近未来日本召喚紀 (しらみね)
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01話 転移

西暦2089年1月15日、日本国旧首都・東京上空36,000km。東京湾軌道エレベーター内静止軌道ステーション上層・戦闘指揮室で、その男は溜め息をつく。

「なぁんでこんな場所で仕事をせねばいかんのだ…」

男は独り言を続けた。

「外を見渡しゃ常に一面星だらけ。下を覗いてもいつも変わらねぇ、緑と青と白の球体だけだ。最初の頃こそすれ感動したもんだが、今じゃもう飽き飽きだ。早く地上勤務に戻りたいぜ」

「羽島さん、文句を言っても仕事は減りませんよ」

もう一人、CICで隣に座っていた男が、独り言を垂れ流していた羽島に話しかける。

「とは言ってもよぉ、神崎。ステーションとエレベーター同士をつなぐチューブの防衛司令なんて、AIにでも出来るとは思わねぇか?俺にはここで仕事をする意味が分からねぇよ」

「ステーションへの常駐は必要ですよ。第一それは、人ならざるモノに宇宙防衛の引導を完全に渡すと言っているようなものじゃないですか。第一もうすでに大半が…」

「あ〜はいはい分かりましたっ。この話は終わり。俺たち航空自衛官は、国防という与えられた使命を遂行するのみ、国防の在り方を決めるのは俺たちじゃなく政治家だ。そうだろ?」

「はぁ…」

神崎は、何かはぐらかされたような気がしてならなかった。

「しっかし、宇宙はいつ見ても変わらないな。いや変わり続けているけれど、その変化を俺は感じ取れない、の方が正しいか」

羽島は巨大なアクリルガラスに手を当てながら、ただ白い輝点しかない空を見上げる。

黒と言うには黒すぎる背景に、羽島は吸い込まれていきそうになった。

瞬間。空は一面白く光り輝く。

「なっ…!」

羽島は覚悟した。

「対衛星戦闘用意!全員安全ベルトを着用しろ!新型兵器による攻撃の可能性がある!」

CICが慌ただしく動き始める。

そのCICを、今度は原因不明の浮遊感と横Gが襲う。一部の人間はガラス面へと一直線に叩きつけられていった。

叩きつけられなかった幸運な人間達は自身の机に必死でしがみつき、レーダーを睨み、通信を行おうとしてーーーそして絶望した。

「れ、レーダーに感なし!付近に何処の衛星も確認できません!」

「地上、及び他のステーションとの通信途絶!大阪EVも名古屋EVも応答しません!ケーブル損傷の可能性大!」

神崎は運良く、エレベーターの制御装置に手が届いた。

「制御装置作動します!」

「衝撃に備えーっ!」

神崎が叫んだ瞬間、エレベーター備え付けのスラスタが作動する。

12秒ーーー。ステーションが完全に静止するまで、たったの12秒だった。だが、現場に居合わせた人間にとって、そのほんの僅かな時間は、恐ろしく長く、そして静かだった。

「……被害を報告」

「ステーション内にて負傷者が確認できているだけで23名ほど、現在救護班が治療にあたっています。ケーブルについては、自動修復プログラムが作動中です」

「そうか…」

そう言って羽島は、彼らに冷めきった視線を向けている宇宙へと目をやる。

「なあ神崎」

「どうしましたか…っ!」

神崎は羽島と同じ方向を向いて、息を呑んだ。信じられるはずもない光景を目の当たりにしたからだ。

「俺たちの惑星は…」

 

「こんなにも、デカい星だったか?」




勝ったな、風呂入ってくる()

…という事で、第1話はいかがでしたでしょうか。ハーメルンどころか小説自体が初めてなので、色々稚拙なところもあると思います。そういったところは是非指摘して頂けると幸いです。


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02話 集積と整理

同日

かつての岐阜県中津川市である中津川直轄区・首相官邸には、次々に人と情報が集まってくる。

「総理、入室されます!」

その一角で、会合が開かれようとしている。

官房長官、法務大臣、外務大臣、財務大臣、経産大臣、防衛大臣、農水大臣、国交大臣に国家公安委員長と、錚々たる面子が揃うも、その顔は一様に暗い。

「ただいまより国家安全保障会議、緊急事態大臣会合を開催致します」

総理が重い口を開いた。

「現状を報告してくれ」

「はい、総理。皆さま、お手元の端末をご覧下さい」

どことなく機械的で無機質な音声が状況を説明する。

「こちらが大阪湾軌道エレベーターの静止軌道ステーションから地上方向を撮影した映像です」

「これは…」

「発光の前後で惑星の表面積が約10倍ほど変化しています。また、日本国に属する領域以外の地域も確認できません。衛星についても同様です。以上より、日本国は地球とは別の巨大地球型惑星に転送されたと推測します」

「ちょ、ちょっと待て」

経産大臣が発言する。

「国がまるごと転送?そんなSF小説のようなことがあっていいのか」

「ですが、これは事実です。信じられないとは思われますが、現実に起こっている以上は腹を括って下さい」

「はあ…」

会議室にいた人間は、機械的なそれが発するあまりに現実と掛け離れた状況を未だ飲み込めずにいた。

「軌道エレベーターの損傷も、転送が要因と思われます。表面積の変化に伴って地表面に対する鉛直方向とエレベーターの角度にズレが生じ、その結果エレベーターにしなりが生じて反発したと考えられます」

「なるほど…。エレベーターの復旧状況は?」

次は官房長官が尋ねる。

「現在、東京湾・大阪湾軌道エレベーターとのケーブルは臨時復旧しております。完全復旧にはあと35分程かかると思われます。伊勢湾軌道エレベーターの臨時復旧は現在進行中で、残り3分で終了する予定です。ですが、問題が一つ」

「なんだね?」

総理がそれに聞き返す。

「地球では赤道上及び極地に建設された国連国際エレベーターを軸として、それらと世界各地の軌道エレベーターを網目状に構築することで安定していました。しかし今はそれらの機構が消失しており、現在はスラスタによって強制的に制御しています。現在の状態ではかなり不安定であるため、これらの再構築が必要かと」

「再構築にはどれくらいかかる」

「簡易なものであれば、5年ほどかと考えられます。しかし、高額な建設費用、並びに現地政府との交渉に時間がかかると思われます」

「なるほど…。ん?現地政府ということは文明が存在しているのか!?」

「はい。各地に所在している模様です。特に我が国から西へ2つ目の大陸とその南の大陸には、兵器類や都市群から鑑みるに第二次世界大戦から第一次冷戦中期程度の文明が確認できます」

「先にそれを言ってくれ!ならまずは、これらの文明と接触し、国交を結ぶのが先決だな」

「ああ、我が国だけでは経済は成立しない」

参加者たちは口々に意見を話す。

「エネルギーと食料についてはどうなる」

農水大臣にとっては、食料問題が一番の懸念であった。

「軌道エレベーターに設けられた大規模太陽電池による電力は、ケーブルが復旧次第供給可能です。これらの電力を消費して、液化水素の生成、藻類石油の生産、農業タワーでの農作物生産が可能です」

「よし、分かった」

総理が締めくくりに入る。

「これらの現地政府と国交開設交渉にあたろう。出来る限り多くの国と接触を図れるよう、各々指示してくれ。私からは各機関が協力し合い、横の繋がりを設けるよう要請しておく」

「分かりました、総理」

総理はふと左腕に目をやる。もう2時間以上が過ぎていた。

「これにて解散」

 

 

それぞれの大臣が各省庁へと急ぎ足で戻る中、総理は一人会議室に残っていた。

「このまま何もなければいいが…」

総理の声は、外を飛ぶ無人機の音に消えていく。




説明回です。「早く異世界側と接触しろ!」とお思いでしょうが、次!次までお待ちを!お客様あーっ!

…今回は近未来的というより、結構現代に近いですかね。でも昔も今も会議というもの自体に変化はないので、これから先も大きな変化は生じにくいかな?とは思ってます。今回もお楽しみいただけていれば幸いです。


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03話 接触

神聖ミリシアル帝国・港町カルトアルパスのとある家に、アマチュアの天文愛好家・ウィズダムは住んでいた。

「やはり、いつ見てもあの星は美しい」

彼の趣味はその肩書き通り、天体観測だ。今日は仕事が休みであったので、昼間から彼ご自慢の大型魔導望遠装置で星を眺めていた。と言えども今は昼間である。一等星、それもとびきり明るいものしか見ることは叶わない。好んで飲む蒸留酒の瓶を一つ空けつつ、夕暮れまで優雅に空を眺めながら過ごそうと考えていた。

「最近は動く光点が見えることもあるからな…。楽しくて仕方がない」

彼は独り言を呟きつつ気ままに装置を動かしていると、レンズの先に赤い光点を見つける。

「あれは…隕石か!珍しいこともあったもんだ。これだから天体観測は辞められん」

そう言って隕石に焦点を当ててしばらくしていると、ある事に気がついた。

「…いや、何かおかしい。隕石ならもっと降下速度は速くていいはずだ。それに、形が崩れないのも違和感がある。…まさか、古の魔法帝国の!?」

彼は怯えてあちらこちらに通報した。

 

 

 

西方第2大陸南方の宙域で、二機の白い巨鳥が空へ向かって落ちる。

「現在当機は大気圏に再突入しております。座席にお戻りになり、安全ベルトをご装着ください。繰り返します。まもなく当機は…」

「本当に上手く行くのだろうか…」

その巨鳥、政府専用機に乗り込んでいた外交官・朝田は一抹の不安を覚える。

「なにせぶっつけ本番だ。失敗しないためにも、今回は細心の注意を払わなければ」

話は数日前にさかのぼる。

 

 

 

ーー日本国航空自衛隊大阪宇宙基地、第12無人機偵察部隊。ここでは各地に無人機を展開させ、情報収集を行っている。今日の任務は異世界側の言語データの収集であった。

「まもなく西方第2大陸上空宙域に到達します。大気圏突入開始」

AIオペレーターが状況を報告する。

大陸名は現時点で不明であったために、仮名として日本国から見た方角と、距離が近い順に第1、第2、第3、…と名付けられていった。大国の言語であれば世界の共通言語として使われている可能性が高いために、優先的にこの国が偵察対象となった。

「海抜150,000mまで降下完了しました。指向性マイク展開」

「よし、まずは大陸の西側にある都市に向かおう。なにせドラゴンがいる世界だ。気をつけて飛べよ」

隊長が指示を出し、偵察無人機RQ-37Sは指示通りの空域へ向かう。

「でもまさか、ドラゴンのいる世界とは思いませんでしたよ」

「あぁ、俺もエレベーターからの映像を見た時は驚いたさ。案外この世界、大昔に流行った魔法とファンタジーの異世界なのかもな」

隊長が冗談を飛ばし、そんなはずないと無人機管制室は笑いに包まれる。

「…到達しました」

「よし、収集開始だ。音声を全員のヘッドセットに流してくれ」

全員のヘッドフォンに、わずかに空気を切る音が聞こえる。管制室にいる誰もが耳を澄ましていた。

『……現在…世界…………報…せよ……』

「!!!」

全員に電流が走った。

「今!今の場所だ!あの議事堂様の建物にマイクを指向させるんだ!」

「了解」

無人機のマイクが指向する。

『…世界は現在安定しております。しかし、古の魔法帝国の復活が不明な以上…』

指揮室は驚愕に包まれた。

「に、日本語じゃないか!一体どうなってる!?」

「驚いたな…。しかし、これなら言語情報をそれほど収集しなくとも良いかも知れない」

皆は口々に意見を述べている。

「だが、古の魔法帝国というのが気になるな。この世界には魔法なんてものが存在しているのか?」

「それについては、今後収集していく必要がありそうですね。まさか隊長の冗談が現実になるとは…」

この部隊の仕事は終わりそうにないようだ。

 

 

 

ーー高度5,000mまで降下した機内の中で話は続く。

「ぶっつけ本番、か…。だからって、こんなデカブツで向かう必要があるのか?」

政府専用機といえど、実態は全長500m、全幅1kmに自衛用UAVを6機、小型有人機を2機搭載した宇宙往還機である。

「考えてみろ、第二次大戦期と同レベルの国力を持った国家だぞ?帝国主義を掲げている可能性すらある。そのためにも、我々の国力を見せる必要はあるんじゃないか」

「これじゃ砲艦外交そのものじゃないか。相手を無理に刺激すべきじゃないだろう」

「まあ、政府の考えだ。なにせ今は危機的状況だからな。それに、あの第三次世界大戦のような展開にするわけにはいかない」

2人の外交官は、この後の展開を予想して苦悩する。

「…お、あちらさんがお迎えに来たみたいだぞ」

彼らはそう言って外に目を向けた。

 

 

 

ーー神聖ミリシアル帝国・港町カルトアルパスのある酒場では、大きな騒ぎになっていた。

『小天体の落下について、現在政府は空域に航空部隊を観測に向かわせており…』

「何だこれは!」

「まさか、古の魔法帝国の遺構なのでは!」

酒を呑んでいたの人々はニュースを見て、次々に声を上げる。

事の発端は先程、中央世界の方向へ向けて人工物と思われる天体の落下が確認されたことにあった。その天体の、異様なまでの落下速度の遅さが人々の恐怖心を煽る。

「ミリシアルの戦闘機が直々に確認に向かったんだ。世界最強の神聖ミリシアル帝国だ、きっと大丈夫さ」

人々はそれに怯えながらも、どこか楽観していた。

 

 

 

「しかし、一体どうなってんだ」

神聖ミリシアル帝国第5制空戦闘団の隊長・ウィンダーが、エルペシオ3の機内で愚痴を漏らす。

「訓練から帰って来た瞬間にこれだ、全く何なんだあれは!」

一番最初に天体を捉えたのは、アマチュアの観測家であった。彼による「おかしな天体が落下している」との、天文台への通報を受けてミリシアル軍も観測を開始したのだ。だが、観測を続ける内に人工物、それも古の魔法帝国の遺物ではないかという疑惑が高まっていた。

《まあまあ落ち着いて…。あっ!見えてきましたよ》

「あぁ…ん?ちょっと待て!なんだこれは…!まるで航空機じゃないか!」

航空部隊の隊員達は戦慄した。これほど巨大な飛行物体がどうやって飛んでいるのか、なぜ宇宙から落下してきたのか、そもそもこれはどこのものなのか、様々な疑問がわく。

(まさか、あの古の魔法帝国なのか…?)

その瞬間。一方の巨鳥が1羽の小鳥を手放した。

「っ!!総員臨戦態勢!相手の攻撃の可能性あり!相手が攻撃し次第反撃せよ!」

魔信のスイッチを入れ、各機に通達する。皆緊張していた。

あの小さな飛行物体に、生物らしさなんてものは全く感じなかった。

《近づいてきたぞ!》

「何をする気だ…?」

その小さな飛行物体は我が物顏で近づく。いつの間にか100mを切っていた。

(私の命日は今日なのか…?いや、我々は世界最強の神聖ミリシアル帝国だ。そんなことはないはずだ…)

「私が魔信で呼び掛ける」

隊長機が前へと出た。

「こちらは栄えある神聖ミリシアル帝国である!そこの大型機は応答せよ!!」

…………………。

「こちらは栄えある神聖ミリシアル帝国軍である!そこの大型機!直ちに応答せよ!!」

………魔信に応答は無い。

《どうなっているんだ…》

「…これじゃどうしようもな」

『こちら日本国自衛隊特別航空輸送隊、第701飛行隊である!飛行目的は貴国との国交開設交渉だ!』

《うわっ!…これは、拡声器か?》

「こちら栄えあるミリシアル軍、すまない、もう一度飛行目的を言ってくれ」

『……こちら日本国自衛隊、飛行目的は国交開設交渉だ』

「…貴機の目的は理解した。本国に魔信を送らせていただく。こちらの意見が決まるまで当空域で旋回し、待機せよ」

『……了解した、感謝する』

ウィンダーは魔信のボタンから手を離した。

「まさかこんなことになるとは…」

彼は一抹の不安を覚えた。

 

 

 

ーー神聖ミリシアル帝国・帝都ルーンポリスにある皇城では、今まさに緊急の会議が開かれようとしていた。

「これより帝前会議を開催致します。本日は急なお呼び立てとなりましたが、事態が事態ですので何卒ご容赦ください」

国防省長官であるアグラが、一言断って会議を始める。

「今回の事案について説明致します。本日、宇宙から我が国の方面へ向け人工物と思しき物2個体が落下、いえ、降下しました。我が国の第5制空戦闘団が接触した結果、これらの人工物には日本国という国の使節が搭乗しており、国交開設交渉を求めているとのことです」

「日本国?そんな国聞いたことがないぞ!」

総務相が発言する。

「はい。彼ら曰く、突然に転移してきたと言っており…」

「そんな戯言を信じられるのか」

彼の発言は、常識的に当然の考えであっただろう。

「しかし、宇宙から飛来してきたという事実があります。これ程の魔法技術を備えた国があったでしょうか。また、このような方法で大陸に接近されたとなれば、安全保障上においても大きな脅威となりかねません」

「しかし、うーむ…」

総務相は歯切れ悪そうに引き下がった。

「アグラ。説明ご苦労」

「はっ!皇帝陛下!」

皇帝・ミリシアル8世が、場の空気を一挙に制圧する。

「…つまりだ。あれは古の魔法帝国の遺構、

僕の星ではなかったという事だな」

「はっ、皇帝陛下。しかしながら、大陸にここまで接近されるとなると、安全保障上我が国の脅威足りえます。また、ミリシアルの格位を落とさない為にも、諸外国に弱々しい態度を見せるべきではありません。交渉については応じるべきではないかと」

「成る程」

…場に沈黙が流れる。

「…余は国交開設に向け、交渉しても良いと考える」

「!?陛下、しかし…」

この会議の参加者らは、皇帝の突拍子もない発言に困惑する。

「だが、それは日本国を調べ上げた後だ。外務相、日本国との交渉を認可する。使節を派遣し、情報を持ち帰るよう調整するのだ」

「…はっ、陛下!」

「情報局からも日本国の情報について調べ上げよ。…来たる古の魔法帝国との戦において、日本国は使えるやもしれぬ。彼らを試そうではないか」

皇帝ミリシアルの一言により、異世界は少しずつ動き出す。




申し訳ありません、大変遅くなりました!不定期更新とは言え、流石に遅すぎました。次またこうなったら…察してください()

今回は接触編、という事で…
この作品に出て来る宇宙往還機は大半が軌道エレベーターからの給電を受けて飛んでいます。つまり大まかに星の半分は燃料の心配無く飛べます。どこの某フライトシューティングゲームに出て来る超兵器だよ、というツッコミは置いといて(自分は結構好きですねあのゲーム)。最後の方の展開が本編にかなり近寄ってしまいました。出来る限りオリジナリティを出したいのですが、自分の技量の無さを悔やむばかりです。

感想、批判両方お待ちしています。


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04話 入港

2羽の巨鳥は、神聖ミリシアル帝国の戦闘機によってエスコートされる。

「しかし、一体どうやってカルトアルパスに近づくつもりだ?あんな化け物を着陸できる飛行場なんて、ミリシアルにはないぞ」

ウィンダーは率直な疑問を口にする。

《彼らには何か方法があるのでしょう。…何かは分かりませんが》

パイロットらは、ただ見守ることしか出来なかった。

 

 

 

一方その巨鳥の内部、臨時本部となった政府専用機内の大会議場は、交渉に向けた最終調整を行っていた。

「この資料はペーパーか!?取り敢えず100部くらいは刷っておいた方がいいかな」

「使う映像資料は全部データベースに突っ込んでおくとしよう」

「プロジェクターは…多分あちらさんにはないだろう。ディスプレイを持って行こうか」

各々が自分の仕事を果たすために奔走する。

椅子に座って小型有人機に乗り込むのを待っていた朝田は、隣に座っていた別の外交官と雑談する。

「…しかし、無線が使えないとは。難儀でしたね」

「えぇ。まさか無人機の指向マイクを使って相手の呼びかけに応じるとは考えつきませんでしたよ。あの機長の咄嗟の機転が功を奏しましたね」

そもそも、無人機を繰り出す事は予定に無かった。だが、機長は異世界側の通信がこちらの知る原理のものでない可能性を予見して、集音装置を装備させた無人機を射出したのだった。

「ああいう機転は、人工知能には出来ない芸当でしょうね」

「でも、次は出来ますよ。今回のケースを記憶しましたから」

2人は談笑する。

『射出準備が完了しました。順に第1搭乗ゲートからご搭乗ください。繰り返します。射出準備が…』

「よし、それじゃあ行くとしますか」

小型有人機に、次々と担当外交官が乗り込んでいく。

 

 

 

『こちら日本国航空自衛隊、只今より港湾へ2機入港する。双方とも機体の全長は31.2メートル、全幅35.8メートル』

「了解した。我々が先導する」

《あの化け物には子機があるんでしょうか。しかし入港…水上機なんですかね?》

隊員の一人が声を漏らす。

「さあな。こちらはもう何が来ても驚かんぞ」

そう言っている間に、巨鳥からそれぞれ一つずつ小鳥が産み落とされた。

小鳥はハヤブサのように水面近くへと降り、かと思えばトビウオの如く、表面効果を受けながら水面上を、時速400kmという鈍足で爆走する。

「エルペシオ3よりかは少し遅いな。だが、あれを小型船舶として見るなら異常に速い」

やがて小鳥は着水フロートを機体からせり出し、着水した。それでも100ノット近い俊足を彼らに見せる。

《あれは着水…しているんでしょうか?あの機体は良く分からないですね》

『こちら日本国航空自衛隊シーガル1、港湾へ進む2機のうち前方にある機だ。誘導を求む』

「了解した。貴機から見て10時方向へ進路を調整せよ。港湾へ接近次第、魔導船が誘導を担当する。もう1機も同様に進んでくれ」

『こちらシーガル1、誘導に感謝する』

魔信から手を離す。

「…これで完了か?」

《こちらミリシアル帝国カルトアルパス航空管制、作戦完了だ。第5制空団は帰投せよ》

「了解」

エルペシオ3の群れはその緊張を解かぬまま、基地へと帰っていった。

 

 

 

ミリシアルの魔導船に導かれて、2機の方舟は港湾に接岸する。港湾の担当者は桟橋を接続しようとしたが、何処に繋げてよいか分からなかった。そうしている内に、機体からタラップが伸び、岸へと接続する。

 

この日、日本国の外交官は初めて、異世界の地を踏みしめる。




…一月も投稿にかかった挙句これだけ?いやほんとすみません許してください。忙しくてあまりこちらに手をつけられてないです。
こんな駄文を楽しみにして下さっておられる方はおそらくいらっしゃられないでしょうが…いたら嬉しいな…(消える霊圧)

…文章はここで途切れている ▶︎▶︎


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05話 会談

「それでは只今より、神聖ミリシアル帝国・日本国間の国交交渉を開始します」

ミリシアル側の代表者により、交渉がスタートする。ここはミリシアルが用意した会議場の一室だ。日本国使節の眼前には一面に、デカデカと壁画が描かれていた。朝田はそれを一目見て、まるで悪趣味な、と感じる。中心に置かれているのは巨大都市のようだ。その周りを、2つの島のようなものが描かれる。右側の島にあるのは機械だろうか、左側の島の上にはドラゴンのような生物が飛んでいる。それらの島の上に描かれた人々は、中央の方へ向け平伏している。雲の上では、まるで西洋の宗教観を体現したかのような神が優しく微笑んでいる。なんて傲慢な絵なのだろう。彼らミリシアルから見た世界とはこうなのだろうか。彼らミリシアルには我々がどのように見えているのだろうか。

「我々は日本国の国体を知りません。我々に貴国の詳細を説明して頂きたい」

ミリシアルの外交官、名前をフィアームというらしい彼が話し始めた。

「それについては、私から説明します。こちらの資料を」

私は予め準備しておいた資料を配布するように頼んだ。

「…この言語は、我々には読めないのですが」

「…えっ?」

うっかり声が漏れてしまった。準備は無駄だったかな…と思いつつも、気を取り直して説明を続ける。

「失礼しました。…それでは、こちらの映像をご覧ください」

机の上に1mくらいの、太い角材のような物体を置き、天板を開けるジェスチャーをする。

すぐに上板が開き、空気中に擬似的なディスプレイ状のものを投影する。反レーザー技術によって可視光線を吸収し、背景の空間をほぼ黒に近い色にすることでプロジェクターなどにありがちな背景の透過が少なく、かつて映像投影手段として主流であった液晶ディスプレイと比べても色味や画質で大差ない。

そこへ日本の紹介映像が、音声とともに映し出される。

 

 

 

…こんな国家とは聞いていないぞ。いや初接触なのだから聞いていないのは当然なのだが、それにも限度ってものがある。我々の想定を超えすぎだ。欺瞞なんじゃないか。大体なんだあの映像投影技術は…。空気中の光を魔素で動かしているのか?それだと面の先が透けて見えるはずだ。映像の中に出てきた都市もそうだ。彼らは都市と言っていたが、天に伸びた塔の麓にある多層都市など、世界樹の根元のようなそれだ。本当にあんな文明が可能なのか?一体どのような魔法技術が使われているのか?

「…我が国からの説明は以上となります」

彼らは我々に対して国交を欲している。だが、我々にも彼らを調査しなくてはならないという目的がある。我が国としての意思を伝えなければなるまい。

「我が国としては、映像内の描写に疑問があり、実在するものと考え難い。直接使節団を派遣し、貴国との国交開設を検討したい」

日本側は少しばかりの間身内で話し始めた。だが、すぐに意見がまとまったようだ。こちらの方へ振り返り、今度は我々に向け話す。

「わかりました。日本国は貴国の使節を受け入れます」

会談はスムーズに進みそうだ。

 

 

 

日本と神聖ミリシアル帝国は、ミリシアル側が日本へ使節団を派遣し、その上で国交開設に向け交渉する事で合意した。一方その頃、日本の南西すぐ側にある大陸・ロデニウス大陸には長閑な、それでいて僅か重苦しい空気が流れる。それは異様に静かでもあった。それは唯々平和なのだろうか、それとも、"嵐の前の静けさ"だろうか…

 




気づかないうちにUAが8000を超えていて、個人的にはこんなにも見て頂けるのかと内心驚いております。より多くの方々にも楽しんで頂けるよう努力してまいりたいと思います。次はいつになるかは分かりませんが…

追記
ここのところ忙しく、暫く更新が難しい状況が続いております。時間に余裕が生まれれば逐次更新を行ってまいりたいと思いますので、何卒宜しくお願いします。


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