IS.輝きを纏いて〜仮面のヒーロー〜 (TENC)
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第一章 始まりの決定戦
オリキャラの設定


オリキャラの設定をネタバレにならないように気をつけて書いて見ました。
参考までにどうぞ。


仮面のヒーロー

オリキャラ設定

 

朝凪允(あさなぎじょう)

転生者

特典 平成ライダーのベルトと変身資格

概要

幼少期から見ていた仮面ライダーの存在に憧れて、普通の人よりは正義感の強い人物。

戦闘は、前世では得意では無かったが、今世では白騎士事件をきっかけに特訓に励み、アクション俳優やプロの格闘家もビックリな身体能力を獲得した。

全平成ライダーに変身は可能だが、前世の強い印象から仮面ライダーウィザードを好んで使う傾向がある。

 

夜束叉新太郎(やつかさしんたろう)

転生憑依

特典 門矢士としての権能、ネオディエンドライバー

概要

前世は、高校教師をしていたが新しい病にかかり、そのまま対処法が見つからずに衰弱死を迎えた。が、新しい病に思えたそれは、博士号を持つ医師の人体実験の影響であった為、召されずたましいのみが彷徨っていた。

そこから、ISの世界(今作の世界)の夜束叉新太郎の肉体に、彷徨っていた魂が入り込み、現在の夜束叉新太郎が生まれた。

特典は、憑依した際に彼の前世を管理していた上位存在が与えたもの。

 

三枝倫太郎(さえぐさりんたろう)

転生者 → 転移者

特典

ライダーの力

概要

剣と魔法ならぬ超常飛び交う世界に生まれたなろう系チート主人公キャラ。

ライダー作品の力であれば、敵味方問わずまたその代償に囚われずに行使が可能。

余りにも強力過ぎた為、元いた世界の上司に当たる“皇夜空(すめらぎよぞら)”こと、鋼刃の母から封印されており、相棒であり管理者である鋼刃の許可が無ければ、ライダーも初期強化フォームまでしか使用できない。

 

皇鋼刃(すめらぎこうは)

転生者 → 転移者

特典

知識と技術

概要

人よりも優れた技術と天才よりも万能な知識を持って転生したが、周りが頭のおかしいチート集団だったが、持ち前のセンスでなんとか成り上がった系のサブキャラ枠。

1つの小国の皇太子として生まれたが、周りの大国の上層部に我慢が出来なくなり、他の転生者たちを利用して下克上を果たした。

ライダーの力は、本来なかったが様々な実績から祝福として行使出来るまでになった。

今作にて、もっとも厄介なキャラ。

 

真白唯香(ましろゆいか)

転移者

特典

なし

概要

倫太郎と鋼刃の転生した世界の住人。超常の世界の住人らしく、魔法や超能力を使えたりする。

鋼刃との馴れ初めは、鋼刃が最初に転覆した大国に奴隷として囚われていた所を助けられた所から始まる。

最初は、かなり遠慮がちな人柄だったが、鋼刃やその母の女王など、周囲の人との関わりから今のような面白い事を好む軽快な人柄へと変わっていった。

鋼刃への思いを語らせたら、どんなイチャラブ夫婦やカップルも、敵わない程に募っている。

 

織斑秋十(おりむらあきと)

if

特典

なし

概要

あり得たかもしれない“IS”の世界線に住む織斑一夏の双子の兄。

傲岸不遜な性格で、常に他人を見下している人物で、弱い身分や才能のない者には、いじめや罵詈雑言は勿論のこと、自殺に追いやろうとする程までに、自分を特別だと思い込んでいる。

形容しがたいゴミクズのような人間。

 



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R.1p

「初めまして!この一年一組の副担任の山田真耶(やまだまや)です!皆さん。1年間宜しくお願いしますね!」

 

シーーーーン

 

「え、えー?」

 

元気よく挨拶をする副担任の山田先生だったが、ここに居る生徒の殆どが別の事でいっぱいな為反応を返さない。

 

のっけからカオスな感じだが、俺はそんな空間から現実逃避をするようにどうしてこうなったのか、振り返っていた。

 

 

 

 

 

 

「つまり、俺は巻き添えで死んだと?」

 

「はい。誠に申し分けありません!!」

 

目の前に三度、土下座をかます俺らで言うところの神さま。

何故、こんな状況になっているのかと言うと、普通に学校へ行く為に乗っていたら、俺の座っていた席の窓から何故か電柱が突き出て、敢え無く俺は絶命した。

 

のだが、本来は俺の反対の席に座ってた爺さんが、亡くなる運命だったのが、死神?の不手際で逆の俺の場所から突き出て来たらしい。

 

「あー、もういいんで、これから俺はどうしたら良いんすか?閻魔さまに裁かれるんすか?」

 

自分の人生に未練があったと言う訳ではないが、昔からなってしまったことには頓着しない性格だから、この運命を受け入れてはいる。

 

「いえ、こちらの不手際ですので可能な限りの要望を申し受けます。もちろん、天国に行きたいと申されても裁定は行われますが」

 

「え?そうなんすか?じゃあ、転生とかって、出来るんですか?出来ればアニメの世界とかに」

 

「はい。可能ですよ。ただ、行く世界は決められませんが」

 

あ、出来るのか。

よく読んでいたネット小説みたいに、転生出来ないかと思っていたから、ちょっと嬉しい。

 

「因みに俺だったら、何処なんですか?」

 

「転生する場合ですか?それなら、ちょっと待って下さい………はい、こちらです」

 

そう言って、神さまが俺に見せて来たのは、『インフィニット・ストラトス』と書かれた分厚い辞書みたいな本を出して来た。

 

インフィニット・ストラトス通称“IS”と呼ばれる作品で、ISという女性にしか動かす事の出来ないパワードスーツ型超兵器を中心に、物語が展開していく世界だ。

ISのフォルムなどは好きだが、その世界に広まっている女尊男卑の思考はとても好きになれない。

けど、出来るのならばやってみたい事がある。

 

「貴方が居た世界のモノですが、必ずしも同じ運命ではありません。あくまでも似たような世界です」

 

「あ、そうなんすね。それで、その、特典とかって貰えたりしますか?」

 

「はい。大丈夫ですよ。貴方は若かったですが、芯のある若者でしたので、ある程度までなら申して下さい」

 

「それじゃあ………」

 

趣味が全開になるけど、ISの世界だし多分何かしらで身の危険になるだろうから、こういうのは備えあれば憂いなしだからな。

 

「それでは、貴方の新しい人生に輝きがあらん事を」

 

その神様の言葉を後に俺は新しい、人生を歩んで行くことになった。

 

 

 

転生した後、意識がはっきりと目覚めた時は俺が、5歳の頃だった。

それから、俺の名前は朝凪允(あさなぎじょう)。両親は、何か特殊な家では無かったが、とても優しい人たちだった。

 

そして、神さまから貰った特典の効果も、両親たちから隠れて確認した。

 

そうして、毎日興奮していたから、この時何が起こるのか忘れていた。

 

 

ある日、眼が覚めると俺の家が打ち壊されていた。

この時、俺はISが世界に広まった事件の事を思い出し、そして俺に覆いかぶさっているモノが両親である事に気がついた。

 

「白騎士……事件………!」

 

自分がこの時に何が起こるのか分かっていれば対処の方法は、たくさんあったはずだ。

全て、力に溺れて前が見えなかった俺の責任だ。

 

 

その後は、予想していた政府からの被害の箝口令を受け、両親の親戚からの保護を受けながら、自分の力を高めていった。

 

 

そして、原作通りに世界初の男性操縦者が発表された。

 

 

 

 

 

「(なるだろうとは思っていたが、ホント傍迷惑な数週間だったな)」

 

男性がISを動かした事で、全世界一斉に行われた男性のIS適正検査。

それを受けた俺は、何となくの予想通りに動かしてしまい、あれよあれよと言う内に、IS学園への進学が決まっていた。

 

「(ていうか、多分俺以外にも()()よな……)」

 

原作での男は主人公の織斑一夏(おりむらいちか)ただ1人だったが、俺を含めて6人もいる。

それに、その織斑一夏もなんかアニメで見た雰囲気と違うのだが。

 

「(これは……アンチものか?)」

 

そんな一抹の不安を抱きながら、俺は。

 

「そ、それじゃあ、次は朝凪くんお願いします!」

 

最初の試練を全うする事にする。

 




名前 朝凪允
性別 男
特典 平成ライダーのベルトと変身資格
ISレベル C
概要
変な所で諦めが早いが、芯の通った心を持っており、簡単には折れない精神力を持っている。
5歳の頃から様々な特訓をしていたので、5、6人なら1人でも相手取れる。


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R.2p

「それでは、朝のSHRを終わりにする。くれぐれも遅刻しないようにな」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

大きな女子たちの返事を聞くと、我らが1組担任の世界最強こと織斑千冬(おりむらちふゆ)は、教室から去っていった。

 

あの後、無難に自己紹介を終えた俺の後に、件の織斑。

一夏ではなく、織斑秋十(おりむらあきと)と名乗る何某の後に現れたこの世界のハイパースターである織斑千冬の登場で、他のメンツの自己紹介は流れてしまった。

正直それで良いのだろうか。女子は構わないが、男子勢は流石に辛いのだが。

 

「(はぁ、苦手だけど、話しかけてみるか……)なぁ、ちょっと、良いか?」

 

「んあ?あ、ああ、構わねぇよ」

 

俺が始めに声を掛けたのは、窓際でとても眠そうにしていた男だった。

ただ、初めて会うはずなのに何処かで見た顔つきに、頭を捻りながら自己紹介を済ます。

 

「一応、自己紹介したから知ってるだろうけど、朝凪允だ。よろしくな」

 

「それじゃあ、俺も。夜束叉新太郎(やつかさしんたろう)だ。こっちもよろしく」

 

「ああ」

 

軽く握手して、自分たちの今までを掻い摘んで談笑を交わしながら、次の時間が始まるのを待っていた。

そう言えば、あの多分織斑兄弟以外に居た男子2人組も、何故か見つからなかったが、放課後にでも話しかけてみるか。

 

 

 

「さっさと、席に着かんか!」

 

「「痛っ!?」」

 

鐘が鳴る前に、織斑一夏が来た後に割と遅れて来た織斑秋十と、原作のヒロインだった筈の篠ノ之箒(しのののほうき)が、織斑先生の出席簿アタックに沈められてから、1限目がはじまった。

 

「授業を始める前に、クラス代表を決める。これは、今度行われるクラス対抗戦に出場する代表でもある。さらに、クラス内でも代表となる。誰かやりたい者は居るか?自薦他薦は問わん」

 

そう、織斑先生が言うとそこかしこから手が上がりだし、教室内が一気に騒がしくなる。

まぁ、織斑とかが呼ばれるだろうから、気にしないでいこう。

 

「はい!織斑……秋十くんが良いと思います!」

 

「はい、私も!」

 

「やっぱり、男子が居るんだから活かさないとね!」

 

「ねぇー!」

 

沢山の女子たちから推薦を受けた織斑秋十の顔は、見るからに嬉しがっているように見え、何となくいけすかない感じを受けた。

そこで、この世界の一夏の雰囲気が、暗めなのは多分あの野郎の影響なんだろう。

 

「(仲良く出来るように頑張るか)」

 

そう、心に決めた所で、原作のイベントが開始した。

 

「そのような選考、納得いきませんわ!?」

 

金髪ドリルことセシリア・オルコットのその一喝で、教室が静まり返る。

転生者である俺は、彼女の成り立ちを知ってはいるが、原作初期の彼女の言動は余り賛同出来るものじゃない。

 

「クラス代表とは、クラスで一番の実力者がなるのが定石。それならば、学年主席であるこのセシリア・オルコットこそが、代表に相応しいですわ!」

 

まぁ、本来ならそうなるんだろうけど、ここのクラスの殆どが一般出身の人ばかりだから、話題性のある者に飛びつくのは目に見えている。

まぁ、彼女もまた周りが見えて無いんだが。

 

「それをたかが珍しいからとテキトーに選ぶだけに留まらず、このイギリス代表候補生である私に、男の下に着くという屈辱を1年間も受けろと申しますか?!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

うーん。この際、イギリスも島国ってのは置いといて、わざわざこっちに来たんだから、こっちの人柄とかを知ってからの方が良かったんじゃ無いのだろうか。

 

そう考えていたら、オルコットの演説に予想外の奴がキレた。

 

「それに技術的にも後進的なこの国で暮らす事自体、苦痛で——-」

 

「そんなん言ったら、お前ら所もマシなお国自慢なんて無いだろ。何年連続メシマズ国No. 1だよ」

 

「あ、貴方、我が祖国をバカにしますの!?」

 

正直言って、織斑秋十がこんなことを言う奴だとは思わなかったが、多分自尊心が強い奴なんだろう。

うわ、並な女尊主義者よりも厄介な奴じゃん。

 

その後も言い合いをするオルコットと織斑秋十の2人。

 

「埒があきませんわ!勝負ですわ!」

 

「良いぜ!しのごの言うより、シンプルで良い」

 

「はぁ、やっと終わったか。なら、今から一週間後に代表決定戦を行う。オルコット、織斑たち7名は、準備しておくように」

 

「「「「はっ?」」」」

 

「聞こえなかったのか?朝凪、織斑、三枝(さえぐさ)(すめらぎ)、夜束叉の5名もだ」

 

マジかよ。これって、職権乱用なんじゃ無いのか?

そう思い、他のメンツを見渡すと朝見た時から変わらない無表情の一夏を除いた、連中は皆面倒くさそうに顔を歪めていた。

 

「それでは、授業を始める。山田先生お願いします」

 

「は、はい!」

 

そう憂鬱な気分の中、授業がはじまった。

 



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R.3p

「俺は、皇鋼刃(すめらぎこうは)。よろしく」

 

三枝倫太郎(さえぐさりんたろう)だよ。よろしくね」

 

「ああ、よろしく。それで、そっちが……」

 

「………織斑一夏」

 

「おう!よろしくな」

 

学園初日が終わり、放課後、せっかくの男同士なのだから、知り合っておこうと思ったら、向こうの方から織斑一夏を連れて話しかけてくれた。

鋼刃は、なんか胡散臭い雰囲気があるけど、楽しげに会話をする倫太郎の感じから悪い奴じゃ無いんだろう。

一夏も受け答えはしっかりとしてくれるから、正直ホッとした。

その後は、俺も近くにいた新太郎と一緒に名乗り返して、呼び方とかこれからどうしようかといった風に話していると、教室に山田先生が入って来た。

 

「良かった。皆さんまだ居ましたか。渡し忘れていたモノがありました」

 

少し、息が上がった山田先生から渡されたのはそれぞれ番号が書かれたホテルのカギ見たいな鍵だった。

 

「先生。コレは?」

 

「皆さんの寮の部屋の鍵ですよ?」

 

「あ、あー、成る程そう言うことか………」

 

「あのー、荷物とかってどうしたら良いんですか?」

 

その場にいた全員が、状況をある程度察すると、慣れたように対応する。

山田先生も俺たちの雰囲気を見て感じたようで、申し訳なさそうに答えてくれた。

 

「寮監室に配送済みですので、それぞれで受け取ってください。すいません。伝達が遅れてしまって」

 

「いえ、大丈夫です。なったのならしょうが無いので」

 

取り敢えず、各々の部屋に今日は帰って、どんな感じだったかは明日の朝にでも聞くとする。

 

「それじゃあ、行くか」

 

「そだな」

 

そう軽く言い合い、それぞれの荷物をまとめて学生寮まで向かう。

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

(新太郎)は、自分の鍵の番号と確認して見つけた自分の部屋の前に突っ立っていた。

正直言うならば、俺は所謂転生者なんだが、死因とかは知らないし気づいたらこの世界に居たし、何となく前世の記憶を持ってるだけだから、正直他の人より少し人生経験が多いだけなのだ。

 

「1人部屋とかだったら、嬉しいな」

 

取り敢えず、誰か居たら困るからノックをする。

反応がない。どうやら、1人部屋っぽい。

 

「良かったと言えば良かったな」

 

そう思い、部屋へと入る。

そして、そのままベッドに倒れこんで俺は眠りについたのだった。

 

 

 

「す、すいません……」

 

「い、いや、気にしなくても大丈夫だよ。お互いが悪かった事だから………」

 

「はい……」

 

()が、部屋に着いた時ノックをすると少し小さかったけど、返事があったから、一言言って中に入ると風呂上がりの姿の少女と鉢合わせたのだ。

その後、男の俺に驚いた彼女の爽快なビンタが俺の右頬を吹き飛ばしたのは、言うまでもないか。

 

 

「ま、まさか、男の方と同室だとは思わなくて、すいません」

 

「俺も一言言えば良かったですね。すいません。それより、貴女は?」

 

「わ、私は更識簪(さらしきかんざし)。苗字で呼ばれるのは好きじゃないから、簪で構わない」

 

「そうか。一応俺も「知ってるから大丈夫だよ」なら、俺も允で構わない。よろしくな簪」

 

「う、うん」

 

ちょっと、気弱そうな感じだけど、余り面倒な性格じゃなくて助かった。

 

 

 

 

「むふー、いっちーの料理はやっぱりおいしー」

 

「……そうか」

 

(一夏)は、同室となった昔馴染みの布仏本音(のほとけほんね)の要望で、簡単なモノを作っていた。

正直、こんな俺なんかと関わるだけで、面倒になるのに、鋼刃達も、本音も懲りないと言うか。

頑固者と言うか。

 

「んー?どうしたのー?」

 

「いや、なんでもないさ……」

 

俺もアイツらみたいに、いや、そんな事は無いな。

 

 

 

 

 

「どうだった?他の子達は」

 

「良い奴らだったさ」

 

「ふふ、良い顔してるよ鋼刃」

 

「こんな顔もしたくはなるさ。ああいう、面白いオーラの奴は中々会えないんだからな」

 

(鋼刃)は、同室の奴が誰か()()()()()()()何の躊躇もなく中に入り、荷解きをしていたら、風呂上がりの真白唯華(ましろゆいか)が、凭れ掛かりながら、話しかけてきた。

 

「ねぇ、本当にこの世界に居るの?残党」

 

「ああ、居るだろうな。じゃなきゃ、俺や倫太郎が呼び出されねぇから」

 

「倫太郎は、どうしてるの?」

 

「1人部屋を勝ち取って、喜んでたよ。まぁ、俺もお前と一緒だから、嬉しいけどよ」

 

「あら、嬉しいな」

 

その後は、特になにがあった訳もなく次の日の朝を迎えた。

 



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R.4p

2日目の朝。

(倫太郎)は日課の走り込みをした後、制服へと着替えるのを終えて食堂の方へ向かっていた。

その途中、一応、鋼刃を誘ったが、案の定無言の拒否が帰って来たので、唯華にはしっかりと連れて来るように伝えて、一人で向かう。

 

「ホント、異性が嫌いな癖に話題には群がるんだから」

 

向かう途中、俺の姿を見るたんびに何処かで盛り上がってる話しを聞きながら、特徴的な団体と合流する。

 

「おや?もしかして、ダブルデートかな?」

 

「り、倫太郎?!何言ってんだよ!」

 

「おいおい、軽いジョークだよ?そんなに、間に受けないでよ」

 

「心臓に悪い事すんじゃねぇよ」

 

昨日の内に仲良くなった、允と新太郎と一夏の3人と多分どちらかの同室の人達だろう。女子2人が一緒のグループに、揶揄いながら合流する。

 

「へぇ、お前も1人部屋だったのか」

 

「そうだよ。やっぱり、1人は気が楽で良いよ」

 

「俺もだなぁ〜」

 

女子2人の名前は、布仏本音と更識簪と言うらしくそれぞれ、允と一夏の同室らしい。

 

「それより、鋼刃は?」

 

「ん?ああ、鋼刃は朝基本何も食べないよ。と言うか、朝が一番機嫌が悪い。一応、同室の人が知り合いだったから、頼んで来たけどね」

 

「へぇ、そんな風には思えないけどな」

 

「ただ、途轍もなく夜型な人間だけどね」

 

基本的に起きる三時間まで起きてる事が多い上に、鋼刃の性格上没頭すると周りが見えなくなるからな。

気づいたら徹夜だったとか良くあった。

 

そうこうと、6人で談笑交わしながら、それぞれのランチを取って空いていた席で食べ始める。

 

「ぐっさーは、よく食べるね〜」

 

「まぁね。俺は燃費が悪いから、結構食べないと1日やってけないよ」

 

「それにしたって、朝から丼とカレーはどうなんだよ……」

 

「見てるこっちが、胸やけしてくるぜ……」

 

「まぁ、鋼刃も最初はそんな感じだったよ。慣れてくれた方が良いと思うよ」

 

そうすると、頷きながらも箸を止めず学食の料理を食べる。

昨日は食べる機会が無かったから、初めて食べたけど結構美味しい。やっぱり、使ってる所にはちゃんと使ってるんだろう。

 

「それじゃあ、俺は遅れない内に行くよ」

 

「食うのも早すぎかよ」

 

「色々と必要だったからね」

 

まぁ、これはこれで助かった事はある訳だから、別段と気にした事はない。

 

教室に向かう途中で、見慣れたコンビと出会った。

 

「やぁ、鋼刃。お目覚めかい?」

 

「……まぁな」

 

「まったく。鋼刃のコレには先が思いやられるわ」

 

「惚れた方が悪いんだよ」

 

ケラケラと笑いながら、個人的にも馴染みぶかいメンバーで、教室に向かう。

 

「そう言えば、どうするの?来週」

 

「テキトーにやるよ。代表とかどうでも良いし」

 

「……あの男にでもやらせておけばいい」

 

そうだよ。何で、立候補も何もしてない俺らが、巻き込まれてるのだろうか。

ここは、本人もやる気に満ち溢れてる織斑秋十1人で十分なのに。

 

「ま、何かしらあるんでしよ。それより、今日の放課後時間ある?」

 

「………アイツらも大丈夫なのか?」

 

「多分ね。みんな用事があるとは言ってなかったし」

 

隠すような事でも無いのだから、らしき人達には確認とか取った方が後々で楽になるはずだから。

 

「まぁ、後でちゃんと確認しとくよ」

 

「……ああ、頼んだ」

 

あ、教室が見えてきた。

 

 

 

 

 

「うーん。これは、出来試合かな?」

 

「いつものことだろ。こう言うの」

 

「お前ら、好き勝手に言い過ぎだろ」

 

学校終わりに、織斑秋十に専用機が渡されると言われて、色々と騒がしくなったが、他の試合に出なきゃいけない()たちは、正直言って当て馬にされた感が否めない。

 

「そんな事はこの際どうでもいいか」

 

「良いのかよ」

 

「なぁ、お前ら“転生”ってどう思うよ」

 

「「!?」」

 

突然の事で、俺は辺りを見回す。その横で何となく察していた新太郎も同じことをしていた。

 

「心配しなくても人払いは、出来てるよ」

 

「そ、そうなのか?」

 

そんな慌てる事でもないが、思わずした行動を苦笑いされながら、倫太郎に返された。

 

「多分、お前たちの予想通り俺は転生者だ。勿論、前の記憶だってある」

 

「俺は、多分転生者なんだろうけど、気付いたらここの世界にいたんだ。前世の記憶も正直余り覚えていない」

 

俺たち2人の返事を聞いて、2人は顔を回せると、2人の身の丈を話してくれた。

 

「俺たちは、どちらかと言うと“転移者”だ。こことは違う世界から、こっちに転移して来た」

 

「目的もちゃんとあるよ。前居た世界でやりやった奴らの残党を追って来たんだ」

 

「そうだったのか……」

 

だから、2人からは普通じゃない雰囲気が感じ取れるのか。

ただ、それを俺らに話してどうしたいのだろうか。

 

「それで、頼みあるんだが、もしもの時は手伝ってくれ」

 

「俺からも頼むよ」

 

そう頭を下げる2人に慌てて、やめさせる。

神様から無理して、力を得たんだからどうせなら、誰かの役に立つ方が良いに決まってる。

 

その後、魔法使いという鋼刃の許嫁の唯華を紹介されると、2人の並びが絵になり過ぎて、何故かイライラしたのは内緒の話である。

 



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R.5p

「とうとう、明日に迫った訳だが、近況はどうだ?」

 

当て馬にされたクラス代表決定戦の前日になった今日。

()たちは、俺の部屋に集まって明日どうしようかと談笑し合っていた。

 

正直に言えば、話し合ったところで、どうにかなる訳では無いのだが、なんかした方が良いんじゃ無いかと思ってしまうのは、前世からの性な気がする。

 

「何にも」

 

「まぁ、訓練機とか簡単に借りれる訳じゃ無いからね」

 

「別に勝たなくて良いんだから、どう負けるかで、良いんじゃね?」

 

「そっすね」

 

いや、まぁ、みんなのおっしゃる通りではあるんだが、やっぱり戦うってなると、気持ち的に落ち着かないのは、分からないのだろうか。

 

「俺たちは、巻き込まれた形だし大体の女子連中は、俺たち男の事を舐めきってるから、負けても態度は変わらんだろ」

 

「多分、そうはならないと思うんだが……」

 

鋼刃は、だいぶ楽観的な事を言ってるけど、正直無様な負け方をしたら多分、余計舐められて面倒な事になると逆に俺は思う。

まぁ、勝ってもそうならないとは限らないけど。

 

「てか、一夏は?」

 

「さぁ?一応、誘いに行ったが、簪はまだ戻って来て無いって言ってたな」

 

「んー、なんか、嫌な予感がするなあ……」

 

そう呟く倫太郎の言葉に、俺たちは何となく納得してしまった。

 

 

 

 

 

 

「なに、図に乗ってんだよ!お前は、ずっと影に居ておけば良いんだよ!」

 

ガスガスと、横に倒れた(一夏)を何度も蹴る秋十(アイツ)

ここは、学園から少し離れた場所だし、結構辛くなって来ている。

最初から人気の無い場所なので、この時間帯にはもう誰かが来る心配は無い。

 

「何で、お前みたいな無能の周りに人が居るんだよ!何で、俺には声をかけない!お前なんかよりも、俺の方が優れているんだ!」

 

そう罵倒を受けながら、俺は自分の身を守るのに努めた。

こんな事は、今に始まった事じゃない。

 

織斑千冬という有能な人の弟というだけで、変な期待を受けていた。

双子の兄である秋十は確かに、千冬姉に近しい才能を発揮して、小さい頃から人気だった。

対して俺は、何をやっても凡人どまり。何か優れた事などは無く。強いて挙げれる料理も趣味の範囲を出ない。

 

だから、周りの人たちは俺のことを見下しバカにし、罵って来た。

 

そして、秋十もまたその1人だった。

 

千冬姉が居る時は、何もして来ないが、アルバイトなどで居ない時はこんな風にストレスの捌け口とされて来た。

正直、そんな事を俺に言わないでほしい。

鋼刃たちは、明らかに変わり者だ。俺の雰囲気を見て、もやしでも育てるかなんて、アホみたいな事を言うんだからな。

 

「ちっ、反応もしないとか舐めてんのかよ!」

 

最後に一般、腹に一撃を入れて秋十は清々したのか何処かに行っていった。

 

「………っ!!」

 

何本かいっただろうか。

身体を動かそうにも、痛みが全身に走りマトモには動けない。

 

「………」

 

こんな姿見られたら面倒だ。

俺が正直に話しても、秋十のことだ有る事無い事言って、切り抜けてその後におんなじ事をする。

少ししたら、また動けるようにはなるだろうから、ちょっとだけ休憩しよう。

 

そう思った時だった。

 

「全く。気にくわない奴だとは思ってたけど、まさかここまでとはね」

 

そこには、1人の女子生徒が立っていた。

その手には、救急箱がある辺りさっきのアレを見られたのだろう。

男だったら、何で助けてくれなかったのかと、文句の1つぐらい言いたくなるが、女ならどうでも良い。

 

「ああ、喋らなくても良いよ。ちょっと手当てするから待ってて」

 

ネクタイの色から、俺と同じ一年だろうが他の女どもとは違うオーラを感じる。

 

「うん。これで良いわね」

 

そう言うと彼女は、立ち上がり寮の方へと向かって、途中で振り向き話しかけて来た。

 

「私の名前は、真白唯華。鋼刃の許嫁よ。それから、1つだけ注告、自分の無能さを呪ってばかりじゃ、咲くものも咲かないわよ」

 

それじゃあね。と真白は、去って行った。

夫婦揃って、胡散臭い。

 

そろそろ、起き上がるかと思い身体を起こすと、全く痛みが無くそれに加えて、()()()()()()傷の治りが早い。

 

「何でだ?」

 

その俺の疑問に答えてくれる者は誰も居なかった。

 

 

 

そして、クラス代表決定戦当日の朝が来た。

 




この話の一夏は、色々な理由でネガティブな感じですが、根は原作一夏に近い物があります。


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R.6p

遅れましたーーー!!!!


「うっわ、一組以外の連中も来てるよ」

 

「だろうな。話題性のある奴に飛びつかない現代人は殆ど居ないからな」

 

「尚更、嫌になって来た」

 

「どうにかしなきゃいけねぇとか、面倒だわ……」

 

代表決定戦の当日となった今日。

織斑先生とかが居る管制室で、()たちはアリーナの雰囲気をモニター越しに見ては、口々に好きに語った。

 

俺や新太郎は、普通に面倒なようにしているが、鋼刃や倫太郎はとても飽き飽きしたような感じで、何と言うか纏っているオーラが違う。

まぁ、オーラが違うと言えば、端に居る一夏の雰囲気も、いつもよりも違うように感じる。

 

あとは、ここには居ないオルコットと織斑秋十の2人だが、まぁ、どちらも自尊心の塊みたいな感じだし、この程度の事で慌てたりとか、呑まれたりとかは、しないだろ。

 

「試合の内容を説明する。形式は、数が多いが総当たりで行う。最初は、オルコットと織斑兄の試合だったのだが、織斑兄の専用機が遅れている。その為、お前たちが先に出てくれ」

 

成る程。ここは、原作の一夏通りって訳か。

けど、直ぐに決まる気はしないので、端にに居る一夏も呼び、こう言う時の一番の方法で決める。

 

「「「「「最初は、グー!じゃんけん、ポン!」」」」」

 

古より伝わる伝家の宝刀、じゃんけんで!

 

 

 

 

 

「クッソが、何で最初からやらなきゃいけないんだよ……」

 

言い出しっぺの法則とはよく言ったものだ。

まさか、俺の一人負けだとは。

 

「はぁ、勝てる気がしない。やるだけの事をやれるか?」

 

訓練機で今回の対戦に合わせて用意された確か、第二世代型のISだったか、打鉄を装着しながら独り言ちる。

基本装備しかない上に、向こうはイギリス代表候補生でしかも専用機持ちらしいから、万に1つも勝ち目を見出せないが、ちょっとはびっくりさせるぐらいは、頑張ってみよう。

 

 

 

「………勝敗ってどうなってたっけ?」

 

「上から、オルコット、倫太郎、織斑秋十、一夏、新太郎、允、(鋼刃)の順で、あと一勝ずつ残ってるな」

 

オルコット 5-0

 

倫太郎 4-1

 

織斑秋十 2-2

 

一夏 3-2

 

新太郎 0-4

 

允 1-4

 

鋼刃 0-5

 

うん。改めて見直しても相変わらず酷い戦績だ。

テキトーに流しすぎた感は否めないが、次の相手がオルコットってのが、尚更やる気が削がれる。

 

「唯華は見てないないの?今更だけど」

 

「ああ、用事でな」

 

「ふーん」

 

ここで、アイツが声援でもかけてくれたら、やる気も爆上がりなんだけどな。

朝っぱらから、こんな下らない事に付き合わされてるから、ただでさえ朝が苦手で、気分が上がらないのに追い打ちをかけるが如く、面倒である。

 

「あ、新太郎負けたねぇ」

 

「まぁ、相手は素人感がねぇからな」

 

「口だけじゃないから、尚更厄介だよ。そんな事より、君の番だよ鋼刃」

 

「ああ、やってくるさ」

 

ここで、もし勝った場合は倫太郎が成績的に並ぶ訳だがアイツなら、多分そうなれば手を抜くだろうし、結局はオルコットの優勝だな。

 

そう考えながら、出現の準備をしていたら、件の唯華から通話か掛かってきた。

 

『やっほー。どう?って、聞くまでも無いんだけどね』

 

「……なんだ、来てるのか?」

 

『今さっきね。まぁ、結果は概ね予想通りだけど』

 

「嫌いになったか?」

 

正直に言えば、唯華に胸を張って見せれるような結果では無い。だからと言って、今更覆る訳では無い。

そう、少し暗い気分で返すと、唯華はいつもの調子で言い返してきた。

 

『ううん。そんな、訳ないじゃん。私は、貴方を本当に愛してる。だから、貴方がどんな人かってのも分かってる。だけど、1つだけお願いを聞いて?』

 

「………なんだ」

 

『勝って』

 

唯華は、少し強い口調でそう短く伝えてきた。

 

 

 

 

 

「最後は、貴方ですか。さぁ、さっさと、してください。もう結果は見えてるでしょうが」

 

アリーナに出ると、オルコットが心底面倒そうにそう宣言して来た。まぁ、それもそうだろう。

ほとんどの試合を瞬殺。唯一善戦したと言えるのは、倫太郎と一夏ぐらい。それに、なんかこの2人と戦った後から、少しだけ雰囲気が違う。

 

まぁ、そんな事はどうでも良い。

 

そして、試合開始のランプが点灯し始める。

それと同時に俺は、手に持つブレードを構えて、オルコットに告げる。

 

「2つ。俺がこの場で、勝利を求める理由がある」

 

「……舐めていますの?」

 

「いや?1つは、惨敗中だから1つは勝っても良いだろうって事と」

 

もうそろそろで、試合が始まる。

全神経を集中させて、言葉を繋ぐ。

 

「惚れた女に勝って来いって、言われたらやるしかねぇだろ!!!!」

 

試合開始と同時に、スラスターを添加して加速する。

 

「くっ!ですが、その程度の速さ!」

 

「なら、これならどうだ!」

 

スラスターを偏差的に添加して、緩急をつけた機動を描く。

それを利用し、こちらに向けられた攻撃を避ける。

 

「なら、これは、どうですの!?」

 

こちらの動きに驚きはしたものの、落ち着いて次の手を使ってきた。出てきた、ビットの攻撃を避けながら、加速をやめない。

スラスターの異常報告を受けるがそんな事は知った事かと、もう片手に出した小銃で、迎撃しながら、オルコットの懐へと一気に接近する。

 

「ですが、ブルー・ティアーズはもう2つありましてよ!」

 

「ああ、忘れてねぇよ!」

 

全てのスラスターを瞬時に添加。一瞬だけの高速移動で、ミサイルを交わして、まずは手に持つブレードでオルコットのライフルを切り裂き、そのままの流れで、逆袈裟斬りをする。

 

《シールドエンプティー。勝者、皇鋼刃》



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R.7p

やりきった。

正直に言えば、最後のトドメは結果を急ぎ過ぎた感があるのは、多分気分が、高揚していたんだろう。

そう、内心で反省しながら、管制室に向かう途中で次の出番の倫太郎と鉢合った。

 

「案外(鋼刃)も、単純だな」

 

「その割には、良い顔してんねぇー」

 

「はっ!まぁな。頼まれんたんだぜ?やるしかねぇだろ」

 

「はは、相変わらずだね。いや、これは“愛変わらず”かな?」

 

「うまいことを言ったつもりか」

 

互いに、軽く笑い合いながら、拳を合わせて健闘を称える。

 

「ナイスファイト」

 

「おうよ。お前も、抜きすぎるなよ」

 

「程々にやるよ」

 

じぁあ、と返して倫太郎は俺がさっきまでいたハッチまで、向かっていった。

 

「俺も言えた事じゃないが、テキトーにし過ずないよな」

 

三すくみって、言葉があるんだから不思議じゃあ無いんだが、流石にあからさまではないか?

アイツは兎も角として、俺は色々と言われそうだな。

 

「はぁ、後先考えずにやるもんじゃ無いな。ホント」

 

勝利したと言うのに俺には後悔ばかりが残っていた。

 

 

 

 

「さて、次が最後か」

 

「消化試合な気がしないでも無いが……」

 

「実際そうだろ。戦績としては倫太郎とオルコットが同じ5勝で同率だし」

 

「まぁ、その(倫太郎)もオルコットに負けてるんだけどねぇ……」

 

「最後の試合は流しまくって、俺に負けた奴の言葉じゃねぇ」

 

まぁ、流石に手を抜き過ぎたかもしれないけど、俺的には面倒そうな役職に就くよりはマシ。

そして、今はもう残り一試合となった決定戦を、4人で談笑しながら過ごしていた。

 

最後の試合は、一夏と織斑秋十の織斑兄弟対決。

 

普通に考えれば、専用機の織斑秋十の方が有利だけど、一夏はオルコットに対して一矢報いている。

まぁ、俺もしたんだけどね。そんな事は、置いといて。

正直、結果は分からないけど、会場の雰囲気からは秋十が勝つと思ってるだろうし、本人も自分が勝つと思ってるだろう。

なんか、動きに裏技使った感があるし。

 

「もし、この試合、一夏が勝った場合どうなる?」

 

「イキリ野郎を煽れる」

 

「色んな意味で物騒だよ」

 

「美味い飯を食える」

 

「まぁまぁな、ゲスだね」

 

「一夏サンドバック」

 

「バイオレンスは、ダメ絶対」

 

皆んなお互いの勝手がある程度分かってきたのか、こう言う話をしていると、アホみたいな会話になってくる。

けど、もし、織斑秋十って、もう面倒だから呼び捨てでいいや。ほれで、秋十の奴が一夏を攻撃しだしたら、味方にはならないと。

 

「お、そろそろ始まる見たいだな」

 

そして、拗れに拗れた兄弟喧嘩の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

「ちっ!何受け止めたんだよ!さっさと、終わっちまいな!」

 

「………っ!」

 

試合開始と同時に、手に持つブレードで何度も(一夏)に斬りかかる秋十。

今までの俺だったら、多分何もせず落とされた筈だが、何故だかそうなるのは納得がいかなかった。

 

「なんで、お前の攻撃が当たって、俺の攻撃が当たらないんだよ!」

 

そんなこと知るか。

俺とオルコットとの試合は、何が原因か分からないが、確かに俺の一撃がオルコットの装甲に対してダメージを与えた。

けど、秋十は一撃も入れられずに落とされた。それが、秋十は気にくわないのだろう。

 

「俺は特別なんだ!お前なんかよりも、俺の方が優れているんだ!あんな物何かの間違いだ!」

 

何時ものヒステリックな叫びをする秋十の攻撃を、なんとか受け止める。

允が、千冬姉から聞いていた秋十の専用機の武器には、千冬姉の専用機と同じ能力があるのは、たまたま近くにいたから知っている。

 

「お前なんかは、俺の下で這い蹲っていれば良いんだよ!」

 

そんな言葉と共に一番の衝撃を受けて後ろに吹き飛ばされる。

秋十はその隙を見逃さないように加速して、こちらに能力を使って斬りかかる。

 

「死ねぇ!!!!!!」

 

「死ぬ?」

 

そんな言葉で、俺の中の何かが切れたような音が聞こえた。

 

「死んで………たまるかぁ!!!

 

「はぁ!?」

 

ブレードを持ち替えて、秋十のブレードを握る手に向けて、下段からの振り上げをぶつける。

当たる場所は、外れたがブレードの軌道をズラした事で攻撃は空振りとなった。

 

「ち、調子に乗って……」

 

「ああああぁぁあ!!!!」

 

「こ、こいつ………!」

 

秋十の奴が何か言ってるが、そんな事を気にせずに攻撃をし続ける。

下段からの振り上げ、それを折り返して振り下ろし、防がれたらそこから横薙ぎの回転をかけて、ブレードを弾く。

 

「ふざけるなぁ!!!」

 

「黙れぇぇ!!!!」

 

秋十の喋る言葉全てが、俺の中の何かを掻き立てる。

何か、エラー報告が流れるがそんな事よりも、今目の前にいる秋十を倒すために動く。

 

「ぐっ、がぁっ、お、お前ぇ!!!!」

 

「これで、トドメだぁぁ!!!!!」

 

ブレードをぶつけて、地面まで俺が上になった状態で落下し、下に落ちた時には、マシンガンを呼び出して秋十の腹の真ん中にゼロ距離からぶつける。

 

そして、ゼロ距離からの射撃で爆裂したマシンガンにより、決着がついた。

 

《シールドエンプティー。勝者、織斑一夏》

 

そこからの記憶は、俺が自室のベッドの上で目覚めるまで残っていなかった。

 



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R.8p

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

クラス決定戦のあった日の夜。

最後の試合で、気絶した一夏が目覚めるのを待ってから、新太郎の部屋で軽く打ち上げをしていた。

集まったメンバーは、()を含めた何時もの男子五人組。それから、本音ちゃんと簪、唯香さんの8人。

 

なんか、最後の織斑兄弟の試合は、荒れた感じがするけど、本人としても深く掘り下げない方が良いだろうし、触らぬ神に祟りなしだからな。

 

「にしても、一夏をよく連れて来れたな」

 

「本音ちゃんが、居てくれて助かったよ」

 

「えっへん!褒めて、褒めて〜」

 

「わぁ〜、えらいえらい」

 

「えへへ〜」

 

正直に言えば、一夏は来ないと思ったがやっぱり昔馴染みからの誘いは、効果的なんだな。

そんな事を、唯香さんと本音ちゃんの絡みを見ながら思っていた。

 

「まぁ、これで、決定戦も終わった訳だけど、クラス代表ってどうなるんだ?」

 

「まぁ、普通に考えたら倫太郎かオルコットのどっちかだろうけど……-」

 

「俺は、辞退するよ。てか、立候補も他薦もしてないからね」

 

だよな。織斑先生は、何が目的なのかは知らないけど、俺たち5人は巻き込まれた側だから、本来のメンバーから考えるにオルコットで決定なのは、確実だろう。

 

「それよか、一夏は大丈夫なのか?体調」

 

「あぁ、少し怠いが、問題ない」

 

「ま、問題ないなら、なんでもいいさ」

 

今まで通りの暗い口調だけど、前よりもしっかりと反応してくれるのは嬉しい。

そう思っていたら、簪が端の方で遠慮しているのが見えた。

 

「簪もそんな所に居ないで、こっち来いよ」

 

「い、いや、大丈夫だよ。それに、私4組だし。試合も見てないから……」

 

「そんな事、関係ねぇって」

 

一週間ほどしか話しては居ないが、簪はかなり遠慮気味な性格なのだろう。

一夏が、簪と知り合いだってのは、この打ち上げを開こうとした時に、本音ちゃんから聞いた事だから、どうせなら人となりを知っている人が多い方が、一夏としてもやりやすいだろうと思って、この場に呼んだのだが、やっぱり、こう言う引っ込み思案な性格は、難しいかったか。

 

そう思っていたら、珍しく一夏が口を先に開いた。

 

「……俺は、簪が居てくれたら落ち着くし嬉しい」

 

「え?えぇ!?」

 

「ヘェ〜?ま、私も3組だからね。そう言うのは気にしなくて良いのよ。ほら、こっちおいで」

 

「ま、待って……っ!」

 

「またな〜い」

 

慌てる簪を他所に、唯香さんが簪を俺たちの輪の中に入れる。

ちょっとぎこちなさあるが、少しは馴染めたようだ。

 

そうこうしていたら、ドアがノックされた。

 

「……俺が、出てくる」

 

「あ、じゃあ、頼んだわ一夏」

 

一夏がそれに反応して、応対に出ると予想外の声が聞こえてきた。

 

「お前は………」

 

「お、織斑一夏!?」

 

なぜ、このタイミングでオルコットの奴が来てるんだ?

 

 

 

 

さっきまでの賑やかな感じとは打って変わって、ちょっとどころじゃない気まずさが、辺りに充満していた。

(新太郎)の部屋に来たオルコットを中に入れて、訪ねてきた用事を聞く。

 

「それで、今日は何の用だ?」

 

「文句なら、後にしてくれよー」

 

「……そんなつもりじゃ、ありませんわ」

 

「じゃあ、なんだって訪ねて来たんだよ?」

 

そう聞き返す鋼刃に対して、オルコットは真剣な目つきで身の丈を語り始めた。

 

「わたくしの、わたくしの父親は、母やその周りの人にとても媚びへつらうような人でしたわ。それを、何度も見てこのようなつまらない人にはなりたくないと思い、わたくしは国の代表候補生の試験を受けましたわ」

 

「んで、合格した訳か。ここにいる訳だしな」

 

「ええ、ですが、それ以降父をより一層みっともなく感じる様になりました。そんな時でしたわ。両親が、列車の脱線事故にあって亡くなりましたわ」

 

これまた、重たい話だ。

こう言うゆうのに慣れてるのか、鋼刃や倫太郎は涼しい顔して聞いてるが、俺はちょっと重く感じてしまう。

 

「そこで、謎でしたのが何故母は、父と最後まで離れなかったのか。それが、今まで謎でしたわ」

 

「それが、分かったのか?」

 

「いいえ、正確には分かっていませんわ。ですが、わたくしなりに見出せたのは、貴方がたと戦ったからですわ。特に、皇さんと三枝さんと織斑さんのお三方には」

 

なるほど、大体の話しが見えてきた。

だとしたら、俺もオルコットには謝らなくちゃいけないかもしれない。

 

「必ずしも、表だけではない。それを気付かせてくれたのは、あなた方のおかげですわ。ですから、今までの非礼を詫びる為伺ったまでですわ。すいませんでした」

 

そう頭を下げるオルコットに、俺や允は困惑して顔を見合わせる中に、一夏立ち上がり簡易キッチンの方へ向かっていった。

 

「新太郎。借りても良いか」

 

「あ、ああ、構わないぞ」

 

一夏の目的が、分からないままだったが、何かを作る気なのは、向かったのだから分かる。

そう思っていたら、簪がオルコットの方まで近づき頭を上げたオルコットの頬をビンタした。

 

「……貴女が、どんな人生を送って来て、一夏たちにどんな言葉を浴びせたのかは知らない。だけど、男だからとかで誰かの人生を笑わないで」

 

「………ホントに、すいませんでしたわ」

 

涙を目に溜めた簪との言葉は、口調以外にも重く感じさせるものがあった。

そこで、麻婆豆腐が乗った皿を持った一夏が戻ってきた。それを、オルコットの前のテーブルに置くと、元いた位置に戻って、口を開いた。

 

「食え」

 

「え?」

 

「俺は気にしてない。だから、食え。食って、また明日笑える様になれ」

 

その言葉に、俺たち4人は軽く笑い出す。

唯香さん以外の女子たちは、キョトンとしているが、これが笑えるずにいられるか。

 

「何時も仏頂面なのに、笑えって。ブーメランだぜ、一夏」

 

「……俺は、良いんだ」

 

「はいはい。オルコットも食えよ。それ。そんで、打ち上げに参加しろ」

 

「い、良いのですの?」

 

「当たり前だろ?じゃなきゃ、こんな事いわねぇよ」

 

そんな允の言葉の後、麻婆を食べたオルコットは辛さに少し涙目になっていたが、さっきまでの辛気臭い顔なんかよりも良い顔をしていた。

 




料理は全てを繋げる

あと、今が気づいたけど箒がほとんど出ていない。
まぁ、今後出てくる予定なので、気にしてないですけど!頑張ります。


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幕間 その1
R.9p


今回は、日常回の様な感じです。


次の日の朝。

 

打ち上げも流石に長くやり過ぎると、寮監である織斑先生に何か言われそうだったので、()達はオルコットが麻婆を食べ終えた後で、解散して各々の部屋でその日を終えた。

 

「よお、セシリア」

 

「おはようございますわ。允さん。簪さんも」

 

「……お、おはよう」

 

一夏のお陰かセシリアは、あの場にいた俺たちとは上手く打ち解けた様で、互いに名前で呼び合う程度の仲にはなれた。

 

「そういや、昨日は聞きそびれたが、クラス代表の件はどうするんだ?」

 

「辞退しますわ。あの程度で、カッとなる様では上に立つ者の資格はありませんわ」

 

「真面目だな。それなら、誰がなるんだ?」

 

「り、倫太郎くんじゃないの?」

 

そう言うセシリアの言葉に俺が疑問を返すと、簪がおずおずとそう返して来た。

まぁ、普通ならそうだろうけど、アイツは、と言うか秋十とセシリア以外の俺たちは立候補していないから、多分秋十になるか?

 

「織斑秋十でも、推薦しますわ。貴方方よりも、風当たりは良いでしょう」

 

「へぇ、言うようになったじゃねぇか。セシリア?」

 

「い、いえ、これは言葉の綾で」

 

「はは、分かってるさ」

 

軽くセシリアを揶揄いながら、一組の教室に着いたので簪と別れて中に入る。

すると、いきなり喧騒が聞こえて来た。

 

「なぜ、貴様が秋十に勝てたのだ!?」

 

「………はぁ」

 

その場所に、目をやるとそこには一夏と今にもその手に握る竹刀を振るいそうな箒が、2人相対していた。

いまいち何が起こっているのか、分からなかったが、苦笑いをしている新太郎を見つけた俺は、呼んで事情を把握する。

 

「あれ、どうなってんだ?」

 

「あー、俺も最初からいた訳じゃ無いんだが、一夏が教室に来ると同時に、箒があの手に持ってる竹刀を振り抜いたんだよ」

 

「物騒ですわね」

 

「それを、避けた一夏にずっと、決定戦のあの試合に対してイチャモンを付けてんだよ。暴論並び立ててな」

 

「なるほどね」

 

「そう言う事だったのですわね」

 

だが、正直困ったぞ。箒は、全国1位となった実力者だ。

怪我はしないだろうが、好き好んであの中に入ろうとは思わない。それに、俺が割って入った所でその場しのぎにしかならないから、どうしようもない。

 

「私が、正してやる!」

 

そう思ってたら、箒がもう一度竹刀を振り被る。

だが、今度は一夏は避けようとはしない。それを見て、当たると思った瞬間、何かが箒の竹刀を握る手の甲に当たり、その痛みで竹刀を床に落としてしまう。

 

「何をする!邪魔をするな!」

 

「邪魔?面白いことを言うね。掃除用具が」

 

「そ、掃除用具だと!?」

 

何かが飛んで来た方を見ると、何かを投げた状態から直る倫太郎の姿があった。ただ、今までの倫太郎の雰囲気とは違った確かな苛立ちを感じさせるオーラを放っていた。

 

それから、多分箒にとっては禁句であろう言葉を発すると、それにキレた箒が一夏から倫太郎に標的を変えて、落とした竹刀を拾い、また振り被る。

 

「私をその名で呼ぶなぁ!」

 

「黙れよ」

 

激昂する箒の竹刀が、不自然に軌道を変えると倫太郎の頭に振り被られた竹刀が、倫太郎の手に渡る。そして、次の瞬間には倫太郎の貫洞が、軽快な音と共に箒に入った。

 

「無刀取り………」

 

「柔術の動きしてなかったか、今?」

 

「の、応用編だよ。対人特化に俺が組み替えたね」

 

良くは覚えてないが、どっかの流派の奥義だった筈の技。

刀を持ってない状態で、刀を持ってる奴を相手にする時の対応術。けど、俺の知ってるのはあんなカウンターの技じゃねぇ。

 

「あ、俺はサボるから織斑先生に説明頼んでも良い?」

 

「ほう?私のいる前で、堂々とサボるとは良い度胸だっ!」

 

「なんとぉっ!!」

 

バシンっと、出席簿が竹刀とぶつかった音が教室に響く。

 

「今の見えませんでしたわ………」

 

「俺もだよ………」

 

「部活の影響で、ちょっとは見えたけど……」

 

だからと言って、受けれんだろ。アレは。と語る新太郎に頷きながら、何とか喧騒が収まったのを確認した織斑先生は、SHRを始めた。

 

途中で遅れた秋十は、敢え無く織斑先生の出席簿に沈められた。

 

 

 

「み、皆さんって、優しいのですわね」

 

「どっちかって言うと、ノリが良いだな」

 

秋十が来た後、セシリアは一週間前のことを謝罪してクラス代表に秋十を推薦すると、その終わりに女子たちからお褒めと色々な話しを受けてぐったりした様子で(新太郎)の近くの自席に戻ってきた。

 

「倫太郎さんは、凄いのですわね」

 

「多分、何かやってたんだろ?まぁ、生身とISは違うから慣れてないだけだろうし」

 

「運が良かったんですわね」

 

「後は、性格的にもあるだろな」

 

実際、鋼刃や倫太郎本人からは、手を抜いてたってのは昨日聞いたからな。

そう言えば、鋼刃の奴は来てないが、サボったのだろうか。

 

 

 

 

昼の頃

 

 

「おう。倫太郎か。どうした?」

 

『どうした?じゃないよ。サボるならサボるって、言っておいてよね。今何してるの?』

 

「私用で、魚釣ってる」

 

『いや、まぁ、ここ海の上だけど』

 

(鋼刃)の言葉にため息を返すと倫太郎は、朝あった出来事を教えてくれた。

箒は、多分秋十の事を狂信的に想っているかもしれないが、色々と面倒な事をしてくれる。

 

「お前が、やるのは良いが、対処はお前に投げるぞ」

 

『分かってるよ。俺の責任でもあるからね』

 

それじゃあ。と、言って倫太郎からの通話は終わった。

 

「お!キタキタ!」

 

それと同時に垂らしていた糸に魚がヒットし、釣り上げる。

大きくはないが、6、7匹既に釣ったから丁度いい量だろう。

 

「天ぷらにでもして食べるか」

 

今日の晩飯は、決まりそうだ。

 




もう一話ほど、続くと思います。


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R.10p

最初は理不尽に感じていたこの学園の生活も、二週間を終えて幾分か慣れ始めてきた。

未だに、女子たちの話題の中には(新太郎)たちが居るが、初日辺りの騒がしさは落ち着いていた。

 

「おはようございますわ。新太郎さん」

 

「ああ、おはよう。セシリア」

 

最近は良く朝に合う様になったセシリアと、世間話をしながら教室に向かう。

 

「鋼刃さん。今日は、来るでしょうか?」

 

「さぁな?まぁ、来ないんじゃね?」

 

クラス決定戦後から、鋼刃は朝夕以外姿を見なくなっていた。

昨日、本人になぜサボってるのかと聞いたら、面倒だとかダルいだとか言って、誤魔化されてしまった。

 

「鋼刃は、今日も居ないわよ」

 

「あ、唯香さん」

 

「やっほー。ま、鋼刃は面倒ごとよりも人混みを嫌う時があるから、目立つ事をするのは仕方ないわね」

 

「そうなのですか………」

 

途中で、間に入ってきた唯香さんは、鋼刃が何故サボるのか、教えてくれたが、セシリア的には困るだろう。

偶にだが、俺たちは放課後、セシリアに対人戦を教えている。

鋼刃達2人はもちろん、俺も中学ボクシングをしていたし、允も体を鍛えて新しく生身でもかなり動けた。

 

「生身での訓練は、構わないけど余り無理しないことよ」

 

「わ、分かっていますわ。ですが、初心者に負けるのはとても悔しいのですわ……」

 

「まぁ、そうだろうね、けど、欠点見つけて直そうとしているのなら、必ず結果は出てくるわよ」

 

「そう、ですわよね!」

 

セシリアを元気づけた唯香さんは、それじゃあ。と言って、自分のクラスの3組に向かっていった。

 

「さてと、さっさと中に入るか」

 

「そうですわね」

 

教室に入ると、中は今までとは違う意味で騒がしく感じた。

 

 

 

 

「先生来ないな。自習か?」

 

「いや、多分、これが原因だな」

 

朝のSHRとなったが、織斑先生どころか山田先生すら来やしない。

その事に疑問に思っていたら、允が1つの動画を見せてくれた。

 

「おい、これって………」

 

「イジメの動画ですわ。それも、残虐な」

 

そこに映っていたのは、1人の女子。リボンの色からして同じ一年だろう。そして、その子を囲う様に暴言や暴力を振るう4名の多分上級生の連中。

普通の学校なら、そこまで驚く事じゃない。

悲しい事だが、良くある事だから。驚く程じゃない。だが、ここはIS学園だ。

 

世界各国の未来の国の代表として、この地にやってきた者たちが多い学園であり、その動向一つ一つが世界の主要機関が注目している様な場所だ。

それに、どこか一つの国ならば良かったが、顔立ちから察するにイジメている上級生たちは、皆バラバラの国の人だろう。

 

「けど、全教師が集まるのか?この時間まで」

 

「問題はそれだけじゃ、ありませんわ。この動画、投稿サイトに出されていますわ」

 

そこで、全てを察した。

ただでさえ、注目されている学園で行われたイジメ。

しかも、推定5カ国の人物による集団イジメ。

これほど、マスコミが騒ぎたくなる様なモノはないだろう。

 

「それで動画は?まさか、そのままな訳ないだろ?」

 

「ああ、昨日の内に投稿されたアカウントもろとも消去されてるが」

 

「お前みたいに、保存している奴は多いだろうな」

 

となると、先生たちはこれの対応だったりだとか、対策の為の会議で忙しいのだろう。

 

「それから、これはまだ広まってない事なんだが、裏板も見つかったらしいんだ」

 

「これまた、厄介なのが」

 

裏板。まぁ、裏でやり取りされている掲示板だな。

一般にエリート校として有名なIS学園にそんなのがあったなんて知られたら、大問題も良いとこだ。

 

「はぁ、今日は授業なさそうだな」

 

「普通は嬉しいんだけどな」

 

気長に、ある程度収まるのを待つしかないな。

それよりも、このアングルまるでその場に居たかのように撮られてるけどらどうやったのだろうか。

 

 

 

 

「へぇ、そんな事あったのか」

 

「ああ、結局は今日は昼で終わりになったよ。良かったのか悪かったのか」

 

「だから、こんな時間に会ったのか。あ、それよりも、刺身食うか?」

 

俺が昼飯を食べようと食堂に着くと、サボっていた鋼刃が何食わぬ顔で、何故か刺身を食べていた。

魚料理は、あったけど刺身は無かったはずだけど、どうしたのだろうか。

 

「いや、食うけど、この魚どうした?」

 

「釣った」

 

「は?」

 

「いや、だから、釣ったんだよ。この近くの海から」

 

マジかよ。と茫然としながら、刺身を食べる。

身の色から、多分白身の魚だろう。あまり、種類は分からないが、かなり美味しい味がした。

 

「結構美味いな」

 

「良い包丁だったからな」

 

「え?これ、お前が捌いたのかよ」

 

「もちろん」

 

そして、普通の顔でまた食べ始める。

そこで、允やセシリアとかが入って来たのを見て、テーブルに誘う。

 

「鋼刃さんは、それは?」

 

「ここら辺で釣った魚の刺身。中々に美味いぞ」

 

そう言うが、セシリアはちょっと抵抗があるようだ。まぁ、生の魚はヨーロッパ辺りでは抵抗があるんだろう。

けど、俺らが食べているのを見て、思い切って一切れとり食べる。

 

「お、美味しいですわ!」

 

「そりゃ、良かった。一夏は?」

 

「美味い」

 

「唯香、には聞かなくて良いか」

 

「ふふ、美味しいわよ。けど、残ってるなら後で何か作って欲しいな」

 

はいはい、わかったよ。と言って、鋼刃は食べ終えた皿を厨房の中に入っていった。

 

「鋼刃さんって、料理上手いんですか?」

 

「そうね。かなり美味しいわよ。活け造りとか作れるし」

 

何気に、スペックが高いなと思いながらも、俺も腹ごなしを済ます。

明日には、ある程度片付いているだろう。

 




話しの流れ的にはもう一話付きそうですけど、次話からちゃんと物語を進めます。


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第二章 出会いの乱入戦
R.11p


「眠い……」

 

「今日は、やけにテンションが落ちてるね。どうしたの?」

 

朝の登校中。

(倫太郎)の隣を歩く鋼刃が、いつもよりも眠そうに歩いているのを見て、不思議に思い聞き返す。

鋼刃は、夜遅くまで起きているのは特に珍しく無いが、登校の時にはある程度まで調子を戻しているから、機嫌が悪いだけなんだけど、今日は、テンションが無かった。

 

「それが、昨日の帰りに秋十と箒に絡まれたんだよ」

 

「うわぁ、それは、ご愁傷様だね」

 

「はぁ、変な難癖つけやがって。何しようが俺の勝手だろうが……」

 

「それでも、サボり過ぎだよ」

 

鋼刃から理由を聞くと俺も、苦い顔をしてしまう。

クラス決定戦の後から、秋十や箒は俺や鋼刃によく絡むようになった。

俺は、多分、男子で一番勝ったから。鋼刃は、唯一セシリアに勝ったから。まぁ、そんなトコだろう。

 

別に絡んでくるのは構わないけど、一番迷惑なのはそれが論点が無茶苦茶で、意味がわからないのだ。

やれ、何故俺に勝った。何で、あの女に勝てた。俺より、強いとかありえないetc……簡単に言えば、凄い上からそんなこと知るかと思うような事を言ってくる。

それで、知るかと正直に返せばヒステリックに叫んで、手を上げてくる。

 

「まぁ、素人の攻撃なんて問題ないけど」

 

「目立つは面倒だろが、はぁ、怠いから今日はサボるわ……」

 

「ホント、鋼刃は気楽だよね」

 

そう言って鋼刃は、どっかへと消えて見失ってしまった。

今思ったが、織斑先生達的には鋼刃のあの行動はどう考えているんだろう。流石に、見逃すとは思わないけど。

 

「ま、後々、本人から聞けるでしょ」

 

考えるのも無駄だと判断した俺は、普通にまた賑やかな教室に入る。

 

 

 

 

「へぇ、転校生ねぇ……どこに?」

 

「二組だとよ。まぁ、俺らにはあまり関係ない事だな」

 

教室で、時間を潰している間、俺はこの教室の雰囲気の原因を近場にいた新太郎に聞くと、どうやら、二組に転校生が来るらしい。

と言うか、IS学園にしかもこの時期に転校生とは珍しいな。それに、確か基準も高いって聞いたから、相当出来るんだろう。

 

「わたくしも気になりますわ!」

 

「いっちーも気になる?」

 

「どうでも良い」

 

本音ちゃんの言葉に一夏は、ぶっきらぼうに答える。

それに、本音ちゃんとか付き合いが上手い新太郎のお陰で、クラスの女子たちとは、割と良好な関係を築けている。

まぁ、流石に輪に入れるまではいかないが。

 

そう思っていたら、突然に教室の扉が開きそこにはツインテールが特徴的な女子が決めポーズしていた。

 

「私を呼んだかしら!?」

 

「いや、誰だよ」

 

快活に言われたその言葉に思わず言い返してしまう。

だけど、その女子はそのツッコミを意に返さず、一夏の前まで来ると拳を握り振り抜いた。

一夏は、それに驚くでも無く、軽々と受け止める。

 

「……何のつもりだよ。“鈴”」

 

「軽い挨拶よ。一夏」

 

何時もの鉄仮面な一夏と、ケラケラと笑う鈴と言う女子は、何か満足したのか、また、と言って教室から出て行った。

多分、二組に行ったんだろう。転校生の言葉に反応していたから。

 

「で?誰?あの女子」

 

「小中の友達だ」

 

そう答える一夏は、少し優しげだった。

 

 

 

 

「遅いわよ!」

 

「お前が早すぎるんだよ……」

 

「そうとも言うわね!」

 

快活な笑い方と態度に、若干引きながら()は何時もの定食を注文し、鈴と呼ばれた女子が取っていたテーブルに着く。

 

「それじゃあ、初めましての人ばかりだから、自己紹介するわ。私は凰鈴音(ファン・リンイン)一夏みたいに鈴で構わないわ。あと、一夏とは小学校の5年から中学の2年までの間同じ学校だったわ。まぁ、悪友の腐れ縁ね。それから、中国の代表候補生よ」

 

「自分で言うのかよ……」

 

「当たり前でしょ?特に中学なんて、結構バカしたじゃない」

 

そう語る鈴と一夏は、かなり楽しげに話す。

どうやら、かなりの仲のようだ。しかし、話しの内容から察するに、候補生となったのは去年だろう。それから、学園の基準を達する程なのは、かなりの天才なんだろう。

 

「それより、来月のクラス対抗戦なんだけど、出るんでしょ?」

 

「……いや、俺じゃない。アイツだ」

 

「あー、アイツも居るんだったわね」

 

アイツって言うのは、多分秋十の事なんだろう。それよりも、鈴はかなり嫌そうな顔をする。

どうやら、相当秋十の事を嫌っているらしい。まぁ、俺もアイツの言動から好きにはなれないし、関わろうとは思えない。

 

その後は、昼食を取りながら、お互いに自己紹介をして終わった。

その際に、セシリアがイギリスの代表候補生として、宣戦布告をしていたが、あまり興味が無いのかテキトーにあしらった鈴とそれに絶句するセシリアの図はかなり面白かった。

 

 

 

 

 

「あー、分かってる。休日だろ?覚えてるよ。ああ、明日には、戻るつもりだから」

 

夕暮れの空。(鋼刃)は、人気のない屋上で1人過ごしながら、唯香と話し混んでいた。

 

「職業柄的に、気になるがどうやって手に入れようか。困ったなぁ」

 

化学者として、未だ未開の技術には興味を示すのは当然の帰結だ。

 

「仕方ない。また、練ってからやるとしよう」

 

そう思い、俺は屋上から出て行った。

 

 




科学者ではなく、化学者です。


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R.12p

「はぁ、眠い」

 

平日の学校終わり。(鋼刃)は、自室のベッドに寝転がりながら手元の端末でニュースを漁りながら、今日の夜飯を何にしようかと考えていたら、ドアがノックされる。

今、友達と出掛けている居ないし、来てもノックなんてせずに入ってくるし、倫太郎たちなら連絡はする筈だ。

 

こんな時間に誰だ?と思いながら応対する為に、扉を開ける。

 

「皇ぐぅぅん!!!私の何が行けなかったんですかぁ!?」

 

すると、そこには涙目で俺を出迎える山田先生とその後ろで頭を抱えて呆れている織斑先生の2人が、立っていた。

 

「は?」

 

 

 

 

立ち話もなんだと言う事で、部屋で話すことにした。

その時に織斑先生が、山田先生を落ち着かしてくれたお陰で、一応話しが出来る状態にはなった。

 

「それで、改めて何用すか?」

 

「ああ、簡単に言うならば、お前が授業に出席しない理由を教えてくれ。私たち教師に非があるならば、直すのは当然だからな」

 

成る程、山田先生がああも、泣きそうにしていたのは納得がいった。

多分、山田先生はかなり他人思いなのは、何となくだが分かってたから、俺みたいな不真面目な生徒に対しても、親身になるつもりなんだろう。

だが、これは困った。理由なんて、特に無いのだから。

 

「あー、そっすね。うーん、なんて言うかなー」

 

「や、やっぱり。私の教え方が悪かったんですか!?」

 

「落ち着きたまえ、山田先生。皇、言いにくい事でも構わん。私たちは、しっかり受け止めるつもりで、今日は来たのだから」

 

くっ、大人の女性からの善意100パーの厚意が、心に刺さる。

けど、こんな下らない事でサボってるって知られるのは嫌だが、それ以上に、自分に非があると思っている先生2人の気持ちの方が、とてもくる物がある。

ここは、腹をくくるしか無いと思い俺は、正直に白状する。

 

「まぁ、別に先生たちには問題ないですよ。倫太郎たちから、内容は聞いているんで。けど、俺は真面目な生徒じゃないんで、中学もよくサボってたんですよ。理由は、特に無いんですけど」

 

さぁ、来い!出席簿の一発程度なら、受け切ってみせるぞ!

そう言うと、織斑先生は「はぁ」とため息を漏らすと、頭を抱えたまま言葉を返した。

 

「この際、サボった事自体にはどうこう言うつもりは無いが、しっかりと出席はしろ。山田先生から、相談された時は私も心配したんだぞ?」

 

「そ、それは、すいませんした」

 

呆れ返る織斑先生は、未だポカンとしている山田先生を呼び覚まして、部屋から出て行った。

 

「あ、あの、もし相談したい事があったら、先生にちゃんと言って下さいね!私にできることなら、何でもしますので!」

 

「あー、はい」

 

「そ、それじゃあ、明日からちゃんと来てくださいね!」

 

そう言って、山田先生は織斑先生を追うように部屋から出て行った。

そして、2人と行き違いになるように唯香が部屋に入って来た。

 

「さっき、織斑先生たちが此処から出てくるのが見えたけど、何かあったの?」

 

「あー、んー、説教っていうか登校相談されたな」

 

「なにそれ?」

 

ポカンと首を傾げる唯香に苦笑いを返しながら、俺は話題を変える。

 

「そんなことより、飯食いに行こうぞ」

 

「はーい。じゃあ、今日は鋼刃の奢りね。ふふ」

 

「はぁ……まぁ、良いけどよ」

 

これは、今日の夜は長くなりそうだ。

 

 

 

 

「よう」

 

「久しぶりだな鋼刃」

 

「毎日会ってるだろが……」

 

「学校では、久しぶりですわ」

 

久しぶりに教室に入って来た鋼刃を見て、()達は揶揄いつつ談笑を交わす。

その途中、秋十が鋼刃をバカにしてきたが。

 

「それで、セシリアにお前は勝ったんか?」

 

その一言と嘲笑でもしてそうな口調に、秋十の仮面が綻び掛けるが、それよりも先に箒が突っかかってきた。

 

「図星を突かれて、直ぐに手を出すとか猿かよお前」

 

久しぶりに学校に来ても煽り力がフルスロットルな鋼刃に、さらに手玉に取られる2人を周りの俺たちは気付かれないように内心で、笑っていると始業の鐘がなる。

 

「おはようございます!」

 

教室に入って来た山田先生は、鋼刃が来ている事に気づくと見るからに嬉しそうにしていた。

それに対して、鋼刃はかなり苦い顔をしていたのは、多分昨日辺りになんか山田先生が、鋼刃に対してやったんだろうな。

 

「(因果応報とは、言わないか?)」

 

そんな事を思いつつも、俺は1日の授業を受けていた。

 

 

 

そして、それは放課後に起こった。

 

 

バシンッ!

 

軽快に響いた音が、中庭の一角で鳴り響く。

平手打ちをした鈴は、目の前に立つ一撃を受けて何が起こったのか分からないと言った表情の秋十に対して、言い放った。

 

「ぶっ潰す………っ!!」

 

「っ!」

 

かなり殺気のこもった声に、秋十は思わず飛び退く。

やりたい事はやったと言わんばかりに鈴は、離れた場所にいた俺に手を振り返して、寮の方へと帰っていった。

 

「あー、これは、波乱の予感だなぁ」

 

そんな事よりも、秋十の奴は絶望でもしてくれないかな?なんて、物騒な事を思いつつ、俺はこちらを睨み返す秋十と箒を無視して、自室へと戻っていった。

 

そして、時間はあっという間にクラス対抗戦の当日となった。

 



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R.13p

「あら、允さん達は?」

 

「允は、昨日徹夜で遊んでたらしいから昼過ぎまで寝るとさ。倫太郎は、単純に興味が無いから見ないとさ」

 

「な、何というか、自由ですわね……」

 

クラス対抗戦の日になった今日、(新太郎)はそれぞれの理由で来ない允達に疑問に思ったセシリアからの質問に、答えながら苦笑いするセシリアに俺も苦笑いを返す。

 

「俺としては、鋼刃が来てるのが逆に不思議だからな」

 

「唯香に誘われなきゃ、来てねぇよ」

 

「ふふ、色々と必要そうだったからね」

 

俺たちの後ろから並んで歩く鋼刃と唯香の2人を見ながら、俺たちはアリーナに入る。

別に見ようとは思わないが、一応鈴がやる気を出していたからどんな感じなのか気になるから、足を運んだのだが、対戦表を見て思わず口がひきつる。

 

第1試合

一組 織斑秋十 vs 二組 凰鈴音

 

本来の対戦なら、普通なのだろうけど、今までの絡みを知ってるから誰かが狙ったようにしか見えない。

 

「鈴さんは、大丈夫でしょうか……」

 

「大丈夫だろ。鈴は、案外冷静だから」

 

「振り幅が広いんでしょ?」

 

「天才の可能性はかなりあるけどな」

 

その鋼刃の言葉に、俺は納得する。一夏と別れたのが2年の終わりと聞いていたから、そこから中国に帰って候補生になって、専用機を貰ったのだとしたら天才にも程がある。

 

「セシリア的には、どっち勝って欲しいんだ?」

 

「勿論、鈴さんですわ。クラスとしては、秋十さんに勝って欲しいですが、鈴さんの友達としては、無論鈴さんですわね」

 

そう言いつつ、俺たちは空いてる席を見つけて中に入る。

 

「唯香は、いいのか?クラスの奴と見なくて」

 

「貴方との方が面白いからね」

 

席に着いてから早々にイチャつく2人をよそに、俺は試合が始まるのを待つ。

 

「もうそろそろだな」

 

そして、試合に出る2人が各々のハッチから飛び出して来た。

 

 

 

 

「鈴。今、謝って俺の元に来るんなら許してやっても構わないぞ?」

 

「はん!そんなのゴメンだわ。アンタみたいな、ゲスの下になんか誰が着くものですか」

 

「……取り消しは聞かないぞ。本当に良いんだな?」

 

「アンタみたいに難癖つけたりしないわよ。さぁ、さっさとやりましょ?」

 

フィールドで相対したアイツは、何時もの調子で(鈴音)に向かって、そんな事をのたまった。

あの男は何を勘違いしているのか、力無きものの下よりも自分のような有能な人の元に人は集まるべきだと考えている。

まぁ、実際、アイツは並より出来たから下に着く奴なんて沢山居たけど、そんな単純なら世界に世界は争いで乱れていないのだから。

 

「誰がどこに居ようが、その人の勝手でしょ?ま、私は単純にアンタのことが嫌いなだけどね」

 

「ちっ、あんな能無しと一緒に居たところで、お前にはなんの価値もないんだよ!」

 

「価値なんて、アンタが決めんじゃないわよ。一夏との価値なんて、私が決める。私が、感じたことが価値なのよ」

 

そう告げる私に、アイツはもう無駄だと言わんばかりに睨みつけ、その手にブレードを構えた。

それと、同時に試合開始のカウントが始まる。

 

 

 

「うおぉぉーーー!!!!!」

 

「舐めんじゃないわよ!」

 

開始と共に、バカ真面目に突撃して来たアイツに、冷静に両手に握る二本の青龍刀を振るい弾き返す。

 

「俺は、強い!」

 

「寝言は寝て言いなさい!己の事しか知らない奴に、私は負けないわ!」

 

私の返し、一瞬態勢が崩れたが直ぐに整えると反撃して来た。

だが、私も落ち着いて二本の青龍刀を連結させ両刃剣に変えて切り返す。

 

「知ってるわよ!アンタのその専用機は、千冬さんと同じ能力があるんでしょ!けどね、あの人だからこそ最強だったのよ。アンタのそれは千冬さんのとは別物よ!」

 

「そんな筈はない!この力は、最強なんだぁ!!!」

 

私の言葉に激情したのか、能力を起動させた秋十の攻撃に対して、私もこの“甲龍(シェンロン)”に搭載された特殊兵装を発動させる。

その瞬間、こちらに向かって来ていた秋十の身体が横に吹き飛ぶ。

 

「ぐはっ!」

 

「どうかしら?良い、味でしょ!」

 

完全に生まれた隙に、攻撃を辞めずに私は更に乱打を加える。

 

「ここからは、私のターンよ!」

 

 

 

 

 

「何が起きたんだ?」

 

「多分、鈴の特殊兵装だろうな」

 

「“龍砲”ですわね」

 

秋十が突貫したかと思ったら、突然横に飛んだ事に対して、(新太郎)が疑問に思っていたら、セシリアが答えてくれた。

 

「………ああ、見つけた。なるほど、空気砲か」

 

「そうですわ。指定した場所の空間に対して圧力をかけて銃身を作成し、そこから圧縮した空気を圧縮エネルギーと共に放つ物ですわ」

 

「なぁ、それってさ?」

 

「ああ、お前の察してる通り、全てが空気で出来ているから、弾丸どころか砲身すらも見えないその上」

 

「死角はありませんわ」

 

「マジかよ………」

 

空気を利用していると言うから、見えないのは何となく分かったが、まさか死角も無いのは、予想外だった。

そこで、秋十が横に吹っ飛ばされたのか分かった、

 

「エネルギーも圧縮エネルギーだけですので、レーダに反応しづらいのも強みですわ」

 

「鈴にしてみれば、アイツの周りそのものがアイツの武器のようなものだからな」

 

2人の解説を聞きながら、俺はこの試合の流れは何となく分かったのと、ちょっとトイレに行きたくなって来た。

 

「少し、席外すは」

 

「おう」

 

決着が着く前に、戻ってこれたら良いな。

 

 

 

 

「はぁはぁ、クソっ!何で、当たらないんだよ!

 

「言ったでしょ?アンタじゃ私に勝てないって」

 

(鈴音)の攻撃を何度も受けた秋十は、息も絶え絶えになりながら文句を言い放つ。

けど、私にそんな事は意味を成さない。

そろそろ、決着をつけようと龍砲の出力を上げて放つ。

 

そして、その瞬間、高エネルギー反応が甲龍から伝えられ、顔を上げると私と秋十の間を巨大な光柱が、突き立てられた。

 

光が止んだ時に空に現れたのは、今までのISとは違った姿形をした機体が不気味にこちらを見下ろしていた。

 

 



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R.14p

「誰だか知らないが、邪魔すんじゃねぇ!!!」

 

「あ、ちょっと!何してんのよ!?」

 

「お前は、そこで見ていろ!コイツは俺が倒す!」

 

「全く、あの男は!」

 

乱入して来た未確認機に対して、何故か威張って突撃していった秋十をフォローする為に(鈴音)は、甲龍を動かす。

 

「今から、俺が活躍する筈だったのに邪魔すんじゃねぇよ!モブがぁ!!」

 

私たちの突撃に未確認機は、全く動じず自らにブレードを振るう秋十を興味がないといった風な立ち振る舞いをする。

何故、そんな事をしているのかは、装甲にぶつかったブレードが教えてくれた。

 

「なにっ!?」

 

振るわれた装甲には、全く傷がなく。ダメージを負ったような雰囲気は、全くなかった。

どころか、その身体以上の大きさを持っている腕で、秋十を殴り飛ばした。

 

「ぐはっ!!」

 

『お前たち何をしている!?早く避難しろ!』

 

「すいません、織斑先生!今、アイツは私たちをロックオンしています!観覧席の避難が完了するまで、何とか耐えてみせます!」

 

『何を言っている!?教師陣が、今すぐに突入するすぐに秋十を連れて逃げろ!』

 

「あのバカにそんな言ったところで、意味なんて無いんですよ!」

 

未確認機と対峙している私たちに向かって、織斑先生から通信が来るが、私はここに残って殿をすると提案する。

勿論、織斑先生はそれに反対するが、今もバカ正直に戦おうとしている秋十やどんなに嫌いな奴でも危険な目に合わすのは忍びない私の気持ちを見て、とても辛いような雰囲気が通信からも感じられる。

 

「……お願いします。千冬さん。無理はしませんから」

 

『……学校では織斑先生だ。決して無理はするな!いいな?!』

 

「はい!」

 

私の意思を汲み取ってくれた織斑先生が、折れるか形で提案は認めてくれた。

 

「さぁ、やってやるわよ!」

 

あのバカのお守りと未確認機の対処。どっちも面倒ではあるが、やってやる。私にだって、強くなったと見せたい意地があるのだから。

 

 

 

 

 

「結構、暴れてるな」

 

「そうね。ところで、あの2人はアレに勝てると思う?」

 

アリーナの観覧席で、セシリアとかのお陰で順調に避難を終えている空席ばかりの中、(鋼刃)は唯香と一緒に中で乱入機を対応している鈴と秋十の2人を観戦していた。

 

普通なら、不思議に思われるがまぁ、それは問題ない。

 

「さぁな。勝てるかもしれないし。勝てないかもしれない」

 

「最悪の場合は、どうするの?」

 

「そりゃ、()()()()()()()()()

 

こんな事を使いたくは無いんだ。だから、鈴。負けるなよ。

 

 

 

 

「くっ、アイツ、ホンット何も考えて無いんじゃ無いの!?」

 

真正面から何度も突貫しては、巨腕に殴られて飛ばされるかひらりとかわされるを繰り返す秋十にイライラしながら、龍砲の支援を行う。

 

「甲龍のスタイルと全く違うから、動きづらいし、燃費が良いって言っても龍砲の出力は高いからそう何度も出来はしないし、あーもう!!」

 

全ての元凶は、あの秋十(バカ)の所為だと決めつけて、私は乱入機じゃなくて、秋十の方へと加速し、残り少ないアイツのシールドエネルギーを無くして、強制退場させようかと思った矢先、甲龍からの高エネルギー反応を受けて、乱入機の方を見ると、両腕にエネルギーを溜めていた。

 

「まさか!?」

 

あの手の先には、あのバカがいる。

そう思った私は、無意識に加速を上げて秋十へと急いだ。

 

その瞬間、アリーナのシールドを突き破った時と同等かそれ以上の光柱が放たれる。

 

「なに、ボサッとしてるのよ!」

 

「ガッ!?」

 

その攻撃に惚けていた秋十に対して、シャイニングウィザードをぶつけて、壁まで弾き飛ばす。

そして、私も避けようと思った時、光柱が私を呑み込んだ。

 

 

 

 

「さ、流石に無茶し過ぎたかな………」

 

光に呑まれる際に、咄嗟に龍砲でどうにか威力を落とす事は出来はしたけど、甲龍のエネルギーはもう既に二割を切って、一割も切ろうとしていた。

 

けど、乱入機はそんな事はお構いなしと言わんばかりに、私に標準を合わせて攻撃をしようと構えている。

 

「(ああ、ホントに良いとこ無しだったなぁ)」

 

もう、流石にどうしようもないと思い、覚悟を決めて眼を瞑る。

 

しかし、その受けるはずだった衝撃は来なかった。

 

 

 

 

『DEFEND PLEASE』

 

そんな電子音と共に、私の前に紋章のような物が現れ、乱入機の攻撃を私から防ぎ切った。

 

「なに、コレ?」

 

私が不思議に思っていたら、後ろから多分私を助けただろう人物が声を上げる。

 

「ふぃー、焦ったけど結構上手くいったな」

 

格好がよくわからなかったが、思わず次いで出た言葉を使ってしまう。

 

「アンタは……一体?」

 

「俺か?俺の名前は、ウィザード。仮面ライダーウィザード。魔法使いさ」

 

そう言ったウィザードは、剣を構えて乱入機を見据えて私に言った。

 

「俺がお前の希望だ」

 



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R.15p

「ここは、俺に任せてお前はアイツを連れて行け」

 

「ちょ、ちょっと、待ってよ。アイツがそんな事聞くはずが」

 

『BIND PLEASE』

 

唐突に告げられたウィザードと名乗った男の言葉に、(鈴音)は思わず反論するが、ウィザードはそれに対する答えなのか腰の辺りにある人の手の形をしたバックルに右手をかざすと、電子音のような音が鳴る。

何が起きているのか分からない私を他所に、ウィザードは中指に嵌められている大きな指輪?を外し別の物に変えるとまた、バックル「かざした。

 

『CONNECT PLEASE』

 

すると、私の前にさっき私を攻撃から防いだ紋章が現れそこから、鎖に縛られた秋十が落ちてきた。

 

「ダメージが大きかったんだろうな。気絶してる」

 

「ホント、コイツ虚勢にも程があるでしょ……」

 

秋十が現れた時はまた暴れ出すのかと思って、焦ったが白目をむいて何も言わないのを見たウィザードが呟いた言葉に私は呆れながらも、秋十を抱える。

 

「アンタの事が誰かは分からないし、従うのも癪だけど、助けてくれたから一応は信頼してあげるわ」

 

「そりゃあ、ありがたい。それで、聞くが」

 

ウィザードは、そこで私たちから視線を外してまた指輪を変えながら私に言ってきた。

 

「別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「……ええ!やっちゃいなさい!」

 

「ああ!心得た!」

 

そう言うと、ウィザードはブースターも無しに高く飛び上がり、乱入機へと攻撃を始めた。

正直、戦いが気になるけど、取り敢えずは避難しなくちゃいけないから、ハッチまで戻る。

 

コレが終わったら、アイツを問い詰めてやるんだから!

 

 

 

 

 

「さてと、威勢良く出たは良いが、流石にウィザードだと空中戦は不利になりやすいな」

 

()は、嫌な予感を部屋のベッドで寛いでいたら感じて、アリーナまで来たらゴーレムが現れるではないか。

そこで、そう言えばこの対抗戦にゴーレムが出るんだったのだとと言う事を忘れていた事に気付いた俺は、一眼に着かない場所に移動してウィザードベルトを身につけて、ウィザードに変身しピンチだった鈴を助けて、今に至る。

 

しかし、相手は空を飛んでいるから普通に戦うのでは、こっちが完全に不利だ。だから、俺は新しい技を使う。

 

「消費が激しいから、多様は出来ないが、行くぞ!」

 

『CONNECT PLEASE』

『BIND PLEASE』

 

「はっ!」

 

手を前に突き出すと無数に展開された魔法陣間を鎖が飛び交い、即席の空中の足場を作り出す。

 

俺は、それを利用して鎖の足場を飛びながら、ゴーレムに向けて攻撃を与える。

 

「流石に、装甲が硬いな。だったら、コレでどうだ」

 

『BIG PLEASE』

 

現れた魔法陣にウィザーソードガンを刺し、巨大化したブレードでゴーレムを思いっきり叩く。

正直このサイズになったら、切るよりも叩く方が近い気がする。

 

「流石の耐久性だが、これでフィナーレだ」

 

『BIND PLEASE』

 

トドメを決める前に、拘束をする。

そして、キックストライクリングを嵌め、ハンドオーサーにかざす。

 

『ルパッチ マジック タッチ ゴー』

 

『チョーイイネ!キックストライク サイコー!』

 

相変わらずの五月蝿い音声だと思いながら、俺は必殺の動きに入る。

正直そのまま飛んでやれば早いのだろうが、ようはルーティーンみたいな奴だから、やり得なんだよ。

 

「はあぁぁ!!!!」

 

ムーンサルトからのストライクウィザードをゴーレムにぶつける。

 

「ふぃー」

 

良い感じに決まったのでは無いかと思いつつ、ここからどうしようかと思っていたら、また不吉な予感が頭に走った。

 

 

 

 

「へぇ、どこのどいつか知らないけど、面白いじゃん。それに、あっくんを、ああも、雑に扱っちゃって、これはちょっとぐらいやっても大丈夫だよね?」

 

暗闇の中、沢山の画面が煌々と光り照らすその女性の顔立ちは、美人と言えばそう見えるが、目の下のクマだったり肌の荒れ具合などから、そう思えないものばかりだった。

 

「なんたって、君は希望なんでしょ?簡単に挫けないでよ?」

 

その狂気にも似た感情は、モニターに映る魔術師然と立つ人物に向けられそれに答えるように、淡く後ろの黒塗りの機体の目が光った。

 

 

 

 

 

「鈴……」

 

「一夏?!なんで、あんたここに居るのよ!?早く避難しなさい!」

 

アリーナから、秋十を連れて帰った後なんだろう。少し、息切れしている鈴を前に(一夏)は、近づき頸に手刀を落とす。

 

「うっ……」

 

「悪いな、鈴。まだ、知られる訳にはいかないんだ」

 

そう答える俺に、呼ばれるように何処からか何かが飛んでくる音が聞こえる。

 

「ふぅ…………変身」

 

目の前に止まった黒いカブトムシ、ダークカブトゼクターを取り、ライダーベルトに差し込む。

そして、ゼクターホーンに手を掛け

 

「……キャストオフ」

 

『CAST OFF CHANGE BEETLE』

 

 

 

 

「来るっ!」

 

そう身構えると、爆煙が晴れた場所にほぼ原型は残っていないが、こちらをロックオンしているゴーレムが一機、こちらに攻撃しようと首を動かすがそれより下は何も無いから、どうしようもない。

そのタイミングで、上から4機の乱入機とは毛色の違う機体がアリーナのフィールドに降り立った。

 

「マジかよ……」

 

見た感じにゴーレムの改良型だろう。

差し詰め、ゴーレムllだろうな。けど、流石にこの数を一人でやるのは、無茶だ。一応、コピーすればいけるだろうがコピー体はまだそんな複雑な事は出来るわけではない。

 

そう思っていたら、俺以外の気配を感じて辺りを見渡す。

 

「お前らは………」

 

「俺か?俺は、通りすがりの仮面ライダーだ!」

 

「アギト。それが、俺の名前だ」

 

「………」

 

何というか、こうして見ても濃ゆいメンツである。

 



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R.16p

「一人一機だな」

 

「ああ、任せたぜ」

 

「話しは、後でな?」

 

「………ああ」

 

ウィザード()アギト(倫太郎)ダークカブト(一夏)。これと言って、まとまりの無い組み合わせだが、そんな事は(新太郎)たちには関係なく、互いに意思疎通し狙いを立てて、それぞれの動きをする。

幸い、アリーナは結構広い。

多少派手にやったところで、問題はないだろう。

 

「それじゃあ、行くぜ!」

 

 

 

 

「最初っから飛ばしてくぜ!」

 

『KAMEN RIDE KUUGA』

 

ディケイドライバーにライダーカードを差し込み、クウガへと変身する。

そして、そこから、もう一度カードを取り出し、ドライバーに差し込む。

 

『FORM RIDE KUUGA・TITAN』

 

クウガ・タイタンフォームに超変身を遂げ、俺は手に現れたタイタンソードを握り、高く跳躍すると同時に思い切りソードを振り抜く。

危険を感じたのか、大振りだったその攻撃を乱入機は、大袈裟に後ろに飛んで交わした。

 

「ちょっと、相性が悪いな」

 

そこで、すぐに新しいライダーカードを装填する。

 

『KAMEN RIDE FOZE』

 

「まだまだ、足りないよな」

 

『ATTACK RIDE RANCHER』

 

『ATTACK RIDE RAD-AR』

 

フォーゼの特徴的な姿の左手と右足にそれぞれのモジュールが展開される。

俺との距離をとった乱入機に向けて、レーダーでロックオンしミサイルを発射する。

それを、よける乱入機だがロックオンされている為、追尾するミサイルを振りきれずに着弾しダメージを受ける。

 

「今度はコイツだ」

 

『ATTACK RIDE ROCKET』

 

『ATTACK RIDE DRILL』

 

左手と右足のモジュールが消え、フォーゼの代名詞とも言えるロケットとドリルが、さっきの逆の手足に展開される。

ロケットの噴射で、高く飛び乱入機へと急接近し近づいたところで、左足のドリルで、機体の装甲を蹴る。

 

「はあぁぁ!!!!」

 

ギリャンと、なかなかにエゲツない音を立てて、傷を与えていき、地面に叩き落とす。

 

「これで、トドメだ」

 

『FINAL ATTACK RIDE fo fo fo FOZE』

 

「ライダードリルキィィックゥ!!!」

 

ロケットの噴射で思い切り、急降下しそのまま足のドリルで、乱入機を蹴り飛ばす。

 

派手に爆ぜながら、散る乱入機を背に俺は他の連中を確認していた。

 

 

 

 

 

「行くぞ!」

 

アギトに変身したのは気分だったが、結構いい感じだったから、(倫太郎)もその場のメンツのノリに合わせて、無人機に攻撃を与える。

 

「はぁぁ!!!!」

 

接近した瞬間に、格闘攻撃の連打を叩き込む。

そんな俺に対して、反撃をしようと動くがそれを良しとはせずに、動きに合わせて攻撃を与える。

 

「燃え上がれ!」

 

ベルトのバックルに手をかざし、フレイムフォームに変身しながら、フレイムセイバーを取り出しながら、その無駄にデカイ両腕を切り裂く。

 

「これで、仕上げだ!」

 

両腕を切り裂かれた辺りで、まともに動かなくなった無人機の腹に、フレイムセイバーを突き刺し、全力に振り上げ、そのままの流れで横一文字に断つ。

 

「上出来だぜ」

 

爆発を背に、俺は他の対戦に目をやった。

 

 

 

 

「クロックアップ」

 

『CLOCK UP』

 

腰のボタンを押し、クロックアップを行いクナイガンを使って、目の前に立つISを切り傷を与える。

 

特に何か遊ぶ必要も無ければ、そんな器用な事は(一夏)にはできない。だから、全力で一撃一撃を確実に与えてその装甲を切り裂いて行く。

 

「これで、決める」

 

ゼクターの三つのボタンを押して、ゼクターホーンを戻す。

それにより、得られたパワーが、頭の角を経由して、右足に溜まっていく。

 

「………ライダーキック」

 

そして、ゼクターホーンを戻し跳躍と同時にISに向かって、後ろ回し蹴りを放つ。

 

『CLOCK OVER』

 

そんな電子音と共に黒いISは、爆発した。

 

 

 

 

 

「スタイルチェンジだ」

 

『シャバドゥビ タッチ ヘンシン』

 

『WATER!! PLEASE スイー スイー スイー スイー」』

 

ウィザード特有の変身音を出しながら、ウォータースタイルにチェンジする。

 

「このスタイルなら、これだ」

 

『LIQUID PLEASE』

 

リングを通して、魔法を発動させる。

それにより、()の身体は液体状に変化する。それで、ゴーレムが俺に攻撃を加えるが、液体になっているから、ダメージは入らず、ヌルヌルと動きながらゴーレムに接近する。

 

そこで、実体化しウィザーソードガンで斬りつける。

 

「時間を掛けてられ無いから、畳み掛けるぜ」

 

さらに、新しいリングを左手にはめてハンドオーサーにかざす。

 

『HURRICANE!! PLEASE フーフー フーフーフーフー!』

 

ハリケーンスタイルにチェンジして、右手のリングを付け直す。

 

『COPY PLEASE』

 

コピーの魔法で、ウィザーソードガンを複製し日本に増やし、つけられているハンドオーサーを起動する。

 

『キャモナ・スラッシュ・シェイクハンズ』

 

そんな待機音に合わせて、ハンドオーサーとシェイクハンズ(握手)する様にリングをかざす。

 

『 HURRICANE!! スラッシュストライク! フーフーフー!』

 

二本のウィザーソードガンが、風を纏ったのを感じながら、そのまま横一文字に切り裂き、ゴーレムを両断する。

 

「フィナーレだ」

 

その言葉と共に爆発が起きる。

これで、終わったかなと思って、辺りを見渡すと他のみんなも終わっていたので、どうしようかと思っていたら、先生たちのIS部隊がアリーナに入って来た。

 

『お前たち!何者かは知らないが、大人しくしてもらおう!』

 

マジでどうしようかと思ったら、俺たち四人の足元に大きなクラックが開き何をするでもなくそこに俺たちは飲み込まれてしまった。

 

 

 

 

「はぁ、世話が焼けるぜ」

 

 



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R.17p

「いたっ!?」

 

「ぶふぅっ!?」

 

「あだっ!?」

 

「………っ!?」

 

突然足元に開いた大きなクラックに落ちた()たちは、そのまま落ちたかと思ったら、何か地面らしき場所に四人揃って落っこちた。

全員で周りを見渡して、一応の確認をしてから変身を解く。

 

「イタタタ、ここは?」

 

「俺の別空間の中さ」

 

変身を解いた新太郎が、落ちた時に痛めたであろう腰を抑えながら、苦言を呈すと聞きなれた声が聞こえてきて、暗闇だった空間が明るくなり、そこには鋼刃と唯香さんの2人が並んで立っていた。

それに、気付いた倫太郎は胡座をかいてその場に座り直した。

 

「お前らなぁ、バレたら面倒なことになるんだから、終わったらとっとと去れよ。主に、允と新太郎は」

 

「い、いやぁ、盛り上がって忘れててたわ」

 

「俺も、正直倒した辺りでどうしようかと思ってたわ」

 

俺と新太郎の言い分に呆れたと言わんばかりに頭を掻く鋼刃は、何処かからか現れたソファに座り込みながら、今の状況を説明してくれた。

 

「さっきも言った通り、ここは俺の別空間だ。出入り口はこのクラック以外にも色々ある」

 

そう言いながら、鋼刃は俺たちの前に小さいクラックを開いて外の中を見せてくれた。

それよりも、俺は聞きたいことがある。

 

「外の状況ってどうなってるんだ?」

 

「ああ、そうだよ。俺たちは居なかったとは言え、流石に不自然な所に出たらヤバイだろ。それに、新太郎やお前たちはあの場に居たんだろ?だったら、あまり姿を消してたら怪しいだろ」

 

同じことを考えていた新太郎の言葉に俺も乗る。一夏もそれに、疑問に思ったのか、ソファで寛ぐ鋼刃に目をやる。

すると、帰って来たのは鋼刃からでは無く後ろの倫太郎からだった。

 

「それは、問題ないと思うよ。どうせ、止めてるんでしょ?」

 

「察しが良くて助かるぜ。簡単に言うなら、俺は特殊能力を使える。さっき見せたクラックの開閉の他に時間停止だったり、魔法だったりな」

 

そう言って、鋼刃は指を鳴らす。

そうすると、俺たちの身体が固まったように動かせなくなった。

けど、そうなったのも一瞬ですぐに元に戻り、少しバランスを崩してしまう。

 

「それから、外の状況だけど貴方たちをこの空間に落とした時点で止めてるから、怪しまれない場所に行けば大丈夫よ」

 

唯香さんは、ソファの手置きに腰掛けながら、慣れたように状況を説明してくれた。

 

「それから、一夏。お前には、ちょっと話しがある」

 

いつも以上に胡散臭さを感じさせながら、ニヒルに笑う鋼刃がそう告げると、一夏は苦い顔をしながら顔を鋼刃たちに向けた。

 

 

 

 

 

「簡単に言うならば、俺たちは転生者また転移者だ」

 

「は?」

 

唐突に鋼刃から告げられた言葉に、(一夏)は全くもって理解が出来なかった。

確かに、俺が持ってるこの力を不思議に感じた事なんて沢山あった。けど、明らかに俺じゃないけど、俺と似たような力を持ってる奴が居るのは知ってたから、そこまで気にした事はなかった。

 

けど、鋼刃は何を言っているんだ?

転生者と言えば、一度死にそして生まれ変わった人。転移者は、別の世界から訪れた人のことを言うのは、弾や数馬の話から知っている。

 

だが、それよりも気になるのは何故それを俺に、そして今言うのかだ。

 

「俺たちの使う能力。『仮面ライダー』の力は、転生や転移の際に授かったものだ。授かったのは、神なり上位存在なり、まぁ色々だがな」

 

「別に驚く事じゃないよ。どっちも俺たちの元居た世界じゃあ、普通だったからね」

 

そう鋼刃の言葉を補足しながら、倫太郎は鋼刃の座るソファに寛ぐ。

 

「俺たちが、来た理由はただ一つ。討つべき敵の残党がここに居る」

 

「………俺にやれって事か?」

 

「いや、そうじゃない。手を貸して欲しい」

 

鋼刃が、いつも胡散臭く感じてしまうのは多分、こう言う交渉を良くやっているからなんだろう。

俺としては、やって良いのかも知れないが、一つだけ俺も聞きたい事がある。

 

「一つだけ、聞きたい事がある」

 

「ああ、良いぜ。俺たちが答えられる限りの事なら、答えてやる」

 

その言葉を聞いて、俺は意を決して今まで一番気になっていた事を口に出す。

 

「俺は、何者なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何者、か。一夏の事は知らない事ばかりだけど、アレはなんか心の奥から気になってる感じがするなぁ」

 

「それに、答えた鋼刃も何か知ってそうだけど、実際はどうなんだろうなぁ」

 

(新太郎)らとしては、よく分からない質問に「………調べておく」と返した鋼刃の事が気になるが、取り敢えずは夕食を取りに行く。

食堂に着くと、そこら中で仮面ライダー(俺たち)の事を話しているグループが、至る所で目に付くが、その印象は何というか女尊的な雰囲気だ。

 

「俺らが、気にすることじゃないか」

 

「まぁ、そだな」

 

気持ちを切り替えて、何時もの定食を頼み空いてる席で、允と2人で並んで食べる。

 

「そう言えば、用事があるって鋼刃は言ってたが、何だったんだろうな」

 

「さぁ?俺らじゃ、分かんない事は深掘りしない方が楽だから、ほっとこうぜ」

 

「ま、それもそうだな」

 

そう2人で結論づけて、箸を進める。

流石に今日は、疲れたな。

 

 

 

 

「やっぱり。そうか」

 

沢山のウィンドウを開きながら、(鋼刃)は、座っていた椅子にもたれかかる。

 

「どの道潰さねぇといけないって事か」

 

厄介ごとは嫌いだが、そうするしか無いのだから、腹を括ってやるしか無い。

そう心に決めて、俺はその晩を明かした。

 




次回から4話ぐらい日常とか幕話入れようと思います。


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幕間 その2
R.18p


「今回も皇は休みか。では、これより、実習訓練を開始する」

 

もはや、定型文になりつつある鋼刃の休み報告に、(倫太郎)は耳を傾けながら、今朝先生から告げられた事を考えていた。

 

 

10分ほど前………

 

 

SHRも終わり、今日は朝から実習の為、そうそうに着替えて済まそうと思ったら、教室から出るところを織斑先生に呼び止められた。

 

「ちょっと、待ってくれ三枝」

 

「ん?何ですか?」

 

一緒に並んでいた新太郎たちに先に行ってもらうようにして、俺は織斑先生の話を聞く。

 

「今日の放課後だが、石動重工からの企業パイロットの要請が、お前に来ている。お前の他にも来ているが、ウチからお前だけだ」

 

「そうなんすか?それより、パイロットってことは………」

 

企業パイロットって事は、その石動重工が開発したISを使い、会社の技術力をアピールする広告塔の立ち位置だ。

詰まる所、俺に専用機が渡されるという訳だ。しかし、一組から俺以外に居ないとなると、必然的に男子は俺だけだになる。

それは、それで構わないのだが、秋十の奴が関わって来そうで面倒な気はするけど、やっておいて損なことはそこまでないだろう。と結論づけて、俺は話しを進める。

 

「ああ、簡潔に言うならばお前に専用機が渡される」

 

「それ自体は構わないんですけど、俺以外の人は誰なんですか?」

 

そう聞くと織斑先生は、一つの資料を渡してくれた。

その資料を見た俺は、思わず苦笑いをするが先生は、それに気づいていないのか、そのまま説明を始めた。

 

「名前は、真白唯香。3組のクラス代表だ。どうやら、石動と元々関わりがあったようでな。今回は、彼女の通達の追加としてお前が選ばれた訳だが……何が面白い?」

 

「いや、ただ知り合いだっただけに、そんな事やってんだなぁーって」

 

織斑先生は、俺が笑っているのを不思議に思っていたが、俺たちがここに来た時は中学辺りだった為、3人で互いに情報収集をしながら過ごしていた訳だが、唯香の行動はよく分からないものばかりだったが、まさか、こんな所で分かるとは思っていなかった。

 

「それよりも、その受け渡し?ですか?それは、放課後の何処に行けば良いんですか?」

 

「ああ、それならば、第2搬入口でやってもらう。その時に色々とあるが、それは渡されてからにしよう」

 

「まぁ、そうですね。分かりました」

 

話も区切りがつき、遅れた分を取り戻すために急いで、更衣室に向かう。

その際、鋼刃と出会ったが、連れて行こうとする前に俺の前から居なくなっていた。

 

「どれだけ、やる気無いんだよ………」

 

我が相棒ながら、ここまでする必要があるのかと思いながら、俺は向かう脚を早めた。

 

 

 

 

「へぇ?それで、引き受けたって訳か」

 

「まぁね。何かあった時に役立つだろうし」

 

「それよりも、唯香さんクラス代表だったのか」

 

唯香が代表だった事に驚いている允を置いといて、俺は実習の待ち時間を使って、新太郎や一夏たちと談笑しながら、専用機の話しを交わした。

俺の割とさっぱりしたセリフに、一夏とかは呆れていたが、個人的には己の力以外に信用出来る物は鋼刃の能力だけだから、気にしない。

 

「だから、今日は夕食は遅くなるかもね」

 

「マジか。まぁ、無理しない程度にやれば良いと思うぜ」

 

「そのつもりだよ」

 

何たって、身体は運動を良くする俺にとってはかなり大事なものの一つなんだから、気をつけてはいるし、万が一ヤバくなってもどうにか出来るようになってるから、そこまで無理するつもりはない。

 

「次、三枝と織斑弟」

 

「「はい」」

 

取り敢えず、今はこの実習を終わらせてから、気持ちを入れ替えよう。

 

 

 

 

 

「コネクションでも作ってたの?」

 

「ううん?ただ、あそこの奥さんと知り合いになっただけ。因みに鋼刃には、直ぐバレたけど」

 

「なら、俺にも言って欲しかったよ……」

 

「あはは、サプライズの方が劇的でしょ?」

 

ケラケラと軽快に笑う唯香にげんなりしながら、俺は織斑先生に案内されながら、第2搬入口へ向かう。

その途中、私服の鋼刃と鉢合わせになったけど、織斑先生は何も言わなかったので、一緒に向かう事にした。

 

「それよりも、どんな機体かは聞いてる?」

 

「いいえ?ただ、私たちに合わせた要素は取り入れるらしいわよ。詳しくは、教えて貰えなかったけど」

 

「石動は、堅実って感じじゃないし、良い意味でイかれてる奴が、多い感じだからな。案外、ロマン機かもな」

 

「あ、それなら、俺は大歓迎だよ」

 

などと、3人でくだらない事を話しながら、歩いていたら搬入口に着いた。

そして、搬入口に着いた丁度のタイミングで、石動重工のトラックが入って来た。

 

入って来たトラックから降りて来たのは、1人の白衣を来た男性だった。男性は、俺たちに気付くと一礼をして来たので、しっかりと返しておく。

これから、お世話になる相手なのだから礼節はわきまえておかないといけない。

 

「どうも。石動重工の開発主任の斎川一心(さいかわいっしん)と言います。よろしくお願いします」

 

そう言って名刺を渡されたのを受け取り、2人で自己紹介をする。

その場にいた鋼刃も、流れで自己紹介をすると何故か、手をガッチリと合わせている。

多分、何かお互いに感じる事があったのだろう。

 

「んんっ!それでは、我が社のISを確認していただきます。少々お待ちを」

 

そう言って一心さんは、トラックに何か指示を出すと、荷台が開き中には黄色と黒のISと青と白のISが、鎮座していた。

 

「こちらが、お二方に乗ってもらう第三世代機体の『雅狼』と『月華』です」

 

そう紹介されて、俺たちの手元に資料が渡された。

俺の所には『雅狼』の資料が、唯香には『月華』の資料が渡された。

多分、それぞれの専用機をこの時に教えてくれたのだろう。

 

「それじゃあ、フォーマットとかをやるから、装着して下さい」

 

そう指示されるまま、俺たちはISを起動する。

 

 

そして、その日一番の面倒ごとに絡まれるが、それは後の話だ。

 




報告
来週一週間投稿を休みにさせていただきます。流石に、学校と毎日投稿は、疲れましたので。

更新を楽しみにしていた方もいると思いますが、しっかりと療養して続けて行きたいので、ご了承ください。




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R.19p

「まずは、この『雅狼』について説明します」

 

下準備も終わり、先ずはアリーナで性能や操作の感じを確かめるために移動する。

アリーナはちらほらと自主練をしている生徒が居たが、織斑先生の存在を見て深く関わろうとはしてこなかった。

 

それから、俺の専用機となる『雅狼』から動かす事になり、斎川さんの説明を聞きながら、手を握ったりその場で軽くジャンプしながら、感触を確かめる。

 

「この『雅狼』は、両腕に内蔵されたパイルバンカー型拳武装の『壊爪・烈牙』や同様の仕組みで作られた脚武装の『崩爪・爆牙』を使う近接格闘機となっています」

 

そう言われながら、両手両足を確認する。

かなり小型化されてるが、アンカーが装填されているのを見て、何となくバッタの兄弟が思い浮かんだが、それを振り払い斎川さんに質問を投げる。

 

「弾数はどれぐらいなんすか?」

 

「各箇所6発の計24発ですね。また、非固定ユニットのブースター以外にも、『崩爪』を空撃ちする事で、その反動での移動も可能です」

 

そう言われたので、周りを確認してから言われたようにやってみる。

脚を上げ踏み込みと同時に、バンカーを射出。その反動で、身体に大きな負荷が掛かるが、何とか耐えて移動を行う。

PICだったかを使っているとは言え、十数メートルを一気に移動できるのは、『崩爪』の威力は十分に理解出来るほどに良い結果だった。

 

「また、射撃武装として、改造型アサルトライフル『群狼』他2種の重火器を備えています」

 

そう言われて、確認の画面を開いてどんなものかを確かめる。

少し、大きいが手には馴染む感じの丁度いいものが現れた。

 

「また、三枝くんの格闘能力を活かすために、独立ブースターユニット『青海波』によって、無理な加速操作にも対応できる物になっています」

 

そう言われた所で、俺は空中を飛ぶ。

『崩爪』の加速と『青海波』のブースター操作を行いながら、縦横無尽に空を駆ける。

最初は、キツイ負荷が掛かっていたが、ある程度続ければ慣れ加速の変化も気にしないレベルまで、出来るようになっていた。

 

「それにしても、素晴らしい操作技術ですね。やはり、適正Aは伊達ではありませんね」

 

「そっすか?ありがとうございます」

 

ISの適正ランクの五段階ある中で、Aは高い方だけど、俺としてはそこまで手放しに喜べる事じゃないから、軽く返しておく。

俺の確認がある程度終わった事で、今度は唯香の『月華』の説明に移った。

 

正直、唯香がどんな風な戦いをするのか、前も今も見たこと無いので気になるが、先ずは機体の方が興味が湧く。

 

「この『月華』は、独立非固定ユニット『鳳閃華』を使った中遠距離からの戦闘を目的とした機体となっています。他の武装は大太刀『柳桜』と射撃武器の80mmアサルトライフルの『雛菊』のみですが、唯香さんの腕ならば、使いこなせると思っています」

 

そう言って唯香は、背後の花の蕾の形をしたユニットを操作しながら、大太刀を振るう。

すると、その周囲が爆発する。

 

「爆薬?」

 

「火打ち石の役割が有るんだろう。あのブレード」

 

どこの剣豪なのかと思いながら、さらに唯香の動きを観察する。

『鳳閃華』が開くと、今度は其処からエネルギーシールドが展開される。さらに、其処から実体剣が現れて、唯香の周りに漂う。

見た感じ、敵を認識して其処に突撃したりするんだろう。パッと見の印象は、セシリアのブルー・ティアーズを思い浮かべるが、アレはセシリア本人が操作していて、唯香のはAIによる判断なんだろう。

 

「問題ない見たいですね」

 

『それじゃあ、やる?』

 

そう通信越しに唯香に聞かれた時のアイツの顔は、やっぱりコイツは鋼刃の嫁だわと思うほどに胡散臭かった。

 

「いい「おい!お前ら、練習相手にこの俺がなってやるよ!」……あ?」

 

いいよ。と返事を返そうとしたら、アリーナの別の入り口の方から、そんな声が聞こえて振り向くと、そこには白式を纏った秋十と箒が立っていた。

 

俺たちの対決を邪魔された俺と唯香は、テキトーに秋十を煽り、この鬱憤をアイツを相手に晴らすことにする。

 

 

 

 

 

『俺が先手を打つから、合わせてよ。いける?』

 

『誰にモノを言ってるのかな?出来なくて、鋼刃の許嫁なんて言ってないわよ』

 

『はは、そりゃ、そうだ』

 

そんな他愛ない話をしながら、俺は徒手を構える。

そして、織斑先生の開始の合図と共に、俺はさっきで慣れた加速を使い一気に距離を詰めて、まずは一発。さっき確かめられなかった『壊爪』を使う。

 

ガガンッ!

 

「ゴパッ!?」

 

「くっ!」

 

派手な爆裂音と共に、秋十が弾け飛ぶ。

何がなんだか分からなかったのか、情けない声を上げるがそんな事は気にせずに、唯香の方に蹴り渡す。

 

「邪魔してくれたお返しよ。存分に味わいなさい」

 

そう言うと鳳閃華が、またも開く。

そして、唯香はブレードを振るい白式の装甲にぶつけながら、振り抜く。

 

「カハッ!」

 

忽ちに火花が散り、秋十の周りに撒かれた爆薬移り、連鎖爆発を起こす。

さらに、唯香はそこから手を止めずに今度は、ライフルと銃口を展開させた鳳閃華を構えて、思い切り撃ち放つ。

 

「締めは任せたわよ」

 

「ああ、分かってる」

 

余り、目立ちそうな事は出来ないけど、せっかくやれるのだから、オリジナルで撃ち込む。

 

「圧縮」

 

『崩爪』のアンカー3つを圧縮装填し、装填していない方の脚で加速。

そこから、こちらに飛んでくる秋十に向かって、こちらの慣性を加えた蹴りを思い切り打ち出す。

 

「トドメだぁ!!!」

 

バガァンッ!!!

 

盛大に爆発した秋十は、白目を向いて気絶したまま、そのまま下へと堕ちていった。

 

「制裁だぜ」

 

晴らせてはいないけど、少しはスッキリ出来た試合となった。

 



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R.20p

「なるほど、確かにここをこうした場合、抵抗力が低くなりますね。ですか、それだと内部の装甲が厚くなるのでは?」

 

「それなら、ここをこの加工法を使って耐性を高めれば……」

 

「ああ!これは、盲点でした!いや、しかし、直感でもしやと感じましたが、これほどとは!」

 

楽しげに、斎川さんと新しいマシンの談義で盛り上がる鋼刃を、背後のソファで寛ぎながら、(ゆいか)はこれから、どうしようかと思っていた。

 

私のクラスは、鋼刃達のいる1組や鈴のいる2組とは違って、そんなに目立った人がいない。

4組も目立った人は、居ないと言えばいないが、専用機持ちでしかも候補生の人が居る時点で、勝ち組に近い。

 

「(鋼刃や倫太郎は、気付いてるだろうけど、あんまり相談しづらいなぁ……)」

 

私は、彼らのように強くは無いから、こういう時所であまり迷惑をかけては、こっちの罪悪感がすごい。

 

「しかし、これではエネルギーの効率が落ちてしまいますね」

 

「伝達部分の最適化は、まだまだ出来る感はあるから、多分多少なりの解決は出来ると思われ」

 

「成る程。では、時間もそろそろなので、私はお暇させていただきます。実に有意義な時間でした」

 

「それは、こっちもです」

 

私が悩んでいる間に、どうやら談義は終わったようで鋼刃と斎川さんは、お互いに握手して別れの言葉を告げていた。

私は、斎川さんが出て行ったのを確認してから、鋼刃に話しかける。

 

「久しぶりに、見たな。鋼刃のあんな顔」

 

「そうか?まぁ、ここに来てから周りで話せる奴は居なかったからな」

 

「そうね。鋼刃は、よく出来てるからね」

 

私としては、いつも通りに言葉を返したと思っていたが、鋼刃はこちらをジッと見つめると、真剣な表情で言葉を返してくれた。

 

「唯香。お前が、考えてるよりも俺たちは厄介な奴だぞ」

 

そう語気を強めて言うと、鋼刃は私の手を引いて椅子に座らすと、対面の椅子にどかっと座って、射抜くような視線を向けて来た。

 

「よし。言ってみろ。語り終えるまで、今夜は寝かさない」

 

その晩、悩みを喋るのを愚図るわたしは、鋼刃の宣言どおり1から10まで言い終えるまで、そのベッドの上に行くことは叶わなかった。

 

 

 

 

「な、何と言うか、鋼刃さんって良く分からない人なんですわね?」

 

「ふふ、まぁね。でも鋼刃は、やる時はやる人だから。セシリアも、いずれ分かるわ」

 

休日の昼。

私用で居ない男子組を除いた女子組で、食堂で女子会と言うか駄弁り会を開いていた。

セシリアの他に、鈴や本音の4名で集まって取り留めのない言葉で、話しを続ける。

 

「何というか、鋼刃さんと言うか倫太郎さんもですが、他の方々と違って、不思議な感じですわよね」

 

「そうね。唯香には悪いけど、鋼刃はそれなりな仲になったけど、あの胡散臭さは、拭えないわね」

 

「こうちんも良い人なのは、分かるけどね〜」

 

セシリアや鈴、本音のあんまりな言い草に普通なら、文句の1つや2つ言うのだろうけど、私も最初に鋼刃と会った時は、鋼刃の事を信用出来なかったから、気にはしない。

 

「鋼刃は、周りが出来る人が沢山居たから、ああいう風になったのは仕方がないと言えば、そうなんだけどね」

 

「確かに、倫太郎さんは何というかスゴイですもの」

 

「私より、語彙力あるアンタがそう言うんだから、ホントにスゴイのね」

 

3人の返答に対して、私の返しにセシリアが頷きながら返して来てくれた。その言葉に鈴も、苦笑いしながらそんな事を言ってくる。

 

「そう言えば、じょー達は今日何するって言ってたっけ〜?」

 

「そうですわね。私は、唯香さんから聞いたので分かりませんが………」

 

「私も分からないわよ?一夏に会いに行ったら、本音に会ったから着いて来ただけだもの」

 

「となると………」

 

私以外の全員が、男子組の不在の理由を知らなかった為、私に顔を向けて問いかけてくる。

 

「私も、詳しくは知らないわよ?その、倫太郎の家に行ってるとしか聞いてないわよ?」

 

ただ、私が正直に伝えたと言う訳では無いけどね。

 

 

 

 

 

「アレ?なんか、嬉しいそうね?」

 

「ん?そうか?まぁ、そうかもな……」

 

その日の夜。

帰って来た鋼刃から、倫太郎の家でやった特訓の内容とかを聞いていたら、何処かテンションが高く感じる鋼刃にそんな事を聞くと、カバンの中から1つのアタッシュケースを取り出した。

 

「斎川さんに、無理前提で頼んでみたら、借りれたんだよ。頼んでみるもんだな」

 

そう言って、アタッシュケースの中を開けると、1つ大きな球体の造形物が入っていた。

 

「色々と契約する事はあったが、使えるのなら文句は無いさ」

 

「ねぇ、これって……」

 

正直に言えば、この球体の正体は何となく気付いているけど、念のため確認する。

すると、鋼刃は何時もの胡散臭い笑顔を浮かべて私にこう返してくれた。

 

「ああ、お前の予想どおり“ISコア”だよ」

 

この日、私の夫がかなり危険な爆弾発言をここに落としてくれた。

 

彼は、ここでも下克上するつもりなんだろうか?

 



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R.21p

存在しない軍事基地。

噂でそう呼ばれる場所が、世界各国に点在しているらしい。

その基地の目的は、多岐に渡るが全てを通して言える事が1つある。

 

それは、その基地全てが非合法で非道徳的な実験や研究を、行なっていると言う事だ。

 

 

 

「さてと、これで8つ目だな」

 

俺は、眼前に広がる基地を衛星情報からの地図と見合わせてから、そこが目的の場所だと確認し、迷彩を起動させ中へと侵入していく。

 

「(ここの研究は、クローンだったな)」

 

悠々と基地内の通路を歩きながら、近くに見つけた研究室のパソコンから研究データを拝借する。

データを端末に移している間、ここの研究結果の内容や状況などを片手間に確認する。

 

「(研究や実験自体は、一応成功例があるが最近は芳しく無いようだな。だが、ドイツ政府からの資金援助を受けているって事は、利用価値があるんだろうな)」

 

ここは、ドイツお抱えの秘密基地だが、それを知っているのはまぁ、政府内でもごく僅かといった所だろう。

さらに言えば、最近はISが使える男性に対して、盲目的になっているのか、当初の強化人間計画よりも内容がエゲツないものになっていた。

これを、公表すれば色々と荒れるだろうが、まずこの基地が知られてないから、他の国の。特に先進国とかは、自分たちも怪しまれないか気が気じゃなくなって、どうなるか分かった物じゃないから、まくのは、もう少し後で良いだろう。

 

「(ISコアの研究なんかもやってたのか。いや、こう言う所だからこそか……)」

 

ISコアの構造や仕組みは、未だ解明されてないブラックボックスと言われている。

こう言う、研究所なら国が公に出来ないような研究とか実験を出来るから、非難を浴びそうな事はここのような汚い場所が、役立つのだろう。

 

「(さて、ここの用事も終わったし。本題に戻るか……)」

 

部屋を出た俺は、そこまで小さい基地では無いが、人気の少ない通路を歩きながら、先程のパソコンから得たこの基地の地図を見て、散策を再開する。

 

「(警備員?)」

 

角を曲がったところで、武装した警備員らしき男が、2人並んで歩いていた。

もしかしたら、見つかるだろうがその際には殺るしかない。

 

俺は、両手に銃を構えて背後から静かに2人の男に接近する。

背後に近づいた瞬間に、それぞれの頭にに銃を突きつけて、2人になけ聞こえるように声を出す。

 

「声を出すな」

 

「「!!」」

 

2人は、俺に反応しそうになったが、頭に当たる銃口の感覚に大人しく俺に従った。

俺が確認できる範囲でなら、勝手な真似は出来ないだろうが、念には念を入れて警告しておく。

 

「通信を切れ、切ったら床に置け」

 

警備員2人は、案外大人しく胸元からトランシーバを取るとしゃがむようにして床に置く。

床に置いたのを確認した後、俺は目的地へと案内するように告げる。

 

「第3研究室まで案内しろ。その間、勝手な事は許さん」

 

そう告げると、男たち2人は歩き出した。

一応、銃を下げるがこちらを振り返ろうとした反応見せた瞬間にまた突きつけて、こちらが反応出来ると言うことを示しておく。

少し歩いたところで、男たちが曲がった辺りで、俺はこの2人の頭を撃ち抜いた。

 

「(はぁ、肉壁役に持ってこうかと思ったが、流石に良い訓練がされてやがる。仕方ない、そのまま行くか)」

 

基地の地図を俺は持っているので、誰かの案内を必要とする程では無いから、目的地とは逆の方へ案内しようとしたコイツらは、用済みとして始末しておく。

堂々と侵入しているが、数で責められた俺も勝てるとは思っていないので、念のための防御用に使ったが、盾になる前に要らなくなるとは思わなかった。

 

「(さて、本当なら解除してから行くんだが、なんかヤケに人が居ない。となると、色々とやってるな」

 

「ご名答!流石と言うべきかな?()()()()

 

「サーモグラフィーを使った熱センサーか………」

 

「ああ!そうだとも!お前が、ここのような施設の情報を盗んでいるのは、既に察知済みだ」

 

「はぁ、面倒だ………」

 

迷彩を解き、こちらに向かって胡散臭くそう告げる白衣の男がを見ながら、これからどうしようかと考える。

 

「それで、俺をどうするつもりだ?」

 

「簡単だ。他の基地の情報を私たちに渡して、ここで死ぬか。抵抗せずに死ぬかだ」

 

「結局殺す気か……」

 

「当たり前だ!貴様のように、ここの存在を知った者は皆殺す決まりだからな」

 

偉そうに語る男は、手を上に上がるとその背後から、さっき殺った2人と同じように武装した集団が銃を構えて現れた。

その光景に俺は、思わずため息が出る。

 

「悪いが、その全てを遠慮させてもらうわ」

 

「ならば、死ねぇ!!」

 

男の怒号と同時に、武装集団が銃の引き金を引く。

 

「はぁ………いくぞ」

 

俺は、手元から目玉のような物を取り出して、トリガーを押す。

 

「変身」

 

 

 

 

 

「はぁ、ここもハズレだったか………」

 

重要情報を確認した俺は、今回もハズレだった事に落胆しながら、眼下の燃え上がる基地を尻目に、帰る準備を整える。

 

「まぁ、まだ基地はあるから、少しずつ片付けていくか」

 

しかし、まさか他国で情報を交換してるのは流石に頭が悪かった。

次からは、もっと気をつけて行こう。

 

そう心に決めて、(鋼刃)は闇夜に姿を消した。

 




前回話したように明日から一週間投稿を休ませてもらいます。
一週間ご、楽しみにしていて下さい。



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第三章 仮面の騎士
R.22p


お待たせしました。
一週間の間で十分に休めたので、投稿を再開させてもらいます。
無理のないように努めるので、毎日投稿の形が崩れるかと思いますが、大目に見てくださるとありがたいです。

では、本編をどうぞ。




「うわぁ、見ないうちに大分荒れてるなぁ………」

 

束の間を休日を何時ものように、鋼刃の家で過ごそうかと思ってそこに行くと、前から鋼刃を嫌ってる女子たちからのイタズラとかで荒れてたが、動かした事で更に荒れている鋼刃宅に、若干引きながら(倫太郎)はそんな()()()()()()()は気にせずに、家の中に入る。

 

「やっほー、遊びに来たよー鋼刃ー」

 

ドアを開けて、少し静かな玄関から中に居るだろう鋼刃に声をかける。すると、奥の方から足音が聞こえてきた。

 

「あら、倫太郎。悪いけど、鋼刃は今下よ」

 

「また、何か作ってるの?」

 

「さぁね?乗り物がどうとかとは言ってたけど」

 

鋼刃が、下に作った開発部屋に篭るのはそう珍しい事じゃないが、唯香が居る時に篭ってるのは、ちょっと珍しい。

 

「あっちじゃ、乗り物は要らなかったからね」

 

「アタシやお母さんが、魔法使ったからそれほど問題無かったし。列車があったからね」

 

「まぁ、ここじゃあ、どれも使えないから仕方がないと言えばそうなのか?」

 

俺たちが居た世界は、簡単に言えば剣と魔法と近未来というカオスな環境だった為、魔法が飛び交う中レーザー光線が混じってたりと割とテキトー感が強かった。

乗り物はあるにはあったが、俺たち転生者は皆自分の足があったから、目立ってイメージはない。

 

そんなこんなで、唯香と雑談しながら、テレビゲームをしていたら開発部屋から出てきた。

 

「やぁ、鋼刃。お邪魔してるよ」

 

「ああ、なんか馴染みの気配を感じたがお前だったか。それより、何しに来たんだよ」

 

「え?暇だったから遊びに来ただけだよ」

 

「はぁ、だろうな」

 

部屋に入って来た鋼刃は、大分呆れながら疲れたのか冷蔵庫からアイスを取り出して、食べながら指でキッチンのテーブルを叩く。

アレは、何かを考えてる時の鋼刃の癖だが、ここまで音が聞こえるほど激しいって事は、行き詰まってるのだろう。

 

「そう言えば、乗り物がどうとかって言ってたらしいけど、今度は何か作ってるの?」

 

「……あ?あー、そりゃ、ライダーって言ったらバイクだろ」

 

その言葉を聞いた俺は、此処には居ない允たちにメッセージを送った。

 

 

 

 

「最初から、連絡した方が良かったんじゃ?」

 

「すっぽり忘れてたわ。やっぱり、唐突にやるもんじゃねぇな」

 

頭を書きながら、複数のモニターを動かす鋼刃を後ろからボーッと眺める。

鋼刃が悩んでいた理由は、単純で俺たちに使ってもらうバイクをどれにするかでかなり悩んでいたらしい。

根っからの技術屋である鋼刃らしいとらしいのだが、普通はそう言う時に、俺たちに聞くんだとは思う。

その事には唯香も笑っていたのは、まぁ当然だろう。

 

「それよりも知ってるか?転校生の話」

 

「いいや?初耳だよ」

 

「あ、私はちょっと聞いたよ。先生から。流石にどんな人かは知らないけど」

 

プログラムも打ち込んで終わったのかこっちを見てそんな事を聞いてくる鋼刃に対して、そんな風に返す。

にしても、また転校生か。鈴は、確か手続きの問題で遅れたらしいけど、今回は何だろうか。

まぁ、少なくとも何かしらの思惑か働いていそうな時期である。

 

「それに関して何だが、1つ気になることを見つけてな」

 

そう言って、鋼刃が多分その件の転校生の2人のプロフが載せられた画面を見せて来た。

その内の1人を見て、鋼刃がなんでこんな事を言って来たのか俺は分かると同時に、面倒だと感じて来た。

 

「て事だ。取り敢えず、俺らは注意だな」

 

「そうだね。まさかこんな事をしてくるだなんて………」

 

そして、その日は鋼刃宅で夜を明かした。

 

 

 

 

 

「よーっす」

 

「よう。鋼刃」

 

教室に入った(鋼刃)を出迎えたのは、何時も朝が早い新太郎だった。

そして、教室がいつも通りに騒がしい。多分、その原因はアレだろう。

 

「そういや聞いたか?転校生が来るって」

 

「ああ、にしても、こんな時期にしかもまたこのクラスってだけで、俺は鬱になりそうだ」

 

「まぁ、普通に考えたら俺ら関係だろうな」

 

俺の暗い返しに新太郎も同じ気持ちだと言いたげな顔をしながら同意してくる。

その後も、徐々に集まってくる何時ものメンバーに転校生の話やら今後どうするかなど、始まりまでの時間を潰す。

 

そして、朝のSHRとなり、先生たちが入って来た。

 

「まず、連絡をする前に転校生を紹介する。入れ」

 

短く伝えられた織斑先生の言葉の後、扉から金髪と銀髪の“男”と女が教室に入って来た。

その瞬間に秋十を除いた男子が身構えるのが、視界に捉えられてるだけで分かった。

 

「デュノア、ボーデヴィッヒ。自己紹介をしろ」

 

「「はい」」

 

“彼女たち”は軽く返すと静かに自己紹介を始めた。

取り敢えず、俺は鼓膜を守る準備をしておく。

 

「はじめまして。シャルル・デュノアです。これから、よろしくお願いします」

 

「「「「「きゃあああぁぁ!!!!!」」」」」

 

シャルル・デュノアと名乗った彼の言葉の後、女子たちの男子歓喜のハウリングが教室に響く。

俺たちは、耳を何とか塞いでいたお陰で衝撃は免れたが、どうやら秋十は予想していなかったらしくモロにダメージを受けていた。

その後、織斑先生が静かにさせた後、もう1人の自己紹介が始まった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「え、い、以上ですか?」

 

「以上だ」

 

そう短く言うとボーデヴィッヒは、自分の席に座った。

まぁ、本当は秋十の事を思い切りぶん殴ったのだが、個人的にはそんな事などは、覚えておくと意味は無いので、忘れてこれからどうするか考える。

 

「(“シャルル・デュノアは女”、そう簡単にバラすのはキツそうだ)」

 

その後1人の男が大変な目に合うのだが、それはまだ先の話だ。

 



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R.23p

「やぁ、僕は………」

 

「あー、それは後にしてくれ。早く行かないと大変だから」

 

「え、あ、ちょ、ちょっと」

 

デュノアが、朝のSHRが終わった後、次の実習の準備をしていた()たちに話しかけて来たが、この後の展開が分かっていた新太郎が、荷物を持たせて手を引く。

その時、何故かデュノアが、顔を赤くしているが今はそんな事は気にする暇はない。

 

「居たわ!転校生の男子よ!」

 

「きゃあ!!美形!それも守りたくなるような雰囲気!」

 

「みんな!捕まえて、質問タイムよ!」

 

「ゲッ、もう来たか」

 

だが、俺たちの思惑は外れ予想よりも早くに女子たちが集まって来たので、どうするか考える。

自分の事を考えるのならば、ここはデュノアを捧げて行くところだが、そんな非人道的な事をするのは気が引ける。

だから、丁度目に入った秋十の首根っこを掴んで、そのまま女子たちの方へと投げる。

 

「お前!何しやがる!」

 

「じゃあな。嬉しいだろ?女子に埋もれるのは」

 

と、捨て台詞を吐いて急いで更衣室に移動する。

その際、秋十の叫びが聞こえたが、あんな奴がどうなろうと良いので、無視して移動する。

そして、更衣室に着いたのだが案の定鋼刃は何処かで抜け出していたらしく見当たらなかった。

 

「ん?どうしたんだよ、デュノア。着替えないのか?」

 

「う、うん!着替えるよ!そ、それに僕の事はシャルルで構わないよ!」

 

「お?そうか?なら、俺たちは先に行っとくぞ」

 

「う、うん。後で行くよ」

 

俺たちが着替えても何故か制服のままのシャルルに、新太郎が疑問に思ったが、取り敢えず先に終わっていた俺たちは、グラウンドに出て行く。

何というか、らしくないなと感じながら、俺はシャルルに対して少しだけ警戒を高めていった。

 

 

 

 

 

「お前らなぁ………」

 

「あっは!見事なまでに完敗だねー」

 

「う、うっさいわね!」

 

「うう、わたくしもまだまだですわ……」

 

今しがた2対1のマッチで見事に負けた鈴とセシリアの2人を軽く煽る倫太郎を他所に、俺はさっきの山田先生の動きを振り返る。

 

実習前のエキシビションみたいな感じで、山田先生対鈴・セシリアペアの対戦が行われたのだが、結果から言えば数的にも機体的にも有利な鈴たちが何も出来ずに負けてしまった。

正直に言えば、普段の山田先生からは全く想像出来ない上手い戦いだった。

 

だって、何もないとこでコケたり、うっかりやポカをするような人が、実はスイッチマンだったなんて想像も出来ないだろう。

スイッチマンで言えば、鋼刃も唯香さんもそんな気がするが、まぁそれは今じゃなくていいか。

 

「これで、教師の実力は分かったな?今後は、敬意を表するように。では、授業を再開する。今回は………」

 

その後は、織斑先生の指示の下授業が進められていった。

今日は、2組との合同という訳だが、この数を1人で動かせるのは多分織斑先生のカリスマ性やらが強いんだろう。

あのキツそうなボーデヴィッヒですら、素直に聞いているんだから。

 

 

 

 

 

「この内容なら問題はないか………」

 

屋上で、グラウンドで実習をしているクラスメイト達を見下ろしながら、(鋼刃)は、手元の端末を操作しながら、画面を動かしていた。

 

「さて、俺に何か用か?」

 

こっちに来て少ししてから、俺のことを背後で伺ってる奴に話しかける。

まぁ、多分何処かの国の諜報員とかな気がするが、もしもの時は消すだけだ。

 

「だんまりかよ。はぁ、面倒だなぁ………」

 

「……貴方は何者なの?」

 

俺の言葉に返す気なのか、姿を現しながら、そう語って来たのは水色の髪が特徴的な女子生徒だった。

リボンの色からして2年生だな。

 

「何者?俺は、皇鋼刃っすよ?何か、問題でも?」

 

「貴方は、今まで大小様々な問題に巻き込まれているわ。けど、学園での貴方は余りにも()()()()()

 

「……へぇ、よく知ってますね」

 

彼女のその言葉に俺は思わず目を細めてそう言ってしまった。

これでは、自分は怪しいですと言っているようなものだ。ここで、向こうのバカ王たちとの対談が仇になった。

けど、こんな事で落ち着いて居られない。ここは落ち着いて、上手く返す。

 

「けど、別に問題無くないですか?普通なのは。ここにいるのは、身分や経験に差はあれど普通な人が多いですし」

 

「そうね。たしかにそんな人は多いわ。でも、貴方は普通では無いわ。私に言わせれば、演じているわ」

 

「演じている?何を俺が演じているって言うんですか?不良生徒ですか?」

 

少し戯けた口調で彼女にそう語ると何処からか取り出した扇子で、口元を隠しながら彼女は言葉を紡いで来た。

 

「確かに貴方は、実習や座学を度々サボっているようだけど、別にそれは不思議じゃ無いわ。そして、成績も良いみたいだけどそれも珍しくない。けど、貴方はどんな時でも此処から見当たらなくなる時がある」

 

そこで、俺は右手にバレないように力を込める。

流石に、この世界の人間を舐めていた。しかし、コイツらが計算に入れていなかったのは、俺が転生者だということだ。

 

「それで、結局何が言いたいんですか?」

 

「……貴方の目的は何」

 

端的に告げられた言葉に対して俺は、静かに溜め息を吐きながら、距離を一気に詰めて彼女の頭に右手を翳す。

 

「これが俺の答えだ」

 

その後、その場に力なく倒れた彼女を放置してはおけず、保健室まで運ぶ。

別の記憶を移しておいて。

 

まだこれを語るには早すぎる。

 

 



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R.24p

「それじゃあ、案内するわ」

 

「よろしくね。新太郎」

 

「ああ」

 

激動では無いが、いつも以上に騒がしい1日を終えた(新太郎)は、1人部屋だった俺はシャルルのルームメイトとなった為、シャルルを部屋まで送る。

その途中、他の生徒からの変な雑談が聞こえて来たが、それは気にしてばっかりじゃ、此処ではやってけないと俺はこの短い間で学んだから、無視して行動する。

 

けど、俺はこのシャルルに少し違和感を感じているから、余り気を抜けばしない。

 

「ここだ。荷物は中に入ってると思うから」

 

「うん。ありがと」

 

取り敢えず、案内を終えた俺はシャルルに允達のところに行くと伝えて、一旦別れる。

連絡先も交換したので、困ったことがあったらシャルルの方から電話してくるだろう。

 

「おーい。允ー」

 

「あ、入ってくれ」

 

「おう」

 

ドアをノックして居るかを確認すると、何時もの調子で返されたのでそのまま中に入ると、簪は居らず允1人だった。

 

「アレ?簪は?」

 

「あー、なんか私用で割と居ないぞ。なんだか、大変らしいが俺には手伝えそうにはない」

 

「へぇ、まぁ、本人が辛そうだった時は、手を貸せば良いことだろう」

 

「そうだな。それより、何か用か?」

 

簪について、心の中で応援していたら、允が用事を尋ねてきた。

 

「いやさ、シャルルに関してなんだけどさ……」

 

「あー、ね。俺もちょっと聞きたいことがあったんだよ」

 

意外と言うわけでは無いが、允も俺と同じようにシャルルに感じるような事があったらしい。

俺や允で気づいているから一夏やあの3人が気付いていない筈は無いだろう。

自慢じゃないが、あまり俺は察する能力が足りないのだ。

 

「正直、今日一日過ごしたが何というか男子と言うよりも女子な気がするんだよな」

 

「俺も。結果的に俺が一番関わったから分かるんだけど、アイツの手って、男特有の硬さが感じないんだよなぁ」

 

「うわ、側から見たら女子の柔らかさを知ってるみたいで、嫌だわー」

 

「た、例えだよ例え」

 

「ふーん?まぁ、それに関しては俺も感じるのはあったがな」

 

允からの視線が痛いが、どうにか話を修正する。

まぁ、正直朝の更衣室に連れて行く時に手首を掴んで女子みたいに感じていたが、更衣室での俺の質問に対してのキョドリ方は、いきなり俺たちに話しかけてくるようなコミュ力の高い奴には思えない。

だから、多分俺たちに言えない何かが、アイツにはあるってことだろう。

 

「何も無いのなら、仲良くしていきたいが、そう簡単には行かないよなー」

 

「俺たちと同じ男で、編入ってだけでだいぶ怪しかったがな。しかも、フランスの候補生だろ?」

 

「明らかに怪しいよな。男だから貴重だからってだけで、候補生にはならないからな」

 

同じ候補生のセシリアや鈴から聞いているからでどれほど、候補生になる事が大変かは素人の俺たちも良く知っている。

もし、正規の手続きをして候補生となったのなら、シャルルには国絡みでの隠蔽されていることになる。

となれば、フランスは他国から色々と弾糾されそうだが、そう言った話は聞いてないから、するまでも無いと判断されているのだ。

 

「取り敢えずは、様子見にしておくよ。悪いな、邪魔して」

 

「いや、構わねぇよ。んじゃ、気をつけてな」

 

「おう。お前もな」

 

そう返して俺は允の部屋を出て、食堂で食べに行こうと思い、シャルルを誘いに部屋へと戻る。

鍵は俺も持っているが、一応の為にちゃんとノックしてから反応を確かめる。

 

「シャルル?俺だ。入るぞ」

 

「し、新太郎?!ちょ、ちょっと待ってね!」

 

「お、おう」

 

余りの慌てた様子に思わず苦笑いを零すが、取り敢えず返事があるまで外で待っておく。

1、2分程度待った後、風呂上がりのようで上気した肌のシャルルが、出迎えた。

 

その後は、俺の誘いに乗ったシャルルと一緒に食堂まで向かう。

その途中、秋十と箒が俺に絡んで来たがテキトーにあしらいつつ、シャルルに秋十達には余り関わらないように伝えておく。

シャルルがどんな奴かは知らないが、コイツらと一緒なるよりはマシだろう。

 

「何時もあんな感じなの……?」

 

「まぁな。ただ、今日は一夏が居ないからマシな方だな」

 

「アレで、マシな方……」

 

シャルルが俺の言葉に驚いていると、注文していたカツ丼が届いたので空いている席を探していたら、丁度鋼刃達がいるのを見つけて、同席にさせてもらう。

 

「一緒に座っても良いか?」

 

「ん?ああ、大丈夫だよ」

 

「そうか。サンキュー」

 

食堂は人が沢山居るので、良く場所が取れないが今日は運が良い。

シャルルも食事を受け取ったようで、こちらに呼びかける。

鋼刃と倫太郎は、知っているが唯香さんは初めてなので、お互いに自己紹介をする。

その際、唯香さんの視線が細められたように感じたが、特に何も無かったから、俺の気のせいだったようだ。

 

それから、鋼刃と唯香さんの関わりを見てシャルルが俺に疑問を投げかけて来た。

 

「ねぇ、2人ってどういう関係なの?」

 

「許嫁らしいけど、俺からしたら夫婦だな。夫婦」

 

「い、許嫁?!そ、そう、なんだ」

 

許嫁という言葉に凄く驚いていたが、少し顔が引きつりながら、取り敢えずは自分で納得させたようだ。

 

その後も、今日の実習のことを話しながら、夕食を終えた俺は外の空気が吸いたかったので、外を散歩する。

外は、暗くなっていたが、それよりもどこか怪しい雰囲気が漂っていた。

 

「なんだこれ……」

 

悪い予感を感じながら、俺は赤いなにかを見つけて、物陰に隠れてドライバーを構える。

 

「lhgvy&_&__/&/#/gt?s&(v(jJltJj〆」

 

「なんだよ。あれ……」

 

すると、俺の目の前を何とも形容しがたい何物かが、蠢きあっていた。

俺は、それが、何かは何とも言えなかったがここでアイツをどうにかしなければならないと直感的に感じた俺は、迷わずにライダーカードを握る。

 

「変身……ッ!」

 

そして、俺の一人きりの長い夜が始まった。

 



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R.25p

「lgvvgox&&_gp&.y"pju(!!!!」

 

「なに言ってるかわかんねぇよ……」

 

最早言語なのかとすら思うが、この程度で怯えてたらライダーなんてやっていけない。

どれ程の威力を秘めているのか分かっていない内は、あまり前に出れない。だから、まずはライドブッカーをガンモードにして、中距離からの射撃で様子見する。

 

「g@gy,so?"rata(gjjysom!!!」

 

「無反応とか聞いてねぇぞ………ッ!」

 

だが、目の前の黒い靄のようなスライムのようなナニカは、俺の攻撃に何か叫ぶだけで目立ったダメージは感じられない。

しかも、明確に俺が敵対しているのに全く攻撃をして来ようとしてこない。これをチャンスと見るか誘いと見るか微妙だが、そう言う時の対処法はちゃんとある。

 

「だったら、こうするしかねぇだろ」

 

『ATTACK RIDE ILLUSION』

 

ライダーカードをバックルに読み込み、俺の身体を能力で分身させる。1人だけでは、無理かもしれないが数を増やして検証をすすめる。

 

「「「行くぞ」」」

 

『ATTACK RIDE SLASH』

 

『『ATTACK RIDE BLAST』』

 

ガンモード状態の俺が、後方から射撃を与えてからその後すぐ様にもう1人の俺が、近距離の斬撃を加える。

 

「l"grt?rowala&_(_@/#gtgt?vj(pvTvvm(\!!」

 

「ダメージ入ってるのか?」

 

だが、ナニカはさっきよりも大きな声で反応をしただけで、射撃も斬撃も特に聞いたような様子は無かった。

ディケイドのドライバーのお陰で、ダメージは与えられるとは思うが、こうも手応えのない相手は初めてだ。

 

「未確認ってんなら、こっちにも手はあるぞ」

 

正直、勝てるかは分からないが被害を抑えられるのなら、やるに越したことはない。

俺は、分身それぞれでライダーカードを取り出し、バックルに読み込む。

 

「これだ」

 

『KAMEN RIDE KUUGA』

 

『KAMEN RIDE W』

 

『KAMEN RIDE BUILD』

 

それぞれが、各ライダーに変身したのちにそれぞれの手段を持って、目の前のナニカに攻撃を加える。

特に選んだ理由はないが、それでもどのライダーも多彩なフォームチェンジを主にしていたライダー達だ。だから、手数の多さはただの分身よりも多い。

 

「jpa(_t(y?t)?tgtj(np??t&j_&#&/igfugvlajus.J」

 

「なんだよ。急に静かになって」

 

「&j(pj(ram?,5々4さほむmts)gw」

 

「聞いた事ある言語?いや、そんな事は今は関係ない」

 

俺の全力の攻撃も全て反応がなかったナニカは、突然いままで叫んでいたのに急に静かになり、聞こえる言葉も何処か聞いた事のあるような感じのする言語となっていた。

 

そこに何か危険な物を感じたが、それを易々と受け入れる程俺は流暢にしていられないので、必殺技を決める。

 

『FINAL ATTACK RIDE KU.KU.KU KUUGA』

 

『FINAL ATTACK RIDE DA.DA.DA.W』

 

『FINAL ATTACK RIDE BU.BU.BU.BUILD』

 

「はあぁぁあ!!!!」

 

1人トリプルライダーキック!

3人同時に飛び上がり、空中で体制を整えてからキックのモーションに移り、そのまま下でまだ呻いているナニカに向かって蹴りの一撃をぶつける。

そして、三ライダー分のライダーキックをモロに受けたナニカは爆発に巻き込まれる。

 

だが、それでは、ナニカは消えはしなかった。

 

「嘘……だろ……?」

 

思わずその出来事に驚きを隠せない俺は、その見事な隙にナニカの触手なのか腕なのか分からない物体に分身もろとも吹き飛ばされる。

 

「ガハッ!」

 

その衝撃で、全ての返信が解けてナニカの前に生身の身体を晒してしまう。

ナニカは、俺を見下すように呻き出すと今度はハッキリと理解できる言葉でこう告げて来た。

 

気をつけろ……黒い雨に…気をつけろ……

 

ニゲロ……ニゲロ……ココからさ去れ……

 

お前を殺してやるぅ!!!!!

 

「くっ!」

 

いきなり、忠告されたかと思えば次はこの場から逃げるように催促され、最後には純粋な殺意をぶつけられる。

その実、俺を殺そうとさっきの物体が迫ってきていたのを見て、俺咄嗟にオーロラカーテンを使い、寮近くまで自分を移動させる。

 

「はぁ、はぁ、何だったんだよアレ」

 

正直、あんな怪人や現象は見たことは無い。それに、あそこまでの非科学的な現象はこんな世界じゃ起こるわけがない。

となると、俺には1つの可能性が見えてくる。

 

「鋼刃達の敵、か……」

 

「半分は、正解だな」

 

「鋼刃!?うっ!」

 

壁に凭れて、休憩しながら思わず口に出していたら、反対の場所から鋼刃が出てきて思わず、驚くが直ぐに最初に受けた攻撃のダメージの反動が返ってくる。

 

「おい。無理すんな。アレの攻撃は、装甲を無視するから回避が正解だな」

 

「そうかよ……それよりも、アレはどうなったんだ?」

 

「お前が撤退した後に消えたよ。だいぶ不安定だったから、正直お前が居なくとも消えてたな」

 

「それじゃあ、俺は無駄骨だったわけか」

 

「まぁ、そうだな」

 

事も無げに言う鋼刃にため息が出ながら、あのナニカについて聞くと鋼刃は、普通の調子で教えてくれた。

 

ナニカは、様々な死体を錬金術で掛け合わせたキメラ。

だいたいが、罪人や悪人を利用して作られるため憎悪が溢れている。

そして、作成に使われた死体それぞれに心臓となる部分が生まれる為、まともにやっても殺しきれない。

魔法の付加がされると、かなり強力な兵器となる。

 

全てを聞かされたが、正直本当だと言う実感はしないが、鋼刃が言うのだからそうなのだろう。

 

「それよりも、戦うのは結構だが、ここが学園内ってのは忘れんなよ?まぁ、バレても良いない構わないがな」

 

「いや、それは勘弁したいから遠慮しておく」

 

そこで、工作をしてくれたと言う鋼刃に礼を言い、今日はそのまま自室の寮で眠る事にした。

 

 



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R.26p

「そこぉ!」

 

「なんのぉ!」

 

学校終わりの放課後。

今日は珍しく全員の予定が合った為、皆んなで模擬試合をしながら談笑を交わしていた。

 

今は、唯香と倫太郎の2人が上で相変わらずのドッグファイトをしているのを見ながら、(鋼刃)はセシリアに動きの指南をしていた。

ISは、基本的にISのサポートがあるが、生身で動ければそれを使った動きをISに応用する事は、あの2人に確認してもらったから分かっている。

 

「だいたい分かったか?」

 

「す、少しはですが、とても難しいですわ……」

 

「仕方ないな。武術において足運びは、奥義にまで昇華できる大事な業だからな」

 

俺の質問に、肩で息をしながら言うセシリアに対して、武術経験者の新太郎が、補足と共に飲み物を持って来た。

 

そこで、俺は再び上の対決に目を移すと、そこでは倫太郎が大体七、八ぐらいの挌闘業を組み合わせて、唯香のゲージをドンドンと削っていく。

 

「(やっぱ、挌闘能力は倫太郎が1つ飛び抜けてるな)」

 

そこで、いつもの男子以外の奴の事を見返してみる。まずは、唯香だが、唯香も強いには強いが、慣れてる奴らと比べれば、やはり見劣りしてしまう。

セシリアは、高い射撃精度を持っているが、咄嗟の出来事だったり距離を詰められた時の対応力の悪さが顕著である。

それから、鈴だが、1年程で代表候補生となり専用機のパイロットとして選ばれる事から才能は凄いのだろうが、衝撃砲だよりだったりする事が多く感じられる。

ここで、パッと三ヶ国の代表候補生を見てみたが、やはりISの機密の高さが逆に仇になっていると様に思うが、俺1人でどうにか出来る物では無いので、ここは、どうにかなって欲しいと願いつつ最後のシャルルを考える。

 

「(シャルルは………)」

 

シャルルは、かなり巧い。

第3世代の専用機持ちの3人と違って、第2世代と悪く言えば型落ちの機体を持っているが、その世代差をシャルル本人の技術の高さでカバーしている。

それにワンマンになりがちなセシリアや鈴、独特な唯香と違って誰とでも合わせて動ける対応力の高さもある。

 

「(だからこそ、怪しいんだが……)」

 

正直、これほど高い能力を持っているなら、第2世代なんて型落ち機を渡すとは思えないが、それには何か理由があるんだろう。

シャルルが、この学園に入学して来た理由と関わっていそうな。

 

そこまで、考えた所で誰かがこちらに向かって砲撃を放って来た。が、それは戦いを終えた倫太郎が、アサルトライフルで迎撃しながら降りて来た。

そこで、俺たちは砲撃された方を向くと、もう1人の転校生であるボーデヴィッヒが、黒いISを纏って不敵な笑みを浮かべながら立っていた。

 

「ほう?素人にしては、良い動きだな」

 

「挨拶が攻撃とは君は何処の戦争屋かな?」

 

「戦場に攻撃する時に挨拶するとでもいうのか?」

 

「短絡的な考えしか出来ないのかって、言ってるんだけど?」

 

「貴様………ッ!」

 

倫太郎に対して煽っているような言葉を吐くが、この男にはそんな物は効かない。

現に、倫太郎に煽り返されて苛立ちを隠せて無いような口調で喋るボーデヴィッヒを他所に、俺はアイコンタクトで倫太郎に指示を出す。

俺の指示に、一瞬驚いた顔をしたが、納得したのか直ぐに口角を上げて笑った。

 

「え?なに?怒ったの?この程度で?」

 

「…………っ!」

 

「自分は、選ばれた人間みたいな雰囲気出してるけど、それほどじゃないかな?」

 

「……………っ!」

 

「まぁ、お前が何しようとしたかなんて興味ないけど。ただ、一言言うなら、バカだねぇ?」

 

「貴様ぁ!!!」

 

俺の指示通り煽りに煽った倫太郎に対して、愉快そうに笑う唯香を除いて全員がドン引きする状況になったが、ボーデヴィッヒは、我慢の限界が来たのかアリーナの端から俺たちの所に襲いかかろうとして、ブースターを動かすが、ここでアナウンスが響く。

 

『そこ!何をしていますか?!所属を報告しなさい!』

 

「くっ、命拾いしたな貴様ら」

 

「そっちがね」

 

アリーナの管理をしていた先生の注意により、冷静さを取り戻したのかかなり苛立ちを隠せて居なかったが、この場から捨て台詞を吐きながら去っていく。

だが、倫太郎の言葉にまた反応しそうになっていたのは、流石にどうかと思う。

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ、眠い……」

 

練習終わりに、(倫太郎)は食後の運動と思い、学園内を散歩していたら、誰かに着けられているのに気がついた。

 

「俺に、何かようかな?」

 

「ふん。やはり気付いていたか」

 

俺の問いに答えたのは、後ろの木から出て来たボーデヴィッヒだった。

 

彼女は、心底嫌そうに俺のことを睨みながら、懐からナイフを取り出すとそのまま斬りかかって来た。

それに驚きつつも咄嗟の判断で取り敢えず、交わすことに成功する。

 

「っぶねー。物騒だなぁ」

 

「ちっ、貴様避けるな」

 

「いや、避けるでしょ」

 

舌打ちと暴言をしながら、ナイフの攻撃を続けるボーデヴィッヒに呆れながら、攻撃するタイミングでボーデヴィッヒを弾き少し距離を置く。

 

「何でこんな事するのさ?ドイツとしては大事なんじゃない?」

 

「貴様だけは気に食わん。それに、1人死んだ所で後5人いる」

 

成る程ね。確かに、君たちからしたらその程度の価値なんだろうけど、俺たちは違うんだよ。

 

「ちょっと、痛い目にあってもらうぜ」

 

「ぬかせ、一般人風情が!」

 

ガゴッ!

 

 

 

 

「悪いっすね。こんな事を頼んじゃって」

 

「いや、構わない。コイツの事は、私にも責任があるからな」

 

「そうっすか。なら、深くは追求しないで起きます」

 

「ああ、そうしてくれると助かる」

 

気絶しているボーデヴィッヒをどうしようかと思ったが、偶々通りがかった織斑先生に事の経緯を説明してから、ボーデヴィッヒの事を頼む。

何か、訳ありげだったが、本人が言う気が無かったから別に聞くまでもないだろう。

 

「しっかし、暗くなりすぎたなぁ」

 

そんな事を呟きながら、1人夜道を歩きながら俺は寮へと戻っていった。

 



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R.27p

すいません!遅れました!
学科終わりに書こうとして、そのまま熟睡してしまい二日も開けました!
こちらで、ご勘弁してください!



「なぜです!?なぜ、このような所で教師などをしているのですか?!」

 

少女の怒号が、人気のない庭で響く。

叫ぶ少女——ラウラ・ボーデヴィッヒは、かつての己の教官としてその圧倒的な手腕を発揮した女性——世界最強(ブリュンヒルデ)の織斑千冬に、自らの祖国ドイツでまた教官として、活躍して欲しいが為に興味のない男のパイロットの勧誘にわざわざこのIS学園まで来たのだった。

 

「はぁ、何度も言っているが、私はドイツに対しての恩返しのつもりでやっただけだ。ドイツの下に着く為にやっていたのではない」

 

「ならば、こんどは私たちの為に祖国で師事してください!貴女のような人が我が国には必要なのです!」

 

頭を抱えてため息を吐きながら、ボーデヴィッヒを諭そうとする千冬だったが、それでもボーデヴィッヒは止まらずに、千冬の勧誘を続ける。

 

「あのような現場を知らない素人ばかりでは無く、我々のような者達にこそ、貴女の師事が必要なのです!」

 

言葉早くに喋るボーデヴィッヒに、千冬は呆れを感じつつも自らが外面だけどの指導ばかりをしていた事に反省しつつ、今後に対して嗜めるように言葉を出そうとして、固まった。

 

「それに、男だからとチヤホヤされ、ダラけている者たちなど捨てておけば良いのです!」

 

「………おい、今何と言った?」

 

「ひっ!??」

 

彼女は、興奮のあまりに千冬の前では絶対に言ってはいけない言葉を使ってしまった。

今のご時世、男と言うだけで見下される状態だ。それは、ISを動かせる一夏たちとて例外では無く、特に関わりのない2、3年生には未だに彼らをどうやって陥れようかと考える者は少なくない。

そして、千冬にとって、家族である一夏と秋十の2人は大切な存在だ。たとえ、2人の関係を理解出来ていなくとも、彼女にとってはかけがえのない存在なのだ。

それを、ボーデヴィッヒは、貶してしまったのだ。

 

「お前が、何を目的としてここに来たのか薄々感づいていたが、それだけで動けるほど、私もお人好しではない」

 

淡々と喋る千冬の口調は静かだが、そこには明確な怒りを感じられた。それは、正面で聞いているボーデヴィッヒも同じで、身体を震わせては、それを手で必死に抑えようとしている。

それに、千冬は気づいてはいるが、それでも状態を崩さずに続ける。

 

「それに、我々のようなとは、まるで自分は選ばれたような口ぶりだな?」

 

「そ、それは……」

 

「思い上がるなよ小娘」

 

「ッ!!」

 

千冬の言葉に応えようとしたが、有無を言わさせない口調で返されまた固まってしまう。

 

「選ばれた人間など居やしない。それは、私も含めてだ。それを、たかが軍の部隊長に就任していただけで、優れた人間だと思うとは、やはりあの時、もっと深くまでやるべきだったな」

 

「な、ならば、今からでも」

 

「黒兎の中で、そこまでやるべきなのはお前だけだ。ボーデヴィッヒ」

 

千冬から告げられた言葉にボーデヴィッヒは、思わず歯をくいしばってしまう。

だが、彼女はその意味をしっかりと理解していない。

 

「部隊長として選ばれたお前は、全てにおいて他の者より優れていたのではない。ただ、他よりも強かった。それだけだ」

 

感情のままに、言い返そうとしたボーデヴィッヒに、千冬は無表情のままに告げた。

そして、最後には耐えきれなくなったボーデヴィッヒが逃げるように、この場から去って行ってしまった。

 

「はぁ、ままならないのは知ってるが、ここまでとはな」

 

1人残された千冬の言葉に、答えるのは通り過ぎた風ばかりであった。

 

 

 

 

「あら、鈴さん、奇遇ですわね」

 

「アンタもねセシリア。それに珍しいじゃない」

 

(鈴音)が、とある事の為に練習しようと思い、アリーナに来ていたら、先客のセシリアと出くわした。

セシリアが、練習するのは珍しくないが、それは何時も決まって誰かとだ。けど、今日はセシリア1人だったのだ。

まぁ、多分十中八九アレが関係しているんだろう。

 

「アンタもアレの為?」

 

「はい。もしかして、鈴さんも?」

 

「まぁね。やるからには全力でやりたいもの」

 

私が言うアレとは、今度開かれる学年別トーナメントの事である。

クラス対抗戦では、あのバカとやる事になったが、これならば一夏や強いらしい倫太郎、それにセシリアに勝っている鋼刃とも戦えるかもしれない。

戦闘狂では無いけど、自分の限界を知りたい気持ちは、候補生になったあの日から無くならないのだ。

 

「それじゃあ、私と乱取りしない?アンタとしても、十分だと思うわ」

 

「そうですわね。分かりましたわ」

 

セシリアの了承を聞いて、早速始めようとして、何処からか攻撃を咄嗟に回避と衝撃砲を展開する。

 

「セシリア!」

 

「あそこですわ」

 

セシリアがライフルのスコープを覗きながら指し示す場所を見やると、そこには此間も突っかかってきたボーデヴィッヒだった。

 

「ほう?他国の候補生もやるじゃないか」

 

「なに?また、私たちにちょっかい出してきて」

 

「ふん。あんな種馬に尻尾を振っている雌豚を躾しに来ただけだ」

 

好き勝手に言ってくれるボーデヴィッヒだけど、正直私にはそんな事は意味がない。

今までバカにされる事なんて沢山あった。でも、アイツに比べれば私に対してなんてちっぽけなモノだ。

けど、なんだか、アイツの態度が我慢ならなかった。

 

「セシリア、悪いんだけど………」

 

「付き合いますわよ。鈴さん」

 

「セシリア………アンタ。分かった。後ろは任せたわよ!」

 

「承りましたわ!」

 

アイツの事を知らないからと言って、アイツに対しての負の言葉を捨て置くほど、伊達に悪友になった覚えは無いわ!だから!

 

「面白い。軽く捻ってやる!」

 

「上等!!!」

 

アイツの顔に一発入れなきゃ気が済まない!

 



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R.28p

今回初めて、セシリアや鈴の視点で書いてみましたが、かなり難しかったです。
変なところがあるかもしれませんが、批評のほどよろしくお願いします。



「そんで?手痛く反撃にあったわけか?」

 

「う、うるさいわね!それに、私は別にやられたなんて!」

 

「はいはい。分かったから落ち着けって」

 

ベッドで横になりながら、鋼刃に対して文句を言う鈴に()は、呆れながらも落ち着かせる。

 

俺たちは今、セシリアと鈴が、ボーデヴィッヒと戦って怪我したと聞いて見舞いの為に来たのだが、2人とも案外元気そうだった。

 

「それよりも、なんであんな無謀な事をしたんだよ。お前らはバカじゃねぇだろ」

 

「まぁね。ただ、アイツの言葉とか態度が気に食わなかったのよ」

 

「わたくしも、あの方に言われたままなのは、納得が行きませんでしたもの」

 

俺たちが呆れた顔をすると、2人は少し顔を俯いてそう返してきた。

それに、なにかを察した俺たちは軽く励まして医務室から出て行った。

 

 

 

 

「ホンット、情け無いわね……」

 

「鈴さん………」

 

(鈴音)たちの思いを知ってか知らずか、丁度いい時にアイツらが、出て行ったのを見てから私は自分の不甲斐なさを痛感していた。

 

本能的にボーデヴィッヒが、強いのは分かっていた。けど、あの場で、アイツらの友達の私には逃げるだとか流すなんて、選択肢は無かった。

だって、アイツらは、逃げたりなんてしなかったのだから。

 

 

 

 

「はあぁぁ!!」

 

「ふん!効くか!」

 

牙月を振るうが、ボーデヴィッヒには軽く受け止められる。

だが、そんなのは私だって分かってるだから、展開したままの衝撃砲の標準をボーデヴィッヒに合わせる。

 

「なら、これならどうかしら!?」

 

「くっ!?」

 

私も衝撃に巻き込まれるが、多少のダメージは覚悟の上だ。

そこで、私はボーデヴィッヒから距離を置いて後ろのセシリアに指示を出す。

 

「セシリア!」

 

「承知しましたわ!」

 

サイドステップで、一気にセシリアの射線から外れる。

 

「セシリア、私がまた出るからティアーズで、援護頼むわ!」

 

「勿論ですわ!私も、今までのつもりはありませんもの!」

 

ティアーズを展開したセシリアが、ボーデヴィッヒに向けて攻撃をし始めたのを見て、私も牙月を連結して両刃剣にしてから、ブーストを一気に掛けて、ボーデヴィッヒ目掛けて斬りかかる。

 

「これでぇええ!!」

 

「……この程度とは、舐められたものだな」

 

「うそっ!?」

 

私が振るった牙月は、軽くボーデヴィッヒに片手で受け止められていた。けど、この距離はマズイと思って、さっきと同じように衝撃砲と、ブーストで置こうとしたが、甲龍が動かない。

 

「AICだ。覚えておけ」

 

「しまっ!」

 

回避が無理と気づいた私だったけど、それよりも先にボーデヴィッヒの肩のレールカノンの銃口が私に向けられる。

 

ISからの危険シグナルを受けるが、どうしようもなく私にその一撃が直撃する。

 

 

 

「鈴さん!?」

 

「呆気ないな。やはり、この程度だな。次はお前だ英国の」

 

鈴さんが、わたくし(セシリア)の眼の前で吹き飛ばされるのを見て、動揺するわたくしに軽くボーデヴィッヒさんの言葉に、私は落ち着いて、ティアーズを動かして、回避を取る。

 

「ほう?報告では、BT兵器との同時操作が出来ないとあったが、流石に克服しているか」

 

「わたくしだって、いつまでも囚われては居ませんわ!」

 

まだ、わたくしには出来ない事が多いですがそれでも、何れはあの方たちを追い越していく。ですから、このような所で立ち止まっていては、いけない。

 

「だが、距離を取った所でこのシュヴァルツェア・レーゲンには、無意味だ!」

 

「ワイヤーブレード?!」

 

ボーデヴィッヒさんの両腕から飛び出たのは、ブレードをワイヤーで繋げたワイヤーブレードが飛び出る。

それを、ティアーズとの射撃で撃ち落とす。ですが、その時の隙を突かれてボーデヴィッヒさんのレールカノンの砲撃を受けてしまう。

 

「きゃあ!!!」

 

「ふ、精度は良いみたいだが、それだけだな。これで、トドメだ」

 

「ここまで、ですか……」

 

体勢を崩して、地面に倒れるわたくしをボーデヴィッヒさんは、ワイヤーブレードで拘束してから、レールカノンの標準を合わせる。

流石に、わたくし1人ではどうしようも有りません。ですが、ここで諦めてしまっては今までと同じ。

ですから、わたくしがここでやるべき事は1つ。

 

「いいえ!まだですわ!」

 

「なにっ!?往生際が悪いぞ!」

 

まだ動かせるブースターを動かして、ボーデヴィッヒさんの機体に体当たりをする。

ですが、それよりも早くに先程の鈴さんのように動きを止められてしまう。

 

「ふん。この私を驚かせたのは、褒めてやる」

 

「それは……光栄ですわね………なら」

 

たしかに、わたくし1人ではボーデヴィッヒさんを倒す事は出来ない。わたくし1人では!

 

「充分に稼ぎましたわよ!鈴さん!」

 

「なに!?」

 

「「……フルバーストッ!」」

 

直後、ティアーズの全エネルギーを注いだ攻撃と鈴さん最大出力の衝撃砲が、わたくしとボーデヴィッヒさんを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

「結局、削り切れなくてエネルギー切れで私たちの負け。ごめんね。セシリアに、あんな事させといて、倒せなかった」

 

「いいえ、構いませんわ。あの時は、アレが正解だとわたくしは、思ったのですもの」

 

医務室で、鈴さんと2人であの戦いを振り返る。

わたくしたちの決死の攻撃も、ボーデヴィッヒさんを倒し切るには足りなかった。

鈴さんからの秘匿通信で、時間を稼いでと頼まれた時は、驚きはしましたが、結果としてわたくしは良く動けていました。

 

「ですから、鈴さんが、気に病むことでは有りませんわ。問題があるとするならば、わたくし達が未熟だと言う事ですわ」

 

「……そうね。私たちは、まだ上がれるわ」

 

「そうですわ!」

 

2人でまた強くなると誓い合い、今は身体の安静に努めた。

 

 

その甲斐あってか、わたくし達の体調は三日と掛からずに全開した。

 

ただ、倫太郎さんが、ボーデヴィッヒさんを打ちのめしたという話を聞いたのは、その時だった

 



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R.29p

「やあ、また、会ったね」

 

「貴様は………っ!」

 

倫太郎達の見舞いの後、俺はやんちゃした原因のボーデヴィッヒを探して、裏庭に隠れているのを見つけた。

 

「何をしに来た……!」

 

「そうだね。今の俺は、怒ってるんだ」

 

正直に言えば、この世界で誰がどんな事をしようと俺は、気にしない。けど、俺にだって返すべき恩や仇はある。

 

「鈴達の事を随分と舐めてかかったようだけど、結局は君の辛勝。あれほど、デカイ事を言っておいて、無様だね」

 

「なんだと……っ!?」

 

彼女は、上手く隠しているつもりだろうが、両手足には鈴達が与えたダメージが残っており、それほどボーデヴィッヒが鈴達を舐めていたのかが分かる。

良くは思ってないとは言え、彼女は軍人だ。そんな人が、候補生とは言えそこらの一般人に遅れを取るはずがない。

 

「人が黙っていれば、良くもつらつらと……っ!」

 

「本当のことを言って何が悪いのさ」

 

「やはり、貴様だけは許してはおけん!」

 

そういうと、ボーデヴィッヒはあの時と同じようにナイフを取り出して、こちらに振りかぶる。

俺はそれに臆さず、ナイフを握っている手首を掴みそのままの勢いを利用して、後ろに投げ飛ばす。

 

「くっ!一般人にしては、なかなか出来るじゃないか」

 

「君らは、勘違いしてるみたいだけど、鍛えた男にただの女が生身で勝てる道理はないよ」

 

「ふん!なら、これで!」

 

俺の煽りに答えるように、ISを部分展開して、こちらに標準を定めるボーデヴィッヒ。

明らかに、禁止行為な上に殺人行為だ。

けど、彼女にとっては自分にとっての使命以外は、多少の犠牲やコラテラルとしか考えていない。

さらに言えば、彼女はまともな思考を取れていない。だって、この行為が彼女の使命達成から遠ざける物だという事を知らないのだから。

 

「吠えろ」

 

「終わりだぁ!!」

 

レールカノンによる砲撃を、俺も部分展開した烈牙のバンカーを使って相殺して、爆牙のバンカーで距離を詰める。

 

「そんな事で!」

 

「それも知ってるよ」

 

どんな名前だったから知らないけど、動きを止めれるヤツだったのは、允達と別れた後に調べたから把握してる。

ボーデヴィッヒが手をかざすその一瞬の隙を、烈牙の反動を利用して横にそれてから、横腹に手を合わせる。

 

「吹き飛べ」

 

「っガハッ!!」

 

弾丸は装填していないから、直接的なダメージはないけど、バンカーの衝撃はまともに受ければ、受けきれない。

衝撃により、吹き飛び後方の壁に激突する。

 

「俺は、まだ自己防衛に入るかもしれないけど、先にけしかけた君はどうなるだろうね」

 

「そんな…事……関係ない!」

 

明らかに入った筈だが、ボーデヴィッヒは、それを物ともせずにこちらに攻撃を加える。

だが、俺にしてみればどれも簡単に避けれる程のスピードで、交わしつつ、一本のワイヤーを掴み思い切り引っ張る。

 

「そっちが、その気なら俺も容赦は出来ない…よ!」

 

「二度も同じ手を!」

 

「二度も同じな訳無いだろ」

 

こちらに飛んで来たボーデヴィッヒは、俺がさっき同じように攻撃してくると思ったようだが、その前に容赦出来ないと言った時点で俺は、バンカーに杭を装填している。

俺が突き立てる前に気付いて、その細い腕でガードしようとしたみたいだけど、もろともに放つ。

 

バギンッ!

 

「ぐっ」

 

「パイルバンカーは、ガード崩しには持って来いなんだよ。それなのに、たかが腕で一本で防げる訳ないでしょ」

 

「き、貴様………」

 

先程と同じように、俺を睨んでくるがさっきと同じような殺気も気迫も感じない。

そして、ガードした代償に骨にダメージが入った右手をダランと下げながらも、ボーデヴィッヒは俺に攻撃を与えようとしてくる。

 

「そんな攻撃もう俺には聞かない!」

 

「掛かったな!」

 

俺がワイヤーを弾くと、それを待っていたとばかりに叫ぶボーデヴィッヒに、呆れながら俺は爆牙を暴発させる。

 

「なに?!」

 

「集中が途切れてるよ」

 

「しまっ!」

 

「はあぁ!!」

 

動きは止まることは出来ても、全てじゃない。

中の機構を1つでも動かされれば、意識を逸らす事なんて簡単だ。

集中が切れた事で、拘束が取れた俺は残った爆牙で突進して、ガラ空きの腹に烈牙を叩き込む。

 

「かはっ!?」

 

「良く頭を冷やすと良いよ」

 

そこで、気絶したボーデヴィッヒを騒ぎを聞いて、こちらに来た先生方に任せて、俺はその場から去る。

 

 

 

 

「やり過ぎだ」

 

「いや、それは、分かってるんだけど………」

 

「言い訳など、聞かん」

 

「はい……」

 

倫太郎を説教する鋼刃という珍しい光景を見ながら、()は、トーナメントをどうするか迷っていた。

 

「タッグ戦かー、相方が居ないんだよなー」

 

「唯香さんは、鋼刃と。一夏は、興味がない。となると、俺らで組むしかないんじゃね?出るなら」

 

「そうなんだろうけどさぁ……」

 

本来はソロでやるトーナメントが、今年からタッグマッチになったらしい。

まぁ、組む相手は居るには居るが、出て良いものかが悩んでいた。

 

「ここに居るメンツ以外にも、相手は居るが」

 

そう、シャルルが居るのだが、警戒対象だから深く関わるのは遠ざけている。そんな状態だから、誘うに誘いづらい。

 

「まぁ、今日は解散しようぜ。参加は別に強制じゃないんだから」

 

「そうだな。それじゃあな。鋼刃」

 

「ああ、またな」

 

まだ、続く鋼刃の説教に引きながらも、俺達は自分達の部屋へと戻っていった。

 

そして、その夜とある男に時間が起きた。

 

「きゃあぁぁぁあ!!!!!」

 



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R.30p

「じゃあな」

 

「おう」

 

允と別れた(新太郎)は、疲れた身体を休めようと足早に自室へと向かう。

 

「はぁ、今日も大変だったわ……」

 

「へ?し、新太郎?」

 

「あ?」

 

俺が何気なく言った言葉に、聴き慣れた声が困惑したように返したから、思わず下を向いていた顔を上げる。

そこには、風呂上りなのかバスタオル一枚でこちらを見ている明らかに女性のシャルルの姿だった。

 

「き、きゃあぁぁぁあ!!!!!」

 

「まじかよ」

 

今日はもしかしたら、厄日かもしれない。

 

 

 

「ご、ごめん。いきなり、叫んじゃって……」

 

「いや、いいよ。見てしまった俺も悪い訳だから」

 

「本当にごめん……」

 

取り敢えず、お互いに落ち着いた訳だが、正直とても気まずい。

もともと、シャルルは男として編入して来たから、色んな事情があるのは分かっていたけど、それを間近で見てしまったのでは、受ける衝撃が違う。

 

「き、聞かないの?」

 

「何がだ?」

 

「い、いや、何で僕がこんな事をしたのか………」

 

今は、お互いに顔を合わせづらいが、お互いのベッドに腰掛けながら何もするでもなく向かい合ったままで、特に話しはしなかった。

そんな中に、耐えかねたのかシャルルが、そんな事を聞いて来た。

 

正直、とても気になる。けど、それを聞いて俺1人でどうにか出来る物なのかとそこで、躊躇してしまう。

 

「そ、それは、まぁ、気になるけど」

 

「まぁ、そうだよね………」

 

多分、シャルルはこのままいけば事の顛末を教えてくれるだろう。けど、それは、彼女にとっては辛い事だろう。

誰が好き好んで男装して、潜入するなんて危ない橋を渡る筈がない。

なら、俺はどうするべきだ?俺が出来る最善を考える。

 

そして、出た答えがこれだ。

 

「シャルルは、どうしたい」

 

「え?」

 

「お前が、どんな経緯でここに来たのかは、俺には全く分からない。けど、望んで来たとは思えない。だから、俺に聞かしてくれ。お前は、どうしたい?」

 

俺に出来る精一杯は、語る理由を作ること。

彼女が、自分から語るのではなく俺が、きっかけとしてなる事。こんなちっちゃな事しか今の俺には、考えつかなかった。

 

俺の言葉を聞いたシャルルは、何かの糸が切れたのかポロポロと泣き出した。

それに、慌ててどうしようかと思った俺は、思わずシャルルを抱き寄せる。

 

「落ち着け。今は泣いて良い。泣いて良いんだ」

 

「あ、あ、あうあぁぁあ!!!!!!」

 

泣き崩れるシャルルが、落ち着けるように背中をさすりながら俺は、もうどうにでもなれと諦めるのだった。

 

 

 

 

「僕は、浮気相手の子供なんだ」

 

泣き止んだシャルルから告げられたのは、その言葉だった。

もう、どんな事があっても驚かないと思っていた所にそんな事を言われて、思わず固まってしまう。

 

「僕のお父さんは、デュノア社の社長なんだ」

 

「……それを知ってか?」

 

「ううん。僕のお母さんとお父さんは、もともと恋人同士だったんだけど、今の本妻と結婚する事になったんだよ」

 

「政略結婚か」

 

「うん。そういう事」

 

だとするならば、何故と思ったが、多分シャルルの母親に何かがあったのだろう。じゃなければ、大手の社長の妾の子であるシャルルが表舞台に出てくる筈がない。

 

「お母さんと僕は、フランスでも田舎の方に住んでたんだけど、困った事は無かったんだ。周りの人たちは優しかったし」

 

「けど、数年前にお母さんが亡くなったんだ」

 

母親が亡くなった。そこで、合点がいった。

シャルルの母親と父親は、もともとは恋人で今のデュノア夫人は政略結婚の末に出来た仲。

だとすれば、社長はシャルルの事は大切に考えているだろう。けど、そうなれば、出てくるのは本妻だ。

 

「新太郎も分かってるだろうけど、僕はお父さんのところに呼ばれたんだけど、そこで本妻の人に「この泥棒猫の娘が!」って言われて、平手打ちされたんだ」

 

そう語るシャルルは、とても自傷的で見ていられなかった。

辛いならば、辛いと言えば良いと言いそうになるが、彼女はそれが出来る環境じゃ無かったのだろう。

同情しようと思えば出来るような環境で、従うしかない日常。俺ならば、いや、()()()を持った俺が言える事じゃない。

 

「それでね。新太郎は、言ったよね?僕はどうしたいのかって?」

 

「……ああ、言ったな」

 

「僕は、まだ、ここに居たいな……。折角友達って言ってくれる人たちにも会ったし、ここ数年で初めて心から笑えた気がしたんだ。だから……」

 

消え入りそうな声でそう語る俺は、自分の不甲斐なさを感じながらも、こんな時に一番頼れるアイツに電話をかける。

 

『なんだ?新太郎』

 

「……鋼刃か?頼みたい事があるんだけど」

 

鋼刃は、何考えてるか分からないことは多いけど、それ以上に俺たちよりも世界を知っている。

だから、俺には出来ないシャルルが、枷から解かれる方法を知ってるかもしれないし、出来るかもしれない。

 

『言ってみろよ。取り敢えず、聞いてやる』

 

「シャルルを………」

 

そこで、言いかけて俺はシャルルを再び見やる。

シャルルは、俺が何をしているのか分かってないのか、困惑した表情を向けている。

 

「シャルルを助けるには、どうしたら良い。俺は何をすれば良い」

 

俺の言葉に、鋼刃が電話越しに笑ったのが聞こえた。それを、黙って待っていると鋼刃が、自信に満ちた声で言ってきた。

 

『俺に乗せられろ。それが、条件だ』

 

「上等だ。やり遂げてやる」

 

そこで、電話を切って、三度シャルルに向けて、気になっていた事を聞く。

 

「シャルルって、本当の名前か?」

 

「………ううん。僕、私の名前は、シャルロット・デュノア。お母さんがつけてくれた。私の名前」

 

「そうか。その名前、絶対に取り戻してみせるからな。シャル」

 

「っ!……うん、うん!!」

 

そう涙目ながらに笑う彼女は、さっきまでの殺伐した雰囲気では無く、普通の女の子だった。

 



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第四章 それぞれの強さ
R.31p


「はい。承認しました。頑張って下さい」

 

「は、はい!」

 

「うす」

 

シャルと話し合った次の日の放課後。

一年の大半の女子達からペアを組まないかと誘われていたシャルに、(新太郎)は、一緒に組まないかと持ちかけた。

それに対して、シャルも特に拒む訳でもなく了承してくれた。

 

そして、今は参加申請書を出した後、どう言う感じに戦っていくかを相談しようと屋上に来ていた。

 

「まぁ、こうなるよな……」

 

「ま、知ってるからな。色々と俺らは」

 

「あ、あはは……」

 

力なく笑うシャルに俺は苦笑いをしながら、何時ものように集まった允達と談笑しながら、作戦を考える。

 

「一応言っとくが、実力差などはある程度考慮されてるらしいぞ」

 

「あー、候補生とか専用気持ちは、初戦で当たりやすいんだっけ?」

 

「データ取りよりも、アピール目的が強いからな。このトーナメントは」

 

となると、もしかしたら俺は、訓練機だげと専用気持ちと当たる事になる訳か。

それは、面倒だ。

 

「別に慣れただろ?なら、そこまで心配はしなくて良いんじゃないか?」

 

「そうだね。初戦で、鋼刃たちとかに当たったらご愁傷様だけど、それは仕方がないよ」

 

嫌味のように言われるが、実際そうなのだ。

普通にセンスは、一番だと思ってる唯香さんと身近な最強と言えば鋼刃なのだ。

そんな2人がペアを組んでいるのだから、勝てる気が正直ない。

 

「私たちもホントは出たかったんだけどね」

 

「ISのダメージが大きすぎて、無理なのですわ」

 

「そうか……やっぱり、無理だったか」

 

「ま、アンタ達の会議の相手にはなってあげるわ。ジッとしてるのも癪だしね」

 

「わたくしも、勿論協力しますわ」

 

そう心強い言葉を聞いて、幾分か肩の荷が降りた。

ある程度、話も落ち着いた所で俺は、鋼刃に昨晩の事をしっかりと確認する。

幸い、ここにいるメンバーは、シャルの事情知っている。聞いても問題はない筈だ。

 

「鋼刃、昨日事なんだが………」

 

「ん?なんだ、心配してんのか?任せろ」

 

「あ、あの、ありがとうございます!」

 

「良いって事よ。こう言うのも偶には良いからな」

 

ケラケラと笑う鋼刃に、シャルはどうしたら良いのか分かってなかったが、取り敢えず笑ってるあたり、意外とこの空気にも馴染めてるもんだな。

 

「それよりも、シャル?で良いの?」

 

「うん。お母さんとかもそう呼んでくれたから」

 

そして、さっきからシャルと呼んでいるが、これは昨日シャルロットじゃ怪しまれるから、シャルと呼んで欲しいと言われた。

たしかにこれなら、シャルルでもシャルロットでも、怪しまれない呼び方だ。

 

「あー、そう言えば、一夏は当日どうするの?」

 

「何がだ?」

 

「いや、流石に参加しないと煩いだろ?」

 

「そうだな、気が向いたら行くさ」

 

「いや、それ、行かない奴のセリフじゃん」

 

さっきから黄昏てた一夏に、允が話しかけるがその返事は何処かテキトーさに溢れていた。

いや、たしかに何時もの一夏も割とテキトーだけど、今日の一夏は何かどうでも良くなったように感じる。

 

「そうよ!私が出れないんだから、変わりにやるって言う気概は無いのかしら?!」

 

「無い」

 

「言い切ったぞ。一夏のやつ」

 

むかーっ!と一夏にちょっかいを出す鈴とそれを、テキトーにあしらう一夏の光景に笑いながら、放課後は解散となった。

 

 

 

 

 

 

「俺は何者なんだ?」

 

鋼刃達にそう聞いた(一夏)だったが、アイツらに任せるでもなく俺自身でも、調べられる事は調べていた。

けど、それでは何も見つからなかった。

なぜ、俺にはあのチカラがあるのか。なんで、俺には戦う覚悟があるのか。そして、死に対するあの異常なまでの嫌悪。

 

死にたいなんて、必ずしも感じる訳でないが、それでも自分でも感じるほどに俺は異様なまでに、生に執着している。

 

「俺は、どうすれば……」

 

「お前が何者であれ、俺たちの友達には変わらないだろ?」

 

「允……」

 

思わず口に出した言葉に、偶々出会った允が返してきた。

 

「お前がなんでそうまでして、疑問に思ってるのかは知らないが、この学園で過ごした日々は偽物か?」

 

「………違う」

 

「なら、今はそれで良いじゃねぇか。俺たちが、何者かなんて俺たちだって分からない。なら、今を生きてくしかないだろ?」

 

「そう、か?」

 

「ああ、俺はそう思ってる」

 

断言するように告げられた允の言葉が、心の中に沈んでいく。

俺は、深く考え過ぎていたのかもしれない。俺の根本が、允のその言葉で変わる訳じゃない。

けど、今の俺が進めるには、大きな言葉だった。

 

「そうだな。俺もそう思ってみる」

 

「ああ、その方がいい。何かを考えて、周りが見えなくなるよりは、ずっと良い」

 

「そうだな」

 

ここに来て、俺を認めてくれる人は沢山いた。

バカにしながらも、そこには確かな信頼があった。

それを感じた俺は、少し泣き崩れそうになったが、そんな姿は見せられないと思って、何とか耐えて允と別れる。

 

そして、自室のベッドの上で決壊した。

 

 

「俺は俺なんだ」

 

そう心に響かせながら、俺は覚悟を確かめた。

 




流石に終わりが雑すぎる……

次回からは、トーナメントです。個人的に盛り上がりどころなので頑張って行きたいです。


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R.32p

「そろそろだな」

 

「そうだね」

 

色々とあった日常が終わって、とうとう学年別タッグトーナメントの当日となった。

(新太郎)は一回戦目の対戦相手が当日に発表されるので、ペアであるシャルと共に相手の確認をしに歩いていく。

一番当たりたくないのは、鋼刃たちのペアだが、当たってしまったら全力でやるまでだ。

 

「新太郎は、今日大丈夫?」

 

「問題ねぇよ。昨日も普通に眠れたから、疲れは残ってねぇよ」

 

「良かった。対戦相手って、誰だろうね?」

 

「さぁな。ただ、鋼刃たちだったら、正直勝てる気がしない」

 

「あ、あはは。僕も、あのコンビネーションを崩せる気がしないよ………」

 

あの2人は、それぞれが上手い上に、許婚なだけあって息もピッタリと多分今回のトーナメントでも、トップクラスの実力を持っているんだと思う。

まぁ、単体の実力で言えば、ボーデヴィッヒとかが入ってくるんだけど、タッグ戦はそれだけでは勝てない。

 

「まぁ、でも、俺たちに出来る事をやるだけだ」

 

「うん。そうだね。僕らは全力でやるだけだよ」

 

そう強く2人でうなずきながら、対戦表の前まで到着する。

対戦表の前には、確認しに来た人たちが沢山居たが、幸い張り出されているのも多かったので、そこまで困らずに相手が誰なのかを確認する事が出来た。

 

「俺たちの相手はっと………」

 

「あ、あった。でも、これって………」

 

「ん?なるほどな」

 

シャルル・デュノア&夜束叉新太郎

VS

ラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒

 

秋十が自分から箒を誘う事は無いと思ったが、箒も秋十を誘っていなかったのには驚いた。

けど、それよりも大事なのは箒ではなくその相方。

 

「初戦から、あのボーデヴィッヒか……」

 

「強いよ。彼女は」

 

「分かってる。まぁ、やるだけやるさ。俺にはそれしか出来ないからな」

 

「うん。分かった。僕も、出来る限り協力するよ」

 

鋼刃たちじゃなかったから、良かったかと思ったが、結局は似たり寄ったりだ。

ただ、こっちにはあっちに無いコンビネーションがあるのを活かして、やるしか無い。

 

「本番頑張ろうぜ」

 

「うん」

 

そう拳を合わせて俺たちは、そのまま観客席へと脚を向かわせた。

 

 

 

「ドイツにアメリカ、イギリスの防衛大臣じゃんアレ」

 

「それ以外にも、各国のIS関係のトップ連中ばかりだな」

 

「……そんなに来ていたのか」

 

「俺は、なんでそんな事が分かるのか驚きだわ……」

 

世界から注目されている学園のイベントの中でも、各国の要人たちが集まるトーナメントだってのは、もともと聞かされていたが、予想外の人たちが集まっていたのに()は驚きつつも、それよりも鋼刃と倫太郎が何でそこまで詳しく知っているのかの方が、疑問に感じた。

 

「顔や名前は、調べれば簡単に判りますわよ?ただ、あそこまではわたくしも詳しくはありませんが……」

 

「ま、そんなのは良いじゃ無い。それよりも、新太郎たちの初戦の相手はあのボーデヴィッヒなのよ?」

 

「まぁ、一応箒も居るが問題ないか」

 

近くに座る鈴は、新太郎とシャルに自分たちの仇を取って貰おうと盛り上がっている。

それに、一夏が言葉を繋げるが、意味はないなと捨てさる。

分かってたが、一夏って意外と口が悪いのな。

 

「まぁ、あのままのボーデヴィッヒなら、問題無いと思うよ。このトーナメントは、タッグマッチだからね」

 

色々とボーデヴィッヒと、因縁があるのか鋭い目つきそう語る倫太郎には、言葉には出来ないが、不気味なオーラを纏っていた。

 

「始まれば分かるだろ。なるようにしかならんさ」

 

そう言う鋼刃の言葉と共に、新太郎たちがフィールドに出てきた。

 

 

 

 

 

「ふん」

 

明らかに協力出来なさそうな雰囲気のボーデヴィッヒ達を尻目に、俺はシャルと通信しながら開始の作戦を話す。

 

『俺が、何とか耐えるから先に箒の方を頼む』

 

『任せて。でも、危なくなったら援護するよ』

 

『すまん。そっちも、余り無理するなよ』

 

『うん。分かってるよ』

 

正直、あの2人が協力するのはあり得ないから、早急に数的有利を作る。そう考えた俺たちは、実力のあるシャルが箒を落とし、その後に2人で協力してボーデヴィッヒを倒すと言ったシンプルなものだ。

けど、実際こう言う相手にはこれが一番効く。

 

「「行くぞ!」」

 

ボーデヴィッヒとのセリフが被ったが、それが試合開始の合図となった。

 

 

 

「素人風情が、私の相手とは舐められたものだな!」

 

「舐めてねぇよ!最良の判断だぜ!」

 

こちらをバカにしながら射撃してくるボーデヴィッヒの攻撃を、今日までに覚えた回避運動で、避ける。

攻撃だとか防御だとか戦略だとか。そんな難しい事は、正直やってこなかった。ただ、ひたすらに行ったのは回避1つ。

 

けど、1つのこと鍛えれば武器となる。

 

「よく避けたな。だが、これならどうだ!?」

 

「上等だぁ!!」

 

今度は、ワイヤーブレードが飛んでくるが、それをさっきの要領で避ける。だが、ワイヤーが生きているように曲がり、また俺を狙って飛ぶ。

それにも、落ち着いてさけ最初から出していたハンドガンを使って、射撃で撃ち落とす。

 

「ちょこまかと、だが、そんなことでは!」

 

「おいおい、俺1人に構ってて良いのか?」

 

「僕も居るよ!」

 

「なに?!」

 

俺ばかりに構っていたボーデヴィッヒの隙をついて、箒を落としたシャルが横からの射撃を撃ち込み、ボーデヴィッヒは、体勢を崩してしまう。

 

「サンキュー。助かったぜ」

 

「新太郎もよく耐えたね。それより、畳み掛けるよ!」

 

「ああ!」

 

2人で合流して、今度はボーデヴィッヒの事を攻める。

ボーデヴィッヒが如何に強くても、シャルの状況把握の前には鈴達の様にはいかない。

鈴達即席のコンビでさえ、いい線まで行けたのだ。ペアで戦うために特訓して来た俺たちなら、そう簡単には崩されはしない。

 

「くっ、ふざけるなぁ!」

 

「もらったぁぁ!!!」

 

「舐めるなぁ!」

 

「くっ!?」

 

「ふっ、捕えたぞ!」

 

態と突撃し、予想通りに俺のことを停止させてくるが、俺たちの狙いはまさにこの時だ。

 

「もう一度言うよ。僕を忘れないでね!」

 

「しまっ!?」

 

先程と同じように現れたシャルに、意識が削がれ、俺の拘束が解かれる。

その瞬間に俺は、銃撃を与えて離脱する。

そして、完全に隙を晒したボーデヴィッヒに向かって、シャルが取っておきを展開する。

 

「《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》!」

 

「それは、盾殺し(シールド・ピアース)………!?」

 

確かそれは、単純な火力なら第二世代最強と言われた兵装。

それが、ガラ空きのボーデヴィッヒの腹にぶつかり撃ち込まれ、そのまま地面へと叩きつけられた。

 

 

 

 

「これは、いけない。貴女はまだまだ働いてくれないと困りますからね」

 

アリーナの上に黒のローブがたなびく。

そして、不気味に光る右手を下に落ちた少女へとかざし、嗤う。

 

「そう、死ぬまでね」

 

 

『Valkyrie.trace——STAND-BY』

 

そこに黒騎士が生まれた。

 




箒は、秋十とは違う方向に自惚れているため、結構弱いです。

べ、別に短くしたのを隠してる訳じゃないっすよ?


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R.33p

————負けたのか?私は。

 

————嘘だ。私にそんな事は。

 

————いやだ。また、捨てられたくない。

 

————そうだ、力だ。

 

————力が欲しい。

 

————もっと、もっと強力な力が。

 

————教官のような圧倒的な力が。

 

————だから

 

《搭乗者の意思を確認》

 

《システムシーケンス・チェック》

 

《システムスタンバイ・グリーン》

 

「私に力を寄越せぇえええ!!!!」

 

『Valkyrie.trace——STAND-BY』

 

その時の(ボーデヴィッヒ)は、自分の愚かさを知らなかった。こんな事をしたところで、教官には遠く及ぶ事などは無いはずなのに。

 

ごめんなさい。

 

許して。

 

私に出来る事なら、何だってやる。

 

だから、だから。

 

「助けて………」

 

闇のような何かに侵されていく頭の中に残った理性で、助けを求める。

来るはずのない助けを。

そして、その言葉を最後に、私の意識は完全に呑まれてしまった。

 

 

 

 

「ああああぁ!!」

 

「「!?」」

 

突然に叫び出したボーデヴィッヒの方を向くと、彼女の専用機が固体の形状を保てずに崩れ、ボーデヴィッヒをその泥のようなモノの中に飲み込もうと蠢いていた。

 

「アレは……」

 

「どうするの新太郎?!あのままじゃ、ボーデヴィッヒさんは!」

 

「っ!ああ、わかってる!見捨てるほど、腐ってねぇよ!」

 

あの物体が何か、何処かで見たことがある気がしたが、隣のシャルの言葉に頭を切り替えて、あの泥からボーデヴィッヒを助け出す。

 

「これじゃあ、ボーデヴィッヒに、当たっちまう!」

 

「彼女を態と盾にしてるの!?」

 

シャルの言葉と共に銃火器を構えるが、専用機だったモノは、一丁前にボーデヴィッヒを俺たちの前に向けて、肉壁のように構えている。

その事に気を取られて躊躇していたら、ボーデヴィッヒの姿は完全に見えなくなってしまった。

そして、それからその半固体のような泥は、形を形成していき最後には、前の専用機とは全く異なる形の専用機のようなフォルムに変わった。

 

「アレは、もしかしてVTシステム!?」

 

「は?なんだよそれ?」

 

俺が、何が起こっているのか分からなかったが、何かに気付いたように驚くシャルに俺は質問を投げかけるが、シャルがそれに答えるよりも早くに、目の前のISもどきがその両手に持つブレードを振りかぶって、突撃して来た。

 

「やばっ!」

 

「…………」

 

咄嗟に避ける事に成功したが、流石にこのままではこっちがジリ貧で負けてしまう。

それに、さっきのシャルのVTなんちゃらも気になるし、警報が鳴っているのもぶっちゃけ、意識が向いてしまうが、今俺が明確に分かる事は1つ。

 

「お前を止めなきゃいけないって、事だろ!?なぁ、ボーデヴィッヒ!」

 

銃火器を再度構え直して、俺は未だ反応のないボーデヴィッヒに宣言した。

難しい事なんて、今は考えるな。勝つための一手を詰めていけ。

 

 

 

 

「アッハハハハ!!!!そんな事したって、勝てないんだよー!バーカ!アッハハハハハ!!!」

 

耳障りな笑い声に頭を抑えながら、俺は隙を晒している男の背中に向けて、銃撃。放つ。

 

「おおっと!?そんな攻撃効かないんだよねー!」

 

「そうか。なら、これでどうだ」

 

「そんな事したって、っ!?」

 

マントを翻して、さっきと同じように避けようとした男の動きが止まり、もろに銃撃を受けてその場に倒れ込む。

 

「だ、誰だよ!お前はー!!!??」

 

「なんだ、俺を知らないのか?なら、答えてやる。皇鋼刃。ただのしがない化学者だ」

 

「皇……鋼刃ーッ!?」

 

俺の名前を聞いた男は、どうやら状況を確認出来たようでさっきまでのコチラを馬鹿にしたような態度から一変して、取り乱したように喋りだす。

 

「な、なんで、お前がここに!?あの時、ボスがお前を!」

 

「ああ、自爆特攻した時だな?悪いが、俺はその程度では死なん」

 

「なら、ボスは何のために!?」

 

「ただの無駄死にだろ?悪党には良くあることだ」

 

「き、貴様ぁ!!」

 

男がキレてこちらに、黒い触手を飛ばしてくるが、俺はクラックから取り出したアイテムを構える。

 

「火縄大橙DJ銃」

 

DJ銃のスクラッチを動かし、ビートを始める。

そして、スピードコントローラーを下に動かして、ビートを低音で鳴らす。

 

「吹き飛べ」

 

「ぎゃあああぁ!!!」

 

大砲モードの一撃をまともに喰らったソイツは、さっきよりも2、3回転して転がる。

生身だと思ったが、意外に丈夫なようだ。

 

「まだだ、まだ、俺は終わらない!今度こそ、我らが願いを果たさないばいけないんだ!」

 

「なに?」

 

「ふふ、貴様には分かるまい!もっと、働けぇ!!」

 

そう言うと男は、さっきの触手と同じような雰囲気の物体を取り出すと、アリーナ内のあのボーデヴィッヒを呑み込んだ何かに向けて、投げる。

 

「ハハハハハ!!!これで、もう、ここはお終いだ!じゃあね!我らが宿敵よ!」

 

「はっ!」

 

高笑いした男が、この場から逃げようとするが、流すわけがない。

アイツをどうにかするなんて、簡単に出来るから殺さずに時間をとめる。

 

「ーー?!」

 

「テメェみたいな小物逃すかよ」

 

さて、ここはどうにか出来たが、あっちは大丈夫なんだろうか。

 

 

 

「くっ、流石にキツくなって来たか……!」

 

「新太郎!」

 

執拗に俺を狙ってくる黒いISの攻撃を避けながら、少しずつ攻撃を与えていたら、シャルがさっきの試合と同じように援護射撃をして、この状況から助かった。

 

「すまん。それよりも、アレなんだ?」

 

「難しい事は分からないけど、アレはパイロットには危険なモノなの」

 

「なら、早く助けなきゃな」

 

危険だって言うんなら、尚更助けなきゃいけない。

シャルに協力して貰って俺は、ISに攻撃を与え続ける。そして、体勢を崩した所に、銃撃をぶつける。

 

「よし!」

 

「………いや、まだだよ!」

 

「嘘だろ!?」

 

やったかと思ったのも束の間、あの黒いISの装甲が、ボーデヴィッヒを呑み込んだ時のように蠢き、形を作り直す。

 

「デカっ」

 

「なんなの、アレ?」

 

動きが止まったかと思ったら、さっきよりも2、3倍はありそうな大きさに変わっているのに呆けていたら、気付いた時には目の前に迫って、こちらにブレードを振りかぶっていた。

 

「がはっ!?」

 

「新太郎!?きゃあ!」

 

そのまま、もろに受けた俺は壁まで弾き飛ばされ、シャルも俺が飛ばされた事に驚いた隙を疲れて、同じように飛ばされる。

 

俺は、残り少ないエネルギーでシャルの前に立ち、壁になるように構える。

 

「し、新太郎。危ないよ……」

 

「俺が残るよりは、シャルの方が良いからな」

 

そう強がってみせるが、正直このままでは変わらない。

変身でもすれば何とかなりそうだが……。

 

「いや、何を迷ってるんだ。俺は」

 

「し、新太郎?!いきなり、降りてどうしたの?!危ないって、言ったでしょ!?」

 

解除して生身の姿を晒す俺に、シャルが驚くがそれを気にせず、俺はドライバーを取り出す。

 

「こんな事を言うのもなんだけど、俺に任せろ」

 

「それは……」

 

「ボーデヴィッヒ!お前を止めれるのは、オレだ!」

 

カードを差し込み、高らかに宣言する。

 

 

「変身!!!」

 

お前をそこから助けてやる。

 



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R.34p

「し、新太郎。その姿は……?」

 

「悪いシャル。後で、ちゃんと話すから今は俺を信じて避難してくれないか?」

 

「………わかった。でも、ちゃんと教えてよ?」

 

「ああ、約束する」

 

俺の言葉を聴いてくれたシャルは、残り少ないエネルギーを使って、ハッチへと戻っていった。

しかし、フラグ臭いセリフなってしまったが、そんなのは関係ない。なんたって、今の俺は仮面ライダーなのだから。

 

「異形にはコイツだ」

 

『KAMEN RIDE HIBIKI』

 

『ATTACK RIDE ONGEKIBOU REKKA』

 

ATTACK RIDEから呼び出した烈火を握り、その先に集中し点火した炎をキマイラに向かって放つ。

落ち着いて、考えてみればあの雰囲気は、あの時の夜から戦ったキマイラに似ている。そう思ったら、近くにその鋼刃たちの敵が居るかもしれないが、コイツを放ってはおけなかった。

 

「€*→3:×→9=→〒:#〆!!!tgts」

 

そして、響鬼になったのが功を奏したのか、烈火から放たれた炎に苦しむように、あの時のキマイラのように叫ぶキマイラごとき。

それよりも、倫太郎から清めの音の事を鍛えて貰っていて助かった。

 

「まだまだいくぜ!」

 

攻撃の手を休めずに、火炎弾を飛ばす。

だが、向こうも何度も同じことを受けていくつもりは無いようで、その燃える身体のまま、こちらに攻撃を放って来た。

 

「くっ、流石に1人はキツいか……」

 

俺が、そんな弱音を吐いていたら、上からの攻撃が、キマイラに直撃する。

 

「これは……」

 

「ギリギリ間に合ったかな?」

 

「コイツは……」

 

「一気に片付けるぞ」

 

「お前ら……!」

 

ウィザード()ゴースト (倫太郎)ダークカブト(一夏)の増援が来て、一気にこちらが攻勢となった。

 

「お前たちは、アイツの周りの泥とかを剥がしてくれ。そうしてくれたら最後は俺が決める」

 

「オッケー。なら、魔法使いよりもこっちの方が良いかもな」

 

そう言うと、允はドライバーに手をかざすとウィザードドライバーが、オーズドライバーに変わる。

 

「変身!」

 

『タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ・タトバ・タトバ!』

 

「よし!行くぞ!」

 

「相変わらず、軽快な音だな」

 

「それは、俺ら全体に言えなくね?」

 

そんな呑気な事を言い合いながらも、俺たちは再度構え直して、攻撃を再開する。

一夏は、すぐさまクロックアップでクナイガンで、攻撃をし始めて姿が見えなくなる。

 

「コンボは控えておくぜ。お前らにも被害が行きそうだしな」

 

「ラトラータは特にな」

 

そう話し合えて、俺たちはその場から散開して各々の持てる手段を使ってキマイラを攻撃する。

 

だが、俺や倫太郎の攻撃は聞いているがやはり物理攻撃には、強いようで允と一夏の攻撃は余り効いている様には見えない。

いや、允の事だから何か考えがあると思う。そう思っていたら、メダジャリバーを取り出した。

 

『スキャニングチャージ!』

 

「セイヤァ!!!」

 

大振りにふるわれた大剣が、一瞬空間も切り裂いたように錯覚し、ボーデヴィッヒを呑み込んでいた泥が一気に吹き飛ぶ。

 

「今だ!ディケイド!俺が道を作る!」

 

『ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!』

 

「はあぁあ!!!!!」

 

倫太郎が、ゴーストドライバーのトリガーを引き、ダイカイガンを行う。本来なら、それはライダーキックになる筈が、倫太郎の組んだ印がボーデヴィッヒを照らす光のように輝く。

 

「すまん!」

 

『FINAL KAMEN RIDE ARMED HIBIKI』

 

「響鬼・装甲!」

 

その掛け声と共に、俺は呼び出した装甲声刃(アームドセイバー)を構える。

そして、装甲声刃に声を掛けて清めの音を増幅させる。

 

「はあああぁぁあ!!!!!」

 

俺の声が出ると共に、装甲声刃にエネルギーが溜まって行き、最大まで溜まった事に、装甲声刃を天高くに構えると共に、俺のドライバーがライドカードを読み込む。

 

『FINAL ATTACK RIDE Hi Hi Hi HIBIKI!』

 

「はぁあ!鬼神覚声!」

 

清めの音を燃え盛る炎のエネルギーに変え、その刃に纏った装甲声刃をそのキマイラへと振り下ろす。

 

「届けえぇぇ!!!!」

 

そして、俺の全力がキマイラをボーデヴィッヒもろとも飲み込んだ。

 

 

 

 

「私は、間違っていたのか………?」

 

暗闇の中を、誰に言うでもなく(ボーデヴィッヒ)は、自らの行動に自問していた。

 

試験管ベビー。実験によって、人工的に産まれた存在である私は、最初軍の期待戦力として様々な訓練を受けて来た。

そうなると調整された為もあったが、私は確かな成績を残し、私と同じ試験管ベビー達で組んだ シュヴァルツェ・ハーゼ(黒兎隊)も、実戦成績を着実に重ねて、私に少佐の階級が与えられた。

 

「私は、何処をどうすれば良かったのだ……?」

 

だが、それもISの登場とその適正向上として行われた越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)により、私は『出来損ない』の烙印を押されてしまった。

 

超兵器としてその名を各地に轟かせたISの適正能力の向上として、私たち黒兎隊に施されたオペレーション。

それが『越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』だ。

 

越界の瞳は、ナノマシンによる伝達神経などの感覚を高めて、高い戦闘能力を獲得すると言う物だった。

だが、それは失敗に終わりその代償として私は、ISを上手く動かせないと言う致命的な代償を負ってしまった。

 

「教官なら、教官ならどうしていたのか……?」

 

そんな私を救ってくれたのは、世界最強として名高い織斑千冬教官だった。

教官の指導により、私は以前のいやそれ以上の能力を取り戻していった。

だから、私はあの人に憧れた。あの人の輝きに惹かれた。あの人のような絶大な力や強さを望んだ。

 

「それが、間違っていたのか?」

 

「ただ、何者をも寄せ付けない力。あの人の強さは、それだけじゃ無いぜ」

 

「お前は……」

 

そんな自問し続ける中、突然に声をかけられ振り向くと、そこには確か先ほどまで私と戦っていた素人の男だった。

その男は、こちらに呆れたような顔をしながらも、言葉を続けた。

 

「強さってのは、誰かを負かしたい。勝ちたいって、思うだけじゃ手に入らない。自分がこれだと貫ける信念みたいな何かが無いと、強くはなれない」

 

「あの人には、それがあるのか?」

 

「ああ、あるだろうな。あの人は、1人で2人の弟を育てて来た。まぁ、もしかしたら他の大人とかに助けられたかもしれないけど、あの人は弟2人を守り抜くって、気持ちがあったからこそ世界最強の称号を背負ってるのさ」

 

その名が、弟2人を守る盾だと信じてるからな。と語る、コイツを見て私は、やっと理解できた。

あの人が、あんな優しい顔を出来たのは、そこに対しての気持ちがあったから、なら、私はどうすれば。

 

「どうすればあの人のように成れる?」

 

「誰かになれる訳ないだろ?お前は、何か大切な人ってのは居ないのか?」

 

「大切な人………」

 

そう言われて考えれば、黒兎隊の隊員たちの顔が思い浮かぶ。

同じ境遇で、時々バカな事を言うが、彼女たちは確かに私にとって大切な者たちだ。

 

「いる。大切な隊員たちが」

 

「なら、そいつらの為に輝いてみろよ。そいつらが、どんなに辛く暗い時にでも、うちの隊長は最高だって思えるようにな」

 

「そんなので、良いのか?」

 

「そんなんで良いんだよ。人が強くなる理由なんて、意外と単純だろ?」

 

そう語るコイツの言葉が、何の抵抗も無しに胸の奥に入ってくる。

そして、私の心を表すように暗闇だった空間に光が差す。

 

「もし、それでも、悩むんだったら俺が手伝ってやるよ。さぁ、手を取りな!お前を此処から出してやる!」

 

差し伸ばされた手を掴んだ時、私を呑み込んで闇よりも明るく暖かい光が私を照らし出した。

 

「私……は……」

 

「先ずは、皆んなに謝るところだな」

 

そう笑う男に、私の胸に分からない感情が渦巻いたが、疲労からかそこで私は気を失ってしまった。

 

 

 

 

「ふぅ、終わったな」

 

「ああ、そうだな。けど、これからどうするか」

 

ボーデヴィッヒを無事に助けることが出来たが、俺の正体はバレてしまったので、どうしようも無いが逃げるのは何か違う気がする。

そう思っていたら、機動隊が出てきて俺たちを取り囲んだ。

 

「動くな!」

 

「これは、従うしかなさそうだ」

 

結局、選択肢は無かった。

 



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R.35p

「かぁーっ!何時間問い詰めるんだよ!」

 

「時間にして、ざっと4、5時間だね」

 

「軽い拷問だぜ?しかも、ちゃんと答えてるってのに文句言いやがって………」

 

「疲れた……」

 

あのボーデヴィッヒのISの暴走の後、バレてしまった新太郎に巻き込まれる形で()たちは、織斑先生を筆頭にした学園のIS部隊の人たちに拘束され、事情聴取を行われた。

逃げようと思えば、新太郎のオーロラでその場から移動する事は出来たが、あそこまで各国の人たちが居る中、アレを使うのはリスクが大きい。

 

などと、並べるが実際は暴走ISモドキが、普通に強くて怠かったから、まともな思考は余り残っていなかった。

 

まぁ、変身を解いた一夏を見たときの織斑先生の顔は、結構面白いものだったな。

 

「それよりも、どうするかコレから」

 

「あくまで、俺たちの事は監査処分とは言え、余り良くは思われないだろうな」

 

「そうだね。さっき見てみたけど、かなり各国からの問い合わせがあったみたいだよ。人体実験しかり、刑罰処分しかり」

 

「五体満足とは言えないけど、こうやって呑気に話せるだけ、マシって事か」

 

新太郎の言葉に、納得してしまう。

人とは、よく分からないモノを排他しようとする生き物だから、仮面ライダーの力が、この世界の理解外のモノなら、排他しようと動くだろうな。それも、無能と見下して来た男が、変身するモノなら。

 

「ドライバーどうするか………」

 

「俺も、ゼクターの反応が無い」

 

「分解やらされて、壊さないで欲しいな」

 

「ああ、それなら、問題無いよ」

 

「「「は?」」」

 

事情聴取の際に、俺たちは自分たちが使っていたドライバーを押収された。拒否ったのだが、ヒスって煩かったので渋々オーズドライバーを渡した。

まぁ、何本かのドライバーは外す事が出来ないから、どうしようも無かったりするけど、オーズドライバーは一応外す事ができる。

 

そして、それに億劫になっていた俺たち3人に、倫太郎はこともなげにそう告げた。

 

「鋼刃が、念のためって言って俺たち以外には、崩すことも反応することも出来なくしたって、言ってたし」

 

「は?ちょ、ちょっと、待ってくれよ。何時だよ」

 

「クラス対抗戦のあの時に、やってたよ。態々時間止めてね」

 

「にしたって、どうやったんだよ………」

 

正直、鋼刃がやったと言うならそこまで不思議に思えないが、あの時の俺は、まだウィザードドライバーぐらいしか、見せていなかった筈だが………この事は、流すしか無さそうだ。

 

「じゃあ、一応良かったのか?」

 

「俺に質問しないでよ」

 

「唐突に、振り切るんじゃねぇよ」

 

ボケをするぐらいなんだから、多分大丈夫なんだろう。

それに、大丈夫じゃなくてもドライバーだけで変身は出来ないから、問題は大きく無いか。

 

「さてと、今日はもう解散しようか。またね」

 

「おう。それじゃあな」

 

そう言って、別れる倫太郎を見送ったあと、俺たちもそれぞれの部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「ここ………は?」

 

「目が覚めたか?」

 

「お前……は、確か………」

 

「夜束叉新太郎だ。取り敢えず、まだダルいだろうから、横になってろ」

 

「あ、ああ………」

 

目が覚めた(ラウラ)を迎えたのは、私を倒す為に力を示した男であり、闇に呑まれた私を救ってくれた男だった。

 

「今は……何時だ?」

 

「結構時間が経って、夕方の4時ごろだ」

 

「その……私はそんなに、眠っていたのか………」

 

「色々と張っていたモンが取れたんだろ。お前みたいな、タイプには良い薬だ。それに、新太郎で良いぜ」

 

そう語る男———新太郎は、こちらを見定めるでもなく聞き流すでもなく、私の言葉を聞きそれにしっかりと返すように眼を閉じていた。

 

「なら、私もラウラで良い」

 

「そうか。なら、ラウラ、気分はどうだ?」

 

「気分……分からない。正直、あの時の私が本当に間違っていて、今の私が正しいのか、色々と困惑していて、分からないんだ」

 

「そうか」

 

軽く頷いて、閉じていた眼を開けた新太郎は、今度はちゃんと私の眼を見て話し始めた。

 

「あのときの言葉を覚えているか?」

 

「ああ………」

 

覚えているとも、新太郎(コイツ)が私に抜け出す勇気を与えてくれたのだから。

だが、それでも私の中には答えは出ていない。

 

「じゃあ、聞くがお前は何者だ?」

 

「わ、私は……」

 

何者だ、と問われても私には分からない。新太郎のように人と人とが作り出した命じゃない、ツクリモノの命の私にはその問いに返す言葉は、無かった。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「っ!!?」

 

私が答えに悩んでいたら、突然に大きな声で名前を呼びかけられる。

私は、その声に驚き身体を跳ねさせる。

 

「ラウラ。お前が、何者で無いのなら都合が良い」

 

そう言うと、私に指を指し眼を真っ直ぐに突きつけて、新太郎は答えてくれた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒになれ」

 

「ラウラ……ボーデヴィッヒ…になれ……」

 

そう告げられた言葉が、私の胸の中にゆっくりと溶けていく。

 

「誰かが望んだラウラ・ボーデヴィッヒじゃ無い。織斑先生が、知ってるラウラ・ボーデヴィッヒじゃ無い。お前が思うお前にしか成れない、ラウラ・ボーデヴィッヒになれ。強くなるのは、それからだ」

 

「私が思う私にしか成れない……ラウラ・ボーデヴィッヒ(わたし)……」

 

教官じゃ無いのに、その言葉は確かに私に覚悟を決める言葉になった。

その後、新太郎はそれじゃあな、と言って病室から出て行ってしまった。その後の私の胸には、何かが抜けたように感じた。

 

「これは……」

 

何かは分からなかったから、私は初めて私の元部下の彼女に通信をして、頼った。

誰かを頼りにするのも、中々良いモノだな。

 

 

 

 

「意外と、優しいのねあなた」

 

「……なんだアンタ」

 

新太郎()の1日は終わらない。

 



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R.36p

夕方も過ぎ、そろそろ夜が訪れようとしている中、(新太郎)は医務室から出た時にあった女生徒に連れられて、屋上に来ていた。

 

「それで、アンタ誰だよ」

 

「あら、一応、学園では私生徒会長してるんだけど、知らないの?」

 

「そんなの一々覚えられる日常じゃなかったんだよ」

 

「まぁ、それもそうね」

 

持っていた扇子をパチンッと閉じると、会長さんは嫌に決まっているポーズで、自己紹介をして来た。

 

「私の名前は、更識楯無(さらしきたてなし)。ここ、IS学園の生徒会長で、ロシアの国家代表でもあるわ。よろしくね。噂の仮面ライダーくん?」

 

「胡散臭さ……ッ」

 

「ふふ、よく言われるわ。でも、初対面の女性に向かってそれは失礼なんじゃない?」

 

「そうっすか……」

 

態とらしい反応をしながらも、更識会長は閉じた扇子をパッと、開くとそこに達筆な字で書かれた“興味津々”の文字に、引きつつ俺は身構える。

それに、更識って、もしかして簪の姉か?

と言うか、さっきまであの扇子には“生徒の長”とが、書かれた筈だが?

 

「ねぇ、IS学園の生徒会長って、どうやって選ばれるかって、知ってる?」

 

「アンタの事を知らなかった俺が、そこまで知っていると思ってますか?普通に選挙とかじゃ無いんですか?」

 

「そうね。確かに選挙もあるわ。でも、それは選ばれる時の条件の1つよ」

 

その言葉の後、更識会長の纏う雰囲気が明らかに変わり、さっきまでの胡散臭さなんか消え去り、織斑先生に近いこちらを威嚇するような雰囲気を感じとる。

 

「学園内の生徒の中で、最も強い。つまり、学内最強の生徒って事も条件の1つなのよ」

 

「………それは、また凄いことで」

 

「それで、もう一つIS学園(ココ)だからこそ、特別な任務が生徒会長にはあるの」

 

パチンッと、また扇子が閉じられ再度開かれた時には、さっきまでの文字や内容とは違う。

“敵”の一文字だった。

バカな俺でも、その文字を見せて来た更識会長の真意は理解できる。

そう思った事を口に出すと、向こうも同時に口を開いた。

 

「「敵の排除」」

 

2人で同じ言葉を答えると、更識会長は満足したように扇子を閉じた。

どうやら、望むような返答をしたようだ。

 

「人って言うのはね。よく分からないモノやそれに類する事を、周りから排除しようとするの。今の貴方達みたいに」

 

「それでもね。貴方達は、この学園に入学し生徒として過ごして来た。そして、貴方達はココや生徒達を守ろうとした。だから、私たち、学園は貴方達を守る義務がある」

 

「まぁ、私自身は貴方達の事をよく知らなかったから、試すような事したのは悪かったわね」

 

そう笑う更識会長は、さっきまでの鋭い雰囲気でも、最初の胡散臭い雰囲気でもない普通な人の雰囲気へと、変わっていた。

 

「あ、シャルル・デュノア()()()の件だけど、心配しなくても良いわよ?」

 

「……なんのつもりだよ」

 

「あら、そんな怖い顔しないで、ふふ。それじゃあね。遅くなる前に帰るのよ」

 

じゃあねー、と、張り付いたような笑顔で笑い去っていった更識会長を見送った後で、俺は壁にもたれかかり、大きな大きなため息を吐く。

 

「今日は本当、厄日だろ」

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、視線が辛いな」

 

「だいたいが、嫌悪だろうな。この感じ」

 

「だ、大丈夫?皆んな」

 

「暗い顔は、ダメだよ〜?」

 

「……そう簡単に直せなら、苦労はしてないさ」

 

次の日の朝。()達は、あの騒動のときに仮面ライダーである事がバレてしまい、様々な理由から入学当初よりも注目されていた。

ただ、好奇心でしか無かった当初の頃の方が、悪意や嫌悪がほとんどの今の状況より、幾らかマシだった。

 

「はぁ、これからどうなるんだろ」

 

「人体実験なんてのは、やだな」

 

「はぁ、憂鬱だ」

 

俺たち3人の暗い雰囲気に、押されて簪と本音の2人は苦い顔しか出せなかった。

そして、アホが絡んできたがガン無視をしていたら、いつの間にかSHRが始まっていた。

 

 

 

 

「そ、それでは、皆さんにその編入生?を紹介します」

 

疲れ果てた山田先生が、困惑しながらそう言うと扉が、開かれ見慣れた顔の女生徒が入って来た。

 

「シャルロット・デュノアです。見ての通り、女でしたが訳があり男装していました。また、仲良くしてもらえると嬉しいです」

 

「は、はい。シャルルくんは、シャルロットちゃんでしたー……」

 

覇気の無い山田先生は、この際無視するし、腐った思考を働かせてるクラスメイトも無視する。

しかし、女子として来たってことは、上手くいったのだろう。良かった。

 

そんな事を内心で考えていたら、また1人見知った顔が入って来た。

 

「す、すいません!遅れました」

 

「はぁ、あんな事があったから、今回は許す。席に着け」

 

「は、はい!教官!」

 

「ここでは、織斑先生だ」

 

ウンザリしながらも、優しく言う織斑先生に疑問に思いながら、ボーデヴィッヒもまた、雰囲気が変わったなと思う。

新太郎が、何か話してたのは分かってるけど、何かあったのだろうか。

 

「ああ、それから、夜束叉たちにはこれを返そう。それから、終わりに伝えることがある」

 

アタッシュケース共に告げられた言葉に俺たちは、嫌な予感を感じるのだった。



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第五章 VS精鋭パイロット
R.37p


すいません遅れました!

最近は、色々と用事が重なってギリギリになりやすいので、大目に見てもらえると気が楽になります。


織斑先生に呼ばれた()たちは、人が多いところで聞かれると、面倒だからと、応対室に案内された。

中に入ると、今日は朝から見ていなかった鋼刃達3人が、椅子に座って待っていた。

 

倫太郎は、分かるが何であの2人が居るのか疑問に思ったが、取り敢えず座らないと始まらないと考えて、多分俺たちの席として準備されている場所にそれぞれ座る。

 

「先ずは、コレを返そう。お前達には、大事なモノなんだろ?」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って織斑先生から渡されたアタッシュケースを開き、予想通り中に入ったそれぞれのドライバーを取る。

新太郎は、一応ディエンドの方も持っているけど、本人が好きだからそうだろう。それに、俺もコレが無いとメダルを使う事が出来ない。

 

各々が、自分の回収したのを確認した織斑先生が、改めて用件を説明してくれた。

 

「お前たちに伝える事だが、簡単に言えば朝凪、夜束叉、三枝、織斑の4人には学園が選抜したISパイロットと対決してほしい」

 

「理由を聞いても良いっすかね?」

 

「ああ、構わん」

 

実際は、そんな事を聞かずとも、ここにいるメンツは何となく理由は分かってるし、聞いた所で返事を変えるつもりは無い。

 

「お前たちの存在が、明らかになり各国の役人たちは様々な論争はして来た。内容は、この際省くが議論している派閥は、大きく分けてふたつ」

 

そこで区切り、人差し指を立てて説明を続ける。

 

「お前たちが、男だと言う事から新しい兵器、ISに対抗出来る手段と考えて保護や研究をしようとする派閥」

 

さらに、中指を立てて続ける。

 

「ISを脅かすかもしれないと考えて、お前たちを排除しようとする派閥の2つだ。だが、実際にはそこから多様な思惑を持った派閥に分かれるが、規模で言えばこの2つに分かれる」

 

「1つ聞いて良いですか?」

 

「なんだ?」

 

織斑先生の話が終わった辺りで、疑問に思っていた鋼刃と唯香さんの2人について織斑先生に問いかける。

 

「なんで、鋼刃たちがココに居るんですか?」

 

「………此間の暴走事件の日。その日、あのアリーナの上部で高エネルギー反応と、人影を確認した。そして、昨日の晩、その解析が終わった」

 

そこで、俺は鋼刃を見やると無反応を貫き、その横で唯香さんが、鋼刃を嗜めるように睨みつけている。

本人は、何も言っていないが、この態度はもうそうとしか言いようがない。

 

「お前たちは、もう察しがついてるようだが、そこにあった人影は2つ。1つは、未だに確認出来ないが、もう1つはそこに居る皇という訳だ」

 

「何やってんのさ鋼刃」

 

「………ぬかった」

 

「全く、やるならバレないようにって言ったのに」

 

「お前ら………」

 

開き直ったのか、さっきまでの頑なな雰囲気から一変して、何時もの3人の会話になり、それに対して一夏が呆れたように呟くが、3人はそのままのノリで会話を続ける。

 

「無駄話なんてせずに、一気にやればこんな事には」

 

「それって、まず見つかった時点でダメじゃん。なんで、何時ものステルスしてないんだよ」

 

「製作で疲れてるのは分かってるけど、それは流石にないわよ」

 

「はぁ、しくじった………」

 

明らかに素が出ていた会話だったが、こっちを置き去りに話すのは流石にどうかと思う。それは、対面している織斑先生もだったようで、先払いをして、話しを戻す。

 

「んんっ!と言う訳だが、お前たちの返事を聞きたい」

 

織斑先生の話しを聞いて、俺たちは顔を見合わせてそこで頷き返す。そして、代表として俺が答える。

 

「もともと、バレた時にそうなるだろうとは思っていたので、問題は無いです」

 

「そうか。では、お前たちは先に戻っておけ。私は、皇たちと話さなくてはいけないからな」

 

「分かりました。そんじゃな、鋼刃」

 

「ああ、後でな」

 

そこで、分かれた俺たちは、1組の教室に戻り次の授業の準備を進めた。

 

 

 

 

 

「あ、新太郎!」

 

「シャル。それに、ラウラ」

 

「うむ!昨夕ぶりだな!師匠!」

 

「師匠?!」

 

教室に戻り、次が織斑先生の担当する授業なのだが、今頃あの3人と話しをしている為か、自習となっていた。

そんな中、打ち解けた様子のシャルとラウラの2人が、俺に気付いて話しをかけてきたが、ラウラの突然の師匠発言に思わず変な声が出てしまう。

 

「新太郎は、私が、迷っていた時に道を指し示してくれたのだからな。敬意とそして、お前は強い。その強さを学ぼうと思ったまでだ」

 

「いや、それは分かんだけど、なんで師匠?」

 

「あはは、なんか、副官から師匠になって貰えばって、言われたらしいんだ。まぁ、僕にも師事してほしいな?師匠?」

 

「やめてくれ。心臓に悪すぎる………」

 

正直、シャルやラウラのような綺麗どころが、俺みたいな奴を敬ってくれるのはめちゃくちゃ嬉しいのだが、ここでは余りそう言うのは控えて欲しい。

 

「あ、それから、僕のことありがとうね」

 

「………いや、俺は何もしてない。それは、鋼刃とかが」

 

「それでも、そのきっかけになったのは新太郎でしょ?僕は、本当に感謝してるんだよ」

 

「……そうか」

 

「そうだよ!」

 

正直シャルの件は、俺は何も出来ていない。

その後、シャルからどうなったのかを聞きながら、鋼刃に感謝する。

 

「お父さんの会社にいた本妻派閥の横領や違法行為が、沢山見つかったの。それで、お父さんはそれを皮切りに、会社の掃除と共に僕の身の回りを整えてくれたみたいなんだ。昨日、お父さんから電話があって沢山謝られたけど、仲直りも出来たし、上手く行き過ぎてるなんて思う事もあったけど、今こうしていられるから、文句は無いんだ」

 

「それは……良かったな。ただ、シャルの親父さんは大変だな、これから。体勢を整えたからと言って、信頼は失われたようなもんだからな」

 

「それは、お父さんが頑張るから気にするなって、言ってたけど心配だよ」

 

「気に病む事では無いのでは無いか?」

 

俺たち2人の話しを聞いていたラウラが、急に入って来て意見を投げて来た。

 

「シャルロットの父親が、お前を大事にしているのなら、やり遂げられる。私は、そう言う人を知っているからな」

 

「……うん。そうだね。そうだよね」

 

「うむ!」

 

あの時までは、結構仲が悪かった感じだったけど、仲直りもして結構良くなってるのは、一応渦中の1人だった俺としては見ていて嬉しい限りだ。

 

「それよりも、織斑先生と何を話してたの?」

 

「ああ、学園の選抜メンバーと戦うことになった」

 

俺は、拳を握り覚悟を決めながら、そうシャルに答えるとシャルは、雰囲気を変えて返事を返して来た。

 

「それじゃあ、もし戦うことになったら、容赦しないよ」

 

「私も、全力を持って相手してやろう!」

 

「はは、こっちも全力で行かしてもらうさ」

 

そう3人で、語りながら、自習の時間を過ごしていった。

 




はい!という訳で、次回からIS対仮面ライダーとなります。
それから、投稿時間も遅れるかもしれませんが、ご了承してもらえるとありがたいです。


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R.38p

昨日は、流れが思い付かずに投稿でませんでしたが、今日は何とか間に合いました。
読み納めください!


「お前たちに来てもらった理由は、これだ」

 

何時ものように、朝登校して来た()たちは織斑先生に呼ばれて前先生と話した応対室に案内された。

そこで、織斑先生から見知った名前の書かれたリスト表を渡された。

 

「これは、我々が選抜した者たちのリストだ。公平を期すために、お前たちにもメンバーを把握してもらう為に呼んだ」

 

「大体が、代表候補生なのはまぁ、予想通りだな」

 

「てか、知らない人居るな」

 

「2、3年の誰かだろ。誰が相手でも俺のやる事は変わらない」

 

リストを見ながら、俺たちは皆んな思い思い事を言う。

俺たちが知らない人の1人が、新太郎と面識があったようで説明してもらったら、まさかのロシアの代表で、この学園の生徒最強らしい。

 

「なんで、そんな人がここに居るんだよ……」

 

「知るかよ。色々と事情があるんだろ」

 

「そんな事よりも、俺たちを呼んだのは本当にこれだけですか?」

 

「いや、こっちからが本題だ」

 

俺たちが、自分たちの話しに夢中になりかけた時に、倫太郎の言葉で話の軌道を修正する。

 

「私としては、そんなものは必要ないが女権利の団員や、各国の女性上官の者たちが、ハンデとして相手を選ばせると言ってきた」

 

「ふーん?まぁ、俺的にはそれは良いんですかど、それって人数とかもこっちで決めて良いんすか?」

 

「ああ、構わん。ただし、その後の責任は自分自身で取ることになるがな」

 

そうですか、と返す倫太郎の思惑は、余り詳しく無い俺でも何となく察せれる。

それにしても、選べるのか。なら、全力でやってみたい人は俺にだっている。

 

「俺は、他が決めてくれ」

 

「俺も、そっちで決めてくれて構わないっす」

 

「俺は………山田先生となら」

 

一夏、新太郎、俺の順で各々の希望を述べる。

2人は何となく予想できたが、向こうは俺の言葉が予想外だったのかこちらを見返して来た。

 

「………本当に良いのか?」

 

「構わないですよ。俺は、全力でやるからあの憎たらしい奴らの顔を驚きに染めたい。だったら、山田先生クラスは倒さなくちゃいけないんだ」

 

「………そうか。分かった伝えておこう」

 

まぁ、負けた時は負けた時で暴れれば良いや。

そう内心で考えながら、倫太郎を見やると倫太郎は、少し悩んだような雰囲気の後、深く頷いて織斑先生を見て宣言した。

 

「じゃあ、俺はこの人たちで」

 

その後に告げられた言葉に、俺たちだけでなく織斑先生も驚いたのは言うまでも無かった。

 

 

 

 

 

「何だか、色んな意味で盛り上がってんな」

 

「皆さんは、知らないでしょうけど、とても大騒ぎだったのですわよ?」

 

「そうね。私たちは関わりが結構深かったから、色々聞かれたから大変だったわ」

 

「だろうな。まぁ、隠したんだから、お前らが知る由も無いがな」

 

アリーナで、タッグトーナメントの比じゃないほどの人たちを見渡しながら、(鋼刃)は、呑気に周りの唯香や最初の出番の筈のセシリアと鈴たちと談笑していた。

 

「それよりも、お前らは行かないで良いのか?」

 

「私たちは大丈夫なのですが、倫太郎さんが何かに悩んでるそうで」

 

「あいつは………仕方ない。ちょっとアイツのところ行ってくるわ」

 

「あ、私もいくわ」

 

まぁ、何となくだがアイツが悩んでいる理由は分かるが、気にするぐらいなら俺に聞けば良いのに。

 

「制約のことよね?」

 

「だろうな。アイツは、呑気なくせしてああいう所で律儀な所があるのは、まぁ、前世からだろうな」

 

「貴方もだけど、なんでこうも厄介な人が多いのかしらね?」

 

「俺に聞くんじゃねぇよ………」

 

耳の痛い事を唯香から言われ、思わず苦い顔をして返す。

俺たち(転生者)は、皆んな大なり小なり変な癖や特徴を持っている。転生先で生きていた唯香には、それが面白いのだろう。

 

「それよりも、織斑先生にはあんなテキトーで良いの?」

 

「ライダーの力は、バレてもどうにか出来るが、俺たちの今まではそう簡単に片付けられないからな」

 

「それは、分かってるわよ。私も貴方も倫太郎も、力に制約をしているんですもの」

 

「もしもの時は解除される簡易なものだが、無いよりはマシだ。それよりも、着いたぞ」

 

さてと、とっと解除と約束をして戻ろう。

ただでさえ、面倒な連中が多いのに時間がかかると、もっと面倒になってしまう。

それで、こっちにも飛来しそうだから、さっさと済ます。

 

 

「おい、倫太郎。なにやってる」

 

「鋼刃。それに、唯香まで。もしかして、またしちゃってる?」

 

「ああ、さっさと覚悟決めろ」

 

俺たちは、控え室に入るなりすぐさま倫太郎に向けて、喝を入れる。

面倒な奴だが、これでも俺の頼れる相棒なのだ。しっかりとして欲しい。

 

「制約は、全て解除する。そして、解除した上での契約だ」

 

「………太っ腹だね。それで、何かな?」

 

「俺たちの力を示せ」

 

「………OK.Mister」

 

俺の言葉で、決めたのか倫太郎は、いつも以上の調子でフィールドへと向かっていった。

 

「何で行くのかしらね?」

 

「アイツのことだ。何となく予想できる」

 

「へぇ?じゃあ、教えてよ」

 

「自分で考えな。出来るだろ?」

 

「あ!さっき私が、揶揄ったの根に持ってるでしょ?ねぇ!」

 

「んなわけあるか」

 

その後もこちらに言い寄ってくる唯香を交わしながら、観客席へと戻っていった。

 

まぁ、相手が普通の奴ならこんな事はしないんだが、アレじゃあな。

 

 

 

 

第一試合

 三枝倫太郎

   VS

全学年代表候補生

 




展開が早いような気が自分でもしますが、まだ大丈夫ですよね?


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R.39p

久しぶりに四千近くも書いてしまった為、遅れました。
無理矢理な所は無いと思いますが、一言だけ申し上げます。この作品で最も人間辞めているのは、倫太郎です!

そこだけは、忘れないでください。



正直自分でも厄介な性格だと思っているが、正直これは死ぬ前からも変わらない俺の性格だ。

 

「それでも、俺はこの性格のお陰だったのは、何度かあるから結構好きなんだよね」

 

鋼刃や唯香は、色々と俺のこの性格を面倒がってるみたいだけど、俺自身は嫌いじゃないし、たまに観る馬鹿な奴らと比べれば全然マシなんだよな。

 

「さてと、行きますか」

 

右手に持つ大剣を肩に担ぎながら、俺はフィールドの中へと入場していく。

 

ブーッ!ブーッ!ブーッ!

 

ブーッ!ブーッ!ブーッ!

 

「うわー、俺ってばヘイト高っ」

 

「アンタと鋼刃ぐらいよ。こんな光景で、そんな呑気に出来るのは」

 

「やぁ、鈴。待たせたね。悪かったよ」

 

呑気に入場して来た俺を迎え入れたのは、俺たちの存在を良く思っていない連中のブーイングと、そんな俺を呆れたように見る全学年の代表候補生たち。

その中でも、鈴やセシリア達は俺と関わりがあった分、余計に呆れている。

 

「アンタ、本当に良いのか?今なら、撤回聞くわよ?」

 

「そっすよ!君が強いのは分かるけど、流石にこの数は無理があるっすよ!」

 

そんな中、確か3年のアメリカ代表候補生のダリル・ケイシー先輩と2年のギリシャ代表候補生のフォルテ・サファイア先輩だったかな?

まぁ、確かに普通ならそう見えるだろうな。てか、実力とかは認めてくれてるのか。意外だな。

 

「お気遣いはありがたいっすけど、相棒に言われたんですよ、勝って来いって。それに、俺もそう易々と撤回する様な甘い人生を送って来てないんでね!」

 

「なら、全力を倒すまで!」

 

良い感じに盛り上がって来たな。

それじゃあ、さっさと俺も変身と行きますか。

 

「ああ、鈴達に言っておく事があったんだった」

 

「何よ」

 

取り出した“デンオウベルト”に、ケータロスを装着する。

そして、さっきから手に持っていたデンカメンソードに、ライダーパスをセットする。

 

「今日の俺たちは、本気と書いて本気(マジ)だぜ」

 

『LINER FORM』

 

「「「「「っ!!??」」」」」

 

電子音と共に、電車の発車音が鳴り出し、突然と現れたデンライナーに目の前の鈴たちだけで無く、これを観戦しているアイツら以外の人たちが驚いているのが分かる。

これだけでも、正直やって良かったと思うが、まだまだ驚いてもらう。

 

それから、デンライナーが俺目掛けて突撃し、エネルギー化されデンカメンや装甲が装着されていく。

 

役目を果たしたデンライナーは、また何処か消えるが、俺は何も無しに地面にデンカメンソードを突き立て、デンガッシャーをソードモードに替え、未だに惚けている鈴達に向けて高らかに宣言する。

 

「さぁ!最初っから、クライマックスで行くよ!」

 

 

 

 

「デンライナーあるのかよ………」

 

「正直、もう驚かないつもりだったけど、アレは無理だ。何で、当たり前のようにあるんだよ」

 

「それは、多分、アイツらだからだろうな」

 

控え室で倫太郎の登場を観戦していた()たちは、デンライナーの登場に驚きながらも、一夏の一言に悲しいが納得してしまう。でも………。

 

「やり過ぎないに、千円」

 

「トラウマ案件に、二日分」

 

「巫山戯るに、二千」

 

取り敢えず、勝負でもして時間を潰そう。

 

 

 

 

「何よアレ」

 

「気にしたら負けですわ。鈴さん」

 

「そうね!それじゃあ、行くわよ!」

 

何か鈴とかが言っていたが、それよりも開始したので、先ずは上にいるアイツらの所まで行くことにする。

 

両足をしっかりと踏み込み脚の筋力と力の向きを、上に向けて放つ。

 

「せえぇえりゃあ!!!」

 

「何?!」

 

跳んだ先に居たのはさっき俺に、リタイヤしろとか言っていたダリル先輩。これは、ちゃんと思い、デンガッシャーとデンカメンソードの二本を上段から振り下ろす。

 

「くっ!舐めるなぁ!」

 

「舐めてねぇよぉ!!!!」

 

俺の振り下ろしを手に持つライフルで止めた先輩だが、そんなのはわかり切っていた事なので、俺はそのまま先輩を弾くと、デンガッシャーを投げつける。

 

「武器を投げただと!?」

 

「こうするためさ!」

 

先輩には悪いが、1人目の脱落者になってもらう。

デルタレバーを引き、ターンテーブルを回転させる。そして、決めたデンカメンになった所でレバーを押し込む。

 

『キン・アックス』

 

「この強さは、泣けるぜぇ!!!!」

 

既に自由落下をし始めているが、そんなのは関係ない。ブレードに溜まっていくエネルギーを、大振りの力とこのカメン特有のパワーを持って、先輩に向けて放つ。

 

「きゃああぁぁ!!!!!」

 

「先ずは、1人」

 

「せ、先輩!貴様ぁ!!!!」

 

親しい関係なのか、落ちていく先輩を見やった後、俺を睨みつけながら飛んで来たフォルテ先輩を見て、俺は笑う。

 

「飛んで火に入る夏の虫って、奴だよ!」

 

「先輩の仇ぃ!!」

 

グレネードランチャーを放ってくるが、その程度では意味がない。

俺は、それをデンカメンソードで切り裂きながら、挟み撃ちしようとしていたセシリアを見つけてそこに降りる。

 

「上。失礼するぜ」

 

「レディの上に乗るとは感心しませんわね!」

 

「はっはー!当たるかよ!」

 

そして、再度跳躍し高さを取り戻した所で、ケータロスの呼び出しボタンを押して、飛んで行ったデンガッシャーを()()()()

 

「もう一発行ってみようか!」

 

「させない!」

 

「そう何度も、やらせると思うな!」

 

もう一度、ぶっ放そうかと思ったが、間に入ったシャルロットとラウラの2人を見て、デンガッシャーを腰に戻す。

そして、またレバーを引き別のデンカメンで止める。

 

『ウラ・ロッド』

 

「そこだと、俺に釣られるぜ?」

 

「「っ!?」」

 

牙突の要領で、思い切り前に突き出し、さっきの横薙ぎの要領で直前上に突き放つ。

 

「きゃあああ!!!」

 

「くっ!」

 

完全には削りきれなかったが、これで厄介な2人は少しは動きづらくなっただろう。

 

「私を忘れるなぁ!!!」

 

「いいや、そんな訳じゃないよ」

 

こちらに突撃して来たフォルテ先輩を受け止め、またレバーを引く。

 

「悪いが、アンタにも堕ちて貰うぜ!」

 

「私はそう簡単には落とされ……」

 

「答えは聞いて無いけどね!」

 

『リュウ・ガン』

 

弾くと共に、銃のように構えたデンカメンの切っ先から、光弾を放つ。

 

「きゃあああ!!!!!」

 

「これで、2人目!」

 

堕ちて行く先輩を尻目に、俺は殺気と共に感じた気配に反応して、レバーを引きながら、後ろから攻撃して来た鈴を受け止める。

 

『モモ・ソード』

 

「ホント、バケモノッ!」

 

「何とでも言いなよ。それでも、俺の方が強いのだから!」

 

鈴を弾きながら、そのまま着地し、その時を狙って来たセシリアの射撃を回避した後俺は、一気に場面をクライマックスへと持っていく。

 

「お前らに、最初に言ったよね?最初からクライマックスだと」

 

『モモ・ソード』

 

『ウラ・ロッド』

 

『キン・アックス』

 

『リュウ・ガン』

 

「こっからが、本題のクライマックス(終幕)だ」

 

『フルスロットルブレイク』

 

ターンテーブルを一周するまで、レバーを引いた事で必殺技へと攻撃が変化する。

待機音と共に、レールに似たオーラの上を乗り、変身の時に出てきたエネルギーデンライナーと共に、惚けているセシリアと鈴に向かって突撃する。

 

「必殺!」

 

「ダメだ鈴!」

 

「シャル?!」

 

「させませんわ!」

 

「電車斬り!!!」

 

俺の声に抵抗しようする鈴とセシリアだったが、鈴は飛んで来たシャルロットに横に弾かれる。攻撃を加えるセシリアと、鈴を庇ったシャルロットを2人もろともに、両断する。

 

「「きゃあああ!!!!」」

 

「これで、4人!」

 

残るは、色んな意味で厄介な鈴とダメージがデカいが、上手いラウラの2人だが、負ける気はしない。

 

「鳳」

 

「鈴で、良いわよ。それで、なに?」

 

「私がアイツを止めるその内に、私ごと打て」

 

「………アンタがそれを言うの?」

 

「私だからこその提案だ」

 

「……ふふ、良いじゃ無い!乗ったわ!その代わり、歯ぁ食いしばんなさい。アンタには、色々と鬱憤があるんだから」

 

「ふっ、上等だ」

 

向こうはどうやら、作戦会議が終わったようだ。まぁ、だからと言って今の俺には問題は無い。

 

「行くぞ!」

 

「来い!」

 

機体に負傷が目立つラウラに、突撃をしてデンガッシャーとデンカメンソードの二本で、ラウラを相手に斬り結ぶ。

何となく分かっていたが、やっぱりはラウラは前の状態でも強いが、今は色んな物が落ちて、もっと強くなった様に感じる。

けど、それだけで勝利を譲ってやるほど、俺はライダーを舐めていない。

 

「これで!」

 

「掛かったな!?停止結界!」

 

「っ!?」

 

振り下ろそうとした身体が止まる。

ああ、確か物理的な動きを止めるんだったか。だが、そんな物!

 

「今だ!鈴!」

 

「龍砲最大装填。出力フルスロットル!バースト!」

 

「っ!!!!」

 

負けるか。お前らに、負けたくない気持ちがある様に、俺だって負けられ無いんだよ!

 

直後、ラウラごと撃ち放たれた龍砲により、倫太郎とラウラの2人の周りが大爆発とその爆煙の土煙が舞う。

 

取ったと、見ていた者のほとんどが確信した。

 

 

 

 

 

『Full Charge.』

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、5人、目ぇ!」

 

「嘘でしょ?!どうやってアレを抜け出したのよ!?」

 

「男に大事なのは、気合と!度胸!(それから)根性だぁ!!

 

気合いで、停止結界から抜け出した俺は、デンカメンのパスをベルトに通して、デンガッシャーのブレードを飛ばす事でその場から脱する。

流石に、法則を無視して動くのは無理があったが、どうにかなった。

 

「続けるか、鈴?」

 

「ええ!当たり前でしょ!私はこんな時に引く様な女じゃないわ!」

 

「上達だぜ!」

 

『Full Charge.』

 

「はぁあ!!!!」

 

ライダーパスをもう一度通し、この仮面ライダー電王の代名詞で決める。

 

「俺の必殺技パート1」

 

こちらに向かってくる鈴と同様に前に駆け出す。

そして、その大きなブレードを避けながら、そのままデンガッシャーを振り向きざまに切り抜く。

 

 

 

『試合終了!!勝者!三枝倫太郎!!』

 

その日、世界は彼らの存在を認識した。

 




セカン党の人たちには悪いですけど、この作品の鈴って結構強さを示すのに丁度良いんです。
すいません!


次回は、允か新太郎の対戦です。


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R.40p

三千って、こんぐらいにするつもりだったのに、何で、昨日は四千も行ったんだろ。

それよりも、今回は允対山田先生となっています。

では、どうぞ


(倫太郎)の勝利を知らせるアナウンスの後、俺は色々来ると思って身構えていたが、まるで葬式の様に静かな状態だった。

 

「あれー?俺勝ったのに、歓声の一言も無いのー?」

 

正直思ってたのと違う結果だったが、ここに長居するのも意味がないので、鈴達の容態を確認した後、その場から去って行くのだった。

 

「はぁ、なんて言うか。拍子抜けだなぁ………」

 

ライナーでこれなら、他のならもっと早くに終わっただろう。でも、まぁ、悪くは無かった。

 

「取り敢えず、鋼刃に伝えておかないとな」

 

内心で感想を考えながらも、俺は足早に控え室へと戻って行く。

 

「スパイを見つけたってねー」

 

あの人は明らかに手を抜きすぎている。

 

 

 

 

 

 

「この場合は、一夏の勝ちか?」

 

「怪しいから流しで」

 

「不服だけど、仕方ない」

 

「何やってんだよ。君たち………」

 

控え室に戻って来た俺は、何やら呆れた様子で談笑する3人に、ツッコミを入れる。

何となくだけど、想像は出来るけど、確かめないとちょっと気持ちが落ち着かない。

 

「まぁ、予想してただけさ」

 

「ふーん?まぁ、俺に実害ないならどうでも良いか。次誰だっけ?」

 

「俺と山田先生だ」

 

「何で行くのか決めたのか?」

 

新太郎のその言葉に允は、考えるそぶりをしている。

允は、ウィザードが一番好きだから使っているって、言っていたけど俺と同じように平成全ライダーにはなれる訳だから、新太郎の質問も納得出来る。

少し、考えてから頷き、そのままフィールドまで向かって行った。

 

「アレ、何で行く気だ?」

 

「何時もどおりだろ」

 

「まぁ、慣れてるのは大事だからね」

 

俺の相手と違って、允の相手はあの山田先生だから、簡単にはいかないかも知れないけど、あそこまで行けるなら大丈夫だろう。

 

第2試合

  朝凪允

   VS

  山田真耶

 

 

 

 

 

 

 

「お通夜かよ!」

 

「あ、あは、あはは……」

 

フィールドに出た俺を迎えたのは、驚く程に静かな観客達と、驚く俺に苦笑いを溢す山田先生だった。

正直、これ程までにISが最強だと信じて不敗の兵器だと思っていた事自体に、俺は驚く。

 

「最強は、絶対じゃないのに………」

 

ライダーの力だって、強かった物が通じなくなるから進化していくって言うのに、ISはほぼ低迷している状況だから、仕方がないと言えばそうなんだろう。

 

「?なにか、言いましたか?」

 

「いえ、何でも無いっすよ」

 

「そうですか………それじゃあ、始めましょうか。私だって、やるからには勝ちに行きますよ!」

 

「こっちも全力で、行かして貰うっすよ!」

 

『ドライバー・オン!』

 

互いに、強く言い合いながら俺はベルトを起こす。

そして、レバーを切り替えて待機状態へとシフトする。

 

『シャバドゥビ タッチ ヘンシン』

 

「な、なかなか、個性的なベルトですね?」

 

「こんなもんすよ。大体」

 

やっぱり、初見の人の反応はそんなもんだろうな。

慣れた俺は、そのまま指輪を嵌めて、ドライバーにかざす。

 

「変身」

 

『FLAME !! PLEASE ヒー!ヒー!ヒーヒーヒィー!! 』

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

「行きます!」

 

俺の変身が完了し、決め台詞を言うと同時に、山田先生も両手にそれぞれの武器を構えて、戦闘を開始する。

無数の弾丸の幕を『DEFEND』で防ぎながら、ソードガンで迎撃しながら突撃する。

 

「はぁぁあ!!」

 

「無駄です!」

 

まぁ、当然普通に避ける訳だが、ウィザード()は、ライナーと違って近接格闘家(インファイター)メインじゃ無い。

 

『FLY PLEASE』

 

「空を!?」

 

「山田先生には、悪いけど今の俺は魔法使いなんでね!」

 

「ですが、負けません!」

 

俺が何も無しに空を飛んでいるのに驚く山田先生だったが、そこは教師であり、さっきの鈴達とは違って直ぐに切り替えて攻撃をしてくる。

しかし、弾幕の層が暑すぎて中々切り抜けられない。

 

向こうには、まだ何か持っているだろうし、射撃の腕なら代表をも凌ぐと織斑先生が言っていたのだから、何かが無くても俺を寄せ付けず戦うことは出来るはずだ。

 

「だったら、迷ってる訳にはいかないか」

 

奥の手でも何でも無いが、出し惜しみなんてしていたら、勝てるものも勝てないのは、俺自身が分かってる。

 

「行くぜ!」

 

『DRAGON PLEASE ボー、ボー、ボーボーボー!』

 

燃え盛るドラゴンが俺を包み込み、その炎が弾けると共にフレイムドラゴンへと変身する。

その光景に、見慣れていないのか、山田先生は唖然としているが、俺はまだまだ終わらない。

 

「惚けてる時間は無いっすよ!」

 

『EXPLOSION PLEASE』

 

「燃え盛れぇ!!!」

 

「っ!?きゃあぁ!!!」

 

山田先生の隙をついて、爆裂を起こして山田先生にぶつける。

そして、その衝撃で体勢を崩した所に追い打ちをかける。

 

『キャモナ・シューティング・シェイクハンズ!DRAGON』

 

「くらえぇえええ!!!」

 

ソードガンから放たれた大火球が、山田先生に直撃する。

流石にこれを防ぐには、骨が折れるだろう。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、中々やりますね。ですが、私は先生です。これだけでは落とせませんよ!」

 

「大型タワーシールド!?」

 

ISはそれなりにデカイがそれよりもデカイシールドで防いだのか。

それにしても、かなりの耐熱性だ。仮にもドラゴンの炎を一発とは言え防いでいるのは、やっぱり侮れない。

 

「流石っすね。だったら、俺も奥の手を出すしか無いですね」

 

「まだ、あるんですか?!」

 

「俺たちは、強く。上へ。行かなければならなかったんだ!」

 

『ドラゴタイマー・セットアップ!』

 

『ウォータードラゴン!』

 

『ハリケーンドラゴン!』

 

「っ!!させません!」

 

山田先生は、俺が何をやっているのか分からなかったようだけど、増えていく俺を見て危機を感じて、攻撃をしてくるがそれをウォーターとハリケーンが、それを防ぐ。

 

『ランドドラゴン!』

 

そして、最後のランドを召喚した時に、右手のドラゴタイマーをドライバーへとかざす。

 

『All DRAGON PLEASE!』

 

そして、4人で魔法陣を描くように展開して、融合する。

 

「こっからが、ラストだ!」

 

「負けません!」

 

俺の胸、背、腕、それから背下部それぞれにドラゴンの頭、翼、腕、尻尾のそれぞれが現れ、正しく伝説のドラゴンの様な形を作り出す。

そして、山田先生がこちらに向けて放った弾幕を、背中の翼で一薙ぎで吹き飛ばす。

 

「うそ!?」

 

「さっきも言いましたが、惚けてる暇はありませんよ!」

 

「くっ!ですが、まだまだぁ!」

 

胸の龍頭から、火球を放つ。

山田先生は、両手の重火器でそれを相殺しながら、こっちに向かってくる。それを見た俺は、前に思い切り突撃し龍の腕を思い切り振り下ろす。

 

「っ!?(お、重い!)」

 

「これなら、防げはしないでしょ!」

 

「しまっ!きゃあああ!!!」

 

俺の攻撃を両手で受け止めた先生は、防げていない場所に向けて近距離から放たれた火球をもろに受けてしまう。

 

「さぁ、フィナーレだ」

 

『チョーイイネ!キックストライク サイコー!』

 

「っ!」

 

俺がキックの構えになったところで、攻撃を悟った山田先生が防御に入ろうとするが、そんなものは意味はない。

 

“威力が抑えられてる”とは言え、太陽まで飛ばせるキックをたかだかそんな鉄塊では防ぐことは出来ない!

 

「はあぁぁあ!!!!」

 

高所から回転し、そのまま山田先生目掛けて蹴り落ちる。

 

「きゃああああ!!!!!!!」

 

 

 

『し、試合終了!勝者!朝凪允!』

 

「ふぃー」

 

感想、鋼刃に行っておかないとなぁ。

 




それから、お気に入りが五十を超えました!ありがとうございます。
プロットなんて、殆どないこんな小説を読んでいただきありがたいです。

今後も見ていってもらえると、嬉しいです。



なんで、威力抑えられてるかって?そりゃ、フェニックスの二の舞になるからだよ。


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R.41p

「………ちょっと、トイレ行ってくるわ」

 

「………次はお前だから、早くに戻ってこいよ」

 

「ああ、分かってる」

 

何となく察してる一夏に見送られながら、允の試合は気になるが、俺には俺のやる事をやっていく。

なんで、アイツがこんな事を知っているのかは分からないけど、そんな事など今の状況を知らせてくれた事に比べれば、些細な疑問だ。

 

「ここか」

 

鋼刃から教えてもらった通路を進みながら、突き当たりの曲がり角で、誰かが言い争いしている言葉を聞いて、気持ちを落ち着かせる。

 

「アンタのせいで、私の人生は最悪よ!」

 

「痛っ!」

 

「どれもこれも、アンタが!アンタが、バレたりなんかしなければ良かったのよ!アンタなんかは、私の掌で踊っていれば良かったのよ!それなのに!」

 

ドンッ!!

 

捲し立てる女が、その手を振り上げた辺りで俺は、我慢利かずに通路の壁を拳で叩きつけながら、2人の前に現れる。

 

「アンタは!」

 

「し、新太郎……!?」

 

「その手を離せよ。クソババア」

 

「ば、今、何て言った!」

 

突然現れた俺に、シャルと多分本妻だった人のような人は、驚き、元本妻の方は俺の言葉に、すっかり意識がこっちに向いている。

 

「聞こえなかったのか?その手を離せよ」

 

「お前も!男なんて、私たちの前に傅いて、媚び諂っていれば良いのよ!」

 

「黙れ。ババア。テメェは、もう終わってんだよ」

 

「貴様はぁ!!」

 

「きゃあ!し、新太郎!」

 

俺の罵倒に、とうとう我慢が出来なくなったのか、掴んでいたシャルを弾き、隠し持っていたであろう拳銃を取り出してこちらに構える。

こんな所で使うのはやめとけって、鋼刃から言われてたけど、関係ないか。

 

「死ねぇ!!!」

 

「新太郎!」

 

躊躇なく引かれたその拳銃から、何発も弾丸が放たれる。

それに対して、悲痛に叫ぶシャルを尻目に俺は手を前に振るう。そして、現れたオーロラカーテンがその銃弾を防ぐ。

 

「な、なによそれ………」

 

「俺たちライダーは、皆んな普通には生きて無いんだよ。だから、お前みたいな甘い蜜を吸ってしか生きていられない奴には、勝てないんだよ」

 

「ふ、ふざけるなぁ!!!」

 

「無駄ってのが、わかんねぇのかよ」

 

オーロラカーテンを見て、何がなんだか分かってないそいつは、叫びながら俺を狙うが、その全てはオーロラカーテンによって防がれる。

そして、とうとう弾切れになったところで、俺との距離は縮まり、拳を振れば当たる程の距離にまで迫っていた。

ババアは、そこでヘタレ込み俺に怯えるように退がるが、腰が抜けているのか、上手く喋れてもいないし動けていない。

 

「ひ、た、たす、たすけて!わ、わたしは、まだ、まだ、死にたくない!」

 

「………」

 

「か、金ならやる!わたしに、出来ることなら、何だってやる、だから……!」

 

「なら、死ねよ」

 

「へ?」

 

何だってやる。そんな言葉を聞いた俺から出た言葉に、意味が分からないと言うような顔をするババアと、惚けているシャルを他所に俺は言葉を繋げる。

 

「お前が、陥れてきた人たち1人1人に詫びながら、死ねよ。今のお前に、出来ることなんてそんなもんだ」

 

「い、いやよ!し、死ぬなんて!」

 

「その手で沢山の人の命を奪って来た癖によく言うぜ」

 

「ど、どう言うこと、なの?」

 

鋼刃から聞いたこのババアの悪事。

シャルは、それがどんなモノなのかは知らないが、今は気にしない。

一向に命乞いをやめないババアに、飽きた俺はディエンドライバーを取り出し、その銃口を向ける。

 

そして、引き金をしようとした時に時間が止められるのを感じた。

 

「おいおい、仮にもライダーだろ?簡単に殺めるな」

 

「………すまん」

 

時間を止めた犯人は、ここを教えた人物でもある鋼刃だった。

 

「この女は、俺が預かるから、用事すませな」

 

「悪い。助かる」

 

「気にすんな。それに、允もそろそろ終わるから早めにしろよ?」

 

「ああ、分かった」

 

俺が頷き返すと、止まっていた時間が再度動きだす。

 

「え?あの人、は?」

 

「シャル。悪いが、全部は話せないんだ」

 

「え、う、うん。それは、分かってるんだ。でも、なんで」

 

 

 

 

 

「なんで、新太郎は泣いてるの?」

 

第三試合

  夜束叉新太郎

    VS

   更識楯無

 

 

 

 

 

 

「あら、前見た時よりも、良い顔ね。何か良いことでもあったのかしら?」

 

「合ったと言うよりも会ったが、近いなこの場合」

 

俺の番となり、フィールドに出るとそこには、学園最強と言われる楯無会長の姿があった。つまり、会長が俺の相手となる訳だ。

 

シャルとの話で、大分吹っ切れた感はあるけど、やっぱり根っこまでは変わらない。

けど、今はこの目の前の試合に集中するのみ。

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

「変身!」

 

俺は、ドライバーにライダーカードを差し込み、ディケイドへと変身する。

覚悟も勇気も貰った。だから、今度は己のモノで、進んで行くだけだ。

 

『試合開始!』

 

「先手必勝!はあぁぁあ!!!」

 

楯無会長は、その手に持つ両手槍を使って、懐まで飛んで来る。

 

「先ずは小手調べと行こうか」

 

『KAMEN RIDE RYUKI』

 

『ATTACK RIDE GUARD VENT』

 

ディケイド 龍騎になり、ガードベントでその突きを受け止める。

今までに比べれば確かに強烈な一撃だったが、まだまだ、本気じゃないだろう。

 

「やるわね?正面から受け止められるなんて」

 

「飛ばずに、舐めプしてる人に言われたくないっすね」

 

「あら、お気に召さなかった?」

 

この人は、多分本性から人をからかってるのだろう。

だが、時にそれが身を滅ぼすのをまだ、実感していないんだ。

 

「それじゃあ、これなら」

 

『KAMEN RIDE GHOST』

 

『ATTACK RIDE GAN GAN SABRE』

 

「へぇ、そんな事も出来るのね」

 

「舐めてんのも今のうちだぜっ!」

 

ディケイドゴーストになり、呼び出したガンガンセイバーで、楯無会長を思い切り弾き飛ばす。

そして、ゴーストの浮遊能力を使い、楯無会長と空中での戦闘を開始する。

パワーはそんなに無いが、色々とブーストされてるおかげか、軽々と振るえる。

 

『ATTACK RIDE BLAST』

 

「はぁ!」

 

ガンモードに変えたガンガンセイバーで、BLASTを放つ。

威力が、加算されているから、こちらを迎え撃とうとした楯無会長に、被弾する。

 

「やるわね!」

 

「本気になったか。だったら!」

 

『FORM RIDE TOKON BOOST』

 

『ATTACK RIDE SUNGLASLASHER』

 

「これなら、どうかしら!」

 

「何の!」

 

さっきよりも鋭い突きの連撃を、ガンガンセイバーとサングラスラッシャー’の二刀流で、捌ききる。

向こうは、学園最強かもしれないがこちとら日本最強の剣士に師事されたんだ。この程度では、まだ俺を倒せはしない。

 

闘魂ブーストへと強化した事で、全体的に戦闘力が上がり、楯無会長の攻撃を捌きつつも、此方らからも攻撃を加える。が、イマイチ決定打に欠けるものばかりだ。

こんな事を考えつつも、油断はせずに攻防を繰り広げていた。

 

「ねぇ、水蒸気爆発って、知ってる?」

 

「そんなの……」

 

「そうね。例えば、こんな風に」

 

「………っ!?」

 

気づいた時には遅く、俺を強烈な爆発が飲み込んで行く。

これは、別の覚悟が必要かもしれないな。

 

 

 

 

「やった、訳無いわね」

 

彼らは、決して諦めない。

周りの無能共は、彼らを罵り下に見ているが、今までの試合から安易には彼らを語るのは難しいだろう。

そんな事を思っていたら、さっきまでの容姿とは違う状態の新太郎()が地面に立っていた。

 

「流石に、簡単にはいかないわね」

 

「………出し惜しみは、無しだな。こりゃあ」

 

「へぇ?」

 

私の呟いた言葉が聞こえたのか分からないが、彼は徐に何かデバイスを取り出すと、それを操作しだす。

私の本能が不味いと告げ、妨害に出ようとするが、そう決断するには余りにも遅すぎた。

 

『KUUGA』、『AGITO』

『RYUKI』、『FAIZ』

『BLADE』、“KABUTO』

『DEN-O』、『KIVA』

『W』、『OOO』

『FOZE』、『WIZARD』

『GAIMU』、『DRIVE』

『GHOST』、『EX-AID』

『BUILD』、『ZI-O』

 

『FINAL KAMEN RIDE DECADE 』

 

 

 

 

 

コンプリートフォームは、まだ使うのは温存しておくべきだと思ってたけど、本気で行かなきゃ行けないのは、向こうだけじゃなく俺たちもだったのを忘れては行けない。

 

「余り時間は掛けられないんだよ」

 

派手に行くが、長くは出来ない。

だから、とっておきを使う。

 

『FINAL KAMEN ATTACK FORM RIDE』

 

『『『『『All RIDER』』』』』』

 

召喚された19人のライダーたち全員が、エネルギーカードとなり並び立つ。

 

「これで、どうだぁぁあ!!!!」

 

その中を通り、ライダーキックを楯無会長へと突き当てる。

 

 

 

『し、試合終了!しょ、勝者 夜束叉新太郎』

 

 




作者の独り言。

もう少し、戦闘シーンを書けたと思うけど、出来ないのが現状。

それよりも、前半をやりたいが為に後半がテキトー過ぎるのが、いかんせん………

何かいい案無いか?


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R.42p

「「いえーい」」

 

帰って来た新太郎とハイタッチする允の2人を他所に、(一夏)は、瞑想を終える。

ただ戦うのなら、いつも通りだが、次の俺の相手はアイツだ。

 

「何も心配は要らないさ」

 

「倫太郎……」

 

俺が、止まっている事に気付いた倫太郎が、横からそんな事を言ってくれた。

 

「俺たちは、君の過去を知らない。でも、君の今なら知ってる。秋十が相手なんて関係ない。気負う事なんて、何もないさ」

 

俺の心境を読んでか、そんな風に語る倫太郎に背中を押される形で、俺も允や新太郎の2人と手を合わせてから、フィールドへと進んでいった。

今の俺なら、少しは自分に自信を持てる気がする。

 

 

 

 

 

「戻った」

 

「遅かったわね?何か、あったの?」

 

「いや、ちょっと、迷っただけさ」

 

「ふぅん?」

 

用事を済ませた(鋼刃)は、唯香に何をやっていたのか怪しまれながらも、観客席で個人的に一番気になる対戦へと、意識を変える。

一夏から、最初に頼まれていた事もそろそろ告げなければ、抱えているこっちとしてもキツイものがあるのだ。

 

「いっちー勝てるかな……?」

 

「勝てるさ。アイツは、前の織斑一夏じゃない」

 

もう、一夏は己が、周りが思う織斑一夏だと信じ込み、前に進む脚を止めていたアイツじゃない。

それに、他人を舐め腐ってる秋十のクソ野郎なんかに、ライダーの力が劣ってたまるか。

 

「そろそろね」

 

「だが、俺らには見守る事しか出来ねぇよ」

 

「今後の一夏自身の事は、本当に一夏の手の中にあるんだものね」

 

「ああ」

 

勝てよ、一夏。俺らは、お前の力を信じてるんだからな。

 

第四試合

  織斑一夏

   VS

  織斑秋十

 

 

 

 

 

 

フィールドに出てきた(一夏)な事を睨みつけながら、秋十は今にも斬りかかって来そうな雰囲気を崩さない。

それ程までに、俺が注目される事が気に入らないのだろう。

正直、なんでそうまでして、俺を目の敵にするのか俺には理解出来ないが、一つだけ言えるのは学園に来る前の俺のように、何もかもを受け入れる必要は無いのだと言う事。

 

『どうやら、覚悟は決まったようだな』

 

「………ああ、だから」

 

俺の影から飛び出したソレの名は、キバットバット2世。俺は、コウモリもどきや2世とも呼ぶ。

俺とあの日、一つの契約の元俺を助けてくれた恩人?であり、もっとも力を頼りたく無い人物?だ。

だが、そんな事でくだらない事を考えるのは、もうやめたんだ。

 

突然現れたコウモリもどきに驚く秋十や観客たちを尻目に、俺は手を前に差し出す。

 

『小僧。ありがたく思え。絶滅タイムだ。ガブリっ!』

 

「………変身」

 

重く無い代償として激痛が、全身に走るが俺にはそんなのは慣れている。

そして、手に握る2世を腰に現れた止まり木に付ける。変身が完了すると共に、呼び出されたザンバットソードを握る。

 

『で、では!試合開始!』

 

「死ねぇえええ!!!」

 

俺の変身の後、試合開始となりすぐ様秋十は、何時ものように突撃して斬りかかってくるが、それをザンバットソードで軽々と受け止める。

 

「なに、澄ましたように現れてるんだよ!お前らなんて、ただの化け物だろ!死んじまえよ!」

 

「化け物、か。構わない。今の俺には、それでも認めてくれる友がある。お前とは違う道がある!」

 

「仲良しごっこしたいんだったら、地獄でしやがれぇ!!!」

 

「殺せるモノなら、殺ってみろ!」

 

力を込めて押し込もうとする秋十を、全力を持って跳ね除ける。

そして、その崩れた体勢の上からザンバットソードの袈裟斬りをぶつける。

 

「ぐあぁ!!ふ、ふざけんじゃねぇ!!なんで、俺がお前に、お前なんかに下に見られるんだ!」

 

「それが、お前と俺との差だぁ!」

 

口煩いのは今に始まった事じゃ無い。

そして、手を抜けばそれはそれで、後で面倒な事になるのも分かっている。

だから、最初から手段を問わずに全力を振るう。

 

「零落白夜!」

 

「はあぁ!!」

 

単一能力(ワンオフアビリティ)だったか、千冬姉と同じそれの力は、出力の上昇だと思ってる奴も多いらしいが、アレはISのシールドエネルギーを無効化しているだけで、別に威力はそこまで変わらない。

だが、秋十はそんな事を知らないのか、自信気に振るう。

俺は、紋章を展開してそれを受け止める。

 

もちろん、シールドエネルギーでも無ければ、単純に硬い紋章を切り裂ける筈もなく呆気なく受け止められる。

 

「なんでだよ!?これは、千冬姉の力だぞ!?」

 

「世界最強が何だ。俺は、最強だ」

 

『ウェイク・アップ・1』

 

ホイッスルを吹く2世に合わせるように、辺りが赤黒い霧に包まれる。

そして、困惑している秋十の隙を見て、紋章を展開して磔のように秋十を拘束する。

 

「ぐっ、くっ、は、はな、離せよ!」

 

「………」

 

『ふん。哀れだな』

 

ゆっくりと俺が距離を縮めていく中、文句を言う秋十に対して2世か、目の前で飛びながら、そんな事を言う。

もちろん、秋十はそれにキレて斬りかかろうとするが、紋章の拘束から抜け出せる筈もなく反動で更にダメージを受ける。

 

『己が優れていると勘違いし、別の方向に研鑽したお前とあの男とでは、人としての価値が違う』

 

「なん、だと……ッ!?」

 

『私からしてみれば、人間など絶滅しようが構わないが、面白い人間が居るのも事実。だが、貴様はそんなモノでは無い。他者を見下し己の汚点を決して認めようとしない。そのような存在、見ているだけで気に食わない』

 

2世は、基本的に自分が上位存在だと確信しているいるし、実際そうだ。それで、他種族を見下す事はあるが、認めるべきところはしっかりと認められるそんな人格者な所もある。

そんな2世からしてみれば、自分の保身しか見えていない秋十は見るに堪えないのだろう。

 

「これで、決める」

 

すっかり赤黒いオーラを纏った右拳を構えて、目の前に磔されている秋十目掛けて、一撃を振り抜く。

 

ドゴンッ!!!!

 

大きな衝撃音と共に、真ん中程に居た秋十は一瞬にしてフィールドの端の壁の方まで吹き飛ばされる。

ぶつかった衝撃で、アリーナの壁に亀裂が走るが、秋十はまだ意識はあるし、試合終了の報告はなっていない。

 

『ふん。封印されているとは言え、中々に硬いな』

 

「さっさと終わらすぞ」

 

『分かってるでは無いか』

 

俺の言葉に愉悦を感じるように、2世は止まり木へと戻り、俺はザンバットソードを構える。

そして、エネルギーを剣先に集めるようにイメージして、上段から振り下ろす。

 

「ぐっ、があああぁぁあああ!!!!!!」

 

赤黒いエネルギーが、その振り下ろしと共に放たれ、壁際の秋十をあっという間に呑み込んでいった。

 

『試合終了!勝者!織斑一夏!』

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

『まぁまぁだったぞ』

 

「うるせぇぞ。コウモリもどき」

 

そんな言葉を残して、2世はまた俺の影の中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

「一夏………」

 

(千冬)は、何のために戦っていたのだろうか。

2人が、協力しているのは見た事無かったが、それが秋十のイジメなどと分から無かった。

 

「なにが、家族だ……ッ」

 

私自身を責め立てるその言葉に返す者は、1人のこの場所には居なかった。

 




作者の独り言

個人的に2世は、本気ギルみたいな感じがする。


この後、数話書いてやっとギンベル編です!


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R.43p

何というか微妙な終わり方になっ気がするのは、気のせいだと思いたい!

そんなこんなで、第43話ですどうぞ


「まるで、お通夜だな」

 

「分かっていた事でも、実際に見るとやっぱり壮観ね」

 

「頭が沸いてる奴らばっかだっただけだろ」

 

全4試合が終わり、倫太郎達ライダーの4戦4勝のストレートと言う結果が、ISが最強だと信じてやまなかった世界各国の無能達に叩きつけられた。

(唯香)は、元の世界で一度死を体験しているから、絶対無敵、最強のモノなんてのは、信じない主義だからどうせISなんてのも、期待なんてしてなかった。

 

「これから、どうなるんだろうね」

 

「決まってる。上が騒いで、アイツらを保護という名の拘束だ」

 

「だよね」

 

静かな中で語られる私と鋼刃の会話に、今まで固まっていた本音や簪、1組の皆んなが反応を返して来た。

 

「それじゃあ、いっちー達は………」

 

「学園側が何もなければ、このまま……そうだな4人だからアメリカ、EU、日本と後何処だ?」

 

「ロシア辺りでしょうね」

 

「その4カ国に、拘束されて色んな実験に付き合わされるだろうな」

 

「倫太郎とか一夏は、解剖とかもあるかもね」

 

私としては、軽いノリで出した言葉だったのだが、皆んなには耐えられないモノだったようで、俯いていたり顔を覆っていたり、今にも泣きそうになっている。

この世界の女は、皆んな高慢な連中ばかりかと思っていたけど、こんな子も居るんだから捨てたもんじゃないのかも。

 

「ただ、織斑先生ならそれを良しとしないだろうな。あの人は、俺たちを1人の生徒として見れる少ない人だから」

 

絶望とまではいかなくても、悲しんでいた皆んなが告げられた鋼刃の言葉に喜び出す。

そうだろう。一夏に対して、思う事は沢山あるだろうけど、その程度であんな厳しい態度はそうそう取れない。

 

「さてと、俺は帰るが、唯香はどうするよ?」

 

「私も帰るわ。用事なんて無いからね」

 

「そうか」

 

短く返した鋼刃に、皆んなに別れを告げてから着いていく。

まぁ、私が慌てていない理由は、織斑先生の存在以外なんだけど。

 

「これから、どうするの?」

 

「取り敢えず、カチコミに行ってくる」

 

「そう。いってらっしゃい」

 

友を見捨てるような男に、私は惚れていないのだから。

 

 

 

 

 

ギャーギャーと、教師達に色々と叫んでる連中を見つけて(鋼刃)は、気にも止めずにその中へと入っていく。

 

「お前らそこどけよ。邪魔だ」

 

あえて傲慢に言う。

そして、それに釣られたように沢山の顔がこちらを一斉に振り向く。

その表情は、怒りや落胆、それから興味と様々だが一言言えるのは、その全てが己の欲でしか無いと言う事だけだ。

 

「なんだ。聞こえてんのか?邪魔だってんだが?」

 

「君!失礼じゃ無いのかね!?私たちを誰だと」

 

「知るか。常識の無い奴覚えて何になる」

 

「な、なんだと〜!?」

 

俺に激昂してくるじいさんの言葉を無視して、俺は言葉を続ける。

 

「ISに捉われて、過去も未来も見えていない連中に、俺の友達を渡してたまるか。それに、アイツらにアポ取りたきゃ俺を通せ」

 

そう言って、俺はクラックを開く。

その光景に、一斉にこいつらが俺に思っていた感情が一変する。

なんとまぁ、分かりやすい連中だ。こんなんで、本当に国を率いてられるのか?

 

「あの少年を捕らえろ!」

 

クラックを開いただけで、何も出さなかった俺に対して誰かが、護衛か懐刀かは分からないが、ガタイデカイ奴らに俺を捕まえるように指示を出すが、舐めているのだろうか。

 

「クソが」

 

何時もならここで、DJ銃を取り出すところだが、こんな所でアレは流石に派手すぎる。

仕方がないから、スカルマグナムを取り出して、襲いくる男たちの足元を狙って撃つ。

 

「「ぐあぁ!!」」

 

「なんだ?この程度か?」

 

「ちっ!おい!何してる!さっさとしろ!」

 

「………分かりました」

 

「IS持ちかよ」

 

俺の攻撃で吹き飛んだ男たちに苛立ちながら、隣にいた女がISを纏う。その時点で、この場にいた殆どの人が身の安全の為か避難していた。

だが、逆にそれそれでやりやすい。

 

「死ねぇ!!!」

 

「誰が」

 

アリーナでも無ければ、周りに人が多かった為か威勢の割にはそこまで高い威力の攻撃ではない。俺はソレを何時ものように、女の時間をとめる。

もちろん、突然反応が無くなった女と空中に止まった銃弾に、周りが騒がしくなるが、そんなのも消し去るようにクラックからDJ銃を取り出し、丁度持っていたオレンジロックシードを嵌める。

 

「態々、やりやすい場を作ってくれて助かったぜ」

 

『ロックオン!』

 

「吹き飛べぇ!!!」

 

引き金を引き、銃口から放たれたエネルギー弾が女にぶつかり、爆発共に後方へと吹き飛ぶ。

久々に使ったが、やっぱり威力は調整しないとやってけないかもな。ここでは

 

「それで?俺をどうするって?」

 

「ひっ!た、助けて!」

 

「俺の友達に手を出したら、今度はこれだけで済まさないからな?」

 

そう言い残し、俺はまた取り出したスチームガンの蒸気を使って、その場から消える。

 

「はぁ、後は一夏のトコだな」

 

俺自身が、こうするつもりは無かったが、アイツらの為だ俺がどうなるのは構わない。

そんな事よりも、新太郎に連絡しなくちゃな。

 

「一夏を連れて、研究所まで。とこれでいいか」

 

取り敢えず、唯香に怒られる覚悟だけはしとくか。

 

 



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第六章 Who are Me
R.44p


(新太郎)たちの存在が全世界にバレ、それにより生まれたIS学園の精鋭達との対戦から、日が明けた次の日。

俺としては、もう少し拘束されるかと思っていたら、どうやら鋼刃が暴れたらしい。しかも、生身でISを倒したとか。

まぁ、俺と允と一夏の3人が変身してるのに、生身で捌けるアイツが可笑しいのには気付いていたけど、まさか表立って動いてくれるとは思わなかった。

 

そして、この日は前に鋼刃から伝えらていたように、あのクラック内の鋼刃の研究所へと行く日だった。

 

「アンタ達何処に行くのよ?」

 

「鈴か………」

 

鋼刃から呼ばれた俺たちは、その途中授業から戻って来た鈴達と出会ってしまった。

正直、まだ全てを知るには、鈴たちは弱いし頼る事は出来ない。

それに、多分これから話されるのは、一夏の事だ。それを、仲の良いコイツらには、辛すぎる。

 

そう、俺が葛藤していたら、意外な人から声をかけられた。

 

「皇の所に行くのか?」

 

「………織斑先生」

 

「楯無会長まで………」

 

「私は貴方達の事をよく知らないけど、私はここの会長よ?気になるじゃない」

 

「お姉ちゃん……」

 

別の方向から現れた織斑先生と楯無会長に、それぞれの反応を返す。それに、同じ更識と言う苗字からだろうとは思ったが、簪とはやはり姉妹のようだ。

 

「私は、何も知らない。お前たちの事も、家族の事もだから、私は少しでも知りたい。何があったのかを」

 

そうこちらを見やる織斑先生の目は、確かな覚悟が乗っていた。

これは、もう観念するしか無いかもしれない。

 

「……允。悪いけど」

 

「連絡はもうしておいたから、気にすんな」

 

「ああ、わりぃ」

 

取り敢えず、鋼刃の方からも了承は得たので、少し広いところまで移動する。

その際、明らかに関わりが変な更識姉妹を見やりながら、何処の兄弟も面倒な奴らばっかりだと、思う。

 

「ここで良いか」

 

「?ここは、応対室ですわよ?」

 

「アンタたちは、鋼刃に会いに行くんじゃ無いの?」

 

「今から行くんだよ」

 

応対室に来た俺たちに、疑問を抱くセシリアと鈴だったが、俺が広げたオーロラカーテンを見て直ぐに驚きの表情へと変える。

 

「なにこれ?」

 

「それも含めて、後でな。それより、これから行く場所だけど、余り騒ぐなよ?」

 

「それって、どう言う事よ」

 

「見れば分かる」

 

俺たちよ発言に聞き返す鈴だったけど、それに誰かがしっかりと答える訳もなく流石に待たせすぎなのも行けないから、さっさと移動する。

 

 

 

「こ、ここは………」

 

「鋼刃の研究所だな。まぁ、研究以外の事も出来るが」

 

「いや、そんな事じゃ無いわよ。まず、どうやってここに移動できたのよ!?」

 

突然の出来事に驚きを隠しきれない鈴が、捲し立てるのが案外うるさかったので、簡単に説明する事にする。

 

「これの名前は、オーロラカーテン。場所の行き来が可能な力さ」

 

「……それも、仮面ライダーの力なの?」

 

「まぁ、似たようなもんさ」

 

実際は、本当の仮面ライダーディケイドにして、世界の破壊者である門矢士の権能の一つだけど。

そこまでは、語る必要はないだろう。

 

「鋼刃は、何の為にアンタらを呼んだのよ?」

 

「それは………」

 

「それは、一夏の為だよ」

 

「倫太郎さん?それは、どう言うことですの?」

 

指示された場所に向かう途中に、鈴から答えづらい質問を投げかけられ、困っていたら部屋の前で待っていた倫太郎が、俺の代わりに答えてくれた。

 

「ここだと話しも長くなるし、鋼刃が大変だから早く中に入ってよ」

 

「あ、ちょ、ちょっと!」

 

「取り敢えず、入ったほうが良いのでは無いのか?」

 

「そうだな。行くぞ」

 

足早に中に入っていく倫太郎を追う形で、俺たちも中に入る。

訓練ルームには何度も入った事があったが、この実験室にはまだ一回しか入ってない上に、その時は対抗戦の時だったから、見学も無く帰ったので、俺たちとしても結構この部屋は見ていて楽しい。

 

「マシンダイザーやタイムマジーン」

 

「各種ツールに、バイクまで」

 

「これ全部鋼刃が?」

 

「そうだね。だいたいのアイテムは網羅してるんじゃ無いかな?」

 

武器とかは、訓練で使ってたから持ってたのは知ってたが、まさかここまでやっているとは思わなかった。

そんな風に驚きつつも、開けた場所に出た。

 

「ねぇ、ねぇ、ねぇ!何もしないから、拘束解いて欲しいなぁー?!」

 

「誰がやるか」

 

「ふわぁー、眠い………」

 

「アレは………」

 

「束?!」

 

「あ、ちーちゃんにいっくん!やっほー!」

 

そんな場所で、キーの高い人が鋼刃に吊るされている光景に引いていたら、織斑先生がかなり驚いている。

それよりも束って事は、あのISを作った篠ノ之束って事だろう。

 

「何があったんだ?」

 

「ああ、移動しようとしたら絡まれて、そのまま連れて来てしまった」

 

「ちょっと、色んなところを弄りそうだったから、拘束してるのよ」

 

「ねぇ、ねぇ、ねぇ!さっきの事は謝るから、離してぇー」

 

「ふん。お前はそのままそこに居ろ。お前が自由だと面倒だからな」

 

「酷いちーちゃん!」

 

何というか、織斑先生でも一応あんな子供らしい所があるのか。

まぁ、確か篠ノ之束とは友人らしいから、昔からあんな感じの関係だったのだろう。

 

「それよりも、俺らを呼んだ理由があったんじゃ無いのか?」

 

「ああ、そうだった」

 

「忘れてたのかよ………」

 

俺が、呑気な返事を返す鋼刃に呆れていたら、一夏の所に行くと、そのままDJ銃を撃ち放った。

 

 



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R.45p

*こっから、オリジナルのフォームがでてきます。ので、注意してください。


「何してやがる鋼刃!?」

 

「……落ち着けお前ら。新太郎もドライバーを下ろせ」

 

「お前の態度次第だ」

 

「はぁ、もう良いやそのままで」

 

突然目の前で行われた行為に、()たちが驚いている間に、允や新太郎の2人はすぐに鋼刃へと、武器をむけて臨戦態勢を取る。

けど、そんな状況に関わらず、鋼刃は特に焦った様子は無く倫太郎や唯香も、鋼刃を止めようとはしない。

 

そんな状態の中、鋼刃が語り出した。

 

「最初、一夏と約束を結んだ時、正直に言えば何となく気付いていた」

 

「アイツが………キングだって事にか?」

 

「それもあるが、俺が言いたいのは、一夏は言わば俺たちの敵だ」

 

敵。そう短く告げられた言葉に返したのは、私たちや臨戦態勢の允たちでも無かった。

それは、さっき吹き飛ばされた一夏本人だった。

 

「俺は………一度死んでいる」

 

「だろうな。じゃなきゃ、あそこまでの侵食や依存度は高くないはずだ」

 

「………死にたくなかったんだ」

 

意味がわからない。

一夏が、死んでいる?嘘だ。一夏は、あの一夏は私が何度も一緒にバカをしたり、自分を誰よりも大切にしない、他人をそこまで信頼しないのに、誰かを守ろうとするお人好しな、あの一夏だ。

死んだって、そんなのもはや別人じゃない。

 

「イレギュラーのせいで、最初はそんな事もあるかと思ったが、そうなったのは、俺たちだけじゃない」

 

「残党か………」

 

「一年前、俺は第二回モンド・グロッソを観戦するために、ドイツに行った。そして、誘拐された」

 

私が困惑する中、男たちの間で話しが進む。

それよりも、一夏がドイツに行ったのは知っていたけど、誘拐されたのなんて、初めて聞いた。

そして、そんな私を置いて、一夏は話しを続けた。

 

「俺を誘拐した奴らの目的は、俺じゃなくて秋十だった。そして、俺が秋十じゃないと気づいたそいつらは、何の躊躇いなく俺に銃口を突きつけ引き金を引いた」

 

「俺は、確実にその時死んだ。よく分からないし、その時の事は覚えていないけど、夢のような場所でコイツに………」

 

『人のその醜い生への渇望に、私は価値を見出したのだ』

 

そう一夏の言葉を繋げるように、秋十との対決で出来たコウモリが、傲慢な態度で現れた。

 

「お前が、コイツを見出したのはそれだけじゃないだろ?」

 

『ふっ、貴様は中々に頭が回るようだな』

 

「テメェに褒められても嬉しかねぇよ。仇は良いのか?」

 

『使命も無ければ、完膚なきまでに敗北を味わってまで、抗う。それこそ、私の嫌う生き恥だ。貴様の事など、もはやどうでも良い。私は、この男の一生を見届ける。それだけだ』

 

話しの意図が全く理解出来ていないけど、ただ鋼刃とあのコウモリには因縁があって、今の一夏が居るのはあのコウモリのお陰であると言う事だけは、私にも理解出来た。

 

「……単刀直入に言うが、一夏。お前は、このままいけば長くない。もともと死んだ人間を生き返らせてんだ。それだけで、無理してるのにお前の体は、少なくとも3、4体が混ざってる」

 

「……ファンガイア、オルフェノク、オーバーロード」

 

「それから、アンデッドだ」

 

アンデッド………確か、日本語で不死身だったっけ。他にも知らない単語は出てきたけど、この、アンデッドってのだけは、一番ヤバそうに感じる。

 

「それは、なんだ?」

 

「………総称として怪人と呼ばれる化け物さ。ライダーの力は元々それの対抗策として作られた」

 

「そして、別世界から持ち込まれた、イレギュラーの一つよ」

 

「別世界、イレギュラー、ですか?」

 

新太郎や唯香の言葉に、セシリアが疑問を返す。

そして、鋼刃の行動に納得がいったのか、2人は臨戦態勢を戻すとその場に力なく座り込んだ。

 

「これから話す事は信じられないかもだから、別に構わないけど、そうなったら記憶は悪いけど、ね?」

 

「お前たちは、どうだ?允、新太郎」

 

「……構わねぇよ」

 

「俺もだ………」

 

当人たちから了承を得たことで、鋼刃や倫太郎たちは、ことの経緯や私たちの知らない鋼刃達のことを話し始めた。

 

 

 

 

 

転生、転移、異世界。

何度反芻しても、理解出来ない。けど、そんなバカな話しを鋼刃たちが話す訳がない。

それは、今まで絡んで来たから分かってる。

けど、だからこそ、私には意味が分からなかった。

 

「本当なの?」

 

「ああ、誓って事実だ。だが、さっきも言ったが、別に信じれとは言わない。その時は、まぁ、手荒になるが記憶は消させてもらう」

 

「………僕は」

 

皆んなが黙っている中、シャルロットが口を開いた。

 

「僕は、新太郎たちに助けられた。だから、どんな事でも新太郎たちの味方になりたいって思ってる。だから」

 

「だから、僕は信じる」

 

はっきりと告げられたシャルロットの言葉を皮切りに、私やセシリア、簪、ラウラに本音の4人は、信じると告げる。

そうだ。前世だったり難しい事なんて、今は関係ない。その程度で、逃げるようでは、私は一夏たちの味方なんかじゃないのだ。

 

私たちが、そんな風に意思を固めている中、今まで黙っていた織斑先生が口を開いた。

 

「私たちの目の前にいる一夏は、偽物なのか?」

 

「今のままなら………」

 

「ねぇ、それって、君が持ってる力でどうにか出来るものなの?」

 

「俺が出来るのはあくまで、アイツを助ける事だけだ。けど、一つ言えるのは」

 

「なんだ?」

 

「偽物であっても、あの一夏は本物だ」

 

「「………」」

 

短い鋼刃の言葉に、織斑先生と篠ノ之博士は黙りこむ。

2人は、私なんかよりも一夏に近かったから、私なんかよりも思うことがあるんだろう。

 

「ねぇ、下ろしてくれる?大丈夫。変な事はしないから」

 

「………」

 

「ありがと」

 

そんな時、篠ノ之博士がさっきまでとは、違った雰囲気で鋼刃に言うと、拘束が解かれ地面に下される。

すると、織斑先生のところまで行くと、そのままジッと目を合わせる。

 

「……-そうだな。私のやる事は変わらないな」

 

「うん!それでこそ、ちーちゃんだよ!」

 

「ふ、皇。お前たちの事だが、私たちは信用する。だから、一夏の事は任せたぞ」

 

「頼んだよ!こうくん!」

 

「アンタらに言われんでもやるわ」

 

2人の言葉に素っ気なく返す鋼刃だったが、その目はちゃんとしていた。そして、最後に残った更識会長の方へ皆んな視線が向く。

 

「はぁ、何だか私が、悪者見たいわね。でも、そうね。私は、ここにいる人たちと比べれば、貴方達とは関わりが薄いわ。なんだったら、さっきの話なんか、殆ど信用してないわ」

 

「そうだろうな」

 

「でも、信頼はしてる」

 

パッと広げられた扇子には、“会長!”と達筆に書かれていた。

 

「貴方達の事は、この数日で信頼してるわ。それに、仮にも貴方は、生徒を守った。生徒会長として、そんな生徒の言葉を聞かないなんて事はないわ」

 

「お姉ちゃん!それじゃあ!」

 

「えぇ、学園生徒会長として、貴方のその言葉しかと聞き届けたわ」

 

パチンと扇子を閉じて笑う会長に、呆れた顔をしつつも鋼刃は、言葉を続けた。

 

「一夏。どうやら、ここにいる連中は、バカばかりらしい」

 

「ふ、そうらしい」

 

「全力で来い。俺も“全力”で、行ってやる」

 

「っ!?ちょっと、鋼刃!」

 

「倫太郎。頼んだ」

 

突然、一夏に話しかけたかと思ったら、全力と言う言葉に唯香が反応を返すと、今まで動かなかった倫太郎が、唯香を止める。

何が何だか分からない。けど、鋼刃が何か無茶をするのだけは、分かった。

 

「コウモリもどき。行くぞ」

 

『ふん。人間、貴様も大概だな』

 

「ウルセェよ。死に損ないが」

 

「戦極ドライバー………?」

 

「…………っ!まさかっ!?」

 

允達とは同じようにドライバーと呼ばれるモノを取り出すと、腰に装着する。

そして、允や新太郎も何をするのか、分かったのか動こうとするが、寸でのところで、立ち止まる。

 

『ガブリ』

 

「変身」

 

『リンゴ!」『ヨモツヘグリ』

 

ロック・オォン!!

 

「……変身」

 

そこには、闇が二つ。




一夏が、後半仲間外れなのはわざと。

それよりも、次回は、ずっと初めて見た時から考えていたフォームよ登場です。
読んでいられるように気をつけますので、待っていてください。


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R.46p

風邪気味で小説なんて書くもんじゃ無いけど、書くしかオラにはない!


(鋼刃)が、二度目の人生を歩んだ場所は弱肉強食。弱い奴から淘汰され、強い奴らが、生き残る。正に、そんな世界だった。

 

俺の周りには、多種多様な転生特典を持った超人達。そして、幾千年と積み重ねられた技術を使う現世人。

けど、俺にはそんな何か強大な力なんてモノは無かった。合ったのは、誰よりも悪知恵が働く程度の頭と現代的な技術に、前世からの持ち越した知識のみ。

それだけでは、俺は世界を生き延びていくには困難だった。

 

だから、俺は自分を顧みない事に決めた。

 

それで、俺が負けないのなら構わない。

 

 

 

 

デッドエンドアームズ!終焉・オン・ザ・ロード!!

 

「なんだよ……あの、アームズは……」

 

「いや、ここでやんじゃねぇよ!」

 

()が、鋼刃の聞いたことのないアームズに呆気に取られていたら、新太郎が、オーロラカーテンで訓練室に全員を移動させる。

アリーナのようになっている訓練室の上で、始まった2人の対決を見ながら、俺は落ち着いた様子の唯香さんと倫太郎の方を向くと、倫太郎が、俺の気持ちを察したように語り出した。

 

「允たちは気付いてるだろうけど、アレは鋼刃が自分で生み出したアームズだよ」

 

「やっぱり。だが、アレは」

 

「そうだね。多分、俺たちが変身するライダーの中でも、あのダークキバなんて目じゃないレベルで危険だよ」

 

「ちょっと、待ってください!一夏は、危険な状態なんですか!?」

 

何気なく告げられた倫太郎の言葉に、簪を含め俺たち以外の人物が、こちらに確認を取る。

そういえば言っていなかった。

 

「一夏が変身しているライダーの名前は『ダークキバ』アレは資格の無い者が変身すればそれだけで死ぬし、生半可な状態じゃ生命力を吸い取られて死ぬ。その代わりかなり強力な力得る。まぁ、簡単に言えばこんな感じだよ」

 

「じゃあ、鋼刃の奴も死に関わるの?」

 

「いや、アイツのは違う」

 

シャルロットの疑問に倫太郎が返すが、答えは地面にヘタレこんでいた唯香さんが、ポツポツと語り出した。

 

「………デッドエンドアームズ。それは、簡単に言えば、零落白夜のようなシロモノよ……。でも、激しい出力と充填を半永久的につづけているから、使い勝手は上よ」

 

「ただ、人の身ではまともに耐えられないほどのエネルギーを使い続ければ、その身体はいずれ消えるわ」

 

「消える……でも、それって死ぬってことじゃ無いの?」

 

俺や新太郎は、何となく分かり始めているが、よく分かっていない鈴の純粋な疑問に、唯香さんは辛い笑顔を向けながら返した。

 

「死んでしまっても、魂ってのは消えないの。でも、“アレ”は皇鋼刃を消すの。魂もろとも、鋼刃の権能を」

 

「それじゃあ!」

 

「鋼刃が居なくなったようなモノよ。私はそんなの耐えられない。だから、私はあの力を封印したの。でも……!」

 

「鋼刃は、頭がキレるからね。身代わりを用意してたのさ」

 

鋼刃ならやりそうだ。

多分、鋼刃は自分の命に対する優先度が極端に低い上に、唯香さんみたいな大切な人の優先度が極端に高いのだろう。だから、そんな人達から反感を買おうと、守るために犠牲にするのを厭わない。

なんとも、俺たちなんかよりも仮面ライダーしている。

 

「取り敢えず、貴方達2人は覚えておきなさい」

 

「はいはい。分かったよ」

 

そんな、暗い空気の中意識を対決へと向ける。

 

 

 

 

 

硬い。装甲が硬い。防御が硬い。拳が硬い。パンチやキック、ザンバットソードで攻撃を加えても、イマイチ手応えを感じない。

そんな(一夏)の頭の中に、2世の声が響く。

 

『奴の特徴は、性能と自身の技術を合わせた前衛攻撃だ。少しでも手を緩めたら、押し込められるぞ』

 

「わかっ、てる!」

 

「まだまだ行くぞ!」

 

デッドエンドスカッシュ!

 

「これならぁ!」

 

『ウェイク・アップ』

 

カッティングブレードを倒して、必殺技を発動する鋼刃に合わせて、俺も2世に笛を吹かせて、必殺技を発動する。

 

紋章を展開して、ぶつけようと思い前に突き出すが、鋼刃の手に持つ大剣が、紋章を紙切れのように叩っ斬る。

そして、そのまま俺に迫ってくるブレードを間一髪の所で避ける。

 

「なんだよ……アレ」

 

『アレが、奴の能力“概念無視”の攻撃だ。簡単に言えば、防御無視だな』

 

「んなの、見てたら分かるわ………」

 

「これは、倫太郎みたいな奴に対抗する為に開発したアームズなんでな。多少の理不尽は考慮してくれよ!」

 

「それは、意味がちげぇ……ッ!」

 

ガンッと思いその大剣をなんとかザンバットソードで受け止める。だが、防御系の能力が今を成さないとなると、攻撃を受け止めるのは得策じゃ無い。

俺はすぐ様、横にズラしながら距離を取る。

 

「今の俺に取れるのは一つだ」

 

『面白い。やってみろ』

 

「言われなくともやってやらぁ……!」

 

俺は覚悟を決めて、前へと走り出した。

 

 

 

 

これから、やる事を鈴とかが見れば何か言って来そうだけど、そんなのは無視だ。

迫りくる一夏を、ソードバスターで受け止める。

 

『ウェイク・アップ』

 

「自分もろとも行く気か!」

 

「お互い楽に死ねないんだ!変わらないだろ!」

 

何とも不死身らしい戦法だ。だが、その程度では、俺は止められない。

 

デッドエンドオーレ!

 

「はあぁぁあ!!」

 

「ぐがぁあ!!!」

 

カッティングブレードを二回倒し、デッドエンドオーレによって、赤黒いオーラを纏ったソードバスターを、ザンバットソードごと一夏をぶった斬る。

だが、流石は魔皇剣だ。能力を使って無かったが、ヒビすらも入らない。そして、地面に倒れる一夏を見て、俺はソードバスターを投げ捨て、カッティングブレードを3回倒す。

 

デッドエンドスパーキング!

 

「トドメだ」

 

立ち上がろうとする一夏に対して、俺は軽く前に飛び上がり後ろ回し蹴りを撃ち込む。

 

「がああぁぁああ!!!!!!」

 

その一撃をモロに受けた一夏は、訓練室の壁に叩きつけられて、変身が解除される。

 

「先ずは…………一つ………ッ!」

 

 




デッドエンドアームズの設定を少し

仮面ライダー バロン デッドエンドアームズ
変身者:皇 鋼刃

 スペック
パンチ力:24t
キック力:30t
ジャンプ力:ひと跳び52m
走力:100mを4.1秒

武器:ソードバスター
 ソードプリンガーが、三回りほど肥大化した大剣。

 禁断と禁忌のロックシードであるリンゴロックシードもヨモツヘグリロックシードを装着して変身するアームズ。
 強力な2つのロックシードを使用しているため、絶大な力を手に入れた代わりに、その代償は約2倍にまで増加している。
 生命力の上昇と生命力の吸収により、半永続的に戦闘力を向上出来るが、そのエネルギーに人の身は勿論、オーバーロードの身体でも耐えうるには困難な程にまで上昇する。
 特異な存在である鋼刃が変身したことで、特殊能力を獲得し、概念無視の攻撃が可能となった。
 その存在が持つ能力を無視して、ダメージを与えられるこの能力もまた、反動によるダメージを負うが、何処を攻撃するかも選べるため弱点のみを狙う事も可能となる。

参考までにどうぞ。

因みにオリジナルフォームは、もう一事考えてるけど、出せるのだろうか……


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R.47p

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

一夏の変身が解除されたのを確認した俺も、変身を解除するが、反動の影響で膝をつく。

 

「鋼刃!」

 

俺が倒れかけるのを見た唯香が、周りの目など無視して魔法を行使して、俺の事を支えつつ回復魔法をかけてくれる。

 

「後で、お説教だからね」

 

「ああ、悪い。一夏の所まで、頼めるか?」

 

「分かったわ」

 

唯香に肩を支えて貰えながら、一夏のところまで連れて行ってもらう。

その途中、こちらに降りて来た倫太郎たちと合流して、一夏と対面する。

 

「気分はどうだ……?」

 

「お前にやられた事以外は、まぁ、楽になったわ」

 

「そうか。先ずは、上手くいったな」

 

俺が、一夏と戦った理由は、今の一夏を侵食しているオーバーロードやワーム、オルフェノクと言った変質した因子を殺す為。

一度死に、2世の力によってファンガイアもどきとして、言わば転生した一夏を完全な人へと戻す事は出来ない。

だが、ファンガイアはあの2世が居るから、暴走の可能性は無いが、それ以外のは危険度が高過ぎる。だから、デッドエンドの特殊能力の“概念無視”を使って、ファンガイア以外の因子だけを全て、倒したのだ。

 

「ねぇ、鋼刃。多分、一夏は選ばれてるよ」

 

「………ああ、それか。俺も、分かってる」

 

「ふーん?なら、任せたよ」

 

おんなじ存在である倫太郎からの言葉に、俺は大丈夫だと返す。

そして、允や新太郎は何かに察しているのか、最初の時のように手を出そうとはしない。

 

「一夏。さっきも言ったが、今のお前は人じゃ無い。そこだけは分かるな?」

 

「……ああ、分かっちまったからな」

 

「だから、今から、お前は人になってもらう」

 

そう言って、俺は13枚のラウズカードの束とブレイバックルを取り出し見せる。

 

「お前には、これから死ぬ間際まで行ってもらう。だから、間違っても落ちるんじゃねぇぞ?」

 

「…………」

 

カードの束やバックルを見た一夏は、何かを考えているのかジッとその2つを見ると、確信したようにその2つを手に取る。

 

「相手は、俺がやるよ。良いね?」

 

「ああ、頼んだ」

 

「それじゃあ、俺たちは戻ろう。新太郎、外まで頼めるか?」

 

「屋上で良いか?」

 

「ああ」

 

倫太郎が、やる気を見せているので、後の事は2人に任せて、新太郎に帰る節を伝えると、やっと内容が掴めたようで、鈴が案の定突っかかってくる。

 

「ちょっと、待ってよ!?私にも分かるように説明してよ!一夏は、なんでそんな事をしなくちゃいけないのよ!?」

 

「落ち着け鈴。そんなんじゃ、分かるもんも分からねぇぞ」

 

「………ッ!」

 

取り敢えず、落ち着いた鈴に経緯を説明する。

 

「怪人の中に、人の怪人がいる。今から、それを馴染ませる為に戦うのさ」

 

「なんで、戦う必要があるのですか?」

 

「怪人ってのは、言わば生態兵器の一種だからな。戦うってのが、一番良いんだよ」

 

俺もそれで、今の身体を馴染ませて行ったからな。

 

「分かったわ。分からないけど、分かったわ」

 

「なんだか、お前一夏に似てんな」

 

そんな事を語りながら、俺らはとりあえず元の世界へ戻る。

 

 

 

 

「束。お前どうするつもりだ?」

 

「帰るよ。ここには要はないし、いっくんは任せられそうだからね」

 

「そうか」

 

そうか、篠ノ之博士は現在全世界指名手配されてるから、見つかれば大騒ぎになるのか。

それにしても、最初に見た時よりも雰囲気が変わったな。

これが、もしかして素なのか?そんな事を()が思っていたら、鋼刃のところに行くと、一つのアタッシュケースを渡した。

 

「はい。コレ」

 

「………なんだこれ?」

 

「君に役立つモノだと思うよ!それから、楽しみにしてるから。あ、ねぇ、君さっきのもやもやで上空一千メートルに飛ばせる?」

 

「まぁ、出来るが………」

 

「じゃあ、お願い!」

 

そう言うと、新太郎のオーロラカーテンを通って帰って?いった。

アタッシュケースを見ながら、鋼刃は、相当疲れたようで自分の部屋に繋げたクラックからそのまま崩れるように戻って行った。

 

「朝凪。お前たちの件だが」

 

「なんか、また抗議が来てるんすか?」

 

「いや、お前達に会いたいというものだが……」

 

「拒否で。そう言うのには、興味ないんで」

 

「分かった。伝えておこう」

 

まぁ、多分、そんな事を言ったら向こうは、切れたら何かするだろうけど、鋼刃が態々目立ってくれたお陰で、下手に手を出す事は無いだろう。

まぁ、出して来たら、全力で抵抗するだけだが。

 

「……允さん達は、辛く無いのですか?」

 

俺たちも帰ろうかと思ったところで、セシリアからそんな事を聞かれた。

辛いか。そう言えばそんな事考えたこと無かったな。

 

「俺には、親が居ないんだ。捨てられたとかじゃない。2人とも死んだ。それで、この力を持ってから、1人で生きていく事を目標にしてたから、別に辛いなんて事はなかったなぁ。まぁ、特訓は死にかけたけど」

 

「俺は、自分の行動に後悔はしないって決めてるから、そんなの思った事はない」

 

「そう、なの、ですの………」

 

白騎士事件の事なんて、もうどうだって良い。

倒すべき相手が居るのだから、そいつらを倒す為ならば、後悔なんてのは持ってない。

 

「それに、ライダーが後悔なんてしたら、ダメだろ」

 

「いや、みんなにそんな事言ったって、通じないだろが」

 

「ん?まぁ、それもそうか」

 

つまるところ、俺たちは自分の納得のいく生き方を目指してるだけに過ぎないのだから。

 

 




次回もまた、文字数が増えそう………


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P.48p

今回、ブレイド作品から登場するため、オリジナルのワザがありますが、私はポーカーをそこまで知らないので、間違ってるかも知れませんが、広い心で見てくれると嬉しいです。




「それじゃあ、やろうか」

 

「ああ。そうだな」

 

鋼刃たちが居なくなった後、(一夏)は、倫太郎の言葉に答えて、受け取ったデッキから、一枚のカードを取り出す。

 

「一夏。最後の確認だよ。君は、負けない覚悟はできてるかい?」

 

負けない覚悟。それは、倫太郎に負けない覚悟じゃない。

力を制御出来ず、そのまま本当の化け物と化さない覚悟が出来ているのかと言う事だ。

 

「ああ、だから、俺は今ここに残ってるのだから」

 

「そうか。どうやら、杞憂だったみたいだね」

 

「いくぞ」

 

スペードの1。

カテゴリーエースのカードを、ブレイバックルに差し込み腰に構える。

 

そして、倫太郎は腰に現れたカリスラウザーに、ハートのカテゴリーエースのカードを取り出す。

 

そして、お互いを見据えて、叫ぶ。

 

「「変身!!!」」

 

『TURN UP』

 

『CHANGE』

 

仮面ライダー(ブレイド)となった俺と、仮面ライダーカリスとなった倫太郎は、突撃しお互いにブレイラウザーとカリスアローをぶつけ合う。

 

「俺は、もう逃げない。運命に立ち向かう!」

 

「そのいきさ!上げてくよ!」

 

「来い!」

 

そう答える俺に応えるように、俺を弾いた倫太郎は、デッキからカードを取り出す。

 

『CHOP』

 

『TORNADO』

 

『SPINNING WAVE』

 

「はあぁ!」

 

通した2枚のラウズカードの力を受けて、放ったその拳の振り下ろしには軽い竜巻が巻き起こっていた。

それを呆然と見ている訳もなく、俺もブレイラウザーのデッキを広げて、カードを2枚取り出し読み込む。

 

『METAL』

 

『BEAT』

 

『METAL PUNCH』

 

「ウェアァ!」

 

硬質化された拳をそのまま、倫太郎の拳にぶつける。

 

「くっ!」

 

「アアァ!!」

 

硬い俺の拳が、倫太郎の拳を打ち破り、そのまま直撃する。その衝撃で、後方へと飛ばされるが、倫太郎は直ぐに立ち上がり今度は3枚のカードを取り出す。

 

『DRILL』

 

『CHOP』

 

『REFLECT』

 

『COUNTER STRIKE』

 

「ゼェアァ!!」

 

3枚のカードから得た力をカリスアローに込め、こちらに放つ。

俺も、カードを使おうかと思ったが、あの矢の速さではまともに通す事は出来ないので、避けるのに専念して、しっかりとカードを取り出す。

 

『THUNDER』

 

『MACH』

 

『LIGHTNING SPRINT』

 

「っくぅ!!」

 

走力が上がりそうなコンボにしたが、思いの外上がりすぎて、制御が難しいが、それは向こうからしても、予測が出来ていないようで狙いが定まって居ない。

そして、ガラ空きの隙目掛けて、ブレイラウザーを振るう。

 

「はあぁ!」

 

「っ!なんの!」

 

「受け止めるか………」

 

受け止められるのは、正直分かっていたから驚きはしない。けど、このままでは圧倒的な経験不足から、こっちの不利なので次の手を使う。

 

倫太郎を、弾き左腕に装着されたラウズアブゾーバーに、取り出したアブゾーブクイーンをセットする。

そして、フュージョンジャックをスライドし読み込む。

 

『FUSION JACK』

 

「なるほど、だったら!」

 

『FLOAT』

 

ジャックファームとなりオリハルコンウィングが生成された事で、飛行能力を得た俺に対抗するように倫太郎はフロートのカードを読み込み、空中に浮遊する。

 

「「はあぁ!!」」

 

空中で、お互いの武器をぶつけ合いながら、多様な攻撃を交わしていく。

だが、やはり、空中戦でも経験の差は出るようで、どんどんと押されていく。

だったら!

 

「決められる前に決めてやる!」

 

「上等!」

 

空中に居ながら、2人ともカードを取り出し必殺技を決める。

 

『THUNDER』

 

『KICK』

 

『LIGHTNING BLUST』

 

「いくぞ!」

 

『DRILL』

 

『TORNADO』

 

『SPINNING ATTACK』

 

「来い!」

 

俺は上から落下の加速を加えた蹴りを。倫太郎は、下からその身体を浮き上がらせるほどの力を持った蹴りを。それぞれが、繰り出し丁度真ん中辺りで激突する。

 

「ぐはっ!」

 

「はぁ、はぁ、俺の方がまだまだ上だな」

 

競り負けた俺は、そのまま地面に落下する。

たしかに、倫太郎との差は感じていたが、まさかここまでの差があるなんて思っても居なかった。

鋼刃とも戦ったが、やっぱりこの2人は強い。

 

そう、考えながら俺は一枚のカードを取り出す。

 

「………来い」

 

それを見た倫太郎が、前に手をかざすとそこに1枚のカードが飛んでくる。

それは、俺が取り出したカードと同じカテゴリーK(キング)のカード。

 

そして、俺はそのKのカードをラウズアブゾーバーに、倫太郎はカリスラウザーに通す。

 

『『EVOLUTION』』

 

同じように発せられた音声と共に、お互いのデッキから13枚全てのカードが飛び出し、それぞれの装甲として変化していく。

本来なら、一体のみの融合であった筈が、高い融合係数により、13体のアンデッドとの融合となった想定外の強化フォーム。

それが、このブレイドキングフォームである。

 

「いく、ぞ………っ!」

 

「必ず、戻って来い。一夏」

 

そして、進化を遂げた俺の意識は、突如として暗転した。

 



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R.49p

『「AAAAAAaaaaA!!!!!」』

 

「早く戻って来なよ。一夏」

 

吠える一夏を見ながら(倫太郎)は、ワイルドスラッシャーを再度構え直す。

適正はあったとは言え、突然に13体のアンデッドと融合したのだ。それは、アンデッドたちの意思に呑まれかねない危険性を孕んでいた。

ただ、戦うだけならば、鈴たちをここから出ていってもらう必要は無い。

だが、我を忘れ暴走する一夏の姿は、余りにもアイツらには見せられるような物ではない。

 

『「AAAAAAaaa!!!」』

 

「くっ!流石に重いね」

 

『「AAAAAAaaaaaAA!!!」』

 

『THUNDER』

 

「ぬおっ!?」

 

片手剣であったブレイラウザーとは違い、両手剣となりその重量が増えた事で、総じて上がった高い攻撃力を真正面から受け止めてしまった俺は、力負けしそうになるのを耐えるが、キングフォームの各所に装飾されたアンデッドクレストから、能力を使われた事でダメージが入る。

 

「やる、ね!」

 

『「っ!!!」』

 

「ゼェアァ!!!」

 

電撃のダメージを我慢しながら、腹に蹴りを入れて後方に飛ばし、その反動を利用して距離を取る。

 

「だいぶ強くなってるけど、そのままじゃあ、俺にはその剣は届かないぜ!」

 

『「AAAAAAraaaaa!!!」』

 

「数を増やしても同じだ!」

 

『MACH』

 

『TACKLE』

 

「その程度!」

 

雄叫びを上げて、ブレイラウザーとキングラウザーの2本の醒剣を構えた一夏は、マッハとタックルの能力を発動させてこちらに向かってくるが、さっきも止める事が出来、さらにワイルドカリスとなった事で五感が研ぎ澄まされている俺は、その程度の動きでは乱されない。

 

「はあぁ!!!」

 

『「AAAAAAraaAAA!!!」』

 

高速となった一夏の乱打をワイルドスラッシャーの2本を使って、裁き続けるが、やはりパワーの差は出るようで、時々受け流せない攻撃が飛んでくるが、それだけでは終わらない。

 

「こっちも、いくぞ!」

 

『SHUFFLE』

 

『「!?」』

 

「今度は、俺の番だ!」

 

シャッフルのカードで、一夏のカードの能力をこちらに移す。高速化されたことで、少し制御に慣れないが、重いキングフォームの装甲に少しずつダメージを与えていく。

 

「そろそろ、目覚めなよ一夏!」

 

そう叫びながら、攻撃を続けた。

 

 

 

 

「やあ、はじめましてだね?(一夏)

 

「……お前は……」

 

森のような空間で、白髪の俺に出会う。

ソイツは、俺を見ると柔和に微笑んでくるが、俺はどうも警戒心を解くことは出来ない。

 

「僕は(一夏)さ。それよりも、遊ぼうよ」

 

「…………そういうことか」

 

「変身」

 

「変身」

 

(キング)は、その姿をキングフォームへと変えるが、装飾とかは同じだけど、色は金色ではなく黒い。深く黒い色一色のカラーリングをしていた。

お互いが変身したのを確認した(キング)は、そのままの雰囲気で攻撃を繰り出す。

 

「どうしたの?このままだとやられちゃうよ?ねぇ、(一夏)

 

「ちっ」

 

「ははっ!そんな怖い顔しないでよ!」

 

ヘラヘラとした態度を崩さない(キング)に対して、苛立ちを隠せない俺に奴は、楽しげにテンションを上げていく。

 

「はあぁ!!」

 

「はは!良いね!僕も乗って来たよ!」

 

「……10」

 

『SPADE 10』

 

2本の色違いの重醒剣のぶつかりの最中。俺は、ここに来た目的と己の今からの為にキングラウザーに1枚のカードを差し込む。

それを見た(キング)は、また雰囲気を変えるが、直ぐに元に戻り攻撃を再開する。

 

「君はどうするつもりだい?」

 

「………守るさ。この手で守れる奴を」

 

「そんな血濡れた手で、何が守るだよ」

 

「何も手を差し伸ばさなくても、誰かは守れるさ。………J(ジャック)

 

『SPADE JACK』

 

雰囲気は変わらない。だが、その口調はこちらを煽るような物ではなく見定めるような物だった。

 

「俺は、弱いんだ。だから、どんな風になろうとも、勝利する。そこに死があろうとも」

 

「無価値なセリフだね。でも、そう言うのは嫌いじゃないよ」

 

「………Q(クイーン)。お前は俺だ」

 

『SPADE QUEEN』

 

「そうだね。僕は君だ。君なんだよ」

 

『『BEAT』』

 

鍔迫り合いから、ビートにより強化された拳の殴り合いになる。

お互いに、ノーガードで放たれる拳を受け続けるが、俺の放った右ストレートが、(キング)の顔に打ち当たり、そのまま後ろによろける。

 

K(キング)

 

『SPADE KING』

 

「どうやら、問題はなさそうだね」

 

「ありがとな………A(エース)

 

『SPADE A』

 

『ROYAL STRAIGHT FLASH』

 

スートエースのカード5枚を装填し終えた俺の前に、黄金のカードが現れる。

そして、その中を潜り力が溜まっていくのを感じながら、(キング)へとキングラウザーを振るう。

 

「さぁ、戻りな。君なら、もう大丈夫だ」

 

そんな言葉と共に、俺の意識はだんだんと戻っていった。

 

 

 

「うぐっ!」

 

「はぁ、はぁ、やっと戻って来たね」

 

「……すまない」

 

「いいや。構わないよ」

 

現実に戻って来た俺を襲ったのは、大きな疲労感とダメージだったが、目の前の倫太郎が疲弊していることから、かなり任せてしまっていたらしい。

 

「お互い時間も無いし。終わりにしようか」

 

「ああ」

 

俺は、5枚の倫太郎は1枚のカードを取り出して、それぞれのラウザーに読み込む。

 

『SPADE 10 JACK QUEEN KING A』

 

『ROYAL STRAIGHT FLASH』

 

『WILD』

 

俺の前に黄金のカードが現れ、キングラウザーを地面に突き立てて上へと飛ぶ。

倫太郎は、その周りに大きな暴風を吹き起こすと、そのまま上昇する、

 

「「はああぁぁあ!!!!」」

 

空中で態勢を整え、そのまま目の前の敵へとキックのモーションを取り、激突する。

 




明日からの3日ほど投稿が出来ませんので、ご了承下さい。



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R.50p

お久しぶりです!

それから、本当にすいませんでしたぁ!!

派遣の日に、スイッチとソードを買って、3日で殿堂入りし厳選の沼に入り投稿を厳かにしたバカが通ります。


すいません。がんばりますはい。


爆裂による衝撃と、自分へと放たれた攻撃に意識を飛ばされそうになるが、必死に踏ん張り(一夏)自身が持てる全てをこめて、剣を振るう。

 

「はああぁぁあ!!!!!」

 

「おおぉぉぉぉお!!!!!」

 

そして、決着が着いた。

 

 

 

 

 

 

「いやー、流石に勝てないかー……」

 

「なんで、そんなに、喋れるんだよ………」

 

「まぁ、俺は特別だからな!」

 

変身が解け、そのままの姿で地面に倒れ込むも、何時もの調子でしゃべる倫太郎に辟易しながら、俺も変身を解きその場に座り込む。

 

勝負は、俺の勝利となった。

 

2人とも確かにダメージはあったが、俺が意識を失っている間の消耗が激しかった倫太郎の体力が尽き、俺に押し切られてしまい、俺の勝ちとなった。

けど、正直あまり勝ったような気はしない。

 

「なんか、納得いってないみたいだけど、過程よりも結果が語ってくれる時が多いんだよ?」

 

「……そんなのは、分かってるさ」

 

「まぁ、俺の考えを押し付けるような事はしたくないから、深くは言わないさ」

 

「ああ………」

 

気分があまり乗らない俺を尻目に、倫太郎はこれからについて話し出した。

 

「君に名前を付けるとするならば、ヒューマンファンガイアだ。けど、それは、スピリットアンデットとは違う人の形をした怪物(ファンガイア)だって、ことに気を付けなよ?」

 

「………この手は、血濡れてるのか?」

 

「血濡れるもなにも、君はまだ誰も殺して無いでしょ?それに、そんな汚れを背負うのは俺たちで、十分だよ。さて、戻ろうか」

 

「ああ」

 

倫太郎にそう返し、倫太郎が開いたクラックから、元の世界へと戻る。

何度も、思うが倫太郎たちは、本当に同い年なのだろうか。

 

そんな疑問を感じながら、俺は自分の力を確かに感じていた。

 

 

 

 

 

「皇、お前どこまで進んだ?」

 

「……なんのことすか?」

 

「ちゃんと言わないと、分からないか?」

 

一夏の一件から翌日。

祝日で休みとなったこの日、屋上で唯香や復帰した倫太郎と談笑していたら、突然上がってきた織斑先生にそんな事を聞かれた。

まだ、話すのは早いと思った俺の誤魔化しは、意味をなさず、観念したように懐から一つの端末を取り出す。

 

「作ろうと思えば出来る」

 

「なるほど、三枝たちに比べればお前はまだまだだと思っていたが、そういうところは、アイツら以上だな」

 

「それで、なんのようすか?」

 

「お前に対して、アメリカから交渉が来ている」

 

その言葉に、唯香の雰囲気が変わる。

倫太郎は、無反応だが多分俺がやれと言えば直ぐにでも動くぐらいの、準備はしているだろう。

 

「内容は?」

 

「お前の身柄の受け渡しと技術協力だ」

 

「………もし、行かないなら?」

 

「間接的に対して動くだろうな」

 

「………」

 

今までなら、周りの被害など気にせずに俺は直ぐにアメリカに襲撃しただろうが、それで生まれる影響はライダーの存在と俺の周りが賑やかになりすぎた。

もちろん、そんな事をせずにも動く事は出来る。けど、そうすれば別の所に目をつけられる。

 

「向こうの人を呼んでください。俺が、自分で肩をつけます」

 

「……分かった。日時はこちらから追って伝える」

 

「お願いします」

 

そう返すと織斑先生は、屋上から去っていった。

 

「どうするの?鋼刃が言えば、俺は動くよ」

 

「私も」

 

「落ち着けお前ら。ここは俺に任してくれ」

 

そう言い、俺はクラックから研究室へと移動する。

 

 

 

 

「はぁ、なんだか、変わらないなぁ………」

 

倫太郎と別れた後、寮の自室に戻る途中、最愛の鋼刃について1人ごちる。

そんな時、別れ道を通り過ぎようとした瞬間に後ろの襟を掴まれて、そのまま別れ道の壁に叩きつけられる。

 

「っう………」

 

「あんた、何度も何度も調子に乗って、懲りないの?」

 

私を壁に叩きつけ、周りを逃げないように取り囲まれる。

一つだけ、鋼刃にもバレて無いことがある。それは、私がクラスに馴染めてないこと。

そのせいで、こんな風にクラスメイトやその姉妹の2年、3年生などにいびられる。

 

「なんで、アンタみたいのが専用機なんか持ってんのよ。寄越しなさいよ」

 

そう言われ、ブレスレット状態の『月華』を奪おうと手首を掴まれる。

そのまま無理矢理、逆向きに手を曲げられる。

多分、この連中は専用機なんか興味がない。ただ、鋼刃や倫太郎たちと言った話題の男子連中と仲の良い私に対しての嫉妬から来ている。

 

「何とか言いなさいよ!」

 

「うぐっ………」

 

反応の無い私に、苛立ちを感じたリーダーらしき上級生が、私に平手打ちし、そのまま地面に倒されてしまう。

そして、地面に倒れる私の腹を思い切り踏みつけられる。

 

「ほんっと、イラつく!なんで、こんな奴が優遇されるのよ!それに、男なんて無能があんな風に出来ないわ!イカサマよ!」

 

私を踏みつけながら、罵詈雑言を吐く上級生。

前までなら、そんなに気にした事は無かった。まぁ、ここまでは無かったけど。

だけど、今日は私の機嫌が悪い。

 

「空気よ爆ぜろ」

 

私を、怒らせた事を後悔させてやる。

 

 

 




A抜き5Vサザンドラのハイパーボイス1本で、チャンピオン倒せて泣きそう(嬉)


ドラピオンかダゲキどっちを厳選しよう


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R.51p

結局シャンデラにしました。

皆さんは、新ポケやってます?

そんなこんなで、51話です、


「顔上げろ。唯香」

 

「………う、うん」

 

(唯香)の前でガイナ立ちしながら、正座する私を見下ろす鋼刃を恐る恐る見上げる。

 

私は、私の機嫌が悪い時にからまれた連中に、思わず爆裂魔法を放ってしまい現在、鋼刃から説教を受けているのだ。

 

「お前、俺にバレて無いとでも思ってたのか?」

 

「は、はい………」

 

「はぁ、前にも言ったが、お前は俺に少しは依存しろってよ?忘れたのか?」

 

「す、すいません………」

 

「はぁ、まぁ、俺も何も言わなかったのは、悪かったがな」

 

頭を掻き、ため息を吐く鋼刃に何も言えないでいたら、鋼刃が独り言のように語り出した。

 

「そう言えば、お前は痛みをそのまま受け入れる奴だったな。人がどれだけ心配したのか知ってもなお、自分の身体を酷使するのを厭わなかったな?」

 

その声は、怒りや呆れといった感情ではなく懐かしむような。そんな感情を感じられた。

 

「と言うわけで、罰ゲームだ」

 

「へ?」

 

どう言う訳なのか全く分からないまま、私は鋼刃に身体を拘束され、そのまま何かの準備をする鋼刃を、震えながら眺める。

 

「あ、あの、鋼刃?」

 

「……2度と我慢なんて、甘ったれた事言わないようにしてやらぁ………」

 

「ひぃ……」

 

その日の事は、思い出したく無いが、刻まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、なんか、今までよりも近くない?」

 

「そうか?まぁ、俺は構わないが」

 

「ふーん?あ、それから、被害だけど色々と誤魔化して置いたよ」

 

「すまんな。助かる」

 

「いいよ。こんな事くらい」

 

またも屋上で、寛ぎながら(倫太郎)は、唯香とイチャイチャしている鋼刃に、あの時のことを聞く。

鋼刃は、自分に任せろとは言っていたけど、俺が気にしているのはそう言う事ではない。

表立って動く事は、鋼刃の十八番ではないのだ。

 

「一応、鋼刃が動くなって、言ったから従うけど最後まで従う気は無いからね」

 

「ああ、分かってる。お前が居るってだけで十分だ」

 

「はぁ、俺が言いたいのはそう言う事じゃないんだよ。鋼刃が、態々矢面に立つ必要は無いんじゃない?ただでさえ、君の持っている技術は特別製なんだから」

 

「俺は、俺の持てる全てに厭わない」

 

「君らは、本当に似ているね」

 

唯香も唯香で、俺たちにいじめの事実を隠していた。

正直、俺はそう言うのに気付くのが鈍いから、仕方がないけど、2人とも感が鋭い。

だから、お互いがお互いに隠していると思って、お互いを心配させないように無理をしている。

昨日何があったのか何となく分かるが、多分、唯香はまた我慢する。だって、鋼刃がそうなのだから。

 

「取り敢えずは、リーダーは君だから言う事は聞くよ。でも、俺はそんなちっちゃい男じゃないよ」

 

「ああ、肝に銘じておくさ」

 

「それじゃあ、先に帰ってるよ。ごゆっくり」

 

そう別れを告げて、屋上から降りる。

今から何をしようかと迷っていたが、ふと貰った専用機の“雅狼”を動かしていなかった事を思い出して、憂さ晴らしと慣らしも兼ねて、アリーナへと移動する。

 

 

 

 

 

「そこだぁ!!!!!」

 

「しまっ!?」

 

強烈な爆裂音がアリーナに響く。

そして、2人の対決が終わりを告げた。

 

「本当に素人か?」

 

戦闘(こっち)は、君よりもベテランかもね」

 

「ふっ、それは違いない」

 

アリーナに着いた俺と出会したのは、俺と同じように専用機を慣らしに来たラウラだった。

そして、ついでに対戦形式で勝負を始め、一瞬の隙を突いた俺の勝利で終わった。

 

「そこまでの腕。やはり、我が軍にも欲しい人材だな」

 

「それは、遠慮させてもらうよ。俺はあくまで鋼刃の矛だから」

 

「確かに、貴様を扱うには難しそうだ」

 

「よく言われるよ」

 

いい感じに、発散も出来た所で夕方にもなったからご飯でも食べようかと思った矢先、ハッチの方から爆発が鳴り響く。

 

「なんだ!?」

 

「この感じは………」

 

感じた事のあるエネルギーに訝しげな俺を他所に、爆発したハッチを確認するラウラを習うように、俺も“雅狼”ごしに確認する。

 

「アレは………」

 

「允と新太郎?にしても、何であんなところで変身してんだよ」

 

「いや、止めに行くぞ!」

 

「あ!ISじゃ遅すぎる!」

 

そう言うが遅いか、先程は上の方で爆発したはずが俺の真横で爆発する。

これは、多分ファイズとカブトだな。

 

「ほんと、世話の焼ける奴らだよ」

 

何が起きたのか分からないが、戦っている2人に呆れながら、俺は時間をとめる。

 

「先ずは、落ちろ!」

 

そして、止まった2人目掛けてパイルバンカーを打ち込む。

 

「「がぐぅっ!?」」

 

「!?」

 

「あ」

 

だが、吹き飛んだ先にラウラがおり危うく、巻き込まれる所だった。

 

「君たち何やってんの?」

 

「お前たち、何をふざけている?」

 

「い、いやぁ、これは……」

 

「そ、そのだなぁ………」

 

歯切れの悪い2人に頭を捻っていたら、どうやら事情を知っていそうな奴らが割り込んで来た。

 

「ご、ごめん!僕たちが、悪いの!」

 

「そ、そうなの。どっちが、凄いのか聞いたから……」

 

「ああ、そう言う事……」

 

割り込んで来たシャルロットと簪の2人の言い分を聞くに、お互いが自分だと言ったのだろう。

俺や鋼刃よりは弱いが、一夏よりは広い2人でしかも似たような事ができるから、自分だと言うのは納得だな。

けど、これはやりすぎだ。

 

「あとで、組み手手伝ってよ」

 

「うっ………わ、分かった」

 

「………あ、ああ」

 

「シャルロット達には、向こうの片付けお願いするよ。2人にも非があるからね」

 

「うん、分かってる」

 

「そ、そうだよね」

 

取り敢えずは、被害の片付けを原因の4人に頼み俺は、1人食堂へと移動する。

ラウラは、なんだか可哀想に思えたのか、4人を手伝うと行ってついてきてくれなかった。

 

「まぁ、そこまで気にしないけど」

 

明日は、アメリカとの交渉の日だったなぁ。

 



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