告白、何年かかる? (スキンみるく)
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EPISODE1 決意

ひびきちゃんが可愛すぎたので初投稿です。オリ主にするか悩みましたが、私の大好きな五代さんに出張ってもらいました。(正直つづくかどうかわから)ないです。


「ヤバい……コレはちょっとシャレにならねぇ……!」

 

 風呂上がりに久々に体重計に乗った紗倉ひびきは、この世の終わりみたいな表情になってしまった。

 

『55.4kg』

 

今日、友人である彩也香に指摘されたとおり、この1年でずいぶんと彼女は肥えてしまった。太った原因は彩也香曰く「食べ過ぎ」だろう。ほぼ毎日のように彩也香と買い食いし、手当たり次第に物を食らっていたツケがまわってきたのだ。

 

 

「決めた! ダイエットしよう……!」

 

 

 そう言うひびきの目は決意に満ちていた。このままではダメだと己を奮い立たせ、手始めにカレーパンに齧り付く。

 

「明日から……」 

 

 紗倉ひびき……彼女が理想のモテモテボディを手に入れる日は果たして来るのだろうか……

 

 

 

 歯磨きを済ませ、ベッドに横になった私は考える。ダイエットする目的はなんなのかと。お気に入りの服を着るため? 誰もが羨む肉体を得るため? もちろんどれも間違っちゃいない。でも、きっと一番は……。

 

「アイツに女の子として見られたいから……だよなぁ」

 

 私にはいわゆる幼馴染がいる。そいつとはずーっと一緒だ。うんと小さい頃から……。いっつも笑顔で、世話焼いてくれて、私が落ち込んでたら「ひびきは笑ってたほうが可愛いよ!」なんて言ってよく励ましてくれる。究極のお人好しだ。たぶん、アイツは私がいくら太ろうと今まで通りに接してくれるんだろう。でも、だからダメなんだ。今まで通りじゃ! そう、今年こそアイツに私の気持ちを伝えるんだから!

 

「好きだ! いや、好きです! や、もっとこう色っぽく……」

 

 

 ひびきの告白シミュレーションはその後夜明けギリギリまで行われた……。

 

 

 

 

「雄介! これ3番テーブルさんな!」

「了解! ……お待たせしました! ポレポレ特製サンドイッチとコーヒーです!」

 

 

 時刻は午後五時。喫茶店ポレポレは帰宅途中の学生で賑わっていた。皇桜女学院の目と鼻の先であるし、価格も『皇桜女学院生ティータイム割引』なるサービスがあるため人気となっている。ちなみに、このサービスを考えたのは店主である『おやっさん』だ。そんな店で働く青年、五代雄介。幼くして両親を事故で亡くした彼を引き取り、育ててくれたのがおやっさんである。そんな恩に報いるため、雄介は中学を卒業後すぐさまポレポレで働き始めた。おやっさんからは高校ぐらい卒業しろ! と反対されたが、どうしても働かせて欲しいと押し切り現在に至る。元来の人懐っこさと笑顔で客からの評判は上々であり、特に皇桜女学院生は雄介目当てに通うものも多い。

 

「雄介! おやっさん! 来たぜー」

「どうもー」

 

 学校帰りのひびきと彩也香が入店してきた。彼女たち、特にひびきは雄介と幼馴染ということもあり、ポレポレとの付き合いは長い。彩也香はひびきの付き合いでこの店を知り、今ではすっかり常連である。

 

「二人ともお疲れ! いつものでいい?」

 

「うん、あたしはいつもので」

「ええっと、私はパフェなしで、サンドイッチを……野菜多めで」

 

 

 ひびきのオーダーを聞き、雄介は驚愕の表情を浮かべる。

 

「ええっ!? ひびき……パフェ食べないって本気? いつも決まって食べてるのに」

 

「あ、ああ! 今日はちょっと腹の具合が悪くてよぉ。は、ハハハ」

「大丈夫? お薬持ってくるよ」

「いや! いいってば! ホントたいしたことねーから!」

 

 ひびきの言葉に、そっか。でも無理しないでね、と労りの言葉をかける雄介。しばらくして注文の品が届いた2人は料理を楽しみつつ、ひそひそと会話を始める。

 

「なぁ、やっぱり五代にはちゃんと打ち明けるべきだって。お前ひとりじゃダイエットなんて絶対無理」

 

「わ、分かってるって! そもそも今日はダイエット付き合ってくれって言うつもりで来たんだからよ……」

 

「まったく……。ダイエット付き合って欲しいって言うだけでこれかー。こりゃアッチの付き合ってくださいは夢のまた夢、だな」

 

「ば、バカヤロー……! 雄介に聞こえちまうだろ!」

 

 

 そんなこんなで三十分ほど経過し、いよいよ意を決して雄介のもとに向かうひびき。告白するわけでもないというのに胸の鼓動が収まらない。

 

 

「ゆ、雄介……! あ、あのよ」

「ひびき、どうしたの? 別の注文?」

 

「い、いや実は相談があるんだ!」

「ん! いいよ。オレでよかったら力になるから!」

 

 

 雄介のまぶしい笑顔がひびきを襲う! 彼を一人の男性として意識しはじめてからは、より一層ひびきの弱点になってしまった。茹蛸のように赤くなった顔を隠すようにひびきは遂にその言葉を口にする。

 

「ダイエットに付き合ってくれ!!!」

 

 ひびき渾身のお願いはどうやら雄介に届いたようだ。当然である。店内に響き渡るには十分すぎる声量だったのだから。つまり……

 

『くすくす……』

 

 

 居合わせた皇桜女学院生にまで自分、太りました宣言をかましてしまった。

 

(ああああああ!!!!!)

 

 

 やってしまった……! ひびきの心はもうズタボロである。思い人である雄介のみに打ち明けるつもりが、自身の通う高校の生徒に知られてしまった……! もしひびきの手にスコップがあれば、店内に穴を掘り隠れたがっていたことだろう。

 

 

「うん! いいよ! 一緒にがんばろう、ひびき!」

 

 失神寸前のひびきに投げかけられたのは雄介のその一言。それだけでひびきはたちまち涙を浮かべ、大いに喜んだ。

 

「ま、マジでいいのかよ! 店のほうは……」

 

「心配無用! ちょうどバイトの応募が集まってきてね! まったく驚いたよ。募集した途端、もうすごいのなんの」

 

 

 ひびきの心配を一蹴したのはおやっさんだった。いやーいいね、若いってのはいい、と一人盛り上がっている。おやっさんの言葉の意味を理解しているひびきは再び顔を赤らめるが、一方の雄介は気づいていないようである。

 

「というわけで……店は大丈夫! ちょうどオレも運動不足ぎみで、何とかしなきゃな! って思ってたし!」

 

「お、おう……! じゃ、よろしく頼むよ。雄介!」

「うん! ほら、ひびきアレやろう! アレ!」

「……アレ? ああ! アレか!」

 

 

 それは、二人が幼いころからやっていたこと。ひびきが落ち込んだときや、二人でまた遊ぶ約束をした後必ずやっていたことだ。

 

『大丈夫!』

 

 

 笑顔いっぱいに親指をお互いにたてるサムズアップ。かくして、紗倉ひびきのダイエット計画が始動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただいてありがとナス! 書いた後思ったんですけど、これシルバーマンジムに通わないルートになりそう……なりそうじゃない?


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