ゼロの使い魔×ポケットモンスター  仮題名『メタモン物語』 (蜜柑ブタ)
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プロローグ

メタモン連載版、プロローグ。


 

 “彼”なのか、“彼女”なのかは、分からない。

 

 

 それでも、この出会いはきっと運命だったと、思える。

 

 

 けれど……。

 

 

 

 

「…まっ…て…。」

 

 ルイズにそっくりな、彼女の“使い魔”が、ルイズが乗っていこうとした馬に代わりに乗っていく。

 

「い…か…ない…で……。」

 

 急激な眠気にルイズは抗えず、どんどん意識が遠のいていく。

 

 ルイズそっくりに変身したその姿は、見知った人物でも見分けがつかないほど精巧だ。

 

 けれど、その顔に、大きな覚悟を秘めた表情を浮かべている。

 

 そして、彼なのか彼女なのかは分からないが、ルイズそっくりに変身しているルイズの使い魔は、馬を走らせていった。

 

「…メタモン…!」

 

 そして、必死に伸ばした手は空しく空を切り、ルイズは夢も見ないほどの眠気によって意識を失った。

 

 

 

 

 

 自分の身代わりにするために、出会ったのではない。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルイズは、その日。

 春の使い魔召喚の儀式で、その生き物と出会った。

 いくら魔法を使っても爆発しか起こらないため、ゼロなどと揶揄されるルイズが行った、何度目かの大爆発の末に、現れたのは、薄紫色の軟体生物であった。

 

 目は点みたいに小さく、鼻も耳もなく、口はあり、微妙な微笑みを浮かべている。

 

 ちょっと間抜けっぽい顔をした生き物だった。

 

 

 なんだあれ? なにあれ? っと他の生徒達がざわつく。

 

 ルイズもルイズで戸惑っていた。

 美しく強い使い魔を望んでいたのに、やってきたのは、得体の知れない軟体生物。

 それも間抜けな顔をした軟体生物。

 

 コルベールが、ルイズにコントラクトサーヴァントの儀式を促す。

 ルイズは、ビクッとし、けれど、進級のためには背に腹はかえられないと思って、仕方なくその軟体生物に使い魔の儀式を施そうと近づいた。

 

 すると、ウニョ~ンとその軟体生物が動き、あっという間にルイズとそっくりの姿へ早変わりした。

 

 ピンクの髪の毛、鳶色の瞳、白い肌、お世辞にも発育が良くない体格と身長、マントから制服、杖まで再現されていた。

 

 そのことに、ルイズもコルベールも、他の生徒達も驚いた。

 

 そして、偽のルイズが手と一体化しているであろうがそうは思わせないほど精巧な杖を手にした手をルイズに向けた。

 

 ハッとしたコルベールが慌てて魔法を使いルイズを跳ばす、その瞬間。

 

『エクスプロージョン!』

 

 ルイズそっくりの声が聞いたこともない呪文を使い、ルイズがさっきまでいた場所に爆発を放った。

 元々は、謎の軟体生物だったソレが、ルイズ特有の爆発の魔法を使ったことに、場が騒然。

 ルイズが、オロオロしていると、偽のルイズが杖の先を、またルイズに向けた。

 ハッとしたルイズは、慌てて逃げると、またエクスプロージョン!っと唱えられ、爆発が起こる。

 なんだアイツ!?っと他の生徒達が慌て出す。すると、偽のルイズは、そちらにも杖を向け、中空に向けて杖の先を向けると、エクスプロージョン!っと唱え、中空で広範囲の爆発を起こして生徒達とその使い魔達を脅かした。

 エクスプロージョン!エクスプロージョン!っと、何度か…たぶん、5回ぐらいだろうか、唱え終わると、杖の先からポッと煙だけが出るだけで終わるようになった。

 どうやら打ち止めらしい。

 コルベールが、今だ!っとルイズに叫び、ルイズは、今度は逆に慌てている偽のルイズに向かい、コントラクトサーヴァントの儀式の呪文を素早く唱え、偽のルイズを捕まえて、無理矢理キスをした。

 ルーンが刻まれ始め、その痛みで、キャア!っと悲鳴を上げた偽のルイズが、徐々に軟体生物に戻っていった。

 軟体生物に戻ったソレが、プルプルと震え、痛みにのたうっていた。

「あの、ミスタ・コルベール…、この生き物はいったい?」

「さあ…、私もこのような生き物は…。」

 そう会話している間にルーンが刻まれ終わり、軟体生物は、きゅうっ…と目をバッテン状態にして、気絶した。

 ルイズが召喚し終わったことで、使い魔召喚の儀式は終わり、他の生徒達や教師のコルベールがフライで飛んで学院に戻っていく中、ルイズは、気絶している軟体生物を抱えて、歩いて学院の寮に帰った。

 寮に帰ると、使い魔用にこしらえておいた、藁の上に軟体生物を置き、ルイズは、なんて日だ…っと、疲れてそのままベッドに横になった。

 

 

 それが、謎の軟体生物・メタモンとの最初の出会いであった。

 

 

 




よくよく考えたら、メタモンが姿だけじゃなく、技までコピーできるのってどういうことだろう?
ポケモンの不思議。


冒頭は、短編でのアルビオンでの撤退戦での一幕。


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変身生物・メタモン

メタモンの食性については、捏造です。


何にでも変身するんだから、雑食性で、かつカロリーが必要そうだから大きさの割に大食いだと思って。


 

 翌朝。

 ルイズが目を覚まし、寝返りを打つと、そこに自分の顔があってビックリした。

 偽のルイズは、ちょこんっと顎を乗せて、その横のベッドに手を置いてルイズをジ~っと見ていた。その様はなんとなく、犬のようである。

「ちょ…。あっ…。」

 あんた誰っと言いかけて、ルイズは思い出す。

 昨日の進級試験である、使い魔召喚の儀式で、自分そっくりに変身する謎の軟体生物を召喚したことを。

「な…なんで、私に変身してんのよ?」

 ルイズが起き上がりながら聞くと、偽のルイズは、ニコ~っとルイズとは違う笑い方で笑った。

 どうやら、喋ることはできないらしい。

「…喋れないの?」

 一応聞いて見ると、コクコクと頷かれた。

 性格は素直なようだ。

 外見こそルイズそっくりだが、中身は、犬猫みたいに思えた。

 ルイズは、ベッドから降り、着替えることにした。

「……着替えるの手伝って。って、できるの?」

 一応聞いてみると、立ち上がった偽のルイズがルイズの着ていた服を脱がせていき、ポイポイ部屋の中に脱がせた服を放った。

「ちょっと、投げずに畳むなり洗濯籠に入れてよね。」

 すると偽のルイズは、ピタッと止まり、キョロキョロと周りを見回す。ルイズがココだと籠を示すと、投げた服を拾って籠に詰めた。

 あら、賢いのねっとルイズは感心した。

 教えれば、着替えもタンスから出して、着せてくれた。

 細部まで人間に似せられるだけに、相応に賢いのかもしれない。

「ありがと。」

 っと、お礼を言うと。ルイズがしない笑い方で、またニコ~っと笑うのであった。

「朝ごはん食べに行くわよ。……でも、その姿はやめて。」

 すると、え~?っという感じで首を傾げる。

「ややこしいじゃない。同じ人間が歩いてたら。」

 ルイズにそう言われ、偽のルイズは、渋々といった様子で軟体生物に戻った。

 ルイズがそれを見てホッとし、扉を開けて廊下に出ると。

「あら、おはよう。」

「ゲッ…。」

「げっ、ってなによ?」

 っと言いつつ、キュルケは、クスクスと笑っていた。

「あの変な生き物ちゃんといる?」

「変な生き物って…。」

「あんたの使い魔よ。」

「べ、別に変じゃ…な…。」

 変じゃないとは言い切れず、ルイズは口を閉ざす。

 そこへ扉の向こうからウニュウニュと蠢きながら、軟体生物が出てきた。

「へ~~、よく見ると可愛い顔してるじゃない。」

「どこがよ? 間抜けじゃない。」

「シンプルで、ゴチャゴチャしてなくて、いいんじゃない? ま、私のフレイムには負けるけどね。」

 キュルケは、そう言ってオホホホっと笑い、自身の後ろに控えている大型のサラマンダーを撫でた。

 軟体生物がジーッとフレイムを見つめる。

 すると、ウニョーンと変化し、フレイムそっくりに変身した。

「あっ!」

「あらまぁ! もしかして何にでも変身できるの? ちょっと、フレイム、威嚇しちゃダメ。」

「あんたも、喧嘩腰になっちゃダメよ。」

 お互いが自分の使い魔を落ち着かせた。

 フレイムに変身していた軟体生物は、またウニョーンと変身し、ルイズの姿になった。

「ちょっとぉ、私に変身しないでよ。」

「へ~、ほんとすごいわね。ぺったんこなところまでそっくり。」

「なによ!」

「それより、食堂行かないの? 授業遅れるわよ?」

「うぐ…。」

「じゃ、お先に。」

 キュルケは、そう言って先に行ってしまった。

 ルイズは、ムスッとしつつ、大股で歩く。その後ろを、トトトっとつかず離れず偽のルイズがついてくる。

 ルイズが立ち止まる。すると偽のルイズも立ち止まる。

「ねえ…、変身解いて。」

 ルイズが、ブスッとした声で言う。

 偽のルイズは、なんで?っと言いたげに首を傾げた。

「いいから、元に戻りなさい!」

 ルイズが振り返って怒鳴る。

 怒鳴られ、ビクッとなった偽のルイズは、また渋々という様子で変身を解いて軟体生物に戻った。

 それで良しっと、ルイズがフンッと息を吐くと、また大股で歩く。

 それを一生懸命ウニョウニョ動きながら、軟体生物が追いかけた。

 アルヴィーズの食堂に入ると、軟体生物を連れたルイズに視線が集まる。

 昨日のルイズに変身した軟体生物が、ルイズの爆発魔法を操ったことなどがあり、ヒソヒソと声が聞こえる。

 ルイズは、自分の席に座ると、食事を食べ始めた。

 しかし、ふと手を止める。

 そういえば、この生き物…何食べるんだろう?っと。

 机の下を見ると、軟体生物は、ジーッとルイズを見上げている。

 ルイズは、試しに、綺麗に切られた飾りの果物を手に取って、差し出してみた。

 差し出された果物を前に、軟体生物は、アーンっと口を開け、放り込まれた果物をシャクシャクと咀嚼し飲み込んだ。

 なら、野菜は?っとサラダをフォークに刺して与えてみる。アーンとまた口を開け、放り込まれた野菜をムシャムシャ食べて飲む。

 なら、肉は?っと、一口大に切った鶏肉をフォークで刺して与えてみる。アーンとまた口を開けて、放り込まれた肉を、モグモグと食べて飲む。

 どうやら、肉でも野菜でも食べる、雑食なようだ。

 ルイズに用意されていた豪勢な朝食の半分近くを食べたところで、ケプッと息を吐き、満足したようにウネウネ動いた。大きさの割に大食いなようだ。まあ、変身能力を考えると、それだけ栄養が必要なのかもしれない。

 

 そうして朝食を食べ終え、食堂を出たときだった。

 

 

「め、メタモンだぁ!」

 

 

 食堂手前で、そんな声が聞こえた。

 ルイズがそちらを見ると、ひとりのメイドがビックリした顔をしてこちらを見ていた。

「…知ってるの?」

「あっ…、申し訳ありません! つい!」

 メイドは、青ざめ深々と頭を下げた。

「顔を上げて。怒ってるわけじゃないのよ。」

「は、はい…。」

「ねえ、知ってるなら、教えて、この生き物のこと。」

「は、はい…。」

 

 そうして、メイドは、この軟体生物のことを切れ切れとだが教えてくれた。

 

 

 軟体生物の名は、メタモン。

 

 生物や道具でも、何にでも変身できる不思議な生き物だそうだ。

 

 

 そうして教えて貰っていると、予鈴のチャイムが鳴り、ハッとしたルイズは、メタモンを抱えて教室に走ったのだった。

 

 結局、間に合わず、シュヴルーズに怒られたし、教室内の生徒達からも笑われたのだった。

 ルイズは、他の使い魔達がいる教室の後ろにメタモンをポイッと投げ落とし、自分の席に座った。

 

 そして、今日も元気に……爆発魔法を披露し、生徒達から怒られたのだった。

 

 なお、メタモンは、床に同化するように変身していて、爆発から逃れていたため、他の使い魔と違い、唯一無傷だった。

 でも、煙を吸い込んでしまったらしく、ケホッと煙を吐いたのだった。

 

 

 




シエスタから、メタモンの名を教えてもらう。

ところで、メタモンの強度(変身前)は、どれくらいなんでしょうね?
何にでも変身できるから、スライムみたいにツルッとしてて柔らかすぎるのか、ある程度硬さがあって抱えられるのか。
それとも、その場その場で硬さを変えられるのか……。


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シエスタのメタモン講座?

タイトル通り、シエスタのメタモン講座?

でも、ざっくりです。


 

 ルイズの爆発魔法で、メチャクチャになった教室の掃除を、ルイズに変身した謎の軟体生物こと、メタモンがルイズと一緒に片付けた。

 ルイズは、ルイズでも、爆発魔法でボロボロになったルイズに変身したため、ルイズは怒った。

 

 その後、メタモンのことを知っていた黒髪のメイドを呼び、メタモンのことについて教えてもらうことにした。

 シエスタというメイドは、緊張しながらメタモンについて教えてくれた。

 

 

 まず、メタモンは、シエスタの故郷の近隣の森でしか見かけられない珍しい生き物なのだそうだ。

 シエスタにとっては、身近な生き物だっただけに、メイドとして実家を出てから他の場所にいないと知ってビックリしたそうだ。

 たまに姿を現わしては、何かに変身して相手をビックリさせるイタズラ好きだとか。

 かつて、シエスタの曾祖父が飼育していたことがあるそうだが、村のお年寄り達は、メタモンが森に現れ始めたのは、よそ者だった曾祖父が来てからだとかと言っているそうだ。

 生物だけじゃなく、鉱物だろうと、道具だろうと何にでも変身できるそうだ。

 だが、くすぐられると笑ってしまい、変身が解けるそうだ。

 それを聞いたルイズは、ルイズの隣でルイズの姿になっているメタモンをくすぐってみた。

 するとメタモンは、キャッキャッと笑い、変身が解けた。

 

「ねえ…、メタモンってメイジに変身して、魔法を使うことも出来るわけ?」

「さ、さあ…、そんなことは聞いたこともありませんので…。」

「……アンタが特別だから?」

 ルイズが、シエスタからメタモンの方に視線を向ける。

 しかし、喋ることができないメタモンは、微笑んでるだけだ。

 

 ルイズは、宇宙のどこかにいる、美しく強い使い魔を望んだ。

 しかしやってきたのは、謎の変身生物、メタモンだった。

 普段は間の抜けた顔をしているだけだが、その気になれば人間にも、道具にも変身する多彩な能力を秘めている。

 

「たまに…、色違いと言われる、色が違うメタモンがいるんですけど…。ミス・ヴァリエールのメタモンは、色は同じでも、能力が高いのかもしれません。」

「…使い魔のルーンの影響かしら?」

 使い魔に刻むルーンには、使い魔に影響を及ぼすものがある。

 身体能力の強化や、知能を上げるもの、中には言語を喋れるようになるなど様々だ。

 しかし、よくよく思い出したら、使い魔召喚の時で、すでに魔法を使っていたではないか。…ルイズにとっては、忌まわしい爆発の魔法ではあったが。

 やはり、個体としての能力が抜群に高いのかもしれない。

 それとも、単にシエスタが見たことも聞いたこともないだけで、実際はメタモン達はメイジに変身して魔法を使うことも出来るのではないかとも思える。

 結局のところ……分からないが答えだ。

「まあ…いいわ。メタモン、よろしくね。」

 ルイズがそう言うと、メタモンは、再びウニョーンとルイズに変身し、ニコ~っと笑って、ルイズに抱きついた。

「もう! なんで私なの!」

 なぜかルイズに変身しまくるメタモンに、ルイズは、怒った。

 

 

 

 

 




次回は、ギーシュ戦の予定。
さっくりと終わる予定。


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メタモンと青銅と

ギーシュ戦ですが、さっくりと終わります。


 

 使い魔召喚の儀式から、3日。

 メタモンは、相変わらずルイズに変身する。

 覚えた仕事を実行するためには、どうしても人間型でないといけないようだ。だが、なぜ主人であるルイズ?

 っという疑問はさておき、あんまりにも頻繁にルイズの姿になるメタモンに、ルイズの方が折れた。というか、もう諦めた。

 なぜならいくら怒っても変身するのをやめないからだ。

 日も経てば、自分そっくりの使い魔が尽くしてくれるのには、慣れてくる。

 メタモンの変身の再現度は高い。

 だが、仕草や表情が本物と違う。そこまでは再現できないのか、あえて再現していないのか、どっちなのかは分からない。

 ルイズの後ろを、ルイズが追いかけて歩く、そんな光景は、最初こそ奇妙であったが、数日も経てば見慣れるものだ。

 間違い探しだ、などと勝手にルイズとメタモンを見比べて間違い探しをしようとする生徒までいる始末だ。

 ルイズは、ヤレヤレと思いつつも、昼ご飯の最中、ルイズに変身しているメタモンに水を注いでもらっていた。

 なお、メタモンが雑食の大食いであるため、メタモンのことを教えてくれたシエスタが気を利かせて、賄い食と野菜の切れ端や肉の端っこなどをたくさん持って来てくれているので食事問題は解決している。

 メタモンは、最初こそナイフとフォークの使い方も分からなかったようだが、ルイズの使い方を見て学んだらしく、すぐに使えるようになった。

 パンを両手で持ってモグモグと嬉しそうに口いっぱいに頬張って食べている姿は、ルイズとは違う幼さを感じさせ、ルイズは、その食事の光景を見ていて……、姉から見た妹とはこんな感じなのだろうか?っと思った。

 まあ…なんか、可愛い気がするのである。

 ルイズは、末っ子だ。上に二人姉がいる。もし自分に妹がいたらこんな気分になるのだろうか?

 そう考えていると、メタモンが、ふと何かに気がつき、床に手を伸ばした。

 そこには、香水が落ちており、メタモンは、クンクンと香水を匂った。

「あら? その色…、モンモランシーのかしら?」

 見覚えがある色の香水の瓶に、ルイズは、そう思った。

 

「それ…、私のですわ。」

 

「あら、やっぱりモンモランシーのだったのね。」

 そこへやってきた金髪の少女・モンモランシーに、ルイズがそう言った。

「なんで持ってるのかしら?」

「拾ったのよ。ほら、メタモン、返してあげなさい。」

 ルイズがそう言うと、メタモンは、モンモランシーに香水を渡した。

 そうして食事の続きを…っと思ったら…。

 ガシャーンだの、バリーンだの、と騒音。

 見れば、金髪の少年・ギーシュが頭からモンモランシーにワインをぶっかけられている光景があった。

「嘘つき!」

 モンモランシーは、涙を散らして食堂から走り去っていった。

 残されたのは静寂…。

 硬直していたギーシュは、やがて、ハンカチで頭から滴るワインを拭いた。

「彼女達は、バラの存在の意味を知らないようだ…。」

 っと、キザったらしく言っているが、周りのヒソヒソ声で、ルイズは、理解した。

 ギーシュは、二股をしたのだということを。

 するとギーシュは、なぜか、ルイズとメタモンのところに来た。

「なによ?」

「君が軽率に香水を拾ったおかげで、二人のレディの名誉が傷ついたじゃないか。」

「はあ? 何言ってんのよ? バカじゃないの? メタモンは、そこの床に落ちてた香水を拾って、モンモランシーに返して、モンモランシーが香水をあんたに返しただけでしょ? それを責任転嫁するなんて…。」

 ルイズの言葉に、周りからも、そーだそーだ! お前が悪い!っとヤジを飛ばした。

 ギーシュは、顔を赤くしてプルプルと震えた。

 どうやらやり場の無い怒りをどこかにぶつけたくて、ルイズとメタモンを標的にしたのだ。

 するとギーシュのマントを、メタモンが引っ張った。

「なにかね?」

 そして視線がメタモンに向けられると、メタモンは、食堂の出入り口を指差した。

 まるで早く行けと言いたげに。

「なんだい? 言いたいことがあるなら、言えばいいじゃないか。」

「メタモンは、喋れないのよ。」

「まったく、人のマントを断りもなく触るなんて、躾のなってない!」

 ギーシュは、バシッとメタモンの手をたたき落としてマントから手を放させた。

 その際に、メタモンに出されていた具だくさんのシチューの皿がひっくり返り、バシャッとギーシュの服にかかってしまった。

「ああ! お前! 勝手に人に触ったばかりか、僕の服を! 許さないぞ! お仕置きだ!」

「ちょっと! 待ちなさいよ! 今のは…。」

「ゼロは黙ってろ!」

 ギーシュは、薔薇細工の杖を取り出し、メタモンに向けた。

 メタモンは、キョトーンとした顔をして、杖の先とギーシュを交互に見た。

「立て! 広場でお仕置きをしてやる!」

「ダメよ、メタモン!」

 メタモンは、困った顔をして、ルイズを見た。

 だが、鼻息荒いギーシュの様子を見て……、困ったように笑って立ち上がった。

「メタモン!」

「よーし、それでいい。こっちだ。逃げるんじゃないぞ?」

「な、なあ、ギーシュ、いくらなんでも酷くないか?」

「そうだぜ。さっきのだって、どう見てもお前が…。」

「ちょっと小突くだけだ。殺しはしないさ。」

 止めようとするギーシュの友人達だが、ギーシュは聞かない。

 メタモンは、ルイズの姿のまま、ギーシュを追いかけ食堂から出て行った。

「メタモン!」

 ルイズも後を追った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 広場に、野次馬達と、中央にギーシュと、ルイズの姿をしたメタモン。

「ゼロのルイズの使い魔! 躾のなってない君を僕が躾けてやる。」

 ギーシュがそう宣言する。

 メタモンは、困ったような顔をしているだけだった。

「僕の二つ名は、青銅。噂に聞くと、お前はゼロのルイズの爆発を使えるようだな。ならば、こちらも魔法を使わせてもらう。」

 ギーシュが、薔薇の杖を振るうと青銅で出来たワルキューレが出現した。

 メタモンは、右手から杖を生やし、その杖を握る。あくまで擬態であるため、身につけている物はすべて、メタモンの身体なのだ。

「いつでも来てもいいぞ。」

『…エクスプロージョン!』

 擬態で作った杖の先をワルキューレに向け、メタモンが唱える。

 ボガーン!っと爆発が起こり、ワルキューレが一撃で大破。そして吹っ飛んだ首から上が、ギーシュの顔に高速で激突し、ギーシュは倒れた。

 シーンと場が静まりかえる。

「メタモン!」

 人をかき分け、ルイズがメタモンに駆け寄った。

 そして、中央に広がる光景に、言葉を失う。

 バラバラに粉砕されたワルキューレ。ワルキューレの頭が横に落ちていて、それの横で倒れたギーシュ。

「なに…やったの?」

 メタモンが喋れないのは分かっているが聞かずにいられなかった。

 メタモンは、自分でもまさかこんな簡単に終わると思わなかったらしく、オロオロとしていた。

 その後、騒ぎを聞きつけた教師達が駆けつけ、ギーシュは保健室へ。

 その後、ギーシュは、頭に血が上っていたことを友人達に指摘されて説教され、あとメタモンがマントを掴んで外へ行くよう促したのは、泣いて出て行ったモンモランシーに謝れと言っていたのでは?っと指摘され、その後、ルイズとメタモンに謝りに来たのだった。

 

 




このネタのメタモン的には、あんまり喋る気がなく、呪文もポケモンで言う鳴き声の技程度にしか使ってません。

なお、メタモンに刻まれているルーンは……、ガンダールヴってことにしましょうか…。
でも武器を手にする機会があるかな?


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メタモンの1日

ルイズの使い魔になった、メタモンの1日の過ごし方の1例。


短いです。


 

 メタモンの朝は早い。

 朝起きる。

 ルイズが寝ている間に、顔を洗うための水を用意しておく。

 起床時間を知らせる鐘の音が聞こえたら、ルイズを起こす。

 寝ぼけているルイズの背中を支えて起こし、桶を前に出す。

 顔を洗わせ、タオルを差し出し拭いたら、洗濯籠に。

 ネグリジェ姿のルイズの着替えを手伝い、洗濯物を洗濯籠に。

 授業に必要な教科書などを準備するのを見守り、準備ができたら、洗濯籠を抱えて、途中で洗濯物置き場に置いてから、ルイズと朝ご飯を食べに食堂へ。

 ルイズの姿で、食堂に行くのももう慣れっこで、クラスが違う生徒達の一部が見慣れずギョッとするが、もうほとんどの生徒は慣れた。

 シエスタが運んできてくれる、平民達の賄い食と肉と野菜の切れっ端をたくさん。たっぷりと食べる。

「美味しい?」

 ルイズに聞かれると、メタモンは、笑顔でコクコクと頷く。

「やあ、おはよう、メタモンくん。」

 決闘沙汰になって以来、ギーシュは、友好的にメタモンに挨拶をするようになった。

 挨拶の代わりに、ルイズに変身しているメタモンは、ニコ~っと笑う。

 それもすっかり日課だ。

 朝ご飯を食べ終われば、授業に出るため、ルイズと一緒に教室へ。

 授業中、他の使い魔達と戯れながら、授業を見守り、ルイズが失敗して爆発を起こせば一緒に片付けた。

 お昼ご飯も、朝ご飯同様に食堂で頂く。

 昼休憩には、趣味の編み物をしているルイズの真似をして編み物をしてみたり…。

 しかし、不器用なルイズとは裏腹に、メタモンは、すぐに編み物をマスターして上手に作ってしまいルイズにプンプン怒られた。

 昼休憩が終われば、また授業。

 日も暮れれば、夕飯の時間になり、食堂へ。

 その日の夕食のデザートは、ルイズが大好きなクックベリーパイだった。

 ルイズが、恍惚としてクックベリーパイを食べているのを見ながら、メタモンも食べる。そしてその美味しさにトキめき、パクパクと子供みたいに食べた。

 その姿を、ルイズがポカンッと見ていたのだが、メタモンは気がつかなかった。

 夕食後は、お風呂。

 しかし、使い魔は入れないので、外でお留守番。

 お風呂から上がれば、部屋に帰り、ルイズは、勉強机で予習復習。

 その頃には、メタモンはウトウトしていて、変身も解ける。

 そして就寝時刻になれば、ルイズはネグリジェに着替え、ベッドに入り。

「メタモン、おいで。」

 今日は一緒に寝てくれるらしかった。

 メタモンは、ニコッと笑い、ベッドの中に入る。

 ルイズは、メタモンのプルプル感が結構気に入ったらしかった。

 そして、ルイズは、メタモンを抱きしめて眠った。

 メタモンは、ルイズに抱きしめられて、その温もりを感じながらクウクウとやがて眠った。

 

 そうして、朝が来れば、また1日が始まる……。

 

 

 




デルフと出会わせるか…どうするか…、悩んでます。



とりあえず書いてるのは、現在(2019/09/18)ここまでなので、少し間が空くかも。


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メタモンの不思議

メタモンにたいする疑問など。


短いです。


 

 ルイズは、ずっと考えていた。

 

 メタモンは、ルイズの爆発の魔法を巧みに操れる。

 

 エクスプロージョン、と唱えており、詳細の呪文を省略している。

 

 エクスプロージョン…。そんな呪文を、ルイズは知らない。

 

 つまりルイズは、そんな呪文を体得した記憶も欠片もないのだ。

 

 だが、ルイズに変身してしたメタモンは、それを使うことが出来る。

 

「ねえ、メタモン。あなた、どうやってその呪文を知ったの?」

 メタモンに聞いてみるが、メタモンは困ったように笑うだけだった。

 一目見ただけで、相手の姿形どころか、技まで真似するメタモンの目は、普通の生物とはまったく違うだろう。それは間違いない。

 最近じゃ、どんな物にでも変身できる能力を知られ、コルベールが道具に変身させて、どういう細胞の構造をしているんだと目をギラギラさせていたりして……。

 よくよく考えたら、変身前はとぼけたような顔をして、実は高度な進化を遂げている凄まじい生物じゃないのかと思えてくる。

 コルベールが、メタモンは、軟体であるため全身の細胞が筋肉であり、骨であり、脳である可能性があると興奮気味に言っていた。もしそれが事実なら、鉱物系に変身しても生物としての能力を残しているのがすごい!っと言っていた。

 だが、興奮しているコルベールに、生物学に詳しい教師が、タコも岩に似せて擬態できるので、似たようなものじゃないかとツッコミを入れていたので、くすぐられて変身が解けるのだからあくまでも擬態でしかないのかもしれないと、肩を落としていた。

 しかし、変身した相手の技を見てもいないのにコピーできる点は、他の生物ではあり得ないっと研究すべき部分を見つけ再起動したのだった。

 ポイントは、やはり目だろうと思われるので、抉ろうとか言い出したので、怯えたメタモンがルイズのもとへ逃げ帰ったりした。

 ガタガタ震えるメタモンに、ルイズが何があったの?と聞いたら、メタモンがメモ帳に、コルベール、と汚い字で書いたので、コルベールにメタモンを貸すのは控えようと思った。

 

 

 ルイズは、その夜、本塔近くで試してみることにした。

 

 エクスプロージョン。

 

 その呪文をメタモンが使えるなら、自分でも使えるはずだと。

 

 周りに誰もいないことを確認し、足下にメタモンがいるのを確認してから、ルイズは、意識を集中させて杖を構えた。

 

「……エクスプロージョン!」

 

 直後、杖の先から放たれたのは、小さな火球。

 いつもと違う。

 それは、途中で止まり、徐々に大きくなっていき、破裂した。

 その爆風にルイズもメタモンも吹っ飛ばされ、

 その爆発音と振動で学院中にも響いたらしく、すぐに教員達が駆けつけてきた。

 教員達が見つけたのは、本塔の壁に叩き付けられ、気絶しているルイズとメタモンだった。

 

 そして、その日の夜、本塔の宝物庫から近頃巷を騒がせている盗賊・土くれのフーケが宝を盗んだという文字が残されており、マジックアイテムのひとつ、不思議な木の実の玉が盗まれたのだった。

 

 

 

 




呪文が省略されているため、ちっちゃい爆発しか起こせなかったです。
もし、呪文全部を唱えてたら……。大事です。


次回は、土くれのフーケ編かな。


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メタモンと不思議な木の実の玉

土くれのフーケ編。


エクスプロージョンの呪文の一部を、メタモンが詠唱。


 

 土くれのフーケは、ルイズが起こしてしまった爆発の混乱に便乗して宝物庫を荒らしたと思われる。

 本塔の壁に叩き付けられて気絶していたルイズとメタモンは、保健室に搬送された。

 数十分程度だろうか、目を覚ましたルイズは、何があったのか分からず、同じく目を覚ましたメタモンを連れて何があったのか聞こうと教師を探した。

 すると、廊下の曲がり角でヒソヒソ話が。

 思わず隠れてそのヒソヒソ話に耳を傾ける。

 

「…土くれのフーケの討伐命令をオスマン師が掲げられたって…。」

「無理だ…。土くれのフーケほどのメイジを相手にするなんて…。」

「それにしても、ミス・ヴァリエールにも困ったものだな。なぜあんなところで爆発の魔法なんて使っていたんだ?」

「ああ、きっと練習のつもりだったのだろうな。しかし、その混乱に便乗して土くれのフーケの侵入を許したことが王宮に知られたら…。」

 

 ルイズは、それを聞いて目を見開いた。

 あのいつもと違った爆発がかなり大きな混乱を招き、そのせいで最近巷を騒がせている盗賊・土くれのフーケが学院に侵入したのだと理解したからだ。

「ど、どうしよう…。……メタモン?」

 ルイズが青ざめて慌てていると、メタモンがルイズに変身して、ルイズの肩をポンッと叩いた。

 そして指で示す。

 まるで行こう!っと言いたげに。

「……どこって…まさか?」

 するとメタモンがウンウンと頷いた。

 ルイズは、ますます青ざめた。

「む、無理よ! ダメに決まってるじゃない! 単独で土くれのフーケの討伐になんて行ったら、それこそ重い処分が下るかも知れないわよ! そ、そりゃ、私のせいだって分かってるけど。って、ちょっとぉ!」

 焦るルイズの手を握り、メタモンがグイグイっと引っ張って歩いた。

 そして学院長室に来る。

「メタモ~~ン!」

 そして学院長室の扉を遠慮なくメタモンが開け、中で会議をしていたオスマン達がビックリした顔をした。

「どうしたのかね? ミス・ヴァリエール。もう身体は大丈夫なのか?」

「あ、あの…えっと…。」

「ミス・ヴァリエール! 土くれのフーケの侵入は君の責任だぞ! 分かっているのかね!?」

「ギトー! 口を閉じろ!」

「しかし!」

「では、これより、土くれのフーケの討伐を任務とする。我と思う者は杖を掲げよ!」

 しかし、誰も上げない。

「どうした! それでも貴族の子供らの手本としている教師か!? 当直の件といい、責任のなすりつけあいをしていて、それが子供らに物を教える大人の手本となるか!?」

 オスマンの怒声が響く。

 そんな中、メタモンが手を上げた。

「む? …お主は…、おお、ミス・ヴァリエールの使い魔の方か。まさか志願するというのか?」

 オスマンが聞くと、メタモンは、ウンウンと頷いた。

「め、メタモン…。」

「しかし、お前さんひとりでは、心許ないじゃろうて。誰か、共に行く者が必要じゃろう。」

「では、私が!」

 コルベールが杖を掲げた。

「メタモンくんに死なれては、とても困るので。」

「…あ、あの、ならば私も行きます!」

「ミス・ヴァリエール! 君は生徒じゃないか!」

「今回の件は私の責任です! そしてメタモンは、私の使い魔ですから!」

「ふん…、最初からそうすれば…。」

「ギトーくん。志願もしていない君が言う言葉では無いぞ。」

「うっ…。」

 オスマンに睨まれ、ギトーは悔しげに顔を歪めた。

 

 

 そして、オスマンの秘書・ロングビルの案内で、土くれのフーケが潜伏していると思われる場所へと馬車で移動した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 うち捨てられた小屋。

 そこに土くれのフーケと思われる不審人物がいたという目撃情報があったらしい。

「では、私が見てこよう。」

 そう言ってコルベールが抜き足差し足で小屋に近づき、周りの気配を魔法で探知し、人がいないのを確認したら、合図を送ってきた。

 小屋に入ると、そこには……、半分が赤、半分が白の奇妙な球体があった。大人の掌に乗るぐらいの大きさだろうか。大きすぎず小さすぎずだ。

「これが、不思議な木の実の玉?」

「うむ、おそらくそうだろう。」

「木の実にしては……。」

 なんか変。っというのがルイズの印象だった。

 すると、メタモンがその木の実(?)に触った。

 カチッと音がし、赤っぽい光が放たれ、メタモンが吸い込まれて消えた。

「ええーーーー!?」

「メタモンくん!?」

「メタモン? メタモーン!」

 ルイズが慌てて、木の実(?)を揺さぶってメタモンの無事を調べようとしたら、カチッとまた音が鳴って、パカッと紅白の境目が開き、赤い光が出て、メタモンが変身が解けた状態で飛び出した。

「メタモン! だいじょうぶ!?」

「むむ? 今のは一体…? こ、これは?」

 コルベールがデイテクト・マジックを使い木の実(?)を調べてみると……。

 

 

 登録モンスター:メタモン

 

 持ち主:ルイズ

 

 

 っという情報が抽出できた。

「うむ…、これは…。ミス・ヴァリエール、どうやらこのマジックアイテムは、君の物になってしまったようだね。」

「どういうことですか?」

「デイテクト・マジックを使ってみたら、このマジックアイテムに登録されたモンスターは、メタモンくん。そしてその持ち主は、ミス・ヴァリエールの名となっているのだ。」

「ええーーーー!? メタモン、なんてことしてくれたのよ!」

 ルイズは、驚き、メタモンを叱った。

 っとその時、外の方で地響きがした。

 外へ出ると、そこには巨大な土のゴーレムがいた。

「逃げなさい!」

「し、しかし!」

「君では相手にならない! 私が隙を作る! その隙に、マジックアイテムを持ってメタモンくんと逃げなさい!」

「こ、ここで逃げたら…、貴族じゃありません!」

 ルイズは、竦みそうになる足を叩いて奮い立たせ、杖を土のゴーレムに向けた。

「なんとか…なんとか、アレ…を、当てられれば…。」

 アレとは、エクスプロージョンのことだ。

 いつもと違う爆発の現象だったうえに、威力が凄まじかった。

 あれを当てられればこの土のゴーレムも一撃で粉砕できるはずだと思い、ルイズは、エクスプロージョンと唱えようとした直後、ルイズに変身したメタモンに掴まれ、その場から跳んで転がった。

「ちょ、メタモン!」

 メタモンは、バッと指さした。そこには、コルベールがいる。コルベールごと爆破する気だったのか?と言いたげだ。

「あ…。」

 そうだ、あの爆発で、本塔に自分達は叩き付けられたじゃないか。もしあの場で放っていたら自分達もコルベールも無事じゃすまなかった。

「ごめんね、メタモン…、私、どうかしてたわ。」

 そう謝罪したルイズを見て、メタモンは、ニコッと笑い、ルイズを助け起こした。

 そして、ルイズが杖を握る手に自分の両手を添え、顔をルイズの顔の横に付けるように近づけた。

「メタモン?」

『……エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ…。』

「メタモン…?」

『……エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ。』

 それは、まるでその言葉を唱えてくれと復唱される。

 メタモンは、その言葉を繰り返しルイズの耳元で囁きながら、ルイズの杖の先を、土のゴーレムの真ん中の胴体へ向ける。

「…土のゴーレムの中心を狙えって事ね…。分かったわ…。」

 フー…っとルイズは呼吸し、集中した。

「……エオルー・スーヌ……、フィル・ヤルン…サクサ。」

『エクスプロージョン!』

「エクスプロージョン!」

 その呪文をルイズが唱えた後、二人は同時にエクスプロージョン、と唱えた。

 杖の先から、小さな火球が飛び出し、土のゴーレムの胴体の中心に着弾すると、膨れ上がりながら土のゴーレムを抉っていき、最後に爆風を放って土のゴーレムを粉みじんにした。

 コルベールは、だぼついた袖で顔を庇いつつ、あの巨大な土のゴーレムが一発で粉砕されたことに驚いていた。

「ミス・ヴァリエール! 今…何を?」

 コルベールがそう言ってくるが、ルイズは、ペタンっとその場にへたり込んでいた。

「…ウソでしょ…。」

 あまりのことに信じられず、力が抜けたのだ。

 その直後、ルイズに変身してるメタモンの背後をロングビルが取り、ナイフを突きつけた。

「メタモン!」

「メタモンくん!」

「さあ、あの変な木の実(?)を持ってきな。でないと、このわけの分からない使い魔の首がなくなるよ?」

「ま、まさか…。」

「そうさ。私が、土くれのフーケさ。アレの使い方が分からなくてねぇ、だから利用させてもらったよ。さあ、使い魔が可愛ければ、さっさとあの木の実(?)を…、ゴホォ!?」

 次の瞬間、ロングビル、改めフーケがくの字になって吹っ飛んだ。

 腹を押さえ、転がった彼女の上に、背中から別の腕を形成してフーケの鳩尾を殴ったらしいメタモンが飛びかかり、岩に変身して、腹の上にのしかかった。

 フーケは、グェっと潰れたカエルのような声を漏らし気絶した。

 ルイズとコルベールは、一連の流れにポカーンとした。

 しかし、コルベールがハッと我に返り、慌ててロープを持って来て、気絶したフーケを縛った。

「お手柄だ、メタモンくん。」

 コルベールがメタモンを褒めたが、メタモンは、岩からルイズの姿になり、ルイズのもとへ向かった。

 メタモンは、ニコニコ笑いながらルイズに抱きついた。

『お疲れ様、ルイズ。』

 っと、ルイズの声で、けれど口調が子供っぽく言ったのだった。

「…しゃ、喋れるなら喋れるって言いなさいよ、バカ!」

 ルイズは、赤面してウガーっと怒ったのだった。

 

 

 その後、馬車に縛ったフーケを乗せ、学院に帰り、不思議な木の実の玉がルイズの物になってしまったと報告。

 それを聞いたオスマンは、それならしょうがないと言って、木の実(?)をルイズにあげようと言い出した。

 

 

 

 




主人の名誉回復のため、行動を起こしたメタモン。

土くれのフーケ編は、どうねじ込むか悩みました。
結果、こういう強引な形にしました。


たしか、呪文の詠唱が長いほど威力が上がる…でしたっけ?
ゼロの使い魔の魔法は。

なので、詠唱の一部を使うことで、射程距離が伸び、土くれのフーケの巨大な土のゴーレムが一発。
なお、ルイズがまだ虚無に目覚めてないため、メタモンが制御を補助しています。


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メタモンと魔法の剣

デルフリンガーとの出会い。



感想欄でのアイディアで、メタモンのルーンは、ガンダールヴにしました。


 

 メタモンは、とても賢い。

 変身能力を持つからだろうか、学習能力も高く、道具の使い方なども教えればすぐに使えるようなる。

 

「キャーー! ゴキブリーーー!」

 

 虫嫌いの生徒がゴキの出現に泣き叫んだ。

 直後、ルイズに変身しているメタモンが、その辺にあった鉛筆をナイフのごとく投げてゴキを仕留めた。

 あまりの早業にその場にいた者達はポッカーンだ。

 それを見たルイズは、思い付く。

 

 メタモンに武器を持たせたらどうだろうかと。

 

「メタモーン。城下町に行きましょう。」

 後日。虚無の日にルイズは、メタモンを連れて城下町に行くことにした。

 馬の後ろにルイズに変身したメタモンを乗せた。ただし、頭からローブを被せている。同じ姿の人間が歩いていたらそれこそ怪しまれるので念のためである。

 城下町に着くと、馬を駅に預け、ルイズはメタモンを連れて城下町を歩く。

「こっちよ、はぐれないでね。」

 ルイズは、メタモンがちゃんとついてきてるか確認しながら武器屋へ向かった。

 裏道を進んでいくと、やがてこじんまりした武器屋に着く。

 戸を開けると、カランカランと鈴が鳴った。

「らっしゃーい。おや? 貴族の奥様ですかい? うちは、まっとうな商売をさせて貰ってまさぁ。お上に目を付けられることなんざこれっぽっちもありませんよ。」

「客よ。」

「こりゃ驚いた! お貴族の奥様が武器を!」

「こっちの子が使うの。」

「こりゃおったまげた、こんな美少女が…、あれ?」

「気にしないで。」

 よく見たらルイズと顔が同じなのでそれに気づいた店主が訝しむので、ルイズはそう言った。

 メタモンは、キョロキョロと武器屋の店内を見渡していた。

「それでしたら、これなんざどうですかい?」

「あら、綺麗な剣ね。」

「そうでしょう! これは、かの高名なゲルマニアの…、あれ? お客さん?」

 しかしメタモンは、剣をチラッと見ただけでそれ以降見なかった。

 その様子を見たルイズは、怪しんだ。

「ねえ…、まさかパチモノを売りつけようって腹だったんじゃないでしょうね?」

「そ…、そんなことは!」

「怪しいわね…。あの子、目だけはすごいから。解析、分析能力は他を凌駕するのよ。」

「ぅぐ…。」

 ルイズがジトッと見ながら言うと、店主は観念したように呻いた。

 

『やいやい! たいしたぁ目ぇもってるらしいな、嬢ちゃん!』

 

「? 誰よ?」

「や、やい、デル公! 黙ってろ!」

「デル公?」

『一目でパチモンを見分けるたぁ、たいしたもんだぜ!』

 メタモンは、剣の束の中から、1本の剣を抜きだした。

 その剣は、長刀といった風貌であるが、刃部分は錆びており、お世辞にも良い見た目ではない。

 しかしメタモンは、剣を手にしてから、目をキラキラとさせている。

「それがいいの?」

 ルイズが聞くと、メタモンは、ルイズを見てウンウンと頷いた。

『おう? ……おめぇ…、こいつは驚いたぜ。使い手とはな…。しかもおめぇ…。まあいいや。俺を買いなよ。なあ。』

「いくら?」

「ひゃ、百で結構でさぁ。」

「あら、安いわね。」

『デルフリンガーってんだ、よろしくな。』

 そしてオマケで付けて貰った鞘にデルフリンガーを挿し、メタモンは、嬉しそうに嬉しそうに鞘ごと抱きしめて、鞘にほっぺをグリグリさせて笑った。

 ルイズは、正直剣についてはド素人なので分からないが、メタモンの目にはきっと素晴らしい武器として見えているのだろうっと思った。

 

 

 その晩、フリッグの舞踏会があった。

 

 

 ルイズもドレスを纏い、舞踏会会場になっている食堂の屋上に来た。

 普段から容姿の良いルイズが、いつもと違う格好で現れれば、たちまち男達がざわめく。

 自分と踊ってくださいという誘いをやんわり断りつつ、ルイズは、メタモンを探した。

「……なにしてんの?」

「あ、ミス・ヴァリエール。ほら、メタモンさん、給仕のお手伝いはもういいですから。」

 シエスタの近くでシエスタに変身して、給仕を手伝っていたメタモン。

 メタモンは、変身を解き、ルイズにそっくりの姿へと変わる。

 するとメタモンが、テーブルの上の料理を小皿に入れ、ルイズに差し出してきた。

「それが、美味しかったの?」

 そう聞くと、メタモンが笑顔でウンウンと頷いた。

「食べさせて。」

 そう言われたメタモンは、フォークでその料理を一口大にして、ルイズの口の中に入れた。

 貝とチーズの料理だった。(グラタンみたいなの)

「うん…、確かに美味しいわね。」

 するとメタモンは、ナプキンを手に、ルイズの口の端についたソースを拭き取った。

「ねえ、メタモン…。一緒に…踊りましょ。踊り方は見れば覚えるでしょ?」

 言われてメタモンは、他の生徒達が踊っているのを見た。

 少しの間見た後、ルイズに視線を戻し、ルイズの手を取った。

 メタモンは、今ルイズと同じ姿だ。だから、二人の同じ姿の少女が手を取り合って、踊っているのは実に不思議な光景であった。

 メタモンは、男性パートとしてルイズをリードし踊る。

 穏やかな音楽にノって二人は、クルクルと踊る。

 

「メタモン。」

 ルイズは、踊る最中に名前を呼んだ。

「使い魔が、あなたで、よかったわ。」

 ルイズが、少し恥ずかしそうに言うと、メタモンは、穏やかに優しく笑った。

 

 

 

 

 




原作では、土くれのフーケ討伐後にフリッグの舞踏会でしたが、今回は順番が前後。
虚無の日に城下町に行く前に土くれのフーケイベントがあったということにしました。

メタモンが、まだ武器を手に戦ってないので、オスマン達にガンダールヴのことが知られていません。


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メタモンのドタバタ

メタモンが困ったことに。


メタモンに、悪気はありません。


 

 ルイズは、夢を見た。

 

 まだ6つか、10くらいの頃の夢だ。

 

『お嬢様も難儀ですね…。』

『上のお姉様方は、魔法がお上手ですのに。』

 

 実家でのそんな陰口に耳を塞ぐ。

 夢の中の彼女は、悲しいときにいつも来る秘密の隠れ場所の池の小舟に乗っていた。

 二つの月が空に浮かんでいる夜。

 ルイズが、その月を眺めていると、やがてルイズを抱き上げる両の手があった。

 

『子爵様?』

 

 ずっと年上の自分の婚約者。

 貴族の間で、年の差婚は珍しくはない。ルイズも漏れなくそういう立場で幼い頃に両親が決めた相手がいた。

 

 彼の名は、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。

 

『ルイズ、小さなルイズ。こんなところにいたのかい? 逃げ隠れしたと聞いて、ビックリしたよ。僕のことが嫌いなのかと思って。』

『そ、そんなこと、ありませんわ!』

『ルイズ、ルイズ、僕の小さなルイズ。』

『子爵…さま…。』

 

 幼いルイズは、ワルドの腕の中で身を任せようと身を寄せると、プルンッとした感触が伝わってきた。

 あれ?っと思い、見ると……。

 

 点のような二つの目と、口は優しく微笑んでいるが、間抜けな顔がルイズを見ていた。

 

 

 

「メタモーーーーン!?」

 

 

 ルイズは、寮の自室で叫び声を上げていた。

 直後、ベッドからドサッと何か大きな物が転がり落ちた。

「なに? なによ?」

 慌てて明かりを探し、照らすと……そこにいたのは、夢の中で見た、ワルドそっくりになったメタモンがいた。

 メタモンは、う~っと、呻き、やがて起き上がって、眠そうな顔でルイズを見た。

「その姿! やめて! その顔でそんな顔しないで!!」

 ルイズは、ギャーギャー怒り、メタモンは、目を擦りながら、ハテナっと言いたげに首を傾げ、軟体に戻った。

 ルイズは、ワルドの姿が消えたことで、ホッと息を吐いて、バタッとベッドに倒れた。

 そして、そのまま寝てしまったため、ルイズに変身したメタモンは、寝ぼけた顔のまま、布団をルイズにかけてやり、自分もベッドの中に潜り込んだ。

 

 そして明け方、異変に気づいたルイズにより、ベッドから蹴落とされることになる。

 

 それで目を覚ましたメタモンの姿は、また若い頃のワルドになっていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌朝、ルイズは、むくれていた。

「あ~ら、どうしたの?」

「別に…。」

「メタモンちゃんは?」

「別に…。」

「あんなにお気に入りにしてたのに?」

「違うわよ!」

「え~? あんな可愛がってたのに? 違うってんなら、私が貰っちゃおうかな~?」

「なんでよ!?」

「擬態とはいえ、あれだけ精巧に変身できるんですもの。あんなのや、こんなのや…。ウフフフ…。」

「色ボケのためにメタモンを利用しないで!」

「え~、だってアンタのためにあれだけご奉仕してくれるし~? 教えれば色んなコトできるでしょ?」

 ムフフ…っと笑うキュルケに、想像してしまったルイズは、茹でダコみたいに赤面してギッとキュルケを睨んだ。

 

「待て! 不審者め!」

 

 なんか廊下の向こうから、ドタバタと音と怒声が聞こえた。

 見ると、なんか見覚えがある…黒い衣装の青年が教師達に追われていた。

 ルイズが、一転して顔を青ざめさせると、青年が走ってきて、シュバッと素早くルイズの後ろに隠れた。

「ちょっと、ルイズ? その人……。」

「し…知らない…。」

「嘘おっしゃい。顔色が最悪よ。」

「と……閉じ込めといたはずなに……。」

「なに?」

「ミス・ヴァリエール! その不審者は…。」

「えっと……。」

「もしかして……。」

 焦るルイズを余所に、キュルケが大きな羽帽子で隠れている顔を覗き見た。

「あらま…。そういうこと? メタモンちゃんってば。」

「どういうことかね?」

「これをご覧くださいな。」

 そう言ってルイズの後ろに隠れている青年の羽帽子の鍔を掴んで持ち上げた。

 隠れていた顔は、点みたいな目と、アワアワと震えた唇の無い口をしたメタモンの顔のソレだった。

 教師達は、青ざめ汗をダラダラかいているルイズをよそに青年の顔を見て、アッ!と声を上げた。

「なんだ…あの使い魔か。」

 あのルイズに変身できる変な使い魔が正体だと分かり、教師達は肩の力が抜けた。

 なんて迷惑な…っと教師達は、ゾロゾロと去って行った。

「メタモンちゃん、どうしたの? その格好? ルイズ好みに合わせたとか?」

「違うわよ!」

「なんでアンタが否定するの? 怪しいわね~?」

「違うの違うの!」

「顔のパーツは、ともかく、顔の輪郭は、整ってるわね。背も高いし、もし顔のパーツがよかったら相当ないい男なんじゃない?」

「違うーーーーーー!!」

 キュルケの追求に、ルイズは、頭を抱え、髪を振り乱して否定していた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その後。

 

「おそらく、ルーンによる主人との共感によるものじゃないかね?」

 

 メタモンを借りようとして来たコルベールが、そう言った。

 ルイズの部屋を訪ねたら、顔そのままで見たこともない青年の姿になっているメタモンと、そのメタモンを前にズーーンと暗くなっているルイズがいたので、慌てて事情を聞いたのだ。

 メタモンが一向に戻らないため、ルイズは、精神的な疲労も相まってポツリポツリと夢の内容まで答えてしまった。

 そして、得られた答えたが上記のことだ。

 言われてルイズは、ハッとする。

 言われてみれば、メタモンが変身したのは夢を見た晩のこと。

 それ以降、何度言っても若いワルドの姿から戻らない……、否、戻れないのだと。

「おそらくだが、あまりにも強くその人物を求めたがために、メタモンくんの体細胞がルーンから情報の流れ込みによって強制的にその形にならざる終えなくなっているのでは? メタモンくん、君は別に悪気があってその人物になっているのではないのだろう?」

 コルベールが聞くと、若いワルドの姿(※顔はメタモン)のメタモンは、ウンウンと頷いた。

「顔がそのままなのは…、幼い頃の記憶が曖昧だったせいじゃないのかね? しかも夢とあっては。」

「どうやったら…、戻せるんですか?」

「うーむ、このような事例は初めて見るからな…。そもそも、メタモンくんのような生き物を私は知らないし、生物学に詳しい先生方もメタモンという種族を知らないそうだ。」

 コルベールは、腕を組んでウ~ムと悩んだ。

「う~む…、おそらくは、ミス・ヴァリエールの無意識や、潜在意識に反応してしまったいるのだろうから、それを変えるより他ないと思うがね。」

「私の…。」

「例えば、君が言う、君の婚約者に直接会うとか…。」

「そ、そんな!」

 直接ワルドと会うことを提案され、ルイズは慌てた。

「しかしだね…、そうでもしないと、君の潜在的な欲求は満たせないのではないのかね? メタモンくんは、君の満たされない気持ちを無意識に満たそうとして、足りない情報を使ってその婚約者に変身しているのでは?」

「……そうだとしたら…、もう、いいわよ、メタモン…。もう十分だから。」

 しかし、メタモンは元に戻らない。

 鍔に隠れ気味になっている顔を見ると、困っているように笑っていた。

「じゃ、じゃあ、私に変身しなさい。」

 そう言うとメタモンは、顔を上げてルイズに変身した。

「なんで、私には簡単に変身するのよ!」

「ふむ、相変わらず、すごい再現度だ。」

 足の先から髪の先まで精巧にルイズに変身したメタモンに、ルイズは怒り、コルベールは感心していた。

 

 

 




ルーンの五感共有で、無意識にルイズが夢で見た若い頃のワルドに変身。
ただ、夢の中でメタモン顔のワルドを見ちゃったため、顔がメタモンのまま。

でも、変身しろと命令されれば、他に変身は可能。ただ変身を解くと、自然とまたメタモン顔のワルドに。
メタモン自身も制御できず困ってる。


次回は、アンリエッタ。


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メタモンと王女様

アンリエッタ登場。


そしてアルビオン編へ。


 

「思い出したわ! わたくし達が、ほら、アミアンの包囲戦と呼んでいる、あの、一戦よ!」

「姫様の寝室で、ドレスを奪い合ったときですね。」

 

 ルイズと、美しい女性が思い出話に浸っているのを見守りながら、メタモンは、フア~とあくびをした。

 

 

 時は、少し遡る。

 

 ルイズが夢で見た若い頃のワルドの姿に、メタモンの顔状態になっているメタモンが、すっかり学院中に知られた頃の授業中だった。

 ルイズは、姿が元通りの軟体になれずにいるメタモンを教室の後ろに立たせ、暗く沈んでいた。

 若い頃のワルドは、背が高く、そのため、いくら擬態で再現している帽子のツバで隠しているとはいえ、顔が下から見えてしまう。なので、一見整った姿なのに、顔だけ間抜けなので笑いのネタになっていた。

 

 なんで、あんな夢を見てしまったんだと……、ルイズは今日ほど自分を呪ったことは無い。

 

 ギトーの授業は、いつもつまらないのだが、なぜか妙に着飾ったコルベールが乱入してきて授業は中断された。

 

 なんと、トリステインの王女である、アンリエッタが、学院に来ると言うのである。

 ゲルマニアからの帰りにこの学院に来ると。

 歓迎式典を急遽行うため、生徒達、そして教師達も正装してくるようにっと言い渡したのである。

 ルイズは、青ざめた。

 とてもじゃないが、今のメタモンを見せれない!

 なので、授業中断後、即部屋に帰り、正装しながらメタモンに、部屋から出るなと口を酸っぱくして命令し、ドアに厳重に鍵をしてアンリエッタの馬車を迎えるため学院の広場に向かった。

 そこでルイズは、思わぬ人物を遠目に見ることになる。

 

 グリフォンに乗り、アンリエッタが乗るユニコーンの馬車を守る存在。

 

 グリフォン隊隊長となった、自身の婚約者、ワルドがいたのだ。

 

 すっかり立派な男に成長し、立派なヒゲも生やしたワルドの横顔を見て、ルイズは、ボーッとした。

 

 その後、その夜、心ここにあらずな状態で部屋に帰ると、メタモンは、すっかり元の軟体生物の姿になっていた。

 

 どうやらコルベールの推測は正しかったらしく、本物のワルドを見たことでルイズの無意識の欲求が満たされ、メタモンがワルドの姿でいる理由も無くなったため元に戻ったのだ。

 ルイズは、そのことに、単純な自分が恥ずかしくなり、そのままベッドに寝転がった。

 メタモンは、どうしたの?っと言いたげに、ルイズの姿になってルイズを眺めた。

 しかし、ルイズは、壁の方に顔を向けていて、メタモンを見ていない。布団を抱きしめて寝転がっている。

 すると、扉が外から叩かれる音がしたので、ルイズを起こそうとメタモンが、ルイズを揺すった。

 何度か叩かれる。まるで何かの合図を表わすように、リズムを刻む。

 その音に、ルイズは、ハッと起き上がり、慌てて扉を開けた。

 

 扉の外にいたのは、頭から黒いローブを纏った女性だった。

 顔は見えない。

 そして部屋に入ってきたその人物は、杖を手に、ディティクト・マジックを使い部屋を調べ、その後、外に音が漏れないよう、魔法を使い、扉を自ら閉めた。

 そしてルイズに向き直り…。

 

「お久しぶりですね。ルイズ。」

 

 そう言って頭に被っていた黒いローブの部分を外した。

 そこから現れたのは、アンリエッタ王女。その人だった。

 

 

 そこから始まったのは、幼なじみであるルイズとの思い出話。

 しかも、かなり芝居がかった感じで……。

 渦中の外の、メタモンは、ルイズから軟体生物の姿になり、話が終わるのを待った。ひたすら待った。夜なので眠たいな~っと思いながら。

「あらあら、お話しが長くなってしまいましたわね。ルイズ、あなたの使い魔がとても眠たそうですわ。」

「ちょっと、メタモン!」

 メタモンがとうとうウトウトとしだしたあたりでやっと気づいたアンリエッタがそう言い、ルイズは、そんなメタモンに怒った。

「それにしても、可愛らしいですわね。」

「どこがですか? あの間の抜けた顔が…。」

「飾りっ気がないのが良いのでしょう。ところで、先ほどもうひとりルイズがいたような気がしたのですが…?」

「えっ、あ、あれは…。」

 ルイズがしどろもどろすると、メタモンが目を擦り、ルイズに変身して見せた。

「まあ! すごいわ! こんな一瞬で! ルイズ、あなたは一体どんなすごい生き物を召喚したのです?」

「それは…。」

 よく分からないとは言えない…。

 ルイズに変身しているメタモンは、眠たそうにしながら、ジッとアンリエッタを見つめ、やがてアンリエッタに変身して見せた。

「まあ! 今度はわたくしに!」

「やめなさい、メタモン!」

 ルイズが叱るが、メタモンは、もう眠気が限界なのか、そのままコテンッとベッドの上に倒れてクウクウと眠りだした。

「せめて変身を解きなさーーーい!」

 ルイズは、アンリエッタ姿のメタモンを掴んでメチャクチャ揺すった。

 アンリエッタは、ツボに入ったのか、口を押えて笑いを堪えていた。

 ルイズに揺すられまくって、メタモンは、目をバッテンにして、変身を解き、ぐったりした。

 ルイズは、ハーハーっと荒い呼吸を整え、アンリエッタに向き直り、何をしにわざわざお忍びで来たのか聞いた。

 すると、アンリエッタは、一転して悲しい顔をして、芝居がかかった仕草で嘆く。

 

 ……簡潔にまとめると、今ピンチのアルビオンにいる従兄弟のウェールズが持つ、アンリエッタからの手紙がレコン・キスタの手に渡る前に、ウェールズから返してもらってきてほしいという密命を頼みに来たのだった。

 

「わ…私に…ですか?」

「あなたは、見事土くれのフーケを捕えたと聞いていますわ。」

「あ、あの、あれは…。メタモンの協力があって…。」

「まあ、それほどに頼りになる使い魔を! ならば、余計にあなた達しかいませんわ!」

「で、ですが…。」

「お願い…、ルイズ…。このことは、マザリーニにも、母上にも言えないことなのです。わたくしは、あなたを頼るしかないのです。」

「姫様…。」

 アンリエッタは、必死に懇願する。

 ルイズは、紛争状態のアルビオンがどれほど危険なのか想像しただけで、汗が垂れた。

 しかし、この密命を無事に成功させなければ、ゲルマニアとの同盟も危うく、トリステインの未来が危ないのだ。

「もちろん…、タダでとは言いませんわ。」

「い、いえ! そういうことでは…。」

「この水のルビーを…。これがあなたがわたくしが送り出した大使である証明になりますわ。そして、もしお金が足りなかったら、売って路銀にしてください。今、手持ちの物がありませんので…。」

「ですが、これは、王家に伝わる…。」

「ええ…。王家に代々伝わる、水のルビーですわ。」

 ルイズは、手渡された水のルビーの指輪を見つめ、ますます汗をかいた。

 ここまでされたら、断るわけにはいかない状況である。

 しかし…、本当に自分にそんな重い任務がこなせるのか?という不安がのしかかる。

 

「ひとりで背負い込もうとするから、いけないのだよ、ゼロのルイズ!」

 

 そこに、ギーシュ。

 そして扉を開けたらしいメタモンがいた。

「あなたは?」

「姫様! 僕は、グラモンの元帥の子息であります! どうか、僕をその任務の一員として…。」

「まあ、グラモン元帥の…。」

 アンリエッタは、嬉しそうに顔を緩めた。

「あなたも、この不幸な姫の力になってくれるのですか?」

「はい!」

「ルイズ…。どうか…お願いできないでしょうか?」

「…ぅ…う…。わ、分かりました。」

 もはや断ることはできない。アンリエッタが涙を浮かべて懇願する顔に、もはやルイズには逃げ場は無かった。

 足が自然と震えるルイズの肩を、メタモンがルイズに変身し、安心させるように叩いた。

 ルイズがメタモンを見ると、ルイズの顔をしたメタモンが、優しく微笑んでいた。

 その顔が…まるで『だいじょうぶ。僕がついてるよ。』っと言っているような気がした。

 ルイズは、そんなメタモンにグッと泣きそうになるのを堪え、耐えるように唇を噛んで抱きついた。

「お願い…、一緒に来てね、メタモン…。」

 そう小さく懇願するルイズに、メタモンは、ルイズを抱きしめ返し、ウンウンと頷いた。

 

 

 国の未来を賭けた、重い任務の旅が翌朝始まることとなった。

 

 

 

 

 




原作読むと、メッチャ長話……。

そして、なぜホイホイ承諾したし、ルイズ…。
っというわけで、このネタでは、ルイズは、すぐに承諾しませんでした。頼れる人間が他にいないとはいえ、なぜ落ちこぼれの自分なんだっという劣等感や、死への恐怖などから。


ワルドは、次回。


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メタモンと、ワルド

メタモン、本物のワルドと出会う。


アルビオンへの道中。


 

 アンリエッタからの密命を受けた翌日の早朝。

 

 ルイズは、ゲッソリしていた。

 

 緊張のせいで眠れなかったのだ。

 逆にぐっすり寝ていたメタモンが心配している有様だ。

「おいおい、君がそんな状態でどうするんだい?」

「うっさいわね…。」

「馬から落ちないでくれよ。そうだ、僕の使い魔を連れていっていいかい?」

「あんたの使い魔?」

「出ておいで、ヴェルダンデ!」

 すると、モコモコと土が盛上がり、ボコッと大きなモグラが出てきた。

「ジャイアントモール?」

「そうさ! 青銅の二つ名を持つ僕のために宝石を持って来てくれるとびっきり素敵な相棒さ! ああ、ヴェルダンデ! 今日も可愛いね! ドバドバミミズをいっぱい食べてきたかい? うん、そうかい!」

 ギーシュは、それはそれはヴェルダンデを可愛がっていた。

 するとヴェルダンデが、ヒクヒクと鼻を動かしてルイズに近づいてきた。

「な、なによ…。キャッ!」

 そしてヴェルダンデに飛びつかれ、身体をまさぐられた。

「いや! やめてやめて! 助けてメタモン!」

 ルイズが悲鳴を上げて助けを求めると、ルイズに変身していたメタモンがヴェルダンデの首根っこを掴んで引き離そうとした。

 だが、力が強く中々引き離せない。

「いやぁ、いくらヴェルダンデが美しい宝石に目がないとはいえ……。むむ? ああ、なるほど、ゼロのルイズ、君が指に付けている指輪だね。」

「へっ?」

「ヴェルダンデは、君の指輪に反応していただけさ。」

 ギーシュがなんのことはないと言っていると、突然風の魔法が飛んできて一瞬にしてヴェルダンデが吹っ飛ばされた。

「ヴェルダンデ!」

 ギーシュが慌てて駆け寄り、無事を確認すると、先ほど魔法を使ってきた相手を睨んだ。

「貴様…、よくも僕のヴェルダンデに!」

「あ…あなたは…。」

 

「すまないね。僕の婚約者が襲われていたので手を出してしまったよ。」

 

 見覚えがある羽帽子。そして、立派なマントと杖。

 その男は、ルイズの婚約者であるワルドだった。

 ワルドは、ルイズに近づくと、その手を取り、軽々と抱き上げた。

「ああ、僕のルイズ。君はとても軽いね。まるで羽のようだよ。」

「わ、ワルド様…。」

「ところで、僕のルイズ。そちらにもうひとり君にそっくりな子がいるけれど…、君には妹がいたのかい?」

「あ…。違うんです…。私の使い魔ですわ。」

「ほう? 変わった使い魔を召喚したとは人伝には聞いていたが、君が…そうなのかい?」

 ルイズに変身していたメタモンは、ジーッとワルドを見つめていた。

 そして、ルイズの姿から、ワルドの姿になって見せた。

 ワルドは、それに驚いて目を見開いた。

「あ、あくまでも、擬態ですわ…。」

「これは、驚いたな…。人相や姿形を変える魔法は存在するが、それを一瞬でやれる生き物は見たことがないよ。ルイズ、君はやはり他のメイジとは違う。すごい生き物を呼んだんじゃないのかい?」

「そ、そんなこと…。」

『レビテーション。』

「キャッ!」

 不意にメタモンがレビテーションを唱えて、ルイズがワルドの手の中から浮き上がり、そのままワルドに変身しているメタモンの方に浮いていってその腕の中に収まった。

「め…メタモン?」

 メタモンを見上げると、メタモンは、ぷうっと頬を膨らませて、いかにも機嫌悪そうにしていた。

「おやおや? メタモンくん、嫉妬かい?」

 ギーシュが聞くと、メタモンは、ウンウンと頷いた。

「メタモン! その顔でそんな顔しないで! 色々とイメージが! あと、降ろしてよ!」

 ルイズは、ジタバタ暴れるが、メタモンは、ギュッと抱きしめて放そうとしない。

「ずいぶんと、懐かれているようだね?」

「違うの、違うんです! こら、メタモンってばーー!」

「それはそうと、早く出発しないかい? 時間が無いんだ。」

 そう、アルビオンの状況は刻々と悪くなっているのだ。

 早くしないと船で渡ることすらできなくなるだろうと、ワルドが言い、ハッとしたルイズがメタモンを諭し、やっと放してもらった。

「私の…姿でいなさい。」

 ルイズは、メタモンにそう命令する。

 そしてメタモンは、ルイズの姿になった。

「さあ、僕のルイズ、僕のグリフォンに乗ろう。」

「えっ、で、でも…。」

「それとも僕と一緒はイヤかい?」

「そんなことは…。」

 ただ心配なのは…。

「ねえ、メタモン…。あなたひとりで馬に乗れる?」

 ルイズがそう聞くと、メタモンは、ぷうっと頬を膨らませつつ頷いた。

「だいじょうぶみたいだね。じゃあ、早く出発しよう。」

「メタモン…ごめんね。」

 ルイズは、そう謝罪しつつワルドに手を引かれてグリフォンに乗り、グリフォンが先頭を走った。

 ギーシュも慌てて馬に乗り、メタモンも、頭から頭巾を被って馬に乗って馬を走らせた。

 

 

 ワルドのグリフォンは、馬よりも早い。

 そしてスタミナもすごい。

 そして、それを操り、グリフォンの隊の隊長であるワルド自身も慣れているので速度を維持しつつスタミナも切れない。

 休憩無しの速い遠乗りにギーシュは、へばり、メタモンも変身を維持するのがやっとだった。

「ねえ、ワルドさま! ギーシュもメタモンも限界だわ。」

「頑張ってくれって励ましてやってくれ。今日中には、ラ・ロシェールに着きたい。」

「そんな…。」

 ルイズは、振り向き、必死に着いてきてくれている、ひとりと一匹を見た。

「メタモン頑張って! ギーシュもよ!」

 そう声援を送ることしか出来なかった。

 

 

 馬を何度も乗り換え、やっとラ・ロシェールに着いたのは、夜の夜中だった。

 

 

 やっと一息ついたところで、崖の上から松明の炎が降ってきた。

「うわ!?」

 その炎に驚いたギーシュの馬がギーシュを振り落とした。

 そこへ、矢の雨が降り注ぐ。

 瞬時にメタモンがデルフリンガーを抜いて、ギーシュに向かって飛んできた矢をたたき落とす。

「すまない! ありがとう!」

「まさか、アルビオンの反乱軍の貴族!?」

「いや、貴族ならば武器など使わないさ。」

 グリフォンから飛降りたワルドがメタモンに加勢した。

 すると、崖の上で風が小さな竜巻となって上にいる者達に襲いかかり、何人もの人間が落ちてきた。

「風の魔法か!?」

「あれは…、タバサのシルフィードだわ!」

 

「メタモンちゃーーん! あと、ついでにルイズーー。」

 

 風竜・シルフィードには、タバサとキュルケが乗っていた。

「きゅ、キュルケぇ!? なんであんたが…。」

「助けに来てあげたのになによ、その言い方?」

「誰が…。」

「ま、あんたは、つ・い・で。私はね、メタモンちゃんを助けに来たのよ。」

「なんで…、メタモン? あんた…。」

 ルイズが訝しむと、メタモンは、ブンブンと首を横に振った。

「ま、ホントのところは、朝方からあんた達が出て行くのを見ちゃったからなのよ。ねえ、何か面白いことしてんの?」

「あのね…、この旅はお忍びなのよ…。」

「なんだ~、つまらないわね。それならそうと教えなさいよ。」

「教えたらお忍びにならない!」

 わざとらしく残念がるキュルケに、ルイズがガーッと怒った。

 

 その後、崖から落とされた夜盗達を尋問したら、ただの物取りだと分かり、崖の上から落とされて何人も怪我をしていたが、放っておいて、ラ・ロシェールで一泊することになったのだった。

 

 

 

 

 




メタモンがお気に入りのキュルケ。それに付き合わされるタバサ。
なお、メタモンは、別にキュルケと何かあったわけじゃありません。

そして、ワルドにちょい嫉妬するメタモンでした。(大好きなご主人取られたと思って)
あと、メタモンには、性別はありません。(※原作のポケモン)


次回は、アルビオンヘ。に、なるかな?


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メタモンとガンダールヴ

やっとガンダールヴの話題。


後半は、メタモンと、ワルドの手合わせ。


 

 ラ・ロシェールで一番高い宿、女神の杵(きね)で、一泊することになった。

 

「あらあら、メタモンちゃん、どうしたの? そんなにむくれて。」

 1階の酒場でくつろいでいた一行だが、今は、ルイズとワルドがいない。二人は、アルビオンへの船を手配するために出ているのだ。

 メタモンは、本当はルイズについていこうとしたが、ルイズに、待ってなさいと命令され、渋々宿に残ったのだ。

 それからというもの、ずっとルイズの姿でほっぺたをぷうっと膨らませているのだ。

「酷いわね~、ルイズも。こんなに慕ってくれている使い魔がいるのに、やっぱ婚約者の方が大事って事かしら? ねえ、メタモンちゃん、いっそ私の使い魔になる?」

 キュルケが膨れているメタモンのほっぺたをツンツンとつつきながら聞くと、メタモンは、イヤイヤと首を振った。

「うーん、やっぱり、ルイズにはもったいないわねぇ。」

 キュルケは、席につき、フォークを弄びながらため息を吐く。

「なぜ?」

 タバサが聞いた。

「だって…、相手を見ただけで相手が使える魔法まで使いこなすのよ? どういう目をしているのかは分からないけど、ルーンの五感共有でも夢を通じてその記憶情報から、その人物に変身するし、もしスクウェア・クラスの使い手の使い魔だったらどうなるかしら?」

「…フレイムは?」

「フレイムは、私の自慢の使い魔よ。でも、なんで使い魔ってひとりに一匹なのかしらね? もっといてもいいと思うんだけど。」

「理由。知らない。」

 タバサは、そう手短に言うと出された料理を食べるのを再開した。

 キュルケは、肩をすくめ、フォークとナイフで、肉を一口大に切ると、フォークで刺し、メタモンに与えようと目の前に差し出した。

「メタモンちゃ~ん、ほら、あ~ん。」

 しかし、メタモンは、ぷいっとそっぽを向く。

 キュルケは、楽しそうにフォークの肉をメタモンの前に移動させる。その都度、イヤイヤとメタモンがそっぽを向くのでしつこくしていると、やがてメタモンが観念して、口を開いて肉を食べた。

「美味しいでしょ?」

 無理矢理食べさせられた肉料理は確かに美味しい。メタモンは、ムグムグと噛みしめて頷いた。

 

「メタモン?」

 

 そこに聞こえてきたのは、ルイズの声。

 ハッとしたメタモンが、振り向く。

「あら、ルイズ。遅かったわね。」

「キュルケ…。私のメタモンに何してたの?」

「あら? 気になるの? 放っておいたくせに?」

「あのね! あんたには、あんな立派なサラマンダーがいるじゃない!」

「そうね。でも、メタモンちゃんも欲しいのよ。ねえ、メタモンちゃん。ルイズのところが嫌になったら私の所へいらっしゃらいな。」

「キュルケーーー!」

「落ち着くんだ。」

「けど、ワルドさま!」

「キュルケ…くんといったね? 使い魔を連れて行かないでいいと言ったのは僕なんだ。ルイズを責めるのはお門違いだよ。」

「あら、そうでしたの? でも、放っておいたのはルイズの意志ですわ。私がつけいる隙を与えたくなかったら、連れて行くべきでしたのに。それとも、なに? 一々、嫉妬するからうっとおしかったのかしら?」

「ち、ちが…。」

「可哀想に~、メタモンちゃん。ルイズのこと大好きなだけなのにね~。」

 キュルケは、ルイズの姿のメタモンを抱きしめてヨシヨシと頭を撫でた。

 カッとなったルイズは、メタモンを奪い返そうとした。

 すると、メタモンが軟体の本来の姿になり、キュルケの後ろに隠れてしまった。

「メタモン! こっちに来なさい!」

 しかし、メタモンは、プルプルと頭と首らしき部分を横に振る。

「命令よ! こっちへ来なさい!」

 しかしメタモンは、イヤイヤと首を振る。

「一言謝ればいいのに。」

「なんで、私が!?」

「あんたが、置いて行っちゃったからでしょ?」

「ぅう…。」

 しかしプライドが邪魔して謝罪の言葉が出ない。

「すまないな、メタモンくん。僕が置いていけって言ったばっかりに。ルイズを許してやってくれないかい?」

 ワルドがメタモンに目線を合わせるように膝を折ってそう言った。

 メタモンは、ジイッとワルドを見つめ、そして目線をルイズに戻し、ルイズに変身して、ルイズに駆け寄り抱きついた。

「も…もう…。もういいわ。好きにしなさい。」

 自分の姿で人前で抱きつくなと怒りかけたが、ワルドが自分に代わって謝罪したのもあり怒鳴れなかった。

 しかし、ぎゅうぎゅうとあんまりにも抱きしめてくるので、苦しくなったルイズはさすがに我慢できず怒ったのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 アルビオンへ渡るのは、明後日となっている。

 理由は、空中にある大陸であるアルビオンが、一番トリステインに接近する時が明後日だからだ。

 で……、宿での部屋割りだが、ワルドは、ルイズに大切な話があるからと、メタモンに部屋を外して欲しいと言った。当然だが、メタモンは、ガーンっとショックを受ける。

「メタモンくん…、貴族の婚約者同士の大事な話なんだ…。主人の将来のためなんだから、我慢するんだ。」

 ガーンガーンっとショックを受けているメタモンに、ギーシュがそう慰めた。

「じゃあ、私と一緒に寝る?」

「ダメよ!」

 すぐにメタモンに言い寄るキュルケに、ルイズが速攻でダメと叫んだ。

「すまないな、メタモンくん。許してくれ。」

 ワルドが苦笑しながらそう言った。

 メタモンは、ショボーンと落ち込んで床に溶けるように広がった。

 ルイズは、罪悪感に胸を痛めた。

 

 

 そうして、結局、メタモンは、ギーシュと同じ部屋に行き、ルイズは念のため、メタモンに、若い女に変身するなと命令しておいた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌朝。

 ギーシュと同室になっているメタモンは、戸を叩く音に気がついて目を覚ました。

 ギーシュの姿になり、戸を開ける。

「おや? ……違うな。メタモンくんだね。」

 ワルドだった。

 ワルドは、少し間を置いてギーシュの姿になっているメタモンだと見破った。なお、本物のギーシュは、グースカ寝ていた。

「メタモンくん、少しいいかい?」

 メタモンは、不思議そうに首を傾げた。

「君は、ガンダールヴだろう?」

 そう言われてもなんのことやらで、メタモンは、分からないと首を振った。

「少し…確かめさせて欲しい。来てくれるかい?」

 ワルドがメタモンに外に行こうと誘う。

 メタモンは、分からないまま、デルフリンガーを持ってワルドに案内された。

 

 

 やがて古い練兵場らしき場所に来た。

 そこには、ルイズがいた。

「ワルド? どういうつもり、こんな朝早くに…。」

「いや、なに。少し確かめたいことがあってね。君には審判をしてほしい。」

「まさか…メタモンと…。」

「ああ、その通りさ。」

「だ、ダメよ。」

「だいじょうぶさ。少し手合わせをするだけだから。傷つけはしない。それとも、僕の腕を疑っているのかい?」

「そ、そんなことは…。」

「では、メタモンくん。少しで良いからその剣を手にして僕と戦ってくれるかい?」

 言われたメタモンは、困った顔をした。だが戦わないとワルドが引かないと考えたのか、渋々デルフリンガーを抜いた。

「……身体が軽くなる感じはしないかい?」

 そう聞かれ、メタモンは、目をぱちくりさせた。

 言われて見れば、デルフリンガーを手にすると、身体が妙に軽くなる気はする。

「もし、君が伝説の使い魔であるガンダールヴならば、あらゆる武器を使いこなせたはずだ。その証拠に君の左手のルーンが光っているだろう?」

 言われてルイズもメタモンは、メタモンの左手のルーンに驚いた。確かに光っていたからだ。

「き、気がつかなかったわ…。」

「今まで武器を使わせてなかったのかい?」

「ええ…。あの剣を持たせたのも最近だから…。」

『全然俺のこと使ってくれねーから、言うに言えなかったんだよな。相棒が使い手だってことによぉ。』

 そう言ったのはデルフリンガーだった。

「む? インテリジェンスソードか。」

『相棒も娘っこも聞きな。ガンダールヴってのは、あらゆる武器を使いこなせる達人にする力を持ったルーンだぜ。神の左手とも言ったっけな?』

「メタモンが…。」

『たぶん、だからこそ、パチモンの武器を一瞬で見分けられたし、あの武器屋じゃ俺が一番だってのも見分けられたんだろうよ。なにせ、そういう生き物に、あらゆる武器を一瞬で使えるようなる分析・解析能力が付与されたんだからな。で、よぉ、そうと分かってて戦うってのかい?』

「ああ、だからこそその力を知りたいんだ。ぜひ、お手合わせ願う。」

『だとよ。娘っこ、審判!』

「えっ…。」

 ルイズが戸惑いつつ、試合の合図を出すことになった。

 その瞬間、メタモンの姿がワルドの姿へと変わる。

「ほう? 僕に変身した方が戦いに適していると踏んだのかな?」

『そうだぜ。な?』

『……ユビキタス・デル・ウィンデ。』

 デルフリンガーがメタモンに聞くとほぼ同時に、メタモンが呪文を唱えた。

 その瞬間、メタモンの左右隣に、ワルドに変身しているメタモンの分身が作られた。

 ワルドは、それを見て目を見開いた。

「なんと! 僕の魔法を…。」

 ワルドが驚いていると、メタモンが二人の分身と共に飛びかかってきた。

 ワルドは、後ろへ飛び退き、素早く魔法を杖に纏わせ、斬りかかってくる3人のメタモンを相手にする。

 ワルドは、的確に本体であるメタモンを狙ったが、ワルドが突き出した杖の先をメタモンがしゃがんで避けると同時に、メタモンの姿がルイズへと変じた。

「!」

『エクスプロージョン!』

 ワルドの腹部に向けて向けられた擬態の杖から、爆発の魔法が放たれ、ワルドが吹っ飛んだ。

 地面に叩き付けられたワルドは、腹部を押え呻いた。

「ワルド! もうやめて、メタモン! 勝負あったわ!」

「うぐぐ…、まさか…手加減したとは言え、そう来るとは…、完全に油断したよ。」

 メタモンは、風の偏在を消し、今度はアンリエッタの姿になって、ワルドに近づいた。

「む? 今度は姫様に?」

 そしてメタモンは、水の魔法を唱え、ワルドの腹部の傷を癒した。

「……ガンダールヴの力を確かめたかっただけだが…、変身能力の方に驚かされたな。ルイズ。君はすごい使い魔を呼んだんだね。」

「え、ええ…。」

 ワルドを助け起こしたルイズは、少し戸惑いながら返事をしつつメタモンを見た。

 アンリエッタの姿からルイズの姿になったメタモンは、ニコッと微笑みながらコテッと首を傾げた。

 

 

 




確か、アンリエッタは、水の魔法(回復)が使えるんでしたっけ?


次回は、やっとアルビオンへ、かな?


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メタモン、アルビオンへ

メタモン、やっとアルビオンへ。


vs仮面の男。


 

 ワルドと手合わせをした、その夜、ハルケギニアの二つの月がひとつになった夜。

 メタモンは、キュルケの姿でベランダから月を眺めていた。

「ちょっと、その姿はやめて。」

 そこへ、ルイズがやってきて不機嫌な声でそう言った。

 メタモンは、顔をルイズに向け、ルイズの姿になった。

 ルイズは、ホッとすると、メタモンの横に来て、月を眺めた。

「ねえ、メタモン…。」

 どこか愁いを帯びた横顔に、メタモンは、首を傾げた。

「私…、ワルドから結婚を申し込まれたわ。」

 ルイズは、それを言った後、チラッとメタモンを見た。

 メモタンは、キョトーンとした顔をしていた。

「……やっぱり…ショック?」

 恐る恐る聞くと、メタモンは、ハッとし、ふるふると首を横に振った。

「嘘。あんた、あんなに嫉妬してたじゃない。」

 それを言われメタモンは、ギクッとし、シュンッと項垂れた。

 ルイズは、そんなメタモンを見て、クスッと笑った。

「嘘付けないところ…、可愛いわね。」

 ルイズがメタモンを可愛いと思っているのは、本当だ。

「ねえ、メタモン、聞いてくれる?」

 ルイズがそう聞くと、メタモンは顔をあげた。

 そこからは、グチグチとルイズの愚痴が始まる。

 

 アンリエッタの無茶な任務のこと。

 

 キュルケの家との因縁のこと。

 

 学院のこと。勉強のこと。

 

 そして…、魔法がまともに使えない自分が結婚したらワルドの立場が悪くなるかも知れないという不安。

 

 ルイズの口から次々飛び出す、愚痴やら不安の言葉をメタモンは、時折相づちをうちながら聞いていた。

 ひとしきり喋った後、ルイズは、ハ~っと、スッキリしたように息を吐いた。

「メタモン…。あんたがいてくれてよかったって、ホントにホントに思ってるんだからね?」

 急にそんなことを言われ、メタモンは、キョトンとした。

「だからね……、約束して欲しいの。これからも、ずっとずっと一緒だって。」

 ルイズがメタモンを見た。

 ルイズに変身しているメタモンは、少しだけ困ったような顔をしたが、やがて優しい微笑みを浮かべ、頷いた。

 ルイズは、その時のメタモンの表情に何かを感じた。だがその違和感のようなものの正体は分からなかった。

「ありがと。メタモン。」

 ルイズも微笑み、お礼を言った。

 だが、次の瞬間。ハッと表情を変えたメタモンが、ルイズを庇うようにした。

「なに? えっ…?」

 

 見ると、見覚えがある巨大なゴーレムがいた。

 そして、その肩には…。

 

「なっ…、なんで!?」

「親切な人がいてね。」

 土くれのフーケだった。

「私みたいな美人はもっと世の中のために、役に立たなきゃいけないって言って、出してくれたのよ。……素敵なバカンスをありがとう。お礼を言いにきたんだよ!」

 そしてフーケが操るゴーレムの拳がメタモンとルイズがいるベランダに振り下ろされた。

 メタモンは、ルイズを抱えて部屋の中に飛び込み逃げた。

「1階に逃げましょう!」

 メタモンに降ろされ、ルイズは、メタモンと共に1階へ降りた。

 だが、1階も1階で修羅場だった。

 どうやらワルド達を、ラ・ロシェール中の傭兵達が襲ってきたらしく、多勢に無勢に状況らしい。

 このままでは、精神力が尽き、敵が一斉に襲いかかってくるだろう。そこでワルドが言った。

 キュルケ、タバサ、ギーシュに、陽動をしてもらい、その隙にワルド、ルイズ、メタモンが船着き場へ向かってアルビオンへ向かうという作戦を。

 それを聞いてルイズは、ギョッとする。一応は同じ学院の生徒である彼らに犠牲になれと言っているのだから。

 それを聞いたキュルケらは、少しばかりつまらなさそうにしたり、ここで死ぬのはなぁ…っとか、早く行けっと言ったりそれぞれ反応。しかし、作戦そのものに異論はないらしい。

 そして、ルイズ達が走り出し、弓が飛んでくるのがそれをタバサが風の魔法で防いだ。

 背後で派手な破壊音が聞こえだし、陽動作戦が始まったことを知らしめる。

 ルイズ達は、とにかく走る。

 やがて、桟橋へと着く。

 そして階段を登り、丘の上へ。そこに生えた巨木の中に入り、階段を駆け上る。

 その時。

『ユビキタス・デル・ウィンデ!』

「メタモン? きゃっ!」

 階段を登りながらワルドに変身したメタモンが、風の偏在の魔法を使い、偏在がルイズを抱えて移動した。

 その瞬間、ルイズがいた場所に風の衝撃波が打ち込まれた。

 そして、上部から白い仮面を顔に付けた男がひとり飛んできた。

 デルフリンガーを抜いたメタモンは、襲いかかってきた男を相手に立ち回る。

 剣のように杖を振り回す相手が、メタモンと戦いながら呪文を唱える。それとほぼ同時にメタモンも同じ呪文を唱えていた。

「ライトニング・クラウド!」

『ライトニング・クラウド!』

 両者が放った風の最強の魔法がぶつかり合う。

 だが変身してるとはいえ、しょせんは擬態。メタモンの能力に依存するため、威力で負け相手のライトニング・クラウドが半分以上相殺されているものの、相殺しきれなかったものがメタモンに浴びせられた。

「メタモン!」

 メタモンの風の偏在に抱えられていたルイズが悲鳴じみた声をあげる。

 ガクンッと膝をついたメタモンに向け、仮面の男がトドメだとばかりに杖の先端を振り上げた。

 そこにワルドがエア・ハンマーを放ち、仮面の男を弾き飛ばす。

「だいじょうぶか!」

 ワルドに駆け寄られ、メタモンは、辛そうに顔を歪めながらも頷いたが、疲れたように変身を解き、元の軟体生物の姿へ変わってしまった。

 ワルドは、メタモンを抱え上げ、階段上の方に先に行ったメタモンの偏在とルイズを追った。

「メタモン! メタモン…。」

 ルイズは、ワルドからメタモンを受け渡され、バッテン目のメタモンを労った。その頃には、メタモンの偏在は消えていた。

「なるほど…、姿や技を真似できても、身体能力や精神力は同じにできないのか。」

 ワルドは、ルイズの腕の中で、キュウ…っと力無く溶けそうになっているメタモンを見てそう呟いた。

 そして二人と一匹は、巨木を登り、巨木の枝に吊るされた船に向かった。

 船員達を叩き起こし、風石が足りないから無理だと言う船員達に自分が風のスクウェアのメイジだと言って、無理矢理に出港させた。

 船が風石の力で浮き上がり、空へと舞い上がる。

 ルイズは、甲板から、メタモンを抱えたままラ・ロシェールを見おろした。

 宿の位置辺りから煙が上がっている。キュルケ達は無事だろうかと心配になった。

 すると、ルイズの腕の中でメタモンがモゾモゾ動いた。

「メタモン…、だいじょうぶ?」

 メタモンは、ルイズの腕の中でコクコクと頷いた。

 そしてスルリとルイズの腕から抜け出て、甲板の上でルイズに変身した。

 ほら、だいじょうぶ!っと言いたげに手を上げてポーズを取るが、直後にふらついて倒れた。

「ダメじゃない! 大人しく休んで!」

 ルイズに抱き起こされ、メタモンは、ウ~っと、悔しそうに小さく呻き、変身を解いた。

 

 そして、夜が明けていき、ワルドの力を加えて飛んでいる船が雲をかき分け、やがて、雲よりも高い位置にある、巨大な大陸、アルビオンが見えてきた。

 

 

 

 




メタモンの能力は、あくまで擬態と技のコピー。
なので、ステータスは、メタモンがもっているモノに依存するため相手と同じステータスにはならない。
なので同じライトニング・クラウドを撃ち合っても、負けてしまう。

しかし……?って展開にしようかと思ってます。


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メタモン、ウェールズに出会う

メタモン、お腹すきすぎて、全然活躍できず……な、回です。


 

「メタモン…、もしかしてお腹すいてる?」

 仮面の男にやられた傷もあるだろうが、それにしたって元気がないので聞いてみると、メタモンは、ぺっとりと甲板に広がった状態で頷いた。

「なにかないかしら…。ねえ、何か食べ物ない?」

「わるいね、お客さん。うちの船に食事のサービスはないぜ。」

「そんな…。」

「携帯食ならある。これでいいかい?」

「ありがとう、ワルド。」

 ワルドから干した携帯食を受け取り、メタモンに与えた。

 しかし、ムグムグと携帯食を噛んだメタモンは、渋い顔をする。

「不味いのは分かるけど、我慢して。」

 う~っとか、む~っとか唸ってムグムグと口を動かしているメタモンに、ルイズがそう言った。そしてメタモンは、不味い携帯食を頑張って飲み込んだ。

「アルビオンが見えてきたぞーー!」

 そこに見張りの船員の声が轟く。

 やがて、雲よりも高い位置にある巨大な浮遊大陸アルビオンが姿を見せる。

「だいじょうぶよ、メタモン。アルビオンにご飯あるから。」

「…それどころではないかもしれないがね。」

「どういうこと?」

「聞くところによると、今、ウェールズ皇子は、布陣を敷いているニューカッスル城を反乱軍に包囲されているそうだ。食料を得る前に皇子の安否が気になる。」

「そんな……。」

 どうやら状況は、想像していた以上に悪いらしい。

 ルイズは、青ざめる。頼りのメタモンは空腹でぐったり。ワルドもいるのだが、船に足りない風石のブースターとして風の魔法を使い続けていて精神力もいずれ尽きるだろう。

 ルイズは、しゃがみ込み、メタモンを抱き上げて抱きしめた。

 そんなルイズの肩にワルドが手を置いた。安心させるように。

 その時、見張りの船員が声を荒げた。

 右の方角から、一回りも大きな船が接近してきていることを。

 その船には旗はなく、船長は空族だと判断し、急いで逃げるよう船員達に指示した。

 だが、逃げようとすると向こうの船が大砲を一発撃ってきた。こちらにも武装がないわけじゃないが、圧倒的に向こうの大砲の方が上だ。

 船長がワルドに助けを求めるように見たが、ワルドは首を振った。自分はもう魔法が使えないという意味で。

 従うより他なかった。

 空中で止まったこちらの船の横に、空族の船が近づく。

 ワルドのグリフォンがギャンギャン鳴くが、眠りの雲という魔法が浴びせられてしまい眠らされた。

 ルイズは、メタモンをギュッと抱きしめる。

 その後、空族の船長らしき人物がやってきて、船長に積み荷のことを聞き、船員達の命を代金に船を全部買い取ると言い出した。

 ルイズとワルド、そしてルイズに抱きしめられていたメタモンは、船倉に連行された。身代金をたんまり貰うための人質として。

 ルイズは、連行される前に空族に触られたため、その手を払ったりと気丈に振る舞ったが抱きしめられていたメタモンは、ルイズが震えていることに気づいていた。

 杖も剣も奪われた中、船倉の壁を背に座っているルイズは、ずっとメタモンを抱きしめていた。

 メタモンは、手をウニョ~ンと伸ばし、ルイズの頬を撫でる。その優しい撫で方にルイズは、涙を浮かべた。

 メタモンは、ハッとして、ワルドに手を伸ばしてつつく。

「なんだい?」

 そしてメタモンは、自分の手の先を鍵に変えて見せた。

 しかしワルドは、首を横に振った。

「見張りもいることだし、それに僕らは杖がない。君もロクに力が出せない状況でどうやって武器を奪還するんだい? しかも、ここは空の上だ。」

 それを言われ、ガーンっとなったメタモンは、鍵の変身を解いてへにゃりとなった。

「すまない。言い過ぎたね。」

 

「飯だ。」

 

 そう言って太った見張りがスープを一皿もって入って来た。

 それをワルドが受け取ろうとすると、見張りの空族は、皿を持ち上げていった。

「その前に答えろ。お前達は何をしにアルビオンに?」

「りょ…旅行よ!」

「トリステインの貴族が、今時のアルビオンに? 何を見物しに来たんだ?」

「そんなことあんたなんかに答える義理はないわ。」

「そのプルっプルの生き物がぐったりしてんで、すっげー強がってるくせによく言うぜ。」

「っ…。」

 痛いところを突かれ、ルイズは、ギッと相手を睨んだ。

 見張りの船員は、スープの皿を残して、気にせず去って行った。

「これっぽっち…。」

「身代金目当てだけなら、コレでも十分すぎるだろう。ルイズ、食べるんだ。体が持たない。」

「私はいいわ。メタモン、私の分も飲みなさい。」

「君の分をあげても、メタモンくんの回復には足りないだろう。今のメタモンくんには、固形でカロリーの高い物がたくさん必要だ。」

「でも…。」

 それでも食い下がろうとするルイズに、メタモンが、スープの皿を押しつけるように渡そうとした。

「メタモン…。」

 自分のことよりルイズを優先してくれるメタモンに、ルイズは、涙が出そうになった。

 そして、二人と一匹でスープを分け合った。

 そうするともう本当にやることがなく、空腹で力が出ないメタモンが座り込んでいるルイズの横に寄り添っているだけになる。

 どれくらい経っただろうか…、やがてまた扉が開かれ、痩せ細った男が入って来た。

「おまえら…、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」

「……違うわ。」

「ほんとうかい? 俺たちゃ貴族派の皆さんのおかげで商売させてもらってんだ、王党派に味方する連中がいてな。そいつらを捕まえる密命を帯びてんのさ。」

「ってことは、この船は、反乱軍の軍艦なのね?」

「いやいや、俺達は雇われてるわけじゃあねぇ。あくまで対等な関係で協力しあってるのさ、まあお前らには関係ねぇことだがな。で? どうなんだ? 貴族派か? 王党派か?」

「もし王党派って言ったら?」

 ルイズは、必死に顔に出さぬよう気丈に振る舞う。

「ただじゃ済まないな。」

「……私達は、王党派よ。トリステインの大使として、アルビオン王室に向かう途中。大使としての扱いをあんた達に要求するわ。」

 ルイズが気高く言い放つと、痩せ細った男は、笑った。

「美徳はいいが、時と場合を考えるんだな。まあ、いい。頭に報告してくる。」

 そう言い残して去って行った。

 メタモンが心配そうにルイズの頬にペチッと触れた。

「分かってるわよ…。でもね、メタモン。あんな奴らに嘘言って姫様の任務を放棄するほど腐っちゃないのよ。私は…。」

「いいぞ。ルイズ。さすが、僕の花嫁だ。」

 そう言われルイズは、複雑そうな表情を浮かべて俯いた。

 それから少しして、また痩せ細った男が来た。

「お頭がお呼びだ。」

 そう言われ、他の空族が入って来て剣やナイフを手に二人に突きつける。

 ルイズは、メタモンを抱き上げ、ワルドと共に船倉から出された。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そこは豪華な船室だった。

 豪華なディナーテーブルの向こうに、これまた豪華な椅子に座り、水晶のついた杖を指で弄っている空族の頭がいた。

「話は、聞いた。王党派だとな?」

「ええ…、言ったわ。」

 ルイズは、震えそうになる体を心の中で叱咤して気丈に振る舞う。

「何しに行くんだ? あいつらは、明日にでも消えちまうよ?」

「答えるとでも? 空族ごときに。」

「気丈なのは別にいいが、自分達の状況を考えたらどうだ? どうだ? 貴族派につく気は無いか? あいつらは、メイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ。」

「イヤよ。そこの男にも言ったけど、もう一度言うわ。私達を、トリステインの大使として扱いなさい。」

「……もう一度言う。貴族派につく気はないか?」

「断るわ。」

 ルイズがキッパリと言うと、空族の頭は大笑いした。

「トリステインの貴族は、気ばかり強くってどうしようもないな。まあ、どこぞの恥知らず共よりもは、何百倍もマシだがね。」

 ルイズは、その言葉から、恐らくゲルマニアのことを言っていると考えた。

「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな。」

 途端、周りでニヤニヤと笑っていた空族の船員達が、ビシッと直立した。ニヤニヤ笑いも止めた。

 そして頭である男が、席を立ち、ボサボサのカツラであった物を取り、眼帯を取り、ヒゲも外した。

 現れたのは、凜々しい金髪の若者。

 

「アルビオン…、王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。」

 

 威風堂々と名乗った頭…、否、アルビオンの皇子、ウェールズが、そこにいた。

 

 突然のその展開に、ルイズもワルドも、メタモンもビックリ仰天、開いた口が塞がらなかった。

 

 

 




ここの回は、書くの大変で……、他の作品でも書くのが億劫で…。


次回は、色々と飛ばして、ワルド裏切り。


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メタモンと、ワルドの裏切り

色々とすっ飛ばして、ワルド裏切りへ。


感想欄でのアイディアを参考にしたりしなかったり?


 

 

 その後、本当にウェールズであることを、証明するため、ルイズがアンリエッタから渡されていた水のルビーに、彼が持つ風のルビーを当てて反応させたり。

 アンリエッタから渡されていた手紙をウェールズに渡し、その内容を確認したウェールズが、アンリエッタが結婚すると知って、どこか憂いがある表情を少しして、すぐに表情を切り替えたり。

 そして、アンリエッタからの任務である、アンリエッタがウェールズに送った手紙はニューカッスル城にあるので、共に行くことになったりした。

 

 そして、反乱軍の空軍を避けて、ニューカッスル城へ着くと、王党派の大臣が出迎えた。

 ウェールズは、硫黄が手に入ったと告げ、共に喜んだ。

 

 

 これで、……誇り高く散ることができると。

 

 

 そう…、ウェールズ達は、もうそこまで追い詰められていたのだ。

 本当にギリギリであったのだ。

 その後、その夜…、最後の晩餐となる夜会で、メタモンは、やっとたくさんの食事を得ることが出来た。

 やっと元気になったメタモンは、元気になったよ!っと言わんばかりに、ルイズに変身してルイズに抱きつき、周りを驚かせたり、色んな人間に変身したり、道具にまで変身して見せて場を盛り上げた。

 そんな中、ルイズがいないことに気づいたメタモンは、自分を囲んでいる王党派の者達の間をすり抜け、ルイズを探した。

 ルイズは、廊下で窓の外…、夜の月の明かりが入るこむ窓からその月を眺めていた。

 メタモンは、ルイズに変身し、近づく。するとルイズは、ハッとして涙を拭ってメタモンを見た。

「メタモン…。…さっきワルドからね……、明日結婚式を挙げようって言われたわ。こんな時によ…。しかもウェールズ様に媒酌をしてもらって、式を挙げるんですって…。ふふ…、なんか笑えてきちゃったわ。」

 ルイズは、そう言いつつ笑うが、涙がこぼれ落ちた。

「あ、あれ? ……どうしてかしら?」

 メタモンは、そんなルイズに近づき、ギュッと抱きしめた。

「メタモン…、どうして皇子は死を選ぶのかしら? 姫様は皇子と相思相愛だわ…。でも、愛よりも死を選ぶのよ? 私、嫌い。こんな国も…、名誉だとかなんだとかのために、愛する人を捨てて死んでいこうとしている人達も。もう、いや…、早く帰りたい!」

 メタモンの肩に顔を埋めて泣くルイズの頭を、メタモンは、優しく撫でる。

『ルイズ。』

「メタモン?」

『僕に…、任せて…。』

 メタモンがルイズの肩を掴み、一旦引き離すようにして、ルイズと同じ声で、けれどどこか幼さを感じられる口調でルイズに言った。

 ルイズは、メタモンが浮かべている優しい微笑みに、キョトンとした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 翌朝。

 

 礼拝堂にて、ルイズとワルドのささやかな結婚式が行われた。

 アルビオン王家から借り受けた新婦の冠を乗せ、純白のマントを身につけたルイズと共に、ワルド共に扉の向こうから歩み出す。

 ブリミル像の前に立っているウェールズのもとへ、二人は並び、ワルドが一礼。

「では、式を始める。」

 式が終われば、ウェールズはすぐに戦場に向かう。この場には三人しかいない。皆、最後の玉砕のための準備をしているのだ。

「新郎。子爵、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、この者を敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか?」

「誓います。」

「新婦。ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール、汝は、始祖……、新婦?」

 ウェールズは、ルイズの様子がおかしいことに気づいた。

「……ワルド。私…、誓えないわ。」

「どうしたんだい? 僕のルイズ。」

「やめて。」

「ルイズ?」

「私…、あなたと結婚できない。ウェールズ様、そしてワルド…、お二方には申し訳ありませんが、私はこの結婚を望みません。」

「…ルイズ。君は緊張してるんだ。そうだろ、ルイズ? 君が僕との結婚を拒むわけがない。」

「ごめんなさい…。これが答えよ。」

 ルイズが冠を外したのを見て、ワルドが目を見開く。

「ルイズ!」

「離して。」

「世界だ…。僕は世界を手に入れる! そのためには君が必要なんだ!」

「………それが…。」

 ワルドが掴んでいるルイズの肩が、急に柔らかくなった。

 それにハッとしたワルドよりも早く、ルイズ(?)がワルドの両腕を掴む。

 

「あなたの…本心?』

 

 ルイズの姿が溶け、一瞬にして軟体の姿へと変わったメタモンがギュルルル!っと、ワルドの体に巻き付き、拘束して床に転がした。

「くっ! き、貴様! 本物のルイズは…。」

『…知らなくて…いい。お前…、裏切り者…。知って…た。』

「!」

『皇子…殺して…、手紙奪う。お前のこと…見たら…分かった。お前、レコン・キスタ。』

「なんだと!」

 状況が読めずにいたウェールズがメタモンの言葉に驚いた。

 

「メタモン!」

 

 その時、バーンと外の扉が開かれ、ルイズが駆け込んできた。

『! ルイズ…、来ちゃ…だ…。』

 その瞬間を狙って、ワルドが隠し持っていた小型の杖を使い、メタモンを風の魔法で弾き、拘束から逃れた。

 メタモンがベチャッと床に落ち、ワルドが自由になったと同時に、グリフォン隊隊長としての身体能力でウェールズに迫って、一瞬で魔法を完成させ、エア・ニードルでウェールズの心臓を貫いた。

 ルイズが、悲鳴を上げた。

 メタモンは、あっという間にワルドに変身し、デルフリンガーを抜いた。そして、ワルドに斬りかかると、ワルドが杖の先でその剣を受け止めた。ギリギリと音が鳴る。

「メタモンくん…、君のその能力は理解したよ。同じ姿…、同じ技を使えるが…、身体能力や精神力までは真似できない!」

 ワルドがメタモンを弾き、距離を取る。

「ユビキタス・デル・ウィンデ。」

『ユビキタス・デル・ウィンデ!』

 ほぼ同時に、メタモンも、同じ呪文を唱えた。

 ワルドの姿が4つ増える。しかし、メタモン、2人分だけ。それを見て、ワルドが口元を歪めて笑う。

「やはりな! しょせんは、擬態! 本物には勝てないということだ!」

『そいつは…、どうかな?』

「?」

『相棒! 任せな!』

 その時、錆び錆びの姿をしていたデルフリンガーが光り輝き、美しく立派な刀身の剣となった。

『忘れてたぜ。ロクな使い手にしか会わねーから、てめぇでてめぇの姿を変えちまったってのによぉ。』

「ふっ…、それで? ナニができると? …死ね。」

『相棒…、俺を信じろ。アイツの魔法は全部俺が引き受けてやるぜ!』

 放たれてきたエア・ハンマーを、ワルドの姿のメタモンがデルフリンガーで受け止める。その瞬間、エア・ハンマーは、デルフリンガーに吸い込まれた。

「なに!?」

『おめえの怒りをぶつけるんだ、相棒! ガンダールヴは、心の震えで力を増すんだ! 俺が吸い取った魔法をブーストに使いな! お前さんならできるぜ!』

 メタモンは、頷き、キッとワルドを睨む。

 そして、輝きを増すガンダールヴのルーンが、バチバチと放電するようになり、メタモンが再度、風の偏在の魔法を唱えた。

 すると、メタモンの偏在がさらに増えた。メタモン本体を含めて、8人に。

「馬鹿な…。だが…、偏在とは意志力に比例する! 使い手がコントロールできなければ!」

 ワルドは、自らの偏在を操り、攻撃を繰り出す。

 すると、メタモンの偏在が二人動き、その後ろで、二人の偏在がルイズの姿へと変わった。

「なっ…。」

『エクスプロージョン!』

 ルイズに変身した偏在が、同時に杖を構え、爆発の魔法を放った。

 放たれた爆発によって、ワルドの偏在の二人が消えた。

「くっ、ならば!」

 残る偏在を相手にさせ、ワルドが唱える。ライトニング・クラウドを。

 他のメタモンの偏在は、ワルドの姿だ。ワルドが唱え出すと同時に、同じく唱え出す。

「ライトニング・クラウド!」

『ライトニング・クラウド!』

 ワルドひとり。メタモンは、三人分。

 一発の威力はワルドに負けるが、数名集まれば…。

「ぐああああ!!」

 押し負けたワルドが、ライトニング・クラウドをもろに受けた。

 そこにたたみ掛けるようにメタモンがデルフリンガーを手に迫り、振り下ろされる剣から身を守るため、ワルドは、左腕を犠牲にした。

「ぐ…ぉおお…。きさまぁ…、これほどとは…。」

「あなたの負けよ。ワルド。」

「……くっ…ふふふ…、本当に…とんでもない使い魔を呼んだんだね…ルイズ。」

 膝をついたワルドに、ルイズが毅然とした態度で言うと、ワルドは、脂汗をかきながら、笑う。

 その時、大きな爆音と振動が礼拝堂を襲って、天井が崩れだした。

 それにぐらついた、メタモンと、ルイズの隙をつき、ワルドが力を振り絞ってフライの魔法を使い、天井から逃げていった。

「間もなく、レコン・キスタの軍勢が来る! いくらガンダールヴといえど、数千の軍勢と空中艦隊には勝てまい! 愚かな主人もろとも、死ぬがいい!」

 そう言い残していなくなった。

「メタモン…。ごめんね…。」

 ルイズは、昨晩、メタモンから言われていたのだ。

 ルイズに変身したメタモンのフリをして、残る女子供達を乗せて出航するイーグル号に乗って逃げろと。ワルドは、ルイズに扮した自分がなんとかするから安心してくれと言われて…。

 しかし、メタモンが心配でいてもたってもいられず、イーグル号から飛び降り、戻って来てしまったのだ。

 メタモンは、偏在を消してフルフルと首を振り、ワルドの姿からルイズの姿になりルイズを抱きしめた。

「ごめんね、メタモン…。本当に…ありがとう。」

 逃げ場もなく、このまま死ぬだろうと予感したルイズは、メタモンを抱きしめて泣いた。

 その時だった。

 礼拝堂の床が、ポコッと盛り上がり、そこから大きなモグラが現れた。

「……えっ?」

 ルイズとメタモンがビックリしていると、モグラが出てきて、ルイズの指に嵌められた水のルビーにフンフンと鼻を擦りつけた。

 そしてそれを追いかけてきたかのように、穴から、ギーシュとキュルケ、そしてタバサが出てきた。

「おや! 君達、ここにいたのか!」

「ギーシュ? どうしてここに?」

「僕らは、土くれのフーケとの一戦に勝利した後、寝る間も惜しんで君らを追いかけてきたんじゃないか!」

「ところで、何してんの? あのおヒゲの素敵な、あんたの婚約者は? って…、そこに倒れてるのって…まさか…。」

 ハッとしたルイズは、それどころじゃないことを三人に伝え、その間に、メタモンがウェールズの指から風のルビーを外した。

 そして冥福を祈るように手を合せ、そして、ルイズと共に、ギーシュのモグラ、ヴェルダンデが開けた穴からアルビオンを脱出した。

 

 そして、全員がいなくなった直後に、礼拝堂にレコン・キスタの軍勢がなだれ込んできた。

 

 

 




デルフリンガーが吸収した魔法を精神力として吸収し、ブースト。
とりあえず、これで魔法使い限定で相当に強くなったかな?
ただし、これは、デルフリンガーがあって可能になるわけで…。
もしメタモンが、変身以外に、ドレイン系の技を自力で会得すればそれも解消?

まあ、予定としては、ティファニアのもとにいるメタモンとルイズが再会するところまでですから……。


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メタモン、トリステインに帰る

アルビオンから帰還。

そして、ルイズの態度が……?


 タバサの風竜・シルフィードに乗り、ルイズ達はトリステイン城へ来た。

 中庭に着陸したのだが、当然だがいきなりの侵入者に兵達によって包囲される。

 ルイズがアンリエッタに取り次いで欲しいと伝えたが、聞いて貰えるはずもなく……、全員を束縛しろと命令が下ろうとしたとき、アンリエッタ本人が駆けつけて事なきを得た。

 そして謁見の間で、報告。そしてウェールズから渡された件のアンリエッタの手紙を渡し、自分より名誉が大事だったのだろうかと…悲しむアンリエッタに、メタモンが風のルビーの指輪を渡した。

 ウェールズさまから?っと聞かれ、ルイズに変身しているメタモンは、悲しげに俯いた。

 それで察したのかは分からないが、アンリエッタは風のルビーを指に嵌め、ありがとうございます…っと、悲しげに、けれど微笑みを浮かべてお礼を言った。

 

 任務を終え、タバサのシルフィードに乗って学院に帰った。

 

 その翌朝から、ルイズは、メタモンへの態度を変えた。

 今までこき使っていたのを、軟化させ、自分で出来ることは自分でやるからと言い出したのである。

 その変化に、メタモンは、ガーンである。まるで自分が必要なくなったかと思って。

 目をウルウルさせ、『ボク、必要ないの?』っと言いたげに目で訴えてくる。

 ルイズは、その目にメチャクチャ罪悪感を感じた。

 メタモンにここまで従属を強いたのは、結局の所自分に責任がある。

 しかし、ルイズが今までのことを反省して態度を変えた理由は、メタモンが自ら命を投げ打つような真似をしてワルドの相手を自分が引き受けると言い出したことにある。結局これは、ルイズが戻って来てしまったため、未遂に近い形で終わってしまったし、もしギーシュ達が来なかったらルイズもメタモンも死んでいただろう。結果良ければ全て良しなどという言葉で片付けたくなかったのだ。

 使い魔を平気で使い捨てる貴族は多いだろう。よっぽどの使い魔でないと生かす理由もないからだ。最悪の場合、殺すためだけに召喚するような醜悪な者さえいると聞いている。それは、使い魔召喚の儀式が一方的な従属を強いるからに他ならないからだろう。

 ルイズは、魔法がまともに使えない。

 それゆえに魔法の成功は何よりの宝であった。

 だから使い魔を邪険に扱う、普通に魔法が使える者達が許せなかったし、まともに魔法さえ使えれば声を大にして止めたいぐらいだった。しかし、魔法主義社会がそれを許してくれなかった。

 今思うと、メタモンにあれこれ、使用人より重労働を平気でさせててたのも、あの使い魔召喚の儀式以降、一向に魔法が使えなかったことへの八つ当たりだったのではないかとルイズは、自己分析している。メタモンが文句を言わないのをいいことに……。

 そしてアルビオンでのことでルイズは、ふと気づいたのだ。

 

 自分にとってメタモンがいかに大事かを。

 

 それを自覚した瞬間に、気づけばアルビオンを脱出する女子供達を乗せたイーグル号から飛び降りていた。

 そして任務が終わった後、メタモンへの態度を変えようと思い立ったのだ。

「違う。違うのよ。メタモン。私は別にあなたが必要じゃないからそう言ってるじゃないのよ?」

 ルイズがそう言ってメタモンをなだめようとするが、メタモンは、ウルウル目でやがて背中を向けて部屋を出て行ってしまった。

「メタモーーン!」

 ルイズがメタモンを追いかけたが、とにかく速くって捕まえられなかった。

「そんなつもりじゃなかったのにぃ…。」

 ルイズなりに優しくしたら逆効果で傷つけてしまったのかと、ルイズは、顔を手で覆った。

 

 ルイズがトボトボと歩いていると、教師がルイズを呼び止め、オスマンが呼んでいると言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あらあら? メタモンちゃん、どうしたの?」

 

 自分の使い魔であるサラマンダーのフレイムが、急にこっちにて来てくれと誘ってきたので、キュルケがついていくと、そこにメタモンがいた。

 メタモンは、ベンチの上でベソベソ泣きながら、軟体生物姿で器用に触手のように手を伸ばして毛糸で編み物をしていた。

 横を見ると、まあ……ルイズをデフォルメして可愛いぬいぐるみにした毛糸の編みぐるみが山に…。表情がひとつずつ違うのがこれまた…。

「どうしちゃったの? ルイズに酷いコトされたの?」

 キュルケが目線を合わせるようにしゃがんで聞くと、メタモンは、ピタッと手を止めた。

「メタモンちゃんを泣かせるなんて酷いわねぇ…。」

 キュルケが、そう言いホウッと息を吐いていると、メタモンが違う違うと首を振った。

「じゃあ、どうしたの?」

 キュルケがそう聞くと、メタモンは、ルイズに変身し、ポツリッと小声で言った。

 

 ルイズの様子が変…っと。

 

「変? なにかあったの?」

 それからメタモンは、キュルケに、ぽつりぽつりと何があったのか語った。

 アルビオンでの任務から帰ってきてから、変に優しいと。

 いつもなら色々と命令してくるのに、自分が命令より速く事をやろうとするとほとんどのことを自分でやると言い出したこと。

 

『ボク…、必要…ない?』

 

 っと、ウルウル目でそう呟くその様は、非常に可哀想だ。

 キュルケは、眉間を抑えた。

 ああ…、あの子(ルイズ)ったらバカねぇっと。

 しかし、ここはしっかり言ってやらないと拗れるだろうからキュルケは、口を開いた。

「違うと思うわよ? メタモンちゃん、しっかりルイズから理由を聞いたら? 理由も聞かずに逃げてきちゃったんでしょ? その編みぐるみでも手土産にして帰ったら?」

『……。』

「いい? メタモンちゃん。あの子はね、素直じゃないの。だから上手く素直になれないだけよ。いい?」

 キュルケがメタモンの手を握って、子供に言い聞かせるようにすると、メタモンは、しばらく考えて、コクリッと頷いた。

 そしてメタモンは、どこから出したのか、袋の中に編みぐるみを詰めて、走って行った。

 その姿を見送ったキュルケは、フウッとため息を吐いた。

「甘味でも奢って貰おうかしらねぇ。メタモンちゃん取らなかっただけよかったと思いなさいよ。バカルイズ。」

 そう独り言を言いながら、見事な赤毛を手でなびかせたのだった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして、メタモンは、恐る恐るルイズの部屋に帰ってきた。

「メタモン!」

 椅子に座って本を開いていたルイズがメタモンを見て立ち上がった。

 怒られる!っとメタモンは、思わず目を強くつむった。

 しかし、一向に怒鳴られず、むしろ、抱きしめられた。

「何処に行ってたのよ…、バカ…。」

 ルイズの声が震えていた。

 まるで親にでも置いて行かれてしまったかのような寂しがる子供のように。

 メタモンは、目を開け、ルイズの背中を落ち着かせようとポンポンと叩いた。

「メタモン……、私のこと嫌い?」

 思わぬこと言われ、ギョッとしたメタモンは、ルイズの肩を掴んで引き離してブンブンと首を横に振って見せた。

「うぅー。」

 ルイズの目からとうとう涙がこぼれ落ちた。

 メタモンは、アワアワと慌てた。

「お願いだから…、嫌いにならないでよ~。」

 ルイズは、ベソベソ泣きながらそう言ったのだった。

 メタモンは、編みぐるみが入った袋を落とし、慌てた。

 ルイズは、床に転がった自分をデフォルメして可愛くしたような編みぐるみを見て、しばらく黙り……。

「な…、何作ってんのよーーー!」

 っと、顔を赤くして叫んだのだった。

 

 

 




この回、書くのが大変でした。

メタモンは、ドMではありません。
ルーンの従属性も手伝って、使い魔ってこういうことすると主人が喜んでくれるんだっと、インプットされちゃったから必要されなくなったと思ってショックを受けただけです。

さーて…、タルブ戦どうするかな……。


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メタモンの宝探し

メタモンの宝探し。




タルブ戦での重要なイベントなのでどうするか悩みに悩んだ結果、こうしました。



このネタでのメタモンは、ポケモン世界のメタモンです。タルブ近隣のメタモンではありません。


 

 

 メタモンは、キュルケから見せられた宝の地図を見て、思い立つ。

 

 この宝の地図で素晴らしい宝を見つけてくれば、ルイズが喜んでくれるのではないかと。

 

 そう……簡単に考えてしまった。

 

 

 そして、現在……とっても後悔している。

「メタモンちゃ~ん、コレに化けてみて。」

「ひ、ひひひひひ、卑猥過ぎるぞ! ツェルプストー!」

「あ~ら、経験の無い男だったのね、あんた。」

 

 キュルケが提案した宝探しに、なぜかギーシュ、そしてキュルケに付き合わされたタバサ、そしてシエスタがいた。

 

「そ、その前にだね! 君が持って来た地図だが…、これが本当にブリーシンガメルなのかい?」

「……さあね。」

「目をそらすな! やっぱり詐欺られたんだ!」

「あとからノリノリで来たくせにうるさいわね~。」

「いくらなんでも酷すぎるだろ! これで、7件目だぞ! あぁ…、こんなことなら、モンモランシーとデートのひとつでも…。」

「ふられたくせに、よく言うわよ。」

「いいや! 僕はまだ…。」

「あれだけ人の目のあるところで、盛大に二股がバレて二人共にふられたくせに?」

「うぐ!」

 痛いところを突かれ、ギーシュは、ガクーンと膝と手をついたのだった。

 メタモンは、哀れむようにギーシュを見てから、タバサに助けを求めるように目を向けたが、タバサは、手元の本に目線を落としていて全然こっちを見てくれない。

 シエスタを見ると、シエスタは、料理中。さすが貴族の子供が通う学院のメイドだけあり、キュルケが見せた卑猥な…ナニかを見ても動じないし、止めようとしない。

 キュルケとギーシュが言い合っている間にせめて隠れようと思ったが、途端に軟体の体の端っこをキュルケに掴まれて。

「何処に行くの?」

 っとキュルケに捕まり、逆戻り……。

 

 やっぱり、行くんじゃなかった……。っと後悔しても後の祭りである。

 ただ…、ルイズにとても似合う、ふさわしい宝をあげたかっただけなのに…。

 

「みなさ~ん、ごはんできましたよ~!」

 

 そこに、シエスタが食事が出来たことを伝えに来た。

 

 メタモンは、シエスタの故郷名物・ヨシェナヴェを食べながら、帰りたい…っとつい呟いた。

 

「次。次よ、コレで最後だから、泣かないで。」

 気がつけば泣いていたらしい。

 そしてキュルケが地図を広げた。

「竜の衣! これよ!」

「えっ?」

 するとシエスタが反応した。

「あら? どうしたの? もしかして知ってるの?」

「し、知ってるもなにも…、竜の衣は、私の故郷の村にありますから…。」

「なんですってー!」

 意外な接点であった。

 これは、もしかした当たりか?っとメタモンが希望を持ったが…。

「でも…。」

「なによ? 問題でもあるの?」

「あの…宝と呼べるのかどうか…微妙でして…。私の曾祖父が残した物で…。」

「つまり、平民が残した宝ということかね? それは、期待できないな…。」

「申し訳ありません…。」

「でも、見るだけ見ましょうよ。ここまで来たんだし。で、あなたの故郷ってどこ?」

「タルブです。ラ・ロシェールの先にあります。」

「タバサ。頼むわよ。」

 キュルケが言うと、タバサは、ヤレヤレと言った様子でため息を吐いた。

「あっ。もしかしたら、メタモンの故郷かもしれませんね。」

「えっ? どういうことかしら?」

「私の故郷のタルブも近隣の森でしか見たことがないんですよ。だから、学院で見た時はすごく驚きました。」

「へ~。そうなの? メタモンちゃん。」

 しかし、メタモンは、違う違うと首を振った。

「えっ? 違うの?」

「えっ?」

 シエスタがキョトンとした。

 

 ルイズが召喚したメタモンにとって、タルブ近隣は……故郷ではなかったのだ。

 

 しかし、それを説明する気もなかったし、説明したところで信じてもらえるとも思ってなかったので今まで黙っていたのだ。

 

 そんなこんなで、タルブ村。

 そして、メタモンが知っている赤い門のようなもの…鳥居を超えた先に、竜の衣と呼ばれている物が奉納されていた。

 

 メタモンは、それを見て驚く。

 

 それは、戦闘機と呼ばれる飛行機の一種だったからだ。

 

 メタモンがもといた世界でも一部でしか見られない、出番がほとんど無い人間が作った兵器で、空を飛ぶことができる機械だ。

 ルイズの姿に早変わりしたメタモンが、戦闘機をペタペタと触る。

 ガンダールヴの解析能力で調べたところ、故障箇所はない。

 だが……、肝心の燃料が空っぽだった。

「何よコレ? 鉄の塊? こんなののどこが竜の衣よ?」

「ヤレヤレ、やっぱりガセネタじゃないか。」

「私の曾祖父が、コレに乗ってタルブに来たと言われているんです。本当かどうか分かりませんが…。」

「これが空を? 冗談でしょ?」

『燃料が…空っぽだから…。』

「あら? メタモンちゃん分かるの?」

「あっ! 曾祖父の遺言で、これのことが分かる人が現れたらコレをその人に譲れって言われてるんです。メタモンさん…、いりますか?」

 シエスタが聞くと、メタモンは、ウンウンと頷いた。

「だが、どうやって持って帰るんだい?」

 ギーシュの言葉にメタモンは、あっ!と声を漏らし、俯いた。

 しかし諦めきれず、戦闘機の車輪部分を掴んで引っ張る。

「もう…メタモンちゃんたら…。仕方ないわねぇ。」

「おいおい、まさか…。」

「あんたも協力しなさい。グラモン元帥の息子さん。」

「僕もかい?」

「竜騎士隊を連れてきて、運んでもらいましょう。請求先は……。」

「まさか…僕らが?」

「んなわけないでしょ。さすがにそんな大請求が来たら実家から絶縁されるわ。コレ見せたら絶対大金を出す心当たりがあるのよ。」

「?」

 そうして、ギーシュの父親のコネで借りた竜騎士隊に、戦闘機を学院に運んで貰ったのだった。

 

 そして、心当たりがあるとキュルケが言った人物を呼んで見せたところ、キュルケの思った通り大興奮して、請求を肩代わりしてくれたのだった。

 コルベールが……。

 

 

 

「メタモン!」

 帰るなり怒鳴られ、メタモンは萎縮した。

 ルイズに何も言わずにサプライズのつもりで勝手に出てしまったのだ、怒られて当然だ。

「バカバカ! もうどこに行ってたのよ! こんなわけの分からない物がお土産のつもり?」

 ルイズに怒られながら、メタモンは、縮こまりながら頷いた。

「もう……。急にいなくならないでよ…。」

 すると急にしおらしくなったルイズの声が、泣きそうに震えた物になった。

 その後、メタモンが必死にルイズを慰め、ルイズが泣き止むまで数分ほどかかった。

 

 ルイズが泣き止んだ後、メタモンは、ルイズにコレが空を飛ぶことができる機械だと説明したが信じて貰えず、コルベールと協力して、錬金で必死に大量の燃料を作ることに集中したのだった。

 ルイズは、そんなメタモンに、寂しさを感じ、プウッと頬を膨らませ拗ねてしまい、これまたメタモンが機嫌を取るのに苦労することになるのだった。

 

 

 

 

 




なぜメタモンが戦闘機を知っているのか……、まあ人間に紛れて生活するようなメタモンもいるぐらいだし、人間の世界に詳しくても不思議じゃないかなって思って…。

なお、零戦ではなく、ステルス機のような戦闘機です。


もうすぐ、戦争が始まる……。


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メタモン、戦闘機を飛ばす

色々と考えに考え……。


結果、特撮や映画に出るような未来形の発達した戦闘機ということにしました。(バードストライクが起こらない構造とか、滑走路を必要とせずその場で浮き上がってから発進するとか)

なので、現実に存在する戦闘機と形状と積んでいる兵器などが異なります。


 

 メタモンとコルベールは、せっせと戦闘機の燃料作りに励んだ。

 その甲斐あって、十分すぎる量ができあがり、補給に成功したのだった。

「で? どうやって飛ぶの? こんな鉄の塊が…。」

 メタモンは、そんなルイズの疑問に、知る限りの知識を語る。

 普段ほとんど喋らないメタモンがこの時ばかりはよく喋った。

 コルベールがめちゃくちゃメモしていたりとカオスだった。

 メタモンは、まず、エンジンの状態を調べるため、エンジンを起動させた。

 固定化の魔法で劣化せずにいたエンジンが燃料を得たことで息を吹き返し、後ろの噴射口から轟音と共に火が灯る。あまりの音に学院の窓から戦闘機のある広場を生徒や教師が見るほどだ。

 メタモンは、エンジンがしっかりしているのを確認したらエンジンをいったん切った。

「飛ばないのかね?」

 コルベールが聞くと、メタモンは、今日は飛ばないと答えた。

「む…、それは残念だな。ぜひともこの鉄の竜が飛ぶところを見たかったのだが。」

 残念がるコルベールに、操縦席から飛び降りたメタモンは、今は壊れた箇所がないか調べると答えた。

 一見すると金属の塊であるが、精密機器の塊でもある戦闘機。特に心臓部であるエンジンに異常を来せば途端に空飛ぶ棺桶となる。

 それと、武装も調べる必要がある。

 見たところ、機関砲と……、電磁砲。

 この電磁砲は、メタモンの故郷であった“世界”で、他のモンスターが使っていた技をヒントに作られた人間の兵器だ。

 エンジンの発電で充電し、電気の塊を発射するというミサイルに代わる兵器だったとメタモンは記憶している。

 1回発射すると、充電に時間がかかるのがネックだが、威力は絶大だ。エンジンさえ稼働していれば、燃料さえ切れなければ何度でも発射できるのでミサイルより凶悪であろう。

 メタモンは、考える。

 電磁砲も強いが、戦闘機の機動性を生かすことを求めるなら機関砲の方がいいだろう。だが弾切れしたら終わりだ。

 そこで、弾を補給できる体制を作っておく必要があると考え、ガンダールヴの解析能力と自身のコピー能力をもって機関砲の構造と弾の制作方法を理解した。

 幸いなことに、このハルケギニアという世界には、錬金という魔法が存在し、その場で物質を別の物質に変化させる魔法が存在している。本来なら長い歳月の末に地底から掘り起こされる化石燃料もこの方法で作れたのだから、弾を作るぐらい簡単だろう。ただ、精密な加工技術が必要だ。だがよくよく考えてみれば、ギーシュのように青銅でワルキューレのような美しい稼働できるゴーレムも作られるのだから、試行錯誤次第で可能になるとメタモンは考える。

 ただ問題があるとしたら、戦闘機本体が壊れた場合だ。そうなると設計図がない限り修理は不可能になる。なので、やはり飛行する場合は慎重にならなければならない。

 幸い、強固な固定化の魔法のおかげで錆び付くなどの劣化は起こらないようなっており、時間経過での故障は今後もないだろう。

 うん、だいじょうぶだ!っとメタモンは、ひとりウンウンと頷いた。

 そんなメタモンを見ていたルイズは、拗ねてプウッとほっぺたを膨らませた。

 その時、メタモンがルイズの様子にハッと気がついてアワアワとルイズの前で慌てだした。

「なによー、なによー、今更私に構ったって機嫌直さないわよ? ミスタ・コルベールとこの鉄の塊のことで話の花でも咲かせたら?」

『…ルイズを乗せたい。』

「私を?」

『コレに乗るとね。鳥よりも、竜よりも高いところを飛べるよ!』

 メタモンが、大げさに手を広げて戦闘機を示す。

「…どうでもいいわ。」

 ルイズが、わざとボソッと言うと、メタモンは、ガーンとショックを受けた。

 そして目を潤ませる。

「め、メタモン?」

『…ルイズに喜んで貰える…、宝物…あげたかっただけなのに…。』

「そ、そうだったの?」

 ルイズに内緒で勝手に宝探しになど行ったのは、そういう理由だったらしい。

『綺麗な宝物じゃなくて、ごめんなさい~~~。』

 っと、メタモンがグズグズ泣き出す。

 そんなメタモンに、今度はルイズが慌てだした。

「いい! もういいの! 怒ってないから! あ、そうね…、ちゃんと飛べるようになったら乗ってあげるから…。」

『ホント!?』

 瞬時に泣き止んだメタモンが顔を上げ、顔を輝かせた。

『ほんとに、ホント!?』

「ええ…。本当よ。」

『わーーい!』

 メタモンは、無邪気に手を上げて喜ぶ。

 ルイズは、ひとまずホッとしたのだった。

 

 その後、数日間。

 コルベールと共に戦闘機の整備と状態を調べたメタモンは……。

 

 虚無の日に、寝ていたルイズを起こして早く早くっと、戦闘機のある広場に連れて来たのだった。

 早朝で、寝ぼけ眼のルイズは、もっと寝かせろと怒りかけたが、メタモンのキラキラお目々に怒る気が失せ、戦闘機の発進準備を始めるメタモンを見守った。

 そして、メタモンが操縦席から手を伸ばす。その手を取ったルイズを、軽々と持ち上げて後ろの席に座らせシートベルトをさせて、風防を閉める。

 そして、メタモンは、エンジンを起動させた。

 コルベールが見守る中、そして轟音によって叩き起こされた生徒や教師達が建物から顔を出してくる中、凄まじい風を巻き上げながら戦闘機が広場の地面から浮き上がった。

「う、浮いたー!」

 ルイズは、まずこんな金属の塊が浮いたことに驚いた。

 そして、ある程度の高さまで浮いた戦闘機は、後方のジェットを点火し、発進した。

「うぐっ!?」

 その急発進にルイズが席にめり込むような思いをした。

 スピードに乗った戦闘機が飛行速度を一定にすると、最初の衝撃はなくなった。

 メタモンは、徐々に高度を上げていき、ルイズに外を見てと手で示した。

 ルイズは、風防から外を眺めた。

 そこには、竜や風石で飛ぶ船から見た光景以上の高さからでないと見られない光景が広がっていた。

 下がほとんどが雲であるが、雲がない所から見える光景は……、ミニチュアの景色の模型をもっとリアルにしたような景色が広がっていた。

 ルイズがその光景に息をのんでいると、メタモンが、操縦桿を操り、不意にイタズラ心で…。

「っ、ぎゃあああああああああああああ!?」

 いきなり急降下。旋回。

 言うなれば絶叫マシンの、アレだ。

 シートベルトはしているが、落下の浮遊感と、急な旋回による重力の圧は凄まじく、ルイズが、ギャーだの、なんだのもう声にならない悲鳴を上げ続けた。

 そうして散々飛んだ後、メタモンは、戦闘機を学院の広場に着陸させた。

 メタモンは、ルイズが楽しめたかな?っと思いつつ後ろを見ると……、完全に白目を剥いて口から泡を吹いているルイズがいて、大慌てすることになり、急いで降ろしてペチペチとほっぺを叩いて起こすと、グラングランしていたルイズがやがて復活してムチを手に、メタモンに怒りをぶつけたのだった。だが足が生まれたての子鹿のように震えていて足をもつれさせて倒れることになるのであった。

 

 ところで、なぜルイズが乗り物酔いを起こさなかったのか?

 

 それは……、烈風の二つ名を持つ母・カリーヌのしごきで竜巻で回され落とされることを小さい頃からやられていたからだった……。

 

 

 

 




メタモンは、よかれと思ってやりました……。遊園地で絶叫マシンで喜んでる人間を知っているので。

たぶん、このあと、コルベールも乗せてるかも。

ところで、現実の戦闘機って、最高速度は音速レベルでしたっけ?
音速が生み出す衝撃波も武器になるかな?


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メタモンと戦争の始まり

やっと書けた! 頑張ったよー!


ルイズのメタモンとは、別に、タルブ近隣に棲むメタモン(※シエスタの曾祖父の手持ちの子孫)が出てます。


 

 

 アンリエッタがゲルマニアとの同盟のため、嫁ぐ。

 その際の結婚の儀式の時の祝福の言葉を言うという大役を、アンリエッタは、自分の一番の親友だと言っているルイズに任せた。そのために、始祖の祈祷書を渡したのだ。

 しかし、国の宝物庫に大切に保管されていた祈祷書は、何も書かれていない。すべてのページが真っ白だった。

 そのためルイズは、とても難儀した。

 正直、ルイズは、荷重に思っていた。ゼロだ何だと周りから認められていない半人前のメイジでしかなく、親の七光りの後ろ盾しかない自分には、あまりにも重たすぎる大役だと感じていた。これで、大ごけしてアンリエッタに大恥をかかせてしまったら、それこそゲルマニア側との外交にドでかい傷ができてしまう。それを考えただけで、胃がキリキリする。

 メタモンが心配して、胃に良いお茶を煎じた特製のミルクティーを持って来てくれたり、料理長のマルトーに胃に良い料理を頼んだりと気を遣ってくれる。それもそれでとっても有り難いが、気を遣わせてしまって申し訳ない気になってしまう。

「メタモ~~ン…、私、もうダメかも…。」

 アンリエッタが嫁ぐ日が迫るにつれ、ルイズは、ルイズに変身しているメタモンに泣きつくようになった。

「姫様~~、なんで私なんかにこんな大役を……。胃に穴を空けて殺したいんですか~?」

 グスグスと泣き言を言うルイズを膝に、メタモンは、ルイズの頭をヨシヨシと優しく撫でる。その優しさが染みてルイズは、ますます泣く。

 そんなルイズを慰めながら、メタモンは、最近不穏な空気を感じていた。

 それは、メタモン自身の勘というか……、風が運んでくる不穏な空気というか……。メタモンにもよく分からなかった。だけれど、とても悪いことが近いうちに起こるのではないかという予感をさせた。

 メタモンには、もといた世界にいた、人間達からポケモンと呼ばれている同族であるものの、他の種類のポケモンと違い、予知夢のような能力があるわけじゃない。なのに悪い予感を感じてしまう。

 それは…、きっとルイズに災いとなって降りかかるだろう。

 そうなったら……、自分がすべきことは……。

「メタモン…?」

 ルイズの声で、メタモンは我に返り、なんでもないと首を振った。

「それならいいけど…。なんか変なこと考えてないわよね?」

 ルイズが口を尖らせてそう言ったので、図星だったメタモンは思わずビクッとなってしまった。

「? ちょっと? 何考えてたの?」

 ルイズが、ルイズに変身しているメタモンの膝から顔を上げ、詰め寄ると、メタモンは大汗をかきながら違う違うっと慌てていた。

「丸わかりよ! 何考えてたのか教えなさい!」

 メタモンがルイズにとって良くないことを考えていたのを見抜いたルイズは、ずいずいと詰め寄り、ベッドの端に追い詰めた。メタモンは、イヤイヤ!っと首を振るだけだ。

 その時、コンコンっとドアがノックされた。

 ドアの向こうから聞こえた声は、コルベールだった。

 メタモンが軟体に変わってルイズの身体の隙間から逃げると、そのままドアを開けた。

「やあ、メタモン君! 時間があるかい? 時間があるなら、また戦闘機というので飛んでほしいのだけれど!」

「ミスタ・コルベール? ……あんな目に遭ってまた…。」

 ルイズは、コルベールの図太さというか、研究熱心さに呆れていた。

 ルイズを乗せた後、戦闘機を知りたがって鼻息荒いコルベールも戦闘機に乗せて飛んだのだが、初老の身体には負担が大きくすぐに音を上げてしまったのだ(※ゲロは吐いてない)。だが、科学というものに熱心なコルベールは自分に渇を入れて戦闘機の研究のため乗りたがった。なお、今回で三回目である。

「特注の酔い止めを飲んだから問題ない! さあ、メタモン君! 時間が許す限り!」

「メタモーン。イヤならイヤって言いなさいよ。」

 メタモンは、ルイズとコルベールを見比べるようにキョロキョロと見て……、疲れるからイヤっとコルベールに断りの言葉を言ったのである。

「そ、そこをなんとか!」

 しかし食い下がるコルベール。土下座しそうな勢いだ。

 しかし、メタモンは断った。操縦する方は、ものすごい神経を使うためハッキリ言ってとんでもなく疲れるのだ。連チャンで頼まれたらたまったものじゃない。

「うう~む…、そうか…。では、今回は諦めるよ。でも、もし機会があればいつでも言ってくれ! 仕事なんぞほっぽり出して、這ってでも乗るからね!」

「いや、それは、さすがに教師としてダメですよ。」

 さすがにツッコむルイズであった。メタモンも同意するようにウンウンと頷いた。

 コルベールも、さすがに生徒とその使い魔にそう指摘されて、うぐっと言葉を詰まらせ、すまなかった…っと先ほどの言葉を撤回したのだった。

 

 その後間もなくであろうか……、メタモンは、大形の鳥に変身してきた、タルブ近隣に棲む同族のメタモンから、タルブ村に新生アルビオンが攻めてきたという知らせをいち早く聞いた。

 そして、窓に止まっているルイズのメタモンとは別のメタモンにキョトンとしていたルイズとコルベールを残し、メタモンはすごい速さで部屋から飛びだしていった。

「メタモン!?」

 それに気づいたルイズが慌てて追いかけ、我に返ったコルベールも追いかけた。

 メタモンはルイズに変身し、戦闘機に乗り込もうとしていた。

「何処に行くの!?」

『…タルブ……。』

「タルブって…、えっと…たしか…。」

 ルイズは、思い出そうとする。そして思い出す。そこの地名は確か、メタモンのことを教えてくれたメイド、シエスタの故郷ではなかったか?

「そこがどうしたの?」

『アルビオンが……、レコン・キスタが…。』

「えっ? どうして? アルビオンはトリステインと不可侵条約を結んでるのよ?」

『破った……、今…森が…燃えてる。助けを、求められた。』

 メタモンが辛そうにそう言っていると、先ほどの大形の鳥が飛んできて、メタモンと同じ軟体へと変わって見せた。

 それに驚いたルイズが、ハッとして自分のメタモンを見ると、戦闘機の発進準備を進めていた。

「私も行く!」

『ダメ…。』

「あなただけ行かせるなんてできないわ! 使い魔をひとりでほっぽり出すなんてできない!」

「大変だぞ、ミス・ヴァリエール! 今、ラ・ロシェールの近隣がアルビオンの空中艦隊の侵略を受けているという情報が入った!」

 コルベールが途中でその緊急連絡を他の教師から聞いて駆けつけてきた。

「メタモン君! 行くのかね?」

「私も行くわ! イヤだって言っても行くからね!」

「ミス・ヴァリエール!」

 コルベールの制止も聞かず、ルイズは、戦闘機によじ登って、後ろの席に座ってシートベルトを付けた。

 メタモンは、ウ~っと悩みながら、渋々風防を閉じ、戦闘機を発進させた。

 轟音とジェットの風を吹かせながら広場から飛び立った戦闘機はまっすぐタルブ村へと飛んだ。

 戦闘機が生み出す圧にシートに小柄な身体を押しつけられるような気分になりながら、ルイズは、気づかなかった。

 肌身離さず持っていた水のルビーの指輪が光り、始祖の祈祷書が僅かに開いて、そこに呪文の文字が浮かび上がっていたことに。

 

 

 

 




メタモン、同族だけど、同じ世界に住んでた仲間ではないメタモンから助けを求められ、緊急発進。


次回は、vsレコン・キスタなどかな。


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メタモンと空中の戦争とルイズの覚醒

メタモン、戦闘機での戦闘と、ルイズの覚醒。


 

 音速で空を飛行する戦闘機の存在に、タルブの地を攻め入っていたレコン・キスタの艦隊や風竜の部隊が気づいたのは、トリステイン魔法学院に知らせが入って数分ほどであった。

 メタモンが操縦する戦闘機は、凄まじい音だけを残して風竜の横スレスレを通り過ぎる。それだけで、戦闘機の音速が生み出す音と空気の衝撃波の攻撃を受け、あっという間に風竜の部隊は陣形を崩し、間近で大音量を食らった者は耳をやられ、一部の風竜は恐れをなして騎手の制止も聞かず地上へと降りて身体を伏せてしまうほどであった。

 メタモンは、風防の内側から、タルブを見おろした。森は、一部が燃えた痕跡があったものの、辛うじて無事だったが、村は空中からの攻撃と上陸した陸軍にやられたのかすでにボロボロだった。

 果たして…、シエスタは無事なのだろうか?

「ひどい…。シエスタは、無事かしら?」

 ルイズもメタモンと同じ事を思ったのかそう呟いていた。

 メタモンは、風防の内側から目を細めて森の隙間を見た。

 その中に、手を振っているメタモンがおり、ジェスチャーや、身体の表面を変化させて文字を作り、村人は無事だとこちらに知らせてきていた。それを見てルイズのメタモンはとりあえずホッとし、まずは、タルブの空を支配している軍勢をどうにかすることに集中することにした。

『ルイズ。』

「なに? ……まさか…。」

 言われずともなんとなく察したルイズは、青ざめた。

『だから…、ダメって…。』

「分かってる! 存分にやりなさい! あの娘(こ)の故郷をメチャクチャにした奴らを懲らしめるのよ!」

『うん!』

 ルイズがヤケクソ気味に叫んだ途端、メタモンは、操縦桿を握り直して戦闘機の武装のセーフティを解除していった。

 そして、大きく旋回しつつ、陣形を建て直した風竜の軍勢に向けて飛んでいく。

 陣形のど真ん中に最高速度で突っ込んでいくと、そのスピードについて行けなかった風竜達の一部に激突し風竜の翼がへし折れて墜落、衝撃波により通り過ぎただけでかなりの数の風竜が吹っ飛んでいった。

 風竜に乗っているメイジ達が音でやられながら、体制を崩されて不安定な風竜に乗った状態で必死に魔法の呪文を唱え、風竜の部隊のド真ん中を通り過ぎた後大きく旋回して再び迫ってこようとしている戦闘機に向かって魔法を放とうとして……、放てなかった。

 ドンッという大きな衝撃の後、下を見ると、風竜の胴体に大きすぎる大穴が空いていて、死んだことを理解できないまま風竜は騎手と共に墜落していった。墜落していく中、騎手は他の風竜も同じように穴を空けられて死んで墜落していく姿を目撃した。

 墜落する間際、せめて傷ひとつでも!っと悪足掻きをして魔法を放つメイジもいたが、音速による衝撃波の壁が邪魔をして氷も風も通さない。

 その間にも機関砲が放たれ、一発も外さず空を支配下に置いていた風竜の部隊に叩き込まれる。

 あらかた片付けた後、今度は空に停泊している艦隊に目標を定めた。

 人工により作られた電磁砲を充電し、空中戦艦の一機の上を通り過ぎる際に置き土産のごとく破壊の雷の塊を落としていく。

「うぉえええ……。」

 ルイズは、メタモンが操る戦闘機の後ろの席でグロッキーになっていた。まだ吐いてない。けど、そろそろ限界だった。だが止めることはできない。無理矢理ついてきたのはルイズなのだから。それは分かっている。

 ルイズは、必死に精神力を振り絞って耐える。メタモンの足は引っ張りたくない。だが、自分がここにいても無意味なのも理解している。

 不意に逆さまになった。宙返りだ。

 ルイズは、声にならない悲鳴をあげかけて耐え、その際に手元から離しかけた祈祷書を持ち直した。

 その際にページが開き、宙返りが終わった後、視線が落ちたときになってやっとルイズは、祈祷書に浮かび上がった文字に気づいた。

 一方でメタモンは、困りだしていた。

 というのも、敵艦隊が多すぎるのだ。

 電磁砲は、空中艦を壊せる。だが大きい艦を破壊して戦闘不能に陥らせるには至らない。しかもエネルギー消費が大きすぎる。つまり燃料が、ヤバい。

『燃料が…。』

 そのメタモンのぼやきをルイズは、しっかりと聞いた。

「メタモン…、私に任せてくれる?」

『?』

「もしかしたら……、やれるかも。私がなんとかするから、あなたは時間を稼いでくれる?」

 メタモンが振り返ると、ルイズは、杖を手に、もう片手に文字が浮かんだ祈祷書を手に覚悟を決めたような顔をしていた。

 メタモンは、ルイズのその様子に何かを感じ、頷いた。

 ルイズは、呼吸を整え、呪文を唱え始めた。

 

 

 エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ

 オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド

 ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ

 ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル

 

 

 その呪文を、メタモンは、知っていた。

 

 そう……、初めてルイズと出会ったあの野原でルイズを見た瞬間にコピーした、ルイズの中にあった……唯一の魔法。

 けれど、メタモンの“目”でも一部しか見えなかった呪文の、ソレ。

 その魔法の名は……。

 

 

「エクスプロージョン!」

 

 

 ルイズが風防内から杖の先を艦隊の中心に向けた瞬間。

 巨大な火球が現れ、それは徐々に膨れ上がり、すべての敵艦隊を包み込み、光りが晴れると全ての艦隊が燃えていた。

「……やった…。」

『ルイズ!』

 ぐったりとシートに背を預けたルイズを見て、メタモンは、慌てて戦闘機を焼け野原に着陸させた。

「やったわ、メタモン……、私、やったのね…?」

『うん、うん!』

 風防を開け、シートベルトも外して、ルイズを引っ張り出すように抱き上げながらメタモンは、頷いた。

「メタモンさん! ミス・ヴァリエール!」

 そこへ、森の方からシエスタが走ってきた。

 シエスタの後ろの方から、森に住んでいたらしい野生のメタモン達がウニョウニョとやってきて、ルイズのメタモンを讃えるように動いていた。

 

 

 

 




メタモンの“目”では、ルイズの中に最初から宿っていた攻撃の魔法としてエクスプロージョンが見えてたけど、未覚醒なため、呪文の全ては見えてなかった…っということで。そのため土くれのフーケ編の時に、呪文の冒頭しか唱えられなかった。

これ以降、ルイズに変身してならメタモンは、呪文を全部唱えられるようになります。
ただし、威力などはメタモン自身のステータスに依存するので威力はルイズよりもずっと低いです。


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メタモンと、惚れ薬

令和元年の最後の投稿が、短編(ゾンビ屋れい子ネタ)で最後と言ったのは、ありゃウソだ。ウソになった。


ネタ詰ってたけどなんとか書けました。


令和元年の最後の投稿は、これで最後ですね。


 

 アルビオンが不可侵条約を自ら破った。

 それは、人間社会に激震を走らせる。

 それは、石を投げ込まれ水面に発生した波紋のように広がり、沈んでいった石のように水底の沈殿物を巻き上げる。

 それは、戦争と呼ばれる悲劇の始まり。

 

 メタモンは、オロオロしていた。

 

 ルイズがベッドで枕を抱えてふて寝している。

 机の上には広げられた手紙。

 それは、ルイズの実家からの手紙だった。

 要約すると、実家に帰ってこいという内容である。

 アルビオンが宣戦布告を宣言した今、トリステインは同盟を結んだゲルマニアと共にその侵略に対抗しなければならない状況である。つまり力あるメイジ達が徴兵されるのだ。それは、学院の生徒にも重くのしかかる責任であり、それは力ある者達に負わされた責務と言えよう。

 これにたいしルイズの実家であるヴァリエール公爵家が取ったのが、末っ子の娘であるルイズを徴兵から逃れされるための実家への帰省だった。

 まだヴァリエール家には知られていないが、ルイズがタルブの地を荒らしていたアルビオンの艦隊を覚醒した系統である虚無の力をもって全滅させているので、それを知っているアンリエッタ達からしたら絶対に力になって貰いたい、そしてルイズのメタモンが操縦できる戦闘機の存在も大きく、いまだ空の戦力を保持するアルビオンに対抗できる戦力として数えられているのもある。

 しかし伝説の魔法の系統。いまだ未知数であり、あの時の巨大な爆発がルイズが起こしたと知れれば敵がどのような手段に打って出てくるか分かったものではない。なのでルイズの虚無については極秘とされていてそれは王家と親密な関係にあるヴァリエール家にすら知られせていないのだ。どこから情報が漏れるか分かったものじゃない。信用していないわけではないのだが…。

「メタモン…。私、決めたわ。」

 するとルイズが起き上がった。

 メタモンがルイズに変身し、言葉を待った。

「私、志願する。」

 それは、ルイズにとって大きな決断だった。

 アルビオンへの密命で見せたビクビクはなりを潜めているが、メタモンは心配そうに彼女を見つめた。

「そんな顔しないでよ。…決心が揺らいじゃうじゃない…。」

 それはメタモンにとって願ったり叶ったりだった。メタモンとしては、ルイズに志願兵になってほしくはなかったからだ。

「他のみんなが戦いに向かおうって時に…、実家に帰って指くわえて待ってるなんて…できないから…。」

 それを聞いてメタモンは、ハッとした。

 ルイズは、同級生達が従軍するのを見ているのが辛いのだ。偉い地位の娘だからという言い訳で彼らの命が散っていくのが悲しいから……。

 メタモンは、思わず俯き、ごめん…っと呟いた。

「なんで謝るの?」

『…ルイズには……戦って欲しくなかったから…。安全なところにいて欲しかったから…。』

「……ありがとう。」

 ルイズは、メタモンのその素直な気持ちが嬉しかった。

『僕も…戦う!』

「メタモン…、ありがとう。」

 ギュッとルイズを抱きしめてきたメタモンを、ルイズは半泣きになりながら抱きしめ返した。

「…まずは、説得ね。」

 涙を拭いたルイズが、意を決したように呟く。

 しかし、すぐに青ざめたりする。よっぽど実家が怖いのか…?

「ぅう…、絶対反対されるぅ……。」

『内緒にはできないの?』

「い、一応、言質だけでも取らないと! 反対されるのは百も承知だけど形だけでもよ!」

『…絶対反対されるよ?』

「それでも伝えないといけないの! 私だっていつまでもちっちゃいルイズじゃないんだから!」

 ルイズは、頑なだ。これは、テコでも動きそうになさそうだ。

「でも、……うーうーうー…、どうしよう…。」

 ルイズは、必死に考えている。

『ルイズ。頭冷やせば良い考えが……。』

「そうね、そうよね。ありがと。」

 メタモンは、プスプスと頭から煙を出しそうなほどパニックっているルイズの頭を撫でたりして宥める。

 そしてルイズは、井戸に行く。

 冷たい井戸水で頭を冷やしていると。

「ん? なんでこんなところにワイン?」

 いかにも今冷やしてますって感じで桶にワインの瓶が入っていた。

 冷たい井戸水で頭を塗らしたはいいが、今だパニックが治まらないルイズは…。

「……こんな一目のある所に置いているのが悪いのよ!」

 ヤケクソ気味にワインをグビリっと。

『ルイズ~、タオル~。』

 そこへタオルを持ったメタモン。そして、それに反応したルイズがそちらを見た。

 

「あーーーーーー!!」

 

 っと同時に、モンモランシーの悲鳴。

 ルイズの目が、トロンッとなる。

『? ルイズ~?』

「め……。」

『?』

「メタモ~~~ン。」

『うひゃっ!』

 タオルを持ったメタモンに飛びつくように抱きつくルイズ。尻もちをつきながらルイズを受け止めたメタモンは、キョトンとする。

 どうしたの?っとメタモンが聞きつつ、ルイズの濡れてる頭をタオルでゴシゴシと拭く。

 ルイズは、ギューッとメタモンに抱きついている。

「ああ…、なんてこと…。ああ…、私がせっかく…。」

『?』

 メタモンがどういうこと?っと言いたげにモンモランシーの方を見た。

 そして、メタモンは、ヒクヒクと鼻を動かし、微かな異臭を辿った。

 異臭を放っているのは、ルイズが先ほど飲んでいたワインだ。今は投げ出されて地面に転がっており、中身が流れ出ている。異臭はそこからしていた。

 何の匂い?っと思いつつ、ルイズの異変とモンモランシーの様子、そして異臭の正体を必死に分析する。

『……あっ。惚れ薬?』

 メタモンは、異臭の正体を分析して理解して、ポンッと手を叩いた。

 モンモランシーは、言われてヘナヘナとその場にへたり込む。ギーシュに飲ませるはずだったのに…っとヨヨヨ…と泣く。

 その様子を見てメタモンは、思い出す。そういえばギーシュといえば自分にいわれの無い喧嘩をふっかけてきた男子生徒じゃなかったかと。そしてモンモランシーは、そんな彼に愛想を尽かして泣きながら去って行った彼女じゃなかったかと。しかしどうやらモンモランシーは、そのギーシュのハートを無理矢理にでも掴もうとして惚れ薬を盛ろうとしていたらしい。それをルイズが飲んじゃった。そして今に至る。

『……ルイズ。』

「なぁに? メタモ~ン?」

 ルイズに変身しているメタモンの胸の上で顔をすり寄せていたルイズが、頬を染めた状態でうっとりと聞いてきた。

 メタモンは、性別が無いし、そして何より人間じゃ無いけど思った。

 

 これは、完全に恋する顔だと。

 

『どうしよう?』

「ね~え、メタモ~ン? 私のこと好き?」

『ルイズの…うっかり屋さん…。』

 酒の力も手伝ってほっぺた真っ赤で目をトロンとさせているルイズの様は、普通の男ならイチコロだろう。

 メタモンは、性別が無いし、そして何より人間じゃ無いけど思った。

 

 惚れた相手が自分でよかったと……。

 

 じゃなきゃ、ルイズがそこらの男にあんなことやこんなこと…。

 想像してメタモンは、ギュッと守るようにルイズを抱きしめたのだった。

 

 

 




メタモンの繁殖方法ってどうなんでしょうね?
メタモン同士だと仲が悪いって聞くし……。それとも繁殖期があるのか、それとも分裂するのか……。

このネタのメタモンは、性別が無いし、そもそも人間じゃないため惚れ薬でラリッてるルイズの魅力にはドライな感じ。むしろ守らなきゃ!って感じかな?


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メタモンと水の精霊

惚れ薬騒動、その2。


メタモンは、性別無いし、そもそも人間じゃないので原作と違って惚れ薬でラリッたルイズには魅了されないし、むしろ心配してるだけ。


 困ったことになった。

 ルイズがモンモランシーが作った惚れ薬を盛ったワインを飲んでしまった。

 惚れ薬効果で最初に見た相手に恋をしてしまうソレで、メタモンを見てしまいメタモンに恋してしまったルイズ。

 幸いだったかどうかは分からないが、メタモンは人間じゃ無い、そして性別が無い、なので普通の男ならイチコロだろう恋したルイズの可愛さとか魅力は客観的に分析して見ることは出来ても誘惑されることはなかった。

 とりあえず……この状態のルイズを他の男に見せるわけにはいかない!っと、まずメタモンは考え、あの後肩に担いで寮の部屋にルイズを放り込んで扉をロック。

 次に惚れ薬の解除方法を聞き出すべく追っかけてきてくれていたモンモランシーに話を聞く。

 そもそも惚れ薬は製造を禁止されている魔法の薬であるため、作ったことが発覚すれば当然だが制作者であるモンモランシー自身が罰を受けることになる。なので禁止されている魔法などを取り締まる司法関係に発覚する前になんとかしたいところなのだ。だからすぐに解決策を言ってくれた。

 惚れ薬の解除薬。これでないと惚れ薬効果を消せないそうだ。だが問題なのはそれを作るための材料だ。どうやらモンモランシーは、惚れ薬を作る段階で資金を使い果たしており、解除薬に必要な材料を揃えられないと言う。

 惚れ薬の効果は永遠には持続しないが、長くても一年単位だとか……。

 メタモンは、頭を抱え、その場にへたり込んだ。

 こういうのをなんというか? 黒歴史? たしかそんな言い方が出来るだろうか? ルイズが正気に戻った時のダメージを考えると早く戻してやらないといけないと思うが現実は厳しい。

 人間じゃ無い自分になんか恋したなんて記憶が残ってたら大変だ!っと、メタモンは考えている。(※メタモン主観)

 しかし、現実は厳しい。このあと約束していたモンモランシーが来ないので探しに来たギーシュが来て事情説明をし(ついでにギーシュとモンモランシーは仲直りした)、なんとか材料を揃えていったのだが…、最後の必要な材料である水の精霊の涙というのだが、これの入荷が絶望的状態らしい。

 メタモンは焦るが、ギーシュも気が気じゃない。なにせ今回の件が発覚すればモンモランシーが牢屋行きなのだから、せっかく仲を取り戻せた彼女を失いたくないギーシュとしてはなんとかしたいが彼もモンモランシーも二人とも家が貧乏貴族。そして入荷未定の材料。

「ラグドリアン湖で何かあったのかしら…?」

 どうやらラグドリアン湖という湖にその水の精霊がいるらしく、ソレから取れる材料らしい。

 そこでメタモンは考えつく。材料の在処が分かっているならやるべきことはひとつだと。

 メタモンは、すぐにその湖に行こうと言い出すが、二人は渋い顔。

 なにか問題があるのかと聞くと、水の精霊は滅多に姿を現わさず、そして怒らせると大変なことになるほど強いのだとか。

 だがそれでもメタモンは、引くわけにはいかないと行くことを強く主張。

「メタモンくん…、君って奴はなんて主人想いなんだ…。」

 ギーシュが感動していた。

「どうだろう? モンモランシー。ここまで来たらやるしかないんじゃないかい?」

「わ、私も行けってことですの?」

「そもそも原因は僕らにある。ルイズにも非があるとは言え、そもそもの発端は僕にあるし、そして惚れ薬を作ったのは君だ。このままだと異常事態に周りが気づくのも時間の問題であるし、それに入荷未定の物を待つよりよっぽど確実じゃないかい?」

「……分かったわ。」

 ギーシュの説得に、渋々モンモランシーは承諾したのだった。

「けど…期待はしないでね?」

 モンモランシーは、メタモンを見てそう念を押したのだった。メタモン的にはルイズさえ元に戻ってくれればそれでよかったので頷いた。

 そうして目的が決まればあとは準備。

 ルイズを放っておくわけにはいかないので、ルイズも連れて行く。

 そして準備が整った一行はラグドリアン湖を目指した。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ラグドリアン湖。

 そこは、随一の美しさを誇る名所なのだそうだ。これは、行く途中で聞いた話だ。

 その湖の底に、水の精霊達が住まい、その水の精霊と交わした誓い約束…誓約は決して破られないと言われている。水の精霊そのものが滅多に姿を現わさないため本当かどうかは分からないそうだが。

 まあそれはさておきラグドリアン湖に到着。

 だが…様子がおかしいとモンモランシーが言った。

 近くの村が水没していた。ここまで水位は高くないはずだと言っている。言われてそちらを見れば確かに建物が水没していた。

 するとその村の村人らしき老人がやってきて、自分達にたいし水の精霊の件を解決しに来てくれたのかと聞いてきた。

 モンモランシーが違うと言うと、それはそれは残念そうに項垂れた。そして老人は、2年前あたりくらいから水位が上がっててきていて、なんとかしてもらいたいと領主や王家にも頼んだらしいがアルビオンの件でそれどころではなくまったく話にならないのだとかと、上の者達は下の者達である自分達の生活がどれほど苦しい状況下も考えないと愚痴るだけ愚痴り去って行った。

 メタモンは、気の毒だとは思ったが、自分達は別の目的があってきたのでどうしようもないと思った。

「メタモ~ン。」

『ルイズ。早く治してあげるからね。』

 ルイズに変身している自分の背中からギューギュー抱きついてくるルイズを宥めつつメタモンはそう言った。

 モンモランシーが自身の使い魔であるカエルのロビンに水の精霊を連れてきて欲しいと頼み。あとは、待つ。

 やがて湖面が波打ち、水が徐々に浮き上がるように蠢き、モンモランシーの形を取った。

 モンモランシーが交渉を始める。

 しかし、水の精霊から返ってきたのは……。断るという無情な言葉。

『そ、そこをなんとか! なんでもするから、なんでもするから!』

『単なる者よ、ならば、条件がある。』

 メタモンが軟体になってルイズの腕から逃れ、ルイズに変身して必死に祈るように頼むと、意外な言葉が返ってきた。

『我に仇をなす者共を退治せよ。そうすれば、我が一部を分け与えん。』

『?』

 どういうことっとメタモンがモンモランシーとギーシュの方を見ると、二人はつまり今現在進行形でこの水の精霊に害を与えている者達がいる、だからその相手を退治すれば水の精霊の涙をくれるということだっと言った。

 それなら話が早い!っとメタモンは快諾。ギーシュは、さすが主人想いっと感動し、モンモランシーは喧嘩は嫌いっと愚痴っていた。

 

 そうして、夜にいつも来るというその厄介者達を退治するべく湖の畔で待つことにした。

 

 

 

 

 




惚れ薬が終わったら……、あー、屍ウェールズ編か。

さてどう展開させるか。


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メタモンの生態?

戦闘は無し。


後半、なんか異種交配を匂わせる話題が出ています。注意!!


 

 水の精霊が言ってた厄介者の正体は…、キュルケとタバサだった。

 昼夜でも関係ない視力を持つメタモンは、夜にやってきた二人を見てすぐに正体を見破ったのだ。メタモンの目はそういうことに特化してる。というか相手を見ただけで分析・解析してその技までもをコピーできる体質ゆえの能力だった。つまりいくらローブで身を隠していてもその正体を見破れるのだ。まあ、もっともこの見破りは初めて見る相手には無意味なのだが。

 早々に正体が分かったため、メタモンが茂みから身を出し名前を呼んだことで戦闘にはならなかった。

 しかし話を聞いてみれば、タバサの実家であるガリアからの命令で水位を上げ続け国土を侵食し続ける水の精霊の討伐をしていたのだとか。

 そこで水位を上げる原因を突き止めればなにも水の精霊そのものを討伐しなくてもいいんじゃないかということで、メタモンが挙手。

 そして再びラグドリアン湖へ向かい、水の精霊を呼んだ。水位を上げる原因を聞くと、水の精霊が守っていた秘宝を奪った者達がいて、それを取り返すために気長に水位を上げていたらしい。それは、時間の流れが圧倒的に違う水の精霊だからこそやる発想だった。

 その秘宝の名は、アンドバリの指輪。

 それは、偽りの命を死体に与えるというマジックアイテムだそうだ。そして命を与えられた死体は蘇生してきた相手の言いなりになる人形になってしまうそうだ。

 奪っていく際に、数名いた盗人が言っていたそうだ。『クロムウェル』と。それは、今アルビオンを支配するレコン・キスタの最上位。つまり新皇帝の名だった。

 聞き間違いじゃ無いのかと怪しむが、嘘を言わない水の精霊なのだから間違いないのだろうと、モンモランシー達は首を捻る。

 メタモンは、その指輪さえ取り返すから水位を上げないで欲しいっと頼んだ。おいおい軽率だぞっとギーシュが心配するがメタモンは真剣だ。

 水の精霊は、こちらの約束を守ってくれたのだから信用すると言い、お前達の寿命が尽きるまでに返せと約束を取り付けてきた。メタモンは、それならと頷いた。

 そうして約束を交わした後、水の精霊から身体の一部(水の精霊の涙)をもらったのだが、水に帰ろうとした水の精霊をタバサが引き留め、あなたがなぜ誓約の精霊と言われているのかと問うた。その問いかけに対し水の精霊は、自分が変わらないから人間からしたらそう思われているのだろうと答えた。

 タバサは、目をつむり手を合せてなにかを祈る。言葉にされない祈りをこの場にいる誰も知らない、知ることはない。

 ギーシュをモンモランシーが小突き、自分への愛を誓えと迫った。ギーシュは、オドオドしつつ『一番に…』と言いかけたため再び小突かれ、自分“だけ”を愛せ!っと怒られていた。悲しそうに誓っている姿に…おそらくは守られにくい誓いであろうことが窺える。

 するとルイズがメタモンの腕を引いて、自分にも誓ってよっと頼んでくる。しかし、メタモンは首を横に振った。

『ボク、人間じゃないもん。』

 っと、なんてこと無いように言うメタモンだったが。

 ルイズがギラッと目を輝かせ。

「シエスタから聞いてるわよ? あなた、他の生物との間にその相手の生物の子供を産めるんでしょ?」

『あっ…。』

「そーなのかい!? メタモンくん!」

 なぜかギーシュが一番に食いついた。なんか赤面もしている。

「あらー、それならルイズとの間でもいけるんじゃないの?」

『…に…、人間は、知らない…。』

 オドオドしながらポツリポツリと言うメタモンは、ダクッと汗をかいている。メタモンの一部が人間社会に溶け込んで生活している話を知っているし、実際もとの世界で人間に化けて様々な情報を得ていた経験があるルイズのメタモンにとって、前例を聞いたことがないだけで実際そこのところが可能かどうなのかは分からない…っというのが答えだ。一部を抜いて様々な相手と交配が可能なのは、自分達の身体を相手とそっくりにできる体質がなせることだ。そういえば中にはメタモンとの間でしか子を残せない性別がオスしかいないとか、メスしかいない種族もおり、そういった関係で生態系が成り立っている場合もあった。

 そのことを考えてみて、汗が引いたメタモンは、どーなんだろう?っと、ジーッとルイズを見つめた。

 メタモンに見つめられ、ルイズは、ポッと頬を染めた。

「おーい! 真剣に考えちゃダメだと思うが!! 異種交配は中々良いかもしれないが!」

「あんたはナニたわけたこと言ってんの!? それより、ルイズが正気に戻った時に子供なんて出来てたら、発狂するわよ!?」

 空気がヤバいと感じて、ギーシュとモンモランシーが止めに入った。

「ねえ、メタモンちゃん、あなた達の種族ってどんな形で生まれるの?」

『…卵?』

「あらー、じゃあルイズそっくりの子が卵から生まれてくるってわけね?」

『……うん?』

 キュルケが、あらあらまあまあっと身をくねらせているのにたいし、メタモンは変なこと言ったかな?っと首を傾げたのだった。

 この後、なんかヤバげだから、ギーシュとモンモランシーが必死にメタモンを止めたのだった。

 しかし帰り道、こっそりとギーシュがメタモンに聞いた。

 メタモンくん的には、ルイズはアリなのかと…。

 メタモンは、じっくりと考え…。

『アリ?』

 っと、答えてしまいギーシュがナニを想像したのかぶわっと赤面して馬から転げ落ちたのだった。

「う~ん、興味あるけど…、私まだ楽しみたいし…ママになるのは早いかしら?」

「意味不明。」

 キュルケの熱のこもった呟きに、タバサが淡々とツッコミを入れた。

 なお、ルイズはメタモンとの子供を想像したのか、すっごい赤面状態でメタモンの後ろにしがみついていた。

 

 

 

 




たぶん、メタモンは、卵と、分裂の両方だと思って……。

メタモンが、他の他種族の生態系にも関わっているというのは想像です。
なにせメスしかいないとか、オスしかいないとか、性別がそもそも無いってポケモンもいますし……、実はメタモンが?って可能性も無きにしろ非ずかな…って。

色んなポケモンとの交配(伝説などの一部を除いて)が可能なうえに、人間社会に入り込んだメタモンもいるぐらいだし…、もしかしたら?って可能性も無きにしろ非ずかな…?

なおメタモンは、客観的にルイズを繁殖相手としてどうだろう?っと分析しているだけで、人間的な感情や本能はありません。


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メタモンは、愛を理解できない

屍のウェールズ編。

一話で終わらせました。


メタモンがワルドとの戦いで得たヒントを糧に、メチャクチャやってます。
注意!!


 帰って早々、モンモランシーに急ピッチでルイズのために惚れ薬解除薬を制作させた。

「で…、出来たわよ…。」

 ヘロヘロのモンモランシーが匂いの強い薬が入った小さな壺をメタモンに渡した。

 さあ、あとはルイズに飲ませるだけだっと、ルイズに壺を見せると、ルイズは嫌そうに顔を歪める。

「それ、臭い。」

「なにかに混ぜた方が良かったかもしれないな。」

 ギーシュが今更そんなことを言った。

「ねえ、メタモン…。それより、私…あなたとの子供…。」

『ダメ。』

「なんで…? 私って相手として不足?」

『繁殖期じゃないから。』

「そこ!? 言うことソコ!?」

 モンモランシーがたまらずツッコむ。

「繁殖のための相手としてはOKなんだね!? メタモンくん!」

 なぜか興奮気味のギーシュ。

「でも、シエスタが…。」

『ダメ。ルイズは、今…薬で変になってる。健康じゃないとダメ。』

「む~~~。」

 ふるふると首を横に振って壺を押しつけるメタモンに、ルイズはほっぺたを膨らませる。

 健康なら…OKなのか…!っと、ギーシュが目を血走らせて興奮しているので、モンモランシーが脇腹をど突いた。

「じゃあ、これ飲んだら、子作り…。」

『……。』

 期待してくるルイズからの視線に、メタモンは困る。

「うぅ…くっさ~い。」

 ルイズは、臭さに苦しみつつ、眉間にしわを寄せながら必死になって薬を飲んだ。

 そして、ゴクンッと薬が喉を通過する。

 すると……、さっきまで色欲で潤んでいた目と赤面していた顔が変わっていく。

 ああ…、やっぱりっと、メタモンは、自分の額を押さえた。

「メタモン……。」

『……うん。』

「ギーシュ、モンモランシー…。」

「な、なんだね?」

「な、なに?」

 嫌な予感を二人は感じ背筋がゾワッとなった。

 次の瞬間、ルイズが杖を構えた。

「お願い…、消し飛んで!」

「おおおおおおお、落ち着きたまえ! 黒歴史なんて誰でも一つや二つ…。」

「そ、そそそそ、そうですわ!」

「いいから消えて!」

「助けてくれ! メタモンくん!」

『…無理。』

 その後、ギーシュとモンモランシーは、爆発魔法を放ちまくるルイズに追い回され、キュルケとタバサが止めに入るまで追われガチで死ぬかと思ったとか。

 メタモンの方はというと…、なんだかんだでルイズの怒りの矛先にはならず、むしろ、ごめんね…っと謝られていた。これについて殺されかけたギーシュとモンモランシーは、不服を申し立てが…。

「人じゃないのに迫ったのは私よ…。ホントにごめんね、メタモン…。」

 っと、メタモンに甘いことを言ったので呆れられたのだった。

 メタモンはメタモンで、薬のせいだから気にしてないよっと安心させるように笑って言ったのだった。

 そんなメタモンのさっぱりさに、ギーシュは、いくら変身できてもやはり異種なんだな…っと残念そうに見ていたため、またモンモランシーにど突かれた。

「そういえば、変な一団がいたわね…。あれって、ウェールズ皇子じゃなかった?」

「えっ?」

 ふとキュルケが言った言葉に、ルイズとメタモンが反応しそちらを見た。

「たぶんそうよね。あんな凜々しい殿方なんてそうそういないわよ。」

「ど、どこで…?」

「ラグドリアン湖近くでよ。すれ違ったわ。」

『皇子様は…。』

「そうよ…、あの方はもう…。まさか…!?」

 ルイズはとてつもない嫌な予感がした。

「アンドバリの指輪! そうよ! それがあれば…。」

「ルイズ?」

「ねえ、モンモランシー! そうよね!? アンドバリの指輪は、水のマジックアイテム! 偽りの命を死体に与えるって言われてるんでしょ!?」

「え、ええ…。」

「もしそれがアルビオンにあるんなら、利用しない手はないわよ! 姫様が危ない!」

『?』

「だって、ウェールズ皇子と姫様は!」

『あっ…。』

 そうだったっとメタモンはやっと合点がいった。

 ルイズと共に赴いたアルビオンにて回収することを命じられたのは、アンリエッタからの恋文だったからだ。

 アンドバリの指輪の力を用いて、ウェールズの死体を蘇生させて人形にしたならば…、それを向ける相手は…。

 

 突然の非常事態にタバサのシルフィードを借りて城へ急行。

 

 その途中の空から見えたのは…、アンリエッタらしき女性を抱えたウェールズ皇子と不気味な雰囲気を纏った兵士達を乗せた馬の一団だった。

 

「姫様!」

「タバサ! 降下して! 追うのよ!」

「ん…。」

 シルフィードが低空飛行し、ウェールズの一団に迫った。

 彼らを追っていたのはなにもルイズ達だけじゃない。異変に気づいた城の魔法兵士達も追ってきていた。

 その一団とシルフィードに向けて、竜巻や様々な魔法が襲う。それをタバサは、早い判断で魔法で相殺しつつシルフィードを上昇させて回避したが、城の魔法兵士達はやられて乗っていた馬やヒポグリフごと倒れていった。

『エクスプロージョン!』

 メタモンがウェールズ達の前方に向けて、エクスプロージョンを使い道を爆破させて進行を妨害した。

 最前列を走っていたアンリエッタを抱えていたウェールズを乗せていた馬がひっくり返り、ウェールズがアンリエッタもろとも地面に転がる。

「姫様!」

 シルフィードが降下し、ルイズが飛び降りて駆け寄ろうとすると起き上がったウェールズの動く死体が瞬時に風の魔法を完成させてルイズに放った。それを横からメタモンが飛びつき二人は転がりながら避けた。

 アンリエッタは、気絶しているようだった。そんなアンリエッタを抱き寄せた状態でウェールズが微笑む。笑い方まで生前と同じなのが恐ろしい。

「あなたは…、死体ですね…? 皇子…。」

「そう見えるかい?」

「私は、この目であなたが死ぬところを見ました。どれほど言い訳を言われましてもこの目に刻まれたあの光景は消せません!」

「ふふふ…。君は、もしや僕がアンリエッタを騙して攫ったと思っているのかい?」

「えっ…?」

 ルイズが一瞬固まったとき、アンリエッタが目を覚ました。

「ウェールズさま…。」

「ああ、僕の可愛いアンリエッタ。怪我はないかい?」

「ええ…。」

「ひ、姫様…?」

 ルイズの声を聞いてアンリエッタがハッと我に返る。だがウェールズに寄り添うように。

「行かせて…、ルイズ…。」

「なにを…?」

「私達を行かせてほしいの…。お願い…。」

「なにを言われてるんですか!? そのウェールズ様は…。」

「例え…そうだとしても!」

 アンリエッタが叫ぶ。

「なにもかもを捨ててでも選びたい未来があるのです!」

「それがトリステインを裏切ることでもですか!」

「そうです!」

 ハッキリと叫んだアンリエッタの言葉に、ルイズは絶句した。

「ルイズ、あなたは本気で誰かを愛したことがないのね…。例えウソだとしても、ウェールズ様は誓ってくれた…、永遠の愛を…。自分の気持ちに…、嘘をつきたくないのよ。」

「ひめ…さま…あなたは…。…メタモン?」

 王家の者でもなんでもなく、ただただひとりの女としてそう言葉を出すアンリエッタから庇うようにメタモンが前に出た。

 ルイズに変身しているその顔には、強い意志が宿っている。主人を…守らなければならないという。

「待って! メタモン!」

 メタモンがなにを考えているのか悟ったルイズが止めようとするが、メタモンが手を伸ばして制した。

 そしてあっという間にワルドの姿へと変わる。

『ユビキタス・デル・ウィンデ!』

 擬態で作られた手と一体化したワルドの杖を掲げ、メタモンが唱える。そしてメタモンの姿が複数に分かれた。

「あくまで…、引かないということですわね…。」

「姫様…、お願いです…、お戻りください。今なら、まだ間に合います!」

「もう…遅いのよ…ルイズ…。」

「まさか!」

「いいえ…、わたくしは手を下してはいません…。ですが、これより手を下しましょう。」

「ありがとう、僕の可愛いアンリエッタ。さあ、僕らの愛を邪魔する相手を排除しよう。」

「はい…。」

「っ…、メタモン…! お願い…。」

『うん!』

 悲痛な表情を浮かべ俯くルイズの言葉にメタモンは強く頷く。

 すると雨が降ってきた。まるでこれから始まる悲しき戦いに反応するかのように。

「見なさい! この雨を! 雨の中、水の魔法に勝てるとでも!」

「天は僕らに味方をしているようだね。」

 しかしメタモンは、ジッと二人を見つめているだけで動かない。まるでその時を待っているように。

 二人が詠唱を合わせ始める。それは、王家に伝わるヘキサゴン・スペル。風と水が混じり合い巨大な水の竜巻が形成され始める。

 するとメタモンは、それにリズムを合わせるように偏在達と共に詠唱を始めた。

 それは、同じ分身だからこそできる息の合った動き。そして何より…、メタモンという規格外の相手の分析・解析能力がなせた恐ろしい技。

『ユビキタス・デル・ウィンデ!』

 メタモンは、更に偏在を増やし、コピーして覚えたヘキサゴン・スペルを利用し魔法を重ねる。

『おいおいおーい、やべぇぜ、娘っこ。相棒の奴、あの姫さんごと潰す気だぜ。』

「め、メタモン! や、やり過ぎよ!」

 デルフリンガーの言葉にルイズが焦るが、しかしメタモンは集中しすぎていてまったく聞いてない。メタモンだけがなせると言っていい大技によりウェールズとアンリエッタの風と水の竜巻を越える、ライトニング・クラウドまで混ざって雷まで帯びた巨大な風と水の竜巻がぶつかろうとしていた。

「……これは、不味いな…。アレを喰らえば、死体も残りそうにない…。この大きさ…逃げられそうにないな。」

 さすがの生きる死体のウェールズも、ヤバいと感じたらしい。事態に気づいたアンリエッタも、焦りを見せ、ウェールズの腕に抱きついて目を硬くつむった。

 ど、どうしたら!?っとルイズが焦っていると、デルフリンガーが祈祷書を開けと叫んだ。

「な、なによ!?」

『虚無の魔法を使うんだよ! 相棒の魔法もろともあの皇子さんを止める魔法があんだよ!』

「ど、どこ!?」

『落ち着きな! 浮かんでくるはずだ!』

 言われるまま焦りながら祈祷書を開くと、水のルビーが光った。

 そして真っ白な祈祷書のページに魔法の呪文が浮かび上がる。

「ディスペル…マジック?」

『そいつだ! それだぜ! 早くしろ!』

「分かってるわよ!」

 ルイズは、焦る気持ちを必死に押さえながら呪文を詠唱する。これで失敗したらアンリエッタが死ぬ!

 メタモンは、あくまでも主人の敵を倒そうとしているだけだ。ただそれだけなのだ。

 アンリエッタがどういう立場であろうとも、ルイズを悲しませる敵ならば容赦はしない、という気持ちだけで動いているだけなのだ。そこに人間的な感情とか感傷とかいうものはない。

 人が持つ愛という感情を理解できぬがために容赦なく作り上げられ、今まさに放たれようとしているメタモンが作り上げたヘキサゴン・スペルによる竜巻が二人を襲おうとした直後、ルイズの魔法も完成した。

「ディスペル・マジック!」

 ホント…、ギリギリだった。竜巻に含まれていた雷(ライトニング・クラウド)の一部がアンリエッタの寝間着の一部を焦がす程度にはギリギリだった。

 メタモンは、魔法を放った余韻と、自分が完成させた大技が一瞬で消えたことにポカーンとなる。そして偏在が消えた。

『ギリチョップだったな…。あと2秒遅かったら確実に運が良くて大怪我だったぜ。』

 ハーハーっと焦りのあまり過呼吸になるルイズに、デルフリンガーがそう言った。

 メタモンが我に返り、そんなルイズに駆け寄ると、へたり込んでいたルイズからアッパーカットを受けて倒れたのだった。

 なお、殴られて倒れる直後まで、メタモンは、なぜ殴られたのか分からずハテナマークを頭に浮かべていたのだった。

 

 そして、メタモンが気絶している間に、ウェールズはルイズのディスペル・マジックの効果でアンドバリの指輪の呪縛から解放されており、死体に戻りながら正気を取り戻し、泣き崩れるアンリエッタの腕の中で別れを告げ、その死体はラグドリアン湖に沈められて葬られたのだった。

 なお、アンリエッタがトリステインを捨ててまでウェールズと逃避しようとした件は、現場にいたルイズの心にしまい込まれることになり、城の者達に伝わることは無かった。

 

 

 

 




呪文を完成させ、強化していくことに集中しすぎてルイズの言葉が届かず……、危うくアンリエッタを殺しかけたメタモンさん…。
ヘキサゴン・スペルは、二人を見て分析・解析してコピーした。これだ!っと思って使用。


この回ねぇ…、原作読んでて思うが、アンリエッタの気持ちは分からないでもない…。
でも、愛に狂って女王としての責務を全て放棄したのはどうかと…。まあ、いくら王族でもしょせんは人間ってことが描かれてるのかな?
うーん…。


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メタモンとルイズの夏休みは?

やっと書けた……。


今回から魅惑の妖精亭へ。


原作と違う展開です。


 メタモンは、その後機嫌を損ねたルイズの機嫌取りに必死だった。

 事情(アンリエッタが逃避行しかけた件は無しで)を聞いたキュルケ達は、そりゃメタモンが悪いけどメタモンを躾てないアンタも悪いと言われていた。

 メタモンがとても賢くて、躾の必要も無いと思っていただけに、まさか王家に伝わるヘキサゴン・スペルをコピーしてあんな大技を繰り出し、アンリエッタを殺しかけたなんてことになるとは思わなかったのだ。

 メタモンからしたら、ワルドが裏切った時のような感覚でアンリエッタがルイズと敵対したから敵と判断し排除しようとしただけなのだ。それは現場にいたルイズが分かっている。だから、怒るに怒ることもできない。メタモンがただ…ルイズのために行動した優秀な使い魔であるから。

 ルイズがどうしようかと苦悩していたとき、問題の元凶になったアンリエッタから直接の命が下ったのだ。

 あんな騒ぎを起こしておいて、この期に及んでなにを?っと思ったことは飲み込む。一応は女王だ。未遂とは言えアルビオン側に逃避行しかけたことは秘密だから。

 悶々としたまま顔に出さないよう努めつつ、メタモンと共に命令を実行するため行動を起こす。

 ルイズが無言で手紙を見つめているので、メタモンが後ろからのぞき込んで手紙の中身を見た。

 “この世界”のメタモンではないが、コピー能力を駆使して文字の読み方を覚えたメタモン。手紙の内容を理解した。

 

 要約すると、情報収集である。

 民間人達の間で交わされる噂話など。

 

『ボク、得意!』

「確かにあなた以上の適任者はいないわよね…。でもこれは私に下された命令だから。」

『ボク、頑張るよ!』

「あのね、メタモン。あなただけが頑張っちゃダメなの。分かる? 私も民間人に扮して情報収集するの。いいわね?」

『えー?』

「なによ? その『えー』って? 私じゃできないって言いたいの?」

『……だって、ルイズは貴族だよ?』

 メタモンが言わんとしていることは分かる。生まれてこの方貴族の、それも名門の公爵家の娘として育ってきたのだ。それなのにいきなり民間人になれっと言われてできるはずがない。

「で、でもやるっきゃないの!」

『えー…。』

 メッチャ心配そうなメタモンの顔に、ルイズは一生懸命強がった。

 

 こうして夏休みの期間を使った任務が始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 メタモンは、服ごと擬態すればいいが、ルイズはそうはいかない。

 なのでアンリエッタから支給されたお金で民間人の服を買う。もちろん地味めの。

「う~…。」

『やっぱり…。』

「違うわよ! これは気合いよ!」

 貴族の服と比べて圧倒的に着心地の悪い質の服に不服そうに声を漏らしたルイズに、メタモンがやっぱりか…っと声を漏らしていたのでルイズは慌てて違うと否定していた。

 服を整えたら、次は任務中の住まい探し。

 ルイズは、正直安い宿はイヤだった。だがお金は限られている。頭じゃ分かっているが生まれついての環境と身に染みついた贅沢が拒否してしまう。

『ルイズー。』

「…なに?」

『情報を集めるには良いところがあるよ!』

「どこ?」

『酒場~!』

 メタモンが壁に貼られたアルバイト募集の紙をバシバシと手で叩いた。

「そうね…。確かに酒が入れば本音も飛び交うでしょうね。良い意味でも悪い意味でも…。」

『ね!』

「でも、いやよ。酒臭いところなんて。」

『え~。』

「分かってるわよ! 贅沢言ってることくらい! でも、どうしろってのよ、もう!」

『ルイズ…。』

「姫様もまた無茶なことを…、なんでなのよ…。」

 ルイズがブツブツと呟きながらうずくまってしまったので、人目が集まる。メタモンは、ルイズを無理矢理立たせて路地裏に逃げるように移動した。

 人目のない路地裏の建物の壁を背に、ルイズは膝を抱えて丸くなってしまった。メタモンは、心配でハラハラしながら変身を解いた。

 

「まあ! メタモンじゃない!」

 

 いきなり低いが、妙な色を帯びた男の声が聞こえた。

「あの子の故郷以外で久しぶりに見たわ! 人間に化けて溶け込むこともあるって聞いたことがあるけれど!」

『あの子って、シエスタのこと?』

「あらまあ! 知ってるの? 私はスカロン。あの子の伯父よ。」

「はあ!?」

 それを聞いたルイズがバッと勢いよく顔を上げた。

 そこにいたのは……、なんというかなんというかなんというか…、アレだ、良く言って個性的な…男がいた。

 ルイズが、思わず、うわぁ…っと声を漏らす。スカロンは、そんなことは慣れているらしく反応はしなかった。

「なんで、あなたがシエスタちゃんのことを知ってるのかしら?」

「そ、そりゃあ…。むぐっ!」

 メタモンに口を塞がれた。

『あのね、あのね。シエスタと知り合いなの。ボク。』

「まあ、流暢に喋れるのね。でも、こんなところでどうしたの? 変身なんか解いて。」

『あのねあのね…、とっても困ってるの…。』

「あらあら、どうしちゃったの? もしかして住むところとかに困ってるとか?」

『あのね…、とっても大事なことするの、ミンカンジンの情報を集めるの。』

「あらまあ…、なにか事情がありそうねぇ? まあいいわ、なんの事情かはさておいて、メタモンちゃん、民間人の情報が欲しいならうちに来る? うちは宿をやってるの、酒場もしてるから情報盛りだくさんよ?」

『ホント?』

「ええ。本当よ。よかったらいらっしゃい。」

『ルイズも連れて行っていい?』

「るいず? そっちのお嬢さん? いいわよ。…見たところお仲間のメタモンじゃなさそうねぇ。」

「わ、私はメタモンじゃないわよ!」

「あら、そうなの? ごめんなさいねぇ、じゃあ、こっちよ、ついてきて。」

『行こう、ルイズ!』

「なんで…あんたがここまで取り決めちゃうのよ…。」

 自分はメタモンの主人なのに…っとルイズは肩を落としながらメタモンに手を引かれて歩いた。

 スカロンと名乗った男は、ひとりと一匹を案内し、魅惑の妖精亭という店の中へ入った。

 スカロンは、変身を解いているメタモンを抱き上げて、こっちよとルイズを案内した。

 案内されたのは、屋根裏の部屋だった。埃まみれで、クモの巣も張ってるし、コウモリもいる…、最近までずっと人が入ってなかったことが窺える。

「文句は無しよ?」

「うぐ…。」

 文句を言いかけたルイズの先手を取ってスカロンが目を光らせて言ったので、ルイズは言葉を詰らせた。

「ねえ、メタモンちゃん。どうせなら働かない? ただで住まわせてあげるなんて虫が良すぎるでしょ?」

『う、うん…?』

 スカロンの香水が辛くて息を止めてたメタモン。

「だ・か・ら、うちで働きながら情報収集しなさいな。その方が効率的だと思わない? きちんと働けば報酬はちゃんとあげるわよ。」

『ルイズ…、いい?』

「……もう勝手にして。」

「あなたもよ、ルイズちゃん。」

「はあ!? なんで!」

「メタモンちゃんの飼い主かも知れないけど、ま・さ・か、メタモンちゃんだけに働かせて自分は鼻ほじってふんぞり返っているつもりはないでしょうねぇ?」

「わ…私は…!」

『いいよー、ルイズ。ボク頑張るから!』

「ダ、ダメよ! メタモン! 私もやるから! あんただけにやらせないから!」

「トレビアン! その意気よ。じゃ、今夜から頑張りましょうね? じゃあ今から制服あげるからついてきて。」

「……なんでこうなるのよ…。」

『ルイズ…。』

「あー、もうそんな顔しないで。私だってやるっていったらやるんだからね!」

 心配するメタモンに、ルイズがビシッと指差して強気で言い放ったのだった。

 

 

 こうして、メタモンとルイズは、夏休み返上でアンリエッタからの任務のため、魅惑の妖精亭という店という店で働くことになったのだった。

 

 

 

 




メタモンひとりにやらせるって選択もルイズにはできました。
でもメタモンだけにやらせるとなにが起こるか分からないからと言う理由と、あと自分自身のプライドにより任務を遂行。
このネタのルイズは、原作のようにアンリエッタに絶対忠実的な感じじゃないです。むしろなんとなく不信感を持っている。
そして頭で分かっていて、物わかりが良い。でも公爵家の娘として温室育ちだから色々と抵抗感はある。


次回は、チップレースかな?
さて、メタモンを女の子として変身させるか、ルイズに変身状態で双子という形で働かせるか……。


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メタモンとルイズのアルバイト

魅惑の妖精亭編。



メタモンの姿をどうするか考えた末、ルイズをベースにして、ちょっと弄られた美少女顔にしました。


 

 ルイズが魅惑の妖精亭の給仕をするウェイトレスの格好になって更衣室から出てくると。

「う~ん、やっぱもうちょっと目尻を下げて~、そうそう、でもって眉毛は~…。」

 スカロンがメタモンの造形を弄っていた。

 ベースはルイズなのだが、それだとルイズと被ってしまうのでということで、粘土みたいに少し弄っているのである。

 見た相手をそのままに姿形を変えるメタモンからしたらはた迷惑だが、働かせて貰う条件なので受け入れている。

「は~い、このままキープね! この形を覚えておくのよ。」

『…むぅ…。』

 メタモンの顔が引きつっている。あんな顔見たことない。まるで全身がつってしまったような、そういう顔だ。耐えきれずルイズをベースにした美少女顔が忽ち溶けるように崩れる。

「あん、ダメよ。私思うのよね~、メタモンって生き物はもっと変身能力を磨くべきよって。だって、同じ姿だといずれバレるじゃない。人間に溶け込むなら誰にも似てない顔とか身体にしないと!」

『顔が…つった…。』

「無理しちゃダメよ、メタモン。」

 ルイズが見かねて助けに入ろうとする。

「あらルイズちゃん、似合ってるわよぉ! 可愛いわ!」

「メタモンに無理させないでください。」

「ダメよ。これも一種の特訓だと思ってやらなきゃ。場合によっては相手をコピーするだけじゃやってられないこともあるでしょうしね。」

「でも…。」

『ルイズ…、ボク頑張る。』

「メタモン。」

 メタモンは、フーッと息を吸って吐き、意を決して変身。先ほどスカロンに形作られた顔になる。

「あらま! 飲み込みが早い子ね。タルブの親戚の話じゃ、人慣れしたメタモンでも相手を真似するのが手一杯っぽいのに。」

「なのに無茶なことをさせたの!?」

「あとは、笑顔よ! これ重要! さっ、やってごらんなさい。」

 スカロンに言われるままメタモンは、すんごい引きつった笑みを浮かべた。さすがに形をキープするのがやっとらしい。

「う~~ん、これはちょっと店の奥で鏡を前に練習するしかないわね。お店を開けるのは夜だからそれまで頑張りなさい。」

『…うん。』

「メタモン! 無理しちゃダメって言ってるでしょ!」

『だいじょうぶ!』

「メタモン!」

『だいじょうぶだもん!』

「もう…。」

 断固としてだいじょうぶだと言うメタモンの様子に、ルイズはこれ以上なにも言えなかった。

 ルイズは、心の中で。

 どうしちゃったの、メタモン? あなたそんな頑固だったっけ?っとモヤモヤした。

 そして、奥の部屋で鏡を前に笑顔の練習をするメタモン。それを部屋の外からヒヤヒヤと見守るルイズ。

「ルイズちゃ~ん、あなたも接客の練習しなきゃいけないわよ?」

「えっ! わ、私も…?」

「当たり前じゃな~い。なんのためにうちの店の格好させたと思ってるの?」

「こ、こんな小っ恥ずかしい格好させたと思ったら……。」

 魅惑の妖精亭は、給仕をする女の子達がきわどい格好をしていることを売りとしている宿だった。

 その後、スカロンが店員達を集め今日のミーティング。そしてメタモンとルイズの紹介。もちろんルイズが貴族だということは秘密だ。

 メタモンは、にっこにこだ。しかもまったく違和感のない自然な笑顔だ。ルイズが基本ベースの顔立ちとはいえ、スカロンに多少弄られ、化粧を軽くしたその顔はルイズをベースにしたとは思えない別人の美少女となっている。可愛い系、美人系と揃っている女性店員達から見ても笑顔のおかげで好印象だったようだ。

 そして開店時間となり、いざ、仕事。

 メタモンは、他の女の子達の仕事ぶりを見て動きをコピー、これにより新人とは思えない動きでスイスイと仕事をこなした。一方でルイズは……。

「なにしやがる、このガキ!」

「人の尻に触ったでしょ! この変態!」

 早々に客と喧嘩勃発。そして給仕の仕事が追いつかず、そして料理を落としたり、ひっくり返したりもして迷惑を掛けてしまった。

 こうなることはスカロン側も見越しており、ルイズを給仕から外し、速やかに客に謝罪。ルイズは、服を着替えさせられ、エプロンを付けられ裏方に回された。だが皿洗いを公爵令嬢が出来るわけがなく、この後店が終わるまでに十数枚と割ってしまったのだった。

 結局、メタモンの頑張って稼いだ今日の給料は、ルイズが皿を割ったり迷惑を掛けた分のお金でほとんど引かれてしまった。

 店が終わったあと、スカロンから与えられた部屋を掃除してなんとか寝られるようにした。

「疲れたわ…。」

 ルイズは、ため息を吐いた。肉体労働などしない令嬢であるルイズには、本当にキツいことであった。

 ふと見ると、メタモンが床にベタ~と伸びるように広がっていた。目をバッテンにして。

「め、メタモン!? だいじょうぶ!?」

 ルイズが慌ててメタモンに触る。メタモンは、小さく呻き…、お腹すいた…っと言った。

「ああ、そうよね、ご飯まだだったわね! 今から持ってくるわ!」

 ルイズが慌てていると、屋根裏部屋の戸が叩かれた。

「ごめんね~、これ賄いだけど食べて。」

 スカロンが店の賄い料理を持ってきてくれた。

 受け取ったルイズは、店で出す料理で出た屑野菜と肉の欠片とお米を煮込んだ料理(リゾットみたいなの)をスプーンですくって、メタモンの口に突っ込んだ。

 モグモグと咀嚼し、飲み込んだメタモンは、少し元気が出たのか広がっていた身体が少し戻った。

「私の分も食べて良いわよ。」

『ダメ。ルイズも食べるの。』

「今日はかなり無理したんでしょ? いいから食べなさい。」

 しかし、直後、ルイズの腹が鳴った。ルイズは、カーッと赤面した。

『ホラ。』

「うぅ…、分かったわよ、もう…。」

 全然格好がつかずルイズは、シュンッと落ち込んだ。

「私…、かっこ悪いわね…。」

『?』

「聞かなかったことにして…。」

 ルイズのぼやきに首を傾げたメタモン。ルイズは、慌てて首を振った。

 

 

 




メタモンは、外見を相手そっくりに出来るけど、オリジナルの姿にはなれないかな?
なのでスカロンがルイズに変身しているメタモンをちょっと弄って顔をちょっとだけ変えさせてみて、そこに軽く化粧。
全身整形じゃないからそこまで負担は無いけど、顔がつっちゃってって感じです。でも練習して慣れましたって感じです。
人間社会に入り込むメタモンがいるぐらいだし、多少のオリジナル性も入れられたりして?

このネタのルイズは、原作みたいにワガママじゃなく、けれど令嬢として育ったため一般職の仕事ができるわけもなく…。けれど、メタモンをメッチャ労る。無理をさせている自覚があるだけに。


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