五等分の花嫁と五等分のジョジョ (Pに花咲かない)
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プロローグ The World Over Heaven
第1話 予兆


始める前に…

このssは五等分の花嫁とジョジョの奇妙な冒険のクロスssです。中々ぶっ飛んだ要素を入れておりますので「クロスが苦手」「作品の世界観を壊さないでほしい」「キャラ崩壊は好きじゃない」という方にはオススメ出来ません。

またこのssはPS3 PS4ソフト、『ジョジョの奇妙な冒険 アイズオブヘブン』の世界観を使っています。アイズオブヘブンのネタバレも含まれていますのでご注意ください。

 

 

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宇宙の存在を強く感じさせてくれる紫色の空、いつも住んでいる日本とは違い星がたくさん見えていてとても幻想的だ。

しかし、そんな気が引かれるような星空を見てる余裕など彼にはない。

 

彼はこの世界の『運命』の分岐点に立っているのだから。

 

 

DIO「……………ぐっ」

 

承太郎「…………………」

 

 

承太郎と徐倫は天国に到達した並行世界のDIOと対峙した。

最初はDIOのスタンド、ザ・ワールド・オーバーヘブンの前に押され続けており徐倫も魂として吸収されてしまったが承太郎がいた世界のDIOが身につけていた腕輪のリングをぶつけて両腕を潰した。

承太郎はDIOを完全に追い詰めていたがまだ意気消沈していないDIOは以前変わらず殺気立っている。

 

 

承太郎「その手が治るまでに何秒かかる?」

 

DIO「!?」

 

承太郎「治ったと同時にスタープラチナをテメーに叩き込む!」

 

承太郎「かかってきな!!!!」

 

DIO「くっ……」

 

承太郎「!?」

 

DIO「無駄ァ!!!」

 

承太郎「うぐっ!」

 

DIO「どうだ!!この血の目潰しは!!」

 

窮鼠猫を噛む。

DIOは役に立たずと化した腕を振り承太郎の目に自分の血を直撃させた。

 

DIO「勝った!!死ッ——」

 

承太郎「オラァッ!!」

 

 

バキッ!!

 

 

DIO「グワアア!!」

 

承太郎にとってこの展開は経験済み。逆にDIOの顔面にカウンターを決めた。

 

承太郎「くだらねえぜDIO」

 

承太郎「テメエの言う真実とは、ただのまやかしだ!!」

 

承太郎はスタープラチナの射程距離内に入り

そして…

 

承太郎「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!」

 

承太郎「オラアアアーーーッ!!!!!!!!」

 

 

DIO「グブアアアアアア!!!!」

 

 

DIOの身体は空中に飛ばされた後に爆発し、粉々になった。

 

 

承太郎「何度も言わせるなよ……」

 

 

 

承太郎「てめーは俺を怒らせた」

 

 

その後、DIOの身体は蒸発を起こしその身体の内側から光が大量に出現し空中に上がって承太郎を照らした。

 

承太郎「ぬぅっ……」

 

承太郎「……………………」

 

 

 

承太郎「うぐっ!!」

 

承太郎は胸に手を当てその場で膝をついた。

 

承太郎「ヤローに殴られた傷が…早いとこ治さねーとな……」

 

その時

 

承太郎「なっ…なんだ、急に目眩が……」

 

承太郎「ヤローの…DIOの攻撃が…ここまで響くとは……」

 

承太郎「ダメだ………意識が……と…お……のい…て………」

 

承太郎「………………………………………」

 

ドサッ

 

承太郎はその場に倒れ込んで意識を失った。

 

 

 

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西暦20XX年 9月5日

 

 

「承太郎!!」

 

「承太郎!」

 

「承太郎さん、しっかりしてくださいよ」

 

「承太郎さん……」

 

 

承太郎「…………………………」

 

 

「おい大丈夫じゃないんじゃねえの?」

 

「いえ、承太郎さんに触ってみてわかるんです。生命エネルギーは感じます」

 

「それが本当なら必ず目を覚ますはずだ、何せ傷は治してるからな」

 

「頼りになるね、その能力。羨ましいくらいだ」

 

 

承太郎「……………うっ」

 

「「!!??」」

 

195cmあるその巨大な身体はゆっくりと上半身を直立させた。

 

承太郎「ぐぅ……うるせーな」

 

「せっかく助けてやったのに第一声がそれかよ!!」

 

承太郎「うるせーぞ…ジジイ」

 

ジョセフ「あのなぁ…この顔のどこがジジイなんだよ!?あぁ!!??」

 

ジョルノ「まあ落ち着いてくださいよ、ジョセフさん」

 

ジョナサン「承太郎!自分の祖父に対してジジイとはなんだ!!もっとしっかりとした呼び方があるだろう!」

 

仗助「いや、そういうことじゃないと思いますよ…ジョースターさん」

 

 

目を覚ますと、ある一室の床で寝ていた承太郎を囲むように同じ血統を持つ、ジョナサン ジョセフ 仗助 ジョルノの姿があった。

 

 

承太郎「そんなことよりお前たち、無事だったのか?」

 

仗助「まあこの通り無事生きてますよ、何故ここにいるのかはわからないっすけど」

 

承太郎「……なに?」

 

ジョルノ「僕たちは承太郎さんと別れた後、各時代に行って仲間達を元に戻していましたが…その後DIOに魂を吸収されて、意識はそこで途絶えたんです」

 

ジョルノ「そして気がついたらここで僕ら5人倒れていたってわけです」

 

承太郎「何?じゃあここは」

 

ジョナサン「きっと、また新しい時代に飛ばされてしまったんじゃないかな」

 

ジョセフ「そんなことより承太郎!DIOの奴はぶちのめしたのか!?」

 

承太郎「あぁ、奴は死んだ。もう奴の脅威が来ることもない」

 

仗助「その報告を聞けて嬉しいっすよ!承太郎さん!!」

 

ジョナサン「ディオ…ようやく…やっと亡くなってくれたんだね…」

 

 

ジョルノ「……いえ、待ってください」

 

ジョナサン「どうした、ジョルノ?」

 

ジョルノ「DIOを倒したということは『異変』は終わったということですよね?」

 

ジョルノ「なら…この現状はおかしくないですか?」

 

ジョセフ「なにぃ?」

 

ジョルノ「元々僕たちは全員違う時代から来たんですよ。DIOが死に『異変』が解消されたのなら僕たちがこうして同じ場所にいることはありえないんです」

 

ジョナサン「……そういえばそうだ、ディオが死んだのならこの状況は不可解だな」

 

ジョセフ「おい承太郎!本当にDIOの奴は死んだんだろうな!?」

 

承太郎「何度も言わせるなジジイ、確かにぶちのめして野郎の身体は粉々になった。それに聖なる遺体も奴が死んだことにより集まっていたはずだ」

 

仗助「もしかして戻れないとかっすか…そりゃちょっと困るっスねぇ…」

 

ジョナサン「そういえば他のみんなはどこに言ったんだろう…僕たち5人だけしか見当たらないね」

 

 

世界線は一緒でも住んでいる時代は別々のこの5人、天国に到達したDIOが作り出した『異変』そしてそれに対抗するために集めた9つの『聖なる遺体』。

DIOを倒し、遺体を全て集めのは確かだった。

 

ジョナサン「まあここで考えていても仕方ないか、異変が続いているのならきっとこの後何か起こるんだろうし」

 

 

ジョルノ「………というか、そもそも」

 

承太郎「?」

 

 

ジョルノは最上階近くにあるマンションの一室とも思える部屋の中をグルグルと回り、大きな窓の手前で止まった。

その窓の向こうには夕暮れ時の美しい太陽が街を血の色に染め上げている。

 

 

ジョルノ「ここはいつの時代の何処なんですかね、イタリアではないのは確かですが…」

 

ジョナサン「イギリスでもないかな、建物の雰囲気がまるで違う」

 

ジョセフ「アメリカでもねーな、だがこの建物の質といいこの窓から見える建物といい、かなり裕福な国だぜこりゃ」」

 

仗助「じょ…承太郎さん、多分ここ…」

 

承太郎「ああ、間違いねえ」

 

 

承太郎も部屋の物などを見ながら窓を開けてベランダに出た。中の涼しい部屋とは違い外は太陽の直射と生暖かい風が吹いており暑い、この時に今が夏ということも知った。

 

 

承太郎「ここは日本だ、それも俺や仗助達が住んでいた時代よりも未来の」

 

ジョセフ「ここがぁ?日本??日本ってショボくれた建物しかないイメージだったけどよぉ」

 

仗助「おいコラ!さらっと日本ディスってるんじゃねえよ!!」

 

承太郎「外から見える看板、車のナンバープレート、一般市民の顔立ち、そしてこの部屋の雑誌。間違いねえ」

 

ジョルノ「流石スタープラチナですね、そんな遠くの物までしっかりと見えるなんて」

 

 

ジョナサンは机の上に載っている雑誌を開いて読んでみたが全て日本語で記載されており、写真には女性の化粧品などがいくつか載っている。

 

 

ジョナサン(化粧品…こういうのエリナに挙げたら喜んでくれるだろうか?)

 

ジョルノ「…………………………」

 

ジョルノ(ジョースターさん…女性ものの雑誌に釘付けだな、そういう趣味でもあるのかな…)

 

仗助「いやー、本当に未来に来ちまったのかよぉ!すげぇな!!」

 

承太郎「おい、ガキじゃねえんだからあんまはしゃぐんじゃねえ」

 

 

その頃仗助は未来に来てテンションがハイになったのか部屋の備品などに片っ端から目を通した。

 

 

仗助「ええっ!?こ…これテレビかよ!?」

 

承太郎「そうらしいな。………随分と……デカいな」

 

仗助「幅うっっっっすっ!!こんな狭い中にどうやって部品入れてんだよ、作った奴天才か…こんな大画面のテレビでゲームとかやってみてぇな!!」

 

ジョセフ「未来だからなんでもありだな…あー、なんか腹減ったな。食いもんあるかな、この家」

 

ジョルノ「ジョセフさん、食べ物は流石にやめておいた方がいいのでは?この家は僕たちのものじゃありませんよ」

 

ジョセフ「細けーことは良いんだよ!おっ、冷蔵庫発見!!ジョルノもなんか食うか?」

 

ジョルノ「いえ、遠慮して——」

 

グゥ〜〜〜〜〜

 

ジョルノ「………………………」

 

ジョルノ「冷凍のピッツァとかありますか?」

 

 

ジョセフとジョルノで冷蔵庫の中を漁っている中、ジョナサンは先程読んでいた雑誌を置いて水槽に目を向けていた。

 

 

ジョナサン「魚?随分とデカいな、なんて魚だろう?」

 

承太郎「恐らくピラルクーだろう、アロワナ科ヘテロティス亜科に属している魚だ。こいつは2.5mくらいだがデカい奴は5mとかあったりする」

 

ジョナサン「へぇー、物知りだね承太郎は」

 

承太郎「まあ…こっちの方面は少し知識があるんだ、興味持っててな」

 

 

 

仗助「ここはなんの部屋だ?」

 

ガチャリ

 

バン!!

 

仗助「うっひょぉおおおお!!浴室かよ!!デッカいなこれ!!うちの家の4倍……いや、5倍あるぜこりゃ!!」

 

仗助「いいなぁ、こんな風呂なら185cmある俺でも足がつっかえずに入れるなぁ」

 

仗助「…………ちょっと試しに風呂沸かして入ってみるか、うひひっ」

 

 

ポチッ

『お湯はりを開始致します』

 

 

 

 

ジョセフ「はぁあああああああ!!??こりゃ北極にいるシロクマの餌かぁあああ!!??こんなカチカチの食べ物どうやって食うんだよ!!??」

 

ジョルノ「これは冷凍食品といって、そのまま食べるんじゃなくて。ほら、あそこにある電子レンジで温めるんです」

 

ジョセフ「なんだそりゃ、あの箱に入れればあったかくなんのか?」

 

ジョルノ「そうです」

 

ジョセフ「……………ってことは、仮に一生懸命誠意を込めて作った俺様のスパゲティが冷めちまってもあれにいれればあったかくなるってことか??」

 

ジョルノ「そうです」

 

ジョセフ「うおおおお!!!未来すげぇええええぞ!!!ジョナサン!!」

 

ジョナサン「ああ、僕も今承太郎に色々と教えてもらっているところだ。たったの百年ちょっとでここまで進化するなんて…やっぱり人間は凄い生き物だ」

 

承太郎「………やれやれだぜ」

 

 

 

 

——————————————————————————

 

 

 

 

その後はしゃぎまくった5人は一旦冷静になり冷凍のピザとプリンを頬張りながら再びこれまでや今後のことについて話し合った。

 

 

承太郎「とりあえず、こんな時代に飛ばされているってことは異変が続いているのは確かだ」

 

ジョセフ「そうだな、あーあ。DIOが死ねば全部終わると思ってたのによぉ」

 

ジョルノ「とりあえず、今日はもう少しで日が暮れますし休みましょう。明日以降外に出て行動しませんか?」

 

仗助「ジョルノに賛成だぜ、それになんとなくだけど。この時代は俺たちの時代の時と違ってなんか邪悪や奇妙な気配はしねえから、安心できそうだ」

 

ジョナサン「仗助もそう思ってたか…僕も同じだ」

 

承太郎「DIOの野郎が死んだのが関係してるのかもしれねえな、あくまで予測だが」

 

ジョルノ「それに、僕達の仲間がこの時代のどこかに飛ばされてるかもしれませんし。一旦また合流したいですね。元の時代に戻る打開策を考えるのはそれからにしましょう……………このピザ、中々イケるな」

 

ジョセフ「結局オメーが一番食ってるじゃねえかよ!」

 

ジョナサン「しかし、休むといっても何処で?」

 

仗助「場所なら承太郎さんが持ってる亀にまた……」

 

承太郎「あれはDIOの『ザ・ワールド・オーバーヘブン』に殴られた後に消えちまったぜ」

 

ジョナサン「そういえばそうだったな…」

 

ジョルノ「困りましたね、路上で寝るのは流石に無防備すぎる、もし奇襲があったら対応できない……ホテルでも取りたいけどお金がない…」

 

ジョセフ「…………仗助」

 

仗助「…………ジョセフさん」

 

ジョセフ「……………………」コクン

 

ジョセフは仗助を見ながら頷いた

 

仗助「…………………」コクン

 

仗助もまたジョセフを見ながら頷いた

そして2人は椅子から立ち上がり同じタイミングで口を開いた。

 

 

 

ジョセフ 仗助「「ここに泊まっちまおうぜー!!」」

 

ジョナサン 承太郎 ジョルノ「「!!??」」

 

 

 

ジョルノ「だから…先ほども言ったように部屋主が帰ってきたら…」

 

仗助「大丈夫だって、もうすぐ日も暮れるんだから今日は帰ってこねーよ!ジョルノ!」

 

ジョセフ「それによ…気がついたらここにいたってことは。この部屋は誰かが俺たちの為に用意してくれたのかもしれねえだろ!」

 

承太郎「おいジジイ、そんな都合の良い話が—」

 

ジョセフ「それにもし部屋主が帰ってきたとしたら承太郎が時止めてあてみ食らわせればいいんだよ!」

 

仗助「おお!ナイスアイデアっすよジョセフさん!!」

 

ジョナサン「ダメだ!そんなの!!いくらなんでも野蛮すぎる!紳士のやるべき行動ではない!!」

 

ジョセフ「固いこと言うなってジョナサン、エリナ婆ちゃんから聞いたけどお前だって10代前半の頃、未成年のくせにパイプふかしてたらしいじゃねえか。紳士のやることじゃねえよなぁ??」

 

ジョナサン「待て!それは違…というかエリナは何処でそれを知ったんだ!?」

 

承太郎「まあ確かに…泊まるとこがねえならここで…」

 

ジョナサン「承太郎まで何言って——-」

 

 

ガチャ

 

 

5人のジョジョ「「「「「!!!???」」」」」

 

 

その音は今の5人にとっては地獄への導き。絶望への扉の解放。全く策を練っていない時の奇襲。どの言葉にも当てはまってしまった。

 

ジョセフ「やばい!!みんな隠れろ!!」

 

承太郎「チッ!言わんこっちゃないな」

 

ジョナサン「君だって乗りかけてたじゃないか!というかピザ!処分しないとばれる!」

 

ジョルノ「待ってください!後2切れ残ってます!!」

 

仗助「食ってる場合じゃねえだろ!!さっさと隠れろ!!」

 

ジョセフ「こ…このクローゼットだ!ここに身を潜めようぜ!!」

 

ジョナサン「みんな入れ!!このデカさなら5人隠れられる!!」

 

 

バタン!!

 

 

ガチャリ!!

 

 

5人がクローゼットを閉めたタイミングで入口の扉が開いた。

 

 

「この扉開きにくいわね、本当にこのマンション出来たばっかなのかしら」

 

「二乃が開けるの下手くそなだけ…」

 

「そうだよ、私だったら一発で開けられるからね」

 

「うっさいわね!じゃあ三玖と一花が今度一発で開けられ無かったらアタシにあの高級プリン10個買ってきてもらうから!」

 

「ちょっと喧嘩してないで早く入ってください!」

 

 

クローゼットの中にいる5人に女性の話し声が微かに聞こえてくる。

 

 

ジョセフ「チッ、多分複数人いるぜ」

 

承太郎「3人くらいならあてみ出来る、5秒あれば十分だ」

 

ジョナサン「ほ…本当にやるのか…やっぱりやめたほうが!」

 

ジョルノ「しっ、ジョースターさん声が大きいです。それに口数は出来るだけ減らしてください」

 

ジョナサン「いや、やっぱり野蛮な気がしてならない…」

 

仗助「後あんまり動かないでほしいっス…いくらクローゼットがデカいからと言って巨大の男4人入ればかなり窮屈っすよ…」

 

ジョセフ「うしし、ジョルノ。お前巨大な男の中に入ってねえぜー?」

 

ジョルノ「同じことを2回言わせないでください、口数は出来るだけ減らせ。2回言わせるってことはそいつの頭が——」

 

承太郎「黙れ」

 

ジョナサン ジョセフ「…すまん」仗助 ジョルノ「…すいません」

 

 

玄関で靴を脱ぎ、1人 2人とリビングに入ってくる。

 

 

「なんかちょっとチーズくさくない?」

 

「そうかなぁ…あっ!そういえば五月はさっきのカフェの後にクワトロチーズバーガー食べてたからそれじゃないかな!?」

 

「ち…違いますよ!!」

 

「あれー?誰かお風呂予約してくれてたの?助かるねぇ、三玖かな?」

 

「私…違う…」

 

 

 

その頃5人のジョースターはクローゼットの僅かな隙間からリビングの様子を監視していた。

 

 

 

ジョセフ「よく見えねーが、どうやら女5人のようだな」

 

承太郎「チッ、いくら女だからって5人一斉に始末するのは不可能だ…」

 

 

「先にお風呂入ってきていいですか?」

 

「どうぞ〜ごゆっくり〜」

 

 

ジョルノ「これで1人減りましたね…」

 

承太郎「せめて3人じゃねえと……」

 

ジョナサン「この人たちが寝付くまでここにいるのはダメなのかな?」

 

仗助「そっちの方がリスキーっすよ…クローゼットなんていつ開けられてもおかしくないですから」

 

ジョセフ「うぐっ…汗かいてきたな…流石に狭いぜ…」

 

 

「三玖ー、そういえばこの前貸したアタシの黒薔薇女子のジャージどこー?」

 

「あ、それ多分……」

 

 

 

「クローゼットの中」

 

 

 

5人のジョジョ「「「「「!!!???」」」」」

 

 

「直接アタシに渡してくれればいいのに」

 

「汚れとかついたら怒るかなって…」

 

「まあそうだけどさ〜」

 

 

ジョセフ「やべぇよ…こっち来やがる!」

 

承太郎「チッ、一か八かか……」

 

ジョナサン「ダメだ、4人ともかなり離れている!5秒じゃ足りない!」

 

仗助「チッ……俺にも時を止める能力とかあれば……」

 

ジョルノ「!……仗助!」

 

仗助「なんだよ、ジョルノ」

 

ジョルノ「君の出番だ!君の!!」

 

仗助「!?」

 

 

 

「よいしょっと」

 

5人のうちの1人がクローゼットの扉に手をかけた……が

 

「あれ、開かない…うーんしょ!」

 

「もうなにやってんの二乃ー?」

 

「クローゼットが開かないのよ、やっぱり古いのよこのマンション!」

 

「いつも普通に開くじゃん、よいっしょっと…あれ?」

 

「ほらね!なんか開かないのよ!」

 

「確かに…」

 

「ゴメン、三玖と四葉も手伝ってくれない?」

 

「うん!力仕事なら任せて!」

 

「壊さないようにね…四葉」

 

「いくよー?」

 

 

「「せーーーのっ!」」

 

 

4人が一斉にクローゼットの扉を思いっきり開ける。

 

 

ガラガラガラガラ!!

 

 

先ほどまで硬く閉じていたクローゼットの扉がようやく開いた………そして

 

 

 

 

「「「「きゃあああああああああああ!!!!!!!」」」」

 

 

女4人は近所のことなど御構い無しに大声で叫んだ。

 

 

それもそのはず……

 

 

 

大量の服が雪崩を起こして落ちてきたのだ、4人は服の重さに体制を崩して床に勢いよく落ちた。

 

 

「ちょっと!どうしたのですか!!??」

 

「アンタはその格好で出てくるなー!!ったく誰よ!こんな入れ方したの!!」

 

「一花じゃないの?部屋あんなのだし」

 

「私じゃないよー…イタタ…」

 

「と…とりあえず服戻そうか!ってあれ?」

 

「どうしたの四葉?」

 

「今一瞬クローゼットの奥の壁…壊れていませんでした?」

 

「はぁ?なわけないでしょ、傷1つついてないわよ。頭打って幻覚見えたんじゃない?」

 

「ええ!?怖い!!」

 

 

 

 

 

仗助「はぁ、はぁ…た……助かったぜ……」

 

ジョルノ「ええ……お二人のおかげです」

 

仗助「承太郎さんのスタープラチナで時止めてクローゼットの壁を破壊、そして破壊した壁の先にある部屋に5人で逃げ込んで俺のクレイジーダイヤモンドで即壁を直す」

 

ジョセフ「しかしよく気づいたな、隣に部屋があることなんて」

 

ジョルノ「クローゼットの壁を叩いてる時妙に響く音がしたんです、これは壁のすぐ向こうに部屋がある証拠なんです」

 

ジョナサン「綺麗に閉まってあった洋服を出しまくって扉を重くしたことには罪悪感を感じてしまうな…」

 

承太郎「とりあえず、上手くいって一安心といったところか…」

 

仗助「とりあえずこっそり電気をつけるか、窓がありゃそっから脱出だ」

 

ジョナサン(それよりもこの部屋……妙に暑いな)

 

ジョセフ「あーん?この部屋電気どこにあるんだ?暗くてよく見えねえな」

 

仗助「承太郎さん」

 

承太郎「今スタープラチナで見ているが見当たらねえ…ってこの部屋…」

 

 

その時

 

 

パチッ!!

 

 

仗助「うはっ!?勝手に電気がついたぜ、流石に未来!……ってこの部屋」

 

ジョナサン「ここは!!」

 

 

5人のジョジョ「「「「「浴室!!??」」」」」

 

 

ジョルノ「まずい!承太郎さん!仗助!もう一回壁を壊すんだ!!」

 

承太郎「わかってる今や——」

 

 

バタン!!

 

 

五月「はぁーあ、この時期は汗すごい出るから一刻も早くお風呂に入りたいんですよねぇ……」

 

5人のジョジョ「「「「「…………」」」」」

 

五月「早くシャワー浴びて……って………は?」

 

5人のジョジョ「「「「「………」」」」」

 

五月「………………は?」

 

 

 

 

ルネッサンス期のイタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリによって作られた『ヴィーナスの誕生』それを連想させるかのような生まれた時の同じ格好で来た目の前の女性。

『ヴィーナスの誕生』と違うところは手で見られたくない部分を隠していないことだ。ありのままの姿。

 

 

五月「い…………」

 

 

目に涙が浮かんでいる目の前の女性は今自分に何が起きているのかを理解出来てないのだろう、放心状態ということだ。

 

 

ジョナサン「こ…これはちが——」

 

ジョセフ「ヒュー、ナイスバディ……」

 

承太郎「…………やれやれだぜ」

 

仗助「お…俺は…ちが…その…」

 

ジョルノ「…………………………」

 

 

 

 

五月「い……い…………いぃ………」

 

 

 

 

 

ジョルノ「マンマミーア」

 

 

 

五月「「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

 

 

 

再び、ジョースターの血統の者たちに奇妙な試練が降りかかろうとしていた。

 

 

 

 

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改めまして、この作品に目を通していただきありがとうございます。

作者のパムーンにも花は咲くというものです。投稿スピードは亀のように遅い私ですがゆっくりと投稿していこうと思いますのでよろしくお願い致します。



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第2話 刹那

五月「いやぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

ダッ!!!!!

 

赤髪でロングヘアーの女子はタオルを片手に滑りやすい浴室の床をまるで短距離走のスタートダッシュかのように地を蹴って浴室を飛び出して行った。

 

 

ジョナサン「待て!落ち着くんだ!!」

 

仗助「いやぁジョースターさん。あの状況で落ち着くなんてとてもじゃないけど無理だぜ、いきなりスタンド攻撃食らった時と同じくらいの衝撃のはずっすよ」

 

承太郎「仗助、呑気に語ってないであの女を追うぞ」

 

仗助「えっ?追うんですか!?どうせならこのまま逃げちまいましょうよ!」

 

ジョルノ「いえ、このまま僕たちが逃げれば確実にこの世界で生き辛くなる。もしもDIOのような強敵がいるのならそれは非常に厄介だ!ダメ元でも彼女と話し合って説得する!!」

 

仗助「わ…わかったぜ!」

 

 

5人は先程の少女の後を追いかけた。

 

 

二乃「五月!?どうしたのよ!!」

 

五月「不審者!!不審者です!!今すぐに119を!!」

 

三玖「119じゃ消防車が来ちゃうよ」

 

一花「不審者って言っても…ゴキブリとか蛾とかじゃないの?」

 

五月「違います!人間の不審者です!!それも複数人!!」

 

一花「ええ!?それホント!!??」

 

三玖「いつかは来るとは思っていたけど、こんなにも若くして身の危険を感じることになるとは……」

 

四葉「不審者って!?このマンション警備もしっかりしてるって書いてあったのにどうやって入って来たのぉ!?」

 

一花「うーん、それよりもまずは不審者の退治から…かな?」

 

一花はホウキを、二乃は包丁を、三玖は厚本を、四葉はちりとりを、五月はけん玉を持って不審者達がいる浴室の方向へと目を向けていた。

 

そして対面の時は来た。

 

 

ジョジョ5人「「「「「!?」」」」」

 

中野五姉妹「「「「「!?」」」」」

 

 

リビングに構えている五姉妹は5人全員険しい顔をしていて……ジョジョ5人には同じ顔が5人いるように思えた。

 

 

中野五姉妹(((((この不審者、デカい!!!!)))))

 

ジョジョ5人(((((こいつら、全員顔が同じだ!!!!)))))

 

 

 

五月「この人です!この人達が!!!!」

 

二乃「何が目的!?お金なら無いわよ!親なんて帰ってこないんだから!」

 

一花「それとも浴室に陣取っていたってことは…私達の身体目当てかな?」

 

四葉「成仏できてない幽霊さんならお経唱えてあげますので呪わないでください!!」

 

 

ジョナサン「ま…待て!これは誤解なんだ!!一回話し合おう!!」

 

三玖「不審者と話す舌なんて持ってないから」

 

仗助「だーかーらー!!誤解なんだって!俺たちは不審者じゃねえ!!」

 

一花「ほぉ〜、ならば君達が不審者じゃないことを証明してみせてよ。私達が納得するように」

 

承太郎「目が覚めたらここにいた、それだけだ」

 

二乃「ねぇ、アンタ馬鹿なの?嘘つくならもうちょっとマシな嘘つきなさいよ!!」

 

ジョルノ「だから、皆さん一旦静かにして話し合いましょう」

 

五月「話し合うことなんてありません!!!!」

 

ジョセフ「Oh!!No!!こいつら全く人の話を聞かないぜ!!とんだバカちん野郎共だぜ!!」

 

四葉「この状況わかってそういう事言ってるんですか!!??」

 

 

一花「とりあえず二乃と三玖はこのマンションの管理者にこの話をつけて来て!私と四葉と五月は近くの警察署まで避難しよう!!」

 

二乃「そうね、アタシ達じゃ太刀打ちできるかどうかわからないしひとまずののマンションを後にした方が良さそうね」

 

五月「ちょっと待ってください!!私服着てないのにこんな姿で外なんて——」

 

三玖「五月、そんなこと言ってる場合じゃない」

 

 

五姉妹はそう言うと武器を捨てて玄関の方へと猛ダッシュした。

 

 

承太郎「……ちょっと手荒くなるが悪く思うな」

 

仗助「承太郎さん、やるつもりっすか」

 

承太郎「あぁ、奴らをこの家から出すわけにはいかねえ」

 

 

承太郎「スタープラチナ・ザ・ワールド!!!!」

 

 

ズォオオオオオオオンンンンン

 

 

承太郎を基準に世界が灰色になる、先ほどまで必至に逃げていた5人の動きが止まったが焦りと不安の表情を一切崩していない。

この空間を感じさせることは五姉妹にはもちろん他の4人にだって出来ない。そう、DIOが消えた今、この世界は承太郎だけの世界。

 

 

承太郎「スタープラチナ」

 

ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ! ビシッ!

 

5秒という限られた時間の中で承太郎のスタープラチナは確実に五姉妹の首元を片手で叩く。弱攻撃だが女5人を気絶させるには他愛もない。

 

 

承太郎「時は動き出す」

 

 

ピカッ!!

 

 

5秒を過ぎた途端、承太郎が見ていた世界に色彩が再び周りのものに色を与え始め、止まっていた時計は動き出し、この部屋にいる承太郎以外の9人の人間も石の石像が動いたかのように不自然なく普段の世界へと戻った。

 

バタッ!!!!

 

そして時が動き出した瞬間、先ほどまで逃げようと玄関先まで走っていた女達が一斉に倒れた。

 

 

ジョセフ「野郎、時止めしやがったな」

 

ジョルノ「相変わらず凄い能力だ、そして僕の父親もこの能力を……」

 

仗助「すっげえええ!流石承太郎さん!!」

 

承太郎「とりあえずこいつらの目が醒めるまで待つとするか」

 

 

ジョナサンは気絶した5人を一人一人抱えて部屋の中心にまとめておいた。

 

 

ジョナサン「ゴメンよ、こんなことして…」

 

 

 

 

 

——————————————————————————

 

 

数時間後

 

 

 

一花「う…う〜ん…首痛っ…」

 

一花「って……ええ!?この状況なに!?」

 

 

一花が目を覚ますとそこには最近住み始めたマンションの一室にいたことは確認できたが身体が紐で縛られていて身動きが取れないのとその近くには5人で円を描くような形で縛られている他の4人が未だに目を瞑って気を失った状態であることに驚きを隠せなかった。

 

一花「起きて二乃!ほら他の3人も!」

 

一花は必死に身動きの取りにくい身体を動かして横や後ろにいる妹4人を起こそうとする。

 

四葉「うーん…なに一花?…ってうわぁああああああ!!拘束されてる!!」

 

二乃「うるさいわねぇ…って、え?なにこれ?」

 

四葉の大声で二乃 三玖 五月も目を覚ます。

 

 

承太郎「ようやく目を覚ましやがったか、やれやれだぜ」

 

 

拘束されている五人の近くには大きく股を開き前屈みになりながら両手を合わせている承太郎がソファに座っていた。

他のジョジョ達の姿は見えない。

 

 

四葉「えっ、目が醒めるまで待っててくれたんですか?不審者の割に意外と優しい人ですね」

 

三玖「四葉そういう問題じゃない……私たちに何する気?」

 

承太郎「黙っていれば何もしない、そして俺たちが不審者じゃないということをお前たちが理解してくれたら解放してやるし俺たちもここから姿を消す」

 

一花「へ〜?もし騒いだ場合はどうするの?」

 

承太郎「その状態のまま窓からお前達を投げ捨てる」

 

二乃「ほとんど脅迫じゃない!!この高さから投げ捨てられたら死ぬわよ!!」

 

五月「そもそも貴方ですよね?私たちを気絶させたの」

 

承太郎「そうだ、お前らが話を聞かないで1歳児の赤子みたいにギャーギャー喚いているからあてみを食らってもらった」

 

一花「家の中に見知らぬ人が5人もいたら誰だって喚くんじゃないかなぁ、あはは…」

 

三玖「結局目的が何かもわからないままだしね、ちょっとの間は黙って聞いてあげようか」

 

承太郎「いい判断だ」

 

 

承太郎は立ち上がると右手の人差し指を部屋の床へと向けた、その床の位置は最初に承太郎が倒れていた場所を指していた。

 

承太郎「一から説明してやる、まず俺たちはこの家に入りたかったわけじゃねえ。いつの間にかここにいたんだ」

 

承太郎「今指を指しているこの場所で倒れていてな」

 

五月「……いや、意味わかりませんよ」

 

二乃「さっきも言ったけどなんでここでいつの間にかここに倒れていたという状況が出来てんの?どう考えてもウソじゃない」

 

承太郎「スタンドにも石仮面にも会わずに生きてきた人間ならとても信じられる話じゃねえのはわかるがこれは事実だ、俺たちはいつの間にかここに転送されていたんだ」

 

四葉「んん??今さりげなく専門用語が入ったような…」

 

三玖「そこまでいつの間にかって言うなら…証拠は勿論あるんだよね?」

 

二乃「そうよ!!そんなバカみたいな話、決定的に証明するものがない限り信じないわよ!!」

 

承太郎「ああ、勿論だ。これを見ればお前達も納得するはずだ」

 

 

そう言うと承太郎はテレビの方へと向かった。

リモコンを掴み大きなテレビの画面をつけるとDVDプレイヤーに承太郎がポケットから出したディスクを入れて再生し始めた。

 

 

三玖「この状況で何を見せる気?」

 

承太郎「このディスクにはお前達が嘘と決めつけた俺の話を真実にする映像が映っている」

 

 

そう言うと真っ黒だった画面が彩りを作り始め、そして5人にとっては見慣れた光景がテレビ画面に映し出された。

 

 

一花「えっ、これもしかして私たちの家のリビング?」

 

承太郎「そうだ今日の夕方の監視カメラの映像だ。この時間帯はお前らは勿論俺たちの姿も無い。当たり前だがな」

 

三玖「このマンション、部屋に一つ一つ隠しのカメラがあるんだ。気づかなかった」

 

承太郎「警備員も常に監視しているわけではないらしい、緊急の自体が起きた場合のみのカメラらしい」

 

その映像をつけて数分が経ったが5人にとっては見慣れたリビングの映像がずっと動きを見せずに垂れ流されるだけだった、唯一動いているものは当時の時間と秒数を数える数字のみ。

 

五月「あの…これいつまで見るんですか?」

 

承太郎「黙って見ておけ、もうすぐ俺たちが出現する」

 

二乃「ほー、どっから入ってくるのか見ものね」

 

一花「というか監視カメラの映像なんていつの間に……」

 

承太郎「お前らが気絶してる間にこのマンションの警備員と交渉しただけだ……そろそろだぜ」

 

 

その時だった

今まで動きを見せていなかった映像が遂に行動を起こした。リビングの床の一部が突然金色に光だした。その光は徐々に面積を広げていき、最終的に人が何人か入るくらいにまで広がっていった。

 

四葉「うわわわ!!なんですかこれ!カメラバグってませんか!?」

 

承太郎「カメラは正常だ、状況的にはバグっているがな」

 

そしてピカッ!!と床の金色の光がカメラ越しでも眩しいくらいに光った直後、人の姿をしたものが5つ横たわっているのが確認できた。

 

 

五月「なななっ…なんですかこれ!?」

 

一花「転送…たしかに、ピカッと光った直後に人が現れたね…」

 

三玖「映画のワンシーンでも見てるみたいだった…」

 

承太郎「理解したかお前ら。これが真実の映像だ、横たわっているのが俺と他の4人」

 

二乃「………ありえないわ」

 

承太郎「……なに?」

 

4人が口を開けながら映像を見ている中二乃は承太郎を睨みながら口を開いた。

 

二乃「どうせアタシ達が気絶してる時にでも映像の加工して作ったんでしょ!こんなのありえないわ!非現実的よ!!」

 

承太郎「……非現実的…か」

 

 

承太郎はテレビの電源を落としポケットに手を突っ込みながら円の字で拘束されている五つ子の元へと歩いて行った。

 

承太郎「なら俺が今この場でお前にとっての非現実的なことをやればこの映像を信じるか?」

 

二乃「何よそれ…出来るもんならやってみなさいな」

 

承太郎「…………………」

 

 

その時、机の上に置いてあったリンゴの山のうちの一個が突然命を吹き込まれたかのように宙を舞いはじめた。

 

 

二乃「……えっ?」

 

 

そしてそのリンゴは承太郎の手の中へとストンと落ちた。

承太郎にとってはスタープラチナを発動させ机の上にあったリンゴを掴んで自分の手元へと落としただけだが非スタンド使いには奇妙な光景を見たと十分に言えよう。

 

 

五月「今…何をしたのですか?…何故、リンゴが突然…」

 

承太郎「どうだ女、これは非現実的だろ。信じる気になったか?」

 

二乃「ふっ、ふん!どうせ目の錯覚とかで見えない紐でも使って移動させたんでしょ!?そんなのテレビの中でマジシャンがやってるわよ!そんなものでアタシが信じると思ってるのかしら?」

 

承太郎「やれやれ、面倒な野郎だ」

 

承太郎「……お前ら5人、俺を見ろ」

 

四葉「え?」

 

承太郎「いいか、瞬きをするんじゃねえぞ」

 

 

承太郎が口を開き5人の視線が一気に注目する。

そしてその時、一瞬の時間のうちに彼の姿に変化が起きた。

 

 

五つ子「「「「「えっ」」」」」

 

 

五つ子は素の意識していない声が自然と漏れた。

先ほどまでは制服のポケットに手を突っ込んで仁王立ちをしていただけだったが一瞬でその姿は変化し、ポケットの中に突っ込んでいた右手はいつの間にか缶の飲料水を持っていた。

 

 

一花「い、今おかしかったよね?ポケットに手を入れてたのに…一瞬のうちに飲み物なんか持って」

 

四葉「私瞬きしてないよ!凄いですね!!」

 

 

カチャ!!

 

承太郎はその飲料水の蓋を開けて飲み始めたが先ほどの奇妙な光景に5人は口をぽかんと開けてその姿を見つめていた。

 

承太郎「不味いなこいつは」

 

五月「」ポカーーーーーーーン

 

承太郎「どうだ?これでも非現実的じゃないと言うのかお前は」

 

二乃「ふ、ふん!5人がたまたま瞬きした時を見計らってポケットから取り出しただけでしょ!いきなり出てくるなんてあり得ないわ!」

 

三玖「二乃。それは流石に無理がある…」

 

承太郎「……はぁ、やれやれ」

 

 

承太郎は二乃の目の前に立つとそのまま座り込み、持っていた缶ジュースを彼女の方へと近づけ、最終的に二乃の頰にくっつけた。

 

ピタッ

 

二乃「冷たっ!!!ちょ、ちょっと何すんのよ!!」

 

承太郎「冷たい…と言ったな、二乃とやら」

 

二乃「えっ?」

 

承太郎「俺が制服のポケットにこいつを仕込んでいたなら冷たいはずがない。既にお前らが目を覚ましてから何十分と経っているからな、確実に緩くなっている」

 

承太郎「冷たいに決まっている、何故ならこの缶ジュースはそこの冷蔵庫から今取ってきたものなんだからな」

 

二乃「なっ!…そ、そんなのどうやって!!嘘よ!そんなのでっち上げだわ!!」

 

承太郎「なら他にどのような方法がある?「冷たい」とお前が言った時点で制服から取り出した説は否定されたぜ」

 

二乃「そ……それは………でも、そんな冷蔵庫から一瞬で取り出すなんて、どうやって……」

 

承太郎「過程はどうでもいい、結果的にこれは非現実的だろ」

 

二乃「うっ…………」

 

承太郎「あの映像も真実だと言うことだ、わかったかお前ら」

 

一花「まっ…まああそこまで貴方に見せられたら信じるしかないよね〜、はぁ。この夢いつ覚めるんだか…」

 

四葉「凄い!こんなことが本当に出来るなんて!テレビ出た方がいいですって!!」

 

五月「まあとりあえず、この拘束されている状況で貴方が何も私たち5人に害を与えていない時点で本当に不審者ではないんでしょう。私は信じます」

 

三玖「………………」プクッ

 

一花「み…三玖どうしたの?頬膨らまして」

 

 

三玖と呼ばれたその女性は頰を膨らまして睨みつけている、その先には缶ジュースを持った承太郎の姿がある。

 

 

承太郎「なんだお前、お前もまだ納得していないのか?」

 

三玖「冷蔵庫から取ったんでしょ?それ」

 

承太郎「あぁ、そうだ」

 

三玖「その抹茶ソーダ……私の」

 

承太郎「…………………………」

 

 

承太郎は抹茶ソーダを見る、確かにそこは小さい字で『三玖』と記載されていた。

 

 

三玖「今日帰ったら飲もうと思って楽しみにしてたのに」

 

承太郎「……お前好きなのかこれ、不味いぞ」

 

三玖「私は好きなの」

 

承太郎「………………」

 

 

 

 

——————————————————————————

 

 

 

ブチッ!!!!!!!

 

 

鈍い紐の千切れる音と共に五つ子を縛っていた物が消え、拘束からようやく解放された。

 

 

五月「本当に何もしないんですね?」

 

承太郎「最初から言っただろう、不審者じゃねえって」

 

五月「まあ私の裸を見られたことには変わりありませんけどね、この変態」

 

承太郎「…………事故だ」

 

五月「私が気を失ってからいつの間にか服も着せられてるんですがこれも貴方がやってくれたんですか?」

 

承太郎「俺じゃねえ、服を着させたのはジョルノだ」

 

五月「なるほど、そのジョルノって人が私が巻いていたタオルを取って裸を見た挙句服を着させてくれたのですね」

 

承太郎「やれやれ……こいつも面倒な野郎だ」

 

二乃「というかアンタいつまでいんのよ、不審者じゃないのはわかったけどこの家とは何も関係ないんだから早く出て行きなさいよ」

 

承太郎「あの4人が帰ってきたらすぐに出て行ってやるからもう少し待て」

 

一花「というか名前聞いてなかったけど、なんて言うのかな?」

 

承太郎「………空条承太郎だ」

 

一花「クウジョウ ジョウタロウ君ね、いきなり我が家に転送されてきた人の名前。しっかりと覚えておくね」

 

四葉「空条さーーん!お茶入れておきましたので飲んで行ってください!」

 

承太郎「………助かる」

 

 

ガチャ

 

 

一花「おっ!どうやら帰ってきたみたいだよ」

 

 

ガチャ…ガチャガチャガチャガチャ!!!!!!!

 

ドンドンドンドン!!!!!!!!

 

 

五月「ちょっと!扉壊れますって!!今開けますから待っててください!」

 

 

ガチャリ!! バン!!!

 

 

五月「きゃあ!!??」

 

 

五月が鍵を開けた瞬間勢いよく扉がバンと開きドアノブを持っていた五月が吹っ飛ばされた。

 

 

ジョセフ「おーいおいおい!わざわざ扉の鍵を閉めずに出て行ったのにどこのタコスケ野郎が鍵閉めやがったぁ!!??」

 

二乃「ちょ、アンタオートロックって知らないの?」

 

仗助「壊れたのかと思ったぜ、危うくぶち破るところだった」

 

五月「壊したらそれこそ不審者確定してましたね」

 

 

ジョセフ 仗助 ジョルノ ジョナサンと入って承太郎を合わせてもう一度現段階でわかっていることを整理する。

 

 

承太郎「この5人は説得に成功した。もう俺たちの害になることはない」

 

ジョナサン「良かった、彼女達には悪いことをしたからね」

 

承太郎「お前達はどうだった?何か情報でも掴めたか?」

 

ジョルノ「いえ、残念ながら仲間は誰も見つかりませんでした。この時代に飛ばされたのは本当に僕たちだけなのかもしれません」

 

仗助「街中も異変の影響などを受けている奴とかは特に見ませんでしたね、普通に平和な街ですよ。ここは」

 

ジョナサン「ジョースターの血統を持っている人達も特には見なかったなぁ」

 

ジョセフ「バーガーショップを3つも見つけた、後は中国系の飯屋も結構あったな」

 

承太郎「やれやれ…結局情報無しか、泊まる場所とかは?」

 

ジョルノ「それも探しましたが、程よい隠れ家というのでしょうか…そういうのも特にはありませんでした」

 

ジョセフ「チッ!あの亀があればそんな問題速攻解決すんのによぉ!」

 

ジョナサン「無い物ねだりしてもしょうがないよジョセフ、とりあえず今日はどこか人気のない場所で寝るしかないよ」

 

ジョルノ「一応お金なら摂取したんですが…それでも一日とかしか持ちませんね、たったの5万円じゃあ…」

 

仗助「お、お前なぁ……」

 

 

慣れない時代、そしてこの世界に馴染んでいる仲間は一人としていない事実。ジョースターの血統を継ぐ5人は事実上積んでいた。

 

 

ジョナサン「とりあえず今日は———」

 

二乃「ねえ」

 

 

真剣な表情をして悩んでいる5人の中に突如二乃が横から入ってきた。

なにかいいアイデアを……言うはずもないのは5人ともわかっていた。

 

 

二乃「約束よ、5人揃ったんだから出て行きなさいよ」

 

五月「そうです。私達5人と貴方方5人は赤の他人。赤の他人が人の家のマンションにいることに違和感を感じずには入られません」

 

三玖「困ってそうなのはわかるけど、それは私達には関係ないから」

 

一花「まあ…確かにいつまでも要られちゃ困るかなぁ、私達には私達の生活があるし」

 

四葉「まあそうだよね、確かに面識がない他人がマンションにいる状況って滅多にみないし…」

 

 

5つ子からド正論を食らい言い訳を言う暇もなく納得したジョジョ5人は互いに顔を見合わせてその正論を受け入れることにした。

 

 

ジョナサン「君たちの言う通りだ、すまなかった。すぐに出て行くよ」

 

ジョセフ「まあこのメンバーなら野宿でもなんとかなりそうだな」

 

承太郎「不審者という誤解だけ解けただけ儲けもんと考えるとするか」

 

仗助「俺たちといると変なことに巻き込まれそうだし、さっさとオサラバするのが一番っすね」

 

ジョルノ「勝手に冷凍食品とか漁ってすまなかったと思ってるよ。後プリン凄く美味しかった」

 

 

皆それぞれ反省の言葉を発して少しでも怒りを鎮めて出て行こうとしたが5番目の金髪の言葉が火に油を注ぐことになった。

 

 

二乃「はぁ!?プリン!!??」

 

 

ジョルノの言葉に二乃が反応し、すぐに5人から背を向けて冷蔵庫の中を漁り始めた。そして数秒後ガクッと膝から崩れ落ちる二乃の姿を9人で見つめることになった。

 

 

仗助「お前なんでそういうこと言うんだよ…余計な怒りを買うだけじゃねえか!」

 

ジョルノ「いや、自分の罪は自分で背負わなきゃいけないなと思って」

 

二乃「プリン…アタシが、朝一に並んで買った高級プリン……全部…無い」

 

 

片言の発言になっている二乃が放心状態から怒りの最上級になるまでそう時間はかからなかった。

 

 

二乃「……出て行け」ボソッ

 

ジョセフ「あ〜ん?聞こえねぇな、ハッキリ言えや!!」

 

 

次の瞬間、まるで日本の富士山が噴火したかのような爆発力と驚きが部屋の人間の全身を駆け巡った。

 

 

 

 

二乃「さっさと出て行けぇええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」

 

 

二乃「二度とアタシの前に姿を現わすなぁあああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

ジョセフ「逃げるんだよぉ〜!!」ダッ!!!!

 

仗助「おい!早いとこ退散するぞ!!」ダッ!!!!

 

ジョルノ「皆さんすみません」ダッ!!!!

 

ジョナサン「僕も迂闊だった…人の大切にしているものを食べるなんて…父さんが天国できっと怒っている…」ダッ!!!!

 

承太郎「チッ………」ダッ!!!!

 

 

ガシッ!!

 

承太郎も他4人と同じく逃げようとしたが筋肉質の腕を小さい女性の手が握り立ち止まるように言い聞かせてきた。

 

 

承太郎「……何しやがる」

 

三玖「承太郎…私の抹茶ソーダ、いつ返してくれるの?」

 

承太郎「……二度とお前らの前に姿を現さない。これが弁償の代わりだ」

 

三玖「そういうことじゃ——」

 

 

バッ!!!

 

 

三玖の小さな手を振りほどき再び承太郎はこの家から背を向けた。

 

承太郎「……悪かった」

 

三玖「…………」

 

 

 

ジョースター5人は玄関の方へとダッシュをした。

しっかりと自分が履いていた靴を履き、出来るだけ部屋の中を荒らさないように。

 

 

ジョセフ「先に行ってエレベーター呼んでおくよ〜ん」

 

そして先頭のジョセフが扉を開けた、その時……

 

 

バン!!!!

 

ジョセフがドアノブを掴みそれを押した瞬間ジョセフの力とは別の力が入り扉が豪速球並みのスピードで開いた。

 

 

ジョセフ「おわっ!?」

 

 

先ほどの五月同様ドアノブを持っていたジョセフが勢いよく吹っ飛ばされた。

 

 

「はぁ……はぁ……見つけたぜ!!」

 

ジョセフ「テメエ、一体何考えて……って、お前!」

 

ジョナサン「君は!!」

 

承太郎 仗助 ジョルノ「「「!!」」」

 

 

ジョジョ5人「「「「「スピードワゴン!!!」」」」」

 

 

スピードワゴン「ようやく見つけられたぜ!ジョースターさん!!みんな!!」



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第3話 獲者 その1

目の前に現れた黒服の男。

西部開拓時代のカウボーイを連想させる羽のついたハット帽を被り背中まで伸びる金髪が特徴的。彼の名前はロバート・E・O・スピードワゴン。

通常世界では食屍鬼街(オウガーストリート)でチンピラ集団のボスをやっていたがジョナサンと出会い共にディオ打倒に協力してくれ、アイズオブヘブンの世界でも幾度と助けられたジョースター家の人間には欠かせない人物である。

 

 

 

ジョナサン「君もこの時代に飛ばされていたのか!?」

 

スピードワゴン「そうだ!ディオの野郎に魂を奪われた時はマジで死んだかと思ったが、目が覚めたらこの時代に飛ばされていた!」

 

承太郎「やれやれだぜ」

 

ジョルノ「しかしこれでこの時代に飛ばされたのは僕たち5人だけという可能性は否定されましたね」

 

スピードワゴン「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

承太郎「……………………」

 

 

目の前に現れたスピードワゴンはどこかおかしかったことには5人はすぐに気がついた。マラソンランナーがフルマラソンを走り終わったかのように息を切らし顔は汗で覆われている。

 

 

ジョナサン「スピードワゴン、何があったんだ」

 

承太郎「………敵か?」

 

スピードワゴン「そ……そんなとこだ…お、俺にも何が起きてるのか…さ……さっぱりわからねえが…」

 

一花「ちょ、まーだいたのー?」

 

三玖「というか…1人増えてるし…」

 

仗助「悪い、もう少しだけ時間をくれないか?」

 

一花「え〜?そんなこと言われたって……」

 

ジョルノ「君ら2人は風呂場にいた彼女とは違い話がわかる人だ」

 

五月「だ れ が 話のわからない人なんですか?」

 

ジョルノ「…………………………」

 

 

一花と三玖の間からひょっこりと眉間にシワを寄せて五月が姿を現した。

 

 

五月「いい加減にしないと本当に警察を呼びますよ、不法侵入って理由で十分逮捕されるんですからね」

 

ジョルノ「やめてください、警察の方にまで怪我を負わせたくない」

 

五月「ちょ、この犯罪者予備軍!!」

 

 

ジョルノと仗助が5つ子の対処をしている反対の玄関前では片膝をついて息を切らしているスピードワゴンを囲むように他3人のジョースターが話を聞いていた。

 

 

ジョセフ「そんなことよりスピードワゴン!敵ってどういうことだよ!?吸血鬼か!?スタンド使いか!?」

 

スピードワゴン「わ…わからねえ、わからねえんだ。ただ…俺やジョースターさん達の敵ってことは間違いねえ!」

 

承太郎「この5人なら大体の敵は対処できる、安心しなスピードワゴン」

 

スピードワゴン「なら…1つ約束してくれ……」

 

ジョナサン「や、約束?」

 

 

スピードワゴン「今から来る敵が『どんな姿』をしていても、必ず倒してくれ」

 

 

承太郎「………なに?」

 

 

ピンポーン

 

スピードワゴンが発した言葉を理解できずに黙り込んでいた3人の静寂な空間を貫くように耳に入ったエレベーターの到着音。

そのエレベーターにスピードワゴンの言う『敵』が載っていることは簡単に想像がつく。

 

 

スピードワゴン「チッ!もう来やがったか!!気をつけろみんな!!」

 

承太郎「出てきた瞬間スタープラチナを叩き込むだけだ」

 

ジョセフ「吸血鬼なら、俺の波紋でチリにしてやっからよ!」

 

ジョナサン「待て!一般市民の可能性もあるぞ!」

 

 

ジョセフと承太郎は玄関を出てエレベーターの扉前に待機する。

ジョセフも承太郎も考えていることは同じだった。

エレベーターから出てくる奴を速攻でぶちのめせば終わり。とても単純だった。

 

 

ウィーーーン…

 

2人の視線の先にあるエレベーターの扉が静かな音を立てながらゆっくりと開いた。

 

 

ジョセフ「波紋疾走!!」

 

承太郎「スタープラチナ!!」

 

 

ジョセフは波紋を左手にまとわりつけ、承太郎はスタープラチナを出現させ右手を大きく振り上げた。

そして扉が腕を通るほどに開いた瞬間2人は自分の腕を扉の中へと突っ込み中にいる人物へと進ませた。

 

 

「うわーーーっと!!ストップストップ!!!!」

 

ジョセフ 承太郎「「!!??」」

 

 

エレベーターの中の人物は大声をあげて攻撃を止めるように呼びかけて来た。普通ならそんな言葉を馬耳東風してぶちのめせば終わる話なのはジョセフも承太郎もわかっていた。

 

だが…彼らはその人物の目の前で攻撃の手を止まらせた。

聞こえて来た声、そして扉の隙間から見えていたその人物の格好。2人には見覚えがあったからだ。

 

エレベーターから出てきた敵だと思っていた人物は意外な『姿』をしていたのだ。

 

 

 

ジョセフ 承太郎「「スピードワゴン!?」」

 

スピードワゴン「随分おっかない出迎えだなぁ!?ジョセフ 承太郎!」

 

 

エレベーターから出てきた人物は先ほど玄関前にいたはずだったスピードワゴンだった。

 

 

 

 

ジョセフ「おいオメエ!随分と笑えねえ冗談を言うじゃねえか!」

 

 

ジョセフは荒い足使いでエレベーター内のスピードワゴンの胸ぐらを掴みに行った。

 

ジョセフ「どういうトリック使いやがったぁ!?」

 

スピードワゴン「わ…笑えねぇ?ち…違う!」

 

承太郎「テメエ、随分とふざけた真似を——」

 

 

承太郎はその言葉を発しながら玄関の振り向いた瞬間その後に続く言葉を言えずにいた、承太郎自身も奇妙な光景に目を丸くした。

 

 

スピードワゴン「言っただろ!『どんな姿』をしていても必ず倒せと!!」

 

ジョナサン「中から出てきたのは…スピードワゴン……だって?」

 

承太郎「なっ…何ぃ!?」

 

 

息を切らしていたスピードワゴンはジョナサンと一緒に、玄関前にいた。

つまりどういうことか……という思考はすぐに吹っ飛びその場にいた3人はすぐに1つの答えを導き出した。

 

 

ジョナサン「スピードワゴンが2人だって!?」

 

ジョセフ「Oh!!No!!どうなっていやがる!!??」

 

エレベーターにいたスピードワゴン「見つけたぜテメエ!!みんなそいつから離れろ!スタンドで俺の姿に変装した偽物だ!!」

 

玄関にいたスピードワゴン「何言ってやがる!偽物はお前だろうが!!ジョースターさん!みんな!こいつに騙されちゃいけねえぜ!!」

 

仗助「随分とこっちが騒がしいっすね…ってどわぁあああああ!!!!???どうなってやがるこれは!!」

 

ジョルノ「スピードワゴンさんが……2人?」

 

エレベーターにいたスピードワゴン「仗助ジョルノ無事だったか!気をつけろ、先にお前達の前に姿を現したのは偽物の方だ!そいつを始末してくれ!」

 

玄関にいたスピードワゴン「断じて違う!偽物はあいつだ!どんな方法で俺になったかはわからないがとにかく敵であることは間違いねえ!」

 

 

 

スピードワゴン達は互いに指を指し合いながら偽物と言った、側から見れば双子の言い合いにしか見えないが奇妙な冒険をしてきた5人にとってはこのスピードワゴンがどちらかが敵でどちらかが本物であることはすんなりと理解できた。

 

 

 

エレベーターにいたスピードワゴン「俺の姿をパクリやがって!何が目的だ!」

 

エレベーターにいたスピードワゴンは玄関前に走り出しもう1人のスピードワゴンの胸ぐらを掴みながら玄関からリビングの方向へと連れて行った。

 

一花「うわうわ!何!?」

 

エレベーターにいたスピードワゴン「ゴメンよ嬢ちゃん達、少し家借りるぜ」

 

五月「もう他人は通しませんよ!!帰ってください!!」

 

五月はリビングの扉の前で仁王立ちをして進行経路を塞いだ。

 

玄関にいたスピードワゴン「どいてくれ!!」

 

ドカッ!!!!!!

 

五月「きゃ!!」

 

しかしスピードワゴン2人の特攻に耐えられるはずもなく大きく横に吹っ飛ばされてしまった。

 

五月「も……もう我慢できません!!警察呼びます!!」

 

ジョナサン「待て!待つんだスピードワゴン!!」

 

 

胸ぐらを掴み合っているスピードワゴンは玄関を抜けリビングへと足を運んだ。

 

バタン!!!

 

 

二乃「きゃあ!?またなんか変な奴が入ってきたわ!!もうなんなのよこのマンション!!」

 

四葉「双子さんですかね?まあなんにせよ喧嘩は外でお願いします!」

 

 

玄関にいたスピードワゴン「その言葉をそっくりそのままテメエに返すぜ、何者か答えやがれ!!」

 

エレベーターにいたスピードワゴン「ロバート・E・O・スピードワゴン!!」

 

玄関にいたスピードワゴン「それは俺の名前だ!!」

 

 

スピードワゴンの後を追いかけてジョースター5人と中野五つ子はリビングの中へと集結した。

 

 

ジョセフ「チッ!あれじゃあどっちかわからねえぜ」

 

仗助「並行世界からどっちも来てどっちも本物…ってことはないか」

 

ジョルノ「あり得ません、ファニー・ヴァレンタインが言ってたように並行世界の同じ者同士を合わせると消滅するからです、あーやって取っ組み合いは出来ないはず」

 

三玖「当たり前のようにこの家に戻ってきてるし……」

 

二乃「さっき出て行くって言ったわよね!?それなのにまた来て挙げ句の果てに仲間まで連れてくるってどういうこと!!??」

 

ジョナサン「ち…違うんだ!これが終わったらすぐに出て——」

 

五月「それは先ほども聞きました!!」

 

一花「あっ、後土足はダメだからね。ここ日本だから」

 

四葉「あわわ!そんなことよりあの双子さんの喧嘩止めないとぉ!!」

 

エレベーターにいたスピードワゴン「承太郎達に近づくんじゃねえ!」

 

玄関にいたスピードワゴン「こっちの台詞だ!ジョースターさん達にこれ以上近づくな!!」

 

 

「スピードワゴンが2人」「他人がまた家に侵入した」色々な出来事が重なり音楽も流れていないリビングがクラブハウスのようにうるさくなった、人の声が交わい続けそのザワつきが止まることはない。

 

 

承太郎「「やかましい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

 

 

しかし、1人の男による怒りを交えた大声によってザワつきが静寂の空間に速攻で変わることが出来た。

 

 

承太郎「ジョナサン ジジイ 仗助 ジョルノ、ひとまず状況を整理するぞ。どちらかが偽物であり、俺らの敵であることには間違いない」

 

ジョルノ「そ……そうですね」

 

 

一花「……ねぇ二乃、さっきの承太郎って人。ちょっとカッコいいって思ったでしょ?」

 

二乃「は…はぁ!?そんなワケないでしょ」

 

一花「いや、多分思ったね。頰も赤くなったし、口も緩んだ」

 

三玖「流石面食い」

 

二乃「アンタまで…黙っておきなさい」

 

二乃「…………………………………」

 

二乃(顔に出ていたかしら……いや、そもそも思ってないから!)

 

 

 

——————————————————————————

 

 

承太郎「まずお前ら2人に聞きたい、どうして俺たちがこの場所にいることがわかった?」

 

2人のスピードワゴン「「それは勿論」」

 

 

承太郎の目の先にいるスピードワゴン2人は自分のジャケットの内部に手を突っ込みある物を出した。

 

四葉「うわっなにあれ!?なんかピカピカ光ってるよ!?」

 

三玖「後……なんか見た目が気持ち悪い…」

 

 

それはこの世のどんなものにも例えることが出来ない奇妙な物、色は真っ白だが妙に黄色っぽい光で不気味に輝きを放っている。

 

 

2人スピードワゴン「「この聖なる遺体に導かれてきた!!」」

 

一花「あはは…この2人息ピッタリじゃん……」

 

ジョルノ「聖なる遺体……やはりこの時代にも転送されていたか…」

 

承太郎「聖なる遺体のことについては偽物をぶちのめした後に本物からゆっくりと聞いてやる」

 

承太郎「先に俺たちの前に姿を現したスピードワゴンをA、後からやってきたスピードワゴンをBとする」

 

仗助「えーっと…それじゃあどっちがAだ?」

 

スピードワゴンA「俺が先にアンタ達の前に姿を現した方さ」

 

スピードワゴンB「俺が後から追いかけてきた方さ」

 

仗助「あぁ、把握。右がAで左がBだな」

 

承太郎「先にやってきたスピードワゴンAは俺たちの前に敵だと伝えてその場で息を切らしていた」

 

承太郎「一方でBのスピードワゴンは息を特には切らしていなかった」

 

スピードワゴンB「当たり前よ!俺はエレベーターでやって来たからな」

 

承太郎「そう、Bの方はエレベーターでやってきた…つまり——」

 

二乃「あの、ちょっといい?」

 

承太郎「あ?なんだ」

 

二乃「さっきから偽物とか本物とか言ってるけどさ、普通に双子じゃないの?ドッペルゲンガーとか信じちゃってるのアンタ達」

 

ジョルノ「同じ顔、同じ背の高さ、同じ顔の傷、同じ服装、ここまで同じ双子はいませんよ」

 

一花「う〜ん、実はそうでもないんだなぁ…」

 

承太郎「………スピードワゴン、お前兄弟はいるのか?」

 

スピードワゴンA「いるわけねえだろ!」

 

スピードワゴンB「いたらこんな取っ組み合いしないっての!」

 

承太郎「だそうだ、数秒無駄にした。お前ら5人は黙ってな」

 

五月「………この人達と一緒にいるとイライラが止まりませんね、殺意も湧きます」

 

三玖「五月…どうどう」

 

 

承太郎「話を戻すぞ、後から来たBはエレベーターでやってきた。しかし先に来たAは階段だ、これはおかしな話だと思わないか?」

 

ジョルノ「そうですね。ましてやここはビルの最上階、エレベーターと階段どちらが早く到着するかは考える時間もなく答えは出せる」

 

承太郎「おいAのスピードワゴン、なんでお前はエレベーターじゃなく階段でここまで来たんだ?」

 

スピードワゴンA「俺がこのマンションに着いた時はエレベーターは1階になかった、いつ来るかもわからねえし後ろから俺の偽物が追いかけてきているから仕方なく階段で来たのさ」

 

承太郎「ならば今度はBに質問だ、お前は何故階段で追わずにエレベーターを待った?」

 

スピードワゴンB「呑気に待っていたんじゃねえ!俺がこの偽物を追ってここに着いた時にはたまたまエレベーターが降りてきてたから少し待って乗ったまでだ!早いとこ承太郎やジョナサン達に会って敵を倒したかっただけなんだ!」

 

スピードワゴンA「違うね!こいつはきっと俺に化けて承太郎達と合流し、隙を見て5人全員始末するつもりなんだ!」

 

スピードワゴンB「俺にスタンド使い3人と波紋戦士2人を倒せる力があるわけねえだろ!だからこそこうやって承太郎達に会いに来たんだ!」

 

承太郎「やかましい、お前ら2人が話していてもキリがねえ」

 

 

四葉「ねえみんな、この人達の話理解できてる?」

 

二乃「出来てたらそれはもう人間やめてるわよ」

 

三玖「お遊戯会で発表する劇の練習とかじゃないかな」

 

一花「あはは、もしそうなら演技相当上手いよね……本職が役者さん達かな?」

 

五月「なんにせよ他人の家でやることではありません」

 

 

スピードワゴンA「ジョースターさん達信じてくれ!俺はこの聖なる遺体がアンタ達5人のところに導いてくれたんだがその後ろでこいつが俺の姿をして着いて来たんだ!」

 

スピードワゴンB「デタラメを言うな!お前がスタンドで俺の姿に変装しているんだろうが!」

 

ジョセフ「ダメだこりゃ、どっちもどっち。マジでどちらも本物ってことあるんじゃねえか?」

 

ジョナサン「いや、よく聞いてみるんだジョセフ。僕は1つ違和感を覚えた箇所があったぞ」

 

ジョセフ「なっ!マジかよ!?」

 

承太郎「やれやれ………」

 

 

承太郎は制服のポケットに手を突っ込み、その場に立ち止まっていた承太郎がついにその手を出して2人のスピードワゴンの元へと足を進め……

 

 

承太郎「マヌケは見つかったようだな」

 

 

スピードワゴンA B「「!?」」

 

 

彼は確信した。

 

 

承太郎「まとめるとAは追われる側、Bは追う側。この構図が出来ているということはAとBの距離はさほど無かったはずだ」

 

四葉「うぅ…AとかBとか距離とか…数学の授業受けてるみたい……」

 

承太郎「さほど距離が変わらなかったにもかかわらずAは階段を使いBはエレベーターを使った」

 

承太郎「普通なら……どちらが速く30階に到着する?三玖とやら」

 

承太郎は身体を後方に向けヘッドフォンを付けた女性に右手の人差し指を突きつけ問いかけた

 

三玖「わ…私?」

 

五月「ちょっと!貴方達のくだらない演劇に私達を巻き込まないでください!」

 

承太郎「やかましい、お前に聞いてるんじゃねえ。俺はヘッドフォンを付けているこいつに質問をしている」

 

五月「や…やかましいって……もうっ」

 

三玖「えっと、エレベーターと階段の話だよね?」

 

承太郎「そうだ、俺はこのマンションのエレベーターがどのくらいのスピードが出るのか知らねえ。ヨーイドンで人間が全力で階段を登るのとエレベーターのスピード、どっちが早い?」

 

三玖「………エレベーターだよ。このマンションは30階建てだからそれに合わせてエレベーターはかなりのスピードが出る、人間が必死に階段を登ったとしても追いつくのは絶対無理」

 

承太郎「………ということだ、Aのスピードワゴン」

 

スピードワゴンA「…なっ……なにぃ?」

 

承太郎「なに、じゃねえ。お前は階段を使ったくせになんでBよりも先にここに着いたんだよ」

 

スピードワゴンA「し…知らねえよそんなもん!俺は偽物に追いつかれるわけにはいかなかったし一刻も早くこの事をジョースターさん達に伝えたかっただけなんだ!」

 

スピードワゴンB「そうか!こいつきっと階段の中でスタンドを発動させて高速で移動したんだ!じゃなきゃエレベーターより速く階段を登れるわけねえ!」

 

承太郎「……今のお前の発言が決定打となった、ぶちのめさなきゃいけない方は決まったようだな」

 

ジョナサン「承太郎……」

 

スピードワゴンA「た…頼む信じてくれぇ!!俺はアンタ達10人に伝えなきゃいけない事があるんだ!!この世界で生きていくための方法だ!!」

 

一花(……………10人?)

 

スピードワゴンB「往生際悪い奴だ!!あの世で俺に変装するという手段を選んだ事を悔いやがれビチグソ野郎!!ざまあみやがれぇええええ!!!!」

 

スピードワゴンA「待ってくれぇええええええ!!!!!!!」

 

承太郎「オラァッ!!!!!!!」

 

 

 

 

バキッィ!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

腕を振り上げずとも強烈な威力が出るスタープラチナの右フック、それをスピードワゴンの顔面に命中させた。

 

 

 

 

 

スピードワゴンB「ブホォ!!!!!!!!」

 

 

Bのスピードワゴンは大きく吹っ飛びリビング奥の大きなガラス張りの窓へと打ち付けられた。

 

 

スピードワゴンA「え…ええっ!?」

 

仗助「じょ…承太郎さん、今殴った方はBの方っすよ」

 

ジョルノ「いや…きっとこれで合っているんだ」

 

承太郎「…………………」

 

 

承太郎は殴った腕を再び制服のポケットへと戻し、何も言わずに窓に打ち付けられたBのスピードワゴンへと足を進めた。

 

 

スピードワゴンB「………………………」

 

承太郎「『今のお前の発言が決定打となった』…というのは、お前に対して言ったことだ、偽物」

 

スピードワゴンB「!?」

 

承太郎「A…いや、スピードワゴンはお前のことを『吸血鬼かスタンド使いかわからない』と言っていた。それに対してテメエは『スタンドで化けている』だの『スタンドで階段を高速で移動した』だの、スピードワゴンのことをスタンド使いと決めつけていた。そこが決定的な違いだぜ。人狼ゲームで例えると狂人や黒猫などの人外役職がたくさんある中で怪しい奴を『こいつは人狼』と決めつけてるのと同じだぜ」

 

スピードワゴンB「ッツ…」

 

承太郎「それに人間は身の危険を感じると止まることを恐れる、お前が本物ならば階段を登った偽物を階段で追うはずだ。エレベーターを使うと言うことはお前の中で絶対に攻撃されないという安心があったからだ」

 

ジョナサン「後は呼び方だよ。君は僕のことをジョナサンと呼んだ、僕は本来の世界でもスピードワゴンと旅をしていたからわかるんだが彼が僕を『ジョナサン』と呼んだことは一度もない」

 

スピードワゴンA「そうだ、俺はこの人の性格、そして覚悟に対して敬意を払っている。ジョースターさんを呼び捨てになんて出来ねえ!!」

 

ジョナサン「……流石だよ承太郎、君の洞察力。僕も見習わなければいけないね」

 

承太郎「ふっ、それはこちらの台詞だ。呼び方で違和感に気づくのは盲点だった」

 

 

四葉「うわっ、きっとこれクライマックスのシーンだよ!男の友情ってやつだね!」

 

ジョセフ「お前はまだ劇だと思ってんのかよ!?脳みそパープリンなんじゃねえのかぁ!?」

 

五月(劇ですよね……そうですよね…。でもそしたら彼が先ほど見せた非現実的な現象は?…あれが本当に超能力なら今目の前で起きてることは……)

 

 

承太郎「さて……オメエには色々と喋ってもらうぜ」

 

ジョナサン「まず何者だ、そして何故スピードワゴンに変装をした」

 

スピードワゴンB「お…俺は……」

 

 

承太郎「…………ドゥーユーアンダスタン?」

 

スピードワゴンB「!?」

 

承太郎「………テメエの口癖だったよな。化ける方は随分と上手くなったが、ツメが甘かったな。『節制』のスタンド野郎」

 

 

承太郎は先ほど殴った右手を偽物のスピードワゴンの前に出した、そこには小指球の辺りに黄色の液体のようなものがこびり付いていた。

 

 

ジョナサン「承太郎、それは?」

 

承太郎「こいつのスタンド能力だ。本来の世界でも俺はこいつと戦ったことがあってな…本体は馬鹿だが中々厄介なスタンドだ、気をつけろジョナサン」

 

承太郎「さあ話を戻すぜ。俺たちを殺そうとしてきたことはわかったがそれには何か理由があるはずだ、俺への復讐ならスピードワゴンに化ける必要はねえ。大人しく答えてこの右手にこびり付いたテメエのスタンドを解除してくれれば…痛い目に遭わずに済むぜ?」

 

スピードワゴンB「……ふっ」

 

承太郎「あ?」

 

スピードワゴンB「ふっふっふっ……ぎゃはははははははははっ!!!!!!」

 

 

スピードワゴンに化けた彼の変装はドロドロと溶け始めついに本体が姿を表そうとした

その瞬間だったドロドロと流れる彼のスタンドの中から「何か」飛び出した。

 

ラバーソール「喰らえやぁああああ!!!!!」

 

ジョナサン「気をつけろ承太郎!火炎瓶だ!!この家ごと燃やす気だ!」

 

承太郎「チッ、往生際が悪い奴だ…スタープラチナ・ザ・ワールド!!」

 

 

ズォオオオオオオオオン!!!!!

 

 

再び世界が灰色になる、地面の落下へと一直線だった火炎瓶もスレスレで止まっている

 

承太郎「オラァ!!」

 

スタープラチナで火炎瓶を回収しラバーソールの顔面へとパンチをしようとしたが…

 

承太郎「チッ…」

 

ラバーソールはまだスピードワゴンの変身を解除している最中のためイエローテンパランスに全身が覆われている、この段階で攻撃をしても本体にダメージは入らない。

 

承太郎「……時間だな…ん?」

 

時が再び通常の流れに戻る……

その時だった、何処と無く承太郎は違和感を感じた。この世界では体感できるはずもない人間の視線を感じた為だ。その視線の感じた後ろを振り向く、そこにはたった1人、承太郎と目が合った者がいた。

 

承太郎「………あのヘッドホン野郎、何故俺と目が合っている」

 

視線の先にはこの世界の住民である三玖がおり、その三玖の視線の先には承太郎がいる。非スタンド使いとは決して交わることのない視線、その違和感を感じている為、承太郎はいつの間にか自分が止めた世界が進み始めていることに気がつかなかった。

 

 

カッ!!!!!!!

 

承太郎「!」

 

ラバーソール「テメエが時を止めてそいつを拾うことは計算済みだぜぇ!!」

 

承太郎の目の前に立っているラバーソールがイエローテンパランスを承太郎が手に持っている火炎瓶の方へと進めた。

 

ジョナサン「承太郎!!」

 

承太郎「しまっ——」

 

気がついた時には黄色の液体は承太郎の火炎瓶の方へ届いていた。

 

 

バリィイイン!!!!

 

 

火炎瓶が承太郎の右手で爆発を起こし火炎瓶仕込まれていた油が火に移り渡り火炎、そして火に触れたイエローテンパランスは辺りに飛び散っり、承太郎の全身、そして近くにいたジョナサンの身体にもいくつかのこびり付いた。

 

 

承太郎「グゥウ!!」

 

ジョナサン「くっ、これは!!」

 

ラバーソール「バーカ!!時が動き始めた瞬間テメエ何処向いてんだよぉ!承太郎センパーーイ!!」

 

承太郎「ちぃ!!」

 

ラバーソール「俺のイエローテンパランスは炎に触れることで更に激しさを増す!195cmとかいう無駄にでかい図体のテメエの全身の全てにまとわりつくほどにな!」

 

ジョナサン「そうか…炎は囮で、本当はその炎にスタンドを近づかせることだったのか…」

 

 

二乃「な…なによ、あの人……身体になにかまとわりついているわ…気持ち悪い…」

 

三玖「……ねえ、二乃」

 

二乃「なっ、なによ三玖」

 

三玖「………きっと今見ているものは、私たちがまだ知らなかった世界なんだと思う」

 

二乃「はっ、はあ?」

 

三玖「世界は…広いんだね」

 

 

身体はイエローテンパランスと炎がまとわりつき、承太郎のダメージもかなり大きくその場で片膝をついた。

 

仗助「テメエ許さねえ!!クレイジーダイヤモンド!!」

 

ジョルノ「ゴールドエクスペリエンス!!」

 

仗助とジョルノはそれぞれスタンドを出し、ラバーソールの元へと走っていった。

 

仗助「ドラァッ!!」

 

ジョルノ「無駄ァッ!!」

 

 

仗助は右で、ジョルノは左でパンチを左右からラバーソールへと向けて繰り出す。

 

 

ガシッ!!

 

 

ラバーソール「承太郎の叔父の東方仗助と『あのお方』の息子のジョルノ・ジョバァーナ…か」

 

仗助「こいつ…受け止めやがった…」

 

 

クレイジーダイヤモンドとゴールドエクスペリエンスの腕は本体のラバーソールに届く事はなくガッチリとイエローテンパランスに止められている。

 

ラバーソール「イエローテンパランスの前では無力だビチグソ共!お返ししてやるぜ!ドラ無駄ぁ!!」

 

承太郎「仗助!ジョルノ!そいつから手を離せ!!」

 

2人のスタンドの腕にイエローテンパランスが高速にまとわりつこうとした。

 

仗助「のわっ!あぶね!」

 

ジョルノ「くっ……」

 

ラバーソール「あぶね!じゃねぇええんだよ!!テメエらの手の表面には既にイエローテンパランスが付いている!そいつはテメエらの肉体を食い尽くすまで消えて無くなる事はねえ!」

 

 

ジョセフ「ちっ、前回の世界でも何人かスタンド使いと出会ったけど。今回の野郎は対抗手段が思い浮かばねえ!!」

 

スピードワゴン「なんて奴だ!変装だけする奴と思っていたがここまでスタンド能力が厄介とはぁ!!」

 

四葉「一花!もっと強くつねって!!」

 

一花「だ…ダメだよ、これ以上はお肌に傷つく」

 

四葉「いいから!早くこんな夢終わらせたいよぉ!!」

 

 

ラバーソール「承太郎は死んだも同然、ジョナサン 仗助 ジョルノも放っておけば時間はかかるが確実に死が待っている。後はジョセフとスピードワゴンだけ……と言いたいところだが」

 

ラバーソール「ここで!ジョースター御一行様にラッキーでスペシャルな情報がありまぁああああす!!!」

 

ジョセフ「なっ、なんだぁ?」

 

ラバーソール「1つ。たった1つだ、条件を飲んでくれさえすれば俺はスタンド能力を解除し、お前ら5人を助けてやる」

 

承太郎「………………………」

 

 

5人の思考は同じ、こんなゲス野郎が提案する条件などろロクことではないと確信していた。

 

ラバーソールは人差し指立てとある人物達に向けた、それはジョースター家の人間でもスピードワゴンでもない。このスタンドの同士の戦いで一番場違いとも言える5人…。

ラバーソールは右の唇を上へやり、ニヤけた表情で口を開いた。

 

 

ラバーソール「そこの女5人」

 

 

ラバーソール「そいつらを俺に引き渡すことを許可してくれるなら、お前らを助けてやる」

 

五つ子「「「「「えっ」」」」」

 

 

ジョセフ「なっ……」

 

承太郎「なん……だと?」

 

 

 

その条件はとても意外であり、誰も予想しなかった第三者。

悪は関係のない第三者にも牙を容易く向ける。



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第4話 獲者 その2

スピードワゴン「ダメだみんな!!その5人を引き渡してはアンタ達も——」

 

ラバーソール「テメエは黙ってろ!!!!!」

 

瞬く間にイエローテンパランスをスピードワゴンの方へと向かわせ、スピードワゴンの口を覆うようにへばり付いた。

 

スピードワゴン「むが…もごぉおお!!」

 

スピードワゴンは必死に口にへばり付いたスタンドをはぎ取ろうしたが無意味、このスタンドを離すには本体が解除する以外に方法はない。

 

ラバーソール「ったくイエローテンパランスを口にへばり付けてもまだ喋ろうとするのか、とんだ解説王だ」

 

三玖「貴方が言ってたそこの5人って……もしかして私達?」

 

ラバーソール「てめえら意外誰がいるんだよこのビチグソが!!」

 

二乃「ちょ…なんで私達が!関係ないでしょ!アンタ達のくだらない喧嘩をこっちまで巻き込まないで!」

 

ラバーソール「関係ない?………ニッヒヒ、そうだなぁ…関係ないなぁ」

 

 

一歩、また一歩とラバーソールは静かにそして確実に歩みを進めた。

小学生が稀に団地へと姿を現す野良猫を悟られないようにゆっくりと近づくように。

 

 

ジョナサン「君達は逃げるんだ!!早くこのマンションから出ていってくれ!」

 

五月「ここは私達の家です!出て行くのは貴方達——」

 

一花「いや、五月ちゃん逃げようよ!なんか…凄く嫌な予感がする!」

 

一花は五月の腕をがっしりと握り強引に引っ張りながら玄関の方へと走り始めた。

 

一花「二乃も三玖も四葉も!早く!!」

 

二乃「えっ、ええ!わかったわ!」

 

ラバーソール「わかったわ!じゃねえ、取り引き道具をそう簡単に逃すと思ってんのかよ!!イエローテンパランス!!」

 

 

自分のスタンド名を叫ぶと同時に再び黄色の物体が宙を舞う。狙いは五つ子…ではなくその先にあった玄関へと続く扉だった、扉全体を覆うようにイエローテンパランスがへばり付きドアノブに手をかけることも扉をぶち破ることも不可能になってしまった。

 

 

四葉「うわぅ!またこの液体!!」

 

二乃「多少液体には触ることになるけど、それでもこのドアノブを開けるしかない!!」

 

承太郎「やめろ!!その液体に触るんじゃねえ!!」

 

二乃「えっ?」

 

承太郎の警告は二乃耳に入るのが遅く既にドアノブに手をかけてしまっていた。

 

二乃「っ!!」

 

ドアノブを回すことは出来ないことに二乃は違和感を感じ手を離したが既にその手のひらには黄色の液体が付いていた。

 

二乃「なによ…なんなのよこれ!」

 

一花「あの人達に付いているものと同じ…見せて二乃!」

 

ラバーソール「バッカだなお前!!散々こうやって承太郎やジョナサンが被害に遭ってんのに自分から触りに行くとか…滑稽すぎる!!」

 

 

ジョナサン「……承太郎、時を止めて奴の本体を倒すことは可能か?」

 

承太郎「それが可能ならとっくにやっている、しかし身体は野郎のスタンドがへばり付いていてマトモに動けやしねえ。時を止めて攻撃するには距離が開き過ぎている」

 

ジョナサン「そうか……ぐっ、この液体…確実に僕の身体を蝕んでいる…」

 

仗助「ジョースターさん!承太郎さん!今俺のクレイジーダイヤモンドで治して——」

 

ラバーソール「そこを動くんじゃねえ!!!!」

 

仗助「!?」

 

走り出して承太郎達に近づこうとした仗助はその場で歩みのブレーキをかけラバーソールの方向へ向く。

 

二乃「は…離しなさいよ…!」

 

ラバーソール「離してって言われて離す奴がこの世にいるかってんだ!悲劇のヒロインぶるんじゃねえ田ゴ作が!!」

 

そちらを見るとラバーソールは二乃の首に腕を回し拘束をしていた。

 

五月「二乃を離しなさい!!警察を呼びますよ!!」

 

ラバーソール「このラバーソール様がサツごときにビビると思ってるのかぁ?スタンド使いでも裁くことの出来ないこの俺様によぉ!?」

 

五月「………………」

 

ラバーソール「呼んでみろや、そしたら無駄な死人が出るだけだ」

 

五月「うっ」

 

ジョルノ「貴方は余計なことをしないでください」

 

五月「余計…って、どこが余計なんですか!?」

 

ジョルノ「巻き込んだことは申し訳ないと思っている。しかし奴のあの姿、あのパワーを見ても警察なんて現実的なものが通用すると思いますか?」

 

五月「じゃあ教えてください!あの人は何なんですか!……いえ、貴方達はなにをやっているのですか!?」

 

ジョルノ「…………君達は知らない方がいい。知れば君達の平穏な生活は終わりを迎え、幸せを掴めずに大往生が出来なくなるだろう」

 

五月「質問の答えになってな——」

 

ラバーソール「黙れそこのガキ2人!今喋っていい権利があるのは俺様だ馬鹿野郎!!」

 

 

ラバーソールの声は家全体に響き渡りジョルノと五月も肩をすくめ目を合わせるのをやめる。

 

 

ラバーソール「答えを聞かせてもらうぜジョースターの人間ども、この小娘5人を『渡す』か『渡さない』か」

 

ジョセフ「渡さないと言った場合はどうなんだ」

 

ラバーソール「…今捕まえているこの女を…ぶっ殺す」

 

二乃「!?」

 

 

突然の殺害予告。二乃を始めとする5つ子の顔色が死人のように真っ青になっていく、一方ジョースター5人は怒りから眉間にしわを寄せてラバーソールのことを睨んでいる。

 

 

ジョナサン「その女性はお前にとっても無害のはずだ!巻き込むのをやめろ!」

 

ラバーソール「無害かどうかなんて関係ねえ、利用できる物は利用する。こいつは俺の為に利用されるべき道具なんだよ!」

 

仗助「てめえ……」

 

ラバーソール「迷うことはねえんだぜぇ!?なあ承太郎、この女達を俺に引き渡したことでお前たちになんの損があるんだよ?」

 

承太郎「………………………」

 

ラバーソール「こいつら5人を引き渡せば瀕死のお前も無事助かる、お前らにとっても利になる条件だろう?」

 

スピードワゴン「もがっ!!…もごっ!もごごっ!もぶがご!!」

 

スピードワゴンはもがきながら何かを必死に伝えようと5人に目線を送るが口を塞がれている為、聞き取ることは出来ない。

 

ラバーソール「うるせぇなお前も」

 

ラバーソール(お前だけは直接始末してやるぜスピードワゴン。お前はこの世界の『仕組み』を知っているからなぁ)

 

「離して」

 

ラバーソール「?」

 

ラバーソールと拘束されている二乃の前に同じ顔の女性が前に立った。肩は震えながら、それでも目線だけはしっかりと相手の方へと向けて

 

三玖「二乃を離して」

 

二乃「三……三玖!」

 

一花「そうよ、今すぐ返して!私の妹よ!」

 

三玖に続いて一花も隣に立った。

 

二乃「一花…まで……」

 

ラバーソール「はーぁ、そういうのマジでウザいわ」

 

ラバーソールに纏わり付いているイエローテンパランスの動きが激しくなる、それはつまり攻撃の合図を示していた。

 

二乃「に…逃げて2人とも!!」

 

纏わり付いていたイエローテンパランスはラバーソールの体を離れ2人の女性の方へと向かった。

 

承太郎「じじい!」

 

ジョセフ「ダメだ間に合わねえ!!」

 

一花「ヤバッ——」

 

三玖「一花!避け——」

 

ラバーソール「射程距離には入っている!避けることは不可能だぜ!」

 

 

三玖は一花を自分もろともダイビングで避けさせるように身体を押したが既に時遅し、既にハイスピードで迫る黄色の液体を完全に避けることは出来ず三玖と一花が液体の餌食になることは確定していた。

 

はずだった。

 

 

ラバーソール「なっ!?」

 

承太郎「!!」

 

ジョセフ「ちょ、マジかよ!?」

 

 

三玖と一花は液体を完全に回避した。液体は空振りをし、地面にベチャという音と共に着地した。

しかし三玖達の回避行動は既に遅かったのは間違いない、それでも彼女達は瞬間的に回避をした。

 

 

ジョルノ「瞬間的に…位置が移動したような…今」

 

ラバーソール「どうなってやがる、確かに。あの距離は殺れる距離、避けることなんて不可能…」

 

承太郎(今…あいつ、いやまさか)

 

三玖「一花、怪我ない?」

 

一花「う…うん、大丈夫」

 

 

ラバーソール「テメエら…避けてんじゃねえ!!!!」

 

 

再びイエローテンパランスを向け2人を攻撃しようとする…が

 

 

仗助「どこ向いてんだよ、田ゴ作」

 

ラバーソール「ぬわっ!?」

 

 

ラバーソールが目を離した瞬間に仗助は一気に間合いを詰めて来ており、その距離はクレイジーダイヤモンドで仕留めるには十分な距離であった。

 

 

 

仗助「てめえが何者かは知らねえし、てめえの目的も知らねえ、仮にここで俺が死んじまってもそれは不用心だった俺の敗北だし、お前の勝利になるのは間違いねえ。仕方ねえってことだ」

 

ラバーソール「あ?」

 

仗助「ただよ、この戦いとは無関係の第三者巻き込んでよ、てめえにとっても無害な女人質に取ってよ、大切な人達目の前で死にそうになってる所見せつけられたらヨォ……俺も仕方なしに負けるわけにはいかねえんだ!」

 

二乃「!?」

 

仗助は高々と腕を振り上げ、人差し指を立てながら勢いよく降ろしながらラバーソールと二乃に向けて指さしをした。

 

仗助「10秒やるぜラバーソール!!その女を解放しろ!解放すればお前に何もしないと約束してやる!」

 

ラバーソール「……………ふっ」

 

ラバーソール「ふっふふふ、はーっはっはっはっ!!こいつは傑作だなぁ!おい!!」

 

仗助「…………………」

 

ラバーソール「承太郎、お前の頭の回転の良さは、他のジョースターの連中には引き継がれなかったようだなぁ!こいつを見てりゃわかるよ!」

 

仗助「…………………」

 

ラバーソール「しょうもねえ脅しなんかしやがってよぉ!俺のスタンドイエローテンパランスに弱点はない!!!!」

 

仗助「………………」

 

ラバーソール「ドゥーユー!アンダスタァアアアアン!!??」

 

仗助「……………10秒、経過だぜ。ラバーソール」

 

 

仗助はクレイジーダイヤモンドを背後に召喚した。

 

 

仗助「命までは取らねえ、ただ二度と人前に出れねえ身体にはなるかもな」

 

二乃「ア、アンタ何する気!?」

 

仗助「黙ってな、お前を拘束してる奴をぶちのめすだけだ」

 

ラバーソール「攻撃してみろや!!攻撃を食らうのはこの女だけだぜ!!」

 

仗助「そうかい………」

 

 

そして静かに動きをまだ見せていなかったクレイジーダイヤモンドがロボットのスイッチが入ったかのように動き出し、右腕をラバーソールの方向へと走らせた。

 

そして…

 

 

ボゴォ!!!!!!

 

 

二乃の身体を貫き、そしてラバーソールの身体も貫いた。

 

 

二乃「ゴフッ!!!!」

 

ラバーソール「ぶはぁ!!!??」

 

 

ジョセフ「ブフッゥ!?」

 

承太郎「?」

 

クレイジーダイヤモンドが通った2人の体からは徐々に溶岩のように赤黒い血が流れて地面にポタポタと落ちる。

 

二乃「ぐっ………うっ……」

 

四葉「二乃!!!!!!!!」

 

仗助「近寄るんじゃねえ!まだそいつのスタンドは発動中だ!!」

 

ジョナサン「仗助なんてことを!いくら敵を倒す為とは言え無関係の女性ごと殺すなんて!」

 

仗助「安心してくださいよ、ジョースターさん。無関係の女に傷を負わせるほど、俺も落ちちゃあいませんよ」

 

ラバーソール「ぶふっ……き…貴様ァ……」

 

仗助「この女とテメエとの隙間は1mmも無かったはずだ。1mmもねえってことはテメエのスタンドが入る隙間すらねえってことだ……油断したな」

 

ラバーソール「な……なんて野郎だ…テメエが無関係って言った女ごと…攻撃しやがるなんて……」

 

仗助「いいや、俺のクレイジーダイヤモンドは治す能力だ。心臓さえ動いていれば……」

 

ズブッ!!!!

 

仗助は二乃、そしてその後ろにいるラバーソールの腹を貫通させていたクレイジーダイヤモンドの右腕を引き抜いた。

瞬間、二乃の身体に大きく開いていた穴は塞がれておりイエローテンパランスがこびりついていた右手も元に戻っていた。

 

 

仗助「傷は治した、早くそいつの側から離れな」

 

二乃「あ、あれ?」

 

五月「二乃!!大丈夫ですか!?」

 

二乃「う…うん、さっきまで死ぬほど痛かった…いや、痛すぎて痛みも感じずに意識が朦朧としてたけど、急になんとも無くなったわ」

 

四葉「二乃ぉおおお!!生きてて良かったぁああああ!!」

 

二乃「ちょ、四葉抱きついてこないでよ」

 

三玖「いやでも、本当に死んだと思った」

 

一花「何が起こったとかは…全くわからなかったけどね、まあ無事で何より…」

 

 

二乃の無事を確認しに五つ子は二乃の元へと集まる。

一方ラバーソールは深手を負っている状況は変わっておらず片膝をついて傷を抑えていた。

 

仗助「俺のクレイジーダイヤモンドは生きてさえいれば例え致命傷と言えるほどの深手でも治すことが出来る、あの二乃とかいう女のようにな」

 

ラバーソール「き…汚え手使いやがってよ!!」

 

仗助「どーの口が言ってるんだか、人質取ってヒャッハーしてた野郎がよぉ?」

 

ラバーソール「………チッ」

 

仗助「お前の誤算だぜ、ラバーソール。お前があの10秒間に二乃を離していたら恐らく俺の敗北は確定していた、俺のスタンドじゃあテメエのスタンドに打つ手がねえ」

 

ラバーソール「……………………」

 

仗助「………………………」

 

 

今まで嫌悪の目で仗助を睨み続けていたラバーソールだが、次第に仗助と目を合わせるのをやめて下に俯く。それがどういう感情を表しているのかを仗助はまだわからずにいた。

 

 

ラバーソール「……お……」

 

仗助「あ?」

 

ラバーソール「お…俺が悪かった……すまない…すまなかった」

 

仗助「…………………」

 

ラバーソール「も……もう何もしない、神に誓う。もうお前らに何もしないし、無関係者を巻き込むこともしない………」

 

ラバーソール「だ…だから……ぶはっ!!…お前のスタンドで、傷を……治して欲しい」

 

仗助「今更そんな安い命乞いが通用すると思うなよ、こんな滅茶苦茶にしておいてよぉ」

 

ラバーソール「た……頼む!このままじゃ傷が大きすぎて出血多量とかで死んじまうよぉ!!」

 

仗助「…………取り引きだぜ、ラバーソール」

 

ラバーソール「へ?」

 

今まで片膝をついているラバーソールを見下ろしていた仗助は腰を下げラバーソールと同じ目の位置なるよう身体を合わせた。

そしてラバーソールの髪の毛をガッチリと掴み静かに、口を開いた。

 

 

仗助「俺が出す条件、全てお前がYESと言って行動に移すなら…治してやる」

 

ラバーソール「なぁ!?」

 

仗助「だけど…もしNOと言ったり、少しでも俺たちに噛みつこうとしたら……出血多量で死ぬ前に俺が三途の川までの片道チケットをすぐに用意してやる」

 

ラバーソール「ヒィ!?」

 

仗助「まず1つ目、俺たちの仲間にへばりついているテメエのスタンドを解除しろ」

 

ラバーソール「はいぃ!すぐに!!」

 

そうラバーソウルが叫ぶと承太郎 ジョナサン ジョルノについていた奴のスタンドが弾け、完全に消滅した。

 

承太郎「チッ…おせえぞ仗助。お前がベラベラ喋ってるうちも俺達は攻撃を喰らっていてえんだ」

 

ジョナサン「まあ、承太郎。今は助けてくれた仗助に感謝を伝えるのが先じゃないかい?」

 

ジョルノ「感謝するよ、仗助」

 

承太郎「……助かった」

 

仗助「すいません承太郎さん、こいつの片付けが終わったらすぐに傷治しますんで」

 

スピードワゴン「モガモゴ!!!!!」

 

一花「あのぉ、あの帽子の男の人の奴は解放されてませんよぉ?」

 

仗助「てめえ!スピードワゴンのも解放するに決まってんだろうが!!あぁ!!??」ガシッ!!!

 

ラバーソール「わ…忘れてた!忘れてただけだから頼むから髪の毛を引っ張らないでくれぇ!!」

 

二乃「うわぁ…不良ってホント怖いわね」

 

三玖「ジャパニーズ不良……恐るべし」

 

四葉「見た目もバッチリですしね、ヤンキー映画のワンシーン見てるみたいです」

 

五月「ちょ…ちょっとみんなこの変な状況に段々と慣れてきてませんか!?」

 

 

スピードワゴン「ふぅー、助かったぜぇ。もう少しで首と鼻にまで侵食するところだった」

 

ラバーソール「ほら!全員解放したぞ!早く治してくれよぉ!!」

 

仗助「まだだ、まだ取り引きは終わってねえ」

 

ラバーソール「えぇ!?」

 

仗助「2つ目の条件だ。お前の仲間のスタンド能力、それからバックにいるお前らのボスを教えろ」

 

ラバーソール「へ??」

 

仗助「お前みたいな馬鹿が1人で行動してるとはとても思えねえ、それになんだよ『あのお方』って。DIOか?」

 

ラバーソール「違う!今回DIOは関係してねえ!仲間もいねえ!俺1人だ!」

 

仗助「嘘つくんじゃあねえ!!じゃあなんで遺体なんか集めてんだよ!?DIOみたいなジョースターを天敵と思ってる奴に従っているから俺達に攻撃してきたんだろう?じゃなきゃ俺達に関わる必要ねえだろうが!!」

 

ラバーソール「ち…ちが……違う」

 

仗助「弱点はないスタンドって自賛してたがテメエは過去に承太郎さんに負けてるんだろ?なら無条件でてめえが俺達を襲うとは考えられねえぞ!!」

 

ラバーソール「わ…わかった!わかったから…喋るから殴ろうとしないでぇ…」

 

仗助「最初からそうしろ、次もし口を籠らせたら本当に潰す」

 

ラバーソール「っ…たく、酷い奴だ…承太郎にも引けを取らねえな…」

 

 

ラバーソール「俺はそこの承太郎にボコされた後、病院の入院してベッドの上だった」

 

ラバーソール「そこに…奴は現れた」

 

仗助「………………DIOか」

 

ラバーソール「ああ、そうだ」

 

 

ラバーソール「奴がジョースター一行に倒されたというのはとあるツテで俺も知っていた、だからこそその情報を聞いた夜。あいつが俺の病室の枕元に立っていた時は度肝抜かれた」

 

承太郎「そいつは……」

 

ラバーソール「そいつは確かにDIOだった。しかし、俺に金の交渉をしてきたあのDIOとは全く違かった。膝まで伸びていた金髪、真っ白の服装、そしてその世界にいたDIOと比べ物にならないほどのオーラ、俺はDIOが生きていたことよりも野郎が身体中から発していたプレッシャーに心底恐怖した、目を合わせることも出来なかった…目を合わせたら凍らせられるんじゃないかと勝手に思い込みもした」

 

承太郎「天国に到達した並行世界のDIO……か」

 

ラバーソール「そうだ、奴もそう名乗っていた。奴はスタンドを発動させ一瞬で俺の怪我を治した。そして奴は俺にこう言った」

 

ラバーソール「『その怪我を完全に治した代わりに私が今求めているものを探すのを手伝って欲しい』……と

 

仗助「それが、聖なる遺体か」

 

ラバーソール「そうだ。その条件に俺は首を縦に振るしかなかった、逆らおうなんて思わなかった。あのDIOはヤバい、俺たちがいた世界の奴よりもずっと」

 

仗助「そうか、だがDIOの野郎はもういねぇ、ここにいる承太郎さんがぶちのめしたからよ」

 

ラバーソール「……………………」

 

ジョルノ「つまり、お前が遺体を集める必要もなくなったということだ」

 

ラバーソール「いや、DIOが死んだことは俺も知っていた。だが、DIOが死んだことによりこの遺体に新たな力が宿ったんだ」

 

仗助「新たな力だと?」

 

 

ラバーソールは遺体を取り出して全員の前に再び見せた。ラバーソールが持っている部分は右手の部分、遺体は先ほどと変わらず不気味に光を放っており、見る者の背筋をピンと張り詰めさせる。

 

 

三玖「………うん、さっきも見たけどやっぱり気持ち悪い」

 

五月「よく見るとアレ手じゃないですか?うへぇ……」

 

ラバーソール「遺体が教えてくれたんだ。『この遺体を九つ集めし者の願いを1つ叶える』……と」

 

ジョセフ「おーいおい、そんな話信用出来るかよ。スピードワゴンオメエはどうなんだ?」

 

スピードワゴン「そいつの言っていることは間違いじゃあねえ!俺も確かにこの世界に飛ばされた時、この遺体からそう教えられた」

 

ジョセフ「よし、信じよう」

 

二乃「前言撤回はやっ!?」

 

四葉「それよりもどうやってあの遺体から教えてもらうんですかね…口なんてついてないのに…」

 

スピードワゴン「いや…なんか、こう。心に語りかけてくるというか…そんな感じだ」

 

承太郎「んなことはどうでもいい。つまりこいつらみたいな奴に遺体を集めさせたらヤバいってことか」

 

ジョルノ「こいつみたいな小物ならまだマシな方です。DIOやディアボロのような強い野心を持ったものが揃えれば世界を滅亡しかねない。遺体の役割がわかった以上、何としても僕たちがこの遺体を回収しなければならない」

 

仗助「よし、この件はとりあえず置いておこう、最後の質問だぜラバーソール」

 

ラバーソール「………………」

 

仗助「あ?おーい、生きてるかー?」

 

ラバーソール「………………」

 

仗助「…………………」

 

 

仗助はラバーソールの掴んでいた髪の毛をゆっくりと離した。すると彼の身体は全身の力が抜けたかのようにその場に顔面から倒れ込んだ。

 

 

二乃「きゃああ!?」

 

三玖「………死んじゃったんじゃない?」

 

仗助「えっ…嘘だろ?やべぇ…」

 

ジョルノ「いいえ、生命エネルギーは感じることが出来ます。きっと出血が多かったため気を失ったのでしょう」

 

仗助「チッ…止血くらいしておけばよかったか、最後の質問がまだなのによ〜」

 

承太郎「あんなデカい穴が身体に空いてりゃいつか死ぬなんてのは誰にだってわかる」

 

仗助「とりあえず止血だけはしとくっすよ、後は病院にでもぶち込んで病院ライフを楽しめばいい」

 

一花「あれ…傷を治すって言ってなかったっけ?」

 

仗助「こんな奴の傷を完全に治してみろ、また近いうちに襲ってくるのが目に見えている」

 

 

二乃「 と り あ え ず 」

 

 

二乃「アンタ達は出て行く前にこの部屋の掃除をしていきなさい!!!!!!!!!!!!」

 

 

二乃はラバーソールを跨ぎ仁王立ちをして腕を組みながらジョジョ5人に怒りをぶつけるのだった。

中野家のリビングは至るところに血が飛び散っており机や椅子、テレビは辺りに散らばっている。美しい景色が見える大きなガラス張りの窓も身体をぶつけた衝撃でヒビが入ってしまっている。

 

 

仗助「ったく…これが命の恩人に対する言動かぁ?」

 

ジョナサン「いや…ここは彼女に従おう。無関係の人間からしたらいい迷惑だ」

 

ジョナサン「それよりジョセフ、先ほど物凄く辛そうな顔をしながら血を吐いていたが…大丈夫なのか?」

 

ジョセフ「今は何ともねえ…ただあの時は本当に死ぬかと思ったぜ。腹が死ぬほど痛くて…いや、途中から痛みも感じずに朦朧としていたが、急に治ったんだ」

 

ジョルノ「そうですか…僕はてっきり痛がっているフリして奴の攻撃対象から外れようとしたのかと思ってました」

 

ジョセフ「酷い奴だなジョルノ、仲間がピンチになっているってのに俺がそんなことする奴だと思うか?」

 

ジョルノ「思います」

 

仗助「思う」

 

承太郎「ジジイらしい行動だ」

 

ジョナサン「………こういう時に、どう言っていいのか言い訳が見つからない」

 

ジョセフ「泣いていい?」

 

承太郎「それよりも……だ」

 

 

承太郎は4人に背を向け、振り向いた目線の先にいた人物のもとへ歩を進めた。止まった時間の中で目が合い、ラバーソールの攻撃を瞬間的に移動して躱した者。

ヘッドフォンを首に巻きこの戦闘の『全て』を見ていたと承太郎自身が感じていた人物の元へ…。

 

 

三玖「……なに?」

 

承太郎「お前………」

 

三玖「?」

 

承太郎「…………………」

 

三玖「………………」

 

承太郎「『俺だけが動いていた時に』、お前は何を見た」

 

三玖「!?」

 

 

普段黒目の半分を覆っている目蓋をしている三玖が承太郎の言葉を聞いた途端朝目覚ましが爆音を鳴らしたかのようにパッチリと開いた。

それは承太郎の疑惑が確信に変わった瞬間でもあった。

 

 

三玖「………なんでもないよ、何も見えてない」

 

承太郎「………………」

 

三玖「『承太郎だけが動いている時』なんて無かった…そんなの」

 

承太郎「………………」

 

三玖「………………」

 

 

先程見つめ合った時とは違い三玖の黒目がチラチラと動いていた。それは何か真実を隠している行動という思考にたどり着くのは簡単だった。

 

 

承太郎「…………そうか」

 

三玖「…………」

 

承太郎「野暮なことを聞いた」

 

そう言いながら承太郎は三玖に背を向け再び掃除を開始しようとしている4人の元へと歩を進めた。

 

 

この世界では何が起きてもおかしくない世界。

 

『世界』のような能力も受け入れざるおえない世界。

 

承太郎は改めてそれを感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

本体名 ラバーソール

スタンド名 イエローテンパランス 

   再起不能

 

叶えたい夢

『無限に減らない金を手に入れていい女を抱きまくって一生を極楽気分で過ごす』



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