ガンプラ物の短編集 (ノイラーテム)
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ガンダムVZ

 宇宙を切り裂く光の翼。
誰よりも巧みに操り、羽ばたきすらする。
V2ガンダム・ベースのその機体は、バアルゼブルと呼ばれていた。


「さてと、今日は面白い奴が居るかなっと」

 少年風のアバターが手ごろな戦場を探すと、大規模ミッションが行われている。

 

まだ参加が閉め切られて居ないにも関わらず、大勢が決して居た。

少年はそのスコアを見て、たった一つのフォースが他を圧倒して居ることに目を付けた。

 

「いいねえ。そんじゃオレ達も行こうか……」

「ガンダム・バアルゼブル、ゲットレディ!!」

 機械音声がエントリーを告げて、スタートポイントに機体が転送される。

V2ガンダムをベースにした機体が、光の羽で羽ばたきながら飛んでいく。

 

ただ強い敵を求めて……。

 

 

●光る宇宙(ソラ)

 画面上には幾つもの煌めきが宿る。

その一つ一つがビームであり、あるいは爆発する機体だった。

 

「くそっ! ロンド・ヘルの進軍を止められねえ!!」

「手堅い連中だぜ。ちったあ遊び心ってもんを弁えろよ!」

 その戦場を制して居るのは、ジェガンの集団だった。

 

ロンドベル隊をジェガンだけで摸したフォースで、νガンダムやリガズィ含めてすべてがジェガン・ベースだ。

フィン・ファンネルで構築したI・フィールドを軸に、フォーメーションを崩さずにフラッグへ迫っているようだ。

 

「そろそろ支援砲撃が来るぞ! ここは手を組んで連中を叩くぞ!」

「「おう!」」

 対するはジオン系を中心としたフォースと、一部の小規模フォース。

あるいは個人参加の連中が、四方より実弾を叩き込み始めた。

 

「おかしいねえ」

「どうしたんですか?」

 その渦の中で、ジェガン乗りの一人が唸りを挙げた。

 

モニターで表示されるのは軍服をイメージした黒服で、着ているのは厳つい大女のアバターだ。

質問するのも似た様な男のアバターで、マッチョ姿が軍服を圧迫している。

 

「こっちが隊伍を組んでるのに、連中ときたら三々五々に迫って来やがる。こいつあ何か企んでるよ」

「考え過ぎでは? 臨時で手を組んだ奴らです。ポイント争いで必死なのかと」

 大女は舌打ちしたい気分を抑えられなかった。

 

雪深い彼女の国はこういった遊びが盛んで、だからこそ参加人数が多い。

気心の知れたメンバーも居るが、楽天的な見解を聡明さと誤解している者も多かった。

もちろんこれは遊びである、他の連中こそ彼女の様な考えを、凝り過ぎだとか考え過ぎの寝暗なのだと口にして居るのだろうが。

 

「ここは警戒するよりも足を早めて、フラグを回ってしまった方が……」

「P4!?」

 ドウ!

 膨大な光が言葉を遮ったのは、その時だ。

I・フィールドを貫いて、ジェガンが一撃で吹っ飛ばされる。

 

「この威力、GNランチャーか!?」

「ちぃ。言わんこっちゃない。散開しろ! N1は周辺警戒、R1は防壁を一点集中させな!」

「「了解!」」

 大女の指示でジェガン隊が数機一組で分散して行く。

 

例外なのはリガズィ風に改造された機体N1と、νガンダム風に改造された機体R1だった。

高機動を活かして周辺を探索し、あるいはスクエア状のI・フィールドを盾の様に一枚板に変更する。

 

「隕石群の中に一機、その手前に護衛が居ます! 次弾が……いえ、第三射のチャージも確認中!」

「はあ!? 連射ってどんな改造してんだよっ」

「モビルアーマーでも持ち込んだのか!?」

 EWACを兼ねているのか、暫くしてN1が標的を見付けた。

だがその時には、改めて第二射、第三射が見舞われる。

 

防御集中したことで最初は遮って居たI・フィールドも、少しずつゆらぎ始め……。

加えて電源の問題が心配された。

 

「N1、N2を連れて行きな! その間、他の連中を叩くよ!」

「「了解!」」

 大女は少しも迷わなかった。

N2……スターク・ジェガンがN1と共にブースターを吹かし、隕石目指して加速して行く。

 

●人外魔境

 中央ではジェガン隊の数が減ったこと、そして支援砲撃を中止させまいと牽制して居たフォースも距離を寄せて来た。

砲撃に巻き込まれない様に輪を形成し、ビームを解禁して釣る瓶打ちだ。

 

 そんな中で二条の光が、隕石群を目指して居る。

 

「……来るか。残り二発、せっかくだから撃たせてくれたまえよ」

「任せとけ。てめえは誤射の心配でもしてな」

 隕石の中に隠れていたのは、ヤクト・ドーガの改造機だった。

ガトリング砲の代わりにGNランチャーを持ち、ファンネルは攻撃性能を持たない、交換用の太陽炉そのものである。

 

今も第四射で使い尽くしたファンネルを切り離し、サイコミュ制御で五発目を装填して居る。

 

「戦うなら中の方が楽なんだが……。巻き込む訳にゃいかねえし、外の方が好きなんだよな」

 護衛に付いて居たのはリックドム・ツヴァイだ。

おそらくはシュツルム・ディアスでも摸して居るのだろう。

シュツルム・ブースターと増加装甲を付け、右手にはクレイバーズを持ち、予備としてMMP80の軽マシンガンを左手で直ぐに抜けるようにぶら下げている。

 

プロペラントを過剰消費して、アフターバーナーの様な使い道で急加速を掛けた。

 

「タリホー! お互い高機動だ、愉しませてくれよ!」

「そうはいくか。N1、ここは私が引き受ける。お前はランチャーを潰せ」

「任せる!」

 リックドムⅡとスターク・ジェガンがもつれあう。

 

サーカスの様に踊るミサイルの軌道を先読みして、パラパラとMMPが火を吹いた。

宇宙には無い筈の煙が周辺を覆い隠したのを見ると、専用で作った煙幕弾なのだろう。

 

「スゲー。ミサイルをあんなに簡単に撃ち落とすとか……。しかもソレを予想して煙幕だとぉ」

「そりゃトップエース同士ならあんなもんだろ」

 見てる方にも技術が必要とされる人外魔境。

往年のチャンピオンシップを思い出させる熱いバトルに、既にやられて脱落して居る連中は唸りを挙げた。

バトルテックに憧れて、やがてバーチャロンで暴れ回った世代なのかもしれない。

 

それでも数人居れば意見も出しあえる。

煙の向こうでバズーカから散弾が放射され、対抗する様にクレイバズーカで前面にのみ道を開けただとか、ニュータイプじみた読み合いになっているようだ。

 

だがそれでも、結局最後の形は一つだ。

ビームサーベルとヒートサーベルのチャンバラが始まった。

 

「十手!? いかん、ということは!」

「そうさ。避けられまい!」

 威力の劣るヒートサーベルを選んだのは、ギミックを仕込むサイズの問題だった。

数本の刃がビームの刃を抑え込み、消して再構築したら、そのまま切り込む勢いだ。

 

そしてサーベル同士が絡み合う中、リックドムの胸元に仕込まれたドリルがジェガンを貫く。

スタークジェガンもバルカンで対抗しようとするが、破壊には至らず、追加装甲をめくったのみである。

 

「勝ったが……。護衛は失敗かな」

「そうだね。こっちも生き残ったが、最後の太陽炉をやられたよ」

 どうやらN1がリガズィ風にカスタムする為に使ったパーツは、切り離して衝角(ラム)ミサイルにできたらしい。

それで第五射を強引に止められ、六発目を装填する前に太陽炉を使った弾倉を看破されてしまった。

 

ヤクト・ドーガはそのままN1を倒したようだが、代わりにランチャーも潰され、支援砲撃が出来ないのでは意味があるまい。

同じ様にリックドムⅡの方も、武装を使い果たしてしまった。

 

「とはいえこのまま見てるわけにもいくまいよ。向こうの援護に行くか、それとも此処で戦うかね?」

 砲撃役や護衛役としては装備が噛みあって無いのは、急造のコンビだからだ。

ヤクト・ドーガには同じ仕様の仲間が居て弾薬交換が出来た筈だったし、リックドムⅡの方も似た様な物である。

 

この二機が所属するフォースが殴りあって居た時に、中央でジェガン隊が猛威を振るったのだ。

あのフォースを協力して阻むと言う事もできなくなった以上、自分達だけでも決着を着けようかと提案したのだが……。

 

「サーベルだけで一騎打ちってのも悪かないが……。同じことするなら向こうの方が面白そうだ」

「ほう。向こうもほぼ白兵戦だけか」

 以前としてジェガン隊の猛威は続いていたが、それでも囲んで居る数が多い。

 

それに全員が結託した訳でもなく、中にはジェガンに協力したり、無視してどっちも狩っている連中も居るから当然と言えば当然と言える。

 

「お祭り騒ぎに参加させてもらうか。……で、どっちに付く気なのかね?」

「そりゃ、弱い方に決まってんだろ!」

 戦うなら強い奴が良い。

助けるなら弱い奴が良い。

 

プレイヤーの多くがそうは思っても、実行できない所だ。

だが二人はそういうタイプであり、依存は無かった。

 

●乱戦

 中央の戦場では、次第に数が減って行った。

残っているのは自フォースの勝利条件を果たした者と、とっくに失敗してヤケクソで戦っているバトル・ジャンキーだけだ。

 

「今度はこっちかい! てめえはどっちの味方だ!」

「数で潰すのが嫌いなだけだよ。そういう意味では、あんたらも敵だ!」

 ジェガン隊が囲まれていた時は味方に付いて居たV2ガンダムが、今度は敵に回った。

 

光の翼を自在に振るい、多少の攻撃ならば跳ねのけてしまう。

最後には白兵戦になってしまったのも、この機体の影響かもしれない。

 

「世の中は所詮、数の暴力なんだよ!」

「あんたも強いんだろ? なら部下に囲まれてないで本気を出しなよ!」

 もし自爆覚悟で突っ込まれたら、とっくに勝負は決まっている。

だからこそV2を操るプレイヤーは、笑って大女を挑発した。

 

二本のビームサーベルを振り回し、たった一機でジェガン隊を蹴散らしながら。

それも仕方あるまい、この機体は最初から白兵戦のみで戦い抜く事を考慮されている。

撃ち合いが出来なくなれば、圧倒して居ても仕方あるまい。

 

「悪いね! 数を操った方が強い、性に合う奴も居るんだよ!」

「嘘だね! 最初はそうでも、最後には強い奴が残る! その方が楽しく成って来るのさ!」

 煌めく二本のビームサーベルが、次々に敵を切り裂く。

隙を狙うジェガンを蹴り飛ばし、撃破狙いでは無く激しい戦いをこそ好む。

その様は蝶のようではあるが、優美と言うよりは、荒々しさすら感じられた。

 

ラッシュラッシュ!

そして牽制の弾を光の翼で弾き、戦場を引き裂いた。

 

「K! そいつはV2じゃない、バエルです! バエルの戦闘スタイルだ!」

「惜しい。正確にはGガンも入ってるけどな。つーかクィーンじゃねーのかよ」

「チェスの駒だよ! コールサインってやつさ」

 二本のサーベルだけで高機動。

白兵戦主体で射撃を笑いながら回避し、圧倒的な戦闘力を見せる。

 

確かにその戦いはガンダム・バエルであり、その強さはGガンダムのようであった。

 

「まあ……そんなにクイーンが見たいなら、見せてやるよ! R2、指揮を引き継ぎな(キャスリングだよ)!」

「了解! 御武運を!」

「これはEXAM? いや、NT-Dか!」

 隊長機の装甲が割れて行く。

左右に割れるというよりは、抑えつけていた装甲をパージしているのか。

言われてみるなら、機体強度的にも、変形するより使い切りの封印にした方が楽なのかもしれない。

 

剥離(パージ)する装甲の中より現われるガンダムフェイス。

煌めく光は全てサイコミュではなく、加速と出力を挙げる物だ。

NT-Dの準AI制御はここでいかんなく発揮され、ともすればプレイヤーが制御しそこなう超速機動を何なく制御してみせた。

 

だが……。

 

「手こずらせやがって!」

「はっ! 最適解過ぎん(みえみえなん)だよ!」

 AI制御は諸刃の剣だ。

V2ガンダムは予測軌道の反対側から、回避行動も含めるコースで巨大な光の剣を振るった。

 

反撃を予想して咄嗟に動きをずらした大女だが、その長大なブレードに驚きを隠せなかったのである。

 

「馬鹿な。盾を……光の翼を吸収しただと!?」

「言ったろ。こいつはGガンでもあるってな! ガンプラは自由だ!!」

 V2ガンダムは時おり、ビームシールドをサーベルと合一して居た。

そしてこの攻撃に至っては、フルドライブした光の翼をも統合して居る。

 

その正体はGガンダム系に使われているビーム制御だ。

ビームを闘気の技として制御する技術を使って、制御して居たのである。

 

バエルの戦闘スタイルとGガンの技術。

それこそが、このV2の秘密であった。

 

「御機嫌じゃねえか。混ぜてくれよ!」

「ヒャッハー!!」

「いいぜ。遊ぼうぜ! 残った奴らみんなでお祭り騒ぎだ!」

 双方の消耗も待って駆け付けた、金星狙いを笑って迎撃。

収束させていた光の翼を開放し、回転しながら超弾覇王電影弾を掛け始めた。

 

「「「爆発!!(ぶぁーくはぁつっ)」」」

 その陽気な騒ぎにモニター越しに、コメントが無数に打ち込まれたと言う。

 

この日の戦いは残った機体で一騎打ち(トーナメント)

流石に消耗し尽くしたV2が撃破された所で、お開きに成ったと言う。

 




 唐突にガンプラ物が書きたくなったので、短編を載せてみます。
連載とかはせずに、思い付いた小ネタを時々追加して行く感じになるでしょうか?

●レギュレーション

1:ベース機体は宇宙世紀の機体に限る
(練習用やストーリー・モードなど個人使用は問題無い)

2:ドロップしたパーツは使っても構わない
(太陽炉や阿頼耶識など)

3:ランキング・ポイントはフォース規模で考慮される
(個人や少人数でも、大規模フォースと競えるようにする為)

●登場機体

『ガンダムVZ』
 V2ガンダムをベースにした機体で、愛称はバアルゼブル。
Gガンダム系に使用されている、ビームの射出位置で闘気をコントロールするプログラムを採用して居る。

 ビームシールドを取り込んでビームサーベルを大型化。
更に光の翼を取り込んで、超大型ビームサーベル斬山剣と化す。
だがその本質は、匠に翼を操って羽ばたく事。
原作で見られた攻防一体の戦闘力を再現する事である。

 とはいえ改造可能な場所、スキルなどの都合もあり他の装備が設置できない。
よって白兵戦のみを主体として切り込む、突撃仕様となっている。
参考にしているのはガンダムバエルで、二本のサーベルのみで戦闘する。
(なお兄弟機のバアルゼブブは、ターンXをモチーフにして居るとか)


『ロンド・ヘル』
 ジェガンだけで構成された大規模フォース。
パーツは全て共有可能で、ソレに抵触しない範囲でなら改造も認められて居るとか。
その為、ロンドベルに所属する各機や、チェスの駒をモチーフに役割分担に応じた改造をしているらしい。

・K→Q
 NTーDを仕込み、上に増加装甲と通信機器を付けている。
消耗が激しくコントロールが難しいので、基本的には指揮官機。
変形しないのはパーツ共有の為であり、変形すると構造が脆く成る為。

・N1
 リガズィをモチーフにした高機動機。
とはいえ本体には接続パーツが追加されているだけで、ガワ以外は仲間とパーツ共有出来る。
またガワにEWACやランチャーを取りつけることで、戦闘方法が変わる。

・N2
 スターク・ジェガンを普通のジェガンで再現して居る。
よってこの機体も接続パーツ以外は、仲間と共有可能。
とはいえバズーカの弾などを変更するくらいで、高機動マシーンというのは変わらない。

・R1
 νガンダムをモチーフにした防御系の機体。
フィン・ファンネルで仲間の防御を担当する。

・R2
 指揮官機と偵察機を代行可能なマルチ機体。
通信機とレーダーを追加し、プログラムで連動できる様にしている。

『ヤクトドーガ88』
 太陽炉の交換をサイコミュで行うヘビーガンナー系の機体。
GNランチャーをぶっ放し、白兵・防御系の相棒とファンネルは共有。
相棒はトランザムを連続使用するタイプだったが、早々に倒されたらしい。

『SRD』
 リックドムⅡをベースに、シュツルムブースターや増加装甲を付けている海兵隊仕様。
大盾を持った機体、ナックルシールドで白兵主体の機体の仲間がいたが、こちらも早々に撃破されている。
生き残った機体は様々な武装を使いこなすタイプで、フラッシュビームの代わりに、ドリルを追加して居た。

『モヒカン』
 実はSDで、簡単にやられる外部パーツはオマケ。
やられたフリをして生き残る……ということになっているが、バレバレだったり、あまり強くないので賑やかしである。


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高機動型ヅダ

●足止め

 0083ベースのシナリオで、落ちて行くコロニーを巡る攻防戦。

戦いは序盤から熱く燃え盛って居た。

 

「よう! 今日は太陽炉じゃねえのかよ」

「この間の戦いで壊されたと言ったろう? ドロップ物なので数が揃え難いんだよ」

「だからダインスレイヴってか? 節操がねーなあ!」

 三機編成のリックドムⅡが、二機のヤクトドーガと競り合っている。

狙撃型のヤクトが持つ手製のガンランスは、キマリスヴィダールの物を改装した連装砲だ。

 

以前に太陽炉をファンネルにして交換していたが、今回はダインスレイヴの交換弾倉と化している。

 

「コロニーに撃たせるな! あえてジェットストリームアタックを掛けるぞ!」

「ほう……。君達らしく思い切りが良いね。だが!」

 三機のリックドムⅡは一直線に並ぶことで、ダインスレイヴでの攻撃を誘う。

普通は当らないはずだが、こいつなら必ず当てて来ると妙な信頼感があった。

 

しかしヤクトドーガの方も似た様な物だ。

無視すれば危険と知ってなお、三機に対して背を向ける。

 

「背中は任せたよ、友よ」

「承知。お前の敵は私が止めて見せる!」

 他のフォースを牽制に行っていた、もう一機のヤクトドーガが復帰する。

こいつは連続トランザムを諦めて、ファンネルを機体制御型サイコミュでのインコミュ・ブースターに変更していた。

 

全てのエンジンが一か所を向いて急加速を掛け、ブースターがアポジモーターの如く稼働する。

しかも六基のうち二基は、ケーブルを伸ばしてから摩訶不思議なバックブーストを掛けさせた。

反動で引き千切られるケーブルと引き換えに、S字機動を掛けて、連続射撃を避けさせたのである。

 

「くそっ。俺ら三人を二人で止めるとか、やっぱてめーら頭おかしいぞ!」

「君達が言うか? お互いさまだろう」

 もう一機のヤクトドーガが構えるのは、斬艦刀を改装した八十八連斬甲刀。

一度に使える宝弾は限られるが、掠れば一撃で吹っ飛びかねない大業物である。

使い勝手ではビーム系の斬艦刀には叶わないが、こういった火力重視性は物理系の方が向いていた。

 

「よし。こうなりゃ当初の計画通りに行くぞ。忌々しいがあいつらに任せる」

「仕方ねーなあ。……しかし考えることは同じってことか」

「何!? まさか!」

 リックドムⅡは散開し、倒す事より牽制に戦術を切り替えた。

盾三刀流の機体が前面に立ち、MMP二丁流とギミック型の二機が当て易い連射で足止めを行う。

 

そして一撃は無く成ったことで、ヤクトドーガが隙を覚悟して策敵範囲を広げると……。

他の砲撃ユニットの居るフォースを防ぐ光と、蹴散らしている機体が居た。

 

「あの光はこの間のV2として、もう一機はなんだ?」

「馬鹿な……。早い、早過ぎる。まるで私の機体以上の速度だ」

「言ったろ。同じ様な事してるってよ。てめえ見たいなヘンタイ機動は無理だが、ガンギマリの直線番長サマだ」

 良く知らない奴だが、それだけは判る。

此処に居るトップエース以上の、あえていうなら特化能力を持った機体が居るのだ。

 

リックドムⅡは他所者に任せるのを不服としながらも、作戦の為に足止めに残った。

盾から機雷やミサイルをばらまき、マシンガンの弾を放ち続けて強敵二機を足止めする。

 

●殺人的な加速

 V2ガンダムにコロニーの防御を任せ、もう一機が次々に砲撃機を葬って居た。

その進軍速度は凄まじく、気が付けば肉薄されているありさまだ。

 

「こういうのを殺人的な加速というのかしら? カメラ以外に反動無いから良いですけれど」

 ビリビリと振動が画像を揺らがせる。

フルダイブとはいえ肉体に影響は無いが、画像が揺らいでは戦い難いはずだった。

 

しかしこの機体を操るパイロットは、生息速度域が早いのが当然なのだろう。

いつものように制御して、当てることに成功して居た。

もちろん相手が砲撃機で、回避力がおざなりだからというのもあるだろうが。

 

「くそっ! あのヅダを止められる奴は居ないのか!?」

「無理だ! あんな速度に追い付けるわきゃねーだろ。今の内に護衛を振り分けるぞ!」

 戦場を蹂躙して居るのはたった一機のヅダだった。

 

あまりの速度に当てることすら難しく、そもそもマシンガンやミサイルでは狙っている間に、レンジから振り切られてしまう。

 

「間に合えばのお話ですわね。……次の標的に向かいますわよ、ブラウ・シュピーゲル!」

 ヅダは足そのものを改装した、大型ブースターを吹かせる。

そして背中に配置されている、双胴のエンジンをも稼働させた。

 

四機のエンジンは機体制御サイコミュで、ノズルそのものが稼働する。

ヤクトドーガと同じ様なコンセプトだが、エンジンサイズの問題で出力が段違いなのだ。

かつてVトール機の戦闘機が何機かあったが、傑作機のハリアーよりも、試作機のフリースタイルの方が早く武装が多いのと良く似ている。

 

「……聞こえていますかバアルゼブル。こちらは新しい標的に向かいますので、位置変更をお願いしますわ」

「もう片つけたのか? 了解、惜しいけどそっちのフォローに回るぜ」

 倒したといっても、砲撃機だけだ。

場合によっては砲門を潰しただけで立ち去って居るので、拘束時間は短い。

 

とはいえヅダと高機動ザク・サイコミュ試験型の合いの子であるこの機体は、装備を次々と捨てて戦っている。

もちろん移動力を保ったまま、複数の武装を搭載する以上は、莫大なペイロードがあっても装甲はそれほど積む事が出来ない。

既にシールドも対艦ライフルも投げ捨てて、残るはヒートグレイブとMMPマシンガンだけだった。

 

加えて速度が早いと言う事は、良いことばかりでは無い。

特に移動進路に攻撃を掛ける予測射撃には弱いので、それをV2ガンダムが光の翼で庇う作戦なのである(もちろん味方も付いていけない)。

 

「しっかし、たた二機にやられるなんざちょっと寂しいんじゃねーか?」

「普通なら考えない作戦ですもの。だからこそ、わたくし達が手を組んで居るのですけれどね」

 二人はともにソロで、自分の信条のみ従って戦っている。

 

V2ガンダムは強い敵との戦いを求め、ヅダの方は他の誰にもできない領域の戦いを好んで居た。

似ているようで似て居ないこの二人は、むしろお互いを狙い撃つ方がありえただろう。

 

●ダンス・マカブル

 まともに戦えば苦戦する事もあったろうが、砲撃機のみを叩く戦術は上手く行った。

もちろんバズーカや大型ミサイルなどは侮れないが、そちらは防衛側の直営が居る。

 

「ソーラーシステムが出て来ましたわね。もう間に合わないでしょうが、コントロール艦まで付き合っていただけます?」

 0083におけるコロニー落としは、最後にソーラーシステムが出て来る。

防御側に巨大構造物の耐久性と言うメリットがあるように、攻撃側にはソレがあった。

 

とはいえフォースによる攻勢を抑えた以上は、イベント進行以上のものはない。

急がなくとも功績p稼ぎに行っている、誰かが黙らせるだろう。

 

「おーらいっ。せっかくだからロスタイムまで踊るとしようぜ!!」

「良いですわね。それでは一曲、御付き合い願うとしましょうか♪」

 コントロール艦へ両陣営が駆け付けて行く。

片や撃沈する為に、片や守る為に宇宙を翔ける。

 

そんな中で二人が踊ると言うのは、ただの比喩だ。

ヅダは残弾の少ないMMPを投げ捨てヒートグレイブへ。

V2はビームシールドのみを巻き込んで、長剣二刀流に変えた。

 

「せっかくだからよ! そのスピードとやりあって見たかったんだ!」

「蝶の様に舞うのは、わたくしだけで十分ですわ!!」

 消化試合になった中、敵味方の陣営を無視して二機は踊る。

十字を描く光の剣と、超高速のマシンが交差。

 

お互いに戦闘機動は確認しあっており、どんなコースで飛ぶかは予想済みだ。

機動力はヅダに分があり、攻撃面での広さはV2にあった。

 

『識別コードは味方です。識別コードは……』

「お黙りなさい!」

「うるせえ!」

 敵味方識別コードの唸りが上がる中、システム音声を両機は解除。

警告の中にはソーラレイに巻き込まれるというモノもあったが、知ったことではない。

 

お互いに特化系で割り切って居るため、全損しても取り返せないものなどない。

いや、そうだったとしても、闘争心に火が点いた以上は引けるはずなど無いではないか!!

 

「ガンダム系ならば下半身はオマケ……ならば狙うべきは上半身!」

「機体制御サイコミュなら、バランスくらいは何とかなるよな。だったら素直にソイツを狙う!」

 ヅダは翼を中心に上半身へ袈裟斬りを掛ける。

対するV2は当るを幸いに、ヒートグレイブへの強打を仕掛けた。

 

お互いに高速機ともあって、当り易い場所へ無理なく仕掛ける。

同時に複数のフェイントを入れて、その後にこそ本命を残した。

 

「もらったぜ!」

「まだまだですわ!」

 質量の無いビームサーベルでは、実体のヒートグレイブを折るには至らない。

金属を削って軽量化しているからこそ、弾き飛ばす事に成功した。

 

だから、そのまま本体を斬るには至らない!

 

「モビルスーツには腕がありますのよ!」

「そいつはどーも……」

 ヅダは回避せずにそのまま突っ込んで、ラリアット気味の体当たりを掛けた。

既に翼がへし折られ、光の翼は発生しない。

ビームシールドはサーベルに収束されており、面白い様にV2の首がもげた。

 

「お互い様だ!」

「ブーツアタック!? しかし、こんな近距離ではっ!!」

 まだメインカメラがやられただけだ、V2は下半身を射出して一発逆転を狙う。

だが至近距離から放っても、推進距離が足りない。

 

しかし高速で突っ込んで居るヅダの事。

引っかけられただけでもタダでは済まない。

 

「シャイニング・ウイザードとは! しかしその翼はコアファイターの物、この勝負わたくしの……」

「まだまだ! 直進なら翼がなくとも行ける!」

 ブーツはヅダに軽く当った後、そのまま接触事故を起こした。

フラフラに成ったところを、コアファイターが翼を開かずに突っ込んで来た。

 

半カケの翼でキリもみしながらコアファイターが直撃する。

それで撃破するには至らないが、ヅダは近過ぎて殴れず、コアファイターも機関銃は撃てなかった。

 

「幕切れですわね。最後に一つ聞いておきますわ。なぜ光の翼も使わなかったんですの?」

「そりゃエネルギー切れだよ。騙されてくれて助かった」

 二機はソーラレイの光にのみ込まれながら、笑いあって吹き飛んで行った。




 と言う訳で第二話というか、新しく思い付いたガンプラです。

最初はシャア専用ヅダとかヤクトドーガって面白くない?
とかだったのですが、思いいたって修正。
ヤクトは別のフォースに、ヅダは高機動ザクと合体する事に成りました。

ただでさえ高機動のヅダに、下半身をブースターにチェンジ。
頭のおかしい直線番長になったということです。

ちなみにヅダにサイコミュ試験型みたいなビーム砲が無かったり、V2が範囲攻撃を使わないのは主にエネルギー問題。
どっちもギリギリの設計で特化して居るので、そんな余裕はない感じですね。
砲撃機を潰して回らなければヅダには武装が、護衛しなければV2にはエネルギーが残って居たと思いますが、それだとストーリーそのものが作られないので。

●新規登場機体

『高機動ヅダ・ブラウシューペリア』
 下半身が高機動ザク・サイコミュ試験型をベースにした、大型ブースターになっている。
塗装は全体的に青く、上半身に稼働型ブースターの形状変更も行っているので、蒼いドレスに見えなくもない。
背中にある双胴のエンジン込みで、四発のブースターを持ち、一部は可動型であるので、直線ならば物凄い速度が出せる。
 フルダイブなので体にダメージはこないが、一応画面に影響が出るのだが……。ダイバーのお嬢様は普通に乗りこなせる模様。
(機体制御サイコミュの影響もあるけど)

『ヤクトドーガ88・緑』
 ファンネルをインコミュ・ブースターにした高機動マシン。
機体制御サイコミュをフルに活かした、異次元の軌道が特徴。
武装は八十八連斬甲刀で、八十八発の弾を爆発させて衝撃力を得る実体剣。
(なお、一度に全部爆発はさせられない)
 本来は複数の太陽炉を使う連続トランザムを得意としていたが、前回の戦いで破損し、現在は00ステージをドロップ周回中だとか。
その影響で相棒の『赤』も、武装がダインスレイブに成っている。

『SRD、二番機・三番機』
 リックドムⅡを操る三人組の残り二機。
ガトリングシールド・ナックルシールド・ギャンシールドと盾Ⅲ刀流で、予備にショルダーアーマーの二番機。
そしてMMP79と80を使い分け、シュツルムファストを持つ残弾重視の三番機である。
(一応は一番機のギミック型使いが一番強いとか)


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ガンダムVZ(黒)

●ドロップ品と機体改造

 赤い閃光と残像を残して敵機が消える。

実際にはただの高速移動で、今までの位置でのカメラでは捉えられないだけだ。

 

出力向上に伴う膨大なエネルギーで、急加速と急減速。更にはGN粒子によって攻撃力や防御力も向上する。

俗に言うトランザムによって、戦場は危険な水域にあった。

しかし……。

 

「流石に速い。だが……NPCではな」

 いかにトランザムの機動を間違えないNPCでもミスを犯す。

例えばそれ以上の速度で迫る飛来物など想定して居ない。

 

『馬鹿な。この俺様が……』

 普通の機動目標に当てるのも難しいダインスレイヴが、あっさりとNPCサージェスを討ちとった。

NPCのルーチンワークでは、当てられた揚句に装甲を貫通されるなどという、と言う演算が成り立たないのだ。

 

「埒の外であれば全てが覆されるモノ。ですが、それができるのは、おじさまくらいですわ」

「そう言ってくれるのは有り難いがね。何もかも君達が援護してくれるからだよ。本来のマイスター達にはこれほどの援護はなかった」

 言葉は丁寧だが、一周回って頭おかしい。という意味になる。

そう言われたヤクトドーガを操るプレイヤーは、ロックオン・ストラトスも同じことが出来た筈だ……と言う事にした。

 

00ガンダムの最終ミッションをモデルにした、ストーリーモード。

原作におけるマイスター達のコンディションは、確かに酷いものである。

だからこそ自分の功績では無く、仲間のお陰だと告げたのだ。

 

「君達なくしてこれほどのペースで太陽炉を狩れなかった。配分の件も含めて感謝しよう」

「当然ですわ! 世が世ならば、わたくし達もマイスターに選ばれた筈。もっとも太陽炉など不要ですけれどね」

 傲岸不遜なお嬢様の物言いに、その場に居た者たちは思わず苦笑した。

自分ならば原作主人公達に成り代われるという自信もだが、太陽炉を欲しいと言う人間の前で、『など』と口にする気がしれない。

 

彼女がソロだったのは、戦い方以前に性格も問題だったのだろうなーと知れた瞬間である。

 

「まあオレ達もドロップ手伝ってもらうしな。テストもあるから構わねーぜ」

「フラッシュシステムと阿頼耶識だったか。どんな機体に仕上がるのか今から怖いな」

「あら、そんな事はありませんわよ。わたくしのブラウシュ-ペリアの完成は、次のアップデート待ちですもの」

 V2とヅダのプレイヤーは、本来ソロで行動して居る。

それがヤクトドーガ二人組のフォースと手を組んだのは、互いが狙うドロップ品が異なるからだ。

ドロップ率はスコアではなく手数や、相手の機体を落としたコンディションも関わるので一時的に手を組んだのである。

 

疑似太陽炉であればトランザムで焼き切れてしまう為、序盤で倒す方がドロップし易い。

同時にその試行回数が多ければ多いほど……相手が強くて数が多いミッションほど、手に入れ易く成るのである。

 

「次のアップデート? 寡聞にして良く知らないのだが、そんなに重要な項目があったかね?」

「ふふ。そう思うのも当然ですわ。使いこなせないから、埒の外に置く内容ですもの」

 このお嬢様がなかなか憎み切れないのが、頭がおかしいメンバーから自分を外さないことだ。

言外にディスるとしても、その例から自分を除外する事は無い。

 

……もっとも気が付いて居ないだけで、悪口など言ってはいないつもりなのかもしれない。

 

「もしかしてパーツの整備性や信頼度ってやつか? 危険なパーツや裏ルートの装備っての」

「それなら見た覚えがあるね。カタログ・スペックだけの装備に成り易い代わりに、コストや性能にバラ付きがでるとか」

その通りですわ!(イグザクトリィ) 本来はフォーミュラーなどのレースや、不正規戦などの持ち込みルールがある戦場で使うモノなのですけれどね」

 装備データは完成品なので、カタログ・スペックと実働データは全く同じである。

プラモデルの完成度によって機体耐久度に差は有るが、妨害や破損以外では基本的に能力が変わることが無い。

 

これに対してアップデートで導引されるデータの中には、幾つかのパターンが存在するらしい。

性能は良いが故障し易い物、コストは易いが直ぐにジャムる銃。

あるいは……使い過ぎると爆発するエンジンである。

 

「てーことはヅダに土星エンジンを積む気かよ。それ以上速くしてどーすんだ? だいたいトランザムやスーパーモードの方が便利だろうに」

 実のところ、瞬間的に速度を上げるだけなら他にも方法がある。

 

トランザムによる高機動化は、誰でも知っているほどの性能だ。

あまり知られてはいないが、スーパーモードは全ての能力があがるので、使い方次第では強力だ。

特に装備重量に難のあるヅダでは、武装込みでスーパーモードの方が相性が良いと思われた。

 

「サイコミュ試験型の下半身を使って居るなら尚更、スーパーモードの方が良いと思うがね」

「リスクは完成度の向上で下げるにしても、程度というものがあるものだしね」

 ヅダを更なる高機動にするため、彼女のマシンは下半身が大型ブースターになっている。

サイコミュ試験型の下半身を流用して居るのだが、この機体にはビーム砲が設置されているのだ。

 

元からビームを運用した機体ゆえにエネルギー配分は、妥協できる範囲に収まるだろう。

そしてスーパーモードはビームの方向を収束させたり拡散させて、闘気のように使ったり、出力・移動力を底上げするモノなのである。

 

「それでは当たり前のことしかできないではありませんの。わたくしが欲しいのは、瞬間的な速さではなく、常在戦場の速さなのですわ。例え危険と引き変えにしてでも!」

「熟語の使い道を少々間違えている気もするが……気持ちは判らなくはない」

 ビームとスーパーモードを使うだけなら、最初からサイコミュ試験型で良い。

それこそEX-Sガンダムのパーツでも使えば、良い物ができあがるだろう。

しかしそれでは当たり前の性能であり、当たり前で収まるのは好みではないらしい。

 

「まーヅダは分解の危険と隣り合わせってのがロマンだしなあ」

「ツダのロマンはむしろ、生命を掛ける決断にこそあると思うがねぇ」

 ヅダが原作で見せるオーパーツじみた超性能。

それと引き換えにした、オーバーロードと分解の可能性は語るに尽くせないロマンがある。

 

ありえない性能にしても、命を掛けて同胞を守ると言う志にしてもロマンには違いあるまい。

 

「それはそうと貴方の方はどうするつもりですの? 秘密であれば聞かないでおきますけれど」

「別に構わねーぜ? こないだのブーツアタックで閃いただけだしな」

「なるほど。V2はあれで量産予定だったという設定だ。フラッシュ・システムで集団運用というのは悪くない」

 その言葉を聞いた少年は心外そうな顔で首を横に振る。

そしてニヤリと笑いながら、悪戯っ子の笑顔を浮かべたのである。

 

「そんな使い道はしないぜ? だいたいオレは数で攻めんの嫌いだしよ」

「ふむ。ますます興味が募るね。私達でよければ、周回後にテストプレイを務めよう」

 心外そうな顔は他のメンバーに移った。

しかし他所のフォースの事は詳しく聞かない物だ。

それに戦う事になれば、否が応でも見ることに成るのだから。

 

●ガンダム・バアルゼブブ

 試作の終わったV2は若干の意匠変更を伴っていた。

黒い塗装への変更もあって……まるでクロスボーンx1がx2に変わったかのようだ。

 

「さて、新しいV2ガンダムの性能を見せてもらおうか」

「いいぜ来なよ! ガッカリはさせないからさ!」

 緑色のヤクトドーガを操るプレイヤーは違和感を覚えた。

ビームの収束率が下がっており、以前に見た盾や翼を巻き込むような動きがないのだ。

 

これではあくまでキットの能力を、スキルで拡張した程度。

やはりフラッシュシステムを導入したことで、スーパーモードを外しているのかもしれない。

 

「私も白兵型だから対応は変わらないが……。まさかそのままでは済まないのだろう?」

「当たり前だろ! ここからが本番だぜ」

 勝負は三体三。

フラッシュシステムはフォースの予備機を戦力に換算できるというメリットもある。

大規模フォース戦では袋叩きにあるので役に立たない事も多いが、こうやって少人数の戦いではNPC以上の性能を持つ事もあった。

 

だが今回は相手が悪い。

二機分のトップリム・ボトムリムを四機の戦闘機にしていたが、次々に撃墜されて行くのだ。

 

「さすがに本体の操縦はマシですけれど、これでは拍子抜けですわ」

「隠している能力を見るまで……。いや、口にするのも無粋か」

「そうさ。このくらいの状況で出せなきゃ、ミッション中でも使いこなせねえからな!」

 改装されたヅダの方も、エンジンとシステムを新調したばかりで、本調子ではないのか今までの精彩が無い。

だがそれでもV2ほど停滞は無く、暴れ馬を乗りこなそうと、不規則な加速の手綱を絞って居た。

 

そして二機の様子を見守って居た赤い方のヤクトドーガも、ここに来て参戦。

範囲の方も強烈なGNランチャーを、味方であるヅダは巻き込まず、平然とV2だけに当てて来たのである。

 

「相変わらず。スゲーなあ! だが、真骨頂はここからだ。来いよ、アサルト……バスター!!」

「何!? 破壊されたトップとリムが……」

「そうか、フラッシュシステムはこの為か!」

 トップパーツとボトムパーツが、それぞれ複数のパーツに別れて飛翔を開始した。

内部に組み込まれたフラッシュシステムと、追加されたアポジモーターでバランスを取りながら移動する。

 

そして破壊されたV2のパーツと交換され、不規則な装備ながらもアサルトバスターが完成したのだ!

 

「合体! アサルトバスターってな! バアルゼブルはバアルゼブブのオニーサーン!」

「モチーフはターンXですの!? くっ……この範囲は予定外……」

 バアルゼブルを他所者が呼んだ蔑称がバアルゼブブなのだが、この際気にしてはいけない。

あくまでターンXをモデルにしたと言う方が重要なのである。

 

しかも機体構成は残ったパーツや、戦術に合わせて変更できるらしい。

本来は左肩のビームスプレーポッドや、機体各所のマイクリミサイルポッドを増設。

強烈な弾幕を展開して、ヅダの移動半径全体にバラまいたのである。

 

「これはいけない。間に合うか……」

「構いませんわ。あちらが隠していた力を見せるならばこちらも見せるまで! アラララLALALA!!」

 ヅダは強過ぎる上に、分解しかねない土星エンジンをフルスロットルで起動。

更にパイロットはアバターのドレスに手を掛け、一気に引き裂いたのである!

 

「目覚めなさい! 阿・頼・耶・識!!」

 ビキニのアバターに計器が接続される無駄に凝った画像。

縦ロールの金髪がアップの夜会巻きに変更されるところなど、どうしてそんな所にこだわって居るのか判らない。

だが本人のノリが全てであり、この方が集中できるならば重要な事なのだろう。

 

阿頼耶識に寄る巧みなコントロールは、機体制御サイコミュ以上の動きを見せる。

これまで跳ね馬の様な動きであったが、実に滑らかな動きで弾幕の間をすり抜けて行った。

弾幕ゲーの世界でも、きっと当り前の様に微笑んで居るに違いあるまい。

 

「甘いぜ! 超信地旋回!」

「甘いのはそちらですわ! やるなら……既存の装備全てを見直すべきでしたわね!」

 たかだがビームシャワーが二倍に成った程度!

回転によって変化するビームの軌道を、巧みにかわしながら避けて行った。

いつものようなスーパーモードでビームがホーミング化しないのであれば、十分ではないが、避けることが出来る!

 

もちろん全ての直撃を避けられる訳ではない。

だがヅダは次々に装備や装甲をパージしながら、可能な限り被弾率を下げて急速機動。

衝撃の伝達を最低限に落として、V2へ肉薄したのである。

 

「ちぃ! だがそれじゃあロクな装備が残らねえぜ」

「以前も言いましたわよね。モビルスーツには腕があると!」

 そこから先は以前の焼き直しだ。

体当たりが来るのは予想できるし、分離して再構成するのも予想済み。

 

ならば勝負は土星エンジンが暴走するまでに捉えられるか、それとも先に倒してしまうかの差であった。

 

「勝利の差は今までの延長か、それとも新規アイデアの差かね?」

「どうだろうね? 彼女も言っていたが、完全な新規アイデアであればまるで変わって居たかもしれないよ」

 最終的にヅダが僅差で勝った後、暴走を迎えて危険状態に成る。

だがコレはフォース戦であり、緑のヤクトドーガならば追いつける範囲だ。

 

アイデアが固まって居ないことで、熟練度の差で決着が付いたのであろう。

もし出力やエネルギーロスを覚悟の上で、スーパーモードも併用して居たら逆転していたかもしれないのだ。

とはいえ互角であり、二人の差は若干であるとも思われた。

 




と言う訳でプラモの方に別アバターを作ってみました。

今回は感想欄にあったネタを元に、信頼性の怪しいパーツなどを導入。
(コスト制ミッションなどに、直ぐ壊れる裏ルート装備など)

せっかくなのでV2の兄弟機を出してみました。

●追加機体
『ガンダムV2バアルゼブブ』
 メソポタミアの神バアルゼブルが、キリスト教徒などにバアルゼブブと蔑称された事を元に、別装備のバリエーションを作成。
実際には兄弟機として、フラッシュシステム対応型のバアルゼブブを作成した。
(いわゆる、蝿の王ベルゼブブのこと)

 能力はトップリム・ボトムリムを連れておき、パーツを自在に交換すると言うモノ。
イメージ的にはターンXをフラッシュシステムの制御を使う事で、V2で再現したと言っても良い。
フラッシュシステムでの残機は小規模フォースの事情にもあい、彼には有って居る。
装備を自在に調整できるとか、やられてもやられても立ち上がれると言う意味では彼の性格にもあっていたらしい。

とはいえ装備も組み換えで合体と言う、男の子のロマンを求め過ぎて失敗。
装備の増やし型をもっと意欲的に変更するとか、スーパーモードも同時併用したら勝って居たかもしれない。
(なお、システムを2つ併用すると、他のモノが搭載できなくなるので、躊躇っていたらしい)

『高機動ヅダ・ブラウシューペリアver.2』
 高性能な代わりに使い続けると暴走する試作型土星エンジン。
そして阿頼耶識を搭載することで、その制御を完全な物にしている。
機体制御サイコミュと違って時間制限はあるが、速度は変わらないので採用したらしい。
通常時の制御が難しい? そんなモノは慣れれば大丈夫と言う力業である。
かなり無茶な機体設定ではあるが、熟練度をそのまま活かせるので、今回僅差で勝利した。
跳ね馬状態の制御も、そのうち乗りこなして見せると豪語して居る。


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スペードの女王

●大規模戦闘

 そこは雪に閉ざされた寒い国だった。

雪国にはちょっとした噂と真実が混在する。

 

例えば出歩けないからこそ、冬場に可能な趣味にはお金を掛けるという。

集会所の類も雪の重みと寒さに耐えるため、堅牢でセントラルヒーティングも充実して居る。

 

他にも寒い国では、畑で兵隊が獲れるという。

それはガンプラに置いても同様だった。

 

「K! 全レーザーリンク、同期しました!」

 ピコーン!

闇の中でジェガンの頭部装甲が開かれ、バイザーが明滅を開始する。

指向性レーザー通信機がむき出しになっており、味方機との情報リンクを行っているのだろう。

見えない位置に居る筈のフォース全機のマーカーを捉えた。

 

「おっぱじめるよ! 我らがツアーマスターに勝利を!」

「「「我らがツアーマスターに勝利を!」」」

 照明を灯して居ない民の中……工場かドックらしき場所。

そこで無数の明滅が起きる。

闇の中で一つ目巨人が唱和したかのように。

 

ドン! と爆音が聞こえたかと思うと巨人の群が飛び出した。

それらは全てジェガンで構成されており、識別用にスペードの紋章がある。

更にその全てが、不整地用のダッシュローラーで高速機動を行っていた。

 

戦闘で砕けたアスファルトを物ともせず、町中を進軍し始めた。

 

「敵機来襲! 先方はタイヤ付きです!」

「よりにもよってアインラッドか!?」

 望遠カメラで捉えられた画像が指向性レーザー通信で配布された。

タイヤ型のSFSに搭乗したモビルスーツが町を目指して疾走して居る。

 

「うろたえんじゃないよ! 空から降ってくるビルゴよりもマシさ!」

「HAHAHA! 確かにあの程度!」

「それは傑作だ。インフレに感謝しましょう!!」

 同じNPC軍団でも能力傾向に差が存在する。

 

移動力と防御力を兼ね備えたアインラッド。

数が増えることで強化される特性を持つ、絶大な防御のプラネイト・ディフェンサー。

どちらが手に負えないかといえば、精鋭であるジェガン部隊にとって後者の方が厄介だった。

 

「当らなければ良いって事は、当てれば倒すのは可能って訳だ。B1とB2をサポートしな!」

「「了解!!」」

 大女のアバターが指示を出すと、ジェガン隊が数機一組で射撃戦を開始した。

回避を重視した軌道で移動し続け、相手の動きを阻害しつつ味方への経路を邪魔しに掛る。

 

彼ら歩兵役のPナンバーに変わって、突破役を担うのはBを記した二機。

 

「俺がヴェズバーで道を拓く! てめえは突喊しな!」

 アインラッドは強固だが、それでも昨今のインフレ火力ならば上回れるし、横合いは弱い。

側面を守るビームシールドは飛行用のビームローターよりも厚いが、突破できない程ではない。

 

それをプログラムされているからこそ、敵も編隊移動で互いの死角を補い合っていた。

前後を守るタイヤ部分は、それこそ火力特化ではないと破壊できないからだ。

 

「B2からの砲撃を確認。B1、突撃しまーす!!」

 F91をモデルにしたジェガンが分厚いビームを斜めに放つ。

流石に正面は貫けないが、側面に振れた瞬間にビームシールドを叩き割った。

 

それで倒し切れる訳ではないが、その隙をついてクロスボーン系をモデルにしたジェガンが突撃を掛けた。強烈なランスチャージで移動力を攻撃力に変換。圧倒的な攻撃力で貫通したのだ。

 

「B1の後退を援護する! 全機弾幕を張りな!」

「統制射撃を開始します!」

 濃密な飽和攻撃がアインラッドに見舞われた。

損傷して足を止めている事もあり、むき出しになった中のモビルスーツへと火力が集中される。

 

次々に叩き込まれる攻撃で二機が大破し、その間にB1は悠々と後退を果たした。

 

「B1、今の内に穂先を変更しときな。アインラッドは壊れた刃で何度も倒せる相手じゃないよ」

「了解です! ランサー脱槍!」

 バンと音を立てて、B1が持って居たランスが弾ける。

ヒビの入った穂先が外され、中から真新しい部分が顔を出した。

 

アインラッドは他にも居るし、数で押し込むには彼らの活躍はまだ必要なのだ。

 

「R2! 他の部隊はどうなってる!!」

「以前として通信は途絶した場所が多いですが、一部で回復して居ます!」

 他の部隊……。

おそろしい事にソレは別のフォースではなかった。

 

大女がKを務めるこの部隊とは別に、同胞たちだけでチームを組んで居るのだ。

ヌーベルGMⅢやハイザック……それも関節部を共通規格された、恐るべき大集団である。

識別用にクローバー・ダイヤ・ハートの紋章が記され、トランプにちなんでいると思われた。

 

「ピピニーデンが出る前に落としたんですかね?」

「知るか! こっちもチンタラしてられないよ! さっさと片付けて母艦のモトラッドを叩く!」

「「了解です!!」」

 Vガンダムのキャンペーンを同胞だけでこなして行く。

NPC部隊が補修ルーチンを開始する前に、彼女達は損傷パーツを融通し合って進撃して居た。

 

それはNPCのタシロやクロノクルが補正できるペースではない。

このフォースは二個一、三個一を繰り返し……。

弾薬補充以外で一度も補給に戻ること無く、補修タイム無しでキャンペーンを乗り切ったのである。

 

●集団戦対策

 その記録画像を見た時、さしものトップエース達も絶句した。

ましてや今売出し中の少年少女にとって、脅威以外の何物でもない。

 

「どうかね? 彼女達の実力は」

「おっかねー。数もスゲーが、オッサンらと同じくらい強い奴らも居たぞ?」

 チャップマンを思わせる髭の紳士が画像を閉じた。

画面に表示し続けなくとも、それがどれだけの強さだったのか、少年は良く覚えている。

 

雑魚ならば無視しても気にならない。

だが彼をして、戦って見たいと思う強者が何人も居たのだ。

 

あの戦場だけではない、ジムⅢが、マラサイが、あるいは鹵獲品仕様のゲルググが居た。

雪原で、湿原で、海岸で、砂漠で。その多くの戦場を駆け抜けていたのだ。

仮にもV2ガンダムを操る少年にとって、NPCとはいえあのステージに出て来る敵の強さは知っている。

 

「個々で倒すのは苦労しませんけれど、大規模ミッションとなると面倒すわね」

「そう。倒しても倒しても立ち塞がり続けるのが厄介だ」

「ジオンも連邦相手にこんな気分だったのかね」

 ヅダを操る少女はピンポイントで襲撃が出来る。

だから大駒を落としに向かったり、逆に引き離すのは難しくは無い。

 

だが倒しても本体さえ無事ならば、倒された仲間のパーツを使って立ち上がるなどラチの外だ。

普通のガンプラであれば、大破させただけでゲーム終了なのである。

 

「我々の知っているロンド・ヘルはジェガン・ベースだが、見ての通り他の部隊も関節部など共有しているのが特徴だ」

「GMⅢと共有までならまだしも、マラサイまでというのは悪夢を通り越して笑い話ですわね」

「まさにユニバーサル規格とでも言うしかないな」

 関節部を平らにしたり延長して、同じポリキャンプなどで共有できる様にしている。

そして追加装備はパーツ共有を妨げない様に徹底されており、追加装甲なども大枠で邪魔をしないように成っている。オルフェンズ以降のフレーム構成でも参考にしたのだろうか?

 

もちろんそんな事をすれば耐久値は下がるだろう。

しかし全部隊がパーツを共有出来るのであれば、総合的な耐久値が上回るに違いない。

そして共有部分を繰り返し作ることで、ガンプラ改造のテクニックなども向上して居るだろう。

 

「ひとまず倒す事よりも、ミッション目的を攻略するしかありませんわね。当然想定して居るでしょうけれど」

「そうだね。君達に対応してもらう事に成る特務機だが……」

 まともに消耗戦をやると絶対に……ではないが勝てないだろう。

だから相手の構成を理解し、その都度、ミッション目的を先に攻略することになる。

 

しかしそれは、相手も予想している事なので難しいのは確かだ。

 

「このフォースの特徴は知っての通り、チェスの駒に成る」

「Pナンバーは前衛担当で基本的に継戦重視。機動戦のNナンバー、突撃役のBナンバー、防御役のRナンバーがミッションに応じて入れ替えられる」

「そして指揮官のキングだよな。こないだは何故かクイーンもやってたけど」

 知って居るのはジェガン・ベースのロンドヘルなので、映し出されたのはジェガンの集団だ。

 

ポーンは全てが同じ姿で、ビームライフルとシールド、ミサイル・グレネード・ビームサーベルを完全共有した歩兵群。

ナイトは縦横無尽に移動し続け、ビショップは切り込み役として機能して居る。

最後にルックが防御および、予備指揮官を兼ねているらしい。

 

「あら……同じナンバーでも装備は違いますのね」

「さすがに昇格した連中まで統制させるとエースが育たないと言う事だろうね」

「駒の機能通りの能力で構築されているのが1、解釈の範囲で違う武装なのが2と言ったところか」

 ポーンが1だろうが8だろうが同じ姿なのに対して……。

ビショップは1がランス持ち、ルックはIフィールドと能力そのものを純強化して居る。

対して2の方は、ビショップは狙撃力であり、ルックはレーダーや指揮能力を強化して居た。

 

「予想し易いってのは敵も味方もお互いに把握し易いって事だよな。んーこいつらと戦う感じか」

 少年は自分のV2でランス持ちのジェガンや、ヴェスバー持ちのジェガンとの戦いを思い浮かべる。自分ひとりで切り込んだり、ここに居るメンバーに合わせて戦い方を切り替える姿を想定して居るに違いない。

 

「と色々と彼女たちの脅威を示して来た訳だが、次の『ゼダンの門』では協力してもらえるかな?」

 大規模戦闘ミッション、ゼダンの門。

それは小さな部隊を複数登録する事が出来、一定数まで好きな陣営に集合できる乱戦だった。

 

シロッコ隊やバスク隊、連邦軍本隊。あるいはエウーゴにアクシズ。

そういった陣営の間の移動が可能で、場合によっては味方を倒してもポイントが入ると言う混線だった。

これに対してロンドヘルが参加すると聞いて、今回の会合に成ったと言う訳である。

 

「あいつらだけをフルボッコにするなら断ってたかもだが、あいつらの方が多いなら構わねえぜ」

「わたくし達がエウーゴということかしらね」

 こうして彼らは集団戦の専門チームと大規模戦闘を行うことになる。




 と言う訳で集団戦用のフォースの解説会です。

 ロシアン・ビューティだった(過去形)の大女さん率いるロンドヘル。
彼女の御仲間である他の部隊。全員がロシアなど寒い国のプレイヤー。
ちなみにツアーマスターというのは別に皇帝と呼ばれるチャンピオンではなく、私有の筐体とサーバーを提供してくれた御爺ちゃんらしいです。まあ本当にチャンプが居て「まさか皇帝!?」とかやても良いのですが。

●構成
 作中でも述べて居ますが基本的にチェスの駒を元にして居ます。
規格統一しているのは慣れるためと、普段は身内サーバーで遊んでる訓練中メンバーだから。
一人で遊びに行きたい時は、ナンバー無しで普通に遊んでいるそうです。

『ポーン』
 戦闘の練習とガンプラの練習を兼ね、一緒にワイワイやってるメンバー。
慣れて来ると卒業して、他のメンバーにプロモーションできます。
このPナンバーは普段、身内サーバーで愉しんでる層です。

・他のメンバー
 規格統一され戦術さえできれば、改造パーツは何でも良い。
ただしモチーフが何なのか、などの説明は求められる。
基本はイメージ通りの戦闘が1、そうでない物が2の番号を割り振られる。

『ナイト』
 機動戦主体の改造。
フライングパーツやデンドロビウム、シュツルムブースターやSFSまで広範囲。

『ビショップ』
 突撃戦仕様のメンバー。
高速機動を掛けて突っ込む者が1に成る可能性があり、普段はナイトを割り振られている者も多い。
狙撃やファンネルなど、広範囲の攻撃を持つ者も居るとか。

『ルック』
 防御を主体として、指揮官候補になっている。
重防御が1で、レーダーや指揮力強化などが2に成る事が多い。
消耗戦・大規模戦闘主体のフォースゆえに、ルックを経験してキングへと昇格する者も多いとか。
(機動戦闘主体のフォースだと、ナイトやビショップ上がりも居おるが)

『クイーン』
 万能型のことを指すが、チェスで昇格すると大抵はクイーンになるので、判別できない物はとりあえずクイーンとも言われる。
器用貧乏だとかその他扱いされる事もあるが、万能では収まらないトップエースである場合も稀にある。
1話と今話でキングを務める大女の人は、このタイプであった。

『キング』
 言わずと知れた指揮官。
全体把握と指揮が出来ない人はキングになれないので、指揮官ポイ事をしたいだけの人は、ルックのまま昇格せず分隊指揮官をやっているらしい。
なお大女さんがそうであるように、指揮さえできていれば、他のナンバーを兼ねて居ても問題は無い。
(というよりも、普通のミッションでは同じフォースに十機までしか出れないし)


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勝利への道筋

●戦術予報士と発想の転換

 大規模戦闘ミッション、ゼダンの門。

Zガンダムにおける最後の戦いをモチーフにした、軍団戦である。

 

常であれば挑んでスコアを稼ぐだけでも良いのだが、今回はフォース単位で構成された厄介なレイド集団が居るのが問題だ。

 

「同じ配属だったら馴染みの所に声は掛けるとして、もう少し戦力が欲しいところだな」

「それもそうだが、問題なのは我々に合わせるかどうかではないかね?」

 ヤクト・ドーガを操っていた貴族風の青年アバターと壮年の紳士風アバターが話し合う。

 

「当然、合わせるべきですわ。数だけならば当日の配属メンバーだけで良いでしょう。同等の力を持たねば思い切った作戦も難しいでしょうね」

「ゆえに問題だね。君たちは我々の行動についていける知人がいるかな?」

 ヅダを操っているお嬢様はつーんと突き放したが、解答に詰まった。

孤高のプレイヤー系のタイプゆえに友人が少ないのもあるが……。そもそも彼女たちのレベルを前提にすると少ない友人が一気に減ってしまう。

 

「せ、戦術予報士でしたら? ……そちらはどうですの?」

「あー。戻って来てたらだけど、ねーちゃんが一応な」

 V2ガンダムを操る少年は言い難そうにウーンと唸る。

家族に同じ趣味の者が居るのは羨ましいとも言えるし、逆に肩身が狭いのかもしれない。

 

「君が対人訓練をして苦戦するレベルという事で間違いないかな? 差し支えなければ機体を教えて欲しい」

「キュベレイをモビルアーマーにしたような感じの奴? だーっと移動しながらファンネルをばらまくんだ」

「ゲー・ドライか。珍しいね」

 近藤版漫画に登場するエルメスとキュベレイの中間にあたる機体。

それがG-3、通称ゲー・ドライだ。

 

ショルダーバインダーやファンネル・コンテナが大きいキュベレイと言った風情である。

キュベレイの飛行形態は翼を広げて手足を縮める程度だが、ゲー・ドライは折り畳みエルメスの様に成る。ガレージキットを作るか、あるいはキュベレイからの改造になるので、基本的には珍しいガンプラだと言えるだろう。

 

「あら。今回の戦いに丁度良い戦術パターンじゃありませんの。どうして黙っていらしたの?」

「いやー。仕事もあるし……性格に難があってな。っていうか、お前の知り合いこそなんで戦術予報士なんだ? フツーはビルダーだろ」

 あまり話したくないのか劣勢と見た少年は咄嗟に切り返した。

行動するに際して能力レベルを基準にしようと言ったのは少女の方で、友人が少ないにしても、ビルダーならばガンプラを持っているだろう。

 

「戦闘レベルで妥協したくないから、基準に達してないと言っておりますのよ。その代わりに、戦術眼はよろしいのですけれどね。見たままなので会えば直ぐに判りますわ」

 そういって少女はフレンドリストからその人物を呼び出した。

それほど多くないフレンドなので、一覧を見ただけで一目瞭然だ。その姿とは……。

 

 

「数を呼ばなかったのは正解だな。戦いは数といったドズルの言葉が基本じゃあるが」

「……」

「……」

 出逢って暫くの会話は沈黙したままだった。

相手の言う事をそのまま頷くくらいで、向こうもまた判っている範囲を再確認しかしようがない。

 

「コーラサワーに年を取らせたような……」

「本編に関わらず、アラビア方面でもう十年か二十ほど歳を取ったらこう(・・)成りそうだね」

「あー。むちゃ判る」

 もしコーラサワーが地方に派遣された後に戻ってこないとか……。

マネキン大佐と出会わずに苦労し続けて性格が丸く成ったら、こんな風になるのではないかと言った風情だった。外見的には髭面にターバンなどアラビア地方の装束が印象的である。

 

「どうしたんだ?」

「いや。何でもない」

「そうそう。頼もしそうだと言ってたんだよ」

 コソコソと内緒話をしていた一同に対し、彼は非常に照れ臭そうだった。

あまり頼もしそうと言われたことがないのかもしれない。とりあえずヒゲは似合わないから止めろとは言いたくなったが。

 

「しかし基本的にはと言ったね? ではどうして少数精鋭を求める?」

「決まってんだろ。同じことをやっても勝てやしねーよ。それに連中自体が集団戦で有利に立つ方法を良く知ってるからな」

 そう言って戦術予報士の男は幾つかの動画を挙げた。

どれも集団戦だが連中が相手チームになっているものばかりだ。実に上手い立ち回りで、しかも消耗戦特化型なのでまず負ける事がない。

 

「とはいえ数で無理だから精鋭ってのは安直ではないかね? 相手も予想して対抗策を出すだろう」

「それはその通りだ。だから一枚上手の作戦と集団機動を行う。精鋭なら可能だが、逆に言えば雑魚の大集団じゃあ逆立ちしても無理だ」

 今度はジオン水泳部での上陸戦や、モビルアーマー中心の戦術レースだ。

連中も水際対策をしているが全機が水陸両用の水泳部には劣るし、高機動にシフトしていても流石にモビルアーマーの大集団にはかなわない。

 

こういった統一性、特殊性、高度な戦術。

全てを兼ね備えるのに少数精鋭ならそれほど苦労はしない。だが複数チームでは足並みを揃えるのも一苦労だろう。

 

「00のガンダム・マイスターは強いが、最初は連携が取れてもねえしコンボを持ってるわけでもねえ。だがお前らはソレを用意できるとしたらどうだ?」

「はっ! いいねえ。刹那やロックオンを越えろと来たか!」

「腕前だけならまだしもですけれど……。それ以上のチームワークというのが難点ですわね」

 言い出した対処策はかなりの無茶振りだった。

登場人物に数あれど、ガンダム00のマイスターたちはみな凄腕だ。職業軍人以上のエキスパートである。それを越えろという時点で無茶苦茶だろう。

 

だがしかし、それに近い所までいけたらどうだろう?

劇場版まで辿り着けというのは無理でも、初期マイスターくらいならいけそうな気がしないでもない。

 

そしてそれだけの腕前を持ったうえで、巧みな連携を熟せるならば……。

集団戦特化のチームなど一ひねりで粉砕できそうではないか!

 

実際にそこまでのチーム、それを運用できるほどの戦術予報が可能かは分からない。

だが、一瞬でダウナー気味だった気分を吹き飛ばせるだけのビジョンを示せる予感を感じさせた。

 

「では仮にそうするとして、まずはどうしたら良い?」

「そうだな。GBNならではという手法を取る。てめえら機体交換して仲間の癖を知りな。それと他人が使った時の良い所があればそれも覚えとけ」

「機体を渡せと?」

「まあデータだから可能といえばだけどよお」

 それは同じガンプラを使ったゲームでもGBDでは難しいことだ。

アレでは壊れてしまうし、そもそも目の前で出会わなければならない。だがGBNはデータ上のやり取りなので、許可さえ出してしまえば簡単だ。

 

だからといって自分の愛機をホイホイと渡せるだろうか?

それでなくとも弱点なども知られてしまうし、恥ずかしい部分もある。

 

「どうせ終わったら一回り上の機体にバージョン上げるから気にすんな。ここで必要なのは、仲間がどの程度の攻撃なら巻き込まれても大丈夫か。そして独特の動きができるか知ることだぜ」

「なに?」

「同士討ち上等で行くのかよ!?」

 驚いてしまったがニヤリと返されたのは狙っていたのだろう。

思いもかけない事であり、そこまでやるかという気持ちと、確かに有効だという気持ちの両方があった。

 

同士討ちが起きかねないレベルのコンビネーションを覚え、そのために期待を交換してまで速度や射程を把握する。

そのレベルの連携が取れるなど相手も予想していないだろうし、仲間とはいえ知られてしまった以上はガンプラのデータを一新するのだ。

 

「そこまでやれば相手の妨害よりも有効に動ける。連中こそ一手無駄にして、こちらは予想外の動きができるって寸法だ」

「……どうする?」

「……どうするも何も後はやるか、やらないかですわ」

 最初に紹介された時、説明を渋ったこと、そして戦術予報士と言った意味が良く判った。

行っていることは無茶苦茶だが、いあっまで勝てないと思っていた相手に勝てる気がしてくる。いや、確かにやり切れば勝てる可能性はそれなりにあるはずだ。

 

「頼んだのこちらだ。前向きに応じよう。その上で、改造と言ったね? ひとまずどんな改造を?」

「せっかくだし、てめーらのやってることを混ぜちまおう。チーム戦が終わってからは別の改造にするとしてだ……」

 戦術予報士の男はみなのデータと動画を一瞥する。

そして最初にクリックしたのはV2ガンダムである。

 

「坊主のバアルを完全なものにする。フラッシュシステムは搭載せずに、機体を自由に組み替えれるようにするんだ」

「そんなこと可能なのかよ? そりゃシステム搭載せずに組み替えれるなら最高だけどさ」

 子供扱いされたのに思わず関心の方が強かった。

光明が差したと言っても良い。せっかく思い付いたが合体メインのバアルゼブブではスーパーモードを搭載できないので弱くなるのだ。搭載せずに直接戦闘に専念できるならば確かに強化もされよう。

 

「パーツを用意するだけなら、別に坊主が自分で用意しなくても良いだろ? お前のねーちゃんがゲー・ドライなら猶更都合が良い。俺に任せときな」

「なるほど。我々のファンネルによる弾倉交換と同じ方法か」

「それは盲点だったね」

 ヤクト・ドーガの二人組は太陽炉を改造してファンネル扱いにしている。

その方法で異常な出力を抱えているのだが、確かに同じ方法でトップやボトムの交換を制御してはいけないという理屈はないのだ。

 

「坊主のねーちゃんのブースターとして、トップかボトムの組付け易い方を合わせる。その上でSFSとしてもう片方を用意すりゃ構うめえ」

「でもさ、それだとスーパーモードの他にサイコミュ要るぜ? そりゃフラッシュシステムよりは軽いけど」

 モデルとして使われたのはギャプランの大気圏離脱ブースターだ。

こんな感じでゲードライの戦闘パーツ・移動パーツとして戦場に持ち込み、切り離して利用するのだとか。同様にGアーマーを参考にした、SFSの強化パーツとして用いれば無駄にならない。

 

「任せろって言ったろ。そこは何とかするさ。ていうか、どうせ改造終わるのは先だし、機体交換の訓練に模擬戦闘しようぜ」

「マジに何とかなんだろうな? とりあえずねーちゃんには連絡いれてるけどさ」

 

●バディ戦術

 こうして模擬戦闘が行われることになった。

場所はテキサス・コロニー周辺。まずはV2とヅダのペアと、戦術予報士・姉のペアだ。

 

「ねーちゃんのはファンネル主体だから中に入って待とうぜ」

「それは構いませんけれど、予測されているのではないかしら」

 確実に予想されているだろう。

だが宇宙空間で多角的な攻撃をされると面倒なことになる。それを考えればコロニー内の方が楽に戦えると思われた。

 

「はっ! 罠なんかは待って噛み潰せばよいんだって!」

「いつもならそうするところですけれど、私たちは今、機体の交換をしているんですのよ?」

 本来ならば二人とも突撃するタイプであり、宇宙を飛び回る方が得意なはずだった。

それが相手の事を対策仕様だとか、警戒しようと消極的なのは、機体を変えているせいだろう。

 

同じ高速移動型であっても、直線移動型のヅダとバランス型のV2では違い過ぎる。

戦い慣れない事、そして自分に自信が持てないことが大きな問題だったのかもしれない。

 

もちろんそれぞれ機体データを渡された時点で、可能な限りの改装は行っている。だがあくまで武装やシステムの変更くらいなのも影響が大きいだろう。

 

「あっ……あの姿は」

「フフフ。ならば外からサテライト・キャノンでも撃ち込めば良い物を」

「出たなねーちゃん! 二対二の決闘にそんなデカブツ砲を持ち込もうなんて、ねーちゃんくらいだよ!」

 砂塵の向こうより現れたのはキュベレイをベースにしたと思わしき機体だ。

まるでクシャトリアのように巨大なバインダーを広げて、空を飛びながらこちらに向かって来る。

 

「だから貴様は阿保なのだ! アホウとは本来、阿呆。途方もないという意味であることを知れ!」

「何言ってるか分かんねーよ!」

「……」

 通信を開いてアバターで語り掛けてくるが、その姿も異様だった。

黒を基調とした軍服を着て、まるでオーケストラのコンサートマスターの様に指揮棒を振るっている。

 

指揮棒が揺れるたびに、ファンネルが射出されて包囲網を作り上げていく。

だが無謀にもヅダはその中に飛び込んでいく! いや、遠距離戦は確かに不利だ。白兵戦で早めに決着を付けようというのか?

 

「先手必勝! スーパーモードだ! おい、どうした。いくぜ!」

 黄金色に輝くヅダは、猛烈な火力でファンネルを焼き払いながら進んでいく。

どうやらヅダというよりは、下半身を構成するサイコミュ試験型ザクに近い設計に戻したらしい。手足からビームをサーベルのように固めて薙ぎ払ったのである。

 

「はう……。お姉さま……素敵ですわ」

「こりゃ駄目だ。援護くらいはしてくれよ」

 遅れてV2もスパーモードで追いかけるが、先ほどのアバターに夢中な模様。

少年の方も慣れたもので、V2にもう一機の索敵とガードを任せて突っ込んだのである。

 

「判ってる中に飛び込むにゃ、ちょっと油断が過ぎるぜ! もうちっとマシな策を練ってきな!」

「赤いサンドロック……いえこれはEZ8ですか!? それに陸戦ガンダムベースのマグアナック隊まで!」

 砂漠の中から奇襲をかけてきた。

すかさずV2が援護に入るのだが、あまりにもその砲撃数が多い。

 

「そんな。この数の砲数。フラッシュシステムとしても多過ぎますわ」

「フラッシュシステムだけならな! それとこいつら外伝のスコーピオをモデルにしてるんだぜ。ついでに俺のもだ!」

「プラネイトディフェンサー!? くそっ。生半可な攻撃じゃ通らねえ! どうなってやがんだ!」

 砂の中から次々に現れるディフェンサー。

集中砲火はともかく牽制攻撃などまったく通りはしない。男は戦術予報士としてなら一流と釘を刺されるだけであって、大して強くはないがその作戦は見事に嵌っていた。

 

マグアナック隊風のコンセプトだが、実質スコーピオでありソレはビルゴに近い設計だ。

プライネイトディフェンサーで守りを固め、ビームソードで切り込んで来る。もちろんライフルも用意しているので射撃も馬鹿にならなかった。

 

「どうした愚弟! そこまでか!」

「ちくしょう! ねーちゃんだけならそれほど倒すのは難しくないってのに」

「こいつがチーム戦っていう事だ。ハイドボンプを用意してないだけ親切に思いな!」

 ファンネルをディフェンサーが守り、それを潰すには火力を集中しないといけない。

スーパーモードならばそれも難しくはないが、あくまでコレはビームの向きを集中させているだけだ。どうしても一か所だけを潰すことになり、多方面から集中砲撃を受けてしまう。

 

かといって牽制攻撃を繰り返しても、ディフェンサーの防御幕で開いての攻撃が中断されるだけだ。どこかでジリ貧に成ってしまうだろう。

 

「おい! アレを使うぞ!」

「おいはないでしょう。おいは。私にも名前が……。まあそれは後にしましょう。今は有象無象を叩き潰す時ですわね」

 ヅダとV2が隣り合い、高速機動をかけながら回転を始めた。

背中合わせに回転しつつ、周囲を再び薙ぎ払い始めたのだ。

 

「風神! 覇王!!」

「雷神! 覇王!!」

「「電影弾!!!」」

 ビームの光に包まれながら両機は突撃を掛けた。

二機の火力を集中させることで、薙ぎ払いと貫通を同時達成したのである!

 

「そうきたか! だがしかし。こいつが防御主体ってことを忘れてんじゃねーぞ!」

 赤いサンドロックはシールドと硬化マントを構え、マグアナック隊ともども我が身を盾にしながらカバーに入った。

同時にテイルブレードを使って二機の連携を邪魔する。これぞまさしく蠍の尾というべきか。ているブレードがショーテルなのはサンドロックらしいが。

 

「ふっ。双方見事。敗北したとはいえあれだけ絶望的な状況から良く立て直した!」

「ねーちゃん何もしてねーじゃねえか」

「いんや。お前のあねさんはNT-Dで俺の用意した機体をジャックしてたのさ。こっちはただの囮ってやつだ」

 最終的に数の問題と、防御を固められたことで敗北した。

外に出ていれば勝てたかと言われれば、奇襲がない程度で勝てると断言できないのが残念なところだ。

 

「まあ。お姉さまのコント-ル数は凄まじいですわね」

「フフフ。子猫ちゃん。私はあくまでグループをひと固まりで配置しただけさ。よく見れば同じ行動しかしていないと判っただろうね」

「だからこそ俺が囮になって……。って聞いちゃいねえ」

「いつもこうなんだよ。ほっといて改造とかの戦術の話を始めようぜ」

 和気藹々と話し続ける女性陣を尻目に、男性陣は次なる戦いの為に話し合い始めたのである。

 

ただ一つだけ判ったことがある。

難しいと思われた大規模ミッションに、手が届いたような気がした。




という訳で前回の続き。

パーツを共有したチームに対抗し、数ではなく精鋭による連携を行う事にしました。
同レベルの仲間だけなら特殊な連携や、特殊な行軍も可能です。にわかチームの数を揃えるよりは、無茶な作戦を実力で通そうという感じでしょうか?

●ガンダムVZ
 フラッシュシステムとNT-Dを使って、サイコミュ制御のトップパーツ・ボトムパーツを操る方向にシフト。
本体はあくまでスーパーモードで機体強化だけを行うので、パーツの組み換えと言う利点を取り入れつつ、戦闘力は落ちなくなった。

今回はお嬢様が操り、本来のスーパーモードと同じく速度・火力・防御を全て上昇させている。
少年の方は攻撃と射程にガン振りして、超巨大サーベルを作るのとは少しバリエーションが違う。

●高機動型ヅダ
 サイコミュ試験型ザクの装備に寄せて、ビーム兵器主体に。
そしてスーパーモードを搭載して、大火力化を果たした。代わりに継戦能力は劣化したが、短期決戦で強力な機体と言う方がヅダっぽいのであまり気にはしていない。

今回の目玉はV2と並んでスーパーモード化しつつ、二機のビーム発生位置を共有化することである。
このことにより、ドモンと師匠の電影弾なみの火力が出る。

G-3(ゲー・ドライ)
 エルメスとキュベレイの中間にあたるモビルアーマーだが、プラモとしては発売されていない。
そこでガレージキットを作るか、改造するかなのだが、キュベレイのパーツをメインに使っている。
今回はNT-Dがサイコミュジャックや暴走を、無理に行わなくても良いという利点を使用。
フラッシュシステムと共同で、持ち込める最大数の機体とファンネル・ディフェンサーを操った。

●ガンダムサンドロック・スコルピオと、マグアナック隊スコルピオ
 サンドロックはEZ8で、マグアナック隊は陸戦ガンダムをベース。
赤いサンドロックには増加装甲とテイルブレードが設置されている。
このテイルブレードはショーテル状になっており、シールドの上から攻撃可能。そういった部分も含めて蠍がモデルである。
ゼロ・システムは積まずにフラッシュシステムとサイコミュを搭載しているが、どちらかといえばNT-Dでコントロールされるための物。

マグアナック隊の方は外伝のスコーピオをモデルに、プラネイトディフェンサーを装備。
というよりも、装備の輸送装置・中間装置という意味で、むしろマザーファンネルに近いといえる。
指示された事しかできないので、戦闘力としては実は弱い。


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勝利へのカウントダウン

●ゼダンの門攻略戦

 かつてアバオ・ア・クーと呼ばれた大要塞。

そこに居たのは悪夢の軍団だった。統一された意匠ならぬ装備を付けたファランクスだ。

 

四肢のパーツが規格化されているのはいつもの事だが、今回はもう二つ問題がある。

一つ目はビーム攪乱幕が撃ちまくられ、二つ目は……全機がゼク・アインや陸戦ガンダムをイメージしたコンテナを背負っている事だ。

 

「な、な、な。なんじゃそりゃ!!」

「ふざけんなー!!」

 攻め手側のプレイヤーから怒号と共に、サテライト・キャノンやメガ=バズーカ・ランチャーなどの強烈な攻撃が放たれた。

それもそうだろう。一定時間まで防御側が有利に作られたシナリオなのに、それを助長し、その後の変遷を無力化するような構成になっているのだ。

 

それも気を利かせた一部の連中ならば良い。

だがロンド・ヘルを含めたあの軍団は、配属された殆ど全てがソレを実行している。ただの連合部隊ならば不可能な協議と編成を、身内の利点を活かして平然と実行されては腹も立とう。

 

「しっかしスゲーなあ。言った通りじゃん」

「当たったそのものは大したことねーよ。数の利を活かすにゃ手段が限られる。幾つか考えたが、あの辺が妥当なところだろうさ」

 連中がティターンズ・サイドや連邦中立派を選択するのは簡単に予測できる。

ビーム攪乱幕も自分たちがビーム主体に組み替えたので、懸念事項から考えはした。だが男は敵全員のコンテナ装備までは予想しており流石と言うべきか。

 

「その幾つか考えた案の一つでしかないしな。こっちとしては味方がいきなりブッパすることまでは読めんかったのが残念だ。まあ向こうも対抗したからトントンだが」

 先ほど攪乱幕を突破するサテライト・キャノン等が撃ち込まれた。

直撃すれば相当なダメージになるはずだが、これに対抗する形で内側からも撃たれて威力は大きく減衰している。当りはしたもののそれほど影響は期待できないだろう。

 

「重要なのはそんな事じゃねえ。こっから連中がどう動くかってことだ」

 そこまで行って男は重要なことを説明する。

ここまでの流れは当たっても当たらなくても、それほど意味のない物。あえて言うならば相手の切り札や詳細に対して確信が持てた程度だ。それこそ戦いが進めばどこかで判ったし、複数の予想を立てていたので外れることもあまりない。

 

「連中の装備からして選択肢は二つ。当り障りのない方は、このまま縦深陣を構築して撃ちまくるだけ」

「なるほど当り障りない。では君の予報は違うというのだね?」

 予め打ち込まれたデータMAPは二枚分。

そのうちの一枚は防御は要塞に頼って消耗を抑え、容赦ない攻撃で終始優位に立つというものだ。攪乱幕までは予想していないが、その分防御力は足されるだろう。

 

「まあな。こいつはカン(・・)だから補正でしかねーが。……そんなのつまらねえだろ?」

「ははっ。言えてらあ」

「品の無い言い方をしてもよろしいのでしたら、チキン過ぎますわね」

 有利な条件を最大源に活かすといえば良いが、とても地味な戦いだ。

戦機を自分で作ることもなく、相手が芸なく地味に攻めてくるならば確実に勝てる。攻め手が特殊な作戦を用意するとしても、先ほどのサテライト・キャノンの様に対策チームが居れば対処は早い。

 

だが、それはハッキリ言って面白みもないのだ。

生死を掛け権力奪取が必要な原作とは違う。消極的過ぎると思う者は多いだろう。

 

「それでなくともこのイベントには、アクシズの衝突やグリプス2の八社がある。俺だったら要塞に籠って心中なんて真っ平だね。だから連中は多分こう来ると思うぜ」

「これはまさか……」

「逆包囲って……嘘だろ」

 男の戦術予想は大胆なものだった。

敵陣は交戦序盤でゼダンの門を放棄。一部が足止めしている間に攻め手側を包囲して、内外からの攻撃で殲滅するのだ。

 

「弾薬やら予備兵装を背負ってるなら別に構わねーだろ? それに攪乱幕やI・フィールドなんざ実弾系の敵にはなんの意味もねーからな」

 だが逆包囲を掛ける段階で、ビーム主体のフォースを中心に攻めれば話は別だ。

優位どころか一方的に戦えるし、数さえ減ればその後の包囲戦で圧倒することも難しくない。

 

問題はそんな作戦を徹底できるはずがないという事だが……。

目の前にいる連中は、殆どが同じチームに属しているのである。

 

●罠は嵌って噛み潰せ!

 細かい推移は別にして概ね予報通りに進んだ。

アクシズ衝突まで要塞内に留まっているはずの部隊が直撃前どころか、遥か前に打って出たのだ。

 

「うわあ!? 敵機多数。至急、来援請う!!」

「またビームが効かなくなったぞ! ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!」

 再び放たれるビーム攪乱幕。

さらにビームコートやI・フィールドを搭載した機体が前衛に立つことで、ビーム主体で戦っていたフォースを蹴散らしていく。

 

「既に敗走中か。これを支えるのは難儀だろうが……それどころか無視して逆行しろとは無茶をいう物だ」

 予報に沿って建てられた作戦は単純なものだ。

相手の策をスルーして状況を固定した後、混乱する味方を肉壁にして有利な位置を占拠。後は相手が想定している流れを逆用して鴨撃ちするというだけだ。

 

「さて。優先目標は……あれか。見つけたぞ」

「了解。指定時間後にGNバズーカを発射する。気を付けてくれたまえ」

 まずは二機のヤクト・ドーガが先行。

高機動型の一機が戦場の中から問題のある機体を選定。それを報告しつつ可能ならば排除する。無理ならGNバズーカで周囲ごと薙ぎ払う構えである。

 

「R2! 敵だ! こっちに向かって来るぞ」

「迎撃します。ファンネル!」

 戦い慣れたロンド・ヘルとの戦闘。

彼らは敵部隊の中でも精鋭であり中核を担っている。今回の優先排除対象はこの部隊に二つ存在した。

 

「さすがに対応が速いな。こちらも切り札を使わざる得ないか。……トランザム!」

 高機動型のヤクト・ドーガは早い段階でトランザムを稼働。

フィン・ファンネルを排除しながら部隊を攪乱する。これで目標の半分を達成、ゆえに狙うのは隊長機のみである。

 

「トランザムの癖に相変わらずの稼働時間だよ。でも、そいつは何時まで保つかね? 残りの太陽炉はあと幾つだい!」

「全て使っても構わんよ。ここで貴様を仕留めれば有利になる!」

 味方陣営を邪魔しない程度に回り込むことで、味方を壁でありカモフラージュに使用した。

高速機動の連続で消耗する太陽炉を、次々に交換して戦場そのものを翻弄。しかし、それは時間制限付きの優位であり、相手がソレに付け込むのは当然のことだ。

 

そして状況の転機が訪れる。

彼方から膨大なエネルギーの奔流が訪れたのだ。

 

「K! 大変です。この反応はGNバズーカかと!」

「こっちの大砲はどうした! さっきみたいに撃ち返しなって言ってやりな!」

「ダメです! 先ほど別の高速機が突っ込んできており、バレルを交換するまで砲撃に対応できないそうです!」

 本来ならば全員で攻撃し、ここでロンド・ヘルを殲滅しきる予定だった。

だが序盤の撃ち合いを見て、カウンター用の砲撃を潰しに数機が飛び込んでいる。

 

「ちっ。そういう事かい! R2! まだいけるか!?」

「数器は残っていますが……。予備を動員するのは間に合いません!」

 一機目のヤクト・ドーガがロンド・ヘルを留めつつ、特にフィン・ファンネルを排除。

そこへ二機目がGNバズーカで薙ぎ払い、部隊を壊乱させることで周囲に居る部隊を押し留める作戦に見えた。

 

このロンド・ヘルは状況に合わせて動ける精鋭だ。

様々な装備を揃えているし、対応してきた数が違うから練度がケタ違い。ゆえにここ停止させる意味は大きかった。

 

「仕方ない! R1、指揮を引き継ぎな! 予備のファンネルはあたしがコントロールするよ!」

「「了解!!」」

 一同が背負っているコンテナの一部から、次々にフィン・ファンネルが飛び出していく。

移動する防壁として設置できるので、嵩張る大きさとはいえ予備を用意していたのだ。それを操るために隊長機は、内部のNT-Dを稼働する。

 

NT-Dのサイコミュ・ジャックならば連携の一手間を省いて直接防御に出れる。

それこそがロンド・ヘルの防御の要だったのだろう。GNバズーカの二射目には間に合わせて、見事に後続の攻撃を防ぎ切った。

 

「戦術予報とはよく言った物だ。面白いくらいに予定通りだ。こちらも帰投する」

「了解した。もう一発放ってから撤退する。ソレに紛れてくれ」

 ここまでの攻防は一進一退だが、全て予定されたものだ。

先んじて対応することで状況を固定し、相手の流れではなく、こちらの流れに持ち込むためのものである。

 

「こちらも帰投しますわ。やはり予報士としては優秀ですのね」

「そいつはどうも。本当なら俺も無事のはずだったのになあ。一足先に観戦させてもらうぜ」

 高機動ヅダが撤退する中、撃破された機体が爆散する。

状況は読んだものの彼の方は精鋭同士の戦闘対応できなかったので、大型砲を潰しに行く過程で倒されてしまったのだ。

 

「それにしても……。対ビームで固め、対サイコミュを用意している相手にビームとサイコミュで攻め入ろうとは、良い度胸ですわ」

 相手の予想を上回るなど早々都合よくできるはずがない。

だからこそ、今回の作戦は相手の想定を変更しない。策そのものはスルーして状況だけは固定。守りの有利さを捨てて攻め手の有利さを取った相手に対し、時間稼ぎで対応している。

 

そしてフォースとしての切り札は……。

相手が『これ以上の防御を用意するのは効率が悪い』という考えを逆用したのだ。

 

「ねえちゃん、準備が出来たってよ!」

「見ているとも。舞台の幕が上がる。いや、終わりの始まりというべきか」

 超高速で駆け抜ける二体。

V2ガンダムをモデルにしたガンダム・バアルが光の翼をはためかせながら先行。その後ろを追いかけてゲー・ドライが侵攻する。

 

たった二機。

二匹の蝶が戦場を蹂躙するのだ。これを笑わずしていつ笑うのだろうか。

 

「光の翼、最大展開! こっから大掃除の始まりだ!」

「マザーファンネル。アイン、ツヴァイ、ドライ。連続解放!」

 ビームで構成された巨大な翼が文字通り掃除を始めた。

最初は何が起きているか判らなかっただろう。なにしろ、ビーム攪乱幕が消耗し、あるいはエネルギー流で流れゆく光景など誰も見たことも探知したこともないからだ。

 

「さぁ。踊れファンネルたち。捧げよ閃光、今宵は破壊の宴なり」

 マザーファンネルより無数のファンネルが射出された。

それらが一斉に砲撃を開始し、光の帯が戦場を覆う。次々と上がる爆破によって、ようやくビーム攪乱幕が消えた事実に気が付いた者もいるはずだ。

 

「ああ。あぁ。それでも立ち向かって来るか。良いだろう。こうでなくてはね。

 弟よ! 聞こえているな!」

「判ってるさねえちゃん。ようやくオレの出番だぜ!」

 ビーム攪乱幕が消えても一撃で致命傷になりはしない。

中にはビームコート処理を行っている機体だっているのだ。精々がライフル・レベルのファンネルなど物ともしまい。

 

もちろん、そこに待ち受ける機体が居なけばという前提が必要なのだが。

 

「あんたら判りやす過ぎだっつーの!」

 バアルは光の翼やビームシールドを、全てビームサーベルに統合した。

スーパーモードによるビームコントロールにより、巨大な闘気の剣と化して立ち塞がる敵を両断する。ここまでの威力があればビームコートなどないも同じである。

 

だが敵も猿モノひっかくモノ。相討ち覚悟で放たれる十字砲火!

シールドも攻撃に回したために、避け切れない弾丸を次々に食らって少なからぬ損害を受けた。

 

「ねえちゃん。アレ行くぜ!」

「任せておけ。各パーツ分離。NT-D起動!」

 ゲー・ドライの増設ブースターや追加火器として接続したパーツを分離。

それらはサイコミュ制御でV2ガンダムのトップやボトムとして利用できるようになっており、いわゆるブーツ・アタックを仕掛けられるようになっている。サイコミュ・ジャックで短縮するのは先ほどのロンド・ヘルと同じ時短技だ。

 

「十二王方牌……」

「大車併ドッキングだ!」

 無数のパーツをぶつけながら、幾つかのパーツを使って補強。

バアルの完全復活とはいかないが、戦闘力そのものを取り戻すことに成功した。重要なのは直撃を食らっても倒されずに戦えるという事だ。これが量産機ならまだしも、エースゆえに意味が大きい!

 

「さっきビーム防御高い奴が先頭だったしな。後は楽勝だぜ!」

「ここで油断するとは未熟。未熟千万! だから貴様は阿保なのだ。奴らは集団戦のプロ。先に私が薙ぎ払っておく」

 ゲー・ドライがサイコミュ・ジャックを疑似的なスーパーモードとして使用。

繊細な位置コントロールこそできないものの、ファンネルによる射撃を束ね、高密度のビーム・シャワーに変えた。ビームコートを有する大型シールドなども残っているが、大火力で吹き飛ばし一気に翻弄していく。

 

それでも残った機体が懸命に戦線を立て直そうとするのだが……。

ビーム攪乱幕やI・フィールドが無くなったことに気が付いた各フォースが、引き返して戦闘に復帰した。

 

例え消耗戦と連携に優れた部隊であろうとも、こうなってはおしまいだ。

乱戦に突入することで秩序は無意味化した。ゼダンの門での戦いをモデルにした大規模ミッションはここに幕を閉じる。

 

「任務完了ですわ」

「いえーい!」

「ふっ……」

 ガッツポーズの代わりに親指を立てて勝利の凱歌を祝う。

所詮は大規模ミッションを有利に戦ったというだけに過ぎない。

しかし、一騎当千の活躍をしたことに満足して戦場を去った。




 という訳で大規模ミッションで引っ張ったネタの終了回です。

今回は戦術予報士がガンプラでの戦いに存在したら?
というのをポイントに置いています。

基本的にゲームですから能力に上限・下限はあります。
それとは別に発想は自由だし、負けても権力・命が奪われたりしない。
その辺を読むことができる人が、ガンプラでの予報士と言う感じですかね?

●システム的な物
『NT-D』
高性能AIおよび、サイコミュ・ジャック。
今回は後者を重要視し、強制だから敵……ではなく、味方の装備を利用。
管理権の以上とかその辺を無視して、一時的に借用としています。
まあ意味あるのはフィン・ファンネルとかくらいですけどね。

『スーパーモード』
 Gガンダムでの闘気はビームとしています。
ビームの位置をコントロールし、好きな位置・タイミングで使用。
そう考えればロボットが闘気を出す理由にもなりますしね。
このストーリーでは絞って威力を向上・幅を広げたりとかに使用。


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モーション

●最適な所作

 激戦を終えた一同は、次なる戦いに向けて調整に入った。

先の大規模戦闘で見えた欠点を洗い出し、マイナスを減らしプラスを増やしていく地味な作業だ。

 

「お姉さま。捕まえられるものなら、どうぞ捕まえてごらんなさいまし!」

「ふふふ。これは手厳しい。君の踊りは軽やかで素敵だ。しかも抱きしめれば折れてしまうのだから、この身の不甲斐なさが悲しいよ」

 高機動で逃走するヅダを追いかけて、ゲー・ドライが飛ぶ。

そしてマザー・ファンネルから射出された無数のファンネルが展開される。

 

だが逃げる逃げる。

高速なだけでなく、最低限の動きまで身に着けたヅダは時に素早く時に軽やかにビームの嵐を掻い潜る。

 

「……お前のねーちゃん。いつもああ(・・)なのか?」

「ああ。いつの間にかオレのガールフレンドはねーちゃんに夢中になるんだ。まあいいけどさ」

 その姿を見ながら剣戟が交わされる。

サンドロックに似せた陸戦ガンダムとV2ガンダムをベースにしたバアルは、それぞれショーテルやビームサーベルのモーションを確認していた。

 

一見ただの一騎打ちに見えるが、ソード・アクションを繰り返して所作を見る。

未設定だと10のフレーム(小間割り)で構成される斬撃であるとしたら、これを8くらいまで減らせばかなり変わって来る。。もちろん機体を変更した反動で10が12になっているとしたら、もはや20%どころか半分の速度で攻撃できると言っても良いだろう。

 

「問題なのは偶に夢中になるやつが居るんだよな。ねーちゃんも断らねーし、浮気性って名前の不治の病さ」

「そのうち刺されるんじゃねーか? ……次行くぞ」

 くだらない話を入れながらソード・アクション以外のモーションを確認。

バアルの変形合体中にサンドロックが割り込んで攻撃。邪魔された状態での高速立て直しを測る為、合体モーションを幾つか登録しているのだ。

 

プラモの位置を画像で記録して、そのフレーム単位で並べ直しておく。

不要な画像を取り払ったり、逆に付け足して回避しつつ合体するモーションを作成するのだ。もちろん介入で跳ね飛ばされた画像を編集して、そこから立て直すモーションも作る予定だ。

 

「うおっと。テイルブレードにも追加したのかよ」

「おう。まさかブレードが居残ってるとは思わなかったろ? そいつをどうするかも考えときな。もっとも慣れで済ませて、モーション作らないのもアリだけどな」

 サンドロックには蠍をイメージしてテイルブレードを追加している。

この先もショーテル状なのでシールドを迂回できるし、今回みたいに尻尾が猫の様に揺れるモーションで、攻撃を継続することもできる。

 

「慣れで済ませる?」

「そういう攻撃で邪魔されると判ってたら、マニュアル操作を準備しとけばいいんだよ。お前のねーちゃんもファンネルやフラッシュシステムの位置を調整してたろ?」

 モーションを作っておけばボタン操作で済ませられる。

だがボタン操作自体の切り替えも面倒だ。それこそ合体ボタンのABCという三つの動作があって、Bが最適だとしたら最低でも二度は操作が必要。もちろんボタンを全て覚えるのは前提になって来る。

 

「介入されると分かったら起動して、後は指でやるなり、視点ポインタで操作するなり好きなので調整するんだ」

「あー。あれ面倒なんだよな。とはいえモーション増やすの好きじゃないし、考えてみるよ」

 マニュアル操作には幾つかの方法がある。

指でドラッグしてその動きをトレースさせることもできるし、視点ポインタでおおよその軌道をトレースさせても良い。もちろんレバー操作やキーボード入力も基本的なマニュアル操縦の一つだ。

 

 合体・変形などは手足が外れて妙な位置に移動するなど、特殊な動きがなければモーションは登録不要ともいえる。

だがファンネルなどはこの手の操作やモーションの追加は必須になって来る。何も登録していないと相手の背後に弧を描くようにして死角を突くだけだ。迎撃に慣れれば対処もし易い部類でしかない。

 

しかし脇から移動したり足元だったり、モーションを登録しておけば簡単には見切れない。

加えて視点ポインタで動かしたり指先で動かせば、その複雑な動きも可能なのだ。一流のファンネル使いは自作のファンネルを作るだけではなく、複数の作業の中から最適なパターンで攻めるのだという。

 

「これが終わったらみんな集めて合体技をやるか相談するぞ」

「合体技? 電影弾みたいなやつ? 別に今でなくても適当なミッションで練習しながらでも良いと思うけど」

 今はモーション登録や見直しの話をしているのに、唐突な話が出た。

最初はそう思ったのだが、どうも違うらしい。

 

「モーション登録すると位置を変更したり、特定のパターンにできるだろ? ってことは、特定の位置にインコムやリフレクターを設定できるわけだ。お前のバアルがそれを利用するとしたらどうよ?」

 判り易い話でリフレクタービットを例に取ろう。

この兵装は相手のビーム攻撃を逸らす防御や、跳ね返すカウンター攻撃を行う事が可能だ。それとは別に、自分の攻撃を跳ね返して死角から攻撃したり、遠距離への到達も可能になる。

 

「あ、そっか。一人のリフレクターをみんなで使ったりできるのか。オレのバアルにビーム砲はないけど……いや、待てよ……」

 空に浮かんだリフレクタービットを狙って撃つのは簡単だが、上手く跳ね返せるわけではない。

だがモーションとして登録しておけば、それも不可能ではない。先ほど言った余計な操作が増える他、プログラムできる数は有限なので相談が必要にはなるのだが……。

 

もう一つ、遥かに重要なメリットがあった。

 

「もしかしてみんなのビームを借りて、斬艦刀みたいなのができる?」

「そういうことさ。もちろんスーパーモードを登録した機体がメインになる必要があるけど、デカブツを背負うよりは楽になるぜ」

 数機のビーム攻撃を特定の位置に調整。

そのエネルギーを束ねることで、これまでよりも強大なビームサーベルを作ることができる。一撃では倒せなかった敵も倒せるかもしれない。

 

仮に闘気のような攻撃でなければ駄目だという設定があったとしても、みんなの力を借りるというのは定番だろう。

 

シャッフル同盟拳のような、すごい必殺技ができるかもしれないのだ。




 という訳で今回はパワーアップ回です。

良くある斬撃速度を向上する修行とか、必殺技を会得する感じ。
ビルドダイバーズ初期に出て来た個人データ登録の為のアレとかに、色々登録できるのでは?
格好良い攻撃なだけとか、スキルとしての必殺技以外にも、色々可能なんじゃない?

そんな感じのイメージです。


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