父親が斬る………といいなぁ (初任者)
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第1話ー転生する‼︎ー

アカメが斬るの二次創作です。
実はこういうのを読みたかった………。
なお、こんな方は読まれるとこれじゃないと思われる可能性がございます。ご了承くださいませ。
・タツミはマイン派の方。
・オネストかブドー大好き‼︎の方。
・エスデス様はSデス様じゃないと⁉︎の方。



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第1話

ー転生する‼︎ー

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終わり、否始まりは交通事故だった。

 

赤信号を無視して突っ込んでくるトラック。

 

慌てた様子のトラックの運転手。

 

呆けていた学生の俺。

 

そして壮絶な痛みとぶつかる音。

 

平成日本で暮らしていた俺は死んだ。

 

トラックにはねられ、即死であっただろう。

 

ーーーはずだった。

 

 

『いやー、実は地球でアニメとかラノベとか流行ってんじゃん? あれにハマっちゃって俺も二次創作してみようかなって感じ? というわけで、君に特典あげるからアニメをもとに作った世界にちょっくら行ってきてよ』

 

 

これは神の御言葉である。 何というかもう………何とも言えなかった。

 

なお、生き返らせることは不可能らしい。 誠に無念だ。

 

結果として俺は3つの特典を渡されて、記憶を持ったままアニメを元に作られた世界に転生した。

 

そして20年、俺はこの世界を生き抜いていた。

 

俺の名前は【カイドウ】ーーー【帝国】の将軍である。

 

 

**********

○帝国○

○帝都○

 

 

白銀の軍服姿に白銀の大きな箱を背負った俺は、帝都の道を進む。

 

 

「あ、あれは【大嵐のカイドウ将軍】では?」

「血塗れの間違いだろ? ほら見ろあの返り血を」

 

 

帝都の民が言う通り、戦場帰りの俺の軍服は血と肉で赤黒く染まっていた。白銀の生地は見る影もない。

 

 

「西の異民族討伐の帰りじゃないか?」

「そういえば、将軍とたった1000の兵が出兵してたな。 って、待て待て‼︎ それなら出兵してからたった1ヶ月で平定してきた事になるぞ⁉︎」

「流石、帝国最強………」

 

 

俺はそんな声の中をただ進む。

 

 

「し、将軍‼︎ カイドウ将軍‼︎」

 

 

俺の前に帝都の警備兵が立ちふさがる。

 

 

「流石にその格好では民達が不安がります‼︎ せめて返り血を落としてからーーー」

「貴様は何の権限で俺の道を塞ぐ?」

「ーーーへ?」

 

 

俺は殺気をその警備兵に向ける。

 

 

「俺は"とても急いでいる"。 貴様はそんな俺を何の権限で止めている?」

「も、申し訳ありません‼︎」

 

 

警備兵が道を開ける。

 

 

「ふん」

 

 

俺は警備兵にチラッと視線を向けて歩き出す。

 

 

「すまなかった。 職務に励んでくれ」

「は、はい‼︎」

 

 

謝罪した俺はさらに急ぐ。

 

しばらくすると宮殿が見えてきた。

 

ーーーその日、俺は将軍という職を手放した。

 

 

**********

○翌日○

○兵舎○

 

 

「まさか、お前さんが軍人をやめるとはなぁ」

 

 

同僚の将軍が片付けを手伝いながら呟く。

 

 

「仕方ないだろう? 妻が突然他界してしまったんだ。 子供を育てないといけない」

 

 

俺は荷物をまとめながら答える。

 

俺の妻は数週間前に流行り病で死んだ。 出産の事や俺の遠征もあり彼女は彼女が生まれた里に戻っていたため、今は里の女達が我が子の世話をしてくれているらしいが、やはり親の俺が近くにいるべきだ………この人生では親は死んでおり、前の人生でも親が共働きでまともに親が家にいたことがないため、親のいない寂しさは知っている。

 

幸い将軍の給料は高かったから多少蓄えがある。 豪華絢爛な生活をせずに慎ましく田舎で生活すれば何とか暮らしていけるくらいにはな。

 

 

「お前が見てる子供はどうする気だ?」

「あの子か?」

 

 

俺は既に兵士として働いている俺が面倒を見た少女を思い出す。

 

 

「あの子はもう独立している。 俺がもう庇護を与える期間は過ぎた………彼女は弱肉強食の世界で生きる立派な人間となった」

「お前さん、相変わらず世の中をきつく見過ぎてないか?」

「実際、弱い奴は虐げられて強い奴は栄えるだろ? そんなもんさ」

 

 

俺はまとめた荷物を手に持つ。

 

 

「じゃ、帝国を頼むぞ。 せめて俺が戻るまでな」

「いつ戻るつもりだ?」

「息子が16くらいになったら帝都に送り込むつもりだ。 まだ3歳だからあと13年か? そのあと息子の様子をみにくるついでに兵士に戻るさ」

「13年後か………楽しみにしてるぜ?」

「ああ、その時は頼む」

 

 

俺は部屋を出る。

 

 

「義父‼︎ 軍をやめたというのは本当か⁉︎」

「ん?」

 

 

声のした方を見ると慌てた様子の先程話に登った俺が面倒を見ていた少女が軍服姿のまま俺の方に歩いてきていた。

 

 

「ああ、妻が他界したから息子の面倒を見るために田舎に引っ込む」

「………」

 

 

俺の目の前に来た少女が下を向いて何かを我慢している。

 

 

「勿論、お前も俺の娘だ。 好きな時に無理なくうちに来ればいい。 歓迎する」

「うん」

 

 

俺は住所を書いた紙を握らせる。

 

 

「それと、お前の弟………【タツミ】が16歳になったらこの帝都に送るつもりだ。 お前が面倒を見てやってほしい。 そう、俺がお前の面倒を見たようにな。 関わり過ぎず、突き放し過ぎない距離感でな」

「うん」

「それまで、帝国を頼むぞ」

 

 

俺は軍帽を取り、少女の頭に乗せる。

 

 

「それまで俺の誇りである軍帽を預ける。 無くすなよ? 俺がまた来た時に必要になるからな」

「ゔん‼︎」

「ははは、泣くなよ【エスデス】。 今生の別れじゃねぇんだからな」

 

 

俺はその場を後にし、帝都を出て、我が子タツミの元へ向かった。

 

ーーー俺は今だに知らない。

 

ーーーこの世界が何のアニメの世界なのか。

 

ーーー今後何のイベントがあるのか? もしくは全て終わってしまっているのか?

 

ーーーただ言えるのは、今は息子を無事に育てるという事だ。

 

 

「息子のためにも、異世界日常モノだといいんだがな………まあ、そんなのはないか」

 

 

そして、月日は流れる。

 

 

**********

○13年後○

○とある里○

○カイドウ邸宅○

 

 

雪が積もる小さな里の自宅で、俺はお茶を片手にコタツもどきに入っていた。ぶっちゃけ、コタツもどきと言っても机の骨組みに布団かけて板を乗せただけであるが………。

 

 

「タツミが帝都に行ってだいぶ経つが、あいつは無事に帝都に着いただろうか?」

 

 

俺は不安であった。何せあのバカ息子は俺が書いておいた軍への紹介状を家に忘れていったのだ。

 

 

「とはいえ、社会の厳しさを知るのもまた大事な事か。 まあ、知り合いにはタツミの名前を伝えてあるし、【ブドー将軍】には手紙も出しておいたしな」

 

 

俺はお茶を飲み、ふぅと息を吐き出す。

 

 

「そういえば、エスデスの奴全く来ないが、元気にやってんのかな?」

 

 

あはははと笑う。

 

 

「それにしてもエスデスか。 名前の通りドSだからSですって、か………」

 

 

その瞬間、頭の中に一つのアニメの情報が浮かぶ。

 

 

「あぁああああ‼︎ この世界【アカメが斬る‼︎】の世界じゃねぇええええか‼︎」

 

 

転生して今の今まで続いてた謎がやっと解けたが、今さらすぎるぅううう‼︎

 

 

「おまけに息子が主人公の上に、アニメ版だと死ぬじゃねぇかよ‼︎ おまけに漫画でも人外になるじゃねぇかよ⁉︎」

 

 

俺はコタツもどきから出て、旅の用意を始める。

 

 

「冗談じゃねぇ‼︎ 一人息子を殺されてたまるか‼︎ーーー相手が皇帝だろうとな‼︎」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○鎮圧軍キャンプ○

 

 

そこは北の異民族を鎮圧するための前線基地であった。

 

そんな場所に建てられた軍総司令官のエスデスの部屋の中………エスデスは頭を抱えていた。

 

 

「これは、どういう事だ? 私は確かにあの時【ナイトレイド】の【アカメ】に斬られて、タツミと共に………」

 

 

そう、エスデスは"原作の記憶"を取り戻していた。 さらに言えば自分の最後の瞬間までの記憶を。

 

 

「ふっ、しかしまあこの世界では私はタツミの"姉弟子"になるのか」

 

 

ふふっとエスデスは笑う。

 

 

「タツミはすでに帝都にいるはず………一先ずはここを早く終わらせて帝都に戻るか。戻ったらすぐに探し出さないとな」

 

 

エスデスは立ち上がり、机の上に置かれた軍帽を手に取る。

 

 

「次こそ、私は全てを手に入れる」

 

 

それは決意の表明であった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

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エンド

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資格の勉強中なので投稿が遅くなる場合がございます。ご了承くださいませ。


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第2話ーエスデスが来る‼︎ー

連続投稿です。
エスデス様大暴走。
注意、オリ主出番ありません。


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第2話

ーエスデスが来る‼︎ー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○ナイトレイド隠れ家○

○とある部屋○

 

 

ーーー最近寒気が止まらない。

 

 

「あん?そんなの風邪じゃねぇのか?粥でも食って安静にすれば大丈夫だろ?」

 

 

目の前の席で、装備の点検をしているナイトレイドの仲間である【ラバ】が、俺の相談に軽く答える。

 

 

「いや、そうじゃなくて………そう、まるで襲われる前の獲物のような………」

「はぁ?なんだそりゃ?」

 

 

そう、この感覚は親父の『ドキ・本気の組手lvMAX』を初めて受けた時に感じたそれによく似ている。

 

あの時は本気で殺されるかと思った。

 

 

「嫌な予感がする」

「まあ、慎重なのはいいことだがな………そうだ。気晴らしに飯でも行くか?」

「………はぁ、そうだな。気にしすぎるのもアレだな」

「ああ、アレだからな‼︎」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミside END○

☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

その日、北の異民族を鎮圧してきた将軍エスデスが皇帝に謁見し、褒美をもらう手はずであった。

 

しかし、その場にいた人間は言葉を失っていた。

 

 

*********

○宮廷○

○謁見の間○

 

 

「ーーー恋を成就させようかと思っています」

 

 

皇帝は言葉を失っていた。何せエスデス個人に褒美を与えようとしたら、惚気話が出てきたのだから。

 

 

「あ、相手はどんな人間なのだ?」

「はい、タツミという平民で、辺境の生まれですが………」

 

 

エスデスの口から語られる情報に、近くに護衛として控えていた1人の将軍が反応する。

 

 

「タツミ………もしや、大嵐のカイドウの息子」

「知っているのか?」

 

 

皇帝は思わず声に出してしまった将軍に問う。

 

 

「は、はい、皇帝陛下。タツミが私の知っているタツミであるならば、先代皇帝陛下が配下にして、当時最強の名を欲しいがままにしていた英雄、大嵐のカイドウ将軍の息子かと」

 

 

頭を下げた将軍が、皇帝に報告を行う。

 

 

「おお‼︎ その名前なら朕も聞いたことがあるぞ‼︎」

「はい、私の師であり義父でもあります」

 

 

皇帝の喉から変な音が出る。

 

 

「待てよエスデス将軍。それはすなわち………」

「ええ、義弟と結婚しようかと考えています」

 

 

皇帝は慌てた様子で隣に立つ太った男ーーー【オネスト】大臣を見る。

 

いつも大臣に任せれば何とかなっていた。今回もきっとうまくやってくれる。そう信じて皇帝はオネストに視線を向けていた。

 

しかし、その視線に答える余裕はオネストにはなかった。

 

 

「(か、か、か、か、カイドウだとぉおおお⁉︎ あのバケモノの息子⁉︎ アブアブアブ⁉︎ バァブ)」

 

 

帝国を牛耳り、その上皇帝を傀儡にしているオネストの脳内は、すでに恐慌状態であった。それはもうキャラ崩壊を起こすほどには。

 

それは彼がまだそれなりにしか権力を持っておらず、勢力を拡大させていた当時の話であった。

 

 

ーーーとある戦場。

ーーー圧倒的なまでの武力。

ーーー瞬く間に全滅する敵。

ーーー応援するだけの味方兵士達。

 

 

味方兵何してると言っている余裕など無かった………圧倒的な恐怖と今までも見たことのないような死の世界。それはオネストの心の中に恐怖を植え付けるだけの威力があった。

 

どんなに権力があろうと、どんなに兵を持ち合わせようと、どんなに金を持っていても、勝てる気がしなかったのだ。

 

何とか辺境に引っ込んだと思えば今度は息子である。オネストの胃腸はキリキリと音を上げていた。 珍しく手に持っていたハムを食べる気にすらならない。

 

 

「(ーーー待てよ?)」

 

 

しかし、悪知恵に関しては天才的であるオネストの脳内は、とある可能性を見出す。

 

 

「(エスデス将軍はこちら側の人間。別に引き込めるなら構わないのでは?)」

 

 

というよりもあの怪物の手綱を引けるなら悪い話ではない、とオネストの脳内は損得をはじき出す。

 

 

「(ついでにタツミとやらも利用して差し上げましょう。ふふふ、私にもツキが回ってきましたか)」

 

 

オネストは巨大な腹をぶるんと鳴らし、皇帝の顔に視線を向け、次にエスデスに視線を向ける。

 

 

「それではエスデス将軍、我々で協力できることはさせていただきましょう」

「それでは少しの休暇と一般兵を少々お借りします」

 

 

エスデスの目が細くなる。

 

 

「分かった。休暇を与え、帝都の兵は好きに使うといい。エスデス将軍ならば兵士達も喜んで従うであろう」

「はっ、ありがたき幸せ」

 

 

しかし、エスデスは内心で全く別の感情を持っていた。

 

 

「(愚物が)」

 

 

それはオネストに向けられた感情であった。

 

 

「(あのタツミが貴様なんぞの愚物の仲間になるわけがないだろう)」

 

 

タツミはナイトレイドという暗殺集団の一員である。そしてナイトレイドは反乱軍側の組織だ。

 

そんな場所に所属している人間が、悪の親玉たるオネスト側に付く事はありえなかった。

 

 

「(だが、それでいい)」

 

 

そう、エスデスは変わった。 タツミと出会い、タツミと過ごし、タツミを思い、タツミに恋い焦がれ、タツミと最後を迎えたその瞬間………その間の幸せが彼女を変えた。

 

彼女は戦闘狂、いや戦争狂であったが………すでに彼女の中で戦争は一番にはならず、その座にはタツミがいた。

 

 

「(タツミさえ見つかれば、信用できる兵と共に反乱軍に鞍替えし、交渉でタツミを手に入れ、チャンスさえあれば義父のいるタツミの故郷の辺境地域を独立国家として認めさせる。無論王はタツミで女王は私だ。 あとはうまくタツミを説得して、帝国か近くの国と小競り合いを起こせれば私の戦闘欲も満たせる)」

 

 

それはある種でエスデスらしい計画であった。しかし、エスデスはタツミのために帝国を捨て、皇帝を断頭台に送り、オネストを殺す覚悟を決めた。

 

 

「(ふっ、大臣に皇帝陛下。 せめて最後まで私とタツミの幸せの役に立つといい。 それまでは生かしてやるさ)」

 

 

しかし、問題がないわけでもなかった。

 

 

「(確かナイトレイドは女所帯だった気がする。なんだかんだで【アカメ】や【ナジェンダ】も女だしな。あ、もちろんあの【帝具】は除くが)」

 

 

それは常にタツミの周囲に女の影があることを意味していた。

 

 

「(一刻も早くタツミと会う必要がある。そう、"多少強引にでも"な)」

 

 

そしてもう一つ。

 

 

「(皇帝陛下の帝具【シコウテイザー】………あれをどうしたものか)」

 

 

それはタツミを殺した帝具であり、帝国の切り札である。

 

 

「(反乱軍ごときで何とかなる武力ではない。 仕方ない。 私の【三獣士】と反乱軍帝具部隊を鍛えて袋叩きにするしかないか?)」

 

 

そして皇帝に申し出た休暇。 それは未来で三獣士を死なせないためのものであった。

 

 

「(あの犯行はナイトレイドの仕業………下手をすればタツミがやったのかもしれない。流石に部下をタツミに殺させるわけにはいかない)」

 

 

どちらにしても、エスデスのやる事は決まっていた。

 

 

「(人と時間は確保できた。あとは実行するのみだ)」

 

 

エスデスは野望(?)に燃えていた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside END○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

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エンド

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第3話ーエスデスの策略ー

第3話です。
そういえば、最近のアニメを見ていないことに気付きました。今度時間を作ってゆっくり見たいです。


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第3話

ーエスデスの策略ー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ーーー帝国将軍エスデス帰還。

 

その報告を受けた俺達は、アジトに集まっていた。

 

 

*********

○ナイトレイドアジト○

 

 

「てか、話は聞いてたけどエスデスって誰?」

 

 

俺の質問に、全員がため息を吐き出す。

 

 

「現在帝国最強の将軍とされている人物だ。まあ、本人は義父が最強と思っているらしいがもう引退してるからな」

 

 

ボスが答える。

 

 

「そして奴はドSで戦争狂だ。我々反乱軍に与する事はないだろうな」

「へぇ」

 

 

俺はふむふむと話を聞く。

 

 

「っと、マイン達から報告だ」

 

 

伝書鳩を腕に停めたラバが、声を上げる。

 

 

「明日エスデス将軍が昼頃に重大な告知を行うらしい」

「ふむ、タツミ」

 

 

ボスが俺に視線を向ける。

 

 

「いい機会だ。告知会場に行ってエスデスの顔を確認してこい」

「分かった」

 

 

こうして、俺は帝都に潜入した。

 

 

*********

○翌日○

○帝都○

○とある広場○

 

 

「諸君、よく集まってくれた」

 

 

エスデス将軍の声が、拡声器によって響く。

 

 

「すごい数だな」

 

 

フードを被った俺達は声が響き渡る会場で、おしくらまんじゅう状態になりながらエスデス将軍を見る。

 

 

「あの人どっかで見たような………」

「あ?有名人だしなぁ‼︎ クソキツイ‼︎」

 

 

ラバが自分の空間を確保しようと奮闘してるのを一瞬確認しながら、視線をエスデス将軍に向ける。

 

 

「やっぱりどこかで見たことがある気がする………」

 

 

エスデス将軍の話は続く。

 

 

「諸君に集まってもらったのは他でもない。とある人物を探しているからだ‼︎」

「「ーーーっ⁉︎」」

 

 

俺達ナイトレイド(現在指名手配されてはいないが………)はドキッとする。

 

 

「その人物の名前はーーー"タツミ"だ」

 

 

バサリとエスデス将軍の背後に、そのタツミらしき似顔絵(というか全身像の絵)の垂れ幕が下がる。 それは明らかに俺であった。

 

 

「(お、俺ーーー⁉︎)」

「(おい‼︎ お前何やったーーー⁉︎)」

「(いやいやいや‼︎ 何もやってないって‼︎)」

 

 

ラバも混乱しているらしく俺を小声で問い詰める。

 

 

「見つけた者には褒美を与える‼︎ 発見に結びつく重要情報の提供であっても金一封を与える‼︎ ただし‼︎ 傷つける事は許さない‼︎ 無事に私の前に連れてこい‼︎」

「「「「「うぉおおおお‼︎」」」」」」

 

 

会場が熱を帯びる。

 

 

「(やべぇ、逃げるぞ)」

「(そ、そうだな)」

 

 

俺達はそろーりそろーりと逃げ始める。

 

しかし、その言葉は俺達が出口近くまで来た時点で放たれた。

 

 

「特に"この場でフードなどで顔を隠している場合は注意せよ"」

「「(おいーーー⁉︎)」」

 

 

周囲の視線がこちらに集まる。

 

 

「クソ、逃げるぞ‼︎」

「お、おう‼︎」

 

 

俺達は強行突破にかかる。

 

 

「ん?おい、お前達‼︎」

「悪い‼︎」

「ぐっふ」

 

 

兵士を突き飛ばして、俺達は広場から出る。

 

 

「クソ、ナイトレイドの一員とバレたか?」

「分からないが、逃げるしかないだろ」

 

 

俺達は隠れ家へ急ぐ。

 

 

「ちょーと待ってもらおうかな?」

 

 

しかし、俺達は足を止められる。

 

 

「僕はエスデス将軍が配下、三獣士が1人【ニャウ】」

「ちっ‼︎」

 

 

ラバが逃走用煙玉を破裂させる。

 

 

「ゴホゴホ」

 

 

ニャウとやらが咳き込んでいる間に、逃走を再開させる。

 

 

「ゴホゴホ………あれ?どこ行った?」

 

 

しばらく走ると、隠れ家が見えてくる。

 

 

「周囲に人は?」

「居ないようだ。早く行け。お前が狙われてるんだぞ」

 

 

俺は建物の中に入る。

 

 

「あとはしばらく様子見だな。お前は隠し通路でアジトに行け」

「すまない、ラバ」

 

 

俺は隠し通路でアジトへと向かった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

家から飛び出して数日が過ぎたカイドウだ。

 

現在俺は、森を抜けて帝都よりいくつか前の辺境の街に向かっていた。

 

………その筈だった。

 

 

*********

○とある山道○

 

 

「ああ、クソッタレ。何だこの【危険種】は?」

 

 

ゴキと首の関節を鳴らしながら、バケモノの死体の上に腰掛ける。

 

 

「何かの実験動物か?ずいぶん人型に近いが………」

 

 

周囲にはそのバケモノの死体達が、何十も倒れていた。

 

 

「しかしまあ、一つ言えるのはーーー"手を出す相手を間違えたな"」

 

 

俺はポケットからタバコを取り出し、口に咥え、マッチで火をつける。

 

 

「………ふぅ」

 

 

煙が夕暮れの空に消えていく。

 

 

「さてはて、近くに泊めてくれそうな民家があるといいんだがなぁ」

 

 

こんな危険種が出る以上は、あまり暗い中を歩くべきではない。

 

 

「というか、帝都に行く道で山道なんてあったか?」

 

 

帝都は未だ遠い(←そもそも方向音痴)。

 

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エンド

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第4話ー確保ぉお‼︎ー

遅くなりました‼︎


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第4話

ー確保ぉお‼︎ー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

エスデス将軍の魔の手から逃げ切った俺達は、アジトまで追跡されないために、追跡者がいないか確認を行っていた。

 

 

「はぁ、はぁ………くそ、一体なんだってんだよ」

 

 

俺は息を整えながらラバを見る。

 

 

「俺が知るかよ」

「だよな」

 

 

ふぅと息を吐き出す。

 

 

「………ん?なんか音楽聞こえないか?」

「え?………本当だ笛の音が聞こえる」

 

 

俺達は警戒を始める………しかし。

 

 

「な、なんだよ、これ」

 

 

眠気に襲われ、立っているのも辛い状態になる。

 

 

「て、帝具か⁉︎」

「せいかーい♪」

 

 

ひょこりと、ニャウと名乗った少年が現れる。

 

 

「それにしても、僕の帝具をここまで耐えるなんて………2人共やるねぇ」

 

 

ニヤリと少年が笑う。

 

 

「くっ、こんなところで………‼︎」

 

 

俺は必死に立ち続ける。

 

 

「あー、何か勘違いしてるみたいだけど、別に殺したりしようってわけじゃぁないからね?」

「くっ、信じられるかよ………‼︎」

「うーん、悪名高いのも困りものだね」

 

 

意識が遠のいていく。

 

 

「安心してよ。悪いようにはしないからさ♪」

「くっそ………た、れ」

 

 

俺は意識を失った。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆

○エスデスside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○王宮○

○エスデス執務室○

 

 

無駄に豪華に飾られた(文官達にやらせた)部屋の中で、座る私の前にニャウが片膝をついていた。

 

 

「やはりあれはタツミだったか」

 

 

私は紅茶を楽しみつつ、ニャウの報告を聞く。

 

 

「はい、今は眠らせて、エスデス様のご命令通り寝室にお運びしました」

「ご苦労」

 

 

皿に乗ったクッキーの一つを取り、口に運ぶ。

 

 

「それで?手紙は置いてきたか?」

「はい。一緒にいた男の額にくっつけておきました」

「あとは向こうがどう出るか、か」

 

 

タツミのそばにいたのは、まず間違いなくナイトレイドメンバーだろう。ならば交渉のために、手紙の伝令役となってもらった。

 

多少危険な手ではあるが、私もあいつらのアジトを知らない以上仕方ないことだ。

 

 

「それはそうと、良識派の件はどうなっている?」

 

 

この腐った帝国でも未だに大臣に逆らう勢力………いつか私達が帝国から離れるために使う駒としては悪くない。強いて言うなら、数が少ないのが問題ではある。

 

 

「はい。今は残りの2人と配下達が護衛をしつつ、エスデス様の元に集うように説得に当たっています」

「良識派の中には、大臣すらも侮れない権力を持つ人間もいる。全て吸収できれば、私の武力と合わせて大臣と対等に渡り合えるだろう」

 

 

そのために、大臣への目くらましとして(無論タツミ確保も、大きな目的ではあったが)、イベントじみた指名手配と多数の兵を動かしたのだ。

 

あの男が気付く頃には、帝国内に強大な軍事力と権力を持つ大臣包囲網が完成している事となるだろう。

 

 

「(問題は反乱軍との内通だが、直接は危険すぎる。一番いいのはナイトレイドを通じて内通を行う事だが)」

 

 

流石に反乱軍に直接では、大臣の耳に入りかねない。そのために反乱軍の暗殺部隊であるナイトレイドを利用する。

 

 

「ふふっ、帝国が終わる前に大きな戦いがあるといいのだがな」

「エスデス様がいなくなった帝国軍に、エスデス様の率いる軍相手に、まともに太刀打ちできる将兵がいるとは思えませんが」

「いやーーー」

 

 

ふっと、ある男の顔が浮かび、焦りが浮かぶ。

 

 

「そうだ‼︎ タツミの村に至急伝令を走らせろ‼︎ 義父を呼び寄せなければ………‼︎」

「義父………ああ、タツミ君の父親ですね?」

「ああ、元帝国軍最強の将軍"大嵐のカイドウ"だ」

「………は?」

 

 

ニャウが呆けた表情を浮かべる。

 

 

「大臣の派閥に吸収されたなんてことになったら、目も当てられん‼︎ 至急保護するのだ‼︎ ニャウ、お前も行け‼︎」

「は、はい‼︎」

 

 

慌ててニャウが部屋を出て行く。

 

 

「"大嵐のカイドウ"か」

 

 

数々の戦場で風の帝具を操り、帝国に多くの勝利をもたらした英雄である。そして、私の記憶に残る彼は、帝国に忠義を捧げる忠実な軍人であった。

 

 

「(あの【幼王】に忠義を捧げるか分からんが、大臣側に付かれるのだけはまずい‼︎ 私はあの男に"一度も勝ったことがない"‼︎)」

 

 

義父に敗北はなかった。それは義父の行った『ドキ・本気の組手lvMAX』で、私含め現役の将軍多数相手でもだ。

 

 

「(だが、逆を言えば義父をこちら側に付かせれば、"シコウテイザー"もなんとかなるだろう)」

 

 

となれば、速さが勝負だ。素早くこちらの懐に入れ、説得する。最悪タツミを人質のような形にしてでもだ。

 

 

「ああ、そうだ。そんなことよりタツミの様子を見に行こう」

 

 

タツミのいる寝室へと向かう。今日はこのままタツミを抱き枕にして寝てしまうか、と考えながら。

 

 

ーーーしかし、この時私は知らなかった。いや、想定していなかった。

ーーーまさか、義父が既に帝都に出発していた上に、迷っているなど。

ーーー全くもって知らない事だった。

 

 

「タツミ〜♪」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○エスデスsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆

○オネストside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

王宮の一室で、私は文官から報告を受けていました。

 

 

「では、タツミ君はエスデス将軍によって確保されたのですね?」

「はっ、現在は王宮ののエスデス将軍閣下のお部屋で、お休みになられているとの事でした」

 

 

私はふふふっと笑みを浮かべる。

 

 

「(エスデス将軍。どうやらうまくやったようですね。あとはタツミ君を私の金と権力漬けにして、私の操り人形として差し上げましょう。そして、あの"大嵐のカイドウ"を私に跪かせるのです‼︎ あの"大嵐のカイドウ"を‼︎)」

 

 

カイドウの名前は、私にトラウマという恐怖と嫉妬心を植え付けていた。

 

しかし、そんな男が私に跪くのだ‼︎

 

 

「ふっふっふ、あーはっはっは‼︎」

 

 

私は大きく笑い声をあげる。こんな愉快なことはないと。

 

 

「(とはいえ、面識がないままというわけにもいきません。一度会っておきますかね)」

 

 

ーーーこの時の私は気付いていなかった。

ーーーカイドウの名前を聞いて以来、全く間食を取る気がせず、体重が減り始めているのを。

ーーー忙しさのあまり、部下よりも自分が動いていることを。

ーーー胃が悲鳴を上げていることを。

ーーー私は気付いていなかったのだ。

 

 

「はーはっはっはっは‼︎」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○オネストsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

突然だが、一つ質問に答えてほしい。

 

気付いたら【フェクマ】(フェイクマウンテンの略)にいた。どうすればいい?

 

 

*********

○フェイクマウンテン○

 

 

「オラ‼︎」

『ギャ⁉︎』

 

 

俺の拳で、木に変装した危険種が、崖の下に落ちていく。

 

 

「あーばよ、とっつぁん」

 

 

定番のネタをやりながら、先へ進む。

 

 

「しっかし、こんな事なら村から案内人を付けてもらうんだったな。相変わらずの方向音痴に、なんかこう、逆に安心してしまった」

 

 

といっても、早くタツミの元へ行かねばならないのも事実である。

 

 

「まずは軍に顔を出すとするか」

 

 

といっても、まず帝都はどっちだ?

 

 

「つか、人っ子一人いないから道も聞けんのよね………こりゃあ、フェクマで野宿を覚悟するかなぁ」

 

 

思わずため息が出た。

 

 

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エンド

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第5話ー最強、ついにやらかすー

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第5話

ー最強、ついにやらかすー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○王宮○

○エスデス寝室○

 

 

おかしい。俺は帝国軍に捕らえられたはずである。これから拷問されるかもと、顔を青くしてたのに。

 

ーーーなのに、なぜ背後から現代最強の将軍エスデスに抱きかかえられているのか?

 

 

「タツミ〜♪」

「(ん?んんん?)」

 

 

疑問に感じながらも頭の中を整理する。が、全くわからない。

 

 

「えっと、なんで俺はここに?」

「ああ、突然連れて来られれば混乱するか。ここは王宮にある私の寝室だ。

 

 

おーっと⁉︎確実に暗殺対象になりそうな相手の寝室⁉︎

 

 

「私はエスデス。帝国で将軍をしている………まあ、場合によってはどうなるか分からんが」

「?」

「ともかく、だ。タツミ………私のものになれ」

 

 

それは完全に告白のセリフであった。

 

俺の頬にエスデスの右手が触れる。

 

 

「愛されるか不安か?無論私はお前だけを愛そう。

故郷が心配か?なら、資金を送り、必要なら警備兵を送ろう。

家族が心配か?ならば、私が保護しよう。何不自由ない生活を保障しよう。

金が心配か?大丈夫だ。私は将軍という地位を持っているから、それなりに蓄えはある。

政治の世界が怖いか?ならば、私の持てる全ての権力で、お前を害する全てを叩き伏せよう。

ーーーだから、私の隣にいてくれ。タツミ」

 

 

俺の胸に手が置かれ、エスデスの顔が迫ってくる。それは明らかに赤く、まるでーーー。

 

 

ーーードンドン。

「エスデス将軍閣下。【ハウゼン】将軍閣下がタツミ殿とお会いしたいといらっしゃってますが」

 

 

ドアの外から声がする。

 

 

「………はぁ、ハウゼンならば仕方あるまい。タツミにも縁が深い人物でもあるしな」

「ほっ」

 

 

俺は安堵の息を吐き出す。

 

 

「ああ、それと一つ訂正せねばならないな。お前の父、帝国最強の将軍"大嵐のカイドウ"………私の師であり、義父でもあるあの男が、私の保護を必要としているとは、つゆほども考えられないからな」

「ーーーゑ?」

 

 

帝国最強の将軍?大嵐のカイドウ?エスデスの師匠?義父?………あの父が?確かにめちゃくちゃに強かったけれども。

 

 

「ん?知らなかったか。なら、そこら辺含めて、ハウゼンと話すといい。

あの男は義父が現役時代に、肩を並べて戦った将軍だからな」

 

 

エスデスが寝室を出ようとする。

 

 

「ああ、それと、準備ができたら迎えに来るから、しばらく大人しく待ってろ。王宮は暗殺者対策でかなり厳重な警備を敷いてるから、下手にうろついてると殺されかねん」

「了解です‼︎」

 

 

俺は瞬時に答えた。

 

 

「よろしい」

 

 

エスデスは満足気に部屋を出た。

 

 

「(………え?あれがエスデス?俺が殺す相手なの⁉︎)」

 

 

やっと出た、今更のツッコミであった。

 

 

「(嘘だと言ってよ、親父ぃいいい‼︎)」

 

 

色々と処理しきれていなかった。

 

 

「(最強の将軍で親父のことかよぉおおお⁉︎ しかもあれほぼ告白だろ‼︎ どうなってんだァアアア⁉︎)」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○タツミsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

そこは王宮にある談話室であった。

 

 

「初めましてかな?私は帝国の将軍で、ハウゼンという。君のお父さんの同僚ってところかな?実力で言えば、彼の足元にも及ばないのだけれどね」

 

 

そう言って、帝国の将軍の1人、ハウゼンは対面に座ったタツミに語りかける。

 

 

「は、はぁ、父はそんなに強かったんですか?実はそこら辺の事情を聞いたことがなくて」

「カイドウは秘密主義的だったからな」

 

 

やれやれとハウゼンは首を横に振る。

 

 

「彼は英雄たる男だったよ」

 

 

懐かしい目をしながら、ハウゼンは紅茶の入ったカップを手に取る。

 

 

「ところで、少し前にカイドウから推薦状が届いていたのだが、君は軍に入らなかったのかい?」

「いや、父の作ってくれた紹介状を忘れてしまって、受付に行ったんですが、もちろん入れないどころか話も聞いてくれなくて」

「そうか。なら私の元でーーー」

 

 

少し離れた場所にいるエスデスから、殺気が放たれる。

 

 

「ーーーというのは冗談で、エスデスの元で兵士として働いてみないかい?」

「え?でも今の仕事が………」

「そうか、今は何の仕事を?」

「鍛治師を少々」

「ほう、なるほど」

 

 

しばらく雑談が続く。

 

 

「(ハウゼン、か)」

 

 

エスデスは、目の前の男のデータを思い浮かべる。

 

ハウゼン。特にこれといって大きな武功はないながらも、堅実堅固が似合う仕事をする将軍であった。

考え方も中立的で、いざという時頼りになる人間であった。

 

 

「(こちら側に引き込めればいいが)」

 

 

ハウゼンがタバコを咥える。

 

 

「しかし勿体無い。あのカイドウが、手塩をかけて育てた有望株を、まんまと逃してしまうとは」

「一応剣の鍛錬は続けてるんですがね」

 

 

あははとタツミが笑う。

 

 

「失礼します」

 

 

文官が談話室に入ってくる。

 

 

「何事だ?」

 

 

ハウゼンが文官に問う。

 

 

「オネスト大臣閣下が、タツミ殿との面会を求めておられます」

「オネストが?」

 

 

ハウゼンが眉をひそめる。

 

 

「(大臣だと?このタイミングで何のつもりだ?)」

 

 

その瞬間、ドアが開く。

 

 

「これは失礼。いてもたってもいられず、気付いたら来てしまいました」

 

 

それは大臣オネストであった。

 

 

「………オネスト大臣、痩せたか?」

 

 

ハウゼンが思わず問いかける。それもそのはず、現時点で大臣の頬はこけ、目の下にはクマが浮かんでいた。

 

 

「ああ、そういえば最近間食しておりませんでしたからなぁ。君、何か持ってきてくれたまえ」

「はっ‼︎」

 

 

文官が立ち去る。

 

 

「(こいつが、帝国腐敗の元凶)」

 

 

タツミの手にチカラが入る。ここで殺せば帝国はーーー。

 

それとは対照に、オネストはタツミを冷静に観察していた。

 

 

「(ふむ、見た目は片田舎のクソ坊主ですが、これをうまく転がせれば、カイドウが手に入る。安いものですね♪)」

 

 

実はオネストは今日に備え、私財を投げ打って、タツミ籠絡の用意を進めていた。

 

オネストにとって、この程度のことであれば楽な仕事であった。

 

まあ、そのために部下よりも働いたわけであるが………。

 

 

「(はぁ‼︎ 彼を籠絡できれば‼︎ 私の胃は再び無事に復活することでしょう‼︎ この睡眠不足と、色々な手配を行う日々は今日で終わりにしたいところデス‼︎)」

「で、何か用か?大臣」

 

 

エスデスがタツミの前に立つ。

 

 

「(流石に、こんな場所で暗殺させるわけにはいかんからな………)」

「いえ、私もかの英雄カイドウ殿と無関係ではないので、挨拶にと」

「親父と?」

「ええ、私が若い頃彼の戦闘に同行しましてなぁ。あれはすごかった。3万近くの敵と帝具によって従わされた危険種の軍団を、その名の通り大嵐のごとく蹂躙したあの圧倒的な戦いは、この胸の中にしっかりと記憶しております」

 

 

そう、トラウマを残すほどに。

 

 

「彼に借りも多くあります。何かあれば是非頼っていただきたい。全力で対応いたしましょう」

 

 

ニコニコと笑顔を浮かべた大臣が、タツミに語りかける。それはもう、タツミが『あれ?大臣て身内に甘い?』と思うほどに。

 

 

「は、はぁ」

「ああ、そうだ‼︎ 皇帝陛下もタツミ殿に興味があるようでしてな‼︎ 今晩の晩餐会に.エスデス将軍と来て欲しいと招待状も預かっておりましてなぁ‼︎」

 

 

オネストが体格に似合わぬ小さな手紙を、タツミに手渡す。

 

 

「それでは私はこれで‼︎」

 

 

ささっと、大臣が立ち去る。

 

 

「………あれって、大臣、だよな?」

 

 

ハウゼンがエスデスに問いかける。

 

 

「あ、ああ、そのはず………だが」

 

 

 

2人の視線がタツミに向かう。

 

 

「…………え?ぇえええ⁉︎」

「あ、間食のお届けに………失礼しました」

 

 

その間食は、タツミ達の腹の足しとなった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○フェクマ近くの村○

 

 

「¥¥$2¥€¥〒5〒€?」

「いや、だから帝都はどっちって聞いてるだけだって‼︎」

 

 

俺は必死になって、隠れ棲んでいる異民族の民から、帝都の場所を聞き出していた。 最悪な事に言葉が伝わらない最悪の事態である。

 

 

「5・〒3<446+:3」

 

 

フェクマを指差す異民族。

 

 

「ま、まさか」

 

 

どうやら、俺は全くの逆方向に向かっていたようだ。

 

 

「ありがとう‼︎ これお礼‼︎」

 

 

俺は異民族にお小遣い程度の少しの金を渡し、再び走り出す。

 

 

「待ってろよ〜〜〜‼︎ タツミ〜〜〜‼︎」

 

 

俺は再び走り出す。一体いつになったら、俺は帝都に着けるのか………(遠い目)。

 

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第6話ー大嵐は迷いながらー

遅くなりました‼︎


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第6話

ー大嵐は迷いながらー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ーーータツミの拘束。

その知らせは、ナイトレイドを駆け抜けた。

 

 

*********

○ナイトレイド拠点○

 

 

「何故エスデスがこんな手紙を………」

 

 

ナジェンダは机の上に置かれた手紙を、手を組んだまま眺める。

 

 

「まさか、あのエスデスが内応を決めた上、我々に協力を依頼するとは………」

「だけど、この交換条件は………」

 

 

ラバは唇噛み締める。

 

 

「『1つ、タツミの身柄をエスデスに差し出すこと。

2つ、タツミがナイトレイド構成員であったことを抹消し、タツミをナイトレイドから除名すること。

3つ、ナイトレイドが反乱軍とのパイプ役になること

4つ、革命成功の暁には、辺境の一部地域を独立国として認める。同時に、その国の女王としてエスデスの就任を認める』………」

「分からん。何故そこまでタツミに拘る?」

 

 

ナジェンダには不思議であった。あのエスデスが、何故タツミにここまで執着するのか?独立国までなら分からなくもない。しかし、何故エスデスがタツミを求めるのか?

 

ナジェンダにはその理由が分からなかった。

 

ーーーというよりも、恋愛だと分かれという方が無茶である。

 

 

「少し探りを入れたいところだが………」

「協力をするふりをして、内情を探るか?もしかしたら、大臣との関係が悪化しているのかもしれない」

 

 

【アカメ】が提案する。

 

 

「ふむ、それでは手紙の通りに、指定されたカフェに出てみるか………いや、しかし」

 

 

その瞬間であった。

 

 

ーーーごめんくださーい。

 

 

「「「「ん?」」」」

 

 

全員がその声に反応する。

 

 

「………ラバ?」

「いや、糸に反応はなかった。かなりの手練れだ」

 

 

全員が入り口に集まる。

 

 

ーーー誰もいないのかな?

ーーーいや、でもトラップ仕掛けてあったしなぁ。

ーーー逃亡犯でも潜伏してんのかな?

ーーーはぁ、帝都はどっちだ?

 

 

しばらくすると、声が離れていく。

 

 

「………迷子か?」

 

 

ナジェンダが呟く。

 

 

「しかし、どこかで聞いたような………」

ーーーしかし、タツミのやつ帝都でうまくやってるのかねぇ。

「「「「…………」」」」

 

 

その後、メチャクチャ慌てて呼び止めた。

 

 

*********

○数十分後○

 

 

「あっはっはっは‼︎ そうかそうか‼︎ タツミの仕事場だったか‼︎」

 

 

ナジェンダ達の前で、中年の男が肉を食べながら(アカメ提供)大笑いしている。

 

 

「あ〜、タツミ君のお父様で?」

「おうよ‼︎ タツミの親父だ‼︎」

 

 

男の見た目はガッチリとした筋肉質であった。その上に着ているのは民族衣装である。

 

 

「ーーー"カイドウ"ってんだ。昔は将軍なんてやってて、"大嵐のカイドウ"なんて呼ばれてたぜ」

 

 

カイドウは笑いながら自己紹介する。しかし、それに対するナイトレイドの反応は劇的であった。

 

 

「カイドウ⁉︎ 帝国最強の将軍カイドウかっ⁉︎」

 

 

ナジェンダが思わず悲鳴のような声を上げる。

 

 

「そんな呼ばれ方もしたことあるな」

 

 

笑顔でカイドウは答える。

 

 

「タツミの親父さんって、凄い人なんですか?」

 

 

ラバが小声でナジェンダに問う。

 

 

「帝国最強の名前を欲しいままにした英雄だ。そしてあのエスデスの義父であり、師匠でもある」

「えぇ⁉︎ 明らかにやべぇ奴じゃないですか⁉︎」

 

 

ラバが小声で叫ぶという器用な真似をする。

 

 

「で、どうだい?タツミの様子は?というかタツミどこ?」

「あー、実はですね………」

 

 

*********

○数分後○

 

 

「何だってー‼︎ タツミがエスデスに攫われてしまっただって⁉︎」

 

 

カイドウは青い顔で叫ぶ。

 

 

「申し訳ない。我々は彼を………」

「まあ、死ぬことはないだろうけど………マジか」

 

 

カイドウが頭を抱える。

 

 

「死ぬことはない?どういうことですか?」

「エスデスにはタツミはお前の義理の弟って伝えてあるし、軍の同期とか上司にも伝えてある。下手な真似しなきゃ大丈夫だろ」

「だから指名手配できたのか‼︎」

 

 

ラバが納得の声を上げる。

 

 

「ということは、今回のエスデスの目的は弟弟子の確保だったのか………?」

 

 

それならタツミに拘るのもわからなくない。

 

 

「さて、世話になったね。俺は帝都に行って、息子の顔でも見てくる。まあ、エスデスも説得してみるさね」

 

 

肉を食べ終えたカイドウは、おもむろに立ち上がる。

 

 

「それでは元気でな‼︎………あ、その前に道教えて」

「アッ、ハイ」

 

 

カイドウは森の中に消えたのであった。

 

 

「………まさに嵐みたいな人だったな」

「私の肉………」

「ん?そういえば、確か大嵐のカイドウって相当な方向音痴だった気が」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

おいっす、タツミの仲間と合流したカイドウだ。

 

 

「さて、しかしどうして言われた通り来たはずなのに迷うんだ?」

 

 

周囲を見渡しながら、頭をぽりぽりとかく。

 

 

「っと、こんなとこにも出るのかよ」

 

 

俺は構えを取る。そこにいたのはいつだったか皆殺しにしたはずの人間に似た危険種であった。

 

 

「この先はタツミの仲間の………仕方ないな。全員"斬り刻んで"やる」

 

 

俺は腰の細身の西洋剣を抜く。

 

 

「さあ、刃で死にたい奴から前に出ろやぁあああああああ‼︎」

 

 

俺は危険種の集団に飛び込んだ。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○王宮○

 

 

机の上に次々と贅を凝らした食事が運ばれてくる。

 

 

「まずは初めましてだな‼︎ 朕はこの国の皇帝である‼︎」

 

 

まだ子供の皇帝が、ドヤ顔で自己紹介する。

 

 

「大臣のオネストです」

 

 

大臣が無難に挨拶する。

 

 

「あ、タツミです………」

 

 

タツミが緊張した様子で名乗る。その隣で腕を組んだエスデスがタツミをちらりと見る。

 

 

「ああ、話は聞いているぞ‼︎ 大嵐のカイドウの息子とな‼︎」

「アッ、ハイ………そんな有名な将軍だったとは知らなかったんですけどね………」

 

 

あははとタツミは力無く笑う。

 

 

「そうなのか?」

「ええ、あまり自分のことを話す人ではなくて………」

「なんと、それは勿体無い‼︎」

 

 

大臣が両手を広げて声を上げる。

 

 

「あの方は戻ってきてくれるのであれば、すぐに大将軍にもなれるお人ですぞ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、奥様がお亡くなりにならなければ、今なおその武勇を世界に知らしめていたでしょう。将軍を恐れて北の反乱もなかったかもしれませんな」

 

 

大臣がワインを飲む。

 

 

「(大臣がここまで言うなんて………親父何者なんだよ⁉︎)」

 

 

その横でエスデスはハラハラしながら、その様子を見ていた。

 

 

「(頼むから今暗殺はやめてくれよ………‼︎)」

 

 

エスデスはタツミが大臣を暗殺しようとするのをまだ早いと判断していた。

 

 

「(心情は悪くはないというところですかな?)」

 

 

そんな暗殺どころでない暗殺者とハラハラしている女将軍の心情を理解できていない大臣が、間違った判断を下す。

 

 

「(朕、ワクワクするぞ‼︎)」

 

 

そんな中で唯一皇帝だけが大嵐のカイドウの武勇伝を楽しみにしていた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

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エンド

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第7話ー帝具ー

久々の投稿です。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

第7話

ー帝具ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○とある戦場○

 

 

「し、将軍‼︎」

 

 

慌てた様子の文官の男が、軍服姿の将軍に声をかける。

 

 

「いくらなんでもこの数の差は埋めがたい‼︎ 増援要請を‼︎ このままでは‼︎」

 

 

敵は数万、対してこちらは1000もいない。すり潰されるのが目に見えていた。

 

 

「ーーー問題無い」

 

 

しかし、その言葉を将軍がすり潰す。

 

 

「何故ですか‼︎ この数の差をみてください‼︎」

「問題無いと言ったはずだ」

 

 

腕を組んだ将軍は、敵軍を見下ろしながら答える。

 

 

「今日はいい風が吹いている。これなら負ける気がしないさ」

「ーーー風などで‼︎」

 

 

将軍がふわりと浮かぶ。周囲には風が流れている。

 

 

「我が風の帝具【竜風神風:ヤオオロチ】ならば、敗北はない」

 

 

そして、戦場に虐殺の風が吹いた。

 

荒れる風が、次々と敵兵士を切り裂き、大地に血と肉を降らせる。

 

 

「吹き荒れろ神風よ‼︎ 全てを吹き飛ばせ‼︎」

 

 

吹き荒れる風が、敵の全てを吹き飛ばし、切り裂いていく。

 

 

「「「カイドウ将軍万歳‼︎」」」

「「「将軍‼︎ 将軍‼︎」」」

 

 

味方の兵士達が声を上げる。

 

そこはすでに人間の入り込める戦場ではなかった。

 

 

「戦場の、神」

 

 

文官はその日、戦場の神を見た。

 

 

*********

○王宮○

 

 

「ーーーというわけで、私は戦場の神カイドウをあの日目にしたのです」

 

 

大臣が語りを終える。

 

 

「(そう、私はあの日戦場の神を見た。いや、魅入られた。だからこそ憧れた。 そして決めたのだ。カイドウが戦場の神であるならば、私は政治の神になろうと)」

 

 

そして、オネストは大臣の地位を手に入れ、絶対的権力と莫大な金を手にいれた。

 

既に帝国内部には、オネストにまともに逆らえる権力者は皆無であった。

 

 

「(だが、満たされなかった。 いつも空腹だった。満足できなかった)」

 

 

それはオネストが誰にも言ったことのない事である。

 

オネストは権力と地位と金を手に入れ、政治世界の神と言っても過言でない状態になっても"満足できなかったのだ"。

 

 

「(まだここまで来るまでの方が満たされていた。しかし、今はどうだろうか? 食事を食べなくても気にならない。この感覚は一体………?)」

 

 

そんな中で、晩餐会は進んでいく。

 

 

「(親父の奴‼︎ なんでそういうことを話さないんだ⁉︎)」

 

 

対してタツミは聞けば聞くほど初耳な話に、頭をかきむしりそうになっていた。

 

 

「(いや、確かに街の人から尊敬されてたけど、なんでかまでは知らなかったしなぁ)」

 

 

カイドウが目の前にいたのであれば、タツミは殴りかかっていただろう。

 

 

「(しかも、エスデスの義父が親父なんだよなぁ………いや、わけわかんねぇーよ⁉︎)」

 

 

まさにどうしてそうなったと言いたいタツミであった。

 

 

「(………大臣の奴、妙に義父に拘るな)」

 

 

対してエスデスは大臣の反応に違和感を感じていた。

 

 

「(ここ数日の大臣の不審な行動といい………愚物め、何を考えている?)」

 

 

それにエスデスとしては、カイドウが大臣に吸収されることだけは避けたかった。

 

 

「(ちっ、腐っても大臣か。軍人の私では腹の探り合いでは差がある、か)」

 

 

エスデスはワインを手に持つ。

 

 

「(まあ、安心しろ大臣。お前は必ず殺す。それが反乱軍か、ナイトレイドか、タツミか、義父か、私か、誰がやることになるかは分からんがな)」

「(ーーー何でしょう?急に寒気が)」

 

 

大臣はエスデスのわずかな殺気に反応したのか、ブルリと震える。

 

 

「(カイドウか。再び軍に戻ってくるのだろうか?あとで大臣にでも聞いてみるか)」

 

 

皇帝はステーキを優雅に切り分けながら、カイドウの今後に思いをはせる。

 

 

ーーー4者が4者共に、考えていることがまるでずれていることに、4者は誰1人として気付いていなかった。

 

 

「「「「(あ、これ美味い)」」」」

 

 

食事の感想以外は。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

おいっす、オラカイドウだぁ‼︎

 

っと、そんなことより、あれから必死に歩き回って、やっとの思いで着いたぜ‼︎

 

 

*********

○帝都○

○入門管理所○

 

 

「戻ってきたぜ‼︎ 帝都‼︎」

 

 

俺は帝都の入り口で思わず声を上げる。

 

 

「しかし今更だが、ここら辺てあんなに危険種いたか? まあ、全部始末したが」

 

 

俺は帝都の中を進む。

 

 

「やや‼︎ おじさま、そっちはスラム街ですよ‼︎」

「ん?」

 

 

振り返ると、若い少女がいた。軍服を着ているから軍人なのだろう。

 

 

「おや、これは助かったよ軍人さん」

「いえいえ! それでは失礼します」

 

 

少女が立ち去る。

 

 

「………ふむ、一先ず宿でも取るか。まともに飯も食えてないしな」

 

 

俺はなんとなく記憶していた宿へ向かう。

 

 

ーーー俺、カイドウは転生者であるが、この世界の生まれは孤児だった。

家族は俺が生まれてからすぐに死んだ。

 

不幸中の幸いか、金だけは残ってたからスラム街には落ちなかったが………。

 

 

「人生紙一重、か」

 

 

まあ、"神から与えられた特典"を行使すれば、将軍くらいすぐなれたと思うがな。というか、"使わなくてもなった"が。

 

 

「っと、ここだ」

 

 

俺はのれんをくぐって、中へ入る。

 

 

「いらっしゃ、あんた………」

「久しぶりだな【ルソル】」

 

 

俺は目の前の女店主に声をかける。

 

 

「か、か、カイドウさん⁉︎」

 

 

ーーールソル。

元帝国軍士官であり、俺の補佐をしていた女軍人だ。俺が引退後は手紙でやり取りしており、俺も知っている宿を継いだと聞いていた。

 

 

「いつこっちに?」

「ついさっきだ。話は飯にしてからにしようぜ? 店主のオススメを1つ」

 

 

併設されている食堂に向かう。

 

 

「それにしても、何で帝都に?」

「息子を送り込んだんだが、その様子見だな。そっちはどうなんだ?」

「まあぼちぼちってところですよ。最近は景気も良くないですからね。はいこれ」

「ふーん」

 

 

俺は出されたエールを飲む。

 

 

「で、軍に戻るんですか?」

「いや、このまま余生を過ごすつもりだ。 まあ、細々としたことを片付けるために一時的に軍属になるかもしれんが」

 

 

そう、例えばオネスト大臣が妙な動きをしていた場合………とかな。

 

 

「なら、軍を離れていた【突撃親衛隊】を呼び集めておきますか?」

「ん? あいつら軍を離れたのか?」

 

 

ーーー突撃親衛隊。

主に俺の護衛をしていた部隊で、6名という非常に少ない隊員数ながらも、数々の戦場を切り抜けてきたエース級の実力者達だ。

 

てっきり、エスデスの傘下に組み込まれたと思っていたが………。

 

 

「4人が退役、2人は軍に組み込まれて国境部隊の部隊長をしていると聞いてます」

「思い切ったな。軍なら一先ず食いっぱぐれはないだろうに」

「オネスト大臣が気に入らなかったそうです」

「身も蓋もねぇな」

 

 

俺はケラケラと笑う。

 

 

「軍はともかくとして、一度集まって飯でも食いたいな」

「全員に伝えておきます」

「悪いなルソル」

「いえ、閣下のためならば」

 

 

俺はそこに泊まった。

 

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エンド

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そういえば、この前初めてボルトを見ました。ナルトも書いてみたいこの頃………。


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第8話ー突撃親衛隊ー

あまりにワンピースと言われるので、入れてみました。少ししたらタグにも入れようと思います。


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第8話

ー突撃親衛隊ー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○??side○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

………突撃親衛隊。そこは私が最も充実していた場所だった。

 

構成人数たった6名というこの部隊は、数々の戦場を踏み越えてきた精鋭部隊だった。

 

ゆえにだろう。突撃親衛隊が簡単に崩壊したのは。

 

閣下がいなくなってすぐに他の将軍達が私達を求めた。だが、私達は誰の下にもつく気になれなかった。

 

 

ーーーあの戦場を、今一度‼︎

ーーー地獄のような我らが世界を‼︎

ーーー我らが戦場を‼︎

 

 

だからこそ、私は歓喜した。

 

 

ーーー閣下が再び帝都に現れた。

 

 

「閣下、我らが閣下。この哀れな私に戦場をお与えください。閣下の為にならいくつもの首を眼前に並べて見せましょう

 

ーーーこの【首切りザンク】がね」

 

 

私は首切りザンク。かつては死刑執行人であり、戦場で数百もの首を並べ続けた軍人である。

 

 

「あぁ、次の戦場は幾つの首を並べられるだろうか? ああ‼︎ 閣下‼︎ 我らが閣下‼︎」

 

 

戦場は、すぐ目の前だった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○ザンクsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

夜もすっかりふけた頃、とある居酒屋に懐かしい顔が揃っていた。

 

 

「愉快愉快、懐かしいですな、閣下」

 

 

そう言ってエールを思いっきり飲むのは、元突撃親衛隊の切り込み役のザンクだ。

 

こいつ、戦場に出ると必ずと言っていいほど殺す人間の首をはねるから首切りなんて異名がある。

 

 

「がっはっはっは‼︎ ザンク、湿っぽいぞ‼︎」

 

 

大声で笑うのは同じく突撃親衛隊隊員の【オーガ】である。

 

 

「よく来てくれた2人共」

「何をおっしゃる‼︎ このオーガ、たとえ警備隊に属そうとも閣下への忠誠は忘れはしないぜ‼︎」

「私も同じ気持ちです閣下」

「そうか。ありがとう」

 

 

俺は改めて2人を見る。

 

 

「(原作で見覚えがあるんだよなぁ………)」

 

 

主に敵としてだが。

 

 

「(つか気付けよ‼︎ ザンクとか異名までそのままじゃねぇか‼︎)」

 

 

両者ともタツミに暗殺される筈の敵キャラであった。

 

 

「(まあいい。オーガは問題なさそうだし、ザンクも首首うるさい事以外は紳士的だ)」

 

 

そう、問題なんてなかったんや(白目)。

 

 

「そういえば、今回はどうされたのですか? 確か今は子育てをされている筈では………」

「帝都に送り込んだ息子の様子見で来たんだ。 まあ、そのなんだ………再び軍人をやろうかと思っている」

 

 

将軍の席が残っているかは分からないが、上の方ならエスデスやオネストに干渉できるだろう。

 

ーーー俺はエスデスにタツミを渡す気はないのだから。

 

 

「ほう‼︎ これは愉快愉快‼︎ 再び閣下と戦場を共にできるとは‼︎ 歓喜に脳が震えます‼︎」

「ガハハハ‼︎ 俺も警備隊から軍に鞍替えしねぇとなぁ‼︎」

 

 

2人が愉快そうに笑う。

 

「とはいえ、北の異民族の反乱が収まった今戦う機会があるとすれば」

「反乱軍だな。いや、規模から言えば革命軍だな」

 

 

オーガが顎を撫でる。

 

 

「オーガ君、警備隊なら反乱軍の動きを何か掴んでいませんか?」

「正直帝国内外に反乱分子が多すぎる。反乱軍の小枝を毎回掴んでもトカゲの尻尾切りのごとく大元までたどり着けねぇ」

「帝国も落ちたものですね………いえ、我々がいた頃は現状よりもかなりマシでしたから、そこまで落としたオネスト大臣の手腕がすごいのか………」

「政治力だけなら、オネスト大臣に及ぶ人間は今の帝国内にいないだろう」

「いや、【チュウ】元大臣が帝都に戻ってきてる」

「チュウ元大臣、か」

 

 

チュウ元大臣。 俺の頃は現役だったが、正義感の強い。そして原作では殺される人間だ。

 

 

「(エスデスか………少しは丸くなってるといいが、丸くなるとは思えんな)」

 

 

これは、ついに特典を使う時が来たかもしれない。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

*********

○王宮○

 

 

王宮にタツミが連れ込まれてそれなりの日にちが過ぎた。

 

 

「(もう結構経ったな)」

 

 

疲れ切った様子で、タツミはベットに転がる。

 

 

「(まさか、親父が最強の将軍カイドウなんて………何も知らない俺が聞いても絶対信じないな。というか今でも信じてないんだが)」

 

 

思わずタツミは深いため息を吐き出す。

 

 

「(それにしてもどうしたもんかな? 色々と………)」

 

 

*********

○とある茶屋○

 

 

団子が美味いと評判の茶屋で、2人の人間が同じ長椅子に腰掛けていた。

 

 

「ーーー久しぶりだな、ナジェンダ」

「エスデス………」

 

 

元同僚のエスデスとナジェンダがそれぞれの名前を呼ぶ。

 

 

「安心しろ、この茶屋は今私の手のものしかいない。他の目はない」

「ふん………」

 

 

ナジェンダが団子を口にする。

 

 

「さて、では提案の件だが………飲む気にはなったかな?」

「その前に聞かせてもらおう。何故寝返る気になった? お前のような戦闘狂が平和を求める気になるとはとても思えん」

「ふっ、哀れだなナジェンダ」

「何?」

 

 

エスデスがお茶を口にする。

 

 

「そんなことよりも、私にとってタツミの方が大切なのだ。戦争よりもな」

「なん、だと?」

 

 

ナジェンダは両目を見開く。あの戦闘狂が、戦争よりも1人の男を選ぶというのだ。

 

 

「い、意外だな。お前が1人の男に夢中になるとは」

 

 

出てきた冷や汗を拭いながら、ナジェンダは探りを入れる。

 

 

「恋………いや、愛とは素晴らしいものだったのだな。私はそばにタツミがいるだけでよくなってしまったよ」

「………」

 

 

エスデスのあまりの変わりように、ナジェンダの口は閉まらなくなっていた。

 

 

「一目惚れだった。あの時運命を感じたよ」

 

 

エスデスの表情は自らの恋話を話す乙女の表情であった。ナジェンダの目が点になる。

 

 

「………もう取りこぼすものか。タツミはもう私のものだ」

 

 

エスデスの瞳に鋭い光が一瞬光るが、すぐに元の瞳に戻る。

 

 

「ふふっ、気付けば、染め上げるつもりが、すっかり染められてしまったな」

「(タツミ、お前一体………)」

 

 

ナジェンダは恐怖した‼︎ タツミのホスト並みのたらし能力に‼︎ おまけに相手はあのエスデスである‼︎

 

 

「(戦争狂すら落とすか………‼︎)」

 

 

気のいい青年くらいのはずだったのにと思いつつ、ナジェンダはさらに探りを入れる。

 

 

「しかし、国を求めるとは………」

「タツミの故郷を中心に、それほど大きい国でなくても構わん」

 

 

ナジェンダは考え込む。数個の村を独立させるだけでエスデスの軍事力が手に入るなら悪い取引ではなかった。

 

 

「(エスデスが死んだ後回収しても構わんだろうしな)」

「その国の城で結婚式をするつもりなのだ」

 

 

砂糖を吐きそうなのろけを続けるエスデス。そう、空から降ってくるそれにすら気付かない程に。

 

 

ーーーどぉおおん‼︎

「がっはっ‼︎」

「なっ⁉︎」「な、何だ⁉︎」

 

 

何かが店の中に突っ込み、店を破壊していた。

 

 

「………お、お前は」

 

 

そこにいたのは、エスデスが護衛として周囲に配備していたエスデスに忠誠を誓う兵士であった。

 

 

「ーーーうぃひっく」

「「っ⁉︎」」

 

 

2人が声のした方を見ると、民族服を着た男がゆっくりと歩いていた。その手には酒の瓶が握られている。

 

 

「あれは、まさかっ⁉︎」

 

 

エスデスが青い顔で声を上げる。

 

 

「我こそはぁ‼︎ 帝国軍元将軍カイドウぅ‼︎ 腕に覚えのあるものはかかってこんかぁ‼︎」

「誰だぁ‼︎ 義父に酒を飲ませた愚か者わぁあ‼︎ この手で直接拷問して殺してやるぅ‼︎」

 

 

エスデスは悲鳴に近い叫びを上げる。

 

帝国軍元将軍カイドウ。酒に酔い、一定のラインを超えると近くに全力の組手を仕掛けてくるという最悪な酒癖を持つ男である(組手故に殺すことはない)。

 

 

「ま、不味い‼︎ このままでは我々だけの被害で終わらんぞ‼︎」

「な、何だと⁉︎」

「総員、義父を何としてでも止めろ‼︎ ナジェンダ‼︎ お前も手伝え‼︎」

「あ、ああ………」

 

 

生き残っていたエスデスの兵士達と、近くで状況を見守っていたアカメが現れる。

 

 

「クハハハハ‼︎ 面白い‼︎ 我に自ら挑むか‼︎ いいぞいいぞ‼︎ その粋やよし‼︎」

 

 

カイドウが構えを取る。

 

 

「全力はやめておいてやる。故に全力で来いやぁあああああ‼︎」

 

 

殺意の波がエスデス達に放たれる。

 

 

「「「………」」」ふら。

 

 

兵士達の一部が意識を失って倒れる。

 

 

「さ、殺気だけで兵士達が、い、意識を刈り取られるとは………」

「本気の義父の前では、並の人間は立っていられない。話には聞いていたが、実体験する時が来るとは」

 

 

カイドウは倒れた人間達を無視して、腰の細身の西洋剣を抜く。

 

 

「俺の【覇王色の覇気(モドキ)】に耐えると………ひっく………やるな」

 

 

ギラリと細身の西洋剣の黒い刃がきらめく。

 

 

「チカラを底まで見せてみろや」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

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エンド

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第9話ー最強の将軍カイドウー

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第9話

ー最強の将軍カイドウー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「カッカッカ‼︎ 遅い遅い遅い‼︎」

「ぎゃっ⁉︎」「ひでぶっ⁉︎」「うぁああ⁉︎」

 

 

殴られ、蹴り飛ばされ、投げ飛ばされ、次々とエスデスの兵士達がリタイアしていく。

 

 

「俺に剣を使わせてみせろやァアアア‼︎」

 

 

カイドウの一撃で地面が砕け、何人かの兵士が吹き飛ばされていく。

 

 

「………あれは、人間なのか? 危険種ではなく」

 

 

現実逃避したいとばかりにナジェンダが言葉をこぼす。

 

 

「馬鹿を言うな。あの程度、義父にとってはお遊びにもならん」

 

 

エスデスが剣を構える。

 

 

「(さて、どうする?相手は義父………否、最強の将軍カイドウ。生半可な攻撃ではダメージも与えられるかどうか)」

 

 

その瞬間、アカメが飛び出す。

 

 

「屠る」

「ちょございな‼︎」

 

 

アカメの刃をカイドウが黒く変色した左腕で受け止める。

 

 

「は、刃が通らない⁈」

「【武装色の覇気(モドキ)】………そして‼︎」

 

 

カイドウが距離を取る。

 

 

「武装色硬化‼︎ 【トールハンマー】ぁあああ‼︎」

「かっ⁉︎」

 

 

カイドウの左ストレートに、アカメが吹き飛ぶ。

 

 

「アカメ⁉︎」

「ちっ」

 

 

エスデスが飛び出す。

 

 

「エスデスぅううう‼︎」

「はぁあああ‼︎」

 

 

2つの刃がぶつかり合う。

 

 

「久しぶりじゃ〜ね〜か? ひっく………少しばかり見ない間に随分派手にやらかすようになったじゃ〜ねぇかよ?なあ?エスデスぅ」

「義父も息災なよう、で‼︎」

 

 

つば斬り合いの末、両者が距離を取る。

 

 

「だが、その程度では息子は………ひっく………譲れんなぁ」

 

 

カイドウが剣をしっかりと構える。

 

 

「ならば越えるまで‼︎」

 

 

空中に大量の氷礫が生成され、雨のように降り注ぐ。

 

 

「武装色の覇気(モドキ)‼︎」

 

 

しかし、その攻撃は無情にも弾かれていく。

 

 

「流石義父。守りも固いようで」

「お前も動きが良くなったな?だが、何故片腕の動きが悪い?」

「ッ⁉︎」

 

 

エスデスは思わず左腕を抑える。そこは前の生で切り落とした腕であった。

 

 

「………お前、もしかしてだが」

「何か?義父」

 

 

エスデスは剣を構える。

 

 

「俺と同じ………いや、"逆行してきた"エスデスだな?」

「ッ⁉︎(何故それを⁉︎)」

 

 

エスデスに動揺が走る。

 

 

「タツミとともに散った方かな?まあ、どちらにしても息子は任せられんよ?

「ほざけ‼︎」

 

 

激情に駆られたエスデスが飛び出す。

 

 

「暴れるな」

「ぐはっ⁉︎」

 

 

エスデスが地面に叩きつけられ、そのまま踏みつけられる。

 

 

「問おうエスデス………お前は何を持ってタツミと共に歩む?お前の道は真の修羅の道。血と肉と鉄と憎悪の道。そんな道をタツミにも歩ませる気か?」

「い、え………義父。私、は、真の愛に、目覚めたのです」

「………」

 

 

カイドウはエスデスを無言で見下ろす。しかし、エスデスを踏みつけるチカラは緩めていた。

 

 

「私は戦争よりも愛を取ることにしました。我が武は愛のために‼︎」

「………ではどうする気だ?このままでは帝国は革命によって倒れるだろう。その時、帝国軍将軍のお前はどうする気だ?」

「革命軍と密約を交わしています。タツミの故郷に独立国を作るという密約を」

「な、に?」

 

 

カイドウが驚愕に目を丸くする。

 

 

「故に義父………いや、タツミの父カイドウよ。息子さんを下さい‼︎」

 

 

周囲が静寂に包まれる。

 

 

「「ーーーえ?今それ言う?」」

 

 

ナジェンダとアカメが呆けた顔をする。

 

 

「………くっ、あはははははは‼︎ 面白い‼︎ 面白いぞ‼︎ 我が娘エスデスよ‼︎ 戦いの申し子にして愛の狩人よ‼︎ いいだろう‼︎ 見せてみろ‼︎ 貴様の愛と武を‼︎」

 

 

そして、カイドウが笑いながら倒れる。

 

 

「寝る………zzz」

「やっと寝たか………」

 

 

エスデスがむくりと起き上がる。

 

 

「無事か?」

「ああ、軽い打撲程度だ」

「それは残念だ」

 

 

ナジェンダとエスデスが会話を交わしていると、2人の男が現れる。

ーーーオーガとザンクであった。

 

 

「失礼いたします、エスデス将軍。カイドウ閣下をお迎えにあがりました」

「ああ、頼む。それと後日使いの者を出すから王宮に来てくれと伝えてくれ」

「「はっ‼︎」」

 

 

2人がカイドウを担ぎ上げ、街に消えていく。

 

 

「………さて、この惨状をどうするべきか」

「私達とやりあったとでも言えばいいだろう」

「それが妥当か」

 

 

エスデスがナジェンダの提案を受け入れる。

 

 

「そろそろ警備隊が来る頃だ」

「ああ、失礼する」

 

 

ナジェンダとアカメが立ち去る。

 

 

「………しかし、義父は何故私の正体を知っていたのだ? 別で聞かねばならないな」

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ーーー妻が微笑んでいる。

ーーー食卓で、共に食事をしている。

 

ーーーもう、今はない光景だ。

ーーー君は向こうで幸せかい?

 

ーーーなあ?○○?

 

 

*********

○【宿屋:若木】○

 

 

「ぅぁああ………頭がいてぇ」

 

 

ベットから抜け出した俺は、食堂で飯を食べながら頭を抱える。

 

 

「昨日はかなり呑んだっくれておられましたからな‼︎」

 

 

オーガが笑いながら答える。

 

 

「おまけに散々暴れましたから。愉快愉快」

 

 

ザンクがケラケラと笑っている。

 

 

「静かにしろ。響く………」

 

 

コーヒーを飲みながら、ズキズキと痛む頭を抑える。

 

 

「とりあえず、昨日の流れを教えてくれるか?」

「「アッハイ」」

 

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エンド

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第10話ー王宮ー

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第10話

ー王宮ー

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☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りside○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

帝国中の財が集められた場所こそ王宮である。

 

そんな王宮には精鋭と言えるだけの近衛兵達が詰め、多くの文官達も働き回っている。

 

つまり、豪華な見た目に反して王宮は騒がしい。

 

しかし、今日はピンと張った空気と共にその騒がしさは静けさへと変わっていた。

 

 

「あ、あれは………」

 

 

近衛兵の1人がゴクリと唾を飲み込む。

 

王宮の人間達の視線の先にいるのは、白地に所々に薄い青色を使った軍服を着た男であった。

 

 

「か、カイドウ将軍」

 

 

ーーー大嵐のカイドウ。

それは帝国の伝説となった男であった。

 

 

「エスデス将軍に会いに来た。いるか?」

「は、はひ‼︎ お、お部屋でお待ちです‼︎ ご、ご案内しましゅ‼︎」

 

 

近衛兵の案内で、カイドウが進む。

 

 

「あ、あれが大嵐のカイドウ」「隠居したと聞いていたが………」「子育てが終わったらしいぞ?」「将軍が復帰されるなら革命軍など鎧袖一触であろう」

 

 

ズンズンとカイドウは案内される道を進む。

 

 

「こ、こちらになります」

「ありがとう」

 

 

カイドウが部屋の中に入る。

 

 

「「あ」」

 

 

そこでは、椅子に座ったままのタツミに、エスデスが背後から抱きついていた。

 

 

「おいおい、熱々なのは見えないところでにしてくれんか?流石に目の前でやられると父親としてはちょっと複雑」

「いやいや!急に抱きつかれただけだから‼︎」

 

 

タツミがエスデスから離れる。

 

 

「タツミはいけずだな」

 

 

エスデスが頬を膨らませて怒ってますアピールを行う。

 

 

「ーーーさて、シラフで会うのはお久しぶりですな。義父」

「ああ、俺も昨日の記憶はないから実質的に数年ぶりだな」

 

 

カイドウが椅子に座り込む。

 

 

「ずいぶん長旅だったようですね」

「あー、変な危険種殺し回ってた。最近の帝国はあんな化け物を放置してるのか?ちょっと職務怠慢だぞ?」

 

 

カイドウがエスデスに注意する。

 

 

「こちらには報告は来ていませんが………分かりました。警備部隊を増員しておきます」

「囚人服を着た人型の危険種だ。戦力的には危険種1に対して一般帝国兵2.3名というところだろうな」

「私の直属兵なら問題ありませんな。対処させます」

「ああ、お前のところなら問題ないだろう」

 

 

カイドウはタツミをチラッと見てから、エスデスに声をかける。

 

 

「だいぶうちの息子が世話になってるようだな」

「未来の旦那様だからな‼︎」

 

 

エスデスがドヤ顔で答える。

 

 

「エスデス………そのだな」

「義父よ、奥で話しませんか?ここでは他人の耳もありますので………」

「それもそうだな。タツミそこで待ってろ。奥でエスデスと話してくる」

「え?あ、ああ」

 

 

カイドウとエスデスは部屋の奥へと向かう。そこは寝室であった。確かにここならば他人に聞かれることはないだろう。

 

 

「義父よ。この前言ってた事を答えていただきたい」

「あ〜すまん、言ったことを覚えてない」

「義父は本当に酒癖が悪いですな。義父は私が未来から逆行してきた事を当てたのですよ」

「………は?」

 

 

カイドウは思わずといった声を出す。

 

 

「どうして知っているか、お答えいただいても?」

「………あ〜簡単に言えば俺も同じようなもんだからだ」

 

 

カイドウはめんどくさくなり、普通に答える。

 

 

「しかし前の帝国には義父は………」

「ただしお前の知る世界ではない。違う世界から来たのさ。だから前の帝国には居なかった」

 

 

カイドウが笑みを浮かべる。

 

 

「しかし、エスデスが逆行してきていたとは………」

「私としても義父が違う世界から来たとは………驚きました」

 

 

カイドウは近くにあったイスに座る。

 

 

「で?お前は今後どうする気だ?」

「愛に生きます。私はタツミさえいればいい」

「恋でもなく、愛………か」

 

 

カイドウの脳裏に妻の姿が浮かぶ。

 

 

「愛と恋は別のものだ。お前はそれを愛と言えるか?」

「はい」

 

 

エスデスははっきりと答える。

 

 

「そうか………なら結果で表せエスデス。それで判断する。お前の思いが愛かどうか、な」

 

 

瞬間、ドアがものすごい勢いでノックされる。

 

 

「し、将軍‼︎ たたたた大変ですぅうう‼︎ だ、大臣がぁああああ‼︎ オネスト大臣がぁああああ‼︎」

 

 

衛兵が悲鳴のような声を上げている。

 

 

「狼狽えるな‼︎ 中に入ってはっきり報告しろ‼︎」

「は、はひ‼︎」

 

 

衛兵が中に入り説明を始める。

 

 

「ほ、報告いたします‼︎ オネスト大臣が粛清を宣言されました‼︎ 多数の兵士と近衛兵まで動員して対象者の捕縛を開始しています‼︎」

「反乱軍の前に帝国の良識派を叩く算段か? 誰が拘束されている?」

「"大臣派"の大物が次々と‼︎」

「「………ん?んん?」」

 

 

2人は聞き間違えかと思い問い直す。

 

 

「大臣派です‼︎ 大臣自ら大臣派の腐敗政治家たちの粛清を開始しました‼︎ 名だたる大臣派の大物達が拘束されています‼︎」

「「………はぁッ⁉︎」」

 

 

悪の親玉が部下たる悪の粛清を始める。それが現実に起きていた。

 

 

「大臣、狂ったか?」

 

 

そういえばとエスデスは思い出す。最近どうもオネストの様子がおかしかった事を。

 

 

「さらに大臣自ら良識派を重要ポストに抜擢しており、帝国の政治中枢が良識派へと変わってきています‼︎」

 

 

それは、帝国の腐敗の終わりを意味していた。

 

 

*********

○大臣執務室○

 

 

「この男は犯罪組織と内通しています。泳がせつつ部隊を配備して摘発しなさい」

「は、はい‼︎」

 

 

オネストの命令に、混乱を表情に浮かべながら将軍が敬礼を返す。

 

 

「………もう少し味方が欲しいところですかね」

 

 

オネストは退室する将軍を見送り、すっかり細くなった顎を右手でさする。

 

 

「国を悪くするのは容易かった………では、良くするのはどうでしょう?」

 

 

オネストは考えた末に考え方を変えた。財を溜め込み浪費しても己の空腹に似たそれを満たすことはできなかった。ならば逆に良い政治をしてみようと考えたのだ。

 

 

「くっふっふっふ………やはり思った通りですね。いいです、いいですよ‼︎ 満たされていく‼︎ 空腹が‼︎」

 

 

オネストは凶悪な笑みを浮かべる。

 

 

「さあ、私が育て上げた帝国の闇よ。今こそ私に逆らうがいい………それを真っ向から叩き潰して差し上げましょう」

 

 

オネストは政治闘争に快楽を見出していた。帝国の闇を育て上げた手腕が、遺憾無く育てたものを潰すために振るわれようとしていた。

 

そしてその手腕により、帝国の闇は大ダメージを受けていた。腐敗した政府高官達は次々と捕縛され、政府高官と癒着関係にあった犯罪組織も次々と壊滅することとなる。

 

のちに、帝国史に刻まれる奇跡の会心は、圧政に苦しんだ民達に、そして敵の総大将をオネストとしていた反乱軍に大きな衝撃を与えたのであった。

 

 

ーーー怪物は神に魅入られ、自ら邪道から正道を歩き始める。

ーーーしかし、その先は贖罪のための地獄か、はたまたそれとも………。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

○語りsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

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エンド

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まさかの大臣大革命でした。この後も続く予定です。


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第11話ー滅ぶ者達ー

久しぶりに書いてみました。楽しみにされていた方は大変申し訳ございませんでした。


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第11話

ー滅ぶ者達ー

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*********

○帝国○

○王宮:謁見の間○

 

 

俺達の目の前に、大臣派でも【大臣の裾持ち】とまで呼ばれた貴族の男が、衛兵に引っ立てられて連れて来られる。

 

 

「汝を汚職、犯罪組織との癒着、殺人、恐喝、脱税………大臣、これはなんと読む?「国家転覆未遂罪ですね」なるほど‼︎ 国家転覆未遂の罪により、死刑に処す‼︎」

 

 

幼き皇帝が罪人に宣言する。

 

 

「さて、カイドウ………どのような刑が妥当か?」

 

 

幼き皇帝が俺に問いかける。

 

 

「………【ファラリスの雄牛】が妥当かと」

「ふぁらりすの?まあよい、それにしよう」

 

 

少し待つと、出入り口から鉄製の牛の置物が運び込まれてくる。

 

 

「ーーーッ⁉︎」

 

 

猿轡をされ四肢を拘束された罪人が、泣きながらジタバタと暴れる。

 

 

「うーむ、これはどう使うのだ?」

「将軍も中々に乙な処刑方法をお選びになられる…私から説明いたしましょう」

 

 

オネスト大臣が前に出て説明を始める。

 

 

「まず、罪人を牛の中に入れます」

 

 

牛の中は空洞であり、暴れる罪人が牛の中に入れられる。その際に猿轡を取られ、拘束も解かれる。しかし、鍵を閉められるために外に出ることはできない。

 

 

「牛の下の大皿で火を焚きます」

 

 

パチパチと皿の上で火が踊る。

 

 

「あとは鉄に伝わる熱で呼吸できなくなった死刑囚が、新鮮な空気を求めて牛の内部に備え付けられている管で呼吸をしようとすると…」

ーーーぶぉおおお。

 

 

牛から牛の鳴き声のような音がする。そう、これは死刑囚が新鮮な空気を求めて奏でる死の音楽である。

 

 

「という風に音楽を焼け死ぬまで奏でてくれるのですよ」

「こ、これは中々に残酷な処刑方法だな…朕は少し苦手だぞ。焦げる匂いも臭いし」

 

 

オネスト大臣が幼い皇帝に語りかける。

 

 

「陛下、皇帝というものは女神の微笑みのような優しさだけでは国を統治できません。時には地獄すらも生ぬるいと感じさせるほどの残酷さも必要です。割合的には優しさ6の残酷さ4というところでしょうか?」

「残酷さ、か?」

「ええ、ご覧ください」

 

 

幼い皇帝が家臣達の顔を見る。全員が青い顔をしている。

 

 

「慈愛だけでは家臣達は勝手につけあがり、今回のような事を起こします。なればこそ、このような鞭を見せつける必要があるのデス‼︎」

 

 

オネスト大臣の視線が、ゆっくりと俺に向く。

 

 

「その点、このファラリスの雄牛は素晴らしいものです。ここまで見せつけるという行為を芸術的に仕上げたものはありません。開発者のカイドウ将軍はどう思われますかな?」

「ッ⁉︎」

 

 

タツミが驚いた顔で俺を見る。

 

 

「………元々、ファラリスの雄牛は命令に逆らい略奪等の重罪軍務違反に対して執行される処刑方法だ。他の兵士達への見せしめも含めてある程度は残酷なものでなければならない。

ーーーそう、このファラリスの奏でる音を聞いた時に恐怖を感じる程度でなければならない」

 

 

その点、前世の知識からコピー生産したこのファラリスの雄牛は十二分に効力を発揮した。

 

 

「よって、当時俺の部隊での軍規違反はいない」

「だ、だけど………」

「タツミ、戦争で人は死ぬ。将軍とは戦争で死んだ部下を無駄な死であったとさせないことだ」

 

 

俺は腕を組む。音が弱くなってきた。

 

 

「軍規違反の死刑など無駄な死以外の何物でもない。ならばその死すらも俺は利用した。一度は俺に預けてくれた命を無駄にしないように」

「お、親父」

 

 

音が止み、死刑官が死体を確認して、ファラリスの雄牛ごと運び出す。

 

 

「カイドウは前へ」

「はっ」

 

 

俺は皇帝の前へ出て片膝をつく。

 

 

「カイドウよ、朕が汝に命ずる。将軍に復職し、再び帝国のためにその武を振るえ」

「ははっ‼︎ 謹んで将軍の任を拝命いたします‼︎ 陛下に大義がある限り、我が武を振るいましょうぞ‼︎」

「うむ、汝に【右将軍】の地位を与える‼︎これは大将軍の次に高位の地位である‼︎」

 

 

会場がざわつく。

 

 

「カイドウ右将軍には早速で申し訳ありませんが、裏社会で勢力を拡大させ続けている【六本指】という組織の撲滅に動いていただきたい。兵は近衛以外ならば自由に引き抜いていただいて構いません」

 

 

オネスト大臣が髭をいじりながら指示を出す。

 

 

「カイドウよ。民のため、帝国を蝕む闇を討て‼︎」

「はっ‼︎」

 

 

俺は頭を下げる。

 

 

「(オネストの奴…どういうつもりだ?俺に兵を持たせて懐柔する気か?)」

「続いて、カイドウの息子タツミよ」

「あ、はい」

 

 

俺の隣でタツミが片膝をつく。

 

 

「汝には一時的にカイドウの元で将軍見習いとして働いてもらいたい…いや、ここははっきりと言うべきだな」

 

 

皇帝がタツミの前まで歩いてくる。

 

 

「朕の父である前皇帝はカイドウに信を置いていた。カイドウが将軍職を辞した時は卒倒したほどだ」

「え、あ、はい」

 

 

皇帝はタツミの手を取る。

 

 

「タツミよ。朕は汝を朕の父におけるカイドウとしたい。朕の元で剣を振るってはくれぬか?」

「え?えぇええええ⁉︎」

 

 

タツミが驚愕の声をあげる。

 

 

「へ、陛下?」

 

 

あまりの事態に、オネスト大臣もたじろぐ。

 

 

「皇帝陛下。大変失礼ながら、私の息子は武を教えてあるとはいえ、鍛治師として生計を立てている身の上。それをいきなり将軍見習いというのは父親としては少々不安であります」

「それについては…ハウゼン‼︎」

「はっ‼︎」

 

 

同期であった将軍のハウゼンが皇帝の前に進み片膝をつく。

 

 

「朕の父が作りし帝国最高の諜報部隊【見えざる手】の部隊長であるハウゼンに問う」

「はっ」

「「「「ッ⁉︎」」」」

 

 

会場の全員が息を呑む。もはや妄想の産物、噂だけの存在とされた前皇帝が作り上げた最高の諜報機関"見えざる手"。その部隊長がそこにいるというのは全員が息を飲み込んでもおかしくない出来事であった。

 

 

「タツミはこの帝都にて何をしていた」

「反政府の暗殺組織ナイトレイドの構成員として活動しているのを確認しております。ただし見習いという但し書きが付きますが」

「「「「なッ⁉︎」」」」

 

 

全員が驚愕し、衛兵が武器に手をかける。

 

 

「タツミよ。朕はこれから色々なことに悩み色々なことに迷うだろう。もしも汝が朕が間違えを犯していると思った時は、朕を叱咤せよ。汝にその許可を与える。

ーーーナイトレイドに一時的に加入していたのであれば、私の首を狙う覚悟もできているだろう?」

「ッ⁉︎ 陛下‼︎」

 

 

オネストが声をあげる。しかし、皇帝が右手でオネストを黙らせる。

 

 

「正直に言えば、朕はこの帝国を朕の代で終わらせるのも一興かと思っていた。愚王としてナイトレイドや革命軍に首を打ち取られるのも覚悟していた。しかし、人というものは強いのだな。ハウゼンからの革命軍の情報、そしてオネストを代表とする人間の可能性…朕はこの帝国に希望を見出した」

 

 

皇帝が両手を広げる。

 

 

「朕はここに宣言する‼︎ この帝国を千年帝国とする‼︎ 朕の代では不可能であろう。しかし、朕の代で地盤を作り上げ、その子孫達が千年続く平和を築き上げるであろう‼︎」

「「「「ぉおおおお‼︎ 皇帝陛下万歳‼︎ 千年帝国に栄光あれ‼︎」」」」

 

 

部屋を轟音が支配する。

 

 

「さあ、どうするタツミよ」

「…やってやる」

 

 

タツミが立ち上がる。

 

 

「皆が笑顔で暮らせる国を作る‼︎」

「うむ、その返事を待っていた」

 

 

皇帝が従者に箱を持って来させる。皇帝が箱を開けると、そこにあったのは控え目の装飾がされた、しかし業物であろう剣であった。

 

 

「これは朕と汝の契約の証。我が千年帝国への約束…汝が持て」

「…ああ」

 

 

タツミが剣を受け取る。

 

 

「(待て…待て待て待て⁉︎ 一体全体どうなってやがる⁉︎ こんな設定あったか?)」

 

 

エスデスを見ると顔を真っ青にしている。

 

 

「さあ、我が臣達よ‼︎ 帝国の再建を始めよう‼︎」

 

 

こうして、帝国の再建が始まった。始まっちゃったのである。

 

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エンド

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