海神絶唱シンフォギア~海の化身と装者たち~ (サミン)
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プロローグ


タイトルやタグにもあるように、この作品の主役ウルトラマンはアグルです。


この世界には、人間にとって最も危険と言われている『ノイズ』が存在している。ノイズとは、人間のみを大群で襲撃し、その身に触れた者を自分もろとも炭素の塊へと変えてしまう特性を持っている。そんなノイズは10年ほど前から特異災害認定されており、現在でもニュースで被害報告がされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…………!」

 

そして、今もノイズに襲われようとしている女性がいた。その女性は、恋人の男性とデートをしていたのだが、その帰りにノイズと出くわしてしまったのだった。その時、男性は彼女だけでもと思い女性を庇い、ノイズに触れられてしまい、炭素と化してしまったのだ。

 

女性は悲しみながらも、助けてくれた彼のためにも生き残るために、ノイズから逃げようと走り続けていた。

 

ノイズによる炭化を防ぐための対処法としては、ノイズが一定時間で自壊するまで逃げることのみとされている。そのため、女性は今もなお走り続けていたのだ。

 

しかし、ノイズは大群で襲ってくるので、1体が自壊してもまだ何体もいるため、いつ触れられてもおかしくはない。

 

「ハァ、ハァ…………きゃっ!?」

 

とうとう限界が来てしまったのか、躓いて転んでしまった。

 

「いや、来ないで……!来ないでぇ!!」

 

そう声を出すもノイズは止まることなく近づいてくる。

 

そして彼女と1体のノイズの距離が0になり―――

 

 

「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!!!!!」

 

 

断末魔の悲鳴と共に女性は炭素と化してしまった。

 

そして、残ったノイズたちが自分達の一定の範囲に人間がいるかどうかを確認しようとしたその時―――

 

 

「―――くそ、遅かったか……!」

 

 

突然ノイズたちの前に1人の少年が立ちはだかった。走ってきたのか、少し息切れをしている。

 

「よぉ、ノイズ……何度も何度も罪のない人たちの命を奪いやがって……!俺はお前らを絶対に許さないッ!!」

 

そう言って少年が右腕を見せると、その右腕には三角形をした金縁と、同じく三角形をした水色の水晶が金縁に埋め込まれ、古代文字のようなものが書かれた2つの銀色のブレードが折り畳まれている、ブレスレット型の謎のアイテムが装着されていた。

 

そして少年が右腕を振り下ろすと、2つのブレードが左右に展開し、水晶が激しく点滅しながら青く発光し、握り拳のまま胸の前へ掲げるとブレスレットが180度回転した後、強烈な青い光が彼を包み込んだ。

 

そして光が晴れるとそこにいたのは、普通の人間と同じサイズをした、青い体に黒い部分と銀色のライン、胸と肩に連なる銀縁のプロテクターと胸の中央に青く光るランプを持ち、銀色の顔に鋭くつり上がった光り輝く両目を持つ謎の超人だった。

 

そして、謎の超人は右腕をノイズに向けて垂直に伸ばす。すると青い電撃のようなものが走ったと思ったら右手から光弾が何発も放たれ、ノイズたちに当たって爆発した。

 

突然の攻撃でノイズたちは驚くが、反撃しようとして走り出すと、超人が右手から今度は青く光る剣が形成させた。

 

『ハァアアッ!』

 

掛け声を出すと同時に超人は剣を振るい、ノイズたちを斬り裂いていく。そしてその攻撃を食らったノイズたちは炭素と化していった。

 

しかしノイズはまだいる。1体のノイズが跳躍して突撃を仕掛けてくるが、超人はそれを慌てることなく華麗に躱す。突撃してきたノイズはそのままうつ伏せに倒れてしまい、その隙に超人に両足を掴まれてしまう。

 

すると、驚くべきことに超人はノイズに触れてもその身が炭素化することがなかったのだ。そして超人はノイズの両足を持ち上げて何回も回し、そして他のノイズたちのいる方へ投げ飛ばした。

 

『ハァッ!』

 

その後に超人は両腕を額の前でクロスした後に振り抜くと、彼の両手の間にエネルギーが発生し、そのまま両手を握り拳にして右手を上、左手を下にして胸の前で組むと青い光弾が形成された。

 

『デヤッ!』

 

そして右手を下、左手を上に組み替えるとそのまま両手を突き出し、青い光弾をノイズたちに何発も放った。

 

光弾が何発も放たれ、結構の数がいたはずのノイズも残り1体となった。超人は残りの1体に向け、挑発するかのように左手でクイクイと手招きをする。それに怒ったノイズは思いっきり走ってきて突進してくるが当然避けられてしまい、足を払われてしまう。

 

超人は足を払われて倒れかけたノイズの胴体に蹴りを入れるとノイズは高く飛ばされ、それを追うように、なんと超人は空へと飛び上がった。

 

そして空中へと飛ばされたノイズをさらに蹴り飛ばし、自分が浮遊している場所まで落ちてくると今度は降下する速度を早めるために蹴り落とした。

 

『ハァッ!オォアアアアァァァ……!』

 

ノイズは勢いよく落下し、超人は着地した後、超人はもう一度両腕をクロスする。そして右腕を上に左腕を下に伸ばす。すると彼の額に青い光の渦が発生し、それが集まってくるとやがてそれは青く輝く光の刃を作り出し、それは空へと立ち上るように伸びていく。

 

そして―――

 

 

『デェアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

伸ばしていた右腕を振り下ろし、光の刃をノイズめがけて撃ち出した。

 

ノイズは立ち上がった瞬間にそれを食らってしまい、そして頭部から次々と粉々に爆発四散していった。

 

粉々になったノイズの断片は炭素と化していった。

 

 

 

 

 

ノイズたちを一掃した後、超人は先程倒したノイズたちによって炭素化されてしまった女性のいたところへと歩いていく。

 

そこには当然、炭素化された女性の肉体だった(・・・)ものが広がっていた。

 

超人はその場で片膝をついてその炭を片手で掬い、それを見つめる。すると、風が吹いて手にあった炭はもちろん、その場にあった炭は風にさらされて消えてしまった。

 

それを見届けた超人はゆっくりと立ち上がり、超人―――その姿になった少年は心の中で呟いた。

 

 

(すまなかった……早く助けに来られなくて……!本当に、すまなかった……!!)

 

 

彼はもっと早く助けてやれなかったことへの後悔と、それによる謝罪をした。その悔しさによって彼は手を強く握りしめていた。

 

(……次こそは……。とりあえず今日はこれだけのようだな……さっさとここから消えるとするか)

 

心の中でそう呟き、空を見上げたままでいると胸のランプから青い光が溢れ出て、彼の体は光となってその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

 

「ノイズの反応、全て消失しました」

 

どこかの施設の指令室と思われる場所で、ノイズの反応を確認していたオペレーターがそう報告をする。

 

「そうか……。その時の映像は残っているか?」

 

「いえ、ほとんどブレているものしか残っておりません……」

 

「分かった。しかし……シンフォギア(・・・・・・)以外でノイズを倒す者がいるとすれば―――」

 

「―――ええ、今ネットでも話題になっている、突然現れてはノイズを倒し、倒した後は跡形もなくその場から消え去る存在……そして、あの事件(・・・・)の時にも姿を現した。その名も―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――『ウルトラマン』」

 

 

逆立った赤い髪にワインレッドのシャツを着た、まさに屈強の男という相応しい言葉が似合う男―――ここ、『特異災害対策機動部二課』の司令『風鳴(かざなり)弦十郎(げんじゅうろう)』は腕組みをしながらそう呟いた。




完全な思いつき作品ですが、是非見てくれたら嬉しいです。
アグルの変身者については次回になります。ちなみこのアグルはV1であります。


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1話 吉宮(よしみや)一翔(かずと)


今回は前回より少し短めです。


ギィ……ギィ……

 

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……!」

 

ノイズを倒した翌日の日曜日。超人―――ウルトラマンに変身していた少年『吉宮(よしみや)一翔(かずと)』は朝から自宅でトレーニングをしていた。

 

汗をかき、呼吸が荒れそうになりながらもリズムよく呼吸を整え体を動かしていく。

 

 

[続いてのニュースです。昨夜、梶尾地区で特異災害ノイズの出現が観測されました。しかし、残念なことに観測された場所のピンポイントに男女二名が遭遇してしまったことで、その後の調査により、男女二名はノイズによる死亡が確認されました]

 

点けていたテレビからそんなニュースが流れてくると、ちょうど一段落終えたのか一翔はトレーニングマシンから降り、テーブルの上に置いてあったペットボトルの中の水を飲みながらニュースを見始める。

 

「はぁ……あれは決してノイズ出現を予知するアイテムじゃないことは十分理解してるが、やっぱり悔しいな……事前にノイズから人を守ることが出来ないと言うことが……」

 

一翔はテレビを見た後、ペットボトルの隣に置いてあった、ウルトラマンに変身するために使用したブレスレットを見つめてそう呟く。

 

[続いてのニュースは、現在ネットなどで注目されている謎の存在・ウルトラマンについて―――]

 

 

「……ウルトラマンか……良い名前だな……と言いたいところだが、犠牲者を出さずにノイズを倒したことなんてほんの少し程度しかない俺が、そんな名前を持ってても無意味だな……」

 

自虐気味に笑いながらそう呟いた後、一翔は再びトレーニングを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、トレーニングを終えてシャワーを浴び、着替えた後に一翔は外出した。

 

ちなみに彼の服装は、グレーのインナーに黒いジャケットを羽織っており、これまた黒いズボンを穿いているという、いわゆる黒ずくめの服装をしていた。

 

ちなみに、髪の毛の色も黒である。

 

(今日は……いや、今日もあそこ行くか)

 

心の中でそう呟いた一翔は近くのホームセンターで様々な道具を買い、目指すべき場所へと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

そして数十分後、一翔はとある一軒家へとやって来た。

 

そこには―――

 

 

「やっぱりか……ったく、あの事件(・・・・)から結構経ったってのに、まだこんなことする奴らがいるのかよ……」

 

 

一翔が訪れたそこには、『死ね』『犯罪者』『消えろ』『人殺し』といった暴言が書かれた紙が貼られており、スプレーでもそういった暴言が述べられていた。

 

一翔は先程ホームセンターで買った道具を一通り並べ、まずは貼り紙を一枚一枚剥がし始める。そしてそれを近くにあったゴミ箱にまとめて捨てた。

 

そこへ―――

 

 

「あ、一翔さんじゃないですか!」

 

「こんにちは、一翔さん!」

 

「ん?おぉ、立花に小日向か。また来てやったぜ」

 

一翔が先程の貼り紙を捨てたところで、茶髪でボブカットの少女『立花(たちばな)(ひびき)』と、黒髪ショートで大きな白いリボンでハーフアップにした髪型をしている少女『小日向(こひなた)未来(みく)』がやって来た。

 

「なんか、いつものことながら本当にすみません……一翔さんには何の関係もないことなのに……毎日毎日、家の壁とかの掃除とかしてもらっちゃって……」

 

響が一翔にそう謝罪すると、一翔はそれに対し首を振って答える。

 

「勘違いするな。俺はあくまであの事件で生き残った罪のない人たち(・・・・・・・・・・・・)のためにやってるんだ。お前だけのためにやってるわけじゃない」

 

「ふふっ、そういうところは相変わらずですね、一翔さんは」

 

「うっせぇよ、小日向……」

 

未来がクスクス笑いながらちゃかすと一翔は照れ臭そうにそっぽを向いた。

 

「にしても……ここに来たときも思ったが、たぶん他の人たちもこんな状態だろうな……」

 

「ええ……あれから半年経った今でもこんなことが続くとなると、色んな意味で心が痛みます……」

 

「響……」

 

一翔の言葉を聞いて響も同意するような言葉を言って顔を俯かせ、未来はそんな響を心配そうに見つめる。

 

「ま、それがあの事件で死んだ人(・・・・・・・・・)の遺族、または友人に恨まれるならまだ仕方ないと思うかもしれんが、俺にとっちゃ憎むべき相手が違いすぎる。そもそも、あの事件の発端はノイズだったんだ……ノイズさえいなければ……!」

 

そう言う一翔は拳を強く握りしめていた。

 

(そして……俺がもっと早く駆けつけていたら……立花も、他の人たちもこんな仕打ちは受けなかったのに……!!)

 

そして悔しさを感じると同時に、一翔は半年前に起こったあの事件を思い返していた。




一翔の服装はもちろん原作ガイアの藤宮がモチーフです。決して一翔の読み仮名が“かずと”だからってあっちの“かずと”をモチーフにしたわけではありませんので……。

ちなみに、次回はライブでの事件のエピソードですが、一翔自身の過去に関するエピソードはまだ先となります。


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2話 悲劇の前の日常


1ヶ月以上経ちましたがお待たせしました(待ってくれてる人いるのかな?)

今回の話の時点では一翔はもうアグルの力を手にしてます。

あと、ご存じかもしれませんが自分はこの作品自体が初投稿であるので、とりあえず最初のうちは文字数少な目な感じで投稿していきます。

タイトルのように今回はライブ事件の前の話となるので予めご了承ください。


半年前

 

桜ヶ丘中学校―――一翔はここに通っており、現在一翔は中学3年で受験生である。そんな彼の教室では授業が行われている。

 

「―――であるからして、生命の源とも呼ばれている海から生まれた生物たちが、私たち人間の先祖であることが考えられている」

 

ちなみにやっていたのは生物に関する教科の理科であり、海の生物などに関することが担当の教師の口から述べられていた。

 

しかし昼食を食べた後、つまり午後の授業であるため、いくら今年は受験シーズンと言えど、ほとんどの生徒たちにとっては眠たくなったりしてしまうつらい時間である。

 

「…………」(カリカリ)

 

だが一翔はその例外で、あくびをすることなく真面目に先生の話を聞きながら授業内容をノートに書き写していた。

 

そして海に対して強い思い入れがあるのか、この授業の内容を聞いた時に一翔は表情には出さなかったが内心では少し楽しそうな感じになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数回の授業が終わり、最後の授業も終えたところでHRも終了し、放課後となった。

 

「なぁなぁ、知ってるか?今度『ツヴァイウィング』のライブがあるんだぜ!!」

 

「おぉ、俺も知ってる!新曲とかも出たんだろ?俺も行きてぇよ……」

 

帰り支度を始める一翔の近くでそんな話をしている男子たちの声が聞こえてくる。

 

「ふっふーん、そうだろうと思って……じゃじゃーん!お前の分のチケットも手に入れておいたぜ!!」

 

「マジか!?すげぇな!」

 

「だから一緒に行こうぜ!せめてもの息抜きとしてよ」

 

「あぁ、いいなそれ!」

 

その会話は一翔の耳に入りはするが、当の本人は特に気にすることなく支度を終えると教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り道、一翔は自宅ではなくとある水族館へと足を運んだ。

 

「あの、すいません。館長は今いらっしゃいますか?」

 

受付の方へ行き、入場の手続きをしながら一翔は受付スタッフにここの館長がいるのかどうかを尋ねた。

 

「申し訳ありませんが、館長は現在外出中でして……」

 

 

「僕なら今、戻ってきたところだよ」

 

 

そこへ、青いシャツに白いズボンを穿いている40代くらいの男性が現れた。その胸には館長と書かれた名札が付いている。

 

「それじゃ、手続きが終わったらいつもの場所へ来てくれ」

 

「はい、分かりました。木戸さん」

 

「おいおい、この場では今は館長と呼ぶんだぞ」

 

「あ、すいません……」

 

 

 

 

 

その後、手続きを終えた一翔は関係者以外立入禁止の通路を見つけると、人がいないことを確認してその通路を歩いていく。

 

すると、先程受付で出会った館長がエレベーターと思われる1つの扉の前に立っていた。

 

「やぁ、人に見られずにちゃんと来れたかい?」

 

「大丈夫ですよ、何回も来てるんですから(・・・・・・・・・・・)……」

 

「ははっ、そうだったな。よし、行こうか」

 

館長はそう言うとエレベーターのボタンを押し、扉が開くと二人はその中へ入る。

 

「さて……また来てくれて嬉しいよ、一翔。最近来てくれなかったから他のみんなも寂しがってたんだ」

 

「仕方ないでしょ、今年は受験シーズンで色々と大変なんですから……」

 

「そんなこと言って、本当はもう内定とかは一発合格でもらってるんだろ?」

 

「まぁ、そりゃそうですけど……」

 

目的地へと向かいながらエレベーターの中で談笑を交える2人。

 

そして、目的地へと着いたエレベーターの扉が開くと、辺り全体がガラス張りの通路があり、その外には抜群の透明度を誇る海と、その中を泳ぐ魚や海洋生物がたくさんいるという美しい景色が広がっていた。

 

「……やっぱり、何度見ても綺麗だな。まるで疲れた魂がこの海の方へ戻っていく感じだ……」

 

「その年でお爺さんみたいなことを言うのは本当に君しかいないくらいだよ。ま、何はともあれ今日も彼らに顔出してやりな。あの子達(・・・・)も喜ぶことだろう」

 

「はい」

 

会話を交えながら2人は通路の先に見える、海の中に設置されている1つの建物へと足を進める。

 

 

 

 

 

そしてその建物の中に入ると、先程の水族館より近未来的な仕上がりとなっている広い部屋がそこにあった。その場には館長と同じ服装をした、職員と思われる人たちが様々な作業をしていた。

 

「みんな、久々に一翔が来てくれたぞ」

 

「お久しぶりです、皆さん」

 

館長がそう言うと一翔も挨拶をする。

 

「おぉ、来てくれたか一翔!」

 

「なかなか来てくれなかったから寂しかったのよ?」

 

屈強な体格をした男性と何かのメカを製作していた女性が一翔に声を掛けながら歩み寄ってくる。

 

「真壁さん、日向さん、ここに来る時に木戸さんにも言いましたけど、俺は今年受験なんだから―――」

 

「そんな事言っておきながら、天才頭脳の持ち主である君なら一発合格だったんだろ?」

 

「狩野さん……それ、木戸さんにも同じこと言われましたよ……」

 

コンピューターで何かを操作していた物静かな感じがする男性が館長と同じようなことを言い、一翔は苦笑いしながらそう言葉を返す。

 

すると―――

 

 

「グワァ、グワァ」

 

「キイィッ!」

 

1つの大きな水槽から、緑の体色に丸い目、赤い唇をしたトカゲのような小さな生物と、水色の体色にクジラとノコギリザメが合わさったような姿をした小さな生物が顔を出してきた。

 

「よぉ、チビスケにジョリー。元気にしてたか?」

 

「グワァ」

 

「キイィッ!」

 

一翔はトカゲのような生物に『チビスケ』、クジラとノコギリザメが合わさったような生物に『ジョリー』と呼び、2匹は嬉しそうな鳴き声を発する。

 

 

ここで彼らの説明をしよう。

 

彼らは、民間の水族館の職員として働いているがそれは表向きであり、本来は海洋専門に関する研究やチビスケやジョリーといった海で生まれた未知の生物を保護するために結成された組織である。

 

その名も『Oceanography Research Circle(海洋学研究サークル)(通称ORC)』

 

表向きの水族館側の職員もこの組織に属しているが、現時点でここでメインとして働いているのが以下の4人。

 

日向(ひゅうが)(りょう)

この組織の中では紅一点であり、海に潜るためのメカを開発、操縦を担当する。

 

狩野(かのう)浩平(こうへい)

海洋生物学の専門家。物静かで、コンピューター操作を得意とする。

 

真壁(まかべ)孝信(たかのぶ)

データリング担当。屈強な体格の持ち主であることから、格闘家と思われているが……それとは裏腹に臆病な一面があるらしい。

 

 

そして『木戸(きど)慎吾(しんご)

水族館の館長兼ORCの隊長で、落ち着いた性格であるが時々他の隊員たちや一翔と明るく接するムードメーカーでもある。

 

 

一翔はここに属しているわけではないが、幼い頃から木戸との交流があることもあり、名目上はORCの関係者及び、協力者という立場にある。

 

「チビスケたちがここで保護されてもう大分経つんだな……結構それなりに成長もしてきてるし」

 

一翔はそう呟きながらチビスケにチョコレート、ジョリーに骨抜きの魚を食べさせていた。

 

「まぁ、ここである程度保護して、もう海に帰しても良い具合になれたらその時はしばらく会えなくなっちゃうけどな」

 

「……そうですね。けど、大丈夫ですかね?こいつらは結構遠くの海から来たらしいけど、今でも帰りたがらないんでしょ?」

 

「そうなんだよなぁ……まぁ、帰りたがらないのは一翔が恋しいのかもしれないしな」

 

「フッ……そうだと良いんですけどね」

 

 

 

 

 

その後、チビスケやジョリー以外の他の生物たちのことや最近の海の変化などのことを色々知った後、そろそろ水族館の方が閉館時間となるため一翔は帰宅することにした。

 

「それじゃあ、また時間があれば来ます」

 

「あぁ、いつでも待ってるぞ」

 

木戸に出入り口まで見送ってもらった後、一翔は自宅へと帰るために歩き始める。

 

「一翔」

 

と、そこで木戸が呼び止めたため振り向くと、真剣な表情をしながら木戸は一翔に問いかけた。

 

「君は今もずっとノイズと戦っているのか?」

 

「……はい。そのために俺はこの光を手にしたんです」

 

一翔はそう言うと胸ポケットの中からウルトラマンに変身するブレスレットを取り出した。それを木戸に隠すことなく見せる。

 

「……君の気持ちは僕も……いや、僕たちも痛いほどよく分かる。けど……無茶だけはするな。そんな事じゃ、僕たちだけでなく彼ら(・・)も悲しい思いをするんだ」

 

木戸が以前ノイズに襲われかけた時に一翔は彼の前でウルトラマンに変身したことがある。そのため、木戸や他のメンバーは一翔がウルトラマンであることを知っている。

 

そして、一翔はその時の戦いで結構無茶な戦い方をしていたため、木戸はその時のような無茶な戦いを続けているのではないかと案じていた。

 

その言葉に対して一翔は―――

 

 

「無茶かもしれないけど無理じゃない……ノイズが現れ続ける限り、俺も戦い続けるだけです」

 

 

なんとも冷たい眼をしながら一翔は今度こそ歩き出して水族館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、完全に日が沈んだ頃―――

 

 

『ハァッ!』

 

 

一翔はウルトラマンとなってノイズと戦っていた。その後ろには1人の人間がウルトラマンとノイズの戦いの場から遠ざかるように逃げていた。

 

ノイズが現れた場所に一翔が偶然その近くを歩いていたため、炭化される前に早く駆けつけることが出来たようだ。

 

『デェアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

そしてとどめに額から光の刃『フォトンクラッシャー』を放ち、ノイズたちを一掃した。

 

(ふぅ、なんとかすぐに駆けつけられたか……今日はこれまでだな)

 

ノイズの一掃を確認すると、ウルトラマンはその場から飛び去ろうとする。

 

すると―――

 

 

『ッ!』

 

 

彼の背後から突然青く光る何かが向かってきた。ウルトラマンはいち早く気づき跳躍して回避する。すると謎の衝撃で辺りに煙が舞い上がる。

 

「見つけたぞ!」

 

そして煙が晴れるとそこにいたのは、青い長髪と左側で結わえたサイドポニーという特徴的な髪型をし、機械的なアーマーを身に纏って、1本の刀を構えている謎の少女だった。

 

(何だこいつ……?人間らしいが、ただ者じゃなさそうだな……)

 

突然現れた謎の少女に警戒しながらウルトラマンは少女を観察する。

 

「噂や二課での情報通りのようだな。ノイズを倒し、人間を襲わないということは人間の敵ではないのは確かだろう。しかし、正体が分からない以上、安易に味方だと断言することも出来ない。だからここで貴方を拘束し、正体を暴かせてもらう!」

 

(なるほど……どうやらこいつはその二課って言う組織に属していて、身に纏っている鎧のようなものはその組織のもの……そして、その組織の命令かどうかは知らないが俺を捕まえようと……少なくとも、ORCのような秘密組織であるのも間違いなさそうだな)

 

その考えに至ると、ウルトラマンは胸のランプ『ライフゲージ』から青い光を発生させてこの場から消えようとする。

 

「させるかッ!!」

 

『ッ!?』

 

しかし、光が発生しかけたと同時に少女はウルトラマンとの距離を積め、手に持っていた刀で彼に斬りかかる。

 

だが、間一髪のところでウルトラマンは斬撃を免れることに成功する。

 

「やはり光となって消え去るということも本当のようだな。だが、ここでみすみす野放しにするわけにはいかんッ!!」

 

そう言って少女は再びウルトラマンに斬りかかる。しかしウルトラマン―――一翔は人間とは戦いたくないため、ただただ避け続けるだけだった。

 

(くっ……!このままじゃ埒が明かねぇ……!)

 

先程のノイズとの戦いの後ということもあり、このままではまずいと思い、ウルトラマンは目にも留まらぬ速さで移動する『高速移動能力』で少女の背後に回り込む。そしてその直後にウルトラマンは飛び上がり、光となって消えていった。

 

「なっ!?待てッ!!」

 

目の前から突然消えたことに少女は一瞬驚愕するも、背後に回り込まれたと瞬時に気づき振り返るが、すでにウルトラマンは消え去ってしまったため追いかけることができなくなった。

 

「くっ、逃げられたか……!」

 

悔しそうに少女は呟くと、謎のアーマーは解除されていくかのように消え、どこかの学校の制服姿になる。

 

「何者なのだ、一体……?」

 

1人そこに残った少女はウルトラマンが消えた場所を見つめながらそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日経ったある日―――

 

 

(一体何だったんだ、あの女……?恐らくあの女が言っていた二課って言う組織の本来の目的は俺と同じようにノイズを倒すこと……しかし、あの見たことのない鎧は何だ?)

 

一軒のラーメン屋で椅子に腰掛けながら、注文した品を待っている間に一翔は前に現れた謎の少女や彼女の言ってた二課という組織について考えていた。

 

(にしても、俺を捕獲か……ま、他人から見れば俺が手にした力は未知のものだ。調べるために捕獲しようとするのにも納得がいく。けど、俺だってまだ訳の分からん組織にこの力のことを教えるつもりは毛頭ないがな……)

 

「へい、醤油ラーメン1丁お待ち!」

 

考えてる途中で注文したラーメンが出てきたため、考えることは一度中断して食事を摂ることにする。

 

そして、一翔は割り箸を取り出して2つに割り、出されたラーメン―――そこに入っているなるとを

 

 

ブスッ

 

 

……ぶっ刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、店を出た一翔は見知った人物と遭遇した。

 

「ん?立花じゃないか」

 

「あ、一翔さん!こんなところで会うなんて奇遇ですね」

 

その人物とは響だった。

 

響と未来は一翔と同じ中学に通ってる後輩であり、一翔は時折2人の勉強(特に響の)を見てくれることもあるので、2人からは結構信頼されている。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「ただの気分転換だよ。そういうお前こそ、小日向がいないみたいがどうしたんだ?」

 

「今日はツヴァイウィングのライブがあってこれから向かうんですけど、未来は急な用事があって来れなくなって……それで、私1人で行くことになっちゃったんです……」

 

見て分かるほど響は本当に残念そうに落ち込む。

 

「私、呪われてるかも……」

 

「その口癖は聞き飽きた。まぁ、行ってやりたいがチケットはもう完売してるだろうし、あまり知らないアーティストのライブを楽しむのもどうかと思うし……悪いとは思うが、俺たちが後悔するくらい1人で楽しんでこい。今度俺と小日向で焼肉奢ってやるから」

 

「やったー!じゃあ思いっきり楽しんできますね!!絶対にライブに来なかったことを後悔させてやりますから!!」

 

そう言って響はさっきまでの落ち込みが嘘のように元気よく返事して走っていった。

 

「ったく、現金な奴だな……」

 

響の変わり様に呆れながらも一翔は微笑ましく響を見送った。

 

 

しかし、この時一翔は知らなかった

 

この後に起こる悲劇により、別の意味で後悔することに……。




原作やアニメだと響と未来の通ってた中学の名前は出てなかったと思うので、仮にあったとしたもオリジナル設定に基づいて敢えてここは主人公の通ってる中学と同じという設定であります。

あと、今回登場したORCという組織とそこに所属するメンバー……分かる人には分かります。

この後にやるライブ事件エピソードは2回に分けて投稿する予定です。


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3話 最悪のライブ


年が明けて2週間が過ぎましたが、明けましておめでとうございます!今回が今年初の投稿となります。

一応、歌詞コードは入力したから本当にこれで大丈夫かな?


『ツヴァイウィング』

 

それは、世界でも人気を誇る2人のボーカルユニットであり、その名を知らない者は数少ない。

 

そんなツヴァイウィングのライブ会場では、既に楽しみにしている観客たちが団扇やサイリウムを手に持って今か今かと待ち構えている。もちろん、響もその観客の中に混じっている。

 

「はぁ~。ああは言ったものの、やっぱり1人だけで楽しむなんてちょっと気が引けるなぁ……いや!何がなんでも2人を後悔させてやるんだから!おまけに焼肉奢ってもらえるし!」

 

未来だけじゃなく、一翔も今日のライブを一緒に観てやることが出来なくなったことがやはりショックではある響だが、なんとか気を取り直してライブ開始を待つ。

 

といっても、最後の言葉の部分が一番の本音に聞こえなくもないが……。

 

すると、ライブ会場が暗くなり始めた。

 

「おい!始まるぞ!」

 

「気合い入れていくよ!!」

 

暗くなったことでライブ開始間近になったことに気づいた観客は準備を整える。そして、ついにツヴァイウィングのライブが始まった。

 

『『『ワアアアアァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!』』』

 

開始直後から観客のテンションは絶好調である。

 

「奏さーん!!翼さーん!!」

 

響は、ライブ会場を飛ぶように羽を舞い上がらせながら登場した、ツヴァイウィングである2人の少女―――鳥の羽がモチーフとされる特徴的な形をした赤髪の『天羽(あもう)(かなで)』と、青い長髪と左側で結わえたサイドポニーというこちらも特徴的な髪をした『風鳴(かざなり)(つばさ)』の名を叫びながらサイリウムを勢いよく振り回して元気よく声援を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

 

[ま、そんなところだ。言ってしまった手前、お前にも協力してもらうからな、小日向]

 

「もう……私を抜きにしてそんな約束させないでくださいよ、一翔さん」

 

未来は一翔からの電話で響に会ったことや、ライブに行ってやれなかったお返しとして焼肉を奢るという約束をしたことを伝えられ、その内容を聞いた未来は少し呆れていた。

 

[仕方ないだろ?どうしても手が離せない急な用事が出来たとはいえ、約束を破っちまったんだからな。それ相応の対価が必要だろう]

 

「……まぁ、それは確かに言えますけど……けど、わざわざ一翔さんまでそんな対価を払う必要はないんじゃ―――?」

 

[―――だからこそだ。先に口約束した奴がちゃんと約束守らねぇと、先輩として示しがつかねぇしな]

 

「……分かりました。そういうことでしたら協力しますよ。それにしても―――ふふっ」

 

[?なんだ?急に笑って……]

 

「……いえ、初めて会った時なんていつも辛辣な言葉を言ったり、誰とも関わりたくない雰囲気を晒し続けてたこともあったけど―――やっぱりなんだかんだ言いながら一翔さんは優しいなぁって思って……」

 

[うっせぇ!!]プツッ!ツー、ツー……

 

「あ、切られちゃった……」

 

未来にからかわれたと思った一翔は思いっきり大声を出して通話を切った。

 

 

 

 

 

「ったく、人をからかうのも大概にしろよな……」

 

海が見える高台へと来ていた一翔は顔を赤くしながらも通話を終了させてスマホをしまうと、ジャケットの内ポケットの中からハーモニカを取り出した。

 

「音楽なんて趣味程度だが、たまにはいいよな。今度またあいつらにも何か聴かせてあげるか」

 

そう呟くと、一翔は海を見据えながらハーモニカの吹き口に口を当て、ゆっくりと目を閉じてから綺麗な音色をハーモニカから奏でさせた。

 

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 

その心が落ち着くようなメロディに、同じく高台に来ていた人たちも魅了されていた。子供達に至っては好奇に満ちた笑顔で一翔を見続けていた。

 

吹いている一翔自身もこの曲によって心が落ち着きかけていったその時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───お父さあああん!!お母さあああん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!!」

 

突然の謎の光景を見たことによって一翔は目を見開いて演奏を止め、思わず倒れかけそうになるが近くにあった手摺に掴まり、なんとか体勢を立て直す。

 

「あの、大丈夫ですか!?」

 

当然それを見ていた人たちは心配して一翔に駆け寄ってくる。

 

「はぁ……はぁ……す、すみません……ちょっと目眩がしただけなんで、大丈夫です……」

 

「そう?ならいいんだけど……」

 

「お兄ちゃん、これ」

 

なんとか駆け寄ってきた人たちに言葉を返すと、倒れかけた際に落としたのであろうハーモニカを、1人の子供が拾って一翔に渡してくる。

 

「あぁ、拾ってくれてありがとうな」

 

「ねぇ、もう1回さっきの吹いてくれない?」

 

「あー悪い、今日はもう吹けねぇや」

 

「「「えぇ~!?」」」

 

「こら、さっきのこともあるんだから無理にお願いするのはやめなさい!」

 

「そうだぞ。あまりお兄さんを困らせるな」

 

もう一度ハーモニカの演奏を子供達に頼まれるも、先程のこともあるために一翔は断り、それぞれの子供の親御さんも一翔の身を案じてやめさせるように子供達に注意する。

 

「じゃあ、俺はこれで……」

 

「気をつけてくださいね」

 

「「「じゃあねー!」」」

 

周りの人たちに見送られながら一翔は高台を後にした。

 

 

 

 

 

その後、一旦自宅へと帰ってきた一翔はジャケットを着たままベッドに仰向けになって倒れる。

 

「はぁ……」

 

ため息を吐くと、一翔はテーブルの上に置かれている、1枚の写真が入った額縁を見つめる。その写真には、海を背景に6~7歳くらいの少年と、彼の両親と思われる2人の男女の姿が写っていた。

 

「戦い続けなきゃ……ならないんだ……!ノイズを全て倒すまで……例え、どんな無茶な戦いになろうとも……ッ!」

 

自分に対して強く言い聞かせていると、ふと、ジャケットの右ポケットに違和感を感じた。ポケットの中に手を入れ、取り出すとウルトラマンに変身するためのブレスレットの水晶部分が点滅していた。

 

「ノイズか!」

 

ノイズが出現したのだと瞬時に気づくと、すぐさまベッドから降り、靴を履いて外へ出て急いで出現ポイントへと向かう。

 

すると、ブレスレットの点滅が段々激しくなっていく。

 

「ッ!?やべぇ、恐らく1人や2人なんてレベルじゃない!結構な団体が襲われてるかも―――!!」

 

そう思い、一翔はちょうど誰も入っていない証明写真撮影機を見つけ、その中に入りカーテンを閉めた瞬間にブレスレットを右腕に装着し、ウルトラマンに変身―――ではなく、青い発光体となってそのまま目的地へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

そして、発光体の状態のまま目的地に到着する。

 

しかし、そこは―――

 

 

(なっ!?ツヴァイウィングの……ライブ会場だと……ッ!?)

 

 

一翔は目的地の上空から、そこはツヴァイウィングのライブ会場であることに驚愕していた。

 

さらに―――

 

 

「生きるのを諦めるなッ!!!!」

 

(ん?あれは……立花!?)

 

 

ウルトラマン特有の聴力と視力で、胸から大量出血を起こしながら気を失っている響と、彼女を揺さぶって呼び掛けるツヴァイウィングの1人である奏の姿を確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数分前―――

 

 

『『『ワアアアアァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!』』』

 

 

ライブはまさに絶好調である。響や他の観客たちのテンションも最早下がることがない。そんな中、ライブ会場の天井が翼を広げるように開いていく。

 

それにより、観客たちのテンションはさらにうなぎ登りとなっていく。

 

「まだまだ行くぞー!!」

 

1曲目を終えて、熱狂が冷めないうちにもう1曲歌おうと奏がマイクに口を当てた。

 

 

その次の瞬間―――

 

 

ドオオオオンッ!!!

 

 

ライブ会場の中央から大きな爆発が起きた。それにより、ライブは一気にパニック状態に陥る。そして、次に現れた存在により熱狂から一瞬で阿鼻叫喚の叫びへと変わる。

 

「―――ノ、ノイズだあぁ!!」

 

「きゃああああああああっ!!」

 

ノイズ出現に観客たちは我先にと一目散に逃げ出す。

 

「あああああぁぁぁぁぁ―――」

 

「嫌だ!!死にたくない!!死にたくな―――」

 

しかし、逃げ遅れた人たちはノイズにより次々と炭化されていってしまう。

 

「うっ!くっ……!」

 

響もノイズに触れられまいと必死に逃げようとするが、人混みが激しいが故に上手く逃げられる状態ではなかった。それ故に、取り残されてる人たちは次々と炭化されていく。

 

 

 

 

 

「ちっ、今日は厄日かよ。ノイズまであたしらのライブ邪魔しに来やがって……」

 

そんな中、ステージに残ったままの奏は大量に溢れ出したノイズに悪態をついていた。

 

しかし、その目には恐怖というものが全く感じられなかった。

 

「いくぞ翼!この場に槍と剣を携えているのはあたしたちだけだ!!」

 

「ええ!」

 

奏の言葉に翼も恐れることなく応え、ステージを降りる。すると、2人はどういうわけか歌を歌い始めた。

 

 

━━━Croitzal ronzell gungnir zizzl

 

━━━Imyuteus amenohabakiri tron

 

 

2人はそれぞれの歌を歌い終えると、ライブ衣装が消えたかと思ったら、奏は朱色、翼は青の機械的なアーマーを身に纏っていた。

 

そして、アーマーを纏ったと同時に奏は槍、翼は刀を手に持ち、ノイズたちを蹴散らしていく。

 

その光景に、観客たちはノイズから逃げるのに必死で気づいていなかった―――否、見ている余裕がなかったというべきか。

 

「うりゃあっ!」

 

「はぁっ!」

 

奏の持つ槍がノイズを突き、翼の持つ刀がノイズを両断する。しかし、まだまだノイズはたくさんいる。それでも、2人は決して怯むことなくノイズを一掃していく。

 

だがそこで、空を飛ぶノイズが体を細めて翼に向かって突進してきた。翼はなんとか避けるが、その拍子に奏と引き離されてしまった。

 

(くっ……これでは連携が!)

 

なんとしてでも奏と距離を積めようとするも、ノイズが次々と邪魔してきてなかなか近づけない。

 

一方、奏は苦虫を噛むような表情をしていた。

 

(ガングニールの出力が上がらない!制御薬を断っていたのが裏目に……!)

 

『ガングニール』という、自身が纏っているアーマーを見て悪態をつく。すると、ガングニールは徐々に光を失い始めていく。

 

「くそっ!時限式じゃここまでかよ!?」

 

恐らくタイムリミットが迫ってきてるということで焦りが募ってくる。

 

すると―――

 

 

「きゃあっ!?」

 

「ッ!?生存者!?」

 

 

恐らく上手く逃げられないがために別の避難ルートを探していたのであろう響が、奏たちが戦っている場所の近くまでやって来たのだが、その場が崩れ落ちてしまって彼女も地面に落とされてしまった。

 

「おい大丈夫か!?」

 

なんとか目の前のノイズを倒し、響に駆け寄ろうとする奏。しかし、後ろからノイズがうじゃうじゃと湧いて出てくる。

 

 

「か、奏さん……う、後ろ……!」

 

「ちぃ!」

 

 

相方である翼とは引き離されたが彼女はまだ戦えていると信じ、奏はなんとしてでも響を守るために目の前のノイズを相手に槍を構え、一掃していく。

 

だが、段々とガングニールからピシリ、という嫌な音が響いてくる。

 

「くっそぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

そして、ついにガングニールが砕けて飛び散る。

 

「あっ―――」

 

さらに、最悪なことにその砕けて飛び散った欠片の一部が響の胸を貫いた。胸から大量に出血を起こし、響は気を失って倒れる。

 

「大丈夫か!?……おい、死ぬな!目を開けてくれ!!生きるのを諦めるなッ!!!!」

 

悲痛な面持ちで奏は叫ぶ。すると、僅かながら響は息を吹き返し、小さな唸り声をあげて少しだけ目を開かせた。

 

「よかった……!」

 

その事に奏は安堵するが、肝心なノイズがまだ後ろにおり、他のノイズは翼が1人で蹴散らしているため、まだ終わってはいない。

 

しかし、今の自分では恐らく全てのノイズを倒すことは不可能に等しい。ならばと、奏はこの現状を打破するためにある考えに至った。

 

「一度……心と体を全部、空っぽにして歌ってみたかったんだよな……」

 

響を守るように立ち上がり、決意を固めたかのような表情でノイズと対峙する奏。しかし―――その表情は、まるで自分の死を受け入れようとして(・・・・・・・・・・・・・・)いる(・・)かのような表情でもあった。

 

(奏!まさか、絶唱(・・)を……!?)

 

翼は奏が何をしようとしているのかを理解し、ノイズを倒すと奏を止めようと叫びながら近づこうとする。

 

「いけない!奏!歌ってはダメェェェェェェェェ――――――――――!!!!!!」

 

だが、戦闘中に引き離されてしまった時の距離が大きいため、叫んでも奏を止めることは出来ない。その上、ノイズが邪魔をしてくるので近づけない。

 

(翼……ごめんな……)

 

奏は目を閉じ、心の中で翼に謝罪しながら『絶唱』という歌を口ずさもうとする。

 

その時だった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━生きるのを諦めるなと言ってた奴が、生きるのを諦めるような顔をするな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

突然、奏の頭の中に誰かの声が響いた。その直後、奏の目の前にいたノイズが空から降り注いだ青い光弾によって一掃された。

 

「なっ!?これは―――」

 

突然の出来事に奏だけでなく、翼も何が起こったのかと目を見開く。しかし、それにより隙が生じてしまい、1体の巨大型ノイズが翼に襲いかかろうとする。

 

「しまっ―――!?」

 

だが、その巨大型ノイズも空からの光弾の直撃を受け、爆発四散して炭と化した。

 

まだ大量なほどの数がいたノイズも、先程の光弾によりかなりの数が一掃された。それでも、まだ数十体残っている状況だった。

 

「……何だよ、今のは……?」

 

「さっきの攻撃……まさか!?」

 

2人は先程の攻撃が何だったのか考えていると、翼はある存在が思い当たった。

 

その時―――

 

 

ドガアアアアアアン!!

 

 

「うぅっ!?」

 

「な、何だ!?」

 

突然の爆発が起こり、辺りがその衝撃で煙が舞う。その衝撃になんとか耐える2人。

 

そして段々煙が晴れていくと、眩い光に包まれている人型のシルエットが見えた。

 

「あ、あれってまさか……!」

 

さらに光が晴れていくと、片膝立ちで両腕を立てた構えをしている青い超人―――一翔が変身したウルトラマンが降臨していた。




他のウルトラマンネタやオマージュがあることはタグを見る限りわかると思いますが、それ以外にも主人公の一翔には、原作ガイアの藤宮以外の一部の歴代ウルトラマン(またはその変身者)の要素が取り入れられています(さすがに全部入れるのはどう考えても無理があるので)
なので、今回は某銀河の風来坊のようなシーンも書かせていただきました。

ついでに言うと、アグレイターにも様々な要素が取り入れられてます。


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4話 ライブ会場での戦い


タグにもあるように、自分は原作知識は多少ある程度なので、もし「このシーン捏造してあるじゃねぇか」とか、「これって作者の解釈だろ」とか、「ご都合主義すぎるな」みたいなことがあれば、「あ、オリジナル設定・展開ありってタグがあるから当然か」というような感じで見てくれれば幸いです。
要は、捏造や独自解釈、ご都合主義はオリジナル設定・展開に含まれてると思ってください、ということです。それでもタグに付け加える必要があるのであれば追加します(入りきらなくなる可能性もありますが)

そして、タグや前回の話で既に分かっていたと思いますが、この話では二次創作では最早定番になりつつある奏生存ルートになってます。

あとは、後書きにも書きますが、この話のアグルには、本来のアグルには無いオリジナル技・能力が備わっております。


あと、ごめんなさい。ライブ事件エピソードは確かに終わりましたが、回想編はまだ終わってないです。次回で一応、今回の回想編を終わらせられるように頑張ります!


最後に(まだあったのかよ)
今現在、新型コロナウイルスでやばい状況ですが、本作を見てくれてる読者さんや他の作者の皆さんもお体にお気をつけて、感染予防もしっかりとしておきましょう。

では、長い前書きもここまでにして、今回の話をどうぞ!


「あ、あれってまさか……!あいつが、最近噂になってるウルトラマンか……!?」

 

奏はウルトラマンの存在を噂で耳にしていたが、実際に生でウルトラマンを見た事で様々な思いを募らせる。

 

「…………」

 

一方、翼はウルトラマンに対して特に驚いている様子は無く、ただ見つめていた―――というより、ウルトラマンを睨んでいた。

 

それも、まるで一度逃がしてしまった相手(・・・・・・・・・・・・)を睨むような眼で……。

 

すると、ノイズたちが今度はウルトラマンを標的にして一斉に向かって突進してくる。

 

『……』

 

ウルトラマンは立ち上がると、右腕をノイズたちに向けて垂直に伸ばし、ノイズたちとの距離が近くなる寸前で高速移動能力を使って背後に回り込んだ。

 

「速い……!」

 

奏はウルトラマンの素早い動きに感嘆の声をあげる。しかし、翼はまたしても特に驚く様子はなく―――

 

 

(……またあの能力を……)

 

 

―――と、まるで一度体験したことがある(・・・・・・・・・・・)ような感じに心の中で呟いていた。

 

そんな中、高速移動能力で背後に回り込まれたノイズは瞬時に振り返り、再びウルトラマン目掛けて突進してくる。

 

ウルトラマンは後ろを向いたまま、右手を光らせる。そして、ノイズの方へ振り向いた瞬間に右手から光の剣を形成させ、それを振るって接近してきたノイズたちを両断する。

 

しかし、その隙を突こうと1体の飛行型ノイズが飛んだまま襲いかかろうとする。

 

「危ねぇ!!」

 

咄嗟に奏はウルトラマンに向かって叫ぶ。だが、ウルトラマンは至って冷静に、振り向くことなく後ろから迫ってくる飛行型ノイズを剣で突き刺した。

 

 

ノイズ自身に意思はない。ただ、人間を炭化させようと襲ってくるだけ。それ故に、怒り、悲しみ、喜びといったような感情も本来は持ち合わせてはいない。

 

しかし、先程まで奏や翼が苦戦するほどであったノイズを圧倒的な力で一掃していくウルトラマン―――その強さに、残りのノイズたちには“恐怖”という感情が渦巻いていた。

 

その恐怖を拭い去るためか、残りのノイズたちは1ヶ所に集まっていき、なんと次々と合体していき、十数メートルくらいにまで巨大化した。

 

『ハアアァァァァァァァ……!!』

 

だが、そんな事は関係無しにと、ウルトラマンは剣が形成されている右手を空に掲げる。すると青い稲妻のようなエネルギーが剣の方へ集まってくる。

 

合体したノイズは、ウルトラマンが何かしてくると瞬時に理解し、何かされる前にこちら側から仕掛けようと距離を積めてくる。

 

『ドゥオアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

しかし、それより先に合体したノイズに向けてウルトラマンは剣を振り下ろすと、剣にまとわりついていた青い稲妻が合体したノイズに向かって襲いかかる。

 

それを受け、抵抗するように合体ノイズは負けじとウルトラマンとの距離を積めようとする。だが、ついに合体ノイズに限界が訪れ、頭から次々と爆発四散していき、その断片は炭化されていった。

 

 

ライブ会場を襲ったノイズは、謎のアーマーを纏った奏と翼、そして途中から加入してきたウルトラマンの手によって殲滅された。

 

「……ははっ、こりゃすげぇや……あたしたちより断然強ぇ……」

 

ウルトラマンの強さを目の当たりにした奏は、ただそう呟くしかなかった。

 

「まっ、何はともあれノイズどもは全部やっつけられたわけだし……翼ー!とりあえず旦那のところに―――」

 

「はああああぁぁぁぁッ!!!!」

 

「―――って、おい!?翼!!」

 

奏が翼に向けて撤収の言葉をかけようとすると、翼は突然ウルトラマンに向かって刀を構えて斬りかかろうとする。

 

『ッ!』

 

ウルトラマンもそれにいち早く気づき、消えかけていた剣をもう一度出現させ、翼の斬撃を防ぐ。

 

(くっ!ノイズを倒したと思ったらこれかよ……ん?そういえば、前にも同じような……それに、この女どこかで……?)

 

翼と鍔迫り合いをしながら一翔は彼女に対して何らかの既視感を感じていた。

 

「まさかこの戦場(いくさば)で再び相見えるなど思っても見なかった。あの時は逃がしてしまったが、今日こそ貴様を捕まえさせてもらうッ!!」

 

(あの時?……ッ!)

 

そう言われて一翔は、翼の今の容姿を見て気づいた。青い長髪と左側で結わえたサイドポニーという特徴的な髪型、身に纏っている機械的なアーマー、そして自分に斬りかかろうとしていた1本の刀―――

 

 

(まさかこいつ、俺を捕まえようと急に現れたこの前の……!!)

 

 

そう、翼が数日前に自分を捕まえようと襲いかかってきた少女と同一人物であることに気づいた。

 

その時―――

 

 

ピコン、ピコン、ピコン、ピコン……

 

 

胸のライフゲージが青から赤に変わり、音を鳴らしながら点滅を始めた。

 

(しまった!リキデイターやブレードの使いすぎでエネルギーが……ッ!!)

 

一翔は、最初にノイズを一掃する際に放った光弾『リキデイター』を大量に使った上、光線技を放ち続けている状態に等しいがためにエネルギー消耗が激しい剣『ブレード』を使用しすぎたからライフゲージが鳴ったのだと苦虫を噛んでいた。

 

『デアッ!』

 

「ぐっ!?」

 

仕方なくウルトラマンは翼の腹部を蹴り、一旦距離を離した。その後、ブレードを戻してこの状況をどうするべきかを考える。

 

「うっ、うぅ……!」

 

「あっ、おい大丈夫か!?」

 

その時、まだ傷が塞がっておらず意識が朦朧としながらも小さな唸り声を上げる響と、そんな彼女に寄り添うボロボロな状態の奏が視界に入った。そして、奏ほどではないが同じくボロボロな状態である翼を再び見る。

 

(正直、あの青髪の女にもこれ(・・)を使うのは気が滅入るが仕方がない……とりあえず―――)

 

一翔は3人のボロボロな状態を見た後、自身に蹴られた腹部を押さえていた翼に向けて右手を伸ばしてクイクイと挑発する。

 

「ッ!!挑発のつもりか……ッ!!危険信号のように胸のランプを点滅させてる者が調子に乗るなッ!!」

 

ものの見事に挑発に乗ってしまった翼は怒りに任せて、刀を握ってウルトラマンに向かい突っ込んでくる。

 

だが、ウルトラマンには高速移動能力で回避できることを、翼は怒りの感情に任せたことで忘れてしまっていた。

 

『フッ』

 

そして、距離が縮まる瞬間にウルトラマンは高速移動で翼の背後に回り、その直後に空へと飛び上がる。だが、この前とは違い十数メートル飛び上がったところでその場で停止する。

 

『ハァッ!オォアアアアァァァ……!』

 

するとあろうことか、ウルトラマンは突然フォトンクラッシャーを放つ構えを取り始めた。その先には、先程挑発した翼と、その近くに響に寄り添ったままの奏がいた。

 

「まさか!私だけじゃなく奏もやるつもりか!?」

 

「なっ、嘘だろ!?」

 

攻撃を仕掛けてくると思い込んだ2人は思わずそう叫ぶ。それでも、ウルトラマンは両腕を上下に伸ばして発射前の態勢を取る。するとどういうわけか、ウルトラマンの額には光の渦が発生しても光の刃が出現することはなく、そればかりか光の渦が右手に集まっていく。

 

『デェアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

そして光の渦が集まった右腕で半円を描き、一度ライフゲージのところに持ってくると右腕を垂直に伸ばしてフォトンクラッシャーとは違った光線を放った。

 

しかも、奏と響、翼がいる方向へと……

 

「くっ!」

 

「翼!!」

 

翼は2人を守るために前に立ち、両手を広げて防ごうとする。そして、死を覚悟した翼は目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、いつまで経っても何の痛みも感じなかった。

 

「うっ……あ、あれ?」

 

恐る恐る目を開くと、ウルトラマンの右手から放たれてる光線は自分に直撃してるが、ダメージが全く伝わってこない。それどころか、先程までノイズと戦ってたことでボロボロだった体がどんどん癒えていく。

 

「か、体が……」

 

それは奏や響も同様で、ウルトラマンから放たれた光線により傷が癒えていき、響の胸の傷口も塞がった。

 

『デュオアッ!』

 

3人の傷が癒えたのを確認すると、ウルトラマンは上空の彼方へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラマンが飛び去っていったのを見届けた後、数人の謎のスタッフたちがやって来て、謎のアーマーを纏ってノイズ殲滅に専念し、その途中でガングニールが砕け散ってしまい、最終手段として絶唱を歌おうとしたところでウルトラマンが現れたと奏は伝えた。

 

「一応、こちらの方でもウルトラマンの反応は感知していた。その体の状態を見る限りだと、彼に救われたみたいだな」

 

「旦那……」

 

そこへ、逆立った赤い髪をした男―――弦十郎が現れた。

 

「それにしても、命を落としかねないというのに、シンフォギアを失った状態で絶唱を使おうとしていたとはな……」

 

「うっ!わ、悪かったってぇ~……」

 

弦十郎からの言葉を受けて奏はバツが悪いように苦笑いしながら謝る。

 

しかし、彼がなぜ奏が歌おうとしていた絶唱という用語を知っているのか―――それは、奏と翼が纏っていたアーマー『シンフォギア』が、弦十郎が司令を務める特異災害対策機動部二課に所属している“ある人物”によって生み出されたものだからだ。

 

そして彼らの会話を聞く限り、奏と翼も二課に所属していることが窺える。さらに聞いたところによると、どうやら絶唱は命の危険に曝されるらしい。奏が絶唱を歌おうとした際に死を覚悟した表情をしたのもその為だからだろう。

 

「……けどよ、あいつが……ウルトラマンが来てくれて、あたしたちは助かった。それに―――」

 

ふと、担架に乗せられて運ばれていく響の姿が目に入る。あの時のウルトラマンの光線によって傷口は完全に塞がりはしたが、それ以前に大量出血を起こしていたのでまだ意識は戻らず、ひとまず近くの病院へと運ばれることになった。

 

「思わずウルトラマンがあたしたちにまで襲いかかってくるんじゃないかって思ってたけど違った。あいつは、ノイズの戦いでボロボロだったあたしたちの傷や、あの子の傷だって癒してくれた……ウルトラマンはきっと―――いや、絶対にあたしたちの味方だ!」

 

奏は自分が正直に思ったことをまっすぐに言葉にして弦十郎に伝える。

 

「フッ、そうか……お前が言うのであれば間違いないだろう。だが……俺の姪はそう簡単にはいかないらしいぞ」

 

やれやれといった感じで弦十郎は別の方向へ視線を向けると、シンフォギアは既に解除されてるが悔しがってるかのごとく拳を強く握りしめている翼の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奏と翼、響の傷を癒したウルトラマンは飛び去った後、発光体となって移動していき、証明写真撮影機の中へと戻ってきた。

 

そして光が晴れると一翔が姿を現す。

 

「はぁ……はぁ……ライブ会場なんて規模じゃ、さすがに全部までは救えなかった……けど、立花がなんとか無事でよかった。それにしても―――」

 

一翔は以前自分を捕まえようと現れた少女が、トップアーティストの1人である風鳴翼であることにまだ驚いていた。

 

しかも、途中から加入したため実際には見てないが奏もノイズと戦っていた可能性があるため、2人はトップアーティストでありながら、翼が以前言っていた二課という組織に属しているのだろうと一翔は推測した。

 

「いや、トップアーティストが表向きで本来は二課って組織に属して……?なんにせよ、あの鎧のこととか色々と訳が分からないことが多いし、またあの女が捕まえようとしてくるかもしれないから気をつけとくか」

 

今後のことで色々と考えた後、一翔は帰路につこうとする。

 

その際に、証明写真撮影機から[ご利用ありがとうございました!]という音声が聞こえたので何かと思ったら、一翔がブレスレットを装着して光に包まれる瞬間の写真が出てきたため、一翔は慌ててそれを取り出し、証拠隠滅のためにビリビリに破いて近くにあったゴミ箱へ捨てた。

 

 

 

 

 

ノイズによるツヴァイウィングのライブ襲撃事件はこうして幕を閉じた。

 

 

しかし、また新たな残酷な事件が起こることを、一翔はまだ知らないままだった……。




今回使用したアグルのオリジナル必殺技・能力

1.アグルライトニングブレード
本文でも言ってたように、アグルブレードを空に掲げることで青い稲妻のようなエネルギーがブレードに集まっていき、それを標的めがけて振り下ろすことでその雷撃を放射する。
原作ガイアで、アグルが地球怪獣たちを呼び起こすために使用した『アウェイクニングインパクト』が基であり、アグルブレードに稲妻のようなエネルギーが集中した描写があるのもそのためである。

2.アグルヒーリング
名前の通り、相手の傷を癒すことの出来る技。この技を放つ際の動作は本文にもあるようにフォトンクラッシャーを放つ前の構えをした後、右手に集まったエネルギーを前に突き出して放つことで対象者の傷を癒す。
原作ガイアのガイアヒーリングと同様、無理矢理操られたりしてる者や、暴走状態に陥ってしまった者を浄化させる役割も持つ。ただし、どんな要因であれ死んでしまった者を生き返らせることは出来ない。あくまで傷を癒したり心を浄化させるだけ。


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5話 いわれなき迫害


お久しぶりです、自粛生活を理由に全く投稿する気が起きないサミンであります。

もし初期の藤宮だったら“人間がいなければ”なんてことを言って癌細胞扱いするんだろうなぁ……まぁ、ここまで新型コロナが広まってしまったのは実質人間がちゃんとしてないからってのも一理あると感じてしまってる自分もいます。


ノイズによるツヴァイウィングのライブ襲撃事件の翌日。一翔は未来と一緒に響が入院してる病院へと足を運んだ。未来はお見舞いにと花束を持っている。

 

「……まさかライブ中にノイズに襲われかけたなんて、響にはすごく嫌な思いさせちゃいましたね……」

 

「あぁ。立花には本当に申し訳がないな……。まぁ、無事に帰ってこれただけでもよかったよ」

 

「そうですね」

 

受付を終えた2人は雑談を交えながら、響のいる病室へと向かう。

 

そして、『立花響 様』と書かれてるプレートがある病室の前にやって来た。一翔は扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

中から響の声が聞こえ、入室の許可を貰ったところで一翔は扉を開ける。

 

「失礼するぞ、たちば……な?」

 

「響ー、お見舞いに来た、よ……?」

 

扉を開けて病室へ入りかけると、2人は愕然とした。

 

なぜなら……

 

 

「ガツガツ……あっ、一翔さんと未来!モグモグ……お見舞いに来てくれたんだ!ありがとー!バクバク」

 

 

昨日ノイズに襲われかけた上に重傷を負っていたはずの響が、まるでそうとは思えないほど元気な様子で病院食を平らげていたからだ。しかも、どう考えても普通の女の子では食べれないほどの量をペロリ、と……。

 

とはいえ、響の重傷を治したのはウルトラマンとしてあの場にいた一翔自身なため、本人は一瞬愕然とするも“実質自分が治したわけだからこうなるのは当然か”と納得した。

 

しかし、一翔が響の傷を治したこと、ましてや一翔がウルトラマンであることを知らない未来からすれば驚くのも無理はない。

 

「えっと、響……聞いた話によれば結構重傷だったって聞いたけど……?」

 

「ん~?ゴクン……あぁ、自分で言うのもなんだけど、私って結構出血が酷かったと思うんだよね……でも、どういうわけかまるでそんな感じは全く無いし、目が覚めた時にはもうお腹ペコペコでさぁ~!」

 

「まぁ、相変わらずバカでよかった」

 

「バカってなんですか一翔さん!!」

 

一翔のバカ発言に頬を膨らます響。

 

「でも、本当によかった。……ごめんね、響。嫌な思いさせちゃって」

 

「大丈夫だよ、そんなに気にしないで。何はともあれ、奇跡の生還を果たしたわけだからさ!」

 

「……奇跡、ねぇ……」

 

その奇跡の生還をさせたのが一翔本人なのだが、そんなことを言ってしまえば自分はウルトラマンであることをバラしてしまうことにもなる為、一翔は敢えて言わないでおいた。

 

(……それに自分からバラそうなんてとんだ自慢野郎になっちまう)

 

「―――そういえば、未来は最近噂になってるウルトラマンってどう思う?」

 

一翔は1人で考えていると、響は未来にウルトラマンの事について質問していた。

 

「ウルトラマン?ん~……実際に見たことないからまだよく分かんないけど、どうして?」

 

「ウルトラマンってさ、ノイズを倒してくれることで有名じゃん?もしかしたらあのライブ会場にもウルトラマンが来てくれたんじゃないかって!もしそうだとしたら、ウルトラマンに会ってお礼が言いたいんだよね!」

 

「……まぁ、気持ちは分からなくもないけど、会いたいからってすぐに会いに来てくれるとは限らないよ?」

 

(悪いけど、そのウルトラマン本人はここにいるって……)

 

ウルトラマンの正体を知らない2人の会話を聞いて、一翔は思わず心の中でそう呟いていた。

 

(だが……今まで未知の存在として認識されてきたウルトラマンの正体が俺だったなんて知ったところで、木戸さんたちはしっかりと受け入れてくれたりしたが、こいつらが木戸さんたちみたいに、「はいそうですか」と受け入れてくれるとは限らないしな……)

 

その後、響から退院できる日、学校に復帰できる日を伝えられ、一翔と未来は病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後

 

響は無事退院し、今日は響が学校に復帰する日でもあった。

 

「さーて、また立花の勉強を見るはめになりそうだなぁ……ま、やるっきゃねぇか」

 

入院していたとはいえ、休んでいた分の成績を上げなきゃいけない響の為にまた勉強を教えてやらなきゃいけないことに、一翔は嫌そうになりながらも気を引き締めて学校へ向かおうとする。

 

その時―――

 

 

「何でお前なんかが生き残ったんだよ!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

「ふざけんじゃねぇよ、この人殺し!!」

 

「や、やめてよぉ……!」

 

 

路地裏で一翔と同じ桜ヶ丘の制服を着た男子生徒3人が、同じく桜ヶ丘の制服を着た女子生徒1人に暴行を加えていた。

 

「何やってんだあいつら……ったく」

 

見過ごせなかった一翔は路地裏に入り、仲裁役を買って暴行を止めさせる。

 

「おいやめろ!」

 

「あぁ!?なんだてめ……って、吉宮先輩じゃないですか」

 

一翔が仲裁に入り、男子生徒は一翔にも敵意を向けかけるが、同じ制服である一翔の姿を見て手を止めた。どうやら彼らは一翔の1年下の後輩らしい。

 

「何やってんだよ、こんな朝っぱらから……それに、よってたかって女子1人をいじめるとか……何でこんな酷いことするんだよ?」

 

「はぁ?吉宮先輩、知らないんすか?こいつ、あのツヴァイウィングのライブの事件で生き残った犯罪者なんすよ」

 

「そうだよ、だから俺たちが罰を与えてんのさ!何もないくせに生き残って他の人たちを死なせたこいつらにさ!」

 

男子たちの口から、“ツヴァイウィングのライブの事件”という言葉を聞いて、いじめられていた女子生徒は響と同じライブ事件の生存者であることが分かった。

 

しかし、彼らの言う、“生き残った犯罪者”、“生き残って他の人たちを死なせた”という言葉に疑問を持った。

 

「……どういうことだ?何で生き残った彼女が犯罪者なんだ?それに、こいつらってことは……?」

 

「いや、だからですね?こいつのせいであのライブにいた他の人たちが死んじまったんすよ。こいつだけじゃない、あのライブで生き残った他の奴らも」

 

「知らないなら見せてやりますよ、ほら!」

 

すると、1人の男子が鞄の中から一冊の週刊誌を取り出す。そしてあるページの記載部分を見せる。

 

その内容を見て、一翔は絶句した。

 

 

「“ライブ事故の大量死者の原因は人災”、“逃走中の将棋倒しによる死亡”だと……!?」

 

 

記載された内容は、ライブ事件で死んだ人々は生き残った人たちによる人災だというものだった。

 

 

 

 

 

週刊誌に記載されたもっと詳しい内容はこうだ。

 

ツヴァイウィングのライブ公演中にノイズが出現した事件―――その被害者は観客と関係者を合わせて約12000人にも及んだ。

 

その内、ノイズによる被災で死亡したのは3分の1程度であり、残りの3分の2以上は逃走中に起こった将棋倒しによる事故によるもの―――つまり、事故の大半が人の手によって引き起こされたものであるということが述べられていた。

 

それにより、生存者たちに向けて苛烈なバッシングが始まったのだ。それはライブ事件の生存者たちが生き残ったことで、死者の遺族、友人たちから生じた妬みや怒り、行き場のない感情が生き残った人たちに向けられていたのだ。

 

それが段々と肥大化していき、ついには社会現象となってしまった。

 

 

一翔が助けた女子生徒も、最初は特にいじめられてることはなかったが、このような経緯もあり、とうとう学校内だけでなく登下校中にもいじめの対象としてみられていたのだ。

 

ただ、“生き残った”という理由だけで……

 

 

「……まぁ、大体は分かったよ。とりあえず、お前らは先に学校に行け。後のことは俺に任せろ」

 

「ちぇ、分かりましたよ……あーあ、行こうぜ」

 

一翔の言葉に男子たちは渋々といった感じに学校へと向かっていった。

 

「さてと……」

 

「ひぃっ!?」

 

「あー、安心しろ。ああでも言わないと引き下がってくれなさそうだったからな。とりあえず、立てるか?」

 

「あ、ありがとうございます……うっ、うぅ……!!うあーん!!!!」

 

「あっ、おい……」

 

女子生徒は思わず一翔の胸で泣き出してしまった。それほどまでに彼らからのいじめは酷かったのだろう。

 

「とりあえず、学校に着いたら先に保健室に行け。お前の担任の先生には俺が伝えておいてやるから」

 

「グスッ……は、はい……」

 

「とはいえ、1人で行かせたらまたいじめに遭いそうだからな……ひとまず一緒に行ってやるよ」

 

そう言い、一翔は彼女を守りながら学校へと足を運んだ。しかし、一翔は週刊誌に載ってた内容といじめられてた彼女を見てあることに懸念していた。

 

(ライブ事件の生存者への迫害……もしかしたら、立花にも影響が……)

 

響もあの事件で生き残った当人だ。今日は学校への復帰日だが、彼女もいじめに遭ってる可能性がある。そういう不安が一翔の中にあった。

 

そしてその不安が、的中していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ!!」

 

「あうっ!!」

 

響が学校に復帰してから1週間後。放課後の正門前で、一翔は十数人の男子生徒を痛め付けていた。

 

「このぉ!!」

 

「…………」

 

立ち上がった1人の男子生徒が一翔に殴りかかるが、一翔はそれを受け止め、腹部に膝蹴りを食らわした。

 

「うっ!?」

 

それを食らい、男子生徒は地に伏せた。

 

「……お前らさぁ、何でこんなに酷いことなんて出来るわけ?」

 

「う、うるさいっすよ!前にも言ったじゃないっすか……あんたの後ろにいるそいつらは、俺たちに罰を与えられて当然なんすよ!」

 

一翔が痛め付けていた男子生徒の中に、1週間前に1人の女子生徒をいじめていた男子3人の姿もあった。

 

そして彼の言う、一翔の背後には恐らく殴られたであろう顔に痣が出来てる響と、そんな彼女に寄り添う未来、さらに一翔が助けた女子生徒にそれ以外の男女数名の姿があった。そして響と同じく顔に痣が出来ている。

 

彼らもライブ事件で生き残ったことでいじめを受けていたようだ。

 

そして、なぜ一翔がいじめを行っていた男子生徒を痛め付けていたのか……。

 

 

それは、響が学校に復帰した当日。やはり響もライブ事件で生き残ったというだけでバッシングを受けていた。

 

響の机の上には罵倒の言葉が綴られた紙が置かれたり、給食の際には足を引っかけられたことでその拍子に手に持っていた食器を床に落とされてしまったり……さらには学校内だけでなく彼女の家にまでその迫害は及んだ。

 

窓ガラスは割られ、壁には落書きの要領で暴言をスプレーで書かれ、『死ね』『犯罪者』『消えろ』『人殺し』といった暴言が書かれた紙が家の外にたくさん貼り付けられたり、と……。

 

 

“生き残ったから”という理由だけで、このような理不尽な事をされていく人たちを見て、一翔は思わずバッシングを続ける者たちを懲らしめてやろうかと思っていた。

 

しかし、そんな事をしてしまったら今度は一翔にまで被害が及んでしまうと思った響は「平気、へっちゃらです!」と言って一翔が自分の手を汚させないようにした。

 

響からそう言われたことで、一翔は怒りを抑えつつ未来と一緒にせめて守ってあげるだけでもしてあげようと思った。

 

 

だが……バッシング行為は減っていくことはなく、日に日に増え続けていくばかりだった。その度に響は何度も「平気、へっちゃら……」と、どう見ても無理してるとしか思えない様子を見てついに一翔の怒りは頂点に達し、今のような状況になってしまった。

 

「……なぁ、1つ聞いていいか?あのライブ会場にお前らの家族や友人はいたのか?」

 

「は、はぁ……?いないっすけど……」

 

「俺も別にいなかったけど……」

 

一翔からの質問に男子生徒全員がいないと答えた。

 

「―――じゃあ、何でお前らはこいつらをいじめるんだ?」

 

「い、いじめだなんて人聞きが悪いっすよ……俺たちはそいつらに罰を……ぐえっ!?」

 

「罰だと……?笑わせるな……ッ!!」

 

一翔は右手で思いっきり男子生徒の胸ぐらを掴み、宙に浮かす勢いで持ち上げた。

 

「お前らがやってるのはなぁ、家族も友人も殺されたわけでもないのにただ他人がやってるから自分もやってるという、意思の無いただのいじめだ!!自覚の無い暴力だ!!お前らは周りの影響に流され過ぎた能無しだ!!!」

 

「んなっ……!」

 

その言葉を聞いて、胸ぐらを掴まれてる男子生徒だけでなく、地に伏せていた他の男子たちも驚きを見せる。

 

「もしあの場にお前らの家族、友人がいて、それに対する怒りであるなら、心は痛むが目を瞑ってやる!それが立花たちが背負うべき罪だからな。だがな!そうではなく、ただ情報や影響に流されただけで、他人がやったからという理由でこんなくだらないことをするのなら容赦はしない!!何があっても俺はこいつらを守る!!」

 

「いでっ!!」

 

そう叫んで一翔は手を離し、男子生徒は尻餅をついて地面に落下する。そんな彼に目もくれず、一翔は周囲の野次馬となっている他の生徒たちにも叫ぶ。

 

「そこで見ているお前たちもだ!もしちゃんとした理由もなしにこいつらに手を出したら許さないからな!!」

 

思わず他の生徒たちはビクッ!となるも、一翔はそんなことにも目もくれずに響たちの元へやって来る。

 

「立てるか、みんな?」

 

「は、はい……」

 

「とりあえず行くぞ」

 

「う、うん……」

 

響たちはそれぞれ手を貸してもらったりしながら立ち上がり、一翔を追う形で学校を出てその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、しばらくして一翔たちは大きな公園へと足を運んだ。すると一翔はベンチに座るなり大きなため息をついた。

 

「―――はぁ~……ったく、ああは言ったけど、俺も結局は奴らと同類なんだよな……」

 

「……え?」

 

「さっき言ってただろ?家族や友人からの怒りなら目を瞑ってやるって……けど、そんなのただ見て見ぬふりをしてる事と同じなんだ。迫害を受けてる人がいるのに助けてやろうとしない、そんなもんだ」

 

「そんなこと……」

 

「それに―――本当は憎むべき相手が違う、あの場でノイズが現れなければこんなことにはならなかったんだって、立花たちは他人を殺したりなんかしていない……って、言おうとしてたんだが……結局俺も流されてお前らが人を殺してしまったんだと遠回しに認めてしまったもんだからな……」

 

一翔の言葉に響たちは何も言えなかった。

 

「なぁ……これからどうするつもりだ?」

 

「どうって……?」

 

「いずれ迫害は終息する。けど、それまでの間はお前たちは今までと同じいじめを受ける。立花たちだけじゃない。小日向だって目をつけられる可能性もある。手を打つべきは今かもしれんぞ」

 

一翔からの提案とも言える言葉に響たちはどうするかと顔を見合わせる。

 

「まぁ、もちろんこれはお前たちが決めることだ。俺は別に異を唱えるつもりはない」

 

最後にそう付け加える一翔。

 

すると―――

 

 

「……生きるのを、諦めるな……」

 

 

響はあのライブ会場で奏から言われた言葉を思い出して呟き、それを聞いた一同は響に視線を向ける。

 

「……未来や一翔さんは知ってると思うけど、私あそこで瀕死の重傷を負ったの。その時、ある人からその言葉を言われて、それで今もこうして諦めずに生きてきたから―――だから今は世界に拒絶されていたとしても、私は生きるのを諦めません!世界に負けません!まっすぐに!一直線に!この世界で前向きに生きていきます!」

 

前向きな響の言葉に感化され、他の生徒たちも頷いて言葉を出す。

 

「私も……今はとてもつらいけど、世界に打ちのめされないように頑張ります!」

 

「僕も、なんとか乗り越えられるようにします!」

 

「俺だってこんなことくらいで負けてたまるかよ」

 

「あたしも負けない!」

 

みんなの言葉を聞いて、心配は不要だと感じる一翔。そして未来の方にも視線を向ける。

 

「私も、何があっても響を独りにはさせません。世界と戦ってるのは響たちだけじゃありませんから」

 

「そうか……心強いな、お前たちは」

 

響たちの様子を見て一翔は笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一翔は響や未来以外の生徒たちを家まで見送った後、2人を連れて一軒の焼肉屋へと足を運んだ。

 

「今日は俺の奢りだ!遠慮せずに食ってくれ!」

 

「やったー!!焼肉焼肉ぅ~!!」

 

「一翔さん、いいんですか?せめて私も払いますよ」

 

「いや、やはりここは言い出しっぺの俺が果たすべきことだ。金なら問題ないし……それに、小日向は俺以上に立花のことを守ってくれてたんだ。だからここは俺に持たせてくれ」

 

「……分かりました」

 

「てゆーか、本当に一翔さんって結構お金持ってる感じですよね?バイト、ではないと思うけど何かお金稼ぐことでもやってるんですか?」

 

「ボランティアみたいなやつだよ。まぁ、内容は企業秘密だから教えられないけどな」

 

響や未来は知らないが、ORCの関係者及び協力者である一翔はとても中学生とは思えないほどの収入をもらっている。

 

さすがにORCに正式に所属してる訳じゃないからもらうわけにはいかないと一翔は木戸たちに言うが、彼らは一翔に対して過保護なところもあり、本人が断っても普通に受け取らせることがある。

 

その為、一翔は特に金に関して不自由ない状況となっている。

 

「さてと、肉もいい具合に焼けてきたから食おうぜ」

 

「はーい!では―――」

 

 

「「「いただきます!」」」

 

 

3人は手を合わせ、談笑を交え賑やかに楽しみながら食事をした。




一翔のバッシングを続ける生徒たちに向けるセリフ、いい具合にちゃんと書けただろうか……。

てゆーか、もしかしたら見る人によっては今回はいい加減な感じになってるかもしれませんが許してください。初心者である自分にはこれが精一杯なので(苦笑)

また1ヶ月以上は過ぎるかもしれませんが、何卒『海神絶唱シンフォギア~海の化身と装者たち~』をよろしくお願い致します!


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6話 進むべき未来、与えられた意味


ウルトラマンZ(ゼット)、見ました!ウルトラ面白かったですねぇ!

にしても、もう既にウルトラ怪しい匂いがプンプンとしてくるんだよなぁ……ヘビクラ隊長とか、ヘビクラ隊長とか、ヘビクラ隊長とか……。2話なんかもう完全にあれでしたからね。かといって、怪しく見せつつ役者が同じだけの全くの別人だったってなったらそれはそれで……(苦笑)

そんなわけで(←いやどんなわけで!?)、今回は今までより結構短いです


一翔が半年前の事件を思い返してる現在。

 

「―――まぁ、過ぎた事を悔やんでいても仕方ないよな……」

 

「え?何か言いましたか?」

 

「ん?あぁ、半年前のライブ事件に俺や小日向もいたとしても結果は変わらなかっただろうし、そんな事を悔やんでいても無意味だよなって考えてたんだ」

 

「確かに―――今更あの場に私たちもいれば、なんて悔やんでも何も変わらない……過去なんて変えられないんですよね」

 

「うん……どんなに抗ったところで、過去の出来事を覆すことなんて出来っこない」

 

一翔の言葉を聞いて、2人はお互い暗い表情になって俯き始める。

 

2人は理解しているのだ。特に未来は、仮に響と一緒にあのライブへ行けたとしても結果は変わらなかっただろうし、万が一あの場に自分がいれば少しでも何かが変わっていたのかもしれない、なんていう淡い気持ちを持ったとしても過去の出来事は変えられない、と……。

 

すると、一翔は響と未来の頭にポン、と手を乗せる。

 

「そんな顔をするな。確かに過去を変えるなんてこと、タイムマシンでも無けりゃ無理な話さ。だからこそ、俺たちは過去を受け入れて未来へ進む―――よく言うだろ?“過去は変えられないが、未来は変えられる”ってよ」

 

「……ですね。過去に囚われすぎてたら、それこそ生きるのを諦める事になる……過去の出来事を受け入れてこそ、未来は素晴らしいものになる」

 

「うん、そうだね。どんな出来事だろうと、それを受け入れなければ明日なんてやってこない」

 

「そういうことだ。―――さて、とりあえず作業再開といくか」

 

「はーい!」

 

その後も3人は談笑を交えながら響の家の手入れを行い、それが終わった後には他のライブ事件の生存者の家へと赴き、同じように手入れをしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――なんて、一番過去に囚われてる(・・・・・・・・・・)俺みたいな奴が、何偉そうなこと言ってんだって言われてもおかしくないことをあいつらに言っちまったんですよ」

 

「なるほどね……」

 

手入れ作業を終えた後、一翔はORC基地へとやって来て、木戸たちに昼間に響たちに言った事を話していた。

 

「全く、自分にほとほと呆れてしまいます……」

 

「でも良いじゃないか。自分が過去に囚われているからこそ、自分と同じようになってほしくないって言ってくれてるようなものさ。一翔が言ったことは間違いじゃない」

 

そう言って木戸はコーヒーが入ったカップを一翔に差し出す。それを受け取り、一口飲み込む一翔。

 

「ありがとうございます……―――美味い。また、あの店(・・・)から良い豆をもらったんですね?」

 

「あぁ。悔しいけど、黒星さんの作るコーヒーは僕たちは疎か、色んな店にはない程の素晴らしい出来だからな。そういや、今度はラーメンを作ってみようなんて言ってたよ」

 

「いや、コーヒーにラーメンって……カフェやるのか別の料理店にするのかどっちかにしろってんだよ……」

 

「ははは!まぁ、何でもありの店だと思っておけば良いだろう。ほら、『あるよ』しか言わないマスターがいるバーみたいな」

 

「どこぞの検事ドラマですか……」

 

 

 

 

 

その後、木戸と共にORC基地から水族館へと赴き、水族館内に設置されている、海に関する本が主に並べられている本屋へと足を運び、どのような本を買うのか見定めていく。

 

「これと、これくらいか……」

 

そして、数札ほど手に持ってレジに向かう。

 

「そういや、一翔は城南高校に進学するんだったな?」

 

「ええ、午後の授業は選択式で学びたい科目を決められるそうですし、海洋学を学ぼうと思ってます」

 

「ふふ、相変わらず海が好きだな……まぁ、その気持ちもあったからこそその力(・・・)が一翔に与えられたんだろうな」

 

木戸にそう言われて立ち止まり、一翔はジャケットのポケットの中からウルトラマンに変身するためのブレスレットを取り出す。

 

「……だといいんですけどね」

 

そう言う一翔は悲しみがこもった眼をしていた。その後、ブレスレットをポケットにしまいレジへと歩く。

 

「それじゃあ、今日はこの辺で失礼します」

 

「あぁ。言うまでもないと思うが、頑張れよ!」

 

会計を済ませた後、一翔は木戸と別れ、自宅の方へ向かう。

 

だが、その途中で足を止め、もう一度ブレスレットを取り出してそれを見つめる。

 

「木戸さんはああ言ったけど、何でお前は俺に力を与えてくれたんだ……?最初はノイズを倒すために光を手にしたんだと思ってたけど、今思えば結局まだ分からない……お前が俺に光を託してくれた本当の意味が」

 

ブレスレットに問いかけるように呟くが、何も反応は起きなかった。

 

「……自分で探すしかないのか、その答えは」

 

最後にそう呟き、ブレスレットをしまって帰路につく一翔だった。



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7話 何気ない日常、覚醒の序曲


ガンマフューチャー……ウルトラかっこいい!!
世代じゃないとはいえ、物心ついた時に最初に見たウルトラマンたちの力が宿ったフォームだから興奮が収まらなかったなぁ……!特に、ガンマイリュージョンでガイアがスプリーム・ヴァージョンになったのが良い意味でウルトラやばかったw

しかも、次の話でもV2とはいえ、もう一度ガンマイリュージョンを使ってくれたのがもうウルトラ嬉しい限りっす!!


1年と半年―――ライブ事件から2年経った平日

 

灰色のブレザーに黒い学生ズボンを身に纏い、青と黒の配色がされたバイクを走らせる少年がいた。

 

そして1つの学校が見えてきて、そこのバイク専用の駐輪場へとバイクを停める。

 

「よいしょっと……」

 

エンジンを切ってバイクから降り、ヘルメットを外した少年―――一翔はヘルメットをホルダーに掛け、昇降口の方へ歩いて行く。

 

「吉宮先輩、おはようございます!」

 

「おはよう、吉宮!」

 

「あぁ、おはよう……」

 

同じく昇降口へと歩いて行く生徒たちが一翔を見ると、元気よく挨拶をし、一翔もぶっきらぼうではあるがきちんと挨拶を返す。

 

「よぉーっす一翔!今日も良い天気だな!!」

 

「ちょっと俊!そんなことしたら一翔がビックリしちゃうっていつも言ってるじゃない!」

 

「いや……もうとっくのとうに慣れたよ、野々川」

 

そこへ、明るく元気に一翔に肩組みをしてくる男子と、その後を追いかけるように走ってきた女子が注意してくる。そんな彼女に、一翔は慣れたというより最早諦めたと言いたげな表情をして言ってくる。

 

 

男子の名前は『千山(せんやま)(しゅん)

明るく人懐っこそうな性格で、一翔を見かけると何かと肩組みをしてくる。

 

女子の名前は『野々川(ののかわ)深生(みお)

俊に振り回されたりと苦労している事が多いらしいが、決して彼と居ることに対しては不安は無いと感じている。

 

 

2人は一翔と同じ、ここ『城南高等学校(じょうなんこうとうがっこう)』に通う一翔と同学年の生徒であり、選択式で学びたい科目を選ぶことの出来る午後の授業では、これまた一翔と同じ海洋学を学んでいる。

 

 

ちなみに余談だが、2人は所謂恋人同士であり、付き合っているのである。どういう経緯があったのかを語る機会があるのかもしれないが、敢えて省くとしよう。

 

 

「おっ、そうだ。バイト終わりにお裾分けしてもらった昨日の余りだ。昼に食おうぜ!」

 

「余り、というより廃棄物だろ?もったいないと思うのは分かるが、貰いすぎて食べると逆に体に悪いぞ」

 

「言われなくても分かってるって!こう見えても、俺は自分の体のことはちゃんと大事にするように心がけてるしさ!」

 

そう言って俊はピースサインを作り、満面の笑みを浮かべる。それを見ていた深生は感慨深そうに見つめる。

 

「ん?どうした、深生?」

 

「別に……ただ、去年までは自分の体の事なんて(・・・・・・・・・)みたいな感じだったのに―――やっぱ俊は変わったね、って思ってたのよ」

 

そう言われて、俊は照れくさそうに頬を掻くと、一翔を見て言う。

 

「……自分で言うのもなんだけど、別に変わってないよ。でも―――もし、そうだとしたら……それは一翔のお陰だな」

 

笑みを向けられて言われた一翔は、至って真顔でいたが顔が少し赤くなっていた。

 

「別に俺のお陰なんて……俺はただ―――……いや、何でもねぇ」

 

「おいおい、言いかけたんなら最後まで言っちゃえよぉ!気になるだろぉ~!」

 

「うっせぇ、とにかく先に行くぞ」

 

これ以上はと思い、一翔は歩くペースを早める。

 

「まったく、確かに一翔のお陰なのはそうなんだけど、あまりからかうのも良くないわよ?」

 

「いや、別にからかってないだろ……ま、あいつはただ単に恥ずかしがってるだけで―――」

 

「―――おい、無駄口叩いてないで早く教室行くぞ!」

 

「「おう!/ええ!」」

 

昇降口で内履きに履き替えた一翔は2人に呼び掛け、それに応えた2人は一緒に昇降口へ歩みを進める。

 

「ま、要はあいつは口ではあんな感じだけど、根は優しい奴なんだよな」

 

「そうね」

 

歩みを進めながら2人はそう言葉を交え合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城南高校の午前の授業は、一般的な高等学校レベルの内容が主に行われている。国語、数学、理科、社会、英語はもちろんのこと、体育や家庭科などの実技授業も午前の方に分類される。

 

その午前の授業が終わり、昼休みに昼食を摂り、午後の授業が始まった。

 

「―――で、少なくとも現段階では皆もご存じの通り、まだまだ海の全てを解明する事が出来てないわ。ましてや、よくテレビとかで取り上げられている未確認生物もそこまで確認はされてないわね」

 

海洋学担当の女性教師が教科書にある一部の文を黒板に書き写しながら、説明をしていく。

 

「とはいえ、今ではノイズ事件の被害者の中に有名な海洋学者がいたり、探査中に原因不明の事故によって皆、帰らぬ人となったりする事が多く、結局迷宮入りとなったりしてるのよねぇ……」

 

教師は少し悲しみがこもった様子で語る。

 

「まぁ、そんな亡くなってしまった人たちの分も私たちは引き継いで、まだ知られていない海の新たな発見を見つけていくしかないわ」

 

しかし、気持ちを切り替えて意気込む様子を見せる。

 

「さて、それじゃあ今回の内容は海洋生物の生態について―――」

 

 

 

 

 

その後、一部の授業時間が終わり、休憩時間となった。

 

「ん~」

 

「どうしたの、俊?」

 

「いやぁ~、去年と同じ科目を選んだとはいえ、やっぱこうやって海のことを知っていくのも魅力的だなぁって、改めて実感してるんだよ」

 

「そりゃ、1年の時に習った科目を2年生になってからもやってたらそんな気持ちにもなるわね」

 

俊の言葉に深生も同意する。ちなみに、深生の言葉から3人は去年も海洋学を学んでいることが窺える。午後の選択授業は1年間変わらず、2年目からは違う科目を選ぶことが出来る。しかし、中には3人のように連続で同じ科目を選ぶ生徒もいるのだ。

 

すると、深生は海に関する本を読み続けている一翔の方へ視線を向ける。

 

「でも、一翔にとってはそんな気持ち以上なんじゃない?私たち以上に海に思い入れがある感じだし……」

 

「……まぁ、否定はしねぇよ。ただ……」

 

「「ただ?」」

 

「逆に人間は海のほんの上っ面しか知らない……地球の7割は海だというのに、どの国も……自分とこの優秀さをひけらかそうと宇宙ばかり行きたがる。それ故に、宇宙学や天文学といった宇宙に関する科目に参加する生徒が比較的に多く、この科目は最少と言ってもいいほどだ」

 

一翔はいつも以上に真剣な表情で語る。そんな彼の言う通り、この学校の海洋学は10人にも満たさない数しか生徒はおらず、文学系の科目の中では興味を持たれるような印象は無に等しい。

 

「それでもさ、あっちはあっち、こっちはこっちで普段通りにやってけば良いじゃん。この科目はすごいんだぞ!っていう、証を残したいためにこの科目を選んだんじゃないし」

 

「そうね、私たちはただ海のことについて、もっとたくさん、知らなかったことを知りたいだけなんだもの。なにも目立つようなことなんてしなくたって良いんだから」

 

俊と深生は前向きな言葉を綴っていく。一翔は、そんな2人に対して無意識ではあるものの、小さく微笑んでいた。

 

 

 

 

 

その後、休憩時間が終わり、2部、3部と滞りなく授業は進み、1日の授業が終了し、放課後となった。

 

「はぁ~」

 

「どうしたのよ?今度はそんなに深いため息ついて……」

 

「いやさ、さっきは改めて魅力的だと実感したって言ったけどさ、それと同時に罪悪感を感じてさ……」

 

「どういうこと?」

 

「海って綺麗だけどさ、必ずしも汚れてないって訳じゃないじゃん?さっきの授業でもさ、海が汚染されてるのは人間のせいでもあるって先生も言ってたからさ……」

 

今日は一翔が日直であるため、その仕事を終えるまで待ち続ける2人。その間に雑談を交わす中、俊が言い出したことに、深生も複雑そうな顔をする。

 

「あぁ、あれね……確かに罪悪感を感じちゃうわ。事故によるオイルや油の流出、大量の産業廃棄物の投与による汚染……前者は事故によるものだからまだ少しだけでも目を瞑れるかもしれないけど、後者は確実に人が意図的にやっちゃってるから……特に昔はその廃棄物が原因で大変なことがあったらしいし」

 

「そうそう。だからさ、俺たちも含めて人間って愚かなんだな、とも思えてくるよ。しかも、それは海とかの環境だけじゃなく、他人までも傷つけていくんだなって……」

 

「……あぁ、2年前のあのライブ事件の後に起こった迫害事件ね。確かに、あれは度が過ぎていて目に余っちゃうわ。でも、それに関しては一翔や響たちの方が一番思い知らされたはずよ」

 

俊と深生は一翔からの紹介で響と未来とは友人関係となっている。そして、響がライブ事件で生き残ったことで迫害を受けたこと、その際に一翔と未来が守っていたことを聞いている。

 

迫害事件に関しては、2人も実際に響を罵ったわけじゃないとはいえ、もし自分が他の人たちのように度が過ぎた正義感を持っていたらと思い、改めてあの事件は愚かしいものだと感じていた。

 

「―――あれに関してはノイズが悪い。ノイズさえいなけりゃ良かっただけの話だ」

 

そこへ、日直の仕事を終えてきた一翔がやって来た。

 

「あ、一翔」

 

「日直の仕事、終わったんだな。てゆーか、聞いてたのかよ?」

 

「まぁな……それより、さっき俺が一番人間の愚かさを思い知ったって話だが、確かに俺たちを含めた人間は愚かで、醜い部分がたくさんある生き物だ。でも、それと同時に美しく、優しい心を持った生き物でもある。人間には美しい面と醜い面があることを自覚しなきゃいけないんだ」

 

一翔はそう語り、昇降口へと足を運び始めた。そんな彼を追うように2人も足を運ぶ。

 

「ま、確かに人間はそういう2つの部分を持った生き物だし……一翔に至っても愚かな部分は無いにしても2つの部分を持った生き物だって思うよなぁ~」

 

「は?どういう意味だよ?」

 

「一翔は普段素っ気なくて、無愛想で、近づいてくるなっていうオーラがプンプンしてくる奴だ。でも、それと同時に面倒見が良く、困っている人を見ていると放っておけない―――そんな優しい部分もあるって意味さ。それに、お前は自覚が無いだろうけど、その優しい部分のお陰で……ムフフ」

 

「……何だよ、急に天然水柱みたいな笑い方して……」

 

「いや……やっぱ何でもない……ムフフ」

 

結局何も教えてくれず、俊はずっと笑い続けたままだった。

 

 

 

 

 

その後、一翔はバイクで登下校しているため、2人は駐輪場で一翔と別れ、2人で帰路についていた。

 

「まったく……からかうのは良くないって言ったじゃないの」

 

「だから別にからかってねぇって。少しはあいつに自覚させてほしいだけだよ」

 

「自覚させてほしいって……まぁ、確かにそうなってほしいって気持ちは私にもあるけど……一翔ってば、さっき俊が言ってた優しい部分のお陰で、先輩後輩を問わずに慕われたりしてるのに気づいてない。ましてや―――」

 

「その優しい部分を垣間見た大抵の女子からは好意を寄せられている、なんて微塵にも思ってないからなぁ~」

 

2人の言う通り、一翔は普段は近寄りがたい程の雰囲気を出し過ぎてるが、それと同時にちゃんとした優しいところもあり、それに加えて一翔は誰から見てもハンサムな顔立ちをしているため、学校内での評価は高く、大半の女子からは好意もしくはそれに近い感情を寄せられている。

 

「でも……自覚させる以前に、一翔は少しくらい俺たちみたいに楽しいことにも目を向けてほしいって思うんだよな……。外食とかにはたまに付き合ってくれるけど、それ以外の娯楽をあいつが楽しんだとこなんて見たことないし」

 

「そうよね……それに去年の時からずっと思ってたけど、一翔は何か無茶してる気がするのよね。学校とかそういうのじゃなく、なんか……違う何かに執着しすぎてるって言うか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俊と深生が一翔のことで語らっている中、当の本人は自宅とは別の方向へ向けてバイクを走らせていた。そしてたどり着いたのは、数々の墓標が建てられている海沿いの丘だった。

 

そこへ足を運び、『R.YOSHIMIYA』と『H.YOSHIMIYA』という、一翔と同じ苗字と名前の頭文字(イニシャル)がローマ字で刻まれた1つの墓標の前に立つ。

 

「お父さん、お母さん……俺は、今でもこの力を使ってノイズを倒し、救えなかったものも少なくないが人間を守ってきた。けど……2年前のあの事件の時から、俺は人間に対して不信感を抱くようになってきた。千山たちにも言ったように、人間には美しい部分と醜い部分があるのは、俺も十分理解している」

 

一翔が墓標に向けて父、母と呼んで語りかけているのを見ると、やはりこれは一翔の両親の墓である事が解り、恐らく2年前よりも以前に亡くなっていることが窺える。

 

「けど……それでも、もしかしたら俺は人間の醜い部分という片方の局面しか見ようとしなくなってきてしまうかもしれない……俺は、それが怖い……!」

 

一翔は墓標の前で両膝をつき、自身の体を抱くようにして震えていた。

 

「……そうやって、俺が一番本当に愚かな存在になってしまったらと思うと……怖くて仕方がない……ッ!!」

 

そう言って一翔は震えが止まらぬまま顔を俯かせ、さらに体をうずめていく。そのまま、一翔はしばらく動けないでいた。

 

 

 

 

 

それから5分後、震えをなんとか抑えた一翔は立ち上がり、もう一度墓標へ向けて語っていく。

 

「……正直、俺には自信がない……今は大丈夫だとしても、これからもずっと人間を信じ続けてやれることに。けど……」

 

一翔はブレザーの左の内ポケットからブレスレットを取り出す。

 

「それでも今は、俺は戦うよ。ノイズから罪のない人たちを守るために……!」

 

表情を引き締め、決意を改めた後、ブレスレットを左の内ポケットに仕舞い、一翔はその場を後にしようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

 

「はぁ、はぁ……!早くしないと、ツヴァイウィングの初回限定特典のCDが売り切れちゃうぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 

少女―――立花響は全力疾走していた。

 

響は現在、未来と一緒に『私立リディアン音楽院』という、音楽を学ぶ学校へ入学し、今は高等科1回生である。

 

そんな彼女は今、リディアンでの1日の授業を終えた後、現在も活動を続けているツヴァイウィングのCDを買いに外に出ていたのである。走っているのは、その発売日が今日であることを本人はすっかり忘れていた為、慌てていたのである。

 

ちなみに、響がリディアンに入ったのは、ツヴァイウィングの1人であり響の憧れの1人でもある風鳴翼が通っているからというのが動機である。未来もピアニストを志望のため、リディアンに入学している。翼の相方で響のもう1人の憧れの人物である天羽奏もリディアンに通っていたが、響と未来が入学する前に卒業していたため、現在はOBとなっている。

 

未来はともかく、中学時代から一翔に教えてもらえなければダメなほどあまり勉強が出来ない響が、憧れという理由で入学したことに、一翔は感心しながらも若干呆れていた程だ。

 

「はぁ、はぁ……!あそこを曲がれば、CDショップに―――ッ!?」

 

その時、走ったことで荒くなっていた呼吸を整えていると、ある臭いを嗅いでしまった。

 

「―――炭の臭い……もしかして……!?」

 

嫌な予感がしながらも、響は炭の臭いがする方向へ足を進める。その方向は、響が向かおうとしていたCDショップと同じ方向であった。

 

そして、響は見てしまった。不自然に山積みとなっている大量の炭―――それを見て、響は戦慄する。

 

「ノイズ……!!」

 

そう、ノイズだ。さっきまで人の肉片だった(・・・)ものが炭化され、その場に広がっていた。

 

「逃げないと……!」

 

響はなんとか足を動かし、ノイズから逃げようと走り出す。

 

「うわああああん!!!!」

 

そんな時、どこからか子供の泣き声が聞こえてくる。

 

「ッ!近くに子供が!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、バイクを走らせて自宅へと向かっていた一翔は、途中で赤信号に差し掛かったため停車していた。

 

「ん?」

 

その時、ブレザーの左側の内ポケットに違和感を感じた一翔は、ポケットの中に入れていたブレスレットを取り出す。ブレスレットは点滅していた。

 

「ノイズか……!どこか近くに人目のつかない場所は―――」

 

ノイズが出現したと気づいたが、赤信号で止まっている上、人も結構周囲にいるためウルトラマンに変身することが出来ない。そのため、人目のつかなさそうな場所を探している。

 

「―――ん?あそこのコンビニに行くか……コンビニの外の裏で変身すれば、監視カメラに映らんし人目もつかんからな」

 

近くにコンビニがあったため、青信号になったと同時にバイクを走らせてコンビニに停める。

 

その後、コンビニの裏に回って誰もいないことを確認し、監視カメラも無いことを確認した後、一翔はブレスレットを右腕に装着し、青い発光体となって現地へと飛び立った。




そういえば、ガンマフューチャーが登場した日は『MEGザ・モンスター』が土曜プレミアムでやってたんですよね……。偶然だろうけど、ガンマフューチャーは実質アグルの力も加わってるわけだから、それが登場した日に“海”と“サメ”がテーマの映画がやるなんて思いもしなかったなぁ……。

ちなみに、サメがモチーフのベリアルと海の力を宿したアグルの組み合わせであるサンダーストリームは、僕の推しフォームの1つであります。

まぁ、僕の推しフォームは何なのかなんてどうでもいい話は置いといて、次も何週間……いや、何ヵ月掛かるか分かりませんが、何卒、本作品をよろしくお願い致します!


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8話 覚醒と邂逅


今更ながらに気づいたこと……他のシンフォギアの小説を書いてる作者さんの作品を見てみたら、別に聖詠の歌詞コードを入力してなくても、普通に投稿出来たんだなぁ、と……

まぁ、でも一応歌詞なのだから、めんどくさくはありますが、僕は歌詞コードを入力してやっていきます

あと、今回も短いうえ、展開が早い感じがしますが、どうぞ!


ノイズから逃げようとした響は、子供の泣き声が聞こえたので、鳴き声がする方向へ駆けつけると、1人の女の子がいた。

 

どうやら女の子は母親とはぐれてしまったようだ。響はなんとか女の子を連れて再び逃げようとする。

 

しかし、ノイズから逃れるためのシェルターとは反対の方向へ走ってきてしまったようだ。響はどこか隠れられそうな場所を探す。

 

その後、なんとかビルの屋上へ逃げ込むことに成功した。しかし、ノイズが自壊するまでは油断は出来ない。

 

「……私たち、死んじゃうの……?」

 

女の子は恐怖のあまり、涙を流して響に問い質してくる。響はなんとか女の子を元気付けようとする。

 

「大丈夫だよ。絶対に死なない、必ず助かるから……だから―――」

 

響は、2年前に奏から言われた言葉を口ずさんだ。

 

 

「生きるのを、諦めないで!!」

 

 

すると、それがトリガーとなったかのように、彼女の心の中に歌が浮かんできた。

 

 

━━━Balwisyall Nescell gungnir tron

 

 

響は自然とその歌を歌っていく。

 

そして歌い終えると、彼女の体が光に包まれていく。

 

 

 

 

 

同時刻―――

 

 

「反応、絞り込みました!位置特定!」

 

「ノイズとは異なる高質量エネルギーを検知!ウルトラマンの反応とも異なります!」

 

特異災害対策機動部二課の指令室で、ノイズともう1つ別の反応を確認し、オペレーターたちが報告していく。後者の反応は、恐らく響が歌った後の光に関係がある。

 

「……まさか、これって……アウフヴァッヘン波形……!?」

 

アウフヴァッヘン―――ドイツ語で“覚醒”を意味するその波形をもっと詳しく調べていく。

 

「解析結果、出ます!」

 

1人のオペレーターがそう報告を入れると、モニターに解析結果が表示された。

 

そこに表示されていたのは―――

 

 

『gungnir』

 

 

―――ガングニールという文字だった。

 

「ガングニールだとォッ!?」

 

それは、2年前に奏が身に纏っていたアーマー―――シンフォギアの名称であり、その名が出たことに、指令室で解析結果を見た弦十郎は驚愕の声を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?あ、あれ?私……って、えぇ!?」

 

歌を歌ったことで突然体が光り出し、思わず目を閉じていた響だったが、光が収まって目を開くと、なんと橙色の機械的なアーマーを身に纏っていた。

 

それはまさしく、2年前に奏と翼が身に纏っていたシンフォギアであった。しかも、色は全く別で形も所々変わってはいるが、響が身に纏っているのは奏と同じガングニールだった。

 

「ええええええっ!?何で!?どうなっちゃってるの!?」

 

体が突然光り出しただけに留まらず、全く知らないアーマーを身に纏っていることに、響は仰天していた。

 

「お姉ちゃんかっこいい!!」

 

女の子は響の今の姿に目を輝かせていた。

 

「そ、そうかな?……って、今はノイズが来てるんだった……!」

 

そう言うや否や、響は女の子を抱き抱え、迫ってきたノイズたちから逃げるように飛び上がった。

 

「えい―――って、うわあああああああああああっ!?!?!?」

 

しかし、何も考えずに飛んだためか、勢いよく飛び上がったは良いものの、重力に従って落ちていく。

 

 

ドォーンッ!!

 

 

だが、シンフォギアを纏っているお陰か、普通の人間なら死んでしまうであろう高さから落ちたものの、無事に着地することに成功した。

 

「これ、すごい……!―――てゆーか、土煙が舞い上がるなんて演出はなかったから良いものの、私が先にこんな派手な着地してよかったのかな……?いや、あくまでクロスしてない原作では私が主役だったわけだし……」

 

「お姉ちゃん、何言ってるの?」

 

シンフォギアに対し感嘆な声を挙げつつ、何やらメタいことを呟き、女の子から疑問の声が掛けられる。

 

「えっ?あっ、いや、何でも―――って、ノイズが来てる……!」

 

なんとか気を取り直し、響たちを追ってくるようにビルの屋上からノイズたちが降りてくる。

 

着地に成功したものの、現在自分が纏ってるシンフォギアが何なのか自体知らない響は、女の子を抱き抱えたままノイズから逃げるために走り出す。

 

しかし、ノイズは逃がさんといわんばかりに響に襲いかかろうと迫ってくる。その際、響は逃げるのに必死で前方にしか向いていなかったため、横から突っ込んでくる1体のノイズに対して反応が遅れてしまう。

 

「マズい!!(せめて、この子だけでも守らないと……!)」

 

そう思った響は、突っ込んでくるノイズに向けて腕を突き出した。その瞬間、ノイズは弾かれていき、響は炭化せず、ノイズのみが炭化していった。

 

「えっ!?なんで……?でも、これなら……!」

 

自分は炭化せず、ノイズのみが炭化したという思わぬ事実に響は驚愕するも、これでならノイズを倒し、女の子を守れると確信した。

 

「何だかよく分からないけど、やれるだけやってみよう!」

 

そう叫び、突っ込んでくるノイズめがけて響は拳を作ってそれを振るい、ノイズを倒していく。

 

だが、戦うこと自体したことがないうえに、まだ女の子を抱えたままでいたため、思うように戦えない。そして、少しではあるがノイズの数も増えていっている。

 

早く女の子を安全な場所へ逃がしてやりたいが、ノイズが周囲にたくさんいるこの状況で逃がそうとしたら、ノイズは間違いなく女の子の方へも襲いかかってしまうだろう。しかし、だからと言ってこんな危険と隣り合わせな状況にずっと居させることも出来ない。

 

「くっ!どうすれば……!」

 

苦虫を噛んだその時、突如上から青い発光体が現れ、響とノイズたちの間に割り込んできた。その発光体は着地すると共にもっと眩い光を放ち始めた。

 

「えっ、な、なになになに!!?」

 

突然現れた青い発光体がさらに眩い光を発したことで響は当然驚き、眩しさに思わず顔を背ける。すると、段々と光が晴れていき、顔の向きを戻すとそこにいたのは、響に背を向けて立っているウルトラマンだった。

 

「えっ……?あ、あなたはいったい……?」

 

突然現れたうえに初めて見るウルトラマンに思わずそう問いかけると、ウルトラマンはゆっくりと響の方へ顔を向け、目を合わせる。

 

「ッ!?」

 

その瞬間、響は背筋がゾッとするような感覚に見舞われる。

 

そんなことを知ってか知らずか、ウルトラマンはノイズの方へ向き直り、右腕を垂直に伸ばす。そして青い電撃のようなものを走らせた後、そこからリキデイターよりも小さな光弾『スラッシュ』を放った。

 

何発も放たれたスラッシュを受けたノイズは爆発していき、怯んだ隙にウルトラマンはノイズへと突っ込んでいく。

 

『アイッ!オォアアアアッ!!デヤッ!!』

 

ノイズを蹴り倒し、またはノイズの足を掴んで投げ飛ばし、空を飛ぶ飛行型ノイズにはジャンプキックなりと、ウルトラマンは次々とノイズを殲滅していく。

 

「すごい……とてもすごいとしか言えない……!」

 

「かっこいい……!」

 

先程まで背筋がゾッとするような感覚に見舞われていた響だが、ウルトラマンの戦いを見てそのような感覚はなくなり、ただすごいとしか呟くことが出来なかった。女の子もウルトラマンに対し憧れを込めた眼差しを向けていた。

 

その時、ウルトラマンは何かを感じ取ったのか、ある程度ノイズを倒した後、高速移動でどこかへと去っていった。

 

「……って、あれ!?ちょっと、何でどっか行っちゃ―――」

 

 

━━━Imyuteus amenohabakiri tron

 

━━━Croitzal ronzell gungnir zizzl

 

 

ウルトラマンが突然去っていったことに驚愕していると、バイクの走る音と共に2つの歌が聞こえてきた。

 

「はぁっ!」

 

「おりゃあっ!」

 

その瞬間、2つの斬撃がノイズたちを蹴散らした。その正体は、シンフォギアを纏いそれぞれ刀と槍を手に持った翼と奏だった。ちなみに、バイクは2人がシンフォギアを纏ったと同時に飛び上がったため、実質乗り捨てられる形でノイズの方へと突っ込んでいき、壊れてしまった。

 

「あーあ、まーたバイク壊しちまったな。いつになったら乗り捨てるって概念を捨てるのかねぇ」

 

「何言ってるの。バイクは乗り捨てるものよ」

 

「はいはいそうですか」

 

「それと―――」

 

壊したバイクのことで会話した後、憧れのツヴァイウィングが2人も揃って目の前にいることで困惑したまま動けないでいる響へと視線を向ける翼。

 

「呆けない、死ぬわよ。あなたはそこでその子を守ってなさい」

 

そう言い捨て、刀を構えてノイズの方へと走っていく翼。奏も翼に続こうとする前に、響の方へ近づいていく。

 

「よっ、久しぶりだな」

 

「は、はいっ!お久しぶりです!奏さん!ま、またお会い出来て光栄です!!」

 

憧れの人物から話しかけられたことに、響はガチガチになりながらも返事をする。

 

「ま、お互い話したいことや聞きたいことはあるだろうけど、とりあえず今はその子を守っておけ。残りのノイズどもはあたしたちに任せな」

 

「は、はいっ!」

 

「あっ、あとそれから―――」

 

奏は響の頭に手を乗せ、優しく撫でる。

 

「ふぇっ!?あ、あの……!!」

 

「ありがとな。あの日から2年間、生きるのを諦めないでいてくれて」

 

「ッ……!」

 

響にそう言った後、奏は槍を構えてノイズの方へと走っていった。響は、奏からの言葉に嬉しさによる涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ツヴァイウィングが来ることを感じ取って高速移動で姿を消したウルトラマンは、物陰に身を隠しながら様子を窺っていた。

 

(……まさか立花まであの鎧を身に纏っていたとはな……。だが、立花の様子からするとあいつは何も知らないみたいだし、たぶん偶発的な何かがあったんだろう)

 

一翔は、響まで見たことのない鎧を身に付けていることに内心驚愕しながらも、先程までの様子を見たことで何かしらの偶発的な要因があったのだろうと結論付けた。

 

(とりあえず、今回ばかりはあいつらにここを任せるか。あの青髪の女にまた出くわすのも厄介だし)

 

そう考え、翼たちがノイズと戦ってる隙を突いて飛び上がり、光となってその場を後にした。

 

 

 

 

 

その後、ノイズは奏と翼の活躍により殲滅され、響が助けた女の子はノイズ殲滅後にやって来た二課のスタッフたちにより保護された。

 

「あ、あの……これって一体どうしたら……?」

 

「着ていた服をイメージしなさい。そうすれば、ギアは解除されるから」

 

未だにシンフォギアを纏ったままの響が尋ねると、翼がそう答えたことで響はシンフォギアを纏う前の服をイメージする。するとギアは解除され、元の服装に戻った。

 

「暖かいものどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

スタッフの1人が暖かい飲み物を響に差し出し、それを受け取った響は礼を言う。

 

「よっ」

 

「あ、奏さん……!二度も助けていただき、ありがとうございます!!」

 

「なぁに、気にすんな。むしろ礼を言いたいのはこっちなんだ。改めて、生きるのを諦めないでいてくれて、ありがとな」

 

「ッ、はい……!」

 

改めて奏から礼を言われたことで、嬉しさのあまりまた泣きそうになった響だが、なんとかこらえた。

 

「そういやよ……お前さん、あたしたちが駆けつける前にウルトラマンがいたりしなかったか?」

 

「えっ、ウルトラマン?……もしかして、青い体をした、胸にランプのようなのが付いてる……」

 

「そ。でもその反応からすると、いたんだな?」

 

「はい。でも、奏さんたちが来る直前にどっかに行ってしまいましたけど……てゆーか、あれがウルトラマンだったんですね」

 

「そうか……はぁ、あたしもあいつにもう一度会ってみたかったのにな……ま、翼がいたんじゃ無理もねぇか」

 

 

 

 

 

それからしばらくし、スタッフたちが作業を一通り終えたのか、退散の準備を始める。

 

「あ、あの……そういえば、お2人が着ていたあの鎧みたいなのって……それに、私もなぜかそれを着ていたことなんですけど……」

 

「あぁ、その説明をしてやるんだがその前に―――」

 

 

ガチャン

 

 

「……へ?」

 

「わりぃな、ちょっと着いてきてもらうぞ」

 

「え……えええええええええええ!?!?!?」

 

突然憧れの人物から手錠を掛けられたことに、響はただ絶唱ならぬ絶叫するしかなかった。




今回のアグルの活躍はほんの少しだけだという……まぁ今回はあくまで響のガングニール覚醒に加え、響がアグルとツヴァイウィングとの邂逅を果たすのがメインだったので、ご了承ください


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9話 秘密


オリキャラと原作キャラとの会話はあるものの、今回は地の文と主人公の語りがほとんどだという……そして短い(泣)

次回はなんとかアグルを参戦させるようにします。本当にごめんなさい


奏と翼、響がノイズと戦っていた場所から去り、発光体の状態でバイクを停めていたコンビニの裏へと戻ってきた一翔は変身を解いた。

 

その後、バイクを停めただけでは失礼だと思い、コンビニである程度の食材を購入し、バイクに乗って自宅へと戻っていく。

 

(まさか立花までもがツヴァイウィングと似たような鎧を身に纏うとはな……でも本当に意図的にではなく、偶発的になったんだとしたら……恐らく2年前か)

 

一翔は、2年前にウルトラマンとしてライブ会場に駆けつけた際、響が胸から大量出血を起こして気を失っていたのを見ていた。しかし、何が原因でそうなったかまでは見ていない。

 

(それによく見たら形や色は違えど、あの赤髪の女と立花が纏っていた鎧が似ていたんだよな……たぶん、あいつが気を失っていた立花に何かしたって可能性も……まぁ仮にそうだったとしても、そのお陰で立花は助かったのも事実だしな)

 

一翔はあくまで推測として、響が謎の鎧―――シンフォギアを纏っていた理由を心の中で述べていた。

 

(ただ―――ツヴァイウィングは二課という組織に属し、その組織が開発したであろう鎧を立花も纏っていた。恐らく、立花は二課という秘密組織に必然的に入ることになる。そうなると……小日向には何があっても秘密にしなくちゃいけなくなっちまうな)

 

さらに一翔は、響がシンフォギアを纏っていることで必然的に二課に所属し、秘密組織とされていることから家族であろうと友人であろうと口止めさせられると思った。そして、響は一番身近な親友である未来にも、シンフォギアや二課のことを秘密にさせておかなければならないとも思った。

 

(世の中には、秘密のままにしておいた方が良いこともあるとは言うが―――それにだって限界がある。それに立花の性格上、上手く隠し通せるとも思えんしな……。さて、これからどうなることやら……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

「―――で、立花が最近は何か怪しい感じがするから、俺たちに相談ってか?小日向」

 

「……はい」

 

案の定、響はシンフォギアを纏ったことで二課に所属し、機密事項なのでシンフォギアや二課のことを秘密にするように言われた。そして響が二課に所属してからここ数日、未来は響が何か隠してるのではないかと疑問を持ち始めていた。

 

そこで、未来は放課後に一翔の他に俊と深生も呼んで、ファミレスにて3人に相談していた。

 

「う~ん……連絡はたまにするけど、俺からすれば特に何もなかったけどなぁ……」

 

「私も、特に心当たりはないわね……」

 

俊と深生は特に思い当たることはないと未来に伝える。

 

「そう、ですか……」

 

「ま、あいつが本当に何か隠し事したとしても、決して悪事に手を染めたなんてことはないだろう。少なくとも、小日向のためを思って敢えて何かを隠してるってこともあり得る」

 

「う~ん……でも、やっぱり何かを秘密にされるのは……」

 

全てとまでは言わないが、響のある程度の事情を知った一翔がそう語るも、未来は不安そうな顔になる。

 

「まぁまぁ未来ちゃん、なんだったら俺たちも軽く聞いてみるよ」

 

「そうよ。1人だけ不安にさせるわけにはいかないもの。形だけの友達関係にならないように、私も協力するわ」

 

「……ありがとうございます。俊さん、深生さん」

 

 

 

 

 

その後、ファミレスを出て一翔はバイクで自宅へと戻っていく。その際、来月に“こと座流星群”が観られるとのことで未来から誘いを受けたが、一翔は適当に理由をつけて断っていた。俊と深生は快く承諾したが、一翔が断ったのを見て、少し複雑そうな顔をしていた。

 

(……ま、俺も結構重大な秘密を抱えてるんだよな。ORC、そこに保護されてるチビスケやジョリーたち、そして―――俺が手にした光……)

 

一翔も、自分は響と同じくらいの秘密を隠していることを改めて自覚していた。

 

(少なくとも、正式に所属してるわけではないがORCと関係を持っていること自体は別にバレても問題ないだろう。それに、千山と野々川のような奴ならチビスケやジョリーたちのことを知られても問題ない。だが―――)

 

1つだけ、一翔にとってこれだけはなんとしてでも隠し通さなければならないと思う秘密がある。

 

それは、先程一翔が心の中で言ってた、自分が手にした光―――ウルトラマンの力を手にしていることだ。

 

奏と翼、そして響はシンフォギアを纏った時、少なくとも彼女たちは顔を出した状態となるため、他人から見れば武器を纏った人間だと認識される。

 

しかし、ウルトラマンの場合、無表情な鉄仮面のような顔な上、ライフゲージやプロテクターを除いた部分は人間で言う生身に等しい。

 

そのため、“鎧を纏っているがちゃんと人間として認識される”響たちとは違い、“生身で鎧がなくても戦える人間を遥かに越えた超人として認識される”ウルトラマンが、実は人間が変身していたなどと知られてしまったら響たち以上に大問題となると思ったのだ。

 

幸い、木戸を始めとしたORCのメンバーとは幼い頃から交流があったお陰で、ウルトラマンの正体は自分だと知られながらも受け入れてもらい、変わらず温かく接してもらっている。

 

だが2年前にも思っていたように、響や未来、そして俊と深生とはそれなりに関係は築けているものの、木戸たちのようにしっかり受け入れてもらえるとは限らない。最悪の場合、自分から離れていくのではないかと一翔は不安になっていた。

 

 

だから、一翔は何があっても、自分がウルトラマンであることだけは絶対に秘密にすべきだと考えていたのだ。

 

(自慢じゃないが、俺は立花よりは秘密を隠し通すことに長けている。それに、もしウルトラマンの正体が人間だと知ったところで、俺だということには気づくまい。だが―――だからといって油断は禁物だな)

 

一翔はそう考えながら、バイクを走らせていった。




Zのボイスドラマでゼロが“生身”発言した際には一瞬、は?って疑問を抱きましたが、よくよく考えてみれば、生身じゃなけりゃパワードや原作ガイアでのアグルの流血(?)シーンはあんな感じに描かれませんよね……

ゼロの場合、プロテクターは備わっているけど、ベリアルアトロシアスはそれをも貫く程の威力を見せたから、右肩があんな風になったんだろうなとも思いました


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