海神絶唱シンフォギア~海の化身と装者たち~ (サミン)
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プロローグ


タイトルやタグにもあるように、この作品の主役ウルトラマンはアグルです。


この世界には、人間にとって最も危険と言われている『ノイズ』が存在している。ノイズとは、人間のみを大群で襲撃し、その身に触れた者を自分もろとも炭素の塊へと変えてしまう特性を持っている。そんなノイズは10年ほど前から特異災害認定されており、現在でもニュースで被害報告がされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…………!」

 

そして、今もノイズに襲われようとしている女性がいた。その女性は、恋人の男性とデートをしていたのだが、その帰りにノイズと出くわしてしまったのだった。その時、男性は彼女だけでもと思い女性を庇い、ノイズに触れられてしまい、炭素と化してしまったのだ。

 

女性は悲しみながらも、助けてくれた彼のためにも生き残るために、ノイズから逃げようと走り続けていた。

 

ノイズによる炭化を防ぐための対処法としては、ノイズが一定時間で自壊するまで逃げることのみとされている。そのため、女性は今もなお走り続けていたのだ。

 

しかし、ノイズは大群で襲ってくるので、1体が自壊してもまだ何体もいるため、いつ触れられてもおかしくはない。

 

「ハァ、ハァ…………きゃっ!?」

 

とうとう限界が来てしまったのか、躓いて転んでしまった。

 

「いや、来ないで……!来ないでぇ!!」

 

そう声を出すもノイズは止まることなく近づいてくる。

 

そして彼女と1体のノイズの距離が0になり―――

 

 

「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!!!!!」

 

 

断末魔の悲鳴と共に女性は炭素と化してしまった。

 

そして、残ったノイズたちが自分達の一定の範囲に人間がいるかどうかを確認しようとしたその時―――

 

 

「―――くそ、遅かったか……!」

 

 

突然ノイズたちの前に1人の少年が立ちはだかった。走ってきたのか、少し息切れをしている。

 

「よぉ、ノイズ……何度も何度も罪のない人たちの命を奪いやがって……!俺はお前らを絶対に許さないッ!!」

 

そう言って少年が右腕を見せると、その右腕には三角形をした金縁と、同じく三角形をした水色の水晶が金縁に埋め込まれ、古代文字のようなものが書かれた2つの銀色のブレードが折り畳まれている、ブレスレット型の謎のアイテムが装着されていた。

 

そして少年が右腕を振り下ろすと、2つのブレードが左右に展開し、水晶が激しく点滅しながら青く発光し、握り拳のまま胸の前へ掲げるとブレスレットが180度回転した後、強烈な青い光が彼を包み込んだ。

 

そして光が晴れるとそこにいたのは、普通の人間と同じサイズをした、青い体に黒い部分と銀色のライン、胸と肩に連なる銀縁のプロテクターと胸の中央に青く光るランプを持ち、銀色の顔に鋭くつり上がった光り輝く両目を持つ謎の超人だった。

 

そして、謎の超人は右腕をノイズに向けて垂直に伸ばす。すると青い電撃のようなものが走ったと思ったら右手から光弾が何発も放たれ、ノイズたちに当たって爆発した。

 

突然の攻撃でノイズたちは驚くが、反撃しようとして走り出すと、超人が右手から今度は青く光る剣が形成させた。

 

『ハァアアッ!』

 

掛け声を出すと同時に超人は剣を振るい、ノイズたちを斬り裂いていく。そしてその攻撃を食らったノイズたちは炭素と化していった。

 

しかしノイズはまだいる。1体のノイズが跳躍して突撃を仕掛けてくるが、超人はそれを慌てることなく華麗に躱す。突撃してきたノイズはそのままうつ伏せに倒れてしまい、その隙に超人に両足を掴まれてしまう。

 

すると、驚くべきことに超人はノイズに触れてもその身が炭素化することがなかったのだ。そして超人はノイズの両足を持ち上げて何回も回し、そして他のノイズたちのいる方へ投げ飛ばした。

 

『ハァッ!』

 

その後に超人は両腕を額の前でクロスした後に振り抜くと、彼の両手の間にエネルギーが発生し、そのまま両手を握り拳にして右手を上、左手を下にして胸の前で組むと青い光弾が形成された。

 

『デヤッ!』

 

そして右手を下、左手を上に組み替えるとそのまま両手を突き出し、青い光弾をノイズたちに何発も放った。

 

光弾が何発も放たれ、結構の数がいたはずのノイズも残り1体となった。超人は残りの1体に向け、挑発するかのように左手でクイクイと手招きをする。それに怒ったノイズは思いっきり走ってきて突進してくるが当然避けられてしまい、足を払われてしまう。

 

超人は足を払われて倒れかけたノイズの胴体に蹴りを入れるとノイズは高く飛ばされ、それを追うように、なんと超人は空へと飛び上がった。

 

そして空中へと飛ばされたノイズをさらに蹴り飛ばし、自分が浮遊している場所まで落ちてくると今度は降下する速度を早めるために蹴り落とした。

 

『ハァッ!オォアアアアァァァ……!』

 

ノイズは勢いよく落下し、超人は着地した後、超人はもう一度両腕をクロスする。そして右腕を上に左腕を下に伸ばす。すると彼の額に青い光の渦が発生し、それが集まってくるとやがてそれは青く輝く光の刃を作り出し、それは空へと立ち上るように伸びていく。

 

そして―――

 

 

『デェアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

伸ばしていた右腕を振り下ろし、光の刃をノイズめがけて撃ち出した。

 

ノイズは立ち上がった瞬間にそれを食らってしまい、そして頭部から次々と粉々に爆発四散していった。

 

粉々になったノイズの断片は炭素と化していった。

 

 

 

 

 

ノイズたちを一掃した後、超人は先程倒したノイズたちによって炭素化されてしまった女性のいたところへと歩いていく。

 

そこには当然、炭素化された女性の肉体だった(・・・)ものが広がっていた。

 

超人はその場で片膝をついてその炭を片手で掬い、それを見つめる。すると、風が吹いて手にあった炭はもちろん、その場にあった炭は風にさらされて消えてしまった。

 

それを見届けた超人はゆっくりと立ち上がり、超人―――その姿になった少年は心の中で呟いた。

 

 

(すまなかった……早く助けに来られなくて……!本当に、すまなかった……!!)

 

 

彼はもっと早く助けてやれなかったことへの後悔と、それによる謝罪をした。その悔しさによって彼は手を強く握りしめていた。

 

(……次こそは……。とりあえず今日はこれだけのようだな……さっさとここから消えるとするか)

 

心の中でそう呟き、空を見上げたままでいると胸のランプから青い光が溢れ出て、彼の体は光となってその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

 

「ノイズの反応、全て消失しました」

 

どこかの施設の指令室と思われる場所で、ノイズの反応を確認していたオペレーターがそう報告をする。

 

「そうか……。その時の映像は残っているか?」

 

「いえ、ほとんどブレているものしか残っておりません……」

 

「分かった。しかし……シンフォギア(・・・・・・)以外でノイズを倒す者がいるとすれば―――」

 

「―――ええ、今ネットでも話題になっている、突然現れてはノイズを倒し、倒した後は跡形もなくその場から消え去る存在……そして、あの事件(・・・・)の時にも姿を現した。その名も―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――『ウルトラマン』」

 

 

逆立った赤い髪にワインレッドのシャツを着た、まさに屈強の男という相応しい言葉が似合う男―――ここ、『特異災害対策機動部二課』の司令『風鳴(かざなり)弦十郎(げんじゅうろう)』は腕組みをしながらそう呟いた。




完全な思いつき作品ですが、是非見てくれたら嬉しいです。
アグルの変身者については次回になります。ちなみこのアグルはV1であります。


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1話 吉宮(よしみや)一翔(かずと)


今回は前回より少し短めです。


ギィ……ギィ……

 

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……!」

 

ノイズを倒した翌日の日曜日。超人―――ウルトラマンに変身していた少年『吉宮(よしみや)一翔(かずと)』は朝から自宅でトレーニングをしていた。

 

汗をかき、呼吸が荒れそうになりながらもリズムよく呼吸を整え体を動かしていく。

 

 

[続いてのニュースです。昨夜、梶尾地区で特異災害ノイズの出現が観測されました。しかし、残念なことに観測された場所のピンポイントに男女二名が遭遇してしまったことで、その後の調査により、男女二名はノイズによる死亡が確認されました]

 

点けていたテレビからそんなニュースが流れてくると、ちょうど一段落終えたのか一翔はトレーニングマシンから降り、テーブルの上に置いてあったペットボトルの中の水を飲みながらニュースを見始める。

 

「はぁ……あれは決してノイズ出現を予知するアイテムじゃないことは十分理解してるが、やっぱり悔しいな……事前にノイズから人を守ることが出来ないと言うことが……」

 

一翔はテレビを見た後、ペットボトルの隣に置いてあった、ウルトラマンに変身するために使用したブレスレットを見つめてそう呟く。

 

[続いてのニュースは、現在ネットなどで注目されている謎の存在・ウルトラマンについて―――]

 

 

「……ウルトラマンか……良い名前だな……と言いたいところだが、犠牲者を出さずにノイズを倒したことなんてほんの少し程度しかない俺が、そんな名前を持ってても無意味だな……」

 

自虐気味に笑いながらそう呟いた後、一翔は再びトレーニングを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、トレーニングを終えてシャワーを浴び、着替えた後に一翔は外出した。

 

ちなみに彼の服装は、グレーのインナーに黒いジャケットを羽織っており、これまた黒いズボンを穿いているという、いわゆる黒ずくめの服装をしていた。

 

ちなみに、髪の毛の色も黒である。

 

(今日は……いや、今日もあそこ行くか)

 

心の中でそう呟いた一翔は近くのホームセンターで様々な道具を買い、目指すべき場所へと足を運ぶ。

 

 

 

 

 

そして数十分後、一翔はとある一軒家へとやって来た。

 

そこには―――

 

 

「やっぱりか……ったく、あの事件(・・・・)から結構経ったってのに、まだこんなことする奴らがいるのかよ……」

 

 

一翔が訪れたそこには、『死ね』『犯罪者』『消えろ』『人殺し』といった暴言が書かれた紙が貼られており、スプレーでもそういった暴言が述べられていた。

 

一翔は先程ホームセンターで買った道具を一通り並べ、まずは貼り紙を一枚一枚剥がし始める。そしてそれを近くにあったゴミ箱にまとめて捨てた。

 

そこへ―――

 

 

「あ、一翔さんじゃないですか!」

 

「こんにちは、一翔さん!」

 

「ん?おぉ、立花に小日向か。また来てやったぜ」

 

一翔が先程の貼り紙を捨てたところで、茶髪でボブカットの少女『立花(たちばな)(ひびき)』と、黒髪ショートで大きな白いリボンでハーフアップにした髪型をしている少女『小日向(こひなた)未来(みく)』がやって来た。

 

「なんか、いつものことながら本当にすみません……一翔さんには何の関係もないことなのに……毎日毎日、家の壁とかの掃除とかしてもらっちゃって……」

 

響が一翔にそう謝罪すると、一翔はそれに対し首を振って答える。

 

「勘違いするな。俺はあくまであの事件で生き残った罪のない人たち(・・・・・・・・・・・・)のためにやってるんだ。お前だけのためにやってるわけじゃない」

 

「ふふっ、そういうところは相変わらずですね、一翔さんは」

 

「うっせぇよ、小日向……」

 

未来がクスクス笑いながらちゃかすと一翔は照れ臭そうにそっぽを向いた。

 

「にしても……ここに来たときも思ったが、たぶん他の人たちもこんな状態だろうな……」

 

「ええ……あれから半年経った今でもこんなことが続くとなると、色んな意味で心が痛みます……」

 

「響……」

 

一翔の言葉を聞いて響も同意するような言葉を言って顔を俯かせ、未来はそんな響を心配そうに見つめる。

 

「ま、それがあの事件で死んだ人(・・・・・・・・・)の遺族、または友人に恨まれるならまだ仕方ないと思うかもしれんが、俺にとっちゃ憎むべき相手が違いすぎる。そもそも、あの事件の発端はノイズだったんだ……ノイズさえいなければ……!」

 

そう言う一翔は拳を強く握りしめていた。

 

(そして……俺がもっと早く駆けつけていたら……立花も、他の人たちもこんな仕打ちは受けなかったのに……!!)

 

そして悔しさを感じると同時に、一翔は半年前に起こったあの事件を思い返していた。




一翔の服装はもちろん原作ガイアの藤宮がモチーフです。決して一翔の読み仮名が“かずと”だからってあっちの“かずと”をモチーフにしたわけではありませんので……。

ちなみに、次回はライブでの事件のエピソードですが、一翔自身の過去に関するエピソードはまだ先となります。


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2話 悲劇の前の日常


1ヶ月以上経ちましたがお待たせしました(待ってくれてる人いるのかな?)

今回の話の時点では一翔はもうアグルの力を手にしてます。

あと、ご存じかもしれませんが自分はこの作品自体が初投稿であるので、とりあえず最初のうちは文字数少な目な感じで投稿していきます。

タイトルのように今回はライブ事件の前の話となるので予めご了承ください。


半年前

 

桜ヶ丘中学校―――一翔はここに通っており、現在一翔は中学3年で受験生である。そんな彼の教室では授業が行われている。

 

「―――であるからして、生命の源とも呼ばれている海から生まれた生物たちが、私たち人間の先祖であることが考えられている」

 

ちなみにやっていたのは生物に関する教科の理科であり、海の生物などに関することが担当の教師の口から述べられていた。

 

しかし昼食を食べた後、つまり午後の授業であるため、いくら今年は受験シーズンと言えど、ほとんどの生徒たちにとっては眠たくなったりしてしまうつらい時間である。

 

「…………」(カリカリ)

 

だが一翔はその例外で、あくびをすることなく真面目に先生の話を聞きながら授業内容をノートに書き写していた。

 

そして海に対して強い思い入れがあるのか、この授業の内容を聞いた時に一翔は表情には出さなかったが内心では少し楽しそうな感じになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数回の授業が終わり、最後の授業も終えたところでHRも終了し、放課後となった。

 

「なぁなぁ、知ってるか?今度『ツヴァイウィング』のライブがあるんだぜ!!」

 

「おぉ、俺も知ってる!新曲とかも出たんだろ?俺も行きてぇよ……」

 

帰り支度を始める一翔の近くでそんな話をしている男子たちの声が聞こえてくる。

 

「ふっふーん、そうだろうと思って……じゃじゃーん!お前の分のチケットも手に入れておいたぜ!!」

 

「マジか!?すげぇな!」

 

「だから一緒に行こうぜ!せめてもの息抜きとしてよ」

 

「あぁ、いいなそれ!」

 

その会話は一翔の耳に入りはするが、当の本人は特に気にすることなく支度を終えると教室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その帰り道、一翔は自宅ではなくとある水族館へと足を運んだ。

 

「あの、すいません。館長は今いらっしゃいますか?」

 

受付の方へ行き、入場の手続きをしながら一翔は受付スタッフにここの館長がいるのかどうかを尋ねた。

 

「申し訳ありませんが、館長は現在外出中でして……」

 

 

「僕なら今、戻ってきたところだよ」

 

 

そこへ、青いシャツに白いズボンを穿いている40代くらいの男性が現れた。その胸には館長と書かれた名札が付いている。

 

「それじゃ、手続きが終わったらいつもの場所へ来てくれ」

 

「はい、分かりました。木戸さん」

 

「おいおい、この場では今は館長と呼ぶんだぞ」

 

「あ、すいません……」

 

 

 

 

 

その後、手続きを終えた一翔は関係者以外立入禁止の通路を見つけると、人がいないことを確認してその通路を歩いていく。

 

すると、先程受付で出会った館長がエレベーターと思われる1つの扉の前に立っていた。

 

「やぁ、人に見られずにちゃんと来れたかい?」

 

「大丈夫ですよ、何回も来てるんですから(・・・・・・・・・・・)……」

 

「ははっ、そうだったな。よし、行こうか」

 

館長はそう言うとエレベーターのボタンを押し、扉が開くと二人はその中へ入る。

 

「さて……また来てくれて嬉しいよ、一翔。最近来てくれなかったから他のみんなも寂しがってたんだ」

 

「仕方ないでしょ、今年は受験シーズンで色々と大変なんですから……」

 

「そんなこと言って、本当はもう内定とかは一発合格でもらってるんだろ?」

 

「まぁ、そりゃそうですけど……」

 

目的地へと向かいながらエレベーターの中で談笑を交える2人。

 

そして、目的地へと着いたエレベーターの扉が開くと、辺り全体がガラス張りの通路があり、その外には抜群の透明度を誇る海と、その中を泳ぐ魚や海洋生物がたくさんいるという美しい景色が広がっていた。

 

「……やっぱり、何度見ても綺麗だな。まるで疲れた魂がこの海の方へ戻っていく感じだ……」

 

「その年でお爺さんみたいなことを言うのは本当に君しかいないくらいだよ。ま、何はともあれ今日も彼らに顔出してやりな。あの子達(・・・・)も喜ぶことだろう」

 

「はい」

 

会話を交えながら2人は通路の先に見える、海の中に設置されている1つの建物へと足を進める。

 

 

 

 

 

そしてその建物の中に入ると、先程の水族館より近未来的な仕上がりとなっている広い部屋がそこにあった。その場には館長と同じ服装をした、職員と思われる人たちが様々な作業をしていた。

 

「みんな、久々に一翔が来てくれたぞ」

 

「お久しぶりです、皆さん」

 

館長がそう言うと一翔も挨拶をする。

 

「おぉ、来てくれたか一翔!」

 

「なかなか来てくれなかったから寂しかったのよ?」

 

屈強な体格をした男性と何かのメカを製作していた女性が一翔に声を掛けながら歩み寄ってくる。

 

「真壁さん、日向さん、ここに来る時に木戸さんにも言いましたけど、俺は今年受験なんだから―――」

 

「そんな事言っておきながら、天才頭脳の持ち主である君なら一発合格だったんだろ?」

 

「狩野さん……それ、木戸さんにも同じこと言われましたよ……」

 

コンピューターで何かを操作していた物静かな感じがする男性が館長と同じようなことを言い、一翔は苦笑いしながらそう言葉を返す。

 

すると―――

 

 

「グワァ、グワァ」

 

「キイィッ!」

 

1つの大きな水槽から、緑の体色に丸い目、赤い唇をしたトカゲのような小さな生物と、水色の体色にクジラとノコギリザメが合わさったような姿をした小さな生物が顔を出してきた。

 

「よぉ、チビスケにジョリー。元気にしてたか?」

 

「グワァ」

 

「キイィッ!」

 

一翔はトカゲのような生物に『チビスケ』、クジラとノコギリザメが合わさったような生物に『ジョリー』と呼び、2匹は嬉しそうな鳴き声を発する。

 

 

ここで彼らの説明をしよう。

 

彼らは、民間の水族館の職員として働いているがそれは表向きであり、本来は海洋専門に関する研究やチビスケやジョリーといった海で生まれた未知の生物を保護するために結成された組織である。

 

その名も『Oceanography Research Circle(海洋学研究サークル)(通称ORC)』

 

表向きの水族館側の職員もこの組織に属しているが、現時点でここでメインとして働いているのが以下の4人。

 

日向(ひゅうが)(りょう)

この組織の中では紅一点であり、海に潜るためのメカを開発、操縦を担当する。

 

狩野(かのう)浩平(こうへい)

海洋生物学の専門家。物静かで、コンピューター操作を得意とする。

 

真壁(まかべ)孝信(たかのぶ)

データリング担当。屈強な体格の持ち主であることから、格闘家と思われているが……それとは裏腹に臆病な一面があるらしい。

 

 

そして『木戸(きど)慎吾(しんご)

水族館の館長兼ORCの隊長で、落ち着いた性格であるが時々他の隊員たちや一翔と明るく接するムードメーカーでもある。

 

 

一翔はここに属しているわけではないが、幼い頃から木戸との交流があることもあり、名目上はORCの関係者及び、協力者という立場にある。

 

「チビスケたちがここで保護されてもう大分経つんだな……結構それなりに成長もしてきてるし」

 

一翔はそう呟きながらチビスケにチョコレート、ジョリーに骨抜きの魚を食べさせていた。

 

「まぁ、ここである程度保護して、もう海に帰しても良い具合になれたらその時はしばらく会えなくなっちゃうけどな」

 

「……そうですね。けど、大丈夫ですかね?こいつらは結構遠くの海から来たらしいけど、今でも帰りたがらないんでしょ?」

 

「そうなんだよなぁ……まぁ、帰りたがらないのは一翔が恋しいのかもしれないしな」

 

「フッ……そうだと良いんですけどね」

 

 

 

 

 

その後、チビスケやジョリー以外の他の生物たちのことや最近の海の変化などのことを色々知った後、そろそろ水族館の方が閉館時間となるため一翔は帰宅することにした。

 

「それじゃあ、また時間があれば来ます」

 

「あぁ、いつでも待ってるぞ」

 

木戸に出入り口まで見送ってもらった後、一翔は自宅へと帰るために歩き始める。

 

「一翔」

 

と、そこで木戸が呼び止めたため振り向くと、真剣な表情をしながら木戸は一翔に問いかけた。

 

「君は今もずっとノイズと戦っているのか?」

 

「……はい。そのために俺はこの光を手にしたんです」

 

一翔はそう言うと胸ポケットの中からウルトラマンに変身するブレスレットを取り出した。それを木戸に隠すことなく見せる。

 

「……君の気持ちは僕も……いや、僕たちも痛いほどよく分かる。けど……無茶だけはするな。そんな事じゃ、僕たちだけでなく彼ら(・・)も悲しい思いをするんだ」

 

木戸が以前ノイズに襲われかけた時に一翔は彼の前でウルトラマンに変身したことがある。そのため、木戸や他のメンバーは一翔がウルトラマンであることを知っている。

 

そして、一翔はその時の戦いで結構無茶な戦い方をしていたため、木戸はその時のような無茶な戦いを続けているのではないかと案じていた。

 

その言葉に対して一翔は―――

 

 

「無茶かもしれないけど無理じゃない……ノイズが現れ続ける限り、俺も戦い続けるだけです」

 

 

なんとも冷たい眼をしながら一翔は今度こそ歩き出して水族館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、完全に日が沈んだ頃―――

 

 

『ハァッ!』

 

 

一翔はウルトラマンとなってノイズと戦っていた。その後ろには1人の人間がウルトラマンとノイズの戦いの場から遠ざかるように逃げていた。

 

ノイズが現れた場所に一翔が偶然その近くを歩いていたため、炭化される前に早く駆けつけることが出来たようだ。

 

『デェアアアアアアアアアアアッ!!!!』

 

そしてとどめに額から光の刃『フォトンクラッシャー』を放ち、ノイズたちを一掃した。

 

(ふぅ、なんとかすぐに駆けつけられたか……今日はこれまでだな)

 

ノイズの一掃を確認すると、ウルトラマンはその場から飛び去ろうとする。

 

すると―――

 

 

『ッ!』

 

 

彼の背後から突然青く光る何かが向かってきた。ウルトラマンはいち早く気づき跳躍して回避する。すると謎の衝撃で辺りに煙が舞い上がる。

 

「見つけたぞ!」

 

そして煙が晴れるとそこにいたのは、青い長髪と左側で結わえたサイドポニーという特徴的な髪型をし、機械的なアーマーを身に纏って、1本の剣を構えている謎の少女だった。

 

(何だこいつ……?人間らしいが、ただ者じゃなさそうだな……)

 

突然現れた謎の少女に警戒しながらウルトラマンは少女を観察する。

 

「噂や二課での情報通りのようだな。ノイズを倒し、人間を襲わないということは人間の敵ではないのは確かだろう。しかし、正体が分からない以上、安易に味方だと断言することも出来ない。だからここで貴方を拘束し、正体を暴かせてもらう!」

 

(なるほど……どうやらこいつはその二課って言う組織に属していて、身に纏っている鎧のようなものはその組織のもの……そして、その組織の命令かどうかは知らないが俺を捕まえようと……少なくとも、ORCのような秘密組織であるのも間違いなさそうだな)

 

その考えに至ると、ウルトラマンは胸のランプ『ライフゲージ』から青い光を発生させてこの場から消えようとする。

 

「させるかッ!!」

 

『ッ!?』

 

しかし、光が発生しかけたと同時に少女はウルトラマンとの距離を積め、手に持っていた剣で彼に斬りかかる。

 

だが、間一髪のところでウルトラマンは斬撃を免れることに成功する。

 

「やはり光となって消え去るということも本当のようだな。だが、ここでみすみす野放しにするわけにはいかんッ!!」

 

そう言って少女は再びウルトラマンに斬りかかる。しかしウルトラマン―――一翔は人間とは戦いたくないため、ただただ避け続けるだけだった。

 

(くっ……!このままじゃ埒が明かねぇ……!)

 

先程のノイズとの戦いの後ということもあり、このままではまずいと思い、ウルトラマンは目にも留まらぬ速さで移動する『高速移動能力』で少女の背後に回り込む。そしてその直後にウルトラマンは飛び上がり、光となって消えていった。

 

「なっ!?待てッ!!」

 

目の前から突然消えたことに少女は一瞬驚愕するも、背後に回り込まれたと瞬時に気づき振り返るが、すでにウルトラマンは消え去ってしまったため追いかけることができなくなった。

 

「くっ、逃げられたか……!」

 

悔しそうに少女は呟くと、謎のアーマーは解除されていくかのように消え、どこかの学校の制服姿になる。

 

「何者なのだ、一体……?」

 

1人そこに残った少女はウルトラマンが消えた場所を見つめながらそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日経ったある日―――

 

 

(一体何だったんだ、あの女……?恐らくあの女が言っていた二課って言う組織の本来の目的は俺と同じようにノイズを倒すこと……しかし、あの見たことのない鎧は何だ?)

 

一軒のラーメン屋で椅子に腰掛けながら、注文した品を待っている間に一翔は前に現れた謎の少女や彼女の言ってた二課という組織について考えていた。

 

(にしても、俺を捕獲か……ま、他人から見れば俺が手にした力は未知のものだ。調べるために捕獲しようとするのにも納得がいく。けど、俺だってまだ訳の分からん組織にこの力のことを教えるつもりは毛頭ないがな……)

 

「へい、醤油ラーメン1丁お待ち!」

 

考えてる途中で注文したラーメンが出てきたため、考えることは一度中断して食事を摂ることにする。

 

そして、一翔は割り箸を取り出して2つに割り、出されたラーメン―――そこに入っているなるとを

 

 

ブスッ

 

 

……ぶっ刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、店を出た一翔は見知った人物と遭遇した。

 

「ん?立花じゃないか」

 

「あ、一翔さん!こんなところで会うなんて奇遇ですね」

 

その人物とは響だった。

 

響と未来は一翔と同じ中学に通ってる後輩であり、一翔は時折2人の勉強(特に響の)を見てくれることもあるので、2人からは結構信頼されている。

 

「今日はどうしたんですか?」

 

「ただの気分転換だよ。そういうお前こそ、小日向がいないみたいがどうしたんだ?」

 

「今日はツヴァイウィングのライブがあってこれから向かうんですけど、未来は急な用事があって来れなくなって……それで、私1人で行くことになっちゃったんです……」

 

見て分かるほど響は本当に残念そうに落ち込む。

 

「私、呪われてるかも……」

 

「その口癖は聞き飽きた。まぁ、行ってやりたいがチケットはもう完売してるだろうし、あまり知らないアーティストのライブを楽しむのもどうかと思うし……悪いとは思うが、俺たちが後悔するくらい1人で楽しんでこい。今度俺と小日向で焼肉奢ってやるから」

 

「やったー!じゃあ思いっきり楽しんできますね!!絶対にライブに来なかったことを後悔させてやりますから!!」

 

そう言って響はさっきまでの落ち込みが嘘のように元気よく返事して走っていった。

 

「ったく、現金な奴だな……」

 

響の変わり様に呆れながらも一翔は微笑ましく響を見送った。

 

 

しかし、この時一翔は知らなかった

 

この後に起こる悲劇により、別の意味で後悔することに……




原作やアニメだと響と未来の通ってた中学の名前は出てなかったと思うので、仮にあったとしたもオリジナル設定に基づいて敢えてここは主人公の通ってる中学と同じという設定であります。

あと、今回登場したORCという組織とそこに所属するメンバー……分かる人には分かります。

この後にやるライブ事件エピソードは2回に分けて投稿する予定です。


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3話 最悪のライブ


年が明けて2週間が過ぎましたが、明けましておめでとうございます!今回が今年初の投稿となります。

一応、歌詞コードは入力したから本当にこれで大丈夫かな?


『ツヴァイウィング』

 

それは、世界でも人気を誇る2人のボーカルユニットであり、その名を知らない者は数少ない。

 

そんなツヴァイウィングのライブ会場では、既に楽しみにしている観客たちが団扇やサイリウムを手に持って今か今かと待ち構えている。もちろん、響もその観客の中に混じっている。

 

「はぁ~。ああは言ったものの、やっぱり1人だけで楽しむなんてちょっと気が引けるなぁ……いや!何がなんでも2人を後悔させてやるんだから!おまけに焼肉奢ってもらえるし!」

 

未来だけじゃなく、一翔も今日のライブを一緒に観てやることが出来なくなったことがやはりショックではある響だが、なんとか気を取り直してライブ開始を待つ。

 

といっても、最後の言葉の部分が一番の本音に聞こえなくもないが……。

 

すると、ライブ会場が暗くなり始めた。

 

「おい!始まるぞ!」

 

「気合い入れていくよ!!」

 

暗くなったことでライブ開始間近になったことに気づいた観客は準備を整える。そして、ついにツヴァイウィングのライブが始まった。

 

『『『ワアアアアァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!』』』

 

開始直後から観客のテンションは絶好調である。

 

「奏さーん!!翼さーん!!」

 

響は、ライブ会場を飛ぶように羽を舞い上がらせながら登場した、ツヴァイウィングである2人の少女―――鳥の羽がモチーフとされる特徴的な形をした赤髪の『天羽(あもう)(かなで)』と、青い長髪と左側で結わえたサイドポニーというこちらも特徴的な髪をした『風鳴(かざなり)(つばさ)』の名を叫びながらサイリウムを勢いよく振り回して元気よく声援を送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃―――

 

 

[ま、そんなところだ。言ってしまった手前、お前にも協力してもらうからな、小日向]

 

「もう……私を抜きにしてそんな約束させないでくださいよ、一翔さん」

 

未来は一翔からの電話で響に会ったことや、ライブに行ってやれなかったお返しとして焼肉を奢るという約束をしたことを伝えられ、その内容を聞いた未来は少し呆れていた。

 

[仕方ないだろ?どうしても手が離せない急な用事が出来たとはいえ、約束を破っちまったんだからな。それ相応の対価が必要だろう]

 

「……まぁ、それは確かに言えますけど……けど、わざわざ一翔さんまでそんな対価を払う必要はないんじゃ―――?」

 

[―――だからこそだ。先に口約束した奴がちゃんと約束守らねぇと、先輩として示しがつかねぇしな]

 

「……分かりました。そういうことでしたら協力しますよ。それにしても―――ふふっ」

 

[?なんだ?急に笑って……]

 

「……いえ、初めて会った時なんていつも辛辣な言葉を言ったり、誰とも関わりたくない雰囲気を晒し続けてたこともあったけど―――やっぱりなんだかんだ言いながら一翔さんは優しいなぁって思って……」

 

[うっせぇ!!]プツッ!ツー、ツー……

 

「あ、切られちゃった……」

 

未来にからかわれたと思った一翔は思いっきり大声を出して通話を切った。

 

 

 

 

 

「ったく、人をからかうのも大概にしろよな……」

 

海が見える高台へと来ていた一翔は顔を赤くしながらも通話を終了させてスマホをしまうと、ジャケットの内ポケットの中からハーモニカを取り出した。

 

「音楽なんて趣味程度だが、たまにはいいよな。今度またあいつらにも何か聴かせてあげるか」

 

そう呟くと、一翔は海を見据えながらハーモニカの吹き口に口を当て、ゆっくりと目を閉じてから綺麗な音色をハーモニカから奏でさせた。

 

 

♪~♪~♪~♪~♪~♪

 

 

その心が落ち着くようなメロディに、同じく高台に来ていた人たちも魅了されていた。子供達に至っては好奇に満ちた笑顔で一翔を見続けていた。

 

吹いている一翔自身もこの曲によって心が落ち着きかけていったその時―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───お父さあああん!!お母さあああん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!!」

 

突然の謎の光景を見たことによって一翔は目を見開いて演奏を止め、思わず倒れかけそうになるが近くにあった手摺に掴まり、なんとか体勢を立て直す。

 

「あの、大丈夫ですか!?」

 

当然それを見ていた人たちは心配して一翔に駆け寄ってくる。

 

「はぁ……はぁ……す、すみません……ちょっと目眩がしただけなんで、大丈夫です……」

 

「そう?ならいいんだけど……」

 

「お兄ちゃん、これ」

 

なんとか駆け寄ってきた人たちに言葉を返すと、倒れかけた際に落としたのであろうハーモニカを、1人の子供が拾って一翔に渡してくる。

 

「あぁ、拾ってくれてありがとうな」

 

「ねぇ、もう1回さっきの吹いてくれない?」

 

「あー悪い、今日はもう吹けねぇや」

 

「「「えぇ~!?」」」

 

「こら、さっきのこともあるんだから無理にお願いするのはやめなさい!」

 

「そうだぞ。あまりお兄さんを困らせるな」

 

もう一度ハーモニカの演奏を子供達に頼まれるも、先程のこともあるために一翔は断り、それぞれの子供の親御さんも一翔の身を案じてやめさせるように子供達に注意する。

 

「じゃあ、俺はこれで……」

 

「気をつけてくださいね」

 

「「「じゃあねー!」」」

 

周りの人たちに見送られながら一翔は高台を後にした。

 

 

 

 

 

その後、一旦自宅へと帰ってきた一翔はジャケットを着たままベッドに仰向けになって倒れる。

 

「はぁ……」

 

ため息を吐くと、一翔はテーブルの上に置かれている、1枚の写真が入った額縁を見つめる。その写真には、海を背景に6~7歳くらいの少年と、彼の両親と思われる2人の男女の姿が写っていた。

 

「戦い続けなきゃ……ならないんだ……!ノイズを全て倒すまで……例え、どんな無茶な戦いになろうとも……ッ!」

 

自分に対して強く言い聞かせていると、ふと、ジャケットの右ポケットに違和感を感じた。ポケットの中に手を入れ、取り出すとウルトラマンに変身するためのブレスレットの水晶部分が点滅していた。

 

「ノイズか!」

 

ノイズが出現したのだと瞬時に気づくと、すぐさまベッドから降り、靴を履いて外へ出て急いで出現ポイントへと向かう。

 

すると、ブレスレットの点滅が段々激しくなっていく。

 

「ッ!?やべぇ、恐らく1人や2人なんてレベルじゃない!結構な団体が襲われてるかも―――!!」

 

そう思い、一翔はちょうど誰も入っていない証明写真撮影機を見つけ、その中に入りカーテンを閉めた瞬間にブレスレットを右腕に装着し、ウルトラマンに変身―――ではなく、青い発光体となってそのまま目的地へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

そして、発光体の状態のまま目的地に到着する。

 

しかし、そこは―――

 

 

(なっ!?ツヴァイウィングの……ライブ会場だと……ッ!?)

 

 

一翔は目的地の上空から、そこはツヴァイウィングのライブ会場であることに驚愕していた。

 

さらに―――

 

 

「生きるのを諦めるなッ!!!!」

 

(ん?あれは……立花!?)

 

 

ウルトラマン特有の聴力と視力で、胸から大量出血を起こしながら気を失っている響と、彼女を揺さぶって呼び掛けるツヴァイウィングの1人である奏の姿を確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡ること数分前―――

 

 

『『『ワアアアアァァァァァァァァァァァァァァ――――――――――!!!!!』』』

 

 

ライブはまさに絶好調である。響や他の観客たちのテンションも最早下がることがない。そんな中、ライブ会場の天井が翼を広げるように開いていく。

 

それにより、観客たちのテンションはさらにうなぎ登りとなっていく。

 

「まだまだ行くぞー!!」

 

1曲目を終えて、熱狂が冷めないうちにもう1曲歌おうと奏がマイクに口を当てた。

 

 

その次の瞬間―――

 

 

ドオオオオンッ!!!

 

 

ライブ会場の中央から大きな爆発が起きた。それにより、ライブは一気にパニック状態に陥る。そして、次に現れた存在により熱狂から一瞬で阿鼻叫喚の叫びへと変わる。

 

「―――ノ、ノイズだあぁ!!」

 

「きゃああああああああっ!!」

 

ノイズ出現に観客たちは我先にと一目散に逃げ出す。

 

「あああああぁぁぁぁぁ―――」

 

「嫌だ!!死にたくない!!死にたくな―――」

 

しかし、逃げ遅れた人たちはノイズにより次々と炭化されていってしまう。

 

「うっ!くっ……!」

 

響もノイズに触れられまいと必死に逃げようとするが、人混みが激しいが故に上手く逃げられる状態ではなかった。それ故に、取り残されてる人たちは次々と炭化されていく。

 

 

 

 

 

「ちっ、今日は厄日かよ。ノイズまであたしらのライブ邪魔しに来やがって……」

 

そんな中、ステージに残ったままの奏は大量に溢れ出したノイズに悪態をついていた。

 

しかし、その目には恐怖というものが全く感じられなかった。

 

「いくぞ翼!この場に槍と剣を携えているのはあたしたちだけだ!!」

 

「ええ!」

 

奏の言葉に翼も恐れることなく応え、ステージを降りる。すると、2人はどういうわけか歌を歌い始めた。

 

 

━━━Croitzal ronzell gungnir zizzl

 

━━━Imyuteus amenohabakiri tron

 

 

2人はそれぞれの歌を歌い終えると、ライブ衣装が消えたかと思ったら、奏は朱色、翼は青の機械的なアーマーを身に纏っていた。

 

そして、アーマーを纏ったと同時に奏は槍、翼は剣を手に持ち、ノイズたちを蹴散らしていく。

 

その光景に、観客たちはノイズから逃げるのに必死で気づいていなかった―――否、見ている余裕がなかったというべきか。

 

「ウリャアッ!」

 

「ハァッ!」

 

奏の持つ槍がノイズを突き、翼の持つ剣がノイズを両断する。しかし、まだまだノイズはたくさんいる。それでも、2人は決して怯むことなくノイズを一掃していく。

 

だがそこで、空を飛ぶノイズが体を細めて翼に向かって突進してきた。翼はなんとか避けるが、その拍子に奏と引き離されてしまった。

 

(くっ……これでは連携が!)

 

なんとしてでも奏と距離を積めようとするも、ノイズが次々と邪魔してきてなかなか近づけない。

 

一方、奏は苦虫を噛むような表情をしていた。

 

(ガングニールの出力が上がらない!制御薬を断っていたのが裏目に……!)

 

『ガングニール』という、自身が纏っているアーマーを見て悪態をつく。すると、ガングニールは徐々に光を失い始めていく。

 

「くそっ!時限式じゃここまでかよ!?」

 

恐らくタイムリミットが迫ってきてるということで焦りが募ってくる。

 

すると―――

 

 

「きゃあっ!?」

 

「ッ!?生存者!?」

 

 

恐らく上手く逃げられないがために別の避難ルートを探していたのであろう響が、奏たちが戦っている場所の近くまでやって来たのだが、その場が崩れ落ちてしまって彼女も地面に落とされてしまった。

 

「おい大丈夫か!?」

 

なんとか目の前のノイズを倒し、響に駆け寄ろうとする奏。しかし、後ろからノイズがうじゃうじゃと湧いて出てくる。

 

 

「か、奏さん……う、後ろ……!」

 

「ちぃ!」

 

 

相方である翼とは引き離されたが彼女はまだ戦えていると信じ、奏はなんとしてでも響を守るために目の前のノイズを相手に槍を構え、一掃していく。

 

だが、段々とガングニールからピシリ、という嫌な音が響いてくる。

 

「くっそぉぉぉぉぉッ!!!!」

 

そして、ついにガングニールが砕けて飛び散る。

 

「あっ―――」

 

さらに、最悪なことにその砕けて飛び散った欠片の一部が響の胸を貫いた。胸から大量に出血を起こし、響は気を失って倒れる。

 

「大丈夫か!?……おい、死ぬな!目を開けてくれ!!生きるのを諦めるなッ!!!!」

 

悲痛な面持ちで奏は叫ぶ。すると、僅かながら響は息を吹き返し、小さな唸り声をあげて少しだけ目を開かせた。

 

「よかった……!」

 

その事に奏は安堵するが、肝心なノイズがまだ後ろにおり、他のノイズは翼が1人で蹴散らしているため、まだ終わってはいない。

 

しかし、今の自分では恐らく全てのノイズを倒すことは不可能に等しい。ならばと、奏はこの状況を打破するためにある考えに至った。

 

「一度……心と体を全部、空っぽにして歌ってみたかったんだよな……」

 

響を守るように立ち上がり、決意を固めたかのような表情でノイズと対峙する奏。しかし―――その表情は、まるで自分の死を受け入れようとして(・・・・・・・・・・・・・・)いる(・・)かのような表情でもあった。

 

(奏!まさか、絶唱(・・)を……!?)

 

翼は奏が何をしようとしているのかを理解し、ノイズを倒すと奏を止めようと叫びながら近づこうとする。

 

「いけない!奏!歌ってはダメェェェェェェェェ――――――――――!!!!!!」

 

だが、戦闘中に引き離されてしまった時の距離が大きいため、叫んでも奏を止めることは出来ない。その上、ノイズが邪魔をしてくるので近づけない。

 

(翼……ごめんな……)

 

奏は目を閉じ、心の中で翼に謝罪しながら『絶唱』という歌を口ずさもうとする。

 

その時だった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━生きるのを諦めるなと言ってた奴が、生きるのを諦めるような顔をするな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

突然、奏の頭の中に誰かの声が響いた。その直後、奏の目の前にいたノイズが空から降り注いだ青い光弾によって一掃された。

 

「なっ!?これは―――」

 

突然の出来事に奏だけでなく、翼も何が起こったのかと目を見開く。しかし、それにより隙が生じてしまい、1体の巨大型ノイズが翼に襲いかかろうとする。

 

「しまっ―――!?」

 

だが、その巨大型ノイズも空からの光弾の直撃を受け、爆発四散して炭と化した。

 

まだ大量なほどの数がいたノイズも、先程の光弾によりかなりの数が一掃された。それでも、まだ数十体残っている状況だった。

 

「……何だよ、今のは……?」

 

「さっきの攻撃……まさか!?」

 

2人は先程の攻撃が何だったのか考えていると、翼はある存在が思い当たった。

 

その時―――

 

 

ドガアアアアアアン!!

 

 

「うぅっ!?」

 

「な、何だ!?」

 

突然の爆発が起こり、辺りがその衝撃で煙が舞う。その衝撃になんとか耐える2人。

 

そして段々煙が晴れていくと、眩い光に包まれている人型のシルエットが見えた。

 

「あ、あれってまさか……!」

 

さらに光が晴れていくと、片膝立ちで両腕を立てた構えをしている青い超人―――一翔が変身したウルトラマンが降臨していた。




他のウルトラマンネタやオマージュがあることはタグを見る限りわかると思いますが、それ以外にも主人公の一翔には、原作ガイアの藤宮以外の一部の歴代ウルトラマン(またはその変身者)の要素が取り入れられています(さすがに全部入れるのはどう考えても無理があるので)
なので、今回は某銀河の風来坊のようなシーンも書かせていただきました。

ついでに言うと、アグレイターにも様々な要素が取り入れられてます。


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