東方心壊キ録 (ベネト)
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眠りから覚めて
プロローグ 封印の祠


第3作目...

諸事情あり実質第2作目



幻想郷...

 

極東の地日本のとある場所に存在する楽園...外の世界で忘れられた者たちにとっての最後の安息の場であり、様々な存在が日々幻想入りする...

 

幻想郷は全てを受け入れる...その言葉は創始者である幻想郷の母・妖怪の賢者の八雲紫の言葉だ...

 

 

...彼女がいうのだから間違いはないのだろう

 

 

 

 

 

 

そしてここは幻想郷のとある森の中...

 

そこには八雲紫と、その式神である八雲藍がおり、彼女たちの視線の先には鎖と大量のお札がつけられた大きな祠があった...

 

古びた祠であり物自体の価値はまるでないが紫はワクワクしたような表情...

 

その反面藍は溜息をついていた...

 

 

 

 

 

 

 

side藍

 

「...はぁ」

 

現在私は...主である紫様がどこかで拾ってきた祠の前にいる...

 

紫様曰く、この前スキマを弄っていたら偶然見つけたということだ...

 

 

 

 

「藍♪すごいでしょ!」

 

「...」

 

正直私を巻き込まないでもらいたい...

 

早く帰って橙に抱き着きたい...何で私がこんなことを...

 

そんな私を見て紫様は頬を膨らませる。

 

 

 

 

 

「つれないわね!この祠の中にはすごい子がいるのよ?」

 

「...そうですね」

 

...祠の中からは何か霊力のようなものが溢れてくるのを感じる。

 

只でさえ厳重に封印されているんだ...とんでもないものがあるに決まっている!!

 

 

 

「やめましょうよー!!早く元の場所に戻しましょう?今からでも遅くは無いですよ?」

 

「~♪」

 

私の忠告を聞かずに紫様は祠の封を開ける...

 

 

 

ぶぉ...

 

 

その瞬間中から濃厚な霊気が更に溢れだし空気が重くなる...

 

「あー!もう...」

 

「さてさて♪中身は何かな~?っと!!」

 

紫様は私の手を引っ張り中へと入る

 

 

 

 

 

 

...中は薄暗く寂れている

 

床板などは長年の月日で変色や歪みが生じており壁には大穴があいている...

 

 

(...帰りたい)

 

「ほら!お宝の発見よ!!」

 

紫様は祠の奥を指差す

 

そこには天井・壁から出ている鎖に何かが磔にされているようだ...

 

暗くて良くは見えないが何かがいる...

 

 

私は一歩前に出て、それに目を凝らす

 

 

 

 

「...これは」

 

...そこにいたのは人間の少女だった

 

齢は14~16といったところで長いぼさぼさの白い髪をして黒いいボロボロの着物を身に着けている...

 

 

「人間ですか?見た限り封印されているみたいですが?」

 

「ええ...私も驚いているわ」

 

紫様は少女を観察し彼女をつないでいる鎖に手を触れる

 

「やめましょう?帰りましょう?」

 

「うるさいわね!藍!」

 

紫様が怒鳴ると触れていた鎖に力が入ったのか、鎖は脆くも切れて少女の左腕がだらんと下がる...

 

 

「あ...あら?随分と劣化していたみたいね」

 

「...」

 

私たちが見ていると少女につながっていた鎖が震え始める...

 

 

 

 

 

 

...ピキ...ピキ

 

 

 

 

他の鎖も連鎖的に割れ始め、少女の体を支えられなくなったのか...宙にいた少女は音を立てて床へと落下し私は身構える...

 

ああ!言わんこっちゃない!!こういうのには触らない方がいいのに!!

 

 

 

「ゆ...紫様!」

 

「落ち着きなさい!只落ちただけよ!」

 

紫様はそう言うが床に落ちた女は、もぞもぞと動き始めて身を起こす!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「...う?...ふぁぁ!!」

 

女は欠伸をし目を開けて辺りを見る...

 

赤い色の目で右の目元には欠けた白の勾玉のメイクがしてある...

 

 

 

 

彼女は寝ぼけた赤い色の目は私達の方を見つめる...

 

 

 

 

「...誰だ?」

 

彼女は私たちを見つめる...

 

特に敵対心のようなものは感じないが?

 

「お目覚めのようね...私の名前は八雲紫...貴女を封印から解放した者よ」

 

「...そうか」

 

彼女は只一言そう言うだけで興味がなさそうに祠を移動する...

 

寝起きだったのか少し機嫌が悪いような顔をしている...

 

紫様は彼女に指を向ける。

 

「ねぇ!私が名乗ったのだから貴女も答えてよ!」

 

「...名前?」

 

彼女は首をかしげて一息入れる。

 

 

 

 

「名前は如月白楽...一般人だ...」

 

(如月 白楽(きさらぎ はくらく) 通り名:???導師)

 

白楽は、そう言い自身の髪をガシガシと掻く...只異様に長い髪だけあり、手入れがなっていない...年頃の娘だというのに...あまりにもガサツだ...

 

しかし人か...

 

只の人が封印なんかされるのだろうか?

 

見た限り力は感じないが...何か嫌な予感がする...

 

「只の人ねぇ...」

 

「...ふぁぁぁ」

 

白楽は退屈そうに床に座り欠伸をする...

 

何というか眠りに入ろうとしているようだ...

 

「ねぇ?答えたくないなら聞かないけど...その前に私の話を聞いてくれないかしら?」

 

「...何だ?」

 

彼女はうつろな目で紫様を見る...

 

眠そうな顔だ...見た限り全く話に集中していないみたいだ...

 

 

「貴女を封印から解放したのは私...それは分かるわよね?」

 

「ああ...何となくだが」

 

白楽は頷くが、どことなく面倒臭そうな雰囲気を出している...

 

「つまり貴女にとっては恩人というわけ」

 

「で?」

 

「つまり私には何らかの見返りがあっても良いってことになるわ!」

 

「...だから何だ?要件を言え...」

 

 

 

 

 

 

 

「私の式神にならないかしら?」

 

「...」

 

「...」

 

やはりか...そうだと思った...

 

私が溜め息をつくと白楽は座ったままの状態で紫様を見つめる。

 

「...我々が?」

 

「貴女に決定権は無いわよ?次の言葉は考えるようにね...」

 

紫様が威圧すると嘉玄は胡坐のまま頭を掻く...

 

「...我々に不利益が生じるのはご免被る...断る...どうせ...ロクな目に合わないからな...」

 

彼女は、そう言うとまた床に寝そべる...

 

しかし...こいつも独特な話し方をする、淡々と答えているため、感情らしいものが感じられない...一人称が複数系なのは気になるな...

 

 

紫様の方を見ると後ろ手にスキマを展開しており、白楽の背後にスキマが現れている...

 

出た...死角からの初見殺し...あいつも油断しきっているみたいだし一撃で...

 

「そう?なら力ずくで♪」

 

背後のスキマから光弾が発射される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フッ...

 

 

 

 

 

 

刹那...白楽の体に触れる前...一瞬だがフラッシュのような眩い光がした瞬間、紫様の放った光弾は消滅する...

 

「何が起きた?」

 

「能力かしら?」

 

「...やれやれ...こちとら寝起き...更に力も戻り切っていないというのにな...」

 

私たちの問いかけに面倒臭そうに身を起こす

 

「...我々には...意味ない...封印開けとはいえ...ワタシが遅れをとる訳がないだろう?」

 

白楽は何もない虚空を見る...

 

何かの能力か?

 

能力が分からない以上危険すぎる...

 

「一体何をした!?」

 

「教えてもいいが...説明に困るのだ...」

 

白楽は虚空を見たままだ...

 

さっきから観察しているが、覇気のない奴だ...こちらの話には集中してもいないしやる気があるのか?

 

「...だが仕方がない...飛んでくる火の粉は払うとしよう...」

 

白楽が札を取り出すと札が光り出し、光の中から薙刀を出現させ、その刃を私達に向ける。

 

薙刀を出現させた?こいつの能力か?

 

彼女は薙刀の刃を撫でた後、カツカツとした足取りでこちらへと近づく...

 

「紫様!」

 

「霊気が強くなってきたわね...」

 

やはり封印されていただけあり、何かの能力を持っているみたいだ...

 

気を引き締めないとやられるな...

 

 

 

 

 

「...む...そういえば...」

 

白楽は思い出すかのように紫様の方を見つめて、歩みを止めて殺気を消す?

 

「何かしら?」

 

「八雲...八雲紫...思い出した...ずっと昔、人と妖怪の共存がどうとか言っていた妖怪か...随分昔のことだから忘れていた...」

 

白楽は額を抑え考える仕草をする...

 

 

 

 

ずっと昔?

 

紫様が人と妖怪の共存を掲げてたのは今から900年前だ!

 

こいつ...そんな昔の人間なのか?

 

「長生きなのね...14~16歳くらいにしか見えないけど?」

 

「...まぁ...それなりに長生きだ...人と妖怪か...懐かしいな」

 

懐かしむように彼女は言うが、無表情のままだ...目は相変わらず光を灯しておらず、心ここにあらずみたいだ...

 

「でも...それは我々にとって...どうでも良いことだから...どうとも思わないけどな」

 

白楽は薙刀を振り回した後構える...

 

「狩りの時間だ...」

 

白楽は薙刀を軽くなでた後、目を閉じる...

 

また...殺気が出てきたな...

 

 

 

 

 

「戦闘モードというわけね...藍準備しなさい」

 

「は...それでどうしましょう?」

 

私の問いに紫様は笑みを浮かべる

 

「そうね...軽く殺さない程度にやりましょう♪」

 

半殺し以上か...

 

少女を痛めつけるのはあまり好ましくないが命令だ...やるしかない...

 

奴の方も静かに殺気を出し戦闘態勢になっている...

 

 

 

 

 

「八雲紫...妖怪の賢者である大妖怪...しかし...我々を倒せるのか?」

 

「ええ...やってみせますわ」

 

紫様の言葉に白楽は目を閉じたまま、虚空を手探りするような仕草をする...

 

「そう...なら...狩りの時間だ...まぁ精々...懐に入られないように気を付けろ!」

 

白楽が開眼すると右の目の部分が変化し白目部分が黒く変色する。

 

赤い色の瞳はギラギラと光を灯し彼女は私達に向かい走る...

 

 

 

 




天災手記よりも前に書いていた作品です...

諸事情あって投稿できませんでした

ではこれにて


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解かれた封印

バトル編


side藍

 

「久しぶりの狩りだ...それなりに楽しめるかもな」

 

薄暗い祠の中...

 

白楽は振り回して私達に襲い掛かる...

 

「おっと!!」

 

紫様はスキマの中へ入り、薙刀の攻撃を避け背後の壁に刀傷がつけられる...

 

破壊力は、そこそこ...スピードも、そこそこというべきか...

 

 

 

 

「...能力か?」

 

白楽の言葉に反応し紫様はスキマから顔を出す...

 

「そう!私は境界を操る程度の能力!これくらいはできるわ...」

 

「良くは分からんが...空間移動か...なるほどな...的当てには丁度いいだろうな...」

 

白楽は薙刀を紫様を切るが、また避けられる...

 

「...遅いわ!この程度の早さなら目を瞑っても避けられるわ!」

 

紫様は光弾を白楽に飛ばす...

 

「無駄だ...」

 

彼女は避けることなく薙刀で光弾を次々と弾いていて光弾を防ぐ...

 

明らかにあの薙刀は能力で作られた代物...奴の能力が分からない以上...まだ観察する必要があるな...

 

 

 

 

 

「...ちぃ」

 

光弾を防いだ薙刀はボロボロになり消滅する...彼女は新たに札を出して新しい薙刀を手に持つ...

 

思ったより弱いな?奴の妖力も上がったとはいえ、そこらへんの妖怪並みだ...まだ本調子ではないのか?

 

紫様の方は彼女の方を観察している...

 

「武器は鈍らのようね?無駄な霊力の消費になるわよ?」

 

紫様は次々と光弾を放つ...

 

白楽は薙刀でそれらを弾いていくが、彼女が取りこぼした光弾が彼女の体を傷つけていく...

 

「...やるじゃないか」

 

白楽は後退していくが紫様は更に距離をつめ、彼女の周りにスキマが展開される...

 

 

 

「もらったわ!!」

 

 

 

スキマから矢が放たれ、白楽は瞬時に薙刀で矢を弾くが取りこぼした矢が彼女の体を貫く...

 

「っ!?」

 

白楽はフラフラと後退し床に自身の鮮血をまき散らしながら、彼女は薙刀を杖替わりにして何とか持ちこたえている...

 

「貴女の能力は分からないけど...攻撃に荒々しさが無いわ...封印される程の力はないように見えるけど?」

 

「長年の封印で鈍った体は言う事を聞いてくれないものだ...ワタシも随分と衰えたものだ...」

 

白楽は表情を変えずに体中に刺さった矢を引き抜きながら淡々と答える...

 

人間の体である彼女にとって、すでに致命傷のはず...もう戦えないはずなのに、彼女からは戦意が消えない...

 

...何か嫌な予感がする...私の九尾としての勘なのかもしれないが...

 

「...紫様!油断はいけません!」

 

「分かってるわよ♪」

 

紫様は傘を嘉玄に向ける...それを見た白楽は怪訝そうな顔を浮かべている

 

 

 

 

「...だが良い準備運動になったというものだ...あまりワタシを舐めるな!」

 

白楽の姿が消え、紫様の背後に現れる!!

 

「!?」

 

こいつまだ動くことが出来たのか?それどころか先ほどよりも速い!

 

「もらった!」

 

白楽は紫様へ薙刀を振り下ろす!

 

「紫様!!」

 

「...あらら...まだやるみたいだけど...やってることは脳筋ね...」

 

紫様は白楽の斬撃をヒラリと避けるが白楽は一瞬で紫様の前に現れる!

 

「!?」

 

「ワタシの速さは目で追うことなぞできん...少々甘く見たようだな!」

 

「甘く見てはいないわよ?」

 

紫様は白楽と至近距離で光弾を炸裂させる!

 

ボン!

 

軽い爆発音と共に奴の周囲は黒煙に包まれる...

 

 

 

 

「ふん...」

 

奴は一瞬で別の場所に現れる...

 

目で追うことができなかった...丸で高速移動...テレポーテーションしているくらいの速さだ...

 

「え~?今の避けるの?」

 

紫様は不服そうに言い白楽は新たな札を出す。

 

「お前の動きなぞ止まって見えるぞ?」

 

白楽は手にした札を投げる...その札は苦無に変化して紫様の方へ向かう!

 

「詰めが甘いわね?」

 

 

ざしゅ...

 

 

「!!?」

 

だが奴の放った苦無は奴自身の体に深く突き刺さる!

 

奴は驚いた顔をしながら自身の背に刺さった苦無を見つめた後、紫様の方を見つめる...

 

紫様の前にはスキマが開いており、白楽の背後にもスキマが開いている...

 

「ワタシの苦無...そうか...空間移動だけでなく...攻撃も受け流すことができるのか...」

 

白楽は蹲り、床に血だまりを広げる...

 

これはもう致命傷だ...

 

奴もこれで...

 

「...げほ」

 

奴は刃を引き抜く...全くもって表情に変化がない...ここまで痛みつけられれば、多少は変化があってもいいはずだが?

 

「このままだと死んでしまうわね?私の式神になることをお勧めするわ!」

 

紫様は白楽に近づき負けじと勧誘をする...

 

(まだ勧誘する気でいたのか...)

 

「何故する必要性がある?」

 

白楽は片目を閉じて私達を見る...

 

 

 

「ええ!今なら貴女は助かるわ!もっとも選択肢は残ってないけどね」

 

「確かにワタシでは...勝てないだろうな...だが...これは我々が決めた道...その歩を止めることは許されない」

 

「決めた道?」

 

「...貴様に伝える必要はない...しかし...」

 

白楽は体を確認して目を光らせる...

 

「...これで終わりですわ!!!」

 

彼女の目が紫色に変色し、嬉々とした表情を浮かべる...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グァパ!!

 

 

刹那...紫様の周りの影が蠢きだし、大きな髑髏となり紫様を呑み込む!!

 

何だこれは!?奴がさっき見せた能力ではない!

 

「くぅうう!!?」

 

「紫様!?」

 

紫様の体は黒い髑髏の中に入ったまま出てくる気配がない!!空中に浮いた巨大な髑髏を白楽は見つめている...

 

「くくく!!あっははははは!!!...これでまずは1人...か」

 

白楽は笑みを浮かべる...奴が見せた表情は...嫌らしい嘲笑だった...

 

「貴様!よくも紫様を!」

 

「ふん...実力を測り損ねたみたいだな...おっと...そんな顔をしてもらいたくはないな...ワタシはあくまで自己防衛をしただけだ...」

 

白楽は薙刀を手に取り、私にそれを向ける...

 

「!?」

 

「次は貴様だ...苦しまぬようにバラバラにしてやるからな」

 

奴から少しずつ、殺気に混じり濃い妖気が出てくる...

 

 

 

 

ピシ...

 

何かが割れる音が響いた瞬間...風切り音が私の横を通り過ぎる...

 

 

ざしゅ...

 

「かはっ!??」

 

そして目の前の白楽の体を風切り音の正体が貫き...奴は表情を崩して、吐血する...

 

奴の胸には小刀が深々と刺さっている...

 

そして飛んできた方向には、巨大な髑髏...先程とは違い、ひびが入り割れている...

 

まさか!

 

「まさか...術の中から!?」

 

「ええ...一か八かの賭けだったけどね...」

 

球体から紫様が出てくる...怪我らしいものは見当たらない!良かった無事なようだ!

 

 

 

 

「うぐ...」

 

だが紫様は少し歩を進めると、その場に倒れてしまう!!?

 

「紫様!」

 

私は紫様を助け起こすが紫様はぐったりしている!何故!?傷らしいものはないというのに!

 

「ふん...トドメを刺したと思ったが...しぶといものだ...まぁいい...浸食した呪いは...しばらく続くぞ...げほ...」

 

「貴様!!」

 

私は白楽に光弾を仕掛けるが奴は光弾を薙刀で弾く...

 

「...これ以上は...妖力の無駄だな...お暇すると...しよう...か」

 

白楽は倒れこむようにドロドロとなった影への中へと呑まれる...

 

それと同時に奴の気配が完全になくなってしまった

 

「くっ!!」

 

私は紫様を抱えるが...このままでは不味いか...

 

奴を追うにしても...紫様を守りながら戦う程私には余裕はないし、能力にしても正体が掴めていない...異常なまでの高速移動と彼女が呪いと言っていた力...追撃するのは...危険か...

 

「くそ!!」

 

私は紫様を抱いてその場を離脱する...

 

あれだけの傷...死にかけだろうが...

 

生きていたら時期を見て...封印してやる!!

 

 

 

 

 

 

side白楽

 

祠から離れた、深き森にてワタシは影から出て、地面に倒れこむ...

 

「...全く酷い目にあった...が...げほ!!!」

 

迂闊だった...本調子ではないとはいえ、術を打ち破って攻撃を仕掛けてくるとは...厄介な奴に目を付けられたものだ...それにワタシの力も弱くなっている...いつまで続くか...

 

「...げほ!!!......まぁ...笑えない状況ですね...これは」

 

...目が覚めたと思ったら...ボロボロになってるわ...踏んだり蹴ったりです...不躾な妖怪がいたものですね...

 

 

「げほ......問題は...ない...か」

 

だが...止まるわけには...死ぬわけにはいかない...

 

我々は...成し遂げなくてはいけない...恨みを晴らさねば...怒りを...怒りを開放しなくては...

 

 

「ぐぐ...少し...休むぞ...」

 

我々は深い森を眺める...日は落ちてしまった...下手に動くとまた襲われかねん...

 

時間さえあれば...傷を癒すことができるかもだな...

 

 

「...少し...眠るとしよう」

 

知るはずもない森の中...

 

我々は休眠につくことにした...生きねば...止まることも死ぬことも許されない...皆のために...

 

 

 




今作はほかの作品と比べて少々ダーク系です

ではこれにて


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出会い



月が落ち、暗闇が広がる幻想郷の森の中に荷台を引きずりながら森を歩く少女がそこにはいた...

 

黒い髪・赤いリボンに変わった巫女服を身に着けた少女こと幻想郷の守護者である博麗霊夢の姿がそこにはあった...

 

荷台には様々な食料品やお布施の金品が入った袋があり、彼女は満足気にそれを眺めながら荷台を引いていく...

 

 

 

 

 

 

side霊夢

 

「今日の晩御飯は豪勢にいきたいわね!」

 

久々の妖怪退治の依頼が入り、まさかの大量の謝礼金!!

 

一月は生活に困らないわ!

 

 

「ふんふーん♪...ん」

 

...血の臭いがするわ...それもまだ新しいわね...

 

道はずれの獣道を観察すると、血痕が点々と続いているわ...

 

私は獣道に入り血痕を観察する...進むにつれ...血痕が少しずつ大きくなっていく...

 

 

「...」

 

 

しばらく歩くと、その血痕の持ち主に遭遇する...

 

「...すぅ...すぅ」

 

白い髪にボロボロの着物を身に着けた女性...その女性は木に寄りかかって寝息を立てている...年は私より少し上くらいかしら?死んでいる訳ではないみたいね...

 

「人間...外来人かしら?少なくとも生きているみたいね...」

 

外来人...それは外の世界から幻想郷へと迷い込んだ人の事を指す...

 

だいたいの原因は分かっているけど、それを元の世界に返すのも私の役目なのよね...

 

 

「...」

 

良く観察すると彼女のお腹や胸からは血があふれだしている...このままでは不味いわね...

 

「妖怪に襲われたのかしら?...でも」

 

...でもどちらかというこの傷は...爪で切り裂かれたというよりも刀や矢による傷だわ...妖怪・妖獣のものではなく人為的な傷...

 

「...気にする必要はないかしら」

 

まだ息があるみたいだし神社に運んだ方がいいわね...

 

後で話も聞かないと...

 

私は荷台に彼女を乗せて神社へと向かう...

 

 

 

 

 

3時間後...

 

ここは博麗神社...幻想郷と外の世界を分ける境界に位置する神社...

 

その大きな神社のとある一室で、如月白楽が布団の中で目を覚ます...

 

 

 

 

 

 

side白楽

 

「...ここは?」

 

目を開けると布団の中に我々はいた...

 

確か...あのスキマなんたらにやられて...森の中で休眠をとっていたはずだが...

 

「...」

 

体を確認すると包帯がまかれている...

 

誰かが治療したのか?誰が?

 

「...運がいいのか...悪いのかだな...」

 

まだ我々が助かったと決めるわけにはいかないな...また変なのに捕まったら、もう術は使えん...

 

...確かに...警戒するに越したことはありません...

 

鼻孔を擽る匂いを感じる...

 

 

 

「...スンスン...何か良い匂いだ...」

 

腹がぺこぺこだ...

 

封印明け故にどうしても腹が鳴る...

 

身を起こして匂いのもとまで向かうと、そこには巫女のような格好をした人間の少女が台所で何かをしているのを見つける...

 

 

 

「ふんふん♪」

 

呑気に鼻歌を歌いながら料理とは...無防備にも程があるな...

 

しかし...人間か...まだ我が目覚めたことに気づいてはいないみたいだ...怪我を治してくれたことは礼をいうが...

 

「...人間は信じられん」

 

...長い時が経過しようとも...我々の怒りと恨みが収まることはない...君に恨みはないが...この怒りを抑えることは出来る訳がない...

 

札を手に取り少女の後ろを取る...

 

 

 

 

「ん?あ?アンタ起きたのね...」

 

「!?」

 

少女が振り向き、ワタシは札を引っ込める...

 

何て運が良い奴でしょうか...おかげで...

 

少女はお玉をもって我々に近づく...

 

 

 

 

 

「...」

 

「...?何だ?」

 

「こら!」

 

 

かつん!!

 

お玉で頭を小突かれる...

 

「い!?」

 

「怪我人何だから寝ていなさい!とりあえずおかゆが出来たら、起こすから!」

 

「...すまん」

 

我々は強制的に布団へ戻される...

 

「...」

 

衝動が収まった...年下に叱責をされた事はショックだが...これはこれで良かったかもしれん...

 

何故かは...分からん...とうの昔に分からなくなってしまった...でも...この人間は我々を助けた...何故助けたというのだ?

 

 

「...お暇するか」

 

本当に宜しいのですか?

 

傷が癒えていないが私達は、その場を離れる...その方がワタシとしても...都合が良い...

 

我々が...我々であるために...我々を抑えることをできない。それに我々は絶対に人間を許したりしない...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side霊夢

 

 

「よし!」

 

鍋のおかゆが出来終わり、私はそれをもってあの子のところへ向かう。

 

大きな傷だけど、このまま治療すれば命には関わらないわ。

 

ゆっくり治療していかないと...

 

 

「できたわよー!」

 

部屋の戸を開けて私は布団を目にして固まる。

 

 

 

「...!?」

 

いない!?

 

さっきまでいたのに!?

 

まさかあの子出て行ったというの?

 

傷も癒えていないのに!!

 

 

鍋を置いて神社の近くを散策するが全く姿が見えない!!

 

このままでは彼女は!!

 

「...ぐぐ!!ぬかったわ」

 

外を見るとすでに日が落ちている...

 

これでは探すことすら困難になるわ...

 

 

 

「...全く...せっかく助けたのに」

 

冷めていくおかゆを見ながら私は外を眺める...

 

でもまたあの子に会える気がするわ...

 

私の勘だけどね...

 

 

 

 

 




繋ぎです

ではこれにて


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出会いと秘密

とある方の登場


side白楽

 

「...げほ!」

 

神社から離れ現在は月が照らす暗い森の中...

 

少し歩いただけだが...やはり傷口が開いてきている...やはり...出歩くのは早計だった...

 

「はぁ...どうする?...大人しく...神社で休むべきだったか?...だが...」

 

あの子を殺しかねない...命の恩人に手をかける程、我々は外道ではないが抑えられないのも事実だ...だが...人間に対する蓄積された怒りは....もう止めることはできない...

 

ですが...仕方ありません...とりあえず身を休める場所へ向かいましょうか?力は失えど、それくらいは出来ますよね?

 

 

 

 

 

 

「...仕方ないか」

 

贅沢は言ってられないな...ごねた所でどうすることもできないだろう...なけなしの霊力を使うとしよう...

 

ワタシは札を投げて術を発動させる...

 

「開け...陰陽キ壊寺門...」

 

何もない空間から戸が現れる...何とか成功というべきか...

 

「霊力が足りてよかった...」

 

ワタシは戸を開けて中へと入る...

 

そして目に映るは...一件の寺...あまり大きい物ではないが、休むには好都合だ...

 

...この空間ならば外部からの干渉を受けない...あのスキマ何たらにも見つかる心配がないということだ...

 

「とりあえず久しぶりの帰宅だな...」

 

ワタシは寺に入り自室を目指す...流石にも久しぶりの帰宅だけあり空気が淀んでいるが今は傷を治すことが先決だ...

 

自室に到着したワタシは着ている物を脱ぎ捨て敷いてある布団の中へと入る...

 

正直傷だらけの体で布団に入りたくはないが、体力を回復させるすべがない以上仕方があるまい...残りは体力をどこまで回復するかが今後の鍵だ...

 

「...体力の温存だな...とりあえず今後に備えるか...霊力も回復させなければ...」

 

目を閉じると眠気がやってくる...

 

封印開けで正直疲れていたこともあった故か...このまま...何もなければいいのだがな?

 

 

 

 

 

 

そして同時刻...白楽がいる空間にとある者が入り込んでくる...

 

桃色の髪にシニョンを2つ付け...赤い導師服の前掛けをつけた少女...右腕には包帯が巻かれており、何とも痛々しい姿をしている...

 

彼女の名は茨木華扇...彼女は寺に侵入して白楽の眠っている部屋へと入る...

 

「...」

 

「すぅ...」

 

眠っている白楽の傍に座り彼女はそっと彼女の体を抱きしめる...

 

「やっと...見つけた!」

 

そのまま華扇は白楽の体を抱きかかえると、白楽が目を覚ます...

 

 

「ん?...な...何だ?」

 

「貴女達!起きたのね!!良かった...う...うああああん!!!!」

 

白楽が目を覚ました事に安堵したのか、華扇は泣き始め、白楽の方はその光景を見て驚きの表情を浮かべる...

 

「か...華扇様!?え...何でこの空間に?...ここは我々の空間だというのに...」

 

「貴女達の事はずっと探してたの!!生きてて良かった...」

 

「その...お久しぶりです?」

 

「何で疑問形なのよ!」

 

華扇はぐずりながら、懐から一升枡を取り出し中へ酒を注ぐ...

 

「...そ...それは...」

 

「私の道具...茨木の百薬枡...これを飲んだら怪我が治るの...」

 

枡に並々注がれた酒を見て、白楽は眉間を顰め顔を青くする...

 

「...あの?ワタシが酒を飲めないのは知っているはずですが?」

 

「...飲んでよぉ!う...うわあああん!!!」

 

白楽が拒否すると華扇が泣き、白楽は更に顔を青くする...

 

彼女は一滴も酒を飲むことが出来ない下戸...そんな彼女に向け華扇は無理難題を言っているのだから...

 

「いや...時間さえ貰えれば...」

 

「...飲んで」

 

「いや...嫌です...」

 

「飲んでったらー!!」

 

しびれを切らした華扇が酒を無理やり彼女の口へと注ぐ...並々と注がれた酒は拒否反応を示す白楽の意志に背き体内へと強制的を送られる...

 

「ごぼぼぼ!!?...無理!!助け...かふ...」

 

そのまま彼女は白目を剥いて昏倒する...

 

「...ぐす...これで怪我は治るかも...でも...一回様子を見ないと...」

 

華扇は昏倒した白楽を担いでその場を後にする...このまま彼女がどうなるのか誰にも分からない...

 

 

 

 




短いですが...

ここまでです

ではこれにて


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療養と戒律

繋ぎ編ラスト


幻想郷のとある場所にある華扇の屋敷にて...

 

 

白楽達の封印が解かれ...幻想郷の仙人である華扇に保護されて3日が経過する...

 

白楽の怪我は華扇の治療により完治し事なきを得た...

 

しかし...華扇は新たな問題に頭を抱える...

 

それはもちろん...この白楽達の事である...

 

封印明けで...今の現状について知らない彼女について...

 

 

 

 

side華扇

 

白楽達を保護して3日...彼女達の容体も良くなってきている...最初はどうなるかと思ったけど心配は要らなそうね...

 

私は白楽達の部屋へと向かう...

 

 

「白楽達...いいかしら?」

 

「ああ...別に構わないよ...華扇様」

 

白楽の返答を聞き私は彼女の部屋に入る...白楽は鏡の前でジッと鏡を眺めているようだ...鏡の中の彼女は引きつった笑みを浮かべている...笑顔の練習でもしていたのかしら?

 

「...失礼するわね?...体の具合はどうかしら?」

 

「以前よりは楽になった...封印の所為で霊力は乏しいがな...怪我も治ったことだし、そろそろ湯浴みをしたいところだ...」

 

白楽は鏡から目を放してこちらを向く...僅かに笑みを浮かべている...顔色も良くなったみたいね...

 

「それは良かったわ!」

 

「...しかし...ここは退屈だ...術の展開も出来ないし、外に出たいくらいなのだが...」

 

白楽は不服を漏らしている...でも彼女のお願いとはいえそれは出来ないわ...

 

「殺しは厳禁よ...貴女にそれが出来ない以上、私は貴女を解放できないわ...」

 

「...無理を言う...我々がこうなったのも全部人間の所為だろう?あの時起きたことを忘れたというのは聞き逃せんぞ...」

 

白楽は私に対して威圧する...やっぱり...こうなっていたのね...残念だわ...

 

 

「悪いけど問題ごとは絶対起こさないで...この世界の決まりみたいなものよ...後で詳しく話すけど...あまり度が過ぎると私でも庇えないわ...」

 

そう...幻想郷は...昔とは違う...

 

今では人と妖怪が暮らす世界だもの...当然ルールはあるわ...特に人里内の人間には妖怪は手出しできない...それを破ったものは退治されるわ...

 

それに...この子は明らかに血の味を覚えてしまったみたいだし...普通の人間の生活を慣れさせないと...

 

白楽は私の話を聞いて少し不服そうな顔をしている...

 

「でも昔からこんな感じだ...」

 

「文句言わない!!」

 

「バレなきゃいいだろう...」

 

...相変わらず無鉄砲で恐れ知らずなところがあるわね...でも...この子の弱点は把握済みよ...

 

「...私の言うことが聞けないのなら考えがあるわ!!」

 

...私が茨木の百薬枡を出すと白楽は青い顔をする

 

「そ...それは...」

 

「ん?言うこと聞けなければ...飲ますわよ?」

 

私が枡を前に出すと彼女は後退する。

 

「分かった...だからそれだけは...」

 

彼女は怯えるように頭を抱える...

 

そう...白楽は大食らいだけど...お酒が一滴の飲めない下戸...この脅しはよく効くわ...

 

私が枡を下げると白楽は胸をなで降ろしながら、恨めしそうに指を咥える仕草をする。

 

「...はぁ...心臓に悪い...だが不服だ...」

 

嘉玄はじとーっと私を見る...

 

「駄目なものは駄目!!!」

 

私はフーセンガムを取り出して白楽へと渡す...

 

「...何だ?」

 

「どうしても我慢できなくなったら口にしなさい!」

 

「これでどうしろと...」

 

白楽は一枚ガムを取り出して口に入れると気にいったのか僅かに機嫌が良くなる...

 

「...♪」

 

(...これで少しは慣れてくれればいいんだけど)

 

私は予備のガムを見つめる。禁人食ガムKISIMOZIN...ザクロ味...気にいったみたいだけど何か不安ね...

 

この子達の中の怒りを収める何てできることではない...何とか矛先を反らせないと...

 

「...」

 

この子達...私達と離れてから何をしていたのかしら...全く年をとっていないみたい...只でさえ...人間であるこの子達が、ここまで生きているというのも驚きなのに...

 

「ねぇ...白楽?」

 

「ん...」

 

彼女はガムを膨らませながら私の方を向く...私は単刀直入で話を入れることにした...

 

「貴女達...今まで...何をしていたの?見かけも変わらないし...一体何を?」

 

「...何って...人間やめただけだ...」

 

「...は?」

 

人間をやめた?心の中では確信はしていたけど...私にはショックがあった...せめて...人としての幸せを掴んでもらいたかったのに...

 

白楽は明後日の方を向いて話を続ける...

 

「怒りに身を任せた結果こうなったに過ぎない...だが良いだろう我々は歩を止める訳にはいかない...幾多数多の時を生きるには、それしかなかった...それに...人間のままでも異端者扱いだろう...」

 

白楽は寂しそうに私をジッと見つめる...

 

「...私は味方よ」

 

「...味方は1人いれば充分だろう?」

 

「...馬鹿」

 

私は彼女を抱く...

 

この子達は私達の想像がつかない程...辛い思いをしていたはず...せめて私が、この子達を慰めなきゃ...この子達が壊れちゃう...

 

私は白楽の体を掴む...

 

 

 

「...ン?」

 

「...とりあえず...復活した今!!私が貴女たちに最大限尽くしてあげるわ!!」

 

私は白楽を抱いたまま、お風呂へ直行し彼女の着ている着物を剥ぎ、湯のはってある浴槽へ彼女を入れてシャンプーを取り出す...

 

「あの...華扇様?何で我々...お風呂に?」

 

「湯浴みがしたいと言っていたじゃない!それに最大限尽くすと言ったでしょ?サービスよ!!私好みの女の子にしてあげるからよ!!」

 

私はシャワーのノズルを最大限に捻り、シャワーは豪雨の如く白楽の体に振りそそぐ!

 

「いやあああああああああああ!!!!!」

 

白楽の悲鳴が聞こえるけど気にしない!

 

「今風にアレンジしてあげるわ!」

 

私はシャンプー・リンスを使い彼女の長い髪を洗っていく!!長年の汚れが次々と落ちていくわ!!

 

「痛い...痛い...抜ける...髪が抜ける...」

 

「黙りなさい!!」

 

ぺし!

 

「ひゃあ!!!」

 

彼女のお尻に張り手をして黙らせた後、私は再度清掃にかかる...

 

 

 

 

15分後...

 

「...」

 

意気消沈としてグデっとした彼女を抱いて私は彼女の体を乾かす...

 

とりあえず...綺麗になったけど...まだ物足りないわ!!

 

女の子らしく!!今度は服装をそれっぽくしないと!!

 

私は箪笥の中から下着・中華風の導師服・髪飾りを出して彼女をコーディネートしていく...

 

「...」

 

「むふふ!!いい感じよ!!」

 

仕上げに頭頂部を団子にして、襟足の髪は一本にまとめて...完成ね!!

 

 

「...」

 

「白楽...これが今の貴女よ!!」

 

私は放心している彼女に手鏡を渡す...彼女はそれを疲れたような目で見て目を閉じる...

 

「...中々の御手前で」

 

彼女はそのまま失神する!!

 

「あ!!まだメイクは済んでいないのに!!」

 

私は彼女を揺さぶるが返答はなし...

 

少しやり過ぎたかしら?

 

 

「...少しずつ...戻してあげるからね...」

 

私は彼女を布団に運んで毛布にくるむ...

 

今度は私が救ってあげる...二度と貴方達に悲しい思いはさせないわ...

 

 

 

 

 




とりあえずここまでです...

残りは文章整理して時間をおいて投稿です

ではこれにて


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アニマルセラピー

日常編

茨城華扇の屋敷にて


side華扇

 

白楽を我が家に連れて来て一月が経過する...こっちの生活に慣れていなかった彼女も家事などをやらせてみたら慣れ始めて来ているみたいね...

 

まだ常識が足りていないところはあるみたいだけど、そこの所は時間をかけて直していきましょう...

 

 

 

「華扇様...とりあえず洗濯と居間の掃除は終了した...次は?」

 

私の部屋に掃除道具を持った嘉玄がやってくる...

 

酷い怪我だったけど後遺症もなかったし、とりあえずは一安心ね...

 

「うん!ご苦労様!...次はそうねぇ...」

 

...大体の仕事は終わってしまったわ...次にやらせることといっても...

 

「無いのか...」

 

「待って...考える...!そうだわ!!」

 

そろそろ頃合いだし彼女に任せても良いかも!!私は彼女の手をとり、外へ向かう!

 

「次は何だ...そんなに引っ張らんでも...」

 

「ちょっと貴女達にお願いしたいのよ!!私の可愛い子達をね!!」

 

「え...」

 

私が返答すると何故か白楽は困惑の表情を浮かべる?

 

 

 

 

「何よその顔?」

 

「...いや...華扇様に子供とは...相手はどんな人と...」

 

「ばかものー!違うわ!!」

 

私の包帯ロケットパンチが火を吹いて白楽の顔にめり込ませ、彼女は悶絶して床に転がる...

 

「ぐぉぉぉ...」

 

「子と言っても動物の方よ!!ホラ!行くわよ!!」

 

私はとんだ勘違いをした白楽を引きずって小屋へ向かう...

 

 

 

 

 

 

小屋に辿りつくと白楽は鼻を鳴らす...

 

「...この中に動物が...我々に何をしろと?」

 

「この子達のお世話をお願いしたいのよ!」

 

小屋を開けると中には犬やら鷲やら虎やら私のペット達がお出迎えする!!

 

本当に可愛いわ!!ペットにして良かったくらいよ!!!

 

「...」

 

私とは対称的に白楽は困惑しているけど...

 

「お世話って...ワタシが危なくないか...空の王者に陸の暴君だぞ?」

 

「何言っているのよ...可愛いじゃない!!ホラ!触ってみなさいよ」

 

私は虎を白楽に近づける...

 

白楽は慄くように後ろへ下がる...

 

「か...勘弁しろ...食べるのは好きだが...食べられるのは好きじゃない...」

 

「大丈夫よ!噛まないから!!」

 

「そうなのかな...」

 

白楽は恐る恐る虎に手を伸ばすが、虎は彼女の手を舐める...

 

噛むわけがない!私の躾が良くできている証拠よ!!

 

「ね?」

 

「ああ...確かに噛まないみたいだな」

 

白楽は手を引いて時計を見る...

 

「...そろそろ食料調達の時間だ...続きは帰ってからでいいか?」

 

「ええ!いってらっしゃいー!...約束は覚えているわよね?」

 

白楽は面倒くさそうな顔をする...

 

「人里で問題を起こすな...そして人間を食べるなだろ?」

 

そのまま白楽は外へと向かう...一応分かっているみたいね...やはりあのペナルティが効いたみたいね...

 

「分かればいいわ...こっちの方も躾も効いているわね...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻...博麗神社

 

その頃博麗神社では、博麗霊夢が縁側でお茶を楽しんでいた...

 

「...ふぅ...相変わらず参拝者はいない...閑古鳥が鳴くけど...平和が一番だわ...」

 

いつも通りの事だが...とある来訪者により彼女の日常が終了する...

 

 

 

 

 

 

「霊夢ー!慰めてー!!」

 

突如スキマが開き八雲紫が飛び出してくる!!

 

霊夢は飛び出して来た紫を避け札を掲げる...

 

 

「...二重結界!」

 

 

「待って!!本当に待って!!!それを食らったら死んじゃうわ!!!」

 

紫は霊夢を牽制してスペルの発動をやめさせる...

 

「...何よ?...いつもそのくらいしてもピンピンじゃないの!」

 

「今回はやばいの!!とある子の能力を受けて弱体化しちゃったのよ!!」

 

「能力?」

 

霊夢は面倒くさそうに紫を見つめるが、紫から感じる力がいつもより弱々しいことに気づく...

 

「何をやらかしたのよ...」

 

紫は目を逸らす

 

「えーと...面白い子が封印されていることを知って...式神にしようと...戦ってみたら~思ったより強くて...負けちゃった♪」

 

「ふん!」

 

スパーン!!!!

 

「へぶ!!!」

 

霊夢はお祓い棒で紫の頭を小突く...紫は悶絶しながら霊夢との距離を取る...

 

 

 

 

「アンタが悪いわ!!自業自得じゃない!!」

 

「うう...酷い...」

 

霊夢は紫に追撃を入れようとするが、その腕を止める...

 

「その封印されてた奴って...どうなっているの?」

 

紫は目を反らす...

 

「それが...逃げちゃって行方も分かっていないのよね...それなりに痛めつけていたから...多分生きてはいないとは思うけど...」

 

「...それの特徴は?」

 

「何!やる気なの!!」

 

霊夢の言葉に紫は目を輝かせる...その双眼がまるでシイタケのような形をしており、どこか胡散臭い...霊夢はその顔を見て露骨に嫌そうな表情を浮かべる...

 

「どうせ私がやらなければいけないじゃない!!アンタの尻ぬぐいするんだから報酬はそれなりにもらわないと!」

 

「うう...分かっているわよ...少しだけど...私にも責任はあるし...」

 

全てがアンタの責任じゃない...っと心の中で思う霊夢ではあったが彼女はその言葉を飲み込み、紫は笑みを浮かべた後に口を開く...

 

 

 

 

「人間よ...その封印されてた子はね...」

 

「人間?封印されていたのよね?」

 

霊夢は紫の言葉に驚きの表情を浮かべるが、紫は淡々と話を続ける。

 

「ええ...でも人間というよりは人をやめているという感じだわ...妙な身体的特徴もあったし」

 

「妙な?身体的特徴?」

 

「戦闘時...彼女の右目が白黒目になったのよ...能力の影響か...もしくは別の力か...少なくとも呪術が使えることが分かったわ...」

 

「能力ね...そして彼女ということは...女性なの?」

 

紫は頷く...

 

「すごい長い白い髪の可愛い子よ♪...式神にしたかったわ...」

 

「...!」

 

どこか未練のあるような紫を尻目に霊夢は、あることを思い出していた...

 

少し前...森で倒れていた外来人のこと...身体的特徴は紫の言ったことと該当していたからだ...彼女はその外来人を保護したのだが同じく逃げられてしまったことには変わりはない...

 

 

 

「何か思い当たることでもあるのかしら?」

 

「...無いわ」

 

紫の言葉を一蹴して霊夢は湯呑を傾け紫は扇を開く...

 

「...とりあえず危険な感じではないとは思うけど...未知数の能力を持っていることには変わりないわ...万が一の時はお願いね」

 

「...分かってるわ」

 

霊夢の返答を聞き紫はスキマの中へと消える...

 

 

 

「...私も人の事言えないわ」

 

紫がいなくなった神社に霊夢は溜息をつき、空を見上げる...

 

彼女もまた...お尋ね者を逃がしたことになる...

 

それは必然か...それとも偶然か...それが吉と出るか凶と出るか...それは誰にも分らない...

 

 

 

 

 

 

 




日常編

ではこれにて


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人里と伝記

日常編

人里にて


青き空が続く幻想郷...

 

その青空の下には、幻想郷の唯一の人間が住む場所...人里が存在する...

 

人里では寺子屋という建物があり、その人里で住む子供たちは、そこで勉学に励んでいた...

 

そこで講師を勤めるのは、白い長い髪を靡かせ青い服に身を包んだ女性こと上白沢慧音...彼女は教壇に立ち書をめくる

 

そして寺子屋の中では、本日最後の授業が行われようとしていた...

 

 

 

 

 

 

side慧音

 

「よし!本日最後の授業だ!今回は私の好きなモノだぞ!!」

 

私は教壇に立ち黒板に文字を書き記す...

 

この授業だけは外すことはできないな!これは永久的に語り継げないといけないものだ!!

 

「本日最後の科目は伝記の授業だ!!さぁ!!本日も最後頑張ろう!!えいえいおー!!!」

 

 

「...」

 

「...」

 

「...」

 

「...」

 

「...ん?」

 

返ってきたのは沈黙...あれ?返答なしか?

 

教室を見回すと子供たちは、飽き飽きしたかのような顔で私を見つめている...

 

「先生...またそれ?」

 

「今日の早朝の授業でも...昨日の授業でもソレやった気が...」

 

「この前の国語の授業でやった耳にタコが出来るが分かった気がする...」

 

...子供たちの目が向かう先は黒板の文字...人里英雄譚!!私の一番好きな伝記だというのに!!?

 

「飽きてしまったというのか!?これは!!語り継げていかないといけないものだぞ!!」

 

私が憤慨すると子供の一人が手を挙げる...

 

「いえ...飽きてしまったというより...頭に入ってる感じです...少なくとも書の暗記は私達できますし...」

 

「この書にはまだ隠された謎が多いんだ!!!英雄の名前も分かっていない!!貴重な文献なんだぞ!!」

 

「確かに貴重なのは理解できますけど...未だに前編だけじゃないですか...後編は?」

 

「うぐ!!?」

 

確かに...この伝記には後編の書物がない!!私が見つけ出した書物は話の内容からして前編だけだ...

 

「なら!今日は総復習だ!!今から音読するぞ!!ダメって言っても先生音読するからな!!」

 

私は書を捲り英雄譚の文を音読する...

 

 

 

 

 

 

 

15分後~

 

 

 

 

 

「して...え...英雄は...英雄はっ!!村を守ったというのに!...迫害っおおおおおお!!!」

 

教壇に突っ伏し私は号泣する...やはり涙を堪えられなかった...

 

本の内容は、とある呪術の家系に生まれた英雄の話だ...英雄は、その家系中で歴代最高と呼ばれるに相応しい人物だった...

 

しかし...その御家は、人里の住民達によるの襲撃に遭い...一晩で英雄は命からがらお家を追われた...

 

放浪の末に英雄は、とある里で身を下ろし、人並みの幸せを掴もうとしていた...

 

しかし...今度は妖怪が里を襲うことになる...

 

英雄は里を襲った妖怪から里を守るために、己が持つ力を使い妖怪たちを追い払った...

 

しかし...その力を恐れた里の者達は英雄を、あろうことか迫害するという悲しい物語だ...

 

 

この話は読んでいて悲しい!!私がこうなったらと思うとやり切れない!!

 

 

「せ...先生質問が...」

 

1人手を挙げている...

 

「ぐす...何だ?」

 

「その英雄って...その後どうなったんですかね?」

 

「私でも分からん...やはり後編の書がないと英雄たちの末路が見いだせない...」

 

...この授業が終わったら鈴奈庵へ向かうか...本の続きが多分あるかも...

 

子供たちは、口々に感想を述べている...

 

「しかしヒデー話だな...英雄は命がけで里を守ったというのに!」

 

「人外というだけで追い出されるって酷いよ!!可哀想だよ!」

 

 

「!!お前たち!!この話は飽きたと言っていたはず?」

 

「授業としては飽きたと言っているだけ...この話は私達は好きだよ」

 

「仮に慧音先生がこの英雄だとしても私達が守るよ!!」

 

「お前たち!!」

 

...私は本当に良い生徒を持った!!この仕事をしてて良かったと思える瞬間だ!!!

 

私は教壇から身を乗り出す!!

 

「よし!!今日の授業は終わりだ!!英雄譚の感想文...それが本日の宿題だ!」

 

「...ゑ?」

 

子供たちから素っ頓狂な声が聞こえるが、それは空耳だろう!!

 

「原稿用紙10枚分だ!!お前たちの感想!心待ちにしているぞ!では!解散!」

 

私は荷物を纏めて教室を後にする

 

(先生ー!!無茶だよー!!!)

 

子供たちの声はあえて聞き流そう!

 

英雄譚の内容を詳細に知りたいという質問だろうが、ここはあえて心を鬼にする!!

 

自分の力で英雄譚を知ってくれ!子供たちよ!!

 

さて!鈴奈庵で後編の捜索を!!

 

私はその足で鈴奈庵へ向かう...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴奈庵

 

人里に存在する古本屋...鈴奈庵...

 

その暖簾を掻き分け書を探す私は、店主(代理)に挨拶する...

 

「やぁ!小鈴!少し邪魔をするぞ!」

 

橙色の髪をした少女こと本居小鈴がカウンター越しで椅子に座りながら私を見て笑みを浮かべる...

 

「あら?慧音先生!何かお探しでも?」

 

「ああ...少し欲しい書があってな...少し探しでもいいか?」

 

「ええ!どうぞ!先生はお得意様ですから!!」

 

「ああ!!今日こそ見つけてみせる!!」

 

私は鈴奈庵の本棚を見つめる...

 

 

 

4時間後...

 

 

 

「...すまん邪魔した」

 

「またの起こしを~!」

 

私は鈴奈庵を後にする...

 

やはり後編の書は見つけることはできなかった...

 

絶対あるはずだが、この人里での唯一の本屋で見つけられなかったとなると...幻想郷では無理だというのか?

 

「...はぁ...ある意味私が前編の書を持っていることが幸運か?」

 

すでに日は落ちかけている...夕食だけ買って帰ろうか...

 

私は歩を進める...

 

 

 

 

 

 

 

「そこの...何か落としたぞ」

 

「ん?」

 

声のする方を振り向くとそこには長い白い髪をした女性がいた...

 

白い中華服に身を包み、彼女の手の中には一冊の本がある!

 

あれは...英雄譚?

 

私はバックの中を探るが、私の原本の英雄譚がないことに気づく!!

 

「ああ!!?すまない!!大事な物なんだ!!」

 

「...」

 

白い女性は私に英雄譚を渡す...良かった!これだけは大切なモノなんだ...

 

女性は不思議そうに私を見つめている...

 

「その書が大切なのか...随分と古い物みたいだが」

 

「ああ!私の好きな物語なんだ!感謝するよ!...そういえば名前を言っていなかったな!私は上白沢慧音!この人里で教師をしている!」

 

「教師...ね...どうりで...」

 

女性は長い白い髪を軽く撫でた後、口を再度開く...

 

「如月白楽...それがワタシの名だ...」

 

白楽と名乗った女性は口から何かを出して紙に包んでポケットの中へと入れる...

 

何か甘い匂いがするな...ガムか?

 

白楽は懐から再度ガムを取り出して口に入れる...だがその視線の先には、私が抱える原本にそそがれている...

 

「興味があるのか?」

 

「いや...その本よりも字体と文に興味がわいただけだ...」

 

字体と文?どこかおかしなところがあったのか?

 

「何か?あったか?」

 

彼女はガムを膨らませながら考えるように額に指をつける

 

「...特に理由はない...只字体が我々が使っていた時と違っていたのでな...」

 

白楽は、本を細かく指さす...

 

彼女が示した先は、通常の文が書かれている部分だ...

 

この本の作者の名前が書かれているが...文字が掠れて読めない箇所がある...

 

「何かおかしいか?」

 

「少なくともワタシが見たことが無い字があるってだけだ...あの時から何百年経過しているかは分からないが...」

 

「!?」

 

何百年?幾ら人間であっても一生は長くても80年くらいだ...これだけ若いという事は彼女の年齢もそれなりにいっている...明らかに人外だな...本人は自身の失言に気づいていないみたいだ...

 

「何百年?お前...人間なのか?」

 

白楽は僅かに動揺をする...

 

「...口が滑った...安心しろ...ここでは迷惑はかけないようにするからな...」

 

「...お願いする...私も立場としては人里の守護者だからな...」

 

「心配は要らない...首輪付きだからな...」

 

白楽はガムを膨らましながらそっぽを向く...

 

首輪付き?...何かの比喩か?

 

だが...問題はないか...少なくとも人外のようだが、暴れたりしないみたいだ...

 

私はバックから写本を取り出して彼女へと渡す

 

 

「...?」

 

「お礼だ!これは写本だが物語はちゃんと書いてあるぞ!」

 

「...書なんか久しぶりだな...一応礼は言っておく」

 

白楽は本のページを捲って黙読している...

 

「...」

 

彼女は次々とページを捲っていく読むのが早いな...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...!」

 

だが...ページが進むにつれて僅かにだが、彼女の表情が険しくなってきており、やがて彼女は読むのをやめて私を見つめる...

 

「どうした?内容が気に入らなかったのか?」

 

「...ああ...ワタシとしても好ましいものではないな...何でこの物語が好きなんだ?...明らかに良い結末ではないと思うが...」

 

彼女は不服そうに鼻を鳴らす...

 

やはり、この話は賛否が分かれるのか...だがこれだけは知ってもらいたい!

 

「...確かに良い結末にはならないだろうな...私も英雄には幸せになってもらいたかった...だが!この物語を広めていかないと彼女が報われない!私はそう思うんだ!」

 

「...報われない?」

 

「確かにお前のように否定的な意見も出るだろう...だが...このまま歴史の闇に葬ることは私にはどうしてもできない...彼女が確かに存在したという証...それがこの英雄譚なんだ!」

 

白楽は私を見つめている...

 

 

 

 

 

 

「...ふ!」

 

そして彼女は笑いだす...初めて見せた彼女の笑顔だ...こうしてみると年相応の顔をしているな...

 

「!」

 

「...ふぅ...成程...確かに英雄にとっての一種の供養かもな...君とは仲良くできそうだ...では失礼するよ...買い物の途中だからな先生...」

 

「ああ!すまない引き止めてしまったな...」

 

「気にするな...」

 

白楽は踵を返し人里の奥へと向かう...

 

だが途中で立ち止まった後、私の方を向く...

 

 

「先生...」

 

「何だ?」

 

白楽は書を指で弾く...

 

「...この書...添削が必要だ」

 

「添削?...どこか文に間違えでもあったのか?」

 

嘉玄は首を横に振り、本を捲る...

 

「いや?文はおかしくなかった...ワタシも細部まで見ていないけどな...問題は物語だ...肝心な部分が抜けている...これが無いと本当の意味を知ることは出来ないはずだ...」

 

「肝心なところが抜けているだと!!!馬鹿な!少なくとも!そんなところは!!」

 

「...ワタシが言いたいのは1つ...呪術師の家系が人間に襲われ、そこから生きて逃げ出した英雄が放浪の末に辿りついた里の前...その過程が抜けているんだよ...意図的かはどうかは知らないがな...」

 

「な?」

 

...英雄が家族を失った後から里へたどり着くまでの過程だと?そんなものが存在するのか?

 

いや待て!何で白楽はそんなことを知っているんだ!!読んだだけでは、そんなことまで分かるはずがない!!

 

「何を知っているんだ!!」

 

「...それはまた次回にしよう...さっきも言ったはずだ?買い物の途中だとな...ではな...」

 

白楽はそのまま通りの角を曲がる!

 

私はその後を追いかけようとするが、通りには白楽の姿はどこにもなかった...

 

 

 

「...」

 

どうやら彼女は何かこの話を知っているみたいだな...長生きのようだし...もしかしたら英雄を知っているのか?

 

「如月白楽か...覚えたぞ...」

 

私はその場を後にし...自宅へ戻る...

 

また彼女とは会える気がする...その時に全てを聞いてやるさ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side白楽

 

 

「...ああ...久しぶりだな...この感じは...」

 

買い物を済ませたワタシは書を捲りながら、帰宅する...

 

書を捲っていくにつれ、話の内容が細かに記されている...まるで見て来たかのようにだ...

 

...全く忌々しいですわ

 

 

 

「...細かいことを考えても仕方がない...とりあえず今だろ」

 

書をしまい、我々は本拠地に向かい走る...

 

嫌なことは...体を動かせば忘れるだろ...

 

 

 




軌道修正が大変だ

ではこれにて


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紅い景色
紅い霧と行方不明


異変に入ります


青い空...そして青々と生い茂る森が続く幻想郷...

 

けたたましい蝉の声が鳴り響き、蒸し暑い気温になる季節...夏が到来する...

 

 

 

妖怪の山のとある隠れ家...

 

その屋敷の庭では、長い白い髪をした女性こと如月白楽がエサ袋を持って、その封を開ける...

 

この日の彼女の仕事は、白楽の主である茨木華扇のペットのエサやりを任命されていたからだ...

 

 

 

いつも通りの仕事...しかし様々な仕事にはアクシデントがつきものだ...

 

 

 

 

 

side白楽

 

「よし...今日も頑張るか...」

 

エサ袋の封を開けると森の奥から華扇のペット達が一斉に我々の方に向かって現れる...

 

色々と危なそうな動物がいる気がするが...気にしないでおこう...怪我をしなければそれでいい...

 

小さな動物から大きな動物まで、一通りのエサやりの時間と行動パターンは頭には入っている...最初は動物達に慣れるまで苦労したが今は慣れた...これでも最近は動物達の管理を任されているまでなった...

 

 

「さーて...ご飯だ」

 

エサを撒くと動物たちは我先へとエサを食べていく...

 

この光景は色々と微笑ましいものだ...しかし...華扇様も良くここまで集めたな...

 

虎・雷獣・大きな蛇...大鷲など...本来なら手懐けることすら難しい動物もあるというのに...華扇の実力があるという証拠というもの...

 

 

 

「...うん?」

 

急に集まってくる動物の数に違和感を感じて我々は首をひねる...

 

...気のせいか動物が少ない気がする?

 

気のせいでは無いな...記憶では確か大鷲は2羽だったはず...なのに、ここには一羽しか...

 

「...待て...待て」

 

我々は必死に頭の中を整理する...

 

...年老いた大鷲の久米はここにいる!!!つまり今いないのは若い方の大鷲竿打!!!

 

1+1は2...2羽...1+0は1...一羽足りない...

 

「待て...何かの間違いだ...」

 

辺りの草むらを掻き分けても...竿打はいない...

 

今日は、来ないのか...いや違う...毎日この時間に来ていた奴だ...来ないはずがない...

 

「...つまり何かあったってことだよな?」

 

動物達のことはワタシが担当...つまり責任はワタシにあるということだ...このままではワタシは...華扇様に!!

 

 

...お仕置きですね?

 

 

「う...うわああああああ!!!」

 

ワタシがお酒を飲めないことを彼女は知っているから...絶対、お酒の事に関するお仕置きに決まっている!!

 

そんなことになったら地獄だ...そんなことになったら破滅だ...そんなことになったら絶望だ!!!!これが...恐怖...今まで忘れていた恐怖という...感情!!!

 

ワタシはどうすれば!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...こういう時こそ...落ち着くのです...まだ、お仕置きに関しての事を考える必要はありません...

 

華扇様はまだ、この事実は知らない...つまり早急に、この事案を解決する方が善処的...正に鬼が居ぬ間に洗濯というものです...

 

「...そうだ...そうだよな...知らぬが仏と言うこともあるな...良し...探すしかない...」

 

我々は、庭から離れ竿打の痕跡を探していく!!

 

幸いこういう時があろうかと竿打の奴にはワタシの術をかけておいた...それを辿っていけば...なんとかなる...

 

「夕飯までには探してみせる...我々には不可能はない...お仕置きを受けてたまるか...」

 

 

我々はその場を後にし、竿打探しに外に出る...

 

大丈夫だ...軽い運動に過ぎないからな...

 

「時間は余りないな...さっさと回収して日が暮れる前には戻らないとな...っ!!にしても...何か肌寒い...」

 

深い森を駆け抜け、我々は空を見上げる...

 

...何だ?何かさっきから嫌な感じがする、今の季節は夏だ...霧が出ているが...幾ら何でも肌寒い!!

 

ワタシは...あんまり環境の変化に追いつけないから...こういうの勘弁してもらいたい...

 

 

 

 

森を抜けて辺りを見回すと...辺りが何故か...紅い?

 

「...何だこれ...紅いが...霧だな?」

 

確かに...これは霧...だが何かの力を感じるな...幸先が悪い嫌な予感がする...

 

「勘弁しろ...迅速に問題を解決しないといけないのに...ワタシの勘だが...この霧は...」

 

この霧の所為で太陽が遮断されているからな...それ故に日光を好まない妖怪たちが活発になるのは一目瞭然だ...

 

くそ!!!竿打の奴がこんなことにならなければ!!!

 

ですが...この恩恵を受けるのは我らも同様...このまま弱体化した体を元に戻すのに丁度良いかと...

 

「だが...時間が惜しいな...とりあえず痕跡を探して...」

 

 

 

 

 

 

 

「貴方は食べられる人間?」

 

「...ん?」

 

声のするほうを向くとそこには、金色の髪をした少女がいた...

 

白いブラウスに黒のベスト・スカート...

 

一見人間に見えるが...この状況から考えて、それは無いな!

 

とりあえず...返答するべきだな?

 

 

 

「...いや...人間ではないな...」

 

「えー...」

 

少女は見る限りガッカリしたような顔をしながらワタシをジッと観察するように見つめる...

 

「...むぅ...久々の獲物だと思ったのだー!」

 

「勘弁しろ...食えたものではない...それに今は戦う気分ではない...これやるから消えろ...」

 

ワタシは懐から食料を取り出す...

 

「ほら...おにぎり...ワタシのご飯だがやるよ...」

 

「うわぁ!!」

 

少女は目を輝かせておにぎりを受け取る...

 

「ありがとうなのだー!!」

 

少女は、皿を抱えて闇の中へと消える...

 

「ふ...ではな...」

 

無血開城...戦わずにその場を何とかする...トラブルは極力なくしたほうが良い...

 

あまり戦うと無駄な霊力を消費してしまう...こういうのは穏便にかぎる...

 

「さてと...仕事の続きをしなくてはな...竿打の気配はずっと先だ...」

 

我々はそのまま術を辿り、先を急ぐ...

 

 

 

 

 




残念ながら文章は作り直しですね

ではこれにて


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氷と挟撃

異変中


華扇のペットである大鷲の竿打を探して、白楽は紅い霧が舞う幻想郷を走る...

 

異常気象の中...飛んだアクシデントに見舞われた彼女ではあるが、これも運命...一種の試練であろう...彼女の能力で大体の場所が分かると言っていたが...果たしてそれが正しいのか誰も分からない...

 

 

 

 

side白楽

 

「ぶえっしゅ!!」

 

...夏だっていうのに何だ...この肌寒さは...

 

全く...さっさと終わらして温かい風呂に入りたい...

 

「...とりあえず...こっちの方向で合っているな」

 

...竿打の気配は...こっちの方向だ...ワタシの術を使えばこれ位のことは造作もない...

 

その方角であっていますが...如何せん時間がない...華扇様にバレることだけは避けなければ...

 

肌寒さを堪えながら、森を進んでいくと我々の前に大きな湖の光景が広がる...ふむ...今まで見た中では大きい部類のようだ...

 

「...これは中々の広さだな」

 

霧が邪魔で対岸が見えないが、それなりの大きさになるみたいだ...

 

だが...霧の流れも...竿打の気配もこの先だ...何だか嫌な感じがする...

 

 

「何か...巨大な物に立ち向かっている気分だな」

 

何だか身震いがする...あの妖怪賢者の戦いの時と同じくらいだ...

 

ワタシの危険予知は大体は当たる...気を引き締めないと...道は閉ざされてしまう...

 

...臆することはありません...我らの力に勝るものなど、存在することがあり得ない...歩を進めなさい...されど道は開かれる...

 

 

 

「...ふぅ」

 

ワタシは湖の上空を飛ぶ...

 

...そう...我々は強い...あの妖怪の賢者も下したんだ...恐れることなぞ何もない...

 

...いや...華扇様のお仕置きは除くが?

 

「...くしゅん!!」

 

...先に進むたびに、辺りの気温が下がっていく!!

 

何だ...夏の気温ではない...この霧で太陽が無いとはいえ...ここまで下がるのか?

 

だが...進むにつれてワタシの力が増していくのも事実だ...悪いことだけではないようだが...

 

「アタイはサイキョー!」

 

「...?」

 

我々の目の前に何かが現れる...

 

 

水色の髪に青い服...そして氷のような羽根をした少女?

 

...妖怪の類?いえ...見たことがないものですね?これは細心の注意を払いませんと

 

「とりあえず無視すればいいだろ...触らぬ神に祟りなしだ...」

 

我々は少女の横を通り過ぎようとするが、少女が我々に気づいて通せんぼする...

 

 

「...」

 

「...」

 

左に抜けて先に行こうとすると、また...少女が通せんぼを...

 

「...」

 

「...おい!!アタシの縄張りに来たんだぞ!!相手しろよー!!」

 

少女は空中でジタバタする...

 

...最悪だ...こちとら時間がないというのに!!相手をしろということは...先程の無血開城も無理なようだ...

 

 

「相手する必要はない...我々は急いでいる...分かるだろ?」

 

「嫌だ!相手はしてもらう!!これでも食らえ!!」

 

少女の周りに氷の弾が多数現れる...

 

これってまさか...

 

 

 

「食らえ!」

 

氷弾が我々の方へ飛ぶ!!!

 

「本気か...」

 

我々は、それを避けて行くが物量が多い...

 

「...おっと...わ...げふ!」

 

避けれるはずもなく...何発か被弾して湖へ落下する...

 

「げほ...ぶぇくし!!」

 

...このうすら寒い中、湖に落ちるとか...本当に勘弁してもらいたい...

 

「はは!!変な力を感じたから来てみれば...何だ弱いじゃない!アタイってばやっぱりサイキョーね!」

 

上空では、少女が笑っている...

 

...華扇様に戦闘は禁止されているが...バレなければ問題はない!!

 

そう...知らぬが仏です...聞かぬが仏です...聞くは気の毒...見るは目に毒です...

 

 

「出ろ...太陽弩弓」

 

我々の手に巨大な弓が現れる...少女はそれを見て後退する...

 

「...う...何だそれ!!お前ただの人間じゃないな!!」

 

「...一応人間だが...もうやめた...最後に...名前教えてくれないか」

 

「...あ?何で?」

 

「これで、お別れだからだよ...あんまりワタシとしても時間はかけられないんだ」

 

 

 

 

「...アタイの名はチルノ!お前を倒す妖精だー!!!」

 

...チルノと名乗った少女は我々へと再度氷弾を飛ばす!!!

 

...ワンパターンだな...それはすでに見切った!

 

「詰めが甘い...」

 

ワタシは妖精に向けて弓を放つ...一筋の光と化した矢はチルノが放った氷弾を破壊しながら反射を繰り返して彼女へとジグザクに向かう...

 

「あ...アタイの氷弾が!?っと!?危な!!」

 

辛うじて彼女は被弾を免れたようだ...

 

「それなりの速さだったのだが、避けるとは...」

 

「ふん!アタイはサイキョーだもん!!アンタの攻撃何てお見通しよ!さぁて!もう一か...」

 

「悪いが終わりだ...」

 

彼女は氷弾をワタシへと放とうとしたようだが...2回目の矢を放つ...今度は彼女が氷弾を生成する前に彼女へと一直線に着弾する...

 

「げほ!!」

 

チルノは被弾して湖へと落ちる...

 

速すぎて何が起きたか向こうからしてみれば理解できないだろうな...

 

「...ふん」

 

ワタシの力...長年の晩成した術...少しずつ昔に近づいてきているな...本気ではないが...できる限り抑えんとな...手加減が難しい...

 

「本気で行く必要がないし...時間が惜しいな...次行くぞ...」

 

我々は湖を後に更に奥へ進んでいく...

 

竿打の気配は後僅か...タイムミリットも後僅か...できる限り早く向かわなくては!!

 

 

 

 

 




チルノでした...

ではこれにて


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弾幕なしのガチ勝負

湖を抜けた先は...


ペット探しに幻想郷を探索していた如月白楽...

 

チルノを降し...霧の湖を越えた白楽は、湖の畔に辿り着く...

 

そこには洋風の真っ赤な建物であり、海の外の文化を知らない彼女は只それを漠然と眺めていた...

 

 

 

 

 

side白楽

 

「...これは」

 

湖を越えて我々の眼前には大きな建物が目に映る...

 

こんな形の見たことない...外面が全て赤い壁で覆われている建物...長年生きてはきたが...こういう建物は見たことがない...

 

「...知らないことばかりだ...まぁ...勉強は時間がある時にしようか...」

 

確かに時間がないのは事実...早く竿打を探さないと華扇様の雷が我々に落ちるのは必然...迅速に事を進めないと...

 

「こんなアクシデントが無ければ...おや?」

 

門の方を見ると、そこには黒焦げでズタボロになった女性が倒れていた...

 

赤い長い髪に...緑色の中華服に身を包んでいる...

 

ところどころ...焦げ跡がある限り...何かに襲われた...それがワタシでも理解はできる...

 

「...妖怪にでもやられたのか?」

 

...いえ...それはありませんね?...見た限りこの女性には我々と同じ力を感じる...

 

並大抵の雑魚には遅れは取らないでしょうし、この異常気象の原因である紅い霧を発生源は辿ってみる限り...この館...そして彼女はその門で倒れている...つまり、この異常気象の原因の仲間かもしれませんね?.

 

 

「防人か?...ううん...ということは...」

 

...竿打と異常気象がバッティングしたみたいだ

 

見た限り竿打の奴は、この建物の中みたいだし...この建物からは赤い霧が出ている...

 

よりにもよって...こんな面倒なところにいるなんて...

 

「...はぁ...とりあえず...さっさと回収して帰宅を...」

 

建物へ向かおうとするが、足が止まる?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「...ここから先へはいかせません!」

 

我々の目線の先にはズタボロになった門番が我々の足を掴んでいる...

 

...振りほどこうにしても力が強いな

 

「離してくれないか?先を急いでいる...」

 

「嫌です!!貴女まで屋敷に通したら咲夜さんのお仕置きが増えてしまいます!!」

 

中華服こと...とりあえず中国と名付けようか...中国は意地でも我々の足を離そうとしない...恐怖に満ちた目をしている...そこまで咲夜という人物のお仕置きが怖いのだろうか?

 

「...いや...ペットが屋敷に入っただけだ...只それの回収を行うだけだ...」

 

「駄目です!!そんなことしたら...私のお尻の穴がズタズタに!!!ここで眠ってください!!」

 

中国は我々に向けて不意打ちの掌底を放つが...我々はそれを弾いて後ろへと下がる...

 

 

 

「...何だ?...やる気なのか」

 

「これ以上お仕置きのレベルが上がるくらいなら死を選びます!!」

 

「...」

 

ワタシは弾いた右腕を見る...

 

...一発食らっただけで痣が出来ている...それなりに戦えるみたいだな

 

「ふぅ...我々もそれなりに強いんだが...君と同じくお仕置きは受けたくないんだ...」

 

ワタシは札を展開させて辺りを囲む...

 

華扇様に戦うなと言われてたが...この際無視だ...

 

さっさと終わらして...迅速に帰還...それが我らの正しい選択かと....

 

 

 

 

 

「...あ?」

 

「ふ!」

 

...いつの間にか...中国は我々の目の前まで迫っていて...すでに攻撃に移っている?...速いな?

 

「貴女以上に私はお仕置きを受けたくないんですよ!!!」

 

中国からの掌底が我々の腹へと放たれる!!

 

「ぶっ!!?」

 

速い...気を抜いたわけではないというのに一発食らうとは...

 

...何てこと!!!

 

我々は、それを耐えて後ろへと後退する...

 

...少し不味かった...朝食が出るところだった...困ったな...余り力は消費したくないのだがな...

 

「余り手加減が出来ないんだ...勘弁してもらいたい...」

 

「この際弾幕ごっこはしません!!ルールを無視してでも!ここは死守します!!」

 

中国は呼吸を整えている...

 

彼女の力が少しずつ高まってきている気がするな...まぁ...制圧は可能だ...

 

それにしても気になる言葉が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...弾幕ごっこ?...何だそれは?」

 

「知らないんですか?」

 

中国は信じられないような顔をする...

 

「...つい最近目覚めたばかりでな...そういうの疎いんだよ」

 

ワタシの言葉に中国は戦闘態勢を崩さないまま口を開く...

 

「...簡単にいうと幻想郷での戦い方ですね...スペルカードというものを使って弾幕の美しさを競う戦いのようですが...私は得意ではないので...」

 

「無知とは罪だな...全く理解ができない」

 

...この問題が終わったら勉強しよう...全て済んだら華扇様に聞くのがベストだ

 

「だが...我々にとっても好都合...今回だけはその弾幕ごっこをせずに済むって訳だ」

 

私は札を中国へと飛ばす...

 

彼女は宙返りをし、迫る札の嵐を回避しワタシから距離を取る...

 

 

「貴女の能力ですか...見た限り...その札...嫌な力を感じますね...」

 

「勘がいいな?触れるのはオススメはしない」

 

札を飛ばすが中国は、それを防ごうとはせずに避けてワタシとの距離を詰める...

 

「あ?」

 

「貴女の力は厄介そうですが...あまりにも遅いし...隙だらけです!!」

 

後ろから中国の声が聞こえたかと思うと、背中に衝撃が走り我々は突き飛ばされる!!!

 

 

 

「げほ!!!」

 

...見えなかった?反応ができなかったというのか?礼儀正しいようだが...戦闘に長けているようだ...悠長に構えている暇はないか?

 

...あまり小出しにしていると、負けますよ?

 

「見かけの割には...あまり戦闘向けの方ではないみたいですね...」

 

「あんまり本気は出していない...今の姿は...」

 

ワタシが妖力を上昇させるが、彼女は冷静そのもの...全く意にも介していない...もっと反応があってもいいのにはずだといるのに...つまらん...

 

「...やっと本気ですか...それに貴女のその眼...何かの呪術でも使ったのですか?」

 

「...ワタシの力の感想よりも...体の変化か」

 

あまり驚いてくれなかったことに、ワタシは内心溜息をつく...

 

我々の体は妖力が上がり過ぎると、人外のような白黒目になってしまう...あまり気にはしていないが変な目で見られるから、それがちょっとな...色々とキツイものがある...

 

 

「まぁ...ちょっと本気だ...頑張って避けろ...」

 

能力を展開し飛ばした札が変化し、形成された武器が嵐のように中国へと飛んでいく!!

 

「手数を増やしましたか!!ですが!遅いです!!」

 

中国は飛び交う武器を掻い潜りながらワタシへと距離を詰めていく...

 

「距離を詰めるのは悪手だ...」

 

懐から札を放つ...中国はその不意撃ちを蹴りで弾き飛ばす...

 

「...これで仕舞ですよ!!」

 

中国の飛び蹴りがワタシの胸へと放たれる!!

 

「げほぁ!!!!」

 

...食べた物ではないが、口から血が噴き出す...

 

ああ...器が悲鳴を上げています...

 

ああ...この後休憩が必要だな...

 

 

 

 

 

「だが!これで終わりだ!!」

 

ワタシは能力を発動し、体の速さを高める...

 

彼女の動きが止まって見える...彼女はワタシが眼前に迫っていることに気づいていない...彼女の胸部に渾身の掌底を放つ...

 

「...ぐは!?何時の間に?」

 

やっとワタシに気づいたのか、彼女はそのまま後退する...

 

懐から治癒札を出して体の傷を癒す...やはり戦闘は苦手だ...毎回傷だらけになる...

 

「...なっ!?これは!貴女の力ですね!!」

 

彼女はワタシに警戒している...中々だな?...それなりの力で放ったはずだが倒れないとは驚きだ...

 

「...びっくりだ...昏倒させたと思ったのだが...」

 

「質問に答えなさい!!!」

 

...中国はワタシに怒号をあげる...酷いな...説明しようとしたというのに...

 

「...質問に答えるが..ワタシの能力でワタシの速度を高めただけだ...これが殺し合いでなかったことをありがたいと思え...」

 

「ぐぅぅ!!」

 

彼女は怒りの表情を浮かべている...大方手を抜かれたと思ったのだろうな...

 

「本気で行かないのは当たり前だろう...まだ本調子ではないからな...」

 

「勝った気でいるのは今のうちですよ...貴女の攻撃で倒れる程軟ではありません!」

 

中国は拳を構える...これ以上は時間と余力の無駄だな...

 

「うむ...仕方ない...では何発で倒れるだろうな」

 

ワタシは札を投げる...

 

「また妙な術ですか!そんなもの見切りましたよ!」

 

「同じ手ではないのだがな...」

 

彼女へと向かう札は、次々と分裂し数を増やしていく...

 

「な?」

 

彼女はそれに気づいて避けようとするがもう遅い...

 

「無駄だ...一度分裂したら最後...何処までも増えるぞ...」

 

放った札は次々と増え彼女の逃げ場を詰めていき、彼女の体に着弾する...

 

「がっ!?ぐ!!?」

 

「威力は大したことはないが、どこまで持つ?」

 

「うあああ!!!」

 

中国は札の嵐を突っ切りワタシへと突撃する...

 

「貴女さえ倒せば!この術は解けるはず!」

 

「ああ...だが無駄な行為だ」

 

ワタシは指を向けて一筋の光線を放つ...

 

光の速さで駆け抜けた光線は中国の体を撃ち貫き、彼女はその場へと倒れる...

 

 

 

「...ごほ!?」

 

「...安心しろ命まではとらん」

 

戦意喪失したようだな...思ったよりも時間をかけ過ぎてしまったようだ...これでは先が思いやられる...

 

「そんな...貴女は...」

 

「まぁ...それなりに苦労はしたがな」

 

中国をそのままにして、我々は屋敷の戸を開く...

 

「待って!!内部に入られたらお仕置きがー!!」

 

後ろから中国の叫び声が聞こえるが、とりあえず無視だ...我々が勝ったんだ...後は好きにしていいだろ?

 

「じゃ...」

 

軽く彼女へ手を振り我々は屋敷の中へと潜入する...

 

さて...竿打の奴...どこへ行った?

 

 

 




紅魔館潜入

ではこれにて


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書と時計と傍観者

館内にて


紅魔館の門番、紅美鈴を降した如月白楽は紅魔館内部に侵入し奥を目指す...

 

目標は屋敷のどこかにいるはずの、彼女の主である華扇のペットである竿打の救出、そして現在進行形で紅魔館は異変の真っ最中であり、彼女達は無事に目的を達成することはできるのであろうか?

 

 

 

 

 

side白楽

 

「...」

 

我々の目の前には広い長い廊下が続いている光景...我々が見たことが無い家具やら浮世絵のようなものが飾ってあるようだ...これが異国の文化というものだろうか?興味深いな...

 

だが屋敷に入ったのは良いが...明らかに外観よりも広すぎる...空間がおかしいとしか言えない...何か術的な物が使われているのだろうか?

 

「あまり時間はかけたくないのだが...」

 

日の傾きは頂点を過ぎている、このままでは華扇様が屋敷に帰ってきてしまう...

 

このことは我らとしても喜ばしいことではありません...長く屋敷を空けていたことが露見してしまう...

 

「...はぁ...前途多難だ」

 

我々は廊下を進み竿打の気配を探る...

 

...この先か...かなり近いところみたいだが...どうなることやら...

 

 

 

 

「...はぁ」

 

目の前の廊下には多数の妖精がウヨウヨしている...

 

この廊下を通れば竿打のいるところまで、すぐに向かえるが...そうもいかないな、相手してもいいが...こちらとしては、先程消耗したことだし無駄に力は使いたくない...

 

「回り道がベストだな」

 

我々は近くにあった扉を開けて迂回をする...

 

何となく道順は分かっている...残りは...無事にたどり着くかだ...

 

早く終わらせないと...

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けて通路を進んでいくと、辺りには書の纏まった棚が所せましと並んでいる広い空間に辿り着く...

 

「これが図書館って奴か...確かに噂通り本はあるが...まずいかもな」

 

この空間から嫌な空気が流れているし、確実に向かう道を間違えた気がする...

 

「...回復しきっていないのに」

 

...こういう時こそ...落ち着くのです...我らの力は、そこらの者に劣るはずがない...用心して...警戒して進むのです...

 

「...ふぅ...出来るだけ避けていこう」

 

我々は図書館を進んでいく...

 

 

 

 

図書館を歩いて、しばらくすると、広い空間に出てとある光景を発見する...

 

それは白黒の少女と紫色の少女の弾幕ごっこだ...

 

「ほらほら!!行くぜー!!」

 

「待って!!持病の喘息が...むきゅあ!!?」

 

白黒の少女が放った弾幕が紫色の少女を弾き飛ばす...どうやら幕引きらしいな...戦いの過程を見ることができなかったな...

 

「少し遅れたみたいだな...見れなかったのは残念だが...最近の人間って強くなっているみたいだな...」

 

...時代と共に術も強力になりますわ...それは当たり前のことよね...未知の物がある以上、出来る限り避けて行ったほうがいいです...余計なことに首を突っ込む必要はないわ...

 

「...はいはい...分かっている」

 

我々は、その場を後にして奥へ進んでいく...

 

しかし収穫はあったな...幻想郷の人間の観察をしてみる必要性が出てきたということをな...

 

「...面白い...この世界に少しだけ興味が湧いたな」

 

我々は図書館を後にして、竿打の気配がする方へ向かう...

 

 

 

 

 

 

図書館を抜けて廊下に出て竿打がいる方向へと歩を進める...

 

気配が近くなってきた...このまま竿打を回収して早急にお暇だ...

 

竿打は...この先の調理場らしき場所にいる...ですが...このまま楽には進まないようね...

 

「はぁ...」

 

「...今日は来客が多いわね」

 

廊下の奥を見ると、そこには銀髪の女がこちらを見つめている...

 

海の向こうの世界の格好をしているようだ...可愛い格好だが我々には似合いそうもない...この洋館の内装にあった服装をしているし、明らかに向こう側の人間のようだ...

 

女はこちらへと向かってくる...

 

「...新たな侵入者かしら?...聞いていたのは紅白と白黒の少女と聞いていたけど」

 

「いや...私はそれとは関係は無い...私は如月白楽...侵入者というより...ペットがこの屋敷に入り込んでしまったから探しに来ただけだ」

 

「そう...美鈴...また侵入者を通したのね」

 

銀髪の女は...ナイフを手に取り我々に向ける。

 

 

 

...人間にしては殺気が濃い...面倒な奴にあってしまった...こういう荒事に慣れた者特有の雰囲気を出しているようだ...

 

...竿打まで後わずか...最後の最後で貧乏くじを引いてしまいましたね

 

「...我々に敵意を向けるのは、余りおすすめしない...我々はただペット探しをしているだけだ...それを終わらせたらさっさと帰る...」

 

「本当にペットを探しているだけなら通すけど、お嬢様の命令で侵入者は排除するように言われているのよ」

 

...排除...全く楽に進むことはできないようだ...しかしお嬢様...確実にこの異常気象の元凶というべきか...

 

「お嬢様...この館の主というべきか?」

 

「ええ...そしてレミリアお嬢様に仕えるメイドこと、この私十六夜咲夜でございます...」

 

「...冥土?」

 

...冥土?あの世のことか?言っていることが良く分からない...

 

「...冥土ではなくメイドです...清掃、炊事を行う女性使用人の事を言いますよ?」

 

咲夜と名乗ったメイドは腰に手を当てて溜息をつく...何だ...恥をかいた気がする...無知は罪だ...

 

気を付けた方が良いですね...只の人間に見えるけど、明らかに能力持ち...油断は禁物よ

 

咲夜は再度ナイフを我々に向ける...

 

「で?退くの?退かないの?」

 

「退くつもりはないが...お前が立ちふさがるだけならやるだけだ...」

 

ワタシは薙刀を出現させ回転させながら、咲夜へ飛びかかる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な人...」

 

咲夜の姿が一瞬で消え、ワタシの薙刀が空を切る?

 

「な...?消えた?いや...足が速い?」

 

バカな...ワタシの力を使ったのだぞ?人間に避けられるはずがない!!

 

辺りを見回すと、こっちに飛んでくるナイフが多数全方向に囲まれている!?

 

「何だこれは!」

 

飛んできたナイフを全て弾く!一瞬でこの量をどうやって展開したというのだ!?

 

...困りましたね?確かにタイミングは完璧だったはず...何かの能力かしら?術者に目を放すのは危険ですね...

 

「どこだ!どこへ行った!?」

 

「後ろでございます...」

 

「!?」

 

後ろを向くとそこには咲夜がナイフを大量に投げている光景が映る!!

 

さっきと同じように飛んでくるものを弾いていくが、向こうの方が手数が多い...取りこぼしでワタシの体が傷ついていく...

 

 

「ぐぐ...ああ...傷ついてしまった...」

 

...着ている物がワタシの血で汚れてしまった...あああ!!華扇様にバレてしまう!!

 

「大きい的ね?当てやすいわ!」

 

遠くでは、我々をせせら笑う咲夜の姿...あのスキマ何たらと似た能力でも持っているというのか?

 

能力はともかく...本気出さないと負けるわね...

 

「...ち!」

 

戦闘は専門ではないが...確かに本気で行かないとやられるのは目に見えている!!さっさとワタシの能力で倒す必要が!

 

一度攻撃を当ててしまえばワタシの勝利は確定する!!何の能力を持っているか分からないが見切ってやる...ワタシの速度を超えることなぞ出来る訳がない!

 

咲夜はワタシを見つめて、腕を組んでいる。

 

「反応が遅いわ...これじゃあ私を捕まえることはできないわよ」

 

「後悔するな!!」

 

 

 

ふっ...

 

「なっ?」

 

「もらった!!」

 

能力を使用し彼女の後ろを取った!...避けることなんでできるわけがない...薙刀を振り下ろせば終了だ!

 

「足が速いようね?...でも遅いわ」

 

ザクザク!!!

 

「うぐ!!!?」

 

背中に激痛が走る...ナイフが刺さっている!!そして後ろにいるのはメイドこと咲夜が...何でこの女...ワタシの後ろにいるんだ?さっきまでワタシが後ろを取っていたというのに!?

 

「何時の間に移動した...な...何だ...お前...」

 

「タネのない手品よ...貴女は隙だらけなのよ」

 

...狂人...悪魔だ...さっきからヒトの事をザクザクと刺して...血も涙もない...だから人間は嫌いなんだ...

 

...少しイラッと来ましたわ

 

 

 

 

side咲夜

 

「赤い景色...腐臭...亡骸...」

 

白楽は顔を青くしながら後退している...さっきまでの威勢は何処へいったのかしら?何かぶつぶつと呟いているし...私に対してびくついている...

 

それに...あの白黒目を見れば分かる通り確実に妙な能力を持っているわね、動きは速いようだけど大したことない...気にすることはないわ

 

「さて...と...そろそろ排除させてもらうけどいいかしら?」

 

「血も涙もない...だから人間って嫌なんだ..」

 

何やらブツブツ言っているわね?さて...この子に構っている暇はないわ...時間も有限だし早く他の侵入者を...

 

「ううう...フフフ♪」

 

「!?」

 

「アッハッハッハ!!!!」

 

...先ほどまで狼狽えていた白楽が急に笑い出す?何よ...この寒気のする不気味な笑い声は...

 

「アハハ!!...面白いですね?まさか我らが、ここまで追い詰められるのも中々の絵になるというものです...」

 

白楽は自身の血を指につけ唇に塗る...さっきまでと雰囲気が全く違うわ...瞳も赤から紫へと変色しているし白い髪もどんどん黒く変色してきている...彼女に何が起きているというの?

 

「貴女の能力かしら?」

 

「ええ...正解です...でも言う必要はありませんよ...貴女はここで終わるのですから」

 

ばしゅ!!

 

突如脇腹にに衝撃が走り吹き飛ばされる!!

 

「かは...」

 

一体何が起きたの?何も見えなかったわ!時を一瞬止めて白楽から距離を取るが彼女は驚きもせずに高笑いするだけ...

 

「アッハッハッハ!!!...反応が遅いのは貴女も一緒じゃないですか...幾ら貴女の力が強力でもワタシの攻撃から逃れられる術はありません」

 

白楽は笑みを浮かべながら手鏡を取り出して化粧をしている...

 

丸で別人にでもなったと思うくらい変貌しているわ..何かやばそうね...先程と比べて余裕があるみたい...でも明らかに態度が違くなったわ...

 

「...貴女白楽よね?念のために聞くけど?」

 

彼女が化粧をし終えると私の方を見つめる。

 

 

 

 

 

「その名前は正しくありませんね...その名前はワタシの妹の名前...ワタシの名前は如月嘉玄...ごきげんよう...」

 

(如月嘉玄 きさらぎ かふか 通り名:???導師)

 

「嘉玄?」

 

名前が違う?何このヒト多重人格者なの?妹がお世話になったということは...

 

嘉玄は急に笑みを消して私に指を向ける...

 

「さて...と...竿打の回収もしないといけないし...貴女と遊んでいる暇は無いのですよね...」

 

このヒトは不味い...この先に通したらお嬢様の身に危険が及ぶわ!!!

 

「通すわけないでしょ...っ!!」

 

時を止めようとすると私の体が動かなくなる?何で?

 

「が!?」

 

「フフフ...何の能力かまでは分かりませんが...侵食された体では辛いでしょう?...散々白楽を痛みつけたみたいだしあの子の仇をとりましょうか...」

 

まずい...ここは...

 

 

 

 

 

 

 

side嘉玄

 

「...あら?」

 

咲夜の姿が消えワタシの術が空を切る?...つまらないですわね...もう少し遊んであげようと思ったのですがね...

 

(...逃げられたようだな...嘉玄)

 

白楽が話しかけてくる...落ち着きを取り戻したみたいですが...相変わらず詰めの甘いようです...

 

「五月蠅いですよ...白楽...貴女が苦戦しているからワタシが出ることになってしまったのですわ...反省なさいな」

 

(悪かった...強かったんだ...)

 

白楽が謝罪をしていますが...些末なことです...しかし...

 

「少し術が甘かったですかね?」

 

札を取り出し妖力を込める...

 

「あのメイドとかいう者がまた来るかもしれませんし...この子に相手をしてもらいましょうか?」

 

ワタシは札を投げる...これで対策は打たせてもらいましたよ...

 

「...う」

 

眩暈がして、景色が歪み体がふらつく...

 

...あまり力は使えませんか...やはり相当弱っているみたいです...長年の封印が堪えましたか...

 

(...大丈夫か?)

 

「...後は任せますよ...残りの仕事はちゃんとこなしなさいな...」

 

白楽に器の所有権を渡して引っ込みましょう...流石にも...

 

 

 

 

 

side白楽

 

「...すまない...気を付けるよ...嘉玄」

 

(分かっているなら...さっさと終わらしてくださいよ)

 

「分かった...」

 

嘉玄も封印明けで消耗しているみたいだ...無理をさせてしまったな...ここからはワタシの力で何とかしないといけないのに...

 

「...迅速に終わりにしよう...残りは竿打の救出のみだ...」

 

我々は竿打の下へと急ぐ...早くこの危険な場所から退散するとしよう...

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃...紅魔館の廊下にて...

 

 

「ちっ...不覚を取ったわね...あの侵入者は厄介ね...お嬢様の下に近づかれる前に倒しておくべきね...」

 

白楽・嘉玄から逃げ出した咲夜は廊下の隅で息を整える...余力が戻ったら再度嘉玄達を追撃しようという魂胆なのだろう...

 

だが...彼女の心理を予測していた者は彼女の次の行動はお見通しであった...

 

「...?」

 

咲夜の目の前に一枚の紙が床に落ちる...

 

その紙が弾け飛ぶと同時に辺りの影がグネグネと蠢き次々と集合して人型を形成していく...

 

「...な...何なの?嫌な予感が!!」

 

身の危険を感じ、咲夜はその影に攻撃を仕掛けるが、時すでに遅し...

 

 

キィィィン!!

 

 

「...!?」

 

「...」

 

影は形成をし終え、咲夜の攻撃を弾き、咲夜は目の前の光景に目を見開く...

 

「なっ?」

 

彼女の眼前には、自分自身...十六夜咲夜自身の姿をした者の姿だった...

 

その咲夜の姿を写した者は黙ってナイフを本物の咲夜に向ける...

 

「敵意丸だしね...嘉玄の能力かしら?」

 

咲夜はナイフを自身の偽物に向ける...

 

「悪いけど...時間がないのよ...そこを通してもらうわ!

 

咲夜は攻撃を仕掛けるが、偽物はいとも簡単に攻撃を弾く...

 

「な?」

 

「...」

 

咲夜は偽物から距離をとり、驚きの表情で偽物を見つめる...

 

戦闘慣れしている彼女だからこそ今の瞬間に理解する...この偽物は自分と同等の力を持っているのだと...

 

「...こんなものに時間を取られるわけにはいかないのに...」

 

彼女はナイフを大量展開し偽物へと向かう...

 

足止めが成功している今...白楽達の目的は無事に達成されるのか?

 

 




メイドとのバトルともう一人の主人公の登場です...

ではこれにて


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興味本位

紅魔館終了編


十六夜咲夜を下した白楽&嘉玄は紅魔館の奥地へと足を進ませていく...

 

当初の目的である竿打を見つけることではあるが、大幅に時間を消費している...

 

夕日は沈み始め時間のない状況...彼女達は無事に任務を達成できるのだろうか?

 

 

 

 

 

side白楽

 

「まずい...見つからん...」

 

長い廊下を歩きながらワタシは焦燥に駆られていた...窓の外を見る限り日が落ちているのが目に見てわかる...

 

時間のかけすぎだ...このままでは竿打の救出どころか...華扇様のお仕置きを受けてしまう!!

 

(時間がありませんよ?)

 

嘉玄からは煽るような苦言をもらうが...何とかしてもらいたい!!我々の体は一つなのだ!!

 

「協力してくれ!嘉玄!!このままではお仕置きを食らうのはワタシだけではない...お前もだぞ!!」

 

(別にワタシの方はお酒飲めますし...関係のないことですわ)

 

嘉玄は無慈悲な返答する...ずるい...ワタシ達姉妹なのに...

 

「少しはワタシのことを考えてくれないか?ワタシは嘉玄とは違って下戸なんだぞ!?」

 

(そればかりは諦めなさいな...今は貴女が表に出ているのです...受けるのは貴女が道理では?)

 

「...」

 

駄目だ...利己的主義なこいつに何を言っても無駄か...昔はこうではなかったというのに...

 

なら...さっさと竿打を救出して帰還するのが一番の最善策か...

 

 

 

 

 

 

しばらくして...

 

長い廊下を歩いていくと、何やら良い匂いが鼻孔をくすぐってくる...

 

「...ん?」

 

(あら?食べ物の香りですかね?しかし今までで嗅いだことのないものですわね...)

 

匂いを辿っていくと、とある一室にたどり着く...ここから食べ物の匂いがする...

 

「...念のため確認するか?」

 

(ご勝手に...時間がないことをお忘れなく)

 

嘉玄の許可をもらいワタシは扉を開く...

 

扉を開くとそこには、見たことのない空間が広がっている...

 

「...」

 

おそらく台所であると思うが、やはり異国の文化なのだろうか?一面白一色になっている...

 

(これはこれは...ずいぶんとキレイな場所ですこと...)

 

「ああ...これが異国の文化か...」

 

...学ぶことが多すぎるな...やはり封印されるというのも考え物だ...その封印されてしまった時間の分だけ我々が遅れてしまうというものだ...

 

...実に惜しいことをしたものだ

 

 

(感傷に浸かっている暇はあるのですか?時間がないと言ったはずです)

 

「...ああ」

 

ワタシは台所を見回す...竿打を探さないと...

 

 

 

 

「くえー!!」

 

「...!」

 

声のする方を見ると竿打がいた!!!

 

何やら小型の檻に入っているようだが無事なようだ!

 

「よし!!目標達成!!」

 

(ふふふ...ですがあと少し遅れていたら大変でしたね?)

 

「ん?」

 

嘉玄の言葉に引っ掛かり檻をよく見つめると、何やら紙が貼ってある...

 

(今日のメインディッシュ用の鳥...触れるな)

 

紙にはそう書かれている...よく分からないが...窮地を脱したようだ...

 

(早く竿打を開放しなさいな...これで我らの役目は終了です...)

 

「ああ...」

 

ワタシは檻を壊して竿打を救出する...残りは帰るのみだ

 

「ん?」

 

何だ...?強力な力を感じる...妖力の類ではなさそうだが?

 

(何をしているんです?早く帰りませんと華扇様に叱られますよ?)

 

「ああ...だがすまない少し寄り道をいいか?」

 

(ご勝手に...)

 

嘉玄の了承を得たワタシは力を感じる方へ向かう...ただの興味本位なのかもしれないが...何かがざわつく...

 

奥へ進むと広い空間に出る...扉の影から中の様子を確認すると、力の発生源が確認できた...

 

 

 

 

「アハハハハ!!!ブッツブレロ!!」

 

そこには何かと戦っている金色の髪をした少女がいた...赤い服を身に着け背には宝石のようなものがついた翼がある...

 

少女は手にした燃えている剣を振り回し辺りの物を破壊している...

 

「ううう!!フラン!落ち着いてよー!!」

 

そして部屋の隅を見ると、水色の髪をした桃色の服身に着けた少女が確認できる...背には蝙蝠のような翼がついている...

 

少女は頭にのせた帽子のようなものを目深にかぶり頭を両手で守るようにその場でうずくまっている...

 

(片方はともかく...力が暴走しているようですね...感じる変な気は彼女から発せられているようですね)

 

「ああ...そのようだ」

 

確認完了だ...出来ることならもう少し観察はしていたいが、時間が余りないな...この力が発生しているこの空間にいれば...封印で弱った体も回復してくれるはずだが...

 

(悪くはない考えですが...危険であることが変わりませんよ...ほら見なさい...)

 

「ああ...そういえば戦っている奴がいたな...」

 

忘れていた...そういえば何かと戦っていたようだが...

 

「なっ!?」

 

「ちっ!!この馬鹿力!!やりづらいことないわ!」

 

金髪の少女の相手をしていたのは...黒い髪をし変わった巫女のような装束を身に着けた...この前我々を助けた...あの人間!?

 

「...」

 

(ふふ...実力はあるようですが...苦戦を強いられているようですね...どうしたんです?白楽...我らを助けたあの巫女に驚きでも?)

 

「いや...そういうわけでは...」

 

人間は嫌いだ...これは昔からの恨みだ...別におかしいものはない...だが...

 

 

(ん?あ?アンタ起きたのね...)

 

(こら!)

 

(怪我人何だから寝ていなさい!とりあえずおかゆが出来たら、起こすから!)

 

「...」

 

ワタシも...封印のせいで体だけではなく、心もぬるくなってしまったようだ...

 

ワタシは巫女へと札を投げる...投げた札は霊力増強の符...これでならもう少しは戦えるだろう...

 

(それが貴女の選択ですか...白楽?)

 

「...借りを作ったままでは気持ち悪いからな別にいいだろ?嘉玄」

 

(...全く...それよりも良いのですか?屋敷に帰らないと)

 

「...あ」

 

ま...まずい...悠長にしすぎたか!!このままではお仕置きを受けてしまう!!

 

「帰るぞ!竿打!!」

 

「くえ!!」

 

竿打を抱えたまま、ワタシは能力を使い光の速さで屋敷方面へ飛ぶ!!月が出てきてしまっている!何やっているんだワタシは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

side霊夢

 

「はぁ...ちょっときついかも」

 

私はフランの方を見てため息をつく...レミリアの戦いが終わったら連続で彼女とも戦うことになるとは...流石にも疲れるわね...

 

「ミコ!モウツカレタノ?」

 

フランは私に向けてレヴァテインを向ける...これは万事休すかしら?

 

びゅ!

 

「!?」

 

突如飛んできたものを私は反射的に手に取る...飛んできたのは...お札?種類からして霊力増強の符だわ...何でこれが...

 

飛んできた方向を見ると、白い長い髪をし同色の中華服に身を包んだ女性が去るのが確認できた...あの時と姿が違うけど...彼女は!

 

「ち...追うのは無理ね...とりあえずこれは使わせてもらうわ!」

 

霊力増強の符を使い、私の力を回復させる...

 

「モットモットアソンデヨ!」

 

フランがこちらへとレヴァテインを振り下ろすが、もう遅い...

 

「遊びは終わりよ!!」

 

ボン!!!

 

「ゴハァ!?」

 

0距離で光弾を炸裂させ、彼女を撃退する...この符がなかったら危なかったかもね...

 

 

 

「ん!?何だ?終わったのか?」

 

遠くから彼女がやってくる...幻想郷の白黒魔女こと霧雨魔理沙が...

 

「何だ...全部お前がやっちまったのか...私にも残し...」

 

「遅い!」

 

スパーン!!!

 

「あだ!!」

 

お祓い棒で魔理沙の頭を叩く...こいつ私と一緒に来たのにどこで道草食ってたのよ!!

 

「何で殴るし...」

 

「もう疲れたのよ!!これで異変はおしまい!!帰るわよ!!」

 

私はその場を後にする...

 

あの子には今度会ったらお礼を言う必要があるわね...

 

でも...紫の話では封印されていた者のだったわね...退治するって言ってしまったし...どうしよ...

 

 

 




次回もお楽しみに

ではこれにて


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選択は1つだけ

紅魔郷終了



紅い霧の異変の首謀者が倒され、幻想郷を覆っていた紅い霧は跡形もなく消滅する...

 

自分のすべきことを終わらせた如月白楽・嘉玄は、茨木華扇のペットである大鷲の竿打を連れて急いで屋敷へと戻る...

 

なんやかんや長く屋敷を開けてしまった上、能力を使って戦闘を行った事を華扇に知られる前に戻らなければならない...

 

 

 

 

「まずい!!!月があんな高いところに!!」

 

(悠長に構えていた結果ですよ...残念ですが華扇様のお仕置きは貴女が受けてください...白楽)

 

「そんなこと絶対に回避してみせる!」

 

垣根を飛び越え、彼女たちはやっと華扇の屋敷へと帰還する...

 

屋敷の灯りがついていないことを確認した白楽はほっと胸をなでおろす

 

「まだ...帰っていないようだ...よかったこれで何とか」

 

「...何がよかったの?」

 

「!!?」

 

声のする方向を見るとそこには...

 

 

 

 

満面の笑みで白楽の肩を掴んでいる茨木華扇の姿があった...

 

「な?」

 

「日中何か問題があったみたいだけど...どうしたの?」

 

「えっと...それは...」

 

「とりあえず屋敷の中で話をしましょうか...白楽・嘉玄」

 

彼女たちはそのまま華扇により屋敷に連行される...

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この馬鹿者ー!!!!」

 

屋敷に入って数秒で華扇の雷が落ちる...

 

異変のことについて全て話した白楽は華扇の私室にて正座をしている...

 

「これは仕方なく!!」

 

「竿打のことはともかく!力を取り戻すために勝手に戦ったってどういうことよ!!!」

 

華扇の怒りように白楽は冷や汗を流しながら目を泳がせる...この状況をどうするか考えているようだが既に手遅れである...

 

「か...嘉玄...手を貸してくれ...」

 

小声で白楽は語りかけるが、嘉玄からの反応はない...

 

「...?」

 

僅かに違和感を感じた白楽は自身を確認する...彼女の中に嘉玄がいなくなっていることを...

 

「あ...あいつ!!一人だけで逃げたな!」

 

「...どうやら嘉玄の方は逃げたみたいね...昔から隠れるのと逃げるのが得意みたいね」

 

「ちくしょ...」

 

小声で毒づく白楽に対し、華扇は白楽の体に抱き着いて足を絡める...

 

「今回は少しお仕置きが必要のようね...白楽」

 

「え?何で?」

 

予想とは違ったことに狼狽える白楽に対して華扇は笑みを浮かべる

 

「お酒で酩酊させたところで意識を飛ばせてしまったらお仕置きにならないわ...体罰も同様よ...だから体で分からせてあげるだけよ...」

 

華扇の手が白楽の中華服のスリットの中に入り下着に手をかけ、ようやく白楽はその内容を理解したかのように首を振る

 

「待ってください!!それだけは!ダメです!!」

 

「貴女に拒否権はないわ...今日は沢山苛めてあげる...んっ!!!」

 

「んー!!!!」

 

ジタバタする白楽に対し、華扇はそのまま覆いかぶさりお仕置きが開始されるのであった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある森にて

 

(ふふ...全くあの子は賢い選択ができないようですねぇ)

 

影が集まりそれが人の形になり始め、如月嘉玄の姿へと形を変える...

 

「選択は1つだけ...2つに1つ...それが吉とでるか凶と出るか...その選択肢を選べるのは貴女次第なのでしてよ...白楽」

 

嘉玄は自身の姿を確認した後、幻想郷の夜の空へ浮かぶ月を見つめる...

 

「そう...選択肢により運命は変わる...聖人として進むか...堕ちる...か」

 

薄ら笑いを浮かべた彼女はとある1点を凝視する

 

「...」

 

その先は何もない木々が生い茂る森が広がっているだけで生き物の気配はない...

 

「...ふふ...封印明けとはいえ...面白くなりそうです」

 

そのまま彼女は深い闇の中へと消えてなくなる...

 

 

 

 

これにて紅い霧の異変は終了するが、影のように裏で蠢いている者たちがいるのも事実...本当の平和が訪れるのだろうか?

 

 




次回日常編

ではこれにて


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