カラテだいおうの弟子、チャンピオン目指します! (左回りの変態)
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タマムシシティ

第4世代で止まっていた筆者はサンムーンを買いました。5世代以降のポケモンは全部、新しいポケモンという認識です。ゾロアーク、お前伝説じゃなかったのか・・・


場所は、ヤマブキシティのとある道場。ぱっと見の外観はポケモンジムに似ているし、ジムと隣接しているのでジムに挑戦に来たトレーナーが道場破りと間違えられてしまい、痛い目に合うというのはヤマブキシティでは冗談としてよく聞く。特にヤマブキシティのジムリーダーはエスパー使いであることから、あくタイプのポケモンを引き連れて挑みに来たトレーナーにとっては悲惨な結果が待っている事は容易に想像がつくだろう。そんな道場を旅立つ1人の少年と1匹のポケモンがいた。

 

「もう10歳か、速いな……」

 

からてだいおうはしみじみと言った。

 

「6年間ありがとうございました。必ず、チャンピオンになって帰ってきます!」

 

「楽しみにしてる。リルもライトの事を頼むぞ」

 

コクリと頷くリルと呼ばれたリオル。少年ライトと一緒に旅立つポケモンであり、兄弟のような存在だ。

 

「では、行ってきます」

 

そう言ってライトは道場を後にした。まずは、ナツメと両親に挨拶しなくてはいけないので、早足でヤマブキジムに向かう。ワープ装置という最先端技術で挑戦者を惑わすジム。ライトは正解のルートを覚えてしまっているが、初見の挑戦者は絶対に迷う。ワープ装置なんて技術があるならリニア鉄道の計画なんていらないのではとライトは思うが、もしかしたら短距離ワープしか出来ないのかもしれない。それかナツメの超能力。

 

「ナツメ、こんにちは〜」

 

「挑戦?それとも挨拶?」

 

「聞かなくてもわかってるよね!?」

 

「ふふ、からかっただけよ。このジムを最後にするのね……効率悪くないかしら」

 

ライトは計画がバレてることには驚かない。相手はエスパー少女だ。効率に関しては余計なお世話だ。ジムリーダーは挑戦者のジムバッジの所持数に応じて使用するポケモンの強さを変える。ジムとはあくまでもトレーナーの力量を測る場であるからだ。ライトはジムバッジを7個所持した状態でナツメと戦いたいと思っている。だから、効率は悪くても譲れないのだ。

 

「私、ライトになら本気出すよ?」

 

「(私では相性が悪い、勘弁して欲しい)」

 

リルが波導で語りかける。ナツメはエスパーでその声を聞き、ライトは波導でその声を聞いた。

 

「リルの言う通りだ。これからの冒険で新しい仲間を探して万全の状態で挑むよ」

 

「そうでないと困るわ。今のままだと私の勝つ未来しか見えないもの」

 

「それは煽りか?それともほんとに未来見てんの?」

 

「さぁ、どうかしら」

 

ナツメはエスパーで未来を見たりも出来るが、自分である程度の線引きをしている。例えば、ライトがチャンピオンになるかどうか見ようと思えば見る事は出来る。しかし、それでは面白くない。何気無い会話をする時もそうだ。相手の返す言葉がわかるなら会話をする必要がない。会話を楽しむという事を覚えたナツメは一歩大人になったのだ。

 

「じゃぁ、俺らはもう行くぜ!バッジを7個集めたらまた来るから、そん時はよろしくな!」

 

「ええ、楽しみに待っているわ」

 

「(では、ナツメ。失礼する)」

 

ライトとリルは両親に挨拶すべく家に帰った。道場に住み込みで修行をしていた為、家に帰るのは久しぶりだ。とはいえ、定期的に家には帰っていたので、そこまで久しぶりというわけでは無いのだが、家にいた母は

 

「ライト、リル、おかえりなさ〜い!お母さん寂しかったわ〜」

 

と言いながら2人に抱き着く。十分に2人を堪能した母は父に電話をかけていた。

 

「すまんなぁ、息子達の旅立ちだっていうのに仕事休めなくて」

 

「 気にしなくていいよ。父さん」

 

「ありがとなぁ、父さん嬉しいよ。2人とも気をつけて行ってくるんだよ」

 

「そうよ、何かあったらいつでも帰ってきていいのよ」

 

「ありがとう。じゃぁ、行ってきます」

 

そう言ってライトとリルは旅だった。最初に向かう場所はタマムシシティだ。ヤマブキシティと凄く近く、偶に家族でデパートに出かけたりもするので、旅の初めに最適な場所だからだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヤマブキシティから少し歩けば直ぐに着く場所にタマムシシティはある。近すぎて旅という感じはしない。ヤマブキシティと同じく都会という雰囲気が漂っている。

 

「旅というよりお使いみたいだな」

 

「(ならば、お使い程度でジムに挑めばいい)」

 

「随分と余裕そうだな、リル」

 

「(6年間、道場で鍛えたんだ。バッジ未所持のレベルに合わせたジムなど勝てぬ道理は無い)」

 

「それもそうだな。サクッとバッジ貰ってくるか」

 

完全にジムを舐めていた2人。この時の2人は、タマムシジムに入った時に発狂せざるを得ない状況に陥るなんて思いもしていなかった。

 

「こんにちは〜、ジムに挑戦しにきました。ライトっていいます。よろしくおねがいします」

 

「ようこそ。わたくし、タマムシジムのエリカと申します。あなた方が来るのは3年前から存じておりました」

 

「ちょっと待ってくれエリカさん。どっかで聞いた事ある言葉なんだけど」

 

「はい、ナツメちゃんから「リオルを連れた男の子がタマムシジムに挑戦しに来るけど、バッジの所持数に関係なく本気出していいよ」と言われたので、本気を出させて貰います」

 

「(くっ、あの女……)」

 

「あのやろー!ぜってぇ許さねぇ」

 

「本当は3対3の形式で行うのですが、所持しているポケモンはリオル1匹とナツメちゃんから伺っているので1対1でどうでしょうか?」

 

「それでお願いします。リル引き締めろ!こんなとこで躓いてたらチャンピオンなんて夢のまた夢だぞ!」

 

「(ああ、わかってる。それに、ジム戦というのは初めてだからな。少し楽しみだ)」

 

ジムリーダーエリカはモンスターボールを1つ取り出し所定の位置につく。ライトもリルと一緒に反対側のエリアに移動した。

 

「ラフレシア!おねがいします」

 

エリカが出したポケモンはラフレシア。どく・くさタイプのフラワーポケモンだ。かくとう技が、どくタイプに対して効果が今ひとつとライトは苦戦を強いられるのが予想される。かくとうタイプのリオルしか持っていない挑戦者に対して、どくタイプのポケモンをジムリーダー側が出すというのは鬼畜にも見えるが、きっと偶々である。実際ラフレシアはエリカの手持ちポケモンの中でも主力メンバーの一体。おしとやかなエリカがそんな鬼畜な訳はない。

 

「(リル、聞こえるか?)」

 

ライトは波導でリルに語りかける。

 

「(ああ、聞こえている)」

 

「(よかった。ビルドアップしといてくれ)」

 

「(もうしている)」

 

そして、ここにも1人、否、2人鬼畜と思われる行為を行っている者がいた。ビルドアップは攻撃力と防御力を上げる補助技だが、この世界では補助技について詳しく知る者はほとんどいないので、強くなるなぁ程度の認識だ。そんな技を対戦前に行っていた。実際、バトルの準備と言ってしまえばそれまでなのだが、補助技という概念が一応ある以上グレーな行為と言わざるを得ない。しかも、波導での会話が他人に聴かれない事をいいことに意思疎通し放題である。

 

「では、これよりポケモンバトルを開始します。エリカ様に勝とうだなんて100年早いわ!」

 

「すいません。審判に公平性を感じられないのですが」

 

ライトの意見はもっともだが周りにはタマムシジムの関係者しかいないので、その声は虚しく消えていった。完全にアウェイである。

 

「始めっ!」

 

審判の声とほぼ同時にリルはラフレシアに一気に距離を詰める。繰り出す技は【はっけい】。修行を積んでも相手を麻痺にさせる確率は40%か50%程度だが数を打てばいつかは麻痺になるだろう。リルの拳がラフレシアを捉える。ラフレシアは粉を巻きながら吹き飛ばされるが、なんとか耐える。

 

「すごい一撃ですね。鍛えられているのがわかります」

 

「ありがとうございますってリルの代わりに礼を言っときます」

 

「ですが、あなたのポケモンは体が痺れているのではないですか?」

 

リルは殴った時に吹き出した粉で逆に麻痺状態になってしまった。これはラフレシアの特性[ほうし]によるものだ。攻撃を受けると近くにいる敵に[ほうし]を撒き散らすという特性だ。ビルドアップをしていたリルの【はっけい】はかなりの威力だったが、どくタイプのラフレシアには威力が半減した為、少しキツそうだが、まだ戦えるといった表情だ。

 

「(くっ、体がうまく動かない)」

 

「(リル、麻痺になっちまったもんは仕方ねぇ。一発の【きあいだま】に全てこめろ!ぜってぇ外すなよ)」

 

「(無茶いうな!こんな状態で撃った【きあいだま】なんて当たる訳がない!)」

 

と、喧嘩してる間にラフレシアの【ギガドレイン】でリルは体力を吸われた。エリカはラフレシアのダメージを少しでも和らげようと【ギガドレイン】を多用する作戦に出る。リルが麻痺状態とはいえ油断はしない。

 

「(リル!動くことは出来ないのか?)」

 

「(多少は動ける。少し動きづらいだけだ)」

 

「(おーけー、じゃぁ、今から俺が言う事を実践してみてくれ)」

 

リルはライトの作戦を聞いて、そんな事出来るものかと思ったが、現状やるしかなさそうだと悟った。集中力が必要な事なのでリルは【めいそう】に入る。その間にラフレシアの【ギガドレイン】で体力を吸われていく。

 

「どうしました?もしかして諦めてしまわれたのですか?」

 

エリカは煽りではなく純粋に失望していた。ナツメが本気を出していいと言うから期待していたが、状態異常で何も出来ずに負けるなど、初心者同然ではないか。そもそも、ライトはバトルが始まってから一言も喋っていない。ただ、リルをみて表情を変えてるだけだ。ジムリーダーの立場として挑戦者を力量を測らないといけないので、【ギガドレイン】を多用し様子見をしていたが、もう必要ないだろう。

 

「ラフレシア!トドメです【はなびらのまい】」

 

「(いまだ!リル!!)」

 

「(くらえっ!!)」

 

リルの手から放たれたのは【きあいだま】なのだが、それは信じられないくらいの輝きを放っていた。あれを食らっては不味いと思ったエリカはすぐさま回避行動をとるようにラフレシアに指示する。間一髪で回避に成功したラフレシアは、リルにトドメを刺すべく【はなびらのまい】をもう一度リルに放とうと試る。

 

「ラフレシアっ!だめ、後ろよ!」

 

エリカの声がラフレシアに聞こえた時には既に【きあいだま】がラフレシアの背中に直撃していた。ラフレシアには理解出来なかった。さっき交わした筈の攻撃が何故、後ろから飛んでくるのか?そんな事を考えてる間に自分の体は挑戦者側の壁に叩きつけられ意識を刈り取られていた。

 

「ラ、ラフレシア戦闘不能……よって勝者…ライト」

 

「よっしゃぁぁぁああ!!!」

 

「(ふう、疲れたな)」

 

「お疲れさん!ポケセンに連れていくからモンスターボールに入っとけよ」

 

「(体も痺れてるしな、助かる)」

 

無事にジムリーダーに勝利したライトの下にエリカが近寄り、当然の疑問を投げかける。最後の技はなんだ?という質問だ。エリカはまだ若いが、それなりに冒険をしてジムリーダーという地位についた。そんなエリカが見た事無い技だったからだ。

 

「最後の技ですか?他のトレーナーに内緒にしてくれるって言うならいいですよ」

 

「当然、心得ております。わたくしの中に留めておきます」

 

「えっと、なんて言ったらいいのかな……【きあいだま】を波導で包んで放ったみたいな?」

 

「波導…ですか?」

 

「そうです。多分リルぐらいにしか出来ない技だと思います。【きあいだま】でさえ結構な集中力が必要なのに、そこに波導で包み込むなんて芸当が出来るのはね」

 

「なるほど…鍛錬の賜物というわけですね」

 

「咄嗟の思いつきですけどね」

 

「まるであなたが考えたような言い方ですね。戦闘中は一言も声を発していなかったと見受けられましたが」

 

「あー、波導を使ってリルと会話してたって言ったら信じてもらえます?」

 

「また、波導ですか……まぁ、ナツメちゃんのお友達という事で納得致しましょう」

 

「凄く不服なんだが……」

 

エスパーと波導を一緒にしてもらいたく無いと思ったが、はたから見れば同じようなものなのかもしれないと思い、ライトはこれ以上何も言わなかった。

 

「これがレインボーバッジです。あなたの機転とリオルの胆力に評して贈呈致します。それと、初めての挑戦という事で、こちらのバッジケースも差し上げます」

 

「ありがとうございます!なんかニヤけてしまいます」

 

「初々しくて可愛らしいですね」

 

「かわっ!?……コホン、では対戦ありがとうございました」

 

「はい、こちらこそ〜」

 

こうして、ライトは初めてのジム戦を勝利で飾る事が出来た。ナツメが余計な事をしなければもっと楽に勝てたのだが、勝利の余韻に浸っていたライトはそんな事をすっかりと忘れていた。

 

ポケモンセンター、通称ポケモンに入ったライトはリルの入ったモンスターボールを受け付けのジョーイさんに預けて、自分もポケセン内の部屋を借りた。旅をするトレーナーを援助するためにポケセンでは無料で宿泊出来るのだ。 さらに、風呂と飯付きである。ただし、あくまでも旅をするトレーナーに限るので一泊という制限がある。

 

ライトはベッドて仰向けになり今日の戦いの反省をしていた。公式の対戦ルールでは、戦闘中のトレーナーによる道具の使用は禁止されているが、戦闘前に1つだけポケモンに持たせれば、その道具は使っていいというルールだ。つまり、状態異常対策するのは当たり前。草タイプ使いのジムとわかっていたのだから最低でも、ねむり、どく、まひに対して対策をするべきだった。今日、苦戦を強いられたのは、自分達は他のバッジ未所持トレーナーと違って強い、そいつらに合わせたジムリーダーのポケモンに負けるわけがないという驕りが招いた結果だ。あの時、エリカはジムリーダーとしての様子見で【ギガドレイン】を使っていた。そのお陰で、【めいそう】し、集中力を高めて波導で包んだ【きあいだま】を放てたが、フリーバトルだったら御構い無しに【はなびらのまい】を使ってきただろう。そしたら結果は逆だった。

ナツメはこの未来が見えていたのだろうか。俺達が驕り、勝ち進み、そしていつか取り返しのつかなくなる未来が。

きっと、浮ついた心で旅をする俺達に警告をしたんだろう。

 

「まぁ、文句は言わせてもらうけどな」

 

呟いた声は天井へと消え、目蓋が世界を黒く染めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方、ヤマブキジムからエリカに電話し終わったナツメは悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

 

「ふふ、ライトの叫ぶ顔が目に浮かぶわ。見なくてもわかるもの」

 

ナツメはライトの未来など全く見ていなかった。それは、あとでエリカから結果を聞いた方が面白いと思ったからだ。エリカが本気を出せばきっと出鼻を挫かれて敗走してくる。そこでナツメが盛大に煽る。完璧な作戦だった。ライトは自分のためだと思っているが、ただ、ナツメのSっ気が発揮されただけであった。しかし、数時間後にかかってきたエリカからの電話でナツメの作戦は失敗に終わった事を知る。

 

「えっ、ライトが勝ったの!?」

 

「はい、とても強いトレーナーでした。ナツメちゃんが本気を出して欲しいと言ったのがわかりました」

 

「そ、そう……当然ね!私の幼馴染だもの」

 

「はい、彼もエスパー使いだったなんて驚きました」

 

きっと波導の事を言っているのだろうと察したナツメは何も言わなかった。

 

「エスパー少女ナツメちゃんも可愛いのに、幼馴染にあんなに可愛いエスパー少年ライトくんがいるなんて……」

 

妙に声が色っぽくなったエリカの言葉で薄ら寒いものを感じたナツメはすぐに電話を切った。幼馴染の貞操の危機を感じたナツメはライトの未来を少しだけ見た。そこに映ったライトはセキチクシティに向かうため徒歩でサイクリングロードに行こうとしたところ、ゲートの警備員に止められて説教されていた。

 

「何してんのよ…ライトは」

 

幼馴染の馬鹿な行動に呆れて未来を見るのをやめた。なるべくライトの旅の先を見ないようにしようと自分の中で決めているので、それ以上はやめておいた。帰ってきた時の旅の話を楽しく聞きたいと思っているからだ。




波導のリオルで「はどうだん」を使っていたのでリルくんにも使わせました!特別なんです(白目)


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セキチクシティ

正直、誰にも読まれないと思っていたので、嬉しくもあり恥ずかしくもあります。



「まさか、サイクリングロードを通れないとは…」

 

「(当たり前だろう)」

 

サイクリングロードを徒歩で通ろうとしたところ、入口のゲートで警備員に止められ、叱られた。仕方なくライトはクチバシティを目指すべく歩みを進めていた。クチバシティはヤマブキシティの南にあるため、一度ヤマブキシティを経由しなければならない。これがライトの歩みを遅めていた。旅立って1日でヤマブキシティに戻ってくるなんて恥ずかしいところを道場の仲間やナツメ、両親には絶対に見られたくない。

ライトの計画ではクチバシティより更に南のセキチクシティにサイクリングロードで向かい、そこからクチバシティ、地下通路を使って北のハナダシティに行く計画だったが、変更を、余儀なくされた。

 

ライトは昨日通ったゲートを今度は逆方向に通りヤマブキシティへと入った。

そこには自分と全く同じ格好の人が立っていた。

 

「おい、何してんだモノマネ娘」

 

「おい、何してんだモノマネ娘」

 

いつものオウム返しだ。

 

「お前のことが好きだ」

 

「ごめん、タイプじゃないんだ」

 

そう言ってくるりと回転すれば、瞬く間に少女の姿へと戻った。ヤマブキシティでは有名人のモノマネ娘。主に悪名だが。しょっちゅう人やポケモンの真似をする事からモノマネ娘と呼ばれるようになった。

 

「もう一度聞くぞ、俺の姿で何してんだ?」

 

「昨日旅立ったライトが街にいたら、ホームシックって噂がたって面白いと思ったんだけど、本人が帰ってきてびっくり!もしかして、ホームシック?」

 

「ちげーよ!お前、なんて恐ろしいこと考えてやがんだ!!」

 

「人をからかうのって楽しいことだからやめられないの」

 

ライトはモノマネ娘とは長い付き合いになる。それなりの対処法を熟知しているので、モノマネ娘がからかってきても怒るような事は無い。感情を表に出せば喜ばせる結果になってしまう。1番いいのは無視する事だ。

 

「じゃ、俺はクチバシティに行くから」

 

「待って、これ貸してあげる」

 

そう言って取り出したのは、くろいメガネだった。

 

「これをかければ、多少はバレないんじゃない」

 

「お、ありがてぇ、サンキューな」

 

メガネをかけて誰にもバレずにクチバシティに行けたとしても、モノマネ娘のせいで結局、ホームシックの噂が流れるから変装の意味ないじゃんとライトは思ったが、面倒くさいので考えるのをやめた。

モノマネ娘に別れを告げクチバシティへと歩き始める。自然と早足になりゲートにすぐについた。ゲートを抜けた先は6番道路。目と目が合ったらポケモンバトルの無法地帯だが、ライトとリルの敵ではない。全てのポケモンをワンパンで沈めクチバシティへとたどり着いた。

 

町に着くと目の前にジムがあった。ライトは親切設計と一瞬思ったが、入口が奥側なので裏に回らなければならない点は不親切だと感じた。

「入口逆だろっ!」とツッコミたいのを我慢し、ジムの中へと入った。

 

「オー、ミーはチャレンジャーですネ!このジムのなかに、スイッチを2つ、かくしまーした!みつけられたら、ミーのエレクトリックポケモン、みせるよ!」

 

「あ、どうもライトっていいます。よろしくおねがいします」

 

いきなり片言の日本語で話しかけてきたのはクチバシティのジムリーダーマチス。でんきタイプのポケモンを使い戦場を生き抜いた兵士だ。

 

「(このジムの中からスイッチを見つければいいのか?)」

 

「(待ってリル、俺がやる。これは俺に課せられた試練だ)」

 

ライトは集中力を高め波導を使う準備を整える。ソナーのように波導を飛ばし、跳ね返った周囲の波導を感じとる。結果、不自然な突起がある場所を二ヶ所見つける。そこに移動すると案の定スイッチがあり、マチスの課題を難なくクリアする。

 

「なんと、アメイジング!こんなに早くスイッチをみつけるなんて!ユーはすばらしい!」

 

「さぁ、マチスさん。ポケモンバトルをしましょう」

 

「ユーはバッジなんこ、もってますか?」

 

「あ、一個です。あと、ポケモンも1匹です」

 

「オーケー、ミーはタイマン、まけたことアリマセーン!!ユーもビリビリしびれさせるよ!」

 

ルールを確認しライトとマチスはお互いに所定の位置につく。ライトが出すのは当然リル。いつも通り【ビルドアップ】も積んである。マチスが出したのはビリリダマだ。でんきタイプのポケモンで見た目がモンスターボールに似ている。

 

「これより、挑戦者ライト対ジムリーダーマチスのバトルを始めます」

 

「始めっ!」

 

エリカ戦と同様に、開始の合図と同時にリルは一気に距離を詰め【はっけい】をビリリダマにくらわせた。回避行動を取る間もなく吹き飛ばされたビリリダマは壁に叩きつけられ目を回していた。

 

「えっと……ビリリダマ戦闘不能………マチスさんどうします?」

 

「おい!審判、俺の勝ちだろ!」

 

「オーノー、ユーはストロング!ほんとうにバッジいっこですか?ミーのかんぱいですネ!オレンジバッジやるヨ!ただ、もういっせんバトルしてほしーネ!ミーはぜんぜんビリビリできてないヨ!」

 

「えっ、そんなこと、俺のしったこっちゃねーよ」

 

「(ライト!私もあれではつまらない)」

 

「(しゃーねーなぁ)」

 

「あー、わかりました。いいですよ!続きやりましょう」

 

「センキュー!これがミーのエレクトリックポケモンですヨ!」

 

マチスが出したポケモンはライチュウ。でんきタイプのねずみポケモンだ。あのピカチュウの進化系である。

 

「(リルどうだ?【きあいだん】は撃てそうか?)」

 

「(先程からずっと集中力を高めていた。いつでもいけるぞ)」

 

ビリリダマを殴った後もずっと【めいそう】をして集中力を高めていたリル。それを聞いたライトは直ぐに仕掛ける。

 

「フリーバトルだろ!じゃぁ、こっちから行くぜ」

 

「(リル、【きあいだん】だ!)」

 

リルの手から放たれる眩い玉は一直線にライチュウに襲いかかった。

 

「ライチュウ!【エレキボール】」

 

【エレキボール】と【きあいだん】がぶつかる。凄まじい衝撃かバトルフィールドを駆けるが【エレキボール】では【きあいだん】の威力は殺せずに、収縮し消えてしまう。

 

「オーノー、ライチュウ!【ひかりのかべ】でス!」

 

ライチュウは咄嗟にはった【ひかりのかべ】で【きあいだん】の威力を殺しクロスアームブロックで【きあいだん】を受けきった。

 

「(流石ジムリーダーのポケモンだな。集中力切れてねぇか?)」

 

「(大丈夫だ)」

 

「こんどは、ミーからいきますヨ!ライチュウ!【かげぶんしん】からの【エレキボール】です!」

 

リルを囲むように分身したライチュウは四方八方から【エレキボール】を放つ。リルは紙一重で回避しているが、ライチュウの攻撃の密度はどんどん増していっている。このままでは時間の問題だろう。

 

「(リル!波導で本体の位置を特定できないか?)」

 

「(やろうと思えば出来るが、今は難しい)」

 

「マチス!これはフリーバトルだったよなっ!」

 

「イエス!このバトルにまけたからといって、バッジやらないなんてこと、ないヨ」

 

その言葉を聞いたライトはフィールドへと駆ける。リルが出来ないなら俺がやるという思いで波導を使いライチュウの本体の特定に成功する。

 

「お前が本体だ!」

 

ライチュウは【かげぶんしん】をしている。分身といっても高速で動いて増えているように見えてるだけだ。だから、殴るのではなく拳を置く。案の定、置いた拳に突っ込んできたライチュウに発勁を当てライチュウの【かげぶんしん】を止める事に成功するが、ライトも後ろへ吹き飛ばされる。転がりながらもライトはリルに指示を飛ばす。

 

「(リル!【スカイアッパー】!」

 

不意をつかれたライチュウは防御姿勢を取ることが出来ずモロに受け、体が宙を舞った。そして、地面に落下したライチュウは気絶していた。

 

「エレガント!すばらしい、ファイトです。ミーはユーともたたかいたいヨ!」

 

「いや、遠慮しときます。流石に軍人に勝てそうにないので」

 

「ハハハ、ユーはスペシャル!ミーはまんぞくだヨ!」

 

その後、きちんとオレンジバッジを貰った2人はクチバジムを後にした。ワンパンで終わるはずだったジムなのに疲れた。主にマチスのせいで精神的な疲れなのだが。ライトはぐいぐいくるタイプが苦手なので気疲れしていた。

 

「ポケセンで休むか」

 

「(動き足りないから、草むらに行ってくる)」

 

「まって、じゃぁ、組手でもしようか」

 

「(いや、見知らぬ敵との戦いの経験を積みたい)」

 

「おっけー、ポケセンで待ってるから、あんま遅くならないようにな」

 

「(ああ、わかった)」

 

ライトはリルと別れてポケセンへと向かった。明日は、セキチクシティに行くために迂回して向かわなくてはいけないため、体を休めたいと思ったライトは早めに床に着くことにした。

 

「今日の夜飯は何かなぁ」

 

ポケセンの料理は意外と美味しいのでライトの楽しみの1つでもあるのだ。




リアルにマチスの喋り方おもろい


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クチバシティ〜セキチクシティ

自転車があればセキチクシティについてました


セキチクシティはクチバシティの南に位置するが、歩いて行くには東に迂回しなくてはならない。仕方なく、11番道路を歩く。例の如くポケモンバトルを挑まれるが、全て返り討ちにし、12番道路に差し掛かったところで問題が発生した。カビゴンが道を塞いで通れないのだ。

 

「(どうする?遠回りするのか?)」

 

「ふざけんな!イワヤマトンネルなんていう暗い穴を誰が通りたがるんだ!)」

 

「(じゃぁ、殴り飛ばすか?)」

 

「待て待て、こういう時は頭を使うんだ」

 

そう言ってライトはモンスターボールを1つ取り出した。

 

「いいか、モンスターボールを投げるとカビゴンが一回はモンスターボールに入るだろ?その間に俺達はダッシュで向こう側に行く。捕獲失敗でモンスターボールからカビゴンが出て来ても、俺達は先に進めるって寸法よ」

 

「(なるほど)」

 

「じゃぁ、いくぞ」

 

ライトはモンスターボールをカビゴンに投げた。モンスターボールの中心が赤く点滅する。その隙にライトとリルは全力ダッシュで駆け抜け、12番道路の方へと抜けた。

 

「あれ?カビゴンが出てこない?」

 

「(もしかして……)」

 

恐る恐る、モンスターボールに近づくと赤い点滅は消えていた。

 

「捕まってんじゃねーかっ!!」

 

盛大に突っ込みを入れたライトはコミュニケーションをとろうとカビゴンをモンスターボールから出した。リルを通訳に立てればポケモンと会話が出来るのだ。

 

「なんで抵抗しなかったんだ?」

 

ライトがカビゴンに話しかけるとカビゴンは、なにやら言葉を発した。

 

「(眠いし怠かった。と言っている)」

 

「そんな理由で!?あー、そうだ、あれ、俺らチャンピオン目指して旅してんだけど一緒に来るか?」

 

「(えー、めんどそうだけど、暇だしなぁ……三食飯付きと睡眠の時間があるならついて行ってもいいゾ)」

 

「そんくらい、当たり前だろ!食って寝なきゃ死んじまう」

 

ライトはカビゴンがどれだけの量の飯を食べて、どれだけ睡眠するかを知らなかった。

 

「(やったー、主にマジ感謝)」

 

「あ、俺の名前はライトっていうんだ。よろしくなっ!」

 

「(ライト氏、お腹空いた)」

 

「自由かっ!まぁ、待ってろ。今きのみを出すから」

 

ライトは持っていたきのみをほとんどカビゴンに与えたが、カビゴンの空腹感を和らげる事はなかった。それもそのはず、カビゴンは1日に400キロの飯を食べる。トレーナー1人が持ってる食糧では腹の足しにもならないのは当たり前であった。このまま旅を続けたら確実に破産して飢え死ぬ。死活問題に直面したライトはクチバシティに『ポケモンだいすきクラブ』があるのを思い出し伺う事にした。

 

「やー、やー、君はポケモンが好きかい?」

 

『ポケモンだいすきクラブ』の建物に入った途端に声をかけられたライトは「好きです」と答えたばっかりに、数時間に及ぶ自慢話を会長を名乗るおじさんに聞かされた。なんとかひと段落ついた話に割り込んでカビゴンの話をすると会長は驚いたように話しを続けた。

 

「ちょうど、カビゴンを捕まえて世話をしようと考えてたとこだったんじゃよ。いやー、カビゴンは食費がかさむだろう?そんな君にコレをプレゼントしよう。ホウエン地方から取り寄せた特製ポロックじゃ。一粒食べれば、たちまちお腹一杯になる優れものじゃ」

 

「いいんですか?こんな良いもの貰ってしまって」

 

「元々カビゴン用だから大丈夫じゃよ」

 

「ありがとうございます」

 

「ただし、気をつけておくれよ。カビゴン以外のポケモンが食べてしまったら、どうなるかわからないからのう」

 

カビゴンのお腹を一杯にするポロックを他のポケモンが食べたら確かに危険だ。ライトは肝に銘じ会長にお礼を言って家を出た。外は赤く夕日に染められており、今からセキチクシティに向かったら確実に野宿する羽目になるので、ライトは今日もクチバシティに泊まろうと思ったが、一泊の制限を思い出したので先に進む事にした。

 

12番道路に一軒の家があったので、ライトはドアをノックした。返事をし、ドアを開けてくれた住人は見るからに釣り人というような格好をしていた。ライトは一晩泊めて欲しいという願いを伝えると、釣り人は笑顔で「君は釣りが好きか?」と質問をしてきた。

既視感を感じたライトは一瞬答えられなかったが、泊めてもらう為に「好きです」と答えたばっかりに数日間、釣り人と一緒に釣りをする日々を過ごすことになった。

 

意外と筋の良かったライトは釣りが好きになり、釣り人と仲良くなった。ちなみにコダックを釣ったので仲間にした。呆れたリルは数日間、水中戦闘の修行をし、カビゴンは食っちゃ寝を続けていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

旅に出た筈のライトがヤマブキシティで目撃されたという噂がナツメの耳に届いた。超能力で町の様子を見たが誰も気にしていない様子だ。ライトを知らない人にはどうでもいい話しだし、ライトを知っている人からしてみれば、ホームシックなんて有り得ないので、たった1つの結論に至る。どうせ、モノマネ娘の悪戯だろうと。

ナツメもその結論に至り、ライトの家では無く、モノマネ娘の家を訪ねた。

 

「私のマネ、しないでくれる?」

 

「私のマネ、しないでくれる?」

 

「これでは話が進まないわ」

 

頭をおさえたナツメがそう言うとモノマネ娘はクルッと1回転して元の姿に戻った。

 

「話しって何?」

 

「私が言わなくても検討はついてるでしょ?」

 

「もう噂が立ってるんだ!」

 

「あなたの思惑とは違って、モノマネ娘がまた変なことをやってるって噂だけどね」

 

「な〜んだ、残念……それで、ナツメは何しに来たの?わざわざ、それを言う為だけに来たんじゃないんでしょ?」

 

そう、そんな事を言う為に会いに来たわけではない。ナツメには別の目的があった。

 

「単刀直入に言うわ。ライトのモノマネをして」

 

「へっ?」

 

「いーから、お願い」

 

「そうやって頼まれるとやりたくなくなるな〜」

 

「タマムシシティで人形を買ってくるわ」

 

「やぁ、ナツメ。元気かっ!」

 

人形買ってきてくれるという言葉を聞いたモノマネ娘はすぐにライトのモノマネを始めた。彼女のモノマネはもはや、変装の域に達している。さながら怪人二十面相の如く、見た目も声も全く同じである。

それを見たナツメは小さな息を吐くと、モノマネ娘にお礼を言った。

 

「ありがとう、邪魔したわね」

 

「これだけでいいの?」

 

モノマネ娘には訳がわからなかった。これだけの為に、わざわざ来たのか。

 

「ええ、いいわ」

 

「なんで?理由を教えてよ〜」

 

しつこく付き纏うモノマネ娘。これ以上、踏み込まれたくないナツメはモノマネ娘をサイコキネシスで浮かせた。

 

「ちょ、ナツメ。待って、浮いてる。浮いてるって」

 

「さよなら」

 

「ぎゃぁあああ」

 

断末魔と共に家の中に飛ばされていった。悪戯のバチといえばそれまでだが、哀れである




モノマネ娘にフォーカスした二次創作も面白そう


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過去編1

投稿前にプロローグに入れるか悩みましたが、ナツメを早く出したかったので過去編というかたちになりました。


おぎゃぁ、と産声を上げて1人の子供が生まれた。両親は悩んだ末にライトという名前を付けた。例えどんな暗闇でも周りを明るく照らし、自ら道を切り開いて生きて欲しいという願いからだ。少年は愛され、健やかに育った。

 

父はヤマブキシティにあるシルフカンパニーで働いている。そんな父が会社の同僚からポケモンの卵を貰った。ただ単に、知人から卵を貰って困った同僚が父に押し付けただけなのだが、そんな事はつゆとも知らず、父は喜んだ。息子にポケモンの孵化という貴重な経験や、共に育つ事で良い勉強になると考えたからだ。

 

ライトが2歳くらいの時、その卵が孵った。

 

「これでライトはお兄ちゃんだぞー」

 

「あら、リオルの卵だったのね。かわいい〜」

 

産まれたリオルはじーっとライトを見つめていた。

 

「リ…ル……?」

 

「リオルよ〜、ライト。リ、オ、ル」

 

「リルっ!」

 

リル、リルと喋りながらリオルに抱き着くライトに両親はメロメロであった。俗に言う親バカと言えなくもないが、このくらいの子供は皆可愛いと感じるだろう。

 

「お前の名前はリルに決まりだな!今日から、うちの家族だ!お兄ちゃんと仲良くするんだぞー」

 

「僕がリルを守る!」

 

「あらあら、もう立派なお兄ちゃんね」

 

リルとライトは両親の愛情をたっぷりと注がれすくすくと成長した。そして、ライトが4歳の時、事件は起きた。

 

初めてリルとライトは大喧嘩をしたのだ。遂に殴り合いにまで発展した喧嘩はライトが怪我を負った事で終息がついた。リルはこの時にポケモンの力は人間の力よりも強い事に気が付いた。殴り合ったらライトを傷付けてしまう。

両親はリルに特別な事は何も言わずに喧嘩両成敗と言って2人を分け隔てなく叱ったが、リルは自分が責められている様な気持ちになった。絶対に両親が言わないような言葉を、頭の中の両親は浴びせてくるのだ。

 

この事件の後、怪我が治ったライトは道場に行きたいと両親を説得していた。なんとか両親の了承を得たライトは笑いながら「次やるときは絶対に負けないからね」と言ってリルを連れて道場に弟子入りしに行った。

リルには訳がわからなかった。自分に負けないようにするならば1人で修行を積めばいい。自分が一緒にレベルアップしたら結果は目に見えている。しかし、ライトはあくまでも自分と一緒に修行をしたいと言った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ライトは弱い自分を恨んでいた。弱かったせいでリルに余計な心配をかけてしまった。喧嘩した事がトラウマになって戦う事が出来なくなってしまったらどうしようと不安になった。そんな時に名案が浮かんだ。ここヤマブキシティのジムは道場だ。リルと戦えるくらいに強くなりたい、そして、リルには全力で戦って欲しい。その一心で親を説得し、からてだいおうに頭を下げて弟子にしてもらった。

 

最初は厳しく感じた修行も段々と慣れていった。精神的余裕が出来たライトは自分の内に秘める波導と呼ばれる力に気付き、こちらも並行して鍛える事にした。

 

何度かリルと組手をしたが、リルは手を抜いているようだった。時々、波導を纏って攻撃すると、リルは一瞬、本気で受けるが、また手加減をする。ライトは一層に不甲斐なさを感じた。リルの本気を出させるにはまだ足りないのだ。いつしか、リルを超える事がライトの目標になり、修行に明け暮れた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は少し遡り、ライトが3歳の時、家族旅行でシンオウ地方に足を踏み入れた。きっかけは母がソノオの花畑に行きたいと言ったことからだ。父もシンオウにちょっとした用事があったので丁度いいという事もあり、トントン拍子で話が進み今に至る。船で来た彼らは、ミオシティで一泊し、次の日から観光をする計画を立てた。

 

父は長い船旅で疲れた母とライト、リルの3人を宿に残し、用事を済ませてくると言って出て行った。母は行ってらっしゃいと告げ、ライトとリルを抱きしめてエネルギーを補給していた。

 

家を出た父は聞き込みを始めた。以前、同僚に教えてもらった「ゲン」という名前の人物を探すためだ。しばらく聞き込みを続けていると、いつもは「こうてつじま」に修行に行っているらしいが、たまたま帰ってきている事がわかった。さらに聞き込みを続けようとすると不意に声をかけられた。

 

「あなたが、わたしを探している方ですか?」

 

「…え?もしかして、あなたが……」

 

「はい、わたしがゲンです。あなたは?」

 

ゲンは青いつば付き帽子に青いスーツという身なりで、好青年という雰囲気を醸し出していた。父は自分の名前を伝え、改めて挨拶をした。ゲンは何故、自分を探しているのかを父に尋ねた。

 

「以前、卵を頂戴した同僚から卵を譲りうけました。今は私の息子共々、元気に育っているという報告をしたいと思いまして。これはつまらない物ですが」

 

と言ってお菓子をわたした。

 

「これは、ご丁寧にどうも。これはカントーのお菓子ですか?遠いところからわざわざ、ありがとうございます」

 

「いえいえ。それともう一つ、聞きたいことが御座いまして」

 

「なんでしょうか?」

 

「実は、息子がリオルの喋っている言葉がわかるそうなんです。最初は子供の言う事だからと聞き流していたのですが……」

 

「成る程……もしかしたら、あなたのお子さんは波導使いなのかもしれません」

 

「波導…ですか?」

 

聞いた事があるようで聞いた事の無い単語に父は首を捻った。

 

「はい。波導とは、万物が有している振動そのものを指します。気やオーラと言い換えても差し支えないでしょう。波導使いはそれらを操り、ルカリオと意思疎通する事が出来ます。ですから、お子さんは病気でも何でもありませんよ。むしろ、波導を使ってお子さんと意思疎通を図っているリオルの方が興味深いですね」

 

「うちのリル……リオルの方が特異なんですか?」

 

「ええ、通常リオルはそこまで波導を使う事に長けていません。感じとるくらいしか出来ない個体が大多数です。一般的にルカリオに進化してから波導を使いこなせるのですが、あなたのリオルは波導を使う才能が非常に高いようですね」

 

リルを息子同然の様に育ててきた父にとっては、才能があるというのはとても誇らしい事だった。息子が特異だったのは違いなかったが、病気ではなくて安心した父の気分は旅行前とは違い、晴れやかになった。

 

「もしよろしければ、お子さんとリオルに合わせて頂けないですか?」

 

「是非!家内にも紹介したいです。今、宿に泊まっているので案内しますね」

 

「ありがとうございます」

 

父はゲンを宿に案内した。家族に、同僚の知人で、リオルの卵をくれた人という紹介をするとライトが不安げな顔になったのは、ライトを初めて見るゲンにもわかった。

 

「(大丈夫。リルを連れて行ったりはしないよ))

 

「(え!?おにーちゃん、リルとおんなじことできるの?)」

 

「(出来るよ。わたしも波導使いだからね)」

 

「(すごーい!じゃぁ、リルとお話し出来るね!)」

 

「(僕とお話し出来るのライトだけだと思ってたから……なんか不思議な気分)」

 

無言なのに楽しそうな3人を見ていた母は、父から波導の説明を受けたが「つまり、2人は凄いってことね!流石わたしの子達」といって勝手に納得していた。これ以上説明しても無駄だと感じた父は何も言わなかった。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろゲンが帰るという時間になった。父はわざわざ時間を割いてくれたゲンに御礼を言った。

 

「今日は、ありがとうございました」

 

「いえいえ、わたしも楽しい時間を過ごさせて頂きました。それと、彼らの将来が楽しみになりました。御礼としてはなんですが、これを貴方に渡しておきます」

 

「これは……?」

 

「来たるべき日にお子さんに渡してください。きっと役に立ちますから」

 

そう言ってゲンは父に「おくりもの」を渡した。父は、ゲンから「おくりもの」の説明を受けた。確かに、今のライトとリルには早すぎると思った父は、来たるべき日の意味を理解し、改めてゲンに御礼を述べた。

 

「おにーちゃん、もう行っちゃうの……?」

 

「ああ、君が冒険をすれば、また会えるかもしれないね」

 

そう言ってライトの頭を撫でたゲンは宿を去っていった。

その後、一家は明日行くソノオの花畑に備えるために、夜飯をサッと済ませて寝る事にした。




筆者の中では第4世代が黄金時代です。
ちなみに筆者は論者です。知的な喋り方を抑えて投稿しております。


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セキチクシティ

ポケモン全く関係ないのですが、今日、にじさんじのライブがありますね!私はBGクラブが大好きです!腐腐腐


釣り人と涙の別れをしたライトはセキチクシティに向かって旅を再開した。カビゴンの戦闘能力を見たいので、セキチクシティに着くまでは積極的にバトルさせたいとライトは思った。

 

「カビゴン。セキチクシティに着くまで、ふっかけられたバトルは全部お前な」

 

「(なっ、ライト氏!それは横暴ですぞ!)」

 

「おいリル、ホントにそんな言い方なのか?」

 

「(一言一句違わずに訳している)」

 

「……そうか。カビゴン。お前、散々食っちゃ寝したろ。もし、やらないっていうなら飯抜きだぞ」

 

「(ライト氏!それは契約と違いますぞ!僕は三食飯付きっていうから付いてきたのに!)」

 

「じゃぁ、飯抜きな」

 

「(待たれよ!まだやらないとは言ってない。否、やりますぞ。やる気に満ち溢れてきました)」

 

カビゴンは意外と戦闘力が高く、立ち塞がる敵を次々と薙ぎ倒していった。結局無敗で13番、14番、15番道路を抜けてセキチクシティについた。

 

「おつかれカビゴン。今日は休んで明日ジム戦な」

 

「(なっ、明日のジム戦も僕が戦うんですか!?無理無理無理無理、あと3日は寝ないと無理ですぞ)」

 

「はぁ、しょーがねぇな。明日はリルな」

 

「(元からそのつもりだ)」

 

「(ふぅ、危ない所だった。明日も戦わなきゃいけないなんてたまったもんじゃないでゴザル。あっ……リルのアニキ!ここは訳さなくても……)」

 

「なるほど、なるほど。俺はお前を追い詰めすぎたようだ。ほれポロックだ。明日はゆっくり休めよ」

 

「(え?ライト氏神ですか?やったー。一生ついていきます)」

 

ポロックでこんなに懐くカビゴンが可愛く見えてきた。喋ると残念だが……。

 

セキチクシティのジムリーダーは毒タイプ使いという情報を得ていたライトは、リルとタイプ相性が悪いのは承知していた。だが、バッジはまだ2つ。リルならば問題ないだろうという思いもあった。

 

ライトは取り敢えずポケモンセンターに泊まり、明日のジム戦に備えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

清々しい朝だ。リルに挨拶すると無言で頷く。きっとジム戦に向けて集中力を高めているのだろう。邪魔しないように朝食をとり、身仕度を整えた。

 

「さぁ、3人目ジムリーダーだ。この辺はチャチャっと片付けんぞ」

 

「(油断してると足元すくわれるぞ)」

 

「油断はしてないさ。それに緊張してるよりマシだろ?」

 

「(はぁ、いい緊張をしてほしいのだがな)」

 

話しているうちにセキチクジムの前に着いた2人は自動ドアを抜けて中に入った。そこは何もない殺風景な正方形の部屋で、部屋の真ん中にジムリーダーが立っていた。

 

「ファ、ファ、ファ!ようこそ挑戦者よ。拙者はジムリーダーのキョウ!今に生きる忍びよ。この見えぬ壁、お主に突破できるか?」

 

「あ、こんにちは。俺はライトでこっちがリルっていいます。よろしくおねがいします」

 

挨拶をしながら、クチバジムで行ったように波導のソナーを使って見えない壁を感じ取り、簡単にキョウの元へたどり着いた。

 

「な!?お主どうやって正解を!?」

 

「波導でちょちょっとね」

 

「まさか、お主も忍びであったか」

 

変な勘違いをされているが、説明するのが面倒だったライトは無視してバトルを申し出た。

 

「手持ちがリル……リオルとコダックの二体なんですけど、1対1のシングルバトルでもいいですか?」

 

「ではルールは、先に1体倒した方が勝ちというルールで問題ないか?」

 

「ええ、こちらとしてもそっちの方が助かります。コダックは昨日捕まえたばかりのポケモンなので」

 

「ファ、ファ、ファ!では行くぞ!忍びの技の極意、受けてみるがよい!」

 

キョウの出したポケモンはベトベトン。毒タイプのポケモンでとても臭い。ライトが出すのは当然リルだが、格闘タイプのリルにとっては相性の悪い相手だ。

 

審判が声を上げる。

 

「これより、ジムリーダーのキョウ対挑戦者ライトの試合を始めます。始め!!」

 

「ベトベトン!【どくどく】攻撃!」

 

キョウの指示でベトベトンは【どくどく】を放った。リルは開幕で速攻を仕掛けようとしていた為、かわしきれずに毒状態となったが、怯むことなく【はっけい】を打ち込む。しかし、流動体のようなベトベトンの体に衝撃が緩和されたのか、たいして効いた様子が無い。醜悪な笑みを浮かべたベトベトンはキョウの指示で【とける】を使い、より一層流動的な見た目になった。

 

「ファ、ファ、ファ!お主の攻撃など効かぬ。さぁ、どうする?挑戦者よ」

 

リルは片膝をついて苦しそうにしている。

不利なタイプ相性、毒状態、【とける】によって防御力の増したベトベトン。状況は最悪だ。

 

「(リル、【きあいだん】は撃てそうか?)」

 

「(【きあいだま】で十分だ。一撃で沈める)」

 

リルはきあいを両手に貯めて【きあいだま】を発動しようとするが、黙って見ているキョウでは無い。すぐにベトベトンは【のしかかり】をして発動を阻止しようとする。

 

毒状態で且つ、技の発動に集中しているリルが躱せるはずが無かった。そう、躱せるはずが無いのだ。しかし、リルはベトベトンの背後を取り【きあいだま】を直撃させた。

 

「何故だ!?何故そんなに速く動ける!?」

 

キョウの叫びにライトは答える。

 

「すいません。実はリルの毒は〔モモンの実〕で回復してるんです」

 

ライトはタマムシジムでの失敗から学び、リルにあらかじめ毒状態を回復する木の実を持たせていた。

リルに毒状態の演技をさせて隙を突いたのだ。

 

「ぐぬぬ、戻れベトベトン。ゆけっ、マタドガス」

 

「待ってください!1対1のシングルバトルじゃないんですか!?」

 

「拙者は先に1対倒した方が勝ちとしか言ってないぞ。ベトベトンはまだ気絶してはいなかった。よって、お主はまだ勝利条件を満たしてはいない!」

 

なんという屁理屈。汚いなさすが忍者きたない。

 

「マタドガス!【えんまく】」

 

マタドガスの体から煙幕が噴き出し、リルの視界を遮る。リルは波導で探知しようと試みるが、煙幕中の細かい粒が邪魔をして、上手く探知出来なかった。

 

「(リル!一旦下がれ)」

 

「(わかってる。離れて【はどうだん】をチマチマ当てる)」

 

そう言ってライトの前に戻ってきたリルは毒に侵されていた。

 

「既に【どくどく】を使わせてもらった」

 

今度は演技ではなく、本当に苦しそうなリル。そんなリルに、ライトは思いつきの策を伝える。

 

「(どうだ?乗るか?)」

 

「(無論だ。毒で倒れる前に決着をつけたい)」

 

「(オーケー、じゃぁ、行くぞ!)」

 

掛け声と共に走り出す2人。ライトの目的はキョウ本人。

 

「ルールは先に1対倒した方が勝ちってだけですよね!」

 

ライトの攻撃を体術で受け流すキョウ。忍者としての修行を積んでいたからこそ、咄嗟でも反応出来た。しかし、ポケモンの攻撃は別だ。反応出来たとしても受け切れるかわからない。故にマタドガスの【まもる】で盾をはり、リルの攻撃を受け止める。否、受け止めてしまった。

 

「待ってましたよ。キョウさん!」

 

ライトが狙ったのはキョウを守りにきたマタドガス。ライトの拳がもろに入りマタドガスは呻いた。更に、虚を突かれたマタドガスが体制を立て直す前に、リルが【からげんき】を打ち込んだ。

 

「戻れ!マタドガス」

 

「させませんよ!」

 

ライトは尚もキョウへの攻撃の手をやめない。別に攻撃を当てる必要は無く、審判がマタドガスの戦闘不能をジャッジするまでの間、キョウにモンスターボールを使わせなければよい。そしてその時は直ぐにきた。

 

「マタドガス戦闘不能。よって勝者、挑戦者ライト」

 

【からげんき】の後も【はどうだん】で容赦なく追い討ちをかけていたリルは拳を高々と突き挙げた。

 

「これで勝利条件を満たしました」

 

「ぐぬぬ、お主、やりおるな。拙者と同じ土俵で戦い、勝利を掴むとは。そら!ピンクバッジだ!」

 

「ありがとうございます。この戦いで勝負の奥深さを学びました」

 

「皮肉か?小童が!……勘違いするな。いつもやる訳では無い。お主のリオルが想像以上に強かったからな、便宜上の屁理屈を言わせてもらっただけだ。試すのがジムリーダーの仕事なのでな。まさか、それを逆手に取られるとは思わなんだ」

 

成る程なと納得したライトは思った。他の挑戦者ってどういうジム戦なんだろうかと。思い返せばタマムシからクチバ、セキチクと3人のジムリーダーと戦ったが、どいつもこいつもバッジ所持数以上のポケモンを出してきている。やはりジムリーダーともなるとバトルジャンキーなんだろうか。

 

ピンクバッジを貰い、セキチクジムを後にしたライトは次の目的地に決めたグレンじまに行く方法を悩んでいた。

 

「コダック。俺を乗せて泳げる?」

 

「コダッ?」

 

頭をかかえて、首をかしげるコダック。

 

「かわいい……」

 

「(会話になってないぞ)」

 

「やっぱり空路だよなぁ」

 

「(取り敢えずポケモンセンターに行きたい。モモンの実を食べたとはいえ多少の疲れがある)」

 

「そりゃそうか。今日はポケモンセンターに泊まれないし、リルを預けたら泊めてくれそうな家を探すかぁ」

 

死んでも野宿したくないライトは、今日も宿探しを始める事にした。

 

セキチクシティにはサファリゾーンというポケモンの捕獲を楽しめる娯楽施設があるが、ライトは一切の興味を示さずに宿探しを始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ライト「おやじ。一晩泊めてくれ」

 

忘れおやじ「1000円」

 

翌朝

 

ライト「おやじ。ありがとな」

 

忘れおやじ「ああ(誰だっけ?)」




どっかの世界ではロケット団だから多少はね汗


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セキチクシティ2

あれ?すすまん


一泊した忘れおやじの家を出たライトはすぐ隣にあるポケモンセンターにリルを受け取りに行った。ジョーイさんにグレンじまに空路で行きたいと相談したところ、街の西側でオニスズメが出現すると言うことを教えてもらった。しかし、オニスズメは獰猛な為あまりお勧めしないとのことだった。

 

「野生のポケモンを倒して捕まえるってのはトレーナーの誰もがやってる事だけどさ、なんか違う気がするんだよね………いや、違くは無いんだけどさ、もっと運命的な出会いをしたいというかさ」

 

「(カビゴンとコダックは運命だったのか?)」

 

「コダックはビビッときたね。カビゴンは事故だけど」

 

「(何にせよ、捕まえるか捕まえないかはライトの決める事だ。俺はオニスズメを倒すだけだ)」

 

言葉通り遭遇したオニスズメ達を次々と薙ぎ倒すリル。ライトはリルを仲介し、オニスズメにグレンじまに連れて行ってくれないかと頼んだところ「(俺達、飛ぶのが苦手だから無理)」と断られた。ライトは「ジョーイさん!話が違いますよ!」と叫びたくなったがジョーイさんは決して悪くないので言葉を呑み込み、次の案を考える。

 

「お前ら、ボスとかいねーの?」

 

「(いるけど……ボスは大の人間嫌いなんで、絶対に無理。人間なんて連れて行ったら、俺達ボコボコにされちまうよ)」

 

「うるせー!連れてけ。ボコすぞ!」

 

「(酷いっ!)」

 

渋々、ライト達を案内するオニスズメ。茂みをかき分けた先に居たのは、大量のオニスズメの群れと1匹のオニドリルだった。オニドリルがライトとリルを見て声をあげた。

 

「(なんじゃぁ、おのれ)」

 

「どーも、ライトっていいます。こっちはリルです」

 

「(名前など聞いておらんわ人間。それに使役されて喜んどる家畜め)」

 

「リル、自分で訳しててイライラしないの?」

 

「(一言一句違わず、正確に訳しているだけだ。多少は腹が立っている)」

 

「(ふん、非力な癖に家畜を使って、さも自分が強いと思いこんどる人間が、儂は気に食わん。そういう奴を見ると殺したくて堪らなくなるわ)」

 

「そうか、じゃぁ、タイマンだ。リルには手出しさせねぇ。俺とお前のサシで勝負だ」

 

流石に、飛行タイプのポケモンと戦った事はないライトだが、負けてやるつもりも無かった。何よりもリルを馬鹿にされた事がライトの怒りのボルテージを上げていた。

 

「(タイマンだと?笑わせる。人間如きに負けるはずがないわ)」

 

「御託はいいからかかってこいよ。ビビってんのか?」

 

その瞬間、オニドリルは静脈がはち切れんばかりに青筋を立ててライトに【ドリルくちばし】で突っ込んで行く。

 

ライトは間一髪で躱すが、オニドリルは旋回して、もう一度【ドリルくちばし】を仕掛けてきた。一度見た攻撃。ライトはタイミングを合わせ後ろに飛びながら腰を捻り、波導を込めた左足の回し蹴りをオニドリルの頭に叩き込む。

まさか蹴られるとは思っていなかったオニドリルは、その勢いのまま墜落し、地面を転げ回る。木の幹にぶつかるまで転がったオニドリルは負傷に耐えながら立ち上がりライトを睨む。

先程とは違う静かな怒りがライトに伝わってくる。オニドリルはライトをとるにたらない人間ではなく敵として認識した。

 

「いい目になったじゃねえか!ほら、かかって来いよオニドリル!」

 

ライトは挑発するが、オニドリルは先程のようには飛び込まない。空を飛べるというアドバンテージを活かし、ホバリングしながら【かげぶんしん】をしてライトを囲む。そこから【でんこうせっか】を繰り出し、四方八方からライトに攻撃を仕掛ける。

ライトは今までの修行で身に付けた体術と波導を駆使してオニドリルの猛攻を受け流していたが、【こうそくいどう】を併用してどんどん速くなるオニドリルの攻撃に、次第に着いていけなくなってきた。

致命傷は避けているが、ギリギリ回避が間に合わなかった攻撃が服や表皮を切り裂き、傷だらけになる。

最初のようにカウンターを狙っていたライトは本気で防御する事だけを考え始めた。そうしなければならないほどオニドリルの素早い攻撃は苛烈になっていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

オニドリルは焦っていた。これ程の攻撃を凌ぐ人間など今まで一度も会ったことが無い。傷だらけになりながらも決して倒れない姿に畏れを抱いてきた。他の人間とは違う何かをこの男は持っている。オニドリルはそう感じた。

 

このままでは体力が尽きる。オニドリルは【かげぶんしん】をやめて上昇し、激しい光に包まれる。放とうとしているのは飛行タイプ最強クラスの技【ゴッドバード】だ。人間に遠距離攻撃は無い。故に、隙を晒しながらも力を溜める事が出来る。

 

オニドリルが【ゴッドバード】をしてくるのがわかったライトは身体中に波導を纏い防御の態勢に入る。受けるのをミスれば大ダメージは免れない。最悪、死すらあり得る。

 

両者共に睨み合い、力を溜める。

 

オニドリルはその静かな間を切り裂く様に急降下しライトに突っ込む。対するライトも波導を飛ばしてオニドリルの速度を落としクチバシを掴む。

まさに力と力のぶつかり合い。土煙が辺りに吹き荒れ、爆音が広がる。

 

吹き飛ばされないように踏ん張っていたリルが見たのは、オニドリルのクチバシをガッチリと掴み、木に叩きつけられているライトのボロボロの姿だった。

 

「ど…う……だ………み…た……か…………」

 

ライトが小さな声で呻くように呟いた。

 

吹き飛ばされつつも自分の最強技を止めたこの男は、今まで見てきた人間とは違う。オニドリルにはライトに対して最初に抱いていた敵意はもうなかった。そこにあるのは敬意。口だけでなく、その身体で強さを証明したライトへの敬意だけがオニドリルの中に刻まれた。

 

リルはオニドリルの思いを訳して伝えようとしたが、すでにライトの意識がなかった。リルはオニドリルに再開を誓い、ライトをポケモンセンターへと運んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

目が醒めた。病室の知らない天井ではなく、ライトの顔を覗き込むリルの顔が見える。

 

「(見た目ほど大怪我では無いらしい。波導のおかげだな)」

 

「リルか…………いやー、危なかった。あの野郎、【ゴッドバード】とか洒落にならねーわ。つか、ここで起きたっつーことは負けたのか?」

 

「(いや、負けた事には変わりないが………この辺の説明はオニドリルに会った方が早い)」

 

「どゆこと?負けたんしょ?また追い払われるんじゃね?」

 

「(安心しろ。ライトをここに連れて来る前に再開の約束をしている)」

 

「ふーん。まぁ、このまま挨拶無しってのもアレだしな」

 

リルと会話していると、部屋のドアがノックされジョーイさんが入ってきた。

 

「体の方は重体では無かったですが、まさか病室で独り言を大きな声で言うほど頭がやられていたなんて……申し訳ありません。私がオニスズメの生息地を教えたばかりに……」

 

「いえ、ジョーイさんは何も悪く無いですよ!あと、頭は昔から何で大丈夫です」

 

「(何が大丈夫なんだ?)」

 

「というわけで、退院します。治療ありがとうございました!」

 

そう言ってライトはベッドから出て荷物をまとめて、ポケモンセンターから飛び出して行った。ジョーイさんが二、三日は安静にして欲しいみたいな事を言っていたが聞く耳をもっていなかった。

 

「やっぱり、頭がおかしくなってしまったのね……」

 

ジョーイさんは悲しそうに呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ライトはオニドリルに再開するために街の西側に再び訪れていた。

 

「(来たか人間)」

 

「よう、オニドリル。敗者の俺に何の用だ?」

 

「(儂は勝ったとは思っておらんわ。儂の大技止めるとは貴様、人間の癖に根性あるのう)」

 

「なんだよ急に……まぁ、ありがとな」

 

ライトはオニドリルに会いに来た理由を伝え、相談を持ちかけた。

 

「(グレンじまに行きたいだと?そんなん、ひとっ飛びやわ)」

 

「マジかっ!?助かるぜ」

 

「(だがのう、お前の事は認めたが、お前の家畜の事を儂はまだ認めてはおらん)」

 

オニドリルの申し出にリルの口角が上がる。リルとオニドリルのバトルが始まった。結果を言うと、最後に立っていたのはリルだったが、ガッツポーズをしたところで倒れた。飛行タイプのポケモンと相性の悪いリルだが、流石だとライトは思った。

 

傷だらけのオニドリルとリルを抱えてポケモンセンターを訪ねてきたライトを見るジョーイさんの目はとても優しかった。




世の中やっぱり拳よ!


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グレンじま

翌日、治療を終えたオニドリルにまたがって海を渡り、グレンじまへとたどり着いた。

 

「なぁ、オニドリル。俺と一緒にチャンピオンを目指さねぇか?」

 

ライトはオニドリルをすっかり気に入っていた。リルとの戦いを見ても、その戦闘力の高さは目を見張るものがあり、今後旅をする上での移動手段として空を飛べるというのは非常にありがたい事であるからだ。

 

「(悪くねぇ。だが、可愛いガキ共を待たせてるんでな)」

 

「そうか、残念だがしょうがないか」

 

オニドリルの勧誘に失敗したライトだが、予想は出来ていたので、それ程落ち込みはしなかった。ライトはここまで運んでくれたオニドリルに感謝をし別れを告げた。

 

ここグレンじまにはジムのほかに寂れた屋敷や研究所などがあるが、ライトにとっては興味がない。早速ジムの扉を開く。すると、目の前のディスプレイにクイズが表示されていて、隣に立っていた理科系の男が話しかけてきた。

 

「挑戦者かい?」

 

「はい、ライトっていいます。よろしくお願いします」

 

「これはご丁寧にどうも。では、グレンジムの説明をしましょう。見ての通り、ディスプレイに表示されている問題に正解すれば、目の前の扉が開く仕掛けになっています。しかし、間違えてしまうと、その部屋にいるトレーナーと戦わなくてはいけません。勝つことができれば扉は開きます。負けたら、最初からやり直しです」

 

「途中退出って出来るんですか?」

 

「可能ですが、次に挑戦する時は、また最初からになります。このジムは、トレーナーの知識を試しています。なるべく戦闘を回避して、万全の状態でジムリーダーと戦うということが求められています」

 

その他諸々の細かい説明を聞いたライトは早速ディスプレイの画面に目をやる。そこには説明の通り問題が表示されていた。

 

[第1問、キャタピーが進化するとバタフリーになる]

 

下に[はい]と[いいえ]のボタンがある。キャタピーの最終進化は確かにバタフリーだが、間にトランセルをはさむ三段階の進化ポケモンのはずだ。キャタピーの進化はトランセル。そして、トランセルの進化がバタフリー。つまり、答えは[いいえ]だ。ライトは[いいえ]のボタンを押した。

 

ばか はずれです…

 

「え?」

 

「残念、では私とポケモンバトルをしましょう」

 

「待ってくださいよ!キャタピーの進化はトランセルでしょ!?」

 

「しかし、トランセルの進化はバタフリーだ!」

 

「問題の書き方が悪いと思います!」

 

「問答無用!」

 

抗議も虚しく理科系の男はロコンを繰り出した。毛並みの綺麗な可愛らしい狐ポケモンだ。しかし、見惚れる暇もなくリルがワンパンで仕留める。ライトが問題の内容についての抗議をしている間にリルは【ビルドアップ】を積んでいたのだ。あまりの一瞬の出来事に理科系の男とライトは硬直した。

 

「(次に行くぞ。ライト)」

 

「あ、ああ。そうだな…」

 

問題に間違えても結局バトルに勝てばいい。リルにそう思わされたライトは真面目に解くのがばからしくなった。

 

[第2問、ポケモンリーグ認定バッジは全部で9種類]

[はい]

ばか はずれです…

どかーん(リルのパンチの音)

 

[第3問、ニョロモは3回進化するポケモンである]

[はい]

ばか はずれです…

ぼこーん(リルのパンチの音)

 

[第4問、でんきタイプの技を繰り出したとき、じめんタイプのポケモンにはよく効く]

[はい]

ばか はずれです…

ばきーん(リルのパンチの音)

 

[第5問、同じレベルのポケモンでも、捕まえるたびに強さが違う]

[はい]

あたりです

 

[第6問、わざマシン28とは、しねしねこうせんである]

[はい]

ばか はずれです…

ぼかーん(リルのパンチの音)

 

6問目の戦いが終わって扉を抜けると、そこは今までの部屋とは違ってディスプレイが無く、部屋の真ん中に白い髭のハゲがグラサンをかけて立っていた。

 

「うおおーす!儂は燃える男!グレンじまポケモンジムのカツラ。儂のポケモンは全てを炎で焼いて焦がしまくる強者ばかりなのだー!それにしてもお前、1問しか正解してないのか?よっぽどの馬鹿だな!」

 

2問目から問題も読まずに[はい]を押していたが、結局正解はひとつ。全部[いいえ]にしていれば馬鹿にされずに済んだのにとライトは嘆いた。

 

「お前、バッジは何個だ?」

 

「3個です」

 

「そうか、なら3対3のシングルバトルだ!見事儂に勝てればバッジをくれてやろう!」

 

かくして始まった4つ目のジム戦。グレンジムのジムリーダーカツラは、ほのおタイプ使い。ならばこそ、みずタイプのコダックの出番だ!

 

「いけっ!コダック!」

 

「(私じゃないのか!?)」

 

「(いや、リルが出たら余裕で勝っちゃうし、コダックの戦闘力も測りたいしね)」

 

「(………そうだな)」

 

「(それに3対3のシングルバトルは初めてだろ?仲間の勝利を信じて待ってろ)」

 

モンスターボールから出てきたコダックは相変わらずアホっぽい。頭を押さえて、ぼーっとしている。

 

「みずタイプのポケモンか!セオリーは理解しているようだな!だが、燃える男にタイプ相性など関係ないのだ!ゆけっ!ポニータ!!」

 

カツラが繰り出したのは、ほのおタイプのポニータ。燃え盛るたてがみを持った馬のポケモンだ。まさに、燃える男カツラに相応しいポケモンである。

 

「ポニータ!【とっしん】」

 

「かわして、【みずのはどう】」

 

しかし、コダックはポニータの攻撃をかわせずに吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「コダックゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

ライトの悲痛な叫びに応えたのか、コダックは何事も無かったように立ち上がる。しかし、命令した【みずのはどう】を使う事は無くボーっとしている。そんな様子のコダックにライトは必死に声をかけるが、コダックが動く事はない。

 

「言う事を聞かないのか?トレーナーとしては未熟だな!ポニータ!追撃だっ!」

 

次々に技を繰り出すポニータに為す術もなく、攻撃を受け続けているコダックは苦悶の表情を浮かべていて、明らかにダメージが蓄積されているようであった。

ポニータは一切反撃してこないコダックに対して最初こそ不信感を抱いていたものの、今では技の練習のようにコダックに攻撃を浴びせていた。しかし、その気の緩みが勝敗を決した。

ポニータの【とっしん】に対して見事なカウンターの頭突きを食らわしたコダック。ポニータはジムの壁まで吹き飛んだ。

 

「ポニータ!!」

 

叫ぶカツラ。しかし、土煙が霧散した先に倒れていたのは気絶したポニータだった。

 

「ポニータ戦闘不能」

 

カツラは審判の声でポニータの敗北を後から実感する。それ程までに一瞬の出来事だった。

コダックが使った技は【がまん】。相手の攻撃を我慢して受けて、そのダメージを倍にして返す技である。ただ、【がまん】している間は他の技を使えないという欠点がある。

 

「ふっふっふっ、俺の言う事を聞かなかったのは演技です。本当は【がまん】をしていたから、それ以外の行動が出来なかったんです」

 

嘘である。ライトはコダックが勝手に【がまん】して勝利をしたことを自分の手柄にして未熟なトレーナーというカツラからの評価を覆したいだけである。

 

「うおおーす!そういう戦いがある事はわかっているが、わしは正々堂々と戦うぞ!ゆけっ!キュウコン!」

 

続いてカツラが繰り出したのはキュウコン。先ほどの理科系の男が出してきたロコンの進化系のポケモンだ。

対するライトはコダックを労ってボールに戻しカビゴンを繰り出した。出てきたカビゴンが必死に何かを訴えてくるのでリルに訳してもらった。

 

「(働きたくないでござる)」

 

「(よしカビゴン。勝ったら、ちょっと値段の高い木の実を買ってあげよう。負けたら飯抜きな)」

 

「(やる気に満ち溢れてきましたぞ)」

 

飯で釣られるカビゴンはやっぱり可愛いと思うライトであった。そして、カビゴンはキュウコンの【かえんほうしゃ】をその身に受けながら繰り出した【ギガインパクト】の一撃でカツラのキュウコンをねじ伏せた。

 

「なんだと⁉︎」

 

「つ、つえぇ〜」

 

驚くカツラとライト。しかし、そんな事は全く気にせずに、ぽちゃぽちゃと踊っているカビゴン。リルに訳して貰うと「(きっのみー、きっのみー)」と言っているらしい。おそらくカビゴンの特性である[あついしぼう]で炎タイプの攻撃を半減していたために、キュウコンの【かえんほうしゃ】があまり効いていないのだろう。だが、何故カビゴンは動けるのだろうか?【ギガインパクト】は強力な技だが、使った後に反動で動けなくなるというデメリットがあるはずだ。だというのに、カビゴンは全く意に介さず踊っている。食欲の為せる技とでもいうのだろうか?

カビゴンに高い木の実を買ってあげる約束をしてボールに戻し、リルに視線を向ける。

 

「(待ちくたびれたぞ。ライト)」

 

「(そんな待ってねぇだろ。つか、どうだ?3対3のシングルバトルは?)」

 

「(別に、どうという事はない。他の2人が負けても、私が3回勝てばいいだけの話だ)」

 

「(ははっ、リルらしいな。でも、仲間の勝利を信じて待つってのは面白いだろ?)」

 

「(……まぁ、悪くはない……かもな。それよりもコダックには説教をした方がいいと思うぞ)」

 

言葉とは裏腹に嬉しそうなリル。常にライトと2人で修行をしてきたリルにとって、ライト以外で一緒に1つの勝利を目指す仲間がいるという事は不思議な感覚だった。

彼の周りには、いつも好敵手しかいなかった。道場の先輩やナツメのポケモン達ともしのぎを削るするばかりで、共に戦うという経験は無かったのだ。だからこそ、この不思議な感覚に包まれている。だが、それだけではない。同時に、カビゴンに負けたくないという意思も心の中で燃えている。それは、リルの生い立ちからすれば当然の事である。強い仲間もリルにとっては好敵手なのだ。

 

熱く燃えるリルの気、否、波導に気圧されたのか、カツラの輝く額から汗がつたう。しかし、燃える男カツラは怯まない。むしろ、これ程熱いポケモンと戦える事に喜びを覚えていた。

 

カツラの出した最後のポケモンは、相棒のウインディだ。ボールから出てきたウィンディはリルの波導に負けずに【とおぼえ】のごとく咆哮をあげる。そして、メラメラと炎を纏う。対するリルも気、波導といった力を次の一撃に込める。お互いに睨み合い集中力を高めていく。まるで西部劇の決闘のように緊張感が高まっていく。それはポケモンだけでなくトレーナーにも伝播し、審判も唾を飲む。

 

ウィンディとリルの間の空間が歪む。比喩ではなく本当に歪む。それはウインディの熱によるものか、それともリルの光を屈折させるほどの気か。ともあれ、気圧され足元がおぼつかなくなった審判の膝が折れる。そして、審判の尻が地面に着くまさにその瞬間、2人のトレーナーが同時に声をあげる。

 

「リル!【きあいパンチ】!!!!」

 

「ウィンディ!【フレアドライブ】!!!!」

 

両者共に、地面が抉れる程の踏み込みから放たれた技。ウインディの頭とリルの右の拳がスタジアムの中央で接触する。

ウインディは吠える。こんな小さき者に敗れるものかと。

リルは吠える。ライトとのチャンピオンへの道がこんなところで終わる筈がないと。

 

刹那の拮抗。その後、ぶつかり合う2つのエネルギーが大爆発を引き起こしグレンジムを半壊させる。いや、ほぼ全壊といっていいだろう。

 

荒れ果て窪んだスタジアムの中央で拳を高々と上げているリルを見たのは、吹き飛ばされながらも意識を保っていたライトと、意識が飛ぶ寸前に微かに見ることができたカツラの2人だけであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「すいませんでした〜っ!」

 

目が覚めたばかりのカツラに見事な土下座を見せるライト。幸い、怪我人がゼロという奇跡が起こったが、ジムは酷い有様だった。

 

「別に怒ってないぞ!熱いバトルだったからな!それに、もうすぐ「ふたごじま」にジムを移設する予定だったからな!予定が少し早まっただけだ!」

 

ライトは、本当に怒っていない様子のカツラに安堵した。弁償なんて言われても払えるわけ無い。

 

「それよりも、ポケモンは休ませたのか?」

 

「いえ、まだです。カツラさんの意識が無かったので」

 

「なら、一緒にポケモンセンターにいくぞ!話はそれからだ!」

 

カツラと共にポケモンセンターに行きポケモンを預けた後、そのままポケモンセンターに泊まった。

 

翌日、カツラにマサラタウン行きの船は出てないのかと聞くと、マサラタウンに居るオーキド博士に用があるということでカツラの自家用の船に乗せてもらうことになった。水タイプのポケモンを持っていないので、船を使っているらしい。何故グレンじまにジムを建てたのか……

 

そして、クリムゾンバッジを貰った。これでバッジは4つ。残りのバッジはトキワシティ、ニビシティ、ハナダシティの順に取って、最後にヤマブキシティでナツメと戦うつもりだ。




実際、ジムが壊れたらどうなるんですかね?
ジムが壊れても生きてる人達、いやー不思議ですね(白目)


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ニビシティ

投稿頻度落ちるかも


マサラタウンにはオーキドの研究所以外何も無い。まっさらだ。

ライトはカツラと別れたあと、すぐにトキワシティに歩みを進めていた。

トキワシティに着いて直ぐにジムに挑戦しに行ったが、生憎ジムリーダーが不在で、近所の人に聞くと、いつ帰って来るかわからないらしい。

 

「俺の完璧な計画がぁ!」

 

「(諦めてニビシティに行くか?)」

 

「ぐぐぐ、確かにトキワシティはセキエイ高原に近いから最後でもいいが、ナツメとの約束が……」

 

「(バッジの数に関係なくナツメは本気を出してくれると思うがな)」

 

ライトは悩んだ末にトキワジムの挑戦を諦めてニビシティに向かうことにした。

 

「トキワの森って広いかな?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ニビシティ、それは灰色、石の色。ニビシティには博物館があるが、当然ライトには全く興味がない。

 

波導を使って最短でトキワの森を抜けたライトはジムに挑む前にコダックに説教をしていた。

 

「いいか、コダック。昨日みたいに勝手に戦っちゃ駄目だぞ!俺の言う通りに技を出すんだ。ニビシティのジムリーダーは岩タイプの使い手だ。お前の水技がダメージを通しやすいんだ。わかるか?」

 

「コダッ?」

 

頭を抑えて首をかしげるコダック。可愛い。

 

「(ライト。意思疎通が出来てないように見えるが?)」

 

「うるせー!コダックが理解するまで繰り返し言い聞かしてやる」

 

これから始まる説教が長くなる事を感じとったのか、コダックはライトに頭突きをして話を中断させた。

 

「ぐふっ!な、何すんだよコダック!」

 

「コダッ?」

 

「可愛い」

 

「(やれやれだ)」

 

その時、コダックから眩い光が発した。

その光の中でコダックは姿を変える。この光は進化だ。

ゴルダックに進化したコダックはライトを見つめる。

 

「っておい!どんなタイミングで進化してんだよ!主人に頭突きして進化するなんて聞いたことねーよ!」

 

ライトの当然のツッコミにゴルダックは静かに答える。

 

「(ふっ、過去の事を気にしていては前には進めないぞ!ご主人)」

 

「ホントにそんな喋り方なん?」

 

「(一言一句違わず訳している)」

 

「そ、そうか、ってかコダック。お前がそれを言うな」

 

「(あの時の私は愚かだった。頭痛に悩まされ、幾度と判断を誤った)」

 

「つい、さっきだけどな」

 

「(ご主人!このジム戦。私にお任せください。必ずや勝利して見せましょう)」

 

「お、おう。頼むぜ」

 

やる気に満ち溢れたゴルダックは勝手にジムに入ってしまった。

 

「おい〜っ!!頭痛関係なく判断力クソじゃねーか!」

 

ライトは後を急いで後を追ってニビジムに入る。そこには気絶して倒れたゴルダックと半裸の男とイワークが立っていた。

 

「コダックぅぅうう!!」

 

「ん?このゴルダックは君のポケモンかい?」

 

半裸の男が話しかけて来る。

 

「はい、すいません!俺のコダックが」

 

「ゴルダックじゃないのか?」

 

「コダックって名前のゴルダックです」

 

「ややこしいな」

 

半裸の男は、元々細い目を更に細くさせて呟いた。

本来、ニビジムで戦わせようと思っていたゴルダックがアホ過ぎて倒されてしまった。

 

「(リル。いけるか?)」

 

「(いつでもいける)」

 

格闘タイプのリルも岩タイプのポケモンにダメージを通しやすい。リルなら瞬殺だろうなとライトは思うと同時に、進化してもアホなゴルダックに呆れていた。

 

「その顔つき……挑戦者か。名前は?」

 

「ライトって言います。もしかして、ジムリーダーですか?」

 

「ああ、俺はニビシティジムリーダーのタケシだ。ジムバッジは何個だい?」

 

「4個です」

 

「そうか、なら、このイワークを倒せたらグレーバッジを授けよう。審判、合図を頼む」

 

「リル、準備は?」

 

「(愚問だな、既にビルドアップして、集中力も万全だ」

 

グレンジムを吹き飛ばした負い目を感じさせない闘志。流石、戦闘狂。

はじめ!という審判の合図と同時にイワークをワンパンで沈めたのはいうまでもないだろう。ジムリーダーのタケシは細い目をかっぴらいて驚いている。

 

「先程のゴルダックの件で、君を見くびっていたようだ。約束通り、グレーバッジを授けよう。俺のイワークを一撃で倒すとは、君とリオルならば、チャンピオンになれるかもしれないな」

 

「ありがとうございます!」

 

バッジが4個だから手加減してくれたのだろうが、それを一切感じさせない爽やかさ。今までのジムリーダー共はタケシを見習ってほしい。

 

気分良くジムを出たライトは、次のジムがあるハナダシティにどうやって行くかを悩んでいた。普通にニビシティからハナダシティに行くとしたら必ず「オツキミ山」は避けて通れない。しかし、ライトは山を越えるのは面倒だと思っていた。そこで、もう1つのルートが「ディグダの穴」を通りクチバシティに出て、そこから地下通路を通ってハナダシティに行くルートである。こちらは遠回りだが山は無い。この2つのルートで迷っていた。いっそ、オニドリルを仲間に出来ていれば、こんな事で悩む事は無かっただろう。

 

「よし、明日はディグダな穴を通ってクチバシティに向かうぞ」

 

「(私は、もう少し体を動かしてくる。ポケモンセンターで会おう)」

 

そう言ってリルは1人で草むらの方へ消えていった。

ライトはカビゴンの柔らかいお腹を堪能した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

地面から次々と出てくるディグダとダグトリオの頭をモグラ叩きのように踏み付けながらライトは走る。最初は普通に歩いていたのだが、誤って1匹のディグダを踏み付け怒らせてしまい追われることになった。それだけならばライトにとって些細な事なのだが、運の悪いことに追われる途中に別のディグダの群れを踏み付けてしまい大量のディグダとダグトリオに追われる事になってしまった。その騒ぎのせいでライトの前からもディグダとダグトリオが現れ、今に至る。

 

「(最初のディグダを倒すべきだった)」

 

「んな事言われても、あの時は走ればいいかぐらいにしか思ってなかったんだよ!」

 

予定よりも圧倒的に速いスピードでディグダの穴を抜けた2人はクチバシティに着いた。

 

「ここから、地下通路を通ってハナダシティに向かう」

 

「(次にディグダが出てきたら、私が倒す)」

 

「いや、舗装されてるから大丈夫だと思う。多分。あ、その前にポケモン大好きクラブの会長に特製ポロックを貰いに行ってくわ」

 

「(カビゴンもそろそろ飽きるんじゃないか?)」

 

「あー、そんな事言われた事なかったから気が付かなかったわ。俺のカビゴンはあんまりグルメじゃないっぽいし、腹が満たされればいいんじゃね?」

 

話しながら歩いていると奥の方から、件の会長が走ってきた。

 

「あ、会長!お久しぶりです!」

 

「君は会員のライトくん!ちょいど良かった。ちょうど良く無いが」

 

「どっちっすか?」

 

「ヤマブキシティが大変なんじゃ!」




この作品初のロケット団参上!今までがたまたま平和だっただげです。あれ?平和だったかなぁ・・・平和ってなんだろうね?


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