最高最善の力を継ぐ者 (天導 優)
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プロローグ
No.1 出会いは突然に


原作開始 出久side(回想)

 

時は遡ること、10年前。

「無個性、か」

病院で言われたその一週間後の話。

その日はお母さんは夕方までお出かけしているので一人で近くの森まで一人で散歩に来ていた。

すると一人のおじさんが展望台から町を見ていた。

「おじさん、どうしたの?」

「ヒーローの活動を、見ていただけだよ」

僕が話しかけるとおじさんは一言だけ呟いた。

僕はそのおじさんにもう一度話しかけてみた。

「おじさんもヒーローなの?」

「いや、ヒーローではない。ヒーローになれなかった人だよ。坊や、時間は有るかい」

僕が頷くとおじさんはたった一言。

「ついておいで」

それだけ言うとおじさんは山を登り始めた。

僕はそのおじさんの後について行くことにした。

直感だけど、この人は悪い人じゃないと思った。

ちなみに、その山は遠足で来たことはあったけど、私有地だから頂上までは行ったことがなかった。

前に先生から聞いた話だと頂上にはお金持ちの人が住んでいて、その人は子供好きのため、毎年幼稚園や小学校の遠足に使っても良いと許可を出してくれてる人らしい。

おじさんにその事を話すと、そのお金持ちの人がおじさんだということを教えてくれた。

僕が登るのに疲れた時はおじさんがおんぶをしてくれた。

おじさんには子供はいたけど、こういった事をした経験が無いそうだ。

登り始めて10分くらいした頃、そのお屋敷が見えてきた。

僕が知ってる一戸建ての家よりも大きな家が建っていた。

中に入ると客間のような場所に案内してもらった。

僕が周りをキョロキョロしているとおじさんは金色の装飾が付いたベルトの様な物を持って来た。

「おじさんは、これを使ってヒーローになろうとしたんだよ」

「なんなの、これは?」

疑問に思った僕が聞くとこれはヒーローに変身するための道具らしい。

僕が「使ってみせて」と言うとおじさんは「衝撃が凄いから別の場所にいこうか」と言って僕とおじさんは客間の窓から見えている中庭に移動した。

中庭に着いておじさんがベルトを腰に巻き付け「変身」と叫ぶ。

次の瞬間、ベルトから声が聞こえてきた。

『祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!オーマジオウ!』

するとおじさんはそのベルトを着け、黒と金でできた様な鎧のような姿になっていた。

「これが私、最高にして最善のヒーロー。その名もオーマジオウ」

「…オーマ…ジオウ」

僕はそう呟いていた。

僕の憧れているオールマイトとは真逆の、だけど、それと同時に引き込まれる様な存在感を感じていた。

おじさんは変身を解くと直ぐ様に僕に渡してきた。

「このベルトは君にあげよう。おじさんはもうヒーローをするつもりはないからね」

「で、でも僕は無個性だし。それにこのベルトも」

「良いんだ。おじさんも無個性だったからね。それにベルトが大きいというならそのベルトが合うほど大きくなれば良い」

「おじさん…」

「おじさんはそのベルトを使って沢山の人を助けてきた。だけどおじさんはヒーロー免許を持っていなかった。だからヒーローやマスコミ達からは最低最悪の存在と言われてたんだ。だけど、君は違う。未来という可能性を持ってる。だから君がオーマジオウを最高最善のヒーローと呼べる存在にしてくれ」

「うん、わかった。約束するよ」

「頼んだよ。さて、遅くなっても困るから君を自宅まで送るとしようか。玄関で待っていてくれ」

その後、おじさんの運転する車で自宅まで送ってもらった。

別れ際におじさんは大量のノートを僕に渡してきた。

オーマジオウの力を使いこなすのに必要なものだと言われたので受け取っておいた。

夕飯の時にお母さんにその事を話すと、どこか悲しいような、懐かしむ様な顔をしながらただ一言、「良かったね」とだけ言ってた。

そして僕は10年後、僕は憧れのあのヒーローに出会う事になる。



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雄英高校入学編
No.2 ヒーローの条件


あのおじさんに出会い、そしてオーマジオウのベルトを貰ってから10年、僕は鍛練を積み重ねてきた。

そのおかげかは分からないけれど同年代の子に比べれば筋肉は有る方だと思える。

他にもおじさんのアドバイスでヒーローには学問も必要という事で勉強も頑張った。

その結果全国中学模試では3位という成績を出せた。

この事でかっちゃんは僕に対して文句なんかを言いながら個性の爆発なんかをしかけてきたけど、おじさんのアドバイスの元、無視しておいた。

おじさんによると嫉妬も大事な感情だが、他人や物に当たっては駄目なんだそうだ。

常にライバルは自分自身だと考えるんだと教えてくれた。

それと、ベルトは巻けるようになったが「変身」はまだできない。

おじさんが言うには何か切っ掛けが必要らしい。

おじさんの場合は目の前で戦友とも呼べるべき仲間が亡くなった事により変身できるようになったらしい。

ちなみに勉強等はおじさんが例の家で教えてくれている。

勿論送迎もしてくれるけど、お母さんに1度も会っていない。

僕がその事を聞いたら、大人には色々とあるんだよ、と言ってたしお母さんも会う気はないらしい。

おっと、今は帰りのホームルームだから先生の話を聞かないと。

「今から進路希望のプリントを配るが、皆!!!だいたいヒーロー科志望だよね」

その言葉で皆が一斉に個性をアピールするかのように個性を発動する。

「うんうん、皆良い個性だ。でも校内で個性発動は原則禁止な」

だけどそれに水を差すような発言をする生徒がいる。

「せんせぇー。皆とか一緒にすんなよ!」

かっちゃんこと、爆豪勝己だ。

「俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんざ、行かねー、よ」

そんな事を言いながら足を机に乗っける。

そりゃねーだろカツキ等と周りの生徒が騒いでいる。

「あー、確か爆豪は雄英高志望だったな」

周りが国立の、とか倍率も毎度とか騒いでる。

「そのざわざわがモブたる所以だ!。模試判定ではA判定。俺は中学(ウチ)唯一の雄英圏内!」

そう言いながら机の上に立つかっちゃん。

「あのオールマイトをも越えて俺は、トップヒーローとなり、必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!」

行儀がなってないな。

「そいやあ緑谷も雄英志望だったな」

その言葉で皆が一斉に僕を見て笑いだす。

かっちゃんが僕の机を爆発させる。

「没個性どころか無個性のてめぇが、何で俺と同じ土俵に立てるんだ!?」

かっちゃんが僕にそんな事を話してると先生が。

「何を言ってるんだお前たちは。確かにA判定は爆豪だけだが、緑谷はS判定だぞ」

次の瞬間、皆はびっくりした顔をしていた。

「ついでに言えば、推薦も来てたぞ。雄英と傑物、後は士傑から来てたな。でもそれを断って普通の試験を受けるんだろ」

「はい、そのつもりですけど」

「まぁ、自分で決めたなら仕方ないな。とにかくやってみろ。それじゃあ、今日のホームルームはこれまでな」

先生が退出した後に僕も荷物を纏めて教室から出ようとすると後ろからかっちゃんが僕に向かってきた。

「待てや、クソデク」

振り替えるまでもない。

僕はその場でしゃがみ、右足を伸ばす。

するとかっちゃんは、僕の足に引っ掛かり派手に転倒していた。

「クソが」

そんなかっちゃんの捨て台詞を聞きながら、帰宅をした。

______________________

帰宅後、僕が勉強を終え、部屋でのんびりしているとお母さんに買い物を頼まれてしまった。

買い物をしようと商店街に行くとどうやら(ヴィラン)が人質をとって暴れているらしい。

周りのヒーロー達は自分が苦手な状況だからと言ってお互いに譲り合い、挙げ句の果てに人質になった人物に、「あの子には悪いが少し耐えてもらおう」だって。

それが、ヒーローのすることか。

僕は考えるより先に、その(ヴィラン)の元に向かっていた。

馬鹿ヤローとか聞こえるけど、関係無い。

ヒーロ-?達が「無駄死にだ。自殺志願かよ」と騒いでる。

何を考える必要があるんだ。

おじさんが言っていた。

やらない善より、やる偽善だと。

僕は捕らわれてる人質に自分の買い物袋をぶつける。

人質はかっちゃんだった。

その(ヴィラン)が今度は僕を人質にしようとした時に後ろから一人のヒーローがやって来た。

誰もが知る№(ワン)ヒーロー、オールマイトが。

______________________

その後、(ヴィラン)はヒーローらに回収され、警察に引き取られたらしい。

そして僕はヒーロー達に「君が危険を冒す必要は全くなかったんだ」と言われたが、僕は反撃の一言を言った。

「貴方達のどこが、ヒーローなんですか」

「何!?」

「場所が苦手な場所だとか、耐えてもらおうだとか、ヒーローなら、今ある可能性を、示してみろよ」

僕はそれだけ言うとその場を後にした。

______________________

帰宅途中、僕はオールマイトに出会った。

「オールマイト、貴方も僕の事を叱りに来たんですか?」

「いや、そうじゃないよ。君はなぜ、あの場でヒーロー達が居たのに君は飛び出したんだい」

「人が人を助けるのに理由なんて必要ないですよ」

するとオールマイトはニコリと笑うと。

「うん、君なら私の力を受け継ぐのに相応しいかも知れない」

えーと、何を言ってるんだろ、オールマイト(この人)は。



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No.3 受け継がれる個性

な、何を言ってるのか僕には理解できなかった。

「済まなかった。まずは私の個性の話からだったね」

確か週刊誌等には毎回「怪力」だとか「ブースト」だとか書かれていた覚えがある。

「私の個性は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ。その名はワン・フォー・オール」

ワン・フォー・オール。

1つは皆のためにって意味だ。

「一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また培い次へ。そうして、救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!!」

「なんでそんなものを僕に?」

「元々、後継は探していたのだ」

するとオールマイトの体から煙が出て、まるで骨と皮だけになったようなオールマイトがいた。

更にオールマイトは自分の服を脱いで腹などを僕に見せてきた。

そこには荒々しい傷と手術の跡が合った。

「5年前、敵の襲撃で負った傷だ。呼吸器官半壊、胃袋全摘。度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね。私のヒーローとしての活動限界は今や、一日三時間程度なのさ」

5年前、一体何があったんだ!?。

「そして、君の先程の行動力と言動を見て確信したよ。君になら託しても良いと」

ここまで聞いて、大事な秘密まで晒してくれて、断る理由なんてあるか?。

そんなことは、あるわけない。

「分かりました」

「即答。そう来てくれると思ったぜ。なら二日後の朝6時に、市営多古場海浜公園に来てくれ」

そう言うとオールマイトは去っていった。

______________________

二日後、僕は約束の市営多古場海浜公園に来ていた。

時間は5時55分。

するとオールマイトがやって来た。

「5分前に来てるとは、なかなかだね」

「オールマイト、おはようございます」

「うん、おはよう。早速だが君にここで1つ試練を与えてみようと思う」

「試練、ですか」

「そう。ネットの調べによるとこの海浜公園の一部は何年もゴミの山できているようだね」

「はい、海流で漂着物が多くて、さらにそこにつけ込んで不法投棄する人までいますから」

「うん、だから君にはこの海浜公園の清掃を行ってもらう」

なるほど、そういうことか。

「物によっては使う筋肉が違うから筋トレになるわけですね。それに本来ヒーローは本来奉仕活動。この海浜公園を綺麗にして市民に喜んでもらおうって事ですね」

「1を聞いて10を知るとはまさにこの事だな。その通りだよ。早速始めてくれ」

「はい」

僕は返事をすると同時におじさんがくれたベルト(オーマジオウドライバーって名前らしい)を巻き付ける。

「変身」

すると嘗ておじさんが変身した時と同じようにベルトからあの声が聞こえてきた。

『祝福の刻。最高、最善、最大、最強王』

後ろからオールマイトが「あのベルト。それにその姿は、まさか!?」とか言っていた。

変身できた理由は分からないけれど、昨日の夜、おじさんの家で特訓をしていると変身できるようになっていた。

おじさんの説明だと強い思いが可能にしたらしい。

まだ長時間変身を維持するのは難しく、10分程しか出来なかった。

能力の方もまだ完全には使えない。

全体的にはまだ、1%程度の力しか出せていないらしい。

それでも海浜公園のゴミを全部片付けるのは夜明け前に終わらせる事ができた。

ゴミの片付けが終わり変身を解除すると同時にオールマイトに質問をされてしまった。

「そのベルトはどこで手にいれたんだい、緑谷少年」

「知り合いのおじさんに貰いました」

すると綺麗になった海浜公園から海の方を見ながら。

「彼はまだ、生きているのか」

消えそうな声で呟いていた。

「ところで緑谷少年。君の進路希望は雄英高校だろ」

「は、はい」

急に大声を出すからビックリしてしまった。

「本当は10ヶ月かけてやるつもりだったんだけどな」

「あー、それは済みません」

「別に構わないさ。だから残りの10ヶ月は私と組み手方式で鍛えていこうと思う。覚悟は良いかね」

「はい、お願いします」

こうして僕の特訓生活が始まった。

平日は夜明け前にオールマイトとオーマジオウの変身を使っての組み手。

夕方からはおじさんの家でオーマジオウの力の使い方の勉強。

勿論、中学にも普通に登下校する。

そして休日は午前中はオールマイトとひたすら組み手、午後からはおじさんにオーマジオウの力の使い方のトレーニング。

ただオールマイトも、おじさんもお互いに会おうとはしなかった。

おじさんに聞くと「5年前に少しね」と言うだけで詳しくは教えてくれなかった。

そして月日は流れるのは光陰矢のごとしというようにあっという間に10ヶ月がたった。

日付としては雄英高校の試験日1日前。

同級生より筋肉が有るかなと思っていた筋肉は、今やシックスパックが作れるほどになった。

オーマジオウの力もまだ、完全とは言えないが、ある程度は使えるようになった。

ただし、オーマジオウの最大の能力はまだ使えていないらしい。

おじさん曰く、それが使えるようになった時、君に敵はいなくなると呼べる代物らしい。

そして僕は今、オールマイトと一緒にあの海浜公園に来ている。

「この10ヶ月、よく頑張った。早速個性を授与しよう」

そう言うとオールマイトは髪の毛を1本抜き。

「食え」と言ってきた。

「なるほど、オールマイトのDNAを取り込む訳ですか」

「やっぱり君は物分かりが良いよ。別にDNAを取り込めればなんでも良いんだけどね。ただ、誰でも良いと言うわけではないんだけどね」

「どういう事ですか」

「簡単に説明するとワン・フォー・オールは持ち主が渡したいと思った相手にしか譲渡されないんだ。無理矢理奪われる事は無い。けど、無理矢理渡すことは出来るがね。この事を肝に命じておいてくれ」

「分かりました」

そして僕がオールマイトの髪の毛を飲み込んで1時間後、僕の体に変化が起きていた。

見た目はそんなに変化は無いけど、腕や足に、大きな力を感じている。

「想像以上に適応しているな」

「え、そうですか」

「私は精々5%使えれば良いと思っていたが、今の君は60%の力を引き出せていると感じている」

「60%、ですか」

「残りの40%は君の脳が勝手にリミッターの様なものを掛けているのかもしれない。今日はもう帰って休みなさい」

「はい、それでは休ませてもらいます」

そう言えば、おじさんも言ってたな。

筋肉を休ませるのも特訓の内だって。

その後、僕は家に戻り、そのままお昼近くまで寝ていた。

 



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No.4 入試試験

投稿2日目で既にお気に入りが80件。
これからも頑張ります。


オールマイトから個性を受け継いだ次の日、僕は雄英高校の試験を受けに来ていた。

さすが名門高校と呼ばれるだけあり、そこには沢山の受験者が集まっていた。

そしてその中に、僕がよく知ってる人物がいた。

「どけモブ共。俺の前に立つな、殺すぞ」

言動が英雄(ヒーロー)よりも(ヴィラン)みたいな幼馴染みが。

さて、僕も行かなくちゃ。

______________________

「今日は俺のライヴにようこそー!!!」

試験官である、ボイスヒーロー、「プレゼント・マイク」が大きな声を発している。

「こいつあ、シヴィー!!!。受験生のリスナー!、実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!。アーユーレディ!?」

そして息継ぎをして。

「YEAHH」(イヤー)

そういえば、雄英高校は講師が皆、プロのヒーローなんだっけ。

「入試要項通り!、リスナーにはこの後、10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!!。持ち込みは自由!。プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」

なるほど、それなら僕はH会場って事か。

「演習場には“仮想(ヴィラン)”を三種・多数配置してあり、それぞれの『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある!!。各々なりの“個性”で“仮想(ヴィラン)”を“行動不能”にし、ポイントを稼ぐのが君達の目的だ。もちろん、他人への攻撃など、アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」

プレゼント・マイクがそこまで話すと眼鏡をかけた真面目そうな人が挙手していた。

「質問、よろしいでしょうか!?。プリントには四種の(ヴィラン)が記載されております。誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態。我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」

その質問にプレゼント・マイクは冷静に対応していた。

「オーケーオーケー、受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな!。四種目の(ヴィラン)は0ポイント」

と話しているけど、ちゃんとプリントを見れば書いてあるのに。*1

「俺からは以上だ!!。最後にリスナーへ、我が校の“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った。『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』と!!。“Plus Ultre”!!。それでは皆、良い受難を!!」

______________________

僕はH会場に着くと早速オーマジオウドライバーを巻き付ける。

周りの皆が、「なんだ、あれ」とか言っているけど僕は軽く深呼吸をしてあの言葉を言う。

「変身」

『祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!オーマジオウ!』

「姿が変わった!?」

「ど、どうせ見かけ倒しだろ」

周りがビックリしてそんな事を言っていると。

「ハイ、スタート」

「クロックアップ」

『クロックアップ』

開始の合図と共に僕は能力の1つを発動した。

クロックアップ。

それは超高速で移動できる能力だ。

その為、周りの人や仮想(ヴィラン)が止まっているかの様に見える。

その能力を使って仮想(ヴィラン)を全部倒した僕が最初、自分が居た位置に戻ると同時に。

『クロック、オーバー』

ベルトからその音声が流れる。

次の瞬間、周りの人が動き出すと同時に、仮想(ヴィラン)が全て破壊される。

「なんだ、学校側の整備ミスか」

と僕の近くに居た、高校生とは思えないタンクトップを着た人がそんな事を言っていると。

「どうしたあ!?。実戦じゃカウントなんざねえんだよ!!。走れ走れぇ!!。賽は投げられてんぞ!!?」

その言葉で周りの人が一斉に走り出した。

僕が深呼吸をしているとさっき僕に向かって話してた二人が話をしていた。

「な、見かけ倒しだったろ」

「そうだな。この試験は俺達がもらった」

とか言っているけどもう僕が全部倒してるから意味がないんだけどね。

そう思った次の瞬間、ビルを壊して巨大な仮想(ヴィラン)が現れた。

そうか、これが0ポイント(ヴィラン)か。

「うわー、逃げろ」

「あんなの、勝てるわけがない」

周りの人が逃げるなか、僕は見逃さなかった。

0ポイント(ヴィラン)が現れた時の衝撃で足を怪我した女の子がいることに。

僕は迷うことなく駆け出した。

あの時、ヘドロ(ヴィラン)から、かっちゃんを助けた時と同じように。

それにおじさんも言ってた。

真の英雄(ヒーロー)とは、考えるよりも先に体が動く。

あの時はなんとも思わなかったけど、今ならそれは確かに大事なことだと理解できる。

だからオールマイトの言葉の一部を借りてこう叫ぶ。

「もう大丈夫。僕が君を守るから」

*1
原作第1巻の94ページの飯田が持っているプリントにはイラストの隣にポイントの様なものが書かれている



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No.5 入試試験の裏側と合否発表

三人称視点

 

「さて、今回は優秀なヒーローの卵はいるかな」

プレゼント・マイクこと山田の言葉に、人でも犬でも熊でもない、ネズミの校長、根津校長が口を開いた。

「限られた時間と広大な敷地。そこからあぶり出されるのさ。情報をいち早く把握する為の情報力。遅れて登場じゃ話にならない、機動力。どんな状況でも冷静でいられるか、判断力。そして純然たる戦闘力……」

「その事ですがH会場でトラブルです」

寝袋に身を包んだ男、相澤が根津校長に報告していた。

「試験前に入念に準備したよね。どんなトラブルが?」

「H会場の仮想(ヴィラン)が全て壊れました」

「……は!?」

その場に居た教師全員が口をぽっかり開いていた。

「イヤイヤイヤ、前日にパワーローダー君が入念に整備をしてたじゃないか」

いち早く言葉を発したのは根津校長であった。

「ですが事実ですので」

録画映像であるH会場の試験の様子を見ていると確かに一斉に壊れていた。

「仕方ない。H会場の試験を受けた者には悪いがレスキューポイントだけで計測をしよう」

相澤はそんな事を呟いていた。

しかし、根津校長はあることに気付いた。

「もし壊れるとしても、一斉に、それも全部が壊れるなんて事はあるだろうか」

根津校長の言葉に相澤は口を挟む。

「ですが事実ですので」

「だったら映像をスロー再生してみてくれないか?」

相澤は溜め息を付きながらスロー再生すると。

「な!?」

教師達は驚いていた。

一瞬の内に0ポイント(ヴィラン)を倒した受験生がH会場の監視カメラの映像全てに写っていたからである。

時間にしてみれば、開始から0.01秒程。

次の0.02秒には自分の最初の立ち位置に戻っていたのである。

「つまり、ロボは壊れたのではなく、破壊されたのね」

教師の一人である香山はそんな感想しか出来なかった。

「だとしたら、彼の「個性」はなんなんだ?。分身とかか?」

山田の言葉に根津校長が口を開く。

「いや、違う。きっと高速で移動してるんだろうね。ただ、彼の持つ力はこれだけじゃ無いような気がするんだよ」

根津校長の言葉にオールマイトはただ、鋭いとしか思えなかった。

______________________

試験から数日後、僕の家に雄英高校から手紙が来たとお母さんが持ってきてくれた。

手紙を開けるとホログラム装置が入っており、起動すると。

『私が投影された』

オールマイトが投影された。

『私が投影された事で君は驚いているかもしれないが、私も驚かされたよ。筆記試験は1位タイ。実技試験の方は雄英高校歴代トップの940ポイント。そしてもう1つ隠されたポイント。その名もレスキューポイント。しかも審査制。君はそれでもトップの60ポイント。なぜ、レスキューポイントってのが存在してるかって。決まってるじゃないか。人救けをした正しい者を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!。きれい事!?。上等さ!!。命を賭してきれい事を実践するお仕事だ。主席合格だってさ。来いよ、緑谷少年。雄英が君のヒーローアカデミアだ!』

この事をおじさんに報告すると。

「頑張ったな、出久」

と初めて名前で呼んでもらった。

ただ、それだけなのに物凄く嬉しかった。

その時はまだ、一人前に1歩近づいた。

その事で呼び方が変わったと思っていた。

その時は……まだ。



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No.6 個性把握テスト

今回は爆豪アンチ・ヘイトがあります。
爆豪ファンの方はごめんなさい。


春、それは。

「出久、ティッシュ持った!?」

「うん」

「ハンカチも!?、ハンカチは!?。ケチーフ!」

「うん!!持ったよ。時間がないんだ。急がないと」

「出久、超カッコイイよ」

「……!。行ってきます!」

それは高校生活の始まり。

毎年300を越える倍率の正体、それは一般入試で定員36名。

18人ずつで、なんと、2クラスしかない。

そこに推薦入学の2人ずつを加え、合計20人のクラスだ。

僕は自分のクラスである1ーAを探していた。

そしてクラスは見つかったのだけど。

「あったけど、ドアでか」

早速教室に入ると、かっちゃんと入試試験で質問していた眼鏡をかけた真面目そうな人が口喧嘩をしていた。

「机に足をかけるな!。雄英の先輩方や、机の製作者に申し訳ないと思わないか」

かっちゃんがそんな事を考えるわけないじゃん。

「思わねーよ。てめー、どこ中だよ。端役が!」

ほらね。

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

律儀に答えるんだね。

「聡明~。くそエリートじゃねぇか。ブッ殺し甲斐がありそうだな」

いや、かっちゃん。

名前を教えてもらったんだから、自己紹介ぐらいしなよ。

あ、無理か。

「君ひどいな。本当にヒーロー志望か!?」

僕が教室に入ると飯田君が僕に向かって話しかけてきた。

「俺は私立聡明中学の………」

「聞いてたよ!。僕は緑谷出久。あそこで足をかけてるかっちゃん事爆豪勝己と同じ中学出身なんだ。そろそろ席についた方が良くないかな、予鈴がもう少ししたらなりそうだし」

「それもそうだ」

早速席につく僕達。

最後に茶髪の女の子が教室に入ると、寝袋に身を包んだ怪しい人が入ってきた。

「既に席についていたか。時間は有限。君達は実に合理的だ」

「あの、貴方は?」

飯田君の質問に男の人は答える。

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

って事はこの人もプロヒーロー。

「早速だが体操服(コレ)着てグラウンドに出ろ」

______________________

「個性把握…テストォ!?」

多数の生徒の声が重なる。

「入学式は、ガイダンスは!?」

最後に教室に入ってきた女子生徒が質問していた。

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事、出る時間はないよ。雄英は“自由”な校風が売り文句。そしてそれは、“先生側”もまた然り」

………?。

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈、中学の頃からやってるだろ?"個性"禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まあ文部科学省の怠慢だよ。爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」

「67m」

「じゃあ"個性"を使ってやってみろ、円から出なきゃ何してもいいよ。思いっきりな」

「んじゃまぁ、死ねぇ」

相変わらず、言葉が汚いな。

「まずは自分の「最大限」を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

先生の持つスマホには705.2mと数字が表示されていた。

周りからは「面白そう」って声が聞こえてくる。

「どうだー!!」

かっちゃんが叫んでいると相澤先生が。

「さすが入学試験2位の実力者だな」

「はぁ!?。2位…そんな訳ねぇ! 獲得ポイント77は過去10年の記録を見たって、トップクラス」

「過去の記録は過去の記録。今年はお前の上を記録した者がいたって事。それも1000ポイントのな。それと……面白そう……か。ヒーローになる為の3年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう」

「はあああ!?」

「生徒の如何は先生(おれたち)の"自由"。ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

______________________

「最下位除籍って、入学初日ですよ。初日じゃなくても理不尽すぎます」

生徒の一人がそんな事を言っている。

「自然災害、大事故、身勝手な(ヴィラン)たち。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。放課後マックで、談笑したかったならお生憎、これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。Plus Ultre 。全力で乗り越えて来い。それじゃ次は」

と言い、僕を指差し。

「主席合格だった緑谷、全力で投げてみろ。「変身」しても構わないぞ」

「分かりました」

僕はオーマジオウドライバーを腰に巻き付ける。

「な、なんだあれ」

男子生徒の何人かが僕に近づこうとすると先生が。

「離れていろ。危ないぞ」

先生がそんな事を言うと皆が僕から距離をとった。

僕はオーマジオウドライバーの両端を触りながら。

「変身」

『祝福の刻!最高!最善!最大!最強王!オーマジオウ!』

「おい、姿が変わったぞ!」

「なにもんだよ?」

周りの生徒から色々言われてるけど関係なく僕は意識を集中してボールを投げる。

記録は無限だった。

「どういう事だ、説明しやがれ。クソデク」

かっちゃんが近づく中、僕は親指を立て、かっちゃんのツボを刺激しつつ、背後に回り両手を押さえる。

「遅いよ、かっちゃん」

「離せや、クソデク」

そう言って爆発を起こそうとするけど、一向に爆発する気配はない。

何故なら、僕が押したツボは発汗を押さえるツボだ。

少なくとも今日の半日位は汗が止まっている筈だ。

「暴れると問答無用で除籍にするぞ、爆豪。緑谷も手を離してやれ」

「分かりました」

「チッ」

______________________

その後も個性把握テストをやったのだけど。

立ち幅跳び

ゴーストの能力を使い、記録は無限。

50m走

入学試験の時と同じように『クロックアップ』を使って、測定不能。

飯田君は得意分野だけに落ち込んでいた。

でも走った訳でもなく、ただ、歩いただけだということは黙っておいた。

持久走

『クロックアップ』の力をまた使い、今度は走って測定不能。

握力

これは普通に握ったら壊れてしまった。

「これ、1トンまでは耐えれるように作られてんだが」

そういえば昔、おじさんの家で本格的なカレーをご馳走になった時に、オーマジオウの姿になったおじさんが鰹節を片手(利き手とは逆の手)で握り潰して粉にしてたっけ。

反復横跳び

コレも『クロックアップ』の力を使い、測定不能。

大仏みたいな頭をした男子生徒が。

「おいらの得意分野が」

とか言って落ち込んでいた。

上体起こし

コレも『クロックアップ』を使った。

足を押さえてくれた尾白君が。

「早すぎて数えきれない」

という事で測定不能。

長座体前屈

ルナジョーカーの能力を使い、無限。

そして……。

「じゃあ、1位は分かってると思うがパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのはめんd、いや、時間の無駄なので、一括開示する」

相澤先生がスマホを操作しながらそんな事を言っていた。

「ちなみに除籍は嘘な」

皆、ビックリしている。

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

「はーーー!!!!??」

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから、目ぇ通しとけ」

そう言って先生は職員室に帰って行った。

クラスメイトの八百万さんが。

「あんなのウソに決まってるじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」

とか言ってたので僕も言っておく事にする。

「嘘だね」

「だからそれは先程私が……」

「除籍するってのが嘘ってのが嘘だよ。あの先生は最初から誰かを落とそうとしてたみたいだった。除籍は嘘なって言った時に視線を逸らしたのが証拠だよ」

そう言って僕は更衣室に向かった。




ちなみに個性把握テストの結果は出久が1位になり、爆豪が最下位になった以外は原作通りです。


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No.7 雄英の授業

初めて評価で色が付きました。
コレからも頑張ります。


個性把握テストの後はすぐに解散となった。

その後、僕は帰宅するために駅に向かう事にした。

「少しやり過ぎたかな?。でも、おじさんに言わせればまだまだなんだよな。というよりコレで本気じゃないとしたら本当の実力ってどれくらいなのかな」

そんな事を呟いてると急に肩を叩かれた。

「君も此方なのか」

「あ、飯田君。うん、僕も此方方面なんだ」

「しかし、君の個性は凄いな。強化系の個性なのかい?」

「うーん、それがよく分からないんだ。このベルトみたいな物も産まれた時から身に付けてたみたいだし」

「はぁ!?。なんなんだいそれは」

勿論嘘だが、おじさんに万が一聞かれた時はこう言ってごまかせって言ってたけど。

「人為的な物を身に付けてた産まれてきた、いや、それにしてもベルトは。しかし前例がないだけで」

めっちゃ飯田君信じてるよ。

しかもなんかブツブツ言って怖いし。*1

しかもこの事をお母さんに話したら思いの外理解してくれたし、いつおじさんと連絡をとったんだろう。

「お二人さーん、駅まで?。待ってー!」

後ろから麗日さんがやって来た。

「君は、∞女子」

いや、そのあだ名はどうかと思うよ。

「麗日お茶子です!。えっと飯田天哉くんに、緑谷…デクくん!。だよね!!」

「デク!!?」

思わず声が出てしまった。

「え、だってテストの時、爆豪って人が『クソデク』って」

「いや、本名は出久(いずく)で、デクはかっちゃんがつけたあだ名だから」

「えーそうなんだ。ごめん」

こんな感じだけど、僕には友達が二人できた。

だから気づかなかった。

校舎の窓から僕達を眺めているオールマイトの存在にに気づかなかった。

______________________

次の日から本格的な授業が始まったんだけど。

「んじゃ次の英文のうち、間違っているのはおらエヴィバディヘンズアップ、盛り上がれー!!!」

午前は必修科目、英語等の普通の授業。

昼は大食堂で、一流の料理を安価で頂ける!。

クックヒーローのランチラッシュが。

「白米に落ち着くよね、最終的に!!」

なんて言ってたけど、僕としてはお母さんやおじさんの作ってくれた料理の方が美味しい気がする。

そして午後からの授業。

ヒーロー基礎学!!。

「わーたーしーがー!!。普通にドアから来た!!!」

オールマイトの登場にクラスの皆が騒ぎ出す。

ちなみにヒーローの基礎学とは、ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う課目だ。

「早速だが、今日はコレ、戦闘訓練!!!」

「戦闘……訓練!」

かっちゃんが妙にやる気を出していた。

「そしてそいつに伴って…こちら。入学前に送ってもらった「個性届」と「要望」に沿ってあつらえた…戦闘服(コスチューム)

この日、一番の盛り上がりだ。

「着替えたら順次、グラウンド・βに集まるんだ」

「はーい!!!」

そして一足先に教室から出ているオールマイト。

「格好から入るってのも大切な事だぜ、少年少女!!。自覚するのだ!!!!。今日から自分は…ヒーローなんだと!!」

うん、やっぱりこの服、動きやすい。

「さあ、始めようか。有精卵共!!」

*1
出久本人は自分がこうなっている事に無自覚



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No.8 戦闘訓練

アンケートに付き合ってくださった皆様、ありがとうございます。
アンケートの結果は以下の通りです。
(93) 有っても良い
(8) 無い方が良い
(28) 番外編扱いならOK
(96) 作者にお任せする
なので時折、オリジナルの話を載せていきます。
それでは本編、どうぞ。


被服控除。

入学前に「個性届」「身体情報」を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる素敵なシステムだ。

「要望」を添付することで便利で最新鋭のコスチュームが手に入る。

だけど、僕の場合は。

「あ、デクくん。何て言うか、コートだよね。それ」

「うん。僕の師匠って言えば良いのかな?。その人に貰ったんだ」

「へぇー、でも動きやすそうだよね」

そう、僕が今、着ているコスチュームは嘗ておじさんの側近だった人の服を僕のサイズに仕立て直してくれたものだ。

ちなみに麗日さんのコスチュームは。

「要望ちゃんと描けばよかったよ…。パツパツスーツんなった」

「ヒーロー科、s」

峰田君が何か言おうとしたけど、考えるより先に手が出てた。

「良いじゃないか皆、カッコイイぜ!!」

するとロボットみたいなコスチュームを着た飯田君が挙手をして質問してた。

「先生、ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか」

「いいや、もう二歩先に踏み込む!。屋内での対人戦闘訓練さ!!!。(ヴィラン)退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内のほうが凶悪(ヴィラン)出現率は高いんだ」

僕が思い付く屋外での戦闘は去年デビューしたMt.(マウント)レディのデビュー戦、そしてかっちゃんが人質にされたヘドロ(ヴィラン)だ。

「監禁、軟禁、裏商売…。このヒーロー飽和社会、真に賢しい(ヴィラン)屋内(やみ)にひそむ!!」

ここで咳を1つ挟んでオールマイトが訓練内容を発表した。

「君らにはコレから、「(ヴィラン)組」と「ヒーロー組」に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!!」

「基礎訓練も無しに?」

蛙みたいな少女、蛙吹さんがそんな事を聞いていた。

「その基礎を知るための実践さ。ただし、今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

さすがに、ロボじゃないよな。

対人って言ってるわけだし。

「いいかい!?。情況設定は敵「(ヴィラン)」が「核兵器」を隠していて、「ヒーロー」はそれを処理しようとしている」

設定、アメリカンだな。

「「ヒーロー」は制限時間内に「(ヴィラン)」を捕まえるか、「核兵器」を回収する事。「(ヴィラン)」は制限時間まで、「核兵器」を守るか、「ヒーロー」を捕まえる事」

ちなみにこの台詞はカンペを見ながら説明してた。

コンビ及び、対戦相手はくじで決まった。

コンビは麗日さん。

そして、対戦相手はかっちゃんと飯田君のコンビだ。

______________________

こうして戦闘訓練が始まった。

ルールとして捕らえる方法としては確保テープを相手に巻き付けた時点で捕らえたと証明になるとの事だ。

僕と麗日さんは今、狭い通路を歩いている。

ちなみに僕は今、オーマジオウには変身していない。

これはハンデとかではなく、オーマジオウの力に頼ってばかりじゃダメだと思った自分への戒めだ。

「麗日さん。僕の後ろから2から3歩離れて付いてきて。たぶんかっちゃんが襲撃を仕掛けてくると思うから」

「う、うん」

そう言って歩いてると建物奥の方から爆発音が聞こえてきた。

たぶんかっちゃんが通路を爆発させながら近づいてると想像が付く。

そこで僕と麗日さんは道が丁字路になっている所で待機をしていると。

「クソナードが」

予想通り、かっちゃんがやって来た。

かっちゃんが僕に向かって来たので、麗日さんを見ると黙って頷いて、かっちゃんがやって来た方向に走り出す。

これは予め決めていた作戦だ。

かっちゃんが相手なら、イラついてる相手である僕を狙ってくる確率は高い。

だったらそれを逆手に取ってしまおうというのが考えだ。

「変身しろ、クソデク。そんで俺の方が(パワー)が上だって証明してやるよ」

僕は息を吐くとかっちゃんに言っておく。

「変身は必要ないよ。それに戦いにおいて力は絶対じゃない」

「ふざけんな!!」

かっちゃんが僕に向かって飛んで来るので僕はかっちゃんに向かって左手親指を立てる。

するとかっちゃんの動きが少し落ちた。

その隙を狙って僕は右手でマフラーを外し、かっちゃんに向かって振る。

このマフラーは特別な材料で出来ていて数メートルは伸ばせる。

そのままかっちゃんに巻き付かせて地面に叩きつける。

素早くかっちゃんの背中に乗り、素早く両手を確保テープで巻き付ける。

「かっちゃん。力って脆いでしょ」

そう言って僕は麗日さんの後を追った。

後ろからかっちゃんが「クソナードが!!!」とか叫んでいたが、確保テープを巻き付けられた時点で敗北だ。

______________________

僕が麗日さんに追い付くと麗日さんは1つの部屋の前で待機していた。

麗日さんが僕に向かって話しかけようとしていたので人差し指で麗日さんの唇を塞ぐ。

大体の事は理解できた。

どうやら飯田君に気付かれたらしいけど、勝てる策がある。

僕は伏せてから飯田君が走っているであろう場所に向かって上向きに振る。

「な!?」

足と胸に僕のマフラーが巻き付き飯田君が驚いている。

「麗日さん」

「うん」

僕が飯田君の動きを封じている間に麗日さんが核(張りぼて)を掴む。

「そこまで。ヒーローチームの勝利」

オールマイトの声を聞き、僕達の勝利が確定した瞬間だった。

その後も他のペアを見ていたが、轟君はかなり凄い方法でクリアをしていた。

なんと、建物を外側から凍らせて、動きを封じて勝っていた。

______________________

「お疲れさん!!。全員、大きな怪我なし!。しかし真摯に取り組んだ!!。初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!。それじゃ、解散」

その後、僕達は反省会を雄英近くのファーストフード店でしたけど、やっぱりかっちゃんは来なかった。

そしてこの時、僕達は気付いてなかった。

真に賢しい(ヴィラン)が、動き出そうとしていることに。



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USJ(ウソの災害や事故ルーム)編
No.9 目指せ、委員長


戦闘訓練の翌日。

雄英高校正門の前には大量のマスコミが居た。

「オールマイトの授業はどんな感じです?」

「朝食、食べたりなかったから早く食堂に行って大盛ご飯頼むつもりなんで」

僕はそう答えてその場を後にした。

ちなみに麗日さんや飯田君、更にはかっちゃんや相澤先生もインタビューを受けてた。

オールマイトが雄英の教師に就任したというニュースは全国を驚かせ、連日マスコミが押し寄せる騒ぎになっていた。

でも、校内には入ってきていない。

何故なら雄英高校には学生証や通行許可IDを身につけていない者が門をくぐるとセキュリティが発動して扉を閉じる仕組みになっているからだ。

______________________

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績見させてもらった。それと、爆豪。お前もうガキみてえなマネするな。能力あるんだから」

「………わかってる」

かっちゃんは不満そうに答えてた。

「さて、ホームルームの本題だ…。急で悪いが今日は君らに…」

なんだ、また臨時テストか?

「学級委員長を決めてもらう」

『学校っぽいの来たー!!!』

皆が騒ぎだしていた。

普通科なら雑務って感じでこんなことにはならないと思うけど、ここヒーロー科では、集団を導くっていう…トップヒーローの素地を鍛えられる役なんだ。

後、峰田君が変な事を言ったので喉に軽く突きを入れておいた。

「静粛にしたまえ!!」

飯田君が大きな声を出していた。

「“多”を牽引する責任重大な仕事だぞ…!。「やりたい者」がやれるモノではないだろう。周囲から信頼あってこそ、務まる聖務…!。民主主義に則り、真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!!!」

飯田君、言うことは立派だったよ。

でもね。

「そびえ立ってんじゃねーか。なぜ発案した!!!」

手を高く真っ直ぐに上にと伸ばして言うことじゃないよね。

結局、投票する事になったわけだけど。

緑谷出久 14

八百万百 3

峰田実  1

飯田天哉 1

爆豪勝己 1

僕だけが大半を占めていた。

かっちゃんはかっちゃんで。

「なんでデクに…!」

とか言ってたけど、絶対個性把握テストとか、昨日の戦闘訓練の結果だろうな。

______________________

「うーん、僕が学級委員長」

「納得いかないのか?」

僕の斜め向かいでカレーを食べてる飯田君が話しかけてきた。

「だって僕、飯田君に入れたわけだし」

「あれは君だったのか。だが、大丈夫さ。緑谷君のここぞという時の胆力や判断力は多を牽引するに値する。だから君に投票したんだ」

「そっか」

「私もデク君に投票したんだ」

「ありがとう、二人とも」

「気にしないでくれ。僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」

ん、ちょっと違和感が。

『僕…!』

麗日さんと声が重なる。

その事で飯田君がビックリしている。

「ちょっと思ってたんだけど飯田君て坊っちゃん!?」

「………。そう言われるのが嫌で一人称を変えてたんだが…」

カレーを一口食べてから飯田君は話を続ける。

「ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」

「ええー凄ー!!!」

麗日さんが物凄く驚いてた。

「ターボヒーロー、インゲニウムは知ってるかい」

「勿論知ってるよ。東京の事務所に65人の相棒(サイドキック)を雇ってる大人気ヒーローでしょ」

「詳しい…」

若干飯田君が引いてたけど、直ぐに気を取り直し。

「それが、俺の兄さ。俺はそんな兄に憧れ、ヒーローを志した」

大体分かった。

僕にとってのオールマイトやおじさんが、飯田君にはインゲニウムなんだ。

そう思った瞬間、突然警報が鳴りだした。

「セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください」

急なことで食堂に居た全員が出口に向かって走りだしていた。

先輩によると、校舎内に誰かが侵入してきたって事と、3年間はなかったらしい。

皆が慌ているため、このままだと怪我人がでるのも時間の問題だろう。

だけど僕は冷静になっていた。

飯田君の言葉を聞いて、おじさんの教えの1つを思い出していた。

「多を牽引するヒーローは常に仲間の中で一番冷静でいるんだ。全員が炎みたいに熱くなってるときでもただ一人、氷のように冷静に戦況を見る余裕を持っておくんだ」

だからこそ、1つの考えが浮かんだ。

「あれは、報道陣じゃないか!」

背の高い飯田君が状況を教えてくれる。

それなら。

「麗日さん、飯田君を浮かせて。飯田君はあそこに飛んで」

「え、うん」

「……!!分かった!!!」

頭の良い飯田君はすぐに理解してくれたらしい。

出口に向かって飛び、出口の電灯の上に立つと皆に呼び掛けてくれた。

その後、警察が到着し、マスコミは撤退した。

こうして、事件は解決した。

そう思ってた。




原作と違って出久が委員長を勤める事になりました。
それと出久の大盛ご飯のネタ、わかる人いるかな?。


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No.10 敵、襲来(前編)

僕が学級委員になってから数日後。

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト。そしてもう一人の3人体制で見ることになった」

なった?…。

特例なのかな。

「ハーイ!、なにするんですか!?」

隣の瀬呂君が質問をしていた。

「災害水難、なんでもござれ。人命救助(レスキュー)訓練だ!!」

皆が騒ぎだすけど、いつものように、先生が止める。

「まだ、話の途中だ。今回コスチュームの着用は各自の自由だ。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。それと訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上」

______________________

バスに乗って移動中、隣に座った蛙吹さんが話しかけてきた。

「私思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」

「何、蛙吹さん?」

「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの“個性”、まだまだ全力じゃない感じがするの」

すると隣に座ってた切島君が。

「何言ってんだよ。入試や個性把握テストでぶっちぎりの一位だったんだぜ。あれで全力じゃなかったら相当ヤバイって」

悪い気はするけど言っておこう。

「ゴメン、切島君。蛙吹さんの言うとおりなんだ。僕の知り合いのおじさんが言うにはまだまだ全力じゃないみたいなんだ」

「マジかよ」

「う、うん」

「所でそのおじさんってどんな“個性”なんだ」

やっぱりそれ、聞いてくるよね。

「何て言うか、ゲームのステータス画面みたいな物が見える程度の能力らしいよ」

「まぁ、緑谷の“個性”は派手で良いよな。俺の“硬化”は対人じゃ強いけど、いかせん、地味だよな」

そんな話をしているとかっちゃんと轟君の話になった。

「派手で強えっつったらやっぱ、爆豪と轟だよな」

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なそ」

するとかっちゃんは。

「んだとコラ、出すわ」

キレていた。

まぁ、かっちゃんの短気は今に始まったわけじゃないし。

「もう着くぞ。いい加減にしとけよ」

『はい!!』

______________________

ついた場所は物凄く広い場所だった。

誰かがUSJ かよとか叫んでた。

「水難事故、土砂災害、火事、エトセトラ。あらゆる事故や、災害を想定し、僕がつくった演習場。その名も、ウソ()災害()事故()ルーム」

そこには宇宙飛行士みたいな格好をし

たヒーロー、13号が居た。

ちなみに麗日さんは13号のファンらしい。

そして、オールマイトだけど、来るのが遅れるそうだ。

そして訓練を始める前に13号から話があるとのことなので聞くことにする。

「えー、始める前に、お小言を一つ二つ、三つ」

増える…。

「皆さん、ご存知だとは思いますが、僕の“個性”は“ブラックホール”。どんなものでも吸い込んで、チリにしてしまいます」

「その“個性”で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね」

僕がそう言うと。

「ええ…。しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう“個性”がいるでしょう」

かっちゃんの“爆発”なんかもそうだ。

「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制することで、一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えば、容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい。相澤さんの体力テストで、自身の力が秘めてる可能性。オールマイトの対人戦闘で、それを人に向ける危うさを、体験したかと思います。この授業では、心機一転。人名の為に“個性”をどう活用するかを学んでいきましょう。君たちの力は、人を傷つける為にあるのではない、助ける為にあるのだと、心得て帰って下さいな」

13号、カッコいい。

「以上、ご清聴ありがとうございました」

13号が言い終わった直後。

「一塊になって動くな。13号、生徒を守れ」

命を救える訓練時間に僕らの前に現れた。

「なんだアリャ。また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

「動くな、あれは(ヴィラン)だ」

プロが、何と戦っているのか。

「13号に、イレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなのですが」

「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」

「どこだよ。せっかくこんなに大衆引きつれてきたのにさ。オールマイト、平和の象徴、いないなんて」

何と向き合っているのか。

「子供を殺せば、来るのかな」

それは途方もない、悪意。



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No.11 敵、襲来(中編)

大変遅くなってすみません。
前みたいな投稿スピードよりは遅くなりますが、少しずつ再開していきます。
遅くなった理由は後書きで説明させてもらいます。
それでは本編どうぞ。


(ヴィラン)ン!?。バカだろ!?」

「ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

誰かがそんな事を言っているけど。

「先生、浸入者用センサーは!」

「もちろんありますが…!」

「現れたのはここだけか、学校全体か…。なんにせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうこと出来る“個性(ヤツ)”がいるってことだな」

八百万さんと13号先生、轟君が冷静に判断していた。

けど、これは明らかに計画的だ。

何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ。

「13号避難開始!。学校に電話試せ!」

相澤先生が冷静に周りの人に指示を出す。

「先生は一人で戦うんですか!?」

個性把握テストの後、調べた事で分かった事だけど相澤先生の「個性」は個性を消す個性の持ち主、イレイザーヘッドだった。

イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕獲だ。

だから、正面戦闘は……。

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号!、任せたぞ」

僕の考えを読んだかのような台詞をいうと相澤先生はゴーグルを掛け、単身で(ヴィラン)に向かっていった。

たぶん、あのゴーグルで目線を隠して「誰を消しているのか」わからなくさせているんだ。

「今の内に避難を」

僕の一言で皆が一斉に出口に向かうけど。

「させませんよ」

僕たちの目の前に黒い霧のようなモノが現れる。

「初めまして、我々は(ヴィラン)連合。僭越ながら…、この度ヒーローの巣窟、英雄高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思っての事でして」

は?。

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…。ですが、何か変更あったのでしょうか?。まぁ、それとは関係なく、私の役目は、これ」

次の瞬間、かっちゃんと切島君と僕の三人で攻撃を仕掛ける。

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

切島君がそう言うけど。

「危ない危ない………。そう…生徒とはいえど、優秀な金の卵」

「ダメだ、どきなさい君たち」

後ろから13号先生の声が聞こえたので、慌てて僕はその場から後退したけど、相手の敵が放出した黒い霧のようなモノに包み込まれてしまった。

気が付くと僕は水面に叩きつけられていた。

多分、さっきの霧はあの敵の個性だと思う。

おそらく、目眩ましだけじゃなく、ワープの能力も有るんだろうか。

そんなことを考えていると、僕の目の前にどこかで見たことのある人が現れた。

「オメーはあの時の。オメーみたいな奴がなんで合格できて、なんで、俺は」

とか言って僕に向かって突っ込んできた。

その時、蛙吹さんがその人に蹴りを入れていた。

その人が怯んでる隙に僕と蛙吹さん(と脇に抱えられた峰田君)は近くに有った船に乗り込んだ。

「ありがとう。助かったよ、蛙吹さん」

「梅雨ちゃんと呼んで。しかし大変な事になったわね」

僕はあの人の事を思い出していた。

確か、試験会場で僕と同じエリアにいた人だ。

0ポイントの仮想(ヴィラン)が現れた時に真っ先に逃げてた覚えがある。

そんな事より大事な事に僕は気づいてしまった。

あの霧みたいな奴は何か変更があったのでしょうかなんて言ってた。

つまり、それは。

「カリキュラムが割れてた…!。単純に考えれば、先日のマスコミ乱入は情報を得る為に、奴らが仕組んだってことだ」

「でもよでもよ!、オールマイトを殺すなんて出来っこねえさ!。オールマイトが来たら、グッチョンチョンだぜ」

峰田君が強がるけど、蛙吹さんがそれを妨げる。

「峰田ちゃん…、殺せる算段が整ってるから、連中こんなむちゃしてるんじゃないの」

僕は蛙吹さんの意見に同意する。

「確かにそこまで出来る連中に僕たちは襲われたんだ」

「なんでお前たちは冷静でいられるんだよ」

峰田君が僕たちに話しかけてくる。

「峰田君、聞いて。僕たちは冷静でいるんじゃない。冷静になってるんだ」

「は!?」

僕はおじさんに教わった言葉を峰田君にも教えてあげる事にした。

「おじさんが言ってたんだ。ピンチの時は焦れば焦るほど、視野が狭くなる。そうなったら、相手の思うつぼだって。だからこそ、冷静になって周りを確認するんだ。ピンチをチャンスに変える為に」

「緑谷……」

峰田君が僕を尊敬するような目線を僕に向ける中、僕は1つの真実に気づき始めていた。

「もしかしたら、相手は僕達の“個性”を知らないのかもしれない」

「どうしてそう思うのかしら?」

蛙吹さんが僕に話しかけてきた。

「蛙吹さんの“個性”は蛙だよね。だったら水難ゾーン(こっち)より、火災ゾーン(あっち)に飛ばした方が良かったと思うんだ」

僕は親指で火災ゾーンの方を指しながら二人に言った。

「確かにそうかもしれないわね」

すると次の瞬間。

「もう許さねえぞ」

「ぶっ殺してやる」

どうやらさっきの人だけでなく、まだ複数居たらしい。

「どうすんだ、緑谷?。おいら達囲まれてるぜ」

僕は峰田君に言った。

「こんなところで時間を潰す訳にはいかないんだ。だから、向こうの岸まで一気に跳びうつる」

「成る程な。……は!?」

峰田君は感心したように頷いた後に、びっくりした顔を僕の方に向けてきた。

「無理に決まってんだろ。お前や蛙吹の個性なら兎も角、おいらの“個性”じゃ無理だ」

「大丈夫だよ。峰田君、僕の背中に乗ってて」

そう言うと僕は峰田君をおんぶして、蛙吹さんの脇と膝を両手で抱えると、一番近い岸とは反対の手すりの方まで下がり、走り幅跳びの横領で両足にワン・フォー・オールの力を20%込める。

そして、右足に力を込めて跳んだ。

「なんだ!?」

水面に待機していた(ヴィラン)達が驚いているが、僕はそのまま、回し蹴りの要領で左足に込めた力を水面に向けて振るう。

僕の足から解き放たれた衝撃波が水面に直撃し、(ヴィラン)達を吹き飛ばしていた。

そして岸に無事に着地した僕は峰田君と蛙吹さんを降ろす。

「スゲーな緑谷!!」

感心する峰田君と。

「少しだけ、恥ずかしかったわ」

顔をほんのり赤くさせた蛙吹さん。

「早くセントラル広場に急ごう。敵はここだけじゃないはずだから」

そして僕達はセントラル広場に向かうことにした。




前書きでも書きましたが、更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
理由としては自分はスマホ投稿しているのですが、故障してしまい、メモしていたデータが消えてしまったのが原因の1つです。

後は仕事場で後輩指導と身内が入院(コロナとは関係ありません)したので忙しくなったのも原因です。

ある程度落ち着いたので、前みたいな更新速度とはいきませんが、少しずつ更新していきますので、最後までお付き合いお願いします。


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No.12 敵、襲来(後編)

今回はお茶子視点からです。


お茶子side

うちらは今、明らかに危機的状況にあった。

デク君達が黒い霧のような(ヴィラン)の“個性”に包まれて居なくなった後も、相澤先生が優勢に戦っていた。

だけど、黒い霧から現れた脳みそ剥き出しの黒い怪物によって形成は逆転してしまった。

うちらは飯田くんに助けを頼んだけど、いつ来るか分からへん以上、この状況では不利な事には変わらん。

すると手のようなモノを顔に着けた男が黒い霧のような人の話を聞いて。

「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。()()()ゲームオーバーだ。帰ろっか」

帰る。

これだけの事をしておいて、あっさり引き下がるなんて…。

オールマイトを殺しに来たねんな。

何を考えとる。

このままやと雄英の危機意識が上がるだけやのに。

「けども、その前に、平和の象徴としての矜持を少しでも、へし折って帰ろう。脳無」

次の瞬間、怪物がうちらの方に向かってやって来た。

けども、その攻撃がうちらに向かう事はなかった。

黒いスカーフかマフラーのような物が攻撃を遮ったから。

私は、その持ち主を知っている。

オールマイトではないけれど、とても頼りになるその存在を。

その布が宙で何かを包むかのように纏まった後、その持ち主は姿を現した。

「皆、もう大丈夫。何でかって?。僕が来た」

______________________

出久side

「皆、もう大丈夫。何でかって?。僕が来た」

マフラーを使った瞬間移動。

原理は分からないけど、初めて試した割には上手くいった方だと思う。

「そのセリフ、オールマイトのフォロワーか?。まあ、いいや。脳無、そいつから片付けろ」

手のようなモノを顔に着けた男が、何かを指示していた。

僕は僕を見て安堵したのか、泣き顔になり、アヒル座りしている麗日さんを蛙吹さんに託す。

そして。

「皆下がってて。こいつの相手は、僕がする。それに、こんな奴らのために、誰かの涙を見たくないんだ。だから見てて、僕の変身」

僕はオーマジオウドライバーを装着する。

『祝福の時、最高!』

僕の手足の指先から肘と膝の方にまで鎧のような物が形成される。

『最善!』

鎧が肩と股関節の辺りまで形成される。

『最大!』

首から下腹部の辺りまで鎧が形成される。

『最強王!』

マスクが形成され、鎧にも装飾が現れる。

『オーマジオウ』

ライダーの文字が目の部分に赤く発光する。

変身が完了するが早いか、脳無と呼ばれた怪物が拳を振るって来たので、ノーガードで受け止める。

「やったか?」

手のようなモノを顔に着けた男がそんな事を言っていたけど。

「この程度か」

「「な!?」」

(ヴィラン)二人が驚いているが、僕にとっては蚊が止まるぐらいの感覚でしかなかった。

次の瞬間、僕はある言葉を無意識に言っていた。

(ヴィラン)連合とか言っていたね。僕は自分の罪を数えたよ。一つ、僕は自分自身を過大評価してた。二つ、そのせいで、相手の“個性”のせいによって皆バラバラになってしまった。三つ、その結果、皆を不安にさせてしまった。後は、お前達の罪を数えろ」

「ふざけんな。脳無、やっちまえ」

脳無が激しいラッシュを僕に加えるなか、僕は一発攻撃を放つ。

次の瞬間、ぶっ飛ぶ脳無。

「どんな技を使ったか知らねえが、脳無の“個性”は衝撃吸収。その程度無効にするんだよ」

なるほど、衝撃吸収か。

それなら。

僕は脳無に接近し、先程と同じように脳無の腕に、小指で凸ピンを放つ。

次の瞬間、ちぎれ飛ぶ脳無の太い腕。

衝撃吸収って事は上限が有るって事じゃないのかと思ったけど、やっぱり有ったみたいだ。

「たかが、凸ピンが、あの威力だと!?。けど、脳無の“個性”はそれだけじゃない」

よく見ると、ついさっきちぎれた脳無の腕が再生していた。

「なるほど、再生能力もあるのか。それなら」

僕がオーマジオウドライバーに両手をかざすと。

『クウガの刻、マイティキック』

そんな音声が流れる。

「何をするつもりだ?」

呆れてる手のようなモノを着けた男をよそに僕は脳無に向かって右足の回し蹴りを食らわす。

蹴りを食らった脳無は謎の模様なモノを体に描き、U・S・Jの壁に向かって再びぶっ飛んでいた。

そのまま、ピクリとも動かなくなった脳無を見て手のようなモノを着けた男は憤慨していた。

「何で、対オールマイト用の脳無が、あんなガキにやられんだよ」

「とにかく、今は引きますよ。死柄木弔」

黒い霧のような敵がそう言い二人は黒い霧に包まれ、霧が晴れた頃には、居なくなっていた。

僕は変身を解くと、その場で意識を失ってしまった。

______________________

気が付くと僕は保健室のベッドの上で寝ていた。

目が覚めた後は、他の先生に怒られてしまったが、緊急事態は避けれた為に咎めは無しになった。

後は、飯田君が申し訳なさそうに僕に謝ってきた。

何でも13号先生に救援要請を頼まれた際に自分だけ逃げると言った考えをしてしまった事で若干タイムロスしてしまったとの事だが、相手の“個性”を考えると飯田君が躊躇しなくても結果は変わらなかったと思う。

その後も飯田君は謝ってきた来たので、プロヒーローであるお兄さんのサインを貰うということでチャラにしてもらうことにした。

ちなみに僕が倒れた原因は過労によるものに近いものなのですぐに教室に帰れた。

教室に戻るとかっちゃんが怒った顔(いつもだけど)をして僕の方を睨んでいた。

その後は相澤先生が治療を受けているため、校長先生が代わりに僕達のホームルームを行い、その日は下校になった。



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体育祭編
No.13 告げられる報告と迫るイベント


久しぶりに書いたら3000字越えてました。

誰よりも作者である自分が一番驚いてます。


オールマイトside

敵襲撃事件の翌日。

私は今、私の“個性”の秘密を知る数少ない友人である塚内君の話を聞くために他の教員達*1と一緒に雄英高校の会議室に集まっている。

「U・S・Jに現れたという(ヴィラン)についてですが、生徒が聞いた死柄木という名前、触れたモノを粉々にする“個性”、20代~30代の個性登録を洗ってみましたが、該当なしです。“ワープゲート”の方、黒霧という者も同じです。無戸籍旦つ、偽名ですね。個性届けを提出していない、いわゆる裏の人間」

「何もわかってねえって事だな。早くしねえと死柄木とかいう主犯がまた来たら面倒だぞ」

私の隣でスナイプ君がそんな話をしている中、一つの疑問を抱いていた。

()()か」

「何だい、オールマイト」

私の右に座っておられた校長が聞いてこられたので質問に答える。

「思いついても普通、行動に移そうとは思わぬ大胆な襲撃。用意は周到にされていたにも拘わらず!。生徒達の報告では、自分の“個性”は明かさない代わりに、脳無とやらの個性を自慢気に話したり…。そして思い通りに事が運ばないと露骨に気分が悪くなる」

「それにしたって、対ヒーロー戦で「個性不明」というアドバンテージを放棄するのは愚かだね」

「“もっともらしい稚拙な暴論”、“自分の所有物を自慢する”。そして思い通りになると思っている単純な思考。襲撃決行も相まって見えてくる死柄木という人物像は、幼児的万能感の抜け切らない、いわゆる、“子ども大人”だ」

「“力”を持った子どもってわけか!!」

「小学時の「一斉“個性”カウンセリング」受けてないのかしら」

「で、それが何か関係あんのか!?」

ブラド君の質問に塚内君が答える。

「先日のUSJで検挙した(ヴィラン)の数、72名。どれも路地裏に潜んでいるような小物ばかりでしたが、問題はそういう人間がその“子ども大人”に賛同し、付いて来たということ。ヒーローが飽和した現代。抑圧されてきた悪意達は、そういう無邪気な邪悪に魅かれるのかもしれない。まあ、ヒーローのおかげで我々も地道な捜査に専念できる。捜査網を拡大し、引き続き犯人逮捕に尽力して参ります」

塚内君が話を終えると校長が。

「“子ども大人”。逆に考えれば生徒らと同じだ。成長する余地がある…。もし優秀な指導者(バック)でもついたりしていたら…」

校長の話に私は一言だけ返した。

「………考えたくないですね」

そして会議の後。

「オールマイト、少し良いかい?」

塚内君に呼び止められてしまった。

______________________

出久side

U・S・Jの事件の翌日は臨時休校となった。

そして休校明けの次の日。

「皆、席についてる?」

「ついてるよ!」

怒鳴りながらだけど、かっちゃんが代表して言ってくれた。

そして、

「お早う」

包帯でミイラみたいになった相澤先生が教室に入ってきた。

「先生、無事だったんですね」

「無事言うんかなぁ、アレ……」

飯田君と麗日さんがそんな話声がしていた。

先生が教壇に立つと、

「俺の安否はどうでも良い。何よりまだ、戦いは終わってない」

「戦い?」

「まさか…」

「また敵が!?」

かっちゃん、僕、峰田君*2の三人でそんな反応した直後。

「雄英体育祭が迫っている」

『クソ学校っぽいの来たあああ!!』

大多数の生徒がそんな反応をするなか、誰かが。

「待って待って。敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか?」

すると先生は。

「逆に開催する事で雄英の危機管理体制が磐石だと示す。って考えらしい。何より、雄英の体育祭は……最大のチャンス。敵ごときで中止にしていい催しじゃねえ。ウチの体育祭は日本のビックイベントの一つ!!。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ、全国が熱狂した。今は知っての通り、規模も人口も縮小し、形骸化した。そして日本に於いて今、「かつてのオリンピック」に代わるのが、雄英体育祭だ」

ここまで先生の話を聞いて僕の後ろに座る峰田君が口を開いた。

「その意見も一理あるけどよ、やっぱり中止にした方がよくねえか?。入り口のゲートだってそこまで治ってるわけでもないし」

峰田君の質問に対して先生は。

「峰田の考えも尤もだが、警備は例年の五倍に強化するそうだ」

その答えに納得したのか峰田君は首を縦に降っていた。

「卒業後はプロ事務所にサイドキック(相棒)入りが定石(セオリー)だもんな」

「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね」

「当然、名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓ける。年に一回、計三回だけのチャンス。ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ」

先生はそれだけ言うと、朝のHRは終了した。

そして四限目終了後の昼休み。

「あんなことあったけど、なんだかんだ、テンション上がるなオイ」

「活躍して目立ちゃプロへのでけぇ一歩を踏み出せる」

切島君と瀬呂君がそんな話をしていた。

「皆、すごいノリノリだ」

「君は違うのか?。ヒーローになる為在籍しているのだから燃えるのは当然だろう!?」

お昼を誘いに来てくれた飯田君が独特な燃え方をしていた。

「飯田ちゃん、独特な燃え方ね。変」

蛙吹さんにまで言われていた。

そして麗日さんは顔がちょっとかっちゃんぽくなっていた。

芦戸さんにもうららかじゃないよなんて言われていた。

そういえば、麗日さんに聞いてなかったな…。

______________________

「え、お金!?。お金欲しいからヒーローに!?」

階段を下りて食堂に向かう途中麗日さんにヒーローを目指す聞いてみたところ、そんな風に返された。

「究極的に言えば。なんかごめんね、不純で。飯田君とか立派な動機なのに、私、恥ずかしい」

顔を赤く染める麗日さん。

そんな横で腕を激しく動かしながら飯田君が。

「何故?。生活の為に目標を掲げる事の何が立派じゃないんだ?」

「ウチの実家、建設会社やってるんだけど全然仕事なくてスカンピンなの。こういうのあんま人に言わん方が良いんだけど」

「なるほどね。麗日さんの“個性”なら許可取ればコストかかんないね」

「でしょ!?。それ昔父に言ったんだよ。でも、父は「気持ちは嬉しいけどな、お茶子。親としてはお茶子が夢叶えてくれる方が何倍も嬉しいわ。したらお茶子にハワイ連れてってもらえるしな-!」なんて頭撫でられながら言われた。だから私は絶対ヒーローになって、お金を稼いで、父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」

憧れだけじゃなくて現実を加味したうえで…。

飯田君が隣で、

「麗日くん…!。ブラボー!!」

と言っていたので僕もおじさんに教えてもらった言葉を麗日さんに終えてあげた。

「麗日さん。僕の師匠にあたるおじさんが言ってたんだ。憧れだけじゃ力は手に入らない。けど憧れる事で目標を目指して努力する手助けにはなるって」

麗日さんの両肩を叩いてそう言うと麗日さんはさっきよりも顔を赤くしていた。

「ありがとう、二人とも。ウチの夢を応援してくれて」

そして放課後。

僕達の教室の前には沢山の生徒達がいた。

「出れねーじゃん!。何しに来たんだよ」

「敵情視察だろ」

そう言ってかっちゃんは教室の入り口に向かっていき。

「意味ねえからどけ、モブ供」

かっちゃんがそう言うと。

「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい」

「ああ!?」

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅しちゃうかな。普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴、けっこういるんだ。知ってた?、体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた然りらしいよ。敵情視察?。少なくとも普通科(おれ)は、調子にのってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつ-、宣戦布告しに来たつもり」

宣戦布告ねえ。

だけど今回ばかりは。

「かっちゃんの意見に僕も賛同かな」

そして軽く力を入れて他クラスの人を睨み付ける。

次の瞬間、その場にへたり込む他クラスの生徒達。

「君達が僕達を倒してヒーロー科に編入するのは無理だよ。こんな所で宣戦布告してるようじゃ、ね」

僕の隣に立っていたかっちゃんは。

「俺に賛同者なんて要らねえんだよ」

そう言って教室を出ていった。

僕達もその後、未だにその場にへたり込んでいたり、気絶している人を避けながら下校した。

*1
相澤と13号、修善寺を除く

*2
峰田は原作ほど驚いていない



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