ザンザスが、殺し屋を目指すお話。 (黄色いうちわ)
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 憤怒、事実を知り逃走する。

  


    一番最初でございます。ザンザス幼少期です。


  

 

    ほんのすこしだけ、お父様のお仕事を知りたい。そんな軽い気持ちだった。

 

 

 

    内緒で忍び込んだ、お父様の執務室。

 

    執務室のお父様の机には、書きかけの手紙があった。来ると、必ず自分と遊んでくれる家光さんへの宛名書き。自分の事が書いてあるのかなと思い、中身を読んでしまった。

 

    自分にとっての絶望がかかれていた。

 

 

    お母さん、貴女は、俺を置いて消えてしまった貴女は、どれほど残酷な事をしたのかをわかっていますか?

 

 

    ぐちゃぐちゃな胸の中に宿った想いは、この場所から、ボンゴレファミリーから逃げ出さないといけないという想いだった。

 

 

    優しいお父様や優しいお兄様と弟から逃げなければならない。あの優しい人達にとって、自分は疫病神そのものだ。

 

 

 

    洗ってもらって保存していた、…棄てる事を進められていたけれど、お母さんが俺にプレゼントしてくれた一番上等の服に着替えた。

 

 

    この屋敷に来てから与えられた物は、すべて置いていく。ありがとうございました。いつか、お金も返しにきます。

 

 

    与えられた知識や技術で、大人になったら必ずボンゴレファミリーに貢献します。

 

 

 

    「あれ、ザンザス君じゃないか。出掛けるのか?護衛を誰かに頼むんだよ。そうだ、兄さんがお小遣いをあげよう。おみやげなんか考えなくていいから、楽しんでおいで」

 

 

    「兄さんばっかりズルイですよ。ザンザス君、僕からもあげるよ。エンリコ、君は飴玉で大丈夫だよ」

 

 

    「ザンザスおにいさま、はい」

 

 

    「あ、ありがとうございますっ」

 

 

    泣き出さずに、お礼を言えたのは奇跡だった。

 

 

   

   優しいあなた達に弟と、兄と呼ばれた事をけして忘れません。あなた達か お父様九代目の後を継ぎ十代目になる事を心から祈ります。

 

 

 

    見咎められぬ様に注意しながら、屋敷を出た。出たところで、声をかけられた。

 

 

 

    「ザンザス、どこに行くんだ?」

 

 

    「…リボーン。今日はお父様の護衛をしないのですか?」

 

 

    「たまにはな…ズル休みだ。ザンザス、悩みがあるのなら聞いてやる。お前は九代目の息子だ。お前の兄弟も認めている。外野が何を言ってもかまうな。お前はガキでも男だ。泣くな」

 

 

    リボーンの言葉に、自分が泣いていると気がついた。ああ、屋敷から出てやっと泣けたんだ。

 

 

    俺は泣きながら、リボーンに伝えた。自分がお父様の血を継いでいない事を。屋敷から、ボンゴレから離れて生きていく事を。

 

 

    「戻れと言っても聞かねー面構えだな。わかった。俺がお前を弟子にしてやる。一人で生きていく強さを持った一流の殺し屋にしてやる。お前はボンゴレファミリー専属の暗殺者になればいい。それで、親父と兄弟を助けてやれば良い。だからもう泣くな」

 

 

     逃走を決めて、一時間いないに、俺は人生の師を得て人生の目標を得た。

 

 

     リボーン先生は、ご自分の隠れ家のアパートの一室を俺に貸し与えてくれた。

 

 

    「本邸の私室と比べたらゴミ箱みてぇなもんだろ?帰りたくなったら直ぐに言え。九代目には、お前が町で迷子になって泣いているのを保護した。泣いて瞼が腫れたのを恥ずかしがっているから治るまで俺が預かると伝えてやる」

 

 

    「…?いえ、お母さんと暮らしていたスラムと比べたら天国みたいな環境ですよ。死体が転がってないしネズミもゴキブリもいない。セックスのあえぎ声も矯声も聞こえないし銃声も断末魔の叫びもない。屋根を支える柱がいつ崩れるかを心配する事もない。リボーン先生がくださったパンも柔らかくて美味しいです。カビても腐ってもいない。まあ、耐性がついたのか、お腹をこわさなくなりましたけどね。…リボーン先生、俺はできたらお母さんを探したいです。たぶん、もうお母さんは自分で命を絶っています。だけど、ちゃんとしたお墓をつくりたいです。ボンゴレで行方つかんでいますかね?俺が偽物と知って預けたのは、俺をまともな環境で育ててやりたいと思ったからですかね」

 

 

     「…ああ、そうに決まっている。もう、寝ちまえ。俺は屋根の上で星を見てるから、なんかあったら声をかけろ」

 

     「はい、おやすみなさい」

 

 

     「おやすみ」

 

 

     精神的に疲れていたのか、夢は見なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

      貧困がみんな悪い。心を病んでしまった母親が気の毒だ。傷つけられた息子は俺が弟子にして守ってやる。

 

 

 

 

     九代目に、ザンザスが全てを知ってしまった事と、俺が弟子にした事を話したら酷く取り乱した。ああ、こいつはこいつでザンザスを息子として愛していたのだとわかった。

 

 

     問題の手紙にも、血の繋がりなどないがザンザスが愛しい。家光、君にもし娘が生まれたのなら私の息子ザンザスと婚約してほしいと続けるはずだったと。…書き終えてから席を外せよ。

 

 

 






リボーン先生はザンザス過保護になります。








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 憤怒、四人の父親を得る。

 

  リボーン先生の深まる過保護。


 

 

  リボーン先生に課せられた訓練は辛く厳しいものだった。

 

 

   だけど、これは俺が死なないために、生き抜く為に必要な事で、弱音を吐いてはいられなかった。

 

   それでも、純粋に強くなれる事は嬉しかった。訓練をこなせばこなすほど、俺の体力と技術は向上していったのだ。俺が強くなれれば、リボーン先生みたいな最強の殺し屋になれれば、あの優しい人達の力になれる。

 

   体力と気力が尽き果てたら、ちゃんとリボーン先生は休ませてくれた。俺がベットに寝て、リボーン先生が横で勉強を教えてくれた。ボンゴレの歴史やアルコバレーノの仲間とした仕事を話してくれた。俺はそれらを聞くのがすごく楽しかった。

 

    「初代はどうして、日本へと旅立ってしまったのでしょうか?」

 

    「さあな。あいつの、家光の先祖だからな、あまりロマンスを求めないほうがいいぞ。惚れた女のけつを追っかけていったとかな」

 

    「それってやっぱり駆け落ち系のロマンスですよね」」

 

    「あ、思いだした。確かな借金が膨れて返済に困って二代目に押し付けて日本に高跳びしたという文献が最近発見されたな」

 

    「えっ!本当ですか?」

 

    「ああ、全部嘘だ。ボンゴレボンゴレでなくてだな、お前はもっと自由に自分を生きても罰は当たんねぇぞ。家光の適当さを見習え」

 

    「適当さをですか?」

 

    「適当さとか困ると俺や九代目に泣きつくとことか愛妻家なところだな。ザンザス、お前はガキだ。だから、ガキのうちは大人に甘えて良いんだ。…そうだ。たまには今みたいに泣いても許されるんだって覚えておけ」

 

    「…リボーン先生、あり…がとうございます」

 

    リボーン先生は、俺の教師でもう一人の父親だった。

 

 

    お父様に、九代目に会えと何度も言って下さったけど、何の関係もないと知ってしまったからには、九代目に会うなんてできなかった。

 

 

 

    ザンザスが直ぐに音をあげると思っていた。

 

    直ぐに帰りたいと泣きついてくると考えていた。

 

    だが、ザンザスは狂った母親に育てられて、長じてからは母親を守りながらスラムで生きてきた子供だった。

 

    生きる事、強くなる事に貪欲な獣だった。

 

    血の繋がりなど欠片もないくせに、最強のマフィアの首魁としての強さを資質を俺に見せつけてきた。

 

 

   …神様は時折酷く酷い事をなさる。

 

   九代目の三人の息子よりも、同年代のマフィアのボスの後継者よりもザンザスには才能があった。人を惹き付ける魅力と人を殺す技能。大局を見る力。才に溺れずに努力を惜しまぬ勤勉さ。ボンゴレファミリーの代々のボスにしか宿らぬはずの炎。禍々しくも強く美しい炎は、憤怒の炎という。ザンザスに似合いの炎だ。これになぜ血統が与えられなかったのかっ。ザンザスの母親がボンゴレファミリー以外にザンザスを預けていれば良かったのだ。そうすればザンザスは後継ぎとはならなくても、次代の最高幹部として育ててもらえた。裏切りにあい、傷つく事もなかった。

 

 

    血反吐を吐いても、胃液を吐いても俺に俺達に挑んでくる愛しい獣。

 

    与えた課題をクリアーをしたので誉めてやると、嬉しそうに笑う。ザンザスは俺達アルコバレーノの可愛い弟子だ。

 

 

    コロネロ達にも可愛がられて鍛えられてはいたが、スカルには会わせないでいようが全員の意見だった。バイパーの奴にも、ザンザスを一流の幻術士にしてほしかったのだが、行方不明のままだ。まったく何処をほっつき歩いているのやら。

 

 

    ザンザスは七代目と同じ二丁拳銃の扱い方を仕込んでいる。

 

    ボンゴレに憧れながらもボンゴレに怯えてしまう様になってしまったザンザス。

 

    抱えちまったボンゴレへのトラウマは、憧れているボンゴレのボスへの憧憬を使って消してしまえ。

 

    ザンザスの成長記録を読んだ九代目は泣き伏した。

 

    …俺達アルコバレーノの愛弟子の成長記録を見せてやったというのに、いったい何が不満だ。

 

 

    「り、リボーンっ。君は私の息子のザンザスに何を教えているのだっ。あのこは御曹司として育て」

 

 

    俺は、殺気を込めて九代目を睨んだ。

 

    「二ヶ月だけな。その前は治安最悪な糞よりもひでぇスラムで生きてきたんだ。母親に置いていかれた子供が、置いていかれた場所から追い出されない様に、その場所にいたお綺麗で品の良い子供たちの真似をして、必死になって《ボンゴレに相応しい御曹司》を覚えた。お前が知るザンザスはその結果の御曹司だ。ザンザスはな、お前とお前の三人の息子、ボンゴレファミリーに恩を返したいんだと。その為に牙を磨いて爪を研いでいるんだ。…あんなに傷ついて可哀想?お前とあいつの母親がザンザスにしたことは残酷でないとでも言う気か?」

 

 

    「……すまなかった。ザンザスを頼む」   

 

    「ああ。任せておけ」

 

    「…ザンザスに一度会わせてくれないか?抱き締めて、その…ボンゴレ本邸に戻って君に師事を受けなさいと言いたい」

 

    「無理だ。俺はザンザスを泊めた翌日に、ザンザスを連れてここに来た。門扉に近付くにつれ、汗をかき呼吸は苦しそうになった。門をくぐって敷地内に入った時点で、ザンザスは朝飯を吐いた。ザンザスを心配していた兄弟がザンザスに駆け寄り声をかけたら、謝罪の言葉を繰返し言いながら気を失った。…ザンザスの事は、今は諦めてやれ。あいつが強くなって、自分で落とし前をつけなきゃいけねーんだ。無理に会うなんて思うなよ。ザンザスを廃人にしてぇんなら、俺は、俺達アルコバレーノはお前の敵になる」

 

 

   慟哭をあげる九代目を置いて部屋を出た。

 

 

   会わせるも何も、風とコロネロと一緒に、ザンザスは今中国大陸で体幹と反射神経強化月間だ。

 

 

   ザンザスも実際のところは、お前に会うのは嫌がったが、俺達からの説得の末に、兄弟には会いたがった。

 

   お前に似て、三人の息子はザンザス大好きっこだからな。一日、いや、半日の不在にヤンデレと化していた。こいつらは、ザンザス監禁計画を企てていたからもう会わせないでいいやがアルコバレーノの総意だ。

 

 

    …ザンザスの泣きながらの血の繋がりがない他人です発言に、なら結婚できるねと嬉しそうにとちくるった事ほざいた獣だったから会わせないがザンザスの父親になった俺達の総意だ。

 

   

 






  コロネロ氏・風氏・ヴェルデ氏・リボーン氏。ザンザスの嫁は受け付けるが婿は断固拒否だ。欲しければ俺達を倒してみろ。←無理難題すぎる。 


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 憤怒、親友を得る。

 

  家光氏はザンザス氏を気にかけてます。










   

 

    今日は、リボーン先生が本邸に行かれた。

 

   俺は毎日、学校から帰ってきたら、宿題と予習復習を終える。そうしたら、軽く家の掃除をしてから夕御飯を作る。作り終えたら、明日の授業の準備をする。そして、ヴェルデ先生から渡されたプリントや計算ドリルをする。

 

   一日三枚と五ページ。二週間分が終わったら、ヴェルデ先生が来てくれてわからなかった所を教えてくれる。科学とか数学は楽しい。

 

 

   プリントと計算ドリルが終わったらリボーン先生&風先生の特製のトレーニングメニューをしはじめる。晴れと曇りの日はトレーニングをするけど、雨と雪の日はコロネロ先生監修のビデオを見ている。重火器の組み立て方・壊し方・威力・撃ち方等興味深い。アルコバレーノはすごいと思う。でも、まだ三人のアルコバレーノに会えていない。どんな人達なのだろうか?

 

 

    考えていたら、チャイムが鳴った。

 

    「おーい、ザンザスっ。ちょっと玄関を開けてくれ。リボーンと俺は、これから両手が塞がっちまうんだ」

 

    家光さんの声がした。

 

    耳を澄ませば、リボーン先生の声もした。

 

    「往生際が悪ぃぞ。助けは来ねぇよ。諦めろ」

 

    「っ。嫌だあっ。お前に習ったらマフィアになる前に死ぬじゃんかっ!体が蜂の巣みたいになって死ぬじゃんかっ。嫌だけど、スッゴク嫌だけどマフィアになるよっ。だから教師のチェンジをっ!」

 

   ??なんだろう。お客さんかな?新しい弟子なのかな?

 

   慌ててドアを開けた。

 

   ああ、確かにリボーン先生と家光さんの両手がふさがっていました。

 

   簀巻きな少年をお姫様抱っこした家光さん。雪車に化けたレオン(少年の荷物が乗っている推定)を引いているトナカイコスのリボーン先生。

 

    「お、お帰りなさいリボーン先生。いらっしゃいませ家光さん。今日は、シチューとサンドイッチです。沢山作りましたから、沢山食べて下さい」

 

    「そこの少年っ。助けてくれっ。こいつらは人さらいだっ。拐かしで誘拐犯だっ。警察に通報してくれっ。謝礼ははずむからっ」

 

    全部同じ言葉の意味ですね。

 

 

    「あのさ、リボーン先生に習えるのはすごく幸運な事だよ。だってあの伝説のアルコバレーノだ。確実に強くなれるよっ」

 

    「騙されているっ。騙されているっ!あんたはこの二人に騙されているんだっ。きらきらした目で嬉しげに強くなれるなんて言っては駄目だっ!洗脳?…っこんの極悪人どもがっ。俺だけならまだしもこんな民間人の少年まで拐って洗脳するだなんて絶対に許さないぞっ。いつからボンゴレファミリーの門外顧問とボスの親友の暗殺者は外道マフィアになったんだっ。恥を知れっ。俺はともかく少年はマンマと親父の所に今すぐに返してやれっ」

 

   えっ?なにこの正義の味方みたいな少年。

 

   「返すも何も、こいつ、ザンザス自身が望んで此処にいて俺の弟子になったんだ。…それにな、こいつにはもう、マンマと実の父親はいねぇ。こいつを残して死んじまった。俺と俺の親友達がザンザスの親父で教師で家族だ」

 

    「で、俺が今は親戚の伯父さんで将来のお義父様だな」

 

    「「…家光・さん。気が早い・ぞ・です。白の結婚期間・だろ・でしょうに」」

 

    「ち、違ぇしっ。奈々と俺はもうラブラブバカップルだしっ。リボーン俺はもう親父だ!くそっ。ディーノ、もう下ろすぞっ。なんで奈々じゃない人間をお姫様抱っこしなきゃなんねーんだっ」

 

    下ろされた簀巻きなディーノ君は、ボロボロと涙をこぼしながら泣いていた。ホームシックかな?

 

 

    「ご、ごめんっ。ごめんなさいっ。お、俺知らなくてっ。マンマと親父がいないなんて…死んじゃったなんて悲しいよなっ寂しいよなっ」

 

    えっ?なにこの優しすぎるきらきらな生き物。天の国から落ちてきちゃった神様の御使い様?俺と同世代みたいだけど、もっと幼いのかな?なんで他人を思いやれるの?もしかして優しいアルコバレーノの先生みたいに幼いけど大人なの?それとも、楽しくなるお薬をキメてらりらり中なの?

 

    …そうだ。きっとそうに違いない。可哀想に。綺麗で可愛い顔をしているから薬浸けにされちゃって、慰み者にされちゃう直前の所を助けてもらったのだ。薬を完全に抜くのって大変だからな…違う大変さを、リボーン先生の特訓を当てて相殺する気なんだ。流石です、リボーン先生、家光さんっ。

 

    「…リボーン先生、家光さん。俺は、大人になったら貴方達みたいな優しくカッコいい大人に必ずなりますね。目指せハードボイルドっ。で、俺は何をおてつだいすれば良いのでしょうか?」

 

    「…ザンザス、なんかお前、一週回って深読みしすぎてねぇか?子供特有の思い込みで突っ走ろうとしてないか?落ち着け、なっ?」

 

    「…(くそっ。素直さんかっ可愛いじゃねーかっ)ザンザス、お前は今まで通りの生活で良い。ただ、同居人、こいつが増えるだけだ。名前はディーノだ。パーティーで一度くらいは会っているはずだが、覚えているか?」

 

   「…糞野郎ども、民間人の可哀想な少年が俺と知り合いのわけないだろっ。だいたい俺はマンマと親父と一緒にマフィア主催のパーティーに出る事しか外の世界を教えてもらえてねーんだよっ。それなのに、なんで今さら家庭教師の家で住み込み合宿なんざしなきゃなんねーんだ…甘えだ。傲慢だ。ごめん、ザンザス君?…糞リボーンに糞家光、お前らはさっきからこの少年をザンザス君と言っていませんでしたか?」

 

   「おうっ。言っていたぞ。お前らマフィアの御曹司が憧れているボンゴレファミリーの四番目の御曹司だぜ?人見知りで引きこもりなお前がボンゴレファミリー主催のパーティーには必ず出たがったのは一目惚れしたザンザス少年に会いたいからだもんなぁぎゃあああっか、噛むなっ指を噛むなよっ!」

 

   「ザンザス、まだ思い出さねーか?」

 

   「いえ、リボーン先生、ですが俺が会ったのはディーノ嬢でした。ご令嬢達に意地悪をされて、…ドレスを汚されてしまって泣いていらっしゃったので、メイドに頼んで着替えさせてもらってから、図書室にお連れして絵本を一緒に読みました。…失礼いたしました。美しく伸ばされていた髪が短くなっていたので気づきませんでした」

 

   「…無自覚たらしホストジゴロめ。まあ、キャバッローネファミリー唯一の継承者だ。婿を取らせて継がせる気でいたが、愛娘可愛さにな、愛娘の好きな男を婿にする気だった。だけどな、噂でディーノの好きな男はマフィアを嫌って家出をして、生死不明になっちまったんだと。ご令嬢達も嘆き悲しんでいる。で、ディーノは女ボスだがボスとして生きる。婿は取らないと断言して髪を短く切った。で、俺に家庭教師になってくれと依頼がきた」

 

   「男冥利につきるねぇっ。よっ!女泣かせの色男っ憎いねっだ・か・ら・噛むなっ痛いっーのっ」

 

 

   「ひへみふがわひゅい!おれっわたしのこい…べらべらとしゃべるなっ」

 

   「可愛いけど可愛くねーぞっ。ほら、いい加減簀巻きから解放してやるからっ。大人しくしろって。だいたいあのデブいやふとましやかな丸太がこんなガリガリまな板美少年になっちまったら誰も気づかねーよ。深窓の泣き虫でおしとやかな少女かこんな口の悪い悪童にジョブチェンジを果たすなんて思い付かないっての。いいか、男はみんなマザコンなんだ。ザンザスの亡くなったマンマはどっちかといったらふとましやかでしとやかなレディだ。ディーノ、お前がやった努力は水の泡だな。そもそも縁なんてなかっヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァま、マジて撃つなよっ!!!」

 

 

    「…家光、お前は喋りすぎた。俺の恋の成就の為にも消えてくれ。ザンザス君、俺の名前はディーノだ。女に戻るのは、大人になってボスとして胸を張れる様になってからと決めている。だから、俺の親友になってほしい。さ、支えてほしい。男友達として側にいてほしい」

 

   「よろしく、ディーノ。俺は親友の君を支えると誓うよ。君の選んだ道は苦難の道だ。それでも、逃げずに後継者となる事を選んだ君に敬意と友情を誓います」

 

 

   片膝をつき、ディーノ君の手の甲にキスをした。

 

 

   ディーノ君はぶっ倒れた。

 

 

   家光さんは「やるねぇ!」と言ってから口笛を吹いた。

 

   俺はリボーン先生に「この、たらしがっ」と怒られピコピコハンマーで頭を打たれた。…解せぬ。

 

 

 

   





  リボーン氏&家光氏「だってなぁ、家光に・俺に娘が生まれたならザンザスを婿にしたいし」


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 憤怒、料理を教える。


  端から見ると、微笑ましい兄妹。





 

   ディーノが俺と同じリボーン先生の弟子になった。

 

   ディーノとは、通う学校が当然ながら違う。だから、学校が終わったら駆け足で帰る事にした。同居生活の翌日からの日課だ。女性をあんなふうに泣かせてはいけないのだ。

 

   ディーノは家事ができない。というよりは、する必要がなかったのだ。使用人やメイドを束ねる執事に命令をする。その事だけができれば構わないことをゆるされていた。

 

    キャバッローネファミリーのボスが愛妻家なのは有名な話だった。マフィアのボスとしては、複数の愛人を持つのは当然だった。だけど、彼は恋人=妻で、妻だけを深く愛していた。なかなか子供が授からなかったけど、周囲が進める愛人を受け入れる事はけしてなかった。

 

   年老いてから授かった一人娘のディーノ嬢を、文字通りに溺愛した。盲愛といってもよかった。

 

   好きな食べ物、甘いお菓子に甘い紅茶。望む物をねだられる前にすべてを与えた。

 

   …そう、なんというか…娘が可愛くて可愛くて、だからこそ娘が望む家庭教師に最高峰の人材を用意してしまったのだ。

 

   リボーン先生は無茶振りはしない人だ。これくらいはできるだろうと思い、ディーノと俺に先に帰った方が飯を作っておけと言った。

 

   俺が帰宅したら、ディーノは途方にくれて泣きそうになっていた。

 

   父親と母親からはカードと多額の現金を渡されていた。だけど、その意味すらも教わっていなかった。電話はアパートにはなく、携帯電話は俺は本邸に置いてきたから所持していない。ディーノは持ってはいたが電池切れを起こしていて充電の意味も理解していなかった。

 

    ディーノは、知らない事だらけだという事を、生まれてはじめて知った。そしてそれを恥じてしまい、それでも両親を責める事が出来ずに、ただ、自分の無知を恥じて責めていた。

 

 

   そうして、俺にたどたどしく謝って謝りながら泣くまいと必死に耐えていた。

 

   俺は、泣いていいよと言った。泣いて、気が済むまで泣いていい。泣き止んだら、わからない事を一から全部説明してあげる。泣いたのは君が生きはじめる合図の産声だ。君も君が愛するご両親も、ファミリーの人達も誰も悪くないよ。ただ、与える愛が導く愛を上回ってしまっただけだと。

 

 

   泣くディーノの背中をずっと撫でていた。

 

   ディーノは泣きつかれたのか眠ってしまった。痩せて髪を切ってしまい口調を変えても、本質は変わっていなかった。

 

 

   足を引っ掛けられて転倒した少女。わざとらしく頭から浴びせられたジュース。滴る水滴を拭うよりも父親から贈られた新しいドレスの染みをなんとかしようと思い、でも自分では対処出来ずに泣いていた少女。

 

   ディーノをソファーに寝かせてから夕食を作り始めた。

 

   暫く経ってから視線を感じたので、ディーノをみたら恥ずかしそうにこちらを見ていた。手招きをしたら、早足できた。

 

   「じゃあ、今日から少しずつやっていこう。手を洗って、このレタスをこうやって洗いながらちぎります。洗い終わったら軽く水気をきってね。そしたらこの大きめのお皿に入れて。プチトマトを乗っけてツナ缶を開けて中身を上にかけます。はい、サラダの完成です。キュウリとかハムとかを切って乗せてもありです。包丁やナイフの使い方は、サラダを一人でできるようになったらね」

 

   ディーノはきらきらとした目で自分で作ったサラダを見ている。

 

   「こ、これなら私にも一人でできそうっ。お父様とお母様、皆に作ってあげられるっ」

 

   …っ。この感じはなんかヤバイ。こそばゆい。きっとこの感じは、先生方が俺に抱いている感じと似ているんだ。だって上手く出来て喜ぶと、先生方は俺の頭を撫でてくれる。今、ディーノを誉めてあげて頭を撫でてあげたいもの。

 

    「…ごほん。ザンザス、ありがとう。あのさ、充電って途中でも電話できるかな?おかあさま…マンマにサラダ作れたって報告したいんだ」

 

    「良いよ。どうせならディーノがサラダを作っている所を動画配信してあげよう。タッパーに入れて、護衛と送迎をしてくれているマルコさんにお願いして、ディーノのご両親に届けてもらおう」

 

    「あ、ありがとうっ。俺、頑張るからっ」

 

    ディーノは言葉通りに頑張った。サラダだけよりはと思い、卵を大量に割らせて砂糖を入れてかき混ぜて、スクランブルエッグを作らせてみた。火加減は俺が担当した。

 

 

   ディーノ、多分リボーン先生が俺達の夕御飯を買ってきてくれる。サラダとスクランブルエッグはもれなく君のご両親とファミリーが食べる。

 

   この部屋、いや、君が盗聴されている。でなきゃ、アパートの外から叫び声と制止の声が聞こえる訳がない。

 

 

    「優しいディーノちゃんっ。パパの罪を許しておくれっ。放せっ!俺は愛しいディーノちゃんに裸でジャンピング土下座をして謝罪をするんだっ。地上に舞い降りし最後の天使のディーノちゃんの作ったサラダとスクランブルエッグのご相伴に預かるんだっ!そんでもってザンザス君を何としてでもディーノちゃんの婿にするんだっ」

 

    「だ、駄目だっ。ボス、今あの部屋に入ったら間違いなくディーノ嬢のご機嫌を損ねてプライドを傷つけちまうぞ!《おとうさまのバカっ。きらい。だいっきらい。おとうさまをとめてくれなかったみんなもきらい》なんて言われちまったら確実に自殺一択だ。明日っ、明日には食べれるからっ」

 

    「奥様からも叱られますよっ。ディーノ嬢様の動画で我慢ですよ!ほぅら!満面の笑顔なんてひさしぶりでしょうがっ。ディーノ嬢様の真剣な表情のなんという尊さと健気さっ」

 

    「か、可愛いっ。頑張っているねディーノちゃんっ。ザンザス君に圧倒的感謝っ。ボンゴレの血を引いてなくても絶対に婿にしたいっ。くそっ。なんで俺は通いの家庭教師で頼まなかったんだっ。ディーノちゃんの泣き声なんか聞きたくなかった!そうだっ。家光の野郎に落とし前ををつけさせなきゃ!あんの男っ。俺の天使を侮辱しやがった!罵りやがった!俺が馬鹿で愚かだった結果でディーノちゃんは悪くないのにっ。野郎ども戦争だ!」

 

   「おおっ!家光との戦争なら喜んで従うぜ!」

 

   「俺達の姫様を侮辱したからには死ぬ覚悟なんて出来てますって。望み通りにブッ殺してやりましょう!」

 

 

   …武闘派のマフィア達が吠えまくっていて怖い。殺せ、血祭りだ、臓物を引き摺り出してやれ、見せしめだ、侮辱には死で報いてやれなんて公道で叫ぶ言葉じゃない。

 

    …家光さん、さようなら。

 

 

    賢明な貴方ならご存知ですよね?ディーノ嬢に意地悪をしたご令嬢達とそのご両親達、ファミリーが何故か一夜にして全滅をしてしまったと。お義父様、いえ九代目が青ざめたお顔で報告をうけて、ご友人夫婦に急ぎ会見の申し込みをしていた事を。

 

 

   …もしかしたら、俺のした行いはボンゴレファミリーの役にたったのかもしれませんね。

 

    俺が貴方の代わりにボンゴレを守りますからね。ボンゴレを巻き込まないで下さいね。奈々さんに迷惑をかける前に離縁してあげて下さいね。

 

 

    「ざ、ザンザス様っ。私、ぱ、パンケーキを作れるようになりたいですっ。執務中のお父様に差し入れをしてみたいですっ」

 

 

   口調が変わっている事に気づいていないのが可愛い。

 

    「いいよ。今日作ってあげよう。たぶん、無茶苦茶運動をして疲れるから甘いパンケーキの差し入れがあったら泣いて喜ぶと思うよ。うん、料理初心者が頑張ったよ。それに愛娘の初の手料理だ。喜ばない両親はいないよ(*´ω`*)」

 

    「そ、そうですか?そうだといいのですけど(≧▽≦)」

 

 

   「(もう、お前ら二人結婚しちまえよ。…なんて今はまだ言えないな。十歳と八歳じゃあな)ただいま。ピザとケンタッキーを買ってきた。ザンザス、レディに優しくはイタリア男として正しい。その調子だ。ディーノ、護身術と一般知識から教えていくからな。お前はお前のペースで良い。じゃあ、ザンザスの作ったサラダとピザとチキンを食べるぞ。いただきます」

 

 

    「「いただきます」」

 

 

   …人数の増えた食卓は幸せだ。

 

 

 

 

   必死で逃げてもあいつらは何処までも追いかけてきたし、回り込んできた。

 

   しっているかえる。しにがみはりんごしかたべない。

 

   訳 知っているか、ザンザス。キャバッローネの九代目な、俺がディーノにしていた事を録画していやがった。で、日本の奈々に焼き増しした映像を送っていやがった。俺が父親になった日に、産院に来てな《昔、君が私の愛娘にした事の録画映像をみて感想を述べたまえ( ´_ゝ`)》とネチネチと言ってきてだな。おじさん、つらたん。

 

 

 

 




  

   ちなみに、俺達アルコバレーノはザンザスを盗聴している。



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 父親と忠臣の話。



  成長を喜ぶ保護者達。


 

 

   俺達の愛し子のザンザスは確実に、賢く強く優しく成長している。

 

 

   強さと知力は着けさせてやれた。後は幻術や超能力等の能力だ。

 

 

   俺は、当代一の幻術師バイパーを呼び出す為に、アルコバレーノを集合させる際の暗号を新聞に載せた。

 

 

   指定した、俺が愛人に経営を任せているバーには既に、ザンザスの父親になった三人がいた。

 

   三人の開口一番が「呼び出すなんて、数日会わない間にザンザスに何があった」と聞いてきたのには、嬉しくて愛しくて笑ってしまった。俺と同じくらいにザンザスを溺愛していやがる。俺は店を閉店させると愛人を帰した。

 

 

   笑ってしまった事を詫びてから、集合させる際の暗号を新聞に載せた理由を話した。

 

 

   《なんだ。ザンザスに何もなかったのなら良かった。バイパーを説得するのなら、人数的にもいたほうがい。バイパーだけ仲間外れも可愛そうだ》と返ってきた。

 

 

   三人にザンザスの近況報告をした後に、ザンザスの優しいお兄ちゃん成長を話してやった。初めての親友みたいな妹に浮かれている子供らしいところがいかに可愛いかを熱弁した。

 

 

   ディーノの恋する眼差しを見ていると自分の初恋を思い出して切なくなるとか、ディーノも成長が楽しみで教えてやりたくなると教えてやった。

 

   「お互いに恋愛に発展していく可能性があると。楽しみですね」

 

   「キャバッローネの九代目とは美味い酒が呑めそうだな」

 

 

   「向こうばかり家族同然の付き合いは不公平だ。急ぎ俺達もディーノ嬢と親睦を深めるべきだ」

 

 

   話が盛り上がってきた時だった。バーのドアが開いた。

 

 

   来客は待ち人ではなかったが、親友、家光だった。どうやら病院から無理矢理退院したみたいだな。

 

 

   「家光、出歩くな。自業自得なキャバッローネファミリーからのリンチから日が経ってねーんだ。自重しろ。奈々と九代目が心配するぞ」

 

 

   「リボーン、俺は決めた。このままじゃあザンザスは確実にキャバッローネファミリーの入り婿になっちまう。…それだけは、いや、ザンザスはボンゴレこそが取り込むべきだ。誰か、この際だ。年齢は問わん。年上でも年下でも不問だ。九代目と縁のある女性をザンザスの妻にする。ザンザスの気持ちなんか考慮しない。

 

   お前には悪いが、お前がザンザスを保護して外に逃げさせたのは間違いだった。心を壊してでもボンゴレ本邸に居させるべきだった。

 

 

   ザンザスがボンゴレと九代目に罪悪感を抱いているんだ、望む通りに今からでも暗殺者として酷使するべきだ。人殺しのプロ集団から称賛される稀有なる才能なんか持っている子供なんて所詮化物だからな。

 

 

   今は、しおらしくしていても、その内絶対に謀反を起こすね。自分の部下を引き連れて反乱起こすね。でもって九代目に氷漬けにされて冷凍睡眠で八年間眠らされるね。温情なんて糞だ。殺処分しないと。反省なんかしないで、どうせまた謀反するよ。化物らしいあの禍々しい炎の持ち主はボンゴレで飼い殺すいや今すぐ拷問して殺害するべぎゃあああああっ………」

 

 

  風の暗器、俺とコロネロの銃弾、ヴェルデの謎の液体Xは家光に命中した。家光は動かなくなった。

 

   「……俺達《ザンザスの父親》の前で良い度胸だな」

 

   「イタリアから少し離れさせるのはどうでしょうか?」

 

   「…傭兵として戦場を転戦させたくはないが、このバカが暴走すると、九代目の従姉妹の年上マダムと無理矢理婚姻を結ばれそうだからな。下手すると良くて監禁悪くて殺害されかねないな。どうする?」

 

   「俺の研究員とするか?普通の一般人として生きれる。だが、ザンザスの意思に反してしまうな」

 

 

   「…リボーン、一番最初に父親になった貴方の意見に従います」

 

   「俺も風と同じだ。でも、ザンザスが一般人として生きたいと願うのなら全力で支える。その事は覚えておいてくれ」

 

   「ザンザスが一番頼りにしているのは、リボーンお前だ。お前の考えを支持し協力しよう」

 

   「ありがとな。取りあえずは、リンチの際に頭を強打していたと報告があった家光の馬鹿を埋めるか」

 

   「「「そうだな/そうしましょう」」」

 

 

   四人で淡々と、バーの床板を外して穴を掘っていたが、スカルのアホがやって来て煩く制止を求めて来たのでぶん殴った。お前は呼んでいない。俺達が探し集合を求めたのはバイパーでお前じゃない。

 

 

    家光を処分したかったが、超直感を感じたのか《ザンザスの父親になったアルコバレーノ達がバーに集まりザンザスの成長を祝う会を開いている気がする》から私も参加させてくださいな(*´ω`*)九代目がやって来てしまったので出来なかった。 

 

   埋めかけていた理由を聞かれたので、家光の妄言を話してやった。

 

   笑顔だった九代目は、無表情になった。ステッキを家光にあてると、家光を凍らせて護衛と守護者に運ばせた。

 

   なんか、一気に疲れたようなので、俺が持ってきた《バイパーを説得する為の小道具のザンザスお手製の酒のつまみとクッキー》を分けてあげた。ザンザスの手料理にウッキウッキになる様はキャバッローネファミリーの九代目とまったく同じだった。娘でも息子でも、手料理で喜ばない親はいないということだ。

 

   スカルが《先輩方が父親なら俺はザンザスっていう奴の兄貴か。よし、兄貴も色々と教えてやるぜ》と言っていた。…いや、喜び勇んでいるがお前には色々と仕事を紹介するから、ザンザスには会わせるつもりはないからな。

 

 

 

          ※※※

 

 

    長期休暇明けの私に伝えられた言葉は衝撃的な事でした。

 

   私の大切なディーノお嬢様がお屋敷から居なくなってしまったのです。いえ、言い方が間違っておりました。

 

   ディーノお嬢様は、旦那様の跡を継ぐ為に、家庭教師の家に住み込む事になったのです。

 

   私はお嬢様が心配で仕方がありませんでした。一人くらいはメイドがいたって許されるべきだ。そう思い、旦那様にお伝えいたしました。

 

   ディーノお嬢様専任メイドの私をディーノお嬢様のお供として派遣させてほしいと。

 

 

   「ありがとう。ディーノちゃんへの忠誠を嬉しく思うよ。だけどね、お供はもう大丈夫だよ。君が今までずっとディーノちゃんを守ってくれて、私達に内緒でディーノちゃんに様々な事を教えてくれていた事。…ありがとうね。ディーノちゃんがね、帰ってきた時にね全部話してくれたよ。

 

  「クレアがボタンの付け方とアイロンの掛け方を教えてくれていました。だから、ディーノはザンザス様に誉めていただけました。嬉しかった。すごく、嬉しかった。ディーノはクラスメイトや他のマフィアのご令嬢達が言う役立たずじゃなかったのです。クレアのおかげで、ザンザス様とリボーン先生の役にたてました。クレアに今あうと泣いてしまいますから、泣かないで笑ってお礼を言える様になるまではクレアには会いません。お父様お母様、クレアが戻ってきたら、ディーノがありがとうと伝えていたと話して下さい」

 

  とね。ディーノちゃんは、毎日笑顔で過ごしているよ。自転車に乗って買い物だって出来るんだよ。

 

  ザンザス君よりも先に、ディーノちゃんの味方になってくれた君に感謝するよ。ありがとう、クレア」

 

 

   泣いた。子供みたいに泣いた。

 

 

   旦那様と奥様が、やっとディーノお嬢様の事を考えて下さる様になってくれた事を神様に感謝した。

 

 

   ディーノお嬢様が救われた事を神様に感謝した。

 

 

   ディーノお嬢様を馬鹿にしないでくれたザンザス様に感謝した。

 

   ザンザス様、貴方は知らないでしょう。ディーノお嬢様は貴方に初めて御会いになられた日から変わりはじめたのです。勝手な事ですが、私は貴方がディーノお嬢様を救って下さると期待していたのです。ありがとうございます。

 

   裁縫専用なメイドの私に、「くれあはまほうつかいみたい。あのね、ディーノにもはんかちをきれいにするまほうをおしえて。おねがい」そう言いながら、くしゃくしゃになったハンカチを泣きそうな顔で差し出してきたディーノお嬢様を思い出して泣いた。

 

 

   初めてのディーノお嬢様からのお仕事に浮かれた私は馬鹿だ。

 

   あのハンカチがなんで汚れていたかを考えて先輩にでも報告するべきだったんだ。そうしたら、もっと早くにディーノお嬢様は幸せに…いや、ディーノお嬢様はもう幸せなのだ。《希望》そのものであるディーノお嬢様は幸せに笑っている。

 

 

   …マフラーか手袋の編み方だな。よし、ディーノお嬢様、待っていて下さい。クレアはディーノお嬢様に分かりやすく教えて差し上げれる様になっておきます。新たなる決意をかためてから、私は旦那様と奥様の御前を離れた。

 

 

 

 

 




 

  …俺も参加したいのだが?不憫さに定評のあるスタントマン。


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 憤怒、説教される。


  泣き叫ぶ姿を見て猛省したが、説教がまた始まった。


 

   「ザンザス、お願いがある。明日、俺の家で行う式典に出席してほしい。…俺の変化を見届けてほしいんだ。ダメか?」

 

   「出るよ。でも、本当にしてしまうのか?後悔しないのか?今までの自分を捨ててしまうんだぞ?慣れて生きはじめても、結局は元に戻るんだ。なら変わらなくても良いだろう。俺がディーノを守る。だから変わらなくて良い」

 

 

   「ザンザス、あのな、ありがとう心配してくれて。ははっ。お父様とお母様と同じ事を言っている。うん、ファミリーの皆からも止められた。

 

  ロマーリオなんて「虐められていたから、弱かった自分を消したいから男になるのか?弱いなら強くなればいいだけだ。俺達部下がディーノお嬢様を支えるし守る。女のままでもボスになれる」…ズバズバと言われたよ。

 

   …ロマーリオの言ったこと、あってる。だけどな、男として生きたい、男として生まれてきたかったと思った事が何度もあったんだ。

 

   男だったら、もしかしたらお父様は、俺をあまり甘やかさないでいてくれたのかなとか?古参幹部に、お嬢様が若様であったのならと言われなかったのにって。虐められることもなかったのかなって。 

 

   必ず今の身体に戻れるんだから、それまでは男を満喫しようと思う。

 

   お父様とファミリーの皆、先生達とザンザスとたくさん遊びたい。仕事をしたい。支配地域の民間人の為に働きたい。ちゃんと、俺がお父様のファミリーを継いで次代に繋げていきたいんだ。俺達キャバッローネファミリーを民に愛されるマフィアにしたいんだ。

 

   最初は慣れないし、ザンザスや皆に迷惑をかけてしまう。確実に泣いてしまう。だけど、後悔だけはしないから。ザンザス、君に側にいてほしい」

 

   「…ディーノ、お前が覚悟を決めたのなら、俺はお前の側にいる。だけどな、リボーン先生達の訓練内容、俺と同じ…内容に近くなるぞ。そっちの覚悟はできたのか?」

 

   「 …だ、大丈夫だよっ。たぶんっ?一週間は寝たきりになるから、その間に覚悟はつけておく。あ、あのさ。もしも話だけど、自転車の乗り方レッスンに例えると?」

 

   「俺がしたディーノへの教え方がお子様カレーの甘口カレーとする」

 

   「うん。分かりやすかった。ありがとう、ザンザス。補助輪つけて、乗り方のコツを口頭と文章、イラスト付きで教えてくれたよな。膝と肘にサポーターをつけてくれてヘルメットを被って、後ろから支えてくれたよな。慣れたら片側ずつ補助輪を外していったよな」

 

   「俺は山頂に連れて行かれた。マウンテンバイクに跨がれと言われて、怖々と股がったら山頂から山肌いや崖をGOだったよ。半袖短パンだったな。防具がそれで武器はサバイバルナイフ。連続婦女暴行殺人犯と切り裂き魔が逃げたとされる山で、おまけに、くーまさーんとか野生の猪が出る山だったよ。会わないと思うだろ?でもな、二人と三匹・群れに遭遇したよ。マウンテンバイクさ、俺の身体に、知らない間に固定されていてさ。乗りながら戦闘になったよ…もうね、最後の方はマウンテンバイクとサバイバルナイフに愛着が湧いて相棒になっていたよ。《ベスター》と《憤怒》って名前をつけていたね。一週間のサバイバル生活を送ってやっと下山した時には、バラバラになってしまったふたつの相棒を抱えて泣いていたみたいだ。

 

   リボーン先生とコロネロ先生が、風先生とヴェルデ先生に「やりすぎ・だ・ですよ」と注意されていたのが最後の記憶だった。ベスターと憤怒の残骸を離さないままで気絶したって。夜中に《壊れないでくれっ!》《折れないでくれっ!》《お母さん、ベスター、憤怒、俺を置いていかないでっ》泣き叫んで大変だったって。俺はその修業の後から、物をすごく大切に扱おうと決めた。

 

   うん、唐辛子入りの激辛カレーだったな。泣くなよ。訓練が一緒なら俺が助けるから。妹が弟になって親友のままなんだから守るよ」

 

 

    「ぜ、ぜったいにっ。俺はザンザス君おいていかないからねっ!」

 

 

   「うん。俺はその言葉が嬉しいよ。ありがとう」

 

   この二つ年上の初恋の君は、私が想像も出来ない様な辛い経験をしてきた人だ。だからこそなのだろう、彼はザンザスはとても優しい。優しいのにとても強い人なのだ。

 

 

   …男になる事に不安がないわけではない。でも、男にならなくてはザンザスの隣には立てない。ザンザスの妻になりたいと強く言えば、私の立場上なら受け入れてもらえる。でも、それでは真の意味でザンザスには愛されない。愛してくれて大切にしてはくれる。だけど妹に向ける家族愛や友愛だろう。それも愛だ。だけど、私はザンザスに私に恋をしてから愛してほしいのだ。

 

 

   無謀で叶わぬ望みだ。わかりきっている。だけど、あの周囲からの侮蔑と嘲笑の中で、彼だけが唯一、私に近付き手を取ってくれた。優しい言葉をかけてくれてスーツの上着を脱いで肩にかけてくれた。赤い、赤い目がとてもとても綺麗でずっと見ていたいと思った。欲しいと、強く思った。

 

 

   その想いは、あの時から日増しにどんどん強くなるばかりだ。

 

   唯一になれなくても、親友で弟妹の座は手にいれた。正妻は無理でも恋人や愛人にはなれる。もちろん一番は正妻を狙う。

 

   《与えられる》事だけだった私が、生まれて初めて欲しいと思った。

 

   …だからな、ザンザス。俺が男から女に戻ったら覚悟はしてくれ。

 

   俺の方はとっくの昔にお前を諦めないと決めているからな。

 

   キャバッローネファミリーは割りと民衆に愛されている。だけどボンゴレファミリーと同じくらいの歴史を持っているんだ。裏側の世界で生き抜いてきたんだ。欲しいと思ったら時間をかけてでも必ず手にいれてきた。お父様だって、お母様との結婚を決めたのは俺と同じだった。お母様の美貌を受け継いだけど、性格はお父様に似てこれと決めたら一途に一直線らしい。

 

 

   ああ、楽しみだ。ザンザスとこれから出逢う全ての恋敵達。お前達の最大の脅威はもうザンザスの親友で弟妹ポジションだ。おまけにザンザスとは秘密の共有者だ。ザンザスの一番はボンゴレで、父親で教師のアルコバレーノには勝てないけど、その次の大切に俺はなっている。だから、傷が浅いうちに諦めた方がいい。

 

 

           ※※※

 

 

    式典は厳かだった。

 

   キャバッローネファミリーの全構成員、キャバッローネファミリーと同盟を結んでいるファミリーのボス夫妻と最高幹部と門外顧問が勢揃いしていて、俺は気後れしていた。

 

   「ザンザス、のまれるんじゃねーぞ。これがお前が数年後に生きていく世界だ。…中心にいて王の如く振る舞える道もある。それでも、俺と同じ暗殺者の道を選ぶのか?」

 

   「はい。俺は暗殺者になる道を選びます。憧れだったんですよ。父親の職業を継ぐのって。暗殺者で軍人で武道家で研究者って最高にカッコいいじゃないですか。…俺が九代目の血を引いていたとしても、お兄さまや弟が継ぐべきファミリーですから。こんな特別な式典には参加しませんよ」

 

   「そ、そうか。なら、父親として息子が誇れる様な仕事をしてくるか。ザンザス、司祭様の祝福が終わったら俺を壇上に連れていけ」

 

   「はい。あ、あの《性転換弾》を撃ったら、数十年後には本当に元の性別に戻れるのでしょうか?キャバッローネファミリーの九代目の慟哭を聞いていると無茶苦茶不安になるのですが」

 

 

   「し、司祭様っ。お父様いえ、父の言葉はお気にしないで下さい。続けて下さいっ」

 

   「し、司祭様っ。やっぱり止めます辞めますっ!ごめんなさいごめんなさいっ。寄付金も礼拝も今までの倍いたしますからっ。お願いします!私のお姫さまを王子様にしないで下さいっ。司祭様の祝福と許可がないとこの先の儀式には進まないのです。許しませんの一言で私の天使はディーノちゃんは女の子のままなんです!ディーノちゃんっ、お父様はやっぱり反対だよおおおっそ、そうだっ。お父様とお母様もう一回がんばるからっディーノちゃんの弟が生まれるまでがんばるからっ女の子のままでいてよおおおおっ」

 

  「司祭様っ。申し訳ありませんっ。つ、続けて下さいっ!」

 

  「…まあ、溺愛している愛娘が息子になるのを喜ぶ父親はいないだろうからな。(妹を心配している兄貴の目しかしてねぇな。ディーノ、頑張れ。超頑張れ)」 

 

   「そ、そうだっ。ディーノちゃんだけではなくて私にも祝福と許可を下さいっ。ディーノちゃんの指針となるべく女ボスに私もなりますっなんだロマーリオっ司祭様の前で失礼だろ!神聖な儀式の邪魔?なぜ私を連れ出す?止めろおおおおっ」

 

 

   「ロマーリオか。アイツはディーノのいい部下になるな」

 

   「ええ。じゃあ、壇上にお連れいたしますね」

 

   司祭様の祝福と許可を戴いたディーノは、俺を見ると少し困ったような笑顔を浮かべた。

 

   ディーノだけに聞こえる様に小声で「後少しだから頑張れ」と言った。

 

   「ああ。頑張るよ。リボーン、頼む」

 

   「わかった。ディーノ、俺はお前のしたファミリーを守る為の決意を誇りに思う」

 

   「ありがとう。さあ、俺を撃ってくれ」

 

   リボーン先生がディーノを撃った。

 

 

   煙幕がディーノの姿を隠した。そうして煙幕が晴れたら小柄なディーノの身体は少し大きくなっていた。

 

 

   「…ああ、これが。これが俺の男としての姿なんだな。ははっ。説明通りだ。体が痛いっ。…声も低いや。リボーンにザンザス。ありがとう見届けてくれて。これからもよろしく頼む。とりあえずは一週間後に帰るから、待っていて………」

 

   気絶し倒れかけたディーノを慌てて抱き止めた。

 

 

   駆け寄ってくるディーノのお母さんにメイド達、キャバッローネの九代目とロマーリオさん達。

 

 

   ディーノの身体を渡そうとしたら、部屋までお姫さま抱っこをして運んであげてと懇願された。

 

   「男になったけど、女の子なんだからそれは失礼ですよ。おじ様かロマーリオさんがするべきです」と断ったのに、「君以外にいないんだ!」と式典参列者全員から言われた。

 

 

   リボーン先生と司祭様からもお説教された。解せぬ。

 

 





  ザンザス(少年)の鈍さについ。byリボーン&司祭様。

  お父様にも、私とお母様でお説教した。byディーノ。



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 父親達の密談。

 

  知らぬは本人ばかりなり。






    うわっ。にぶっヘ(゜ο°;)ノ

 

   ザンザス少年以外の参列者全員はそう思った。

 

   ザンザス少年は、キャバッローネファミリーの同盟ファミリーの中で、御曹司でただ一人出席を許された存在なのです。

 

 

   そう、キャバッローネファミリーの正統後継者であるディーノ嬢が女性から男性へと変わり、組織を継ぐ次代になるという大切なお披露目の場。その大切な場所に唯一招かれた同世代の御曹司。

 

   《ああ、ボンゴレファミリーの秘蔵っ子のザンザス君は、ディーノ嬢の未来の婿君だな》

 

    参列者は暗黙の了解をしていました。

 

   キャバッローネとボンゴレの二人のボスも、司祭様の控え室に一緒に赴き《ディーノとザンザスは仮の段階ではありますが婚約者となります》報告をして、司祭様からも《幼い婚約者達に神様の祝福がありますように》と祝福されておりました。

 

 

   いったい誰が、清い少年の清廉な否定に《違う。君こそがしないと逆に失礼で不貞にあたるんだ》突っ込みを入れたくなると思っただろうか?

 

   「いやはや、ザンザス君の優しさはレディに対しては百点満点ですが…」

 

  「ええ。婚約者に対しての対応となると奥ゆかしすぎですな」

 

  「あら、母親の立場からしてみたら、少し嬉しいですわよ」

 

  「そうですわね。ずかずかと配慮もなしに運ばれたら、扇子いえハリセンで殴り飛ばしますわね」

 

  「「…そ、そう?(あ、俺が最愛の妻が最愛の婚約者だった時にパーティで酔い潰れてしまったから送り届けた時に寝室までお姫さま抱っこをして運んだのってお義母様的には完全にアウトだったのね・・・(;´Д`)))))」」

 

   晩餐会では、女性陣はザンザス少年の行為を讃え、男性陣は過去の麗しい記憶が、実は暗黒歴史だったと知り((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルしておりました。

 

 

   「ザンザス君、今日はありがとう。で、ディーノちゃんの部屋を見た感想はどうだね?(私と君が写った写真の写真立てを見たよねっ。ディーノちゃんの初恋の相手が君だって気付いてくれたよねっ)」

 

   「いえ、その…ディーノに正式に招かれた部屋ではありませんから、極力他を見ないように気をつけてベットまで運びました。ただ、やっぱりアパートのベットは、ディーノにとっては寝心地が悪いかなと思いました。弱音を吐いていないんだなと、偉いなと思いました」

 

   「…ははっ。ディーノちゃん新しいマットレス持っていこうね。あ、あのね、ザンザス君。ディーノちゃんはね、君と私で撮った写真をね、写真立てに入れているんだよ。可愛いでしょ」

 

   ゆ、勇者っ。キャバッローネファミリーボス・九代目・友よ、あんた勇者だっ。魔王ザンザスの次の攻撃はなんだっ。by参列者一同。

 

 

   「ふふ。俺もディーノと同じ事をしてますよ。母の写真と(妹)ディーノの写真。(養父)アルコバレーノの先生達と撮った写真を飾っていますよ」

 

 

   「そ、そうかっ。そうなのかっ。良かった~」

 

 

  (まさに家族の集合写真だけど、無いよりはましだ。ディーノちゃん・ディーノお嬢さん頑張るんだよ…あ、あれ?ザンザス君、ボンゴレファミリーの九代目と兄弟の写真は?)

 

 

   ほっとした参列者一同は、また魔王ザンザスによる新たな爆弾発言に停まってしまいました。怖くて怖くて、ボンゴレファミリーが座る席を見れませんでした。 

 

   …耳をうさぎの耳や犬の耳のようにして、ザンザスの言葉を聞いていた友人は真っ白になった。

 

   当たり前か。だって自分が与えてきた全部を置いて出ていった子供だものな。一枚くらいは《私達と写した写真》が飾られているかもという希望を本人から否定されたのだからな。

 

   「リボーン、今すぐにでも奪って来てくれないかな?十年バズーカを。成功報酬は言い値を払おう。《げんどうポーズ》生まれてすぐのザンザスを特別養子にしてしまえば、今頃は反抗期なザンザスに困った顔をしていられるはずなのだ。そう、キャバッローネファミリーとの婚約発表会だったはずなのだ」

 

   「九代目っ。駄目です。そんな事をしてしまったらザンザスは貴方のご子息三人を殺して貴方すらも殺害します。奴は兄弟殺し父親殺しの大罪人です。化物で悪魔いや魔王ですっ。覚醒前の今なら簡単に、糞っ物理攻撃はかわすな。化物アルコバレーノの愛弟子め。そうだっ貴方や三人のご子息が与えた食べ物や飲み物なら疑わずに食べますし飲みます。毒殺しましょう。今すぐにっ。俺が自害用に持ち歩いている毒をジュースに入れてきます。今すぐザンザスに飲ませてきて下さいね「「黙れ家光」」

 

   俺の麻酔弾の被弾と、と九代目が家光を凍らせたのは同時だった。

 

   「まったく。あれほどザンザスを可愛がっていたくせに、急に真逆の態度をとりだして。家光は大丈夫なのかね?父親を越えてゆく気概がある方が逞しくて良いと思うのだがね」

 

   「まったくだ。ザンザスの奴に飾らないのかと聞いたらな、《通学の定期入れに、一番最初に撮った一枚だけを入れてあります。あれだけは置いていけませんでした》と言っていた。定期入れは左胸のポケットにいつも入れている。完全に置いていったってわけでもねーから安心しろ。母親に置いていかれちまったやつが同じ悲しみを大切な人間にさせない…ま、マウンテンバイクを贈ってやれよ。喜ぶ。きっと長く愛用するから丈夫なやつを贈ってやれ。クリスマスに贈ってやれば感謝のお手紙を出すぞ。俺が贈る気でいたけど譲ってやる。だから十年バズーカは諦めろ」

 

   「い、良いのかいっ?ありがとうリボーンっ。他にザンザスが欲しがっている物はないかな?」

 

   「有るには有るがな、コロネロがサバイバルナイフをねだられて贈る気でいる。初めてのおねだりにコロネロの顔は溶けたな。マウンテンバイクも俺がねだられたやつだ。そいつを譲るんだ感謝しろよ」

 

   「うんうんっ(*´ω`*)ありがとうリボーン。特注で頑丈なマウンテンバイクを作らせるよ」

 

   「あ、そうだ。俺に感謝をするなら家光を少し日本に帰させろ。こいつ、奈々欠乏症に掛かっておかしくなっているのかも知れないからな」

 

   「そうだね。うん、そうしよう」

 

 

   「で、ディーノはやっぱりお嬢様学校から転校か」

 

   「ああ。名目は花嫁修業の為に退学扱いだよ。もう、あの学校に通う事はないよ。ふふっ。自分達がさんざんに苛めて馬鹿にしていたクラスメイトが、自分と兄弟の憧れのザンザスの婚約者だと両親から伝えられるんだ。…ボンゴレファミリーの御曹司の婚約者だと伝えられるんだ。ディーノちゃんが友に頼み込んで、クラスメイトに内緒にしていたキャバッローネファミリーの総領娘という事も知れわたるんんだ。ああ、楽しみだねぇ。これからの一生を震えながら生きていくといいよねぇ。キャバッローネファミリーの強さとかしつこさとか執念深さとか仲間大好き度とかディーノちゃんへの溺愛過保護とかはもう敵に回したくないよねぇ。ああ、あの報復期間中は気が休まらなかったよ。ザンザスがいなかったら、ボンゴレファミリーも報復対象に入っていたね。もうね、ディーノちゃんに在学していた学校の情報は絶対に知らせないだろうし。いやはや、どの御令嬢から消されていくのかねぇ」

 

   「…ああ、やっぱりお前もキレていたか」

 

   「当然だよ。親友夫妻の愛娘だよ。息子ばかりの私にとっては娘や姪そのものだよ。ところで、ザンザスは転校可能かい?」

 

   「ああ。だけど、学ぶものなんてねーぞ。ディーノの奴は、ザンザスが普通の小学校に通っていると思っているが、ザンザスが通っていたのは大学だ。まったく飛び級制度様様だな。ヴェルデのプリントと計算ドリルでザンザスは大学院生クラスの頭脳だ。俺達の訓練で一流暗殺者の技術者。今更マフィアの子弟が通う学校なんて意味ねーぞ」

 

   「いやいや、それがあるんだよ。まあ、ぶっちゃけ、コネ作りという名のザンザスの部下探しだね。ザンザス本人がいくら否定しても、私はザンザスを手放さない。保護下におく。ザンザスを慕う者は、ザンザスという存在に惹かれて必ず現れる。楽しみだねぇ。暗殺者になるも、新しいファミリーを築くのも起業家になるのでも。ザンザスの才なら何をやらせても大成するよ。それに将来の妻を共に守るのってロマンだと思わんかね?」

 

   「なるほど。ロマンなら仕方ないな。ああ、ちょっとばかりな、ザンザスとディーノを日本に連れて行くぞ。奈々がな、二人に謝りたいってよ。

 

   キャバッローネの九代目がな、奈々に、

 

 

   《貴女の伴侶は私の愛娘と娘婿に暴言を吐きまくっています。

 

   最近は娘婿のザンザス君の人格否定や監禁暴行殺害計画を垂れ流しにしています。

 

   …ご結婚と懐妊おめでとうございます。ですが、家光君は二重人格の恐れがあります。貴女やお産まれになるお子様に暴言や暴力が向けられてしまう前に離縁なされる事をお薦め致します》

 

   と綺麗な日本語でお手紙を出していやがった。奈々は家光には勿体ないほどの良い女だ。被害者本人達に謝りたいとよ」

 

 

   「…そうか。わかったよ。気をつけて行ってくるんだよ」

 

 

   「ああ。じゃあ、そろそろ俺とザンザスは帰る。ガキには睡眠が必要だからな。ドアのところで、ザンザスにお前に手を振ってやれと言ってやるから手を振るといい。おやすみ」

 

   「おやすみ、リボーン。ザンザスに、私がザンザスを愛していること、おやすみと言っていたと伝えてくれ」

 

   「わかった。あまり飲みすぎるなよ」

 

   「ふふ。大丈夫だよ。久しぶりに可愛い息子を見れたんだ。お酒に頼らなくても素敵な気分だ」

 

 

   九代目と別れ、ザンザスの座る席へと移動した。ザンザスはキャバッローネファミリーの幹部達にディーノの日常生活といかにディーノががんばり屋さんなのかについて話していた。

 

    …完全にシスコンの兄貴の目でな。

 

   嬉しそうに聞いている幹部達とは対照的に、ディーノの愛娘溺愛ラブな父親と母親、席の近い参列者達は嬉しさ半分やるせなさ半分で聞いていた。兄弟に姉妹、気持ちはわかるぜ。先は長い。だから、俺達父親と母親がちょっとばかしザンザスのけつを蹴ってやろうぜ。

 

 

 

 

   俺とディーノは、転校する前に、休みを取って日本に行く事になった。

 

   女性だったディーノを知らない人達しかいない国だ。

 

   ディーノにとっては良いことだ。

 

   俺にとってもご褒美なんだぞとリボーン先生は言っていた。飛び級で大学を卒業したお祝いだと。うん、嬉しいな。お祝いで旅行なんてあれだ、卒業旅行っていうやつだ。日本楽しまなきゃっ(*´ω`*)

 

   ザンザスと日本にり、旅行かっ。これって父親同伴のこ、婚前旅行っ(*´ω`*)

 

 




   卒業旅行兼家族旅行・婚前旅行・家族旅行&婚前旅行に行ってきます。



   …里帰り&療養命令がでた。


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 憤怒、日本旅行をする。



  忍者・侍がいないなんて嘘やろ…(._.)(._.)


  

 

   飛行機内でアホ家光が、日本に可愛らしい期待をしていた少年二人に

 

  《日本に忍者はいない。勿論、侍もな。芸者は、まあいるにはいるが京都や奈良に料亭だな。うちに泊まるから、会えないぞ》

 

   爆弾発言をした。可哀想に、ザンザスとディーノは気落ちしてしまった。他の、日本に忍者や侍がいると信じていたピュアな生き物も落ち込んだ。家光、罪深すぎるぞ。

 

   「…侍、いないんだ。そうだよな…お父様と見た《ラストサムライ》…最後の侍って意味だものな…いないんだ…会いたかったな…」

 

   「…忍者、いないんだ。そうだよな…風先生言ってらしたもの。忍者がいたら第二次世界大戦で日本はもっと長くたたかっていたかもしれませんねって…いないんだ…会いたかったな…」

 

   仲が良すぎると、言動が似通ってくるものなんだな。

 

   ちなみに家光のアホは、空港から出て直ぐにディーノの護衛達に連れて行かれて別行動になった。助けを乞うてはいだが、あえて無視をした。

 

 

   良かったな、普通の旅客飛行機できていて。お前の爆弾発言に落ち込んだちみっこ旅行者達が他にもいて。そのちみっこの両親に睨まれていて。…顔を見られていて。これがキャバッローネファミリー所有の自家用飛行機で来ていたのなら、家光、お前だけは突然の心不全で死んでいたか行方不明だぞ。

 

   もう、キャバッローネファミリーは、お前がボンゴレファミリーの門外顧問であろうと一切容赦しねーからな。次代ドンナのディーノと夫のザンザスを馬鹿にされたり傷付けられて報復しない構成員は、武闘派マフィアなキャバッローネに存在していない。

 

   「…ディーノ。いないものは仕方ない。気持ちを切り替えて日本を楽しもう。食べ歩きをしたり、アニメイトに行ったり神社仏閣に参拝したりお城を見学したりしよう」

 

   「そうだな。日本って食べ物が美味しくて魅力的だったわって亡くなったお祖母様が話してくれた。うんっ。いないなら仕方がない。別の事を色々と楽しまなきゃな!お土産もたくさん買って帰ろうっ。リボーン、お薦めってあるか?」

 

   「二人は初めての日本だからな。和食。寿司にカツ丼、和菓子とラーメンは押さえるぞ。修業は免除するが、日本の武術は一通り見学をさせる。ディーノ、お前はその身体に慣れるまでは無理をしなくていいからな。まだ、体がまだだるいんだろ?ザンザス、さりげなく体を支えてやっていて偉いぞ。免除するが、ザンザスお前は体験したいですって顔に書いてあるな」

 

   「すみません。なんか訓練していないと落ち着けないんです。体を休ませる事も必要だとわかっているのですが」

 

   「…いいか、ザンザス。今は、子供のうちはそれでも構わない。だけど、大人になったら気を付けるんだぞ。体の鍛練は良いが、仕事までもをそうしては駄目だ。俺やコロネロの仕事を継ぐ気でいるのなら、仕事と休みは等しくしろ。自分の趣味を、息抜きを、家族や仲間との時間を大切にしろ。でないと生き残れないぞ」

 

   「はい。気を付けます。俺は重責をもつ九代目や十代目、ディーノを支えて生きる人間です。生きて役にたちたい、死ぬとしたら老衰と決めています。ディーノ、仲良く共白髪を目指そうね?って、ディーノ?また気絶って!リボーン先生、ディーノに撃った特殊弾の説明書を読ませて下さいっ。明らかに最近のディーノはおかしいっ。一緒に風呂に入ると途中で墜落睡眠一緒に寝ると朝には鼻血まみれ…帰国して検査入院させるべきですイタッ」

 

   「(*´ω`*)病気じゃねーから。落ちつけ。なっ?」

 

   「そうだぜ、ザンザス。ボス・ディーノは病気じゃねーから。(恋のそれかも知んねぇけどよ(*´ω`*))」

 

   「そうそう。病気じゃないから。ザンザスさんだって、アルコバレーノの兄さん達と酒を呑める年齢になるの待ち遠しいでしょう?一緒に酒盛り出来たら嬉しいでしょう。そんな感じです。病気ではありませんから(*´ω`*)」

 

   甘酸っぱい恋だよな。ディーノ、敵は鈍さには定評がついてしまった魔王ザンザスだ。超頑張れ。

 

   事前に家光から聞いていた並盛町にある家光の自宅へと向かう事にした。日本の電車に初めて乗ったザンザスとディーノは、時刻表通りに運行されている列車に大いに感動をしていた。で、町にスラムがないこと、孤児が町中に居らず孤児院-国で保護を受けて教育をさせてもらえているー事を知り、真剣な表情をして話し合っていた。そうして、町行く人々に話し掛けて二、三質問をして答えを聞いてを繰り返していた。そうだ考えろ。この、俺達からみたら美しく生きやすい国でも、住む人々からしたら不幸や不満がある。国を、人を、自分が愛する存在の事を常に考え続けろ。俺達は社会からはみ出した存在だ。望んで入った俺とは違い、ディーノ、お前はそうあれと望まれる家に生を受けた。ザンザス、お前は母親に置いていかれた。だが、その場所に留まる道を選んだ。だから考えろ。どう在れば、自分が後悔する事なく生きられるのかを。

 

 

   俯き、涙を流すディーノの顔を

隠すかの様に立っているザンザス。

 

   絵になるな。二人とも顔が整っているから、映画のワンシーンかのようだ。

 

   泣く自分の女を心配している面をしているくせに、妹&弟で大親友だと公言していやがるんだよな。やっぱりバイパーを探して、ザンザスの奴にディーノが異性として、伴侶として好意をもっていると暗示をかけてもらわないとな。俺達以外のどっちの親も高齢だからな。

 

 

   「おーい、弟子共。そろそろ移動するからディーノは泣き止め。観光は明日にする。とりあえずは、一番最初の目的を、奈々からの謝罪を受けるを達成するぞ。奈々は家光の嫁だが、俺達や家光の裏の顔、マフィアは知らん。普通の人だから会話内容には気を付けろ。自分の旦那が、上司の息子と上司の友人の娘に暴言を吐いている事を知り、謝罪をしたいと申し出た女性だ。家光にはもったいないから敬意を払うように」

 

   「わかったけど、奈々さんはまったく関係ないのに謝罪をするなんて、おかしくないか?」

 

   「ディーノへの暴言も家光さんはもう報復を受けていますし、奈々さんは関係ないですよね?」

 

   「まあ、大人の事情だ。…ディーノ、お前の父親がな。…奈々と家光に《簀巻き状態の子供に向かって暴言を吐いている姿》の録画映像をな産院で見せて、「子供が生まれて幸せだねぇ。愛しいねぇ。その子供の為ならなんだってできるよね。…私の可愛い娘に暴言を吐いていたねぇ。君さあ、今どんな気分かなあ?君さあ、8年後のその子供がさ、父親の自分のせいで酷い虐めにあっていてさ、ある日凄く酷い扱いをされて、それを助けてくれた男の子に恋をして自分を変えたいと思って努力をして変わったら、父親と交友関係にあたる男から無駄な努力だとか恋心を暴露され馬鹿にされたらどう思うのかな?更には自分にとって子供の恩人の人格否定に誹謗中傷されたらどう思う?監禁暴行殺害計画たてたな。ていうか、私の娘と娘の婚約者にしたよな。ごく最近。…今どんな気持ちだよ?答えなさいよ。泣いてないでさ」ねちねちねちねちくどくどくどくど、看護士に摘まみ出されるまで言っていたらしい。謝罪を受けてやれ。なっ?」

 

   「お、お父様っ。奈々さんになんて事をっ。い、家光が悪いだけじゃんかっ」

 

   「…な、なんと言ったら」

 

   「「「ボス、家光の嫁さんは巻き込まないで下さいよっ。護衛なしで出掛けちまったと焦っていたら日本に来ていたなんて…イタリアで見つからなかったわけだ」」」

 

   …家光のアホの行動の結果は、巡り巡って二人の少年を打ちのめし、キャバッローネファミリー次代ドンナの三人の護衛を陰鬱な気分にさせた。

 

 

   「そういえば、お前達は家光をどうしたんだ?」

 

   連れ去った割には、三人で早く戻ってきた。家光を撃ってねーだろうな?

 

   「えーっと、ディーノ坊っちゃんとザンザス坊っちゃんの前では、教育と情緒的に最悪なので話せません」

 

   「殺してはいません。生きていますです。たぶんね。気に入られれば。預けたのでワカリマセン」

 

   「神聖な儀式の日に、マイボスのヒーロー、俺達にとっても恩人なザンザスさんに対して吐いていた暴言とその他に供述していたおぞましい内容があれでしたからね。《あなた様が考え付く〔されたらやだなぁな内容をすべて当てはめて下さいませ〕》をまるっと仕返ししてやっただけですよ。本当です。私怨は入れてません。あ、供述内容は風先生とコロネロ先生とヴェルデ先生とボンゴレ九代目にコピーして渡してあります。ぶっちゃけアレなGOサインは出てます。リボーン先生にはお渡しする機会がありませんでしたので、あ、これですね。帰国したら聞いて下さい。奈々さん巻き込んでの戦争はいかんでしょう」

 

 

   「…なるほどな。実弾をかましたくなる内容か。レオン、頼む。《渡されたデータを聞いている》すまんな、予定変更だ。ザンザス、駅前の並盛ホテルに泊まれ。今日は俺とアルコバレーノの父親、ボンゴレ九代目以外にはドアを開けるな。ディーノ、お前は護衛達と一緒に別のホテルに今日は泊まれ。明日から三日間は観光して楽しめ。泊まるホテルは後で連絡する。帰国する日に謝罪を受ける。すまねぇな。俺が冷静になる時間が欲しい」

 

 

   「「「「「…わ、わかりましたっ!」」」」」

 

 

   五人が怯えるほどの殺気を抑えられなかった。俺のなかの荒ぶる鬼神と邪神と魔王が家光を殺させろと喚いている。息子を愛弟子を守れと叫んでいる。ああ、糞っ。ちょっと前に家光を心配した自分に一番腹が立つ。

 

 






   リボーン、俺・私達もキレたから。

   



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 憤怒、日本旅行をする。2


  暗躍していたディーノパパ。










 

 

   あてられた殺気に対応などできなかった。動いたら終わる。それがあの場での真理だった。

 

   リボーン先生の殺気を感じられたのは、ある意味幸運だ。俺は暗殺者として生きる上で、一番恐ろしい生き物の殺気を感じたのだ。あれ以上にはそうそう遭うこともないだろう。あれ以下に対しては、直ぐ様対応できる。…いや、油断大敵だ。慢心したら、俺は死ぬ。俺が生きる事を決めた世界は優しくもなまぬるくもない。もっと強くならなければ。日本の武術を色々と見てみたいな。

 

   国技の相撲を観たいとディーノが言っていたから、相撲を観に行くのも良いな。間近で力士を見れるかな?ガイドブックにある日光江戸村とかなら忍者ショーがあるかも。京都とかの撮影村に行けば役者の扮した侍が見れるかもっ。今回が駄目だったとしても、またディーノと来れば良いよな。

 

 

   楽しい予定を考えながら眠りについた。

 

   夢の中で、家光さんが忍者や侍になった先生に攻撃されているのを、ところてんという食べ物を食べながらディーノと見ていた。

 

   朝起きて、思った事は、そうだ、ところてん食べようだった。

 

 

 

    リボーンさんの殺気にびびっちまった。

 

   …だが、良いものを見れた。

 

   殺気にびびっちまって固まったのは俺達五人だ。だけど、俺達よりも先にザンザス坊っちゃんがディーノ嬢坊っちゃんを庇うかの様に背に隠したのだ。

 

     尊いったらない。 

 

   あれで、弟妹と大親友を護るとか言っちまうのが魔王ザンザスクオリティー。ヾ(・д・`;)違う。世間ではそれを愛と呼ぶから。惚れた人を護りたいラブだからっ。

 

   …ザンザス坊っちゃんのお鈍さんを嘆く前にしないといけない事がある。

 

   それはザンザス坊っちゃんに携帯を持ってもらう事だ。

 

   ザンザス坊っちゃんは、ディーノ坊っちゃんの所持している最先端の携帯を扱える。そもそも、説明書を読んでディーノ坊っちゃんに操作方法を教えたのはザンザス坊っちゃんだ。

 

    持っていないんだ。

 

 

   ボンゴレファミリーから、父親である九代目から与えてもらったもの。その全てを置いて家を出ていった少年。

 

   ボンゴレファミリーの専属暗殺者を目指しはじめた御曹司。父と異母兄弟の為に、華やかな生き方を棄てて荊の道を、ファミリーの暗殺者と成ることを選んだ。

 

   …ザンザス坊っちゃんの選択に馬鹿が煩く言ってくる。

 

   《キャバッローネファミリーの総領娘であられるディーノ嬢には、ファミリーの次代を約束された御曹司の方が相応しいのではないでしょうか?ボンゴレファミリーの次代継承権を持たぬ子息よりうちの息子の方がディーノ嬢を幸せにできます》と。

 

   …相応しいって、お前んとこのチンピラファミリーがか?寝言は寝て言え。お前のクローンみたいな双子のバカ息子とバカ娘は、あの事件の時のディーノお嬢様の事を指差して馬鹿にしていたぞ。地獄への招待状は、配布者が多すぎて配達遅延しているだけだからな。ディーノお嬢様が痛ましいくらいに痩せてしまった後に優しくしたって、うちのボスの報復からは逃れられないし、俺達も絶対に許さない。

 

   ザンザス坊っちゃんに敵う婿養子候補なんざいねーよ。

 

   《ザンザス様がいい。ザンザス様以外の方のお嫁さんには絶対になりたくありません。なるくらいなら、神様にお仕えするシスターになるか、神様に謝罪をしてから死を選びます》

 

 

   もうね、控えめで大人しく気弱で優しいディーノお嬢様が目に涙をたたえて宣言したら、逆らえる人間はキャバッローネにはいないのよ。

 

 

   ボス自身は、ディーノお嬢様からの初のおねだりに舞い上がった。愛娘が生まれた瞬間、いや、奥様の妊娠がわかった時から、将来の婿と嫁を探していたから。そして、ボンゴレの子息は既にリストにあがっていた。

 

   正妻の産んだ御曹司ではなく、愛人の産んだ御曹司。後ろ楯のない少年。だけど、ザンザス少年には華があった。覇気があった。ボンゴレファミリーの代々のボスが宿している炎があった。接して話し合った人間を惹き付けるカリスマを持っていた。誰もが目を奪われ惹き付けられる漆黒の黒髪に赤い紅い瞳。美しい容姿だけでなく、強さと賢さを備え、残酷なほど優しかった。

 

 

   ディーノお嬢様の惨状に駆けつけたザンザス少年は、ディーノお嬢様しか見なかった。優しい言葉をディーノお嬢様だけにかけて優しく立ち上がらせる。ハンカチで濡れた頭や顔、肩を拭うと、来ていた上着を脱いでディーノお嬢様にかけて、パーティに招待された子供達専用の会場から退室した。その間、ディーノお嬢様しか見ないで、ディーノお嬢様だけと話していたという。ひたすらに話し掛けている他の御曹司とご令嬢には反応しなかった。

 

   完全に切り捨ててしまったのだ。視界に入れる価値なし。言葉をかわすに値しない無価値なモノだと。子供とはいえ、仲良くしていなくてはならないはずの同盟ファミリーや中立ファミリー同士での虐め。正しく優しくあれと教えるボンゴレファミリー九代目、尊敬している父親からの教えに反する行動。ザンザス少年には到底許せない事だったのだろう。

 

 

   傲慢で不遜。冷酷で残忍。味方以外に見せる顔は、子供ながらも恐ろしかったと同僚は語った。

 

   無言で見てみぬ振りをして退室をしたボンゴレ子息より、ディーノお嬢様を助けてくれたザンザス少年。ボスの感動と感謝は色々なものをぶち抜いた。ボンゴレファミリー九代目から、ザンザス少年の事を執拗に事細かく聞き出し、ついには血の繋がらぬ他人である事を聞き出していた。執念深さとしつこさにひいた。

 

 

   「俺の最愛の天使ディーノちゃんを見てみぬ振りをして見捨てた奴等と血が繋がっていないんだ。ふーん。良いねー良いねー最高だよっ。ふふっ後ろ楯とか後見人がまだいないんだー。そっかー。じゃあ、君の親友のおじ様が立候補しようっと。つーか、なったから。婚約者もまだいないんだってねぇ。オッケーオッケー。うちの地上に舞い降りし最後の天使ディーノちゃんにも婚約者がまだだからさあ、君の最近発覚した隠し子のザンザス君をうちの婿養子にくれるよねっ。してくれたら、君の三匹がうちの地上に舞い降りし最後の天使の愛娘ディーノちゃんを見てみぬ振りをして見捨てた事をチャラにしてやるよ。あ、断るという選択肢はないよ。ま、あったとしてもここを完全に更地にしてからザンザス君を連れ去る事もうちには簡単だって君ならわかるだろう?まあ、ザンザス君からは君とボンゴレに関しての記憶が綺麗に無くなるけど、お母さんと一緒に死にかけていたところを俺に救われた記憶を持って生きていくわけだから平気だよね。えっ、司祭様にご報告にいく日の都合を俺に合わせてくれるの。ありがとう親友よっ」

 

   …遅くにできた愛娘を幸せにするためなら手段を選ばないその姿勢に憧れます。話がそれた。

 

 

   携帯を持って頂きたい。

 

 

   「うわああん!ザンザスと話がしたいようっ。何時もなら一緒に夕御飯を一緒に作っている時間じゃんかっ。話したいいいぃっ。ザンザスとおしゃべりしたいようっ。観光の打ち合わせしたいのにできないなんてっ。リボーンっなんで俺とザンザスを離ればなれにしたんだよっ。今の俺は男なんだから、俺が女だった時にお父様が唆してきた大人の仲良しは出来ないんだからいいじゃんかっ。あと十年は待つと神様と司祭様に誓ったんだから俺をもっと信用してくれよっ」

 

   …出来ます。出来るんですよ。男同士でも。むしろ子供ができないぶん色々と出来ちまうんです。清童同士だから病気にかかるリスク少ないですし…言えない。つーか、ボス。男親の貴方が推奨してはいかんでしょうに。十歳と八歳では無理です。同性同士でも異性同士でもだめです。

 

 

   「坊っちゃん、ザンザス坊っちゃんと風呂に一緒に入ったり一緒に寝たりしていて鼻血をだしたり気絶したりしているうちは…いや、今の方が安全だよな?坊っちゃん、坊っちゃんからザンザス坊っちゃんに、一緒に風呂に入ろうと言ったのか?」

 

   「うん。ザンザス猛反対したけどな。《今は男でも、ディーノは女の子なんだから、もっと自分を大切にしなさい》《頼む。好きな男とかおじ様と先に入ってからにしてくれ》《止めなさいっ。いいかっ。七歳をすぎたら男と女性はわかれて生きるべきなんだっ。同衾なんか絶対に俺はせんぞっ。殺し屋たるものクールで女性に対しては紳士でなければならないんだ》《くそっ。ディーノ、俺はお前の為に言っているんだ。頼むからわかってくれ》《ホームシックだな。わかった。送っていく。今日は実家に帰ろう》

 

   もうな、リボーンやコロネロはお腹をかかえてゲラゲラ笑うし、ヴェルデは笑わない様にしてくれているけど、肩が小刻みに揺れているし、風は俺の肩を優しく叩いて《ディーノ。女の子の方が早く大人になるのです。ザンザスを見守って下さい》なんて言うしで。

 

   ま、四人の父親と俺のお父様とお母様から説得をされてやっと折れてくれた。…鼻血とか気絶はさ、なんていうかその…ザンザスが色っぽいのが悪い。セクシーすぎて、なんか筋肉のつきかたが俺と違いすぎて羨ましくて、傷のある体がかっこよくて、見惚れた赤い瞳がすっごく綺麗で、毎日誰にも気兼ねしないで見られて幸せで。なんか虐められてて辛かったけど、対価でザンザスの近くにいられる権利を得られたのなら、俺って世界一ついているラッキーな人間なんだなって思ったら気絶したり鼻血出ちゃったりして~《寝落ちまで続くザンザスラブな自慢話》~………みんな、おやすみ…もっと…きいてほしいのにな……(-_-)zzz」

 

 

   なんか、俺達三人は和んだ。

 

   幼い恋ばなを聞くのって癒されるわ。

 

   青コーナーは、全身全霊全力投球でザンザス坊っちゃんに愛を伝えるディーノお嬢様。対する赤コーナーは夢はアルコバレーノクラスの殺し屋になりたい魔王ザンザス。恋心に気づかない鈍さも魔王クラス。…むしろ、ディーノお嬢様を娘扱いしていて逆に不安になったのだが。

 

 

 

         ※※※

 

 

    最近の俺はおかしい。

 

   あれほど可愛がっていたザンザスに酷い事を考えてしまう。ザンザスの事は可愛いと、可愛そうな子だと今も思っている。娘が生まれたのなら、婚約者にして、俺が後ろ楯に、後見人になってやりたいと思っている。だけど、あの赤い瞳が、別の男に重なってしまう。九代目をボンゴレファミリーを傷つけた孤高の王に。ないはずの記憶だ。それなのに、その記憶が俺を駆り立てる。焦燥感に陥らせる。

 

   《早くザンザスを拘束しないと。閉じ込めて牙を抜いてしまわないと。あいつは必ずボンゴレに牙をむく。恩を仇で返す。ボスを傷つけないうちにお前がザンザスを倒せ。…綱吉を守れるのは父親のお前だけだ》と。

 

   囁くな。囁かないでくれ。あいつはまだ何もしていない。真実を知っても、誰も、何も恨まずに妬まずに消えようとした優しい子供だ。あのリボーン達がいとおしみ育てている子供だ。これから先に道を誤ることはない。

 

    《本当にそう思うのか?スラム育ちの猛獣が、そんなしおらしいたまかよ。あの狂犬達や悪魔を従えた男の本質がそうそうたやすくかわるかよ。なあ、今は最強達から教育を受けているんだ。いいのか?今度はゆりかごで九代目を殺すぞ?リング争奪戦であいつは綱吉を殺すぞ?…守れるのは、お前だけだ》

 

   ちくしょうっ。お前はもう黙れっ。黙ってくれよ。

 

   「…ないているの?だいじょうぶ。ぼくのなみもりでのはんざいしゃはぼくがかみころす」

 

   「…っ。すまねぇ。おじさんがお前を守るからな」

 

 

   「とんふぁーさえとりもどせれば。ざんざすって、おじさんのこども?ねているあいだ、ずっとなまえをよんでいた」

 

   「…ああ。息子だよ、可愛い息子なんだ…」

 

   泣き出した人の背中を撫でてあげた。

 

 

 

 

   





  門外顧問、風紀委員長に慰められました。







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 憤怒、日本旅行をする。3



   衝撃を受ける四人の父親。






    目覚めは爽やかだった。

 

   隣のベットに、リボーン先生達が眠っていたので驚いた。

 

   「「「「起きたのか・ですね。おはよう(ございます)、ザンザス」」」」

 

   「おはようございます。あの、どうしてコロネロ先生、ヴェルデ先生、風先生までもが日本にいらしたのでしょうか?」

 

   「…ザンザス、お前に初めての依頼がきた。弟子で息子であるお前が最初にする一人だけの任務だ。見届けさせろ。…だが、ピンチになったら助けにいく。お前は一人じゃない。

 

   最終確認だ。マフィアとして生きる、暗殺者として生きる、一般人として生きる。どれを選ぶ?

 

   今なら、何を選んでも構わない。俺達父親がお前を守る。

 

   人を殺さないで生きる道もあるんだ。真っ白のままで生きることが許されている。父親としては、真っ白のままで生きてほしい。だが、教師としてはお前に暗殺者かマフィアを選んでほしい。

 

   お前は神様に愛されちまった。暗殺者やマフィアとしての才能と資質は神様からの贈り物だ。どうする?」

 

   「…今回は、要人二名の救出と敵アジトの壊滅だ。殺さなくても構わないし、お前にならできる。だが、万一の可能性もある。人を殺してしまうかもしれない。ザンザス、耐えれるか?」

 

   「ザンザス、武道家になって用心棒として生きていく道もありますよ。私達が導きます」

 

 

   「そ、そうだぜ。俺の弟子でもあるんだから学徒として真理の追求をしていってもいいんだ。俺達みたいな人殺しにならなくてもいいんだ」

 

 

   「ありがとうございます。お父さん。先生。だけど、俺はあの日に決めました。リボーン先生に救われた日に。絶対に暗殺者になってボンゴレの為に生きると。ディーノの力になる事、ディーノの側にいる事も。お父さん達に恩返しを必ずすると。決意は変わりません。

 

   …気遣ってくれてありがとうございます。だけど俺は既に人を殺しています。ですから既に真っ白ではありませんよ」

 

 

   「「「「…はあっ?い、今、なんて言ったっ・おっしゃいましたかっ?」」」」

 

   「既に人を殺しているから真っ白のままではありませんよですか?」

 

 

   先生方は、いきなりじゃんけんを始めた。で、勝った風先生が俺のベットの隣に来て、三人は部屋から出ていってしまった。

 

   「それで、ザンザス。私に教えて下さいませんか?いったいいつ貴方が人を殺めてしまったのかを。残酷な事を聞いてしまいますが…」

 

   「お母さんとスラムで暮らしていた頃に。五つと七つの時に。2つとも夜中でした。

 

   お母さんと眠っていた家に、押し込んできた強盗に銃で撃たれ、薬中毒者にナイフで身体を切られて…俺を庇うお母さんを守らないと…いえ、怒りで殺しました。お母さんを、俺を標的にした。殺すには十分な理由でした。

 

   五つで出した炎は小さかったけど、相手が背を向けて逃げ出すにはじゅうぶん威力がありました。置いていった銃で殺しました。

 

   七つの時は…その、殴られて押さえつけられて身体をなで回されまして…お母さんが俺だけは見逃してと泣いて暴れてお母さんも殴られたのを見て、かっとなりまして灰も残さずに燃やし尽くしました。

 

   スラムでは、その…身体を売って生きるのもおかしくなんかはないのです。知識はその時にはもうありました。お母さんは俺を育てるために、どんな事もしていました。だけど、身体を売ることだけはしなかった。俺が家計を助けるために働いても、身体を売ることだけは禁じていました。

 

   あいつらは《犯した後は殺せば良い。具合がよかったら親子揃って飼ってやろう。まあいつもの遊びだ》なんて笑って言っていやがった。だから後悔なんかはしていません。

 

   殺される覚悟は、炎を使える前に出来ていました。毎日人が理不尽な理由で殺され、死んでいく場所。それが俺が生まれ育ったスラムです。

 

   殺す覚悟?五つで敵は殺さなきゃ、自分と大切な母親が殺される。だから躊躇わないと決めました。善良な罪のない人は殺せません。ボンゴレファミリーが、九代目がディーノが、先生達が俺に善良な罪のない人を殺してこいなんて命令しないでしょう。したら、全力で抗い意見を申し上げます」

 

 

   「…つ、辛い過去を話させてしまいっ…ごめんなさいっ。あ、あのねっ。ザンザス、大好きだよっ。お父様は君を愛しているからねっ。みんなもザンザスが大好きで愛しているからねっ。お父様、今聞いた事をアルコバレーノのお父様に告げて大丈夫かな?」

 

   「ありがとうございます。俺も風お父様とお父様達が、先生達が大好きで愛しています。告げてもらっても大丈夫です。…もっと早くに話しておけば良かったですね。ごめんなさい」

 

   泣き出してしまった風先生は、俺の頭を撫でると部屋から出ていってしまった。…嫌われてはいないような気がするけど、可哀想な子供認識が更に深まる気がする。母さんに、あなた達に、ディーノに愛されていて幸せなのですと伝えるべきだな。

 

   ドアが開いて、手紙をもったリーチがやって来た。俺に手紙を渡すと、頭を撫でてくれてから退室した。先生達のペットは先生達に似て俺に優しくしてくれる。俺は手紙を読んだ。

 

 

   《  ザンザス、辛い過去を話させてしまい悪かった。お前に覚悟が出来ているのなら、俺達はお前を導き成長させよう。

 

   任務内容の正式な指令書、及び装備品は明日18時までに揃えさせておく。

 

   キャバッローネの護衛三人とディーノにも、初任務の事は伝えておいた。今日は並盛町図書館で日本の歴史を学んでから町で買い物を楽しんでいろ。このカードを使え。支払いはお前に甘えて欲しい父親と野獣三匹だから、限度額ギリギリまで使い込め。

 

   イタリア、ボンゴレの九代目とキャバッローネ九代目、野獣三匹と緊急会議をしてくる  》

 

 

   黒いカードが一枚落ちてきた。

 

   …これに手を出してしまうのは危険な気がする。なんか使った瞬間に、九代目の守護者が来て

 

   《そのカードはボンゴレファミリーボスのみに許されているカードだよ。何者かによって持ち出されてしまっていたが…。ザンザス君、使ってしまったね。さあ、本邸に帰ろうか。君の父上、兄上と弟君が待っているよ。暗殺者などにならなくても、補佐役として生きる道があるよ》

 

   なんて言ってきて強制連行されてしまうカードな気がする。うん、先生達が用意して下さったカードと入れ替わっている。犯人は家光さんだな。(大正解)

 

 

   …おじ様経由で返して頂こう。

 

   要人救出か。誰なのかな?日本に来ているイタリア人なのか。それとも、日本人なのか?顔は知られない方が良いのだろうか?

 

   控えめなノック音がした。部屋のドアを開けると、ディーノがいた。

 

   「おはよう、ザンザス。迎えにきた。リボーンから聞いたぜ。初任務だってな…喜んであげたいけど、だめみたいだ。ご、ごめん…」

 

   もうっ。この泣きそうな顔になっている可愛い生き物の製造責任者出てきなさいっ。ふざけんなよっ。マフィアのボスになるのにこんなに優しいってどうする気なんだよっ。俺が既に人殺しだと知っていて、それでも自分から手を繋いできたくせに、初任務の俺の身を案じて泣きそうになっている。

 

   どうしたら、こんなにも他人に優しくいられるのだろう。ディーノが目指す、キャバッローネファミリーの姿は民を大事にするマフィアだ。圧倒的強者でありながら、弱者に寄り添い生きると決めた強さ。

 

   酷い苛めを受けてきたのに、ディーノは両親に、ファミリーに訴えなかった。発覚してしまわない様にひた隠しにした。あの出合いの後に全てが知られてしまったけれど。

 

   自分を傷付ける者すらを守ろうとしていたのだ。優しい、優しすぎる女の子。俺が、彼女の立場なら両親にファミリーに訴える。報復を望む。…ディーノは望まれて生まれ、愛されて育った。彼女はありとあらゆる悪意から遠ざけられて生きてきた。人の悪意を知らなかった。だからこそ、外の世界で初めて受けた悪意にも、悪意で返そうと思わなかった。

 

   きっと、ディーノの中には優しくて暖かで綺麗ななにかがあるんだ。

 

 

   俺が捨てたものなのか、それとも、俺があの哀しい女性の腹に置いてきてしまったものなのか。それはもう、俺にもわからない。でも、ディーノがそれを持ち続けてくれるのならいい。

 

   忠誠はボンゴレに捧げた。

 

   友情はディーノ、お前に捧げよう。俺はお前が、いつの日にか、俺の手を振り払ったとしてもお前の友で在り続けると誓う。

 

   「初任務だな。だけど、迷子のペット二匹の捜索だよ。だから泣くなって。えっ?涙じゃない?鼻水が目から出ただけ…それ汚い以前に別の病気だからな。ほら、鼻をかんでやるからおいで」

 

   「…ザンザスは、たまにおれのおかあさまみたいだ。だいすきっ」

 

   …二個上の同性のお母様か。継母か?継父か?どんだけチャレンジャーな女で男だよ。老け専か?ディーノの護衛の兄さん達、もう笑ってくれて良いよ。俺も笑うからさ…ははっ。乾いた笑いしかでねぇや。こいつの兄貴分でいたつもりだったけど、お母さんだったのかあ……。なんで胸がモヤモヤとするんだ?そうだ、ところてん食べよう。ところてんの事を忘れていたからモヤモヤとしたんだな。

 

 

   「…ディーノ、初任務が終わって帰国したら、君が泳げるように特訓してあげるよ。心配してくれたお礼だ」

 

   「…う、うん。やっぱり水泳の特訓始まるのか。ザンザスは昔から泳げたのか?じ、自転車みたいなサバイバルだった?」

 

   「…泳げたよ。お母さんが教えてくれた。その事はいまでもお母さんに感謝しているよ。

 

  …ちなみに、サメさんがリーダーな凶暴な海のお友達の餌にならないように泳げと遊泳禁止区域を遠泳させられたよ。

 

   目的地と指定された島はお決まりの事で、敵対ファミリーの麻薬密売場所で取引を邪魔して敵対ファミリーを完全制圧するがテストだった。一対多数…武器は持たされてなかったよ。風先生の指示で、殺しは厳禁だった。後はわかるな」

 

   「可愛くウィンクしてもなっ、わかる事を拒絶するっ。また泣いていたんだろうっ。記憶にないくらいに壊されちゃったんだろうっ!」

 

   「いや、この時の俺は回収時に壊れてなかったぞ?泣いてなかったし。敵を全員浜辺に一列にうつ伏せに並べてその上を歩いて《因幡の白兎ごっこ》や《お煎餅焼けたかな?》ていうのをしていたというから。…鮫が怖かったんだろう?図書館に行けといわれたから、《因幡の白兎》と《お煎餅焼けたかな?》について調べようと思っている」

 

   「…それな、壊されているって表現されるからな。自分の事なのに、結局、また聞きになっているじゃないかっ。ザンザス、強くなるのは当たり前だ。だって、誰だって自分の命がかかったら全身全霊をかけて挑むだろう?アルコバレーノ、やっぱり怖い。ザンザス、甘口コースでお願いします」

 

   「わかった。…そうか、泣いてなくても壊れていたのか。もっと精神力を鍛えないとだめだな」

 

   「だからっ。精神力でどうなる世界でもないんだよっ…わかってよっ…」

 

   ごめん、ディーノ。お前の泣きそうな顔と泣き顔に俺は弱いから、やめて。

 

 

   俺達は壁紙ですから、ち、ちゅうとかしてもぜんぜんまったくかまいませんよ(*´ω`*)

 

 

 

 

 

 

 





   和みまくる三人の護衛。

   その、白兎はファイアボールを投げてくる苛烈な兎さんですよね?忠誠を捧げたいのですが、部下を募集していませんか?by忠鮫と忠犬忠王子忠オカマ。



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 憤怒、日本旅行をする。4


  ザンザスの初任務。





 

 

   大人の人と誘拐されていた。

 

   その人は眠らされていたけど、泣きながらずっと謝っていた。起きたから元気付けてあげたら、息子さん(推定養子)を可愛がっていたのだけど、実子が生まれてから、可愛がれなくなってしまってつらく当たってしまうのだと話してくれた。

 

   

   あまりにも泣いて悔やんでいたので、可哀想に思った。可哀想だから、何とかして群れに返してあげようと思った。群れに返しても攻撃をしないであげようと思った。武器のトンファーと靴を取り返せれば、でもどうやろうかと考えていた。

 

   「大切な人質の皆さん、ご飯ですよ。さあさあ、殺されたくなければ大人しく食べろよ。まったく向こうの二人は、俺達が用意した飯は食いたくないとよ。王子だなんて言っているけど、現状は人質だっつーの。若獅子、暴れんなよ。お前が暴れたらそのガキか王子のひとりを殺す。わかるだろ?俺達は帰属場所を、守りたかった全てを滅ぼされた人間だ。無くすものは何一つないし命乞いなんてするわけがない」

 

   「大人しくしている。頼む、誰も殺さないでくれ」

 

   「…丸くなったもんだな。ガキが生まれると変わるもんなのかね?なんだ、ガキ?嫌いな食いもんか?」

 

   「あなたはこのひとのしりあいなの?しりあいなのにとじこめるの?」

 

   「ガキ、知らなくて良い。大人しく食べて寝ちまえ。お前の親が身代金を払えば返してやるからよ。…そうだ、俺達はあいつらとは違うちがうんだやくそくやくそくはまもるだからころさないでころさないでくれなんでなんでころしたぼすはかねをよういしてくれたなんでなんでやさしいぼすやなかまがしんでいたちがうちがうおれはころしてないころしてないはんにんはべつにいたんだしんじてくれよ…」

 

   「刺激しない方が良い。良い子はしぃーだ」

 

   「…わかったよ」

 

   この人間は、もう、どんな言葉も届かない場所にいる。きっと、僕の両親が身代金を払っても僕の死体を届ける。いや、そもそも身代金を要求したのかさえ怪しい。誘拐犯人達は、日本人に見えるけど違うのかな?

 

   わかじしさんが僕を隠すように背に庇ったので、僕は口を閉ざした。

 

   男の人は、頭をかきむしりながら、何かを呟きながら部屋から出ていった。僕達の他にも人質に、誘拐された人がいるみたいだ。二人って言っていた。一緒にいられていれば良いのに。

 

   「…ごめんな。おじさんはお前と他の人質を絶対に守るから。今は飯を食って身体を休めていてくれ。…おじさんには最強の仲間がいるから、探して…ないな。うん。可愛がっている息子で愛弟子な存在を監禁暴行殺害計画を企てている危険人物を探さないよな。そもそも俺がこいつらに誘拐されたのも、ディーノとザンザスの夢を踏みにじったから、護衛に人身売買のブローカーに売られてそこからさらにこいつらに横から拐われた。あ、詰んだわ。ごめんな、おじさん一人でも頑張るからな」

 

   …殺されてしまう前に、わかじしさんが何をしでかしたのかを、詳しく聞きたいと思った。

 

 

   …眠っていた。だけど揺すり起こされた。

 

     美しい朱を見た。

 

   朝陽の希望の色、夕陽の鎮魂の色。その二つよりも尚鮮やかな朱を見た。

 

   「…助けに来ました。あなたの他にも人質はいますか?」

 

   「ふたり。わかじしさんは?」

 

   「すみません。家光さんは俺を見るなり、『ザンザスっ!やっぱり貴様が黒幕か』と叫び殴りかかってきたのでカウンター攻撃をしてしまいました。気絶したので、最初に運び出して来ました。…ご自分で歩けますか?歩けなければ、俺が運びますが」

 

   「あるけ…ない。いたい。くじいたみたい…」

 

   「わかりました。じゃあ、抱きあげますね。二人いる人質を救出しに行きます。その後であなたをお家に送って行きます」

 

   「ま、まって。ぼくをだっこしていてあなたはたたかえるの?ひとじちだってまだふたりもいるんだよ?あのこわれたひとつよいよ。あなたはぼくよりもおにいさんだけど、まだこどもでしょう?」

 

   「ああ。大丈夫です。完全に制圧済みですから。全員拘束したので、自由に歩いて大丈夫です」

 

   お兄さんの言っていた事は全部本当だった。僕を誘拐した人達も、壊れてしまっている人も全員倒れていた。

 

   「す、すごいねっ。あなたはとてもつよいんだねっ。あ、あなたときたほかのひともつよいの?」

 

   「?俺一人での任務です。俺しかこの場所には来ていませんよ。まあ、先生達が何処かで見守ってくれているはずですが」

 

   この綺麗な朱を持っている人は、群れないと言った。綺麗で、強い生き物なんだ。なんか、良い。孤高の、赤い肉食獣。聞いてみようかな?

 

   「ね、おにいさんはすきなたべものってなに?」

 

   「肉ですね。肉大好き。肉があれば生きていけると思っています。だけど、俺もあなたもまだ子供、未成年です。身体を作っている最中です。好き嫌いなくいろんな食べ物を食べて、たくさん運動をしてたくさん眠らないといけません。強くなれません。親孝行とか師に恩返しするのには、一人で生きていける力を付けて、群れから巣立つ事だと思います」

 

   「ぼくも、おなじかんがえだよ。むれるのはうつくしくないとおもう」

 

   お兄さんはやっぱり赤い肉食獣だった。好き嫌いはやっぱり良くないみたいだ。僕も気をつけよう。

 

   「そうですね。でも、種に…生き物毎に生き方は変わります。群れない孤高の強い生き物がいれば、群れて生物として繁栄を選ぶ生き物もいます。否定してはいけません。それは理解し、共存共栄できるという選択肢を潰してしまいます。(そうしないと、俺の大切な友人が悲しむ…ああ、糞っ。ディーノの顔が見たくなってきた。さっさと要人を見つけて帰らないとっ。でも、ほんとこの子は風先生にそっくりだ。はは、なんていうか、風先生の子供みたいだな。ていうことは、俺の弟妹か!なら弟妹は守ってあげないと)」

 

   こんな人間には初めてあった。

 

  誰も僕にどうして駄目なのかまでは答えなかったのに。頭ごなしに否定しないで、お兄さんなりの答えをくれた。うん、嬉しい。

 

   「ね、ころしたの?」

 

   「殺してはいません。気絶をしているだけです。ただ、気がついてから襲って来ないように、関節を外したり片手か片足の骨を折りましたが。暗殺の指令は出ていませんから」

 

 

   このお兄さんは、強すぎる。

 

   殺してしまう方が早く楽に済むのに、この大勢をたった一人で戦闘不能にしてしまった。

 

   「しれいがでていたら?」

 

   「暗殺指令がでていたら、その通りに実行します。俺は殺し屋ですから。…誘拐されていた間の事はなるべく話さないで忘れて下さいね。あなたを誘拐した奴等は、此方側の世界でも不可解な事件の被害者達なのです。ああ、仕留め損ないが人質にナイフを突き付けていますね。はい、制圧終了っと」

 

    突然の浮遊感に驚いた。

 

  僕を抱き上げているお兄さんが跳躍して、誘拐犯人達の中で一番威張っていた男の人の顔面に蹴りをいれたのだ。

 

   威張りんぼは、無言で倒れて動かなくなった。

 

   僕よりもちょっと上か同じ年の子供達もびっくりとしていた。

 

   「要人確保。助けに来ました。三人いますから、一人おんぶで二人抱っこで撤退します」

 

   「おにいさん、できるの?おもくない?ゆっくりでいいなら、ぼくはあるくよ?」

 

   「…だきあげることをゆるしてやるっ。だからころすなっ。ほうびならいくらでもやるからころすな」

 

   「かっきー。もにたーでみさせられてきたけど、あんたちょうつえーじゃんっ。いふうどうどうとしているしおうさまだった。まじすげえよっ。なあなあっあのきれいなほのおってだせるのいちにちいっかいなの?おうじ、もういっかいみたい。みせてよ!みせてくださいっ!」

 

   「べるっやめろっ。そいつまおうだからかかわるなっ。ころされるぞっ」

 

   そっくりな顔の双子の、お兄さんに対する態度は真逆だった。怯えているのもなついたのも、なんかムカついた。…モニターに、お兄さんが闘っている姿が映っていたのか。見たいな。

 

   「…あ、先生達からの電話だ。失礼します…はい、制圧して要人確保しました。家光さんと一緒にいた方もご無事、足を挫いていましたがそれ以外は健康です。えっ?モニターにある俺の画像をヴェルデ先生の研究室、リボーン先生と風先生とコロネロ先生とおじ様とボンゴレファミリーのパソコンに送れ?わかりました。後、直接依頼人の代理の方が此方に向かえに来ると?はい、待機しています」

 

   「おうさまっ。がぞうおくるならさ、おうさまのゆうしをおうじにみせてよっ」

 

   「ぼくもみたいっ」

 

   「おれはみたくないっ。あんなばけものじみたたたかいかたはにんげんじゃねーよ」

 

   「…お言葉ですが、俺は弱いですよ。まだライオンの群れで狩りの仕方を教わっている最中のひよっこです。…そういえば、自分が闘っている時の姿を見る事はないですね。…見ましょう。弱点を見つけて無くすチャンスです」

 

     上映会が開かれた。

 

   僕とべるからみたら、お兄さんは肉食獣そのものの美しい戦い方をしていた。圧倒的な強さは見ていて惚れ惚れとするものだった。

 

   そうして、僕は美しい炎を見た。

 

   美しい炎は、お兄さんが生み出した美しい炎は厚い壁を一瞬で消し飛ばした。

 

   『…人質はどこだ。早く答えろ。俺は気が長くない。お前も壁と同じにかっ消してやろうか?』

 

   『キャバッローネのキモブスメス豚よりも良い女をやる?よし、死ね。お前は俺を完全に怒らせた。人質を確保した後で望み通りに殺してやる。命乞いしたって、俺やディーノが許したからっておじ様とキャバッローネファミリーが許さない。…ほらな、おじ様からだ。はい、わかりました。ここに放置しますからご自由にどうぞ。今のディーノの写真を見せてから殺害して下さいね。ディーノは天使で王子様ぞ。無礼者め。…携帯電話って便利だよな。やっぱり持たないとだな』

 

   なんていうか魔王(だけど携帯電話持っていない)がいた。

 

  僕とべるには楽しい映画だったけど、べるの兄弟にはホラーアクションだったようだ。お兄さんがディーノという名前の人を馬鹿にされて怒った時点で気絶をした。

 

   お兄さんは一人反省会をしていた。

 

   「…ぜんぜんクールじゃない。だめだっかっこ良くない。ベラベラと喋るなよ初任務だからってはしゃぎすぎだ。こうして、改めて見ると隙だらけだ。もっと早く動けないと簡単に捕まえられてしまう。蹴りにも威力をつけたいな。下半身強化に力をいれないと」

 

   真面目な魔王様みたいだ。勇者が町から出た瞬間に自分で殺しにやってくるタイプだ。物語りが開始して直ぐに終わるシナリオだから採用されない。

 

   「…あのさ、おうさまにひばり。おうじたちにむかえがきたら、むかえがおうさまとひばりにぶれいなことをいう。だからさきにあやまる。ごめんなさい。おうさま、たすけてくれてありがとう。ひばりもおれのとなりにすわってくれてありがとう」

 

   …突然謝って御礼を言ったべるの言葉の意味は直ぐにわかった。

 

   べるはいらない存在として、差別されて生きていた子供だった。

 

   お兄さんも、僕を向かえにきた両親も怒っている。それに気づく事なくべるを馬鹿にした言動をとる代理人。

 

   そして、お兄さんは代理人の顔面を殴った。倒れた代理人に構う事なく、べるに向き合った。

 

   「べる、泣け。今、お前は死んだ。美しい死体のお前を報酬でもらった。お前は俺のもんだ。生き返ったお前も当然俺のものだ。お前は俺が連れて帰って育てる。魔王の王子なんだから胸を張って生きろ」

 

   べるは声をあげて泣いた。

 

   ちょっと羨ましいと思った。

 

 

 

 

 




   

   愛弟子の初任務は盗撮&盗聴していた。

   ザンザス君、ディーノちゃんへの気持ちがラブだとそろそろ自覚して?


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 憤怒、日本旅行をする。5

 

 ザンザス、悪魔を弟にする。


   「べる、泣け。今、お前は死んだ。美しい死体のお前を報酬でもらった。お前は俺のもんだ。生き返ったお前も当然俺のものだ。お前は俺が連れて帰って育てる。俺の王子なんだから胸を張って生きろ」

 

   「なっ、何を勝手な事を言っているのだっ。俺にこんな事をしてただですむと思うなよ!」

 

   「黙れカス。今死体になるか、《ベル様は殺されていた。死体は救出の報酬として望まれたので渡しました》と告げる為に生きるかを選べ。俺を脅そうなどと考えるなよ?俺はベルを守ると決めた。邪魔をするのなら王族も国も関係なくかっ消す。要らないと否定してきたんだろう?俺には必要だ。だからベルを俺によこせ。俺がベルを愛して育てる」

 

   その言葉が、どれだけ俺にとって嬉しかったか。どれほど救われたのか。あの瞬間に決めた。俺の王様はこの人で、この人がいる場所が俺の生きる国だって。自分を殺し屋だと名乗る人の行き着く先は地獄だ。なら、自分も地獄まで喜んで着いていこう。

 

   ひばりのお父様とお母様も、俺の境遇を知り悲しみ怒ってくれた。日本という大国で、かなりの権力を持っていた二人は、俺を王様の異父兄弟という事にしてくれた。感謝しかない。

 

   異父というのは、王様の生きてきた人間関係が複雑だからだ。俺を王様、ザンザスが巻き込まれる事を恐れている後継者問題から逃がす為でもある。

 

   王様とひばり、ひばりのご両親と一緒に捕らえられていた場所から離れた。

 

   代理人はザンザスからあてられた殺気に動けなくなった。片割れの顔には落書きを残した。もう、会うことはないけど、ザンザスが兄上になるのだから構わなかった。

 

   ひばりとひばりのご両親は、何度も何度も、王様に頭を下げて感謝をしていた。

 

   王様が四人の赤ん坊に誉められて嬉しそうに笑っていた。赤ん坊の一人が、ひばりにそっくりだったので驚いた。ひばりが睨み付けていてちょっと怖かった。

 

   おじいさんと護衛ともすれ違った。王様を誉めていたし、俺の頭を撫でてくれた。だけど、目が険しかった。王様が、「ディーノの、俺の親友のお父様だ。とてもディーノを愛して可愛がっている方だ。これから報復に向かわれる。イタリアから駆けつけるくらいなら、最初から一緒に日本にくればよかったのに」と話してくれた。

 

    ディーノにも会った。

 

   彼は泣いていた。そうして、泣きながら王様に抱きついていた。

 

   恋をしているのがわかった。

 

   とても綺麗な人だった。

 

   ディーノを馬鹿にされた事にすごく怒っていたザンザス。

 

   だから、ザンザスもディーノを愛していて恋をしているのだと思った。

 

   「ほほえましいよね」

 

   「ししし。おうじがあのふたりのなかがしんてんしたら、ひばりにおしえてやるよ。けっこんするときにひばりとおうじでうたをうたってやろう」

 

   「うたか。いいね。いたりあごをまなんでおこうかな。ざんざすやべるみたいにすうかくごをはなせるようにならないと」

 

   「おうじにできたんだからひばりにだってらくしょーだよ」

 

   そんな会話をしていたけど、ザンザスのお父様達が俺とひばりに説明してくれた。

 

   魔王ザンザスの魔王の由来が、乙女ディーノの健気な恋心にまったく気づく事がないあんぽんたんでぽんこつぼくねんじん系の残念魔王だと。

 

   「「そんなばかなことがあるものかっ。あんなにつよいんだ・よ/ぞ」」

 

   ひばりと声がハモった。

 

  だけど、四人の赤ん坊と三人の護衛は悲しそうな表情になった。そして、幼い恋人同士に視線を向けた。

 

   「ディーノ、親友で兄ちゃんの俺が心配だからって泣くなよ。もう、ベルやひばりという弟分ができたんだから泣くなって。ほら、ちゃんと自分が女の子だけど、立派なボスになる為に男の子になっていますって説明してこよう」

 

   「…なあ、ひばり。おうじはぜんりょくでおうさまとおひめさまのこいをおうえんするんだ。おまえもおうさまのけつをいっしょにけらないか?おうじのともだちになってくれ」

 

   「いいよ。でも、きみとはもうともだちだよ。かれはつよい。つよいくせににぶくてじょせいをかなしませるなんてうつくしくない。いっしょにがんばろうね」

 

   「あ、ありがとうっ。ひばり」

 

   兄と養父達と、友達ができた。未来の兄嫁の恋を応援し隊に入団した。

 

   「どうした、ひばり。なんかへんなかおをしているぞ?」

 

   「なにかをわすれているきがしてね?」

 

   「あ、おたがいのれんらくさきだな。ボスたちにきいてくる」

 

   「それだねっ。いたりあにあそびにいくから、きみたちもにほんにあそびにくるんだよ」

 

   「あたりまえだって」

 

   ひばりとはずっと仲良しの友達になった。

 

   ザンザスは殺し屋になりたいみたいだけど、マフィアのボスも天職だと思う。俺はマフィアのボスに、王様になってほしい。だから、殺し屋ザンザスとマフィアのボスのザンザスに飼われる悪魔になろうと決めた。

 

   で、ひばりにはマフィアのボスになったザンザスの相談役になってほしいと思っている。ボスは冷静で冷酷でカッキーけど、家族やお姫様を侮辱されるとブチ切れを起こすから、冷静なストッパーがほしい。

 

 

         ※※※

 

   初任務における、ザンザス坊っちゃんの装備は親のエゴが濃縮&凝縮されていた。

 

   パンツ一枚状態の時に、虫除けスプレーを吹き掛ける。この段階で笑いたかったが、ディーノ坊っちゃんがディーノお嬢様だった時のハイキング前もこうだったなと思い出して切なくなった。

 

   《えっ?これっておかしくないですか?》

 

   ザンザス坊っちゃんは目で俺達に訴えていた。

 

   「ザンザス、これで虫刺されの心配はないな。よかった。俺もハイキング前はこうだから大丈夫だ」

 

   …ディーノ坊っちゃん、うちとボンゴレだけのお話しだから余所のファミリーの前では言わないで下さいね。

 

   「そ、そうなのか。まあ、先生達の指示だしな」

 

   諦めたらそこで終わりですぜ、ザンザス坊っちゃん。

 

   着々と準備を整えていくザンザス坊っちゃん。纏う空気も目の鋭さも変わっていった。

 

    純粋に欲しいと思う。

 

   正式に婚姻が結ばれれば、ドンナ・ディーノの婿君としてキャバッローネファミリーに入ってくれる。だけど、叶うのなら今すぐに、このたぐい稀なる才能を持つ戦士が欲しかった。

 

 

   「装備完了。地図と見取図は頭に入れた。…カメラとマイクをつける意味はなんだろうな?近くに先生達とボンゴレ医療班がいてくれるのに」

 

   「何でかな?あ、携帯電話を持っても安全にならないと使えないだろう?その時までの保険だよ。カメラは敵の数が多かった時に、直ぐに助けにいけるようにだよ」

 

   「そっか。そうだな。でも、聞かれてしまうとわかると、鼻歌とか泣き言を言えないな。気を引き締めていかないとな」

 

   「がんばれっ。まったく、ペットじゃなくて要人救出じゃないかっ。危なくなったら逃げてくれよ。怪我をしないようになっ。神様に無事を祈っているからっ」

 

   「ありがとう。でもな、ディーノ。頼むからわ・ら・え・っ・!。泣くなっ。俺が死ぬフラグを立てるなっほら笑えよ!」

 

   「いひゃいいひゃい笑うからほっぺをのばすなよっ」

 

   いいぞっ。もっとやれっ。俺達が和むからもっとやれ(*´ω`*)

 

 

   …だが、ザンザス坊っちゃんの父親達の愛が、うちのボスの愛に重なっていて…完全に同調していてドン引きした。言えない。ザンザス坊っちゃん、あんたに怪我をさせたり暴言を吐いた奴等の面を覚えて報復するためですよって。

 

   これってさ、両刃の刃なんだよな。

 

   場合によっては、パーティで、ボスがいきなり鬼の形相になって、子供専用の会場に愛銃二挺持って走り出した時の再現じゃないですかやだー。ボス一人でも止めるのに満身創痍になったのに、今回は四人だなんてムリゲーですって。

 

   ボスは途中で乙女座りをして、

 

   《うんっ。ディーノちゃん惚れた?惚れたよね?うん。パパもわかるよ。ボンゴレ子息三匹と害虫を一掃しようと思ったけど、うん、王子様がディーノちゃんを守ってくれるのなら、パパは別のお仕事をするね。ああんっメイドさんっ。ディーノちゃんに優しくしてくれてお風呂に入れてくれるのはありがたいけど、イヤリングとネックレスとティアラはとらないでっ。ディーノちゃん視線とディーノちゃんの聞いた声が聞こえなくなっちゃうからっ」

 

 

   愛息子の初陣を心配して盗撮盗聴する父親達と、外出先で離れてしまう愛娘を心配して盗聴盗撮する父親。

 

   そっか、同じ穴の狢かぁ。

 

   父親達が似た者同士だから、ザンザス坊っちゃんとディーノ坊っちゃんは仲良しなのかな。

 

 

   ホテルで、ザンザス坊っちゃんの活躍している姿・ザンザス坊っちゃん視点を見た。

 

   ただただ、感嘆のため息しかでない。この完成された暗殺者が、まだ十歳の少年だとは信じられない。

 

   一緒に見ているディーノ坊っちゃんは映像に釘付けだ。

 

   アルコバレーノ達も満足そうに見ている。

 

   「戦っているときの乱暴な口調もかっこいい…。あ、そっか…俺はやっぱりザンザスにふさわしくないのか…」

 

   「ディーノ、馬鹿な事を言ってんじゃねーぞ。ザンザスブチ切れてるじゃねーか。好いてもいない人間の為に怒るほど殺し屋は暇じゃねーよ」

 

   「そうだぜ、科学者は常に理知的でないとダメなんだ。惚れた人間か家族や仲間の侮辱に対しては怒る事を許している。お前はザンザスにとって大切な存在だ」

 

   「ありがとう、リボーンにヴェルデ」

 

   リボーン先生とヴェルデ先生ナイスフォローです。あの暴言吐き野郎は許さん。

 

   ボスにもリアルタイムで聞かれているから、自殺して早くあの世に逃げればいいのに。

 

   人質の居場所を聞いたザンザス坊っちゃんが向かった部屋には、要人はいなかった。代わりに少年となぜか家光がいた。ナンデヤネン。

 

   「ザンザスっ。やっぱり貴様が黒幕かっ」

 

   殴りかかってきた家光を殴って気絶させたザンザス坊っちゃん。

 

   「「「家光の野郎。なんでまだ生きてる?売られて掘られてばらされて魚の餌になっている時間だろうに。まさか誘拐されたのか?チッ、使えない奴等だな」」」

 

   「なんだよ、風。なんでいきなり俺の耳を塞ぐんだ?」

 

   「いえ、つい。幼い子供に聞かせる内容ではありませんから」

 

   ありがとうございます風先生っ。俺は風先生に感謝をした。

 

   ちみっこのひばり君とベル君がザンザス坊っちゃんになついた。…ディーノ坊っちゃんは送られてきた監視カメラ映像を見て溶けた。俺達も目を奪われたからな。ザンザス坊っちゃんに恋をしているディーノ坊っちゃんなんて瞬殺内容だ。あーあ、マジで戦力として欲しいわ。

 

 

   ひばり君のご両親とベル君達の代理人がやって来た。ひばり君のご両親は善良な方達だったが、代理人は糞だった。聞いてもいないのに、ベル君を如何に不当に差別してきたのかを誇らしく語る。純粋に死ねと思った。

 

   ザンザス坊っちゃんのブチ切れと宣言には、満場一致で喝采があがった。

 

   ほんとに、強くてかっこ良くて優しくて真面目で謙虚なのに、恋愛面では鈍さに定評のある魔王様で困っちゃう。

 

   ひばり君とひばり君のご両親、ベル君が《ザンザス/坊っちゃん/君/お兄さん/ボス・王様とディーノ/坊っちゃん/君/ちゃん/さんの恋を応援し隊》に入隊してくれた。ありがたい事だ。

 

  ちみっこ二人にもアルコバレーノ達が護身術を教えていくらしい。ちなみに風先生いわく、ひばり君とは遠縁にあたるらしい。




 

  増えていく、隊員達。


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 憤怒、日本旅行をする。6



   これから《如何にして、愛息子兼愛弟子に自信をつけさせるか会議を開く》byリボーン。

  


  

     拝啓、お母さん。

 

  お母さん、ごめんなさい。貴女に息子が一人増えました。優しいお母さんなら、俺のした事を誉めてくれると、そう思います。

 

  ベルフェゴール、ベルは家族から否定をされて生きてきた子です。王族らしいですが、俺から言わせたらベル以外の家族は滅びていい王族だと思いました。

 

   家族のなかの誰かを生け贄にして、他の家族は仲良しだなんて…いえ、もうベルの家族は俺とお母さんですから関係ありませんね。

 

   いつか、俺がお母さんに再会したら、ベルの事をたくさんお話しします。ですから、楽しみにしていて下さい。

 

   そうそう、最近の俺は日本において初任務を請け負い、これを成功させる事ができました。初任務でベルフェゴールとひばり君に出会う事ができました。

 

   ひばり君は、風先生にすごくそっくりです。風先生の遠縁にあたるそうです。

 

   ひばり君とベルは友達になりました。ディーノの護衛のお兄さん達や先生達、ボンゴレファミリーやキャバッローネファミリーの人達と仲良しになって何かの隊員ごっこをしています。楽しそうで何よりです。

 

   交ぜてほしいと、ディーノと一緒にお願いをしたのですが、交ぜてはくれませんでした。ですので、ディーノと二人と言いたいのですが、ディーノのお父さんの三人で日本を観光しました。 

 

   明日、イタリアに帰国します。

 

   帰国前に、奈々さんにお会いして謝罪を受けるのですが、まったく関係のない、むしろ被害者の女性からの謝罪を受けなければならない状況に、正直胃が痛みます。

 

   お母さんが俺を深く愛してくれたように、ディーノも深く愛されています。ディーノを愛しているおじ様の、娘を守りたい愛が今回の事態の引き金でした。悪い人はいないけど、やっぱり産院でのねちねちくどくどはやり過ぎな気がします。

 

   そうそう、今回は監視カメラに映っていた俺の戦う姿を見る機会がありました。

 

   …強くなったと慢心してしまった自分が恥ずかしいです。黒歴史です。これって、二つのファミリーと先生達のパソコンにデータとして保存されてしまったんですよ。もっと強くなって、笑い話にできる様に頑張りますね。《恥ずかしい》と感じてしまうのは、俺が自分に自信を持てずにいるからなのです。心もまだ弱いままなのでしょう。

 

 

   お母さんが、俺を護る為に自ら命を断ってしまった事。お母さんの遺してくれた遺書を読みました。

 

   本当なら、俺が気づかないままか、大人になってから知るはずだったお母さんの秘密。お母さんが俺を置いて姿を消してしまった2ヶ月後に俺は知りました。以前にも書きましたが、俺はお母さんに生きていてほしかったです。貧しいままでも、弱いままでも、ただ、俺はお母さんと暮らしていたかった。

 

   お母さんは俺を幸せにしたい。幸せに、愛されて生きてほしいと思ってくれて、たくさん考えて、その結果の事だったとわかっています。

 

   俺がボンゴレファミリー専属の暗殺者を目指す事に、お母さんは悲しむかもしれませんが、お父様、九代目とボンゴレファミリーに恩返しをするには、これが一番だと思うのです。

 

   九代目は穏健派です。ですが、九代目の慈悲がわからぬ人間やマフィアは残念ながら多数います。悲しむべき事に、ボンゴレファミリー内部にもいるのです。

 

   九代目の手足になって動ける暗殺者。リボーン先生以外にもいても良いと思ったのです。一応、ボンゴレファミリーの御曹司である俺が暗殺者であれば、ボンゴレファミリーの内側の膿は口を閉ざすとおもいます。

 

   死にたいわけではありません。ディーノの生きる道を支える事、ボンゴレファミリーの九代目と十代目を支えて生きる事が俺の希望で指針です。アルコバレーノの先生達みたいにクールで優しい男になる事が夢です。お母さん、俺を見守っていて下さい。

 

   このお手紙はまたいつものように、お母さんのお墓の前で燃やしますね。お母さんの元に届きますように。

 

     敬具 ザンザス。

 

 

   手紙を書き終えてから封筒にいれた。

 

   手紙を書いている間、俺の書く内容を見ていたリボーン先生はため息をついた。誤字がありましたか?

 

   「ザンザス、自分の強さをどう思う?」

 

   あ、実はご立腹でしたか。すみません。動きが無駄そのものでしたよね。

 

   本当は、直ぐにでも叱りたかったのでしょう。でも、人質という怖い経験をしてしまった幼い子供三人の前で叱るということは、幼い子供の心に更なる負担を押し付けてしまいますものね。流石です。俺は必ず、リボーン先生達みたいなクールで優しい男になります。

 

   「弱いです。足の早さもダメダメですね。俺が子供だからと、敵が油断してくれたから勝てただけです。もっと暗闇に同化して、音もたてない様にしないと一流の暗殺者にはなれませんね。ディーノを侮辱されて切れたのも、よくよく考えたら冷静さを失ってしまい減点ですよね。筋トレの見直しと新たに始める剣術の指導をお願いします。やっぱり拳銃やナイフのない闘いは心細かったです。得物に頼りすぎてはいけないとわかっていますが…すみません。心も弱いです。使わぬと決めた憤怒の炎も、人質が殺されてしまっていたらと思ったら、使って脅していました」

 

   「弱いか。(お前に一対一で勝てる暗殺者はもうあまりいない…これを言っても、こいつは信じねーな)ザンザス、自分が弱いと知っているお前は強くなれる。変わらずに努力をし続けろ。そろそろ、成長痛が始まる。体がガキから大人に変わる痛みだ。これからはカルシウムをたくさんとって睡眠も多くとれ。背が伸びるためにはこの二つが重要だ」

 

   「リボーン先生、ありがとうございます」

 

   「ああ。お前も風呂に入ってこい。日本の温泉なんてめったに来れねーからな。ひばりのご両親に感謝しろよ。お前への感謝の気持ちだと言ってくれているが、ベルをお前の異父弟にする手続きまでしてくれたんだ。…お前とベルが大人になったらひばり専属の護衛として雇いたいとまでいってくれた。縁は大切にしろ」

 

   「はい。ボンゴレの暗殺者に採用されなかったら、その時は頼ります。(日本の和牛は控えめ評価で最の高っ。角煮の婿になりたい)」

 

   「…なんかな、ディーノが可哀想な気がしたから、風呂からあがったらコーヒー牛乳を奢ってやれ」

 

   「?わかりました」

 

   「早めに休めよ。俺はアルコバレーノの皆と、俺の愛人のバーに呑みに行ってくる」

 

 

   「わかりました。リボーン先生、呑みすぎには注意してくださいね」

 

   「わかっている。大丈夫だ」

 

   リボーン先生は、部屋から出ていった。

 

 

   …愛人か。リボーン先生達は、たくさんの恋人や愛人を持っている。マフィアやマフィアのボス達は、当たり前の様に複数の女性を恋人や愛人にしている。

 

   例外中の例外で特例だよな。キャバッローネファミリーの九代目。

 

 

   奥さん一筋に生きて《愛人恋人?要りません。最愛の妻が永遠の恋人で伴侶で女神で心の聖域いや神域に住まわれる女神なのよ。最愛の妻に誠実に忠実に真摯に生きる事を優先していたいのよ。最愛の妻を不安にさせて不快にさせる要因は全て排除する。俺に奥さん以外の女性を進めた奴等は招待状を送っている。えっ?何の?聞きたいの?》ですものね。

 

   聞いたら送られてきてしまう恐ろしい招待状の事なんて知りたくありません。

 

   前世は破壊神か邪竜か荒神だったであろう戦闘狂バーサーカーの溺愛盲愛している掌中の珠である愛娘を苛めた人間(含む一族郎党)に出した招待状と同一なんでしょうね。

 

   優しいディーノに知れてしまうと、100%泣かれてしまうので、知られないようにしてくださいね。

 

 

   風呂上がりに、コーヒー牛乳を買おうとしたら売り切れていた。キャバッローネの九代目が涙目になりながら、ディーノに謝っていたので、かの人が主犯なのだろう。べルがコーヒー牛乳を飲みながら俺にも一本くれたので、有り難く頂戴した。

 

   愛娘と愛娘の友人ように買い占めたら、愛娘にやりすぎだと叱られているのか。ディーノがしっかり者になって嬉しい。だけど、なんか寂しい。何でだろうな?

 

 

           ※※※

 

 

   計画としては、《可愛い子には旅をさせろ。ザンザス君に安全性の高い簡単なお使いを頼むよ。でもって、リボーンに止められているあげたいお小遣い&送りたい仕送りを報酬として渡したい。勿論、初めてのお使いは録画してもらうし、万が一怪我をしてしまったら、医療班に治療させて無理矢理本邸へ強制帰還させるよ!てへぺろ》だったのだ。

 

   三人の息子達・守護者達・最高幹部達・執事・メイド長・料理長・私の主治医・ザンザス専用主治医・ザンザス専用メイド達・同盟ファミリーのボス夫妻(ザンザス君がディーノ嬢と破局してしまったら、うちの娘の婿に下さい派)の前で、初めてのお使い(リアルタイム)を上映した。 

 

 

   美しい肉食獣の強さと冷静な判断力、苛烈な怒りと弱者に対する慈悲深さが余す事なく放映されました。

 

   イエミツヨ、マタシテモキサマカ…。

 

   「す、素晴らしいっ。ザンザス様なんと慈悲深いのでしょうっ」

 

   「いいなあ。ザンザス君みたいな優秀な御曹司がいて。うちの子はどうも運動が苦手でねえ」

 

   「ザンザス様っ。なんとご立派になられてっ」

 

   「いいなあ。あの炎。僕もほしかったな」

 

   「父上、ザンザスに危険な事をさせないで下さい。ザンザスは御曹司なのですよ。あんな暗殺者の真似よくありませんよ」

 

   「ザンザスにいさまつよーい!」

 

   「あかん。キャバッローネファミリー絶対に破談なんかにしないわ。あのう、ボス・ボンゴレ。愛人でもいいからうちの娘をザンザス君の愛人にしてくれないか。あのこの遺伝子が欲しいわ」

 

   「ボス、あれを手離すのは駄目だ。だが、手元に置くためには暗殺者にするしかないのか?…残念だ」

 

   「ボス、明らかに依頼した内容と違いすぎる。…家光のアジトを全部家宅捜査する許可をくれ。だいたい家光のバカはなんで人質になっているんだ?」

 

   「格好いいっ。若様ったら素敵でございますっ」

 

   「良いものを見た。感動した。××国は駄目だな。これ、一部編集して国連に伝えてネットに拡散するべきだよ」

 

   「…あのう、ボス・ボンゴレ。ダビングして下さい。うちの息子がザンザス君に憧れているんですよ。つーか、俺がザンザス君のファンになったね!」

 

   「格好いい。だけど、これって《初めてのお使い》?どう見ても《ハードボイルド&アクション映画》なんだけど?主演男優のサイン下さい」

 

   「家光君ってさ、ボスの息子に殴りかかるってなんなの?最近の彼、大丈夫?憑かれてない?」

 

   …うん。私もそう思う次第でございます。

 

 






   ボス・ボンゴレとその守護者は、No.2に疑念を抱いた。

   俺の回収マダー?。by家光氏。



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 幕間・繋がった世界の話。

 

  ザンザス氏を可愛がっている家光氏がお邪魔している世界。




 

    おかしな夢を見る。

 

  夢の中で、俺はリボーンの野郎や他のアルコバレーノに師事を受けている。

 

   強くなる事に貪欲な生き方をしているガキの俺は好ましかった。俺が感じた裏切りは、このちっこい俺には自分に与えられた慈悲に感じられたようだ。あの女に金で売られたくせに、女を探していた。

 

  見つけた女は、死んでいた。俺はざまぁみろと思っていたが、ガキの俺は泣いていた。女の遺した手紙を読んで泣いていた。

 

 

  どうやら、夢の中の女は俺を愛しているらしい。惚れた男の子のザンザスに豊かな暮らしをさせ教育を与えたいが為に、ボンゴレにザンザスを預けた。聡く慈悲深いドン・ボンゴレなら、実子でないと解っていても、引き取り育ててくれる。ザンザスは大丈夫。ボンゴレファミリーが守ってくれる。後は、ザンザスの将来に陰をおとしてしまう自分を消すだけ。そうして、女は簡単に自分を殺した。

 

   夢の中の俺は、女に、母親に愛されていた。

 

   無いとわかっているが、俺も女の行方をカス共に探させてみた。

 

   生きていればいい。売った金で今も生きていて、俺を見て金蔓ができたと笑えばいい。そうすれば、所詮は夢だと俺は笑える。笑って女を殺せるはずだった。そうしたかった。

 

   …俺の母親は、夢の中のガキの母親と同じだった。手紙の内容も同じだった。俺を売って得た金は使われていなかった。埋葬されていた墓所で年老いた神父が手紙と小切手を渡してきた。

 

   「貴方のお母様は、貴方が来たら渡してほしいと仰ってました。主の祝福が貴方と貴方のお母様にありますように」

 

 

   そうして、同じ日に、ガキの母親と俺の母親は冷たい河に飛び込んだ。けして足掻かぬように重石を抱いて。

 

   …泣いた。カス鮫は黙って雨を降らした。マーモンは深い霧を出した。他のカス共も俺を見ないようにしていた。…カス共、次のボーナスには施しを加算してやる。

 

 

   夢の中の俺は、ジジイをお父様と呼んでいたが、くだらない誓いを立ててからは、かたくなにジジイを九代目と呼ぶようになった。夢の中のジジイは悲しそうにしていた。悲しそうな顔が、現実のジジイの顔に重なり苛ついた。

 

   恋人になったカス鮫にも、夢の内容は話してある。

 

   呼び方の事を話したら《健気だ。小さいボスさんが優しくて健気で尊い。うちのボスさんは尊大さと傲慢さが最高にいかしている。たまに見せる優しさが良い》と言って泣いた。腹が立ったので、カス鮫を一日俺の膝上に置いて甘やかした。顔を真っ赤にして恥ずかしがってやがった。ざまぁみろ。

 

   ジジイと沢田に招かれた食事会に参加した。最後、ジジイと沢田に向かって《おやすみなさい、お父様と十代目》そう言ってキスをしてから退出した。阿鼻叫喚になったらしい。歩みよりは嬉しいがいきなりは止めてほしいとジジイと沢田の守護者達から苦情がきた。知らねえな。 

 

 

   カス鮫は他のカス共に、俺の夢の話をしたらしい。…恋人同士の秘め事とかは、鮫には理解できなかったか。難しすぎて解らなかったか。そうだな、人間の俺様が教えなかったからわからないままだな。すまん。

 

   ベルが一番に、俺のものになったことを歓喜していた。はしゃぎ自慢しまくる姿は可愛いい。

 

 

   夢の中の俺は、純粋にこいつを弟として可愛がっている。カスの守護者も可愛がっていたな。確かになついてくる奴等は特別に施しをしてやっても良いと思える。

 

   で、カス鮫は落ち込んでいる。

 

  勿論、他の奴等も落ち込んでいるし、ボス、俺の・私の・僕の出番はまだかと聞いてくるが、夢はガキの俺の話ばかりではない。

 

  しかし、カス鮫の落ち込みようは凄まじいな。

 

  夢の中の俺が、跳ね馬と婚約者で保護者の様に優しく接しているのが不満で不安らしい。…だが、夢の中の俺は自分の気持ちに気づいていねぇよ。鈍すぎて逆にいたたまれない。夢の中の跳ね馬とキャバッローネの九代目に対して申し訳ないくらいだ。周りの奴等、真剣にガキの俺のけつを蹴ろ。跳ね馬を馬鹿にされてキレたあいつは、俺がカス鮫やカスを馬鹿にされた時と同じ顔をしていたぞ。マジで惚れて愛しているじゃねぇか。

 

 

   「ボスさんの恋人は俺。ボスさんの愛人は俺。ボスさんの一番の忠臣は俺。ボスさんの一番の剣は俺。小さいボスさんの俺、早くボスさんと出会えよっ。ボスさん剣に興味を持っちまったぞおおぉ…」

 

   カス鮫は、暗い顔暗い声で呟いている。

 

  はぁ…。こいつはほんとうに使えないやつだ。夢の中の話だというのに。現実で跳ね馬に当たるんじゃねぇよ。家光の野郎にも殺意を向ける…つーか、あの馬鹿マジで家光に切りつけやがった。ヒステリックに泣き喚きながら切りつけたから、周りからは加害者なのに被害者扱いだ。家光、被害者はお前だ。謝るな。

 

   沢田、落ち着け。何が、

 

  《スクアーロの髪に勝手に触るなんてセクハラだよっ。恋人のザンザスに捧げた忠誠の証の髪に勝手に触るなんて酷すぎるだろっ。泣いちゃっただろっ。ヴァリアーがこの件でうちに協力してくれなくなったらどうするんだよ!》だ。

 

   家光の身内はお前なんだから、家光の味方をしろ。

 

  家光は家光で、俺にかまうようになってきたよな。理解できん。隙有れば俺の殺害や失脚を常に企んでいたくせに。

 

  沢田をかまえよ。沢田を釣りに誘え。沢田を息抜きに遊びに連れ出せ。沢田の仕事を手伝ってやれ。沢田と呑みに行け。沢田の仕事にアドバイスをしてやれ。沢田に珈琲を煎れてプリンをおやつに与えてやれ。沢田に夜食を作ってやれ。沢田の為に資料を揃えてやれ。沢田に添い寝をしてやれ。沢田の服にアイロンをかけろ。沢田と風呂に入れ。沢田と奈々と旅行に行け。沢田がお前の息子だっ。俺はお前の息子じゃないっ。うちのカス共の仕事を取るなっ。俺のお母さん間違えたルッスリーアが、お前に対して激おこだぞ。

 

  もしかして、お前も俺と同じ夢を見ているのか?

 

  だけど、夢に振り回されているんじゃねぇよっ。夢は夢だ。

 

   沢田に《性転換弾を撃てばザンザスと結婚できるぞ》なんてほざくな。

 

   《ザンザス、綱吉と結婚しよう。ああ、わかっている。本妻で最愛の伴侶はスクアーロで良いから。綱吉とは仮面夫婦で大丈夫だ。結婚すれば、娘婿としてだけどボンゴレで権力を持てる。だからキャバッローネファミリーには行かないでくれ。ディーノ、察してくれるよな。まあ、お前がどうしてもというなら、ザンザスの二番目の愛人なら許すぞ。一番は綱吉だ》だ。

 

   …正気に戻れ。息子を大切にしろ。俺と打ち合わせをしていた沢田とディーノの前で言うな。気まずいだろうが。可哀想に二人とも無言で項垂れているぞ。俺の嫁が務まるのはカス鮫くらいだ。撃つならスクアーロに撃つ。弾をよこせよ。

 

  お前はヴァリアーの幹部から隊員事務員使用人にメイド全員から危険人物扱いされているから気をつけろ。ヴァリアーの本部やアジトに来るなよ。お前の為だからな。

 

   …夢の中の俺のトレーニング内容を丸っと真似をしたら、驚きの効果が表れた。

 

   …これをガキの頃からしていれば、確かに強くなれるな。正直、夢の中の俺が羨ましい。今さらだが、リボーンの野郎に師事を受けてみるか。

 

   マーモンを夢の中のリボーンに例えて、頭の上に乗せたり肩車をしたり、腕に抱き上げていると落ち着く事が判明した。夢に振り回されている。だけど、仕事の効率も上がるし的確な判断が出来て良い。驚くほどに効率が上がる。素晴らしい。マーモンが大きくまではこのスタイルで事務仕事をしたいものだ。

 

   一日の仕事を逐えて、部屋に向かう。カス鮫がいた。仕事後は恋人として過ごすのだから居るのは構わない。だが、マーモンのコスプレをしていた。またしても、馬鹿な事を言い始めたのでキスで酩酊させてから抱いて完全に黙らせた。

 

   鮫にはそろそろ正式に指輪でも贈るべきだろうか?最近情緒が不安定だ。再生医療の発達や科学に幻術で心臓の再生はなった。左手も再生させて指輪を贈ろう。右手の手袋を外して、俺の指輪を填めてやった。婚約指輪を施すまでそれをつけていろ…ブカブカとまではいかないが緩いな。チェーンもつけるか。この鮫は繊細そうな美しい外見だが、中身は杜撰で可愛い生き物だからな。

 

           ※※※

 

 

   僕の格好をして、ボスの寝室に向かうスクアーロを見てしまった。

 

   …明日から連続で有給休暇を取るから、ボスと旅行に行くのかなと思っていたけど、コスプレプレイからのイチャイチャパラダイスか。

 

   …僕が羨ましかったのかい?だけどね、子供、赤ちゃん扱いだからね。ボスから守られるなんて、君には耐えられないだろう。君はボスの特攻切り込み隊長で一番切れ味の良い剣だからね。

   

   僕の夢の中のボスの家庭教師参加はまだかな?でも、ボスには幻術とかは似合わないよね。曰く付きの場所に、肝試しに行っても、ボスが一歩踏み出したら綺麗な空気の場所に早変わりしたもの。マフィアを廃業しても、退魔師で食べていけるね。

 

  ボスの部下になるのでもかまわないけど。出会いの順なら、やっぱりスクアーロかな?…あれ?だいたい夢の中の小さいボスはおこりんぼうじゃないよね?ボスの怒りに惚れたスクアーロは小さいボスに惚れないんじゃあないかな?

 

   「だめよ、マーモンちゃん。あなた、考えていた事が全部口に出ていたわよ。あのこの耳に入ってしまったら泣いちゃうじゃない」

 

   「ごめん。でも、僕の考えていた事って正しいよね?会っても惚れなさそうじゃない?」

 

   「泣き虫のディーノちゃんにスクアーロがカチンときてドカンでディーノちゃんが泣いたところで魔王様なボスが現れてスクアーロの投了よ。ほら、惚れた。パラレルワールドだとしても、人間の本質は中々かわらないわよ。そうそう、夜食に焼きおにぎりを作ったから良かったら食べてね」

 

   「ありがとう。スクアーロの分は僕がもらうよ。僕の格好を勝手にする慰謝料代わりだよ」

 

   「あらやだ。あの子ったら家族にまで嫉妬するなんてね。困った子だわね」

 

   「…跳ね馬の様に髪を金にを染めたりしてな。ルッスリーア、旨かったぞ」

 

   「ししし。王子の口にもあったからな。あいつ、カラコンのカタログを真剣に見ていたから眼の色を変えるかもよ」

 

 

   「「「で、ボスに呆れられると」」」

 

    四人で笑いあった。

 

  まったくもって、うちの作戦隊長殿は可愛い。ボスが一番大好きで、ボスの為に何時だって全力だ。だけど、何故か空回りしてしまう。だからこそ、家族であり仲間の自分達が、彼の恋を応援して支えるのだ。

 

   そう。鈍いボスがまったく気づいていない、ボスを狙う《馬に蹴られてしまえ集団》から二人を守る。

 

   ボスへ。あなた、夢の中の小さいボスの鈍感さを笑えませんからね。

 

   九代目からの親の愛はまだ良い。拗れてしまったけど、お母さんを想って泣いたあなたは、父親とも解りあえます。

 

   だけど、沢田綱吉、綱吉のファミリーに守護者達。跳ね馬や他のファミリーのボスまで魅了するだけしておいて、まったく彼らの恋心に気づかないんだもの。ま、気づかないで良いんだけどね。最近、穏やかに笑う姿なんか見せるから、横恋慕している輩が増殖して困る。

 

 

 

    「…ボスさんいねぇな。シャワーか。うん?なんだぁ?」

 

   傍らにあるはずの人がいなかった。ちょっと寂しく思っていたら、指に違和感があった。

 

   慌てて、確認の為に指を見たら、ザンザス愛用の指輪が嵌められていた。

 

   「起きたか。ほら、これに繋いで首にかけていろ。お前が俺のもんだという証だ。今日買いに行くがそれまではそれをつけておけ。…朝メシまでには泣き止めよ」

 

   首を縦に振ることしかできなかった。

 

 

 

 




 

   接続しているザンザス氏は穏やかになっております。




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 憤怒、帰国する。



   主君に甘えてもらえましたね!


 

 

   日本滞在も今日で終わりだ。

 

   初任務も無事に終わらせる事ができ、ベルフェゴールを弟にした。ひばり君とも友達になれた。

 

   日本は、食べ物が素晴らしかった。露天温泉も良かった。

 

   剣術も柔道も空手も合気道も弓術も槍術も薙刀も見学させてもらった。相撲はひばり君のご両親が国技館に連れていって下さった。土俵近くの席って迫力が有りすぎて少しだけ怖かった。

 

  偽物だけど、侍と忍者を見れた。江戸村と撮影村に行って正解だった。日本旅行は本当に楽しかった。

 

  …わかっている。逃げていた。ごめんなさい。家光さんが、消えたままだ。きれいに忘れていた。だってさ、ボンゴレ医療班が家光さんを回収すると思うだろ?家光さんはボンゴレファミリーのNo.2だ。お兄様達が未成年者で、後継者が定まっていないいま、ドン・ボンゴレの次に優先し守られるべき存在だ。

 

   意識を刈ってから、建物から離れた場所に寝かせておいた。

 

   マイクでも《家光さんを確保。回収をお願いします。俺は任務を継続します》と伝えたし、任務終了後も医療班が俺と人質だった子供達の健康状態を診てくれたし。家光さんを回収して治療してくれたと思うじゃないか。

 

   ほんと、どこに消えてしまったのかな?家光さん。

 

   先生達も様子を見に来てくれた九代目のお使いの方も《気にしなくて大丈夫です。初任務お疲れ様でした》労いの言葉をかけてくれただけだった。

 

   …家光さんは、俺と違って大人だ。きっと自分の部下を呼んだか自力で帰宅したはずだ。

 

   そう。この沢田家のチャイムを鳴らせば出てくるはず。

 

   《遅いぞ、ディーノにザンザス》と不機嫌そうに言いながら。

 

   「ザンザス?大丈夫か?なんか、眉間に皺が寄っているぞ?」

 

   「あ、ああ。大丈夫だ。ごめんなディーノ。さ、チャイムを鳴らそう」

 

   「あ、俺が鳴らしたいっ。呼び鈴押したいっ」

 

 

   正しく箱入り娘なディーノには初めての経験なのだろう。俺が泊まった部屋のノックも護衛の兄さんの様だし。いつでも一生懸命で頑張りやさんだよな。俺も見習わないと。

 

   「良いよ。でも、連打は駄目だからな。玄関までの移動距離を考慮しないといけないぞ」

 

   「わかる。わかっているよ。お父様は俺の歩く遅さとか部屋の広さも考えてくれないんだ。たいていドアを蹴り破って《ディーノたんっ!パパが助けに来たからもう大丈夫だよ!》と叫びながら入ってくる。で、控えの部屋にいた俺の専用メイド達に叱られるんだ。お父様のねえやのばあやが俺の部屋にいた時は、泣くまで叱られてた。大丈夫だよ。俺の座右の銘は《他人からされて嫌だった事は絶対に相手にしない》だから」

 

   俺の弟妹分で親友のディーノが尊い。

 

   「ディーノは、偉いな。親友として誇らしいよ」

 

   「褒めすぎだよ。でも、嬉しいよ。ありがとう」」

 

     ピンポーン。ガチャ。

 

  押した直後に、ドアは開かれた。

 

  早すぎる。ドアの内側で待機していたのか?

 

   「いらっしゃいませ、ザンザス様、ディーノ様。お待ちしておりました。さあ、中にお入り下さいませ。裏切り者、いえ。家光氏の狭いウサギ小屋ですがどうぞおくつろぎください。ザンザス様、此度のご活躍素晴らしかったです。このオッタビオ感服いたしました」

 

 

   「いらっしゃいませ。ディーノ様、ザンザス様。お待ちしておりました。ディーノ様っ。ご立派になられてっ。家光めのご内儀は善き方かも知れませんが、念のためクレアがお側に控えております。お心を強くもって会談にお臨み下さいませ」

 

       バタン。

 

   玄関を閉めた。で、ディーノ/ザンザスと手を繋いで走った。行き先は途中で見かけた公園だ。

 

 

   なんで?なんで?オッタビオさん/クレアが日本に沢田さんのお宅に執事服/メイド服でいるのっ!?奈々さんは?家光さん/家光はいったいどうしたの?

 

 

   全力疾走したからツライっ。

 

   「ごめんディーノ。なんか、日本に居ちゃいけない人がいた」

 

   「ごめんザンザス。なんか、日本に居ちゃいけない人がいた」

 

   「「オッタビオさん/クレアは優しくて頼りになる大好きな人なんだけど、俺に対してかなり過保護で忠誠心が強すぎるんだっ。助けてっリボーン先生っ/ロマーリオっ」」

 

 

   「「呼んだか?ザンザス/ディーノ坊っちゃん」」

 

   呼んだら現れてくれた、自分達の真なる保護者に抱きついて泣きついた。

 

   そうして、沢田家でスタンバっていた日本にいてはいけない忠臣を見たことを話した。

 

   だって怖かったんだ。日本にいないはずの真なる忠臣が、日本に来ていて被害者女性(彼と彼女からしたら、一族郎党連座待ったなし。うちの主君の敵に慈悲は無いよ。当たり前だよね)にどんな態度をとってどんな酷い暴言を吐いたのかなんて考えたくなんかなかった。俺達はまだ十歳と八歳だっ。泣いている(確定)大人の被害女性を慰める方法なんかわかんねーんだよっ!(逆ギレしまくる子供達の図)

 

    

 

   「えっ。マジでクレア嬢ちゃんがか。…うちのNo.1戦闘メイドじゃねーか。俺達三人で止めれるか?いや、ムリだな。ボスにだって無理だ。…ディーノ坊っちゃん、毅然とした態度でクレア嬢ちゃんに《イタリアのキャバッローネ本邸にて俺の留守を守れ》と命じるんだ。クレア嬢ちゃんの忠誠はディーノ坊っちゃんにだけにある…泣かないで下さいディーノお嬢様っ」  

 

   「オッタビオがか。あいつもな、家光がぶっ壊れた日と同じ日にぶっ壊れたからな。

 

   《間違った。間違ったんだ。完全に間違った。ザンザス様を裏切ってしまった。間違った間違ったんだ。忠誠を誓い愛していたのになぜ裏切ってしまった?なぜ私は穏健派などを選択した?ボンゴレを解体?馬鹿がっ。なんてことをしたなんてことをしてくれた。伝統を歴史を軽くみるなっ。マフィアとしか生きられない、マフィアとしか存在できない人間だっているのにっ…許さない許さないっ。九代目に家光、お前らの選んだ後継者はボンゴレを完全に潰したぞ。潰した潰すくらいならザンザス様がお継ぎになっても良かったではないかっ。違う違う。私が裏切ったからだ。ザンザス様ザンザス様貴方が正しかったっ。貴方こそが真理を理解していたっ。償わないと償わないと私の命をかけて、いや私は貴方の為だけに生きる生きて貴方の幸せだけを祈りその為だけに尽力いたします貴方を愛しています貴方だけに永遠の忠誠を捧げます》

 

   なんて言い始めた。父親としては子供に近づけたくねーランキング一位になっちまったな。…ディーノの儀式の日に家光の暴言を聞いて無表情になっていたから…ザンザス、お前の大好きで信頼しているオッタビオが、お前がオッタビオと同じくらいに大好きで信頼している家光を殺していたらどうする?泣くなっ。俺が悪かったっ泣き止んでくれ」

 

    ザンザス/ディーノと声をあげて泣いた。泣いて泣いて泣きつかれてうとうととし始めたら、一番安心できる温もりに後ろから包みこまれた。だから温もりに抱きついてから寝た。俺達はまだ子供だ。だから大人に甘えても許されるんだ。(子供達の主張)

 

   次に気がついたら、イタリアのアパートのベットにベルをまぜた三人で寝ていた。

 

   リボーン先生/ロマーリオの頬に複数の赤い紅葉ができていた。なんとなく誰が犯人達なのかを察した。オッタビオさん/クレアは居なかった。ほっとしたような寂しいような……。いやいや、いつまでもオッタビオさん/クレアに甘えていてはいけない。

 

   ひばり君/ひばりと直にお別れできなかったのと、ひばり君/ひばりのご両親にお礼をいえなかったのが、日本旅行の心残りだった。沢田家で謝罪を受けるイベントなんて最初から旅程に含まれていなかったんだ。いなかったんだよ。うん。俺/ザンザスは最初にひばり君/ひばりを救出して、それから要人二人を救出したんだよ。俺/ザンザスは頑張った。家光さん/家光?旅行前も旅行後も、最近はお会いしていませんよ。(子供達の現実逃避)

 

 

 

            ※※※

 

 

   日本において、俺は初任務を無事に達成することができた。

 

   で、俺は今恐れおののいている。

 

  リボーン先生から渡された、俺名義の通帳。それには、俺が始めて目にする大金が記帳されていた。

 

   「ザンザス、受け取れ。お前に渡された成功報酬だ。この金額に見合う仕事をお前は成し遂げた。胸を張って受け取れ。返すなんてバカな事を言うなよ。これは正当な報酬だ。殺し屋なんてもんはこんな報酬当たり前の世界なんだからな。自由に使え。だが、薬と酒に手を出す事だけはまだ許さんぞ」

 

   無理です。自分には無理です。こんな大金自分には無理です。薬?酒?無理です無理です無理です無理です。俺はお薬でラリってる馬鹿に殺されかけました。お薬怖い絶対ダメ人間です。お酒も無理です。殺されかけた時の酒臭さに未だに嫌悪感があります。お酒は一流の暗殺者になれた時の祝杯までは飲みません。飲みたくありません。

 

   返すのもダメ。…どうしよう、どうしたら良い?貯金か…そうだ、貯金をして、ディーノとベルと、お世話になっている人達全員に感謝の気持ちとしてプレゼントを贈ろう。で、九代目とリボーン先生に養育費と生活費を渡す。うん、そうしよう。思い付いた考えは、とても素敵に思えた。

 

   プレゼントと一緒に、感謝の気持ちを手紙に書いて贈った。勿論、ひばり君とひばり君のご両親にもプレゼントと手紙を送った。ベルとひばり君も文通を開始した。なんか、微笑ましくて羨ましく思った。

 

   俺の世話役をしてくれていたオッタビオさんにも、俺が九代目と血の繋がりが無いこと。御曹司としてではなく殺し屋として生きていくこと。何の相談もしないで本邸を去ってしまったこと。世話役になってくれてマナーや常識を教えてくれて助かりました。ありがとうございますとお手紙を出して万年筆を贈った。

 

   ディーノもクレアさんに感謝のお手紙を書いて、ディーノが作った焼き菓子を贈っていた。

 

          ※※※

 

 

   ザンザスから頼まれた、ザンザスからの贈り物と手紙をボンゴレの本邸と本部に届けてやった。

 

   ほぼ全員が喜んでいた。

 

   三人の御曹司とオッタビオは特に狂喜乱舞していて、ぶっちゃけ引いた。俺達父親と教師を兼ねたアルコバレーノを見習って静かに喜べないものだろうか?

 

   四人、いや、みんなとは真逆で、九代目だけは一人で燃え尽きていた。御愁傷様としか言えない。ザンザスがボンゴレに引き取られてから、俺のアパートに来るまでにかかった生活費や養育費を、丸っと全額+利子+謝礼金を返金されちまったからな。因みにオッタビオが見積書をザンザスに渡していやがった。

 

   そう。もう、ボンゴレファミリーは、ザンザスに借りを返されちまったのと同じようなもんなんだ。

 

   さあて、ザンザスはもう俺達アルコバレーノの息子なわけだな。九代目、ザンザスは俺達アルコバレーノが面倒を見るから安心してくれ。しかし、まだオッタビオがいやがるな。でも、なんか俺達ザンザスの保護者とディーノとベルには無害で友好的だから大丈夫だろう。ベルはなんか一方的に嫌っているが。なんでだ?お前は家光やオッタビオみたいに変な電波を受信するんじゃねーぞ。ザンザスが悲しむからな。

 

 

 

 





   ザンザス氏 「カス共、使えそうなオッタビオが登場したぞ。ディーノにもオッタビオの女版のメイドがいるみたいだ」

   ザンザス氏の守護者達「なにそれこわいっ」

   家光氏 「待ってっ。俺はどうなった!無事なのかっ?」  


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 ユダの懺悔と教師の憂鬱。



  ユダ、教師に懺悔と懇願をする。 


 

 

  私は、物心ついた時から、漠然とした不安に苛まれて生きてきた。私がお仕えする主を失うという不安に。それが嫌でがむしゃらに働いた。そうした結果、私は若くしてボンゴレファミリーの最高幹部まで登り詰めた。

 

   そうしなければ、私の最愛の主を守れないからだ。戦闘能力を持たない私は、知力や謀でしか主の力になれない。モスカ・シリーズを内密で造り、将来の主の為に備えていた。

 

   ほんの少しだけ祈っていた。

 

   私の愛しい年下の少年王が、マフィアにならないで済む事を。

 

   だけど、運命は残酷だった。

 

   どれほど神に祈っても、裏切り者のユダである自分の祈りは、天には届かなかった。

 

   会議の席で九代目が言った。

 

   「私の息子を連れた女性に会い、息子を引き取る」と。

 

   ザンザス様だと確信した。

 

   隣にいた家光が呻くように言ったのを聞いた。

 

   「…ザンザスっ。貴様なのか?糞っ。ボンゴレも九代目も綱吉も俺が守るっ…俺は今、何を言った?候補者は多いい方が暗殺に備えられるだろうに」と。

 

 

   これはいけない。これは私と同じモノだ。こいつは、家光はザンザス様と敵対する。…何がザンザス様と敵対だ。ザンザス様を敵視する家光と、ザンザス様を裏切った自分。どっちも同じではないか。違う、私は違うザンザス様を愛していた愛している守りたかったから止めたかったから死んでほしくなかった私の前から消えてほしくなかったから。

 

   …記憶が蘇り絡まる。激しい頭痛に襲われて、耐えきれずにその場に蹲る。医務室にへと運ばれる間に、付き添ってくれたアルコバレーノのリボーン氏に自分の罪を話していた。間違った。間違ったんだ。完全に間違った。ザンザス様を裏切ってしまった。間違った間違ったんだ。忠誠を誓い愛していたのになぜ裏切ってしまった?なぜ私は穏健派などを選択した?ボンゴレを解体?馬鹿がっ。なんてことをしたなんてことをしてくれた。伝統を歴史を軽んずるな甘くみるなっ。マフィアとしか生きられない、マフィアとしか存在できない人間だっているのにっボンゴレファミリーが在ることで生活できる弱き人びとがどれだけいると思っているっ…許さない許さないっ。九代目に家光、お前らの選んだ後継者はボンゴレを完全に潰したのだぞ。潰した潰すくらいならザンザス様がお継ぎになっても良かったではないかっ。違う違う。私が裏切ったからだ。ザンザス様ザンザス様貴方が正しかったっ。貴方こそが真理を理解していたっ。最強でなければ守れやしない。償わないと償わないと私の命をかけて、いや私は貴方の為だけに生きる生きて貴方の幸せだけを祈りその為だけに尽力いたします貴方を愛しています貴方だけに永遠の忠誠を捧げます。だから、だからお願いします。リボーンさん私が狂ったらザンザス様を裏切る前に私を殺してくださいと。残酷な事実を十六歳という幼い年齢で知らずに済むように私と一緒にザンザス様を守ってくださいと。

 

   「ずいぶんと重いもんを抱えちまったな。…家光もそうか。家光とは真逆か。九代目の友人である俺に恥も外聞もなく頼みやがって。わかった。俺もお前の主を見守ってやる。だからもう眠ってしまえ」

 

   その言葉に安堵して気を失った。

 

 

   リボーンさんは、九代目にも家光にも、誰にも、私の話した事を話さなかった。

 

  翌日に、私は九代目に願い出た。私をザンザス様の主治医にしてほしいと。主治医と家庭教師、側仕えの使用人にしてほしいと。

 

   九代目はとても驚いていた。

 

   当然だろう。私の出世欲や向上心は皆が知るところだった。三人の御曹司に媚びを売らずにいた私。三人の御曹司と家光につぎ、五番目の後継者と呼ばれていた私だ。

 

   「オッタビオ、君はその…」

 

   「ああ。私はボンゴレにはまったく興味がないのです。ただ、昨日お話に上がったザンザス様のためだけに有りたいのです。私の全身全霊をかけてお仕えすると決めてあります。…この事はリボーンさんにも伝えてあります。九代目、何卒お許しくださいませ」

 

   「おいおいっ。お前、オッタビオ。頭を下げるくらいしろよっ。おい、なんだよその《何、馬鹿な事言ってんだこの馬鹿。あ、馬鹿だったな。絶対の忠誠を捧げた主君がいるのになんで単なる雇い主に頭を下げる必要があるんだよ》な目はよっ。なんなんだよ、冷静で野心家なお前はどこに行っちまったんだよ。ボンゴレのボスになりたくないのかよ!あんだけ努力していたじゃねぇかっ。だからっ《沈む船にはお前ら親子と偉そうに座っている耄碌人でなしジジイの三人で好きなだけ乗ってろよ脳筋禿げ》な目でみるなっ!」

 

   「家光に九代目。そいつは決めた男だから好きにさせてやれ。そいつの主に危害を与えない限りはボンゴレに有益を与えてくれるからよ。認めてやれ」

 

   「…リボーン。何かを知っているのかい?」

 

   「何にもしらねぇよ。俺は言っただろう危害を与えない限りはボンゴレに有益を与えてくれるって。反対に、危害を与えたらそいつはボンゴレに牙をむく。実質的なNo.3で頭のキレすぎるこいつがボンゴレに牙をむくんだ。ボンゴレを守りたいんだろ?なら、こいつの提示した条件はのんだほうが良い」

 

   「わかった。オッタビオ、ザンザスを頼む」

 

   「おい。オッタビオ。《何を偉そうに。この血筋馬鹿が》の目をやめろ。オブラート買ってこいよっ。昨日までのお前はどこに行っちまったんだよっ」

 

   「家光、もう私に話しかけてくんな。お前と一緒にいると大概不快でしかありません。…ザンザス様が傷付かれない限りは、ボンゴレにも有益を出すと誓います。リボーンさん、ありがとうございます。貴方のお仕事でかかった経費は私にお任せ下さいね。家光、貸した金を今すぐ返せ。後、二度と貸さない。九代目、二度と貴方の子息の側近になれとの話はしないで下さいね。正直、不愉快でした。貴方の子息で、貴方から無条件で愛されている存在だというだけで殺してしまいたくてならない。一番に殺したいのは九代目、お前と家光だ。家光の息子っ。あの方が望んだ全てを得ながらあっさりと捨てやがったっ。殺す。ガキのうちに殺す。ああ、そうだ。あの子達を早く探さないと。ザンザス様の守護者達を。もう私達はザンザス様だけの存在ですから痛いっ」

 

   「落ち着け。家光も九代目もお前の放った殺気で気を失ったからな。…どんだけ愛していたんだよ。ほら、迎えに行く時間だぞ。お前が気を失った間にばんばん情報が集まったぞ。どんだけボンゴレを掌握済みなんだよ」

 

   「リボーンさん。ツッコミ役として私の肩に乗っていてくれませんか?掌握…九代目、家光、九代目の守護者、家光の部下以外の弱みを握り恩を売ってありますけど…クーデターは起こしませんから安心して下さい。《ゆりかご》《指輪争奪戦》を成功させるための布石…いえ、私はザンザス様とともにあるのですから。何もしませんよ」

 

   「…ザンザスってやつが可哀想になってきたぞ。なあ、ザンザスがお前の知るザンザスと違っても忠誠を捧げるのか?」

 

   「捧げますよ。私の全てを捧げます。資料を見ましたが、ザンザス様以外のなにものでもありませんでしたよ。さて、今ならこの二人を痛いっすみませんリボーンさん。行きます、ザンザス様をお迎えに行きますから私の本体(眼鏡)を取らないで下さいっ」

 

   「オッタビオ、お前、弱くなんかないだろ?弱かったらお前の放った殺気でこの二人が倒れるわけがねぇ」

 

   「…それはその…えっとですね、弱いです。ぶっちゃけヴァリアー幹部…私のいた世界のザンザス様の組織で一番に弱いです。私ではザンザス様を守れない。盾にもなれない。剣になんてどれだけ望んでも努力しても成れやしなかった。だから、造りました。企業機密ですから詳しくは話せません。造った相棒は、とても頑丈でとても強いです。そいつと私の肉体の一部と心を融合してあるんです。私の殺気プラス相棒の殺気だから気を失ったのですよ」

 

   「…化学者、マッドサイエンストでもあるのかよ。俺の親友と意気投合しそうだな。…なあ、ザンザスが平凡な生き方を望んだら叶えてやれよ」

 

   「もちろんですともっ。私はザンザス様に傷ひとつつけたくないですからねっ。目指せ、ボンゴレの脛かじりで生きる道楽息子なザンザス様の一の家臣っ。ぐはっ…ザンザス様の一番最初の家臣で部下で忠臣で下僕っ生きてて良かったー転生万歳っ神様ありがとうございますっ。カス鮫ざまぁっむっつりスケベざまぁ守銭奴ざまぁリボーンさんを見習え糞生意気な王子ざまぁこの世界で一番尊く高貴なのはザンザス様ですよ。サイコなカエルざまぁオカマあなたは早く馳せ参じなさいっぐぇっ………」

 

   「うるせぇ、だまれ」

 

   またしても電波を受信したオッタビオに麻酔弾を撃ち込んだ。

 

 

   結果としては、こいつが警戒していた十六歳よりも早い段階で、ザンザスは知っちまった。

 

   十歳のガキの泣きながらの告白は、知っていても胸に突き刺さった。

 

   オッタビオの不在時に、残酷な事実を知っちまったザンザスを、俺は保護した。約束していたからな。

 

   オッタビオがなんで不在だったのかは未だに謎だ。あの男の事だ、ザンザスの敵を暗殺しに行っていたかザンザスの為に修行に出ていたかだ。

 

   ザンザスを保護した、俺の隠れ家のアパートに、オッタビオも押し掛けてくるかと思った。いや、むしろ一軒家を用意して引っ越しを勧めてくると思っていた。

 

   奴は斜め左からせめてきた。

 

   「リボーンさん、ザンザス様の保護をして下さってありがとうございました。話が纏まりました。ザンザス様の将来の花嫁であるディーノお嬢様が一緒にお住みになります。ザンザス様と一緒に貴方に師事を受けます。まさか、こちらの世界では跳ね馬ディーノが女性で、ザンザス様をお慕いしているとは……。くくくっ。ボンゴレファミリーがザンザス様を否定するのなら、キャバッローネファミリーや他のファミリー、いや、ザンザス様のザンザス様によるザンザス様だけのファミリーを作ればいいだけ。あれ?リボーンさん?いない?」

 

   オッタビオの野郎は自動でザンザスの為だけに動くので、俺は奴を放置する事にした。

 

 

   ディーノの忠臣と結託してしまうとわかっていたら放置はしなかったがな。

 

   あいつらときたら、共通の敵を家光と認定しやがった。絶対に、現在進行形で行方不明になっちまった家光の事を知っている。つーか、主犯グループだ。

 

   家光の家で、執事服とメイド服を着て主夫妻の来訪をスタンバってんな。奈々に何を言っていたんだ。俺達が謝りに行ったら、俺達に泣いて謝罪を繰り返しているだけだったぞ。

 

   「ええっと、私のザンザス様への忠誠と愛を語り、ザンザス様とディーノお嬢様がいかにラブラブかを話しただけです」

 

   「ええっと、私のディーノお嬢様への忠誠と愛を語り、ディーノお嬢様とザンザス若様がいかにラブラブかを話しただけです」

 

   「「それと、家光がいかに残虐非道で幼い恋人同士の純愛を真っ向から否定し貶め辱しめる悪意の固まりでザンザス様/ザンザス若様を一方的に憎み殺害しようとしているかをイライラしながら説明しただけです。事実を述べたら泣いただけですよ」」

 

 

   アカン。こいつら、もうザンザスとディーノが結ばれる事と二人を守る以外に人の優しい心を持てなくなってやがる。駄目だこりゃ。

 

 

 






  執事とメイドは、私達は悪くないと供述しており、当局は余罪があるとみて調査を続けるそうです。

   なんかオッタビオ(様)がいないとわかっていてもムカつく。byザンザス様大好きなヴァリアー隊一同。




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 王子と教師の憤慨。



   王子と教師は激怒した。




 

 

  自分が生きてきた世界が、異常で不幸だったとわかった。

 

   自分は今、正常で幸せな世界で生きている。

 

   王族としての生活とは違う生活。王族とは一転して暗殺者見習いだ。でも、こちらの方がずっと人間らしく生きられている。

 

    家族愛や隣人愛、友愛で満たされているのだ。

 

  俺は今、笑っている。嘲笑ではなく心の底から笑えている。家族や友人と他愛ないことで一緒に笑えている。それが、どれほど嬉しくて幸せなことか。俺がずっと望んでいたものが、いま、ここにある。

 

   近所に住む子供達と一緒に遊ぶ。姫と一緒に料理やお菓子作りに挑戦する。ボスと一緒に買い物をする。ヴェルデに勉強や化学を教わる。風にパンダや中国武術について話してもらう。コロネロにイタリアや軍隊について教えてもらう。リボーンに護身術や世界史を教えてもらう。ボスにお母さんの事を聞く。ボスと姫に絵本を読んでもらう。姫のお母さんに服を買ってもらう。姫のお父さんに男の美学を教えてもらう。姫の護衛のお兄さん達とため息をついたり和んだりする。学校に通う。ひばりと文通をする。ボスと姫と一緒に訓練を行う。ボスに姫からの恋心に気づいてと念を送る。ひばりに会いに行って遊んで、遊びに来てくれたひばりと遊ぶ。

 

   毎日が楽しくて楽しくて幸せだ。寂しいと、寒いと感じていた場所は温かくなった。

 

   全部、ボスがくれた。

 

  ひばりを抱っこして現れた王様が、俺を幸せにしてくれた。ひばりが俺の隣に座ってくれた。対等な友達になってくれた。

 

  嬉しくて幸せな世界。でも、やっぱり嫌なことはある。

 

   《家光》と《オッタビオ》この二人が嫌だ。

 

   家光はボスを嫌っているから嫌だ。昔はボスを可愛がっていたけど、少し前からボスに対して意地悪になったと、リボーン達が困った顔で教えてくれた。

 

   オッタビオを見ると、マジで駄目だ。本人は俺に対して優しいし親切だ。ボスに絶大の忠誠を誓っているのが、見ていてわかる。ボスを裏切るくらいなら笑いながら、自分の死を選べてしまうような狂人だ。

 

   世界で一番、ボス・ザンザスに忠誠を誓い、けして裏切らない存在。それがオッタビオだと言えてしまうくらいだ。

 

   だけど、それが俺には許せない。

 

   お前じゃない。その場所はお前にだけは譲らない。お前は俺達とは違う。お前は俺達とは違う。お前はボスを裏切った。一番近い場所にいたくせに、一番最初からボスを守っていたくせに俺の王様を俺達のボスを裏切ったじゃないか。俺達を裏切った。俺達を置いていなくなった。ボスが待ち望んでいた弁解も謝罪もしないで毒を飲んで勝手に死んでしまったじゃないか。自分が許せないだなんて、自分が全部考えてボスに濡れ衣をきせたなんて手紙を残してあんたの死体を渡せなんていう奴等から、あんたの死体を守るために炎を使わざるを得なかったボスに謝れよ。

 

   …なんであいつを見るとこんな言葉や思いが浮かんでくるのだろうか?最近では夢をみる。ボスに従い暗殺者として生きる自分と顔のぼやけた仲間達。最初から男性なままの姫、ボスの近くで献身的に尽くすオッタビオ。クーデターを起こし失敗する俺達。氷に閉じ込められてしまうボスの姿。氷に閉じ込められて眠り続けるボスの前で泣くオッタビオと俺達の姿。現実と虚構の区別がつかなくなり、静かに狂っていくオッタビオ。それに引きずられかけ、狂いはじめる※※※※※と※※※。止められない自分達の無力さ。目覚めたボスに喜ぶ俺達。未来へと生き、歩き始める俺達と違い俺達とは違う場所へ行ってしまったオッタビオ。心臓を足を腕を無くしたボスと※※※※※。※※※※の呪いを解くための戦い。解けて平和に穏やかに過ごせる静かな毎日。やきもきしつつ、見守っていたボスと※※※※※の結婚。幸せなのに、満たされているのに彼が彼だけがいない世界。

 

   …夢は夢だ。俺の王様は、俺のボスは、ボンゴレファミリーや九代目を大切にしている。クーデターなんか起こさない。だから大丈夫。親バカなアルコバレーノが、ボスを止める…か協力してクーデターを成功させる。オッタビオも、ボスがクーデターを考えたら、実行前にクーデターを成功させて、ボンゴレファミリー十代目の椅子を献上してくる。

 

   だから、俺は夢の中の事はあまり考えない。囚われてしまうよりは笑い飛ばした方がずっと前向きだ。前世とか、違う世界の俺達の関係なんだなくらいでいいと思う。

 

   家光と違って、ボス至上主義者な狂信者だから、俺が撮ったボスの写真を売って日本への旅費を貢がせよう。うん、我ながらいい考えだ。流石は王子じゃん。

 

 

           ※※※

 

 

   俺のベルと俺のオッタビオさんは、なんか仲が微妙だ。

 

   歩み寄ろうとしているオッタビオさんだけど、ベルの

 

   《…おっさんはさ、今回は、王子の王様を裏切らないよね?ああその…あんたは王様を裏切るくらいなら、平気で自殺だけを一択するのは知っているしわかっているよ。だけどさ、前もだけど今回の王様は優しい人だよ。悪かったと思ったら素直に謝ろうね。

 

   前も《オッタビオのカスは仕方がない奴だ。まあ、ザルな計画を立てちまった俺も悪かったな。カスが謝罪したら許してやるし守護者のままにしておいてやるか》と言っていたしさ。謝れよ。狂って服毒自殺なんか選びやがって。馬鹿。残された俺達やボスがどんだけ泣いて悔やんで悲しんだか。泣きながらあんたの死体を燃やしたボスに謝れよ》

 

   発言を受けて固まった。フリーズした。リボーン先生がため息をついた後に、タクシーを呼んでボンゴレファミリー本部へ着払いで届けていた。

 

 

   で、オッタビオさんの俺達の自宅訪問の回数は増えた。が、野生の勘でベルが在宅時は来ない。ベルもベルで、ちょっと気まずそうにしていて、なんか可愛い。

 

 

   俺としては、弟のベルの可愛い前世ごっこの内容が超絶気になった。前世ごっこの中の俺の傲慢さに引きました。ええ、ドン引きです。えっ?この憤怒の炎って、人の肉体も燃やせてしまえるのですか?やだっ。怖いっ。リボーン先生達が、そろそろ憤怒の炎について訓練をはじめると言っていたけど、真剣に訓練しないと。

 

         ※※※

 

 

   リボーンさん、毎回毎回突っ込みとフォローをありがとうございます。

 

   お代官様、リボーン様。お手元に届きました小切手は、わたくしからのお礼の金子でございます。ええ、純然な感謝の気持ちでございます。

 

   《ベルの言っていた事はほんとか?盗聴の心配はいらねぇ。正直に話せ》

 

   ええたぶん。正直、クーデターの失敗は解りきっていましたし、情報をリークしてザンザス様とあの子供達の助命は約束されていました。クーデター前に猛反対をして、ちょっとザンザス様と子供達のご機嫌を損ねてしまったけど、大丈夫。私から謝るし。そんな風に軽く考えていました。

 

   …だけどね、ダメでした。

 

   ザンザス様を筆頭にして、幹部のあの子達、ヴァリアーの隊員達は善戦しすぎたんです。

 

   十代の子供達が本部を襲撃し、全壊近くの損害を出し、九代目の守護者を征し九代目とザンザス様の一騎討ちにまでに行ってしまったんです。

 

   《ヴァリアー隊員の、俺達の帰還をヴァリアー本部で待っていろ。勝利を持って帰るからな》

 

   《後方で俺達の支援を頼む》

 

   《王子とマーモンの活躍を見てなよ》

 

   《君が残ってくれているから、僕も全力を出してくるよ》

 

   《行ってくるわ。ボスとあの子達は私が守るわ》

 

   《オッタビオ、行ってくる。俺は十代目のボス・ボンゴレになる。お前らの期待に応えてやる。お前達はどこまでも、地獄の底までも俺についてこい》

 

   …裏切らない選択を選べば良かった。信頼に答えて、一緒に怪我をすれば良かった。ボロボロになるまで傷つけば良かった。地位も名誉も捨てれば良かった。こっそりと後をついていって盾になって死ねば良かった。ザンザス様とともに氷に閉じ込められて、それこそ永遠の眠りにつければ良かった。

 

   私が見たのは、傷だらけで放心している子供達と隊員達。

 

   物言わぬザンザス様でした。

 

   まさか、この私が狂うとかね。…狂っていたなんて。まあ、所々記憶があったり無かったりしていた時点で、既に私は壊れていたのでしょう。たぶん《ザンザス様の憤怒の炎で消されて死んだ記憶》は、私の願望で、狂った私の最後の妄想でしょうね。

 

   ああ、本当に私を着払いで送って下さいましてありがとうございます。

 

   あのままだったら、ザンザス様から、私を心配する声をかけられた時点でザンザス様の目前で謝罪をして、拳銃自殺をしていましたからっ。ザンザス様とベルのトラウマ待ったなしなんて許せません。

 

   ベルの言う世界が、私の死後にあったのなら、私の犯した罪は重すぎますね。結局は償いなどではなく自己満足でしかなかった自殺です。

 

   ああ、そんな慰めの言葉はやめて下さい。

 

   …ザンザス様から賜る死と老衰からの死、ザンザス様の身代わりとなっての死以外はもう選びませんから。約束します。 

 

   でも、私や家光の馬鹿以外にも記憶持ちや記憶がどこかの世界の自分と繋がっている人間はいるのですね。

 

   …ザンザス様がこれから出逢う《ザンザス・様大好きっ子》達に記憶があったりしたら、私袋叩きになってしまいますね。いやあ、幼いベルで良かった良かった。

 

   《されてやれ。お前はトラウマ量産機械じゃねーか。自分を責めた結果狂っちまって非業の死をむかえた可哀想な兄貴分が、ヘラヘラと幸せそうに笑って自分達の大好きな主にお仕えしていたら誰だってキレて殴りかかってくるぞ。猛省しろ》

 

 

   …やっぱりマズイですかね。私としては、狂っていたとしても幸福の中で満足して死んだのですが。それに、私は昔っからザンザス様の前では常にヘラヘラと幸せそうな満面笑顔でしたし。

 

   生まれ変わって、ザンザス様の未来を知り、ザンザス様に関連した作品を読みまくって幸せな毎日を過ごせてハッピーエンドな人生でしたし、今は前と比べて強くて知識のあるニューゲーム状態なのですが。

 

   食いついてきましたね。それでこそザンザス様の父上っ。ええっ。たくさん読みまくっていましたよ。

 

   ザンスクにスクザン、ザンベルにザンマモ。ザンレヴィにザンルッスリーア。あのくそ家光の遺伝子継承者ともありましたしおぞましくもろうがいとのもありましたが、それらは見てません。見たくない。ザンザス様の相手はうちの可愛い子供達が良い。個人的な見解ですが。

 

   《地雷回避は自己防衛》に繋がりますからね。《私の萌えは誰かの萎え。私の萎えは誰かの萌え》腐男子・腐女子・貴腐人・腐男の持つべき嗜みですよ。

 

   ザンザス様に関しては、ザンスクにスクザンが主流でしたね。

 

   リボーンさんのはけっこうありますよ。流石は主人公の一人。

 

   えっ?私の聖書ですか?勿論、ビオザンにザンビオですね。あまあまな作品を神のサイトのキリ番ゲットして描いてもらいました。ツンデレなザンザス様尊いっ。私と真実を知り絶望したザンザス様が駆け落ちして幸せになる系の話が一番萌えました。エロ系の方は、ザンザス様が尊いので手を出しませんでしたが、悪友が私の誕生日にプレゼントしてくれた一冊がエロでした。十五才のザンザス様を私が無理矢理に近い形で和かん…カチッ…えっ?何故安全装置を外す音がしましたか?り、リボーンさんっ何故私の部屋にいますか?ま、待って下さいっ。それって特殊弾ではなく実弾ですよねっ!や、止めてくださいっ!し、死んでしまいますっ。逃げますっモスカ、今すぐ私の部屋に来てくれっ。助けて下さいっ。

 

   「オッタビオ。てめぇは俺を怒らせた。死ね」

 

 

 

   結局は、私は全治三ヶ月になった。ザンザス様にお会いできなくてつらいっ。モスカの機動力をあげないと。

 

 

 

  






  家光氏 「あれ?ザンザス、今日は幹部達はどうした?」

  ザンザス氏 「…墓を汚しやがったからな。罰として沢田とディーノとお父様の護衛に二週間させた。静かな内に仕事を片付けて、奈々に詫びに行く。家光、テメェも来い。…神様に感謝してねぇでコーヒでも煎れてくれよ家光お父様(棒読み)」

  家光氏 「オッケーマイサンっ!」

  ザンザス氏ラブ勢力 真に遺憾である。



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 憤怒、嫉妬から忠誠を誓われる。

 

  憤怒の元へ帰る守護者達。


 

   マフィアの子弟が通う学校に転入…大学院までの学業は修め終わっていたが、ディーノとベルと同じ学校に通って子供時代を楽しめと言われた。

 

   愛だと思う。愛されていて幸せだ。早くボンゴレファミリーの殺し屋にならないといけない。そう焦っている気持ちを見透かしたかの様に、逃げ道を与えてくれる。あの養父達のような優しい大人になりたい。

 

 

   全寮制の男子校だったが、ディーノの本来の性別を考慮した結果、通学を認めてもらった。

 

   理事長先生と校長先生が可哀想だった。

 

   武闘派ファミリーのキャバッローネファミリーが、学校の周りや自宅周辺を黒塗り高級車や戦車で取り囲っていたら、どんな無理難題でも飲まざるを得ない。アルコバレーノとボンゴレファミリーとベルの元実家もさりげに混ざっていたし。

 

   ディーノ専用の着替え室にシャワールームにトイレを…うん、キャンピングカーを学校の敷地内にいれて、専属メイドのクレアさんをつけての学園生活。

 

   虐められてしまう事を警戒しても、あれだけ堂々と脅しをかけていたら誰も俺達を虐めないと思います。

 

   ええ、虐めはありませんでした。

 

   …そりゃあそうですよね。

 

   《貴方の学校に転入してきた三人には、絶対に逆らってはダメ。虐めてはダメ。無視をしてもダメ。報復で家族と一族ファミリーが消されてしまうからっ。×××××ファミリーの一家惨殺事件の二の舞なんて絶対に嫌っ。良い?ディーノ様ザンザス様ベル様に逆らってはダメよっ》

 

   《ボンゴレファミリーの御曹司であるザンザス様の命令にはけして逆らうな。お祖父様に送られてきた極秘映像をお前も見ただろう。あの御方がザンザス様だ。あの悪名高き××××ファミリーを素手で壊滅させて人質四人を無傷で救出したのだ儂らのファミリーなんぞ赤子の手を捻るようなもんだ。けして逆らうなっ。逆鱗に触れてしまったら、儂はお前を殺して一族とファミリーの助命を懇願しなくてはならん》

 

   《ベル様に逆らってはダメ。ベル様は××国の王族よ。あの王族以外の国民はゴミ扱いの王族。外国籍のマフィアの私達なんて虫けら扱いよ。あなたの命もママの命も消すことに躊躇いなんか持たないわ。良い、ベル様には逆らってはダメよ》

 

   両親祖父母姉兄親族から伝えられたら、幼い子供達は逆らいませんよね。あ、これ楽しい学校生活は望めませんね。お互いに。

 

   クラスメート達には悪いけど、ディーノとベルが虐められなければ良いや。うん、あの二人は虐められてきたから、他者を虐めないし他者を弱者を思いやれるから大丈夫だ。

 

   問題は俺だ。どうしよう。

 

   「あのさ、レヴィ君」

 

   「はい!何でありましょうかザンザス様っ。俺の事はどうか以前の様に、レヴィと呼び捨てにして下さいっ」

 

   「いやその…レヴィ。跪くのはやめて」

 

   「いいえっ。再び家臣にして頂きたいとの申し出にまだ御言葉をもらっておりません!以前の様に、幹部クラスなどとは望みませんっ。臣の末席で構いませんっ。一番したっぱで構いませんっ。俺の忠義と活躍でザンザス様に認めてもらうまでであります。俺は絶対にザンザス様のお役に立ちます!」

 

   …ああ、どうしよう。

 

   脳内のオッタビオさんが喜びの歌を歌ってリボーンさんに突っ込みを入れられている。…もっと頻繁にお見舞いにいきたいな。

 

   …ボンゴレファミリー本部にいたNo.3のオッタビオさんが、暗殺者に銃撃を受けるなんて。リボーン先生とモスカが駆けつけてくれて本当に良かった。凄腕暗殺者が逃げてくれて良かった。オッタビオさんの命が助かって良かった。モスカを初めて見たけど、凄いよな。メカってドキドキするよな。これは強いってわかったもの。でも、何でリボーン先生に怯えるのかな?

 

   「…わかりました。死にま「レヴィ・ア・タンっ。臣に迎えるっ。以後は俺に、地獄まで付き従えっ。俺の命令にはyesのみで答えろ。使えないカスにはなるな。俺を裏切ったら必ず殺す。自分の命は大切にしろ。危なかったら撤退する勇気を持て。2つ下に転入したディーノと幼稚舎のベルを全力で守れ。将来俺の女になる愛しい男と異父弟になった可愛いガキだ。お前も俺のファミリーになったからには自分のことも絶対に守れっ。失敗は許すが怠慢は許さん。悩みがあるなら、抱え込まずに俺やベルに相談しろっ。自殺だけは裏切りよりも許さん。女性は大切にしろでなきゃかっ消す。

 

   おいおいっ。冷静になれっ。ベルの可愛い前世ごっこの設定を勝手に使うなよっ。殺し屋になる俺の部下になりたいんじゃないだろ?こいつにちゃんと教えてやって諦めさせないとっ。俺はお父様の、ボンゴレファミリーの九代目の血縁ではないって。ボンゴレは継げないって。俺に着いてきてもお前は出世できないって!だいたい、ディーノに対して隠してきた想いを自分から暴露するなんてどうした俺っ。冷静になれ冷静になれっ。でもってレヴィとクラスメートの記憶をかっ消す方法を考えないとっ。って、何でクラスメート全員と教師がびびっているんだ?」

 

   「ザンザス様、思考がすべて尊きお言葉になっております。…今生もオッタビオが世話役でしたので、奴めの癖がまたお移りになったのでしょう。

 

   レヴィ・ア・タン、今生もザンザス様の守護者として一の家臣として誠心誠意お仕えいたします。

 

   唯一の主君にお仕えできる。その事だけが俺の望み、俺の幸せでございます。

 

   もとより、俺は、ボンゴレファミリーではなく、ザンザス様ご自身に帰属すべき存在です。ベルもオッタビオも、他の皆もそうでしょう。

 

   俺としては、些か複雑ではありますが、ザンザス様が選ばれたのでしたらディーノ様にも忠誠を捧げます。(まあ、スクアーロは愛人枠でも狂喜しているからな。特に困るまい)

 

   ザンザス様、レヴィ・ア・タン、今、帰参致しました」

 

   レヴィ・ア・タンは、そう言うと俺の手をとると、忠誠の誓いのキスをした。

 

   ああ、レヴィが帰ってきたのだなとなぜか思った。

 

   そう、オッタビオさんがリボーン先生と家光さんと一緒に俺達を迎えに来てくれた時と同じだ。あの時も、懐かしく思ったっけ。

 

   「…そうか。戻ってきたのか。レヴィ、よく戻った。以後も俺に忠誠を誓い忠勤に励め。カス共、俺の女のディーノと弟のベルに今言った内容を喋るなよ。喋ったらかっ消す。噂が広まったら、俺はお前達を一番最初に疑う。わかったな?」

 

   乱暴な口調で、クラスメートに強くお願いした。こういった場合は弱気でいるよりは強気になる方がいい。

 

   ……いや、だからおかしいだろ。クラスメート全員と教師が床に平伏しおった。

 

   レヴィは恍惚としているし。いや、こいつはこれが平常運転だったな。ああ、今日も空が青いな。(現実逃避)そうだ、ディーノに会いに行こう。

 

 

         ※※※

 

 

   転入した学校はつまらなかった。帰ったら、俺を元の学校に通わせてほしいとリボーンに頼もうと思った。

 

   つまらないから、授業をボイコットした。まあ、サボりだ。サボり。

 

   ボスは最強の王様だから大丈夫。だけど、姫は泣き虫の女の子だから様子を見に行ってあげる事にした。

 

   騒がしい姫の教室。嫌な予感がしたので、ナイフとワイヤーを準備しながら教室に駆け込んだ。

 

   夢の中の同僚が、修羅と化したクレアさんに血だるまにされていました。ディーノは予想通りに泣いていた。殴られ腫れてしまった頬が痛々しい。両手で胸を隠して…シャツが破れて上半身見えてる。あれ、スクアーロは生きているのかな?あ、王子が鮫先輩を押し退けて隊長になるチャンスじゃね?(狂おしく現実逃避)

 

   「あっはっはっはっ。ねぇねぇ、今さあどんな気持ちぃ?クレアお姉さんにお話ししてみようかぁ~?ねぇねぇ、スクアーロ君だっけぇ?あんたさあ、あたしのディーノ様に何をしたかぁわかってまちゅか~?《女みてぇな面しやがって》なんて暴言吐いたよねぇ~?でもってやめてと言ったディーノ様に手をあげて《女だろ。女じゃなきゃ上半身脱いでみろ》と言ってシャツを破いたと。ね、そうだよね?クラスメートの皆さん?」

 

   あ、察した。スクアーロは窓からみていたんだな。王様が姫をエスコートしていた姿を。嫉妬をレヴィから譲ってもらえば良いのに。頷くクラスメート達が可哀想だ。殺気に怯えている。

 

   「…あー、殺したい。どっちみち旦那様に処分されそうだし、あたしがやっても良いよね?あ、ベールちゃん!お願いっ。ディーノ様をザンザス様の所へエスコートしてくれない?ロマーリオさん達を呼んできてくれるのでもいいけど」

 

   「(笑顔だけど、目が怒ったまんまだ。…鮫、御愁傷様)クレアさん、クレアさんしか姫を任せられないよ。ボスはこの状態の姫を見たら、俺の時よりキレるよ。ボスがこいつを殺しちゃう。そしたらディーノとボスは離ればなれになる。俺はね、まだ三人で楽しく笑って過ごしていたい。姫を一番最初に助けてきたクレアさんなら、姫の気持ちわかるよね」

 

   「クレアっ。おねがいっ」

 

   姫っ。頑張ったねっ。ナイスアシストっ。怒れるクレア神の怒りを宥めてっ。鎮まりたまえクレア神よっ。何故そこまで昂るのかっ…もののけ姫またひばりとみたいな。

 

   俺が姫の立場だったら、クレアさんに処刑を命じるね。姫ったら優しいよね。

 

   おい、カス鮫先輩、生きていたかったら口パク止めろよ。《女とガキに庇われて恥ずかしくないのかよ》か。姫の本当の性別が女性だと知ったら、お前この責任とって姫と結婚するしかないんだぞ?王子は強いし、姫の義弟になるんだから守るのは当然だし。クレアさんは姫の守護者なんだから守るのは当然なんだよ。

 

   あ、空気が変わった。

 

   そうだよね、王子が来たのに王様が来ないわけがないよね。チャイムが鳴ったら着いたって事は、ボスも授業中に抜け出して来たのかな?クレアさんは姫を連れていった。

 

   「…ベルか。久しぶりだな。俺がわかるか?」

 

   「うん。オッタビオを見たら繋がってきて、スクアーロ先輩とレヴィをみて完全に繋がったよ。久しぶり、というのがおかしいけど、よろしくね、レヴィ。レヴィはいつから?でもって、再会そうそう、スクアーロ先輩の人生が終了のお知らせです」

 

   「俺の両親は九代目の別荘の管理人としてお仕えしている。昔、オッタビオを遠目で見た。そしたらいろいろとわかった。いっつも無表情か人を馬鹿にしていた奴がへらへら満面笑顔になったからザンザス様にお会いできたのだとわかった。…後で、二人でオッタビオをしばこう」

 

   「うん。やっぱりさ、殴ってやんないと気がすまないよね。バカ兄貴め、俺達とボスの涙を返せよだよね」

 

   「ああ、まったくだ。…ボスの怒りは、憤怒の炎は相変わらずに美しいな。苛烈な炎そのものだ。美しいっ」

 

   「うん。でもって、人間が人間に惚れる瞬間って見ていて恥ずかしいよね。あーあ、スクアーロ二度目の人生が終了しましたっ。また、《自分の為に生きる》を選ばないで《主君ザンザスの為に生きる》を選びましたっ。解説のレヴィ・ア・タンさん、どう思いますか?」

 

   「そうですね。俺のザンザス様への忠誠心ををさんざんに馬鹿にしていた二個下の幼馴染みの生意気後輩が今どんな気持ちなのかを聞いてみたいですね。…はぁ。さて、止めにいくか」

 

   「いこっか。行きたくないけど。あのさ、姫、ディーノはマジで女の子だからね。特殊弾で男になっている、ボスの婚約者だから。レヴィも姫を守ってあげて」

 

   「マジか。わかった。スクアーロ、後で後悔するがいい」

 

   「だよね。俺達は再会記念日だけどスクアーロだけ黒歴史爆誕記念日だよね」

 

   二人でため息をついてから、スクアーロだったものの助命嘆願を主君にした。

 

 





  フルボッコスクアーロ氏 「正直、ディーノに悪かった。あと、怒りに惚れた(*´ω`*)」

  フルボッコ確定なオッタビオ氏 「リボーンさん、助けて下さいっ・・・(;´Д`)」

  リボーン先生 「だが断る( ´_ゝ`)」

  ルッスリーア氏 「あらやだ、予想が当たったわ(;゜∇゜)」

  大人ザンザス氏 「カス鮫、スクアーロ、泣くな。俺の伴侶はお前だ。(こいつらまで夢を見るようになりやがった。家光のアホは戻らねーし、どうするかな)」

  大人スクアーロ氏 「俺だけ扱いが酷すぎるっ。でも、俺に俺のザンザスが優しいからいいや(*´ω`*)」

 


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 憤怒と忠臣、反省をする。



  憤怒は後悔している。





 

 

   アパートの子供部屋で目覚めた。

 

   撃たれた麻酔の効果は消えても、頭の痛さと体の怠さは消えてくれないか。寝返りをうってうずくまる。ディーノとベルが居ない。俺が夜間訓練時は、たいていはキャバッローネファミリーでお泊まりだから、今日もそうなのだろう。

 

   ディーノ大丈夫かな?泣いていた。頬を腫らして破かれたシャツ…人間って怒りで記憶がなくなるんだな。あ、自制心も消えていたな。

  

   クレアさん、よく殺人衝動に耐えられたな。流石大人だ。俺が最初にあの泣いていたディーノを見てしまったら、きっとディーノ以外の人間を証拠隠滅で消す。うん。それができてしまえて、その事に痛みを抱けないのが俺だ。

 

   ディーノは、ディーノなら違うんだろうな。自分を辱しめた相手だとしても、その命を奪わない。許せてしまえるのだ。ああ、なんて甘いんだ。唾棄すべき甘さなのに、こんなにもいとおしい。ディーノがボンゴレファミリーの姫として生まれてくれば良かったのに。そうしたら、俺は兵隊として喜んでディーノの為に生きて死ねるのに。

 

   俺が殺し屋になっても、ディーノは俺に笑顔でお帰りと言ってくれるのだろうか?言ってくれると嬉しいけど、泣いて殺し屋を止めてくれと言うのかもしれない。

 

   泣かれて言われたら、俺はもう従うだろう。今日の一件で思い知らされた。うん、傷つけられて泣く姿を見たくないと思ってしまったんだ、俺の行動が原因で泣くのなら…従うな。俺のベルとレヴィを連れて、ひばり君の護衛に雇ってもらうしかないな。…護衛とか誘拐された被害者を助ける会社でも創ろうかな。そうだな、そうしよう。なんとなくだけど、オッタビオさんも俺が会社を創ったら着いてきてくれる気がするし。マスコットキャラをモスカにするのも良い。

 

   …気分が浮上してきたな。よし、それでは本日の反省会を始める。そう、俺が一人でいられるうちにだ。先生達に叱られる前に、自分で反省をしないとならない。ディーノとベルに《ザンザス・ボスは悪くないよ》と甘やかされてしまう前に、レヴィとオッタビオさんに《ザンザス様は正しい事をなされました》と行為を肯定されてしまう前に。家光さんとおじ様から《ザンザス・君の戦闘能力はキャバッローネファミリーでこそ輝くよ!後、愛する女の為にキレたのは男としてなら当然だ!》と称えられてしまう前にっ。自分の良心と良識と常識よ、甘言に惑わされないでくれっ。

 

 

   俺は既に制裁(過剰に)を受けていた年下の少年を、更にフルボッコにしてしまったのだ。これは、あれだ。クールな男がする事じゃない。ディーノと同じ年じゃないか。

 

   …穴があったら入りたい。

 

   教師陣よ、何故俺を止めない。止めろよ止めて下さいっ。大人が止めろよ。止めに入ってくれたのが、俺のベルとレヴィだけって、ヤバイだろ。

 

   先生達が、俺に監視をつけていてくれて助かった。監視が先生達を呼んできてくれたから、俺は止めてもらえた。

 

   スクアーロだっけ?ごめんな。明らかにやり過ぎた。悪かった。マジキレした成人女性(戦闘民族)の逆鱗を撫でて報復を受けていたのに、更なる追い討ち。ごめん。お詫びとしてだが、おじ様に無理だろうけど助命嘆願してみるから。…まだ生きているよな?魚の餌とかになっていないよな?

 

   ああ、気が重い。転入初日に問題行動を起こしてしまった事を、本邸に行って報告しないとだ。絶対に気持ち悪くなる。やだなあ。九代目にまた悲しい顔をさせてしまうんだ。

 

   「ザンザス、起きれるか?」

 

   「おい、リボーン。ザンザスはショックを受けているんだ。まだ寝かせておいてやれ」

 

   「ですが、少しでもお腹に物をいれた方が良いですよ。ザンザス、お粥を作りましたよ」

 

   「落ち込んでいる時こそ好物の肉を食わせてやれよコラッ」

 

   ああ、お父さんだなぁ。風先生はお母さんが入っているけど。泣きそうだけど、起き上がった。

 

   「起きれます。今、そちらに行きます」

 

 

   リビングに行くと、九代目がいらっしゃったので驚いた。

 

   「き、九代目っ。あ、すみませんでした。自分を抑えられずに年下の少年を傷つけてしまいましたっ」

 

   慌てて頭を下げたて謝罪をした。

 

   「?話しはリボーンから聞いたよ。ディーノ君を心配して、ディーノ君の教室に向かって、クレア君の暴行を止めようとしたが、振り払われて床に倒れて気を失ってしまったと。頑張ったねザンザス」

 

   「えっ?ち、違います!」

 

   「そうなんですよ、ザンザス。貴方はちょっと寝ぼけているのです」

 

   「クレア嬢ちゃんのブチギレに負けたのは、お前が子供だからだコラッ。気にするんな」

 

   「く、クレアさんはどうなります?」

 

   「特別賞とボーナスを貰ってディーノに甘えてもらえて今頃は添い寝をして鼻血を流しているだろうよ。キャバッローネファミリーがあの女傑を手放すわけがねぇ」

 

   「す、スクアーロ君は?」

 

   「お前の忠臣が助命嘆願したからな無事だ。オッタビオが躾をして、お前の部下にする事で報復を免れた。聞いたぞ、オッタビオの他にも忠誠を誓われたって。お前のカリスマが父親としても師匠としても誇りに思うぜ」

 

   「ザンザス、大丈夫ですよ。貴方は子供で、相手も子供。しかも、相手の子供が最初に手を出した。婚約者を守ろうとした貴方を責める者はいません。いたら、父親の私達が相手をしてやりますよ」

 

   涙腺が壊れたかの様に泣いた。なんか申し訳なさとか不甲斐なさで泣いた。優しさが嬉しくて泣いた。スクアーロ君とクレアさんに申し訳なくて泣いた。

 

   泣き疲れて、子供部屋のベットに逆戻りしてそのまま朝まで爆睡した。

 

   夕御飯は朝御飯になった。

 

   九代目からだと、マウンテンバイクと剣がプレゼントとして渡された。    

 

   「弾倉が尽きたらそいつで戦え。そいつが折れたら拳と蹴りで戦え。憤怒の炎はお前の最後の手段にしておけ。生きる事に帰ることに貪欲になれ」

 

   「剣帝が基本を教えてくれるそうだ。…お前の忠臣がな、スクアーロってガキを連れて剣帝に差し出して剣を振るわせたら気に入っちまってな。そいつに剣を叩き込むから基本をお教えしますだとよ。あのガキは大丈夫だから、次にあったら悪かったなと言えば大丈夫だ」

 

   「基本っつても、剣帝からの教えだからな。後はお前が独学で学んでも道場破りでもして力にしていけばいい。…どうせなら俺の作ったプラズマソードとかはどうだ?切れば当たれば必ず相手を感電(死)させられるぞ」

 

   「「「それはなんか美学に反するから却下だ・です」」」

 

   「そ、そうか」

 

   プラズマソードに心ときめいたけど、先生達の却下によってプラズマソードはもらえなかった。残念だ。

 

 

          ※※※

 

 

   奈々に無性に会いたかった。

 

   久し振りに帰宅したら、奈々に泣かれてしまった。綱吉は、突然現れた俺を警戒して泣いてばかりだ。

 

   記憶が混乱している。

 

   綱吉はボンゴレを継いで十代目になっていたはずだ。九代目の三人の子息は亡くなってしまって、ザンザスは暗殺部隊の長になっていた。

 

   で、忙しい綱吉の代わりに奈々に親孝行として旅行に連れて行ってくれているんだよな。

 

   問題児の部下を抱えているのに、優しい良い奴だ。

 

   …なんでこんな事を考えているんだろうな?まだザンザスはたったの十歳だ。綱吉は赤ん坊だ。

 

   「あなた?どうしたの?」

 

   「あ、ああ。大丈夫だ。ちょっと時差ボケだ。悪いな、奈々。最近はどうだ?困った事があったら、この電話番号にかけてきてくれ」

 

   「大丈夫よ。貴方のお仕事はちゃんと理解していますから。貴方の上司のボンゴレさんが定期的に人を寄越してくれていますから大丈夫です」

 

   「そうか。良かった」

 

   「あ、でもザンザス君とディーノちゃんに謝罪できなかったのが残念だわ。具合が悪くなってしまって急遽帰国してしまって。…ね、ちゃんと二人と二人の保護者の方に謝罪をしておいてね。クレアさんとオッタビオさんには特に念入りにお願いね」

 

   「…奈々、オッタビオは死んだはずなんだ。あれ?いつ死んだんだ?そもそもディーノは男だよな?ザンザスの恋人はスクアーロだよな?でもって綱吉とディーノや他のファミリーのボスがザンザスに横恋慕していて……疲れたから眠るわ。自然に起きるまで眠らせてくれ。奈々、愛している」

 

   「おやすみなさい、貴方。私も愛しているわ」

 

 

   寝室に行って、睡眠薬を飲んでから寝た。今は夢は見たくなかった。

 

 

         ※※※

 

 

   《ザンザスが気に病む案件が生じたから、全力で揉み消せ》

 

   リボーンさんからのメールに、慌ててザンザス様の元へと向かった。

 

   教師に案内をされた教室は、ザンザス様の教室ではなく、ディーノお嬢様の教室で、これだけでなんとなく察した。教室の前の廊下には、うちの可愛い子供のベルとレヴィがいた。

 

   「遅いよオッタビオ。つーか、お前知っていたくせに王子に黙っているとか酷くない?一発ぶん殴らせろよな」

 

   「そうだぞ。ボスと再会できたのなら、ボスを独占していないで俺達を探すべきだろう。オッタビオ、俺にも殴られろ」

 

   「…あ、思い出したか繋がるかをしましたか。チッ。蜜月終了ですか。お手柔らかにお願いします。あ、ぐーではなく平手打ちですか。ありがとうございます。では、速やかに状況を説明して下さい」

 

   「あんたがスッゴく苦しんで悲しんでいたから手加減してやったんだよっ。王子とレヴィの優しさに感謝しろっーの」

 

   「お望みなら、俺達が大人になってから思いっきり「ごめんなさい。ありがとうございます。内容を詳しくオッタビオお兄さんに話して下さい。お願いします」

 

   久し振りに会えた子供達が愛しくて、ついついからかってしまった。

 

   「…なるほど。で、ザンザス様はスクアーロに報復をしているところをリボーンさん達に眠らされたと。ありがとうございます。とりあえずはスクアーロの助命嘆願をしてきます。レヴィはスクアーロに付き添って病院に行って下さい。ベルはディーノお嬢様のケアとスクアーロの助命嘆願をお願いします」

 

   「わかった。姫にスクアーロを許してと伝えて命を助けてとお願いしておくよ」

 

   「俺はスクアーロの護衛をすればいいのか?」

 

   「交渉は必ず成立させてみせます。…そうですね、魘されてザンザス様に怯えているようでしたら、手を握ってあげてザンザス様の素晴らしさを布教してあげて下さい。ディーノお嬢様は将来、ザンザス様の奥様になられる事も囁いておいて下さい」

 

   「わかった。オッタビオ、お前がいてくれると助かる。…今生は、今回は最後までザンザス様と俺達といてくれ」

 

   「そうだよ。あんたが死んで、ボスと俺達は寂しかったんだから。あんたがいないからスクアーロは剣だけで生きられなかったんだからな。適材適所、あんたは俺達やボスに必要な人なんだからなっ」

 

   「…ありがとう、レヴィにベル。ただいま」

 

   「「お帰り、オッタビオ」」

 

   駆けていく二人を見送った。

 

   ザンザス様とあの子達と、今度こそは最後まで生き続けよう。

 

   交渉を成立させて、眠っているザンザス様をお送りした。ザンザス様を、アパートの子供部屋のベットに寝かせた時に、寝惚け声のザンザス様に声をかけられた。

 

   「…オッタビオか?…カスが勝手に死にやがって……かえってきたんなら、もう、かってにいなくなんなよ。カス…さめたのむ…………」

 

    アパートを後にして、車に乗り込むまでは、声を押し殺して泣いた。

 

   ザンザス様の命令を遂行するために移動中の車の中では大声を出して泣いた。運転手さんは引いていた。

 

 

 

 






  …家光が正常に戻って、俺に掴みかかってきだが、奈々に後ろからスーツケースで殴られた。でもっておかしい家光が継続している。ちっこい俺よ、交渉係りのオッタビオを俺に貸してくれ・・・(;´Д`)

  


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 幕間・繋がった世界の話。2



   無意識で甘えまくるザンザス氏。  


   

 

      夢を見ていた。

 

   残酷なくらいに優しい夢を。

 

    夢の中で、眠ってしまった俺を、オッタビオがベットに寝かせてくれていた。

 

   おやすみなさいのキスを額にもらって…当たり前の様に与えられていたもの。俺には二度と与えられないその無くしてしまった幸せに泣いた。

 

   「ザンザス様、おやすみなさいませ。大丈夫、あの子はちゃんと守ってきますから、安心しておやすみ下さいませ」

 

   涙を拭う指の暖かさに、睡魔に逆らい目をあけた。

 

   懐かしい、秀麗な顔が視界にあった。ああ、幼い自分からみて大人だった彼は、こんなにも年若い青年だったのだ。

 

   そして、数年後に彼は自らの命を絶つ。俺の企てた計画を自分が企てて、俺達を操りクーデターをおこした事にして。…ふざけるな。誰が俺を庇えと、罪を着ろと命じた。俺達の為に犠牲になって死ねと誰が言った。俺は、俺達はお前が死ぬ事を望んでいない。俺のものであるお前らは俺自身だ。それを一番に知っていたお前がなんで最初に俺の許しなく勝手に死んだっ。

 

   彼の享年を越えてしまった自分。永遠に時を止めてしまったオッタビオ。

 

   「眠って下さい、ザンザス様。オッタビオはザンザス様の憂いなき様にかたをつけて参ります。必ず、ザンザス様の元へと帰ってきます。二度とお側を離れません。今生は、地獄の底までお供をします。ふふ。今度はクーデターをうまくやりましょうね。指輪争奪戦もね、モスカと私ですぐに負けちゃいますけど、出ますからね。でも、ひばり君が、友人枠でこっちに来てくれるかもしれませんね。血筋を継ぐ後継者しか認めない、時代遅れな糞指輪はこっちから捨ててしまいましょうね。ヴァリアーはザンザス様と私達で強くした組織です。指輪争奪戦で勝利したらさっさと独立をしてしまいましょう。《ヴァリアーファミリー初代ボスのザンザス》魅力的な響きではありませんか」

 

   今生はといったか?そうか、ならお前はいつかまた生まれ変わって、俺に俺達に何度でも出会って何度でも俺に忠誠を誓い、何度でも俺の元に帰ってくるのだな。俺の今の先で待っているのか。なら、もう許してやる。だから、次は離れるな。…なってやるよ。お前がお前達が俺に望むものすべてに。

 

 

   「…オッタビオ…カスが勝手に死にやがって……かえってきたんなら、もう、かってにいなくなんなよ。カス…さめたのむ…………」

 

 

   ちっこい俺の代わりにオッタビオに依頼してやった。ていうか、俺がフルボッコになっちまったスクアーロが心配だからだ。

 

   剣が主に会う前に折れちまったら意味がないだろう?

 

   会うには会っていたがな。会話不成立だったからノーカウントだ。

 

 

   ちっこい俺よ、お前は悪くない。フルボッコにしたのはお前の前の奴だ。…スクアーロはもしかしたら、俺の憤怒ではなくクレアの憤怒に惚れるかも知れねぇな。

 

   もう、さすがに自分の気持ちに気がついただろう?誰を愛しているのかを。スクアーロでないのが意外だか、スクアーロは俺が愛して大切にするから、お前はお前が惚れたディーノを守って愛してやれ。

 

   クレアもいるがな。自分の主と同じ年のガキに容赦なく制裁する戦闘メイド。…リンチだよな。怖いっ怖すぎるっ。カス鮫と俺のスクアーロ、跳ね馬に喧嘩を売るのは止めろ。命はひとつだ。大切にしろ。

 

   クレア、あの女が俺の世界にもいたら勧誘をしたいのだが、いないだろうか?オッタビオが生きていてくれたのなら、あらゆる交渉が上手くいったのに。ちっこい俺が羨ましい。しかし、子供時代からレヴィの忠誠は変わらないのか。…羨ましくなかったな。すまん。子供時代からって、年々忠誠心が加算されていくんだろ?あいつが俺に対してマイナス感情を抱く事は100%ないからな。指輪争奪戦の頃なんて、揺りかごおこさなくても、揺りかごするのか?したら、記憶持ちが三人いる俺達が勝つじゃんか。反省を踏まえた三人が揺りかごと指輪争奪戦を頑張ったら、死人が沢田サイドに出るな。ガキに容赦しない化け物を俺は三人も飼わないとなのか…こわいっやめろさいしゅうてきなぜんせきにんをおれにおしつけるなっ。いやだちがうっおれはのぞんでないったすけてっオッタビオっ!

 

 

 

   夢の中でも怯えるのってどうだろう?ああ、オッタビオが髪を背中を撫でてくれている。こいつがいてくれたから、こいつがおれをあいしてくれたからのぞまれるふさわしいぼすになりたかった。こいつやあいつらのほこりになろうとあるじになろうときめた。

 

   ああでも、ねむい…もっとこいつ……のかおみてたいのに……こえききたい……はなしたい……なくなよ……かってにいなくなったくせに………いしゅがえしだいたがってなけばいいっ………俺はこんしんのちからで、なきはじめたカスの前髪をおもいっきりひっぱってやった。

 

 

 

   「ザン君っ!大丈夫よっ。怖いことはないからねっ!」

 

   「ザンザス大丈夫か?酷く魘されていたから起こしたが。…オッタビオの名を呼んでいた」

 

   「オッタビオさん?ザン君のお知り合い?」

 

   「ああ。ザンザスの兄貴分だった奴だ。こいつと仲良しでな、だけど、ずっと昔に逝っちまった」

 

   「親父にお袋、起こして悪い…じゃなくてっ。間違えただけだろっ。にやけ面いますぐ止めろっ。…くそっ。奈々に家光、俺は温泉に行ってくるから鍵は持って行く。家光、お父様に要らん事を伝えるなよ。奈々、沢田…綱吉には内密でお願いする」

 

   夢で泣いていた。現実でも泣いていた。濡れた目尻を乱暴に拭った。

 

 

   「おうっ!俺達親子の秘密だもんな!」

 

   「ふふふ。弟のツッ君には内緒ねザン君」

 

   「「俺・私達とザンザス・ザン君だけの・ひ・み・つ・♪」」

 

   …わかってねぇな。なあ、親父にお袋。お前らが光速で打っているラインは誰に繋がっているんだよ。俺のスマホに鬼電かかっているぞ?泣き顔撮ってから起こしただろう?嫁とお袋とお父様から交互に着てる。レヴィマーモンベルフラン骸白蘭風紀ディーノ京子にハルにイーピンに花にランボ。代理戦後の入院生活中に勝手に登録されていた奴等全員から心配している内容で着ている。追加がきた。親交のあるファミリーのボス全員に取引先とアルコバレーノに沢田。…全員になぜ送った?お前ら夫婦の中の《秘密・内密・内緒》の意味はどんな意味なんだ?俺と世界の常識が間違っているのか?

 

 

   …オッタビオ、お前が家光をなんとなく敬遠していた理由がわかったぜ。こいつ、基本的には尊敬できて信頼できるけど、うぜぇ。基本的にうぜぇししつけぇ。ジョークは笑えねーし足は臭いし。やるなって言った事を即効するし。沢田のやつは、こんな親父なのによくまあ真っ直ぐに優しく育ったよな。奈々が良妻賢母だからか。家光は反面教師だな。

 

 

   家光は最近俺を、前の亡くなった嫁との間にできた子だと思い込んでいてキッツい。若い学生の時の子供で、ジジイに泣く泣く養子に出したけど、揺りかごおこした俺を凍らされて激おこ。取り戻して育てたと思い込んでいる。奈々という、電波を受信しちまった旦那を健気に支えているできた女を女房にできているのがムカツク。

 

 

   …奈々、頼む。家光に引き摺られないでくれ。俺とお前が出逢ったのはマーモンの呪いを解いた代理戦がはじめてだ。お前の頭の中の亡くなった大親友は俺のお母さんじゃない。俺はお前達の養子になっていないから。沢田と兄弟ではないから。怖いっ。奈々までもが電波を受信していやがる。なにかの報いか呪いか?最近した悪いことは…髪の毛をひっぱってやった事か。

 

   オッタビオ、夢の中でふさふさなお前の前髪をおもいっきりひっぱって悪かったな。だが、あれで許してやったんだから、俺の慈悲深さに感謝しろ。

 

   …なんで金糸を掴んでいるのだろうか?

 

   奈々と家光は色素の薄い髪だが金色ではない。

 

   俺の髪の色は黒だ。

 

   宿泊客はいない。俺が奈々孝行の為に貸し切りにした。赤の他人とは離れて夫婦水入らずで休めといったのに、《家族旅行にきたのにザン君は何をいっているの。ツッ君にも言ったけどお母さんに甘えるのは恥ずかしいことじゃないのよ》と返ってきやがった。いや、俺の歳を考えてくれ。マザコンが許される年齢は越えている。

 

 

   従業員やスタッフは黒髪や白髪だった。

 

   主婦の奈々が「このホテルの部屋はすっごく綺麗ね!清掃が行き届いているわ!」と誉めていたので、前の客の可能性は低い。

 

   両隣が家光と奈々というふざけた構図で寝ていた。しかも、二人と手を繋がされて眠りに堕ちたはずだ。

 

 

   《座敷わらし》が出ると噂のホテルではない。そもそも《座敷わらし》は日本の神だ。黒髪だろう。

 

 

   …結論を急ぐと、この金糸はオッタビオの髪の毛である。

 

   「…これは現実か?朝になっても消えるなよ。お帰り、オッタビオ」

 

   フロントで封筒をもらい、金糸をいれた。嫁とお袋に、ヴァリアー本部に戻って開かずの間にしたオッタビオの部屋に入り、オッタビオの髪の毛を採取して鑑識にまわしておけと伝えた。これと遺伝子が一致すれば良いのに。

 

   結論から言うと、泣き顔は送られていたし、掴んでいた金糸とオッタビオの部屋で採取された髪の毛は完全に遺伝子が一致した。

 

   要は、こちらとあちらが繋がったという事だ。また、向こうのちっこい俺と繋がれたら、オッタビオを正式に許してやろう。ところで、俺があちらに行っていた時に、ちっこい俺はこっちに来ていたのか?

 

   ひねちまった俺と違って健気で弱気な奴だからな。家光と奈々の妄想を聞いたら信じてしまいそうだからこっちに来ていないでほしい。

 

 

          ※※※

 

 

   最近の父さんと母さんは頭がおかしい。

 

  ザンザスを自分と亡くなった前妻の息子・亡くなった大親友(最愛の夫の前妻)の忘れ形見の義息子だと思い込んでいる。

 

  学生の時の子供で、育てられなかったから九代目に泣く泣く養子に出す。揺りかごでザンザスが大怪我をしてあまつさえ凍らされて激おこになって解凍したら引き取って育てました。俺に十代目を継がせるくらいなら、なんで兄貴のザンザスに継がせないんだと激おこ。戸籍上は他人だから、綱吉の性別を換えてザンザスと結婚させちまおう。勿論、本妻は健気にザンザスを支えてくれていたスクアーロだよ!

 

   どんな家庭環境なんだよっ。ザンザスから困り顔で話された俺の身になってっ。

 

   若年性痴呆症の説明書と高級老人ホームのパンフレットと認知症専門病院の紹介状を渡されて泣きたくなったよっ。

 

   《二人とも俺を息子だと思い込んでいる。だから介護は俺も負担する。てめえは忙しいだろう。俺が二人を病院へ連れていく。なに、ジジイも俺が見てやるから安心して仕事をしていろ》

 

   頼りになる暗殺部隊の長にこんな事を言われたマフィアのボスは、俺が世界で一番最初で最後だからねっ。

 

   獄寺君目頭を押さえて内線で《ザンザスお義兄様にサーロインステーキを持ってこいっ。いますぐにだっ》って叫んでいたからね!

 

   お詫びをしようとしたら父さんと母さんが乱入。あげくに《弟ばっかり構わないでパパとママと遊ぼう!空白だった時間はさ、これから毎日過ごしていけば埋まると思うの。綱吉・ツッ君になりたかったボスをとられてしまったザンザス・ザン君はお仕事を辞めて暫く実家の沢田家に帰ってのんびりと過ごそう!》と晴れやかな笑顔で言った。

 

   …雲雀さんと骸と遊びに来ていた白蘭が泣きながら部屋から出ていった。泣きたいのは俺とザンザスだったからね!

 

 

   母さんは日本へ帰国したけど、父さんがヴァリアー本部に居座っている。ザンザスを毎日構い倒している。羨ましいけしからん代われよじゃなくて、俺の好きな人に迷惑をかけないでくれ。

 

 

 

  

 

 

 






   この家光氏と妻君は、ザンザス氏がマジで実子&大親友と最愛の夫の子供で大好き&大切&愛しているな世界と繋がってしまったので、彼と彼女からしたら、ザンザス氏は息子で綱吉氏の異母兄です。



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 忠臣達、お喋りをする。



  病室内ではお静かに。





 

   幼馴染みは眠り続けている。

 

   オッタビオがやって来た。髪がボサボサになっていた。?昼間にあった時はきれいにしてあったはずだが?

 

   俺の視線に気づいたのだろう。オッタビオは照れくさそうに笑った。

 

   「レヴィ、お疲れ様です。スクアーロの事ですが、助命は叶いました。私が預かり教育をして、ザンザス様の部下として生きる事を条件としました。スクアーロが嫌がるのなら、ヴァリアーの表方の会社に勤めさせますよ」

 

   「そうか。オッタビオ、ありがとう。こいつの命を救ってくれて。ところで、そのボサボサになった髪はどうした?」

 

   「ザンザス様が魘されまして。宥めていたのですが、こうガシッと前髪を掴まれまして数本ぶち抜かれました。あとですね、ザンザス様も一部繋がれたみたいです。私に向かって『…オッタビオ…カスが勝手に死にやがって……かえってきたんなら、もう、かってにいなくなんなよ。カス…さめたのむ…………』とおっしゃいましたから…ああ、本当に私は愚かでしたね。レヴィ、私の死後にザンザス様の忠臣であり続けてくれてありがとうございます」

 

   「貴様が愚かだとは俺には言えん。俺もスクアーロもお前と同じくらいに壊れていた。ただ、俺達には暗殺という役割が与えられた。無理矢理に外に出されていた。お前に九代目と上層部が与えた役割はザンザス様の観察と俺達がまた謀反を起こさない為の監視だった。主君を守れなかった罪を突き詰められて家族の監視、狂ってしまうのは当たり前だ。まあ、お前を氷の前から離そうとしたり氷越しにザンザス様に触れようとすると、お前は躊躇いなく俺達に発砲し、普段の非力さと優しさが嘘の様に俺達を瀕死にまで追い込んだからな。…待て。ま、まさか覚えてなかっただと?Σ( ̄ロ ̄lll)」

 

   「ま、まったくもって身に覚えがございませんっ。も、申し訳ありませんでしたーっ。あ、あのう。赤ちゃんなマーモンや八歳のベルにもそうでしたか?」

 

   「お前に飯を食えとサンドイッチを食べさせ様としたベルの腹に蹴りをいれて泣かせたな。催眠で眠らせようと術をかけようとしたマーモンの口をガムテープでふさいで窓から突き落としていたな。それらを見てキレたルッスリーアをも腹パンで意識を刈っていた。ザンザス様を閉じ込めている氷に触れようとした俺とスクアーロは銃で撃たれた。殺し屋の目になっていた。俺達は思った。こいつをボスから離す事と氷越しにザンザス様に触れる事を諦めないと、俺達がこいつに消されると」

 

   「…何て事だ。九代目と家光にしていた事があなた達だったなんて!」

 

   …していたんだな。九代目と家光にも。ならいい。敵味方の区別なく威嚇していたのだとしても、下の奴等全員には穏やかに対応をして労を労っていたのだから。

 

   『えっ?ザンザス様の氷に普通に触らせてもらえましたが?」

 

   『オッタビオ様、俺達が『オッタビオ様、俺達がザンザス様の警護に当たりますから仮眠をとって下さい』と言いましたら、仮眠室に素直に向かわれましたが』

 

   『殴られも撃たれもしませんでしたよ。ちゃんと差し入れた夜食を食べて下さいました。俺達の仕事のスケジュールがきつくないかを心配してくれて。優しい副隊長のままでしたよ。隊長達、疲れていたんですよ。暫く休んでください。俺達もヴァリアー隊員です。頼りないだろうけど、頼って下さい』

 

   『そうですよ。ザンザス様が戻られた時に、隊長達が疲れた顔をしていたら、叱られちまいますよ。さ、休んでください』

 

   部下達の声に、俺達の頭がおかしくなったのかと不安になったな。

 

   下の奴等全員には優しくて、俺達幹部に鬼対応をしていたのは、こいつが俺達に甘えられたからだと思いたい。

 

   「…レヴィ、ごめんなさい。あ、送っていきます。どっかで夕御飯を食べましょう。親御さんに連絡をいれないと」

 

   「オッタビオ、俺は家に連絡をいれてある。ザンザス様がスクアーロを罰している時に、家族に連絡をした。俺の家族も俺と同じでな。俺の再就職を祝ってくれた。繰り返しをうまく利用してな、ギャンブルや農園経営に自営業で馬鹿みたいに稼いでいる。三男坊の俺の夢を家族で応援してくれている。ザンザス様の突然の家出に《なら、自分達がマフィアのファミリーを創ってザンザス様に捧げてしまえば、うちのレヴィが即幹部にしてもらえるんじゃね?》といい始めた。ある意味お前のライバルだ。いや、競合相手がいるとお前は燃えるタイプだったな」

 

   「そう。では、あなたの御家族の計画を私に詳しく話してもらいましょうか。負けませんよ(ゲンドウポーズ)」

 

   「当主のお祖父様がお前の《前》にたいそうご立腹でな。子供だった俺達はお前を仕方ないと許せても、大人だったお祖父様達からしたらお前の行動が不忠で無責任に思えたのだろう。お前はお祖父様と交流があったのに、お祖父様に相談をせずに逝ってしまった。友情を踏みにじられたと感じたのか、お前の名前は禁句になった。計画はいっさい教えてもらえていない。すまん。俺の一族は遺伝子レベルでザンザス様に忠誠を誓っているからな」

 

   「デスヨネー。ああ、《前》では頼りになった貴方のお祖父様が私の敵だなんてっ。気を引き締めていかなくてはっ。あ、スクアーロの連絡先はわかりますか?先にキャバッローネファミリーに行っていたものですから」

 

   「伝えてある。こいつだけ記憶が接続していないだけだな。こいつの歳の離れた兄さん達は、俺の《ザンザス様に早くお会いしてお仕えしたい》発言を馬鹿にするこいつに対して嗜めていたし拳骨を落としていた。《ごめんね、レヴィ君。こいつの発言全部こいつの黒歴史になるから怒らないで許してあげてね》と言ってらしたな。…なあ、オッタビオ。こいつはクレア殿の怒りに惚れてしまうのではないか?」

 

   「そ、それはどうでしょうか?あ、でも、それも考えないとですね。剣士をどっかで募集しないとですかね?」

 

   「…それを考えてくれなきゃいけないのは、オッタビオ、お前だ。うちの頭脳なんだから考えてくれ。まだ俺達は小学生だからわからん」

 

   「いやいや、レヴィ。貴方は見かけは子供でも頭脳は大学教授クラスじゃないですかっ!ベルだって中身は天才王子様です!ザンザス様だって中身は大学生っ。あのアルコバレーノの大天才ヴェルデ先生の愛弟子です!私と一緒に考えて下さいよっ。ほらっ見かけは子供頭脳は大人なキャラみたいにっ」

 

   「まて。落ち着け。落ち着いてくれ。正気に戻れ。ドウドウ」

 

   「…おおぃっ、さっきからうるせぇぞ」

 

   幼馴染みのスクアーロは目を覚ました。すまんな、お前は怪我人だったな。

 

   オッタビオは身構えている。あ、警戒しているのか。まあ、お前を見て、スクアーロが前と接続した場合殴りかかってくる可能性があるからな。オッタビオに同情的な俺やベルは軽く平手打ちだったが、感情で動けてしまうこいつがどうでることやら。 

 

   「…レヴィか。お袋に連絡してくれたかぁ?」

 

   「ああ。連絡しておいた。お前は退院後はこの人、オッタビオ氏の預かりになる。でもって、俺と同じく、ザンザス様の家臣になる。それが条件としてお前の助命が成立した。ザンザス様と奥様のディーノ様のご慈悲に深く感謝をしろ。オッタビオ氏にも感謝をしろよ。キャバッローネファミリー九代目の溺愛しているディーノ様に無礼な真似をして。お前が生きているのはオッタビオ氏の交渉があっての事だぞ」

 

   「…スクアーロ君?私がわかりますか?」

 

   「御曹司の主治医と教師と側使えだろ?兼任しすぎてウザイ邪魔。いっつもあんたは御曹司の近くに居やがって。邪魔。俺が御曹司の近くに行こうと決意すると、速攻で『ザンザス様、お部屋に戻りましょう』って言って御曹司を連れ帰ってしまう。邪魔。俺が御曹司の一番最初の部下になってやる気でいたのに…邪魔。レヴィなんか俺より先に御曹司の部下に成りたがっていたんだから譲れよ大人げない。邪魔。だいたいあんたいくつだよ。童顔なくせに美形なのがムカツク邪魔。なんか昔から見ている、内容覚えていられない夢の勝手にいなくなっただけはわかるやつに似ていて不愉快だから邪魔」

 

   …邪魔しか言わないな。もっとこう…感謝の気持ちを伝えるとかな。うん?なんか俺を馬鹿にしていたわりにはザンザス様に積極的に関わっているな。しかも夢で見ていたのかっ。

 

   「スクアーロ、ザンザス様にお会いしようとしていたのか?」

 

   「ち、違うっ。たまたまだっ。べ、べつにあいつに人身売買されかかったのを助けてもらった事なんてないし家出して空腹で死にかけたところを助けてもらったなんてないしおそろしく強いガキに訓練されてフルボッコにされたのに、立ち上がってガキに対して獰猛に笑ってみせてから挑む赤い目に惚れてなんかいねーしっイエミツなんておっさんにあいつへの恋文じゃなくてお礼の手紙を渡してくれって頼んだのに断れてなんかいないんだからなっ」

           

 

   《スクアーロ、アウトーっ!×2》

 

   俺とオッタビオの心の声が重なった瞬間だった。

 

   「家光、まともだった貴方の最後の仕事がうちの子の恋路妨害っ。今の貴方なら喜んで恋のキューピッドをするのでしょうね。…スクアーロ君、貴方が無礼を働いたディーノ様は、特殊弾で性転換をしている女性です。ザンザス様が将来婿入りする婚約者です」

 

 

   告白をして顔を真っ赤にしていたスクアーロは、オッタビオの言葉を聞くやいなや、顔を真っ青にした。当然だな。

 

   女性に暴言を吐いて、制止の声をあげた女性の頬を叩きシャツを破いて肌を無理矢理晒しました。

 

   …ものすごい字面だな。

 

   イタリア男いや、男として最低最悪な行為だな。女性の父親おじ祖父兄弟に刺殺されてもしかたない行為だ。

 

   …キャバッローネファミリーのボスは一人娘を溺愛しファミリー構成員は未来のドンナを自分の娘や妹みたいに愛している。クレア殿はスクアーロをこんな状況まで追い込んだ。本当に大丈夫なのか?

 

   「…お、女っ!あ、俺はし、知らなくて…だめだ。俺が俺を許せないっ。すまん、レヴィ。介錯を頼む。俺の首はあの狂犬女に渡してくれ」

 

   「スクアーロ君、君の命はザンザス様のものです。勝手に貴方の意思で死ぬ事はもう許されないのです。《お帰りなさい、私達ヴァリアーの剣士。ザンザス様だけの剣》私オッタビオはヴァリアーの頭脳でザンザス様だけの側仕えです。ちなみに名乗ってザンザス様に申請した順で役職は決まりますからレヴィ貴方も急ぎなさいね。スクアーロ君、いえ、スクアーロ。これからは楽しみながらザンザス様にお仕えしていきましょうね。まずは、これから狂った剣士が来ますから、彼の前で木刀を振って下さい。ま、持つだけで大丈夫ですけどね。打ち負かせたら、ザンザス様の愛人枠に貴方が入る事を全力で推しますよ」

 

   幼馴染みは剣鬼になり、当代の剣帝に一太刀浴びせて傷という傷を全て開いた。剣帝殿は警察に収監された。

 

   オッタビオという鬼には逆らうまいと思った。

 

   「だってあの剣帝、ザンザス様にも剣をお教えする様に依頼をしたら、

 

  《偽物御曹司に教えられる剣はないんだよ。基本を叩きこむ(訳 出自を知っても絶望をしても直ぐに歩き出した強い男には、既に最強が教えている。だから基本を徹底的に教える。あの方は野生の獅子だ)》

 

   なんて宣いやがってふぁ××。ですよ。だから、収監はちょっとした仕返しみたいな?」

 

   …オッタビオ、普段の冷静なお前なら剣帝殿の内なる声にも気づいただろうに。ザンザス様の悪口に敏感なのは俺と同じだからな。可愛く首を傾げる仕草も似合ってしまうから童顔美形はたちが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 




  

   剣帝、なにやら解せぬ。


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