〜あのミットめがけて〜聖ジャスミン高校野球部奮闘記 (なだかぜ)
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設定集1:各校紹介

ちょっといきづまっているので、閉話休題で気分転換。
今のところ出そうと思っているのはこれだけですが、思い付き次第順次追加していきます。


 高校野球部まとめ

 甲子園の出場・優勝回数は格付けくらいの軽い気持ちで見てください。

 

・北海道地方

 北雪高校(南北海道)

 女子部員を中心とした高校で、伝統のスモールベースボールが持ち味。

 「野球は男子のもの」なんてもう言わせない。

 甲子園 春10回 夏9回

 イメージ:昔の駒大苫小牧高校

 

 

 白轟高校(北北海道)

 エースを中心とした攻守バランスのよい高校。

 『THE 高校野球』のような勝ち方で二度目の全国制覇を。

 甲子園 春8回 夏18回(うち優勝1回)

 イメージ:北海高校

 

 

・東北地方

 白州水産高校(岩手)

 チームワークは随一。限られた練習環境で得られた判断力や精神力は奇跡をよんできた。

 今回も「白州旋風」を。

 甲子園 春4回 夏6回

 イメージ:花巻東高校

 

 

 ときめき青春高校(宮城)

 不良のたまり場と化していた高校が、かつての輝きを取り戻して再び甲子園に。

 「新生ときこー」。その実力は未知数だ。

 甲子園 春6回 夏13回

 イメージ:仙台育英高校

 

 

 芸農大付属高校(山形)

 一発芸に優れた選手たちが集まる学校。

 驚くような戦術を取ることも多い超個性派集団は、頂点に輝くことができるのか。

 甲子園 春5回 夏9回

 イメージ:なし

 

・関東地方

 アンドロメダ高校(南神奈川)

 言わずとしれた超強豪。

 打撃も強力だが、投手陣は特に層が厚く打ち崩すのは非常に難しい。

 また、身体能力に優れた選手が多い。ただ、その裏には......

 甲子園 春11回(うち優勝2回) 夏24回(うち優勝4回)

 イメージ:横浜高校

 

 

 文武高校(北神奈川)

 文武両道の高校。力よりも技や頭脳で魅せるプレイが持ち味。

 卒業生には官僚も大勢いる。

 野球は力と力のぶつかり合いという考えを結果で否定できるか。

 甲子園 春6回 夏11回

 イメージ:慶応義塾高校

 

 

 激闘第一高校(埼玉)

 破壊力のある打撃が持ち味の学校。

 失点が減ればいちやく王者になる可能性も大にしてある。

 甲子園 春8回 夏16回

 イメージ:花咲徳栄高校

 

 

 流星高校(群馬)

 超機動力野球を実践する高校。足を絡めた技や守備は超一級。

 『打撃にスランプはあっても、足にスランプはない』

 甲子園 春6回 夏12回

 イメージ:健大高崎高校

 

 

・東海地方

 

 

・甲信越地方

 日本経理高校(新潟)

 相手チームの観察に優れた学校。

 油断も隙もない野球が持ち味。

 甲子園  春6回 夏12回

 イメージ:日本文理高校

 

 パワフル学園ラグナロク分校(長野)

 

 

 

・北陸地方

 星英高校(石川)

 北陸の強豪。長打のある打撃と投手力が持ち味。

 過去には主砲が全打席敬遠されて負けたこともある。

 打撃にリズムをもたせられるかが、勝利の鍵を握る。

 甲子園 春11回 夏19回(うち優勝1回)

 イメージ:星稜高校

 

 

・近畿地方

 そよ風高校(滋賀)

 バランスのいいチーム。

 いぶし銀の技と足を使った幅のある攻撃、鉄壁の守備と強みはいくつもある。

 足りないのは想定外の展開に対処する冷静さか。

  甲子園 春9回 夏17回

 イメージ:近江

 

 

 聖タチバナ学園高校(大阪)

 大阪の古豪。甲子園で勝ち上がる姿は最近見られない。

 しかし、激戦区の大阪を勝ち抜く力はまだまだある。

 あの栄光を再び。

 甲子園 春11回(うち優勝2回) 夏19回(うち優勝4回)

 イメージ:履正社

 

 

 聖ジャスミン高校(大阪)

 元お嬢様学校で、野球部は最近新設。実績はないが実力はある。

 いざ、初の甲子園へ。

 甲子園 春夏共に出場なし

 イメージ:(最終的には)大阪桐蔭

 

 

 パワフル高校(京都)

 古豪パワ高。その栄光は何も過去のものではない。

 甲子園の覇者に返り咲く日は来るのか。

 甲子園 春18回(うち優勝2回)  夏27回(うち優勝5回) 

 イメージ:龍谷大平安

 

 

 あかつき大付属高校(奈良)

 春夏通算9回の優勝を誇り、春夏連覇も経験した関西の超強豪。

 全国から選抜されたエリートが集う。

 負けを知らない常勝軍団は今年も高校野球界に君臨する。

 甲子園 春15回(うち優勝3回) 夏27回(うち優勝6回)

 イメージ:智辯学園

 

 

・中国地方

 駈杜高校(岡山)

 投手力とちからのある打撃が売りの学校。

 宗教色がいろこい学校。

 「神は弱いものに必要なもの」を否定できるか。

 甲子園 春6回 夏13回

 イメージ:天理

 

 

 覇道高校(広島)

 西の強豪。練習量は全国トップクラス。

 血の汗滲む度力の結晶は必ず実を結ぶだろう。

 『努力は人を裏切らない』

 甲子園 春14回(うち優勝2回) 夏21回(うち優勝4回)

 イメージ:広陵

 

 

・九州・沖縄地方

 海東学院大付属高校(福岡)

 九州の強豪。

 左腕エースと繋がりのある打撃が持ち味。

 エースと打線がどれだけ粘れるか。

 甲子園 春12回 夏19回(うち優勝1回)

 イメージ:なし

 

 

 壱岐高校(長崎)

 海東学院大付属高校と九州一の座を争う。

 打撃でも守備でも攻めの姿勢が目立つ学校。

 その姿勢で相手より有利にたてるか。

 甲子園 春14回(うち優勝2回) 夏20回(うち優勝4回)

 イメージ:秀岳館

 

 

 天空中央高校(鹿児島)

 泥臭い野球が持ち味。

 粘りのプレイと逆境の強さが、甲子園に奇跡を巻き起こす。

 甲子園 春8回 夏13回

 イメージ:鹿児島中央

 

 

 さわやか波乗り高校(沖縄)

 非常にチャラい学校。

 しかし、プレイスタイルは虎の子の1,2点を守り勝つ手堅い野球をする。

 徹底したチームプレイで初優勝を。

 甲子園 春6回 夏11回

 イメージ:なし

 




 ご意見、ご感想をいただけるとうれしいです。


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序章:はじめの一歩
プロローグ1:すれ違う二人


 この物語はフィクションであり、登場する人物や建物、学校は実在の個人、企業、団体などと一切関係はありません。
 また、初投稿のため駄文だとは思いますが、温かく見守って頂けると嬉しいです。
 それでは、どうぞ!


 ”プロローグのプロローグ”

 

 ~あかつきシニア。それは野球に携わったものだけでなく、いまや野球を知らない人にまで知れ渡るジャイアンツカップをを3年で2度制し、他にも日本選手権など名だたる大会で常に勝利を積み重ねてきた名門中の名門。

 そして今年高1となる世代を、人々はあかつきシニアのエースの名前をとって「猪狩世代」と期待を抱きながら呼んでいた~

 

 

「なんでお前が聖ジャスミンなんかに......頼む、この通りだ!あかつきに残ってくれ」

 ここは今にも日が沈もうとしているあかつきシニアの練習場、そして一人の少年がもう一人の少年に向かって夕日を背に必死に頭を下げていた。

 

 

 「...ガラにも合わないことをするなよ、猪狩(いかり)」

 猪狩と呼ばれた少年は顔を上げるが、なおも視線を離さない。

 

 

 そして、

 「なんで僕が認めるほどの才能を持ったお前がそんな元女子校に行かないと行けないんだよ、俊太(しゅんた)。あれだけの大会を制してきたんだ。それに僕とお前のダブルエースで甲子園に行こう、ってリトルのときからずっと言ってきただろう?」と続ける。

 

 

 「知ってるだろう?猪狩。俺は上からの推薦が取れなかったんだ。上でやるだけの才能がないってことだよ。だから俺はもうあかつきで野球はできない。」

 「答えになっていないだろう、それにあかつきは実力主義だ。監督だってお前ほどの選手を手放したくないはず...」

 

 

 そんな猪狩の言葉を遮り結城は呟く。

 「そんなこと言って、結果は変わらないさ。監督やコーチとも話しはした。どうせ推薦のない俺があかつきに行ったところで俺は何もできない。マウンドに立てないどころか、レギュラーさえ取れないだろうよ、猪狩。そんな高校生活なんてまっぴらゴメンだ。だから、俺は聖ジャスミンに行く」 

 「くっ......でもっ!......」

 

 

 何も言い返せない猪狩を尻目に、結城はこう言い残してグラウンドを去っていった。

 「そうゆうことだ、じゃあな猪狩」

 こうして、猪狩の目の前で最大のライバル、あかつき・結城は消えた......

 

 

 プロローグのプロローグ 完

 

 

   ☆

 

 

 

 〜猪狩Side〜

 おい、俊太......なんで、なんでいなくなっちゃうんだよ......

 

 

 お前がいたから外野まで飛ばしてもいいと割り切って安心して投げられたのに、後ろに優秀なピッチャーがいるから全力で投げられたのに、そして四番にお前がいたからピンチでも勝負をしに行けたのに、お前がいたからあれだけの大会での優勝を成し遂げられたのに...

 

 

 あいつの名前は「結城 俊太(ゆうき しゅんた)」。僕に劣らない、いやもしかしたら僕より上の実力を持つ数少ない一人。

 

 

 球速こそMAX130km/hで僕に劣るが、コントロールは僕よりもよく、なおかつドロップカーブ、スライダーそしてチェンジアップという多彩かつどれも一級品の変化球を操る。これでしかも打者としてチームトップの打率、打点。そして本塁打もチーム二位かと思えば、守備も安定していて更に走れる。

 

 

 野球は0点に抑えても1点も取れなかったら勝てないし、逆に何点差であっても勝ちは勝ち、負けは負けなのだから一人で野球なんてものはできない。その点で僕は何回あいつの打撃に何回救われたかわからない。

 

 

 そんな奴をあかつきから手放すだなんて......ましてや名前も知らないような学校に行かせてあの才能を腐らせてしまうだなんて......

 そして、実力を認めているライバルがそのようなことをされているのにもかかわらず、何もできない自分がただただもどかしかった。

 

 

 「監督たちは何をしているんだ......結城を手放すだなんて......」

 僕は俊太がひょっこり出てくることを期待しながら誰ともなしに呟いた。しかし案の定あいつが出てくることはなかった。

 

 

 「あかつき高でも僕はお前と一緒に試合をしたかったよ、俊太......」

 届くことのない呟きをした僕は現実の厳しさを噛みしめながら、暗いグラウンドで一人唇をかんだ。

 〜猪狩Sideout〜

 

 

 

 〜俊太Side〜

 帰り道、俺はさっきあいつに俺があかつきに推薦をもらえなかった、いや推薦を断った理由を教えた方が良かったのか考えていた。

 

 

 まあ、でもあいつに教えたら一瞬で広まってしまいそうなのでやめておいて正解だったのかもしれない。

 

 

 しかし、あのプライドの高い猪狩が俺ごときにここまでしてくれるなんて。

 そのことに正直俺は驚くとともに戸惑っていた。

 そして、そんな猪狩に答えたくても答えられない自分がいるということが悔しかった。

 

 

 ......でも俺はこれでよかったんだよな。これであの事を隠せた。そう、これで良かったんだ。たぶん。

 

 

 話を戻して俺がさっき問い詰められた奴の名前は「猪狩 守(いかり まもる)」。

 猪狩コンツェルンの御曹司にしてあかつき中のエース。しかもイケメンというおまけ付きだ。

 

 

 投げては最速139km/hのノビのあるストレートとキレのあるカーブ、そしてスライダーを操り、野手としても規格外のパワーを持っていて中学通算本塁打数一位と、まるで才能が野球をしているような男。

 

 

 あれがなければ俺はきっと高校でも、あかつきであいつと一緒に俺は野球をやるはずだったんだろう。

 

 

 だがこうなってしまった以上、どうあがいたところでその差は埋まらないばかりか広がっていく。何故なら俺はもう一試合投げきることができない腕なのだから......

 

 

 ただ、あいつとだけはもう一試合一緒に戦いたかった。それぐらい後ろで守っていても信頼できるような奴だったから......

 

 

 そんな叶うことのない夢想をしながら、俺は一人で家路をたどっていった......

 〜俊太Sideout〜

 

 

 

 

 




 投稿ペースは遅いと思いますが一週間に一話くらいは投稿したいと思っています。


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プロローグ2:新たな仲間

この作品では原作と違い、友沢翔太と友沢亮の年齢差を10歳から9歳にしています。よろしくお願いします。


 ~俊太side~

 猪狩と別れた次の休日、俺は次の春から同じ学校に通うことになる親友のもとを訪れることにした。

 ......といっても徒歩三分なんだけど。

 

 

 その親友の名前は「友沢 亮(ともざわ りょう)」。帝王シニアで野球をやっていた、俺と同じ中学三年生。MAX136km/hの速球とキレがありプロ顔負けのスライダー、緩いカーブとシンカーを投げて来て、完投能力もある本格派の好投手。そして打っても猪狩超えの打率と飛距離、足を持っているというもしかしたら猪狩よりも上の選手。

 

 

 一回ショートの守備についているのを見たことがあるのだが、慣れないためか守備範囲はそこまで広くないものの強肩を活かした守備はきれいで、野手としてもやっていけるのではないかと俺は思う。

 

 

 自慢じゃないんだけれど俺は帝王を近畿地方大会の決勝戦で破った。

 ……ホントに自慢じゃないからな!?

 ただ、俺は亮から三打数一安打で、試合も1対0だから、猪狩に本当に助けられた。その再戦(リベンジ)がしたいのだけれど、亮はもう投手はやらないらしい。

 

 

 あいつも俺と同じ境遇なのだろうか。そしてそんなことを考えている俺はもう一度あそこに立てるのだろうか……

 

 

 ただ、それどころか家の都合で亮は帝王実業高校ではなく聖ジャスミン高校に進学することになったらしい。そういった家庭の事情にはあまり踏み込めないが、少し心配になる。

 

 

 猪狩にしても友沢にしても、こんな才能のあるやつらに囲まれているのに諦めずに努力をした自分を褒めたくなる。そのくらい俺とアイツらの才能には天と地ほどの差がある。アイツらだって努力をするのだから、その差は埋まらないようなものなのかもしれない。でも、猪狩から離れてしまうような根性だった以上、これは言い訳にしか過ぎないんだろうな。

 

 

 そうこう考えているうちに、俺はあいつの家の前まで来ていた。

 『ピンポーン♪』

 俺がインターホンをならすと亮は兄弟の面倒を見ていたのかエプロン姿で登場した。

 

 

 俺は本当に亮を尊敬する。中学生ながらに家事をほぼ一人でやりこなしているのだから。自分には絶対できないと自信をもって言えるようなことを、彼は平然と一人でやりこなしているのだ。

 

 

 だから俺は亮にこう声を掛けることしかできない。

 「よう、亮。今日は翔大たちに会いに来たぞ~」

 

 

 ……まあ翔大たちがかわいいから会いに来た、って言うのもあるんだけど。

 ~俊太sideout~

 

 

 

 ~亮side~

 「おお、俊太か、狭苦しいところだが入ってくれ」

 こういうところで「世話をしに来た」というようなことを言わない俊太の優しさがうれしい。

 

 

 そういう鼻につかない優しく、頼れて、責任感のあるキャプテンに向く性格で、このままあかつきに行くのかと俺は勝手に思っていた。

 

 

 俺と一緒に聖ジャスミンに行くと言うのは一体どう言うことなのだろう。

 

 

 まさかあいつ……俺と同じように肘を?

 肘でなくても何処かを痛めたのか?

 まぁまだ聞くのは早いだろう。遅くとも春には教えてくれるはずだ。

 

 

 気を取り直すと俺は俊太に「お茶を注ごうか?」と声をかけようとしたが、それは弟たちー翔太(しょうた)と朋恵(もえ)ーの「俊兄ちゃーん」という声でさえぎられる。

 

 

 まぁ無理もない。もう一人の兄としたっている俊太が久しぶりに訪ねてきたのだ。そりゃ、はしゃぎたくもなるだろう。

 

 

 ここは少し俊太に甘えさせてもらうか。

 そう思った俺は俊太の「おお、久しぶり」というおじいちゃんのような発言を聞きながらお茶を注ぎに台所へと向かった。

 〜亮Sideout〜

 

 

 

 〜俊太Side〜

 やっぱりいいよな、兄弟って。そんなことを突然言い出すのにはもちろん訳がある。

 俺にも姉がいるのだが、いろいろな事情があって今は会えない。

 

 

 そんな俺にとって、翔太くんたちはホントに実の兄弟のような関係だ。翔太くんや朋恵ちゃんが本当に小さい頃から一緒に遊んできたもんね。

 

 

 「ねえ、俊兄ちゃん、キャッチボールいこうよ」

 「あっ、わたしも」

 

 

 こんな感じで亮の家に遊びに行くと大体野球をすることになる。二人とも兄ゆずりのセンスで会うたびに上手くなっているし、何よりも野球を楽しんでいるから一緒に遊んでいて楽しい。

 

 

 だから俺は、

 「分かったから着替えてきて。終わったら行こう。」

 と声を掛ける。すると、翔太くんと朋恵ちゃんは先を争うように自分たちの部屋へと駆けていった。

 

 

 そうだ、亮にも声掛けないとな。そう思った俺は亮にもらったお茶を飲み干すと、台所に向かった。

 〜俊太Sideout〜

 

 

    ☆   

 

 

 〜亮Side〜

 「俊太〜行くぞ〜」

 ここは近所の河川敷。俊太に付き合ってもらって、翔太と朋恵の四人でキャッチボールをしている。

 

 

 「あ、翔太。ステップが一歩多いよ、でも良い球来てる」

 「分かった〜」

 「あと、朋恵は肘がちょっと下がってるから上げてみて」

 「はーい」

 

 

 こんな感じで俊太は細かいところまでしっかり見てくれるし、良いところは素直に褒めているから上達が速い。将来いいコーチに慣れるんじゃないか。

 

 

 それにしても俊太の様子におかしいところは見つけられない。

 バッティング面なのだろうか。それとも投手?

 

 

 そんなことを考えているうちにキャッチボールは終わってノックに。

 「じゃあ次はノック打つよ。最初は亮が受けて」 

 「ほいっ」

 「それっ!」

 カキーン!

 パシッ!

 ......おっと危ない。球際にしっかりと回転をかけたボールを打ってくるから難しいんだよな。

 スイングもきれいだ。じゃあやっぱり投球面?

 

 それはまあ良い。今は貴重なノックを受けられる時間だ。

 ショートはあんまり慣れないし、時間も限られているから少しでも練習しないと。

 

 

 そう思った俺は、

 「よし、もう一丁!」

 と声を上げて構えた。後ろで弟たちがなにか言っているが無視しよう。

 

 

 「とぉっ!」

 カキーン!

 際どいあたりだが取れる!

 そう思った俺はグラブを伸ばした......

 〜亮Sideout〜

 

 

 〜俊太Side〜

 おお、亮はやっぱり凄いな。あの打球を体勢を崩さずに取るだなんて。

 翔太くんたちもそこまでは行かないけど小学校低学年とは思えないグラブさばきだ。練習をしっかりすれば、将来俺を軽く超えるような選手になるだろう。

 

 

 じゃあ肩慣らしはここまでにしてひと勝負しますか。

 亮と俺の1打席勝負。前は両方投げて2回やっていたのだが、亮は投げられないと言っていたので今回からは俺しか投げない文字通りの一回勝負だ。

 

 

 「じゃあ亮、やるぞ」

 おう、という声がかえってきて亮がバットを構える。

 

 

 まだ翔太くんたちに俺のボールは取れないので投げる相手は壁だ。これが投げづらい。目標が定まりにくいもんね。

 

 

 1球目。俺が選んだのは内角高めのストレート。

 おおきく振りかぶって指先に力を込める。

 そうだ、この感覚、忘れかけていたこの感覚がふっと蘇る。

 これは外れて1ボール。

 これで速球を意識させられたかな?

 

 

 2球目。俺が選んだのは外角低めに逃げるスライダー。

 打者の手元でククッと動きを変えるボールに亮のバットは空を切った。これで1ボール1ストライク。

 

 

 「良いボールだな」

 あれだけ自分のスライダーに誇りを持っていた亮に言われるのは嬉しい。

 おっと、気持ちを引き締めないと。

 

 

 3球目。俺が選んだのは内角低めにボールになるサークルチェンジ。

 俺はチェンジアップだって言っているのに、みんなはサークルチェンジだって言うんだよな、この球。

 

 

 亮はしっかりタイミングを合わせたものの、ボールが思ったより変化したからかゴロになりギリギリ三塁線を切れてファール。

 危ない、危ない。少しでも浮いていたら間違いなくヒットだった。

 でもこれで追い込んで有利に立てた。

 カウントは1ボール2ストライク。

 

 

 4球目。俺が選んだのは外角高めに外れるストレート。

 俺は1球1球に力を込めて見えないミットに向かって投げ込む。

 亮はしっかり見て2ボール2ストライク。

 

 

 5球目。俺が選んだのは内角低めに落ちるカーブ。

 大きく弧を描いて来る球に対して、亮はなんとかタイミングを崩されまいとするものの、不遇にも亮のバットはまた空を切った。

 

 

 今回の勝負は三振で俺の勝ち。ただ今回運があっただけで、とても危なかった。一歩間違えば長打の当たりがあったしね。

 

 

 そんなこんなで夕方になってしまったので、俺は亮とクールダウンをして帰ることにした。

 「じゃあな、亮、翔太、朋恵」

 そう俺は声を掛けると家へと一歩を踏み出した。

 

 

 あかつきに行けなかったからといって、俺の野球人生が終わったわけじゃない。むしろ、ここから始まるんだ。

 そう思うと同じ陽のはずなのに、猪狩と話したあの日のものとは全く違うものに見えた。

 

 

 そういえば俺も高校から一人暮らしだ。料理は人並みよりはできるけど......

 家事の効率の良いやり方を亮に聞かないとな。

 〜俊太Sideout〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは選手生命を絶たれかけた二人の少年を中心とした物語。それは聖ジャスミン高校で今、始まろうとしていた。




 日が暮れるのは一日の終わり。ただ、それは明日の始まりでもある気がします。
 次回から本編です。どんどん感想をもらえると嬉しいです。
 翔太くんの話し方がわからなかったので間違ってたらすみません。


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第1章 今日ここから
第1話:始まりの日


投稿遅くなってすいません。パワポケを漁ってたら遅くなりました。パワポケのキャラを出したいけれど特徴が掴みきれていないのでまた別の作品で。


 〜俊太Side〜

 桜が舞う中で行われた4月の入学式。それは聖ジャスミン高校の共学化後二度目の入学式だった。

 

 

 俺は亮と一緒に高校の最寄り駅から学校までの道を歩いていた。それは入学式の日ということを除けばなにげない日常のはず、だったのだがそれはある男子生徒によって妨げられることになる。

 

 

 「もしかして、君たちは帝王の友沢くんとあかつきの結城くんであっているでやんすか?」

 と瓶底眼鏡をかけた少年に声を掛けられたのだ。

 

 

 「そうだよ。ところで亮、こいつ知っているか?俺は会ったことないと思うんだけど」

 と俺は亮に聞いた。

 ......というか「やんす」ってどんな語尾だよ。

 

 

 すると、「俺も良くは覚えていないが、パワフルシニアのセンターで」じゃなかったか?」という答えが返ってきた。

 

 

 やっぱり隣の地区か。しかもパワフルシニアは帝王にサヨナラ負けを喫して、ベスト8止まりだったはず。

 どうりで会ったことがないわけだ。

 

 

 そうしたら、突然目の前の男子生徒はまるで漫画のようにガラガラと崩れ落ちた。

 「この美少年の人読んで『パワ中のスピードスター』、矢部明雄を知らない人がいるだなんて......でやんす」

 

 

 なんか出会って早々に矢部くんの裏の顔を見てしまったような気がする。うん、気にしないでおこう。

 あと最後に無理矢理でも「やんす」つけるんだね。

 

 

 「じゃあ、改めて自己紹介をするでやんす。おいらはパワフル中の矢部 明雄(やべ あきお)でやんす」

 「俺はあかつき中の結城 俊太だよ」

 「俺は帝王シニアの友沢 亮だ」

 

 

 「二人もおいらと一緒でピンク色の学園生活を送るためにここにきたんでやんすね?」

 矢部くんは俺らのドン引きによる沈黙を肯定と捉えてしまったようで、

 

 

 「さすが女の子だらけの学園生活。どこを向いても目が癒やされるでやんす。そして最終的にはキャッキャムフフなハーレムがオイラを待ってr......」

 

 

 「ちょっと黙ろうか」

 (ギュッ)

 「ムググ、苦し...でやんす」

 

 

 何やら変な妄想を矢部くんが熱弁しだしてしまったので、周りの人に変な目で見られないように少し黙っていてもらおう。

 しかし初対面の人にそんなこと話すかなあ、普通。

 

 

 そんなことをしているうちに、これから三年間通うことになる学校の校門が見えてきた。

 俺は亮と出来れば矢部くんとおなじクラスになれるように、見たことのない神様をイメージしながら祈った。

 

 

 そして迎えた運命の瞬間......

 

 

 俺は矢部くんと亮といっしょの1年B組だった。

 「二人ともおなじクラスでやんすか?嬉しいでやんすー」

 

 

 横でおもちゃのおまけ程度としか考えていなかった矢部くんが大喜びしている。

 ちょっと可哀想だなと思ったけど、矢部くんってこういうキャラなのかな。

 

 

 横で見ていて表情がコロコロ変わっているから面白い。

 きっと中学でもムードメーカー的な存在だったのだろう。

 

 

 共学化に合わせて建て替えられた真新しい教室に入り自分の席につく。

 やはり元女子校だからか男子は3割くらいしかいない。

  

 

 そんなことを考えていると、となりから声を掛けられた。

 「もしかしてキミ、あかつき中の結城くんかな?」

 「えっと、君は?」

 

 

 俺がそう聞くと、彼女は明るい笑みを浮かべながら

 「アタシは夏野 向日葵(なつの ひまわり)、よろしくね」

 と挨拶をしてくれた。

 

 

 茶色い髪をヘアピンで止めた、まさしく名前の『夏のひまわり』のような元気そうな印象を受ける娘。

 

 

 「先に言われちゃったけど、俺は結城 俊太。

  でも、俺のことを知ってるっていうことは野球をしてたの?」

 「まあね、中学ではちょっとやってたかな」

 

 

 「何処の中学出身なの?」

 「橘中学ってところ。でも地区大会の3回戦で負けちゃったからね。」

 やっぱり野球をやっている人とは会話が弾む。

 

 

 すると突然、高校生活最初のHRの始まりを告げるチャイムが学校中に鳴り響く。

 俺たちは雑談をそこそこにやめると、これから一年お世話になる担任の先生について思いを巡らせた。 

 〜俊太Sideout〜

 

 

 〜亮Side〜

 なんでこうも世の中の入学式というものは長いのだろうか。

 おそらくみんな真面目に聞いていないであろう、ありがたい校長先生のお話に始まって、来賓のこれまたありがたい祝辞。

 

 

 そして現在、式の終盤には新入生代表の挨拶が始まろうとしている。

 『新入生代表の言葉 一年E組 小鷹 美麗(こたか みれい)』

 

 

 このときの俺は思いもしなかった。

 彼女と同じチームで戦うことになる、ということを。

 

 

 『やわらかく暖かな春の陽の光に、草木も色づき始めた今日という良き日に、私達は今日......』

 彼女の凛とした声を聞きながら、俺はこれから始まる人生最後の学校生活に想いを巡らせた。

 

 

 学校生活と言えば部活動。それを目一杯楽しもう。

 そう俺以外のこのホールにいる人間は考えているのだろう。

 

 

 俺の野球人生は中学まで。家の状況は誰よりも俺が知っているし、野球なんかしているような場合ではない。

 そうとは分かっていても、野球への想いはそうかんたんに捨てられるようなものではなかった。

 

 

 俺は蛇島先輩に肘を壊されたり、危険なスライディングタックルをされたりといった選手生命の危機に何度も立たされた。

 

 

 それでも野球への思いは消えるどころかどんどん強くなっていき、更に練習に打ち込むようになっていった。

 

 

 そんな昔の完全な惰性ながら、未だに基礎練習は続けている。

 素振り、キャッチボール、走り込み、筋トレといった類だ。

 

 

 無論、バッティングセンターなんかには行く金も時間もないが。

 そんなやめると決めたはずなのに、けじめのつけられない自分が俺は嫌だった。

 

 

 でも、このことはとりあえず忘れてみよう。

 限りある学校生活を楽しむためにも。

 ここでつかの間の夢を見るためにも。

 

 

 いいだろう、少しくらい目をそらしたって。

 小さいときからイヤというほど、この世界の現実を見てきたのだから。

 

 

 そう思う頃にはもう挨拶も終わりかけ。

 『......ときに温かく、ときに厳しくご指導していただきますようお願いいたします。』

 

 

 そうだ、俺は孤高のヒーローなどではないし、一人なんかじゃない。

 頼れるやつもいる。

 また頼らせてもらうぞ、悪いな俊太......

 〜亮Sideout〜

 

 

 




感想をください、どんなことでもいいので。
あと、作者の語彙力を見ても解ると思いますが作者は学生です。
もうすぐ試験なので次話投稿はしばらく先になりますが、「早く更新しろ」とか「つまんないからやめろ」とか「楽しみに待ってます」とか思いながら待っていてください。
よろしくお願いします。

リメイク版の投稿を開始しました。
良ければお付き合いください(内容は濃くなってます)
(https://syosetu.org/novel/205529/)


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