女子寮生活は難儀です (as☆know)
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人数配分間違えるとハーレムじゃなくて地獄

 

 春の陽気にぽかぽかと包まれたこの季節は、なにか新しい物事を始めるのにピッタリだ。

 ついこの季節は夜もちょうどいい気温で寝すぎてしまいがちだ。夜更かしでもすれば尚更である。

 

 

「……んぁ」

 

 

 日の眩しさと心地よい温かさに襲われながら目を覚ます。

 

 寝起きのモヤモヤ感のまま目を少しずつ開くと、上にはまだまだ見慣れない天井。

 体を起こすと机の上には食べかけのお菓子やジュースの痕。

 

 

「……なにこれ」

 

 

 更に右手を上げれば、何故かゲームのコントローラーが握られてる。

 更に更に周りを見渡してみる。

 

 

「……なんこれ」

 

「ぐへへ……その横スマは安直だぞぉ……」

「岡〇のスリーランだけで3本は空けられるね……」

 

 

 両隣りには未成年がいるのにビールの空き缶をそこらじゅうに撒き散らす野球バカと同学年とは思えない妖精ボディをした半ニート。あと机の上に置かれたメモ帳。

 

 

「……なんぞや」

 

『ぐっすり眠っているみたいだったからおこさないでおいたわよ。遅刻しないように気をつけてね♡』

 

「『かなで』……ってはぁあああああああああああ!!!!!」

「うるさいなぁ……杏はまだ眠いんだよぉ……」

 

 

 ご丁寧にハートマークまで付けられた綺麗な字をした書き置きと、机の上に置かれた電子時計で状況を完全に把握する。もうおめめパッチリやわ。

 畜生、あのもみやで野郎なんで起こさなかったんだよ! 確実にこうなることわかっていやがったな! 

 

 隣でモゾモゾと妖精(半ニート)がなにかほざいてるが、そんなことは知ったことではない。速攻で風呂場に制服を持って向かい一瞬で着替える。

 朝飯とか食ってる時間もねぇ! そんなわけで鍵もかけずに自分の部屋から勢いよく飛び出す。

 

 

「いってきまあああああす!!!」

 

 

 どうせユッキは二日酔いで寝てるだろうし杏は酔ってなくても寝てるだろうし。あの二人がいる限り部屋は開けっぱでもいいだろう。

 エロ本とかも隠してないしな。隠す勇気なんてさらさらないし、なんなら持ち込めなさそうだけど。

 

 廊下を全力疾走してると先の方に見慣れた超背の高いシルエットが見える。

 てかあれきらりだな。紛うことなききらりだな。

 

 

「あーっ! 光くんおっすおっすー☆」

「うっす! 杏は俺の部屋で寝てっから!」

「ありがとぉー☆」

 

 

 うむ、俺の予想通り杏を迎えに来てたんだな。多分きらりは優しいから酔いつぶれてるユッキさんのことも何とかしてくれるだろう。最悪ちひろさんも呼べばいいし。

 

 

 いやー、なんでこんなに忙しいんだろうなー!

 なんでなんだろうなー! あん時から全部おかしかったんだろうなー! (めちゃくちゃわかりやすい回想入り)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーディション?」

「そう! 出てみようぜ!」

 

 

 軽音部の部室でもある物置で今西という奴にそんな話を持ちかけられたのは、ちょうど今よりひと月かふた月前のことだった。

 

 当時はお金が必要で……といった理由も特になく。ちょうど新しいベースや機材を買うお金も出来たと言うことで務めていた激ブラックなアルバイトをやめた直後だったはずだ。

 いやー、マジでスーパーのバイトはヤバいぞ。大ブラックすぎ。腰が逝くかと思ったもん。

 

 

「って言っても俺ら高校生だぜ?」

「大丈夫だって! 学生向けって訳でも無いけど学生でも受けられるのは間違いねぇから!」

 

 

 オーディション、と言ってもアイドルになる訳では無い。俺がアイドルとかそもそも考えられないし考えたくもないでおじゃる。

 

 

 持ちかけられたのはプロのベーシストのオーディション。スタジオミュージシャンになる為のものだった。

 スタジオミュージシャンとかになるには自分から売り込みに行かないといけないとか聞いたことあったけど、案外そんな訳でもないらしい。

 まぁそもそも俺ってベーシストでは有るけど圧倒的エンジョイ勢だしな。プロになるのが目標って訳でもないし。

 

 

「でもプロになりたいって訳でもないしなぁ」

「いいから出てみろって! 受かったら月収とかはバイトの並じゃねぇからさ!」

 

 

 好きなことを仕事にできるならそれにこしたことはないだろうが、世の中そんなに甘いもんじゃないだろう。

 てかなんでこいつはそんなに俺にオーディションさせたいんだ。深い意味は無いんだろうけど。

 

 

「出てみるだけでも経験になると思うぜ? 交通費ぐらい出してやっからさ!」

「……まぁ、そこまで言うなら」

 

 

 交通費を出してくれると言うならば、そりゃあ行くだろう。どーせ受かんないだろうけどな。

 

 

 

 


 

 

 

 

「……おい、ほんとにここであってんのか」

「おうともさ! ここがオーディション会場の346プロよ!」

「とんでもなくでかい所じゃねぇか! ふざけてんのか受かるわけねぇだろ!!!」

「まぁまぁ」

 

 

 何度もどこに行くか聞いたのにするするっと躱され続け、結局言われるがまま今西に連れられてきたのは、謎のどでかい学校のような城のような建物。

 

 これがあの346プロなのかよ。

 346プロといえば個人的にはよし〇ととかに匹敵するくらいどでかい事務所のイメージがあるくらいにはやべー芸能事務所だったはずだ。あと知り合いが確かここに勤務しているくらいだな。

 てかなんなんだこれデカすぎだろ。会社というかもはやシンデレラとかに出てきそうな城じゃねぇか。

 

 346プロってアイドルとかも扱ってるとこだったはずだ。あいつはアイドルだったはずだし。 a〇exとかみたいな。a〇exにアイドルいたかあんまり覚えてないけど。

 

 アイドルとかほとんど知らねぇんだよなぁ。クラスにもドルオタは何人でもいるしテレビでも見るっちゃあ見るけど、ちゃんと注目して見た事はない。

 高垣楓とかは聞いたことあるけど。あとバラエティ番組によく出てる人達は知ってる。輿水幸子とか。あとは渋谷凛。

 

 

「とりあえず早く入ろうぜ!」

「これ勝手に入っていいんか?」

「大丈夫大丈夫! 俺に任せとけって!」

 

 

 全く持って信用出来ないんですがそれは。

 

 

 


 

 

 

 今西に連れられるがまま入口を通ると、冗談抜きで何かの城のような光景が目の前に入る。

 なんなんだマジで。頭おかしいすぎる。

 

 

「……でっけぇ」

「光、俺ちょっと受け付け済ませてくるわ」

 

 

 何故か慣れた手つきで受け付けの女性と何かを話している今西を他所に、とんでもない内装の事務所に圧巻され続ける。

 

 

「なつきちー。今日暇?」

「おう、今日は夜なら空いてるぜ」

「ほんと!? じゃあまたギター教えてよ!」

「別にいつでも教えてやるって」

 

「えっ」

 

 

 あの二人、すっげぇ見た事あるんだけど。

 金髪のリーゼントにしてる子はF〇S歌謡祭とかでもよくギター弾いてる子だよな? ヤバくね? 普通に居るやん。

 もしかして俺ってとんでもないところに来てね? 

 

 なんかあんまり周りをジロジロ見るのももどうかと思ったので、不本意ながら野郎である今西に視線を移すと、何やら変な紙を見せて受け付けを済ませていた。多分、応募の紙だろう。

 あれ? でも履歴書は俺が持ってるし応募の紙とか書いた覚えないんだけどな。

 

 

「迎えの人が来るからしばらく待っててってよ」

「おかのした」

 

 

 受け付けから少し離れたところで缶コーヒーをあけながらだべっていると、何やら緑の服に身を包んだ綺麗な女の人が迎えに来てくれた。

 

「お待たせしました。今西くんと松井くん……ですよね?」

「お久しぶりです、ちひろさん」

「……ん? お久しぶりです?」

「なんでもない」

 

 

 こいつ、今どう見ても完全に口を滑らせたよな。

 

 今西からちひろさんと呼ばれた女性は、表情を崩すことなく笑顔を保ち続けている。

 てか胸元に千川って名札が貼ってあるやん。なんで今西は下の名前を知ってんだよ。

 

 

「ふふっ、それでは案内しますね?」

「あっ、お願いします」

「じゃあ、俺はここで待ってるから」

 

 

 7割ほど入ったままのコーラ入りペットボトルを振りながらニヤニヤ笑ってくる今西にむかつきながらも、適当に返事だけは返す。

 あいつここまでして一体何を考えてやがるんだ。帰ってきたら今度こそ問いただしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エレベーターに乗り、長い長い廊下をテレビで見たことある女の子やスーツの人達とすれ違う。

 なんなんこれ。ほんとに別世界に来たみたいだわ。未だに夢かと思うわ。

 

 目的の部屋に着いたのだろうか。

 千川さんがドアをノックすると中から少し低い女性の声が聞こえる。

 

 

「松井さん。ここからは貴方自身のお仕事ですよ」

「は、はぁ」

「頑張ってくださいね!」

 

 

 ちょっと待って。俺なんにも聞かされてないんだけど何を頑張ればいいのだろうか。

 

 ドアを指さしながら入っていいんすか? 的なことをジェスチャーで千川さんに訴えかけると、ニコニコしたままどうぞどうぞと言った感じでドアに手を向けられる。

 

 これは入るしかないよね? 男だから腹をくくれっていうのかよ。マジかよ。嘘だろジョージ。

 

 ここでうだうだ言っててもどうにもならないのでドアに手をかけて、一呼吸置く。

 大丈夫だ。心の中に修造を飼うんだ。北京だって頑張ってるんだよ! 

 

 

「失礼します……」

 

 

 高校に入る時の面接の感じを思い出しながら部屋に入ると、まず一番最初に奥の机に黒髪の女性が座っているのが見えた。

 てか部屋広っ。よそ見とかしてないからわかんないんだけど、視線に入る限りでもめちゃくちゃ広いのがわかる。ちょっとくらい俺の部屋にも分けて欲しいんだけど。

 

 なんか座ってる女性、風貌とかめちゃくちゃ偉そうな人なんだけど。ラスボスオーラがえぐいんだけど。完全に強キャラやん。ベヨ〇ッタやん。てかベヨ〇ッタにしか見えんやん。

 

 

「私はベヨ〇ッタではない」

「……はい?」

「はっはっはっ!」

「うぉっ!?」

 

 

 隣からいきなり笑い声が聞こえたからびびっちまったじゃねぇか!

 

 てか女の人以外にももう一人部屋にいたんだな。緊張しすぎて気が付かなかった。

 真横にあったソファに座っていたのは、とっても見た目が優しそうなおじさんだった。

 女の人とのオーラのギャップがえぐいんだけど。おじさんの方が年上っぽいのに。

 

 

「君が松井光くんだね? 孫から話は聞いているよ」

「……孫?」

「おっと、これは言ってはいけなかったかな?」

「今西部長。話を進めても?」

「おっと失礼」

 

 

 なんでこのおじさん俺の名前を知ってんだ。資料にでも目を通してたのか? 

 

 てか待てよ。今西? 孫? 

 ……あっ(察し)

 

 

「それでは話を進めさせてもらうぞ」

「ちょっ、話っt」

「分かっていると思うが、君には我が346プロアイドル部門専属のスタジオミュージシャンとして活躍を期待している」

「えっ、なにそれは」

 

 

 待って。僕が知っていた情報スタジオミュージシャンだけしか合ってないんだけどどゆこと? 

 何? アイドル部門専属とかあるの? マジでなんも知らないんだけど。

 

 

「……今西部長。聞いていた話と違いがあるようですが」

「はて、ボケが回ってきたのかな?」

「えぇ……(困惑)」

 

 

 すっとぼけた様子を見せるおそらく今西のおじいちゃんを見て、女性が片手で頭を抱える。

 マジかよ。この女の人もハメられたの? 

 これ俺帰ったらダメかな? 思ったより大きい話になってるから家に帰りたいんだけど。

 

 

「松井光くんだったな? 君はどこまで話を聞いているんだ」

「えっ。いや、スタジオミュージシャンのオーディションがあるから試しに出てみないかって」

「まぁ、間違ってはいませんな」

「間違ってはいませんね」

「うわビックリした!」

 

 

 知らん間に千川さんも部屋に入ってきとるやないか! 

 びっくりして間抜けな声を出しちまったよ。

 

 

「……千川。資料に間違いはないのだな」

「はい、常務。映像の方もこの方で間違いはありません」

「ふむ……」

 

 

 ここに来て初めてこの女の人の役職がわかった。

 でも常務ってどれくらい偉いんだろうか。部長と社長と係長くらいしかわかんないしな。常務なんて初めて聞いたかもしれない。

 

 常務は腕を組み、少し考えるような様子を見せると、直ぐに頭を上げてこちらを見つめてくる。

 な、なんか照れるんですけど。普通に綺麗だもんな。年齢的に守備範囲外だけど。

 

 

「まぁいい。手違いはあったが、予定通り採用だ」

「は、はぁ」

「良かったですね! 松井さん!」

「……はぁ?」

 

 

 うん。全く話の流れがわかんないんだけど、とりあえず良かったのだろうか。

 

 

 


 

 

 

「悪かったって〜。ラーメン奢るから許してくれよ〜」

「軽すぎだろ」

 

 

 とりあえず一番最初のロビーに戻ると一発今西の腹に拳を打ち込んで洗いざらい履かせた。

 その結果、最初からこいつとこいつのおじいちゃんの策略通りだったという事実が明かされた。まぁほぼほぼ予想通りだったけど。

 

 ちょうど346プロのアイドル部門も活発化してきたこのタイミングで新しいスタジオミュージシャンが欲しかったらしく、そこで白羽の矢がたったのが俺だったらしい。

 だがしかし、基本的に怠惰でめんどくさがり屋な俺をここまで連れてくるのは至難の業。という訳で『とりあえず受けてみるだけ』『交通費ぐらい出してやっからさ!』という甘い言葉で俺を誘い込み、既成事実を作ってやるって寸法だったらしい。

 

 完全に詐欺の手口じゃねぇか! 常務の人も泣く泣く許可してたけど、多分事前に俺に何も言ってないって知ってたら落としてたんだろうな。そらそうよ。

 

 まぁ、いいや。取り敢えず、さっさと家に帰るか。

 それから考えよう。うん、そうしよう。

 



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陽キャは陰キャにこうかはばつぐんだ!

初めまして、私でございます。
一話投稿からお気に入りが50個近くついて泣きそうになっております。てか泣いてる。


 

 

 

 いや〜、昨日は散々だった。

 

 結局あの後、俺が家に帰るまでに自宅に346本社から連絡が来たらしく、疲れたまま自宅に到着した瞬間質問攻めにあった。

 あまりにもすごい圧で押し寄せてくるもんだから、流石に親的にも346で働くのはアウトかと思ったが結果は真逆。

 息子が芸能人デビューするかもしれないとめちゃくちゃ喜んでた。スタジオミュージシャンだぞと伝えたらめっちゃガッカリされたけど。

 

 ちなみに俺まだあそこ勤務じゃないからな。ちゃんと親の同意とかもないと契約できないからな。

 すげーんだぞ、スタジオミュージシャンって。曲がりなりにもプロだぞ、我が母親。息子は悲しい。

 

 あと仲のいい訳では無いが色々ある昔馴染みみたいな奴に、346に所属するかもという旨を伝えるのを完全に忘れてたのでさっき連絡つけたんだ。

 そしたらよ? 

 

 

『よかったね』

 

「短っ」

 

 

 相変わらず素っ気なさすぎる。電車の中で声が出そうになったわ。

 まぁ別にあいつに連絡はしなくてもよかったんだけどな。ただ、事情的に向こうで会うかもわかんないし。いきなり会社であったりしたら流石にあいつも怒るだろうし。怒ったら怖いんだよなぁほんとに。女の子怒らせたらマジで大変だから。

 

 

「……ここで合ってんのか」

 

 

 休日にも関わらず今西から来たLINEに従い、自宅から電車にガタゴト揺られること約1時間掛けて来たのは346プロ本社。

 ちなみに何をしに行くのかは全く知らないので、今西にベースを持っていくか聞いたら当たり前だろハゲとの返信が来た。全ててめぇのせいで分かりにくくなったんだろうが。今度あったらぶっ飛ばしてやる。

 

 前回行ったのは城みたいな形をした本館だったが、今回はその隣にある馬鹿みたいにでかいオフィスビルに用があるらしい。

 てかこの会社、芸能プロダクションの中でも最大手とはいえ全てにおいてデカすぎる。でかけりゃ強いとでも思ってんのか。実際つえーよ(白目)

 

 そんなどでかいオフィスビルに入り、受けつけの人に事情を説明する。ちゃんと通じるかめちゃくちゃ不安だったけど、流石にプロ。嫌な顔一つせず、すぐにどこかに電話を繋いでくれた。

 

 

「松井さん、お待たせしました!」

「あっ、千川さん。そんなに急がなくても……って誰ですか?」

 

 

 しばらくスマホをポチポチしてると、向こう側からなんか知ってるシルエットが来る。

 少し張り切った様子で迎えに来てくれたのは千川さん……と、その横には茶髪で謎の外ハネが特徴的な女の子がニコニコしながらこちらをみている。ナゼミテルンデスゥ! 

 

 

「初対面の女性に対して『誰?』とはなっていませんなぁ。一応、私だってテレビにも何回か出たことあるんだぞー!」

「俺テレビっ子じゃないですしおすし」

 

 

 

 この子、恐らくめちゃくちゃ陽キャ気質だ。オーラが眩しい。陰キャの俺には眩しすぎる。

 てかなんなんだその外ハネは。めちゃくちゃ気になるんだけど。これって外ハネが本体パターンなんちゃうかってほど外ハネしてるんだけど。むしろ外ハネまである。もうこれわかんねぇな。

 

 

「しょうがないな〜。それじゃあ私から自己紹介でもしてあげよう!」

「上から目線かよ」

「本田未央15歳! 来年から高校一年生でーっす!」

「しかも年下じゃねぇか!」

 

 

 なんだこの女。元気ハツラツってレベルじゃねぇ。油断してたらこっちがエネルギーでぶっ飛ばされそうな勢いだ。

 なんで人といるだけで油断うんぬんかんぬん考えてるんだ俺は。

 

 それにしても整った容姿をしている。

 この子多分アイドルだな。まぁ346プロといえばアイドルって所も無きにしも非ずだし、これからここで会う女の子たちはほとんどアイドルなんだろうけど。

 ほんと人生どうなるかわかったもんじゃねぇな。事実は小説よりも奇なりって言うけど、普通に恐怖を覚えるレベルだわ。

 

 

「へー、君って年上なんだ! 敬語使った方がいい?」

「今更だからいい」

「私のことは未央ちゃんって呼んでくれても構わないよ?」

「よし、田吾作」

「雑過ぎない?」

 

 

 0.3秒で考えたあだ名だからな。まぁここは無難に本田呼びでいいだろう。

 てか女の子を下の名前で呼ぶって普通に難易度高くね? 陰キャには無理すぎ。

 

 

「未央ちゃん? そろそろ……」

「そうだった! じゃあ、えーっと……名前なんだっけ?」

「そりゃそうだ」

 

 

 自己紹介だってまだしてないんだからな。本田の勢いが凄すぎて完全に忘れてたけど。

 初対面の人に対して自己紹介もまともにしないとは不失礼極まりないが、本田相手なら別にいい気がしてきた。こんなんだから彼女が出来ないのかもしれない。

 

 

「松井だよ。松井光」

「松井松井……じゃあ『まっさん』だねっ! よーし、それじゃあ行ってみよー!」

「うおっ!?」

 

 

 この娘、初対面の男の手を掴んで引っ張ると申すか。なんという破廉恥な行為! 

 テンパりすぎて古文みたいになったわ。

 まぁ手をガッツリ掴んでる訳でもないし、普通に手首をガッツリ掴まれてるだけなんだよな。

 しかもしれっとあだ名つけられなかった? 気の所為? ねぇ気の所為? 

 

 本田にほぼほぼ引きずられながらエレベーターに乗せられると、本田はなんの躊躇もなく階数指定のボタンをポチッと押す。

 

 

「30階に参りまーす!」

「たっか」

 

 

 30階とか東京タワーかよ。東京タワーがマンション何階分か知らんから適当に言ったけど。

 

 ちなみに少し雑になってしまったがエレベーターのところで軽く手を払わせてもらった。

 仮にもアイドルをやってるような女の子が男の子に勘違いさせるような行動をしては行けないってそれ。

 

 チーン(笑)という到着音が鳴ると、本田がこっちこっちと先導して案内してくれる。

 本当はちひろさんの仕事だったんだろうけど、当のちひろさん本人は楽しそうに俺の横でニコニコしている。大人の余裕なんだろうけど、職務放棄じゃね? 全然いいんだけどね? 

 

 

「さぁ! ここが終点のシンデレラプロジェクトルームでございまーす!」

「ここで合ってるんですか? 今更なんですけど、俺今日なんでここに来たか知らないんですけど」

「はい。未央ちゃんの言う通り。ここが今日、松井さんに来ていただきたかったところですよ。それと要件に関してはあとからのお楽しみです♪」

「なんでちひろさんに聞くの!?」

 

 

 だってなんか信用出来ないじゃん、心配じゃん(辛辣)

 

 なんで本田は俺が今日ここに来るってことを知ってたんだろうか。

 まぁ誰かから聞かされてたんだろうな。例えばアイドルだからプロデューサーとかマネージャーがいるはずだし。プロデューサーとマネージャーの違いとか実はよくわかって無いんだけどな。

 

 

「あの……本田さん、松井さん」

「うぉあぁっ!?」

「あっ! プロデューサー!」

 

 

 びっくりしたァ!

 なんか名前を呼ばれたと思って振り向いたら、俺よりでかいめちゃくちゃガタイのいいくっそ顔の怖い男の人が後ろにいた。顔つきこえーしビビるわ!

 しかも俺よりでかいってなかなかだぞ。俺これでも180cmはあるからな。190以上あるんじゃないかこの人。

 

 てか真後ろに立たれていきなり名前を呼ばれたのに、何故本田は平気な顔をしていられるのか。

 めちゃくちゃ肝っ玉座っとるやんけ。

 

 

「だ、誰だチミは!?」

「そうです! 私が本田未央です!」

「お前ちゃうわ」

「てへっ☆」

 

 

 やっぱり本田は陽キャだな。

 というか変なおじさんネタが通じるとは思わなんだ。アイドルがやると一気に華々しくなるな。俺がやるとただむさ苦しいだけなのに。悲しい。

 

 

「申し遅れました。私、こういうものでございます」

「あぁこれはどうもどうも……」

 

 

 恐らく年上なのにそんな甲斐甲斐しく名刺を渡してもらう。てか大きな体でこぢんまり名刺を渡してくるのなんだかシュールだな。とりあえずちゃんとした名刺の受け取り方は分からないのでなんとなくな感じで受け取っておく。

 

 株式会社346プロダクション

 シンデレラプロジェクト プロデューサー……ん? 

 

 

「シンデレラプロジェクト?」

「はい」

「1回くらいテレビとかで聞いたことないかな?」

 

 

 聞いた訳ないことがあるわけなかろうが。つまり聞いたことはある。

 といっても俺の聞いたことあるって言うのは他の人の()()()って言うのは別モンなんだろうけど。

 

 

「いや、テレビで聞いたことあるというかなんというか」

 

 

 ガチャ

 

 

「P、未央。いつまで外にいる……の……?」

「そう、こいつ(幼なじみ)がいるんで」

 

 

 自動ドアみたく開かれたドアの先に現れた少女はまさに絶世の美少女。

 

 歳とは反比例したような落ち着いた雰囲気を漂わせる長い黒髪。クールな表情と蒼い瞳は世の男性を狂わせる……はずなんだがどうやら今は全くクールな表情ではない様子。

 

 

「……え?」

「はいちーず」

 

 

 とりあえず凛のこんな表情久々に見たから写真撮っておこう。はい、パシャりと。

 うーんいい顔だ、後で親にでも送っておいてやろう。

 

 

「……なんで光がここにいるの」

「色々あったのだ」

 

 

 眉間をぴくぴくさせながらこちらを指さしたまま固まる凛に、事実を包み隠さず伝えるために1番短く伝えられるであろう伝家の宝刀『色々あった』を引き抜く。

 これさえあれば大抵の事はなんとかなる、あの『かくかくしかじか』並の伝説の剣である。

 

 

「ちゃんと全部説明して」

「あっ、はい」

 

 

 もはや表情が氷の女王的な感じになってるこいつには伝家の宝刀も通用しなかったわ。




こちらの方は完全不定期、我のきまぐれによって投稿させていただきます。暇つぶし程度にお楽しみくださいませませ。
出来れば感想よろしくお願いします! モチベになりやす!


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幼馴染は二次元で大量に生産される本妻候補

この世界線はアニデレが元にはなってますがアニデレとは全然違ったりしてます。そこら辺の所をご理解いただくと助かったりします。
アニデレってなんのこと? って方はそのまんま気にしない読んでね!


 

 

 幼馴染とは実は難しいものである。

 それも男女ともなれば尚更だ。

 

 世の中に蔓延するライトノベルやらアニメやらドラマでは、幼なじみは非常に恋愛的に有利なポジション。ハーレム系の作品においては超絶有利な位置にある。

 そりゃあ最初から好感度MAXポジションともなれば、まさに正妻戦争のシード枠のようなもんだからな。実際強い。

 

 幼馴染属性とは最強である。

 

 あるアニメの幼馴染の女の子は、朝から制服でモーニングコールをしてくれる。

 また、ある漫画の幼馴染の女の子は朝食を作ってくれる。

 またまた、あるラノベの幼馴染の女の子はボディタッチも厭わないでぺたぺたくっ付いてくる。

 

 ……否、否否否ァッ! 現実の幼馴染とはそんなに甘くはないッ! (ガチギレ)

 そもそも幼馴染のことをガッツリ()()()って言うことすら少ないのだッ! 

 

 傍から聞けば訳が分からないだろう。幼馴染のことを幼馴染と言うことがなぜ少ないのか。

 

 俺と凛は自宅がお隣さんで生まれた年も同じ。

 

 これは俺の感覚になるが、幼少期から一緒にいるのが当たり前だったので『あり? そういえば俺らって幼馴染ってヤツなんじゃね?』って思ったりするパターンが多かったりするのである。近すぎてわからんくなるってやつだな。

 というか、実際に俺と凛の場合もどういう関係かって友達に聞かれた時に『そういや俺とあいつって幼馴染じゃん』ってなり、そこでやっと理解したくらいだ。それまでは気にすらしていなかった。

 

 そう、気が付きすらしなかった。

 長い黒髪に蒼い瞳。モデルより可愛い(俺談)整いまくった顔立ち。

 正直幼なじみが美男美女なんて言うのは二次元でしか有り得ないが、ここに関しては二次元よりも確実に出来すぎなくらいだ。

 

 だがしかーし! 現実の幼馴染はモーニングコールはしてこないし、朝ごはんも作りに来ない! 

 あっちだって朝は忙しいんだ。女の子ともなれば尚更だろう。多分、化粧とか髪の毛とか大変だろうし。よくわからんけど。

 

 しかも男女間の幼馴染とは非常に難しいものがある。

 

 男だったらそれこそどちらかの性格に難があったりでもしない限りは、お互いのことが手に取るようにわかるであろう親友になり得るかもしれないが、男女間ではそうもいかない。

 

 まず距離の取り方がわからない。特にこれは小学校の終盤頃、もしくは中学に上がってから顕著にでる。

 

 それまでは男友達と同じように接することが出来ていたのに、急にそう出来なくなった時の関わり方は非常に難しいものがある。距離の取り方や接し方の測り方も分からずにわたわたしているうちに、喧嘩した訳でもないのに少しずつ距離が離れていく。話はするけど仲睦まじく話すことだってほとんどない。

 

 

 なんだその程度かよ、って思うかもしれないけどまじで深刻だからな! 女の子と付き合ったことの無い男にはわかんねぇんだよ! 

 しかも凛の場合は元々可愛かったとはいえ、年が経つにつれて急激に可愛いから綺麗になって行ったから俺が戸惑って少し距離を取ってしまった。

 まぁ、それでも全く話せないというわけでも全然なく、単に昔と比べたら話さなくなったよねって言うだけに止まっている。

 

 

 

 アレだよ。アニメで妹に幻想抱きすぎなのと同じように幼馴染にも幻想抱きすぎなんだよ。

 友達も言っていたが実際現実の妹はおにーちゃんおにーちゃんとも懐かないし裸を見たとしてもお互い興奮も何もしないらしい。なんなら我儘ばかりでめちゃくちゃウザいらしい。

 俺も妹という存在には少し幻想を抱いていたから、現実を突きつけられた時は非常に悲しかった。二度と妹欲しいとか言えないよね。まぁ一人っ子の幻想なんだけどね。

 

 

「そんな訳で、一応俺と凛は生物学的に幼なじみなだけなんですわ」

「その言い方、すっごいムカつくんだけど」

「だって凛怖いんだもん」

「なんて?」

「ごめん」

 

 

 ほら怖い。可愛いのに怖い。

 この子さ、基本的に表情は絶対に崩さない氷の女王だから怖いの。その割には表情そのままでオーラとかで威圧してくるから怖いの。こういう意味では元々芸能人のオーラ的なそれはあったのかもしれない。絶対違うけど。

 

 

「それにしても、しぶりんにも仲のいい友達がいたなんてね〜」

「それも男の子!」

「未央、卯月。それってどういう意味?」

「特に深い意味は無いよねー!」

「うんうん」

 

 

 俺は今、不思議な状況にある。

 流れの中で押し通されてしもうた結構広い部屋の中で男二人、女の子が沢山。しかも唯一の同性は超高身長のヤ〇ザみたいな顔をした人。

 

 不味い、これは不味い。あまりにもビジターすぎる。始まる前から勝負決してるぜこれ。

 しかもここにいる女の子が全員揃って可愛い。アイドルだから当たり前なんだろうけど。見た感じ全員中高生みたいな感じなんだろう。同年代かそれ以下の子が多く感じる。

 

 

「それで? 結局光は騙されてここに来たと」

「平たく言えば」

「なんで断らなかったの……」

「だって母親の許可出ちゃったんだもの」

 

 

 曲がりなりにもプロになれるチャンスが転がり込んできたんだぞ。元々現実的にプロになるつもりなんか毛頭なかったが、チャンスがあるなら話は別だ。プロのベーシストに! 俺はなる! ワン〇ース! 

 

 

「じゃあ、凛ちゃんの幼馴染くんも一緒にアイドルやるんだね!」

「えっ」

「えっ」

「え?」

「しまむー……流石にそれは無いよ……」

 

 

 この子は何を勘違いしたのだろうか。俺がアイドルをやる顔だとでも思っているのか。無いよ、絶対に。

 

 

「確かに……松井さんのお顔はとても整っていますけど……」

「島村さん、一応、シンデレラプロジェクトは女性限定なので……」

「そ、そうなんですか」

「俺が知らないのはともかくそっちも知らないんかい」

 

 

 島村さんと呼ばれている子は天然なんだろう。天然というか、ポンコツというか。まぁ可愛いからなんでも許してしまいそうだよね、こういう子。凛とか本田も苦笑いしてるし多分ガチなんだろうな。

 

 

「じゃあ、なんで光さんはここに?」

「……なんでですか?」

「そう言えば、まだ説明していませんでしたね」

 

 

 そうだよ。何の説明もなしに呼ばれて女の子に囲まれてるけど、なんで俺がここにおるねん。

 

 そもそもあのベヨ〇ッタに採用とは言われたものの、ちゃんとスタジオミュージシャンとしての採用なんだろうな。雑用の用務員のおじさんとかだったら泣くぞ。

 

 

「まず、松井さんはシンデレラプロジェクトがどういうプロジェクトか知っていただけてますか?」

「……申し訳ないけど、名前しか知らないっす」

「それじゃあ、まずはそこから説明しましょう!」

 

 

 やけに嬉しそうな千川さん可愛い。

 この緑に包まれたお姉さんもめちゃくちゃ可愛いんだよね。最初普通にアイドルかと思ったわ。

 やっぱりこういう職員さんもみんな顔面偏差値が高くなるようになってるんだろうか。芸能界すげーわ。

 

 

「シンデレラプロジェクトとは、簡単に言ってしまえば『女の子が輝く夢を与える夢のためのプロジェクト』なんです!」

「ほぉ」

「ここにいる子はみんなプロデューサーからスカウトされたり、オーディションで選考された新人さんたちばかりなんですよ!」

「凛もスカウトされたんだもんな。めっちゃ顔の怖い人にストーカーされてるって」

「その件に関しては申し訳ありません……」

「も、もういいから……」

 

 

 実はそれに関して話は聞いていた。珍しくビビった顔をしていた凛からな。

 めちゃくちゃ顔の怖くてゴツい人からめちゃくちゃ声をかけられたって。そんときは普通に学校休めば? って返したな。俺が付いて行ってやるよ! なんてカッケーことは言えないし。俺だって怖いし、凛が。

 

 

「つまり! 私たちみーんな! ちゃんとしたアイドルってこと!」

「おー」

「反応薄くない!?」

 

 

 だって察し付いてたし。凛もいるし、なんならみんなめちゃくちゃ可愛いからアイドルって言われてもおかしくは無いでしょ。

 それよりもよ。

 

 

「そのシンデレラプロジェクトと俺がここに呼ばれたの。なんの関係があるんすか」

「ふふーん。聞いて驚きたまえ!」

「お前が知ってるのか」

「知らないよ?」

「うーん、この」

 

 

 この本田ほんま……ほんま……。

 こんなんでもちろっと舌を出してえへへと笑う姿が可愛いのがむかつく。可愛いなこんちくしょう。待って、凛が怖いんだけど。すっげぇ睨んでくるんだけど。ねぇ、ねぇ! 違うって! 何が違うかわからんけど! 

 

 

「……ずっと立ちっぱなしでも申し訳ないですし。取り敢えず皆さん座ってもらいましょうか。松井さんも荷物をお持ちのようですし」

「あっ、サーセン」

 

 

 そういやずっとベース背負ってたわ。意外と重いねんな。ベースって。

 

 さっきからわちゃわちゃでとにかく話が進まないので、ゆっくり座らせていただくことになった。なんなんだマジで。女の子だらけで本当に緊張するんだけど。




幼馴染が凛ちゃんだったら僕は死にます。泣きます。拝みます。

お気に入り100突破しました! ありがとうございます!


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ギャグアニメのシリアスパートは高低差で耳キーンなる

お気に入り150突破しました! 感想も届いており泣いています。涙腺ゆるゆるマン。
最近腰をやりました。痩せるべきかもしれませんね。まぁ、ダイエットはしませんが。


 

 

 背負ったままだったベースケースをソファーに立てかけ、おっさんみたいな声を出しながら自分自身もソファーに腰掛ける。まだ高校生やぞこれでも。

 

 

「うおっ、ふっかふかや」

「でっしょ〜!」

 

 

 となりからぼふっと言う音が聞こえる。

 なんの躊躇もなく隣に座るんだな、本田な。お前アイドルなのに警戒心ZEROかよ。人懐っこい犬かよ。

 

 

「未央に色目使わないで」

「使ってねぇよ……」

「アイドルが男の人に女の子として見られるのはとてもいいことですからな〜。もっと見てくれてもいいんだよ?」

「頼むから話をこじれさせないでくれ」

 

 

 こいつ絶対学校で男をめちゃくちゃ勘違いさせるタイプだろ。鬼だ鬼。

 本田未央には男を勘違いさせる全ての要素が詰まってる。凛に脅されてなけりゃ俺だって勘違いしてるわこんなん。こんなにかわいい女の子が警戒心ZEROで突っ込んでくるとか普通ありえんわ。

 

 

「じ、じゃあ私もお願いしますっ!」

「ごめんな、まだ名前わからない子に言うのもあれだけどもっと話が拗れるからやめてね?」

「私! 島村卯月っていいます!」

「おぉ、そうかそうか。自己紹介したらいいってわけじゃないんだごめんな」

 

 

 満面の笑顔がとっても可愛い彼女の名前は島村卯月というらしい。

 この子、前回から俺が凛と一緒にアイドルになるとか言ってたし、今もノンストップで突っ込んできてるし多分おばか、もしくはポンコツの部類だろうな。

 

 でもやっぱりアイドルなだけあって可愛いよ。特に笑顔がヤバい。人を軽く100人は救えそうな笑顔をしている。

 未央みたいに髪型に癖があったりしてる訳でもない、まさに普通の超王道JKって感じがするな。うんうん。

 俺はアイドル評論家かい。

 

 

「光」

「俺は悪くねぇって!」

 

 

 凛ちゃん? プロデューサーさんの後ろからこっちを睨みつけてくるのやめて? 

 プロデューサーさん自体にただでさえ威圧感あるのに、凛がその奥のスタンドみたいになってるから。ジ〇ジョとか全然知らないけど時が止まりそうだから。死ぬから。

 

 わかるよ? お前も同性の同僚をそういう目では見て欲しくはないよな。わかるんだ。俺だってそんなつもりで見てないんだ。強いて言うならこういう空気にした本田が悪いんだ。許してくれ(クズ)

 

 と言ってもこのままだと俺が凛に目で殺されかねない。ここは一刻も早く話題を変えよう。うん、そうしよう。

 

 

「そ、それで? シンデレラプロジェクトのメンバーってのはここにいる人だけなの?」

「違いますよ?」

「今は私としまむーとしぶりんしかいないけど、本当は私達合わせて14人いるの!」

 

 

 はえ〜、たくさんいる。まぁ、俺が今いる部屋も死ぬほど広いからな。14人くらいいても狭くもなんともないよな。

 にしても新人を集めたプロジェクトで14人か。やっぱりこの事務所すげーわ。どんだけ人いるんだよ。14人って言ったら野球のチームもサッカーのチームも組めるぞ。マンモス事務所にも程がある。

 

 

「今日は本当なら私と千川さんと松井さんの3人でお話をさせていただく予定だったのですが、三人の予定がブッキングしてしまいまして……」

「だから私達、レッスンがあるまでここで待機してたんです!」

「なるほど」

 

 

 だから本田がわざわざ俺を迎えに来たと。暇だったんだろうな。そこはちょっと可哀想だとは思う。

 

 でもなぁ……よりにもよって迎えに来たのが本田だもんなぁ……。しょっぱなから消費カロリーがエグいことになってたぞ、マジで。まぁ自分から暇だし迎えに行く! って言い出しそうなのは本田くらいだろうけど。島村さんは言い出すかどうかわからないけど、凛は絶対にそう言うことを言い出さないからな。

 

 

「申し訳ありません……本来なら後日しっかりと顔合わせの機会を作る予定だったんですが……」

「いやいやいや! 早かれ遅かれ顔合わせるんだったら変わらないですし!」

 

 

 超コワモテの顔で申し訳なさそうに首元を手でさすさすしているのをみると急に申し訳なくなってくる。この人、この見た目で意外と苦労人なのかも知れない。

 

 

「それで他の方は……?」

「蘭子ちゃんと杏ちゃんときらりちゃんとアーニャちゃんと美波ちゃんは今日はお休みでしたっけ?」

「莉嘉とみりあもね」

「前川さん方も今はレッスン中ですね」

「……つまり、他の人は今はレッスンとお休みだと」

 

 

 知らん名前がたくさん出てきたよ。僕、困っちゃう。

 こういう身内ネタが一気に出てきた時って本当に困るよね。死ぬほど居づらくなるというかモジモジするというか。

 

 

「良かったね光」

「なにがですの」

「別に」

「やめよ? そういうの怖いよ?」

 

 

 意味深なこと言わないで。そんでもって今は笑わないで。その笑顔怖いから

 とってもいい笑顔だけど僕にとっては良くない笑顔だから。

 

 

「おーっとぉ? しぶりんとまっさんのプロレスの開始かぁ〜!?」

「頼むからそんな楽しそうにしないでくれ。困ってるんだ」

「あの……松井さん、お話を進めても……?」

「「「あっ」」」

 

 

 話をそらしすぎて着地点を見失ってた。

 プロデューサーさんはずっと首元をさすってました。ごめん、プロデューサーさん(白目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「松井さんには将来、この346プロを根本から支えるスタジオミュージシャンになっていただきたいのです」

「根本から支えると」

「はい」

 

 

 本田と島村さんと凛が静かになってすぐだけど、プロデューサーさんいきなりとんでもなくでかいことを言ってくるな。なんか急に重圧がすごくなってきたよ。僕そこまでメンタルつよつよ勢じゃないんだけど。

 

 

「今、346プロでは専属のスタジオミュージシャンが不足しているんです。アイドル部門以外のミュージシャンの方々からお手伝いをいただいているので今はまだ大丈夫ですが、やはりその方々の負担にもなってしまうので……」

「それもあって、若いスタジオミュージシャンの卵として、今回松井さんを採用させていただいたんですよ? アイドル部門専門の、ですけど」

「あの……そのアイドル部門専属の、って言うのが気になっていたんですけど」

「私も気になる!」

 

 

 ベヨ○ッタさんにも急に言われてスッゲェびっくりしたんだけど。やっぱり俺ってアイドル部門専属ってので通ってるんだな。なんで俺なんだ、マジで。

 あと今の千川さんの言い方が小悪魔っぽくて可愛かった。なんか俺ここにきてから思考の半分が可愛いで埋まっていっている気がする。気のせいであってほしい。

 

 

「少し話は逸れますけど、そもそもこのシンデレラプロジェクト自体が今のアイドル部門に新しい風を吹かせる、そういう意味もある企画なんです」

「そうなの?」

「わ、私に聞くんですか!?」

 

 

 なんとなく島村さん話についていけてなさそうな感じだったから。

 声掛けてやるなよ可哀想だろって? 馬鹿か。こういう可愛い反応が見れるだろうが! 

 

 

「今はこのアイドル部門というくくり全体でそういう空気が生まれつつあるんです。その新しい風の一環として、アイドル部門の将来を根本から背負う、アイドル部門専属のスタジオミュージシャンを育てる、ということになったんです」

「アイドル部門の将来を根本から背負う、ですか」

 

 

 それはまた壮大なプロジェクトに巻き込まれてしまったらしい。

 要するにアイドル部門を発展させていくためにシンデレラプロジェクトをはじめとした色々なことを進めている中で、スタジオミュージシャンの育成として俺を雇用したと。そういうことね。

 よくよく考えれば実力もわからないであろう高校生をスタジオミュージシャンしてまともな選考もしていないのに起用とかはしないよな。なんなら俺面接しかしてないし。あれって面接と呼べるかもよくわからないですしおすし。

 

 

「……346プロさんは、なんで俺を選んだんでしょうか。正直俺よりもベースが上手い高校生なんて、探せばいっぱい出てきそうだし」

「それは……」

「ベース? まっさんが持ってるそれってギターじゃないの?」

「李衣菜ちゃんが持ってるのとは違うのでしょうか……」

「あー、これはベースだよ、ギターとはまた違うねぇ」

 

 

 ケースをポンポンと叩くと、さっきまで閉じっぱなしだったベースケースのチャックを端から端まで一気にスライドさせて、中身を取り出す。

 赤と白のボディからすらっと伸びる長いネック。ネックの先端からボディの端にまで、長くて太い弦が5本、ピシッと張られている。

 

 

「わぁ、ギターとそっくり!」

「細かいところは違うんだけどね」

 

 

 俺も初心者の時はギターとベースの違うなんかわからなかったし誰だって最初はそういうものだろう。

 足を組んでボディの凹んだ部分を右の太ももに乗せる。左手はネックに軽く添えて、右手の指で下から上へ。5、4、3弦と弾いてみせる。

 

 アンプをつないでいない生音のエレキベースでも、案外良い音は出るんだよね。少し生音独特のカッという弦の弾かれる音とともに、ベース独特の低く響くような音色が鳴る。

 

 

「おぉ……なんか、様になってる!」

「夏樹ちゃんとなんだか似てます!」

「一応、これでここに入ったからね」

 

 

 夏樹ちゃんってよくテレビでギターを弾いてる子のことだった気がする。名前をなんとなーく覚えている。間違ってたら悲しいな。

 

 にししと変な笑い声を出しながら、調子に乗ってマリオのBGMを弾いたりしてみる。

 ベースでなんか弾いてと言われたときの定番はこれだよな。マリオの地下BGM。ギターだったらMステのアレを弾けばいいし、やっぱ軽率に人を抹殺することのできる『なんかやってよ!』への対抗策は必要なんやなって……。

 

 

「松井さんにはシンデレラプロジェクト内で予定されている楽曲も担当していただこうかと思っております」

「俺が?」

「それってつまり、光が私たちの歌う曲を演奏するってこと?」

「はい、そういうことになります」

「でもシンデレラプロジェクトって、アイドル部門のこれからを背負う大事なプロジェクトなんじゃ……」

「だからこそ、です」

 

 

 それじゃあまるで、俺がこの会社の未来を背負う一環みたいになっとるやんけ。というかこの人たち俺の演奏とか聞いたことあるっけ??? 

 俺ってこの会社に来てからちゃんとした演奏見せてないんだけど。本当に大丈夫なの? なんなら話の進みが異常すぎて、俺未だになんかドッキリなんだと頭の片隅にずっとおいてあるよ? 

 

 

「俺がシンデレラプロジェクトの……」

「受けて、頂けますか?」

 

 

 バタン!!!!! 

 

 

「ちょーっと待つにゃあ!!!!!」

「あっ」

「うわびっくりした」

「それ本当にびっくりしてるの?」

「割と」

「みくちゃん! レッスン終わったんですね!」

 

 

 そこそこ重かったはずの扉を爆音鳴らしながら盛大に入場をしてきたのは、ジャージ姿の謎のショートカット少女。

 誰だあんた! てか後ろの方にそこそこ人数いる! しかもみんなジャージとかやんけ! 

 

 

「他の子は今日お休みなのに私たちはしごかれるんだもん……勘弁してほしいよー……」

「李衣菜チャン! 今はそんなこと言ってる場合じゃないにゃ!」

「みくちゃん……私たちもとりあえず休ませてもらうね……」

「かな子チャンも智絵里チャンもダメーッ!」

「なんなんやこいつ……(困惑)」

 

 

 にゃあにゃあ言ってる女の子の横からぐで〇まみたいになってる他の三人の女の子が俺なんかには目もくれず部屋の中に入ってくる。おいおい、チームワーク取れて無さすぎだろ。

 にしても、なんか面白そうなのがきたな。なんかこいつはいじり甲斐がありそうだ(ゲス顔)




この前久々に泣いたのですが、原因はまかだみ〇さんのアンテ実況でした。
アンテは泣けますね。未プレイですがいつか自分でやってみたいものです。ちなみに一番好きなBGMはDummy!だったり。異論は認める


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大阪の人間のお笑い適正の高さは異常

どうでもいい話なんですけど、実は私って方言フェチだったりします。
色んな方言を聞いてるとめちゃくちゃ落ち着くので、みんな標準語をかなぐり捨てて暗号だけで会話して欲しいと常日頃から思っています。


 

 

「Pチャン! みく達なんにも聞いてないにゃ! どーゆーことか、キミにもちゃんと説明してもらうにゃ!」

「みくちゃん! 猫耳猫耳!」

「あわわわ!? みくの耳はどこー!?」

「おもしれー女」

 

 

 部屋に入ってきたと思ったらいなやプロデューサーさんになんか詰め寄ったり猫耳? 探してたり騒がしい女だな、オイ。プロデューサーさんも困ってんだろうが。ほら、首元スリスリしてる。

 プロデューサーさんってよく首元すりすりしてるけど癖なのかな。なんか珍しい癖だな。

 

 にしても初対面の男がいるのに騒がしい人だ。品性ってものを知らないのか、品性ってもんを。まぁ、俺はそういうの全く気にしないしからいいんだけど。なんなら普通よりも色々と面白そうだからそういうのは好きなんだけどね。

 

 

 

「幼馴染くん、みくちゃんのこと知ってるんですか?」

「いや、全く? 見たとしても覚えてないかも」

「に゛ゃ゛!?キミ! 今失礼なこと言ったでしょ!」

「安心しろよ。初対面の人に指差して叫び散らかしてるあんたの方が多分よっぽど失礼や」

 

 

 猫耳をしっかりと装着してもなお、全く衰えることのないマシンガントークを一人で繰り広げていらっしゃる。

 多分この子あれだな。一人で勝手に漫才をするようなタイプの女の子だな。一緒にいたら面白そうだけど、初見の人はドン引きするタイプだろう。実際に今俺若干引いてるし。

 

 

「失礼も何もないにゃ! さっきの話! ちゃんと説明してもらうにゃ!」

「あっ、でも俺あの人のことは知ってるかな」

「……へ? 私?」

 

 

 俺が顔だけくるっと回転させて視線を向けたのは、始めて俺が346プロに来た時にリーゼントの女の子にくっついてた小柄な女の子。

 急にみしらぬ男に視線を送られたその子は、タオル片手に素っ頓狂な顔をしている。

 

 

「そうそう。関ジ○ムかなんかで金髪のリーゼントの女の子と出てたでしょ?」

「あー! 出てたよ出てた! あれ見てくれたの!? 嬉しいなーっ!」

「話をそらすにゃー!」

 

 

 ギターの機種によっての音色の違い的な回で、ベージュの髪色をしたショートカットの女の子がリーゼントの女の子に子犬みたいに懐いていたのをすんごい覚えている。

 あと、めちゃくちゃにわかでゲスト的な立ち位置としてはうってつけの立ち回りをしていたのも覚えている。そっち側で呼ばれたわけではなさそうだったけど。

 

 

「私、多田李衣菜って言うんだ! よろしくね!」

「松井光、高校二年生。よろしくのぉ」

「高二なの? 同い年じゃん!」

「マジ? うっわなんか感動するわ」

「わ、私も高校二年生です!」

「年齢の話はどうでもいいの! 卯月チャンも乗らない!」

 

 

 いやー、女子高生と女子中学生が中心だと思っていたとはいえ、やっぱり同級生の子がいるとなんか一体感あるよな〜。どうしても後輩とか先輩の女の子になると気を使っちゃうし。まぁ仲良くさえなれば年上も年下も全く関係ないんだけどね。

 

 

「光もPも、このままだと話が進まないから」

「えー。もうちょっと遊びたかったー」

「ねー」

「みくで遊んでんじゃないにゃ! 終いにゃ怒るで!」

「あっ、語尾消えた」

 

 

 イントネーションが完全に関西の人だったな。成程、お笑いセンスがめちゃくちゃ高そうなのも理解出来る。

 関西人だからって面白い人ばかりだと思うなってアレ。全員がそういう訳では無いだろうけど、絶対に関東の人間よりも面白い人間の比率は多いよな。

 

 

「まぁ説明と言ってもなぁ」

「松井さんにシンデレラプロジェクトのベースを担当していただくと言う話だったのですが……」

「そこ! 何処の馬の骨ともわからない新人にみくたちの大切なデビュー曲を担当させるなんて絶対に許さないにゃ!」

「確かに」

「確かにじゃないにゃ! キミはそっち側の人間でしょ!」

 

 

 そんなこと言われたって、一人漫才娘の言っていることだって俺理解できるし。普通に正論だと思うし。そりゃあそう思うよなって感じだし。俺だっていいんか本当に? って感じだし。

 でもそんな大声で会社の方針に文句言えるのすげーな。レジスタンスかよ。

 

 

「んなこと俺に言われたってなぁ」

「まぁまぁ、みくちゃん。ちゃんと会社側にも考えはあるんですよ?」

「考えって言われたって納得いかないにゃ!」

 

 

 そんなこと言われたって仕方ないじゃないかぁ、的な感じで頭をぽりぽりしていると、さっきまでニコニコしていただけの千川さんが急に介入してくる。それもニコニコしたまま。なんか怖いんだけど。

 

 

「つまり、松井さんのことをどこの馬の骨ともわからない人間から、みくちゃんのデビュー曲を任せてもいいと思える人間になればいいんですよね?」

「それはそうだけど、そんなの無理にゃ! だって新人さんだし!」

「お前だって新人ちゃうん?」

「私たちまだまだみんな新人だよ〜みくちゃん」

「二人ともうるさいにゃ!」

 

 

 図星なんかい。そりゃあシンデレラプロジェクトって言う企画自体、新人さんを集めた企画って言うからな。この一人漫才娘も新人なのだろう。死ぬほどバラエティ映えしそうなポテンシャル持ってるけど。

 

 ここでふと、俺の中に一つの疑問が思い浮かぶ。そんな大したものでもないけど。

 

 

「ここにいる人って、デビュー曲とかまだなんですか? 多田はテレビにも出てましたよね?」

「あれは特例だからね〜。なつきちがテレビに出るって時に私もなぜか呼んでもらったんだよね」

「それに346プロはある程度の実績がないと簡単にCDは出せない会社ですから……」

「こんなでかい会社なのに?」

 

 

 それは流石におかしいじゃろう。

 本社が城みたいになってる上に、本社じゃない方だってこんなに馬鹿でかい会社なのに。アイドル部門しかないわけでもなかろうに。

 

 

「そこで専属のスタジオミュージシャンが不足している、と言う話になるんです」

「嘘でしょ。それだけでそんな領域まで来てるの?」

「うちの会社の方針で特に楽曲には手を抜かないようになっていますので……どうしても少数精鋭と言う形に」

「そんなありえん話ある……?」

「それが実際にあるからこうなってるんですよねー」

 

 

 千川さんとプロデューサーさんと言う346プロ側の会社の人間お二方がなんだかとっても負のオーラを纏っている。そりゃあ出せるもんならとっくにデビュー曲出してあげたいよな。ごめんなさいね。

 普通に地雷原踏み抜いちゃったかもしれんわ。色々デリケートな問題だよね、そうだよね。こう言う事態にもならないと俺のことを雇ったりしないよね。

 

 

「このこと自体は常務もかなり問題視していまして……長い目でも短い目でもこのアイドル部門の問題を解決するためにこう言う手法を取らせていただいている形です」

「なんか余計にプレッシャーが強くなってきたわ……」

「まっさん? なんか顔色悪くない?」

「光って意外とプレッシャーに弱いもんね。昔は私を目の前にすると顔をよく青ざめさせてたし」

「その話やめて。若干の黒歴史なの」

 

 

 昔はマジで凛が怖かったの。今と相も変わらず可愛らしかったのだけど、それでも奥になんか冷たい何かを感じたから。あとこの子、昔は年上の俺に対しての敵対心が何故かマックスだったから。

 

 

「みくちゃんの言い分もわかるけど、これも最終的には私たちの為なんじゃないかな?」

「むぅ……んむむむむむー!」

「可愛いかよ」

 

 

 多田のなんとなく人ごとっぽい言い方でのかいしんのいちげきに、一人漫才娘も反論の余地がなくなったらしい。そのままほっぺを膨らませてジタバタし出した。

 いや、わかるよ? 正論だってわかってても気に入らんもんな。あるある。

 

 

「光」

「すまん」

 

 

 凛ちゃん、相手はアイドルなんですよ? いくらぶりっ子っぽいモーションとはいえ、アイドル相手に可愛いと言わないのは失礼じゃないんでしょうか? はい、あなたが嫌と言うからダメですね()

 

 

「そ・こ・で・です!」

「うわっ、ビックリした!」

「い、いきなりどうしたの? ちひろさん」

「この計画が出た時点で誰かしらから反発の声は出ると予想していましたので、ちゃんと秘策を練ってきたんですよ♪」

「秘策と」

「はい、秘策です!」

 

 

 それがあるなら早く出して欲しかったんだけど。

 それにしても秘策とはなんなのだろうか。金か? やっぱり最後は金なのか? カァーッ! やっぱり社会は汚いねぇ! 

 あっ、違う? ドラマとかでこう言うのあったからさ。こんな感じの賄賂的な何かかと思ったんだけど。

 

 

「つまりですよ! 松井さんのことをみんなに知っていただければいいんですよ!」

「ほうほう」

「人のことをよく知る1番の近道は、その人とより近い位置で時間を過ごすことだと思うんです! 実際に凛ちゃんは松井さんのことをよく知っているんじゃないですか?」

「……まぁ、卯月とか未央よりは知ってると思うよ」

 

 

 そりゃ科学的には俺と凛は幼馴染ってやつだしな。何だかんだ言いつつもそこらへんの人間よりはお互いのことを知っているはずだ。多分。

 お互いのことを知っていると言うのがどこからどこまでの話なのか定義されてないから何ともいえないんだけど。

 

 

「つまり! 松井さんにはみくちゃんたちと過ごしてもらえればいいんですよ!」

「それはつまり、これから一緒に仕事を共にすると」

「いいえ違います! 文字通り『過ごして』貰うんです!」

 

 

 千川さんの言っていることが理解できない。一人漫才娘と顔を見合わせるも、それでも理解ができない。

 なに、過ごすって。どう言うことよ。

 

 

「幸いなことに、346プロには大きくて立派で綺麗な女子寮があるんです!」

「はぁ」

「シンデレラプロジェクトに参加している方でも女子寮通いの方はかなり多いんですよ?」

「みくも女子寮通いだにゃ」

「わ、私もです……」

 

 

 一人漫才娘とツインテールのこれまた小動物を思わせる小柄な少女が小さな声で手をあげる。全然話に入ってこないから興味ないのかなって思ってたけど、ちゃんと話聞いてたんだね。

 

 

「スバリ! 松井さんにはこれからですね!」

「待って千川さん。多分、今から怖いこと言うでしょ、待って。落ち着いて千川さん」

「346プロの女子寮で生活していただきます!」

 

 

 はい。

 

 俺の人生終わりました。お疲れっした。うっす。

 

 これからは女子寮に住まう変態として、犯罪者として、職場のアイドルから白い目で見られて生きて行きたいと思います。

 泣いたわ。




評価の色がつきました! ありがとうございます!
一日でお気に入り100増えてビビり散らかしました。あと感想も沢山来てて泣きました。評価も入っててチビりました。
これからもよろしくお願いします!


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倫理観を捨てた魔王は無敵

☆10評価が入って喜びで転げ回ってたら☆0評価にスターバーストストリームされました。そしてあまりにも☆0にされた理由がド正論すぎた結果、確かにと血の涙を流しながら少し凹みました。
これ、約3時間前の出来事です。台風怖かった。


 

「千川さん。ひとつ聞いていいですか?」

「はい!」

「女子寮ですよね?」

「そうです!」

「女の子しかいませんよね?」

「もちろん! 学生のアイドルの子しかいません!」

 

 

 どんどん血の気が引いていく。

 しかも今さ、アイドルしかいないって言わなかった? しかも同年代の学生の。

 

 

「俺、家からここまで通える距離なんですけど」

「でも遠いんじゃないですか? 女子寮の方が通いやすいですよ!」

「いや、俺の家は凛の家の隣なんでこいつと通う距離は変わらないです」

 

 

 まぁ遠いといえば遠いよ。今日もここまで来るのに電車で一時間かけてきたし。凛って大変なんだなって思ったよ。

 

 

「そもそも俺、学校がありますし」

「こちらで勝手に調べてもらいました。松井さんの通ってる学校ですが、女子寮から通った方が近いですよね?」

「なんで分かるんですか(困惑)」

 

 

 怖い怖い! そこまで調べたんですか千川さん! 

 そりゃ立地的にはここは強いですよ! 大都会のど真ん中ですしね? とは言えよ。立地的にいいね! よし住もう! とはならない訳よ普通。

 

 

「というか一緒に住むアイドルの子達の気持ち考えてくださいよ! 普通に嫌でしょ! 」

「そ、そうにゃ! いくら会社の方針でもそれは横暴だにゃ!」

「お、男の人と同棲……同棲……はぅ」

「うわわっ!? 智絵里ちゃーん!」

「大丈夫です! そのうち慣れます! この世界に常識なんか通用しないんですよ!」

 

 

 んな無茶苦茶な。

 そもそも自社の大事な大事なアイドルを獣みたいな男子高校生と一緒に住まわすなんて行為が普通じゃない。いいのかそんなんで。てか冗談だよね? 流石に冗談だよね? 

 

 

「プロデューサーさんもなんか言ってよ!」

「そうだよ。Pもなんか言ってよ」

「……申し訳ありません。こちらにも事情がありまして」

「」

 

 

 縦社会こわい。プロデューサーさんが今までで一番の困ったオーラを出してるやん。

 もっと上からの圧力だって言うのかよ。天竜人ォ! 

 

 

「凛もなんか言えよ! 俺が近くから居なくなったら嫌だよな!?」

「いや、それに関しては別に」

「そこはせめて嫌だって言ってくれよおおおおおおおおおおおお!!!! 

「最近あんまり直接話してなかったし」

 

 

 確かに言われてみればそうだけどさ? 物心着いてから隣の家で長いこと一緒にやってきたジャマイカ。僕は悲しいよ。俺だって凛がアイドルになるって言ったとき、ふーんとしか思わなかったけどさ! 

 あっ、それだわ。それとおんなじだわ。距離近すぎてなんかあっても特に何とも思わなくなるやつだわ。

 

 

「てかそもそもそんなの会社が許しているんですか!? なんか間違いあったらどうするんですか!」

「会社からの許可もなにも会社全体の方針ですし、それだけ急務なんです。間違いがあったその時は……ね♪」

 

 

 なんでちょっと嬉しそうな顔してるんですか。笑い事じゃないんすよ! 

 てかありえない! 女子寮ですよ!『女子』寮! 

 

 

「そもそも風呂とかどうするんですか! トイレも!」

「安心してください。 346プロの女子寮は元々あったホテルを改修したものなので、トイレもお風呂もちゃんとありますよ! まぁ、昨日までは両方とも女性用でしたけど」

 

 

 それって簡単にいえば急造じゃないんですかね……間違えてアイドルの子が入ってきたりしたらどうするつもりなんですかね、ほんま……いや無いとは思うけど。

 

 

「それにです! うちの女子寮はそこらへんのマンションなんかよりも豪華なんですよ! 私も入りたいくらいなんです!」

「でも俺男ですよ」

「……そこらへんは気にしたらダメです」

「そこは一番気にしなきゃダメなとこだろうがよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらがこれから松井さんが生活していただく女子寮になりまーす」

「……えっ、なにこれは」

 

 

 見るだけ! 見るだけですから! なんて言いくるめられて千川さんとプロデューサーさんに連れてこられたのは、女子寮と思わしきとてつもなく立派なホテル。もはやホテル。ただのホテル。

 ただ、すぐ目の前には高級なホテルとかにありがちな石に文字が書いてあるアレに『346プロダクション女子寮』としっかり彫られている。

 

 

「これが寮ですか?」

「はい、寮です!」

「ホテルとかじゃなく?」

「もちろん!」

「どんだけ金あるんすか()」

「稼がせていただいてますから」

 

 

 何がとは言わないですけど、ってドス黒い笑みを浮かべてるように見えるのは俺だけでしょうか。プロデューサーさんはずっと申し訳なさそうだし。

 

 

「取り敢えず中に入ってみます? 今の時間はほとんどアイドルの子達もいないと思いますよ?」

「はぁ……」

「れっつごーです!」

 

 

 一人ウキウキな千川さんの後ろをとぼとぼとついて行く俺とプロデューサーさん。俺たちって将来嫁さんの尻に敷かれるのかな。千川さんがパワフルすぎるのかな。

 

 玄関に入ってすぐにある学校の上履き入れみたいな棚に靴をぶち込む。女の子がよく履くヒールなどに大きさをあわせたのか。学校にある棚よりも一周りくらい靴入れが大きい。

 

 何故か人のいないホテルの受付みたいな所を通り過ぎると、そのまま奥に通される。

 やっぱり広いっすねぇ……。

 

 


 

 

「はい! こちらが光くんの部屋になります!」

「いやもうなんかもう名札付いてるゥー!」

「千川さん……いつの間に……」

 

 

 とてつもなくでかい大浴場や、とてつもなくでかい共用リビングや、とてつもなくでかい食堂などを回った後には最後の目玉。

 まるで前から既にありましたよって雰囲気を出しながら『松井光』の文字がドアの隣に貼りついてる。

 他の部屋にも付いてるからパッと見だと違和感ないのやめてくれ。俺だけ男なんだよ。

 

 

「ささ、どうぞ! 鍵は空いていますから!」

「どうも……?」

 

 

 促されるままお邪魔します、とドアを引く。お邪魔しますであってるのか。あってるわ。

 

 中は窓から差し込む陽の光だけで照らされている。と、思ったら千川さんがすぐ横にある照明のスイッチを押してくれた。

 足元見てなかったけど、ちゃんと土間もあるのか。まぁ今スリッパ履いてるからそのまま上がってもいいんだけど。俺は部屋だと裸足の方がいいからスリッパは脱ぐか。

 

 

「風呂もあるんだ」

「はい。大浴場だけではなく、しっかりと個人用のも部屋に用意してありますよ」

 

 

 バスルームもめちゃくちゃ綺麗だ。ホテルにあるトイレとバスルームが一緒になってるのを想像していただけるといいだろうか。まさにアレ。

 元々ホテルだと言ってたし、それの名残なんだろう。

 

 

「キッチンまで。しかもちゃんとしてる」

「今なら冷蔵庫などの家電製品も付いてきますよ!」

「神か?」

 

 

 家のキッチンに比べると少し狭いが……マンションならこんなもんだろう。マンションじゃなくて寮だけど。

 あれ? ここ寮だよな? 

 

 

「それでこちらがリビング兼寝室ですね」

「やっぱり広いっすね……俺の家の部屋よりも広い」

 

 

 ベッド、テレビ、備え付きのでっかいクローゼット。それに加え机も置いてある。

 

 うん、ヤバいな。今のところ完璧すぎる。一人暮らしするには完璧すぎる環境では? 実は一人暮らしはずっとして見たかったし、なんなら高校でたら自分も両親も一人で暮らす気満々だったし。

 ご近所さん全員アイドルってのがあまりにもネックすぎるけど。

 

 

「……ん? あのギターってもしかして」

「光さんのですよ? お先に持ってきました」

「お先に、とは?」

「後から他の荷物もどんどん届きますよ!」

「?????」

「そんな訳でいかがでしょうか! もちろんWiFiも完備してますし、災害があってもここの耐久性はピカイチですので安心ですよ!」

 

 

 圧が強い圧が強い! 近い! そして近い! 

 というかこれもう移動の準備進めてるよね? 先に貴重品のギター持ってきただけじゃねこれ!? 

 

 

「まずは一週間から! ね? ね!?」

「そんな体験入部みたいな……」

「気に入ったらそのまんま入ってもらっても出てってもらってもいいですから!」

「ま、まぁそれなら……」

「はい」

「えっ」

「言質、取りました♪」

 

 

 ニコニコ顔の千川さんがすっと顔の横に持ってきたのは、黒くて小さいマイクみたいな穴の空いた機械。ボイスレコーダーとか僕本物見た事がないんだけど。現物? 

 んーっと、あれ? 録音済み? 

 

 

「松井光さん。これからの346プロアイドル部門、よろしくお願いしますね!」

 

 

 これもしかして、終わった? 

 お願い死んでらぁしちゃった?




お気に入り700突破致しました! ありがとうございます!
やはり日間ランキングに入ると勢いがヤバいですね。この世は高評価が全てなのでしょうか。いいえ、ジャンボです。ちなみに僕はピノが好きです。


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なんか 京都美人、来た。

この前日間ランキングに乗ったらお気に入りが一日で200ちょい増えました。鬼すぎる。もう片方の小説でもやった事ないのに! ありがとうみんな!

どうでもいいけどこの前久々にすき焼きを食べたのですが、下手な和牛よりも輸入のお肉の方が舌に合ってビックリしました。肉は正義、それ一番言われてるから。


 

 

「お疲れさんでした〜」

「ゴブウンヲオイノリイタシマスー」

 

 

 段ボール5箱分くらいの荷物とその他ベースを置くスタンドやら俺の部屋に置いてあった棚やら、それらを全部わざわざ運んできてくれた引越し業者でもなんでも無い、普通に346プロの若い社員さん達を見送りながら途方に暮れる。

 

 なんで俺の知らないところで勝手に話が進んでいやがるんだ。大人の世界怖い。

 プロデューサーさんが言うには両親からも俺の入寮に関しては了承済みで、荷物も全て親が全部選んでここに既に送ってもらっている、ってあまりにもことがうまく進みすぎてる。母親に抗議の電話をかけたら『元気にハーレム生活送れよクソガキ』って言われたし、どういう頭してんだあのクソババア。

 

 ていうかスタッフさん最後に変なこと言ったな。なんだよ、ご武運をお祈りいたしますって。俺は戦地に向かう武士か。戦場って点はあながち間違ってはなかったわ。

 

 それにしてもだね。

 マジかー。いやー、マジかー。

 

 

「ッスゥー……マジかー」

「いやはや、中々大変そうやねぇ」

「まぁそれなりに」

 

 

 おかげさまでなかなか大変でございますよ。本当に人生何が起きるかわかったもんじゃない。

 あらあら、わざわざダンボールまで開けてもらって荷物出してもらって悪いですねぇ。そんな今日初めて顔を見る人に荷出しを手伝ってもらうわけには……わけには……ん? 

 

 

「ところで、あんた誰ですか?」

「あたし?」

「この部屋には私とあんたしかおらんでしょう」

「言われてみればそうだねぇ。おっ、Switchあるじゃーん」

 

 

 輝くような短い白髪。服から覗くすらっとした手足に綺麗な素肌。例によって整った美人寄りの顔立ち。耳からちろっとかかるピアス。

 

 ここまで来ればもうお分かりだろう。この人、アイドルだわ。

 

 

「自己紹介したほうがいい系?」

「あっ、俺からした方がいい系?」

「そうして欲しい系」

「あっ、そう」

 

 

 なんなんだこの人。ペースを握ろうとしても簡単に乗られるんだけど。この人そういう系の人か? それともめちゃくちゃ適当系か? さっきから〇〇系って使いすぎな系だなこれ。

 

 

「どうも、なんと男子な17歳。松井光でごわす」

「どーもどーも、なんと女性な18歳。塩見周子どすえ〜」

 

 

 バチバチTOKYOの大学生みたいな格好からの京都弁とか違和感マックスのはずなのに、やけに馴染む。なんというか、よく聞くエセどすえじゃなくて本家っぽいきがする。気のせいかもしれんけど。

 

 

「で、そんな塩見さんはなぜここに」

「シューコちゃんでいいよ」

「いや、初対面の人を下の名前で呼ぶとかハードル高s」

「いやー、部屋でのんびりしてたらあたしのPから昨日話した男の子の荷出しくらい手伝ってやれよって言われちゃってね」

「話聞けよ」

「そんで面白そうだから、なんとなく来ちゃった☆」

「さいですか……」

 

 

 

 とはいいつつも他の荷物には目もくれず、Switchとスマ○ラだけを箱から持ち出して着々とゲームする準備をしているように見えるのは僕だけですかね。

 

 この人あれだ。あまりにも暇すぎたところに面白そうなのが飛び込んできたから、とりあえずこの波にはノっておかねぇと損だ! とか思ってここに来たタイプだ。というか、そんなことを遠回しに言ってた。

 俺にはわかるぞ。この適当さ、多分同族だ。

 

 

「それで? Switchの方はどうですか」

「んー、もうちょいかかるかなぁ」

「言っとくけど、プロコンは俺の分しかないですぜ」

「シューコちゃんの部屋に二個くらいあるはずだから、あとで取りに行って来てよ」

「アイドルさん、危機管理って知ってる?」

 

 

 この人、色々と本当に大丈夫なのだろうか。というかやっぱりSwitchする気満々やし。

 まぁ、ええわ。正直こんな事態に急に巻き込まれた側としては、はいそうですかと荷出ししてぐっすりスヤァなんてできるはずがない。最悪荷出ししなくてもベットはデフォルトの敷布団と掛け布団もあるし枕もある。抱き枕がないのだけがギルティだが。

 

 時刻はもう5時を回ろうとしているではないか。むしろここは夜になるまでSwitchを堪能してそのまま周子さんを追い出し、そして疲れ切った頭でぐっすり寝て明日の事は明日に考えるのが正解ではないのだろうか。

 今日は金曜日、明日はみんな大好き休日だ。千川さんからもプロデューサーさんからも、土日ははなにも予定がないので女子寮の方々と親交を深めてくださいと言われている。

 

 嫌だね。そう簡単に地雷なんぞ踏んでたまるか。俺は飛んで火に入る夏の虫じゃないんだ。明日は部屋にこもって荷出しして完璧な一人暮らしの体制を整えた末にニート生活を満喫してやる。

 

 よし、完璧なプランじゃあないか。そうと決まれば、早速行動開始だ。

 

 

「周子さん。Switchの設定、俺がやっとくから先にプロコン取ってきてくださいよ」

「しゃーないなぁ。わかったわ、譲ってあげる」

「なんか負けた気がする」

「気のせいだって」

 

 

 ご機嫌な鼻歌を歌いながら出て行く周子さんを尻目にゲス笑いを浮かべる。

 計画は完璧。これでワシの計画は崩れるまい。

 

 とりあえず千川さんは一週間体験で入寮って言ったんだ。それならここで一週間。なんとか他のアイドルとの接触を最大限に減らして乗り切り、変態の称号を消し去ってから346プロに貢献させていただこうではないか。

 

 

「取ってきたで〜」

「はやっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦決行から一時間。周子さんのことをうまいこと取り込むことに成功した光、

 そんな彼は現在。

 

 

「お先失礼しますえ〜」

「あー! 紗枝はん速いー! って痛っ!? 誰ぇ! 今赤甲羅投げたん!」

「俺だよぉ! おっさきー!」

「絶対許さん!」

「周子はん、そない言葉遣いはあきまへんでー」

 

 

 周子さんと謎の着物美少女と3人でめちゃくちゃマ○オカートをしていた。超楽しい。

 

 ところで今周子さんの隣にいる少女。

 デフォルトから着こなしてる服は、今は祭りや年末でない限り絶滅危惧種となったKIMONO。俺どころか、周子さんから見ても明らかに可愛らしいサイズな身長。そして腰まで届くかというような長くて綺麗な黒髪。そしてびっくりするほどのコテコテの京都弁。舞子さんかと最初勘違いしたわ。

 簡単に言うならば、京都をそのまんま美少女化したような少女。

 

 この謎の着物美少女、名を小早川紗枝というらしいの。例によってアイドルらしい。

 誰だチミは! って話を振ったら、周子さんと違って懇切丁寧にちゃんと自己紹介してくれた。ありがたい。

 

 

 

「んー! もっかい! 二人とももっかい!」

「しゃーないなぁ」

「構わん、続けろ」

 

 

 手伝ってくれるのはありがたいんだけど、なんで紗枝ちゃんがここにいるのって話だよね。

 

 これには深い理由なんて何もなくて、単にサボってるであろう周子はんの分を手伝いにわざわざ来てくれただけなんだけど。

 そんな紗枝ちゃんもミイラ取りがミイラになってしもうたわけですけどね。マ〇オカート is GOD はっきりわかんだね。

 

 

「それにしても、まさかここに男の人が来るなんてなぁ」

「どーせちひろさんに言いくるめられたんでしょ。それに、シューコちゃんみたいな可愛いアイドルとひとつ屋根の下で暮らすチャンスをみすみす逃す人もいないしね〜」

 

 

 言われてみれば、それもそう。

 けど俺はクラスにいるドルオタみたいにアイドルのことを知っている訳では無い。それこそ知っている人といえば、凛とリーゼントのギターの人と李衣菜と高垣楓と輿水幸子くらいだ。

 あとはテレビで見かけたことはあれど、ガッツリ名前は覚えちゃいない。李衣菜もそのタイプだったしな。

 

 

「まぁ、今日直接会うまで周子さんの顔も名前も知らんかったですけどね」

「勿体ないことしてんね〜。もっとテレビ見いや」

「YouTubeしか見ないしなぁ」

「YouTubeにも転載動画あるやろ」

「アイドルにそんな興味ないんで」

 

 

 実際、アイドルには興味の欠片もない。というか某A〇Bのとかジャ〇ーズのおかげで昨今のアイドルという文化に自体あんまりいいイメージがなかった

 なんなら、どーせ口パク集団なんちゃうの? 音楽番組で枠取りまくりやがって、他のを見たいんじゃって思うまであった。真実は如何程かはわからんが。

 

 

「ほな、なんで光さんはここに来なさったん?」

「それらは俺が聞きたいなぁ()」

「女の子嫌いなん?」

「まさか」

「変態やな。こわーい」

「おかしい、こんなことは許されない」

 

 

 極論は酷い。それで何度凛にやられたことか。

 ていうか、今のところ馴染めているのが怖い。向こうがあわせてくれてるんだろうけど。なんなら最初っから俺がここに来るってわかってたような……ん? 

 

 

「二人とも、俺がここに来るの知ってたん?」

「お話は先週からぷろでゅーさーはんに聞かされてましたから」

「私もー。てか、部屋が近い人はみんな知ってるんじゃないかな?」

 

 

 ほーん。なんかの条件が当てはまる人にだけ、早い段階でそういうのが来るかもねって話をしてたんだろうか。それなら前川が俺が女子寮に入るって話の時にあのリアクションをしたのも納得が行く。いや全員に話しとけよって話なんだけど。

 

 

「あれ? でも俺がこの話を聞いたのは今日……」

「そういや光はん、晩ご飯はどうする予定なんどすか?」

「抜こうかなと」

 

 

 だって冷蔵庫にはなんもなかったし。買い出し行こうにも明日まで金もないし。食堂に行く勇気なんてさらさらないし。

 2日くらい飯を抜いても平気だろう。うん、死にゃしねぇよ。大人しく寝てりゃ充分持つ。

 

 

「食堂行けばええやん。お金かからんで?」

「いやいやいや、無理よ。そもそも俺がここにいるって知ってるのは部屋が近い人だけでしょ? ただでさえアウェーなのになんで男の人がいるの……的な目で見られるとか死ねる」

「そうなん? みんな気にしんと思うよ?」

「そんなことは無いから安心してな。てか周子さんと紗枝はんって部屋どこなん?」

「シューコちゃんはここの隣」

「うちはその隣どすえ」

「近っ」

 

 

 道理でねぇ。周子さんプロコン取りに行って速攻で帰ってこれた理由がわかったわ。てことは、俺がここに来るって話をされた人は、ここの部屋に近い人なんだろうか。うーん、わかんね。

 てかこの人が隣人かぁ……なんか心配だなぁ……(失礼)

 

 

「でも晩御飯を食べないのは体に悪いしなぁ……響子はんに頼んでなんか作ってもらいましょか?」

「んー、その子に面倒かけるのも悪いし。大丈夫、俺男だから丈夫だし。知らんけど」

「そんなこと言ってもあたしお腹空いたーん!」

「それは知らんがな。食堂行ってきなさいよ」

「みんなで食べなさみしいやーん?」

 

 

 そんなこと言われたってなぁ……冷蔵庫に何も無いんじゃあなぁ……。

 

 

「ほんなら、ここで作ればええんやないか? うちも多少なら料理できるし、そこの周子はんやって、和菓子店の看板娘はんなんやで?」

「マジかよ」

「まぁ、店で試食品食べてサボってただけなんだけどね」

「いいのかそれで」

 

 

 なんかすっげぇ想像つくわ。それに看板娘ってのも。

 正直周子さんって超がつくほどの美人だし、店はさぞかし儲かったんだろうなぁと簡単に想像がつくな。

 

 

「でもあいにく冷蔵庫が空なのよ……」

「食堂から持ってこればいいじゃん」

「えっ、そんなことできるの」

 

 

 意外な突破口が開かれる。てかここの食材勝手に使っても大丈夫なんだろうか。自由が過ぎないですかね……

 

 

「まぁまぁ、ここは寮のセンパイに任せておきなって。何が欲しいだけ教えてくれたら持ってきて見せよう」

「おぉ、頼もしや。じゃあ俺が料理は作るよ、全部やってもらうの嫌だし」

「嫌って……光くん料理できるの?」

「こんなんでも一応料理好きなんですよ」

「ほんなら、美味しい晩御飯。期待してますえ〜」

 

 

 なんかやけにプレッシャーかけられた気がするんだけど。

 まぁいいだろう。これでも料理の腕にはそこそこ自信があるんだ。京のはんなり娘と適当姉さんを唸らせてやろうじゃないの。




サブタイトルですが、某番組のパロディでございます。弄ったら語感が悪くなっちゃった()

そんな訳でお気に入りも900突破、総評も1000になりました。
わしは昔から評価と感想をあとがきでオネダリする乞食スタイルなので、皆さん良ければぜひお願いします!


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オカンの味、カレーか肉じゃが説

何がとは言いませんがクックパットで調べました。自己流のやり方でええかなとは思ったんですけど、間違えてたら主婦の方々から焼肉にされかねませんのでね。
この世でいちばん怖いのは主婦とGだと思います。


 

 圧力鍋の圧を抜いて鍋の蓋を開くと、湯気の奥にたくさんの具材が見える。煮汁の色に軽く染まったじゃがいもに箸を通してみると、箸は簡単にじゃがいもを貫く。

 うむ、柔らかい。やはり圧力鍋は正義か。

 

 

「出来た」

「待ってましたー!」

「もうできはったんかいな……」

「圧力鍋は正義なのだよ」

 

 

 豆腐と油揚げの入った赤だしのお味噌汁を器に取り分けて、紗枝ちゃんに手渡す。

 それにしてもここが二口コンロで地味に助かった。やっぱり料理をする上で、同時進行は基本だからな。

 

 材料を取りに行って貰う前に、二人に何が食べたいと聞いたんよ。

 そしたら和食がいいって二人揃って言うもんだから、短時間で簡単な和食……うーん、肉じゃが!w という安直な考えの元、今日の晩飯は肉じゃがとお味噌汁にした。圧力鍋さえあれば時短なんか簡単に出来るからな。

 

 肉と人参とじゃがいもと玉ねぎを切って鍋にぶち込んで炒める。後は醤油やら砂糖やらみりんやらで作った煮汁を入れてちょちょいのちょいよ。

 お味噌汁に関しても今はだしパックという時代の中で生まれた超便利な代物があるからな。

 

 最低限の調味料しかないからTheって感じの味になったわ。まま、人に出すものならこれがちょうどいいだろう。

 白いご飯に関しては周子はんがにこにこ顔でぱくってきてた。何から何まで厨房から持ってきてたけど、大丈夫なんだろうか。後で俺が怒られたりしないよな?

 

 

 

「はよ食べよー。もうお腹ペコペコやわー」

「周子はんも自分の分運んでや」

「はーい」

 

 

 これもうどっちが年上なのかわかんねぇな。

 それにしても備え付けの机。3人で使うにはせめぇと思ったけど。案外そんなことはなさげだな。

 あと、紗枝ちゃんが着物だからってのもあるかもしれないけど。3人で肉じゃがを囲んでご飯を食べる準備をしてると、なんか昭和の家族って感じがする。床は畳じゃなくてフローリングだし、みんなそこに直で座ってるけど。

 

 てか普通にこの部屋も広いし備え付きのベッドも机もテレビもデカくていいやつなんだよな。めちゃくちゃ金かけてくれてる。正直超助かるし超快適そう。まだここで寝たことすらないけど。

 

 大きな皿にごそっとよそわれた肉じゃがを机のど真ん中に置く。安定のメインのおかずはセルフだから自分の分は自分でとってねってやつだ。取り分けるのめんどいし、みんな学生だからこんなんでいいのだ。ほら、周子さんも実質学生みたいなところあるし。

 

 

「ほな、いただきます」

「「いただきまーす!」」

「肉じゃがもーらい!」

 

 

 ん〜、とうなりながらパクパクと口の中に肉じゃがとご飯を持って行く周子はんよ。いい食べっぷりだ。これだけ美味しそうに食べてくれたら、こっちも作ったがあるってもんよ。全然作ったのに時間かかってないんだけど。

 それに対して紗枝ちゃんの方はなんというかまぁ、お行儀が良い食べ方をしている。正座だし、背筋ピーンってしてるし、育ちがいいってレベルじゃないぞこれ。もはや大和撫子魂を薄めずにそのままぶち込まれたみたいになってる。

 

 てか周子さん肉ばっかとるやん。食べ盛りの男子中学生かよ。じゃがいもだって玉ねぎさだって味染みてて美味いんだから食いなさいよ。

 

 

「京都の女の人ってみんなこんなおしとやかな感じなんかな」

「紗枝ちゃんはよくできた子だからねー」

「周子はんも、これでもええところあるんどすえ?」

 

 

 それはわかるよ。

 暇つぶしでここにきてくれたとはいえ、なんだかんだ材料とか持ってきてくれたし。全て自分の為だしと言われればそれまでかもしれないけど。なんだかんだ面倒見のいいお姉さん感はあるよね。

 何しろ顔がいいから何やってもよさそう(ド偏見)

 

 

「あれ? 周子さんって出身どこなの?」

「あたしは京都。紗枝ちゃんと一緒だよー」

「マジか」

「紗枝ちゃん並みにコテコテの京美人なんて絶滅危惧種だって」

 

 

 言われてみれば、紗枝ちゃんみたいなこれぞ京都の女の人ってのを絵に書いたような人はもう見ないしな。これぞ関西のおばちゃん!っていうようなおばちゃんは中学の時に大阪で見たけど。

 マジで実在するんだよな。トラ柄の服を着て、髪の毛は少しパンチパーマみたいになってて、コテコテの関西弁で声がデカくて、それでいてめちゃくちゃ面倒見のいいおもろいおばちゃん。飴もらったわ。

 

 

「そういや紗枝ちゃんがあまりにも完璧な京の人すぎて気がつかなかったけど、周子さんもちょくちょく関西弁出てた気がするわ」

「意図的に使ってないわけではないんだけど、どうしてもたまにぽろっと出てきちゃうよね。特にこの子といる時は」

「別に悪いことやありまへんえ〜」

「そうですよ。方言女子って可愛いじゃないすか」

「もしかして口説いてる?」

「だとしたらファンやらに殺されますよ」

 

 

 俺はここでは絶対に恋愛しないって決めてるんだ。

 まぁ、俺に限って一目惚れなんてことは絶対にないだろうし大丈夫だろうけどな。今まで16年間生きてきて一度も一目惚れをしたことがなかった俺を舐めるんじゃねぇ。

 

 女の子を見て可愛いとは思えど、小さい頃から美少女の凛を見ているおかげで女の人に一目惚れをするということがないんだよね。

 凛、マジで顔は最強クラスだからな。なんなら俺は中学の時点でなんでこいつはスカウトとかされないんだとずっと不審に思ってたから。こいつ顔は完璧なのに世間のスカウトは一体何を見ているんだ、節穴なのかと思ってたから。

 

 

「こんな可愛いアイドルを目の前にして口説かないとか、光くんには愛しの彼女でもいるの?」

「残念ながら彼女いない歴=年齢ですよ」

「光はん、いけめんやと思うのに意外やなぁ」

「彼女欲しくないの?」

「いやー、付き合ったとしても女性のこととかよくわかんないですしね〜」

 

 

 デートとかまじで何をすればいいのかわかんないしな。

 ほんとにどこ行けばいいの?千葉のネズミの国にでも行けばいいの? 普段滅多に行かないからわかんないけど、あそこってめちゃくちゃ入場料とか高いんじゃないの? 普通に他の遊園地でいいの? 動物園とか水族館とか? ぼくわかんない。

 

 

「ええ感じの人もおらへんの?」

「いい感じって……女友達は何人かいますけどね」

「それじゃあダメそうだね」

「ダメそうってなんすか、ダメそうって」

「女友達として見ている時点でその先は無いのだよ、少年」

 

 

 そういうものなのか。でも凛の事は友達的なよくわからん概念として見てるもんな。そう思うと納得がいくかもしれん。

 

 

「女の子って難しいんですね」

「そんなもんどすえ〜」

「というか周子さん。肉がもうほとんどない気がするんですけど」

「気のせいじゃない?」

「気のせいじゃないんだよなぁ……」

 

 

 いつのまにか二杯目の白米に手をつけながら知らん顔している周子さんをジト目で睨みつける。が、当の本人は知らん顔だ。というかそんなに白米持ってきて誰が食うんだと思ったけどあなたが食うんですね。そんなに食ってるのになんでそんなにスタイルがいいのだろうか。

 やはり女の子は不思議な生き物なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでしたー!」」

「ほな、後片付けはうちがするもんで、光はんはゆっくりしてな」

「あっ、どーもどーも」

 

 

 腰を上げて台所に向かう姿を見ると、昔の日本の男はこういう景色を見てたんだろうなぁと思うね。着物っていいものだわ。

 

 

「……それで、周子さんはなにしてるのかな?」

「ん〜? 何って、ス○ブラの準備だけど」

「まだやる気なんですか」

「当たり前でしょ」

 

 

 周子さん、さっきからゲームしては飯食ってすぐゲームって……ニートかな? アイドルとはいえ、やっぱりただの女の子なんやなって……

 

 飯食ったし、運動がてら荷出しをしようと思ったんだけど……まぁいいか。とりあえず寝る前に抱き枕とクッションさえ出せればおれはそれでかまわんし。

 昔みたいに凛がベッドに転がり込んできて寝ることももう無くなったし、抱き枕とクッションに囲まれてないと寝るとき不安になるんだよ。ギバラの部屋みたいにしたいんだよ。メンヘラ女の部屋みたいになれば完璧なんだよ。

 

 

「周子はん、あんまり遊んでばかりやとあきまへんえ」

「えー、いいじゃないの別に〜」

「光はんも今日きたばっかで大変なんやから。そもそもうちらは手伝いに来たんどすえ?」

「そういえばそうだったね」

「忘れてたんかい」

 

 

 いや、忘れているっぽいよなーとは思ってたけど。多分遊ぶしかなかったんだろうけど。

 それでいいのか、アイドル塩見周子。俺は周子さんがどんだけテレビに出ててどんなキャラで通してるのかは知らんけど。これを見たファンは泣かないかね。

 

 

「て言ってもさ。あとは何が残ってるの?」

「何がって?」

「そりゃあ荷物よ。自分で持ってきてたんでしょ?」

「いや、親が全部ぶち込んだんで。なんなら俺まだ家に帰ってないですし」

「そんなことあるんだ……」

「俺もいまだに信じられないんだけどね」

 

 

 周子さん、あなたがそんな人を哀れむような目で見ないでくれ。能天気でいてくれた方が助かるんだ。じゃないと俺が悲しくなる。

 それにしても、考えれば考えるほどおかしいなこの状況。絶対にどっかに高い点あったはずだろ。一週間の仮入寮で妥協した俺がバカなんだけど。

 

 いや、待てよ? 俺が仮入寮するって決まったのは今日のしかも昼だよな? なんでそのあとすぐに荷物が届いたんだ? いつから親とちひろさんは準備してたんだ?

 あれ? ……あれぇ???

 

 

「それじゃあ紗枝ちゃんも言うことだし。パパッとしちゃいますか〜」

「えっ、本当にやってくれるんすか」

「元々そのために来たんどすえ?」

「そーそー。一応センパイとして、後輩くんの面倒はしっかり見ないとねー」

 

 

 ヤバい、軽く泣きそうなんだけど。俺は今、全力で人の温かみを感じてるよ。

 急に女子寮に押しかけてた意味のわからない赤の他人の男子高校生の荷出しを手伝ってくれるだなんて、冗談抜きで天使か? 天使なのか?

 

 このあとめちゃくちゃなんのイベントもなく、荷物全部一時間くらいで出し終えた。ちなみに、荷物の中身は食器やら服やら抱き枕やら大量のぬいぐるみやら時計やらPS4やらその他諸々でした。なんの面白味もないね。

 

 ごめん。俺のパンツを周子さんと紗枝ちゃんに見られるってイベントがあったわ。周子さんは全く反応しないで『これ、何処に入れとく?』って聞いてたけど、紗枝ちゃんの方は普通に恥ずかしがってた。

 ごめん、紗枝ちゃん。お目汚ししました。俺はファンに殺されるかもしれん(n回目)




お気に入り1000件越えました! ありがとうございます!
沢山の感想と評価も頂いております! これからもよろしくお願いします!


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二次元の幼馴染は最強にして最強

デレマス小説を書くならこういう凛を描きたいと1億年と2000年前くらいから思ってたかもしれないです。


 

 荷出しも終えて風呂入るついでに帰っていった京都コンビを玄関から見送った俺は、一日の疲れを癒すべく湯船に浸かっていた。というか、浸かっていました。

 

 

「はぁー……いいお湯でしたぁ……」

 

 

 最初にパッと見た時はトイレと風呂のくっついたホテルとかでよく見る風呂=あんまりくつろぎはできないかと思ってたけど、実際入ってみたら全然そんなことは無かったな。なんならそこそこデカかったし。

 

 ちなみに俺は自他共に認める裸族である。今ももちろんスッポンポンだ。控えおろう。マサイ族のお通りやぞ。

 風呂に入った後って体が火照って暑いじゃない? だから素っ裸で何にも囚われずに一時間くらいそのまま過ごすのって案外理にかなってると僕は思うんだよね。

 え? 変態? 馬鹿言え、俺は人に裸を見せる趣味はない。裸になるのが好きなだけだわ。

 

 

 コンコンッ

 

「ちょっとお待ちくださいねー」

 

 

 あっ、やべっ。パンツ履いてねーわ。

 

 さっき周子さんになんの感情もなくしまわれたパンツを引っ張り出してそもままズボッと履く。上の服も着たほうがいいよな。ズボンは……まぁ、念のため着ておくか。

 

 このドア、覗き穴とかがなにもないんだよな。木製のお洒落なドアだからそりゃあそうといえばそうなんだけど。

 それに女子寮の中に不審者が入るなんて滅多にないしな。どちらかと云えば俺が不審者ポジだし。

 

 にしてもこんな時間にお客様とは誰だろうか。しかも俺の部屋になんて。

 周子さんか紗枝ちゃんか? それ以外の女子寮の女の子だとヤバいんだけど。俺のメンタル的に。

 

 

「お待たせしましたー」

「遅い」

「お前かいな」

 

 

 ドアを開けた先にいたのは、黒髪長髪に青い瞳。親の顔よりは見ていないけどそれなりに見まくった顔。

 みんなご存知かもしれないし、そうじゃないかもしれないシンデレラプロジェクトの狂犬こと渋谷凛さん。二つ名みたいなのは今俺が勝手につけたんだけど。

 

 

「なに、不満?」

「んにゃ。なんなら安心した」

「ふーん、てか服着てるんだ」

 

 

 さっきまで不満そうな顔してたのにすーぐ雰囲気柔らかくするんだから。そのまま表情も変えりゃええのに。笑うと可愛いんだから。

 まぁ出た相手が凛で安心したのは事実だよ。他の知らない女の子が出てたらパニクってドアをそのまんま閉めたまであったから。

 

 

「……とりあえず入る?」

「……ん」

 

 

 入るか否かを聞くと、コクンと小さく顔を縦に動かす。

 お前コミュ障じゃないんだからさ、もうちょいなんかないのかと思う。言わないけどね。信頼してるってことかもしれないし。俺がそう思いこんでるだけだけど。

 

 部屋に上げさせると、そのまんまズケズケと奥まで進んで行きなさる。

 いや、別に構わんが。気になるんだったらそう言えよ。

 

 

「ふーん、思ったより片付いてるじゃん」

「周子さんと紗枝ちゃんに手伝ってもらったからね」

「……浮気」

「付き合ってもねぇのに浮気もなにもねぇだろうが」

 

 

 冗談、と言いながらナチュラルにベッドに腰掛けてテレビをつけ始める。入力切替をして地上波の番組に切り替えると、ちょうどそこにはアイドルらしき女の子たちが映っていた。

 

 凛がポンポンとベッドを叩くのでそこに座る。するとこっちに体重をかけながら頭を肩に寄せてくる。相変わらず軽い体しやがって。栄養とれよ。

 

 

「この人たちって、ここの人?」

「うん。光はアイドルについて知らなさすぎだし、ここのアイドルくらい誰がいるか勉強しなよ」

 

 

 ちゃんとした正論なのが腹立つ、原○徳。

 まぁ、実際俺はアイドルに関する知識があまりにも皆無すぎるからなぁ。これからは仕事仲間と言うよりも、多分上司やクライアントに感覚は近くなるだろうから、余計に知っておかなくてはいけないわ。

 

 そう思うとシンデレラプロジェクトって言う新人中心の事業に絡ませてもらえるって幸せなのかもな。程よい緊張感だし、そう思うと最初は無茶振りだと思っていたのも少しずつ納得がいく。

 

 

「あれ? 凛は周子さんと紗枝ちゃんのこと知ってたの?」

「名前と顔は」

「知り合いじゃねぇじゃねぇか」

 

 

 顔知ってるだけやんけ! とは言ったものの、346プロってめちゃくちゃアイドルいるらしいし、それも仕方ない気がする。なんなら顔と名前が一致させてるだけこいつ有能なのでは……? そういや凛が赤点取ったとか全然聞いたことねぇぞ?

 満点取ったとかも聞いたことはないから、多分こいつが普段俺と会話をほとんどしないだけなんだろうけど。

 

 

「ほら、今映ってるピンク髪の人が城ヶ崎美嘉。金髪の人は……大槻唯だったかな」

「またすごい髪色。似合ってんな」

 

 

 テレビで曲を披露しているピンク髪でツインテール、スタイル抜群、そのメイクからはいかにもギャルというような雰囲気を感じさせている人が城ヶ崎美嘉と言うらしい。

 そして一緒に映っている金髪でこれまた笑顔がとっても似合う女の子。この子が大槻唯と言うらしい。

 

 うっわー、ギャル系のアイドル二人って事で呼んだんだろうけど、レベルが高すぎる。普通ギャルメイクって俺苦手なんだけど、なんかスッと入ってくる。おそらく元の顔がいいんだろうな。

 あと胸が大きい。とても大きい。お隣の方と比べると一目瞭然なレベルで大きい。

 

 

「痛ったい! なにすんねん!」

「私だって、あれくらいあるから」

「無理すんなって。わかった、そうだな、そうかもしれないな」

 

 

 この子こっわい。ノーモーションで殴りかかってくるやん。

 別に凛だって全然あるし。今映ってるこの二人が規格外なだけでね。凛くらいの大きさが好きな人も多いと思うよ、うん。まぁ僕は大きいに越したことないと思いますけど。

 

 

「ジロジロ見すぎ」

「テレビだから見るに決まってるだろ」

「キモイ」

「妬いてんのか?」

 

 

 冗談半分でそんなことを言うと、凛は無言で頭をグリグリ肩に押し付けてくる。毎回こんな感じだから、結局何が言いたいのかわかんないねんな。頭グリグリも全然痛くないし、なんなら頭を擦りつけてるせいでシャンプーかなんかのいい匂いがするからご褒美まである。

 

 

「膝」

「どーぞ」

「ん」

 

 

 そのうち頭の位置が肩から膝にまで落ちてくる。そして次は顔を俺の腹に埋めて背中に両手を回して抱きつく。疲れてる時はそのまま寝る。

 これ、昔からの毎回のパターンね。今さら息子がこれに反応することも無いし、した記憶もない。そういう雰囲気じゃないからね。

 

 膝に乗っかる凛の黒髪を弄りながら頭を撫でる。バレないように少し覗き込んでみると、撫でられてる当の本人は完全にリラックスした表情だ。

 気分は居間であぐらかいてくる所に乗っかってきた猫を撫でてるアレ。正直めちゃくちゃ触り心地がいい。サラッサラだもんこいつの髪質。

 そういや最後にこれやったのも直接話したのも3日前くらいか。最近やってなかったんだなぁ、と。

 

 

「ひかる」

「寝るなよ?」

「泊まる」

「ダメ、ここ寮だし」

「……や」

「風呂はどうするんだよ。まだ入ってないだろ?」

「……汗臭かった?」

「全然。でもお前は気にするだろ」

 

 

 嫌って言っても、ここ寮だぞ。女子寮に入ったばっかの男がアイドルを部屋に泊まらせたなんて話になれば大アウトだ。

 

 俺の実家の時ならだいたい風呂に入ってから俺の部屋に来てたからそのまんま寝かせてたけど。ここではそうはいかない。帰ってもらうぞ。

 

 

「ダメなもんはダメ。どーせ、ちゃんと迎えもあるだろ?」

「……8時になったらプロデューサーが送ってくれる」

「じゃあ、それまでなら寝てていいぞ」

「泊まる……」

「ダメだってば」

 

 

 時刻は7時を少し過ぎたところ。こいつ最初からゆっくり居座る気だったな? まぁいいけど。

 

 それにしてもだ、なんか今日はこいつやけに食い下がるな。嫌なことでもあったのか。いつもなら普通に帰って行くのに。

 

 

「どうしただ? なんかあったか」

「……なにも」

「嘘こけ」

 

 

 背中に回されてる手に少しだけ力が入ったのがわかる。

 そら見たことか。図星じゃねぇか。

 

 

「……しい」

「は?」

「さみ、しい……」

 

 

 顔を埋めたまま捻り出された細い言葉に、思わず目を丸くする。

 こいつの口からこんな言葉が出てくるなんて、正直思いもしなかった。

 

 

「寂しいも何も、俺はここにいんだから」

「……すぐ会いに行けない」

「お前も高校生だから大丈夫だって」

 

 

 物心ついた時からこいつはこんな感じだ。四六時中俺と一緒、ずっと一緒。

 小学生になったくらいから人前ではやらなくなったけど、二人きりの時は相も変わらずこんな感じだ。まぁ、かく言う俺も距離感が分からないから二人っきりでいる時は昔と同じ感じで接してるんだけど。

 

 だからどちらかと言うと、俺からしたら凛は幼馴染ってよりも妹って言った方が近いのかもしれんな。厳密に言えばそれも違うんだけど。

 

 てかこいつ相当眠たいな? 素面だと絶対に言わないセリフだぞ?

 

 

「……疲れてるだろ。もう寝ろ」

「……うん」

 

 

 顎の方に手を入れて撫でてやろうとすると、凛が俺の手に顔をスり寄せてくる。

 毎回思うけどほんとに犬みたいだな。可愛い。こういうふにゃふにゃな凛を見ることが出来るのも俺だけの特権かと思うと、少し嬉しい気がする。昔からずっとこれだから特権なのかもわかんないけどな。

 

 

「おやすみ、凛」

 

 

 そのうち背中にまわされてた手がストンと下に落ちる。落ちたな(確信)

 凛を起こさないように移動してそのまんまベッドに横たわらせる。もう昔みたいには二人でベッドには入れないもんな。大きさ的に。

 

 

「……ベース弾こ」

 

 

 この凛が寝た後の時間が一番暇だったりする。そしてだいたいこの時間はアンプも繋げずにベースがアコギをしてたりする。

 あんまり大きい音出すと起こしちゃうからね。仕方ないね。

 

 この後、爆睡した凛をおんぶして部屋から出る所を偶然出てきた周子さんに見られて大変な目にあった。

 周子さんってあんなにキラキラした目も出来るんだな。




お気に入り1500ありがとうございます!
あとどうでもいいんですけど誰かのおねがいマッスルのせいで勝俣州和半ズボンが頭から離れません助けてください


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早朝と夕暮と深夜は厨二病の餌

昨日何故かめちゃくちゃこの小説がバズっててビックリしました。
ビックリして日間確認した時には影もありませんでしたが、日間に乗ってたんでしょうかね? 見逃したとしたら泣く


 

 

「……いや、すっげぇ時間」

 

 

 スマホのホーム画面には5:42の数字。とんでもない時間に起きてしまった。

 

 凛を送って行ってすぐに寝たから、意識が飛んだのは何時頃だっただろうか。22時前には多分寝ている。

 高校生とは思えない生活リズムの良さだ。普段寝ない時間に寝たせいでこんな時間に起きることになってるんだろうから、生活リズムはむしろ悪いんだけど。あとはいつもと違うベッドってのもあるかもしれない。

 

 人間って絶対にいつも寝ている睡眠時間を取ると勝手に起きるようになるよね。俺の場合、普段は24時に寝て7時に起きる生活をしているから、約7時間ほど寝ると勝手に目が覚める。

 

 

「二度寝はもう無理かなぁ……」

 

 

 意識を戻してから10分程ゴロゴロしてても寝付けない時は、諦めて行動開始をして眠くなった時にまた昼寝をする。これがニートである俺の心情だ。いや、ガチニートではないんだけど。

 

 こんな早朝に起きてやること。これはみんな同じだろう。

 半分寝ている体を叩き起して水分を補給する。寝巻きのままジャケットを羽織って、ギターケースを背負う。イヤホンとスマホも忘れずに。

 

 

「中庭ってこっちだよな」

 

 

 靴を履き替えて玄関を抜け出す。門限とか聞かされてないし、朝だし別にいいよな。

 

 昨日見た噴水を頼りに適当に敷地内を歩き回る。確か本社の近くあたりにあったような……

 

 

「あった」

 

 

 噴水が目印の中庭。千川さん曰く、346プロのアイドルの人達はここでよくピクニックをしたりしているそうだ。

 周りを見渡しても人はいない。まぁ、こんな時間に起きてる人の方が珍しいよな。

 

 噴水から少し離れたベンチに腰掛けて、ギターケースを開ける。

 長い弦がネックの先から髭のようにだらしなく伸びたままのアコースティックギター。凛からはダサいから切ってと言われるが、使い込んでる感あるやんと言い訳をして切らないままだ。だっていちいち切るのめんどくさいし。どうせそのうち弦も変えるし。

 

 まだ陽の登りきっていない広場に軽いギターの音が零れる。

 毎回チューニングが面倒だとはわかっていても、使ったあとはしっかり弦を緩めてしまう。ネックが曲がるのだけは勘弁して欲しいとはいえ、やっぱり面倒だよなぁ。

 

 

「──────」

 

 

 ギターをチューニングしながら声も見る。

 時たま朝早く起きてしまった日は、チャリを走らせて近くの河川敷でギター弾いて歌う。家に帰ればちょうどいい疲労感でまた寝ることの出来る。朝、不本意に早起きした時だけの俺のルーティンだ。

 それがしたいが為だけに二度寝できそうでも無理やり起きてチャリを走らせる時もあるんだけど。

 

 声は上々。寝起きだし1曲歌えば普通に戻るだろう。ちなみに俺は歌はそこそこ上手いというか、音域が広いという自負はある。

 どちらかと言うと昔は歌を歌うことの方が好きだったからな。今では弾くのも歌うのも好きになってるけど。

 

 空いた右側にスマホを置いて、いつでも見れるようにTAB譜を開いたまま、画面を付けておく。

 足を組んで、ギターを鳴らす。

 

 

『本当のことを言えば毎日は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長いアウトロを体に染み込ませながら、ピックを置く。

 うーん、声が若干枯れてて悲しかった。まぁ喉のケアとか一切しない人間だし妥当なんだけど。俺はプロじゃないしね。

 

 

「見ない顔だね」

「……ん?」

 

 

 少し落ち着いた声。まさかショタか?

 こんな時間に危ないだろう小さい男の子が……違ったわ。いや、見た目はちょっとショタっぽいわ。

 

 

「……少年?」

「初対面の女性に対して失礼なことを言うもんだね」

 

 

 顔を上げたらレディがいました。

 少し茶髪っぽいオレンジの短髪と後ろからはピンクの髪の毛が伸びている。すっげぇ髪型だな。部位によって染め分けてるのか? 東○オンエアのて○やかよ。

 ジャ○ーズJrかと思うくらい美形でかっこよかったから男の子かと思ったんだけど。見当違いだったわ。

 

 

「……そいで、どちら様で?」

「キミとボクが誰だろうか。今はどうでもいいじゃないか」

 

 

 なんか自己紹介拒否されたんだけど。僕この子が考えてることがわかんなくて怖いんだけど。

 どうすりゃいいの? こっからの流れ。人前で歌を歌うの自体は恥ずかしくないけど、流石に初対面の名前も知らない人の前でやる勇気は俺にはないよ?

 

 無言の時間が続く。あちらも様子を伺ってるのだろうか。めちゃくちゃに空気が重たい。ギガグラビティされてるみたいに重い。なんなら気まずいんだけど。

 

 

「……ボクはアスカ、二宮飛鳥」

「いや名乗るんかい」

 

 

 お前絶対気まずい空気耐えきれなくなっただけだろ。やっぱり何にも考えてなかったやん。

 思わず声に出してツッコんじゃったじゃないの。僕ってそういうキャラでもないのに。寒い寒い寒い!

 

 

「ボクはキミのことを知らないけど。キミはボクのことを知っているのかい?」

「ごめん。アイドルに関する知識が無いもんで」

「気にすることじゃ無い。真っ白なキャンパスに色をつけていくのと同じことだよ。寧ろ、今しかできない素敵なことじゃ無いか」

 

 

 さっきから思ってたけど、この子ちょっと言い回しがアレだな。厨二病っぽいな。

 というかこれ厨二病じゃ無いか? よくよく格好を見てみたらなんかすっごいテンプレみたいな厨二病患者の格好してるし。

 

 

「あぁ、今キミはこう思っただろう。『こいつは痛いヤツだ』ってね」

「その通りだよなんでわかるんだよ」

「でも思春期の14歳なんてそんなものだよ」

「ただの厨二病じゃねぇか」

 

 

 年齢的にもドストライクじゃねぇか。なんなら14歳とか普通に現役中学二年生まであるじゃねぇか。マジのリアル厨二病じゃねぇか。

 あまりにも役満すぎてびっくりしたわ。

 

 

「いわゆる中二なんで、ね」

「自覚はあるんだな」

「心の底から理想の役に演じきれて無いだけさ」

「キャラなん?」

「どうだろうね」

 

 

 ウィンクしながら小悪魔的な笑みを向けられる。可愛いかよ。どーせアイドルなんだろうな、二宮も。

 芸能界って怖いんだな。こんなにキャラの濃い子がたくさんいないと生きていけないんだろうか。毎回思うけど、こんなキャラの女の子たちが日常生活に紛れ込んでたらと思うと普通に怖いよな。やっぱスカウトってすげーわ。

 

 てか厨二病に関してはこれ多分元からだな。一人漫才猫娘みたいなキャラ作りとは違うガチ天然もんだ。というか、マジで語尾ににゃんにゃんつけてる女の子がいたら普通に病院を勧めたくなるんだけどね。

 そういや俺ってまだあの一人漫才猫娘の名前知らねぇなよな? 昨日凛にでも聞いておけばよかった。嫉妬するかな。ねぇか。ねぇな、それだけは。

 

 

「その髪型も演じる為のなんかだったり?」

「これはただのエクステだよ」

「エクステかよ」

「そしてただのオシャレだよ」

「ただの厨二病患者のセンスじゃねぇか」

 

 

 俺、わかった。こいつあれだ、シュール芸の使い手だ。真顔でどんどんマシンガンみたいにボケてきやがる。こいつ絶対バラエティ適正あるだろ。

 

 

「まぁ本当はささやかな抵抗だよ」

「社会に対して?」

「そんなところかな」

 

 

 なるほど、二宮は社会や大人に対しては向かう系厨二病なのか。

 厨二病には二宮みたいなタイプの厨二病と、ただ単にセンスとか厨二病を心の底から患っている痛い系純粋厨二病患者がいるからな。

 

 

「そもそも二宮はなんでここにいるんだよ。未成年の女の子がこんな時間に出歩いちゃ危ないざますよ」

「危ないも何も、キミもボクと同じ大人になれない子供だろう?」

「よく俺が未成年だってわかったな」

「俗に言う勘ってやつさ」

「たまたまじゃねぇか」

 

 

 すげぇボケるな本当に。と言うかよく俺解読できてるな。いや、よく良く考えたら言い方が回りくどいだけだから、普通に二宮の言語を貫通させて真っ直ぐにして解読してるだけだわ。誰でもできるわ。

 

 

「それよりだ。ボクのことはアスカでいいよ。苗字呼びはやめてくれ」

「なんで?」

「みんなにはボクとして見て欲しいからね」

「飛鳥ちゃんか飛鳥くんどっちが良い?」

「呼び捨てにしてくれ」

 

 

 よし、とりあえず一矢報いた。

 これだな、飛鳥と相対するときはとにかくカウンターだな。飛鳥は喋り方が独特すぎるからあっちにペース持っていかれがちになるからな。隙を見せたら速攻右ストレートぶち込んで行こう。

 

 

「少し早起きしてしまってね。たまには朝日を浴びるのも悪く無いとここに来ただけさ」

「案外普通の理由なんだね。ルーティンとかだと思ってた」

「早起きは得意じゃ無いんだよ」

「子供か」

「早起きが得意な子供もいるだろう」

 

 

 そう言う問題じゃ無いんだけどね。キミのことなんだけどね。

 というかもっと厨二病っぽい理由で朝早く起きてここにきてるのかと思った。ただの早起きかい。

 

 気がつけば先ほどよりも随分明るくなってきている。ちょうどいい時間だよな、帰る準備するか。

 

「そういうキミはどうなんだい。さっきからボクに質問してばかりじゃ無いか」

「俺も早く起きちゃっただけだからここにいただけだよ」

「そんなものを持ってかい?」

「あぁ、まぁこれは……趣味だよ」

 

 

 肩にかけたギターケースに視線が送られる。そりゃあ目立つよな。

 

 なんて答えようか迷ったけど、朝早起きした時だけ発動するエセルーティンを1から10まで説明するのは面倒くさい。そんな訳で適当に間違っては無いように答える。

 実際趣味だし。アコギもベースも。

 

 

「随分上手かったじゃないか」

「いつから聞いてたの」

「ラスサビみたいなとこからあたりだよ。勝手に聞いてすまないね」

「んにゃ、別にいいけど」

 

 

 俺は人に歌を聞かれるのを恥ずかしいと思う人種じゃないからな。去年の軽音部ではうちの高校の全校生徒の前でめちゃくちゃ歌ったんだぞ。超気持ちよかった。俺ってそういう性癖持ちなのかもしれん。

 

 

「えっ、何。一緒に帰るの?」

「年頃の女の子を一人で帰らせるとは酷い男だな」

「でも寮はすぐそこやん」

「男は黙ってエスコートするものじゃないのかい?」

「じゃあ手でも取ったほうがいいのか?」

「初対面の女の子に対していう台詞じゃないってことだけ伝えておくよ」

「お前が話を振ったんやないか」

 

 

 ポッケに手を突っ込みながら俺の横をちょこんとついてくる。

 というか初対面の男に平気でホイホイついて行くのはどうかと思うけどな。危機管理よ、危機管理。

 周子さんといいなんでそんなにノーガードなの? それで手を出したらこそされるんでしょ? 助けて凛ちゃん。

 

 というか、適当に寮はすぐそこやんって振ったけど、しれっと飛鳥も寮生なんだな。否定しなかったし。

 あの寮って魔境かもしれんわ。一人漫才猫娘も確か寮生だったしな。

 

 

「そういや、俺って名前言ってたっけ」

「キミの名前がどうかなんて、そんなの些細な問題じゃないか」

「じゃあ言わなくていいや」

「聞かないとは言っていないだろう?」

「めんどくせえな、結局言ったほうがいいじゃないか」

 

 

 本当に回りくどいなこの子。結局最初のセリフ言いたかっただけだろ。俺にはわかるぞ。そういうセリフ言ってみたいもんな。

 

 

「松井光。高校二年生だよ」

「光、か。覚えておくよ」

「変な名前じゃないし覚えやすいだろ?」

「そうだね。いい名前だと思うよ」

 

 

 そりゃどーも、としか言えんわな。

 

 自分の名前に関して突っ込まれてもそれが当たり前だし。松井光って名前は生まれてからずっと使ってたし。

 てか名前がかっこいいって言ったら二宮飛鳥って名前も相当かっこいいだろ。なんだよ飛鳥って。かっこいい人間にしか似合わねぇ名前だろ。それでいて名前負けしないビジュアルだから困るわ。

 

 

「なんで俺がここにいるとかは突っ込まないの?」

「話は聞いていたからね。いつか会うとは思ってたけど、これも定めってヤツなんだろうね」

「たまたまだと思うよ」

「ロマンってやつじゃないか」

「女性の口からそんな言葉が出るとは思わなかった」

「ロマンチストは女性が多いだろう? それもまた、偏見だよ」

 

 

 普通に正論を言われてしまった。そうだよな、男でも女でもロマンを求めることは間違ってねぇよな。

 

 いつの間にか付いていた寮の玄関を通り、靴を履き替える。そのまま部屋に戻り……

 

 

「……飛鳥さん? いつまでついてくるの?」

「ボクの部屋はこっちなんだ。キミについて行ってる訳じゃない」

「もう部屋に着くんですけど」

「奇遇だね。ボクもだ」

 

 

 俺が自室の目の前に来て困った雰囲気を全開にしていると、飛鳥はそのまま進んで行く。

 どこまで一緒なんだよ、とりあえず部屋に入ったら二度寝しよう、なんて思っていると、飛鳥は俺の一つ奥の部屋の扉に鍵を入れてドアを開ける。

 

 

「……へ?」

「それじゃあね。お隣さん」

 

 

 そういうと、隣の部屋のドアはパタンと音を置いて行って閉まってしまう。

 

 なんなの? 俺の部屋の付近にはこんな強烈なキャラが集まるの? 隣は京都コンビでもう片方は厨二病とかまともな人間はいないの?

 これ以上考えてもなんだか死ぬ未来しか見えなくなってきた。もういいわ。寝よう、とりあえず至福の二度寝をしよう。




前回めちゃくちゃ感想が飛んできててビックリしました。やっぱり凛ちゃんは強いってはっきりわかんだね。
これからも気軽に感想置いていって頂けるとワシが喜びます!


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夢の国と謎の惑星のある千葉は魔境

今回のサブタイトル!我ながら酷い出来だと思いました。翔んで埼玉とかいう映画もありましたが、個人的には千葉の中に夢の国やらあるのもなかなか恐ろしいと思いますね。ひゃだ…怖いぃ…


 

 

 ダンダンダン! ダンダンダン! ダンダンダンダンダンd

 

 

「うるっせぇえええええええええ!!!!」

 

 

 なんなんだ朝っぱらから! ダンダンダンダンうるっせぇんだよ! こっちはまだ至福の二度寝Timeをすごしているでしょうがァ!? 

 虐めか? 新手の虐めか? 新人いびりか? 

 

 急に謎の激強ドア叩き音に叩き起されてこっちの眠気は完全に0だ。てか現在進行形でダンダンダンダン鳴ってる。この野郎、待ってろ直ぐにとっちめてやる。

 

 

「なんなんだ朝っぱらからァ!」

「起きてるんなら早く出るにゃ!」

「ほら合ってたー」

「てめぇか一人漫才娘ェ!」

「みくには前川みくっていうちゃんとした名前があるにゃー!」

「じゃあ前川ァ! なんなんだ朝っぱらからァ!」

 

 

 勢い良くドアをぶちあけると、目の前にいきなりブチギレモードの一人漫才猫娘こと前川と、寝起きなのか知らないけどまだ眠そうに目をこすってる多田がいた。

 てかお前俺の部屋どこなのか知ってたんかい、って思ったけど多分だけど多田が知ってたのかな。なんで多田が俺の部屋がどこか知ってたのかなおさら疑問だけど。

 

 

「遅いけど朝ごはんの時間にゃ! キミに時間を割くのは正直不服だけど、新人を放っておくほどみくは悪人じゃないんだにゃ!」

「いや、自分で作るよ」

「光って料理作れるんだ」

「多少なら」

「そんな女子力高いエピソードなんて求めてないにゃ!」

 

 

 なんなら俺ってズボラ飯の天才だと自負してるからな。今決めたけど。

 うどんをレンチンして納豆とタレとめんつゆと卵入れるだけの納豆釜玉とか、パンと卵とチーズとベーコン焼くやつとか。なんなら昼とか夜は外食することもあるから、朝を一番作るまである。学校あるときはパン焼いたりだとか親が作ったりしてるんだけどね。

 

 

「てかここって昼と夜しか食事用意してくれないの?」

「普通に朝ごはんは用意してくれるにゃ」

「じゃあそれでいいやん。食堂でいいよ」

「そういう話じゃないにゃー!」

 

 

 話の流れで食堂でいいやんって言ったけど、正直食堂で朝食ってなったら全力で引きこもってた。

 俺が一番恐れているのは超大量の女性の中に俺一人でポツンといることだからな。しかも大半の子たちは俺が寮にいるって知らない可能性だってあるんだし、大事件になりかねない。そんな訳だから本来、今日は引きこもっているつもりだったんだよ。

 

 

「ごめんね? みくちゃん、光に紹介したい場所があるんだよ」

「えっ、李衣菜チャン。こいつのこと呼び捨てにしてるの!?」

「こいつて」

「昨日からずっと呼び捨てだったけど。ねー?」

「ねー?」

「う゛に゛ゃ゛ー! ゛ 鬱陶しい仲良しアピールいらないにゃー!」

 

 

 おぉ、怖い怖い。まぁこれが見たいがためだけに多田と煽りをしているまである。俺たちいいコンビになれるぜ。前川専用機として。

 ちなみに昨日の段階ではまだ下の名前で呼んだり呼ばなかったりだった。この場面では絶対下の名前呼びの方が面白いって多田も分かってんねぇ! 

 

 

「それで何処だよ。紹介したい場所って」

「行ってからのお楽しみ! いいからさっさと着替えるにゃ!」

「人使い荒いなぁ」

「まぁ行って損する場所じゃないから大丈夫だよ」

 

 

 いまだにプンスカしてる前川の隣で多田が苦笑いしてる。いいコンビやわ、バラエティに強そう(小並感)

 

 とりあえずうるさいし着替えるかぁ。ガッツリパジャマだしな。

 スマホ持って財布持って多分朝飯食いにレッツゴーじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はえ〜、こんなところもあるんだ」

「菜々チャン! 3人にゃ!」

「はいっ! 分かりました〜」

 

 

 連れてこられたのはカフェ……なんだけど、どう見ても敷地内にあるよな。大学の中に色々なお店あるのと同じか?

 

 綺麗に刈り揃えられ、春ということもあり色とりどりに花が咲き誇る中庭の一角に同化したカフェ。まるで俺の語彙力がなくて言葉にできないのが申し訳ないが、ヨーロッパとかの田舎にありそうなおしゃれな外にあるカフェって言えば10人中3人には通じるんじゃないかとは思う。

 

 多田に流されるがまま、丸テーブルを囲む椅子に座らされる。

 周りにはアイドルの子なのだろうか。全体の席の半分くらいを俺と同世代の女の子や大人の女性や一般の男性社員さん方が使っている。それぞれが談笑していたり一人で優雅にお茶を飲んでいたりノートパソコンとにらめっこしていたり、悪趣味だけどこういうのは見てて飽きないな。

 

 

「ほら、メニュー」

「おっ、てんきゅー、お前らもう決めたの?」

「みく達もまだ朝ご飯食べてないから。でも何があるかは分かってるからゆっくり見てるといいにゃ」

「私、パンケーキにでもしよっかな〜」

 

 

 二人とも常連なんだな。わかるぞ、よく行く店のメニューってだいたい覚えてるよな。俺もマ○ドナルドのメニューは全部覚えてるし。

 

 それにしても、メニューが凄い充実している。カフェなのにラーメンとかもあるんだけど、すげぇなここ。流石に朝からラーメンはないかな、うん。

 おっ、男性向けのモーニングセットとかあるじゃん。パン二枚にスクランブルエッグとベーコンにスープとサラダとドリンク。これで500円……ってやっす!? ワンコインかよ! これでええわこれで! 700円は取られると思ってたわ。

 

 

「決めた」

「速いね〜。ま、私は最初っから決めてたけど」

「菜々チャーン!」

「はーい!」

 

 

 前からに名前を呼ばれると中の方のカフェから小柄なメイド服の女性が伝票を持ちながら駆け寄ってくる。これまた珍しい髪色をして……あれは茶髪にピンクが重なってるのか? 

 というか、なんか俺この人の顔見たことあるぞ? 気のせいか、気のせいだな。うん。

 

 

「ご注文伺います!」

「私、パンケーキで」

「みくは卵サンド!」

「俺はモーニングのCで」

「かしこまりましたー! ……ってあれ? 初めて見るお方ですよね? 二人のお知り合いさん……ですよね?」

 

 

 まぁこっちに来ますよねー。前川と多田の二人には面識ありそうだし、そりゃあ俺に突っ込んでくるよな。まずこの男誰だよって話だし。

 

 

「まぁそんなところです」

「昨日初めて顔合わせしたんだけどねー」

「新人さんですか! いやー、ここのアイドル部門にも男性の方がいらすようになったんですね! いやー、かっこいい方で驚きましたよ!」

 

 

 いや、違う違う違う。かっこいいって言われるのは嬉しいけど、俺アイドルじゃない。表に出ない裏方。is 裏方。アイアムアウラカタ。おーけー? 

 

 

「菜々チャン、こいつアイドルじゃないにゃ……」

「……えぇ!?」

「どうも、見習いスタジオミュージシャンの松井光と申します。高校二年生です」

「あらあらお若いのにご丁寧にすみません」

 

 

 なんとなく丁寧に自己紹介をしたら、めちゃくちゃ丁寧にお辞儀が返ってきた。これ社会人の人が見せるお辞儀や。超綺麗、綺麗にも程がある。姿勢が。

 

 

「それでは私も……こほん! ウサミン星からやってきた歌って踊れる声優アイドル、ウサミンこと! 安部菜々でーす! キャハッ!」

「おー!」

 

 

 うわっ、なんというか……キッツ(ド直球)

 ここにきてからかなりハイペースでアイドルの方々に会わせて頂いてたけど、こんなテンプレートなことあるかね。も○ちやん、ネタ被りやん。やっべ、これ言ったら過激派に殺される。どっちが先なのか理解すらしてないのに。

 

 てか完全に思い出した。この人、朝のニュースの時におる人やわ。今の導入で完全に思い出した。

 寝起きのままテレビを見てたらこれが飛び込んできて目がぱっちりになったのを覚えている。いやー、こんな偶然あるんだね。てかなんでここにいるんだよ。

 

 

「ちなみにですけど、何年生ですか?」

「え゛っ゛。えーっと、ナナは17歳なので……そう! 高校二年生です!」

「若干のタイムラグがありましたね」

 

 

 テレビでもそうだったけど、この人そういう設定でやってる割にはボロの出方が凄い凄い、プロ根性あるのかないのかわからんけど多分鬼みたいにあるんだろう。実年齢知らんけど。

 いやー、実際にテレビで目にしたアイドルにあったのは安部さんが初めてだろうか。金髪のリーゼントの人はここに初めてきた時に見ただけだったしな。あれは興奮した。変な意味じゃねぇぞ。

 

 

「と、とにかくナナは永遠の17歳なんですっ! これからよろしくお願いしますね、光さん!」

「こちらこそどうぞよろしく……」

「気軽にウサミンって呼んでくださいね! 私たちドーキューセーなので!」

「そうですね、安部さん」

「ウサミンって呼んでくださいよー!」

 

 

 テレビに出るような人たちってやっぱりみんな面白いんだなぁってここ二日間常々思うよ。前川しかり安部さんしかり飛鳥しかり。

 

 あと安部さんのことはこれからもウサミンじゃなくてちゃんと『さん』付けで呼ぶよ。社会的にもこの世のルール的にも、そして面白さ的にもこれが正解ってなんか体が反応しているからね(ゲス顔)




話が全然進みませんが許してください! 書きたいことが多すぎるんです!
時系列的には入寮してまだ夜をこして1日しかたっていません。おそすぎだろ。


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ロックはロックでもロックなロックはなーんだ!

日間3位に乗ってました。ビックリしすぎてもはや冷静です。
ちなみに、意外かと思いますが今日のサブタイトルは考えるのに時間を使いませんでした。サブタイトルの意味は自分でもよくわかっていません。対戦よろしくお願いします。


 

 

「うまっ」

「ふふーん、346カフェの料理はなんでも美味しいんだにゃ!」

「私たちが作ってる訳じゃないんだけどねー」

 

 

 厚焼きのサクふわ食パンに、厚めの焼かれたベーコンと半熟のスクランブルエッグを乗せて食らいつく。んー! これ最高。合わないはずがないよな。

 ホットコーヒーで口の中に残るマーガリンやらの甘みを流し込むとこれまたいい。洋食にはコーヒーが最強ってそれ一番言われてるから。

 

 

「そんで? 結局ここを紹介したかっただけなん?」

「違うよねー、みくちゃん」

「んぐっ……」

「喉詰まらせんなよ」

 

 

 そんなに綺麗な飯を食いながらのうげっ……って反応あるかね。完璧な反応やないか。

 というか多田は何処までいっても他人事なんですね。それなのに前川に付き合ってあげてるってええやつやな。暇なのかな。

 

 

「まぁ……あれだにゃ……昨日のおわびってやつだにゃ」

「なんかしたっけ」

「その……まぁ色々にゃ……!」

「あれか、意気揚々と噛みつきにきたのに全く相手にされてなかったことか!」

「李衣菜チャン離すにゃ! みくはこいつを一発ぶん殴らないと気が治まらないにゃぁあああああ!!!」

「はいはい静かにー」

 

 

 やっぱこいつおもれーわ。なんにもしてないのに急に責任感じてこんなことしに来るとは律儀な方やなぁ。根が真面目なんだろうかね。格好は真面目じゃないのに。真面目じゃないことはないか。安部さんと同じプロといえばプロか。

 

 

「まぁいいにゃ。みくは大人だから許してあげるにゃ」

「年下だろお前」

「ところで光クンは今日はなにか予定あるのかにゃ?」

「ある」

 

 

 家でゴロゴロするというこの世の何物にも変えれない大事すぎる用事が俺にはあります。

 叶うことならここで飯食ったらすぐにアイドルの人たちに見つからないように部屋に戻りたい迄あるんだよ。

 

 

「どっか行くの?」

「ううん、どこにも」

「なにかするの?」

「ううん、なんにも」

「なんも予定ないやんけ!」

 

 

 

 予定がないことはないんだ。さっきも言った通り寮の我が部屋で休息をとると言う何者にも変えられない大事な用事がね、私にはあるのだよ。

 

 

「そういうお前らは暇なのかよ」

「みく達は今日はオフだにゃ」

「昨日レッスンだったからね」

 

 

 まぁ何となく察してはいたけど。オフでもないとこんなやつのところに訪れないわな。

 

 

「じゃあ二人でどっか遊びに行ってくれば?」

「折角遊びに来たのに連れないな〜」

「いやいや、俺にとってここは超ビジターなの」

「アイドル部門に男子高校生が紛れ込むなんて普通ないもんにゃ。仕方ないにゃ」

 

 

 事実だけど言わんでくれ。俺の胃が痛くなるから。

 よくよく考えても考えなくてもこれ不思議だよな。みくの言い方的にも男のアイドルはいないみたいだし、ほんとに不思議だな。他人事でいたかった。

 

 

「でも安心するにゃ! そんなキミに、今日はみく達が直々にここを案内してあげるにゃ!」

「いや、昨日千川さんにビルの方はある程度教えて貰ったんで」

「え゛っ゛」

「じゃあ本館とか別館の方は?」

「両方知らねぇ」

 

 

 女子寮に行くまでの通り道の分だけどな。ビルの方は見たけど、あの城みたいな方は知らない。てか入ろうとすら思わんわ。威圧感がえぐすぎる。何回見ても城だもん、城。

 あと別館ってのは存在すら聞いたこと無い。ここってそんなのもあるんか。

 

 

「じゃあ本館と別館を紹介するにゃ!」

「いや、いいよわざわざ。俺がそこの施設を使うわけでもあるまいし」

「サウンドルームとかはむしろ光の専売特許だと思うけど」

「そうなの?」

「レッスンルームとかには正直縁はないかもしれないけど、エステルームとかは使うかもしれないでしょ?」

「男でエステはないだろ……」

「最近の男の人はそういうの気にする人もいるにゃ」

「そうなんだ……」

 

 

 というか、こんなにぽんぽん色んな施設の名前が出てくるのな。どんだけすげぇんだここは。

 

 

「とりあえずご飯を食べたら本館に行くにゃ!」

「本館は何かあるの?」

「本館は社員さんが使う施設が中心にあるから、正直私達ではなんにも紹介できないよ」

「なんでそこに行くんだよ……」

 

 

 あのお城みたいな外観って見せ掛けなんかい……いや、他に理由はあるんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとに本館に関してはなんも説明できないんだな」

「ぐぬぬ……」

「みくちゃんも見栄っ張りなんだから〜」

「なら李衣菜ちゃんがやるにゃ!」

「私もわかんないから」

 

 

 本館に入ったはいいものの、そこら辺の施設を覗いただけで説明もなしに適当にぐるっと見ただけで終わった。一応前川は何かしら説明しようとしてたみたいだけど、なんか勝手に惨敗してた。

 よくよく考えたら今目の前で漫才してるこいつらもまだ新人なんだろ。紹介できるような立場でもないやん。

 

 

「こ、こっちは伏線だにゃ! 本番は別館の方だにゃ!」

「私たち、そんなに別館のことを網羅しているわけでもないけどね〜」

「うぐっ……」

 

 

 みくちゃん先走っちゃったねぇ! 先走っちゃったねぇ!(ゲス顔)

 まぁわざわざ時間を割いてこんなことをしてくれてるんだから文句は言わないよ。勿論、意地悪はするけど(矛盾)

 

 

「あれ? だりーとみくじゃん。本館にいるなんて珍しい」

「なつきち!」

「あっ」

 

 

 急に聞き覚えのある声が多田の後ろから聞こえて来る。自分の顔を真横にスーッと平行移動して多田の顔を避けながら、先ほどの声の主の顔を覗き込む。

 

 女性なのに、金髪を大きくあげた男らしいリーゼントヘアー。男らしいというか、どちらかも言うとロックだけど。

 俺はこの人のことを知ってる。高垣楓や輿水幸子位の人しか知らない俺でも、俺の趣味のジャンル的にこの人のことは知ってる。F〇Sに出てたからな。その時は歌が上手くてビビり散らかした記憶がある。

 今は想像してたよりも身長が小さいことにびっくりしてる。

 

 

「あれ……もしかして、取り込み中だったりした?」

「ううん。全然大丈夫!」

「前川は一人で取り込み中みたいな所あるけどね」

「ぼそっと言うのやめろや!」

 

 

 なんかこの子、ほんとにこっちが求める100点の反応をしてくれるよね。

 こんなことしてたらいつかガチファンに『みくにゃんに対する当たりが強すぎないですか? 幻滅しました。しぶりんに浮気します』とか言われそうだけど。

 てか、普通に永遠と漫才してたいよね。むしろこの子はよし〇とに入るべきだったのではと思ってしまう。アイドルの方が向いてそうだからこのままでええけど。今の失言、撮ってへんやろな?

 

 

「そちらの方は……友達? 見学?」

「うーん、両方かな」

「両方みたいなもんですね」

「適当に誤魔化さないにゃ! キミは立派なここのタレントにゃ!」

「俺ってタレントなの? 社員じゃなくて?」

「正直、わかんないにゃ」

 

 

 スタジオミュージシャンってどういう立ち位置なんだろな。タレントって言うのは表に出るような人達のことを言うもんだと勝手に思ってたけど。

 社員といえば社員なんだろうけど、そうなると前川や多田も実際社員だしな。社員というカテゴリーが広すぎる。

 

 

「何? あんた、アイドルなの?」

「まさか。そう見えます?」

「顔整ってるし」

「それは嬉しいですわ」

「夏樹チャン! こいつのこと甘やかしたらダメにゃ!」

 

 

 たまにはいいだろ。顔がいいなんて言われるのは初期くらいなんだぞ。慣れられたらなんの価値もないんだから。

 

 

「光はなつきちのこと、テレビで見たことあるんだよね?」

「うん。唯一じゃないけど、ここのアイドルの人達の中で数少ない知ってる人だよ」

「アタシを知ってるってことは、音楽好きなの?」

「なんで分かるの?」

「だってアタシ、出る番組とか殆どそういうのだし」

 

 

 だから俺この人のことよくテレビで見たんだ。関〇ャムでも見たしM〇テでも見たし。

 テレビは見るっちゃあ見るけど、そこまでガッツリテレビっ子ではないからなぁ。それに見たことあったとしても顔と名前が一致するまで何度も見ることなんてそうほうないだろうし。

 

 

「というか、夏樹チャンはこんなところに何しに来たの?」

「あぁ、Pさんに忘れ物を届けに来てね。丁度本館にいたらしいからちょちょっとな。3人は?」

「みく達は光クンにここの紹介をしてたにゃ」

「紹介にはなってなかったけどね〜」

「うぐっ……」

「あははっ! そりゃあみくやだりーだってまだ新人の域だもんな」

 

 

 そういやシンデレラプロジェクトって新人を中心に結成されてるんだっけ? ちひろさんがそんなことを言ってたような気がする。多分。

 デビュー曲もまだって言ってたし、こいつらってここに来てそんなに経ってないんだろうな。なんでよりによって道案内を買ってでたんだ。

 

 

「そういや、まだ自己紹介もしてなかったな。アタシ、木村夏樹ってんだ。ロックなアイドル目指してるから、ヨロシク!」

「お、おう。松井光、一応スタジオミュージシャン見習いだ」

「スタジオミュージシャンね……」

 

 

 いきなり差し出された手に戸惑いつつも、ガッツリと握手を交わす。

 きれーな手をしてんな。この人はバリバリギター弾いてたし、ギタリストの手が綺麗なのは至極当然なんだけど。

 

 

「ベーシスト?」

「そうだけど?」

「だと思った」

 

 

 やり込んでるんだな、と付け足しながらニカッと笑いかけられる。そりゃあ、握手されたらベーシストってバレるよなぁ。テレビに出るようなレベルの人なら尚更、ベーシストの利き手に関する情報もあるだろうし。

 

 

「なつきち、何でわかったの?」

「あぁ、指の先が硬かったからな。スタジオミュージシャンって言うくらいだし」

「やっぱ分かった?」

「そりゃあそうだろ。野球部の手のひらがボロボロなのと一緒さ」

「なつきちはやっぱ凄いな〜。私も握手しとけばよかった」

「李衣菜は俺と握手したらベーシストってわかったの?」

「わ、わかるよ! もちろん!」

 

 

 まぁ、もう俺の掌はだいぶ綺麗なんだけどね。現役高校球児の掌はほんとにズタボロのカチカチだから。どんだけ振り込んだらそんなになるんだ。

 

 ベーシストの指先がカチカチなのはガチだ。手入れをしていない人だと、マジで指先に鉄板を仕込んでるみたいになるからな。

 指弾きする時にどうしても硬い弦を指で直に行くからな。よくよく考えると、なかなかエグいことをしているかもしれない。

 

 

 

「なんか手入れとかしてるの?」

「一応思い出した時にハンドクリームとか塗ってますけど……」

「へー、意外」

「本当に思い出した時だけな」

 

 

 指先が固くなると音質に影響が出るって聞いたことがあるしな。なんでも、音がピック弾きみたいになるとか。指先が固くなれば、まぁ必然的にそういう音に近くなるわな。

 俺はピック弾きに近い音の方が好きだから、保湿とかと言うよりも手を綺麗にするためにたまにハンドクリーム使ってるけど。

 

 ちなみにそのハンドクリームは凛から貰ったやつだ。何処のブランドとかはよく分かってない。中坊の時に、ハンドクリームの話を凛に相談したら普通にくれた。あいつは良い奴だ(小並感)

 

 

「……だりー、この後も彼の道案内か?」

「うん、今度は別館の方のね」

「前川さぁん、今度はしっかりやれるんですよね〜?」

「せ、誠心誠意努力していく所存でありますにゃ……」

「なんで記者会見みたいになってんの」

 

 

 いや、なんとなく(なんとなく)

 適当に嫌らしいマスコミの真似をした俺も俺だけど、それにちゃんと乗ってくるのが凄いわ。前川やっぱ天才だろ。普通はこんなに変なフリわかんないだろ。

 

 

「じゃあ、アタシが案内してやるよ。ここにはなんにもないけど、別館には色々あるしな」

「なつきち、忙しくないの?」

「今日はレッスンもなんもないからな。それに、キミの実力も見たいしな」

「……へ? 俺の?」

 

 

 道案内をポンな前川の代わりにやってくれるのはありがたいけど、実力を見るって……どういうこっちゃ?




ここだけの話ですけど、日間3位に驚きすぎてサブタイトル考える思考を完全にかなぐり捨てました。びっくりした。本当にびっくりした。

ログインユーザーでは無い方からも感想が来ていて嬉しい限りでございます。ワシ、ユーザー登録してないでおじゃる…ってお方も気軽に感想置いて言ってください!


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プロとアマの差は聞けばわかる

誤字が死ぬほど多い中、たくさんの誤字報告非常に助かります。ぶん投げてるみたいだけどほんとに助かります。たまにタイプミスとか変換ミスじゃなくてシンプル漢字間違えとかしてると馬鹿がバレるので泣きたくなります。


 

「さ、入って。ここがサウンドブースだ」

「おじゃましまーす……」

 

 

 部屋に入ると、まずでかい機械と2つのモニターに目を引かれる。モニターにはテンプレみたいなラジオの収録をする設備の整った部屋とドラムやギターなどが覗く部屋の2つの部屋全体が映されている。こう言っちゃあれだけど盗撮してるみたいだな。

 

 そしてそのモニターの手前にあるのが何がどうなっているのかすら理解の出来ない機械だ。

 よくミュージシャンの人がいじってるアレね。よくわかんないけど、勝手にMIXに使う機械だと思ってる。実情はどうか知らないけど。

 

 

「こんなのも設備してるなんてすげぇな……」

「うちはでかい会社だからな」

「み、みくも初めて入ったにゃ」

「へぇ……ここで収録するんだ」

 

 

 その場から動くことも無く、防音室と思われる部屋をラジオの収録する場所によくあるガラス越しから覗いたりしていると、奥からなんかオシャレなおじさんが入ってくる。急にくるから少しビクってなったやんけ。

 

 

「あれ? 君がスタジオミュージシャン見習いの子かい?」

「あっ、はい。どうも、初めまして」

「常務から話は聞いてたよ。レコーディングエンジニアをしてる金子だ。よろしくね」

「松井って言います。よろしくお願いします(?)」

 

 

 よろしくお願いしますって条件反射で言ったけど、一体何をお願いするんだろう。レコーディングエンジニア? とかいうのもよくわかんないし。

 

 それよりこの人の髪型はなんなんだいったい。服とかはめちゃくちゃおしゃれなのに、なんで髪型がそんなに社会人でデビューに失敗したホストみたいになってるんだ。お兄さんかおじさんか理解できないラインだから余計に困惑するんだけど。

 あと全然関係ないけど、顔がめちゃくちゃ川谷◯音に似てる(小並感) 

 めちゃくちゃ優しそうな顔をしてるのに、どこかゲスそうな雰囲気が見えるのは俺だけなのか。

 

 

「金子さん! 急に呼び出しちゃってすいません。どうしてもここを使いたくて」

「俺も彼のこと気になってたし、ちょうど良かったよ。あと、そんなキラキラした目をしなくてもわかるから部屋行ってきていいよ」

「あざーっす!」

 

 

 そういうが早いが、奥の部屋にウッキウキで入っていく木村さんの後ろ姿を見送る。少女漫画並みに目がキラッキラだったぞ。どんだけギターやりたかったんだ。俺がイメージしていたよりも無邪気なところがあるんだな。

 

 

「そういや……君たちはここがどういう所かは知ってる?」

「えっ? い、いや……まだなにも」

「ラジオとかレコーディングをする場所……って言うのはPチャンから聞いてるにゃ」

「そ。つまるところ、ここはこれから君がおそらく一番使うであろう場所なんだよね」

「ほえー、ここが……」

 

 

 こんなガチガチの機材の揃った部屋で俺がこれから活躍するとかなんにも考えられないんだけど。どんなビジョンなんだよ。てか活躍できる保証もないな。なるようにしかならないよね、こういうのって。

 

 

 ッバァン!

 

「に゛ゃ゛っ゛!゛?゛」

「うわびっくりした!?」

「おーい! 来ないのかー!?」

「はいぃ!?」

 

 

 さっき部屋に入って行ったばかりの木村さんが黒ひげ危機一髪並の勢いで戻ってきた。あれ? てかこれ俺に言ってね? 違うよね? 横のおっちゃんだよね? あまりにも視線がこっちに向きすぎてるから思わず返事しちゃったけど俺じゃないよね?

 

 

「ベースならスタジオん中に置いてあるから! それとも今弾けないのか?」

「えっ、弾くって何を」

「何をって……あんた、ベーシストだろ?」

 

 

 きょとんとした顔で言われても、こっちがそう言う顔をしたいんですよ。

 いや、意味はわかるよ? 弾くって言われた時点で俺の中の選択肢はベースかギターしかないからな。それしか弾けないし。

 

 

「ほらほら、あんなリーゼントなイケメンでも女の子なんだから待たせちゃダメだって」

「光クンサイッテー」

「なつきち待ってるじゃん」

「そうだな、ごめん」

 

 

 流石に3対1には勝てないんですわ、うん。

 後ろから6つの視線に刺されつつ、ニッコニコの木村さんが待つ部屋に入る。

 部屋の中は広く、人5人くらいが暴れてても無事そうなくらいのスペースが保たれている。ドラムセットだけでなく、キーボードやギター、ベースも用意されていて、いつでもバンドができるよ状態になっている。

 すげぇな。理想の部屋じゃん。寮にもこの部屋が欲しい(暴論)

 

 

「ジャズベしか置いて無いんだけど、大丈夫? 弾ける?」

「俺が普段使ってるのより弾きやすいと思うから大丈夫っす」

「どこのメーカーの使ってんの?」

「ATELIER Zの五弦っすね」

「五弦とは渋いねぇ」

「多弦ベースにはロマンが詰まってますから」

 

 

 多弦ベースにはロマンが詰まってる。はっきりわかんだね。弦が多いとなんか強そうだし(アホ) まぁ、実際に弦が多い=音域が広がる=やれることが多くなるってことになるから、表現が馬鹿なだけであってつよつよになるってのはあながち間違いでは無いんだけどね。

 

 四弦自体久々に握ったなぁ。ネックが細くて違和感がすごい。左手に余裕と幅がありすぎて、今ならなんでもできそうな気がする。いざやってみたら普段と変わらないんだろうけど。

 

 アンプの上の置いてあるカンカンの入れ物から柔らかめのピックを選び、弦を弾く。

 ピック弾き独特の粒の立った音が真っ直ぐアンプから響く。

 

 

「これ、チューニングしてあるんすね」

「昨日誰か使ってたんだろ。普段はちゃんと緩めてあるよ」

 

 

 ネックは曲がってないから普段からちゃんと管理されてるのはわかるんだけどね。弦が張ったまんまだからなんかの魔法でまっすぐ無理やりさせてるのかと思った。

 

 軽い会話のキャッチボールを木村さんと交わしながらお互いに慣れた手つきで準備を進めていく。基本的な機材自体は普段使っているのと変わんないしな。アンプの横にめちゃくちゃ大量のエフェクターが置いてあるのだけがめちゃくちゃ気になるけど、ああいうのは気にしたら負けだってじいちゃんが言ってた。

 

 

「なんか得意なジャンルとかある? ジャズとかボカロとかロックとか」

「得意……というか。基本的には邦楽ロックばっかですよ。ボカロはともかく、ジャズとか全然」

 

 

 

 ジャズのベースとかかっこいいのは分かるんだけどね。あいにくコード進行とかよくわかんないの。某絶叫脱糞系弾き語りのお兄さんみたいな感性もしてないしね。

 

 

「アタシはだいたいなんでも弾けるし歌えるから、なんか弾ける曲選んでいいよ」

「なんでもって……すげぇっすね」

「だいたいだよ、だいたい。それに基本はロック系だしな」

 

 

 テレビに出てた時から思ってたけど、やっぱりこの人ってホンモノなのかもしれない。音楽一本のアーティストでも食っていけそうなのに、なんでアイドルやってんだろうと思わざるを得ない。くっそ美人だし何か理由があるのかもしれんが。

 

 

「じゃあ、ラルクとか」

「いいねぇ、ラルク」

「HONEYとか行きましょうか。代表曲は抑えとかないと」

「HONEYならだりーもわかるかもな」

 

 

 ケラケラ笑いながら言われてるぞ、多田。テレビ用のにわかキャラだと思ってたけど、多田ってガチにわかなんだな。ベーシストの指先が固くなるってのも知らなかったみたいだし。

 

 

「これ、やるのはいいっすけどドラムとギターどうするんですか」

「金子さんがドラムとメインギターだけ音源流してくれるから大丈夫」

「すげぇな金子さん」

「プロだからな」

 

 

 そんな器用なことが出来るのか。レコーディングエンジニアってすげーんだな。もはや魔法使いじゃん。

 これがプロの一言で片付くあたり、プロってやっぱりプロなんだな(語彙力死亡)

 

 

「金子さん準備大丈夫ですか?」

『あっ、これ声出していいの?』

「全然大丈夫ですよ。な?」

「超ビックリした(もちろんです!)」

『光クン、言ってることと思ってること多分逆になってるにゃ』

 

 

 本心やししゃーない。だって急に上から声が聞こえてくるんだもん。

 上を向いてみると、スピーカーみたいなのが天井に内蔵されていて、そこから音が聞こえていた。なんかすげぇな。あんなのできるんだ。学校のスピーカーみたいなのとは訳がちげぇや。

 

 

「あっ、コーラスどうする? ボーカルやって貰ってもいいけど」

「大人しくコーラスやらせてもらいますよ。木村夏樹の生歌も聞いてみたいですし」

「言うねぇ。後悔させねぇから」

「期待しかないっすよ」

 

 

 ガチプロの生歌とか聞ける機会ないしな。木村さんの場合テレビで歌声聞いた時もめちゃくちゃ上手かったし余計楽しみってもんだ。

 大にわかって言われそうだけど、俺ライブとか行ったことないし。

 

 

「────── っし」

 

 

 リーゼントヘアーを軽く靡かせ、大きく息を吐く。どこか風格のあるそんな姿に少し息を飲んでしまう。

 

 

『ずっと眺めていた 遠く 幼い頃から』

 

 

 真っ黒なボディのギターから繰り出される荒々しい音の波。一瞬、男性かと錯覚させる、低く安定した歌声。

 来た。この歌が上手い人特有のビリビリ来る声。流石に同じ部屋ともなると気圧されるわ。俺の友達にも歌の上手い奴はいるが、それとは比べものにならねぇ歴とした壁を感じる。

 

 

『今も色褪せた その景色は』

『真白な壁に 飾ってある』

 

 

 左足を後ろに蹴り、つま先で地面を叩く。これが自己流のスタートの合図だ。

 座ってベースを弾くときは貧乏ゆすりみたいな要領でリズムを取れるが、立ちだとそうはいかない。まぁノリノリにさえ慣れれば意識しないでも勝手にリズム取っちゃうんだけど。

 

 

『──────乾いた』

 

 

 左手の薬指を弦に押し当て、下から上へ。低温の音の流れが、本震を予兆させる。

 

 HONEYはこのベースの入りが堪らない。フライングしたボーカルを追うようにバックが畳みかけてくる波の連鎖がトリハダ要素を加速させる。目の前で歌ってる人がプロともなれば尚更だ。

 なんだかよく分からないうちにこんなことにはなったけど、この状況を楽しまなきゃ音楽好きの名折れというものかもしれない。

 

 そんなわけで楽しもう。色々忘れて、後で考えればいいさ。




この前この小説が日間一位になってました。別の原作で書いていたでも日間一位は経験したこと無かったのでめちゃくちゃ嬉しかったです。皆さん評価ありがとうございます。それと日間一位になってたのにモチベが死んでて気がついたらこんな時間でした。ごめんなちゃい。

今やってるアンケートですが、ある程度主要のイベントをこなすまでは出ることは無いので、ネタバレというか裏設定がバレるみたいな感じになるかと思います。好きな方を選んでね♡


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ベースが地味っていうは間違いじゃないが反論はしにくい

めっちゃ更新あけてました。色々あったりなかったりしたんです。ごめんなさい。許してヒヤシンス。


 

「凄かったじゃないか! スカウトされたのも納得だよ!」

「いやぁ……? そうなんすか」

「そうなんすかって、スカウトされたのは君じゃないか」

「試すような真似をして悪かったよ。そういうことをする性分じゃないんだけど、どうしても話題の人のことが気になってね」

 

 

 

 俺と木村さんの楽しい楽しい時間はあっという間にすぎた。HONEYって3分超の曲だからそりゃあっという間だわなって感じなんだけど。

 

 結局、俺は木村さんと金子さんに試されていたらしい。そういうことなら最初に言って欲しいのに。最初に聞いていたところでどうにかできる訳では無いが心の準備とかあるやん普通。

 

 

「ま、私から言わせればまだまだ伸びしろあったけどね」

「主にどの部分のことにゃ?」

「ふふん、もっとギュイーンっとロックな感じにだね……」

「ベースだからギュイーンって音は出ないぞ」

「えっ、じゃもっとバチバチっと……」

「HONEYでは基本的にスラップしないぞ」

「」

「惜しかったな、だりー。スラップが出てきた所まではよかったぞ」

「最初でめちゃくちゃコケてたけどね」

 

 

 ベースでギュイーンって音はエフェクターかけても出るかわかんないからな。ギュイーンがどんな音をイメージしてるかにもよるけど。

 多分多田の言っているギュイーンはギターのスライドのことだろうな。ベースでもスライドはめちゃくちゃやるけど、あれはギュイーンってよりブォンって感じだし。擬音ばっかで頭悪くなりそう。天才タイプのプロスポーツ選手かよ()

 

 

「もっと精進せよ」

「うぅ……最近ベースがマイブームだったのに……」

「へぇ、なんでまたベースに」

「だりー、この前急に『多弦ベースってロックだよね!』って言ってたから多分それからだろうな」

「そうそう! 女装したおじさんがすっごいなんかロックでね!」

「女装した……おじさん……?」

 

 

 今、女装したおじさんって言ったな?

 女装したおじさんで多弦ベースってもう確定だよな。どう考えてもあの美少女ベーシストのことだよな。ダイヤモンド☆フユカイのことだよな。

 なんつーもん見てんだお前。洗脳されてないやつが見ると目が腐るぞ。俺は洗脳済みだからあの人見ただけで狂喜乱舞する体になってるけど。

 

 

「ね、ねぇ光クン。李衣菜チャンってもしかして変なのを見てるんじゃ……」

「変なのには変わりないし目は腐るかもしれんが、映像さえ見なけりゃ天国だから大丈夫だ」

「何を言ってるのかよくわからないけど、取り扱い注意の劇物でも扱ってるのあの子?」

「にゃを付けろよ」

「にゃ」

 

 

 雑すぎて草って言いそうなったわ。現実でネット用語を持ち出すやつほどサムいやつはいないってそれいちばん言われてるから。たまにふらっと出てきたらそれはもう末期だから。俺のことだけど。

 

 というか横で木村さんが苦笑いしてるんだけど、どう考えてもその笑い方はヤツを知ってるな? 正直ギターやベースをやってる人間なら一度は目にすると思うが。

 

 

「私も早くギターが弾けるようになって、なつきちみたいにロックに弾きながら歌えるようになりたいなー」

「練習すればすぐ出来るようになるさ」

「弾き語りは慣れだよ、慣れ」

「みくも早くソロ曲デビューしたいにゃ〜……」

「がんばれ」

「なんでみくにはそれだけなのー!」

 

 

 なんでって言われましても……それ以外に言いようがあるんですか。だってどうすればデビュー出来るか知らんし。

 

 

「そういえば光っていつからベース始めたの?」

「ベース? ベースは……中一くらいからだったと思う。多分。きっと」

「なんでそんなに曖昧なんだにゃ……」

 

 

 確かに。自分がベースを始めた時期が曖昧にしか記憶にないってどうなんだろうか。

 覚えてないもんは覚えてないんだから仕方ないんだけど、それでもなんとなく思い出なんだからちゃんと覚えておけよとは思う。まぁ、結局覚えてないんだけどね(白目)

 

 

「光って確か高二だったよな? それだと、ざっと5年くらいになるのか? それならそのうまさも納得だよ」

「リズム感は昔からよかったの?」

「リズム感とかあんまり気にしたことは無いからなぁ」

「じゃあ生まれつき良かったのかもな」

 

 リズム感ってよくわかんないじゃん。某メリーゴーランドでラブソングしてそうな人並みに突き抜けてないとわからない能力じゃん。

 というか言葉で説明すること自体が難しいし、なによりも圧倒的に地味すぎる。

 

 

「なになに? 結局光ってどこがすごいの!?」

「俺も気になる!」

「本人が気になってどうするんだにゃ」

「仕方ないだろぉ、藤○くぅん。俺が一番わかってなかったんだから」

「おうおう、松井光ぅ! みくはヒゲのおっさんじゃないにゃー!」

「イマドキの高校生でもどうでしょう知ってるんだな……」

 

 

 金子さんが信じられないような顔で見て来るけど、そりゃあ知ってるでしょうに。8時に全員集合するやつとかだってちゃんと知ってるんだからね。昔作られたコントなのに、今を生きる人たちが見ても爆笑できるっていうのは不思議なものがあるよな。

 

 前川って大阪出身だよな。なんでどうでしょうネタが通じるんだよ。北海道民にしか通じねぇんじゃねぇのかよこのネタ(東京都民)

 

 

「光の凄いところはリズムキープの安定力だよ」

「……ベースが? りずむきーぷ? ドラムじゃなくて?」

「あっ、そこからなのね」

 

 

 ベースってギターと同じ弦楽器だからギターと似たようなことしてるって思われがちだよな。

 だがしかーし! 実際やってることはギターと違って鬼地味だし、ギターよりもドラムにやってることは近いんだよね。ドラムと一緒にリズム隊って言われるくらいだし。

 

 

「実際、隣にいてすげぇ弾きやすかったよ。光のバンドメンバーは恵まれてるな」

「でへへ……そんなこと言われても嬉しくねぇぞこんにゃろー!」

「長身の男子高校生が言ってもキモいだけにゃ」

 

 

 うるせぇ!わかってんだよ、んなこたぁ! けどパスがまる見えだったんだから取るしかないじゃないの! それが生きとし生けるものの本能じゃないの!(違う)

 

 

「でも、正直地味な能力だよね。もっとロックな能力持ちだと思ったな〜」

「漫画の世界じゃねぇんだぞ。素人がトンデモ能力なんか持ってたまるか」

「いやいや、光のリズムキープって十分とんでもない領域に入ってると思うぞ?」

「へ?」

 

 

 少し拍子抜けしていた緩んだ顔が驚きの色に変わる。

 いやいや、リズムキープに凄いも何も無いと思うんだけど。

 

 

「少なくともアタシと金子さんが打ち込みかと聞き違えるくらいにはな。途中で遊んだりしてたからちゃんと光が弾いてるって確認できたけどな」

「機械と間違えるって言い過ぎっすよ」

「それくらいぶれなかったんだよ。音もリズムもな。そりゃレコーディングには向いてるだろうな。意識を持った機械みたいなもんだし」

「褒めてんのかよくわかんないにゃ」

「褒めてる褒めてる」

 

 

 俺のすげーところってそんな所だったんだ。生まれてこの方、部活連中はもちろん、親にもそんなこと言われたことなんて無かったわ。なんて地味な強味やねん。

 

 

「なんというか……地味、ッスねー……」

「そんなことないって! 人間の手でやってるのに一切のブレもなく音も安定してるつって凄いんだぞ!」

「簡単に出来そうで実はできないって悲しいよな」

「みく、ベースとかよくわからないけど、光クンってなんかベースみたいだにゃ」

「どういう意味だそれ。俺が地味って言うのか」

「地味に見えて凄いって意味だにゃ」

 

 

 なんだそれ。不思議と褒められてる気が一切しねぇ。泣きたい。泣くが? いや待てよ、俺がベースみたいってベーシストとしては最高の褒め言葉では? 違うな、うん。

 

 

「まぁ光がなんで私達専用のスタジオミュージシャンに選ばれたかは分かったよ。なつきちが認めるってことはそれだけ凄いってことだし!」

「ほんとに凄いってわかってる?」

「わかってるわかってる!」

 

 

 自信満々に胸を張ってそういうが、絶対にわかってないしフラグにしか聞こえない。

 という訳で、カマかけてみよう。こいつと出会ってまだ24時間も経っていないが、なんとなくこいつはかけたカマに面白いくらい綺麗に引っかかってくれそうなタイプな気がする。俺の直感は当たるんだ。知らんけど。

 

 

「どの辺が?」

「リズムキープ!」

「どこのフレーズ?」

「かーわいったー! って所!」

「可愛い。しかも合ってる」

「ふふーん! でっしょー!? これぞ、ロックなアイドルってね!」

「多分、知ってるフレーズ言っただけだにゃ」

 

 

 ワイトもそう思います。まぁでも当たってたからいいんだよ! にわかをどうにかしてふるい落としに行くの良くない。それ先祖代々言われてるから。多分。

 

 

「ともかく、同じ趣味をもった奴が仕事仲間になるのは嬉しいよ。これからよろしくな」

「う、うっす」

「敬語じゃなくていいよ。それに、苗字じゃなくて気軽になつきちって呼んでくれ」

「いや、なつきちはちょっと……」

「冗談だって。なつきちってあたしを呼ぶのはだりーだけだしな」

 

 

 なつきち呼びは恥ずかしいがすぎるからビビった。テレビで見てた人間がいきなりあだ名で呼んでくれとか言ってきても無理がすぎる。

 にしてもこの2人。木村さんと多田の二人はまじで仲がいいんだな。なんか百合厨が大量に湧きそうだ。

 

 というか、俺って木村夏樹になんか認めてもらったの? ヤバくね? これだけでご飯15杯おかわりできるんだけど。

 嘘だわ、ご飯15杯とか現役高校球児が泣いて1000本マジノックに変えてくださいって頼み込むレベルの量だわ。




あまりにも日を空けすぎた結果、小説の書き方を忘れました。バカかな?
ただでさえ低めなクオリティがしばらくの間余計に下がると思いますが、誤字報告等でしばいていてだければ幸いです。

あとにじさんじの小説書き始めたんで、良ければそっちのお気に入り評価等お願いします(露骨なステマ)


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猫はこたつではなく主人の布団で丸くなる

お久しぶりでございます。滅茶苦茶日が空きまして許してヒヤシンス。
こんだけ日が空いたのに感想たくさんうれしいです本当にありがとうございますよろしくお願いします(何を)


「あぁ、疲れた……」

 

 

 色々なことがありすぎてどう考えてもほとんど情報を処理できない頭から、備え付けのふかふかベッドにダイビングする。ちなみにダイビングをしても変な魚とか電気ネズミを咥えてこれるわけでは無い。あの鳥の原理ってなんなんだ。うっうー!

 

 それにしても疲れた。休日でまだ午前中だというのに、非常に疲れた。何があったのか詳しいことを話すのが嫌になるくらいにはどっと疲れたし、色々あった。

 だってテレビで見てた人と一緒にセッションしたんだもんな。いまだに信じられねーや。

 なんなら、ついさっきまで一緒にいたしな。多田と前川と一緒にまとめてラーメンも奢ってもらったし。美味しかった。

 

 というか、夏樹さんも寮通いなんだよな。しかも部屋めっちゃ近かったし。隣の隣の隣だからな。周子さんと紗枝ちゃんときて次の部屋だ。近いなほんと。何がどうなってるんだよ、この寮。

 

 

「眠いでごわし」

 

 

 というか眠い。眠すぎる。

 当然といえば当然だ。お腹がいっぱいで体は疲れている。ともなればやることは一つであろう。そう、睡眠だ。お昼寝だ。爆睡だ。

 

 脱いだシャツとズボンを机めがけて投げつけ、掛け布団に包まる。中シャツは別にいいや、寒いし。

 

 

「ふわぁ……」

 

 

 でかいあくびを抑えることなく、目を瞑る。昼寝っていいよね。最高に気持ちいいよね。某三下いちご大福が起きてこない理由もわかるもん。仕方ないよな、眠いもんな。おはしいなできないよな。

 とか思ってたらマジで眠くなってきた。意識が遠くの彼方に行ってまう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふわふわした感覚の中で意識が戻るのがわかる。

 変な夢を見た。バランの妖精とタテガミがポンデリングになってる声がおっさんのライオンにひたすらセクハラされてたような、そんな記憶が薄いのに濃く残ってる。かなり恐怖を感じた。

 起きたとはいえまだ眠い。100人がこの状況にあるならば、きっと97人くらいは

 二度寝するであろう。というわけでワシも寝よう! お茶は飲まない。

 

 

「うにゃあ……」

「あっ、ちょっと狭いっすね……失礼しました」

 

 

 布団をぐいっと首元まで上げた時に、右腕がこつっと当たる。いやはや、失礼しました。それじゃあ俺も寝て……寝て……

 

 ……ん? 今俺の右腕何に当たった? 心霊現象か何か? ……んん??

 

 

「……ん?」

 

 

 体を起こして、何か当たった右手側を見てみる。明らかに布団が膨らんでる。というか赤みがかったふわふわの長い髪の毛みたいなのが布団の横から覗いてる。怖いんだが。普通にこれひっぺがしたら怖い女の人に襲われそうなんだが。

 

 とは言いつつも、横でなんか絶賛もぞもぞしているなんかをひっぺ剥がしてみないことにはことは進まない。

 というか中身はなんとなく予想できてる。個人は予測できないけど、多分横にいるであろう人の職業はわかる。なんでやろなぁ。真面目にやってきたというわけでも無いのに。

 

 

「……ご開帳〜」

「寒い〜……」

「あっ、失礼」

 

 

 ペラっと掛け布団を捲ってみると中から出てきたのはまるで赤い宝石箱のようなどえらい綺麗な女性。すっごい寝顔綺麗。なんなら布団をめくられて唸ってた顔すら綺麗だった。こんな美人が存在している事実がすげーわ。

 とか言って見惚れている場合では無い。この見た目には騙されていけない。赤の他人が自室で寝ているところの横に転がり込んでくるような女性が一癖二癖ない女性な訳がない。絶対にヤバい。

 

 とは言ったものの、このまま俺が直接この人に触って起こすわけにはいかない。なぜかって? 女性に直接触れるなんて選択肢が俺にはないからだよ!

 

 

「どうしたもんか」

 

 

 ここで俺に残された選択肢は二つある。

 そのいち、この美女が起きるまで待つ。この場合、放置しているだけでことが進むが、この人がいつまで経っても起きずに夜になってしまった場合に俺がこの人を連れ込んだように見られかねないというデメリットがある。今こんなことになってる時点で連れ込んだもクソもないんだけどね。

 そのに、近くの部屋の人に助けを求める。俺は幸いにも両隣にいる厨二病なアイドルと適当京美人の二人とすでに面識がある。この二人にヘルプを求めてどうにかしてもらうという算段だ。勘違いされたその時は自害を決意し颯爽とここから夜逃げする所存である。

 

 

「うーむ、悩みどころよ」

「何をそんなに悩んでるの〜?」

「いやー、起きたら隣に美女がいてさ。直接起こすわけにもいかないし」

 

 

 いやー、どう振り返っても詰みに近いよなぁ。この場面。

 一体なんでこんな目にあって……ん?

 

 

「起きてんじゃん」

「Good morning〜♪︎」

「発音良」

 

 

 めちゃくちゃグッモーニングの発音綺麗やん。綺麗な顔から綺麗な英語の発音とかこいつ帰国子女か? ほら、なんか帰国子女ってアメリカかぶれの美少女的なイメージあるし、知らんけど。

 

「何これ、英語で聞いた方がいいパターン? はーわーゆー?」

「志希ちゃんバリバリじゃぱにーずぴーぽーだよ?」

「そうなの? そりゃそうか」

 

 

 ウェーブが掛かりながら胸元……んんっ! 辺りまで伸びた髪の毛。人懐っこそうな丸い目とそこから伸びる長いまつ毛。つけまつ毛じゃないよな? 天然だったらヤバすぎだろ。俺が女だったら羨ましくて高速アルプス一万尺急に始めるまである。

 

 

「ところで志希ちゃんさんや。あなたは何でここにいるんですかえ?」

「ん~……なんでだっけ?」

「なんでだろうねぇ」

 

 

 きれいな斜め45度の角度で模範的ただいま考え中のポーズを決められても困るんですよね、こっちとしては()

 とはいえこっちも困ってそっちも困ってでカバディカバディしてても困ったことに話が進まないんですわこれが。

 

 

 ぴんぽーん

 

 

「お客さん?」

「そうみたいだねぇ」

 

 

 ベッドから飛び降りて速足でドアへと向かう。

 いったいどこの誰が急にピンポンしたのかはわからんけどマジで助かる。下位にいるときのキラー並みの打開助かる。この前某マリカ大会を見てしまったせいでマリカしたい欲が過去一すごいのよね。俺もあんなアチアチな勝負してみたいわね。友達もいないわけじゃないけどガチガチに同レベルで殴れる相手はほとんどいないってのも事実だから。

 

 

「はいはーい」

「おーっす、昨日ぶりー」

「あぁ、周子さん……と?」

 

 

 ドアを開くと京美人……と、隣にギャル。

 めったに見ることはないピンク髪にしっかり立った付けまつげ。ぱっと見でギャルとわかる容姿をしているものの、化粧も濃すぎず素の顔の良さで勝負をしていることがうかがえる。というか格好がやばい。露出度が高い。へそが出てるし肩も出てる。風邪ひかないの? お母さん心配しちゃう。

 

 てかずっと疑問だったんだけどさ。周子さんも志希ちゃんさんもだけどみんななんでそんなに平気で肩を露出できるの? 寒くない?あったかくなってきたとはいえ寒くない? お母さん心配しちゃう(母親特有の心配性)

 まぁ室内だから寒くないといえば寒くはないんだろうけどさ、そもそも恥ずかしくない?(真理)

 

 ほんとにこの環境ってすごいよな、美人しかいねぇんだもん。マジで桃源郷だよな。この点に関してだけは目の保養にしかならねぇよな。まぁ圧倒的にやべぇ点としてはここにはアイドルしかいないし男が俺だけしかいないってことなんだけどな。絶対にここにいたらあかんわ、うん。

 

 

「ほんとに男の人が住んでるんだね……」

「いや、ほんとすいませんほんとマジほんと」

「ほんとって三回言うやん」

「俺のマジ度を表したら自然と」

 

 

 このギャルのお方の反応が普通なんですよ。そら驚くよ、女子寮に男がいたら普通に驚くよ。なんならこの状況に置かれてる俺が一番驚いてるまであるもん。もういろいろと諦めたから今は驚いてないけど(?)

 

 

「ま、まぁそう落ち込まないでよ。いろいろと大変なんでしょ? 状況はよくわかんないけどさ」

「女の花園には入れてる時点でシューコちゃんはこの状況を楽しむべきじゃないかとは思うけどね~」

「楽しむとか無茶では?」

 

 

 ハーレムを楽しむ? それは胃が痛いだけでは? それに僕が知ってるハーレムっていう状況はなぜか好感度マックスになってる女の子たちだけに囲まれる状況のことなんだが?

 なんでハーレム系のアニメやら小説やらの世界ってみんな好感度マックスなんだろうね。たまにある何の説明もなしなのに好感度マックスの女の子が最後まで好感度マックスになった理由は経緯を語られぬまま終わったりするの俺すっごいもやもやするんだけど。

 俺はイチャイチャを見てぇだけじゃねぇんだ! その過程も楽しんで限界オタクになりたいんだよ! まぁ別にそこまでハーレムに思い入れがあるわけではないから別にいいんだけどね。

 

 

「ハーレムとかうらやましーじゃん。青少年にはちょーっと強すぎるflavorかもしれないけどネ♪」

「うわびっくりした」

「あ、いた」

「にゃ?」

 

 

 いつの間にベッドからここにきていたのやら。俺の肩に手をかけてひょっこりと顔をのぞかせる小娘の頭をすいと伸びてきた手がむんずと掴む。

 

 てかめっちゃいい匂いする。このギャルめっちゃいい匂いする。猫娘の頭掴むために近寄ってきたんだろうけど、その時にふわっとしたシャンプーの香り凄い(小並感)

 ギャルって香水頭からかけてる生き物だと勝手に認識してたけどこれは新情報だわ。マスコミに高く売れるね(確信)

 

 

「おー、志希ちゃんほんとにここにいたとはねぇ」

「やっぱり適当言ってたんだ……」

「なになに。どゆことすか?」

 

 

 全く状況がつかめない、ということもない。大人になったらその場の状況を読むことも大事だからね。時を戻そう。

 実際、時を戻せたら何でもやりたい放題だよな。俺なら絶対エッチなことするわ。というか男なら全員そういうことやりかねんわ。人間、時を戻す能力がない方が絶対に行ってはっきりわかんだね。

 

 まぁ話を察するからにこの志希ちゃんさんがどっかに行ってそれを探してる時に周子さんが適当に俺の部屋にいるって言ったら本当にいたって感じだろう(オタク特有の早口)

 

 

「いやー、この娘がね? また脱走したもんだから捕まえに来たのよ」

「それほどでも~」

「褒めてないから。ほんとにもう、麗さん送りになってもアタシは知らないからね」

「それだけは勘弁してほしいかにゃ~」

 

 

『また』とな? なるほどなるほど。よくわからんがこの娘には脱走癖があって、なぜか今回はわしのところに来たと。ただのトラブルメーカーじゃねぇか。勘弁してくれ。

 

 

「そういえば美嘉ちゃんって光くんとは初対面だっけ?」

「なんならそちらの方だけじゃなくて今捕まってる方とも今日初めてですけどね」

「どんどん顔広がってくなぁ」

「ここにいるときに顔広げても変な噂しかたたないと思うんで勘弁してほしいんですけどね」

 

 

 いや、ほんとにこれに尽きる。昨日が一日目、今日が二日目で明日過ごしたらこことおさらばできるのに何でこんなにイベントが詰まってるんだよ。バランス調整おかしいだろ運営仕事しろ。

 

 

「明日までここにいることになってます、松井光って言います。いやマジで迷惑かけないんで勘弁してください俺もなるだけここにはいたくないんですごめんなさい」

「別にずっとここにおればええのに」

「周子ちゃんこの子になんかした? すっごい怯えてるじゃん……」

「にゃははー! やっぱりキミ面白いねぇ! かくまわれてた志希ちゃんでーすよろしくー!」

「ちなみに苗字は一ノ瀬ね~」

「周子ちゃん補足説明どーもー」

 

 

 他人事だからって適当言いよって……許すまじ周子さん。それと自分は関係無い的な感じで能天気にしてるけど、そもそもあんたのせいで俺はすごい申し訳なさそうにしてるギャルと対面してることになってんだからな。ただでさえここに所属しているアイドルの人とはここで会いたかないって言ってるのに。

 

 

「あー、光くんだっけ? 周子ちゃんからここに来るまでに色々聞いたけど、気にしなくていいからね?」

「やさしい……」

「アタシは城ヶ崎美嘉っていうの。カリスマギャルとしてやってるからよろしく★」

「天使……」

「色々大変だと思うけど一応アタシのこう見えて歴はキミよりあるからさ。なんかあったらいつでも相談してね」

「」

「泣いてるじゃん……」

 

 

 周子さんが若干引いてるけど知ったこっちゃない。もう泣けてくる。マジで泣けてくる。こんなに癖のなくて優しい人初めてや。いや、みんな優しいんだけど癖がないって点ではね……(白目)

 

 やはり人は見た目で判断してはならないっていうのは至言かもしれない。ヤンキー優しい説とか滅茶苦茶あるもんな。ヤンキーはヤンキーなんだけど。

 

 

「一生付いてきます姉御」

「姉御!? 美嘉ねぇって呼ばれたことあるけどそれは初めてカナー……?」

「じゃあ美嘉ねぇで」

「新しい弟君できちゃったね~」

「おめでたー」

「えぇ!?」

 

 拝啓、母親へ。なんかお姉ちゃんができたかもしれないです。僕は今泣いてます。人間の優しさって素晴らしいですね。人へは優しくしようと決めました。 ―完―




この作品、進行があまりにも遅くね? って思っている読者の方。
この3日間は! この3日間は滅茶苦茶濃い3日間にしたいんです許してください! そのうち普通のテンポで進むんで今だけは勘弁してください!(甘え)


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飼い犬と歴戦の嫁の嗅覚は世界レベル

最近書くのが楽しくなってまいりました。感想が来るとモチベが鬼だよね。無料ガチャは爆死しかしてませんでした。合唱。


 

【朗報】松井光、昼間のイベントをこなして以降ひきこもることにより午後7時まで逝き抜くことに成功する。

 

 いやぁ、これは快挙ですよ。マジで快挙ですよ。昨日ここの部屋に来てからずっとイベント続きだったにもかかわらず、長時間のイベントなしっていう事実を作り上げることのできたこの凄さ。あなたには理解できますか!(大興奮)

 

 ここに荷物が運び込まれてから速攻で周子さんが来て紗枝ちゃんも来て、帰ったと思ったら凛が来て。寝て早起きしたもんで外に出たら飛鳥に会い、家に戻って二度寝してたら前川と多田に突撃されて連れ回されてたら夏樹さんとセッションすることにもなった。草臥れて帰ってきて寝てたら志希ちゃんさんに不法侵入されてお姉ちゃんがなぜかできた。

 

 おかしい。控えめに言って24時間ないくらいの時間でここまでの出来事があるのほんとにおかしい。

 それがあってからのこの何もない時間だ。もう神だね。最高至福の時間だね。

 実際寝るのが最強ってこれで結論付いたわ。なぜ俺は24時間眠れる体に生れてこなかったんだろう(末期)

 

 

「今日はもう晩御飯抜きでいいや」

 

 

 本当はこの時間ならご飯を食べている時間なんだが、今日はもういらないや。大丈夫、晩御飯一食抜くくらいならへーきへーき。

 あれ? 今日俺って昼めし食ったっけ? まぁいいや。

 

 

『着信が来てるぜぇ~? ワイルドだろぉ~?』

 

 

 あっ、電話だ(小並感) スギちゃんの着信音いいよね。電話がかかってきたっていうストレスもないからおすすめだよ。難点としては人に聞かれたら変な顔されるってことね。スギちゃんの何が悪いいんだよ。ゆめおと同じで袖がないだけだろ。

 

 着信主は……凛じゃん。なんや、珍しくもない。

 

 大体電話がかかってくるってこと自体が今の世の中レアケースってことも無きにしも非ずってこともあるかもしれんが、大体俺に電話をかけてくる奴は半分が親でもう半分が凛だ。

 親の場合はわかる。アナログ人間だからしゃーない。けど凛はなんで電話で来るねん。普通にLI〇Eしてくればええやんってなるわ。

 まぁ俺もいちいち文字打つのだるいから凛に用があるときはほとんど電話でかけるんですけどね。

 

 

「あい、なんぞや」

『今暇でしょ』

「暇だが」

 

 

 初手暇でしょってこいつやべぇ。確かに暇だけど。オブラートに包むって言葉知ってる?

 中学生とか高校生になるとさ、絶対にオブラートじゃなくてコンドームっていうクッソ下らん下ネタいう奴いるよな。一人でコンドームで水風船しとけ(辛辣)

 

 

『晩御飯食べてないでしょ』

「食べた」

『ごはん食べに行きたいんだけど』

「どこによ」

『あんたの部屋』

「は?」

 

 

 ぴんぽーんとチャイムが鳴る。嘘だろ? マジで言ってる?

 電話を耳に当てながら玄関に向かい、鍵を開ける。

 

 

「こーゆーこと。どうせひきこもってご飯食べてないでしょ」

 

 

 ドアを開けるとほっと〇っとのマーク付きのビニール袋を掲げながらマフラーをしているせいで呆れたようなジト目しか見せてくれない凛ちゃんさん。

 てか外寒っ! 2月でも冬はばちこり冷え込むのな。

 

 

「ホラーかよ。しょんべんちびるかと思ったわ」

「するならトイレでしてきて」

「ちびってないわ」

 

 

 寒いだろうによく来たねぇというおばあちゃんみたいな気持ち半分、夜道を一人で来させたことに関する焦り半分でそそくさと凛を部屋に招き入れる。

 この子も強いから下手に襲われないとは思うんだけど。というかあの硬派そうなPさんと一緒にいる千川さんがいる限り間違いは起きないと思うんだけど。それでも心配なもんは心配だ。

 

 

「言ったら一緒に買いに行ったのに」

「すぐそこにあるお店行ったから大丈夫」

「お前ほっと〇っと食べたことあんの?」

「普通にあるよ」

「イメージと違う」

「あっそ」

 

 

 そっけない返しとは裏腹にのり弁やらサラダやら豚汁やらを手際よく準備していく。

 ほっと〇っと滅茶苦茶久々だわ。コンビニ飯よりもクオリティ高いしコスパもいいんだよな。学校の昼食に丸々弁当屋ののり弁持ってきてる奴いたわ。正直賢い(小並感)

 

 

「重くなかった?」

「鍛えてるから」

「そのほっそい腕で?」

「見る?」

「いやいい」

 

 

 セクハラになるからね。それに暖房付けたとはいえまだ寒いし。

 店が近いとはいえ汁物も買ってきてるんだったら尚更ついて行ってやればよかった。

 

 

「そこに財布あるから必要な分後で取っといてな」

「わかった」

 

 

 素朴な会話をしながら全部の蓋を開封していく。ちゃんと和風ドレッシングにしてるじゃん。わかってるぅ↑

 

 

「ねぇ」

「ん?」

「ベッドから女の匂いがするんだけど」

「あっ」

 

 

 えっ、だれか空間凍らせた? さっき暖房付けたって言ったよね? 急に氷点下になったんだけど。

 ココ北海道? ロシア? 雪国? アイスランド?

 

 

「何。ついにここの人に手出したの」

「無罪だ」

「そうだよね。ここには私よりもかわいい子がいるもんね」

「違う、待って」

「最低」

「ごめんってたんまあああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、よかったね。可愛い女の子と寝れて」

「実感皆無だったから惜しかった」

「変態」

「冗談だて」

 

 

 何とか飯を食いながら弁解に成功しました。やましいことなんか何もしてないからね。そりゃ誤解ならちゃんと解けるよ。うんうん。

 久々にフリーザー凛を見た。めっちゃ空気凍ってたマジで空気凍ってた。ちゃんと誤解が解けてマジでよかった。なんか若干引きずってる臭いけど。

 

 さっきまで豚汁の入っていた器がまだほのかに暖かい。これでさっきのが幻覚だったと確信できるわ。

 これで器が冷え切っていようものなら俺はもう戦慄していた。あれ?なんか袋の水滴凍ってね? アイスなんか入ってたっけ?

 

 

「そもそもお前よく女の匂いとかわかるよな。嗅覚えぐ」

「香水の匂いとかわかるでしょ」

「確かにわかるけど香水の匂いに関してはあんまり気にしないもん」

 

 

 ファ〇リーズとかはちゃんとやるよ? だってほら、あれってCMでもファ〇リーズで洗おう!って自負しているくらいだから。かけるだけで洗濯したも同然なんだからそらファ〇リーズするよな。

 

 

「香水の匂いとか嫌いなの?」

「嫌いではないかな。特別好きでもないけど」

「ふーん……」

 

 

 そうですか興味ないですか。興味あったとしてとしても何がどうってわけじゃないからいいんだけどね別に。

 

 

「まぁ付けようとは思うよ。今でも」

「……」

「わかったって」

 

 

 めっちゃジト目で睨まれる。ごめんごめん、意地悪して悪かったってホント。

 

 そもそも中学の時に友達からちょっともらった香水付けてたらすっげぇ泣きそうな顔して『香水付けないで』って言ったのお前だからな。好きではないとはいえ匂いは気にするんだからな。あれがなかったら今頃俺はちゃんと香水付けてたよ。

 

 

「お前香水にいじめられでもしてたのか?」

「いや、光に付けて欲しくない」

「意味が分からん」

「別にわからなくていいよ」

 

 

 そういうと凛がスッと腰を上げてベッドに腰掛け、枕を取り上げる。するとおもむろに枕に顔をうずめ始める……も、しばらくすると不満げな顔をしながら枕から顔を離し始めた。

 なんだよ、匂うっていうのか? その行為はゴミ箱を自分から覗いて汚いっていうようなもんだからな。俺が傷つくだけだかんな。

 

 

「……匂いしない」

「新品ですもの。ていうかやめない? いい匂いでもないでしょ?」

「今度光の家から枕取ってくる」

「使わんからな。俺はこの前見つけた新しい枕を使うって決めてるんだ」

「じゃあさ、光の家にある枕貰っていい?」

「駄目に決まってんだろ」

 

 

 そんな顔してもだめだからな。枕が欲しいならついでに買ってやるから。

 そもそも俺の枕なんか貰って何に使う気だよ。絶対にダメだからな。そもそも俺が一番恥ずかしいんだし。

 

 結局、この枕争奪戦(争奪戦とは言ってない)は俺が着れなくなったお古の服を上げるという形で譲歩され、幕を閉じた。

 まったくもって意味が分からん。そもそもお古とはいえお前の体のサイズじゃぶかぶか待ったなしだからな。絶対に外では着させんぞ。お父さんの誇りにかけて(違う)




何故か総評がお気に入りの増えた数よりも多く伸びてると思ったら評価が入ってました。久々過ぎてもはやおじいちゃんになった浦島太郎まである。


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社会の闇と書いて千川ちひろと読むらしい

今回はちょっとだけ、ちょーっとだけまじめな感じのお話になっています。
こういうの考えて書くのは初めてなんで心配ですけど、考えてる時は滅茶苦茶楽しかったのでそれだけでOKです(雑)


 

 どうやら俺は戦士か何かになったらしい。

 

 空を飛び回り、なんか目の前にいる敵を指先から出るビームで蹴散らす。てかこの技黄〇の丸パクリじゃねぇか。

 まぁいいや。気分はまさしく海〇無双。春に出る新作が楽しみでしょうがないな。早くやりたいな。おっ、あっちにも敵がいるじゃん。ヒャッハー! 汚物は消d

 

 ……ん? 待てよ? あの敵ってどっかで見たことあるような。化け物の形がどんどん変わって人間みたく……あの緑色の服……んー?

 

 

 〈hr〉

 

 

 

「松井さーん……起きてますかー……?」

「っは!?」

「ひゃっ!?」

 

 

 強烈な悪寒に襲われ一気に意識が覚醒する。いいだろうかかって来いよ。今の俺は〇猿だぞ。ん~、光の速さでけられたことはあるかいぃ~?(ねっとり)

 

 

「び、びっくりしたぁ……」

「……千川さん?」

「すいません。少し驚かしてしまいましたね?」

 

 

 少しで済むのだろうか。お互いまさに飛び上がるほど驚いていた気がしなくもないんだけど。

 

 

「なんでここにいるんですの?」

「いやー、松井さんにいい報告ができそうでつい」

「……ここ俺の部屋ですよね?」

「早速なんですけど着替えてもらっていいですかね? 別にこのまま話を聞いてもらっても大丈夫なんですけど」

「あっ、そこは触れない方向なんですね」

 

 

 この人マジで何者なんだろ。てか今何時だ。早朝か? マイスマートフォン! 別にライバー用じゃないスマートフォン!(ネイティブ発言)

 てか普通にあったわ。スマートフォン。時刻は現在8時47分! ……昨日寝たのが12時くらいと考えると少し寝すぎた程度だろうか。ぐっすりすやすやであった。

 

 

「……てか千川さん。こんなところにいてお仕事は大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ? こう見えても私結構やりてなんですから!」

 

 

 少し自慢げに言う姿がとってもかわいいのが悔しい。もうこの人直々にアイドルやればいいんじゃないのかな。なんかいろいろと裏方にいるには惜しい存在に見えるんだけどな。

 

 

「それで松井さん。お着換えなさるんですか?」

「あー……じゃあ着替えてくるんで。適当に待っててもらってもいいですか?」

「はい! 大丈夫ですよ!」

 

 

 あんまり待たせないように今日は軽装でいいか。そもそも今日まで俺はひきこもり生活の予定だし。

 というかなんで今こんな状況なんだろ。俺どこかで突っ込まなきゃいけないタイミングあったはずだよな? 完全にもう引けなくなってるだけじゃね? 泣きそう。泣いたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ! 少し本題に入る前に前置きをさせていただきますね!」

「はぁ」

「今、松井さんが住んでいるここは女子寮になっている……というのはご存じですよね?」

「もちろん」

 

 

 それはもうここにきてからの2日間で痛いほど学ばせていただいたですわよ(お嬢様)

 だって部屋からなるべく出ないように心がけていたのに、死ぬほどアイドルと顔を合わせることになったし(遠い目) なんならド早朝に公園に出ただけでアイドルもいたし(悟り世代)

 

 

「実は本来なら女子寮に男性の方が住んでいる、というのはちょっとした問題だったりするんです」

「ちょっとしたで済むんですかそれ」

「済ませるから大丈夫ですよ?」

「あっ……」

 

 

 なんか今一瞬、社会のとてつもない闇を見た気がする。いや、見たというよりも見えた気がする。

 謎の力でもみ消すんですねわかります。いや、嘘ですわからないですだから消さないでくだs

 

 

「そんなわけで! 私たち、ちょっと頑張っちゃいました!」

「なにをどす?」

「ちょっとした問題を問題じゃなくしたんです」

「ほう。……ほう?」

 

 

 問題を問題じゃなくする。つまるところ、女子寮に男性が住んでても問題じゃないようにする……そういうことであろうな。

 いや、どうあがいても無理だけどね(白目)

 

 

「つまりですね……簡単に言えば、女子寮が女子寮じゃなければいいんですよ!」

「でもここ女子寮じゃないですか」

「いいえ! ここは今日から学生寮です!」

「???」

 

 

 この人日本語通じるのだろうか。ここは何と言おうと女子寮である。だって実際そうだしね。

 

 てか俺がここに一番最初に入れられそうになった時にちょうど目の前にいる人に言われたもん。『346プロの女子寮』って言われたもん。

 漢として人生を生きていく中で女子寮に入れなんて言われるとは思わなかったもんだから二度と忘れないよあのセリフは。

 

 

「厳密に言えば、正式にここの名前が学生寮に変わったんですよ! 今日から!」

「……ほう?」

「学生寮なら女子限定なんて一言も書いてありませんから学生なら男性でも寮生活しておっけーです!」

「……ほう」

「それに、名目上学生寮なだけなので別に学生じゃない人でも入居できますし! 完璧な策ですよ!」

「あっ、ふーん……」

 

 

 なるほど、なんとなーく意味は分かった。つまり男性である俺がここにいても何ら問題はない状況をものの見事に作り出したってことやな? なんちゅーことしてくれるんや。

 

 しかもそんな簡単に変えられるんかい。僕、そういう会社の人事? 管理? もはやどれに該当するわからんようなこと簡単に変え得られるなんて知らなかったよ。

 

 

「でもマスコミとかそういうことお構いなしに記事に書くんじゃないですか?」

「名目上の立派なルールを作りましたから! 何一つ問題はありません!」

「あっ」

 

 

 なんでだろう。千川さんのニコニコスマイルから邪魔する奴は力ずくで叩き潰すという強い意志が感じ取れる。怖い。この人なんでこんなに本気なんだよ。

 

 

「でも僕がここにいるって保証がないじゃないですか。そもそも今日までここにいたら実家に帰る気満々だったんですよ?」

「いーや、光さんにはここにいてもらいますよ? 逃がさないですから」

 

 

 そういうと千川さんは、ふっふっふっ……と不敵な笑みを浮かべながら立ち上がりドアの前で仁王立ちして目を光らせる。

 なんでだろう。その行動に関しては何一つ違和感を感じない。小さい。可愛い(小並感)

 

 

「そもそもの話ですけど、なんで俺をここに住まわせたいんですか?」

「質問を質問で返すようですけど、こんなに可愛い女の子たちに囲まれていられる環境で過ごしたくないんですか?」

「ストレスフリーでいられるなら住みたいですけどね」

「なら問題ないじゃないですか! 男性にとっては桃源郷ですよ桃源郷!」

「ワードセンスが地味に古いっすね」

 

 

 一瞬『は?』って言いかけたが桃源郷のおかげで突っ込みが先に出た。

 

 現在進行形で忍者的戦略的籠城という名のひきこもりでアイドルの人たちと接触しないようにしている二尾のどこがストレスフリーなのか、これがわからない。

 でも強いて言うなら? 正直胃が痛いけどみんな顔面がいいおかげで全部目の保養になるとか? まぁまぁまぁまぁそれが目当てというわけではないですけどね決してうんうん(早口)

 

 

「ほら、俺も質問に答えたんだからちゃんと俺の質問にも答えてくださいよ」

「ちゃんとしてますね……なかなか手ごわいじゃないですか。いい社会人になれますよ」

「社畜怖い」

 

 

 社会に出たらそういうスキルも取得しなくちゃいけないのかよ。社会ヤバイな。一生自宅警備員してたい。

 

 

「前も言った通り、松井さんを皆さんに深く知ってもらうためですよ」

「……表向きの理由じゃないんですか、それ」

「ギクッ」

 

 

 その反応マジで裏の理由があったんか。マジか。今滅茶苦茶適当に言ったのに。とっても適当に言ったのに。

 いや、だってありがちじゃん? だいたいこういうのって企業がらみで裏に理由隠してたりすることが多いじゃん? 本当にあるのかよ。

 

 

「いいでしょう! どちらにしよ、遅かれ早かれ松井さんには伝えなきゃいけないことでしたからね」

 

 

 ……あれ? こんなに簡単にバラしてくれるんかい。

 待ってまだ心の準備g




めっちゃ中途半端に終わっちまいましたが、次の話で光君がなんで346プロに入ることになったのか理由がわかったりわからなかったりします。
読者の皆様が納得するような理由かわかりませんが、作者実はそこまで深いことを全く考えていなかったので何卒ご両所ください。


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天才型は大体変な欠点持ち

最近この小説が滅茶苦茶伸びててビビり散らしてるが私はマイペースなのでいつも通りの更新です。すいやせぇん。


 はぁ、とため息を吐きながら少し顔を引き締める千川さんにつられて、ちょっと背筋が伸びる。

 なんか、すごく重大な扉を開いてしまったのかもしれない。今、まさに。

 

 

「松井さんはシンデレラプロジェクトがどういう意味を持ったプロジェクトなのか。それは知っていますね?」

「まぁ、ちゃんと説明してもらいましたね」

「そして、松井さんはシンデレラプロジェクトを根本から支えてもらう存在になってもらう。これも説明しました」

 

 

 どう考えても俺に対する負荷がやばいと思うんだけどね。男子高校生一人に背負わせる量じゃないし、普通に考えたらもうちょい何人か用意してもらいたいもんだ。

 

 

「実はこの問題。無理があると思いませんか?」

「実はじゃなくても相当無理があると思いますね」

「あっ、気付いてたんですか」

「だって現実味がないですもん。全く」

 

 

 会社の敷居に足を踏み入れたばかりの男子高校生一人に大企業の一つの部門に新しい風を吹かせるなんてレベルの企画を背負わせるとか正気の沙汰じゃないからね。まるで設定が無茶すぎるなろう系そのまんまだ。

 

 

「じゃあ色々と単刀直入に言っちゃいますね。そっちの方が手っ取り早いですし」

「よっしゃ、ばっちこい」

「松井さんは簡単に言ってしまえば『当て馬』なんですよ」

「ほう、当て馬。つまるところ本命がいると」

「いや、本命はまだいないですね。というか本命をそろえるための準備段階にすらまだ

入れてないんです」

 

 

 ちなみに当て馬ってどういう意味か分からない人は今手元に絶対あるはずのスマホやらPCやらあるいはvitaやらでググってみような!

 なんで今手元にそれがあるかわかるかって? あれだよ、読心術。鼻からミルクティーが飲めるようになれば読心術が使えるようになるって小学校の同級生のあっくんが言ってたから。

 

 

「そもそもこれだけでかい会社が専属のミュージシャンを雇えてなかったのが不思議ですもんね」

「松井さんのおっしゃる通り。まぁ、専属のミュージシャンが不足していることに関しては色々とあったんですけどね……」

 

 

 千川さんがなんだか遠い目をしている。まぁ、色々とあったんだろう。うん。

 

 

「簡単に言えばコストカットがあったんですよ。美城常務が就任されたときに所属していた専属のミュージシャンの方々が悉くクビを切られてしまって……」

「悉くクビって…その人たちに何か問題でも?」

「……単純に出資に対する実力、それから作業量が見合ってなかったんです。常務が目指しているのはより質の高く需要のある政策ですから」

 

 

出資に見合った結果が出てなければそりゃクビにせざるを得ないのは仕方がないよな。厳しいけどこれが現実だろう。ドラマでもよくサラリーマンの人はとりあえず生中みたいな勢いでクビになってるし。

 

 

「それで取り合えず大量に切ったはいいものの専属ミュージシャンが少なくなって取りあえずは外部頼り……って感じで?」

「美城常務も考えなしにクビを切るようなお方ではないので、ちゃんと補填する人たちに声はかけてたみたいなんですが少し誤算が」

「誤算?」

「その人たちもまさか自分たちが大量リストラの補填要員とは知らされてなかったみたいで…」

「自分たちも何かあればすぐにクビになるんじゃないかと」

「その通りです。急な大量リストラでイメージダウンもしてしまいまして、それ以外の方々もうちには来なくなって……それに乗じたライバル企業が若いアーティスト候補生をよっこいしょと……」

 

 

 隙を見せたライバル企業の隙に乗じてパワーアップと妨害もする。すげぇな芸能界。大量の金が動くだけあって。弱肉強食の色がより濃くなるんだろう。

 

 とはいってもミュージシャンの人も急にクビにされるリスクがあるのは勘弁だよなぁ。ただでさえ綱渡りみたいな職業なのに……おぉ怖い怖い。

 

 

「いつかは悪いイメージも薄れていく。その時にまた若い逸材を捕まえればいい……とはいえ時間は有限ですから。空白の期間の間にライバル企業に差をつけられるのは346プロとしてもなかなか大打撃なんですよね」

「そこで、期間を開けないためにとりあえず若い俺を捕まえてみたと」

「はい。次の本命の方々が見つかるまでの」

「見つかるまでって…そういってもただの高校生捕まえないといけないくらいには余裕がないんですね」

「ただの高校生だなんてとんでもない! ちゃんと松井さんを選んだ理由があるんですよっ!」

 

 

 急にびしっと指をさされてびくってなってしまう。

 ひ、人に指さしたらいけないんだぞ! こんなんでビビる俺が悪いんですけどね。だって急に来るんだもん。

 

 

「第一に技術面。これは今西部長のお孫さんが極秘で入手してくれた映像を見て確認したところ、合格ラインをしっかりと越えてくるほどの実力を兼ね備えてました」

「極秘……ねぇ。それってなんかのライブの映像ですか? めっちゃ音質悪い奴」

「そうですよ? よくわかりましたね!」

「いや、普通に部活で撮影してたやつですねそれ。あんなクソ音質でよく判断できましたね……」

「ちゃんとその道のプロもうちにはいますから!」

 

 

 極秘映像といわれていたやつだが、その映像は多分部活として参加したライブの様子をやっすいカメラで撮影しただけの動画だ。顧問の先生が上達のコツは振り返りだ!……なんて急に言い出したのはいいものの、あまりにもカメラをケチりすぎたせいで音質がよくなく、結局お蔵入りになった映像だな。恥ずかし。

 

 

「第二にルックスです! これは私とPさんで決めたことなんですけどね」

「ルックス……顔面じゃないですか」

「そうです! 白い肌に少し高い鼻。そして全体的にハーフっぽい顔立ち! 体格も細すぎず、寧ろ少し筋肉質で女性からもイメージよし。まさにさわやか系なジャ〇ーズによくいるちょうどいいレベルのイケメンです!」

「わかる」

「ライバル会社のことを若干ディスるようなことしれっと言わんでください」

 

 

 まるでジャ〇ーズはそこまでのイケメン集団みたいないい方。

 実際はいい意味で違うんだけどね。あの人たちはアイドルだから顔よりもダンスとかで魅了するからね。最近はバラエティ特化な人たちも増えたし多様性だよ多様性。なんで俺がフォローしなあかんねん。ジャ〇ーズのことが特別嫌いなわけではないから余計に辛い。

 

 

「そして最後に、松井さんは少なくとも見境なく女性に手を出す悪人ではない。社会人として、芸能界で生きるものとして素行面は重要ですから」

「……よくこんな短い期間でそんなことわかりますね」

「この期間だけで判断したわけではありませんから。少なくとも、松井さんのことをとても信頼している方……その方から得られる情報だけでも、今は十分ですよ?」

 

 

 俺のことを信頼している方ねぇ……なんとなーく予測はついてるけど、よくもまぁあいつから色々と情報を得ようとしたもんだ。

 どうやって知ったかは聞く気力もない。多分知ったら俺はこの人に一生逆らえなくなる気がする。世の中知らなくてもいいことがあるってそれ一番言われてるから。

 

 

「それにしても捕まえたのが俺一人って少なすぎますよ。他にいるかもしれないけど、どんだけ余裕がないんすか。悪評があるとはいえこれだけでかい企業なんですから人も来るでしょ?」

「そこで美城常務の存在ですよ。彼女は同時にアイドル部門も合理的に……まぁ簡単に言えば今まで広げすぎてた風呂敷をいったん縮めて自分の手に届く範疇で動かそうとしているんです。要するに少数精鋭ですね」

「合理的じゃないですか」

「問題は美城常務のやり方が多少強引なところなんですよねぇ……」

「あー……」

 

 

 今まで所属していた専属のミュージシャンのクビを簡単にスパッと切れるんだもんな。

 血も涙もないといえばそれまでだけど、経営者としては天職だよなぁ。受け身の立場としてはこれ以上怖い存在はないが。

 

 

「そこでPさん担当しているシンデレラプロジェクトの存在が重要なんですよ」

「ほう」

「まぁここら辺は色々と大人の事情があって複雑なんですけど、さすがの美城常務とはいえど今すぐにアイドル部門の改革を進める……そういうわけには行けないんですよね」

 

 

 そもそもそれが普通なんだろうけどな。『さすがの美城常務でも』って言われるくらいだから下手したら思わぬ方向からくる可能性だってそれをやりかねない頭脳も力も備えてるんだろうけど。頭よさそうだったしなぁ、あのベヨ〇ッタさん。

 

 

「もちろん改革も重要です。それでも美城常務のペースで進めては全部崩れてしまう可能性もあります。そのためにはあの子たちや松井さんの力が必要なんです!」

「は、はぁ……でも俺当て馬じゃないんですかね……」

「いーえ! 私たちはそうは思っていませんよ!」

 

 

 千川さんが身を乗り出しながら目を輝かせる。何々怖い怖い。この人さっきからテンションがあまりにも高すぎるでおじゃる。

 

 

「確かに現時点では松井さんは成功すればいいな~程度の当て馬にすぎません! というか、超無名の高校生ベーシストを大企業の専属ミュージシャンにするなんてそれこそシンデレラストーリーですからね」

「そら夢みたいな話ですわな」

「だからなっちゃいましょう! シンデレラならぬ、王子様に! プリンセスじゃなくてプリンスに!」

 

 

 あー、なるほど。わかってきたぞ。

 

 シンデレラプロジェクトっていうのは、そもそも素人の女の子たちをアイドルにする。女の子が輝く夢を与える夢のためのプロジェクト。

 幸か不幸か、そのプロジェクトが動いているタイミングで男子版シンデレラみたいな境遇に346プロの事情的に勝手になっていた俺が入ってきたと。

 

 

「仲間は多いに越したことはありません! それにアイドルを支える立場につく松井さんが根本で支える柱の一つになってくれれば百人力です!」

「じゃあ千川さんが無理やり俺をここに住まわせてアイドルと接触させようとしたのは?」

「まぁ、掻い摘んでいってしまえば『会社の事情で色々と背負わせてしまった男の子に少しでも早くなじんでもらうため』っていうのと『性格面と素行面の最終チェック』ですね!」

「俺が手を出したらどうするつもりだったんですか……」

「うちのアイドルに手は出させませんから大丈夫ですよ?」

 

 

 おー、こっわ。今どす黒い空気出てたこっわ。何なら壁からボウガンが出てきて槍が飛んできそうな空気感まであった。

 

 にしてもなんだか知らない間に大ごとになったみたいだ。ていうかそんなにこの会社悪評広まってたんかい。何一つ知らんかったぞ、ていうか凛もなんか言えよ。俺がクビになってもいいんかあいつ。

 裏事情を知らない時点ではラノベみたいな話で信じられなかったが、裏の事情を知ったら知ったで色々信じられないな。いや、信じたくないな(白目)

 

 

「……と、言うのがフィクションです!」

「は?」

「今のは全部作り話です!」

「は?」

「そんな松井さん一人とあの子たちに重圧を背負わせるわけないじゃないですか! アニメじゃないんですから!」

 

 

 パンと手をたたいて終わりました! という感じで話されても困る。

 えっ、何この話即興なの? 今考えたの? 凄すぎんリアルすぎんか。怖いんじゃが。

 

 

「松井さんはそんな細かいことを気にしないで、思う存分ここで腕を磨いて、そしていろんなことを体験していってください。きっと、あなたのこれから先のことに役立ちますから!」

 

 

 勿論、こっちもたくさん出ますので! ってにやにやしながら親指と人差し指で円を作る。下世話な話やめーや。確かに金はあって困らんし、わしも欲しいけど。

 

 

「そんなことよりですよ! ここに来たのはこんな話をしに来ただけじゃないんですよ!」

「こんなって…で、ここに来た理由って?」

「ふっふっふ。今の格好って動きやすい服装ですか?」

「……へ? まぁ全然動きやすい服装ですが」

「それじゃあ、着替えを持ってついてきてください!」

 

 

 着替え……着替え? なんでそんなもんを……って思ってたら、玄関からなんか置いていきますよ~って声が聞こえる。まぁ千川さんの声なんだけどね。

 問題は声の主じゃない。その移動速度だ。さっきまで目の前にいたよね? なに? あの人瞬間移動使えるの? 超人じゃん筋斗雲乗れよ。

 

 

「アイドルのことをもっと知ろうの体験ツアーですよー!」

「……体験ツアー?」

 

 

 適当に着替えをリュックにぶち込んでる間にも、玄関からウキウキ声で急かす声が聞こえる。

 ……ん? 待てよ? これ、またなんか俺の意思とは違う方向で話進んでね? いいのか、いいのか俺。このままでいいのか俺。

 

 

「……ま、いっか」

 

 

 人生なるようにしかならねぇよな。畜生!(血涙)




色々とツッコミどころがありそうな気がしますけど、こんな感じで松井君が選ばれたりしています。
腐っても主人公君ですからやっぱりそれなりの能力は持ってるんですね。イケメン滅ぶべし慈悲はない。ついでにちょっとだけその場所を代わってほしいけどやっぱり遠慮しとくわ。


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