女子寮生活は難儀です (as☆know)
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設定とか色々とあるけど大体読者は気にしてない
設定集って大体あると便利だから作者が置いてるだけ


圧倒的ネタバレ&裏設定注意です。あと完全個人用に呼び方一覧とかあります。

もっと詳しく知りたい! 裏設定とか知りたい! って人は見てみてください。おもろいかは知りません。
設定見れば全部解決するんだよ! って理由で低評価入れられてしまったので顔真っ赤にして公開します。また低評価増えそう。


主人公くんプロフィール

 

名前:松井光

年齢:16歳→17歳

学年:高校二年生

身長:180cm

体重:68kg

BMI:20.99

誕生日:3月28日

血液型:A型

利き手:右

出身地:???

趣味:ベース、野球観戦、ゲーム

特技:料理

 

 

 今西部長の孫であった友達にハメられ、346プロにアイドル部門専属ベーシストとして所属。

 

 346プロ本社と自宅は普通に通える距離ながら、ちひろさんの策略により親会社のアイドルとの関係性をより深めるという名目上の理由で女子寮に一時的に入寮(期間設定なし)

 

使用機種

ATELIER Z BK-5 KenKen Signature Model (値段不明)

 

・見た目、性格

 

 色白で鼻が高い為、ハーフに見られがち。

 短髪で茶髪に染めている為、よく学校から指導を食らっている。

 派手な服をあまり好まず、シンプルな服ばかり着るので幸が薄いと言われる。

 好きな色は紺、または青。

 

 体型は細身だが、筋肉もしっかりついている。特に腕はベースをしているのも相まってかなりガッチリしている。腹筋は少しだけ割れている。

 

 ノリと勢いだけで突っ切るタイプ。その為、よく失敗もするが思いもよらぬ成功を収めることもある。

渋谷凛と幼少期から過ごしてきた為、目が肥えている。アイドルを目の前にしても一目惚れしない。

 

 基本的にテンションが高く、最高潮になるとみくよりもうるさい。だいたい凛から怒られる。

 

 風呂上がりは裸族。長い時は寝る直前まで服を着ない。ライブ中に上裸になったこともあり、軽く事件になった。

 寮に入るようになってから、風呂上がりにパンツは履くようになった。凛曰く、光が裸でも見慣れてるので気にしないし、どちらかと言うとそっちの方が好きらしい。

 

 元テレビっ子、現在は殆どYouTube。

 その為、最近のアイドル事情は全く知らない。アイドル自体にも興味が薄い。

 

 

 

・技術

 

 天性のリズム感持ち。ベースのテクニックに関しては並。リズムキープの正確さ、安定感が常人の域を超えている。その正確性は機械の打ち込みかと一瞬勘違いさせる程のレベル。

 高校の軽音部では誰一人その精密性に気がつかず、自他ともにミスをほとんどしないベースとしか思われてなかったが、同級生の今西が唯一その才能を見抜く。後日ふらっと叔父の部長に光のことを話し、そこから常務まで話が行き346プロ入りする要因になった。

 

 基本的には指弾き。邦楽ロック曲も弾いていた為、ピック弾きも高水準に出来る。柔らかめのピックが好み。

ギターも並に弾ける(木村夏樹には及ばない)

ドラム、キーボードなどは触ったことがある程度で、実質未経験。

 軽音部ではベースボーカルとして活躍。低い音はエッジボイス、高音は裏声と音域がかなり広いので歌う曲を基本的に選ばない。また、マルチタスクで弾き語りなどを一切苦にしない。

 

 

 

・経歴

 

 生まれ年は渋谷凛と同じ、が誕生日の違いで光の方が学年が一つ上に。

 

 幼少期、当時から物静かだった凛との距離を測り兼ねる。

 

 小学生の時は野球部。ポジションは捕手。小学生ながら地肩が強かったものの、他の能力は並。野球は好きだが、練習や上下関係が厳かったので中学では野球部に入らず。

 この頃から音楽自体好きだった。

 

 中学生時代、野球部に入らなかったのはいいものの、あまりにも暇を持て余し色んな趣味に手を出す(ゲーム、ダンス、漫画、料理、サッカー等々)

 その一環で、中一の冬頃に父親の部屋に置いてあるベースを触り、興味本位で父親に指導を頼む。父親にベースの基礎を叩き込まれ、本人も沼にハマる。父親の趣味の曲を叩き込まれたので当時の弾ける曲はラルクやスピッツなど1990前後のアーティストが主。

 

 高校時代、そこそこ大きな軽音部のある高校に進学し、軽音部に入部。今西を始めとする同級生とバンドを組み、高一の終わりまでスーパーでバイトして機材を買い換える。バイトを辞めるとほぼ同時期に今西からオーディションの話を聞き、346プロに入社する。

 高二に進学と同時に凛が同校に入学。

 

 

 

・渋谷凛との関係性

 

 友達以上恋人未満、かつ夫婦。

 パッと見は距離の離れた幼馴染。だが、人が少なくなり二人きりになった途端、急に凛側からの距離が縮まる。通称、懐いた柴犬化。

 スカウトの件を始め、何かしらの事態があった場合、凛は大体一番最初に光に相談をする。

 

 お互い一人っ子なのもあり、幼少期は黒歴史まっしぐらのイチャラブっぷりだったが、小学生頃から凛が人前では突っ込んでこなくなったので、光側は距離を取られたと解釈している。凛が当時から現在に至るまで基本的には真顔で突っ込んでくるので光は距離を測りかねてる。

 が、実際扱いは達人級。二人きりになった時は犬の顔をぐしゃぐしゃにしながらデレデレになる飼い主みたいになる。

 

 

 

※凛の好感度が高い理由

 

 幼少期、コミュ力が低かった凛の唯一と言っていい友達が光。他には友達がおらず、新しい友達ができるまでめちゃくちゃ距離感が近いまま過ごしてきた(新しい友達が出来てから、光との距離が近かった事実に気が付き、周りの目がある時は距離を取るようになる)

今も二人きりの時に凛が甘えてくるのはその名残。好意よりも支えに近い感情で光を見ている。

 

 

・そもそも女子寮に男ってどうなの?

 

 厳密には女子寮ではなく学生寮だったが、他の部門の男子学生は実家暮らしor1人暮らしをする為、女子寮として存在させてる。現在は公式で学生寮に名前を改めてる為、モラル的な問題でもマスコミには突っ込まれることは無い。

 会社全体での急務のプロジェクトに次ぐ変更のため光入寮時には間に合わず、翌週には学生寮として確立。

その為、寮前の石のアレの表記は女子寮のままだが、公式には学生寮となってる。

 

 

・今西という男について

 

 本名、今西達也。身長は177㎝で光よりかは細いがそこそこガッチリした体型をしている。

光とは高校からの付き合いで入部時から同じバンドで活躍している。パートはギター、コーラス。

 

 お爺さんになる今西部長の影響でアイドル事情に幅広く詳しく、幼少期から今西部長の計らいで346プロ内の機材で練習していたため、346プロ内でも普通に顔が利く。

 音楽センスが高く、プロの技術を近くで見てきたために光の才能を早々見抜く音に成功。346プロでのスタジオミュージシャン大量解雇の騒ぎを耳にした際、今西部長に光の存在を報告し光が346プロに入るきっかけを作る。

 

 

 

 

 

 

呼び方一覧 (相手 ~ 主人公)

 

 

346プロ内社員

 

プロデューサー(P) Pさん ~ 松井さん

千川ちひろ 千川さん→ちひろさん ~ 松井さん→光くん

今西(部長) 今西さんor今西部長or部長 ~ 松井くん 

今西(同級生) 今西 ~ 松井

 

 

シンデレラプロジェクト

 

渋谷凛 凛 ~ 光

島村卯月 島村さん→卯月 ~ 光くん

本田未央 本田or未央 ~ まっさんor光

前川みく 前川 ~ 光クン

多田李衣菜 多田or李衣菜 ~ 光

新田美波 新田さん→美波さん ~ 松井さん→光くん

アナスタシア アーニャちゃんorアーニャ ~ 光

神崎蘭子 蘭子ちゃん→蘭子 ~ 光くん

城ヶ崎莉嘉 莉嘉ちゃんor莉嘉 ~ 光くん

赤城みりあ みりあちゃん ~ 光くん

諸星きらり ?

双葉杏 ?

三村かな子 ?

緒方智恵理 ?

 

 

Tulip

 

速水奏 奏 ~ 光

塩見周子 周子さん ~ 光くん

城ヶ崎美嘉 美嘉さんor美嘉姉 ~ 光

一ノ瀬志希 志希ちゃんさん ~ キミor光くん

宮本フレデリカ フレデリカさん ~ 光くん

 

 

その他

 

小早川紗枝 紗枝ちゃん ~ 光はん

二宮飛鳥 飛鳥 ~ キミor光

安部菜々 安部さん→菜々さん ~ 松井さんor光くん

木村夏樹 夏樹さん ~ 光

北条加蓮 ?

神谷奈緒 ?



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女子寮に男がいるって常識的にないってそれあたりまえ
人数配分間違えるとハーレムじゃなくて地獄


 

 春の陽気にぽかぽかと包まれたこの季節は、なにか新しい物事を始めるのにピッタリだ。

 ついこの季節は夜もちょうどいい気温で寝すぎてしまいがちだ。夜更かしでもすれば尚更である。

 

 

「……んぁ」

 

 

 日の眩しさと心地よい温かさに襲われながら目を覚ます。

 

 寝起きのモヤモヤ感のまま目を少しずつ開くと、上にはまだまだ見慣れない天井。

 体を起こすと机の上には食べかけのお菓子やジュースの痕。

 

 

「……なにこれ」

 

 

 更に右手を上げれば、何故かゲームのコントローラーが握られてる。

 更に更に周りを見渡してみる。

 

 

「……なんこれ」

 

「ぐへへ……その横スマは安直だぞぉ……」

「岡〇のスリーランだけで3本は空けられるね……」

 

 

 両隣りには未成年がいるのにビールの空き缶をそこらじゅうに撒き散らす野球バカと同学年とは思えない妖精ボディをした半ニート。あと机の上に置かれたメモ帳。

 

 

「……なんぞや」

 

『ぐっすり眠っているみたいだったからおこさないでおいたわよ。遅刻しないように気をつけてね♡』

 

「『かなで』……ってはぁあああああああああああ!!!!!」

「うるさいなぁ……杏はまだ眠いんだよぉ……」

 

 

 ご丁寧にハートマークまで付けられた綺麗な字をした書き置きと、机の上に置かれた電子時計で状況を完全に把握する。もうおめめパッチリやわ。

 畜生、あのもみやで野郎なんで起こさなかったんだよ! 確実にこうなることわかっていやがったな! 

 

 隣でモゾモゾと妖精(半ニート)がなにかほざいてるが、そんなことは知ったことではない。速攻で風呂場に制服を持って向かい一瞬で着替える。

 朝飯とか食ってる時間もねぇ! そんなわけで鍵もかけずに自分の部屋から勢いよく飛び出す。

 

 

「いってきまあああああす!!!」

 

 

 どうせユッキは二日酔いで寝てるだろうし杏は酔ってなくても寝てるだろうし。あの二人がいる限り部屋は開けっぱでもいいだろう。

 エロ本とかも隠してないしな。隠す勇気なんてさらさらないし、なんなら持ち込めなさそうだけど。

 

 廊下を全力疾走してると先の方に見慣れた超背の高いシルエットが見える。

 てかあれきらりだな。紛うことなききらりだな。

 

 

「あーっ! 光くんおっすおっすー☆」

「うっす! 杏は俺の部屋で寝てっから!」

「ありがとぉー☆」

 

 

 うむ、俺の予想通り杏を迎えに来てたんだな。多分きらりは優しいから酔いつぶれてるユッキさんのことも何とかしてくれるだろう。最悪ちひろさんも呼べばいいし。

 

 

 いやー、なんでこんなに忙しいんだろうなー!

 なんでなんだろうなー! あん時から全部おかしかったんだろうなー! (めちゃくちゃわかりやすい回想入り)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オーディション?」

「そう! 出てみようぜ!」

 

 

 軽音部の部室でもある物置で今西という奴にそんな話を持ちかけられたのは、ちょうど今よりひと月かふた月前のことだった。

 

 当時はお金が必要で……といった理由も特になく。ちょうど新しいベースや機材を買うお金も出来たと言うことで務めていた激ブラックなアルバイトをやめた直後だったはずだ。

 いやー、マジでスーパーのバイトはヤバいぞ。大ブラックすぎ。腰が逝くかと思ったもん。

 

 

「って言っても俺ら高校生だぜ?」

「大丈夫だって! 学生向けって訳でも無いけど学生でも受けられるのは間違いねぇから!」

 

 

 オーディション、と言ってもアイドルになる訳では無い。俺がアイドルとかそもそも考えられないし考えたくもないでおじゃる。

 

 

 持ちかけられたのはプロのベーシストのオーディション。スタジオミュージシャンになる為のものだった。

 スタジオミュージシャンとかになるには自分から売り込みに行かないといけないとか聞いたことあったけど、案外そんな訳でもないらしい。

 まぁそもそも俺ってベーシストでは有るけど圧倒的エンジョイ勢だしな。プロになるのが目標って訳でもないし。

 

 

「でもプロになりたいって訳でもないしなぁ」

「いいから出てみろって! 受かったら月収とかはバイトの並じゃねぇからさ!」

 

 

 好きなことを仕事にできるならそれにこしたことはないだろうが、世の中そんなに甘いもんじゃないだろう。

 てかなんでこいつはそんなに俺にオーディションさせたいんだ。深い意味は無いんだろうけど。

 

 

「出てみるだけでも経験になると思うぜ? 交通費ぐらい出してやっからさ!」

「……まぁ、そこまで言うなら」

 

 

 交通費を出してくれると言うならば、そりゃあ行くだろう。どーせ受かんないだろうけどな。

 

 

 

 


 

 

 

 

「……おい、ほんとにここであってんのか」

「おうともさ! ここがオーディション会場の346プロよ!」

「とんでもなくでかい所じゃねぇか! ふざけてんのか受かるわけねぇだろ!!!」

「まぁまぁ」

 

 

 何度もどこに行くか聞いたのにするするっと躱され続け、結局言われるがまま今西に連れられてきたのは、謎のどでかい学校のような城のような建物。

 

 これがあの346プロなのかよ。

 346プロといえば個人的にはよし〇ととかに匹敵するくらいどでかい事務所のイメージがあるくらいにはやべー芸能事務所だったはずだ。あと知り合いが確かここに勤務しているくらいだな。

 てかなんなんだこれデカすぎだろ。会社というかもはやシンデレラとかに出てきそうな城じゃねぇか。

 

 346プロってアイドルとかも扱ってるとこだったはずだ。あいつはアイドルだったはずだし。 a〇exとかみたいな。a〇exにアイドルいたかあんまり覚えてないけど。

 

 アイドルとかほとんど知らねぇんだよなぁ。クラスにもドルオタは何人でもいるしテレビでも見るっちゃあ見るけど、ちゃんと注目して見た事はない。

 高垣楓とかは聞いたことあるけど。あとバラエティ番組によく出てる人達は知ってる。輿水幸子とか。あとは渋谷凛。

 

 

「とりあえず早く入ろうぜ!」

「これ勝手に入っていいんか?」

「大丈夫大丈夫! 俺に任せとけって!」

 

 

 全く持って信用出来ないんですがそれは。

 

 

 


 

 

 

 今西に連れられるがまま入口を通ると、冗談抜きで何かの城のような光景が目の前に入る。

 なんなんだマジで。頭おかしいすぎる。

 

 

「……でっけぇ」

「光、俺ちょっと受け付け済ませてくるわ」

 

 

 何故か慣れた手つきで受け付けの女性と何かを話している今西を他所に、とんでもない内装の事務所に圧巻され続ける。

 

 

「なつきちー。今日暇?」

「おう、今日は夜なら空いてるぜ」

「ほんと!? じゃあまたギター教えてよ!」

「別にいつでも教えてやるって」

 

「えっ」

 

 

 あの二人、すっげぇ見た事あるんだけど。

 金髪のリーゼントにしてる子はF〇S歌謡祭とかでもよくギター弾いてる子だよな? ヤバくね? 普通に居るやん。

 もしかして俺ってとんでもないところに来てね? 

 

 なんかあんまり周りをジロジロ見るのももどうかと思ったので、不本意ながら野郎である今西に視線を移すと、何やら変な紙を見せて受け付けを済ませていた。多分、応募の紙だろう。

 あれ? でも履歴書は俺が持ってるし応募の紙とか書いた覚えないんだけどな。

 

 

「迎えの人が来るからしばらく待っててってよ」

「おかのした」

 

 

 受け付けから少し離れたところで缶コーヒーをあけながらだべっていると、何やら緑の服に身を包んだ綺麗な女の人が迎えに来てくれた。

 

「お待たせしました。今西くんと松井くん……ですよね?」

「お久しぶりです、ちひろさん」

「……ん? お久しぶりです?」

「なんでもない」

 

 

 こいつ、今どう見ても完全に口を滑らせたよな。

 

 今西からちひろさんと呼ばれた女性は、表情を崩すことなく笑顔を保ち続けている。

 てか胸元に千川って名札が貼ってあるやん。なんで今西は下の名前を知ってんだよ。

 

 

「ふふっ、それでは案内しますね?」

「あっ、お願いします」

「じゃあ、俺はここで待ってるから」

 

 

 7割ほど入ったままのコーラ入りペットボトルを振りながらニヤニヤ笑ってくる今西にむかつきながらも、適当に返事だけは返す。

 あいつここまでして一体何を考えてやがるんだ。帰ってきたら今度こそ問いただしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エレベーターに乗り、長い長い廊下をテレビで見たことある女の子やスーツの人達とすれ違う。

 なんなんこれ。ほんとに別世界に来たみたいだわ。未だに夢かと思うわ。

 

 目的の部屋に着いたのだろうか。

 千川さんがドアをノックすると中から少し低い女性の声が聞こえる。

 

 

「松井さん。ここからは貴方自身のお仕事ですよ」

「は、はぁ」

「頑張ってくださいね!」

 

 

 ちょっと待って。俺なんにも聞かされてないんだけど何を頑張ればいいのだろうか。

 

 ドアを指さしながら入っていいんすか? 的なことをジェスチャーで千川さんに訴えかけると、ニコニコしたままどうぞどうぞと言った感じでドアに手を向けられる。

 

 これは入るしかないよね? 男だから腹をくくれっていうのかよ。マジかよ。嘘だろジョージ。

 

 ここでうだうだ言っててもどうにもならないのでドアに手をかけて、一呼吸置く。

 大丈夫だ。心の中に修造を飼うんだ。北京だって頑張ってるんだよ! 

 

 

「失礼します……」

 

 

 高校に入る時の面接の感じを思い出しながら部屋に入ると、まず一番最初に奥の机に黒髪の女性が座っているのが見えた。

 てか部屋広っ。よそ見とかしてないからわかんないんだけど、視線に入る限りでもめちゃくちゃ広いのがわかる。ちょっとくらい俺の部屋にも分けて欲しいんだけど。

 

 なんか座ってる女性、風貌とかめちゃくちゃ偉そうな人なんだけど。ラスボスオーラがえぐいんだけど。完全に強キャラやん。ベヨ〇ッタやん。てかベヨ〇ッタにしか見えんやん。

 

 

「私はベヨ〇ッタではない」

「……はい?」

「はっはっはっ!」

「うぉっ!?」

 

 

 隣からいきなり笑い声が聞こえたからびびっちまったじゃねぇか!

 

 てか女の人以外にももう一人部屋にいたんだな。緊張しすぎて気が付かなかった。

 真横にあったソファに座っていたのは、とっても見た目が優しそうなおじさんだった。

 女の人とのオーラのギャップがえぐいんだけど。おじさんの方が年上っぽいのに。

 

 

「君が松井光くんだね? 孫から話は聞いているよ」

「……孫?」

「おっと、これは言ってはいけなかったかな?」

「今西部長。話を進めても?」

「おっと失礼」

 

 

 なんでこのおじさん俺の名前を知ってんだ。資料にでも目を通してたのか? 

 

 てか待てよ。今西? 孫? 

 ……あっ(察し)

 

 

「それでは話を進めさせてもらうぞ」

「ちょっ、話っt」

「分かっていると思うが、君には我が346プロアイドル部門専属のスタジオミュージシャンとして活躍を期待している」

「えっ、なにそれは」

 

 

 待って。僕が知っていた情報スタジオミュージシャンだけしか合ってないんだけどどゆこと? 

 何? アイドル部門専属とかあるの? マジでなんも知らないんだけど。

 

 

「……今西部長。聞いていた話と違いがあるようですが」

「はて、ボケが回ってきたのかな?」

「えぇ……(困惑)」

 

 

 すっとぼけた様子を見せるおそらく今西のおじいちゃんを見て、女性が片手で頭を抱える。

 マジかよ。この女の人もハメられたの? 

 これ俺帰ったらダメかな? 思ったより大きい話になってるから家に帰りたいんだけど。

 

 

「松井光くんだったな? 君はどこまで話を聞いているんだ」

「えっ。いや、スタジオミュージシャンのオーディションがあるから試しに出てみないかって」

「まぁ、間違ってはいませんな」

「間違ってはいませんね」

「うわビックリした!」

 

 

 知らん間に千川さんも部屋に入ってきとるやないか! 

 びっくりして間抜けな声を出しちまったよ。

 

 

「……千川。資料に間違いはないのだな」

「はい、常務。映像の方もこの方で間違いはありません」

「ふむ……」

 

 

 ここに来て初めてこの女の人の役職がわかった。

 でも常務ってどれくらい偉いんだろうか。部長と社長と係長くらいしかわかんないしな。常務なんて初めて聞いたかもしれない。

 

 常務は腕を組み、少し考えるような様子を見せると、直ぐに頭を上げてこちらを見つめてくる。

 な、なんか照れるんですけど。普通に綺麗だもんな。年齢的に守備範囲外だけど。

 

 

「まぁいい。手違いはあったが、予定通り採用だ」

「は、はぁ」

「良かったですね! 松井さん!」

「……はぁ?」

 

 

 うん。全く話の流れがわかんないんだけど、とりあえず良かったのだろうか。

 

 

 


 

 

 

「悪かったって〜。ラーメン奢るから許してくれよ〜」

「軽すぎだろ」

 

 

 とりあえず一番最初のロビーに戻ると一発今西の腹に拳を打ち込んで洗いざらい履かせた。

 その結果、最初からこいつとこいつのおじいちゃんの策略通りだったという事実が明かされた。まぁほぼほぼ予想通りだったけど。

 

 ちょうど346プロのアイドル部門も活発化してきたこのタイミングで新しいスタジオミュージシャンが欲しかったらしく、そこで白羽の矢がたったのが俺だったらしい。

 だがしかし、基本的に怠惰でめんどくさがり屋な俺をここまで連れてくるのは至難の業。という訳で『とりあえず受けてみるだけ』『交通費ぐらい出してやっからさ!』という甘い言葉で俺を誘い込み、既成事実を作ってやるって寸法だったらしい。

 

 完全に詐欺の手口じゃねぇか! 常務の人も泣く泣く許可してたけど、多分事前に俺に何も言ってないって知ってたら落としてたんだろうな。そらそうよ。

 

 まぁ、いいや。取り敢えず、さっさと家に帰るか。

 それから考えよう。うん、そうしよう。

 



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陽キャは陰キャにこうかはばつぐんだ!

初めまして、私でございます。
一話投稿からお気に入りが50個近くついて泣きそうになっております。てか泣いてる。


 

 

 

 いや〜、昨日は散々だった。

 

 結局あの後、俺が家に帰るまでに自宅に346本社から連絡が来たらしく、疲れたまま自宅に到着した瞬間質問攻めにあった。

 あまりにもすごい圧で押し寄せてくるもんだから、流石に親的にも346で働くのはアウトかと思ったが結果は真逆。

 息子が芸能人デビューするかもしれないとめちゃくちゃ喜んでた。スタジオミュージシャンだぞと伝えたらめっちゃガッカリされたけど。

 

 ちなみに俺まだあそこ勤務じゃないからな。ちゃんと親の同意とかもないと契約できないからな。

 すげーんだぞ、スタジオミュージシャンって。曲がりなりにもプロだぞ、我が母親。息子は悲しい。

 

 あと仲のいい訳では無いが色々ある昔馴染みみたいな奴に、346に所属するかもという旨を伝えるのを完全に忘れてたのでさっき連絡つけたんだ。

 そしたらよ? 

 

 

『よかったね』

 

「短っ」

 

 

 相変わらず素っ気なさすぎる。電車の中で声が出そうになったわ。

 まぁ別にあいつに連絡はしなくてもよかったんだけどな。ただ、事情的に向こうで会うかもわかんないし。いきなり会社であったりしたら流石にあいつも怒るだろうし。怒ったら怖いんだよなぁほんとに。女の子怒らせたらマジで大変だから。

 

 

「……ここで合ってんのか」

 

 

 休日にも関わらず今西から来たLINEに従い、自宅から電車にガタゴト揺られること約1時間掛けて来たのは346プロ本社。

 ちなみに何をしに行くのかは全く知らないので、今西にベースを持っていくか聞いたら当たり前だろハゲとの返信が来た。全ててめぇのせいで分かりにくくなったんだろうが。今度あったらぶっ飛ばしてやる。

 

 前回行ったのは城みたいな形をした本館だったが、今回はその隣にある馬鹿みたいにでかいオフィスビルに用があるらしい。

 てかこの会社、芸能プロダクションの中でも最大手とはいえ全てにおいてデカすぎる。でかけりゃ強いとでも思ってんのか。実際つえーよ(白目)

 

 そんなどでかいオフィスビルに入り、受けつけの人に事情を説明する。ちゃんと通じるかめちゃくちゃ不安だったけど、流石にプロ。嫌な顔一つせず、すぐにどこかに電話を繋いでくれた。

 

 

「松井さん、お待たせしました!」

「あっ、千川さん。そんなに急がなくても……って誰ですか?」

 

 

 しばらくスマホをポチポチしてると、向こう側からなんか知ってるシルエットが来る。

 少し張り切った様子で迎えに来てくれたのは千川さん……と、その横には茶髪で謎の外ハネが特徴的な女の子がニコニコしながらこちらをみている。ナゼミテルンデスゥ! 

 

 

「初対面の女性に対して『誰?』とはなっていませんなぁ。一応、私だってテレビにも何回か出たことあるんだぞー!」

「俺テレビっ子じゃないですしおすし」

 

 

 

 この子、恐らくめちゃくちゃ陽キャ気質だ。オーラが眩しい。陰キャの俺には眩しすぎる。

 てかなんなんだその外ハネは。めちゃくちゃ気になるんだけど。これって外ハネが本体パターンなんちゃうかってほど外ハネしてるんだけど。むしろ外ハネまである。もうこれわかんねぇな。

 

 

「しょうがないな〜。それじゃあ私から自己紹介でもしてあげよう!」

「上から目線かよ」

「本田未央15歳! 来年から高校一年生でーっす!」

「しかも年下じゃねぇか!」

 

 

 なんだこの女。元気ハツラツってレベルじゃねぇ。油断してたらこっちがエネルギーでぶっ飛ばされそうな勢いだ。

 なんで人といるだけで油断うんぬんかんぬん考えてるんだ俺は。

 

 それにしても整った容姿をしている。

 この子多分アイドルだな。まぁ346プロといえばアイドルって所も無きにしも非ずだし、これからここで会う女の子たちはほとんどアイドルなんだろうけど。

 ほんと人生どうなるかわかったもんじゃねぇな。事実は小説よりも奇なりって言うけど、普通に恐怖を覚えるレベルだわ。

 

 

「へー、君って年上なんだ! 敬語使った方がいい?」

「今更だからいい」

「私のことは未央ちゃんって呼んでくれても構わないよ?」

「よし、田吾作」

「雑過ぎない?」

 

 

 0.3秒で考えたあだ名だからな。まぁここは無難に本田呼びでいいだろう。

 てか女の子を下の名前で呼ぶって普通に難易度高くね? 陰キャには無理すぎ。

 

 

「未央ちゃん? そろそろ……」

「そうだった! じゃあ、えーっと……名前なんだっけ?」

「そりゃそうだ」

 

 

 自己紹介だってまだしてないんだからな。本田の勢いが凄すぎて完全に忘れてたけど。

 初対面の人に対して自己紹介もまともにしないとは失礼極まりないが、本田相手なら別にいい気がしてきた。こんなんだから彼女が出来ないのかもしれない。

 

 

「松井だよ。松井光」

「松井松井……じゃあ『まっさん』だねっ! よーし、それじゃあ行ってみよー!」

「うおっ!?」

 

 

 この娘、初対面の男の手を掴んで引っ張ると申すか。なんという破廉恥な行為! 

 テンパりすぎて古文みたいになったわ。

 まぁ手をガッツリ掴んでる訳でもないし、普通に手首をガッツリ掴まれてるだけなんだよな。

 しかもしれっとあだ名つけられなかった? 気の所為? ねぇ気の所為? 

 

 本田にほぼほぼ引きずられながらエレベーターに乗せられると、本田はなんの躊躇もなく階数指定のボタンをポチッと押す。

 

 

「30階に参りまーす!」

「たっか」

 

 

 30階とか東京タワーかよ。東京タワーがマンション何階分か知らんから適当に言ったけど。

 

 ちなみに少し雑になってしまったがエレベーターのところで軽く手を払わせてもらった。

 仮にもアイドルをやってるような女の子が男の子に勘違いさせるような行動をしては行けないってそれ。

 

 チーン(笑)という到着音が鳴ると、本田がこっちこっちと先導して案内してくれる。

 本当はちひろさんの仕事だったんだろうけど、当のちひろさん本人は楽しそうに俺の横でニコニコしている。大人の余裕なんだろうけど、職務放棄じゃね? 全然いいんだけどね? 

 

 

「さぁ! ここが終点のシンデレラプロジェクトルームでございまーす!」

「ここで合ってるんですか? 今更なんですけど、俺今日なんでここに来たか知らないんですけど」

「はい。未央ちゃんの言う通り。ここが今日、松井さんに来ていただきたかったところですよ。それと要件に関してはあとからのお楽しみです♪」

「なんでちひろさんに聞くの!?」

 

 

 だってなんか信用出来ないじゃん、心配じゃん(辛辣)

 

 なんで本田は俺が今日ここに来るってことを知ってたんだろうか。

 まぁ誰かから聞かされてたんだろうな。例えばアイドルだからプロデューサーとかマネージャーがいるはずだし。プロデューサーとマネージャーの違いとか実はよくわかって無いんだけどな。

 

 

「あの……本田さん、松井さん」

「うぉあぁっ!?」

「あっ! プロデューサー!」

 

 

 びっくりしたァ!

 なんか名前を呼ばれたと思って振り向いたら、俺よりでかいめちゃくちゃガタイのいいくっそ顔の怖い男の人が後ろにいた。顔つきこえーしビビるわ!

 しかも俺よりでかいってなかなかだぞ。俺これでも180cmはあるからな。190以上あるんじゃないかこの人。

 

 てか真後ろに立たれていきなり名前を呼ばれたのに、何故本田は平気な顔をしていられるのか。

 めちゃくちゃ肝っ玉座っとるやんけ。

 

 

「だ、誰だチミは!?」

「そうです! 私が本田未央です!」

「お前ちゃうわ」

「てへっ☆」

 

 

 やっぱり本田は陽キャだな。

 というか変なおじさんネタが通じるとは思わなんだ。アイドルがやると一気に華々しくなるな。俺がやるとただむさ苦しいだけなのに。悲しい。

 

 

「申し遅れました。私、こういうものでございます」

「あぁこれはどうもどうも……」

 

 

 恐らく年上なのにそんな甲斐甲斐しく名刺を渡してもらう。てか大きな体でこぢんまり名刺を渡してくるのなんだかシュールだな。とりあえずちゃんとした名刺の受け取り方は分からないのでなんとなくな感じで受け取っておく。

 

 株式会社346プロダクション

 シンデレラプロジェクト プロデューサー……ん? 

 

 

「シンデレラプロジェクト?」

「はい」

「1回くらいテレビとかで聞いたことないかな?」

 

 

 聞いた訳ないことがあるわけなかろうが。つまり聞いたことはある。

 といっても俺の聞いたことあるって言うのは他の人の()()()って言うのは別モンなんだろうけど。

 

 

「いや、テレビで聞いたことあるというかなんというか」

 

 

 ガチャ

 

 

「P、未央。いつまで外にいる……の……?」

「そう、こいつ(幼なじみ)がいるんで」

 

 

 自動ドアみたく開かれたドアの先に現れた少女はまさに絶世の美少女。

 

 歳とは反比例したような落ち着いた雰囲気を漂わせる長い黒髪。クールな表情と蒼い瞳は世の男性を狂わせる……はずなんだがどうやら今は全くクールな表情ではない様子。

 

 

「……え?」

「はいちーず」

 

 

 とりあえず凛のこんな表情久々に見たから写真撮っておこう。はい、パシャりと。

 うーんいい顔だ、後で親にでも送っておいてやろう。

 

 

「……なんで光がここにいるの」

「色々あったのだ」

 

 

 眉間をぴくぴくさせながらこちらを指さしたまま固まる凛に、事実を包み隠さず伝えるために1番短く伝えられるであろう伝家の宝刀『色々あった』を引き抜く。

 これさえあれば大抵の事はなんとかなる、あの『かくかくしかじか』並の伝説の剣である。

 

 

「ちゃんと全部説明して」

「あっ、はい」

 

 

 もはや表情が氷の女王的な感じになってるこいつには伝家の宝刀も通用しなかったわ。




こちらの方は完全不定期、我のきまぐれによって投稿させていただきます。暇つぶし程度にお楽しみくださいませませ。
出来れば感想よろしくお願いします! モチベになりやす!


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幼馴染は二次元で大量に生産される本妻候補

この世界線はアニデレが元にはなってますがアニデレとは全然違ったりしてます。そこら辺の所をご理解いただくと助かったりします。
アニデレってなんのこと? って方はそのまんま気にしない読んでね!


 

 

 幼馴染とは実は難しいものである。

 それも男女ともなれば尚更だ。

 

 世の中に蔓延するライトノベルやらアニメやらドラマでは、幼なじみは非常に恋愛的に有利なポジション。ハーレム系の作品においては超絶有利な位置にある。

 そりゃあ最初から好感度MAXポジションともなれば、まさに正妻戦争のシード枠のようなもんだからな。実際強い。

 

 幼馴染属性とは最強である。

 

 あるアニメの幼馴染の女の子は、朝から制服でモーニングコールをしてくれる。

 また、ある漫画の幼馴染の女の子は朝食を作ってくれる。

 またまた、あるラノベの幼馴染の女の子はボディタッチも厭わないでぺたぺたくっ付いてくる。

 

 ……否、否否否ァッ! 現実の幼馴染とはそんなに甘くはないッ! (ガチギレ)

 そもそも幼馴染のことをガッツリ()()()って言うことすら少ないのだッ! 

 

 傍から聞けば訳が分からないだろう。幼馴染のことを幼馴染と言うことがなぜ少ないのか。

 

 俺と凛は自宅がお隣さんで生まれた年も同じ。

 

 これは俺の感覚になるが、幼少期から一緒にいるのが当たり前だったので『あり? そういえば俺らって幼馴染ってヤツなんじゃね?』って思ったりするパターンが多かったりするのである。近すぎてわからんくなるってやつだな。

 というか、実際に俺と凛の場合もどういう関係かって友達に聞かれた時に『そういや俺とあいつって幼馴染じゃん』ってなり、そこでやっと理解したくらいだ。それまでは気にすらしていなかった。

 

 そう、気が付きすらしなかった。

 長い黒髪に蒼い瞳。モデルより可愛い(俺談)整いまくった顔立ち。

 正直幼なじみが美男美女なんて言うのは二次元でしか有り得ないが、ここに関しては二次元よりも確実に出来すぎなくらいだ。

 

 だがしかーし! 現実の幼馴染はモーニングコールはしてこないし、朝ごはんも作りに来ない! 

 あっちだって朝は忙しいんだ。女の子ともなれば尚更だろう。多分、化粧とか髪の毛とか大変だろうし。よくわからんけど。

 

 しかも男女間の幼馴染とは非常に難しいものがある。

 

 男だったらそれこそどちらかの性格に難があったりでもしない限りは、お互いのことが手に取るようにわかるであろう親友になり得るかもしれないが、男女間ではそうもいかない。

 

 まず距離の取り方がわからない。特にこれは小学校の終盤頃、もしくは中学に上がってから顕著にでる。

 

 それまでは男友達と同じように接することが出来ていたのに、急にそう出来なくなった時の関わり方は非常に難しいものがある。距離の取り方や接し方の測り方も分からずにわたわたしているうちに、喧嘩した訳でもないのに少しずつ距離が離れていく。話はするけど仲睦まじく話すことだってほとんどない。

 

 

 なんだその程度かよ、って思うかもしれないけどまじで深刻だからな! 女の子と付き合ったことの無い男にはわかんねぇんだよ! 

 しかも凛の場合は元々可愛かったとはいえ、年が経つにつれて急激に可愛いから綺麗になって行ったから俺が戸惑って少し距離を取ってしまった。

 まぁ、それでも全く話せないというわけでも全然なく、単に昔と比べたら話さなくなったよねって言うだけに止まっている。

 

 

 

 アレだよ。アニメで妹に幻想抱きすぎなのと同じように幼馴染にも幻想抱きすぎなんだよ。

 友達も言っていたが実際現実の妹はおにーちゃんおにーちゃんとも懐かないし裸を見たとしてもお互い興奮も何もしないらしい。なんなら我儘ばかりでめちゃくちゃウザいらしい。

 俺も妹という存在には少し幻想を抱いていたから、現実を突きつけられた時は非常に悲しかった。二度と妹欲しいとか言えないよね。まぁ一人っ子の幻想なんだけどね。

 

 

「そんな訳で、一応俺と凛は生物学的に幼なじみなだけなんですわ」

「その言い方、すっごいムカつくんだけど」

「だって凛怖いんだもん」

「なんて?」

「ごめん」

 

 

 ほら怖い。可愛いのに怖い。

 この子さ、基本的に表情は絶対に崩さない氷の女王だから怖いの。その割には表情そのままでオーラとかで威圧してくるから怖いの。こういう意味では元々芸能人のオーラ的なそれはあったのかもしれない。絶対違うけど。

 

 

「それにしても、しぶりんにも仲のいい友達がいたなんてね〜」

「それも男の子!」

「未央、卯月。それってどういう意味?」

「特に深い意味は無いよねー!」

「うんうん」

 

 

 俺は今、不思議な状況にある。

 流れの中で押し通されてしもうた結構広い部屋の中で男二人、女の子が沢山。しかも唯一の同性は超高身長のヤ〇ザみたいな顔をした人。

 

 不味い、これは不味い。あまりにもビジターすぎる。始まる前から勝負決してるぜこれ。

 しかもここにいる女の子が全員揃って可愛い。アイドルだから当たり前なんだろうけど。見た感じ全員中高生みたいな感じなんだろう。同年代かそれ以下の子が多く感じる。

 

 

「それで? 結局光は騙されてここに来たと」

「平たく言えば」

「なんで断らなかったの……」

「だって母親の許可出ちゃったんだもの」

 

 

 曲がりなりにもプロになれるチャンスが転がり込んできたんだぞ。元々現実的にプロになるつもりなんか毛頭なかったが、チャンスがあるなら話は別だ。プロのベーシストに! 俺はなる! ワン〇ース! 

 

 

「じゃあ、凛ちゃんの幼馴染くんも一緒にアイドルやるんだね!」

「えっ」

「えっ」

「え?」

「しまむー……流石にそれは無いよ……」

 

 

 この子は何を勘違いしたのだろうか。俺がアイドルをやる顔だとでも思っているのか。無いよ、絶対に。

 

 

「確かに……松井さんのお顔はとても整っていますけど……」

「島村さん、一応、シンデレラプロジェクトは女性限定なので……」

「そ、そうなんですか」

「俺が知らないのはともかくそっちも知らないんかい」

 

 

 島村さんと呼ばれている子は天然なんだろう。天然というか、ポンコツというか。まぁ可愛いからなんでも許してしまいそうだよね、こういう子。凛とか本田も苦笑いしてるし多分ガチなんだろうな。

 

 

「じゃあ、なんで光さんはここに?」

「……なんでですか?」

「そう言えば、まだ説明していませんでしたね」

 

 

 そうだよ。何の説明もなしに呼ばれて女の子に囲まれてるけど、なんで俺がここにおるねん。

 

 そもそもあのベヨ〇ッタに採用とは言われたものの、ちゃんとスタジオミュージシャンとしての採用なんだろうな。雑用の用務員のおじさんとかだったら泣くぞ。

 

 

「まず、松井さんはシンデレラプロジェクトがどういうプロジェクトか知っていただけてますか?」

「……申し訳ないけど、名前しか知らないっす」

「それじゃあ、まずはそこから説明しましょう!」

 

 

 やけに嬉しそうな千川さん可愛い。

 この緑に包まれたお姉さんもめちゃくちゃ可愛いんだよね。最初普通にアイドルかと思ったわ。

 やっぱりこういう職員さんもみんな顔面偏差値が高くなるようになってるんだろうか。芸能界すげーわ。

 

 

「シンデレラプロジェクトとは、簡単に言ってしまえば『女の子が輝く夢を与える夢のためのプロジェクト』なんです!」

「ほぉ」

「ここにいる子はみんなプロデューサーからスカウトされたり、オーディションで選考された新人さんたちばかりなんですよ!」

「凛もスカウトされたんだもんな。めっちゃ顔の怖い人にストーカーされてるって」

「その件に関しては申し訳ありません……」

「も、もういいから……」

 

 

 実はそれに関して話は聞いていた。珍しくビビった顔をしていた凛からな。

 めちゃくちゃ顔の怖くてゴツい人からめちゃくちゃ声をかけられたって。そんときは普通に学校休めば? って返したな。俺が付いて行ってやるよ! なんてカッケーことは言えないし。俺だって怖いし、凛が。

 

 

「つまり! 私たちみーんな! ちゃんとしたアイドルってこと!」

「おー」

「反応薄くない!?」

 

 

 だって察し付いてたし。凛もいるし、なんならみんなめちゃくちゃ可愛いからアイドルって言われてもおかしくは無いでしょ。

 それよりもよ。

 

 

「そのシンデレラプロジェクトと俺がここに呼ばれたの。なんの関係があるんすか」

「ふふーん。聞いて驚きたまえ!」

「お前が知ってるのか」

「知らないよ?」

「うーん、この」

 

 

 この本田ほんま……ほんま……。

 こんなんでもちろっと舌を出してえへへと笑う姿が可愛いのがむかつく。可愛いなこんちくしょう。待って、凛が怖いんだけど。すっげぇ睨んでくるんだけど。ねぇ、ねぇ! 違うって! 何が違うかわからんけど! 

 

 

「……ずっと立ちっぱなしでも申し訳ないですし。取り敢えず皆さん座ってもらいましょうか。松井さんも荷物をお持ちのようですし」

「あっ、サーセン」

 

 

 そういやずっとベース背負ってたわ。意外と重いねんな。ベースって。

 

 さっきからわちゃわちゃでとにかく話が進まないので、ゆっくり座らせていただくことになった。なんなんだマジで。女の子だらけで本当に緊張するんだけど。




幼馴染が凛ちゃんだったら僕は死にます。泣きます。拝みます。

お気に入り100突破しました! ありがとうございます!


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ギャグアニメのシリアスパートは高低差で耳キーンなる

お気に入り150突破しました! 感想も届いており泣いています。涙腺ゆるゆるマン。
最近腰をやりました。痩せるべきかもしれませんね。まぁ、ダイエットはしませんが。


 シンプルなケースをソファーに立てかけ、おっさんみたいな声を出しながら自分自身もソファーに腰掛ける。まだ高校生やぞこれでも。

 

 

「うおっ、ふっかふかや」

「でっしょ〜!」

 

 

 となりからぼふっと言う音が聞こえる。

 なんの躊躇もなく隣に座るんだな、本田な。お前アイドルなのに警戒心ZEROかよ。人懐っこい犬かよ。

 

 

「未央に色目使わないで」

「使ってねぇよ……」

「アイドルが男の人に女の子として見られるのはとてもいいことですからな〜。もっと見てくれてもいいんだよ?」

「頼むから話をこじれさせないでくれ」

 

 

 こいつ絶対学校で男をめちゃくちゃ勘違いさせるタイプだろ。鬼だ鬼。

 本田未央には男を勘違いさせる全ての要素が詰まってる。凛に脅されてなけりゃ俺だって勘違いしてるわこんなん。こんなにかわいい女の子が警戒心ZEROで突っ込んでくるとか普通ありえんわ。

 

 

「じ、じゃあ私もお願いしますっ!」

「ごめんな、まだ名前わからない子に言うのもあれだけどもっと話が拗れるからやめてね?」

「私! 島村卯月っていいます!」

「おぉ、そうかそうか。自己紹介したらいいってわけじゃないんだごめんな」

 

 

 満面の笑顔がとっても可愛い彼女の名前は島村卯月というらしい。

 この子、前回から俺が凛と一緒にアイドルになるとか言ってたし、今もノンストップで突っ込んできてるし多分おばか、もしくはポンコツの部類だろうな。

 

 でもやっぱりアイドルなだけあって可愛いよ。特に笑顔がヤバい。人を軽く100人は救えそうな笑顔をしている。

 未央みたいに髪型に癖があったりしてる訳でもない、まさに普通の超王道JKって感じがするな。うんうん。

 俺はアイドル評論家かい。

 

 

「光」

「俺は悪くねぇって!」

 

 

 凛ちゃん? プロデューサーさんの後ろからこっちを睨みつけてくるのやめて? 

 プロデューサーさん自体にただでさえ威圧感あるのに、凛がその奥のスタンドみたいになってるから。ジ〇ジョとか全然知らないけど時が止まりそうだから。死ぬから。

 

 わかるよ? お前も同性の同僚をそういう目では見て欲しくはないよな。わかるんだ。俺だってそんなつもりで見てないんだ。強いて言うならこういう空気にした本田が悪いんだ。許してくれ(クズ)

 

 と言ってもこのままだと俺が凛に目で殺されかねない。ここは一刻も早く話題を変えよう。うん、そうしよう。

 

 

「そ、それで? シンデレラプロジェクトのメンバーってのはここにいる人だけなの?」

「違いますよ?」

「今は私としまむーとしぶりんしかいないけど、本当は私達合わせて14人いるの!」

 

 

 はえ〜、たくさんいる。まぁ、俺が今いる部屋も死ぬほど広いからな。14人くらいいても狭くもなんともないよな。

 にしても新人を集めたプロジェクトで14人か。やっぱりこの事務所すげーわ。どんだけ人いるんだよ。14人って言ったら野球のチームもサッカーのチームも組めるぞ。マンモス事務所にも程がある。

 

 

「今日は本当なら私と千川さんと松井さんの3人でお話をさせていただく予定だったのですが、三人の予定がブッキングしてしまいまして……」

「だから私達、レッスンがあるまでここで待機してたんです!」

「なるほど」

 

 

 だから本田がわざわざ俺を迎えに来たと。暇だったんだろうな。そこはちょっと可哀想だとは思う。

 

 でもなぁ……よりにもよって迎えに来たのが本田だもんなぁ……。しょっぱなから消費カロリーがエグいことになってたぞ、マジで。まぁ自分から暇だし迎えに行く! って言い出しそうなのは本田くらいだろうけど。島村さんは言い出すかどうかわからないけど、凛は絶対にそう言うことを言い出さないからな。

 

 

「申し訳ありません……本来なら後日しっかりと顔合わせの機会を作る予定だったんですが……」

「いやいやいや! 早かれ遅かれ顔合わせるんだったら変わらないですし!」

 

 

 超コワモテの顔で申し訳なさそうに首元を手でさすさすしているのをみると急に申し訳なくなってくる。この人、この見た目で意外と苦労人なのかも知れない。

 

 

「それで他の方は……?」

「蘭子ちゃんと杏ちゃんときらりちゃんとアーニャちゃんと美波ちゃんは今日はお休みでしたっけ?」

「莉嘉とみりあもね」

「前川さん方も今はレッスン中ですね」

「……つまり、他の人は今はレッスンとお休みだと」

 

 

 知らん名前がたくさん出てきたよ。僕、困っちゃう。

 こういう身内ネタが一気に出てきた時って本当に困るよね。死ぬほど居づらくなるというかモジモジするというか。

 

 

「良かったね光」

「なにがですの」

「別に」

「やめよ? そういうの怖いよ?」

 

 

 意味深なこと言わないで。そんでもって今は笑わないで。その笑顔怖いから

 とってもいい笑顔だけど僕にとっては良くない笑顔だから。

 

 

「おーっとぉ? しぶりんとまっさんのプロレスの開始かぁ〜!?」

「頼むからそんな楽しそうにしないでくれ。困ってるんだ」

「あの……松井さん、お話を進めても……?」

「「「あっ」」」

 

 

 話をそらしすぎて着地点を見失ってた。

 プロデューサーさんはずっと首元をさすってました。ごめん、プロデューサーさん(白目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「松井さんには将来、この346プロを根本から支えるスタジオミュージシャンになっていただきたいのです」

「根本から支えると」

「はい」

 

 

 本田と島村さんと凛が静かになってすぐだけど、プロデューサーさんいきなりとんでもなくでかいことを言ってくるな。なんか急に重圧がすごくなってきたよ。僕そこまでメンタルつよつよ勢じゃないんだけど。

 

 

「今、346プロでは専属のスタジオミュージシャンが不足しているんです。アイドル部門以外のミュージシャンの方々からお手伝いをいただいているので今はまだ大丈夫ですが、やはりその方々の負担にもなってしまうので……」

「それもあって、若いスタジオミュージシャンの卵として、今回松井さんを採用させていただいたんですよ? アイドル部門専門の、ですけど」

「あの……そのアイドル部門専属の、って言うのが気になっていたんですけど」

「私も気になる!」

 

 

 ベヨ○ッタさんにも急に言われてスッゲェびっくりしたんだけど。やっぱり俺ってアイドル部門専属ってので通ってるんだな。なんで俺なんだ、マジで。

 あと今の千川さんの言い方が小悪魔っぽくて可愛かった。なんか俺ここにきてから思考の半分が可愛いで埋まっていっている気がする。気のせいであってほしい。

 

 

「少し話は逸れますけど、そもそもこのシンデレラプロジェクト自体が今のアイドル部門に新しい風を吹かせる、そういう意味もある企画なんです」

「そうなの?」

「わ、私に聞くんですか!?」

 

 

 なんとなく島村さん話についていけてなさそうな感じだったから。

 声掛けてやるなよ可哀想だろって? 馬鹿か。こういう可愛い反応が見れるだろうが! 

 

 

「今はこのアイドル部門というくくり全体でそういう空気が生まれつつあるんです。その新しい風の一環として、アイドル部門の将来を根本から背負う、アイドル部門専属のスタジオミュージシャンを育てる、ということになったんです」

「アイドル部門の将来を根本から背負う、ですか」

 

 

 それはまた壮大なプロジェクトに巻き込まれてしまったらしい。

 要するにアイドル部門を発展させていくためにシンデレラプロジェクトをはじめとした色々なことを進めている中で、スタジオミュージシャンの育成として俺を雇用したと。そういうことね。

 よくよく考えれば実力もわからないであろう高校生をスタジオミュージシャンしてまともな選考もしていないのに起用とかはしないよな。なんなら俺面接しかしてないし。あれって面接と呼べるかもよくわからないですしおすし。

 

 

「……346プロさんは、なんで俺を選んだんでしょうか。正直俺よりもベースが上手い高校生なんて、探せばいっぱい出てきそうだし」

「それは……」

「ベース? まっさんが持ってるそれってギターじゃないの?」

「李衣菜ちゃんが持ってるのとは違うのでしょうか……」

「あー、これはベースだよ、ギターとはまた違うねぇ」

 

 

 ケースをポンポンと叩くと、さっきまで閉じっぱなしだったベースケースのチャックを端から端まで一気にスライドさせて、中身を取り出す。

 シンプルな木目のボディにミラ―加工のしてあるピックガード。そこからすらっと伸びる長いネック。ネックの先端からボディの端にまで、長くて太い弦が5本、ピシッと張られている。

 

 

「わぁ、ギターとそっくり!」

「細かいところは違うんだけどね」

 

 

 俺も初心者の時はギターとベースの違うなんかわからなかったし誰だって最初はそういうものだろう。

 足を組んでボディの凹んだ部分を右の太ももに乗せる。左手はネックに軽く添えて、右手の指で下から上へ。5、4、3弦と弾いてみせる。

 

 アンプをつないでいない生音のエレキベースでも、案外良い音は出るんだよね。少し生音独特のカッという弦の弾かれる音とともに、ベース独特の低く響くような音色が鳴る。

 

 

「おぉ……なんか、様になってる!」

「夏樹ちゃんとなんだか似てます!」

「一応、これでここに入ったからね」

 

 

 夏樹ちゃんってよくテレビでギターを弾いてる子のことだった気がする。名前をなんとなーく覚えている。間違ってたら悲しいな。

 

 にししと変な笑い声を出しながら、調子に乗ってマリオのBGMを弾いたりしてみる。

 ベースでなんか弾いてと言われたときの定番はこれだよな。マリオの地下BGM。ギターだったらMステのアレを弾けばいいし、やっぱ軽率に人を抹殺することのできる『なんかやってよ!』への対抗策は必要なんやなって……。

 

 

「松井さんにはシンデレラプロジェクト内で予定されている楽曲も担当していただこうかと思っております」

「俺が?」

「それってつまり、光が私たちの歌う曲を演奏するってこと?」

「はい、そういうことになります」

「でもシンデレラプロジェクトって、アイドル部門のこれからを背負う大事なプロジェクトなんじゃ……」

「だからこそ、です」

 

 

 それじゃあまるで、俺がこの会社の未来を背負う一環みたいになっとるやんけ。というかこの人たち俺の演奏とか聞いたことあるっけ??? 

 俺ってこの会社に来てからちゃんとした演奏見せてないんだけど。本当に大丈夫なの? なんなら話の進みが異常すぎて、俺未だになんかドッキリなんだと頭の片隅にずっとおいてあるよ? 

 

 

「俺がシンデレラプロジェクトの……」

「受けて、頂けますか?」

 

 

 バタン!!!!! 

 

 

「ちょーっと待つにゃあ!!!!!」

「あっ」

「うわびっくりした」

「それ本当にびっくりしてるの?」

「割と」

「みくちゃん! レッスン終わったんですね!」

 

 

 そこそこ重かったはずの扉を爆音鳴らしながら盛大に入場をしてきたのは、ジャージ姿の謎のショートカット少女。

 誰だあんた! てか後ろの方にそこそこ人数いる! しかもみんなジャージとかやんけ! 

 

 

「他の子は今日お休みなのに私たちはしごかれるんだもん……勘弁してほしいよー……」

「李衣菜チャン! 今はそんなこと言ってる場合じゃないにゃ!」

「みくちゃん……私たちもとりあえず休ませてもらうね……」

「かな子チャンも智絵里チャンもダメーッ!」

「なんなんやこいつ……(困惑)」

 

 

 にゃあにゃあ言ってる女の子の横からぐで〇まみたいになってる他の三人の女の子が俺なんかには目もくれず部屋の中に入ってくる。おいおい、チームワーク取れて無さすぎだろ。

 にしても、なんか面白そうなのがきたな。なんかこいつはいじり甲斐がありそうだ(ゲス顔)




この前久々に泣いたのですが、原因はまかだみ〇さんのアンテ実況でした。
アンテは泣けますね。未プレイですがいつか自分でやってみたいものです。ちなみに一番好きなBGMはDummy!だったり。異論は認める


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大阪の人間のお笑い適正の高さは異常

どうでもいい話なんですけど、実は私って方言フェチだったりします。
色んな方言を聞いてるとめちゃくちゃ落ち着くので、みんな標準語をかなぐり捨てて暗号だけで会話して欲しいと常日頃から思っています。


 

 

「Pチャン! みく達なんにも聞いてないにゃ! どーゆーことか、キミにもちゃんと説明してもらうにゃ!」

「みくちゃん! 猫耳猫耳!」

「あわわわ!? みくの耳はどこー!?」

「おもしれー女」

 

 

 部屋に入ってきたと思ったらいなやプロデューサーさんになんか詰め寄ったり猫耳? 探してたり騒がしい女だな、オイ。プロデューサーさんも困ってんだろうが。ほら、首元スリスリしてる。

 プロデューサーさんってよく首元すりすりしてるけど癖なのかな。なんか珍しい癖だな。

 

 にしても初対面の男がいるのに騒がしい人だ。品性ってものを知らないのか、品性ってもんを。まぁ、俺はそういうの全く気にしないしからいいんだけど。なんなら普通よりも色々と面白そうだからそういうのは好きなんだけどね。

 

 

 

「幼馴染くん、みくちゃんのこと知ってるんですか?」

「いや、全く? 見たとしても覚えてないかも」

「に゛ゃ゛!?キミ! 今失礼なこと言ったでしょ!」

「安心しろよ。初対面の人に指差して叫び散らかしてるあんたの方が多分よっぽど失礼や」

 

 

 猫耳をしっかりと装着してもなお、全く衰えることのないマシンガントークを一人で繰り広げていらっしゃる。

 多分この子あれだな。一人で勝手に漫才をするようなタイプの女の子だな。一緒にいたら面白そうだけど、初見の人はドン引きするタイプだろう。実際に今俺若干引いてるし。

 

 

「失礼も何もないにゃ! さっきの話! ちゃんと説明してもらうにゃ!」

「あっ、でも俺あの人のことは知ってるかな」

「……へ? 私?」

 

 

 俺が顔だけくるっと回転させて視線を向けたのは、始めて俺が346プロに来た時にリーゼントの女の子にくっついてた小柄な女の子。

 急にみしらぬ男に視線を送られたその子は、タオル片手に素っ頓狂な顔をしている。

 

 

「そうそう。関ジ○ムかなんかで金髪のリーゼントの女の子と出てたでしょ?」

「あー! 出てたよ出てた! あれ見てくれたの!? 嬉しいなーっ!」

「話をそらすにゃー!」

 

 

 ギターの機種によっての音色の違い的な回で、ベージュの髪色をしたショートカットの女の子がリーゼントの女の子に子犬みたいに懐いていたのをすんごい覚えている。

 あと、めちゃくちゃにわかでゲスト的な立ち位置としてはうってつけの立ち回りをしていたのも覚えている。そっち側で呼ばれたわけではなさそうだったけど。

 

 

「私、多田李衣菜って言うんだ! よろしくね!」

「松井光、高校二年生。よろしくのぉ」

「高二なの? 同い年じゃん!」

「マジ? うっわなんか感動するわ」

「わ、私も高校二年生です!」

「年齢の話はどうでもいいの! 卯月チャンも乗らない!」

 

 

 いやー、女子高生と女子中学生が中心だと思っていたとはいえ、やっぱり同級生の子がいるとなんか一体感あるよな〜。どうしても後輩とか先輩の女の子になると気を使っちゃうし。まぁ仲良くさえなれば年上も年下も全く関係ないんだけどね。

 

 

「光もPも、このままだと話が進まないから」

「えー。もうちょっと遊びたかったー」

「ねー」

「みくで遊んでんじゃないにゃ! 終いにゃ怒るで!」

「あっ、語尾消えた」

 

 

 イントネーションが完全に関西の人だったな。成程、お笑いセンスがめちゃくちゃ高そうなのも理解出来る。

 関西人だからって面白い人ばかりだと思うなってアレ。全員がそういう訳では無いだろうけど、絶対に関東の人間よりも面白い人間の比率は多いよな。

 

 

「まぁ説明と言ってもなぁ」

「松井さんにシンデレラプロジェクトのベースを担当していただくと言う話だったのですが……」

「そこ! 何処の馬の骨ともわからない新人にみくたちの大切なデビュー曲を担当させるなんて絶対に許さないにゃ!」

「確かに」

「確かにじゃないにゃ! キミはそっち側の人間でしょ!」

 

 

 そんなこと言われたって、一人漫才娘の言っていることだって俺理解できるし。普通に正論だと思うし。そりゃあそう思うよなって感じだし。俺だっていいんか本当に? って感じだし。

 でもそんな大声で会社の方針に文句言えるのすげーな。レジスタンスかよ。

 

 

「んなこと俺に言われたってなぁ」

「まぁまぁ、みくちゃん。ちゃんと会社側にも考えはあるんですよ?」

「考えって言われたって納得いかないにゃ!」

 

 

 そんなこと言われたって仕方ないじゃないかぁ、的な感じで頭をぽりぽりしていると、さっきまでニコニコしていただけの千川さんが急に介入してくる。それもニコニコしたまま。なんか怖いんだけど。

 

 

「つまり、松井さんのことをどこの馬の骨ともわからない人間から、みくちゃんのデビュー曲を任せてもいいと思える人間になればいいんですよね?」

「それはそうだけど、そんなの無理にゃ! だって新人さんだし!」

「お前だって新人ちゃうん?」

「私たちまだまだみんな新人だよ〜みくちゃん」

「二人ともうるさいにゃ!」

 

 

 図星なんかい。そりゃあシンデレラプロジェクトって言う企画自体、新人さんを集めた企画って言うからな。この一人漫才娘も新人なのだろう。死ぬほどバラエティ映えしそうなポテンシャル持ってるけど。

 

 ここでふと、俺の中に一つの疑問が思い浮かぶ。そんな大したものでもないけど。

 

 

「ここにいる人って、デビュー曲とかまだなんですか? 多田はテレビにも出てましたよね?」

「あれは特例だからね〜。なつきちがテレビに出るって時に私もなぜか呼んでもらったんだよね」

「それに346プロはある程度の実績がないと簡単にCDは出せない会社ですから……」

「こんなでかい会社なのに?」

 

 

 それは流石におかしいじゃろう。

 本社が城みたいになってる上に、本社じゃない方だってこんなに馬鹿でかい会社なのに。アイドル部門しかないわけでもなかろうに。

 

 

「そこで専属のスタジオミュージシャンが不足している、と言う話になるんです」

「嘘でしょ。それだけでそんな領域まで来てるの?」

「うちの会社の方針で特に楽曲には手を抜かないようになっていますので……どうしても少数精鋭と言う形に」

「そんなありえん話ある……?」

「それが実際にあるからこうなってるんですよねー」

 

 

 千川さんとプロデューサーさんと言う346プロ側の会社の人間お二方がなんだかとっても負のオーラを纏っている。そりゃあ出せるもんならとっくにデビュー曲出してあげたいよな。ごめんなさいね。

 普通に地雷原踏み抜いちゃったかもしれんわ。色々デリケートな問題だよね、そうだよね。こう言う事態にもならないと俺のことを雇ったりしないよね。

 

 

「このこと自体は常務もかなり問題視していまして……長い目でも短い目でもこのアイドル部門の問題を解決するためにこう言う手法を取らせていただいている形です」

「なんか余計にプレッシャーが強くなってきたわ……」

「まっさん? なんか顔色悪くない?」

「光って意外とプレッシャーに弱いもんね。昔は私を目の前にすると顔をよく青ざめさせてたし」

「その話やめて。若干の黒歴史なの」

 

 

 昔はマジで凛が怖かったの。今と相も変わらず可愛らしかったのだけど、それでも奥になんか冷たい何かを感じたから。あとこの子、昔は年上の俺に対しての敵対心が何故かマックスだったから。

 

 

「みくちゃんの言い分もわかるけど、これも最終的には私たちの為なんじゃないかな?」

「むぅ……んむむむむむー!」

「可愛いかよ」

 

 

 多田のなんとなく人ごとっぽい言い方でのかいしんのいちげきに、一人漫才娘も反論の余地がなくなったらしい。そのままほっぺを膨らませてジタバタし出した。

 いや、わかるよ? 正論だってわかってても気に入らんもんな。あるある。

 

 

「光」

「すまん」

 

 

 凛ちゃん、相手はアイドルなんですよ? いくらぶりっ子っぽいモーションとはいえ、アイドル相手に可愛いと言わないのは失礼じゃないんでしょうか? はい、あなたが嫌と言うからダメですね()

 

 

「そ・こ・で・です!」

「うわっ、ビックリした!」

「い、いきなりどうしたの? ちひろさん」

「この計画が出た時点で誰かしらから反発の声は出ると予想していましたので、ちゃんと秘策を練ってきたんですよ♪」

「秘策と」

「はい、秘策です!」

 

 

 それがあるなら早く出して欲しかったんだけど。

 それにしても秘策とはなんなのだろうか。金か? やっぱり最後は金なのか? カァーッ! やっぱり社会は汚いねぇ! 

 あっ、違う? ドラマとかでこう言うのあったからさ。こんな感じの賄賂的な何かかと思ったんだけど。

 

 

「つまりですよ! 松井さんのことをみんなに知っていただければいいんですよ!」

「ほうほう」

「人のことをよく知る1番の近道は、その人とより近い位置で時間を過ごすことだと思うんです! 実際に凛ちゃんは松井さんのことをよく知っているんじゃないですか?」

「……まぁ、卯月とか未央よりは知ってると思うよ」

 

 

 そりゃ科学的には俺と凛は幼馴染ってやつだしな。何だかんだ言いつつもそこらへんの人間よりはお互いのことを知っているはずだ。多分。

 お互いのことを知っていると言うのがどこからどこまでの話なのか定義されてないから何ともいえないんだけど。

 

 

「つまり! 松井さんにはみくちゃんたちと過ごしてもらえればいいんですよ!」

「それはつまり、これから一緒に仕事を共にすると」

「いいえ違います! 文字通り『過ごして』貰うんです!」

 

 

 千川さんの言っていることが理解できない。一人漫才娘と顔を見合わせるも、それでも理解ができない。

 なに、過ごすって。どう言うことよ。

 

 

「幸いなことに、346プロには大きくて立派で綺麗な女子寮があるんです!」

「はぁ」

「シンデレラプロジェクトに参加している方でも女子寮通いの方はかなり多いんですよ?」

「みくも女子寮通いだにゃ」

「わ、私もです……」

 

 

 一人漫才娘とツインテールのこれまた小動物を思わせる小柄な少女が小さな声で手をあげる。全然話に入ってこないから興味ないのかなって思ってたけど、ちゃんと話聞いてたんだね。

 

 

「スバリ! 松井さんにはこれからですね!」

「待って千川さん。多分、今から怖いこと言うでしょ、待って。落ち着いて千川さん」

「346プロの女子寮で生活していただきます!」

 

 

 はい。

 

 俺の人生終わりました。お疲れっした。うっす。

 

 これからは女子寮に住まう変態として、犯罪者として、職場のアイドルから白い目で見られて生きて行きたいと思います。

 泣いたわ。




評価の色がつきました! ありがとうございます!
一日でお気に入り100増えてビビり散らかしました。あと感想も沢山来てて泣きました。評価も入っててチビりました。
これからもよろしくお願いします!


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倫理観を捨てた魔王は無敵

☆10評価が入って喜びで転げ回ってたら☆0評価にスターバーストストリームされました。そしてあまりにも☆0にされた理由がド正論すぎた結果、確かにと血の涙を流しながら少し凹みました。
これ、約3時間前の出来事です。台風怖かった。


 

「千川さん。ひとつ聞いていいですか?」

「はい!」

「女子寮ですよね?」

「そうです!」

「女の子しかいませんよね?」

「もちろん! 学生のアイドルの子しかいません!」

 

 

 どんどん血の気が引いていく。

 しかも今さ、アイドルしかいないって言わなかった? しかも同年代の学生の。

 

 

「俺、家からここまで通える距離なんですけど」

「でも遠いんじゃないですか? 女子寮の方が通いやすいですよ!」

「いや、俺の家は凛の家の隣なんでこいつと通う距離は変わらないです」

 

 

 まぁ遠いといえば遠いよ。今日もここまで来るのに電車で一時間かけてきたし。凛って大変なんだなって思ったよ。

 

 

「そもそも俺、学校がありますし」

「こちらで勝手に調べてもらいました。松井さんの通ってる学校ですが、女子寮から通った方が近いですよね?」

「なんで分かるんですか(困惑)」

 

 

 怖い怖い! そこまで調べたんですか千川さん! 

 そりゃ立地的にはここは強いですよ! 大都会のど真ん中ですしね? とは言えよ。立地的にいいね! よし住もう! とはならない訳よ普通。

 

 

「というか一緒に住むアイドルの子達の気持ち考えてくださいよ! 普通に嫌でしょ! 」

「そ、そうにゃ! いくら会社の方針でもそれは横暴だにゃ!」

「お、男の人と同棲……同棲……はぅ」

「うわわっ!? 智絵里ちゃーん!」

「大丈夫です! そのうち慣れます! この世界に常識なんか通用しないんですよ!」

 

 

 んな無茶苦茶な。

 そもそも自社の大事な大事なアイドルを獣みたいな男子高校生と一緒に住まわすなんて行為が普通じゃない。いいのかそんなんで。てか冗談だよね? 流石に冗談だよね? 

 

 

「プロデューサーさんもなんか言ってよ!」

「そうだよ。Pもなんか言ってよ」

「……申し訳ありません。こちらにも事情がありまして」

「」

 

 

 縦社会こわい。プロデューサーさんが今までで一番の困ったオーラを出してるやん。

 もっと上からの圧力だって言うのかよ。天竜人ォ! 

 

 

「凛もなんか言えよ! 俺が近くから居なくなったら嫌だよな!?」

「いや、それに関しては別に」

「そこはせめて嫌だって言ってくれよおおおおおおおおおおおお!!!! 

「最近あんまり直接話してなかったし」

 

 

 確かに言われてみればそうだけどさ? 物心着いてから隣の家で長いこと一緒にやってきたジャマイカ。僕は悲しいよ。俺だって凛がアイドルになるって言ったとき、ふーんとしか思わなかったけどさ! 

 あっ、それだわ。それとおんなじだわ。距離近すぎてなんかあっても特に何とも思わなくなるやつだわ。

 

 

「てかそもそもそんなの会社が許しているんですか!? なんか間違いあったらどうするんですか!」

「会社からの許可もなにも会社全体の方針ですし、それだけ急務なんです。間違いがあったその時は……ね♪」

 

 

 なんでちょっと嬉しそうな顔してるんですか。笑い事じゃないんすよ! 

 てかありえない! 女子寮ですよ!『女子』寮! 

 

 

「そもそも風呂とかどうするんですか! トイレも!」

「安心してください。 346プロの女子寮は元々あったホテルを改修したものなので、トイレもお風呂もちゃんとありますよ! まぁ、昨日までは両方とも女性用でしたけど」

 

 

 それって簡単にいえば急造じゃないんですかね……間違えてアイドルの子が入ってきたりしたらどうするつもりなんですかね、ほんま……いや無いとは思うけど。

 

 

「それにです! うちの女子寮はそこらへんのマンションなんかよりも豪華なんですよ! 私も入りたいくらいなんです!」

「でも俺男ですよ」

「……そこらへんは気にしたらダメです」

「そこは一番気にしなきゃダメなとこだろうがよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらがこれから松井さんが生活していただく女子寮になりまーす」

「……えっ、なにこれは」

 

 

 見るだけ! 見るだけですから! なんて言いくるめられて千川さんとプロデューサーさんに連れてこられたのは、女子寮と思わしきとてつもなく立派なホテル。もはやホテル。ただのホテル。

 ただ、すぐ目の前には高級なホテルとかにありがちな石に文字が書いてあるアレに『346プロダクション女子寮』としっかり彫られている。

 

 

「これが寮ですか?」

「はい、寮です!」

「ホテルとかじゃなく?」

「もちろん!」

「どんだけ金あるんすか()」

「稼がせていただいてますから」

 

 

 何がとは言わないですけど、ってドス黒い笑みを浮かべてるように見えるのは俺だけでしょうか。プロデューサーさんはずっと申し訳なさそうだし。

 

 

「取り敢えず中に入ってみます? 今の時間はほとんどアイドルの子達もいないと思いますよ?」

「はぁ……」

「れっつごーです!」

 

 

 一人ウキウキな千川さんの後ろをとぼとぼとついて行く俺とプロデューサーさん。俺たちって将来嫁さんの尻に敷かれるのかな。千川さんがパワフルすぎるのかな。

 

 玄関に入ってすぐにある学校の上履き入れみたいな棚に靴をぶち込む。女の子がよく履くヒールなどに大きさをあわせたのか。学校にある棚よりも一周りくらい靴入れが大きい。

 

 何故か人のいないホテルの受付みたいな所を通り過ぎると、そのまま奥に通される。

 やっぱり広いっすねぇ……。

 

 


 

 

「はい! こちらが光くんの部屋になります!」

「いやもうなんかもう名札付いてるゥー!」

「千川さん……いつの間に……」

 

 

 とてつもなくでかい大浴場や、とてつもなくでかい共用リビングや、とてつもなくでかい食堂などを回った後には最後の目玉。

 まるで前から既にありましたよって雰囲気を出しながら『松井光』の文字がドアの隣に貼りついてる。

 他の部屋にも付いてるからパッと見だと違和感ないのやめてくれ。俺だけ男なんだよ。

 

 

「ささ、どうぞ! 鍵は空いていますから!」

「どうも……?」

 

 

 促されるままお邪魔します、とドアを引く。お邪魔しますであってるのか。あってるわ。

 

 中は窓から差し込む陽の光だけで照らされている。と、思ったら千川さんがすぐ横にある照明のスイッチを押してくれた。

 足元見てなかったけど、ちゃんと土間もあるのか。まぁ今スリッパ履いてるからそのまま上がってもいいんだけど。俺は部屋だと裸足の方がいいからスリッパは脱ぐか。

 

 

「風呂もあるんだ」

「はい。大浴場だけではなく、しっかりと個人用のも部屋に用意してありますよ」

 

 

 バスルームもめちゃくちゃ綺麗だ。ホテルにあるトイレとバスルームが一緒になってるのを想像していただけるといいだろうか。まさにアレ。

 元々ホテルだと言ってたし、それの名残なんだろう。

 

 

「キッチンまで。しかもちゃんとしてる」

「今なら冷蔵庫などの家電製品も付いてきますよ!」

「神か?」

 

 

 家のキッチンに比べると少し狭いが……マンションならこんなもんだろう。マンションじゃなくて寮だけど。

 あれ? ここ寮だよな? 

 

 

「それでこちらがリビング兼寝室ですね」

「やっぱり広いっすね……俺の家の部屋よりも広い」

 

 

 ベッド、テレビ、備え付きのでっかいクローゼット。それに加え机も置いてある。

 

 うん、ヤバいな。今のところ完璧すぎる。一人暮らしするには完璧すぎる環境では? 実は一人暮らしはずっとして見たかったし、なんなら高校でたら自分も両親も一人で暮らす気満々だったし。

 ご近所さん全員アイドルってのがあまりにもネックすぎるけど。

 

 

「……ん? あのギターってもしかして」

「光さんのですよ? お先に持ってきました」

「お先に、とは?」

「後から他の荷物もどんどん届きますよ!」

「?????」

「そんな訳でいかがでしょうか! もちろんWiFiも完備してますし、災害があってもここの耐久性はピカイチですので安心ですよ!」

 

 

 圧が強い圧が強い! 近い! そして近い! 

 というかこれもう移動の準備進めてるよね? 先に貴重品のギター持ってきただけじゃねこれ!? 

 

 

「まずは一週間から! ね? ね!?」

「そんな体験入部みたいな……」

「気に入ったらそのまんま入ってもらっても出てってもらってもいいですから!」

「ま、まぁそれなら……」

「はい」

「えっ」

「言質、取りました♪」

 

 

 ニコニコ顔の千川さんがすっと顔の横に持ってきたのは、黒くて小さいマイクみたいな穴の空いた機械。ボイスレコーダーとか僕本物見た事がないんだけど。現物? 

 んーっと、あれ? 録音済み? 

 

 

「松井光さん。これからの346プロアイドル部門、よろしくお願いしますね!」

 

 

 これもしかして、終わった? 

 お願い死んでらぁしちゃった?




お気に入り700突破致しました! ありがとうございます!
やはり日間ランキングに入ると勢いがヤバいですね。この世は高評価が全てなのでしょうか。いいえ、ジャンボです。ちなみに僕はピノが好きです。


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なんか 京都美人、来た。

この前日間ランキングに乗ったらお気に入りが一日で200ちょい増えました。鬼すぎる。もう片方の小説でもやった事ないのに! ありがとうみんな!

どうでもいいけどこの前久々にすき焼きを食べたのですが、下手な和牛よりも輸入のお肉の方が舌に合ってビックリしました。肉は正義、それ一番言われてるから。


 

 

「お疲れさんでした〜」

「ゴブウンヲオイノリイタシマスー」

 

 

 段ボール5箱分くらいの荷物とその他ベースを置くスタンドやら俺の部屋に置いてあった棚やら、それらを全部わざわざ運んできてくれた引越し業者でもなんでも無い、普通に346プロの若い社員さん達を見送りながら途方に暮れる。

 

 なんで俺の知らないところで勝手に話が進んでいやがるんだ。大人の世界怖い。

 プロデューサーさんが言うには両親からも俺の入寮に関しては了承済みで、荷物も全て親が全部選んでここに既に送ってもらっている、ってあまりにもことがうまく進みすぎてる。母親に抗議の電話をかけたら『元気にハーレム生活送れよクソガキ』って言われたし、どういう頭してんだあのクソババア。

 

 ていうかスタッフさん最後に変なこと言ったな。なんだよ、ご武運をお祈りいたしますって。俺は戦地に向かう武士か。戦場って点はあながち間違ってはなかったわ。

 

 それにしてもだね。

 マジかー。いやー、マジかー。

 

 

「ッスゥー……マジかー」

「いやはや、中々大変そうやねぇ」

「まぁそれなりに」

 

 

 おかげさまでなかなか大変でございますよ。本当に人生何が起きるかわかったもんじゃない。

 あらあら、わざわざダンボールまで開けてもらって荷物出してもらって悪いですねぇ。そんな今日初めて顔を見る人に荷出しを手伝ってもらうわけには……わけには……ん? 

 

 

「ところで、あんた誰ですか?」

「あたし?」

「この部屋には私とあんたしかおらんでしょう」

「言われてみればそうだねぇ。おっ、Switchあるじゃーん」

 

 

 輝くような短い白髪。服から覗くすらっとした手足に綺麗な素肌。例によって整った美人寄りの顔立ち。耳からちろっとかかるピアス。

 

 ここまで来ればもうお分かりだろう。この人、アイドルだわ。

 

 

「自己紹介したほうがいい系?」

「あっ、俺からした方がいい系?」

「そうして欲しい系」

「あっ、そう」

 

 

 なんなんだこの人。ペースを握ろうとしても簡単に乗られるんだけど。この人そういう系の人か? それともめちゃくちゃ適当系か? さっきから〇〇系って使いすぎな系だなこれ。

 

 

「どうも、なんと男子な17歳。松井光でごわす」

「どーもどーも、なんと女性な18歳。塩見周子どすえ〜」

 

 

 バチバチTOKYOの大学生みたいな格好からの京都弁とか違和感マックスのはずなのに、やけに馴染む。なんというか、よく聞くエセどすえじゃなくて本家っぽいきがする。気のせいかもしれんけど。

 

 

「で、そんな塩見さんはなぜここに」

「シューコちゃんでいいよ」

「いや、初対面の人を下の名前で呼ぶとかハードル高s」

「いやー、部屋でのんびりしてたらあたしのPから昨日話した男の子の荷出しくらい手伝ってやれよって言われちゃってね」

「話聞けよ」

「そんで面白そうだから、なんとなく来ちゃった☆」

「さいですか……」

 

 

 

 とはいいつつも他の荷物には目もくれず、Switchとスマ○ラだけを箱から持ち出して着々とゲームする準備をしているように見えるのは僕だけですかね。

 

 この人あれだ。あまりにも暇すぎたところに面白そうなのが飛び込んできたから、とりあえずこの波にはノっておかねぇと損だ! とか思ってここに来たタイプだ。というか、そんなことを遠回しに言ってた。

 俺にはわかるぞ。この適当さ、多分同族だ。

 

 

「それで? Switchの方はどうですか」

「んー、もうちょいかかるかなぁ」

「言っとくけど、プロコンは俺の分しかないですぜ」

「シューコちゃんの部屋に二個くらいあるはずだから、あとで取りに行って来てよ」

「アイドルさん、危機管理って知ってる?」

 

 

 この人、色々と本当に大丈夫なのだろうか。というかやっぱりSwitchする気満々やし。

 まぁ、ええわ。正直こんな事態に急に巻き込まれた側としては、はいそうですかと荷出ししてぐっすりスヤァなんてできるはずがない。最悪荷出ししなくてもベットはデフォルトの敷布団と掛け布団もあるし枕もある。抱き枕がないのだけがギルティだが。

 

 時刻はもう5時を回ろうとしているではないか。むしろここは夜になるまでSwitchを堪能してそのまま周子さんを追い出し、そして疲れ切った頭でぐっすり寝て明日の事は明日に考えるのが正解ではないのだろうか。

 今日は金曜日、明日はみんな大好き休日だ。千川さんからもプロデューサーさんからも、土日ははなにも予定がないので女子寮の方々と親交を深めてくださいと言われている。

 

 嫌だね。そう簡単に地雷なんぞ踏んでたまるか。俺は飛んで火に入る夏の虫じゃないんだ。明日は部屋にこもって荷出しして完璧な一人暮らしの体制を整えた末にニート生活を満喫してやる。

 

 よし、完璧なプランじゃあないか。そうと決まれば、早速行動開始だ。

 

 

「周子さん。Switchの設定、俺がやっとくから先にプロコン取ってきてくださいよ」

「しゃーないなぁ。わかったわ、譲ってあげる」

「なんか負けた気がする」

「気のせいだって」

 

 

 ご機嫌な鼻歌を歌いながら出て行く周子さんを尻目にゲス笑いを浮かべる。

 計画は完璧。これでワシの計画は崩れるまい。

 

 とりあえず千川さんは一週間体験で入寮って言ったんだ。それならここで一週間。なんとか他のアイドルとの接触を最大限に減らして乗り切り、変態の称号を消し去ってから346プロに貢献させていただこうではないか。

 

 

「取ってきたで〜」

「はやっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦決行から一時間。周子さんのことをうまいこと取り込むことに成功した光、

 そんな彼は現在。

 

 

「お先失礼しますえ〜」

「あー! 紗枝はん速いー! って痛っ!? 誰ぇ! 今赤甲羅投げたん!」

「俺だよぉ! おっさきー!」

「絶対許さん!」

「周子はん、そない言葉遣いはあきまへんでー」

 

 

 周子さんと謎の着物美少女と3人でめちゃくちゃマ○オカートをしていた。超楽しい。

 

 ところで今周子さんの隣にいる少女。

 デフォルトから着こなしてる服は、今は祭りや年末でない限り絶滅危惧種となったKIMONO。俺どころか、周子さんから見ても明らかに可愛らしいサイズな身長。そして腰まで届くかというような長くて綺麗な黒髪。そしてびっくりするほどのコテコテの京都弁。舞子さんかと最初勘違いしたわ。

 簡単に言うならば、京都をそのまんま美少女化したような少女。

 

 この謎の着物美少女、名を小早川紗枝というらしいの。例によってアイドルらしい。

 誰だチミは! って話を振ったら、周子さんと違って懇切丁寧にちゃんと自己紹介してくれた。ありがたい。

 

 

 

「んー! もっかい! 二人とももっかい!」

「しゃーないなぁ」

「構わん、続けろ」

 

 

 手伝ってくれるのはありがたいんだけど、なんで紗枝ちゃんがここにいるのって話だよね。

 

 これには深い理由なんて何もなくて、単にサボってるであろう周子はんの分を手伝いにわざわざ来てくれただけなんだけど。

 そんな紗枝ちゃんもミイラ取りがミイラになってしもうたわけですけどね。マ〇オカート is GOD はっきりわかんだね。

 

 

「それにしても、まさかここに男の人が来るなんてなぁ」

「どーせちひろさんに言いくるめられたんでしょ。それに、シューコちゃんみたいな可愛いアイドルとひとつ屋根の下で暮らすチャンスをみすみす逃す人もいないしね〜」

 

 

 言われてみれば、それもそう。

 けど俺はクラスにいるドルオタみたいにアイドルのことを知っている訳では無い。それこそ知っている人といえば、凛とリーゼントのギターの人と李衣菜と高垣楓と輿水幸子くらいだ。

 あとはテレビで見かけたことはあれど、ガッツリ名前は覚えちゃいない。李衣菜もそのタイプだったしな。

 

 

「まぁ、今日直接会うまで周子さんの顔も名前も知らんかったですけどね」

「勿体ないことしてんね〜。もっとテレビ見いや」

「YouTubeしか見ないしなぁ」

「YouTubeにも転載動画あるやろ」

「アイドルにそんな興味ないんで」

 

 

 実際、アイドルには興味の欠片もない。というか某A〇Bのとかジャ〇ーズのおかげで昨今のアイドルという文化に自体あんまりいいイメージがなかった

 なんなら、どーせ口パク集団なんちゃうの? 音楽番組で枠取りまくりやがって、他のを見たいんじゃって思うまであった。真実は如何程かはわからんが。

 

 

「ほな、なんで光さんはここに来なさったん?」

「それらは俺が聞きたいなぁ()」

「女の子嫌いなん?」

「まさか」

「変態やな。こわーい」

「おかしい、こんなことは許されない」

 

 

 極論は酷い。それで何度凛にやられたことか。

 ていうか、今のところ馴染めているのが怖い。向こうがあわせてくれてるんだろうけど。なんなら最初っから俺がここに来るってわかってたような……ん? 

 

 

「二人とも、俺がここに来るの知ってたん?」

「お話は先週からぷろでゅーさーはんに聞かされてましたから」

「私もー。てか、部屋が近い人はみんな知ってるんじゃないかな?」

 

 

 ほーん。なんかの条件が当てはまる人にだけ、早い段階でそういうのが来るかもねって話をしてたんだろうか。それなら前川が俺が女子寮に入るって話の時にあのリアクションをしたのも納得が行く。いや全員に話しとけよって話なんだけど。

 

 

「あれ? でも俺がこの話を聞いたのは今日……」

「そういや光はん、晩ご飯はどうする予定なんどすか?」

「抜こうかなと」

 

 

 だって冷蔵庫にはなんもなかったし。買い出し行こうにも明日まで金もないし。食堂に行く勇気なんてさらさらないし。

 2日くらい飯を抜いても平気だろう。うん、死にゃしねぇよ。大人しく寝てりゃ充分持つ。

 

 

「食堂行けばええやん。お金かからんで?」

「いやいやいや、無理よ。そもそも俺がここにいるって知ってるのは部屋が近い人だけでしょ? ただでさえアウェーなのになんで男の人がいるの……的な目で見られるとか死ねる」

「そうなん? みんな気にしんと思うよ?」

「そんなことは無いから安心してな。てか周子さんと紗枝はんって部屋どこなん?」

「シューコちゃんはここの隣」

「うちはその隣どすえ」

「近っ」

 

 

 道理でねぇ。周子さんプロコン取りに行って速攻で帰ってこれた理由がわかったわ。てことは、俺がここに来るって話をされた人は、ここの部屋に近い人なんだろうか。うーん、わかんね。

 てかこの人が隣人かぁ……なんか心配だなぁ……(失礼)

 

 

「でも晩御飯を食べないのは体に悪いしなぁ……響子はんに頼んでなんか作ってもらいましょか?」

「んー、その子に面倒かけるのも悪いし。大丈夫、俺男だから丈夫だし。知らんけど」

「そんなこと言ってもあたしお腹空いたーん!」

「それは知らんがな。食堂行ってきなさいよ」

「みんなで食べなさみしいやーん?」

 

 

 そんなこと言われたってなぁ……冷蔵庫に何も無いんじゃあなぁ……。

 

 

「ほんなら、ここで作ればええんやないか? うちも多少なら料理できるし、そこの周子はんやって、和菓子店の看板娘はんなんやで?」

「マジかよ」

「まぁ、店で試食品食べてサボってただけなんだけどね」

「いいのかそれで」

 

 

 なんかすっげぇ想像つくわ。それに看板娘ってのも。

 正直周子さんって超がつくほどの美人だし、店はさぞかし儲かったんだろうなぁと簡単に想像がつくな。

 

 

「でもあいにく冷蔵庫が空なのよ……」

「食堂から持ってこればいいじゃん」

「えっ、そんなことできるの」

 

 

 意外な突破口が開かれる。てかここの食材勝手に使っても大丈夫なんだろうか。自由が過ぎないですかね……

 

 

「まぁまぁ、ここは寮のセンパイに任せておきなって。何が欲しいだけ教えてくれたら持ってきて見せよう」

「おぉ、頼もしや。じゃあ俺が料理は作るよ、全部やってもらうの嫌だし」

「嫌って……光くん料理できるの?」

「こんなんでも一応料理好きなんですよ」

「ほんなら、美味しい晩御飯。期待してますえ〜」

 

 

 なんかやけにプレッシャーかけられた気がするんだけど。

 まぁいいだろう。これでも料理の腕にはそこそこ自信があるんだ。京のはんなり娘と適当姉さんを唸らせてやろうじゃないの。




サブタイトルですが、某番組のパロディでございます。弄ったら語感が悪くなっちゃった()

そんな訳でお気に入りも900突破、総評も1000になりました。
わしは昔から評価と感想をあとがきでオネダリする乞食スタイルなので、皆さん良ければぜひお願いします!


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オカンの味、カレーか肉じゃが説

何がとは言いませんがクックパットで調べました。自己流のやり方でええかなとは思ったんですけど、間違えてたら主婦の方々から焼肉にされかねませんのでね。
この世でいちばん怖いのは主婦とGだと思います。


 

 圧力鍋の圧を抜いて鍋の蓋を開くと、湯気の奥にたくさんの具材が見える。煮汁の色に軽く染まったじゃがいもに箸を通してみると、箸は簡単にじゃがいもを貫く。

 うむ、柔らかい。やはり圧力鍋は正義か。

 

 

「出来た」

「待ってましたー!」

「もうできはったんかいな……」

「圧力鍋は正義なのだよ」

 

 

 豆腐と油揚げの入った赤だしのお味噌汁を器に取り分けて、紗枝ちゃんに手渡す。

 それにしてもここが二口コンロで地味に助かった。やっぱり料理をする上で、同時進行は基本だからな。

 

 材料を取りに行って貰う前に、二人に何が食べたいと聞いたんよ。

 そしたら和食がいいって二人揃って言うもんだから、短時間で簡単な和食……うーん、肉じゃが!w という安直な考えの元、今日の晩飯は肉じゃがとお味噌汁にした。圧力鍋さえあれば時短なんか簡単に出来るからな。

 

 肉と人参とじゃがいもと玉ねぎを切って鍋にぶち込んで炒める。後は醤油やら砂糖やらみりんやらで作った煮汁を入れてちょちょいのちょいよ。

 お味噌汁に関しても今はだしパックという時代の中で生まれた超便利な代物があるからな。

 

 最低限の調味料しかないからTheって感じの味になったわ。まま、人に出すものならこれがちょうどいいだろう。

 白いご飯に関しては周子はんがにこにこ顔でぱくってきてた。何から何まで厨房から持ってきてたけど、大丈夫なんだろうか。後で俺が怒られたりしないよな?

 

 

 

「はよ食べよー。もうお腹ペコペコやわー」

「周子はんも自分の分運んでや」

「はーい」

 

 

 これもうどっちが年上なのかわかんねぇな。

 それにしても備え付けの机。3人で使うにはせめぇと思ったけど。案外そんなことはなさげだな。

 あと、紗枝ちゃんが着物だからってのもあるかもしれないけど。3人で肉じゃがを囲んでご飯を食べる準備をしてると、なんか昭和の家族って感じがする。床は畳じゃなくてフローリングだし、みんなそこに直で座ってるけど。

 

 てか普通にこの部屋も広いし備え付きのベッドも机もテレビもデカくていいやつなんだよな。めちゃくちゃ金かけてくれてる。正直超助かるし超快適そう。まだここで寝たことすらないけど。

 

 大きな皿にごそっとよそわれた肉じゃがを机のど真ん中に置く。安定のメインのおかずはセルフだから自分の分は自分でとってねってやつだ。取り分けるのめんどいし、みんな学生だからこんなんでいいのだ。ほら、周子さんも実質学生みたいなところあるし。

 

 

「ほな、いただきます」

「「いただきまーす!」」

「肉じゃがもーらい!」

 

 

 ん〜、とうなりながらパクパクと口の中に肉じゃがとご飯を持って行く周子はんよ。いい食べっぷりだ。これだけ美味しそうに食べてくれたら、こっちも作ったがあるってもんよ。全然作ったのに時間かかってないんだけど。

 それに対して紗枝ちゃんの方はなんというかまぁ、お行儀が良い食べ方をしている。正座だし、背筋ピーンってしてるし、育ちがいいってレベルじゃないぞこれ。もはや大和撫子魂を薄めずにそのままぶち込まれたみたいになってる。

 

 てか周子さん肉ばっかとるやん。食べ盛りの男子中学生かよ。じゃがいもだって玉ねぎさだって味染みてて美味いんだから食いなさいよ。

 

 

「京都の女の人ってみんなこんなおしとやかな感じなんかな」

「紗枝ちゃんはよくできた子だからねー」

「周子はんも、これでもええところあるんどすえ?」

 

 

 それはわかるよ。

 暇つぶしでここにきてくれたとはいえ、なんだかんだ材料とか持ってきてくれたし。全て自分の為だしと言われればそれまでかもしれないけど。なんだかんだ面倒見のいいお姉さん感はあるよね。

 何しろ顔がいいから何やってもよさそう(ド偏見)

 

 

「あれ? 周子さんって出身どこなの?」

「あたしは京都。紗枝ちゃんと一緒だよー」

「マジか」

「紗枝ちゃん並みにコテコテの京美人なんて絶滅危惧種だって」

 

 

 言われてみれば、紗枝ちゃんみたいなこれぞ京都の女の人ってのを絵に書いたような人はもう見ないしな。これぞ関西のおばちゃん!っていうようなおばちゃんは中学の時に大阪で見たけど。

 マジで実在するんだよな。トラ柄の服を着て、髪の毛は少しパンチパーマみたいになってて、コテコテの関西弁で声がデカくて、それでいてめちゃくちゃ面倒見のいいおもろいおばちゃん。飴もらったわ。

 

 

「そういや紗枝ちゃんがあまりにも完璧な京の人すぎて気がつかなかったけど、周子さんもちょくちょく関西弁出てた気がするわ」

「意図的に使ってないわけではないんだけど、どうしてもたまにぽろっと出てきちゃうよね。特にこの子といる時は」

「別に悪いことやありまへんえ〜」

「そうですよ。方言女子って可愛いじゃないすか」

「もしかして口説いてる?」

「だとしたらファンやらに殺されますよ」

 

 

 俺はここでは絶対に恋愛しないって決めてるんだ。

 まぁ、俺に限って一目惚れなんてことは絶対にないだろうし大丈夫だろうけどな。今まで16年間生きてきて一度も一目惚れをしたことがなかった俺を舐めるんじゃねぇ。

 

 女の子を見て可愛いとは思えど、小さい頃から美少女の凛を見ているおかげで女の人に一目惚れをするということがないんだよね。

 凛、マジで顔は最強クラスだからな。なんなら俺は中学の時点でなんでこいつはスカウトとかされないんだとずっと不審に思ってたから。こいつ顔は完璧なのに世間のスカウトは一体何を見ているんだ、節穴なのかと思ってたから。

 

 

「こんな可愛いアイドルを目の前にして口説かないとか、光くんには愛しの彼女でもいるの?」

「残念ながら彼女いない歴=年齢ですよ」

「光はん、いけめんやと思うのに意外やなぁ」

「彼女欲しくないの?」

「いやー、付き合ったとしても女性のこととかよくわかんないですしね〜」

 

 

 デートとかまじで何をすればいいのかわかんないしな。

 ほんとにどこ行けばいいの?千葉のネズミの国にでも行けばいいの? 普段滅多に行かないからわかんないけど、あそこってめちゃくちゃ入場料とか高いんじゃないの? 普通に他の遊園地でいいの? 動物園とか水族館とか? ぼくわかんない。

 

 

「ええ感じの人もおらへんの?」

「いい感じって……女友達は何人かいますけどね」

「それじゃあダメそうだね」

「ダメそうってなんすか、ダメそうって」

「女友達として見ている時点でその先は無いのだよ、少年」

 

 

 そういうものなのか。でも凛の事は友達的なよくわからん概念として見てるもんな。そう思うと納得がいくかもしれん。

 

 

「女の子って難しいんですね」

「そんなもんどすえ〜」

「というか周子さん。肉がもうほとんどない気がするんですけど」

「気のせいじゃない?」

「気のせいじゃないんだよなぁ……」

 

 

 いつのまにか二杯目の白米に手をつけながら知らん顔している周子さんをジト目で睨みつける。が、当の本人は知らん顔だ。というかそんなに白米持ってきて誰が食うんだと思ったけどあなたが食うんですね。そんなに食ってるのになんでそんなにスタイルがいいのだろうか。

 やはり女の子は不思議な生き物なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでしたー!」」

「ほな、後片付けはうちがするもんで、光はんはゆっくりしてな」

「あっ、どーもどーも」

 

 

 腰を上げて台所に向かう姿を見ると、昔の日本の男はこういう景色を見てたんだろうなぁと思うね。着物っていいものだわ。

 

 

「……それで、周子さんはなにしてるのかな?」

「ん〜? 何って、ス○ブラの準備だけど」

「まだやる気なんですか」

「当たり前でしょ」

 

 

 周子さん、さっきからゲームしては飯食ってすぐゲームって……ニートかな? アイドルとはいえ、やっぱりただの女の子なんやなって……

 

 飯食ったし、運動がてら荷出しをしようと思ったんだけど……まぁいいか。とりあえず寝る前に抱き枕とクッションさえ出せればおれはそれでかまわんし。

 昔みたいに凛がベッドに転がり込んできて寝ることももう無くなったし、抱き枕とクッションに囲まれてないと寝るとき不安になるんだよ。ギバラの部屋みたいにしたいんだよ。メンヘラ女の部屋みたいになれば完璧なんだよ。

 

 

「周子はん、あんまり遊んでばかりやとあきまへんえ」

「えー、いいじゃないの別に〜」

「光はんも今日きたばっかで大変なんやから。そもそもうちらは手伝いに来たんどすえ?」

「そういえばそうだったね」

「忘れてたんかい」

 

 

 いや、忘れているっぽいよなーとは思ってたけど。多分遊ぶしかなかったんだろうけど。

 それでいいのか、アイドル塩見周子。俺は周子さんがどんだけテレビに出ててどんなキャラで通してるのかは知らんけど。これを見たファンは泣かないかね。

 

 

「て言ってもさ。あとは何が残ってるの?」

「何がって?」

「そりゃあ荷物よ。自分で持ってきてたんでしょ?」

「いや、親が全部ぶち込んだんで。なんなら俺まだ家に帰ってないですし」

「そんなことあるんだ……」

「俺もいまだに信じられないんだけどね」

 

 

 周子さん、あなたがそんな人を哀れむような目で見ないでくれ。能天気でいてくれた方が助かるんだ。じゃないと俺が悲しくなる。

 それにしても、考えれば考えるほどおかしいなこの状況。絶対にどっかに高い点あったはずだろ。一週間の仮入寮で妥協した俺がバカなんだけど。

 

 いや、待てよ? 俺が仮入寮するって決まったのは今日のしかも昼だよな? なんでそのあとすぐに荷物が届いたんだ? いつから親とちひろさんは準備してたんだ?

 あれ? ……あれぇ???

 

 

「それじゃあ紗枝ちゃんも言うことだし。パパッとしちゃいますか〜」

「えっ、本当にやってくれるんすか」

「元々そのために来たんどすえ?」

「そーそー。一応センパイとして、後輩くんの面倒はしっかり見ないとねー」

 

 

 ヤバい、軽く泣きそうなんだけど。俺は今、全力で人の温かみを感じてるよ。

 急に女子寮に押しかけてた意味のわからない赤の他人の男子高校生の荷出しを手伝ってくれるだなんて、冗談抜きで天使か? 天使なのか?

 

 このあとめちゃくちゃなんのイベントもなく、荷物全部一時間くらいで出し終えた。ちなみに、荷物の中身は食器やら服やら抱き枕やら大量のぬいぐるみやら時計やらPS4やらその他諸々でした。なんの面白味もないね。

 

 ごめん。俺のパンツを周子さんと紗枝ちゃんに見られるってイベントがあったわ。周子さんは全く反応しないで『これ、何処に入れとく?』って聞いてたけど、紗枝ちゃんの方は普通に恥ずかしがってた。

 ごめん、紗枝ちゃん。お目汚ししました。俺はファンに殺されるかもしれん(n回目)




お気に入り1000件越えました! ありがとうございます!
沢山の感想と評価も頂いております! これからもよろしくお願いします!


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二次元の幼馴染は最強にして最強

デレマス小説を書くならこういう凛を描きたいと1億年と2000年前くらいから思ってたかもしれないです。


 

 荷出しも終えて風呂入るついでに帰っていった京都コンビを玄関から見送った俺は、一日の疲れを癒すべく湯船に浸かっていた。というか、浸かっていました。

 

 

「はぁー……いいお湯でしたぁ……」

 

 

 最初にパッと見た時はトイレと風呂のくっついたホテルとかでよく見る風呂=あんまりくつろぎはできないかと思ってたけど、実際入ってみたら全然そんなことは無かったな。なんならそこそこデカかったし。

 

 ちなみに俺は自他共に認める裸族である。今ももちろんスッポンポンだ。控えおろう。マサイ族のお通りやぞ。

 風呂に入った後って体が火照って暑いじゃない? だから素っ裸で何にも囚われずに一時間くらいそのまま過ごすのって案外理にかなってると僕は思うんだよね。

 え? 変態? 馬鹿言え、俺は人に裸を見せる趣味はない。裸になるのが好きなだけだわ。

 

 

 コンコンッ

 

「ちょっとお待ちくださいねー」

 

 

 あっ、やべっ。パンツ履いてねーわ。

 

 さっき周子さんになんの感情もなくしまわれたパンツを引っ張り出してそもままズボッと履く。上の服も着たほうがいいよな。ズボンは……まぁ、念のため着ておくか。

 

 このドア、覗き穴とかがなにもないんだよな。木製のお洒落なドアだからそりゃあそうといえばそうなんだけど。

 それに女子寮の中に不審者が入るなんて滅多にないしな。どちらかと云えば俺が不審者ポジだし。

 

 にしてもこんな時間にお客様とは誰だろうか。しかも俺の部屋になんて。

 周子さんか紗枝ちゃんか? それ以外の女子寮の女の子だとヤバいんだけど。俺のメンタル的に。

 

 

「お待たせしましたー」

「遅い」

「お前かいな」

 

 

 ドアを開けた先にいたのは、黒髪長髪に青い瞳。親の顔よりは見ていないけどそれなりに見まくった顔。

 みんなご存知かもしれないし、そうじゃないかもしれないシンデレラプロジェクトの狂犬こと渋谷凛さん。二つ名みたいなのは今俺が勝手につけたんだけど。

 

 

「なに、不満?」

「んにゃ。なんなら安心した」

「ふーん、てか服着てるんだ」

 

 

 さっきまで不満そうな顔してたのにすーぐ雰囲気柔らかくするんだから。そのまま表情も変えりゃええのに。笑うと可愛いんだから。

 まぁ出た相手が凛で安心したのは事実だよ。他の知らない女の子が出てたらパニクってドアをそのまんま閉めたまであったから。

 

 

「……とりあえず入る?」

「……ん」

 

 

 入るか否かを聞くと、コクンと小さく顔を縦に動かす。

 お前コミュ障じゃないんだからさ、もうちょいなんかないのかと思う。言わないけどね。信頼してるってことかもしれないし。俺がそう思いこんでるだけだけど。

 

 部屋に上げさせると、そのまんまズケズケと奥まで進んで行きなさる。

 いや、別に構わんが。気になるんだったらそう言えよ。

 

 

「ふーん、思ったより片付いてるじゃん」

「周子さんと紗枝ちゃんに手伝ってもらったからね」

「……浮気」

「付き合ってもねぇのに浮気もなにもねぇだろうが」

 

 

 冗談、と言いながらナチュラルにベッドに腰掛けてテレビをつけ始める。入力切替をして地上波の番組に切り替えると、ちょうどそこにはアイドルらしき女の子たちが映っていた。

 

 凛がポンポンとベッドを叩くのでそこに座る。するとこっちに体重をかけながら頭を肩に寄せてくる。相変わらず軽い体しやがって。栄養とれよ。

 

 

「この人たちって、ここの人?」

「うん。光はアイドルについて知らなさすぎだし、ここのアイドルくらい誰がいるか勉強しなよ」

 

 

 ちゃんとした正論なのが腹立つ、原○徳。

 まぁ、実際俺はアイドルに関する知識があまりにも皆無すぎるからなぁ。これからは仕事仲間と言うよりも、多分上司やクライアントに感覚は近くなるだろうから、余計に知っておかなくてはいけないわ。

 

 そう思うとシンデレラプロジェクトって言う新人中心の事業に絡ませてもらえるって幸せなのかもな。程よい緊張感だし、そう思うと最初は無茶振りだと思っていたのも少しずつ納得がいく。

 

 

「あれ? 凛は周子さんと紗枝ちゃんのこと知ってたの?」

「名前と顔は」

「知り合いじゃねぇじゃねぇか」

 

 

 顔知ってるだけやんけ! とは言ったものの、346プロってめちゃくちゃアイドルいるらしいし、それも仕方ない気がする。なんなら顔と名前が一致させてるだけこいつ有能なのでは……? そういや凛が赤点取ったとか全然聞いたことねぇぞ?

 満点取ったとかも聞いたことはないから、多分こいつが普段俺と会話をほとんどしないだけなんだろうけど。

 

 

「ほら、今映ってるピンク髪の人が城ヶ崎美嘉。金髪の人は……大槻唯だったかな」

「またすごい髪色。似合ってんな」

 

 

 テレビで曲を披露しているピンク髪でツインテール、スタイル抜群、そのメイクからはいかにもギャルというような雰囲気を感じさせている人が城ヶ崎美嘉と言うらしい。

 そして一緒に映っている金髪でこれまた笑顔がとっても似合う女の子。この子が大槻唯と言うらしい。

 

 うっわー、ギャル系のアイドル二人って事で呼んだんだろうけど、レベルが高すぎる。普通ギャルメイクって俺苦手なんだけど、なんかスッと入ってくる。おそらく元の顔がいいんだろうな。

 あと胸が大きい。とても大きい。お隣の方と比べると一目瞭然なレベルで大きい。

 

 

「痛ったい! なにすんねん!」

「私だって、あれくらいあるから」

「無理すんなって。わかった、そうだな、そうかもしれないな」

 

 

 この子こっわい。ノーモーションで殴りかかってくるやん。

 別に凛だって全然あるし。今映ってるこの二人が規格外なだけでね。凛くらいの大きさが好きな人も多いと思うよ、うん。まぁ僕は大きいに越したことないと思いますけど。

 

 

「ジロジロ見すぎ」

「テレビだから見るに決まってるだろ」

「キモイ」

「妬いてんのか?」

 

 

 冗談半分でそんなことを言うと、凛は無言で頭をグリグリ肩に押し付けてくる。毎回こんな感じだから、結局何が言いたいのかわかんないねんな。頭グリグリも全然痛くないし、なんなら頭を擦りつけてるせいでシャンプーかなんかのいい匂いがするからご褒美まである。

 

 

「膝」

「どーぞ」

「ん」

 

 

 そのうち頭の位置が肩から膝にまで落ちてくる。そして次は顔を俺の腹に埋めて背中に両手を回して抱きつく。疲れてる時はそのまま寝る。

 これ、昔からの毎回のパターンね。今さら息子がこれに反応することも無いし、した記憶もない。そういう雰囲気じゃないからね。

 

 膝に乗っかる凛の黒髪を弄りながら頭を撫でる。バレないように少し覗き込んでみると、撫でられてる当の本人は完全にリラックスした表情だ。

 気分は居間であぐらかいてくる所に乗っかってきた猫を撫でてるアレ。正直めちゃくちゃ触り心地がいい。サラッサラだもんこいつの髪質。

 そういや最後にこれやったのも直接話したのも3日前くらいか。最近やってなかったんだなぁ、と。

 

 

「ひかる」

「寝るなよ?」

「泊まる」

「ダメ、ここ寮だし」

「……や」

「風呂はどうするんだよ。まだ入ってないだろ?」

「……汗臭かった?」

「全然。でもお前は気にするだろ」

 

 

 嫌って言っても、ここ寮だぞ。女子寮に入ったばっかの男がアイドルを部屋に泊まらせたなんて話になれば大アウトだ。

 

 俺の実家の時ならだいたい風呂に入ってから俺の部屋に来てたからそのまんま寝かせてたけど。ここではそうはいかない。帰ってもらうぞ。

 

 

「ダメなもんはダメ。どーせ、ちゃんと迎えもあるだろ?」

「……8時になったらプロデューサーが送ってくれる」

「じゃあ、それまでなら寝てていいぞ」

「泊まる……」

「ダメだってば」

 

 

 時刻は7時を少し過ぎたところ。こいつ最初からゆっくり居座る気だったな? まぁいいけど。

 

 それにしてもだ、なんか今日はこいつやけに食い下がるな。嫌なことでもあったのか。いつもなら普通に帰って行くのに。

 

 

「どうしたんだ? なんかあったか」

「……なにも」

「嘘こけ」

 

 

 背中に回されてる手に少しだけ力が入ったのがわかる。

 そら見たことか。図星じゃねぇか。

 

 

「……しい」

「は?」

「さみ、しい……」

 

 

 顔を埋めたまま捻り出された細い言葉に、思わず目を丸くする。

 こいつの口からこんな言葉が出てくるなんて、正直思いもしなかった。

 

 

「寂しいも何も、俺はここにいんだから」

「……すぐ会いに行けない」

「お前も高校生だから大丈夫だって」

 

 

 物心ついた時からこいつはこんな感じだ。四六時中俺と一緒、ずっと一緒。

 小学生になったくらいから人前ではやらなくなったけど、二人きりの時は相も変わらずこんな感じだ。まぁ、かく言う俺も距離感が分からないから二人っきりでいる時は昔と同じ感じで接してるんだけど。

 

 だからどちらかと言うと、俺からしたら凛は幼馴染ってよりも妹って言った方が近いのかもしれんな。厳密に言えばそれも違うんだけど。

 

 てかこいつ相当眠たいな? 素面だと絶対に言わないセリフだぞ?

 

 

「……疲れてるだろ。もう寝ろ」

「……うん」

 

 

 顎の方に手を入れて撫でてやろうとすると、凛が俺の手に顔をスり寄せてくる。

 毎回思うけどほんとに犬みたいだな。可愛い。こういうふにゃふにゃな凛を見ることが出来るのも俺だけの特権かと思うと、少し嬉しい気がする。昔からずっとこれだから特権なのかもわかんないけどな。

 

 

「おやすみ、凛」

 

 

 そのうち背中にまわされてた手がストンと下に落ちる。落ちたな(確信)

 凛を起こさないように移動してそのまんまベッドに横たわらせる。もう昔みたいには二人でベッドには入れないもんな。大きさ的に。

 

 

「……ベース弾こ」

 

 

 この凛が寝た後の時間が一番暇だったりする。そしてだいたいこの時間はアンプも繋げずにベースがアコギをしてたりする。

 あんまり大きい音出すと起こしちゃうからね。仕方ないね。

 

 この後、爆睡した凛をおんぶして部屋から出る所を偶然出てきた周子さんに見られて大変な目にあった。

 周子さんってあんなにキラキラした目も出来るんだな。




お気に入り1500ありがとうございます!
あとどうでもいいんですけど誰かのおねがいマッスルのせいで勝俣州和半ズボンが頭から離れません助けてください


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早朝と夕暮と深夜は厨二病の餌

昨日何故かめちゃくちゃこの小説がバズっててビックリしました。
ビックリして日間確認した時には影もありませんでしたが、日間に乗ってたんでしょうかね? 見逃したとしたら泣く


 

 

「……いや、すっげぇ時間」

 

 

 スマホのホーム画面には5:42の数字。とんでもない時間に起きてしまった。

 

 凛を送って行ってすぐに寝たから、意識が飛んだのは何時頃だっただろうか。22時前には多分寝ている。

 高校生とは思えない生活リズムの良さだ。普段寝ない時間に寝たせいでこんな時間に起きることになってるんだろうから、生活リズムはむしろ悪いんだけど。あとはいつもと違うベッドってのもあるかもしれない。

 

 人間って絶対にいつも寝ている睡眠時間を取ると勝手に起きるようになるよね。俺の場合、普段は24時に寝て7時に起きる生活をしているから、約7時間ほど寝ると勝手に目が覚める。

 

 

「二度寝はもう無理かなぁ……」

 

 

 意識を戻してから10分程ゴロゴロしてても寝付けない時は、諦めて行動開始をして眠くなった時にまた昼寝をする。これがニートである俺の心情だ。いや、ガチニートではないんだけど。

 

 こんな早朝に起きてやること。これはみんな同じだろう。

 半分寝ている体を叩き起して水分を補給する。寝巻きのままジャケットを羽織って、ギターケースを背負う。イヤホンとスマホも忘れずに。

 

 

「中庭ってこっちだよな」

 

 

 靴を履き替えて玄関を抜け出す。門限とか聞かされてないし、朝だし別にいいよな。

 

 昨日見た噴水を頼りに適当に敷地内を歩き回る。確か本社の近くあたりにあったような……

 

 

「あった」

 

 

 噴水が目印の中庭。千川さん曰く、346プロのアイドルの人達はここでよくピクニックをしたりしているそうだ。

 周りを見渡しても人はいない。まぁ、こんな時間に起きてる人の方が珍しいよな。

 

 噴水から少し離れたベンチに腰掛けて、ギターケースを開ける。

 長い弦がネックの先から髭のようにだらしなく伸びたままのアコースティックギター。凛からはダサいから切ってと言われるが、使い込んでる感あるやんと言い訳をして切らないままだ。だっていちいち切るのめんどくさいし。どうせそのうち弦も変えるし。

 

 まだ陽の登りきっていない広場に軽いギターの音が零れる。

 毎回チューニングが面倒だとはわかっていても、使ったあとはしっかり弦を緩めてしまう。ネックが曲がるのだけは勘弁して欲しいとはいえ、やっぱり面倒だよなぁ。

 

 

「──────」

 

 

 ギターをチューニングしながら声も見る。

 時たま朝早く起きてしまった日は、チャリを走らせて近くの河川敷でギター弾いて歌う。家に帰ればちょうどいい疲労感でまた寝ることの出来る。朝、不本意に早起きした時だけの俺のルーティンだ。

 それがしたいが為だけに二度寝できそうでも無理やり起きてチャリを走らせる時もあるんだけど。

 

 声は上々。寝起きだし1曲歌えば普通に戻るだろう。ちなみに俺は歌はそこそこ上手いというか、音域が広いという自負はある。

 どちらかと言うと昔は歌を歌うことの方が好きだったからな。今では弾くのも歌うのも好きになってるけど。

 

 空いた右側にスマホを置いて、いつでも見れるようにTAB譜を開いたまま、画面を付けておく。

 足を組んで、ギターを鳴らす。

 

 

『本当のことを言えば毎日は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長いアウトロを体に染み込ませながら、ピックを置く。

 うーん、声が若干枯れてて悲しかった。まぁ喉のケアとか一切しない人間だし妥当なんだけど。俺はプロじゃないしね。

 

 

「見ない顔だね」

「……ん?」

 

 

 少し落ち着いた声。まさかショタか?

 こんな時間に危ないだろう小さい男の子が……違ったわ。いや、見た目はちょっとショタっぽいわ。

 

 

「……少年?」

「初対面の女性に対して失礼なことを言うもんだね」

 

 

 顔を上げたらレディがいました。

 少し茶髪っぽいオレンジの短髪と後ろからはピンクの髪の毛が伸びている。すっげぇ髪型だな。部位によって染め分けてるのか? 東○オンエアのて○やかよ。

 ジャ○ーズJrかと思うくらい美形でかっこよかったから男の子かと思ったんだけど。見当違いだったわ。

 

 

「……そいで、どちら様で?」

「キミとボクが誰だろうか。今はどうでもいいじゃないか」

 

 

 なんか自己紹介拒否されたんだけど。僕この子が考えてることがわかんなくて怖いんだけど。

 どうすりゃいいの? こっからの流れ。人前で歌を歌うの自体は恥ずかしくないけど、流石に初対面の名前も知らない人の前でやる勇気は俺にはないよ?

 

 無言の時間が続く。あちらも様子を伺ってるのだろうか。めちゃくちゃに空気が重たい。ギガグラビティされてるみたいに重い。なんなら気まずいんだけど。

 

 

「……ボクはアスカ、二宮飛鳥」

「いや名乗るんかい」

 

 

 お前絶対気まずい空気耐えきれなくなっただけだろ。やっぱり何にも考えてなかったやん。

 思わず声に出してツッコんじゃったじゃないの。僕ってそういうキャラでもないのに。寒い寒い寒い!

 

 

「ボクはキミのことを知らないけど。キミはボクのことを知っているのかい?」

「ごめん。アイドルに関する知識が無いもんで」

「気にすることじゃ無い。真っ白なキャンパスに色をつけていくのと同じことだよ。寧ろ、今しかできない素敵なことじゃ無いか」

 

 

 さっきから思ってたけど、この子ちょっと言い回しがアレだな。厨二病っぽいな。

 というかこれ厨二病じゃ無いか? よくよく格好を見てみたらなんかすっごいテンプレみたいな厨二病患者の格好してるし。

 

 

「あぁ、今キミはこう思っただろう。『こいつは痛いヤツだ』ってね」

「その通りだよなんでわかるんだよ」

「でも思春期の14歳なんてそんなものだよ」

「ただの厨二病じゃねぇか」

 

 

 年齢的にもドストライクじゃねぇか。なんなら14歳とか普通に現役中学二年生まであるじゃねぇか。マジのリアル厨二病じゃねぇか。

 あまりにも役満すぎてびっくりしたわ。

 

 

「いわゆる中二なんで、ね」

「自覚はあるんだな」

「心の底から理想の役に演じきれて無いだけさ」

「キャラなん?」

「どうだろうね」

 

 

 ウィンクしながら小悪魔的な笑みを向けられる。可愛いかよ。どーせアイドルなんだろうな、二宮も。

 芸能界って怖いんだな。こんなにキャラの濃い子がたくさんいないと生きていけないんだろうか。毎回思うけど、こんなキャラの女の子たちが日常生活に紛れ込んでたらと思うと普通に怖いよな。やっぱスカウトってすげーわ。

 

 てか厨二病に関してはこれ多分元からだな。一人漫才猫娘みたいなキャラ作りとは違うガチ天然もんだ。というか、マジで語尾ににゃんにゃんつけてる女の子がいたら普通に病院を勧めたくなるんだけどね。

 そういや俺ってまだあの一人漫才猫娘の名前知らねぇなよな? 昨日凛にでも聞いておけばよかった。嫉妬するかな。ねぇか。ねぇな、それだけは。

 

 

「その髪型も演じる為のなんかだったり?」

「これはただのエクステだよ」

「エクステかよ」

「そしてただのオシャレだよ」

「ただの厨二病患者のセンスじゃねぇか」

 

 

 俺、わかった。こいつあれだ、シュール芸の使い手だ。真顔でどんどんマシンガンみたいにボケてきやがる。こいつ絶対バラエティ適正あるだろ。

 

 

「まぁ本当はささやかな抵抗だよ」

「社会に対して?」

「そんなところかな」

 

 

 なるほど、二宮は社会や大人に対しては向かう系厨二病なのか。

 厨二病には二宮みたいなタイプの厨二病と、ただ単にセンスとか厨二病を心の底から患っている痛い系純粋厨二病患者がいるからな。

 

 

「そもそも二宮はなんでここにいるんだよ。未成年の女の子がこんな時間に出歩いちゃ危ないざますよ」

「危ないも何も、キミもボクと同じ大人になれない子供だろう?」

「よく俺が未成年だってわかったな」

「俗に言う勘ってやつさ」

「たまたまじゃねぇか」

 

 

 すげぇボケるな本当に。と言うかよく俺解読できてるな。いや、よく良く考えたら言い方が回りくどいだけだから、普通に二宮の言語を貫通させて真っ直ぐにして解読してるだけだわ。誰でもできるわ。

 

 

「それよりだ。ボクのことはアスカでいいよ。苗字呼びはやめてくれ」

「なんで?」

「みんなにはボクとして見て欲しいからね」

「飛鳥ちゃんか飛鳥くんどっちが良い?」

「呼び捨てにしてくれ」

 

 

 よし、とりあえず一矢報いた。

 これだな、飛鳥と相対するときはとにかくカウンターだな。飛鳥は喋り方が独特すぎるからあっちにペース持っていかれがちになるからな。隙を見せたら速攻右ストレートぶち込んで行こう。

 

 

「少し早起きしてしまってね。たまには朝日を浴びるのも悪く無いとここに来ただけさ」

「案外普通の理由なんだね。ルーティンとかだと思ってた」

「早起きは得意じゃ無いんだよ」

「子供か」

「早起きが得意な子供もいるだろう」

 

 

 そう言う問題じゃ無いんだけどね。キミのことなんだけどね。

 というかもっと厨二病っぽい理由で朝早く起きてここにきてるのかと思った。ただの早起きかい。

 

 気がつけば先ほどよりも随分明るくなってきている。ちょうどいい時間だよな、帰る準備するか。

 

「そういうキミはどうなんだい。さっきからボクに質問してばかりじゃ無いか」

「俺も早く起きちゃっただけだからここにいただけだよ」

「そんなものを持ってかい?」

「あぁ、まぁこれは……趣味だよ」

 

 

 肩にかけたギターケースに視線が送られる。そりゃあ目立つよな。

 

 なんて答えようか迷ったけど、朝早起きした時だけ発動するエセルーティンを1から10まで説明するのは面倒くさい。そんな訳で適当に間違っては無いように答える。

 実際趣味だし。アコギもベースも。

 

 

「随分上手かったじゃないか」

「いつから聞いてたの」

「ラスサビみたいなとこからあたりだよ。勝手に聞いてすまないね」

「んにゃ、別にいいけど」

 

 

 俺は人に歌を聞かれるのを恥ずかしいと思う人種じゃないからな。去年の軽音部ではうちの高校の全校生徒の前でめちゃくちゃ歌ったんだぞ。超気持ちよかった。俺ってそういう性癖持ちなのかもしれん。

 

 

「えっ、何。一緒に帰るの?」

「年頃の女の子を一人で帰らせるとは酷い男だな」

「でも寮はすぐそこやん」

「男は黙ってエスコートするものじゃないのかい?」

「じゃあ手でも取ったほうがいいのか?」

「初対面の女の子に対していう台詞じゃないってことだけ伝えておくよ」

「お前が話を振ったんやないか」

 

 

 ポッケに手を突っ込みながら俺の横をちょこんとついてくる。

 というか初対面の男に平気でホイホイついて行くのはどうかと思うけどな。危機管理よ、危機管理。

 周子さんといいなんでそんなにノーガードなの? それで手を出したらこそされるんでしょ? 助けて凛ちゃん。

 

 というか、適当に寮はすぐそこやんって振ったけど、しれっと飛鳥も寮生なんだな。否定しなかったし。

 あの寮って魔境かもしれんわ。一人漫才猫娘も確か寮生だったしな。

 

 

「そういや、俺って名前言ってたっけ」

「キミの名前がどうかなんて、そんなの些細な問題じゃないか」

「じゃあ言わなくていいや」

「聞かないとは言っていないだろう?」

「めんどくせえな、結局言ったほうがいいじゃないか」

 

 

 本当に回りくどいなこの子。結局最初のセリフ言いたかっただけだろ。俺にはわかるぞ。そういうセリフ言ってみたいもんな。

 

 

「松井光。高校二年生だよ」

「光、か。覚えておくよ」

「変な名前じゃないし覚えやすいだろ?」

「そうだね。いい名前だと思うよ」

 

 

 そりゃどーも、としか言えんわな。

 

 自分の名前に関して突っ込まれてもそれが当たり前だし。松井光って名前は生まれてからずっと使ってたし。

 てか名前がかっこいいって言ったら二宮飛鳥って名前も相当かっこいいだろ。なんだよ飛鳥って。かっこいい人間にしか似合わねぇ名前だろ。それでいて名前負けしないビジュアルだから困るわ。

 

 

「なんで俺がここにいるとかは突っ込まないの?」

「話は聞いていたからね。いつか会うとは思ってたけど、これも定めってヤツなんだろうね」

「たまたまだと思うよ」

「ロマンってやつじゃないか」

「女性の口からそんな言葉が出るとは思わなかった」

「ロマンチストは女性が多いだろう? それもまた、偏見だよ」

 

 

 普通に正論を言われてしまった。そうだよな、男でも女でもロマンを求めることは間違ってねぇよな。

 

 いつの間にか付いていた寮の玄関を通り、靴を履き替える。そのまま部屋に戻り……

 

 

「……飛鳥さん? いつまでついてくるの?」

「ボクの部屋はこっちなんだ。キミについて行ってる訳じゃない」

「もう部屋に着くんですけど」

「奇遇だね。ボクもだ」

 

 

 俺が自室の目の前に来て困った雰囲気を全開にしていると、飛鳥はそのまま進んで行く。

 どこまで一緒なんだよ、とりあえず部屋に入ったら二度寝しよう、なんて思っていると、飛鳥は俺の一つ奥の部屋の扉に鍵を入れてドアを開ける。

 

 

「……へ?」

「それじゃあね。お隣さん」

 

 

 そういうと、隣の部屋のドアはパタンと音を置いて行って閉まってしまう。

 

 なんなの? 俺の部屋の付近にはこんな強烈なキャラが集まるの? 隣は京都コンビでもう片方は厨二病とかまともな人間はいないの?

 これ以上考えてもなんだか死ぬ未来しか見えなくなってきた。もういいわ。寝よう、とりあえず至福の二度寝をしよう。




前回めちゃくちゃ感想が飛んできててビックリしました。やっぱり凛ちゃんは強いってはっきりわかんだね。
これからも気軽に感想置いていって頂けるとワシが喜びます!


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夢の国と謎の惑星のある千葉は魔境

今回のサブタイトル!我ながら酷い出来だと思いました。翔んで埼玉とかいう映画もありましたが、個人的には千葉の中に夢の国やらあるのもなかなか恐ろしいと思いますね。ひゃだ…怖いぃ…


 

 

 ダンダンダン! ダンダンダン! ダンダンダンダンダンd

 

 

「うるっせぇえええええええええ!!!!」

 

 

 なんなんだ朝っぱらから! ダンダンダンダンうるっせぇんだよ! こっちはまだ至福の二度寝Timeをすごしているでしょうがァ!? 

 虐めか? 新手の虐めか? 新人いびりか? 

 

 急に謎の激強ドア叩き音に叩き起されてこっちの眠気は完全に0だ。てか現在進行形でダンダンダンダン鳴ってる。この野郎、待ってろ直ぐにとっちめてやる。

 

 

「なんなんだ朝っぱらからァ!」

「起きてるんなら早く出るにゃ!」

「ほら合ってたー」

「てめぇか一人漫才娘ェ!」

「みくには前川みくっていうちゃんとした名前があるにゃー!」

「じゃあ前川ァ! なんなんだ朝っぱらからァ!」

 

 

 勢い良くドアをぶちあけると、目の前にいきなりブチギレモードの一人漫才猫娘こと前川と、寝起きなのか知らないけどまだ眠そうに目をこすってる多田がいた。

 てかお前俺の部屋どこなのか知ってたんかい、って思ったけど多分だけど多田が知ってたのかな。なんで多田が俺の部屋がどこか知ってたのかなおさら疑問だけど。

 

 

「遅いけど朝ごはんの時間にゃ! キミに時間を割くのは正直不服だけど、新人を放っておくほどみくは悪人じゃないんだにゃ!」

「いや、自分で作るよ」

「光って料理作れるんだ」

「多少なら」

「そんな女子力高いエピソードなんて求めてないにゃ!」

 

 

 なんなら俺ってズボラ飯の天才だと自負してるからな。今決めたけど。

 うどんをレンチンして納豆とタレとめんつゆと卵入れるだけの納豆釜玉とか、パンと卵とチーズとベーコン焼くやつとか。なんなら昼とか夜は外食することもあるから、朝を一番作るまである。学校あるときはパン焼いたりだとか親が作ったりしてるんだけどね。

 

 

「てかここって昼と夜しか食事用意してくれないの?」

「普通に朝ごはんは用意してくれるにゃ」

「じゃあそれでいいやん。食堂でいいよ」

「そういう話じゃないにゃー!」

 

 

 話の流れで食堂でいいやんって言ったけど、正直食堂で朝食ってなったら全力で引きこもってた。

 俺が一番恐れているのは超大量の女性の中に俺一人でポツンといることだからな。しかも大半の子たちは俺が寮にいるって知らない可能性だってあるんだし、大事件になりかねない。そんな訳だから本来、今日は引きこもっているつもりだったんだよ。

 

 

「ごめんね? みくちゃん、光に紹介したい場所があるんだよ」

「えっ、李衣菜チャン。こいつのこと呼び捨てにしてるの!?」

「こいつて」

「昨日からずっと呼び捨てだったけど。ねー?」

「ねー?」

「う゛に゛ゃ゛ー! ゛ 鬱陶しい仲良しアピールいらないにゃー!」

 

 

 おぉ、怖い怖い。まぁこれが見たいがためだけに多田と煽りをしているまである。俺たちいいコンビになれるぜ。前川専用機として。

 ちなみに昨日の段階ではまだ下の名前で呼んだり呼ばなかったりだった。この場面では絶対下の名前呼びの方が面白いって多田も分かってんねぇ! 

 

 

「それで何処だよ。紹介したい場所って」

「行ってからのお楽しみ! いいからさっさと着替えるにゃ!」

「人使い荒いなぁ」

「まぁ行って損する場所じゃないから大丈夫だよ」

 

 

 いまだにプンスカしてる前川の隣で多田が苦笑いしてる。いいコンビやわ、バラエティに強そう(小並感)

 

 とりあえずうるさいし着替えるかぁ。ガッツリパジャマだしな。

 スマホ持って財布持って多分朝飯食いにレッツゴーじゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はえ〜、こんなところもあるんだ」

「菜々チャン! 3人にゃ!」

「はいっ! 分かりました〜」

 

 

 連れてこられたのはカフェ……なんだけど、どう見ても敷地内にあるよな。大学の中に色々なお店あるのと同じか?

 

 綺麗に刈り揃えられ、春ということもあり色とりどりに花が咲き誇る中庭の一角に同化したカフェ。まるで俺の語彙力がなくて言葉にできないのが申し訳ないが、ヨーロッパとかの田舎にありそうなおしゃれな外にあるカフェって言えば10人中3人には通じるんじゃないかとは思う。

 

 多田に流されるがまま、丸テーブルを囲む椅子に座らされる。

 周りにはアイドルの子なのだろうか。全体の席の半分くらいを俺と同世代の女の子や大人の女性や一般の男性社員さん方が使っている。それぞれが談笑していたり一人で優雅にお茶を飲んでいたりノートパソコンとにらめっこしていたり、悪趣味だけどこういうのは見てて飽きないな。

 

 

「ほら、メニュー」

「おっ、てんきゅー、お前らもう決めたの?」

「みく達もまだ朝ご飯食べてないから。でも何があるかは分かってるからゆっくり見てるといいにゃ」

「私、パンケーキにでもしよっかな〜」

 

 

 二人とも常連なんだな。わかるぞ、よく行く店のメニューってだいたい覚えてるよな。俺もマ○ドナルドのメニューは全部覚えてるし。

 

 それにしても、メニューが凄い充実している。カフェなのにラーメンとかもあるんだけど、すげぇなここ。流石に朝からラーメンはないかな、うん。

 おっ、男性向けのモーニングセットとかあるじゃん。パン二枚にスクランブルエッグとベーコンにスープとサラダとドリンク。これで500円……ってやっす!? ワンコインかよ! これでええわこれで! 700円は取られると思ってたわ。

 

 

「決めた」

「速いね〜。ま、私は最初っから決めてたけど」

「菜々チャーン!」

「はーい!」

 

 

 前からに名前を呼ばれると中の方のカフェから小柄なメイド服の女性が伝票を持ちながら駆け寄ってくる。これまた珍しい髪色をして……あれは茶髪にピンクが重なってるのか? 

 というか、なんか俺この人の顔見たことあるぞ? 気のせいか、気のせいだな。うん。

 

 

「ご注文伺います!」

「私、パンケーキで」

「みくは卵サンド!」

「俺はモーニングのCで」

「かしこまりましたー! ……ってあれ? 初めて見るお方ですよね? 二人のお知り合いさん……ですよね?」

 

 

 まぁこっちに来ますよねー。前川と多田の二人には面識ありそうだし、そりゃあ俺に突っ込んでくるよな。まずこの男誰だよって話だし。

 

 

「まぁそんなところです」

「昨日初めて顔合わせしたんだけどねー」

「新人さんですか! いやー、ここのアイドル部門にも男性の方がいらすようになったんですね! いやー、かっこいい方で驚きましたよ!」

 

 

 いや、違う違う違う。かっこいいって言われるのは嬉しいけど、俺アイドルじゃない。表に出ない裏方。is 裏方。アイアムアウラカタ。おーけー? 

 

 

「菜々チャン、こいつアイドルじゃないにゃ……」

「……えぇ!?」

「どうも、見習いスタジオミュージシャンの松井光と申します。高校二年生です」

「あらあらお若いのにご丁寧にすみません」

 

 

 なんとなく丁寧に自己紹介をしたら、めちゃくちゃ丁寧にお辞儀が返ってきた。これ社会人の人が見せるお辞儀や。超綺麗、綺麗にも程がある。姿勢が。

 

 

「それでは私も……こほん! ウサミン星からやってきた歌って踊れる声優アイドル、ウサミンこと! 安部菜々でーす! キャハッ!」

「おー!」

 

 

 うわっ、なんというか……キッツ(ド直球)

 ここにきてからかなりハイペースでアイドルの方々に会わせて頂いてたけど、こんなテンプレートなことあるかね。も○ちやん、ネタ被りやん。やっべ、これ言ったら過激派に殺される。どっちが先なのか理解すらしてないのに。

 

 てか完全に思い出した。この人、朝のニュースの時におる人やわ。今の導入で完全に思い出した。

 寝起きのままテレビを見てたらこれが飛び込んできて目がぱっちりになったのを覚えている。いやー、こんな偶然あるんだね。てかなんでここにいるんだよ。

 

 

「ちなみにですけど、何年生ですか?」

「え゛っ゛。えーっと、ナナは17歳なので……そう! 高校二年生です!」

「若干のタイムラグがありましたね」

 

 

 テレビでもそうだったけど、この人そういう設定でやってる割にはボロの出方が凄い凄い、プロ根性あるのかないのかわからんけど多分鬼みたいにあるんだろう。実年齢知らんけど。

 いやー、実際にテレビで目にしたアイドルにあったのは安部さんが初めてだろうか。金髪のリーゼントの人はここに初めてきた時に見ただけだったしな。あれは興奮した。変な意味じゃねぇぞ。

 

 

「と、とにかくナナは永遠の17歳なんですっ! これからよろしくお願いしますね、光さん!」

「こちらこそどうぞよろしく……」

「気軽にウサミンって呼んでくださいね! 私たちドーキューセーなので!」

「そうですね、安部さん」

「ウサミンって呼んでくださいよー!」

 

 

 テレビに出るような人たちってやっぱりみんな面白いんだなぁってここ二日間常々思うよ。前川しかり安部さんしかり飛鳥しかり。

 

 あと安部さんのことはこれからもウサミンじゃなくてちゃんと『さん』付けで呼ぶよ。社会的にもこの世のルール的にも、そして面白さ的にもこれが正解ってなんか体が反応しているからね(ゲス顔)




話が全然進みませんが許してください! 書きたいことが多すぎるんです!
時系列的には入寮してまだ夜をこして1日しかたっていません。おそすぎだろ。


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ロックはロックでもロックなロックはなーんだ!

日間3位に乗ってました。ビックリしすぎてもはや冷静です。
ちなみに、意外かと思いますが今日のサブタイトルは考えるのに時間を使いませんでした。サブタイトルの意味は自分でもよくわかっていません。対戦よろしくお願いします。


 

 

「うまっ」

「ふふーん、346カフェの料理はなんでも美味しいんだにゃ!」

「私たちが作ってる訳じゃないんだけどねー」

 

 

 厚焼きのサクふわ食パンに、厚めの焼かれたベーコンと半熟のスクランブルエッグを乗せて食らいつく。んー! これ最高。合わないはずがないよな。

 ホットコーヒーで口の中に残るマーガリンやらの甘みを流し込むとこれまたいい。洋食にはコーヒーが最強ってそれ一番言われてるから。

 

 

「そんで? 結局ここを紹介したかっただけなん?」

「違うよねー、みくちゃん」

「んぐっ……」

「喉詰まらせんなよ」

 

 

 そんなに綺麗な飯を食いながらのうげっ……って反応あるかね。完璧な反応やないか。

 というか多田は何処までいっても他人事なんですね。それなのに前川に付き合ってあげてるってええやつやな。暇なのかな。

 

 

「まぁ……あれだにゃ……昨日のおわびってやつだにゃ」

「なんかしたっけ」

「その……まぁ色々にゃ……!」

「あれか、意気揚々と噛みつきにきたのに全く相手にされてなかったことか!」

「李衣菜チャン離すにゃ! みくはこいつを一発ぶん殴らないと気が治まらないにゃぁあああああ!!!」

「はいはい静かにー」

 

 

 やっぱこいつおもれーわ。なんにもしてないのに急に責任感じてこんなことしに来るとは律儀な方やなぁ。根が真面目なんだろうかね。格好は真面目じゃないのに。真面目じゃないことはないか。安部さんと同じプロといえばプロか。

 

 

「まぁいいにゃ。みくは大人だから許してあげるにゃ」

「年下だろお前」

「ところで光クンは今日はなにか予定あるのかにゃ?」

「ある」

 

 

 家でゴロゴロするというこの世の何物にも変えれない大事すぎる用事が俺にはあります。

 叶うことならここで飯食ったらすぐにアイドルの人たちに見つからないように部屋に戻りたい迄あるんだよ。

 

 

「どっか行くの?」

「ううん、どこにも」

「なにかするの?」

「ううん、なんにも」

「なんも予定ないやんけ!」

 

 

 

 予定がないことはないんだ。さっきも言った通り寮の我が部屋で休息をとると言う何者にも変えられない大事な用事がね、私にはあるのだよ。

 

 

「そういうお前らは暇なのかよ」

「みく達は今日はオフだにゃ」

「昨日レッスンだったからね」

 

 

 まぁ何となく察してはいたけど。オフでもないとこんなやつのところに訪れないわな。

 

 

「じゃあ二人でどっか遊びに行ってくれば?」

「折角遊びに来たのに連れないな〜」

「いやいや、俺にとってここは超ビジターなの」

「アイドル部門に男子高校生が紛れ込むなんて普通ないもんにゃ。仕方ないにゃ」

 

 

 事実だけど言わんでくれ。俺の胃が痛くなるから。

 よくよく考えても考えなくてもこれ不思議だよな。みくの言い方的にも男のアイドルはいないみたいだし、ほんとに不思議だな。他人事でいたかった。

 

 

「でも安心するにゃ! そんなキミに、今日はみく達が直々にここを案内してあげるにゃ!」

「いや、昨日千川さんにビルの方はある程度教えて貰ったんで」

「え゛っ゛」

「じゃあ本館とか別館の方は?」

「両方知らねぇ」

 

 

 女子寮に行くまでの通り道の分だけどな。ビルの方は見たけど、あの城みたいな方は知らない。てか入ろうとすら思わんわ。威圧感がえぐすぎる。何回見ても城だもん、城。

 あと別館ってのは存在すら聞いたこと無い。ここってそんなのもあるんか。

 

 

「じゃあ本館と別館を紹介するにゃ!」

「いや、いいよわざわざ。俺がそこの施設を使うわけでもあるまいし」

「サウンドルームとかはむしろ光の専売特許だと思うけど」

「そうなの?」

「レッスンルームとかには正直縁はないかもしれないけど、エステルームとかは使うかもしれないでしょ?」

「男でエステはないだろ……」

「最近の男の人はそういうの気にする人もいるにゃ」

「そうなんだ……」

 

 

 というか、こんなにぽんぽん色んな施設の名前が出てくるのな。どんだけすげぇんだここは。

 

 

「とりあえずご飯を食べたら本館に行くにゃ!」

「本館は何かあるの?」

「本館は社員さんが使う施設が中心にあるから、正直私達ではなんにも紹介できないよ」

「なんでそこに行くんだよ……」

 

 

 あのお城みたいな外観って見せ掛けなんかい……いや、他に理由はあるんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとに本館に関してはなんも説明できないんだな」

「ぐぬぬ……」

「みくちゃんも見栄っ張りなんだから〜」

「なら李衣菜ちゃんがやるにゃ!」

「私もわかんないから」

 

 

 本館に入ったはいいものの、そこら辺の施設を覗いただけで説明もなしに適当にぐるっと見ただけで終わった。一応前川は何かしら説明しようとしてたみたいだけど、なんか勝手に惨敗してた。

 よくよく考えたら今目の前で漫才してるこいつらもまだ新人なんだろ。紹介できるような立場でもないやん。

 

 

「こ、こっちは伏線だにゃ! 本番は別館の方だにゃ!」

「私たち、そんなに別館のことを網羅しているわけでもないけどね〜」

「うぐっ……」

 

 

 みくちゃん先走っちゃったねぇ! 先走っちゃったねぇ!(ゲス顔)

 まぁわざわざ時間を割いてこんなことをしてくれてるんだから文句は言わないよ。勿論、意地悪はするけど(矛盾)

 

 

「あれ? だりーとみくじゃん。本館にいるなんて珍しい」

「なつきち!」

「あっ」

 

 

 急に聞き覚えのある声が多田の後ろから聞こえて来る。自分の顔を真横にスーッと平行移動して多田の顔を避けながら、先ほどの声の主の顔を覗き込む。

 

 女性なのに、金髪を大きくあげた男らしいリーゼントヘアー。男らしいというか、どちらかも言うとロックだけど。

 俺はこの人のことを知ってる。高垣楓や輿水幸子位の人しか知らない俺でも、俺の趣味のジャンル的にこの人のことは知ってる。F〇Sに出てたからな。その時は歌が上手くてビビり散らかした記憶がある。

 今は想像してたよりも身長が小さいことにびっくりしてる。

 

 

「あれ……もしかして、取り込み中だったりした?」

「ううん。全然大丈夫!」

「前川は一人で取り込み中みたいな所あるけどね」

「ぼそっと言うのやめろや!」

 

 

 なんかこの子、ほんとにこっちが求める100点の反応をしてくれるよね。

 こんなことしてたらいつかガチファンに『みくにゃんに対する当たりが強すぎないですか? 幻滅しました。しぶりんに浮気します』とか言われそうだけど。

 てか、普通に永遠と漫才してたいよね。むしろこの子はよし〇とに入るべきだったのではと思ってしまう。アイドルの方が向いてそうだからこのままでええけど。今の失言、撮ってへんやろな?

 

 

「そちらの方は……友達? 見学?」

「うーん、両方かな」

「両方みたいなもんですね」

「適当に誤魔化さないにゃ! キミは立派なここのタレントにゃ!」

「俺ってタレントなの? 社員じゃなくて?」

「正直、わかんないにゃ」

 

 

 スタジオミュージシャンってどういう立ち位置なんだろな。タレントって言うのは表に出るような人達のことを言うもんだと勝手に思ってたけど。

 社員といえば社員なんだろうけど、そうなると前川や多田も実際社員だしな。社員というカテゴリーが広すぎる。

 

 

「何? あんた、アイドルなの?」

「まさか。そう見えます?」

「顔整ってるし」

「それは嬉しいですわ」

「夏樹チャン! こいつのこと甘やかしたらダメにゃ!」

 

 

 たまにはいいだろ。顔がいいなんて言われるのは初期くらいなんだぞ。慣れられたらなんの価値もないんだから。

 

 

「光はなつきちのこと、テレビで見たことあるんだよね?」

「うん。唯一じゃないけど、ここのアイドルの人達の中で数少ない知ってる人だよ」

「アタシを知ってるってことは、音楽好きなの?」

「なんで分かるの?」

「だってアタシ、出る番組とか殆どそういうのだし」

 

 

 だから俺この人のことよくテレビで見たんだ。関〇ャムでも見たしM〇テでも見たし。

 テレビは見るっちゃあ見るけど、そこまでガッツリテレビっ子ではないからなぁ。それに見たことあったとしても顔と名前が一致するまで何度も見ることなんてそうほうないだろうし。

 

 

「というか、夏樹チャンはこんなところに何しに来たの?」

「あぁ、Pさんに忘れ物を届けに来てね。丁度本館にいたらしいからちょちょっとな。3人は?」

「みく達は光クンにここの紹介をしてたにゃ」

「紹介にはなってなかったけどね〜」

「うぐっ……」

「あははっ! そりゃあみくやだりーだってまだ新人の域だもんな」

 

 

 そういやシンデレラプロジェクトって新人を中心に結成されてるんだっけ? ちひろさんがそんなことを言ってたような気がする。多分。

 デビュー曲もまだって言ってたし、こいつらってここに来てそんなに経ってないんだろうな。なんでよりによって道案内を買ってでたんだ。

 

 

「そういや、まだ自己紹介もしてなかったな。アタシ、木村夏樹ってんだ。ロックなアイドル目指してるから、ヨロシク!」

「お、おう。松井光、一応スタジオミュージシャン見習いだ」

「スタジオミュージシャンね……」

 

 

 いきなり差し出された手に戸惑いつつも、ガッツリと握手を交わす。

 きれーな手をしてんな。この人はバリバリギター弾いてたし、ギタリストの手が綺麗なのは至極当然なんだけど。

 

 

「ベーシスト?」

「そうだけど?」

「だと思った」

 

 

 やり込んでるんだな、と付け足しながらニカッと笑いかけられる。そりゃあ、握手されたらベーシストってバレるよなぁ。テレビに出るようなレベルの人なら尚更、ベーシストの利き手に関する情報もあるだろうし。

 

 

「なつきち、何でわかったの?」

「あぁ、指の先が硬かったからな。スタジオミュージシャンって言うくらいだし」

「やっぱ分かった?」

「そりゃあそうだろ。野球部の手のひらがボロボロなのと一緒さ」

「なつきちはやっぱ凄いな〜。私も握手しとけばよかった」

「李衣菜は俺と握手したらベーシストってわかったの?」

「わ、わかるよ! もちろん!」

 

 

 まぁ、もう俺の掌はだいぶ綺麗なんだけどね。現役高校球児の掌はほんとにズタボロのカチカチだから。どんだけ振り込んだらそんなになるんだ。

 

 ベーシストの指先がカチカチなのはガチだ。手入れをしていない人だと、マジで指先に鉄板を仕込んでるみたいになるからな。

 指弾きする時にどうしても硬い弦を指で直に行くからな。よくよく考えると、なかなかエグいことをしているかもしれない。

 

 

 

「なんか手入れとかしてるの?」

「一応思い出した時にハンドクリームとか塗ってますけど……」

「へー、意外」

「本当に思い出した時だけな」

 

 

 指先が固くなると音質に影響が出るって聞いたことがあるしな。なんでも、音がピック弾きみたいになるとか。指先が固くなれば、まぁ必然的にそういう音に近くなるわな。

 俺はピック弾きに近い音の方が好きだから、保湿とかと言うよりも手を綺麗にするためにたまにハンドクリーム使ってるけど。

 

 ちなみにそのハンドクリームは凛から貰ったやつだ。何処のブランドとかはよく分かってない。中坊の時に、ハンドクリームの話を凛に相談したら普通にくれた。あいつは良い奴だ(小並感)

 

 

「……だりー、この後も彼の道案内か?」

「うん、今度は別館の方のね」

「前川さぁん、今度はしっかりやれるんですよね〜?」

「せ、誠心誠意努力していく所存でありますにゃ……」

「なんで記者会見みたいになってんの」

 

 

 いや、なんとなく(なんとなく)

 適当に嫌らしいマスコミの真似をした俺も俺だけど、それにちゃんと乗ってくるのが凄いわ。前川やっぱ天才だろ。普通はこんなに変なフリわかんないだろ。

 

 

「じゃあ、アタシが案内してやるよ。ここにはなんにもないけど、別館には色々あるしな」

「なつきち、忙しくないの?」

「今日はレッスンもなんもないからな。それに、キミの実力も見たいしな」

「……へ? 俺の?」

 

 

 道案内をポンな前川の代わりにやってくれるのはありがたいけど、実力を見るって……どういうこっちゃ?




ここだけの話ですけど、日間3位に驚きすぎてサブタイトル考える思考を完全にかなぐり捨てました。びっくりした。本当にびっくりした。

ログインユーザーでは無い方からも感想が来ていて嬉しい限りでございます。ワシ、ユーザー登録してないでおじゃる…ってお方も気軽に感想置いて言ってください!


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プロとアマの差は聞けばわかる

誤字が死ぬほど多い中、たくさんの誤字報告非常に助かります。ぶん投げてるみたいだけどほんとに助かります。たまにタイプミスとか変換ミスじゃなくてシンプル漢字間違えとかしてると馬鹿がバレるので泣きたくなります。


 

「さ、入って。ここがサウンドブースだ」

「おじゃましまーす……」

 

 

 部屋に入ると、まずでかい機械と2つのモニターに目を引かれる。モニターにはテンプレみたいなラジオの収録をする設備の整った部屋とドラムやギターなどが覗く部屋の2つの部屋全体が映されている。こう言っちゃあれだけど盗撮してるみたいだな。

 

 そしてそのモニターの手前にあるのが何がどうなっているのかすら理解の出来ない機械だ。

 よくミュージシャンの人がいじってるアレね。よくわかんないけど、勝手にMIXに使う機械だと思ってる。実情はどうか知らないけど。

 

 

「こんなのも設備してるなんてすげぇな……」

「うちはでかい会社だからな」

「み、みくも初めて入ったにゃ」

「へぇ……ここで収録するんだ」

 

 

 その場から動くことも無く、防音室と思われる部屋をラジオの収録する場所によくあるガラス越しから覗いたりしていると、奥からなんかオシャレなおじさんが入ってくる。急にくるから少しビクってなったやんけ。

 

 

「あれ? 君がスタジオミュージシャン見習いの子かい?」

「あっ、はい。どうも、初めまして」

「常務から話は聞いてたよ。レコーディングエンジニアをしてる金子だ。よろしくね」

「松井って言います。よろしくお願いします(?)」

 

 

 よろしくお願いしますって条件反射で言ったけど、一体何をお願いするんだろう。レコーディングエンジニア? とかいうのもよくわかんないし。

 

 それよりこの人の髪型はなんなんだいったい。服とかはめちゃくちゃおしゃれなのに、なんで髪型がそんなに社会人でデビューに失敗したホストみたいになってるんだ。お兄さんかおじさんか理解できないラインだから余計に困惑するんだけど。

 あと全然関係ないけど、顔がめちゃくちゃ川谷◯音に似てる(小並感) 

 めちゃくちゃ優しそうな顔をしてるのに、どこかゲスそうな雰囲気が見えるのは俺だけなのか。

 

 

「金子さん! 急に呼び出しちゃってすいません。どうしてもここを使いたくて」

「俺も彼のこと気になってたし、ちょうど良かったよ。あと、そんなキラキラした目をしなくてもわかるから部屋行ってきていいよ」

「あざーっす!」

 

 

 そういうが早いが、奥の部屋にウッキウキで入っていく木村さんの後ろ姿を見送る。少女漫画並みに目がキラッキラだったぞ。どんだけギターやりたかったんだ。俺がイメージしていたよりも無邪気なところがあるんだな。

 

 

「そういや……君たちはここがどういう所かは知ってる?」

「えっ? い、いや……まだなにも」

「ラジオとかレコーディングをする場所……って言うのはPチャンから聞いてるにゃ」

「そ。つまるところ、ここはこれから君がおそらく一番使うであろう場所なんだよね」

「ほえー、ここが……」

 

 

 こんなガチガチの機材の揃った部屋で俺がこれから活躍するとかなんにも考えられないんだけど。どんなビジョンなんだよ。てか活躍できる保証もないな。なるようにしかならないよね、こういうのって。

 

 

 ッバァン!

 

「に゛ゃ゛っ゛!゛?゛」

「うわびっくりした!?」

「おーい! 来ないのかー!?」

「はいぃ!?」

 

 

 さっき部屋に入って行ったばかりの木村さんが黒ひげ危機一髪並の勢いで戻ってきた。あれ? てかこれ俺に言ってね? 違うよね? 横のおっちゃんだよね? あまりにも視線がこっちに向きすぎてるから思わず返事しちゃったけど俺じゃないよね?

 

 

「ベースならスタジオん中に置いてあるから! それとも今弾けないのか?」

「えっ、弾くって何を」

「何をって……あんた、ベーシストだろ?」

 

 

 きょとんとした顔で言われても、こっちがそう言う顔をしたいんですよ。

 いや、意味はわかるよ? 弾くって言われた時点で俺の中の選択肢はベースかギターしかないからな。それしか弾けないし。

 

 

「ほらほら、あんなリーゼントなイケメンでも女の子なんだから待たせちゃダメだって」

「光クンサイッテー」

「なつきち待ってるじゃん」

「そうだな、ごめん」

 

 

 流石に3対1には勝てないんですわ、うん。

 後ろから6つの視線に刺されつつ、ニッコニコの木村さんが待つ部屋に入る。

 部屋の中は広く、人5人くらいが暴れてても無事そうなくらいのスペースが保たれている。ドラムセットだけでなく、キーボードやギター、ベースも用意されていて、いつでもバンドができるよ状態になっている。

 すげぇな。理想の部屋じゃん。寮にもこの部屋が欲しい(暴論)

 

 

「ジャズベしか置いて無いんだけど、大丈夫? 弾ける?」

「俺が普段使ってるのより弾きやすいと思うから大丈夫っす」

「どこのメーカーの使ってんの?」

「ATELIER Zの五弦っすね」

「五弦とは渋いねぇ」

「多弦ベースにはロマンが詰まってますから」

 

 

 多弦ベースにはロマンが詰まってる。はっきりわかんだね。弦が多いとなんか強そうだし(アホ) まぁ、実際に弦が多い=音域が広がる=やれることが多くなるってことになるから、表現が馬鹿なだけであってつよつよになるってのはあながち間違いでは無いんだけどね。

 

 四弦自体久々に握ったなぁ。ネックが細くて違和感がすごい。左手に余裕と幅がありすぎて、今ならなんでもできそうな気がする。いざやってみたら普段と変わらないんだろうけど。

 

 アンプの上の置いてあるカンカンの入れ物から柔らかめのピックを選び、弦を弾く。

 ピック弾き独特の粒の立った音が真っ直ぐアンプから響く。

 

 

「これ、チューニングしてあるんすね」

「昨日誰か使ってたんだろ。普段はちゃんと緩めてあるよ」

 

 

 ネックは曲がってないから普段からちゃんと管理されてるのはわかるんだけどね。弦が張ったまんまだからなんかの魔法でまっすぐ無理やりさせてるのかと思った。

 

 軽い会話のキャッチボールを木村さんと交わしながらお互いに慣れた手つきで準備を進めていく。基本的な機材自体は普段使っているのと変わんないしな。アンプの横にめちゃくちゃ大量のエフェクターが置いてあるのだけがめちゃくちゃ気になるけど、ああいうのは気にしたら負けだってじいちゃんが言ってた。

 

 

「なんか得意なジャンルとかある? ジャズとかボカロとかロックとか」

「得意……というか。基本的には邦楽ロックばっかですよ。ボカロはともかく、ジャズとか全然」

 

 

 

 ジャズのベースとかかっこいいのは分かるんだけどね。あいにくコード進行とかよくわかんないの。某絶叫脱糞系弾き語りのお兄さんみたいな感性もしてないしね。

 

 

「アタシはだいたいなんでも弾けるし歌えるから、なんか弾ける曲選んでいいよ」

「なんでもって……すげぇっすね」

「だいたいだよ、だいたい。それに基本はロック系だしな」

 

 

 テレビに出てた時から思ってたけど、やっぱりこの人ってホンモノなのかもしれない。音楽一本のアーティストでも食っていけそうなのに、なんでアイドルやってんだろうと思わざるを得ない。くっそ美人だし何か理由があるのかもしれんが。

 

 

「じゃあ、ラルクとか」

「いいねぇ、ラルク」

「HONEYとか行きましょうか。代表曲は抑えとかないと」

「HONEYならだりーもわかるかもな」

 

 

 ケラケラ笑いながら言われてるぞ、多田。テレビ用のにわかキャラだと思ってたけど、多田ってガチにわかなんだな。ベーシストの指先が固くなるってのも知らなかったみたいだし。

 

 

「これ、やるのはいいっすけどドラムとギターどうするんですか」

「金子さんがドラムとメインギターだけ音源流してくれるから大丈夫」

「すげぇな金子さん」

「プロだからな」

 

 

 そんな器用なことが出来るのか。レコーディングエンジニアってすげーんだな。もはや魔法使いじゃん。

 これがプロの一言で片付くあたり、プロってやっぱりプロなんだな(語彙力死亡)

 

 

「金子さん準備大丈夫ですか?」

『あっ、これ声出していいの?』

「全然大丈夫ですよ。な?」

「超ビックリした(もちろんです!)」

『光クン、言ってることと思ってること多分逆になってるにゃ』

 

 

 本心やししゃーない。だって急に上から声が聞こえてくるんだもん。

 上を向いてみると、スピーカーみたいなのが天井に内蔵されていて、そこから音が聞こえていた。なんかすげぇな。あんなのできるんだ。学校のスピーカーみたいなのとは訳がちげぇや。

 

 

「あっ、コーラスどうする? ボーカルやって貰ってもいいけど」

「大人しくコーラスやらせてもらいますよ。木村夏樹の生歌も聞いてみたいですし」

「言うねぇ。後悔させねぇから」

「期待しかないっすよ」

 

 

 ガチプロの生歌とか聞ける機会ないしな。木村さんの場合テレビで歌声聞いた時もめちゃくちゃ上手かったし余計楽しみってもんだ。

 大にわかって言われそうだけど、俺ライブとか行ったことないし。

 

 

「────── っし」

 

 

 リーゼントヘアーを軽く靡かせ、大きく息を吐く。どこか風格のあるそんな姿に少し息を飲んでしまう。

 

 

『ずっと眺めていた 遠く 幼い頃から』

 

 

 真っ黒なボディのギターから繰り出される荒々しい音の波。一瞬、男性かと錯覚させる、低く安定した歌声。

 来た。この歌が上手い人特有のビリビリ来る声。流石に同じ部屋ともなると気圧されるわ。俺の友達にも歌の上手い奴はいるが、それとは比べものにならねぇ歴とした壁を感じる。

 

 

『今も色褪せた その景色は』

『真白な壁に 飾ってある』

 

 

 左足を後ろに蹴り、つま先で地面を叩く。これが自己流のスタートの合図だ。

 座ってベースを弾くときは貧乏ゆすりみたいな要領でリズムを取れるが、立ちだとそうはいかない。まぁノリノリにさえ慣れれば意識しないでも勝手にリズム取っちゃうんだけど。

 

 

『──────乾いた』

 

 

 左手の薬指を弦に押し当て、下から上へ。低温の音の流れが、本震を予兆させる。

 

 HONEYはこのベースの入りが堪らない。フライングしたボーカルを追うようにバックが畳みかけてくる波の連鎖がトリハダ要素を加速させる。目の前で歌ってる人がプロともなれば尚更だ。

 なんだかよく分からないうちにこんなことにはなったけど、この状況を楽しまなきゃ音楽好きの名折れというものかもしれない。

 

 そんなわけで楽しもう。色々忘れて、後で考えればいいさ。




この前この小説が日間一位になってました。別の原作で書いていたでも日間一位は経験したこと無かったのでめちゃくちゃ嬉しかったです。皆さん評価ありがとうございます。それと日間一位になってたのにモチベが死んでて気がついたらこんな時間でした。ごめんなちゃい。

今やってるアンケートですが、ある程度主要のイベントをこなすまでは出ることは無いので、ネタバレというか裏設定がバレるみたいな感じになるかと思います。好きな方を選んでね♡


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ベースが地味っていうは間違いじゃないが反論はしにくい

めっちゃ更新あけてました。色々あったりなかったりしたんです。ごめんなさい。許してヒヤシンス。


 

「凄かったじゃないか! スカウトされたのも納得だよ!」

「いやぁ……? そうなんすか」

「そうなんすかって、スカウトされたのは君じゃないか」

「試すような真似をして悪かったよ。そういうことをする性分じゃないんだけど、どうしても話題の人のことが気になってね」

 

 

 

 俺と木村さんの楽しい楽しい時間はあっという間にすぎた。HONEYって3分超の曲だからそりゃあっという間だわなって感じなんだけど。

 

 結局、俺は木村さんと金子さんに試されていたらしい。そういうことなら最初に言って欲しいのに。最初に聞いていたところでどうにかできる訳では無いが心の準備とかあるやん普通。

 

 

「ま、私から言わせればまだまだ伸びしろあったけどね」

「主にどの部分のことにゃ?」

「ふふん、もっとギュイーンっとロックな感じにだね……」

「ベースだからギュイーンって音は出ないぞ」

「えっ、じゃもっとバチバチっと……」

「HONEYでは基本的にスラップしないぞ」

「」

「惜しかったな、だりー。スラップが出てきた所まではよかったぞ」

「最初でめちゃくちゃコケてたけどね」

 

 

 ベースでギュイーンって音はエフェクターかけても出るかわかんないからな。ギュイーンがどんな音をイメージしてるかにもよるけど。

 多分多田の言っているギュイーンはギターのスライドのことだろうな。ベースでもスライドはめちゃくちゃやるけど、あれはギュイーンってよりブォンって感じだし。擬音ばっかで頭悪くなりそう。天才タイプのプロスポーツ選手かよ()

 

 

「もっと精進せよ」

「うぅ……最近ベースがマイブームだったのに……」

「へぇ、なんでまたベースに」

「だりー、この前急に『多弦ベースってロックだよね!』って言ってたから多分それからだろうな」

「そうそう! 女装したおじさんがすっごいなんかロックでね!」

「女装した……おじさん……?」

 

 

 今、女装したおじさんって言ったな?

 女装したおじさんで多弦ベースってもう確定だよな。どう考えてもあの美少女ベーシストのことだよな。ダイヤモンド☆フユカイのことだよな。

 なんつーもん見てんだお前。洗脳されてないやつが見ると目が腐るぞ。俺は洗脳済みだからあの人見ただけで狂喜乱舞する体になってるけど。

 

 

「ね、ねぇ光クン。李衣菜チャンってもしかして変なのを見てるんじゃ……」

「変なのには変わりないし目は腐るかもしれんが、映像さえ見なけりゃ天国だから大丈夫だ」

「何を言ってるのかよくわからないけど、取り扱い注意の劇物でも扱ってるのあの子?」

「にゃを付けろよ」

「にゃ」

 

 

 雑すぎて草って言いそうなったわ。現実でネット用語を持ち出すやつほどサムいやつはいないってそれいちばん言われてるから。たまにふらっと出てきたらそれはもう末期だから。俺のことだけど。

 

 というか横で木村さんが苦笑いしてるんだけど、どう考えてもその笑い方はヤツを知ってるな? 正直ギターやベースをやってる人間なら一度は目にすると思うが。

 

 

「私も早くギターが弾けるようになって、なつきちみたいにロックに弾きながら歌えるようになりたいなー」

「練習すればすぐ出来るようになるさ」

「弾き語りは慣れだよ、慣れ」

「みくも早くソロ曲デビューしたいにゃ〜……」

「がんばれ」

「なんでみくにはそれだけなのー!」

 

 

 なんでって言われましても……それ以外に言いようがあるんですか。だってどうすればデビュー出来るか知らんし。

 

 

「そういえば光っていつからベース始めたの?」

「ベース? ベースは……中一くらいからだったと思う。多分。きっと」

「なんでそんなに曖昧なんだにゃ……」

 

 

 確かに。自分がベースを始めた時期が曖昧にしか記憶にないってどうなんだろうか。

 覚えてないもんは覚えてないんだから仕方ないんだけど、それでもなんとなく思い出なんだからちゃんと覚えておけよとは思う。まぁ、結局覚えてないんだけどね(白目)

 

 

「光って確か高二だったよな? それだと、ざっと5年くらいになるのか? それならそのうまさも納得だよ」

「リズム感は昔からよかったの?」

「リズム感とかあんまり気にしたことは無いからなぁ」

「じゃあ生まれつき良かったのかもな」

 

 リズム感ってよくわかんないじゃん。某メリーゴーランドでラブソングしてそうな人並みに突き抜けてないとわからない能力じゃん。

 というか言葉で説明すること自体が難しいし、なによりも圧倒的に地味すぎる。

 

 

「なになに? 結局光ってどこがすごいの!?」

「俺も気になる!」

「本人が気になってどうするんだにゃ」

「仕方ないだろぉ、藤○くぅん。俺が一番わかってなかったんだから」

「おうおう、松井光ぅ! みくはヒゲのおっさんじゃないにゃー!」

「イマドキの高校生でもどうでしょう知ってるんだな……」

 

 

 金子さんが信じられないような顔で見て来るけど、そりゃあ知ってるでしょうに。8時に全員集合するやつとかだってちゃんと知ってるんだからね。昔作られたコントなのに、今を生きる人たちが見ても爆笑できるっていうのは不思議なものがあるよな。

 

 前川って大阪出身だよな。なんでどうでしょうネタが通じるんだよ。北海道民にしか通じねぇんじゃねぇのかよこのネタ(東京都民)

 

 

「光の凄いところはリズムキープの安定力だよ」

「……ベースが? りずむきーぷ? ドラムじゃなくて?」

「あっ、そこからなのね」

 

 

 ベースってギターと同じ弦楽器だからギターと似たようなことしてるって思われがちだよな。

 だがしかーし! 実際やってることはギターと違って鬼地味だし、ギターよりもドラムにやってることは近いんだよね。ドラムと一緒にリズム隊って言われるくらいだし。

 

 

「実際、隣にいてすげぇ弾きやすかったよ。光のバンドメンバーは恵まれてるな」

「でへへ……そんなこと言われても嬉しくねぇぞこんにゃろー!」

「長身の男子高校生が言ってもキモいだけにゃ」

 

 

 うるせぇ!わかってんだよ、んなこたぁ! けどパスがまる見えだったんだから取るしかないじゃないの! それが生きとし生けるものの本能じゃないの!(違う)

 

 

「でも、正直地味な能力だよね。もっとロックな能力持ちだと思ったな〜」

「漫画の世界じゃねぇんだぞ。素人がトンデモ能力なんか持ってたまるか」

「いやいや、光のリズムキープって十分とんでもない領域に入ってると思うぞ?」

「へ?」

 

 

 少し拍子抜けしていた緩んだ顔が驚きの色に変わる。

 いやいや、リズムキープに凄いも何も無いと思うんだけど。

 

 

「少なくともアタシと金子さんが打ち込みかと聞き違えるくらいにはな。途中で遊んだりしてたからちゃんと光が弾いてるって確認できたけどな」

「機械と間違えるって言い過ぎっすよ」

「それくらいぶれなかったんだよ。音もリズムもな。そりゃレコーディングには向いてるだろうな。意識を持った機械みたいなもんだし」

「褒めてんのかよくわかんないにゃ」

「褒めてる褒めてる」

 

 

 俺のすげーところってそんな所だったんだ。生まれてこの方、部活連中はもちろん、親にもそんなこと言われたことなんて無かったわ。なんて地味な強味やねん。

 

 

「なんというか……地味、ッスねー……」

「そんなことないって! 人間の手でやってるのに一切のブレもなく音も安定してるつって凄いんだぞ!」

「簡単に出来そうで実はできないって悲しいよな」

「みく、ベースとかよくわからないけど、光クンってなんかベースみたいだにゃ」

「どういう意味だそれ。俺が地味って言うのか」

「地味に見えて凄いって意味だにゃ」

 

 

 なんだそれ。不思議と褒められてる気が一切しねぇ。泣きたい。泣くが? いや待てよ、俺がベースみたいってベーシストとしては最高の褒め言葉では? 違うな、うん。

 

 

「まぁ光がなんで私達専用のスタジオミュージシャンに選ばれたかは分かったよ。なつきちが認めるってことはそれだけ凄いってことだし!」

「ほんとに凄いってわかってる?」

「わかってるわかってる!」

 

 

 自信満々に胸を張ってそういうが、絶対にわかってないしフラグにしか聞こえない。

 という訳で、カマかけてみよう。こいつと出会ってまだ24時間も経っていないが、なんとなくこいつはかけたカマに面白いくらい綺麗に引っかかってくれそうなタイプな気がする。俺の直感は当たるんだ。知らんけど。

 

 

「どの辺が?」

「リズムキープ!」

「どこのフレーズ?」

「かーわいったー! って所!」

「可愛い。しかも合ってる」

「ふふーん! でっしょー!? これぞ、ロックなアイドルってね!」

「多分、知ってるフレーズ言っただけだにゃ」

 

 

 ワイトもそう思います。まぁでも当たってたからいいんだよ! にわかをどうにかしてふるい落としに行くの良くない。それ先祖代々言われてるから。多分。

 

 

「ともかく、同じ趣味をもった奴が仕事仲間になるのは嬉しいよ。これからよろしくな」

「う、うっす」

「敬語じゃなくていいよ。それに、苗字じゃなくて気軽になつきちって呼んでくれ」

「いや、なつきちはちょっと……」

「冗談だって。なつきちってあたしを呼ぶのはだりーだけだしな」

 

 

 なつきち呼びは恥ずかしいがすぎるからビビった。テレビで見てた人間がいきなりあだ名で呼んでくれとか言ってきても無理がすぎる。

 にしてもこの2人。木村さんと多田の二人はまじで仲がいいんだな。なんか百合厨が大量に湧きそうだ。

 

 というか、俺って木村夏樹になんか認めてもらったの? ヤバくね? これだけでご飯15杯おかわりできるんだけど。

 嘘だわ、ご飯15杯とか現役高校球児が泣いて1000本マジノックに変えてくださいって頼み込むレベルの量だわ。




あまりにも日を空けすぎた結果、小説の書き方を忘れました。バカかな?
ただでさえ低めなクオリティがしばらくの間余計に下がると思いますが、誤字報告等でしばいていてだければ幸いです。

あとにじさんじの小説書き始めたんで、良ければそっちのお気に入り評価等お願いします(露骨なステマ)


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猫はこたつではなく主人の布団で丸くなる

お久しぶりでございます。滅茶苦茶日が空きまして許してヒヤシンス。
こんだけ日が空いたのに感想たくさんうれしいです本当にありがとうございますよろしくお願いします(何を)


「あぁ、疲れた……」

 

 

 色々なことがありすぎてどう考えてもほとんど情報を処理できない頭から、備え付けのふかふかベッドにダイビングする。ちなみにダイビングをしても変な魚とか電気ネズミを咥えてこれるわけでは無い。あの鳥の原理ってなんなんだ。うっうー!

 

 それにしても疲れた。休日でまだ午前中だというのに、非常に疲れた。何があったのか詳しいことを話すのが嫌になるくらいにはどっと疲れたし、色々あった。

 だってテレビで見てた人と一緒にセッションしたんだもんな。いまだに信じられねーや。

 なんなら、ついさっきまで一緒にいたしな。多田と前川と一緒にまとめてラーメンも奢ってもらったし。美味しかった。

 

 というか、夏樹さんも寮通いなんだよな。しかも部屋めっちゃ近かったし。隣の隣の隣だからな。周子さんと紗枝ちゃんときて次の部屋だ。近いなほんと。何がどうなってるんだよ、この寮。

 

 

「眠いでごわし」

 

 

 というか眠い。眠すぎる。

 当然といえば当然だ。お腹がいっぱいで体は疲れている。ともなればやることは一つであろう。そう、睡眠だ。お昼寝だ。爆睡だ。

 

 脱いだシャツとズボンを机めがけて投げつけ、掛け布団に包まる。中シャツは別にいいや、寒いし。

 

 

「ふわぁ……」

 

 

 でかいあくびを抑えることなく、目を瞑る。昼寝っていいよね。最高に気持ちいいよね。某三下いちご大福が起きてこない理由もわかるもん。仕方ないよな、眠いもんな。おはしいなできないよな。

 とか思ってたらマジで眠くなってきた。意識が遠くの彼方に行ってまう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふわふわした感覚の中で意識が戻るのがわかる。

 変な夢を見た。バランの妖精とタテガミがポンデリングになってる声がおっさんのライオンにひたすらセクハラされてたような、そんな記憶が薄いのに濃く残ってる。かなり恐怖を感じた。

 起きたとはいえまだ眠い。100人がこの状況にあるならば、きっと97人くらいは

 二度寝するであろう。というわけでワシも寝よう! お茶は飲まない。

 

 

「うにゃあ……」

「あっ、ちょっと狭いっすね……失礼しました」

 

 

 布団をぐいっと首元まで上げた時に、右腕がこつっと当たる。いやはや、失礼しました。それじゃあ俺も寝て……寝て……

 

 ……ん? 今俺の右腕何に当たった? 心霊現象か何か? ……んん??

 

 

「……ん?」

 

 

 体を起こして、何か当たった右手側を見てみる。明らかに布団が膨らんでる。というか赤みがかったふわふわの長い髪の毛みたいなのが布団の横から覗いてる。怖いんだが。普通にこれひっぺがしたら怖い女の人に襲われそうなんだが。

 

 とは言いつつも、横でなんか絶賛もぞもぞしているなんかをひっぺ剥がしてみないことにはことは進まない。

 というか中身はなんとなく予想できてる。個人は予測できないけど、多分横にいるであろう人の職業はわかる。なんでやろなぁ。真面目にやってきたというわけでも無いのに。

 

 

「……ご開帳〜」

「寒い〜……」

「あっ、失礼」

 

 

 ペラっと掛け布団を捲ってみると中から出てきたのはまるで赤い宝石箱のようなどえらい綺麗な女性。すっごい寝顔綺麗。なんなら布団をめくられて唸ってた顔すら綺麗だった。こんな美人が存在している事実がすげーわ。

 とか言って見惚れている場合では無い。この見た目には騙されていけない。赤の他人が自室で寝ているところの横に転がり込んでくるような女性が一癖二癖ない女性な訳がない。絶対にヤバい。

 

 とは言ったものの、このまま俺が直接この人に触って起こすわけにはいかない。なぜかって? 女性に直接触れるなんて選択肢が俺にはないからだよ!

 

 

「どうしたもんか」

 

 

 ここで俺に残された選択肢は二つある。

 そのいち、この美女が起きるまで待つ。この場合、放置しているだけでことが進むが、この人がいつまで経っても起きずに夜になってしまった場合に俺がこの人を連れ込んだように見られかねないというデメリットがある。今こんなことになってる時点で連れ込んだもクソもないんだけどね。

 そのに、近くの部屋の人に助けを求める。俺は幸いにも両隣にいる厨二病なアイドルと適当京美人の二人とすでに面識がある。この二人にヘルプを求めてどうにかしてもらうという算段だ。勘違いされたその時は自害を決意し颯爽とここから夜逃げする所存である。

 

 

「うーむ、悩みどころよ」

「何をそんなに悩んでるの〜?」

「いやー、起きたら隣に美女がいてさ。直接起こすわけにもいかないし」

 

 

 いやー、どう振り返っても詰みに近いよなぁ。この場面。

 一体なんでこんな目にあって……ん?

 

 

「起きてんじゃん」

「Good morning〜♪︎」

「発音良」

 

 

 めちゃくちゃグッモーニングの発音綺麗やん。綺麗な顔から綺麗な英語の発音とかこいつ帰国子女か? ほら、なんか帰国子女ってアメリカかぶれの美少女的なイメージあるし、知らんけど。

 

「何これ、英語で聞いた方がいいパターン? はーわーゆー?」

「志希ちゃんバリバリじゃぱにーずぴーぽーだよ?」

「そうなの? そりゃそうか」

 

 

 ウェーブが掛かりながら胸元……んんっ! 辺りまで伸びた髪の毛。人懐っこそうな丸い目とそこから伸びる長いまつ毛。つけまつ毛じゃないよな? 天然だったらヤバすぎだろ。俺が女だったら羨ましくて高速アルプス一万尺急に始めるまである。

 

 

「ところで志希ちゃんさんや。あなたは何でここにいるんですかえ?」

「ん~……なんでだっけ?」

「なんでだろうねぇ」

 

 

 きれいな斜め45度の角度で模範的ただいま考え中のポーズを決められても困るんですよね、こっちとしては()

 とはいえこっちも困ってそっちも困ってでカバディカバディしてても困ったことに話が進まないんですわこれが。

 

 

 ぴんぽーん

 

 

「お客さん?」

「そうみたいだねぇ」

 

 

 ベッドから飛び降りて速足でドアへと向かう。

 いったいどこの誰が急にピンポンしたのかはわからんけどマジで助かる。下位にいるときのキラー並みの打開助かる。この前某マリカ大会を見てしまったせいでマリカしたい欲が過去一すごいのよね。俺もあんなアチアチな勝負してみたいわね。友達もいないわけじゃないけどガチガチに同レベルで殴れる相手はほとんどいないってのも事実だから。

 

 

「はいはーい」

「おーっす、昨日ぶりー」

「あぁ、周子さん……と?」

 

 

 ドアを開くと京美人……と、隣にギャル。

 めったに見ることはないピンク髪にしっかり立った付けまつげ。ぱっと見でギャルとわかる容姿をしているものの、化粧も濃すぎず素の顔の良さで勝負をしていることがうかがえる。というか格好がやばい。露出度が高い。へそが出てるし肩も出てる。風邪ひかないの? お母さん心配しちゃう。

 

 てかずっと疑問だったんだけどさ。周子さんも志希ちゃんさんもだけどみんななんでそんなに平気で肩を露出できるの? 寒くない?あったかくなってきたとはいえ寒くない? お母さん心配しちゃう(母親特有の心配性)

 まぁ室内だから寒くないといえば寒くはないんだろうけどさ、そもそも恥ずかしくない?(真理)

 

 ほんとにこの環境ってすごいよな、美人しかいねぇんだもん。マジで桃源郷だよな。この点に関してだけは目の保養にしかならねぇよな。まぁ圧倒的にやべぇ点としてはここにはアイドルしかいないし男が俺だけしかいないってことなんだけどな。絶対にここにいたらあかんわ、うん。

 

 

「ほんとに男の人が住んでるんだね……」

「いや、ほんとすいませんほんとマジほんと」

「ほんとって三回言うやん」

「俺のマジ度を表したら自然と」

 

 

 このギャルのお方の反応が普通なんですよ。そら驚くよ、女子寮に男がいたら普通に驚くよ。なんならこの状況に置かれてる俺が一番驚いてるまであるもん。もういろいろと諦めたから今は驚いてないけど(?)

 

 

「ま、まぁそう落ち込まないでよ。いろいろと大変なんでしょ? 状況はよくわかんないけどさ」

「女の花園には入れてる時点でシューコちゃんはこの状況を楽しむべきじゃないかとは思うけどね~」

「楽しむとか無茶では?」

 

 

 ハーレムを楽しむ? それは胃が痛いだけでは? それに僕が知ってるハーレムっていう状況はなぜか好感度マックスになってる女の子たちだけに囲まれる状況のことなんだが?

 なんでハーレム系のアニメやら小説やらの世界ってみんな好感度マックスなんだろうね。たまにある何の説明もなしなのに好感度マックスの女の子が最後まで好感度マックスになった理由は経緯を語られぬまま終わったりするの俺すっごいもやもやするんだけど。

 俺はイチャイチャを見てぇだけじゃねぇんだ! その過程も楽しんで限界オタクになりたいんだよ! まぁ別にそこまでハーレムに思い入れがあるわけではないから別にいいんだけどね。

 

 

「ハーレムとかうらやましーじゃん。青少年にはちょーっと強すぎるflavorかもしれないけどネ♪」

「うわびっくりした」

「あ、いた」

「にゃ?」

 

 

 いつの間にベッドからここにきていたのやら。俺の肩に手をかけてひょっこりと顔をのぞかせる小娘の頭をすいと伸びてきた手がむんずと掴む。

 

 てかめっちゃいい匂いする。このギャルめっちゃいい匂いする。猫娘の頭掴むために近寄ってきたんだろうけど、その時にふわっとしたシャンプーの香り凄い(小並感)

 ギャルって香水頭からかけてる生き物だと勝手に認識してたけどこれは新情報だわ。マスコミに高く売れるね(確信)

 

 

「おー、志希ちゃんほんとにここにいたとはねぇ」

「やっぱり適当言ってたんだ……」

「なになに。どゆことすか?」

 

 

 全く状況がつかめない、ということもない。大人になったらその場の状況を読むことも大事だからね。時を戻そう。

 実際、時を戻せたら何でもやりたい放題だよな。俺なら絶対エッチなことするわ。というか男なら全員そういうことやりかねんわ。人間、時を戻す能力がない方が絶対に行ってはっきりわかんだね。

 

 まぁ話を察するからにこの志希ちゃんさんがどっかに行ってそれを探してる時に周子さんが適当に俺の部屋にいるって言ったら本当にいたって感じだろう(オタク特有の早口)

 

 

「いやー、この娘がね? また脱走したもんだから捕まえに来たのよ」

「それほどでも~」

「褒めてないから。ほんとにもう、麗さん送りになってもアタシは知らないからね」

「それだけは勘弁してほしいかにゃ~」

 

 

『また』とな? なるほどなるほど。よくわからんがこの娘には脱走癖があって、なぜか今回はわしのところに来たと。ただのトラブルメーカーじゃねぇか。勘弁してくれ。

 

 

「そういえば美嘉ちゃんって光くんとは初対面だっけ?」

「なんならそちらの方だけじゃなくて今捕まってる方とも今日初めてですけどね」

「どんどん顔広がってくなぁ」

「ここにいるときに顔広げても変な噂しかたたないと思うんで勘弁してほしいんですけどね」

 

 

 いや、ほんとにこれに尽きる。昨日が一日目、今日が二日目で明日過ごしたらこことおさらばできるのに何でこんなにイベントが詰まってるんだよ。バランス調整おかしいだろ運営仕事しろ。

 

 

「明日までここにいることになってます、松井光って言います。いやマジで迷惑かけないんで勘弁してください俺もなるだけここにはいたくないんですごめんなさい」

「別にずっとここにおればええのに」

「周子ちゃんこの子になんかした? すっごい怯えてるじゃん……」

「にゃははー! やっぱりキミ面白いねぇ! かくまわれてた志希ちゃんでーすよろしくー!」

「ちなみに苗字は一ノ瀬ね~」

「周子ちゃん補足説明どーもー」

 

 

 他人事だからって適当言いよって……許すまじ周子さん。それと自分は関係無い的な感じで能天気にしてるけど、そもそもあんたのせいで俺はすごい申し訳なさそうにしてるギャルと対面してることになってんだからな。ただでさえここに所属しているアイドルの人とはここで会いたかないって言ってるのに。

 

 

「あー、光くんだっけ? 周子ちゃんからここに来るまでに色々聞いたけど、気にしなくていいからね?」

「やさしい……」

「アタシは城ヶ崎美嘉っていうの。カリスマギャルとしてやってるからよろしく★」

「天使……」

「色々大変だと思うけど一応アタシのこう見えて歴はキミよりあるからさ。なんかあったらいつでも相談してね」

「」

「泣いてるじゃん……」

 

 

 周子さんが若干引いてるけど知ったこっちゃない。もう泣けてくる。マジで泣けてくる。こんなに癖のなくて優しい人初めてや。いや、みんな優しいんだけど癖がないって点ではね……(白目)

 

 やはり人は見た目で判断してはならないっていうのは至言かもしれない。ヤンキー優しい説とか滅茶苦茶あるもんな。ヤンキーはヤンキーなんだけど。

 

 

「一生付いてきます姉御」

「姉御!? 美嘉ねぇって呼ばれたことあるけどそれは初めてカナー……?」

「じゃあ美嘉ねぇで」

「新しい弟君できちゃったね~」

「おめでたー」

「えぇ!?」

 

 拝啓、母親へ。なんかお姉ちゃんができたかもしれないです。僕は今泣いてます。人間の優しさって素晴らしいですね。人へは優しくしようと決めました。 ―完―




この作品、進行があまりにも遅くね? って思っている読者の方。
この3日間は! この3日間は滅茶苦茶濃い3日間にしたいんです許してください! そのうち普通のテンポで進むんで今だけは勘弁してください!(甘え)


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飼い犬と歴戦の嫁の嗅覚は世界レベル

最近書くのが楽しくなってまいりました。感想が来るとモチベが鬼だよね。無料ガチャは爆死しかしてませんでした。合唱。


 

【朗報】松井光、昼間のイベントをこなして以降ひきこもることにより午後7時まで逝き抜くことに成功する。

 

 いやぁ、これは快挙ですよ。マジで快挙ですよ。昨日ここの部屋に来てからずっとイベント続きだったにもかかわらず、長時間のイベントなしっていう事実を作り上げることのできたこの凄さ。あなたには理解できますか!(大興奮)

 

 ここに荷物が運び込まれてから速攻で周子さんが来て紗枝ちゃんも来て、帰ったと思ったら凛が来て。寝て早起きしたもんで外に出たら飛鳥に会い、家に戻って二度寝してたら前川と多田に突撃されて連れ回されてたら夏樹さんとセッションすることにもなった。草臥れて帰ってきて寝てたら志希ちゃんさんに不法侵入されてお姉ちゃんがなぜかできた。

 

 おかしい。控えめに言って24時間ないくらいの時間でここまでの出来事があるのほんとにおかしい。

 それがあってからのこの何もない時間だ。もう神だね。最高至福の時間だね。

 実際寝るのが最強ってこれで結論付いたわ。なぜ俺は24時間眠れる体に生れてこなかったんだろう(末期)

 

 

「今日はもう晩御飯抜きでいいや」

 

 

 本当はこの時間ならご飯を食べている時間なんだが、今日はもういらないや。大丈夫、晩御飯一食抜くくらいならへーきへーき。

 あれ? 今日俺って昼めし食ったっけ? まぁいいや。

 

 

『着信が来てるぜぇ~? ワイルドだろぉ~?』

 

 

 あっ、電話だ(小並感) スギちゃんの着信音いいよね。電話がかかってきたっていうストレスもないからおすすめだよ。難点としては人に聞かれたら変な顔されるってことね。スギちゃんの何が悪いいんだよ。ゆめおと同じで袖がないだけだろ。

 

 着信主は……凛じゃん。なんや、珍しくもない。

 

 大体電話がかかってくるってこと自体が今の世の中レアケースってことも無きにしも非ずってこともあるかもしれんが、大体俺に電話をかけてくる奴は半分が親でもう半分が凛だ。

 親の場合はわかる。アナログ人間だからしゃーない。けど凛はなんで電話で来るねん。普通にLI〇Eしてくればええやんってなるわ。

 まぁ俺もいちいち文字打つのだるいから凛に用があるときはほとんど電話でかけるんですけどね。

 

 

「あい、なんぞや」

『今暇でしょ』

「暇だが」

 

 

 初手暇でしょってこいつやべぇ。確かに暇だけど。オブラートに包むって言葉知ってる?

 中学生とか高校生になるとさ、絶対にオブラートじゃなくてコンドームっていうクッソ下らん下ネタいう奴いるよな。一人でコンドームで水風船しとけ(辛辣)

 

 

『晩御飯食べてないでしょ』

「食べた」

『ごはん食べに行きたいんだけど』

「どこによ」

『あんたの部屋』

「は?」

 

 

 ぴんぽーんとチャイムが鳴る。嘘だろ? マジで言ってる?

 電話を耳に当てながら玄関に向かい、鍵を開ける。

 

 

「こーゆーこと。どうせひきこもってご飯食べてないでしょ」

 

 

 ドアを開けるとほっと〇っとのマーク付きのビニール袋を掲げながらマフラーをしているせいで呆れたようなジト目しか見せてくれない凛ちゃんさん。

 てか外寒っ! 2月でも冬はばちこり冷え込むのな。

 

 

「ホラーかよ。しょんべんちびるかと思ったわ」

「するならトイレでしてきて」

「ちびってないわ」

 

 

 寒いだろうによく来たねぇというおばあちゃんみたいな気持ち半分、夜道を一人で来させたことに関する焦り半分でそそくさと凛を部屋に招き入れる。

 この子も強いから下手に襲われないとは思うんだけど。というかあの硬派そうなPさんと一緒にいる千川さんがいる限り間違いは起きないと思うんだけど。それでも心配なもんは心配だ。

 

 

「言ったら一緒に買いに行ったのに」

「すぐそこにあるお店行ったから大丈夫」

「お前ほっと〇っと食べたことあんの?」

「普通にあるよ」

「イメージと違う」

「あっそ」

 

 

 そっけない返しとは裏腹にのり弁やらサラダやら豚汁やらを手際よく準備していく。

 ほっと〇っと滅茶苦茶久々だわ。コンビニ飯よりもクオリティ高いしコスパもいいんだよな。学校の昼食に丸々弁当屋ののり弁持ってきてる奴いたわ。正直賢い(小並感)

 

 

「重くなかった?」

「鍛えてるから」

「そのほっそい腕で?」

「見る?」

「いやいい」

 

 

 セクハラになるからね。それに暖房付けたとはいえまだ寒いし。

 店が近いとはいえ汁物も買ってきてるんだったら尚更ついて行ってやればよかった。

 

 

「そこに財布あるから必要な分後で取っといてな」

「わかった」

 

 

 素朴な会話をしながら全部の蓋を開封していく。ちゃんと和風ドレッシングにしてるじゃん。わかってるぅ↑

 

 

「ねぇ」

「ん?」

「ベッドから女の匂いがするんだけど」

「あっ」

 

 

 えっ、だれか空間凍らせた? さっき暖房付けたって言ったよね? 急に氷点下になったんだけど。

 ココ北海道? ロシア? 雪国? アイスランド?

 

 

「何。ついにここの人に手出したの」

「無罪だ」

「そうだよね。ここには私よりもかわいい子がいるもんね」

「違う、待って」

「最低」

「ごめんってたんまあああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、よかったね。可愛い女の子と寝れて」

「実感皆無だったから惜しかった」

「変態」

「冗談だて」

 

 

 何とか飯を食いながら弁解に成功しました。やましいことなんか何もしてないからね。そりゃ誤解ならちゃんと解けるよ。うんうん。

 久々にフリーザー凛を見た。めっちゃ空気凍ってたマジで空気凍ってた。ちゃんと誤解が解けてマジでよかった。なんか若干引きずってる臭いけど。

 

 さっきまで豚汁の入っていた器がまだほのかに暖かい。これでさっきのが幻覚だったと確信できるわ。

 これで器が冷え切っていようものなら俺はもう戦慄していた。あれ?なんか袋の水滴凍ってね? アイスなんか入ってたっけ?

 

 

「そもそもお前よく女の匂いとかわかるよな。嗅覚えぐ」

「香水の匂いとかわかるでしょ」

「確かにわかるけど香水の匂いに関してはあんまり気にしないもん」

 

 

 ファ〇リーズとかはちゃんとやるよ? だってほら、あれってCMでもファ〇リーズで洗おう!って自負しているくらいだから。かけるだけで洗濯したも同然なんだからそらファ〇リーズするよな。

 

 

「香水の匂いとか嫌いなの?」

「嫌いではないかな。特別好きでもないけど」

「ふーん……」

 

 

 そうですか興味ないですか。興味あったとしてとしても何がどうってわけじゃないからいいんだけどね別に。

 

 

「まぁ付けようとは思うよ。今でも」

「……」

「わかったって」

 

 

 めっちゃジト目で睨まれる。ごめんごめん、意地悪して悪かったってホント。

 

 そもそも中学の時に友達からちょっともらった香水付けてたらすっげぇ泣きそうな顔して『香水付けないで』って言ったのお前だからな。好きではないとはいえ匂いは気にするんだからな。あれがなかったら今頃俺はちゃんと香水付けてたよ。

 

 

「お前香水にいじめられでもしてたのか?」

「いや、光に付けて欲しくない」

「意味が分からん」

「別にわからなくていいよ」

 

 

 そういうと凛がスッと腰を上げてベッドに腰掛け、枕を取り上げる。するとおもむろに枕に顔をうずめ始める……も、しばらくすると不満げな顔をしながら枕から顔を離し始めた。

 なんだよ、匂うっていうのか? その行為はゴミ箱を自分から覗いて汚いっていうようなもんだからな。俺が傷つくだけだかんな。

 

 

「……匂いしない」

「新品ですもの。ていうかやめない? いい匂いでもないでしょ?」

「今度光の家から枕取ってくる」

「使わんからな。俺はこの前見つけた新しい枕を使うって決めてるんだ」

「じゃあさ、光の家にある枕貰っていい?」

「駄目に決まってんだろ」

 

 

 そんな顔してもだめだからな。枕が欲しいならついでに買ってやるから。

 そもそも俺の枕なんか貰って何に使う気だよ。絶対にダメだからな。そもそも俺が一番恥ずかしいんだし。

 

 結局、この枕争奪戦(争奪戦とは言ってない)は俺が着れなくなったお古の服を上げるという形で譲歩され、幕を閉じた。

 まったくもって意味が分からん。そもそもお古とはいえお前の体のサイズじゃぶかぶか待ったなしだからな。絶対に外では着させんぞ。お父さんの誇りにかけて(違う)




何故か総評がお気に入りの増えた数よりも多く伸びてると思ったら評価が入ってました。久々過ぎてもはやおじいちゃんになった浦島太郎まである。


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社会の闇と書いて千川ちひろと読むらしい

今回はちょっとだけ、ちょーっとだけまじめな感じのお話になっています。
こういうの考えて書くのは初めてなんで心配ですけど、考えてる時は滅茶苦茶楽しかったのでそれだけでOKです(雑)


 

 どうやら俺は戦士か何かになったらしい。

 

 空を飛び回り、なんか目の前にいる敵を指先から出るビームで蹴散らす。てかこの技黄〇の丸パクリじゃねぇか。

 まぁいいや。気分はまさしく海〇無双。春に出る新作が楽しみでしょうがないな。早くやりたいな。おっ、あっちにも敵がいるじゃん。ヒャッハー! 汚物は消d

 

 ……ん? 待てよ? あの敵ってどっかで見たことあるような。化け物の形がどんどん変わって人間みたく……あの緑色の服……んー?

 

 

 〈hr〉

 

 

 

「松井さーん……起きてますかー……?」

「っは!?」

「ひゃっ!?」

 

 

 強烈な悪寒に襲われ一気に意識が覚醒する。いいだろうかかって来いよ。今の俺は〇猿だぞ。ん~、光の速さでけられたことはあるかいぃ~?(ねっとり)

 

 

「び、びっくりしたぁ……」

「……千川さん?」

「すいません。少し驚かしてしまいましたね?」

 

 

 少しで済むのだろうか。お互いまさに飛び上がるほど驚いていた気がしなくもないんだけど。

 

 

「なんでここにいるんですの?」

「いやー、松井さんにいい報告ができそうでつい」

「……ここ俺の部屋ですよね?」

「早速なんですけど着替えてもらっていいですかね? 別にこのまま話を聞いてもらっても大丈夫なんですけど」

「あっ、そこは触れない方向なんですね」

 

 

 この人マジで何者なんだろ。てか今何時だ。早朝か? マイスマートフォン! 別にライバー用じゃないスマートフォン!(ネイティブ発言)

 てか普通にあったわ。スマートフォン。時刻は現在8時47分! ……昨日寝たのが12時くらいと考えると少し寝すぎた程度だろうか。ぐっすりすやすやであった。

 

 

「……てか千川さん。こんなところにいてお仕事は大丈夫なんですか?」

「大丈夫ですよ? こう見えても私結構やりてなんですから!」

 

 

 少し自慢げに言う姿がとってもかわいいのが悔しい。もうこの人直々にアイドルやればいいんじゃないのかな。なんかいろいろと裏方にいるには惜しい存在に見えるんだけどな。

 

 

「それで松井さん。お着換えなさるんですか?」

「あー……じゃあ着替えてくるんで。適当に待っててもらってもいいですか?」

「はい! 大丈夫ですよ!」

 

 

 あんまり待たせないように今日は軽装でいいか。そもそも今日まで俺はひきこもり生活の予定だし。

 というかなんで今こんな状況なんだろ。俺どこかで突っ込まなきゃいけないタイミングあったはずだよな? 完全にもう引けなくなってるだけじゃね? 泣きそう。泣いたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ! 少し本題に入る前に前置きをさせていただきますね!」

「はぁ」

「今、松井さんが住んでいるここは女子寮になっている……というのはご存じですよね?」

「もちろん」

 

 

 それはもうここにきてからの2日間で痛いほど学ばせていただいたですわよ(お嬢様)

 だって部屋からなるべく出ないように心がけていたのに、死ぬほどアイドルと顔を合わせることになったし(遠い目) なんならド早朝に公園に出ただけでアイドルもいたし(悟り世代)

 

 

「実は本来なら女子寮に男性の方が住んでいる、というのはちょっとした問題だったりするんです」

「ちょっとしたで済むんですかそれ」

「済ませるから大丈夫ですよ?」

「あっ……」

 

 

 なんか今一瞬、社会のとてつもない闇を見た気がする。いや、見たというよりも見えた気がする。

 謎の力でもみ消すんですねわかります。いや、嘘ですわからないですだから消さないでくだs

 

 

「そんなわけで! 私たち、ちょっと頑張っちゃいました!」

「なにをどす?」

「ちょっとした問題を問題じゃなくしたんです」

「ほう。……ほう?」

 

 

 問題を問題じゃなくする。つまるところ、女子寮に男性が住んでても問題じゃないようにする……そういうことであろうな。

 いや、どうあがいても無理だけどね(白目)

 

 

「つまりですね……簡単に言えば、女子寮が女子寮じゃなければいいんですよ!」

「でもここ女子寮じゃないですか」

「いいえ! ここは今日から学生寮です!」

「???」

 

 

 この人日本語通じるのだろうか。ここは何と言おうと女子寮である。だって実際そうだしね。

 

 てか俺がここに一番最初に入れられそうになった時にちょうど目の前にいる人に言われたもん。『346プロの女子寮』って言われたもん。

 漢として人生を生きていく中で女子寮に入れなんて言われるとは思わなかったもんだから二度と忘れないよあのセリフは。

 

 

「厳密に言えば、正式にここの名前が学生寮に変わったんですよ! 今日から!」

「……ほう?」

「学生寮なら女子限定なんて一言も書いてありませんから学生なら男性でも寮生活しておっけーです!」

「……ほう」

「それに、名目上学生寮なだけなので別に学生じゃない人でも入居できますし! 完璧な策ですよ!」

「あっ、ふーん……」

 

 

 なるほど、なんとなーく意味は分かった。つまり男性である俺がここにいても何ら問題はない状況をものの見事に作り出したってことやな? なんちゅーことしてくれるんや。

 

 しかもそんな簡単に変えられるんかい。僕、そういう会社の人事? 管理? もはやどれに該当するわからんようなこと簡単に変え得られるなんて知らなかったよ。

 

 

「でもマスコミとかそういうことお構いなしに記事に書くんじゃないですか?」

「名目上の立派なルールを作りましたから! 何一つ問題はありません!」

「あっ」

 

 

 なんでだろう。千川さんのニコニコスマイルから邪魔する奴は力ずくで叩き潰すという強い意志が感じ取れる。怖い。この人なんでこんなに本気なんだよ。

 

 

「でも僕がここにいるって保証がないじゃないですか。そもそも今日までここにいたら実家に帰る気満々だったんですよ?」

「いーや、光さんにはここにいてもらいますよ? 逃がさないですから」

 

 

 そういうと千川さんは、ふっふっふっ……と不敵な笑みを浮かべながら立ち上がりドアの前で仁王立ちして目を光らせる。

 なんでだろう。その行動に関しては何一つ違和感を感じない。小さい。可愛い(小並感)

 

 

「そもそもの話ですけど、なんで俺をここに住まわせたいんですか?」

「質問を質問で返すようですけど、こんなに可愛い女の子たちに囲まれていられる環境で過ごしたくないんですか?」

「ストレスフリーでいられるなら住みたいですけどね」

「なら問題ないじゃないですか! 男性にとっては桃源郷ですよ桃源郷!」

「ワードセンスが地味に古いっすね」

 

 

 一瞬『は?』って言いかけたが桃源郷のおかげで突っ込みが先に出た。

 

 現在進行形で忍者的戦略的籠城という名のひきこもりでアイドルの人たちと接触しないようにしている二尾のどこがストレスフリーなのか、これがわからない。

 でも強いて言うなら? 正直胃が痛いけどみんな顔面がいいおかげで全部目の保養になるとか? まぁまぁまぁまぁそれが目当てというわけではないですけどね決してうんうん(早口)

 

 

「ほら、俺も質問に答えたんだからちゃんと俺の質問にも答えてくださいよ」

「ちゃんとしてますね……なかなか手ごわいじゃないですか。いい社会人になれますよ」

「社畜怖い」

 

 

 社会に出たらそういうスキルも取得しなくちゃいけないのかよ。社会ヤバイな。一生自宅警備員してたい。

 

 

「前も言った通り、松井さんを皆さんに深く知ってもらうためですよ」

「……表向きの理由じゃないんですか、それ」

「ギクッ」

 

 

 その反応マジで裏の理由があったんか。マジか。今滅茶苦茶適当に言ったのに。とっても適当に言ったのに。

 いや、だってありがちじゃん? だいたいこういうのって企業がらみで裏に理由隠してたりすることが多いじゃん? 本当にあるのかよ。

 

 

「いいでしょう! どちらにしよ、遅かれ早かれ松井さんには伝えなきゃいけないことでしたからね」

 

 

 ……あれ? こんなに簡単にバラしてくれるんかい。

 待ってまだ心の準備g




めっちゃ中途半端に終わっちまいましたが、次の話で光君がなんで346プロに入ることになったのか理由がわかったりわからなかったりします。
読者の皆様が納得するような理由かわかりませんが、作者実はそこまで深いことを全く考えていなかったので何卒ご両所ください。


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天才型は大体変な欠点持ち

最近この小説が滅茶苦茶伸びててビビり散らしてるが私はマイペースなのでいつも通りの更新です。すいやせぇん。


 はぁ、とため息を吐きながら少し顔を引き締める千川さんにつられて、ちょっと背筋が伸びる。

 なんか、すごく重大な扉を開いてしまったのかもしれない。今、まさに。

 

 

「松井さんはシンデレラプロジェクトがどういう意味を持ったプロジェクトなのか。それは知っていますね?」

「まぁ、ちゃんと説明してもらいましたね」

「そして、松井さんはシンデレラプロジェクトを根本から支えてもらう存在になってもらう。これも説明しました」

 

 

 どう考えても俺に対する負荷がやばいと思うんだけどね。男子高校生一人に背負わせる量じゃないし、普通に考えたらもうちょい何人か用意してもらいたいもんだ。

 

 

「実はこの問題。無理があると思いませんか?」

「実はじゃなくても相当無理があると思いますね」

「あっ、気付いてたんですか」

「だって現実味がないですもん。全く」

 

 

 会社の敷居に足を踏み入れたばかりの男子高校生一人に大企業の一つの部門に新しい風を吹かせるなんてレベルの企画を背負わせるとか正気の沙汰じゃないからね。まるで設定が無茶すぎるなろう系そのまんまだ。

 

 

「じゃあ色々と単刀直入に言っちゃいますね。そっちの方が手っ取り早いですし」

「よっしゃ、ばっちこい」

「松井さんは簡単に言ってしまえば『当て馬』なんですよ」

「ほう、当て馬。つまるところ本命がいると」

「いや、本命はまだいないですね。というか本命をそろえるための準備段階にすらまだ

入れてないんです」

 

 

 ちなみに当て馬ってどういう意味か分からない人は今手元に絶対あるはずのスマホやらPCやらあるいはvitaやらでググってみような!

 なんで今手元にそれがあるかわかるかって? あれだよ、読心術。鼻からミルクティーが飲めるようになれば読心術が使えるようになるって小学校の同級生のあっくんが言ってたから。

 

 

「そもそもこれだけでかい会社が専属のミュージシャンを雇えてなかったのが不思議ですもんね」

「松井さんのおっしゃる通り。まぁ、専属のミュージシャンが不足していることに関しては色々とあったんですけどね……」

 

 

 千川さんがなんだか遠い目をしている。まぁ、色々とあったんだろう。うん。

 

 

「簡単に言えばコストカットがあったんですよ。美城常務が就任されたときに所属していた専属のミュージシャンの方々が悉くクビを切られてしまって……」

「悉くクビって…その人たちに何か問題でも?」

「……単純に出資に対する実力、それから作業量が見合ってなかったんです。常務が目指しているのはより質の高く需要のある政策ですから」

 

 

出資に見合った結果が出てなければそりゃクビにせざるを得ないのは仕方がないよな。厳しいけどこれが現実だろう。ドラマでもよくサラリーマンの人はとりあえず生中みたいな勢いでクビになってるし。

 

 

「それで取り合えず大量に切ったはいいものの専属ミュージシャンが少なくなって取りあえずは外部頼り……って感じで?」

「美城常務も考えなしにクビを切るようなお方ではないので、ちゃんと補填する人たちに声はかけてたみたいなんですが少し誤算が」

「誤算?」

「その人たちもまさか自分たちが大量リストラの補填要員とは知らされてなかったみたいで…」

「自分たちも何かあればすぐにクビになるんじゃないかと」

「その通りです。急な大量リストラでイメージダウンもしてしまいまして、それ以外の方々もうちには来なくなって……それに乗じたライバル企業が若いアーティスト候補生をよっこいしょと……」

 

 

 隙を見せたライバル企業の隙に乗じてパワーアップと妨害もする。すげぇな芸能界。大量の金が動くだけあって。弱肉強食の色がより濃くなるんだろう。

 

 とはいってもミュージシャンの人も急にクビにされるリスクがあるのは勘弁だよなぁ。ただでさえ綱渡りみたいな職業なのに……おぉ怖い怖い。

 

 

「いつかは悪いイメージも薄れていく。その時にまた若い逸材を捕まえればいい……とはいえ時間は有限ですから。空白の期間の間にライバル企業に差をつけられるのは346プロとしてもなかなか大打撃なんですよね」

「そこで、期間を開けないためにとりあえず若い俺を捕まえてみたと」

「はい。次の本命の方々が見つかるまでの」

「見つかるまでって…そういってもただの高校生捕まえないといけないくらいには余裕がないんですね」

「ただの高校生だなんてとんでもない! ちゃんと松井さんを選んだ理由があるんですよっ!」

 

 

 急にびしっと指をさされてびくってなってしまう。

 ひ、人に指さしたらいけないんだぞ! こんなんでビビる俺が悪いんですけどね。だって急に来るんだもん。

 

 

「第一に技術面。これは今西部長のお孫さんが極秘で入手してくれた映像を見て確認したところ、合格ラインをしっかりと越えてくるほどの実力を兼ね備えてました」

「極秘……ねぇ。それってなんかのライブの映像ですか? めっちゃ音質悪い奴」

「そうですよ? よくわかりましたね!」

「いや、普通に部活で撮影してたやつですねそれ。あんなクソ音質でよく判断できましたね……」

「ちゃんとその道のプロもうちにはいますから!」

 

 

 極秘映像といわれていたやつだが、その映像は多分部活として参加したライブの様子をやっすいカメラで撮影しただけの動画だ。顧問の先生が上達のコツは振り返りだ!……なんて急に言い出したのはいいものの、あまりにもカメラをケチりすぎたせいで音質がよくなく、結局お蔵入りになった映像だな。恥ずかし。

 

 

「第二にルックスです! これは私とPさんで決めたことなんですけどね」

「ルックス……顔面じゃないですか」

「そうです! 白い肌に少し高い鼻。そして全体的にハーフっぽい顔立ち! 体格も細すぎず、寧ろ少し筋肉質で女性からもイメージよし。まさにさわやか系なジャ〇ーズによくいるちょうどいいレベルのイケメンです!」

「わかる」

「ライバル会社のことを若干ディスるようなことしれっと言わんでください」

 

 

 まるでジャ〇ーズはそこまでのイケメン集団みたいないい方。

 実際はいい意味で違うんだけどね。あの人たちはアイドルだから顔よりもダンスとかで魅了するからね。最近はバラエティ特化な人たちも増えたし多様性だよ多様性。なんで俺がフォローしなあかんねん。ジャ〇ーズのことが特別嫌いなわけではないから余計に辛い。

 

 

「そして最後に、松井さんは少なくとも見境なく女性に手を出す悪人ではない。社会人として、芸能界で生きるものとして素行面は重要ですから」

「……よくこんな短い期間でそんなことわかりますね」

「この期間だけで判断したわけではありませんから。少なくとも、松井さんのことをとても信頼している方……その方から得られる情報だけでも、今は十分ですよ?」

 

 

 俺のことを信頼している方ねぇ……なんとなーく予測はついてるけど、よくもまぁあいつから色々と情報を得ようとしたもんだ。

 どうやって知ったかは聞く気力もない。多分知ったら俺はこの人に一生逆らえなくなる気がする。世の中知らなくてもいいことがあるってそれ一番言われてるから。

 

 

「それにしても捕まえたのが俺一人って少なすぎますよ。他にいるかもしれないけど、どんだけ余裕がないんすか。悪評があるとはいえこれだけでかい企業なんですから人も来るでしょ?」

「そこで美城常務の存在ですよ。彼女は同時にアイドル部門も合理的に……まぁ簡単に言えば今まで広げすぎてた風呂敷をいったん縮めて自分の手に届く範疇で動かそうとしているんです。要するに少数精鋭ですね」

「合理的じゃないですか」

「問題は美城常務のやり方が多少強引なところなんですよねぇ……」

「あー……」

 

 

 今まで所属していた専属のミュージシャンのクビを簡単にスパッと切れるんだもんな。

 血も涙もないといえばそれまでだけど、経営者としては天職だよなぁ。受け身の立場としてはこれ以上怖い存在はないが。

 

 

「そこでPさん担当しているシンデレラプロジェクトの存在が重要なんですよ」

「ほう」

「まぁここら辺は色々と大人の事情があって複雑なんですけど、さすがの美城常務とはいえど今すぐにアイドル部門の改革を進める……そういうわけには行けないんですよね」

 

 

 そもそもそれが普通なんだろうけどな。『さすがの美城常務でも』って言われるくらいだから下手したら思わぬ方向からくる可能性だってそれをやりかねない頭脳も力も備えてるんだろうけど。頭よさそうだったしなぁ、あのベヨ〇ッタさん。

 

 

「もちろん改革も重要です。それでも美城常務のペースで進めては全部崩れてしまう可能性もあります。そのためにはあの子たちや松井さんの力が必要なんです!」

「は、はぁ……でも俺当て馬じゃないんですかね……」

「いーえ! 私たちはそうは思っていませんよ!」

 

 

 千川さんが身を乗り出しながら目を輝かせる。何々怖い怖い。この人さっきからテンションがあまりにも高すぎるでおじゃる。

 

 

「確かに現時点では松井さんは成功すればいいな~程度の当て馬にすぎません! というか、超無名の高校生ベーシストを大企業の専属ミュージシャンにするなんてそれこそシンデレラストーリーですからね」

「そら夢みたいな話ですわな」

「だからなっちゃいましょう! シンデレラならぬ、王子様に! プリンセスじゃなくてプリンスに!」

 

 

 あー、なるほど。わかってきたぞ。

 

 シンデレラプロジェクトっていうのは、そもそも素人の女の子たちをアイドルにする。女の子が輝く夢を与える夢のためのプロジェクト。

 幸か不幸か、そのプロジェクトが動いているタイミングで男子版シンデレラみたいな境遇に346プロの事情的に勝手になっていた俺が入ってきたと。

 

 

「仲間は多いに越したことはありません! それにアイドルを支える立場につく松井さんが根本で支える柱の一つになってくれれば百人力です!」

「じゃあ千川さんが無理やり俺をここに住まわせてアイドルと接触させようとしたのは?」

「まぁ、掻い摘んでいってしまえば『会社の事情で色々と背負わせてしまった男の子に少しでも早くなじんでもらうため』っていうのと『性格面と素行面の最終チェック』ですね!」

「俺が手を出したらどうするつもりだったんですか……」

「うちのアイドルに手は出させませんから大丈夫ですよ?」

 

 

 おー、こっわ。今どす黒い空気出てたこっわ。何なら壁からボウガンが出てきて槍が飛んできそうな空気感まであった。

 

 にしてもなんだか知らない間に大ごとになったみたいだ。ていうかそんなにこの会社悪評広まってたんかい。何一つ知らんかったぞ、ていうか凛もなんか言えよ。俺がクビになってもいいんかあいつ。

 裏事情を知らない時点ではラノベみたいな話で信じられなかったが、裏の事情を知ったら知ったで色々信じられないな。いや、信じたくないな(白目)

 

 

「……と、言うのがフィクションです!」

「は?」

「今のは全部作り話です!」

「は?」

「そんな松井さん一人とあの子たちに重圧を背負わせるわけないじゃないですか! アニメじゃないんですから!」

 

 

 パンと手をたたいて終わりました! という感じで話されても困る。

 えっ、何この話即興なの? 今考えたの? 凄すぎんリアルすぎんか。怖いんじゃが。

 

 

「松井さんはそんな細かいことを気にしないで、思う存分ここで腕を磨いて、そしていろんなことを体験していってください。きっと、あなたのこれから先のことに役立ちますから!」

 

 

 勿論、こっちもたくさん出ますので! ってにやにやしながら親指と人差し指で円を作る。下世話な話やめーや。確かに金はあって困らんし、わしも欲しいけど。

 

 

「そんなことよりですよ! ここに来たのはこんな話をしに来ただけじゃないんですよ!」

「こんなって…で、ここに来た理由って?」

「ふっふっふ。今の格好って動きやすい服装ですか?」

「……へ? まぁ全然動きやすい服装ですが」

「それじゃあ、着替えを持ってついてきてください!」

 

 

 着替え……着替え? なんでそんなもんを……って思ってたら、玄関からなんか置いていきますよ~って声が聞こえる。まぁ千川さんの声なんだけどね。

 問題は声の主じゃない。その移動速度だ。さっきまで目の前にいたよね? なに? あの人瞬間移動使えるの? 超人じゃん筋斗雲乗れよ。

 

 

「アイドルのことをもっと知ろうの体験ツアーですよー!」

「……体験ツアー?」

 

 

 適当に着替えをリュックにぶち込んでる間にも、玄関からウキウキ声で急かす声が聞こえる。

 ……ん? 待てよ? これ、またなんか俺の意思とは違う方向で話進んでね? いいのか、いいのか俺。このままでいいのか俺。

 

 

「……ま、いっか」

 

 

 人生なるようにしかならねぇよな。畜生!(血涙)




色々とツッコミどころがありそうな気がしますけど、こんな感じで松井君が選ばれたりしています。
腐っても主人公君ですからやっぱりそれなりの能力は持ってるんですね。イケメン滅ぶべし慈悲はない。ついでにちょっとだけその場所を代わってほしいけどやっぱり遠慮しとくわ。


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ダンス部の運動量は伊達じゃない

フェス40連回しました。SSR4舞でました。フェス限仁奈ちゃん当てました。
夜道が怖いです(白目)


「……ここってレッスンルームじゃないですか」

「あら、ご存知だったんですね♪」

「色々あって昨日来たんで」

 

 

 千川さんに言われるがままに移動した先はつい昨日夏樹さんに教えてもらったばかりのレッスンルーム。淡い色をして中が見えなくなっているガラス質の壁と、重厚そうなドアのノブには使用中の札が下がっている。

 

 レッスンルーム。昨日前川や夏樹さんから聞いた話では、346プロに所属しているアイドルが主にダンスレッスンをする部屋らしい。中に入ったわけではないから内装がどんなもんかは知らないが、なんとなくダンスルームで想像したらいいんじゃないだろうか。内装知らんけどね。直接見てないから。

 

 

「ここに用があるんですか?」

「はい、そうですよ」

「もしかしてじゃないですけど、人いますよね?」

「もちろん!」

 

 

 おそらく完全防音ではないのだろう。耳を澄ませてみると壁の向こうから音楽と床をけるような音がかすかに聞こえる。その時点で察していたけど、いるねぇ! これ中にアイドル多分いるねぇ!

 いや待て、まだ中にいるのがアイドルであって女の子と確証が付いたわけではない。女の子は嫌いではないけど初対面のアイドルとこれ以上遭遇するのは色々ごめんだ。あまりにも遭遇する人の数が多すぎる。

 

 

「失礼しまーす」

 

 

 俺のそんな雰囲気を感じ取ったのか。ささっとノックをしてドアを開けていく。鉄砲玉かよ。

 ニヤニヤしながら手招きする千川さんにつられるのは癪だが、扉を開けてしまったんじゃあ入るしかない.

 行きますよ行けばいいんでしょうもう!

 

 

「失礼しますぅ……」

 

「ワン、ツー、スリッ、フォー!」

 

 

 うおぉ……絶賛ダンスレッスン中やないか。鏡張りの壁に向かって三人の女の子が曲に合わせてステップを刻んでいる。英数字を刻みながら手拍子しながらその三人を見つめるのはダンスの先生だろうか。

 これ鏡張りの壁一面だけだからいいけど、全面鏡張りだったらちょっとえちえち……ゲフンゲフン。

 

 

「ワン、ツー!……あっ、ちひろさんお疲れさまです!」

「遅れてごめんね! 少し手間取っちゃって」

 

 

 なるほどね、アイドルを担当しているであろう先生も美人と。しかも若い。千川さんも綺麗な方だしここの顔面偏差値は一体どうなっているのだろうか。

 

 

「それでですねこちらにいるのが……」

「松井光さんでしたっけ」

「アッハイ」

 

 

 もはや当たり前のように名前を知られているの怖い。千川さんの事だからちゃんと事前に話を通してたんだろうけど。さっき入った時の先生の反応も来た来たって感じだったし。

 

 

「話は伺ってますよ! 今日は見学でしたよね!」

「あっ、そうなんですか?」

「えっ、そうですよね?」

「そうですよ♪」

 

 

 ごめんなさいね。僕なんにも話を聞かされてないからなんにも知らないの。

 

 どうやら俺はここに見学に来たみたいだ。なんで今更見学……って思ったけど今更じゃねぇな。まだここに来て一週間も経ってねぇもんな。まだまだ見学とかの段階だわそりゃ。

 

 

「申し遅れました。私、ここでトレーナーをしている青木慶って言います! まだまだトレーナーとしては新人ですけど、精一杯頑張らせてもらってます!」

「初めまして、松井光っていうものです」

「ルーキートレーナーさんはまだ若い方ですけど、その腕には定評がありますよ!」

「いやー褒めすぎですよぉ! ……あっ! みんなちょっと休憩してて大丈夫だよ!」

「我の魔力が底を……ちゅかれた」

 

 

 一流芸能事務所に所属してる人ってルーキーだろうが何なんだろうがやっぱり実力者ぞろいになるもんなのね。それにしてもこのお方、先生ではなくトレーナーさんだったのか。先生とトレーナーって意味的に何が違うのかはわからんけど、とりあえずトレーナーさんで覚えておこう。

 

 というか後ろでアイドルの子が普通に倒れてるけどいいのだろうか。めっちゃ踊ってたもんな、そら疲れるわ。お疲れサマーズ。

 

 

「暫くの間、光さんもみんなの練習に参加する際は主に私と姉たちが担当することになると思うので、気軽にルーキートレーナーさんとでも呼んでくださいね!」

「あっ、はい。よろしくおねg……ん? 練習に参加?」

「あれっ、違いましたっけ?」

「違くないですよ」

 

 

 待てよ、俺は何も聞いてないぞ千川ちひろォ! 野郎やりやがったな、ハメやがったな。

 もうわかったぞ、読めてきたぞ。魂胆は知らんが千川さんはなぜか俺にダンスも習得させようって魂胆か? わしはアイドルか。この男なのにアイドルか。訳あってアイドル! 違ぁう!(拒否)

 

 

「千川さん???」

「説明しましょう! これはですね、光さんがアイドルの子たちとより仲良くなるための親睦会みたいなものなんです!」

「ダンスレッスンですよね?」

「そうですね」

「僕踊るんですか?」

「もちろん!」

「今日もその為に?」

「はい!」

「うせやん」

 

 

 その為か、そのためだけにここに来たんか。だから部屋を出るときに着てる服が動きやすい服装か聞いてきたんか。なぜそこでわしはその言葉の意図に気づかなんだぁ(絶望)

 

 

「ちなみにですけど、松井さんはダンスのご経験は?」

「いや……遊び程度でしかないですね」

「遊びでダンスすることとか逆にあるんですね」

「あまりにも暇を持て余していた時期があったんですよ」

「なんでそんな時期が……」

 

 

 中学のときね、滅茶苦茶暇だったのよ。帰宅部だったから。当時はベースもやってなかったから暇つぶしにいろんなことに手を出していた、そういう時期だったの。私も当時は若かったわねぇ……似てねぇな、大〇丸のモノマネ。潜影蛇手。

 

 まぁ中一の時の話だから3~4年前くらいの話なんだけど。それくらい前で合ってるよね? 今年で高二だからそんなもんだよね? 知らんけど。

 

 

「ともかく! ダンスの経験があるなら大丈夫ですよ。最初はみんな初心者ですから!」

「俺は一生初心者でも大丈夫なはずなんですけどね」

「つべこべ言わずに! ファイトっ!」

「いや、あんたのせいやがな」

 

 

 この後滅茶苦茶一人でダンスさせられた。




評価をしてもらう時にコメントでめちゃくちゃ褒めてくれてるのに星の数が5になってて微笑ましいけど「もしかして星の数間違えてませんか? 変えるの忘れてないですか?」ってメールを送るの相手にプレッシャー与えたり間違えてなかったパターンが怖くて出来ないのあるあるじゃないですか? コミュ障の僕だけですかすいませんでした(涙目)


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ハーフのスタイルと顔の良さはズルい

最近ハーメルンのバグで小説がループしてしまうことが多く、感想で報告を受けてからの対応になり申し訳ありません。昨日はループなおしたら2000文字くらいに減ってました。泣いた。
でも運営さんにメッセージで報告したらめちゃくちゃ丁寧に対応していただいたので、そのうち治るかと思います。また気が付くことがあったら気軽に乾燥ください! マジで感想ください!(懇願)


「хорошо! とってもよい踊り、でした!」

「ど、どーも……」

 

 

 ありがとうね。名前わからんけど銀髪の滅茶苦茶可愛い女の子。最初の言語は何を言っていたのが全くわかんないけど、こんなかわいい子に褒めてもらえるだけで踊った甲斐があるわ。めっちゃ内容うろ覚えだったけど。

 

 それにしても久々に動いて超疲れた。マジで疲れた。疲れすぎて初期のナナフシ3Dみたいになったわ(?)

 ダンスってすっごい疲れるんだよね。普段人間がしないような動きをするからとっても疲れる。ダンス部って文化部みたいな扱い受けてるけど普通に運動部並みに体力持ってるよね。尊敬するわ。

 

 

「それじゃあ松井さんの力量もわかったところで美波ちゃんたちも一緒に行きましょうか!」

「トレーナーさん……お、俺も踊るんですか?」

「大丈夫ですよ! 今からやるところはみんな初めてやるところなので」

 

 

 そうなんだ。って違うけどね! 問題はそこじゃないですよ! まだ踊るんですか! 正気ですか!(半ギレ)

 そんな体力はもうない……っていうわけではないけど。それでも半分くらい残ってるのは普段から運動をそこそこしている賜物だろう。

 これでも俺って家でギターとかベース触ってるだけの人じゃないからね。イライラしたことがあったら速攻でバッセンに行く勢だから。バッセンはいいぞ。すごくストレス解消。

 

 

「じゃあ初めましてでお願いしますほんとすいません」

「いえいえ! Pさんから松井さんの話は聞いてましたから!」

 

 

 決まってしまったものは仕方ない、とかただの向きをぐるっと180度回転させて後ろでへたり込みながら俺のダンスを眺めていた方に挨拶と謝罪を同時にしておく。俺ここにきてから謝罪してばっかな気がするな。まぁいいや。

 

 受け答えしてくれたのは圧倒的なお姉さんオーラを醸し出しているお方。

 少し茶色がかった長いストレートヘアーは腰まで届くかというところまで来ているのに、毛先はサラサラとしていて普段からのケアの丁寧さがうかがえる。

 切れ長でながらもややタレ目がちなアーモンドアイからは落ち着いた雰囲気を感じられる。結構アイドルの人ってキリッとした目つきや丸っこい目つきの人が多いイメージだから、こういうタレ目の人は少し珍しく感じてしまう。

 

 うん、なんというか。見れば見るほど大人の女性だなという感想しか出てこない。今まであってきた女の人が良くも悪くも幼かったり学生っぽい人たちばかりだったのもあるかな。でも安部さんは……いや、やめとこう。

 

 

「Pさんって……俺会ったの一人しかいないんですけど……」

「そのPさんで会ってますよ?」

「あっ、じゃあシンデレラプロジェクトのメンバー!(名推理)」

「はい! 新田美波ですっ! メンバーではちょっとだけお姉さんになるの」

「ちょっとだけ……つかぬことをお伺いいたしますがご年齢は……?」

「19歳ですよ?」

 

 

 えっ嘘19とな!? お主、19とな!? ピチピチの未成年とな!?

 

 マジかよ。かんっぜんに社会人のお姉さんかと思っていた。確信していた。

 だってオーラがあまりにもお姉さんすぎるんだもん仕方がないじゃない。オブラートぶっ飛ばして言うなら大人の色気がむんむんだったもん。初対面の人をそういう目で見るのは失礼かもしれないけどだってそうだったんだもん!

 

 19歳となると大学生なんか。こんな美女が同じ大学にいたら毎日幸せハッピーだろうなぁ。あと3年早く生まれたかった。

 

 

「マジですか……すっごい大人っぽかったんで軽く成人してたのかと……」

「ふふっ、たまーに言われるんですよね。けどまだまだ新大学生ですよ」

 

 

 世の中凄い未成年がいるものだ。凛だって年下だけど大人っぽいがここまでのレベルではないぞ。

 まぁでもあれだな。これ以上ある意味逆の年齢詐欺にあうことはそうそうないだろう。うん。

 

 

「ってことは? そちらのお二人もシンデレラプロジェクトの?」

「うむ!」

「да!」

 

 

 なんだろう。そちらの奥のお二人はものすっごくキャラが濃い予感がいたしますわね。片方は日本語だから聞き取れるがもう片方の方はなんて言った? ダーって聞こえたぞ? 何語や……

 

 

「アー……じゃあ、アーニャから自己紹介、しますね」

 

 

 アーニャ……っていうのは一人称だろう。となるとさっきから出てた単語はやっぱり日本語じゃなかったんだな。そうだよな。新しい言語を生み出すことのできるアイドルかと思った。

 

 言語にも目が行きがちだが、一番驚くのはその容姿。一言でまとめるなら美しい。雪の精霊。顔面がいい。もはや暴力。

 ハーフなのか外国の血100%なのかはわからないが、日本人とは全く違う顔の系統をしていてもわかる。この子はとてつもない美人だ。もうだってモデルだもん。

 

 

「Меня зовут Анастасия」

「……へ?」

「エーット……アーニャって、呼んでください」

 

 

 流暢な母国語の後にたどたどしい日本語を聞くとなんだかとっても保護欲が湧いてる。やだ……これが母性本能!?(違う)

 

 それにしてもこのアーニャちゃん。その前はアナスタシアとも聞こえた気がする。

 この子は凄い。俺もここにきて色んな女の子を見てきたがそれでも一歩引くくらいには顔がいい。というか唯一無二といった方が正しいだろうか。

 周子さんよりも白く透き通るような短めの白髪に新田さんとは対照的なキリッとした目。瞳の色は透明感を最大まで引き上げたような水色をしており、あんまり見ると吸い込まれそうになる。

 

 すげぇな外国人って。世界は広いよ、My father。

 

 

「アーニャちゃんは日本とロシアのハーフなの。でも育ちはロシアで日本語はまだまだなのよ」

「ハーフなんですかか。えっと、日本語はわかる……の?」

「アーニャちゃんは喋るのはまだ苦手だけど、リスニングはできるから大丈夫!」

「アーニャ、いっぱいお勉強、しました……!」

 

 

 すっごい満面の笑みをこちらに向けてくるじゃん。なにその一切の曇りもない笑顔。凄い、そんな顔無垢な幼女でしか見たことがない。人間の汚点をすべて消し去りそうな能力もってそうだ。

 

 

「ちなみにアーニャちゃんは15歳よ?」

「……もう女の子の年齢見た目で判断できないです。俺」

「? アーニャ、大人に見えました、か?」

「それはもう、とっても」

「счастливый ……嬉しい、です」

 

 

 なんだろう。凛と同い年っていうのが発覚したからだろうか。さっきからヤバイ。色々とヤバイ。凛と被る。色々と。

 この子あれだわ。同級生の子とかに滅茶苦茶恋させてるけど本人としては善意100%でやってる的なタイプのやつや。あとご近所のお母さま方から訳もわからずにめちゃんこ可愛がられるタイプや。

 

 

「じゃあ最後は蘭子ちゃんかな」

「ふっふっふっ……やはり我こそが最後に立つものに相応しい……」

「この子はハーフかなんかなんですか?」

「違いますぅ!」

「あはは……蘭子ちゃんは普通に日本人よ……?」

 

 

 言語的にやばい子もう一人いたわ。なんならこの子の操る言語に関しては日本中走り回らないと翻訳できる人がいないかもしれない。

 ……いや、いたわ。隣の部屋にもう一人中二病が。この子と接点あるかは知らんけど。

 

 言動はさっきから比喩抜きにヤバいがさすがはアイドル、例によって顔がいい。銀というよりも灰色に近い髪色は暗さを演出するよりもどこか妖艶な麗しさを表現している。

 そしてあまり気にはしていなかったが地肌がとっても白い。薄いといった方が合っているのだろうか。その白さはアーニャちゃんにも匹敵しているが、顔には少し濃いめの化粧が施してあり、それが一層の白さを演出している。

 いうならば人形であり空想上の人物のような。そんな雰囲気が感じ取れる。

 

 すげぇな中二病。来るとこまで来るとここまでできるのか。尊敬するわ。

 

 

「我が名は神崎蘭子。血の盟約を求め我らともに魂の共鳴を奏でん……」

「あっ、飛鳥? 今の聞こえた? これって大丈夫?」

『あぁ、キミのことを歓迎している。これから一緒にがんばろう。といったところかな』

「……えっ?」

 

 

 いやー、飛鳥がいて助かった。やっぱり目には目を歯には歯を。中二病には中二病だよな。

 タイプの違いはあれど通訳できるくらいではあるってのが分かったからこれでも収穫だ。

 

 それにしてもこの前LI〇E交換しておいてほんとによかった。なんとなく交換していたけどまさかこんなところで使えるとは。それにしても初めての着信なのに速攻で出たな。助かったけど。

 ちなみに俺の携帯には、あと凛と本田と島村さんと周子さんと紗枝ちゃんのが入っている。急に俺のLI〇Eが陽キャのリア充みたいになったな。

 

 

「なんで飛鳥ちゃんが電話に……?」

「いやー、色々ありまして」

『人生は出会いと別れの連続だよ。蘭子』

 

 

 別れっていうなよ寂しいなぁ……って思ったけど多分飛鳥の場合はなんとなく深そうだから言ってるんだろう。知らんけど。

 それにしてもこの二人にも交流があったんだな。意外じゃないけどタイプが違うから遭いなれないのかと思ってた。

 

 

「飛鳥は蘭子ちゃんと知り合いだったの?」

『あぁ、寮の部屋が隣同士でね。これもまた同じモノを持つ共鳴者の運命ってやつだよ』

「たまたまだと思うけどね」

 

 

 なるほど、そういう繋がりが。それがなくてもいつかは会ってそうだったけどね、この二人なら。唯一無二の共通点があるし。

 

 

『ちなみにキミが考えていることを予想してあげるよ。蘭子は僕と同じ14歳だよ』

「なんだろう。凄く納得したよ」

 

 

 中二病って名前なのはわかるがまさか本当に二人とも中二の民とかどんだけ原作再現してるんだよ。中二病に原作なんてあるのか俺は知らないけど。

 ここまで14歳にいろいろと集中しているのを見ると俺ももしかしたら中二の時何かヤバかったんじゃないかという恐怖に襲われるわ。俺って中二の時何してったっけな。駄目だ、学校行ってはベース触ってた記憶しかねぇ。なんなんだ俺の中学生活。悲しくなる。

 

 

「それにしてもここってホントに可愛い子しかいないんですね~……」

「まぁこの子たちみんなアイドルですから。そして、そのアイドルを育てて世に出すのが私たちのお仕事なんですよ!」

「まぁ俺はアイドルじゃないんですけどね」

「細かいことは気にしちゃだめです!」

 

 

 なんで俺はここにきてダンスなんかすることになってるんだろうな。俺って本職は本来ならベーシストだろうにな、おかしいな。世の中おかしいな。

 

 

「さっ! 自己紹介も終わりましたし、ここからビシバシやっていきますよー!」

「Да! 頑張って、いきましょう!」

「うむ! 我の蘇生の時は近い!」

「まだ蘇生してなかったんだね……」

「もうやだあああああああ!!! 踊りたくないいいいいい!!!!!」

「さぁ! レッツデレステ!」

「なんすかそれぇ!」

 

 

 結局この後みっちりダンスレッスンした。もうしばらく同じ曲は聞きたくない。




やけに足が長かったり足が細かったりしている女の子は大体中国や韓国や台湾とのハーフの人が多いの、あるあるだと思います。多分。
日本人はなぜスタイルが悪いDNAになってしまったのでしょうか。僕も1000年くらい巻き戻ってお侍さんの足を延ばしたらスタイルがよくなるんでしょうか。でもデブだから無理でしたわ(本末転倒)


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当たり曲を見つけたら大概一週間は無限ループが始まる

評価10が入って狂喜乱舞してたら翌日仮免落ちました。後輪乗り上げたと思ったらもうガクンよ。
良いことがあった後には振り戻しがあるとか言うけど流石に仮免落ちは重すぎんか? そんなに評価10重いんか?(血涙)


 そこそこ混んでいた電車を出る。そこそこ混んでいる改札を抜ける。同校の学生の波に流されながら少し歩く。学校につく。

 

 

「松井ィ! イヤホン取らんか! てかお前染めとるやろォ!」

「いや違いますね! これは朝鳥糞にやられただけですね!」

「髪の毛全部きれいに茶色にできるうんこをする鳥なんかおるわけないやろ!」

「いますー! アルゲンタヴィスってのがいますー!」

「アルゲンタヴィスはもうとっくに絶滅しとるじゃろがい!」

 

 

 校門に待ち構えるクソ教師に髪の毛の難癖をつけられるので、適当に合わせて逃げる。

 

 ここまでが学校のある日の俺のいつものルーティンと化した光景だ。茶髪くらいえぇじゃないか。地毛が茶色い子もいるんやぞ世の中には。まぁ俺は染めてるんだけどね。

 唯一いつもと違うのは、出発地点が自宅ではなくアイドルの住まう寮といったところだろうか。部屋を出るとき滅茶苦茶急いでばれないように出たからな。幸いにも誰にも接触はしていない。これから忍者として生きる道もありだなこりゃ。

 

 1年生の教室はやけに遠い。正門を通って校舎に入る階段をひたすら上って三階だ。今更だけど俺って今年で高二なだけでまだ今月の間は高一なんだよね。来月の終わりから正式に高二だ。でも面倒だから統一した方がいいだろ? うん。

 

 教室のドアを開けるとすでに教室の中は大盛況だ。男女揃って朝からテンション高めに騒いでいる。

 おかしい。いつも通り二日ぶりの学校なはずが、なぜかやけに久しく感じる。1年間通い詰めてきたのに。

 肩にかけてた制定鞄を雑に自分の机にほおり投げ、ちゃちな木製の椅子にドカッと座り込む。騒がしい男子の低い声がやけに心地よく感じるのは俺だけだろうか。いや、俺だけだな。間違いない。

 

 

「……あ゛ぁ゛」

 

 

 普段見上げることのない天井を見上げて大きく息を吹くと汚い声も一緒に出た。おっさんかよ。するとピタゴラスイッチのように連動して前の椅子に座っていた人物がくるりとこちらを向く。ニヤニヤしている顔が非常に腹立たしい。

 

 

「どーだい、幸せだろう。アイドルに囲まれる生活は」

「メンタルが死ぬ」

「ッハー!w」

 

 

 こいつの笑い声マジでうざすぎにも程がある。単芝なのが余計に腹立つ。あぁなったのも元はといえばすべてこいつのせいなのに。一発ぶん殴ってやろうか。

 

 俺の目の前でヒーヒー言いながら爆笑しているのは、何を隠そう俺が346プロに入ることになったきっかけであり元凶であり大戦犯でもある今西。こいつが俺を誘わなければそもそも俺が3日間も神経すり減らしながら過ごすことも今現在足が筋肉痛になることもなかったのだ。

 

 

「てかなんでお前俺が今寮にいること知ってんだよ」

「なんでって、そりゃ千川さんに寮住まいを提案したのは俺だし」

「お前ぶっ飛ばすぞ」

 

 

 こいつは元凶じゃなかった。ガンであり大大大戦犯だった。

 戦犯度でいうとから揚げに無許可でレモンをかけずに飽き足らず、『こっちの方がうめぇからwww』とか言いながら特性の甘いみそタレをぶっかけるくらいの戦犯。あと不必要に閃光玉投げまくってモンスターをウロチョロさせるくらいにも戦犯。

 一回滅んだ方がいいレベルだわマジで。

 

 

「それはいいんだよ。千川さんもノリノリだったしさ。同罪同罪」

「てめぇいつか覚えてろよ……」

「おぉ~……怖いねぇ……」

 

 

 黄〇のモノマネのクオリティが無駄に高いのむかつく。今ならこいつのすべてにむかつきそうなくらいにはムカついてる。もはや無限ループ(?)

 

 

「それで、3日間で何人の女の子と話したんよ」

「何人って……えーっと」

 

 

 寮に行ってからまず周子さんと紗枝ちゃん。次の日の朝に飛鳥。二度寝してから前川と多田と安部さんと夏樹さん。戻って昼寝して起きてから志希ちゃんさんと城ヶ崎さん。そんで昨日は新田さんと蘭子ちゃんとアーニャちゃんか。全部で何人だ?

 

 

「きゅう……じゅう……10人か?」

「……お前、結構やり手なんだな。あと一人増えたらサッカーチーム出来るじゃん」

「これでも会わないように頑張ったんだぞ」

「主人公補正って怖いな」

「被害者補正って言え」

 

 

 元々誰一人として会うつもりもなかったところを10人も会ってしまったんだぞ。

 出会いには感謝、なんて言葉もあるが出会いが多すぎたら多すぎたでそれはそれで問題がある。例えば俺のメンタルが死ぬとか凛がなんか怖くなるとか。色々ある。

 

 

「じゃあさ、もう一人増やしてサッカーチーム作れるようにしね?」

「人の出会いをチームつくりみたいな感覚でやるのやめてくんね」

「いいじゃん。面白そうだし」

「アホか」

 

 

 やめろ、いちいちサッカーチームで例えるな。その感覚で来られると舞〇イレブンを思い出すんだよ。

 

 ちなみに意味が分からない人のために説明すると、舞〇イレブンっていうのは舞〇っていうおっさんの付き合ってきた女性の人数が11人で『サッカーチーム作れるやん!』の発言から生まれた言葉である。

 人の元カノでサッカーチーム作れるななんて言葉を人生で目にする言葉あるなんて夢にも思わなかった。

 

 

「お前も聞いたことくらいはあるだろ。俺らの同級生にアイドルがいるってさ」

「あー……聞いたことあるような。無いような」

「興味ないのかよ」

「あんまアイドルとか興味ないんだよね」

「なんでお前アイドル部門入ったの?」

「お前がそれを俺に聞ける勇気だけは評価してやる」

 

 

 こいつほんとにすげぇな。今西の言った言葉を全部『いやいや、お前のせいやからな!』っていうだけで返せるってのが凄い。

 

 

「『速水奏』名前くらいは知ってるだろ?」

「……聞いたことあるような。無いような」

「少しぐらい興味持てよ……」

 

 

 だって気にしてこなかったんだもん。仕方がないじゃない。

 そりゃあ同級生に甲子園でめちゃくちゃ活躍した子がいるなら興味は示すし話しかけにはいくよ。ただアイドルでしょ? 女でしょ? そもそも他クラスでしょ? そんなのムリムリムリのカタツムリ。

 

 

「ったく、この音楽バカが……」

 

 

 そういうと今西が鞄の上に置いていた俺のスマホを手に取り俺の指に押し付け、無理やりロックを解除するとYou〇ubeを開き何かを検索しだす。

 履歴とか見ても無駄だからな。それのYouTubeの履歴ほとんど野球と音楽とYouTuberばっかりなんだから。

 

 

「ほらこれ。聞いてみろ」

「Wi-Fiないんだからやめろよな……来月までもーちょいあるんだし」

「イヤホンつながってんだろ! いいから聞いてみろって」

 

 

 俺のスマホあんまり通信容量ないんだから勘弁してくれよほんま。

 そんなことを言っても今現在使われている通信量は帰ってこない。無駄になるくらいなら聞いてやるとしぶしぶイヤホンを耳に掛ける。そして少し経つと、俺は体を強大な鉄球で殴りつけられたような感覚に襲われた。

 

 エレキベースやドラムのバスではない、もっと太く熱い重低音がイヤホンから漏れ出しそうなほどに暴れてる。クラブで聞こえてきても遜色ないようなサウンドは一気に俺の心を揺さぶり、鷲掴みにする。

 それに乗るのは妖艶な歌声。歌声もメロディもすべて飲み込みそうな圧倒的なサウンドに負けず、かつ違和感のない加工の入ったボーカルの歌声は素人の語彙力では到底表現しきれない魅力に溢れていた。

 

 

「……何、この曲」

「『Hotel Moonside』……速水奏のソロ曲だよ」

「これが346の作る楽曲……」

 

 

 正直に言う。舐めてた。完全に舐め腐ってた。アイドルの歌う楽曲なんざ、オタクに媚びが売れれば歌声やサウンドなんかどうでもいい。そんなレベルだと思っていた。

 

 それがどうだろう。今イヤホンから流れている曲はそう言った代物か? 否、全くの別物だ。

 プロが作った本気の楽曲。それを歌うアイドル。全てのレベルが段違いに高い。俺の想像していたアイドルソングではない。こんなの完全にEDMだ。それも本格的な。

 

 歌詞だってそうだ。アイドルが歌うような夢掴むだのそんな言葉なんかじゃない。例えるならば女優が歌うようなそんな代物だ。これを俺と同い年の女子高生が完璧に自分のモノにしているなんて正直考えられない。

 

 あっという間の5分半だった。もっと聞いていたい。鬼リピしたい。

 そんな俺の心理は、まさに俺が好みの曲を見つけた時に覚える感情そのものだった。

 

 

「どうよ、感想はあるか?」

「……めっちゃ良かった」

 

 

 そもそも俺がEDM系に弱いといえばそれまでなのかもしれない。とはいえ、こんなんでもそれなりに音楽好きだ。何でもかんでもいいなんて言う人種でもない。

 

 

「すげぇだろ? 今のアイドルの歌ってこんなところまで来てるんだぜ?」

 

 

 自慢げに意地悪な笑みを浮かべる今西の顔が何故か、アイドルは甘くないと、そう語っているように感じる。

 俺が入った会社ってこんなに凄いところだったのか。今まで全くなかった実感が、初めて音楽という身近な存在を通すことで急に俺にストレートに伝わってくる。

 

 

「速水奏だっけか」

「おう」

「名前、覚えとくわ」

「そりゃあ良かった」

 

 

 今日、新しい音楽への扉を開くことが出来た。それだけでも今日という一日は価値のある一日になったわ。感謝。GG。

 とりあえず後でaviciiもっかい聞き返すわ。あとさっきの曲の作曲者の人と、速水奏の名前も一緒にな。




タグに奏を追加しました。なんか思ったよりも深く絡んできそうなんで完全に後付けですね。そういうこともある(よくあるとは言っていない)
あっ、感想お待ちしております。


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主人公暴走は大体強化イベントフラグ

前回の時に感想がえぐいほど来ててびっくりしました。超嬉しい。小躍りしたくなっちゃう。
今更ですけど、ちょっと前にあったベースの見た目に関する文を変更してます。文に該当するアトリエのベースがなぜか見つからなかったの。あの時の自分は何を書いていたんだ。


 その日はあっという間だった。

 

 いつもは退屈で意識を飛ばしてしまう授業も、今日にいたっては何も聞こえなかった。そりゃあそうだろう。授業中は話も聞かずに通信料も気にしないで動画を見続け、紙切れにずっと耳コピのTAB譜を書き込んでいたんだから。

 

 唯一の息抜きの体育も楽しめず、昼飯だって購買にも行かずに何も口にしなかった。

 頭から離れないのはあの曲。そして、そのあとに今西が見せたあるベースを弾いてみたの動画。

 

 あれほど戻るのはだるいと感じていた女子寮の門をくぐることもなんとも思わず、初めて見る女性が居たのも気に留めずに、俺は部屋に入りバッグをベッドに文字通り投げた。

 ノートPCの電源を入れ、立てかけてあったベースを手に取り、制服のシワも気にすることなくそのままベッドに座り込む。

 少しの待ち時間も待てないというように、指を温めるために適当な曲のフレーズを思いつく限り弾いてみる。違うな、やっぱり俺が弾いてみたいのはこの曲じゃない。

 

 

「焦るな……まだ笑うんじゃない……」

 

 

 電源の付いたノートPCとヘッドホンアンプ、それをベースに差し込んで耳にイヤホンをかける。ベースのボリュームを少し原曲より大きめにして、鞄から耳コピをしたTABを取りだす。YouTubeを開き、学校で幾度となく再生した動画をクリック。すると、何度も聞いたサウンドが流れてくる。

 

 ここで終わりではない。ここからやるのは動画でやってたものの()()()()()だ。それが終われば、今度は()()()()()()()()()()()していく。制限時間はない。終わったその時が俺の気が済んだ時。

 これでも俺は音楽に関する知識は浅いが、親の教育の甲斐もありそこそこの相対音感が備わっている。耳コピは得意中の得意だ。動画で手元を見せてくれているのならば尚更楽だ。

 

 まぁ、それでも完璧に弾けるようになるにはそこそこ時間はかかる。難易度で大きく変わってくるが、この楽曲ならとりあえず完璧に弾けるようになるまでにもざっと2日は余裕でかかるだろうか。スラップも多いが繰り返しの部分も多いのでさほど時間はかからないだろう……とは思う。

 

 

「最初は……こうだな」

 

 

 一音一音動画を見て、音を確認しながら少しずつ精度を高めていく。耳コピは地道な作業だ。

 けど塵も積もれば山となる。最後には自分の気に入った曲を弾きこなすことが出来るという見返りを最初から知っていれば、その作業も苦ではなくなる。

 

 さぁここからは地味な単純作業だ。俺の集中が切れるか、指が限界になるか、弦が限界になるか。デスマッチと行こうぜこの野郎!

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「それでー? 3日間毎日オールしながら不眠不休でベースを弾き続けてたらこうなってたと?」

「……面目ないです」

「馬鹿だねぇ」

 

 

 倒れました。えぇ、見事に倒れましたよ。月曜のあの日からろくに飯も食わずに3日間オールして学校に通いながら不眠不休でベースを弾いてたら、自室のドアの前でバタリと綺麗にね。

 

 不眠不休は言いすぎたな。休んでたし寝てはいたんだよ。学校で寝てたからいいやと思って家では寝てなかったけど。

 それにろくに飯も食わないことも嘘。ちゃんとコンビニでおにぎり買って食べてた。中身も見ないで買ってたからあんまり好きな味じゃなかったけど。

 

 現在私は周子さんの部屋のベッドで寝たまま、あまりの疲労で動けなくなり寝たきりになっている。本来ならば今すぐベッドを出て土下座して自室に戻りひきこもりたい気分なんだが、マジで体が動かねぇ。疲労って凄い。

 

 

「もー、フレちゃんが見つけなかったらどうなってたことか」

「面目ねぇ……」

「いやー、あまりにも君が綺麗に倒れてたもんだからさ~。フレちゃん本当に湯煙殺人事件が起こったのかと思ってたよ~。ヤ〇チャみたいだったよ?」

「生きてます一応」

 

 

 周子さんがフレちゃんと呼ぶ人物。その人がものの見事に部屋の前でヤ〇チャ化してた俺の第一発見者である宮本フレデリカさん。

 見た目はまさにフランス人形をそのまま擬人化したようなもの。左サイドだけ若干長めの金髪ショートヘアーにぱっちりと開いた真ん丸の大きな瞳。どうやらフランス人とのハーフらしく、その端麗な容姿も納得といえる。

 

 これ全部周子さんに教えてもらった情報ね。フレデリカさん本人曰く『フレちゃんフランス語とか全然喋れないんだけどね~』らしい。それ残念ハーフにありがちな奴やん。

 

 

「一応志希ちゃんからもらった薬を飲ませておいたから元気になると思うんだけどね~」

「ちなみにそれどんな薬なんですか?」

「ん~わかんなーい!」

「えっ」

 

 

 さっきから不思議だったんだけどさ。俺滅茶苦茶意識ははっきりしてるのに身体だけまったく動かないんだよね。

 本当にミリ単位たりとも動かないの。感覚はあるのに全く動かないの。微動だにしないの。意識ははっきりしてるのに不思議だね。それ本当に大丈夫な薬?(白目)

 

 ていうか今更だけど志希ちゃんさんって薬とか作れたの?

 あの人ってそっち系の人なのか。天才系の人なのか。ただの猫キャラで前川と被ってるやんとか思っちゃっててごめんな。ちゃんとアイデンティティあったんやな。前川みたいないじられやすいとかいう残念なアイデンティティじゃなくてよかったな。

 

 

「まー……死ぬことはないと思うから大丈夫だよ。志希ちゃんそういう薬作んないし」

「どういう薬なら作るんですか?」

「えーっと……今までだと惚れ薬とか媚薬とか一時的に性別が変わる薬だとか」

「あっ、もういいです」

 

 

 ねぇそれ絶対に変な薬飲まされたじゃん。意識だけはっきりしてるけど体は動かなくなる薬とかほんとに存在してるの? いや、存在してるからこうなってるんだろうな。何が天才系やねん、ただのマッドサイエンティストやないか。

 

 

「そいで? 何をそこまでして弾きたい曲があったんよ」

「弾きたいっていうか、多分弾けてはいたんですけどね。Hotel Moonsideって曲で……」

「あっ、それ奏ちゃんの曲じゃーん!」

「知り合いなんすか?」

「うん。私たちみんなよく奏ちゃんとは会うよ? 気になってるなら連絡先あげよっか?」

「遠慮しときます」

 

 

 まさかこの人たちに奏さんとのコネクションがあるとは。知り合いの知り合いの曲を弾きまくってた結果ぶっ倒れて介抱されるってそれ恥ずかしすぎんか? まぁ今の俺は恥ずかしくなって穴の中に入りたくなったとしても全く動けないんで何にもできないんですけどね。畜生。

 

 

「ていうか来るんだけどね、奏ちゃん」

「どこにですか?」

「ココ、ココ。周子ちゃんの部屋に」

 

 

 そういうとタイミング良くガチャっと扉が開いて、その人物が姿を現す。

 

 首がギリギリ動くので何とかして首を捻じ曲げてドアの方を見ると、ものの見事に見覚えしかない制服。ただしものすごく着崩してある。見た感じ、第一ボタンどころか第二ボタンも開けてねぇか?

 てか下から見上げる形だと胸が邪魔で顔がよく見えねぇ。この人も例によって胸がでかいんじゃ。その割には滅茶苦茶スタイルいいんじゃ。おっとあんまり見るのはいけねぇ。セクハラになるからな。

 

 

「……あら? 見たことある顔じゃない。周子が言ってた子ってこの子だったの」

「……へ?」

「奏ちゃん、松井くんと接点あったんだ」

「少し、ね」

 

 

 接点なんてないない。何なら今日初めてこの人と実際に会ったんだから。

 

 おもむろに速水が手に下げてたコンビニ袋を机に置いてこちらに寄ってくると、急に俺の顔を上からのぞき込んでくる。

 近いが。滅茶苦茶近いしどうした急に。いや、待て言いたいことはわかる。けど俺も動けないんだ友達のベッドで寝ている事実は許してくれすまん。

 

 初めてちゃんと間近で顔を確認できたけど、例によってとっても美しいお顔をしている。もうなんかほんとにバカのバイキングみたいなレベルの強キャラしかいないのな、ここな。

 

 少し蒼っぽい黒髪ショートヘアにどちらかというと大人しそうといった印象を受ける顔立ち。

 な、はずなのに、なんだか唇が滅茶苦茶色っぽい。特別大きかったりアヒル口だったりしてるわけでもないのに、なんか魔力的なものがある気がする。わからんけど。

 てか近い近い近い近い! こんな近くで女の子の顔を見るなんてない! 滅多にない!

 

 

「やっぱり、かわいい顔してるじゃない」

「ど、どーも」

「ふふっ、そんなに硬くならないでもいいのに」

「いや、硬くなるも何も動かないんですよね。体」

 

 

 いやいや、奏さん。わろてる場合じゃなくてほんとなんですよねこれが。ほんとに比喩抜きで。

 にしてもびっくりした。あんな至近距離で見つめられるなんで思わなかったんだもの。

 

 

「松井くん、意外と女の子に耐性あるんだね~」

「……へ?」

「いやー、奏ちゃんくらいの美人に見つめられて照れない人なんていないのに、って思って」

「シンデレラプロジェクトのPさんでも少し動揺してたもんねー」

「俺もめっちゃ動揺してたんですけどね」

「でも表情に出てなかったわよ? 少し意地悪したくなるくらいには」

 

 

 やめてくださいよ。今意地悪されてもなんも抵抗できないんだから。しかも感覚はあるんだからこしょぐられた日には呼吸困難になって簡単に死ぬまである。

 

 

「てか俺、速水さんと接点会ったっけ……?」

「速水さん、なんて。そんなよそよそしい呼び方しなくてもいいじゃない。タメなんだし、奏って呼んで?」

 

 

 待って、この女の人ヤバイ。全然ペース掴めないんだけど。フレデリカさん並みにペース掴めない。フレデリカさんとは全く別物のペースの崩され方してるんだけど。

 

 

「てか速水さん他クラスだし……」

「奏」

「いや速水s」

「奏」

「はy」

「奏」

「………………かなで」

「ふふっ、最初からそう呼んでくれればいいのに」

 

 

 くそったれ! なんなんだこの女は! 女の子の下の名前呼び捨てとか凛と多田くらいしかしたことないんだぞ! なんでかって? 恥ずかしいしなんか罪悪感あるからに決まってんだろうが!

 

 

「私も光って呼ぶから」

「好きにしてくださいや……」

「じゃあそうさせてもらうわ」

 

 

 最初は小悪魔系美少女なんて思ってたけど、これ小悪魔どころちゃう。悪魔や。女王や。

 なんだかこの女の子があの曲を完璧に歌えていたのが今ならわかる気がする。ほんとにこの子俺と同級生か? 年齢詐称とかしてない? 大丈夫? 留年してない?

 

 

「てか、なんでここに奏がいるんよ」

「あたしが呼んだから!」

「なんで呼んだんすか……」

「なんで倒れたのかよくわからんけど、なんとなくポカリとかご飯とか色々買ってきて貰ったんよ」

「いやほんとにすいませんでした。ご足労おかけしました」

「今度晩御飯おごってな~」

「それにフレちゃんがりんごで浜〇雅功の顔掘ってあげたから食べな~」

 

 

 いやなにそのりんご。しかも滅茶苦茶そっくりにできてるし。なにその美術センス。すごっ。なんでそこだけそんなに凄いの。滅茶苦茶笑ってるやんそのハマちゃん。完全にナハハ!って聞こえてくるじゃん。

 

 10分後、俺の体は瞬く間に元気になり。その場で無事復活した。

 フレデリカさんが俺に飲ませた薬は一種の栄養剤みたいなものだったらしく。体を強制的に動かなくさせることで無理やり休ませてその間に栄養補給させて100%の力になったときに戻るようになるとかいう医学的に見たら穴しかないような理論でできた薬だったらしい。その薬多分流通させたらめちゃくちゃ売れると思うわ。




この小説の平均評価が現在☆7ちょいなんですけど、☆9入って大喜びしても平均少ししか上がらないのに☆1で凹んで平均もダダ下がりするの、この世の数字の平均という文化の欠陥だと思うのでもう少し下げ幅減らして欲しいって毎回思います。
この世の常識にあらがっていけ(アホ)


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修羅場は作るだけなら割と簡単

えー、皆様のおかげで評価が赤ゲージまで届いちゃいました。びっくりした。あとがきパワー凄すぎるだろ。
ていうか評価入れてもらった際についてきたコメントで毎回泣いてました。人の良心ってホントに刺さる。好き。みんな好き。

あとなんとお気に入りも5400件、総評も8500まで行きました。ヤバすぎる。怖い。5400人に見られてるって普通にえぐみ。


「全く……ひでぇ目にあったぜ……」

 

 

 まぁどれもこれも全部飯とか睡眠とか二の次にしてた自分のせいなんですけどね。今度志希ちゃんさんに会ったらお礼言っとかな……お礼でいいのか? いや、まぁお礼でいいのか。うん。

 

 志希ちゃんさんの薬のおかげで完全復活を告げた俺はその瞬間布団から飛び出してその場にいた三人に土下座をとお礼をかましてきた。三人ともシンプルに俺のことを助けてくれたからね。いやマジで助かった。

 そんなわけで買ってもらったポカリやらおにぎりやらをお金を渡す渡さないの攻防の末、「私、光よりはお金持ってるのよ?」という最強の反撃を食らってありがたく頂戴し帰路についているところでございます。まぁ、帰路って言っても俺の部屋すぐ隣の部屋にあるから帰路も何もないんだけどね。

 

 

「ただいま……」

 

 

 鍵があけっぱになっている。おそらくぶっ倒れる前に鍵だけは開けてたのだろう、不用意な奴め。ここで盗難なんて万が一にでも起きることなんてないんだろうけど。

 

 取りあえず腹が減ってるわけではないんだけど貰ったおにぎりとかはありがたくいただいておこうかな。腹が減ってないっていうのも空腹が限界突破した先にある腹が減っただから。

 なんで空腹の先に空腹でない部分があるんだろうな。これ普通に人類最大の謎だろ。まぁ人類最大の謎ってもっとたくさんあるんですけどね。知らんけど。

 

 ……ん? なんか扉の向こうからどたどた聞こえるんだけど。もしかしてリビングに泥棒いる? 怪盗いる? 腐女子に大人気のキッドの方かちょくちょく幼女になる探偵に負けてばっかの方かどっちだろ。 はたまた神聖か?

 

 

 バンッ!

 

「うわびっくりした!?」

「……」

 

 

 なんだよ……凛かよ……びっくりさせないでよ。危うくびっくりして女の子になるところだったわ(?)

 リビングの扉が割と勢いよく開いてそこそこの音がしたもんでびっくりしたけど、中にいたのはよく見る人。怖い人じゃないよ。ただの幼馴染みたいなもんだよ。

 

 というか凛がなぜかうつむいているせいで見事に顔が見えない。ちょっと貞子みたいになってる。そのまんま近づいてくるの怖いが。顔が見えないが。ねぇ、怖いが。怖いが!?

 

 

「……へ?」

「……っ」

 

 

 なんか抱きつかれたんだけど。僕びっくり。もうさっきからびっくりして逆に落ち着いてるよね、うん。あまりにもいろいろと急すぎて手に持ってたコンビニ袋と制定鞄落とすかと思ったけど何とか死守した。えらい。

 

 ってかあれ? 泣いてね? 凛ちゃん泣いてね? なんかすすり声が聞こえるんだが。

 どうした? 一人で寂しかったか? そんなキャラではないだろうに。ごめんな、普通にちょっと倒れてたんだ。いやマジで倒れてるところ見られてなくてよかった。まだそうと決まったわけじゃないけど。

 

 

「えーと、凛?」

「……めん」

「はい?」

「……ごめん」

「いやなんで?」

 

 

 なんで僕急に謝られてるの? もしかして俺のベースに傷つけた? それなら構わん。別に気にしないし。 皿割った? それも構わん。新しいの買えばいいし。もしかして今ハマってるゲームのデータ消しちゃった? それは少しだけへこむかもしれん。

 

 

「きいてたのに、なにもしなかった……」

「聞いて……何を?」

「なにをって……」

 

 

 ガチャッ

 

 

「あら、開いてるじゃない? ちゃんとカギはしとかな……」

「へ?」

「誰……?」

 

 

 凄いタイミングで扉が開いてついさっきまで聞いてた声が聞こえてくる。待って、いまこの状況を人に見られるのは不味い。たとえどこの誰であろうとこれは不味い。しかも声の主的にこの人にばれたら不味い! なんで最初にインターフォンを鳴らさねぇんだ!(困惑)

 

 

「……ふーん、光って中々やり手だったのね」

「いや、待って違う」

「光、誰、この女」

「こらっ! 敵意をむき出しにしないの!」

「誰って……うーん、光のオトモダチってところかしら?」

 

 

 何で奏もそんなに煽るような言い方をするんだよ。いや待て、こいつ元からそういう話し方だったか? 初めて会ってから俺奏の手玉に取られてた記憶しかないぞ?

 

 

「嘘。光のこと下の名前で呼ぶ女がいるなんて私知らない」

「下の名前で呼ぶくらい当り前じゃない? ねぇ、光?」

「なんでそんなに煽るんだよ奏ぇ……」

「奏?」

「あっ」

「あら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんかバチバチやってる二人をそのままにしておくわけにもいかず、無理やりリビングまで上げてとりあえず凛が泣いていた理由を聞いてみたところ、案外すんなりとすべてを話してくれた。というよりも、そんなにややこしい話でも難しい話でもなかった。

 

 

「ふーん……光があの緑のアシスタントさんにそんな話をね……」

「その光って呼ぶのやめてくれない?」

「いいじゃない名前くらい」

「聞いてたって凛あそこにいたのね」

 

 

 話を簡単に要約してみよう。俺が千川さんに色々と話をされてたあの朝に凛もいたらしく、急に部屋に入ってきた千川さんから身を隠すためについつい風呂場に身を隠してしまい、その場で色々と俺と千川さんの話を聞くことになったらしい。

 ていうか、確かあんときって俺寝落ちしたけど多分凛の野郎いっちょに寝てるよな? それは許さん。そういうのは将来できる大事な人のために取っとけマジで。

 

 俺の話に関しては隠していたことってわけでも全くなかったからいいんだけどな。千川さん曰く、()()()()()らしいしな。

 

 

「私も次の日からはいつも通りに行こうと思ってここにきてインターホン鳴らしたんだけど、全く反応がないから珍しく気に病んでるのかと思って……」

「あー……次の日って月曜か」

「月曜日ってちょうど3日前じゃない」

「そうだね」

 

 

 3日前といえばちょうど俺が飯も食わすに不眠不休でHotel Moonsideを狂ったようにベースで練習し始めた日だな。インターホンとか鳴ってたのかよ。マジで全然気が付かなかった。

 

 

「一昨日も昨日も反応がなくて……今日来たら反応はないけど鍵は開いてたから……」

「それで中にいたと」

「でも光はいないし部屋も荒れてて……何かあったんじゃないかと……」

「あっ、そういうことね」

 

 

 さっき言ってなかったけど、こいつらをリビングに挙げる直前に部屋に散乱してたゴミを掃除したんだよね。

 ゴミっていうのは空になったペットボトルやエナジードリンクの空き缶。それにおにぎりを包んでた透明なアレとかな。

 あんときはマジで別にあとで片づけるしいいやって思ってそこら中にポイ捨てしてたんだよな。空き缶とかはこぼれる心配ないし。いくら潔癖症ではないとはいえあれはヤバかったな。今度から近くにゴミ箱を置くようにしないと(違う)

 

 

「あの時私が無理やりにでも光に会ってたらって思うと……ごめんって……」

「……こんな優しい子を泣かせるって。どういうことをしたかわかってる?」

「いやほんとに……反省しきっております」

「無事だったらもう何でもいい……」

 

 

 俺だって心当たりがある状況で凛と急にコンタクトが取れなくなってたら血相を変えて都内中を探し回る自信がある。そうやって思うと相当凛には心身的に負担をかけてたのかもしれない。別に俺のことなんか気にしなくてもいいのにって気持ちもあるが、心配させたのは事実だ。今度なんかお詫びしなきゃな。

 

 

(光が倒れてたってことは黙っててあげる)

(ごめんマジで助かる)

(周子たちにも根回ししておいてあげるから)

(天才)

 

 

 唯一の救いは凛が俺が倒れたってことを知らなかったことだろう。この事実を知られたらワンチャン泣くどころじゃ済まなくなる。

 一回小学生の時に野球部の試合で頭部死球食らって軽く脳震盪みたいになりかけたことがあったんだけど、その時たまたま凛が試合を見に来ててしばらく俺から離れてくれなくなったことがあった。あの時は小学生だったし、いまでは違うと思いたいけどな。こいつもアイドルなんだし。

 

 

「それで、話は変わるんだけど」

「はい?」

「この女の人は誰なの」

「あら? 私のこと?」

 

 

 さっきまでしゅんとしていた凛のオーラが急に攻撃的になる。嘘でしょ? ここに来てまだやるの? そんなに奏に敵意向けるんだ(小並感)

 そんなに俺に女友達がいるのって珍しかったっけ。ふつうに小中高と女の子とは話してきたつもりなんだけど。

 

 

「光のことを下の名前で呼ぶ女にろくな女なんていたことないんだけど」

「そうなの?」

「今までもそうだったじゃん。顔目当てのクソビッチが光に近づくから私が気を張ってたんだよ」

「初耳なんだけどそれ」

 

 

 俺の名前を下の名前で呼んでた女の子って誰だ……? 小学生の時は大体みんな男女下の名前呼びだったんだけど。となると中学か? 確かに俺の名前を下の名前で呼んでくる女ってすっげぇチャラかったりあざとかったりしてた覚えはあるけど。あれもしかして凛抑えてたの? お前学年的には下のはずなのにそんなことできるの? 凄いが。怖いが。

 

 

「でも光が異性を下の名前で呼ぶなんて()()()で初めて聞いたし」

「そうだっけ? 割と結構下の名前呼びするぞ。飛鳥も下の名前で呼んで……」

「何?」

「いやなんでも」

 

 

 なんとなく奏なら対処できないけど飛鳥はなんか不味い。絶妙に空気が食い違いそうだけどそれでも会わせるわけにはいかない。飛鳥あれでも14歳なんだからな! そういや紗枝ちゃんも志希ちゃんさんも下の名前呼びだな。黙っておこう。

 

 

「名前の呼び方ひとつで特別扱いしてもらおうなんて浅いわね。変なあだ名で呼び合うバカップルじゃないんだし」

「バカップルならそれでもいいんだけど」

「違うが」

「否定されてるけれど?」

「じゃあバカップルじゃない」

 

 

 凛ちゃん大丈夫? ネジ壊れてない? さっきから普段のクールビューティはどこへやら見たいになってんだけど。

 そろそろ俺ヤバいぞ? 渋谷凛のキャラが崩れすぎてて気持ち悪いです。経緯が感じられないです。的な感じのことをフルボッコに言われてもなんも言えなくなるぞ?

 

 

「でも? 私と光は()()()()だから。貴方の知らない姿を知ってたり……ね?」

「そんなこと言ったら私だって小中と同じ学校だったんだけどね」

「凛は学年が違うし奏はクラスが違くてついさっき初めて話したばっかりなんだけどな」

「「うるさい」」

「はい」

 

 

 なんなんだよこいつら。何で俺がハーレム主人公みたいな立ち位置になってんだよ。

 しかも奏は絶対違うじゃん。こいつは絶対に凛の反応を見て楽しんでるだけじゃん。こいつ天性のSだろ。ドSだろ。ニュースーパーサディストだろ最早。

 俺、奏と初めて会話してから多分1時間たったくらいなんだけどなんだか奏のことが大分分かってきたぞ。こいつあれだな? 攻め手に回したらいけないタイプだな? よしわかった。こうなったら俺は静観してるぞ。知らない。あとは凛が何とかしてくれるだろ。

 

 結局このまま放置してたら2時間くらい言い争いして、結局は奏の帰宅時間による時間切れで幕を閉じた。なんか気が合いそうな気がするのになぁ(小並感)




マジで色々諸々ありがとうございます!
5400人中3200人くらいの感想なら受け止めきれるんで感想とかもくれたらうれしいです!
目指せ、感想書くのをルーティンにしてもろて毎回ニヤニヤモチベアップ計画。


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陽キャへの第一歩はまずLINE交換

新社会人です。疲れました。はい。
感想いっぱいで復活しました。やったね。


「そんなわけで速水奏の連絡先ゲットしたわ」

「お前ほんとにやべぇな」

 

 

 会話のキャッチボールとマジモンのキャッチボールをするついでに一番最初に速水奏とか言う女の存在を教えてくれた元凶に報告だけぶん投げておく。

 ちなみにまだ放課の時間だからまわりには誰もいないぞ。授業中にやったら周りのやつらに聞かれるからな。別にやましいことではないけど。

 

 やっぱり体育といえば野球だよな。

 サッカーも楽しいけど俺には野球が性に合っている。まぁサッカーより野球の方が好きな理由はあんまり走らなくていいからってだけだけど。それに俺キャッチャーだから守備の間は基本的にしゃがんでればいいんだよね。楽極まりない。

 

 

「ほんとにサッカーチーム出来るじゃん」

「今やってるのは野球だけどな」

「うるせぇ」

「そういや宮本フレデリカって人とも話したんだけどお前知ってる?」

「お前ほんとにどうなってんの?」

 

 

 どうなってんのって言われても、倒れた俺を介護してもらっただけだが?

 やっぱり美人なアイドルと話せるようになるには自分の体の一つくらいは犠牲にしなければならないってことなんだろうな。そこまでして女の子とお近づきになりたいの? って言われたら俺はNoって即答するけど。そんなにアイドルには興味なかったし。

 

 

「最近死体みたいになりながら過ごしてんなと思ってたのに抜け目ないなほんと」

「死体て……」

「目が死んでたもん。泳ぐことを放棄したマグロみたいになってたもん」

 

 

 なんつー例えだよ。全く想像つかねぇよ。マグロってあれか、泳いでないと死ぬってそういう意味か? 俺は魚博士でもないしさかなクンさんでもないんだよ。大トロがなんかおいしいってことしか知らねぇんだよ。

 

 そんな話をしているとグラウンドになんか他クラスのやつらがちらほら入ってくる。

 おいおい、あいつら今日グラウンドじゃねぇだろ。誰だよ体育係。伝達ミスでもしてるんじゃないのか? はよ体育館行ってこい。今日は待ちかねた野球の時間やねんぞ。

 

 

「そういや今日ってグラウンド合同だっけ」

「えっ、そうなの?」

「お前昨日話聞いてなかったの?」

「聞いてなかった」

「じじいがよ……」

 

 

 ジジプマイクラじゃないだけまだいいだろ。卯〇コウかよ俺は。

 でもなれるもんならなってみたいよな、御曹司。生粋のエンターテイナーだからな。なんだかんだ人生楽しそうだし。でもなんか闇深そうだし。色んな意味で2.5次元な人物だよな。あぁいうのを推せるなんて俺くらいしかいねぇよな(コウガール特有の思考)

 

 

「それでどこのクラスと同じなん? どーせ何処とやっても知らん奴しかいないだろーけど」

「7組」

「あぁ、やっぱわかんねーや」

「速水奏がいるクラスって言った方がいいか?」

「は?」

 

 

 後ろに回した右手から軟式球がポトリと落ちる。嘘でしょ? いまなんて言った? 速水奏がいるクラス?

 

 ふーん、あいつって7組だったんだ。全く知らなかった。っていうか7組だったらそもそも校舎が違うじゃねぇか。ちなみにみんなは知らないと思うけど、俺たちの学校は1~5組と6~9組で校舎が変わる。一応コースは同じなんだけどね。その中でもスポーツ進学やら大学進学やらで細かく分かれてるから仕方がない。

 まぁスポ進は8組で大学進は9組だから6組と奏のいる7組は理不尽に離されている。食堂遠いからちょっと可哀そう(小並感)

 

 

「でも体育って男女別じゃなかったっけ?」

「そうだけどグラウンドは同じだろ」

「女の子危ないじゃん」

「俺に言うなよ。今までなんも言わなかったくせに馬鹿か?」

 

 

 くっそ。確かに明後日の方向にファールでも飛ばさない限りは女子が使ってる方になんかボールは飛んでかねぇしな。

 今日だけ女子が中とかないかな。無理か、うちのグラウンドバカみたいに広いもんな。

 

 

「ほら、来たじゃん。お待ちかねの方が」

「……今西って話したことあるの?」

「無くはないな。サイン持ってるし」

「お前ってドルオタだっけ?」

「いや? 将来大物になるだろうな~って思ってサインだけ」

 

 

 最低じゃねぇか。いや、最低ではないけど。

 そういやこいつってお父さんかおじいちゃんか叔父さんかはわからんけど346プロに身内の人がいたな。あの人とはあれ以降一回も会ってないけど。だからこいつアイドル事情とか詳しいのか? いや、そんなことはないか。気のせいやな。

 

 向こうから長袖のジャージ姿で歩いてくる速水の姿だけ見てると本当にモデルみたいだと思える。

 学校指定のジャージ着てても顔と胸のせいでスタイルがいいのが分かるもん。周りの男子も隠す気もなくガン見してるし。それもあいつは気にも留めてないし。

 あっ、こっち見た。無視しよ。

 

 

「今西ー。カーブ行くぞー」

「お前カーブ投げるって言って毎回暴投するだろやめろ」

「あら、今西君に光じゃない。二人とも3組だったの」

「おっす。オイ、呼ばれてんぞ」

「俺は知らねぇ」

 

 

 俺は知らんぞ、何も知らない。アイドル速水奏なんて初めて見た……って、ん?

 

 

「あれ? 奏って今西と知り合いなの?」

「知り合いっていうか……会社でよく見るから」

「……どゆこと?」

「あぁ、俺、おじいちゃんのおかげで346の機材使って練習させてもらってんだよね」

「何て贅沢野郎だ」

「いやぁ、コネ万歳だよな。マジで」

 

 

 こいつうちの部活の中でもずば抜けてギター上手いと思ってたけどそういうことか。

 そりゃあ、あんな機材のあるところで練習させてもらえてたらモチベも上がるしめっちゃ練習もしたくなるよな。シンプルにうらやましすぎる。まぁ今の俺ならやろうと思えばできるのかもしれんが。申し出をする勇気はないよね。この根性なし!

 

 

「……っていうことは? お前アイドルの連絡先ゲットし放題じゃねぇか! 最低だな!」

「てめぇと違って見境なしに連絡先を交換して回るヤリチンじゃねぇんだよ」

「あら? 光ってやっぱそういう……」

「言っておくが、年齢=彼女なし歴だぞ」

 

 

 高校生になったらすぐ彼女ができると思ってたんだけどな。どうやら完全に思い違いだったらしい。

 

 というか、俺って人生の中で一度も一目惚れとかをしたことないんだよな。

 周りのやつらの話を聞くと結構あるみたいなんだけど。おかしいなぁ、なんで俺だけないんだ。可愛いって思うことはいくらでもあるだけどそれまでなんだよ。付き合いてぇ! とかこの子が俺の運命の相手だ! 的になことには一切ならねぇんだ。

 

 

「それで経験がないことにはならないじゃない」

「馬鹿野郎。俺は初体験は愛したカノジョとって決めてんだよ」

「目星はついてるの?」

「いや全く」

 

 

 そんな女の子が居たら多分もうその子を彼女するべく動いているだろうな。今こうやって呑気にキャッチボールしてだべってるってことはそういうことだよ。

 それに俺の初体験は絶対に彼女とイチャラブしてするって心に決め散らかしてるからな。童貞臭いとかいうんじゃねぇ。最悪三十路になって風の者で捨てることになろうが男っていうのは夢を追い続ける生き物なんだよ。まぁこれ下ネタなんですけどね。

 

 

「じゃあ私でいいじゃない」

「」

「わ゛ー゛!゛?゛ どこ投げてんだ!」

 

 

 急にロケットランチャーばりの重い一撃を綺麗に食らったせいでリリースされたボールが読売〇人軍の脳筋マッスルボーラーの宇宙開発ボールかっていうくらい明後日の方向に凄い勢いで飛んでいく。

 今までで一番飛んだんじゃねぇかなあのボール。窓ガラス割ってなければいいけど。

 

 

「てめぇ! 急になんてこと言いやがる!?」

「あら? 私じゃ不満?」

「お前あれか!? ビッチか!? 経験豊富系女子高生か!?」

「残念ながら私はまだ処女よ」

「嘘だろマジかよ」

「その反応。他の女性にしたら間違いなくはっ倒されてるから気をつけなさい」

 

 

 確かに今のは勢いがえぐすぎて今までになく失礼なことを口走った。反省。

 

 ていうか今更ながらお前ってまだs……未経験だったんかい。お前だけは絶対に違うかと思った。未成年アイドルの中でもかなり珍しい経験済みでも許される子だと思ってた。

 未経験なのにその色気と雰囲気出せるっていったいどういう人生歩んできたんだお前。修羅の道でも歩んできたか? もしかして家庭の事情で日常的に電気を浴びたり反政府軍に育てられたりしてきたか?

 

 

「てかてめぇさっきの話聞いてただろ! 俺のシモの考えのソレ前提の話を聞いてただろ!」

「聞いていたわよ?」

「それでも?」

「えぇ」

「この子怖い」

 

 

 なんでこんなにバンバン攻めて来れるんだよ……なんでそんなに余裕綽々な笑みを浮かべてるんだよ……なんでそんなにどうせ手を出す勇気なんてないでしょ? 的な雰囲気出してるんだよ……俺だってその気になればちゃんと男らしくなれるよ……知らんけど。

 

 

「もしかしてだけど、凛を弄るための口実作ろうとしてたりしてる?」

「……そんなことないわよ」

「今反応遅かったなぁ。確実に出てるなぁ狙いが」

 

 

 なるほどそういうことね。そういえば昨日は門限があるとかで強制退場させられて決着ついてなかったもんな。そうだよな。どーせ俺なんて……ぐすん。間違えた、ぴえん。

 

 

「でも私はあなたにも興味あるのよ?」

「もういい。フォローなんていらない」

「フォローじゃないわよ? 私だってそこらじゅうの男子にこんなこと言うタイプじゃないんだから」

「もう信じないぞ」

「これでも学校ではマジメなのよ?」

「ここも学校だけどな」

「でも今は光の前じゃない」

 

 

 こんにゃろ……あぁ言えばこう返しやがって。口が達者な野郎……野郎じゃねぇな。女の子の場合なんて言うんだ? アマっていうのは口が悪いよな。でも尼さんっては言うよな。アマって元ネタなんなんだろ。

 

 

「一応、昨日よりもずっと前から光のことは見てたんだけどね」

「そーなの?」

「そうよ」

「知らんかった」

「話す機会もなかったし当たり前じゃない」

 

 

 至極もっともである。だって俺たちは昨日話したばっかなんだから。

 

 昨日話したばかりの女の子でしかもアイドルとここまで話すことが出来てるのももはや奇跡な気がするけどな。

 奇跡な気がするっていうか普通に奇跡だよな。この状況に陥ることが出来てるのが本当に幸運。もはや俺は神に愛されているのかもしれない。でも神様も俺のことを愛してくれてたら女子寮にぶち込むなんてオーバーキルしてないよな。完全に悪ふざけしてるよな。

 

 

「去年の文化祭……体育館のライブで出てたじゃない」

「出てた出てた。あー、あんときに」

「あの時から目をつけてたのよ。ずいぶんカワイイ子が居る、ってね」

「かっこいいって言ってもらえた方が俺は嬉しいんだけどな」

「そういうトコロも好きよ?」

「どーも」

 

 

 あんときは可愛い歌とか歌った記憶ないんだけどな。なに歌ったっけ。ワンオク歌ってたっけ。気持ちよく歌ってた記憶しかなくてあんまり覚えてないや。

 ほんとに超気持ちよかったことだけは覚えてるんだよね。ワンオクが気持ちよかったのかあの空気が気持ちよかったのか完全に自分に酔ってたのかはわからないけど、とにかく気持ちがよかった。なんか言い方きもいな。気持ちいいしか言ってないやんけ。快楽狂いかよ。

 

 

「……随分余裕があるのね」

「何が?」

「一応、これでも色々と自信があるのよ? どことはいわないけど、ね」

 

 

 そのウインクしながら唇に指充てるのやめて、とってもsexy(ネイティブ)だから。ほんとにやばいから。あと胸に手を当てるのもやめて。万胸引力の力働くぞ? いいのか? キモイ目で見るぞ。

 

 

「ま、そういうところも面白いんだけど」

「ミステリアスな女だな」

「本人に直接言う人は珍しいわね」

「ごめんいったん考えるって作業を放棄してそのまんま口に出したわ」

「それ、危なくないかしら?」

 

 

 大丈夫だよ。あんまり気を許してない人にはやらないから。とりあえず奏はこれやっても大丈夫な人類って判断したからね。すっごいマジメでバラエティとかNG系に見えるけど、実はオールラウンダーなタイプだと俺は思うんだわ。

 

 この後、草むらからボールを引っ張ってきたため草まみれになってキレてた今西に追いかけられる形で奏と距離をとることに成功した。ほんとに底が分かりそうで全く分からん女だ。怖い。綺麗だけど怖い(小並感)




総評が9000突破致しました。
もう片方書いてた小説の息抜きに始めたはずなのに、いつの間にかそっちの方のお気に入りも越してました。嬉しいね。楽しいね。ありがとうね(嬉し泣き)


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無理難題は現実でも起きるもの

拝啓、読者の皆様。
この前が気を見ている時私はもうここには居ないのでしょう。この一ヶ月の間、たくさんのことがありました。
社会人キツすぎワロタ…社会人時間無さすぎワロタ…社会人疲れすぎワロタ…コロナで気分死にすぎワロタ…いやそもそも続き書け無さすぎワロタ…最強雀士決定戦面白すぎワロタ…麻雀楽しすぎワロタ…FGO面白すぎワロタ…ギルガメッシュ最強卍…

一つだけ言わせてください。
お待たせしてすいませんっしたあああああ!!!!!


 金曜日っていいよな。多少きつい時間割だったとしても、明日から休みじゃーん! というその精神だけで生きていける。家に帰れば後は自由に遊ぶだけ。なんて幸せな日なんだろうか!

 

 ……って今までの俺ならそう思ってたんだろうが、今の俺ではそうはいかない。なぜならば、今俺がいるのは自宅の自室でもなく女子寮の自室でもなく、シンデレラプロジェクトの部屋だからだ。

 

 

「へー、卯月たちが先輩アイドルのライブのバックダンサーにですか」

「はい。と言いましても、練習自体は松井さんが会社に入られる一週間前から既に始まっていますが」

 

 

 帰り道にガッツリスマホを見ながら帰っていると知らぬ番号から着信が。番号をググっても相手は分からず、意を決して出てみると相手はあの体のでかいコワモテPさん。んで、そのPさんに呼ばれて今俺がここにいるってわけ。

 

 机を挟んでソファ越しにはあのPさん。顔が怖い、とっても怖い。

 そういや本田とかはこの顔のPさんが急に扉越しに表れてもそんなに驚いてなかったっけな。やっぱ慣れるもんか。違うか。あれは本田のメンタルがおかしいだけか。

 

 

「ちなみにその人って俺が名前聞いてもわかる人ですかね」

「……申し訳ありません」

「流石にその質問はPさんも困っちゃうんじゃないかな……?」

 

 

 ちなみにこの部屋にいるのは俺とPさんだけではない。この前会った新田さんと多田と前川もいる。それと知らない幼女が二人いる。まぁ知らない幼女じゃないんだけどね。さっき元気に挨拶貰ったし。

 

 

「いくらアイドルに興味がない光くんとはいえ、流石にお姉ちゃんのことは知ってると思うよ? なんて言ったってカリスマギャルなんだから!」

「ねぇ莉嘉ちゃん? その情報どこで仕入れたのかな? あんまりそのことを大声で言われると大人の事情で不味い気がするんだけどね?」

「この前ね、未央ちゃんが言ってたよ?」

「ありがとなみりあちゃん。なんであの外ハネ野郎がそのこと知ってんだ」

 

 

 先にこの幼女二人の情報を処理しようか。バレたら不味い気がする情報をばらまきやがったどこぞの外ハネ野郎に関してはあとで詮索しよう。どこで手に入れたんだマジで。

 

 まず先に発言したのが城ヶ崎莉嘉。中学生らしいがバチバチに金色の長髪を蓄えている。名前的にこの前会った城ヶ崎さんと苗字が同じだし、もしかしたら姉妹なのかもしれない。ギャルだし。知らんけど。

 最初は普通にDQNの子供かと思って引いたけど、少し話したらめっちゃ素直だったから多分いい子だ。

 

 二人目は赤城みりあちゃん。この子は黒髪短髪にツインテールみたいなのが頭の上の方についてる。なんかツインテって上についてるか下についてるかで名前が変わるんだっけ? 知らんけど。

 ちなみにこの子もちょっと話したら滅茶苦茶素直でいい子だった。ちゃんと面接もしているのかわからんけど、今のところ性格がいい子としか会ったことがないよな。マッドサイエンティストとかドSとか中二病とかたくさんいたけど性格が悪いわけじゃないしね。癖は強いが。

 

 

「で、そのカリスマギャルの後ろで卯月たちが踊ると」

「そっちの呼び方の方向で行くんだにゃ」

「ちなみにだけど、卯月ちゃんたちの前で踊るのは城ヶ崎美嘉ちゃんよ……?」

 

 

 あっ、やっぱり美嘉さんだったのね。苗字も一致してるしギャル姉妹ともなれば納得だ。

 

 でも姉妹確定して改めて顔を見てみると似ている気がする。ていうか、付けまつげとかそういうメイクに関してはお姉ちゃんとほとんど同じなんじゃなかろうか。まぁ姉妹揃って可愛いならそれでOKですけどね。

 

 

「それにしても大役ですねぇ。美嘉さんってテレビとかにも出るくらいには有名なんじゃないでしたっけ。よくGOサイン出しましたね」

「私も最初は迷っていたのですが、今西部長の助言もありまして」

「今西部長…? あー、あの今西の…」

 

 

 あの人って部長って言われるだけあって偉い役職についてるんだろうなやっぱ。今西のじいちゃんってだけで腕がどんなもんかはわかりかねるけどね。

 でも今西も計算高いところが地味にあるっぽいしよくわかんねーな。あいつゲームとかやるときは徹底的に戦略を立てるタイプだし。

 

 

「光…さすがに部長さんのことを呼び捨てにするのは不味いんじゃ…?」

「いや、今西ってのは俺の同級生のことだよ。今西さんとは完全に別人」

「なんだ…急に部長さんのこと呼び捨てしだしたのかと思ったよ…さすがにロックすぎるしね」

「ロックだったら何でも許されるわけとちゃうからね」

「絶対二人ともロックって単語の意味をはき違えてるにゃ」

 

 

 まぁ完全に赤の他人ってわけではないんだけどな。なんてったって今西のじいちゃんだし。

 

 というかロックの意味ははき違えてないぞ。ロックって単語は超万能だからな。大体なんにでも使えるし。戦犯並に万能ワードだわ。

 

 

「まぁともかく、卯月たちはまだ新人なのによくそんな仕事持ってきましたね」

「いえ…私が仕事を持ってきたのではなく、城ヶ崎さんの方から島村さんを是非と…」

「アイドルの仕事ってそんなので決まるんだな…」

「芸能界って案外ガチガチではないんだにゃ…」

 

 

 確かに大御所芸人が気に入った若手を自分のレギュラー番組で起用してるのはテレビでもよく見るけど、本当にそういうのがあるとか。

 

 でもほんとにいい機会だよな。成功さえすれば知名度は跳ね上がるだろうし本人たちも経験にはなるだろうし。まぁバックダンサーって全然目立たないんだけどな。

 実際某有名男性アイドル会社の人たちもバックダンサーとかあんまり知られてないけど元をたどれば有名な人たちもバックダンサーでしたってパターン多いし。ある意味トップアイドルになるための登竜門なのかもな。

 

 

「だから前川が立てこもり事件なんて起こしたんだな」

「に゛ゃ゛!゛?゛ なんでそれを知ってるんだにゃ!?」

「ここに来る前に李衣菜から聞いた。『みくより後より来た新人が一番デビュー早いなんて納得いかないにゃー!』とか言ってたんだろ?」

「にゃあああああああっ! ほんとに反省してるから! もう二度とやらないからやめるにゃー!」

 

 

 ちなみにみんなは何にも知らないと思うから説明してあげるね。

 この前川みくという猫女、卯月たちが自分たちよりも早く仕事がもらえたってことに怒ったらしくジェンガやなんやらで勝負を仕掛け続け悉く負け続け、挙句の果てには菜々さんの店にこもってクーデターを起こしたそうな。まぁ今ここにいるってことはしっかり和解したってことなんだけど。

 

 この話は全部李衣菜からここに来る途中に歩きながら聞いた話な。学校帰りの電車の方向が同じなのはびっくりしたよね。帰り道知り合いと同じってだけでなんだか楽しくなるから不思議なものだ。

 ちなみにその卯月たちが貰った仕事の内容はここに来てPさんから直接聞いて初めて知ったわ。まぁしっかりと細かいことまではそんなに聞きこまなかったからな。

 

 

「そんな分かりやすくヒール役みたいなことをやらなくてもねぇ…」

「あの頃はみくも若かったんだにゃ…」

「みくちゃんがせんそーしてたのっていつだっけ?」

「先週の火曜日じゃないかな? 確かその時アタシたちレッスンの日だったし…」

「先週の話じゃねぇか!」

「女の子にとって時間は一瞬だにゃ」

「一瞬ってそれだと意味逆じゃね?」

 

 

 

 言い訳が適当すぎて言い訳にもなってないし逆に自分の間抜けさを露呈しているだけやないか! 新田さんの方見てみろよ! さっきからフォローもできずに苦笑いしてるだけだぞ! 可愛い!

 

 とは言っても前川の気持ちがわからんわけでもない。卯月たちがどんくらい新人で前川がどんくらい先輩かは知らんけど、普通に急に入ってきた新人に仕事を回されて前からいた自分はダンマリなんてされたらブチギレたくなる。それはわかるけどさすがにねぇ…

 

 

 

「ていうか、Pさんや。なんでその話をわざわざ俺に? 俺が来る前から決まってたモンなんだから俺に関係ないんじゃ?」

「いえ、そういう前例の話があったということを伝えたくて」

「はぁ…成程…?」

 

 そういうとPさんが首をかきながらなんか書類を取り出して、俺の方に向けてくる。

 

 

「…なんですか? これ」

「企画書です」

「…なんのです?」

「シンデレラプロジェクトメンバー全体曲のです」

「…えっ?」

 

 

 プロジェクトルームの空気が一瞬で凍りつく。

 

 ほーん、全体曲か。っていうかそもそもソロ曲とかあるんだな。どっかの48人くらいいそうなアイドルグループみたいに基本は全体曲しかないものだとばっかりに。

 でもまぁやっぱり基本は全体曲になるよな。その曲調とかで色々とそのグループのイメージが左右されるといっても過言だし。

 

 

「P、Pちゃん…? 今なんて…?」

「シンデレラプロジェクトでの全体曲の企画書です。まだ企画段階ですが…」

「デビュー予定あるやんけ!」

「あっ、みくちゃんの語尾が取れた」

 

 

 まーたこの猫娘は語尾を取ってるのか。ちゃんとキャラ守れよな。じゃないと今どきの厳しい芸能界は勝ち抜けないぞ。

 まぁ最近の芸能界って第六世代っていう新星が輝いてるからそういうボロボロのキャラでもいいのかもしれないけど。

 

 

「なんでそれを早く言ってくれなかったんだにゃ! 知ってればみくがあんな馬鹿なことしなくてもすんだにゃ!」

「そこでやらなくてもいつかやりそうだよな」

「みくちゃんだしねぇ…」

「そこのバカ二人は黙ってるにゃ!」

「いえ…現段階でもまだ企画段階の話なので…」

 

 

 おー怖い怖い。シャーッ! ってなってるやん。体毛が生えてるわけではないのに毛が逆立ってる風に見えた気がした。そういう猫っぽい部分は雰囲気的にはリアルなのな。

 雑な猫キャラかガチな方の猫キャラかはっきりしてくれ。M‐1で頭角を現したロッテファンのナスみたいな人と一緒にいる、見た目普通なボケ担当の人もキャラが渋滞して酷いことになってたぞ。滅茶苦茶面白いからずっとあのままでいてほしいけど。

 

 

「そこで騒いでる猫娘は置いといて」

「にゃー! みくをのけ者扱いするにゃー!」

「みくちゃん落ち着いてー!」

「不機嫌な時の猫ちゃんみたい」

 

 

 幼女組から窘められて人扱いされない前川お姉ちゃん…それでいいのかお前…

 俺が言うのもあんだけどほんとにこの子は大丈夫なのかな。こいつ俺とあってから散々なところしか見られてないけど。義理を通しに来たりするあたり芯はしっかりしてるんだろうに、惜しいなぁ(遠い目)

 

 

「なんでそれをわざわざ俺に知らせたんですか。しかもメンバーさんたちよりも先に」

「これは城ヶ崎さんの話とも繋がるのですが。松井さん、あなたにも同じような話が来ています」

「先輩アイドルからってことすか?」

「はい」

 

 

 へー、なんで俺が? っていう言葉を空気と一緒にゴクリと飲み込む。

 

 そもそも俺はアイドルじゃなくてスタジオミュージシャンだしな。だとしても同じような話ってことは直接指名が来てるってことか? へー、なんで俺が?(二回目)

 

 

「ちなみにこれもうだれか聞いてもいい奴ですか? もうここまでの絵取れましたか?」

「はい、もう充分です」

「マジトーンでボケてもツッコみにくいからやめるにゃ」

「Pさんもそれに乗るんですね…」

 

 

 意外とノリがいいのかなこの人。まさか合わせてくるとは思わなくてびっくりしちゃったよ僕。

 

 

「松井さんには来週の日曜にある木村夏樹さんが参加される対バンイベントのベーシストとして参加していただく…という話が本人からの要望で」

「あー! なつきちから!」

「全然知ってる人だったな」

「いや、さらっと理解してるけどみくは結構驚いてるよ? そっちが普通なんかにゃ?」

「みくちゃんの感性は正しいと思うよ…?」

 

 

 それなら色々と納得がいく。夏樹さんは俺の目の前で一緒にセッションしたときに俺の実力がどんなもんか知れたと思うし、俺のことを346のベーシストとして認めてくれたかどうかはまだわかんないけど、わざわざ呼んでくれたってことはそういう意味があるって期待してもいいのかな。

 

 っていうか来週の日曜ってそこそこ急じゃね? いや、そこそこどころか結構急じゃね? 1週間とちょっとしかないやんけ。

 

 

「ちなみに対バンってことはバチバチライブですよね?」

「はい。今回木村さんは対バンライブの大トリという形で参加されます」

「ちなみに規模の方は…?」

「一応会場のキャパは500人ほど…」

「500!?」

 

 

 ご、ごごごごごご500人!? あのスマ〇ラの組み手ですら100人組手なのに!?

 

 っていうネタみたいなことを言ってはいるが500人の前でライブとかもちろん未経験だ。しょぼい箱の中でしかライブしたことないのになんやねん500人の箱って。かなりでかいだろ500人って。

 しかも大トリかぁ。そりゃあ夏樹さんくらいにもなればそうなるよなぁ、アイドルとはいえ。

 

 

「ちなみに今更ですけど、俺って枠的にはスタジオミュージシャンですよね?」

「はい。肩書ではそうなっています」

「これってバックバンドの仕事では…?」

「…今回は木村さんの直接指名なので特例です」

 

 

 スタジオミュージシャン(笑)やん。いやそうではないけど。

 裏でシコシコベース弾いてればいいって思ってたのに表の仕事もあるのかよぉ! 知らねぇよぉ! Pさんもすっげぇ困った顔してるからほんとに特例じゃねぇかよぉ!

 

 

「光クン」

「なんぞや」

「正直に言うにゃ」

「うん」

「ちょっとわくわくしてるでしょ?」

「うん。結構」

「やっぱりバカにゃ! バンドマンってバカにゃ!」

 

 

 怖いけどロマンあるよね。血が騒ぐよね。男なら一回は大勢の客を沸かせてみたいよね。

 

 まぁ俺、ベーシストなんだからあんまり沸かせることはできないんですけどね。




そんなわけでこれからめちゃくちゃ更新頻度落ちます。申し訳ございません。泣いた。
でもでも、皆様の感想やら評価のおかげで何とか持ちこたえておりまする…僕頑張るから感想をいただければ幸いですぅ…(涙目)


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スパルタ練習は嫌だが身になる

 ちなみに捕捉し忘れてましたが『Pさん』と書いて『プロデューサーさん』と呼んでたりしてます。ここら辺は原作と同じだと思います。原作のコミュ忘れたけど。
 そしてこの世界線のシンデレラプロジェクトのPさんの苗字は武内さんだったりします。原作通りですね(多分違う)


「いや~っ! 一昨日にTAB貰ったばっかなんだろ? よくここまで仕上げてきたなー! やっぱり光を指名して正解だったよ!」

「ど、どうも……」

 

 

 背中にギターケースを背負ったロッキーな女性……そう、我らが夏樹さんにバシバシ叩かれながらちょっと遠慮気味に返事を返す。

 

 Pさんから唐突に500人入るどでかい箱でのライブを宣言されて2日。

 その週の日曜日にサウンドブースに集合をかけられ、バカ緊張しながら合わせ練習を終えた俺! 身体的というよりも精神的に疲れた体を休めるため同じ寮住まいであり、今回の件の首謀者である木村夏樹さんと寮に戻るべく歩を進めていたのであった!

 

 はい、ここまでが今日のあらすじね。マジで疲れた。知らん大人に囲まれてベース弾くのってあんなに緊張するんだな。しかもバンドマンだからなんだろうけどすっごい髪型が厳つい人とかもいたし。心臓爆発するかと思ったわ。

 

 

「みんな光のこと褒めてたぜ? 想像以上だったってさ」

「いやぁ……そんなこともないですよ……」

「アタシはそうは言ってないけど」

「えっ」

「冗談だって!」

 

 

 想像以上に俺が自分の曲を弾けてたのが嬉しかったのかはどうかわからんけど、今日の夏樹さんはやけにテンションが高い。

 マジで昨日が土曜日でよかった。昨日一日ずっとベース弾きっぱなしだったからな。あと木村さんの曲がわりかしシンプルなのも助かった。

 いやー、良かったね木村さんの曲。Rockin'Emotion。シンプルだけどちゃんとロックのいいところのツボを押さえてた。

 

 

「急な指名になっちゃったからさ、申し訳ないなって思ってたんだけど……」

「いやいやいや! こんな機会でもないと500人の箱でやることなんてないですから!」

「500人ってそう大した人数じゃないと思うんだけどな」

 

 

 それは夏樹さんの感覚がバグってるだけです。

 普通に考えてみろよ。俺って今までちっこいライブハウスでくらいしかライブしたことないんだぞ。そっから急に500人に増えたのにデカくないって……んなわけなかろうが!(半ギレ)

 

 まぁそれは置いといてだ。

 本当に夏樹さんは兄貴分だよなぁ……頼れる……兄貴ってなる……華のJKなんだけど。

 

 とは言っても俺の言うことはお世辞でも何でもなく事実だ。

 それこそ今回の課題曲が死ぬほど難しかったり3曲分覚えるとかだったら無理ですって血の涙を流しながら断るところだったわ。

 けど普通に余裕ぶっこくわけでも何でもなく、この譜面ならもう覚えてここから練度を高める段階に入れるからな。俺の出せる限りのパフォーマンスを500人の観客の前で発揮することが出来るなら、それはもう男のロマンだからな。

 

 そりゃあ緊張はするけど、冷静に考えれば500人の前でベースを弾けるなんて人生で一度も経験できないようなことだしな。楽しまねば損ってことよ。なんたって夏樹さんから直接のご指名なわけだしな。

 

 

「ていうかよ。敬語じゃなくていいって言ってるのになんでまだ敬語なんだよ」

「いや、夏樹さん年上ですし」

「夏樹さんじゃなくてなつきちで良いって言ってるのに」

「いや、それだけは譲れないですね。なつきち呼びだけは譲れない」

 

 

 それだけはやだ。絶対にやだ。

 

 ネーミングセンスとかそういう話じゃないんだ。木村夏樹っていう人物像の人間をなつきちって呼ぶ行為自体になぜかアレルギーがある。そもそも女性をあだ名で呼ぶことのハードルが高すぎる。

 俺が女だったら多分平気で呼べてたんだろうけどな。あいにく俺の股間には息子がいるんだ。

 

 

「じゃあ敬語は外してくれよ。他人行儀みたいで嫌なんだ」

「慣れたらで」

「えー、いいじゃんか別に。そんな細かい事気にしないでも」

「段階を踏ませてください頼むから」

 

 

 あいにく俺はラノベとか小説とかアニメでよく見る、年上からタメでOKサインが出てすぐに切り替えられる人間なんじゃないんだ。少なくともある程度関係を深めてからその段階に自然に踏み込みたいんだ。年上相手にため口は元運動部である俺にはハードルが高いんだ。

 

 マジで創作もので速攻ため口解禁できる主人公とかキャラってすげぇって思うわ。俺なら無理だもん。

 そりゃあ世界救ったり超絶美少女侍らせたりする人たちだから格が違うのはわかるけどさ。素でアレなんだからほんとに敵わん。

 

 

「……ん? あれPさんじゃね?」

「……あー。そういや、光も管轄的にはだりーン所のPさんが担当になるのか」

「そうっすね」

 

 

 いやー、遠くから見てもわかりやすいな。うちのPさん。背もでかいし雰囲気もあるからね。

 というかほんとにわっかりやすいな。廊下の端っこで歩いてるだけでPさんやんけって速攻でわかるの凄い。

 あっ、こっち見た。気が付いた。

 

 

「お二人とも、合わせ練習の方、お疲れ様です」

「うっす。どうも」

「お疲れさんです」

 

 

 お疲れさんっておかしいか。お疲れしたのは俺の方だもんな。

 というか木村さんもPさんに面識合ったのかな。すっごい気楽な返事してるし。いや、わかんねぇな。夏樹さんって誰でにでもフリーな感じするし。

 

 

「松井さん。本日の予定はこれだけですので、もう上がっていただいて大丈夫です」

「了解です」

「Pさんはこれから何の用事?」

「私は、これから島村さんたちのレッスンの様子を見に……」

「あー、卯月たちの」

 

 

 Pさんってそういう仕事もあるんだな。めっちゃPCカタカタやってるイメージしかなかったけど、自分の担当しているアイドルたちの仕事ぶりを見守る仕事もあるんだな。

 そういうのって、正直芸能人だとマネージャーがやる仕事だと思ってたけど、俺が想像してたのと違うんだろうな。

 

 

「なーなー、光。お前んところの新人の子が美嘉のバックダンサーやるってマジなん?」

「えっ、そうですけど……あ、これ言っていいんでしたっけ?」

「問題ありません」

 

 

 そうそう、俺も俺でなんか大変大きい箱でベースを弾くっていうトンデモ案件を取り入れてるけど、卯月たちは卯月たちでトンデモ案件を相手にしてるのよね。

 

 城ヶ崎美嘉っていうアイドルがどのくらいすげぇのかはまだ俺にはわからんけど、少なくともテレビで見るレベルってことは346を代表するアイドルの一人なんだろうし、やっぱり卯月たちもとんでもないことになってるよなぁ。

 俺が美嘉さんを直接見た時もオーラ凄かったし。あと安心感な。

 

 

「ねぇ、Pさん。その子たちのレッスン見てくのって、ダメかな?」

「いえ……構いませんが」

「えっ」

「よっしゃ! 多分レッスンルームだよな! 行こうぜ光!」

「ちょm」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれー? 誰かと思えば夏樹とこの前の……えと、光くんだっけ?」

「あ、ご無沙汰してます」

「おっす。やってるねぇ」

「まぁ、本番近いからね~☆」

 

 

 目の前には座り込んだり倒れこんだりしてるジャージ姿の新人3人トリオ。そして、初めて会った時と違って薄めのメイクにもはや胸元しか隠れてないやんってレベルで首元とおなかあたりが見えてる服を着た美嘉さん。

 目のやり場に非常に困りますね。本当。

 

 いやいや、凄かった。

 レッスンルームに俺たちが入った頃にはもうレッスンも半ばといった感じで卯月、凛、本田の三人がバチバチに踊っていたんだけど、まぁとにかくハードだった。俺がやったら倒れるかもしれんというくらいにはハードだった。

 凛は大体何でも軽くこなせる天才肌だから心配はしていなかったが、卯月と本田に関しては驚きだ。伊達に美嘉さんに選ばれたわけではない……ということかもしれない。美嘉さんがどこを見て選んだのか俺は全く知らんけどね。

 

 そして後ろで3人にアドバイスを送ったり一緒に踊ってたりしていた美嘉さんは何事もなくピンピンしてるし。

 アイドルってすげぇ。体力半端ねぇ。

 

 

「新人の子、アレで何日目?」

「えーっと……確か10日くらい?」

「今日で9日目、ですね」

「さっすが! そーゆーとこ、ほんときっちりしてるよね~」

 

 

 スケジュール管理は完璧、といったところだろうか。っていうかPさんってもしかしてシンデレラプロジェクトメンバー全員+俺のスケジュールを全部ひとりで管理してるのかな。

 ……いやいや、無いよな。流石に。そんなことできてたらマジモンの化け物だぞ。仕事の鬼だよ。鬼。

 

 

「美嘉さんから見て、正直どうですか。あの3人」

「頑張ってると思うよ。呑み込みも早いしね。大丈夫大丈夫、アタシが保証してるんだから★ 」

「そうすか……」

「ていうか、美嘉ねぇじゃないんだね」

「いや……あんときはテンションに任せてたんで。今思えば、とんでもない言い方してたなって……」

「別に気にしなくていいのに」

「なー」

 

 

 普通に初対面の人に向かって姉御呼びなんてやべぇよなって。今思えばとんでもないことしてたなって割とガチ目に反省してたからね。

 しかも相手は多分すげぇアイドルなんだから、ファンにでもバレようものなら我が部屋にロケランや火炎瓶が投げ込まれること待ったなしだ。ドルオタってなんか怖いイメージあるし。

 

 それにしても、あの三人ってそんなに凄かったんだなぁ。なにで選ばれたのかは知らんけど、とりあえずダンスが凄いってのは分かった。それにやっぱりなんだかんだ顔がいい。

 

 

「どうだね、キミたち。美嘉さんにしごかれてんねぇ」

「いやー……キビシイよ、本当に……」

「頑張りますぅ……」

「……別に」

 

 

 心なしか外ハネが下がってヘタっているように見える本田。ガッツリ倒れこんでもなお、ひきつった笑顔の卯月。シンプルに座り込んで頭が下がってるせいでホラー映画みたいになってる凛。

 

 うーん、見事に三者三様の反応である。

 卯月のその頑張りますは一体どこに向かっての頑張りますなんだろうか。自分に向けての暗示かな。知らんけど。

 

 さて、何の気もなしにこいつらに近づいて話しかけたはいいものの、こっからどうしよう。なんか一言位かけた方がいいよね。

 でもここで無責任に頑張れっていうのはなんか違う気がする。そしてその選択肢を潰された時点で俺のかけられる言葉はもう限られてしまった。

 

 

「ところで今年はジャイ〇ンツ優勝しなさそうだよな。広島強そうだし」

「えっ、ジャイ〇ンツ? ……なんの?」

 

 

 バタン!

 

 

「今年も優勝するのはジャイ〇ンツだよ!!!」

 

 

 野球の話題が女の子にも通じる時代はどうやら終わっていたようだ。

 ちなみに俺はプロ野球こそ見るものの贔屓球団はないんだ。ジャイ〇ンツファンの皆様、ごめんなさい。




オチにとても困ったのでいつかちゃんと出てくるであろうあの人を出しました。
いつかちゃんと出番はあるだろうけど、かなり先かもしれないしそうじゃないかもしれない。


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困ったときに相談できる友達こそ一番大事にするべき人

お気に入り6000人が見えてきたこちらの小説ですが、更新する度にお気に入り人数が10人減るよくある状態に陥った為、5980人前後をタップダンスしております。無限ループって怖い。
というかいつの間にそんなに増えたんや。なんかいろいろ怖い。


 昼間はちっこい子供たちや中坊たちが走り回っている公園も、夜になり街灯が灯れば静寂に包まれる。

 

 夜の公園はいい。基本的に人もいないし、街灯の明かりがなんともいい雰囲気を出してくれる。

 中二病モードになるときにも使えるし、ふと夜の中でのんびりと歩きたい気分になったときにも重宝する。

 

 

「ワン、ツー、スリー、フォー……」

 

 

 それに、こういう無性に外で運動したくなったようなときにも重宝する。とくにこいつみたいな人に努力しているところを見られたくないような人には余計にそうだろう。

 

 ベンチに座りながら凛の飼い犬であるハナコを膝に乗せて見るダンスというのも乙なものだ。全然そんなことはないんだけどね。

 だって俺がここにいるのってこいつが夜の公園で一人でいるのが心配すぎただけだし。だから俺がもうここにいるだけで俺の役割としては全うしてるから、見るくらいしかやることがないんだよな。あとはハナコをなでるくらい。

 

 

「今の良かったじゃん」

「……全然」

 

 

 ほんとにプライドが高いというかなんというか。目指す地点が高いというか。

 まともに今までダンスをしてこなかった小娘が短期間でここまで踊れるようになってんだから十分じゃないかと思うんだけどなぁ。本番も近いし、凛の性格上こうなるのは無理もないというのは全然わかるんだが。

 

 ただ、凛本人が言うように正直まだあの美嘉さんの後ろで踊れるようなダンスになっているかといえば、そうではない。あの人のライブの映像をYoutubeで見たが、まぁ凄かった。度肝抜かれた。キレがえげつなかった。たゆんたゆんだったし(違う)

 

 

「はっ……スリー、フォー……!」

 

 

 だがなんというか……とっても心配である。俺の知ってる渋谷凛という人間は多少無理しても大丈夫だし、基本的にセンスの塊だから俺がなにしなくてもほっときゃちゃんと仕上げてくるような奴なんだが……だけどとっても心配だ。わかるだろ? うん。

 

 

「……ご主人様頑張ってるなー」

 

 

 まぁ結局俺には口出すことさえできないから、こうやってハナコを撫でてる訳なんだけどな。ほんとにいい子だ。

 ハナコを撫でてると俺も猫とか犬とか飼いたくなるけど。絶対に買わない。逝ってしまったときに立ち直れる気がしないからね、仕方ないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「飛鳥ならこの気持ちわかるだろ?」

「残念ながら僕は一人っ子なんだ」

「俺だって一人っ子だよ」

 

 

 飛鳥と面と面を向かい合って熱く語るが、あえなく撃沈する。

 てか一人っ子関係あるのかよこの話に。確かに凛は立場的には妹みたいな感じかもしれないけども。でも凛みたいな顔のいい妹が居たらマジでアニメだよなぁ……ツンケンしてるのがやけにリアルだし。

 

 

「全く……急に部屋に来たと思ったら、惚気話を聞かされるこっちの身にもなってくれ」

「惚気てないだろ」

「惚気てなくてもキミがバカということはよくわかったよ」

 

 

 何処まで行っても失礼な奴だなこんちくしょう。確かに寮の部屋に戻ったその足で飛鳥の部屋に行ったのは申し訳ないけどさ。まさか部屋の中に入れてくれるとは思わなかったし。

 

 というか女子中学生の部屋に上げてもらうなんて中々ヤバいよな。下心とか皆無なんだけど、こいつがアイドルというところに問題があるし。

 にしてもまさか部屋に上げてくれるとは思わなかった。確かに俺の部屋に入れるわけにはいかないけど。逆も大問題だろうとは思う。もう入ってしまったんだけどね。

 それにしても、中々ちゃんとしている部屋だな。もっと中二病グッズ多いのかと思ったけど、なんというかカッコいい女の子のような部屋をしている。大人な雰囲気ではないんだけど、カッコいいような感じの家具が多めな印象だ。センスあるな。ちょっと憧れる。

 

 

「ダンスが上手くなるコツとか飛鳥知らない?」

「練習あるのみさ。それが最大の近道だよ」

「だよなぁ」

「随分あっさりと受け入れるんだね」

「大体何事もそんなもんなんだよ」

 

 

 楽器だってそうだしな。早く上手くなりたけりゃとにかく練習するしかない。

 何度も基礎練習を繰り返して、出来ないところは反復、反復、繰り返しの無限ループ。本当にこれが一番早いんだよ。

 安定感っていうのは普段の数えきれないほどの努力が地を固めて初めて生まれるものだってはっきりわかんだね。俺だって滅茶苦茶練習はしたし。

 

 

「ならその例の彼女にもそう教えてあげればいいじゃないか」

「彼女じゃねぇ」

「そういう意味の単語ではないよ」

「ハメやがったな」

「キミが勝手にハマっただけだろう?」

 

 

 確かにそうだな、ごめん(ごめん)

 そりゃあ飛鳥も苦笑いするよな。角野〇三じゃねーよ! みたいな感じで反射的に言ってしまったんだ。正直すまんかった。

 

 

「まぁそのなんだ。もう十分に努力はしてるんだよ。なんならちょっとパンク気味なくらい」

「じゃあそっとしておけばいいじゃないか」

「それはそうだけどさぁ……」

 

 

 呆れたような顔をして飛鳥がため息をつかれてしまう。

 

 

「心配しすぎなんだよ。僕はこの子と直接話したことはないからあまり知らないが、女の子という生き物は案外強いものだよ」

「あいつが強いってのは分かってるけどよ……」

「心配する気持ちもわかるが、少しは信じてあげてもいいんじゃないか?」

 

 

 信じていないわけじゃない。ただただ、心配なのよ。もし凛が倒れでもしたら全てをほっぽり出してブちぎれながら女友達に看病をお願いする自信がある。俺が看病するわけにはいかないからね、仕方ないね。体拭いたりとかできないし。

 

 

「『見守る勇気』……今、キミ必要なことじゃないか?」

「見守る勇気か……」

 

 

 元々俺はなんにでもかんにでも手を出すような人種じゃない。どちらかというと滅茶苦茶裏で隠れながら見てた部類の人間だ。だって手を出すと滅茶苦茶怒られるし。

 

 でももしかしたら、もうそろそろ目を離してもいい年ごろになったのかもしれない。あんなちっこかった凛ももう高校生だもんな。まぁ一個しか違わないからそういう感情あんまりないんだけどね。

 

 

「飛鳥って良いこと言えるんだな」

「ボクはただ歴史の偉人の言葉を借りてるだけさ。ボク自身はちっぽけな生き物だよ」

 

 

 飛鳥ってそういう系の中二病なんだな。歴史上の人物とか難しい本を読み漁ってそう。

 ていうか本棚を少し見てみたらなんかそれっぽい本ばっかりあった。なんか色々と納得したわ。悔しい。やっぱり本を読むと人間賢くなるんだな。一歩道踏み間違えたらこうなりそうだけど。

 

 

「ちなみに見守る勇気って誰の言葉?」

「この前、図書館で見かけた子育て本のタイトルだね」

「なんか急に薄っぺらく聞こえてきた」

 

 

 なにが歴史の偉人だよ! よくある子育て啓発本のタイトルじゃねぇか!

 しかもあぁ言うのって大体似たようなことしか書いてないし、親が自己申告で子育て大成功しました! ってどや顔で言ってることが大半だからうさん臭さしかないんだよな。

 本当にまともな人間なら本を出すような傲慢なことしないしもっと謙虚だわ、多分。

 

 

「そもそも君だって近いうちにライブを控えてるんじゃないのか」

「えっ、それ何処情報?」

「女の子の噂の伝達速度はバカにならないからね」

「飛鳥にも友達はいるんだな」

「キミ、今までで一番失礼なこと言ったって自覚はあるかい?」

 

 

 たまに脳内を通す段階を超えてそのまんま声に出しちゃうことがあるんだ、ごめんな。まぁでもよくよく考えてみたら、飛鳥って蘭子と知り合いだったっけな。

 そもそも飛鳥ってちょっとひん曲がってるだけで、普通にコミュニケーション自体は取れるタイプの中二病だし、常識はあるから普通に友達はできるわな。それにだいたい芸能界って基本的に変人ばっかだし。

 

 

「そんなに彼女のことが心配なら、僕が少し見てあげようか。こう見えても、ボクだってダンスには自信が……」

「いや、飛鳥が凛と会うのは不味い」

「……何故だい」

 

 

 その問いに一瞬馬鹿正直に『凛の目の前で下の名前呼びしたら呼ばれた対象が狙われる』って言いかけたけど、流石にギリギリのところで止まった。マジで出かかってた。超ファインプレー。菊〇もびっくり。

 あんなのがバレたら凛に変な印象が付いちまうからな。後俺も変な目で見られかねん。

 

 

「凛も多分拒否すると思うからな。多分、俺が言っても聞かないだろうし」

「ハハッ!……随分強情なんだね。彼女は」

「強情というかなんというか」

 

 

 まぁ間違ってはいないだろう。間違ってはいない。それがいいところでもあるしな。

 

 取りあえず凛と飛鳥を引き合わせるようなイベントを回避することには成功した。これでまぁ変なことは起きないだろう。

 ……あれ? 凛が大丈夫かどうか心配してるはずだったのに、どこで話変わった? ……ま、いっか!(脳死)




総評の方が9800を超えていました。それと同時に評価していただいた方の人数が合計で300人突破いたしました。めちゃくちゃありがたいですね。土下座して感謝を述べたい気分。
いつかは総評10000へ…ってな感じで目標持ちながらやっているので、もしよろしければ評価とか感想とか入れていただけると滅茶苦茶ありがたいです!

ちなみに、某野球好きのネキの贔屓球団に関しましてはキャッツにしてしまうと他球団の名前も変えなくてはいけなくなり、わしが非常に混乱して現実とこっちでごちゃ混ぜになる可能性がありますので、キャッツの元ネタの方のジャイ〇ンツの方に変更させていただきます。ご了承ください。


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初体験は盛大な方がいい

最近小説を読むという行為から逃げ続けてるんですけど、そろそろ面白い日常系の小説を読みたくなってきました。
でも漁ってその場で寝てます。もったいねぇ。


 10日弱あったはずだよな? 本番まではそこそこ時間はあったはずだった。

 そして今日は何曜日だ? そう、今日は日曜日だ。そしてここは対バン会場でもあるでけぇ箱だ。

 

 ……いやはっや! ていうか凛達のよりも俺の初ライブの方が日程的に早いんかい! 

 そういやって思うとうちのPさんかなり無理な日程組んでたんだな……あいつらみたいにダンス未経験からダンス練習じゃなくて、俺はベース経験済みからのスタートだから其処で大きな格差はあったんだろうけど。

 

 勿論日にちが勝手に過ぎて行ったなんてことはないし、なんならつい昨日、ちゃんと前乗りしてこの会場でのリハも済ませてきた。

 リハは完璧……とまでは行かないが、初めてにしては上々といったところらしい。まぁ俺は必死にやってただけで何がどうなってたか全然わかんないんですけどね。

 

 

『──────!!!』

 

「うめぇ……」

 

 

 控え室のモニターから見る参加者の姿は輝いて見えて、他人事に見えたけど、それでいてそこから薄く聞こえてくる生音で本物だと実感して身震いする。

 

 不思議と孤独に包まれている気がして寒気のようなものを感じる。

 本来ならライブ前にあのコワモテのPさんが様子を見に来てくれるはずだったんだけど、なんか色々あってこれなくなったらしいし。なんだよ、色々って。まぁ来れないのはしゃーないんだけど。

 

 

「ま、ここに集まっているのは全員プロだし、当然だよ」

「バチバチに決まってますね」

「なんたってライブだしな!」

 

 

 いつもの髪型にアクセサリーをつけて戦闘態勢、と言わんばかりに目をキラキラ輝かせる夏樹さん。対して思ってた数倍参加してるバンドのレベルが高くてかなり緊張しているわし。

 経験の差といえばそうなんだろうけど、なんかここまで雰囲気というか落ち着きに差があると、この先俺は大丈夫なんだろうかと心配になってくる。こんなの気にしてたら始まらないんだろけど。

 

 

「光もちゃんとやってもらってるじゃん」

「メイクとかしたの初めてですよ……」

「ほぼメイクしてないも同然だけどな」

 

 

 それはそう。だってちょっとなんか粉をポンポンってしてもらったり、髪型をセットしてもらっただけだしな。

 でも、どうやらライブ前にメイクをする、しないっていうのは個人によって別れるらしい。木村さん率いる346組はもれなく全員メイクしてもらってたけど、他のバンドではやって貰わず、そのままステージに行ってた人もいたし。

 

 

「Pさんはもう来たのか?」

「いや、なんか色々あったらしくて来れないそうです」

「……そっか」

 

 

 まぁ何があったのかは俺にも全くわかんないんだけどね。

 うちのプロジェクトのメンバーは個性が強い奴らばっかだから、それに伴って問題の起きる数も多くなっていくのも仕方がないことよ。それを解決するために奔走するのもPさんだからな。

 

 

「やっぱ緊張してるか」

「もちろん。こんなでかい箱でベース弾いたことなんてないですから」

「そんなもんだよな。アタシも最初のライブは緊張した。でも、同時にすげー興奮したし」

「……そうっすね」

 

 

 正直な話、100緊張ではない。100あるうちの80が緊張で、残った20くらいワクワクしている自分もいるのも事実だ。

 バンドマンってバカな生き物だよな。正直今はとっても助かってるって実感してるわ。これで100緊張してたらまともに両腕が言うことを聞かなくなってた自信あるわ。

 

 

「親とか友達は呼んだ?」

「いや、シンデレラプロジェクトの人たち以外は呼んでないですね。あと一応親も」

「親御さんも喜ぶんじゃないか? 光がこんなでかい舞台でライブしてるの見たら」

「喜びますかねぇ」

「そりゃあ、喜ぶだろ」

 

 

 一応両親二人とも一応チケットは渡しておいたけども。

 

 母親は分からん。あの人はマジでわからん。あの人は俺のことをどう思っているかすらわからん。

 流石に自分の息子のことを嫌いというわけではないんだろうけど、色々とうちの母親は破天荒だからな。入寮したときの一件を見てくれれば分かるけど、まさにあんな感じの母親だからね。

 

 父親の方は多分喜ぶわ。なんてったって、俺にベースを仕込んだのは父親だからな。

 俺の父親はなんてことないただのベーシストだったけど、息子が形はどうあれでかい箱の舞台に立って演奏するとでもなれば、それなりには来るものがあるのではなかろうか。

 まぁ俺は本人じゃないから知らないんですけど。

 

 

「夏樹さんは誰か呼んだんですか?」

「アタシはもう何回もやってるからな。キリ無くなっちまう」

「かっけぇ」

「新鮮味がなくなるだけだよ」

 

 

 うわぁ、頑張ろう。ビッグになろう。

 

 俺も後輩か誰かが出来たら、いつかこう言えるようになろう。そん時はバチバチにキメ顔で言おう。

 いや、ダメだわ。今の夏樹さんみたいにちょっと照れながら言うのが逆にいいんだよ。ていうか夏樹さんだから良い。というか夏樹さんの顔が良い。

 

 

「緊張することなんてないさ。まぁ見てろよ。終わったことにはきっと楽しいって思えてるぜ?」

「こんなところでライブなんてできたら楽しいに決まってるでしょうよ」

「ははっ! 言うねぇ。そのクチ聞けるなら心配いらなかったかもな」

 

 

 そんなに生意気なこと言いましたかね……。

 

 何度も言ってるけどワクワクはしてるのよ。バンドマン魂っていうのがどうやら俺にもあったらしく、それがうずうずしてたまらんのよ。

 あれよ。バンジージャンプとかジェットコースターみたいな感じ。行けば終わりなんだろうけど、どうしても想像する光景が怖くて足が竦むって感じ。

 

 まぁでも、最後に一歩を踏み出すのは自分だしな。結局。

 

 

「それに、言っちゃあれだけど500人なんて全然少ないんだからな?」

「えっ」

「日本武道館で1万5000人届かないくらいだろ? ドームになると4万人は下らないか。うちのアイドルとかそこでもライブして満席にしてるし。なんならアタシも出てるからな」

「マジですか」

「段階を踏むってのもあるけど、最終地点に近いとこくらいは考えとけよ?」

 

 

 もうそんなバグったような人数まで飛ばれると逆に吹っ切れそうな気もするけどな。

 

 そっか、ドーム公演もあるんだよな。俺がそこに立つことになるかはわからんし多分ないとは思うんだけど、子供のころのプロ野球選手になるって夢が色々ねじ曲がってドームに立つくらいのレベルではかなうのかもしれねぇんだな。

 そう思うと夢のある仕事だ。

 

 

「木村さーん! そろそろですー!」

 

「……よし、行こうぜ! 心配すんなよ。お前はすげぇんだからさ!」

「……よっしゃ! やるか!」

「そうだそうだ! もう逃げらんねぇからな! 勇気を出して飛び込んで行け!」

 

 

 ごめんこれだけは言わせて。ポケモンの四天王かよって思ってもうた。もうだめだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 凄かった。なにが凄かったとかじゃなくて、すべてが凄かった。

 

 目の前に広がる広大な客席と所狭しと詰め寄る観客。

 本当に自分の出している音かと信じがたくなるような最高の音質。

 そして体全体を包み込むようなボリューム。

 目の前でなんか燃えてるんじゃねぇかと思うくらいには熱い空気。

 観客の雄たけびとジャンプによって揺れる地面。

 

 そして、何よりも扱った舞台が何処よりも清々しく感じたあの瞬間。

 

 

「ぜぇ……いやー、楽しかったぁ……」

「いや、そんな体勢で言われても説得力ないけどな」

「いや……格好に関しては申し訳ねぇ……ちぬ……」

「冗談だって」

 

 

 なによりもビビったのが体力の持ってかれ方よ。

 今まともな体勢してないからね。もう椅子に座ってるんじゃないから。乗って溶けてるから。もうでろーんってなってるから。台パンして壁に穴開けたりはしてないけど。

 

 確かにいつもよりはしゃいだよ。だってテンションが上がる要素しかなかったんだもん。超絶楽しかったんだもん。

 けど流石にここまで体力ガッツリ削られるのは想定外。マジで一撃必殺だった。持続系じゃなかった。気が付いたらもうクエスト失敗しましたのテロップが流れてた。ライブは成功したけど。

 

 

「松井さん。お疲れさまでした」

「うわびっくりした!」

「光とだりーン所の……だっけ?」

 

 

 急にでかい影に乗語きこまれたと思ったらうちの担当のPさんでした。心臓飛び出るかと思ったわ。下手なブラクラよりも怖えよ。

 

 

「……申し訳ありません。本来ならばライブ前に様子を見に来させていただくつもりだったんですが……」

「全然全然。大丈夫っすよ」

 

 

 実際何とかなったし。それに楽しかったしね。

 

 ただ、いざおおきな物事を目の前にしたときに、頼れる人物が自分の近くにいないだけでも自分はこんなにも弱弱しくなるっていうのは驚きだった。

 高校生にもなって少しは大人になれた期ではいたが、実際はそうでもなかったみたいだ。大人へのハードルってたけぇ。

 

 

「この後はライブ終了後、スタッフさん方へのあいさつ回りなどを終えたら帰宅となります。その際には自分も同行しますので」

「あい。了解しました」

 

 

 ライブ前にもあいさつ回り……というか楽屋に様子を見に来た偉そうなおじさんに挨拶はしたけど、終わったらこっちから行くんだな。

 

 そらこんだけの箱を動かすのには俺らだけの力では出来ないことだらけだもんな。スタッフさんたちの協力あってこそだし、むしろ挨拶だけでいいのかと心配になる。

 あっ、でもなんか346名義で差し入れあったし、そこらへんはもう大丈夫なのか。しっかりしてんねぇ。

 

 

「……なぁPさん。ちょっと確認したいことがあるんだけど、時間あるか?」

「……? はい。時間なら暫く大丈夫ですが……」

「そっか。じゃあ後でちょっと面貸してくれ。光はもうちょっと休んでな。アタシらちょっと用があるから」

「はぁ……」

 

 

 結局どっか行ってから直ぐになんともなさそうにして帰ってきてたけど、いったい何だったんだろう。俺がやらなくてもいいようなコトとかやってたのだろうか。

 まぁわかんねぇしいいさね。ライブも無事に終わったし、今日はもうこれで十分じゃ。帰って寝よ(本音)




なつきちがどっか行った理由もちゃんと描写しようかと思ったんですけど、オチもないし割とちゃんとしたアレだったのであえて避けました。
これが考察の余地ってやつなのかもしれないですね(たまたま)


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眠れない夜には少し大人の子守唄が似合う

今週だけで今持ってる3つの小説を全部更新しました。偉い。
時間が無い代わりにモチベーションはあります。自粛期間がもう少し続けば時間も…なんて思うけど、外食が解禁されるのなら等価交換な気がします。流石デブ。


 長い、長い戦いだった。

 

 見えない敵を相手に必死でもがき、苦しみ、雑念を消して立ち向かうも歯が立たない。

 いつになっても俺一生この敵には勝てないのだろう。

 

 

「……あー、クソ。寝れん」

 

 

 ほんと、人間悪循環のループに入ると抜け出せなくなるよね。

 

 寝たくなる→それを意識する→余計寝れなくなるっていうのは、ある程度経験したことがある人も多いであろう。

 俺はそれがよくある。不眠症とかそういう類ではないが、何だかそういう沼にハマって寝れないときがなぜかあるものだ。

 いやマジで困るよね。寝たいし眠いっていう感覚はあるのに寝れないんだもん。現代のお手軽生き地獄。

 

 

「ふぁ……ぁう……ねみ……」

 

 

 そういう時は掛布団を反行儀キックコースで綺麗に蹴っ飛ばし、外に出るに限る。

 

 この前、初めて飛鳥に会った時も似たような感じで外に出てたけど、俺って睡眠系に関することが苦手というかなんというか。そんな感じだったりする。正直のび太くんがクソ羨ましい。

 

 朝、早く目が覚めて寝れなくなっちまった時と同じで、閉鎖的な空間からいっそのこと一度外に出て空気に触れ、スッキリしてからベッドに入ると馬鹿みたいに寝れるものだ。

 これを開発してから俺は滅茶苦茶日々が楽になった。寝る時間は遅くなるけど。

 

 

「さっむ」

 

 

 あの時と同じようにジャケットを羽織り、スマホをポケットに突っ込んで、イヤホンを耳に刺して、あまり音をたてないように部屋のドアを開ける。

 

 時刻は丑の刻に差し掛かったところだろうか。明日は平日ということもあり、廊下では物音一つ聞こえない。

 もちろん電気は消えており非常用出口を示すと消火器を居場所を照らすライトしか灯っていないのもあって、軽いホラーだ。

 外気温はかなり低く、さっきまで布団にくるまってた俺にとっては余計に厳しいものになっている。

 

 

「三日月……?」

 

 

 ……ではないかな。空には薄い雲が3割、夜空が7割。そして、三日月と呼ぶにはちょっと体重がオーバーしたフォルムになってる月。

 なんて言うんだろうな、あの形。小学生の頃、理科室に貼ってあった月の名前が全部あるポスターで覚えたはずなんだが、どうにも出てこない。

 懐かしいな、あのポスター。理科室ってなんかよくわからんポスター貼りがち説あるわ。ちゃんと理科に関係していることではあるんだけど。

 

 

『淡い月に見惚れてしまうから 暗い足元も見えずに』

 

 

 それにしても夜の街っていうのも美しい。車も普段より少ないし、通行人なんてほぼほぼ皆無だ。

 早朝もそうだが、静寂がほとんどという町並みは、昼間の光景と真反対といこともあって何だかとっても中二病的な雰囲気になれる。

 

 

『転んだことに気が付けないまま 遠い夜の星が滲む』

 

 

 テンポもビビるほどゆっくり、どれどころか一定のリズムすら刻んではいない。

 鼻歌のような、それでいて近所迷惑にはならないレベルで気持ちよくなれる。そんな声量で。

 勿論、周りに人がいないことを確認してな。

 

 

『したいことが見つけられないから 急いだ振り 俯くまま』

 

 

 歌と趣に背中を押されるがまま、あの朝と同じように、中庭へと足を進める。

 

 ほんの少しだけ、アコギを背負ってこればよかったなと一瞬頭をよぎるが、こういうのは中途半端なところでとどめておく方がいいんだ。なにがいいかは知らないけどね。そもそもこれ寝れないから外に出てるだけだし。

 

 

『転んだ後に笑われてるのも 気付かない振りをするのだ』

 

 

 中庭にはもちろん人がいない。

 そりゃそうだ。こんなド深夜にいるはずがない。むしろ誰かいたら大問題だ。いや、問題ではないかもしれんが。

 

 一度、大きく両手を広げて深呼吸をする。なんとなく、胸の中にあったようなモヤモヤが外の空気と入れ替わるような気がする。

 実際はどうかは分からんけど、そもそも寝れないって理由がメンタル面の問題なんだから、そこんところは気にしたら負け。

 

 深夜に灯る電柱。無人の中にを飾る花たち。清らかな水音を流す噴水。

 

 うーん、エモい。完璧なる、エモの塊。

 あとはここに女神みたいな見た目をした美少女とかいれば完璧。白髪で透き通るような蒼い目をしていれば完璧だろうか。いや、まぁそんな上手い話しあるわk

 

 

「Мм……続きは、歌わないんですか?」

「」

 

 

 あったわ。いたわ。女神みたいな見た目をした美少女。しかも白髪で透き通るような蒼い目をしている。役満すぎる。高め入った(?)

 

 

「えと、アーニャちゃん? なんでここに?」

「光が外に行くのが、見えたから、付いてきました!」

「あ、そういう」

 

 

 アーニャちゃん夜更かしするんだ。いやちゃう、そこちゃう。

 

 ド深夜に外に出歩くような意味の分からん男性にちょこちょこ付いてきちゃ危ないからダメでしょ!

 ……なんて本当はキッチリ言いたいところなんだが、何が悪いのかを全く理解していないようなまっさらな笑顔を見たら怒れるわけもなく。

 

 

「アーニャちゃん、割と夜更かしするんだね……」

「Не могу спать ……アー、寝れないとき、結構多いです」

「わかるわかる。結構、寝れないときってあるよな」

 

 

 明日学校とか大丈夫なん? ……って聞こうとしたけど、それは中学生でも高校生でも同じか。

 寝ないと死ぬってわけじゃないし、明日辛くなるのはお互い様だろう。そんな聞くことでもない。

 

 

「光も、寝れないこと、多いですか?」

「そりゃあるよ。今日だって、それだからこんな時間にここにいるわけだし」

「アーニャと、同じです」

 

 

 可愛いなぁ。そんなふにゃっとした笑顔もできるのか。

 若干眠くて頭がふわふわしているということもあって、思わず反射的に頭に手が伸びていきそうになった。あぶねぇあぶねぇ。

 

 女の子の頭をよしよししても許されるのは菅〇将暉だけってどっかで見たことがあるからな。なんだよそれ、俺だってされてみてぇわ。菅〇将暉によしよし。

 

 

「アーニャも、寝れないときは外に出るの?」

「отличаться……アーニャは、空を見ます」

「空?」

「なんだか、落ち着きます」

「……そっか」

 

 

 確か、アーニャちゃんはロシアとのハーフと言っていたっけ。

 ちょくちょく出る外国語はおそらくロシア語だ。日本語を流暢に離せないところを聞くと、元々ロシアにいたところからこちらに越してきたのだろうか。

 それでいて寮住まい。15歳。並のメンタルでは正直耐えられるものではないだろう。少なくとも俺なら普通に病む。

 

 東京の空も、ロシアの空につながってるかもしれねぇもんな。オーロラも出ないし、星なんかほとんど見えない寂しい夜空だけど。

 ここにいるってことは、アーニャも望んでアイドルにはなったんだろうが、それでも中学生が親元を離れて異国の地にいるんだ。眠れない夜が合ってる何らおかしくはないだろう。

 なんか普通に謎に寝れないだけの自分が悲しくなってきた。

 

 

「Чем это」

「ん?」

「アーニャ、さっきの続き、聞きたいです」

「……あー」

 

 さっきの続き……あー、あれか。夜明けと蛍のことか。そういえば聞かれてたんだな。恥ずかしい。

 

 あれってこういう夜更けの曲じゃなくて、題名の通り情景的には夜明けが近いんだけどね。たまたま歌ってたけど。

 でもあのメロディーというか、テンポというか。深夜に聞くとすげぇ心地いい曲だよな。半分鼻歌だからテンポも何もボロボロだったけど。

 

 

「とっても、落ち着く歌でした。アーニャ、あの歌が好きです」

「……じゃ、ギターがなくて悪いけど」

 

 

 なにか叩けるものないかな。出来るだけ変な音がいないような……ベンチでええか。叩いた感じ音も悪くない。

 

 少し冷たいベンチに腰掛け、股を開いてその間に両手を添える。

 アーニャがなぜか不思議そうな顔をしてたので、首をかしげてベンチの隣を指さしてジェスチャーすると、素直に隣に座ってきた。

 超絶かわいい。違う、女の子を立たせて自分だけ座るとか最低だからね。仕方ないね。

 

 

「Название песни ……歌の名前、知りたいです」

「『夜明けと蛍』……蛍ってロシアにもいたの?」

「直接見たことは、ありません。けど、ロシアにはホタルは、います」

 

 

 蛍って日本にしかいないイメージが謎にあったけど、ロシアにも蛍っているんだな。ロシアの蛍も、闇夜で淡く光る道しるべになるのかな。

 って中二病かよ。夜だからだな、こんな言葉が簡単に浮かぶのは。

 

 カホンって知ってるか? 四角い箱みたいな楽器で、股の間とかにはさんで太鼓みたいに叩いて音を出し、リズムを刻む楽器だ。

 中学校の音楽室にカホンが置いてあったって話は置いておいて、あの楽器はとっても良い。歌いながらリズムを刻むことが出来るんだが、それがとてもいい。

 

 歌を歌うときの道しるべになるから、とっても歌いやすいしノリやすい。そんなわけで、このベンチに座ったってわけだ。

 そんなわけでまた下に広がる木製の面を普段よりゆっくりと、あとからでもスッと立てるようなリズムを刻んでいく。

 

 

『淡い月に見惚れてしまうから 暗い足元も見えずに』

 

 

 不細工な月夜と一色の電灯が、ぼんやりと広間を照らす。

 

 あぁ、良い夢だ。現実かもしれないけど、夢のような気分だ。

 なんだか今日は良い夢を見られそうだな。




最近疲れた時にはおっぱいとTwitterで呟くことにしてます。
特にいいこともありませんが、なんかちょっとだけ気分が空く気がします。これが犯罪者への第1歩なのかもしれん怖い。


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キャラ渋滞は便利な言葉

ささっと出すだけのつもりがてんこ盛りになってました。
おかしいね。軽く考えてた時はこんなに長くなるはずじゃなかったのにね。


 初めての346プロ所属スタジオミュージシャンとしての舞台に立った次の日。

 本来ならあの興奮を忘れられず、いつにもましてベース欲が高まり延々とベースを弾き続けていた! ……的な感じにはなってたんだろうけどなぁ。前科者の俺にはもう一度同じ過ちを繰り返すメンタルはないのよ。

 

 

「んま」

「良かった~!」

 

 

 そんなわけで、俺はとっても大人しく、事務所でシンデレラプロジェクトのメンバーと、かな子ちゃんが作ってきてくれたお菓子を食べて豊かなティータイムを過ごしていた。

 

 中学生の時までイキって無理やり飲んでいたコーヒーのおいしさが最近やっとわかるようになってきたよね。

 いやぁ甘いものとコーヒーの相性って化け物みたいにいいわ。まぁ、今食ってるのはクッキーだから多分紅茶とかの方が相性良いんだろうけど。コーヒーは飲めるようになったのに紅茶は飲めないんだよね……

 

 

「かな子ちゃんのお菓子本当においしいです!」

「しまむー、あんまり食べ過ぎちゃうとおなかに~?」

「えぇっ!?」

「卯月なら大丈夫でしょ……未央も人のこと言えるの?」

「私は最近ダンス沢山してるから!」

「それは三人ともそうじゃん」

 

 

 卯月は多少太った程度では全く影響ないから大丈夫だよ。卯月のそこんところの事情全く知らないからアレだけど。

 というかこいつら二人とも美味そうに菓子食うよな。CM向いてるわ絶対。凛は……化粧品のCMとかいいんじゃないかな。ほんと知らんまに模範的クールになりやがって。

 

 

「おいしいから大丈夫だよ~」

「かな子ちゃん、トレーナーさん大丈夫なの……?」

「あっ」

「後で徹底的にしごかれる姿が目に浮かぶにゃ……」

 

 

 こいつ、完全にトレーナーさんに減量迫られてたの忘れてたな? 後でレッスン利用されて締め上げられるぞ。

 

 はい、かな子はこういうやつです。

 フルネームで三村かな子。超絶お菓子作りが上手く、めちゃくちゃいい子。明るめの黄土色のショートカットに真ん丸でタレ気味な目は、見る人をほんわかさせてくれること間違いなし。つまり顔が良い。

 

 ……ではあるが、ほんのちょーっぴりだけふくよからしい。

 このレベルで太ってるって女性社会どうなってんだって最初は思ってたけど、あまりにもここの会社で見る女性のスタイルが良すぎて最近感覚がバグってきた。

 確かにここにいる人たちに比べたらふくよかかもしれないな。うん。でも実際これくらいの体系の方が好みの人は多い……なに言ってんだ俺は。

 

 

「……あれ。ていうかさ、俺以外みんな紅茶派だったりする?」

「私、コーヒー飲めなくて……」

「私もー」

「凛はお前コーヒー飲めないっけ?」

「飲める」

 

 

 その割にはお前今飲んでるの紅茶やん。コーヒーちゃうやん。

 まぁ飲めるってだけで好きとは一言も言ってないもんな。そりゃそうじゃ(オーキド)

 

 そいで本田も卯月もコーヒーは飲めないと。卯月はなんかすっごいイメージ通りだったけど、本田も飲めない側の人間なんだな。

 

 

「多田は?」

「わ、わたしはロックだから勿論飲めるよ? うん」

「さっき李衣菜チャンめちゃくちゃ砂糖入れてたにゃ」

 

 

 おい、多田。やっぱり飲めねぇやんけ。

 いや、正直予想付いてたけどね。なんなら一番予想付きやすかった。意外とパターンすらも許さないってレベルで想定しやすかったわ。

 

 

「智絵里ちゃんはコーヒー飲める系なの?」

「わ、わたしですかっ!? わたしも苦いのはちょっと……」

 

 

 あら可愛い。まぁ智絵里ちゃんが苦い系の者が無理っていうのは、なんとなーくイメージ通りだよなぁ……って言っても智絵里ちゃんとこんな距離近いのは初めてだけど。

 

 そんなわけで確かフルネームは緒方智絵里。合ってるかは知らん。俺も名簿見て必死に覚えたんだから。

 少し赤っぽい茶髪に近い髪を高めの位置にツインテールにしてまとめていながらも、ツインテールにしてる人にありがちなキツイあざとさとかは一切ない。どちらかというと、まんま小動物的な雰囲気を感じる。

 

 ちなみにだけど、さっきから初対面というのもあるのかもしれないが、たまーに目が合うと凄くびっくりされるのでなるべく目を合わせないようにしている。

 そうだよな。今まで他の奴らが環境に順応しすぎてただけで、普通の女の子ならそういう反応になるよな。ごめんな、ビビらせちゃって(涙目)

 

 

「いやー、にしてもお疲れ様でしたな~。光クン」

「俺?」

「当たり前じゃないか~。昨日のライブ、未央ちゃんの目にはしっかりと焼き付いているぞ!」

 

 

 というか本田はどこ目線で言ってるんだよ。

 お前がもしかして俺のプロデューサーなんか? だったらとっても不安になること間違いなしだわ()

 

 

「でも本当に凄かったですっ! 私たちも次はあぁやってステージに……!」

「卯月たちなら出来る出来る」

「ふーん。卯月のことは名前呼びなんだ」

「えっ」

「私は名前で呼ばれる方が嬉しいですよ? 凛ちゃんはイヤ……ですか?」

「えっ」

 

 

 何この子。強い(確信)

 周りの人がみんな揃って卯月卯月っていうもんでいつの間にかそれが移って下の名前呼びになってただけなんだよ。誤解だ。直せるなら直すよ。そのうちね。

 

 

「そういえば、まっさんはあんまり私たちのこと、下の名前で呼んだりしないよね」

「私と凛ちゃんくらい……でしょうか?」

「李衣菜ちゃんも呼ばれてたにゃ」

「アレはお前をイジる為の悪ふざけだし。な?」

「うんうん」

「うにゃー!!!」

 

 

 怒るな怒るな。面白かったからええやないか別に。

 でも多田はそれこそ名字呼びしてる人少ないし、下の名前呼びが落ち着く枠だよなぁ。前川は前川ァ! って感じするからそのまんまでもいいんだけど。

 

 

「そもそも異性を下の名前で呼ぶのってなんかハードル高くね?」

「全然そうは思いませんなー」

「男の人ってそういうものなんですかね……?」

「私は全然気にしないかなー。小さいことを気にするなんてロックじゃないし」

「アカン、価値観が違いすぎる」

「多分この子たちがフレンドリーすぎるだけだにゃ」

 

 

 前川はこっち側の人間なんだな。今までで初めてお前と心が通じ合ったな。トレーナーとして嬉しい限りだ。ごめん、全部適当言った。

 

 それにしても、島村さんと本田がコミュ強なのは予想付いてたけど、問題はぽかんとした顔してるこのロックかぶれよ。

 お前もそっち側の人間やったんかい。その薄そうなロックの仮面の裏にはどんな素顔が隠されているのかちょっと楽しみになってきた。

 

 

「でもみくちゃんだって私たちのこと、上の名前では呼ばなくない?」

「それは女の子同士だからにゃ。相手が男の子だと話は別にゃ」

「みくちゃんは男の子が苦手なんですか?」

「いやそういうわけでは……」

「結局あだ名付けるのが一番なんだよねー!」

「それは違うよぉ」

 

 

 あれ? 渾身のシンジくんモノマネしたはずなんだけど。なんかものの見事にスルーされてない? 気のせい?

 いや違うわ。これあれだわ、完全に通じてないだけだわ。世代じゃねぇかぁー……そっかぁ……悲しいなぁ。

 

 まぁ俺も全然世代じゃないし、なんならエヴァとかほとんど見てないんだけどね。雑モノマネのモノマネしてるだけだから。もはや原型残ってないまである。……あれ? 原因それじゃね?

 

 

「でもこんだけ距離感ぶっ壊れがいると大変だよな」

「そこだけは同情してやるにゃ」

「前川が急に可愛く見えてきたわ。お前、アイドル向いてるんじゃね?」

「みくは正真正銘のアイドルだにゃー!」

 

 

 前川ってもしかしたらちょっとおかしいところがあるだけで、それ以外の点に関しては滅茶苦茶常識人なのかもしれない。

 いや、でも猫キャラの時点で全てぶっ壊れてるような……いや、やめといてやるか。

 

 距離感ぶっ壊れタイプな女の子の何が大変って、こっちの距離感の調節の仕方が大変なんだよな。

 クラスに一人はいただろ? めちゃくちゃ男女関係なく接してくれて、しかも滅茶苦茶距離感の近い女の子。全国の男子学生を勘違いさせ続ける最強生命体な。

 

 そういう女の子っていうのは本当に扱いが難しい。普通に扱えばいいじゃんって思ったそこのあなた。それは違うよぉ(シンジくん)

 このタイプの子と普通に接し続けていると、そのうち異性なのにまるで男の子のような扱いをその子にしてしまうようになるんだよ。具体的にどういうことかっていうと、自然に距離が近くなるうちにそのうちとんでもない地雷を踏み抜いて相手を傷つける可能性があるということ。

 これだけは阻止しなくてはならない。だから気を付けなくてはならない……って昔、凛に教えてもらった。滅茶苦茶熱弁されて推されたから、あれ以降ちゃんと気を付けるようにしてるんだよ。女の子って難しいね。

 

 

「でもアイドルなんだから、こんだけコミュ力的な能力あった方がいいのかもしれんな」

「わたしも頑張らなきゃいけないのかな……」

 

 

 緒方さんはそのまんまでもいいと思うんだけど……っていうのは口に出してはいけない。まだそれを口に出せる距離感じゃない。

 これだからコミュ障は辛いね。本田が羨ましいよ。

 

 

「これ以上コミュ強がいるのも困るけどな」

「あれ? まっさんってきらりちゃんとまだ会ったことないっけ?」

「きら……それって芸名?」

「本名でしょ」

 

 

 すげぇ名前してんな。ごめん第一印象それになったわ。

 キラキラネームがちょっと前に流行語みたいな感じになりかけてたけど、きらりってキラキラ通り越してもはやスタンダートなまであるからな。娘さんがアイドルでほんとによかったなって謎の目線で見ちゃうわ。

 

 

「凛は何回かあったことあるん?」

「当たり前でしょ」

「きらりちゃんたちは今日確かレッスンでしたっけ……?」

「Pさんがそうやって言ってたね」

 

 

 もしかしたら俺も今まで見たことあるのかもしれない。

 てか、今の今までまだちゃんと全員と顔合わせする暇がないって忙しすぎだろ。実際、卯月たちのライブも控えてるし、俺もつい昨日までライブ関係でわちゃわちゃしてて、実際ちゃんとした時間捕る余裕なんてなかったけどさ。

 

 

「そっかー。いつかそのうちちゃんと挨拶しときたいよな」

「……光クンって結構律儀なところ多いにゃ」

「俺、常識人だからさ」

「常識人は自分のこと常識人って言わないにゃ」

 

 

 それはそう。正論で返されたらなんも言い返せなくなるのマジで悔しい。

 

 合うなら早く会ってみたいよな~。きらりさんって人。その人含めると……13人か。シンデレラプロジェクトって確か14人だっけ? こうやって見ると多いよn

 

 

 バァン!!!

 

 

「!?」

「杏ちゃーん! レッスンの時間だにぃ~☆ ……ってあれ? 杏ちゃんは?」

「杏ちゃんは見てないですね……」

「きらりちゃん、今日はレッスンじゃないのかにゃ?」

「うん! 今日は杏ちゃんとレッスンの予定だったんだけど、杏ちゃんったらまーたいなくなっちゃって!」

「きらりちゃん……扉はゆっくり開けないと智絵里ちゃんが……」

「ひ、びびび……びっくりしたぁ……」

「あわわわ! 智絵里ちゃんごめんねー!」

 

 

 …………ハッ! いかん、思考が完全に止まっていた。

 いやいや、いやいやいやいや。いったいこれはどこからどうツッコんでいけばいいんだ。ツッコミどころが多すぎて逆にツッコめないタイプだ。

 

 爆発音かと思うくらいの音量で扉を開けた先に立っていたのは、とてつもない背丈をした女性。

 背丈の割には体はごついというわけでもなく、とってもスラッとしたモデル体型にも見える。ただでかい。滅茶苦茶でかい。うちのPさん並みにでかい説あるぞこれ。

 

 

「杏ちゃんはどこにいるんでしょうか……」

「レッスンはサボるわけにはいかないしね」

「だいじょーぶ! 杏ちゃんはぜーったいここにいるにぃ☆」

「なんでわかるの……」

 

 

 そしてやはりというかなんというか。顔はとてもかわいい。

 少しカールのかかったふわっふわの茶髪にぱっちりとした目とアヒル口は、絵にかいたようなメルヘンを感じさせる。だが、全体的な顔立ちはどこか大人びていて、お姉さんといったような印象を覚える。口調についてはもう触れないでおこう。

 というかあんなスラっとした体形であんだけ爆音でドアを開ける力があるってどうなってんだ。色々とメルヘンが過ぎる。よくドア壊れなかったな。

 

 

「杏ちゃんがいる場所は大体ここだから……えーっと、ソファーの下にはいなさそうかな?」

「なんでわかるの……」

「きらりちゃんって杏ちゃんのサーチ能力はものすごいからにゃ……」

 

 

 杏ちゃん杏ちゃんって言われているのが14人目のシンデレラプロジェクトの子だろうか。なんでソファの下にいる説が出てるんだよ。流石に即否定してたけど。

 その子も多分一度も姿を見たことがないんだよな。マジで謎の人物。まぁ、目の前で元気に飛び跳ねてるメルヘン少女も謎に包まれてるんですけど。

 

 

「ふっふーん! きらりんサーチ発動☆……杏ちゃんはー、こーっこだぁ~!」

「うわぁ!? 起こすなよきらりー!」

「わぁ! 凄いですー!」

「杏ちゃんの一本釣り……見事!」

「杏のこと、魚扱いは酷いと思うなー」

 

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……!

 きらりさんがきらりんサーチとか言って一直線に俺たちの座っているソファーとは別にある、一人用のソファーみたいな椅子に走り出して行ったんだ! そして急にソファーの片側を軽々と片手で浮かせたと思ったら、もう片方の手を空いた隙間に突っ込んで出てきたのは体の小さい女の子だった……!

 俺も何を言っているのかわからねぇ……! というか、何一つ今起きたことが理解できねぇ……!

 

 なんで一発でわかんだよ。というかなんでソファーの下にいるんだよ。おかしい。この世界は何かが間違っていやがる。

 

 

「……すげぇもん見た」

「みくはもう見慣れてきた段階に入ってるにゃ」

「お前やっぱおかしいよ」

「悔しいけど同感にゃ」

 

 

 おそらく、今きらりさんの小脇に抱えられている少女が杏ちゃんと呼ばれている少女だろう。

 年齢的には小学生くらいか? でもみりあちゃんよりも小さい……かわかんねぇな、あの体勢だと。

 

 金髪……というよりクリーム色に染まった髪を下の方でツインテールにしてるっぽいけど、滅茶苦茶長いのを見ると元々ロングヘア―なのだろうか。ここから見てもわかるくらいサラサラしてんな。

 さっきから絵にかいたようなやる気のない顔をしているけど、それでもわかる。もう定番化してきた。顔が良い。そらアイドルだもん、知ってたわ。うん。

 

 

「あーっ! 初めましてだにぃ!」

「あっ、初めまして」

「昨日のライブ! と───っても! 凄かったにぃ! はっぴはぴしてて、きらりまで元気になっちゃった!」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 グイグイ来られすぎてつい敬語になってしまった。

 距離感が近いとかそういうレベルじゃない。新幹線だわ。横顔じゃなくて、距離感の縮め方がもはや新幹線。

 

 

「きらりー。まだ自己紹介もしてないんだし、急に来られてもこの人も困っちゃうでしょ」

「そうだった! おっすおっすー☆ 諸星きらり! 17歳だにぃ! ほーら、杏ちゃんも! 自己紹介して!」

「杏はいいよぉ……眠いんだよぉ……」

「しょうがないな~……ごめんね? こっちは双葉杏ちゃん! きらりと同い年! 体は小さいけど、色々とすっごいんだよ!」

「ま、松井光。17歳です」

 

 

 もうどこからどう処理すればいいのかわからん。勢いが凄すぎる。もうコミュ障陰キャみたいな話し方にこっちがなってしまっている。

 っていうか17歳って言ったか? 俺と同い年じゃねぇか! しかも双葉さんも! なんか色々とバグってて頭がおかしくなりそうだ……

 

 

「それじゃあ、きらりたちと一緒だね! これからも杏ちゃんも一緒にみーんなではっぴはっぴしていこうにぃ☆」

「よ、よろしくどーぞ」

 

 

 なんだろうな。俺、これから先が不安になってきたよ。

 助けてケスタ。




作者の妄想じゃない小説ってなんだよ(哲学)


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大舞台は緊張と期待のタイフーン

 今日は卯月たちの初めてのライブの日。

 本来なら祝日ということもあってグッスリ爆睡する予定だったんだ。そんな中でも半分同僚みたいな感じになってる三人の初舞台を見るために、ちゃーんと寝る前に次の日の持ち物やら服装やらを準備して、そのうえで目覚ましをかけてスタンバってた俺のことをまずは手放しで褒めてほしい。

 

 

『おはよ』

 

『…………おはよ』

 

 

 でも思い返せば目覚ましが鳴る前から凛のモーニングコールで叩き起こされ。

 

 

『起きて』

『ハッ! ……えっ、もう着いた?』

『うん』

 

 

 電車の中で無事寝落ちし、気が付けば凛に肩を叩かれ半分飛び起きたと思ったらすでに現場に着いていて。

 

 

『凛? ここ関係者しか入れんパターンの場所では?』

『関係者でしょ』

『いや、普通にチケットあるし今日は客側なんだけど』

『大丈夫』

 

 

 ちゃんと普通のお客さんと一緒に正規の入り口から入ろうと思ったら、何故か服を引っ張られて職員用窓口から入場させられ。

 

 

『あれ? 今日は見学でもしに来たの?』

『いや、よくわかんないですね……』

『あははっ! なにそれー!』

『今日はよろしくお願いします』

 

 

 なんか我が物顔でスタッフさんに道案内してもらいながら、美嘉さんとか先輩方のあいさつに付き合うことになり。

 

 

「先輩たちからいろいろ学んでください。今日の全てが、皆さんにとって貴重な体験になります」

「「「はいっ!」」」

 

 

 果てには気が付きゃ本番前の三人を激励するPさんという激エモシーンを千川さんと二人で眺めることになってる。一体俺はどういう立場でここにいるねん。

 

 早い、早すぎる。手際といい全てが早すぎる。俺がちゃんと備えていた意味よ。凛ちゃんほんとによくできた子。お母さん感心しちゃう。

 

 

「千川さん」

「なんでしょうか?」

「俺ってなんでここにいるんですかね」

「さぁ? でもなんら問題はないですから、大丈夫ですよ」

 

 

 その割にはさっきPさんめちゃくちゃ焦ってたように見えたけどな。

 

 そりゃあそうだ。だって俺も聞いてなかったんだもん。

 Pさんが凛からそういう旨の話を聞いてるなら、律儀なこの人のことだし事前に連絡をしてくれるはずだもんな。

 というか、毎日最初の軽いミーティングでその日の予定を全部伝えてくるようなこの人が伝達ミスとかやるはずないもんな。可哀そうに(他人事)

 

 

「そもそもここに俺っていてもいいんですかね」

「さっきも言ったじゃないですか。問題はないって。松井さんも立派な関係者ですから」

 

 

 いやいやいや。違うからね? そもそも俺ってシンデレラプロジェクトのメンバーでもないからね? ただ346プロと契約している高校生ってだけだから。それ以外何にもないから。関係者って俺が知らないだけでそういうもんなの?

 

 

「ところで松井さんはみなさんに声をかけたりしないんですか?」

「なんで俺が」

「またまた~。 凛ちゃんの練習に付き合ってあげてたのは松井さんじゃないですか」

 

 

 えっ、なんで知ってるの? 俺、そのことは誰にも言ってないんだけど。

 っていうかやってた場所が場所なだけに俺らの地元と同じ人しか知りえない情報だよね? だってあの公園昼間はともかく、夜なんて全然人来ないんだぜ?

 どういう人脈持ってんのこの人? そもそも人脈から来た情報なのか? もうわかんねぇなこれ。大人怖ぇ。

 

 

「なんか言うことないの」

「お前が言うんかい」

「『なんか言うことないの』」

「そんな似てないが」

「ちぇ~。未央ちゃんの自信作だったのに」

 

 

 めちゃくちゃ表情変えずに真顔で言うじゃん。怖いじゃん。『お前ずっと私のダンスを近くで見てきただろ???』って顔が語ってるもん。

 あいつは無表情だけど俺は分かるんだ。だって後ろにスタンドが見えるもん。爆熱ストームだもん。マジン・ザ・ハンドだもん。めっちゃキレてるもん。

 

 っていうか本田のモノマネは凛のだよな? だとしたら色々と足りてない。足りてないというか。本田のバックにはマジンじゃなくてパリピの魂が付いてるから無理だわ。

 

 

「がんばれ」

「向いてないよ」

「何が?」

 

 

 俺が10秒くらい悩みに悩み抜いて出したエールは真っ二つにされました。

 

 お前辛辣すぎんか? 臭くならないようにちゃんと簡潔にわかりやすくかつ短くストレートに届くような言葉を選んだのに。そんな俺の渾身のエールだったのにひでぇや。

 

 

 ガチャッ!

 

「?」

「あ゛っ゛」

 

 

 目があったぞ、前川。おはよう。挨拶は大事。

 

 本番前のちょっと神妙な感じになってる空間のドアがいきなり開こうものなら、そりゃあ音でバレるし視線は集めるよね。

 そんなわけで視線の先にいたのは前川とかな子と智絵里ちゃん。前川を先頭についてきた感じがぷんぷんとする。そいつ色んな意味で先頭向いてるもんな。わかるわかる。

 

 いやでも今のドアを開けたら先客がいて、そいつと目が合って『あっやべ』って顔になって硬直するって体の動きはとっても猫だった。猫キャラ貫けてて偉いぞ! 前川!

 

 なーんでこいつ簡単に入ってこれてるんだと思ったけど、こいつに関しては完全に関係者だったな。ちゃんと繋がりあるし。っていうかよく見たら緒方さんと三村さんまでいるじゃん。保護者かな?

 

 

「あぁう……っまだ納得はいかないけど! 今日はみくを倒したみんなに託すにゃ!」

 

 

 暫く視線を集めてうろたえる中、絞り出したセリフがこれである。

 

 茶化しに来たんじゃなくて応援しに来たんじゃん。良いとこあるねぇ野良猫さん。

 っていうかこれ、俗にいうツンデレじゃね? 僕知ってる! これツンデレだ! 猫意識してんのか? 顔は可愛いんだから破壊力だけはあるぞ。命中30%だけど。

 

 

「ライブ、頑張って!」

「みんなと一緒に、見てますから……」

「はいっ! ありがとうございます!」

 

 

 智絵里ちゃんとかな子ちゃんの女の子らしいエール。それに元気に答える卯月。グッとサムズアップする本田。無言でうなずく凛。

 なんというか、三者三様だよなぁ。御三家みたいな感じがする。こうやって見ると、この三人って相性がいいのかもな。上手いこと相性を補えそうな気がする。

 

 

「光」

「なんだよ」

「これだよ」

「正直すまんかった」

 

 

求めていたのはこれね。ごめんね。そんなの分かんない無理ぽ。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 なんだかんだで前川達についていって観客側に戻りましたとさ。

 まぁでもあれだわ。思ってたよりもガチガチじゃなくて何だか安心したわ。本番前にガチガチになる凛ってなんか想像できなさそうではあるしな。あいつも緊張はするんだけどね。

 

 今回、美嘉さん達がライブをする会場はかなりでかい。例えるのなら、小中の時に学校で貸し切ってやった合唱コンクールの時に使った会場みたいなどでかいホール。久々に来たわ。おそらく去年ぶり。

 例え方へんじゃね? って思ったやろ? マジでこれが一番正しいから。みんな見たら『あっ、ここ昔合唱コンクールで使った所っぽい!』ってなるから。

 

 

「ここだよー!」

「えーっ! もっと近くが良かったー!」

「でも~、ここからでもとってもよく見えるよぉ!」

 

 

 何故か真っ赤に固定されてるカーペットの敷かれた階段を上り、ドアの向こう側に抜ける。狭い空間から一気にどえらけない広い空間が目の前に移るのは何とも言い難い快感があるよね。

 なんというかアイドルのライブをやるっていうよりも、劇〇四季が始まりそうなステージだな。こういう会場ってアイドルとかのライブにも使えるんだって豆知識的な何かが増えたよ。この先使うとは思えない知識だけど。

 

 っていうかここ、端の席じゃん。しかも空中に浮いてるタイプの。

 俺ってエスカレーターでもそうなるんだけど、それってどこでどう支えてるん? ってなるようなものの上にいるのすげぇ苦手なんだよな。慣れたら大丈夫だから高所恐怖症ってわけではないんだろうけど。

 

 

「あそこのステージに卯月ちゃんたちが立つんだね……」

「バックダンサーだけどな」

「ふんっ! お手並み拝見にゃ!」

 

 

 って言いつつ、お前ら基本的には使ってる部屋も時間帯も卯月たちと一緒だから練習の進展具合とか知ってるはずだろ。お手並み拝見も何もないのでは? 詳しいことは知らんが。

 

 なんかオタクっぽいひょろっとした男性の隣の席に腰を掛ける。本当に映画館みたいな席だな。ポップコーンとジュースを摘まみたくなってくる。まぁここ飲食禁止なんだけどね。

 暇な時間はスマホでも見ようかと思ったが、なんかこんな場所でスマホを見るってマナー違反な気がしなくもなく、スッと左ポケットにスマホを押し込んでステージをぽけーっと見つめる。

 いやー、あそこに立つんだなぁ。なんか信じられねぇ。

 

 

「お隣、空いてる?」

「御覧の通り」

「座っていいかな?」

「どうぞどうぞ」

 

 

 もう片方の空いた席に座ってきたのは超越美女、新田さん。なんとなく重心をお宅の人の方に少し寄せる。なんか近づいたら罪な気がしたんだ。

 

 それにしても顔が良い、ほんとに。もし知らない人だったら美人すぎてちょくちょくばれないように横目に見てたまである。そんな事したら怒られるからやんないけど。

 

 

「光くん、不安じゃないの?」

「……何がですか?」

「凛ちゃんのこと。幼馴染なんでしょ?」

 

 

 一体どこから情報が洩れてるんですかね、ほんとに。また本田か? あのセルフスピーカーめが。まぁ隠してるわけでもないから別にいいんだけどさ。俺じゃなくて凛が困っちゃうからね。

 

 

「不安……不安ねぇ……そんなこと言っても、もう本番ですしね」

「腹は括った……みたいな? 漢らしいところあるんだね」

「いやいや、俺じゃなくて。凛は強いですから。あの見た目通りですよ」

 

 

 ツンケンしてて、名前の通りに凛としてて、何事もクールにこなす。それが渋谷凛という女性の表向きの姿だから。

 長いこと一緒にいるってだけで何回か弱い所を見たことはあれど、それを表に出すようなことは昔からしなかったからな。昔から強い人だよ。

 

 っていうかさ、男らしいところあるってどういうこと? 美波さんは俺のこと今までどういう目で見てたの? 悲しくなっちゃうよ?

 

 

「ねーねー! 二人とも何話してるの? もう始まるよ!」

「もうそんな時間ですかい」

「みんなの姿、ちゃんと見ないとね」

 

 照明が落ちていくのと反転、周りのボルテージが上がっていくのを完成の大きさとペンライトの光で身をもって感じる。

 この前はあっち側だったけど、今回はこっち側だもんな。どっちから見てもすげぇ迫力。アイドル冥利につくよな。

 

 

「気張れよ、凛」

 

 

 なんかここでボソッと言っとけばかっこよくなる事ね? って思ったけど、そんなことは無かった。というか周りの圧がすごすぎて多分誰にも聞こえてないわ。陰キャかよ。



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人生の転機って重大な癖にしょっちゅうくる

更新が見るからに遅くなってますが、僕は無事です。無事じゃないけど無事です。失踪はしないから…ごめんなさい…


「お疲れぃ」

「そっちもね」

 

 

 カチャン、と軽くガラスでガラスをこずいたような音を出して、コップに入ったオレンジジュースを一気に喉を通して胃に流し込む。んー、良い爽快感だ。何歳になってもジュースはおいしいものである。

 

 机の上には豪華……ではないが、スーパーで適当に買ってきたお菓子がちょっと丁寧にお皿に盛られている。

 今日は、俺の初ライブと凛の初ライブのお疲れ様会みたいな感じの奴だ。ちなみに会の発案者は凛である。昨日は頑張ったもんね。マジでお疲れ様。

 

 

「どうだったよ。初ステージ」

「どうって……なにそれ」

「いや、気になるじゃん。あんだけ観客を沸かせてたわけだし」

「別に……ファンの人を沸かせてたのは美嘉さんだし」

「でも、ちゃんと最後は紹介してもらってたじゃん」

 

 

 十中八九、照れ隠しだろう。俺にはわかる。わかんないけどわかるんだ。凛だって人間だからね。

 

 実際、昨日は凄かった。

 自分の周り全部の熱量も尋常じゃないし、ステージでアイドルしている美嘉さんや卯月たちは滅茶苦茶輝いていた。

 他にも可愛い子いっぱいいたし、ほんとにすげぇ事務所だしアイドルが集まってるんだなって再確認させられた。そんな気分になる。

 

 そもそもの箱の規模が違うとはいえ昨日の凛たちの会場はキャパ2000人とか聞いたし。500人って多いとおもんだけどなぁ……おかしいなぁ……ライブハウスとコンサートホールの違いか?

 

 

「……凄かった」

「……」

「ステージから見える景色も、空気も、感覚も、全部が初めてだった」

「……楽しかったろ」

「楽しかったっていうよりも圧倒された、かな」

 

 

 知ってしまったか、ステージの味を。まぁ俺もそんなに知らないんだけど。

 でもそんなにキラキラした目で話されたらさ、どれだけよかったのか想像もつかないなりに思い浮かべてしまう。

 あれだけ努力してちゃんと得られた成果があるっていうのは素晴らしい。努力しても水の泡とかあるからね。ちゃんと報われてよかったほんま。

 

 

「アイドル、始めてよかったな」

「……うん」

「最初、アイドルになるかもって言われたときはびっくりしたもん」

「もう昔の話でしょ」

「回想入っとく?」

「良いって別に……」

 

 

 まぁそんなこと言われても回想には入るんですけどね。

 いやー懐かしいね。あれから何年たつのだろう。俺の記憶が正しければ、あれはなんと昔、先月の事だったであろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は部活もなく、学校が終わってそのまま寄り道もせず速攻で我が家に帰宅したんだ。そしたら玄関に置いてある靴がなんか一つ多かった。それも松井家の人間の靴のサイズとは思えないモノ。

 なんかおかしいなー、なんて思いつつ、制服を脱いでダル着に着替えに二階の自分の部屋に戻ったのよ。

 

 

「おかえり」

「ただいま」

 

 

 うん、知ってた。知ってたよ。どうせお前だろうなって皆目見当ついてたよ。なんなら最初に靴見つけた時点で気が付いてた。

 

 おんなじ町内でありさらにはご近所さんでもある昔なじみの友達が勝手に部屋に上がり込んでて来てたよね。その名も渋谷凛。顔が良いことで地元では有名奴。

 まぁ上がってたのが凛で良かったよ。不審者だったら叫んで逃げてた。

 

 

「私、アイドルになるかもしれない」

「…………はい?」

 

 

 ズボンをベッドにほおり投げ、シャツの第一ボタンを開け、さぁ脱ごうとシャツで視界を真っ白にした瞬間に急な衝撃が入る。物理的ではなく。

 

 ……今、なんて言った? アイドルって言ったか? アイドリングストップの間違いじゃなくて? なんかエコな運転をこれからするとかじゃなくて?

 

 

「嘘、忘れて。じゃあ帰るから」

「おい待てコラ。話聞かせんかい」

 

 

 顔も会わせずにスッと立ち上がってそのまま逃げようとする凛の肩をガッシリと掴んで、そのまま先ほどまで座っていたベッドに押し戻す。

 凄くバツが悪そうに俺の顔から眼をそらしているあたり、さっきの話は本当だったんだろうな。

 信じようとしなくてごめんて。もう信じたから許してや。ちゃんと信じたから。

 

 

「……今日、店番してたら凄い顔の怖い男の人に声かけられた」

「よし分かった。明日から俺も一緒に店番してやる。凛の父さんと母さんには話しとくから」

「違う」

 

 

 大丈夫だって。凛の父さんも母さんも昔から滅茶苦茶俺のこと可愛がってくれたし、超優しいから。

 凛って綺麗に両親の顔を半分ずつ受け継いでるんだよな。二人ともイケメンだし綺麗だから。超羨ましい。

 

 それもよりも不審者の話よ。こいつ、本当に顔は天下一品だからな。

 中学の時から顔が良いってことで俺らの学年でも有名だったんだから。地元でも有名学校でも有名ってもはや芸能人まである。

 でもこいつ、問答無用で告白してきた男を片っ端から振るんだよね。顔が良い奴もいるのにかわいそーに。百人斬りナイトバタフライかよ。

 

 

「それで、その人が急にアイドルにならないかって言ってきたから……」

「不審者じゃん」

「私も不審者だと思って追い返した。三日前に」

「三日前に」

 

 

 こやつ、なぜその時すぐに言ってくれなかったんだ。

 まぁこの子って基本的に本当にやばくでもならない限りはヘルプミーマーリオしに来ない子だからね。プライドが高いというか、オオカミちゃんだから。がぶがぶ~、童〇明治だよ~(裏声)

 

 

「それで昨日も来て今日も来たからさ、もう折れて話だけ聞いたの。今日はお父さんもいたし」

 

 

 うーん、このお人よし。なんだかんだこういうところがあるからいけない。クールでツンケンしている癖に押して押して押されると折れるからね。告白は斬るけど。

 

 これ、無駄なカミングアウトなんだけど、中学の時に凛のこのお人よし部分を使って、どうにかして胸を見せてもらえないだろうかと本人に頼み込もうかと思った時期があったんだよね。

 結局、あまりにも凛がいい子過ぎたから作戦移行には至らなかったんだけど。あの時の俺とっても偉い。中学生の思考って怖いね。バカだね。

 

 

「そしたら。これ」

「ほう」

 

 

 延ばされた手の先にはなんだか小さな紙が。どれくらいの大きさ化というとちょうど名刺サイズ。というか名刺だな、これ。

 それをひょいっと摘み上げて裏表を見てみると、何だか小さめな文字で色々と文章が書いてある。

 

 なになに。『株式会社346プロダクション アイドル部門 シンデレラプロジェクトプロデューサー 武内────』

 

 

「…………346プロって、あの?」

「うん。多分、光が想像してるとこ」

「アイドル部門って、マジなんか」

 

 

 名刺にガッツリ刻まれているアイドル部門の文字。うん、何回見ても確実に入っている。

 隣にあるシンデレラプロジェクトとかいうのはよくわからんけど、多分管轄とか事業的なもんだろう。会社の事だろうし、素人にはよくわかんねーけど。

 

 

「なに、私じゃアイドルに向かないって言いたいわけ?」

「いや、どちらかというとモデルかなーって」

「褒めてんの? それ」

 

 

 いや、褒めてるだろ。少なくとも凛だったらモデルも余裕だよ。適当に言ったけど。

 

 それにしても346プロってマジかー。名前だけなら俺だけでも知ってるんだよな。

 そもそも芸能事務所がどういうものなのかは全く知らないんだけどね。まぁでもよし〇ともジャ〇ーズもそういうものだし。

 

 

「そんでどうすんのよ。やるの?」

「……光は、どう思うの」

「どうって」

「私がアイドルになること」

 

 

 単純なようで難しくてやっぱりちょっと単純なこと言うなぁ、こいつ。

 女の子ってやっぱりこういう少し回りくどいような言い方が好きなんだろうか。これは回りくどいっていうよりもどう答えればいいか困るってやつだけど。

 

 正直な話、正直な話よ? 俺は凛にはアイドルにはなってほしくない。

 理由は超絶単純明快。芸能界の闇だとか枕営業だとか、そういうのに触れる機会を作ってほしくないし、出来ることなら指一本たりとも触れさせたくないから。

 考えてみろ。友達が黄金の沈む泥沼に飛び込もうとしているのをとりあえずでも止めようとしない人がいるか? 止めないやつは多分サイコパスかなんかだね。

 

 けど、俺は知っている。女性がこういう『どうした方がいい?』『どう思う?』系の話を振ってきた時は、大概肯定してほしいと結論はもう決まっているのだ。

 

 

「枕営業とか死んでもしてほしくないから出来ればやだ」

「するわけないでしょ」

 

 

 ごめん。やっぱり隠し事とか無理だわ。本音出ちゃったわ。

 

 肩の力が抜けたのか知らんが、凛が急にぼふっとベッドに横になる。お前よく男のベッドに簡単に横になれるよな。まぁいいけど。

 想定していた答えの斜め上に行ったのかな。なんか噴水みたいにどでかい溜息出してるし。おもしろ。

 

 

「じゃあさ。そういうのしなかったら、私がアイドルになっても良いわけ?」

「まぁ、いいんじゃね? アイドルとかよーわからんけど、お前顔はいいから」

「ふふっ、なにそれ」

 

 

 そういえば、なんかアイドルには笑顔が大事とか聞いたことがある気がするし、無い気もする。多分、俺が今イメージしたアイドルがめっちゃ笑顔でドルオタたちから金をむさぼり取ってる風景しか出てこんからだろうな。

 

 そういう意味では、今こう言う笑顔を見せられるこいつはアイドル適正高いのかもしれない。

 これは高くつくぞ。どれくらい高くつくかというと不良債権ゲス狸のローンくらいには高くつく。

 

 

「……うん。決めた」

「そう。スッキリした?」

「まぁまぁかな」

「充分。じゃ、家まで送ってってやる。感謝しな」

「泊まる」

「アホか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、まだオタクの人から搾取とかしてないからやさしいよな」

「アイドルに偏見持ちすぎでしょ」

 

 

 まぁ凛がまだそのうちにすら立てていないと言うのも事実だけどな。アイドル初めて一ヶ月ちょいくらいしかたってないんだからそりゃあそうだけど。逆にステージに立ったのが早すぎるくらい。

 

 

「でもまぁ……アイドルになって正解だったかな。まだわかんないけど」

「どっちなんだよ」

「光の真似だよ」

 

 

 嘘だ。俺はそんな適当なことは言わないから。何でそんな悪い笑顔してるんだよ。泣くぞ、おい。

 でも適当な発言だとは言え、自分で選んだ道が正解だったって言ってるのを見れて俺は嬉しいよ。今が全てじゃないけどさ。

 

 

「まぁでも中学最後の思い出くらいにはなったんじゃねぇの?」

「もう中学校なんてとっくの昔に卒業してるけどね」

「とっくの昔ではないやん」

 

 

 言うても一ヶ月くらい前じゃね? 全然日付把握してないからわかんねぇや。

 中学生の卒業式って何月にやるっけ。 二月? 三月? どちらにせよ、長くてもまだ全然立ってないのに大瀬差に言いやがる。こいつ楽しんでんな?

 

 

「そういや、凛って高校何処にしたん?」

「……さぁ」

「えぇ……」

 

 

 逆になんでそんなにまっすぐとこっちを見ながら嘘つけるわけ? お兄さん怖いよ。そんなウソを堂々とつける子に育てた覚えはないのに!(違う)

 

 結局、この後ちょいちょいと凛の進学先を聞き出そうとしたけど、全部うまく躱された。ケチな奴だ。今度晩飯おごってやらねぇからな。




前回シンプルに前後書きを書き忘れてたんですけど、感想がいつもの半分もなくてびっくりしました。お前そんな効果あったんか絶対書くわめちゃくちゃ凹んだもん(白目)


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学年が変わってもそんなに大きな変化はない

最近デレステの調子が良さげで無料ガチャが滅茶苦茶当たります
まぁ数週間前の話なんですけどね(遠い目)


「もーいーくつねーるーとー」

「お正月か?」

「今日は始業式ですね」

「なんなんだよ一体」

 

 

 今日は始業式ですね、えぇ。一週間あったかなかったか微妙なラインの休みを挟んだせいで実感とか全くないんですけど。事実、今日を境に進級ですよ。

 

 今までは高校二年生といいつつ括弧の中に高校一年生って入ってるような状態だったからね。

 これで俺も晴れてれっきとした高校二年生になったわけよ。そんなに進級が待ち遠しかったわけでは全然ないんだけどね。

 

 

「にしても話がなげぇ」

「あともうちょいだろ」

「あのおっさんタ〇リに似てない?」

「グラサンだけだろ」

 

 始業式に限ったことではないが、こういう式系はとってもだるい。

 立ちっぱなしで色々なお偉いさんっぽい人の話も聞いて……それだけの事がとても長い。

 今日に限って校歌も歌って、そんでもって新入生との顔合わせという名目上だけの儀式を終わらせなけりゃならぬからな。それさえ終われば、あとはもうパラダイスよ。

 

 

「クラスってもう分かるっけ」

「食堂前に紙貼ってあっただろ」

「知らん」

「アホか」

 

 

 新クラスってなんだかんだやっぱりわくわくはするよな。前のクラスで仲良かったやつとは同じがいいとかも思いつつ、他クラスの面白そうなやつとも絡んでみたいし。

 

 ちなみに二年生になっても今西とはおんなじクラスだった。お前は部活が同じなんだから、これ以上一緒に居なくても別にいいだろ。

 

 

『一日でも早く、先輩方のような城聖高校を代表する立派な高校生になれるよう────────』

 

「かわいそー」

「うちの高校のこと知らねぇんだろうな」

 

 

 うちの高校は酷いぞ~、可哀そうに。って新入生に対して思うの。高校生あるある説じゃね? 中学の時も似たようなこと言ってた気がするんだけど。

 

 実の所は、うちの高校の良くないところっていうのはそんなにない。

 強いて言うなら、今どきの世界を生きる高校の癖に、クーラーが弱すぎて真夏は教室の窓開けた方がまだ涼しい(涼しいとは言っていない)ゲキアツサウナになるくらいだ。

 サウナはサウナでも水風呂からの外気浴がねぇから整わねぇんだよ! サウナハットよこせ!

 

 

「今日部活あるっけ」

「新入生歓迎のヤツやらなきゃダメだろ」

「マジ? 俺入ってるん?」

「入ってる」

「終わった」

 

 

 我が高校には新入生歓迎会という名目上の部活動宣伝回みたいなものが新入生に向けて毎年あるのだ。

 毎度毎度、野球部のようなガチスポーツ部活がほんとにそれで新入部員が入るんか? って思うようなガチ宣伝をしたりだとか、ネタ系の部活がなんか変なことをしようとして若干スベったりだとかしている。控えめに言ってそこそこ地獄。

 

 そんな中でもわりかし目を惹いているのが、我らが軽音部。

 いやぁ、こういうのには滅法強いよね。ただ単に1曲か2曲くらい舞台で演奏すればシンプルにかっけぇんだもん。そりゃあわかりやすく宣伝になるよね。

 大体これで入った新入生の7割が半年以内にやめるんだけどね。楽器って割と難しいから仕方ないね。バンド存続問題とかも色々あるからね。

 

 

「今年は何するんだろうなー」

「適当にそれっぽいの選んでもらおうや」

「絶対に王道にしような」

「それは言えてる」

 

 

 尖った選曲して大爆発して文字通り死んだバンドを俺は何度か見てきたからな。絶対に同じ轍は踏まねぇ。少なくとも素人相手には絶対にやらねぇ。

 

 ネットで強いオタクって大体リアルでは浮いてるからな。ネットでは受けるような事でも、現実でやったらゲロ滑りだから。ネットミームとかあんまり使っちゃダメだぞ。

 ここ、特にテストには出ないからね。覚えなくても別にヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新クラスの顔合わせも終わり、あっという間に解散時間。時間は現在お昼前。昼飯どうしよう。今日は外食でもしようかな。誰を誘ってみようか。

 

 ……なんてルンルンで思っちゃいるが、流石に実質初対面がほとんどの面々相手には、急にご飯を誘うなんてことは流石にできない。俺ってそこまでコミュ強でもないし、そもそもそういうタイプでもないんだよね。

 そんなわけで今日はボッチ飯確定だ。もしくは今西を引きずっていくという選択肢もある。

 

 

「なーなー」

「なによ」

 

 

 そうそう、今西っていうのは今話しかけてきたこいつね。

 

 ちなみに初期の番号順の席だとそこそこ離れてるんだよね。今西は窓際の早い順だし、松井だとそこそこ真ん中から後半あたりになってくるから。必然的に席は離れてしまう。まぁ今西以外にも一年とおんなじクラスの奴いるから全然いいんだけど。

 

 

「一年に超かわいい女の子居るみたいなんだけど、見に行かね?」

「興味ないね」

 

 

 手〇よろしく未来が見えそうな金髪少年の真似をしたんだけど、多分これ通じてないよね。悲しい。

 ネタがそもそも通じてなくてスルーされるときが一番悲しいんだよね。

 

 にしても今西がわざわざ可愛い女の子がいるなんて俺を誘いに来るのは珍しい。そんなこと言ったのは今までだと奏の時……ん? 奏の時?

 

 

「……その子ってそんなにかわいいん?」

「可愛い。クール系」

「俺知ってる人?」

「…………知らんやろ」

 

 

 なんだその間! 嫌だぞ! 俺の後輩に俺と今西の要らない共通点上知りかねないような人がいるとか絶対に嫌だぞ! なんかはずかしいやんそれは!

 

 

「そもそも情報回るの早すぎだろ。どっから仕入れた」

「サッカー部の連中がナンパしに行ってた」

「よし、行こう」

「お前手のひら返し早すぎな」

 

 

 サッカー部のチャラ男たちの目って間違ってないからな。あれは信用できる。そこらの情報通よりも確実な物だからな。

 っていうかガチ運動部の中でもサッカー部だけダントツでチャラ男率高いのってなんでなんだろうな。

 バスケ部もチャラ男率高いといえば高いけど、サッカー部だけはマジでダントツじゃん。髪伸ばせるだけで人間あんなに変わるの?

 野球部なんて見てみろよ。全員丸坊主なだけなのにごつくてムサい集団ってレッテル貼られてるじゃん。実際、ごつくてムサいのは挨拶と体格だけだからな。坊主でゴリラみたいなやつがショートケーキ幸せそうにちびちび食ってたりするから。

 

 

「なんか明日から間違えて一年の教室入りそうだよな」

「わかる」

 

 

 一年の教室は俺たちのいる校舎の四階にある。ちなみに俺たち二年生は三階と二階にわかれている。

 だもんで毎朝一年生は寝起きの体に鞭打って四階まで階段で登って教室まで行かなきゃならないんだよな。これが地味に面倒くさい。きついというよりも面倒くさい。単純に長いんだよね。

 

 

「うわっ、めっちゃ人ごみ出来てるじゃん」

「あれ、一年じゃないよな」

「ほぼ二三年くさいな」

 

 

 階段を上ると、遠目からでも奥の教室の前に人だかりができているのが目視できる。人が多すぎてまるでゴミのようだ。ゴミカスゥ! そこまで人数多くはないがな。言ってみたかったから仕方ないじゃん、許して。

 集団の内訳は男が9割、女が1割って感じだろうか。みんな揃いも揃って教室をのぞき込んでる。あのクラスの新一年生可哀そうすぎるだろ。不憫にもほどがある。

 

 

「まだなんか話してんのかな」

「他のクラスはもう終わってる臭いし、多分あの集団のせいで出るに出れないんだろ」

「あっ、先生来た」

 

 

 教室の前に群がる野次馬たちを見てあざ笑う野次馬とかもうこれわかんねぇな。そんな状況。

 

 丁度、指導の先生が上がってきたからあそこにいる群衆も勝手に散るだろう。

 指導の先生ってマジで怖いもんな。なんであんなに怖いんだろう。どこの高校でも指導の先生は最強と決まっているのだろうか。うちの指導の先生なんて人殺せそうな顔してるもん。極道の世界にいても不思議に思わんもん。

 

 

「あー、散ってく散ってく。教師無双だな」

「コワ……ってあの子じゃね?」

 

 

 今西が指さす先には、黒髪ロングの後ろ姿。顔は見えないが、少なくともスタイルは良さそう。足は長いし、シルエットがとても美しいな。

 でもなんだか少し様子がおかしい。というか、なんか他の女の子二人に絡まれてるっぽい。両腕をそれぞれガッチリと掴まれている。

 

 高校始まって早々変なことに巻き込まれたとクラスメイトの女の子相手に虐められる直前かと思ったが、どうやらそんな感じではないっぽい。

 左右の女の子がボスのわきを固める部下みたいになってるなアレ。むしろ守ってる側だな。ていうかなんか見たことある気がする。あのもふもふは既視感を感じる。

 

 

「どいたどいた~! 私たちもう帰るんで!」

「凛は誰とも付き合いませんから! あけてあけてー!」

 

「……ボディガードじゃん」

「平和だな」

「本当か?」

「嘘」

 

 

 今、確実に凛って言ったな? 俺の耳がおかしくなっていなければ、凛と聞き取れた。

 俺の悪い予感は当たらないはずなんだが、おかしいなぁ。でもあの顔はどう見ても知ってる凛だなぁ。どう考えてもちょっと不機嫌になってる凛だなぁ。制服似合う。

 

 

「どうする? とりあえず適当なところに逃げる?」

「センパイ探した方が早いでしょ。何組か知らないの?」

「知らない」

「じゃあその線はないなー」

 

 

 っていうか、俺あの女の子二人知ってるわ。中学の後輩だわ。だからなんか見たことあると思ったのか。

 いやー、それにしてもこの高校に来たんだなぁ。おんなじ学校の後輩が進学先にも入ってくるのなんか嬉しいな。接点がそこそこある人だから余計に嬉しい。

 

 

「ったく……光先輩はどこ行ったんだよ。この学校のどっかにはいるんじゃないのか?」

「ここにいますが」

「わっ!? びっくりした!」

「あー! 遅いですよ~、センパイ」

 

 

 階段に向かってそそくさと退散しようとするところをそのまま捕まえる。一瞬めちゃくちゃ警戒されたけど、俺だとわかって安心してくれたらしい。人望バンザイだわ。




今年の夏休みがどんな感じなのかわかんないんですけど、とりあえずみんな涼しいクーラーの効いた部屋でのんびりと小説読んでくれればいいと思いました まる
熱中症には気を付けよう!


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可愛い後輩には旅させなくていいから可愛がれ

気がついたら涼しい過ごしやすい季節になりましたね。2ヶ月くらいたってる気がしなくもないです。

※追記
なおーんちゃんの年齢思いっきり間違えてとんでもないことになってるので、そのうち削除後、修正して再投稿します。感想で教えてくれた人達本当にありがとう! 愛してる!
それまでは時空が歪んでます。本当にすいませんでした土下座です。


 今西と一緒に凛・加蓮・奈緒を連れて軽音部の部室に退散する。

 入学の経緯を聞いてそのまんまこれからよろしく!的な感じで終わり。

 

 

 

「キャー♪ センパイによく分からない部屋に連れ込まれちゃった~」

「よく分からないとは失礼な」

「突っ込むところは本当にそこで合ってるか?」

 

 

 テンション高そうだな、お前な。入学早々楽しそうでなによりです。

 

 なし崩し的に合流した感じになったのもつかの間。ほっといたらまた騒ぎに巻き込まれそうな凛たちをどうにかせねばと悩んでたけど、結局ここに匿うってなったよね。ここ以外アテもないから当然といえば当然。

 

 

「……で、ここってどこ? 物置……には見えないけど」

「軽音部の部室」

「嘘!? こんなとこに部室があるの!?」

 

 

 こんなとことは失礼な。全く、去年のこの時期の俺みたいなこと言ってんな。

 

 別棟の三階の一番奥にある我らが軽音部の部室は、防音対策としてドデカい扉で守られてる。そのせいでパッと見では怪しい倉庫にしか見えないんだよな。中は普通の部屋なのに。

 ちなみにこんなにドデカい扉に塞いでてもドラムの音は簡単に貫通する。ドラムは音量調節出来ないからね。仕方ないね。

 

 

「確かに。ここならあの人たちもわかんないだろうね」

「全く、高校始まって早々大変な目にあったよ……」

 

 

 開幕早々学校の生徒に囲まれるなんてまるでアニメみたいな話だなほんとに。中学の時はこういうの無かったのに、やっぱり高校生って生き物はいろんな意味でちょうどいいんだろうな。

 

 

「……で、結局お前は全員と知り合いだったんだな」

「全員中学の後輩なだけだって」

 

 

 実際そうだからね、仕方ないね。

 にしても凛を守ってたのがこいつらだったとは。中学の時から仲はめちゃくちゃ良かったんだけど、まさか高校でも同じクラスとはね。

 

 

「だってさー。悲しいな~」

「お前嘘つくなよ」

「嘘ちゃうわ」

 

 

 マジで文字通りの後輩なだけって言ってんだろ! たまたま凛と仲が良くて、その凜と面識のある俺とも顔見知りなだけよ。友達の友達的な。

 

 

「ったく、こんなに可愛い女の子がいるなら俺に紹介してくれよ」

「こいつら彼氏持ちだぞ」

「終わったわ」

「なんで嘘つくんだよ」

 

 

 今西に対しては脊髄で嘘をつきたくなるんだよ。絶望させてみたくなる。厨二っぽく言ったけど、単に反応が面白いから楽しんでるだけなんだよな。

 おい誰だクズって言ったやつ。聞こえてんだからな。俺を騙して346に入れたのを未だに忘れてないだけだからな。でもその件に関しては若干感謝してる迄あるからやっぱ俺の性格が悪いだけだったわ。

 

 

「まぁさっきまでのは冗談として……三人とも新入生で知り合い、だっけ?」

「あっ、はい!」

「先輩ヅラすんなよ」

「してねぇよ。とりま名前でも知っとかないとだろ」

「それもそう」

「なんかすいません。うちの光が迷惑かけてそうで」

「お気になさらず」

 

 

 なんなんだよそのオカンムーブ。今西も小学生にしては礼儀正しいちゃんとした男の子ムーブしてるし、妙にリアル感あるのやめーや。

 

 それにしても、完全に失念していたけど、今西からしたら三人とも初対面だもんな。勝手に巻き込んでるが。こうやって見ると今西も若干の被害者な気がする。まぁいいや。男だしな。

 

 

「じゃあ……誰から行く?」

「それじゃあアタシから~!」

 

 

 はいはーい、なんて言葉も一緒に飛び出しそうな勢いで手を挙げながら先頭を切っていく。

 お前凄いな。俺なんか陰キャだから、絶対にそう言うのは真ん中あたりで上手いこと目立たない具合で収めに行くわ。

 

 

「北条加蓮。元病弱体質の城聖高校一年生だよ!」

「未だに病弱だろ」

「油断してたら救急車呼ぶからな」

「やめて」

 

 

 そんな感じで先陣を切っていったのは加蓮でした。

 

 オレンジと茶髪の狭間くらい明るい色に染まった髪を肩にかかるぐらいまで下ろしているが、これは今日に限った話。

 女性にしては珍しい? といえば珍しいのか、日によって髪型がしょっちゅう変わる。

 今日みたいに下ろすだけだったり、編み込んできたり、後ろ髪がコロネみたいになったり、ポニテにしたり横にポニテを作ったり、ツインテにしたり、なんかパーマ? みたいなのをかけてふわっとさせたり……

 

 本人曰く飽きるかららしいが、とにかくレパートリーが多すぎて見てる分にはビビる。しかも全部似合う。全て顔が良いのが悪い。

 

 

「凛と奈緒とは中学からの友達で、センパイは中学の先輩だったからセンパイ!」

「ゲシュタルト崩壊しそう」

「先輩って概念はなんなんだろうか」

 

 

 ちなみに病弱体質だったっていうのはマジだ。

 今でこそこんなにも元気元気してるが、幼少期は入院続きだったらしく、体が大きくなった今でも調子に乗ったらフラっと逝きかける。マジで心配。お兄ちゃん心配しちゃう。

 

 余談だけど、これだけ見るとはっちゃけた明るい可愛い後輩娘に見えるこいつだが、実はすごいマジメ。だから決して頭の軽い子ではないってだけ言っておこう。彼女の名誉のために。

 というか、本来は凄い尖ってる子なのよね。俺と初めて会った時も若干とげが残ってたし。こんなに明るくなったのは奈緒と凛のおかげなんだろう。友達ってマジで素敵。

 

 

「じゃあ、次は奈緒行きなよ」

「あたしかよ……んんっ、かm」

「こいつ神谷奈緒。もっふもふでもっふもふしてるけどポメラニアンじゃないから」

「だー! あたしのこと犬扱いすんな! セリフも奪うなー!」

「キャラ把握したわ」

「おもろい奴だろ」

 

 

 奈緒はこういうやつなんだよ。高校デビューとかしなくてよかった、マジで。そのままの奈緒でいて。

 

 ちょっと大きめの眉に真ん丸でなんか犬っぽい眼つき。そして極めつけは御団子にした部分からもガッツリ伸びる、若干色の抜けたもっふもふの髪の毛。例えるならばやっぱりポメラニアンだろうか。それが神谷奈緒という女の子。違うか、違うな。

 

 ちなみにこの子。性格が鬼のようにいい。いい子っていうイメージをしてみたら大体この子の顔が頭に思い浮かぶくらいにはいい子。

 単純にいじられやすいキャラなだけで常識もあるし性格もいいし顔もいいし髪の毛もっふもふだしで、本当にマジでいい子なんだよな。凛が懐くのも納得な気がする。

 

 

「この子も後輩?」

「そう、後輩」

「お前の中学顔面偏差値高かったんだな」

「こいつらは抜けてると思うけどね」

 

 

 まぁ顔が良いだけでモテてたというわけではないけど。いや、モテてたといえばモテてはいたが、顔の割にはという話だ。

 

 というのも、大体は凛と加蓮のこの二人が原因。

 二人とも基本的に近づいてくる下心のある男子には敵意をむき出しにして威嚇するし、奈緒に関しては近づいてくる男共をボディガードみたいに二人で蹴散らしてた。

 そんなことをしていれば、そう簡単に男たちも近寄れないわけで。それでも告白する奴は一定数居たけどな。ほんとに凛と昔からの知り合いで良かった。こんな後輩、怖くて近づけねーもん。

 

 

「ほな、最後は」

「渋谷凛。よろしく」

「この子も後輩と?」

「いえす、後輩」

 

 

 普通の後輩に比べると、もう少しだけ親密というか歴が長いというか。まぁどちらにせよ、後輩は後輩だ。

 

 しっかし、こうやって三人並べると本当に圧巻。美女が三人そろってらぁ。類は友を呼ぶってね。

 さっきまで先輩たちに囲まれてたあれ、確実に凛ひとりのせいじゃなくて、加蓮と奈緒もいたってのがある気がする。というか絶対にそう。

 可愛い女の子一人いるだけであんな大騒ぎになることは普通ないもん。奈緒なんかは絶対に認めないだろうけど。

 

 

「ほーん。それじゃあほんとにお前の知り合いの後輩ちゃん3人がそのまま入ってきたと」

「そうみたいでさぁ」

「他人事かよ」

「だって俺も今知ったもん」

 

 

 ここの高校ってそんなにあの子の中学の生徒がホイホイ来るような高校じゃないんだけどなぁ。多くもないけど少なくもないって感じ。

 

 俺の代では5人くらい同じ中学の奴がこの高校に来てたけど、知り合いが3人揃ってっていうのは恋でもない限りはそうそうないよな。まぁ女の子だしそこらへんは合わせたのかもしれない。昔から仲は良かったけど、高校まで一緒とは思わなんだ。

 

 

「俺、今西達也。松井とは去年からの同級生なんだわ。とりあえずよろしくね」

「よ、よろしくお願いいたします」

「そんなかしこまんなくても良いって」

 

 

 俺からしてみれば、この今西とか言う男も相当プレイボーイ気質があると思う。

 346で散々可愛かったり綺麗だったりな女の子と交流してるから扱いに慣れてるだけってかもしれないけど。なんというか女の扱いに慣れてる感がとてもうざい。羨ましいんじゃなくてうざい。

 

 

「ところで、御三方はなぜこんな高校に揃って入学したんだい」

「確かに」

「ここってなんというか普通の学校だし。なんとなくって感じ?」

「あたしは特に決まっていきたいとこもなかったから。色々とちょうどよかったんだ」

 

 

 確かにこの高校はたいそうな名前をしているが、実情は工業科が引っ付いている以外は何の変哲もない普通の学校だ。

 何かに優れているわけでもなく、学力もごく一般。安定性のあるといえばそうなんだけどね。完全に城聖という名前に負けている。何で名前だけこんなにかっけぇんだよ。中二病かよ。

 

 

「でも凛は違うもんねー」

「なー」

「いや別に……私も色々ちょうどよかっただけだから」

「お前ぶっ殺すぞ」

「なんで俺がキレられてるんだよ」

 

 

 まるで恋するセンパイにくっついてきた青春的なそれだけど、実際絶対違うぞ。こいつ俺が近くにいた方が色々と便利に決まってるからだぞ。

 

 実際、凛の志望校を去年くらいに聞いた時から、ここは選択肢に入ってたからな。他の高校はレベルが高かったり低かったり、もしくは距離的に遠かったりでほんとにここってベストな立地なんだよな。

 なにより通り道にどでかい駅を通るから帰りに遊び放題だし(重要)

 

 

「いや~、イケメン様は流石ですわ! 速水さんの件といい流石ですわ!」

「なんかあったの」

「ううん」

 

 

 こういう時の凛には決して目線を合わせていけない。そうやって僕は17年間生きてきたんだ。

 

 あれだよ、ほら。山脈とかキャンプ場とかなんかでクマと遭遇したときのあれ。違うか、あれは目を合わせながらじりじり後退するんだっけ。

 雑学は身を救うってね。そんなわけで、こういう状況の時に助かる雑学を誰かに教えてもらいたいものだ。

 

 

「なんかあったの」

「いいえ」

「なんでこっち見ないの」

「いいえ」

「りーん。あんまりイジめるとセンパイかわいそうじゃん?」

 

 

 といいつつ加蓮ちゃんは助けてくれないんだよね。僕知ってる。この子はこういうところで全部傍観者になるタイプの子だから。

 

 

「凛ちゃん。帰りにアイスを食べたくないかい?」

「いや、別に」

「奢りで」

「光、早く帰るよ」

 

 

 はい、買収成功。高校生相手には困ったらこれしかないってはっきりわかんだね。自分のお財布が軽くなるというとんでもない諸刃の剣だけど。

 

 結局30の次に来そうな数字をしている有名アイスクリーム屋さんに行って、ちゃんと後輩三人にアイスを奢った。

 俺のお財布はとても軽くなった。美味いけど高いんだよなぁ……




少しずつペースあげてく予定なのでお願いします! 予定です! 予定☆DESU!!!


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