平民の職業(パーティー)で魔王討伐なんて出来るわけない! (炭酸ルウル)
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思ってたのと違う・・・

あらすじから読んでいただけると幸いです。


あれ…俺はどうなったんだ……ここはどこだ…暗くて何も見えない…

 

無音で暗い宇宙空間のような場所をふわふわと浮いている感覚だけがあった

 

 ダメだ…思い出せない……誰か…いないのか…

 

思うように身体は動かない意識を手にもっていっても反応がない

 

 誰か……助けて…誰もいないの…か…

 

叫んだ、精一杯の声で叫んだ。だが周りには届かず自分の心の中にだけ響いた

 

 はぁ…どうしよ……

 

その時だった…バンッっと目の前に明るい光が差した

 

 

 「えっと、次はお前か?」

眩しっ…え?誰…?

 「はろー!私は女神よ~」

……は?女神…?

 「うんそうそう、女神だよー・・・」

えっ…と…俺、喋ってないんだけど…なんで会話ができてるの…

 「私が女神だからに決まってんじゃんバカなの?喋れるようにしてやっからちょいまち」

えっ⁉ 出来るのっ…⁉

 「あったりめえだろー?まじでだるいわ~少し準備すっから」

う…うんよろしく

 「あーい…準備かんりょ~いきまーす。クルクルピラピラケロリンチョ!」

 

いや…だs

 

「さすぎでしょ…」

 「あーい…終わり~あと…ダサいとか言わないで?潰すよ?」

「急に怖いじゃん…」

 「はーい、じゃあめんどくさいからとっとと終わらせるね~」

「え?終わらせるって…?」

 「はぁ?決まってんじゃん…転生の儀式だろーが…」

「転生?儀式?まって…まじで状況が読み取れない…」

 「ちょいまち、お前さ、自分が死んだこと気づいてる?」

「………は⁉ 俺、死んだの!?」

 「まじかよ…そっからかよ…使えねーな」

「え…俺は、どうやって死んだんだ…?」

 「お前は!学校の掃除中に階段から滑って落ちて死んだの!」

「えぇ…なんだよそれ…。え…となると…転生って⁉ ま…まさか…?」

 「は?まさかって?」

「異世界転生とかなのか?いや、まさかな…異世界なんて存在しないもんな…」

 「いや、異世界に転生すんだよ?てか異世界存在すっから…」

「え…と、なると…?俺は…?異世界最強ラノベ主人公!?」

 「は…?」

「異世界に行ったら…勇者とか英雄とか賢者とか呼ばれっちゃったりして?」

 「いや…ちょいまち・・・」

「異世界を無双するんだ…他の人とか桁外れな魔法の力とかで最強だ…」

 「おい…」

「それから…それから…」

 「おい!!」

「あ…はい!早く転生させて!!」

 

 「いや…お前は勇者にはなれねーし、しかもお前の職業なんだと思う?」

 

「え…?勇者じゃないって事は…?賢者!?」

 

 「はーい、ぶっぶー!正解は~? 『料理人』 で~す」

 

「・・・・・・・・・は?・・・・」

 

 「お前の職業は料理人です…だから魔法も使えないと思うしそれにそれに武器も所持できませーん!!」

 

「・・・・・はぁぁぁぁああ!?」

 

 「残念だったね?私がさっき適当に決めた~」

 

「いや、まじかよ!?でも俺…料理なんか作ったことないぞ…?」

 「そんなの知りませーんっ!」

「まってこのジャンルってもしかしてさ?異世界料理系?異世界の日常を描く物語?」

 

 「それもハズレ~!」

 

「嘘だろ…異世界で日常系じゃないって言ったら…まさか…い、いやまさかな…」

 

 「正解は~? 『バトルファンタジー』 でーす!おめでとうございま~す!」

 

「はい、うざい~!うん・・・うん・・・・うん。それ無理があるよね?」

 「ははは‼ いや~ほんとはね?異世界日常系のジャンルにしようとしたんだけどね?」

「じゃあしろよ!せめてそれでいいわ!」

 「いや~ふざけちゃいましたっ てへっ」

「可愛くないぞ…」

 「うわ…女神の心を気づ付けた罰として世界難易度ハードにしまーす」

「おいおいおい!やめてくれ~!」

 「もう遅い~っ!」

 

 

「じゃあ料理人でバトルファンタジーで難易度ハードの世界を頑張ってね~?」

 

 

「いやいやいや!まてまて!それは違う!それはちがぁぁぁぁぁぁ・・・・」

 

 

うざ女神の光は消えて周りの暗闇が一気に吹っ飛び眩しい光と共に草原に転生されていた

 

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああう!!!!!!」

 

 

 まじですか…?これまじですか?流石に無いわ…これはないわ…

 

辺りを見まわたすと…スライムやら一つ目のウサギやらが跳ねていた

 

 「…っ⁉」

まずい…今の俺はレベル1の武器すら持ってない一般人だ…まだ草原は早すぎる…

どうしよう…王都の方向もわかんないし…てかなんで最初から草原なんだよ…

難易度がハードだからか…?

 

そこに奇跡かのように馬車が止まってくれた

 

「おや、おぬしや…こんなところで何をしているんじゃ…?冒険者の人だべや…?」

「いえ!僕は料理人です!」

「料理人…?料理人がなぜ?こんなところで?」

 「いや、その、王都へ行きたくて…」

「へ…?王都…?もうすぐそばじゃよ…」

「そうなんですか?」

 「なるほどな…おぬしは転生者の方だべや?」

「あ、はい、多分そうだと思います」

「じゃあ王都まで乗せてあげよう」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

優しいおじいさんが馬車で王都まで乗せていってくれるらしい

 

 「そうかい…王都に行くのは初めてかい?」

「そうです」

王都かぁ~!綺麗なところなんだろうな~!街は栄えてるんだろうな‼

「そうか…そんなに期待しない方がいいぞ……」 

 「…え?」

 

そうして少ししたら王都の防壁が出てきた

 

 「あれが王都か…」

「そうじゃ…」

なんか…防壁がつるまみれだな…

 

王都の門に着くと兵隊がいた

 

 「止まれ…この馬車の中身はなんだ?」

「人と食料じゃよ…」

 「人?」

「どうもこんにちは」

 「…っ⁉ こ、こんにちは?」

「通っていいかの…?」

 「あ、ああ…通ってよし」

 

門を潜り抜けると…そこには荒廃した王都の姿が視界に飛び込んできた

 

……っ⁉ なんだよこれ……ここ…王都…なんだよな……?

 

 「おぬし…ついたぞ?ここら辺でいいかの…?」

「あ…はい、ありがとうございました…」

 

おじいさんにお礼を言いながらゆっくり馬車を下りた

 

 「それでは…またどこかでの…はいやぁ!」

「あ…ちょっ…まっ……」

行っちゃったか…この王都のこともっと聞きたかったな…

さて…どうしましょうかね…いったん、人を探そう。王都って言ったら普通は人でにぎわってるよな…?人が居ないじゃねぇかよ…

 

遥人は辺りを見回したがそこには家は崩れ落ち地面は割れ人の気配がまるでなかった

 

まずは…人がいそうなところに行ってみよう…。

 




最後まで読んで下さりありがとうございます!
更新頻度はなるべく早めにします!


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綺麗な銀髪の裁縫師

 ダメだ…全然人が居ない…。ん?まてよ?ここに来たおじいさんはどこに行った…?

 そうだ…‼ 王都の門番に聞いてみよう!

 

遥人は走って門まで戻った

 

 「はぁ…はぁ…あの…」

「・・・?」

「はぁ…さっきここを通ったおじいさんはどこへ行きましたか?」

「食料を大量に持っていたから、多分…教会だろう…」

「教会…?それはどこに?」

「この大通りをずっと真っ直ぐ行ったところに大きな教会がある…そこだ」

「なるほど…ありがとうございました!」

「・・・」

 

そうか…お‼教会に行けば…人も大勢いるのかもしれない!急いで行ってみよう!

 

遥人は教会の方向に走っている時だった…

 

バリンッ‼とガラスの割れる音がどこかで鳴った

 

「…っ⁉ なんだっ…‼??」

 

荒廃した人気のない王都の街にその音は響き渡った…

 

「誰かいるかっ…?おい…‼ 居るんだったら返事してくれ!」

 

返事は返って来ず、遥人は先に進もうと走ろうとした時…

またガラスの割れる音が鳴った

 

「…んっ?! こっちか…?」

 

ガラスの割れる方に恐る恐る近づいてみた…

 

「おー…い…、誰か…?居るの…?返事して下さーい…すみませーん…?」

誰もいないの…かな…?いや、でも…完全に音したし…。絶対誰かいるはず……この中か?

 

窓ガラスは割れ…壁にはコケやツルがびっしりこびりついた家に入った…

 

「あの…すみません…誰か居ますか…?お邪魔しま…す…。」

ここは、なんだ…?居酒屋的な店か…?テーブルと椅子がたくさんあるな……

 

 ガシャァン‼

 

「なにっ…⁉ 誰かいるの…?」

二階から音がしたな…行ってみるか…。絶対誰かいるよな…

 

ギシギシと床をきしませながら二階への階段を上った

 

音がしたのは…この部屋か…?

「すみません……誰か居るんですか…?あの…」

……?なんだこれ…?パイプ…?

 

遥人の足にカランッと当たったのは錆びた鉄パイプだった

 

使えそうだ…もっておこう…。よし…じゃあ突入だ!

 

バンッ!とドアを破り部屋に入った

 

 「ぶ…武器を捨ててください!!」

「…っ⁉」

「はっ…早く!捨ててください!」

「わ…わかったよ…」

 

そこには綺麗な銀髪の女の子が尖った木の枝を手に腰を抜かしていた

遥人はその女の子に従って、錆びた鉄パイプを投げ捨てた

 

「…な?もう武器は持ってない…、だから安心して?」

「本当にもうありませんか…?」

「ああ…本当だ、ほらないだろ?」

「は…はい。」

「それで、こんなところで何してるんだ…?」

「あの…お腹が空いていて、それで…ここら辺に来れば何かあると思って来たんですけど…そうしたら…あなたが居たので隠れたのですが…」

「なるほど?えっと…つまりは、お腹がすいてここまで来たと?」

「そういうことです…」

「え、君は王都の住人なの…?」

 

 「いえ、私は二日前にこの世界に来ました。えっと転生者…?とか言ってた気がします」

 

「転生者っ…⁉ 君も!?」

「え…っ?君も?って事は…?あなたも…転生者なんですかっ⁉」

 「そう、俺も転生者…俺はさっきこの世界に来たんだ」

「そうだったんですか…それでなぜ王都に来たんですか…?」

「王都に来た理由か…とにかく人が大勢いそうなところに行きたかったんだが…王都は荒廃していたってところだな…」

「なるほど…確かにこの世界はイージーの世界やノーマルの世界に比べるとかなりひどい世界です…。」

「え…?イージーの世界?ノーマルの世界…?」

…?もしかして…あのうざ女神の言ってた世界難易度ハードって…そういう意味だったのか…俺は一番難しい世界に来てしまったのか…。ん?てか…なんでこの子はイージーの世界やノーマルの世界の事、こんなに詳しく知ってるんだ…?

 「はい、イージーの世界とノーマルの世界です!」

「・・・?」

「え…っと…もしかして…知らないのですか…?」

「知らない…」

「え…っ⁉ じゃあこの世界に来たのは自分の意思ではないんですか?」

「いや…女神が勝手に俺をこの世界に送り付けただけだよ…?」

「そうなんですか…っ⁉」

「え…?」

 「いえ…私の場合は三つの世界から行きたい世界を選ばせてくれたのですが…」

「えええ‼ なにそれ…。」

あのうざ女神め……

 「……?え?じゃあ…君は自分の意思でこの過酷な世界に来たの…?」

「はいそうです。苦しんでいる人々を助けたかったのですが…いざ来てみると思ってた何十倍も辛く…今も死にそうなくらいで…」

「そうだったのか…」

「すみません…自己紹介が遅れました!私は『冬月 琴乃花(ふゆつき このは)』って言います!」

「俺は、『遊馬 遥人(あすま はると)』えっと…なんて呼んだらいいのかな…?」

「あの…なんでも大丈夫です。できれば…琴乃花と呼んでくれたら嬉しいです」

「わかった、じゃあ琴乃花って呼ぶね?」

「はいっ‼ 私はなんて呼んだらいいですか…?」

「遥人でいいよ」

 「じゃあ遥人君って呼びますね!」

「おう、あと敬語じゃなくていいからね?」

「いえ、敬語ではないとなぜか話しにくいのです…」

「そうなのか…?」

「はい!たまにタメ語になるかもしれませんけどそれは気にしないでください!」

「お…おう?わかった」

 

 ぐぅ…

 

「あ…」

「そうだったね、お腹空いてるんだったね?じゃあ教会に行ってみよう」

「教会に…?」

「うん、教会に食料が運ばれてるらしいよ?だからそこに大勢の人が居るんじゃないかな?」

 「教会には人はいませんよ…?」

「え…そうなの?じゃあ王都の住人たちはどこに…」

「ほとんどは隣国の帝都にいます…残りは冒険者や盗賊などになってますね…」

「なるほどな…てか…琴乃花は、なんでこんなにこの世界に詳しんだ…?」

「私がこの世界に転生した時、この王都から帝都へ移動しようとしていた冒険者の方と会って、その冒険者の方がこの世界の事を色々と教えてくれたんです」

「なるほどな…そういう事か…だからこんなに詳しいのか…」

「はい、でも詳しいと言ってもまだこれくらいの事しか知りませんけど…」

 「十分だよ!じゃあとりあえず教会に向かってみようか?」

「そうですね‼ 本当に食料が教会に運ばれたならたくさんあるはずです!」

「そうだな!じゃあ行くか」

「はい!」

 

遥人と琴乃花は教会へと歩いて向かった

 

 「なあ…?」

「どうしました?」

「なんで人が居ない教会に食料を運んで行ったんだろう…」

「確かに…少し気になりますね…。」

「んな」

「はい。ちなみに食料の量ってどれくらいかわかりますか?」

「量か…えっと…馬車の荷台の半分以上は食料だったよ」

「半分以上…⁉ そんなに食料が…。でも、仮に教会に人がまだ居たとしても、そんなに食料はいらないはずです…。」

「そうだな…だとしたら…教会に何かがある?って事になるな…」

「そうですね…。何かあるのは間違いないでしょう…」

 

 

教会に着き扉を開くと二人はとんでもない光景を見た…

 

 

 「まじ…かよ…」

「うそでしょ……」

 

そこには…大勢の人が教会で宴会をしている光景だった…

 



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赤髪の鍛冶屋は頼もしい

 「人…居るよなこれ…てか人しか居ないよな…?」

「そ…そうですね…なんでこんなに…」

 

 「おぉう?あんたたちも宴会に来たんかい?楽しんでいきぃよ!」

「は…はい。ありがとうございます。」

軽いパニックなんですけど…‼琴乃花はこの王都にはほとんど人が居ないって言ってたよな…なにこれ…教会になんでこんなに人が居るんだ……⁈

「な…なあ?琴乃花…ちょっと…」

 

一旦…遥人と琴乃花は静かな教会の外に出た。

 

 「えっと…人、居たね…?しかもたくさん…」

「そ…そうですね…。聞いた話だと…ほとんどが帝都に移動したとか……」

「あの…まさかさ…?」

「はい?」

「その話を聞いた冒険者…?だっけ…?」

「はい冒険者の方です」

「その冒険者になにか代金的なもの渡した…?」

 「はい、情報量だとか言って私が持っていたお金全てもっていきました…」

「それさ…冒険者の振りした盗賊じゃね!?」

 「えええええ!!だまされた……。」

「まああくまで俺の推測だが…」

「と…言う事は教えてくれたことが全て嘘だったって事ですか……」

「まあ…全部が全部嘘ではないんじゃない…?わからないけど…」

 「はぁ……そうですか……」

・・・・・・ん?お金…?どうやって琴乃花はお金を入手したんだ…⁉

「な…なあ‼」

「ど…どうしました…?」

「琴乃花はどうやってお金を入手したんだ…?」

 「え…?ここに転生する時に女神さまから金貨10枚貰ったんです…。」

「嘘だろ・・・」

「もしかして…貰ってないんですか…?」

 「ああ…貰ってない…。あのうざ女神…まじでうざいな…」

「その女神さまは、うざいと言うより…性格が悪いのでは…?」

「まあ…確かに、なんか悪そうな顔してたわ…。まあ、そうか…てかこの世界での金貨10枚は高いのかな…?」

「さあ…どうなんでしょうか…私はあの嘘つき冒険者にだまされたのでお金の価値を調べることが出来ませんでした…」

「じゃあ…お金も集めないといけないな…」

「はい」

 「それより…この教会どうする…?この中に行ったら多分だが食料もあるだろうし…

入ってみる…?」

「確かに…お腹もすいたし…入ってみますか」

「そうだな」

 

教会の扉を開けると…またさっきのにぎわかさが戻ってきた

 

食料がどこにあるか聞くか…なんか優しそうな人がいいんだけどな…

 お…?あの椅子に座ってる人とかどうだ…?結構優しそうじゃん…行ってみるか。

 

「琴乃花、俺についてきて」

「わ…わかりました…」

 

 「すみません、食べ物ってどこにあるかわかりますか?」

「…ん?あっとな…そこの扉に入ったらたくさんあるぞ」

「なるほど、ありがとうございます!」

「おうよ」

 

 そこの扉か…食べ物が貯蔵されてるのか…?それとも飲み会的なものをやってるのか…

 

「遥人君、行ってみましょ?」

「お…おう、そうだな。行ってみるか」

 

扉を開けて中に入ると美味しそうな食べ物がずらぁ~っと並んでおり、それを人がバイキングしていた。

 

「おぉ…」

「あの…これ…食べていいんですよね……」

「おう?みんな食べてるしいいと思うぞ?」

 「じゃあ…頂いてきます……」

「い、行ってらっしゃい…」

 

琴乃花は目をまんまるくして食べ物に食いついていった

 

じゃあ…俺はどうするかな…そこまで腹も減ってないんだよな…

そうだ…‼この世界でどうやってお金を稼ぐか聞いてみよう!

 

 

 「あのすみません…ちょっとお話いいですか?」

「話か?後にしてくれ~それより!今は宴の時間だぁ!」

「あ、すみません…」

そうか…今は宴会してるんだったな、これじゃあ…誰も聞いてくれないかな…

 

 「すみません!少しお話いいですか?」

「今はすまんなぁ~? ビールおわかりぃ~」

「そうですか…ありがとうございました」

うーん…やっぱダメか…

 

 「あ!少しでいいんで!お時間いいですか?」

「ごめんね?今からこのご飯届けないといけないのよ?ごめんね?」

「あ、いえ…大丈夫です!ありがとうございました」

優しそうな女性だったから話聞いてくれると思ったんだけどな…忙しかったか

どうしよう…これじゃあお金の稼ぎ方が全然わからないな…もうちょい頑張ってみようかな?

 

 遥人はいろんな人に話を聞いてもらおうと頑張ったが…誰一人として話を聞いてくれなかった

 

いやまじか…こんなに頑張ったのに…一人も話を聞いてくれなかった…。

それより…琴乃花、遅くね…⁈ もう一時間くらい?経つけど……見に行ってみるか

 

 

 「琴乃花~?まだ食べてるの?」

「んん、あほほれはけ、はへさへて?」

「え…?なんて…?」

「ほれはけ!はへさへて!」

 「これだけ?食べさせて?」

琴乃花はコクコクと頷いた

「わ、わかった」

 

 「ぷはぁっ~…美味しかったぁ~っ。あ、どうしたんですか?」

「い、いや…まだ食べてるのかな?って思って…」

「なるほど、お待たせしました!今!食べ終わりましたっ!」

「なんか…?機嫌よくなった…?」

 「そうですね!満腹になった事により幸せになりました‼」

「おぉ…それはよかった、じゃあ行こう」

「はい!ところで遥人君はなにをしていたのですか?」

「俺は…この世界でのお金の稼ぎ方を聞こうとしたんだが…誰も俺の話を聞いてくれなかった…」

「なんで誰も話を聞いてくれなかったのですか…?」

「うーん、ほとんどの人は今は宴の時間だから話なら後にしてくれって言う人ばっかりで」

「そういう事でしたか…じゃあ未だに稼ぎ方は分からないと…」

「そうだな…、次は外に居る人に聞いてみるか…?」

「はい、そうしましょう、生きてく上ではお金はかなり重要ですからね」

「おう」

 

そういう会話をしながら教会の外へと出た

 

 「どこら辺に人がいると思う?」

「そうですね~人……人…」

 

 「人ならここにいるよ!!!」

 

「…んっ⁉」

「えっ…⁉」

 

 教会の屋根の上から声がして。二人は振り返り教会の屋根を見るとそこには

 ショートカットで赤髪の女の子が腕を組んで屋根の上に立っていた

 

「なに、ぽかーって見てんだよっー!・・・っと」

 

 スタッっと地面へ飛び降りてきた

 

「えっ…あの…誰ですか?」

 「うちの名前は『一ノ瀬 夏夜(いちのせ かや)』!君たちの名前は?」

「俺の名前は遊馬遥人」

「私は冬月琴乃花」

 「じゃあ、遥人とこのちゃんって呼ぶね?」

「俺はそれで構わないよ」

「私も大丈夫です」

「えっと俺たちは君の事なんて呼んだらいいのかな…?」

「えっ?普通に夏夜でいいよ!」

「わかった。じゃあ夏夜ね?」

「おうよ!それよりなんで人を探してたんだ?」

「えっと、この世界でのお金の稼ぎ方を知りたくてね…」

「この世界でのお金の稼ぎ方?そんな事を知りたいの?」

「そうなんだよ…」

 「じゃあ教えてあげるよ」

「夏夜さん!ぜひ教えてください!」

「うんいいよー?」

「ありがとうございます!」

 

 「この世界でお金を稼ぐ方法は主に二種類に分けられる

  まず一つ目は、自分の職業で働いて稼ぐ

  そして二つ目は、モンスターを討伐してお金を稼ぐ」

 

「なるほどな…」

モンスター討伐か、少しだるそうだな…

 

 「でも、このハードの世界は八割くらいが自分の職業で稼いでると思う」

「モンスター討伐する人は少ないのか…?」

「うん、かなりね…この世界のモンスターは格が違う程に強い…、だからほとんどの人はモンスター討伐なんかで稼いだりなんかしない」

「そうか…」

やべぇ…俺の職業…料理人じゃん…‼ まともに料理なんか出来ねーよ…

「あの…じゃあモンスター討伐で稼いでる人たちは相当強いんですか?」

「まあ、そうなるね?それか職業が冒険者だったりとかする」

「そういう事ですか…」

 「じゃあ次はうちから一つ質問いい?」

「いいよ」

「はい?」

 

 「遥人とこのちゃんって転生者でしょ!?」

 

「…えっ⁉ なんでわかったの…?」

「そうです…本当になんでわかったんですか…?」

 「そりゃ!わかるよ!だってまず!その名前!そんな名前の人、転生者くらいしかいないよ!」

「そうなのか……ん?」

「え…?それだと…夏夜さんも、もしかして転生者なんですか?」

 「その通り!うちも転生者です‼」

「いつ頃この世界に来たんですか…?」

「そうだなぁ…二年くらい前かな?」

「二年前って事は若くして亡くなったんだな…」

「いや、若くして亡くなったのはお互い様でしょ?」

「あぁ…?そうか」

 

 「それより二人は何してるの…?旅…?」

 

「旅?ってよりかは…なんだろな…」

「旅です」

あ…旅になっちゃった…

 「その旅さ!うちも一緒に旅していい!?」

「私は構いませんけど…遥人君、いいと思いますか…?」

「まあ、仲間が増えるなら歓迎だよ」

「ほんとに!?じゃあいったん荷物整理するからうちの家まで来てよ!」

「家…?どこにあるの…?」

 

 「鍛冶屋!」

 



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三人の武器について

「鍛冶屋?」

「そう!鍛冶屋!うちの職業は鍛冶屋なの!」

「だから腰にハンマーをぶら下げてるんですか…?」

「そういう事!じゃあついてきて!」

「お、おう、わかった」

 

遥人と琴乃花は夏夜に連れられて夏夜の家、鍛冶屋まで来た

 

 「ここが私の家!鍛冶屋です!」

「おぉ…」

結構立派でしっかりしてる鍛冶屋だな…

 「まあ入ってよ!お茶でも出すからさ!」

「お、おう」

「あ、うん…それじゃあお邪魔します」

「お邪魔しまーす」

 「少し汚れてるけどそこの椅子座って?あ、ごめんテーブルの上片付けるね?」

「なあ、夏夜はここに一人で住んでいるのか…?」

「今はね…?」

「今は…?って事は…昔は誰かと住んでいたのですか?」

「まあ昔って言っても、一年前まではお父さんと住んでいたんだよ」

「お父さんっ⁉」

「あぁ…お父さんって言っても義理のお父さんだよ?うちにこの世界の事を教えてくれてこの居場所までくれたお父さん」

 「もしかして…そのお父さんは一年前に……」

 「うん、そう…一年前に魔王がこの王都を襲って来てね…?」

「魔王がっ…‼⁇ 襲ってきた⁉」

「そう、それで王都の住人はほとんどが亡くなったんだよ…」

 

なるほど…これで、繋がった!王都が荒廃している理由、そして住人が少なかった理由が!

 

「それでお父さんを・・・」

「そういう事…だからはうちはお父さんの敵(かたき)である魔王を討伐するのが夢なの!」

「魔王を討伐…っ!?」

 「そう!だって遥人とこのちゃんは旅をしてるんでしょ?それでうちも一緒に旅をしてレベルアップして魔王を討伐しに行くの!!」

「えっと…それだと、俺たちも必然的に魔王を討伐しないといけなくなるような…」

「まあ、そうなるね!力を合わせて一緒に頑張ろー!」

「え・・・」

 「いやいやいや!無理でしょ!相手は魔王だよ!?それに俺は料理人で…琴乃花は……あれ…?そういえば…琴乃花の職業まだ聞いてなかったな…」

「そうですね…遥人君は料理人だったんですか?」

「そうなんだよ、琴乃花はなんなんだ?」

 「私は裁縫師です!」

「裁縫師か!ふむふむ…うん。料理人と裁縫師と鍛冶屋?うーん、魔王討伐か、余計に無理じゃね…?」

 「大丈夫だよ!うちらならイケるって!」

「いや!平民の職業で魔王討伐なんて聞いた事ないよ!この世界の勇者に任せた方がいいんじゃない?」

 「それがこの世界の勇者は弱すぎて魔王に太刀打ちできないって聞いたことがある!」

「あの、それ本当に勇者が弱いんでしょうか…?魔王が桁違いに強いとかではなく…?」

「確かにな…、それにこの世界の勇者が弱かったとしても俺らよりは遥かに強いわけだからな…」

 「魔王も強いけど、この世界の勇者が弱いのは確実!」

「そうなのか…?」

 「だってうち一年前にこの王都にやってきた魔王に勇者がビビッて逃げたのをみたんだから!」

「勇者が逃げた…?魔王から…?」

「そう!」

「まじかよ…」

「ありえませんね…」

 

 「だから!うちたちが強くなって!魔王討伐しないと!また…人々が亡くなる!」

 

「そういう事か…よし…まあやるだけやってみるか…」

「私も魔王討伐に協力します!」

 

 「ほんとっ⁉ ありがと!!」

「でもな…?俺たち武器とか…一切持ってないよ…?」

「そうですね…武器がないと下級モンスターすら討伐が困難ですね…」

 

「あれ…?知らないの…?

 

この世界は自分の職業の武器しか持てないんだよ…?」

 

「・・・え?どういうこと・・・?」

 

「えっと…自分の職業で使える武器しか持てなんだよ。なんだろ難しいな、例えば…鍛冶屋のうちが剣を持って戦おうとすると自分と剣が磁石のS極とS極みたいに弾き飛ばされるんだよ…」

 

 「じゃ…じゃあ、もし職業が役所の人とかだったりしたら一生武器を持てないって事ですか…?」

 「そういうことになるね?」

「そうですか…」

「まじかよ…」

そうか・・・。 ん…?俺…料理人だよな……武器になるのは…包丁?フライパン?

そんくらいしか思い浮かばないぞ…

 「うちの武器はハンマーでしょ?んで遥人とこのちゃんは………」

「うん。黙っちゃったね?まあそういう事なんだよ?」

「遥人君は探せば強さうな武器があると思うんですが…私は…針?ですか…?」

「針だな…、でもあれ、結構武器になるんじゃないか…?」

「そ…そうですかね…?」

 「そうだ!針を大きくすればいいんじゃないかな?」

「なるほどな!それはナイスアイディアだ!」

「確かに…それだと武器として使えそうですね!」

「遥人は結構、武器になるものが多いから考えるのは後でいいね?」

 「お…おう…」

俺は…後回しにされた・・・

「じゃあ支度も出来たことだし下級モンスターがどれくらいの強さなのかいったん見に行く?」

 「でも、武器はまだないぞ…?」

「大丈夫!大丈夫!今回は戦わないから!見に行くだけ!」

「わ…わかった」

見に行くだけじゃあ…強さが伝わらないような…

 

 

 そして三人は王都付近の草原へと出た

 

 

 「ここら辺はモンスターが少ないな…」

「そうですね…やはり、王都付近だからでしょうか…?」

「かもな…」

 「見てあれ!あそこにモンスターいるよ!近づいて見てみよ!」

「おいっ…ちょっ…まっ…」

 

 「ほら…あれ…」

「あれはなんだ…?下級モンスターにしては強そうだぞ…?」

「見つかったら少し厄介ですね…武器もありませんし…あれから走って逃げるとなると…」

 「そうだな…見つからないように、そっと移動しよう…」

「ですね…」

 

 「・・・あれ・・・夏夜は・・・?」

 

 「遥人君・・・やばいです・・・夏夜さん…、あれ…まずくないですか…?」

 

 「ん・・・?・・・・・っ!? えっと…まじか…これは…逃げるか?」

「逃げられますかね…?」

 

 二人が見たのは、夏夜が下級モンスターに近づいているところだった

 

 「大丈夫だよぉ~、こっちおいで~…?」

「かっ…夏夜さん!戻って下さい!危険ですよ!」

「そうだぞ…夏夜!そのモンスターが狂暴かもしれないぞ!」

 「大丈夫大丈夫、このモンスターは温厚な性格をしているから!」

「そ…、そうなのか…?」

 

 夏夜がそのモンスターの角をチョンッっと触った時…そのモンスターは急変して、目は赤くなり爪をジャキッっと立てて巨大な牙を剥き出しにして襲い掛かってきた

 

 「あっ…⁉ やばい‼ 二人とも逃げて!!」

「えっ…⁉」

「とっ、とにかく逃げましょう!」

「お、おう…‼」

 「早く!」

 

 ウゥゥゥ‼ バウッ‼ グワァァ‼

 

 「いや…‼ 温厚なんじゃないの!?」

「忘れてた!あのモンスターの角触ると怒るんだった!」

「えええっ!?今思い出しても意味なくねっ⁉ さっき思い出せよ!」

「二人とももっとペースを上げましょう!」

 「夏夜っ…どうにかしてくれぇぇ・・・ずっと追ってくるぞ!」

「どうにかって言ったって…!何もできないよ!?」

「とりあえず、逃げてモンスターを撒きましょう!」

「あぁ…‼そうだな! 夏夜!お前は奢りだからな!」

「わかったわよぉ!!!!」

 



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金髪ロリっ娘は薬剤師

 



 「おいおいおい!まだ追って来るぞ……、あのモンスターしつこ過ぎないか!?」

「もぉぉぉ!ぶっ殺すかっ?!」

「いや!口悪ぃな!おい!」

「でも、このまま追われてても埒が明かないので、戦った方が賢明かもしれません!」

「いや!俺たち…武器がないんだぞ⁈ あるのは、夏夜のハンマーだけ!無理だろ?」

「私たち、二人がおとりになって、夏夜さんがモンスターを倒すのだったら出来ると思いません?」

 

 「確かに…それだったら…。 ・・・ん?おとり・・・?

  え!?おとり!?無理無理無理!!」

 

「でも、それしか手段はありません!大丈夫です!出来ますよ!!」

「いやいやいや!あのモンスターの顔見てみろよ…‼ 完全にイッてる目してるだろ?あれはやばい…」

「じゃあどうするんですか!?もう追いつかれますよ!!」

「ちなみにうちは二人に合わせるから…?」

 「うーん・・・‼ ああああ‼ おとりしかねぇーかぁ?!おとりやるかぁ・・・‼」

「そうしましょう!」

「お!おう!」

 「じゃあ、もう少し走ったらこの先に大きな木が一本立ってるからそこでやろう!」

「わかった!」

「了解しました!」

 

 三人は大きな木の場所まで走った…

 後ろでは唸り声をあげながらモンスターがずっと追いかけて来ていた。

 

 「あそこの木!」

 

「じゃあ、俺と琴乃花はあの木のギリギリで二手になって左右に行く!夏夜はそのまま、まっすぐ行って木に登って!そしたらモンスターは木にぶつかって少し怯んだ所を夏夜が木の上から全体重をハンマーに乗せて重力と共にモンスターに向かって落ちてくれ!」

 

「なんか最後の方、言い方しつこかったけどわかった!」

 

「じゃあ琴乃花いくぞ!!」

「はいっ!」

 

 

 遥人は走って大きな木を右に避けようとした時、木の陰から金髪の女の子が倒れ込んでるのが視界の端に映った

 

 

 「…っ!? ちょまっ!STOP!!」

 

そんな言葉は二人の耳には届かず、琴乃花は左へ走り、夏夜は木の上に登った

 

あぁぁ…‼ どうしよう…! とにかくこの女の子を守らなきゃ!

 

 ドォォン!とモンスターは木にぶつかり、モンスターは倒れた

 そこを、夏夜が木から飛び降りてハンマーでトドメを刺した。

 

「夏夜さん…⁈ 殺りました?」

「うん、完璧だよ。 会心の一撃って感覚がした」

「う、うん?」

「あれ…?遥人は…?」

 

 遥人は、その金髪の女の子をモンスターから守ろうと考えた手段が…

 

 自分が相手に抱きついて守る 『俺がお前の鎧になるぜ?』作戦だった。

 

「遥人…こんなところに居た、なんで木の陰に……い…る……の…」

「・・・・・・・」

 

 琴乃花と夏夜の目に飛び込んできたのは遥人が金髪の女の子を抱きかかえて

 地面に寝ている姿だった……

 

 「ふぅ…モンスターは討伐できたみたいだな…‼ お疲れ様」

 

 「「「・・・・・・・」」」

 

 遥人は金髪の女の子と琴乃花たちの方を二度見して、自分の状況を確認した

 

……え?

 

 「…え?引いてる…?」

「・・・」

 「え、金髪の女の子をかばって抱きついて寝ていたことに引いてる…?」

「・・・」

 「ぇえ⁈ ちょっと待ってちょっと待って嘘だよね…?」

「・・・」

 「え…?引いてんの?ねぇ、引いてるの…?」

「・・・」

 「いやいやいや、それはないよね…?流石に無いよね…?」

「・・・」

 「え、嘘でしょ…?ねぇ、ちょっと、黙ってないでさ?」

「・・・」

 「あの、なんか言ってよ、ねえ、頼むよ、ねぇ……」

「・・・」

 「引いてるの…?ねぇ?引いてるよね…?ねぇ、なんか言って?」

「・・・」

 「いやいや、まじかよぉ…引いてるのかよ…ぉ…」

「あれはないわ」

 「いや…それはないわぁ…それはないって!こっちは仕方なく抱きついただけで特にそんな変な意味はないんだよ?」

「・・・」

 「ねぇ、琴乃花は…?」

「はい?」

 「琴乃花は引いてるの…?」

「いや」

 「いや、正直に言ってよ?別に嘘つかなくても、もう、一人 引いちゃってるんだから、これ以上、傷つくことはないっ!」

「引いてます。」

 

 「はぁぁぁあ…… うっ…… 胸が痛い… ぐえっ…」

 

「更に傷つきましたよね…?」

「遥人、抱きつくのはないわ…。」

 

 「はぁうぅ…っ」

 

「もっと他にやり方はあったと思います。」

「うちなら抱きつくことはしない。」

 

 「うんうんうんうんうん」

 

「早く、その子から離れなさいよ」

「そうですよ。いつまでくっついてるんですか…?」

 

 「あ、‼ すみません‼ あの……どうしたらこの件の事を帳消しに出来るんでしょうか…?」

 

「うちは奢りの件をなしにしてくれれば忘れる」

 

 「なるほど…‼ ではそうさせていただきます!!琴乃花さんの方は……?」

 

「私は、今後、このようなことがないように注意していただければいいです。」

 

 「はい では、そうさせていただきます!この度はご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ございませんでした。今後はこのような卑劣な行いがないように注意して生活をさせていただきます。」

 

 

「じゃあ、この女の子をいったんうちの家まで運ぼう」

「そうですね」

 「でしたら私目に運ばせてください。」

 

 「「「却下!!」」」

 

 

 

 夏夜が金髪の女の子をおんぶし家まで運んでベットの上に寝かせた

 

 

 「しかしなんであんなところで倒れてたんだろ…」

「確かに…少し気になりますね…」

「うちって王都に二年間いるけどこんな子見たことないよ?」

 「だとしたら帝都から来たとか?」

「いえ、それにしては恰好がこの世界の住人と違いすぎます。」

「もしかして……」

 「うちも思ってた」

 

 「この子も転生者…!?」

 

「かもしれませんね…起きたら話を聞いてみましょう。」

「だな」

「うん」

 

 

 それから4時間後の事だった。金髪の女の子が目を覚ましてトコトコと三人のいるリビング的な場所にやってきた

 

 

 「え!?なに…⁉ まじ?二年前の地球にはそんなのなかったのに!へぇ!」

 「あとタピオカなんてものもあるんだぜ?」

「それは前からあるよ。」

「・・・」

 

「あの……すみません…」

 

 「おっ…⁉ 目が覚めたか!」

「ここはいったい…」

「ここは王都にあるうちの鍛冶屋!まあ座って?」

 「は、はい…」

 

「まあ良かったよ!うちたち以外のスケベな男に運ばれなくて」

「はい、ありがとうございました…。」

「ほんとに良かったよぉ…うんうん」

 「いや!お前が言うな!」

「えっ…⁉」

「そうですよ、遥人君もスケベ男の一人なんですから」

「なにっ…⁉」

 「そ…そうなんですか?」

「いいや!違う違う!ほんとだよ?! ほら!俺の顔見て⁉ 嘘ついてるように見える…⁈」

「えっと……」

「ちょっと!こんな可愛い子にそんな顔見せないで!?」

 「えぇぇぇ…。」

「逮捕しますよ?」

 「なんの容疑でだよっ!」

「 顔面公然わいせつ罪 で逮捕です!」

「なんだよそれっ!聞いたことねーよ!!」

 

 「ぷへへへ 面白い人たちですね」

 

あ、笑った

 「そうですか?」

「はい!僕の名前は『秋元 汐莉(あきもと しおり)』です!」

「なるほど…」

ボクっ娘なのね?

 



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職業(パーティー)が揃った

 「うちは一ノ瀬 夏夜 よろしくね?」

 「私は冬月 琴乃花 よろしく」

「よろしくお願いします!」

 「あ、俺は遊馬 遥人 よろしく」

「はいお願いします!僕の事は汐莉って呼び捨てで呼んでくれて構いません!」

 「そうか、じゃあ俺は汐莉って呼ぶわ」

「うーん、遥人が汐莉って呼ぶとわけわかんなくなるからうちはしーちゃんって呼ぶ!」

 「しーちゃん…、なんか恥ずかしいですけど、はい!わかりました!」

「私は、汐莉さんで」

「はい!えっと…僕はなんて呼べば…」

 「遥人でいいよ」

「うちも夏夜でいいよ」

「私も琴乃花で大丈夫です!」

 「えっと…遥人だとかぶるので…」

かぶるってな…設定言うなよ…

 「うーん、三人って何歳ですか?」

「俺は17」

「うちも17」

「私も17歳です」

 「え…っ⁉ 夏夜と琴乃花も17歳だったの!?」

「そうだよ?」

「そうですね?三人が1同い年ってのは奇跡かもしれませんね?」

 「運命だな」

「あ、くさい」

 「え?セリフが?」

「遥人の体臭が」

 「あの…大きいハンカチ用意してもらえる?大粒の涙をボロボロ流すから」

「汐莉さんは何歳なんですか?」

「僕は15歳です!」

 「へぇ!でもそこまでうちらと歳は変わらないんだね!」

「そうですね‼」

あ…俺はシカトか…

 「じゃあ年上って事もあって、三人の呼び方決めました!」

「おう、なんでもいいぞ?」

 

「はるにい、このねえ、かやねえ、にします!」

 

「またなんか新しいな、俺はいいぞ」

「私もそれでいいですよ!」

 「うちもおっけ!あとは、うちたち三人は敬語じゃなくてタメ口で喋ってね?」

「わ、わかり、・・・わ、わかった‼」

 

 「あ、そうだ…汐莉さんは転生者の方なんですか…?」

 

あぁ…そういえば聞くの忘れてたな。

 

 「転生者…?って何…?」

「えっと、転生者はこことは違う世界で亡くなってこの世界に来ることだよ?」

「なるほど‼ じゃあ僕は転生者です!」

 「おぉ‼ やっぱり?」

「うちたち三人も転生者なんだよ!」

 「そうなの⁉ 仲間がいてよかった…」

「じゃ…じゃあさ…ここに来る前とかに女神とかに会った?」

「うん!会った!なんかすごい優しかったよ‼」

 「その女神から…お金…貰ってない?」

「やらしいわ!」

 「いや‼ 別にそんなお金が欲しいとか考えてないよ!」

「ふ~ん?」

「ほんとだよ!」

 「えっと、このくらい貰ったよ?」

 

 ジャラァァ‼っとテーブルの上に 金貨15枚 白金貨30枚が転がった

 

「…っ⁉ 嘘でしょ…。」

「夏夜?どうした?」

「白金貨30枚…⁉ こんなに…」

 「夏夜さん…白金貨30枚って何円くらいなんですか?」

「えっとね…約、300万…。」

「300万っ…⁉ 嘘だろ…超大金じゃねーかよ…」

「あの女神さまは僕にこんなに多くのお金をくれたのか…」

 「女神にはいい女神と悪い女神と普通の女神がいるんですね…」

「だな…、俺は運がなかったって事か…」

 「この300万をどうするかですね…」

「やっぱ、これはしーちゃんのお金だからしーちゃんが決めるべきだよね?」

「うーん…三人はなにか困っていることとかない…?」

 「困ってることですか…」

「そうだなぁ…あ、武器がない」

「そうだ!うちはハンマーが武器だけど、琴乃花と遥人の武器がないんだ!」

「でも武器って言ったって自分の職業以外の武器は持てないんだろ?」

「うん、そうだね?でもほら、遥人は包丁とか持てるしょ?」

「いや、流石にダサすぎない…?俺、いちよう主人公なんだぜ?主人公の武器が包丁って」

 「いや、調子乗んな。だって仕方ないでしょ?」

「まぁーな…」

 「え、はるにいの職業ってなんなんですか?」

「俺は料理人だ」

「ちなみにうちは見ての通り鍛冶屋ね?」

「私は裁縫師です!」

 「なるほど…あ、僕は薬剤師です!」

「薬剤師か!」

「えっと…料理人でかっこよくて強い武器なら知ってますよ!」

「本当か!?」

 

 「はい!マグロ包丁って言う包丁です!」

 

「マグロ包丁…?」

 「はい!よくマグロ解体ショーとかで使われる包丁です!」

「あぁ‼ 日本刀みたいな包丁か!」

 「それです!!」

「確かに…それならかっこいいし強いな!俺の武器はマグロ包丁で決まりだ!」

「じゃあ後は私と汐莉さんだけですね…」

 「まって、しーちゃんは薬剤師なんでしょ?」

「うん」

「じゃあしーちゃんは回復役に回ってもらった方がいいんじゃない…?」

 

 「ちょぉぉっと待った!」

 

「なによ?」

 「いや、汐莉を勝手に俺たちの旅仲間にしてるけど、汐莉はそれでいいの⁉ この先、危険なことだらけだよ⁈」

「大丈夫!僕の行き場所はここしかないから!」

「まぁ…そうか…まあ、汐莉がいいって言うんだったらいいけど…」

 「じゃあさっきの続きね!」

んっ? 切り替えはやっ…‼

 「僕が回復役って話だよね?」

「そう‼」

「まあそうだね…薬剤師は回復役が一番妥当かもね!」

「じゃあ、決定と…あとは…」

 「そうですね…私の武器問題ですね…」

「そうだねぇ…」

「裁縫師の武器はまじで針くらいしか思い浮かばないんだよなぁ…」

 

 「…っ⁉ そうだ!針でいいんだよ…‼ このちゃんの武器は少し大きい針で決まりだ!」

 

「…え?どうしてですか…?針なんて、使い物にならないのに…」

「違うよ!針を使うんじゃない!」

 

 「え…?夏夜、どういうことだ…?」

 

「うちたちは武器の性能だけを考えすぎてたんだ!この世界には魔法以外にスキルってのがある!うちたちは魔法を使えないが、職業一つ一つにはスキルが存在する!このちゃんはそのスキルを習得して、針ではなく、針と繋がれた糸を使うんだよ!」

 

「なるほど…‼ それなら…使えるな…‼」

「確かに…それは私が頑張ってスキルを覚えれれば!強いかもしれません!」

「かやねえ?スキルと魔法って何が違うの?」

 

 「魔法は戦闘系の職業の人が使う技で、その職業の人は誰でも同じ魔法を使うことができるが、スキルは魔法とは全く違って、修行したり生まれつき持っているなど、その人しか使えない特別な技なんだ。」

 

「へぇ…じゃあさ、魔法を使える人はどんなに強い人の魔法でも真似ができるって事…?」

 

「まあ、頑張れば100%真似が出来る…が…人には魔力という魔法を使うためのエネルギーみたいなものが存在する、その魔力が弱いものは強い人の魔法は出せないかもしれないな」

 

「魔力…、僕たちにもその魔力ってものがあるのかな…」

 

「あぁ、あるぞ?魔力は生まれつき人の魂の中に存在する。まあ、うちら平民の職業では魔力がいくら多くても関係ないんだがな?」

 

「なるほど…勉強になりました。」

 

 「じゃあ、これで、俺と、琴乃花と夏夜の武器が決まった。汐莉は、回復役だが…どうやって回復するんだ…?スキルを覚えるのか…?」

「うーん…確かに、回復するっていっても回復させる手段を考えてなかった…」

 「それなら、大丈夫!いい考えがある!」

「いい考え…?」

 「錠剤をスキルと一緒にうちたちの方に投げてくれれば、回復する!」

「そんなスキルがあるの…?」

 「さあ?わかんない」

「いや、わかんないんかい!」

「でも大丈夫‼ しーちゃんならきっと出来る!」

 「頑張ってみます!」

「じゃあ、武器を作るための素材集めてくるか‼」

「うん‼」

 

 「あ…そういえば…300万の使い道どうするか決まってなくね…」

 

 「「「  あ  」」」

 



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元勇者パーティー所属‼ にゃーのおばあちゃん‼

 「じゃあ、この白金貨30枚(300万)は武器を作るための資金にしよう!」

 

「しーちゃん‼ いいの⁉」

「うん!こんだけお金があればいい武器の素材が色々揃うでしょ?」

「まあ…でも汐莉…本当にいいのか?」

 「うん!その代わり、僕の錠剤も買ってね?」

「当たり前だよ!」

「汐莉さん‼ ありがとうございます‼」

 「じゃあ、素材を集めて来よう!!」

「でもどこで素材を集めるんですか…?」

「それならうちに任せて!いい場所知ってる!」

「さすがっ‼ 鍛冶屋!」

 

 

 四人は鍛冶屋を出て夏夜の後を歩いた

 

 

 「なあ夏夜、本当にこの道で合ってるのか…?」

「あってるよ、こっちの方が近道なの」

「ならいいんだけど…」

 

 人気のない薄暗い路地裏を四人はトコトコと歩き進んだ

 

 

 「あとちょっとでつくよ」

いい場所を知ってるって言ってたが素材屋とかなのか…?

  

 「ついた!ここ!」

「ここ…?」

「夏夜さん…本当にここで合ってるんですか…?」

「人いるのかな…?」

 

 「もぉ‼ 信じてよぉ‼ 本当にここなんだって‼」

 

夏夜がついたっと言って見せたのは、窓ガラスはバリバリに割れて壁にはびっしりとコケが付着し今にも崩れ落ちそうな荒廃した家だった…

 

 「じゃあ、入ろうか?」

「お…おう…」

「は…はい…」

「う…うん…」

 

 夏夜がドアノブに手をかけた瞬間、ドアノブがバキッと取れた。

 

 「あ」

「あ、じゃねーよ‼ え…?どうするの?入れないよね?」

「ううん…ここは強行突破する…」

 「強行突破って…まさか…ドラマとかでよく見るタックルか…⁈」

「かやねえ…気をつけてね…?」

「当たり前…‼」

 「私たちは少し後ろに下がってますね?」

「うん‼ じゃあ行くよ… 3 2 1 !」

 

 ドアに向かって夏夜がタックルをしようとした時だった…

 ガチャっとドアが開きよぼよぼのおばあちゃんが顔を出した。

 

 「何か用かい?」

 

 少しキレ気味の口調で言った

 

 「夏夜さん‼ 止まってー!」

「夏夜!STOP!!」

「かやねえ…‼ 危ない‼」

 「えっ…⁉ うぅぅぅ…‼ ううぅ…っと…」

 

おばあちゃんスレスレでギリギリ止まった

 

「ふぅ…、あっぶない!何してるのよ!」

「いや…こっちのセリフじゃよ…」

 「あ、にゃーのおばあちゃん、」

 

「「「にゃーのおばあちゃん…?」」」

 

「えっと、うちが三人を連れてきたかった場所はこの家なの、このおばあちゃんに用があって来たのよ」

 「あ、初めまして、遥人って言います。よろしくお願いします」

 「私は琴乃花です」

 「僕は汐莉って言います!」

「ほほう…そこの男の子…遥人って言ったかの……」

「はい、そうです」

 

「遥人は…夏夜の彼氏なのか…?」

 

 「えっ…‼??」

 

「ちょっと…‼ にゃーのおばあちゃん‼ 違うって!仲間だよ‼ 仲間‼」

 

「はい、彼氏的な感じですね?」

 

 「おいっ!!」

 

琴乃花と夏夜に頭をぶっ叩かれる遥人を横目に少し引き気味な汐莉がいた

 

「まあ、こんな夏夜だが…よろしく頼むよ…」

「にゃーのおばあちゃーん…」

 「は…はい……」

 

 「まあ…入りなさい…用があって来たんじゃろ…?」

「そうちょっとほしい素材があってね?」

「また何か作るのか…?」

「まあね?」

 

ボロボロの家の中には本当に何もなく、あるのは朽ち果てた木の椅子とカビだらけな木馬だけだった…。

 

 「なあ…琴乃花…本当にこんなところに素材なんてあるのかな…?」

 「見た感じだと無さそうですよね…」

 「んな…」

 

「一瞬だけ眩しいぞ…注意しておくれ…」

 

 「え・・・?」

 

にゃーのおばあちゃんが杖で床をコツンと叩くと、瞬く間に眩しい光が一瞬だけひかり目を開くと…そこにはさっきとは全く違った部屋が見えていた。

 

 「「「…っ!?」」」

 

遥人、琴乃花、汐莉の三人は驚きに表情を隠せなかった

 

「なんだよこれ…」

「どうなっているの…」

「わぁ…」

「まあ…落ち着きなさい…ここに座りながら話そう…」

 

「にゃーのおばあちゃんは不可視化の魔法使いなの」

 

「不可視化?なんだそれ?」

 

「不可視化ってのは人間などの動物が直接目で見ることができない事象の事を言うの、まあ言えば、透明魔法?的な感じかな…?」

 「まあ、透明魔法ではないんじゃがな…」

「なる…ほど…。」

 「魔法を使えるって事は戦闘系の職業なんですか…?」

 

「えぇ…そうだとも…まあ…昔の話になるんじゃが…わしは元勇者様のパーティーに居てな…?魔王討伐をしていたのだよ…」

 「えっ…⁉ そうだったの⁉ 聞いてないよ!」

「だって言ってないもん…」

 

 「えぇ…まじかぁ……」

 

「…っえ⁈ 魔王討伐っ⁉」

「あぁ…そうじゃとも…」

 「魔王は討伐できたのですか?」

 

「ええや…無理じゃった…想像以上に強くて、退散したのじゃよ…そっからは一歩も魔王城には足を踏み入れてない…」

 

「なんで行かなかったのですか…?」

「元勇者が怖気づいていけなかったのじゃよ…」

 

「ええ…元勇者も今勇者も…魔王に怖気づいて手出し出せないのかよ…」

「そんなに魔王は怖いのですか?」

「いや、見た目はわしたちとほとんど変わらんよ…」

「うん、全然変わらないよ?」

 「ああ…そうか、夏夜は一回魔王の姿を見たことがあるんだっけか?」

「うん、ある」

「じゃあ、勇者たちは魔王の強さに怖気づいてるのか…?」

 「そういうことじゃ、あれはこの世界に居てはいけない存在なのじゃよ…」

「僕たち…本当にそんな魔王を倒せるのかな…?」

 

 「あんたら、魔王を倒そうとしているのか…っ⁈」

 

「まあ、倒せたらいいな?って感じです」

 

 「甘ったれるなぁぁぁ…‼ ごほっごほっ…」

 

「え…」

 

 「魔王を倒そうとするのなら本気でやりな…本気で修行し、本気でレベルアップしな…

そうじゃないと…あんたら…秒で死ぬよ…」

 



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針とハンマーと錠剤とマグロ包丁

 「秒で…?」

 

「もう秒ってもんじゃない…コンマで死ぬ…」

「コンマで…?」

「コンマってもんじゃない…0秒で死ぬ…」

「0秒で…?」

「0秒でってもんじゃない…」

 

 「もういいよっ‼ とにかくにゃーのおばあちゃんがこうやって言うんだ、うちらも本気になって魔王を討伐しよう‼」

「まあ、そうだな…確かに本気でやらんと命はないかもな…」

「そうですね」

「わかった」

 

「四人が本気で魔を討伐しに行くのなら、わしは最高級の武器の素材をあげよう…」

「ほんとにっ⁉」

「あぁ…いいとも…なんでも言ってくれ…揃ってるからの…」

 

 「じゃあ、ユニコーンの角とハングリーオークの牙とホルスの尾羽をとりあえず」

 

「ホルスの尾羽…⁉ 欲張りな…まあいい…大切に使うのじゃ…」

 「ありがとう、これでこのちゃんの分の素材は揃ったな、あとはうちと遥人の分…遥人の素材は少し難しいな…あるかな…?」

「そうなのか?鋼とかがあればできそうだけど…」

「それは弱すぎるよ‼ もっと攻撃力の高く耐久力も高い武器を作らないと…‼」

「そ、そうなのか…」

 

 「えっと、遥人の分はニーズヘッグの牙と角と皮膚、それと…ラグナロクの書」

 

「…っ⁉ それはまた…無茶を言いよる…、ニーズヘッグ素材は封印してあるというのに…それにラグナロクの書も…いったい何の武器を作るんだい…?ラグナロクの書は武器には使えないぞ…?」

 

 「いや、ラグナロクの書の中にある呪いを武器に封じ込めるの。」

 

「呪いをっ…⁈ それがどんだけ危険なこと事かわかってるの…⁉」

「わかってる、だけどやるしかない…」

「そうか…正しわしは一切の責任を負わないぞ…?それでもいいのか?」

「うん、それでもいい。」

「ならラグナロクの書もやろう…あとは、何が必要なんだい…?」

 「そうだな…」

 

え…てか呪い?普通に聞いてたけど、よくよく考えたらやばいこと言ってね?ラグナロクの書?の中にある呪いを俺の武器(マグロ包丁)に封じ込めるんでしょ、完全にやばいことしてるじゃんそれ…俺、呪われたりしないよな…。頼むぞまじで…。

 

 「じゃあ後は…、世界樹の枝と獄炎の黒曜石をもらいたい」

「またこれも…まあ、いいじゃろ…。はい、大事に使えよ…」

「うん‼ それはもう念入りに使うよ!」

「ならいい…」

 

 「ねぇ、はるにい…」

 「ん?どうした…?」

 「かやねえがさ、なんでこの人の事をにゃーのおばあちゃんって呼んでるのかな…?」

 「あぁ、確かに…なんでなんだろうな?猫好きとか?か?」

 「聞いてみていいかな…?」

 「まあ、いいんじゃない?」

 「じゃあ聞いてみる…」

 「うん」

 

「これで全部かい…?」

「うん、これで揃った、後はうちの鍛冶屋に行って武器を作るだけだ!」

 

 「あの…なんでにゃーのおばあちゃんって言われてるんですか?」

「ん…?あぁ、これの事じゃよ…」

 

 またしてもにゃーのおばあちゃんが杖で床をコツンと叩くと、次は暗黒の闇が身体を包み目を開くと…辺り全体には猫の木彫り人形が無数に置いてあった…

 

 「…っ⁉ びっくりしたっ‼」

「これはすまなかったね?わしの趣味じゃよ、猫の木彫り人形が好きなんじゃよ…」

「なるほど、だからにゃーのおばあちゃんって呼ばれてるのか…」

 「まあそういうことじゃ…」

 

「じゃあうちらはそろそろこの辺で帰るね?」

「そうかい、またなんかあったらいいなよ?」

 「うんありがと!」

 「貴重な素材、ありがとうございました!」

「いいんだよ、魔王討伐頑張りなよ…自分を限界まで極めてから挑むといい…」

 「はい、わかりました…」

「じゃあ、夏夜の家まで送って行ってあげよう…」

「いえ!大丈夫で……す……。」

 

 それは一瞬だった…瞬きと同時にもう夏夜の鍛冶屋についていたのだ…。

 

 「「「えっ…!?」」」

 

「魔法使いは凄いでしょ?」

「え…夏夜さん…なにが起きたんですか……、私、一瞬の事で状況が把握できていません。」

 「これはにゃーのおばあちゃんの瞬間移動魔法だよ」

「瞬間移動…⁉ まじかよ…瞬間移動すらできるのかよ…すげぇな…」

「言葉も…出ません…」

 

 三人はその場で息を呑んでいた。

 

 「じゃあ武器の作成に入ろうか?」

「お…おうそうだな…」

 

 鍛冶屋に入り、夏夜は着々と準備を始めた。

 

 「あとは…これっと・・・・よしっ‼ 準備完了っと。じゃあ最初はこのちゃんの針から作ろうかな」

「よろしくお願いします!」

「任せとけっ!」

 

 金床に材料を乗せ、慎重に作り始めた。

 

 「俺たちは…何をすれば…」

「ん…?んっと…特にないね…?まあ、休憩しててもいいし、見ててもいいし?」

「そうか、わかった。」

 

 三人は休憩をすることがなく夏夜の頑張っている姿をじっと見つめていた。

 

 

 作成しては休憩しての繰り返しで数日が過ぎた。

 ようやく最後の武器マグロ包丁を作り終えた時だった…

 

 

 「ふぅー‼ やっっと‼ 完成したぁ!!疲れたぁ!」

「お疲れさまでした!」

「お疲れ!夏夜」

「おつかれ!」

 

 ガシャン!バリ!ドォォォン‼ と窓と玄関からガタイのいい男が4人入ってきた。

 

 「邪魔するぜぇ!」

 



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初めての戦闘

「お…?なんだよ、美人さんが三人を居るじゃねーかよ?」

 

 「えっ!? 何っ!?」

 

「見ろよあの銀髪の女、くっそ可愛くねーか?」

「まじめっちゃ可愛いなぁ…兄貴終わったら回してくださいよ?」

「ああ、回してやるよ」

 

 遥人たち四人は不安の中堂々と立っていた…。

 

 「あんたたち…何者よ…」

「あ?あぁ…俺たちは『ブラックニルス』だ」

 

 「…っ⁉ ブラックニルスって聞いたことある…」

 「夏夜さん、誰なんですか…?」

 「確か…盗賊なんだけど、そこらの盗賊とはわけが違って…」

 「なにそんなに強いの?」

 「いや、そういう事じゃなくて…あのブラックニルスって奴らは若くて可愛い女だけを狙って生きてる盗賊よ…」

 「まじかっ…」

 「えぇ…はるにい、ここは逃げた方が…」

 「だよな…戦ったとしても勝てるとは思えないような…」

 「でも、武器はありますよ?」

 「いや、武器あったところで、スキルも習得してないし…」

 「大丈夫だよ‼ ほら遥人がおとりになってうちたちは逃げるから‼」

 「いや‼ 俺が大丈夫じゃないよ!」

 「でも、逃げられるとは思いませんが…」

 「そ、そうだね…?」

 「えぇ…まじで戦うの…?」

 「ぼ、僕はなにもできないかも…です…」

 「汐莉はなにもしなくても大丈夫だよ‼ なんだろ…敵が隙を見せた時になんか物を投げたりして、サポートしてくれると嬉しい!」

 「わ…っ!わかった!」

 「じゃあ、戦おう!」

 

 「「「うん!」」」

 

「おい!なに…ヒソヒソと話してんだ⁈」

 

「い、いやなんでもなんです…‼」

「嘘つくな!なんでなんでもないのに話す必要があるんだ‼」

「そ、それは…」

「あのじゃあ今話してたこと言っていいですか?」

 「えっ⁈ 遥人さん!言うつもりですか⁉ 」

 「まあ、任せろ…」

 「は、はい…」

「なんだ!言ってみろ!」

「あの…」

「なんだ?」

 

 「鼻毛でてますよ?」

 

「っ!?なにつ!?はっ…鼻毛っ⁉ だと…っ?!」

 

「あ、兄貴!お、落ち着いて!鼻毛なんてでてねーよ!」

 

 「はなっ‼ ・・・え?」

 

「兄さん、落ち着いてください!この男の嘘ですよ!」

 

 「なん…だと…?」

 

「あ、バレた?」

 

 「バレた? だと…?ぶっ殺してやる!」

 

 

兄貴と呼ばれていた男は手に持っていたナタを振り上げ襲ってきた

 

遥人たち四人は息があったように全力疾走で夏夜の鍛冶屋を飛び出し荒廃した王都の大通りを走った

 

 

 「ちょっとぉ!遥人のバカぁ!!死ぬところだったじゃない!」

 「遥人さん!なにを言ってるんですか!」

 「はるにい!今はふざけるときじゃないよぉ!」

「いや!ほら?みんな戦うって言ったじゃん!」

「言ったけど!ふざけるのとなんの関係があるのよ‼」

 

 「てめぇ!らぁ!止まりやがれぇ!!」

 

「相手を挑発して我を忘れた時の方が倒しやすいかなって思って!」

「えっ⁈ バカなのっ!?」

「遥人さん…相手は四人なんですよ…?」

 

 「あ…そうか…」

 

「お前は頭が悪いんかっ‼」

 

 後ろからはじりじりとブラックニルスが迫ってきていた…。

 

 「はるにい!まずいよ!後ろ!」

「んっ…⁉」

 「来てるよぉぉ‼」

「追いつかれるっ!」

 「遥人!この先にちょっとした広場がある!そこで太刀打ちする⁈」

「そ、そうだな!それが一番いいかもな!そうしよう!」

「じゃあそこまで走るよ!」

 

 遥人たち四人は広場まで走りそこでブラックニルスを待っていた…

 

 「はぁ…はぁ…追い詰めたぞ…?俺たちから逃げられると思うなよ…。」

「兄貴…どうします…?」

「そうだな…この男は殺す、女どもは気絶させて持ち帰れ…」

「わかりました。」

「んじゃあ…とっとと殺っちゃいますか」

 

 「うっ!」

だわな!流石に俺が一番早く狙われるかっ!しゃーない‼

 

 遥人はマグロ包丁で相手の武器をガードした

 

 「こいつは俺が相手にする!そっちは任せても大丈夫か⁈」

「う、うん!任せて!」

 

「残念だったな!男は最優先で始末したいんでな…?四人がかりでぶっ殺しに行かせてもらう!」

 

 「なっ‼ 卑怯だぞ!これはいじめだぁぁ!」

 「いやいじめ以前に殺しだぁぁ!」

 

「遥人!うちたちは遥人のサポートに回る!」

 

 「おう!頼んだ!」

 

「このちゃんは右の奴を攻撃して!」

「こっ、攻撃って言われても…私はまだ一つもスキルを覚えていません!」

「大丈夫!スキルってものは戦ってるうちに勝手に覚えるものだから!」

「そっ、そうなんですかっ、じゃ、じゃあ頑張ってみます!」

「頼んだよ!しーちゃんはうちたちのサポートをお願い!」

「わ、わかった…‼」

 

 「んじゃあ!行くよぉ!!」

 

 

 夏夜はハンマーで殴りかかり、琴乃花はなんでもいいからスキルを出そうと攻撃した

 

 「ぐはっ…っ‼ この…女め…、んぐ・・・。」

 

 「一人気絶させたよ!」

 

 夏夜は遥人に攻撃をしようとしていた男の背後を取り後頭部に会心の一撃をキメた

 

「くそっ…夏夜…そろそろ俺 限界だわ…スキルも覚えてない状態でこの人数相手はきつい…、」

 

 「遥人!今行く‼」

 

 「おっとっ~?君君~?よくも僕たちの仲間を遣ってくれたね~?」

「くっ…」

 「行かせないよ~?ふっ!」

 

夏夜の前に立ちはだかった男は容赦なく夏夜を気絶させようと夏夜の首を本気で締めた…

 

 「うっ…ぅ…苦しぃ……離…せ…っ…」

 

 「夏夜っ!」

 「かやねえ!」

 

 「夏夜さん!私に任せてください!」

 

 夏夜はうっすらと聞こえた琴乃花の声にコクンと頷いた…。

 

お願い…‼ 何でもいい‼ 何でもいいから!スキル出て!!

 

 「おねがぁぁぁい!!」

 

 琴乃花は叫びながら針を男の方に突き指した。

 

 すると…針の穴から糸が出現した

 

んっ…⁉ なにこれっ…‼

 

 「へっ!?」

 

 針の穴に出現した糸が夏夜の首を絞めて居る男に絡みつき拘束した

 

 「ぐはぁ…はぁ…はぁ…はぁ…あり…が…とう…はぁ…はぁ…」

 



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スキル発動!

 「だ、大丈夫ですか?」

「う…うん、なんとかね…」

 

 「くっそ!これどーなってんだ!なんだよこれ‼ 身動きがとれねぇ…」

 

「よくも、うちを苦しめてくれたな…?お前が気絶してろ!」

 

 夏夜はハンマーで男を気絶させた。

 

 「ぐはっ…‼ どはっ…・・・」

 

まずいな…残り二人だけになったが…俺を集中狙いしてきてやがる…きつい

 

 「はるにい!伏せて!」

「っ…⁉」

 

 遥人は汐莉に言われたとおりに伏せた

 

 「んなんだぁ?んぐっっ‼」

 

「命中!」

「しーちゃんやるぅ!」

「汐莉さん‼ ナイスです!」

 

 汐莉が投げた花瓶が遥人を抑えてた奴の頭にヒットした

 

 「この…ガキ…っ‼」

 

「汐莉!危ない!」

「えっ…⁉」

 「任せてください!」

 

 琴乃花がさっき覚えたスキルで拘束しようとするが…

 

 「くくくっ…俺には効かねぇんだよ…?俺はなぁ、自分自身を高温で囲むことができるスキルを持っている、だからお前の糸は俺の前じゃあ秒で溶ける!」

 

「なっ…⁉」

 

 「んじゃ金髪のガキ…てめぇはいたぶって気絶させてやるよ…こっちに来やがれ!」

 

「しーちゃん‼」

 「汐莉っ‼ …っん⁉」

 「てめぇは…気にすんじゃねぇよ…?とっととくたばれやカスが…。」

「汐莉さん‼ 遥人さん‼ せめて!遥人さん‼拘束します!」

 

 「んっ…⁉ くそが!しゃらくせぇ!!」

 

 琴乃花は兄貴と呼ばれている男を拘束したが…自分の筋力だけで琴乃花の拘束を破った

 

「なっ…‼ 私の糸が…」

 「琴乃花っ、ダメだ!こいつと俺らではレベルが違う…それじゃあ敵わない…」

 

 「んくくく…そーいうことだ!」

 「んぐっ‼」

 

「そんな…」

 

しーちゃん…遥人…うちは…どうすれば…うちもなにかスキルを…、なにか…。

 

 「痛いっ‼ 放して‼ 髪引っ張らないでよ!痛い!」

 「ギャーギャー喚くな…」

 

「しーちゃん!」

なにか…スキル…、っ‼ お願い!なんでもいいから出て!

 

 「しーちゃんから…手を放せえ!このクソ野郎がぁぁぁぁ!」

 

 夏夜がハンマーを男に振りかざした が 男は避け、ハンマーは地面をドォォン!と叩き割った…

 

 「んっ…⁉」

 

 ―――その時だった…地面を叩き割ったハンマーからバチバチッ!っと火柱が発生した…次の瞬間、汐莉の髪を引っ張ていた男が突然、その火柱と共に吹っ飛んだ。

 

 「んぐっ!がはっ…っ‼」

 

「えっ…⁉ 出た…スキル…?出た…」

「かやねえ‼ ありがとっ‼ 凄い!スキル!」

「そ、そうだね、あはは…。」

まさか…本当に出るとは…しかもこんな強力な…。

 

 「かやねえ、さっきのスキルではるにいも助けてあげてよ!」

「う、うん‼ そうだね!くーらーえっ!!」

 

 遥人と接戦をしていた兄貴と呼ばれている男の方に向かって地面を本気で叩くとさっきと同じように火柱が走り男を突き飛ばした

 

 「んっ!」

 

「…っ⁈ 夏夜…?」

「遥人!うちのスキルだよ!」

「この短時間でスキルを覚えたのか…?凄いな…」

 「遥人さんこの三人どうします?」

「そうか…琴乃花もスキルを習得したのか、んじゃあ後は俺と汐莉だけか…」

「そうですね」

 

 「て…てめぇら…ブラックニルスをなめんなよ…もう生かさねぇぞ…皆殺しだ…。」

 

「くそっ…」

 

 「俺の職業はな、木こりだ。スキルはな…これだよ。」

 

その言葉と共に手に持っていたナタを横に振りかざした瞬間荒廃していた家が真っ二つになり崩壊した。

 

 「…っ⁉」

 

 「これでお前らも…んはは…安心しろ、痛みはない、んじゃあ死ねや!」

 

まっ‼まずい…‼ どうにかしないと本気で死ぬ…。どうする…琴乃花のスキルで…ダメだ…夏夜のスキルもダメだ打つ前に殺られる…俺が何とかしないと…

 

 

 頼む…神様…みんなを救えるスキルを発動させてくださぁぁぁぁい!!

 

 

 (ねえ?それなんで神様に頼む?そこは女神に頼むところだぉぉ?)

え…っ⁉ 何この声…っ⁉

 



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うざ女神再び

 

光が届いてない奥のドアへと入っていった

 

 くっそ…まじで暗いな…、足元すら見えねぇ…。

「なあ…夏夜、本当にこっちで合ってるのか…?」

「そんなんわかんないわよっ‼」

「えぇぇ…、」

 「ちょっと…今、触ったでしょ?」

「はっ…⁈ 触ってねーよ!」

「嘘」

 「ほんとだっ」

「きゃっ‼ 誰か、私のおしり触りました…?」

「僕は触ってないよ?」

「うちも触ってないよ…と…いう事は…遥人…。」

「はるにい…。」

 「いやいやいや!まじで触ってねーって!」

「じゃあ…誰…ですか…。」

「俺以外の誰かだな?」

 「遥人以外の誰かって、うちかしーちゃんしか居ないよ?」

 「僕は本当に触ってないよ…」

「と…いう事は、おばけ?」

「おばけって…がちで言ってんの…?」

 「だって、そうとしか考えられないもん…」

「うーん…、おばけ…なぁ? てか、俺たちはどこに向かってるんだ?」

「スイッチのある場所…?」

「そこどこだよっ‼ この暗闇じゃあ、どこにあるかわかんなぞ…」

 

その時だった…。

 

先頭を歩いていた遥人と夏夜はドスッっとおでこを壁にぶつけた

 

「痛った‼」

「んぐっ…‼」

 

「どうしたんですかっ⁉」

「大丈夫っ⁉」

 

 「あぁ…痛てて…」

 「壁…?」

 

あぁ…なるほど…なんとなく理解した…。なんでこんなに暗いのか、ここは、部屋だ。

窓のない部屋だ…。と、言う事は、この壁沿いをたどれば…電気のスイッチがある!

 

 「この壁沿いをたどろう…」

「そうだね…」

 

四人は遥人を先頭に壁沿いをたどった

 

 スイッチはどこだ~…?

 

 壁に手を当てスタスタと歩いていた。すると…

 

 べちゃ…っと、水溜りを踏んだかのように足元に違和感を感じた…。

 

 「ん…?」

「遥人さん…?どうかしました…?」

「ん、いや…なんか、踏んだのかな…?」

「踏んだ…?」

「ああ、そこら辺、水溜りみたいなもんあるから気を付けてね」

「はーい」

「うん、わかった~」

「わかりました」

 

次の一歩を踏み出した時、遥人の足にゴツっと何かが当たった。

 

 「うっ…⁉」

 

それにつまずいた遥人は前へへと倒れ込んだが壁に頭をぶつけると同時に手元には部屋のスイッチがあった…。

 

 「大丈夫っ⁉」

「あぁ…めちゃくちゃ痛いけど…、でもスイッチあったよ」

「ほんとにっ‼ やった~!」

いったい何に引っかかったんだ…?

 

 パチっと部屋の電気のつけると、遥人の足元には…

 

 「………へ…?」

 

「「「き…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁあ!!」」」

 

 薬局のオーナーと思われる女性の死体が無惨に転がっていた

 

 「う…嘘だろ…」

足元にはべっとりと血がへばりついていた…

「オ…オーナー…?」

「かやねえ…だめ…完全に亡くなってるよ…」

「そ…そんな…」

 「しかもこれ…普通の死に方してないな…。」

「そうですね…。」

 「見る限りだと…、何者かに食い殺されてる…。」

 

死体は無惨に食い殺されていた。

頬はなくなり、腹部からは腸や器官が垂れ下がり、太股には食い殺した者の歯型がついていた…。

 

 「遥人さん…見てくださいこれ…、」

「歯型…か…?」

「はい、でもこの歯型…完全に人間の歯型ではありません…」

「だな…、でも流石に人間は人間を食べないだろ…」

 「遥人、そうでもないよ…これは聞いた話なんだけど、北国の山に食人族が住んでるって話も聞いたことあるし…」

 「食人…族…?」

なんだよそれ…この世界にはそんな奴が居るのかよ…

「うん、だけど…この歯型は完全に人とは違う形をしているから、人ではない何かもっと強大な力を持つ物って考えた方がいいかもね…」

「そうだな。」

 

 そんな会話をしている時だった…

 

 「グギィィィィィィ!!」と吠え唸る声が天上の隅から聞こえた…

 

 「なんだっ…⁉」

「なっ…なんですか…この生き物…。」

「みんな…見てあいつの口元…血がついてるよ…」

「この女性の血だろうな…、」

「ねえ…遥人…。」

「ん…?」

 「この状況、やばいと思うのうちだけ…?」

 「いや、俺もかなりやばいと思う…」

「遥人さん…戦いますか…?」

遥人は当たりを見まわたした…

 「ここには、汐莉の使える錠剤が山ほどあるな…。戦えなくもないが…奴に勝てる自信が一向にわかない…、なんだろ…なんか奴と俺らには圧倒的な戦力差が見える…」

「僕もそう思う…、あのオーラは以上だよ…。」

「でも逃げるとしたらこの部屋から逃げれると思いますか…?」

「無理…だろうな…、」

くっそ…詰みゲーか…、ここでゲームオーバーするくらいだったら、戦ってゲームオーバーする方がいい…。

 「よし…戦おう…。」

遥人の声は震えていた。

 「遥人っ…本気っ⁈」

「あ…あぁ…、どーせ逃げれねーんだ…。」

「そ…それはそうだけど…。」

 

戦う事を決断したその直後だった…そのモンスターは突然襲い掛かってきた…。

 



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