緑谷くんはクソデクです (色々残念)
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緑谷くんはクソデクです

過去において「個性」とは超常な能力を表した言葉ではなく、個人個人の性格や容姿等を表した言葉であったが。現在は、個人個人の千差万別に異なる超常な能力を表す言葉として「個性」が使われている。

 

空想や虚構の存在でしかなかった超人が今では珍しくも何ともなく、至極ありふれた存在となり日常へ溶け込んでおり。大多数の人間が当たり前のように大なり小なり「力」を持っているこの超人社会では度々「個性」を悪用した犯罪が行われるが、その都度単なる職業の一つと化した「ヒーロー」を名乗る偽者共が鎮圧に向かい一応は事件を解決していく。それが偽者共の仕事である為競い合うように動き、悪党退治を奪い合う事も少なくは無い。しかし自分自身の為ではなく誰かを助ける為に動く者こそが本来は「ヒーロー」と呼べる存在だ。

正にその体現者と言える「ヒーロー」の頂点の頂点にして「平和の象徴」と讃えられる最高のヒーローである彼の存在が、今の社会を支える一本の柱と成っている事に気付く者は僅かだ。

彼の登場以降大幅に減少した犯罪件数の数は即ち、抑圧された潜在的な犯罪者の数に等しい。

強大な抑止力となる彼の存在が消え去った直後、減少した筈の犯罪件数は増加の一途を辿るだろう。

平和を維持する為には、彼という「平和の象徴」の存在が欠かせない。

存在するだけで犯罪への抑止力となる者など彼以外には居ない。故に彼1人こそが真のヒーローと言える事は疑い様の無い真実であり。

 

「つまりヒーローと呼ばれて良いのは彼だけで、讃えられるべきなのは世に蔓延る偽者ではなく本物である彼だけだ、解るなグリーン?」

「とりあえず貴方がオールマイト大好きなのは解りました、レッドさん」

路地裏で並んで座り込み持論を熱く語る男性と聞き終えた感想を答える少年。ヴィジランテのチームとして活動中に名乗る名で互いを呼ぶ彼等の前には世間一般でヴィランと呼ばれる存在達が男だろうが女だろうが区別無く、1人残らず四肢の関節を外された上で縛られて地に転がっていた。

 

態々用意した進路希望の紙を配らず放り捨て印刷に使われたインクと紙を無駄にする環境には優しくない担任教師がキミら全員ヒーロー志望だよねと言い放つと生徒達は2名を除いた全員が全て個性を発動させる。目玉が飛び出るだけとか、頭が河豚の様に膨らむだけだったりとか、明らかにヒーロー向きでは無いのが混ざっていたりもするが概ね全員何かしらの力を持っているようだった。そんな彼等へ個性を発動させなかった2名の内1人が行儀悪く机に足を乗せたまま口を開く。担任教師にこんな没個性達と自分を一緒にするなと挑発的に言い放ち周囲の人間をモブ扱いして嘲笑いながら目立っているクラスメート約1名に見向きもせず。将来の為のヒーロー分析ノートに今日デビューしたヒーローについて書き加えているもう1名。因みに何を書いていたかというと「マウントレディ」のページへ、ヴィラン退治後に見せた悪どい笑顔と手柄を奪われて項垂れている「シンリンカムイ」を色鉛筆まで使ってフルカラーで鮮明に書いていたりする。書き加えた絵に「現代ヒーロー社会の厳しい現実」と題名を付けて満足げに頷く彼の名は緑谷出久。マイペースな彼を置いて盛り上がるクラスメート達の中でも一際テンションが高い生徒1名が何故か机に乗りながら、この学校唯一の雄英進学者となりオールマイトを超えるヒーローになって高額納税者ランキングに載るという人生設計を高らかに語ったが。担任教師が放った緑谷も雄英志望の一言で表情が一変し鬼の様な形相と化した生徒が怒りのままに爆破の個性を使い、気に入らない相手の机を破壊する為に背後へ振り向いた時には既に。緑谷出久は隣の席に座っていた名前も覚えていない誰かを軽々と持ち上げ、無理矢理自分の机の上に座らせて盾にしていた。俺を盾にするなんて本当に雄英志望かよと批難する生徒に、僕が雄英志望だと聞いて嘲笑っておきながら直ぐに手が届く範囲に居て僕よりも非力なのが駄目なんだよとにっこり笑い。近くにいた君が悪いと言い放った緑谷に、ヤベー奴の事嘲笑っちゃったと焦るクラスメート複数

行動を読まれ出鼻を挫かれたとしても雄英志望の男子中学生は止まらず。

「邪魔だァ!退けやモブがァ!」

雄英志望どっちも酷い奴だコレ!と嘆く肉の盾を押し退けてムカつく相手の胸ぐらへ手を伸ばすが、そんなムカつく相手が着ている学ランの襟に剃刀が仕込まれていた事を思い出して舌打ちしながらも手を引っ込める程度の冷静さは持っていた。しかし「どういう事だクソデク!何で無個性のテメェ如きが!」声を荒げ凶悪な目付きでクラスメートを睨み付ける様はヒーローとは程遠く。どう見てもヴィランにしか見えないヒーローランキング上位にランクインしそうな彼の傍へと、いつの間にか音もなく席を立ち歩み寄っていた緑谷は「この前中学生が煙草吸ってたの見かけて思わず写真撮っちゃったんだけど、なんか何処かで見た覚えがあるんだよね。あの煙草吸っちゃってる2人と近くで嫌がる1人。未成年の喫煙は、将来への悪影響があるから気をつけないとね。本人にも周りにも、例えば君にも」と爆豪の耳元で囁いて「内申とか結構気にするタイプだよね。君は」笑顔で脅すタイプだった。

 

自身の肉体を流動的な液体状に変化させる個性を持つヴィランに捕らわれた爆豪勝己。爆破という優れた個性を持つ彼の激しい抵抗とヴィランの厄介な個性が合わさって迂闊に手が出せず歯噛みするヒーロー達の間をすり抜け、爆豪の元へ駆け出した1人の少年。制止を求めるヒーローの声は届かない。考える前に緑谷出久の身体は動いていた。遂にヴィランに身体の自由を奪われた爆豪、彼の意思に反して無理矢理に振るわれる右腕。使わされた爆破の個性によって連続で巻き起こる爆発。しかし幾ら優れた個性だとしても使い始めたばかりの他人の個性はぎこちなく、誰よりもその個性の爆破に慣れている少年には容易く回避されてしまう程に未熟で稚拙な爆破だった。燃え盛る道を怯まず止まらず駆け抜けて、どんなヒーローよりも先に爆豪勝己の前へ辿り着いた無個性の少年の口が開く。

「内面が外見に反映されちゃったのかい爆豪くん!クソの下水煮込みって感じの性格だって皆さんにバレちゃったら人気者のヒーローになんて一生なれないんだから確りしまっておかないと駄目だよ、もう!ほら頑張って今だけで良いから取り繕うんだ、今日から品行方正にして人に優しく生きていくとかは永遠に無理だって解るけど外見だけなら何とかなるでしょ?早くその醜い本性をしまわないとヒーローにさえもなれないよ爆豪くん!え、ヘドロは爆豪くんから溢れ出したものじゃなくてそういう個性のヴィランだったのかい!?なんてこった、余りの親和性に違和感皆無でヴィランって発想自体が無かったよ。悪党顔に悪党がくっついててたからかな凄いなあ。それはそうと爆豪くんは何時まで捕まってるんだい?クラスメートを没個性のモブとか見下してた癖にヴィランに手も足も出ないなんて情けない事はないよね爆豪くん!だってナンバーワンヒーローのオールマイトも越えてヒーローのトップになるなんてデカイ事を言ってた爆豪くんがヘドロに負けるなんてクソ恰好悪い事にはならないよね!さっきキミが助けを求める顔をしていたような気がしたけど、それはきっと僕の気のせいだから助けなんて必要ないよね!あ、それと最後に。学校で僕に爆豪くんが言った「来世は個性が宿ると信じて屋上からのワンチャンダイブ」とか本当にヒーロー志望なのか疑いたくなるような言動と行動は全部逃さず録音録画で記録してあるから、きみが死んだら色々な人に見聞きしてもらおうと思ってるんだ。爆豪くんが生前どんな人間だったのか、僕頑張って出来るだけ沢山の人に拡散するよ!それじゃあ、さよなら爆豪くん!出来れば永久にさようなら!」

言いたい事を早口で言うだけ言って晴れやかな顔で踵を返し、もう用無いから帰りますねと素早く走り去る緑谷出久。その足取りに迷いなんてものは無かった。

 

あのクソデクがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

余りの怒りに限界を越えて一瞬だけ身体の自由を取り戻した爆豪は、天に向かって最大出力の爆破を放つ。澱んだ緑の流動体を突き破り、昇る爆炎の柱。

強烈な爆風が爆豪の身体に纏わりついた敵を荒々しく吹き飛ばした。

 

爆豪勝己自力で脱出。

 

因みにその後全力で緑谷出久を追い、限界を越え痛む腕を無理矢理動かして怒りの雄叫びを上げながら個性を発動させ襲いかかるが。右の大振りを軽々と避けられた上に反撃として「爆豪くん辛いの好きだったよね。そんな君にプレゼントだ!」と唐辛子から抽出したカプサイシンが配合された防犯スプレーを顔へ噴射されてしまう。

視界が塞がれた爆豪少年の無防備な股間に自販機で買ったペットボトルの水を「スマァァァァァァァァァァァァァァァァッシュ!」と叫びながら投擲しトドメを刺す緑谷少年に容赦など無かった。

「それで顔を洗って出直してきなよ、ば、ば、ば、えーと、ば、ば、ば、ちょっと待って、ばけ、ばこ、ばき……確か名字が「ば」から始まって次は、か行だった様な気がする人!」

「さっきまで言えてただろが!クソナードがァァァァァァ!」

 



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緑谷くんはクソデクです2

歴史に名を残す男になりたい。それは忘れ去られたくないということでもあるのかもしれない。私はきらびやかな道を歩むヒーローになりたかった。しかし今の私はヴィジランテ、非合法な活動を行う者。闇に潜むことは避けられないのだとしても、光を浴びたいと思ってしまう。ヴィジランテとして活動しながら全世界に私の動画を配信していたら、ファンだという女性が現れて私の手伝いをしたいと言い出し始めた。無二の相棒となった女性は私へ更なる力を与えてくれたのだ。彼女の思いに応える為にも今日も私は悪と戦い続ける。公に認められることがないとしても1つでも多くの悪を倒そう。ヒーローになれなくとも私は悪と戦うヴィジランテとして活動をしていく。非合法な活動で個性を無断で使用する犯罪者として有名となったとすれば、それは悪名となるのかもしれない。だとしても私という存在が此処にいたという証にはなる。誰もかにも忘れ去られて朽ち果てていくよりかはマシだ。ヴィジランテを悪だと言う者もいるが、だったら私は悪でも構わない。悪として悪と戦おう。私は立ち止まらずに戦い続ける。より良い明日が訪れると信じて、悪を倒し続ける。相棒と共に、そして悪と戦う内に出会った仲間達と共に戦いを続けていくと決めておく。今日もまた悪を倒した。

 

「勝利の後の、紅茶の味はどうかなグリーン」

 

「悪くないですよジェントル」

 

紳士の様な恰好をした男と緑色の髪で顔を包帯で覆い隠した少年が、優雅に紅茶を飲んでいた。周囲には失神したヴィラン達が山積みになっている。彼等2人だけで倒したことは間違いない。

 

「今日のジェントルも素敵!」

 

そんな2人をビデオカメラで撮影している小柄な女性の姿があった。

 

時は流れに流れて雄英高校入試の時がくる。持ち込みは自由なので大量の得物を背負った緑谷少年が歩いていると俺の前を歩くんじゃねぇデクとか言ってくるばなんとかくんが現れたが緑谷少年は普通に無視して前を歩くことにしたようだ。歩いていくとばなんとかくんがヘドロ事件のと言われているのが聞こえてくるが、それも無視して突き進む緑谷少年。マイペースな緑谷少年にばなんとかくんが怒って駆け出して行ったが緑谷少年は気にせず歩いていく。途中で出会った丸顔の女の子が得物を沢山背負った緑谷少年を見て凄い背負っとると驚いていたりもしたが緑谷少年は気にしない。会場でハイテンションなプレゼントマイクの説明が始まり、ポイントのついた仮想敵が出ると説明をされた。ばなんとかくんとは試験会場は別になるようで、デクを潰せねぇじゃねぇかと声を漏らすばなんとかくんにできもしないことは言うの止めた方が良いよと言う緑谷少年。沸点が低いばなんとかくんはそれで怒って大きな声で暴言を吐いたが眼鏡の真面目そうな男の子に注意されていた。そんなことがありながらも入試試験の会場に移動する。移動して直ぐに始まった試験に戸惑う受験生達の中からひと足先に抜け出して背負った得物を引き抜き真っ先にロボットを殴り壊し始める緑谷少年。出遅れたことに気付いた他の受験生達もようやく動き始めた。止まることなく動き続けて背負った得物をふんだんに使い捨てながらロボットを破壊していく緑谷少年。稼いだポイントは既に50を越えており、襲われていた誰かを助けたりもしながらロボットを壊していく。合格圏内に入ったことは察していたが、それでも止まらず動き続ける緑谷少年。倒してもポイントにならない0ポイントの巨大ロボットが現れて逃げ惑う受験生達。瓦礫に足を挟まれて動けない丸顔の女の子がいたので迷わず助けにいく緑谷少年。得物の頑丈な鉄パイプを瓦礫に差し込みテコの原理と腕力で瓦礫を持ち上げてやり助けだした。

 

背負っていた得物を全て置き、助けだした女の子を背負って安全なところまで運んでいく。運び終わったところで試験が終了となった。怪我人がいないか確認しにきたリカバリーガールに背負っていた丸顔の女の子を預けて帰ることにした緑谷少年。そんな彼に助けてくれてありがとうと丸顔の女の子が言っていた。ヒーローは人を助けるものだから当然のことをしただけだよと笑って去っていく緑谷少年。雄英入試試験は終わった。受かった者もいれば当然の如く落ちた者もいる。狭き門を潜り抜けた者達だけが雄英高校で学生生活を歩むことができるのだ。

 

届いた入試の結果が室内に投影される。ナンバーワンヒーローオールマイトが映し出されて少しは驚いた緑谷少年。入試試験のヴィランポイント58点レスキューポイント40点合計98点で筆記試験も文句なしの首席合格だと言い渡された緑谷少年。無個性でこの記録を叩き出したのは雄英で君が始めてだとオールマイトに言われて、緑谷少年は無個性でもヒーローになれると証明してみせると拳を握り決意を新たにした。雄英に合格したと母に伝えると涙を流して緑谷少年に抱きついて良かったと喜ぶ母。今日はカツ丼にするねと言う母にありがとうと笑う緑谷少年。好物のカツ丼をほうばり笑顔になった緑谷少年を笑顔で見つめる母。幼い頃からの夢だったヒーローの第一歩を歩んでいる息子に涙腺が緩くなる緑谷引子。無個性だろうとヒーローになれるって証明して見せると言った息子が有言実行した。誇らしい息子を持てて幸せだと思う母に、おかわりと丼を差し出す緑谷少年。母は笑っておかわりを用意した。

 

雄英高校の制服に身を包んだ緑谷出久。行ってきますと母に言い、玄関から出て歩いていく。向かう先は雄英高校。これから緑谷少年の学舎となる場所だ。到着した雄英高校の1年A組、そこが緑谷少年の所属するクラス。異様に高い扉を開けて入り込んだ中には真面目そうな眼鏡の男子と、ばなんとかくんが言い争う姿が見えた。またばなんとかくんと同じクラスになったのは腐れ縁があるのかもしれないなと思いながら緑谷少年が自分の席に座ると丸顔の女子が話しかけてきた。同じクラスだね、よろしくと笑顔の丸顔の女子にそうだねよろしくと返事を返す緑谷少年。自己紹介をしようかと思っていると寝袋に入った小汚い男性がゼリー飲料を素早く啜り、担任の相澤消太だと言って全員体操着に着替えろと言い出したので着替えることにした緑谷少年。全員着替え終わり移動した先で個性把握テストが始まった。入試首席だったことからまず最初にボールを投げろと言われる緑谷少年が全力でボールを投げると担任教師の持つ装置に350メートルと表示される。無個性でそれだけの記録を出せるなら上出来だと言った担任教師、A組の生徒達に本当に無個性かよと驚かれる緑谷少年。

 

個性把握テストを面白そうと言った生徒がいたことが担任教師の琴線に触れたのか、最下位は除籍と言い出したA組担任教師。これは本気で言ってるなと判断した緑谷少年は全力を尽くすことを決める。結果として最下位は峰田というブドウみたいな頭をした生徒になったが除籍は合理的虚偽と嘘をついて終わりにした担任教師。見込みが無ければ容赦なく除籍にしていたことは間違いないと緑谷少年は確信していた。個性把握テストも終わり帰宅の時間となった。丸顔の女子と眼鏡の真面目そうな男子が緑谷少年を待っている。入試の試験会場が一緒だった面々で会話をしながら楽しく帰っていく。ばなんとかくんが言っていたデクは名前じゃなくてアダ名で出久が本名ですと訂正を入れながら会話をしていった。デクって頑張れって感じがすると丸顔の女子に言われようが出久ですと押しきる緑谷少年。緑谷少年が嫌がっているようなので流石に丸顔の女子もデクと呼ぶのは止めてくれたようだった。

 

オールマイトが指導する戦闘訓練。生徒達は皆服を着替えて用意をする。緑谷少年も耐寒耐火耐爆防弾防刃で全身を覆う黒いボディスーツの上に深緑の防護コートを身に纏っていた。初めての授業でカンペ片手に生徒達へ指導するオールマイトを見ながらレッドさんが此処にいたら凄いことになってただろうなと考えるグリーン。後でレッドさん用にサインもらっておこうかなと考えているとクジ引きが始まり、2人組で別れることになった。緑谷少年が組んだ相手は丸顔の麗日さんでヒーローチーム。対戦相手は、ばなんとかくんと眼鏡の飯田くんでヴィランチーム。屋内で行う戦闘訓練が始まり2人で移動している緑谷と麗日に突撃してきた1人。ばなんとかくんが腕を振りかぶって攻撃してくるのを完全に予想していた緑谷少年は麗日さんを突き飛ばして退避させてから、爆破をものともせずにばなんとかくんの腕を掴み三角絞めの体勢に入ると一瞬で絞め落とした。通常絞め技では気管の両側に沿って走る総頸動脈だけを絞めるが緑谷少年は通常は骨に保護されている頸椎動脈も絞める方法を知っており、第一頸椎骨から頭蓋骨に入るところで骨から長く出てたるみを作っているそこを頸椎動脈とともに圧迫することで一瞬の内にばなんとかくんを失神させたのだ。一瞬で無力化されたばなんとかくんに驚いた麗日さんに笑顔でまず1人と笑う緑谷少年。とりあえず確保証明となるテープも失神しているばなんとかくんの両手に巻いておいた。

 

1人になった飯田くんが抱えている仮想核爆弾を麗日さんと2人で確保しにかかる緑谷少年。飯田くんのスピードに素で着いていく緑谷少年に遅れながらも自らに個性を使用して飛び上がる麗日さん。麗日さんと連携して飯田くんを追い詰めた緑谷少年は装備の1つであるフックショットを用いて一気に距離を詰めると核を確保した。ヒーローチームが勝利して初対戦が終了となる。総評の時間に入りヴィランに徹した飯田くんと動きの良かった緑谷少年とサポートした麗日さんが褒められる中でばなんとかくんだけが酷評されていた。単独行動で突っ走った挙句に速攻で返り討ちにあった結果があるので厳しい評価が推薦入学者から下される。それを聞いているばなんとかくんは馬鹿にしていた相手に敗北したショックが大きかったのか静かだった。その後も戦闘訓練は続いて推薦入学者の轟が圧倒的な実力差を見せつけた時も何にでも噛みつくばなんとかくんが静かにしていたのを珍しいなと眺める緑谷少年。全ての戦闘訓練と総評が終わり1人駆け出していくばなんとかくん。とりあえず面白そうだから追いかけてみた緑谷少年が追いついて話しかけてみる。

 

 

「何の用だデク」と言いながらもばなんとかくんが泣いていたのでとりあえず写真をこっそり撮影しておく緑谷少年。酷評をその通りだと思ったとか推薦入学者の轟に勝てないんじゃねぇかと思っちまったとか色々と思いの丈を語ったばなんとかくんがこっから俺は一番になってやるとか言ってるのを聞いた緑谷少年は「もしかして脳に酸素が行き渡ってないのかいばなんとかくん。きっとこれは僕のせいだね、ごめんよまさかあんなに僕のことを馬鹿にしていたのにちょっと軽く絞め技かけただけで失神する糞雑魚だったなんて思ってもみなかったから。所詮は口だけの人間だったってことをちゃんと理解してなかった僕が悪いね。ブッ殺すとか死ねとか良く言うけど実際に殺したことなんてないもんねばなんとかくんはさ。性根がみみっちいから大それたこと出来ないよね君。中学時代に僕が君に手を出したことは一度もないけど勝手に君が怪我したことはあったよね。僕が襟に仕込んでた剃刀を掴んで勝手に君が怪我したことはあったけど僕が君に手を出さなかった理由が良く解ったんじゃないかな。ヒーローになる人間がヴィラン以外に手を出したら駄目だよ。そう考えるとばなんとかくんはヒーロー失格だけど本当にヒーローになる気があるのかい。言動も行動もヴィラン志望にしか見えないよ本当。しかも僕に瞬殺される程度の実力しかないヴィランだから同級生をモブとか馬鹿にしてたばなんとかくんはモブ以下なんだけどそこのところはどう思うのかな。まあ正直どうでもいいけどね糞雑魚ナメクジが何言おうが負け犬の遠吠えにしかならないしね。あ、負け犬語じゃないと解んないかなわんわん。ちなみに今のは負け犬泣いてるマジウケるって言ってみたけど通じたかな。というか何で泣いてるのかなばなんとかくん。そんなに悔しかったのかい。自分が糞雑魚ナメクジだってことがようやく解ったみたいだねばなんとかくん。調子に乗ってた割には打たれ弱いのかな。普通あの程度で泣かないでしょ。ばなんとかくんがどうなろうと僕には関係ないから良いけどね。じゃあさよなら、ばなんとかくん」

 

言いたいことを言うだけ言って笑顔で立ち去る緑谷少年。ご機嫌にスキップしながら帰っていく。

 

あのクソデクがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

怒りの余り悔しさを忘れたばなんとかくんは爆破の個性を発動させながら空中を移動して緑谷少年に接近して襲いかかるが爆破を喰らわせる前にオーバーヘッドキックで撃墜されて地面をバウンドして跳ね上がったところに踵落としを喰らって気絶した。

 

爆豪勝己2度目の敗北。

 



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緑谷くんはクソデクです3

ヒーローではなくヴィジランテとして活躍するレッドと呼ばれる男に興味があり接触を試みてみるとそれは成功。今のヒーロー達はオールマイト以外はヒーローではないというレッドの話を聞くとその通りだと思えた。ヒーローと呼ばれるべき存在は一握りで、後は偽物だと断言するレッドに着いていきたいと感じて相棒にしてほしいと頼むと相棒は間に合っていると断られる。今の相棒よりも役に立つと自分を売り込んだが、だったら試してみるといいと言われてレッドの相棒であるグリーンと戦うことになった。路地裏で対峙したグリーンに個性で蒼炎を放ったが、グリーンが跳躍して蒼炎を飛び越えて接近し、強烈な打撃を頭部に繰り出してくる。回避する間もなく直撃したそれで脳震盪を起こして立っていられなくなり倒れ込んだところで、喉元に突き付けられたグリーンの手刀に敗北を認めた。無個性であるというグリーンに負けた自分を未熟と感じ、鍛え直すことに決めて、ヴィランを相手に戦いを続ける。来る日も来る日も戦いに明け暮れた。そんな日々の合間にグリーンと再び戦うが一度も勝てていない。素手の格闘術を磨いてもグリーンには及ばず、個性と組み合わせても確実に見切られて避けられる。個性が無くても人間はここまで強くなれるのかと感心すら覚えたが、グリーンに勝ちたいという気持ちは色褪せてはいない。更に自分を鍛え上げてグリーンに挑む。この時にはもうレッドの相棒になりたいという気持ちよりもグリーンに勝ちたいという気持ちが勝っていたと思うが、それでも戦いを止めなかった。挑みに挑んだ100戦全敗。ここまでくるといっそ清々しい。大の字で地面に倒れながら此方を見下ろすグリーンに声をかけた。

 

「今日もあんたの勝ちだグリーン」

「今日で100回になるけど、荼毘とはそれなりに長い付き合いになってきたかな」

「俺は弱いか?」

「個性持て余してるチンピラやその辺のヒーローよりかは強いよ」

「嬉しくねぇな」

「まあ、そうだろうね」

「あんたが強いからレッドは相棒に選んだのか?」

「それもあるとは思うけど、僕が無個性だったからというのもあるんじゃないかな」

「無個性にとっての希望の象徴があんたということになるからか」

「そこまでのことじゃなくて、無個性であるからこそ真に己の力のみで生き抜いて戦ってきたことを評価しているとレッドさんは言っていたよ」

「俺はまだ個性に頼ってるってことか」

「個性も荼毘の力だからそこまで気にしなくてもいいと思うけど」

「いや、あんたに一度も勝てていない俺はまだ甘いってことだ」

「蒼い炎出しときゃ良いって感じの最初に比べたらだいぶ強くなったと思うよ」

「あんたを舐めてた頃の俺は忘れてくれ」

「荼毘と戦う度に思い出すから、もう戦わないなら忘れるかもしれないね」

「あんたに勝つまで無理じゃねぇか」

「そう簡単には負けるつもりはないよ」

「そいつは良く解ってるさ、そろそろ回復してきたから俺は帰る」

「それじゃあまた今度」

「ああ、それとこの前焼いたヴィランが言ってたが雄英高校がヴィラン連合ってのに狙われてるらしい。狙いは平和の象徴オールマイトだそうだ」

「それを実行する実力があるヴィランを用意できるとすれば、裏にオールフォーワンがいるかもしれないか。貴重な情報ありがとう」

 

長々と言葉を交わしていた2人が別れると別々の方向に歩いていく。身体中に火傷痕が目立つ黒髪の男は路地裏の奥に、顔に包帯を巻いた緑色の髪をした少年は路地裏から外に歩いていった。路地裏から出たところで顔に赤い布を巻いて背に刀を背負い身体中に刃を仕込んだ男と合流する。そして男が少年に声をかけた。

 

「動くか?」

「今回は、個性持て余したチンピラ程度しか集まらないでしょうし、動くには早いと思います。重要なのは相手の戦力を見極めることですよ。オールマイトを殺せる戦力を用意できるのは今のところはオールフォーワンの勢力くらいですから、ドクターと呼ばれる存在の情報は掴めましたが正体まではまだ解っていません。慎重にことを進めないといけませんよ」

「今回はそうだとして次はどうする」

「ドクターを先に始末しましょう。オールフォーワンの陣営でも重要な役割を担っているようなので代用がきかない存在の筈です。警察に引き渡すなんて手緩いことは今回は無しでお願いします」

「全てはより良き世界の為に」

 

今後の予定を話し終えた武装した男と包帯を巻いた少年は互いに握りしめた拳を合わせて決意を露にした。

 

雄英高校1年A組で学級委員長を決める投票が行われて6票を獲得した緑谷出久。とくになりたいと思っていた訳ではないのでやりたがっていた飯田くんに投票していた緑谷だったがぶっちぎりで6票も獲得してしまった為に委員長に決定してしまった。副委員長は2票獲得していた八百万さんに決まり票差に悔しがっていたり、ばなんとかくんが何でデクがと愕然としているとお前に票が入るよりかは解るけどなとか言われていたりもする。時は流れて昼食の時間。食堂でランチラッシュの作成した食事を食べている緑谷と飯田くんに麗日さんの3人。緑谷に票を入れた2名が飯田くんと麗日さんだということが判明したり、飯田くんに票を入れたのが自分だと緑谷が言うと飯田くんが感動したりしながら食事を続けていく。飯田くんが代々ヒーローを続けているヒーロー一家の坊っちゃんだということも話題に上がり、飯田くんがインゲニウムの弟ということも解った。そんなところで警報が鳴り響き、セキュリティ3が突破されたと放送が入り、生徒の皆さんは迅速に避難してくださいとアナウンスが流される。人の波を掻き分けて窓際まで到達した緑谷と飯田くんは侵入者が報道陣だと知り、それを慌てる生徒達に伝える為に手を打つ。麗日さんに浮かせてもらった飯田くんが個性のエンジンを用いて出口の上に移動する。大きな声でただのマスコミだと説明して生徒達を落ち着かせた飯田くん。警察が到着してマスコミは退散し、学級委員長による他の委員決めが始まる時に緑谷が飯田くんが学級委員長になった方が良いと言い出して学級委員長交代となった。副委員長の八百万さんが私の立場はとか言ってたけど緑谷出久は気にしない。

 

人命救助訓練の為にバスで移動する最中、隣の席に座った蛙吹さんに梅雨ちゃんと呼んでと言われてから緑谷ちゃんはどうしてそんなに強いのと聞かれて鍛えてますからと答えていると、梅雨ちゃんを挟んだ隣の切島くんがやっぱり鍛えるのって大事だよなと頷きながら言ってくる。個性も鍛えりゃ伸びるしなと切島くんが言うと派手で強い個性は誰だという話になり、爆豪と轟の名前が上がるが、梅雨ちゃんが爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なそうと言うとんだとコラ出すわ!と言う爆豪。そんな爆豪にこの付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだ様な性格と認識されるってすげぇよと上鳴くんが言ったので思わず笑う緑谷出久。確かに爆豪の性格はクソを下水で煮込んだ様な性格だと思ったので上鳴くんに拍手しておく緑谷に爆豪が何拍手してんだデクと絡んできた。

 

「いやいや、自分がどう思われてるのか客観的に知れたんだから寧ろ上鳴くんに感謝しないといけないんじゃないの爆豪くん。君のことをクソを下水で煮込んだ様な性格だって皆思ってるんだからそれは認めようね。皆考えることは一緒というか、爆豪くんの精神が汚物だということが皆の共通認識なんだから、それは覆ることのない事実として受け止めて生きていくんだよ爆豪くん。外見はお母さん似だけど内面は誰に似たんだが解らないクソみたいな産物だからね君はさ。良個性だと持て囃されて肥大した自尊心が根底にあるのは解るけど、それはこの前の戦闘訓練で格付けが済んで収まったみたいだから別だとしても、普段の生活態度が変わらないからクソを下水で煮込んだ様な性格だって理解されたんだろうね。良かったね、皆正しく君のことを理解してくれてるんだよ爆豪くん。変にフィルターかかってないから実の家族よりも理解してもらってるじゃないか。ああ、何で上鳴くんに拍手してたかと言うと、僕も君のことを汚物だと思っていたからだね。君のことを的確に表現していたから思わず笑って拍手していたよ。短い付き合いでクソを下水で煮込んだ様な性格だって理解されてる中で、中学時代の君の今までの諸行を長々と語ってやったら、君はこれまでと同じ生活はできなくなりそうだけど、そうしてほしいのかな。別に僕はそれでもいいけど、どうする汚物くん」

笑顔で言い放った緑谷に黙り込む爆豪。中学時代に何があったのかと気にしている面々。到着したバスに会話はそこまでと切り上げた緑谷。

 

ウソの災害や事故ルームでスペースヒーロー13号とオールマイトと合流して、13号から小言と言うが大事なことを聞かされてから、人命救助訓練が始まろうとしたその時。広場に黒い霧の様なものが発生し、そこから大勢のヴィランが現れた。ヴィランが来ることを事前に予測していた緑谷出久は慌てず冷静にヴィランを観察する。脳味噌が剥き出しの黒い大男が要注意だと判断して、上半身に手を沢山付けた男と黒い霧の様な男が主犯格だと確信。生徒達に一塊になって動くなと指示する担任のイレイザーヘッド。学校に連絡を試すが通信が妨害されていて繋がらない13号。ヴィランの群れに高速で突っ込んでいくオールマイト。個性を持て余した様なチンピラ程度は瞬時にオールマイトに一掃されて、脳味噌が剥き出しの黒い大男と殴り合うオールマイトに近付けない主犯格のヴィランの2人。生徒達を守っているイレイザーヘッドと13号。殴り合いに勝利し、脳味噌が剥き出しのヴィランを遥か彼方に殴り飛ばしたオールマイトが、全盛期なら3発で済んだところを100発以上も打ってしまったと言いながら、残ったヴィラン2人を見据えると一瞬で殴り飛ばす。気絶した2人のヴィランにヘドロの様なものがまとわりついたかと思えば、姿が消えていた2人のヴィラン。転移系の個性によるものだと判断した緑谷出久は最後にオールフォーワンの介入があったと確信していた。予想以上にオールマイトが弱っていなかったから、今回の計画は失敗ということで主犯格の2人だけは必要だから逃がしたということになると推測する緑谷。ヴィラン連合の背後にはオールフォーワンの姿があると考える緑谷は1人、拳を固く握りしめていた。



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緑谷くんはクソデクです4

早朝の人通りのない路地裏で全力で刀を振るう男に素手で立ち向かう少年。真正面から振り下ろされる刃を両手で挟み込む真剣白刃取りで防ぎ、刃を挟んだ両手を傾けて相手の体勢を崩すと、しなる鞭の様な上段廻し蹴りを男の首へと叩き込もうとするが、刀を手放して瞬時にナイフに持ち換えていた男が蹴りの軌道上にナイフを構えていたので蹴りを止める。両手に挟み込んでいた刀を手放して自由になった両手で男のナイフ攻撃を捌いていく。少年はナイフを振るう男の手首を掴み取り、捻り上げてナイフを手放させてから投げると、投げられながら男が棘の生えた靴で突き出す様な蹴りを繰り出してきたので、蹴りを潜り抜けて躱し中段の廻し蹴りを放つとそれは男の腹部に直撃。尋常ではない威力の少年が放った蹴りは確実に男にダメージを与えていた。蹴りを受けて吹き飛びながらも体勢を立て直し着地した男は新たな得物として折りたたみ式のナイフを取り出して構える。一息で間合いを詰めた男のナイフによる突きが少年の急所を狙い連続で放たれた。半身になり突きを回避していく少年は男に接近し拳で体当たりするかの様な一撃を繰り出して、男の脇腹を撃ち抜く。放たれた拳打の威力は並ではなく、吹っ飛んだ男は壁に叩きつけられる。それでも怯まない男は両手に折りたたみ式のナイフを持ち、少年に襲いかかった。渾身の力で振るわれる刃を避けながら、男へと小刻みに拳を叩き込んでいく少年。放たれた拳の連撃が男を痛め付けていこうが、男は止まらない。縦横無尽に刃を振るう男に、全てを躱しきった少年の飛び膝蹴りが叩き込まれて、ようやく決着の一撃となった。失神して地面に倒れ込んでいた男が目覚めて、自分に手を差し伸べている少年の手を取り立ち上がる。

 

「腕に衰えはないようだなグリーン」

「レッドさんも本気で斬りにきてましたからいい訓練になりましたよ」

 

1つ間違えれば大怪我では済まない過激な手合わせを終えた2人は和やかに会話を始めた。地に落ちた刀やナイフを拾い上げて鞘に納めながら男は口を開く。

 

「ドクターの隠れ家が判明する時は近い」

「絞り込むのにもう少し時間がかかると情報提供者は言っていましたが、そろそろですか」

「いつでも出られるように用意はしておけ」

「わかりました」

「全ては」

「より良き世界の為に、ですね」

 

言葉を交わして路地裏で別れた男と少年。少年は顔に巻いていた包帯を外すと笑みを浮かべた。

 

「体育祭前の軽い運動にはなったかな」

 

雄英体育祭が開催され、18禁ヒーローのミッドナイトに選手宣誓を任される緑谷出久。台に立ち口を開いた緑谷は宣誓の言葉を言い終えると「僕には個性がありません。無個性というやつです。しかしそれでも入試の成績で1位を取りました。個性があるからヒーローなのかと言えば、それは違うと僕は思います。ヒーローとは自分以外の誰かの為に戦える人で、助けを求められたらそれに瞬時に応えられるような人。余計なお節介だと言われても綺麗事だと言われても、それを実践するのがヒーローだと僕は思います。長々と語りましたが、僕はヒーローになることが夢でした。無個性でもヒーローになることができると証明する、その為にも結果を出そうと思っています。勝負ですよ皆さん。僕は負けません。」笑顔で宣戦布告をした緑谷に「上等だ!」「負けねぇぞ!」「クソデクがぁぁぁぁ!」などと声が上がる。第1種目の障害物競争が開始された直後に轟の個性による氷結が行われて、足止めされた者達がいる中で1年A組は氷結を全員回避していた。直ぐ様先頭の轟を追い越した緑谷は第1関門のロボ・インフェルノをロボを潜り抜けて躱す。続けて第2関門のザ・フォールという名の綱渡りを綱を渡らずに見事な跳躍力で跳び越えて進んでいく。最終関門の地雷原を地雷が埋まっていない場所を瞬時に判断して走り抜けて、圧倒的な速さで1位でスタジアムにまで戻ってきた緑谷出久。2位が轟、3位が凄い顔した爆豪となった。第2種目は騎馬戦となり障害物競争の順位に応じたポイントが配布されることになる。1位だった緑谷出久は1000万ポイントとなって周囲の視線が緑谷に集中したが、緑谷は笑顔で視線を受け止めた。そんな緑谷に近付く人影が1人。

 

そろそろ始まる騎馬戦で緑谷が組んだメンバーは麗日さんと発目さんに常闇くんだった。発目さんが開発したサポートアイテムを装着した緑谷と麗日さん。開始された騎馬戦で狙われまくる緑谷チーム。緑谷が装着したサポートアイテムのジェットパックで空を飛び、空中へ逃げる緑谷チームに伸ばされた耳郎さんのイヤホンジャックを常闇くんのダークシャドウが弾く。サポートアイテムのブーツを装着した麗日さんから安全に着地して、サポートアイテムのことをベイビーと言う発目さんがベイビーはどうですかと言ってくるので凄いよベイビーと緑谷が感想を言うと発目さんは嬉しそうだった。何故か面白くなさそうな顔をしている麗日さんに緑谷が、峰田くんの頭のモギモギが設置されてるから踏まないように気をつけてと言うと、麗日さんは慌てて回避する。障子くんが1人で騎馬となり峰田と蛙吹さんの2人を腕で覆っている守りの堅い騎馬が突っ込んできてジェットパックで再び逃げる緑谷チーム。そんな緑谷チームに爆破で空を飛び近寄っていた爆豪が調子乗ってんじゃねぇぞクソデクがぁ!と言いながら襲いかかってきたので緑谷が拳で爆豪を撃墜すると地面に墜落する前に瀬呂くんのセロハンテープが爆豪をキャッチしていた。キャッチされた爆豪はB組の物間にハチマキを奪われた上で挑発されて簡単に激怒して一時的にターゲットを物間に変更したようだ。そして遂に緑谷チームの前に轟チームが現れる。放たれた轟チームの上鳴くんの無差別放電によりジェットパックがイカれた緑谷。轟チームを襲おうとしていた他のチームが放電で動きを止められている間に轟の個性で足を凍らせられていた。完全に動きを止められた他のチームからハチマキを奪い取った轟チームは緑谷チームに猛追。常闇くんのダークシャドウで牽制をかけるが八百万さんの創造した装甲で防がれる。破れていた筈の装甲が破れない程度には、先程の上鳴くんの電光でダークシャドウが弱まっていると常闇くんは緑谷に報告した。相手の轟チームにバレてないなら牽制にはなるからこのままいけると緑谷は判断。常に距離をおいて左側に移動する緑谷チームに苦戦する轟チーム。残り1分弱となった騎馬戦の時間、飯田くんが切り札を切るようだった。トルクオーバー!レシプロバーストと言って超高速で接近してくる飯田くんを先頭にした騎馬。緑谷はその超高速に対応して伸ばされた轟の手を防ぎきった。1000万ポイントを守りきった緑谷出久。

 

完全に機動力が低下した轟チームは、それでも緑谷チームを狙うが時間切れとなる。物間チームから得点を全て奪い取った爆豪チームも近づいてきていたが時間切れで爆豪が地面に倒れ込んでいた。1位が緑谷チームで2位が轟チーム3位が爆豪チーム4位が心操チームとなっている。1時間ほど昼休憩を挟んでから午後の部が始まるようだ。そんな休憩の最中、緑谷は轟に呼び出されていた。クラスメート程度にしか意識はしていなかったが、体育祭で俺は無個性のお前に負け続けてると言い出した轟は自分のことを語り始めた。自身の個性をより強化して継がせる為だけに配偶者を選び結婚を強いる倫理観の欠落した前時代的発想が個性婚。自分はその個性婚で生まれたと轟は言い、自分をオールマイト以上のヒーローにすることで自身の欲求を満たそうとする父親を屑と言い放ち、そんな屑の道具にはならねぇと語る轟。記憶の中の母は常に泣いていて、おかしくなってしまった母は「お前の左側が醜い」と煮え湯を浴びせたと、自身の顔の火傷痕の原因を緑谷に教えた轟は、ざっと話したが自分が緑谷につっかかるのは見返す為だと言う。クソ親父の個性なんて使わず1番になることで奴を完全に否定すると言いきった轟。右の力だけでお前の上を行くと言って立ち去ろうとする轟に緑谷が口を開く「僕は無個性に生んでごめんねって母親に泣かれたりもしたけど君と違って家族仲は良好で喧嘩もしたことないから仲の悪い家族がいることは知ってはいたけど、そこまで家族関係が拗れている家も珍しいっちゃ珍しいね。君のお父さんにとって何が1番大打撃かと言うと、君がヴィランになることだと思うけど、そういう発想がなくてヒーローとして1番を目指すということになったのには何か理由があるんじゃないかな。何で君はヒーローになりたいのかな轟くん。それを考えてみることも必要だと思うよ。後はそうだね、多分君のお母さんは精神的に追い詰められて病院に入院してると思うから、会いに行ってあげたらどうかな。人間なんていつ死ぬか解らないんだし、生きてる内に会いに行った方が良いと思うよ僕はね。それでまあ思ってることを全部お母さんに話してみるといいよ。多分入院してだいぶ時間が経ってるからお母さんも落ち着いてるだろうし、ちゃんと話ができる状態になってると思うから大丈夫。とりあえず僕から言えることはそれくらいかな。ああ、それと僕も全力で勝ちに行くからよろしくね轟くん」

 

そう言って緑谷は笑みを浮かべた。轟は少し黙った後、考えてみると言って立ち去る。轟が立ち去った後、緑谷は「爆豪くん、盗み聞きは良くないよ」とだけ言って昼を食べに行く。隠れて話を聞いていた爆豪が気付いてたんかデクと言って出てきた。

 

最終種目のトーナメントが始まり緑谷の相手は心操となる。尾白から忠告を受けていた緑谷は心操が何を言おうと無視して心操を場外にあっさりと投げ飛ばす。第1試合は終了となり緑谷の勝利。そこで初めて口を開いた緑谷は心操に「洗脳は相手を傷つけないで捕縛できるヒーロー向きの個性だけどヒーロー目指すなら身体をもっと鍛えないと駄目だよ。一芸だけじゃヒーローは務まらないからね」と言っておく。心操は無個性で最終種目までに残った緑谷にそう言われて何か実感するものがあったようだ。続いて始まる試合の数々。勝ち抜いて上がってきた面々が出揃い。2回戦が始まる。緑谷の相手は轟となり個性による氷塊が迫りくる中で、己の拳足のみで氷塊を砕いて突き進む緑谷のアッパーが轟の顎に叩き込まれ、宙に浮く轟の腹部に追撃の中段前蹴りが直撃して場外に近付く轟は個性を発動させて氷で壁を作り場外に吹き飛ぶことを防いだ。しかし緑谷の追撃は止まらず、連続で放たれた緑谷の攻撃に耐えきれず氷の壁が砕けて轟は場外に押しやられた。そこで決着となり緑谷は3回戦進出となる。更に試合は進みベスト4が決まった。緑谷の次の相手は飯田くんとなり開幕直後にレシプロバーストで勝負を決めにきた飯田くんの動きに対応する緑谷。飯田くんの高速の蹴り技をことごとく躱し、反撃の拳を叩き込んでいく緑谷出久。レシプロバーストの制限時間が過ぎたところで飯田くんを場外に投げ飛ばした緑谷。それで決着となって緑谷は決勝進出となる。最後の決勝戦の相手は常闇くんを破った爆豪となった。全力でてめえを捩じ伏せると言い出す爆豪に緑谷はできもしないことを言わない方が良いよと言う。始まった決勝戦、爆破で加速して突っ込んできた爆豪の放つ右手の爆破を躱しざまに合わせた緑谷の右拳は、正確に爆豪の顎の先端を捕らえ脳を頭骨内壁に激突させ、あたかもピンボールゲームの如く頭骨内での振動激突を繰り返し生じさせ、典型的な脳震盪の症状をつくり出した。さらには既に意識を分断された爆豪の下顎へダメ押しの左アッパー。崩れ落ちる体勢を利用した左背足による廻し蹴りは爆豪を更なる遠い世界へと連れ去り、全てを終わらせた。その間実に2秒。

 

決着が決まった決勝戦。続いて表彰式が始まりオールマイトによるメダル授与が行われる。3位の飯田くん常闇くんときて2位の爆豪は珍しく大人しい。よほど秒殺がショックだったようだ。オールマイトにおめでとう緑谷少年と1位のメダルを授与された緑谷出久。ありがとうございますと言いながら授与されたメダルをじっと眺める緑谷。体育祭に優勝することができて嬉しいという気持ちがある緑谷は無個性のヒーローを目指す第一歩を踏み出せたと感じている。最後にオールマイトが大きな声でお疲れさまでしたと言う、ずれたところを見せつけるということもあったが、雄英体育祭はこうして終わりを迎えた。

 



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緑谷くんはクソデクです5

個性を破壊する銃弾が出回っているとの情報が入り調査をしてみると実際に現物を持っているチンピラを何人か発見。注射器の針の様な弾頭を持つ個性破壊弾が、何処から流れてきたものなのか更に調査を進めると、死穢八斎會から流れてきたものだと判明。ヤクザがチンピラに提供していたことは解ったが、個性破壊弾には人の身体の一部が微量に使われているようだった。人体実験の結果、個性破壊弾は生み出されたものらしい。個性破壊弾を造り上げたのは死穢八斎會の若頭である治崎廻だと自慢気に語る組員が居たようだが情報を漏洩するような奴は既に始末されている。それでも一度流れた情報の流れは止められるものではなかったのでこうして情報を掴むことができた。チンピラ達から手に入れた個性破壊弾は21発。1発は調べる為に分解したので使えるのは20発。使えるものは使わせてもらおう。ドクターへの襲撃に使える手札はいくらでもあればいい。チンピラが持っていた拳銃に個性破壊弾を装填して向かう先は遂に突き止めたドクターの隠れ家。背負った刀を引き抜いた相棒と拳銃を構えた僕は隠れ家に突入する。現れた脳味噌剥き出しの面々を排除しながら進み、到着したドクターの眼前。オールフォーワンの協力者であるドクターの正体は、昔僕を無個性だと言ったお医者さんで、確か名前は殻木球大という名前だった筈。衝撃的ではあったがやることは変わらない。ドクターには消えてもらうとしよう。個性で何もさせないように個性破壊弾を撃ち込むとしわくちゃになったドクターは、どうやら個性で若々しい外見を保っていたようだ。雄叫びの様に大きな声で喚きちらすうるさいドクターにトドメを刺すと最後は静かに「すまんな、先生」と言って息を引き取った。目的は達成。手早く退去して隠れ家を後にする。オールフォーワンの手駒の1人を始末することができたが、敵はいまだ強大だ。これからも戦いは続いていく。全てはより良き世界の為に。

 

体育祭が終わってから2日後、朝の電車で体育祭1位の緑谷が電車にいるとちょっとした騒ぎになり大変なことになりながらも辿り着いた雄英高校。ヒーロー情報学の授業が、今日はちょっと特別だと担任教師の相澤に言われて何かと思えばコードネーム、ヒーロー名の考案だった。体育祭の結果を踏まえてプロからのドラフト指名の集計結果が発表され、4000を超える指名が来ていた緑谷出久。指名の有無に関係なく職場体験に行ってもらうと言う担任教師。だからこそヒーロー名が必要となるので、仮ではあるが適当なもんは、と担任教師が言った瞬間に割り込んで入ってきたミッドナイト。ヒーロー名のセンスをミッドナイトに査定してもらう為に担任教師が呼んだらしい。それから15分後、できた人から発表していく方式でヒーロー名の発表が行われていく。初っぱなは妙な空気になったが梅雨ちゃんのおかげでリカバリーができてまともな感じに戻ってきた。続いていくヒーロー名の発表。緑谷の番が回ってきたので、紙に書いたヒーロー名を発表する緑谷。ミッドナイトに駄目だしされることもなく緑谷のヒーロー名はバイオレンスグリーンというものになる。ちなみに爆豪は駄目だしされまくっていたようだった。

 

職場体験が始まり皆それぞれがプロのヒーローの元へ向かうことになる。飯田くんは兄のインゲニウムの元で職場体験を行なうらしい。それぞれがプロの元へ向かおうとする最中、轟に呼び止められる緑谷。緑谷に言われたことを考えていた轟は体育祭が終わってから母親に会いに行ったようで、そこで会話をしていく内に自分の原点となるオールマイトの言葉と母親の言葉を思い出したと語る轟。凝り固まっていた気持ちが解れて楽になったと言う轟は緑谷に「お前のおかげで大切なことを思い出せた。ありがとな」と礼を言うと立ち去っていく。礼を言われた緑谷は笑顔で「たいしたことはしてないよ」と言うと職場体験に向かうことにした。4000以上も指名されていた緑谷が選んだプロの職場はオールマイトのサイドキックであったサーナイトアイ。到着したサーナイトアイの事務所。そこで雄英高校3年の通形ミリオと出会うことになる。サーナイトアイと通形ミリオことヒーローネームルミリオンとの実戦形式での立ち合いや、ヒーローとしての活動、パトロール、サーナイトアイに戦闘許可をもらった上でのヴィランとの戦い等々。サーナイトアイの元で行われた職場体験は実りのある結果に終わった。

 

1週間の職場体験を終えた皆が集まる1年A組。爆豪の髪型が8対2になっていたり、麗日さんが武闘派に目覚めていたりもしていた。そんなこんなでヒーロー基礎学が始まりオールマイトが授業をする。救助訓練レースが運動場γという名の密集工業地帯で始まり、5人4組に分かれて1組ずつ行われる最初の組に緑谷出久は入っていた。救難信号を出したオールマイトの元へと向かう5人。最初にオールマイトの元へ到達した緑谷に続いて瀬呂くんが2番目に到着。オールマイトが「1番は緑谷少年だったが皆入学時より個性の使い方に幅が出てきたぞ!この調子で期末テストへ向け準備を始めてくれ!」と言って次の組の準備を始めていた。

 

 

時は流れて6月最終週、期末テストまで1週間を切っている最中、全く勉強してねぇと叫ぶ上鳴くん。1年A組で最下位の20番目の座学の成績を持つ上鳴くんは危機感に頭を抱えていた。そんな上鳴くんの隣で笑う芦戸さんも成績は19番目と最下位に限りなく近い。落ち込んでいた2人に座学では2番目の成績を持つ八百万さんから救いの手が差し伸べられた。そんな八百万さんに何人かの生徒達が勉強のことを教えてもらいにいくと八百万さんは良いデストモと喜んで受け入れた。その姿を見てこの人徳の差よと、成績4番目の爆豪を見る成績15番目の切島くんに俺もあるわてめェ教え殺したろかと言う爆豪におお!頼む!と声をかける切島くん。成績1番目の緑谷にも常闇くんを筆頭に声をかけてくる人はそれなりにいたが、緑谷は笑顔でそれを受け入れて勉強を教えていく。一段落が着いたところで昼食の時間となり、食堂にいく皆の中で会話をする内容は演習試験。話題となる演習試験の内容が何になるかを考えていると背後に不穏な気配を感じて頭を屈めてすんなりと避けた緑谷の背後をB組の物間がわざとらしく肘を出して通り抜けていた。物間は偶然を装い肘うちを当てるつもりだったらしい。背後を振り返った緑谷は「かなり空いているのに態々僕の背後に回って偶然を装いながら肘を当てようとしてくるとかやることが姑息だね君は。突っ掛かる相手を間違えているんじゃないかな物間くん。体育祭で爆豪くんを挑発してたわりにはあっさりとハチマキを奪い返されて負けた物間くん。特に体育祭で良い結果を残せなかった物間くん。君が気にするべき相手は爆豪くんでしょ物間くん。僕に正面から攻撃する度胸がないから態々背後から偶然を装うなんてことをしたのは解ったから、さっさと用件を言ってもらおうか物間くん。君と違って僕達は暇じゃないんだよ物間くん。何も言わないねどうしたのかな物間くん。もしかして特に理由もないのに僕を攻撃しようとしたのかい物間くん。特に理由のない暴力を振るおうとするなんて本当にヒーロー志望なのかな物間くん。そんなことを考えて実行に移すような奴と一緒のクラスじゃなくて良かったよ物間くん。いや本当にB組じゃなくて良かったと思ったよ物間くん。B組の生徒は君みたいな奴等ばっかりなんじゃないかと不安になるよ物間くん。本当にヒーロー目指してるのかな君達はさ。将来ヴィランにならないでね物間くん。他の人に迷惑かけちゃ駄目だよ物間くん」

 

一息で言い放った緑谷に物間が言い返そうとした瞬間にB組の拳藤さんが物間の首に手刀を叩き込んでいた。倒れ込んだ物間を引っ張り上げながらごめんなA組こいつに絡まれてたんでしょ?こいつ心がアレなんだと言う拳藤さん。演習は対ロボットの実戦らしいと情報を提供してくれた拳藤さんに感謝の言葉を返す緑谷。物間を引きずって去っていく拳藤さんはB組の姉御的な存在のようだ。食事も終わり教室に戻った緑谷達は演習がロボットらしいという情報を皆に伝えたが、それが変更されるかもしれないということも緑谷は付け加えた。ここは雄英高校だから更に向こうへを生徒達にも実践してくる可能性があると緑谷は考える。そうこうしている内に爆豪が緑谷に期末試験で結果を出して、てめェよりも上に行くと宣戦布告をしてから立ち去っていく後ろ姿を見送った担任教師が爆豪が拗らせていることを危惧していた。

 

そして演習試験当日。ロボットではなく諸事情あって二人一組で教師との戦闘を行なうことになった。緑谷は爆豪と組んでオールマイトと戦うことになる。移動中のバスの車内で沈黙に耐えきれなかったのかオールマイトがしりとりとかする?と話しかけていた。それに応えた緑谷がしりとりしましょうかと言い出して、オールマイトと緑谷のしりとりが始まったのを苦々しい表情で眉間にシワを寄せながら見ていた爆豪。到着したビル群のステージでオールマイトから説明が行われる。ハンドカフスをオールマイトに掛けるか、ステージからの脱出。それが演習試験のクリア条件。ハンデとして体重の約半分の重りを装着したオールマイト。さっそく始まったオールマイトとの戦闘。ハンドカフスを持つのは緑谷出久。会話することなくバラバラに移動する緑谷と爆豪。オールマイトに正面から戦闘を仕掛けようとする爆豪とステージからの脱出を目指す緑谷。全力で疾走する緑谷の遥か後方で爆発音が聞こえた。爆豪とオールマイトの戦闘が始まったらしい。気にせず駆け抜けていく緑谷出久の背後から投げ飛ばされた爆豪が転がってくる。緑谷に追いついたオールマイトにチームを置いて逃げるのかと聞かれて、僕をチームだと思ってくれない相手ですからと答える緑谷。そんなことではプロとしてやっていけないぞ緑谷少年と言うオールマイトが繰り出してきたパンチを受け流しながら、反撃の拳を叩き込んでいく緑谷は冷静にオールマイトの隙を伺っていた。体育祭1位と2位。成績だけで言えばとても優秀な2人であるが、チームワークは最悪だ。互いが互いを嫌っていて性格がそもそも合わない2人。腐れ縁で緑谷をデクとあだ名でしか呼ばない爆豪と普通に爆豪くんと呼ぶ緑谷。爆豪は緑谷に複雑な思いがあるのだろうが、緑谷にとって爆豪はただの嫌いな人という単純なものになっている。緑谷にとって爆豪はたまに名前を忘れたりする程度にはどうでもいいけど嫌いな人というものだ。地に転がっていた爆豪が立ち上がり、オールマイトの背後から襲いかかるが振り返りざまの裏拳で右腕の籠手を破壊されて吹き飛ばされる爆豪。爆豪への攻撃で生じた一瞬の隙を狙いハンドカフスをオールマイトに掛けようとする緑谷。しかしオールマイトには反応されて躱された。危ない危ないと言いながら拳のラッシュを繰り出してくるオールマイト。オールマイトは、放たれる拳打の数々を捌いていく緑谷に戦い慣れてるな緑谷少年と感心する。

 

緑谷はオールマイトの背後で立ち上がっていた爆豪に僕ごと撃てと声を上げた。振り向いたオールマイトが目撃したのは手榴弾の様な左腕の籠手を構え、ピンを引き抜く爆豪の姿。最大出力の爆破が放たれてオールマイトと緑谷が呑み込まれる。耐爆のヒーローコスチュームを身に纏う緑谷は爆炎の中でオールマイトに近付き脇腹を狙い、渾身の拳を叩き込んでいた。爆豪の最大出力爆破と緑谷の古傷を狙った一撃に血を吐いたオールマイト。ダメージを与えたことが確認できた緑谷はオールマイトに、防護コートの内側にしまっていたハンドカフスを取り出して掛けようとするがオールマイトはそれも察知して跳躍し、緑谷と距離を離そうとした。しかし緑谷は瞬時にオールマイトの足を掴み、跳躍するオールマイトに着いていく。そして互いに宙に浮いた状態でハンドカフスをオールマイトの足に掛けていた。着地したオールマイトは緑谷に「君達の勝ちだが、あまり褒めることはできないよ。チームワークが最悪だったからね。最後は協力していたみたいだけど、それも緑谷少年ごと攻撃するとかだいぶ荒っぽかったしな。プロになれば、どんな相手ともチームを組めるかが重要視される。相手にどのような気持ちを抱いていようがプロは、働かなければいけない。緑谷少年も爆豪少年も素晴らしい資質を持っている。もったいないぜ、君達」と語ったが緑谷は「何故か昔から僕に突っ掛かってくるんですよ爆豪くんはね。昔僕に何もできない奴って意味で、デクってあだ名をつけて未だに呼んでいますから性格も良くないと思いますよ。それに僕が無個性なのに自分よりも良い成績残してるのが気に入らないみたいです。というか中学時代に爆豪くんに「来世は個性が宿ると信じて屋上からのワンチャンダイブ」とか言われてますから、そんな奴と仲良くしたい訳がないのが普通だと思いますよ。爆豪くんに謝られたことも一度もありませんが、まあ爆豪くんに謝罪なんてことができるわけないんでそれは期待してません。とりあえず今回は貴方に勝てましたが、今後似たようなことがあった場合を考えておきますねオールマイト」と言って踵を返す。1人残されたオールマイトは教師って難しいと思わず呟いた。



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緑谷くんはクソデクです6

闇の大物ブローカー義爛、ヴィランにサポートアイテムや人材を提供している存在。ヴィランの力を増長させるヴィランと言ったところか。そんな存在を生かしておいてもろくなことにはならないので始末することになったレッドとグリーン。義爛には依頼を受けてヴィラン連合に人材を派遣する予定があったようだが、その予定はもう叶うことはない。義爛の護衛らしきヴィランもまとめて倒れ込んで動くことはなく。拳銃を向ける義爛であったが、銃身がぶれることなく真っ直ぐ銃口が2人を狙う。銃弾があらぬところへ飛んでいくことなく真っ直ぐ飛び。飛んできたものは避けるグリーンに刀で弾くレッド。そうして拳銃の残弾を全て撃ち尽くした義爛に為す術はない。壁際に追いやられた義爛が不敵に笑う。その笑みは、大物ブローカーとしての最期の意地だったのだろうか。そんなことを気にすることはないレッドとグリーンによって、義爛が最期の声を上げる間もなく絶命する。義爛の死体の顔は笑みで固まっていた。ヴィランを殺害することに躊躇いがないヴィジランテ、レッドとグリーン。彼等にとっては今日もまた悪を倒したという考えしかない。全てはより良き世界の為に。その言葉の通りに行動してきた彼等の活躍は、確かに犯罪への抑止力にはなっていた。レッドとグリーンが活動していた街では犯罪件数が減少傾向にあるという情報もある。より良き世界には確かになっているのかもしれない。しかしそれでも彼等はヴィジランテであり、個性の不正使用によって犯罪者として扱われる。そうだとしても彼等は日夜、悪と戦い続けるだろう。止まることなく戦い続ける彼等の戦いの終わりは、この世の悪が消え去るまでだ。永遠に終わることがないとしても彼等はけして退かない。それがヴィジランテのレッドとグリーン。2人の戦いはこれからも続いていく。全ては、より良き世界の為に。

 

林間合宿に全員行くことになり、期末の演習試験で赤点を取った者達も一緒に行くことが決定した瞬間。テンションが上がっている赤点を取った者達。しかし上がったそのテンションも担任教師の別途に補習時間を設けてるという言葉に勢い良く下がった。補習の対象者は実技で切島くん上鳴くん芦戸さん砂藤くん瀬呂くんに峰田が赤点だ。何はともあれ全員で行けて良かったねと尾白くんが言うと、1週間の強化合宿に話題が移り色々と必要なものの話題になる。そんなところで明日休みだしΑ組皆で買い物に行こうよと言い出す葉隠さん。それに賛成する上鳴くんと他の面々。翌日県内最多店舗数を誇る木椰区ショッピングモールに到着した面々は目的がバラけているので時間を決めて自由行動をすることに決定。1人残された緑谷出久に近寄る一般人のフリをしたヴィランの死柄木弔。相手が雄英に襲撃にきたヴィランの1人であることに気付いていた緑谷は、持っていた缶ジュースを奢りますよと言ってヴィランに向けて軽く放り投げる。缶ジュースを受け取ったヴィランは中指だけを立てていた。5本の指で触れると発動する個性を持っていると瞬時に推測した緑谷は、あの手に触れられないようにしなければいけないなと考える。なおも接近してくるヴィランに、ヴィランが反応すら出来ない速度で繰り出した左拳を顎に叩き込み、ふらついたヴィランのこめかみに上段廻し蹴りを繰り出していた緑谷出久。命中した蹴りで卒倒したヴィランは気絶していた。直ぐ様緑谷は警察に通報し、ヴィランを買ってきたロープで縛り上げる。手がロープに触れられないように縛り上げられたヴィランは、駆けつけた警察によって確保された。緑谷出久は無個性であったから個性を使用した訳ではないと判断されて、雄英を襲撃したヴィラン連合の主犯格を捕らえたお手柄雄英生として少しの間有名になる。警察に捕らわれた死柄木弔は自分を最初に捕らえた緑谷出久に初めて憎悪を抱くことになるが、いまだ幼稚なままの悪はオールフォーワンという巨悪に守られていた。取調べが行われている最中に死柄木弔は黒いヘドロの様なものに包まれたかと思えば、姿を消す。それがオールフォーワンの手によるものだと気付けたものは極少数だろう。

 

そんなこともあってかヴィランの動きを警戒し、例年使わせて頂いてる合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなる。こうしてあまりに濃密だった前期は幕を閉じ、夏休みとなり林間合宿当日。物間がテンション高くA組に補習対象がいることを挑発するとB組の拳藤さんが物間の首に手刀を叩き込んで気絶させた。ごめんなと言う拳藤さんが苦労しているようなので緑谷は特に何も言わなかったが、B組の女子を見た峰田がよりどりみどりかよと犯罪者の様な顔をしていたので、とりあえず気絶させておく緑谷出久。ちなみにB組に補習の人はいないのかと聞くと物間が1人だけ補習らしい。それでよくあれだけ挑発できたなとある意味緑谷は感心した。乗り込んだバスが1時間後に停車し到着した場所は山々の風景が見える場所。そこでワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの2人と遭遇。ここら一帯は私らの所有地なんだけど、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね、と指差すプッシーキャッツのマンダレイ。じゃあ何でこんな半端なところにと麗日さんが疑問を言い、嫌な予感がしたのかバスに戻ろうかと言う瀬呂くん。今はAM9時30分早ければ12時前後かしらんと言い出したマンダレイに嫌な予感を掻き立てられたのかバスに戻れ!早く!と叫ぶ切島くんだったが時すでに遅し。12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きねと言うピクシーボブが地面に手を置くと発生した巨大な土石流に押し流される1年A組の中で避けきった緑谷出久のみが1人プッシーキャッツの前に立っていたが、一緒に降りた方が良いですか?と担任教師に聞くと、そうしてくれと言う相澤消太。あれ避けたの!将来有望ね!つばつけとこ!とつばを飛ばしてくるピクシーボブのつばを躱しながら飛び降りた緑谷出久。着地した先で土塊で作られた魔獣を破壊しながら進み、到着した合宿先。土魔獣が簡単に攻略されちゃったと笑うピクシーボブは躊躇ないそこの4人。3年後が楽しみ、つばつけとこ!とつばを飛ばしてくる。飛んでくるつばを回避しながら質問をする緑谷。さっきから居る1人の男の子は、どういう関係なのかを問う緑谷出久。どうやらマンダレイの従甥で洸汰というらしい。よろしくと挨拶をする緑谷の股間を狙いパンチを打ってくる洸汰だったが、しかし容易にパンチは受け止められて、こういう挨拶はやめた方が良いよ洸汰くんとたしなめる緑谷。

 

離せ、ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇと言う洸汰。そんな洸汰をマセガキと笑う爆豪に、お前に似てねえか?と言う轟。あ?似てねえよつーかてめェ喋ってんじゃねえぞ舐めプ野郎と喚く爆豪。悪いと謝りながらも似てると呟く轟。それを聞いた緑谷は「いやいや全然似てないよ轟くん。爆豪くんと一緒にしたら洸汰くんが可哀想だよ。こんな精神汚物といたいけな子供を一緒にしちゃあいけない。生まれた時からクソを下水で煮込んだ様な性格と言われるような奴と何か理由があって反抗的な子供を一緒にするのは良くないよ本当に。爆豪くんが子供みたいに幼稚というところは解るけど、本当の子供と一緒にしてはいけないよ、子供が可哀想だ。爆豪くんが子供の頃から成長していないと言われたら、それはその通りだとしか言えないけど、爆豪くんと違って成長の余地がある子供は爆豪くんと一緒にされたくないと思うよ。どう成長したらこんな汚ならしい汚物に育つんだという精神を持った爆豪くんと洸汰くんを似てると言うのは洸汰くんを爆豪くんと同レベルだと見なしているのと同じだからね。それは洸汰くんにとって最大級の侮辱に等しい行いだよ轟くん。こんなクソを下水で煮込んだ様な性格と似ていると言われる洸汰くんの気持ちを考えておかないと駄目だよ。洸汰くんにお前はうんこに似ていると言った様なもんだよ轟くん。それはもう、お前はクソ同然だと言ったに等しいからね。もうちょっと考えてから発言しようね轟くん。うんこと一緒にしてごめんなって後で洸汰くんに謝っておいた方が良いんじゃないかな。まあ洸汰くんもそんなこと言われたらびっくりすると思うけどね。まあ僕が何を言いたいのかと言えば、クソ下水煮込みといたいけな子供を似ているとか言っちゃあいけないよってことかな」と締めくくる。そんな緑谷に誰がうんこだ!このクソデクがァァァァァァァァァァァ!とキレる爆豪。素直に悪いなと謝る轟。茶番はいいからバスから荷物降ろせと言う担任教師。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だと言った担任教師。本格的なスタートは明日からだと言ってさァ早くしろと急かす担任教師相澤消太だった。

 

食事が終わり入浴の時間。峰田が堂々と覗きをしようとしていたのを防ぐ洸汰。しかし何があったのか洸汰も頭から落ちてくる。そんな洸汰をキャッチして危機を救った緑谷出久。マンダレイの元に洸汰を運ぶ緑谷。タオルを巻いただけの姿で現れた緑谷に凄い身体してると思わず見惚れるマンダレイ。そんなことは露知らず洸汰くんのことを気にかける緑谷にマンダレイが、落下の恐怖で失神しちゃっただけだから心配はいらないと語りかける。洸汰くんがヒーローに否定的なのは何か理由があるんですかと問いかける緑谷出久。普通に育ってればこの子もヒーローに憧れていたんじゃないかなと言うマンダレイ。マンダレイのいとこ、洸汰の両親ね、ヒーローだったけど殉職しちゃったんだよとマグカップを載せたお盆を持ったピクシーボブが部屋に入ってきながらそう語る。そしてタオル1枚の緑谷を見てピクシーボブは密かに凄く良い身体と思いながらも話を続けた。2年前ヴィランから市民を守ってね、ヒーローとしてはこれ以上ない程に立派な最期だし、名誉ある死だったと語り終えるピクシーボブ。そこから先はマンダレイが引き継いで、でも物心ついたばかりの子どもにはそんなことわからない、親が世界の全てだもんね、「自分を置いて行ってしまった」のに世間はそれを良い事・素晴らしい事と誉めたたえ続けたのさ、私らのことも良く思ってないみたい、けれど他に身寄りもないから従ってる、って感じと言うマンダレイは最後に洸汰にとってヒーローは理解できない気持ち悪い人種なんだよと語った。それを聞いた緑谷は「洸汰くんがヒーローに否定的な理由は解りました。デリケートな問題なのに教えて下さってありがとうございます」深く頭を下げてその場を後にする。緑谷出久は洸汰くんの事情を知り、自分にできることが何かないかと考えた。翌日、合宿2日目AM5時30分。お早う諸君、本日から本格的に強化合宿を始めると言い出した担任教師。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得と言った担任教師は具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ、心して臨むようにと言い終えると緑谷に体力テストの測定ボールを投げ渡す。前回の入学直後の記録は350m、どれだけ伸びてるかなと言う担任教師。全力で投げる緑谷出久。表示された値は420mと70mも伸びていた。成長してるなと感心している担任教師が今度は爆豪に投げさせると709.6mと表示される。前回は705.2mだった爆豪。

 

成長していた無個性の緑谷はともかくとして、ご覧の通り個性そのものはあまり成長していない。今日から君らの個性を伸ばす、死ぬ程キツイがくれぐれも、死なないようにと笑顔で言い放つ担任教師。許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型・その他複合型は個性に由来する器官・部位の更なる鍛錬。緑谷出久は単純な増強型の面々と一緒に鍛錬することになる。PM4時カレーの材料だけが用意されていた。己で食う飯くらい己で作れ!カレー!と言ったラグドール。それに応じて飯田くんがフルスロットルで世界一旨いカレーを作ろう皆!と声を上げた。轟に火を出せるかと聞いた芦戸にいいぞと言った轟に緑谷は火を出せる様になったんだねと語りかける。ああ、お前のおかげだ緑谷と言った轟は火を放出する自分の手を見ながら感慨深い顔をしていた。出来上がったカレーを食べ終えた緑谷出久は新しい皿にカレーを盛ると足跡を追って洸汰くんの元へと移動を始める。辿り着いた崖っぷちで1人座り込む洸汰くんに話しかける緑谷。たぶんお腹すいてると思うから持ってきたけど食べる?カレーと言った緑谷に何でこの場所が解ったと言う洸汰くん。足跡をたどってと答える緑谷に、いいよいらねえよ、言ったろつるむ気などねえ俺のひみつきちから出てけと言う洸汰くんは、個性を伸ばすとか張り切っちゃってさ気味悪い、そんなにひけらかしたいかよ力をと言った。僕は無個性だけど身体を鍛えてるのは力をひけらかす為じゃないよと言う緑谷。じゃあ何の為だよと言った洸汰くんに護る為だよと力強く答える緑谷出久。うるせえよ、何が護る為だよ頭イカれてるよみーんな、馬鹿みたいにヒーローとかヴィランとか言っちゃって殺し合って、個性とか言っちゃってひけらかしてるからそうなるんだバーカと言い放つ洸汰くん。そんなことを言いながらも君は個性の練習をしているのは何故かなと言った緑谷。何でそれをと驚く洸汰くん。個性を持ってる人は大なり小なり使いたがるもんだからねと頷く緑谷。ここは私有地だから問題にはならないけど、特に理由なく個性を他人に向けるようなことはしないでほしいかなと緑谷は言った。俺がどうしようが関係ねえだろ、帰れと言う洸汰くんにカレー置いとくから良ければ食べてよと言ってから緑谷は去っていく。

 

血狂いマスキュラー、そう呼ばれる凶悪なヴィランが洸汰くんの前に現れた。マスキュラーは洸汰くんの両親であるウォーターホースを殺害したヴィランである。思わず涙してパパ、ママと声を漏らす洸汰くんに振り上げられる剥き出しの筋繊維の束で覆われたマスキュラーの左腕。腕が振り下ろされる瞬間、間一髪間に合った緑谷出久が洸汰くんを助け出した。マスキュラーがそんな緑谷を見て、お前緑谷だな、死柄木を1度捕まえた奴だ、と笑いながら言う。「緑谷、お前は必ず殺しておけって死柄木が言ってたぜ。後は轟って奴を捕まえろとか言ってたがそんなの他の奴等に任しときゃ良い、俺は好きにやらしてもらう。楽しませろよ緑谷、じっくりいたぶってやるから血を見せろ!」と楽しそうに笑いながら背に洸汰くんを庇う緑谷に襲いかかる。赤い筋繊維の束で覆われた右腕で殴りかかるマスキュラーの右拳を受け止めてその場で完全な円運動で回転した緑谷は、マスキュラーの打撃力に自分の打撃力を加えて変則的なカウンターを繰り出した。その威力は並みではなく腹部に喰らったマスキュラーが吐瀉物を撒き散らしながら吹き飛ぶ程だ。その一撃で緑谷の実力を認めたマスキュラーは「悪いな緑谷、遊びじゃ失礼だった。無個性だって聞いてたが、お前強いな。本気の目で殺しに行くわ」と言いながら義眼を取り出そうとする。そんなマスキュラーにお前がパパとママを、ウォーターホースを殺したのかと言う洸汰くん。マスキュラーはそれを聞いて「ああ、殺したぜウォーターホース。俺も片目はやられちまったが、別にこの目のことは恨んじゃいない。これはお互いにやりてえことやった結果だ。悪いのはできもしないことをやろうとしたお前のパパとママさ。ああ、待たせたな緑谷、これが本気の目だ」と禍々しい義眼を装着して緑谷の眼前に立つ。マスキュラーの上半身を筋繊維が覆い尽くし、驚異的な速度で拳を振り下ろすマスキュラーの拳を洸汰くんを抱えながら躱す緑谷出久。洸汰くんを抱えながら崖っぷちから飛び降りて木々の枝をクッションに着地した緑谷は洸汰くんに走れるかを聞く。そんなこと聞いてどうするんだよお前!と言う洸汰くんに「それだけ元気なら大丈夫だね、負けないよ僕は」と笑顔で言った緑谷。「これからはちょっと手荒な戦いになるから見ない方が言いかと思って配慮したんだけど、洸汰くんが大丈夫ならそのままいくから、覚悟は良いかな」と言う緑谷に何する気だよお前!と言った洸汰くん。

 

緑谷は崖っぷちから飛び降りてきたマスキュラーを見据えて構えた。そして飛びかかってくるマスキュラーの懐に入り込むと「血を見せろと言っていたね、好きなだけ見ろ自分の血を」と言い放ちながら手刀突きを筋繊維で覆われていないマスキュラーの首筋に繰り出す。突き刺さるそれはまるで槍の一突きの様な一撃であり、勢いよく迸る鮮血が緑谷出久の手刀がマスキュラーの頸動脈を切り裂いた事を物語っていた。指を引き抜いた傷口から止めどなく溢れる血液が、マスキュラーに致命傷を与えたことを確実にしている。溢れ出る血を止めようとするマスキュラーの無傷なもう片方の首筋へ容赦なく緑谷は手刀を叩き込み、血液を噴出させていた。出血性のショックで意識を失ったマスキュラー。このまま放置すれば確実に死亡することは間違いない。緑谷に殺したのかと聞いてくる洸汰くん。まだ生きてるよと答える緑谷。血を止めないと死ぬだろうけどと緑谷が言うと止めないと、と言った洸汰くん。助けるのかい?と問いかける緑谷に本当はこんな奴死んでほしいけど助けないとお前が人殺しになっちゃうだろ!俺はそれが嫌だ!と言い放つ洸汰くんは緑谷のことを考えてくれたようだった。じゃあ仕方ないねと、緑谷は持ち歩いていた応急処置セットでマスキュラーの手当てを始める。何とか血を止めることはできたが、助かるかどうかは解らない。それでも何もしないよりかは何倍もマシだった。その場にマスキュラーを置いて洸汰くんを抱えながら移動を始める緑谷出久。目指す場所は担任教師の相澤消太がいる宿泊施設。途中で担任教師と出会い洸汰くんを任せた緑谷はマンダレイに轟が狙われていることを伝えた。マンダレイのテレパスで全生徒に轟が狙われていることが伝わったところで、緑谷は轟の元へ駆けつける。すると常闇くんが暴走状態になっているようだった。ムーンフィッシュという歯を刃に変える個性を持つヴィランに暴走した常闇くんを誘導して当てると、圧倒的な力で常闇くんのダークシャドウはムーンフィッシュを蹴散らす。轟の火と爆豪の爆炎で鎮静化したダークシャドウに合流した障子くんも引き連れて、その後は何事もなく全員で宿泊施設まで帰還した。後日、捕縛されたヴィランは3名で、脳味噌が剥き出しのヴィランに発信器を八百万さんが取り付けることに成功したらしい。ヴィラン連合に繋がる何かをヒーロー達は掴んだようだ。

 



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緑谷くんはクソデクです7

神奈川県横浜市神野区、そこにヴィラン連合のアジトがあると情報を手に入れたレッドは単身で神野区へと向かう。辿り着いたビル内部にあるバーに死柄木弔と黒霧の姿があった。有無を言わさず2人に襲いかかったレッドは自身の個性、凝血を用いて身体の自由を奪い取り、トドメを刺そうとしたところで黒いヘドロの様な液体に呑み込まれる死柄木と黒霧。脳無が製造されていた工場内部に移動した死柄木と黒霧の前に現れたオールフォーワン。また失敗したね弔と話しかけるオールフォーワンに殺されるところだったと言う死柄木弔。お手数をおかけして申し訳ありませんと言って畏まる黒霧。会話をしている3人だったが、ベストジーニスト率いるヒーロー達が脳無製造工場に侵入してきた。オールフォーワンは死柄木弔に逃げるように言ってからヒーロー達の撃退に向かう。空気を押し出す個性に加えて筋骨発条化と瞬発力×4に膂力増強×3の個性の組み合わせでヒーロー達を一撃で打ち倒すオールフォーワン。唯一意識があったベストジーニストに追撃を行い、完全にヒーロー達を制圧したオールフォーワンは、まだ残っていた死柄木弔に本命が来る前に早く逃げなさいと言っていた。そんなオールフォーワン達の前にオールマイトが現れる。始まった正義と悪の頂上決戦はあまりにも激しく誰も立ち入ることが出来ないものだった。ワンフォーオールを譲渡することなく持ち続けてきたオールマイトに徐々に軍配が上がり、最後はオールマイトの勝利で終わる。死柄木弔が志村菜奈の孫だということをオールフォーワンが語る前に着いた決着。平和の象徴は尚も健在だと世の中に見せつけたオールマイト。戦いが終わりオールフォーワンが移動檻に入れられようとしたその瞬間、全速力で駆けつけたレッドが日本刀でオールフォーワンの首を切り落として逃走。活動限界だったオールマイトも咄嗟に動けない程の早業だった。そして巨悪がヴィジランテに殺害されて死亡という結果に終わることになる。この一件でレッドをヴィランとして扱うべきだと語るメディアは数多く。世間ではレッドはヴィランだと思われているようだった。そうだとしても彼は止まることはない。

 

オールマイトとオールフォーワンの戦いが終わった翌日。メディアがオールマイトを讃えて、レッドを批判している朝。緑谷出久は非常に機嫌が悪かった。自分を置いて1人で戦いに行った相棒にも、オールフォーワンを生かしておいて発生する問題点には触れずにただ殺害したからという点だけに触れてレッドを批判しているメディアにも、腹立たしい気持ちを抱いていた緑谷。目付きが尋常ではないことになっていた緑谷出久に触れようとするクラスメートは誰もおらず、教師すらも緑谷の目怖っ!と内心思いながら授業をした。時は流れて雄英教師による家庭訪問が行われて全寮制導入に関する話をするために緑谷家を訪れたオールマイト。オールフォーワンという巨悪と戦いながらも目立った怪我はないオールマイトは、やはり最高のヒーローと言える存在であると緑谷出久は思った。ナンバーワンヒーローの登場に慌てる緑谷引子だったが、緑谷出久が落ち着かせると何とか落ち着いた様子。全寮制導入に関しては息子と離れるのは寂しいですが、それが息子の将来の為になるのならと受け入れる緑谷引子。ありがとうございますと礼儀正しく頭を下げるオールマイト。家庭訪問が終わり、平和の象徴が帰っていく。そして始まる雄英での新生活。雄英敷地内、校舎から徒歩5分の築3日。ハイツアライアンス、そこが緑谷達が住む新しい家。今回の寮生が生徒の安全を確保するだけではないと緑谷は確信していた。雄英高校内部に確かに存在している内通者を見極める為のものでもあると考える緑谷。教師のみならず生徒にも内通者の可能性はある。油断は出来ないと気を引き締める緑谷出久。担任教師相澤消太から部屋割りを聞き、運びこんだ荷物で部屋を作る各自。部屋を作り終えた面々が共同スペースで寛いでいると女子達が話しかけてきた。それから何故か皆で皆の部屋を見て回ることになる。緑谷の部屋は鍛錬器具が多い部屋であったが、切島くんほど暑苦しい部屋ではなかった為に評判はそこそこだった。最終的に部屋王なる怪しい王座に輝いたのは砂藤くんだったが、砂藤くんが焼いていたシフォンケーキが美味しかったのが決め手になったようだ。緑谷は部屋もう関係ないなと思いながらも皆笑顔になっていたので野暮なことは言わないようにした。

 

担任教師が昨日話した通りにまずは仮免取得が当面の目標だと言い、続けてヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だと語る。当然取得の為の試験はとても厳しい、仮免といえどその合格率は例年5割を切ると言った担任教師。そこで今日から君らには1人最低でも2つ、必殺技を作ってもらうと言う担任教師相澤消太。コスチュームに着替えて体育館γに集合したA組の面々。それぞれがエクトプラズムの分身体によるマンツーマンの必殺技習得訓練に励んでいた。その中で緑谷の一撃を喰らったエクトプラズムの分身体が消滅。緑谷出久は単純な攻撃自体が必殺技レベルの威力があると判断される。後はコスチュームに変化を加えることぐらいだと助言された緑谷は校舎1階の開発工房に向かった。そこで足の強化に関する話題を出したところで食い付いてきた発目さんと共同で開発をして完成したアイアンソール。蹴りの威力の底上げとなり、えげつない威力の蹴りが放てるようになった緑谷出久。普通に死人が出るから使う相手は選ぶようにと注意された緑谷だった。訓練の日々は流れ、試験会場国立多古場競技場にてヒーロー仮免許取得試験当日。仮免取れっかなと不安がる峰田に担任教師が取れるかじゃない取って来いと言っていた。仮免許が取得できれば晴れてセミプロになれる、頑張ってこいと激励する担任教師相澤消太。いつもの一発決めて行こーぜと言う生徒達がプルスウルトラと声を上げた時に何故か混じっていた他校の生徒夜嵐イナサ。他校の円陣に勝手に加わるのは良くないと先輩に言われた夜嵐は地面に頭を叩きつける勢いで雄英生徒達へと頭を下げる。東の雄英、西の士傑とまで言われる士傑高校の生徒である夜嵐イナサは優秀な生徒であることは間違いない。何故なら雄英高校推薦入試でトップの成績を残しながら、何故か入学を辞退したという経歴の持ち主だからだ。その後は傑物学園高校2年2組を連れたスマイルヒーローミスジョークが雄英高校1年A組担任教師相澤消太に結婚しようぜと話しかけ、しないと即答で断られていたりもしたが、問題なく試験会場に入ることになる。

 

ヒーロー公安委員会の目良という疲れを一切隠さない人が説明を始めた。1540人の受験者一斉に勝ち抜けの演習を行ってもらいますと言った目良。条件達成者先着100名を通過としますと言って条件を説明する。受験者は身体の好きな場所、ただし常に晒されている場所にターゲットを3つ取り付ける必要があり、他者のターゲットに渡された6つのボールを当てていき、ターゲットはボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落となる。3つ目のターゲットにボールを当てた人が倒したことになり、2人倒した者から勝ち抜きだとルールが目良から語られる。ターゲットとボールが全員に配られて行き渡ってから1分後に開始された演習試験。固まって動いた方が良いと判断した緑谷はクラスメートを集めて行動を開始。集まらなかった爆豪と個人の方がやりやすいと別れた轟。さっそく始まった他校による雄英潰しだったが、それを予想していた緑谷達は危うげなく切り抜ける。傑物学園高校の真堂揺の個性により大地が割れてクラスメートと分断されて離ればなれになった緑谷出久。現れた他校の生徒達が個性で攻撃してくるのを躱していく緑谷。アイアンソールで蹴りの威力を増加させた緑谷出久の蹴りは、容易く他校の生徒達の足場を蹴り砕いた。足場が崩れて戸惑う他校の生徒達、その隙に距離を取って逃走する緑谷。逃走中に瀬呂くんと麗日さんと合流した緑谷は作戦を2人に話していく。全員合格出来るだけの人数をまず拘束し、身動き取れなくしてからボールを確実に当ててくという作戦を語った緑谷は僕が囮になるから2人は出来るだけ多くの人を拘束してほしいと言って駆け出した。一撃離脱で他校の生徒達の間を駆け抜けた緑谷出久。緑谷の重い一撃を喰らい、動きが鈍った他校の生徒達を瀬呂くんがセロテープで拘束していく。瓦礫にセロテープをくっ付けて投げた麗日さんが個性を解除すると、浮かんでいた瓦礫がセロテープごと落ちてきて他校の生徒達の動きを妨げる。すかさず緑谷達3人はターゲットにボールを押し当てていく。演習試験を突破した緑谷出久。上鳴くん達と合流したところで爆豪とも鉢合わせになり、通ったんかクソデクと話しかけてきた爆豪に緑谷は、まあねと短く答えて控室に移動する。

 

雄英全員が1次試験を突破して皆が集まっている中で、100名の皆さんこれご覧下さいと目良に言われ控室の画面に表示されたフィールドを見ていると突如として試験会場のフィールドが爆発した。次の試験でラストになりますと言った目良は皆さんにはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいますと言い放つ。あらゆる訓練において今引っ張りダコの要救助者のプロHELP・US・COMPANY略してHUCが傷病者に扮してフィールド全域にスタンバイ中であり、1次試験を合格した100名にはHUCの救出を行ってもらうことで救出活動に応じたポイントで採点していき、演習終了時に基準値を越えていれば合格となる。それぞれが控室で過ごしていると士傑高校の学生夜嵐イナサに轟が話しかけていた。俺が何かしたか?と話す轟に夜嵐は、エンデヴァーの息子さん、俺はあんたらが嫌いだと答える。あんたの目はエンデヴァーと同じだと言った夜嵐イナサ。それに対して話を聞こうとした轟だったが、救助演習試験が開始となり話が出来る時間がなくなった。さっそく子どもを発見した緑谷は、泣きわめきながら助けを求める子どもに「もう大丈夫、助けにきましたよ!」と笑顔で話しかけて「血が出てるから頭を見せてくれる?歩けるかい?」と子どもに聞きながら子どもに寄り添う。あっちおじいちゃんが潰されてと子どもが言っていたので他の面々をおじいちゃんの方に向かわせて子どもは緑谷が連れていくことにした。子どもの頭部の出血は何によるものか聞きながら、子どもを抱き抱えて移動する最中も子どもを安心させるように笑顔で話しかけていく緑谷出久。HUCにはそれは好印象だったようだ。救護所まで辿り着いた緑谷は子どもを見せてと言った救護所の人に「頭を怪我していて出血が多いけど傷はそこまで深くありません。落ちてきた瓦礫で頭を怪我したそうですが、受け答えはハッキリしてます。」と子どもの状態を正確に伝えた。子どもを右のスペースに運んでと言われた緑谷は先ほど運んできた時のように丁寧に優しく子どもを運んで「大丈夫!おじいちゃんもきっと助かるよ!」と最後に励ましの声を子どもにかける。その直後、フィールドが爆発し、ヴィラン役のヒーローがサイドキック達を引き連れて現れた。ヴィランっぽい見た目のヒーローランキング第3位のギャングオルカがヴィラン役として救助演習試験に登場する。

 

傑物学園高校の真堂揺が殿としてヴィランに立ち向かうが、ギャングオルカの超音波アタックで麻痺させられた真堂。続けて放たれた轟の氷結も超音波で防ぐギャングオルカ。尾白くんや常闇くんに芦戸さんが避難を手伝うと言ってくれたのでダウンした真堂を任せた緑谷出久はヴィランの相手をすることにした。轟くんに使い慣れてる氷結だけを使うように言い含めて、ギャングオルカと対峙する緑谷出久。プロテクターを着こんでいるようなので遠慮なくアイアンソールで強化された蹴りを叩き込んでいく緑谷の動きについていけていないギャングオルカ。拘束用プロテクターのハンデがあるとしても日本のプロで10番目の実力があると評価されているギャングオルカを圧倒する緑谷。上段廻し蹴り、中段前蹴り、三日月蹴り、飛び後ろ廻し蹴り、瞬時に4種類の蹴りを叩き込んだ緑谷の眼前で倒れ込むギャングオルカ。倒れ込みながらも超音波を放つギャングオルカに超音波を回避しながらの緑谷の胴廻し回転蹴りが脳天に打ち込まれて気絶するギャングオルカに社長がやられたとざわめくサイドキック達。それでも流石はプロだったのか直ぐに気を引き締めてセメント弾を発射してくるサイドキック達の中に飛び込んだ緑谷は、拳を振るいサイドキック達を沈めていく。そうこうしている内に最後のHUCの救出が終わり、仮免試験全工程が終了となる。皆さん長いことお疲れさまでした、これより発表を行いますがその前に一言と言った目良は採点方式がヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる2重の減点方式だと語る。つまり危機的状況で、どれだけ間違いがない行動をとれたかを審査していますと言う目良が、とりあえず合格点の方は五十音順で名前が載っています、今の言葉を踏まえた上でご確認下さいと言いながらモニターを表示させる。合格者の中に緑谷出久の名があったことに素直に喜ぶ緑谷だったが、雄英高校で只1人爆豪の名前が表示されていなかったことに気付いてちょっと笑う緑谷。爆豪だけが仮免に落ちてるのが面白かったらしい。そんなこともありながら続いて採点内容が詳しく記載されたプリントが手渡されていく。緑谷が受け取ったプリントには96点と記載されていて100点から4点しか減点されていないようだった。こうして仮免試験は終了となり、また一歩ヒーローに近付いたと考える緑谷出久。とりあえず仮免試験に合格したことを母さんに伝えておこうと思った緑谷はさっそく電話をかけて報告した。

 

寮に戻った皆は疲れきっていて直ぐに部屋に戻る者達ばかりであったが、爆豪のみが面かせクソデクと話しかけてきたので普通に断り、良いから来やがれと胸ぐらを掴もうとしてくるのを避ける。それを見ていた切島くんが、何か緑谷に用があるみたいだから爆豪に着いていって上げてくれ、頼むと頭を下げてきた。何で関係ない君が頭を下げてるんだと言いながらも、爆豪以外のクラスメートには優しい緑谷は仕方ないねと切島くんに免じて爆豪に着いていくことを決める。夜中、皆が寝静まった時間、学校の敷地内を歩き回る爆豪に着いていく緑谷。到着した場所はグラウンドβ、初めて緑谷と爆豪が戦い、爆豪が瞬殺された場所。自分が負けた場所で緑谷に爆豪は「無個性で出来損ないなてめェに負けるなんざ思ってもみなかったのに、ここで負けてから1度もお前に勝ててねェんだよ俺は!体育祭でもあっけなく負けて、期末試験もてめェのおかげで合格したようなもんだ!いつからだ?いつからこうなっちまった!しまいにゃ仮免、てめェは受かって俺は落ちた、なんだこりゃあ?なあ?」と言い出す。そんな爆豪に緑谷は「無個性の僕のことを出来損ないとか言うような奴がヒーロー目指してるとか冗談かな。ヒーロー志望が言っていい言葉じゃないよ。自分のことを客観的に判断できていないみたいだから言うけど、普段の君の言動は本当にヒーロー志望なのかと思えるぐらいに酷いから、当然それは減点の対象になったことは間違いないね。どうせ君のことだから誰かを助けるなんてことは苦手でしょ?助けを求める傷病者に対しても「うるせえ!自分で助かれや!」なんて感じに話しかけたんじゃないかな、そりゃ減点されるに決まってるよ。爆豪くんはさ、本当にヒーローになりたいのかい?オールマイトが勝つ姿に憧れてたのは解るけど、ヴィランを倒せば良いってわけじゃないのがヒーローだからね。誰かを護る為に戦うのがヒーローであって、ヴィランを倒すだけがヒーローってわけじゃないんだよ爆豪くん。ヴィランを倒す力だけじゃなくて誰かを助ける力もヒーローには必要だからね。と言っても誰かを助ける爆豪くんなんて違和感しかないから、本当にヒーローに向いてないね爆豪くんはさ。勝つことだけが好きな君は、誰かを倒すことは得意なのかもしれないけど、誰かを助けることはできていない。だから仮免の1次試験は突破できても次の救助が駄目だったから仮免に落ちたんだよ君は。当然の結果さ」と息継ぎ無しに言った。

 

そんな緑谷に「黙って聞いてろクソカスが!」と凄む爆豪だったが緑谷は笑顔で「カスに負けてる君は何かな?プランクトンか何かですか?」と煽る。緑谷の煽りに舌打ちした爆豪は「戦えや、ここで今」と言った。此方を真剣に見据える爆豪に緑谷は「トレーニング室を借りて戦うのは本気で戦えないから嫌みたいだね爆豪くん、良いよやろうか」と軽く応える。そうして始まった2人の戦いは一瞬で決まった。爆破で急接近してくる爆豪をサマーソルトキックで打ち上げてから、落ちてきたところに追撃の中段廻し蹴りを叩き込まれた爆豪が失神して終了となった戦い。気絶した爆豪を背負って素早くその場を後にする緑谷出久。何とか監視のロボットに見つかる前に勝負を決めることができたことを喜ぶ緑谷は、寮に戻ってきて爆豪を爆豪の部屋のベッドに寝かせてから自分の部屋に帰りベッドへと横になった。翌日顔を合わせた爆豪と緑谷は、爆豪が不機嫌そうな顔で次は負けねえと言うと緑谷は次も勝つよと言葉を返す。そんな2人に何があったのかと疑問に思う切島くんだった。

 



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緑谷くんはクソデクです8

オールフォーワンの忠実なしもべであるギガントマキア。オールフォーワン亡き後黒霧が頼ろうとしていた存在。そんなギガントマキアとレッドが戦うことになったのは必然だった。巨大化した身体と山をも削るパワーを持つギガントマキアに対してレッドが勝っているのはスピードと装備。強大な力により大地が削られて周囲の地形が変わっていく最中、ギガントマキアが咆哮を上げる瞬間を狙い個性破壊弾を口内に撃ち込んだレッド。個性で巨大化していたギガントマキアの大きさが縮んだところで、背負っていた装備の1つである特殊な合金で造られたチェーンが取り付けられた特注品のチェーンソーで斬りかかるレッドによってギガントマキアの腕が切りつけられて血液が噴出する。腕から噴き出した血液を舐めたレッドの個性、凝血により身体の自由を奪われたギガントマキア。倒れ込んで動かないギガントマキアの首をチェーンソーで切り刻んでいくレッドの手で、ギガントマキアは首を落とされる。主としもべが同一の存在に首を落とされて死亡。死柄木弔に拠点を用意していた為に遅れて到着した黒霧が見たものは首が落とされたギガントマキアの死体と返り血に赤く染まったレッドの姿だった。呆然とする黒霧をレッドという脅威が襲う。腕をナイフで切りつけられて噴き出した血液をレッドに舐められる黒霧。動きを封じられた黒霧の身体をレッドの日本刀が両断する。これでオールフォーワンが用意していたものは死柄木弔を除き全てが台無しとなった。残された死柄木弔はいまだに幼稚で信念もなく個性の覚醒もしておらず、仲間もいない1人ぼっちの未熟な悪。だからといってレッドは見逃すことはない。オールフォーワンが残したものは全て消し去るとレッドは決めている。

 

グラウンドに向かう途中の下駄箱で、聞いたよΑ組、1人仮免落ちたんだってね、とテンション高めに話しかけてきたB組の物間。どうやらB組は全員仮免に合格したらしい。爆豪よりも酷い奴は流石にいなかったようだ。よっぽど酷くなければ普通受かるでしょ、どうしたのかなぁA組は、と煽る物間にキレる爆豪を切島くんが羽交い締めにして抑えていた。そんな状態でいると普通科の心操くんが後ろ詰まってんだけど、と言ってきたので飯田くんがすいません、と謝る。心操くんが身体を鍛えていることに気付いた緑谷は、身体鍛え始めたんだね、と話しかけた。無個性のあんたが自分を鍛え上げた結果として体育祭に優勝までしたんだから、個性がある俺だって鍛えれば強くなれる筈だ、鍛えた結果はいずれ見てもらうことになるかもな、と言って心操くんは去っていく。グラウンドに並ぶ雄英の生徒達の前で校長が長話を始めた。夏休み中に色々と事件が起こったりもしたと語る校長は、2・3年生の多くが取り組んでいるヒーローインターンもこれまで以上に危機意識を持って考える必要があると言う。短く要点だけまとめたと言った校長だったが自分の毛並みについて語る時間が少し長かったんじゃないだろうかと緑谷出久は思ったが声にも態度にも出すことはしない。最後に生活指導のハウンドドッグ先生から1言、慣れない寮生活かもしれませんが節度をもって生活しましょう、と落ち着いた様子で話していたハウンドドッグ先生はキレると人語を忘れてしまうという欠点があるらしく生徒には恐れられているそうだ。3年生から教室に戻り、1年生は最後になる。教室に帰る3年生の中に通形ミリオの姿を見つけた緑谷出久が手を振ると気付いた通形がテンション高めに手を振り返してくる。そんな緑谷に知り合いかと聞いてくる峰田に職場体験先で知り合った先輩だと説明する緑谷。その説明に職場体験先で何かがあった峰田はその何かを思い出してしばらくフリーズしていた。教室に戻ってきてから梅雨ちゃんが担任教師にヒーローインターンについて聞くと、担任教師は平たく言うと校外でのヒーロー活動、以前行ったプロヒーローの下での職場体験、その本格版だ、と説明した。それを聞いて立ち上がり体育祭の頑張りは何だったんですか、と言い出す麗日さん。そんな麗日さんに担任教師は冷静にヒーローインターンは体育祭で得たスカウトをコネクションとして使うんだ、これは授業の一環ではなく生徒の任意で行う活動だと言う。

 

むしろ体育祭で指名を頂けなかった者は活動自体難しいんだよ、元々は各事務所が募集する形だったが雄英生徒引き入れの為にイザコザが多発し、このような形になったそうだ、わかったら座れと麗日さんに言った担任教師。席から立ち上がっていた麗日さんは早とちりしてすみませんでした、と言って席に座る。担任教師は続けて仮免を取得したことでより本格的・長期的に活動へ加担できる、ただ1年生での仮免取得はあまり例がないことから、おまえらの参加は慎重に考えてるのが現状だ、まァ体験談なども含め後日ちゃんとした説明と今後の方針を話す、こっちも都合があるんでな、と言ってから1限の教師に後を任せて立ち去る。担任教師相澤消太と入れ替わりに教室に入ってきたプレゼントマイクがテンション高めに英語の授業を開始した。全ての授業が終わり寮に帰ってきた皆は英語の授業で習ってない文法が出ていたことを話題に出したり、ヒーローインターンについての会話をしている人も多い。仮免を取れなかった爆豪のみが取り残されてる自覚があるのか不機嫌そうな顔をしながらもインターンについて考えている様子。以前職場体験で行ったヒーローの事務所がベストジーニストだった爆豪だが、ベストジーニストはオールフォーワンによって重傷を負わされてまだ回復していない。そんな理由がなくても1度ベストジーニストの元に行って、来るとこ間違えたと考えていた爆豪がベストジーニストの元に再び赴くことはないだろう。仮免を取得していない自分がヒーローインターンに参加することはできないと考える爆豪。そんな爆豪とは違って職場体験と同じくヒーローインターンもサー・ナイトアイの事務所に向かうつもりの緑谷出久。以前得難い経験をさせてもらった事務所に再び向かうことに決めている緑谷だった。それから2日後、本格的にインターンの話をしていこうと言った担任教師が入っておいでと声をかける。職場体験とどういう違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらう、多忙な中都合を合わせてくれたんだ、心して聞くように、現雄英生の中でトップに君臨する3年生3名、通称ビッグ3の皆だ、と通形ミリオを先頭にして教室に入ってきた3人を紹介する担任教師。天喰環と波動ねじれと 名前を紹介された2人の内1人、天喰環と言われた1人が通形ミリオの親友だとは通形に聞いていた緑谷出久は、帰りたいと言い出した天喰に聞いていた通りの人だなと思う。

 

生徒達の気になるところを矢継ぎ早に聞いてくる波動ねじれ。そんな波動に合理性に欠くね?と言う担任教師にイレイザーヘッド安心して下さい!大トリは俺なんだよね!と勢い良くサムズアップした通形ミリオ。1年A組の生徒達に前途!と大きな声で話しかけて耳を傾ける通形に緑谷だけが多難と答える。そんな緑谷にありがとう緑谷くん、ちょっと掴めたよと感謝する通形。それから続けてまァ何が何やらって顔してるよね、必修てわけでもないインターンの説明に突如現れた3年生だ、そりゃわけもないよね、1年から仮免取得だよねフム、今年の1年生ってすごく元気があるよね、そうだねェ緑谷くんのおかげでスベリ倒すことはなかったけど、君たちまとめて俺と戦ってみようよ!と言い出した通形。驚く1年A組の生徒達の中で緑谷だけは通形先輩なら言い出してもおかしくないなと冷静だった。俺たちの経験をその身で経験した方が合理的でしょう!?どうでしょうねイレイザーヘッド!と担任教師に聞く通形。担任教師は好きにしなと短く答える。体操着に着替えて体育館γに移動した1年A組。通形に天喰がミリオやめた方がいい、形式的にこういう具合でとても有意義ですと語るだけで充分だ、皆が皆上昇志向に満ち満ちているわけじゃない、立ち直れなくなる子が出てはいけない、と言っていたり波動が芦戸さんの角を弄りながら、昔挫折しちゃってヒーロー諦めちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ、知ってた!?大変だよねえ通形ちゃんと考えないと辛いよこれは辛いよ、と言っていたりもした。そんな心配される程俺らザコに見えますか?と問いかける切島くんに通形ミリオはいつどっから来てもいいよね、一番手は誰だ!?と言う。それに俺だ!と応じる爆豪がさっそく爆破の個性で飛びかかっていくと、通形は個性を用いてそれを躱すと通形の体操着だけが体育館γに残されて通形の姿が消える。通形の姿を見失った爆豪の背後から全裸で飛び出すように現れた通形の拳が、振り向いた爆豪の腹部に叩き込まれて悶絶する爆豪の顎にも追撃の拳が叩き込まれて意識を失う爆豪。そしてズボンを手早く着用した通形ミリオがまとめてかかっておいでと言い放つ。1年A組全員で通形に勝負を挑むことになり、遠距離攻撃持ちから潰すことに決めていた通形が個性を用いて遠距離攻撃持ち達の背後に回り込み、拳で沈めていく通形ミリオ。6秒近くで遠距離攻撃持ち達を圧倒して打ち倒した通形。

 

パワー!と雄叫びを上げる通形に担任教師がおまえらいい機会だしっかりもんでもらえ、その人通形ミリオは俺の知る限り最もナンバーワンに近い男だぞ、プロも含めてな、と言い放つ。あとは近接主体ばかりだよねと言う通形に無敵かと言った緑谷以外の生徒達。そんな生徒達に緑谷が通形先輩の個性は1つ、透過だよ、ワープも個性の応用でやってるんだ、此方を殴る一瞬だけ拳の透過を解除しているから切島くんなら全身を硬化すればダメージを受けないで済むかもしれないね、と言った。緑谷からの情報を聞いた生徒達の前でズボンを残して沈んだ通形。緑谷の背後に現れた通形の攻撃を回避する緑谷。やっぱり君は違うね緑谷くんと笑顔で言った通形は他の生徒達を沈めにかかる。全身硬化状態の切島くんと緑谷出久以外の生徒達を拳で沈めた通形。残された2人となった緑谷と切島くん。切島くんの全身硬化状態は長く続くものではなく制限時間があり、その時間が過ぎてしまう。隙を逃さずすかさず切島くんの鳩尾に拳を叩き込む通形。崩れ落ちた切島くん、1人残された緑谷。これからは通形ミリオと緑谷出久だけの戦いとなる。背後から飛び出してきた通形に瞬時に反応した緑谷が鳩尾を狙う通形の拳を受け止める。握った通形の拳を捻り上げて投げる緑谷だったがコンクリートの床に叩きつけられる瞬間に透過で沈んだ通形。今度は真正面から飛び出して現れた通形の拳が緑谷の顎を狙って突き出されていた。伏せてそれを避けた緑谷がコンクリートの床に立つ通形の足を狙った高速足払いを繰り出すが透過で躱される緑谷。緑谷の攻撃は透過で当たらず、通形の攻撃は必ず回避される。互いに勝負がつかない状況が数十分続き、ついに担任教師からストップがかかった。それを見ていた天喰がミリオと張り合える1年生がいるなんてと驚く。戦いが終わったところで通形がギリギリちんちん見えないよう努めたけどすみませんね女性陣!と言ってから俺の個性強かった?と話しかける。強かったと言う1年A組の生徒達。緑谷くんが言っていた通り俺の個性は透過の1つだけさ!個性は使い方次第でどこまでだって強くなれる、まあ無個性でも強い緑谷くんとかもいるけども、プルスウルトラの精神で皆にも頑張ってもらいたい、この個性を強い個性にする為には経験が必要だったと語る通形ミリオ。

 

長くなったけどコレが手合わせの理由!言葉よりも経験で伝えたかった!インターンにおいて我々は「お客」ではなく1人のサイドキック!同列として扱われるんだよね!それはとても恐ろしいよ時には人の死にも立ち合う!けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校じゃ手に入らない一線級の経験、俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ1年生!と熱く語る通形ミリオ。そんな通形にありがとうございました!と言う1年A組。帰っていく雄英ビッグ3の3人は緑谷って子だけ最後まで残ってたね、と言う波動ねじれにミリオが倒せないなんて驚いた、と言った天喰環。いや職場体験でも一緒になって面識があって手合わせもしたんだけどやっぱり緑谷くんは強かったね、俺の攻撃が全然当たんないよ、と笑う通形ミリオ。サーも凄く気に入ってたから、インターンで選んでくれるといいけど、と言う通形だった。後日、インターン初日、インターン先で出会った通形ミリオと緑谷出久は笑顔でよろしくお願いします!と互いに声をかけ合う。本日はパトロール兼監視と業務内容を語ったサー・ナイトアイは私とバブルガール、ミリオと緑谷の二手に分かれ行うと言った。死穢八斎會という小さな指定ヴィラン団体の若頭「治崎」という男が妙な動きを見せ始めたと治崎の写真を見せながら言うサー・ナイトアイ。治崎という名前に聞き覚えがある緑谷は、個性破壊弾を開発したのが確か治崎廻だったと思い出していた。明らかに何かを企んでいる治崎に対して証拠を掴めていない現状では黒に近いグレーでヴィラン扱いができないと言ったサー・ナイトアイ。我がナイトアイ事務所が狙うのは奴等の犯行証拠、くれぐれも向こうに気取られぬように、と言うサー・ナイトアイに返事をする面々。始まったパトロールで歩いていた緑谷出久にぶつかりそうになったところを受け止められた壊理。そんな壊理の後ろから現れた治崎にお子さんですかと軽く話しかける緑谷。緑谷にうちの娘ですよ、と答えてからにこやかに遊びざかりでケガが絶えないんですよ困ったものです、とまるで親のように語る治崎。すいませんねご迷惑をおかけして、と言った治崎に通形ミリオ改めルミリオンが、いえいえ此方こそすいません、娘さんを相棒がキャッチしちゃって申し訳ない、それはそうとその素敵なマスクは八斎會の人ですよね、と言う。

 

ええ、マスクは気になさらず、汚れに敏感でして、お二人とも初めて見るヒーローだ、新人ですか?随分お若い、と言った治崎にそうです!まだ新人なんで緊張しちゃって!さ!立てよ相棒、まだ見ぬ未来に向かおうぜと言い出したルミリオン。どこの事務所所属なんです?と聞いてくる治崎に学生ですよ!所属だなんておこがましいくらいのピヨっ子でして、職場体験で色々回らせてもらってるんですと答えるルミリオンは、では我々昼までにこの区画を回らないといかんので!行くよ!と言い出したルミリオンに緑谷改めバイオレンスグリーンが応えて移動しようとしたところでいかないで、と声を漏らす壊理にグリーンは娘さん貴方に怯えてますけどと言った。それを聞いた治崎は少し苛立った様子で叱りつけた後なのでと言う。遊びたいざかりと言ってもこの包帯は異常だ、こんな小さな女の子が声も出さずに震えて怯えて助けを求めているなんて、この子に何してるんですか?と問いかけるグリーンは察していた、おそらくはこの子が個性破壊弾の原料だと。そんなグリーンに全くヒーローは人の機微に敏感ですね、わかりました、恥ずかしい話です、人目につくし、此方に来てもらえますかと言って路地に入る治崎。治崎に着いていき路地に入ったグリーンとルミリオン。実は最近壊理について悩んでいまして、何を言っても反抗ばかりで、と言った治崎に子育てに難航しているということですかと本当は違うだろうな思いながらも言葉を返すグリーン。ええ、難解ですよ子どもは、自分が何者かになる・なれると本気で思ってる、と言って手袋に指をかけながら殺意を見せつける治崎。それに反応した壊理がグリーンから手を離して治崎の元へ帰っていく。なんだ、もう駄々は済んだのか?と問いかける治崎に頷く壊理。いつもこうなんです、すみません悩みまで聞いてもらって、ご迷惑おかけしました、ではお仕事頑張って、と言って去っていく治崎。あの子を使って治崎は何かを企んでいるのかもしれませんと言ったグリーンに、そうかもしれないけど今は手が出せない、耐える時だよ、サーの指示を仰ごう、と答えるルミリオン。こうしてグリーンのインターン初日が終わった。

 

授業を開始する前に緑谷にインターンがどうだったかと話かけてくる生徒達。それについて答えていくと前の席の爆豪が、俺より一歩先の話するんじゃねえ、と頭を抱えていたので緑谷は「いやいや仮免落ちてる君に比べたら一歩どころか五十歩くらい進んでると思うけどね。仮免取得してない爆豪くんはインターン受けれないから、他のクラスメートにだいぶ遅れをとっているわけだけど、爆豪くんはどう思っているのかな自分の今の現状をさ。自分の今までの行動や言動と性格を省みてごらんよ爆豪くん、ヒーローらしいこと1つもしてないよね君は。そりゃ仮免も落ちるよ、落ちて当然だよ爆豪くん。本気でヒーローになる気があるのなら上っ面だけでも良いから他人を助けようとしないと駄目だと思うよ、誰も助けられないヒーローなんてヒーローじゃないからね。というかクソの下水煮込みな性格をしている奴がヒーロー志してるとかあり得ないだろって言われたらその通りだねとしか言えないけど、クソの下水煮込みでもヒーロー目指していいみたいだから雄英って凄いと思う。でもまあ所詮はクソの下水煮込みだから仮免落ちてるけどね、言動と行動と性格が全部駄目だったから、試験に落ちたんだね間違いなく。まあ爆豪くんがどうなろうが別に僕には関係ないからどうでもいいけどね。クラスメートに迷惑かけないようにしてほしいかな爆豪くんにはさ。それにしてもオールマイトを超えるヒーローになるとか中学時代から言っておきながらこの体たらくとは情けないにも程があるよ爆豪くん。中学時代はクラスメートをモブ扱いしておきながら今は仮免も取れなかったなんてね、中学時代のクラスメートが聞いたらどう思うことやら、まあどうでもいい奴等にどう思われようがどうでもいいか。君はそんな奴だからそんなもんだろうね」と語り終える。その後個性を破壊する個性とはどんなものなんだろうかと考える緑谷は授業中もそれについて頭の片隅で考えながら問題なく授業を行っていく。考えても結論が出なかった緑谷出久はサー・ナイトアイが情報を掴むのを待とうと考えた。



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緑谷くんはクソデクです9

オールフォーワンは首を切り落とされて死に、ギガントマキアも同様に殺害されて黒霧は身体を両断されて死亡。オールフォーワンの後継者として育成されていた死柄木弔だけが最後に1人残された。帰ってこない黒霧に苛立ちを覚えながら日々を過ごしている死柄木だったが、その日々が遂に終わることになる。拠点としている場所をレッドに突き止められた死柄木弔。レッドに拠点内に踏み込まれて対峙するレッドと死柄木。崩壊の個性を使う間もなく手首を切り落とされた死柄木弔の手首が再生して生えてくる。超再生の個性をオールフォーワンから与えられていた死柄木にレッドは冷静に個性破壊弾を撃ち込む。チンピラ程度にばら蒔かれていた個性破壊弾の試作品だが、それでも個性因子が攻撃されて破壊されてしばらくは個性が使えなくなる。崩壊も超再生も使えなくなった死柄木弔はレッドに背を向けて逃げようとするが、直ぐ様追いつかれて日本刀で首を落とされた。顔に父親の手を着けたままの状態で転がる頭部、記憶を取り戻すことも個性を覚醒させることもできないまま死亡した死柄木。しばらく死体となった死柄木を眺めて再生をしないか確かめてから拠点を後にするレッド。拠点には首を落とされた死柄木弔の死体だけが残されている。こうしてオールフォーワンが残したものは全てが消え去ることとなった。ドクターはグリーンと共同で、ギガントマキアも黒霧もオールフォーワン自身すらもレッドの手で殺害されている。ヴィランと呼ばれるもの達の中でも厄介な存在を消し去ってきたレッド。より良き世界の為に行動してきた彼の活動によって世界は確かに平和へと近付いたのかもしれない。だとしてもレッドが讃えられることはないだろう。彼はあまりにも血を流し過ぎている。流血の上に築かれた平和を世間一般の人々に有り難がれることはない。それでいいとレッドは思っている。讃えられるべきなのはオールマイトの様なヒーローだけでいいとレッドは考えているからだ。自身が血に染まることで世界が平和へと一歩でも近付くのならば止まることはない。これからもレッドはヴィランと戦い続ける。時にはヴィランを殺害することもあるだろう。それを止めることはない。全てはより良き世界の為に、それだけを考えて動くレッドが止まることはなく。流れる血が絶えることもない。悪を倒し続けるレッドは、たとえ終わりがないとしても立ち止まることなく戦いを続ける。それがヴィジランテのレッド、赤黒血染の生き方だ。

 

上鳴くんが切島くんにレッドライオットというヒーロー名がネットニュースにのってるとスマホ片手に話しかけていた。上鳴くんのスマホの画面には新米サイドキック、レッドライオット爆誕!初日から市民を背負い単独ヴィラン退治!と書かれている。それを見ながら歯軋りをする爆豪。爆豪にはクラスメートを祝う気持ちはなさそうだ。次は芦戸さんが梅雨ちゃんと麗日さんに凄いよ名前出てるとスマホ片手に話しかけていた。芦戸さんのスマホの画面にはリューキュウ事務所に新たな相棒、インターンシップで所属した2人!ルックスもキュート!お手柄!大事件を瞬時に制圧!実力は本物、と書かれている。喜ぶ麗日さんと何処から撮影したのかが気になる梅雨ちゃん。マウントレディみたいにファンついてるかもねえと言う芦戸さんに、うらやまと声を漏らす葉隠さんだった。仮免といえど街へ出れば同じヒーロー、素晴らしい活躍だ!と言いながらも、だが学業は学生の本分!居眠りダメだよ!と注意する飯田くん。そんな飯田くんにおうよと応える切島くんと、そうだねと頷く緑谷。それから数日後、インターンシップに向かうことになる緑谷出久。同日に切島くんと梅雨ちゃんと麗日さんもインターン先に向かうことになるが、向かう先までもが一緒だった。到着した場所で雄英ビッグ3とも合流し、向かった先で集合しているヒーロー達。その中には担任教師相澤消太、イレイザーヘッドの姿もある。呼び出された全員が集まってからサー・ナイトアイが切り出した。あなた方に提供して頂いた情報のおかげで調査が大幅に進みました、死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます、と言ったサー・ナイトアイ。サー・ナイトアイ事務所2階大会議室にて始まった会議。強盗団の事故をきっかけとして死穢八斎會について追跡調査を始めたらしい。サー・ナイトアイ事務所のサイドキック、センチピーダーが調べたところによると、ここ一年以内の間に全国の組外の人間や同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集めを目的に動いているものと見ているそうだ。世間一般でヴィランと呼ばれる者達とも接触をしているとの情報もあり、HNで皆さんに協力を求めたわけで、と言ったバブルガールにセンチピーダーがそこ飛ばしていいよと声をかけた。HN?と疑問の声を上げた麗日さんに波動ねじれがヒーローネットワークだよと説明する。

 

プロ免許を持った人だけが使えるネットサービス、全国のヒーローの活動報告が見れたり便利な個性のヒーローに協力を申請したりできるんだって!と後輩に教える波動。それを聞いていたのかロックロックが雄英生とはいえガキがこの場にいるのはどうなんだ?話が進まねえや、本題の企みに辿り着く頃にゃ日が暮れてるぜと言い出した。それを聞いたファットガムが椅子を弾き飛ばしながら立ち上がり切島くんと天喰の2人をぬかせ、この2人はスーパー重要参考人やぞと言い出す。困惑する切島くんにノリがキツイと着いていけていない天喰。レッドライオットが活躍した事件で天喰がヴィランに撃ち込まれた弾丸に使われていたものが個性を破壊する薬であると語ったファットガムは続けて、硬化した切島くんに当たって中身がそのまんま残っていた弾丸は中身が人間の血液や細胞だったと語る。個性を破壊する薬が込められた弾丸は死穢八斎會から流れてきたものだという情報も出揃い、通形ミリオは壊理の身体が包帯まみれだったことを思い出して個性破壊弾の原料が壊理だと確信し、顔を悲痛に歪めていた。緑谷出久は冷静に情報を聞き、自分の掴んでいた情報と照らし合わせて間違いがないか頭の中で確認をしている。対照的な反応をしていた通形と緑谷だったが2人に共通していることがあるとすれば今度こそ壊理を保護して助けると決めていることだろう。土地勘のあるヒーロー達に死穢八斎會と接点のある組織やグループ、及び八斎會の持つ土地がある複数の場所をそれぞれ調査してもらうことになり、サー・ナイトアイが協力をお願いしていた。娘の居場所の特定・保護、可能な限り確度を高め早期解決を目指します、と言ったサー・ナイトアイ。

 

会議は終わり雄英の生徒達が集まっている最中に、以前壊理と出会っていたことを語る通形ミリオと緑谷出久。落ち込んでいる通形に緑谷が「通形先輩、いつまでも落ち込んでいたままじゃいられませんよ。今度こそあの子を助けましょう。そんなショボくれた顔で助けに来られても本当に助かるのか不安がるでしょうし、笑顔でもう大丈夫だって言ってあげましょうよ通形先輩。いつもの皆を笑顔にしようとしてる通形先輩に戻って下さい。悔しいのは僕だって一緒です、あの子を連れてそのまま逃げていれば良かったんじゃないかと思うこともありますから。それでも前を向きましょう通形先輩。落ち込んで下ばかり見ていても何も変わりません、次こそ助ける。それだけを考えましょう。どんな時もヒーローは笑顔で助けにくるものですから、あの子に見せる顔は笑顔じゃないと駄目です。今の通形先輩の顔じゃあ安心してもらえませんよ。自分を責めても何も変わりません、ただ自分が辛いだけです。過去は変えることは出来ませんが、これからの未来は、きっと変えることが出来ますよ。あの子が笑えるような未来を作る為にも、僕たちが頑張らないといけません。暗い顔ばかりしてる訳にはいかないんです、明るい未来の為に立ち上がりましょう。さあ通形先輩、笑って下さい。いつものように笑顔を見せて下さいルミリオン。ヒーローは笑顔で人を助けるんですから、貴方ならそんなヒーローになれる筈です」

 

そんな緑谷の言葉に前を向いた通形の目に輝きが戻り、そうだねその通りだよ緑谷くん、ありがとうと言った通形は笑顔を取り戻していた。少し明るくなった雰囲気の最中に話しかけてきた1年A組担任教師イレイザーヘッド。明るくなっていた雰囲気に気休めを言う必要はないかと合理的に考えたイレイザーヘッドはインターンは続行するが、命の危険があるかもしれない、各々注意するようにと忠告する。壊理の居場所が特定できるまでの間、待機となった緑谷達。インターンに関しては一切の口外を禁止とされ、動きがキレてるインターン組に外で何か掴みやがったんだ、コラオイ何を掴んだ言えと言い出した爆豪へ、わりー言えねーと答える切島くん。それから何日かが経過して遂に決行日が決まった。壊理はどうやら本拠地にいるとサー・ナイトアイが情報を掴んだらしい。決め手となったのは死穢八斎會の構成員が女児向けの玩具を購入していたところに、サー・ナイトアイの個性である予知を用いて本拠地で壊理に玩具を与えている瞬間を予知したことだ。ちなみにその玩具を何故かサー・ナイトアイも買っていた。それについて何でお前も買ってるんだと触れるヒーローもいたがサー・ナイトアイはそれについては何も答えない。通形ミリオが緑谷くんやるぞ!やるんだ!と気合いの入った声で両腕を激しく動かしながら言っていたので緑谷出久もやりましょう通形先輩!と通形に声をかけていた。サー・ナイトアイが構成員のその後を予知で見た結果、死穢八斎會邸宅には届出のない入り組んだ地下施設が存在し、その中の一室に今回の目的である壊理がかくまわれていることが確定。構成員の男は地下への入り口から壊理の部屋まで一切の寄り道をせず、その為地下全体を把握することは適わなかったが、男の歩く道はそのまま目的への最短距離であり八斎會の広い敷地を捜索するにあたって最も有益な情報となる。個性を駆使されれば捜索は難航すると言った警察の人が、わかる範囲だが八斎會の登録個性をリストアップしておいたと書類を配っていたので緑谷も受け取って死穢八斎會構成員の登録個性を頭に入れておく。AM8時30分決行となりインターホンを押す警察。玄関を殴り開けた死穢八斎會構成員に殴り飛ばされる警察官数名をイレイザーヘッドとバイオレンスグリーンが救出する。助けた警察官に先を急ぐんだと言われたグリーンは突入する部隊に入る最中、麗日さんにあるものを手渡しておく。

 

それは発信器の居場所を特定する機器であり、緑谷が持つ発信器の位置を教えるものである。玄関から現れた死穢八斎會構成員を担当することになるリューキュウ事務所の面々に後々動いてもらうことがあるかもしれない為に緑谷が用意していたものだ。死穢八斎會の本拠地に突入した緑谷達。治崎の個性によって造られた壁で塞がれている道の厚い壁を切島くんと緑谷が破壊する。先へ進もうとする面々を妨害するために死穢八斎會本部長入中が個性のブースト薬でブーストさせた個性で道をうねらせて変えていく。物に入り自由自在に操れる個性、擬態によって地下を形成するコンクリートへ入り込み地下道を生き迷宮と変えた入中。しかしそんな状況であろうとルミリオンならば問題なく先へと進める。透過の個性で先行するルミリオンを見送ることになった面々は入中によって約一階層ほど落とされて死穢八斎會構成員3人が待つ部屋へと入れられた。ファットガムが戦闘体勢に入ろうとしたところを天喰環ことサンイーターが止めて、自分1人で充分だと言い出す。イレイザーヘッドが八斎會構成員の3人の個性を消している間にサンイーターがタコの触手で3人を纏めて縛り上げる。サンイーターが皆は先に進んでくれ俺なら完封できると自信満々に言い放ったので、それを信じた面々は先へと進むことにした。暫くは入中の妨害が入ることもなく先へと進めたが、イレイザーヘッドを狙って入中がコンクリートを手のように伸ばして連れ去ろうとした瞬間、ファットガムと切島くんが飛び込んでイレイザーヘッドを弾き飛ばして助けたが代わりに彼等が連れ去られてしまう。入中の妨害は更に続いて壁や天井に床が隆起して迫りくる。それをロックロックが個性で施錠して塞き止めていた。施錠ができていない前面から迫り来るコンクリートをグリーンが破壊していく。いち早く入中の位置を気配で察知したグリーンは天井を蹴り砕いて掘り進み入中を引き摺り出した。イレイザーヘッドに個性を消された入中は擬態を使うことができなくなり、グリーンの追撃によって気絶。警察によって捕縛された入中を残して先へと進む面々。先行していたルミリオンと治崎の戦いはルミリオンが優勢だった。治崎を圧倒するルミリオン、治崎を助けるものはなく。治崎の個性オーバーホールもルミリオンの透過によって触れられず、一方的に攻撃を受ける治崎。治崎の敗北が目前に迫る最中、ルミリオンが気絶させた筈の音本が壁の隙間から這いずるように現れた。

 

音本に治崎が個性破壊弾の完成品を放り投げた瞬間、壁を蹴り破り現れたグリーン。バイオレンスグリーンは個性破壊弾を装填しようとしていた音本に近寄り、銃を奪い取ると音本を気絶させる。銃を分解して無力化させたグリーンは個性破壊弾の完成品を回収した。それからルミリオンのマントに包まれた壊理を保護したグリーン。グリーンが開けた壁の穴から続々と入り込む面々。追いつめられた治崎が個性を用いて範囲攻撃を繰り出そうとするのをルミリオンの拳が止める。鍛え上げられた体術と透過の個性を駆使したルミリオンに敗北した治崎が崩れ落ちた。気絶して動かない治崎を警察が捕縛しにかかる。壊理の元へ近付くルミリオンが笑顔で、もう大丈夫だよ壊理ちゃんと話しかけていた。そんなルミリオンをサー・ナイトアイが優しい眼差しで見つめている。そうこうしている内に玄関で暴れていた死穢八斎會構成員の男を下敷きに天井を破り現れたリューキュウ事務所の面々が、八斎會構成員の活瓶を失神させていた。天井に開いた大穴から空が見える。突入した面々と合流した麗日さんと梅雨ちゃんに波動とリューキュウ。こうして戦いは終わり壊理はヒーロー、ルミリオンに救われた。AM9時、保護完了。死穢八斎會構成員の男、活瓶力也の活力を奪う個性で半数以上のヒーローや警察がダウンする中、動ける者は地元ヒーローらと合流し被害の確認にあたっていた。リューキュウが開けた大穴以外には周辺被害はなく、怪我をした者はヒーローと警察達だけで済んだようだ。周辺住民に被害なく済んで良かったと考える面々。戦いで傷ついた者達は最寄りの大学病院へ搬送されたが命にかかわる怪我をした者は1人もいなかったことは幸いと言えるだろう。切島くんは全身打撲に裂傷が酷いが命に別条はなく、天喰環も顔面にヒビがはいっているが後に遺るようなものではないとのこと、ファットガムは骨折が何ヵ所かあるが元気そうで問題はない。ヒーローで目立った怪我をしたのはこの3人だけで後は皆病院に搬送されるほどではなかったようだ。保護した壊理は人を巻き戻す個性を持ち、それをコントロール出来ないことから個性を消すことができるイレイザーヘッドが預かることになり、教職員の寮の空き部屋が壊理の部屋となるらしい。壊理の服はイレイザーヘッドに任せると駄目だと判断したルミリオンが購入することになり、素敵な服を買ってきたルミリオンに感謝する壊理だったが笑顔を見せることはない。

 

寮に帰ってきた緑谷出久と切島くんに麗日さんと梅雨ちゃんの4人を1年A組の生徒達が出迎える。ニュースを見たと言う者や皆心配していたと言う者にガトーショコラお食べと言ってくる者まで居たりした。賑やかなクラスメート達の中で1人飯田くんだけが静かに休ませてあげるべきだと声を上げたが、緑谷が大丈夫だよ飯田くんと言うと一転してとっても心配だったんだぞもう俺はもう君たちがもうと激しく心配してくれていたので緑谷は、ありがとう飯田くんと声をかける。1人ソファーに座っていた爆豪へと上鳴くんがお前も心配してたんだろと言いながら近寄るが、爆豪は寝るとだけ言って部屋に帰っていく。それから数日後、青山くんが奇妙な行動をしていたりもしたが、何故か少し仲良くなった緑谷と青山くん。時は流れて文化祭が開始される何週間か前、毎度の如く壊理の元へ好物のリンゴを籠に入れて持ってきた通形ミリオと緑谷出久。リンゴを器用に切りウサギを作った緑谷に輝いた顔を見せる壊理。リンゴを食べながら壊理と話を始めていくと壊理がまだ治崎の呪縛に囚われていることが解った。笑顔を見せることのない壊理を心配する通形と緑谷。そろそろ時間だとイレイザーヘッドが部屋に入ってきた時に緑谷出久が壊理ちゃんに文化祭を見せることは可能かとイレイザーヘッドに聞いていた。雄英預かりになっていることから付き添いが誰かいるなら大丈夫らしい。付き添いに立候補した通形ミリオはクラスの皆には悪いけど、俺は壊理ちゃんと文化祭を回りたいと言い出す。通形にクラスには話を通しておけよと言ったイレイザーヘッド。また会いに来るねと言って去っていく通形と緑谷に手を振る壊理だった。

 



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緑谷くんはクソデクです10

オールマイトが現役で活動していることから活動は活発ではないが闇に紛れて密かに動いている異能解放軍というヴィラン組織の情報を掴んだレッド。その組織には表の立場を持っているものが多数存在していると調査した結果解った。異能解放軍から闇市に流されているサポートアイテムは全て常時監視されていて、危なくなれば爆破されて跡を残さない作りになっている。膨大な戦闘データを回収している異能解放軍は厄介な存在だとレッドは考えた。更に調査を進めて判明した表の立場を持つ異能解放軍の幹部、大手IT企業フィールグッドインク取締役近属友保、心求党党首花畑孔腔、集瑛社専務気月置歳の3名。そして異能解放軍最高指導者リ・デストロがサポート企業デトネラッド代表取締役社長四ツ橋力也であることも掴んだレッド。異能解放軍が潜伏解放戦士と呼ぶ存在が11万6516人もいることを知り、愛知県の泥花市がヒーローを含めて人口の9割が異能解放軍の手に落ちていることも解り、個人で全てを狩ることは不可能に近いと判断したレッドは異能解放軍の幹部格を始末することに決めて機会を待った。近属友保と花畑孔腔を始末することに成功したレッドだったが、それで異能解放軍の防御が固くなってしまう。表の立場を利用して防御を固めた気月置歳と四ツ橋力也。真に賢しいヴィランは闇に潜むと言うが、表と裏を行き来する異能解放軍は厄介な存在だとレッドは判断する。防御が固められたかといってそれで諦めるようなレッドではなく、その防御を切り崩して突き進み気月置歳を処理したレッド。残る大物は四ツ橋力也だけだと狙いを定めたレッドであるが、異能解放軍もやられてばかりではなく、異能解放軍の息のかかったヒーロー達を総動員してレッドの殺害を試みるなどの報復を行っていた。休む間もなく襲い来るヒーローを撃退して戦いを続けるレッドは止まることなく突き進む。悪を倒す、その為だけに動き続ける。レッドはヴィジランテとしてこれからも活動していく。いつか終わりが来る、その時まで彼は止まらない。

 

ダンスが得意な芦戸さんと楽器を演奏できる耳郎さんを主導にして文化祭の出し物がライブに決まった1年A組。ダンスを披露するチーム、演出を担当するチーム、演奏をするチーム、3つのチームに別れてライブを行うことに決めた面々。緑谷出久はキレの良いダンスを見せつけたことから即座にダンスチームに決定した。爆豪は演奏をするチームでドラムを担当することになる。最初は乗り気ではなかった爆豪だが緑谷に挑発されてやる気になったようだ。雄英全員音で殺るぞ!と首を親指でかっ切るポーズを見せながらも完全にやる気になっている爆豪。緑谷以外最初はぎこちない動きを見せていたダンスチームであったが芦戸さんの指導により上達していくダンスチームの面々。ドラムが完璧だった爆豪以外の演奏チームも耳郎さんの指導により腕を上げていく。青山くんを使った演出をするのに人手が足りなくなり、ダンスチームの中で素早く動けて力がある奴は誰だという話になったところで緑谷出久に白羽の矢がたった。ダンスの途中から緑谷は青山くんと一緒に演出をするチームに移動になる。まあ少しでも出番があるだけ良いかと考える緑谷。日々練習は続いていき、どのチームも皆上達していったようだ。そんな最中通形ミリオが壊理を連れて緑谷の元に現れる。これまで社会から切り離されてきた壊理を人混みに慣れさせて本番でびっくりしてパニックを起こさせないようにするために文化祭前に1度連れてきたらしい。通形は壊理と雄英を回るようだが、それに緑谷も一緒にどうかと話しかけてくる通形。休憩挟むからその間に行ってきなよ緑谷、とダンスチームを率いる芦戸さんから言われたので心置きなく通形と壊理の2人に着いていくことに決めた緑谷。制服に着替えた通形と緑谷は壊理を連れて校内を歩く。通りすがりの経営科3年I組の2人が通形が子ども連れてる、まさかその子は、といい反応をしてくれた経営科の2人に無言で微笑む通形。ガチっぽいから止めろその反応と言った経営科の人が、まあ冗談はさておき今年の3年I組は凄いぜとチラシを通形と緑谷に配る。まだ1ヶ月前なのに慌ただしい校内。作り物のドラゴンの頭を持った1年B組の面々が通りがかり、物間が煽ってきたが緑谷は無視をして壊理が平気か気にしていると物間が続けてB組の演劇の方がA組より凄いと言い放つ。

 

ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~という題名を物間が言ったあたりで緑谷出久は壊理の耳を両手で塞ぎながら「完全オリジナル脚本超スペクタクルファンタジー演劇とか言っても題名がロミオとジュリエットとハリー・ポッターにロード・オブ・ザ・リングをパクってるのはどうなのかな。完全オリジナル脚本と言うのなら題名もパクらないでちゃんと考えた方が良かったんじゃない。なんというか題名だけ聞いているとパクりの寄せ集めにしか聞こえないから面白くなさそうなんだけど、それでよく自慢気にできるね物間くん。いつもいつもB組で突っ掛かってくるのは君だけなんだけど、君だけのせいでB組の印象がどんどん悪くなっていくよ。そのことについて皆に悪いとは思わないのかい?自分がやりたいことだけやって言いたいことだけ言ってそれで何の責任も負わずに生きていくのかな君は。どうやら物間くんはB組のことなんて何も考えていないようだね。君は自分のことしか考えていないみたいだ。A組に対して対抗心を剥き出しにしているのはB組では君だけだよ物間くん。もしかして君はB組の皆を大事に思っていないんじゃないかな。B組の皆が本当に大事ならB組の敵を作るような言動でA組を煽ったりはしないだろうし、個人的な感情でクラスメートに迷惑をかけるようなことはしないはずだ。本当にB組の皆を大切に思っているなら余計なことは普通はしないよ。まあ物間くんは普通じゃなくて異常者みたいだから、A組に対して対抗心を燃やしていちいち突っ掛かってくるみたいだけど、B組の為になることとは言えないね。とりあえず君の行動と言動でB組が迷惑を被っていることを自覚した方が良いよ物間くん。というか結局君は何がしたいんだい?雄英高校1年B組の生徒として恥じない行為をしていると胸を張って言えないようなことしかしてないよ君は。恥を知れとしか言い様がないね」と一息で語った。緑谷に何か言い返そうと考えている物間の背後にいたB組の生徒が棒で物間を殴打して気絶させる。ストッパーの拳藤さんは今日はいないんだねと言った緑谷にB組の生徒は気絶した物間を抱えながらあいつはミスコン出るのよと不在の理由を教えてくれた。去っていくB組の生徒。通形が壊理にいきなり雄英の負の面を見せてごめんよと謝っていた。確かに物間は負の面だと納得する緑谷。

 

通形がミスコンと言えばそうだ!あの人も今年は気合い入ってるよと言っていたので、そのあの人に会うために備品室に移動する3人。そこで去年の準グランプリ波動ねじれと出会い、去年勝てなかった相手の話を聞き、今年の意気込みを聞いた3人は楽しそうだった波動が今年はどうなるのか気になった。それから移動したサポート科で発目さんと遭遇しヒーロー科がメインだった体育祭とは違い、今回は他の科が主役でサポート科の作品を発表する場として文化祭を楽しみにしていると語った発目さん。そんな発目さんが作った作品が爆発して発火したので急いで避難する緑谷達3人。一通り見て回った3人は食堂で壊理を真ん中に座り壊理にリンゴジュースを買ってあげた。ジュースをストローで吸い上げて一息ついた壊理は今回の見学がどうだったかを聞かれて、よくわからないと言った後にたくさんいろんな人ががんばってるから、どんなふうになるのかなってと言う。緑谷は通形と顔を見合わせて頷き今回の見学が壊理に良い影響を与えたと確信する。僕たちのクラスはダンスと音楽で僕の出番は途中から演出に変わっちゃうけど、きっと楽しめる良いものになるから壊理ちゃんも見にきてねと笑顔で言った緑谷。休憩終わるからそろそろ戻りますと言った緑谷に、俺も楽しみにしてるよと声をかける通形。練習が終わり寮に帰ってきた皆がそれぞれの時間を過ごす最中、八百万さんが用意した紅茶を皆に振る舞っていた。今日の紅茶は幻の紅茶ゴールドティップスインペリアルというものらしい。とても良い香りで素晴らしい紅茶だった。数日後、道具の点検をしている最中、青山くんを吊り上げるロープがほつれていることに気付いた緑谷。本番前にホームセンターで朝一に買ってくることに決めた緑谷だった。文化祭当日の朝8時にホームセンターでロープを購入した緑谷出久はついでに壊理に渡す為のリンゴ飴の材料を購入していく。必要な物を全て揃えた緑谷は急いで1年A組の皆の元へと戻った。そして始まる1年A組のライブ。演奏チームの演奏、青山くんと緑谷の息の合ったダンスから青山くんを放り投げる緑谷。人間花火の様にレーザーを放出する青山くん。落ちてきた青山くんを尾白くんがキャッチする。見せ場が短い緑谷が裏手に移動して青山くんに繋いだロープを持ち、演出チームと共同で動く。ミラーボールの様になった青山くんを緑谷が動かしていった。梅雨ちゃんが舌で麗日さんを動かして観客を麗日さんが浮かせる。

 

障子くんがダンスチームを放り投げて、演出チームの切島くんが硬化した手で氷を削って降らせていく。上鳴くんを砂藤くんが放り投げて空中ギターを披露する上鳴くん。葉隠さんが氷の道の上で光輝く。芦戸さんが浮いた観客を瀬呂くんのテープで安全確保していた。飯田くんが1人だけずっとロボットダンスを続ける。峰田が女子に囲まれながらダンスをしていく。最高に盛り上がったライブ会場で歌う耳郎さんはとても楽しそうだった。通形ミリオとライブを見ていた壊理がついに楽しそうに両手を上げて笑う。それをみた通形は嬉しくて涙を溢していた。ライブが終わり緑谷達が片付けをしている最中、壊理が緑谷に話しかけてくる。壊理がライブの感想を精一杯語るのを聞いていた緑谷は楽しんでくれたなら良かったよと笑顔で言う。片付けをしているとごめん!こき下ろす気で見てた!と謝っていく人達や、ライブが良かった楽しかったと言ってくれる人達が集まっていた。君らの想いは俺達には伝わったと言った人達は、本当に楽しかったもん君らの想いは見た人から伝播していくさと言って去っていく。片付けを終えた面々の内一部はミスコンを見に行くようだ。壊理を連れてミスコンを見に行った緑谷と通形。3年サポート科ミスコンの女王が圧巻のパフォーマンスを見せつけて、壊理がこれは何する出しもの?と疑問を口にする。それに通形がちょうど今わからなくなったとこだよねと答えた。絢爛豪華なミスコンの女王の後は波動ねじれの出番。空中を自在に舞う姿は純真無垢な妖精のようだと天喰環が言っていた。ミスコンの集計結果は夕方5時にシメのイベントとして残される。1年A組の面々はそれぞれ行きたいところに行くことになった。クレープの屋台に行き、クレープを買った緑谷は壊理にそれを手渡す。文化祭を巡りに巡り楽しんだ通形と緑谷に壊理の3人。ミスコンの結果発表でグランプリに選ばれた波動ねじれを見たりもしながら文化祭を巡り終えた壊理が帰る時がきた。今日はありがとう!楽しかった!と言った緑谷に、うんと頷く壊理。寂しそうな壊理に顔を上げてと言う緑谷に顔を上げた壊理の前にサプライズと言ってリンゴ飴を差し出す緑谷出久。リンゴ飴!売ってた!?俺探したよ!?と驚く通形に、プログラム見てないかもと思ったんで、だから買い出しの時に材料買っといたんですよ、作り方以外に簡単で!食紅だけコンビニには無かったんで砂藤くんに借りて作ってみました、と語った緑谷。

 

リンゴ飴をかじって笑顔でさらに甘くて美味しいと言った壊理にまた作るよ楽しみにしててと言う緑谷も笑っている。笑顔で壊理を見送り手を振る緑谷。相澤消太と通形ミリオに連れられていく壊理。11月も下旬に差し掛かる頃、壊理の元へ通っていた面々だったが1年A組の生徒達は来賓があるから寮に戻っていろと担任教師に言われたので寮に帰っていく1年A組。寮に戻りしばらくしてからワイルド・ワイルド・プッシーキャッツが現れる。お土産のにくきゅうまんじゅうを受け取った生徒達がにくきゅうまんじゅーにくきゅうまんじゅーと喜んでいた。久しぶりにあった洸汰くんに久しぶりと話しかける緑谷。手紙ありがとうね!宝物だよと声をかける緑谷に別に、うんと素っ気ない素振りを見せる洸汰くんだったが、マンダレイが緑谷くん見てよと声をかけるとやっやめろよと動揺する洸汰くん。自分で選んだんだよ「絶対赤だ」ってとマンダレイが言うとべっ違っと恥ずかしがる洸汰くんにお揃いだね!と嬉しそうに笑う緑谷に恥ずかしそうに黙る洸汰くんだった。しかしまた何で雄英にと紅茶を抱えた砂藤くんが聞くとピクシーボブが復帰のご挨拶に来たのよと答える。ラグドールはいまだに個性を奪われたままで、奪った個性を持っていると推測されたオールフォーワンも殺害されている為に、個性が戻ってくることは永遠にないと諦めて事務仕事で3人を支えると決めているラグドール。そんなプッシーキャッツに何故今になって復帰を、と問いかける八百万さん。マンダレイがヒーロービルボートチャートJP下半期が411位だったんだと語り、全く活動していないにも関わらず3桁だったということは待ってくれている人達がいるとラグドールが語る。支持率の項目が我々突出していたと言う虎。意気込みも新たに活動を再開しようとするワイルド・ワイルド・プッシーキャッツの面々。生徒達はビルボートについての話題に移り、そういえば下半期はまだ発表されていなかったと言う生徒達。オールマイトが引退することのなかったヒーロービルボートチャート。不動の1位はオールマイトで決まっていて2位にエンデヴァー3位にホークスというものになっていた。これまで通り発表の場にヒーローが登壇することはなく問題もなく今まで通りに発表が終わる。

 

オールマイトは平和の象徴として責務を今日も果たしていた。そして雄英の教師として活動を続ける最中、通形ミリオを呼び出してある話を持ちかける。それは平和の象徴となったオールマイトから力を受け継いでみないかという提案だった。話を聞いた通形ミリオは自分を選んでくれたことは嬉しいですが、もっと適任な人が居るんじゃないですかねと申し出を断ろうとするが、サー・ナイトアイもそれを望んでいるとするならどうかなと声をかけるオールマイト。その言葉を聞いた通形ミリオはしばらく考えさせて下さいと返答を先送りにして立ち去っていく。サー・ナイトアイに連絡して通形ミリオをワンフォーオールの後継者に選んだと伝えたオールマイトは、サー・ナイトアイに会って話さないかと提案する。仕事終わりにサー・ナイトアイと合流したオールマイトは通形ミリオのことを聞いていく。その最中、サー・ナイトアイがオールマイトに貴方の未来が変わったんだと話しかける。ヴィランによって凄惨な死を迎える筈だった貴方がこれからも生きていく未来が見えるんだと語るサー・ナイトアイ。未来が変わった原因は解らないが貴方が生きる未来があるのが嬉しいと言ってから、未来の中で貴方がサポート企業デトネラッド代表取締役社長四ツ橋力也と対峙している姿があったことから四ツ橋力也はヴィランである可能性が高いとサー・ナイトアイは言う。サポート企業デトネラッド社について調べてみる必要がありそうだと考えるサー・ナイトアイとオールマイト。調査については此方に任せてくれと言ったサー・ナイトアイ。最近発売された異能解放戦線という本が何かに関係しているのではないかと睨んでいるサー・ナイトアイは異能解放軍指導者であるデストロが執筆したとされるこの本に手がかりがないか探ってみることにしたが結果は著しくない。異能解放軍の再来ということなのかもしれないと予測したサー・ナイトアイは四ツ橋力也がデストロと何か関わりがあるのではないかと考えた。その予測は正しく四ツ橋力也はデストロの血を受け継ぐものであり異能解放軍最高指導者リ・デストロであるが、その事をサー・ナイトアイが知ることはまだない。サー・ナイトアイには治崎に殺されるという未来があったのかもしれないが、その未来はねじ曲げられて今がある。未来が変わったのはオールマイトだけではなかったのだろう。

 

彼等の未来が変わった原因はヴィジランテのレッドとグリーンによるものだが、彼等がそれを知ることはない。未来は変わるものだということを知れただけでもサー・ナイトアイにとっては喜ばしいことだ。未来予知の個性を持つサー・ナイトアイにとって未来とは、変わることのないものの筈であった。それが覆ったことは彼には驚きであったのだろう。しかしオールマイトの凄惨な死という未来が変わったことはサー・ナイトアイにとっては素晴らしいことだ。オールマイトの熱烈なファンであり、オールマイトを裏から支えてきたサー・ナイトアイにはオールマイトの生存が何よりも嬉しいことだった。そして通形ミリオがワンフォーオールの後継者に選ばれたこともサー・ナイトアイにとっては喜ばしいことである。最初は器として選んだ通形ミリオを次第に誇りに思えるようになっていったサー・ナイトアイ。サー・ナイトアイが選んだ通形ミリオをオールマイトが後継者として選んでくれたこともサー・ナイトアイには嬉しいことだった筈だ。未来が変わることを知った彼が、過ごす日々は希望に満ち溢れたものになるだろう。



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緑谷くんはクソデクです11

字がびっしりと敷き詰めて合って読みづらいというメッセージが届きましたので今回は改行を使って空白を空けています

今回の方が読みやすくて良いという声があった場合は次回からも今回のように改行を使って空白を空けていきます

特に何も反応がなければ次回からは元に戻すかもしれません


オールマイトが引退していないとしても犯罪は起こるようだ。

 

日々起こる事件、徒党を組み行動するヴィラン達。

 

ヒーローよりも先に事件を解決し、徒党を組んだヴィラン達を倒していく。

 

そんな慌ただしい日々を過ごしていても紅茶を楽しむ時間は必ず確保している。

 

この間見つけた常連客しか通っていない寂れた喫茶店で幻の紅茶ゴールドティップスインペリアルを味わうことができたのは至上の幸福だったが、文化祭が開催される雄英高校が喫茶店の近くにあったので少しドキドキしていたのは内緒だ。

 

ヴィジランテのジェントルとして活動をしていく最中に自らの活躍を動画で撮影し帰宅後に投稿していく。

 

ヒーローを目指していたが挫折して忘れ去られてしまいたくない一心で始めたヴィジランテとしての活動。

 

戦いは好まないがヴィランと戦わなくてはならない。

 

鍛え上げた個性を駆使してヴィラン達を倒していく。

 

誰かの為に個性を使って失敗した自分を省みて個性を使いこなすことにいくらでもある時間を用いて鍛え上げた個性はヴィラン達に通用している。

 

倒したヴィラン達を縛り上げて警察に通報し、いつものようにその場を後にした。

 

ヴィジランテの中にはヴィランを殺すこともあるヴィジランテも存在するが、私は殺しはやらないと固く心に決めている。

 

ラブラバという相棒と出会えたことは私にとってとても素晴らしいことだった。

 

自身の活動を動画で投稿していく最中に戸惑いながらパソコンを操作していた私には、パソコンに詳しい彼女の手助けはとてもありがたいものであったからだ。

 

彼女の個性には何度も窮地を救われた。

 

私は得難い相棒を得ることができたのだ。

 

そしてヴィジランテとして活動をしていく最中に私はヴィジランテのグリーンに出会った。

 

無個性でありながら鍛え上げられた身体能力と技術に裏打ちされた実力者であるグリーン。

 

手合わせをしてみたがラバーモードで強化された私でも歯が立たない相手である。

 

 

彼にもレッドという相棒が居るようだが、互いにフリーで活動することも良くあるらしい。

 

そんなグリーンとたまに活動を共にすることがあったが、とても良い映像が撮れるので感謝をしている。

 

グリーンのことは仲間と呼べるぐらいには信頼しているが、彼が正体を明かすことはない。

 

年齢からしてまだ学生ではあるのだろうが、彼が何処の学校に通っているのか知ることはなかった。

 

正体を知られても何ら困ることのない私と違って彼には未来がある。

 

グリーンが私に正体を明かすことがなくとも仕方がない。

 

グリーンの相棒であるレッドは活発に活動を続けているようだが、グリーンの活動は停止している。

 

何か理由があるのだろうが、それを私が知る術はない。

 

「ジェントル、どうしたのかしら。浮かない顔をして」

 

「ラブラバ、いやグリーンがどうしているのかが少し心配になってね」

 

「きっと大丈夫、グリーンはとても強い子だから、負けることなんてないはずよ」

 

「ああ、それもそうだねラブラバ、私は要らぬ心配をしていたのかもしれない」

 

彼がヒーローになるという夢に向かって突き進んでいることを願おう。

 

「さあ、ラブラバ、ティータイムにしよう」

 

「今日のジェントルもやっぱり素敵!」

 

紅茶を用意するジェントルを見てはしゃぐラブラバの姿がそこにはあった。

 

午後から始まる演習。1年A組の皆がコスチュームの変化を話題に出して和気あいあいとしていると、やってきた1年B組の物間が随分と弛んだ空気じゃないか、僕らをなめているのかいと話しかけてくる。

 

それに切島くんがなめてねーよワクワクしてんだと答えると、そうかい、でも残念、波は今確実に僕らに来ているんだよと言った物間は、さァA組!今日こそシロクロつけようか!?と高らかに叫ぶ。

 

B組の演劇はA組のライブに2票差で負けたけど合同戦闘訓練では負けないからね、何故なら僕らはと言いかけた物間をA組担任教師イレイザーヘッドの捕縛布が首を締め上げて黙らせる。

 

今回特別参加者がいますと言ったB組担任教師ブラドキングとしょうもない姿はあまり見せないでくれと言うA組担任教師イレイザーヘッド。

 

特別参加者の正体はヒーロー科編入を希望してる普通科C組心操人使だった。

 

イレイザーヘッドに一言挨拶をと促された心操は、俺はもう何十歩も出遅れてる、悪いけど必死ですと言ってから立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい、この場の皆が超えるべき壁です、馴れ合うつもりはありません、と宣言する。

 

それから始まる戦闘訓練。

 

今回はA組とB組の対抗戦で、部隊は運動場γの一角。

 

双方4人組をつくり、一チームずつ戦うことになる。

 

心操は今回2戦参加させることになり、A組チームB組チームそれぞれに1回ずつ。

 

つまり5試合中2試合は5対4の訓練となるようだ。

 

今回の状況設定はヴィラングループを包囲し確保に動くヒーローというもの。

 

お互いがお互いをヴィランと認識しろ!と説明するブラドキングは4人先に捕まえた方が勝利となると語る。

 

双方の陣営には激カワ据置プリズンを設置してあり、相手を投獄した時点で捕まえた判定になると言ったブラドキング。

 

クジでチームを決めることになり決定したチーム。

 

緑谷のチームメイトは峰田に芦戸さんと麗日さんで試合は5戦目となる。

 

心操くんはA組の1戦目のチームと、B組の5戦目のチームに所属することになった。

 

スタートは自陣からで制限時間は20分。

 

時間内に決着のつかない場合は残り人数の多い方が勝ちとなる。

 

開始された戦闘訓練の1戦目。

 

心操くんを仲間に加えたA組のチームは切島くんに上鳴くんと梅雨ちゃんに口田くんの5人。

 

先制攻撃を仕掛けてくるB組の宍田くんに弾き飛ばされる梅雨ちゃんと切島くん。

 

宍田くんの背中に乗っていた円場くんの個性によるエアプリズンに囚われた口田くんは暫くは身動き出来ない状態となる。

 

心操くんの装着していた特殊なマスク、もう一つの声帯、変声可変機構マスク、ペルソナコードによって円場くんの声で喋り、宍田くんを洗脳した心操くん。

 

捕縛布による攻撃に移ろうとする心操くんだったが、いち早く動いた円場くんのエアプリズンに囚われてしまう。

 

円場くんに叩かれた衝撃で洗脳が解かれた宍田くんが上鳴くんに腕を振るうが帯電していた上鳴くんにダメージを受けながらも腕を振り抜いて上鳴くんを吹き飛ばした宍田くん。

 

上鳴くんを攻撃していた宍田くんから一瞬離れていた円場くんを梅雨ちゃんが舌で捕まえる。

 

梅雨ちゃんを追いかける宍田くんを切島くんとエアプリズンから脱出した口田くんが食い止めようとするが、個性ビーストを解除して体格が縮む人モードに戻り攻撃を躱す宍田くんが再びビーストの個性を発動させて切島くんを塩崎さんの居る場所にまで放り投げた。

 

塩崎さんの茨のツルに捕らわれた切島くんと宍田くんに抱えられていた口田くんはB組陣地の牢に囚われて、円場くんはA組陣地の牢に囚われている。

 

心操くんが囚われている円場くんのエアプリズンを鉄パイプで殴り破壊した梅雨ちゃんと上鳴くん。

 

梅雨ちゃんが弱い毒性の粘液を腕から分泌して心操くんと上鳴くんに塗り付けて、鼻がきく宍田くんへ匂いによる撹乱を行う。

 

宍田くんへ上鳴くんが付けていたポインターによって居場所を把握して進むA組チームの3人。

 

塩崎さんが伸ばした茨のツルにわざと上鳴くんが捕まり、ポインターに狙いを定めた一点集中の電撃を狙ったと見せかけて、それを防いだ鱗くんの声で喋る心操くんによって洗脳された塩崎さん。

 

洗脳を警戒して喋らない宍田くんと連携出来ていない鱗くんが塩崎さんを正気に戻そうとするがそれを読んでいた梅雨ちゃんが塩崎さんを手早く運んでいく。

 

そして梅雨ちゃんによる蛙の脚力を活かした両足蹴りが鱗くんに叩き込まれる。

 

心操くんを警戒していた宍田くんが心操くんの元に近付くがイレイザーヘッド直伝の捕縛布を使った攻撃が宍田くんの脳天に命中。

 

しかしそれでも宍田くんは止まらず心操くんを狙うが、梅雨ちゃんに舌で投げ飛ばされた鱗くんが宍田くんの後頭部に直撃して気絶する。

 

一転して逆転したA組チーム。

 

捕縛したB組チームを連れて牢にまで連れていく最中、梅雨ちゃんが遅れてるどころかとっても強力よと心操くんを誉めていたが、全然まだまだだと言った心操くんは納得していない様子。

 

第1セットは心操くんプラスA組チームの勝利となった。

 

A組担任教師に各々が反省点を述べるように言われたA組チーム。

 

各々が反省点を述べる中で、教わったことの一割も実践できなかった、悔しいですと口にした心操くんに、いきなり出来たら苦労しない、捕縛布を使いこなすのに俺で6年かかってると言うA組担任教師は、その悔しさ忘れず次も臨めと言った。

 

B組担任教師は、B組チームにもう自分達でわかってるな?と問いかけて、宍田を軸にするか塩崎を軸にするか統率が取れていれば勝てた内容だぞと目力強めに生徒達を見据える。

 

互いの教育方針の違いが良く解る担任教師の対応だった。

 

チームが決まったそれぞれの生徒達が皆揃って合同戦闘訓練をこれからどうするか話をしていく。

 

そんな中で始まった第2セット。

 

結果は投獄数0対4でB組の勝利となったが、A組もそれなりに健闘したようだった。

 

続いて始まった第3セット。

 

気絶者多数で互いに投獄数1対1となり時間切れでタイムアップとなって引き分け。

 

爆豪が所属する4セットのA組チーム。

 

緑谷以外のクラスメートとはそれなりにコミュニケーションが相手のおかげで取れている爆豪が作戦を言い放つ。

 

てめえらとりあえず俺についてこいと言った爆豪は俺が先頭で上を進む!と言い、瀬呂くんと砂藤くんにてめえら俺をサポートできるようにしとけと言ってから耳郎さんに常に音で雑魚共の位置探っとけと命じた。

 

隙は窺うもんじゃねえ動いてつくるんだと言った爆豪は、姿が見えりゃこっちのもんだと言うが耳郎さんは本当に大丈夫なのか心配だったようだ。

 

B組チームの作戦で罠に嵌まった爆豪率いるA組チームだったが爆豪の活躍により罠を喰い破る。

 

クラスメートを明確に助けた爆豪に緑谷は驚いていたが、僕以外なら助けることが出来るようになったんだなと認識を改めることにした緑谷出久。

 

その後は爆豪が敵対していた相手を途中から味方に任せるという今までなら有り得ない姿も目にすることになった緑谷は、今日は驚きが連続で続くなと思いながら戦闘訓練が表示されている画面を見つめて「いやいやまさかあのクソ下水煮込みが成長しているなんて驚きだね。ちゃんと勝つ為に必要なことをしているなんて誰も思わなかったんじゃないかな。長い付き合いになるけどあんな爆豪くんは初めて見るね。というかやれば出来るなら初めからやってれば良かったのに、今になってやるとはどういう心境の変化なんだろうか。もしかしてバンドを組んだことが爆豪くんに良い影響を与えたとでも言うのかな。協調性皆無だった暴君が変われば変わるもんだね。昔の爆豪くんが今の自分を見たらなんて言うのかな。こんな奴は俺じゃねえとか言いそうだ。回りを下に見る言動は変わっていないけど行動は確かに良い方向に変わっているね。明日は雨の代わりに槍でも降ってくるかもしれないな。それにしてもこんな爆豪くんは初めてだから違和感が凄いなあ。どうなんだろうね実際。長い長い付き合いの僕でも戸惑ってるんだから、他の人達はもっと戸惑ってるんじゃないかな。特に体育祭での爆豪くんしか知らないB組の戸惑いは並みじゃないだろうね。爆豪くんの真似した別の誰かと言われても納得しそうな自分がいるよ。いや本当に別人みたいな変わりようだね爆豪くん。まあ僕にとっての爆豪くんがクソを下水で煮込んだような性格だという認識は変わらないけどね。進歩はしても爆豪くんは爆豪くんだから変わらないところは変わってないよ。とりあえずあの言動まで変わってたら偽者だと判断した方が良さそうな気がするかな。オールマイトを超えるヒーローになるとか言ってたのは本気だったんだろうけど、行動が伴っていなかったのがようやくまともになっただけだよね。それだけで凄く変わったように見える爆豪くんの前がどれだけ酷かったかが浮き彫りになるんじゃないかな」と一息で長々と語る。

 

協調性皆無だった爆豪が有り得ないほどに成長していたことを知らなかったB組はあっという間に2人確保されてしまう。

 

そして正面からの戦闘で爆豪に敵うはずもなく気絶させられたB組の1人。

 

身体を切り離して操ることが出来るB組の生徒が戻していた身体の一部に瀬呂くんのテープが付けられた爆豪の手榴弾がくっついていたことに気付いて距離を取ったが、爆発で居場所が爆豪にバレてゼロ距離閃光弾を喰らい失神することになった。

 

第4セットは僅か5分足らずで終了となって投獄数4対0でA組チームの勝利となり、これでB組の勝ちは無くなったようだ。

 

そして始まる第5セット。

 

罠を仕掛ける計画を練る緑谷のチーム。

 

とりあえず緑谷が囮役になることは決まったようだ。

 

先行した緑谷の前に現れた物間が煽るような言葉を発するが、緑谷は無視して物間に瞬時に近付き、鳩尾に拳を叩き込んで立っていられない程度に悶絶させた後、こめかみにアイアンソールで加減した蹴りを叩き込んで失神させた。

 

失神した物間をさっそく自陣のプリズンに投獄した緑谷は居場所がバレたらしい他の3人と行動を共にして先へ進んでいく。

 

鉢合わせとなったA組チームとB組チーム。

 

乱戦となって激しい争いが始まる。

 

心操くんと対峙した緑谷出久。

 

捕縛布を巧みに扱い攻撃を仕掛ける心操くんに近付いた緑谷は三角絞めの体勢に入ると心操くんを一瞬で絞め落とす。

 

今度は乱戦の真っ只中に突入する緑谷。

 

B組の3人をA組の3人と協力して打ち倒した緑谷出久。

 

B組を全員失神させた緑谷達はプリズンに3人投獄して勝負を終わらせた。

 

第5セットは投獄数4対0でA組チームの勝利となり、総合的な勝利数もA組の勝ちとなる。

 

回復した心操くんがA組B組の担任教師2人に今回は俺の編入試験も兼ねていたんですよねと聞いていた。

 

今回の結果を考えると心操くんは2年からヒーロー科に入ってくるらしい。

 

心操くんがA組かB組かはまだ決まってはいないようだが、それでも夢を追いかけていた彼がヒーロー科に編入してくるのは喜ばしいことだと緑谷出久は考えた。

 

失神から回復した物間が今回は確かに僕らB組にクロ星がついた、しかし!内容に於いては決して負けてはいなかった!今からもう一回やれば次はわからない!と言ったがB組担任教師ブラドキングにやんねえよ、もう今日の授業終わりだと言われている。

 

そんな物間にA組担任教師イレイザーヘッドがちょっと明日壊理ちゃんのとこ来いと言っていた。

 



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緑谷くんはクソデクです12

指名手配犯分倍河原仁を追っていた荼毘。路地裏に分倍河原を追い詰めて蒼炎で頭に紙袋を被った分倍河原を焼き殺そうとした荼毘だったが、分倍河原を仲間に引き入れようと企む異能解放軍の面々が現れて荼毘に襲いかかる。鍛え上げた体術と個性で異能解放軍を焼き尽くしていく荼毘。次から次へと現れる異能解放軍は完全に分倍河原を守っていた。鍛錬を積み重ねた個性を用いる異能解放軍達は随分と厄介な相手であり、長期戦は耐えられない荼毘の体質も相まって苦戦を強いられる荼毘ではあったが彼に獲物を逃がすつもりはなく。近寄れば焼き尽くされる蒼い炎の壁で分倍河原とその他を区切り、分倍河原の元に駈ける荼毘。俺が裂ける分裂すると声を漏らす分倍河原に蒼炎を浴びせようとした瞬間、空から降ってきた異能解放軍が1人。両腕に氷の腕を纏い振り下ろしてきた異能解放軍の攻撃を躱した荼毘は蒼い炎を異能解放軍に向けて放射した。それは異能解放軍の1人が操る氷とぶつかると氷が溶けて水となり炎熱で蒸発して水蒸気が周囲に広がる。異能解放軍潜伏解放戦士の1人外典が操る氷の竜と荼毘の蒼い炎が衝突する度に水蒸気が撒き散らされた。外典の操る氷によって退避させられた分倍河原に蒼炎が飛ぶが、氷により邪魔をされて分倍河原にまで届くことはない。まずは眼前の相手を始末することだけを考えようとした荼毘は両手から蒼い炎を放出して空を自在に飛び、空中で操った氷を足場に立つ外典に高速で接近し、腹部に蹴りを叩き込んで氷の足場から外典を落とした。落下しながら氷を操り新たな足場を形成しようとする外典に蒼い炎を喰らわせて焼き尽くそうとする荼毘だが、外典が着ていたコートによりそれは阻まれる。蒼い炎を放出して急速に接近し、フードを被っている外典のフードを引っ張り上げて顔を露出させてから顔面を掴み蒼炎を直接叩き込む荼毘。外典の焼き尽くされた頭部とコートを着こんだ身体が動くことはもうない。一つの戦いを終えた荼毘が標的の分倍河原を探すが既に異能解放軍に連れ去られた後のようだった。度重なる異能解放軍達や外典との戦いで身体が限界を迎えていた荼毘はそのまま崩れ落ちるように倒れ込んだ。

 

「ああ、くそ、標的取り逃がしてるようじゃ、まだまだレッドやグリーンには及ばねえな俺は」

 

自嘲するかのように声を漏らす荼毘の身体から焦げ臭い煙が溢れていた。限界を迎えた荼毘の身体は完全に熱がこもり、身体機能に異常をきたしている。暫くは動くことさえも出来ないだろう。それでもヴィジランテとして活動を続ける荼毘はこれからも戦いを続けていく。

 

教員寮入口に居る壊理の元に来訪者が現れた。その来訪者に壊理はゆうえいのふのめんと声を漏らす。雄英の負の面と言われた相手が誰かと言うと勿論物間だった。雄英の負の面は笑いながら何言ってんのかなこの子ォ!何言ってんのこの子ォ!?と言いながら壊理を指差している。そんな物間を指差しながら通形ミリオが文化祭の時、君のこと雄英の負の面と教えたんだと言うと物間は僕こそ正道を征く男ですけどォ!?と言葉を返す。とりあえずそれを聞いた緑谷は、君が正道を進んでるところを見たことないよ雄英の負の面と言っていた。そんな4人の元に1年A組担任教師相澤消太が現れて、おう、緑谷、通形、悪いな呼びつけて、物間に頼みたいことがあったんだが、如何せん壊理ちゃんの精神と物間の食い合わせが悪すぎるんでな、まァ入れ、と言って教員寮に入ることを進める。そんな担任教師に物間が僕を何だと思ってるんですかぁと言いながら笑っていた。教員寮に入って物間に壊理の個性をコピーさせた相澤消太だったが、物間はスカですね、残念ながらご期待には添えられませんイレイザーと言う。物間は個性の性質そのものをコピーする。そのため何かしらを蓄積してエネルギーに変えるような個性だった場合、その蓄積まではコピーできない。だから壊理の人を巻き戻す個性をコピーすることは出来なかったようだ。何でコピーを?と問いかける通形に相澤が、壊理ちゃんが個性を発動させられるようになったとしても使い方がわからない以上、暴走の危険がある、だから物間がコピーして使い方を直に教えられたら彼女も楽かと思ってな、そう上手くはいかないか、と言った。それを聞いていた壊理が、ごめんなさい、私のせいで困らせちゃって、私の力、皆を困らせちゃう、こんな力無ければよかったなぁ、と沈んだ声を漏らす。そんな壊理の前でしゃがみこんで目線を合わせて緑谷出久は、そんなことは無いよ壊理ちゃん、君の個性は多くの人を助けられる可能性を秘めてる凄い個性だよ、要するに使い方だと思うんだ例えば包丁だってさ危ないけど、よく切れるもの程おいしい料理がつくれるんだ、だから君の力は素晴らしい力だよ!と言って笑顔を見せる。緑谷の言葉を聞いていた壊理は、私、やっぱりがんばる、と決意をした。

 

ライフスタイルサポートメーカー大手デトネラット社を調査するサー・ナイトアイ。ヒーローサポート事業への本格参入に踏み切ったデトネラット社。闇市に流れている商品であるサポートアイテムが正規の会社であるデトネラットから流れてきたものだという情報を掴んだサー・ナイトアイだが、常時監視されているサポートアイテムは遠隔操作で爆破されて証拠が残らないようになっていた。闇市の市場を荒らしているデトネラット社に憤りを隠さない裏社会の人間もいるようで、そういう人間達から異能解放軍に関する情報を入手することができたサー・ナイトアイ。入手した情報を持ち帰ろうとするサー・ナイトアイに異能解放軍の手が伸びる。異能解放軍潜伏解放戦士達が集団でサー・ナイトアイに襲いかかった。大量に押し寄せる異能解放軍達から逃走するサー・ナイトアイ。鍛え上げられた個性を持つ異能解放軍達に超質量印という1つ5kgもする印鑑型の投擲武器を投げつけていく。相手の動きを予測して攻撃を回避していくサー・ナイトアイ。多勢に無勢で追い詰められてしまうサー・ナイトアイだったが、そんな時に現れた1人のヒーロー。異能解放軍達を拳の一振りで吹き飛ばし、もう大丈夫、何故って、私が来た!と力強い声を発するオールマイトがサー・ナイトアイの救援に駆け付けた。その場に居た異能解放軍達を全て倒したオールマイト。サー・ナイトアイはオールマイトに深く感謝をして、手にいれた情報をオールマイトに話す。デトネラット社の悪行を聞いたオールマイトは、今回倒した彼等はデトネラット社に何らかの関係があるのだろうか、と疑問を口にする。今回の件には異能解放軍とやらが関わっているとサー・ナイトアイは語った。デトネラット社代表取締役社長四ツ橋力也が新たな異能解放軍の指導者という可能性が高いと言ったサー・ナイトアイ。今回貴方が倒した連中は異能解放軍の一部でしかないと言うサー・ナイトアイはオールマイトに、異能解放軍の指導者と戦う時には貴方の力が必要になることは間違いない、と断言した。

 

異能解放軍最高指導者リ・デストロこと四ツ橋力也を狙うヴィジランテのレッドだったが、彼の行く手を阻む異能解放軍に所属するヒーロー達。熟練した個性を振るうヒーロー達の動きを凝血で封じながら先へと進むレッド。室内で遂に対面した四ツ橋力也とレッドだったが、ストレスという個性を用いて身体強化した四ツ橋力也が巨大化した左腕を振るう。高速で振るわれた腕を潜り抜けて接近したレッドが胴体にナイフを突き立てようとするが、反応した四ツ橋力也が右腕も巨大化させてナイフを弾き飛ばした。弾き飛ばされたナイフが天井に突き立ち、交互に振るわれた四ツ橋力也の両腕を高々と跳躍して避けたレッドが天井に突き立ったナイフを引き抜く。四ツ橋力也の身体がストレスの個性で巨大化していき、動きも早くなっていった。レッドに振り下ろされる四ツ橋力也の巨大化した両腕、それをレッドが躱すと直撃した箇所から大きく陥没していき崩れ落ちる床。1階層分程落ちていく四ツ橋力也とレッド。着地した2人が互いに駈ける。四ツ橋力也の眼球を狙いナイフを横に振るうレッド、それを回避してレッドの胴体を掴もうと素早く腕を伸ばす四ツ橋力也。四ツ橋力也の腕を蹴り距離を取ったレッドを掴むことは叶わない。ナイフを斜めに振るうレッドのナイフの刃を指で挟み込みへし折る四ツ橋力也。へし折った鋭利な刃をレッドに投げつける四ツ橋力也だったが、レッドは顔面に向かって回転して飛んできたそれを余裕で避ける。巨大化した右拳を高速で突き出した四ツ橋力也の拳から放たれた風圧を鞘から引き抜いたナイフで切り裂くレッド。ナイフを鞘に納めたレッドは2丁の拳銃を取り出すと1丁を四ツ橋力也の背後に放り投げた。もう1丁の拳銃で四ツ橋力也を狙わずに宙を舞う1丁の拳銃の引き金を狙い撃ち、個性破壊弾を発射させて四ツ橋力也の背中にそれを命中させる。個性破壊弾を命中させられた四ツ橋力也はストレスの個性を発動出来なくなり、巨大化していた身体も元に戻ってしまう。背負っていた鞘から日本刀を引き抜いたレッドは四ツ橋力也の首を切り落とす。見事だと言葉を発した四ツ橋力也の首と身体が溶けて消えていく。この四ツ橋力也は本物ではなく分倍河原の個性で増えた分身だったようだ。レッドは拳銃を拾い上げてその場を後にする。本物の四ツ橋力也を探してレッドは動く。

 

炭酸水を操るヴィランが率いるグループが現れて人々の鞄を奪い取り財布を盗んでいく。そんな最中、現れたオールマイト。サポートアイテムを使用したヴィランをものともせずに圧倒的な力でヴィラングループを全て気絶させて鞄や財布を奪い返した。被害者達に奪われた鞄や財布を返していた時に炭酸水を操るヴィランが両腕に着けていた炭酸水をウォーターカッターの様に噴出させる籠手が爆発して跡形も無くなる姿を見たオールマイトは籠手がデトネラット社製であると見抜く。遅れてやってきたヒーローのスライディン・ゴーが爆発で破壊された籠手の残骸を見て、闇市製の粗悪品ですねこれはと誤魔化す様に言っていたのを聞いたオールマイトは、ヒーローにも異能解放軍の手は伸びているという情報が確かであると確信していた。恐らくはスライディン・ゴーも異能解放軍の一員であるだろうと考えたオールマイトは、この場で追求することはせずに証拠を集めてから捕まえることに決めている。スライディン・ゴーに後を任せるようなことはせずにヴィラン達を警察に引き渡すまでオールマイトは事件現場にいた。ヴィラン達を警察に引き渡した後はマスコミのインタビューに軽く答えてからその場を後にするオールマイト。サー・ナイトアイの調査は成功したがデトネラット社の社長である四ツ橋力也と私が対峙している姿がサー・ナイトアイの個性である未来予知で見えたと言っていたことから、四ツ橋力也による抵抗は間違いなく考えられる。四ツ橋力也の個性がどのようなものかはわからないが、サー・ナイトアイが見た予知では四ツ橋力也の身体が巨大化していたということから身体強化系統の個性である可能性が高い。一瞬で勝負が終わらずに対峙ができていたことから四ツ橋力也の身体強化はかなりのものだと推測出来る。USJで襲撃してきた脳無と同じかそれ以上の実力を持っていると仮定しておいた方が良さそうだ。まだまだ引退することは出来そうにないなとオールマイトは考えた。

 

特別講師として雄英高校に招かれたマウントレディ。マウントレディが今日行うのはメディア演習。ヒーローの立ち振舞いを教授すると言ったマウントレディが行うのはヒーローインタビューの練習。一番手は轟焦凍ことヒーローネーム、ショートから始まった。ショートがインタビューを受けていると天然というか素直過ぎるところが露になってそこはマウントレディにとっては好評価だったみたいだ。どのような必殺技をお持ちでと聞かれた時に穿天氷壁という広域制圧や足止めに足場づくり等幅広く使える氷の技を見せつける。あとはもう少し手荒な膨冷熱波という技も、と技を紹介するショート。必殺技の紹介も終わり最後にマウントレディからアドバイスをされたショートは安心させたいなら笑顔をつくれると良いかもねと言われてぎこちないながらも笑みを見せてみてみたが、まだちょっと笑顔が固いからもう少し自然な感じで笑えるとなお良しとマウントレディに言われていた。技も披露するのか?インタビューでは?と疑問を口にした常闇くんにマウントレディは、皆があなた達のこと知ってるワケじゃありません!必殺技は己の象徴!何が出来るのかは技で知ってもらうの、即時チームアップ連携、ヴィラン犯罪への警鐘、命を委ねてもらう為の信頼、ヒーローが技名を叫ぶのには大きな意味がある、と語る。続いてヒーローインタビューを受けたのは飯田くん改めヒーローネーム、テンヤ。必殺技は高速移動のレシプロターボを紹介していた。続いて八百万さんことヒーローネーム、クリエイティのヒーローインタビューが始まる。その次は麗日さん改め、ヒーローネーム、ウラビティ。次は常闇くんことヒーローネーム、ツクヨミ。更に次は切島くん改めヒーローネーム、レッドライオット。次は尾白くんことヒーローネーム、テイルマン。その次は芦戸さん改めヒーローネーム、ピンキー。次は上鳴くんことヒーローネーム、チャージズマ。更に次は障子くん改めヒーローネーム、テンタコル。今度はヒーローネームが不明の爆豪の番がきて発言が荒々し過ぎるとマウントレディに不評を受けていた。爆豪の次が緑谷改めヒーローネーム、バイオレンスグリーンのヒーローインタビューとなる。落ち着いた様子でマウントレディからのインタビューを受けていたバイオレンスグリーン。必殺技を披露してほしいと言われたバイオレンスグリーンは目にも止まらぬ素早い手刀突きと風圧を発生させる蹴りを披露した。

 

ヒーローインターンが再開されてサー・ナイトアイの事務所に向かう通形ミリオと緑谷出久。インターンに向かう最中緑谷が「通形先輩どうかしたんですか?どことなく上の空って感じなんですけど大丈夫なのか心配になってきましたよ。久しぶりのインターンですけど集中出来ないくらいの何かがあったんですか?壊理ちゃん関係ではないのは解りますけど、通形先輩が思い悩むような出来事というのはとても重要な事のような気がしますね。僕に話せるような事だったらガンガン話してもらっても大丈夫ですけど、僕には話せないような話だったら無理に話さなくても結構ですよ。内緒話を無理にほじくり返すような事はしません。まあその場合は勝手に心配だけはさせてもらいますけどね。とりあえず今の通形先輩は隙だらけなので注意して下さいよ。今の状態でパトロールやっても成果は出ないような気がしますから、インターンが始まったら何か深い悩み事があったとしても切り替えて下さいね通形先輩。学生とはいえプロのサイドキックとして扱われるんですから些細なミスは許されませんよ。シャキッとして下さい通形先輩。悩み事があるのは解りましたけどもうそろそろ仕事なんで、仕事に支障をきたさないように気をつけましょう。僕から言えることは以上です。そろそろサー・ナイトアイの事務所に着きますんで気を引き締めて行きましょうか、ルミリオン」と一息で言った。それを聞いた通形ことヒーローネーム、ルミリオンは心配かけてごめんよグリーン、もう大丈夫、切り替えていくよ、ありがとう、と緑谷改めヒーローネーム、バイオレンスグリーンに感謝の言葉を返す。オールマイトから言われた、力を受け継ぐ事をサー・ナイトアイも望んでいるという言葉が頭の中を駆け巡っていたルミリオンだったがグリーンの言葉で今はインターンに集中しようと切り替えることができたようだ。これから始まるインターンで2人は異能解放軍の事を知ることになる。それがどんな未来を招くことになるかは、今は誰も知らない。



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緑谷くんはクソデクでした

これで最終話となります
今まで感想をくださった方々、お気に入り登録してくれた方々、評価をしてくれた方々、ありがとうございました


トガヒミコが殺した相手から血を吸っている姿を発見した荼毘は容赦なく蒼炎を放つ。個性ではなく体術でそれを避けたトガヒミコは近付いてナイフを荼毘に突き刺そうとした。尋常ではない高温の蒼炎を放射してトガヒミコが持っていたナイフを溶かした荼毘。

 

焼かれた手を押さえるトガヒミコに蒼い炎を放出して素早く接近した荼毘はトガヒミコの顔面を掴んで火力を上げた蒼炎を叩き込む。完全に頭部を焼き尽くされて死んだトガヒミコは、もう人の血を吸うことはできない。

 

「こいつが多分連続殺人事件の犯人なんだろうな」

 

頭部を焼き尽くされたトガヒミコの死体を見ながら言った荼毘は助けられなかった犠牲者の死体を見て、自分の到着が遅かったことを悔やむ。

 

「まだまだだな俺は」

 

俺がもっと早ければ殺される犠牲者は増えなかったかもしれないと考えていた荼毘は、拳を強く握り締める。

 

「だが、いずれはレッドやグリーンに追いついてみせる」

 

決意を言葉にして前を見た荼毘は折れることなく目標を目指して精進を続けていくだろう。自分が理想とするヴィジランテ2人に追いつく為に荼毘は、これからも戦いを続けていく。

 

ヴィランを倒して積み上げていくジェントルは、ヴィジランテとして活動していきながら動画サイトに動画を投稿する。動画投稿するヴィジランテとして有名になっているジェントルが投稿した動画が削除されては、ラブラバが再び動画をアップするということを繰り返していたりする日々を過ごしていた。

 

動画の伸びがイマイチであることを納得できていないラブラバは、ジェントルよりもグリーンはよ、というコメントに怒っていて、メインはジェントルよ!と怒りを露にしていたが、落ち着きなさいラブラバと優しく諭すジェントルに宥められて落ち着く。

 

今日もヴィジランテとして悪を倒したジェントルはラブラバと共に紅茶を飲みながら撮影した動画を編集していったようだ。拠点で2人だけで過ごしていたジェントルとラブラバは、最近のヴィジランテ達について語り合う。

 

「どうやらレッドに憧れて、ヴィランを殺害するヴィジランテが増えているようだねラブラバ」

 

「確かにオールフォーワンを殺したレッドは凄いことをしたのかもしれないけど、ヴィジランテのイメージが悪くなっちゃうわ」

 

「最近ではヴィジランテのことをヴィランを倒すヴィランとまで言われているからね」

 

「レッドに文句のひとつも言ってやりたいくらいよ」

 

「きみをレッドに会わせる訳にはいかない、彼は我々とは考え方が違う人間だ。レッドはグリーンほど優しくはないよ」

 

「グリーンは良い子なのに」

 

「グリーンはヴィジランテの中でも特殊だね、誰の考えも否定することはなく受け入れてくれる子なんだ。それでもグリーンが相棒に選んだレッドには確かな信念があると私は感じたよ」

 

「そうなのね」

 

「もしもレッドが止まることがあるとすれば、彼を止めるのはグリーンになるだろう」

 

長々と会話をしたジェントルとラブラバは、紅茶を飲んで一息つくと再び動画を編集する作業に戻っていく。編集された動画は動画サイトに投稿されていき、ジェントルというヴィジランテの活動を教えていった。

 

異能解放軍の分身を増やしていた分倍河原仁の元にまで辿り着いたレッドは、四ツ橋力也の分身を作り出した分倍河原仁へと迫る。四ツ橋力也の分身は分倍河原仁を守るように動いていたが個性破壊弾を撃ち込まれ、個性が使えなくなったところで眉間にナイフを突き立てられて消滅。

 

異能解放軍達の分身に身を守らせていた分倍河原仁に近付いていくレッドは分身達を日本刀で容赦なく両断していった。守る分身がいなくなった分倍河原仁の首をレッドの日本刀がはねる。分身を作り出すことができる分倍河原仁が死んだことで少し低下した異能解放軍の戦力。

 

四ツ橋力也を探して戦いを続けていたレッドが移動を続けている最中に集まったヒーロー達と異能解放軍の戦いが始まっていく。総力戦となっていた戦いは乱戦となり敵味方が入り交じる戦いとなっていた。そんな戦いの中で異能解放軍を斬りながら進むレッドは、ヒーローとして活動しているグリーンと出会う。

 

「ヴィジランテのレッドですね」

 

と初対面であるかのように装うグリーンに、それでいいと思ったレッドはグリーンに合わせて初対面であるかのようにふるまった。

 

「お前は何者だ?」

 

とグリーンに聞いたレッドは望んでいた答えが返ってくることを予想していたようだ。

 

「バイオレンスグリーン、貴方を捕らえるヒーローの名です」

 

と名乗ったグリーンはレッドとヴィジランテのチームを結成する時に約束したことを果たすつもりでいる。それはいずれグリーンがヒーローとなった時にレッドを捕らえることであった。

 

自分が倒されるべき存在となっていることには気付いていたレッドは、グリーンに倒されることを望んだ。

 

「いいだろう、俺を捕らえてみろバイオレンスグリーン」

 

と言って笑ったレッドは、グリーンならきっと真のヒーローになれる筈だと思っていたらしい。無個性であるとしても折れることなく強くなったグリーンに光を見たレッドは、今までグリーンと戦ってきたことを思い出す。

 

これ以上強くなることはできないレッドと、まだ伸び代があるグリーンの戦いは一方的なものとなったが、最後の最後まで倒れることのないレッドは、グリーンの壁として立ち塞がる。

 

「俺を倒していいのは本物のヒーローだけだ!」

 

と叫ぶレッドに拳を叩き込んでいくグリーンは、これがこの人なりの餞別になるんだろうと思いながら戦っていく。今までの出来事を思い出していくグリーンは、それでも手を緩めることはない。

 

ヴィジランテとして共に戦ってきた2人が、今ではヒーローとしてヴィジランテとして戦うことになっている。握った拳を叩き込んでいくグリーンは、本気のこの人を越えて僕はヒーローになると決めてレッドを捕らえる為に戦う。

 

ヒーロー、バイオレンスグリーンの飛び蹴りが叩き込まれる瞬間、ヴィジランテのレッドは「俺を越えていけ、ヒーロー」と言った。ヴィジランテのレッドを倒したバイオレンスグリーンは、レッドを担ぐと捕らえた相手を連れていく場所までレッドを運んでいく。

 

レッドを待機している警察官達に預けたバイオレンスグリーンは、異能解放軍達との戦いに戻ると全力全開で異能解放軍達を倒す。これからはヒーローとして戦うバイオレンスグリーンは、もうヴィジランテのグリーンに戻ることは永遠にない。

 

異能解放軍最高指導者リ・デストロこと四ツ橋力也とオールマイトの頂上決戦が始まり、人間を超越したパワーを持つ2人の戦いはしばらく続く。ストレスを力に変える四ツ橋力也と代々受け継がれてきた力を振るうオールマイト。膨れ上がった身体を黒く染めて拳を振るう四ツ橋力也に、オールマイトの拳が繰り出され続けた。

 

四ツ橋力也の放つ負荷塊をデトロイトスマッシュで迎撃するオールマイト。最終的には150%の力を引き出した四ツ橋力也に対して限界を超えたパワーで対抗するオールマイトの拳が四ツ橋力也に叩き込まれる。決着はそれで着いた。ナンバーワンヒーローオールマイトの勝利で終わった戦い。

 

異能解放軍最高指導者リ・デストロこと四ツ橋力也はタルタロスに収監されることになる。ヒーロー内部に存在した異能解放軍の面々も捕らえられて刑務所送りとなった。大量に捕らえられた異能解放軍の潜伏解放戦士達。ほぼ壊滅状態となった異能解放軍だった。

 

オールフォーワンの内通者であった青山優雅。レッドによってオールフォーワンが殺されたことで自由の身になれたことを知っていてもクラスメイトを裏切っている気持ちになっていた青山くんは、内通者であったことを打ち明けるつもりでいたようだ。

 

オールフォーワンによって個性を与えられた青山くんは、元は無個性であった。同じ無個性でありながらも折れることなく戦っていた緑谷出久の姿は、青山くんにとってとても眩しいものに見えていたらしい。

 

無個性でも強くなれた緑谷出久を見ている度に僕もああなれたら良かったのかなと思う青山くんは、でももう遅いんだと暗く沈んだ気持ちになっていた。オールフォーワンが死んでも、僕が裏切っていたことはなかったことにはならないと考える青山くん。

 

皆の前で勇気を出して内通者であったことを明かした青山くんは涙を流しながら「僕は皆と一緒にはいられないよ」と言う。そんな青山くんに「一緒にいられないかどうかはきみが決めることじゃないよ、決められるのは相澤先生だけじゃないかな」と言った緑谷出久は担任教師を見た。

 

担任教師の相澤消太は「青山、お前の除籍はない、悔やんでいるなら立派なヒーローになって誰かを助けろ、俺が言えるのはそれだけだ」と言って青山くんを責めるようなことは言わない。それを聞いた緑谷出久は青山くんに「先生がそう言ってるんだから、青山くんは立派なヒーローにならないといけないね」と笑顔で言う。

 

クラスメイトの皆も青山くんを責めるようなことは誰も言うことはなく、青山くんから話を聞いて、家族の命を人質に取られていたなら仕方ないと理解を示す。「なんで、皆」と裏切り者であった筈の自分に皆が優しくしてくれることが信じられないような顔をしていた青山くん。

 

そんな青山くんに「大丈夫だよ青山くん、きっときみはヒーローになれるよ」と言って笑いかけた緑谷出久。緑谷出久のその言葉がきっかけになったのか、大量の涙を流した青山くんは、1年A組の仲間として受け入れられた。

 

それからしばらく青山くんは両親と一緒に警察に行くことになったが、無事に帰ってくることができたようだ。1年A組の生徒としてヒーローになる為に頑張っていく青山くんは、今日も元気に笑顔を見せていく。

 

結束が強くなった1年A組は、どんな困難があろうと乗り越えていけるだろう。担任教師相澤消太は生徒達を教師として導いていき、ヒーローとして育てていった。

 

オールマイトの元へ行った通形ミリオは自分の考えをきっぱりと伝えることにしたらしい。考えに考えた結論として通形ミリオは、ワンフォーオールを受け継がないという答えを出したようだ。断られたオールマイトは「何で断ったのか、理由を聞いても良いかな」と聞く。

 

「俺が受け継ぐよりも他に受け継いだ方がいい相手がいるからですかね。多分ワンフォーオールを俺が受け継いだとしても彼に渡しちゃうと思うんで、あんまり意味ないかなって思いまして」と答えた通形ミリオ。「彼とは誰のことかな」と聞いたオールマイトに通形ミリオは「緑谷くんですよ」と笑顔で言った。

 

「なるほど緑谷少年か」と頷いたオールマイトは「確かに彼は強いが、強いだけじゃないことも確かだね」と続けて言う。通形ミリオは「緑谷くんには何度も励まされてきました。パトロール中も人に優しくできる彼の優しさはヒーローにとって必要なものである筈です。俺は彼にこそ受け継いでもらいたいと思ったんですオールマイト」と言い切る。

 

「どうやら通形少年の意思は固いようだね、ワンフォーオールを受け継ぐのに相応しいのは緑谷少年か」と言うとオールマイトは緑谷少年に話をしてみようと思っていたようだ。通形ミリオがワンフォーオールを断ったということはサー・ナイトアイにも伝わったが理由を聞いて、ミリオらしいと思ったサー・ナイトアイは怒ることはなかった。

 

オールマイトに呼び出された緑谷出久は、ワンフォーオールの個性を受け継いでみないかと言われて普通に「いらないです」とあっさり断ったらしい。そんなあっさりと断られたオールマイトは「理由を聞いても良いかな緑谷少年」と聞いてみる。

 

「無個性でヒーローになるのが僕の夢ですから、それに無個性の僕がヒーローになることを約束した人もいますからね。だから僕は無個性のままヒーローになります」と強い意思を見せた緑谷出久を見て、これは受け継いでもらえそうにないと思ったオールマイトは落ち込んだ。

 

2連続で後継者候補に断られたオールマイトは、お師匠から受け継いだワンフォーオールを私の代で終わらせる訳にはいかないと考えていたようだった。困っているオールマイトを見かねたのか緑谷出久が「とりあえずオールマイトは壊理ちゃんに身体を治してもらいましょうか。脇腹に古傷があるんでしょう?」と言い出す。

 

「いやこれは6年前のでね」と言うオールマイトの背を押しながら「個性を使いこなせるようになった壊理ちゃんなら6年前くらい簡単に巻き戻せますよ」と言う緑谷出久。「まだまだヴィランは居るんですから平和の象徴は必要ですよ、この際全盛期まで若返ってください」と言いながらオールマイトの背中を押して壊理ちゃんの元まで緑谷出久は連れていく。

 

平和の象徴が完全復活して若返っていたりもしながら時は過ぎていき、ヒーローの卵達がヒーローとして世に出ていくことになる。かつて1年A組だった生徒達がプロヒーローとなり、ヴィランと戦って人々を助けていった。

 

荼毘やジェントルはいまだにヴィジランテとして活動しているようであり、彼等はヴィランを倒してもヒーローとは決して戦うことはない。戦うのはヴィラン相手だけと決めている荼毘とジェントルは危険度がそこまで高くはないヴィジランテとして知られている。

 

レッドかぶれとも言えるどんなヴィランでも殺すヴィジランテは、バイオレンスグリーンに全て捕らえられることになったようだ。殺す相手は選んでいたレッドとは比べものにならない相手を決して許すことはなかったバイオレンスグリーンは容赦なくレッドかぶれ達を倒していった。

 

一時期はそんな忙しい日々をおくっていたバイオレンスグリーンに母校である雄英高校から連絡が届く。それは雄英で教師をやってみないかという提案であった。かつて将来の為のヒーロー分析ノートを書いていたように、ヒーローについて分析するのが得意であるバイオレンスグリーンには教師は向いている職業なのかもしれない。

 

平和の象徴オールマイトは今も健在であり、ヒーロービルボートチャート1位を動くことはないようである。結局オールマイトは越えられてないみたいだね爆豪くんはと笑っていたバイオレンスグリーンは、雄英高校の教師となることを決めて雄英高校に向かう。

 

新任でありながら担任教師を任されることになったバイオレンスグリーンこと緑谷出久は副担任となる教師に挨拶をすることにした。1年A組の副担任教師となるのはヒーローとなった心操人使であったようで、師匠であるイレイザーヘッドと同じく捕縛布を首に巻いている心操人使。

 

「よろしく心操くん」と手を差し出した緑谷出久の手を掴んで握手をした心操人使は「緑谷が担任だと生徒達は苦労するだろうな」と苦笑いしていたようだ。「まあ無個性である僕に負けているようじゃ駄目だから厳しくいかせてもらうよ」と言う緑谷出久に「大概のヒーローはお前に負けてるよ、少しは優しくしてやれ」と言った心操人使。

 

今年入学してきた1年A組の生徒達の前に現れた緑谷出久と心操人使は「担任の緑谷出久と、こっちが副担任の心操人使だけど、とりあえず体育着に着替えてグラウンドに集合ね、きみ達は入学式は無し」とだけ言って1年A組をグラウンドに集めていく。

 

個性把握テストをすることになった1年A組の首席入学した生徒に個性を使ってボールを投げさせた緑谷出久。表示された600mという記録にはしゃいでいた生徒達が面白そうと言った瞬間、緑谷出久は「面白そう?そんな考えでヒーローを目指すつもりであるなら、実力を示してもらわないと駄目だね。僕は無個性だけど、僕よりも総合成績が悪かった生徒は除籍にしちゃおうかな」と笑う。

 

ボール投げをした緑谷出久が1050mという記録を出したところで絶望の表情を浮かべた生徒達。何なのこの人、本当に無個性なのと思っていた生徒達は必死になったが、緑谷出久以上の総合成績を出すことができた生徒は1人もおらず、全員が絶望していた。

 

「いや、皆頑張ったね。発破をかけたかいがあったかな」と言う緑谷出久に1年A組の生徒の1人が「俺達全員除籍ですか」と恐る恐る聞くと「ああ、除籍にしちゃおうかなって言っただけで除籍にすると決まってる訳じゃないよ。まあ、やる気がなかったら除籍にしたかもね。じゃあ、これからよろしく皆」と笑った。

 

「良かった」と喜んでいた生徒達の中から1人の生徒が歩み出てきて「先生はもしかしてバイオレンスグリーンですか?」と聞いてくる。「そうだよ」と頷いた緑谷出久に驚愕した生徒達が一斉に緑谷出久まで近付いていく。

 

「サインください!」

「ヒーロービルボートチャート6位のバイオレンスグリーンが本当に先生なんですか!」

「つーか本当に無個性なんですか先生は」

「バイオレンスグリーン目指してヒーロー科にきました!」

「ファンです!」

「バイオレンスグリーンみたいなヒーローになりたいっす!」

「人気のあるヒーローになったらモテますか!?」

 

と矢継ぎ早に話しかけてくる生徒達に「どっから色紙とサインペン出したのかはわからないけどとりあえずサインしといたよ。僕がバイオレンスグリーンって証明できるヒーロー免許を見せようか、ほら本名緑谷出久で、ヒーロー名にバイオレンスグリーンって書いてあるだろう。僕が無個性であるのは本当だよ、個性因子が身体にないからね。バイオレンスグリーンを目指してヒーローになりたいって子は久しぶりになるかな、ありがとう。バイオレンスグリーンのファンになってくれてどうもありがとう、とても嬉しいね。バイオレンスグリーンみたいなヒーローになりたいなら身体を鍛える必要があるね、僕のトレーニングメニューを教えよう。残念だけど人気のあるヒーローになってもモテない人はモテないよ。さあ、個性把握テストは終わったから皆帰る時間だ、明日から雄英で生徒として頑張ってもらうよ皆」としっかりと対応した緑谷出久。

 

「これがバイオレンスグリーンのマシンガントーク」と感動していたバイオレンスグリーンのファンの生徒は、生でマシンガントークを聞けたことをとても喜んでいたらしい。雄英高校1年A組の担任教師となった緑谷出久は、これからも教師として生徒達に試練を与え続けていくだろう。

 

かつて緑谷出久の担任教師であった相澤消太のように、緑谷出久は担任教師としてプロのヒーロー、バイオレンスグリーンとして生きていく。そこにかつてデクと呼ばれていた少年はおらず、1人のヒーローがいた。そのヒーローの名はバイオレンスグリーン。



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