二度目の転生はありふれた職業な世界 (ライダーGX)
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プロローグ

新作書きました。

どうか見てください。


 とある世界でこの俺『天道 新一(てんどう しんいち)』はこの世界の天敵で世界の元凶と言える『魔王』と相手の本拠地である城で対決していた。

 

「どうした!その程度なのか『勇者』!!」

 

「けっ!まだまだ行けるに決まっているだろう!!」

 

っと俺はそう言って聖剣を構え、魔剣を構える魔王。

 

なぜ俺はここで魔王と対決しているかと言うと。

 

此処とは別の世界、日本で生まれ育った俺は、事故で死んでしまって天国に来てしまった、その時この世界の女神『リリアーナ』にこの世界を救って欲しいと頼まれたのだ。

突然の事に困惑する俺だが、当然リリアーナは待ったなしにこの世界に送られたられた。

 

突如断りもなしに送られた事に怒りが込み上がった、だが最初に出会った少女と出会いが俺の運命を変えた。

 

その少女こそ、この世界の聖女であり巫女でもある「アリス・バニングス」と出会い、この世界を本気で救いたい願いが俺の心を動かした。

 

俺が世界を救う事を考えたのを天で見ていたリリアーナが、『聖剣』を新一に渡して託した。

 

そして様々な困難を乗りこなし、途中で気遣いが出来る武闘少年「トール・カルバーソン」、お転婆でお茶目なおかっぱヘアーの魔法少女「サリー・マジェス」、新一にライバル心を抱いていた槍使いの達人「ランドル・ヴォルドス」。

2歳年上でお色気満載のムチ使いの女性「マリアンヌ・シュバルツ」達と出会って仲間にし、魔王を倒す冒険の旅に出て、最終局面である、魔王の城と対立していた。

 

 

俺は聖剣を構えて走り出し、魔王に向かっていく。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ふっ!こざかしい!!」

 

魔王は俺に向かって魔法弾を放ち、それに俺は避けながら飛んでかわし、魔王の上に飛んで、そのまま降下しながら向かう。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

「ぬっ!!?」

 

「うぉりやあああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

俺は魔王に向けて一気に聖剣を切り下ろす、聖剣が魔王の身体を切り裂き、それに魔王は大きな致命傷を得る。

 

「ぐおおおおおおおお!! お!おのれ…!!!!」

 

魔王は致命傷の傷を抑えながら後ずさりし、俺はすぐに立ち上がり聖剣を構える。

苦しみながらも魔王は俺の方を見て、指をさしながらこう言った。

 

「いいか…! この我を倒しても、必ずや復活してみせる!例え別の次元でさえもだ!そして…必ずお前を葬ってやる!覚えておけぇ…!!」

 

そう言い残して、魔王はその場で倒れ、魔王の身体から夥しい魔力の波動が出てくる。

 

そしてあたり一面光に包まれ、それにより俺は思わず目をそらしてしまう、そして光が収まると、辺りがボロボロの城の状態となっており、天井は穴が大きく開いていた。

 

俺は魔王が倒れていた場所を見ると、魔王の身体は骸骨の姿になっており、完全に倒したと見た。

それに俺は思わずガッツポーズをする。

 

「新一さーん!」

 

俺は声がした方を見ると、アリス達が魔王の部下だった魔物を全て片付けて駆けつけたようだ。

 

「新一!大丈夫!?」

 

「うわ~、凄い状態?」

 

「おい、魔王はぶっ潰しんたんだろうな?」

 

「それとも、逃がした?」

 

トール達がそれを問い、新一はうなづきながら言う。

 

「大丈夫だ、それと魔王は倒してやったぜ」

 

っと俺は倒した魔王の方を見て言い、それにアリス達は喜びの雄叫びをあげる。

 

「やったーーー!」

 

「魔王を倒したんだ!」

 

「へ!やれば出来るじゃねえか!」

 

「へぇ~、これで世界は平和になるんだね」

 

喜ぶ皆の様子に俺は見つめていて、そしてアリスが俺に寄ってくる。

 

「新一さん、お疲れ様でした」

 

「ありがとうアリス、これで君も『ピカー!!』?」

 

真上に猛烈な光の柱が現れ、それに新一だけじゃなく、アリス達はそれに見つめてる。

 

『どうやら終わったようですね…』

 

するとそこからこの世界の女神、リリアーナが姿を現し、俺達の前に現れた。

リリアーナはそのまま新一たちを見つめていて、アリス達は唖然としていた。

 

「め、女神リリアーナ様…!」

 

「ほ、本物だ!」

 

そしてリリアーナが俺の方を見つめて言う。

 

『新一さん、お時間です』

 

「え?時間って?」

 

『貴方がこの世界から去る時間です、転生させたのは良かったんですが、魔王を倒した直後に連れ戻すと言う設定を忘れていたんです、皆さんには申し訳ないですが、新一さんとはお別れです』

 

リリアーナの言葉にアリス達は驚き、新一はその言葉に唖然としてしまう、折角出会えた仲間達との別れがもう来てしまうなど、だれも予想していないからだ。

俺はアリス達は見つめ、アリス達も新一を見つめる。

 

そして俺はアリスを見つめ、アリスを俺を見つめながら言う。

 

「新一さん…」

 

「アリス、どうやら別れの時が来たようだ」

 

「そんな…、折角新一さんと会えたのに」

 

悲しい顔をするアリス、俺はアリスの肩を手を置いて言う。

 

「アリス、悲しい顔をしないでくれ、これからは君がこの世界の巫女として導いて欲しい」

 

「新一さん…、はい、分かりました」

 

アリスの意思に俺は頷き、そして皆の方を見て、お別れの言葉を言う。

 

「ありがとう皆、俺は別の世で見守ってるよ」

 

その言葉にリリアーナは新一に光の柱の当て、新一の体が浮かび上がる。

 

「新一!」

 

「新一くん!」

 

「新一!!」

 

「おい新一!!まだ俺の勝負は付いてねえんだぞ!!」

 

ランドルがまだ俺との勝負に根に持ってるらしく、申し訳ない表情で俺は言う。

 

「すまないランドル、それは叶えられないや。トール、お前の気使いには本当に感謝するぜ、サリー、魔法をもっと偉大にしていけよ。マリアンヌ、もっと自分の大事にして行ってくれよ」

 

そう言って新一はリリアーナと共にこの世界から去り、アリスたちはその様子を見つめる他なかった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そして白い空間、新一はそこにいて少しばかり考える、自分がまたこの場所に戻ってきて、今後どうするのかを…。

 

「新一さん、何かお考えですか?」

 

っとリリアーナが新一の方に問いかけ、それに新一はリリアーナの方を見ていう。

 

「いや~、折角魔王を倒して平和になったんだ、その後のことをどうするかなって考えて…。それで今後どうするかをっとね」

 

「ああ~、そういう事ですか。ただそればかりは申し訳ありませんが、新一はまた別の世界に転生する必要がありまして」

 

「はっ!?また?! えらく急だな?」

 

新一はその事に問い、リリアーナは申し訳ない表情で言う。

 

「はい、あなたをこのままにしておくと、肉体が滅びてしまって永久に屍のまま徘徊する事がありますので、急いで次の世界に転生する必要があるんです」

 

「そうなのか?」

 

「はい、あっでもあの世界を救ったお礼として、今回は私が新一さんに特別なアイテムをお渡しします」

 

するとリリアーナがとあるペンダントを渡した、ペンダントと言うよりドックタグである。

 

「これは?」

 

「それは『無限ペンダント』と申しまして、身につけると不思議なことにあらゆるものが無限の状態になるアイテムです、例えばピストルとか弾が永遠に減らなくなったり、手裏剣も減ることはない代物です」

 

「凄いな…でもいいのか?」

 

「構いません、これはお遊びに使っても構いませんよ」

 

リリアーナが笑顔でそう言い、新一はうなづきながら言う。

 

「ありがとうリリアーナ、それじゃあ俺はその世界でたっぷりと満喫するよ」

 

「はい、ではその世界に送りますね」

 

するとリリアーナが新一をその世界へと送り、新一はその場から去っていった。

 

「ふぅ…、ようやくひと仕事をおえm『ゾゾッ!!』っ!」

 

リリアーナが何かを感じ取り、その辺りを見渡す、しかしあたりには何もなく、リリアーナはただ唖然とする。

 

「一体何が…? ちょっと調べて見ましょう」

 

っとリリアーナが少し世界の星図を出して見てみる、すると新一が送った場所には何やらうす暗い影が地球の周りを回っていて、それにリリアーナが目を見開く。

 

「これは…!何や嫌な予感がします…新一さん、どうかご武運を…」

 

そうリリアーナは新一の無事を祈る他なかった。

 

 




どうにかプロローグはかけました。

後は一話をゆっくりと書いていきます。

あと感想もご自由にどうぞ。


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第一章 始まりの召喚
第1話 突如の召喚


1話が遅れてすいません、完成しました。


女神リリアーナの転生で二度目の人生を日本で送る事になった新一は再び小学校からやり直していた、最初は「また小学生からやり直しか…」っと呟く新一だった。

でもそれもその筈、新一は二度目の転生を行っている為、成人からではなく、小学生からの転生が最適だと女神リリアーナはそう思ったのだ。

 

仕方なく新一は小学校からやり直して、一から勉強し直した。

 

そのおかげか、覚え直しも順調で、更にこの世界の知識も覚え直したと言える。

 

更にそこで新しい親友が出来たのだ。

 

その親友は自分たちのリーダー的存在『上地 進次郎(かみじ しんじろう)』と大柄な体と力自慢が特徴の『郷田 軍平(ごうだ ぐんぺい)』とメカオタクの『飯島(いいじま) きよし』、グループの紅一点てツインテールの『早川 千春(はやかわ ちはる)』。

彼らが小学校での深い親友となり、共に心を分かち合う中となった。

 

 

 

月日は早くも流れて中学生になって、部活動も始まったが、新一は運動系はあまりせずに帰宅部となって帰っていた。

進次郎たちは部活動をやっているのに、新一はやらないのは何故かと言うと、最初の転生の際に勇者である時のステータスがまだ残っていたのだ。

 

流石に最大とはいかない、弱冠低くなっている所はある。例えばこんな風な簡単に。

 

 

 

 

========================

 

 

 

天道 新一  元勇者

 

体力:100

 

力:200

 

すばやさ:200

 

魔力:0

 

耐久:200

 

 

 

========================

 

 

 

 

まあ、こんな感じである、新一は元勇者である為、ある程度体力も落ちてはいるが、これでも一般…アスリートと同レベルくらいの能力を持っている。

この後新一はある目的の為、自宅へ戻っている途中に老人と子供がガラの悪い男に絡まていた。

 

その様子を見ると、どうもガラの悪い男に子供が誤ってアイスクリームをその男のスーツにつけてしまったようである。

 

勿論わざとでないことではあるが、そのガラの悪い男は高級スーツが台無しと文句を叫び、脅しながら叫んでいた。

 

「おいおい!!俺のスーツを汚してしまったこと!どう弁償してくれるんだよ!!!」

 

「すいません! クリーニング代はキチンと支払いますので、どうか許してください!」

 

老人の祖母が謝っているのに対し、ガラの悪いは怒りが収まらず、更にエスカレートしていた。

新一は一応周りの人たちを見る、他の人は知らん振りして通り過ぎ、関わらないようにしていて、更に見ていた人たちはどうするか迷っていた。

 

「なにがクリーニング代だ!!おいガキ!!! この落し前はキッチリ付けさせてもらうぞ!!!」

 

ガラの悪い男が子供の胸倉を掴んで、持ち上げると拳を突き上げる。

 

「ひぃい!!!!!」

 

「やめて下さい!!!」

 

祖母が叫んだ途端、男の腕に誰かの手が掴まれる。

 

それに男は振り向くと、新一がそのガラの悪い男の腕を掴んで止めていた。その様子に見飽きた新一は自分で止めに入ったのだ。

 

「あ?!なんだオメェ!!」

 

「あんた恥ずかしくないのか?子供相手に、しかも大人が大声を上げながら拳をあげてさ」

 

「なんだと!!!!」

 

男は子供を落として、新一に向かって殴りかかろうとする。

 

っが新一はそれを避け、男は思わず体制を崩してしまう、更に新一は足を引っ掛け、その男を倒れさせる。

 

「どわぁ!!!」

 

 

ドテッ!!!

 

べり!!!

 

 

「!!?」

 

っと何やら破けた音がして、男は思わずズボンの方を見る、するとズボンのお尻辺りが破け、ハートのパンツが丸見えであった。

 

「……プッ!」

 

思わず新一が笑ってしまい、その場にいた人たちも笑ってしまう。

 

ガラの悪い男は思わず顔を真っ赤にして立ち上がり、尻を隠しながら涙目になる。

 

「く!!くっそおおおおおお!!! てめぇ!!!!覚えてやがれええええええええええええええ!!!!」

 

その男は走りながらその場を去っていき、新一は呆れた様子で見た。

 

「やれやれ、今時ハート型のパンツを履いている奴がいるんだな。…君、大丈夫か?」

 

新一はその場の子供に近づいて、様子を尋ねると…。

 

「…う、うわああああああああああああ!!」

 

子供は突如泣き出して新一に抱きつき、よほど怖かった思いを下と見える。

 

「よしよし、もう大丈夫だぞ。そちらも大丈夫ですか?」

 

「は、はい…、ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか」

 

「いいですよお礼なんて、この子が無事で良かったんですから」

 

そう言って新一は子供と祖母に挨拶した後、その場を後にして自宅へと帰る。

 

そしてその様子をジッと見つめていた一人の少女が新一を見つめいた事に、その当時の新一は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

そして高校生になって、新一はすっかり大人の身体に近い状態になった。

 

新一は自宅の自室で登校の準備をしているときに、首の無限ペンダントを見る。

 

女神リリアーナからもらったこのペンダントは確かに効果を発揮した、試しにエアガンでBB弾を発射してみた、一応5発を入れたマガジンを撃ってみると、5発どころか20発以上撃ち続ける事が出来て、これには確かに効果はあると確信する。

 

「これは確かに効果あるな。リリアーナに感謝しないとな…そして」

 

新一は更に右腕についてある細いブレスレットを見るめる、そのブレスレットはアリスから貰ったブレスレットで、転生の際に一緒に持ってきていた事に気付いた。

 

そのブレスレットを新一は触れながら微笑み、つぶやきながら見る。

 

「今日も頑張って行ってくるよ」

 

そう言って新一はカバンを持って、自分が通う高校へと向かう。

登校の途中である人物たちが新一の姿を見て声を帰る。

 

「おーい新一!」

 

「ん?おお…進次郎、軍平、きよし、千春、おはようさん」

 

「おう!!今日もこの軍平様の筋肉美を女子たちに見せて、惚れ込ませる瞬間!是非見せてやるから見ててくれよ!」

 

「軍平のそれはいつも失敗してるじゃん」

 

「そうね、私たちもそれに巻き込まれて私達はたまらないわ」

 

「おいおい!それはないだろう!」

 

朝から楽しい笑い声が飛び交い、色んな話をしながら高校へと向かった。

そして高校へと到着して、進次郎たちは新一とは違うクラスである為、ここで別れる。

 

「そんじゃな新一、また休み時間でな」

 

「ああ、また」

 

そう言って新一は教室へ入る、するとクラスの皆が一斉に新一に向けて、…舌打ちや一部の者は敵意の目線が降り注ぐ。

 

それには新一は無視して入ってくる、何故皆がその様子をするかと言うと、それは一人の少女の影響である。

 

「あ、おはよう!天道君、今日はずいぶん時間があったね。何時もはギリギリなのに」

 

彼女は『白崎 香織』、この高校のマドンナと言える存在で、世話好きで面倒みもよく、更に責任感も強い為学年問わず人気が高い。何故人気が高い彼女が新一に声を掛けるのはそれはまた別の話。

 

「おはようさん白崎、今日も元気がいいな」

 

「うん!」

 

笑顔がとても似合う彼女に他の男子たちは思わず目が行く、新一はそれに関係なく席にカバンを置くと、そこに3人の男女が来る。

 

「おはよう天道君、今日も朝から大変ね」

 

「香織、また天道の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」

 

「全くだぜ、だが天道は時より分かんねえ所があるけどな」

 

そんな様子を言って来たのは『八重樫 雫』、172cmの長身でポニーテールが特徴の彼女は女子に絶大な人気を誇る。

 

香織に声を掛けたのは『天之河 光輝』、ルックスがよく、成績がトップを誇る完全なイケメン野郎。そしてなぜか嫌な所がある『ご都合解釈』があって、残念が部分がある。

 

最後に大柄の『坂上 龍太郎』、軍平と同じ大きさを持ち、更に空手部に入ってる為腕っ節が強い。しかし頭の中まで脳筋な為、考える事はかなり単純。

 

「おはようさん、八重樫も天之河も坂上も、相変わらず仲がいいな。まあ俺も進次郎たちの仲なら負けないが」

 

その言葉に香織と雫は苦笑いしながら見て、光輝は呆れた様子になる。

 

「何を張り合ってるのかは知らないけど、君はもう少しシャキっとした方がいい、そんなぶっきら棒な感じでは皆や香織に迷惑だ」

 

「…お前にぶっきら棒って言われる事なんてないぞ、全くその変な解釈いい加減に直せ」

 

「何を言っているんだ。俺は人して正しい事を言っているんだ」

 

っとその様子に少しばかりイラっとする新一は言い返し、光輝もその様子に言い返す。

二人のちょっとばかりの言い合いに龍太郎は割って入ること出来ずにいたが、雫は光輝の言葉に少し呆れながら見ていた。

 

「? 私は別に迷惑なんて思ってもないよ、私は、私で天道君と話しているだけだから」

 

するとその言葉にクラスの皆が騒めく、それに新一は呆れながらも無視する、いちいち絡んでいては面倒になるからだ。

 

「え? ……そ、そうか。香織は優しいな」

 

「(気遣いはこっちとしては嬉しいんだが、これ以上余計な害虫共の目線がうっとしい…!)」

 

新一はクラスの嫉妬の目線が徐々にイラつき始めた、丁度その時授業のチャイムが鳴り、それにより皆が席に着いた。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

お昼となり、新一がカバンから弁当を取り出そうとした時に進次郎たちが教室にやって来る。

 

「おーい新一! 一緒に飯でも食おうぜ」

 

「おういいぜ、俺も丁度飯にするところだから」

 

そう言って空いている机を持ってくっつけて、新一たちが弁当を食べようとした時に香織がやって来る。

 

「天道君、私も一緒に食べても良いかな?」

 

「あっ、香織ちゃん、いいわよ~♪」

 

「千春が答えてどうすんだよ」

 

香織の返事に千春が答え、軍平が呆れながら言う。そんな様子で香織が向かおうとした時に、肝心のあいつがしゃしゃり出る。

 

「香織、こっちで食べよう、彼らは彼らのグループで食べるんだ。こっちのほうが楽しいぞ?」

 

光輝はいつものイケメンスマイルを使いながら香織を誘う、しかし香織は。

 

「え?どうして光輝君の許しがいるの?」

 

っと思わずその言葉に雫が「ブフッ!」と吹き出し。光輝は困った様子になりながらも笑いながら話を続けるが、結局の所、香織は新一たちと食べて、光輝たちは雫と龍太郎と食べようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

っがその時。教室全体に謎の魔法陣が現れ、徐々に全体を覆いかぶす。

 

新一はそれを見て思わず見る。

 

「(っ!!? これは魔法陣!!? どうしてこんなものが!?)」

 

彼が驚く中で非常事態に気付いた皆はそれに驚いて悲鳴をあげ、未だに教室にいた愛子先生が叫んだ時に、魔法陣が強烈な光を放ち、それにより新一たちはその場から姿を消し、教室は弁当や備品、ペットボトルが残されながらものけのからとされていた。

 

そして後に異例の事態となった学校側は警察に通報し、神隠し事件とされて捜査が進められるのであった。

 

 



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第2話 異世界トータス

本日2本目でございます。

1日2本出すの本当久しぶり…。


強烈な光が収まり、冷たい床の硬さに新一は目を覚ます、するとあたりは教室は全く別の場所となっていた。

 

まず目に飛び込んだのは巨大な壁画だった。縦横10メートルくらいはありそうな壁画に、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれている。

背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。

 

いい壁画ではあるのだが、不思議なものを感じるモノもある。

 

新一は辺りを見渡し、巨大な部屋の広場の中心にいる事が分かった。

 

そして背後に人の気配を感じ、振り向くとそこには辺りを見渡す生徒たちは勿論の事、香織の姿があり、更に進次郎たちが近くにいた。

新一は香織や進次郎たちに怪我がないことに一安心する。

 

「(無事の様だ…、しかし…)」

 

先程から疑問を思っている事が新一にはあった、それは先ほど自分たちの周りには30人程の人々が祈りを捧げ、何かをしているようだった。

 

その中で一人の老人の方が前に出て、新一たちに落ち着いた声で話し始める。

 

「ようこそ…トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は【聖教教会】にて教皇の地位に就いております『イシュタル・ランゴバルド』と申す者です。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

イシュタルと名乗る老人に困惑する皆、だがその中で新一のみが落ち着いた様子で見て、考えていた。

 

「(…また、異世界?)」

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

少し落ち着いて場所を移し、新一たちは現在大広間の様な場所で10m以上のテーブルで並んで座っていた。

 

混乱していた生徒たちは光輝のカリスマ力が何とか抑え、少しばかりひと段落している、唯一教師である愛子先生が思わず涙目でなってしまったのは言うまでもない。

 

上座の近い所に愛子先生、光輝たち、そして取り巻きたちが座っており、新一たちのグループはその後部に座っていた。

 

皆が座っていると、数名のメイド達がカートを押してやって来ていた、そこで男子数名が思わず目を輝かせていた。

なんせおばさんや年取ったメイドではなく、正真正銘の美少女メイドであったのだ。

 

それには半数の男性陣が見とれている中で、女子達は冷たい目線でその様子を見ていたのであった。

 

「おい新一!! 本物のメイドだぞ!メイド!!」

 

「しかも美少女と来たもんだぜおい!!」

 

「ちょ、ちょっとばかし凄いね…」

 

進次郎たちは興奮しながら見ていて、千春は冷たい目線で見ていた。

 

「全く男子共は…、新一君もそう思って…ん?」

 

千春は新一が何やら考え事をしていて、メイドが紅茶を新一の目の前に置いても見向きもしないのを見て、千春は問う。

 

「新一君、どうしたの?」

 

「ん?ああ…ちょっとな」

 

「??」

 

その様子に千春は頭を傾げ、興奮していた進次郎たちは新一の方を見て、思わず目を合わせる。

 

そしてそれを香織はホッと一安心していた、メイドに夢中になっている男子たちの様子に心配して新一の方を見ていて心配していたが、何もないことに安心したのだ。

香織の様子を雫は微笑んで見て安心する、それを光輝は少しばかり何かと気になる雰囲気をしていたのはまた言うまでもない。

 

全員に飲み物が行き渡った所にイシュタルが語り始める。

 

「未ださぞ混乱している者達もいることでしょうが。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

その言葉にイシュタルは語り始める。

 

 

 

まずこの世界、トータスと呼ばれる世界は三つの種族に別けられている。

 

人間族、魔人族、亜人族の三種類の種族が北、南、東の方角によって別けられている。亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと暮らして生きているとの事。

 

そして問題なのは人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

 

魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していた。

ここ数十年、大規模な戦争はしていないが、しかしここ最近、異常事態な事が多発しているらしい。

 

それは魔人族による魔物の使役だ。

 

魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだと言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣だの事。

 

それらを聞いていた皆が唖然とする中で、新一のみ、全てわかっていた様子をしている。

 

「(どこも変わらないな。魔物ことも…世界の事も)」

 

新一は以前、前の世界で魔王が放った魔力によって、その世界の獣や動物達がその魔力を受けて凶暴化、更に変化して人を襲い掛かり、更にそれによって獣神へと変貌してしまう事態が起こったらしい。

それに対処する為、女神リリアーナが新一をその世界に送って、その世界を魔王から救って欲しいと頼んだのだ。

 

今それを考えると、どこも変わらない、そう言う異常な考え、支配したい者達の考え、そう考えると新一は少しばかり頭が痛くなる。

 

そんな中でイシュタルが語り続けていた。

 

「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。

このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。

召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という“救い”を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。どこかで神託を聞いた時のことでも思い出しているはず、その様子に新一はずっと見ていて、少しばかり“疑問”を持っていた。

 

そんな中で突然立ち上がり、猛然と抗議する人が現れた。

 

言わずと知れず愛子先生だ。

 

「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!

ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

愛子…現在彼女は25歳、その愛子は低身長と童顔、更に愛らしい性格が人気が高く、生徒からの信頼も厚い、そんな彼女が必死に相手側に理不尽な理由に抗議するも、イシュタルの言葉で辺りが凍る。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能なのです」

 

っとその言葉にその場にいた皆が思わず騒然としてしまう。

 

「ふ!不可能って…ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。

我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんので、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第という事なのです」

 

「そ、そんな…」

 

愛子は脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。すると今の様子に周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!?」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

皆が混乱する中で進次郎達も混乱していた、まさかこんな状況に巻き込まれることになろうとは。そして新一は冷静に今の状況にどう対応するか考えていた。

自分が経験してきた状況では、勿論戦う意思を聞いて戦う選択を選んだのだが、今回は違う、理不尽な上に身勝手の召喚、そしてイシュタルの“奥に隠している考え”が新一の警戒心を高まらせていた。

 

 

 

バンッ!!!

 

 

 

すると光輝が立ち上がりテーブルを強く叩いた。その音に驚いて注目する生徒達。新一もその様子に目線だけを光輝に向け、光輝は全員の注目が集まったのを確認すると話し始める。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。だから……俺は戦おうと思う。

この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。

それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

イシュタルの言葉に光輝は自分の手を見て問う。

 

「今の俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっとこの世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。…俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救って見せる!!」

 

そう手を握り締め拳を作りそう宣言する光輝。

 

それと同時に彼のカリスマ性は遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。

皆が活気を取り戻す中で新一は光輝の宣告とは裏腹に、何やら厳しい様子で見ていた。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。俺もやるぜ?」

 

「龍太郎…」

 

「今の所、それしかないわよね。気に食わないけど……私もやるわ」

 

「雫…」

 

「え、えっと。雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織…」

 

彼のメンバーが光輝に賛同する。後は当然の流れというようにクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っがそれを一人の男が声を上げる。

 

「世界を救う……ね、そんな簡単な言葉、気安く言うもんじゃねえぞ天之河」

 

すると皆がその声が発した人物に目を向ける、光輝にそう言ったのは新一だった。新一は腕を組んだまま光輝に目線を向いたまま言い、それに光輝は新一の方を向く。

進次郎達も新一のその言葉を聞いて見る。

 

「新一?」

 

「どう言う意味だ天道、俺の言った事が気安く言うもんじゃないって」

 

「そのままの意味だ」

 

新一はそう言って立ち上がって、光輝の方を見て言う。

 

「お前、世界を救うって事は魔人族と、…即ち“人を殺す”と言う事だぞ」

 

っと新一の言葉に皆は思わず息をのみ、背筋がゾッとする。だれもその言葉を聞いて、ようやく自分の行動を理解したのか少し後悔の様子も伺う。

光輝はそれに少し戸惑う様子を見るも、すぐに反論する。

 

「だ、だがこの世界の人たちは今苦しい状況に陥ってるんだ! 俺はそれを見過ごす事なんて出来ない!それに今の俺達には力がある!」

 

「力があるっか…なるほどね」

 

光輝の言葉に新一は移動して、光輝の元まで歩み寄り、その様子を皆は唖然としながら見ていて、香織はオロオロしながらも新一の様子をずっと見ていた。

そして新一は光輝の前まで来て、強い視線で光輝を見る。

 

「いいか天之河、力は所詮力だ……。その力に飲まれて、逆に人々を傷つけ、殺す事になってしまう…。お前はそれを、本当に理解しているのか?」

 

「と!当然だ! 俺は絶対に飲み込まれたりしない!!」

 

その言葉に光輝は当然の様に反論し、新一に負けないくらい強い視線を返す。

 

新一は光輝の言葉を聞いて、テーブルのカップを見て、それを手に取り、そして…。

 

「フッ!」

 

 

パリン!!!

 

 

カップをその場で割って、破片を手に取る。

皆は新一の行動を見て思わず驚き、何をするか分からず、ただ唖然とする。

 

そして新一は右手に破片を持ち、左手の手の平にめがけて切りつける。

 

 

バシュ!!!

 

 

「「「「!!!?」」」」

 

「天道君!!」

 

新一の突然の行動に皆は驚きを隠せない、特に香織は思わず声を上げてしまう。

 

その事にも関わらず、新一は手の平から流れ出る血を光輝に見せ、そして握り締める。

 

「いいか?天之河、お前は自分が行おうとしている事を自分で理解して言っているつもりだろうが、俺から見れば理解してない様に見える。先ほどの様に、人を傷つけながらも出来るのか?」

 

「っ!……も!勿論だ!! 俺は絶対に救ってみせる!!この世界を!!」

 

光輝の言葉を聞き、新一は少しばかり間を空けた後に語る。

 

「…良いだろう、なら見極めさせてもらう。お前の…覚悟とやらをな」

 

「ああ!勿論だ!!」

 

光輝は新一の言葉に言い返し、そう言って新一はその場を去ろうとする、っがその時香織が新一の腕を掴む。

 

「ん?」

 

「天道君!手を出して!」

 

その威圧感に新一は素直に左手を出すと、香織はハンカチを取り出して、新一の手の平にハンカチを巻く。

 

「痛いことはしないで…、お願い」

 

「…すまん」

 

そう言って新一は自分がいた場所に戻っていく。

戻ってきた新一に進次郎たちは心配ながらも声を掛けるのだった。

 

 

 

そして皆はこの世界の戦いに身を通す結果となった。

 



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第3話 天職のステータス

この世界の戦いに身を投じる事になった新一達、しかし普通の高校生だったものにいきなり魔物や魔人と戦うのは不可能な事、一部…新一は例外であるが。

 

しかしながらその事情は相手は当然予想していたらしく。イシュタル曰く…この聖教教会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っているとの事。

聖王教会と王国は陰ながら親密な関係がある為、受け入れを容易くしてくれていた。

 

新一達は神山から下りて、下山先にあるハイリヒ王国へと向かう。

 

そしてハイリヒ王国に向かうのだが、門を通った先には雲海が広がっていた。

 

高山特有の息苦しさなど感じていなかったが、流石に高山にあるとには気付かなかった。息苦しさがかんじないのは魔法で生活環境を整えているのだと考えてもいい。

 

香織達太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見蕩れた。

新一はその様子をずっと眺めてはいたが、少しばかり懐かしさも感じる、実は前の世界でもこの光景はあったのだ。

 

そしてどこか自慢気なイシュタルに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてくる。大聖堂のと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。

台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。柵の向こう側は雲海なので大多数の生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、イシュタルが何やら唱えだした。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――《天道》」

 

唱えた途端、足元の魔法陣が燦然と輝き出した。そして新一達が乗っている台座が、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。

 

先ほどの“詠唱”で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。この台座は別の名で言うロープウェイなのだろう。ある意味初めて見る魔法に生徒達がキャッキャッと騒ぎ出す。

 

「すっげえええ!魔法ってすげえな!!」

 

「おう!!ホントだぜ!」

 

「機械とはまた別のものだね…?」

 

メカオタクのきよしは魔法の効果に感心しつつも、やっぱり彼曰く、機械の方が馴染みが強いらしく、そんなに興味はないらしい。

 

「それよりも新一君、手は大丈夫?」

 

千春が新一に手の事を問い、それに新一は手を見ていう。

 

「ああ、問題ないよ」

 

「っておいおい!問題ないって…あのな」

 

「あれは僕たちびっくりしたよ、いきなり手を切っちゃうんだもん」

 

「いくら天之河に言う為とは言え、流石にな~」

 

進次郎達の心配に新一は分からなくもないが、これはあえて光輝に言う必要があったのだ。気安く甘い考えで世界を救うのは必ず命を落とす、そして何より、自分の経験がそれを言ってる。自分が一番それを知っているからだ。

 

「まあ…とりあえず今は様子見ってことだ、天之河がどう行動するのか、今後見る必要があるけど」

 

「ふ~ん…、あっ!見えてきた!」

 

千春が指差す方に新一達は見る、雲海を抜け地上が見えて来て。眼下には大きな町…否、大きな国が見える。

山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。新一達が乗っている台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

 

皆が見つめる中で、新一はその王国を見つめながら思った、かつての世界…『異世界ディスペア』の王国…『アルテス王国』に、そこでは様々な事情を抱えていた者達が多く、そこでアリスもどう救うか悩んでいた時に、新一と出会った。

それに新一はアリスとの出会いで、世界を救う心の強さに引かれ、ディスペアを救う決心をし、旅を始めた。

 

それを思うと、どれも懐かしい感じの思い出であり、忘れられない物だった。

 

だが今は違う、この世界で召喚され、何が起こっているか調べる必要がある。元の世界に帰る為にも…ここで起きている事を調べ、結果次第では救うかを見極める必要である。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

王宮に着くと、新一達は真っ直ぐに玉座の間に案内された。

 

教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を歩き。道中で騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。新一達が何者かある程度知っているようだ。

 

美しい意匠の凝らされた巨大な扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

 

イシュタルは、それが当然というように悠々と扉を通る。新一達や光輝達一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉を潜った。

扉を潜った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子…玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っていた。

 

「よくぞ参った勇者一行よ、我らはそなた達を歓迎しよう」

 

そしてその隣には王妃と思われる女性、その更に隣には10歳前後の金髪碧眼の美少年、14~5歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。

更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと30人以上並んで佇んでいる。

 

イシュタルは新一達を止めて、国王の元に行き、イシュタルに手を差し出す。

すると国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。教皇の方が立場は上のようで、国を動かすのが“神”であることが確定だと、新一は内心で思った。

 

そして自己紹介でだが、国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒと言い、王妃をルルアリアと言うらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナと言う。

 

っがそこで新一は思わずリリアーナの名を聞いて心に引っかかる。

 

「(ん?リリアーナ…? 女神リリアーナと同じ名前…偶然か?)」

 

因みにランデル王子は香織の魅力に引かれ、時々見ていた事は言うまでもない。

 

その後、晩餐会で、食事をしたり、教官役の騎士団が選ばされたりと、色んな事がありながら1日が終える。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 

「勇者御一行よ!昨日も挨拶をしたが、私がハイリヒ王国騎士団の団長を務めるメルド・ロギンスだ!さっそくだが諸君等に渡したい物がある、“ステータスプレート”だ」

 

騎士団員が新一達に12×7cm位の銀色のプレートを配る。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルドが直々に説明を始める。

 

最初は騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思った皆だったが、対外的にも対内的にも『勇者様一行』を半端な者に預けるわけにはいかないとの事。

メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を副長(副団長のこと)に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだ。最も副長は大丈夫ではないかも知れないが…。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。

最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

最も新一達もその方が気楽で良かった。遥か年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪くてしょうがない。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。

そして“ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代の『アーティファクト』の類だ」

 

「アーティファクト?」

 

アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。

そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。

普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

皆が「なるほど」と納得している中で新一のみ、アーティファクトの言葉を聞いて、思わず目を細める。

 

「(アーティファクトを一般的に…? よく神代の物を一般に使うもんだな…。アーティファクトは神々が来る時の戦い時に作った物を一般的にとは、この世界の常識は変わってるな…)」

 

新一からすれば、アーティファクトはとても貴重で、ディスペアでは鎧の一つに使われていたものだった。それを一般的に使われているものと知って、思わず耳を疑う。

 

そう言ってる中、新一は針で指を刺し、血をアーティファクトに浸して、魔法陣に擦りつける。

すると、魔法陣が一瞬淡く輝いて、この様に表示される。

 

 

 

========================

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:1

 

天職:■■:副天職:錬成師

 

筋力:■■■

 

体力:■■■

 

耐性:■■■

 

敏捷:■■■

 

魔力:■■■

 

魔耐:■■■

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成・複合魔法・格闘術・剣術・斧術・射撃・棒術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解

 

 

========================

 

 

 

っとその様に表示されたが、なぜか表示されていないものがあって。それに新一は頭をかしげていた。

 

「全員見れたか? 説明するぞ、まず最初に『レベル』があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。

つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

彼曰く、どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。

詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。

それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

メルドの言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。人によっては地道に腕を磨かなければならない様である。

 

「次に“天職”ってのがあるだろう? それは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。

天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。

非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

「(なんだって…?)」

 

その言葉に新一は、自分のステータスを見る。

見れば天職は何かに隠されていて見えていないらしく、副天職の方では錬成師とされていて、その他はきちんと表示されている。でもどういう訳かステータスは隠されている。そこだけが分からなかった。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ!

あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

どうやらこの世界のレベル1の平均は10らしい、ごく一般とほぼ変わらないらしい。

 

メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは…。

 

 

 

 

========================

 

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

 

========================

 

 

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。

成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。

 

「おい新一!こっちを見てくれよ!スッゲェぜ!」

 

っと進次郎達が自分たちのステータスプレートを見せて、それに新一はそれを見る。

 

 

 

========================

 

 

上地進次郎 17歳 男 レベル:1

 

天職:双剣士

 

筋力:50

 

体力:75

 

耐性:80

 

敏捷:100

 

魔力:60

 

魔耐:100

 

技能:双剣術・言語理解

 

 

 

郷田軍平 17歳 男 レベル:1

 

天職:大斧戦士

 

筋力:85

 

体力:100

 

耐性:80

 

敏捷:40

 

魔力:50

 

魔耐:45

 

技能:大斧術・剛力・言語理解

 

 

 

飯島きよし 17歳 男 レベル:1

 

天職:弓手

 

筋力:20

 

体力:55

 

耐性:60

 

敏捷:70

 

魔力:80

 

魔耐:100

 

技能:弓術・言語理解

 

 

 

 

早川千春 17歳 女 レベル:1

 

天職:魔道士

 

筋力:5

 

体力:30

 

耐性:15

 

敏捷:10

 

魔力:100

 

魔耐:120

 

技能:全属性適性・全属性耐性・調理+[全毒無効効果]・言語理解

 

 

========================

 

 

 

新一は進次郎達の天職を見て、納得した表情をする。

 

「へぇ~、皆かなりいいもん持ってるじゃないか。それに千春、スキルに調理なんてお前のスタイルに合ってるんじゃないか? ほら、お前結構料理好きだし」

 

「うん、これなら皆にいいもん食べさせられるんじゃないかな? 毒無効だったら結構嬉しいかも」

 

っとそう言っていると、メルドが新一を読んで、ステータスプレートを要求する。メルドの表情はホクホクしていて、皆が多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。

 

メルドが新一のステータスプレートを見て笑顔の表情から「うん?」真剣な表情をする、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。

そして、ジッと凝視した後にステータスプレートを返し、真剣な表情をしたままだった。

 

「天職が隠されていて、副天職と言うものがある…? どういう事だこれは、今まで見た事がないぞ、スキルの方は良い方なのだが、肝心の天職とステータスが分からん…これはどういう事だ」

 

っとその様子を見た男子生徒『檜山大介』がもしやと思い、笑みを浮かばせながらやって来て、新一のステータスプレートを取る。

 

それに新一は檜山の方を見る。

 

「あ、おい」

 

「ん?ぶっはははっ~、なんだこれ!天職が錬成師ってマジかよ!」

 

「ぎゃははは~、ムリムリ!笑っちゃうぜ!」

 

「これはたまげたぜ!ぷはははは~」

 

「まあ、天道が作った武器とか超イラネー、絶対に死ぬわ~」

 

っと檜山の取り巻きの『斎藤良樹』と『近藤礼一』と『中野信治』がそれを見て檜山と共に大笑いする。それと同時に新一を目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。

だがそれはあくま“副天職”の方である、彼が実際どんな天職を持っているか分からない。

 

そして進次郎達のイラつきは勿論の事、香織や雫も不快げに眉をひそめていた、香織に惚れているくせに、なぜそれに気がつかないのか。その様子を見て新一は檜山からステータスプレートを取り返す。

 

「お前らは副天職の方を見てるだろう? 本職は天職の方だ。これさえ分かればいいんだが」

 

「ムリムリ、お前じゃあ即死だよ。ソ・ク・シ!」

 

「バカを言うんじゃない!!」

 

っとメルドの怒鳴り声に、檜山達は驚く。

 

「この者のステータスを見る限り…、恐らくはそいつと同レベルか、或いはそれ以上かも知れん。第一、天職の他に副天職があるのはこいつだけだ。本職がその隠された方なら、バカには出来んぞ…」

 

メルドは光輝の方を見ながら新一見て言い、それに香織は思わず表情が明るくなり、雫は香織の様子を見て微笑む。

 

すると愛子が新一の方の元にやって来て。

 

「そうですよ!天道君!気にする事はありません! 先生だって非戦系?とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。ほらっ!」

 

そう言って、愛子先生は新一に自分のステータスを見せた。

 

 

 

========================

 

 

畑山愛子 25歳 女 レベル:1

 

天職:作農師

 

筋力:5

 

体力:10

 

耐性:10

 

敏捷:5

 

魔力:100

 

魔耐:10

 

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

 

っとそう記されていて、その様子を見た新一は、愛子の肩に「ポンっ!」っと手を置きながら言う。

 

「先生、“空気を読む”って事をまず覚えましょう」

 

「ええ!?どういうことですか!?」

 

新一のその言葉に愛子は全く分からず、それに進次郎達はそれを見て思わず驚く、なんせ愛子の天職は糧食問題を解決させるチート天職なのだからだ。

 

なんにせよ、今後の訓練内容が決まり、今後の為の訓練が始まるのであった。

 

 



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第4話 静かなる怒り

新一達の天職とステータスが分かり、その内容で訓練が始まって二週間が経った。

 

皆が訓練に励む中、新一は自分のステータスプレートを見て少しばかり考え、今のレベルの内容を見て考えていた。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:10

 

天職:■■:副天職:錬成師

 

筋力:■■■

 

体力:■■■

 

耐性:■■■

 

敏捷:■■■

 

魔力:■■■

 

魔耐:■■■

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成・複合魔法・格闘術・剣術・斧術・射撃・棒術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

 

この通り、レベルが10までに上々に上がっただけで、何も変化していない。と言うか…今だ天職がどんなものなのか全く分からない。

これでは全く手詰まり状態になりかねない。

 

 

新一はそれに少しばかり感がていると、進次郎達がやって来る。

 

「おーい新一、何考え後としてんだ?」

 

「俺の天職の事を考えていたんだよ。訓練では結構良い感じなんだが」

 

「そっか…、新一君はまだ天職は分からないままなんだよね。副天職は錬成師でしょう?」

 

「あ~!!そうだ!!」

 

っときよしが何やら大声をあげて、それに新一達は振り向く。

 

「どうした?きよし」

 

「いいことを思いついた! ねえ!新一は錬成出来るんだよね?」

 

「ああ…とりあえずはな、だがどこまで錬成出来るか分からんが」

 

「大丈夫だよ! 設計は僕がするから、新一はそれの通りに作ってくればいいんだ! よ~し!僕の望んでいた物が出来るぞ!!」

 

きよしは興奮しながらどこかへと行ってしまい、その様子を唖然としてしまう新一達。

 

「あいつ…急に人が変わるよな。なにかできるとなると」

 

「まあ~あいつは昔っからだよな」

 

新一達はそう思いながらも、自分たちの訓練に戻り、ステータスの向上を伸ばすのであった。

 

因みに進次郎のステータスはこうだ。

 

 

========================

 

 

 

上地進次郎 17歳 男 レベル:9

 

天職:双剣士

 

筋力:63

 

体力:83

 

耐性:89

 

敏捷:114

 

魔力:76

 

魔耐:124

 

技能:双剣術・言語理解

 

 

 

郷田軍平 17歳 男 レベル:9

 

天職:大斧戦士

 

筋力:105

 

体力:170

 

耐性:140

 

敏捷:66

 

魔力:59

 

魔耐:57

 

技能:大斧術・剛力・言語理解

 

 

 

 

飯島きよし 17歳 男 レベル:8

 

天職:弓手

 

筋力:32

 

体力:64

 

耐性:71

 

敏捷:88

 

魔力:97

 

魔耐:121

 

技能:弓術・言語理解

 

 

 

早川千春 17歳 女 レベル:7

 

天職:魔道士

 

筋力:19

 

体力:44

 

耐性:27

 

敏捷:22

 

魔力:157

 

魔耐:212

 

技能:全属性適性・全属性耐性・調理+[全毒無効効果]・言語理解

 

 

 

========================

 

 

こんな風に、進次郎達のステータスとレベルは上昇して、良い感じのコツをつかみ始めている。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

翌日後、新一は訓練するために訓練所へと向かう中…。

 

「ぐあっ!」

 

「ん?」

 

なにか音が聞こえ、新一はその音の発生場所に足を踏み入れる、するとそこにはきよしが檜山達に寄ってたかってリンチされている様子が目に映った。

 

きよしが何か抱えている物が見え、それに檜山達が蹴って蹴りまくって、それを引き離そうとしていた。

 

「おい!いい加減にそれ渡せよ?」

 

「あんな奴の為になんでそんな必死なんだよ。有り得ねえっつの」

 

「はぁ…はぁ…、君…君達には…関係ないだろう。ぼ、僕は…新一の為にやってるんだ!」

 

きよしがボロボロな状態になりながらも、檜山達に向かって目線を向けて睨みつけ。それに檜山はイラっとする。

 

「なんだよその目はよ!!」

 

檜山の蹴りが、きよしの横腹に突き刺さり、それによりきよしは表情を歪ませる。

 

「っぐ!!」

 

蹴られたきよしは身体をより丸くするも、何とか耐え抜いていて、それにより檜山達はイラつきが徐々に達する。

 

「くっ!いい加減に!」

 

檜山が訓練用の剣を抜こうとしたその時、檜山の腕が誰かに掴まれる。

 

「あっ?」

 

檜山が振り向いた先は、新一が檜山の腕を掴んでいて、鋭い眼光を立てながら檜山を睨んでいた。

 

「何してんだよ…おめぇ」

 

「し…新一」

 

「て!天道!? てめぇ!離しやがれ!」

 

腕を掴んでいる新一の左手を解こうとする檜山。しかし新一の手は全く動かず、更には握り締める手の力が徐々に強くなっていった。

それには檜山の腕が痛みに耐え切れない。

 

「いででででででで!!!や!!やめろ!!!」

 

「こいつ!!!」

 

近藤が新一に向かって、剣の鞘で使って背中を強打する。

だがそれを受けても、新一はビクともせず、更に檜山の腕を握り強める。

 

「あだだだだだだだだだだだだだ!!!!!いでででででぇぇぇぇ!!!」

 

「て!てめぇ!!ここに焼撃を望む──“火球”!」

 

「ここに風撃を望む──“風球”!」

 

斎藤と中野が魔法を使って新一に向かって放ち、魔法が新一の身体に直撃する、魔法自体は一小節の下級魔法だ。それでもプロボクサーに殴られるくらいの威力はある。

それは、彼等の適性の高さと魔法陣が刻まれた媒介が国から支給されたアーティファクトである事が影響を及ぼしている。

 

だがそれでも新一は全くビクともせず、更に力を強めていく。その影響に檜山の骨がミシミシと悲鳴を上げる。

 

「だあああああああああああああああああああああああああ!!!!や!やめてくれえええええええええええ!!!」

 

猛烈な痛みに耐えられない檜山は悲鳴をあげ、近藤たちはそれに驚きを隠せず、思わず尻餅をついてしまう。

 

「ひいいっ!!」

 

「な!なんだよお前!?」

 

近藤たちは魔法を受けても平然としている新一の怯え、きよしはふらつきながらも新一に言う。

 

「新一!もういいよ! 僕は…平気だから!」

 

「何が平気だよ…、そこまでされておいてさ。それにテメェ等もテメェ等だ、俺が気に入らなかったら…直接言いに来いよ!」

 

「ぐあああああああああああ!こ!この野郎!!!」

 

檜山は新一に向けて、残っている左手を使って殴りかかる。

 

 

ガツン!!!

 

 

新一の右頬に当たるも、全くビクともせず、更に鋭い目線が檜山の目を捉えていた。

 

「ひぃぃ!!」

 

「さっきも言ったが、俺が気に入らなかったら直接来い、いくらでも相手してやる!」

 

そう言って新一は檜山の手を放り離して、檜山は腕を抑えながらこがりながらもがいてた。

 

「いででででででで!!!いででででよよおお!!!」

 

「「「檜山!!」」」

 

近藤たちが檜山に駆け寄り、新一はきよしの元に駆け寄る。

 

「新一!!」

 

すると進次郎たちと香織たちが突然悲鳴が聞こえて、慌てて駆けつけるとそこに新一たちがいて、今に至る。

 

そして進次郎達は新一ときよしの元に行き、きよしがボロボロになっている様子に進次郎は新一に問う。

 

「どうしたんだよ?!」

 

「檜山達がきよしに一方的な暴行をしていたんだ」

 

「貴方達…きよしに何をしたのよ!」

 

千春が檜山たちを睨みつけ、それに檜山達はその場から逃げていく。

 

「おい待てよ!!」

 

軍平が呼び止めるも、檜山達はもうすでにいなかった、軍平は舌打ちをしながら拳をぶつけ合わせ、新一は香織の方を向く。

 

「白崎、すまないがきよしに治癒の魔法をかけてくれないか?」

 

「え、うん…でも天道君も怪我が──」

 

「俺は平気だ」

 

新一の言葉に香織は心配しながらも、きよしの元に寄って、治癒魔法をかける。香織の治癒魔法によりきよしの身体が徐々に癒されていく。

 

雫は新一の方を見ながら、右頬の後を見て問う。

 

「本当に大丈夫なの?」

 

「ああ、大丈夫だよ…、あの野郎…」

 

新一が檜山のことでイラついている時に、肝心の者がこう言う。

 

「だが檜山も天道の様子でかなり怯えていたぞ、もしかしたら檜山は天道になにかしたんじゃないのか?時々天道の不真面目さもあったからな」

 

「あっ?!お前本気でそう思っているのかよ!!」

 

軍平が光輝の言葉に怒りが出て、それに光輝は軍平の方を向きながら言う。

 

「俺は人として当たり前の事を言っているだけだ。檜山達も悪いところはあるが、天道も少しはやり過ぎだったぞ」

 

光輝は『基本的に人間はそう悪いことはしない。そう見える何かをしたのなら相応の理由があるはず。もしかしたら相手の方に原因があるのかもしれない!』と言う解釈がある。

彼の“ご都合解釈”がそう成り立ってしまっているのかも知れない、新一は光輝の気づいていない無関心な心にイラつきが出てくるも、今はきよしの様子を見て、連れて行く。

 

その時に新一は光輝に言う。

 

「少しは自覚しろ、その無関心な頭を」

 

「何?どう言う意味だ? 天道!」

 

光輝は新一にその意味を問いかけるも、新一達はその場から去っていき、香織は少しばかり心配しながらも新一の後を追いかけるのだった。

 

「あ!香織!」

 

新一達を追いかけていった香織を呼び止めようとする光輝だが、それを無視する香織、雫はそれを静かに見守る。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

新一達がきよしを連れて行く途中で、新一達を追いかけてきた香織がやって来る。

 

「天道君!」

 

「白崎?」

 

「ちょっと待って、今怪我を治すから」

 

そう言って新一に治癒魔法をかける香織、心配そうに見つめる香織に新一は少しばかり困る表情をする。

その様子を進次郎達はからかいそうになるが、それを千春が止めて、呆れながら睨んでいた。

 

進次郎達は千春の睨みを冷や汗を流しながら目線を逸らし、その様子に新一は呆れる様子になる。

 

「天道君」

 

っとそこに雫がやって来て、新一が振り向く。

そして雫が新一に向かって小さく謝罪する。

 

「ごめんなさいね? 光輝も悪気があるわけじゃないのよ」

 

「あれが悪気があるわけじゃない…か。とてもじゃないけど俺にはそうは思えないんだが」

 

「ぅ…ごめんなさい」

 

その事に雫は気になる所に新一は何とも言えない表情をする。っとその時背筋に強い視線を感じる、香織がスマイル表情の威圧感に思わず新一は勿論の事、雫は冷や汗をかいてしまう。

 

そんな中で、進次郎がきよしに先ほどの仕打ちを受けていたことを問う。

 

「きよし、お前はどうしてあんな仕打ちを受けていたんだ?」

 

「うん、実は新一にある物を持ってきたんだよ。ほら、錬成の!」

 

「ああ~あれか、それで?」

 

「実はこれを持ってきたんだよね!ほら!」

 

きよしは持っていた袋を開けて、それを新一に見せる、新一に見せたのは武器の設計図で、中には銃を元にした物があった。

新一はその設計図を見て、その内容を確認する。

 

「これがきよしが考えた物か?」

 

「うん、んでどうかな? 上手く出来そう?」

 

「分からないな、上手くできるかどうかやってみないとな」

 

「勿論だよ! 僕も必要な素材はかき集めるからさ! くぅ~!ワクワクするな~!」

 

メカオタクのきよしがここまで興奮するっと言うことは、自分が考えていた物が新一の力の助けによって実現されると言う事だ、天職とはまた別の才能である。

副天職がきよしにだったら、絶対に向いている職業だ。

 

その様子に新一達は笑うしかなかったのだった。

 

 

 

そして訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのだが、今回はメルドから伝えることがあると引き止められた。

何事かと注目する生徒達に、メルドは野太い声で告げる。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!

まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

そう言って伝えることだけ伝えるとさっさと行ってしまった。ざわざわと喧騒に包まれる生徒達、新一達のグループもその様子に少々焦る。

 

「おいおい本当か?」

 

「実戦か…マジでやるんだな」

 

「僕…未だに自信がないな」

 

「私も…」

 

そんな様子に、新一は不満はないが、流石に思うところはあった。

 

「(皆がこの調子か…、無理もない…でもこれが上手く行かなかったら、本当に前途多難だせ…)」

 

っとそう思うしかない新一であった。

 

 



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第5話 真夜中の約束

メルドが昨日、報告した通り、新一達はメルド達が率いる騎士団員複数名に連れられ、馬車で移動をしていた。

馬車の中で新一は外を見ながら考え事をしていて、それにきよしが問いかけてくる。

 

「ねえ新一、何考えてるの?」

 

「ん?いや。別に大したことじゃないよ」

 

「そう?」

 

それに頷く新一。

きよしはその後進次郎達と少しばかり話し合い、新一は持ってきた本を読んで時間を過ごす。

 

そうしているうちに、目的地の場所に着く。

 

宿場町ホルアド…そこには目的の場所が存在していた。

 

【オルクス大迷宮】

 

それは、全100階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現するといわれている。

 

しかしながらこの迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからという事と、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の『魔石』を体内に抱えているからだ。

 

魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核をいう。強力な魔物ほど良質で大きな核を備えており、この魔石は魔法陣を作成する際の原料となる。

魔法陣はただ描くだけでも発動するが、魔石を粉末にし、刻み込むなり染料として使うなりした場合と比較すると、その効果は三分の一程度にまで減退する。

 

分かりやすく言えば、魔石を使う方が魔力の通りがよく効率的ということだ。その他にも、日常生活用の魔法具などには魔石が原動力として使われる。

魔石は軍関係だけでなく、日常生活にも必要な大変需要の高い品なのである。

 

それと良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。

一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

ホルアドに到着し、新兵訓練によく利用する王国直営の宿屋に止まる事となった新一達。そこで新一は久しぶりの普通の部屋に思わずベッドへと寝転がる。

 

王国の部屋はとても豪華で、とてもじゃないけど落ち着かない様子があって、眠れない時があった。別に寝れない訳ではない筈だが、新一はあまり豪華過ぎるものには眠れない事があるのだ。

前の世界でも同じようなこともあり、王国で1日だけ泊まったことがあったが、どうしても眠れない時があって、その後の冒険に影響を及んでしまった事があった。

 

「ふぅ…、この世界。もっと知る必要があるな…何故俺達が呼ばれたか…、調べる必要も」

 

そう思いながら、明日は早くも迷宮への訓練が始まる。っと言いつつも新一にとっては戦闘のカンを取り戻すには最適な日。

新一は目を閉じながら深い眠りにつく。

 

っとその時だった。

 

 

 

コンコンコン。

 

 

 

「ん?」

 

新一の眠りを邪魔するように扉からノックする音がして、それに新一は起き上がり、声を返す。

 

「誰だ?」

 

「天道君、起きてる? 白崎です。ちょっと…いいかな?」

 

「白崎…?」

 

真夜中の時間にわざわざ白崎がやってきた事に、新一は疑問に思いながらも、扉の方に向かい、そして、鍵を外して扉を開けると、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「うん。その…少し天道くんと話したくて…。…やっぱり迷惑だったかな?」

 

「いや、迷惑なんて思ってないぞ。入りな、廊下は寒いぞ」

 

「うん!」

 

そう言いつつ、新一は香織を部屋に招き入れると、香織はなんの警戒心もなく嬉しそうにして、窓際に設置されているテーブルセットに座った。

 

新一は紅茶とコーヒーを用意しながら湯を沸かせ、持って行く。

とは言うものの、ここのコーヒーと紅茶はティパックと粉末の物であって、高級なものではない、それでもないよりマシなものはない。

 

そして新一は香織と自分の分を用意し、紅茶を香織に差し出して、向かい側の席に座った。

 

「ありがとう」

 

嬉しそうに紅茶を飲む香織、新一はコーヒーを飲みながらも、香織の方を見て問う。

 

「白崎、俺に話ってなんだんだ? この真夜中に」

 

「うん、実はね…」

 

新一の問いに突然、香織はさっきまでの笑顔が嘘のように思いつめた様な表情になった。

 

「明日の迷宮だけど……天道君には町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから!お願い!」

 

話の内容に興奮してしまったのか、身を乗り出して懇願する香織。新一はただそれをジッと見つめたまま問う。

 

「…白崎、落ち着け。まずはどういう事なのか説明して欲しい」

 

「あ…ゴメンね」

 

新一の言葉に香織は自分でも性急過ぎたと思ったのか、自分の手を胸に当てて深呼吸する。少し落ち着いた様で、静かに話し出した。

 

 

「あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢を見てね。

そこに天道君が居たんだけど…、声を掛けても全然気がついてくれなくて…走っても全然追いつけなくて…、それで…最後は……」

 

するとその先を口に出す事を恐れるように押し黙る香織。その様子を新一は落ち着いた様子で見ていて、そして何となく察して語る。

 

「…俺が消えるか?」

 

「っ! ……うん」

 

その事に香織はグッと唇を噛むと泣きそうな表情で頷く。

新一はその話を聞いて少しばかり思った。

 

話の内容は確かに不吉な夢、でもそれは悪魔で夢、そんなことが起きる事はまずない。香織の考えすぎかもしれないが、今の様子を見ていて、とてもそうは思えない。

 

「白崎、夢は夢だ。あまり気にしないことだ、それに俺はそう簡単に消えはしないし、そしてそう簡単に死なないさ」

 

「天道君…」

 

「それに俺だけじゃなく、進次郎達も八重樫達も居る、そいつらが居れば100人力(又は百人力)だ。だから俺を信用しろ、もしそれでも心配だったら…」

 

椅子から立ち上がった新一は自分の荷物からある物を取り出し、それを香織に渡して、香織はそれを見つめる。

新一が香織に渡したのはミザンガであった、それを見つめる香織は新一の方を見て、新一は椅子に座りながら言う。

 

「そのミザンガが切れたら俺が死んでしまったって事を思ってくれ、そのミザンガは試しに錬成で作った物だ。

俺の命に繋がっているから、切れたら俺がもういないと言うことが分かる。それをずっと持っててくれ、もし俺が生きて帰った時はそれは幸運のお守りだと思って欲しい」

 

その事に香織はそれを見るも、再び新一を見る。

 

「天道君…」

 

「そんな顔をするなって、俺は平気だ」

 

新一は微笑みを浮かばせながら香織に言う。

すると香織は微笑みながら新一を見る。

 

「やっぱりそう気強い所は変わらないね、天道君は」

 

「は?」

 

香織の言葉に不思議そうな表情になる新一。その様子に香織はくすくすと笑う。

 

「天道君、私と会ったのは高校に入ってからだと思ってるよね? でもね、私は中学二年の時から知ってたよ」

 

「なんだって?一体いつ」

 

新一は香織とは全く面識がないことに首をかしげるも、香織は再びくすりと笑みを浮かべた。

 

「私が一方的に知ってるだけだよ。……私が最初に見た天道君は、怖い男の人が子供を殴りかかろうとした時に止めた時だった」

 

「(あっ…その時の。白崎いたんだ…)」

 

どうやらあの時、新一の姿を当時のかおりが目撃していたらしく、それには新一は頭をかきながら困り果てる。

 

「最初はケンカでもするのかなって思っていたけど、天道君はその人の暴行を行う前に止めた。そしてその人が殴ろうとした時に天道君は避けて、その人は…フフフ」

 

「やれやれ、どうやら見られてしまったようだな」

 

「ううん、そんな事ないよ。むしろ、私はあれを見て天道君のこと、凄く強くて優しい人だって思ったもの」

 

「そうなのか?」

 

新一はその事を香織に問うと、香織は頷きながら言う。

 

「うん、天道君小さな男の子とおばあさんを助ける為に動いたんでしょう。暴力なしで」

 

「…それは」

 

「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝君はよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし…、

…実際、あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった。

あっでも、昨日の天道君もちょっと恐ろしかった所もあったかな、檜山君達を睨みけた時の事…」

 

「あれはあいつ等がきよしを一方的に暴行した奴らの罰だ、まだ足りないくらいだ」

 

っとそれには香織は苦笑いするしかなかった。

 

「あははは…、そっか…。でも私の中で一番強い人は天道君なんだ。高校に入って天道君を見つけたときは嬉しかった。もっと知りたくて色々話し掛けたりしてたんだよ。天道君すぐに上地君達と一緒にどこか行くんだから」

 

「それはすまない…。」

 

「だからかな、不安になったのかも。迷宮でも天道君が何か無茶するんじゃないかって。勿論天道君だから問題はないんだろうけど、時々そう思っちゃうの…」

 

「…そっか。でも心配するな」

 

そう言って新一は香織の手を握り、それに香織は思わずドキッとなり、頬を赤くしながら見て、新一は香織を見つめながら言う。

 

「俺は死なないさ、約束する。絶対にだ」

 

「天道君……うん」

 

それからしばらく雑談した後、香織は部屋に帰っていった。

 

新一は明日の大迷宮の訓練では絶対に死なないようにと心に誓い、香織との約束を必ず果たすのだった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

深夜、香織が新一の部屋を出て自室に戻っていくその背中を無言で見つめる者がいたことを誰も知らない。その者の表情が醜く歪んでいたことも知る者はいない。

その時の新一はそれに気付くことすらなかったのだった。

 

 



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第6話 オルクス大迷宮

翌日の朝、新一達は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。

 

進次郎達や香織達としては薄暗い陰気な入口を想像していたのだが、まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着たお姉さんが笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。

 

ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だ。 

 

入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。まさにお祭り騒ぎ。

 

浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があり、人も自然と集まる。

馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。

入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。

 

新一達はその様子を想像以上に見ていた。

 

因みに彼らの服装はほぼ天職に合う服装をしていて、新一は軽いコートな服装をしていて、身体には胸当て鎧を着込んでいて、進次郎も同じように胸当て鎧を着込んでいる。

軍平は肩までの出している筋骨な腕を見せびらかす様な服で、きよしは軽い服装な上に右手には弓を撃つための手袋をしていた。

千春はローブの服装をしていて、大きな真珠がある杖を持っている。

 

「オルクス大迷宮…予想以上にお祭りの様な感じだね」

 

「おうよ、てっきりもっと重い感じの雰囲気だと思ってたぜ」

 

「それだけ人気ってことか…」

 

「でも油断したら命が危ないって事と変わりないのよね?」

 

っと千春の言葉に進次郎達は少々重い空気になって、だんまりとしてしまう。

 

その様子を新一は見て、進次郎達を励ます。

 

「ほらほら、そんなに暗い顔をするなって。要は生きて帰ればいいだけだ」

 

「そ、そうだな…。よし!『上地軍団』気合い入れていくぞ!」

 

「ええ!? いつそんなの出来たの!?」

 

「俺達知らねえぞ?」

 

進次郎の突然の宣告にきよしは驚きを隠せず、軍平は頭をかきながら聞いていた。

そんな中で香織が新一の所にやって来る。

 

「天道君、おはよう!」

 

「おう、白崎。八重樫達の所に居なくていいのか?」

 

「うん、ただその前に天道君に挨拶しておきたくって」

 

それに少しばかり照れてしまう新一、っとその様子を進次郎達はからかう。

 

「ヒューヒュー♪ 熱いね~♪」

 

「「にひひひ♪」」

 

「お前らな…」

 

それに香織は少々顔を赤くし、3人の様子にイラつきが来る新一、千春がそれに注意する中で新一は武器をチェックすると…。

 

 

 

 

────ゾッ!!!!

 

 

 

 

「(ん!?)」

 

ただならぬ殺意の意思が新一の方に向けられ、それを感じ取った新一は思わず辺りを見る。

 

クラスメイト達がワイワイと騒いでいて、露店には冒険者達が何かを買っている様子が目に入り、それに新一は少しばかり警戒する。

新一の鋭い目線の様子に気付いた香織が、首を傾げながら問う。

 

「天道君。どうかしたの?」

 

「え?いや…、何でもない」

 

新一はそう言い返し香織はそれに少しばかり気になりながらも気になっていたが、新一は香織の右腕にある物を見つける。

 

「おっ、そのミザンガ」

 

「うん、ちゃんと付けてるよ。ちゃんと分かる為にも…」

 

「そうか」

 

それに新一は頷いて、新一達はメルド達に連れてられて大迷宮へと入っていった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

迷宮の中の入った新一達は中の様子を意外そうに見つめていた、それは外の賑やかさとは無縁の光景だったからだ。

 

縦横5メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。

『緑光石』という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、オルクス大迷宮は、巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。

 

一行は隊列を組みながら進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは7~8m位ありそうだ。

 

その時、物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。

すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

メルドの言葉通り、ラットマンと呼ばれた魔物が結構な速度で飛びかかってきた。

 

灰色の体毛に赤黒い目が不気味に光る。ラットマンという名称に相応しく外見はねずみっぽいが……二足歩行で上半身がムキムキだった。

8つに割れた腹筋と膨れあがった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。

 

正面に立つ光輝達──特に前衛である雫の頬が引き攣っている。やはりどんな魔物でもあの様なムキムキな魔物を見るのは気持ち悪いらしい。

 

間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の3人で迎撃し。その間に香織と特に親しい女子2人、メガネっ娘の『中村恵里』とロリ元気っ子の『谷口鈴』が詠唱を開始。

魔法を発動する準備に入る。訓練通りのフォーメーションだ。

 

光輝は純白に輝くバスタードソード『聖剣』を視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。

 

ハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれる“聖なる”力が宿されているのだが、それを見ている新一はなぜか『何かが宿ってない』風な表情をしていた。

 

「(う~ん…天之河が持っているあのアーティファクトの聖剣、どうも何かが欠けている様な…。俺が持っていた聖剣とはまた違うのか?)」

 

そして龍太郎は、空手部らしく天職が“拳士”であることから籠手と脛当てを付けている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、また決して壊れないのだ。

龍太郎はどっしりと構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士様々。

 

雫は、日本の武士らしい“剣士”の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬で敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員をして感嘆させるほどである。

その様子に新一も少しばかり感心する。

 

新一以外の者達は光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。

 

「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──“螺炎”」」」

 

3人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。

「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する

 

気がつけば、広間のラットマンは全滅していた。他の生徒の出番はなしである。どうやら、光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱いとの事。

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

生徒の優秀さに苦笑いしながら気を抜かないよう注意するメルド。しかし初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。

頬が緩む生徒達に「しょうがねぇな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

メルドの言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 

そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。

 

そして次の階層で、新一達のグループに戦闘の番がやって来て、メルドが新一達に向かっていう。

 

「よし!次はお前達だ!」

 

「よ、よし!頑張るぞ…!」

 

初の戦闘に緊張して気が引き締まるきよし、それに新一が言う。

 

「落ち着けきよし、お前は後方支援だけでいいから、千春もきよしと同じのでいいからな?」

 

「う、うん…!」

 

その言葉に千春も頷きながら言い、新一と進次郎、軍平の3人は前に出ながら武器を構える。

 

新一の武器は宝物庫から持ってきた長剣、『ロングソード』である、流石に元勇者である彼の武器である聖剣は、女神リリアーナに返却している為ない。天職は未だに不明ではあるが、戦闘ではまず遅れをとらない。

 

進次郎の武器は二刀流でショートソードとダガーの中間辺りになる双剣である。アーティファクの中でも少し反り返っている双剣は素早く攻撃が可能。彼にとっては良い武器だ。

 

軍平の武器は大きな斧である『バトルアックス』、大きな斧の刃にハンマーの両方が揃っていて、斬撃にも打撃にも攻撃する事が可能である。

 

「軍平はきよしと千春の守りに入りながら敵を蹴散らしてくれ、きよしと千春は弓と魔法で後方援護して欲しい、俺と進次郎は奴らを蹴散らす」

 

「よし!上地軍団行くぞ!」

 

「だからそれやめてって!」

 

恥ずかしそうに言うきよしに対し、他の皆は思わず笑っていた。

そんな中でもメルドは新一の的確な指示に感心を持っていた。

 

「(ほう…、強靭な軍平を後方組の守りに固め、2人で前衛ををつとめる感じか…。新一の奴…まるで“経験者”の様な言い分だな?)」

 

そうしている中でこの階層である魔物達が新一達に襲いかかってきて、新一と進次郎が前に出てロングソードと双剣で魔物を蹴散らす。

 

新一がロングソードで迫り来る魔物に対し、華麗な斬撃を繰り広げる。斬って、突き刺し、受け流して、かわしながら飛んで、更に足を使って体制を崩して斬る。

彼の剣術は光輝や雫をも上回っていて、それには光輝と雫は思わず唖然としてしまう。

 

進次郎は双剣の二刀流で、複数の魔物に対してもなんの苦戦もなく魔物を斬っていた、左右同時しても平然と対処し、そして一体に向かって同時斬りもしていた。

 

軍平は2人が撃ち漏らしている魔物がこちらに迫っているのを見て、バトルアックスで豪快に斬っていた。彼の剛力と大斧術が相性抜群で、彼に斬られた魔物は綺麗に二つに分かれた。

 

きよしはアーティファクトの弓を使って、矢を放ち、魔物の頭部を的確に狙っていた。更に矢はそのまま貫き、後方に居る魔物にも直撃して倒れる。

 

千春は魔物に向かって魔法の詠唱を唱えていた。

 

「赤き炎の風、美しき矢に変え、灰となり大地に帰らん──“炎矢”」

 

千春の魔法『ファイヤーボルト』が放たれ、更に3発同時に向かっていき、魔物3体は直撃して炎に包まれていく。

 

そして魔物は倒されて、新一達は辺りを確認する。

 

「魔物は…いないな」

 

それを確認したメルドは頷きながら言う。

 

「うん!良いぞお前たち! なかなか良い感じではないか! 特に新一、お前なかなかやるではないか?まだ天職がわからんのに。それに“慣れている”感じの様な気もするな」

 

「たまたまですよ。まあ何とかなったでしょうね。今回は」

 

そう言いつつ、新一は進次郎たちと共に後方へと下がった。

メルドはそれを見つめたあと、皆に出発の合図を出して、更に階層を降りていく。

 

そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている20階層にたどり着いた。

 

現在の迷宮最高到達階層は65階層で、それは100年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で40階層越え、20階層を越えれば十分に一流扱いだと言う。

 

だが迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くある。

その為トラップ対策として“フェアスコープ”がある。魔力の流れを感知し、トラップを発見することができるという優れ物で、

迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上発見できる。だが索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。

今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの20階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

メルドのかけ声が迷宮内ではよく響く。

 

ちょっと息抜きに新一が少し休憩してると、前方にいた香織と目が合った。彼女は新一の方を見て微笑んでいる。

 

それに新一は少しだけ手を振り、それに嬉しそうになる香織、それを横目で見ていた雫がにやけ笑いし、小声で話しかけた。

 

「香織、なに天道君と見つめ合っているのよ? 迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

 

からかうような口調に思わず顔を赤らめる香織。怒ったように雫に反論する。

 

「もう雫ちゃん!変なこと言わないで! 私はただ、天道君大丈夫かなって、それだけだよ!」

 

「(それがラブコメしてるって事でしょ?)」

 

っと雫は思ったが、これ以上言うと本格的に拗ねそうなので口を閉じる。

その様子に新一はやれやれとしていると。

 

 

 

 

 

 

────ゾッ!!!!

 

 

 

 

 

 

「(んっ!!)」

 

またしても強い殺意がまたしても新一の方に来て、それを感じた新一は辺りを見渡す。

しかし誰かの者か分からず、それに新一は少しばかり真剣な表情をするのだった。

 

少し休憩を挟んだ一行は20階層を探索する。

 

迷宮の各階層は数十キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だと言う。

 

現在、47階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないと。

 

20階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと21階層への階段がある。

 

今回の実戦訓練はそこで終了で。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、地道に帰らなければならない。

一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

「歩きずれぇなおい」

 

「でもこの壁…なんか、妙に違和感がある様な…」

 

っときよしがそう言ったところ、先頭に立っている光輝達やメルドが立ち止まった。新一はすでに気づいていて、訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。

どうやら魔物のようだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルドの忠告が飛ぶ。その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。

そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物だっだ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ!見た目通りの豪腕だぞ!」

 

メルドの声が響く。光輝達が相手をするようで。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。

光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った直後に。

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「きゃあ!?」

 

体中に衝撃が走り、ダメージ自体はないが硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”て。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

それを食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

その様子を見た新一は「マズい!」と言って、素早い動きで皆の列の間を“縮地”を使ってすり抜けていく。

 

ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。

見事な砲丸投げのフォームで咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。

 

香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

しかし香織達が演唱を発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。

言わずもがな、今の様子はさながらル○ンダイブだ。しかも“聞き覚えのある声”が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。

香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

っとその時に新一が香織達の目の前に現れて、ロングソードを抜いて。

 

 

スバッ!!!!!

 

 

「『横一閃!!』」

 

目では見ることが出来ない速さで斬り込み、ロックマウントはそのまま胴体を真っ二つに割られて地面へと落ちて倒れる。

ロングソードを鞘に収めて、新一は香織達の方を見る。

 

「大丈夫か?」

 

「て、天道君…。ありがとう」

 

「た、助かった~、ありがとね!」

 

「あり、ありがとうございます…」

 

その様子にメルドが加勢しようとしていたが、それを見事に持って行かれた事に苦笑いするしかなかった。

 

そんな様子を見てキレる若者が1人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者天之河光輝である。

 

「貴様……よくも香織達を……許さない!」

 

どうやら気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いし。「彼女達を怯えさせるなんて!」と、微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか彼の聖剣が輝き出す。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ──“天翔閃”!」

 

「あっ!こら、馬鹿者!」

 

メルドの制止の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

 

その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。

曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

 

「……あの大馬鹿野郎め」

 

新一は光輝の攻撃を見て呟きながら言う。

 

パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。

香織達を怯えさせた魔物は自分が倒した。『もう大丈夫だ!』と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルドの拳骨を食らった。

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうすんだ!」

 

メルドのお叱りに「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪する光輝。香織達が寄ってきて苦笑いしながら慰める。

 

新一は自業自得だと思いながら腕を組んでいて、後からやって来る進次郎達が見て呆れる。

 

「あちゃ~…天之河の奴、思いっきりやりやがったな?」

 

「ああ、もうメルドさんのお叱りを受けてるから、もういいだろう」

 

っとその時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「……あれ、何かな? キラキラしてる……」

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれは“グランツ鉱石”だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気である。

加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るとか。

 

「素敵……」

 

香織が、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。

そして、誰にも気づかれない程度にチラリと新一に視線を向けた。もっとも、雫ともう一人だけは気がついていたが……。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルドだ。

 

「こら!大介! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

「はいはい、わかってますよ(たく、うるせぇおっさんだぜ)」

 

しかしあえて檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長! トラップです!」

 

「ッ!?」

 

しかしメルドも、騎士団員の警告も一歩遅かった。

 

檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。

 

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」

 

メルドの言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

 

部屋の中に光が満ち、新一達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

場所は変わって、新一達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に皆は地面に叩きつけられた。

 

新一は体制を崩さないで着地し、辺りを見渡す。

クラスメイトのほとんどは尻餅をついていたが、メルドや騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。

 

先の魔法陣は転移させるものだったらしく。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

新一達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。100mはくらいはあり。天井も高く20mはある。

橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。

 

橋の横幅は10mくらいあり、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもない。

新一達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

 

それを確認したメルドが、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……。

 

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルドの呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

「まさか…、ベヒモス……なのか」

 

メルドのその言葉に新一は思わず耳を疑ったのだった。

 

 



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第7話 最悪の結末

檜山の軽率な行動でベヒモスと呼ばれる巨大な魔物と、無数の魔物『トラウムソルジャー』が溢れて出てくる階層に来てしまった新一達。

 

皆が混乱する中、新一はメルドが放った言葉を聞いて少しばかり唖然としていた。

 

 

【ベヒモス】

 

 

ハイリヒ王国の図書館で一度調べた事がある、オルクス大迷宮の中でとてもない強さを持ち、最強と言われる冒険者達を苦しませ、全く歯が立たなかった魔物。

その魔物が今もの前に居て、新一は少しばかり手に汗がにじみ出てくる。

 

「(…ベヒモス。もしあれが本当のベヒモスだったりしたら、今の俺達じゃまず無理だ!)」

 

新一がそう思っている中で、ベヒモスが凄まじい咆哮を上げた。

 

「グルァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」

 

「ッ!!マズい!!」

 

ベヒモスの雄叫びにメルドは正気を取り戻し、すぐに騎士団に指示を出す。

 

「アラン!生徒たちを率いてトラウムソルジャーを突破するんだ!カイル!イヴァン!ベイル!全力で障壁を張れ!ここでヤツを食い止めるぞ!絶対に後ろに通すな!!

光輝!お前達は早く階段へ向かえ!急げ!」

 

「待って下さいメルドさん!俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達もここで一緒に!」

 

光輝のその言葉にメルドは怒鳴りながら言う。

 

「馬鹿野郎!あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! 奴は65階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だぞ!

早く行け!!私はお前達をここで死なせるわけにはいかないんだ!」

 

メルドの鬼気迫る表情に一瞬怯むも、「見捨ててなど行けない!」と踏み止まる光輝。

 

するとベヒモスが咆哮を上げながら突進してきた。それにメルドたちは全力の多重障壁を張る。

 

「「「全ての敵意と悪意を拒絶する、神の子らに絶対の守りを、ここは聖域なりて、神敵を通さず――“聖絶”!!」」」

 

メルド達の多重障壁がベヒモスの突進を防ぐ。

突進の衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が発生し、ベヒモスの足元が粉砕される。石造りの橋が大きく揺れた。

 

その様子を新一は体制を保ちながら見て、進次郎たちが新一の元に駆け寄る。

 

「新一!こっちは大変だ! 皆パニックになってる!」

 

「あの怪物だけじゃなく、骸骨の戦士たちがこっちに迫ってる!どうするんだ!」

 

進次郎達の様子に新一は辺りを一度見渡し、そして言う。

 

「進次郎、お前は皆を率いてすぐに上の階層へと避難させて欲しい、ここでお前のリーダーの能力が発揮される番だ! 軍平は皆の前に出て、あの魔物達を蹴散らしながら退路を切り開け!

きよしと千春は後方でサポート!」

 

「分かったぜ!」

 

「でも新一は?」

 

「俺はあのバカを連れ戻す」

 

新一は今だにメルド達の元に居る光輝の方を見ながら言い、それに進次郎達は頷きながら言う。

 

「OK!俺達が上手くやっておくぜ!!」

 

「新一君も気をつけてね!」

 

そう言って進次郎達はその場から離れていき、皆の元に向かった。

 

「さて…ん?!」

 

光輝たちの元に向かおうとする新一の目にある者が映る。

それは一人の女子生徒『園部 優香』が後ろから突き飛ばされ転倒してしまう様子だった。呻きながら顔を上げると、眼前で一体のトラウムソルジャーが剣を振りかぶっていた。

 

「あ──」

 

園部はその一言と同時にトラウムソルジャーは彼女の頭部目掛けて剣が振り下ろされた。

 

死ぬ…っと園部がそう感じた次の瞬間、トラウムソルジャーの胴体…否、身体中は無数に斬りさかれて、トラウムソルジャーは倒される。

 

「え…?」

 

園部はその様子に唖然としながら斬った人物を見る。

 

トラウムソルジャーを斬ったのは新一は、『一閃』でトラウムソルジャーを瞬く間に切り裂いたのだ。

ロングソードをしまい、新一は園部に向けて手を差し出し、それに園部は呆然としながらそれを取り、立ち上がって新一は園部に言う。

 

「大丈夫か園部? いいか?進次郎の話を聞いて動くんだ。そして自分たちの能力を信じて進むんだ。皆チート並の能力を持ってる。どうってことはない!」

 

「うん!ありがとう。天道君!」

 

園部は元気に返事をして駆け出した。

 

新一はそれを見送った後、再び光輝たちの方を見る。

光輝はまだその場にいてメルドを説得している様子を見て、イラつきが出てくる。

 

「たくぅ…、ちょっとはいい加減にしろよ、天之河」

 

そう言って新一は光輝たちの元へと向かうのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

一方、ベヒモスは依然、光輝達とメルド達が張っている障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

メルド達の張る障壁に衝突する度に壮絶な衝撃波が周囲に撒き散られるが、障壁が徐々に亀裂が入ってきて、突破されるのは時間の問題だった。

 

「クソッ!もう持たん!! 光輝!早く撤退しろ!お前達も早く行け!」

 

「嫌です!メルドさん達を置いていくわけには行きません!! 絶対…皆で生き残るんです!」

 

「(くっ!こんな時にワガママを…!)」

 

光輝のワガママにメルドは苦虫を噛み潰したような表情になる。

ベテランのメルドならこの状況をよく理解し、すぐに撤収を始めるのだが、光輝のみはどうやら自分なら何とか出来るとそう思っているらしい。

 

だがそれは自分の力を過剰評価しているに過ぎない。戦闘素人の光輝達に自信を持たせようと、褒めて伸ばす方針が裏目に出たようだ。

 

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

 

雫は状況がわかっているようで光輝を諌めようと腕を掴む。

 

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

 

「龍太郎…、ありがとな」

 

撤収を意義を見せる中、龍太郎の言葉に更にやる気を見せる光輝。それに雫は舌打ちする。

 

「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿ども!」

 

「雫ちゃん…」

 

苛立つ雫に心配そうな香織。

すると目の前に石が突如持ち上がっていき、ベヒモスの目の前に立ちふさがり足止めしている、それにメルドだけじゃなく光輝達もそれに驚きを隠せない。

 

光輝達が後ろを見ると、新一が錬成で石を操っていた。

 

「たくぅ…、やっぱ俺は錬成より戦闘の方が楽でいいぜ」

 

「天道!?」

 

「「天道君!!」」

 

光輝達は新一が来たことに驚きながら見ていて、新一は光輝達の下による。

 

「天之河、お前らも早く撤収しろ、ここはメルド団長に任せろ」

 

「いきなり何を言い出すんだ?それより、なんでこんな所にいるんだ!ここは君がいていい場所じゃない! ここは俺達に任せて──」

 

 

ドゴッ!!!!

 

 

「ゴホッ!!!」

 

新一の猛烈なボディブローに光輝は思わずひざまついてお腹を抑え、それに香織と雫は驚き、龍太郎は怒りを露にする。

 

「おい!!!何をするんだ!!」

 

 

ガシッ!!!

 

 

「グッ!!!」

 

新一は龍太郎の首を掴み、握り締めながらも龍太郎は苦しい表情をする。

そのまま新一は光輝の方を見て、冷たい言葉を放つ。

 

「ちょっとは自分の力を自覚しろ、その事をはお前でも分かるだろう。それに今のお前ではあの魔物に立ち向かうなど不可能だ。それともメルド団長が側にいないと怖いのか?」

 

「…ッ!?」

 

その言葉に光輝は心に鋭い矢が突き刺さる、まさかそんな言葉が吹き込んでくるとは思ってもいなかった為、光輝は歯を噛み締めながら立ち上がる。

 

「…ああ、分かったよ。龍太郎!雫!やれるか!?」

 

「ゲホッ!ゲホッ! …ああ!勿論だ!」

 

「やるだけよ!」

 

そう言って雫と龍太郎は皆の所に向かっていき、新一はメルドの方を向く。

 

「メルド団長。こっちは大丈夫です。それとあいつの足止めは俺が錬成でなんとかします」

 

「大丈夫なのか? 副天職では力がそんなに発揮するとは思えんが…」

 

「何とかしてみますよ、それよりも…あのバカをしっかりと頼みますよ?」

 

迷いのない決然とした目線に。メルドは「くっ」と笑みを浮かべる。

 

「まさか、お前さんに命を預けることになるとはな。時々お前が勇敢に思える時がある、…必ず助けてやる。だから…頼んだぞ!」

 

「了解…!」

 

「天道君!!」

 

っと香織が心配する表情を見せ、それに新一は笑みを浮かばせながら言う。

 

「大丈夫だ白崎、俺は死なない…」

 

「天道君…」

 

「よし!行くぞ!!!」

 

メルドは香織を抱いて連れて行き、去っていく様子を新一はジッと見つめた後、ベヒモスの方を見る。

 

「やれやれ…、出来ればお前とガチでやりたかったが。生憎ここでやりやったら心配する奴らが居るんでね、悪いがここでさいならさせてもらう!」

 

っと新一は錬成を最大限に発揮させて、ベヒモスに最大級の石の硬さを与える。

そして新一はそれを見届けた後に撤収を始める。

 

メルドがそれを見て、皆に言う。

 

「よし!やるぞ! いいか!お前達!!」

 

「「「はい!!」」」

 

「やれ!!!!」

 

メルドの指示で魔力支援組は火炎の魔法を放ち、それにより新一はより後退しやすくなる。

そしてベヒモスを新一の錬成を強引に打ち壊し、そして怒りを咆哮を上げるベヒモス。

 

皆の魔法がベヒモスに直撃し、足止め程度にはなるものの、気休め程度しかならない。

だがその間に新一は素早く皆のもとに向かう。

 

「天道君!頑張って!」

 

「新一!!早く来い!!」

 

香織と進次郎達が新一を励ましながら送ってる中…。

 

 

 

 

 

「フッ」

 

 

 

 

 

1人の男が笑みを浮かばせるのを、誰も知る由はない。

 

新一が撤収する中で、皆の魔法が飛び交うのが見える、っがその時、一つの魔法が新一の下にやって来て、それに新一は思わず目の瞳を大きく開かせる。

 

そして魔法が新一に直撃し、それに大きく飛び跳ねる。

 

「ぐあああああ!!!」

 

新一は後ろに大きく転び、ベヒモスは新一がやってきた事に雄叫びをあげる。っがその時、足場が崩れて、橋は崩落して新一はベヒモスと共に橋から落ちてしまう。

 

「天道くぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅん!!!」

 

「「「「新一いいいいいいいいいいいいいいいいい/君!!!」」」」

 

香織と進次郎達は叫びながら手を伸ばし、新一はベヒモスと共に暗い奈落の底へと落ちてしまうのであった。

 

 

 




とうとう新一が奈落…、真の大迷宮へと行きます。

ここから新一の真の力も発揮する時期ですよ…。


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第8話 奈落での覚醒

とうとうタイトル通り、新一が覚醒します、どんな風になるかはお楽しみ


突如魔法が新一に直撃し、橋が崩壊しベヒモスと共に奈落の底へと落ちた新一。

 

「新一いいいいいいいいいいい!!!」

 

「おい嘘だろう!!!?」

 

進次郎達は新一が落ちたことに信じられずにいて、きよしと千春は膝を落としてしまいながら床に手をつく。

 

「天道君!!」

 

「香織!!」

 

雫は香織を羽交い締めで抑え、香織は必死にもがいていた。

 

「離して雫ちゃん! 天道君が!天道君が…!!」

 

「だめだ香織!君まで死にに行く気か! 天道はもうダメだ!このままじゃ、君まで壊れてしまう」

 

光輝は必死に香織に気を使う言葉を言ったつもりだった。だがそれは香織だけじゃなく、進次郎達まで逆効果を与えてしまった。

 

「おいテメェ!! 今なんて言った!!」

 

「勝手に新一を死なすなよ!!」

 

「そうよ! それにダメって何!? 天道君はまだ死んでない!そう!絶対死んでないだって!だって──」

 

光輝の言葉には進次郎達は勿論、今の香織にそれを受け入れる余裕がない。

皆はそれにオロオロするしかなかった。

 

 

 

ダンッ!!

 

 

 

すると香織の首筋に強い手刀が入り、それにより香織は気を失ってしまう。

香織に手刀を入れたのはメルドであり、光輝は思わず香織を見て、メルドの方を向けて睨むが、それを雫は遮る様に機先を制し、メルドに頭を下げる。

 

「すいません、ありがとうございます…」

 

「…礼などやめてくれ、もう誰1人死なせる訳には行かないんだ…。お前達も分かってくれ」

 

「しかし!」

 

「上地君!」

 

進次郎は雫の方を見て、香織を抱える雫は頭を横に振りながら言う。

 

「今はここを出る事を考えましょう…。さあ、光輝と一緒に皆を率いて、貴方は光輝と同じ皆を率いる力がある…天道君にそう言われたでしょう」

 

「クッ……、ああ…分かったよ」

 

「進次郎…」

 

進次郎は悔やみながらも皆の方を向き、光輝と共に叫ぶ。

 

「皆!!一団となってここを脱出だ! ここで諦めたら終いだぞ!」

 

「生き残ることだけ考えるんだ!撤退するぞ!」

 

進次郎と光輝の言葉にクラスの皆はノロノロと動き出し、雫は香織を背負いながら歩き、光輝もその様子を見て歩き始める。

そして進次郎達は橋から落ちた新一の方を人目見て、悔みながら皆の後を追いかけるのであった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

一方、橋から落ちた新一は…。

 

「どわああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

そのまま奈落の底に落ちていき、もうここで死ぬかと思いきや、横から噴水の様な水が一気に吹き出てきて、それにより新一はその水圧に押され、横の壁にある穴に吸い込まれる。

しかもその穴はウォータスライダーの様に急斜面で、何度も急なカーブに流されて、そして最後に穴から飛び出てしまう。

 

「うおああああああああ!!!」

 

新一はそのまま背中から落ちてしまう、しかも運の悪い事に…。

 

 

 

グザッ!!!

 

 

 

「ぐぅっ!!!!」

 

どうも落ちてしまう所に大きなトゲがあったらしく、それにより新一は左腹部の横腹にトゲが刺さってしまった。

 

それに苦しむ新一はそのトゲを壊して、刺さっているトゲを見て錬成させる。

 

「れ、錬成…!!」

 

苦しみながらもトゲを長く細い棒にさせて、綺麗な棒に変換させた後に棒をゆっくりと抜いて、そして棒は綺麗に抜けて、新一は抜いた所から出る出血を止める為、火の魔法を使う。

 

「“火種”!」

 

火を使って出血する所を塞ぎ、火の熱さに苦しみながら血が止まった事に新一は近く壁に持たれ、そのまま地面へと座り込む。

 

「ダァア! ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…! クッソ…!」

 

汚い言葉を放ちながらも新一は、少しばかり先ほどの事を考えた。

さっきの魔法…あれはどう見ても誤爆ではない、明らかにこちらに狙っての攻撃だった。しかも放った場所を見ると、その犯人はもう明らかだった。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…、クッ…やってくれたな…“檜山”のクソ野郎!」

 

先ほどの犯人は檜山だった、何故檜山が攻撃したのは明らか、完全に香織関係で、それを妬み、殺せば香織との関係を完全に断ち切ろうと考えたのだろう。

だがそんな事をしても無意味だって事は檜山も知っているはず、だが檜山はそれに全く関係なく、殺せば終わると考えた。

 

「戻ったら絶対に覚えてろよ…! だが今はそれよりも…」

 

新一は辺りを見渡す、見た所洞窟の様な場所で、岩や壁があちこちとせり出し、明らかに不気味な所であった。

 

立ち上がって新一は少しばかり進もうとすると、何かの気配を感じ、それに隠れてやり過ごす。

 

 

ドスン…ドスン…ドスン…!ドスン…!!ドスン…!!!

 

 

明らかにこちらに近づいているのが分かり、それに新一はロングソードを抜いて、警戒していると…。

 

 

ズバン!!!

 

 

突如鋭い刃が新一の横を通り過ぎて行き、隠れていた場所の岩が綺麗に斬れたのだ。

それに新一は思わず目を見開いた。同時に悲劇も起きる。

 

 

ドテッ…。

 

 

新一の左腕が綺麗に斬られていて、それに新一は思わず腕を抑える。

 

「ぐぅっ!!!(斬られた!? どうして…警戒していた筈!?)」

 

新一は後ろを振り向くと、そこには2m近くもある巨躯で白い毛皮をしている巨大なクマがこちらを見ていて、長い両手にある3本の長く30cmはある鋭い爪が光っていた。

どうやら新一はあの魔物の鋭い爪によって斬られてしまった様だ。ただ何よりスキルの気配感知が全く聞かなかった事に焦りを感じていた。

 

「(くっそ!!怪我のせいで気配感知が薄れていたのか!? このままではマズイ!どこかに隠れる必要がある!!)」

 

「グゥゥオオオオオオオオオ!!」

 

クマの魔物は鋭い爪を新一に向けて振りかぶり、それに新一は落ちた腕を放り出して、飛んで回避した。

新一は一旦撤退する為に錬成を使って大きな穴を作り、そして塞ぐ。

 

クマの魔物は追いかけようと穴を掘り始め、新一は逃れるために更に奥に進んでいく。

 

「錬成‥!錬成‥!錬成‥!錬成‥! お前と遊ぶのはまた今度だ…!」

 

錬成を繰り返していく中で、斬られてなくなった左腕からポタポタと血が流れていき、徐々に意識がなくなり始めていた。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

「錬成‥!錬成‥!錬成‥!れn『ゴポッ!』アデッ!!」

 

錬成を続けていく中で大きな空洞へとたどり着いた新一、痛む腕を抑えながら立ち上がり、そして新一の目にある物が映る。

 

「いででで………、なっ!これは…!」

 

彼の目に映ったのは、バスケットボールぐらいの大きさで、青白く輝く鉱石だった。その鉱石に新一は思わず見とれてしまう。

っとその時鉱石から一滴のしずくが落ち、それを見ると、そこに水が溜まっていたのだ。

 

それを見て、新一は少しばかりその水を飲む、すると体力と魔力が一気に回復し、それに新一は驚く。

 

「っ!体力が…これってもしかして、王国の図書館で読んだ事がある伝説の秘宝『神結晶』か?!」

 

新一は思わずそれを見て驚くしかない、なぜならもう既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったからだ。

そして新一が飲んだのは『神水』と言い、どんな怪我も病も治ると言われている伝説の水である。流石に腕は治ることは出来ないが、飲み続ければ寿命は尽きないと知られるものだ。

 

伝説の秘宝がこんな所にあるのは驚くしかない、しかしそんな時に新一の腹がなる。

 

 

 

グゥゥゥゥゥゥ~……。

 

 

 

「…こんな時に腹が減るなんて、俺って緊張感がないな…、でも何か食わないと」

 

しかしここには食料がない、食料は騎士団の人たちが持っており、新一は水しか持っていないのだ。

このままでは飢え死になってしまう、なんとしても食料を確保しないと、そう考えた新一はちょっとばかし危険な賭けに出る。

 

 

 

数時間後。

 

 

 

新一はある物を持って帰ってきた、それは魔物の肉…『二尾狼』の肉だった。

魔物の肉を食えば、少しばかり飢えを凌げるかと思ったのだ、しかし1つだけ問題がある、魔物には猛毒があるのだ。

 

魔物は魔力の影響で魔物の身体を強化し、更に人間が食えば、人間の体内を侵食し、内側から細胞を次々と破壊していくのである。

過去にその人が魔物の肉を食って、ボロボロになって死んだ記録があったのだ。

 

しかし新一には考えがあったのだ。

 

新一はある物を見る、それは先ほどの神水だった。これを同時に飲んで食べれば、もしかしたら助かるんじゃないかと思ったのだ。

あまりに危険な賭けだが、飢えから凌ぐにはこれしかない。

 

「…毒があるのはわかってる、だがやるしかない」

 

新一はコップを錬成し、神水をすくって、魔物の肉を同時に食べて飲む。

 

「っ!ぅ!! アガァ!!!」

 

すると突然、新一は苦しみと猛烈な痛みが出始めた、魔物の毒がすぐさま全身に行き渡り、身体中の崩壊を始めたのだ。

だが神水の効果により、すぐに痛みは引いたが、またすぐに猛烈な痛みがあらわる。

 

治っては痛み出し、治っては痛み出し…っと何度も繰り返していく中、新一は必死にその激痛に耐えていた。

 

「(た!耐えろ…!!! 耐えて耐えて…必ず生き残て、必ず生き残る!!白崎との約束があるからな…! そしてアリスとの約束も!)」

 

っと新一はアリスの約束の事を思い出す。

 

 

=======

 

 

それは異世界ディスペアでの事、魔王を倒そうとばかり新一は何時も無茶する事があった、それにアリスは心配するばかりで、いつもアリスに叱られていたのだ。

魔法で手当てをしながら、新一に叱るアリス。

 

「新一さん! 少しは無茶はやめて下さい!どんだけ無茶をすれば気が済むんですか!?」

 

「すまねぇ。でも早いところ魔王を倒さないと」

 

「それでは理由になりません!」

 

っと猛烈に怒鳴るアリスに、新一は思わずドン引きする。

 

「いいですか!!そんな無茶ばかりじゃ! いつか命がつきます! ですから約束してください…必ず生き残る事を考えてくだいって!」

 

「え?まあ…それはいいk──」

 

「分かりましたね!!!」

 

「はい!!!」

 

新一はアリスのその言葉に、生き残る事を考え、そして無茶はしないと決めたのだ。まあ多少無茶はしているけど…。

 

 

 

=======

 

 

 

「(だから俺は…必ず生き残る…そしてこの痛み…耐えてみせる!!)ぐ!!ぐぅおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

っとその時だった。前髪一部の髪から色が抜け落ち、日本人の特有の黒髪が変化していく。

 

次に、筋肉と骨格が徐々に太く大きくなっていき、更に筋量も増えいく、超回復という現象が起き始め、崩壊と回復の影響がそれに影響を及ぼしている。

腕の血管が浮き始め、そして瞳の色が茶色から赤に変色していくのだった。

 

そして変化はしばらく続き、新一は痛みを耐えるのであった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そしてしばらくすると痛みが収まり、新一は身体を起こし始め、身体を確かめる。

 

「…なんだ?急に痛みがなくなった…。それどころか、前より軽い感じだ」

 

っと近くの壁を見る、一部の壁は鏡のようになっていて、今の自分を見る事ができる、新一は今の自分を見ると、前髪の色が変わっていて、瞳の色が赤に変わっていた。

更に身長と体格が少しばかり変化していた、新一の身長は当時176cmで、10cm近くは伸びていた。

 

また、筋肉が一段と大きくなっており、腕の血管がより出ているのが分かる。

 

「ありゃま~…これはまた随分と変化したな。そうだ、ステータスプレートはどうなんだろう」

 

っと新一はステータスプレートを開いてみる。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:20

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:700

 

体力:750

 

耐性:800

 

敏捷:900

 

魔力:1000

 

魔耐:1000

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定]・複合魔法・格闘術・剣術[+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃]・棒術・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

っとその内容に思わず驚きを隠せない新一、その内容は天職が表示されているからだ。

 

「おいおい…勇者って。…へへへ、どうやら俺はまだ、勇者の座からまだ降りられないようだな。それに錬成の方も上がっている様だな?それに魔力操作…。詠唱もいらずに出来ると言う事か。胃酸強化…それで苦しんだのか。

しかし…どれもこれも優秀な物ばかりだ、これは便利で良いぞ。あと錬成の鉱物鑑定…、これなら鉱物を見て分かるかも知れない、強力な武器も作れるかもな、丁度きよしの設計図もあるし」

 

新一はポケットからきよしの設計図を取り出す、どうもあの後、きよしに返さず持っていたのだ。

 

「ここを脱出するための力になって貰うぞ、必ず生き抜く為にも!」

 

っと目の瞳を輝かせ、希望の光を消して途絶えない思いを背負いながら、きよしの設計図を見るのであった。

 

 

 




はい!こんな風になりました、変更点と言えば、髪が全体にならず、一部のみになっております。

更に外道にならず、純粋なまま保った状態です。

前の世界での経験がそれを露わにしています。


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第9話 活動開始

新一が魔物の肉を食い、進化してだけでなく、勇者としての天職が発揮されてから翌日、新一は奈落の底の洞窟内の辺りを調べに入った。

 

副天職の鉱物系鑑定で鉱石を調べ、使える素材を探していた。

 

「さて。どれが良いかな…ん?」

 

するとある物が目に入った。

それは黒くて何だかとても硬い鉱石があちらこちらとあったのだ。

 

新一はそれを目に付けて、調べてみるとステータスプレートに表示された。

 

 

 

【タウル鉱石】

 

黒色で硬い鉱石。硬度8。靭性8。

衝撃や熱に強いが、冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。

 

 

 

「へぇ…、衝撃と熱に強いのかこいつ、冷気…冷たさにはダメってことか。つまり氷を使った魔法では弱いって事だな、使うときは気を付けないと。

さて…次はどんなのがあるかな?」

 

新一はタウル鉱石を持ってポケットに入れて、別の鉱石を探し始める。

 

するとまた別の鉱石を見つけて、調べてみると。

 

 

 

【燃焼石】

 

可燃性の鉱物。

密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵。

 

 

 

 

「おお、可燃性…って事は火薬だなこれ。よし、これならば出来るぞ。よし、早速してみよう」

 

っと新一は片手で鉱石を錬成し作業をする………っと思いきや、右手だけではなく、なぜか失った筈の左腕(・・・・・・・)を使って、器用に錬成する。

 

しかし何故クマの魔物に斬られた筈の左腕があるかと言うと、それは昨日の事であった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

新一は設計図を見ながら何を作るかを考えていて、一枚一枚、設計図をめくりながら見ていた。

だが片手だけではどうも見るのに手間が掛かっていた。

 

「くっそ…、片手だけじゃ不便だ…。どうしようかな…『ツルッ!』おっと!!」

 

次の設計図をめくろうとした時に体制を崩し、そのまま倒れてしまった。

 

 

ペキッ!!!

 

 

その時に、アリスから貰ったブレスレットに当たってしまい、ブレスレットにヒビが入ってしまった。

 

「あっ!!ブレスレットが!! やっべぇ!!」

 

壊したら夢の中でアリスに怒鳴られると思い、すぐに錬成で直そうとした時に、ブレスレットが光って新一の腕から離れていく。

それに新一は思わず目を見開き、そして目の前に光が降りてきて、緑色で半透明の液体が入った3本の小瓶と手紙が出てくる。

 

「これは…」

 

ブレスレットが3本の小瓶に変わったのを見て、新一は唖然とするが、その小瓶を拾って見ると、一気に表情を変えて驚く。

 

「ん?って!!!これは『再生液』じゃないか!!? 『ヘイムダル大神殿』でしか手に入らない神器の薬品がどうしてこれに!?」

 

新一は驚いたのも無理はない、なにせそれは異世界ディスペアにしか存在しない薬なのだ。

 

 

【再生液】

 

 

異世界ディスペアに存在し、ヘイムダル大神殿にある薬品。魔力の結晶が長い年月を得て、液体となって溶け、回復の液体として現れた。

 

その名の通り、その液を飲むと失った臓器や血液、そして定期的に飲んでいくと、時間はかかるが失った身体の腕や足を復元する事が出来る。

ただしこれは貴重な薬品である為、なかなか手に入る事が出来ない。

 

しかも単価は高く、下手すれば80万近くの大金が必要となってくる。

 

それだけ貴重な薬品で神器と言われる物だのだ。

 

 

その再生液がブレスレットから変化するのは驚いた新一だが、それを見て、次に手紙を読む。

 

『新一さん…、この手紙を読んでいるって事は絶対無茶して、ブレスレットを壊してしまったのですね?もう…だから言ったじゃないですか。無茶はしないでって…。

でも新一はどうもそれを守ってくれなさそうなので、再生液3本をブレスレットに変化させておきます。

 

どうか大切に使って下さいね…。 アリス』

 

その内容に新一は思わず呆然としてしまった、まさかアリスがブレスレットにこんな細工をしていたとは思いもよらなかったのだ。

 

「すまないアリス…、でも3本じゃあまず足りない気がするけどな…。そうだ!この神水を使って、一緒に混ぜたらどうだろう?」

 

新一はコップに神水をすくい上げ、再生液を入れて混ぜる。すると神水が再生液と混ざり、少しばかり輝きを放ち、それに新一は驚く。

 

「おおっ!すげぇ! これなら…」

 

そう言って新一は輝く神水を飲み、一息すると身体にまた変化が現れる。

 

腹部の横腹の止血した火傷の後が綺麗に消えて、更に左腕が輝きだし、更に伸びていき、右腕と同じ長さになって、光が収まるとそこから綺麗な左腕が現れたのだ。しかも筋肉と骨が進化した腕として。

 

新一はそれに思わず見とれてしまい、左手を握り締めて確かめる。

 

「すげぇ…、一気に再生したよ…。通常なら一週間はかかるのに、でもこれならまた戦える! よし……ん?」

 

っと新一が再生液を戻そうとした時に、不思議に感じたことがあった。

 

それは再生液が一滴も減っていないからだ。

 

通常、液体は注げば減ってしまうはずなのに、それが全く減っていない事に疑問を持つ。

 

「どういう事だ…?一体何が…あ。まさか…」

 

新一はある物に気付き、首元から取り出して見る。

彼が取り出したのは無限ペンダント、もしや同じ鉱物系と思いそれを見て、ステータスプレートで確認してみる。

 

 

 

【無限ペンダント】

 

女神リリアーナから授けられた無限アイテム、これはあらゆるものが全く減らない効果を持っており、弾や手榴弾と言った消耗品だけじゃなく、乗り物系の燃料や電力のエネルギー、飲料水も含む効果を表す。

まさに完全な無限アイテム。

 

 

 

っとそう表示されているのを見て、新一は唖然とした。

 

「…あ、あはははは……。マジか? まさかこんな効果があるなんて、いや。そう言えばリリアーナも言っていた様な…」

 

 

──身につけると不思議なことにあらゆるものが無限の状態になるアイテムです。

 

 

「ははは…、思い出した。そうだったぜ…」

 

っと呆れながら自分の頭をかく新一だった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

新一は少しばかり呆れながらも今の鉱物を使ってきよしの設計図を見て、とある武器を作っていた。

 

最初は上手くは行かないが、きよしの設計図の通りに作り、鉱物の硬さと使いやすさにした『銃と弾丸』に、更に燃焼石を粉末状にした『火薬』。それらを使ったリボルバー回転式拳銃がいま完成した。

 

「よし!出来た! この世界の初となる『ドンナー』の完成だ!」

 

っと出来上がった銃…、ドンナーを上に掲げながら喜ぶ新一、しかも名前までつけている…と言うが、すでに設計図に名前がついていたらしく、それを取ってつけている。

 

「よし、これなら大丈夫だ、弾も心配ない。さて…少し試し撃ちしてみるか、今日の食事を取るためにも」

 

そう言って新一はロングソードを持って、ドンナーを加えて狩りに出た。

 

そして、暗い洞窟の中で、一匹だけ魔物がいた。それはうさぎの様な魔物で、動きは遅そうだが、見た目とは違いとても早く、強い魔物だった。

新一はそれを獲物と捉え。ドンナーを構える。

 

すると気付いたのか、うさぎの魔物は回避する為、風の魔法を放ち逃げる。

逃がさない為か、新一は自身が新たに手に入れた固有魔法、纏雷で加速させる。

 

ドンナーは纏雷を応用する事によって、小型の超電磁砲と同じ原理にする事が出来る。言わば“レールリボルバー”と言えるだろう。

 

銃口から放たれる銃弾が、電磁加速によっと加速されて、威力が増しうさぎの頭部を直撃し、そして爆さんする。

 

ドンナーの威力に新一は思わず驚いた。

 

「すっげ、纏雷と一緒に使うとこんな風になるんだな。さあ、飯確保っと…」

 

そう言って新一は魔物を拾い、自分の隠れ家へと戻っていくのであった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてその頃、進次郎達一行はハイリヒ王国に戻って、オルクス大迷宮で起きた事をエリヒド国王に報告し、死者が出た事を伝えた。。

 

「なるほど、グランツ鉱石を囮にしたトラップか…」

 

「はい、突然の転移魔法により陣形は崩れ、ベヒモスの居る65階層に飛ばされ、あげくはその仲間が犠牲に…」

 

「65階層、ベヒモスが住み着く階層ですな。勇者一行に死者が出た事に国民が知れば、瞬く間にパニックになるでしょう」

 

イシュタルはその事をエリヒド国王に言い、それにエリヒド国王は頷きながら言う。

 

「この事は内密にする。よいな?」

 

「ッ…、はっ…」

 

メルドはその事に頭を下げて承知する。だがそれを納得しない者がいた。

 

「(冗談ねぇよ……!そんな理由で内密だと!?)」

 

進次郎はその事に納得がいかず、拳を握り締めながら悔しがっていた。

だがここで進次郎が暴れても解決にはならない、それを察した千春が進次郎の腕を掴む、それに進次郎は見て悔しがる。

 

その様子を見ていた雫は辛く重い表情をするしかなかった。

 

しかし進次郎達はこれで諦める程、愚かではなかった。

 

 

 

 

その夜、雫は1人木刀で素振りをし、自身の心を清めていた。

 

あの日以来、部屋では香織がまだ目覚めていない、精神的ショックが大きく、その影響が出ているらしい。

雫はその事に胸が痛くなり、そして腰にある剣を抜いて、刃を見ながら目を細くする。

 

「……どうかしてたわ、そんな簡単に行くはずがない。……こんな事なら天道君の話をちゃんと聞いて…そう言えば」

 

っと雫はその事に何か思い出した。

 

 

 

───その力に飲まれて、逆に人々を傷つけ、殺す事になってしまう…。

 

 

 

聖教教会でのあの一言、新一が光輝に放ったあの言葉を思い出し、雫は考える様子を見せる。

 

「まるで天道君、知っているかの様な言いぶりだった…、これに似た状況でもあったのかな…?」

 

そう言いながら素振りを済ませ、香織が眠る部屋まで戻っていくと、途中で雫はある人物達を見つける。

 

「あれ…?」

 

雫が目にしたのは進次郎達が門の近くで大きな荷物を持って、何やら準備をしていた。

それを見て、雫が進次郎達の下に寄る。

 

「上地君、郷田君に飯島君、それに千春もどうしたのよ…?」

 

「雫。私達…行くね」

 

「行くって?」

 

雫はそれに首を傾げると、進次郎がそれに答える。

 

「新一を探しにだよ」

 

「ええ?!でもあの状況じゃあ!」

 

「あいつは絶対に死なねぇ…」

 

進次郎の言葉に雫はそれに思わず言葉が止まる、進次郎は目に強い意思を宿しながら雫を見ながら言う。

 

「新一は決してあの程度では死なない奴だ、絶対に。俺達は新一を見つけて必ず証明してみせる!絶対にな!」

 

「だからごめんね雫、私達は行かなきゃならないの」

 

「でも…──」

 

「やはり行くか」

 

っとその言葉に進次郎達と雫は振り向く、するとそこにはメルドが立っていて、それに進次郎達は一瞬戸惑うも、すぐに決意の表情をしてメルドに言う。

 

「メルド団長、俺達は──」

 

「ああ、皆まで言わなくていい。どうせお前達の事だ。こう出てくる事ぐらい予想した」

 

その言葉に進次郎達だけじゃなく、雫も驚く。

メルドはある袋を取り出し、それを進次郎達に渡す。

 

「ほら、これを持っていけ。大金だがある程度は養える。残りは稼ぎは冒険者となって稼ぐ事も出来る、後はお前達ならできるな」

 

「団長…ありがとうございます!」

 

「じゃあ、行ってくるぜ。八重樫、白崎には俺達は新一を探しに行くって伝えておいてくれ」

 

そう言って荷物を持って、進次郎達は王国を出ていき、それを見届ける雫。

メルドは少しばかり情けない表情をしながら呟く。

 

「俺は…あの状況を受け入れる他なかった、新一を助けに行くと思っていたが。あの様な結果になるとは…今の自分が情けない」

 

「メルド団長…」

 

メルドはそう言ってその場を去っていき、その様子を雫は見つめる事しか出来ず、そのまま香織が居る部屋へと戻るのであった。

 

 




新一の左腕速攻復活ですwww

展開早すぎると思いますが、少しばかり予想外の展開もあってよろしいかと思いまして。


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第10話 迷宮攻略

新たな技能によって、新型の武器『ドンナー』を完成させた新一は、それを使ってうさぎの魔物を仕留め、それを食料として持ち帰った。

新一は炎の魔法を使って肉を炙り、かなり変な匂いに耐えながら食べる新一。

 

胃酸強化のお陰で、もう苦しまない様になったが、何か不満な様子。

 

ムシャ、ムシャ、ムシャ、ムシャ、ゴックン!

 

「ブハッ! ふぅ…慣れないな、本当に、さてと…ステータスはどうかな?」

 

そう言って新一はステータスプレートを開く。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:25

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:820

 

体力:900

 

耐性:1000

 

敏捷:1100

 

魔力:1300

 

魔耐:1300

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査]・複合魔法・格闘術・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃]・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

ステータスがまた上がり、その様子に新一は考える。

 

「どうやら上がったようだな、増えたり減ったりするものがあるけど、あれは一体何だったんだろうな。

それよりもどうにかこの匂いをなんとかしたいな…、不味い肉をどうにか旨くしたいんだが…。そうだ、試しに神水で洗って試してみよう。多少はこの匂いも取れるかも知れない」

 

っと新一は新たに錬成したボトルに入れている神水で肉を洗って試してみようと考えた。

一度鍋を錬成し、それに神水を入れて、そして肉を洗ってみる。

 

すると魔物のの血が神水と混ざり合って、それに紫色になって、魔物の肉が腐って食べられたくなった。

 

それに新一は一度止めて、ため息が出る。

 

「はぁ…、ダメだ。上手くいかない…、そうだ!『超神水』で今度は試してみよう!」

 

っと新一はボトルに神水と再生液を入れて混ぜた物を取り出して、鍋の中の物を取り出して、水で一度洗って、超神水を入れる。

 

 

 

【超神水】

 

 

神水に再生液を混ぜて入れた物で、名前がなかったこれを新一が付けた物。

 

怪我だけを治す神水に復元させる能力を得た事を考えて付けた名前、正直どっちでもよかった。

 

 

 

新一は超神水を鍋に入れ、魔物の肉を入れて洗ってみると、魔物の肉がより輝き出して、それに新一は思わず見る。

一度取り出してみると、肉は綺麗な物となり、更に普通の肉となっていた。

 

それに新一は笑みを微笑みながら見て、鍋の方を見てみると、オレンジ色の玉が一つ浮いていた。

オレンジ色の玉を取る新一は、それを見ながら首をかしげていた。

 

「なんだろうこれ…、よく分からないな。まあいい…これは後で見てみるか、さてと…新しい技能は置いておいて…」

 

新一は鍋を片付けて、新鮮な肉を再び焼いて、その肉を食べる。

その肉は先程よりもかなり旨みがあり、もう最高と言っていい程の旨さだった。

 

食べた後に立ち上があって、ロングソードとドンナーを持って笑みを浮かばせる。

 

「あのクマの魔物に…、一度左腕の借りを返しに行こう」

 

そう言って新一はクマの魔物…爪熊にリベンジに行くため向かった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

爪熊は手当たり次第に魔物を食って、自分の腹を満たしていた。

当然その爪熊は新一の左腕を食べていて、血の付いた彼の手袋が爪熊の毛皮に引っかかっていた。

 

「よう、久しぶりだな」

 

その言葉に爪熊は振り向くと、新一が右手にロングソード、左手にドンナーを握って立っていた。

 

そして爪熊は有り得ない気持ちで見ていた、なぜなら新一の左腕があることに動揺しているからだ。

新一はそれを見て笑みを浮かばせながら言う。

 

「俺の左腕美味かった? あっ、俺の手袋があんな所に。まあいい、後で回収と行くか」

 

「グゥゥオオオオオオオオオ!!」

 

爪熊は新一に向かって鋭い爪を使って斬りつけてくる。

 

だが新一はそれを新たな技能【爆縮地】を使って回避する。

 

「ははは!いいぞいいぞ! 俺もお前を倒して、今先に向かう!」

 

「グゥゥオオ!!!」

 

怒りが頂点に達する爪熊は新一に猛突進してくる、それに新一は爆縮地を使って、爪熊の後ろに向けて一気にすり抜けた。

爪熊は振り向いた瞬間、左腕が切り落とされる。

 

新一が一気に進んだ時にロングソードで爪熊の左腕を切り裂いたのだ。

 

「グゥゥオオオオオオオオオ!!??!!?」

 

突如切り落とされた左腕を見て、大きく苦痛を上げながら吠える。

 

新一は腕についていた手袋を取り、自分のポケットにしまう。

 

「どうだ、切り落とされた感じは? まだまだ終わりじゃないぞ」

 

そう言って新一はドンナーを爪熊に向け、纏雷で加速させて打ち込む。タウル鉱石で固められた銃弾が爪熊の右腕を撃ち落とし、それにより爪熊は大きな悲鳴をあげる。

 

止めと言わんばかりに、新一は爪熊の頭部に向け、ドンナーを撃ち込む。

 

 

 

ドォォォン!!

 

 

 

ドンナーから放たれた銃弾が、爪熊の頭部に直撃し、それにより爪熊は命を絶つ。

 

新一はドンナーを下ろし、ロングソードをしまいながら呟く。

 

「悪いな。俺は生きたいんだ…生きて約束を果たさなきゃいけない。白崎との約束をな…」

 

そう言って新一は爪熊の肉を拾いながら一度食べ、自分の身体に新たな技能を得る。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:28

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:900

 

体力:990

 

耐性:1050

 

敏捷:1130

 

魔力:1350

 

魔耐:1350

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇]・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃]・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

「よし、増えたな、特に錬成系と格闘系が。ステータス関係はそんなに上昇していないな。もうここからは地味道で行くしかないか、よし、そんじゃあ…」

 

新一は超神水を使って爪熊の肉を洗い、毒素を落とした後に、肉を保存して毛皮をローブの様に被り、更に荷物を背負う箱を作って、出発準備が出来た。

そして最後にポケットに入れていた手袋をはめて、新一は前を向く。

 

「さて…、行くとするか。脱出する為に」

 

そう言って新一は脱出する為に、この奈落の底…“真の大迷宮”を攻略しに向かった。

すると新一は足を止めて、少しばかり考える。

 

「…白崎の奴、絶対に心配しているだろうな」

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そしてハイリヒ王国では、雫が香織の側に居てあげて、目が覚めるのを待っていた。

 

「(香織…)」

 

雫は眠っている香織を見つめている中、香織はある夢の中にいた。

 

「……ここって」

 

香織が居た場所は無限に広がる浜辺、その先には海があり、香織は足を海に浸かりながら眺めていた。

 

「浜辺……?でもどこの…」

 

「ここは私の世界、私だけの空間です」

 

っと後ろから声が聞こえ、それに香織は後ろを振り向くと、そこには丸いテーブルに座って、紅茶を飲んでいる女性、女神リリアーナがいた。

香織はその光景に呆然としながら見ていて、リリアーナは香織の方を見る。

 

「貴女が白崎香織さんね」

 

「え?どうして私の名前を…?」

 

「貴女の事ならなんでも知ってるわ、私はリリアーナともうします。よろしく」

 

「リリアーナって…」

 

彼女はその言葉に思わず耳を疑った、ハイリヒ王国のリリアーナ王女と同じ名前の人物であることに。

それにリリアーナは微笑みながら言う。

 

「あら、ごめんなさい。そちらでは知っている人の名前と同じだったわね。でも私はそちらの人とは全く違う人物…女神なの」

 

「女神?!」

 

香織はその言葉に驚いたのも無理はない。香織が知っているのは神エヒトのみで、女神がいるとは知らなかったのだ。

まして女神本人が自らこちらにやって来るとは思いもよらなかった。

 

「香織さん、どうかこっちに寄ってくださらない?私は貴女と話しがしたくて貴女の精神をここに呼んだのですから」

 

「私を…ここへ?」

 

「はい、さあ…こちらに」

 

女神リリアーナの誘いに香織は歩み寄り、空いている椅子に座って女神リリアーナと向き合う。

そしてリリアーナは持っている紅茶のカップを置いて、香織の方を見ながら言う。

 

「香織さん、貴女が心配している新一さんは無事です」

 

「っ!!天道君!?天道君が無事なの!?どういう事!?」

 

「新一さんはあの程度では死にません。それに彼からくれたそのミザンガ、全く切れていないでしょ?」

 

っと香織はその事を聞いて思わず腕を見る、その言葉通り、ミザンガは全く切れてなくて、それに香織は表情が明るくなり、ミザンガを握り締める。

 

「天道君…、そ!それはそうとどうして貴女は天道君の事を知っているのですか?」

 

それに女神リリアーナは香織の問いに答える。

 

「香織さん。貴女は《転生》と言うものを聞いた事はありますか?」

 

「転生…?そんなによく知りませんけど、確か死んだ人が何かの理由で別の場所で蘇るって…。それと天道君の何の関係があるのですか?」

 

「……新一さんはその転生に深く関わっているもの、この私がそうさせた様に」

 

その言葉に香織は驚きを隠せなかった。彼女が新一を転生させた? 理解出来ないと思い、香織はそれに問う。

 

「ど、どういう事なんですか?!」

 

「フフフ、後の事は新一さんに聞いてみてください。彼からの方がよく話すと思いますので」

 

「そんな!」

 

「大丈夫です、時が来れば必ず私も話しますから」

 

っとその言葉に香織の意識が徐々に薄れて行き、女神リリアーナは最後に香織にこう言う。

 

「心配しないでください。必ず貴女は新一さんに会えます、その事を信じてください」

 

そう女神リリアーナは言い残して、香織の意識は途切れてしまう。

 

そして香織は目を覚まし、その様子に雫は香織の方を見る。

 

「香織!大丈夫!?」

 

「雫ちゃん…?」

 

香織は身体を起こし、周りを見渡して確認する。

 

「……あれは夢?」

 

「香織…どうしたの?」

 

様子の可笑しい香織に雫は問いかけ、っとそれに香織は雫の方を向いて頭を横に振る。

 

「ううん!何でもないの。ねえ雫ちゃん、私お腹すいちゃった」

 

「え?そ、そっか、じゃあ今メイドさん達に頼んで持ってくるわ。ちょっと待ってて」

 

そう言って雫は部屋から出て行って、香織はミザンガを見る、切れていないミザンガを見て、香織は何かを決心するのだった。

 

 

 

そして進次郎達は宿場町ホルアドに再びやって来て、オルクス大迷宮の前に来ていた。

 

「よし、行くぞ皆」

 

「おうよ」

 

「うん、絶対に見つける」

 

「ええ、新一君を見つける。絶対に…」

 

っと決意を固めながら進次郎達は再びオルクス大迷宮へと入っていくのであった。

 

 




ヒロイン的には完全に香織がメインとなってますね、まあユエと並ぶ程の少女ですから。

もうダブルヒロインとしてもいいかもと思ってますwww


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第11話 探索と決意の意識

奈落の底での攻略を開始した新一はまず初めにこの階層を調べることにした。

 

上の出口があるかどうか調べ、上の階段が調べたが、なかなか見つからないことにため息をつく。

 

「ハァ…、だめだこりゃ。どうやら上への道はないようだ。下に降りていくしかない」

 

っとそう言って新一は下への階段を探すために捜索する。

するとなにか気配を感じ取り、それに新一は足を止めて、ロングソードとドンナーを取る。

 

しかし暗い空間で何も見えないため、どこをどう探すか分からなかったが、気配感知と魔力感知を使って探し、そして壁の近くに何かがいると感じ、新一はそこを見る。

するとそこには2mもある大きな灰色のトカゲの魔物が居て、金色の瞳で新一を睨み、そしてその金眼が一瞬光を帯びた。

 

 

 

ビキビキ!!!

 

 

 

突如と右腕が石化し始め、それにより新一は思わず隠れて、何ストックも用意した神水を取り出してかける。

すると石化した腕が収まり、石化した部分が徐々に治っていく。

 

「石化能力か…! だがこんな時にこれが役に立つ。きよしの設計図のお陰でな」

 

っと新一はある物を取り出す。

それは“閃光手榴弾”事『スタングレネード』だった、ピンを抜いて、先ほどのトカゲの魔物の方に投げる。

 

スタングレネードは爆発して、強烈な閃光を放ち、それにトカゲの魔物は目を光にやられて倒れる。

 

その隙に新一は爆縮地を使い、トカゲの魔物に向かって一閃で切り倒す。

 

それによりトカゲの魔物は倒されて、新一はロングソードとドンナーをしまって、トカゲの魔物を見る。

 

「こいつ…、暗闇でも見えるのか? まあいい…あんまりトカゲの肉は食べたくないけど、贅沢は言えないな」

 

新一はそう言いつつ、トカゲの魔物の肉を切って、一口食べて、与えられる能力を得る。味は最高とは言えないが…。

 

「おぇ、最悪だ…。まだ犬とうさぎ、そして熊の肉がまだ最高だ、さてと…ステータスは?」

 

そう言って新一は今の自分のステータスを見ると。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:32

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:1000

 

体力:1200

 

耐性:1150

 

敏捷:1200

 

魔力:1500

 

魔耐:1500

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇]・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃]・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・石化耐性・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

 

良い感じにレベルも上がり、更に2つ技能が増えた、夜目と言う技能が先ほどのトカゲの魔物が周りを見渡せたのと、石化耐性と言うものが追加されたのを見て、新一は納得する。

その獲物からの能力を引き継ぐのではなく、ある部分の能力の耐性を得る事と見た。

 

「なるほどな、そういうこと。でもまあこの夜目と言う技能が辺りの様子を見渡せる様になった事だし、よしとするか」

 

っとそう言って新一は辺りを見渡すと、確かに先ほどとは違い、暗かった辺りが遠くまで見渡せるようになり、辺りが夜からライトが付いた感じの洞窟に見えた。

そんなに遠くは見えないが、ある程度は視界が確保出来た、これならもう暗い所は問題ない。

 

新一はこれを期に、次の階層へと繋がる階段を探し、そして見つけて階段を下りて向かった。

 

次の階層は地面がタールのように粘着く泥沼のような場所だった。新一はそれを見て一度『鉱物系感知』を使い、辺りの鉱石を調べていると、とある鉱石を発見した。

 

 

 

【フラム鉱石】

 

艶のある黒い鉱石。熱を加えると融解しタール状になり、融解温度は摂氏50度ほどで、タール状のときに摂氏100度で発火する。その熱は摂氏3000度に達する。燃焼時間はタール量による。

 

 

 

その鉱石を見た新一は辺りを見渡す、あちこちにタール状のフラム鉱石があり、下手に引火させると命がないと確信した新一。

 

「なるほど、ここでは超電磁砲と纏雷は使えないっと言う事か。まあいい…ロングソードだけでも十分行けるしな」

 

そう言ってロングソードを抜いて、タール状のフラム鉱石の上を歩く、辺りは何か特になるものがないか調べていると。

 

すると…。

 

 

ガチンッ!

 

 

「ッ!何!!?」

 

突如鋭い歯が無数に並んだ巨大な顎門を開いて、サメの魔物がタール状の液体の中から飛び出して、新一に襲いかかってきた。

それに新一はロングソードで防御して、何とか凌ぎ、サメの魔物は再びタール状の液体の中に消えた。

 

「(気配感知が全く効かなかった…、まさか感知を遮断する方法があるのか…? でもそれだけでは…)」

 

すると新一はロングソードをゆっくりと下ろし、構えたまま目を瞑る。

 

まるで相手を待っているかの様にじっとして…。

 

そしてサメの魔物は新一を食い損ねたと思い、再びサメの魔物がタール状の液から飛び出してきた。

しかし、これが新一の狙いだった。

 

「そこだ!!」

 

 

ズバッ!!!

 

 

 

新一は待っていたのか、一閃でサメの魔物を切り裂き、サメの魔物は横直線で綺麗に斬れて落ちる。

 

ロングソードをしまい、斬った後のサメの魔物を見る。

頑丈な歯と皮膚の下には分厚い肉の固まりが集まっていて、いかにも頑丈さが目に見える。

 

「なるほど…、多分ドンナーじゃこの皮膚は撃ち抜けなかったろうな。だがロングソードで口から一気に切り裂いたのが正解か」

 

そう言って新一はサメの魔物を掴み、どこか安全な場所があるか探してみて、調理をしようと思った。

だがどこもタールだらけの場所で、安全な場所が存在しない為、サメの魔物の肉を切って、別の階層に下りて、その肉を調理して食べた。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:40

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:1190

 

体力:1310

 

耐性:1210

 

敏捷:1290

 

魔力:1700

 

魔耐:1700

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇]・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃][+安定射撃]・剛力・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・石化耐性・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

予想通りにステータスや技能が増えて上がり、それを見た新一は頷きながら降りてきた階層を見ながら呟く。

 

「さて…、どこまで続くか分からない迷宮を必ず脱出するぞ」

 

新一は荷物を背負って、再び迷宮を探索して攻略を進むのであった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

一方ハイリヒ王国では、香織が目覚めた事を聞き、光輝達がやって来る。

 

「香織!目が覚めたのか!」

 

「あ、光輝君に龍太郎君…」

 

「目が覚めて良かったぜ」

 

2人が安心している様子に頷く香織。

 

「うん、ごめんね。心配かけて…」

 

「いいさ、君が目を覚ました事が一番いい事だんだから。香織。俺はもう二度と仲間を死なせはしない、死んでしまった(・・・・・・・)天道の分まで頑張り、香織を守るよ」

 

「……」

 

っとその言葉に香織の言葉は止まる、本当は新一は死んでいない筈なのに光輝からすれば、もう死んでしまったと思ってしまっている。

それに光輝は気付かないまま言い続ける。

 

「だから香織、君もいつまでも天道の事を引きずってはダメだ。そんなんじゃ天道が報われn──」

 

「ゴメン、今は雫ちゃんと二人っきりにして」

 

香織の言葉に思わず光輝は口を止めてしまう。

 

「え? 香織…?」

 

「そうよ」

 

っとドアから雫がやって来て、光輝と龍太郎を押して、外まで追い出す。

 

「ほら!後は私がやるから、2人はどこかに行く!」

 

「え?でも…」

 

「いいから行く!!」

 

雫の猛烈な勢いに光輝と龍太郎は慌ててその場を去っていった。

 

「全くも…」

 

「雫ちゃん」

 

香織が声を掛けてきて、それに雫は香織の方を向く。

 

「え?どうしたの香織?」

 

「…上地君達は?いないの?」

 

っと進次郎達の事を問う香織に雫は少し考えるが、その問いに答える。

 

「…上地君達なら、天道君を探しに向かったわ。…でも本当に生きてるかどうk──」

 

「私は信じてる」

 

すると香織がその言葉を言い、それに雫は思わず香織の方を見る。

 

「え?」

 

「私…天道君が生きている事を信じてる。絶対に死んでないって…。でも今の私じゃあダメ…、だから」

 

香織は立ち上がって雫の方により、雫に面と向かい合って言う。

 

「私…強くなる。だから雫ちゃん…力を貸して下さい」

 

そう言って香織は頭を下げてお願いする。

香織の真剣な表情と覚悟に雫は言葉を止まりながらも、香織の決意を聞いて頷く。

 

「いいわ、とことん付き合ってあげるわ」

 

「雫ちゃん!ありがとう!!」

 

雫の言葉に香織は雫に抱きつき、何度も礼を言う。

 

「礼なんて不要よ、親友でしょう私達」

 

その言葉に香織の目に涙が溢れ、雫はそれを優しく受け止めるのだった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてオルクス大迷宮で、進次郎達は新一を探しながら迷宮を探索していた。

現在、進次郎達は20階層よりもしたの28階層に来ていた。

 

「おりゃあ!!」

 

進次郎は双剣を魔物に斬りつけて倒し、軍平も同じようにバトルアックスで切り倒す。

 

「どぉるりやああ!!!」

 

 

ガシュン!!!

 

 

軍平のパワーで倒される魔物、そして魔物は軍平の後方に迫った時に一発の矢が魔物の頭部に直撃し、魔物は倒される。

 

きよしの放った矢が当たった事に、きよしは笑みを浮かばせ、その様子に千春は思わず拍手が送られる。

 

「お見事、皆、やるじゃない」

 

「ああ、ここまでレベルアップした甲斐があった」

 

っとそう言って進次郎達は自分たちのステータスプレートを開いてみる。

 

 

 

========================

 

 

 

上地進次郎 17歳 男 レベル:22

 

天職:双剣士

 

筋力:160

 

体力:180

 

耐性:160

 

敏捷:210

 

魔力:130

 

魔耐:200

 

技能:双剣術[+斬撃速度上昇]・火属性適用・縮地・剛力・言語理解

 

 

 

郷田軍平 17歳 男 レベル:22

 

天職:大斧戦士

 

筋力:260

 

体力:320

 

耐性:280

 

敏捷:160

 

魔力:120

 

魔耐:130

 

技能:大斧術[+斬撃效果上昇]・土属性適用・剛力・身体能力・縮地・言語理解

 

 

 

飯島きよし 17歳 男 レベル:21

 

天職:弓手

 

筋力:120

 

体力:190

 

耐性:130

 

敏捷:210

 

魔力:180

 

魔耐:210

 

技能:弓術[+連射技術上昇]・風属性適用[+風属性效果上昇]・言語理解

 

 

 

早川千春 17歳 女 レベル:20

 

天職:魔道士

 

筋力:100

 

体力:150

 

耐性:110

 

敏捷:100

 

魔力:620

 

魔耐:800

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少]・全属性耐性[+全属性效果上昇]・調理[+毒性完全無効化][+酸性完全無効化]・言語理解

 

 

 

 

========================

 

 

 

進次郎達は驚く程の成長速度をしていた。新一を探したい願いもあってか、その效果はこの通りに現れ、進次郎達をこの様にさせた。

 

彼らが探索してからは地上には戻っておらず、千春が調理で増えた新たな技能と変わった技能を使い、魔物の肉を材料にして調理し、何とかこの飢えをしのいでいた。

ここだけの話だが、千春の料理はかなり美味いとの事、進次郎達はもう満足する程に食べまくっていたとか。

 

「へへへ、この調子でもっとレベルを上げて、次の階層まで対応出来る様にしておかないとな」

 

「おうよ!絶対に新一を見つける!」

 

「うん!そうだね!」

 

「ええ! 新一君…待っててね!」

 

そう言って進次郎達は次の階層へと向かい、新一を探しに向かうのであった。

 

 



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第12話 迷宮での出会い

遂にあのヒロインとの出会いです。

どうか見てください。


新一が奈落の底での迷宮を探索してから日が過ぎて、もう50階層まで降りてきた。

 

ここに来るまでにかなりの道中だった。

 

とある階層で毒の痰を吐く大きなカエルと毒蛾に、通常よりも巨大なムカデ、更に頑丈な鱗を持つ魔物を相手にし、新一は思わずため息が出る。

新一はそれらの物を食べて、超神水で洗い…浄化で試した所、ムカデや毒蛾以外の物は意外な程に旨みがあり、更にカエルの肉がとても美味かった事が、何故か新一には悔しい思いする事になった。

 

そんな感じで新一は下に降り続け、気付けばもう50階層まで来ていた。

 

今だに終わりが見えない迷宮。そして新一のステータスはこんな感じになっていた。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:63

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:3930

 

体力:4400

 

耐性:3930

 

敏捷:5830

 

魔力:6000

 

魔耐:6000

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇]・全属性耐性[+全属性效果上昇]・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇][+豪脚]・毒耐性・麻痺耐性・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃][+安定射撃]・剛力[+豪腕]・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・遠見・石化耐性・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

 

っとこんな感じにレベルが完全に上がっていた。

そして50階層で捜索していると、何かとても頑丈で、厳重そうな扉が有り、それを新一は見上げながら見ていた。

 

「…こんな扉がこの奈落の底にあるなんてな、まさしくパンドラの箱…開けてはならない感じがビンビンくるよ。でもここを通らないと先には進めない」

 

そう言って新一はロングソードとドンナーを抜いて、荷物を置きながらその扉の方を見る。

 

「悪いけど、開けさせて貰うぞ。そのパンドラの箱と見た扉…」

 

新一はパンドラの箱と見る扉に近寄る。

扉には見事な装飾が施されていて、更に中央に2つの窪みのある魔法陣が描かれているのが見えた。

 

「ん?なんだこれ…、こんなの見たこともない。王国の図書館でしっかりと覚えたはずなんだが…、いや…あそこで覚えた事はこの奈落では通用しないな。仕方ない…錬成で試してみよう」

 

そう言って錬成で扉に穴を開けようとした時に。

 

 

バチィィン!!!!

 

 

「ッ!!!」

 

扉から赤い放電が流れ、それに思わず新一は飛んで下がり、手から少し煙が出ていたが、すぐに消えていったので、はらって扉の方を見る。

 

 

──グオォォォオオォ!!!

 

 

すると突然、野太い雄叫びが響き渡る。

 

扉の両側にある壁と一体化していた巨大な像が突如動き出し、像として同化していた灰色の肌が暗蒼色に変色し、そしてもう一体の方が暗緋色に変色して新一を睨みつけていた。

それを見た新一はその巨人の魔物…『サイクロプス』を見て納得する。

 

「なるほど…、こいつらはここの番人って訳か。まあいいさ、先手必勝!!」

 

っと新一はドンナーを構え、暗緋色のサイクロプスに向けて撃つ。

 

サイクロプスは突然の攻撃に対処する事が出来ず、目を撃たれて倒れる。

 

「グオオオオォォォォオオオ!!!」

 

もう一体のサイクロプスは倒された仲間を見て、怒りを爆発させ、巨大な腕を振り下ろしてくる。

それを新一は回避して、距離をとり、更に技能の空力を使って、空中に足場を作って飛び、サイクロプスの首元を狙ってロングソードで斬る。

 

 

ズバァァン!!

 

 

首を斬られたサイクロプスは無残に倒れ、新一はロングソードとドンナーをしまい、サイクロプスを見る。

 

「意外と呆気なかったな。いや…俺が強くなりすぎたって所か……ん?」

 

新一はサイクロプスの中に何かがあるの見て、それを取ると、宝玉の様な魔石が出てきた。

 

「魔石…、こいつら自体が鍵という事だったのか、でももう1個揃ったらあの扉も開くって事だな」

 

確信した新一はもう一体のサイクロプスからもう1つの魔石を取り出し、扉の窪みにはめ込むと、魔石から赤黒い魔力光が迸り。

そこに魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして扉の鍵は開き、扉はゆっくりと開いて、新一はその中へ入っていく。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

新一は開いた扉の奥に進むと、部屋には光が1つもなく、真っ暗で大きな部屋が広がっていた。

 

「やっぱり暗いな…ん?」

 

そして奥には薄らと光が現れ、巨大な立方体の石が置かれていた。

 

何やら妙な感じがする新一は警戒しながら進んでいると、扉が急に閉じて、それに思わず振り向く。

 

「ッ!おいおい…脅かしっこ無しだぜ…!」

 

少々驚いた新一が呟いた。

 

 

 

 

「……誰?」

 

 

 

 

「え…?」

 

っとその時だった、突如弱々しくかすれた女の子の声が聞こえ、それに新一は思わず振り返る。

 

巨大な立方体の中心に“埋まっている女の子”が見えた、その女の子は金髪で、まだ12歳くらいの少女だった事に、新一は驚きを隠せなかった。

 

「少女……女の子?」

 

新一はその少女の様子を見て、思わずその場所に近寄り、その少女に問う。

 

「君、どうしてそこに? って言うか……なんで?」

 

「…私、先祖返りの吸血鬼、すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でもある日…… 家臣の皆……『お前はもう必要ない』って。

おじ様…『これからは自分が王だ』って言って、私……それでもよかった…、でも私…すごい力あるから危険だって、殺せないから封印するって…それで、ここに…」

 

枯れた喉で必死に語る少女の問いに、新一は思わず黙ったまま聞いていた。何より吸血鬼の末裔と聞いた時、同じような事を異世界ディスペアでも聞いたことがある。

 

ディスペアでの吸血鬼は人から隠れで過ごし、見つからないようにし、長年生き続けていた。

しかし魔王の手によって全てが滅び、もう生き残りはいないと思っていたが、唯一生き残っていた女性が居て、そこで当時勇者でもある新一達がある程度助言を頼み、それによって魔王の居場所が分かったと言う。

 

そして今戻って、新一はその少女の話しに少し問う。

 

「君、何処かの王族だったのか?」

 

「……ん」

 

少女は新一の問いに頷く。

 

「それに殺せないってどういう事だ? 不老長年の吸血鬼でも死なないことは…」

 

「…勝手に治る。怪我しても直ぐ治る…。首を落とされてもその内に治る」

 

「(も、もしかして…再生魔法? …再生液の元となっているのと一緒のか)…マジか、凄まじいな、でも…それだけ?」

 

「これもだけど…、魔力、直接操れるの…陣もいらない」

 

それを聞いた新一はそれに納得する、吸血鬼である彼女は新一が獲得した技能の魔力操作が同じように彼女にもあるっと確信し、その力に怯えた当時のその王族達は彼女をここに封印したと思った。

 

「…たすけて、私…悪くない! 裏切られただけ!」

 

今にも泣きだそうとする彼女は必死に新一に助けを求める。

 

それに新一は笑みを浮かばせながら言う。

 

「…任せろ、気安く見捨てるほど俺は落ちてはいない」

 

新一はそう言って彼女を捉えている立方体に手を触れる。

少女はその様子に目を大きく開き、新一はそれに気にしないまま錬成の技能追加の『錬成分解』を行う。

 

すると変形する筈の立方体は、まるで新一の魔力に抵抗するかの様に錬成を弾き始め、それに新一は少々表情を歪ませながらも徐々に追い詰めていく。

 

「へぇ…、当時の王族達は相当この子を出したくないみたいだな、すげぇ抵抗だ、でも俺の方が魔力は上だ!」

 

そう言って新一は魔力を一気に注ぎ込み、少女を捕らえている立方体は激しく抵抗するも、新一の魔力によってあっという間に粉砕されてしまい、少女はその場に倒れる。

新一は少し呼吸を整えると、その少女の下に行き、状態を確かめる。

 

「大丈夫か?」

 

「……うん、……ありがとう」

 

その言葉に新一は頷きながら見て、そして少女はある事を問う。

 

「…名前、何?」

 

「俺か? 俺は天道 新一。新一って呼んでくれ。君は?」

 

すると少女は「新一、新一」っと呟きながら大事なものを内に刻み込む様に繰り返し。そして、問われた名前を答えようとして思い直した様に新一にお願いする。

 

「…名前、付けて」

 

「え?付けてって…、思い出したくないの?」

 

「……ん、もう、前の名前…いらない。……新一の付けた名前がいい」

 

っとその事に少しばかり迷った、正直名前を付けるのはどうも苦手で、いつも適当な事ばかり言っていた。

しかし真剣に見つめてくる少女に、新一はちょっとばかし考え、そして言う。

 

「…“ユエ”、君の名はユエだ。ユエって言うのは俺の故郷で月を意味する言葉。最初に部屋に入った時、まるで月の様な光が出ていたから、それで思いついた」

 

「ユエ、ユエ、…うん。今日からユエ、ありがとう」

 

その微笑ましい美しさの表情に、新一は少しばかり照れながら言う。

 

「い、いや~それほどd──」

 

 

 

ゾッ!!!!!!

 

 

 

 

すると上から突如猛烈な気配と膨大な魔力を感じ、それに新一は思わず振り向く。

 

「っ!!?」

 

すると上にはサソリの様な魔物がこちらを睨みつけるように見ていて。そしてトゲのような岩を放ち、新一とユエに襲いかかってきたのだった。

 

 



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第13話 ユエ

50階層で封じ込められていたユエを自由にさせた新一、しかしその時、サソリの魔物が突如現れ、新一とユエに岩のトゲを放った。

 

 

ズバッ!!

 

 

トゲの攻撃を新一がロングソードで一気に切り裂き、新一はサソリの魔物を見る。

今まで気配はなかった筈なのに、突如現れた、それを考えると新一はユエの方を一度見て納得する。

 

「なるほどな、どうやらユエを相当じゃなく、絶対に外に出したくない様だな」

 

「新一…」

 

「大丈夫だ。ユエは下がってろ! それとこれを被ってな」

 

っと新一は爪熊だった毛皮をユエに渡す、ユエはそれを受け取る理由が分からなかったが、すぐに今の自分の姿を見て確信する。

 

今のユエは素っ裸だった為、それにすぐに隠して上目遣いでポツリと呟く。

 

「新一のエッチ」

 

「なんでそうなる…、隠れてろよ!」

 

そう言って新一はロングソードだけじゃなく、ドンナーも取り出して突き進む。

サソリの魔物は向かってくる新一に岩のトゲを放つ。

 

それを新一はロングソードで切り落として、更にドンナーで反撃に出る。

 

 

ガキン!!!

 

 

だがドンナーの銃弾、タウル鉱石で作られた銃弾がいとも簡単に弾き返されて、サソリの魔物は更に岩のトゲを出して反撃する。

 

「チッ!」

 

舌打ちをする新一はすぐさまトゲを切り落として、物陰に隠れて様子を疑う。

 

「あの魔物…、随分と硬いな、タウル鉱石で作った銃弾が弾き返されるなんて、どんな仕組みなんだ? 出来れば調べたいけどね!」

 

そう言って新一は向かっていき、サソリの魔物が放ってくるトゲの岩を切り落としながら近づき、そしてサソリの魔物が尻尾の毒針を使って新一を刺そうとする。

新一はそれをかわして、ロングソードでサソリの魔物の尻尾を斬ろうとする。

 

 

ガキン!!!

 

 

しかしサソリの魔物の体はかなり頑丈で、ロングソードでも斬ること出来なかった。

 

新一は表情を歪ませながらも、その場を直ぐに引く、サソリの魔物がハサミで攻撃してきたのに対し、新一はそれを飛びながらかわす。

そして新一は試しにサソリの魔物の目を狙ってドンナーを撃つ、するとドンナーの攻撃がサソリの魔物の目を直撃して、目を潰されたサソリの魔物は大きく苦しむ。

 

「キシャァァァァア!!!」

 

その隙に新一は一度体制を整える。

 

そしてユエが新一の側にやって来る。

 

「新一」

 

「ユエ! こっちに来るな!危ないぞ!」

 

「ちょっと首を貸して、力になれると思う」

 

「え…何だって?」

 

新一はユエの言葉に少しばかり首を傾げるも、ユエは新一の首にキス…否、首に向かって噛み付いた。

 

「ぅお!」

 

あまりの突然に新一は思わず声が出るも、ユエは新一の事にお構いなく彼の血を吸っていた。

 

ユエは新一の血を吸いながら、自分の力を蓄えていた。

そんな中でサソリの魔物は苦しみながらも、新一達を捉え、襲いかかろうとする。

 

しかしそれを新一はドンナーを使って阻止し、何とか抑える。

 

そして血を吸い続けたユエは、新一から首元を離れて、舌なめずりする。

 

「…ごちそうさま」

 

そう言ってユエは立ち上がり、サソリの魔物に向かい合う。そしてサソリの魔物に向けて片手を上げた同時に、その華奢な身からは想像もできない莫大な魔力が噴き上がり、一言呟いた。

 

「“蒼天”」

 

するとユエが放った魔法、サソリの魔物の真上に直径上、6mくらいあるな青白い炎の球体が現れる。

直撃したわけでもないない筈が、サソリの魔物はその場から逃げようとする。

 

しかしそれをユエが許すはずもない。

 

ユエは伸ばした指差しを振り、青白い炎の球体が逃げるサソリの魔物を追いかけ、そしてその場に押しつぶす。

 

「グゥギィヤァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!????!!???!」

 

サソリの魔物はかつてもない悲鳴をあげ、同時に青白い閃光が辺りを満たして見えなくなってしまう。そして魔法の効果時間が終わったのか、青白い炎が消えていく。

痕跡には、外殻を赤熱化させ、表面を融解化させたサソリの魔物が苦しみながらもがいていた。

 

ユエの膨大な魔力の威力に、新一は思わず唖然とする。

 

「うっそん。マジで…?」

 

新一がそう呟くと、ユエが肩で息をしながら座り込んでいる姿を見かけ、新一は近寄る。

 

「大丈夫か?」

 

「うん…、最上級……久々に使うと疲れる」

 

「ははは、上出来だ。後は俺に任せてくれ」

 

「うん…、頑張って」

 

そう言って新一はサソリの魔物の方を見る、サソリの魔物は今だ健在で、今にも動き出そうとしていたが、ダメージが大きいのか動くにもやっとだった。

 

新一は爆縮地を使い、サソリの魔物の真上に降り立つ。

 

そしてドンナーをしまい、ロングソードを片手に持つ。

 

「さて……ここでおさらばだ、じゃあな」

 

っと新一はロングソードを一気に振り下ろし、サソリの魔物の命を絶つのであった。

そしてその肉とサイクロプスの肉をちょっとばかし食べて、新たな力が得る。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:67

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:4800

 

体力:6300

 

耐性:4800

 

敏捷:7100

 

魔力:8600

 

魔耐:8600

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇]・全属性耐性[+全属性效果上昇]・物理耐性・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇][+豪脚]・毒耐性・麻痺耐性・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃][+安定射撃]・剛力[+豪腕][+金剛][+怪力]・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・遠見・石化耐性・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

サソリの魔物を撃退した新一はユエを錬成で作ったテントに入れて、一通りの事を聞いた。

 

「なるほどな、300年間…この場所に封印されていたのか。辛かったな」

 

「ううん、もう大丈夫、辛さには慣れた」

 

っとそう言うユエだが、彼女の手から少しばかり震える感じが見え、未だ心に影響が残っている事があると確信する新一。

するとユエは新一にある事を聞く。

 

「そうだ。新一に聞きたいことがあるの」

 

「ん?なんだ」

 

「さっき…吸血鬼の事を『不老長年』って言ってたよね。どうして吸血鬼を不老長年と思ったの?」

 

ユエはその事を気にしていたのか、新一にそれを聞いた。

新一は思わず黙り込んでしまう。

 

よく聞いているなと思いつつ、新一は己の過去を振り返りながら思う。

 

自分が積んできたかつての旅…、今ユエに話しても問題はないであろうと…。

 

「そうだな。ユエ…今から俺が話すのは少しばかり驚くばかりの話だが…聞いてくれるか?」

 

「ん…いいけど。どうして驚くばかりなの?」

 

ユエはそれに問い、新一は自分の話しを語り始める。

自分がこの世界とは別の場所、そこで勇者をしていていた時に、不老長年の吸血鬼と出会い、そこで色々聞いた事を、そして魔王を倒した事と転生した事をユエに話した。

 

ユエは新一が語りだした事に驚きつつも、ユエは新一の事を信じた。

 

「凄い…どれも驚く事ばかり。新一って凄いことをしてきたんだ…」

 

「まあな、それにしてもこいつ…、どんな甲羅をしているんだ?」

 

新一は先ほどのサソリの魔物の甲羅を取って、それを鉱物系鑑定で調べてみた。

 

 

 

【シュタル鉱石】

 

魔力との親和性が高く、魔力を込めた分だけ硬度を増す特殊な鉱石。

 

 

 

 

「なるほど、どおりで硬かった訳だな」

 

っとそう言って新一はその鉱石を使って、設計図を見ながらある物を作り上げていく。

新たに手に入れた追加技能の複製錬成によって、一度作り上げた弾を軽々と作り、少しづつ改良を加えつつ予備の為の弾薬を整え、新たな武装を作り上げた。

 

そして対人狙撃ライフル【シュラーゲン】が完成し、新一はその弾薬も完成し、新一の新たな武器が完成した。

その様子を見て、ユエは問う。

 

「新一、それは何?」

 

「ああ、これは友人が託してくれた武器の設計図をもとにした物だ、と言っても俺のオリジナルを入れてるがな」

 

「へぇ~」

 

ユエはそれに納得しながらも、また次の事を問う」

 

「ねえ、新一はどうしてここにいるの?」

 

「…そうだな、話しても構わないか」

 

っと新一は語り始める。

 

新一はある奴の行いのせいで、この奈落の底に落とされてしまい、ここをさ迷い続ける羽目になった、だがそれを脱出する為に出口を探している。

それを聞いたユエは涙を流していた。

 

「どうしたのだ?」

 

「ぐす…、新一…。つらい…、…私もつらい」

 

っと同様するかの様にユエは涙を流し、それを新一は頭を横に振りながら言う。

 

「別に悲しむ事はないよ。俺は皆にじゃなく、1人の奴がやった事なんだ。まあそれはいいさ、戻ったらたっぷりとお仕置きするつもりだから。それとユエ、ここの出口知らない?」

 

「詳しくは知らないけど、ここ…この迷宮は、反逆者の1人が作ったと言われてる」

 

「反逆者…?そんなやつが此処を?」

 

新一はそれを聞くとユエは頷きながら言う。

 

「うん、反逆者…神代に神に挑んだ神の眷属のこと。世界を滅ぼそうとしたと伝わってる…後の事はよくわからない」

 

「そうか…、俺が聞いてきた話しとはかなり違う所があるな…。まあいい、後に分かってくるさ。それよりもユエ、お前はどうするつもりだ?」

 

「え?どうするって…?」

 

「帰る所はないし、地上に出ても待っている人もいない。ユエ…どうしたんだ」

 

「…………分からない」

 

長い間、ずっと封印されてきた彼女、もうだれも待っている人もいない、それを考えるとユエはすぐに悲しい表情をする。

それを見た新一は言う。

 

「なら俺と一緒に来るか?」

 

「え?」

 

「魔法のない国、そこならばユエは安心して暮らせる場所がある、そこなら俺が戸籍を整えられるし、もしもの場合匿えるし、一石二鳥だ」

 

「新一の国……、うん…行きたい…、そこに行きたい…私」

 

っとそれに新一は頷き、そして新一は超神水で綺麗に洗い、焼いた肉をユエに渡す。

 

「ユエ、ご飯食べる?」

 

「……食事はいらない、確かに食事でも栄養価は取れる、でも…一番は新一の血」

 

「…え?」

 

思わず新一は変な声を出してしまう、そしてユエは舌なめずりをしながら近寄る。

 

「えっと……ユエさん? 何故舌舐りを…」

 

「新一の血…美味、熟成の味がする…」

 

「ええ~~……マジ」

 

新一は有り得ない表情をしながら少々引いてしまう。

 

「……いただきます」

 

「おい~~~~~~!」

 

っと新一はその事に声を上げる他、無かった。

 

 



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第14話 奈落での再会

新一が奈落の底…、真の大迷宮でユエを見つけた時の事。進次郎達はオルクス大迷宮の90階層まで来ていた。

 

あれ以来ずっと迷宮内でこもっていて、戻らずにずっと探し回っていた。

余りにも攻略スピードに少々驚きを隠せないが、それは彼らが新一の生存を思う気持ちが、成長を強まらせたからだ。

 

そして彼らのステータスはこの通りになる。

 

 

 

 

========================

 

 

 

上地進次郎 17歳 男 レベル:56

 

天職:双剣士

 

筋力:600

 

体力:730

 

耐性:600

 

敏捷:880

 

魔力:650

 

魔耐:750

 

技能:双剣術[+斬撃速度上昇][+無拍子]・火属性適用[+火属性效果上昇]・火属性耐性[+火属性效果上昇]・縮地[+爆縮地]・先読・剛力・言語理解

 

 

 

郷田軍平 17歳 男 レベル:56

 

天職:大斧戦士

 

筋力:800

 

体力:980

 

耐性:880

 

敏捷:680

 

魔力:590

 

魔耐:610

 

技能:大斧術[+斬撃效果上昇]・土属性適用[+土属性效果上昇]・土属性耐性[+土属性效果上昇]・剛力・身体能力[+全身強化]・縮地[+爆縮地]・言語理解

 

 

 

飯島きよし 17歳 男 レベル:55

 

天職:弓手

 

筋力:480

 

体力:510

 

耐性:470

 

敏捷:560

 

魔力:680

 

魔耐:690

 

技能:弓術[+連射技術上昇][+安定技術上昇][+貫通技術上昇]・風属性適用[+風属性效果上昇]・風属性耐性[風属性效果上昇]・先読・短剣術・言語理解

 

 

 

早川千春 17歳 女 レベル:54

 

天職:魔道士

 

筋力:390

 

体力:490

 

耐性:370

 

敏捷:390

 

魔力:1100

 

魔耐:1300

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少][+発動速度上昇]・全属性耐性[+全属性效果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法・高速魔力回復・調理[+毒性完全無効化][+酸性完全無効化]・言語理解

 

 

 

 

========================

 

 

 

 

この様に進次郎達はかなりの成長を遂げていて、65階層にいたあのベヒモスを難なく倒す事が出来る様になったのだ。

進次郎達に取って大きな成果だったと言える、そして90階層に来た進次郎達は必死に新一を探していたが、中々見つからなかった。

 

「くっそ…、中々見つからねぇ、どこにいるんだ新一」

 

「この階層にもいないとなる、更に下の階層なのかな?」

 

「でもよ、もう90階層になるぜ? あと10階層降りたら100階層だ」

 

「……新一君、どこにいるんだろう」

 

千春は少しばかり落ち込む表情をしてしまう。

それに気付いた進次郎が慌てて慰める。

 

「お!おいおい!落ち込むなって千春! 絶対に新一を見つけるんだ!俺達は!」

 

「おうよ!」

 

「そうだね。もっと探そう千春、新一はきっと見つかる!」

 

3人の励ましに、千春は俯いた状態から顔を上げて、それに頷く。

 

「うん、そうよね」

 

「よし!上地軍団行くぞ!!」

 

「おうよ!!」

 

「はぁ…、もう慣れてきちゃったよこれ」

 

進次郎の軍団名にもう慣れてしまったことに、落ち込むきよし、進次郎達は次の階層に向けて進む。

 

すると千春の足元のすぐ近くに“この階層に存在しないトラップ”が反応する。

 

 

 

ガコッ!!!

 

 

 

「あっ?なんだ?」

 

突如奇妙な音をした事に辺りを見渡す進次郎達、すると彼らの足元の地面が突如開き、それにより進次郎達は落ちてしまった。

 

「「「「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」」」」

 

地面から空いた穴に落ちてしまった進次郎達、そして穴はゆっくりとしまっていき、そして存在しないトラップは消えて行く。

 

そして進次郎達は真下にあった奇妙な浮き輪の上に乗って、そのまま流れる川に下っていく。

しかももの凄い速さで下った。

 

「うわああああああああああ!一体何だこれえええええええええええ!!!」

 

「俺達どうなるんだあああああああああああ!!??」

 

「きゃあああああああああああああああああああ!!!助けてええええええええええ!!!」

 

叫びながらも進次郎達が乗る謎の浮き輪はそのまま流れる川を下っていったのだった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

一方その頃、新一とユエは55階層辺りに来ていて、魔物を蹴散らしながら進んでいた。

 

新一のロングソードとドンナー、ユエの魔法を使って進み、下に降りる階層の階段を探していた。

 

「ふぅ…、意外とサクサク進めるな?」

 

「新一の剣と、私の魔法のお陰」

 

ユエはその事を言い、それに新一は頷きながら見る。

 

「そうだな、よし、このまま次の階層に向かおう」

 

新一はそう言ってユエと共に次の階層に降りる階段を探す。

っとその時だった。

 

 

……ゴゴゴゴゴゴ!!

 

 

突如謎の音が聞こえ、それに新一とユエは辺りを警戒し、その音は徐々に大きくなっていく。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

 

「何だ…?」

 

「……」

 

新一達が警戒していると、横の壁が開き、そこから水が流れ込んでくる、そしてそこから…。

 

「「「「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」」」

 

壁から4人の男女がやって来て、新一に目掛けて突っ込んでくる。

 

「え?えええ??ええええええええ~~~~~!?!?!!?」

 

ドガ~~~~~~ン!

 

新一を巻き込んで、そのまま突っ込んで近くの岩に激突する。

そして新一の荷物は空に飛んで落ちる所を、ユエが難なくキャッチする。

 

「ほっ、……新一?」

 

ユエは新一の方を見ると、ごちゃごちゃ状態になりながら目を回す新一と4名、っと新一の顔に何やら“柔らかい”物が当たっていた。

 

「(ん…? なんだこれ…)」

 

「っ!!!いや~~~!!!」

 

1人の少女が一気に離れ自分の胸を隠しながら、右手で平手打ちをし、新一の顔面に向けて放つ、それにより新一の左頬に手形が出来る。

どうもあたっていたのは胸部らしく、どちらにしろ美味しい思いをしたのは誰も言うまでもない。

 

ペチン!!!

 

「ブヘッ!!!」

 

思わず受けてしまう新一、かなりの丈夫な体になっているはずだが、何故か痛いのが伝わる。

 

っとその時だった、手を出した少女が思わず新一の方を見て唖然とする。

 

「え……、新一君…?」

 

「はっ?」

 

その言葉に新一は見ると、先ほど振った人物は千春だった、そして周りを見ると、千春だけじゃなく進次郎、軍平、きよしの3人もいた。

千春の言葉に新一は唖然とし、そして進次郎達は千春の放った言葉を聞いて思わず顔を上げる。

 

「へ…新一?」

 

「進次郎…軍平…、きよしに…千春!」

 

新一の言葉に進次郎達は目を大きく開く。

 

「新一……新一!!!」

 

「新一!!生きてたのか!!」

 

「よかった~~!!」

 

進次郎達は新一に抱き寄せ、新一も進次郎達に向かって抱きついて、再会の喜びを分かち合う。

その際にユエはただ置き去りされた状態だった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

「新一、本当に無事で良かったぜ!」

 

「新一君、あの時死んだかと思ったのよ…」

 

「すまない皆、心配かけたな」

 

新一達は一度キャンプを張り、お互いの状態を聞いていた。そして新一は進次郎達に心配かけた事に素直に謝る。

 

「謝らないでよ新一、僕たちは必死に探し出したことで十分なんだからさ」

 

「きよし…すまない」

 

「良いって事よ! …ところでよう新一、この嬢ちゃんは?」

 

っと軍平がユエの方を見ながら問い、それに新一は答える。

 

「ああ、彼女はユエだ、このオルクス大迷宮の奈落…真の大迷宮で見つけた子だ」

 

「真の大迷宮…? ってどういう事だよそれ!?」

 

「後で説明するよ、本名はあるんだけど、それは思い出したくないらしく、俺があたえた名で通している」

 

「思い出したくない…? 訳ありか?」

 

「まあそんな所だ」

 

進次郎の問いに新一は頷く、そんな中でユエは進次郎達をしばらく見ていて、新一の方を見て問う。

 

「新一、誰なの?この人達…」

 

「ああ、俺の親友たちの進次郎に軍平、きよしに千春だ。前に話しただろう」

 

「……そう、ユエ、よろしく」

 

無表情なままユエは答えて、その様子に進次郎たちは思わず冷や汗と流しながら見て、新一に聞く。

 

「な、なあ…。なんかすっげぇ絡みづらいんだけど」

 

「まあそのうちに慣れるよ、今はちょっと進次郎達の事を信用していいのか迷ってるだけ」

 

そう言う新一に進次郎はただ黙り込む、ユエは千春を見て……否、千春の“ある部分”を見ていた。

それには千春は気づいて、ユエの方を見る。

 

「ど、どうしたの?」

 

「……大きい」

 

「え?」

 

千春はユエの言った一言に思わず唖然とし、新一達もその言葉を聞いて黙り込んだ。

ユエがそう言うのもそのはず、千春は女子の中でも少しばかり大きいサイズを持つ者だからだ。

 

「さっき新一をぶった時、それを隠した。……羨ましい」

 

「ええ~~~!!! ちょっとなんでそうなる訳!!? って!男子共!聞いてるんじゃないわよ!!」

 

「「「「すいません…」」」」

 

ユエの視線に思わず隠す千春、そしてその千春の怒鳴りに素直に謝る新一達。

そして進次郎は新一にこの迷宮の脱出方を聞く。

 

「なあ新一、ここを抜け出す方法知らねぇえか? さっき俺達が落ちてきた場所、見たらまるで何もなかったかのように消えてたんだよ」

 

「一応1階層で調べたんだが、どうも上への階段が見当たらなかった。このまま最下層まで下りて行けば、出口に繋がる方法が在るはずだ」

 

「なるほどな、よっしゃ! そうと分かれば行こうぜ!「ちょっと待った~~~~!!!!」うぉっ!!何だよ!きよし!?」

 

突然きよしの大声に思わず皆は驚く、きよしは新一が持っているドンナーを見て目を輝かせていた。

 

「新一!!それ!!」

 

「ん?ああ…、これか。きよしの設計図から作ったドンナーだ、これのお陰でここまで来られたよ」

 

「うわ~~!!やっぱり僕は天才だよ! よく見せて!よく触らせて!! ねえ!他にもまだある!?もっと見たいよ!ねえ!ねえ!ねえ!!」

 

きよしは大興奮しながらドンナーの他に、シュラーゲンを取り出して見せ、その事に更に目を輝かせていた。

進次郎達は大興奮しているきよしの様子に呆れながら見ていて、ユエは千春の方を見て問う。

 

「彼、いつもあんな感じ?」

 

「えっと~…まあ、そんな感じかな」

 

っと千春はユエの言葉にそう答えるほかなかった。

 

 



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第15話 最下層への道 前編

新一とユエが進次郎達と再び再会し、共に大迷宮を脱出する為に行動し、きよしがドンナーとシュラーゲンを見て大興奮し、ようやく収まった所で出発した。

 

そんな中で千春が新一の姿を見ていて、かなり変化した様子に問う。

 

「ねえ、新一君どうしてそんなに大きくなったの? 前まではそんなになかったじゃない」

 

「おっ、それは俺も気になってだぞ? それに目が赤くなってるし、前髪の一部が白くなってるぞ」

 

進次郎達もその事を問いかけ、それに新一は振り向く。

 

「ああ、魔物の肉を食ったからな、その影響でこうなってしまった」

 

「「「「えええっ!!!??」」」」

 

進次郎達はその事を聞いて驚きを隠せなかった、魔物の肉は猛毒で、強烈な酸性があるからだ、それをそのまま食べれば死に至ると言われている事を進次郎達は聞いていた。

その言葉を聞いて進次郎達は驚いたまま問いかける。

 

「おいおい新一!お前よく無事だったな?! 普通そのまま食えば死ぬぞ!?」

 

「どうして新一は生きてるの!?」

 

「ああ、これのお陰だ」

 

っと新一が荷物から取り出したのは、神水と神結晶だった。

それらを見た進次郎達は首を傾げながら見ていた。

 

「なんだこれ?」

 

「すげぇ……この水晶メチャ光ってるぜ」

 

「神結晶だ、王国の図書館で見たんだ」

 

「あっ!僕も見た事あるそれ! 伝説になっているものだよね!」

 

進次郎と軍平がそれを見て、きよしが思い出したかのように言い、その様子に千春はどうも新一の変化の理由が見当たらない。

 

「ちょっと待ってよ、これがどうして新一君と関係あるの?」

 

「これはどんな怪我や病気を治してくれる事が出来てな、飲み続ければ寿命は絶えないと言われるんだ。これと共に魔物の肉を食ったお陰で命は助かったんだ。その代わりにこの様な姿になったんだ、それと証拠にほれ」

 

っと新一は進次郎達にステータスプレートを見せて渡す。

それに進次郎達は新一のステータスプレートを見て、そして目ん玉が飛び出るほどに驚いた。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:70

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:6200

 

体力:7000

 

耐性:6200

 

敏捷:8000

 

魔力:10300

 

魔耐:10300

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少]・全属性耐性[+全属性效果上昇][+持続時間上昇]・物理耐性[+持続時間上昇]・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇][+豪脚]・毒耐性・麻痺耐性・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃][+安定射撃]・剛力[+豪腕][+金剛][+怪力]・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・遠見・石化耐性・言語理解

 

 

 

========================

 

 

 

新一の驚異的なステータスに驚く進次郎達、彼のステータスは常識を超えており、しかも光輝よりも軽く超えているのが分かる。

 

そして新一の天職に更に驚く。

 

「な!なんじゃこりゃ~~~~~!!!??!」

 

「とんでもねぇじゃねぇか!!?」

 

「って言うか新一の天職!!」

 

「勇者って天之河君と一緒!? 本当なの新一君!!」

 

進次郎達の質問攻めに新一は頷きながら答える。

 

「ああ、そうだぜ。俺もまさか“また”勇者に選ばれるとは、思いもよらなかったから」

 

「あ?また? どういう事だよ新一」

 

「教えてよ新一君、またってどういう事?」

 

進次郎達の問いに新一は少し間を開けて、そして頷きながら言う。

 

「そうだな、皆はもう召喚を経験しているから、もう話してもいいだろう。俺の……“本当の事”を」

 

「「「「…?」」」」

 

進次郎達はまた首を傾げ、ユエは先に聞いているから何も動じなかった。

 

新一は足を止めて、進次郎達の方に振り向いて語り始めた。

 

 

かつて新一はこの世界と別の世界、女神リリアーナによって異世界ディスペアによって転生した、そしてそこで勇者として、聖女のアリス、トール、サリー、ランドル、マリアンヌと共に魔王を倒して世界を救ったことを。

そして更に召喚される前の世界に転生してもらい、平和な暮らしをしてた所にこの世界、トータスに呼ばれた…っという事になる。

 

「これが俺が経験してきた事で、俺の物語の話だ」

 

その話を聞いた進次郎達は口をポカンと開けてしまって、騒然としてしまう。

 

「「「「………」」」」

 

「ん? どうしたんだ?やっぱり俺の話は異常過ぎたか?」

 

新一は進次郎達の様子を見てそう問いかけるも、進次郎達は思わず身体を震わせながら新一に近寄る。

 

「すげぇじゃねぇぇか新一!!」

 

「お前!前の世界では勇者として活躍したのか!!」

 

「どうりで強いと思ったよ! それに慣れていた様子にも頷けるよ!」

 

「新一君! そんな凄いことをやってきたのなら、新一君が勇者なら納得するわ!」

 

進次郎達の猛烈な尊敬に新一はただ唖然としてしまう。

 

「(うわぁ~~~……、まさかここまでの反応とは。俺も結構やってきた価値あったか)」

 

っと新一はその事を思いながら少しばかり一滴の冷や汗が流れる。

 

そしてユエはその事を気にもしないまま新一の血を吸う、っとその様子を見た進次郎達は思わず驚く。

 

「ちょ!!何してんだよ!?」

 

「首に噛み付いているぞ!?」

 

「血が欲しくなった…」

 

「「血!?」」

 

皆はその事に驚き、新一は言い忘れていた事を思い出した。

 

「ああすまん、この子はこの大迷宮で300年間封印されてきた吸血鬼なんだ、どうも俺の血が好物らしく…」

 

「「「「吸血鬼!!? それに300年!?」」」」

 

進次郎達はまたしても驚きを隠せずにいて、新一から全て説明してもらい、ユエは300年前はとある王国の者である事と、この迷宮は反逆者が作った場所である事を聞き、進次郎達はこのオルクス大迷宮の真実を聞いて唖然とする。

 

「おいおい…マジかよ」

 

「この大迷宮が反逆者のアジト?」

 

「どうもその感じじゃない風に見えるけど…」

 

「でもユエちゃんの言うことが本当ならそうかもしれないわね『グイッ!!』イタタタタタッ!!?」

 

ユエに頬を抓られる千春、ユエは頬を膨らませながら睨む。

 

「ちゃん付けは辞めて、一応年上だから…」

 

「だったらもっと年上らしくしなさい!!」

 

千春はそうユエに叱りながら言い、それにユエは何故か怒られた感じになり、へこむ。

その様子に新一達は何も言えず、次の階層に続く階段を見つける。

 

「あった、次の階層だ、皆…気を引き締めろよ」

 

「おうよ!」

 

「おっしゃ!! この階層には魔物はいなかったからな、存分に暴れるぜ!」

 

その事にきよしと千春も頷き、新一達は次の階層へと降りていくのだった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そして一方香織達は表の大迷宮の60階層近くまで来ていた、香織は崖の方によって、その底の方にずっと目を向け、少しばかり悲しい表情をしていた。

 

「香織」

 

っと香織は後ろの方を見ると、雫達が香織の方を見ていて、雫が香織に近寄る。

 

「香織…大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ雫ちゃん。ありがとう」

 

その様子に雫は微笑む、そんな感じの時に空気の読めない光輝が入ってくる。

 

「香織、ずっと下の階層の方を見て思うんだが、多分てんd───」

 

「香織さん、必ず天道君は見つかりますよ」

 

「そうそう!鈴達はいつでも“カオリン”の味方だよ!」

 

っと光輝が話している時に鈴と恵里が割って入って来て、香織を励ましている、当然この2人も光輝が空気を読めない事に気がついていて、その事を察して話してきた。

それに香織は微笑みながら頷き、それに2人は笑顔の表情をする。

 

その中で檜山だけが暗い瞳を香織に向けながら見つめていた。

 

彼は新一を奈落に突き落とした真犯人であり、香織を自分の物にする為強硬手段を取った男、その当時、彼は自分の行いを正当化するかの様に何度も自分に言い聞かせて、何もなかったかの様にしていた。

 

何が何でも香織を自らの手で手に入れたい…そんな彼は“ある人物”の手を借りている。

それは後ほど分かることになるであろう…。

 

そしてメルドが光輝達に向けて大きく言う。

 

「よし!! これより先の60階層以上の階層に向かう!! 当然65階層にはベヒモスがいる階層だ!気を抜くなよ!!」

 

『『『はい!!』』』

 

その掛け声にメルド達は次の階層に向かい、光輝達もその後に続いた。

 

すると香織はまた崖の下を見て、一目見た後に香織は雫の後を追いかけるのであった。

 

 

 

 



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第16話 最下層への道 後編

更新が遅れてすいませんでした。

なかなか進まなくて遅れました、ではどうぞ


新一達が奈落の底…真の大迷宮を順調に攻略している……かと思えた。

現在新一達はと言うと……。

 

『『『うわああああああああああ!!!!』』』

 

「「「「「「「「「「「「シャァアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」」」」」」」」」」」

 

今現在新一達は恐竜のようなトカゲの魔物に襲われていたのだ、しかも大量に…。

それも頭に妙な花が咲いていた。

 

「くっそどうしていつもこうなるんだよ!!」

 

「誰だよ!あんなの呼び出したのはよ!!」

 

「「軍平!! 君でしょ/あんたでしょ!!!」」

 

「ええっ!?俺か!?」

 

っとその事に驚きを隠せない軍平、それもその筈、軍平はこの階層に降りてきた時にその魔物の尻尾を踏んでしまって、怒らせてしまったのが1つの原因だった。

 

「お前が魔物の尻尾を踏んだんだ! それで追い掛け回される羽目になるんだよ!」

 

「ってそうなのかよ~~~!!」

 

軍平はその事に叫びながらも必死に新一達と逃げ、頭の上に花がある魔物から必死に逃げていた。

 

「新一、頑張れ~…」

 

「貴女は超気楽ね!!!」

 

ユエは新一の荷物の上に載っていて、それに千春が思わずツッコミを入れる。

すると目の前に大きな岩が見えてきて、逃げ場がないことに新一達は思わず目に入る。

 

そして腹をくくって、魔物に対抗しようとした時に、それを制するように前に出てきたユエがスッと手を掲げた。

 

「“緋槍”」

 

するとユエの手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形をとり、一直線に魔物の口内目掛けて飛翔して、あっさり突き刺さって、そのまま貫通した。

周囲の魔物を容赦なく燃やし、更に溶かして絶命させた。

 

残った頭に生えた花だけを残して。

 

新一達はそれに呆然としたまま立っていた。

 

「すっげぇぇ…彼女の魔法」

 

「何だか僕たちの出番、少なくなった感じ」

 

新一は勿論の事、進次郎達も少しばかり出番が少なくなった事に少々疑問を感じ始めていた。

最近ユエの無双ぶりが目立ちはじめ、新一達に魔物を倒す余裕が徐々に無くなってきている、それを感じた新一はユエに問う。

 

「おいユエ、ちょっとでもいいから俺達の出番残しておいてくれないか…?」

 

「……私、役に立つ。パートナーだから」

 

それを聞いた新一は少々ため息を吐き、そしてユエに語る。

 

「分かったよ、だがユエの魔力は強大だ。そんなに打ちまくったら魔力が切れる。きよしと千春と共に後方援護に回って欲しい、前衛は俺と進次郎、軍平の3人でやる」

 

「…新一、ん…」

 

少しばかりしょぼんとするユエ、その様子に新一達は少々苦笑いをしてしまう。

 

そしてきよしはユエによって切り落とされた恐竜の魔物の首を見る。

 

「それにしてもこの魔物の頭、なんで花があるんだろう?」

 

「…可愛い」

 

「……もっと他に言う事ないの?それ…」

 

ユエの言葉に千春は言うが、新一はその魔物の頭を見ながら呟く。

 

「……」

 

「どうしたのだよ新一? さっきからその魔物をジッと見てよ」

 

「気になる事でもあんのかよ?」

 

進次郎と軍平がその事を聞き、それを新一は立ち上がって振り向き、言おうとした時に。

 

「シャァアアアア!!!」

 

まだ生き残りがいた魔物が新一に襲いかかってきて、それに進次郎達がすぐさま構えた瞬間。

 

 

 

ズッバァァァァン!!!!

 

 

 

新一のロングソードが一閃で魔物の胴体を斬り、その魔物はそのまま真っ二つになって倒れる。

ロングソードをしまう新一の様子に、進次郎達は改めて見る。

 

新一のステータスは自分たちとは比べ物にならないほどに上がっている事を。

すると新一は進次郎達がこっちを見ている事に気付く。

 

「ははは、改めて驚いたか?」

 

「あ、ああ…、本当に変わっているんだな…」

 

そう言う進次郎達、そして新一は先ほどの魔物を見て、何やら“違和感”を感じていた。

それにユエが問う。

 

「どうしたの…?」

 

「いや…妙に手応えがないっと思ってな」

 

「あ?手応えがない…?」

 

「なんだよそれ」

 

「それって新一が強すぎるから?」

 

っときよしの鋭い指摘に思わず新一は少々言葉をなくす、その様子に千春はこっそり笑っていた。

 

「そ、それもあるが、通常ならもっと良い感じに強い筈なんだ。この奈落の大迷宮は異常な程強い魔物が多い」

 

「うん、私を封印していたあの魔物も強いから、当然だと思う」

 

「え?マジで…?」

 

「うん、マジ」

 

進次郎の問いにユエは頷き、それに軍平達は思わず顔を見合わせるのだった。

新一は嘘は言わないし、ユエが言った言葉に偽りもない、そう考えると少しばかり疑問になっていく進次郎達。

 

「今は考えても仕方ない、先に進もう。この階層は少し調べて、下の階に続く階段を探そう」

 

っとその言葉にユエと進次郎達は頷き、次の階層に続く階段を探した。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

新一達は下の階層に続く階段を探している中で、ユエは時々新一の血を吸い、自分の空腹を満たしていた。

 

「もう!!いい加減にしなさいよ! どんだけ新一君の血を吸えば気が済むわけ!?」

 

それを見かねた千春は怒鳴る。

 

「貴女が気にすることじゃない」

 

「あのね!」

 

「お、落ち着けよ千春。ユエもすぐに反抗するんじゃない」

 

「新一、この女うるさい」

 

「うるさいって何よ!!」

 

っと千春とユエの少しばかりの口論が始まり、それに新一は呆れ、進次郎と軍平は何も言えず、きよしは慌てた様子で止める。

 

「や!やめなよ! 2人共大人げないよ!」

 

「「うるさい/うっさい!!」」

 

「ひっ!!」

 

2人の猛烈な視線に怯えるきよし、その様子に新一は声を掛けようとした時に、新一の技能の気配感知が何かを感じ、それに新一は振り向く。

 

「っ!!」

 

「ん?どうした新一?」

 

「…マズイな、60から80体の魔物が急接近している、こっちを包囲するかの様に囲んできている」

 

「ええ!?そうなの!?どうするの!?」

 

「一旦包囲される前に逃げる。これだけの魔物を相手にするには厳し過ぎる」

 

新一の言葉に少し心配になってきたきよしと千春、するとユエが新一に言う。

 

「新一、私達なら出来る」

 

「ユエ…駄目だ、この階層の魔物は妙に可笑しい、ここは対策を立てながら引くぞ!」

 

そう言って新一は走り出し、それに続くように進次郎たちもついて行く。

ユエは納得しないまま新一の方を見る。

 

すると新一は少しばかり策があるかの様な表情をしていて、それにユエは気づいた。

 

 

 

しばらくして新一達は走り続け、後ろから魔物が追いかけてくる様子が見える。

そして目の前に縦割れのある洞窟らしき入り口が見えて、それに新一が皆に言う。

 

「皆!あそこに行くぞ!!」

 

「おうよ!」

 

そう言って新一達はその洞窟に入り、丁度その縦割れの洞窟は大の大人が2人分が入れるくらいの大きさで、当然魔物の恐竜は入ってこられない。

新一は入り口を錬成で閉じて、その様子に進次郎達は一息する。

 

「ふぅ~…疲れた」

 

「何とか逃げ切ったぞ」

 

「……」

 

「どうしたのよ新一君?」

 

千春は新一の表情を見て、それに新一は答える。

 

「皆…、気を引き締めろよ。ここに“元凶”がいるぞ」

 

っとその言葉に進次郎達は表情がぐっと引き締まり、そして武器を取り出して構える。

 

ゆっくりと中央に近寄り、辺りを警戒する新一達。

すると全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んで来て、新一達は背中合わせになり、飛来する緑の球を迎撃する。

 

しかし100を超える緑の球は容赦なく襲い掛かり、それを新一はロングソードとドンナーで斬り、そして撃ち落とす。

 

「おりゃあ!!」

 

進次郎は双剣で斬り落として、軍平も同じように斬り落とすが、背後から緑の球が迫る。

それを新一がドンナーで撃ち落とす。

 

「うぉっ!?」

 

「気をつけろよ! ユエ!きよし!千春! 3人も気をつけろよ!」

 

「「「……」」」

 

「ん?おいどうした?」

 

進次郎が返事がないことに問いかける、そして返答してくる答えが…。

 

「……逃げて…新一!!」

 

「…み!皆…!」

 

「ダメ!!」

 

「「「っ!!」」」

 

いつの間にかユエの手が新一の方に向けられて、ユエの手に風が集束し、強力な風の刃が新一に襲いかかる。

更にきよしの弓が進次郎に向けられていて撃つ、同じように千春が軍平に向けて魔法が放たれる。

 

「ユエ!千春!!」

 

「きよし!止せ!!」

 

「待てよお前ら!!」

 

新一と進次郎に軍平はそれを慌てて回避し、まさかの攻撃に驚愕の声を上げるが、ユエ達の頭の上にあるものを見て事態を理解する。ユエ達の頭の上にも花が咲いていたのだ。

 

「くっ!!さっきの緑の球か!」

 

「操られてるのか!?」

 

「もしそうなら、下手に攻撃出来ねぇぞおい!」

 

そう考える新一達、進次郎と軍平は操られているユエ達に攻撃出来ないことに焦るも、新一は辺りを見渡す。

 

「(きっと何処かに、ユエ達を操っている魔物が居るはずだ。俺の技能の気配感知と魔力感知なら見つけられる!)」

 

新一は技能の気配感知や魔力感知を使って、ユエ達を操っている魔物が何処にいるか探った。

そしてその者が何処にいるか分かり、その場を見る。

 

すると新一の目線に気付いたのか、奥の縦割れの暗がりから黒幕が現れた。

 

アルラウネやドリアード等という人間の女と植物が融合したような魔物が新一達の前に現れた、女性らしいところはあるが、見てれば見るほど魔物の形をした女、完全に敵である証拠、それに新一は構え、進次郎と軍平は気付く。

 

「おおっ!!?なんじゃありゃ!?」

 

「女! …って訳じゃなさそうだだ、タイプじゃねえよ」

 

「おいおい…惚れてんじゃないぞ」

 

そう言う新一、すると植物の魔物は緑の球を打ち出し、それに新一は避ける。

すると避けるのが遅れた進次郎と軍平がその緑の球に辺り、頭に花が生えてしまい、操られる。

 

「しまった!」

 

「新一!!逃げろ!!」

 

2人の攻撃が新一を襲い、それに新一はかわして、操られたユエや進次郎達を見る。

 

植物の魔物がユエや進次郎達を連れ回すかの様に撫で回し、それに苦しみながらももがくユエや進次郎達。

 

「新一…、ごめんなさい…」

 

「すまねえ…!」

 

悔しそうな表情で歯を食いしばっているユエや進次郎達、その様子に新一はこれ以上皆に苦しい思いをさせない為に、ある方法を思いつく。

 

「……久しぶりにやってみるか、あれを…」

 

っと新一はロングソードとドンナーをしまい、ロングソードに手を伸ばして姿勢を低くする。

その様子にユエや進次郎達、更に植物の魔物は不思議そうに見ていて、新一はその植物の魔物を見る。

 

「『ソニックブレイド』!!!」

 

ロングソードを居合斬りで衝撃波の斬撃を放つ技『ソニックブレイド』が炸裂し、植物の魔物に目掛けて行く。

植物の魔物はそれに気付き、撤退しようと思ったが、時に既に遅し、ソニックブレイドが植物の魔物を切り裂いた、魔物の胴体を綺麗に真っ二つにし、地面にドサッ!っと音を立てながら倒れる。

 

そしてユエや進次郎達の頭についていた花が枯れて落ち、皆の拘束が解かれる。

 

「おお!身体が動けるぞ!」

 

「サンキュー!新一!」

 

「新一…凄い…!」

 

進次郎と軍平、そしてユエが先ほどの様子を見て驚きながら見ていた。

 

「でも新一、どこでそんなの覚えたの?」

 

「前の世界の冒険で覚えた技だ。久しぶりにやってみたけど、少し鈍っていた所があったが、まあ今後少しづつでもカンを取り戻していくさ」

 

そう言って新一はロングソードをしまい、植物の魔物を調べる。

進次郎達はそれに見合いながらもそれに強力し、それを調べた後に、この階層の階段を探して見つけ、最下層への道に進んだ。

 

そして徐々に最下層に近づいていく。

 

 

 



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第17話 最奥の守護者 前編

新一達が植物の魔物を退治してから約数日がたち、いよいよ最下層への道がすぐそこまで来ていて、現在99階層にいた。

 

その一歩手前の階層で新一達は装備の確認と補充にあたっていた。この先何が起こるか分からないからだ。

ユエはその様子を飽きもせずにただじっと見つめていた。

 

新一は超神水を複数のボトルに入れて、進次郎達用に詰めていた。

 

ボトルに入れてる超神水が減らない事を、進次郎は気づいて問う。

 

「おい新一、さっきからそれ、一向に減らないみたいだが?」

 

「ああ、これのおかげだ」

 

すると新一は首にある無限ペンダントを見せて、それに進次郎達は首をかしげる。

 

「なんだそれ?」

 

「ネックレス…? 違うようだけど」

 

「ドックタグだよ、でもそれが何?」

 

進次郎と千春は首傾げ、きよしがそれに問うと、新一は答える。

 

「無限ペンダントだ、女神リリアーナから貰った物で、これを身につけてると弾や水、手榴弾が無限になるんだ」

 

「はぁ!!?マジか!!?」

 

「何それ!それでずっと弾が減らなかったの!? どおりで!!」

 

新一の問いに軍平ときよしは驚きを隠せず、進次郎と千春は口をポカンと開けたままになっていた。

そしてユエは見ていた様子に飽きて問う。

 

「新一…、いつもより慎重…」

 

「うん? ああ、次で100階だからな。もしかしたら何かあるかもしれないと思ってな、それにここは表の階層とは違って真の大迷宮の階層、念入りにしておく必要がある」

 

っとそう言って新一達は準備を進める。

最初にいた階層から80階を超えた時点で、ここが地上で認識されている通常の大迷宮の感覚は無くなっていて、真の大迷宮の感覚になっていた。

当然普通ではないことは確かだった、だがここまで来られたのは新一の能力もそうであるが、ユエは勿論の事、進次郎たちもこの大迷宮の階層を超えてかなりのレベルアップがはかれた。

 

そして今の新一達のステータスはこの通りである。

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:98

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:10300

 

体力:12000

 

耐性:10300

 

敏捷:10700

 

魔力:20100

 

魔耐:20100

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少]・全属性耐性[+全属性效果上昇][+持続時間上昇]・物理耐性[+持続時間上昇]・魔法耐性・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇][+豪脚]・毒耐性・麻痺耐性・剣術[+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃][+安定射撃]・剛力[+豪腕][+金剛][+怪力]・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・熱源感知・気配感知・気配遮断・魔力感知・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・遠見・石化耐性・威圧・念話・言語理解

 

 

 

上地進次郎 17歳 男 レベル:81

 

天職:双剣士

 

筋力:1320

 

体力:1520

 

耐性:1340

 

敏捷:2010

 

魔力:1600

 

魔耐:1750

 

技能:双剣術[+斬撃速度上昇][+無拍子]・火属性適用[+火属性效果上昇][+消費魔力減少]・火属性耐性[+火属性效果上昇][+持続時間上昇]・縮地[+爆縮地]・先読・剛力・豪脚・言語理解

 

 

 

郷田軍平 17歳 男 レベル:81

 

天職:大斧戦士

 

筋力:1700

 

体力:1800

 

耐性:1700

 

敏捷:1450

 

魔力:1390

 

魔耐:1410

 

技能:大斧術[+斬撃效果上昇]・土属性適用[+土属性效果上昇][+消費魔力減少]・土属性耐性[+土属性效果上昇][+持続時間上昇]・剛力・身体能力[+全身強化]・縮地[+爆縮地]・言語理解

 

 

 

飯島きよし 17歳 男 レベル:80

 

天職:弓手

 

筋力:1100

 

体力:1120

 

耐性:1100

 

敏捷:1310

 

魔力:1220

 

魔耐:1230

 

技能:弓術[+連射技術上昇][+安定技術上昇][+貫通技術上昇]・風属性適用[+風属性效果上昇][+消費魔力減少]・風属性耐性[風属性效果上昇][+持続時間上昇]・先読・短剣術・言語理解

 

 

 

早川千春 17歳 女 レベル:80

 

天職:魔道士

 

筋力:790

 

体力:890

 

耐性:790

 

敏捷:770

 

魔力:2900

 

魔耐:3100

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少][+発動速度上昇]・全属性耐性[+全属性效果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法・高速魔力回復[+魔素集束]・調理[+毒性完全無効化][+酸性完全無効化]・言語理解

 

 

 

 

========================

 

 

 

この通りに新一達はかなりのレベルアップをはかっていた。

 

その中で、新一はこっそり魔物の肉を食って能力を取り込み、自分の力を強めていた。それには勿論の事、千春にこっぴどく叱られた。

進次郎達は千春の作った料理で何とか猛毒に侵されずにすみ、飢えに苦しまずに済んだ。

 

そして準備が整い、下の階層へと進む、慎重に進みながら新一達は100階層に到達する。

 

新一達が降りてきた100階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間が広がっていた、柱の一本一本が直径5mはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。

柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは30mはあり、地面には荒れた所はなく、平らで綺麗なものであった。

 

新一達が入ると、全ての柱にある松明が蒼く燃え始めた。

 

それには新一達はしばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れ、そこを歩きながら呟く。

 

「凄い…、とても大迷宮の場所とは思えない」

 

「おう、こんなの上の階層では無かったよな?」

 

「うん…僕たちこんな凄い場所を見るのは初めてだよ」

 

「いかにもラスボスが出そうな場所だよな?」

 

「ちょっと軍平、やめてよそれ」

 

「…千春、軍平の言ってる事正しい」

 

っとユエの言葉に新一達は振り向き、それに問う。

 

「どういう事だユエ?」

 

「ん」

 

ユエは指を刺す方向に新一達は目を向けると、そこには巨大な扉があった、全長10mはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。

 

「……確かに、軍平の言っている事は正しいみたいだ」

 

「いかにもラスボスの部屋だな」

 

「違う…多分反逆者の住処だと思う」

 

その事にユエは額に汗が流れ、千春は思わず生唾を飲み込む。きよしは身体が震えが出てきて、進次郎と軍平は武者震いがしてきていた。

 

新一もそれに例外ではない、少しばかり冷や汗が背中から流れ出ていて、今にも握りしめている手に血が流れ出ている。

しかしそれでも進むしかない事に新一はすぐに我れを取り戻して、皆の方を向く。

 

「皆、ここから先は途轍もない戦いが待っている可能性が高い。準備はいいな?」

 

「っ!お! おうよ!!」

 

「おう!やってやるぜ!」

 

「うん…!怖いけど!」

 

「私達は新一君がいるから大丈夫!」

 

「…私達は、皆がいるから大丈夫」

 

皆の様子を見て、新一は頷き、そして皆は進む。

するとその瞬間、扉と新一達の間に30m程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

「「「「「「ギャアアオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」

 

すると新一にはその魔法陣に見覚えがあった。かつてベヒモスが現れた時と同じ感じがした、だが目の前にいる物はそれとは全く違うオーラと威圧感が感じさせていた。

 

「でっか!!」

 

「おいおいマジか!?」

 

「…勝てる気がしない」

 

「よ!弱気になっちゃダメよ!」

 

「そう…大丈夫…、私達、負けない……」

 

その言葉を聞いて、新一はロングソードとドンナー、そして背中にシュラーゲンを背負い、荷物をできるだけ遠くに置いた。

 

「行くぞ!!この階層をクリアして、この迷宮を攻略するんだ!!」

 

『『『おう!!』』』

 

その事にユエ、進次郎達は頷きながら叫び、新一と共に向かい、巨大な魔物『ガーディアン』に向かっていくのであった。

 

 

 



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第18話 最奥の守護者 後編

戦闘パートで躓いていて遅れました。


真の大迷宮の最下層に到達し、守護神である『ガーディアン』と対決する新一達、ガーディアンの体長は約30m、6つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の魔物、その姿を見ればまさに神話に出てくる『ヒュドラ』だった。

 

「「「「「「ギャアアオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」

 

ガーディアンは雄叫びを上げながら新一達を睨みつけ、更に赤い紋様が口元に現れて、口を開くと同時に火炎放射が放たれる。

 

それに新一達は左右に分かれて、新一は真上に、進次郎は左に、軍平は右に飛んでかわした。

ユエ達は後方に下がって、魔法で攻撃を仕掛け、きよしは弓で正確に狙いを定めて、矢を放つ。

 

同時に新一がドンナーで撃ち込み、きよしの矢と同時に向かい、ガーディアンの頭部の2つの頭に命中する。

新一が撃った超電磁砲がガーディアンの頭を粉砕する。

 

だがきよしのガーディアンはビクともせず、さらに雄叫びを上げながら魔力の砲弾を撃ち込む。

 

それに千春が防御魔法を放つ。

 

「《全ての敵意と悪意を拒絶し、神の子らに絶対の守りを超え、ここは聖域な壁を築き、神敵を通さず──“聖壁”!!》」

 

千春の防御魔法がガーディアンの魔法を防ぐ。

その隙に、新一達が攻撃を仕掛けに入る。

 

「はっ!!!」

 

新一のロングソード、進次郎の双剣、軍平のバトルアックスがガーディアンの胴体に切りつける、だが切りつけられた胴体は謎の粒子によって直っていく。

 

「なっ!治っていくぞ!?」

 

進次郎の言葉に新一はそれに目を細める、そして粒子の発生源を探すと、白い頭の龍のガーディアンが白い紋様を発動させていて、それに新一は奴が原因だと分かった。

それにより分かった新一は皆に向かって念話で伝える。

 

(皆!白い頭の龍を狙うんだ! 回復役を潰せば勝機はある!)

 

「おお!なるほどな!!わかったぜ!!軍平!!」

 

「おう!!!」

 

念話で語ったのに進次郎はすぐに言葉に出しながら向かい、軍平も同じように向かっていく。

 

「あらっ!お前ら少しは言葉に出すの抑えろよ!たくっ!」

 

それに思わずズッコケそうになる新一だったが、ドンナーを構えて撃ちながら距離を取る。

きよしと千春はそれに苦笑いしながらも弓と魔法を使いながら援護する。

 

だが白い龍のガーディアンの前に魔法の壁が立ちふさがり、矢と魔法は勿論の事、ドンナーの銃弾も弾かれてしまう。

 

「チッ」

 

新一は舌打ちをしながら後退し、進次郎と軍平を呼び戻して、物陰に隠れる。

 

「あの黄色い龍の頭は盾の役割を補ってるな、攻撃に防御、回復のバランス…厄介だな」

 

「でも回復される前に倒せばいいんじゃ?」

 

「白い龍を倒しても防御系の奴が邪魔をする。そうなると白と黄色を同時に倒す必要がある」

 

「おっしゃ!! なら速攻片付けるぜええええッ!!!」

 

っと軍平は考えなしに突っ込んでいき、それに慌てる新一達。

 

「ちょ待てお前!!」

 

「すぐに向かっていかないでよ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

軍平はバトルアックスを一気に振り下ろそうとした時に赤い龍のガーディアンが火炎放射を放った、それに軍平は慌てて逃げる。

 

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!!???」

 

「たくっ!!考えなしに突っ込むからだ!」

 

っと新一は進次郎にある物を渡し、それと同時に投げる。

新一と進次郎が投げたのは、焼夷手榴弾である、これはタール状があった階層の液を使って複製した物、それを応用して手榴弾を作った。

 

2人の焼夷手榴弾が赤と白の龍の頭のガーディアンに直撃し、燃え広がる。

 

「「ギャオオオオオオオ!!!」」

 

雄叫びを上げながら苦しみ、それにより新一達が突っ込もうとする。

 

っがその時だった。

 

「「い!いやあぁあああああああ!!」」

 

「っ!?ユエ!千春!?」

 

新一達は後ろを振り向いたら、黒龍の頭のガーディアンがユエと千春を睨みつけて、何かの魔法を掛けていた。

 

「チッ!!」

 

すぐさまドンナーのレールガンで黒龍の頭を吹き飛ばし、引き離したあとに新一達はユエと安全な場所へと移す。

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「……新一?」

 

「新一君…、進次郎に皆…」

 

「おい!どうしたんだよ!?」

 

すると目に涙を浮かばせるユエと千春。その様子を見た新一達は戸惑いを隠せない。

 

「…よかった……見捨てられたと。……また暗闇に一人で……」

 

「……私、皆からひどく虐められた。それも穴から落とされて埋められる程に…」

 

「何だって…?」

 

その事を聞いた新一達は思わず耳を疑う、そして新一は黒龍のガーディアンの方を振り向く。

 

「…どうやらあいつには精神と恐怖を与えて狂わせるステータスを持っている様だな。俺はともかく進次郎達が迂闊に近寄ると一気に落ちる…」

 

「ええっ!じゃあどうするの!?」

 

きよしが新一の言葉を聞いて困っていると、進次郎が笑みを浮かばせながら立ち上がる。

 

「へっ!ならそれをくらわなければいいって事だろう!」

 

「おう!そういうこった!!」

 

そう言って向かっていく進次郎に軍平、それに気を取られる新一。

 

「お前ら…」

 

「…そうだね。新一!指示を頂戴!僕も出来る限りやるから!!」

 

っとそう言ってきよしもそこを後にして、弓を構えて進次郎達を援護する。

 

その様子に新一は思わず苦笑いをする。

 

「ははは……、俺がこんな様子になってどうするってんだよ。たくぅ…」

 

そう言って新一はユエと千春の方を見て、魔法を放つ。

 

「…“解呪”」

 

っと新一はするとユエと千春のバッドステータス状態を解除し、それに気が付く2人。

 

「新一…」

 

「ユエ、千春。シュラーゲンを使うから援護を頼む。少々時間が掛かるからな」

 

「…ええ!わかったわ!」

 

すぐにユエと千春はすぐに動き、新一はシュラーゲンを取り出して、構える。そして撃鉄を引いて、初弾を装填し、本体に纏雷を流し込み、エネルギーを充填させる。

その間に進次郎達が戦う中で千春とユエは進次郎達に伝える。

 

「皆!新一君が時間を稼いでだって!」

 

「何!よし分かった!」

 

「“緋槍”“砲皇”“凍雨”!!」

 

有り得ない速度で魔法が構築され、炎の槍と螺旋に渦巻く真空刃を伴った竜巻と鋭い針のような氷の雨がガーディアンに襲い掛かり、ガーディアンに直撃して爆発する。

更に千春の魔法を放つ。

 

「《赤き炎の風、美しき矢に変え、灰となり大地に帰らん──“炎矢”》」

 

千春のファイヤーボルトがガーディアンに降り注ぎ、無数の炎矢が突き刺さる。

 

「うおおおおおおおおお!!!」

 

「どりぃやあああああああああああああああ!!!」

 

進次郎と軍平の攻撃が交互に炸裂して、大きなダメージが入り、その隙間にきよしの矢が放たれる。

きよしの矢が傷の隙間に入り、ガーディアンの身体に大ダメージが入る。

 

そしてシュラーゲンを構えた新一はエネルギー充填完了して、ガーディアンに狙いを定める。

 

「さあ…、吹っ飛びな!」

 

纏雷の赤と青のスパークが連動して、タウル鉱石とシュタル鉱石の配合のフルメタルジャケットの銃弾が火を噴き、弾丸がシュラーゲンから飛び出していき、ガーディアンに直撃し大爆発する。

 

一度シュラーゲンを下ろし、それを見つめる新一達。

 

「やったか…?」

 

煙が立ち誇る中、「ギュゥゥゥァァァァアアア!」っと声がし始めて、それに警戒する新一達、そして煙が晴れると信じられない光景を目にする。

 

「「「「「「っ!!!?」」」」」」

 

傷ついたガーディアンが徐々に姿を変え始め、更に無数の頭が1つとなって、更に背中に2問の砲台らしきものが生えてくる。

 

その姿はまさに『スーパーガーディアン』と言える。

 

新一達はその光景に目が釘付けとなる。

 

「な、なんて姿だ…」

 

するとスーパーガーディアンは2問の砲台にエネルギーを貯め、更に口元にもエネルギーを溜め込み、新一達に狙いを定める。

それに気付いた新一は皆に向かって叫ぶ。

 

「っ!マズイ! 皆俺の後ろに下がれ!!!!」

 

っとそれに進次郎達は思わず驚いて新一の方に向かい、そして新一の後ろに隠れ、新一はより強力な防御魔法を放つ。

 

「《防氷壁》!!」

 

防氷壁と言う防御魔法は聖絶や千春の聖壁よりも強力で、長く持つ。

そうしている間にスーパーガーディアンは七色の紋様を現れ、そして強力な魔法砲弾が放たれる。

 

強力な魔法砲弾が防氷壁に直撃し、そして強烈な光に包まれる。

 

それにより、ユエは思わず目を瞑る。

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

強烈な光が放たれて、光が止むとユエは前を見る。

すると進次郎達が少しばかり倒れていて、新一があちこち煙を上げながら立って、頭から血を流れながらそして倒れる。

 

「新一!!!」

 

「いっつ……ッ!新一!!」

 

進次郎達とユエは倒れた新一の元に駆け寄る、どうも防氷壁では完全に防ぐ事が出来なかった。防氷壁を突き破り、新一の身体に大ダメージを与え、最高レベルの新一に瀕死の重傷を負わせた。

 

「ギャオオオオオオオ!!!!!!」

 

スーパーガーディアンは雄叫びをあげ、勝利の声を上げる様子が目に浮かぶ。

進次郎達はすぐさま新一を物陰に運び、そして新一に超神水を飲ませる。

 

「新一!しっかりしろ!!!」

 

「新一!!」

 

超神水を飲ませた新一の身体はみるみる傷が治っていくが、その傷の治りが遅かった。

 

「どうして!?」

 

ユエは半ばパニックになりながら原因がどうか調べていた。

神水より強い超神水が襲い理由はスーパーガーディアンの極光の魔法砲弾の影響があった、一種の毒の効果が侵食して、身体を溶かし始めていたのだ。しかし超神水のお陰で再生しているのだが。それでも效果は絶大だった。

更に新一のロングソードを溶かし、持っていたシュラーゲンを粉々にしている。

 

進次郎達はスーパーガーディアンの方を見ながら立ち上がる。

 

「やってくれるじゃねえか…!」

 

「ぜっていぶっ倒す!!!」

 

そう言って進次郎達は向かっていき、スーパーガーディアンに攻撃を仕掛ける。

残されたユエは新一のドンナーを持って立ち上がる。

 

「……今度は私が助ける番」

 

っとそう言ってユエが飛び出して行こうとする。

 

 

 

 

 

ガシッ!!!!

 

 

 

 

 

するとユエの足を誰かが掴んだ、それにユエは振り向くと、新一が苦しみながらもユエの方を見ていた。

 

「待てユエ…」

 

「新一…!」

 

「俺にいい考えが……ある」

 

 

そしてそんな中で進次郎達が攻撃を仕掛けていたるものの、スーパーガーディアンの体に一行にダメージが入らない。

 

「くっそ!!!あの野郎!!!」

 

「一向にダメージが通らない…」

 

「どうすればいいんだよ!」

 

進次郎達が考えている中でスーパーガーディアンが砲台に紋様を現れ、そして無数の光線が放たれる。

そして進次郎達の武器に直撃し、破壊していった。

 

「どわっ!!!」

 

「ああ!!私達の武器が!」

 

「畜生!!!!」

 

進次郎達が武器を失い、スーパーガーディアンが進次郎達に攻撃手段を無くさせ、止めを刺そうとした。

 

っがその時、一発の銃弾がスーパーガーディアンの頭部に直撃して爆発を起こさせた。

それに進次郎達は振り向くと、新一がユエに支えられながらもドンナーを構えていて、それに進次郎達は驚く。

 

「新一!!!」

 

「皆…ちょっと手伝ってくれ。皆の魔力…俺に貸してくれ」

 

その言葉に進次郎達は思わず耳を疑うが、新一の言葉を信じて駆け寄る。

 

そしてスーパーガーディアンの方は受けた銃弾で頭に大きな傷が出来た。進次郎達の攻撃でビクともしなかった筈が、銃弾による攻撃が効いた事に有り得ない筈なのだが、どうも頭のみが耐久性が極端に落ちていた。

 

新一の元に進次郎達がやって来て、新一は進次郎達とユエに言う。

 

「いいか皆…、ありったけの魔力を俺に注げ、そしてこのドンナーに詰め込んだ銃弾をあいつにぶつける。俺達最大級の魔力をな」

 

「おお!そう来たか! でも大丈夫なのか?!」

 

「分からない。これはイチかバチかの掛けだ。最悪ドンナーも壊れて俺達も吹き飛ぶ。だがこの掛けにかける!」

 

その言葉に進次郎達は新一の言葉を信じ、魔力を注ぐ。

 

「「「うおおおおおおお!!!」」」

 

「くぅぅぅ……!!」

 

「ぅっ……!!」

 

進次郎達とユエの魔力が新一に注がれていき、新一の身体が悲鳴を上げ始めた。

歯を食いしばる新一はスーパーガーディアンに狙いを定め、スーパーガーディアンも新一達に向けて狙いを定めていた。砲台を新一達の方に向けながら。

 

そして新一はドンナーの銃身に紋様が現れて、新一はスーパーガーディアンを睨みながら言う。

 

「とびっきりの魔力だ。美味しく味わいな…じゃあな!!」

 

そう言って引き金を引く、同時にシュラーゲンよりも強力な弾が発射されて飛び出す、その代償にドンナーが壊れた。

 

スーパーガーディアンが強力な魔法を放とうとした同時に、ドンナーから放たれた銃弾が胴体を突き破り、更に体中に爆発を起こさせて、内側から大爆発して、スーパーガーディアンはこの世から消え去っていった。

 

ドンナーが爆発した反動で新一達は倒れて、スーパーガーディアンを倒した事に一息する。

 

「ふぅ……今回、マジでヤバかったな…」

 

そう言って新一は意識を失い、それに気付いたユエと進次郎達が慌てて声をかけるも、新一は目を覚まさなかったのだった。

 

 



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第19話 住処と歴史 そして旅立ち

とある場所の宮殿らしき家、そこに屋根付きのベッドが置かれていて、新一はそこで包帯を巻かれたまま寝ていた。

眩しい日差しが新一の顔に照らされて、それに新一は目が覚める。

 

「…っん、ぅ~」

 

まだ薄らボーッとしている頭を起こし、辺りを見渡す、見たところ何処かの建物の様な場所にて、その中心にベッドが置かれていて、そこに新一は寝ていることに気付く。

 

「(確か…ここはオルクス大迷宮の筈…、何故…?)」

 

っと新一がそう思ったその時だった。

 

 

ムニュン…。

 

 

「ん?」

 

右手の感触に何やら柔らかいものがあって、それに新一は頭をかしげる。

 

「何だ?この感触…」

 

新一は妙な感触に右手の方を見ると、隣には服を着ていないユエが寝ていたのだった。

それに新一は目が飛び出る程に驚く。

 

「でえええええええええええええっ!!!!!??? ユ!ユエ!!?」

 

「……んぁ…、新一……っん」

 

新一は慌ててシーツをユエを被せる、すると自分自身の方にも異変に気付く、何せ今の新一は包帯だけ巻かれている素っ裸の状態だったのだ。

 

「うわあ~~~~~っ!ヤバイ!!!この姿を皆に! しかも千春に見られたりしたら!!」

 

「誰に見られたら………ですって?」

 

「っ!!!!」

 

後ろから突如重たい言葉が出てきて、それに新一が固まってしまい。首を『ギギギギギ』と音を鳴らしながら後ろを振り向く。

するとそこに鋭く、ドス黒いオーラを漂わせながら新一を睨んでいる千春が食事を持ったまま立っていた。

 

「ち!千春!!!ち!違う!!!!俺が起きた時にはもう!!!!!!」

 

「五月蝿い!!!!!このドスケベ!!!!不潔!!!!チカン!!!!最低!!!! 新一君の馬鹿あああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

千春は持っていた食事の器ごと新一に投げて、それに新一は顔面に直撃するのであった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そして新一は一応ズボンを履いて、何故か腕を組んで睨んでいる千春の前で正座していて、ユエはシャツを着ていて、新一の隣で正座していた。

 

「つまり新一君が起きた時にユエさんがいて、ユエさんは新一君が寝ている時にこっそり忍び込んだって事…?」

 

「はい…そうです」

 

新一はシュンっとしながら頷きながら千春の問いに答える。

 

「ん。私は悪くない、私の勝手」

 

「勝手すぎるわよ!!!!」

 

千春はユエのマイペースで身勝手な行動に怒鳴りながら睨む、それに新一は何とも言えない状況でいた。っとこっそり新一に近づいた進次郎と軍平が問う。

 

「おい新一…、どうだった?」

 

「あのユエちゃんの感じh──」

 

「こらそこ!!!!!!何はなしてるんじゃああああああああああああ!!!!」

 

ドス黒いオーラを強めて言う千春に、進次郎と軍平は顔を真っ青にして背筋を真っ直ぐにして固まってしまう、こっそり見ていたきよしが『カタカタ』と震えながら見ててい、とても出てこられない状況であった。

っと新一はこの建物の様子を一通り見て、皆に問う。

 

「皆…、ここは一体?」

 

「あ?ああ~。ここはユエちゃんが言うにはなんでも反逆者の住処らしいぜ。俺もそれを聞いて驚いたわ、こんな立派な豪邸を建ててるからよう」

 

進次郎の言葉に新一は耳を傾け、そして再び建物を見る。

そして上に軽めのシャツを着て、ユエと進次郎達と共に建物内を捜索していた。

 

気になっている頭上の円錐状の物体は、昼間の光の暖かさを感じ、この感じだと夜の機能も備えられていると感じる。

 

「ここは夜になると月みたいになる時がある…」

 

「そうか…完全な地上と同じ作りになっているようだ」

 

そう思いながら新一達はこの建物の構造を調べていた。

 

ここから少し離れた場所に川があり、その近くに大きな畑もあるようだ。今は何も植えられていない様で、近くには家畜小屋があった、最低限の水、肉、魚、野菜などの収穫が可能な場所である。

新一達はそれらを見たあとに建物内に入り、辺りを見渡す、入口のエントランスには誇り一つもなく、更に温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。

 

この建物は3階建ての建物で、1階にはリビングの様な部屋と風呂場があって、ライオンの銅像が口からお湯を出して、温めていた。

 

この時ユエが新一の方を見ていたが、それを千春がユエの頬をつまんでいた事は言うまでもない。

 

そして2階には書斎と工房の部屋があって、その中で書斎と工房の部屋の扉が何かしら封印されていて、開けることは出来なかった。

 

「どうして開かないの?」

 

千春が書斎の扉のノブを回して反応せず、きよしも工房の扉のノブを回しても反応しなかった。

 

「こっちも開かない」

 

「う~ん……、ここは今調べても意味がない。別の場所を調べよう」

 

っと新一達はこの場所の捜索を諦め、最後の場所である3階を調べることにした。

3階は一部屋しかなく、更にその部屋の奥を開けると、直径7.8mの見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

 

その奥の方には白骨化した骸がいた、ローブを身にまとい、椅子にもたれかかりながら俯いている。見る限りそこで息絶えたと見える。

 

新一達はそれを見て、少し警戒していた。

 

「怪しさ満載だなおい…」

 

「ん、とても怪しい…」

 

「ねえ、新一君どうするの?」

 

千春は新一はその事を問い、それに新一は少しばかり見ながら言う。

 

「…どちらにしろ、ここを調べない限り、他の場所どころか、地上への脱出手段も見つからない。俺が先に行く。ユエ、魔法で援護を頼む」

 

「ん、分かった」

 

そう言って新一が部屋に入り、魔法陣へ向けて踏み出した。すると新一が魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げ、それに新一だけじゃなくユエと進次郎達は目を瞑る。

 

やがて光が収まり、新一が目を開けると、そこには黒衣の青年が目の前に立っていた。

 

《試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名は『オスカー・オルクス』。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?》

 

っと語り始めたオスカー・オルクスの名を聞いて新一達は驚きを隠せなかった、なんせこのオルクス大迷宮を人物が目の前に現れたからだ。

 

《ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。

だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。

どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを》

 

オスカーの話の内容に新一達はそれをただ黙って聞いていた。

 

それは狂った神とその子孫達の戦い、人間と魔人、亜人の三種族が争いで、この世界の人口は一気に削られていた、身勝手な理由、理不尽な戦い、その争いを見飽きた神が直々に鉄槌を下したと言う。

 

そんな中で“解放者”達が神々達に直接戦いを挑み始めた。その解放者と言う者達がオスカー達であった。

しかし神々の力は強大で、立ち向かっていった者達は次々へと敗れ去り、更に反逆者のレッテルを押されてしまい、解放者は討たれてしまう。

 

生き残った7人の者達は、自分たちでは神を打つ事は出来ず、バラバラとなって各地の大陸へと渡り、自らの迷宮を作って隠れることにした。

各自試練を与え、乗り越え、突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の戦いを終わらせる者が現れることを願って…。

 

長い話しを聞いた新一達はただ黙って聞いていて、オスカーは穏やかに微笑む。

 

《君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。

我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。

話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを》

 

っとオスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、新一の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛みが来るが、それがとある魔法を刷り込んでいた為と理解できたので大人しく耐えた。

やがて痛みも収まり魔法陣の光も収まり、新一は一息を吐き、それを見ていた進次郎達は問う。

 

「おい新一、大丈夫か?」

 

「ああ、大丈夫だ、それにしても反逆者達にそんな事が…」

 

「…ん……どうするの?」

 

ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと新一に尋ねる。

 

「……俺は皆をこの戦いに巻き込ませた神の都合なんて知った事じゃない。俺は皆を元の世界に連れて帰るのが今俺達の最優先課題だ。だが場合によってはその神を倒す」

 

「「「「「っ!!?」」」」」

 

新一の言葉にユエ達は驚きを隠せなかった。

神を倒す…、新一のとんでものない一言は冗談でも何でもない、でも何故か新一はやれそうな感じがした。そうユエと進次郎達は感じるのだ。

 

「それと、さっきの頭痛、どうも神代魔法を覚えたようだ」

 

「神代魔法?」

 

「ああ、しかもこの魔法は、俺の副天職の相性ピッタリな奴だ」

 

「本当?」

 

きよしがその事を問うと、新一は頷きながら言う。

 

「ああ、生成魔法で魔法を鉱物に付加し、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法…。これなら俺達が先の戦いで失ったアーティファクトの新しい物が作れる」

 

「マジか!!? なら俺らの合った武器が出来るってことか!!」

 

「おっしゃ!!!」

 

それに進次郎と軍平が大いに喜び、きよしと千春は呆れながらも笑うしかなかった。

その様子に新一は笑みを浮かばせる。

 

するとユエがある事を言い出す。

 

「ねえ、あれはどうするの?」

 

っとユエがオスカーの白骨化した遺体に指を差し、それに新一は考える。

 

「ああ、あれならこの近くの場所に埋めよう、そして墓をたてる。せめて俺達が出来る唯一の証だ」

 

「うん、そうね」

 

その事に千春も同じように頷き、新一達はオスカーの遺体を埋葬した。

 

その際にオスカーの指についていた指輪を拝借し、そして次の場所に向かった。

向かった場所は書斎、オスカーの指輪で書斎の部屋を開放し、そこで何かを調べていて、それに新一はめぼしい物を発見した。

 

「あった、これだ」

 

「あ?何だ」

 

進次郎達が新一が見つけた物を見て、新一は皆に見せる、それは各地に散らばっている大迷宮の位置であった。

更に設計図も見つかって、一石二鳥な状態である。

 

「この場所…」

 

「おそらく、各地の迷宮を攻略し、神代魔法を手に入れれば、帰る方法も見つかる筈だな」

 

「ようし!!! そうと決まれば今からそこに出発d──」

 

「まだだ」

 

っとその言葉に進次郎は思わずずっこけそうになり、それに千春は問う。

 

「どうして?」

 

「俺達は今は丸腰、準備もなしに向かえば返り討ちにあう、そのための準備が必要だ」

 

「そうだね、僕たちの武器と装備を整えないと、絶対にやられるね。よーし!!それじゃあ早速作業開始!!! くぅ~!楽しみだな~!せっかくだからドンナーもシュラーゲンも改良して、もう一丁…」

 

きよしは興奮しながらそのまま行ってしまい、その様子をただ唖然としながら見る新一達であった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

そして2ヶ月後、新一達は2ヶ月の間に準備をしていた。

 

失った武器を新たに手に入れた生成魔法でアーティファクトを作り、新たな武器を手に入れた。

 

ドンナーを新たに作り出して、シュラークと呼ばれるもう1つの銃、そしてシュラーゲンも改修して、ロングソードの変わりの武器も作り上げた。

 

直径160cmくらいの長さを持つ刃で、大剣の様な形をしたバスタードソード『レイドボーラー』を作った。

更にパイルバンカーとガトリングガンである『メツェライ』に回転弾倉式ミサイルランチャー『オルカン』を作り出した。全て名前はきよしが名づけた物で、設計も全てきよしが行った。

 

それにはユエは思った。きよしの方が錬成師の方が似合ってるのではと。

 

進次郎は青龍刀をモチーフとした双剣『クリプス&クリフォード』。軍平はバトルアックスの柄を延長して、更に刃とハンマーを大型にした『ガンダール』。

きよしの弓はスコープとレーザーサイトを加え、強硬度で嫋か柔軟性を持つ『フェリーアーチ』を作り上げた。

 

千春のアーティファクトで作り出した杖で、先端には神結晶を使用している、何故神結晶を使っているのかと言うと、神結晶から神水を抽出できなくなってしまったのだ。

長年神結晶から流れ出ていた為、神結晶に入っている魔力が尽きてしまったのだ。

 

試しに新一の魔力を注いてみたものの、神水を抽出しなかった。

なので、この神結晶の魔力を内包する特徴を利用し、千春とユエにこれらをあたえた。

 

その事にユエはある事を言った。

 

「プロポーズ…?」

 

「なんでだよ」

 

そして新一達はこの2ヶ月の間でかなりの成長を遂げていた。

 

 

 

 

========================

 

 

 

天道新一 17歳 男 レベル:???

 

天職:勇者:副天職:錬成師

 

筋力:42000

 

体力:60000

 

耐性:42000

 

敏捷:70000

 

魔力:80000

 

魔耐:80000

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少]・全属性耐性[+全属性效果上昇][+持続時間上昇]・物理耐性[+持続時間上昇]・魔法耐性[+持続時間上昇]・錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・複合魔法・格闘術[+身体能力上昇][+豪脚]・毒耐性・麻痺耐性・剣術[+威力上昇][+斬撃效果上昇][+大剣術][+両手剣術]・射撃[+精密射撃][+連射射撃][+安定射撃]・剛力[+豪腕][+金剛][+怪力]・縮地[+爆縮地]・先読・高速魔力回復・熱源感知[+特定感知]・気配感知[+特定感知]・気配遮断・魔力感知[+特定感知]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔力変換[+体力][+治癒力]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力]・風爪・夜目・遠見・石化耐性・威圧・念話・追跡・生成魔法・言語理解

 

超技能:神気開放

 

 

上地進次郎 17歳 男 レベル:???

 

天職:双剣士

 

筋力:19000

 

体力:38000

 

耐性:21000

 

敏捷:49000

 

魔力:40000

 

魔耐:42000

 

技能:双剣術[+威力上昇][+斬撃效果上昇][+斬撃速度上昇][+無拍子]・火属性適用[+火属性效果上昇][+消費魔力減少]・火属性耐性[+火属性效果上昇][+持続時間上昇]・縮地[+爆縮地]・先読・剛力・豪脚・高速魔力回復・身体能力[+格闘術]・魔力操作・言語理解

 

 

 

郷田軍平 17歳 男 レベル:???

 

天職:大斧戦士

 

筋力:22000

 

体力:40000

 

耐性:28000

 

敏捷:19000

 

魔力:24000

 

魔耐:27000

 

技能:大斧術[+威力上昇][+斬撃效果上昇][+斬撃速度上昇]・土属性適用[+土属性效果上昇][+消費魔力減少]・土属性耐性[+土属性效果上昇][+持続時間上昇]・剛力・豪脚・身体能力[+全身強化][+部分強化][+格闘術][+筋力強化]・縮地[+爆縮地]・魔力操作・言語理解

 

 

 

飯島きよし 17歳 男 レベル:???

 

天職:弓手

 

筋力:12300

 

体力:18000

 

耐性:12300

 

敏捷:17700

 

魔力:18000

 

魔耐:18200

 

技能:弓術[+連射技術上昇][+安定技術上昇][+貫通技術上昇][+長距離狙撃技術]・風属性適用[+風属性效果上昇][+消費魔力減少]・風属性耐性[+風属性效果上昇][+持続時間上昇]・先読・短剣術[+斬撃速度上昇]・身体能力・魔力操作・言語理解

 

 

 

早川千春 17歳 女 レベル:???

 

天職:魔道士

 

筋力:9700

 

体力:12300

 

耐性:9800

 

敏捷:10010

 

魔力:50800

 

魔耐:60100

 

技能:全属性適性[+全属性效果上昇][+消費魔力減少][+発動速度上昇]・全属性耐性[+全属性效果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法[+高速魔力形成]・魔力操作[+遠隔操作][+魔力放射]・高速魔力回復[+魔素集束]・調理[+毒性完全無効化][+酸性完全無効化]・言語理解

 

 

 

 

========================

 

 

 

レベル100を超え、数値が表示されなくなってしまったが、皆かなりのレベルに達した。

更に魔力操作が使えるようになって、もう演唱なしに魔法を使うことだ出来る。

 

もう同じ勇者(笑)である光輝でさえも追いつくことは出来ないくらいに成長している、これで再会した時にどんな風に見せるか楽しみである。

 

そして乗り物を作り上げて、『魔力駆動二輪&四輪車』を作った。

これは文字通りに魔力を動力とする二輪と四輪であり、新一は同じように乗れる様、進次郎と軍平、きよしの3人にも魔力を伝わるようにしている。

 

千春はさすがに乗り物を乗り回す自信が無い為、その様に工夫はしていない。

 

バイクの方はスポーツタイプとアメリカンタイプの両方が合わさったオリジナルで、車の方はハマーとハンビィーの両方が合わさった車を作りだした。

車輪には弾力性抜群のサメの魔物『タールザメ』の革を使用、そして各パーツはタウル鉱石を基礎に、工房で保管されていた超最高級で世界最高硬度の鉱石である『アザンチウム鉱石』でコーティングしている。

 

そしてこれは言うまでもないが、全ての設計図はきよしが作り出したものである。

 

これらを運び出すのは困難かと思いきや、“宝物庫”と呼ばれる便利道具があった、これはオスカーが身につけていた物を拝借していたもの、これはどんなものを収納する事が出来て、更に無限に格納することが出来る。

まさに一石二鳥でかなりお得であるアーティファクトだった、そのアーティファクトを新一が技能で解析して、複数に錬成して作り、進次郎達にもこれを渡した。

 

これならばもう持ち運び出来る様になり、移動が楽であった。

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

そして出発の日がやってきた。

3階にあった魔法陣を起動させ、地上に出る前に皆に言っておく新一。

 

「いよいよだな、それと俺達が今持っているこれらは…」

 

「分かってるよ、世界をどっさりとひっくり返してしまうくらいの物…だろう?」

 

「その為なら誰だろうと相手になるぜ!」

 

「うん、僕たちが帰るために」

 

「そして皆と一緒に日本へ帰るための明日に」

 

進次郎達がそう言って、ユエが最後に言う。

 

「大丈夫、私達は皆で最強のチーム。どんな奴が来ても負けない、絶対に」

 

その事を聞いた新一は頷きながら言う。

 

「よし!それじゃあ行くぞ皆!」

 

そう言って新一達は魔法陣に包まれてて行き、地上へと続く道へと行くのであった。

 

 




はい!第一章がこれで終わりました。

次回はちょっと別作品を勧めますので、今しばらくお待ちを…。


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第2章 ライセン大迷宮 集う古株
第20話 ウサ耳少女のはた迷惑 前編


ふう、ようやくできました。

そしてこれが今年最後の投稿です。


とある土地、いくつもの峡谷がある場所『ライセン大峡谷』、その場所に1人の“ウサ耳少女”がいた。

 

ピョコン!

 

キョロキョロ。

 

「もう~、まだ来ないんですか?もう待ち飽きましたよ~!」

 

そのウサ耳少女は何やら誰かを待っているかの様に言い、少しばかりため息を吐く。

 

「はぁ~……『ドスン!!!』ヒッ!」

 

後ろから何やら大きな音がして、それに怯えながら後ろを振り返ると、二つの頭を持つティラノサウルス『双頭ティラノ』がそのウサ耳少女を睨みながら見ていた。

双頭ティラノの様にウサ耳少女は…。

 

「ギィヤアアアアアアアアア!!!!!」

 

思わず逃げ出してしまう。

 

双頭ティラノはウサ耳少女を追いかけていき、ウサ耳少女は涙目をしながら大急ぎで逃げる。

 

「助けてくださぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!」

 

っと誰にも聞こえない峡谷の所で悲鳴を上げながら双頭ティラノから逃げ出すのだった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

一方で、新一達はと言うと、魔法陣から出てきた先には地上だと思っていた所、何もない所であって、少しばかりの先に扉があって、そこに光が漏れていた。

てっきり地上だと信じていた新一達は少しばかりがっかりする。

 

「おいおい…マジか…」

 

「冗談抜きだぜおい…」

 

そんな新一の服の裾をクイクイと引っ張るユエ、それに新一は「何だ?」と思いながら振り向き、ユエは自分の推測を例えながら慰めるように話す。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

「…そうか、まあそうだよな。反逆者の住処への直通の道が隠されていない訳ないよな」

 

「ちぇ、少しはもうちょっと期待してもいいじゃねえかよ」

 

進次郎はそう呟きながらも光が漏れている場所に向かい、軍平も一緒にその扉を開ける。

するとその扉の奥には太陽の光が降り注ぐ日差しが振りそそでいた。

 

新一達にとっては数ヶ月ぶりの外であり、ユエにとっては数百年ぶりの太陽だった。

 

「………よっしゃああああああああああああああああああああ!!!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!外だだだああああああああ!!!!!」

 

進次郎と軍平は両腕を上げながら大喜びをし、ユエもそれに真似するように両腕を上げて喜ぶ。

きよしはようやく外だと思って肩の力が抜けて、千春はそれに涙を流して喜ぶ。

 

一方で新一はと言うと…。

 

「皆、喜んでいる所悪いが…お客さんだ」

 

「へっ?」

 

進次郎達はその言葉に周りを見渡すと、辺り一面すっかり魔物の集団に囲まれていた。

 

「おいおい。せっかく喜んでいる最中だっていうのに、空気読まねえな」

 

「せっかくだ、新しい武器の試し切りしようぜ」

 

「うん。そうだね」

 

「私とユエさんの魔法はここじゃあ上手く出せるかどうか分からないけど」

 

そう言う千春の言葉に新一は少々思い出す、以前王国で座学で学んだ時にライセン大峡谷では魔法の力が使えない場所があると聞いた。

 

「……分解されるけど。でも力づくでいく」

 

「力づくって……大丈夫なの?」

 

「…ん、問題ない」

 

ユエの発言に新一は苦笑いをする。

 

「ははは。分かった、ユエは千春と共に後方支援、きよしは援護狙撃しつつ、千春とユエのサポート。俺と進次郎に軍平は切り込むぞ」

 

「おっしゃ!」

 

「よしっ!いっちょやるか!!」

 

そう言って新一たちはレイドボーラー、クリプス&クリフォード、ガンダールを取り出し、魔物の集団に突っ込む。

 

魔物の集団は新一たちがやってきたの見て、攻撃を加える。

新一達は魔物たちが打撃攻撃を仕掛けてきたのを見て、三方向に分かれて飛び、魔物の集団に斬りかかる。

 

レイドボーラーを使う新一はその剣の最大の特徴である大型の刃と技能を使って魔物の一体を切り倒す、レイドボーラーは魔物をあっという間に切り裂いてしまう。新一はそれに気にせずに更に別の魔物を切り裂き、倒していく。

 

「おりやあああああああ!!!」

 

「どりゃあああああああ!!!」

 

進次郎と軍平はクリプス&クリフォードとガンダールを使って魔物の集団を倒していく。

 

クリプスとクリフォードの切れ味は進次郎が思っていた以上に良く、魔物の胴体をスパッ!っと斬れていまう、それには進次郎も驚きを隠せずにいたが、すぐに笑みを浮かばせながら次の魔物を目掛けて行く。

 

同じように軍平のガンダールも切れ味と重みがある分、威力があって、複数の魔物を一望打人にしていき、それには軍平は大喜びしながら魔物を蹴散らしていく。

 

同時に後方できよしがフェリーアーチで新一たちの背後を取ろうとしている魔物の頭部を目掛けて矢を放ち、魔物たちの頭部を貫いて倒していく。

 

そして千春とユエは魔法が分解される場所で魔法を使いながら魔物を蹴散らしている。

しかしそれでもユエよりも、千春の魔力の方がよほど強いのか、演唱なしの魔法で次々と魔物を倒していく。ファイアボールとサンダーウェーブの複合魔法を使いながら。

 

新一達があっという間に魔物の集団を倒していき、その様子に進次郎は呟く。

 

「呆気なかったな?」

 

「おう、大迷宮の魔物より手応えねぇぜ」

 

「もしかして、僕たちのレベルがもう最大値に達しているから?」

 

「もしかしたらそうかも知れないな」

 

っときよしの言葉に新一は頷きながらレイドボーラーを背中にしまう。

 

「俺達は元々あのオルクス大迷宮のダンジョンを攻略した。そして俺達のレベルは100を超えてしまってるから、地上の魔物とはもう天と地の差があるんだろうな」

 

「うわ~…私達とんでもない領域に来ちゃったわね」

 

「もう自覚を持つ以外ないな」

 

進次郎はその事に納得しながらクリプス&クリフォードをしまい、軍平ときよしもガンダールとフェリーアーチをしまう。

 

「さてと……これからどうする?」

 

「そうだな…、ここはライセン大峡谷とするなら樹海側に向けて探索でもしながら進むか」

 

「……なんで樹海側?」

 

ユエは不思議そうな表情をしながら新一に問い、それに新一はユエの方を見ながら言う。

 

「理由は2つ、そっちに大迷宮の繋がるヒントがあるかどうか調べる事と、もう1つはいきなり砂漠方面に向かうのはさすがにタブーだ。樹海側が街に着くこともあるしな」

 

「そうね。そこに行けば食料も手に入るから言いわね」

 

千春は新一の言葉に納得し、それに進次郎達も頷きながら納得する。

 

「よし!そうと決まれば行くとするか!」

 

そう言って進次郎は宝物庫から魔力駆動四輪を取り出して、運転席側に向かう。

 

「新一!運転は俺に任せろ!」

 

「分かった、それじゃあ頼む」

 

そう言って新一が魔力駆動四輪に乗り込もうとした時に何かを感じた。

新一は一度乗り込むのを辞めて、辺りを見渡す。

 

それに進次郎達は新一の様子を見て問う。

 

「どうした?」

 

「何かを感じた…、何処から……ん?」

 

すると新一はある方向から何かが近づいてくるのが見えた。

それは向こう側に大型の魔物が現れた。2つの頭を持つ魔物、双頭ティラノだった。

 

そしてその双頭ティラノに追いかけられながらピョンピョン飛び跳ねながら泣き顔で逃げ惑うウサ耳少女がやって来る。

 

「あれは?」

 

「……兎人族?」

 

「でも兎人族ってこの峡谷には居ないはずよね?どうして?」

 

「さあ?」

 

新一達はその事に頭を傾げながら見ていると、ウサ耳少女の必死の叫びが峡谷に木霊し新一達に届く。

 

「助けてくださ~い!!死んじゃいます!! 死んじゃいますよぉぉぉぉ!! 助けてぇ~!!!おねがいじますぅ~!」

 

滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサ耳少女に食らいつこうとしていたのだった。

それには新一達は呆れながらもその様子に見ていて、新一は仕方なくドンナーを取り出して、双頭ティラノの頭に向けて2発撃ち込む。

 

ドンドン!!

 

ドンナーから放たれる銃弾が双頭ティラノの頭部に直撃して、その場で倒れて死んでいく。

 

ウサ耳少女はドテッ!!っとその場に倒れながら、ようやく逃走からの悲劇から逃れた。

そして新一はウサ耳少女の元に近寄って問う。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「へ? は、はい……」

 

「そうか。よし、大丈夫そうだから俺達はもう行くぞ。もう危ない所には行くなよ」

 

っとそう言いながら新一はその場を去ろうとする。

だがその時。

 

ガシッ!!!

 

「待ってください!!!」

 

「はっ?!ちょ待て!!離せよ!!?」

 

「いやです! 今、離したら見捨てるつもりですよね!? だから絶対に離しません!離しませんからね! “ようやく”見つけたんですから!!」

 

「待て!見捨てるとか意味不明な事を言うな!! それに俺達は……ん?」

 

っと新一はウサ耳少女の言葉に思わず気になる事に気が付く。

 

「お前…今なんて言った? ようやく見つけた?」

 

「あは!ようやく聞いてくれましたね! そうです!私は貴方達を待っていたのです!!」

 

そのウサ耳少女の意味不明の言葉に新一は勿論のこと、進次郎達もその言葉に頭を傾げながらそのウサ耳少女を見つめるのだった。

 

そしてこの出会いが、新たな物語の先に進む事となる。

 

 




一応これで今年最後の投稿が終わりました。

そして皆さん、来年もよろしくお願いいたします。


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第21話 ウサ耳少女のはた迷惑 後編

活動報告で新年の挨拶はしましたが、見てない人にあえて言います。

新年明けましておめでとうございます。

今年最初の投稿です。


オルクス大迷宮からようやく外に出てきた新一達、出た先のライセン大峡谷にてウサ耳少女が双頭ティラノに追われているのを助けた所、何故か新一にしがみついて、待っていたかの様に言っている。

それには新一達は訳が分からず、取り敢えず新一達はそのウサ耳少女の話を聞くのであった。

 

一応魔物が来ない場所に移動し、近くの岩に座って話を聞いた。

 

「それで、君は一体何者なんだ?」

 

「おっと!そうでした! 申し遅れました、私は兎人族ハウリアの一人、シア・ハウリアといいますです! 先程は助けていただいてありがとうございます! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

っとその言葉を聞いた時、新一は彼女…シアの頭に手を置いて、“纏雷”を流し込む。

 

「アババババババババババババ!!!?」

 

シアは少しばかり真っ黒になって倒れる。

 

「おいこら!勝手に話を進めて決めるな! なんだよさっきから!?君は話は聞かない所か、非常識にも程があるぞ!」

 

「ちょっと新一君! 落ち着いてよ!」

 

千春が新一を何とか抑えながら言い、シアは少々黒い煙を上げながら立ち上がる。

 

「す、すいません…、で!でも!もっと優しくしてくださいよ!私みたいな可愛い美少女を丁寧にしないと、いつか後悔しますよ!」

 

「いや自分で可愛いって言わない方はいいよ…」

 

きよしの言葉にシアは耳に入らなかったことが唯一の幸い、新一はその事に思わず目を細めながら見る。

 

確かに見た目は良い感じの少女、スタイルは良いし、胸はある。しかし中身はご覧のとおり残念なウサギである事には間違いない。

それを考えると少しばかり頭が痛くなる新一。

 

「でもボロボロな服で可愛らしさはゼロ」

 

「グエッ!!それはいくらなんでも酷いです!」

 

ユエの言葉に流石のシアは言い返す、しかしユエの言う通り、シアの服はボロボロであり、よくそんな格好で来られたと言える。

 

ちなみに新一の格好は白いコートに赤のラインが入った物で、下には黒色のベスト、防刃ベストと防弾ベストの両方を併せ持ったベスト、これは新一自身が自ら作り出したものであり、きよしの自身作じゃない。

黒いズボンを着て、ブーツを履いた物を身につけて、指だしグローブを付けている。

 

進次郎は茶色のジャケットに水色のジーンズ、カットブーツの様な靴を履いて、ジャケットの下にはシャツを着込んでいる、しかしこれは普通のシャツではなく、完全防刃のシャツである為、丈夫である。

 

軍平は筋骨隆々の身体を見せつける様な格好で、タンクトップをした上に袖なしの灰色ジャケット、赤ハチマキを巻いている。

 

きよしは普通の服装とは違い、右と左の袖の長さが違い、右が短く、左が長い感じの上着を着込んでいる、右手には弓の玄を引きやすくする為の手袋を使用している。

以前つけていた手袋と全く違っており、かなり頑丈な生地で出来ている。

 

千春の服装は基本的なローブで、唯一違う所は胸の谷間が唯一見えている所で、以前は見えてないローブだった、そしてスカートはロングからミニへと変更している所である。

 

だがシアはこのあと飛んでない一言を言い出す。

 

「で、でも! 胸なら私が勝ってますよ! 流石にそちらの人はともかく、そっち女の子はペッタンコじゃないですか!」

 

「ええ!?私に向けてるの……ッ!?」

 

「「「「っ!!?」」」」

 

っとその事を言ったシアに新一達は思わず言葉が止まる。

 

言ってはいけない言葉がユエの頭の中に入ってくる

 

“ペッタンコじゃないですか…ペッタンコじゃないですか…ペッタンコじゃないですか…”

 

命知らずのウサ耳少女の言葉が響き渡り、長いロングヘアーの髪が徐々に浮き上がってくる。

するとシアはようやく自分が言った言葉に理解したのか、徐々に身体が震えだしてくる。

 

「お、おおおお…、お許しを~……」

 

命乞いをするシアに、ユエの耳には届いておらず、右手をシアに向ける。

 

「“嵐帝”」

 

突如発生した竜巻に巻き上げられ錐揉みしながら天に打ち上げられるシア。

 

「アァァァァァァ!!!!」

 

シアの悲鳴が峡谷に木霊し、きっかり十秒後、「グシャ!」という音と共に新一達の前に墜落した。

今の彼女は気絶しながらピクついている状態で、今は何とも言えない状態だった。

 

それには新一達はただ眺めてるだけしかなかった。

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

そしてシアが意識を取り戻して、彼女の話を聞いた。

 

「ええ~つまり、君の所の兎人族は【ハルツィナ樹海】にて数百人の規模の集落を作ってひっそりと暮らしていた。しかし他の亜人と比べて能力が低く、他の者達から格下と見られていた。そんな中である者が固有魔法を手にしていたと聞いて、有り得ない事が起きてしまった…。

本来魔法を持ってしまうと言う事は他の種族と同じ危険な存在となってしまう……。簡単に言えば見捨てなれければならないと?」

 

「は、はい…。そしてハルツィナ樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】で女の子の存在がバレれば間違いなく処刑されると言う事を聞いて、それでハウリア族はその女の子を隠して、16年もの間ひっそりと育ててきました。ですが先日とうとう彼女の存在がばれてしまって…」

 

「ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出た……って事だな?」

 

新一の言葉にシアは頷く、それらを考えるとその人物がもう既に分かってしまった。新一は目の前の少女を見る、ハウリア達が言っていた女の子…その人物がこのシアだって子が。

 

「なるほどな。大体分かったぞ…その女の子が君だって事が、しかし君が一体なんの固有魔法を持っているんだ? 俺達がここに来るのを予測していたみたいだが…」

 

「あ、はい。“未来視”といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……」

 

「つまりここぞってばかりに見えてしまう事があるって事か?」

 

「はい!そうです!」

 

進次郎の言葉に頷くシア、それを考えるとシアのその未来視の魔法はかなり有能な魔法である、未来は絶対に見ることが出来ないため、かなり便利な魔法である。

しかしその魔法に少し気になる事がある新一。

 

「ん?それならさっきなんで使わなかったんだ? 使ってたらあの魔物にバレずに済むのに…」

 

「え?! じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」

 

「…ちなみに聞くが一体何に使ったんだ?」

 

「えへへへ。友人の恋路が気になりまして……」

 

「あらっ!! ただの出歯亀じゃないか! 貴重な魔法だろう!」

 

「うぅ~猛省しておりますぅ~」

 

シアはウサ耳をションボリとさせながら反省の色を見せて、それに新一はため息をつく。

 

「はぁ…たくぅ、まあいい。どの道俺達はハルツェナ樹海に向かう必要があったからな。いいぞ、そこに向かっても」

 

「っ!うわああああああ!! 最初から良い人だと思ってましたよ!! ありがとうござごわぁ!!!?」

 

興奮したシアが新一に抱きつこうとした時に、新一が頭を抑えて黙らせる。

 

「落ち着け…。全く」

 

「いいの?新一」

 

ユエはすぐに決めた事に問いかける。

 

「いいんだよ、ハルツェナ樹海には大迷宮がある。そこに向かって調べて行こう。そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は新一、天道 新一だ」

 

「俺は上地 進次郎!よろしくな!」

 

「郷田 軍平!筋肉をこよなく愛する男だ!!」

 

「僕は飯島 きよし。きよしって言っていいからね」

 

「私は早川 千春。それと私の胸指すのはやめてね」

 

っと鋭い視線で釘を刺す千春にシアは顔を真っ青になりながら頷く。

そして最後にユエが語る。

 

「……ユエ」

 

「新一さんに進次郎さん、軍平さんにきよしさんと千春さん、そしてユエちゃんですね」

 

名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、ユエが不満顔で抗議する。

 

「……さんを付けろ。残念ウサギ」

 

「ふぇ!?」

 

ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、どうもユエを外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。

どうもユエは、シアが気に食わないらしい。しかしそれを気にしては何も始まらない。

 

「ユエ、もういいから行くぞ、ほら、シアも乗れ。出発するぞ」

 

「……新一、少し気にして欲しい」

 

「はいです~♪……っ!?」

 

っとシアは乗り込めって言葉に勢いにのられてしまい、ちょっとばかり新一達の乗り物を見て一瞬戸惑った。

 

「えっと…これはなんですか?乗り物…なんでしょうか?それに、新一さんもユエさん、それに進次郎さん達も魔法使いましたよね? ここでは使えない筈なのにどうして…」

 

魔力駆動四輪車を見て戸惑いを隠せないシア、それに新一は苦笑いしながら言う。

 

「ははは。それはおいおいな、さて出発だ進次郎!」

 

「おうよ!」

 

進次郎が魔力駆動四輪車を動かして、シアの同族が居るハルツェナ樹海へと向かうのであった。

 

 

 

 



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第22話 迷宮への道のり 前編

皆様、更新が遅れてしまって申し訳ございません。

懐かしいゲームに夢中になって、遅れました。


「キュイイイイイイイイイイイイイン!!!」

 

ライセン大峡谷のすぐ近くにある森林に、突如魔物の遠声が鳴り響いた。

そしてその森林に隠れている兎人族…ハウリア族の者達が急いで隠れ、身を潜めている。

 

「マズイ!奴だ!!」

 

「“ハイベリア”だ! 絶対に表に出ずに隠れろ!いいな!」

 

ハイベリア…、ワイバーンの姿をした魔物は空を飛び回りながら、獲物を探していた、それも一匹だけじゃなく六匹、群れで行動をしていた。

 

ハウリアの皆はすぐ隠れるも、ハイベリアは自らの嗅覚で辺りを探り、そして近くにいる2人のハウリアを目にする。

 

「ひぃ!!」

 

「お母さん!」

 

小さい女の子のハウリアが母親のハウリアに目をつける。

 

そして急降下していき、尻尾に岩の様な鉄球を地面に叩き透けるかのように2人のハウリアに向かっていく。

ハイベリアの行き先が2人のハウリアだと知った、指揮を取っているハウリアの男性が思わず声を上げる。

 

「やめろ!!!」

 

 

 

 

ドンドン!!!

 

 

 

 

っと大きな銃声が森林の元に響き渡り、急降下していくハイベリアはそのまま地面に叩きつけられるように落ちていき、そのまま地面に墜落して死んでしまう。

突然の銃声に周りに居たハウリア達は唖然とした状態になる。

 

「な、何が起きて…」

 

ハウリア達はそれに立ち上がると、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「父さま~~~!」

 

「ん?」

 

1人のハウリアが後ろを振り返りみると、シアが新一達が乗っている魔導四輪車…『ブリーゼ』の天井のフタを開けて身体を出すシアが手を振って声を出していた。

 

「助けを呼んで来ましたよーーー!」

 

「シア!?」

 

父と呼ばれたハウリアはシアの登場に驚きを隠せない、それもその筈。

ブリーゼに乗ってきている状態の新一達を見て驚かない者達はいない。そして先ほどの攻撃は新一が助手席からシュラークで攻撃し、ハイベリアを倒したのだ。

 

しかしまだ五匹残っていて、新一はきよしに言う。

 

「きよし、あの五月蝿いワイバーンを落とすぞ」

 

「うん、分かった」

 

そう言って、きよしは後部座席の窓から身を乗り出して、フェリーアーチを取り出して、矢を放つ。

当然新一もシュラークを使って撃ち込み、ハイベリアを撃ち落としていく。

 

そして束の間に、ハイベリアは全て倒されていくのであった。

 

 

 

 

───────────────────────────────────────────

 

 

 

 

数分後、ハイベリアを全て撃破した新一達、ブリーゼから降りてくる新一達よりも先に上の天井から降りてきたシアがすぐさま父と呼んだ人物に向かう。

そしてそのハウリアの人物もシアの方を見る。

 

「シア! 無事だったか!」

 

「父さま!」

 

シアの父親である人物はシアと再会したのを喜び合い、それに同じハウリア達もシアが無事戻ってきたことに喜ぶ。

その様子を新一達は少しばかり見て微笑み、それにユエは見て問う。

 

「…新一、嬉しいの?」

 

「ん? まあな。そりゃあ家族と無事、再会出来たんだからな」

 

「ええ、そうね」

 

それには千春も同じように頷きながら言い、そして兎人族達の話しが終わったあとに新一達に振り向く。

 

「新一殿で宜しいか? 私は『カム』シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか…父として、族長として深く感謝致します」

 

それにカムと名乗ったシアの父親は頭を下げ、同時に同族たちも頭を下げていた。

新一はそれに頭を横に振りながら言う。

 

「よしてくれ、俺はそこまでお礼をする所まではやっていないさ。それに俺達はこの先のハルツェナ樹海に用があって来たんだ。そのついでだよ」

 

「それでもだ。どうか感謝を言わせて欲しい」

 

断じて頭を下げて礼を言う様子に新一は少々困り果てる感じとなる。

しかしその様子を邪魔するかのように、魔物の遠声が聞こえて来て、すぐに新一は言う。

 

「すぐに此処を移動する。皆は俺達に付いて来てくれ」

 

それにハウリア達は頷いて、新一達の後を追いかける。

その際にきよしはブリーゼを戻して、新一の後を追いかけた。

 

 

新一達がハウリア達を安全な場所を探しつつ、シアの道案内で迷宮に繋がる道を辿っている…。

 

「そこの貴様!止まれ!!」

 

 

 

ガシャン!!

 

 

 

新一達をガッツリと取り囲んで、槍を向ける『帝国兵』が数名いた。

それにはシアは勿論の事、ハウリア達はそれに戸惑いながらシアを必死に隠そうとしている、だが新一達はそれに全く動じず、帝国兵を見ていた。

 

「お前たち、一体何処のものだ?」

 

「人間がこんな所で何をしているんだ。答えなければ拘束して連行する」

 

「おい、そいつらの後ろを見ろよ」

 

帝国兵の1人が新一達の後ろに隠れているシアを含むハウリアの女性達を見て、それに笑みを浮かばせる。

 

「おい、兎人族だぞ」

 

「ああ、しかも豪華な女だちだ。イイね」

 

「おい貴様等、その亜人達の女たちをその場に置いていけ、そしてそこのお前もだ」

 

っと1人の帝国兵が千春の方を指さしながら言い、それに千春は少し貼り遠慮しがちな表情をする。

 

「ええ~私も?」

 

「おいおい、マジか?」

 

進次郎は帝国兵達の考えにどうやら察して呆れた様子を見せる。

どうも彼らは女性達だけを捕え、何処かに連れて行き、後は自分たちが好きなようにすると考えている用だ。

 

その考えに進次郎だけじゃなく軍平やきよし、そして新一はそれにバカバカしく感じて、少しばかり帝国兵を見る。

そして新一は帝国兵に向かって言う。

 

 

 

「断る」

 

 

 

っとその言葉に帝国兵達は眉をピクリと動かす。

 

「なんだと?」

 

「断ると言ったんだ。女たちを連れてイイ事をするつもりだろうが、生憎俺…、俺達はそんな事をすると思っているのか? 馬鹿は言葉は寝てから…いや。“死んで”から言ってくれ」

 

「ッ! き!貴様……!!」

 

新一の言葉にイラついたのか、帝国兵達は新一達に槍を向けて、殺意をあらわにしながら睨みつけている。

帝国兵達の様子に、新一と進次郎と軍平は前に出て、レイドボーラーとクリプス&クリフォードとガンダールを取り出して構える。

 

「取り敢えずこいつらの相手をするぞ。覚悟はいいか?」

 

「ああ…、勿論だ」

 

「女たちは絶対に守るぜ…」

 

っと言って帝国兵達を見る。

 

そして帝国兵の1人が叫ぶ。

 

「おい貴様等!!! 男は皆殺せ!! そして女は捕獲しろ!!!」

 

その言葉と同時に帝国兵達が一斉に襲いかかってくる。

 

っが帝国兵達は新一達の攻撃に一斉に吹き飛ばされる。

吹き飛ばされた1人の兵士が思わず身体を起こして見る、それは新一がレイドボーラーが一気に振って、風圧で押し出したのだ。

 

そして進次郎はクリプス&クリフォードの峰打ちで帝国兵数名を気絶させる。

 

「そらよっと!!」

 

「おらああああ!!」

 

軍平はガンダールのハンマー部で豪華に叩きつけ、帝国兵数人を吹き飛ばす。

 

そして新一はレイドボーラーを峰打ちにし、骨がヒビ入る程度の強さで叩きつける。

それに帝国兵達は思わず身体が思うように動かなくなる。

 

「グッ!く!クソ…!!」

 

「残念だったな。もう諦めろ」

 

「ま!まだだ!!まだ諦めるものか!!!」

 

そう言って帝国兵達はフラつきながらも立ち上がってきて、それに進次郎と軍平は少しばかり困る表情をする。

 

「おい、進次郎どうするよ」

 

「参ったな~…、これ以上やれば確実に相手を…」

 

「…やもえないか。進次郎、軍平。お前たちは下がっててくれ」

 

新一の言葉に進次郎と軍平は思わず新一を見て、新一はレイドボーラーを元の刃に戻して、一度目を閉じながら構えを取る。

 

帝国兵はそれに少しばかり驚くも、すぐさま向かっていき、それに新一は目を開いて、レイドボーラーを横に向けて斬る。

 

 

『一閃!!』

 

 

新一の得意技、一閃により、帝国兵達は新一に近寄ってきたがその場で止まって、そして首から頭の部分がポロリと落ちる。

 

『『『っ!!!』』』

 

ユエを除く進次郎達は新一が帝国兵を殺したのを見て驚きを隠せなかった。

それは当然シア達もだった。

 

「し、新一…」

 

「…皆、俺は平気だ。殺しは前の世界で経験しているから」

 

「って!前の世界でって! 新一お前…!」

 

進次郎は新一の言葉を聞いて驚きを隠せない、新一はレイドボーラーを見て言う。

 

「言いたいことは分かる、だが今の状況、どうも気絶だけでは収まらないと感じて、やもなくだったんだ」

 

「で、でも新一君」

 

「分かってるよ千春。だがこの先はどの道…殺しは避ける事は出来ないだろう、俺達はこの世界の戦争に関わってしまっているんだ。覚悟を決めるしかないぞ」

 

その言葉に進次郎達は新一の言葉を聞いて、相手を倒す…即ち殺す事を覚悟しておく必要があると知って、改めて心に刻み、そして新一の言葉をしっかりと聞くのであった。

 

 

 



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