銀色の革命者外伝 星色の花は天使の手に (ヒロ@美穂担当P)
しおりを挟む

ドルオタは予想外の事に弱い

思いつきで書きました。
息抜き程度に読んでいただければと。


どうもこんにちは。

突然ですが俺の自己紹介をします。

名前は津上浩一。どっかで似た名前を聞いた事があるって?うーん。

それは置いといて。俺の事を軽く紹介すると普通の大学生。地元群馬から1人でここ東京へやってきた。そして……ドルオタだ。

俺はごく普通のドルオタ大学生です。でも今は普通ではないっぽいです。

 

 

 

 

「津上君、どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」

 

 

俺に話してきたのは俺の推しアイドルであり天使であり、でもちょっと小悪魔っぽいところもあってそして「正統派」アイドル(迫真)の相葉夕美ちゃんだ。

 

 

 

「誰かに話してなかった?」

「いやそんな事ないよ(目逸らし)」

「本当に〜?」

 

 

俺に近づいて顔を寄せてくる相葉ちゃん。

俺はこれだけで致命傷レベルに浄化されそうです。でもギリ生きている。

……やっぱり今回もダメだったよ(ルシフェル風)

 

 

 

 

 

 

「津上君は最近ライブって行ってるの?」

「相葉ちゃんのライブは絶対に。連番とかなったりしてる人と一緒に行ったりもするし」

「すごいね〜」

「夢斗を誘っても『めんどくさい』で行かねえし」

 

 

夢斗とは俺の親友である天才で変人なヤツ。

あらゆる事が完璧にできるけど人間性に問題あり。気分屋、マイペースなど人に嫌われる要素が多いヤツだ。

彼との出会いは最悪の一言だった。相葉ちゃんと馴れ馴れしく話していた夢斗。俺ら一般人には相葉ちゃんと話す事も大変光栄な事なのに夢斗は気にしなかった。

そんでケンカになって俺は夢斗に背負い投げされた。今でも根に持ってるわ。

 

 

 

「今度私とライブ行かない?」

「ああ行こうか……えええええ!?」

思わず大声で驚いた。周りの視線が刺さる。でも慣れてるから平気。これくらい耐えれなきゃオタクはやっていけんわ。

 

 

 

相葉ちゃんからライブの誘い……!?行くしかないだろ!

「行く!絶対行く!」

まずないであろう大チャンス。逃さないぜ。

「いつのライブ?誰の?」

「光ちゃんのライブ。『イグニッションZERO』で新曲やるって」

「おおー!」

イグニッションZEROとは南条光、小関麗奈、三好紗南の3人トリオのユニット。

なんでか知らんけどアイドルにほぼ興味が無いであろう夢斗が光ちゃんの事を知っている。なんで?

 

 

 

 

 

 

「津上君はこれからどこに行くの?」

「俺は車屋に。メンテナンス頼んであるから」

俺はある人に憧れて車を買った。マツダのロータリースポーツカー「RX-7」だ。本当は軽自動車でもよかったけど、ある時その人の事を聞いてRX-7の事を調べたらすっかりRX-7のトリコになってしまった。

んで買ったのはいいけど俺が憧れたその人のニセモノ疑惑を作ってしまい、俺は車の色を変えた。

 

 

 

「私も行く」

「えっ」

 

 

車屋はまず女の子は好きではない。

車屋はエンジンオイルなどの汚れ、作業の音など女の子が気にするような要素の集まりみたいな物。

車屋は男の集まりっていう感じが強いだろうし。

でも相葉ちゃんは行くって言った。

 

 

 


 

 

 

しばらくして車屋に到着。

チューニングショップでもある「RGO」だ。

「こんちはー」

「おう、待ってたぞ」

「あれ、大田サンだ」

 

 

俺達を出迎えたのは「大田和夫」。

かつて首都高を走り回っていた走り屋だ。ロータリーエンジンのチューニングはお手の物。今は娘さんのリカコさんが現場の指揮をしているのだが。

 

 

「今リカコが取材受けてんだよ。取材を受けてない日が珍しいぜ」

「なるほど」

「俺はリカコに頼まれたお前のFDをメンテし終わった。退屈してるぜ」

「ありがとうございます」

「お前乗り方変わったな?」

「少し踏み方変えてみたんです。そうすれば少しでも近づけるかなーって」

 

 

 

大田さんの言う通りだ。

最近俺は夢斗の走り方を真似している。……中々変わった感じはしないケド。

 

 

 

「おっ、お嬢ちゃんはアイドルの……」

「相葉夕美です!」

「アイドル……少し前にアイドルのためにFCのエンジンやってくれとリカコに頭下げて頼みに来た坊主はいたが……」

(小日向さんか……)

 

 

 

 

 

 

整備された俺のRX-7はイイ音だ。

「オイル交換しっかりやっとけよ」

「わかりました」

「お嬢ちゃんに優しい運転しろヨ」

「もちろん」

 

 

 

 

助手席(ナビシート)に相葉ちゃんが座る。やべえ、超緊張してる。あの相葉ちゃんが俺のすぐ隣にぃ!

 

 

 

 

運転しているから前を向いている俺。当たり前だけど。でも左を向いたら……俺死んだわ。だって天使がいるんだもん。伝われこの気持ち。

 

 

 

 

「津上君も運転上手いよね」

「夢斗程上手くないよ」

「でも……プロデューサーみたいな運転だなって」

「え、マジで?」

 

 

やったぜ。すっげー嬉しい(小並感)

でもいい事ありすぎてなんか怖い。

 

 

 

 

「相葉ちゃんはこのあとどうするの?」

「仕事行かなきゃ」

「送ってくよ?」

「お願い」

 

 

 

俺はこの後相葉ちゃんを346プロダクションに送った。

相葉ちゃんが車を降りた後も車内に残っていた花の香りが俺を刺激してました。女の子が使う香水ってなんであんなにいい匂いなのかな……。

 

 

 

 

数日後、俺は車内に芳香剤を置いてみたが相葉ちゃんの使った香水みたいな匂いは再現できなかった。やっぱそういう特別ななにかがある、と結論づけた。女の子ってやっぱ不思議だ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ライブでは絶対に迷惑行為で目立つな

皆さんはライブに行ったことありますか?
私は何回も言いますがライブ行ったことないです。
というわけでライブの話。


今日俺は朝早くから入念に準備をしている。何の準備かって?相葉ちゃんとライブに行くんだよ。

ペンライトや法被をリュックに入れて準備完了。よーっし、行くか。

 

 

 

 

集合時間2時間前にはライブ会場へ到着した。

早すぎじゃね?と思うだろう。でも「万が一」がないように俺は出てきた。

 

 

「津上くーん!」

来たよ来たよ天使ィ!相葉ちゃん来たァァァ!! 相葉ちゃんの服装は涼しげ。彼女らしさを最大限発揮している。

「少し早く来ちゃった……」

大丈夫、俺は2時間前からいるから。

「大丈夫だよ。むしろ俺が遅れる方がダメだと思って」

女の子より早く動く。これが女の子が男に求める事だと俺は思っている。夢斗、オメーはダメだ。

 

 

 

 

 

ライブ会場内は大勢の人が。狭い。

「相葉ちゃん大丈夫?」

「私は大丈夫。津上君は……っ!?」

相葉ちゃんが転びかけ、俺は慌てて相葉ちゃんを受け止める。

「ごめんね、津上君」

「平気。相葉ちゃんが怪我する方が一大事だし」

アイドルが怪我なんてしたらヤバい。上手く言えないけどとにかくヤバい。

 

 

ライブ開幕。

イグニッションZEROのメンバーがステージに現れた。

「さあみんな!あたし達の歌を聞けーーー!!」

「「「「「わあああああああっ」」」」」

観客の声が波のように押し寄せる。

「すごいな……」

光ちゃんのMCは完璧。観客達のボルテージをアゲるのが上手い。

 

 

 

「光ちゃーん!!」

なんかやけに目立つ中年のおじさんがいる。法被にペンライトなどフル装備。コール並の大声で呼びかけている。

 

 

 

 

 

どうしようかな……と思った瞬間。

そのおじさんが隣にいた別の観客と揉め始めた。騒ぎが大きくなっていく。

「ねぇ……大丈夫かな」

「アレはダメなパターンだな……」

そのおじさんは周りの声が届いてないらしく、自分の意見だけを押し通そうとしている。ああいった感じはすぐにスタッフが駆けつけるパターン。

程なくしてスタッフの方が来ておじさんに注意。しかし……

 

 

 

 

 

 

 

今日のライブ最後の曲になる「君の青春は輝いているか」。光ちゃんが好きな特撮番組のカバー曲だそうだ。

 

 

 

「ほんとうの自分を隠してはいないか〜」

光ちゃんが歌うのに合わせて大声が聞こえる。俺が声が聞こえた方を向くと……やはり。先程のおじさんだ。

 

 

 

 

「静かにしろよ!!」

「うるせえ光ちゃんを応援するんだよぉ!」

「それはただの迷惑行為だ!」

再び揉め始めた。それが先程よりも大きくなり会場全体にまで広がる。

ステージ上の光ちゃんも思わずそちらを見ていた。

「やめろーーーーっ!!」

光ちゃんの声が会場全体に響く。混乱していた会場中が静まり返る。

 

 

 

「あたし達を応援してくれるのは嬉しいさ!でも!」

「守るべき物は守る!それがヒーローじゃないか!もちろんルールだって!!」

光ちゃんの言う通りだ。例え正義のヒーローだって普通の人のように守る物は守る。ヒーローだけがルールを破っていいなんてそんなのナイ。

 

 

 

「俺はぁ!光ちゃんだけを見ているんだよ……っ!?」

騒いでいたおじさんが後ろから羽交い締めにされる。

「うるせえな。ルールが守れないで何が大人だ」

「この……!」

「光ちゃんだって子供なんだ。俺達大人が子供の前で格好悪くてどうする」

ヒゲを生やしたおっさんと言うべき男性がおじさんを押さえ込んでいた。

やがて再びスタッフがやってきておじさんは退場させられることに。

あのおっさんカッコよすぎだろ。

 

 

 

 

 

ライブ終了後。

「大変だったね……」

「でもライブはこういう事はつきものだよ。何事もない方が珍しい気がするくらい」

普段俺が行くライブでもスタッフが来るようなレベルでなくとも迷惑行為が全くない訳ではない。

小さい物で済む物もあればスタッフに退場させられるような事も。

何故注意書きを守らないのか。これは俺以外にもここに来ている人達みんなが思ってる事だろう。

 

 

 

 

駐車場に戻ってきた俺と相葉ちゃん。

「乗ってく?」

「うん」

また相葉ちゃんが俺のFDに。やったぜ。

そんな内心ウキウキの俺の前に赤い車が。

「お……FC」

俺の乗っているRX-7(FD)の先代のモデル通称FC。今やFD以上にタマが減ってきているのだ。俺が知る人があれと同じ車を作っていたけど……。

乗っていたのはなんとさっきのおっさん。

「シブいな……。ますますカッコいいぜ」

そしておっさんと目が合った。目と目が逢う〜(突然流れ出した目が逢う瞬間)

この後相葉ちゃんを送って帰った。

 

 


 

 

数日後、あのおっさんと再び会った。俺はFCに乗り続けて20年以上になるというおっさんから話を聞いていた。

「兄ちゃんのFD悪くはないけどな……。なんか足りねえな」

「俺もわかってます。けどどうすればいいか全くわかんなくて」

おっさんの指摘は的確。

「パワーどんくらいだ?」

「だいたいブースト1.2kgで450馬力ってとこですね」

「悪くはないな。でももう少し高くてもお前は問題ないだろう」

「俺はバランスよく仕上げてるだけです」

「バランス……とにかくパワーが出てりゃあいいっていうヤツもいるさ。お手本のようにまとまってるのも悪くないがつまらなくないか」

「俺は……今はこれでいっぱいいっぱいで」

おっさんが俺のFDのボンネットを開け、エンジンを見た後。

「俺のFCを追ってみろ。なにか掴めるといいが」

 

 

 

 

 

 

横羽線上り。

赤いFC3Sのテールランプを追う俺の青いFD3S。

(あれがFCなのか!?)

前のFCの動きは歴戦の猛者の動き。一瞬でも気を抜いたら……そう考えないようにFDを走らせる。

 

 

 

「嘘ではないみたいだな」

あのFDは本当にバランスよくチューンしているのがわかる。

ライトチューンであれ程やれているのがいい。趣味で休日にサーキットを走る人がやるような軽めのチューン。

それだけなのに高いレベルの性能を持つ。いいセンスだ。

 

 

 

「く……っ。張り付くしかねぇか」

FDをFCに当たるギリギリまで近づける。スリップストリームの効果を得るために。

 

 

 

「上手いな……。タダのコゾーってわけでもないらしいな」

FDは上手くFCの後ろに張り付く。

大パワー車を低パワー車で追うのには絶対なくてはならないテクニックがスリップストリーム。

空気抵抗を前方の車両で軽減し、自分の速度を上げる。前の車が作り出したエアポケットの中で加速するのだ。

FDのドライバーの腕に感心する。あの若さでこれ程の腕とは。

 

 

 

 

「だが……経験値が違う」

FCが先程よりも速度を上げていく。

浩一はFCの丸いテールランプを見ることしかできなかった。

「だめかよ……」

 

 

 

 

 

合流後。

俺はおっさんからアドバイスを受ける。

「踏むかどうか躊躇してる瞬間があるぜ……。ソレ自分でもわかってるだろ」

「……ええ」

攻めるか悩む瞬間。超高速バトル中の躊躇は状況が一気に悪い方向に進む一番の原因だ。

「あなたは……何者ですか」

俺は問う。おっさんは明らかに俺とは違う次元の速さを持っている。

「内藤健二。車バカでドルオタのおっさんさ」

「ドルオタってことでひとつ聞く。この間相葉夕美ちゃんを乗せてただろ……どういう関係だ」

「クラスメイトですけど」

「お忍びで来てただろう!?」

「そうですよ?」

「ほー……。わかったぞ、兄ちゃんは相葉夕美ちゃん推しだろう」

「大正解です」

俺と内藤さんはドルオタ同士の熱い握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

「俺の工場にいつでも来い。FD見てやるぜ」

「ありがとうございます。あ、俺は津上浩一って言います」

「浩一か……。ドルオタ同士仲良くしようや」

こうして俺は内藤さんと知り合った。これ以降もライブの際にちょくちょく会うようになった。

後に聞いた話で内藤さんは南条光ちゃん親衛隊のリーダーだと判明。

光ちゃんのライブの時に迷惑行為をする輩を注意しているそうだ。

ヒーローはステージ外にもいると俺は学んだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ギャップ萌えは男を堕とす必殺技

現時点では本編より少し未来の話。
皆さんはお菓子を取るかイタズラを取るか……どっち?


今日は……子供に会いたくない。

なんでかって?みんな大好き(でもない)ハロウィンなんですよォ!

だってさぁ!仮装した子供にお菓子をねだられる。ンなモン持ってねえよ。

まあそれはいい。でもな……。仮装したリア充が多いんだよお!!

子供と関係ないじゃんって?あ、本当だ(アホ)

 

 

 

とまあボッチには耐え難いイベントなんですよね。ハロウィンって。

仮装したカップルやらがキャッキャウフフしてるのが羨ましいんですよ。うらやm……けしからん。

だから俺は家から出ない事にした……のに。

 

 

 

 

 

 

 

数時間後。

「あー……にんじん買わないと」

晩飯の肉じゃがを作ろうと冷蔵庫を見たらにんじんがなかった。

にんじんがない肉じゃがなんて肉じゃがじゃないだろ。てなワケで行きたくなかった外へ。

 

 

 

「くそっ……ハロウィンムード全開の街が俺に刺さる……っ」

かぼちゃのランタンやオバケの飾りなどで飾り付けられた街中。

もう雰囲気だけで殺しにかかってる。そしてリア充が。ドルオタでボッチの俺はもう死ぬっす。

イチャイチャしやがってー!

 

 

 

 

「あれ、津上君だ」

その声が聞こえた瞬間、秒で振り返る。

そこには……。

「えっへへ……。どうかな」

天使、もとい小悪魔がいました。

「尊い……(尊死)」

「ちょ……津上君!?」

 

 

 

 

 

 

「ごめん」

「びっくりした……」

あの後ぶっ倒れたらしい俺を起こした相葉ちゃん。本当にごめん。

「その格好は……」

「ああ、お仕事で着た服。貰ったんだ」

小悪魔風衣装。普段から天使の相葉ちゃんが着ることでより小悪魔感が倍増している。

「やられました」

「何に?」

 

 

 

 

 

にんじんを買って相葉ちゃんと歩く俺。

待っていたのは……。

「トリックオアトリート!!お菓子くれなきゃイタズラするぞ!なんてね!」

「志希ちゃん?ごめんね、お菓子持ってないんだ」

「志希ちゃんいたし!」

「待って……ください」

「文香ちゃんごめん!」

なんと3人のアイドルが。一ノ瀬志希ちゃん、城ヶ崎美嘉ちゃん、鷺沢文香さんだ。

相葉ちゃんにお菓子を要求する志希ちゃんと志希ちゃんを止められない美嘉ちゃん、そして2人を必死に追ってきた文香さん。

 

 

 

「夕美ちゃんもイタズラしたら?」

「あ……そういえばやってない」

俺と会う前にもイタズラしてないらしい相葉ちゃん。

「津上君……いいかな」

我々の業界ではご褒美です!

 

 

 

「じゃあ……血を吸わせて」

おおーう。予想の斜め上130度だったわ。反り返ってるじゃねえかってツッコミはなしで。

 

 

 

「やったぜ」

「ちょっ、言ったのはこっちだけども!恥ずかしいし!」

「相葉ちゃんに血を吸ってもらえるこれ以上ない嬉しさ」

「津上君落ち着いて!」

「やっば、止めないと!!」

暴走した俺は相葉ちゃん、美嘉ちゃん、志希ちゃんの3人がかりで取り押さえられた。

 

 

 

 

この後何故かスーパーに戻って志希ちゃん達にお菓子を買うはめになった。ガッツリ棒チョコとかキャンディを買うことになった。

おかげでお金はなくなったけど相葉ちゃんの小悪魔衣装を見れて良かったです(遺言)




今回登場した夕美が着てる服はモバマスの「花の小悪魔」特訓前の衣装と考えてください。
浩一でなくとも堕ちるじゃんあんなの……(成仏)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

物が多い工場の秘密基地っぽさは異常

随分久しぶりの投稿。
「湾岸ミッドナイト」からFDマスター登場!!


俺は以前知り合った内藤さんの工場に向かっていた。

最近FDのタービンの調子が悪く、内藤さんなら相談に乗ってくれるかと思ってだ。

 

 

「こんにちはー」

「お、来たか」

内藤さんが俺を出迎える。

「今日はなんだ?」

「FDのタービンの調子が悪くて……。フケが悪くてパワーが出ないんですヨ」

「……ほーん。んじゃ、試しに吹かしてくれ」

 

 

ヒュウアアアアアァァァァァァァッ

 

 

 

 

「コンプレッサーかなんかだと思うけどな……。作業してるからちょっと待ってろ」

内藤さんはFDのタービンを外し、タービンを分解し始めた。

 

 

 

その間、俺は工場の中を歩いて回る。

工場の中にあるのはパジェロやハイエースなど街中でもよく見る普通の車の他にも……

「コスモスポーツ……」

世界で初の量産型ロータリーエンジンを搭載したマツダの「コスモスポーツ」が。

コスモスポーツ以外にRX-8や初代RX-7(SA22C)など歴代のロータリーマシンが置かれていた。

 

 

 

 

「内藤さんの……」

工場の奥には内藤さんの赤いFC3Sが。歴戦のマシンである事は見るだけでわかる。そういう修羅場をくぐり抜けてきたオーラが出ている。

 

 

 

「?なんだこれ」

FCの隣にひとつだけ置かれているダンボール箱。中身は結構大きいらしく、ダンボール箱のサイズはでかい。

俺はフタが開いてるダンボール箱の中身を見てみる。

「ミッションか?」

箱の中にはトランスミッションが。FCのパーツだろうか。

 

 

 

「それはな、俺の残した情熱だ」

いきなり声をかけられ、振り向くと内藤さんが立っていた。手袋をつけた右手にはFDのタービンが。作業が終わったらしい。

「情熱……?どういう事ですか」

「このFCはな、現役じゃねえんだ」

「そんな、あれだけの走りができるのに?」

「ああ。もう過去に取り残されてるんだよ」

内藤さんが言う事に衝撃を受ける。

 

 

「このシーケンシャルミッションは俺の狙っていたヤツに迫るための秘密兵器だったんだ。でも、ミッション(コイツ)が手元に来た時にはヤツは首都高から姿を消した……」

内藤さんは過去を振り返るように語る。

 

 

 

 

 

「それよか、やっぱりコンプレッサーがダメになってた。圧縮空気が漏れていた」

「コンプレッサー周りはリビルト品に交換した。これで大丈夫だろう」

内藤さんがFDにタービンを付ける。

 

 

 

 

「んじゃ、やります」

シートに座り、エンジンを始動させる。

エンジンが元気よくかかり、何度かアクセルを軽く煽ってみてもエンジンは高回転域までスムーズに回る。

ピラー周りに設置されたブーストメーターの針は正圧を指し、快調である事を示した。

 

 

 

「ありがとうございました」

「いつでも大丈夫だ。困ったら来い」

俺は元の調子を取り戻したFDに乗って工場を後にした。

 

 


 

 

「よかったんですか?チューンの勧めとかしなくて」

「いいんだ。アイツは自分なりに車を作っていくさ。俺が口出ししてもしょうがねえだろ」

「ふふっ、健さんらしくないな」

事務室奥から出てきた美世。

美世は普段こんな事を言わない内藤に違和感を感じた。

 

 

「浩一はな、目指してるんだよ。目標をよ」

「お前だって迅帝狙ってるだろうが。それと同じな」

「浩一は……トレースが上手い。ちょっと前にアイツと走ったが俺の走り方を上手く自分の物にしていたんだ」

「健さんの走りをね……」

「でも浩一は自分の走り方を知らないんだよ。追うのが上手いのは認める。でも誰かがいてこそその方法が通じるだけで自分一人の走り方は行方不明なんだよ」

浩一の走りは夢斗など自分の前を走る人の走り方を模した物。だから一人だけだと速くない。

 

 

 

「久しぶりに行っちゃう?」

「だな……」

「新しいあたしのRに置いてかれないように頑張ってくださいね」

「ぬかせ、10年早い」

 

 

 


 

 

 

 

久しぶりに首都高へ上がった俺。

横浜方面へ向かっていると青いFD3Sが見えた。

「すごいな……確実に速いって見ただけでわかる」

 

 

 

 

 

 

「ん、FDか。首都高慣れしてるみたいだナ……」

「久しぶりに本気で走ってみるか」

 

 

 

 

 

「なんだ!?3速から置いていかれる!」

ベイブリッジ上でバトルを始めた2台のFD。しかし、浩一のFDは前のFDに離されていく。特に4速以降でパワー負けが顕著。

「なんで……あれだけのパワーが出てるんだ!?」

 

 

 

 

 

「なら、こっちだって!!」

俺のFDの秘密兵器。これは夢斗も知らない。

ミサイルスイッチをオン。するとECUに予め入れていた特別な設定に切り替わった。

点火系や燃調などをギリギリまで追い込んでの出力アップだ。

これにブースト1.8kg掛けて570馬力を絞り出すのだ。

しかし、かなりの負担がかかってしまうため使用可能な時間はわずか10秒。

実戦では恐ろしく不安だ。しかも使ったことが無い。

でもあのFDに対抗するにはこれしかない。

 

 

 

 

「行くぜっ!!」

アクセルオン。すると先程までとは全く違う加速が俺をシートに押し付ける。

一気に250kmオーバー。だが加速は終わらない。

 

 

 

 

「追い上げてきた!?……無理してまで勝ちたいか!?」

後ろのFDの異常な追い上げ方。無理してるとわかる。

 

 

 

 

 

 

「はぁーっ、はーっ」

今ので4秒。残り時間(安全圏)は約6秒。

前のFDに近づいた。後はスリップストリームで迫れば……!!

 

 

 

 

 

生麦付近。並び合うFD。

「ここでーーーーーっ」

残った6秒をここで使う。

「俺が前だーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

だが。

「油圧が……!?」

無理な加速により、油圧が低下していきパワーダウン。

やがてノッキングが起きたため俺はスローダウン。

「くっそぉ……」

 

 

 

 

パーキングエリアで前のFDと合流。

乗っていたのは恐らく内藤さんより少し年上の男性。

「すごいな、君」

「……全然ダメですよ、俺」

「そうじゃない。君は本気の走りができている。今首都高でバトルするようなヤツは少ないだろう」

「だからこそ君のその姿勢をすごいと思ったんだ」

「あなたは一体?」

「俺は荻島信二。GTカーズって聞いた事ないかい?」

「読んだことはありますけど」

「俺はそこの編集者だった。今は『カー&ロード』にいるが」

「それならよく読みますよ」

「そうか、嬉しいナ」

 

 

 

 

「君は運転ができる。でももっと車の知識が欲しいと思わないかい?」

「欲しいです。俺はシロウトですから」

「カー&ロードでバイトしてみないか?」

「えっ」

「俺が教える。君が目で見た物、感じた物全てを自分の知識に変えるんだ」

「遠慮はいらないさ。控え目にしていても意味がナイ。看板を背負ってるからな……例え控え目にしていてもみんなが個人を見るからだ」

「個人の声は『看板』の声になるんだ。みんなを見て、動かせ」

 

 

 

悩んだ末、俺は決めた。

「やってみたいです。たくさんの事を知るために俺は東京に来たから」

地元群馬を出てまで東京(ここ)に来た理由。

それは車が多く走る都会での車の姿を知るためだ。

家族が乗るようなファミリーカーはもちろん、物流を支えるトラックだとか様々な車の姿を。

地元にも大学がある。自動車学校が。

でも俺は日本の中心で人が集まるところである東京で知りたいと思ったからだ。

 

 

 

 

「よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ」

こうして俺はバイトをする事になった。

ちゃんと時給も出るし、働くって事で社会人としての経験も得られる。

 

 

 

 

翌日俺は夢斗にこの事を話した。

夢斗は「面白そう」と言ってた。アイツ本当に子供っぽいとこあるな。アイツ働く気ないだろ。

でも夢斗ならどうにでもなりそうだ。アイツは……自分の特技で輝くだろうから。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新人挨拶ほど緊張する事はない

悪魔のZと関わった者が出会う。
ロータリーエンジンに魅せられた者達の走りは浩一にどんな物を残すのか?


俺は荻島さんに案内されてカー&ロード編集部に来ていた。

中々立派なオフィス。緊張しながら俺は進んでいく。

 

 

 

 

社長室に来た俺と荻島さん。

「ここが社長室だ。しっかり挨拶してこい」

俺は挨拶した。社長はとても人が良さそうだった。

挨拶が終わるまで俺はガチガチに緊張してた。職場体験とかでそこで働く人達に挨拶するのって妙に緊張するよね。

面識がない人に挨拶。これだけでかなり緊張する。「なんだコイツ」みたいな視線を送られるって考えるのが怖いじゃん?

 

 

 

 

 

編集室に向かうとデスクが。

ちゃんと「津上浩一」ってネームプレートが置かれてる。

バイトとはいえここで働くっていう実感が湧いてきた。

「お前の初仕事は俺のアシスタントだ。自動車評論家の城島さんのインタビューをするから手伝ってくれ」

「はい」

いきなり責任重大です。

 

 

 

 

 

インタビュー場所へ荻島さんのFDで向かう。

「このFDってRGOでチューンしてもらったんですか?」

「ああ。今もたまに寄っていくよ」

このFDを初めて見た時ウィンドウに「RGO」とあった事にびっくりした。俺はずっとその事を聞こうと思っていた。

 

 

 

 

やがてインタビュー場所に到着。

そこには俺が知る人が仕上げたFCに似た白いFCが止まっていた。

「……なるほど。アレか」

「知ってるんですか?」

「面識はないが……彼の名前は知ってる。過去に筑波サーキットのアタックをやっていたと聞いている」

「その際に使われていたクルマがあのFC3Sだそうだ」

「すごいな……」

 

 

 

 

 

 

 

談話室で待っていると人が入ってきた。

俺はこの人が今日インタビューする人だと直感でわかった。夢斗のような「本物」というオーラが出ていたからだ。

 

 

 

「はじめまして、城島洸一です」

「城島洸一さんですね。俺は荻島信二です」

「荻島信二……。ああ、あなたが『FDマスター』と呼ばれた……」

「知っているのは嬉しい(笑)」

 

 

 

 

「荻島さん、彼は?」

「ホラ、自己紹介」

荻島さんに言われて俺は精一杯の自己紹介。

「俺は津上浩一っていいます!バイトですけど『カー&ロード』で働いてます!」

「彼もロータリーを知ろうと努力している。ロータリーに情熱を注いだ城島サンならわかるんじゃないですか?」

「だな……。俺が最も走りにのめり込んでいた時……今から20年以上も前の時点で周りに置いていかれていたFCを速く走らせるために様々な事をやった」

「たくさんの人と出会い、FCも、そして俺自身も変わって……目指した。悪魔をさ」

荻島さんは城島さんが言ってる言葉の意味がわかってるように続けた。

「『悪魔』……Zは今でも走ってるそうですヨ」

「アキオは……元気にやってるだろうか」

「さぁ……そこまでは俺もわかりません」

 

 

 

 

 

 

 

インタビュー開始。

城島さんが言ったことを荻島さんがメモ帳に記していく。

俺はボイスレコーダーで城島さんの発言を録音。

もし荻島さんがメモ内容を原稿にする時に間違いがないように正しい発言を残すためだ。

 

 

 

 

城島さんが話す事をメモしていく荻島さん。

「俺の持論では大体20年サイクルでクルマはガラリと変わると思うんだ」

「スカイラインGT-R……国内だけでなく世界にもその名を轟かせたクルマ。スカイラインの名を捨てて今のGT-Rになる」

「現在のGT-RはR35型。スカイライン時代のようにボディ流用は行わず、GT-R専用のボディを持つ」

「スカイラインGT-Rといえば言わずと知れたR32だろう。R34やR33もイイけど」

「RB系GT-Rの始まりであるBNR32が生まれたのは1989年。今年で23年か」

「R35は……何年だっけ?」

「確か……2007年です」

俺が城島さんに伝える。

「18年か。とまあ大きな変化があるのはほぼ20年おきだ」

城島さんのインタビューは続いた。

 

 

 

 

 

 

40分程でインタビューは終了。

城島さんと雑談する俺達。城島さんと荻島さんは思い出話をしている。

思い出話の中には悪魔のZの事が必ず入っていた。

RGOの協力もあって完成したという荻島さんのFD、FCのエンジンを調整したリカコさんの事を話す城島さん。

城島さん達は悪魔のZという共通点で繋がってるようだ。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

編集部に戻ろうとした俺達に城島さんが声をかけた。

「話を聞いていたら久しぶりに走りたくなった。そちらのFDを追えるかはわからないが……」

「『FDマスター』の腕を見てみたくてね」

荻島さんは返す。もちろんOKだと。

「ZEROのFCをこの目で見る事が出来たことが嬉しくて。ぜひ走りたい」

 

 

 

 

 

 

 

C1エリア外回り。

荻島さん曰くMAX400馬力のFDがFCを追う。全盛期では500馬力を叩き出したという城島さんのFC。今は少しだけパワーが抑えられてると言うが荻島さんのFDといい勝負をしている。

そしてFCを操る城島さんのテクニック。エンジンのパワーに負けてシャーシが浮き足立っているFCでコーナーを攻めていく。

 

 

 

 

軽くFDが流れる。コーナーの立ち上がりは互角と言ったところか。

 

 

 

 

「シャカリキに攻めてる訳では無い……。最短ラインを確実になぞる走りなんだ」

「ラインを……」

「しっかし羨ましいぜ。メカに強いし走りもウマくてさ。俺はメカは頼りきりだったからさ。大田サンがいなきゃ俺は全然だ(笑)」

「大田さんはいつからロータリーをヤるようになったんですか?」

「わからない。けど大田サンはごく初期の走り屋だ」

「え、何乗ってたんですか」

「確かサバンナだと聞いたけど……。真っ赤だったって聞いた」

「その頃から……」

 

 

 


 

 

 

「さすがFDマスター……一筋縄ではいかないか」

「また、会えないだろうか」

城島は蒼いZを駆った男を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下道に降りた。

俺達は早く編集部に戻らないといけない。時間があっという間に過ぎていたのだ。

「やべー……。忘れてた」

「これアウトな感じしますけど」

「だな……。俺が悪かった」

 

 


 

 

「首都高……走りで繋がる世界」

「彼もまた……悪魔のZに関わるのか。直接でなくとも周りに関わっている人物がいるかもしれない」

城島は呟いた。

 

 


 

 

 

 

 

帰ってきた俺達を待っていたのは編集長のお説教だった。般若の面を被ってそうなキレ顔だったよ。そんな事口が裂けても言えんわ。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

デートは慣れてしまうとなんか雑になるよね

思いつきで書いた割に全然短い……。
回数を重ねると物事が雑になる謎現象のお話です。


バイトが続いていた俺はへとへとで家に帰ってきた。

パソコンでの文字打ちがめっちゃ疲れる。手を動かすから目は開くけど文字をずーっと見ていると目が痛くなる。コマーシャルでやっているような疲れ目ってこういうことかって身をもって知った。いや知りたくなかったけど。

 

 

 

次のバイトは来週の火曜。

一応俺が学生というのも考慮してシフトを組んでくれたらしく、学業に支障が出ない範囲でやってくれた。そのためバイト自体はそこまできっちり入ってるわけではない。

しかし授業の直後に編集部へ直行してバイトに行っているわけで。部活をどうしても休まないといけない日もある。

バイトを始めて少し経ったがなかなかキツい。そんな中での休日がすごいありがたい。

 

 

 

明日は学校もない土曜日だ。

高校生の頃までは土日の休みは当たり前みたいに思っていた俺は19歳になって土日休みのありがたさを思い知った。明日どうしようかなー。

やがて考えるのもダルくなり俺は寝た。

 

 

 

 

翌朝、俺はパンを食べながらコンビニへ向かおうと歩いていた。

すると……

「津上君?」

「相葉ちゃん!」

大天使相葉ちゃんがいるじゃないか(歓喜)

 

 

 

 

 

会ったあとはもういつものようになっている相葉ちゃんと歩く時間。

もうこれデートで良くね?と最近思ってる。

でもな!デートじゃない!!(迫真)

 

 

 

デートってさ、付き合ってる子とキャッキャウフフしながら色んなとこ行くと思うんだ。服屋だったり遊園地だったり。

でも今の俺達は違う。俺は!相葉ちゃんと付き合ってる訳じゃない(真顔)

だからこれはデートじゃないんです。

 

 


 

 

「津上君はバイトしてるんだっけ?」

「うん、最近始めたんだ」

「どんなことやってるの?」

「雑誌関係。車関係の雑誌作りのお手伝い」

「すごいね。そうだ、津上君は将来どうするの?」

相葉ちゃんの質問が俺に突き刺さった。

 

 

 

 

 

俺は将来どうするかをまだ決められてない。でも車関係で働くっては曲げない。

今カー&ロードの編集に関わってるけどさ。あくまでバイト。ちゃんと正社員になって働くかと聞かれたら答えられない。

 

 

 

 

「まだ決まってないや」

「そっか。ってあ!」

「遅刻しちゃうかも……。ごめんね!!」

相葉ちゃんは走っていった。346プロへの出勤途中だったのに俺と話してこんな事に……っ!!

相葉ちゃんごめん。後でスイーツオゴるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方に俺は再び相葉ちゃんに会ってスイーツを奢った。

「なんで?」と聞かれたが「気分だよ」と俺は答えた。スイーツを美味しそうに食べていた相葉ちゃんはそれを気にする様子はなかった。

俺の方は申し訳なさでいっぱいだった。デートで気まずい雰囲気なった時のカップルもこんななんだろうかと苦いコーヒーを飲みながら思っていた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

イライラの原因はいつも近くにある

間が空いてしまって申し訳ないです……。
今回も本編に繋がる内容です。



「おーい、浩一。この文章ミスってるぞ」

「あ、すみません!」

バイト中、荻島さんに注意された俺。先程からミスを連発しているのだ。実は集中力が続かない。

何故かって?よし、じゃあ俺の苦労を聞いてくれ。

 

 

 


 

 

 

今日の午前中の出来事。

課題の提出が遅れた俺は業間休みを使って課題をやっていた。そこに相葉ちゃんがやってきて課題を教えてもらってた。それはいい。むしろ最高だ。

でも、そのわずか30秒後に俺の楽園はあっけなく粉砕された。

「こーいちー、何やってんだ?」

「夢斗?」

 

 

 

クッソ呑気に俺に声をかけたのが夢斗。

以前にも言ったかもしれないがコイツは天才。あらゆる事を簡単にできてしまう。そして人とぶつかるやつだ。夢斗の考え方と周囲の考え方の「ズレ」があってトラブルが起こるのだ。

それを身をもって知っている俺は最近夢斗の考え方がある程度把握できるようになった。

 

 

 

「これはこうやるんだよ」

「わりーな、夢斗」

「お前バイトしてるって言ったけどどうなの?めんどい?」

「いや」

「またまた〜。正直に言っていいんだぜ」

「マジだわ」

「夢斗君、津上君に課題やらせてあげて」

「夕美は今日仕事あんの?」

「今日はオフ。部屋に飾る花を買いたくて」

「ほーん。俺も買いたくてな」

「……そっか」

相葉ちゃんが何かを察したようだったが俺にはわからなかった。しかし、その際に夢斗が見せた悲しげな表情が今も残っている。

 

 

 

 

 

昼休み、部活動の予定変更が起きて部活が無くなった。

俺はバイトに行くためあまり関係ないが夢斗は相葉ちゃんと花を買いに行く。……夢斗は部活ある日によく部活を無断欠席するのは日常茶飯事なので気にしないが。

なぜ夢斗が花を買うのかわかんねーけど。相葉ちゃんが夢斗に振り回されるのが見える……。逃げてー、超逃げてー!!って大声で言いたい。

 

 

 

 


 

 

 

 

とまあ、現在に戻るわけで。

今頃夢斗に相葉ちゃんが振り回されてると思うと胃が痛い。

胃痛のおかげで集中力が発揮出来ず、ミスを連発してる。くっそぉ。

 

 

 

 

 

夕方5時半にバイトが終わり、街中を歩いてた俺は夢斗と相葉ちゃんに会った。

相葉ちゃんは綺麗なライラックの花を持っていた。一方の夢斗は……。

「夢斗、それは何の花だ?」

「えーと、スプレーマムっていう菊だそうだ」

「夕美に教えてもらったんだわ」

相葉ちゃんは夢斗に何を教えたんだろう。わかんねー……。

 

 

この後俺達はバラバラに帰った。

この2日後、スプレーマムを持った夢斗が東京を出ていったという目撃情報があったが一体なんだ?




今回夢斗が初登場。
しかし主役ではない……けどここでの主役の浩一が頭を悩ますのはいつも通り。頑張れ浩一。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出会いは突然って言うけど実際そうだな

いきなり最終話。
唐突すぎだと自分でも思ってますが。







皆さんに質問したい。

「出会い」ってなんだと思う?恋人だとか運命の人だとか「出会い」っていっても色んな形がある。

俺の「出会い」はまず相葉ちゃんとの出会い。ライブ会場での相葉ちゃんを見て俺は彼女のファンになった。それがまず一つ。

 

 

 

「出会い」。それは時に人生を変える事にもなる。ってラノベの導入でありそう。でも俺はそんな「出会い」をしてしまった!

 

 

 

 

 


 

 

 

 

夢斗が東京を出た日の少し後。

相葉ちゃんから夢斗は栃木まで行ったと聞かされた。んで夢斗本人が首都高の伝説的走り屋「迅帝」とバトルしたと言ってきた。

俺はそれ聞いて腰を抜かすかと思った。なんでそんなすんげー人とバトルしてんだコイツ。

 

 

 

 

 

「Zってすげーよな。やっぱバケモンの一言よ」

夢斗がそんな事を呟く。バトルにはなんとあの「悪魔のZ」もいたらしく、しかも元々の乗り手もいたらしい。やべぇよ……やべぇよ……。

 

 

 

「上手かったのか?」

俺は聞く。荻島さんや城島さんが語っていた悪魔のZの乗り手の事を。

「ああ。追いつけなかったぜ」

夢斗ですら追いつけないはまず聞くことがない。本当に速いんだなとわかる。

 

 

 

 

 

 

そんな事を話した後に俺はFDで首都高へ。

会えるとは思ってない。けどなんか気になってしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜ……走る」

ふとそんな事を呟く俺。なんで走っているのかと自問自答する。

俺は憧れの人のように走りたくてFDを買った。んでその人に出会い……。あれ?

 

 

 

「俺は周りの流れに飲まれてるだけだ……」

 

 

 

 

憧れの人や夢斗、荻島さん達との出会いには必ずと言っていいほど「走り」がある。言い換えれば「走り」がなければ俺は誰とも出会いがない。

 

 

 

 

 

そして俺は会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君のFDいい車じゃないか!」

休憩にと寄った芝浦PAで声をかけられる。たぶん内藤さん達とあまり変わらないくらいの人に。

 

 

 

 

「はぁ……ありがとうございます」

「君のFDを見ると……なんか思い出すんだ。首都高SPL(スペシャル)のFDを」

「首都高SPL……?」

「ああ。RGOで制作された究極の首都高マシン」

「ん?」

 

 

 

 

 

俺はそのFDを知っている。

大田さんの元で作られたFD。そしてその乗り手は荻島さん。大田さん、荻島さんはある車を見てきた。そして城島さんが語っていた存在。

 

 

 

 

「荻島さんのFD……」

「知っているのかい?」

「ええ。……あなたはまさか」

「……知っているみたいだな。俺は朝倉アキオだ」

「あなたが……」

 

 

 

 

 

朝倉アキオ。彼は「悪魔のZ」を駆り、首都高にその名を轟かせた首都高の生きる伝説。

悪魔のZを降りても走りを辞めず、ある時突然ミッドナイトブルーのZ34で現れてはあっという間に相手を撃墜(オト)すという。

 

 

 

夢斗が言っていた「悪魔のZ」の本来の乗り手。なぜ彼が俺の元に。

 

 

 

「聞いたんだ。車を知りたいっていう人がいると。……荻島サンから君の事を」

「荻島さんが……」

荻島さんや城島さんが彼の事を話している時俺は熱心に聞いていた。たぶんそんな俺を見て荻島さんが連絡を取ったのだろう。

「荻島さんのFDは速かっただろう?」

「ええ。追いつけなかったですよ」

嘘はない。彼は「本物」のオーラを纏う。その速さが意味するオーラ。

 

 

 

 

「このZはあいつを忘れないようにって乗っているんだ」

ミッドナイトブルーのZ34。あのS30と同じ色をしたZ34からもわかる物。

 

 

 

「お願いです、俺のFDと一緒に走ってください!」

 

 

 

 

 

こうやって俺自身から走る意志を見せるのは初めてだった。

 

 

 

 


 

 

 

芝浦PAから湾岸へ。必死の思いでZの後ろに近づく。Zはまだ流してるとわかる。

離されないように維持するのがやっと。

 

 

 

 

 

「悪くない。けど……一番わかっているのは君だ」

アキオは必死にZを追うFDが苦しい状況に立たされている事を理解していた。

 

 

 

 

 

 

「くっそぉ……」

Zが離れる。俺は食らいつこうと頭をフル回転させてZに向かう。

しかし相手は伝説の男。俺の考えてる事全てが見透かされてるだろう。

やるしかない。俺はFDを信じる。

 

 

 

 

「頼むぜFD……お前が頼りだっ」

スクランブルブースト。荻島さんと走った後に調整し直した新セッティングのECUがFDにパワーを発揮させる。

今度は約32秒。それがスクランブルブーストの使用可能時間。

以前の3倍以上に使用可能時間が伸び、超高速域を多用する首都高にドンピシャだ。

 

 

 

 

FDはグイグイと前に出る。パワーを感じる加速。アドレナリンが脳から溢れ出るのがわかる。

 

 

 

 

 

「……スクランブルブーストか」

FDの変化に気づいたアキオ。パワーはFD(あちら)の方が上。

大体420馬力のこのZとFDの差は確実に縮んでいる。

 

 

 

 

 

(コーナリングスピードはこっちが速いッ)

浩一のFDはアキオのZよりも速く空港前のコーナーを駆け抜けた。

アキオのZは軽量化がほとんどされておらず、車重は1500kg強。対し浩一のFDは1200kgに迫る軽さ。パワーと車重に軽さを活かして浩一はアキオに真っ向から立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「あの車……」

アキオはなにかに気づく。その車は……。

 

 

 

 

 

「夢斗じゃねえか……」

 

 

 

浩一がずっと見続けてきた夢斗の銀色のエボⅩだった。

 

 

 

 

 

 

 

「面白そーなコトやってるじゃんか。なあ夕美?」

「えっと……津上君すごい速い。あの蒼い車を追い越しそう」

「俺も混ざる」

夢斗がバトルに乱入する……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢斗のヤツマジで何するかわかんねー」

何を考えてるかわからない。それが一番怖い所。夢斗と共に過ごしてそれなりになるが未だにあいつの行動は予測できない。

でも今だけはわかる。「俺も混ざる」。絶対そうだろう。

だって走ってるのは首都高の伝説と呼ばれる男。そんな人と走れる事なんてめったにない。夢斗は走ったらしいけど。

 

 

 

 

 

俺は地元群馬を出てきて車の姿を知るために東京に来た。けど俺は東京で数々の出会いをした。

夢斗から始まり相葉ちゃん、小日向さん、荻島さん、そして……アキオさん。

普通に生きていたらこんな出会いなんかできっこない。

だから俺はみんなとの出会いをよかったと思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を見て何を見つけれたんだい?」

アキオさんと走り終わった後。結果は勝った。でも勝負として俺はアキオさんに勝ったとは思わない。もしアキオさんが悪魔のZに乗ってたらそもそも勝負にもなってないはずだ。

「なんだろう……言葉にはならないけど」

「今の俺では言葉に出来ません。けどいつかそれを言葉にできると信じています」

「そうか……君は俺を知ってると言ったな。荻島サンとか大田サンと面識があるみたいだが」

「荻島さんは俺の上司です(笑)」

「あの人今もライターやってるんだっけな……。あの人も……いや大勢の人がチューンドロータリーで俺達に挑んできた」

「そして君も俺と走った。君とFDならきっと『見つけられる』」

 

 

 

 

「そうだ。君はあの時いただろ」

アキオさんが夢斗に聞く。

「あの日に君は何を起こした?」

 

 

 

 

「んー……特に。でもあの日だから起きた奇跡はある」

「俺一人じゃ、あのインプに勝てなかったんで」

夢斗の言った意味は俺にはわからない。でも夢斗の言ってる事に嘘はない事を知っている俺は夢斗の言葉を信じる。

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。またいつか会おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ夢斗。『誰』なんだ?」

「……俺を応援してくれた。それだけだ」

「そうか。つーか相葉ちゃん連れて何してんだコラ」

「夢斗君に付き合わされて……」

「おい夢斗」

「夕美が泣いてねえからセーフ」

「セーフじゃないし!泣いた事ないし!!」

3人でしょーもない事で笑う。青春……ってこうだよね?

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

数日後。

内藤さんに呼び出されて内藤さんの工場へ向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……あのFDは……」

俺が知る人の黄色いFDが見えた。その隣に見える銀色のエボⅩ。

「あり?夢斗?」

とりあえずFDを降りる事にした。夢斗ここに来る用事なくね?

 

 

 

 

 

「こんちわーっす」

「お、来たか……」

内藤さんが俺を迎える。工場の奥に見たことがある白いFCがリフトに掛けられていた。その近くには以前見たシーケンシャルミッションが。

「やあ、こんにちは。浩一君」

「あれ、小日向さん?」

彼が俺の憧れの人である小日向蓮さん。彼は「首都高最速」の称号を持つ。んでアイドル達のプロデューサーしながらプロレーサーも兼業している。俺は小日向さんに憧れてFDを買った。色も同じだったからニセモノ疑惑を作る原因になったけどな。

 

 

 

「おせーぞ、浩一」

「お前はなんでここにいるんだよ」

「んー?小日向さんが来ないかって」

「小日向さん、夢斗を呼んだ理由は?」

「ちょっとね。ここに来る人が夢斗君に会いたいらしくて」

「岩さんっしょ?」

「うん。岩崎さんが内藤さんに会うついでにと」

「誰?」

「岩崎基矢さん。スーパーGTに出てる」

「ちょっ!?」

小日向さんの口から出た言葉に驚きを隠せない。無理だ。

夢斗と争った「迅帝」その人がここに……!?

 

 

 

 

「津上君も来たんだ」

「あれ、相葉ちゃん?……小日向さんについてきたの?」

「うん」

相葉ちゃんも……。これから何が起きようとしてるんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「プロデューサー!いるのかー!?」

「おっ、光じゃん。どした?」

「プロデューサーの車があって。おおっ!!秘密基地みたいだ!」

南条光ちゃんが工場の入口から顔を覗かせていた。あっ(察し)

 

 

 

 

 

「光ちゃんじゃねえか……」

内藤さんがカチコチになっている。オタク特有のテンパリ方だ。

光ちゃん親衛隊のリーダーである内藤さん。本人目の前にいるんだもの……!

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやしている内にもう1台車が。

蒼い鷹目インプ。降りてきた人こそ岩崎基矢さんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「熱いドルオタだな(笑)」

「おう。……いやー、今日ほど人生で最高の日はないぜ」

内藤さんと話す岩崎さん。素顔で会うのは久しぶりだとか。

話が弾んでる様子を見て夢斗が一言。

「おっさんドルオタだったんだな。つか、その推しが目の前とかまずねーよ」

「おっ、待てい。それ言ったら俺らは教室に行けば相葉ちゃんに会えるんだぞ」

「言われてみればそうだな……」

「つーか夢斗はなんで光ちゃんを知ってるんだって思ってたが……」

「ひょんな事から知り合ったぜ」

 

 

 

 

 

 

(夢斗君が特撮ごっこやっていたら光ちゃんと知り合ったんだなんて言えない……)

喉元まで上がってきていた言葉を飲み込む蓮だった……。

 

 

 

 

 

 

 

んで。

その後に夢斗は岩崎さんと一対一で話していた。何話してるかわからなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

工場を出る前に俺は小日向さんに呼び止められる。

「そうだ、浩一君。よかったらだけどFCに乗ってみてくれないかい?」

「えっ!?いやいやだめですよ!!」

「浩一君はアキオさんと走ったんだって?夢斗君が言ってた」

「そうっすけど……」

「『見つけて』みて。このFCで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後7時。

小日向さんが助手席(ナビシート)に座るFCの車内。

小日向さんが様々な所からの協力を受けて完成させた究極のFC3SでC1外回りを走っている。

 

 

 

 

「どう?乗りやすい?」

「いやー、まだまだ40パーってトコですよ。踏み切れないってカンジ」

「大丈夫。君のFDと同じと思えば問題ないよ」

「……んじゃ、行きます」

 

 

 

 

 

 

 

FC3Sは俺の意思をイメージ通りに実現する。なぜこんなにも乗り手との一体感を出せるのか。今まで車を運転してきてこんな事を感じた事はなかった。乗りこなせるようになった頃にはFCの運転が「楽しい」と思えるようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

FCを運転した後。

「どうだった?『見つけた』かい?」

「たぶん。すごいヒントになったと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「車の形……」

無意識に出ていた言葉。

俺は車がどんな姿をしているかを知るためにここまで来た。

その答えを少しだけ見つけられた気がする。

 

 

 

「Be a driver」。日本語で「運転手になる」という意味だそうだ。

 

クルマは単なる道具じゃない。

ドライバーの思いを汲み取ったかのように、いつもしっかりと応える。

ドライバーが車と心を通わすことができれば、

いつまでも、ともに走っていたい存在になれる。

 

 

車の運転を楽しいって思えるのが運転する人にとって一番求める物だと思う。

 

 

 

 

時代の流れと共に客のニーズは変わった。今はミニバンとか家族の事を考えた車が多くなり、昔のようにスポーツカーは少なくなってしまった。

 

 

 

 

でも……必ずスポーツカーを求める人がいる。

走りを楽しむ。それがスポーツカーが求められる条件。

 

 

 

 

俺は「走り」に求める物を『見つけられた』。でもそれを伝えていかないと走りの楽しさは理解されない。

俺は走りの楽しさを知ってもらいたい。だから走り続けていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

「荻島さん、俺を正社員にしてくれますか?」

 

 

 

 

 

 

 

車を深く知って、車の楽しさを伝える。城島さんのように。そして走る。荻島さんみたいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「流れ星見っけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

人生が今、大きく動く。車に魅せられた青年は走り出す。

彼の生き方は加速を始めた……。

 




蓮が内藤の工場に来た理由は「銀色の革命者」本編で載せられたFCのシーケンシャルミッションを降ろすためです。夢斗達が岩崎達と戦った後にミッションを内藤に返却しました。






ラストはマツダのキャッチコピーに絡めています。
マツダの走りの楽しさを伝える姿勢が素晴らしいと思いました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。