ヤンデレキノ達との旅 (黒猫黒)
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番外編
全員子供化で平和な世界


パラレルワールド
全員子供化
全員同じ年の設定

師匠ちゃん=私
キノちゃん=僕
ティーちゃん=わたし
レオンくん=俺
シズちゃん=私

今回はあえて平仮名多め


公園

 

ある公園の滑り台の上に、一人の少女が仁王立ちしていた

 

黒髪の腰まである綺麗なロングヘアで、キリッとしたクールな美少女

 

「私はこの公園を手にいれます」

 

「何言ってるの?師匠ちゃん」

 

話しかけたのは、白髪のショートヘアの少しぼんやりとした男の子

 

不思議そうに下から話しかける男の子に気が付いた師匠ちゃんは、勢い良く滑り降りて来た。

 

「レオンくん良い所に来ました、ここの公園を私の国にします、私と貴方の国です」

 

「師匠ちゃんと俺の国?」

 

「そうです二人は結婚して、国王と妻になるのです」

 

「俺が国王になるの?」

 

レオンくんは不思議そうに首を傾げる

師匠ちゃんは、さも当然の事かの様に返事をする

 

「レオンくんが妻でも良いですが、男にはぷらいどがあると聞きましたですから貴方が国王です」

 

「ぷらいど?」

 

レオンくんは混乱しだしたが、師匠ちゃんはお構い無しに話を続けている

 

「結婚したら一緒に暮らすんですよ」

 

「俺と師匠ちゃんが、結婚するの?」

 

「はい結婚します」

 

そうか俺は師匠ちゃんと結婚するのか、何故かは分からないけどそうだったのか。

混乱している内に納得させられたレオンくんに、救世主が現れた。

 

「それは違いますよ」

 

颯爽と二人の前に現れたのは、キノちゃんである

 

緑がかった黒髪のショートヘア、中性的な見た目の美少女

 

何故か自信満々に、レオンくんの腕を取り話し出す

 

「レオンくんは僕の旦那様になるので、師匠ちゃんとは結婚しません」

 

レオンくんは初耳で驚く、師匠ちゃんは冷静に反論する

 

「いいえ違いますレオンくんは私と、国を築くのです」

 

二人とも何故そんなに自信があるのか、レオンくんはとっても不思議だった

 

「俺と結婚するって、何ではっきり言えるの?」

 

「私が決めましたから」

 

「僕との運命ですから」

 

二人が滅茶苦茶な事は分かった、キノちゃんが文句を言い、師匠ちゃんが冷静に反論するそれをずっと続けている。

どうしようと考えていると服が引っ張られた

 

「わたしといこう?」

 

「えっ?ティーちゃん?」

 

服を引っ張っていたのはティーちゃんだった

 

紫がかった灰色の髪のショートヘア、眠そうな目の少し幼く見える美少女

 

「わたしと、としょかんにいこう」

 

「え?でもあの二人は?」

 

「しらない」

 

そう言うと俺の手を引っ張り歩き始めた

あの二人は喧嘩に夢中で、俺が居ない事に何時気が付くのだろう?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

図書館

 

図書館にある絵本の読み聞かせコーナーに来た

ここはティーちゃんが好きな場所だ

 

「あたらしいほん」

 

「あっ新しい本が入ったんだ」

 

ティーちゃんが見た事が無い本を持ってきた

 

「いっしょによも?」

 

「うん!楽しみだね」

 

新しい本が入るとティーちゃんは何時も一番に気が付く、本棚の本の並びを全部暗記しているらしい

 

「これはどんな本かな?」

 

「ん」

 

本の裏のあらすじを見せてくれた、何々?

ある古い船に閉じ込められたお姫様を、他の国の王子様が助け出す話?

 

「冒険の話?」

 

「らぶろまんす」

 

ええ?あらすじからは想像がつかない、早速二人で読み始める

 

ある所に古い大きな船があり、お姫様が閉じ込められていた。

その噂を聞き付けた違う国の王子様が姫を助け出し、駆け落ちの末に結ばれるラブストーリー

 

「へぇ凄い話だね」

 

「うん、いいはなし」

 

ティーはこの本が気に入ったのか、ぎゅっと胸に抱き締めている。

表紙の姫と王子が、俺とティーに似ている様な気がする

 

「その本を次に、読ませていただけますか?」

 

「え?」

 

振り返ると緑色のセーターを着た、ポニーテールの女の子が居た

 

「この本に興味があるの?」

 

「その本と言うよりも、表紙の男の子に何故か心が惹かれます」

 

「男の子に?」

 

「はい…おや?貴方に少し似ている様な?」

 

俺と本の表紙を見比べている

 

「私はシズと言います、良ければ名前を教えて下さい」

 

「俺はレオンで、この子はティーちゃんだよ」

 

ティーちゃんは俺の横で、シズちゃんをじっと見ている

 

「レオンくんとティーちゃんですね、よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

「…します」

 

三人でお辞儀をして挨拶する

ティーちゃんがシズちゃんに本を差し出した

 

「ありがとうございます、一緒に読みませんか?」

 

「ん」

 

「うん、もう一度読みたかったんだ」

 

一度読んだ本をもう一度読むと、新たな発見が出来て俺は好きだ

お気に入りの本は何回でも読む

 

シズちゃんの読み聞かせ方は、優しい声でとても聞きやすく面白い

特に王子様は本物みたいで格好良かった

ティーちゃんはシズちゃんが気に入ったのか、新しい本を渡している

 

「ティーちゃん、シズちゃんにばかり読ませるのは悪いよ」

 

「良いんですよ、私は読み聞かせるのも好きですから」

 

首を振って優しく否定するシズちゃんは、とっても親切な良い女の子だ

けれど僕はシズちゃんにも、楽しんでもらいたい

 

「今度は俺が読むから、交代ね」

 

「ありがとうございます、レオンくん」

 

シズちゃんも本当は、読むばかりじゃ詰まらない筈だから

 

その日は図書館の閉館時間まで、絵本を交代で読んだ

今日は新しい友達のシズちゃんが出来て、良い1日だった

明日も遊ぶ約束をしている、とっても楽しみだ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あっレオンくん!昨日は話の途中で何処に行ってしまったんですか!」

 

「師匠ちゃんはキノちゃんとずっと喧嘩してたから、図書館に行ったんだよ」

 

公園に行くと師匠ちゃんに話しかけられた、ちょっと怒り気味の師匠ちゃんは、腰に手を当て仁王立ちで待ち構えていた。

 

「私の前から、勝手に居なくならないで下さい!どれだけ不安になると、思っているのですか!」

 

師匠ちゃんは、何時も着けているネックレスを握りしめて怒っているが、その目は悲しそうに見えた

 

「ごめんなさい、次からは黙って居なくなりません」

 

「今回は許します、ですが次はありませんよ」

 

「ありがとう師匠ちゃん」

 

握手で仲直り二人でお話をしていると、キノちゃんとシズちゃんとティーちゃんが、三人で公園に来た

 

「あれ?皆知り合いだったの?」

 

「はい私が父と喧嘩した時に、キノちゃんが仲直りさせてくれました、それから家族ぐるみの付き合いです」

 

シズちゃんとキノちゃんは知り合いだった様子

 

「たまたま上手くいっただけですよ、僕はそんなに器用じゃありませんから」

 

キノちゃんは謙遜しているが、仲直りするのは良い事だ

 

「キノちゃんは偉いですね」

 

頭を撫でて褒める、良い事をしたらちゃんと褒めないといけない

キノちゃんは指輪を触りながら、もじもじし始めた

そう言えばキノちゃんもティーちゃんも、何時も指輪をしている大切な物らしい

 

「そんな、僕はレオンくんの役に立てればそれで…」

 

キノちゃんは時々訳の分からない事を言う、俺の役に立ちたいらしい

 

「わたしもなでて」

 

「ティーちゃんも?」

 

分からないがして欲しいなら、撫でる

 

「しまい、かぞくだから」

 

「そうなの?」

 

「そう」

 

ティーちゃんもよく分からない、家族とか夫婦とか妻のつとめとかをよく口にする。

女の子は男の子よりも大人って聞いたけど、そう言う事かな?

 

シズちゃんがティーの指輪をじっと見ている

シズちゃんは特にアクセサリーは着けていないみたいだけど、やっぱり女の子は欲しいのかな?

 

「シズちゃんは指輪を着けないの?」

 

「まだ貰っていませんから」

 

「まだ?誰かに貰うの?」

 

「ええ、必ず近い未来に」

 

シズちゃんはにこりと穏やかに笑っているが、目が笑っていない、そして言葉も俺に向けられている様に感じる。

指輪を渡さないといけないのかな

何だか怖いので話を変える

 

「今日は何して遊ぶの?」

 

「ほんのつづき」

 

「昨日の本の続編が、入荷するらしいですよ」

 

それなら俺も読みたい

 

「何の話ですか?」

 

「レオンくんに似た王子様さまの、ラブロマンスの絵本があるんですよ」

 

「それは本当ですか!」

 

「それは僕も読みたいですね」

 

「…もういこう」

 

ティーちゃんに手をぐいぐい引っ張られる

今日の図書館に行くメンバーは、昨日よりも多い

このメンバーで居ると何だか懐かしい気持ちになる、不思議だが嬉しい

今日も図書館に行くのが楽しみだ




へいわなせかい
ほのぼのとした日常物
おや、皆の記憶が…?


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見つめてる 学園キノ 木乃

木乃とクラスメートの主人公 玲央 れお
隣の席
学園と言えば青春?


窓から差し込む暖かな日差しと柔らかな風に眠気を誘われる午前最後の授業中

視線を感じた気がしてふと隣の席を見ると、クラスメートの木乃さんとバッチリと目が合った。

 

「…あっ」

 

「…え?」

 

僕の口から驚きの声が漏れでると同時に、木乃さんの口からも声が漏れていた

…勝手に気まずくなった僕は目を反らし黒板に視線を戻す、チラリと横目で木乃さんを見るといまだに僕を見ていた。

何か用事があるのかと考えていると授業の終了を告げるチャイムが鳴った、もうお昼かと考えている内に木乃さんの事は頭から消えてしまっていた。

 

「う~ん」

 

思い切り腕を上に伸ばす、授業で凝り固まった体からバキバキと音が鳴る。

 

今日は天気が良いので裏庭の隅でお弁当を食べよう、屋上の方が気持ち良さそうだが彼処は人が多い。

僕はゆっくりしたいので裏庭の方が好きだ、早速移動しよう昼休みは長い様で短い、ご飯の食いっぱぐれは嫌だ。

 

急ぎ足で教室を後にする、その背中を木乃さんが見詰めている事には気が付かないままで…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

裏庭の大きな木の側のベンチに座る、此処は何時ものお気に入りの場所

此処は日当たりも良く、木が強い風を防いでそよ風だけを届けてくれる、座って居るだけで落ち着く。

 

早速食べようと、膝に乗せたお弁当の包みをほどくと

 

「あれ?」

 

おかしいなお箸が無い、朝確かにお弁当と一緒に包んだ筈。

どうしようかな食べない訳には行かないし、今から学食に箸を貰いに行っても食べる時間が無くなる

いっその事もう手で食べてしまうか…?

自分の右手を見て迷っていると声を掛けられた。

 

「あの~?」

 

「え?木乃さん?」

 

後ろから声を掛けたのは木乃さんだった、木乃さんは後ろ手に何かを持っていたのかこちらに差し出してきた

 

「これ、忘れてないかな?」

 

これ、と木乃さんが差し出したのは僕の箸入れだ

今まさに探していた物を渡されて驚きだった。

 

「あっ僕のお箸!ありがとう困ってたんだ」

 

「ふふっどういたしまして」

 

返事をしながら木乃さんはベンチに腰掛けた

僕のすぐ隣肩がくっつきそうな距離に座る、近くないかな?

 

「ここ気持ち良いね、私も一緒に食べて良い?」

 

「是非どうぞ。それにしてもお箸は何処にあったの?朝お弁当と一緒に包んだのは覚えてるんだけど…」

 

「机の上に有ったよ包みから落ちたのかも」

 

「あ~…」

 

それしか考えられないお弁当を取り出した後にお弁当を机に一旦置いたんだった…何てドジなんだ、木乃さんが持ってきてくれて助かった。

あまり話した事の無い僕の為にわざわざ届けてくれるなんてとても良い人だ。

木乃さんはベンチに紙袋を置き中からパンを取り出し、膝の上に乗せ勢い良く手を合わせた。

 

「いただきます!」

 

「いただきます」

 

木乃さんに続いて僕も食べ始める、ご機嫌な木乃さんは僕に話し掛けて来た。

 

「ねえねえ!何時もお昼は教室に居ないけど、毎回此処に居るの?」

 

「うん、此処がお気に入りなんだ」

 

「そうなんだ!明日からは私も一緒に食べても良い?私も此処が気に入っちゃった」

 

「勿論」

 

「やった!」

 

ニコニコ嬉しそうにしている木乃さんに疑問を感じた、僕達こんなに仲良ったっけ?

今まではそんなに話した事も無い筈…?

考え込んでいると手元に視線を感じた

 

「どうしたの?」

 

「卵焼き綺麗だね…美味しそう」

 

丁度お箸に摘ままれていた卵焼きを見る、今日の卵焼きは焦げ目も無く綺麗な艶が出ていた。我ながら良くできている。

木乃さんは涎を垂らさんばかりに凝視していた

 

「褒めてくれてありがとう。

木乃さんにも分けたいんだけど、この摘まんでいるのが最後の一つなんだ」

 

「お願い、私のパンと卵焼き交換してくれない?」

 

「え?交換じゃなく良いよ。

そうじゃなくて、僕のお箸に摘ままれて嫌じゃないの?」

 

「何が嫌なの?私は嫌じゃ無いよ」

 

「じゃあ…どうぞ」

 

「あ~ん」

 

お箸を渡そうとすると木乃さんは卵焼きをそのまま食べ始めてしまった

 

「美味しい!」

 

瞳がキラッと輝いた木乃さんは美味い美味いとはしゃいでいる、喜んで貰えて嬉しいが距離が近い。

少なくとも只のクラスメートの距離では無いだろう。

木乃さんは良く見なくても可愛いし、そんな娘に近付かれてドキドキしない訳が無い。

 

「美味いよ!ねえ私に毎日作ってくれない?」

 

「え?」

 

「お返しに毎日私のパン食べてよ!」

 

「お返しは良いけど…そんなに気に入ってくれたのなら毎日どうぞ。元々毎日入ってる物だったし。」

 

「本当に!ありがとう!」

 

僕の両手を握りしめ、キラキラと木漏れ日で輝いている木乃さんに鼓動が早くなった気がした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

彼と話をしながら教室まで帰って来た、すぐ隣の席なので授業開始ギリギリまで話をして居られた。

授業が始まるとエルメスが小さな声で話しかけてくる

 

「ふぅ、今日は大収穫だったね」

 

「ついにやったわ、毎日話す口実が出来たわ」

 

隣の席を見ながらストラップのエルメスと小声で話す

顔からニヤケが取れず、さっきから頬杖をついている振りで隠している。

 

見ているだけだった横顔も今日は目があった

お箸を届けたら喜んでくれた

一緒にお昼を食べた

これからは毎日一緒にお昼を食べる

調子に乗って手を握ってしまった

 

それに卵焼きを食べさせて貰った、彼が作った物を彼の手から食べさせてもらえるなんて…幸せ過ぎる

 

なんて大収穫なのかしら、放課後は一緒に帰る約束を取り付けよう

 

「木乃は彼が好きなんだよね?」

 

「勿論」

 

「…即答なんだね、これからどうするの?何か目標はあるのかな?」

 

「そうね先ずは恋人ね、次に結婚よ」

 

言いながら自分の言葉に照れてしまう

チラリと彼を見ると真面目にノートを書いていた、真剣な横顔も素敵だけどこちらを見て欲しいと授業中にも関わらずそう思って居ると彼がこちらに振り向いた。

 

「…あ」

 

彼は少し驚いた後、先生に見えない様に小さく手を振ってくれた

急いで手を振り返すと彼はクスリと笑って又ノートを書き始めた。

 

その反応は格好良すぎないかな?少し鼻血が出そうだよ

 

午前中とは違う反応、私に笑顔を向けて手を振ってくれる。

親しみの感じられる対応に、彼との関係が良い方向に進んだ事を実感する。

 

勇気を出して良かった

いきなり話し掛けて嫌がられないか、何て話し掛けようか、そもそも私の事が嫌いなんじゃないか、そんな事ばかりを悶々と考える日々はもうおしまいだ。

 

今日からは毎日話せる、彼も私に好意的に話してくれたこれは恋人になる日も近いかも?

 

「ふふふふふ…」

 

「木乃幸せそうだね」

 

「幸せだもん」

 

取り敢えず放課後までは日課の彼を見つめる事にしよう

幸せな時間は過ぎるのが早いと言うが、本当にあっという間に放課後になってしまった。




授業中もどんな時も主人公を凝視する木乃
気付かない主人公

切欠作り
木乃は主人公とすれ違い様にお箸をスッたとか、スッてないとか

プロポーズ?
毎日卵焼きを作って下さい


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エルメスに転生

もしもエルメスに転生していたら
本編とは関係ない
短編

エルメス溺愛のキノ
保護者のつもりのエルメス

擬人化できる、メルヘン設定



私はバイクだ

 

この世界では、モトラドと言うらしい

取り敢えず私は人間から乗り物になっていた

 

私の仕事は走る事

最初の持ち主は[キノ]だった

私をただのガラクタから、モトラドに修理してくれた

…結局は私に乗らなかったけど

そして、次の持ち主も[キノ]だった

 

あの国を逃げる時に助けた女の子、それが次のキノだ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ねぇ、エルメス」

 

「何ですか、キノ」

 

「次の国までは、後どれ位かな?」

 

「一日は掛かりますね」

 

「そう、良かった」

 

キノは、嬉しそうに微笑む

 

「後一日は、二人きりだね」

 

「そうですね」

 

キノは恋人に話す様に、甘く話す

 

「今夜は一緒に、くっついて寝ようね」

 

スピードメーターに、チュッとキスをした

 

「…ははっ」

 

私はいつもの、愛想笑いで誤魔化す

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

もう周囲が暗くなる、今日はここまでだ

 

「キノ今日はここまで、ですね」

 

「エルメスがそう言うなら、そうするよ」

 

キノは何時も素直だ、私を停めて夜営の場所を探す

近くで物音が聞こえた

 

「キノ」

 

「僕にも聞こえたよ」

 

気配からして一人では無いだろう、心配だな

その時森の茂みの方から弾が飛んで来る

私の車体に当たり、キノは無事だった

 

「キノ相手から仕掛けて来ました、こちらも応戦の準備を…」

 

そこで気が付いた、私の車体に傷がついている

これは不味い、キノは私が他人に傷付けられるのを何よりも嫌う…いや憎む

もう顔を見るのも怖いが、キノの様子を確認する

 

「あの…キノ?」

 

キノは私のボディをゆっくり撫でる、その顔は俯いていて良く見えない

 

「なぁに?エルメス

僕もエルメスとお話をして居たいけど、ちょっとだけ用事が出来ちゃった。」

 

あっ、これはとっても切れている時のキノだ

 

「私は此処で待っていますから、用事に向かって下さい」

 

「ごめんねエルメス、早くごみ掃除を済ませて戻ってくるから」

 

「気を付けて」

 

返事の代わりに頷きを一つ残して、姿勢を低くし茂みに走って行った。

 

辺りを夜の静寂が包み込む

 

暫くすると銃声と大勢の悲鳴が聞こえて来る、森の中の悲鳴は一つまた一つと減っていき、最後の銃声と共に辺りは静かになり全く音がしなくなった。

 

キノが森から帰って来る、一つの返り血も無く綺麗な姿のままだ。やっぱりキノは強い。

 

「キノ怪我は無いですか?」

 

「大丈夫だよエルメス、ありがとう」

 

大丈夫と分かっていても心配はしてしまう、強いと言ってもキノは女の子、傷でも残ったら大変だ。

 

「強いのは分かっているけど、もう少し体を大切にして下さい。私は心配です」

 

「エルメスに心配して貰えると嬉しいなぁ、でも怪我をしているのはそっちだよね?」

 

うっと言葉に詰まる、忘れていなかったのか…

 

「でも、ボディに傷が付いただけですから…」

 

「そうだね…許せない…」

 

キノが私のボディの傷をなぞる、傷を付けた犯人がどんな殺され方をしたのかは、恐ろしくて想像したくない。

 

「エルメスの治療をしよう」

 

「新しい国に着いたら修理屋に寄りましょう、それからで大丈夫です」

 

車体の表面に傷が付いただけだ、内部に損傷は無いから走行に支障は出ない。

こんな傷を気にする旅人なんてキノ位で、他の旅人に驚かれる程私のボディは何時もピカピカだ。

 

「他人にエルメスを触れさせるなんて、そんなの駄目だよ!」

 

「キノ…」

 

「エルメスは僕の物なんだ、誰にも触れさせない!僕だけのエルメスなんだ!」

 

私を他人に触られる想像でもしたのか、キノは泣きながら叫んでいる。

 

「…分かりました」

 

泣かれては断る事は出来ない。

キノは私に対してだけ嫉妬心や独占欲を抱く、他の物に対してはどうでも良さそうなのに…

 

私は人間になる。

人間の姿の私は、キノの姿を男の子っぽくした感じだ。

髪の毛は短く体格もやや大きい、顔も目がやや鋭く親戚と言えば皆騙される位には似ている。

服はキノがくれたシンプルなズボンとシャツを来ている。

何故か姿を変えると服を着ている、不思議だ。

 

 

「キノ、修理をお願いします」

 

「エルメス、人の時は治療って言うんだよ」

 

涙を拭いながら話すキノは、少し異常な程私に執着している。

私が壊れて動かなくなった時の事を考えると恐ろしい。

シャツを捲り体を見る。

 

「脇腹から血が出てる…痛くない?大丈夫?」

 

「痛くないですよ」

 

「本当に?今から治療するけど、痛かったらちゃんと言ってね」

 

「はい、了解しました」

 

キノは私の傷を優しく治療してくれた、弾がかすった程度だから直ぐに治る。

 

「傷口は、消毒してガーゼを貼ったから大丈夫」

 

「ありがとうございます」

 

「でも…悔しいなぁ…」

 

「何がですか?」

 

「僕のエルメスに傷を付けさせたなんて、僕としたことが…」

 

「あれは奇襲でしたから、気が付かなくて当然です」

 

「違うんだ…」

 

キノに手を引かれて、一緒に座り込む。

 

「奇襲は関係ない、僕がもっと警戒しておけば良かった。何時もエルメスは怪我ばかりで…」

 

それは仕方ない、私はモトラドで丈夫だ。だから喜んでキノの弾除けになる。

でもキノは私が怪我をするのが嫌で、何時も泣いている。

人間の弱い皮膚よりも、私の鉄のボディが弾除けに向いていると何時も説明しているが、そういう事では無いらしい。

 

「私はキノに感謝しています」

 

「エルメス?」

 

「一緒に旅をして、私に素晴らしい景色を見せてくれました。」

 

「でも僕は…」

 

「モトラドだけで旅は出来ません、相棒が…キノが必要なんです」

 

私からキノを抱き締めて話を続ける

 

「私の相棒はキノだけです。キノが私を大切に思っている様に、私もキノが大切なんですよ」

 

「エルメスも僕が好き…?」

 

「はい、キノの事が大切で大好きです」

 

「僕も!エルメスが大好き!」

 

嬉しかったのか、首に抱き付いて来た

 

「キノは私の家族ですから、何処に行くにも一緒です。もし私が必要無くなった時には、どうか他の人には譲らず、キノの手で私を壊して下さい」

 

キノ以外となんて旅をしたくないし、乗せるのも御免だ

 

「…エルメス?」

 

「私は最後まで一緒が良いです」

 

「エルメス!」

 

抱き締める腕に力が入り首が締まる、人間なら死んでたんじゃないだろうか?

 

「勿論、誰にも渡さないよ。僕の旅がもし終わったとしても、生きてる間はずっと一緒に居て貰うよ」

 

「ありがとうございます」

 

良かった、旅が終わっても一緒に居られるなら、幸せに暮らせそうだ。

 

「死んでからも一緒だからね、一緒のお墓に埋めて貰うんだ」

 

「それは…狭くないですか?」

 

「エルメスと一緒なら、喜んでだよ」

 

モトラドもバラバラになれば死ねるのだろうか?ジャンクパーツの時は意識は無かったから、多分死ねるのだろう。

 

「キノは私の事を分解出来ますか?お墓に埋める時はちゃんと死を与えて欲しいのですが…」

 

お墓の中で永遠に意識があって、動けないなんて地獄は嫌だから。

 

「僕が死ぬ前に、ちゃんと分解してあげるからね。心配しないで大丈夫」

 

「これで、未来に関しての心配は全て解消されました。これからは、キノの心配だけですね」

 

「そうだよ、これからは僕の事だけを考えて生きてね。他の余計な事は、何も考えなくて良いから。」

 

「分かりました」

 

悩みが解消されると、何だか急に不安が全て無くなった。

 

「それはそうと、エルメス?」

 

「何ですか?」

 

「エルメスって子供作れるの?」

 

「えっ…、えっとモトラドですから、無理かとは思いますが…」

 

いきなり何を言い出すんだこの子は、モトラドは機械だ子供なんて無理だろう。

生み出せるとしたら排気ガス位だ。

 

「人間の姿の時は食事もするし、全部人間と同じだよね?」

 

「言われてみればそうですね、考えた事もありませんでした」

 

「僕ね、エルメスとの子供が欲しいんだ。勿論今じゃ無いよ?旅が終わってから、ゆっくりと落ち着ける場所で、エルメスと家庭を築きたいんだ」

 

「ちょっ…ちょっと待って下さい」

 

一体何を言ってるんだ…確かに食事も排泄もするが子作り何てした事は無い、人の姿に成れるが中身も同じなのだろうか?

そもそもキノと子供なんて、考えた事も無かった。

 

「良いよ…僕は待つよ、旅が終わるまでに何人欲しいか考えておいてね、僕の希望としては沢山子供が欲しいな。」

 

そうでは無い、待って欲しいのは子供の人数の事じゃ無くて、家族を作る計画の事だ。

キノの中では決定事項なのか?唖然としていると

 

「おやすみ、いっぱい幸せになろうね」

 

私の頬にチュッとキスをして、キノは眠りについた。

 

「おやすみなさい」

 

何とか返事を返したが混乱は治まらない、キノは本気で私との子供が欲しい様だ。

悩みが解決したと思ったら、また新しい悩みが増えた。

これは今夜も眠れそうに無い、キノに腕枕をしながら、また今夜も眠れないまま夜は更けていく。




キノはエルメスに、独占欲と愛情と罪悪感が混じってる
ヤンデレ

エルメスとの子供が欲しい

弾除けに使う度に泣いて謝る、罪悪感はこれ
エルメスは弾除けに使うことに賛成

エンジンに穴が開く等の酷い故障の時に、擬人化すると最悪死ぬ

主人公は元々人間だったので旅が終わって、忘れられ朽ちていくのが怖い。
しっかりと、人間の意志が有るうちに死にたい。


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女主人公 キャラ男性化
森の奥で シズ


パラレルワールド

男のシズさんと、女の主人公が出会った話
若干壊れているシズさん

女性を主人公にするとなんだか気恥ずかしい
主人公の名前はユキちゃんです


「大丈夫ですか?寒くは無いですか?」

 

「ありがとう、大丈夫寒くない」

 

「そうですか?何だか震えている様に見えますよ?

ほら私が暖めてあげますから、こちらに来て下さい」

 

「気のせいだから、近付かないで」

 

「近くに行かないと、暖められませんよ?はい捕まえました、暖かいでしょう?」

 

「ひっ」

 

男の腕に抱き締められ、頭に頬擦りされた。

私は自然と喉から悲鳴が出た、この男には話が通じない、何時もの事だが恐怖すら覚える。

 

初めは普通の好青年の様に見えた、一体何時からこんな風になったんだっけ?

 

ちらりとシズさんの顔を見ると、幸せそうに笑っているどうして私にこんなに好意を寄せてくれるのか、不思議でならない。

 

****************

 

目が覚めたら森のど真ん中に居た、理由は分かっている、転生をしたんだ。

 

説明通りちゃんと異世界?に来たのかは分からないが、事故で死んだ筈の体にはどこも怪我が無い。

 

「ここは何処かな?」

 

辺りを見ても何も分からない、進むべき方向すらも分からない、途方に暮れるが何時までも此処に居ても仕方ない、取り敢えず歩き出そう。

 

鞄を拾い上げ、背負って歩きだす。

そうして私は遭難し、森の中を延々とさ迷い続けた。

 

 

私が森を歩いて一週間は経ったかな、他の人には出会わないし、木や植物以外は何も無い。

ピカピカだった新しい体は怪我をして、足も捻って多分捻挫をしている。

鞄に入っていた食料はとっくに底を尽き、たまに森の果実を見つけては必死に食べて生きてきた。

でもそれももう終わる、体力の限界を感じる。

体が動かない諦めたくは無いが、どうする事も出来ない意識も朦朧としてきた死にたく無いな…

 

 

 

「君!生きているのか!」

 

誰かの声と、体を抱え上げられた浮遊感に意識が戻る。

必死に呼び掛ける声に、目を開ける。

 

「助けて…」

 

なんとか最後の体力を振り絞り、それだけを話す。

ちゃんと聞こえただろうか?助けて貰えるのかな。

 

「俺が助ける!だから頑張って!」

 

「…ありがとう」

 

それだけを伝えると、助かる安心感に涙が出てくる、再び意識が闇に沈む。

 

*****************

 

「シズさま!あそこに誰かが倒れています!」

 

リクの声にバギーのスピードを緩める

 

「何処に居る?」

 

「右側の木の根元です」

 

リクの言う方向を見ると確かに誰かが倒れている、だが旅人を狙った賊の囮かもしれない、慎重に確認しないと。

 

「リク辺りには、他の人間の臭いはするか?」

 

クンクンと鼻を鳴らしたリクは、居ないと首を振った。

私も気配を伺うが本当に一人の様だ、それならば助けなければ。

 

「リク行ってくるよ」

 

「私は荷物の番をしています」

 

「頼んだよ」

 

リクにバギーを任せて急いで駆け付ける、様子を見るとあちこちに怪我をしている様だった。

抱え上げて声をかける。

 

「君!生きているのか!」

 

その声に反応して、彼女はゆっくりと瞼を開いた。

 

「助けて…」

 

掠れた声でそれだけ言うと、体から力が抜けていく、これは本当に不味いかもしれない。

 

「俺が助ける!だから頑張って!」

 

少しでも意識をもたせ様と必死に声をかける、その声に反応して彼女の口が開いた。

 

「…ありがとう」

 

そう言って完全に意識を失ったのか、何の反応もしなくなる。

閉じられた彼女の瞳からは涙が流れ、不謹慎にも美しいと思ってしまった。

 

急いでバギーに戻るとリクに退いて貰い、座席に乗せる。

 

「シズさまどうしますか?」

 

「すぐにテントを張って彼女の治療をしよう、急がないともう意識が無いんだ!」

 

「分かりました、この先に水の音がします。そこに行きましょう」

 

「分かった」

 

急いでバギーに乗り込み、リクの案内に従い水場に移動する。

 

リクは座席の足元から、心配そうに彼女を見つめている。ペロペロと彼女の手を舐め、指先の怪我から出た血を取ってやっていた。

 

森の側に急いでテントを張った。彼女をゆっくりと寝かせる。

様子を見ると足の怪我が酷い、痛めた足で無理に歩いていたのだろう、捻挫した足首がどす黒く腫れ上がっていた。

 

額に手を当てると、とても熱い熱も出ている様だ。

リクが情けない声で鳴いている、急いで治療しないといけない。

 

川から汲んできた水で、タオルを濡らし額に乗せる。

リクは焚き火の為に枝を集めると森に走って行った、いつもよりやる気を出している。

意識が無いので薬は飲み込めないだろう。

 

口移しで水を飲ませるが、意識の無い彼女はなかなか飲み込んでくれない、指で口を開き舌を使って流し込む。

 

少しずつ水と薬を飲ませた。

治療のために怪我を確認する、体のあちこちに擦り傷や切り傷がある、水で綺麗に拭いた後薬を塗り込む。

 

最後は足首の怪我だがここが一番酷い、紫に腫れ所々どす黒くなっている。

触れると熱を持っていた、薬を塗り包帯を巻く。

 

一通りの処置を終えてやっと一息つく、何とか彼女を助けたい、元気になってくれると良いが…

頭を撫でると寝顔が安らいだ、こんな森の奥で一人きり、一体何があったんだ。

 

****************

 

夜になると彼女はうなされる

 

初めは女性と言う事で気を使って私はバギーで寝ようとした、けれどテントから泣き声が聞こえて慌てて見に行った。

 

彼女は涙を流し、何かを呟いていた。

側に寄って耳を近付けた

 

「まだ死にたく無い…痛い…ごめんなさい」

 

苦しそうに泣いている、驚いて抱き起こすと

 

「寒い…もう…いや…一人にしないで」

 

体がぶるぶると震えている、抱き締める力を強め背中を擦る。

彼女の小さな手が私の服を掴む、弱々しい力で必死にしがみついてくる。

 

何に怯えているかは分からないが、酷く震えて氷の様に冷たい。

此処には私しか居ない、見つけたのも助けたのも私だ、何とかしたい。

 

「大丈夫です私が此処にいます、一人じゃありません」

 

震えが治まってきた

 

「貴女は私が助けます、だから死にません」

 

「…ほんと」

 

ほんの僅かに目が開き、私を見つめる

 

「本当です、ほら暖かいでしょう?」

 

「…ん…ひとりはもういや」

 

「ずっと一緒にいます、一人にはしません」

 

「あり…がとう」

 

彼女はまた意識を失ったのか瞼を閉じて、くたっと体の力が抜けていく。

それでも私を離すまいと手の力は緩めない。

 

彼女を抱き締め一緒に寝転ぶ、あやす様に頭を撫でると涙が流れる。

 

腕の中から彼女の鼓動が伝わる、必死に私を求める彼女に胸に愛しさが広がる。

 

感じた事が無い程の強烈な感情、愛情だけじゃない…誰にも渡したく無い、私が彼女を守る。

 

私は彼女を一人にしないと約束した、これからはずっと一緒だ。

 

…彼女が離れたがってもずっとずっと一緒に居る、彼女は私を選んでくれた、それならば永遠に離れない…離さない。

二人でずっと生きていく。

 

****************

 

足の痛みで目が覚めた

 

「うぅ…痛い」

 

私は助かったのかな?

良く覚えて無いけれど、最後に誰かが助けてくれた気がする。

 

「意識が戻ったんですね!」

 

急に男の人の顔が現れた。私は寝かされていて、男の人が私の顔を覗き込んでいる。

 

「大丈夫ですか?今起こしますから、少し待ってください」

 

抱えていた荷物を脇に置き、痛む足に響かない様に、優しく抱き起こしてくれた。

 

「助けてくれて、ありがとうごさいます」

 

「良いんですよ」

 

にこりと笑ってそう言ってくれた、良い人に助けられたみたいだ。

 

「喉は乾いてませんか?水を持ってきたんです」

 

「ありがとうごさいます」

 

男の人のは私の右側に座っている、水を受け取ろうとすると、片腕で抱き締められた。

なんだろうと思っていると、男の人は自分で水を飲んでしまった。

唖然としていると、そのまま口移しされる。

 

「もう少しのみますか?」

 

「なんで…?」

 

知らない男の人は不思議そうにしているが、私の方が訳が分からない。

 

「何で、口移しで飲ませるの…?」

 

「まだ動けないでしょう?」

 

「手は動かせますよ」

 

「駄目です。それで怪我が悪化したら、どうするんですか」

 

男の人に怒られる、これは私が悪いのか?

 

「私が全てやりますから、任せて下さい」

 

優しく笑う男の人に恐怖を感じる、私は助かっていないのかも知れない。

 

「自己紹介がまだでした、私はシズと言います」

 

「ユキです」

 

「ユキ、これからよろしくお願いします」

 

「お願いします」

 

これから?何だろう怪我が治るまでかな?

少し変わってるけど良い人…なのかな、助けてくれたし

暫くお世話になるんだし、何か役に立ちたい。

その為にも早く動ける様にならないと。




死んだ事が無意識でトラウマになっている主人公
死に方が酷く息絶えるまで暫く意識があり、とてつもない痛みと、体が冷えていく感覚を覚えている。
夜になると震えて泣く
一人になるのが怖い


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旅の目的 シズ

森の奥で
続き


「好きですよ」

 

「私もです、結婚は何時にしますか?」

 

「え?意味が違いますよ!」

 

「好きの意味なんてどうでも良いんです。

私に好きと言ったんですから、それは結婚を意味しますよ」

 

「リクは好きかって聞かれたから、答えたんですよ!」

 

「好きなんですよね?」

 

「好きですよ」

 

「結婚しましょう」

 

リクに抱き付いて助けを求める

 

「助けてリク!話が通じないの!」

 

「ユキさま、大丈夫ですよ」

 

「リク…」

 

「無理矢理都合良く、理解しているだけですから」

 

「なお悪いよ!」

 

****************

 

助けられてから暫く経ち、スピードは遅いが何とか歩ける様になった。

 

これからは一人の生活も考えなくては。

先ずはこの世界の事を知る事。旅の仕方や準備、必要な物も揃えないと。

取り敢えず、シズさんに相談してみよう。

 

「あのシズさん、少し相談しても良いですか?」

 

何か作業をしていたシズさんに声を掛ける、私の声に振り向き笑顔を見せるシズさんは格好いい。

この人少しかわってるけど男前だよなぁ。

 

「どうしましたか?」

 

「これからの事について相談したくて、すみません」

 

「分かりました、テントで待っていて下さい。すぐに行きます」

 

「ありがとうございます」

 

テントに戻って待つ、これから一人で生きて行くのか…不安だけれど頑張らないと。

言った通りシズさんはすぐに来てくれた。

 

「相談でしたよね?」

 

「はい、私旅について何も知らなくて…必要な物って何が有りますか?」

 

「大丈夫ですよ、何も要りません。強いて言えば、何か護身用の武器が必要な位です」

 

「え?一人旅って荷物とかどうすれば、移動手段も必要ですよね?」

 

私が質問した瞬間シズさんが固まった、にこやかな表情が一瞬にして無表情になって怖い。

何か悪い事を言ってしまった?

 

「ユキさんは、一人旅をしません」

 

「でも、怪我が治れば一人で生きて行こうと…」

 

言いかけた口を手で塞がれた、シズさんは何を?

 

「私と一緒に生きて行くんです。旅の間も移住したとしても、一生一緒です」

 

シズさんは何を言ってるの?

口を塞いでいる手を引き剥がす、力は入っておらず簡単に離れた。

 

「なっ…なんですか?私は一人で旅に出ます、何時までも迷惑をかけられません」

 

「女性の一人旅は危険です。素人が武器も持たずうろつけば、たちまち襲われ殺されてしまいますよ?」

 

「そんな…」

 

この世界はそこまで危険なの?異世界に転生しても、何処か前世の日本の基準で考えていた。

考えが甘かった、付け焼き刃の戦闘技術ではすぐ殺されるだろうし…

何の知識も無いし、野垂れ死ぬのがオチ、どうしよう…不安に体が震えてきた。

 

「大丈夫ですよ、私が居ます」

 

「シズさん?」

 

震える体を抱き締めてくれた、とても安心する

 

「貴女を迷惑だなんて思った事は有りません。私が一緒に旅をして守ってみせます、だから離れないで下さい…」

 

「でも…私平和に暮らせる場所に住みたいんです、争いの無い、死の危険の無い場所に」

 

平和な日本で生きてきた私に殺し合いなんて無理だ、何とか平和に暮らしたい。

安住の地を探す事を目標にしたい。

 

「おや、目標は同じだった様ですね私も安住の地を探しているんです、やはり一緒に行動すべきですね」

 

ニコニコ笑うシズさんに、目標が同じなら大丈夫なのかなと少し安心した。

お世話になるなら改めて挨拶する。

 

「お世話になります、これからもよろしくお願いします」

 

「ええ、末永くよろしくお願いしますね」

 

にこりとシズさんが爽やかに笑う、末永くとは…

リクを見ると苦笑いの様な表情をしていた、本当に器用な犬だ。

 

これから先に不安が無い訳では無いが、何とか生きては行けそうで少し安心した。

 

******************

 

ユキは安心したのか助手席に座り、リクを抱き締めたまま眠っていた、なんて愛らしい。

 

「シズ様安住の地と言うのは、具体的にどの様な?」

 

「それは私とユキがずっとずっと一緒に、平和に暮らせる国かな」

 

「…そうですね」

 

リクはユキに苦笑いを向けるとそのまま大人しくなった、一体なんの苦笑いだろう?

 

ただ私はユキとリクと幸せに暮らしたいだけだ。

それにはユキに寄ってくる男達を排除する必要がありそうだ、国選びは慎重にしないと。

 

眠る愛しいユキの額にキスをして次の国を目指し走り出す。




短め後で加筆修正あり
シズ ヤンデレ気味
ユキ 流されやすい
リク 苦労性


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欲しい者 キノ

キノの国に産まれた主人公
赤ちゃん転生
主人公の名前はハルちゃんです

男キノ
見た目が可愛い男の娘
策士



産まれた国は平和な国だった

 

私は転生をして、とある平和な国の男女から産まれた

普通に産まれ普通に育ち、そしてある日両親は普通に殺された。

 

その国では住民が増えると、ランダムに選らばれた住民を殺して人口を管理するらしい、今回選ばれたのが両親で残った私は孤児院に送られた。

 

住民は皆納得しているらしく、両親も文句も言わず殺されに行った。

住民達の考えにおぞましさを感じた私は、成人を待たずに旅に出た、次に選ばれるのが自分かも知れないという恐怖でもう1秒も国には居られなかった。

 

住民達は皆不思議そうに私に質問する、この平和な国に何の不満があるのかと、働かなくても食べていける幸せな国なのにと。

私は冒険がしたいからと嘘をつき旅に出た。

 

あの国の一番恐ろしい所は住民達が何の疑問も持たず、家族を差し出し自らも進んで殺されに行く、その思考を放棄した飼い慣らされた家畜の様な所が一番怖い。

 

私は家畜になんかなりたくない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

旅を初めてもう何年も経った、前世の地球とは違い国が点々と存在するこの世界は旅に向いていた。

 

国によって全然文化が違い、法律も違う。

何もかもが新鮮で旅が大好きになっていた。

 

ある時森を通ると、旅人が大の字になって倒れてた

行き倒れかと思って近付いた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫ですよ、ちょっと此処が気持ち良くて。寝転んでいただけですから」

 

「それなら、お邪魔しました」

 

私が踵を返して戻ろうとすると

 

「ちょっと待ってください!」

 

「え?なんですか?」

 

旅人がいきなりガバッと立ち上がり、走ってきた

 

「助けて下さい」

 

両手を握られ真剣に話す旅人のお腹からは、グゥ~と間抜けな音が鳴っている。

 

「食料が底を尽きて、もう何日も食べて無いんです。少しだけ食料を売ってくれませんか?」

 

その間もお腹は鳴り続けている、やっぱり行き倒れじゃないか。

あまりにも可哀想なので、ご飯を分けてあげることにした。

 

「分かりました、今日は私もここで夜営をする事にします。ご飯を多目に作るので、一緒に食べましょう?」

 

「助かります!実はもうふらふらで、さっきも倒れていたんです。本当にありがとうごさいます」

 

お腹が鳴り続けていて見ていられないので、取り敢えずすぐに食べられるソーセージをパンに挟んで出した。

 

「用意するので、その間これを食べて、待っていて下さい」

 

「ありがとうごさいます」

 

私が置いたクッションに座りモグモグとパンを食べている、それが可愛くて思わず笑ってしまった。

 

「?なんですか?顔にパン屑でもついていますか?」

 

「ごめんなさい、食べてる姿が可愛くて…つい」

 

「かっ可愛いなんて、僕は立派な男ですよ」

 

「お詫びにお茶をどうぞ」

 

「あっありがとうごさいます」

 

またモグモグと食べてる姿にほっこりする、可愛いなぁ

 

「そうだ、自己紹介がまだでした。僕はキノです、旅人をしています」

 

「忘れてましたね。私はハルと言います、旅人です」

 

こんな森を通るのは、旅人か商人位だろう

私は料理する為にキノさんから少し離れる

 

****************

 

「キノあの人、可愛い感じの人だね」

 

「そうだね、ご飯も作ってくれるし良い人だね」

 

「ねえキノ?少し聞きたいんだけど」

 

「何かなエルメス」

 

「もしかして彼女、前の国で見なかった?」

 

「ああ見たよ、その時も笑顔で可愛いかったね」

 

「キノは彼女の出国日を調べて、わざわざ先回りしてここに寝てたよね」

 

「間違って他の事まで調べちゃって、彼女にとても詳しくなったよ。勿論わざとじゃないよ?」

 

「鞄に食料あるよね、結構沢山」

 

「あるね」

 

「キノは何でこんな事してるの?」

 

「エルメス、本当に欲しい者を手に入れるには、策が必要なんだ。僕はどうしても彼女が欲しくて…初めてなんだ、何かをこんなに求めたのは。」

 

「キノ?」

 

「だからね、どうしても手に入れるんだ…ハルを」

 

キノの笑顔は何時もと違いイビツで、目の奥に執着の炎が灯っていた。

 

「キノの初恋か…頑張ってね」

 

「ありがとうエルメス」

 

ハルから貰ったパンを食べる、今まで食べたどんなものよりも美味しかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ご飯が出来たのでキノの所に報告に行く

 

「キノ?ご飯が出来たんだけど、食べられそうかな?」

 

「まだまだお腹が空いてて、幾らでも食べられますよ」

 

「それなら、持ってくるね」

 

「僕も手伝います」

 

「あら、ありがとう紳士さん」

 

ふふっと笑って二人で食事の用意をする

キノは話しやすく、とても優しい。

そして何よりも可愛い。

 

「いただきます」

 

「どうぞ」

 

簡単にベーコンと野菜を炒め、スープとパンにした

 

「とっても美味しいです」

 

「ありがとう」

 

「これからもずっと食べたいな」

 

「え?」

 

「なんてね」

 

キノの冗談にドキッとした、見た目が可愛いのに、格好いい一面もあるなんて卑怯だ。

冗談を言った時の真剣な表現が、ドキッとする位格好良かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

夜になりそれぞれの寝袋に入った頃、辺りに気配がした。

 

「キノ…」

 

「うん、起きてるよ」

 

「キノは戦える?」

 

「それなり、ハルは?」

 

「私もそれなり」

 

がさがさと音が近付いて来る、相手は複数それも大勢

 

「左右に別れるわよ」

 

「え?…分かった」

 

「行くわよ」

 

寝袋から這い出し、森に入った

腰から2丁のパースエイダーを取り出し、サイレンサーをつけ両手に持つ。

反対側から銃声が聞こえた、キノはもう始めたようだ。

私も先ずは目の前の男の頭を撃った。

一発で仕留めなければ後が怖い、私はいつも一発で殺す様にしている。

 

***************

 

途中までは順調だった、しかし後ろから布を被せられ意識を失って捕まった。

 

「なあ嬢ちゃん」

 

「…」

 

「黙りかよ、お前俺の仲間を何人殺したんだ?」

 

「…」

 

「お前ほどの腕なら、仲間にしてやっても良いぜ?」

 

「誰が、人殺しの仲間になんか!」

 

「お前も人殺しだろ?」

 

「私は自分から襲った事なんて無い!」

 

「そこまで嫌なら好きにしろ、お前は俺達の発散用に使わせて貰うからよ!」

 

男は私をロープで縛りベッドに放り投げた

 

「いやぁそれにしても運が良いぜ、袋被った女が森に落ちてるんだからよ」

 

男が私に近付いて来ようとすると、扉がノックされた

 

「他の奴も戻って来たか、皆で楽しもうぜ!」

 

絶望で目の前が暗くなってくる

勢い良く扉を開いた男の頭が吹っ飛ぶ、そこにはキノが立っていた。

 

「大丈夫ですか!」

 

「キノ助けて!」

 

「今いきます」

 

私に駆け寄るとロープをほどいてくれた、安心感に涙が出る

 

「もう大丈夫ですよ、僕が居ます」

 

「ありがとうキノ」

 

泣きじゃくる私を抱えて夜営地まで戻ってくれる、ぎゅっと抱き締めてくれるキノに身を任せていると、眠たくなってくる。

 

「少し、眠った方が良いです」

 

「でも…キノに悪いよ」

 

「良いんですよ、ほら…おやすみなさい」

 

優しく話す声に眠気を誘われ、抗えない

私はそのまま眠った。

 

******************

 

「良かったの?」

 

「何が?」

 

夜営地に戻りハルに膝枕をして寝かせる、頭を撫でると嬉しそうにする。可愛い

 

「キノが袋被せた事、知られたら不味いでしょ?」

 

「そうだね。

でも僕とエルメス以外は皆死んだから、大丈夫だよ」

 

「襲われるなんてハルは可哀想だね、この場所じゃ無い方が良かったんじゃない?」

 

「何のために、この場所を選んだと思ってるの?

夜になると山賊が出るって聞いたから、わざとここで寝てたのに」

 

「うわぁ」

 

「でもハルには指一本も触れさせて無いよ、その前に全員殺したから」

 

「知能犯って怖いね」

 

「初恋だからね、どうしてもハルが欲しいんだ。

だから全力を出したんだけど…これで僕を好きになってくれるかな?」

 

「なってくれなかったら、どうするの?」

 

「次の計画も、まだまだ有るよ」

 

「キノの愛って重いよね」

 

「そうかな?普通だと思うけど」

 

「そうかなぁ」

 

エルメスとの会話を切り上げて、ハル寝顔を眺める

町で見た時からずっと好きだった、僕と目が合った時に優しく笑いかけてくれたんだ。

 

僕とハルはきっと心が繋がっている、だからこれからはずっと一緒に居る。

僕がハルを守ってハルは僕に笑いかける、とっても素敵な未来。

今日は一緒に寝て、明日からは一緒に旅をする。

断られても、まだ沢山計画があるから大丈夫。

これからは一時も離れず永遠に結ばれて、死んでも一緒に居る…幸せだなぁ。

明日からの日々が楽しみで仕方ない、ハルと過ごす未来が楽しみだ。




平和な国の真実を聞かされた主人公
ハル
両手にパースエイダーを持つ
素早く正確な射撃
力は弱い
騙されやすい


キノ君
ストーカー策士ヤンデレ男の娘
設定盛りすぎ


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友達? ティー 男性化

ティー 男の娘
主人公 ソラ 女の子


「…ん」

 

船室を出るといきなり、ん、と服を引かれる

私は旅人で海を渡る途中この国の様な、大きな船に乗せて貰っている。

 

始めに塔の側に付くかと聞かれたさいに、部屋だけ貸して貰えれば自分で何とかすると答えて、案内人を付けて貰いこうして船の一部屋を貸して貰っている。

 

この、先程から私の服を引っ張る、ティーと言う男の子が案内人として船の案内をしてくれる様で、最初に紹介された。

 

「ティーだったかな、君は何処に案内してくれようとしてるの?」

 

そう言うと少し考えて上を指差した。

もしかして、行く先も考えないまま案内されそうになっていたとか?…そんな事無いよね?

 

「うわぁ…」

 

案内されたのは船の甲板で、そこから見える景色が絶景で思わず感動してしまう。

 

「…!きれい」

 

「そうだよね!こんなに綺麗な景色滅多に見られ無いよ!」

 

その言葉を聞いたティーは首を傾げ、私を指差した

 

「ちがう…きれい」

 

「?私がどうしたの?まさか私が綺麗なんて事は無いよね…」

 

私の言葉を聞いたティーはこくりと頷き、やっぱり私じゃないよねと思って居ると、私を指差したままもう一度

 

「きれい」

 

そう呟いた。

 

「ぅえっえっとありがとう、そのティーも綺麗だよ」

 

私がしどろもどろに返事をすると、ティーは僅かにその無表情を動かし驚いた様に言った。

 

「!いっしょ…」

 

「へ?ああ、一緒だね」

 

その後ティーは何かを呟いていた様だが波風の音に掻き消されて何も聴こえなかった。

 

「…はじめて」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

そんな事があってからティーは変わった様に思う、朝目が覚めたらベッドの隣に立っていたり、移動するときには服では無く手を繋いで移動したがる様になった。

私にはこの変化の理由が分からず、ティーに聞いてみても一緒としか答えてくれなかった。

 

その日私は旅の相棒、トライクを整備していた。

私は旅の途中で手に入れたこのトライクを事の他気に入っている、それも私が乗っていたモトラドを即効手放して一目見ただけのこのトライクを即金で買ってしまうほどに。

トライクと言えばバイクの隣にもう一人乗る余地があるが、誰も乗せる予定もないのに買ってしまった、主に荷物置き場だ。

 

そんなトライクを整備していると、トライクに積んである荷物を何故かティーがトライクの後方に積み直している。

何事かと見ていると、からになったサイドカーにティーがぽすんと座り満足げにしている。ん?

 

「ティー何してるの?」

 

「…?」

 

「いやはてなじゃ無くて、なんで、トライクに乗ってるの?乗ってみたかったの?」

 

私の質問にはてなを浮かべるティー、ごく当たり前の様にサイドカーに乗っている。

 

「…ぼくのせき」

 

「?ぼくのせき、ってどう言うこと?」

 

「…いっしょ」

 

ティーはむふぅと言うように息を吐くと、私を指差し一緒と言った。

 

「いっしょって前に言ってた一緒って事?」

 

「…おぼえてた」

 

ティーは少し嬉しそうにすると、トライクの運転席をポンポンと叩く

 

「…ここ」

 

「ここに座るの?」

 

ティーはこくりと頷き、無表情ながらも何処かウキウキと嬉しそうにしている。

私がトライクに股がるとティーは満足そうに頷き

 

「…ずっといっしょ」

 

と言い出した。

ずっと一緒とはどういう事だろう船の中では今でも充分一緒に過ごして居る。

でもティーの言うずっと一緒とは、そう言う事では無い気がする。

 

「ねぇティー、ずっと一緒ってどういう事?」

 

「?ソラとぼくはずっといっしょにいる」

 

「うん、そうだよね今まではそうだよね」

 

話しているとティーが突然ふるふると頭を振り、自分と私を交互に指差し

 

「ちがう、これからもずっといっしょ」

 

と言い出した、これからもとは私はこの船旅が終わったら、トライクで旅に出るもしやティーもついてくるつもりなのかも知れない。

 

「ティーもしかして、私の旅についてくるつもりなの?」

 

そう私が訪ねるとティーは、一つこくんと頷き私を指差し言った。

 

「いっしょ…はじめてなかま」

 

「もしかして、はじめていっしょの人。つまり私が居たから仲間に成るの?」

 

ティーがこくんと頷く。

 

「こいびとでもいい」

 

「わっ私とティーが恋人!でっでも歳の差があるでしょ。恋人は無理よ」

 

「あいがあればだいじょうぶ」

 

ティーはそう言うと私にぽすんとぶつかり、抱き付きいて来た。

一体誰がティーにそんな事を教えたのか分からないが、無責任すぎる幾らなんでもティーは幼すぎるのだ。

 

「それに…としそんなにかわらない」

 

「へ?嘘でしょ?」

 

「ほんと、なぜかちいさいまま」

 

そう言うと再び私の腹部に顔をくっ付け、ぐりぐりと動かす。

ティーは幸せそうで、周りに花が飛んでいる様に見える位にご機嫌だ。

 

「それに、もういってきた」

 

「へ?誰に何を?」

 

「くろいのにたびにでるって」

 

「嘘でしょ!」

 

「ほんと、たびにでるからせんべつも…もらった」

 

これでますます断れなくなった、無表情でルンルンしているティーには悪いが二人旅なんてした事無い、船が陸地に着いたら即効で旅に出てティーを置いていくしか…

 

「だめ、ゆるさない」

 

「なっなにがゆるさないのかな」

 

「ぼくとはなれるのは、ゆるさない」

 

ふと、ティーの顔を見ると無表情の中にも確りと分かる怒りの炎が見え隠れしていた。

 

なにがそこまでティーが私に執着させるのか。

確かさっき、はじめていっしょ、と言って居たと言うことは今までは、なにもいっしょの人が居なかったのかな?それなら初めて出来た一緒に執着するのもわからなくは無い。

 

「ティーは旅出来るの?」

 

「できる、がんばる」

 

「戦闘経験は流石に無いよね?」

 

「ある、だいじょうぶ」

 

ごそごそとティーは何時も着けている鞄を探ると、中からは手榴弾とナイフが出てきた。

この小さい体で戦えるのかは些か不安だが、ここまで言われては仕方ない。

 

「ティー旅の同行の条件は自分の事は自分でする、よ

分かった?」

 

ティーは一つこくんと頷くと嬉しそうに微笑み、船に何の未練も無さそうにしている。

 

「ティーはこの船に未練はないの?友達や知り合いも居たでしょうに」

 

そう聞いた所でティーはふるふると首を振ると

 

「いっしょはソラだけ」

 

そう言った、ティーはこの船で友達も知り合いすら居なかったのか…そう思うと切なくなりこちらからも抱き締め返す。

 

ティーは初めは訳が分からないようで、きょとんとしていたが意味が通じたのか瞳を潤ませて更に抱きついていた。




男の娘ティーは策士なイメージ
実は女主人公に一目惚れしていた、とかいないとか…


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逃がさない 師匠※男性化

狙った獲物は逃がさない師匠
取り敢えずキノを弟子にした辺りの、渋い師匠
そのうち若い師匠も書きたい

主人公…若い頃の師匠に拾われた、そこそこ強い
雨の日に拾われたのでアメリア


「師匠達もう帰ってくるかな、それならそろそろお夕飯の仕上げにはいろうかな?ねぇエルメス?」

 

「そうだね、銃声も止んだしそろそろ帰ってくるかもねぇ」

 

森の中から訓練用の銃声も止み、夕陽も沈んで来たそろそろ帰ってくるだろう

 

「アメリアただいま」

 

「ただいま帰りました」

 

「師匠、キノ、お帰りなさい。

晩ごはん出来てますよ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

夜キノは訓練の疲れから早々に自分の部屋で眠ってしまい、部屋には私と師匠の二人しかいない

外は雨と風が酷いので師匠と私は、大人しく読書をしていた。

…雨の音を聞いているとふと昔の事が気になった。

 

「ねえ師匠?私が師匠に拾われた理由って有るの?」

 

「貴女は理由も無しに、拾われたと思っていたのですか!?」

 

珍しく驚いた表情の師匠が、読んでいた本から顔を上げ此方を向く

 

「だって師匠は私の手を取りなさい、としか言わなかったじゃ無いですか」

 

師匠は頭痛を堪える様に額を押さえると、はぁとため息を1つ吐き、座っていた安楽椅子から、私の座っているソファーの隣の席に移動した。

急に近くなった距離にドキッとすると師匠は、少し嬉しそうにした。

師匠は何時もそうだ。

 

「初めから話しますよ。

どうやら貴女には、途中の言葉しか聞こえてい無かったみたいですからね」

 

「え?他にも何か言っていたんですか?」

 

此方をチラッと見ると窓の外に視線を向けた。

外は分厚い雲で真っ暗で、ざあざあと激しい雨と風が吹いていた。

 

「アメリア貴女と出逢ったのも、こんなに激しい雨の日でしたね」

 

「…そう…ですね」

 

あの頃の事は余り思い出したくない。

道端の隅で座り込みたまに誰かが気まぐれや善意でくれる、小銭や残飯やゴミで命を繋いでいた時の事だから…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

悪臭のするボサボサの長髪、肌は垢で真っ黒、体は生きているのが不思議な位細く、今にも折れそうな程に小さかった。

それがあの頃の私、師匠が見つけてくれなければきっとそのまま尽き果てていた筈の軽い命。

 

その日も何時もと同じ道の端、誰の邪魔にもならない様に静かに座り誰かの恵みをただ待っていた時の事。

顔にかかる強い日差しを遮り誰かが目の前にたった。

 

「あなたは?」

 

「はい、どうか今日を生きる糧をお恵み下さい」

 

「はい?貴女の名前を聞いたのですが」

 

「旅人様私に名前はありません、申し訳ありません」

 

「…」

 

「申し訳ありません」

 

そこで初めて顔を上げると、やはり旅人だった様で何故か驚いた表情をしていた。

 

「貴女は…生きたいのなら私の手を取りなさい」

 

「…え?」

 

そんな事を言われたのは初めてだ、私は垢で真っ黒だから触れると殴られるのが常だった

でも旅人は手を取りなさいと言う本当に触れても、殴らないのだろうか?

 

「生きたければ私の手を取りなさい」

 

「はい」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「その前に言った言葉は、聞こえていなかったのですか?」

 

「その前…聞こえてないです」

 

そう言うと師匠はがっくりと肩をおとしたが、不意に此方を向くと私の手を取った。

 

「良いですか?今度はちゃんと、聞いていてくださいね?」

 

師匠の真面目な表情に、此方も自然と背筋が延びる。

 

「はっはい」

 

「私は善意や気まぐれで誰かを助けたり、一生を背負うつもりはありません。

ですが、貴女の目を見て気が変わりました。

貴女が欲しいのです私のものになるのならば、私の手を取りなさい」

 

それだけ言うと師匠は私の手を取った

 

「…へ?」

 

「あの時貴女は、聞こえていなくとも私の手を取った。

あの時から、アメリア、貴女は私のものなのですよ?」

 

「ははっ師匠またまたー」

 

冷たいものが背筋を流れたが、冗談にするようにわざとらしく笑う

 

「あのスラムの中で貴女が、貴方だけが死んでいなかった。

正しく言うと目が生きようとしていました、そんな貴女に惹かれたのですよ」

 

「…師匠」

 

逃げられ無いと悟ると、師匠に真っ正面から向き合う

 

「スラム育ちの私が師匠となんて、一緒になれませんよ…その内何処かに、旅にでも出ようと思って居たくらいですし」

 

「アメリア、そんな事を考えて居たんですか?私は貴女を放しません、当然旅にも出しませんよ」

 

「でも師匠」

 

「でもも、ありません。貴女を放さないと何度言わせるつもりですか?」

 

「では師匠、放さないとは具体的にどうするつもりでしょうか?

まさか彼女か何かにでもするつもりですか?」

 

スラム育ちに酷い劣等感を持っているアメリアは、まさかと言った感じにわざとらしくおどけて見せる。

それに師匠は首を振り否定をし、アメリアは何故かショックを受ける。

 

「まさか、彼女になんてもうこの年です。

貴女は私と夫婦になるのですよ、私は欲張りですからね、アメリア貴女の全てがほしいのです」

 

「まさか、そんな師匠にはもっと素敵な方が居ますよ」

 

「アメリアはどうですか?私と夫婦になるのはやはり嫌ですか?こんなに年が離れているのです」

 

アメリアと師匠は親子以上に年が離れている。

普通なら嫌なのだろうと師匠は、少し俯く。

 

「そんな事ありません!師匠は素敵な方です、だから私と夫婦にならなくても…」

 

「そうですか、懸念が一つ消えました。

アメリア私は言いましたよ、貴女が欲しいと他のどんな人と比べても私には貴女だけが必要なんです」

 

師匠はアメリアの手を取ると懐から、指輪を取り出し自然な動作で左手の薬指に嵌める。

 

「なっ…師匠!」

 

「そしてこちらの指輪を私が嵌めれば、晴れて二人は愛し合う夫婦です」

 

「愛し合うなんて、そんな事…」

 

アメリアは薬指を見つめ、モゴモゴと言い訳めいた事を口にする。

それを見て師匠は嬉しそうに、満足そうに微笑む。

 

「アメリア、私は貴女を愛しています。

貴女はどうですか?私の愛に答えて頂けますか?」

 

アメリアはしばし考え込んだ後、諦めた様に笑った。

 

「もう、そこまで愛してるなんて言われたら、私も遠慮してるのがバカみたいじゃないですか」

 

「それじゃあ!」

 

「病めるときも健やかなるときも、どんな時も師匠を支えて愛する事を、誓います」

 

「あぁ、私もです私もどんな時もアメリアを愛する事を、守り抜く事を、誓いますよ」

 

アメリアは、照れ笑いで嬉しそうに笑う。

 

「アメリア貴女が答えてくれて嬉しいと同時に、安心もしました」

 

「師匠も緊張とかするんですねぇ」

 

「いえ、アメリアが良かった、助かったという意味ですよ」

 

「え?」

 

「私と夫婦になるのは決定事項ですので、はいと言うまで、それこそ監禁でも何でもするつもりでしたよ?」

 

「師匠まさか冗談ですよね?」

 

アメリアは頬を引き吊らせながら、ははっと無理に笑う。

 

「アメリアは少し私の事を理解していない様ですね?

私は狙った獲物は逃がしません、この場合獲物はアメリア貴女の事ですよ」

 

「本気でしたか」

 

「これは私の事をもう少し理解してもらわないといけませんね、まぁこれからは夫婦ですし遠慮もしないですみますし」

 

「え?遠慮?」

 

「はいこれからは独り占めさせて頂きます」

 

「えーとキノは?」

 

「私の目を盗んで旅に出たつもりらしいですよ、ほら」

 

指差した先にはエルメスにまたがり、旅立つキノの背中。

アメリアは見捨てられた気分で見送る。

 

「さて、二人きりですねアメリア、これから初夜ですよ?」

 

「おっお手柔らかに」

 

「すると思いますか?」

 

「ですよね」

 

二人きりの夜はまだまだ長い。

 

 




キノの姉弟子


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パラレル キノと英雄だった彼の二人旅
ただ一人の為に 前


違う世界線のキノ

主人公 ファルシュ ファル君

一話で纏まらなかったので、前後編の二話構成になります。


「やっと邪魔者達は皆消えました。

これで貴方と一緒になれますね。やっとです…長い間待たせてしまって、本当にごめんなさい」

 

周りの人間皆を撃ち殺した彼女と、俺以外誰一人生きている者はいなくなった。

彼女は心底嬉しそうに笑い、血塗れのままこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「さぁ…本当に二人きりですよ」

 

目の前にしゃがんだ彼女は俺にそう告げた。

 

「き…きみはいったい、誰なんだ」

 

恐怖でぶるぶると震える体で後ずさりながら、なんとかその一言を絞り出した。

突然現れた彼女が近所の人達を皆殺しにして、親しそうに話し掛けてくるが、俺は彼女なんて知らないし見た事も無い。

 

「いやだなぁ僕ですよ、貴方の恋人のキノです」

 

「俺に恋人なんて…」

 

「僕が貴方の恋人ですよ」

 

血にまみれた手を頬に当てられた事で恐怖が頂点に達し、俺はそこで気を失った。

最後に見たのは狂ったように笑いながら、俺を抱き締める殺人鬼の姿だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「公然の秘密?」

 

「そうです彼以外は、国中の皆が知っています」

 

入国の際に説明を受けたが、その中で一番大切な事だと前置きがあった。

今から話す事を良く理解して、国の中では決して口にしてはいけないらしい。

 

「この国では、ある病が蔓延しています。

国民にのみ感染し、毎年多数の死者を出す大変な病です。

医者達が死に物狂いで研究を重ねた結果、彼の血が病に有効であると偶然、発見されました」

 

確かに今説明をしている兵士達は、皆顔色が悪く頻繁に咳をしている。

 

「それから彼には、我々の薬として生きて貰っています。

国民には彼の血が必要ですので、死なない程度に血を貰っているんですよ」

 

「その人は大丈夫なんですか?」

 

大勢の国民の為にたった一人で血を提供するなんて、どう考えても血が足りない。

健康でいられる訳が無い、下手をすると死んでしまうんじゃないか。

 

「彼は慢性的な重度の貧血を患っていますが、血液の病気と言う事にして、検査と偽りこっそりと血を抜いています。

国民の中には過激派が居て、乱暴にも彼を施設で管理して血を培養しようと、提案する者達も増えています」

 

「私達穏健派は、そんな酷い事を許しません。

彼には病院に入院して貰って、医者の指示に従い限界まで血を採る提案を進めています」

 

エルメスが小さな声で「それって、どっちも一緒じゃないの?」と呟いている、完全に同意だ。

その人の意思は一切考慮されていない、皆薬としてしかその人を見ていない。

 

「今は彼の血を薄めて配布していますが、全然足りないのが現状です。

過激派か穏健派どちらかの案が通る日も近い、我々は健康になりたいだけなのですよ」

 

「そうですね」

 

口先だけの同意をして、その人の居場所を訪ねる。

少しだけその人に興味を抱いたから。

 

「その人に会うことは、できますか?」

 

「彼は国の最重要人物です、旅人に面会の許可は降りません。

彼に会えるのは、良き隣人として振る舞っている研究者達だけです」

 

会う人間まで制限されているのか、厳重な管理がされている様だ。

 

「ですが、モニターで見学する事は許されています。

彼はこの国の英雄ですからね、見学されますか?」

 

「お願いします」

 

やっぱりこの国は、その人を同じ人間とは思っていないようだ。

薬に英雄、誰かその人を心配する人は居るのだろうか?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「こちらが観察室になります」

 

「ありがとうございます」

 

案内の女性にお礼を言うと、女性は一礼して去って行った、受け付けに戻ったのかな。

 

「キノ、この部屋凄いね」

 

「そうだね、壁一面監視モニターだね」

 

壁のモニターの下にはプレートが付いており、英雄ファルシュの生活、と書かれている。

監視モニターには肌の青白い痩せた男性が映っていた、この映像は彼の家の中での普段の生活の様子が見られる様になっているみたい。

 

「ファルシュって人は、何も知らないんだよね?」

 

「そうだね、皆で秘密にしてるから」

 

男性はふらふらと覚束ない足取りで、ゆっくりと部屋の中を歩いている。

キッチンから水を運び、椅子に座って飲むだけの行動も酷く辛そうだ。

 

「彼死にそうだね、あんなにふらふらしてる」

 

確かに今にも死にそうに見える。

病を患っているらしい国民達よりも、よっぽど重度の病人の様に見える。

 

「誰も彼の心配はしないのかな?」

 

「うん、きっと誰一人してないだろうね」

 

彼の青白い顔をじっと見ていると、何かを思い出しそうになる、一体なんだろう?

 

「どうしたのキノ?」

 

「彼を見てると、何かを思い出しそうなんだ」

 

「キノは彼を知ってるの?」

 

遠い昔の僕がまだキノでは無かった頃、僕がまだ×××××だった頃の事を思い出す。

 

「彼を…知っている?血で人を救う、血で治す…

ファルシュ…?…ファル?」

 

モニターの中の顔を良く見る。

色素の薄そうなブラウンの髪の毛、優しいグリーンの瞳、優しそうな垂れ目の彼は…

 

「ファル!」

 

思わずモニターに向かって叫ぶ、なんで彼がここに居るんだ、なんでこんな目にあって…

彼は幸せになっている筈、優しそうな両親と旅をしていたじゃないか!

 

「ファル?知り合いなの?」

 

「僕の大切な人だよ、ファルは僕の恋人なんだ」

 

「え?どう言う事か、教えてくれると嬉しいんだけど」

 

エルメスに説明をする

 

随分昔の話だ。僕がまだ×××××だった頃に、ファルは僕の住んでいた国に旅をして来た

 

その頃の僕はまだ小さく体が弱くて、よく病気になっていたんだけど、その時は病気が悪化して死にかけていたんだ

 

幼い僕には病気を乗り切るだけの体力は無くて、皆僕が死ぬと思って諦めてた、皆静かに最後の時を待ってたんだ。

 

僕は死にたく無くて泣いて叫んでも、皆が諦めた表情で僕を見てた、それがとても怖くて余計に泣いていた、そんな時にファルが両親と来てくれて薬をくれたんだ。

 

どんな病でもすぐに治る秘薬だって言ってた、真っ赤な水薬で鉄臭かったけど、全部飲みきる頃にはすっかり元気になっていた。

 

皆喜んでファルの両親に感謝していた、ファルは僕の側に来て良かったねって笑ってくれて、やっと僕は助かったんだって気が付いたよ。

 

その時に僕の手を握ってくれたファルの腕に、包帯が巻かれていて血が滲んでいるのをよく覚えている。

 

皆は薬の入手方法を聞いていたけど、旅の人から買って最後の一つだって言われて諦めていた。

 

それからファルが国に滞在してる間は、ずっと一緒に居て遊んでくれたんだ。

僕よりも少し歳上のファルは優しくて、他の人には内緒だって秘密も教えてくれた。

ファルの血は何でも治せるって、怪我でも病気でも何でも治せるらしい。

 

始めは自分の国で皆を少しずつ治していたんだけど、そのうち他の国からも大勢の人が押し寄せた。

皆がファルの血を奪いあって、殺されそうになったから逃げる為に旅をしているって。

 

あの時僕の命を救った薬は、ファルの血だってその時に気付いた。

見ず知らずの僕を救う為に、自分の腕を切ったらしい。

 

それからはもっと仲良くなって、いつの間にか好きになってたんだ。

 

だから別れの時は泣いて泣いて、凄く困らせて…

あんまりにも僕が泣くから最後に約束してくれたんだ、もしも再会出来たら何でも一つお願いを叶えてくれるって。

 

僕はファルにお願いした、再会出来たら恋人にしてって。

ファルは驚いていたけど、優しく笑って約束してくれた、いつか大きくなったらまた会おうねって。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「彼がそのファルだよ」

 

「へぇー、そんな偶然もあるんだね」

 

「偶然なんかじゃ無いよ、きっとこれは運命だ」

 

僕達が再会するのは運命で決まっていたんだ、絶対そうだ。

 

「ふーんそれでどうするの?ファルさんはこの国に必要らしいけど」

 

「そんな事知らないよ、僕はファルを連れて行くだけ。

だって恋人同士は、ずっと一緒にいるんだよ」

 

「そう頑張ってねキノ」

 

「うん、必ず連れて来るよ」

 

僕は必ずファルを連れて行く、僕の恋人が酷い目にあっているんだ助けないと、昔はファルが僕を救ってくれた、だから今度は僕がファルを救う番だ。

 

それからはとにかく情報を集めた、ファルについて、この国について、それから…病についても。




殺人キノ
男前のヒロイン
一人を救う為に大勢を殺す、状況によっては悪い事とは限らない…かも?

ファルシュ、意味は偽り
エリクサー系主人公
重度の貧血
国からの扱いが酷く、現在は年齢よりも老けて見える
その為家に引きこもりがちの生活、色が白い
このままでは家畜の様な未来か、実験動物の様な未来しかない、どっちもBADEND


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ただ一人の為に 後

続き

キノさんキレる、そして病む、デレる



病について分かったことは、色々と研究をしてどんな薬も治療も効果が無く、感染すると致死率100%で死は免れない様だ。

 

研究に行き詰まっていたそんな時に、ファルの両親が事故で死んだらしい。

国民にしか感染しない病だ、何が旅人達と違うのかを調べる為にファルの両親の死体を研究に使ったらしい。

 

ファルには両親のお葬式をしてあげると、嘘をつき死体の入っていない棺桶を埋葬してお葬式をしたらしい。

今墓の下にあるのは空の棺桶だ。

 

まだ子供のファルは国に保護された、そんな頃ファルの両親に国民と違う所は無く、次は健康診断用に採血したファルの血を調べてみた。

するとファルの血は、実験動物の怪我も病気も全て、瞬く間に治してしまったらしい。

 

研究者達は喜んでファルの血を培養して試してみたらしい、すると効果はがた落ちで怪我を少し治す程度だった。

次は薄めて使うと怪我は少し治り、病は治らず少し軽くなる程度だった。

薄めた物を数回飲むとやっと病が完全に治る、研究者達は頭を抱えたせっかくの特効薬が培養出来ない。

 

するとある一人がの研究者が言った、彼からもっと血を採ろうと…それがファルの辛い日々の始まりだった。

彼に重大な病気の可能性があると嘘を吐き、入院させ検査の為にと大量の血を採った、彼は重度の貧血で入院中ほとんど動けなかった。

これには穏健派が反対し、彼は完全に管理された今の家に住む事になった。

 

彼は今も定期的に検査と偽り採血を受ける、その際に採る量は限界ギリギリで、彼は検査の後に毎回治療を受けふらふらで帰るらしい。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「これが病と血の関係だ」

 

「これは酷い、こんなことよく出来るよね」

 

「人間は自分が助かる為なら、何処までも残酷になれる生き物なんだよ」

 

自分達が助かる為に、ファルの血を搾り取り続けてこの国は生きている、ファル一人の犠牲の上に成り立っている。

 

「ファルさんは一体何年、こんな目に遭い続けてるの?」

 

「保護された時の年齢から考えて、五年以上だね」

 

「よく生きてたよね」

 

「そうだね、よく生きててくれた。僕は嬉しいよ」

 

そしてこの国のを憎む気持ちが、僕の中で膨らんで爆発しそうだよ。

よくもファルをこんな目に…

 

「これからどうするの?」

 

「僕はね許せないんだ、僕のファルをこんな酷い目に遭わせて、国民達は健康になって幸せになるなんて」

 

ぎゅっと拳を握りしめ怒りに耐える、すぐにでもファルの所に走って行きたい位だ。

 

「最初はね、この国の事だから酷い話とは思ったけど、僕には無関係で、何もするつもりは無かった。

でもね…それがファルなら話は別だよ、僕の恋人を酷い目に遭わせたんだ…絶対に許さないよ」

 

僕は無関係の人間を救うほどお人好しじゃ無い、ファルだから救うんだ。

その為にはどれだけの犠牲を出しても構わない、平気でファルを犠牲にしてきた奴等なんて、憎しみと殺意しか抱けない。

 

「作戦は考えてあるの?」

 

「先ずはファルの薬を大量に入手しないと、ファルの重度の貧血は本当だから、治るまでの分の薬が必要だね」

 

「じゃあ病院?それとも研究施設?」

 

「両方だね。薬の入手と、ファルに関する全ての資料を削除しないと」

 

資料を残していたら誰かがファルを追い掛けてくるだろう、探しだしてまた薬にされる。

 

「その後は?」

 

「ファルの分の旅支度をして置かないと。

ファルはモトラドに乗れた筈だから、貧血が治ったら何処かの国でモトラドを買うよ」

 

昔乗って見せてくれた事があった、格好良かったなぁ…

貧血のファルをモトラドに乗せるのは難しい

 

「じゃあ暫くは二人乗りの旅?」

 

「そうなるね、暫くは苦労をかけるよエルメス」

 

暫くは二人乗り、沢山くっつけて幸せだろうな…

早くファルに会いたくなってきた。

 

「はいはい、パンクには気を付けてね」

 

「後は戦闘準備だよ、沢山の弾が必要だ」

 

「キノ本気だね」

 

「そうだよ、僕はこれでも本気で怒っているんだ。

ファルを何年もこんな目に遭わせていたんだ、それ相応の償いはしてもらうよ」

 

それ相応、何年も死ぬほどの辛い目に合わせた罪は、死ぬことで償ってもらう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「キノ準備は良い?」

 

「大丈夫だよ完璧だ」

 

あれから病院で薬を盗み、研究施設の機械と資料を全て燃やした。

 

旅支度も終わって荷物は全てエルメスに積んである、後はファルを連れて行くだけだ。

 

「ここで待ってるから、早く戻って来てね」

 

「分かった、じゃあ行ってくる」

 

「いってらっしゃい」

 

エルメスの言葉を聞いて先を急ぐ

 

ここを進めばファルの住む保護地区だ、警備は厳重で住民はファル以外は全員研究者か、兵士達が親切な住民の振りをして住んでいる。

 

先ずは最初の検問を突破する、建物の影から兵士をスコープ越しに見る。

この時間は見張りは一人、サイレンサーを付け撃つ。

狙い通り兵士は音も無く倒れた。

 

次はファルの家に近付かないと、

住民の振りをした者達が沢山出歩いている、ファルは端の方でベンチに座っていた。

ファルが僕のすぐ側にいる、もうすぐで触れられる。

 

僕の侵入に気付いた人達が慌て出す。

薬を奪われるや、彼は死んでも肉体だけは保護してくれ、など何処かに連絡している。

本当にこいつらは腐っている、なるべく被害を減らそうと思っていたけどもういいや、邪魔する奴等は皆殺す。

 

素早くパースエイダーを連射して、ファル以外は皆殺す、向かって来た奴も逃げ出した奴も皆殺して、やっと全員片付いた。

 

彼に近付くとびくりと震えて、後ずさる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

*前話の冒頭に繋がる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

意識が戻る、あの後はどうなったんだ?確か殺人事件が起こった筈

 

体を起こして周囲を確認すると、森の中の様だ。

毛布をかけられて寝かされていたのか、何が起こってるんだろう?

 

「おはようファル、目が覚めましたか?」

 

「君は!殺さないでくれ!」

 

後ろを振り返るとあの時の殺人鬼居た、逃げようにもこの弱った体は走れない。

 

「ファルを殺す訳ありません、ファルは僕の大切な恋人ですよ?」

 

「君は、一体何を言っているんだ」

 

「覚えてませんか?キノで…ああ違いましたね、あの頃は×××××でしたか」

 

「×××××?それは俺の友達の名前…」

 

昔暫く滞在した国で友達になった女の子が居た。

その子の名前が×××××だ、旅の間であんなに仲良くなったのは彼女だけで、今でも鮮明に覚えている。

 

「覚えていてくれたんですか!僕の今の名前はキノです、ファル僕ですよ!」

 

「×××××、いやキノ本当に君なのか?見た目は随分変わって、髪はもっと長かった筈だけど」

 

「旅には邪魔になりますからね、似合いませんか?」

 

「いや良く似合ってる…本当に君なんだな、なぜ君があんな酷い事を、殺人なんて」

 

優しかった彼女が、あんな酷い事をするなんてまだ信じられない、仲の良かった人達が皆殺された。

なんでこんな事に…

 

「確かに人を殺しましたが、理由が有ります。今から全て説明しますね」

 

「ああ、お願いするよ」

 

・・・・・・・・・・・・

 

彼女…キノから全てを聞いた、聞いてしまった…

 

俺はずっと騙されて?仲良くしていた皆も仕事だから、付き合ってくれていたのか?

俺が病気になったのも国のせいで、特殊な血のせいだと思っていたのに。

毎日辛い思いをして頑張ってきたのに、皆は俺を犠牲にしようとしていたのか?俺なんて死んでもどうでもよかったのか?

なんで…なんでこんな…

…もう何も分からない、これからの事も…何も考えられない

 

「ファル、貴方を連れて行きます」

 

「キノ?」

 

「約束通り、恋人になってくれますよね」

 

「そうだね、約束したから」

 

動かない頭で何も考えられないまま、返事を返す

 

「だから、僕と旅にでましょう。

二人で、ずっと一緒に旅をしましょうね」

 

「キノがそう言うなら」

 

「嬉しいです、これからは誰にもファルを傷付けさせません。僕が守ります、幸せにしますからね」

 

「本当に?キノと一緒ならもう傷付かない?幸せになれるの?」

 

もう傷付きたくない、幸せに暮らしたい、殺されたくない。

 

「本当です、ずっと一緒にいて守ります。一人にはさせません。誰にもファルを利用させませんから」

 

「ずっと一緒…」

 

「大好きなファルを全てから守ります、今度は僕が約束します」

 

そうか、大好きな人とはずっと一緒に居るのか…キノが全てから守ってくれるのか。

…それなら俺も

 

「俺もキノが大好きだよ、だからずっと一緒?」

 

「はい!ずっとずっと一緒ですね!」

 

嬉しそうに笑うキノ、それを見て俺も笑う

大好きな人とずっと一緒に居て守ってもらえる、俺は幸せになる、キノが幸せにしてくれる。

だからキノを信じていれば、俺はもう大丈夫。

大丈夫…大丈夫だ…大丈夫なんだ




キノさんのガチギレからの殺戮劇

大切な恋人を、そんな目に遭わされたら当然の行動
ファルさん大好きなキノさん、彼を守る為ならば何でもする

心が壊れた主人公


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英雄だった彼

続いたので章を分けました

こちらはヤンデレキノと主人公の二人旅の予定です

癒すキノと、少しずつ落ち着いていく主人公



顔に光が当たっているのか眩しさを感じる

昨日は森の中で野宿をした筈、もう朝なのか

ボーッとした頭で昨日の事を思い出していると、顔のすぐ上から声をかけられる

 

「起きましたかファル、おはようございます」

 

目を開くとすぐ目の前にキノの顔があった、頭の下には柔らかい感触これは膝枕されているのか。

キノの近くに居ると守られている様でとても安心する、大丈夫だって思える。

 

「昨日よりも顔色が良い様ですが、体調はどうですか?」

 

「おはようキノ、体調は少し良いかな」

 

「そうですか良かったです、この調子で健康になりましょうね。」

 

体調は確実に良くなっている、国に居た頃は頻繁な採血により、何時もふらふらで何も出来なかった。

キノとの旅は採血が無いだけでも、凄く楽になった。

 

「気を付けて下さいね、僕のたった一人の大切なファルシュですから。

少しでも変化があれば、僕にすぐ知らせて下さいね」

 

「ありがとうキノ」

 

「いいえ当然の事を言ったまでです」

 

キノはまるで紳士のようにニコリと笑うと、俺の着替えを用意し始めた。

 

******************

 

川で体を洗うファルを双眼鏡で眺める

 

「止めなよキノ変態みたい…変態その物だよ?」

 

「そんな事は無いよ、何処に危険があるか分からないからちゃんと監視しないと」

 

「そうかなぁ…」

 

双眼鏡越しに見るファルの腕には勿論の事、体の至るところに注射の後がある。

思わず歯軋りをする、なんでファルがこんな事に。

 

「キノ大丈夫?」

 

「大丈夫…だよ、ファルの血のお陰で直ぐに注射の後も治るよ」

 

そうは言ったが許せない今からでも引き返して…

 

「はぁ…キノ、ファルが戻って来るよ」

 

「っ!ありがとうエルメス」

 

うっかりしていた、急いで双眼鏡を鞄に仕舞いパースエイダーの手入れを再開する。

 

暫くするとファルが戻って来る。

野宿の間は邪魔する者は誰一人居ない、完全な二人きりエルメスも見張り役として僕を手伝ってくれる。

なるべくなら野宿の間に距離を詰めておきたいところだ。

 

******************

 

「キノ今戻ったよ」

 

「ファル大丈夫でした?傷は痛まないですか?」

 

「大袈裟だよ傷って言っても、全部注射の後だし。

キノの丁寧な看病のお陰でもうほとんど痛まないよ」

 

「そう…少しは痛むんだ…」

 

キノが下を向いて顔を隠し、ぎりっと拳を強く握り締め、歯軋りをする

 

「キノ?」

 

「あぁ、ごめんなさい何でもないです。

それよりも、今日の分の治療に取り掛かりましょう」

 

ニコリと笑うキノの少しの違和感や、誰が見てもわざとらしい笑顔もファルは疑わない。

だってキノを信じれば好きでいれば幸せに成れる、殺されないで健康に生きていけるのだから。

 

「はいどうぞ、先ずは諸々の飲み薬ですね」

 

「ありがとうキノ」

 

「いえ、なんなら僕が口移しで…飲ませましょうか?

少し量が多いですから」

 

確かに薬は大きめのカプセルやら、錠剤やらがゴロゴロしている。量も十錠は有りそうだ。

 

「キノがそう言うのならお願いするよ、俺はどうすれば良いかな?」

 

「なんて、ファルは飲み慣れてますよね…って!?

本当に良いんですか!」

 

「はぁ…キノ、駄目に決まってるでしょ。

ファルも、これはキノの冗談だからもう飲んで」

 

「そうだったのか、少し恥ずかしいな」

 

エルメスの助け船によりファルは自分で薬を飲み、キノは「…本気だったのに、エルメスのバカ…」等と呟いていた。

 

「キノ、飲み終わったよ」

 

「はい、全部飲めてますね。

疲れはどうですか?エルメスに乗れそうですか?」

 

「お陰様で何とか、キノにしがみ付けば落ちなさそうだよ。

まぁそれも、次の国までの距離にもよる位の自信の無さだけどね」

 

自分の腕を擦りながら話すファルは、注射痕の残る細く青白い腕を自信無さげに見つめる。

回復してきたとは言え何年にも及ぶ、筋肉の衰えは直ぐには治らないようだった。

それを見たキノの顔が途端に曇り、その後直ぐに何時もの表情に戻る。

 

「筋肉の量をチェックしましょうか、少し足を開いて下さい。

腕をだらんと下げて力を抜いて…」

 

「こう?」

 

足を肩幅まで開き、腕はだらんとぶら下がり完全に力が抜け突っ立って居るだけになる。

 

「そうです、では失礼します」

 

そう言ったキノは笑顔でファルの胸に抱きついた。

コレには観察していたエルメスから質問が入る。

 

「えっとキノ?何してるの、セクハラ?」

 

「ファル、僕を力の限り、抱き締めて下さい。

これは純粋な筋力測定ですから、エルメスも邪魔しないでよ」

 

「…なんだかなぁ」

 

「?キノを力一杯、抱き締めれば良いんだね。

分かったよ、こんなヒョロヒョロの腕じゃ、あんまり期待は出来ないけれど…」

 

ファルはぎゅうぎゅうと力一杯キノを抱き締めたが、精々子供の力と同じかそれ以下が良いところだ。

だがキノは幸せそうに微笑み、ファルの胸に頭をぐりぐりと押し付けていた。

 

「キノ?こんな力しか無いけれど、何故笑って居るの?」

 

「ファル、ファルシュ恋人同士のスキンシップは、幸せですね。

僕は今貴方の腕に包まれて、貴方の胸の鼓動を聞いて、暖かさを存在を感じて…凄く幸せです」

 

「…しあわせ?」

 

ファルの胸元から顔を上げ、少し上にあるファルの目を見つめて、キノは蕩ける様な笑顔で話す。

 

「そうです幸せです。

今僕は大好きな、愛する貴方の腕の中で凄く幸せです。」

 

「俺も幸せ…だよ」

 

大好きなキノが幸せなら、俺も幸せに違いない。




紳士的なキノ
エルメスは常識人(車?)
主人公はキノにだけイエスマン
キノの言うことが全て正しいと思っている。


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石の国

こんな国実際に有ったら良いなぁ


「僕の体も少しはマシになったかな」 

 

ついこの前まで青白くひょろひょろだった腕も、今では少し細いまでに回復し、身体中の注射痕も消えていた。

 

後は貧血を治せばキノさんがモトラドを買ってくれるらしい。

 

「そうですね、もう少し筋肉を付けて僕を抱き抱えられるまでになれば合格ですね」

 

「うん、頑張るよ」 

 

ファルが全く無い力こぶを腕で作りながら、二人で笑い合う。

 

実際にファルがキノを抱き抱えられるのは、体が治っても当分先の事である。

 

二人でエルメスに股がりながら次の国を目指す、キノが運転しファルが後ろに乗る。

 

そうして旅を続けているがモトラドに二人乗りでの旅は正直辛い所がある、次の国で少しゆっくりしようと思う。

 

「お二人さん、次の国が見えて来たよ」

 

「本当だ、城壁が見えて来た」 

 

「あの国はどんな国なの?」 

 

「さぁ、行ってみれば分かるよ」

 

「そうだね、それが旅の楽しみでもある」 

 

暫くガタガタと揺れる道を走ると城門が見えて来る、門の前には二人の男性が立っていた。 

 

「止まってください」 

 

門の前の男性が大声で叫ぶ、それに合わせてエルメスのスピードを緩めてやがて止まる。 

 

「こんにちは旅人さんですか?我が国には観光で?」

 

男性がキノに訪ねる、もう一人の男性はファルと荷物を怪しむ様に見ている。

 

「こんにちは、僕達は観光目的で三日間の滞在を希望します」

 

「どうもね」 

 

「こんにちは」 

 

「それでは入国審査に移ります、こちらへどうぞ」 

 

城門脇の小さな小屋へ誘導される、審査は直ぐに終わるそうで、ファルとエルメスは小屋の端で待っていた。 

 

「ファル体調はどう?立っているのが辛いなら、僕に座って居ても良いよ」

 

「ありがとうエルメス、まだ体調は大丈夫そうだよ」 

 

「辛いなら直ぐに言ってよ?倒れちゃ大変だ」

 

「そうするよ」 

 

一人と一台は仲良く会話をしていたが、それをキノがチラチラ見つつヤキモチを焼いていた。

 

入国審査はスムーズに終わり三日間の滞在を許された。 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 

キノは舗装された道を、エルメスに乗ったファルと進む

 

国の中はどこも平和で喧嘩一つ無い。 

 

「キノ、先ずは何処に向かうの?」

 

「先ずは宿だね、何をするにも先ずは宿を見付けないと」 

 

「宿を選ぶ基準は何か有るの?」 

 

「とりあえず安い事とご飯が美味しいことだね」

 

「後は僕が一緒の部屋に泊まれる事だよ」

 

「場所は入国審査官の人にお勧めを聞いたから、そこへ行こうと思うよ」

 

ふむふむとファルは頷きながら、国の様子を眺めていた

 

そうして目につくのは、キラキラと輝く石達で露店で安くで売られていた。 

 

「キノ、この国は宝石の取り引きのが盛んなのかな?」

 

「そんな話は聞いたことが無いけれど…」

 

キノもキョロキョロと辺りを見回すと、直ぐに露店が目についた。

 

「本当だね、凄く沢山の店が並んでいるみたいだ。

宿で荷物を置いたら、ゆっくり見に行こうか」 

 

「本当に!ありがとうキノ」 

 

「どういたしまして、僕も見たかったからお礼は必要ないよ」

 

「キノとファル、あそこが例の宿じゃないかな?」 

 

エルメスの言葉に二人が顔を上げると、先ず初めに美しいステンドグラスが目にはいった。

 

何色ものガラスが使われていて、とても見事な物だった。

 

「これは…とても見事だ」

 

「本当に綺麗だ、こんな所が安い宿なの?」

 

「とても安い宿には見えないね、後で高額を請求されても払えないよ?」 

 

「だよね、でも取り敢えず入ってみようか」

 

エルメスからファルが降り、キノと二人で宿へと入っていく。

 

宿の中に入ると外からは想像できない程のきらびやかな、装飾にまみれていた。

 

「た、高そうだよキノ」

 

「こ、こんな所に泊まれるだけの手持ちは無いよ」

 

「取り敢えずカウンターに行こうよ二人とも」 

 

「そうだね、分かったよ」

 

二人と一台は恐る恐るカウンターに向かうと、呼び鈴を鳴らす。

 

するとカウンターの奥から受付がやって来た。

 

「いらっしゃいませ、おや旅人さんですね」

 

「はいそうです、三日間の滞在を予定しているんですが、入国審査官にここが良いと進められまして」 

 

「それは光栄です」

 

「それで宿代は幾らなの?凄く高そうに見えるんだけど」 

 

「そんな事有りませんよお客様、当店は大変リーズナブルなお値段で商売しておりますよ」

 

「こんなに豪華なのに、ですか?」

 

キノがぐるっとロビーを見回しながら質問する 

 

「豪華?これがこの国の一般的な装飾ですよ?」

 

「そうですか、それではこのモトラドも一緒に泊まれる部屋でお願いします」

 

「ありがとうございます、お部屋にご案内いたします」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「キノとっても良い部屋だよ」

 

部屋は何処もかしこもキラキラで、調度品に至ってはとても高そうに見えた。

 

ファルは部屋を見回しながらキノに話しかける 

 

「そうだねとても安い部屋には見えない」

 

「モトラドを置くスペースも広いしね」

 

キノが荷物を片付けている間窓から、国を眺める

 

国はあちこちの露店で宝石を売っているのか、国全体がキラキラして見えた。

 

「ファルそろそろ買い物に行くよ?」

 

「分かった、今いくよキノ」

 

「いってらっしゃいキノ、ファル」 

 

「「いってきます」」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「これは…!」

 

「すごい数の宝石だね」

 

「それに凄く安い」

 

キノとファルが二人で露店に食いついていると、店主に話しかけられる。

 

「おや旅人さんかい?ここの石は全てこの国で採れた物なんだお土産に一つどうだい?」

 

「こんなに沢山採れるのですか?」

 

「ああ、この国では子供の小遣い稼ぎにもなっていてな、あまり価値は無いけれど綺麗だからお土産に丁度良い、子供達が川原で色石を沢山集めて私達が買い取るんだ」

 

「色石ですか?」

 

「そうだよ、余り高くないから皆ステンドグラスや調度品の装飾に使うんだ」

 

「そ、そうですか」 

 

キノにこっそりとファルが話しかける

 

「キノこの色石ってもしかして、宝石なんじゃないの?」

 

「そうみたいだね、この国の人は宝石って知らないんじゃないかな」 

 

「じゃ、じゃああのステンドグラスは…」

 

「全て宝石で出来ている事になるね」

 

「ひぇー」

 

「ファルこれはチャンスだよ、ここで大量に仕入れて次の国で売れば大儲けできる」

 

「!キノは賢いですね」

 

「えへへ、そうですか?」

 

ファルは露店に並ぶ宝石を眺める、その横でキノは高く売れそうな宝石を見定めている。

 

その時ファルのズボンを誰かが引っ張った。

 

「ん?」

 

「お兄さんこれを買ってくれますか?旅のお土産にお願いします」

 

ズボンを引っ張った少女を見ると、かご一杯に宝石を加工したアクセサリーが入っていた。

 

「えーと、それじゃあ」

 

かごの中を見ると、一つだけ光の加減で色を変える石が有る事に気が付く

 

「これを貰おうかな」

 

「ありがとうお兄さん!その石はこの国でも滅多に見付からない珍しい石なんだよ!」

 

それでも子供のおこずかい程度で買えた、少し多く渡すと女の子は喜んで帰って行った。

 

「ファル買い物が終わりましたよ、それであの女の子とは一体何の話をしていたんですか?」

 

気が付くとキノは能面のような表情をしていた。

 

「キノ怒っているの?」

 

「いいえ、ただの質問ですよ」

 

「これを買っていたんだ」

 

「これは…とても良い物を買いましたね、なかなか見付からない物ですよ」

 

「このネックレスをキノにと思って」

 

「え、良いんですか?売れば結構なお金になりますよ」

 

「キノに貰って欲しいんだ」

 

首にかけてあげると、キノは照れなからお礼を言った

 

「あ…ありがとうございます」

 

「喜んでもらえたならよかったよ、でキノの方はどうだったの?良い物は見つかった?」

 

「はい!沢山売ると宝石の価値が下がりますからね、少しだけ、けれど良い物を仕入れましたよ」

 

「そっかなら良かった」

 

「これでファルのモトラドを買うには十分な利益が出ますよ、美味しいご飯も食べ放題です」

 

そう言うキノの顔は、眩しい程の笑顔で溢れていた




モトラド購入資金調達回


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本編
始まりの海と船


ティーの性格が決まるまで書けるところまで書く
学園キノの様に将来はナイスバディーになるのかな
なると良いね


気付くとそこは海の上だった、知らない海だ

 

 

一体どういう事だ?確か転生と言う話だったが

水面に顔を写すとそこには十代後半位だろう青年の顔があった

雪の様な白い髪の毛、海の様な青い瞳

でも顔には前世の私の面影があった

 

転生とは十代の青年を海の上に放置するのが今の流行りなのか?

全然理解出来ない

 

海の上を多分、救命ボート?テント?そんな物で漂っている

これはそのまま死ぬんじゃ無いか?

でもどうする事も出来ない、流され漂うしかない

無力な事を実感するその事を思い知らせる為の転生だったのか?

 

どれ位経ったのか眠っていたようだ

何か音が聞こえる、テントから顔を出して様子を伺おうとするも

いきなりの浮遊感に座り込む、海の上で浮遊感とは?

それもすぐに終わり足の下に硬い感触、鉄の様な地面がある

 

誰かが入り口を開き光が差し込む

眩しさに目を細めると人影が見えた、凄く小さな…女の子だ10歳位だろうか、こちらを無言で見つめている

 

こちらも見つめ返すが女の子は動かない

こちらも動けない、何だこれ

 

「…ティー」

 

「え?何て?」

 

「…………」

 

女の子が凄く小さな声で鳴いた

小さいのは体だけでは無く声もそうらしい、視線を感じる

 

「…ティ…ファナ」

 

「ティファナ?」

 

「なまえ」

 

女の子は自分を指さす

どうやら鳴き声では無かった様だ

 

「君の名前はティファナ、ティーって呼んでいいの?」

 

女の子、ティーは頷く

その後私を指差す

 

「私は、私の名前は…」

 

どうしよう、前世の名前は使えないだろう

だって目の前の女の子はティファナだ

私が例えば山田太郎と言えば違和感しかない

世界観が滅茶苦茶だ

 

ん?ティファナ?メキシコの?

治安が凄く悪い街の名前じゃないか?

俺は詳しいんだ

この世界はそう言うのが良いのか、なら合わせてやろう

日本人の多い街がメキシコにあった筈

そうだ確か…思い出した

レオン・デ・ロス・アルダマだ

長くない?ティファナに比べて長い

ティファナ

レオン・デ・ロス・アルダマ

全然違う、なんだこの・名前に・が必要なのか?

でもティファナが待っているこれで行く

時間がないんだ

 

「私の名前は、レオン・デ・ロス・アルダマだよ」

 

急に黙った奴が

とても本名とは思えない長い名前を名乗り出す

職務質問で偽名を語る、不審者かな?

 

「…レオ…ン…デ…?」

 

ティーが言いにくそうにする

口数少なそうだもんね

 

「レオンで良いよ」

 

「レオン」

 

吃驚するほどはっきりと言った

何だ気に入ったのか?

 

ティーに手を引かれて、テントから出される

急いで全財産の救命袋だけを持ち出す

 

テントの周りには、遠目にこちらを見る人達が居た

すげぇ居るんだけど

ずっといたの?

名前を考えてるあの無駄な時間もずっと、皆で物音立てずに待ってたの?

全員黒い布被ってるけど忍者なの?

説明は?あの人達に対する説明は無いんですね

 

ティーはそんな人達に見向きもせずに床の扉を開く

この子凄くマイペースじゃないか?

 

今更だけどこれ船だろう

巨大な船、何処の超古代文明だ

戸惑う私を手招き階段を降りていく、置いて行かれ無い様駆け足でついて行く

ちらりと見えた後ろの救命テントには

先程の黒い人達が群がっていた、怖っ

取り込んで新しい仲間でも作るのだろうか?

 

ティーについて行くと配線だらけの通路を抜け

古い作戦室みたいな部屋に出る

何だろう?やっぱり戦艦とかなのかな?

分からないな興味の無い事はさっぱりだ

ここはただの通り道だった様で、ティーはどんどんと進んで行く

 

客室が並んだフロアに出た、ここは?

ここも通り道だろうか

だがティーは1つの部屋の前で立ち止まり、扉を開けながらこちらを手招いている

私が追い付くと再び手を引き中に入る

 

中は割りと広めの造りになっていた

部屋の端っこにベッドが2つある

1つを指差す

 

「ここ」

 

そのままティーを指差す

続いて

 

「ここ」

 

隣のベッドを指差し

それから私を指差す

これが私のベッドなのだろう

行く宛の無い私を、ティーの部屋に置いてくれる様だ

天使かな?

 

「ありがとう、ティー」

 

感謝の気持ちを込めて抱っこする

驚いたのか目を見開き硬直する

 

「ごめんね驚かせたかな、それとも嫌だった?

今下に降ろすから」

 

降ろそうとすると、ティーが私の肩を握りしめ

いやいやと頭を振る

 

「ん?まだ抱っこしていても良いのかい?

嫌じゃ無い?」

 

ティーが頷く、まだ小さなこの子はこの部屋で暮らしているのだろうか?一人で?

 

「ティーは、一人かい?」

 

こくりと頷く

 

「いつも?」

 

また頷く、これは親はどうしたのだろう?

通路の崩れた部分から見えた、下の街のような所にいるのだろうか

 

「下の街に、ティーの家族はいるの?」

 

「…いない」

 

珍しく口を開く

質問が煩わしくなったのかもしれない

 

「そうか、じゃあ…」

 

言いかけた言葉を、止められる

口を、小さな両手で塞がれた、可愛い

 

「…いない…どこ…にも」

 

そうだったのかそれは、辛いことを聞いてしまった

ティーを軽く抱き締める

されるがまま何の抵抗もしない

小さな子供が一人きりそれはとても辛く、悲しい事だろう

子供には家族が必要だ

そして私も一人きり、丁度良い

 

「それじゃあ、ティー私と家族になってくれますか?」

 

ティーが首を傾げる

 

「私も一人ですから…この世界のどこにも家族や友達、知り合いも居ません、本当のひとりぼっちです」

 

この世界には、正確には元の世界にも家族は居ない

天涯孤独だ

 

良く分からないのだろう、考え込んでいる

 

「分かりやすく言いましょうか、私と一緒にいてくれますか?

ずっと一緒にいて決して一人にしません、悲しい時も、嬉しい時もどんな時でも側にいましょう、どうですか?わかりますか?」

 

ティーが暫く考えてから、頷く

大切な質問だから真剣に考えていたのだろう

目と目が合うと緊張がとけたのか、私の顔を見ながら、涙をぽろぽろと流す…?

幼女を泣かした、これは即死刑だ

いや待って貰おうか、泣き止ませたその上で笑顔にしたらどうだろう?

 

「ティー…ティファナ、大丈夫ですよ

これからはずっと一緒ですからね」

 

ぎゅっと抱き締め頭を撫でる

このコンボならどの子供でもたちどころに泣き止む筈

ん?可笑しいなしゃくりあげ始めたぞ

私の首に腕を回し顔を押し付ける

悪化の一途を辿っている、これは死刑だわ

 

「ほんとうに…ひとりにしないの?

おいて…いかないの…もういいの?」

 

ティーがしゃくりあげながら、必死に話す

 

「私が一人にしません、置いても行きません

ずっとずっと一緒です」

 

とうとう大声で泣き始めた

今までずっと我慢していたのだろう、悲しみを出しきる様に

その日はずっと泣いていた

 

 

泣き止むまでずっと抱き締めていた腕と

至近距離、顔のすぐ側で大声で泣かれた為

耳と腕が死んだ




ティー可愛い取り敢えず10歳位の設定
後で不都合があれば変えられる位には
重要な設定では無い

何歳でもティーは可愛い

勘違いポイント
主人公は家族=妹に、家族愛
ティーの家族=プロポーズ、恋愛

主人公は純粋に心配して妹位に考えています


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船の中の国

ティーに朝起こされたい
朝の日差しで、髪の毛がキラキラしてそう
こんな娘がほしい
親の気持ちになる


その後泣き疲れたのだろう、ティーは眠ってしまった

 

眠ったティーをベッドに降ろす、降ろせない

首にがっちりとしがみつき足で私の腹を締め付けている、力が強い

このままでは殺される、背中を撫でると拘束が緩む降ろそうとすると締め付ける

 

起きているのかと思って確認するも、熟睡している

無意識でこれは凄い

 

仕方なく一緒のベッドに入れる

すると足が離れたが腕は力が弱まるも離れない

寝違えないのか

ずっと一緒ってこういう事では無い

ティーが満足そうな顔をしているので、それは良かったが…これで良いのか?

もう私も寝る

 

・・・・・・・・・・・・

 

「…おきて」

 

顔をぺちぺちと叩かれている、何だろう

目を開くとティーが叩いて起こそうとしていた、力が弱く優しさを感じる

おはようと言いかけて痛みが走る

私が寝違えている、解せない

 

「おはようございます、ティーは早起きですね」

 

「おはよ…レオン」

 

ティーに手を引っ張られ体を起こされる

ずっと思っていたけどこの子力強いよね?

そのまま手を引かれ、机に向かう

食べ物があったパンにスープ、サラダに肉まで

立派な朝食だこれはどうしたのだろう、ティーに確認する

 

「ティーこれはどうしたの?

ずいぶんと立派な朝食だけど」

 

「…もらってきた」

 

机の下のバスケットと、扉を交互に指差している

この船は配給でもあるのだろうか?

考えていると椅子を叩かれて座れと手を引かれる

手を引くの好きだな、にぎにぎしてるし

 

椅子に座ると私の膝の上にティーが座る

え?ここで食べるの?

向かいにも椅子あるけど

 

「ティー?向こうにも椅子があるよ?」

 

日本人式の遠回しな言い方、決してはっきり膝からどけとは言わない

こちらを振り返り服を掴む

 

「…だめか?」

 

体格差的に自然と上目遣いでそう言う

可愛い、天使だここに天使がいる

 

改めて天使もといティーを見る

紫がかった灰色の髪、光の加減によっては白にも見える

眉毛も睫毛も同じ色で真っ白だ

ショートカットを真ん中分けにしていて

頭の左側に、ピョコンと新芽の様なあほ毛が出ている

 

瞳はエメラルドグリーン眠そうにしている、昨日からずっとだ

 

眉毛は丸くまろまゆだ、可愛い

 

子供故に小さく私の腰よりも下の身長しかない

体重も軽い

 

ティーが不安そうにしている

 

「良いよ、そのまま食べよう」

 

ティーは頷くと食べ始める

私も手を伸ばすが、とても食べにくい

四苦八苦していると千切ったパンをつき出される、取ってくれるのだろうか

受け取ろうとすると引っ込められる、一体なんだ?

 

「ティーどうしたん…」

 

話の途中に、口にパンを突っ込まれる

 

噎せそうになるが気合いで飲み込む

この子加減を知らないのか?喉の奥まで全力で突っ込んだぞ

水を飲みなんとか落ち着く

 

「ティー、ありがとうございます

でも私は自分で食べ…」

 

また突っ込まれる、この拷問は食事が終わるまで延々と続いた喉の奥がとても痛い、死ぬかと思った

 

この子に一番必要なのは、力加減を教える事だ

 

朝起こしてくれた時は出来てたよね?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

船の中を案内してくれる様だ

 

やっぱり手を繋がれたまま

無口だがスキンシップは好きな様だ

 

この船の中は下の方に街がある

街と言うよりは、船全体が国の様になっている。

広く入り組んでいて一人では絶対に迷子になるぞ

怖くなって手を握る力を強めた、ティーは立ち止まり振り返る

 

「ごめんね、痛かったかい?」

 

ふるふると頭をふる

繋いだ手を見つめている

 

「じゃあどうしたの?」

 

「…あったかい?」

 

「手を繋いでいるからじゃないかな」

 

「ちがう…むねの…あたり」

 

服の上から胸の辺りを撫でている

多分心の事だろう、一人きりでは手を繋ぐ事も無い

 

「手を繋ぐと、心が暖かくなるのかも知れないね

私も今心が暖かいよ」

 

ティーは不思議そうにした後納得したのか頷いてまた歩き出す。マイペースだな

ただ手を握る力が強くなっていた、地味に痛い

 

ティーは慣れた様に進み、目的地に着いたのだろう

一軒の家に入るとそこには老人がいた

 

「おや?ティーどうしたんだ、彼は?」

 

「…かぞく」

 

老人は驚いたのか皺くちゃの目を大きく見開き、ティーと私を見比べている

それはそうだろう、昨日まで居なかった家族を突然連れて来たのだから、普通に事件だ

老人は暫く考えこちらを向いた

 

「ティーは鋭い子供です、大人に負けない賢さもある。その子がここまで懐くのなら、貴方は悪い人では無いのでしょう」

 

ティーの信頼度が高い、この子はそんなに凄かったのか、褒めたくなり頭を撫でる。

老人がまた驚いている

 

「おおっ今まで触れようとした者は、皆避けられ手をはたき落とされたのに」

 

そんな事してたの?

じっとティーを見ると、そっぽを向いていた

 

「それで貴方は?」

 

「私は、レオン・デ・ロス・アルダマです

長いのでレオンと呼んで下さい」

 

「レオンさんですね

私はここの長老…のような者だ、ここに来たと言うことは、仕事を探しているんだね?」

 

仕事?ここは職業案内所だったのか?

働けるのは有難いけど、急だな

 

「…わたしとおなじ…しごとにして」

 

「良いのかい?普通の人には、辛いと思うよ」

 

「だいじょうぶ」

 

大丈夫じゃ無いですね、私が考えている間にどんどん勝手に話が進んでいる

 

「分かったティーがそう言うのなら、本当に大丈夫なのだろう仕事場は同じ所にしておくよ。今日は国を案内してあげると良い」

 

「ありがとう」

 

ティーに手を引かれるが、踏ん張り急いでお礼を言う

 

「有難うございます、これからよろしくお願いします」

 

何の仕事か分からないが、礼儀は大切だ

老人は頷いて見送っている

 

しかし何の仕事だろう?

ティーが大変な仕事をしている事は分かった

私でも大丈夫だとは言っていた

今日は案内と言う事は、明日から仕事か頑張らないといけないな

 

案内されて街を見ていくが、ここはあれだ言うなればスラムだ

しかしティーの住んでいる部屋はとても綺麗で、食べ物も豪華だここと比べると、天国と地獄、月と鼈だ

この子は一体どういう立場なのだろう

まったく不思議な女の子だ

 

上の層に連れて来られる

街よりは綺麗だが、全体的に埃が積もっている

ロッカールームに案内された

袋に入った新品の服が並ぶ古ぼけてはいるが、何故こんな物があるのだろうか?

新しい服と靴を渡される

 

「これは、使っていい物なのかい?」

 

ティーは頷く

他にも鞄やナイフ、生活に必要な物を渡される

しゃがんで靴のサイズを確認する、ピッタリなのはきっとたまたまだ

さらっと混じるナイフが怖いがきっと料理に使うのだろう、そうだろう

 

「…ごしんよう…ぜったいに、しんじゃだめ」

 

口数の少ないティーのさらに珍しい長文だ

大切な事なのだろう、真剣に見つめられる

ナイフを大切にしまう

 

「いっしょう、てばなさないで」

 

「分かりました、絶対に手放しません

ティーを残して死にませんから」

 

ティーがぎゅっと抱きついて来る

しゃがんだまま私も抱き締め返す、この体勢は私の方が抱き締められている

額にヒヤリとした柔らかい感触、チュッと音が聞こえた

 

「おまじない」

 

ティーは無表情のまま雰囲気は嬉しそうだ、いや少し笑っている

 

私は背中に冷や汗が流れるのを感じた

ロリコン…頭によからぬ言葉が走る

頭からそのおぞましい言葉を追い出し、ティーに笑顔を返す

 

今気づいたがナイフが無いと死ぬような危険な国なのだろうか?ナイフの使い方なんて知らない

 

私はティーにナイフでの戦い方を教わる事にした、まだ死にたくない

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ここから登場人物設定

オリジナル要素ふんだんにあり

見たくない方は飛ばして下さい

 

ティファナ

通称ティー

 

10歳位

身長小さい

ナイフで戦闘出来る

割りと強い

手榴弾スキー

 

両親に捨てられてから一人きり

 

主人公が気に入ったので、自分の部屋で休ませてあげようと思っていた

主人公にプロポーズされた為(勘違い)

色々と世話を焼く

 

もともとは、下の層の街に案内するだけの役割

 

実は初めて見た時に、主人公の髪色が

自分と同じ髪色に見えて固まっていた

 

主人公とのスキンシップは好き

他人に触られるのは大嫌い




可愛い天使は幸せになるべき
幸せにしたい
幸せにする

まだ小さい
原作の頃には大きくなる、それでも小さい

勘違いポイント
手放さない
主人公=ナイフの事
ティー=ティー自身の事

少しずつずれて行く


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船の中の生活

強さ
キノ とても強い
ティー 強い
主人公 普通よりは強い

全体的にフワッとしか決めて無い



辛い大変な仕事だとは聞いていた

 

でもまさか肉体労働だとは思わなかった、だってティーがしている仕事だって

10歳位の女の子がしてる仕事だっていってたもん、こんなの聞いてないよ

そりゃティーに力が付くわけだよ

 

毎日へとへとになるまで働き、仕事が終わる頃には動けなくなる。

部屋まではティーに運んでもらう

 

どうやってだって?引きずってだよ

 

同僚や色々な人の前を、初めは恥ずかしかった

でも動けなかった、今では完全に身を任せている

周りの人も、毎日の事に慣れてしまい微笑ましそうに見ている

 

ティーの性格が丸くなったのかと撫でようとした人もいた、でも触れられる直前にティーの体がぶれ、相手の手を殴りつけた、あまりの衝撃に殴られた方は顔から地面に倒れ込む。

えっ叩くか避けるって聞きましたけど?

こんなバトル漫画みたいな動きするの?

身体能力の高さに恐怖を覚える

 

部屋に返るとお風呂に投げ込まれる

何処にもぶつからないのは、ティーの優しさである

初めは頭をぶつけ、その後暫くはたんこぶを撫でられ続けた、痛いからたんこぶ触らないで

お風呂の間にティーにより食事が運ばれている

ティーが風呂に入り、その間に私が服を洗い場に運ぶ

その後一緒に食事だ

 

この生活は一見何の問題も無い様に思える、しかし大きな問題が有る、それは私がティーのペットか何かの様だと言う事である。

 

部屋に運び風呂に入れ食事を与える、全部任せきりだ。

私よりもティーの方が体力がありとても強い

仕事後私は動けないがティーは余裕で動ける

大変申し訳ないがこれではヒモじゃないか?

少し違うのか?

 

一度私が仕事後に頑張って動こうとした事があった

珍しく焦った顔のティーに手刀で意識を落とされ、部屋に運ばれていた、怖い

理由を聞いても答えてくれなかった

 

そんな生活が暫く続いた

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

皆さんは暫くって、どれ位だと思う?

 

1週間?1ヶ月?半年?1年?

正解は…3年でした

 

なんで?長くない?こんなに居るつもり無かったよ

初めはお金がたまったら何処か陸地に寄った時にでも、降ろして貰おうと思っていた

でも一向に陸地になんか寄らない見えない、近付かない

 

さすがにおかしいな?と思って1年経った時位にティーに聞いたら

今のところ全部船の中で成り立っているから、陸地に寄る必要は無いって

 

攻撃を受ける危険性があるから、陸地から見えるような所は進まないって

 

絶望したね

自分の愚かさに、初めに聞かなかった浅はかさに

これじゃあ計画が滅茶苦茶だよ

どうやって陸地に行けばいいの?

人は土から離れて生きられないのよって

何処かの某シータも、言ってただろ!

 

若かった私も前世の年齢に近付き、今では20代に見える正確な年齢は分からない

だって初期地点は海だし説明も無かった

何も分からないままだ

 

3年で得たものは

 

ナイフでの戦闘術

肉体労働で鍛えられた体

多少のまとまったのお金

この船の奥にあったトライクだ、モトラドと言うらしい

この世界はバイク等は殆どモトラドらしい

その位だ

 

ティーも変わった

 

年齢は10代前半位には見える様になり

身長も伸び私の腰の下から、腰の上くらいにはなった

そして何より少し話しやすくなったのだ

今までは

「…おはよ」

だったのが

「おはよ」

になったのだ、変わってない?

そんな事無い大進歩だ、とても会話がスムーズになった

 

どうやって陸地に行こうかな?

 

船の中にボートでも無いかとティーに聞くも、不機嫌そうに黙り込み答えてくれない

 

困った完全に手詰まりだ

私の交友関係はティー以外にはまったく無い、当たり前だ仕事しかして無いのだから、コミュ障では無いと思いたい

 

陸地に行く作戦を考え始めてあっという間に半年が経った、なんですぐに時間が経ってしまうん?

 

・・・・・・・・・・・・・

 

そんな全く進まない状況の中で、長老に呼び出された

 

「君が外に出たがっているのは、確かかな?」

 

「知っていたのですか?

誰にも話していない筈です、何故?」

 

「見ていれば分かる。

今までの旅人達が同じ様な目をしていた、外に恋い焦がれている目だね」

 

なんだ?今日の長老は何時もと違う気がする

ハードボイルドだ

 

「外に行く方法があるんですか?

ティーは今の所無いって言ってましたが」

 

「それはティーは貴方が大好きだから、外に出したく無かった…いや多分置いて行かれると、そう思ったのでしょうね。」

 

「ティーは私の大切な家族です、置いて行く筈がありません。外に行くなら一緒に行くつもりです」

 

「それをティーに伝えた事は?」

 

「もちろん…?」

 

勿論ある筈そうたしか…たしか…あれ?

言った筈…言ったよな?大事な事だからご飯の後にちゃんと伝えようって…え?

あれ?あの日ご飯の後に…あっ寝て…る?

 

伝えようと思ってそのまま寝落ちしてた

自分の中で言ったつもりになってた

ヤバい、そりゃティーも不機嫌になる

 

「伝えて…無かったです」

 

長老の顔が険しくなる

そりゃそうだ

 

「次に陸地に寄るのは、1週間後だ

ティーに伝えて用意しておくと良い」

 

「ありがとうございます」

 

「それから、これを」

 

長老は布の包みを渡してきた

開いてみると、中にはとても大きな宝石が

大きさも輝きも見事な物だこれは?

 

「長い間真面目に頑張って来たからね。

退職金代わりだよ、ティーの分も入っているから受け取るしかないよ」

 

「そこまでしてもらうのは…いえ

受け取っておきます、ティーに不自由はさせられませんから」

 

「1日も休まず今まで良く頑張ったね。

倒れても次の日にはちゃんと仕事に来る、本当に頑張ったよ。さぁもうお行き、元気でやるんだよ」

 

長老は前に体が弱ってもう上層には行けないと言っていた、ここで最後のお別れだろう

 

「色々とお世話になりました

本当に、ありがとうございます」

 

私の事を見ていてくれた人がいたのか

ティーと二人きりで支え合って生きていたつもりだった、でもそうじゃ無かった

そう思うと涙が出てくる

それを隠す様に、足早に立ち去る

 

この世界に来て泣いたのは二回目だ

 

一回目?ティーに初めて特訓でぼこぼこにされた日に、こっそりと枕を濡らした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

部屋に戻るとティーが居た

丁度良いこのまま言ってしまおう

 

「ティー、一緒に陸に行こう」

 

「いっしょに?」

 

不思議そうに首を傾げている

 

「家族だからね、ずっと一緒に居て

一人にしないと約束したよね」

 

「またおいていかれると…おもってた」

 

「また?もしかして、両親に置いていかれたのかい」

 

嫌な予感は当たるものだ

この場は予感ではなく、確信に近いが

 

「そうきいた」

 

「そうか、でも私は置いて行かない

一緒にこの国を出よう」

 

こくんと頷く

 

「おかあさん、さがしてくれる?」

 

「お母さん?」

 

「わたしの、おかあさん

ついででいいから」

 

ティーのお母さんを探すのかそれも良いかも知れない。私は陸地に行きたいだけで、目的は無い

ゆっくりと旅でも、と思っていたが

ティーの母親探しなら立派な目的だ

 

「ついでで良いのかい?

お母さんに会いたくは無いのか?」

 

「かぞくはレオンがいるから

かくにん…したいだけ、りゆうをききたいだけ」

 

キュンと胸を撃ち抜かれる

家族、良い響きだな

 

「確認と理由を?」

 

「わたしを、すてたりゆう

それとおかあさんがみたい、かおのかくにん」

 

ティーは黙っていたがずっと母親に会いたかったんだろう、気づいてあげられなかった

絶対会わせてあげよう

 

「分かった、そうと決まれば準備だね

出発は一週間後だそうだ

私とティーの退職金を貰ったから、十分な物を揃えられるよ」

 

「わたし…おれい、いってくる」

 

ティーは目を見開いて驚いた後

長老にお礼を言いに行ったのだろう

扉から駆けて行った

こういう所も成長した、表情も以前より分かりやすい、良い事だ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一週間はあっという間だった

 

旅の準備はそれほど、お金は掛からなかった。

何故なら、船の中を探せば大抵の物は揃ってしまった

退職金の宝石は困った時の為に置いておこう

 

ティーに聞くと船の中の物の場所を教えてくれる

それを手分けして部屋に運ぶ

その繰り返しで、旅に必要な物は揃った

準備の中でボートも見かけた

ティーは知っていた筈、何故以前質問した時に教えてくれなかったのか

 

「わたしからはなれるつもりかと、おもったから」

 

あの時にちゃんと説明していたら、もしかして?

 

「ひとりでいくのはゆるさない

わたしといっしょなら、いい」

 

やっぱりか!

また1年を無駄にしていた

本当に私は駄目だな

 

そんなこんなで準備が出来た

旅立ちの日だ

 

そして私のモトラド初披露の日

 

見つけた時から、修理と改造を重ね

世界にたった一台しかない、特別製だ

大切な旅の相棒になってくれるだろう

 

修理した所私のトライクは、サイドカートライクと言う物だと判明した

ティーが乗るのに丁度良い

座席はふかふかだ、ティーが乗るのだ最高の物を用意した

 

後は積載量だ、モトラドの積載量が不安だったので

後ろと横に積める量を増やした

ちょっと大きくなったが、モトラドはモトラドだ

色は目立たない黒にしている

 

ティーがこちらを、いやモトラドを見ている

良さが、この良さが分かるのか

ティーは勝手にサイドカーに乗り込む

 

荷物が固定されているのを確認して走り出す

見送りは無い、振り返らずここから見える道を走って行く

 

これからはまだ分からない、最初に見かけた国に暫く滞在して方針を決めよう

 

ティーは風を感じるのか、気持ち良さそうにしている

私はスピードを上げてモトラドを走らせた

 




つまのつとめ
ティーの認識
朝から夜まで、生活の面倒をみること
イケメンかな?

イケメン天使ロリ

強い

たまにぽろっと、何かを落とす
手榴弾です
船の中から、沢山持って来た
他にも、持ち出している様子


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武器の入手 ティー 相談

主人公の武器
分解出来るスナイパーライフル
遠距離型の銃です
暗殺者が屋上とかで使うあれ
FPSで鍛えた腕前
以外と上手

サブ
ハンドガン、ナイフ

この話は後日加筆予定あり


ティーと船を出て、少し経った

 

あれから順調な旅が続いている、特に困った事も無く平和…では無いな、襲って来た人を殺した

 

初めはティーが気付き、いきなり「ふせて」と言われた何も分からず伏せると目の前がふっ飛んだ。

ティーの手には何かのピン、もう1つ取り出すのを見ると手榴弾の様だ。

船から何かを持ち出しているのは知っていたが、手榴弾だったのか

わぁティーはしっかり者だなぁ、遠い目になる

でもそのお陰で救われた

 

ふっ飛んだ場所を見る、死にかけだがまだ生きている人がいた、だがもう助からないだろう。

体が半分無い、ティーがナイフを持って立ち上がるティーを止めて私が行く、殺してあげないと彼が辛いだけだ。

 

その時に始めて、人を殺した

 

ティーに貰ったナイフで人の首を裂いた

辛くないわけでは無いが、それだけだった

もっと吐いたり、泣いたり、気を失ったりするかと思っていた

案外呆気ない、殺人だった

私は冷たい人間なのかも知れない

 

ティーは何も言わなかった、ただ手を握っていてくれた

それが有り難くて、心が落ち着いた。

 

その後はもう何人も襲って来る人を殺している

でも意味の無い殺人も、自分から襲う事も絶対にしない

 

私は殺人鬼では無いから

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

遠距離武器

 

「ぶき?」

 

「そう、私も何か遠距離からの攻撃手段が欲しくて

近付かれる前に、なるべく危険の減る様に」

 

ティーに相談する

知識の量なら誰よりも優れている

 

「いいものがある」

 

ごそごそと荷物を漁る、船から色々持ち出していたが

武器もあったのか

 

「これ」

 

大きめのアタッシュケースを渡される、中はバラバラの銃が入っていた

説明書を渡される

 

「よんで」

 

暫く読んで見たがよく分からない、組み立てながら教えて貰う事にした。

 

ティーは頼られたのが嬉しいのか、何処か得意気だ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

組上がった銃は、スナイパーライフルだった

スコープを覗くとまるでゲームの様だ

 

試しに撃ってみる、的の隅に当たった

真ん中には当たらなかった

ティーが驚いている

 

「つかったこと、ある?」

 

「初めてだけど」

 

「すごい」

 

また驚いている、的に当たったのが良かったみたいだ使った事は無いが、ゲームなら良くしていた。

FPS、簡単に言うと銃で敵を倒すゲームだ、その経験が役にたったのかもしれない、まさか転生してから役にたつなんて。

 

実戦で使うのはまだ先にして、自信がついてから、確実に使いこなせると思えた時まで我慢だ。

それまではナイフで戦おう

 

そう思った所でまた何か渡された

 

「なれるまで、これ」

 

ハンドガンだ、試しに撃ってみる

的の真ん中近くに当たる、これは使いやすい

 

「これで守って見せます

ありがとう、ティー」

 

早速練習を始めるこれで身を守れる

 

「かっこいい」

 

真剣に練習する顔を見て、ティーは呟く

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

武器は一月もすると使える様になった

普通はこんな物なのか?

皆一月程で使える様になるのか?

 

なんだか早い気がするが、分からない

ティーは使わないみたいだし

 

ハンドガンは外す事の方が少なく

ライフルは遠くの動く敵に当てられる

充分実戦で使えるレベルだ

 

スナイパーライフルは狙撃専門

近接戦闘はナイフとハンドガンを組み合わせて戦う事にしようと思う

戦闘を教えてくれるのは、ティーしかいない

また、ぼこぼこにされる日々が始まるのか…

今度はティーに勝てる位強くなって、私が守る側になりたい

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

この世界で家族が出来た、小さな可愛い女の子

ティーが私の大切な家族、転生してから手に入れた暖かな居場所、絶対に守りたいと思えた初めての人だった。

 

ただその大切な家族が強い、目の前に手榴弾を的確に投げ、打ち漏らした敵はナイフで仕留める、まるでプロの殺し屋。

 

守るなんて言って守られている、私は凄く格好悪い。

 

夜の野宿中二人でのんびりしていた

 

「ティー?少し良いかな?」

 

ティーは首を傾げてこちらを見る

私の隣に座っているので、そのまま聞いてくれるのだろう

 

「私はティーを、守りたいと言いましたよね?」

 

こくんと頷く、嬉しそうだ

 

「でも私は、ティーに守られる程に弱い…」

 

悔しくて拳を握る、ティーは黙って聞いてくれる

 

「どうすれば、ティーを守れますか?強くなって大切な家族を守りたいんです。」

 

真剣に相談するどうすれば、ティーは強いが戦うのを殺し合うのを見ていると不安になる、何も出来ない自分が不甲斐なく堪らなく悔しくなる。

 

強く握りしめていた手を、ティーに優しくほどかれる

 

「レオンはつよい」

 

「でも、ティーを守れる程は強くありません」

 

ティーが頷く

 

「それがにんげんの…せいちょうそくど」

 

慰めてくれているのだろうか、独特な言い回しだが普通に成長はしていると、そう言ってくれているのかな。

 

「ありがとうございます、ですがもっともっと、強くなりたいんです」

 

ティーは、んーと考えると閃いたのか口を開く

 

「それはじきがきたら」

 

「時期が来たら?」

 

何の時期だ?

 

「とばして、きたえる」

 

「飛ばして、鍛える?」

 

まったく意味は分からないが、何かを考えてくれているみたいだ

 

「いまは、れんしゅう」

 

「そうですね、色々考えても仕方ありません。練習は着実に力が着きますから、明日からもお願いします」

 

練習は裏切らないらしいから、今は少しずつでも着実に実力を着けて行きたい。

 

ティーが抱き付いて来た、もう眠たいのだろう、寝袋の用意をしよう

 

「ティー今から寝床を用意しますね」

 

「ん」

 

そう言って私から離れた、とても良い子だな

頭を撫でて用意を始める

 

 

 

 

 

ティーは離れた暗がりに向かって1人呟く

「…おとうさま…おねがい」

 

何もない闇が蠢き、現れた黒い靄の様な触手が頷く様に蠢いた

 

「…ありがとう…つよくして」

 

もう一度頷く様に蠢くと、闇の中に掻き消えていった




はじめてのさつじん
ナイフ
武器の入手(貰っただけ)
スナイパーライフル
ハンドガン

乗り物

サイドカートライク

転生特典2

適正・補正アップ

乗り物や武器、道具何でも適用可
あくまで補正、使いやすくなるだけ、練習は必要
適正も伸ばしてくれる

ティーは蠢く闇とお話中
子煩悩なパパ設定?

ティーのお願いで、主人公は後々師匠の元に送られます


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シズとの出会いと依頼

シズさん女体化
イメージは和風美人
普段は私、怒こると俺、これは設定のまま
美人、天然、巨乳、ポニーテール
緑色の縦セーター
真っ直ぐな性格で悪を許さない
突っ走る事もあり勘違いしやすい
そんな設定



平和な国でのんびりする

 

ティーと旅を始めて一年は経っただろうか

色々な国を旅して私もティーも成長した

その話はまた今度ゆっくりと別の機会に

 

朝早くに目が覚めたのでティーが寝ている間に少し、ホテルの周りを散歩する

起こすのは可哀想なので寝かせておく

書き置きをしておけば大丈夫だろうこの国は平和だから

ほんの少しの間だけ一人にするだけだ

 

やはり朝の散歩は気持ちが良い

空気が澄んでいて深呼吸すると体の中が、浄化されていく様だ

まだ他の人も少なくちらほらとしか居ない

 

前方に人影が見えた、何故か目立つ何だろう?

目を凝らして見てみる

 

うわっなんだあの服、凄い強調されてる

でかいっとてつもなくでかい

緑色の縦セーターが胸にピッタリと張り付き形を強調している

 

私の視線に気が付いたのかその人物がこちらを向く

動いた事で揺れる黒いポニーテールと胸

顔は間違いなく美人だキリッとした切れ長の目

だけど垂れ目が優しさを物語っていた

まさに和風美人だ

腰には刀…あれ?日本人じゃない?

 

その横をトコトコと白い犬が歩いている

もっふもふだぁ、触りたい

目は茶色アーモンド形をしているサモエドか?

笑っている様だが賢そうな表情をしている

尻尾をふりふりして、可愛いなぁ

 

「おはようごさいます、はじめまして…ですよね?

こちらを見ていた様ですが何か御用ですか?」

 

やっべぇ話しかけられた

縦セーターで強調された胸を見ていました!

なんて言えば即刻、腰の刀で切られるだろう

もうひとつの本心を言うか

 

「おはようごさいます

ええはじめまして、ですよ」

 

にこりと笑って、愛想よく挨拶

これがコミュニケーションの基本だ

 

「私の故郷の女性に似ていたもので…懐かしくて、つい見つめてしまいました。

不躾な目で見てしまい申し訳ありません」

 

これも本心嘘はついていない

 

じっと目を見つめられている

真実を探っている様だ

 

「そうでしたか、どうやら本当の様ですね」

 

刀から手を離す、やっぱり切るつもりだったのか

情けない理由で死ぬ所だった

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

故郷の事を詳しく教えて欲しいという事で

近くのカフェで話をする事になった

 

「先ずは私の自己紹介から、私の名前はシズと言います、ある理由から旅をしています。

相棒はこのリクです、よろしくお願いいたします」

 

シズとリク名前が完全に日本人だ

この世界にも日本があるのか?

 

「ご丁寧にどうも私はレオン・デ・ロス・アルダマです、長いのでレオンとお呼び下さい。

私は特に急ぐ目的の無い、ゆっくりとした旅を楽しんでいます」

 

ティーはついでで良いと言っていた

きっと長い旅になる、急がずゆっくりと進んで行こう

 

それから頭を下げて挨拶だ

 

「それで?故郷というのは、どの辺りにあるのですか?」

 

咄嗟に言った故郷とは前世の日本の事でこの世界には無い、嘘が通用しないなら本当の事だけ言うしかないか…

慎重に言葉を選んでいく

 

「故郷はとても遠く、私はもう二度と帰れません」

 

世界が違うので遠いどころではないが

 

「…そうでしたか

では国や人の特徴や文化などは、どの様な?」

 

「大体の人は黒髪黒目、背は小柄で

手先が器用で真面目な人が多いですね」

 

「黒髪黒目?

その…失礼ですが貴方は違う様ですが、理由を聞いてもよろしいですか?」

 

あっ忘れてた。転生してから白髪青目だった、日本人の特徴など消え失せていた

 

「私は産まれた時から…この見た目です

両親は黒髪黒目ですが」

 

この世界の海で気が付いた時から白髪青目、嘘では無い

前世の両親は日本人で黒髪黒目、これも本当だ

 

「…両親と産まれながらに髪の色も、目の色も違う?

真面目な国民性の為浮気…では無いだろう突然変異か?そして二度と帰れない。」

 

ぶつぶつ呟いていたと思ったら

急にはっとしてこちらを見る

悲しみと申し訳なさの混じった目でこちらを見ている

 

「貴方も国に帰れない理由があるのですね…私と同じ」

 

何か誤解されている気はするが

訂正するとややこしくなりそうなので、曖昧に笑って誤魔化す

 

「本当は貴方が私の国からの刺客では無いかと疑っていましたが、違う様ですね。

疑ってしまい申し訳ありません」

 

「いえいえ、こちらがじろじろ見ていたのが悪いですから」

 

国からの刺客と言うことは、犯罪者か?

だがシズさんが悪い事をする様な人には見えない

凛とした雰囲気だし、貴族か何かだろうか?

巻き込まれたくないので聞かないが

 

「…貴方は、聞かないのですね」

 

「人それぞれ言いたくない秘密も、ありますから」

 

「貴方も?

いえ私は言えないのに、貴方に聞く事は出来ません」

 

ふっと寂しそうに微笑む

何とか会話を乗り切ったか?

 

「急ぐ旅では無い、と言っていましたが

一つ用事を頼まれてはくれませんか?」

 

乗り切って無かった

 

「何か…困り事ですか?」

 

シズさんが頷く

 

「この国のすぐ近くにある、平和な国の事は知っていますか?」

 

「いえこの辺りは詳しく無いので」

 

この辺りどころか、この世界に詳しく無い

 

「そうでしたか、なら説明からですね。

すぐ近くにある国はとても評判が良いのです、国民たちは争わず犯罪も無く平和、とても素晴らしい国だとか」

 

「それが本当なら、私も住みたい位ですね」

 

そんなに素晴らしい国があるのか

将来旅が落ち着いたら、移住も良いかも知れない

 

「ええ本当に

私はこの国に来る前にある旅人と出会いました、その人はその平和な国に移住を希望する、と言っていました。

まずは国の観光をして、それから決めると」

 

「移住するのですから、それ位慎重な方がいい筈です」

 

住んでからの引っ越しは、しんどい

お金もかかる慎重な位が丁度良い

 

「彼は平和な国を観光してから、この国に

私は他の国を観光してから、この国に

それぞれ違う道を通りますが、この国に来る予定でした。

ですのでその時にお互いの情報を交換する為、また会おうと約束しました

私も平和な良い国なら、移住したいですから」

 

こんな危険な世界で平和な国なら、皆住みたい筈

 

「けれど暫く滞在しても彼は来ません今現在もです。

ですのでその平和な国を、見て来てくれませんか?」

 

まとめると

・シズさんと旅人出会う

・再会の約束をして、それぞれ違う国へ

・シズさん再開の国で待つも、旅人来ず

・旅人探しを私に依頼

こうですか?

 

「入れ違いになるといけないので。

私はこの国で待ちたいのですが…勿論、報酬も支払します」

 

そう言ってお金が入った袋をじゃらりと

机に乗せ私に渡す

袋を覗くと金貨が見えた、欲しい

 

「そうですねその旅人を確認して、シズさんが待っている事を伝えれば、すぐに戻って来ても、良いでしょうか?」

 

「はい十分です

探して見つからければ、帰って来てください」

 

私が探して見つから無いのならば、ただ待っていても時間の無駄だろう

 

「その国まではモトラドで、どれ位かかりますか?」

 

「そうですね…半日もかからないでしよう。

この辺りは道が綺麗で、走りやすいですから」

 

なら往復で1日か。

旅人を見つけるだけならそんなに時間もかからない筈

シズさんも困っているし、受けるか

 

「分かりました、そのお話お受けします。

今日の昼過ぎに出発する予定です」

 

「ありがとうございます、すぐに受けて貰えて助かります。

戻って来たらまたこの店で会いましょう、そうですね…3日後から朝この店で待つことにします」

 

余裕を持って3日だ間に合うだろう

 

「わかりましたそれでは準備があるので、これで失礼します」

 

「依頼よろしくお願いします」

 

そして私は店を出た

 

それにしても、話してる間机に胸が乗っていた

どれだけ大きいんだ

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

ホテルに戻るとティーはまだ寝ていた

もう9時過ぎだぞ、そろそろ起きてもらわないと

 

「おはよう…ティー朝だよ、起きて下さい」

 

ティーは両手でぐしぐしと目を擦っている、可愛い

そのまま私に手を伸ばし抱っこまでが、毎朝の流れだ

そのまま椅子に座る頃にはすっかり覚醒している

寝起きが凄く良い

 

「ティー、私は少しお仕事に行く事になりました」

 

持っていたパンを皿に置き、じっと見てくる。

ちゃんと話せと言うことか

 

「ここからモトラドで半日の国へ旅人を探しに行きます。

伝言を伝えたらすぐに帰ってきます

余裕を持って、3日程の予定です」

 

ティーは怒るだろう、絶対一緒に行くと

 

「わかった、はやくかえってきて」

 

え?怒らないのか?

 

「ティー?私は一人で3日仕事に行きますが、怒らないんですか?

約束を、一人にしないと言った約束を守ってませんよ?」

 

ティーの事は、シズさんに面倒を見て貰おうと思っていた

 

長い間一人にだったから一人でも生活できるが、心配だ

 

「しんじてるから、だいじょうぶ」

 

「ティー」

 

「だんながいない、いえをまもるのは

つまのつとめ」

 

ティーは船に住んでいた頃から頻繁に妻の務めと言う、妻ごっこが好きなようだ

 

「妻の理解があって助かります

なるべく早く、帰りますから」

 

そう言うとティーは抱きついて来る

服を引っ張るのはしゃがめの合図だ

 

しゃがんで抱き締められるもう慣れた

額にキスのおまじない、これは慣れない

 

私のサイドカートライクでは、小回りが効かない為

レンタル用のモトラドを特別に貸して貰った

必ず返すと言う証明に大金を預けてある

時間が惜しい、さっさと用意をすませて出発だ

 

「一人が寂しいなら、誰か呼びますか?」

 

シズさんとか引き受けてくれるだろう

 

「つまのつとめ、ひとりでだいじょうぶ!」

 

ティーが言うなら大丈夫だろうが、早く帰って来よう

 

「いってらっしゃい、きをつけてね」

 

「行ってきますなるべく早く帰ります」

 

本当に夫婦の会話みたいだ

また額におまじないを貰った

 

私は慣れないモトラドに跨がり、評判の良い国を目指す

評判の良い国が、とんでもない国だと知らずに

 




シズさんは和風美人のイメージ
巨乳×セーター=ヤバい
魅力的な体に無頓着でいて欲しい



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ある評判の良い国

暴力要素あり
大幅改変
なるべく矛盾を消したい


ある国のカフェに一人の男と一台のモトラドがいた

向かい合って話している

 

「ねえレオン」

 

「なんだいエルメス」

 

「レオンはキノの事、どう思ってる?」

 

突然の質問に驚くが真剣に考える

キノは腕の良い旅人で知識もある、スキンシップが過剰で中性的な美形の女の子だ

 

「キノは優秀な旅人で、大切な仲間かな」

 

「優秀だから旅の同行を、許可したんだね」

 

「自分の身は自分で守れないと生き残れ無いからね、仲間ばかりを守っている余裕は無いんだ」

 

ティーもああ見えて、私よりも強いくらいだ

 

「キノは戦闘能力は満点だから大丈夫だけど、レオンの気持ちは?

キノからの好意には気が付いてるよね?」

 

好意とは全部をくれるとか、一生ついて行くとか言っていたあの話か

 

「まさかあれは本気で?」

 

「キノは本気でレオンが好きみたいだよ」

 

レオンは驚く

 

「私は君達を助けたけれど好かれる様な特別な事は、何もしていないよね?」

 

「その辺はキノから直接聞いてよ、キノが怖いからね」

 

そう言われてチラッと隣を見る

キノは最初から変わらず

私の隣に座り、私の服の裾を指先で掴んでいた

 

そして瞬きもせず、私の顔を見つめている

目が合うと少し頬を染め

にこりと嬉しそうに微笑む

 

「エルメスばっかりが話をするからだよ、僕だって話したいのに…ずるいよ」

 

「キノが話さないからだよ。

ボクはもう黙るから沢山話すと良いよ、少し眠るからね」

 

エルメスは黙り込み話さなくなる

 

「レオンさんは前の国でボクを助けた事は覚えてますよね?その後の事は?」

 

「前の国?あのとんでもない国だよね?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

前の国の事を思い出す

 

あの国は争い事は無く

とても平和で国民が皆仲が良く

素晴らしいと評判の国だった

 

その評判を聞き、国を訪れるも住民全員から敵意を感じる

私は体質のせいでどの国でも多少の敵意は感じる

そのせいで短期間にいくつもの国を転々としている

長くても3日が限界だ

 

色々な国を訪れたが

住民全員から笑顔で敵意を浴びせられるのは、初めての事だった

 

この国は何か可笑しい

私には合わない国だ、そう思いすぐにでも国を出ようとする

 

その時ふと国の真ん中の大きな通りを見る

道路の真ん中に、大勢の人が集まっていた

全員が手に武器を持ち

石を投げている人もいた

 

中心に居るのは、帽子の上からゴーグルをつけてマスクをした旅人の様だった

 

近くの住民達から会話が聞こえてくる

どうやら私には気がついていない様だ

 

「また旅人が来たみたいですね

今日は二人も、いやぁ良い日だ」

 

「この頃はよく来る、この前も男が一人移住したいと

訪ねてきましたっけ?」

 

「数日前…ですね、結果的には永住できましたな、土の下ですが。

いやぁ旅人が来るのは良い、大変喜ばしい事だ」

 

「そうですねぇ、こうして旅人達には私達の為に尊い犠牲になって貰う事で、皆仲良く暮らせる」

 

「本当に日々の不満や嫌な事は、全て旅人達で発散させて貰って、私達は平和に過ごしていけますねぇ」

 

「とても良い法律が出来た物ですよ。

今までの無法地帯が嘘のようだ

おっと、私達も石を投げないと

元気なうちに痛めつけないと、面白くないですよ」

 

「うっかり話し込んでしまいましたなぁ

このレンガをどうぞ、この大きさなら

良い反応が見られる筈ですよ」

 

はははっと和やかな会話をしながら

レンガを準備し人混みの方に歩いて行く

 

これがこの国のカラクリか

皆笑顔のまま、敵意にまみれていた理由が分かった

 

このままでは、あの旅人が殺されてしまうのも時間の問題だ

 

旅人を囲う輪が小さく、狭くなっていた

時間が無い…こうなれば仕方がない

 

私はモトラドからランタン用の油を取り出し、近くのゴミ箱にかける

そのまま火をつけ、ゴミ箱を蹴り近くのホテルにぶつける

 

その間にモトラドに跨がり、エンジンを暖める

 

ホテルから大きな炎が上がり、それに気がついた住民達が逃げ惑い消火しようとする者もいる

 

このホテルは歴史のあるとても古い物で、この国で1番大きな木造の建物だと説明を受けた。

そしてこの国の建物はほとんどが長屋の様に繋がっていて、一ヶ所で火事が起これば国全体が燃える

住民達は皆必死に、消火活動を始めていた

 

私は急いで旅人に近付く、様子を見ると

頭から血が垂れお腹を押さえ蹲っていた

 

「大丈夫ですか?」

 

モトラドをギリギリまで近付け訪ねる

旅人は私を見上げる

 

「この隙に逃げましょう

国を出るまで少し、頑張れますか?」

 

力なく頷く

その後よたよたとモトラドに跨がり、急いで出発する。

住民達は国中に燃え広がった炎の消火に忙しく、私達に構っている暇は無さそうだ

 

どうやら出入り口の門番達も、消火活動をしている様で門が開いたままだ。

そのまま国から逃げ出る

 

国を出て少しした所で、助けた旅人がモトラドごと倒れる

「いたっ」と言う声が聞こえた

急いで道の端にモトラドを止め、駆け寄る

 

「大丈夫かっ傷が痛むのかい?」

 

側にしゃがみ助け起こす

思ったよりも、軽く華奢な体に驚く

怪我を確認する為に帽子とマスクを外す

 

現れたのは幼さの残る中性的な顔だった

頭から血が流れ、苦悶の表情を浮かべている

もう体力の限界なのだろう

 

旅人を抱き上げ草むらに入る

少し開けた場所に出た、木が倒れギリギリ休めるほどの空間が出来ていた。

ここなら道からは見えない、少しは安心できる

 

旅人のモトラドと自分のモトラドを回収した後、荷物から包帯や薬を取り出す。

旅人の顔色が悪くなっている

上着を丸め枕にし、頭の下に差し込む

 

顔の血を水で濡らしたタオルで拭い

頭の怪我を見る、どうやら血はひどいが頭ではなく額を切っただけの様だ。

額もタオルで軽く拭き包帯を巻く

 

後はお腹を押さえていたな…

服を捲りお腹を見る、そこには広範囲に無数の痣があった

 

助けるのが間に合わなかったのか、申し訳ない

痛々しい傷になるべく響かない様優しく薬を塗り包帯を巻く、それでも痛いのかうめき声を上げる

 

可哀想に…まだ若いだろうに、こんなに辛い思いをして

慰める様に頭を撫でる

少しは和らいだのかうめき声が止まる

意識を失ったみたいで、寝息が聞こえる

 

ここはまだ完璧に安全とは言えない

国から十分に離れていない

 

夜は冷えるので焚き火をしたいが、あの国の住民達に見つかる危険がある為出来ない。

モトラド2台を風避けの代わりに設置し

私と旅人の荷物から毛布を引っ張り出す

 

旅人を毛布でくるみ、その上から私と旅人に毛布をかける

上着を枕として渡し毛布を二人で使うため肌寒いが怪我人が優先だ。

旅人が凍えない様、体を抱き締めそのまま眠りにつく

 

「とっても良い人だなぁ

ボク久しぶりに感動しちゃった」

 

頭の上の方から誰かの声が聞こえた気がするが

眠気に負けてしまう

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

ここから主人公の設定

 

見たくない人は飛ばして下さい

 

現代からの転生者

 

キノの旅を知らないため、普通に旅を楽しむ

キノの旅の小説、マンガがごちゃ混ぜになっている

この世界は人が怖い世界だと思っている

 

なるべく争いを避けたい為

敬語で丁寧な人柄になった

 

お人好しでは無く、目の前で殺されそうな人を見ると

見捨てるのが怖いだけ

 

戦闘スタイルは、遠距離からの狙撃

接近戦はナイフを使う

普通の人よりは強い

 

今のところ20代

 

身長はそこまで高くない

 

白い髪、青い瞳

 

主人公のモトラドは話さないが、意思はある

他の人が乗っても走らない(主人公の許可があれば走る)

話せないではなく、話さない

 

主人公が人の敵意、悪意に鋭いのは転生特典

 

死にたくないと無意識に望む

 

死ににくい様に敵意や悪意にいち早く気付ける様にした

 

特典は他にもある?




なんとなく変わった話
主人公の特典邪魔かな消そうかな


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出会いの国 キノ視点

それぞれの一人称
僕はキノ
ボクはエルメス
私は主人公
ここの小説のキノちゃんは少し、幼いイメージ
エルメスは冷静で淡白なイメージ



キノ視点

 

身体中の痛さで目が覚める

何でこんな事に、確かあの国で…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あの国は手続きも無く親切な門番達が招き入れてくれた

国を訪れた旅人には飲み物を振る舞っているらしい

僕は警戒して、一口飲んで残す

全員がにこにこと笑いながら、嬉しそうに歓迎してくれた

僕が入った後は安全の為かすぐに門が閉められた

 

国の人達は皆親切で話すときは笑顔のままで他の表情を見せない、少し違和感を感じた。

道路をモトラドで走っていると、道の真ん中で子供が座り込んでいた

モトラドを止め声をかける

 

「大丈夫?どうしたの怪我をしたの?」

 

子供が顔を上げる、女の子だ

 

「ううん違うの、頼まれたから座ってたの」

 

「え?」

 

「お母さんがここで座って囮になって、旅人さんの足止めをしてって」

 

はっとして周りをみるといつの間にか、大勢の人達に囲まれていた

 

囮の子供は親らしき人に駆け寄り、良くやったと褒められている、周りの大人達も皆偉い偉いと褒める

 

皆が笑いながらも、手に武器を持っていた

違和感の正体が分かった

 

「どうして、こんなことを…」

 

「私達が仲良く暮らす為ですよ

旅人さんが国を訪れると、私達の不満や嫌な事は全て旅人さんに解消させて貰うのです」

 

手の中の武器を見せながら住民は

にこにこして話す

 

「そんな事、許される筈が無い」

 

「いいえ許されるのですよ、この国の法律で決まっています。

この国は元々住民同士のトラブルや殺人、強盗、強姦、誘拐、他にも犯罪なら何でも毎日の様にありました」

 

「それに困った国のトップが、新しい法律を作ったのです。

日々の不満や嫌な事、やりたいことは全て旅人さんに身代わりになって貰い。

そして住民同士では争わ無い事、それから私達は変わりました。

旅人さんが居ない間は、次の旅人さんにしたい事を日々考え、話し合い犯罪行為が無くなり

皆が仲良く暮らせる良い国になりました」

 

住民達はその話を聞き、頷きいい話だと口々に言い合う

 

「そんな…狂ってる」

 

その時子供から石が飛んでくる

 

「お母さんもう待ちきれないよ!

早く始めようよ!」

 

「そうねぇ少し話過ぎたみたい、そろそろ始めましょうか」

 

住民達が喜びながらじりじりと近付いてきて、飛んでくる石がどんどん増える

その時、体がゆっくりとしか動かない事に気付く

逃げられずに一先ずエルメスの影に隠れるがここは十字路、四方八方から石が飛んでくる

頭に石が当たって怪我をしたのか、目に血が入り咄嗟に蹲って身を守る

誰かに肩を掴まれ引き倒され、僕に馬乗りになった誰かに思い切りお腹を殴られる

 

「やっと薬が効いてきたか?一口しか飲まないから心配したが、コップにも塗っておいて良かったよ」

 

「あれ?この旅人さんは、女性じゃないか」

 

「本当かい?なら楽しみがまた増えたね

死なないように気を付けて、夜に男達で楽しもう」

 

「はいはい、わかってるよ」

 

鳥肌が立つ、殺されるだけじゃなく体を好きにされるなんて…冗談じゃ無い

どうにかしたいが、どうにもならない

なんとか、何か、誰か助けて

その時誰かが叫ぶ

 

「あそこを見て火事よ!」

 

「何だって!」

 

「あれはホテルの方だ!大変だすぐに国中に広がるぞ!」

 

「早く消さないと!皆急ぐんだ!」

 

住民達が僕から離れていく

起き上がろとするがお腹が痛く蹲ってしまう

早く逃げないと、焦るが中々動けない

 

「大丈夫ですか?」

 

誰かの声がして、顔をあげる

モトラドに跨がった旅人の様だった

 

「この隙に逃げましょう

国を出るまで、少し頑張れますか?」

 

優しい声がする、どうやら助けてくれる様だ

ゆっくりとしか動けない体を必死にエルメスに乗せる

 

旅人は僕が乗るまで、周りの警戒をして待っていてくれた

僕がエルメスに乗ったのを確認すると走り出す

国の門が開いたままになっていた

 

しばらく走ると体力の限界でハンドルから手が離れる

僕の体ごとエルメスが地面に倒れる

 

エルメスが「いたっ」っと声を出す、申し訳ないなと思いながらも体はもう動かない

 

誰かに助け起こされたが、顔が良く見えない

いや違う…もう目が見えないみたいだ

誰かが凄く心配しているようだったが、限界が訪れたのかそのまま意識を失った

 

・・・・・・・・・・・・・

 

その後か…

 

暖かい

僕の毛布の上からもう1枚毛布がかかっていて

更にその上から誰かに抱き締められている

 

視線だけで腕をたどると、すぐ隣に眠る男の人がいた

眉を寄せ寒そうにしている

 

この人はあの国で僕を助けてくれた旅人だ

 

僕に毛布をほとんどかけて背中が出ている。

それじゃ寒い筈だ、僕の方からも抱き締め返し毛布を旅人の背中にもかけると更に暖かくなった

 

旅人は寝顔から眉間の皺が消え先ほどよりも安らかに眠っている

 

良い人だなぁそう思った

助けられた時は必死な顔で勇ましく

眠っている時は少し幼い優しい顔

 

旅人の顔に触れる、心臓がドキドキして

いけないことをしている気分になる

そのまま頬に触れ首筋まで辿ろうとすると

 

「キノ?もう大丈夫?ボクももう話しても良いよね?」

 

ビクッとして指を離す

その拍子にお腹が痛んだ

 

「いててっエルメスは大丈夫だった?

あれから僕はどうなったの?」

 

「ボクは投げられた石がいくつか当たっただけで、全然大丈夫だったよ

そこの旅人さんがキノの怪我の手当てをしてくれて、ボクもここに運んでくれたんだ。

いやぁこんなに良い人は滅多にいないね!感動したよ」

 

「そうなんだ、へぇ…」

 

助けた後に手当てをして看病まで、エルメスの言うように滅多に

いないほどの良い人だ

 

額を触ると布の感触がある

チラッと服を捲ると、お腹に包帯が巻いてあった

少し照れるな…ここまでしてくれてお礼をしなくてはいけない、何処かの国では体でお礼をするという

体で…僕の体は豊かとは言いづらいが

受け取って貰えるだろうか

 

「ねぇエルメス、体でお礼ってどう思う?

多分…結婚する事だと思うんだけど」

 

「キノどうしちゃったの?」

 

「彼には僕の命を救われた。

それならお礼もそれ相応に、価値のある物じゃないといけないと思ったんだ」

 

「それがキノなの?」

 

「違う…僕にそんな価値は無いよ

価値のある物を持っていないなら、僕と一緒に居て貰って…少しづつでも恩を返していこうと思うんだ」

 

僕も彼と一緒に生きて行きたい

声に出さずに心の中だけでそう思う

 

「ははーん、ボクは分かったよ

キノは旅人さんに[ハの字]なんだね」

 

「?…もしかして[ホの字]のことかい?」

 

「そうそれ!」

 

「…そうだね、彼が好きだよ

助けられた時に見えたあの勇ましい顔に、確かに胸がときめいた」

 

周りの人が全て敵で、その中に助けに来てくれた

それもたった一人で

絶望と死を覚悟していた僕に

燃える国を背に声をかける彼は、とても勇ましくて心臓が鷲掴みにされた

 

僕にもこういう感情があったんだ

けれど皆、こういう風なのかな?

 

彼に対する感情はとてもドロドロしている

 

彼を独り占めしたい

彼が欲しい

彼に見て欲しい

彼だけを見ていたい

彼に求めて欲しい

彼に好きになって愛して欲しい

僕だけキノだけと言って欲しい

 

師匠に聞いておけば良かった

恋愛や恋心なんて分からない

 

「確かに格好良かったね。

凄く勇敢で、危険を省みずキノの王子様みたいだったよ

キノが好きになったのならそれも良いと思うよ、ボクも旅人さんと一緒の旅は大歓迎だよ」

 

「エルメスが賛成なら決まりだね」

 

彼が目覚めるまでは暫く顔を見つめていよう

まだ体が痛むが、すごく幸せを感じる

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここから登場人物設定

オリジナル要素ふんだんにあり

見たくない方は飛ばして下さい

 

キノさん

 

原作よりも若干幼い

 

師匠の所から出て暫く位、ある程度は旅に慣れている

 

主人公の前では感情が良く出る

 

助けられて惹かれる→手当てを受け惚れ直す→じっくり考えて恋心を確認後、改めて惚れる

 

説明するのは、流石に恥ずかしい為

キノは、一目惚れと言う

恋も用心深い

 

戦闘が強い、体が丈夫、怪我がすぐ治る

死にそうになるが、死なない

 

自分の価値は無い、低いと思っている

 

実は胸は邪魔になる為、押さえ付けているだけで

あることはある

Bカップ位、しかし体が引き締まっている為に

結構大きい

 

筋肉はちゃんと付いているが、身長が低めの為

華奢で軽い

 

十代半ば、はっきりとした年齢は分からない




ヤンデレ好きぃ

キノが何時もより強くないのは薬のせい
気絶してる間に薬は抜けた

キノは自分を無価値だと思っている設定
幸せにしたい

外すとバルンってなるのが好き
大きいのも小さいのも好き
何がとは言わない


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逃げ延びた先で

旅人さんは心の中は現代人のままの喋り方です
一人称が私なのも現代からです

キノ大暴走に見えてしっかり考えている
一目惚れから頭が大分可笑しい


意識が浮上する

 

ここは…そうだ確かあの国を出て

助けた旅人をすぐ隣に寝かせた筈だ

 

目を開くとすぐ目の前に旅人の顔がある

正確には私の顔を見つめていた

 

「あっ目が覚めましたか?僕を助けてくれたんですよね?ありがとうございます」

 

私が言葉を発する前に旅人が喋り出す

この距離で会話を続けるつもりだろうか

互いの吐息がかかるこの距離で

 

「えっと取り敢えず大丈夫ですか?

まだ体は痛みますか、何処か不調は?」

 

「貴方の完璧な処置のお陰で大丈夫です。

あの国で良い様にされたのは、飲み物に混ぜられた薬で体の自由を奪われていたからですよ

その薬ももう抜けた様です」

 

そう言って平気そうにしている

そして何故か旅人の手が、さっきから私の体を撫でている気がするが…気のせいでは無いのだろう、胸と腹を撫でられている。

むずむずするから止めて欲しい

 

「旅人さんは…」

 

「キノです、そう呼んでください」

 

こんなにボロボロなのに有無を言わせない迫力がある

 

「キノさん」

 

「はい」

 

嬉しそうに微笑む

 

「じゃあ私の名前も私は、レオン・アルダマ

レオンと呼ばれているよ」

 

正式にはレオン・デ・ロス・アルダマ

私の名前はこんなに長い横文字じゃ無かった筈

こう…漢字四文字位の普通の日本人の名前

自己紹介の度に少し切なくなる、未だに前世を引きずっている

 

「レオン・アルダマさん良い名前ですね

僕はこれから、レオンさんと呼ばせていただきます」

 

外国の人って取り敢えず名前を褒めるよね

とってもフレンドリー

 

「キノ?ボクの紹介は?

それとも自分でするシステムなのかな」

 

図上から声が聞こえる、キノさんのモトラドだろうか?

起き上がりモトラドの方を向く

キノさんの手が中々離れなかったが、気のせいと言うことにする

 

「やぁやっとボクの自己紹介の番だね

ボクはエルメス、キノのモトラドをやってるよ」

 

「ご丁寧にどうもありがとう、私はレオン・アルダマ

通称レオン旅人をやってるよ」

 

ふふっと笑う声が重なる、私とエルメスの声だ

どうやら気が合いそうだ

 

「キノ!この人良い人だよ!」

 

「そうだね、僕の為に国を滅ぼしてくれる位だからね」

 

キノさんがそう言う、気付かれていたのか

 

「キノさんはいつ気が付いたんだい?そんな余裕も暇も無かった筈だけど?」

 

「僕を助けた時に、レオンさんの背後に炎が見えましたから。

あの国はほとんどの建物が木造ですから、屋外での火の使用は違法です国民は決して外で火を使いません。

僕以外の旅人はレオンさんだけ…なら犯人は貴方です」

 

一瞬見えた景色からそこまで考える頭の良さに感心する。

私も説明された筈だがそんな法律覚えていなかった、ただ単に私の頭が悪いだけかも知れないが

 

「それだけじゃありません、門も開きっぱなしでした国の門が開きっぱなしなんて余程の事ですよ。」

 

「キノさんは賢いんですね」

 

「ふふっありがとうございます、これで役に立つ事の証明は出来ましたか?」

 

役に立つとは何の事を言っているのだろうか?

良く分からない

 

「いったい何の話ですか?」

 

「キノはまだレオンに体で返す話をしてないよっ、そこから話さないと!」

 

体で返すとは物騒な

余計に分からなくなってきた

 

「最初から説明しますね」

 

「是非お願いします」

 

良かったちゃんと説明してくれる様だ

 

「僕はレオンさんに命を助けられました、死を覚悟していた所を…。

その後はこうして手当てを受け今ここに生きています、そこは二人の認識として合ってますね?」

 

「そうですね」

 

「僕を助けるには相当の危険がありました。

敵は国民全員ですから…それを見事にエルメスごと助け出しました」

 

「ありがとうレオン、ボクはまだ走っていられるよ」

 

「どういたしましてエルメス」

 

エルメス可愛いな、素直な弟の様だ

 

「そうなれば報酬は当然莫大な物になります。

1つの国をたった一人で、攻め落としましたからね

報酬は一人で総取りです」

 

「そこまで褒められた事じゃ無いよ。

結果として国の大半か、もしくは全てが燃え尽きたからね」

 

国の方角を見ると未だに煙が見える

まだ燃えているのかな

 

「結果が全てです。

そこで僕の差し出せる物を考えてみても、そんなに価値のある物は生憎持ち合わせていませんでした」

 

「普通はそうだろうね」

 

国を滅ぼした報酬っていったい…

どれ位貰えるんだろう、もしくは私が賠償として払うのか

 

「ですから僕を差し上げます、どうぞ」

 

寝転んだままこちらに両手を差し出す

キノさんは多分頭を、とても強く打ったんだろう

可哀想に私には頭までは治せない

哀れみを視線に乗せてキノさんを見る

 

「…?何ですか?

そんな目で見ないで下さい、僕は正気ですよ」

 

「可哀想に、もともと頭が可笑しかったんだね。

そうとも知らずにごめんね、もう少し優しくすれば良かったね」

 

キノさんの頭を撫でる

嬉しそうに撫でられているが、はっとして

 

「違います頭は大丈夫です!

それにこの発言には、ちゃんとした理由がありますから」

 

「本当に?」

 

「本当です、価値のある物が無いので長期の分割でお願いしようと思います。

そこで先程の発言に繋がります、僕はそこそこ強いので護衛か何かに使えば絶対役に立ちますよ?

他のこともそこそこなら、大抵何でもこなします」

 

確かにキノさんはこの世界に詳しそうだ

私よりも確実に頭は良さそうだ…知識の方でだけど、思考回路はぶっ飛んでいるみたいだし

スキンシップが多い様だが、まあ旅をしていると人恋しくもなるのだろう…だがしかし

 

「長期って一体どの位の事かな?次の国までとか季節が変わる迄とか、その位かな?」

 

「え?そんなの一生ですよ」

 

やっぱり頭が可笑しいじゃないか

話にならない、キノさんが動けるまで回復したらすぐ逃げよう

 

「逃がしませんよ

命を助けられたらその命で返すのは当然です、ですので僕の全てを差し上げます……貴方になら」

 

ひえっ怖い、心を読んでくるのか

最後は良く聞こえなかったけど命は命で返すって…なら助けた意味は?

本人の自由が無くなるなら助けた意味ないじゃん!

 

「僕がレオンさんについて行きたいんです。

何処かの国では、返しきれない恩は体で返すって言ってました…だからっ」

 

「意味、違うくない?」

 

思わず心の声が出た危ない、敬語が外れてしまった

争いを生まないようにと考えた秘策が、この敬語

今までの旅も敬語で何とかなって来た

 

「意味ですか?全てを差し出すのは間違いなんですか?

体で返すって、一体他にどういう意味が?」

 

ここに来て無垢だ、無知で無垢なそんな一面を見せて来たが嬉しくない

そんな子に大人のあれこれを説明するのか

だが説明しなくてはキノさんを受け取る事になる

何の罰ゲームだ

 

「キノさん体で返すって言うのは…その、つまり男女の営みの事でね」

 

「男女の営み?初めて聞きました」

 

「えっ?」

 

どういう事更に説明が増えるの?

この汚れた世界でどうやって生きて来たの

おじさんもう頭が痛いよ

 

「つまりは、セックスの事だよ」

 

「???」

 

あれ?これも?

なら一体どう言えば伝わるの、いきなり私の息子をボロンしてこれを女のアソコに入れて子供を作る事だよ、ゲヘヘとでも?

変態じゃ無いか…私は殺されても文句は言えなくなる

 

…あっ怖い事を思い出させるが

仕方ない一生よりはましだろう

 

「キノさん…嫌で怖いかもしれないが、少し思い出してくれ無いかな」

 

「?はい、貴方がそう言うなら」

 

エルメスもキノさんも素直

本当に一体何処で生きて来たのか

 

「あの国で襲われた時に変態がいたよね?

キノさんの上に乗っていた、あの男だよ」

 

「あっはい…確かに居ました」

 

「あの男はキノさんを女の子だと思ったんだろう、つまりはその…性的に…襲おうとしていたんだよ」

 

「性的に…つまりは交尾、動物の繁殖行動

それを人間がしようと?ああ性行為ですね」

 

ええ?交尾とか、性行為は知ってるの?

分からない基準が分からない

 

「それから、僕は女の子ですよ」

 

ん?何か聞こえたような

 

「聞き間違えじゃ無いですよ」

 

会話が成立している…可笑しいな言葉が無くても会話って出来るんだ

そうじゃなくて

 

「でもキノさんは僕って」

 

「僕…はいけませんか?

レオンさんの好みでは無いなら、私とかに変えましょうか?」

 

「あっ大丈夫です」

 

僕っ娘だった、なんたるトラップ

じゃあ今まで女の子が一生をくれるとか、全てを差し上げますとか言ってたの?

私の見た目が二十代、キノさんは多分十代半ばだろう

普通に事案サラリーマンと中学生、100%逮捕間違いなしだ

 

「レオンさんっレオンさん?聞いてますか?」

 

「はいっ聞いてますよ」

 

「なら良かった、それでですね

性行為についてはそれも全てに入ってます」

 

「入ってる?」

 

「全てですから身も心も全てですよ

荷物もエルメスも、僕の全てを貰って下さい」

 

「ボクも貰って下さいー」

 

エルメスは軽くないかな

 

「それに大丈夫です、もし受け取って貰えなくても

勝手について行きますから…何処までも」

 

大丈夫じゃ無いそれはストーカーだよ

この世界にあるか分からないけど、それは立派な犯罪だ

 

「勝手についてくるなら、一緒じゃないですか?」

 

「いいえ違います。

勝手について行く場合は、一定距離から監視して護衛します

ホテル等に泊まる時は、向かいの部屋からちゃんと守りますからね」

 

ニコッと笑うがとても怖い話をしている

公認ストーカー(認めて無い)か

旅の仲間(強制)ひどい二択実質一択だ

 

「分かりましたよ、取り敢えず一緒に旅をしましょう

途中でキノさんのしたい事が出来たら、離れて貰っても…」

 

「離れませんよ」

 

「はい分かりました」

 

ちょこちょこ見せるこの光の無い淀んだ目がとても怖い、一体何なの

 

「それから敬語もいりませんよ?

貴方は仲間ですからね、僕は敵になりませんから」

 

「それは助かるよ、どうしても長く話すとボロが出るからね」

 

「僕の敬語は自然に出るので止められませんが、貴方が無くして欲しいのなら、僕頑張りますよ」

 

「いやキノさんの好きな様に、楽な方で話してよ

これからは長い付き合いになるんだから」

 

「ありがとうございます

あと呼び捨てで構いませんよ、是非キノと呼んで下さい僕が喜びます

それで、これからどうしますか?」

 

「あっはい、取り敢えずはキノの治療が最優先だね

その怪我じゃ動けないでしょ?」

 

あんなに酷い痣…思い出すだけで身震いする程だ、どんなに痛かっただろうか

 

「怪我?お腹の怪我なら多分明日には動ける筈です、あれ位なら師匠との特訓で慣れてますから」

 

「それは虐待じゃないの?そんなに殴られるの?」

 

キノは苦笑いをして答えた

 

「違いますよ、ゴム弾が当たるとこんな風に痣になるんです。

それに実戦訓練を頼んだのは僕の方ですし」

 

なんて武闘派そんなに頑張る理由は、一体何だろう

長そうなので聞かないが

 

「それなら明日から近くの国に、向かってくれるかな?少し人を待たせているんだ」

 

「分かりましたそこに向かいましょうか

ちなみに、待たせているのは…女ですか?」

 

「私の家族で小さな女の子だよ

妹みたいな娘で、とっても可愛いよ?」

 

「家族…妹、それなら大丈夫です

そうと決まれば夜も遅いですしもう寝ましょう、はいどうぞ」

 

キノは毛布を捲り隣をあける

もうなにも言うまいそのまま隣に入り大人しく目を瞑る

また胸や腹を撫でられているが、もういい疲れた

私は無理矢理眠りについた

 

家族や妹だったら大丈夫って、一体何だろう?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここから登場人物設定

オリジナル要素ふんだんにあり

見たくない方は飛ばして下さい

 

エルメス

 

走ることが大好き、モトラドの本能

 

主人公とキノが大切で大好き

 

割りとちゃんとした事を言うがたまに間違える

わざとの可能性も?

 

素直、可愛い、人を乗せると自立走行可能

 

ボディーを磨いてもらうのが好き

メンテナンスも好き

 

声は高い男の子の様な、低い女の子の様な声

 

性別を聞くとモトラドに性別は無いと言う

実はありそう?

 

主人公のモトラドに、一方的に話しかける

返事が無いので独り言の様だが、良くみるとライト等で返答している、コミュニケーションはとれている様子




レオンの転生後の本名は
レオン・デ・ロス・アルダマ
メキシコの日本人の多い街から取っている

ティファナがメキシコの街の名前
主人公が合わせた

原作では漂流船の名前


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帰還 後 修羅場

シズさんの依頼の途中でキノ助けます
そのまま一緒に帰還
矛盾が出たら直す
後で何話か直す予定です


胸の辺りがひんやり冷たくて目が覚めた

誰かの手が筋肉の筋に沿って動いている

くすぐったくてゾクゾクする

一体何が起こっているんだ

 

「あぁ良い体だなぁ…僕も鍛えてるけどこんな風にはならないし逞しいなぁ」

 

あっこれ前もあったデジャヴ?

違う昨日も触られていた服の上からだけど、今日はもうシャツの前は全開だ

 

「キノ何してるんですか、寒いから止めて下さい」

 

「おはようごさいますレオンさん

目か覚めたらレオンさんの服がはだけていたので、脱がしました」

 

ん?意味が分からない、普通はだけてたら着せ直してあげるよね?

脱がして生肌触るって変態過ぎない?

 

「おはようごさいます、取り敢えず本当に触ら無いで下さい」

 

変態にもちゃんと挨拶する私は偉い

キノは不満そうだが引き剥がすとやっと大人しくなった

 

「それで体の調子は?

ずいぶんと調子が良さそうだけど」

 

「お腹の包帯はもう外しても大丈夫でした。

まだ痣の色は酷いですが、痛みはそれほど無いですから、はい」

 

はいと言って服を捲りお腹を見せる

本当にまだ色は酷いが痛みは無さそうにけろっとしている、凄い回復力だ

ん?ちょっとずつ服が胸の辺りまで持ち上がって…手を掴んで服を戻す

 

「キノやめなさい!胸がみえますよ!」

 

「いえ見せようとしていたので、大丈夫です」

 

大丈夫じゃ無いです、キノは一体どうなっているんだろう?怖い頭が

 

「朝食にしましょうか」

 

もう突っ込まない事にした、疲れるから

荷物からバスケットを取り出す

 

「ご飯があるんですか!」

 

「キノ一緒に食べましょう」

 

「はい!」

 

キノはバスケットを見てから目がキラキラしている、こういう反応は可愛い

元々の顔も可愛いが行動が変態だからなぁ

バスケットの中身は、ティーが作ってくれた日持ちのするサンドイッチだ、数日は持つと言っていたありがたく頂こう

 

「美味しい、やっぱり料理上手だな」

 

「美味しいですね、これは誰が作ってくれたんですか?」

 

「ティーだよ、昨日言った家族だ」

 

「へぇー妹さんて何歳ですか?」

 

何歳?年齢は分からないが…見た目的に今は12歳位か?

小さいから余計幼く見えるし、出会った時からほとんど変わら無いから正確な年齢は分からない。

 

私とは少なくとも船で三年と半年、旅に出て一年で合わせて四年半は過ごしている

始めて合った時は10歳と思ったけど、もう少し幼かったのか?

それとも10+4=14 14歳?そうは見えないけどうぅむ…

うん!取り敢えず見た目通り12歳でいこう。

分からないから見たままの方が分かりやすいと思う。

 

「正確な年齢は分からないんだけど、見た目は12歳位だよ」

 

「12歳なら僕より年下です、丁度良いですね!」

 

何が?とは思っても聞かないキノの頭は理解できない、したくない

 

「食べ終わったら出発だな」

 

「はい!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

朝食後、出発する為の準備中

 

キノは荷物を積み終えエルメスの最終チェック中だ

 

私も荷物を積みここに居た形跡を消す

この位で良いかな

 

「キノ本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫です心配いりませんよ、道中何があってもレオンさんを守りますから」

 

やだイケメン…そうじゃない

 

「私の安全じゃなくてキノの体の心配だよ、本当にもう平気なのか?」

 

「え?僕の心配?えへへ…全然大丈夫です、美味しいご飯も食べたので調子が良い位ですよ!」

 

キノはだらしなく笑いながら返事をする

怖いから理由は聞かないが、少し可愛い

 

「それならそろそろ行こうか、暗くなる前には帰りたいからね」

 

「そうですね、行きましょう」

 

キノの顔がキリッとした顔に変わる、この表情は綺麗だなぁさすが美形

私が見ている事に気付くとニコッと笑う、可愛い

イケメンで綺麗で可愛いのか…キノは実は最強なのか?

 

そんな事を考えながら出発する

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

国がもう目の前だ帰りは早かったな

帰ったら先ずはティーに会おう

 

今までの日程は

 

・国を出て半日

・旅人を探して半日

・キノを助けて半日

・今帰って来て半日

 

全部半日だ手抜きではない

合計まだ2日しか経っていない

明日で丁度3日だシズさんへの報告は、予定通りの明日で大丈夫だろう

 

ティーにキノの事を説明しないと

 

何故か背筋にゾクッとした悪寒が走る

何だろう昨日は野宿だったからかな?

風邪ひいたかな?

 

そんな事を考えながら入国した

 

「私は宿に帰りますが、キノはどうしますか?」

 

病院に行くか、宿を取るのだろう

 

「僕も一緒に帰りますよ?」

 

「一緒に帰る?」

 

また可笑しな事を言い出した

 

「私と同じ宿に泊まる、と言う事かな?」

 

「同じ宿じゃ無く、同じ部屋に泊まりたいです」

 

「私の部屋にはもうティーがいますから、ベッドの数的に無理ですね」

 

「同じベッドでも、いや同じベッドの方が…」

 

「無理ですね!」

 

そんな会話をしながら宿に着く、キノには違う部屋を取って貰った

私の隣の部屋を選んだ様だが連絡がしやすい様にだろう

 

「荷物の整理が終わったら部屋に行きますね、ティーちゃんに挨拶と、これからの事を話し合いたいですから」

 

「そうですね、じゃあまた後で」

 

部屋の前で分かれる

ティーに寂しい思いをさせてしまったな

 

「ティーただいま、帰ったよ」

 

ティーは入口のすぐ側に立っていた

もしかしてずっと待っていたのだろうか

トトトッと走ってきて抱きついて来る

 

「おかえりなさい」

 

何時もよりも抱きつく力が強い

珍しく笑顔もはっきり分かる

ティーと出会ってから2日も離れたのは初めてだ

やはり寂しかったのだろう

 

「ごめん寂しくさせたね」

 

ふるふると首を振って否定する

 

「さみしいけど、しんじてまつのがかぞく」

 

「ありがとう、ティー」

 

抱き上げ感謝を伝える

 

「サンドイッチも美味しかったよ」

 

「いぶくろをつかむのが、だいじ……?」

 

ティーが不思議そうに私の匂いを嗅ぐ

野宿したから匂うのだろう

 

「匂うよね…お風呂に入ってくるから待ってて」

 

「ちがう、しらないにおい」

 

知らない匂い?

一緒に野宿をした事もあるから匂いは知っている筈

 

「おんなのにおい…だれ?

だれがレオンにさわった?」

 

何時もの無表情が更に感情を無くしている

さっきまでの笑顔は一体何処へ?

 

その時ノックが聞こえた

空気を変えるチャンスと思い急いで出る

 

「あっレオンさん、早く会いたくて急いで来ました」

 

扉を開くと笑顔のキノがいた

 

「このおんなの…におい」

 

ティーが私の腕の中からキノを指差す

空気が凍った気がする

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

机に移動しティーに今までの説明をした

これからはキノも一緒に旅する事を

 

むすっとした顔のまま私から離れないティー

キノは硬い笑顔でこちらを見ている、居心地が悪い

 

「勝手に話を決めて来てごめんなさい、ティーに聞いてから決めるべきでした」

 

ティーは瞳に涙を溜めている

 

「わたしは、もういらない?」

 

「そんな事あり得ません、私達の旅にキノが増えるだけです」

 

じっと私を見つめていたが

 

「ゆるす」

 

「え?」

 

「ゆるすのも、つまのつとめ」

 

「ありがとうございます」

 

「あのひとは、まだゆるさない」

 

再び空気が凍った

 

必死の説得の末キノの同行を許可して貰った

交換条件として、1つお願いを叶えるらしい

それは今度で良いとの事

 

キノはほっとしている

 

「ティーちゃん、これからよろしくお願いします」

 

「ティーでいい」

 

キノが握手をしようと手を伸ばすが

 

「さわらないで、ふれていいのはレオンだけ」

 

空気がピリッとした、怖い

 

キノがあえて大きな咳払いをする

空気を変える為の様だ

 

「何か、旅の目的は有るんですか?」

 

話を切り替える様だ有り難くそれに乗っかる

 

「ティーの母親探しだけど、急がなくて良いらしいよ?」

 

ティーを見ると頷いている

 

「暫くは色々な国を見て回って、旅を楽しむつもりだよ」

 

「元々の僕の旅と同じ感じですね」

 

「そうか、それならこの方針で行こうか」

 

「そうですね」

 

話が纏まるすんなり決まった、この後は細かい話し合いだな

 

終始にこやかなキノの目が怖い気がするが気のせいだと思いたい、ティーのキノを見る目も冷たい

 

二人の間の雰囲気が悪すぎる

どうにか仲良くして欲しいな

 




ティー見た目は12歳ほど
中身はキノと同じぐらい?

キノはティーが主人公の妹と思っているので
なんとか仲良くなりたい

今までの行動は分かっていてやっていた?
登場人物の中で一番知能が高い
主人公がティー以外と触れ合うのを嫌う
キノは犬、ティーは猫のイメージ


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シズさんに報告の話

シズさんの覚悟と分かれ
シズさんとは一緒に旅はしません
たまに合う感じです

キノとティーの和解
二人に新たなライバル(シズさん)


朝一番にレンタルモトラドは返してある

ちゃんとお金も帰って来た、これで安心だ

 

シズさんに報告の為に喫茶店に向かう

旅人の死を思うと気が重くなる

 

喫茶店に着くと既にシズさんが店内に居た

私がシズさんの前の席に座ると驚いていた

 

「レオンさん本当に3日で帰って来るとは、素晴らしいですね!」

 

「色々ありまして…それでいくつか報告があります」

 

私の顔を見てシズさんは察したのか、真面目な顔になる

まず旅人の報告からだ

 

「先ずは旅人の事から…単刀直入に言うと彼は既に、亡くなっている様です」

 

シズさんは驚いている

 

「どういう事ですか?」

 

「彼を殺したのはあの国の住民達です

いや正確には、あの国その物に殺されました」

 

「説明して頂けますか?」

 

「勿論」

 

私は全部説明した

 

・あの国は旅人に何をしても許される事

・それは法律で決まっている事

・旅人達は国民が平和に過ごす為の犠牲になる事

・彼を含めた沢山の旅人達が殺されている事

・私が殺されそだった旅人のキノを助けた事

・その時に国を燃やし、滅ぼした事

 

長くなってしまったが全てを話した

 

「そうでしたか、ありがとうございます」

 

シズさんは頭を深く下げてお礼を言っている

律儀な人だがお礼を言われる理由が分からない

 

「一体何のお礼ですか?」

 

「彼の…沢山の旅人の仇を、討ってくれた事にですよ」

 

シズさんは優しい人だな、他人の為にお礼を言うなんて

 

「彼を見つけられなかった上に、国を滅ぼしたんですよ?」

 

「それが?」

 

キョトンとしている

 

「国を滅ぼした事は責められると思ってました、私は大量殺人をした犯罪者です」

 

キノには言えなかったが

そうだ私は犯罪者になったのだ

 

シズさんはやれやれと首を振っている

 

「まず彼は、既に死んでいたんですから見つける事は不可能です、これはいいですね?」

 

「はい…でも何か別の方法は、無かったんですかね?」

 

「済んだ事を考えても仕方ありません、次です」

 

シズさんはてきぱきと話を進める

出来る女性の様でかっこいい

 

「あの国ですが…レオンさんが滅ぼさなければ私が潰しに行きました。

レオンさんが燃やさなくても、結果的には滅んでいたんです」

 

「え?シズさんは何かあの国に恨みが?」

 

「いいえありません。

ですがあの国をそのままにしておけば、これからも沢山の罪無き旅人が殺されます、それを見過ごす事は私には出来ません。

国民全員がその行為を受け入れていたのならば、一度国を滅ぼすしか、被害を無くす方法はありません」

 

シズさんの表情は真剣で

まるで国の事を語る王様の様だった

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あの会話の後から、シズさんが考え込んでいる

 

シズさんの言葉に私は救われた気がした

 

「シズさん、ありがとうございます

私は貴方の言葉で救われました」

 

「え?私の言葉がレオンさんを?」

 

驚いた顔をする

 

「仲間には言えない事だったんです

滅ぼすしか無かったと言って貰って、心が軽くなったんです」

 

「私は…本当の事を言っただけで…」

 

「それでも救われました、ありがとうございます」

 

シズさんの手を握りもう一度お礼を言う

握られた手を見つめて、シズさんが呟く

 

「…私の言葉が人を救った、私でも…救えたのか」

 

シズさんは何かに気が付いた様に顔を上げた

その瞳には決意が見えた

 

「私は少しやる事が出来ました

貴方のおかげで気が付いたんです、このお礼は絶対にします。

私のすべき事が終わったら、いや終わらせて貴方にもう一度会いに行きます、待っていてください必ず探し出しますから」

 

シズさんはそう言うと店から急いで出て行く、続いて出て行こうとしたリクが私を振り返る

リクはペコリと頭を下げると店から出ていった

本当に賢い犬だ中に人でも入ってそうだ

 

報酬の袋を見ると中身が出発前より増えていた

袋が金貨で重たいぐらいだ沢山稼いだな、私も宿に戻るとしよう

キノとティーは喧嘩してないだろうか?

足が自然と早足になっていた

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

宿に帰り唖然とする

 

ティーはキノの近くに座り本を一緒に読んでいた

仲良くなったのか良かった安心した

これから楽しく旅が出来そうだ

 

ちなみに読んでる本の題名は

 

[猿でも分かるつまのつとめ]

 

何の本だ内容が気になる

 

私が帰った事にやっと気付いたのか

二人が近付いてくる

 

「おかえり」

 

「おかえりなさい、お疲れ様です」

 

二人はニコニコしている

 

「仲良くなったんだな」

 

私も笑いながら言う

 

「いちじきゅうせん、きょうどうせんせん」

 

一時休戦と共同戦線?何の話だ?

 

「レオンさんには秘密の話です。

お互いの弱点を無くしてからが本当の勝負と、そう言う事になったんです」

 

何かは分からないが仲良くするならその方が良い

 

「それで依頼の方はどうなりました?

報告に行ってたんですよね?」

 

「そうだった、はいこれが報酬」

 

ティーに報酬を手渡す

旅の家計は一番賢いティーの仕事だ、本人の希望で決まった

 

ティーは金貨の袋に驚いている

 

「こんなにいっぱい…?」

 

「どれどれ?」

 

キノがうわっと驚く

 

「そんなに貰ったんですか、でも一体どうして?聞いていた額より絶対に多いですよね?」

 

「それが良く分からなくて」

 

ティーはお金を数えてノートに書き込んでいた

キノは考えている

 

「確か依頼人は女性…でしたよね?」

 

「そうだ、シズさんと言う」

 

「何か依頼と関係の無い事は、言っていましたか?」

 

キノの目が鋭くなるティーも聞いている様だ

 

「やる事が出来たとか私のおかげとか、探し当ててまた会いに来るとか言ってたな」

 

「これは…」

 

「またふえた」

 

「ええ…厄介そうですね」

 

二人はため息をついて相談している様だ

 

本当に仲良くなったんだな、なんだかほっこりした

主人公は呑気である

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ティー?何を読んでいるんですか?」

 

「これ」

 

「猿でも分かるつまのつとめ…ですか」

 

「そう、ためになる」

 

「僕も少し良いですか?」

 

「ん、しかたない」

 

「ここの夫の帰りを待つ妻の部分は、仕事が終わるのを宿で待つ場合にも応用できますね」

 

「!キノかしこい、よくやった」

 

「ふふっありがとうございます」

 

「これはつかえる?」

 

「朝の起こし方~新婚編~ですか…

内容を少し変えれば僕達も出来そうですよ」

 

「そうか、れんしゅう」

 

「はいはい、付き合いますから僕の練習台にもなって下さいよ?」

 

「ん、こうたい」

 

二人は仲良く夫婦ごっこを始める

その様子は凄く微笑ましく、本当の姉妹の様だった

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

主人公の居ない間のキノとティー

本当に仲良くなった模様

 

キノはティーを可愛いがり、ティーはキノになついた

少しなら触っても怒らない

撫で撫でまで可、抱っこ不可

 

ティーは頭が良いが応用がきかない

キノは応用が得意

意外と良いコンビ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ここから登場人物紹介

見たくない方は飛ばして下さい

 

静 シズ

 

一人称 私

怒ると 俺

 

緑色のセーターにジーンズ

 

主人公と同じ位の身長 胸がおおきい スタイルが良い

黒髪ロングでポニーテール

 

主人公の言葉のお陰で

自分の国と向き合う決意をした

 

手を握られてから胸がドキドキする

 

国の事を解決したら追いかけて会いに行く

絶対に見つけ出す

 

キノと同じ位強い

接近戦ではシズが有利

 

スピードが速く刀の切れも良い

 

 

縦セーターに巨乳の破壊力がやばい

 

 

ティーとキノは巨乳に恐怖を覚えた




[猿でも分かるつまのつとめ]
本の題名
キノとティーの教科書
すべての元凶

シズさん、ストーカー宣言
人前ではキリッと、主人公と二人だとデレ
ストレスや重圧から解き放たれて、甘えられる
クーデレ


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休日の話 (ヒロイン キノ)

主人公とキノの二人だけの休日
主人公はデート初めて
キノもデート初めて
初々しいデートになるかな?



ある休日の話

 

「レオンさん僕とデートに行きましょう、ちゃんとエスコートしますから」

 

やだイケメン

たまに発揮されるキノのイケメン力にときめく

 

ティーは新しい本を読むので忙しいらしい

題名は

[彼の胃袋を鷲掴み

~他の料理を受け付けない体に~]

と書いてある、大丈夫なのだろうか?

 

「きょうりょくかんけい」

 

「ええティーの時も、手伝いますよ」

 

良く分からないが、仲が良いのは良いことだ

 

「先ずは、ショッピングに行きましょう」

 

「ショッピング?」

 

「この国は、国と国を繋ぐ中継地点の様になっています。

良い物が安く手に入り種類も豊富らしいです、お店を覗いて見るだけでも、決して損はしませんよ」

 

それはデートなのか?

キノが楽しそうなので余計な事は言わないでおく

手を引かれてお店に向かう

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「キノ?これはどうだ?」

 

これはとても安く量も多い、掘り出し物かも知れない

 

私の持っている弾を受け取り見て、元の場所に戻す

 

「全然駄目ですね、まず弾の造りが雑ですそれに重さもバラバラでした。

いくら安くても、悪い物を買っては意味がありません」

 

そこまではっきり言ってお店の人が気を悪くしないのか

こっそりと顔を見ると、店員は感心した様に話を聞いていて安心した

 

プロだ買い物のプロがいる、キノは銃に関してとても頼りになる知識が豊富で正しい、専門家の様だ

 

「レオンさんはハンドガンとスナイパーライフルですよね、それならこれとこれです。

お値段も手頃で造りも丁寧です、弾の造りが生死を分けます、いざと言う時に撃てなくては意味がありませんから」

 

確かに弾詰まりで死ぬのは嫌だ、死ぬ時は誰かを守って死にたい。

死ぬ時は位は格好をつけたい

 

「そうか助かったよ、アドバイス通りそれを買うよ」

 

「実は僕も、ハンドガンの弾は同じ物を買おうと思っていて、お揃いですね」

 

キノはニコニコしている

そのまま会計に向かった、お金は渡してある

 

弾のお揃いは果たして嬉しいのか?

だがそこまで喜ばれると、少し照れる

 

キノが会計をしている間に

隣の店を覗く

ん?これは…こっそりと会計を済ませた

 

「お会計終わりましたよ

少し、おまけして貰っちゃいました」

 

やっぱりプロだった、キノは満足そうにしている

 

「ありがとう、キノは本当に頼りになる」

 

そう言うと顔がキラキラしだした、可愛い

 

「もっともっと頼りにして下さい!この後は食事に行きますよ。」

 

繋いだ手を楽しそうに揺らしながら

足取り軽く歩いて行く

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

食事に案内されたのは

 

お洒落なカフェだった…ただしカップルばかりの

何だこれはデートのカップルだらけじゃないか

 

あっ私とキノもデートだった

他の人には私達もカップル見えていると思うと、少し恥ずかしい

思わず顔が赤くなるキノは平気なのか?

 

ちらっと顔を覗くと、平気そうな顔をしているが耳が赤い

可愛い

 

「キノはここのお店に来たかったのか?」

 

「ここのお店、と言うよりは出される特別メニューが目当てですね」

 

ははーん分かったぞ

これはラブコメで良くあるカップル限定メニューが食べたいから私を誘ったんだな

 

「カップル限定メニューか?」

 

「え?レオンさんが良く解りましたね」

 

キノは驚いている

 

私がって失礼じゃない?それは置いといて

やっぱり当たりか少し得意になって答える

 

「良くあるからな、それでどんなメニューなんだ?」

 

キノに顔を向けると顔が怖い、え?怒ってるの?

今の会話の何処に怒る要素があった?

二人で会話を楽しんでいた筈

 

「えっあの…キノさん?」

 

キノはぐるんと振り返る、動きが怖い

 

「何ですか?なんで、さん付けなんですか?」

 

「はいっキノ何でもありません」

 

キノ怖いこれ怒ってない?

 

「では僕から質問します、さっきレオンさんは良くあると言っていましたが」

 

「はいそうです」

 

「それってカップル限定メニューを食べた事が、良くあると言っているんですか?」

 

「へ?いや…」

 

最後まで言わせて貰えない、キノに言葉を遮られる

 

「誰と食べたんですか?

他の女と僕の知らない誰と、食べたんですか?ねえ?何回食べに、いえデートもしたんですか?何回ですか?全部僕の知らないレオンさんの事を、全部教えてください」

 

怒濤の言葉の波に思わずのけぞる

キノの目の光ハイライトさんが居ない…そういえばずいぶん序盤から居なかった

光の無い怖い目でずっと話し掛けてくる

勘違いしているみたいだからちゃんと説明しないと

 

「キノちゃんと説明するから、落ち着きなさい」

 

「はい説明して下さい」

 

まだ光の無い目のままだが、少し落ち着きだした

 

「私が言った良くあるとは、私の事じゃない」

 

「へ?」

 

キノがポカンとしている

 

「ほら本や映画で良くあるシーンじゃないか、一回や二回は見たことあるでしょ?」

 

「あっあります、僕も見た事ありました」

 

勘違いだと分かったのか顔を赤くして

羞恥で震えている

 

「すみません、勘違いしてしまいました」

 

目に光が戻っている、あの目は本当に怖かった

 

「分かってくれたならいいよ、それじゃあ私達もカップルメニューを頼もうか」

 

「いいんですか?まだカップルじゃ無いですけど」

 

まだ?気になったがスルーだ

話がややこしくなりそうだから

 

机の上でキノの手を握る

 

「今日はデートですよ?なら今はカップルです」

 

キノは顔が真っ赤になっている

勿論私の顔も赤い、こんなに恥ずかしいなんて

 

カップルメニューは2つセットだった

1つ目は良くある、1個のコップにハートのストローが刺さっていて一緒に飲む奴だった、とっても恥ずかしい

 

問題はもう1つの方だ、これはひどくないか?

タワーの様に積み重なったパンケーキ、顔の高さ位はあるその周りには、生クリームと山盛りのフルーツにシロップもかかっている

 

大食いチャレンジだったのかな?

こんなに頼んでお値段もリーズナブル

どういう事なんだ、そりゃカップルじゃ無くても沢山来るだろう

 

私は見ただけで胸焼けを起こしたが

キノの目はキラッキラッだ早く食べたそうにしている

 

「キノ、全部食べていいですよ」

 

むしろ私はいらない

 

「本当ですか!でも、そんなの悪いです…」

 

「じゃあ私は、フルーツを少し貰うよ」

 

「レオンさんがそれで良いなら」

 

私が頷くとキノは食べ始めた

少しフルーツを食べるが甘い、食べるのが辛いレベルで凄く甘ったるい

キノは平気そうにもの凄いスピードで食べていく、まるで口に吸い込まれていくみたいだ

食べ物を食べている時のキノは本当に幸せそうで見ていて和む、可愛い

 

もっと食べさせたくなる

 

「キノ、あーん」

 

キノは嬉しそうに食べるこういう時は照れないのか、女心は分からない

 

「レオンさん、お返しにあーんです」

 

やっぱり甘いがさっきよりも甘く感じるし恥ずかしい。

それを見てキノが照れている、これは照れるのかやっぱり分からない

 

その後は時間もそれ程掛からずキノが全てを食べきった

大食いファイターキノ、凄い

 

外はそろそろ夕方街が暗くなって来ていた

 

「そろそろ帰らないとですね」

 

キノは少し寂しそうだ

 

「そうだ、今日の記念にこれを」

 

キノに袋を渡す

 

「僕にですか?ありがとうございます」

 

袋にはネックレスが入っている

キノが取り出したので後ろから着ける

 

「綺麗です、本当に良いんですか?」

 

「キノに似合うと思ったから、選んだんだ。

光に当てると色々な色に変わる宝石が、お店ではキノの目の色に見えて…とても綺麗だと思ったんだ」

 

「僕に、僕の色に見えた…?」

 

「それに思った通り、とても良く似合っているよ」

 

キノはボンッと赤くなる

私も恥ずかしいが最後まで格好をつけたい

 

「受け取ってくれますか?」

 

「はい」

 

キノは満面の笑みで答えた

私も笑顔だ

 

今日は楽しく充実した一日だった

デートは初めてだが、良い物だな

 

「あっ!レオンさん」

 

キノに手を引かれると肩に手を置かれて

チュッという音と頬に柔らかい感触、キスされたのか

 

「ネックレスのお礼です

頬までなら、許してくれますよね」

 

そう言ってキノは私と手を繋いで歩き出す、恋人繋ぎだ

 

キノにキスされたのは初めてだ

平気そうなキノの耳が赤い

それを見て私も照れる、胸のドキドキが治まらない

 

宿に帰る迄には治めないと

ティーが怒るだろう

 

私とキノは自然と歩く速度を緩め

ゆっくりと歩いて帰った

 

隣を歩くキノを見ると幸せそうに笑っていた

その顔を見て私も幸せを感じた

 

今日は良い日だった




お揃いなら何でも嬉しいキノ
照れるのを隠しても耳だけ赤いの可愛い

ティーは本を読んでお留守番
キノの為にわざと宿で待っていてくれた

キノのネックレスの宝石
基本の色は青、主人公の目と似ている為
キノはとても気に入っている
光加減で色が変わる


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深き魚の国 インスマス

今回は、キノの旅×クトゥルフ×fgo
6 3 1
位の割合

ティーとアビゲイル、少し似ている様な?
絵を描いてる方が、一緒だからね
どちらも可愛い

魚臭い話
少しクトゥルフ風味
無理矢理な設定あり


深き魚の国

 

もう少しで着くのだろうか?

キノは前を見て走っている

ティーは疲れたのだろう眠っていた

 

次の国の事を思い出す確かあの国は

[魚の国]

そう呼ばれていた

話を聞いた旅人に魚が美味しいのかと聞けば

そうではない、行けば分かると言われ興味を引かれたので行き先をその国に決めた

 

魚、魚かぁ…そういえばあの旅人も魚に似ていた背骨が曲がり酷い猫背の様だった。

顔も目がギョロっとしていて丸く、余り瞬きをしていなかったし、肌が青白く血行が悪く見えた。

首がエラの様に動いていた気が…いや、これは気のせいだろう

失礼だが少し生臭い魚の様な匂いもした、あれは何だったんだろう

 

少しの不安と好奇心を胸に次の国に向かう

 

 

「…おとうさま…の…けはい」

 

ティーが何か言った気がして顔を見るが、まだ眠っている様だ

ティーの額に黒い穴が見えた気がする

長い距離を走って目が疲れているのだろう

もう一度見たが何も無い

 

きっとこれも、気のせいなのだろう

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

この国は少し匂う、生臭い魚の匂いだ

風もじめっとしていて肌に纏わり付き、嫌な気配がする

それはキノも同じだったのか

 

「この国には、余り長居したくありませんね」

 

顔をしかめ不快そうに腕を擦っていた

 

「ボクも潮風で錆び付いちゃうよ」

 

エルメスもこの国は気に入らない様子

 

魚臭い原因は多分この国が海と繋がっている為だ

国の半分程が海だ、どこもかしこも潮の臭いがする

 

なんとなく国全体の雰囲気が悪く薄暗い

住民がじろじろと私達を見ている、陰気な視線を感じた

海の中からも気配を感じる、誰か潜って漁でもしているのだろうか?

 

なんだか嫌な予感がする

漠然とした不安がどんどんと大きくなる

早くこの国を出た方が良いのだろうか?

だが今着いたばかり、観光をしないと勿体ない

気が進まないまま宿を探し始めた

 

ティーは相変わらず眠ったままだ

 

ここはインスマス、寂れた港町

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

宿を探すもこの国にはたった一つしか無いとの事

そこも宿というより民宿で少し大きな一軒家の様だった

他の旅人も泊まる様で、部屋があと一つしか空いていないという

 

やむを得ず、キノと同じ部屋になる

 

だが内心ほっとしていた

この不安な国で少しでも目を離すのが怖かった

 

「キノこの国では、なるべく一緒に行動しないか?」

 

「それは大歓迎ですが、どうかしましたか?」

 

「この国は何だか薄気味悪い、離れたらもう二度と会えなくなる気がする」

 

「そうですね、僕もそんな気がします

やっぱりこの国に滞在するのは、止めた方が?」

 

「いやティーがずっと眠ったままだ、体調が良くないのかも知れないから少し休ませたい」

 

「国に入る少し前からでしたね、心配です…」

 

キノがティーの頭を撫でている

 

こんなに目が覚めないのは可笑しい気がする

だが熱や咳は出ていない

疲れが溜まっていたのだろうか?

 

「休ませてあげたいが、この部屋に一人にするのも…」

 

なんだか何処に居ても、誰かの視線を感じる

部屋の中に居ても窓の外から見られている気がして、落ち着かない

 

「それなら背負って行くのは、どうですか?」

 

それが一番良い様な気がする

 

「それで行こう」

 

ティーを背負って街を探索する

 

国の住民を見ているとあることに気付く

殆ど皆足を引きずるか、跳び跳ねる様な少しおかしな歩き方をしていた

この辺り特有の物だろうか?

 

「少し、気味悪いな」

 

思わず声に出ていた

 

「はい訪れた方は、皆そう言われます」

 

知らない声だ

振り返ると、浅黒い肌の背の高い男がいた

いつの間に…ついさっきは居なかった筈

 

「貴方は?」

 

「おっと失礼、私もこの国の者では無いのですよ」

 

愛想良く笑う男に何処か違和感を感じる

 

「此処には荷物を届けに来ただけの、商人の様なものですよ」

 

「商人ですか?」

 

「ええ皆様に愉快な感情を届ける、配達人です」

 

商人、配達人、こんな寂れた港町にも届ける物があるのか

 

その時男が私の背中を見た

私の上着をかけていたので、今気が付いたのだろう

 

「おおっ貴方の背中にいるのは!随分と愛らしい娘ですね」

 

「ティーの事、ですか?」

 

男は急にとても嬉しそうに、饒舌に話始めた

 

「その娘と一緒に旅をしているのですか?

乗っていた船は、まだ沈んでいなかったのですねぇ」

 

「何でその事を、ティーが船に乗っていた事を知っているんですか?」

 

私は警戒して身構える

キノは最初に話し掛けられた時から、警戒して黙って成り行きを見守っていた

 

「そんなに警戒しないで下さい、昔あの船を訪れてその娘を知っているだけです」

 

確かに私の時もティーが船を案内してくれた

この男も案内されたので覚えていたのだろう

 

「そうでしたか、失礼しました」

 

私は警戒を解くが、キノはまだ警戒していた

 

「いえいえ良いのですよ、人間は疑う生き物ですからね、人間は本当に面白い生き物です」

 

男はまるで、人間では無い様な話し方をしている

 

「おっとそろそろ行かなくては。

少し話過ぎましたね、貴方には期待していますよ、その娘が選んだ人間なのですから。

どうか我々を楽しませて下さいね」

 

どう言う意味かを聞く前に勝手に話を切り上げた男は歩きだし、すぐに見えなくなった

最後に見えた男の影の中で何かが、黒く蠢いていた様に見えた

 

「変わった男だけど、愛想の良い人だったな」

 

「あの男…愛想良く振る舞っていましたけど、目が僕達を見る目が…」

 

「目がどうしたんだ?」

 

「同じ人間を見る目じゃありませんでした、あれは家畜か…玩具でも見る様な目でした」

 

キノは顔を青ざめさせ震えていた

私の感じた違和感はそれだったのか?

しかしそれだけでは無い、底知れない何かを感じた

 

ティーの寝顔は嬉しそうな笑顔に変わっていた

 

キノの震えが治まらず早めに観光を切り上げた

その後は宿に泊まったが、出された食事は食べる気にならず二人とも手持ちの食料を食べた

食事からも薄気味悪い気配がする

 

ティーはまだ目覚めない流石に可笑しいが、どうしても起きてくれない

本格的に不味いかも知れない

 

「キノ明日には国を出よう、ティーの様子が可笑しい」

 

「はい、早く医者に見せましょう」

 

この国には医者は居ない

なんでもある水を飲むと、どんな病気や怪我でも直ぐに治ってしまうので医者は必要無いらしい

見せられた物は深い青色に輝き、とても受け入れられる物では無かった

その日は三人1つのベッドに体を寄せ合い寝た

 

それでも視線は消えない

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

朝になったので急いで支度をし宿を出た

相変わらず無愛想な店員は、こんな早朝に出発の理由を聞かなかった

 

海辺を通り国の出口に向かう

途中の海岸に立つ美しい女を見かけた

 

「あっ」

 

「どうしましたか?」

 

私はモトラドを止め、海岸に向かい歩きだす

 

「レオンさん!どうしたんです!」

 

キノが慌てているがそんな事はどうでもいい

あの女に彼女に呼ばれているのだ、彼女は微笑んで私を見ている、私だけを…あぁなんて美しい

早くっ早くっ彼女に彼女の元に

 

「今…今行きますからっ…待っていてください。

早く貴女に触れたい、貴女と一つに…」

 

?なんだ?誰が私の服を掴んでいるんだ、誰が彼女と私の邪魔しようと…

 

頭が急にはっきりとし、目が覚める

なんだ私は一体何をしていた

 

「だめ、いっちゃだめ」

 

「ティー?」

 

ティーは海岸に顔を向けて話す

私の顔を両手で固定し、海の方を見ない様にされている

 

「わたしのレオンはあげない

よこどりは、ゆるさない」

 

ティーの目の中に、蠢く物が見えた気がするが

よく分からないいや脳が理解出来ない

 

海岸から「ぎゃっ」と言う声が聞こえた

しばらくしてティーの両手が離された

声のした方を見ても、海に続く足跡と水飛沫しか見えない

 

「もういこう、ここはレオンのいるばしょじゃない

いていいばしょじゃない」

 

「レオンさん、ティーの言う通りもう行きましょう、どうやら住民が集まって来ている様です」

 

見渡すと民家から覗く者や、こちらに近付いて来ている者達が居た

確かにもう行った方が良い

不穏な気配がしている

 

集まって来た住民達の中に、前の国で話を聞いた旅人の顔が見えた

モトラドに乗り込み急いで門を抜けた

 

もうここまで走れば、幾らかは安全だろう

 

「ティー目が覚めたのか?

体に異常は無いか?」

 

今更だが確認する

 

「だいじょうぶ、げんき」

 

本当に何時もと変わらない様で、安心する

 

「さんざんな目に合いましたね、もう二度とあの国には行きたくありませんよ」

 

キノがため息をついている

まったくだ、私も二度と御免だ

急いで国から離れたがまだ生臭い気がする。

服や荷物に匂いが着いたのかも知れない、本当に踏んだり蹴ったりだ

 

モトラドのスピードを上げ走り出す

次の国は明るく過ごし易いと良いな

 

 

 

 

 

 

「さよなら…おとうさま…またね」

 

ティーは小さく呟き

キノとレオンに気付かれない様に

見えない何かに、小さく手を振った




ふおんなけはい
魚のエッセンス配合

主人公は初めから、呼ばれて来ていたので
思考が誘導されぎみ


ティーは母親を探しているが、父親は探していない

fgoのアビゲイルから

おとうさま設定
額の鍵穴
異形の力


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愛の溢れる国 1

国全体が恋愛脳
恋愛推奨の国
旅人にも強要する
キノとティーには、丁度良いチャンス
ボッチなど許さない、理想の恋人を紹介してくれる
とても良い国

前中後編


愛の溢れる国

 

「ティー手を離して下さい」

 

「いや、はんたいのてがあいてる」

 

「成る程、ティーは賢いですね」

 

「えへん」

 

何だこの状況は、両手をキノとティーに繋がれている

どうしてこんな事にこんな恥ずかしい事に

 

「おや?僕を放置して考え事ですか?

そんな事は許しませんよ?」

 

両手で顔を掴みぐいっとキノの方を向かされる

 

「何を考えていたんですか?

他の女、さっき通ったあの女ですか?

僕には無いあの無駄な贅肉が、大きな胸が良いんですか?レオンさんが僕の胸を大きくしてくれますか?」

 

久しぶりの怖いキノさんが出て来た

私の手をキノの胸に近付ける、止めなさい

 

「キノ落ち着ついて、キノとティーの事を考えていただけです」

 

そう言うと直ぐに落ち着く

何回も同じ事を繰り返し、素直に話すのが正解と気付いた

 

「なら良いです、何時でも僕達の事だけを考えていて下さいね」

 

ニコッと笑う顔は可愛いが、セリフが怖い

何時もの事か

 

何故この様な状況になったかと言うと入国まで遡る

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

始まりは、入国審査の時のだった

 

入国審査官の質問に答えていると

突然審査官が感動し始めた

 

「素晴らしい!

愛の為に船の国から、まだ小さな女の子と駆け落ちするなんて!」

 

話た内容と全然違う

どうやら頭の中で、勝手に話を変えている様だった

 

他の審査官が集まって来た

 

「一体どうしたんたそんなに興奮して、控え室まで聞こえて来たぞ!」

 

「聞いてくれとても愛の溢れる話なんだ!」

 

審査官がどんどん集まり、騒ぎ出す

 

「ではそちらの旅人さんとも?

一体どんな素晴らしい出会いを?」

 

キノを助けた話をする

勿論話せる所だけだ

 

「おおなんと言うこと!貴方は愛の為に生きている様なお人なのですね!」

 

感動して泣き出す者もいた

 

「是非入国して我が国に愛を、本当の愛を広めて下さい」

 

審査官達は、それがいいと私達を国の中に入れてくれた

まだ入国審査の途中だったけど…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

私達の事はラジオ放送で、国中に知られている

 

審査官に伝えた話を誇張、捏造、妄想し、一大ロマンスの末の運命の恋人達という話に変えられていた。

一体何処の誰の話か分からない

 

入国すると大勢の人が待ち受けていた

私達のファンになったと言う

話を聞いて感動したらしい

 

「キノさんデートしましょう!」

 

「ティーちゃん可愛い、抱っこしたい!」

 

「レオンさん!恋人を増やす予定はありますか!」

 

皆口々に叫んでいる

困惑している私達に、一人の女が歩み寄る

 

「突然すみません

私この国で宿屋をしているんです

こんなに騒がれては落ち着け無いでしょう?

疲れている様ですし、私の宿にいらっしゃいませんか?

歓迎しますよ!」

 

私の手を握った女の人は、20代位の可愛らしい人だった

確かに少し休みたい、この国に着くまでかなりの距離をモトラドで走ってきてもうくたくたに疲れていた。

キノ達もきっと疲れている

 

「ありがとうございます、是非貴方の宿に泊まらせて下さい。

疲れていたので助かります」

 

返事をすると、私の腕を自分の腕と絡め嬉しそうに笑う

 

「まあ嬉しい。

早速案内しますよ、早く行きましょう」

 

随分積極的だがこれは宿の客を捕まえる為の技術だろう、勘違いしてはいけない

 

私達は案内に着いていった

 

キノとティーの不気味な様子に、私は気が付かなかった

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

宿に着くと女は自己紹介を始めた

 

「私はこの宿を経営している、アンナと言います。

今年で24歳になりました、この国では珍しくまだ未婚です、よろしくお願いしますね」

 

ニコリと笑い

パチンと綺麗にウィンクする

 

「ご丁寧にありがとうございます、私の名前はレオンです」

 

ティーに合図をする

 

「…ティー」

 

挨拶出来て偉いと頭を撫でる

ティーは猫の様に目を細めている

 

「この子はティーと言います」

 

補足の説明を入れる

次はキノの番だ

 

「僕の名前はキノと言います、こっちは相棒のエルメス」

 

「エルメスだよ、よろしくね」

 

キノの声が何故か冷たい、疲れているせいかな

 

「皆様自己紹介ありがとうございます、それではお部屋に案内しますので着いて来て下さいね」

 

アンナさんはまた私と腕を組む、スキンシップが多い人だな

 

案内された部屋でやっと落ち着く

ベッドルームが2つもある豪華な部屋だ

荷物を置き、ソファーに座る

 

「ふぅっ、疲れたやっと一息つける、観光は休憩の後にしないか?」

 

「ええ休憩してからが良いです、ティーのダメージが大きいみたいですよ」

 

ティーを見るとよたよと歩き

私の膝によじ登る

 

「…つかれた」

 

「アンナさんが置いて行ってくれた、お茶とお菓子で休憩にしよう」

 

机の上にお盆に乗ったティーセットがある、サービスが良い

 

「…レオンさん、このサービスは貴方に向けられた物だと、気が付いてますか?」

 

「え?宿泊客を歓迎する物じゃないのか?」

 

キノはため息を吐く

 

「あのあからさまなアピールに、気付か無かったんですか?」

 

「あれは、客を宿に呼ぶ為の行為だと…」

 

「おんなのめ」

 

「そうですレオンさんを見る目が、完全に恋する女の目をしていました…油断できません」

 

キノが私の隣に座る

 

「あの女に腕を組まれて、どうでしたか?」

 

じっと目を覗き込んで来る

キノは光の無い暗い目をしている

ティーも振り返り話を聞いている

 

「別に何も…スキンシップの多い人だなって」

 

不思議な事に、本当に何の感情も沸いて来なかった

 

キノが私の腕に抱きつく

 

「なら僕はどうですか?何か感じますか?」

 

「照れる、胸がドキドキする」

 

素直に感情を伝える

 

「えへへ…なら良いです、あんな女に反応する様なら、少しお話をしなければ…いけない所でした」

 

キノは嬉しそうに笑うと

立ち上がり装備を確認する

 

「僕は少し宿の周りを見てきます、レオンさんはティーと休憩していて下さい。

では行ってきます」

 

キノは素早く用意すると、出ていってしまった

 

ティーがまだ疲れているので気を使ってくれた様だ

キノは良い子だな

 

 

 

「レオンさんは大丈夫でしたが、アンナさんはお話が必要ですね…」

 

廊下でキノが呟く

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

一時間もするとキノが帰って来た

 

その腕には多くの荷物を抱えている

ティーはベッドルームでお昼寝中で

膝の上で寝てしまったので私が運んだ

 

「ただいま帰りました、この国の話は聞けましたが

少し疲れました」

 

ドサドサと机に荷物を置く

花やプレゼント、手紙まである

 

「キノ、これはどうしたんだ?」

 

私の隣に座り、荷物を探りながら返事をする

 

「僕にプレゼントですって、ファンになりましたとか、付き合って下さいとか。

ああ…後は結婚しろって言った人も沢山居ましたね」

 

なんだそれ、キノは美人だがそんな急に告白や結婚?

どうしたんだろう胸がモヤモヤする

 

「キノが人気なのは嬉しいが、胸がモヤモヤして苦しくて、嫌な感じがするんだ」

 

自分の感情が分からない、こんな気持ちになるのは初めてだ

私が首を傾げながら話すと

キノはピタッと手を止めこちらを見る

その顔には満面の笑みが浮かんでいた

 

「それは焼きもち、嫉妬ですよ!僕に焼きもちなんて!嬉しいですけど必要ありません」

 

「焼きもち?この気持ちが焼きもちなのか、でもキノには必要ない?なんでだ?」

 

私にぐいっと身を寄せてきた

 

「初めから言っているでしょ?

僕の身も心も全てレオンさん貴方の、貴方だけの物ですから」

 

キノの後ろに天井が見える、押し倒されたのか…でも笑顔が綺麗で抵抗する気もおきない

そのまま顔が近付いてくる、キスするのか

 

 

 

 

「すとっぷ」

 

キノの顔の前に小さな手が現れた

ティーの手だ

 

キノはすっと身を引く

その間に起き上がる

 

「何ですかティー、良い所で邪魔しないで下さい」

 

「わたしにとっては、わるい」

 

「ティーだってチャンスがあれば、関係を先に進め様とするくせに」

 

「もちろん」

 

「まぁ見つかった僕が悪いですから、今回は素直に引きますよ」

 

ティーがキノの頭を撫でる

 

「すなお、いいこ」

 

「ふふっありがとうございます、ティーも良い子ですよ」

 

お互いに頭を撫で合っている、仲良しだな

 

「嫉妬もして貰えましたし収穫はありました、それで良しとします」

 

「さてそれでは、聞き込みの報告です」

 

キノは座り直して話を始める




次回に続く

あんないのアンナさん
安直な名前

この国にボッチなど居ない

一夫多妻
多夫多妻でも、なんでも可
性別も関係ない
とても自由な国



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愛の練習 2

厳しい練習(意味深)

ヒロイン系主人公
肉食系ヒロイン

人前でのスキンシップは恥ずかしい、元日本人の主人公
愛情表現ははっきりとなヒロイン達
マーキング


キノの話をまとめるとこの国は

 

・恋愛推奨

・自由恋愛、なんでもあり

・独り身を無くそうとしている

・旅人にも強要

・多少強引でも愛の為なら許される

 

話を聞けば聞くほど滅茶苦茶だ

愛の為なら人を襲っても許されるらしい

そんな訳無いあり得ない

この国で身を守るには、見て分かる程の愛を示さなければいけないらしい。

 

「見て分かる愛?」

 

「そうです例えば…」

 

私の手を握り頬にキスをする

 

「こんな感じです」

 

「こんなかんじ?」

 

ティーが反対側にキスする

 

「そうです、ティー上手ですよ」

 

「えへん」

 

とても恥ずかしい

人前でこれをするのか…無理だ心臓が爆発する

 

「他に方法は無いのか?

人前でこんなに恥ずかしい事…」

 

「無いです、ですので慣れるまで練習ですよ

たっくさん練習しましょうね」

 

キノは蕩ける様な笑顔で言った

 

「れんしゅう」

 

ティーもやる気だ

 

逃げようかと扉を見るが、キノが背後に回り込んでいた

後ろから抱きつかれて身動きがとれない

 

「大丈夫です、恥ずかしいのは最初だけですよ

直ぐにレオンさんも積極的になる筈です」

 

お腹に軽い衝撃が走る、見るとティーが抱きついていた

 

「わたしから、する」

 

屈む様に言われ顔が近付いてくる

睫毛が白くて長い…

 

 

厳しい練習は次の日まで続いた

 

羞恥心で死にそうだ

キノとティーはつやつやの良い顔で満足そうにしている、元気だな

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「そろそろ買い出しに行きましょう

食料や弾も補充しないと」

 

と言うことは人前に出るという事だ

練習を実践するのか

 

「たのしみ」

 

ティーが嬉しそうだ

 

宿のロビーに行くとアンナさんが居た、

こちらに近付こうとするもキノを見て足を止める。

 

「おはようございます、アンナさん」

 

こちらから挨拶すると硬い笑顔で返事をしてくる、どうしたんだ?

 

「おはようございます、レオンさん

今日は良い天気ですので、絶好のお出かけ日和ですよ」

 

「はい、今から買い出しに行こうかと」

 

「それなら私が案内を…」

 

アンナさんの言葉をキノが遮る

 

「僕が昨日調べましたから、案内は不要ですよ」

 

キノはにっこり笑っているが、その表情はお面の様に顔に張り付けただけに見える。

 

「そっそうでしたね」

 

慌てて返事をしている

二人の雰囲気が悪い、何かあったのだろうか?

 

「何もありませんよ?

ありませんよね、アンナさん?」

 

キノが私の心の声に返事をしてから、アンナさんに話かける

アンナさんはビクッと震えて返事をする

 

「はっはい、何もないです大丈夫です!」

 

青い顔で早口に話す心配だがキノとティーに手を引かれ宿を出た

 

ティーに手を繋がれる

それを見てキノは不満そうだ

 

そして前話の冒頭に繋がる

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

練習の通りに人前でイチャイチャしなくては、恥ずかしくても我慢だ

 

ティーを片腕に抱きキノの頬にキスをする

 

「えぇっ、れっ練習の成果が出ましたね」

 

キノは慌てた後少し驚いて、

取り繕う様に感心した風を装い笑う

急な事に照れているのだろうか

 

「これでキノとティーは、安全なのか?」

 

「もう少し、ですかね?」

 

そう言うとキノは腕に引っ付く、これで住民達に襲われ無いだろうか?

離れない様にティーは腕に抱いて歩く

 

「まんぞく」

 

ティーは私の首に腕を回し満足そうに、むふーっと息を吐いた

 

住民達は遠巻きに見ているが、アピールの成果が出ている様で声をかけるだけで手は出して来ない、良かった

 

買い物事態はとても満足の行く物だった

この国は恋愛推奨なだけあって、恋人向けのサービスが充実していた

私達は一目見て分かる程イチャついている、山程のおまけや割引をして貰った

 

そう言えばキノは私達と少しの間別行動していたが、何か用事でもあったのだろうか?

心配していたが、すぐに平気な顔で戻って来たので本当に何でも無かったのだろう。

 

それでも心配した事を伝えると嬉しそうに笑いスキンシップが増えたが、無事なら何でも良い。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

単独行動の路地裏

 

 

「貴方たち、もう出て来ていいですよ

いい加減視線が鬱陶しいです」

 

レオンさんから離れて路地裏に入る

 

宿を出た時から続くねちっこく舐め回すな視線に

いい加減うんざりだ、せっかくのデートを邪魔をした責任はきっちり取って貰う

 

彼らを誘う為にわざと一人になったその事に気付いているのか、いないのか簡単に男達は釣れた

 

「キノちゃんだよね?」

 

「こんな所に来るなんて、やっぱり俺達と結婚したかったんだな?」

 

「昨日のプロポーズの返事は、体で返してくれんのかよ?」

 

げへへと笑う男達に反吐がでる

数は三人か、それなら直ぐに片付けてレオンさんと合流できる

レオンさんの事を考えるだけで笑顔になる、それを良い様に勘違いしたのか男達はにじり寄ってきた。

 

「キノちゃん…キノもやる気見たいだぜ?」

 

「へへっあんなに涼しい顔して、実は淫乱かよ」

 

「俺達の妻にはぴったりだな、三人を満足させてくれよ!」

 

涎を垂らした男達の顔がとても気持ち悪い

この国は例え合意無く襲っても結婚すれば無罪になる、それを目当てに話しているのだろう…本当に反吐が出る。

 

「僕が天国に送ってあげますよ」

 

ニヤニヤと笑っていた顔が、サイレンサー付きのパースエイダーを見てさっと色を無くす

 

「そっそんな事が許されるかよ!」

 

「俺達の内一人でも逃げ切れば捕まるぞ!」

 

それはそうだろうが、そんなヘマはしない

 

「貴方達が許されるのなら、僕も許される筈です

例えこの国に許され無くても、僕には関係ありませんが」

 

悲鳴も出させない様にゴミの処理を終えた、証拠も何も無い

 

さぁ早くレオンさんと合流して

買い物の続きだ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

夜中のベッドルーム

 

 

体が動かない

熟睡していたが夜中に急に目が覚めた

これが金縛りなのか…初めてだがとても怖い、背中に冷や汗が流れる。

今日はキノとティーは、二人で隣のベッドルームに寝ているので助けは呼べない。

 

どうにか頭だけ動く、キョロキョロしていると布団が盛り上がっていた丁度動かない腹の上だ。

恐怖で固まると布団が動いたこのまま幽霊に殺されるのだろうか?

少しずつ丸く白い物が見えて来た、窓からの光で透けている様だった

いきなりそれががばっと顔を上げる

 

…ティーだった

パジャマ代わりの白いシャツを着たティーが布団に入り込んでいた

ほっとするが、まだ心臓がバクバクしている

 

「ティーこんな夜遅くに、どうしたんだ?」

 

「…」

 

ティーはじっと見るだけで何も答えてくれない

 

ティーと一緒に寝る事も有るが、忍び込んで来るのは珍しい

今日の買い物で何かあったのか?

頭を撫でて質問する

 

「何かあったか?」

 

「わたしは…」

 

続きをじっと待つ

私を見て話すティーの目は少し、濡れて見えた

 

「わたしは、こどもじゃない」

 

「え?」

 

「しってるはず」

 

私の知っているティーはまだ小さな子供の様で…

知ってる筈?何をだろう

直ぐに答えが無かったので怒ったのか

 

「ずっといっしょだった…!」

 

少し大きな声で言った

こんなに感情的なティーは初めて見た

 

確かに出会ってからずっと一緒だった

年齢も見た目程幼く無い事も知っている

でもつい見た目通りの幼い子供に対する接し方になってしまっていた、その事を怒っていたのか

 

昼間の買い物の時も、キノのスキンシップには照れて心臓が五月蝿かったが

ティーには微笑ましい子供を見ている様な気持ちだった

ティーは本気の気持ちを向けてくれて居たのに、今迄気付いてなかった

 

「ごめんねティー…ちゃんと考えるよ

ティーの向けてくれる真剣な気持ちに、ちゃんとした答えを返す方法を」

 

ティーは頭を振る

何だろうもう遅いと言う事か

 

「からだでかえして」

 

「ちょっとティー」

 

チュッと口にキスされた

体で返してって、こんな事昔もキノとあったぞ

考え事をしているとお腹をつねられた

 

「わたしだけ…かんじて」

 

微笑みに色気がある

こんな大人の色気って、とても子供には見えない

 

「ティー止めなさい、まだ早いだろ」

 

「わたしが、ちいさいから?」

 

また目に涙が浮かぶ

 

「そんな事は無い、とても魅力的だよ」

 

「うれしい、ぜんぶまかせて」

 

ふふっと微笑むとゴツっいう音と共にそのまま後ろに倒れた、キノだ

目の座ったキノがそこに居た

右手にパースエイダーが見えた、それで殴ったのか

 

「回収していきますね」

 

ティーを片手で持ち上げる

 

「あっおやすみなさい」

 

「おやすみなさい、レオンさん」

 

にこぉっと笑うとそのまま部屋から出て行った

深く考えると怖いので、私はこのまま眠る

 

今日も平和な1日だった




アンナさんとのお話

練習
キスまでですよ?
本当ですよ?


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愛の結晶 女の戦い 3

朝から空気が悪い

修羅場の朝は早い
室内は戦場に


今朝のティーは見て分かる程、キノに怒っていた

 

「たんこぶ」

 

「そうですか、まあ気絶する様に殴りましたからね、血は出て無いでしょう?」

 

ティーはキノを睨みつける

 

「いたい」

 

「鉄ですからね、殴られると痛い筈です」

 

キノは涼しげに会話を流している

ピリッとした空気が流れる

 

ティーが私が起きて来た事に気付き、駆け寄って来たのでそのまま抱き上げる

 

「おはよ」

 

「おはようございます」

 

「あれっおはようございます

早いですね、昨日は遅くまで騒がしかったので、もう少し休むのかと思ってました」

 

キノはちらっとティーを見たが、ティーは素知らぬ顔だ

 

「何時も通りに目が覚めたよ、体に染み付いた習慣だね」

 

本当に少しの誤差も無く目が覚める

前世なら役にたっただろうな

 

「いたい」

 

私の服を引っ張りたんこぶを見せる

さっきの会話の続きか

たんこぶを軽く撫でる

 

「これでましになりましたか?」

 

痛いの飛んでけと付け加える

キョトンとしていたが

驚いた様にたんこぶをペタペタ触る

 

「いたくない」

 

それなら良かった、病は気からだ

病では無く怪我だけど

 

そうだ昨日の買い物の時に頼んでいた荷物が、そろそろ宿に届く頃だ。

 

「二人とも私は大事な荷物を受け取って来るから、少し待っていてね。」

 

そう言って部屋を出た

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「大切な荷物?一体何でしょうね?」

 

キノは不思議そうに首を傾げるが、ティーはハッとした様に、鏡の前で姿を整えている

 

「ティー?何をしてるんですか?」

 

「ゆびわをうけとる、じゅんび」

 

「指輪?」

 

そう言えば、昨日合流した時に宝飾店から出て来ていた、そこで指輪を買ったのだろうか?

何の為にわざわざこの国で?

 

「ぷろぽーず」

 

「この国でプロポーズされると、絶対に別れる事はない、例え死んでも来世でまた結ばれると言う噂がありましたね。」

 

ティーがこくんと頷く

 

「ふたつかってた」

 

「2つですか?」

 

「わたしとレオンのぶん」

 

誇らしげに笑うティーに、ピシッと空気に亀裂の入る音がした

気持ちを落ち着け冷静に話す

 

「それは何故そうと、言い切れるのですか?

ティーの為にと言って、買っていたのですか?

僕とレオンさんの分かも知れませんよ?」

 

思ったよりも冷静になれない

レオンさんの事になると、仕方ない

 

ティーが鼻でふっと笑う

それにもカチンと来る

 

「あたりまえ、やくそくした」

 

「僕だって約束しましたよ、一生をかけて恩を返すと、何処までも付いて行くと誓いました」

 

またも鼻で笑われる、何処までも余裕を崩さない

流石僕よりも年上

 

「キノがいっただけ」

 

「なっ何を言って」

 

「わたしはちゃんと、レオンからいわれた」

 

ふふんっと笑う顔に、とうとうブチッと切れる

 

「これ以上話しても解決は難しいでしょう。

なら僕達の得意な実力勝負で、決着を着けましょう?」

 

怒り過ぎると逆に冷静になる、顔には自然と笑みが浮かぶ

ティーもそのつもりだったのだろう

いつの間にか両手に手榴弾を持っていた。

 

「わたしがかつ」

 

「そんな事はあり得ません、僕がゆるしませんから」

 

パースエイダーを構え、一触即発のまさにその時扉が開き、笑顔のレオンさんが帰って来た。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

大事な荷物を受け取り喜ぶ顔を思い浮かべる、胸の辺りがぽかぽかしてくる。

これが幸せか…自然と笑顔になる

この気持ちのまま部屋に帰った

 

「ただいま…?」

 

幸せな笑顔が凍りついた

 

キノの手にはパースエイダー

ティーの手には手榴弾

何だろう殺し合いの最中にしか見えない、一応聞いてみる。

 

「二人とも一体何を、してるんですか?」

 

可笑しいな冷や汗が止まらない

 

キノもティーもお互いに目を離さずに、返事をする

 

「おかえりなさい、すぐに決着をつけて僕が指輪を受け取りますから」

 

「わたしのゆびわ」

 

二人とも指輪の取り合いで喧嘩をしていたのか?

それなら大丈夫だ

 

「これは二人の指輪ですよ?」

 

え?と間抜けな顔で、二人は振り向いた

 

「取り敢えず落ち着いてソファーに座りなさい、喧嘩は駄目ですよ!」

 

私だって怒る時はちゃんと怒るんだ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

二人を落ち着ける為にお茶を出す

皆でソファーに座る

 

「私が指輪を買っていたのは、知っているよね?」

 

ティーが頷く

 

「キノとは別行動をしている間に、買ったんだ」

 

「僕と合流した時に丁度、宝飾店から出て来ましたよね」

 

「その時の指輪が、これだよ」

 

大事に抱えていた箱を見せる

中には指輪が2つ、それぞれの箱に入っている

 

「これはね私の大事な人に、気持ちを伝える為に選んだんだよ」

 

日頃の感謝を伝える為に

お店の人に気持ちを伝える為には何が良いかを聞くと、是非指輪をと進められた。

 

沢山の宝石の中から、二人に似合うと思った物を選んだ

キノにはエメラルドの緑色

ティーにはアメジストの紫色

喜んでくれるだろうか?

 

そして何故二人はまたピリピリしているんだ、仲良くなった筈だろうに

 

「二人とも、受け取って貰えますか?」

 

キノは口元を両手で押さえ感動している様だ

ティーでさえも少し震えている

 

二人はそれぞれ震える指で恐る恐る、指輪を着けている

ん?二人とも左手の薬指でいいの?

そんな大切な指でいいのか

 

「ありがとうございますレオンさん

この指輪は死んでも離しません」

 

「死なないでね」

 

キノは何時も、覚悟が重たい

 

「これでほんとにいっしょ

しんでからもずっと、ずっと」

 

「ティーも死なないでね」

 

何だろう死んでからもって、来世かな?

また転生するのかも知れない

 

「指輪って交換する物だと聞いたのですが、まさか僕が貰えるとは思わず、レオンさんの分を用意していませんでした。」

 

キノがうっかりと言った風に話出す

そりゃ貰う前からお返しを用意するなんて、出来る筈が無い

 

「かいもの」

 

「それが良いですね!レオンさん直ぐに買いに行きましょう」

 

キノとティーに手を引かれ、そのまま指輪を買って貰ってしまった

感謝を伝えたつもりがお返しを貰うとは、また何か贈り物をしないと。

 

二人に選んで貰った指輪は

アクアマリンだった、水色の綺麗な宝石だ。

 

二人は真剣に選んで居たが、店員の説明を聞くと直ぐ様アクアマリンを選んだ。

私も教えて欲しかったが、聞いても教えてくれなかった。

 

なんでも宝石にはそれぞれに宝石言葉があるらしい、キノとティーの指輪も宝石言葉を調べてから、買えば良かったのかも知れない。

だが二人はとても気に入ったと言って居たので、これはこれで良かったと思おう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

主人公は一人別室で熟睡中

 

深夜遅くキノとティーのベッドルームにまだ明かりが点いていた

 

二人はベッドの上に書類を広げて、一つ一つ念入りに確認にしていた

 

「他に必要な書類は、有りましたか?」

 

「ない、しもん」

 

ティーが判子の押されていない部分を指差す

 

「ああそうでした、確か血判って言う物が必要でしたね。それはレオンさんが寝てる間に採るとして、他は…大丈夫ですね書類に不備は有りません」

 

「かんぺき」

 

ティーはグッと親指を立てる

賢いティーのお墨付きを貰い、キノは一安心だった

 

「後はこれを提出すれば、晴れて夫婦と言う物ですね。感動的です」

 

「かぞく」

 

「そうですね、これで僕とティーも正式な家族ですから、これからは姉妹と言う事に?」

 

「いもうと」

 

ティーがキノを指差す

 

「そうでした年齢はティーの方が上でした、でもこれからも可愛いがっても良いでしょうか?」

 

「ゆるす、あね」

 

「ありがとうございます、お姉ちゃん」

 

「ティー」

 

「はいありがとうございますティー」

 

呼ばれ方は今のままが良い様だ

二人は仲良く明日の準備をする

 

出国時に勝手に結婚の書類を提出、受理され既婚者になったのを主人公はまだ知らない。




愛の結晶=指輪
赤ちゃんじゃ無いよ?
まだ、致してないですよ

ティーちゃん、はティーさん

以下ネット参照

エメラルド
非常に強い愛の石
宝石言葉
幸運・幸福・夫婦愛・安定・希望

アメジスト
愛の守護石・真実の愛を守り抜く
宝石言葉
誠実・高貴・心の平和・希望

主人公も無意識に重たい可能性が…?

アクアマリン
幸せな結婚・夫婦の幸福
宝石言葉
勇敢・幸福・安らぎ・聡明


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師匠に助けられた話

昔の時代にタイムスリップ
師匠が若かった時代

本編に唐突に差し込んで行きます

主人公まだ独身時代

番外編ですが、本編の主人公にも師匠にも二人共に記憶がある、出会うと怖い

主人公の首には今もネックレスが、勿論師匠にも
つまり未だに婚約状態


「貴方を私の物にします、良いですね」

 

凛とした雰囲気の目の鋭い美女は、私にそう言った

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

その日も普通にキノとティーと野宿をし、何事も無く眠りについた。

 

朝目が覚めると知らない男達に囲まれていた。

 

キノとティーも居ない此処は何処だ、何が起こったんだ?

皆武器を持ち荒々しい見た目をしている。

山賊だろうか?私が目覚めた事に気が付いたのかこちらに近付いてくる。

 

「おっと目が覚めたのか。

俺達のアジトに一人で乗り込んで来るなんて、良い度胸じゃねえか」

 

男に言われて周りを見ると、山小屋の様だった

昨日は野宿をしたがこんな所で寝てはいない

一体どういう事だ?訳が分からない

 

「ああ?この状況で呑気に考えごとか?

それともこれからどうなるか、分かってねえのか」

 

「私は殺されるのか?」

 

男達はギャハハと笑いだした

 

「そんな勿体ない事するかよ!

ちゃんと全員で、可愛がってやるからな」

 

顔を撫でられ鳥肌が立った、こいつら男でも関係ないのか私の貞操の危機だ。

 

逃げようともがくが頭の上で両手を縛られていた。

せめて噛みついてやろうとするも、麻袋を被せられ無駄に終わる。

 

男に体の上に乗り上げられる、生臭い息がかかり服に手を掛けられた。もう駄目かと思っていると

 

急に目の前の気配が無くなり、私の服がびちゃびちゃに濡れた。

ゴロンと何か重い物がすぐ横で転がる音、続く銃声と悲鳴

 

暫くすると急に部屋が静かになった

 

「ふぅ、大丈夫ですか?」

 

女性の声がした

 

誰かの足音と気配が近付く、怖い

体が勝手に震える

 

「今拘束を外します」

 

さっきの女性の声が直ぐ近くで聞こえ、手が自由になる

目の前が明るくなった、袋を取ってくれたのか

 

女性に見つめられている

私を見ている顔が赤く染まって行く、なんだ?

 

「ありがとうございます、助かりました」

 

返事が無い、どうしたのだろうか?

 

「あの?」

 

私が困惑していると急に女性が動き出した

 

「貴方名前は?」

 

「へっあっ、レオンです」

 

戸惑いつつも返信をする

 

「それが全てですか?名前を全て教えなさい」

 

怖い、尋問を受けているかの様だ

 

「はっはい、レオン・デ・ロス・アルダマです

レオンと呼ばれています」

 

「レオンと呼ばれているのですね」

 

女性は何かを納得している

 

「師匠ーこっちの部屋に死体がありますよ

多分この人が依頼された、行方不明者ですよ」

 

軽そうな男の声がした、足音がこちらに近付いて来る

 

「あれ?それ誰ですか?他にも拐われた人が居たんですかね?」

 

「分かりません、けれど捜索依頼は出てませんでしたね?」

 

「はい、一人分だけでした」

 

男性は書類を取り出し、確認しながら答えた

 

「なら彼は貰っても構いませんね」

 

「はあぁ!?師匠どうしたんです!

頭でも打ちましたか!」

 

師匠と呼ばれた女性は、男性を殴り付ける

 

「本当に失礼な男ですね…

貴方は他の部屋で、お金になりそうな物でも探してなさい」

 

「後で説明して下さいよ」

 

男性はぶつぶつ言いながら、隣の部屋に消えていった

 

女性はこちらを振り向くと質問してきた

 

「貴方はあの人拐いの、仲間ですか?」

 

「そんな訳無いです!今捕まって居たのを見たでしょう?!」

 

ぎょっとする、助けてくれた本人にまさか疑われていたなんて。

 

「分かりきっていましたが、一応の確認ですよ」

 

ふふっと笑うと部屋を物色し始めた

厳しそうな人だけど、笑うと可愛いな

 

おっとそうだ

そんな事を考えている暇は無かった、急いで立ち上がると、服が濡れていた事を思い出した。

これは…血だ、私に覆い被さっていた男の血だった、その男も今は床の上に転がる死体の一体になっていた。

 

服が気持ち悪いが着替えも無い、困っていると服を差し出された。

 

「これをどうぞ」

 

さっきの女性だ、この部屋を物色していたのは着替えを探してくれていたのか。

 

「えっと、師匠ありがとうございます」

 

笑顔でお礼を言うと、師匠は私の言葉に反応していた

 

「師匠とは?」

 

「さっきの男性が師匠とおっしゃっていたので、貴女の名前を知りませんので、師匠と呼ばせて頂きました。」

 

「あぁ確かにあの男は弟子で私は師匠ですが…まあ良いです、後で二人きりの時に名前を教えます。」

 

「はぁ…わかりました」

 

何故二人きりになるのか?

でもこの場で一番強いのは彼女だ、逆らわないでおこう、私は武器も何も持っていないのだから。

そうだ服を着替えなくては

 

「ではこの着替えを有り難く、使わせて頂きます」

 

「はいどうぞ」

 

私が着替え出しても師匠は目を離さない、まだ警戒されているのだろうか。

それにしても血で張り付いた服が気持ち悪い、洗い流したいが贅沢は言えないのでそのまま着替えた。

 

「おや、似合うじゃないですか」

 

「ありがとうございます」

 

お世辞にもお礼を言う、その時師匠は何を思ったのか私の手を引くと小屋から連れ出し、ボロボロの小さな車の後部座席に乗せた。

 

「今回は行方不明者の捜索の依頼でしたが、発見した時の為に後部座席を空けておいて正解でした。

貴方を乗せられたので」

 

にこりと笑う師匠は私に好意的だ、何故?

 

師匠の弟子の男性が荷物を抱えて帰って来た、私の横に荷物を置くので少々狭くなる。

 

「師匠!説明をお願いします」

 

チラリと私を見たので、私の事だ

 

「彼を私の物にしました、以上です」

 

「はぁぁ!」

 

弟子さんの声と私の心の声が重なる、私も聞いていない。

 

「五月蝿いですね」

 

「いやっそれは驚くでしょっ!大体彼は納得してるんですか?」

 

「しますよね?」

 

二人に見られるが納得する訳が無いです、理由も意味も分からない。

 

「ええっと…何か理由が?」

 

師匠は首を傾げる

 

「理由?ええありますよ」

 

「本当でしょうね、また思い付きの行動じゃ…」

 

弟子が車から蹴り出された、素早く鋭い蹴りが怖い

 

「貴方がいると話が進みません、口を挟まず車の外に立って話を聞いていなさい」

 

「いてぇ…はいはいわかりました」

 

お尻を擦りながら、車の横で話を聞いている

 

「貴方を、レオンを私の物にする理由はとても簡単です」

 

何故か緊張感がある

 

「レオンを一目見て欲しいと思ったからです。

欲しい物は何であろうと、どんな手を使っても手に入れる、それだけです」

 

言い切る師匠は格好良いが言ってる事は強盗と変わらない、ヤバい人に助けられたのか?

弟子を見て助けを求める

 

「あ~師匠は言い出したら聞きませんから、諦めて下さい。

これからは俺とも長い付き合いになりますね、師匠が気に入ったって事は…?」

 

「理解の早い弟子で助かります、彼にはこれから私の夫になって貰います」

 

「じゃあ師匠の旦那?言い難いな…俺も名前で呼ばせて下さい、これからよろしくお願いしますレオンさん」

 

呆けている間に話が進み纏まってしまった、私は納得していないので勿論抗議する。

 

「待ってください、私は愛の無い結婚をするつもりなんてありませ…」

 

カチャリと額に硬い物が当たる、パースエイダーを突き付けられていた、速すぎて抜く所が見えなかった。

 

「私は貴方を手に入れる、これは決定事項です。

抵抗出来ない様なら私に同意したと見なします」

 

「そんな!無茶苦茶です!」

 

「どんな手を使っても手に入れる、そう言いました私は本気です」

 

武器の無いこの状態では、いや例え武器があっても師匠には勝てないだろうこの人は強すぎる。

私が固まっていると

 

「ですが、貴方の意見は少し違います」

 

「違う?」

 

「愛ならありますよ、私からの愛なら」

 

愛?さっきの私が言った愛の無い結婚は嫌と言うのを、ちゃんと聞いていたのか。

師匠からの愛とは、私は師匠に愛されている?何時?

 

「初めて見た時からです、まさか私が一目惚れをするとは思いませんでした」

 

だから、初めて顔を見た時に固まっていたのか

 

「これを貴方に」

 

そう言って、ポケットからネックレスを取り出した

 

「それは?」

 

「これは前の国でとある商人から買い叩…、もとい買い取った、大変価値のあるネックレスです」

 

買い叩いたって言いましたか?

 

「このネックレスは世界でたった2つしかありません。

この2つでぴったりと1つのペアになっています、結婚指輪を買うまでの、婚約ネックレスです」

 

ネックレスにはどちらも、ダイヤモンドが付いていた

師匠は自分の首に着けた後私にも着けてくれた

 

「貴方に拒否権はありません、本気で抗うのなら受けて立ちますが?」

 

「いえ、今の私ではかないませんから」

 

ははっと乾いた笑いが出る

 

「今の…ですか。ますます気に入りました。

ではこうしましょう、私が気に入る結婚指輪を見つける前に、もしも貴方が私に勝てたら結婚は無しにします」

 

「本当ですか!」

 

「貴方に嘘は言いません、その間の修行にも付き合いましょう」

 

「それは有り難いです」

 

「ただし何時までも私に勝てない場合は、結婚して貰います拒否権は無いです」

 

「はっはい!」

 

こうして私の期限付きの婚約は始まった

この師匠にはどうしても勝てる気がしないが勝つしか無い、でないと結婚なのだから

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

気合いを入れて張り切るレオンを見て

離れてこっそりと師匠と弟子は話す

 

「まぁ一緒に旅を続けるうちに情も湧くでしょうし、そのうち私からの夜這いでもして、既成事実を作ればいいのですが」

 

「うわぁ師匠、それはあんまりじゃ」

 

「私は始めにどんな手も使うと、ちゃんと言いました」

 

「ああレオンさん御愁傷様です」

 

「まったく、失礼な弟子ですね」




この小説の師匠は、今でも若く美しい
美魔女
一応のクトゥルフ要素
師匠の本棚に怪しい本が?
若さの秘密
本当に魔女

師匠には、本編時もレオンとの昔の記憶があり、ネックレスを大切に身につけている

ダイヤモンド
宝石言葉
純潔・清浄無垢・純愛・永遠の絆

ダイヤモンドの語源に
征服されざるもの、何よりも強い
と言う意味がある、師匠にぴったりと思い選んだ


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師匠との別れの話 無貌な取引

師匠と主人公の別れのシーンだけ先に

師匠とのタイムスリップ中の旅も、今度書きます

題名は無貌であってます
意味は後程


彼の寝顔を(勝手に)見るのが最早日課になっている

今日もまた彼の寝室に忍び込む

 

ベッドには彼がすやすやと気持ち良さそうに眠っていた

しかしよく見ると彼の影が動いている

 

一瞬の出来事だった、彼は黒い靄の様で不定形の触手に掴まれると、黒い渦の中に引き摺り込まれあっという間に見えなくなった。

 

まるで最初から誰も居なかった様に、影も形も存在の一欠片さえ残ってはいなかった。

気が狂いそうで、吐き気がする

 

「彼を上手く、元の時代に帰せた様ですね」

 

後ろの影からいきなり現れた気配に振り向く

影の中に何か蠢いて見えた気がした

 

「おや、何故貴女は悲しんでいらっしゃるのでしょうか?楽しめたでしょう?」

 

浅黒い肌の男は、心底不思議そうにしている

 

この男は一体何を知っていると言うのだろうか。

私と彼の事を何も知らない筈の、赤の他人に、正直に理由を話すとでも?

 

「愛する者と離れて、平気な人はいません」

 

心では話さないと思っていても、まるで操られた様に口が勝手に喋り出す

 

話を聞いた男はにこにこと、愉しそうな悪巧みをする様な顔をしている

 

「それは困りましたね…彼は私の子と繋がる者、その婚約者を悲しませたとなると大変です」

 

少しも困っていない、愉快そうに笑いながら話を続けている

この男は奇妙すぎる、出来れば関わり合いになりたくないが…

 

「貴女は、彼を諦めるつもりは無いんですよね?」

 

「あたりまえです」

 

答えは決まっている、例え世界の何処に居ようと、必ず探し出して見せる

 

「時代が違っても?」

 

「何をおかしな事を」

 

「彼が消えた瞬間を見たでしょう?あれが人間に出来るとでも?」

 

「あれ…」

 

黒く蠢く触手を思い出して、嘔吐する

目の前が歪み座り込む

 

「ああ、人間には刺激が強すぎましたか。

先に答えを教えると、彼は未来に産まれます、今はまだ存在していませんから探しても無駄です。

私が少々手を加えて貴女と彼が出会った、出会う筈の無い二人だったんです。

彼との再会を望むのなら、長き時を待たなければいけません、その覚悟はありますか?」

 

「あるに決まってます、どれだけ長くても待てます」

 

例え理解が出来なくても、レオンの手掛かりはこの男だけだ、それなら…

男が色々と話していたが、最後の問いには即答できる

私の答えに男は満足そうに笑う

 

「気持ちは受け取りました、しかし気持ちだけではどうにもならない。

彼を待つ体は衰え朽ちていく、例え再会しても直ぐに別れが訪れます」

 

「それは…」

 

男の言う事が本当ならレオンは未来に産まれる。

探し当てて再会した所で、どれ位彼と共に生きられるだろう。

私が死んだ後で他の女と結婚するのか?

私を忘れて他の女と幸せに生きるのかそれは悲しく、とても耐えられない一体どうすれば…

 

「そんな貴方に、取引を提案します」

 

「取引?」

 

真っ暗な思考に、一筋の光が差す

 

「貴方に若さと少しの寿命を、彼と共に生きられる程度の命を与えます」

 

この男が人間で無い事は、レオンを消した事で分かっている、しかし人間の寿命を伸ばすなんて出来るのか?

 

「そんな都合の良い事が可能なのですか?」

 

「ええ勿論」

 

本当に与えられるのなら願ってもない事だ、しかし何事も対価は必要だ

 

「若さと寿命を望みますが、対価は何ですか私に払える物でしょうか?」

 

「人間は望むばかりかと思っていましたが、対価とは話が早い、利口な人間は長生きしますよ。

そして貴女に望む対価は、欲望です」

 

「欲望とは…具体的に」

 

「お金宝石財宝、人の欲望が詰まっていそうな物なら何でも良いのです。

貴女にデメリットが無いなんて、これは破格の条件ですよ。」

 

それはそうだろう探せば手に入る物と、探しても、お金をいくら積んでも手に入らない物を交換なんて、自分に何か利益がなければ取引しない筈。

 

その何かを教えてはくれないだろうが、私にデメリットが無ければ良い事にする。

 

「価値の有る物では無く、人々の欲する物という事ですね」

 

「ええ、支払いは私が望んだ時に少しずつ、彼らには長く楽しませてもらうつもりですから」

 

彼らとは一体?疑問に思うもこの男の機嫌を損ねて取引を無くされて困るのはこちらだ、何も聞くまい。

 

「彼は、今から数十年後にこの世界に産まれ落ちます」

 

「それは、その時は教えて頂けますか?」

 

「彼を探しに行ける様になれば教えます、貴女とはこれから数十年の付き合いになりますから」

 

「ありがとうございます」

 

男にお礼を言って頭を上げると、部屋には私1人だった。

ふぅっと息を吐く、これからはよりいっそうお宝を集めなくては

あの浅黒い肌の男が次に何時来るかは分からない、満足して貰える様に欲望をなるべく多く集めよう

 

数十年待てば彼に会える、そう思うと頑張れる

 

「待っていなさい」

 

ペンダントを握りしめ呟いた

ベッドには彼の温もりはもう残っていなかった

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「師匠~レオンさんに逃げられてから働きっぱなしですよ~、少しはゆっくり休みましょうよ」

 

軽い男は運転中にも関わらず、助手席の女性に殴りつけられている

 

「逃げられていません」

 

「でも夜の間に消えるなんて、まさに夜逃げ…」

 

男の頭にカチャリとパースエイダーが当てられる

 

「その話題は出すなと、言いましたよね?」

 

「ごめんなさい!もう二度と言いません!」

 

腰にパースエイダーを戻したのを見て息を吐く

本当にレオンさんが居なくなってからの師匠は、少し可笑しい。

 

先ずは、集めるお宝の種類が増えた。

今まで通り価値のあるお宝や儲かる宝石に加えて価値の無い人気のあるだけの物も集めている。

 

次に、何やら怪しい男と取引をしている様だった。

お宝を渡しているのを見かけた事がある、変なのは男が何処の街でも関係なく現れる事だ。

こちらは車で移動しているが男はふらっと現れて消える様に居なくなる、不思議な男だった。

 

最後に、師匠が老けない、いやおよそ二十代頃まで若返り老化が止まったのである。

俺が歳を取っても師匠は若く美しいままだった、それとなく尋ねても答えてくれない、旅をしているので俺以外に気にする者はいなかった。

 

師匠はレオンさんが居なくなってもペンダントを大切に、肌身離さずに首にかけている、他人にも俺にも決して触れさせる事は無い。

その宝物を、1人になると寂しそうにペンダントを眺めているのも知っていた。

 

レオンさんも師匠を嫌ってはいなかった様だし、二人だけの事情があるのかも知れない。

大人の男女の事を口を出すのは野暮だろうが、師匠が可哀想で見てられない、レオンさん早く帰って来てくれないだろうか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

目が覚めると、見覚えのある昔野宿をした場所だった

 

私の体の左右にはキノとティーが居た、戻って来たのか?

それともあれは長い夢だったのだろうか?

その時首にあるネックレスに気がついた

指で持ち上げる、これは師匠から貰った婚約ネックレスだ、やっぱり夢では無かったのか。

 

「それ、何処かで見た様な?」

 

キノが起きていたのか話かけて来た、久しぶりに感じるがキノには昨日の夜からすぐだ

 

「おはようございます、キノ」

 

「おはようございます、レオンさん」

 

このやり取りも久しぶりだ

それよりもこのネックレスを見た事がある?

 

「何処で見たか思い出せるかい?」

 

「うーん、昔何処で…少し貸して貰えますか?」

 

ネックレスを渡そうとして、手が止まる

キノでさえも触れて欲しくない、師匠の知らない所で知らない人に触らせるのは悪い気がする。

 

「ごめんねキノ、これは大事な物で私以外に触れて欲しくないんだ」

 

師匠に許可を貰ってからでないと、怒られそうだ

 

キノの目が細くなる

 

「ふーん、そんなに大切なんですね

…あっ思い出しましたよ!師匠です!」

 

ドキッとする、師匠とは私の師匠と同一人物では無いだろうが…

 

「師匠も、ネックレスを誰にも触れさせませんでした。

それと全く同じ物で、世界に2つしか無いって言ってました」

 

…まさか本当に同じ師匠なのだろうか?

 

「それでですね…なんで師匠と同じ物を、世界に2つしか無い物をレオンさんが持っているんですか?」

 

キノの目がとても怖い、腕枕から目をじっと見てくる

本当の事を言う訳にもいかない

 

「これは私も、自分の師匠から貰ったんだよ」

 

私は嘘は言っていない

それで納得してくれたのか

 

「えっそうだったんですか、なら似たようなデザインだったんですね、疑ってすみません」

 

キノを騙して申し訳ない、心が痛む

話を逸らそう

 

「そろそろ起きて、ご飯の準備にしようか」

 

途端にキノの目がキラキラしだす、可愛いい

 

「今日は僕が朝ごはんを作りましょうか!」

 

それは不味い、いや味も不味いがそうでは無く、キノには作らせられない

 

「私が作りたいから、キノはティーを起こしてくれるかな?」

 

「そうですか?ならそうしますが…」

 

納得いかなそうな顔をしながらキノはティーを起こしている

私は難を逃れたが、キノを納得させる料理を作らなければいけない、朝から難題だな。




師匠の寿命は主人公が死ぬまで
主人公と共に老けて行く
同年代に見える

取引用の宝を集めている


以下ネタばれ










ティーは、オールド・ワンの養い子
無貌な神、ニャルラトホテプと人間の子供
人間の女性に生ませたが、母親は子供を船に捨てて逃げた、その時の子がティー


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追跡の結果 シズ視点

シズさんとの再会

カッコいいシズさんにしたかった

この小説のシズさんは二人兄妹
父の王様は二人を離れに住まわせて遠ざけていた
原作ほどの狂気は無く、国民と家族に対する行動もマイルド


ある国のホテルの前、一台のバギーが止まった

バギーからホテルを見上げているのは、一人の美女だった

 

「…もうすぐ会えますから」

 

美女が呟く、そのバギーには運転席に緑色のセーターを着たポニーテールの美女と、助手席には白い大きな犬が乗っていた。

 

「シズさま、ここからあの方の匂いがいたします」

 

確認する様に、クンクンと周囲の匂いを嗅いでいた白い大きな犬が、美女に話し掛ける

美女は頷き懐からメモを取り出す

 

「入国の時に勧められたホテルだ、彼もここに泊まっているのだろうね」

 

懐にメモをしまい、荷物を確認する

厚手の布で幾重にも包まれ、丁寧に扱われたその荷物の中身は豪華な装飾を施された宝箱の様なアクセサリーケースだった。

 

箱を開くと、その中には二つのブレスレットが入っていた、大きさがそれぞれ違い男性用と女性用で対になるデザインになっている、丁度真ん中に一粒ずつ大粒のサファイアが嵌め込まれており、一目で高価と分かる程の輝きを持っていた。

 

シズは箱の中にブレスレットがちゃんと収まっている事を確認すると丁寧に荷物にしまった。

 

「リク、行こうか」

 

「はいシズさま」

 

「今日は私の運命を左右する日になるよ、ちゃんと付いて来ておくれ」

 

「勿論です、何処までもお供いたします」

 

凛と背筋を伸ばし歩くシズと、その隣を従者の様に付き従うリクはまるで、王様と家臣の様だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

コンコンと扉をノックする、今までに無い程の緊張が体を走るが、こんなことではいけない、これから重要な話し合いをするのだから。

 

ガチャリと扉が開くと立っていたのは、会いたくて会いたくて、夢にまで見た彼だった。

 

「はい、あれ?シズさん…ですか?」

 

「お久しぶりですね、約束通り貴方を見つけ出しましたよ」

 

「本気だったんですね」

 

彼は苦笑いしている、私にも押し掛けて迷惑を掛けている自覚は有る、それでもどうしても会いたかった、会って話をしなければいけなかった。

 

「少しお時間、よろしいでしょうか?」

 

「あー…、ちょっと待って下さい」

 

そう言った彼は部屋の中の誰かと話をしていた、旅の仲間だろう、彼を探している間に彼に関する情報は大抵手に入れた、今は小さな少女と、もう一人男の子にも見える中性的な少女と旅をしているらしい。

 

一体どういう関係だろうか、噂によると恋仲らしいが…、本人が言ったわけでも無い噂は信用に値しないのでそれも確認しよう。

 

「シズさん、大丈夫でした」

 

彼が部屋から出て来た、コートを着ているので外で話をしよう。

 

「それでは、近くのカフェに行きましょうか」

 

「はい」

 

彼は頷き私の後を付いて来てくれる、カフェに付いてからが本番だ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

二人で隅の席に座ると、何だか前に依頼をした時と同じ様に感じた、不思議だ

 

「今の状況、前の時と似てますね」

 

「!ええ、そうですね」

 

彼も同じ事を思っていたのか、嬉しくなる

しかし浮かれてもいられない、話し合いの為に気を引き締めないと。

 

「実は貴方に、話したい事が有ります」

 

「はい、どうぞ」

 

彼は分かっていたのか、静かに先を促してくれる有難い

 

「貴方に出会ってから、色々ありました、先ずは私の説明からしますね」

 

緊張の為水を一口飲む

 

「実は私はある国の姫でした、黙っていて申し訳ありません」

 

前回の依頼の時に身元をきっちりと話していなかった、それは誠実とは言えないだろう、彼は怒っていないだろうか?

 

「え?あっお姫様だったんですね、通りで…凛として気品が有るな~とは思っていたんですよ、納得しました」

 

「…それだけですか?黙っていた事を責めないのですか?」

 

「だって、自分の事を全て話さないといけないと、決まっている訳では無いでしょう?

そんなの会ってすぐの人に、正直に全てを包み隠さず話す人は居ないと思いますが?」

 

「ですが…」

 

私は彼に結果的にだが、命がけの依頼をしたのに、そんな事で良いのだろうか?

 

「済んだ事を考えても仕方ありません、次です」

 

それは私が彼に言った言葉だった

 

「シズさんが言ってくれたんですよ?なら言った本人が実行しないと!」

 

「…そうですね」

 

彼には励まされてばかりだ、不思議な事に彼の言葉は心にストンと落ちる、同じ言葉を他の人が言っても素直には聞き入れられないだろう、それはきっと私が彼を…

 

「それでは、次です

私の国は少々…いえ、大変な問題を抱えていました」

 

あの国のコロシアム、あんな物が有っては何時まで経っても国民が真に幸せになんて成れやしない。

 

「その事を思い悩んでいた無力な私に貴方は言ってくれたのです。私の言葉で救われた…と、私でも誰かを救えると変える事が出来ると貴方が教えてくれました。」

 

「確かに言いましたが、そんな大層な事じゃ…」

 

「いえ、私に勇気を与えてくれました。

それからすぐに国に戻り、果たすべき事をようやく成し遂げたのです。」

 

私は誰も殺す事無くコロシアムを勝ち進み、父に会い次の王を兄にしました、兄とは元々話し合いコロシアムを無くし平和な国を作ろうと決めていました。

 

勿論父は…前王は暴れて反対しましたが、コロシアムの勝者の願いは絶対です、もう王では無い父の言葉など誰も耳を貸しません。

父は安全の為城の一室に閉じ込めています、今迄の行動が酷すぎましたから、始めは暴れていた父も思う所が有ったのかこの頃は大人しくなり、正気を取り戻しつつあります。

 

ここまで上手く事が運んだのは、幸運でした。

けれど彼の言葉が無く勇気が出ないまま、行動を先延ばしにしていればここまで上手くは行かなかったでしょう

何事にも最善のタイミングがあるのです。

 

兄に王位を渡し、私は補佐として国を良くする為に力を合わせていかなくてはなりません、本来はここに居てはいけないのです。

 

しかし事情を聞いた兄は快く送り出し、ブレスレットまで持たせてくれました。

 

このブレスレットは我が王家に伝わる由緒有る物、国宝と言っても過言ではありません、それを渡す意味それは王家に招く、歓迎すると遠回しに兄は言っているのです。

 

このブレスレットは王家が代々婚約の際に渡す物です、是非彼にも受け取っていただきたい。

 

「私は貴方のお陰で、運命を変えられたのです」

 

「そんな事無いよ、それはシズさん自身の力ですよ」

 

私を認めてくれる彼の言葉に胸が締め付けられる、私はまだ頑張りないといけない、まだここで喜んではいられない。

 

「私は貴方にお礼がしたいのです、どうしても受け取って欲しい物が有ります」

 

彼の否定を聞く前に、机の上にブレスレットの箱を置くと箱の装飾に驚いている様だった、この箱自体の価値もとても高く、使われている宝石も数え切れない。

 

「貴方にはこのブレスレットを、受け取って欲しいのです」

 

「こんなに高そうな物受け取れ無いよ」

 

彼ならそう言うと思っていた、しかし彼の指にある物を見る、結婚指輪だ

ホテルで再会した時から気付いていた、見た瞬間には胸が張り裂けそうになったが、分かっていた事。

 

いくつか前の国で彼が結婚した事は知っていた、その国では彼の話が本になっていた、なんでも愛の為に駆け落ちをしただとか、真実の愛の為に生きているだとか、出国時に同時に二人も妻にしただとか。

 

覚悟はしていた、たがそんな事で引き下がる訳にはいかない、私はこれから国の為に生きるのだ、最後の我が儘位は押し通したい。

 

「これは我が王家に伝わる、婚約のブレスレットなのです」

 

「婚約?」

 

「そうです、私は貴方の言葉に勇気を貰い、そして同時に私も救われたのです」

 

彼は驚き固まっている

 

「国に戻るまで貴方の言葉に励まされ、気が付けば私の心の支えになっていました。

あの国で再会を約束した時は、ただ感謝を伝える為に見つけ出そうと思っていました。」

 

「思っていた?」

 

「はい今は違います、心の支えだった思いは、今は心を支配し私の心を奪いました、つまりは貴方に恋をし、今は貴方を愛しています。」

 

彼は呆気にとられている、それはそうだろう、一度会っただけの女が求愛して来るのだから、相当の驚きだ

 

「私は貴方に婚約を申し込みます」

 

じっと彼の目を見つめ、少しでも気持ちが伝わる様に少しも逸らさない。

 

彼は手で目を覆うと、ふっと力が抜けた様に笑った。

 

「そんなに真っ直ぐに告白されると、流石に照れるます」

 

「そうですか?」

 

「でも私にはもう、二人も恋人がいてね?」

 

「はい知っていますよ?貴方を探す中で、貴方の情報が沢山手に入りましたからね」

 

彼は驚きに固まっている

 

「分かっていて、それでも婚約を申し込むのかい?」

 

「例え貴方にもうパートナーが居た所で諦める理由には成りません、私の国は重婚を許可しています。

私が貴方を諦める時、それは貴方に嫌われ断られた時です。」

 

「そう…なんだ」

 

彼は悩んでいる様だった、私の気持ちが少しでも伝わったのだろうか?それだと嬉しいが、彼に一つの提案をする

 

「どうしても悩んでしまうと言うのなら、今は受け取っておいて下さい」

 

「でも、大切な物だろうに」

 

「ですので私がもう一度会いに行くか、貴方が私の国に会いに来て下さい、その時に返事を聞きましょう」

 

「返事を待ってくれるのかい?」

 

「ええ私が急でしたからね、それまでブレスレットは貴方の物です、私は貴方しか選びませんから…良い返事を待っていますよ」

 

「情けないが暫く待たせる、だが必ず返事をする、私から会いに行くから待っていて下さい」

 

私の国の場所を書いた地図を渡す

 

「私は、何時までも貴方だけを待っていますから、きっと会いに来て下さいね、約束ですよ」

 

彼の頬にキスをしてカフェを後にする

私はあの国を建て直しながら彼を待とう、例え彼が永遠に訪れなくても、待っている間は彼を想って幸せで居られるのだから。




サファイア
平和を祈る・一途な想いを貫く
宝石言葉
「誠実」「慈愛」「徳望」



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答えと気持ち

主人公の答え

真面目に心の内を考える回
告白と気持ちの爆発回

早く師匠を出したい




シズさんは私の頬にキスをして、寂しそうに笑うと振り返らずに去っていった。

 

寂しそうに笑う顔が頭から離れない、あんなにも凛としていた女性にそんな表情をさせているのかと思うと…私はなんて情けない。

 

渡された地図を見てみるとシズさんの国はここから少し距離があった、しかし私を追い掛けてかなりの距離を移動したのだろう、私の足取りを追う様にあちこちに印が付いていた。

 

こんなに私の事を求めてあんなにも真剣に愛してくれているのか、実を言うとシズさんには一目見た時からどこか惹かれていた、それは前世を思い出させる見た目と雰囲気、そして人に対して真摯であろうとする姿勢にも惹かれた。

 

つまるところ私もシズさんに惚れているのだ、しかしすぐには返事が出来ない理由が有った。

私には既にキノとティーが居る、二人に話してからじゃないと、何だか不誠実な気がするのだ。

 

私もカフェを後にするとホテルに向かい歩き出す、シズさんとの関係を説明する為に、これからの私達の関係を前に進める為に、シズさんの想いに流されたからじゃ無く、これは私が自分で決めた事だった。

 

シズさんの真剣な思いには、私も真剣な思いで答えたい、それが相手に対する礼儀だと思うから。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「これを見て欲しい」

 

二人の前に腕輪の箱を出す、目の前のソファーにはキノとティーの二人が座っている、真面目な話があると二人に聞いてもらっていた。

 

「これは、宝箱…ですか?」

 

「たかそう」

 

「箱もそうだけど、中身が問題なんだ」

 

箱の蓋を開いてブレスレットを見せる、男女ペアになった特別なアクセサリーだ

 

「これは私が、シズさんから私への婚約の品として、贈られた物です」

 

キノとティーは黙っていて話を聞いている、怒っているのか、ただ黙っているだけなのかは、二人の真剣な表情からは読み取れない。

 

「私が悩んでいる事に、気が付いたシズさんに託され、返事と共に返す事になっている。今度は私がシズさんの国を訪れて、返事をしようと思う」

 

「それで、返事は何と返すつもりですか?」

 

「それは、二人が良ければ…」

 

「いえ僕達は関係無く、レオンさんの正直な気持ちを聞かせて下さい」

 

嘘や誤魔化しは許さないと、いつになく真剣な眼差しで見つめられている、ティーにいたっては怒りからか拳を握りしめ、俯き黙り込んでいた。

 

「私のシズさんへの気持ちは、正直に言うと好ましい、好きだ、と言うのが正直な所だ」

 

シズさんに対しては、一目で惹き付けられたのは確かだ、しかしそれは前世に対する懐かしさが感情の半分以上を占めていた、婚約を受けるに至り、確かに好きとは感じた。

 

少しの間のやり取りでも相手に対する真剣さや、思いやり国に対する責任感、そして私に対する好きと言う感情の強さを感じた。

シズさんの内面を感じて、私はより惹かれてそれは以前とは違い懐かしさでは無く、異性の一人の女性に感じる好意だった。

 

シズさんに対する私の気持ちは、好きなのは確かだ…たが愛してはいない。これは私がシズさんの事をまだ良く知らないせいだ、愛とは相手と互いに理解し合って産まれる物だと私は思う。

だから、シズさんに会いに行って、気持ちを…好きから愛に変わるかを確かめたいのだ。

 

「それは僕に対する気持ちよりも…ですか?」

 

「キノに対する気持ち…」

 

キノに対する私の気持ち?どうだろう、好きなのは間違いない、愛していると言う気持ちに近いが、まだ違和感がある、好きよりも強く愛よりは弱いそんな所だ。

 

「私はキノが好きです、愛していると言う感情に近い程の好意を、抱いています」

 

私の心の内を、感情をさらけ出す様に伝えるのは初めての事だった、でも今正直に話さないと正しく伝わらないと思ったのだ、照れて誤魔化している場合では無い。

 

「レオンさんが、そこまで僕の事を…?」

 

キノは唖然としている、私は指輪を渡したり、少ないかも知れないが好意を伝えて来たつもりだった、まさか伝わっていなかったのか?

 

「キノは私に、どう思われていると思っていたんだ?」

 

「僕はレオンさんが優しいから、仕方なく受け入れてくれているのかと。僕から押し掛けて、半ば無理やり旅に加わりました、だから正直迷惑だと思われていても仕方ないかと…思っていました。」

 

「そんな事思って無いよ」

 

「はい今分かりました、僕ばかりが好きで、愛しているんだと思い込んでいましたが、ちゃんと気持ちは届いていたんですね」

 

「私もキノが好きだよ、まだ愛しているとは言えないのが、情けなく申し訳ない」

 

「いえ、十分ですよ…僕の気持ちは無駄じゃ無かった、レオンさんに好かれていると分ければ十分です」

 

キノは幸せそうに笑いながら…泣いていた、これは悲しい訳では無いのだろう、嬉し泣きをしていた。

嗚咽が止まらずぐしゃぐしゃに泣きじゃくる、こんなキノは初めて見た、もしやずっと不安だったのだろうか?

 

「キノごめんね今迄はっきりしない、情けない男で本当にごめんね」

 

「いいえ、今が幸せだから良いんです。でもこれ以上泣き顔を晒すのは、流石に恥ずかしいので少し失礼しますね」

 

キノはそう言うとベッドルームに駆け込んで行った、本当は抱き締めて慰めたいが、一人になりたいのだろう、そっとしておく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ティーは俯いたままピクリとも動かない、これは怒っているのかも…取り敢えず話し合いからだ。

 

「ティーごめんね、怒っているよね」

 

「…」

 

ティーは視線も合わせず、無言のままだ。部屋に重い空気が漂っている、言葉を発してくれるのをじっと待つ。

 

ティーが顔を上げて立ち上がった、どうしたのだろうと思っていると、こちらにゆっくりと歩いてきた。

 

「あの、ティーどうし!」

 

いきなり腹を殴られた。

ティーは腹を狙ったのでは無く、そのまま腕を前に出し感情のままに殴ったのだろう、たまたま綺麗に鳩尾に入り大変苦しい。

 

「うえっ、ゲホッゲホッ」

 

苦しくて咳込む、とんでもなく痛い物凄い力だ。

咳が止まらず、えずいていると流石に心配したのか背中を撫でてくれる、優しい。

 

「だいじょうぶか?」

 

「ううぇっ、おえ」

 

返事をしたいが言葉が出ない、ティーは慌てて水を持って来てくれた、一口で飲みほす。

 

「ありがとう、助かったよ」

 

ふるふると頭を振って否定している

 

「わたしが、なぐったから」

 

「私が悪い事をしたからだよ、今回はティーは何も悪くない」

 

「でも…」

 

「ティーはキノみたいに、私に聞きたい事は無いのか?」

 

無理やり話を切り替える、今回の出来事の原因は全て私にある。

 

「わたしは…わたしもきもちを」

 

黙って続きを待つ

 

「レオンのきもちがしりたい、わたしのことはすき…?」

 

ティーに対する私の気持ちは、先ず最初は一人ぼっちの子供に対する保護者としての、守らなければいけないと言う気持ちだった。

 

それからティーの告白でやっと、好意に気が付いた。

真剣に言われ無いと気が付か無いとは鈍すぎる、この時からやっと、ティーを一人の女性として意識する様になった。

 

今の私の気持ちは、好きとは言い切れるだが、愛しているとは言えない、好き以上愛未満だ。

 

「勿論好きだ、最低な答えだが、キノと同じ位好きで、愛に近い程の好意を抱いているよ」

 

「キノとおなじくらい…」

 

「ごめんね最低な男で、はっきりと一人を選べなくて」

 

ティーは私の手を握り、目を見つめる

 

「ちがう、えらんでほしいんじゃない」

 

「違うのかい?一人を選ばなくて良いの?」

 

「そう、ただすきでいてほしい、あいしてほしいだけ」

 

「好きだけど、まだ愛していると言い切れなくて…」

 

またふるふると頭を振って否定する、今日のティーは何かを決意したようで、強い意思を感じる。

 

「まだ…でしょ?これからがある」

 

「これから?」

 

「そうこれから、あいにかえてみせる」

 

力強い言葉に驚く、そうだ気持ちは変わるのだった。

ただの守りたいと言う気持ちから、好意に変わった、それなら愛に変わる可能性も十分にある、今の時点で愛に気持ちが傾いている、それが証拠だろう。

 

「私も愛になると思うよ、でも、もう少しだけ時間が掛かるかも知れない」

 

「じかんならいくらでもある、ずっとまてる…それに」

 

ティーが私の膝に乗り、キスをして来た

 

「そんなに、じかんはかからせない」

 

「ティー…」

 

私がティーに惹かれるのは、この強い意思を感じる所なのだろう、決めたら最後まで押し通す、とても真っ直ぐな強い心を持っている。

 

「私はティーの、強い心が好きだよ」

 

「わたしは、あなたのすべてがすき」

 

二人で抱き締め合い、笑い合う。この幸せを感じる時が大好きだった、この時間は今はキノとティーにしか作れない、シズさんともこういう関係になれるのだろうか?

 




実は、最初からシズさんが気になっていた主人公
日本人風の見た目に惹かれた
誰に対しても、丁寧で真摯に対応する所に惚れた

のろけ回

シズさんへのキノとティーの回答は、長いので次回になりました


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話し合いの結果

前回の続き

双方ばらし、口滑らし回
気まずい
キノは切れると怖い、相手は死ぬ


目を真っ赤に腫らしたキノが、ベッドルームから出て来た、泣いた後だがスッキリとした顔をしていた。

 

「ティーとの話も…終わった様ですね」

 

私とティーを見て苦笑いしている、私の膝の上にティーが乗り落ち着いていた、仲直りしたのは一目瞭然だった。

 

「私のキノとティーに対する気持ちは、同じ位の愛情で好き以上愛未満です」

 

「はい、了解しました」

 

「わかってる」

 

二人は落ち着いた表情で穏やかに会話が進む、それぞれに感情を吐き出したお陰で、心に何の陰りも無く、皆さっぱりしていた。

 

「シズさんへの気持ちは、好きで今はそれだけだよ」

 

「それで、返事をしに行くんですね」

 

「私も好きだと伝えて、婚約をするか考えさせてもらおうと思う、都合が良すぎるかな?」

 

「それで良いと思います、シズさんは好きと言って貰えるとは、思っていないと思いますし」

 

私とシズさんは出会って日が浅い、普通は断るだろう。しかし一目惚れに近い私は既に好きになっていた。

惚れやすいのだろうか…?

 

「それでですね?僕とティーも、その…レオンさんに秘密にしている事がありまして…」

 

「…ありまして」

 

なんだろう珍しく二人とも端切れが悪い、何かとんでもない事でもしでかしているのだろうか?

聞くのが怖い、でも聞かなければ。

 

「なにかな」

 

ごくりと唾を飲み込み、どんな事を言われても驚かない様に心構えをする。

 

「実は僕達とレオンさんは、既に結婚しています」

 

「…え?」

 

今キノはなんて言ったんだ、脳が理解を拒んだのか、一言も聞き取れなかった。

 

「僕キノとティー、そしてレオンさんは夫婦です」

 

「じゅうこん」

 

「ふうふ?じゅうこん?」

 

ふうふとは夫婦?じゅうこんは重婚?

分からないなんだろう?

 

「どういうこと?」

 

「あれ?レオンさん大丈夫ですか?」

 

「めがぐるぐるしてる」

 

「衝撃が大き過ぎましたかね、お茶を持って来ます」

 

「おちつけレオン」

 

バシッと背中を叩かれてなんとか正気を取り戻す、さっきキノは何て言った?私と結婚していると言ったか?

しかもティーとも重婚と言っていた、いつだ?いつの間に私は既婚者になっていたんだ?

 

「レオンさんお茶です」

 

キノはティーにお茶を渡し、自分も飲んで落ち着いている。

 

「私といつ結婚したんだ?」

 

「それは前に、指輪を贈り合った国があったでしょう?その国で届けを出しました、ですのでこれは結婚指輪です」

 

「ゆびわ」

 

ピシッと固まってしまう、この指輪は結婚指輪だったのか…確かにシズさんがじっと見ていた気がする。

 

「結婚は良いとして…」

 

「良いんですか!」

 

「!」

 

「私からのけじめとして、二人にプロポーズをしようとは考えていたんだ、まだまだ先の事だと思っていたけれど」

 

まさか重婚が出来るとは思わなかったけど。

 

「それは、とっても良い事を聞きましたね」

 

「ん!」

 

「何かあるのか?」

 

「実はある国で、良い写真を撮ると評判の方が居るらしくて。せっかくですし、結婚の記念に写真を撮りに行きたくて…ですね」

 

「写真?」

 

「シズさんへ返事をした後に、向かいませんか?」

 

もじもじしているキノが可愛い、破壊力が凄い

ティーも楽しみにしているみたいで、周りに花が飛んでいる様に見える

 

「勿論良いよ、シズさんの国の次に行こうね」

 

「はい!」

 

「ん!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「そうか私は既婚者になったのか、いや既になっていたのか」

 

なんだか感慨深い物がある、日本では違法の重婚までしている更に婚約まで…?

 

ん?なんだ…何か大切な事を忘れている様な、思い出したく無いような?婚約…なんだ?………!

 

ああっそうだ師匠だ!婚約と言えば師匠だった、考えてみると一番始めに婚約していたのは師匠だ、それを忘れて他の妻が二人婚約者が一人。

 

不味いなんて物じゃない殺される!私が殺されるのはまだ良い、いや良くないが。

最悪なのはキノ達を殺そうとする事だ、皆強いので凄まじい殺し合い…いや戦争が始まってしまう、どうにかしないと。

 

だが師匠がまだ私を好きとは限らない、師匠の居場所が掴めない今はその可能性に掛けて祈るしかない、どうか私を忘れていますように。

 

 

「それで、キノは師匠と言う人物を知っているかい?」

 

「…いいえ、知りません」

 

「と言うことは知っているんだね、師匠はお弟子さんに私の事は知らないと言え、と言っていたから」

 

「何故その事をレオンさんが知っているんです!」

 

キノは驚いたのか、大声で叫ぶ

 

「信じられないだろうが、私も師匠の弟子だったんだよ」

 

「そんなの可笑しいですよ…僕が師匠の所に居た年数と、レオンさんがもし本当に弟子だったのなら、どう考えても年数が合いません」

 

私は二十代キノは十代後半、師匠に弟子入りしたなら確かに年数が合わない、師匠の所で出会っている筈だ。

 

「それが信じられないだろうが、いつの間にか私が過去の時代に居てね。その時に弟子入りした…修行してもらったんだよ」

 

「でも、そんなの事が本当に有り得るんですか?」

 

「私も信じられないが、このネックレスが証拠だよ」

 

「これは!じゃあやっぱり師匠の物と同じ!」

 

「ああ、あの時は誤魔化してすまない。本当は師匠との婚約ネックレスで、ペアのネックレスだったんだ」

 

「やっぱり師匠と同じ…?婚約ネックレス?」

 

「あっ」

 

不味い口が滑った、これは言うべきでは無かった

 

「どういうことですか…?」

 

「あっいや、その私は…」

 

焦って言葉が出てこない、キョロキョロと視線が勝手に動く、視界の端にティーを捉えたが眠っている様だ

神は死んだ助けは無い。

 

がっと顔を掴まれ、首を90度曲げキノの方を無理やり向かされる、私の顔すれすれに顔を近付け嘘は許さないと言う様に目を覗き込まれる。

 

「僕に話して下さい、全部ですよ。

大丈夫です…レオンさんには怒りませんから、安心してくださいね」

 

にこりと笑うキノは口だけ笑みの形に笑い、目がとても怖い、少しも動かない。

そして私には怒らないとは、師匠には怒るのか?

全然安心出来ない。

 

「さぁ全て話して下さい。嘘や誤魔化しはしないで下さいね、僕は正直なレオンさんを信じていますから」

 

「はっはい、了解いたしました」

 

「あははっ…何で敬語何ですか?僕には敬語いらないと言いましたよね?可笑しなレオンさん」

 

「そっそうだね」

 

「それじゃあ…お話を始めましょうね」

 

キノのねっとりとした口調が、更に恐怖を掻き立てる。逃げ場なんて無い、正直に話した所で助かるのか?激怒したキノに殺される未来しか見えない。

しかし嘘や誤魔化しは通用しないだろう、私の未来はここで終わるのか?辛い詰んだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「事情は分かりました、レオンさんに責任はありませんね、僕が許します」

 

「…ありがとう」

 

正直に全てを話も何とか許されたらしい、けれど本当に恐ろしい時間だった。温度の無い冷たい視線に思い出すだけで身震いする流石師匠の弟子、しっかり技術を受け継いでいる。

 

「可哀想なレオンさんは、頭にパースエイダーを向けられ、脅迫されて婚約したんですね。それなら全て師匠が悪いです」

 

「いや、全て師匠の責任って訳じゃ…」

 

「何か言いました?」

 

「なんでも無いよ?」

 

怖い、キノには暫く逆らわ無いでおこう

 

「取り敢えず極悪な師匠は後回しです、次はシズさんの国に向かいましょう」

 

「そうだね、一つずつ片付けていこうか」

 

「どうせ師匠は放って置いても向こうから来ます、その時に僕が対処しますね」

 

「どうか穏便に…は無理ですよね」

 

キノの能面の様な表情を見て、無理だと悟った

 

「はい」

 

とても良い返事だが、今はキラキラのその笑顔が怖い、戦闘は避けられないのだろうか?

 

もう良い、今はシズさんの事を考えよう。

 

シズさんの国に着いたら、正直に気持ちを伝える事から始めよう、全てはそれからだ。




主人公衝撃の事実に一瞬知能が溶ける
既に妻二人の主人公、婚約者も二人の模様

師匠はジリジリと近付く
主人公は知らない師匠が時代も年齢も越えて、追跡を初めている事を、刻一刻と近付く足音にも気が付かない…

フォトフラグ


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数十年越しの…

ヒロイン系主人公

人の記憶は案外信用ならない
実は皆大切な事を忘れているのかも…


「見つけましたよ」

 

懐かしい声が聞こえた気がした

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

顔を撫でられる感触がくすぐったい、もう朝なのかな?目を開くと辺りは薄暗く、部屋の隅の照明が僅かに灯っているだけだった。

 

頭がぼんやりとする…自分が何時眠ったのか、ここは何処なのかも思い出せない。

 

最後に記憶にあるのは確か…一人で買い物に出掛けた?

 

そうだ確か夜に買い物に出掛けたんだ。

昼に買い出しに行ったが、宿に帰って荷物を確認していた時、買い忘れに気が付いた。

 

一人で宿を出た後で近道をしようと路地を歩いていて…

路地の闇がとても深くて、誰も居ない事を不気味に感じたから、急いで抜けようと思って…?

そこからの記憶が無い、電源を落とした様にぷっつりと途切れている。

 

思い出そうと必死になっていると、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。

 

「目が覚めましたか?」

 

ぼんやりとして良く見えないが、この声には聞き覚えがある気がする、昔何処かで?

私の様子に気が付いたのか、心配そうに近づいて来た。

 

「大丈夫ですか?意識は、はっきりとしていますか?」

 

「頭が…ぼんやりします…」

 

「他には目眩や吐き気、その他症状は?」

 

「大丈夫…です」

 

ほっと息を吐いたその人は、私のおでこに手を置いて撫で始めた。

この距離なら顔が良く見える、彼女は…

 

「レジー…?」

 

驚きの表情で手の止まった彼女は、やっぱりレジーだ。

 

「レジーでしょ?」

 

「覚えていましたか」

 

「久しぶりだね」

 

「本当に、何十年待った事か。この再会をどれ程夢見たと思いますか?」

 

ぐっと顔を近付けて話すレジーの瞳には涙が浮かんでいる。

長い間私の事を想い続けて、ずっと待っていてくれた。

レジーの首には婚約のネックレスが見える、勿論私の物と同じ世界にたった2つの宝物。

 

「レジーは昔と、全然変わって無いね」

 

「貴方を待っている間にお婆さんになるのは、ごめんでしたから。それに貴方も、妻は若い方が良いでしょう?」

 

「レジーは綺麗だから、お婆さんでもきっと綺麗なままだよ」

 

「…貴方、口が上手くなりましたか?」

 

頬をぎゅっとつねられる、レジーの耳が赤いのをみるに、怒っているのではなく照れているだけみたいだ。

私とレジーの間には長い年月のずれがある。

私が一年も経っていなくても、レジーは何十年も待っていたみたいだ。

一体どうして年を取っていないのかは疑問だが、レジーはレジーで変わっていない、それならば問題は無い。

 

「私は見つけましたよ。

貴方を、どれだけ昔の記憶が薄れようと、貴方だけは忘れません。

例え自分の記憶を無くしても、他の全てを失っても貴方だけを、レオンだけを求め続けて見つけ出すと、自分に誓いましたから」

 

私を探し続けるのは大変だったみたいだ、人の記憶は薄れて消えてしまう物。

どれだけ忘れたく無いと思っていても、脳が勝手に消して行く、そんな中で私を見つけ出したレジーは、どれ程の苦労をしたのだろう。

 

「私は一人でずっとずっと…貴方だけを」

 

「ごめんね、お待たせレジー」

 

「本当に遅いです…」

 

胸にしがみついて泣くレジーは昔よりも小さく見える、私からも抱き締め返し満足するまで待つ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「泣いてスッキリしました」

 

「相変わらず、切り替えの早い」

 

泣き止むとけろっとして、何時ものレジーに戻った。

変わっていないのはこんな所もか、今も私の前以外では泣けないのだろうか?

スッと離れたレジーは、鞄の中から何かを取り出しすと私に見える様に近付ける。

 

「私の勝ちです、素晴らしい品を手に入れました」

 

それは綺麗な指輪だった、一粒のダイヤモンドが埋め込まれた、見事な細工の結婚指輪。

勝負は結局レジーが勝った、私が居ない間にも時間は進むのだから。

 

「気に入る物が無かったので、職人に作らせました。

ほら、この宝石はネックレスの物となるべく似た物を、世界中探したんですよ?」

 

「素敵な指輪だね」

 

「私が何年もかけて、デザインを考えました。

…時間は沢山ありましたから」

 

指輪を見つめる瞳には、濃い悲しみが滲んでいる。

 

「レオンには私と結婚して貰いますが、ひとまずは指輪をどうぞ」

 

「今で良いの?」

 

「今すぐが良いです、もう充分以上に待ちました。

これからの貴方との時間を、1秒も無駄にしたくありません。」

 

「そうだね、待たせ過ぎたからね」

 

「特別に私が指輪を着けてあげます、貴方の妻ですからね」

 

左手を差し出し、薬指に嵌めて貰う。

まるで初めから指輪を着けていた様に、しっくりと馴染む。

どうしてか、前にも他の指輪を着けていた気がするがあまり良く分からない、深く思い出せない。

思い出せないと言う事は違うのだろう、今度は私がレジーに指輪を着ける番だ。

 

「ありがとう、私の愛しい人

今度は私の番ですね、お手をどうぞレジー」

 

レジーの細い薬指に嵌める。

 

「とっても似合ってる、綺麗だよ」

 

「ありがとうごさいます。

これで貴方は私の夫です、もう逃がしませんから」

 

「愛するレジーから、逃げるつもりなんて無いよ」

 

何を心配しているのかな?たった一人の最愛の人から逃げるだなんて、頼まれたってしないのに。

 

「…そうだと良いのですか」

 

レジーが何かを呟くが小さくて良く聞こえない。

聞こうかと思ったが、レジーから話始めた。

 

「これからは私と旅をして貰います、二人だけで」

 

「何を言っているの?」

 

「二人だけの生活を始めます、他の人はいりません良いですね?」

 

「レジーは可笑しな事を言いますね。

私はレジー以外と旅や、生活なんてした事は無いんですよ?

…ああっ!もしかして、お弟子さんの事ですか?」

 

「貴方記憶が…いえ、分からないなら良いんです」

 

「本当に可笑しなレジーですね」

 

私が笑うとレジーも一緒に笑う、これから二人の幸せな生活が始まるんだ楽しみだ。

 

「貴方は、まだ少しぼんやりしている様ですね。

明日に備えて今日は早く寝なさい、分かりましたね」

 

「レジーは、一緒に寝ないの?」

 

「私は少し、用事を済ませてから寝ます

おやすみなさいレオン、良い夢を。」

 

「おやすみレジー」

 

おでこにキスをして、レジーは扉から出て行く。

早く用事を終わらせて戻って来ると良いな…私はもう寝よう。

その時ふと隣のスペースが気になった、なんだか物足りなくて寂しい気がする。

何時も一人で寝ていた筈だけど…?胸の中に違和感の様な気持ちの悪いもやが広がる、思い出そうとするともやが邪魔して分からなくなる。

一体何が?

 

しばらく悩んでいると、何を悩んでいたのか忘れてしまった、忘れる位だから大した事では無い筈。

 

隣が寂しいから早くレジーが来てくれないかな、そのまま私は睡魔に負けて眠りについた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「久しぶりの彼はどうでしたか?」

 

「…再会は嬉しいです」

 

「おや?何か言いたそうですね」

 

「彼に何をしたんですか、明らかに様子がおかしいです」

 

「ちょっとしたサービスですよ。少し記憶をいじって、一時的に二人の事を忘れて貰いました」

 

「記憶は戻るのですか」

 

「そうですね…貴方が彼から盗んだ指輪を返したら、戻る様にしておきます」

 

「これですか?」

 

ポケットから、水色の宝石のついた指輪を取り出した。

彼が私以外の誰かとの指輪をつけるなんて、我慢が出来なくて眠っている彼から抜き取り、私が預かっている。

 

「それです、貴方の良いタイミングで返して下さい。

ですが、一生返さないと言う手もありますね。」

 

「…」

 

「存分に悩んで下さい、それが私達を楽しませてくれるのですから」

 

そう言った男は、闇に紛れて消えた。

 

彼の記憶が私の手の中にある。

記憶の無い彼は、私だけを愛して求めてくれる

記憶の戻った彼はきっと、私だけの彼では無くなってしまう。

 

…それならば、一生記憶を返さない方が…。でもそれは本当の彼と言えるのだろうか?

記憶の無い彼を騙す様に独占した所で、本当の意味で彼を手に入れたと言えるのか?

 

私は…どうしたいのだろう?

 

答えが出ないまま夜は更けて行く




師匠の名前はレジーで行きます
原作でそれっぽい描写があったので

指輪にはダイヤモンド

主人公の様子が?
キノとティーの記憶を消される
物事を深く考えられない
思考がながされる
レジーだけを愛する


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奇襲 奪還作戦

四人乗り出来るトライクが有るらしい、安全性はどうなんだろう?スピードもちゃんと出るのかな?

三人乗りまでは行けるかな?バイク部分に一人、サイドカー部分に二人で行けるかな?

気になる


「私のトライクに、レジーが乗るの?」

 

「ええサイドカー部分に、運転は任せます」

 

「レジーの車は?どうしたの大切にしてたでしょ?」

 

「暫く前に廃車になりました、あれも長く走ってくれたものです」

 

「そう…残念だね」

 

「まったくです」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ある空き家の一室

 

 

部屋にはチリッとした殺気が充満している、こちらから奇襲した筈が相手が思いの外強い、ティーの援護が有っても辛い。

 

正確なパースエイダーの攻撃に加えて、気配を読み素早い動きで先回りされる、手を出せない。

 

悔しい事に相手の姿をまだ一度も捉える事が出来ていない、敵は一人でこちらは二人なのに押されている

 

このままではジリジリと消耗して負けてしまう、思いきってこちらから仕掛けるしかない、ティーに合図をして手榴弾を投げて貰う。

その隙に相手の背後に移動して仕留める。

 

今だっ!と飛び出した所で相手も此方に銃口を向けていた、完全に読まれていたのか…

手榴弾の煙が薄れて相手の顔が見えた。

 

「え?」

 

「は?」

 

目の前に立っていたのは、何年も前に別れた時と全く変わらない師匠だった。

 

「師匠ですよね?」

 

「キノ…ですか?」

 

二人は互いに武器を下ろし唖然としている

 

「しりあいか?」

 

壁の裏から顔を覗かせたティーに説明をする

 

「こちらは僕の師匠です」

 

「は?」

 

全員反応が同じだった

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「師匠の婚約者が、レオンさんだって言うんですね」

 

「ええそうです」

 

皆武器をしまい話し合いを始めた

師匠を信用していないからと、ティーは扉の外に居る

 

「今は何処に居ますか?」

 

「隣の部屋に居ますよ」

 

立ち上がってドアに近づくと、後ろからカチャリと音がしてパースエイダーを頭に突き付けられている。

 

「何の真似ですか?」

 

「まだ話し合いは終わっていませんよ、席に戻りなさい」

 

「…分かりました」

 

渋々従い、椅子に座り直す

 

「彼は私と結婚しました」

 

師匠が左手を机の上に乗せる

薬指には指輪を着けているが、それがどうした

 

「レオンさんが、自分で渡した証拠でもあるんですか?」

 

「いいえ有りません」

 

「…なら、そんなの信じません」

 

「貴女が信じなくても事実は変わりません、私はレオンと結婚しました」

 

ふっと笑う師匠に殺意が沸く、レオンさんをいきなり拐っておいて結婚なんて。

 

「レオンはこれからは私と、二人で旅をするそうです」

 

「…レオンさんが、そう言ったんですか?」

 

「私が提案して、レオンが快諾してくれましたよ」

 

「そんな筈ありません!僕達とずっと一緒だって約束してくれました!」

 

レオンさんが僕達を捨てるなんてあり得ない、約束はちゃんと守る人だ、僕ともティーとも約束したのに

 

「僕を捨てる筈ありません!」

 

「キノ現実を認めなさい、レオンが選んだんです」

 

「そこまで自信があるのなら、レオンさんに確認しても構いませんね」

 

「…良いでしょう、付いてきなさい」

 

「ティー!レオンさんに会いに行きますよ!」

 

扉の向こうに居るティーに呼び掛ける、レオンさんの名前が聞こえた途端こちらに走ってきた。

 

「ん」

 

「行きましょう」

 

やっとレオンさんに会える、数日の事なのにとても寂しく感じる早く会いたい。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

「レオン…さん?」

 

「レオン」

 

部屋に入って目に入ったのは、レオンさんと師匠が、愛し合う恋人の様に抱き締めあっている光景だった。

 

「おや私の愛しいレジーのお客様かい?初めまして私はレオンと言います。本名は長いので、是非レオンと読んでくださいね。」

 

「な…何をいってるんです」

 

「何か可笑しな事を言いましたか?」

 

「師匠!これはどういう事ですか!」

 

そんな、まさかレオンさんが僕とティーの事を知らないなんて忘れるなんてあり得ない、どういう事だ師匠が何かしたに違いない。

 

「見ているそのままですよ、レオンは貴女の事を知らなくて、私だけを愛している。それが現実ですよ」

 

「いいえ、僕達とレオンさんの間には強い絆があります。

レオンさんは、すぐに誰かを愛するのは難しいと言っていました、そんなレオンさんが急に師匠を愛してるなんて可笑しいです。一体何をしたんですか!」

 

「貴女達は愛せなくても、私はすぐに愛せたそれだけの違いですよ。」

 

「そんな筈…」

 

「無いと言い切れますか?」

 

「それは…」

 

嘘であって欲しいでも…もしも本当だったら?僕達は選ばれなくて師匠だけが選ばれて愛された。

レオンさんと話したい、確認しなければ

 

「レオンさんと話します」

 

「好きにしなさい、私はここに座って居ます」

 

師匠は椅子に座ると腕を組んで目を閉じた、話を聞くつもりだろう。

ティーはさっきからレオンさんの周りを、訝しげに睨んでいる何だろう?

 

レオンさんに近づき、椅子に座る

 

「レオンさん、お話をしても良いですか?」

 

「話は良いですが、君は?」

 

名前を訪ねられた事に心が深く傷付いた、あんなに親しかったのに、好きだと言ってくれたのに…?

 

可笑しい、初め部屋に入った時にレオンさんはレジー、師匠のお客様ですかと言った。

今も僕に名前を訪ねた、これはあまりにも可笑しい。

愛してる、いない以前に覚えていない?たった数日で忘れてしまうなんてあり得るのだろうか?

 

「僕はキノと言います、覚えていませんか?」

 

「前に会った事ありましたか?すみません」

 

「いえ」

 

ここまで忘れているのは不自然だ、レオンさんに何か変わった所は…

 

体を隅々まで見る、変わった所は…?指輪が違う!

僕達が渡した物じゃなく、師匠とお揃いの指輪だ。

違う所はここだけ、師匠はレオンさんに危害は加えない筈、頭の病気や怪我じゃなければ、これが原因か?

 

「レオンさん、前の指輪はどうしましたか?」

 

「前の指輪?何の事ですか?」

 

「今着けている指輪の前に、他の指輪を着けていましたよね?」

 

「そんな訳ありませんよ、レジーとの結婚が初めての結婚ですから」

 

「…そうですか」

 

いけない…怒りが爆発しそうだ、レオンさんの大切な指輪を奪ったのは…師匠だ。レオンさんが知らないのなら師匠しかいない。

 

「…師匠、向こうの部屋で話しましょう」

 

「いいでしょう」

 

隣の部屋に二人で移動した、師匠が椅子に座る

 

「指輪を返して」

 

「…これの事ですか?」

 

師匠がヒラヒラと片手で何かを振っている、それはレオンさんに送った大切な指輪。

 

「それを…そんな風に扱うな!」

 

ああもうだめだ、怒りが抑えられない

パースエイダーを取り出して師匠に向け、安全装置を外す

 

「…返せ」

 

「怒りで会話も出来ませんか」

 

やれやれと、あくまで冷静に話す師匠にぶちギレた。

 

「返せ!」

 

引き金を引く直前に師匠はしゃがみ、弾は避けられた

師匠はそのままバックステップで距離を取る

 

「本気の様ですね…」

 

「かえせ!」

 

ダッシュで距離を詰め蹴りを叩き込む、師匠は腕でガードする。硬い!何か服の下に仕込んでいる

それならばと師匠の頭にハイキックを狙うも、足を受け止められ両手で投げ飛ばされた

起き上がろうとするも背中に乗られ、両腕を掴まれている

やはり強い

 

「ぐっ!指輪を返せ!」

 

「分かりましたよ、はいどうぞ」

 

師匠は僕の手に指輪を乗せ、背中から退いた

 

「どういう事ですか」

 

「私は返さないとは言っていません。これですかと聞いたら、貴方が突然襲いかかってきたんですよ」

 

「ぐっ」

 

それはそうだが大切な指輪を雑に扱われたんだ、師匠も悪い

 

「そうですね、私も少しやり過ぎました。大人気なかったですね。」

 

…先に謝られては責められない、ずるい

 

「彼の記憶を戻しに行きますよ」

 

「僕…謝りませんよ」

 

「今回は私が悪いですから、良いですよ」

 

師匠の大人な対応に負けた気がする、やっぱりずるい

前を進む師匠に続いてレオンさんの居る部屋に戻る。

 

部屋に戻るとティーは椅子に座り、変わらずにレオンさん周りを、いや影を睨み付けている、僕が見ても何も無いけど…何だろう?

 

そして師匠はどうやって、レオンさんの記憶を戻すのだろう?

 




師匠は初めから記憶を戻そうと決めていた、訳の分からない力に頼らず、自力で惚れた相手を惚れさせる
それが師匠

だが、自分を溺愛して普段よりも甘やかしてくれるレオンを少し楽しみたかった、悪ふざけが過ぎた師匠。


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戻った記憶と羞恥心

記憶が戻っても指輪が無かった間のことも覚えている
記憶が戻ると思考も元に戻る

記憶が無い間の主人公は、思考が怪しかった

師匠を私の愛しいレジー呼び
頻繁に抱き締めて額にキスをする
ハニー、愛しい人、キティなどと呼ぶ
愛の言葉を囁きまくる

主人公に羞恥の波が押し寄せる


師匠に記憶の戻しかたを聞くと、簡単過ぎて拍子抜けしてしまった。

 

「へ?そんな簡単な事で、記憶が戻るんですか?」

 

「ええ、私が指輪を嵌めるだけです」

 

僕達との結婚指輪を、レオンさんの指に戻すだけで記憶が甦るらしい。

そもそも記憶を指輪に閉じ込めるなんて、どんな技術なんだろう?魔法みたいだ。

僕が考え込んでいると、早速師匠は指輪を持ってレオンさんに近付く。

 

「では戻しますよ」

 

「…はい」

 

師匠は何時もマイペースだ、決めたら即行動他人なんて関係ない。

世界の中心は師匠なんじゃないかな

 

「レオンごめんなさい、少しやり過ぎましたね。もう少し早く記憶を返すべきでした。」

 

「どうしたのレジー?君の悲しい顔も魅力的だけど、笑った顔が見たいな、きっともっと素敵な筈だよ」

 

珍しく表情を変えた師匠は、照れて顔が真っ赤になっていた。

あんな事をレオンさんに言われたら、嬉し過ぎて死んでしまう。

やっぱり師匠はずるい…

 

「…もう黙って下さい」

 

今の指輪を引っこ抜き、元の指輪を嵌める。

ものすごい早業だったけど、本当にこれで記憶が元に戻るのかな?

 

レオンさんの様子を見ていると、ピタリと動きが止まり椅子に座ったままボーッとしている、大丈夫かな?

心配していると、いきなり机に顔を伏せて呻き出した。

 

「レオンさん!大丈夫ですか!」

 

「うわー!やめて、お願い放って置いて!」

 

「へ?」

 

「暫く一人にして!」

 

「わっ分かりました」

 

急いで師匠とティーを連れて部屋を出る、かなり取り乱していた様だけど大丈夫だろうか?

 

「師匠、レオンさんは大丈夫なんですか?」

 

「そう聞いてますけど…」

 

聞いている?師匠の他にも、誰かこの事件に関わっていたのか?

 

「誰に聞いたんですか?」

 

「秘密です、今はレオンを信じて待ちましょう」

師匠が秘密と言ったら絶対に話してくれない、素直に諦める。

 

レオンさんは顔を真っ赤にして、何か慌てていた様だけど…あんなレオンさんは初めて見た。

 

………………………………………

 

まさか自分があんな台詞を吐くなんて思っても見なかった、羞恥心で死んでしまいそうだ。

暫く一人で悶えていたが、大分気持ちが落ち着いてきたので皆を呼びに行く。

 

「あの…どうぞ」

 

扉を開いて呼び掛けると、キノが走って来た。

 

「レオンさん、僕が分かりますか!」

 

「ごめんねキノ、もう全部思い出したよ」

 

「良かったです、どこも違和感は有りませんか?」

 

「大丈夫だよ」

 

安心したのかキノが抱き付いて来る、ティーは扉が開いた瞬間から既に抱き付いていた、とても素早い行動だ。

 

「ティーもごめんね」

 

ティーは否定する様に、ふるふると頭を振る

 

「レオンはわるくない」

 

「ありがとう、心配掛けてごめんね」

 

「ん」

 

頭を撫でると目を細める、本当に猫みたいで可愛い

 

「あの…師匠」

 

扉にもたれ掛かり、こちらのやり取りを見ていた師匠に声を掛ける。

 

「おや?もう愛しのレジーとは、読んでくれないのですか?悲しいですね」

 

「ごめんレジー、羞恥心で死にそうなのでやめて下さい」

 

ふふっと笑うレジーを見て、やっとからかわれた事に気が付いた。

 

今の私の状態を説明する、記憶が完全に戻った事、レジーと過ごした間の記憶も全て残っている事を皆に説明した。

 

説明を聞いたレジーは私に近付いて来て、真剣な表情で話し始めた。

 

「レオン、私は貴方の事をさらって記憶を奪い、私の好きにしようとしました、申し訳ありません」

 

「レジー謝らないで下さい、今回の事は私が悪かったんです。

私がレジーに返事をしていなかったから、不安にさせてしまいましたね…ごめんなさい」

 

「返事…ですか?」

 

大きく息を吸い込んで呼吸を整える、心臓はドキドキで今にも破裂しそうだが、ここで勇気を出さなくて何時出すんだ。

 

「レジー、私と結婚してください」

 

「!…はい、もちろんです」

 

レジーは瞳が潤み涙が出そうになっている。

先程外した指輪をお互いに嵌める、もうこの指輪で記憶を失う事は無いらしい。

 

「レジー貴女と居ない間に私は二人と結婚をしました。

本当ならレジーと結婚していた筈が、ずっと一人にさせてしまいましたね…本当にごめんなさい。

昔は意気地が無く言えないままでしたが、ちゃんと伝えます、私は一緒に旅をしていた頃からレジーが好きです。貴女を愛しています…今度はちゃんと言えましたね」

 

自分に苦笑いが出る、昔はあんなに言えなかった言葉だったのに…

やっと伝えられた、私が勇気を出していれば、もっと早くレジーと結婚していたのかも知れない。

 

「レオン…私は貴方をずっと待って居ました。

長い時を経ても、貴方への気持ちは変わりません、貴方を…貴方だけをずっとずっと愛しています。

これから先は片時も離れず、死が二人を分かとうとも魂は永遠に一つです。

昔は悲しくとも今の私は幸せです、だから貴方が気にする事は何一つ有りませよ」

 

 

二人でぎゅっと抱き締め会う、自然と涙が溢れて止まらない、レジーを見ると同じように泣いていた。

 

泣いたまま二人で笑い合う、これが幸せなんだと実感する。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

私とレジーが落ち着いたのを見計らって、キノが話し掛けて来た。

 

「レオンさん、どうしますか?

お嫁さんが三人になりましたよ」

 

「うっ…そのごめんなさい」

 

三人と結婚するなんて、誰か一人を選ぶ事が出来ない自分に情けなくなる。

 

「別に怒ってはいません、ただ僕の事を愛してくれていればそれで…」

 

「キノ、私はキノを愛しています」

 

「僕も愛しています、それを聞けて安心しました。

僕の事を、ちゃんと思ってくれているのなら良いんです、もし僕を捨てようとしていたらどうしようかと…」

 

どうしようかとって言うのは、多分私をどうにかするのではないだろうか?

何をされそうになっていたのか、やぶ蛇は嫌なので聞かないでおく。

 

「わたしもあいしてる?」

 

「勿論ティーの事も愛しています、一番最初から一緒に居てくれたのが、ティーですから」

 

「ん、わたしもあいしてる」

 

三人とも同じ様に愛している、誰が一番じゃ無く三人とも一番好きだ。

三人から向けられる気持ちに、ちゃんと同じ量を返していきたい。

 

私はもう一つの問題について話すことにした、シズさんとの婚約についてだ。

 

「キノ私の荷物から、婚約腕輪を出して貰えますか?」

 

「分かりました」

 

キノに出してきて貰った腕輪をレジーに見せる、

慎重に包みをほどき、中の箱を取り出し机に乗せた。

 

「これは…何故こんな、国宝級の宝を持っているのですか?」

 

「これは婚約腕輪なんだって、私はシズさんと言う女性から結婚を申し込まれていて、返事をしに行く途中なんだ」

 

途中でレジーに拐われた訳だが…

 

「…これを売って、逃げてしまうのはどうですか?」

 

「とんでも無いよ、シズさんの信頼を裏切る事はしたくない」

 

「貴方はそう言う人ですよね、言ってみただけです」

 

レジーは提案を断られたのに、嬉しそうに笑っている。

昔に戻った様で懐かしいが、何時までもここに居る分けにはいかない、これからの事を決めないと。

 

「私達はこれからも旅を続けたい、レジーも旅に着いて来てくれる?

私はレジーと一緒が良いけれど、もしもレジーに何か目的があるのなら…」

 

「勿論一緒に行きますよ、私は貴方と最後の時まで共に在ります。

もう離れるのは御免ですから…人生で二度も、貴方を失ないたくありません」

 

「ありがとう。私もこの繋がりを決して、手離さないよ」

 

薬指に嵌まった二つの結婚指輪を見てそう誓う。

これからはレジーが旅に同行してくれる、初めは私とティーの二人だったのが、キノが増え今日はレジーが増えた。

 

気が付けばいつの間にか四人旅になっている。

男は私一人で後は皆女性だ、女性を三人も連れていればトラブルも増えるだろう。

 

皆私よりも強いが私も皆を守りたい、またレジーに訓練して貰わなければ…

皆が安心して旅が出来る様に、もっと力をつけないと。

 

 

…しかし今は取り敢えず、レジーが座る席を確保する為に、ティーと交渉をしなければいけない。

 

サイドカーには二人で座るスペースは充分ある、ティーの許可が降りるかが問題だが、許可してくれるだろうか?今の所それが一番の問題だ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

キノとレオンが先に部屋から出ていき、残ったのはティーとレジーの二人きり。

レジーも後に続いて出ていこうとすると、ティーが呼び止めた。

 

「なにをしたの?」

 

「何でしょうか?レオンにした事なら先程説明しましたが…」

 

「ちがう…けはいをかんじる」

 

ティーの瞳の中に、底の見えない暗い闇が広がる

 

「貴女のその瞳…まさかあの男の関係者ですか!」

 

警戒して距離をとるレジーを見て、不思議そうに首を傾げるだけでティーは何も答えない。

レジーは男の特徴を説明する。

 

「浅黒い肌と高い身長、痩せた体の…蠢く影の男です」

 

思い出すだけでおぞましいのか、鳥肌の立つ腕を擦っている。

説明を聞いて納得したようにティーは頷き、再度質問を投げ掛けた。

 

「そのおとこに、なにをのぞんだの?」

 

「貴女は知っているのですね…私はあの男に若さと寿命を望みました。

レオンを待っていられる様に、一緒に朽ち果てられる様に」

 

「そう、ならいい。

そのていどなら、だいじょうぶ」

 

レジーの望みを聞いたティーはクルリと踵を返し去っていく、その後ろ姿を見ていたレジーはティーの影に蠢く物を見てしまった。

 

「あの子は…私を心配していたのでしょうか?

あの男と同じ様ですが、彼女…ティーとなら、なんとかやって行けそうですね」

 

安心した様に息を吐くレジーの後ろで、愉快そうに笑う男の影には誰も気が付かなかった。




奇跡も魔法もあるんだよ!

少し口調が砕けて来た主人公、心を許すと敬語が減る

主人公の薬指には結婚指輪が2つありますが、両方とも細身の指輪の為大丈夫でした。


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実力の証明

実は一番静かな人って切れると怖いよねって話
心の奥に想いを溜め込むタイプは、爆発するとヤバい
シズ
原作通り切れると俺


「レオンさん!」

 

もう懐かしく感じてしまう声が辺りに響き渡った。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

全てを片付けた後。

皆で次の国シズさん居るの国に、いやシズさんに会って婚約の返事をしようとモトラドを走らせ、ある程度進んだ。

国に着くまで残す所後半分程度迄来た、そんな旅の最中前を走るキノがハンドサインを出した。

 

「レオ、キノが止まれと言っています」

 

「分かった、ありがとうレジー」

 

レジーがハンドサインの説明をしてくれる。

それに若干の反抗心を燃やしたのかティーが、状況を詳しく説明してくれる、いつの間にかちゃっかりと双眼鏡を使用している。

 

「…ぜんぽうから、ばぎーがせっきんちゅう」

 

「詳しくありがとうティー、一旦脇道に止まるよ」

 

「ん!」

 

こちらに顔を向けたティーの顔は僅かに微笑んでいる、その変化は私が分かるかどうかと言った程の僅かさだ。

 

先に停まっていたキノが私達のモトラドに近付いてきた。

 

「レオさん、あのバギーも此方に向かっている様です。

目的は僕達でしょう、装備は大丈夫でしょうか?」

 

キノが自分の腰に下げているパースエイダーをちらりと見せながら確認してくる。

私は懐のナイフと腰に下げたパースエイダーを見せる。

ティーは斜めがけした鞄の中の手榴弾を確認し、レジーは腰にちらりと視線を送った程度、全員戦闘準備は万全だ。

 

「全員大丈夫みたいだよ。戦闘にはならないで、話し合いで片付けば良いんだけどね」

 

「そうですね、ですが此方に近づく目的となると…」

 

全員を見渡し荷物を見る。

 

「女性が目当てか、荷物の強奪でしょうね。

全員気を引き締めて」

 

「…ちがう」

 

「ティー?どうしたんだ、何が違うんだい?」

 

「…女ともふもふが居る」

 

「もしかして、シズさんとリクか!」

 

ティーが覗いていた双眼鏡を貸して貰うと、そこに写っていたのは確かにシズさんとリクだ。

 

「レオンさん!」

 

「シズさん?!」

 

私達の近くに停まったバギーからは、シズさんが飛び降りて来て私に抱きつき、リクが申し訳なさそうに降りてきた。

そしてキノ、ティー、レジーの三人は額にピシリと青筋をたて、場の空気は凍り付いていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

皆に少しだけシズさんと二人で話をさせて貰うことを許して貰った。

…ただし三人から見える位置での会話に限るとの事だった。

 

「レオンさんどうぞ、助手席へ」

 

シズさんに案内されるままに助手席に座る、リクはどうやらティーが抱き締めて離さないらしく、リクも満更ではない様なのでそのまま置いてきた。

しかしあのもふもふ具合…後でもふらせて貰おう。

 

「レオンさん?お久しぶりですね、お会いしたかったです!」

 

「ごめんなさい、待たせてしまいましたね。

本当はもう少し早く会いに行く予定だったんですが…」

 

「どうかしたんですか?」

 

「実はその…」

 

今迄の件とその為諸々を全て話すとみるみるうちに、シズさんの顔が雲っていく。

 

「それではレオンさんにはもう、三人の嫁が居ると?」

 

「…そうなります」

 

シズさんの声は底冷えする様に冷たく、それでいて顔は笑っているのに目が笑って居ない。

再開した時の笑顔は何処に消えたのだろうか?

 

「正妻は誰ですか?キノさんですか、それとも他の方ですか」

 

「せっ正妻?それは居ないよ皆を同じ位に愛していて、納得してもらって結婚したんだ」

 

「そうですから、それならば私が正妻は貰います」

 

「いや、それは又今度と言うことで…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「では改めて、シズさん、いやシズ愛しています。

こんな私ですが結婚してください。」

 

「喜んでお受けいたします、幾久よろしくお願い致します。

私は貴方に何処でも、何処までも着いて行きます。

貴方には他にも居るのでしょうが、私には貴方だけと言う事を覚えて置いてくださいね」

 

「はっはい!ですが国はどうするのですか?」

 

「国ですか?父が落ち着いたので、兄を支えて貰いながら国の再建をして貰っています。

ですので私は自由です、何しろ国で私に力で敵う者は居ませんからね、力こそ全てです」

 

「近い内に挨拶に行かないとね」

 

「私は結婚相手との恋愛は何とか許容しますが…それ以外の浮気は決して許しません。

浮気相手を殺してしまうかもしれませんね…」

 

「こっ殺してしまう!」

 

「冗談では有りませんよ、私には貴方が必要なんです。

決して離れないで下さいね、離しませんけれど」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「で、レオンさん私は1つ試したい事が有ります。

力こそ全てと言いましたが、皆さんの実力を知りたいのです背中を預け、共に戦う仲間で…いえ家族?ですから」

 

「皆が良いと言ったのなら、良いと思いますけど」

 

私の返事を聞くと、シズは皆の元へゆっくりと気迫を纏わせながら歩いて行く。

何かを感じたのかリクが猛ダッシュで、私の所に走って来た。

 

「本当にリクは賢いですね、巻き込まれないで良かったです」

 

「シズ様があの顔の時は、ぶちギレてらっしゃいますからね。

遅くなりましたがレオン様、シズ様とのご結婚おめでとうございます。

此れからはレオン様もご主人ですね、喜ばしい限りです」

 

本当に嬉しそうに尻尾を振りながら、アーモンド形の目を細めている。もふもふだぁ

 

「リク少しお願いが有るんだけど」

 

「何なりとお申し付けを」

 

「もふもふさせて貰えないかな?」

 

「…は?」

 

言うが早いか、リクを抱き締めて思う存分もふもふさせてもらう、あぁ癒される。

リクもされるがまま気持ち良さそうだ。

 

私は後ろで上がる爆音や銃声喧騒を、何一つ聞こえない振りをしながらもふもふに集中する事にした。

 

キノがエルメスの影からパースエイダーを射ち、それをシズが刀で防ぎ接近する、ティーは後方から手榴弾を投げ、レジーはパースエイダーで狙撃し激しい攻防が続いていた。…怖い

 

 

皆がボロッボロになった頃、漸く戦闘が終わったようだ。

 

「分かりました、私も皆さんの実力を確かめることが出来ました。

これなら私も安心して命を預けられます」

 

「強いですね」

 

「まあまあやるわね」

 

「…もふもふ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

どうやらティーはリクが大変気に入った様で、リクを抱っこして離さない。

仕方なくシズのバギーに乗せて貰うことになった。

 

こうしてエルメスにはキノ

私のトライクには私とレジー

シズのバギーには、シズとリク、ティーが乗る事になった。

いつの間にか私の旅は大所帯に成ってしまっていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

シズが皆に向けて刀を抜いた事から、事件は始まった。

 

「!なにを!」

 

「俺が少し目を離した隙に!」

 

「ふっ所詮お前はレオをその程度の、目を離しても良い存在だと思って居たのですよ」

 

「貴様!」

 

「…そのていどなら、みをひいてじゃましないで」

 

「どうやら話し合いでは納まりそうも有りませんね、ならば力こそ全てです」

 

「それは賛成です」

 

「良いでしょう、弟子の成長を見る良い機会です。

キノ貴女も本気でかかって来なさい」

 

「…ほんきでいく」

 

「くっ遠距離ばかり少し分が悪いですが、レオンさんのため仕方ありません。

久々に本気で行かせてもらいます!」

 

レオンがリクをもふもふしている間にこんな、会話が有ったとか。




修羅場ムズカシ…ムズカシ


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休日の話 (ヒロイン シズ)

シズさんと…


先程から室内に二人の荒い息だけが響いている

部屋の中にはレオンとシズの二人きり、二人の服装は薄い物で汗だくの二人には無いも同然だった

 

「…はあはあシズ、もう限界です」

 

先に音を上げたのはレオンだった、全身汗だくで息も荒い

 

「レオンさんだらしないですよ、もう一回行きますよ!」

 

そう言ったシズは、竹刀をまた構えレオンに向かって行く、レオンはそれを捌くだけで精一杯だった。

 

「シズ今日はデートに行くんじゃなかったの?」

 

「はい、ですから私のしたい事、稽古に付き合って貰って居るじゃないですか?」

 

「シズはキノみたいに買い物とかに行かなくて良いの?」

 

「私はレオンさんと二人きりが良いので、これでいえ、これが良いのです」

 

何かを隠すようにレオンから顔を背けたまま、シズは話を続ける

 

「でも、普通のデートとかに憧れたりしないの?」

 

「…うっ」

 

レオンの言葉を聞くと、シズは途端に言葉に詰まる。

もじもじとしだし、顔も赤くなる

 

「しかし、普通のデート等と言われてもその普通が分からないのです。

そんな私にはこちらの方が合っているかと…」

 

「そんな事は無いと思うけど…

やってみたい事や、行きたい場所は無いの?」

 

「…やってみたい事」

 

シズはその言葉を聞くと、ふむと考え始める

やがて何かを思い付いたのかレオンの方を向く。

 

「その、二人で手を繋いで散歩がしてみたいです」

 

「へ?そんな事で良いの?」

 

「私はそんな事をしてみたいのです」

 

真剣な表情のシズを見ると、耳の先が僅かに赤くなっている。

そんなシズさんの様子を見るのは初めてで、こちらの方が照れてしまう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「シズ、もう良いかな?」

 

「はっはい」

 

部屋から出てきたシズは一見何時も通りの服装だが、下が違っていた。

 

「似合いますか?」

 

「うん、シズのスカート姿は初めて見たけど、凄く似合ってる綺麗だよ」

 

「ありがとうございます」

 

ニコッと笑うシズは、何処からどうみても何処かの国のお姫様の様な気品に溢れていた。

 

「それじゃあ行こうか、シズ」

 

シズに向かって手を差し出すと、嬉しそうにその手を取る。

 

「はい」

 

「何だかドキドキするね」

 

「はっはい」

 

二人で繋いだ手を見て、二人して照れる。

 

「ですが、こうして手を繋ぐ機会をいたたけたのです。

本日は私にエスコートさせていただけますか?」

 

「えっ、せっかくのデートなのに任せて良いの?」

 

「はいっ任せてください」

 

「それじゃあお願いするよ、シズ」

 

「はい」

 

シズに繋いだ手を引かれ、宿の外に出掛けて行く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

手を引かれ連れて行かれた場所は、国の中心部にある日当たりの良い公園だった。

 

「シズはここに来たかったの?」

 

「はい、一度こういう場合で二人きりで、ゆっくりしてみたかったのです」

 

そう言うとシズはレオンの手を引き、芝生の上に座らせ背後の木にもたれさせる。

 

「どうですか?ガッカリさせてしまいましたか?」

 

「そんな事無いよ、シズと一緒なら何処でも楽しいよ」

 

「そう言っていただけて嬉しいです、私もレオンさんと一緒居たくて此処を選びました」

 

広々とした芝生にはレオンとシズだけでは無く、他にも人々が思い思いに楽しんでいた。

 

「そのまま横になって下さい」

 

「そのまま?」

 

「はい、私の方に私の膝に頭を乗せて、寝転んで下さい」

 

シズは芝生の上に正座になり、背中を木に預けている。

その正座の膝の上を手でポンポンと叩き私が頭を乗せるのを待っていた。

 

言われた通りに体を横たえ、頭をシズの膝に乗せる。

上を見上げればシズが、嬉しそうに幸せそうに微笑んでいた。

 

「レオンさんは私と一緒に居て、幸せを感じますか?」

 

「シズ?」

 

「レオンさん、私はレオンさんと一緒に居るときも、居ないときも何時も幸せを感じます」

 

シズは私の頭を撫でながら、幸せそうに話し出す

 

「昔の私は、私の国をどうにかしようと旅に出て何時も焦って何かを感じる余裕は有りませんでした」

 

「…シズ」

 

「けれど今は違います。貴方がレオンさんが助けてくれたお陰で、こうして今此処でレオンさんのすぐそばで幸せを感じています」

 

シズは座っていた体制から前のめりになり、そのまま寝転んでいるレオンを抱き締める。

 

「昔はいかにして、国を平和にするかしか考えて居ませんでした。

しかしレオンさんと出会ってからは私の幸せについても考えられる様になりました」

 

レオンは黙ってシズの話を聞く。

 

「レオンさん私の幸せは、レオンさんと共に在ること。

レオンさんの剣であり盾であることです、もしもレオンさんが居なくなってしまったら、私の幸せも無くなってしまいます」

 

シズは祈る様にレオンに話す

 

「どうかレオンさん、末永く私を貴方の側に置いて下さい」

 

「勿論だよシズ、結婚した時に言ったでしょ?

死ぬその時までずっと一緒に居るから、離さないよって」

 

「…そうでしたね、ですが私はこの幸せが無くなってしまうのでは無いかと不安になってしまうのです」

 

幸せそうな表情から一転、泣きそうな表情で話すシズにレオンはどうにかしたくなる。

 

「シズの不安はどうしたら解消されるの?」

 

「そうですね、子供…いつかは貴方にそっくりな子供が欲しいです」

 

「子供?」

 

「はい、いつか旅が終わって安寧の地を見つけたら、その時は貴方と私の子供が欲しいです」

 

「旅の終わり…そうだったねシズは、定住出来る国を探してるんだったね」

 

「いえ、今は少し違います。

"貴方"と定住出来る国を探しているんです」

 

「そっか、旅が終わってからの事も考えないとね」

 

「ですがそれもまだまだ、先の事になりそうですね」

 

「待たせてごめんね」

 

「いえ、これもまた幸せですから」

 

 

 

 

 

 




貴方の子供が欲しいの
凄く重たく聞こえる


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美醜逆転の国 1

女性のみ美醜逆転
キノは男性に間違えられているから、セーフ


良く晴れた日、そろそろ次の国につく頃、前から馬車が走ってくる。

そのまますれ違うのかと思いきや、こちらに向かって手を振ってくる。

 

「おーい旅人さん達、ちょっと良いかな?」

 

キノが此方を振り返り、確認をとってくる

 

「レオンさんどうします?」

 

「話位は聞いても良いんじゃないかな?」

 

「分かりました、少し止まりますよ」

 

キノがスピードを緩めるのに合わせて、私達もスピードを緩めトライクを止める。

 

「レオン気をつけてくださいね」

 

「分かってますよレジィ」

 

馬車もスピードを緩め、キノの隣に馬車が止まり一人の男が降りてくる。

 

「あんた達はこれから、あそこの国へ行くんだろ?」

 

「はい、これから向かうところです」

 

「あー…あんた達は止めといた方が、良いかもしれないぞ」

 

キノと話ながらも男は、レジィやシズさんティーを見ながら言いにくそうに話をする。

 

「?どう言うことですか?何かあの国には特別な事でも有るのですか?」

 

キノが質問するが、またもや男は言いにくそうにしているが、観念したのか話してくれた。

 

「あんた達が、このまま行き先を変えないのなら仕方ない。俺があの国についての注意点を、教えておいてやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

「あそこの国は少々変わっていてな、あんたらはどうやら皆美人だから注意するけど…なんていうのかなぁ。

あそこの国は美的感覚が大分変わっていてな、普通の感覚としての美人が不細工、不細工なほど美人として扱われるんだ。

あっこれは女性に限るがな」

 

「え?」

 

「気を悪くしないでくれよ?

あんたとそこの男は大丈夫だろうけど、他は女性だろ?

あの国での不細工の扱いは、あからさまに悪くなるんだ」

 

「それはティー、この子の様な小さな子供もですか?」

 

キノはティーを隣に連れてきて、男に聞いている。

 

「まぁ大人よりはましだけど…それでもあからさまに嫌な態度をとられる事は、覚悟しないといけないなぁ」

 

「そうですか…」

 

「さて俺達はそろそろ行くよ、あの国に行くのなら気を付けてな」

 

「はい、色々注意点を教えて頂きありがとうございました」

 

馬車が去って行った後もキノは何か悩んでいる様で、レオンに話しかける。

 

「レオンさんどうしましょう、僕は大丈夫だと言われましたが。

ティー達はどうしましょう?」

 

「キノはまた、男に間違えられちゃったんだ。

こんなに可愛らしいのに」

 

「かっかわっ、可愛らしいっ!…うっううん!僕の事は良いんです師匠達をどうするかですよ!」

 

照れて真っ赤になったキノに怒られ、レジィ達の事を考える。

 

「国の中に居る間は、フードを被って過ごすとか?」

 

「それは、入国審査で直ぐにバレそうですけど、師匠達はどうですか?」

 

「私は誰にどう扱われようと、レオンに好かれて要るのならどうでも良いわ」

 

「わたしも、れおんさえいればいい」

 

「そうですね、私もレオンさんの好みに合って居るのなら、他の人はどうでも良いですね」

 

「三人とも…」

 

三人の気持ちに嬉しくなるが、他の人間からどう思われても良いなんて少し行き過ぎているような…

 

「僕もレオンさんに好きでいて貰えればそれで良いです」

 

「そっそうなんだ」

 

少し引きぎみに返事をする

 

「じゃあ僕はこのまま入国しますが、皆さんもこのまま入国しますか?」

 

「ええ、もちろん」

 

「うん」

 

「はい」

 

「じゃあ皆覚悟は良い?あの国でどんな目にあうのか、悪いもの見たさだね」

 

「怖いもの見たさじゃないの?」

 

「そうそれ!レオンも分かってきたね」

 

「何が?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「それでは入国を許可します、余計なお世話かもしれませんが私が女性を紹介しましょうか?」

 

レオンが入国審査を終えると審査官が小声で問いかけてくる。

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そうです、人の好みはそれぞれですから」

 

キノの肩を抱いてレオンが答えると、審査官がキノを見て顔色を悪くする。

この国ではキノは相当な不細工扱いをされる様だった。

 

「そっそれでは、この国をお楽しみ下さい」

 

それだけ言うと入国審査官は顔色悪く、口元を押さえながら何処かに走って行った。

 

「なんだろうねあの態度は、少し失礼じゃ無いかな?」

 

「レオンさんおそらくこの国では普通の態度だと思いますよ、僕は多分ものすごい不細工に見えて居るんでしょうね」

 

「あっなるほど、美人は不細工に不細工は美人に見える。

そんな美的感覚の国だったね、なるほどなるほど」

 

「取り敢えず国に入りましょうか」

 

「キノは大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ、ありがとうございますレオンさん」

 

「キノどう?面白そうじゃない?早く国の中に入ろうよ」

 

「そうだね、ここに居ても仕方ない行こうか」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ひぃっあんな不細工見たこと無い!」

 

「今度の旅人さんは、見たこと無い程趣味が悪いみたいだ」

 

国民達はレジィやシズの顔を一目見ると、化け物でも見る様にするものや。

蜘蛛の子を散らすように逃げるもの達と、散々な扱いだった。

 

「あの」

 

レオンが声をかけると国民の一人がこちらに、振り向く

 

「ここらで旅人向けのホテルは有りますか?」

 

「えっああ、この道を真っ直ぐ行くと見えてくるよ」

 

「ありがとうございます」

 

レオンは足早にその場を後にする、国民は何か言いたそうにレオンを見ているが、レオンは無視してトライクを走らせた。

 

「レジィ大丈夫ですか?あんな目で見られて傷付いては居ませんか?」

 

「言ったでしょう?私はレオン以外どうでも良いと。

けれど、決して気分の良いものじゃ無いわね」

 

それはそうだろう何も悪い事をしていないのに、まるで犯罪者でも見る様な顔で見られては、とても気分が悪い。

 

「早くホテルでゆっくりしたいですね」

 

「そうね、でも長旅の後でこんな目に会うなんて、踏んだり蹴ったりだわ」

 

はぁとため息を吐きながら、肩を揉むレジィを見て思わず苦笑いが出てしまう。

 

「あはは…御愁傷様ですレジィ」

 

「後ろのティーとシズもそうね、こんな時ほどキノの中性的な顔が羨ましいと思った事は無いわね」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ホテルのフロント

 

「悪いけどあんた達に、部屋は貸せないねぇ」

 

「どうしてですか?」

 

「この国では、こんな不細工見たこと無いけど。

ここまでの不細工を泊めたとなると、誰もその部屋を使いたがらなくなってしまうんです」

 

「そんな!」

 

「この国は不細工が少ないからね、どうしても嫌がられてしまうんですよ」

 

「それなら、全員同じ部屋ならどうですか?僕達は普通の顔なんですよね?」

 

「うーん、まぁそれなら大丈夫かな。

じゃあ五人一部屋で良いかい?」

 

「あと、モトラドも1台追加で!」

 

「なら大部屋ですね、どうぞ案内します」

 

部屋に泊まる交渉の間も決して、レジィ達の方を見ないホテルマンは失礼ではなく、この国では普通なのだろう。

この国の不細工として扱われている美人達については、とても酷い扱いを受けているのだろう。

想像に難しくない。

 

「ここがお客様の部屋ですね、それでは3日間おくつろぎ下さいませ」

 

「ありがとうございます」

 

部屋に着くと鍵を受け取り中に入る、フロントで言っていた通り凄く広い大部屋だ。

 

「ベッドルームは2つ、これは譲れませんね」

 

「わたしがかつ」

 

「今回も僕がレオンさんと同じ部屋になりますよ」

 

「いや、今回は私が勝たせて貰うよ」

 

「勝負の方法はじゃんけんで良いですね、それでは行きますよ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

部屋割り

 

レオン・ティー・シズ

 

キノ・レジィ・エルメス

 

「わたしがかった」

 

「レオンさんと同じ部屋なら、満足ですねやりましたよ」

 

「僕が負けるなんて…」

 

「そうねキノ勝負は時の運ですよ」

 




美人が不細工ならレジィ達は化け物級の不細工
入国審査ではキノは女性とバレている為に不細工扱い


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美醜逆転の国 2

「ちょっと買い出しに行ってくるよ」

 

「あっなら、僕も一緒に行きますよ、僕ならこの国で普通の顔の筈ですから」

 

「そうですねキノ、レオンのこと任せましたよ」

 

「はい、師匠」

 

「では私は刀の手入れをしていますね」

 

「いってらっしゃい」

 

ティーはそう言うとリクの頭に顎を乗せてもふもふと、体を撫でている

 

「いってらっしゃいませレオン様、キノ様」

 

それを黙って受け入れているリクも気持ちよさそうに目を瞑っている。

一人と一匹は仲良しなのかも知れない。

 

「「行ってきます」」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「二人きりで買い物なんて、久しぶりだね」

 

「そうですね、これも僕が男性に見えたおかげですね。

役得です」

 

キノは嬉しそうにレオンと腕を組んでいる

通りがかる人達は皆怪訝そうに見ているが、キノは構うものかとこの時間を満喫していた。

 

「それにしても"あれ"が美人なんですね」

 

キノがあれと指差す先にはでっぷりと太り、顔は目付きが悪く吹き出物だらけの女性が立っていた。

女性の回りにはナンパで有ろう、男性達が我先にと声をかけている。

 

「そうだね、この国は不細工が少ないらしいし。

太っている人も多い、自然とそうなっていったんだろうね」

 

「なるほど、所でレオンさん」

 

「ん?どうしたのキノ」

 

「もしも僕がこの国で言う"美人"だったら、その僕の事好きになってくれていましたか?」

 

もじもじと聞くキノに言われて、考える。

キノがこの国で言う美人、と言うことは物凄く不細工と言う事だ、けれど中身は変わらない今のキノと一緒。

と、言う事は…

 

「勿論だよキノ」

 

「え?」

 

「キノが例え物凄く美人でも物凄く不細工でも、中身がキノなら変わらない、どんなに見た目が変わってもキノが好きだよ」

 

「レオンさん…僕もです、どんなに見た目が変わっても中身がレオンさんのままなら、僕もレオンさんが大好きです」

 

えへへと照れるキノと、二人で手を繋ぎ歩いて行く。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

二人で露店を見ているとふとキノが話し出す。

 

「不思議なものですね」

 

「?何が不思議なの?」

 

「この国は醜い者が美しく、美しい者が醜いとされていますよね」

 

「確かに」

 

「けれど、見てください。ここにある商品達は美しい物ばかりじゃないですか」

 

キノが一つの美術品を手に取り、説明する

 

「人間は醜い方が美しく、美術品は美しい物が美しい。

何だか不思議だと思いませんか?」

 

「そうだね、言われてみると確かに不思議だね」

 

「もしかしたら、この国も昔は美しい人が美しいとされていたのかも知れませんね」

 

「そうかもね」

 

キノが露店商にこれくださいと話している。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

露店から出た所で、この国で言う美人にキノが話をかけられる。

 

「貴方達旅人なの?」

 

「え?はい」

 

「そう、珍しい話も有るわよね?この私が聞いて上げるから一緒に来なさいよ」

 

女がキノの手を掴もうとのを、レオンはキノの前に出て止めると、キノは少し嬉しそうにしていた。

 

「面白い話ができたら、私の彼氏の一人にでもして上げるわ」

 

「いえ、結構です」

 

「なんですって?…もしかして面白い話をする自信が無いとか、かしら?それなら…」

 

「いいえ、僕にはもうここにレオンと言う夫がいますから」

 

キノはレオンと繋いだ手を上にあげ、繋いだ手を周りに良く見える様にする。

 

「なっ…あんたもしかして女なの?!」

 

周りがざわざわと騒がしくなる

 

「はい、そうですが。僕は1度も自分から男だなんて言っていませんけれど?」

 

「よくも騙したわね!なんて不細工なの、こんな不細工見たことないわよ!」

 

分かっていた事だが、キノが女だと分かった途端に罵り始めた、女とキノの間に入り、レオンが女と話始める。

 

「可笑しいですね、女と分かった途端に不細工ですか?男だと思っていた時は付き合えだの、話を聞かせてだのと言っていたのに」

 

「キノの顔は変わっていないのに、相手の性別で態度を変えるのですか?」

 

「そんなの騙す様な格好をしてる方が悪いのよ!ああ、なんて醜いんでしょう!こんなに醜い顔見たことないわ!」

 

「俺は誰が何と言おうと、キノは美しいと思います。

その言い方はキノに失礼です、取り消してください!」

 

「貴方は私よりも、そこの不細工の方が美しいとでも言うの?!」

 

「勿論です」

 

辺りがざわざわと騒がしく、だんだんと騒ぎが大きくなってきた。

 

「キノ流石に騒ぎが大きくなりすぎた、行こう」

 

「はい、レオンさん」

 

二人はそそくさと人混みをかき分け、その場から撤退する。

しかし、それでもしつこい者達はキノの後をついてきていた。

 

「キノ宿屋まで走るか?」

 

「ええ是非流石に、こうもしつこいと嫌になりますからね」

 

そう言うと二人は示し会わせたかのように走り出し、後ろを見やると二人の健脚に付いて来られる人は一人も居なかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あら、お早いお帰りですね」

 

部屋に二人で駆け込んだ途端、レジィから声がかかる。

 

「師匠それが僕が女だとバレまして、騒ぎに為ったので早めに帰って来ました」

 

「おや?あなたらしくもないですね」

 

「いえいえ、僕はまだまだですし、今日はレオンさんに庇って貰って役得でしたし」

 

「庇って貰うとは、何かあったのですか?」

 

レジィの目が若干鋭くなり、窓の外に視線をやる。

そこにはまだ野次馬が少なからずうろうろしていた。

キノがレジィに訳を話すとはぁと一つため息を吐いた。

 

「レオンだいじょうぶか?」

 

「ん?心配してくれるのか?ティーありがとうな」

 

「では、私は少々用事が出来たので、少し失礼しますね」

 

「シズさまが行くなら私も」

 

シズが腰に刀を差しゆっくりと立ち上がり、ゆらりゆらりと怒りの炎を燃やしながら扉の方へ向かう。

 

「シズ外に出るのに刀は要らないでしょ?」

 

「うっしかし、レオンさんとキノさんを侮辱しておいて、何も無しは流石に許せません」

 

「シズさまに右に同じです」

 

刀を指摘されて都合の悪そうなシズに、歯をむき出しにして怒りをみせるリク。

 

「えんごはいるか?」

 

「そうですね、では私も」

 

ティーと師匠も悪のりなのか、便乗して暴れようとする。

 

「皆こっちから手を出すと厄介だからここは我慢しよう、キノが傷つけられたのには、腸が煮えくり返るほどの怒りを感じるけど」

 

「大丈夫ですよレオンさん、僕は傷付いてませんから、ちゃんとレオンさんに守って貰いましたから平気です」

 

そう言うとキノは庇われた事が嬉しかったのか、クスクスと小さく笑う。

それを見て周りも納得したのかそれぞれの席に戻る。



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海の国

大っ変お待たせいたしました。
お詫びの水着回です。
まだ、見てくれている方が居れば幸いです。


ざざーん、と水の塊が陸に押し寄せる。

これは海と言う物で、揺れている水は波だ。

 

前に行った魚臭い陰気な町とは違い、ここの海は遊泳可能で澄んだ水が特徴だった。

 

「おっおう、すっごい広い初めてこの世界に来た時にはちゃんと見れなかったからなぁ」

 

「レオンさん?」

 

後ろから声をかけられる、振り向いてみるとキノが水着で立っていた。

上下繋がったワンピースタイプの物で、腰の辺にフリルがついていてキノの可愛いさを最大限にアピールしていた。

 

「ああ、キノもう着替えて来たのか速いな」

 

「はい!レオンさんが一人だと他の女が寄って来ないか心配で、速攻で着替えてきました、で、どうですか?僕の水着変な所とか有りませんか?」

 

キノがクルリと回り、水着の左右を前後を確認している。

 

「変な所なんて無いよ、キノにすっごく似合っていて可愛いよ」

 

それに何処とは言わないが、意外に有る。

今も体を捻るたびにたゆんとはいかないが、僅かに揺れている。

 

「えへへ、有難う御座います。レオンさんの好みにあっていたのなら嬉しいです」

 

キノが照れ臭そうに笑っているが、水着だと効果増大だ、胸にズキュンときた。

 

「れおん、きがえた」

 

「おっティーも来たのか」

 

くいくいと水着を引っ張られ、振り向くとティーも水着で立っていた。

ティーの水着はなんと、スクール水着で胸の所にてぃーと平仮名で書いてある。

何故この水着を選んだのか、何故この水着が売っていたのかとても気になる所である。

 

「てぃーもにあっているか?」

 

「あっああ、ティーも似合っていて可愛いよ」

 

レオンがそう言うとティーは嬉しそうに、ムフーと息を吐き喜んでいた。

スクール水着が似合ってしまうのは喜んで良いのだろうか?

 

「レオンさん」

 

「レオン」

 

「あっシズとレジィ…」

 

シズとレジィの方を見ると…見れなかった。

 

「レオンさん、どうしました?」

 

シズが近付いて来て心配そうに顔を覗き込んで来る。

真っ赤な顔で視線を逸らすが、その拍子にシズの胸がたゆんと揺れたのが見えてしまった。

 

「シズその辺にしといてやりな、旦那様もまだまだ若いと言うことだ」

 

「レジィどういう事ですか?」

 

「レオンにはまだまだ私達の水着は刺激が強いと言う事だろう、なあレオン?」

 

「おっしゃる通りです」

 

おっしゃる通り、キノの水着は可愛らしい雰囲気のワンピースタイプだったから平気だったし、ティーに至ってはスクール水着だ。

 

それに比べてスタイルの良いレジィとシズがまさかのビキニ姿で、シズに至ってはその…下はショートパンツ型のスポーティーな水着で安心なのだが、胸がはち切れんばかりになっていた。

普段はあの縦セーターで隠れていた物が今は無防備にも、剥き出しになっていた。直視出来ない。

 

「ぅえっ!似合いませんでしたか?」

 

シズが驚いた様に、ビキニを見ているがそういうことではない。

 

「いや、シズ水着よく似合っているよ」

 

「ならどうして、私の事を見てくれないんですか?」

 

心底不思議そうにシズが尋ねるのを、横でレジィが吹き出しそうな顔で見ていた。

 

「シズ止めてやれといっただろう?レオンには刺激が強い、すなわち、お前の水着姿が似合っていない分けではなく、肌面積の多さとお前の胸の大きさに照れていると言った所かな」

 

「なっ胸の大きさ…」

 

シズは恥ずかしかったのか、腕で隠しているが余計に腕に乗り上げて大変な事になっている。

 

「シズ、これ着てくれないかな?」

 

そう言ってレオンは、自分の着ていたパーカーをシズに渡した。

 

「これはレオンさんの、いいのですか?」

 

「どうか、着てください」

 

心からの願いが通じたのか、シズは胸の所がぱっんぱっつんになっていたが何とか着てくれた。

 

「それで、シズにだけ水着の感想を言って置いて、私には無いなんて事はないよなぁ?だ・ん・な・さ・ま?」

 

レジィが見つめて来るので、水着をよく見てみるとレジィはホルターネックの水着にパレオを合わせていてよく似合っている、胸もそれなりにあるが身体とのバランスが取れていてまるで…

 

「レジィまるでモデルさんみたいに綺麗だよ」

 

「うむっ!レオンにしては中々悪くないぞ!」

 

なんて言っているがレジィの顔は平常通りでも、耳と首が赤くなっていて照れているのは一目瞭然だった。

 

「僕の時と反応が違いませんかね?」

 

キノが自分の胸の部分を見下ろしながら聞いて来る、がキノの水着姿に照れて居ないわけでは無かった。

 

「キノは綺麗って言うよりも、可愛らしいからなぁ」

 

「うっまぁ、今はそれで納得しましょう」

 

照れながらも何とか納得してくれた様だ。

 

「れおん、てぃーはきれいか?」

 

「ははっ、ティーも綺麗だよ」

 

頭を撫でながらそう言うと、ティーは胸を張りながらうんうんと、納得していた。

 

「それにしても、レオンも結構鍛えているなぁ」

 

レジィにそう言われると、認められた様な気がして嬉しくなる。

続いてシズも

 

「そうですね、これは良いものですね」

 

そう言って舐める様に上から下まで目線を動かす、シズは意外とムッツリなのか?

 

「レオンさん、格好良いですよ」

 

素直に褒めてくれたのはキノだけで、

 

「れおんさわってもいいか?」

 

全員にジロジロ見られ、ティーに至っては俺の身体をペタペタと触り、満足そうにしている。

 

「止めて下さい男でも此処まで見られると、恥ずかしいんですよ。

それにティーも異性の身体をみだりに触らないんだよ?」

 

「いせいじゃない」

 

「ティー?」

 

「ふうふのこみゅにけーしょん」

 

「はぁ、そうだね」

 

自信満々のティーにここは此方が折れておく、それに夫婦なのは本当だ。

 

エルメスはと言うと潮風で錆びるのが嫌なのか、ホテルの部屋で眠ったままだった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

で、何でこうなっているんだ?

 

「良いじゃん行こうよ、向こうに良い場所が有るんだって!」

 

「そうそう、こんな所でこんな奴と居ても楽しくないでしょ?」

 

海の家でティーの浮き輪を選んで居ると、後ろからチャラチャラした男達の声が聞こえて来た。

 

「だから、行かないと言っているでしょう」

 

「そうですよ、身の程を弁えなさい」

 

シズとレジィが、男達に言い返して反撃して居るがキノが心配そうに俺の腕を引っ張ってきた。

 

「レオンさん、大丈夫でしょうか?」

 

「うん、俺が行こう」

 

「れおんかっこいい」

 

ティーがパチパチと拍手して応援してくれている。

 

「ほら、こっちに来て」

 

男の腕がシズの腰にまわろうとし、もう一人の男の腕がレジィの肩にまわろうとする。

 

「ちょっとま…」

 

レオンが声をかけようとしたその時、シズが男の腕を取り背負投をし、レジィがもう一人の男の腕を捻り上げた。

 

「うわぁ…」

 

助ける必要が無い位二人は強かった。

レジィに至っては俺よりも強いし

 

「二人共大丈夫?ごめんね助けられなくて…」

 

自分の妻も守れない夫なんてなさけない…

 

「おや、レオンが助けようとしていた所は見ていましたよ。結果的に間に合わなくても、その気持ちだけで嬉しいものですよ?」

 

「そうですよレオンさん気にしないで下さい、自分の身は自分で守れますよ!」

 

うっ二人の気づかいが余計に情けなくなる。

 

「でも…」

 

そんな二人の後からうめき声が聞こえて来た。

 

「いてて…人がちょっと下手に出りゃあ、調子に乗りやがって」

 

「お前等は大人しく、俺らについてくれば良いんだよ!」

 

先ほどシズとレジィに倒された二人が起き上がり、怒りの形相でこちらに手を伸ばしてきた。

 

「今度こそ二人を守るから!」

 

「あはは、男だからって調子に乗んなよ!」

 

「えっおい、あいつの身体筋肉ヤバくね」

 

「えーそんなの大丈夫だろ、2対1だしよ」

 

「だっだよな」

 

そんな事を言い合っている二人の男の油断している顔面を殴りつける。

 

「おうっ!」

 

「ぎゃっ!」

 

二人の男は断末魔を残して倒れ伏し、動かなくなった。

不意打ちこそ最強。

 

「レオン、ありがとうございます。

助かりました」

 

「今度こそ二人を守れたかな?」

 

「はい!レオンさん、格好良かったですよ」

 

「それでこそ私の旦那様であり、弟子ですよ」

 

レジィに褒められ今度は此方が赤面するのだった。




アニメで言うところのテコ入れ回
シズさんの爆乳


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