ガールズ&パンツァー ~捨てられた男の娘~ (ニキ・ラウダ)
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登場人物紹介

登場人物 一覧
すべての話の改善完了してます。


二木 セナ CV 小倉唯→作者イメージ

 

戦闘BGM コバルトの空

 

出身校 聖グロリアーナ(中等部)→大洗女子

 

身長125cm

 

性別 男

 

誕生日 10月23日

 

血液型 A型

 

髪型 茶髪のサラサラで、ショートヘアでサイドテール

 

目の色はブルー

 

本作の主人公で、見た目は完全な女の子。

西住家に産まれるも、男という理由で二木家に養子に出された。みほとは双子で弟に当たる。

中等部から性別を偽り戦車道を始めたが、虐めに会い戦車道への興味を無くし、大洗女子へと転入する。

 

性格は大人しく礼儀正しいがたまに、甘えん坊になる。実はみほ大好きな一面も・・・

 

戦車道では、抜群な聴力と計算能力の高さと自動車レースで培った運転センスを武器に戦う。

中等部時代は、ミリ単位で正確な運転が出来る事と、必ず砲弾を命中させる事から、一部では走るコンピューターと呼ばれていた。

 

 

 

二木ラウダ

 

セナの義理の父親で日本一の航空会社ラウダ航空取締役社長

 

身長171cm

 

性別 男

 

血液型 A型

 

髪型は少し癖っ毛で髪の色は茶色

 

目は堀が深く、瞳の色は水色

 

彼は元F1レーサーで三回の世界制覇をしている。

セナをある程度自由にさせているが、セナが困っていると直ぐに駆け付けるというかなり過保護な一面がある。

 

 

 

二木 かなえ

 

セナの義理の母親

 

身長145cm

 

血液型 AB型

 

髪型はロングでサイドテール、髪の色は水色

 

目の色は茶色でくりっとした可愛い目を持っている。

 

セナをかなり溺愛しており、セナが実家に帰ってくると一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり・・・自分の昔の服をセナに着せてるんだとか・・・

 

ここまで見ると甘やかす駄目親に見えるが、食事の作法や言葉遣いと立ち振舞いにかなり厳しいらしい。

 

 

 

西住 みほ

 

出身校 黒森峰→大洗女子

 

あんこうチーム車長で、大洗女子の隊長

 

誕生日 10月23日

 

性別 女

 

身長 158cm

 

西住流戦車道の名家に生まれ、戦車道から逃げるつもりで大洗女子に転校したが、生徒会から戦車道の履修を強要され困惑する。誰よりも友達想いの高校2年生。セナの実の姉に当たる。

 

 

 

西住 まほ

 

出身校 黒森峰

 

黒森峰の隊長

 

性別 女

 

身長171cm

 

誕生日 7月1日

 

血液型 A型

 

若くして西住流戦車道の後継者として頭角を現している、みほとセナの姉。黒森峰女学園チームの隊長を務め、国際強化選手としてメディアで取り上げられることも多い有名人。ドイツへの留学が決まっている。

 

 

 

西住 しほ

 

西住まほ、みほ姉妹の母親であり、セナの産みの親。

勝利至上主義を掲げる戦車道の名門西住流の師範。高校戦車道連盟の理事長も務めており、名実ともに日本戦車道界の重鎮である。

 

 




うーん・・・


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第1章 全国大会編
第0話 運命の出会いは突然に・・・


誤字脱字ご了承ください。


主人公の名前は「二木《にき》 セナ」高校二年生で自動車レースや戦車道をしている。

 

外見は身長125cmと小柄で茶髪のショートでサイドテールで目は蒼い。性別は・・・"男"だ

 

彼の産まれは少々複雑で戦車道名家の一つである西住家に彼は産まれる。

 

しかし男ということで戦車道は出来ない事から二木家に養子に出され二木家では我が子同然のように育てられた。

 

二木家の大黒柱である二木 ラウダは自動車レースをしているためセナに徹底的にレーシングマシンの操縦の仕方や戦車の操縦の仕方などを叩き込んだ。

 

そしてセナが中学生になる頃父親と母親(かなえ)が「セナに性別を偽らせ戦車道をやらせてみよう。見た目は完全に女の子だから問題ないだろう」ととんでもないことを言い出した。

 

中学生の時に戦車道を本格的に始めたセナは才能を開花させたが、練習試合では仲間に手柄を横取りされたり妨害されたりしたせいで彼の名は有名にはならなかった。

一ミリのズレもない遠距離砲撃や素早く正確に戦車を動かすことから彼の実力を知っている数人は彼の事を走るコンピューターと呼んだという。

 

仲間に手柄を横取りされたせいで、他人との接触を拒むようになり、そして戦車道への興味をも失い戦車道のない大洗女子高校へと入学した。

 

なぜ女子高に入学させたのかというと母親が「面白そうだから女子高に入学させてみよう」と言い出した為だ。

 

そして時が過ぎて・・・高校2年生

 

学舎となる高校へと向かっていた。 もちろん女子高だが・・・

 

「色々な事がありましたけど、早くも高校2年生ですか・・・戦車道から離れて生活するのは悪くはないですねー」

 

戦車道の無い学生生活を振り返りながら、教室へと入った。

 

クラスでは、一番窓際の後ろの席で人間付き合いは苦手な為、あまりクラスメートとも話さない。

 

話すとしたら、同じクラスの武部沙織と五十鈴華くらいだろう・・・彼女達なら何故か普通に話せる。

 

早速 その武部沙織と五十鈴華が話しかけてきた。

 

「おはよう!セナちゃん!」

「おはようございます。セナさん」

「おはようございます。沙織さん 華さん」

 

セナが少し微笑みながら挨拶を返すと沙織が今日のビッグニュースを持ってきた。

 

「知っている?今日転校生が来るらしいよ!」

「そうなんですか?楽しみですねー」

 

沙織から転校生が来るらしいという情報を聞き、セナは少し心を踊らせる。

 

「転校生ですか・・・どんな人なんでしょう?」

「なんか遠い所から来るらしいよ?」

 

そして転校生がやってきた。その転校生は少し緊張しながら前の教壇の近くに立つ。

 

「はっ、初めましてっ! 今日から皆さんと一緒に学ばせてもらうことになりました! 西住みほと言いますっ! わからないことが多いと思いますが……これからよろしくお願いしますっ!」

 

西住という名前を聞いて、セナは少し懐かしくなった。

 

(西住・・・また懐かしい名前が・・・そういえば去年の戦車道全国大会決勝で黒森峰とプラウダの戦いの最中に事故があったと耳にしましたが・・・まさかその関係で・・・?しかし彼女が私の実の姉の1人・・・優しそうな人ですね・・・もし彼女と生活できていたら・・・しかし西住とはもう・・・)

 

セナが少し悲しい表情を浮かべていると、隣の席に彼女は来た。

 

「西住みほです。隣の席同士よろしくお願いします!」

「二木セナといいます。こちらこそよろしくお願いいたします。」

 

セナは彼女を見つめる。

 

(間違いない・・・彼女は西住家の次女・・・西住みほさん本人です)

 

「へーい!彼女達!一緒にお昼食べなーい?」

 

沙織と華がみほを昼食に誘うために、みほの机へやってきた。

 

「えっ?私?・・・」

 

みほは、自分が誘われているのにびっくりしているようだ。

 

「沙織さんがナンパした為にみほさんが困ってしまっています・・・」

 

セナは呆れ気味に沙織のナンパを指摘する。

 

「あはは・・・ごめん ごめん。それでよかったらどうかな?もちろんセナちゃんも」

「はい!お願いします!」

 

みほが嬉しそうに返事をすると、セナもクスッと笑いながら承諾した。

 

「断る理由はありませんからね。」

 

 

彼女達は食堂へと移動した。

 

「私たち西住さんと話してみたかったんだ~私は・・・」

 

沙織が自己紹介をしようとした時、みほが3人の名前と生年月日を答えた。

 

「武部沙織さん 6月22日生まれO型、五十鈴華さん12月16日生まれB型、二木セナさん10月23日A型」

 

「凄い!誕生日まで覚えてくれるんだ!」

「うれしいです。」

 

華と沙織は、転校生が自分の名前と誕生日を覚えてくれていた事に喜んだ表情を魅せる。

 

「うん!クラスの名簿を見て覚えたの!」

「ねぇねぇ!西住さんの事名前で呼んでいい?」

「じゃあ私も名前で呼ばせていただきますね?みほさん。私の事は華と呼び捨てで構いません」

「では、私もみほさんと呼ばせていただきます。」

「凄ーい!友達みたい!」

 

みほは笑顔を見せていたが、セナはみほの事を姉と呼べない為、少し悲しそうだった。

昼食が終わり教室に戻ると、急に生徒会の面々がやってきた。金髪で背が小さいツインテールの少女と茶髪でポニーテールの胸が大きい女の子、黒髪でショートカットで片目にメガネを掛けている3人の少女が居た。

 

「西住ちゃ~ん!ちょっといいかな?」

 

金髪のツインテールの少女がみほを呼んだ。

 

「えっと・・・」

 

みほが誰かわからないと言った表情を浮かべていると、セナと沙織が彼女達を紹介した。

 

「生徒会の方々です。話しかけてきた方が生徒会長です。」

「あと、書記と広報の人」

 

みほは、そうなんだと頷いた。

 

「そんなに時間は取らせないから」

 

セナはふと疑問が浮かんだ。何故いきなりみほを呼び出しに来たのかと・・・セナは嫌な予感がした。

みほは生徒会に廊下へ連れて行かれ教室を出ていった。

 




上手く書けるだろうか...スネェェク!


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第1話 苦悩と葛藤

みなさんようこそ。
たまたま見た方も荒らしに来たぜぇ!という方もこんにちわ。

こんな小説ですが楽しんでください。


3分間待ってやる!流行りの服は嫌いですか?


みほは、いきなり教室へ押し掛けた生徒会3人組に廊下へ連れて行かれた。

ここでセナの特殊能力を紹介しよう。彼はかなり耳が良い。神経を集中させれば数キロ先の会話まで聴くことが可能なのだ。

自分の席から雑音を掻き分け、廊下に居る彼女達の会話を聞く。まず最初に杏の声が聴こえてきた。

 

「必修科目なんだけどさぁ~戦車道取ってね~」

 

セナは、戦車道という言葉に驚いた。何故ならばこの学校の戦車道は大分前に廃止されたはずだからだ。セナは大洗の情報は入学する際に調べていた為、知っていた。

 

みほは少し戸惑った。何故ならみほは戦車道が嫌で戦車道がない学校に逃げて来たのだから。

 

「えっ!?この学校戦車道はないんじゃ・・・」

「今年から復活したのだ」

 

今年から復活したと広報である少女は言ったが、セナはいきなり戦車道が復活したというのが気になって仕方がない。

 

「私この学校に戦車道がないから転校してきたんですけど・・・」

 

みほは暗い表情をしており、あまり乗り気じゃないようだ。

 

「とにかくよろしく~」

 

杏は手を上げながら、廊下を去って行った。

 

セナは、不自然に思った。戦車道が復活するのは良いとして、嫌がるみほを強引に戦車道をやらせるのはおかしい。まるで何か焦っているような感じがした為、セナは生徒会が何かを企んでいるか隠していると予想した。

 

沙織と華は廊下からみほの様子を心配そうに見ている。そして、セナは神経を集中させ遠くの音を聞いた為に疲労感に襲われた

 

「うっ・・・しかしこの技はかなり疲れますね・・・戦車道・・・私はどうしましょう?」

 

セナも戦車道をまた始めるかどうかで迷っているようだ。

 

授業中みほは、上の空状態であまりにも酷い顔をしていた為、先生に保健室に行くように指示され、みほは保健室へと向かった。その後を追うように沙織と華が仮病を使い保健室へ向かった。

 

すると授業中に、突然セナの携帯に父親からメールが入った。セナはキョトンとしながら携帯を開いた。そこにはこんなメッセージが送られてきていた。

 

"文科省が大洗を潰しにかかっている"

 

と書かれていた為、セナは目を見開いた。これで何故生徒会がみほに戦車道をやらせようとしたのか予想が付いた。恐らく・・・戦車道で名を挙げ廃校を阻止しようという考えだろう。セナは焦った、このままではみほが逃げてきた学校が廃校になり、廃校を避けるためには戦車道で名を刻む必要がある。戦車道に再び身を預け、みほを守りたいという思いが強くなったが、セナは戦車道をするのが辛くなっていた。色々考えていると、急に猛烈な熱と倦怠感に襲われた。そしてセナの記憶に捨てられた頃の記憶が甦る。

 

1人の男性の声が聞こえる。

 

(男なんていらない!西住家から追放しろ!

こんなポンコツ居ても一緒だ!みほとまほだけでいい!)

 

セナは"やめて"と繰り返し言いながら、汗だくで耳を塞ぎながら泣いている。

 

中学時代の戦車道をしていた時の思い出もフラッシュバックする。

 

「やりました!勝った!私!命中させた!」

 

セナが敵戦車を撃破した事を喜んでいると、少女が外に向かって喜んでいた。

 

「やったー私が撃破したー!」

「すっごーい!」

「あのチビが足手まといだったけどねー」

「うっそー!なんで戦車道始めたんだろ!」

 

少女達はセナの手柄を横取りした挙げ句、ゲラゲラと笑いながらセナを馬鹿にしていた。

 

「私が命中させたのに・・・」

 

セナが泣いていると、少女がセナを笑いながら見下した。

 

「ばっかじゃないの?アンタの手柄は私のもの私の手柄は私の物!アンタは私の奴隷としてがんばってね?」

 

そう・・・やっと見つけた居場所で嫌がらせを受けた。

こんなの酷い・・・なんで・・・なんで・・・『もう人間とはあまり関わりたくない』この学校から出ていく!

 

 

 

「はっ!?」

 

気付くとセナは保健室のベッドに寝ており、窓の外を見るともう夕方でほとんどの生徒が下校していた。

 

「帰らなきゃ・・・」

 

セナは起き上がり帰ろうとするがフラフラして思うように歩けない、ドア付近でドスンと盛大に倒れた。

 

「身体が・・・」

 

身体が思うように動かない中、這いずりながら帰ろうとしていると、みほと沙織と華が保健室にやってきた。

 

「セナちゃん!?ダメだよ!寝てなきゃ!!」

「セナさん!ベッドに戻って!」

「そうですよ!もの凄い熱じゃないですか!」

 

セナの目は虚ろで汗を沢山掻いていたが、微笑みながらみほを見た。

 

「大丈夫・・・」

「全然大丈夫じゃないよ!いいからベッドへ戻って!」

 

みほは慌ててセナを抱えベッドへ寝かせた。

 

「どちらにしろ家に帰らないといけません。」

 

セナは再び起き上がろうとするが上手く力が入らない。無理やり起き上がろうとするセナを見たみほはセナの両腕をベッドに押さえつけた。

 

「ダメだよ!寝てなきゃ!」

 

すると沙織と華があっ!と声を上げた。

 

「いけない!私帰らないと!」

「私も帰らないといけません。ですが・・・」

 

沙織と華は帰りたかったが、無理やり帰ろうとするセナを見て心配で仕方なかった。

セナは汗だくで顔が真っ赤の状態で沙織達に微笑みかけ、自分の事はいいから帰るように促す。

 

「私の事は気にしないで下さい・・・」

「あんな無茶してたんだから気にするよ!」

 

沙織はセナが心配で気が気じゃない。

 

「じゃあ私がセナさんを看病して送って帰るよ。」

 

みほが自分が看病し、家まで送ると沙織と華に言い聞かせた。

 

「みぽりん1人で大丈夫?」

「うん。平気だよ。」

「じゃあ私達帰るけど・・・セナちゃん!みぽりんに迷惑かけないようにね?」

「ではセナさんお大事に。」

 

沙織と華はセナを心配しながら保健室を出ていき、保健室にはみほとセナの2人きりになった。

2人きりになった時、セナはみほに戦車道をしたいのかどうか聞くチャンスだと考え、みほに本音を聞き出す事にした。

 

「みほさん何か悩んでいらっしゃるんですか?私で良ければお話をお聞きいたしますよ?」

 

セナの問いに、みほは俯きながら悲しそうに過去の事をセナに語った。

 

「私ね、前の学校で戦車道をやって色々あって戦車道が嫌になったからこの学校に来たんだ・・・そしたら生徒会長に戦車道が復活するから必修科目は戦車道を取るように言われて・・・沙織さんや華さんに相談したら自分達も戦車道を取るから一緒にやろうって・・・私・・・どうしたらいいんだろう・・・」

 

みほは今にも泣き出しそうな表情を浮かべている。

 

「みほさんはどうしたいのですか?」

「戦車道やりたい・・・やりたいよ!けど!」

「昔のチームメイトにどう思われるのか怖いのですね?」

「うん・・・」

「言わせておけばよろしいのではないでしょうか?」

「えっ?」

 

みほはセナの答えにキョトンとした顔をした。セナの顔を見ると汗だくになりながら真剣にアドバイスをしていた。

 

「みほさんがやりたいようにすればよろしいかと・・・何かあった時は周りを御覧になってください・・・みほさんには側で支えてくれるお友達がいらっしゃるはずです。共に悩み、共に笑い、共に泣いてくれる友達が・・・この先なにがあろうとみほさんなら必ず乗り越えられます。ですから・・・自分のやりたいようになさってください。自分に嘘を付き続ければ後悔しますから・・・ねっ?」

 

セナは優しく微笑みかけゆっくりとみほの頭を撫でた。

 

「うっうぅ・・・ありがとうセナさん・・・私戦車道!やる!やりたい!」

 

みほは涙を流しながらセナにお礼を言った。しばらく2人の時間を過ごした後、セナは帰る事にした。

 

「では、帰りましょう。」

 

セナは起き上がろうとするが中々起き上がれない。それを見たみほは自分の背中に乗るようにセナを促す。

 

「私の背中に乗って。」

「けど///」

「いいからっ!」

 

セナは恥ずかしく、おんぶされるのを躊躇ったが、みほはセナを強引におんぶした。みほはセナをおんぶしながら帰路を歩く。

 

「セナさんの家ってどこ?」

「この道を真っ直ぐ行ってください」

 

セナはみほにおんぶされ恥ずかしさもあったが同時に実の姉におんぶされ嬉しくもあった。

(暖かい・・・みほお姉様・・・なんだろうこの安心感)

セナはみほの背中で少し笑っていた。セナの住んでいるアパートに着くと、みほには見覚えのあるアパートだった。

 

「あれ?ここって・・・」

「どうかされました?」

「ここ私のアパートなんだけど・・・」

 

セナとみほは顔を見合せびっくりした。更にセナの部屋まで進むと更に驚いた。

 

「あっ私の部屋はここです。」

「えぇ!?となりの部屋!?」

 

なんとみほとお隣さんだった。これにはセナもみほも腰を抜かしそうになった。

 

「あらまぁ・・・」

 

みほはセナの部屋に入るとセナをその場に下ろす。

 

「ありがとうございます。みほさん」

 

セナは笑顔でみほにお礼を言った。

 

「ううん!友達だから当然だよ!御布団はどこかな?」

「布団でしたらみほさんの後ろの襖にありますよ」

 

みほは床に布団を引くとセナをゆっくりと寝かせる

 

「セナさん・・・一つ質問していい?」

 

みほもセナの本音を聞き出す為、語りかけた。

 

「なんでしょう?」

「あのね?セナさんと1日居てわかったんだけど私や沙織さんや華さんを自分から遠ざけようとしてない?」

「・・・」

 

セナは少し俯く、確かに会話はするものの、深く関わっていた感じではなかった。

 

「よかったらその理由を教えて欲しいかな?なんて・・・」

 

みほは苦笑いをしながらセナに話しかけた。セナは話すのを一瞬躊躇ったがみほには一部の過去を話そうと決意する。

 

「私は・・・人と仲良くするのが怖くなってしまったんです・・・」

 

セナは悲しそうな表情を浮かべながら語り始め、みほはセナの話しに真剣に耳を傾ける。

 

「中学生の時に戦車道をしていて、その時に周りにいじめられたんです。自分の活躍を横取りされたり暗い小屋に閉じ込められて一週間放置されたり、私が乗っていた戦車にわざとブレーキがかからないように細工されたり・・・そんなことをされていくうちに人を信用できなくなり、無意識に人を遠ざけるようになっていたんです・・・」

 

セナは元西住家であることはまだ話す時では無いと考え、あえて話さなかった。

 

「酷い!酷すぎるよ!そんなのおかしいよ!」

 

みほはセナの事を自分の事のように受け止め、涙を流した。

 

「みほさん・・・」

 

みほは泣きながらセナをギュッと抱き締めた。セナは素直にみほは良い匂いだと思った。少し頭がボーっとしている。

 

「セナさんは何も悪くないよ!私は許せない!セナさんをこんな風にした人達を許せないよ!私達がセナさんを守るから!もうそんな悲しい顔しないでっ!」

 

みほの叫びを聞いて、セナはみほ達だけは信用してみようと思えた。

 

「お姉ちゃん・・・ありがとう」

 

小さな声でお姉ちゃんと言ったが、みほには聞こえていなかった。

 

「えっ?」

「いえ・・・なんでもありません。みほさん達と出会えて本当に良かった」

 

セナは嬉し涙を流しながらみほに満面の笑顔を見せた。

みほに慰められたセナはある決意をする。

(私は戦車道をもう一度する・・・もう逃げない!)

 

その決意は戦車道に「走るコンピューター」二木セナが復活することを意味していた。

 

次の日の朝、みほは生徒会に呼び出された。

 

「私も付いて行く!」

「落ちついてくださいね?」

 

華は沙織に落ち着くように言い聞かせる。みほと華と沙織は教室を出て行き、セナは廊下でその姿を見送る。セナも一瞬みほに付いていくか考えたが返答の答えを知っていた為付いていかなかった。みほが後ろを振り向くと笑顔でみほに手を振るセナの姿が見えた。みほも笑顔で手を振り返す。

 

「いよいよ生徒会がしびれを切らし、みほさんを呼び出しましたか・・・私も希望必修科目に戦車道と書きましょう」

 

戦車道を取ると言うことはみほもセナもこの先西住家と対峙することを意味する。




見た目は子供!頭脳は子供!お○○はくさーい!その名も名探偵コシン!


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第2話 セナたん!戦車道に参る。

文章力なくてごめんなさい!


セナは朝早く起き朝食を作っていた。メニューは白ご飯と味噌汁と焼き魚である。

 

「ネギ♪ネギ♪トントン♪豆腐 油揚げグツグツ♪焼き魚ジュージュー♪」

 

昨日みほに悩みを打ち明けたお陰か超ご機嫌である。

 

一方セナの隣人である みほ はセナの奏でる鼻歌と包丁の音で目を覚ました。

 

「うん~・・・」

 

みほは目を擦りながら布団から身体を起こすと、隣から焼き魚の香ばしい匂いがしてきた為、お腹が空いた。

 

「いい匂い・・・焼き魚かぁ・・・食べたいなぁ~・・・私はコンビニに行こっ」

 

「ふんふんふ~ん♪」

 

セナが歌いながら料理していると、みほの部屋からみほの呟きが聞こえてきた・・・

 

『いい匂い・・・焼き魚かぁ・・・食べたいなぁ・・・私はコンビニに行こっ』

 

セナは、みほの呟きを聞いて少し心配になった。コンビニの料理は確かにおいしいが健康にはあまり良くない。そういえば、昨日の夜もコンビニの弁当を買ってきていた・・・このままでは、みほが身体を壊してしまうと思ったセナは、魚をもう1匹取り出しグリルに魚を投入し、料理が完成するとみほの部屋へ向かった。すると丁度ドアを出るタイミングが一緒になり、セナはみほに笑顔で挨拶をした。

 

「みほさんおはようございます。」

「あっセナさん、おはよう!」

 

みほも笑顔で挨拶を返す。寝起きの為か若干眠そうな顔をしている。

 

「みほさんはどちらへ行かれるのですか?」

「朝食を買いにコンビニまで・・・エヘヘッ」

 

みほは、恥ずかしそうに笑った。

 

「よろしければ一緒に朝食を食べませんか?」

「うん!じゃあ急いで買ってくるね!」

 

みほが朝食を買いにコンビニに行こうとしてるのをセナが引き留める。

 

「いえ、その必要はありません。みほさんの分まで朝食を作っていますから♪」

 

セナは笑顔でリビングに用意してある朝食を見せた。

 

「えっ!?どうして!?」

 

みほは既に自分の分の朝食が用意されている事に驚いた。

 

「みほさんの呟き、私の部屋まで聞こえていましたよ?」

 

セナが笑顔でウィンクすると、みほは顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに俯いた。

 

「あうっ・・・」

 

セナは自分の部屋のドアを開くとみほを部屋へと招き入れた。

 

「さぁどうぞ」

「じゃ・・・じゃあお言葉に甘えて」

 

みほは少し恥ずかしそうにしながらセナの部屋へと上がった。

 

「おいしそ~!」

 

みほは目の前にある料理を見ると目を輝かせた。

 

「こんな粗食ですが」

「そんなことないよ!いただきま~す!」

「はい、召し上がれ」

 

セナは笑顔だった。みほは焼き魚を箸で摘まむと 魚はパリッ と良い音をたて油がジュワっと出て来た。それを口の中へと運ぶ。

 

「おいしい!この魚の皮のパリッとした感触とフワッとした食感!噛んだ時に出てくる油と絶妙な塩加減が良い感じに合わさってる~♪」

 

みほは顔を傾け頬っぺたを手で押さえながら笑顔で味の感想をセナに言った。

 

「お口に合ったようで良かったです。」

 

自分の料理をおいしいと言ってもらえて、セナも嬉しそうだった。みほとセナは朝食を食べた後登校の準備をし、学校へ向かった。そして学園の戦車の格納庫へとみんな集合する。

いよいよ戦車道が始まるので、華と沙織はワクワクを隠せない。

 

「いよいよ始まりますね!」

「さらにモテモテになったらどうしよ~」

 

沙織は自分がモテる妄想に浸っている。

 

「あははっ・・・」

 

沙織の発言に対しみほは苦笑いして、セナはクスクスと笑っていた。

 

「あっ!セナちゃんひどーい!」

 

そしてみほを見つめる女の子が後ろにいたが、セナは気にしなかった。そして生徒会の広報の河嶋 桃が戦車道の授業の開始を宣言する。

 

「では!これより!戦車道の授業を開始する!」

 

先程みほを見ていた、生徒が生徒会に対し質問をした。

 

「戦車はティーガーですか?それとも・・・」

「うーん・・・なんだったっけなぁ~」

 

生徒会もどんな戦車があるかわからないようだった。

 

そして倉庫の扉が開かれるとそこには、ボロボロの戦車が1台佇んでいた。

 

「うわ・・・ボロボロ」

「最悪・・・」

「詫び寂びでよろしいんじゃ?」

「これはただの鉄錆び・・・」

 

セナとみほは置いてある戦車を歩いて見に行く

 

「レストアすれば十分に使える・・・問題はエンジンです。使えなさそうならスグに新しいエンジンを手配しなければいけない・・・」

「装甲も転輪も問題なさそう・・・これなら行けるかも!」

 

戦車の状態はそこまで悪くないようで、 みほの言葉に皆大歓喜した。

 

「おぉー!」

 

そして、セナは重要な事に気付いた。

 

「戦車が足りない・・・最低後4両要ります。」

「確かに、計5両は欲しいかも・・・」

 

みほもセナの言葉に頷いた。

 

「んじゃ!みんなで探そうか?」

 

杏は足りない戦車を探そうと提案を出し、その言葉に皆は首をかしげる。

 

「探すってどういう事ですか~?」

 

1人の少女が質問をすると、桃が答えた。

 

「我が校は何年も前に戦車道は廃止されている。だが、当時使用されていた戦車がどこかに残っている筈だ、いや必ずある。明日戦車道の教官がお見えになる。それまでに残り4両探し出す事」

 

今日中に4両戦車を探せという厳しいノルマが下った。そして1人の生徒が戦車がある場所を杏に訪ねた。

 

「して・・・戦車は何処に?」

「わからな~い」

「何にも手掛かりも無しですか!?」

「な~い」

 

杏は戦車の場所も分からなければ、手掛かりもないと皆に話す。

 

「では!捜索開始!」

 

手掛かりもない形で捜索が開始された。

 

「なんか聞いてたのと話が違う・・・戦車道やってるとモテるんじゃ・・・」

 

沙織は自分が思っていた戦車道と違い落ち込んでいた。それを見た杏は沙織を元気にする為、明日カッコいい人

が来ると教える事にした。

 

「明日カッコいい教官が来るから」

「ほんとですか!?」

 

カッコいい教官が来ると知った沙織は、テンションが上がり目をキラキラとさせている。

 

「ほんと ほんと 明日紹介するから」

「じゃあ!行ってきまーす!」

 

沙織は杏に手を振ると、勢い良く飛び出して行った。

そして、セナとみほと沙織と華の4人は駐車場へやって来たのだが・・・沙織は見つからない戦車にイライラしていた。

 

「一体どこに戦車があるっていうのよー!!!」

 

戦車が1台も無かった。華は、戦車はここには無いだろうと考え沙織に言った。

 

「駐車場に戦車は止まってないかと・・・」

「だって一応は車じゃん!?こうなったら森林に行ってみよう!なんとかを隠すなら林の中って言うしね!」

「それを言うなら木を隠すなら森の中じゃ・・・」

 

みほとセナが沙織達の後に付いて行こうと歩き出すと先程から木の影で覗き込んでいた女の子が仲間になりたそうに付けてきていたので、それを見たセナは、みほに後ろの女の子も仲間に入れようと提案することにした。

 

「みほさん後ろの女の子ずっと付いてきてますよ?一緒に探そうと誘ってみてはいかがですか?」

 

みほは、「えっ!?」とした顔になったが、覚悟を決め女の子に話しかけることにした。

 

「あのっ!」

「はっ!はい!」

 

付けてきていたの子はびっくりして返事をする。そしてみほは、一緒に戦車を探す事を女の子に提案した。

 

「良かったら一緒に探さない?」

「いいんですか!?あっあの!私!普通2科!秋山優花里といいます!不束者ですが!よろしくお願いいたします!」

 

女の子は元気良く自己紹介をすると、続いてみほ達も自己紹介をする。

 

「こちらこそよろしくお願いいたします。五十鈴 華です。」

「武部沙織!」

「私は・・・」

 

みほが自己紹介をしようとすると、優花里に遮られた。

 

「存じ上げております!西住みほ殿ですよね!」

 

優花里は既にみほの事を知っていたようで、みほはそれに対し少し引きぎみで返事をした。

 

「はっ・・・はい」

 

そしてセナも自己紹介をしたのだが・・・

 

「私は二木 セナといいます♪」

「えぇ!もちろんセナ殿の事も存じ上げておりますよ!」

「えぇ。よろしくお願いしますっ♪」

 

セナは笑顔で挨拶をしたが、優花里の情報力にびっくりしていた。何故なら戦車道でのセナの事を知ってる人はごく一部だからだ。

 

「では!よろしくお願いいたします!」

 

山を捜索中に、セナと華がそれぞれ何かを察知する。

 

「なんか鉄が軋めく音が・・・」

「音?何も聞こえませんが・・・」

 

セナは鉄の軋めく音が聞こえると言っているが、優花里には何も聞こえなかった。

 

「花の香りに混じって鉄と油の匂いが」

 

華は花の香りに混じっている鉄と油の匂いをかぎ分けたらしい。

 

「匂い!?匂いでわかるんですか!?」

「花道やってるとそんなに敏感になるの!?ってさらっとセナちゃんも凄い事言ってるし!?」

 

優花里と沙織はセナの聴力と華の嗅覚に驚いていた。

 

「「私だけかも知れませんが」」

 

華とセナは口をハモらせながら言った。

 

「ではっ!パンツァーフォー!」

 

優花里がある掛け声を出す。

 

「パンツのアホ!?」

 

沙織は何の事かわからないらしい。

 

みほ「あははっ・・・パンツァーフォー、戦車前進って意味なの」

 

みほは少し笑いながら沙織に意味を教える。セナは、沙織の『パンツのアホー』が気に入ったようで、沙織の横で楽しそうにパンツのアホーを連呼していた。沙織は恥ずかしくてセナの口を無理やり塞いでいた。5人は森の中を突き進むと、華が斜面に放置されている戦車を見つけた。

 

「38t・・・」

「なんかさっきのより小さい」

 

沙織は最初に見た戦車より小さいと思ったらしい。セナは戦車に近付いて戦車に話しかける。セナは戦車は物だと思っておらず、同じ生き物として扱っているようだ。

 

「あなたでしたか・・・必死に私達を呼んでいたのは・・・」

 

すると優花里が目を輝かせながら、この戦車の事を解説する。

 

「38tと言えば、ロンメル将軍の第7装甲師団でも主力を勤め、初期のドイツ電撃戦を支えた、重要な戦車なんです!機動性も高くて!tっていうのは重さではなく!チェコスロバキア製って意味なんです!・・・はっ!」

 

優花里は我に帰ったが、沙織が驚いた顔をしていた。

 

「今イキイキしてたよ・・・」

「すみません・・・つい」

 

優花里は申し訳なさそうに謝るが、セナは少し微笑みながらそれを褒めた。

 

「謝る事はないですよ・・・戦車道をする上で戦車の事を知っているのは凄い武器ですよ?戦術の幅も広がります。少なくとも・・・私が敵でしたらもの凄く嫌な敵です。」

 

セナの評価に優花里はうれしかったらしく、笑顔でお礼を言った。

 

「あっ!ありがとうございます!」

 

セナは無線で桃に連絡をいれる。

 

《河嶋さん。森林にて戦車を1両発見しました。》

《ご苦労。戦車は自動車部に回収に行かせるので引き続き捜索を続行せよ》

《わかりました。》

 

そして次々に戦車は見つかり遂に5両戦車が揃い戦車倉庫に戻ってきた。今から戦車への振り分けが決められる。

 

「で会長どのように振り分けましょう?」

 

桃が聞くと、杏は両手を頭の後ろに組ながら言った。

 

「見つけた者が見つけた戦車に乗ればいいんじゃなーい?」

 

という訳で・・・

"Ⅳ号D型にはみほ セナ 沙織 華 優花里"

"M3リー中戦車は一年生チーム"

"38tには生徒会チーム"

"III号突撃砲 には歴女チーム"

"八九式中戦車にはバレー部チーム"

の振り分けになり、全員戦車の洗車にとりかかる。セナがⅣ号の洗車をしていると優花里が話しかけてきた。

 

「あっあの二木殿」

「呼びにくかったらセナでもいいですよ?」

「ではセナ殿。お尋ねしたい事が」

 

優花里は少し言いにくそうにセナに質問をした。

 

「なんでしょう?」

「あの・・・中学の時、あんな事があったのにまた戦車道をして後悔はないのですか?」

 

セナは中学時代の事を聞かれ少し暗い表情になった。

 

「やはり私の中学時代を知っていましたか・・・後悔はありませんよ?みほさんや沙織さん華さんそして優花里さんはそのような事をする方ではないとわかっていますから、それにしても驚きました・・・私の事を知っているのはほんの一握りの人達ですよ?」

 

セナは少し微笑みながら、素直に優花里の情報力を褒めた。

 

「私の情報網を舐めて貰っては困ります!あの一ミリも外さない砲撃!どんな戦車でも正確に操れる器用さ!走るコンピューターと呼ばれるのも頷けます!」

 

優花里はセナの2つ名も知っており、セナは自分の事を知っていてくれたのが嬉しく、笑顔で優花里に返答をした。

 

「知っていただけていたなんてうれしいです♪」

 

そして洗車が全車両完了し、放課後・・・優花里の提案でせんしゃ倶楽部に行くことになった。

 

「こんなところがあったんだ・・・」

 

セナが店内を見回ると、1つの展示物に目が止まった。

"西住流 師範 西住しほ "使用品と書かれていた。

 

「お母様・・・」

 

セナは昔の事を考えたくないのに考えてしまう。セナは心の中で捨てた母親に対し問いかける・・・何故自分を捨てたのか・・・何故一緒に暮らせないのか・・・"何故あなたの息子じゃ駄目なのか"色々と考えているうちに、セナは無意識に涙を流していた。

沙織は泣いてるセナを見つけると、一目散に駆け寄った。

 

「どうしたの!?セナちゃん!?」

 

沙織が心配そうに話しかけるがセナは悲しそうにしている。

 

「沙織さん・・・私・・・要らない子なのかな・・・私・・・うっ・・・ふぇぇっ」

 

セナは子供の様に泣き出してしまい、沙織の胸に泣きついた。

 

「えっ?えっ!?セナちゃん?」

 

沙織はセナの行動に戸惑ったが、セナをそのまま何も言わずに抱き締めた。

するとテレビにとある人物が映った・・・インタビューをされているようだ。

 

《次は、戦車道の話題です。高校生大会で昨年MVPに選ばれて、国際強化選手となった、西住まほ選手にインタビューに行っております》

 

そこにはインタビューされている黒森峰の隊長 西住まほが映っていた。

 

「お姉ちゃん!」

 

セナはみほの発言を聞いた途端泣き止み、テレビを見た。

 

(あれがもう一人のお姉様・・・)

 

セナは涙を浮かべながらテレビを見つめる。

 

《勝利の秘訣はなんですか?》

《諦めない事、そしてどんな時も逃げ出さない事ですね》

 

「お姉ちゃん・・・」

 

みほは姉の言葉を聞いて何故か少し落ち込んでいた。そして、アナウンサーが最後の質問に入った。

 

《では最後に質問です!もう一度対戦したい選手は誰ですか?》

《中学時代に勝てなかった・・・走るコンピューターと呼ばれていた選手です・・・名前はわかりませんが》

 

走るコンピューターというワードにみほと沙織は疑問符を浮かべていた。

 

「走るコンピューター?」

「誰だろう?」

 

セナの正体を知っている優花里は目をキラキラさせながらセナを見ている。セナは少し気まずそうな顔をした。

 

(確かに黒森峰と戦った記憶はありますがあの時戦ったどれかの戦車の中にまほお姉様が・・・)

 

次対戦するときはきちんと相手を覚えようと思ったセナだった。

 

翌日の朝・・・今日は本格的な戦車道の授業があるのでリアカーに必要になるであろう道具を乗せており、セナは今から登校したらギリギリの時間に到着するだろうと読んでいた。みほはセナの朝食を食べた後すぐに登校したようだ。

セナは工具台車などを積んでいるとても重いリアカーを引き通学路を歩いていると・・・前方にきつそうに歩く少女の姿が見えた。

 

「あっ・・・誰か居ますね。あのペースだと完全に遅刻する・・・」

 

少女が遅れると確信したセナは意を決して少女に話しかけることにした。

 

「大丈夫ですか?」

 

少女の顔は今にも倒れそうだ。

 

「いや・・・もう無理だ・・・」

 

と言い少女はその場にしゃがんでしまった。

 

「うーん・・・仕方ありませんね」

 

セナはしばらく何かを考えた後、自分より20cmほど大きい少女を軽々と持ち上げリアカーにクッションをひき寝かせ全速力でリアカーを牽き学校へ向かった。

 

*セナの身長 125cm

*少女の身長 145cm

 

「なんだ・・・何が起こった・・・」

 

少女は自分の身に何が起こったのか理解出来ていなかった。

 

「遅刻ギリギリじゃない!きやぁぁっ!」

 

セナは校門に誰か立っていた風紀委員を無視しとてつもない速さで横を突っ切り少女を玄関前へ降ろす。

 

「すまん助かった」

 

少女はセナにお礼を言う。

 

「いえいえ!遅刻しないようにすぐに教室に向かって下さいね?」

 

セナはニッコリスマイルで、一言言うと全速力で自動車部の整備工場前へと道具を置きに行った。それを見送った少女は顔を赤らめていた。

戦車倉庫前ではみほがいつまでたっても来ないセナを心配しキョロキョロしていた。

 

「セナさんが来ない・・・やっぱ戦車道嫌になったのかな・・・?」

 

みほは不安な表情を浮かべている。

 

「本当どこに行ったのよ!?」

 

沙織もセナが心配なようだ

 

セナは荷物を置き戦車倉庫の前へと急ぐと、集合しているみほ達の隣へと並ぶ。みほはセナを見ると安心したが、すぐにセナを叱った。

 

「どこに居たの!心配したんだよ!?」

「ちょっと自動車部に用事がありまして・・・」

「もう!みぽりんが一番心配してたんだからねっ!」

 

沙織も怒っていた。そして上空から戦闘機がやってきた。

 

「教官がお見えになったようだ」

 

セナはヘリコプターを見て、自衛隊のヘリコプターではないかと予想した。

 

(あれは自衛隊のヘリコプター・・・自衛隊・・・戦車道・・・まさか・・・あのまま戦車で着陸する気なんじゃ・・・)

 

セナの予想が的中し、飛行機から出てきた戦車はそのまま駐車場へと着陸し学園長のスーパーカーを蹴散らしそのままこちらへと走ってくる。

 

「あぁ!学園長の車が!」

 

そして戦車が目の前に来て中から女性が出て皆の前へと現れると、桃がこの人物の紹介を始めた。

 

「今日戦車道の教官をしてくださる陸上自衛隊戦車教導隊所属 蝶野亜美一尉だ」

「みんなよろしくね!ここに要る人達はほぼ初心者と聞いているけど頑張りましょうね!」

 

そして挨拶を済ませると蝶野はみほの存在に気付き駆け寄る。

 

「あなた!西住師範のお嬢さんじゃありません?師範にはお世話になりました。お姉様も元気!?」

 

突然話しかけられたみほは困ったような顔をしながら返事をした。

 

「はっはい・・・」

 

すると生徒達が口々に疑問を口に出し始めた。

 

「西住師範って?有名なの?」

 

すると蝶野が西住流について解説を始めた。

 

「西住流って言うのはね!古くからある由緒正しき流派なの!」

 

セナは西住流に対して良いイメージを持っておらず、顔をしかめる。セナはみほが暗い表情をしているのを見ると、みほを助けるため話題を反らす事にした。

 

「それは一先ず置いて、早く授業を始めましょう蝶野教官」

「そうね、うん?あっ・・・あなたは・・・」

 

蝶野はセナを見ると幽霊でも見たかのような顔をして驚いている

 

「はい?何か?」

 

セナは平然とした顔で返事をしたが、蝶野は信じられないというような顔をした。

 

「まさか二木・・・セナ・・・さん・・・なの?」

「確かに私は二木セナですが、どこかでお会いしましたか?」

 

蝶野はセナの前に行くとセナについて話し出した。

 

「走るコンピューター・・・二木ラウダの義理の・・・そして・・・西住師範の・・・」

 

セナは西住という名前が出た瞬間、嫌悪感を示した。

 

「やめてください・・・もうあの人は関係ないです・・・事情はなんであれあのオバサンは私を捨てました・・・二度とあの人の名前を私の前で出さないで下さい・・・」

 

セナは今にも泣き出しそうな表情になり、周りがみほではなく、今度はセナの事を疑問に思い始めた。

 

「セナさんって有名なのかな?」

「さぁ・・・」

「なんか泣きそうな顔をしてるよ?」

 

自分に精神的ダメージを負ったが、みほの話題を反らすというセナの思惑は成功した。

セナはうっすらと微笑みながら手をパンと叩き、蝶野に授業を始めるように促す。

 

「まぁそれも一先ず置いて、授業を始めましょう!蝶野教官?」

「えぇ・・・そうね・・・」

 

蝶野はセナの笑みに戸惑いながらも授業を始めることにした。

 

「教官!本日はどのような授業を行うのですか!」

 

優花里が蝶野へどのような授業をするか質問する

 

「そうね!本格的な練習試合をやってみましょう!」

 

蝶野の解答にみんなびっくりした。

 

「えぇ!いきなり!?」

「大丈夫よ!何事も実践よ!」

 

そしてみんな戦車倉庫の中へ移動する。

 

「あっセナさん!」

 

セナがみほ達と合流しようと歩き出そうとした時、蝶野がセナを呼び止めた。

 

「あなたはどの車両に乗るのかしら?」

「Ⅳ号ですが?」

「あなたがⅣ号に乗ってしまったら戦力が片寄りすぎるわね・・・」

「では別の戦車に」

「そうね・・・あなたの腕が落ちてないかも観てみたいし一年生チームに加わって貰えるかしら?」

「わかりました。」

 

セナはすぐにみほ達の元へ行きチームを移動する事になったことを伝える。

 

「チームを移動?」

「何で?」

 

セナは蝶野にチームを移動して欲しいと言われた事を話した。

 

「仕方ないですね・・。」

 

華は残念そうな顔をしながらも認めた。そして一番驚いたのはセナの実力を知っている優花里だった。

 

「セナ殿が敵ですか!?そんな!勝ち目が無くなりますよ!」

「戦力差が片寄りすぎるからだそうですよ?」

「大丈夫だって!こっちにはみぽりんが居るし!」

「いや武部殿・・・」

 

優花里が沙織にセナの事を話そうとしたら、セナがそれを遮った。

 

「という訳ですので、敵になるからには全力で迎え撃たせて頂きますので・・・悪しからず♪」

 

セナは微笑むと、一年生チームの元へ歩いていった。

 

「どうやって動かすんだろう・・・」

「詳しい友達に聞いてみようか?」

「いやググった方が早いかも」

 

一年生達は戦車の動かしかたがわからず苦戦しているようだが、セナは一先ず声を掛ける。

 

「私もこちらのチームへ加わる事になりましたのでよろしくお願いいたします。」

「あっセナさん。こちらこそお願いします。」

 

1人の一年生がセナに丁寧に挨拶をした後、セナは役割を決める事を提案する。

 

「皆さんの役割を決めましょう。」

「役割ですか?」

 

セナはそれぞれの役割について解説を始めた。

 

「車長、操縦手、砲手、装填手、通信手を決めます。大丈夫です。私のリードに身を任せて下さい。」

「わかりましたっ!でもどうやって決めるんですか?」

「車長は澤 梓さん・・・ 砲手 山郷 あゆみさんと大野あやさん・・・装填手 丸山 紗希さんと宇津木優季さん・・・ 操縦手 阪口 桂利奈さん ・・・」

「私操縦とかわからないんですけど・・・」

 

阪口桂利奈は、自信が無さそうにセナに言った。

 

「動かし方は私が教えますので安心してください。ある程度動かしたら私と交代して私の操縦を見て学んで下さい・・・って言っても私はそこまで大したレベルじゃありませんが・・・」

「セナさんって戦車道してたんですか?」

 

桂利奈がセナに戦車道の経験があるのかを質問する。

 

「中学生の時に少しだけ」

 

セナは微笑みながら返事をした。そして梓が自分の割り振られた役割にびっくりした声を出した。

 

「私が車長!?」

「車長とはチームの司令塔のようなものでチームをまとめる力が必要です。さっき話していた姿を見てあなたが最適だと判断しました。そして砲手と装填手ですがご覧の通りM3リーには主砲と副砲があります。主砲の砲手は山郷さん 装填手が宇津木さん・・・副砲の砲手は大野さん 装填手が丸山さん。これはさっき見た皆さんの相性で判断したものですので適当に決めたわけではありません。」

 

一年生はセナの冷静な分析と正確な采配に唖然としている。そしてセナは一年生に激励の言葉を送る事にした

 

「こんな言葉を知っていますか?《神様は私たちに、成功してほしいなんて思っていません。ただ、挑戦することを望んでいるだけ》」

「キリスト教の修道女の言葉ですね?」

 

桂利奈はこの言葉を知っているようだ。

 

「このやりとり懐かしい」

 

セナは中学時代にしたやりとりを思い出し、笑みをもらした。

 

「いっ・・・いきなりどうしたんですか?」

「戦車道を少ししていた時の私の車長がいつもこんな事を言ってたんですよ、つい私もやってみたくなってしまって」

 

宇津木と呼ばれる女の子は意味がわからないようで、うーんと唸っている。

 

「え~っと~」

「つまり重要なのはこの試合に勝つことではなく挑戦することが重要ということです」

「なるほどー」

 

納得した所で、セナが一年生達に気合いを入れた。

 

「では皆さん!楽しんでいきましょう!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

次回セナの実力が明らかに!




気円斬!


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第3話 走るコンピューターの実力

さてさて次のお話は?(ノ´∀`*)


セナ率いる、一年生チームはこれから相棒になるM3リーに乗り込む。

一年生チームの阪口桂利奈は、戦車の動かし方がわからず困っていた。

 

「えっとどうすれば・・・」

 

セナは、困っている桂利奈に、優しく教える。

 

「まずエンジンを始動させましょう。 右にあるボタンの中にIGNITIONと表示があるボタンを押します。」

「これかな?」

 

桂利奈がボタンを押すと、エンジンが動き出し、セナはエンジンの異常が無いか軽く点検をし、桂利奈に引き続き戦車の動かし方を教える。

 

「エンジン異常なし・・・次はブレーキを掛けながらクラッチを踏む」

「出来ました!」

「そしたら右にあるレバーを動かします。」

「うぅぅぅん!!硬い!」

 

桂利奈が、シフトレバーを動かそうとするが、びくともしない為、セナは桂利奈の手に自分の手を重ね、一緒にレバーを動かす。

 

「っ!///」

 

セナが手を重ねた瞬間、桂利奈の顔が真っ赤になったが、セナは気にせず教育を続ける。

 

「ではブレーキを離しクラッチを徐々に繋げながらアクセルを吹かしましょう」

 

桂利奈がクラッチペダルを徐々に戻し、アクセルをゆっくり踏むと、戦車がゆっくりと動き始めた。

 

「動いた!」

「ではこのままスタート地点へと向かいましょう。」

 

セナは桂利奈に操縦のいろはを色々と、教えていく。

すると大野あやが、セナに話しかけた。

 

「あのーセナさん」

「はい?」

「この試合勝てるんでしょうか?」

 

大野あやは、不安そうな顔している。セナは、この試合に、勝利する事の難しさを、一年生達に説明を始めた。

 

「みほさんが相手ですから簡単にはいかないでしょう。私の戦闘スタイルもチーム戦向けじゃありませんし」

 

セナは、自信が無さそうに自身の戦い方が今回不利になる可能性を話したが、車長の澤 梓は、セナの戦い方に興味津々なようで、セナにあるお願いをする事にした。

 

「セナさんの、戦い方見てみたい。」

「かなり地味ですよ?」

「具体的には?」

「じっくり隠れて獲物を待つ・・・言ってしまえばハイエナさん作戦という感じでしょうか?最後は恐らくみほさんチームとぶつかるでしょうからその時に見せて差し上げます」

 

セナは、少し微笑みながら、一年生達に自身の戦い方の説明を行った。

そして、梓はある疑問をセナに聞いてみる事にした。

 

「どうして最後西住先輩達に当たるとわかるんですか?」

 

その質問に対し、セナは真剣な顔で、説明をする。

 

「恐らく・・・みほさん達に勝つ為に、会長チームとバレー部チーム 歴女チームが手を組みます。相手は、西住流ですから、初心者チーム単独で戦いを挑むのは、裸で戦場に突っ込むようなものです。多分手を組む3チームは撃破されるでしょう・・・スタート地点に着きましたね?停車しましょう。」

 

スタート地点に着いたM3リーは停車する。

セナは魔法瓶を取り出し7つのティーカップに紅茶を入れ飲みながら試合開始を待つ。セナは6つのカップを一年生達に渡す。

 

「皆さんも紅茶を飲んでリラックスしましょう♪」

「はっ・・・はい?いただきます。」

 

一年生達は、戸惑いながらも、カップを受けとった。

 

「授業中に紅茶なんて飲んでもいいんですか?」

 

真面目そうな梓は授業中に、紅茶を飲むのに抵抗があるようだ。

 

「試合中に、飲み物を飲むチームもあったりしますから、問題ありません。緊張をほぐしてあげるのも、車長の役目です。」

 

セナは少し首を傾けながら、微笑んだ。

すると、蝶野の試合開始の、コールが聞こえてきた。

 

「みんな!スタート地点に着いたわね?ルールは簡単!戦車を撃破するだけ!戦車道は礼から始まり礼に終わる!みんな!礼!」

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

いよいよ、練習試合が始まる。

セナは、スタート直後戦車の横のハッチから、身を乗りだし周囲を確認する。

 

「スタートするのはしばらく待ちましょう」

 

セナの発言が、意外だったのか、車長の梓が不安そうな声をあげた。

 

「えっ!?敵が来るかも・・・」

「敵は、私達から離れてⅣ号に向かっており、バレー部チームと歴女チームがⅣ号と交戦中です。Ⅳ号は、最初生徒会チームを潰す予定だったみたいですが、予定が狂ったようです。」

 

セナが、何も見えない状況で、他チームの状況を説明した事に皆驚いていた。特に桂利奈は、目を点にしながら驚いていた。

 

「なんでわかるんですか!?」

「耳には自信がありますから、では、威嚇射撃をしてみます・・・私が砲撃のお手本を見せますので、皆さん静かにしてて下さいね?」

 

セナはまず3号突撃砲の位置を確認するため耳を澄ませる。

(敵の位置は、エンジン音と地面の振動と音の反響を考えても射程圏にいる。敵の位置と戦車の向きをを完全把握・・・風は追い風・・・地理を考えたら十分届く・・・角度を合わせて・・・発射!)

 

ドンッと凄い音を出し発射され、一年生はキャャャアと耳を抑えながら、悲鳴をあげている。

すると蝶野のコールが鳴った。

 

「有効!Cチーム行動不能!」

 

Ⅳ号車内では、見えない敵からの的確な射撃に軽くパニックになっていた。

どうしても、敵の正体を確認したいみほは、周囲を見回していた。

 

「敵の姿が見えない・・・一体どこから・・・」

 

もしやと、優花里がみほにある質問をした。

 

「西住殿!砲撃は上から来ましたか?」

「うん、上から来たよ」

 

優花里は考えた末、ある結論に辿り着く。

 

「セナ殿・・・」

「えっ!?セナさん!?」

 

みほは、セナが撃ったのではないかという、優花里の推測に驚いた顔をしていた。優花里は、続けてセナの過去の実績を話した。

 

「セナ殿から、あまり他言はしないようにと言われていましたが、セナ殿は中学生時代は戦車道をしており、一部の隊長格の人達から、走るコンピューターと呼ばれてました。その由来は、一ミリも外さない砲撃、ミリ単位で戦車を操れることからそう呼ばれていました。」

 

その説明を聞いた沙織は、大声を上げながら、驚いた。

 

「ヤバすぎじゃん!」

「お姉ちゃんが負けた相手・・・」

「もう1つ、恐れられている事があります。敵の姿が見えなくても、敵の位置を把握できるんです。」

 

みほは、セナが過去に耳が良いと言っていた事を思いだし、ハッとした顔をした。

 

「確か戦車を探しているとき、耳が良いって・・・まさか!」

「はい、セナ殿は遠くからでも地面の振動や音の大きさ、反響の仕方で敵の正確な位置と戦車の向きを把握できます。」

「じゃあ位置がわからないじゃん!?」

 

みほ達は、敵が見えない恐怖に襲われたが、みほは、

不思議とセナと真剣勝負がしてみたいと思った。

 

「戦おう!」

「みぽりん本気!?」

「うん・・・セナさんと本気で戦ってみたい。」

「では頑張りましょう!」

「その方がセナ殿も喜ばれます!ではパンツァー!フォー!」

 

高台から、セナの戦いぶりを、見ていた蝶野はセナに感心していた。

 

「あの距離から敵も見えないのに、さすがよセナさん、西住流も勿体ないことをしたわね、あんな素晴らしい才能を持った子供を捨てるなんてね。」

 

M3リー車内では、先程の遠距離砲撃が当たった為、騒然としていた。

 

「威嚇射撃のつもりでしたが、気が変わりましたので撃破しました。」

 

先程の砲撃を見た、一年生達は唖然としており、砲手である、あやは手を振りながら無理だと、セナに訴える。

 

「あんな芸当無理無理!」

「これが私の戦い方の1つです。地味でしょう?」

 

セナは、少し苦笑いをしながら、一年生達に言ったが、桂利奈は、セナに尊敬の眼差しを向けていた。

 

「そんなことないです!凄いです!」

「ありがとうございます。」

 

セナがニッコリと微笑むと、桂利奈は顔を真っ赤にしながら、うつ向いた。

 

「あうっ///」

「もしかして桂利奈・・・セナさんに惚れちゃった?」

 

それを見た、梓が桂利奈をからかう。

 

「ちっ!違う!///」

「では今度は皆さんにやってもらいます。私は少し休憩するのでわからないことがあれば聞いてください」

「「「「はいっ!」」」」

 

セナは端に座り休憩を取る。耳を澄ますと、かなりの集中力を持っていかれるので、この技は何回も使えない。

セナは5分程仮眠を取ることにした。セナが目を覚ますと、車内が大パニックになっていた。どうやら、Ⅳ号に戦いを挑もうとしたが、怖くなって逃げ出そうとしているようだ。

 

「西住流マジヤバいって!逃げよう!」

 

車長である、梓が逃げる事を提案し、桂利奈が逃げようとアクセルを踏むが、履帯がぬかるみにハマって、動けない。それを見たセナは、桂利奈と運転を変わる事にした。

 

「桂利奈さん、よく頑張りました。運転を変わりましょう?」

「セナさん!お願いします!」

 

セナは運転を変わると、まずぬかるみから脱出する為に、戦車を左右に傾けながらアクセルを踏んだ。すると、戦車はゆっくりとぬかるみを抜け始めた。ぬかるみを抜け木と木の間を抜けていく。

ちなみに横の隙間は 0.5mmほどしかない、桂利奈はセナの技術を素直に凄いと思った。

 

Ⅳ号車内では、M3の動きが変わった事に騒然としていた。みほは、M3の運転手の操縦技術に驚いていた。

 

「M3の動きが変わった!」

「なんか木と木の間をすり抜けてるよ!?」

 

途中でⅣ号の操縦手となった、冷泉麻子も少し目を見開いて、操縦技術に驚いている。

 

「戦車の車幅を考えても横の隙間は0.5mmしかない・・・」

「狙おうにもM3リーの動きが複雑過ぎて照準があわせられません!」

 

優花里の報告に、みほは少し苦い顔をした。

 

M3リー車内でも、セナがⅣ号の操縦手が変わった事を見抜いていた。

 

「Ⅳ号の操縦手が変わった・・・かなり賢い方のようですね・・・」

 

その言葉を聞いた、梓はセナに指示を求めた。

 

「作戦はどうしましょう?」

「主砲!副砲!装填!発射準備!」

 

セナは、迷わず主砲と副砲の砲撃準備を指示した。セナの指示に、主砲の砲手である、山郷あゆみはびっくりした。

 

「どうするんですか!?」

「そのまま真っ直ぐ狙いを定めて私が合図したら副砲、主砲の順で撃って下さい!」

「わかりました!」

 

2人の装填手が、装填完了をセナに報告する。

 

「装填完了~」

「こっちもー!」

 

砲手2人も準備が出来た事をセナに報告する。

 

「準備できました!いつでもOKです!」

「私も準備完了です!」

 

準備完了の報告を聞いた、セナはエンジンを全開にするとⅣ号へ向かい、Ⅳ号も応戦するために前進しM3リーに向かい合う形となり、2台とも射程圏へと入った。

そして両チームの砲撃指示が飛ぶ。

 

「「撃てっ!」」

 

Ⅳ号は止まったまま、砲弾を放ち、M3リーはアクセル全開で、走りながら撃った。

M3が撃った一発目の副砲は、Ⅳ号の放った弾にぶつかり相殺され、セナは主砲を撃つ際に数cmほど車体の向きを変えた。

その光景を見た優花里は、セナの華麗な戦車捌きに見惚れた。

 

「これが走るコンピューター・・・二木セナ。」

 

そして、Ⅳ号に弾が被弾すると同時に、M3リーのエンジンもエンジンブローを起こし、2台同時に白旗を挙げると、蝶野のコールが鳴った。

 

「Aチーム!Dチーム!両者行動不能!両者!引き分け!」

 

模擬戦が終わり、蝶野が今日の試合の感想を述べる。

 

「みんな初めてにしては良い動きをしてたわ!特にAチーム、Dチーム良かったわ!こんなハラハラした戦いは初めてよ!みんなこの調子で鍛練に励むように!以上!」

 

蝶野が感想を言い終わると、桃が号令をした。

 

「気を付け!礼!」

「「「ありがとうございました!」」」

 

その後セナは、みほ達に一緒に温泉に行こうと誘われたが、自分は性別を偽っている為、セナはその誘いを丁寧に断った。

 

温泉に浸かっているみほ達は、セナの戦いに感動していた。特に優花里は走るコンピューターの腕前を直で見れた事に、テンションが上がっていた。

 

「凄かったですね!セナ殿の動き!」

 

セナの動きが凄かったという、優花里の感想に、沙織と華は首を傾げた。

 

「動き・・・ですか?」

「セナちゃんも凄かったけど1年生達も凄かったね!」

「いや・・・ちが」

 

みほが沙織の発言を訂正しようとした時、麻子が割って訂正をした。

 

「あれは全てあの操縦手のおかげだ」

 

麻子の発言に、沙織は首を傾げる。

 

「どういうこと?」

 

みほは、沙織にセナが行った事を説明した。

 

「武部さん・・・砲塔の角度調整や発射タイミングも全部セナさんが1人でやってたの」

「でもセナちゃんは、操縦してたでしょ!?どうやって・・・それに砲塔は動いてなかったよ?」

「発射角度は、戦車をわざと急発進させ遠心力で戦車ごと砲塔を上に向かせ、左右の向きはハンドルだけで調整していた・・・」

 

麻子はジャグジーが気持ち良いのか、目を瞑りながら、沙織に説明をした。それを聞いた華も驚きを隠せない。

 

「えぇ!?そんなこと可能なんですか!?」

「普通は無理、セナさんだからこそ成せた技だよ。」

 

みほは、苦笑いを浮かべながら、華に言った。

 

「それだけじゃありませんっ!普通戦車は止まって砲塔の照準を合わせますっ!それをセナ殿は走りながら戦車の操縦だけで照準を合わせ!さらに砲弾の発射タイミングすらも少しのズレもなく合わせてましたっ!セナ殿は発射角度!発射タイミング!それを走りながら頭の中で計算していたんですよっ!まさか走るコンピューターの技を敵目線で拝めたなんてっ!」

 

優花里はかなり興奮気味にセナについて解説するが、沙織には、1つ気になる事があった。

 

「でもどうしてそんな凄いのに中学の時は有名にならなかったんだろ・・・」

「それは沙織が答えを出している・・・」

「えっ!?私!?」

 

麻子が返した返答に沙織は驚いた。それはそうだ、麻子は沙織自身が答えを言ったというのだから。

麻子は沙織に、説明をする。

 

「沙織が最初に言った・・・『1年生も凄かったね』と・・・つまり、沙織はその操縦手が行っていたことを1年がやったと錯覚していた・・・戦車道を長く経験している者は、戦車の微々たる動きに気付けるが、初心者や経験が浅い奴は沙織の様に全く気付けない・・・」

 

麻子の冷静な分析力と、操縦技術を見たみほは、麻子に戦車道を勧める事にした。

 

「ねぇ冷泉さん・・・冷泉さんも戦車道始めない?」

「そうだな・・・遅刻のし過ぎで単位が不味いしな・・・やるか・・・あの操縦手のロリ娘も気になる・・・」

「えっ!?あの麻子がすんなり入ることを了承するなんて・・・」

 

沙織は麻子が戦車道にすんなり入ったことに驚いているようだ・・・

 

次の日、IV号チームの五人は、他チームの、変わり果てた戦車の外観を見て驚愕した。ピンクに金とそして金赤色・・・そして一台にはバレー部復活の文字があった。

 

「むむっ・・・私達も色を塗り替えれば良かったー!!」

「38tが!三突が!なんか別の物にぃぃぃ!あんまりですよねっ!?」

「フフフッ」

 

改造された戦車を見たみほは、ふふっと笑った。

 

「西住殿?」

「戦車をこんな風にしちゃったのは驚いたけど・・・戦車がこんなに楽しいと思ったのは初めて。」

 

そして麻子はとある事に気付いた。

 

「あのロリは何処へ行ったんだ?」

「「「「あっ」」」」

 

皆は、セナが居ない事に気付いていなかった。

一方生徒会は、何やらコソコソしている。

 

「いいねぇ・・・この勢いでヤッちゃおっか」

 

生徒会長の杏はニヤニヤしてなにか企んでいるようだ。

 

「はっ!電話して参ります。」

 

桃は杏の考えに気付き、直ぐに電話をしに向かった。

 

「えぇっ!?何するんですかぁ!?

 

生徒会室では、ある場所に電話をしていた。

 

《大洗戦車道復活されたのですね?おめでとうございます。練習試合?えぇ喜んでお引き受け致しますわ・・・

引き受けたからには全力で行かせていただきますので》

 

そしてセナはというと、自動車部に用事があり、自動車部に行っていた。

自動車部の1人である、ツチヤに空いているスペースを貸してくれとお願いをしている。

 

「工場の空いているスペースを貸してほしい?」

「はい、実は・・・」

「あれ~?セナだ~」

 

セナが声をした方向を見ると、懐かしい顔があった。昔セナが自動車レースをしていた時、チームメイトだったナカジマだった。

 

「あっ!?ナカジマさん!?まさかこんな所でまたお会い出来るなんて!」

「久しぶり~元気だった~?」

 

2人が固い握手を交わし終わった後、ツチヤはナカジマにセナとの関係を聞いた。

 

「知り合い?」

「うん。昔チーム・ロータスでチームメイトだったんだよ~」

「ナカジマの元チームメイトなら安心だね!いいよっ!使って!」

「セナ~また何かする気だね~セナが行動起こすときは決まって何かする時だから」

 

ナカジマは少しにやけながら、セナの方を見た。セナは、すぐにとある会社に連絡をする。

 

《もしもし二木セナです。すぐに例の戦車の新品のエンジンとフレーム 足回りの部品の発送をお願いします。お金は口座に振り込んでおきますので・・・はい・・・ではまた良い取引を》

 

戦車の新品の部品を寄越せと言ったセナに、ナカジマとツチヤの2人は驚いた。

 

「「はぁ!?全部新品の部品!?」」

「後はお楽しみにっ」

 

セナは、2人にウィンクして、自動車部を後にした。

セナが車庫へ到着した時、みほ達が何かを捜索していた。

 

「もぉー!何処へ行ったのよー!」

「やはり見た目が小さいので誘拐されたのでは・・・」

「そんな・・・セナ殿」

「セナさん何処へ行ったんだろう・・・」

 

皆がセナを探していると、本人が帰ってきた。

 

「あの・・・どうかなさったんですか?」

 

いきなり話しかけられたみほが、後ろを振り向くと、そこにはキョトンと顔をしたセナがいた。みほはセナを見ると、安心のあまりセナに泣きながら抱きついた。

 

「!?・・・ふぇぇぇん!良かった!良かったよぉぉ・・・」

「・・・心配を掛けてすみませんでした・・・みほさん・・・」

 

泣いているみほを見たセナは、みほの頭を優しく撫でた。みほの泣き声を聞いた沙織もやってきた。

 

「居たぁぁぁあ!もう!無断遅刻なんて!麻子じゃないんだからっ!」

「沙織・・・うるさい」

 

セナは麻子を見ると昨日リアカーに乗せた少女だとわかった。

 

「あっ!昨日の!」

「やはり昨日私を拾ってくれた人か」

「知り合い?」

「あぁちょっとな・・・」

 

すると、優花里も華も慌てた様子でやって来た。

 

「セナ殿!ご無事でしたか!」

「セナさん!探しましたよ!」

 

すると、セナを見かけた杏が、こちらへやって来た。

 

「セナちゃんかぁ~用事は終わったー?」

「はい。無事終わりました。」

 

杏が、セナが来ていなかった事情を知っていた事にみんなは驚いた。

 

「え?会長知ってたんですか?」

 

みほは目に涙を浮かべながら、杏を見た。

 

「うん。朝私に連絡があったからねー。」

「知ってたんならなんで教えてくれなかったんですかー!?」

「まぁまぁ、過ぎた事は気にしない気にしない。で・・・どう?セナちゃん!この戦車達」

 

杏は変わり果てた戦車を指差し、セナに感想を求めた。

 

「まぁ・・・とても個性的な戦車ですね」

 

セナは満面の笑みでそう答えた。

 

「うん!うん!セナちゃんならそう言ってくれると思ってたよー!よし!揃った所で練習始めよー!」

 

セナは、指導のため1年生が乗るM3リーへと乗り込む。

セナは、本来であればⅣ号に乗る筈だったのだが、操縦手は麻子がすることになり、セナの枠は無くなってしまったのだ。セナは、桃の怒号が聴こえたが無視して1年生に丁寧に射撃の仕方、操縦の仕方、車長の役目などを的確に指導した。

 

「あまり前へ出るな!遮蔽物を使って!身を隠せ!」

 

セナは、桃の指導方法にため息がでた。

 

「あのような怒号は意味がない・・・体力の無駄です・・・言ってる事は正しいですが・・・それは車体色が正常の場合の隠れ方です・・・あのような指導の仕方ならお家に帰ってお布団で寝た方がいいです・・・」

 

セナが、桃の指導を見ていると、桂利奈とあゆみがセナを呼ぶ。

 

「セナさーん!この道なんですけどー!」

「スコープのメモリの見方がー!」

「はい!は~い!すぐ行きます!」

 

この日、セナは大忙しだった。

そして、練習後に重大発表があった。

 

「今日の練習ご苦労だった。突然ではあるが今どの日曜日練習試合を行うことになった!相手は聖グロリアーナ女学院だ!」

 

この発表に皆騒然としていた。

それはそうだ、いきなり練習試合をすると言われた挙げ句、対戦相手が強豪校の1つ聖グロリアーナ女学院だというのだから当然だろう。

 

(聖グロリアーナ・・・懐かしい響きですね・・・ペコちゃんとダージリン様・・・お元気でしょうか・・・あの小屋に監禁されて衰弱していた時あのお二方が私を探しだし助けてくださった・・・そして戦車道をしていた時の最高に信頼できたチームメイト・・・)

 

セナは、昔いじめで小屋に監禁されていた事があり、助けて貰った2人にかなりの信頼を寄せていた。

そして対聖グロリアーナ戦に向け、作戦会議が開かれた。

 

「まず一台が囮になり!敵をキルゾーンに誘い込む!そして高低差を利用し!皆で敵を叩く!どうだ!」

 

セナとみほ以外が賛成意見のようだが、みほが何かを言う前にセナが挙手した。

 

「なんだ?」

 

セナは少し怒り気味で、桃に異議を唱えた。

 

「やめましょう!危険過ぎる!」

「隊長は私だ!隊長の私に逆らうのか?」

 

セナが逆らった事が気に入らないのか桃は、セナを睨み付けた。

 

「こんな言葉を知っていますか?"私は何事も最悪の事態を想定して行動する"」

「知らんっ!そんな言葉!」

「この作戦は、最悪の事態を想定しておりません・・・さらに言わせて頂ければ、この様な単純な作戦が一昨年の全国準優勝校に通用すると本気でお思いですか?しかも私達は、戦車道を始めたばかりの方々の集まり、そうスムーズに作戦が進むとは思えませんし・・・今の私達が敵に真っ向から勝負を挑んでも、逆に真っ向から返り討ちにされてしまうだけです。私なら・」

 

セナが作戦の問題点を指摘していると、痺れを切らした桃がセナを怒鳴った。

 

「えぇい!うるさいっ!貴様はレギュラーにはしない!補欠だ!戦車道をしてたかなんだか知らないが、西住と比べれば貴様の動きなど平凡だ!そんな奴が1人居なくなった所で我がチームの戦力は変わらんっ!」

 

その発言を聞いたみほは怒りが込み上げてきた。セナは作戦の問題点を指摘しただけなのに、出て行けと言うのはあまりにも横暴すぎる。

みほは、たまらず抗議をする。

 

「そんなっ!横暴すぎますっ!」

「うるさいっ!二木!早く出ていけ!今すぐだ!」

 

そのやりとりを見た杏はさすがにやりすぎだと思った為、桃に注意をした。

 

「桃ちゃん!さすがにやり過ぎ!」

「会長!ですが!」

 

雰囲気が悪くなったのに責任を感じたセナは出ていく事にした。

 

「わかりました。出て行きます・・・」

 

セナが会議室から出ていこうとした時セナが何かを思い出したように喋りだした。

 

「あぁ!それともう1つ!」

「まだ何かあるのかっ!」

「さっきの作戦に対して真面目に答えましょう。Fack you!!コメントは以上です。」

 

そう言った後、少し微笑んでセナは出ていった。セナは笑っていたものの、みほにはセナが少し泣いている様に見えた。

セナが桃に反論した理由は2つあった。1つは作戦が無茶苦茶だった事、そしてもう1つは姉であるみほがこうなる事を防ぐ為だった・・・みほが先に発言していればみほが出ていけと言われショックのあまりまた戦車道を嫌いになっていた可能性があった為だ。

やっとの思いで姉が見つけた居場所・・・そこから立ち退かせるのはあまりにも残酷過ぎる・・・その様な想いがあったからこそ少し乱暴な発言になってしまった。

セナ自信自分の心がこれ以上傷つかないほどボロボロな事に気付いていない・・・。セナが知らない内に、セナの心は助けて!と悲鳴を上げていた。

その後の作戦会議でみほが異を唱えみほの案が採用され、みほが隊長となり桃が副隊長となった。

 

そして迎えた日曜日、朝が苦手な麻子を沙織が起こしに行き・・・戦車の砲撃で麻子の目を覚まさせ戦車で会場へと出発した。

 

聖グロリアーナでは、少し騒ぎになっており、オレンジペコと呼ばれる女の子が、隊長のダージリンの元へ走って駆け寄ってきた。

 

「ダッ!ダージリン様ー!たっ!大変ですー!!」

「ペコ・・・そんなに取り乱してどうしたの?」

「大洗側の出場選手のリストなんですが!」

「それが、どうしたの?」

 

ダージリンがリストに、目を通した時、懐かしい名前がそこにあった。二木セナ・・・と

 

「セナ・・・そう・・・まだ戦車道を続けていたの・・・」

「確かにそれも驚きですが!名前の横を見て下さいっ!」

「横?」

 

ダージリンがセナの名前の横を見ると、補欠と書かれていた。それを見た瞬間、ダージリンは怒りが込み上げてきた。それはそうだろう、昔チームメイトで、セナの腕はダージリンも認めているのだから。

 

「なんですって?補欠・・・?あの娘が補欠?あの娘の実力ならどのポジションも出来る筈・・・全く・・・愚かですわね。」

 

周りにいたグロリアーナの生徒達はダージリンの雰囲気が変わった事に気付き気まずそうにしている。

 

「ペコ・・・今すぐ大洗の元へ行きますわよ」

「はい・・・ダージリン様・・・参りましょう・・・」

 

2人は、凄まじい怒りのオーラを放ち、セナの元へと向かった。

 

大洗側では、元気のない表情のセナを見て、みほと優花里を心配していた。

 

「セナさん・・・」

「セナ殿・・・」

 

セナは、愛想笑いを浮かべる。実はセナは会場に来てからあまりしゃべっていない。

セナがただならぬオーラを感じ、前をよく見ると、遠くからセナが一番見覚えのある2人が歩いてきた。

 

「ペコちゃん・・・ダージリン様・・・?何故?」

 

ダージリンとオレンジペコは、セナとの再会を喜びたかったがまずやることがあった為、杏達が居る方へ向かった。

 

「あれ?どっしたのー?」

「私はダージリンと言いますわ・・・あなたは?」

「大洗の生徒会長 角田杏だよー。」

「少しお願いがありまして・・・」

「なに?」

「そこにいる・・・補欠の二木セナさんを我が聖グロリアーナ女学院に返して頂けないかと思いましてね。」

 

ダージリンの発言に皆驚愕した。セナが聖グロリアーナ出身だなんて知らなかったからだ。

 

「えぇ!?返すって?」

「セナさんって元々聖グロリアーナの人だったの!?」

「そんな!」

 

特にみほは何で!?と言うような顔をしていた。

 

「我が聖グロリアーナ女学院は二木セナさんの補欠に対し不服を申し立てます。」

「ちょっと返すのは無理かなー」

「私は構いません」

 

その桃の発言を聞いたグロリアーナの2人は、誰がセナを補欠にしたのか見当がついた。

 

「成る程・・・大体事情は読めましたわ。」

 

オレンジペコは怒り剥き出しで無言のままだ

 

「会長さん?少しよろしいですか?」

「何ー?」

 

ダージリンと杏はコソコソ話をしている。ダージリンには、何か狙いがあるようだ。2人がコソコソ話しているのを見たセナは、何か良からぬ事が起こるのではないかと不安が募ってきた。セナの不安な表情を見たオレンジペコは、セナに安心するように言った。

 

「大丈夫です。私達はあなたを助けるためにここに来ました。ダージリン様も"キャンディ"あなたを悲しませるような事は考えていない筈です。」

 

キャンディとは、聖グロリアーナに居たときの名前である。そして、2人の会話が終わったらしい。

 

「では彼女を今回限りこちら側に引き入れさせていただきます。よろしいですわね?」

「そういう事ならOKー」

 

聖グロリアーナ側にセナが付くと知った、みほと優花里は愕然とした。

 

「そんなー!またセナ殿が敵ですかー!」

「またセナさんが相手・・・」

「ではまた後ほど・・・行きますわよ。オレンジペコ・・・キャンディ」

「はい。」

 

そしてセナも、ダージリンとオレンジペコの後に続く。

セナがみほの横を通ろうとした時、みほに呼び止められた。みほは、不安だった。このままセナが戻って来ないのではないかと。

 

「セナさん!」

 

みほの不安な表情を見たセナは、みほを安心させるように、クスッと笑いながら言葉を掛けた。

 

「大丈夫・・・また戻ってきますから。試合で、戦うのをとても楽しみにしてます。」

 

みほはその言葉を聞いて明るくなる。自分のところを離れる訳では無いという事を知れたから。そして、セナは去り際にみほにウィンクして行った。

 

ウィンクされたみほは、少し顔を赤らめた。

 




リキッドォォォオ!スネェェェク!


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第4話 走るコンピューター完全復活への第一歩

聖グロリアーナの隊長ダージリンにより一時的に古巣グロリアーナ側に入れられたセナ。

セナを一時的に入れたダージリンの思惑とは!?


試合前、テレビ中継が全国に配信され、大洗の住民達は大盛り上がりだった。

「おぉ!始まったぞー!!」

 

大洗側では、試合前に作戦の最終確認が行われており、優花里のテンションはかなり上がっていた。

 

「いよいよ始まりましたねぇー!」

 

みほはそれに対して頷く。

 

「それでどうしたら良かったんでしたっけ~?」

 

1年生の1人がルールと始まってからの動きを尋ねると、みほは全員に真剣な顔で、ルールと次にする事の説明を行う。

 

「さきほど説明した通り、今回は殲滅戦ルールが適用されますので、どちらかが全滅したら負けになります。まず我々Aチームが偵察に向かいますので、他のチームは100mほど進んだ所で待機していてください。」

 

みほがそう告げると、全員元気良く返事をした。

 

「わかりましたっ!」

 

一方セナが加わった聖グロリアーナ側では、ダージリンとオレンジペコとセナが戦車から身を乗り出し周囲を観察していた。

ダージリンは紅茶を飲みながら余裕の笑みだ。そして、観察が終わると、3人とも戦車の中に入りダージリンが前進の合図を出した。

 

「全車前進・・・」

 

するとチャーチルを先頭にマチルダ4両が綺麗な隊列を組み前進を始め、大洗側では、みほと優花里が崖の上から、聖グロリアーナの動きを観察していた。みほが望遠鏡で敵戦車の数と動きを優花里に報告する。

 

「マチルダⅡ4両 チャーチル1両前進中」

「さすが綺麗な隊列を組んでますねー」

 

優花里の感想に対し、みほは頷く。

 

「あれだけ速度を合わせて隊列を乱さないなんて凄い」

「こちらの徹甲弾だと正面装甲は抜けません。」

 

優花里がみほに不安そうな顔を見せる。

 

「そこは戦術と腕かな?」

 

みほは、少し笑いながら、優花里に正面装甲を突破するコツを教える。

しばらく観察していると、チャーチルから見覚えのある顔がピョコッと出てきた。みほと優花里は、「あっ!?」っと驚くと、互いに顔を見合せる。そう、試合前に聖グロリアーナに引き抜かれたセナの顔が出ており、セナはみほと優花里が居るのを確認すると、満面の笑みで、大きく手を振った。

それを見た優花里は、セナの敵の察知能力に再び驚いた。

 

「あの距離から、我々を見つけるとは・・・流石セナ殿・・・侮れませんね。」

 

優香里の発言に対し、みほも真剣な顔で、「うん」と頷き、2人は自分の戦車に戻ることにした。

 

「麻子さん起きて。エンジン音が響かないよう注意しつつ旋回して下さい。」

 

みほは、麻子を揺すって起こすと、麻子はまだ眠そうな顔で起き上がり、戦車をゆっくりと旋回させる。すると麻子が、生徒会がセナを聖グロリアーナ側に渡した事に対しての愚痴を溢していた。

 

「まったく・・・厄介な奴を敵に回してくれたな・・・」

 

沙織は、麻子がセナを脅威にか感じているのに驚いた。

 

「麻子にそこまで言わせるセナちゃんも凄いね」

「当たり前だ・・・私とあまり変わらない頭脳の持ち主で、増してや戦車道はプロ級で、加えて遠くからでも敵の位置を探れる・・・こんな奴を厄介じゃないと言えるもんか。」

「「「「えぇー!?」」」」

 

麻子のセナに対する評価に一同は驚愕し、麻子はうるさそうに耳を塞ぐ。

 

「うるさい・・・」

「ちょっと麻子!それどういう事!?」

 

沙織は驚いた顔をしながら、麻子を見た。

 

「詳しい話は試合の後でするが、練習試合の時に見せた判断力と計算能力がとんでもなかったから、少し学年の成績を調べた・・・そしたら私と同じ学年一位の成績だった。」

「これぞ完璧人間・・・」

 

沙織は、唖然としながら感想を述べたが、麻子は首を振りながら、沙織の発言を否定した。

 

「本人が聞いたらこう言うだろう・・・《私は完璧なんかじゃありません。沢山の欠陥を抱えた不良品です。》とな」

 

麻子がそう言うと、みほは麻子の発言に対し、苦笑いをしながら相槌を打った。

 

「確かに言いそう・・・」

 

みほ達が、セナの話をしていると、岩場の影から、チャーチルを先頭に聖グロリアーナの戦車5両が接近しているのが見えた。みほは、敵の位置を確認すると直ぐに攻撃準備の指示を出した。

 

「敵前方より接近中!砲撃用意!」

 

砲撃用意の指示が来ると、装填手である優花里が装填を行い、完了の合図を送る。

 

「装填完了!」

 

装填完了の合図を確認した華が、チャーチルに狙いを定めようとするが、戦車の車幅が把握できておらず、標準を合わせるのに戸惑っていた。

それを見たみほは、車幅とメモリを指示し、砲撃の合図を送った。

 

「撃てっ!」

 

みほが合図を送ると、砲弾は勢い良く飛び出し、チャーチル目掛けて発射され、チャーチルの近くで爆発したのを確認すると、急いでUターンして逃げる。

 

チャーチルの車内では物凄い振動と、爆撃音が響きオレンジペコとダージリンが冷静に敵が攻撃してきた事を察知した。

 

「仕掛けてきましたわね」

「こちらもお相手しましょうか・・・」

 

攻撃されたのを確認したダージリンは、逃げるⅣ号に攻撃を開始することにした。

 

「全車両・・・前方Ⅳ号に砲撃開始。」

 

ダージリンが紅茶を飲みながら、砲撃指示を出していると、チャーチルの通信手であるセナが、ダージリンの袖をちょこちょこと引っ張る。

 

「あら?何かしら?」

 

ダージリンが少し微笑みながら尋ねるとセナは真面目な顔でダージリンにあるお願いをした。

 

「ダージリン様・・・敵の位置と、風向きを把握したいので、私を戦車のハッチの外に出させてください!」

 

ダージリンは、セナのハッチの外に出してくれ、という願いに、少し考える素振りを見せ、少し心配そうな顔でセナを見つめる。

 

「いいわ・・・ハッチの外に出る許可をします。」

 

ダージリンから渋々許可が下りると、セナはチャーチルのハッチからから身を乗り出した。

 

一方Ⅳ号では、チャーチルとマチルダの砲撃を避けながら、皆が待つ岩場へと向かっていた。当初、桃が提案した高低差を利用して敵を叩く作戦を行うようだ。

みほは、ハッチから身を乗り出したまま麻子に指示を送っている。

 

「なるべくジグザグに走行してください!こっちは

装甲が薄いからまともに喰らったら終わりです!」

「了解」

 

Ⅳ号はジグザグに走行しながらグロリアーナからの砲撃を避け続けた。

 

チャーチル車内では、Ⅳ号の予想以上の動きの良さにダージリンは少し驚いていた。

 

「思ったよりやるわね・・・速度を上げて追うわよ!どんな走りをしようとも一滴たりとも紅茶を溢したりしないわ・・・」

 

ダージリンの闘志に火が着き、聖グロリアーナ側の砲撃が激しくなった。

一方セナはハッチの上でしゃがみつつ、持ち前の耳の良さで、周囲状況を探っていた。

 

「うーん・・・やはりみほお姉様はさすがですね・・・もうチームをまとめあげましたか・・・」

 

セナはみほのリーダーシップと、冷静な判断に少し舌を巻いていた。

 

「今日は風が強い・・・地形・・・岩質・・・完全把握・・・チャーチルとマチルダの戦車の状態も良好・・・前方に4両待機・・・まさか、本当に桃さんの無茶な作戦を実行するんでしょうか?」

 

セナは、みほが無茶な作戦を了承した事に驚きつつも、微笑みながら前方のⅣ号を見つめた。

 

Ⅳ号では、被弾しそうになり、みほが若干屈む。

 

「ふぅ・・・」

 

みほがホッとしていると、みほに弾が当たるのを心配して沙織がみほに注意した。

 

「みぽりん危ないって!」

「大丈夫。戦車の車内はカーボンでコーティングされてるから大丈夫だよ。」

 

みほは、戦車の車内はカーボンで覆われている為、安全だと言うが、沙織が心配していたのはそこでは無かった。

 

「そうじゃなくて!そんなに身を乗り出してみぽりんに何かあったら・・・もっと中に入って!」

「心配してくれてあり・・・」

 

みほが沙織にお礼を言おうとした時、チャーチルのハッチ上にしゃがんでいるセナを見て驚愕した。みほの表情を見た沙織はみほにどうしたのかと尋ねる。

 

「みぽりんどうしたの?」

 

みほは、チャーチルの方を指差し、不安そうな表情で叫んだ。

 

「私より、セナさんの方が危ないよっ!!」

 

沙織も、みほが指差すチャーチルのハッチの上にしゃがんでいるセナを見て驚愕する。

 

「えぇーっ!ヤバいって!セナちゃんも中に入って!!」

 

みほと沙織の不安そうな叫びを聞いたセナは、大丈夫と言うように、ニッコリ笑顔で2人に手を振ったのだが・・・

 

「「違う!!笑顔は、可愛いけど・・・危ないから中に入ってー!」」

 

2人の叫びがセナに伝わったようで、セナはチャーチルの中に入った途端、誰かに頭をペシッと叩かれた。

 

「痛いっ」

 

セナが上を見上げると、怒った顔のオレンジペコが居た。

 

「毎回危険な事をして!大洗の人にまで心配かけてどうするんですか!」

 

「ごめんなさい・・・」

 

セナが、両手で頭を押さえながらオレンジペコに謝った、

 

「で・・・何かわかったのかしら?」

 

ダージリンが、セナに成果を聞くとセナは真面目な顔で、前方の状況を伝える。

 

「はい・・・前方に4両敵戦車が待機中・・・恐らくⅣ号を囮にして我々を誘き寄せ、一気に叩く作戦のようです。この先は高低差がある場所なので高いところから一斉に我々を狙うつもりなのでしょう。ただ、この作戦は駄目元でやっている可能性が高いです。」

 

セナの発言にダージリンは少し神妙な顔になり、セナに質問をした。

 

「その作戦は駄目元だと、どうして思いますの?」

 

セナは表情を変えずにダージリンに説明をする。

 

「先程言った作戦は、当初の作戦会議で元隊長が、立てられたものです。その作戦には、私と今Ⅳ号に乗っている、隊長である西住みほさんも反対していました。あの西住流の方です。この作戦で我々に勝てるとは思っていない筈です。」

「つまり・・・別に作戦があると?」

「その可能性は十分にあります。しかし、それを確かめる為には敵陣に突っ込む必要がありますが。」

 

セナは少し胸を張りえっへんというような表情をした。

セナの予測にオレンジペコも驚いた。

 

「さすがですね・・・作戦を知っていたとはいえ・・・ちょっと外に出るだけでそんな事まで・・・」

 

すると、砲撃手であるアッサムと呼ばれる金髪の少女がセナが戦力外になった事を話題に出した。

 

「しかしキャンディも災難でしたね・・・まさか戦力外通告を受けているとは思いませんでした。」

 

アッサムの言葉にセナは、手を横に広げやれやれというようなジェスチャーをする。

 

「私もビックリです。作戦の欠点を指摘しただけで補欠だー!出ていけー!なんて言われるとは思いませんでしたよ・・・」

 

ダージリンは、大洗側へと近付いてきたのを確認すると、砲撃開始の合図を送る。

 

「撃てっ!」

 

グロリアーナ側から大洗側に砲撃を開始すると、一年生チームのM3リーはあまりの恐怖に逃げ出し、爆発により、38tは履帯が外れる。

これは、まずいと思ったのか、Ⅳ号を先頭に三突と八九式がⅣ号に着いていく形で、市街地の方へと向かった。

 

「逃げ出したの!?追うわよ!」

 

逃げる姿を見て焦ったのか、ダージリンがすぐに追うように指示を出したが、セナがそれを制止し、罠の可能性があることを警告する。

 

「待ってください!これは罠です。この先は市街地!死角が多いところに誘き寄せて、隠れて狙い撃ちするつもりでしょう・・・ここは1つ私に作戦を提案させて頂けますか?」

 

セナがとんでもない事を言い出した。なんと作戦を提案させてくれというのだ。その発言に対しダージリンとオレンジペコとアッサムの3人は「昔から変わらないわね」と少し笑いながらセナを見つめた。

そしてダージリンは、作戦の提案を許可すると共に、とんでもないことを言い出した。

 

「許可しますわ。そして一時的に"指揮権"も貴方に与えます。」

 

なんとダージリンは、セナに指揮権を一時的に譲渡するというのだ。そしてチャーチルとマチルダは、市街地へと到着した。ダージリンが周囲を見渡す。

 

「消えた?」

 

ダージリンの発言に、セナは首を振った。

 

「恐らく、死角に隠れたのでしょう・・・アッサムさん!砲撃変わって貰えますか?皆さん!耳を澄ませて、外に意識を集中させるので!倒れた後をお願いします!」

 

セナの言葉にダージリンとオレンジペコ、アッサムの3人は微笑みながら、「わかりました」と口を揃えて言った。

セナはアッサムと砲撃手を変わると、集中力を高めエンジン音を頼りに2km位先に居る敵戦車の位置を探った。すると2両の敵戦車を発見した。

 

「駐車場に一台八九式・・・こちらは放っておいても大丈夫でしょう。火力不足でこちら側のマチルダすら、撃ち抜けないでしょうから、路地裏に三突・・・三突からいきましょうか・・・風向き 、風量は把握。Ⅳ号の位置は確認出来ず。」

 

セナは、Ⅳ号の位置はわからなかったが、ダージリンにマチルダを1両、立体駐車場に潜んで待ち伏せているであろう98式の元へ向かわせるように指示した後、セナは風向きが追い風になったのを確認し、狙いを定め空に向けて砲撃を開始した。すると砲弾は、綺麗な弧を描き三突に吸い込まれるようにして三突に命中し、八九式はマチルダの装甲を貫けず、撃破された。

セナの人間離れした業を見た、オレンジペコとアッサムは唖然とする。

 

「さっ・・・さすがです・・・」

「相変わらず無茶苦茶な能力ですね・・・」

 

1両撃破したのを確認したダージリンは紅茶を呑みながら、少し笑った。

 

「これで2両撃破・・・」

 

セナは、先程居た場所から、履帯を修理して追ってきてい38tの存在を確認すると、ダージリンにマチルダを1両山岳方面に向かわせるように指示を出す。

 

「あと履帯が外れた38tも修理して追ってきます。一台のマチルダをそちらに向かわせてください。」

「わかったわ。Bチーム最初に交戦した場所へ向かいなさい。そこから1両戦車がこちらに向かっています。」

 

Bチームは、ダージリンから指示を受けると、先程の山岳地帯へと向かった。セナは、Ⅳ号の位置を確かめようとハッチから顔出し、周囲を見渡している。

 

「後はⅣ号がどこに居るかです・・・」

 

ダージリンは、セナがこちら側に来てくれた事を心強く思っていた。

 

「キャンディが居なかったらこの戦い・・・苦戦してたかもしれないわね」

 

セナは、ダージリンの発言から聖グロリアーナは大洗を見下していたのだと理解した。無理もない、いきなり復活したチームが強いなんて誰が思うだろうか?しかし、戦いでこの考えは命取りだと思ったセナは、ダージリンにある助言をすることにした。

 

「みほさんは西住流ですから・・・あなどってはいけません。ダージリン様こんな格言を知っていますか?『人は見かけで判断するな』」

 

セナは、ダージリンの真似をするように、紅茶を飲みながら格言を言った。その言葉を聞いたダージリンは、はっ!とした。ダージリンは、新しいチームと派手な戦車のカラーリングを見て、大したことが無い敵だと決めつけていた。それがいかに危ない事かという事を、セナが教えてくれた。その事にダージリンは、セナに感謝した。

 

「まさに今敵にいる西住流を指しているわね、覚えておくわ・・・」

 

チャーチルとマチルダ3両は慎重に市街地を走り、辺りを警戒していた。すると、オレンジペコが狭い路地に逃げ込むⅣ号を発見した。

 

「Ⅳ号が逃げてます!」

 

オレンジペコが叫ぶと、ダージリンがセナに指示をだす。

 

「キャンディ・・・操縦を変わって追いかけなさい。」

 

 

ダージリンが涼しい顔で紅茶を飲みながらセナに指示を出し、セナは操縦を変わると、逃げるⅣ号をスロットル全開で追いかけた。

 

一方Ⅳ号では、みほが後方を見ながら渋い顔をしていた。何故なら、後ろからチャーチルが壁ギリギリを攻めながら猛スピードで追ってきていた。しかも綺麗な動きで一切の無駄が無い。

 

「完全に私達の動きを読まれてる・・・」

 

みほは、これまで戦ってきた敵よりもセナに頭を悩ませていた。それはそうだこれまでセナに尽く先読みされ、残りの戦車をⅣ号だけにされたからだ。

 

「どうする?」

 

麻子は無表情でみほに指示を仰ぐ。

 

「とにかく振り切って下さい!」

 

みほは、麻子に振りきるように指示を出す。そして優花里は、セナの業に驚くと共に、セナが敵になったことを後悔していた。

 

「完璧過ぎます・・・やはりセナ殿は味方だと頼もしいですが、敵に回ると脅威ですね・・・」

 

 

すると追跡していたマチルダ1両が、セナのペースに付いて行けず店に突っ込んだ。店が壊れる光景をテレビで見ていた店主は、頭を抱えながら叫んだ。

 

「俺の店がぁぁあ!よし!これで新築できる!」

 

しかし、店主は店に突っ込んでくれた事に喜んだ。何故なら、戦車道で壊れた建築物は協会側が負担する事になっているからだ。その喜びようを見た、別の店の店主はうらやましそうに、その店主を眺めた。

 

「俺の店にも突っ込んでくれないかなぁ」

 

そして、とある場所でテレビ中継を見ている女性がいた。髪は黒っぽい茶色でスーツを着ている。

その女性は、聖グロリアーナのチャーチルに乗るセナに驚いていた。

 

「なんて選手なの・・・遠距離から砲撃を命中させ・・・更にはあんな市街地を最高速で壁ギリギリを・・・しかも動きき一切無駄が無い。」

 

女性がテレビを眺めていると、1人の男性が声を掛けてきた。

 

「気になりますか?」

 

女性が男性の方を見ると、その男性に見覚えがあった。

 

「あなたは・・・ラウダ航空の社長の・・・二木ラウダさん。」

 

話しかけてきた男性は、日本大手の航空会社ラウダ航空の社長でセナの父親である二木ラウダだった。ラウダは女性に少微笑みながら名前を尋ねた。

 

「はい。あなたは西住流の当主の西住しほさんですか?」

 

ラウダの問いに女性は無表情で答えた。

 

「そうです・・・」

 

テレビを見ていた女性は、西住流の当主である西住しほだった。ラウダは、セナに興味を持っている西住流の当主を見て、これは運命だと感じた。何故ならセナはしほの実の息子だからだ。しかし、しほ本人はセナが二木家に引き取られた事を知らない。

ラウダは、しほにセナについて聞いてみる事にした。

 

「あのチャーチルに乗っている選手が気になりますか?」

「はい・・・とても。」

 

しほは、画面をじっと眺めながら無表情で返答をした。

この先、セナとしほは必ず会う運命だと感じたラウダは、少し微笑みながらしほに対して、こう言った。

 

「それは後々わかりますよ。」

「えっ?」

 

しほは驚いた顔をしながらラウダを見つめた。

 

Ⅳ号は、セナの猛追をなかなか振りきれずに悩んでいた。みほは、少しも狂いもなく、一定間隔を保っているチャーチルを少し不気味に感じていた。

 

「後ろのチャーチルが、一定間隔を保ったままピッタリくっついている・・・」

 

みほが言った言葉に優花里は、操縦しているのが誰かわかった。

 

「その走り方!やはりセナ殿で間違いありませんっ!」

 

逃げようと奥に進んでいたが、この先は、行き止まりだった為、Ⅳ号を急旋回させた。

みほは、やられたと思った。早く気付くべきだった・・・近寄らずに一定間隔の距離をセナが保っていた意味に・・・セナはこの先は行き止まりだから、急いで追い付く必要は無いと判断したのだ。みほは、セナの恐ろしさを直で感じ冷や汗を掻いていた。

するとⅣ号の前にチャーチルとマチルダが正面に現れ、チャーチルからダージリンが顔を見せ、爽やかな顔をして格言をみほに言った。

 

「こんな格言を知ってる?イギリス人は恋愛と戦争においては手段を選ばない・・・」

 

Ⅳ号にチャーチルとマチルダこ砲塔が向けられみほ達は絶対絶命かと思われたが、そこへ履帯が壊れ、修理していた筈の38tが援護にやって来た。

 

チャーチル車内では、マチルダが撃破された事について、話をしていた。

 

「マチルダが一台撃破されたようですわ」

「詰めが甘かったわね?キャンディ・・・」

 

オレンジペコは平然とした顔で、ダージリンは少し驚いた顔で、セナに言ったが、セナは目を閉じ紅茶を飲みながら満面の笑みでこう返答をした。

 

「マチルダが撃破される可能性も考えてたので、特に問題はありません。それに38tが砲撃をしたとしても、今の砲撃手の技量のままでは、当たる可能性はかなり低いです。」

 

ダージリンは少し笑みを浮かべると、砲塔を38tに向けるように全車両に指示を出した。

桃の「発射!」という掛け声と同時に、38tからチャーチルへ向け砲撃されるが、弾は外れ38tはチャーチルとマチルダから、集中放火を浴び白旗が上がった。

 

その直後Ⅳ号がみほの指示の元動き出した。

 

「前進!一撃打って離脱して下さい!まず左折!」

 

Ⅳ号は前進すると、砲弾をマチルダに当て撃破した後、猛スピードでこの場から離れる。

逃がしてなるものかと、ダージリンは回り込むように指示を出したが、セナがそれを制止し、この先は死角だらけで逆に返り撃ちに合う可能性がある事をダージリンに説明する。

 

「では・・・どうするべきかしら?」

 

ダージリンは真面目な顔でセナを見つめると、セナは、いたずらっ子の様な笑みを浮かべながら、ダージリンに作戦を説明すると、ダージリンは大笑いし作戦を採用した。

 

Ⅳ号は駐車場の壁で待機していた。

 

「おかしい・・・回り込んで来ると思ったのに」

 

みほは、チャーチルとマチルダ2両が自分達の後をすぐ追ってくると考え、死角となる駐車場の壁の裏に隠れ狙い撃とうとしていたのだが、いつまで経っても現れない。

みほが不審に思っていると、優花里が焦った様な顔で、みほに報告を入れる。

 

「西住殿!おっ!大通りからマチルダ2両接近中!」

 

みほは自分達の後を追って来ず、逆に大通りから回って来たことに動揺した。そして、みほは敵にチャーチルが居ないのに気が付いた。

 

「っ!チャーチルが居ない!?チャーチルは何処に?」

 

みほは、すぐにでもチャーチルの居場所を確認したかったが、マチルダ2両がすぐ近くに迫って来ていた為、チャーチルを探すよりも、逃げることを優先した。すぐさま麻子に、直ぐ横にある壁を使い、砲撃を防ぎながら蛇行してバックするように指示を出す。みほは、少し動揺した為か、セナの存在を完全に忘れていた。

 

一方チャーチルは少し隣の大通りに面した裏路地に身を隠していた。

セナの提案した作戦とは、逃げた先の駐車場の側壁に身を隠し、後に追ってくる自分達を待ち伏せしているであろうⅣ号の考えを逆手に取るというもの。

具体的には、マチルダ2両を大通りからⅣ号がバックで逃げざるを得ない方向から向かわせ、Ⅳ号が旋回した時に出きるスキを狙って、チャーチルを裏路地から気付かれないように発進させ、後ろから砲撃し撃破する。

この作戦の最後は、セナのイタズラ心が混じっていて、この面白い作戦にダージリンは笑ったのだ。

 

そして、Ⅳ号が方向転換をして、逃げようとしたその時だった。物凄い衝撃と爆発がⅣ号に走った。Ⅳ号に砲撃が当たったのだ。みほが後ろを見ると、どこから出てきたのかチャーチルがいた。

 

観客席では、いきなりⅣ号が撃破された為どよめきが起こっていた。そして、観客席からセミロングで、黒っぽい茶髪の少女がチャーチルに乗っているセナを見つめていた。

 

「大洗女子学園チーム!全車走行不能!よって聖グロリアーナ女学院の勝利!」

 

会場に、アナウンスの声が響く。

 

試合終了後、聖グロリアーナのダージリン、 オレンジペコ、アッサムがセナを連れてみほ達の元へやってきた。

オレンジペコとセナは、笑顔で手を繋いでいる。

ダージリンがみほに対して口を開いた。

 

「あなたが隊長さんですわね?」

「はい・・・西住みほです。」

「セナを返しに来ましたわ」

 

ダージリンとオレンジペコとアッサムは名残惜しそうな顔をしながら、セナをみほ達へ引き渡す。

 

「ただいま!みほさん!」

 

セナの表情は明るく、憑き物が取れたように晴れやかで可愛い笑顔だった。

その後、セナを除く大洗チームは罰ゲームである、あんこう音頭を踊った。その後、みんなで御飯を食べに行く事にしたのだが、麻子はおばあちゃんの所へ行くというので、麻子を除く5人でご飯を食べに行くことなった。その道中、人力車を引いている男性と目が合い、その男性がこちらにやってきた。華はその男性を見ると、驚いた顔をした。

 

「新三郎!?」

 

5人は、寄って来た男性が華の知り合いだと知ってビックリしたが、華はみんなに人力車を牽いている男性を紹介した。

 

「家に奉公に来ている新三郎」

 

「お嬢!お元気そうで!いつもお嬢がお世話になってます!」

 

新三郎という男性は、五十鈴家に奉公に来ている人らしい、髪は角刈りで江戸時代の着物の様な物を身に付けており、男前という言葉が似合う外見だった。すると人力車から、紫の着物を着た女性が降りて来た。

 

「華さん?」

「お母様!」

「元気そうで良かったわ。こちらの方々は?」

 

降りてきた女性は華の母親らしく、ニッコリとセナ達を見つめ、華が母親に友達の紹介をした。

 

「こちら同じクラスの武部さんと西住さんと二木さん」

 

3人が挨拶を済ませると、優花里も自己紹介をする。

 

「私はクラスが違いますが戦車道の」

 

優花里が、戦車道という言葉を発した途端、華の母親の表情が強張った。

 

「戦車道?華さん・・・どういうこと?もしや!」

 

セナ達は、この時察した。華は母親に戦車道をしている事を言ってなかったのだと。華のお母さんは、慌てた様子華の手の匂いを嗅ぐ。

 

「鉄と油の匂い・・・まさかあなた戦車道を!?」

「はい」

 

華は真剣な表情で母親を見つめる。

 

「花を活ける繊細な手で戦車に触るなんて!」

 

華の母は目から生気が無くなり、その場に崩れるように倒れた。そしてセナ達は華を心配し、華の家へとやって来た。

優花里は、華に母親の前で戦車道と言ってしまった事を謝った。

 

「すみません・・・わたしが口を滑らせたせいで・・・」

「いえ・・・私がお母様にちゃんと話してなかったのがいけないんです。」

 

部屋が静寂に包まれる中、新三郎が襖を開け華の母親が目を覚ました事を報告に来た。

 

「お嬢・・・奥様が目を覚まされました。お話があるそうです。」

 

新三郎がそう言うと、華は申し訳なさそうな顔で下を向いた。

 

「私はもう戻らないと・・・」

「お嬢っ」

 

新三郎が何か言おうとしたときセナがそれを遮った。セナは真剣な目で華の目を見た。

 

「華さん・・・私はお母様ときちんとお話をされるべきだと思います。」

「セナ・・・さん?」

 

華は驚いた、セナが今まで見たこと無いような目をしていた、まるで自分の目の奥を見つめているようだった。セナは少し悲しそうな顔をしながら華に言った。

 

「華さんのお母様に自分の本心を伝えるべきです。それでも駄目だったら、縁を切るという選択肢でも良いと思います。一番いけない事は、お互いの本心を話さずそのまま事を進める事です・・・そうなってしまえば、お互いの心に傷を負ったままになってしまいます。もし何かあれば私も力になりますので、思いっきりご自分の本心をお母様にお話されて下さい。」

 

セナ自身、訳もわからず西住家に捨てられた為、華の置かれている状況に思うところがあるようだ。

そして、新三郎はセナの名前を聞いてずっと気になっていた事があった。名字の二木という名前だ、ここ周辺に住んでいる二木という家は1つしか知らない。そう・・・二木ラウダの家だ。新三郎はセナの正体がわかってしまった。セナは、ラウダ航空の社長二木ラウダの娘だと・・・

華の母の部屋では、華の母親が布団から身体を起こし、その正面に華が座って話をしていた。

 

「申し訳ありません。」

 

華は母親に謝った。母親は、心配そうな表情で華を見つめた。

 

「どうしたの?華道が嫌になったの?」

「そういう訳じゃありません。」

「何か不満なの!?」

「違うんです!」

「だったらどうして!」

 

お互い起こったように自分の想いをぶつけ合った。華は華道に不満がある訳でも無いようだ。華は自分の想いを母親に告白した。

 

「私・・・生けても!生けても!何か足りないような気がするのです。」

 

華は、思うような生け花の作品が出来ず、悩んでいた様だ。その言葉に対して、母親は首を振った。

 

「そんな事ないわ!あなたの花は可憐で清楚!五十鈴流その物よ!」

「それでも私は力強い花を生けたいんです!」

 

華は母親に、可憐で清楚な花を生けたいのではなく、力強い花を生けたいと心中を吐露した。華の発言に母親は娘を変えてしまった戦車道を恨んだ。

 

「素直で優しいあなたは何処へ行ってしまったの!?これも戦車道のせいなの?戦車なんて野蛮で不恰好なだけじゃない!戦車なんて!鉄屑になってしまえばいいんだわ!」

 

戦車を馬鹿にした発言に、そのやりとりを見ていた優花里は怒った。

 

「戦車を鉄屑とは、聞き捨てなりません!」

「秋山さん落ち着いて!」

 

みほと沙織は今にも飛び出しそうな優花里を押さえる。

 

「ごめんなさい・・・お母様・・・私戦車道はやめません。」

 

華は母親に戦車道は辞めないと伝えると、母親は外方を向いた。

 

「だったらもう家の敷居は跨がないでちょうだい」

 

すると、今までのやりとりを聞いていたセナの堪忍袋の緒がとうとう切れてしまった。家の流派に従わないで、戦車道をするから家から追い出す、こんな馬鹿げた理由があって良い筈がない。

 

 

セナは、みほ達に見られないようにそっと部屋に入るが、新三郎に見られていた。

 

「!?ご令嬢・・・」

 

セナは新三郎に、シーっというジェスチャーをし部屋へと入る。その光景を見ていた3人は、驚いた。

 

「セナ殿!?」

「セナさん!」

「セナちゃん!?」

 

そして、華と華の母親もいきなり入ってきたセナに驚いた様な表情を見せた。

 

「セナさん!?」

「誰です!あなたは!」

 

いきなり入ってきたセナに、華の母親は怒った。新三郎が慌てた様子でセナの事を説明しようとする。

 

「奥様!こっ!この方はラウ」

 

新三郎がラウダ航空の娘と言おうとした時、セナが目を閉じて首を横に振った。

 

「新三郎さん・・・言わなくてもよろしいです・・・」

「はい」

 

セナの力強い口調に新三郎は黙った。

セナは華の横に正座すると、無礼が無いように、丁寧に挨拶を始めた。

 

「私、五十鈴 華さんのクラスメイトをさせて頂いております・・・二木セナと申します。」

 

華の母は、あまりにも丁寧な挨拶とセナの可愛らしい姿に少し、機嫌が良くなった。

 

「何か用かしら?」

 

セナは真面目な表情で華の母親を見つめた。

 

「先程の発言の意図についてお聞きしたいのですが・・・」

「先程の発言?」

 

華の母親は、わからないというような表情をしていた。

 

「戦車道をするのであれば、家の敷居は跨がせないという発言についてです・・・」

 

セナの発言を聞いた華の母親は、セナを思いっきり睨み付け、脅しを掛けた。

 

「家の関係者でも無いのに首を突っ込まないでちょうだい・・・それでも首を突っ込むのであればあなたの家はどうなるかしら?」

 

それを、聞いた華と新三郎は、慌てて止めに入る。

 

「お母様!やめてください!」

「おっ!奥様!お止めください!」

 

セナは、脅しなど無意味だと言わんばかりに、一切表情を変えずに華の母親の方を見た。

 

「構いません・・・では・・・母親というものは家に逆らった・・・というだけで"簡単に娘を捨てれる"のですか?」

「なっ!?」

 

華の母はこの質問が意外だったようだ。何故ならセナは戦車道を何故やらせないのか?と聞いてくると思ったからだった。普通はそう思うのだが、セナが怒っている部分は、そこではなかった。セナは少し睨み付け、華の母親に怒鳴り付けるように質問をした。

 

「もう1度問います・・・流派の家系は・・・流派の家系は!自分の流派に逆らっただけで!こんなにも簡単に子供を捨てるんですかっ!」

 

セナが怒っていたのは、戦車道をやらせるやらせないという部分では無い。家の流派のやり方に従わないから、家を追い出すという部分に怒っていたのだ。それはそうだろう、セナ自身も男で戦車道が出来ないからという馬鹿げた理由で捨てられたのだから。

それを聞いた華の母親は、自分のしていることを娘を捨てたと言われ、思わず激怒した。

 

「あなたごときに何がわかるというの!」

 

室内に乾いた平手の音が響き、それを見た新三郎は顔が真っ青になった。

航空とは日本で1位の航空会社。ラウダ航空の社長の耳に入れば、五十鈴家など簡単に潰されるだろう。セナも落ち着きを取り戻し、華の母親に謝罪した。

 

「申し訳ございません・・・感情的になりすぎました。」

「ごめんなさい・・・こんなつもりは・・・」

 

華の母親もセナを本気で叩くつもりはなかったようだ。

それはセナも理解していた。華の母親と2人きりで話したい事があった為、華の母親に話を持ち掛けてみる事にした。

 

「わかってます・・・華さんのお母様・・・2人だけでお話をしませんか?」

 

華の母親は少し考える素振りを見せると、了承した。

 

「わかりました・・・華さん・・・新三郎・・・席を外して」

 

華と新三郎は2人を心配しつつも外へ出た。

セナと華の母親は、向き合う形で座り、最初に華の母親が口を開いた。

 

「ごめんなさいね?痛かったでしょう?」

 

華の母親は、平手打ちした事を謝罪した後、優しい顔で叩いた場所を撫で、セナは華の母親にさっきの発言を改めて謝罪した。

 

「先程は、生意気な事を言ってしまって、ごめんなさい。」

 

華の母親は、疑問に思った事があったので、セナに尋ねる事にした。

 

「どうして、家に逆らったから娘を家から追い出す。という言葉に何故あそこまで怒ったのですか?」

 

セナを慰めるような顔で、華の母親は質問をした。それに対してセナは悲しそうな顔で、自分の過去を話した。自分はとある家元に産まれ、流派にそぐわないというだけで捨てられた事や、それが華と重なって怒りが押さえきれなくなった事を・・・当然男であることは伏せる。

それを聞いた華の母親は、少し悲しそうな顔をし自分の本心を話始めた。

 

「本当は娘には、自分の生きたいように生きて欲しいと思っています。ですが・・・五十鈴家という看板を背負っている以上中々思うようにはさせてあげれないのです。」

 

セナは、華の母親にある提案をする事にした。

 

「華さんのお母様・・・1つ提案があります。」

「提案?」

 

華の母親は、キョトンとした顔をし、セナは提案の内容を話した。内容は、華が五十鈴流が納得出来るような花を生ける事が出来たら、家に戻る。というものだった。それを聞いた華の母親は、少し考える素振りを見せ承諾した。華の母親と別れたセナが部屋を出ると華が心配そうな顔をして待っていた。

 

「セナさん!大丈夫でしたか!?」

 

「はい!華さん?」

「なんでしょう?」

 

華は、心配そうにセナを見つめた。

 

「お母様がもし五十鈴流が納得がいく力強い花を生ける事が出来たなら・・・家へ戻って来なさいとおっしゃってましたよ?」

 

セナは微笑みながら、華に先程の話し合いの結果を報告し、華はその報告が嬉しくて涙を流しながら、セナに微笑みながらお礼を言った。

 

「セナさん・・・ありがとうございます。」

 

そして、もうすぐ学園艦の出港時間が近付いており、5人は、新三郎に送って貰う事になり、港に着くと、麻子が待っていた。

 

「遅い」

「もう!夜は元気なんだからっ!」

 

沙織は朝はぐったりして、夜は無茶苦茶元気な麻子にツッコミを入れ、船の上に登ると、1年生達がセナとみほに謝罪しようと2人の到着を待っていた。

 

「西住隊長!戦車を置いて逃げたりしてすみませんでした!セナさんもせっかく教えてくれたのにすみませんでした!私達も次はがんばります!」

 

一年生達が謝罪をした後、生徒会の3人が手に何かを持って歩いてきた。

杏は笑いながら、セナとみほを交互に見た。

 

「これからは、作戦は西住ちゃんとセナちゃんに任せるよ。」

「えっ!」

 

杏の発言に桃は驚いた反応をした。そして杏が2つのバスケットを指さした。

 

「それとこれ。1個は西住ちゃんでもう1個はセナちゃんに」

 

 

小山が2つの贈り物を持っており、2人に渡す。みほがバスケットの中身を見ると紅茶の茶葉とティーカップのセットが入っており、そこに一枚の手紙が添えられていた。

手紙には、試合が楽かったので、みほともう一回戦いたい事、紅茶はセナに淹れてもらいなさいという事、そして妙な事が書かれていた・・・今日の試合で、体力をかなり消耗しているため、セナの体調が不安なので、セナから目を離さないで欲しい。と書かれていた。

みほのバスケットの中身を見た優花里は、興奮気味に聖グロリアーナが紅茶を送ってくる意味の説明を始めた。

 

「凄いです!聖グロリアーナは好敵手と認めた相手にしか紅茶は送らないとされていますから!」

 

そして、セナの方にはダージリン アッサム オレンジペコ キャンディ ローズヒップ の紅茶の茶葉と共に手紙が入っていた。手紙には、セナをグロリアーナに率いれた意味が書かれていた。内容は、セナを戦力外にした、無知な副隊長にセナの力を見せつける為だったと書かれていた。その内容を見たセナは涙が溢れてきた、今は違う学校なのに自分の為に動いてくれたダージリン達に感謝の気持ちしかなかった。するとセナの視界が揺らぎ始める、セナは涙のせいかと思ったが、身体が怠く、熱っぽい・・・セナは試合の時に神経を集中させた代償だと理解した。しかし、近くにみほ達が居るので、ここで倒れる訳にはいかない。重い身体を引きずりながら、1人でフラフラと家へ帰り始めた。

そしてみほが、フラフラと路地へ歩いているセナを発見した。

 

「セナさんっ!?」

 

かなり慌てた様子でみほが走ってきた。

 

「セナさん!身体!かなり辛いんでしょう!?」

「どうしてそれを・・・」

 

セナは疑問に思った。遠くの音を聞くために神経を集中させると、その代償で体調が悪くなる事は、ダージリン達以外知らない筈だからだ。

 

「ダージリンさんが手紙に書いてたの!今日試合で無理してるから目を離しちゃだめって!」

 

セナは、試合中ダージリンに倒れた後をお願いした事を思い出した。ダージリンはセナが何時間後に体調が悪くなるか知っていた為、ある程度の時間を予測し、みほに自分の代わりにセナの体調を気にかけるように手紙に書いたのだった。

セナがフラフラなのに気付いた、優花里、沙織、華、麻子の4人も慌てて駆け寄ってきた。

 

「セナ殿!大丈夫ですか!」

「セナちゃん!?凄い熱!」

「セナさん!しっかりしてください!」

「とりあえず、家で寝かせた方が良い・・・」

「セナさんしっかりしてっ!」

 

セナはみほ達の顔を見ながら、ゆっくりとみほに身を預けた。




長編 長編 文章力ないのにー!ビックバンアタック!


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第5話 セナはサンダースに潜入し決意する

プロフィールは、別に作ります。


セナを含むみほ達6人は全国大会の組み合わせ抽選会の後、喫茶店に食事に来ていた。みほは、セナが昨日高熱を出し倒れた為、心配している。

 

「セナさん・・・本当に大丈夫?」

「知恵熱みたいなものですからご心配なさらないで下さい。」

 

セナは可愛く微笑んで、平気だよとアピールするが、その他のメンバーは心配で心配で仕方ないという様な顔をしている。

 

「心配するって!授業中にも熱出して倒れたじゃん!」

「それを言われると・・・」

 

授業中にセナが倒れたことを、知っている沙織も心配しており、物凄い剣幕で怒られたので、セナは心配させてしまったことを反省した。

しばらくして、優花里が戦車の形をした呼び出しボタンを押す。戦車の砲撃音と共に店員さんがやってきた。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

華が店員さんに注文を入れる。

 

「ケーキセットで、チョコレートケーキ2つと苺タルト、レモンパイにニューヨークチーズケーキ、ショートケーキ一つずつお願いします。」

「かしこまりました。」

 

店員さんがテーブルから離れると、沙織はボタンの音が主砲の音なのに驚いている。

 

「そのボタン主砲の音になってるんだ~」

「この音は90式ですね。」

戦車マニアの優花里は音だけで戦車の種類を言い当てる。凝っている喫茶店に華も関心していた。

 

「さすが戦車喫茶ですね。」

「この音を聴くとちょっと快感な自分が怖い~」

 

沙織は、戦車道をしている内に戦車の砲撃音に魅了されてしまったようだ。そして、ラジコンのトレーラーがケーキを運んで来た。

セナは見たこともない戦車の形をしたショートケーキに大興奮し、目がキラキラして笑顔になった。

 

「わぁ!」

 

セナは、ケーキを見ると幸せそうな顔をして、ショートケーキを頬張った。みほは、申し訳なさそうな顔をして

今日の抽選会で強いところと当たってしまった事を皆に謝った。

 

「ごめんね・・・一回戦から強い所に当たっちゃって・・・」

「サンダース大付属ってそんなに強いんですか?」

 

華がサンダース大付属の実力について質問をし、優花里がサンダース大付属の実力について語った。

 

「強いっていうか凄くリッチな学校で戦車の保有台数が一位なんです。チームも一軍から三軍まであって・・・」

 

優花里がサンダース大付属の話をしていると、セナがケーキを頬張りながら、みほにフォローを入れた。

 

「でも公式戦の一回戦の戦車の持ち込みは、10両までって規定がありますし、砲弾の装数も制限がありますから、そこまで気を落とす必要はないかと・・・」

 

セナは、平然とした顔でそう言ったが、沙織はそれでも不安そうだった。

 

「それでもウチの倍じゃん!それって勝てないんじゃ・・・」

「単位は?」

 

麻子は、勝てなかったら単位はどうなるか気になるようだ。

 

「負けたら貰えないんじゃない?」

「ふんっ」

 

沙織がそう言うと、麻子は怒ったように、ケーキにフォークを勢い良く刺した。

皆がサンダース大付属の圧倒的な車両数に怯える中、セナは平常心の様だった。

 

「戦車道は車両数が多ければ勝てる程、甘くはありません。相手の作戦にはまってしまえば負けます。この甘さ!クセになりますぅ!」

 

セナは、笑顔でケーキを頬張りながらそう言った。セナがケーキを美味しそうに食べているのを見た麻子は、セナに話しかけた。

 

「セナ・・・その・・・ 」

 

麻子が、自分のショートケーキを見ながら食べたそうにしているのを見たセナは、少し微笑んで、ケーキが乗っている皿をゆっくりと麻子に近付けた。

 

「よろしければ食べてみますか?」

「あぁ・・・ 」

 

麻子は、少し嬉しそうな顔をして、ケーキを貰った。

その状況をみた沙織は驚いた。何故なら、自分以外を名前呼びした事が無いのに、セナを名前で呼んでいたからだ。

 

「嘘・・・あの麻子が、私以外を名前呼びしてる・・・」

 

口をパクパクさせながら驚いている沙織を見た麻子は、少し照れくさそうにセナを名前で呼ぶ理由を話した。

 

「セッ・・・セナは遅刻しそうな所を救ってくれた恩人だからな・・・」

「それでセナちゃんと知り合ったんだ」

 

麻子と沙織がセナと出会った時の話をしていると、横から女性に話しかけられた

 

「副隊長?いや元でしたね」

 

そこには2人の女性がいた。1人は髪はロングで銀色をしており、もう1人はセミロングで少し、黒ががった茶色で、みほは、誰かすぐにわかった。

 

「お姉ちゃん・・・」

 

みほは、悲しそうな顔をしながら俯いた。

しかし、みほの言葉に一番反応したのはセナだった。

 

「えっ!?」『まさかまほお姉様!?』

 

そう・・・そこにいたのはセナのもう1人の実の姉まほがいた。

 

「まだ戦車道をやっているとは思わなかった。」

 

まほが平然とした顔でそう言うと、その言葉に怒りを覚えた優花里が立ち上がる。セナもまほが何故そんな言葉を言ったのか予測がついた。セナもビデオで観たことがある、恐らく去年の準決勝の日のある出来事とその後の事を指しているのだろうと。

 

「お言葉ですが!あの試合の時は!」

 

優花里がみほの事を擁護しようとした時、セナが優花里を制止するように手を出した。

 

「セナ殿!?」

 

優花里は、セナの表情に驚いた・・・何故ならセナは今まで見たことが無いような、怒った表情をしていたからだ。

 

「あの時の試合のビデオ・・・拝見させて頂きましたが、みほさんの判断は決して間違ってなんていませんでしたよ?むしろ称賛されるべき行動でした。」

「部外者が口を出さないで欲しいわね」

 

もう1人の少女が見下したような目でセナを見たが、セナは動じなかった。そう少女が言うと、2人は出口へと向かって歩いて行った。少女が立ち止まり嘲笑いながらこちらを向いた。

 

「まぁ無様な戦い方をして西住流の名を汚さないことね」

 

みほは、悲しそうな顔をした。少女の態度に怒りを覚えた沙織と華が怒った。

 

「何!?その言い方!?」

「あまりにも失礼じゃ」

「あなた達こそ戦車道に対して失礼じゃない?無名校のくせに、この大会はね戦車道のイメージダウンになるような学校は参加しないのが暗黙のルールよ。」

 

少女がそう言うと、麻子が平然とした顔で少女を見る。

 

「強豪校が有利になるように示し合わせて作られた暗黙のルールとやらで負けたら恥ずかしいな」

 

麻子の言葉に少女は少しムッとした表情を浮かべ、沙織が宣戦布告をした。

 

「もしあんた達と戦ったら絶対負けないから!」

「ふっ・・・頑張ってね?」

 

みほを完膚なきまでに傷つけ、増してや自分達を馬鹿にしたような少女の態度に、堪忍袋の緒が切れたセナがダージリンのような涼しい顔をし、紅茶を持ってゆっくりと立ち上がった。

 

「中等部の時、"たった1両"に歯も立たなかったあなた達に負ける訳ないでしょう?」

 

セナが微笑みながら、まほと少女に言い放つと、中学時代の苦い思い出を言われた少女はムッとした。

 

「なんですって?」

 

少女の口調が少し荒々しくなるのを見た沙織は、ヤバイと思いセナを制止しようとした。

 

「ちょっとセナちゃん!?」

「また1両残らず撃破して差し上げますので、覚悟していてくださいね?」

 

セナが微笑みながらそう言うと、まほはセナをジッと見た。中学時代にまほが敗北した選手はひとりだけだ・・・

そして先週の大洗と聖グロリアーナの練習試合で見た1人の少女の戦い方を思い出した。よく憶えている・・・正確な射撃と凄まじい計算能力で、実力者であるみほを圧倒していた姿を・・・聖グロリアーナの制服に混じった1人の大洗の制服を着た少女を・・・まほは、確信した。目の前にいる小さい少女が、自分の倒したかった敵、走るコンピューター本人だと。

 

「走るコンピューター・・・」

 

まほの発言に、少女は信じられないというような顔をした。

何故なら自分達が完敗した、走るコンピューターがまさか無名校である大洗にいるなんて思いもよらかったからだ。

 

「なっ!うそ・・・こんな無名校に!?」

 

セナの正体を知った少女の怯える顔を見た優花里は、改めてセナを再認識した。走るコンピューター二木セナという人物はこんなにも凄かったのかと・・・

 

「みほさんをここまで傷付けた罪をきっちり償って頂きますので覚悟していてください。」

 

セナは笑顔でそう言うが目は一切笑っていない。まほは、自分の名を語り、セナに名前を尋ねた。

 

「私は西住まほだ。名前を聞きたい」

 

セナは自分の名前と聖グロリアーナ時代の名前を紹介した。

 

「大洗女子学園の二木セナといいます。またはキャンディと覚えて頂ければ光栄です。」

 

聖グロリアーナ時代の名前を言ったのは、ダージリンから名乗っても構わないと練習試合の後に言われたからだ。

 

「二木セナか・・・あの時の借りはきっちりと返させてもらう。」

 

まほは、セナへのリベンジに闘志を燃やしていた。

 

「えぇ・・・お待ちしています。」

 

セナが笑顔でそう言うと、2人は去っていった。セナは、2人を見届けると不愉快そうな顔をした。

 

「全く・・・戦車道をやるに置いて人を見下したような態度は頂けません。」

 

セナの感想に沙織と華もうんうんと頷いた。

 

「あの態度は酷いよ!」

「嫌な感じですね・・・」

 

セナ、沙織、華の発言に、優花里が彼女達が黒森峰の生徒であることと、黒森峰の実績を話した。

 

「今の黒森峰は去年の準優勝校ですよ?それまでは9連覇してて・・・」

「えっ!?」

 

それを優花里から聞いた沙織は嘘!?というような顔をしていた。

 

「それとセナ殿」

 

優花里が少しムッとした表情でセナを見ると、セナはキョトンとした顔で返事をした。

 

「はい?」

「さっきのは挑発過ぎです!乱闘騒ぎになって怪我したらどうするんですか!」

 

優花里は、セナが黒森峰の少女達を挑発した事を心配して怒ったが、セナは真面目な顔で優花里の目をジッと見た。

 

「あれくらいしなければ私の気が済みませんし、なにより・・・みほさんをここまで追い詰めた黒森峰と西住流が許せません。例え追い詰めるつもりは無かったとしてもです。」

 

セナは、黒森峰と西住流が許せなかった。みほは何も悪い事はしていない、なのに何故みほがこんな悲しい思いをしなくてはならないのかと・・・彼女に一体何の罪があるのかと。セナは西住流や黒森峰の事を考えていたら、急に感情の喜怒哀楽がぐちゃぐちゃになったが、表情に出そうとしない。

みほはセナを見つめた。セナの表情はいつもと変わらない故に、今のセナからは感情は全く読み取れない。

しかし麻子だけはセナの感情に気付いた。

 

 

「セナ・・・感情がぐちゃぐちゃになってないか?」

 

麻子はセナをジッと見つめるが、セナは難しい表情をしていた。

 

「どうでしょう・・・自分でもよくわからないんです。訳がわからなくなってて」

 

セナの発言を聞いた麻子は、セナに何かしらの精神的負荷が懸かったと推測した。

 

「私の見る限りだが、西住さんの精神的ダメージよりセナお前の方がよっぽど重症に見えるぞ。」

 

セナは、少し下を向いて返答した。

 

「気を付けておきます。」

 

皆の悪い雰囲気を感じとった華が手をパンと叩いた。

 

「ケーキ・・・もう一つ食べましょうか!」

「もう2つ頼んでもいいか?」

 

麻子は、まだ食べる気満々なようだ。

 

日が暮れる頃、学園艦の船首でみほは1人空を眺めていると、優花里がみほの横へ肩を並べた。

 

「寒くないですか?」

「うん」

「全国大会・・・私は出場できるだけでうれしいです・・・重要なのはベストを尽くす事です。例え負けたとしても」

 

みほと優花里が話していると、生徒会一同が後ろからやってきた。杏が、みほ達を見つめると、両手を腰に当てながら言った。

 

「それは困るんだよね~」

「絶対に勝て。我々は絶対に勝たねばならんのだ。」

「そうなんですよー。だって負けたら・・・」

 

小山が何か言おうとしたが、杏に止められた。

 

「しーっ!全ては西住ちゃんとセナちゃんの肩にかかってるから!」

「すぐに倒れるポンコツには期待していないがな」

 

桃がセナの事をそう言うと、みほと優花里がムッとした表情になった。それをみた小山はヤバいと思い、桃を注意した。

 

「桃ちゃん!一言余計!」

「次負けたら罰ゲームなにしてもらうか考えとくね~」

 

杏がそう言うと、生徒会は帰って行った。

 

「せめて配置さえわかれば・・・いきなりファイアフライはないと思うけど・・・」

 

みほが考えながら、ブツブツ言っている横で、優花里はあることを決意する。

 

一方セナは自分のアパートへと戻りダージリンに連絡を取っていた。

 

『もしもし・・・ダージリン様?』

『あら?セナじゃない。珍しいわね?あなたから電話を掛けてくるなんて・・・』

『実はダージリン様にお願いがありまして・・・』

『何かしら?』

『はい。実はサンダース大付属高校の隊長さんに連絡を取りたいのです。』

 

セナがそういうと、ダージリンの口調が少し慌ただしくなった。

 

『連絡?何をするの?』

『明日高校にお邪魔しようと思ってまして、その許可を貰おうと』

 

サンダース大附属に行きたいと言ったセナの言葉を聞いてダージリンは目を見開いた。

 

『セナあなた・・・サンダース大付属に転校するつもりなの?』

 

ダージリンは少し焦っているようで、セナは恐る恐るダージリンに理由を言った。

 

『いえ。噂でサンダース大付属は色々な意味でオープンな学校だと聞いてましたので敵情視察も兼ねて行ってみようと・・・』

『確かに色々な意味でオープンな学校だけど・・・そういえばあなたの高校の一回戦の相手はサンダース大付属高校でしたわね?いいですわよ?他ならぬセナの頼みですから。少し待ってなさい。』

『はい』

 

しばらくして、折り返しの連絡が来た。

 

『もしもし?』

『許可が取れましたわよ?』

『ダージリン様ぁ!ありがとうございます!』

 

セナは可愛らしい声でお礼を言う。

セナの声を聞いたダージリンは顔が真っ赤になった。

 

『そっ・・・それは良かったですわ(かっ!可愛い!)明日9時に来て欲しいらしいわ。』

『わかりました。ではまた近々聖グロリアーナに遊びに行きます!』

『えぇ。いつでもいらっしゃい?』

 

そしてセナは、杏と学校に用事で休む事を連絡し、明日に備えて眠りに就いた。

 

翌日、ラウダ航空のヘリコプターが学園艦のヘリポートにセナを迎えに来た。セナはヘリに乗り込むと、サンダース大付属高校へと出発した。

 

サンダース大付属高校の学園艦にセナを乗せたヘリが着陸し、セナがヘリから降りると、ヘリポートに髪が長い金髪の1人の女性が待っていた。

 

「待っていたわよ!あなたがダージリンが言ってた。セナね?」

 

セナは少女を見ると元気よく挨拶した。

 

「こんにちはー!二木セナです。ケイさんですね?」

「そうよ!」

 

ケイと呼ばれる少女はセナにウィンクした。

 

「本当に良いんですか?対戦相手の高校の私が来て!」

「誰でもウェルカムよ!さぁ!行きましょう!」

「はい!」

 

セナはトテトテとケイの元へ向かって歩いて行くと、ケイは少し頬を赤らめた。

 

「ベリー!キュート!とても可愛いわ!ダージリンの言ってた通りの娘ね!」

「では案内よろしくお願いします。」

 

セナはケイにクスッっと笑いかけた。

ケイはセナを連れて、サンダース大付属高校の前へとやって来た。セナはサンダース大附属のデカさを目の当たりにして驚いている。

 

「うわぁ!まさにアメリカのHigh School!って感じですねー!」

 

セナは興奮気味に喋った。

 

「でしょ?それにしてもセナ!いい発音ね!」

「一応 英語は使ったりしてましたからね」

 

海外に自動車レースに行ったりしていた為、セナは数ヵ国の言葉を話すことが出来る。

セナがケイと話していると聞き覚えのある声が聴こえてきた。かなり小声だが・・・

 

『私は今サンダース大学付属高校に来ています。では、潜入します。』

 

セナは聞き覚えがあった・・・まさか・・・

 

『優花里さん!?潜入って・・・はぁ・・・今は巻き込まれたくないので、そっとして置きましょう・・・』

 

セナは優花里が喋っているとわかったが、今は高校を見学するのに集中した。

 

「まず校内を案内するわ!付いてきて!」

「はい!」

 

ケイが付いてきてとジェスチャーすると、セナはぴょこん ぴょこん跳ねながらケイに付いて行った。

セナが飛び跳ねながらケイに付いていっている、光景を見たサンダースの生徒達は、頬を赤らめながらキャーキャー叫んでいた。

 

「何!?あの小さな娘!可愛い!」

「動物みたーい!」

「ハァイ!」

 

ケイは校内に居る生徒みんなに挨拶しながら歩いて行く。

 

「ハァイ!」

 

ケイが挨拶しているのを見て、セナも便乗して挨拶をする。

 

「Hi!」

 

セナが挨拶すると生徒達はキャーキャー言いながら挨拶を返した。

 

「それにしても・・・ここの生徒さんはフレンドリーな方ばかりですね?他校の私にも挨拶を返してくださるなんて」

 

セナは他校の生徒に笑顔で挨拶する生徒達を見て、セナは驚いていた。

 

「ここではそれが普通なのよ!次はお待ちかねの戦車を紹介するわ!」

「行きましょう!」

 

セナとケイが戦車が有る車庫へと向かうと、そこには車庫びっしりに戦車が並べてあった。

 

「スッゴい!こんなに沢山戦車が!」

「我が校は戦車の保有台数は日本では1位よ!」

 

戦車の周りには3人程の生徒が居た、戦車のメンテナンスをしているようだ。セナは3人の生徒に笑顔で手を振る

 

「1回戦!お互い頑張りましょう!」

 

セナの言葉を聞いた3人は、一瞬戸惑うような表情を見せたが笑顔でセナに手を振った。

しばらく校内を探索していると、ケイが腕時計で時間を確認する。

 

「そろそろブリーフィングの時間ね。」

 

今からブリーフィングが始まるようだったので、セナはこの場で待つことにした。

 

「では、私は外で待ってます。」

「セナも来ていいわよ!」

「そんな!流石にブリーフィングにまでお邪魔するのは・・・」

「大丈夫!重要な所になったら出て行って貰うから!オーケー?」

「はい!」

 

ブリーフィングの場所まで2人で歩いて行くと1人の女生徒が前から歩いて来た。茶髪のツインテールでソバカスがある少女だ。

 

「隊長?その娘は誰ですか?」

 

少女は、不思議そうな顔でセナを見た。

 

「紹介するわ!大洗女子学園のセナよ!」

 

ケイがセナを紹介すると少女は目を見開いて驚いた。

 

「大洗って・・・1回戦の相手!?隊長大丈夫なんですか!?」

 

少女の反応は当然だ、1回戦の対戦相手が自分の高校にいる事事態が異常なのだ。

 

「この娘は聖グロリアーナの隊長ダージリンのお気に入りの娘よ!」

「聖グロリアーナの?」

 

セナは前に両手を揃えて、丁寧に挨拶をした。

 

「セナです。学校見学も兼ねてお邪魔させて頂いてます。」

「アリサよ。よろしく」

 

アリサは少し笑顔で挨拶をした。

 

「じゃあセナは端に寄って見学して?」

「はい。」

 

そしてサンダース大附属の1回戦の作戦会議が始まった。

 

「出場車両を発表する。ファイアフライ1両 M4シャーマン8両 M4A1シャーマン1両」

「次はフラッグ車を決めるよー!」

 

フラッグ車を決めるタイミングになるとケイがセナにウィンクをした。出ていけということだろう。

セナはブリーフィングルームから出るとサンダースの車両編成を予測していた。

 

『出ていく時に、ちらっとシャーマンA1がフラッグ車と聴こえました。となると、小隊編成は・・・3両で1小隊ですか・・・』

 

するとブリーフィングルームの中から女性の声が聞こえてきた。

 

「あなた見かけない顔ね?」

 

セナはその見かけない顔が優花里だとすぐ理解できた。

 

「私はオットボール三等軍曹でありますっ!」

 

優花里は嘘をついたが直ぐに見破られた。

 

「偽物だぁぁあ!」

 

ブリーフィングルームの中は部外者が混じっていた事で騒然としていた。ドアが勢い良く開くと優花里が慌てた様子で飛びだし、セナの横を勢い良く飛び出して来た。

優花里の胸ポケットにはカメラがありセナはカメラに向かってウィンクしたが、優花里は逃げるのに必死でセナが居たのに気づかなかった。その状況を見たケイが笑いながらやって来た。

 

「面白い娘ね!」

「私もそろそろ帰りま・・・」

 

するとアリサが怒りながらセナの元へやってきた。

 

「あなたもスパイね!」

 

アリサが怒っているのを見たセナは少しからかいたくなった。

 

「あぁ!チキンとかにかけたら美味しい!」

「それはスパイス!」

「では・・・ミートソースがパスタに絡みついて美味しい」

「それはスパゲッティ!」

「なら・・・レモンを食べると」

「酸っぱい!」

「アハハハハッ!」

 

セナとアリサのやり取りを見たケイはお腹を抱えながら笑っている。

 

「セナも中々面白いじゃない!」

 

ケイはセナを気に入ったようだ。スパイと疑われたセナはアリサの疑いを否定した。

 

「そもそも・・・きちんと連絡して許可を貰って来てるのでスパイではないでしょう?」

「うっ・・・確かに」

「セナ?良かったら昼食を一緒に食べない?もう少し話してみたいわ!」

「うーん・・・では!お言葉に甘えて!」

「えっ!?隊長!?」

 

セナはケイ達と昼食を食べて、大洗の学園艦へと戻った。

 

その頃、みほ達は学校から下校していた。

 

「秋山さん・・・結局練習に来ませんでしたね・・・セナさんは事前に学校に連絡があったみたいですが」

「セナさんも心配だけど・・・メールは返ってきた?」

「全然!電話かけても圏外だし」

 

するとみほ達の前から私服姿のセナがやってきた。サンダースの見学から帰って来たセナは、制服姿だと万が一みほ達に会った時に怪しまれると思い、白いワンピース

に着替えたのだ。

セナがみほ達に気づき笑顔で手を振る。

 

「みほさーん!」

「セナさん!用事って聞いてたけど・・・」

「もう終わりました!皆さんどちらへ?」

 

セナがどこに行こうとしているのかみほ達に聞くと、華が答えた。

 

「秋山さんのお宅へ向かってます。」

 

みほ達は、優花里の自宅に向かっているようだ。サンダースで優花里を見たセナは心配になりみほ達と一緒に優花里の自宅へ行く事にした。

しばらく歩くと、秋山理髪店と書いてある店に到着し中に入った。中に入るとみほが優花里の父親と思われる男性に話しかけた。

 

「すみません。優花里さんは居ますか?」

「あんた達は?」

「友達です。」

 

沙織がそういうと、男性は目を点にして驚いた。

 

「とっ!友達!?」

「お父さん落ち着いて。」

 

母親と思わしき女性が男性に落ち着くように促した。

 

「だっ!だって優花里の友達だぞ!?」

 

この2人が優花里の両親で間違いなさそうだ。

 

「わかってますよ。いつも優花里がお世話になってます。」

 

優花里の母親が父親に呆れた様な顔でそう言うと、父親は深々とセナ達に頭を下げた。

 

「おっ!お世話になっております!」

 

セナは、優花里が帰ってきているかどうか尋ねてみることにした。

 

「優花里さんはご在宅でしょうか?」

「優花里、朝早く家を出て学校から帰って来てないんですよ。どうぞ2階へ」

 

どうやら優花里は両親には学校に行くと嘘をついて、サンダースに来たようだ。5人は優花里の母親に案内され2階の優花里の部屋へ入った。

 

「どうぞー食べてください。」

 

優花里の母親がお菓子と飲み物をテーブルに置くと、優花里の父親も2階へと上がってきた。

 

「良かったら待ってる間に散髪しましょうか?」

「お父さんはいいから!」

 

優花里の母親が怒りぎみでそう言うと、優花里の父親はガックリと肩を落とし1階へと戻っていった。

 

「すみません、家に優花里の友達が来たのが初めてなもので、あの娘・・・戦車 戦車で気の合う友達が出来なかったみたいで・・・戦車道の友達が出来たって喜んでたんですよ!ではごゆっくり!」

 

優花里の母親がそう言って出て行くと窓からサンクスの制服を着ている優花里が登場し、その光景を見た一同は唖然とした。

 

「ゆかりん!?」

 

沙織がびっくりして声を上げると、優花里は首をかしげながら皆を見た。

 

「あれ?皆さんどうしたんですか?」

「秋山さんこそ」

 

みほも優花里がコンビニの制服を着ている姿を見て何事かと思った。華は、自宅へ来た理由を優花里に説明する。

 

「連絡が無いので心配して・・・」

「すみません!電源を切ってました。」

 

どうやら携帯の電源を切っていた為、連絡が取れなかったらしい。そして沙織が窓から登場した事に対して優花里にツッコンだ。

 

「つか!なんで玄関から入って来ないのよ!」

「こんな格好だと父が心配すると思って・・・」

 

先程の過保護っぷりを見た一同は「あぁ」と納得した。

 

「でも丁度良かったです!是非観て頂きたいものがあるんです!」

 

どうやら皆に見せたい物があるらしく優花里がポケットからUSBを取り出し、動画を再生すると画面には突撃!サンダース大付属!と表示されていた。

それを見た華と沙織は驚いた。

 

「こんな映像があるんですね」

「どこで手にいれたの?」

「ふふん」

 

優花里が得意気に鼻を鳴らすと、画面には優花里が潜入してる様子が映し出されていた。

 

「これどうしたの?」

 

沙織がこれをどうしたのか聞くと、優花里は動画の説明をした。

 

「帰る途中軽く編集してきました!テロップもまだ仮なんですけど」

「そうじゃなくて・・・」

 

セナは私も居たと言おうとしたが・・・このタイミングで言うと、面倒な事になりそうだったので黙っている事にした。

 

「最初にコンビニの制服を着ていたのは何で?」

 

沙織がそう聞くと、優花里は得意気に答えた。

 

「コンビニの定期便に乗り込んで潜入したんです。」

「成る程」

 

どうやら、コンビニの定期便でサンダース大付属までいったようだ・・・

映像が終わりかけた時、麻子が"ある異変"に気づいた。

 

「秋山さんテープを巻き戻してくれ」

「は・・・はい」

 

麻子の様子を見た沙織がどうしたのか尋ねた。

 

「麻子どうしたの?」

「いまおかしな奴が映ってた。」

 

麻子曰く、おかしな人が映像に映っていたというのだ、みほも何が映って居たのか気になるようだ。

 

「冷泉さん一体・・・」

 

そこには優花里が逃げる途中、カメラに向かって可愛い笑顔でウィンクしているセナの姿があった。

 

「これって・・・」

「セナさん?」

 

沙織とみほは唖然としており、セナが映像に映っているのを見た優花里は声を上げて驚いた。

 

「えぇ!?セナ殿いらっしゃったんですか!?」

「セナ・・・説明してもらうぞ」

 

麻子はセナにキスする勢いで、顔をズイッと近づけた。

セナは顔を真っ赤にしながら慌てて麻子から顔を反らした。

 

「麻子さん!近いです!恥ずかしいです!///」

 

セナは、みほ達にダージリン経由でサンダースの隊長に連絡を取り、学園へ見学へ行った事を説明した。それを聞いた麻子はセナと優花里に呆れた。

 

「2人ともなんて無茶な事を・・・」

 

麻子がそう言うと、沙織がセナに疑問に思った事を恐る恐る聞いた。

 

「ねぇ?セナちゃん・・・一応聞いておくけど、サンダース大付属に見学に行ったって事は、まさか今度はサンダース大付属に付くわけじゃないよね?」

 

沙織は不安そうにそう言ったが、セナはそれをキッパリと否定した。

 

「まさか!今回は公式戦ですから、まずあり得ません。」

 

セナは少し笑いながらそう言ったが、周りは不安そうな表情を浮かべており、みほが泣き出しそうになっているのを見たセナは、シスターのような笑みを浮かべながら皆に自分の想いを語った。

 

「私に・・・私に、戦車道への情熱をもう一度取り戻させてくれたのは皆さんです。私が、サンダースに行って偵察してきたのは・・・皆さんの力になり、情熱を取り戻させて頂いた事へのお礼がしたかったんです。優花里さんも事の経緯は違うと思いますが・・・同じ気持ちでサンダースに潜入されたのではありませんか?」

 

セナは自分の気持ちを伝えた後、優花里にも理由を聞いた。

 

「はい。私も少しでも皆さんの力になれればと・・・」

「それに・・・みほさん」

 

セナはゆっくりとみほの元へ行くと、みほの頬に手当て優しく微笑んだ。

 

「あなたの心が、こんなにも助けてと泣き叫んでいるのに、あなたの心はこんなにも傷付いているのに・・・あなたを見捨てて置いて行くことは出来ませんよ。」

 

セナはみほと居るのは気まずいから転校しようかとも考えたりしたが、喫茶店で今にも泣き出しそうなみほの表情を見て、彼女をこのまま置いて行けないと思った。それが、セナがサンダースに偵察に行った一番の理由だった。

みほは、セナの言葉と仕草を見て・・・一瞬ドキッとした。

 

「ズルいよ・・・セナさん」

 

みほは涙を浮かべながら笑っている。

セナは改めて皆に顔を向け直す。

 

「私は大洗を出て行くつもりはありません。不安にさせてしまって・・・ごめんなさい。」

 

セナは自分の行動で皆を不安にさせてしまった事を謝った。それを見た沙織と華は慌てて両手を振った。

 

「そんなっ!別に責めてる訳じゃかいからっ!」

「そうです!謝らないでください!」

「・・・まぁなんにせよ1回戦を突破しなければな」

「がんばりましょう!」

「一番頑張らなきゃ行けないのは麻子でしょ?」

 

沙織の言葉に麻子は首をかしげた。

 

「なんで・・・」

「明日から朝練・・・始まるよ・・・」

「えっ・・・」

 

朝練という言葉に朝がめっぽう弱い麻子は絶望した表情を浮かべた。

 

セナはみほが楽しそうにしているのを見て安心した。このメンバーなら、みほは戦車道を楽しく出来て、試合ではみほの長所が生きると。

 

セナは決意した。みほとみほの居場所を守ってみせると・・・

 

また次回

 




読んで頂きありがとうございました。


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第6話 セナと特注ユニフォーム

書くのって難しいですね。
コロナに負けず頑張りましょう。


初めての朝練の日・・・セナは5時半に目を覚まし、朝

食を作っていた。セナは昨日母親が送ってきた、白ベースの水玉模様のエプロン姿で、イスの上に立ち調理を行っている。その姿はまるでお母さんにご飯を作ってあげている娘のようだ・・・今日のメニューはトーストと半熟の目玉焼きとソーセージとレタス今丁度6時になった所で、最近日課となっている、みほに朝食を食べさせる為・・・彼女を起こしに行く。

呼び鈴をぴょこぴょこジャンプしながら押す。ピンポーンとチャイムが鳴り、みほがインターホン越しで話しかけてきた。

 

『はい』

「セナですー!みほさん起きてますかー?」

『あっ!ちょっと待ってて!』

 

みほがガチャっとドアを開けると目の前には白い水玉模様のエプロンを着たセナが立っていた。その姿を見てみほは顔を真っ赤にした。

 

「わぁ・・・」

「似合ってますか?お義母様に頂いたエプロンなのですが・・・」

 

セナは顔を赤くしながらモジモジとしている。

 

「うん・・・可愛いよ///」

 

みほはあまりのセナの可愛さに頬を真っ赤にしながらフリーズしてしまった。

 

「では!朝食食べましょうか!」

「うん!」

 

みほとセナは朝食を食べ朝練へと向かった。通学中・・・セナは周りに誰もいないことを確認するとみほへひっついた。

 

「えっ?セナさん?」

「~♪」

 

セナはたまに隙あらば、みほに甘えようとする。

本人曰く・・・たまにはお姉ちゃんに甘えたいそうだ。みほも満更ではないらしい・・・みほ自身セナが実の弟だとは思ってもいないだろうが・・・

朝練中、セナはみほに1年生のの発進から装填、砲撃までのタイムを測り改善点を探るようにお願いされていた。タイムを見て少し顔が険しくなる。

 

「12秒ですか・・・やはり・・・チームの呼吸がまだ合ってないみたいですね・・・しかし、1人1人の役割は出来てますから、あとは連携が上手く行けばタイムは格段と上がる筈です。」

 

セナは生徒会チームをチラッと見ると気合いが入っていた。

 

『気合いが入っている・・・というより、焦ってるという言葉がこの場合適切でしょう。無理はありません、負けたら廃校になるのですから』

 

セナは1年生を集合させ、1人1人の今後の課題と練習方法の説明を行い、そして夕方の練習が終わった。桃が解散を宣言した。

 

「では!本日の練習を終了する!解散!」

「お疲れ様でしたー!」

 

練習が終わると沙織が背伸びをした。

 

「疲れた~!なんか甘いもの食べたーい!」

 

みほは、この後みんなでデザートを食べに行こうと考えた。

 

「何か食べて帰る?」

「うん!」

 

すると華が沙織の肩を叩く。この後、何かあるようだ。

 

「あっ!私達用事あるからみぽりん!先に帰っていいよ!」

 

沙織が慌てた様子でみほに言った。

 

「うん。セナさん!一緒に帰ろ!」

「はい・・・では皆様また明日。」

 

セナは鞄を前にして軽く会釈をする。残った4人はみほとセナが去っていくのを見届けた。

 

「セナちゃんって、たまーにお嬢様に見える時あるなー」

「言われてみれば・・・」

 

沙織の言葉に華も頷く。

 

「セナ殿は元々聖グロリアーナでしたから、癖が抜けてないんでしょう。」

 

麻子は小声で「あれはあれで中々可愛い・・・」と呟いていた。みほとセナが下校している時、みほが何かを思い出したように 「あっ」と声を上げた。

 

「忘れ物ですか?」

「うん!作戦ノートを取りに戻るから!先に帰っててね!」

 

そう言うと、みほは通学路を引き返して行った。セナも帰ろうとした時、みほと同じように「あっ」と声を上げた。

 

「砲撃と操縦の練習しておかなければ・・・とりあえず自動車部に行きましょう。」

 

セナも通学路を引き返して行った。自動車部へ行き、ナカジマを呼んだ。

 

「ナカジマさーん!雨はナカジマさーん」

「えいやっ!」

 

セナがナカジマを呼んでいると、後ろからいきなり誰かに持ち上げられた。

 

「ひゃあぁぁん///んっ・・・ナ~カ~ジ~マ~さぁ~ん?」

 

セナを持ち上げたのはナカジマで、ナカジマがセナを降ろすと、セナは腰に両手を当て、顔を膨らませていた。

 

「ごめんねー!可愛いかったからつい~」

 

ナカジマは、両手を合わせながら笑顔で謝った。

 

「今日も砲撃と操縦の練習を付き合って貰わないと

許しません!」

 

セナは頬を赤らめご立腹である。

 

「付き合うから許してよ~」

「しょっ・・・しょうがないですね!」

 

 

ナカジマとセナは、校庭の端にパイロンを一定感覚で2つ横に並べた後、格納庫へ向かいM3リーへと乗り込む。

操縦手はナカジマにしてもらう。

 

「じゃあ!ナカジマさん!お願いします!」

「任せてー」

 

M3リーを格納庫から出し、練習場へと出た。そして、みほは作戦ノートを教室に取りに戻ってきた。みほは引き出しに手を入れ作戦ノートを探す。

 

「あった!」

 

みほが帰ろうとした時、沙織と華の席に鞄が掛けてあるままだった為、練習場に戻ってみることにした。するとそこには密かに練習をしている沙織 麻子 優花里 華の姿があった。

 

「9秒!さっきより早くなったかも!」

「次はもっと早く動いてみせます。」

 

みほは、ゆっくりと皆の方へ歩き、話しかけた。

 

「みんな」

「あっ」

「まだ練習してたんだ」

 

みほの言葉に沙織は少し照れながら言った。

 

「私達、みぽりんの足を引っ張らないようにしなきゃと思って。」

「お姉さん達を見返してやりましょうね!」

「ではそろそろ帰りましょうか」

 

みほ達が帰ろうとした時、パイロンを持って練習場へと行くセナとナカジマの姿が見えた。

 

「あっ!セナちゃんと自動車部の!」

「あれ?先に帰った筈なのに・・・何してるのかな?」

「面白そうだ・・・見物していこう・・・」

「冷泉殿!?」

「いいんでしょうか?」

「多分・・・」

 

みほ達は隠れてセナ達を見物することにした。セナは建物の影にみほ達が居ることに気がついた。

 

「沙織さん達こっそり練習してた様ですね」

「ここ最近毎日してるみたいだよ?」

「そうでしたか」

「じゃあ!M3!行くよ!」

 

格納庫からM3リーが勢い良く飛び出し、パイロンからかなり離れた所に行った。

 

「あんなに離れて何するんだろう・・・」

 

するとM3リーは勢い良くドリフトしながら円を描き始めた。その光景を見た優花里は、首を傾げた。

 

「遊んでるんでしょうか?」

「そうじゃないと思うけど・・・」

 

M3リーが円を描きながらドリフトをしてる最中に砲弾が放たれ、その砲弾は遠く離れている1つのパイロンへ吸い込まれる様にど真ん中に命中した。

 

「えっ!?あのドリフトしながら回っている状態で、遠くにあるパイロンのど真ん中に命中させるなんて・・・」

 

セナの技にみほも驚きを隠せなかった。優花里は目をキラキラさせながら、セナの技を見ている。

 

「さすがですっ!セナ殿!」

 

そして同じ状態でもう一発放ちもう1つのパイロンも見事ど真ん中に的中させる。

 

「なんと言ったら良いのでしょう・・・凄すぎて言葉が出ないと言うか・・・」

「あの不規則に回っている状態で瞬時に着弾点を計算したのか・・・」

 

さすがの麻子も、一瞬で風向きや距離を計算しているセナに驚いていた。

 

「あれこそが!走るコンピューター!セナ殿です!」

「良かった・・・セナちゃんが敵じゃなくて・・・」

 

セナが味方だった事に、沙織はホッと手を撫で下ろした。

 

「セナさんは多分聴力だけじゃなくて、五感も優れてるんだと思う・・・」

 

みほは、セナから何か学び取ろうと真剣にセナの動きを見ていた。

 

「恐らくな・・・セナは戦車から身体を出すことで、風や震動・・・更には音を肌で感じ取り・・・あのほんの一瞬で着弾点や発射角度を計算している・・・恐ろしい奴だ。」

 

麻子は、少し冷や汗を掻いていた。

セナとナカジマは戦車やパイロンの片付けを終え解散した。するとみほ達がセナの元へやって来た。

 

「セっ!セナさん!」

「皆さん!私の練習を見てたんですか?」

 

セナがキョトンとした顔でそう言うと、優花里は頭を豪快に下げ謝った。

 

「すっ!すみません!」

「堂々と見て下さって良かったのですが・・・」

「で・・・セナ・・・さっき居た女は・・・」

 

麻子は怒っているらしい、ナカジマとセナが仲良く話していたのが気に食わなかったようだ。

 

「ナカジマさんですか?彼女は私が昔レースをしてた時のチームメイトで、少し練習に付き合って貰ってたんです。」

「そうか・・・」

 

セナが事情を説明すると、麻子はなんとか納得してくれたらしい。

 

「では皆さん帰りましょうか!」

 

次の日、戦車の塗装を剥ぎ、各戦車にチームの区別を図るためマークを付け、ユニフォームの採寸を行った。練習を開始する直前杏に話しかけられた。

 

「セナちゃんちょっといいかな?」

「はい?」

「次のサンダース戦!1年生のチームで登録したから!頑張ってね!」

 

なんとレギュラー昇格の知らせだった。

 

「会長!ありがとうございます!」

 

セナはニパァと満面の笑顔でお礼を言った。

 

「っ・・・うっ・・・うん///」

(この笑顔・・・可愛い過ぎる!?成る程ね~ダージリン達が虜になるわけだ~。よーしユニフォームもセナちゃんだけ変えちゃおう!)

「では!早速!1年生チームと合流して練習してきます!」

「頑張ってね~」

 

セナはトテトテとM3リーへと向かう。数日後にユニフォームが届いたのだが、セナのユニフォームが皆と違う・・・上着は皆と変わらないのだが、スカートがフリフリになっている。

 

「会長ー・・・」

 

杏はセナの姿を見ると若干頬を赤らめながら、ユニフォームの感想を言った。

 

「うっ・・・うんうん!似合ってるよーセナちゃん!」

 

セナは恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして指をもじもじさせながら

 

「はっ・・・恥ずかしいですぅ・・・」

「大丈夫!その内慣れるから!」

(ヤバい!ヤバい!破壊力がヤバい!)

 

セナはみほに意見を求めた。

 

「みっ・・・みほさん///」

「どうしたの?セナさ・・・///」

 

セナのユニフォーム姿を見ると顔を赤らめフリーズしてしまった。沙織、麻子、優花里、華の4人も顔を赤らめながらセナに見とれていた。

 

「わぁ!」

 

1年生達もセナの姿に見惚れた。

 

「セナさん可愛い~」

 

桂利奈もみほ同様フリーズしている。

 

「・・・///」

 

そしてその場にいる全員がセナの服を見て見惚れた。そしてセナは小山柚子の方を向き、意見を求めたが

 

「うん!似合ってるよ!」

「・・・桃ちゃん先輩!」

 

セナは桃なら、破廉恥だ!ユニフォームを変えろ!と言ってくれると思い、桃の方を向いたが・・・

 

「ちゃんを付けるな!お前のユニフォーム姿・・・など・・・///」

 

なんと否定してくれるだろうと思っていた桃も顔を赤らめている。

 

「という訳でセナちゃん!これで行こう!」

 

杏に肩をポンと叩かれ、セナは諦める事にした。

 

「・・・はい///」

 

セナのユニフォームはフリフリスカートに決定した。そして、サンダース戦を迎える・・・走るコンピューター二木セナは、サンダース相手にどのような戦略をとるのか。




ロリッ娘で男の娘はさすがにマニアックすぎたかな?

皆様この小説を御覧いただきありがとうございます。


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第7話 走るコンピューターVSサンダース大付属高校

戦闘描写を甘くみてました・・・かなり難しい。理解不能な点が多々あると思いますがご了承ください。

あとセナの生年月日に不備がありましたので変更をしております。

では良い旅を




いよいよ迎えた全国大会1回戦大洗女子学園は、戦車のメンテナンスを行っていた。

セナは1年生に試合前の手入れの重要さを教えている。

 

「試合前の手入れを怠ってしまうと、重要な場面の時に故障してしまう恐れがあります。ですから、必ず試合前は砲塔 ハンドル 履帯 は必ず点検を行って下さいね?」

 

「はーい!」

 

1年生達は手を上げながら笑顔で元気よく返事をする。セナがボーッとしていると、みほが作戦の最終確認をする為セナの所へやってきた。

 

「セナさん。作戦の最終確認をしたいんだけど・・・」

「はい!わかりました。」

 

みほが、セナに作戦の流れを事細かに説明をしていると

、セナは急に真剣な顔になった。みほは不安だった、もしかして何かおかしな点があったのかと・・・しかしそれは考え過ぎだった。セナは笑顔でみほを見た。

 

「この試合・・・絶対に勝ちましょう。」

「うん!!」

 

みほは笑顔で返事をした後、桃が整備が終わったかどうかの確認を取る。

 

「全員整備は終わったか!」

 

各チーム、整備完了を桃に報告した。

 

「よし!終わったら試合まで全員待機!」

 

試合まで待機と桃が言うと、1年生チームの1人宇津木優季が何かを思い出したように声を上げた。

 

「あっ!砲弾忘れてた!」

 

宇津木の発言に対し大野あやがツッコミを入れた。

 

「それ一番重要じゃん!」

「ごめ~ん」

 

皆が宇津木のうっかりに笑っていると、サンダースのアリサとナオミがやってきた。

 

「呑気なものね」

「それでよくのこのこと全国大会に出てこれたわね?」

 

優花里はサンダースの2人が来た瞬間、2人にバレないために麻子の後ろに隠れた。

 

「貴様ら!何しに来た!」

 

桃が2人に対し、敵意を表す。

 

「試合前の交流も兼ねて食事でもどうかと思いまして。」

 

ナオミがそう言うと、杏がニカッと笑った。

 

「あぁ!いいねぇ~」

 

そしてサンダース陣営とやって来た。そこには屋台などが沢山並んでおり、皆その光景に驚いた。

 

「すご!」

 

沙織は、目を真ん丸にして驚いており、優花里と華もリッチさにビックリしている。

 

「救護車にシャワー車!ヘアサロン車まで!」

「本当にリッチな学校なんですねー」

 

皆が驚いていると、サンダースの隊長であるケイが杏の元へと歩いてきた。

 

「ヘイ!アンジー」

 

ケイの呼び方に対し、小山柚子は首を傾げる。

 

「角谷杏だからアンジー?」

「馴れ馴れしい!」

「やぁやぁ!ケイ!お招きありがとう!」

 

杏はケイに対し、お礼を言った。

 

「なんでも食べて行ってね!オーケー?」

「オーケー!オーケー!おケイ!だけに!」

「あはははっ!ナイスジョーク!」

 

ケイが杏の冗談に笑っていると、麻子の後ろに隠れている優花里に気付きこちらへ向かってきた。

 

「ヘイ!オットボール三等軍曹!」

 

ケイに見つかった優花里はしまったという様な顔をした。

 

「あっ!見つかっちゃったぁ!」

「怒られるのかなぁ?」

 

沙織が不安そうにしているのを見たセナは、大丈夫と笑って言い聞かせた。

 

「この前は大丈夫だった?」

 

優花里はケイの発言に対し、少し戸惑ったような表情を浮かべ、「はい」と返事をした。てっきり、学園に忍び込んだ事を怒られると思ったからだ。

 

「またいつでも遊びに来てね!うちはいつでもオープンだから!じゃ!」

 

ケイが、戻ろうとした時何かを思い出したようにセナの方を向いた。

 

「そうだ!セナ?」

「はい?」

 

セナは首を傾げながら返事をすると、ケイは笑いながらセナを見た。

 

「ウチに転入して来ない?」

 

セナはケイからの突然のお誘いに驚いた。

 

「えぇ!?あっあの!それは!」

「待ってください!セナさんは!」

 

みほが勧誘を止めようとした所でダージリンとオレンジペコがやってきた。しかし、何故か怖い顔をしていた。

 

「ケイ・・・私達のセナにちょっかいを出さないで頂きたいですわ。」

 

セナはダージリンとオレンジペコが来た事に驚いた。

 

「ダージリン様!それにペコちゃんも!どうして!」

「セナと大洗の皆様に激励を送りに来たのよ。」

 

ダージリンが少し微笑んでセナにそう言うと、ケイは少し慌てたように先程の発言を否定した。

 

「ジョークよ!ジョーク」

 

ケイはそう言ったが、オレンジペコは疑いの目を向けている。

 

「どうでしょう?ジョークには見えませんでしたが・・・」

 

オレンジペコがそう言うと、ダージリンがみほの方を向いた。

 

「それとみほさん。少しお時間を頂けるかしら?」

「は・・・はい」

 

そしていよいよ試合が始まる。試合前の挨拶の為、各学園の代表が握手をするのだが・・・

 

「これより!大洗女学園対サンダース大学付属高校の試合を開始する。」

 

試合前の挨拶は各チームの代表がやるはずなのだが・・・何故かセナが・・・

 

「はっ・・・恥ずかしい」

 

セナはスカートを両手で隠すようにモジモジしている。

杏曰く、セナの特注のユニフォームをお披露目する為だとか・・・セナの姿を見たケイは少し顔を赤くしていた。

 

「///っ!とっ!とっても可愛いわよ!セナ!今日の試合よろしくね!」

「はっ・・・はい///」

 

一方観客席にいるダージリンとオレンジペコはセナのユニフォーム姿を見た途端、ティーカップを2人同時に落とした・・・

 

「あっ・・・あぅ///」

「・・・ ///」

 

2人共顔が真っ赤で破壊力はバツグンで、父親であるラウダはスマホのカメラを構えパシャパシャとシャッターを押していた。

 

「ふむ・・・似合ってるじゃないか・・・かなえも喜ぶぞ。」

 

そして試合開始前に、みほは作戦の最終確認を皆にしていた。

 

「説明した通り、相手のフラッグ車を戦闘不能にした方が勝ちです。サンダースの戦車は攻守共にこちらより上ですが、落ち着いて戦いましょう。機動性を生かして常に動き続け、相手を分散させて!三突の前へ引きずり出して下さい!セナさんはもし相手の動きがおかしかったりしたら直ぐに報告、万が一の時はセナさんがウサギさんチームの指揮をお願いします!」

 

何故みほがセナに対してこんな指示を出したかというと・・・ダージリンに、『セナは戦局をきちんと見て状況を判断出来ますので、ある程度自由にさせて大丈夫ですわ。』と言われた為だ。

 

『試合開始!』

 

試合の合図が鳴ると、両者一斉に動き始めた。まず最初にみほは、偵察に行くように指示を出す。

 

「ウサギさんチームは右方向の偵察をお願いします。アヒルさんチームは左方向を!カバさんチームは私達と一緒に亀さんを守りつつ前進します。パンツァーフォー!」

 

ウサギさんチームは指示通り森に偵察に向かうが、森をしばらく進んだ所で、セナが異変を感じ戦車を停止させた。

 

「桂利奈さん!ストップ!」

「はい!?」

 

桂利奈は慌てた様子で急ブレーキを掛け停車させると、セナは戦車から身を乗りだし周囲を確認した。丘の上に3両、森に3両戦車がこちらへと向かって来ていた。セナはみほに無線を入れる。

 

『みほさん・・・こちらウサギさんチーム・・・B085S地点にて、シャーマン6両に囲まれました。』

『了解!増援を送りますので、慎重に対応してください。』

 

みほに無線を入れた後、一年生達に真剣な顔を向けた。

 

「シャーマン6両に囲まれました。」

「えぇ!」

 

セナの発言に対して、一年生は怯えた表情になった。セナはこの状況を打破する為、桂利奈とポジションを入れ替える事にした。この試合では、一年生達に経験を積んで貰うため、セナは介入しないようにしようとしていたが、この敵戦車6両に囲まれた状況は一年生達には荷が重すぎる。

セナは迷わず砲撃準備を指示し、フルスロットルで

戦車を前進させると、シャーマン6台が追ってきた。

その映像がモニターに映され、映像を見ている聖グロリアーナの2人がこの状況に対し話していた。

 

「さすがサンダース・・・数に物を言わせる戦い方をしますね。」

「こんなジョークを知ってる?アメリカ大統領が自慢したそうよ?我が国には何でもあるって、そうしたら外国の記者が質問したそうよ?地獄のホットラインもですか?って」

 

ウサギさんチームはシャーマン6両に追われており、セナは砲撃を避けながら反撃の機会を待っていた。

 

「皆さん!そろそろこちらから仕掛けますよ!」

「はい!」

 

木の数が増えてきた所で、セナは突如左にドリフトさせ、森の中へ急旋回をする。セナは木の数が多い場所へ行き、木を盾にしながら戦うのが狙いの様だ。

M3リーの変則な動きにケイは目を見開き、驚いていた。

 

「嘘!?」

 

セナは戦車をドリフトさせ、副砲の狙いを修正しながらながら砲撃を指示する。

 

「副砲撃て!」

 

爆音と共に撃った弾は、木と木の間をすり抜け後方のシャーマン一台の履帯に当たり一台走行不能となった、セナは尽かさずシャーマン5台の後方に回り込み、セナが細かい軌道を修正し、主砲を発射させる。

 

「主砲!撃て!」

 

M3リーの前にいたシャーマンを1両撃破し、シャーマンからの砲撃を避けつつアッサリとシャーマン計4両を撃破した。聖グロリアーナの2人は、少し微笑みながらセナの活躍を見ていた。

 

「サンダースもセナに対して、無駄な事をしますわね。」

「ふふっ」

 

オレンジペコが横を見ると、ダージリンは不適な笑みを浮かべていた。

 

「もしかしてダージリン様・・・大洗に何かアドバイスを?」

「えぇ・・・"最強の切り札"の使い方を伝授したまでですわ。」

 

試合を見にやって来ていた黒森峰の2人は、セナの圧倒的な戦いぶりを見て唖然としていた。

 

「一気に4両撃破・・・」

「あぁ・・・」

 

サンダースでは、M3リー1両にシャーマン4両が撃破された事で、ケイは軽くパニック状態になっていた。

 

「たった敵戦車1両にシャーマン4両を撃破された上に後方に回り込まれるなんて!こんな強いチームだなんて聞いてないわよ!」

 

ウサギさんチームは、無線でシャーマン4両撃破した事を無線で連絡した。その無線を聞いた沙織は歓喜し、みほ達に報告する。

 

「ウサギさんチームが、シャーマン4両撃破したって!」

 

沙織の報告に、優花里と麻子は喜んだ。

 

「さすがセナ殿です!」

「やはり、味方になると頼もしい」

 

桂利奈は、続けてセナがシャーマン3両がみほ達の方へ向かっていくのを察知した事を沙織に報告し、沙織はそれをみほ達に報告した。

 

「セナちゃんがこっちにシャーマン3両来てるって!」

 

沙織からの報告に優花里と華は驚愕する。

 

「えっ!?ってことは全10両中9台この森に投入ってことですか!」

「随分大胆な事をしますね」

 

報告を聞いたみほは、うさぎさんチームにこちらへ合流するように指示を出す。

 

『ウサギさんチーム!私達とこのまま合流しましょう!南東へ進んで下さい!』

 

サンダースのアリサは、通信傍受機を使い大洗のほぼ全ての無線のやりとりを傍受していた。先程のあんこうチームとうさぎさんチームのやりとりを聴くと、直ぐに隊長であるケイに指示を送った。

 

「南南西に2両回して下さい」

 

アリサが指示を送るが無線の奥からケイのイライラしたような口調の返事が返ってきた。

 

「こっちは6両中4両撃破されてるから回す余裕ないよ!」

 

アリサは、ケイの返事を聞いて唇を噛んだ。4両撃破された際の大洗の無線が聞き取りづらくアリサは、シャーマンが4両撃破されたとは知らなかったのだ。さらにこちらは、通信傍受機を使い戦車道のルールのグレーゾーンを突いて戦っているのに、相手車両に全く歯が立たない・・・アリサはとても焦った表情になっていた。

 

一方セナは、操縦手を桂利奈に戻した後、M3リーの横のハッチから身を乗り出して周囲を警戒していた。セナは先程のサンダース側の動きが気になっていた・・・この森にいきなり9両の戦車を投入するのは現実的な作戦では無い・・・敵陣地に9両の戦車を送り込み総攻撃を仕掛けるという作戦は、相手の動きが完璧に分かっていなければ成立しない・・・何故なら、相手の作戦によって投入した9両の戦車が全滅する可能性があるからだ。そして自分達の動きをわかっていたかのように、ピンポイントの地点に戦車を送り込んで来たという事は、サンダースに自分のように周囲の動きを把握できる人間が居るか・・・または、無線のやりとりを傍受している人間がいるかだ。セナでも正確に動きを把握する事は出来ない、となると通信を盗聴されている可能性がある。セナは通信傍受機が打ち上げられているか確認する為、上空を確認していると、森の奥からみほ達がこちらへ向かってきているのが見えた。みほは、セナ達と合流すると周囲を見渡し始めた。どうやらみほもセナと同じ考えで通信傍受機が打ち上げられていると考え探しているらしい。セナが上空を確認していると、通信傍受機らしき物が打ち上げられているのが見えた為、みほに上を見るようにジェスチャーする。みほは、わかったとセナに頷き、バレないように森の傍らに戦車を止め臨時作戦会議を開始した。

 

優花里は、ルールブックを確認し通信傍受機を使って良いのかどうかを調べていた。

 

「確かに・・・ルールブックには、通信傍受器を打ち上げちゃいけないとは書いてないですね。」

 

優花里の話を聞いた沙織はサンダースの戦い方に激怒した。

 

「酷っどーい!いくらお金が有るからって!」

 

華はしばらく考えた後、セナに通信傍受機を主砲で撃ち落とせないかと尋ねた。

 

「セナさん・・・通信傍受機を撃ち落とす事は可能ですか?」

 

華の質問に対し、セナは口に手を当て少し微笑みながら答えた。

 

「撃ち落とす事は可能ですが・・・通信傍受機を使って貰った方がこちらから攻めやすいと思いますよ?」

 

セナの言葉に沙織は驚いた。

 

「でも!相手にこっちの無線は全部聴かれてるんだよ!?」

 

セナはニッコリと笑い、手をパンと叩いて沙織にクイズを出した。

 

「通信機器は・・・戦車に付いている無線と後もう1つは何でしょうか?」

 

セナの言葉に、みほはハッとした。

サンダースのアリサは大洗の無線を傍受していた。

 

『全車0985の道路を南進!ジャンクションまで移動して!敵はジャンクションを北上してくる筈なので!通りすぎた所を左右から狙って』

 

大洗の無線を傍受したアリサは直ぐにケイに指示を送る。

 

「目標はジャンクション!敵は左右に伏せてるわ!囮を北上させて!本体はその左右から包囲!」

 

それを聞いたケイは首を傾げた。何故詳しい事まで分かるのかと・・・

 

「オーケー!オーケー!でも何でそんな事もわかっちゃう訳?」

「女の勘です。」

「あはははっ!そりゃ!頼もしい!」

 

 

 

大洗では、あんこう アヒル ウサギ チームは丘の上で待機し、カバさんチームは敵がやって来る予定の場所の茂みに隠れ、大木を括り付けたカメさんチームが近くで待機していた。みほは双眼鏡で敵の動きを確認した後、指示を送る。

 

「囲まれた!全車後退!」

 

38tがフルスロットルで大木を引っ張り砂埃を上げ移動した。何故そんな事をするのかというと、3両の戦車は丘の上で待機している為、砂埃で全車両がそこに居ると敵に思わせる為だ。

 

「見つかった!みんなバラバラになって待避!38tはC1024r地点に隠れてください!」

 

サンダースでは、大洗の無線を傍受したアリサが、ニヤッと笑い、指示を送っていた。

 

「38t?敵のフラッグ車ね!貰った!チャーリー!ドック!C1024Rに急行!見つけしだい砲撃!」

「はい!」

 

敵戦車1台が目標地点に到着すると、そこには38tではなく草影に隠れて身を潜める三突がいた。エルヴィンが砲撃指示を出す。

 

「撃てぇーい!」

 

三突の放った砲撃は見事シャーマンに的中し撃破した。

先程の敵が北上してきたら左右から狙い打つというのはフェイクで、実際は通信傍受を逆手に取り、こちらのフラッグ車が茂みに隠れたと嘘の情報を流し、敵がこちらへ向かって来た所をその地点で予め待機させていた三突で狙い打つという作戦だった。

 

サンダースでは、撃破された車両より無線が飛んでいた。

 

『チャーリー!ドック!戦闘不能!』

 

その言葉にアリサとケイは驚いた。

 

「嘘!?」

「Why!?」

 

大洗ではしてやったりというよなムードが流れていた。何故なら、無線のやりとりは全部嘘で実際は携帯電話で連絡を取り合って居たからだ。

優花里と華は作戦が成功した事を喜んでいた。

 

「やった!作戦成功です!」

「まさか私達が先に5両も撃破するなんて!」

 

しかし、沙織にはある疑問をみほに言った。

 

「でもこれはフラッグ車を倒した方が勝ちなんでしょう?」

「うん」

「次はどうする?」

 

麻子がそういうとみほは、次の作戦を実行する事にした。

アリサは大洗に撃破された事でイライラしていた。

 

「いい気になるなよ!」

 

そして大洗の無線を再び傍受する。みほとセナがやりとりをしているようだ。

 

《全車荒地に集合してください!ファイアフライがいる限り私達に勝ち目はありません。危険ですが、荒地で陣取って上から一気に叩きます。》

《やめましょう!危険すぎます!》

《お願いセナさん・・・》

《わかりました。》

 

セナとみほのやり取りを聞いたアリサはガッツポーズをした。

 

「捨て身の作戦に出たわね?丘の上に上がったらいい標的よ?」

 

アリサはケイに荒地に向かうように言った。

 

「荒地に向かって下さい。」

「どういう事?」

「敵の全車両が集まる模様です。」

 

アリサの情報にケイは目を見開いて驚いた。

 

「ちょっとアリサ!それ本当?どうしてわかっちゃう訳?」

「私の情報は確実です。」

「オーケー!」

 

サンダースのフラッグ車を除く全車両が大洗が居ると思われる荒地へと向かったのだが、そこには戦車1両すら居なかった。それを確認したケイはアリサに連絡する。

 

「何も無いよー!」

「そんな筈ありません!」

 

アリサは、自分の使っていた通信傍受を逆手に取られたと今認識した。

 

「もしかしてバレてた・・・まさかハメられた?じゃあ!大洗の車両は何処に!」

 

するとアリサの後ろにいつの間にかM3リーが来ており、満面の笑顔のセナが顔を出していた。

 

「あなたのハート♪撃破しちゃうぞ♪ばきゅーん!」

 

セナが両手で銃を打つ真似をした後、2人の間に少し沈黙が流れた。そして・・・セナに挑発された為か、アリサの怒りのボルテージはマックスへ昇った。

 

「あんの!チビを撃破しろぉぉぉお!」

「連絡する?」

「するまでも無いわ!撃て!撃てぇぇぇえ!」

 

M3リーの車内は、アリサの怒号でみんな怯えていた。桂利奈に関しては悲鳴を上げている。

 

「いぃぃ!?怒ってるぅぅぅ!」

 

桂利奈は必死に敵フラッグ車から逃げる。梓も泣きそうになりながら、セナに文句を言った。

 

「もーう!セナさんが挑発するからぁぁぁ!」

 

しかし、皆怖がっているのとは裏腹に、優季はセナの笑顔にメロメロだった。

 

「でもセナさん可愛いかったぁ~」

「ありがとうございます。みほさぁ~ん♪敵フラッグ車 0765地点にて発見しましたぁ♪」

 

セナは、みほに敵フラッグ車を発見した事を連絡したが、みほはセナの甘えたような声に戸惑っていた。

 

「セッ・・・セナさん?えっと・・・0765地点ですね!」

 

すると無線の奥からアリサの怒号が聞こえて来た。

 

『このロリが待ちやがれぇぇぇえ!』

 

その怒号にみほ達は苦笑いをしていた。みほは気持ちを切り替えると、セナ達に指示を出す。

 

「そのまま敵を引き付けて下さい!0615地点へ!武部さん!メールをお願いします!」

『了解』

 

M3リーの車内では、怒涛の砲撃ラッシュにみんな怯えていた。

 

「当たったらどうしよぉぉ!」

 

桂利奈は不安そうにそう言ったが、セナは少し微笑んだ。

 

「大丈夫です。敵は心を乱していますから、当たる確率は低くなります。」

 

セナはそう言ったものの、車長の梓は納得がいかないようだ。

 

「でも!あの怒ってた人は砲撃手じゃありませんでしたよ?」

 

セナは紅茶を飲みながら、梓の方を見た。

 

「はい。あの人は車長です。梓さん車長の役割を覚えてますか?」

 

梓はセナの質問を少し考えた後、セナが前に車長の役割を教えてくれた言葉を思い出した。

 

「チームの司令塔って・・・あっ!司令塔が崩れたらチームの統一性が乱れる!」

 

梓の回答にセナはウィンクをした後、チームの士気を上げる為気合いを入れた。

 

「そうです。今のシャーマンはチームとしての統一性は皆無です。そして!今がこれまで練習を続けてきた成果を見せる時です!

私は知ってます!あなた達が放課後血の滲むような練習をしてた事も!最初のグロリアーナ戦の後!悔しくて泣きそうになってた事も!あなた達はあの時逃げ出したチームじゃない!あなた達を指導している先生として言います。この戦い自信を持って挑んで下さいっ!」

 

セナの言葉に一年生達は元気良く返事をした。

 

「はい!!!セナさん!」

 

アリサ達は、急に前を走るM3リーの動きが良くなった事に驚いていた。

 

「くっ!チョロチョロと!っ!?M3リーの動きが変わった!」

 

M3リーとシャーマンはそのまま大洗の車両が待機している場所へと走っていた。

みほ達が待機していると、遠くからM3リーがこちらへ向かって来ているのが見えた為、みほは全チームに指示を出す。

 

「先程偵察に行っていたウサギさんチームが来ました!突撃します!ただしカメさんは!アヒルさんとカバさんで守って下さい!」

 

M3リーが急旋回した後、アリサ達の目の前にはⅣ号と38tを守りながら三突と89式が来ていた。それを見たアリサは慌てて車両を止める。

 

「ストップ!ストップ!大洗女子全車両が前方から向かって来ます!」

 

アリサからの無線にケイは戸惑った。

 

「ちょっと!話が違うじゃない!」

「無線傍受を逆手に取られたのかと・・・」

 

アリサが無線傍受をしていた事を白状すると、無線越しからケイの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「ばっかもぉぉぉん!」

「すみません」

「戦いはフェアプレイでって!いつも言ってるでしょ!いいから!とっとと逃げなさい!」

「イェス!マム!」

 

シャーマンは大洗全車両から逃げ、まるで鬼ごっこをする形になった。

聖グロリアーナのダージリンとオレンジペコはその光景をみて微笑んでいた。

 

「大洗も大胆な事をしますね。」

「ふふふっ・・・まるで鬼ごっこね。」

 

運営側の蝶野は大洗から逃げるM4シャーマンを見てお腹を抱えて笑っていた。

 

「あはははっ!壮大な鬼ごっこね!」

 

大洗から逃げるアリサ達は、砲撃をしながらケイ達が待つ場所へと荒野を走っていた。

 

「このタフなシャーマンがやられる訳ないわ!なにせ!50000も造られた大ベストセラーよ!丈夫で壊れにくいし!おまけに操縦性も高い!馬鹿でも扱えるマニュアル付きよ!」

 

アリサの言葉にチームメイトがツッコミを入れる。

 

「お言葉ですが!自慢になってません!」

「うるさいわよ!」

 

アリサは砲撃が大洗の車両に一発も当たらない為、イライラしていた。

 

「なによ!あの戦車!小さすぎて的にもならないじゃない!当たれば一ころよ!どうせ直ぐに廃校になるくせに!さっさと潰れればいいのよー!」

 

顔を出しながら大洗に向かって叫んだのだが、みほ達は何を言ってるか分からず首を傾げているのだが・・・その言葉は耳の良いセナにはハッキリと聞き取れていた。セナは険しい顔になりあやに砲手交代をお願いする。セナはアリサの『さっさと潰れろ!』という言葉に怒っていた・・・今戦っているみんなは大洗が好きだ。廃校になると知っている生徒会はそれを打破すべく必死に戦っている・・・それに、みほがやっと見つけた居場所を潰れろと言われた事がセナには我慢できなかったのだ。

みほは、M4シャーマンとの距離が縮まっているを確認すると全チームに指示を送る。

 

「敵との距離詰まって来てます!60秒後再開予定!順次発砲を許可します。この先は登り坂!迂回しながら目標に接近して下さい!」

 

みほが指示を出した直後、物凄い砲撃音がフィールドに響いた。その音に華、優花里、沙織の3人は驚いた。

 

「今のは!?」

「ファイアフライの17ポンド砲です!」

「今物凄い音がしたよ!?」

 

そう物凄い砲撃音の正体はファイアフライの17ポンド砲の音だったのだ。ファイアフライの砲撃音を聞いたセナは、さっきのアリサの発言で怒り心頭だったのに、うるさい砲撃音でさらに怒りが込み上げた。

 

「うるさい砲撃音ですね・・・しかし冷静さを掻いては相手の思う壺です・・・一撃で仕留めます。風は・・・上の方だと瞬間風速20m/s程でしょうか。」

 

セナは後ろから風が強く吹いているのを確認すると、遠距離砲撃をする為、桂利奈に後方にある丘の頂上まで行くように指示を出した。

 

 

 

 

聖グロリアーナでは大洗の戦況を見ているオレンジペコとダージリンが会話をしていた。

 

「大洗ピンチですね」

 

オレンジペコがそう言うと、ダージリンは急に変な話をした。

 

「サンドイッチはね?パンよりもキュウリの方がおいしいの」

 

ダージリンの意味不明な言葉にオレンジペコは眉間を寄せた。

 

「はい?」

「挟まれた方がいい味だすのよ?」

 

一方セナは、丘の上からM4シャーマンに狙いを定めていた。M4シャーマンがセナの射程圏に入った瞬間、セナは風向きが追い風になっているのを確認すると、セナは丘の上から砲弾を風に乗せシャーマンに向け砲撃を行った。映像でセナが後方にいるのを確認したダージリンとオレンジペコは、大洗の勝利を確信した。

 

「終わりですわね」

「セナの砲撃からは逃げられません。どんなに逃げようと・・・セナの砲弾は追ってきます」

 

セナが砲撃し終わりかと思われたのだが、少し遅れてⅣ号も砲撃をした。セナはⅣ号がほぼ同時に撃ったのを確認すると、中学の頃にチームメイトに手柄を横取りされた苦い過去が甦ってきた。皆固唾を呑んで見守る中2つの弾がM4シャーマンに当たりコールが鳴る。

 

『大洗女子学園の勝利!』

 

大洗女子学園が勝利したと確認した観客から大歓声が上がった。

Ⅳ号の中では、自分たちが勝利した事に喜んでいた。

 

「やった!みぽりん!」

「やりました!みほさん!」

「ありがとう華さん」

「みほさんが励ましてくれたお陰です。」

「私は何も」

 

皆が喜んでいる傍らでセナは落ち込んでいた。それはそうだろう・・・皆Ⅳ号とシャーマン軍団との戦いに夢中でセナが砲撃した事に気付かなかったのだから。

大洗の皆がⅣ号へと集まりみほ達を祝福し、セナはM3リーに寄りかかって泣きそうになっていた。

セナの表情を見ていたダージリンとオレンジペコはセナの精神状態を心配し、セナを慰める為一目散にセナの元へと向かった。

そして試合終了の挨拶が終わりケイがみほの元へやってきた。

 

「あなたが?キャプテン?エキサイティング!」

 

ケイはみほに抱き、みほは少し難しそうな表情を浮かべる。

 

「こんな試合が出来るとは思わなかったわ!盗み聞きみたいな真似をして悪かったわね」

「いえ・・・私は」

 

一方セナはオレンジペコの元へと走っていき、セナはオレンジペコに一目散に泣きついた。

 

「ペコちゃぁぁぁぁあん!私!頑張ったのに!またあの時みたいにー!」

 

セナは皆から自分の戦果が認められず、ワーン!ワーン!とオレンジペコの胸の中で泣いている。それを見たダージリンは優しい笑顔でセナの顔をそっと撫でた。

 

「今日の勝利はあなたがほとんど貢献したようなものよ。」

「セナは良く頑張りました。最後のフィニッシュを決めたのがセナだったのをダージリン様と私はきちんと見てましたから。泣かないで」

「うん・・・」

 

ダージリンとオレンジペコはセナの頭をヨシヨシと撫でた。そして夕方 セナ みほ 沙織 麻子 華 優花里の6人は帰ろうとしていた。沙織が何か食べに行こうと提案する。

 

「さぁ!こっちも引き上げるよー!お祝いに特大パフェを食べに行く?」

「行く」

麻子がそう言うと、突然麻子の携帯が鳴る

 

「携帯鳴ってるよ?誰?」

「知らない番号だ・・・はい・・え?はい・・・」

 

麻子が電話に出ると表情が暗くなった。

 

「どうしたの?」

 

麻子の表情を見た沙織が心配して聞いたが、麻子は泣きそうな顔をしながら首を横に振る。

 

「何でもない」

「何でもない訳ないでしょ!」

 

麻子は肩を震わせながら電話の内容を喋った。

 

「おばぁが倒れて・・・病院に」

「えぇ!?」

「早く病院へ!」

 

華は病院に行くように言うが、大洗まで帰る手段が無い。

 

「大洗までどうやって・・・」

 

沙織は、帰る手段を考えたが何も思い浮かばない。みほはうつ向きながら帰る手段を述べた。

 

「学園艦に帰還してもらうしか・・・」

 

セナは当てがあるのだが・・・セナはみほ達にラウダ航空の娘(息子)だと知られる可能性があるから嫌だった・・・どう思われるかわからないからだ。しかし、友人が家族の事で困っているのに・・・それを、見過ごすという行為はセナは出来ない。

 

「私に任せて」

 

セナは麻子の背中を優しく撫でた。

 

「セナ・・・」

 

セナは携帯で父親であるラウダに電話を掛ける。

 

『セナか?どうした』

『ラウダ航空のヘリ1台試合会場まで飛ばして頂けますか?』

 

ラウダ航空というワードにその場に居た全員が驚いた。

 

「ラウダ航空ぅ!?」

 

ラウダからセナに予想外の返答が来た。

 

『丁度上空に居るから今から着陸する』

『えっ!』

 

セナが驚いて上を見上げるといつから近くに居たのか、ラウダ航空のヘリが着陸してきた。着陸すると操縦席から父親が手を招いていた為、セナは駆け寄る。

 

「セナが友人の前でラウダ航空の名前を出してまで呼ぶということは余程の緊急事態なんだろう?」

「うん。お父様・・・大洗まで」

 

セナは父親と話した後、麻子の元へ駆け寄った。

 

「麻子さん・・・行きましょう・・・お婆様の元へ」

「セナ・・・あの・・・ありがとう」

 

麻子は悲しそうな表情でお礼を言った。

 

「お礼はお婆様の元へ行った後で・・・麻子さん乗って下さい。」

「私も行く!」

 

沙織も麻子とセナに続いてヘリコプターに乗り込む

そしてラウダはみほ達にも乗れと声を掛けた。

 

「そこにいるお友達3人も乗ってくれ!うちの娘が世話になっているから!大洗まで一緒に送る!」

 

皆乗り込むとヘリは会場を飛び立った。

そこには、騒ぎを聞きつけやって来ていた西住まほが居た。内容を聞いていたまほは、自分がどうにかしようと考えていたが、セナが代わりに助け船を出してくれた為、その必要は無くなった。まほはセナが呼んだヘリコプターのラウダ航空のマークを見て、昔西住家が養子に出した自分の弟ではないかと疑った。

 

「・・・セナ・・・礼を言う。」

 

試合後 サンダースは学園でM4シャーマンの傷跡を確認していた。試合後に戦車を確認した所、砲弾の痕が2つあった為だ。ケイは2つの内1つの砲弾を撃った戦車を探っていた。

 

「どういうこと?アリサ!確かにⅣ号に砲撃されたわよね?」

「はい・・・私にもサッパリ」

 

ケイは机をバンと叩く。

 

「じゃあ一体どの戦車が撃ったの!?」

 

真相は謎に包まれたままであった。




好評のコメントと共に小説の不備をご指摘までして頂き感謝しております。未熟者ですがこれからも宜しくお願いします。


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第8話 二木家からの招待状とお見舞い

色々ご指摘頂いた点に関してですが・・・申し訳ございません。これが今出せる私の限界です。

日々頑張って参ります。


誹謗中傷等はお薦めしません。自分が惨めになるだけです。


では・・・ゆっくりしていってね♪


みほ達を乗せたラウダ航空のヘリは、病院の最寄りのビルのヘリポートに着陸し、セナは麻子と沙織に早く降りてお婆ちゃんの元へ急ぐように促す。

 

「麻子さん!沙織さん!お婆様の元へ行ってください!」

「うん」

 

麻子はセナに頷き、沙織はセナの父親にお礼を言う。

 

「ありがとうございました!」

「お礼は要らない。早くその娘のお婆ちゃんの所へ行ってあげなさい。」

 

2人はお礼を言った後、病院へ向かった。ラウダは麻子と沙織を降ろした後、しばらくセナの友人であるみほ達と話をする事にした。ラウダはヘルメットを脱いだ、彼の容姿は髪は少し癖っ毛があり、目元は堀が深く目の色は水色でハンサムという言葉が似合うような外見だった。

 

「いつも娘が世話になってるな。確か・・・西住みほさんと五十鈴華さんと秋山優花里さんだったかな?」

 

みほは、自分達の名前を知られていた事に驚いた。

 

「はい・・・どうして私達の名前を?」

「セナから君たちの事は聞いている。数少ない友人が出来たー!とね」

 

ラウダは笑いながらセナを見た。

 

「お父様!それは言わないでぇー!」

 

セナは顔を真っ赤にしながら、ラウダの身体をポカポカ叩いている。

 

「セナさんのお父さんはラウダ航空のパイロット何ですか?」

「まぁそんな所だ」

 

優花里の質問をラウダは言葉を濁しながら返答をした。

ラウダがセナを見ると、自分の事を打ち明けようか悩んでいた為、ある事を考えた。

 

「そうだ。皆が良ければ是非家に遊びに来てくれ。」

「お父様!?」

 

その言葉を聞いたセナは目を見開いてビックリしている。下手したら自分の性別までバレる恐れがあるからだ

 

「いいじゃないか。母さんもセナの友人に会いたいと言っていた。更に絆を深め合う良い機会になるだろう。皆どうかな?」

 

ラウダはみほ 華 優花里に返答を求めた。するとみほ達はウキウキしながら喜んだ。

 

「セナさんの家!?行ってみたい!」

「是非お邪魔させてください」

「セナ殿のお家ですか!是非!」

 

皆の反応を見たセナは覚悟を決め、家に招待する事にした。

 

「家には何もありませんが、出来る限りのおもてなしをさせて頂きますので、是非いらしてください」クスッ

「外が暗くなってきたな。家の近くまで送ろう。」

 

ラウダ航空のヘリはみほ達を乗せ、家の近くのヘリポートへ着陸し、セナ達はヘリから降りた。

 

「では都合の良い日を連絡してくれ。準備しておこう。」

 

ラウダはセナに日程が決まったら連絡してくれと言った後、ヘリで星の彼方へと飛び立って行った。数日後セナ達は花束を持って、麻子のお婆ちゃんの元へお見舞いに行くことにした。セナの服装は、さくらんぼの模様が沢山入った真っ白のワンピースを着ている。そして病室の前に着くと、怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「もういいから帰りな!いつまでも病人扱いするんじゃないよ!私の事はいいから学校に行きな!遅刻なんかしたら許さないよ!?なんだいその顔は!人の話ちゃんと聞いているのかい!?全くお前は!返答も愛想も無さ過ぎなんだよっ!」

「そんなに怒ったら血圧上がるから・・・」

 

病室から怒鳴り声が聞こえた為、優花里は恐がっていた。

 

「帰ります?」

 

優花里は帰ろうと提案するが

 

「いえ!折角来たんですから!ここは突撃です!」

「パンツのアホー♪」

 

セナと華は行く気満々だ。

 

「五十鈴殿とセナ殿って結構肝座ってますよね・・・」

「あはは・・・」

 

優花里の言葉に対してみほは苦笑いしている。そして、平然とした顔でセナが扉を開けた。

 

「失礼しまーす。」

 

病室に入ると沙織が出迎えた。

 

「あっ!セナちゃん!華にみぽりんにゆかりんも!入って!入って!」

 

沙織がセナ達を病室に入れると、麻子のおばあちゃんは険しい顔をした。

 

「なんだい!?あんた達!?」

「戦車道を一緒にやっている友達・・・」

「戦車道!?あんたがかい?」

「うん」

 

セナ達は麻子のお婆ちゃんに自己紹介をする。

 

「西住みほです。」

「五十鈴華です。」

「秋山優花里です。」

「二木セナです。」

 

自己紹介が終わった後、沙織は麻子のお婆ちゃんに1回戦を突破した事を報告する。

 

「私達!全国大会の1回戦勝ったんだよ!」

「1回戦くらい突破出来なくてどうするんだい!で?戦車さん達がどうしたんだい?」

 

麻子のお婆ちゃんは何故彼女達が見舞いに来たのかを麻子に聞いた。

 

「試合が終わった後、お婆ぁが倒れたって連絡が・・・でお婆ぁを心配してお見舞いに・・・」

「私じゃなくてアンタを心配してくれたんだろっ!」

「わかってるよ・・・」

「だったら!ちゃんとお礼言いな!」

 

麻子は照れくさそうにお礼を言う。

 

「わざわざありがとう・・・」

 

しかし、麻子のお婆ちゃんは厳しくダメ出しをする。

 

「あんたはもうちょっと愛想良く言えないのかいっ!」

 

それを聞いたセナはそんなに愛想悪かったかな?と疑問に思ったので、麻子のお婆ちゃんに聞いてみることにした。

 

「あのぉ・・・」

 

セナは首を傾げながら呼びかけた。セナは怒鳴られるかと心配したが、その心配は無かった。

 

「あらまぁ♪可愛い!・・・じゃない!一体なんだいっ!」

 

麻子のお婆ちゃんは一瞬甘い顔になったが、すぐに気を取り直した。それを見た一同は驚がくする。特に麻子と沙織は一番驚いていた。

 

「マジでっ!?」

「お婆ぁの顔が一瞬優しくなった・・・」

 

セナは麻子のお婆ちゃんに、自分が麻子の事をどう思っているかを話す。

 

「麻子さん・・・そんなに愛想無いでしょうか?麻子さんと友人になって日は浅いですが、無愛想だなんて1度も思った事はありません。学校でも笑ったり・・・困ったり・・・怒ったり色々な表情をしていますし、私はとても可愛い女の子だと思います。」

 

セナが少し微笑みながら言うと、麻子は照れながら下を向いていた。

 

「あぁ・・・そうかい・・・ありがとねぇ♪・・・じゃない!」

 

麻子のお婆ちゃんは一瞬ニコッとしたが直ぐに怒った表情になった。

 

「全く!アンタと話してると調子狂うよっ!」

 

そのやりとりを見た麻子と沙織はさらに驚愕する。

 

「セナが・・・あのお婆ぁを翻弄している・・・」

「麻子のお婆ちゃんをあんな優しい表情にさせるなんて・・・セナちゃんなんて恐ろしい子!」

 

麻子のお婆ちゃんは麻子に対し、お説教を続ける。

その間華は花を花瓶に入れるため、沙織案内のもとナースセンターへ花瓶を取りに行った。

 

「あんた達もこんな所で油売ってないで!戦車に油を刺したらどうだい!」

「えっ!?」

 

みほはキョトンとしているが、セナは麻子のお婆ちゃんのご機嫌を取っていた。

 

「上手い!座布団一枚です!」

「まぁ♪嬉しい♪・・・じゃないっ!」

 

麻子のお婆ちゃんはまた一瞬セナに対し甘い顔になるが直ぐに真顔に戻り、麻子に早く帰るように促す。

 

「アンタもさっさと帰りなっ!どうせ皆さんの足引っ張っているだけだろうけどさ・・・」

 

セナ みほ 優花里の3人はその発言を否定した。

 

「そんなっ!冷泉さんはいつも冷静で助かってます!」

「戦車の操縦が上手で!憧れてますっ!」

「こんなにチームメイトに誉められているんですから、戦車道に関してはご安心なさってください♪」

 

セナが笑顔でそう言うと、麻子のおばあちゃんの顔はまた優しくなった。

 

「そうかい♪そうかい♪・・・じゃないっ!戦車の操縦が上手くたっておまんま食べらんないだろ?」

 

お婆ちゃんの反応を見た麻子はさらに唖然とする。

 

「おばぁが・・・おばぁが壊れていく・・・」

 

外が暗くなって来た為、帰る事にした。

 

「じゃあ・・・おばぁまた来るね・・・」

 

麻子が病室から出て行き、みほとセナも続いて出て行こうとした所で、麻子のお婆ちゃんが一言呟いた。

 

「あんな愛想の無い娘だけど・・・よろしく」

「はいっ!」

 

みほとセナは元気よく返事をした。そして、みほが出た途端セナは麻子のお婆ちゃんに引き留められた。

 

「セナって言ったかい?アンタ・・・精神的に参ってるんじゃないかい?」

 

その問いに対しセナは正直に答えた。

 

「そう・・・ですね・・・ここ最近色々ありすぎて・・・」

 

セナの表情は暗い

 

「アンタの心・・・ズタボロじゃないかい」

 

セナは麻子のお婆ちゃんにどうしてわかったのかを聞こうとした。

 

「どうして・・・」

「アンタの倍以上人生を生きてんだ!目を見たらわかるよ!・・・たまには人に頼りな・・・1人で抱え込んだら、アンタ本当に壊れるよ」

「肝に命じておきます。」

 

セナはそう返事を返すと病室を出て行った。帰りの電車の中でみほ達は麻子のお婆ちゃんが元気そうだった事をホッとしていた。麻子は安心したのか電車の中で寝ている。

 

「麻子さんのお婆ちゃん思ったより元気そうで良かったね。」

「えぇ」

 

沙織と華は笑顔でそう言い合った。

 

「冷泉殿が絶対単位が欲しい!落第出来ないっ!っていう気持ちがわかりました。」

「お婆様を安心させてあげたいんですね。」

「うん・・・卒業して早く側に居てあげたいみたい。」

 

その頃セナは隣に居る親子を眺めていた。母に対し娘がキャっキャと話をしている。セナは自分を捨てた母親について考えていた。

 

『もし・・・もし私が女の子で産まれていたら・・・あの親子みたいな感じになってたのかな?』

 

セナ自身産まれた時の事を鮮明に覚えていた・・・そして捨てられた事も・・・そのせいで色々抱え込んでしまう。

 

『今のお父様とお母様も親であることは間違いありません・・・ですが・・・悲しいのに・・・辛いのに・・・産んでくれたお母様の事を考えてしまう・・・何故だろう。』

 

そして次の日、みほは実家に呼び出され実家に向かっていた。

そして、セナはみほの後を付けている・・・なぜならセナは前日みほと夕飯を食べている時に、実家に呼び出されたとみほが言っていたのを聞いて、産みの親にもう一度、会いたいという気持ちが勝ってしまったからだ。みほはデカイ屋敷の中に入って行ったのを確認する。西住邸を眺めていると、セナは赤ちゃんの時の記憶が蘇ってきた。

 

『確かこの門の前で今のお母様に引き取られたんでしたね・・・』

 

セナがボケッと突っ立っていると門の奥から人がやって来た。セナは直ぐにその場を去ろうとしたが、見つかってしまった。

 

「誰です!屋敷の前をうろついているのは!」

「あっ!」

 

そこにいるのは西住家の使用人だった、セナには見覚えがあった。

 

『この人は・・・西住流次期家元・・・産みのお母様の使用人だった筈』

「あなたは・・・もしかして!お坊ちゃま!」

 

使用人は西住家が捨てた子供とわかった途端セナを持ち上げた。

 

「お帰りなさいませ!お坊ちゃま!」

 

セナは歓迎されている事にびっくりした。何故なら西住家は自分の事を嫌っていると思っていたからだ。

 

「えっ!?えっ!?菊代さん!」

「えっ!?」

 

使用人は自分の名前を呼ばれて驚いた。何故ならセナが捨てられた時、セナは言葉もしゃべれない赤ん坊だったからだ。

 

「どうして私の名前を・・・」

 

セナはその質問に対し赤ん坊の時の記憶があることを話した。菊代はその話を聞いた途端、悲しい表情になった。

 

「ごめんなさい・・・お坊ちゃま・・・本当に・・・」

 

菊代は罪悪感のあまりに、泣き出してしまった。

 

「菊代さんは悪くありません!悪いのは捨てた西住流と産みの両親です!だから泣かないで」

 

セナは菊代の背中を背伸びするような格好で撫でていると、まほがやってきた。

 

「お母様に外がうるさいから見てきてくれと言われて来たが・・・何故セナがここにいる?」

 

まほはセナが居るのに驚いている。

 

「それに菊代さん・・・お坊ちゃまと聞こえましたが・・・二木セナ・・・ラウダ航空・・・お坊ちゃま・・・やはり弟だったのか」

 

まほは、セナと喫茶店で会ったことを思い出した。あの時、黒森峰と西住流に示した嫌悪感、最初何故そこまで敵対心を持つのかと考えたが、セナが捨てられた弟ならあの嫌悪感は納得出来る。

 

「あの試合の後でラウダ航空のヘリを呼んだ時、まほさんに勘づかれてるとは思ってました。」

 

まほはある違和感に気付いた。

 

「私に勘づかれたと思ってた・・・ということは私の事を最初から姉だと気付いていたのか・・・」

 

セナは、一番疑問に思っていた事を、まほに聞く事にした。

 

「はい。でもどうして私が二木家に引き取られたことをまほさんが知っているんですか?まほさんもあんなに小さかったのに。」

 

それに対しまほは真剣な顔で答えた。

 

「菊代さんからチラッと話は聞いていたからな」

 

菊代はセナをじっくりと見つめると少し微笑んだ。

 

「やはりみほお嬢様と双子なだけあって、小さい頃のみほお嬢様にそっくりですね。」

 

まほはそれを聞いて驚いた。

 

「目が青いから気付かなかった・・・」

「中等部の時に、ダージリン様に憧れてカラコンを付けているんです。こうしたら・・・」

 

セナが、カラコンとヘアゴムを外すと・・・まほは目を見開いてびっくりしている。

 

「驚いた・・・幼い時のみほにそっくりだ。」

 

セナは自分の正体を明かした所で騒ぎになる前に帰る事にした。

 

「騒ぎになる前に私は帰ります。」

「お坊ちゃま・・・また帰ってきて下さいね」

 

セナは愛想よく「はい♪」と答える。そして去り際、まほと菊代に振り返る

 

「みほさんには近々お話しますので、私の正体は黙っていてください。」

 

菊代とまほは うん と頷いた。そしてセナはまほの方を見つめながらこう聞いた。

 

「もし・・・まほさんがよろしければ・・・2人きりの時・・・まほお姉様とお呼びしてもよろしいですか?」

「あぁ・・・良い」

 

その時セナには、まほが少し微笑んで居たように見えた。

 

「では・・・またお会いしましょう。菊代さん・・・まほお姉様♪」

 

セナは満面の笑顔で挨拶をした後、その場を去って行った。セナを見届けた まほと菊代は、赤面してしまって暫く動けなかった。

 

 

 

 

 

 

次に続きます♪byセナたん

 

 

サンダース大付属高校

 

「どうして撃ったもう一台がわからないのよ!」

 

ケイは前回に引き続き、シャーマンに撃ち込まれた2発のうち1発当てた戦車を特定しようとしていた。

 

「隊長・・・どうしてそこまでして・・・」

 

アリサは、ケイがどうしてそこまでして調べようとしているのか分からなかった。

 

「アリサ考えてみて・・・シャーマンに砲撃が2発当たったということは、あの時ファイアフライでⅣ号を撃破していたとしても負けてたって事だよ?しかも綺麗に急所に1発当たってたし・・・」

 

そこでナオミが解析結果を持ってきた。

 

「隊長!分析結果が出ました!」

「どうだった!?」

「着弾した痕跡から角度を計算した所!もう1台はⅣ号より更に後方の地点から発射された物です!」

 

その結果にケイは目を見開いて驚いた。

 

「what?Ⅳ号の後ろに居た戦車はM3リー・・・でも射程距離が足りなくない?」

「そして発射する際には突風が吹いており・・・それを利用したとしたら、十分シャーマンに届きます。」

「M3リーの乗組員には・・・二木セナが居ました・・・」

「セナちゃん?・・・ダージリンのお気に入り・・・聖グロリアーナ・・・走るコンピューター?まさか・・・」

 

ケイは思い当たる節があったようでハッとある事を思い出し、ダージリンに連絡をした所、セナの正体は中学の時に一度戦った、走るコンピューター本人という事が判明し、ケイは真面目に、セナが欲しいと思った。




小説は大変ですね・・・毎日投稿している方々を尊敬します(笑)


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第9話 セナの悩み

ガールズ&パンツァー~捨てられた男の娘~を見て頂きありがとうございます。

えぇーコメントでも、非常に読みにくく文章力が無い!
とのですねお叱りを受けまして、改善を行いたいと思います。えぇ~、これをセナノミクスと名付けまして、以下の事を改善いたします。

1. 7話以前の地の文の増加

2. スペースの低減

3. キャラの表情の明確化及び、戦闘描写の明確化

4. セナの可愛さの倍増

この4点を少しずつ改善してまいります。


では、本編をお楽しみ下さい。今回は少し暗い話になります。


みほが西住家に呼び出された次の週、みほはセナと学校へ向かっていた。みほの顔はなんだか、元気が無さそうだ。セナは、みほが元気が無いのを心配し話しかける事にした。

 

「みほさん?元気が無いようですが・・・どうかされましたか?」

 

セナの問いかけに対しみほは、少し笑顔を見せ「大丈夫・・・何もないよ。」と返したが、セナには大丈夫そうには見えなかった・・・みほは授業中も元気が無く、いつもとは雰囲気が違うのを感じたセナは、その原因に思い当たる節があった。セナがみほを付けて西住流宗家に行った時、家の中から「あなたは、西住流を背負っている。西住流は絶対に勝たなくてはならない」と一部の会話を聞いていた。セナはそれが原因では無いかと考えたが、セナにはどうすることも出来なかった。

昼休み セナはみほをそっとしておくために、1人で昼食を食べに戦車が置いてある格納庫へと向かった。セナは1人Ⅳ号の装甲に座り、Ⅳ号にサンダース戦での出来事を話し始めた。

 

「あなたは、本当に良いチームに恵まれましたね。私も、皆に戦果を認められるように頑張らなければ行けません!」

 

セナは笑顔でⅣ号に話しかけた後、サンダース戦で自分の戦果が認められなかった事を思いだし、暗い表情になる。

 

「まさか、サンダース戦の時にみほさん達と同じタイミングでシャーマンに弾が着弾したのは予想外でした・・・タイミング的には私の弾の方が着弾は先だったんですが・・・いくら操縦や砲撃が上手くても、認められなければ意味がない・・・」

 

セナは無意識にヒクヒクと涙を流していた。

 

「これじゃあ・・・中等部の時と何も変わらない・・・」

 

セナは心を切り替えようとしたが、中学時代のトラウマが邪魔をして中々上手くいかない。しかも、この先西住流と対立し、みほに自分の事を打ち明けなければならない・・・色々な感情や重圧がセナを押し殺そうとしていた。すると誰かが扉を開けて格納庫に入ってきた為、セナは慌てて格納庫の奥の箱の裏へと逃げた。入ってきたのは・・・みほだった。彼女もセナと同じで、1人で格納庫に食事をしにきたようだ。

みほはⅣ号を眺めながら2回戦のアンツィオ戦での不安を漏らした。

 

「2回戦・・・この戦車で勝てるのかな・・・」

 

みほの表情は少し暗かった。

 

「西住殿?」

 

みほは不意に後ろから話しかけられ「えっ?」とびっくりした表情で後ろを振り向くと、そこには昼食を格納庫で食べようとやって来た優花里が居た。

 

「今日は戦車と一緒にお弁当を食べようと思って」

 

優花里は笑顔でお弁当をみほに見せる。次に沙織と華がみほを探しに格納庫までやってきた。

 

「あっ!居た居た!」

「教室にも食堂にも居なかったから、きっとここだと思って・・・優花里さんもここでお弁当ですか?」

「はい!」

「だったら!みんなで一緒に食べようよ!」

 

優花里が居るのを確認し、沙織と華はみんなで一緒にお弁当を食べようと提案する。

その頃セナは箱の裏で顎に人差し指を当て、どのタイミングで出ていこうか考えていた。この格納庫に沢山人が来るのはセナも予想外だったようで、さらに予想外の出来事が起こる。Ⅳ号から1人の少女がヒョコッと顔を出した。

 

「私にも分けてくれ・・・」

 

セナは「しまった!」という表情になった。何故ならさっきの独り言を聞かれたかもしれないからだ。

集中力を欠いていた為、セナ自身Ⅳ号の中に麻子がいるのに気付かなかった。麻子を見た沙織は授業をサボっていたと確信したようで

 

「あぁ!授業サボったの!?」

 

それに対し麻子は眠そうな顔をしながら言い訳をした。

 

「自主的に休養した・・・」

「おばぁに言いつけるよ!」

 

その言葉を聞いた途端、麻子は一気に目が覚め5人はお弁当を食べ始めた。優花里は、生徒会新聞の号外の話題を出した。

 

「そういえば!生徒会新聞の号外見ました!?」

「うん・・・凄かったね」

「そりゃあ!サンダース付属に勝ったんですからっ!」

「勝ったっていうより、なんとか勝てたって感じだけど」

 

みほの顔は苦笑いをしている。

 

「でも!勝利は勝利ですっ!」

 

その言葉を聞いたみほの表情は暗くなる。

 

「そうだよね・・・勝たなくちゃ意味がないよね・・・」

 

みほは過去の自分の失敗を思い出す。

 

「そうですか?」

 

みほの発言に対し、優花里は違うと否定する。優花里の返答に対しみほはハッとした。

 

「だって楽しかったじゃないですか!」

 

優花里の発言に対し周りもうんうんと頷く。

 

「サンダース付属との試合も!聖グロリアーナの試合も!練習も!練習帰りの寄り道も!全部楽しかったじゃないですか!」

 

優花里は笑顔でみほにそう言い聞かせる。そして沙織も便乗する。

 

「最初は狭くてお尻痛くて大変だったけど!何か戦車に乗るの楽しくなった!」

 

それを聞いたみほは、あっ!っと思った。

 

「そういえば・・・私も楽しいと思った・・・前はずっと勝たなきゃと思ってばっかりだったのに・・・」

 

みほは自分が見失っていたものを見つけたようだった。

そしてみほは少しうつ向きながら、自分の過去の事を話した。

 

「だから負けた時に、戦車から逃げたくなっちゃって・・・」

 

そこへ一連の会話を影から聞いていたセナが、我慢できずに声をあげた。

 

「あの試合!みほさんの判断は決して間違ってませんっ!」

 

いきなりセナが大声を出したので皆「うわっ!」と声を出しビックリした。

 

「ちょっと!いきなり出てこないでよ!」

 

沙織は心臓を押さえながらゼェゼェ言っていたが、セナは話を続けた。

 

「あの試合は確か豪雨の中・・・崖から川に転落した戦車に乗っていたチームメイトを助けようとしたんですよね?」

 

みほは当時の事故を思い出しながら語った。

 

「うん・・・その時私はフラッグ車で、そのまま敵に撃たれて負けたんだ。」

 

みほの言葉を聞いたセナはみほを慰める。

 

「みほさん。あなたの行った行為は決して間違っていませんよ。」

 

みほはセナのその言葉が心に染みた。今にでも泣き出しそうになり、セナは真剣な顔でみほを見つめた。

 

「もし・・・もしみほさんが助けに行かなければ、チームメイトは亡くなっていたかもしれません。確かにあの試合は負けました・・・ですが、勝利以上の・・・いえ!優勝するよりも価値のある事をみほさんはしたんです。これから先も・・・西住流や黒森峰に何を言われても・・・」

 

そこまでのセナの言葉を聞いたみほは涙を流していた。

 

「ご自身でなさった事を誇りに思ってください!そして心から戦車道を楽しんで下さい!」

 

そしてみほはポロポロと涙を流しながら

 

「セナさん・・・ありがとう」

 

みほがセナにお礼を言った所で、麻子が口を開いた。

 

「さぁ・・・セナ・・・今度はお前の傷を癒す番だ」

 

セナは恐らく先程戦車の上で言っていた独り言の事だろうとわかっていたが・・・とぼけた。

 

「なんの話ですか?」

 

これには みほ 沙織 優花里 華も麻子が何の事を言っているのかわからなかった。

 

「麻子!いきなりどうしたの!?」

「沙織達が来る前・・・セナはⅣ号の上で泣いていた。」

 

そう麻子はセナの言葉も泣いている事も全てわかっていたのだ・・・それを聞いたみほ達は驚いた。

 

「サンダース戦でフラッグ車を撃破して勝利した時・・・私達は自分達が倒したとばかり思っていた。」

「その通りです。」

 

セナは麻子の発言を肯定するが、麻子は悲しそうな表情でセナを見た。

 

「セナ・・・お前は、どうしていつもいつも・・・自分の事を無かった事にして、自分を追い詰める・・・素直にサンダース戦の時フラッグ車は私が撃破しましたと言えばいいだろう。」

 

麻子の言葉を聞いたみほ達は頭に衝撃が走った。何故なら自分達がフラッグ車を撃破したと思っていたからだ。

 

「セナさん・・・本当?」

 

みほは悲しそうな顔でセナに真意を訪ねると、セナはうつ向きながら頷いた。

 

「はい・・・Ⅳ号の砲弾よりもやや速く私の弾がシャーマンに当たりました。ですが・・・審査員の判定の結果ではⅣ号がシャーマンを撃破したことになっています・・・」

 

セナの中学時代にチームメイトに故意に戦果を奪われた過去を知ってる優花里とみほは心が痛んだ。そしてセナは中学時代のトラウマの一部を話した。

 

「私は中学の時に戦車道を始めて、ダージリン様にご指導を頂き、私は力を付けていきました。そして初めての試合の時です。」

 

セナは泣きそうになりながらも話を続けた。

 

「試合の時は、フラッグ戦で全く知らないチームメイトと組んで、私は砲撃手を勤めていました。そして、いつもの遠距離砲撃でフラッグ車を撃破したのですが・・・その時組んでいたチームメイトの1人が、自分が砲撃主を務め撃破したと主張し始めました・・・するとダージリン様とペコちゃんやアッサムさんを除く人達はその主張を鵜呑みにして、その人を称賛しました。それから全ての試合でその人は、私の戦果を奪って行ったんですよ。だから、今回自分の戦果が認められなかったことが悲しくてっ・・・怖くてっ・・・何を言われるかわからなかったから皆に言い出せなくてっ・・・」

 

セナはヒクヒクと泣きはじめた。それを見たみほは泣きながらセナを抱き締めた。

 

「セナさんっ・・・どうしてっ!?・・・どうして全部1人で抱え込もうとするのっ!・・・そんなんじゃセナさんが壊れちゃう!私そんなの嫌っ!お願いだからっ・・・もう1人で抱え込まないでっ!」

 

その言葉を聞いたセナはみほの暖かい温もりを感じると共に、少し背負っていたものが軽くなったような気がした。

 

「セナちゃん!ごめん!まさか無意識にセナちゃんを傷付けていたとは知らなくて!」

 

沙織は申し訳なさそうな顔で、謝罪した後、少し微笑んで言葉を付け加えた。

 

「もし・・・悲しい事があったりしたら、前みたいに私に泣きついていいから・・・ね?」

「もし何かあれば私達に相談して下さいっ!」

「はい!だって私達!友達じゃないですか!」

 

優香里と華もセナを慰め、そして麻子はゆっくりとセナに歩み寄りセナを後ろから抱き締めた。その行動にはみんなビックリした。特に沙織はかなり驚いている。

 

「まっ!?麻子!?」

 

麻子はセナの耳元で優しく話しかけた。

 

「私も頼ってくれ・・・私もセナに助けて貰いっぱなしは嫌だから・・・セナの力になりたい。」

 

セナはみんなの気持ちを知り素直にうれしかった。なのでセナは涙を少し浮かべながら満面の笑みで「ありがとう」とお礼を言った。

その後の話だが、セナの涙混じりの100%のスマイルを 見た沙織は卒倒し、みほに関しては顔を真っ赤にして目を回していたらしく、優花里と華は少し頬を赤くして口を押さえて、麻子に関しては顔を真っ赤にしてそっぽを向いてたんだって。

 

セナたんスマイル・・・恐るべし・・・

 

次回はセナの家にみほ達を招待します!

 

 

 

 

おまけ・・・聖グロリアーナの日常

 

ダージリンとオレンジペコはセナの笑顔の写真を眺めながら紅茶を飲んでいた。

 

「はぁ・・・癒されますわね」

 

ダージリンは頬に手を当てながら微笑んでいる。

 

「セナの笑顔を眺めながら飲む紅茶は、お菓子と一緒に飲むよりも美味しいですねぇ♪」

 

オレンジペコも少しニヤケながらダージリンの意見に賛同する。オレンジペコは大洗vsサンダース戦でのセナの泣きそうな表情を思い出し暗い表情になる。

 

「セナ・・・サンダース戦で昔のトラウマが蘇ってなければ良いのですが・・・」

「えぇ・・・」

 

ダージリンもオレンジペコ同様、セナの事を心配している。

 

「セナは心配ですわ・・・ですが・・・今は新しい隊長に任せましょう。」

 

ダージリンはそう言って紅茶を飲んでいたが、とても心配そうな表情をしていた。

 

「そう・・・ですね」

 

オレンジペコは、少し表情を曇らせながら返事をした。

その後、オレンジペコはセナが心配で仕方なくて、今にも聖グロリアーナを飛び出してセナの元へ行きそうな感じだったんだとか・・・




どうでしたか?多少はマシになったと思うんですが・・・やはりこれが限界です。


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第10話 セナの家へご招待!

投稿が遅くなった事を、お詫び申し上げます。
色々なコメントを頂きまして、とある魔術の禁書目録に出てくる天草式の建宮斎字さんより「台本形式は成長せんのよなぁ」と言われましたので色々な小説を読み勉強してきました。では!


セナは、今日実家に帰って掃除をしていた。

何故なら土曜日の今日、みほ達がセナの実家にやってくる予定になっているからだ。

そこへ、セナの母親である、かなえがセナを呼びにやって来た。

 

「セナ?もうそろそろ、お友達が来る頃だから準備しておいてね?」

「はい!お母様!」

 

セナは母親と共に部屋を後にした。

 

 

 

一方 みほ 優花里 沙織 麻子 華の五人は、セナに指定された場所へと向かっている。

みほ達は、セナの家へ向かうという事でテンションが上がっているようだ。

 

「セナ殿の家楽しみですね!」

「うん!セナさんの家行くの初めてだから少し緊張するなぁ。」

「セナちゃんの家どんな感じかな!部屋の中は、縫いぐるみとか置いてあるのかな!?」

「沙織・・・はしゃぎすぎ・・・」

 

そして、セナの家の前へと、一行は到着した。セナの家を見た途端、皆は絶句した。何故なら、家はかなりの大きさで、まるでお嬢様が住むような屋敷だった為だ。

 

5人が唖然としていると、中からメイドさんらしき人がやってきて、みほ達に話かけてきた。

 

「セナお嬢様のご友人様ですね?」

「はい、西住みほと申します。」

「秋山優花里です!」

「冷泉・・・麻子」

「武部沙織ですっ!」

「五十鈴華と申します。」

「セナお嬢様が中でお待ちです。中へご案内致します。」

 

メイドは、5人を確認すると、案内を始めた。

 

みほ達は、歩きながら会話を始めた。

 

「セナさんって・・・何者なのかな?」

「大きな一族の末裔とか・・・」

「沙織、それはないと思う。」

「麻子は何か知ってるの?」

「大体は、予想が付いている・・・」

 

麻子は、以前おばあちゃんが倒れて、セナにヘリコプターを呼んで貰った際に、ヘリコプターに付いていたラウダ航空のロゴを見て、ラウダ航空の関係者だろうという予想を付けていた。

 

そして、屋敷の目の前へ到着し、セナの屋敷を見た5人はテンションが上がっている。

 

「凄い!凄いです!こんなでっかい屋敷は見たことありませんっ!」

「大きい・・・わたしの家よりでかいかも・・・」

「五十鈴家よりも大きいお屋敷です。」

「屋敷というより、城だな・・・」

「セナちゃんって、本当に何者!?」

 

5人が驚いていると、メイドさんが屋敷の扉を開けた。

 

「皆様、どうぞお入り下さい。」

 

メイドが扉を開けた先には、セナの両親である2人が出迎え、自己紹介を始めた。

 

「ようこそ、我が家へ、私はセナの父親で二木ラウダだ。」

「母の 二木かなえ と申します。いつも娘がお世話になっております。」

 

二木ラウダというワードを聞いた一同は更に驚愕した。

 

「「「「「二木ラウダ!?」」」」」

「二木ラウダ!?ってラウダ航空の社長の二木ラウダさんですか!?」

「優花里さん!?失礼だよ!」

「みっ!みぽりん落ち着いてぇぇ!」

「沙織が一番落ち着いた方が良い。」

「こっ・・・これは一大事です!」

 

5人がワーキャー騒いでいると、ラウダがパンパンと手を叩いた。

 

「色々と話したい事はあるだろうが、暑いから早く家の中に入りなさい、熱中症にでもなったら大変だ。」

 

ラウダに、家の中に入るように言われた一同は、恐る恐る家の中へと入った。

 

中は木造で、洋風な内装だ。

 

ラウダはパンと手を叩く

 

「さて・・・まずは、最初のおもてなしをさせて貰おう。」

 

その言葉を聞いた一同は首を傾げた。

「おもてなし?何だろう・・・」

「そういえば、セナ殿の姿が見えませんね・・・」

「まだ、寝ていらっしゃるんでしょうか?」

「セナちゃん何処にいるんだろう・・・」

麻子がセナを見つけた。

「沙織・・・階段の上にいる。」

 

すると階段から、セナがゆっくりと降りてきた。

服装は、白いニーソックスに、ピンク色のスカート、左の胸元に小さくピンク色でSennaの文字が入っている、黒いTシャツ姿で現れた。

セナは、ゆっくりとみほ達の前へ来る。少し緊張しているのか表情は少し硬い。両手を後ろに組むと、クルリと一回転した。

 

「皆様、ようこそいらっしゃいました。今日は、楽しみましょう。」

 

首を少し傾け、セナが、ニコっと笑うと、みほ達は顔を真っ赤にしながら俯いた。

みほ達のリアクションを見た、両親とセナの3人は、みほ達のリアクションに満足した表情を見せ、お互いの顔を見ながら笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうかな?多少はマシになったとは思いますが・・・次は談笑パジャマパーティー!?の予定です。


一件の新着メッセージがあります。

男の娘ロリ セナたん「皆さん、コロナに負けずに頑張りましょう。私が見守っています。」


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第11話 セナの秘め事

第3話、改善完了しました。かなりマシになっていると思いますので、読み返して頂ければ幸いです。


セナの可愛い洋服姿と笑顔で二木家にもてなされたみほ達一行は食堂へと案内され、テーブルへと着席しセナとおしゃべりをしていた。

みほ達は、セナに聞きたいことが山程あった為、色々質問をしている。そして、華は自分の母親がセナを叩いた事に対して改めて謝罪をしていた。

 

「セナさん!私の母がご無礼な事をして申し訳ございませんでした!」

 

華は頭が地面に着きそうなくらい頭を下げており、それを見たセナも戸惑っていた。

 

「華さん!?頭を上げてください・・・もう終わった事ですし、あの時きちんと謝罪は頂きました。それにあの時は私もラウダ航空の娘であることを黙っていましたし、この件は終わりです。」

「ですが・・・」

「私が良いと言っているから良いのです。ですからもう頭を上げてください。ね?」

 

セナは優しく微笑み、ゆっくりと華の身体を起こした所で、ラウダがやって来て、真剣な表情でみほ達の方を向いた。

 

「さて、びっくりすることは山程あったと思う。そして、私から1つ君達にお願いしたい事がある。確かに、セナはラウダ航空の娘だ。だが君達には、セナに対し、今まで通りの接し方をして欲しい。この通りだ」

「お父様!?」

 

セナは、父親の行動にびっくりして驚いた顔をしていた。そして、ラウダはゆっくりと頭を下げた。ラウダはどんな反応が返ってくるのかと心配だったが・・・

 

「はい!わかりました!」

「もちろんですっ!」

「そんなの当たり前じゃん!」

「えぇ!」

「そうだな・・・」

 

返ってきた第一声はみほの元気な声から始まり、次々にラウダのお願いを聞いてくれた。ラウダはみほ達の目を見たが、嘘を付いていない綺麗な目だった為、表情がにこやかになり、ラウダはセナの肩に手をポンと置いた。

 

「セナ・・・良い友達を持てたな。」

「はいっ!」

 

セナの表情は、とても晴れやかだった。

そしてラウダは、パンと手を叩く。

 

「さて、食事の用意が出来たようだから、食事にしよう!堅苦しい食事のマナーなどは要らない。普通に食べて貰って構わない。」

 

みほ達は、セナとの会話を楽しみ、中には見たこともない高級料理が出てきて大成功の食事会となり、あっという間に夜になった。そして各自でシャワーを浴びパジャマに着替え、セナの部屋へと集合した。セナは皆が自分の部屋に入ってきた為、少し緊張している。

 

「あまり部屋の中をジロジロ見ないで下さい・・・恥ずかしいです・・・」

 

セナは顔を真っ赤にしながらうつ向いており、みほ達は、セナの部屋を見ていた。

 

「セナ殿の部屋って意外に殺風景なんですね!私の部屋とは全く違います!あっ!この写真に写っている戦車って・・・」

 

優花里がセナの部屋を見回っているとセナと戦車が写っている写真を見つけた。

 

「あぁ・・・それは」

 

セナが戦車の説明をしようとした時、優花里が被せぎみに戦車の種類を説明した。

 

「この戦車はオーストリア製SK105キュラシェーア軽戦車じゃないですか!?」

「よくわかりましたね?マイナーな戦車でわかる人はあまり居ませんよ?」

 

セナが戦車の説明をしていると、優華里はとある事に気付いた。

 

「あれ?セナ殿・・・この時、目が青くないですね?」

 

カラコンを入れていないセナのレアな写真なので、皆私もみたい!と一気に集まってきた。

セナは何故カラコンを入れていないのかの説明を始めた。

 

「それは11歳の時の写真で、聖グロリアーナにはまだ入学していませんでしたので」

 

皆11歳というワードに驚いた。何故なら、外見がいまと全く変わっていないからである。

 

「嘘!?セナちゃんの外見が全然変わってないんだけど!?もしかして・・・不老不死!?」

「武部さん?それは無いんじゃかいかな?ん?」

 

みほは、苦笑いをしながら沙織にツッコミを入れ、そして"ある事"に気付いた。

 

「昔の私にそっくり・・・」

 

そう、カラコンを入れていないセナは、昔の自分に瓜二つだったのだ。

みほは、少し困惑していた。世界には3人自分にソックリな人が居るとは良く言うものの、これはあまりにも似すぎている。まるで双子みたいにソックリだ。

みほが自分の写真を見て、何やら考えている素振りをしているのを見たセナは、後でみほと2人きりで話すことにした。セナは、みほの耳元に小声でささやいた。

 

「みほさん・・・後で2人きりでしたいお話があります。夜中の0時に、大浴場横のリフレッシュルームに来てください。」

 

みほは、戸惑いながらも軽く頷いた。

そして、その後は皆でお菓子を食べながら、トランプをしたり、テレビゲームをしたりして楽しんだ。そして皆が寝静まった頃、みほは、セナに言われた通りに、大浴場横のリフレッシュルームへとやってきた。そこには1人ポツンと椅子に腰かけているセナがおり、その表情はかなり緊張している様子で、薄っすらと汗をかいている。

セナは手を招いて、みほに隣に座るように促し、みほはゆっくりとセナの横に腰かけた。まず最初にしゃべったのはみほだった。みほもかなり緊張している様子だ。

 

「セナさん・・・あのね?写真を見たときに思った事があって・・・」

「私と似ている・・・ですか?」

「うん・・・」

 

みほは、真剣な表情でセナを見つめる。

セナは少し笑みを浮かべながら、みほの方を向き、みほに1つ質問をした。

 

「みほさんは、自分の昔の事を親から聞いたことありますか?」

 

みほは、横に首を振った。

 

「お母さんは、昔の事をあまり喋ろうとしてくれなくて、だから私、昔の事は、全く知らないの。」

 

みほは少し顔を下に向けながらそう言った。

セナは自分の事についてしゃべり始めた。

 

「私・・・本当は、今の両親と血は繋がってないんです。」

「えっ!?」

 

セナの発言にみほは、驚いた顔をした。

 

「私、産まれて直ぐに実の両親に捨てられて、二木家に引き取られ、現在に至ります。私を捨てたのは・・・」

 

セナの喉は乾き、心臓の鼓動はかなり速くなっていた。セナの頭の中には様々な不安がよぎる。真実を告げたらみほはどんな表情になるのか、どんな感情を抱くのか、自分を拒絶するのでは無いかと、様々な考えが頭の中一杯に広がったが、心を決めみほの目を真っ直ぐ見つめた。

 

「私を捨てたのは・・・西住家です。」

「えっ・・・」

「そして私は、西住しほの長男で、みほさん・・・あなたの双子の弟です。」

「えっと・・・」

 

みほの頭の中は混乱していた。無理もない、いきなり私はあなたの弟ですと言われたのだから。みほには、それよりも気になる事があった。

 

「双子の弟という事は、セナさんって・・・男の人・・・なの?」

「はい・・・戦車道をするに辺り、性別を偽っていました。ごめんなさい。」

 

セナはみほに、性別を偽っていたことに対し謝罪をした。セナが少し顔を上げるとみほは、ボロボロと涙を流しながら、泣いていた。

 

「謝って済む問題では無いことはわかっています。ですが、みほさんに本当の事を言いたかったんです。どんな結果になったとしても・・・」

 

セナはみほに対して、ずっと頭を下げ続けた。ほんの数秒だったが、セナにはかなり長い時間の様に感じた。

そして、みほはセナをゆっくりと抱き締めた。

 

「謝らないで・・・セナさんが私の弟で、男の人だったのはびっくりしたけど・・・それよりも、セナさんが本当の事を言ってくれて嬉しかった。けど・・・もう少し早く話して欲しかったな・・・」

 

セナは涙が溢れてきた。みほは、突き放さず自分を受け入れてくれた。それがたまらなく嬉しかった。セナは泣きながらみほを抱き締め返した。

 

「本当は、いつか言わなきゃと思ってた・・・けど・・・拒否されるのが怖くて・・・言い出せなくて・・・」

「謝らなきゃいけないのは私・・・セナさんが私と居るとき辛そうな顔をしてたの知ってたのに、何も出来なかったから・・・」

 

セナはそんな事はどうでも良かった。自分を弟だって受け入れてくれたのが嬉しかったから。そして安心したのかセナはみほの胸の中で寝てしまった。みほは微笑みながら、セナの寝顔を見た。まるで子供の様な寝顔でスヤスヤ眠っている。時々寝言でお姉ちゃん・・・大好き、と言っていた。すると、聞き覚えのある声が廊下の角から聞こえた。そこには、優花里、沙織、麻子、華の4人が居た。

 

「武部殿!押さないで下さい!」

「だって気になるじゃん!」

「沙織・・・西住さんに、気付かれてる・・・」

「バレてしまいましたね。」

 

そう、この4人は、みほが居ないのに気付き、探しに来たのだった。

みほは、今の会話を聞かれたのは、不味いと思った。何故なら、セナは男で性別を偽っていたのだから。

 

「どこから聞いてたの?」

 

みほは不安そうな顔で4人に尋ねた。それに対して、4人は言葉が詰まり、沙織が気まずそうな顔をして答えた。

 

「私・・・あなたの双子の弟です・・・からかな?」

 

みほは、愕然とした。セナが男だとバレてしまったからだ。どうしようかと考えていると。セナの両親がやってきた。

 

「あら・・・気持ち良さそうに寝てるわね?そんなにお姉ちゃんの懐が気に入ったのかしら?」

 

母親であるかなえは頬に手を当てながら、ふふっと笑っていた。そしてみほに話しかける。

 

「ごめんなさいね?みほさんとセナの会話・・・全て聞いていたわ。」

 

みほは、急に恥ずかしくなった。セナの両親に全ての会話を聞かれていたからだ。ラウダは申し訳無さそうに、みほに謝った。

 

「盗み聞きをするような真似をしてすまない。だが、私達は血が繋がっていないとはいえ、セナの親だからな、この子の行く末を見守る義務があったんだ。それは、理解して欲しい。」

 

ラウダは一拍置くと、話を続けた。

 

「さて、セナの正体が知られた訳だが、君達はセナをどうしたい?」

 

みほ達は、言っている意味がわからなかった。

 

「どうしたいって・・・どういう事ですか?」

 

みほは、恐る恐るラウダに聞いた。

 

「この子は、私達のお願いとはいえ、男である事を君達に隠していた。君達が、男が女子高にいるのが嫌だというのであれば、セナを大洗から別の学校へ転入させる。」

 

それに対するみほ達の答えは

 

「私!セナさんと一緒に戦車道がしたいっ!」

「私も!セナちゃんの友達だもんっ!」

「私もですっ!セナ殿が男であったとしても友人であることに変わりはありませんっ!」

「セナさんが、男性だったとしても関係ありませんっ!」

「男だった事には、驚いたが大した問題じゃない・・・」

 

その言葉を聞いたラウダとかなえは2人で見つめ合い笑った。

 

「そうか、ありがとう。セナを引き続き大洗に居させよう。但し・・・この事は決して他の人には言わない事。」

 

みほ達はラウダの条件に、無言で頷いた。ラウダはそこに、しかしと付け加えた。

 

「君のお姉さんである、西住まほさんと、西住家の使用人、聖グロリアーナのダージリンとオレンジペコだったかな?この4人は、セナの正体を知っているから話しても良い。それ以外は駄目だ。」

 

みほ達の元へセナの母親であるかなえが、近付いてきた。間近で見ると、とても身長は麻子と同じくらいで小さく、髪はウェーブがかった水色で、目はクリっとしてて、幼い外見だった。

 

「みんな、ありがとう。」

 

かなえは、丁寧にみほ達にお辞儀をした。

 

「そんなっ!お礼を言われる事なんて何もっ!」

 

みほは、そう答えたが、かなえはいいえと返答した。

 

「あの子は、あなた達と出会ってもう一度心を開く事が出来たわ・・・ありがとう。」

「私からも、お礼を言う。セナは中学の時に虐められてから、自分から人と関わろうとはしなかった。大洗に入学し、戦車道が復活し、君達と出会えたからこそ、こうやって自ら君達を家へ誘い、自分の事を告白する事が出来た。ありがとう。」

 

ラウダとかなえがお礼を言った後、沙織が何か思い出したように、あっと言った。

 

「明日も出掛けるから、そろそろ寝ないとヤバくない!?」

 

現在時刻は1時半で、朝8時には出掛ける予定になっていたからだ。しかし、セナはみほにしがみついて離れない。みほがどうしようかと思っていた所。

 

「セナは甘えん坊でな、そうなったらもう離れない。もし、西住さんが良ければ、今日はセナと一緒に寝て貰えないだろうか?」

 

ラウダがそういうと、みほの顔が真っ赤になった。弟とはいえ、異性と一緒の布団に寝るからだ、みほが迷っていると、麻子がみほの元へとやって来た。

 

「西住さんが、無理なら私がセナと一緒に寝よう。」

「「「「えぇー!?」」」」

 

セナの両親は、ニコニコしており、後の4人は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。

結局その後、みんなセナの取り合いとなり、最終的には、みんなで一緒に寝ることとなった。




どうでしょうか?投稿初期と比べたら大分マシにはなってると思いますが。


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第12話 止まっていた時間が動き出す

1話~5話まで改善しました!残りも頑張ります。


朝食を終えた朝8時、セナの家に泊まった後6人で出掛けることになっていた為、皆それぞれ支度をしていた。セナは昨日みほ達にに自分の正体を話し、受け入れて貰えた為スッキリとした顔をしている。セナが白いワンピースに着替えていると突然部屋のドアが開き みほ が入ってきた。

 

「セナさん。支度出来た?」

「やっ///」

「あっ///」

 

みほはセナの裸を見て顔を覆っており、セナは上半身裸で両手で身体を隠すように縮こまっていた。それはそうだ、いくら姉弟とはいえ裸を見たり見られるのは恥ずかしい。セナはみほに開いたままの扉を閉めるように言った。

 

「みほさん・・・恥ずかしいので扉を閉めてください///」

 

みほは、セナの裸を見て顔を真っ赤にしながら硬直していた為、セナが上半身を隠しながら扉を閉めた。その後、セナは服を着た後みほを揺すった。

 

「みほさん!着替えたので正気に戻ってください!」

 

セナに呼ばれ、みほが我に帰ると腰元で顔を若干赤らめながら揺すっているセナがいた。

 

「あっ!ごっごめんね?ノックもせずに///」

 

みほは顔が真っ赤なままだった。セナはみほが我に帰ったのを確認すると、両手を腰に当て膨れっ面でみほに怒った。

 

「姉弟とはいえ、ノックをして貰わなければ困ります。みほさんに裸を・・・裸を見られるのはとても恥ずかしいです///」

 

セナは怒った後、頬を赤らめながら下を向いた。みほはセナが弟なのは受け入れれたものの、呼び方まではお互い中々変えれないでいた為、少しもどかしかった。

みほは、セナを呼びに来た理由を思い出した。

 

「あっ!セナさん皆支度が出来てるから早く玄関に来てね!」

「あっ!もうこんな時間!」

 

セナは慌てた様子でバックを手に取ると、麦わら帽子を被り、準備を整えるとみほと一緒に玄関に向かった。セナとみほが玄関へ向かうと皆準備を終えて待っていた。セナはびっくりした事があった。寝坊助な麻子が目をしっかりと覚ましていたのだ。セナの反応を見た沙織は少し笑いながら、麻子が目を覚ました経緯を説明する。

 

「今日、麻子珍しく早起きして、セナちゃんと出掛けるからって顔を何回も洗ってたんだよ?」

「沙織っ!?それを言うなぁぁ!」

 

早起きした理由を、セナの前で言われた麻子は恥ずかしさのあまり叫んだ。無理して早起きした麻子を心配したセナは麻子を気遣った。

 

「麻子さん・・・眠くないのですか?」

「問題ない・・・」

 

麻子は平常心を取り戻しており、元気そうだったのでセナは安心した。そして、華が時間を見ると8時半になっていた為、皆の方を見た。

 

「そろそろ出掛けましょうか!」

 

華がそう言うと慌てた様子でかなえがセナの元へ走ってきた。

 

「セナ?日焼け止めは塗った?」

「はい!」

「ハンカチは持った!?」

「もちろんです!」

 

セナとかなえのやり取りを見た一同は、遠足に行く前の小学生と母親のやり取りその物だと思った。玄関の奥から呆れた様子でラウダもやって来た。

 

「相変わらず過保護だな」

 

ラウダがそう言うと、かなえはラウダの方をジト目で見た。

 

「あなたも変わらないくらい過保護でしょう?」

 

そう言われたラウダは頭を掻きながら笑った。

 

「それを言われると何も言えないな」

 

ラウダとかなえはみほ達の方を向くと、笑顔になった。

 

「こんな息子だが、セナをよろしく頼む。」

「この娘をよろしくお願いいたします。」

 

2人がそう言うと、みほ達は笑顔で返事をした。

 

「「「「「はい!」」」」」

 

6人は大洗の商店街に着くと、優花里が喫茶店に一旦入る事を提案した。

 

「疲れたので、一旦喫茶店に入って計画を練りましょう!」

 

皆疲れていた為、喫茶店に入る事に賛成だった。喫茶店に入ると今後何処へ行くか話し合っていた。沙織、優花里、華、みほ、麻子、セナの順でお互い行きたい所を言い合っている。

 

「私!洋服が見たい!」

「私は戦車ショップに行きたいですっ!」

「私は、商店街を見て回りたいです。」

「私も転入してからあまりこの付近来たことないからゆっくり色々見て回りたいかな。」

「私は、沙織に着いていく・・・」

「私は、商店街にあるソフトクリーム屋さんに行きたいですっ!」

 

皆、行きたい所がバラバラだった為、セナはあることを提案する。

 

「いっその事全部行ってしまいましょう!」

 

セナの発言に皆うんうんと頷いた。

 

「具体的にはどうするの?」

 

みほがセナに聞くと、セナは人差し指を顎に当てしばらく考えた後、両手をパチンと叩いた。

 

「商店街を見回りながら、各個人の行きたい所へ寄って行きましょう!昼食を挟んでも夕方には帰れる筈です♪」

 

セナがウィンクしながらそう言うと、みんな口を揃えて言った。

 

「「「「「賛成!」」」」」

 

6人は喫茶店を出ると商店街を散策しながら、沙織が行きたいと言っていた、洋服店へとやって来た。沙織は洋服を見ながら悩んでいる。セナも色々見回る事にした、外に出ると、1人の女性が話しかけて来た。赤いスーツを着ていて、髪はロングでカールが掛かっていて、色は茶色の美しい女性だった。

 

「あなたは・・・二木セナさんね?」

 

セナは初対面の女性に名前を言われ驚いた。

 

「はい・・・二木セナと申します・・・あなたは?」

 

セナが女性に名前を聞くと、女性は笑いながらセナを見た。

 

「あなたのファンですよ。」

 

女性がそう言うとセナは笑顔になった。

 

「そうでしたか!応援ありがとうございます。」

「色々大変だと思うけど、頑張ってね?」

 

女性が笑顔でそう言うと、セナはお辞儀をして、ニッコリと笑いながらみほ達の方へと走って行った。その姿を見届けた女性は考え込んだ。

 

「あんな可愛い男の娘に育つなんてホントにあの人の血を牽いているのかしら・・・16年前意地でも西住流から島田流に来させるべきだったわね・・・」

 

彼女はそう言うと商店街を後にした。

セナ達は、沙織の洋服選びを済ませた後、優花里の行きたかった戦車ショップへとやって来た。セナが色々見て回っていると、大学生のお姉さん2人に話しかけられた。

 

「あのー」

「すみません。二木セナさんですよね?」

 

セナはキョトンとした顔をした。

 

「はい・・・そうですが・・・」

 

すると大学生2人は嬉しそうな顔をしてセナに握手を求めた。

 

「やっぱり!元聖グロリアーナの走るコンピューターの!」

「私達昔からファンだったの!」

 

セナは握手をしたが、自分が知られていた事に驚き、ある質問をした。

 

「てっきり、あまり名前は知られていないと思っていたのですが・・・」

 

大学生は首を振りながらセナの発言を否定した。

 

「確かに、セナさんを知ってる人達は少ないですが、ファンサークルもあるんですよ?」

 

色々話していると、ボコの縫いぐるみを持ったツインテールの中学生くらいの少女がセナを指差し話しかけてきた。

 

「この人、そんなに有名なの?」

 

大学生はうんうんと頷いた。

 

「隊長知らないんですか?走るコンピューターですよ?元聖グロリアーナで"たった1両で黒森峰を全滅"させた。」

 

この2人は何かしらの戦車道チーム所属で、少女はその隊長なようだ。

 

「この人が?全くそんな風には見えない」

 

少女はセナの容姿を見て首を傾げている。すると大学生2人が「あっ!」っと声を上げた。

 

「いけない!私達用事があるんだった!」

「セナさんまた!」

 

そう言うと大学生2人は、少女を連れ戦車ショップを後にした。

優花里の用事が終わると、セナが行きたかったソフトクリーム屋さんにやって来た。みほ達はソフトクリームを手に取ると近くにあったベンチへと向かった。

そこで事件が起きた。1人の男性が前を見ておらずセナにぶつかったのだ。ぶつかった衝撃でセナは飛ばされ、ソフトクリームは宙を舞い地面へと落ち、ぶつかった男性はセナを思いっきり睨み付けると何も言わずに去っていった。その状況を見た5人は慌ててセナに駆け寄った。

 

「セナさん!?大丈夫!?怪我は無い!?」

 

みほは心配そうにセナをゆっくりと起こした。沙織、麻子、華、優花里の四人は男性を睨み付けた。

 

「なに!?あの態度!ぶつかっておいて謝罪もない訳!?」

「よせ沙織・・・あの馬鹿に何を言っても無駄だ。」

「なんでしょう!不愉快です!」

「あんなのおかしいですよ!」

 

4人は怒っていたが、セナは地面に落ちたソフトクリームを見て、涙を流していた。

 

「私のソフトクリームが・・・チョコレートソフトが・・・ふぇっ、わぁぁぁぁん!」

 

泣いているセナを見たみほは、慌てて慰めた。

 

「泣かないで!お姉ちゃんのソフトクリーム分けてあげるからっ!ね?」

 

みほが頭を撫でながらセナにそう言うと、セナは泣き止み笑顔になった。

 

「うん♪」

 

みほ達はベンチへ座ると、ソフトクリームの食べ合い

っこをしてお互いのソフトクリームを食べた。

セナは思った・・・さっきのソフトクリームのやり取りから昔止まっていた時間が動き出したのだと。

 

皆で色々周り、あっという間に時間が過ぎ、夕方になった。優花里は皆の方を向いた。

 

「今日は楽しかったですねっ!途中色々ありましたが・・・またこうやって6人で遊びに行きたいです!」

 

優花里がそう言うと皆うんうんと頷いた。沙織がある事を提案する。

 

「じゃあさ!2回戦勝ったら祝勝会という事で、もう一回行こうよ!」

 

それを聞いた華と麻子も笑顔になる。

 

「良いですね!」

「私も・・・また来たい。」

 

セナとみほは笑顔で顔を見合わせた。セナは両手をパンッと叩いた後こう言った。

 

「では!次のアンツィオ戦必ず勝ちましょう!パンツのアホー♪」

 

それを聞いた沙織は慌ててセナの口を塞いだ。

 

「セナちゃん!もうやめてぇぇ!」

 

皆そのやり取りを笑顔で見ながら、解散した。

 




この回を書くのは少し辛かったですねー。
登場人物紹介 追加しました。


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第13話 セナと戦車の捜索

ようやく本編へと戻ります。頑張るぞー!
全話改善完了しており、若干内容も変えてあるので「なんだこの話は」と思われた方は読み返していただけると光栄です。


午前の練習が終わり、セナとみほは2人で次のアンツィオ戦に向け話し合いをしていた。みほは、セナに戦力について相談をしている。その顔付きはお互い真剣だった。

 

「次のアンツィオ戦は何とかなるけど・・・その後を考えるともう何両か戦車が欲しいと思ってるんだ。」

 

セナはみほの言葉に頷いた。

 

「確かに、今の戦力だけでは今後勝ち進むのは難しいですね。アンツィオ戦は勝ったとしても、その後はグロリアーナ プラウダ 黒森峰・・・どの高校も実力はトップクラスで戦車のバリエーションは豊富ですからね・・・そうなると、後2~3両戦車が欲しいですね。」

 

セナとみほが話し合っていると、河島 桃と小山柚子がみほの元へとやって来てた。

 

「西住!次のアンツィオ戦に向けた作戦会議をするぞ!」

「戦車の交換部品のリストを作りたいから手伝って欲しいんだけど・・・」

 

桃と柚子のお願いにみほが「はい」と返事を返すと、次々と部員達がみほの元へと相談に来た。

 

「隊長!カーブが巧く曲がれません!」

「西住隊長!私は男友達に戦車の話をしたら引かれます!」

「私は、彼氏に逃げられました!」

 

みんな一気にみほに言った為、みほはとても困った表情をしていた。みほの表情を見たセナは助け船を出す事にする。セナが少し微笑みながら手を2回叩くと皆静になりセナの方に注目した。

 

「そんなに一気に相談を持ち掛けてはみほさんが困ってしまいますので、私が皆さんの相談に乗りますよ。」

 

セナが笑顔でそう言うと、みほが怒った。

 

「それは駄目っ!そうしたら今度はセナさんに過度な負担が掛かっちゃう!」

 

今までのみほなら「ありがとう!セナさん!」と言っただろう・・・しかし、セナの正体が自分の弟だと知ったみほは、可愛い弟であるセナに負担を掛けたくなかった。

セナも姉であるみほに負担を掛けたく無かった為、なんとか自分が受け持とうとする。

 

「それでは!今度は、みほさんに負担が掛かってしまいます!」

 

セナとみほが言い争っていると、優花里が手を上げた。

 

「メカニカル的な事なら私がわかりますが・・・」

 

次に沙織も麻子も華も手を上げた。

 

「恋愛の事なら私が相談に乗るよ?」

「操縦なら私が・・・」

「書類なら私が少し出来ますので・・・」

 

沙織は笑顔で、みほとセナの方を向いた。

 

「みんな仲間だから助け合おう?」

 

沙織の言葉にセナとみほはお互い顔を見合せ微笑んだ。

その後、みほと華は生徒会室へ行き、優花里はアルヴィン達に戦車の事を教えに、沙織は一年生達の恋愛相談、麻子はバレー部員達に戦車の操縦を教える事となった。

何もやる事が無くなったセナは、何か思い付いたらしくその場を後にした。

 

みほと華は、生徒会室に手伝いをしに来ていた。華と柚子は書類仕事をしている。杏と桃はみほと作戦会議をしており、杏がみほに質問をした。

 

「次のアンツィオは勝てる?」

 

杏の言葉にみほは少し暗い表情をした。

 

「チームはまとまってきて良い状態ですが、今の戦車だけでは厳しく・・・もう少し戦車が欲しいです。」

 

みほの言葉に華が反応した。

 

「書類には、過去にまだ何両かあったみたいですが・・・」

 

華の言葉に杏はニカッと笑ってこう言った。

 

「じゃあ・・・戦車探そうか?」

 

そして、沙織と一年生 麻子とみほとバレー部 優花里と歴女達のチームに別れ、戦車の捜索が始まった。

沙織と一年生は、船の中

麻子とみほとバレー部は、旧校舎の付近

優花里と歴女達は森の中を捜索した。

 

一方セナは、ピンク色の白い猫がプリントされているリュックを背負い、地図を片手に学園艦の中を探索していた。何故かというと、先程みほと戦車を増やしたいという話をした為、ラウダに情報を集めて貰って1人で探しに来たのだ。ラウダの情報によると、ダクトの中を通れば戦車のある場所へと辿り付くらしい。セナは周囲に誰も居ない事を確認すると、ゆっくりとダクトの中へと入って行った。

 

その頃みほと麻子達は、物干し竿代わりになっている砲塔を見つけ、優花里達はRENAULT B1 と呼ばれる戦車を見つけた。夕方、みほ達は車庫の前へと戻ってきたのだが、沙織と一年生達がまだ帰ってこない。すると麻子の携帯に沙織からメールが入った。

 

「沙織達・・・遭難したらしい。船底で迷子になってわからなくなったんだと・・・」

「えぇー!?」

 

麻子の言葉にみほ達は声を上げて驚いた。そしてみほはもう1つ重要な事を思い出した。そういえば・・・セナと2人で話した後、セナの姿を一度もみていない。

 

「そういえば!セナさんは!?」

 

みほの言葉に麻子と優花里は何かを思い出した様に「あっ!」っと声を上げた。

 

「セナは一度車庫を出てから戻ってない・・・」

「私もセナ殿の姿を見たのはそれが最後ですね。」

 

みほの顔が真っ青になる。今は夕方・・・まさかセナの身に何かあったのではと嫌な考えが頭を過る。みほは慌ててセナの携帯に電話を掛けるが繋がらない。

 

「どうしよう!?電話も繋がらない!」

 

みほが慌てて居ると杏が船内の地図を持ってみほの元へとやってきた。

 

「はいこれ地図。捜索隊よろしくね?」

 

杏はそれと・・・と付け加えた。

 

「わが校の大エース様のセナちゃんの捜索もお願いね~」

 

みほは真剣な顔で「はい」と答えた。

一方セナはダクトの中を通り、船底にある倉庫でポルシェティガーと呼ばれる戦車を見つけ、ある程度走れるように修理を行っていた。セナは手先も器用で車両の整備もする事が出来る。足回りの修復を終え、今はエンジンの修理及び、冷却系統の応急修理を行っている。

 

「噴射ポンプは生きているから、後は冷却系統のラジエーターやウォーターポンプを応急で修理しなければいけませんね。」

 

セナが戦車の修理を終えるとすぐそばから聞き覚えのある複数の声が聞こえてきた。

 

「お腹空いたよー。」

「このままここに泊まるのかな?」

「大丈夫だよ!もうすぐ助けが来るから!」

 

そこに居たのは、一年生6人と沙織だった。セナは沙織達に声を掛けた。

 

「あの~?何でここにいらっしゃるんですか?」

 

いきなり声を掛けられた為、沙織と一年生達はキャァァァと悲鳴を上げた。

 

「てかセナちゃん!?逆にセナちゃんが何でここに居るのか私達が聞きたいよ!」

 

沙織は胸に手を当てゼェゼェ言っていた。セナを見た一年生達は安堵した表情を見せ泣きながらセナの方へと歩いて行った。セナは一年生達を安心させる為、優しい笑顔を見せた。

 

「もう大丈夫ですよ?安心してください。」

 

泣き止んだところで桂利奈が口を開いた。

 

「セナさんは何でここにいるんですか?」

 

桂利奈の質問に対し沙織もうんうんと頷いた。

 

「そう!それだよ!何でセナちゃんがここに居るの!?」

 

セナはキョトンとした顔で答えた。

 

「皆さん各自指導をしていたのですが、私は放置されて忘れられていましたので、戦車を探しに船内を探索していたんです。戦車を見つけて修理をしていたら、皆さんの声が聞こえましたので・・・」

 

それを聞いた沙織は、セナを放置した事を申し訳ないと思い謝った。

 

「ごめんね?セナちゃん」

 

セナは笑顔で首を横に振った。

 

「影が薄いのは昔からですし・・・気にしないで下さい。」

 

セナはそういうとリュックから、お菓子とパンとジュースを取り出し一年生に渡した。

 

「お腹も空いているでしょうから遠慮なく食べてくださいね?」

 

食料を貰った一年生達の表情は明るくなり、セナにお礼を言った。

 

「「「「「「セナさん!ありがとう!」」」」」」

 

一年生達が食事を終えた後、みほ達がやってきた。みほは、セナが居るのを確認した後一目散に掛け寄った。

 

「もう!こんな所に居たなんて!心配したんだからねっ!」

 

みほが心配そうな顔でそう言うとセナは舌を少し出しながら「ごめんね?」と言った。

 

「ごめんね?じゃないよ!もう!制服こんなに汚して!」

 

みほはそう言うと、セナの制服に付いたススを払った。

セナは少し微笑んでみほに言った。

 

「みほさん。戦車もう1台見つけましたよ?」

 

セナが指を差した方向にはセナが見つけたポルシェティガーがあり、みほは少し微笑んで「もう・・・」と言い、この後みんなで車庫へと帰って行った。

 




次はアンツィオと戦います!


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第14話 みほ不在!?ピンチヒッター!臨時隊長セナたん!

アンツィオ戦!戦闘描写がんばります!


今日は、待ちに待ったアンツィオ戦なのだが、セナは出発前みほの看病をしていた。何故ならみほが熱を出してしまったからだ。セナが、杏にみほが熱を出したので休むと一報を入れると、みほはキツそうな表情でセナに謝った。

 

「ごめんね?セナさん・・・こんな大事な日に。」

 

セナは首を横に振る。

 

「熱を出してしまっては仕方ありません。次の試合までにきちんと病気を治して下さい。いいですね?」

 

セナがそう言うとみほは微笑みながら頷いた。しかしセナは心配だった。みほは責任感が強く、優しい娘だ・・・もしかしたら無理矢理身体を起こしてアンツィオ戦に来るかもしれないし、自分が居ない間にみほに何かあったら・・・心配になったセナは母親であるかなえに電話をし、みほの看病をお願いした。かなえはOKと即答すると、10分以内でみほの部屋へと到着する。セナはかなえにみほの看病をお願いし、みほに「絶対に安静に」と言って不安そうな顔で部屋を後にした。

セナが試合会場に着くと、皆騒然としていた。それはそうだろう・・・今まで頼りにしていた隊長が熱を出してお休みなのだから。セナが到着すると沙織 優花里 麻子 華の4人が慌てた様子でセナの元へ駆け寄ってきた。

 

「セナちゃん!みぽりんは大丈夫!?」

 

沙織は心配そうに聞いたが、セナは少し微笑んだ。

 

「熱はありますが、大したことは無さそうです。お母様に看病をお願いしましたし、お医者様も呼んで頂けるそうなので。」

 

セナがそう言うと、沙織達はホッと手を撫で下ろした。

そこへ杏がセナの元へとやってきた。

 

「西住ちゃんの看病ありがとね。後、西住ちゃんの代わりに隊長よろしくね?」

 

杏が笑顔でそう言うとセナは驚いた。何故なら隊長が不在な場合、本来であれば副隊長が隊長の代わりをするのだから。杏はセナの言いたい事をわかっていたかのように説明をした。

 

「本来であれば副隊長である桃ちゃんが隊長の代わりをするんだけど・・・桃ちゃんは経験が無さ過ぎるし、作戦立てるのも余り上手じゃないからね~」

 

セナは少し不安だった・・・隊長は聖グロリアーナに居たとき紅白戦で1度経験した事はあるが、公式の試合では初めてだったからだ。杏は笑いながら「よろしくね~」と言った後、その場を離れた。

 

試合開始前、セナはⅣ号に乗り込む。Ⅳ号はみほ不在の為、セナが代わりに隊長兼車長となるからだ。みほの様にハッチから顔を出し、深呼吸をする。セナは今までに無い位の緊張とプレッシャーに襲われていた・・・この試合に負ければ大洗は廃校・・・そして、隊長というポジションに居座る以上、みほとまほと血縁がある自分は一部の人間から比べられる・・・色々な考えが頭を過るが首を横に振り頭の中を真っ白にする・・・自分の戦車道の師であるダージリンに言われた言葉が頭の中を過った。

 

「あなたは、私にならなくても良い・・・誰にもならなくて良い・・・だってあなたは、あなたですもの。やりたいように隊長をしてみると良いわ。」

 

そして試合開始の合図が鳴る。

この試合は殲滅戦なので、どちらかが全滅したら負けになる。セナはまず最初にハッチから身体を出し周囲の状況を確認した。相手戦車はこちらより倍の10両・・・隊列を組んで道をこちらに進んでいる・・・セナは状況を把握すると直ぐ様全チームに指示を出した。

 

「カメさんチームとカバさんチームは左の森に隠れて、アヒルさんチームとウサギさんチームは反対側の右の森に隠れて全車両エンジンを切って待機してください。我々あんこうチームは敵を陽動して、今から来るアンツィオの隊列ごと引っ張ります。その後皆さんはエンジンを掛けた後、後ろから一斉に敵戦車を狙い撃って下さい。」

 

セナが指示を出すと、桃が異議を唱えた。

 

「これではコソコソして隠れているみたいではないか!正面から正々堂々と迎い撃てっ!それに!当初の作戦と全く違うじゃないか!」

 

桃の意見にセナは優しい口調で、返答をした。

 

「相手は全国大会出場校ですし、どんな出方をしてくるかわかりません。それに・・・私は会議の時は桃ちゃん先輩により、会議室に出入り禁止になっており作戦全体を把握することが出来ませんでした。みほさんより大体の作戦の内容を聞きましたが、どれもみほさん以外では成り立たないような内容でした。それに、優花里さんが持ってきたビデオも見ることが出来ていない私に同じ作戦を行える可能性はかなり低いです。」

 

桃はいつもと感じが違うセナに戸惑った・・・優しい口調だがいつもよりピリピリとした感じだったからだ。桃は渋々作戦を了承した。

全車両所定の位置に待機し、しばらく敵戦車を待つと、遠くから戦車の走行音が聞こえてきた為、セナはⅣ号のメンバーに指示を出した。

 

「麻子さんは、いつでも発進できる状態にしておいてください。」

「ほーい」

「華さんは砲塔を後ろに向けて、直ぐ迎い撃てるように準備を・・・」

「わかりました。」

「優花里さんはいつでも装填出来るように構えて置いてください。」

「はい!」

「沙織さんは、全チームに直ぐにエンジンを掛けて発進できるように指示を送って下さい。」

「オッケー!」

 

セナはハッチから顔を出し目を瞑る・・・ありのままの自分で戦う為に、みほに勝利を絶対に持って帰る為に・・・セナは髪を結んでいるヘアゴムをゆっくりと外し口に加えた後、ポケットに入れる・・・ヘアゴムを外したセナの姿を見たⅣ号の全員は驚いた・・・まるでいつも見ている"みほ"本人に見えたからだ。

 

後方から敵戦車が見えた。P40の重戦車を筆頭にカルロ・ヴェローチェCV33の小さな戦車9両がこちらに向かっており、P40から装填音が聞こえたセナは麻子に指示を出した。

 

「麻子さん!ゆっくりと速度を上げて前進してください!」

「りょうかい・・・」

 

麻子はゆっくりと速度を上げ前進させると、敵の全車両が速度を上げ砲撃しながら、一斉にこちらへ向かって来た。セナの作戦はⅣ号を囮にして全車両を引き付け、森に隠れた4両を後方から回り込ませる事で、包囲網を作り、前方に塞がっている岩で通せんぼした後に、一気に叩くというものだ。エンジンを切り森の中に待機させたのはエンジン音で敵に気付かれるのを防ぐためである。

 

その光景を観客席から見ていた、聖グロリアーナのダージリンとオレンジペコは、祈る様にセナの戦いを見つめていた。オレンジペコは落ち着きが無くソワソワとしている。

 

「ペコ・・・あなた落ち着きがありませんわよ?」

 

ダージリンは平然とした口調でそう言ったがオレンジペコがダージリンの間違いを指摘した。

 

「ダージリン様も、ケーキをスプーンで食べてますよ?」

 

ダージリンは自分の犯した間違いに気付くと、直ぐに手に持っているスプーンをフォークに変えた。彼女達が不安に思うのは無理もない・・・セナが隊長をしたのは聖グロリアーナに居た頃に一回だけなのだから。

しかし、そこまで心配する必要は無かった。

 

セナは、アンツィオの全車両が各チームを待機させている場所を通過した所を見計らって、各チームに指示を送った。

 

「カメさん!ウサギさん!アヒルさん!カバさんチーム!全員出動!後方から狙い撃って下さい!」

 

アンツィオでは、後方からいつの間にか出てきた敵車両に困惑していた。隊長であるアンチョビと呼ばれる少女はセナの腕に驚いている。何故なら西住流が居ない大洗になら勝てると踏んでいたからだ。

 

「なにぃっ!?森の中に4両も待機していたのか!?西住流が居ないのに何でこんなに強いんだ!」

 

その光景を見た蝶野も驚いていた。

 

「あの娘が、隊長をしているのを初めて見たけど・・・みほさんやまほさんとはまた違うタイプの戦い方をするのね・・・」

 

セナは猛烈な吐き気に襲われていた。常に神経を集中させ音を聴いていたからだ。しかし、ここで倒れてはチームの指揮は誰が取るのか?と思ったセナは無理矢理吐き気を抑え込みながら、指示を出す。

 

「麻子さん!前方に岩が壁になる形で塞がっています!岩の直前で急旋回して森の中に入って後方に回り込んで下さい!」

「わかった・・・」

 

セナは後方の4チームにも指示を出す。

 

「皆さん!前方に岩がありますので、ゆっくりとブレーキを掛け停止した後、一斉砲撃!」

 

麻子はⅣ号を急旋回させると、森の中を通り後方へ周り込んだ。急に現れた岩の壁にP40は急ブレーキを踏んだが、玉突き式にコツンコツンと後方から来ているCV33が追突し身動きが取れなくなった。そして、セナが全チームの砲手に指示を出す。

 

「撃てっ!」

 

5両から一斉砲撃された弾は、容赦なくアンツィオの戦車10両を戦闘不能にし、アンツィオ戦を見事突破した。

大洗陣営に帰ると、そこには熱さまシートをおでこに付けたみほと、セナの母親であるかなえが待っていた。みほが居る事にみんな驚いていた。セナは一目散にみほの元へと向かった。

 

「もうっ!安静にしててって言ったじゃないですかっ!」

 

セナは頬を膨らませ怒っており、みほは申し訳なさそうにセナに謝った。

 

「ごめんね?でもどうしても皆が心配だったから・・・」

 

みほの言葉にかなえも呆れた表情を見せた。

 

「この娘・・・セナと一緒で、頑固で言う事を聞こうとしないんだもの・・・だから、お父さんと一緒にお医者様を連れて、試合を見に来たのよ・・・」

 

セナはオデコに手を当てて呆れていると、アンチョビがセナの元へやって、セナの手をブンブンと振った後に抱きついた。

 

「いや~今年こそは勝てると思ったんだけどなぁ~」

「いえ・・・私も経験不足でしたので、良い経験になりました。」

 

アンチョビはセナを見ると、首を傾げた。

 

「お前・・・どっかで見た事があるなぁ」

 

アンチョビがそう言うと、カルパッチョと呼ばれる金髪の美少女がアンチョビの元へとやってきた。

 

「ほら、中学の時に一部で有名だった、あの走るコンピューターですよ。」

 

アンチョビは走るコンピューターというワードを聞いた瞬間腰を抜かした。

 

「走るコンピューターだってー!?あの!聖グロリアーナの!?そりゃあ勝てない訳だぁ・・・よし!お前ら!宴の準備だ!」

 

アンチョビがそう言うと、アンツィオの生徒達が沢山の食料と調理器具をトラックから持ってきて料理を始めた。それを見たみほとセナは首を傾げた。

 

「「何が始まるんですか?」」

 

セナとみほが口を揃えてそう言うと、アンチョビはふんっと笑って大洗の生徒達を見た。

 

「諸君!試合だけが戦車道じゃないぞ!勝負を終えたら!選手スタッフを労う!これが!アンツィオの流儀だ!」

 

そしてアンツィオ校によるパーティーが始まった。みほはかなえと医者同伴でパーティーを無理せず楽しんでいる。

セナは木陰に腰を掛け、ケーキと紅茶を味わっていると、ダージリンとオレンジペコがやってきた。

オレンジペコはセナに抱き付きたくてウズウズしているようで、セナに勢い良く抱き付くと、セナの顔が真っ赤になった。

 

「はわわっ///」

「セナの匂い!セナの感触!」

 

オレンジペコの状態を見たダージリンは呆れた。

 

「ペコ・・・淑女らしくありませんわよ?」

「ダージリン様!今日くらい良いじゃないですか~」

 

オレンジペコは、セナの可愛さに魅了され、惚気ている。ダージリンは笑いながらセナの頭を撫でた。

 

「セナ良く頑張ったわね。」

 

セナは少し笑うとダージリンにお礼を言った。

 

「いえ・・・ダージリン様が昔、紅白戦の時に頂いたお言葉のお陰で自分を見失わず戦う事が出来ました。ありがとうございます♪」

 

セナが満面の笑顔を見せるとダージリンの顔が赤くなった。ダージリンはコホンと咳を払うような仕草を見せた後、帰ろうとしないオレンジペコの手を無理矢理引っ張りながら帰って行った。

 

その後、桃がセナに今までの仕打ちを謝りに来て、この日の戦いは幕を閉じた。




アンチョビの声が爆走兄弟レッツ&ゴーの星馬豪の声に聞こえて仕方ない(笑)


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第15話 プラウダ高校へ行って来ました。

いよいよターニングポイントに差し掛かります。こっから走るコンピューターセナたんの本領発揮!


セナは、突如大洗の学園艦へとやってきたダージリンに連れられ、プラウダ高校の隊長のカチューシャと副隊長のノンナの元へとやって来ていた。

セナは目の前に座る金髪ショートヘアで自分より少し身長が高い、カチューシャをじっと見つめている。嫌気が差したのか、カチューシャが口を開いた。

 

「ちょっと!なんでこんなチビを連れてきたのよ!」

 

チビと呼ばれたセナは口元を手で隠しながら、フフッと微笑んだ。

 

「わたくしの事を小さいと仰っていますが、カチューシャさんは127cm、わたくしは125cmでたった2cmしか差がありませんわ?」

「なんですって!?カチューシャを馬鹿にしてっ!粛清してやる!」

 

セナが無理して丁寧な言葉を使っているのを見たダージリンは、少し悩んだような表情を見せた。

 

「セナ?前に座っているのはプラウダの隊長だけど

、無理して丁寧な言葉を喋る必要はないのよ?」

 

セナは、ダージリンの言葉を聞くと、ニッコリとした表情をダージリンに見せ、セナの笑顔を見たダージリンは顔を少し赤らめる。

ノンナと呼ばれる黒髪の美人な女性が紅茶をダージリンとセナの元へ持って来ると、ダージリンに対して口を開いた。

 

「準決勝は、残念でしたね。」

「去年カチューシャ達が勝った所に負けるなんて」

 

カチューシャは、少し馬鹿にしたような口調でダージリンに言った。

 

「勝負は時の運と言うでしょう?」

 

ダージリンとセナの前に紅茶が置かれ、ダージリンはノンナにお礼を言った。

 

「ありがとうノンナ」

「いいえ」

 

ノンナがセナに紅茶を渡すとセナはニッコリと笑顔を見せお礼を言った。

 

「ありがとうございます♪」

「っ///」

 

ノンナは、セナの笑顔を見ると少し顔を赤らめ、それを見たダージリンはノンナに対して微笑んだ。

 

「この娘も、中々の可愛さでしょう?」

 

ノンナは「はい!そうですね!」と言いそうになった口を抑える。ノンナの反応を見たダージリンは満足そうな表情を見せると、カチューシャの方に向き直った。

 

「次は、準決勝ですのに余裕ですわね?練習しなくていいんですの?」

 

ダージリンがそう聞くと、カチューシャは余裕そうな顔を見せた。

 

「燃料がもったいないわ?相手は聞いた事もない弱小校だもの」

 

「でも、隊長は家本の娘よ?西住流の」

 

ダージリンがそう言うと、カチューシャは「えっ!?」っと驚いたようなリアクションを見せ、ノンナの方を向いた。

 

「そんな大事な事!何で先に言わないの!?」

「何度も言ってます。」

「聞いてないわよ!」

 

ダージリンが「ただし」と付け加えた。

 

「妹の方だけどね。」

 

ダージリンがそう言うと、カチューシャはホッとしたような表情を見せた。

 

「なーんだ。」

 

ダージリンが急にセナの頭を撫でたので、セナは顔を真っ赤にしながら、身体をビクンとさせた。

 

「ひゃん///」

「後・・・この娘も、居るから油断しない方が良いわよ?」

 

カチューシャがセナを見ると、セナは気持ち良さそうにダージリンに身体を寄せおり、それを見たカチューシャは、セナの可愛さに顔を真っ赤にした。

 

「こんな奴が何だって言うのよ!?」

 

ダージリンはセナの頭を撫でながらカチューシャに言った。

 

「知らないかしら?中等部の頃、隊長達の間で騒がれていた・・・走るコンピューターよ?」

 

セナの正体を聞いたカチューシャは紅茶を吹き出し、ノンナは目を見開いて驚いていた。

 

「けほっ!けほっ・・・ちょっと!ノンナ!なんで早く言わないのよっ!」

「情報が全く無いのでわかりませんでした。」

 

ダージリンは話を続ける。

 

「そして・・・全てのポジションをこなし、2回戦のアンツィオ戦では、体調不良で試合に出れなかった西住流の娘に変わって隊長を務め、見事圧勝したのよ?」

 

カチューシャは、純粋にセナが欲しいと思った。全てのポジションをこなせて、隊長も出来る・・・それに・・・ノンナに肩車されなくても、人を見下ろす事が出来る・・・それに・・・かっ!可愛い!

カチューシャはセナを睨むと、セナを指差した。

 

「ノンナ!私!アイツが欲しい!」

「ひっ!」

 

セナは少し怯えて、ダージリンにムギュっと身体を押し付ける形でしがみついた。セナに抱き着かれたダージリンは頬を赤らめ、セナを優しく抱き締めた。

 

「あまり、セナを怯えさせないで頂きたいですわ・・・ビックリしてしまっています。」

 

カチューシャは、子供が親にオモチャを買ってと駄々をこねるような感じで、ノンナにずっと「セナが欲しい!」と言い続けていたらしい。

 

次の日・・・セナは、長砲身となったⅣ号をみほ達と眺めていた。セナは、その場に居た自動車部のナカジマを見ると戦車について質問をした。

 

「ナカジマさん?戦車が長砲身になったという事は、戦車の重心が若干前の方に来ているという事ですよね?」

 

ナカジマは、セナの方を見ると真剣な顔で頷いた。

 

「うん。若干重心は前に来てるよ?」

 

セナは、麻子の方を見た。

 

「麻子さん。少し戦車を走らせて貰えますか?」

 

セナの様子を見たナカジマは苦笑いを浮かべた。セナは、気になる事があると徹底的に改善しようとする癖があるからだ。

麻子は頷くと、戦車をフィールドまで持っていった。

みほは、ポカンとした表情を浮かべながらセナに質問をした。

 

「今から何をするの?」

 

セナは少し微笑んで、みほにウィンクをした。

 

「直ぐにわかります♪では麻子さん!タイムを測るので!置いてあるパイロンを目印にグルッと一周して下さい!」

 

麻子は頷くと戦車を発進させた。セナはストップウォッチを片手に持ち、走っている戦車を眺めていた。

 

「やっぱり・・・コーナーを曲がる時に戦車が若干膨らみ気味になってる・・・これじゃ曲がりにくいし、車重も変わってるから、タイムが前より落ちているかも・・・」

 

麻子のタイム計測を終えると、セナは、麻子に質問をした。

 

「麻子さん。Ⅳ号が前より乗りにくくなかったですか?」

 

麻子は、頷くと少し顔をしかめた。

 

「曲がりにくいし、加速が前より悪くなった。」

 

セナは少し考える素振りを見せると、みほに先程測ったらタイムと長砲身になる前のタイムを見せた。

 

「えっ!こんなに変わるの!?」

 

みほは、タイムを見ると驚いていた。長砲身になる前と後では、タイムが2秒も違うのだから。

セナはナカジマの方を見ると、ナカジマはセナが何をしたいか察したのか整備工場まで戦車を持っていった。

セナは整備工場へと入ると、自動車部の4人にⅣ号のスペックを聞いた。

 

「車重は?」

「27t」

 

セナは顔をしかめた。

 

「重すぎる・・・なんでそんなに重くなったんですか?」

 

セナの質問にナカジマは気不味そうに答えた。

 

「マイバッハの12気筒エンジンを積んでるし、この前社外の履帯に変えて、長砲身も付けたから・・・」

「馬力は?」

「300馬力だけど、経年劣化で250馬力まで下がってる。」

「足りない・・・」

 

セナは自動車部の方を向くと手をパンと叩いた。

 

「車重を3t軽くして、馬力を上げましょう。」

 

ツチヤは首を横に振った。

 

「無理だよ・・・万策尽きた・・・」

「エンジンオーバーホールは?」

 

セナにそう言われると、自動車部の4人はお互い目を合わせ会った。

その後、セナは自動車部の4人とⅣ号を分解していた。

 

「エンジンを外して、それが終わったら車軸のベアリングの交換と、履帯も変えましょう。その後は余計な物を取り払って軽量化です。」

 

自動車部とセナはエンジンをクレーンで降ろすと、各自作業に取りかかった。ツチヤとホシノはエンジンオーバーホール、ナカジマとスズキは履帯の交換、セナは車軸のベアリングの交換を行った。

作業が一通り終わった所で、あんこうチームのメンバーがセナの様子を見にやってきた。後ろには、おかっぱ頭の女の子3人が居る。

 

「あっ!?皆さんお揃いでどうなさったんですか?」

 

みほは、照れくさそうにセナを見た。

 

「えっとね?セナ・・・さんの様子を見に来たのと、新しく入った人を紹介しようと思って。」

 

どうやら、みほはセナが心配で見に来たようた。セナは後ろの3人の内の1人は見覚えがあった。

 

「あっ!風紀委員の!」

 

3人の内の一人もセナを見て声を上げた。

 

「あっ!アンタ!冷泉さんをリアカーに乗せて私の注意を無視したヤツ!」

 

麻子は少し笑うとセナに彼女を紹介した。

 

「セナ・・・そど子だ・・・」

「そど子って言わないで!私は園田みどり子!」

 

時間が経って外を見ると、夕方だった為セナは、みほ、沙織、優花里、華、麻子と帰りにケーキを食べて帰った。

 

次の日、セナと自動車部は、改良したⅣ号を持って再び練習用のフィールドに来ていた。そこには、あんこうチームのメンバーと生徒会も居た。Ⅳ号を改良したと聞いていたが、皆それで問題が解決したのかどうか半信半疑だった・・・桃は特に疑っている。

 

「二木?改良して逆に遅くなったんじゃないだろうな?」

 

セナは微笑むと指を3本立てた。

 

「私が、改良そしてセッティングしたⅣ号に乗れば昨日よりタイムが3秒上がります。」

 

それを聞いたあんこうチームのメンバーは驚いた。

 

「「「「「さっ!3秒!?」」」」」

 

桃は目を見開いて驚いた。

 

「そんな馬鹿な!」

 

ツチヤが桃に言った。

 

「昨日、自動車部4人も一緒に改善したんです。」

 

そのやり取りを見た杏は笑うとこう言った。

 

「まっ!とりあえず走らせてみたら?」

 

麻子も半信半疑でⅣ号に乗り込む

 

「そんな馬鹿な事が・・・っ!」

 

麻子がⅣ号を発進させると驚いた。加速は抜群に良くなって、カーブを曲がる感じも前よりも一段と良くなっており、ハンドリングも自分に合ったような感覚になっていたからだ。

セナは、外からⅣ号の動きを眺めながら、みほと沙織と華と優花里と楽しそうにお喋りをしていた。

桃がストップウォッチで測ったタイムを見た瞬間目を見開いた。

 

セナが整備工場でアイスを食べながら、自動車部の4人と談笑していると、生徒会がセナの元へとやってきた。

 

「二木?一体Ⅳ号に何をした?」

 

セナはアイスを食べながら桃の方を見た。

 

「教えても構いませんが条件があります。」

「何だ?」

 

桃がそう言うと、セナは条件を話した。

 

「まず、私のレギュラーの保証を。そして、決勝戦で結成されるであろう、自動車部の彼女達と同じチームでポルシェティガーに乗せてください。」

 

セナがそう言うと、桃は顔をしかめた。

 

「正気か?貴様は西住のお願いで、レギュラーにしているだけだぞ!」

「断るなら今すぐこの大洗を出て、プラウダに転校します。」

「そんな乱暴な!」

 

セナはアイスが入っていた容器を近くにあったテーブルまで歩いて持って行き、桃もセナに続いた。

 

「私が改良したⅣ号は速かったですか?3秒速かったですか?」

「3.5秒速かった・・・」

 

桃がそう言うと、セナは最後の一口を食べて、容器をテーブルに置き、ゴマすりをして笑顔で桃の方を見た。

 

「では・・・"大洗の今後"の事を踏まえて、どちらがお得か良く考えてから連絡を下さい。」

 

セナは「では」と言うと、皆に手を振りながら整備工場を後にした。その後、生徒会室で杏はニヤニヤしながら桃に肘を付いた。

 

「桃ちゃん、セナちゃんに見事に1本取られたねぇ~」

 

柚子はセナの言葉に疑問を浮かべていた。

 

「でも・・・セナちゃんは"大洗の今後"と言っていましたけど~もしかして、廃校になることを知っているんじゃ・・・」

 

その後生徒会室には重い沈黙が流れていた。

 




次はプラウダ戦です!大洗にとって重要な戦いになってきますが、セナにとっても重要な局面になって行きます!次回お楽しみに!


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第16話 迎えるプラウダ戦・・・みほのセナに対する想い。

良し悪しに関わらず、この小説を評価して頂いたことを感謝申し上げます。
私の予想を上回る沢山の方々に読んで頂けた事にとても驚いております(笑)
今後も、誤字脱字報告、小説への評価、そしてセナたんをよろしくお願い致します。

では始めましょう。


プラウダ戦当日を迎え、学園艦は北部にある雪原のフィールドへと到着した。

セナがフィールドへ降りると、凍るような寒さに身体が震えた。

 

「さっ・・・寒い・・・」

 

セナが周りのチームメイトを見ると、雪合戦をしたり、侍型のゆきだるまを作ったりして遊んでおり、新しく導入されたRENAULT B1に乗るそど子率いる風紀委員3人は緊張のあまり硬直している状態で、何やら麻子達とふざけ合っているようだった。

セナは寒さを凌ぐため、みほに抱き着いた。みほは急に冷たい感触がお尻から脚にかけてあった為、びっくりして声を上げた。

 

「きゃっ!冷たっ!って・・・セナさん?どうしたの?」

 

みほが驚いた表情でそう言うと、セナは泣きそうな顔でみほに訴えかけた。

 

「みほ・・・さん・・・寒い」

 

みほは、「もう・・・」と言うと、しゃがんでセナをギュッと抱き締めた。

 

「もう寒くないでしょ?」

「うん♪」

 

セナはみほに温められ、笑顔を見せた。その様子を見ていた麻子はムッとした表情でセナの元へとやって来た。

 

「麻子さん?」

 

麻子は無表情でみほが居る反対側からセナを抱き締めると、その行動を見たみほは戸惑った。

 

「麻子さん?何してるの?」

 

麻子は少し満足した様な表情をした。

 

「私も寒いから・・・セナに温めてもらおうと思ってな・・・」

 

女の子2人の顔が至近距離にある状況で、セナは逆に熱くなり過ぎて体温がオーバーヒートしていた。それはそうだろう・・・みほを抱き締めに行く時、かなり恥ずかしかったのに加え、麻子が後ろから抱き締めている状況でサンドイッチ状態になっているのだから・・・そして皆忘れているかも知れないが、セナは男なのだ・・・それは興奮状態になる。

 

すると雪原の向こうから1台のトラックがこちらへやって来た。トラックから降りてきた2人を見て、沙織はキョトンとした顔をした。

 

「誰?」

 

みほが降りて来た2人の事を話す。

 

「あれは・・・プラウダ高校の隊長と副隊長・・・」

 

優花里がみほの説明に補足を入れる。

 

「地吹雪のカチューシャとブリザードのノンナですね!」

 

カチューシャはこちらまで歩いて来ると、馬鹿にしたような笑い声を上げた。

 

「あははははっ!カチューシャを笑わせる為にこんな戦車用意したのね!」

 

杏がカチューシャの前へと出て、挨拶をした。

 

「やぁやぁカチューシャ!よろしく!生徒会長の角谷だ!」

 

杏がかがんで握手を求めると、カチューシャは見下ろされるのが嫌いなのか不機嫌な顔になった。

 

「ノンナ!」

 

カチューシャはノンナに肩車をさせると、ノンナの肩の上で腕を組んで見下ろした。

 

「あなた達は全てがカチューシャより下なの!戦車も技術も身長もね!」

 

セナは自分より身長が低いと言っているカチューシャに思わずツッコミを入れた。

 

「肩車をしていますし・・・私より身長が2cm高いだけじゃ・・・」

 

セナがそう言うと、カチューシャは不機嫌な顔でセナの方を向いた。

 

「よくも!カチューシャを馬鹿にしたわね!?粛清してやる!行くわよ!ノンナ!」

 

カチューシャとノンナがトラックへ戻ろうとした時、カチューシャの目にみほが止まった。

 

「あら?あなたは西住流の・・・去年はありがと?あなたのお陰で私達優勝できたわ?今年もよろしくね?家元さん?じゃーねー!ピロシキ~」

 

カチューシャがそう言って立ち去ろうとした時、セナがロシア語でカチューシャとノンナにこう言葉を投げ掛けた。

 

《見えない敵に気を付けて下さいね?》

 

ロシア語が理解できるノンナは、セナを睨み付けると、トラックへと帰っていった。

 

試合開始前、皆円陣を組んで最終的な会議を行っていた。みほが作戦内容を話している。

 

「とりあえず相手の車両の数に呑まれないで、冷静に行動してください。今回はフラッグ戦です。フラッグ車を守りながらゆっくり前進して、相手の動きを見ましょう。」

 

みほが作戦を話すと、歴女達が異を唱えた。

 

「ゆっくりも良いが、ここは一気に攻めてはどうだろう?」

「うむ・・・妙案だ。」

「先手必勝ぜよ。」

 

みほは、自分の意見とは反対に攻めようと言われた事に戸惑った。

 

「皆さん気持ちはわかりますが・・・リスクが・・・」

 

皆口々に「攻めたい!」「勢いは大事!」「いけそうな気がする!」など発言したが、セナは違った。

 

「やめましょう!危険過ぎる!初めての雪原のフィールドで攻めに行くのは、あまりにも無謀です!積もった雪が崩れて怪我する事もあるんですよ!?」

 

セナがそう言うも、賛同してくれるメンバーはほとんどおらず・・・それどころか、行け行けムードが漂っていた。みほは長考の末、守るよりも皆の意見を尊重して、攻める事を選んだのだった・・・。

 

試合開始後、カチューシャ率いるプラウダ高校は隊列を組み前進していた。

 

「良い!?あいつ等にやられた車両は!シベリア送り!25ルーブルよ!」

 

カチューシャの発言をノンナが言い直した。

 

「日の当たらない教室で25日間の補習って事ですね?」

「行くわよー!フラッグ車だけあえて残して、後はみんな殲滅してやる!力の違いを見せつけてやるんだからっ!」

 

プラウダ高校は掛け声と共に雪原を行進して行った。

 

一方大洗は、プラウダが居る方向へ隊列を組み突撃しており、セナはこの試合で最後になるであろう、ウサギさんチームの通信手として、M3リーに乗っていた。水筒に容れてきた紅茶を一年生達に差し出しながら、ハッチの外から周囲を警戒している。しばらく進むと、遠くから物音が聞こえた為、音がした方向を見ると、崖から2人双眼鏡でこちらを偵察しているのを発見したので、みほに連絡を入れた。

 

《みほさん。こちらウサギさんチーム・・・崖の上にプラウダ高校と思われる2人組が偵察をしているのを発見・・・敵が前方に待機している可能性があります。》

《わかりました。引き続き周囲を警戒してください。》

《了解しました。》

 

しばらくして坂に差し掛かると、カモさんチームのRENAULTB1が雪でスリップし、坂を登れなくなってしまった。

それを見たみほは、無線でセナに指示を送った。

 

《セナさん。カモさんチームの方へ行って指導してあげてください。》

 

セナは、「わかりました。」と言うとM3リーから降りてRENAULT B1へと移動した。ハッチを開けると、ゴモヨと呼ばれる少女が泣きながら困っていた。セナは笑顔で優しく声を掛けた。

 

「運転・・・変わりましょうか♪」

 

セナが運転を変わると、ゴモヨに優しく雪道での運転の仕方を教えた。

 

「この戦車は重く馬力がある為、雪道で一気にアクセルを踏んでしまうと、履帯が空転して前に進まなくなってしまうんです。なので坂道では、ゆっくりとアクセルを踏んで、ハンドルは真っ直ぐに持ち・・・徐々にアクセルを踏んでいく。」

 

ゴモヨは、セナの説明を真剣に聞いているのだが、そど子は敵意剥き出しだった。

 

「いきなり人の戦車に乗り込んでどういうつもりよ!」

 

セナは微笑みながら、そど子を見た。

 

「隊長命令です♪」

 

セナがそう言うと、そど子は口を閉じ、セナはM3リーに帰って行った。

しばらく進むと、前に居るⅣ号が積もっている雪を榴弾で弾き飛ばし道を開け、隊列を保ったまま前進した。すると前方にプラウダ高校の戦車2両が待ち伏せており、セナは周囲を警戒した・・・待ち伏せて居るのが2両だけというのはおかしい・・・相手は15両居るのに、待ち伏せているのはたった2両だけ・・・明らかに罠に誘っている、セナにはそう思えてならなかった。

 

みほは、三突とⅣ号で前方に居るT-34、2両を撃破した。皆前回の優勝校の車両を撃破したという事もあり、皆舞い上がっていたが、セナは引き続き警戒をしていた・・・相手車両はアッサリと撃破された為、あの2両は捨て駒だと読んでいた、セナも何も調べて来なかった訳じゃない、プラウダの戦い方を徹夜で研究していたのだ。プラウダは、相手を高い所まで上げて、一気にどん底に叩き落とすような作戦を取る・・・この舞い上がっている状態から叩き落とすとなると狙いは1つだ。セナは直ぐにみほに連絡を入れようとした所、陰から1両の戦車が飛び出し逃げた。それを皆追撃した為、慌ててみほに連絡を入れた。

 

《みほさん!明らかに誘導されてます!このまま突っ込むのは危険です!》

《そうだね・・・全車両一旦止まって下さい!》

 

みほは、停止命令を出したのだが、M3リーとⅣ号を除く4両が命令を無視して市街地の方まで突っ込んで行ったのだ。みほは、慌てて指示を送り直すが時既に遅かった・・・周りにプラウダの車両13両が大洗を囲っていたのだ。セナは、桂利奈と操縦を変わるとフルスロットルでその場を飛び出し周りに居るプラウダの車両へと向かって行った。その頃みほは、全チームに指示を出し、建物の中へ避難するように指示していた。プラウダに一斉砲撃され、主砲は故障し、履帯は壊れ戦車はボロボロになっていたが、満身創痍で建物の中へ入るとみほは、M3リーが居ない事に気付いた為、セナに連絡をした。

 

《セナさん!今どこですか!?》

《皆さんが居る建物の直ぐそばです!》

《では!早く建物の中へ入って下さい!》

《了解!》

 

セナが何故ずっと戦っていたかと言うと、戦車で建物の周りを走りながら、プラウダの戦車5両を撃破し皆が逃げる時間を稼いでいたのだ。M3リーも建物の中へ入ると皆気分が沈んでいた。理由を尋ねると、この大会で勝てなければ、大洗が廃校になると知らされていたからだ。そこへ、プラウダ高校の生徒2人がやってきた。カチューシャの使いだと言う・・・降伏して土下座し、セナをこちら側に引き渡せば、馬鹿にした事を許すと言う条件を提示しに来たのだ・・・2人はそれだけ告げると去って行った。みほは、この絶望的な状況で究極の選択を強いられていた。このまま、負けを認めるか、負けが確定しているような状況で戦うか、みほが迷っているとセナが少し寂しそうな表情で、みほの元へとやって来た。

 

「私は、みほさんの為にこの大洗を守るつもりですが・・・もし・・・みほさんが降伏するのであれば・・・」

 

セナが降伏するのであればそれでも構わないと言おうとした所、みほが泣きながら抱き着いて来た。

 

「ダメ!絶対ダメっ!」

「みほさん・・・」

 

みほは、泣きながらセナを見た。自分の弟で、誰よりも私を気にかけてくれた大事な人・・・私が不安な時、優しい笑顔で慰めてくれた・・・ここで降伏したら、セナを失ってしまう・・・それは嫌だ!

 

「私・・・あなたが居ないと駄目なのっ!」

 

みほの告白にセナは優しい顔でみほの頭を撫でた。

 

「わかりました。では降伏しないという事ですね?みほさん?」

「うん・・・」

「なら・・・皆に降伏しない事を伝えなければいけませんね?」

 

みほは頷くと、涙を拭いて皆の方を向いた。

 

「私達は!降伏せずに戦い!勝ちます!」

 

みほの宣言と共に「オー!」という掛け声が建物に響いたのであった。




どうでしたか?上手く書けていましたでしょうか?時には甘えるセナたん可愛いと、私ラウダも思っております(笑)


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第17話 走るコンピューターの覚醒

いよいよクライマックスに近付いて来ましたね~。このプラウダ戦でセナの能力が光ります。


みほと生徒会の3人は作戦会議を開き、麻子 そど子 優花里 エルヴィンの4人は戦車の位置を確認する為偵察に行っていた。セナは今、ペール缶に火を起こして、焼き芋を作っている。美味しいものを食べて貰い、皆に英気を養って貰う為だ。全員に焼き芋を配り終えると、次にありったけのお菓子と缶詰を出し、グループ毎に配って行く。それを見た桃は感心していた。

 

「色々持ってきているんだな。」

 

セナは桃を見るとニッコリと笑った。

 

「もちろんです!食べ物の他にもトランプとかオセロとかもありますよ?」

 

それを聞いたみほは若干呆れた。

 

「もう・・・遊びに来てるんじゃないんだから」

 

みほがそう言うと、杏は大笑いした。

 

「あはははっ!いいじゃん!いいじゃん!士気を上げるのは大事だよ!」

 

一方観客席では、聖グロリアーナの2人が試合を観戦しており、オレンジペコは、心配そうに画面を見つめていた。

 

「天候が悪くなってきましたね・・・セナのモチベーションが下がらなければ良いんですが・・・」

 

オレンジペコの不安そうな声を聞いたダージリンは、少し笑いながら紅茶を口に付けた。

 

「こんな格言を知ってる?全てを今すぐに知ろうとは無理なこと。雪が解ければ見えてくる。」

 

そして、みほの試合を見に来ていたしほは、プラウダに囲まれている大洗の絶望的な状況を見てイライラしていた。

 

「こんな試合見ても無駄よ!帰るわ!」

 

同行していたまほにそう言って立ち上がり帰ろうとした時、ある人物が引き止めた。

 

「どこへ行くんですか?」

「!?」

 

しほが声をした方を見ると、セナの義理の父親であるラウダが居た。

 

「まだ試合は終わっていない。それに・・・子供の試合を最後まで見届けてあげるのが私達親の責務でしょう?」

 

ラウダにそう言われたしほは、再び観戦席に腰掛けた。

 

プラウダ高校の隊長カチューシャは、待機場所で焚き火を起こし、簡易カプセルの中に座って温かいスープを飲んでおり、たった1両の戦車に5両も撃破された事に腹を立てていた。

 

「何であんな低スペックな車両1台に5両もやられた訳!?」

 

カチューシャの質問にノンナは冷静に答えた。

 

「あの戦車の乗りこなしといい、あの建物と建物の狭い隙間を最高速度で抜ける技術・・・走るコンピューターがあの戦車に乗っていたのは間違いありません。」

 

ノンナの発言を聞いたカチューシャはますますセナが欲しくなった。

 

「なんとしてでもこの試合勝つわよ!」

 

大洗の方は、降伏するための猶予である3時間が近付くと、降伏しないことをプラウダの遣いに伝えた。

そして、時間になると一斉にエンジンを掛け隊列を作り勢い良く建物を出て行く、作戦は守備が硬い所にあえて突っ込み敵を動揺させ、フラッグ車である八九式を38tとRENAULT B1で守りつつ、敵がそちらに集中している間にⅣ号と三突がフラッグ車を探し叩くというもので、M3リーはあえてフリーな状態にして、周りの敵を出来るだけ撃破してくれという指示だった。その為、セナは砲手として乗り込む。

M3リーは建物から出た途端、砲撃を開始し、後方から来ていた1両を撃破し、しばらく雪原を進むと横から2両現れた為、そちらへ方向転換して行った。

そして最後方RENAULT B1の後ろからはプラウダの車両6両が砲撃をしながら迫って来ており、みほはカモさんチームにフラッグ車の有無を確認した。

 

「フラッグ車は居ますか!?」

 

そど子は双眼鏡で確認するが、フラッグ車は確認出来なかった。

 

「フラッグ車!確認出来ません!」

 

それを聞いた杏はみほに先に行けと指示を出した。

 

「こっちは引き受けるから!フラッグ車を探して!」

 

みほは少し考えた後、フラッグ車を探す事を決断した。

 

「わかりました。そちらはお願いします!」

 

そして、M3リーは周りに居たT34 2両を撃破し、直ぐにみんなの後を追う。セナは桂利奈に急ぐように言った。無線連絡によると、カメさんチームとカモさんチームが、敵車両を3両撃破した直後にやられたと連絡が入ったからだ。

 

「急いで下さい!今38tとRENAULT B1が撃破されました!フラッグ車が撃破されれば我々の負けです!」

 

観客席から見物していたオレンジペコは、ソワソワと落ち着きが無く、不安そうな顔でセナ達の戦いを立って観ていた。

 

「ダッ・・・ダージリン様!セナが大ピンチです!」

 

オレンジペコは慌てた様子でダージリンに言ったが、ダージリンは少し笑いながら戦いを見つめていた。

 

「ペコ・・・落ち着きなさい。淑女らしくありませんわよ?」

「ですが!ダージリン様!」

 

ダージリンは紅茶を一口飲むと、微笑みながらオレンジペコを見た。

 

「確かに、雪で視界も悪くて大洗の戦車の数も残り少ないけれど・・・こういうピンチな時こそ、セナの怖さが出てくるのよ?」

 

セナ率いるM3リーは、フラッグ車である八九式の元へ向かっていた。セナがハッチから身体を出し、神経を集中させ周りの音から情報を集める。

 

(雪で視界が悪く目視では前方を確認不能・・・1000m先の10時の方向で、敵車両2両と八九式1両が交戦中・・・風は10時の方向に向かって吹いており、上空の風速はおよそ19m /s~21m/s。敵車両は射程範囲内)

 

そして、その前方ではIS-2に乗るノンナとT34に乗るカチューシャが八九式を捉えようとしていた。ノンナは前方に居る八九式をロックオンすると、引き金を引いた。放たれた砲弾は八九式へと向かって行く・・・ノンナとカチューシャは勝ったと確信し少し笑ったが砲弾は八九式に届く事は無く、途中で爆発した。その光景を見たカチューシャとノンナは目を見開いて驚いた。

 

「ちょっと!何が起こったの!?」

 

そう・・・セナが放った砲弾がノンナが放った砲弾にぶつかり相殺されたのだ。

カチューシャが周りを見渡すが、雪で視界が悪く、どこにも敵車両は確認出来なかった。するとT34の横に居たIS-2に見えない彼方から放たれた砲弾が着弾し、白旗が上がった。カチューシャは怯えて周りを改めて見渡すが、敵車両は見えない・・・増してや風音のせいで、戦車の走行音も良く聞こえないため、車両がいる方角もわからなかった・・・カチューシャは見えない敵に恐怖した。

 

「どこに居るのよっ!?このカチューシャを倒そうなんて100年早いわよ!」

 

そして、カチューシャが戸惑っていると、真後ろから戦車の走行音が聞こえてきた。カチューシャが気付いた時には砲弾が着弾し撃破されていた。

しばらくすると試合終了のアナウンスが聞こえてきた。

 

「試合終了!大洗女子学園の勝利!」

 

みほ達がフラッグ車を撃破したのだ。

そして、負けたと知ったカチューシャは涙を流した・・・。M3リーが拠点に戻り、セナと一年生達がみほ達を祝福していると、そこへカチューシャとノンナがやってきた。

 

「まさか、守備が厚い所を狙って来るとは思わなかったわ!べっ・・・別に悔しい訳じゃないからっ!」

 

みほは、少し笑いながらカチューシャを見た。

 

「こちらも、もし一気に攻撃されていたら負けていたかもしれません。」

 

みほがそう言うと、カチューシャが首を横に振った。

 

「いや・・・それでも勝てなかったと思うわ・・・」

 

カチューシャはそう言うと、試合で疲れ椅子に座っているセナを見た。

 

「多分、観客とかはⅣ号のあなた達に注目するんでしょうけど、一番のMVPはそいつよ!全ての逆境を覆したんだから・・・ちゃんと褒めてあげなさいよ!」

 

カチューシャはそう言うと、みほに握手を求めた。

 

「あなた達は、最高のチームだったわ。」

 

カチューシャがそう言うと、みほは笑顔で握手をした。その後、カチューシャが握手を終えるとセナの元へ歩いて行き、セナの前で立ち止まった。

 

「正直・・・カチューシャはあなたの事を舐めてたわ。」

 

セナは返事する気力も無かった為、優しく微笑んで手を上げた。別に良いですよと言いたいのだろう。

 

「だから・・・」

 

カチューシャは少し顔を赤らめると、セナの頬にキスをした。セナは柔らかい感触が頬に当たるのを感じて顔が若干赤くなった。少し汗を掻いて目がトロンとしている状態なので、物凄く色っぽい状態になっている。

 

「だから!あっ・・・あなたはカチューシャの物なのっ!」

 

キスシーンを見た周りの女の子達は唖然とし、恥ずかしくなったカチューシャはノンナを呼んだ

 

「ノンナっ!」

 

そう言うとカチューシャはノンナに肩車をされ、その場を去って行った。




遠くからジワジワ狙うセナたん恐るべし・・・


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第18話 セナの秘密兵器

最終戦まで日常を描きます!


大洗では、皆決勝戦に向けて準備をしていた。みほは、生徒会室で生徒会3人と作戦会議をしており、その他は練習に励んでいた。セナはというと、自動車部のナカジマからこの前見つけたポルシェティーガーについて相談を受けており、ナカジマは深刻そうな顔をしていた。

 

「あのポルシェティーガーをレストアして、試運転したんだけど、トラブルが多いからセナの力を借りたいんだよね~。」

 

ナカジマは、この前見つけたポルシェティーガーをレストアしたものの、車両にトラブルが多く走行すら困難な為、何か策はないかとセナに相談に来たのだ。セナはとりあえずレストアされたポルシェティーガーに乗ってみる事にした。セナは大勢の生徒に見守られる中、エンジンを掛けスタートしたのだが、スタートして数m進んだ所で、履帯が砂にハマり、車輪が空転した直後エンジンがオーバーヒートした。セナが戦車から降りると、不機嫌そうな顔をしていた為、ナカジマはセナにポルシェティーガーの感想を聞く事にした。

 

「セナどうだった?」

 

セナはナカジマの方を見ると、頬を膨らませて怒りを露にした。

 

「酷い!まるでブタさんです!」

 

セナがそう言うと、それを聞いた優花里の顔が不機嫌になっていた為、ナカジマは慌ててセナの口をふさいだ。

 

「何て事を言うの!?これは名車ポルシェティーガーだよ!?」

「ポルシェティーガーだとしても、酷すぎます。車体は重い上に空冷エンジンですって?びっくりですよ!当時、あんな立派だった施設で、こんな屑を造ってたなんて!1から戦車を作ったほうがマシなレベルです。」

 

セナはそう言うと早足で整備工場まで歩いて行った。その光景を見ていた沙織は、セナが心配になった。何故なら、いつも以上にセナがピリピリとしていたからだ。

 

「セナちゃん・・・」

 

心配になった沙織は、セナの後を付いて行く事にした。

整備工場へと来たセナは、自動車部に貸してもらっているスペースまで足を運んだ。そこにはセナが秘密裏に作っていた物がベールを被り眠っている。セナがベールを剥がそうとした時、誰かに話しかけられた。

 

「セナちゃん・・・」

 

セナが振り向くとそこには、心配そうな顔をした沙織が居た為、セナは沙織を見ると微笑んだ。

 

「沙織さん?どうかされましたか?」

「セナちゃんさ・・・また何か抱え込んでない?」

 

セナは自分の心理状況を当てられた事に驚いた。

そう沙織は、セナがまた何か不安を抱え込んでいるのでは無いかと心配だった。沙織は知っている・・・二木セナという人物は不安や悩みがあっても、決して自らその不安や悩みを誰かに相談したりしない・・・誰かが聞かなければ、不安や悩みを抱え込んだまま先に進んでしまう事を。先程のピリピリとしたセナの雰囲気を見て、また何か抱え込んでいると踏んでいた。

沙織の不安そうな顔を見たセナは、不安を隠す為微笑んだ。

 

「何もありませ「嘘つき!」」

 

セナが何もありませんと言おうとした所で、沙織が被せぎみにセナの言葉を遮った。セナが沙織を見ると沙織は泣いていた。

 

「嘘つき・・・なんで?どうして!?いつもそうじゃん!限界まで不安を抱えて!たまに泣きそうな顔になって!私は辛いよ・・・セナちゃんのそんな顔見るの・・・お願いだから私だけにでもいいからっ・・・相談してよっ!」

 

沙織はその場に崩れて、涙をポロポロと流していた。セナはゆっくりと沙織の元へ歩き、沙織の頬を優しく撫でた。

 

「ごめんなさい・・・沙織さん・・・。ただ・・・今抱えているこの悩みだけは1人で解決したいんです。心配してくれてありがとうございます。」

 

セナが微笑みながらそう言うと、沙織がセナを壁に押し付けた。

 

「ズルいよ・・・そんなに優しくされたら、私・・・セナちゃんの事・・・本気で・・・」

 

沙織の顔が徐々にセナの顔に近付いて来た。セナは恥ずかしくて顔が真っ赤になった。

 

「沙織さん・・・待って・・・」

 

唇と唇が付きそうになった時・・・誰かが叫びながら走ってきた。

 

「ストォォォォォプ!」

 

セナと沙織がびっくりして声がした方を見ると、みほと優花里、麻子、華の4人が走ってやって来た。

 

「そういう事はもっと大人になってからだよ!」

 

みほは慌てた様子でセナに言い聞かせ、麻子はゼェゼェと息を切らしていた。

 

「もう少しで・・・沙織に・・・セナを・・・取られる所だった・・・」

 

優花里と華はベールを被っている物体に注目していた。

 

「セナ殿・・・これは?」

「戦車?でしょうか・・・」

「ふふっ♪」

 

セナが少し笑いながら被っているベールを剥がすと、そこにはピカピカで新車同然の戦車が姿を表した。その戦車を見た一同は驚愕した。

 

「セナ殿!これはポルシェティーガーですか!?全てが新品の部品ですよ!?」

 

セナは両手を腰に当て、説明を始めた。

 

「これは、ドイツから新品の部品を譲って貰い、私が組み立てた物です。」

 

4人は驚いたが、ポルシェティーガーなら先程と同じように直ぐ故障するのではないかと、疑問が出てきた為、

優花里はセナに質問をした。

 

「しかしセナ殿?ポルシェティーガーは冷却系統や重量に問題がありますので、先程のポルシェティーガーと同じ結果になるのでは?」

 

優花里がそう言うと、セナは微笑んだ。

 

「先程のポルシェティーガーは改良される前でこっちのポルシェティーガーはエンジンが空冷式から水冷式に変った改良された後のポルシェティーガーです。これでオーバーヒートがしにくくなっており、私が強度を保ったまま軽量化を行い欠点を無くしたので、先程のポルシェティーガーとは別物です。」

 

しかし、みほには気になる事があった。

 

「セナさん・・・でもこれ公式戦で使えるのかな?」

 

セナはポルシェティーガーの小物入れから1つの書類を取り出し、皆に見せると・・・ニッコリと笑った。

 

「ちゃーんと・・・戦車道連盟から認可を貰ってます♪」

 

そこには、車両検査合格標と書かれていた。セナがニッコリとみほの方を見ると、みほは顔を赤くして照れていた。

 




寝ぼけて書いたので間違いがあるかもしれません。


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第19話 セナとオレンジペコ

オレンジペコはセナよりも年下なのに呼び捨てなのか理由が明らかに・・・


セナはみほと2人で商店街へ遊びに来ている。

今日は土曜日で練習は休みだ。本来なら今日は練習の予定だったのだが、「あまり根を詰め過ぎると、余計に疲れて練習の効率が下がるので、土曜日の練習は廃止しましょう。」というセナの進言により土曜日は休みとなったのだ。何故セナにここまでの発言力があるかというと、生徒会の3人にこれまでの功績が認められ副隊長へ昇格した為だ。

セナとみほは、雑貨屋でアクセサリーを見ている。

 

「色々なアクセサリーがあるんですねー。」

 

セナは女の子物のアクセサリーを興味津々に見ており、みほもセナに似合いそうなアクセサリーを手に取りながらセナに身に付けてはしゃいでいた。

 

「可愛い!セナさん可愛いよ!」

 

みほがセナに身に付けたアクセサリーは、桜の花びらが付いているヘアピンだった。セナもヘアピンを身に付けている自分の姿を鏡で見て、クルクル回ってはしゃいでいる。

 

「可愛い~♪お姉様も♪」

「えっ!?ちょっと!?」

 

セナは笑顔でそう言うと、しゃがんでいるみほにヘアピンを付けた。

 

「お姉様も可愛い!」

 

みほとセナがイチャイチャしていると、誰かに話かけられた。

 

「決勝戦が近いのに、練習しなくても大丈夫ですの?」

 

セナとみほが声がした方を見ると、そこにはダージリン

が少し心配そうな顔をして立っており、その後ろには、セナとみほの仲の良さに嫉妬して、膨れっ面をしたオレンジペコが居た。

 

「セナ~?休日に女の子とデートなんて良いご身分ですねっ!それに!プラウダの隊長まで恋に落とすなんて!」

 

オレンジペコはそう言うと、セナの頬っぺたを両手で軽く引っ張った。

 

「痛いですぅ!そんなつもりは無かったんですー!うぅ・・・」

 

セナが頬っぺたを押さえていると、オレンジペコがセナに抱き付いた。

 

「あぁ~♪会いたかったです!セナ~♪」

 

セナはオレンジペコの胸の中でジタバタしながら恥ずかしそうな顔をしている。

 

「ちょっとペコちゃん恥ずかしいですっ!こんな人前で~!」

 

みほは、セナとオレンジペコの絡みを見て嫉妬で少し不機嫌な顔になり、みほの表情を見たダージリンは、少し微笑みながらみほに話しかけた。

 

「ふふっ・・・妬いてしまっているのかしら?」

 

ダージリンにそう言われたみほは慌てて否定した。

 

「いっ!いえっ!そういう訳じゃ・・・」

 

ダージリンは少し微笑むと話を始めた。

 

「みほさんは、何故ペコ・・・オレンジペコはセナより年下なのにセナの事を呼び捨てにしていると思います?」

 

みほは、ダージリンにそう言われ少し考えた。

 

「えぇっと・・・セナさんが可愛いから?」

 

みほの回答にダージリンは少し微笑んだ。

 

「みほさんもセナが好きですのね?」

 

ダージリンにそう言われたみほは顔が真っ赤になった。

 

「えっ!?えっ!?あっ!あのっ・・・」

 

ダージリンはふふって笑うと昔話を始めた。

 

「あの2人は・・・中等部の時、苛められていましたのよ。」

 

ダージリンの話にみほは真剣に耳を傾けた。苛めの内容は、酷いものだった。オレンジペコは、トイレで水を掛けられ、靴を隠されたり、体操着を隠されたりされ、セナに関してはセナ本人から聞いた物より酷い内容だった。戦車のブレーキホースに細工をされ、わざとブレーキを効かない状態にされたり、ハンドルに小さな針を仕込んだりされ怪我をしたりしていたのだと言う。

その話をしているダージリンの顔は怒っていた。

 

「今考えても許せませんわ・・・私の可愛い後輩にあんな事をするなんて・・・」

 

ダージリンは1拍置くと、話を続けた。

 

「そして・・・ある日事件が起きましたの・・・」

「事件?」

 

みほが真剣な目でダージリンを見ると、ダージリンは顔をセナに向けた。

 

「セナが行方不明になったのですわ・・・」

 

みほはそれを聞くとセナから聞いた物置小屋に閉じ込められた話を思い出した。

 

「それって・・・確かセナさんが一週間、物置小屋に閉じ込められていたんですよね?」

 

みほがダージリンにそう尋ねるとダージリンは目を閉じて頷いた。

 

「えぇ・・・全く使われていない旧校舎の物置小屋に一週間も閉じ込められていましたわ・・・」

 

みほは疑問に思った事をダージリンに聞いた。

 

「でもどうしてセナさんがそんな目に・・・」

「セナがペコへの苛めをわざと自分に仕向けたのよ・・・結果ペコへの苛めは無くなったけど、元々苛められていたセナの苛めは倍になり、結果苛めがエスカレートしてしまったのですわ・・・。」

 

みほははしゃいでいるセナに目を向けた。

 

「セナさん・・・昔から自分1人で抱え込んでたんだ・・・」

「えぇ・・・あの娘の悪い癖ですわ・・・そして私とペコとアッサムは物置小屋に閉じ込められていたセナを発見しましたわ・・・痩せて、衰弱していましたのよ?病院で回復した後、セナはペコの苛めを被り、苦しいのを我慢していた事を私とペコに話しましたわ・・・それを聞いたペコは泣いてセナに謝った・・・そうしたら、セナはペコにこう言ったの『ペコちゃんはあんな悲しい顔より笑顔が似合います。私はあなたの笑顔を取り戻したかった・・・私の方こそ心配をかけてごめんなさい。』ってね・・・それからセナとペコは仲良くなり、今の関係が出来上がりましたの・・・」

 

ダージリンが話終えるとセナとオレンジペコが店の入口付近から満面の笑みで手を振って2人を呼んだ。

 

「みほさん!お昼ご飯食べに行きましょう!」

「ダージリン様も早くいらしてください!」

 

ダージリンとみほはお互いに顔を合わせると笑い合った。

 

「行きましょう!」

「えぇ・・・」

 

4人は仲良く話しながらファミレスへと歩いて行った。




暗いお話になっちゃいました・・・


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第20話 決勝戦に向けて・・・

更新が遅れました事をお詫び申し上げます。
ネタが思い浮かばず時間を置いておりました!
待っていただけた事を感謝申し上げると共に、最終話に向けて小説を書いて参ります。



Niki Lauda


今日セナは、みほ、優花里、沙織、麻子、華の5人と決勝戦前という事で、決起会を開いていた。

皆笑顔なのだが、セナは浮かない表情をしている・・・セナの表情を見たみほは、セナを気にかけ話しかけた。

 

「セナさん・・・何か悩みでもあるの?」

 

みほは心配そうな表情でセナに聞いたが、セナの表情は変わらない。セナは人差し指を顎に当て、語り始めた。

 

「ポルシェティガーの改良も行った・・・一年生も完璧に仕上がり、黒森峰戦には万全な状態な筈なのですが・・・」

 

5人はセナにズイッと顔を近付け、口を揃えて言った。

 

「「「「「ですが?」」」」」

「何か忘れているような気がして・・・」

 

セナは目を瞑りながら、「うーん・・・」と考え込んでいる。皆セナから顔を遠ざけると、華が微笑みながらセナを見た。

 

「美味しいデザートでも食べたら、その内思い出しますよ。」

 

セナは華が発した"デザート"と言うワードにピンと反応した。

 

「デザート・・・」

 

優花里はセナを見ながら首を傾げた。

 

「セナ殿?何か思い出したんですか?」

 

セナが机をバンッと叩き、勢い良く立ち上がると、セナの横に座っていた沙織は驚いた。

 

「きゃぁっ!急にどうしたのセナちゃん!?」

 

セナは、絶望したような表情で、皆を見た。

セナのただならぬ表情に皆不安を覚えた・・・一体何を忘れていたのだろうと・・・セナは言いにくそうに口を開いた。

 

「今日は・・・」

 

5人は戸惑いながらセナの言葉を復唱した。

 

「「「「「今日は・・・?」」」」」

「今日は・・・商店街で期間限定!大洗牧場の絞りたての牛乳を使った!プレミアムソフトクリームの発売日ですぅぅぅう!」

 

セナがそう言うと、セナの予想外の発言に5人はズッコケた。沙織は驚いた表情をしながらセナに言った。

 

「忘れていた大事な事って!ソフトクリームの事!?てっきり試合で重要な事と思ったじゃん!」

 

セナは沙織を見ると、少し舌を出しウィンクしながら謝った。

 

「ごめんなさい♪」

 

沙織は、セナの笑顔を見ると怒れなくなった。麻子はセナを見つめた。

 

「セナ・・・期間限定なら、売り切れるのも早いんじゃないか?」

 

セナは麻子にそう言われてハッとした表情を浮かべた。

 

6人はデザートのケーキを食べ終えると、商店街にあるソフトクリーム屋にやって来た。セナは店の張り紙を見て崩れ落ちた。

 

「売り切れ・・・」

 

セナは涙を浮かべながらみほを見た。たまに出る甘えん坊セナたんである。この表情に対しては、みほは滅法弱い。みほはしゃがんでセナの頭を撫でた。

 

「またお姉ちゃんと来よ?」

 

みほがセナを慰めていると、店の奥から綺麗な黒髪のスタイルの良いお姉さんが出てきた・・・どうやら店主のようだ。

 

「やっと来たのね?安心して?ちゃんとセナちゃんの分取ってあるわよ♪」

 

その言葉にセナの表情は晴れやかになった。

 

「本当ですか!?」

 

セナの笑顔に店主であるお姉さんも笑顔になった。店主はセナについて語り始めた。

 

「この子・・・頻繁に店に来てソフトクリームを買ってくれるの♪たまに3個くらい買ってくれるのよ?」

 

皆驚いて声を上げた。

 

「「「「「さっ・・・3個ぉ!?」」」」」

 

みほは心配そうな表情でセナを注意した。

 

「もう・・・一気にそんなに食べたら、お腹壊しちゃうよ?」

 

セナは「大丈夫♪大丈夫♪」と言いながらソフトクリームを受け取るのを見たみほは、額に手を当てため息をついた。

その後皆でソフトクリームを食べた後、温泉へとやって来た。セナは断ったのだが、麻子に引っ張られる形で強引に連れて来られた。セナは浴場の入口の前で止まり、顔を真っ赤にしながら、麻子を見た。

 

「やっぱり入らないと駄目ですか?」

 

麻子は少し笑うとセナを見た。

 

「女として大洗に居る以上避けては通れない道だからな・・・」

 

セナは心配だった・・・一緒に温泉に入るのはまだ良いとして、身長が低い自分から見えるアングルが非常にまずいのだ。色々考えていると更に顔が真っ赤になる。日頃見れないセナの表情を見て麻子はいたずら心が刺激され、少し笑っていた。それを見たみほは苦笑いしていた。

 

「麻子さん?あまりセナさんをからかわないであげてね?」

 

みほも一緒に入るべきかどうか悩んでいた。セナは性別は男だが、見た目は女の子なので男湯に一人で行かせるのは心配だった。かと言って女湯に入ろうとするとこの様に顔が真っ赤になり動けない・・・。みほの表情を見た優花里は何か閃いたようで、みほに言った。

 

「セナ殿は身長が低いので子供だと言えば問題ありませんよ!」

 

優花里の発言に沙織と華も頷いた。

 

「確かに男の子を女湯に連れてくるお母さんも居るし!」

「大丈夫ですよ!」

 

みほはセナの顔を自分の胸に当てる形で抱っこし女湯へと入った。抱っこされたセナは慌てふためいていた・・・みほの柔らかい何かが自分の顔に押し付けられているからだ。みほがセナを隠す形で着替えさせ、セナにバスタオルを巻かせた状態で浴場の近くまで行かせると、みほがセナの下半身を身体で隠し、バスタオルを脱がせた。

セナは浴槽に浸かると気持ち良さそうに目を瞑った。セナ自身温泉と言うものは初めてで新鮮だった、まるで今まで溜まっていた悪いものが削ぎ落とされ行くような感覚に陥った。

セナが目を瞑っていると左肩にピトッと人の肌が触れたような感触がしたので、ビクッとして横を見るといたずらっ子のような笑みをした麻子がセナに密着する形で座っていた。セナ自身女の子とお風呂に入るのも初めてなのに、女の子の肌に触れるのがプラスされ、顔が真っ赤になり顔を反対方向に向けると・・・裸で湯船に浸かっているみほが見え、慌てて正面を向くと優花里と華と沙織の裸が目に入った。困った・・・目のやりどころがない・・・セナが困っていると、みほがセナの目をふさいだ。その瞬間セナは安心した。

麻子はやり過ぎた事を反省した。

 

「さすがにまだ刺激が強すぎたか・・・」

 

沙織は呆れながら麻子に言った。

 

「そりゃあ、セナちゃん箱入り娘みたいな感じで、こういう事も初めてなんだから刺激が強いに決まってるでしょ・・・」

 

みほはセナに優しく話しかけた。

 

「でも・・・一緒にお風呂に入りたかったのは本当だよ?だってセナさん、戦車道全員で大浴場に入る時必ず居なかったから・・・」

「それは・・・」

 

セナが男だからと言おうとした所で、みほが言葉を被せた。

 

「知ってるよ?でもね・・・なんだかセナさんだけ仲間外れになってるように見えちゃって・・・」

 

みほと事情を知っている4人はセナが来ない理由はわかっていたが、それでもセナが居ない事を寂しく思っていた。それはそうだろう・・・毎回試合の裏でサポートを行い、目立たないながらも活躍していたセナが当然のごとく決起会に居ないというのは寂しい気がする。セナは少し考えると、口を開いた。

 

「わかりました・・・なるべく出るよう善処します・・・」

 

セナの言葉に5人は微笑んだ。

 

一方文科省では・・・1人の男が机に座り笑みを浮かべていた。

 

「馬鹿な奴らだ・・・全国大会で優勝した所で廃校は決定事項・・・覆る事は無い・・・それに、全国大会で優勝したら廃校にしないとは、私は一言も口にして居ない・・・」

 

そこへある男がドアを開け入ってきた。

 

「ならば・・・今から取り付ければ良いだろう。」

「誰だ?」

 

男が顔を上げるとそこにはラウダ航空取締役社長の二木ラウダが立っていた。

 

「初めまして、ラウダ航空取締役社長の二木ラウダだ。」

「・・・」

 

男はいきなりの大物登場に戸惑っていた。

 

「ここは、関係者以外立ち入れない筈ですが?」

 

男がそう言うとラウダは笑みを浮かべ、ソファに座った。

 

「ある人のコネでね」

 

男は、ラウダの正面のソファに腰をおろした。

 

「そのラウダ航空の社長である二木ラウダさんが何の御用ですか?」

 

ラウダは笑いながら男を見た。

 

「もちろん、大洗の廃校について話し合いに来た。」

 

男は掛けているメガネを人差し指でクイッと上げるとラウダを真っ直ぐに見た。

 

「私は廃校を覆すつもりはありません。お引き取りください。」

 

男がそう言うと、ラウダはビジネスバックから沢山の書類が入ったファイルとボイスレコーダーを取り出し、目の前にあるテーブルに置いた。

 

「これは?」

 

ラウダは少し笑うと、ファイルに入っている書類の説明を始めた。

 

「これはあなたが横領しているお金を記録した物だ。もちろん今回大洗女子学園を廃校にした理由を決定付けるものも入っている。」

 

ラウダは立ち上がると男の周りをゆっくりと歩き始めた。

 

「廃校にするのであればこれを公にする・・・」

 

男は慌てて、声を荒げた。

 

「そんな事をしてみろ!文科省は大混乱に陥るんだぞ!」

 

ラウダは、睨み付けるように男を見た。

 

「私には関係ない事だ。」

 

男は勢い良くファイルに飛び付いたが、ラウダに手首を掴まれた。ラウダは元F1ドライバーなので、筋力は通常の倍以上はある。そこへ、白髪の禿げたおじさんがそのファイルを目にした。

 

「これは・・・辻くん・・・どういう事かね?」

 

この男は辻というらしい。

 

「あっ・・・あなたは!須賀総理大臣!」

 

ラウダは須賀を見ると、ファイルについて説明をした。

 

「これが、総理が怪しんでいた物の正体です。」

 

須賀はボイスレコーダーを聞くと怒りを露にした。そこには大洗を廃校にし、浮いたお金を自分のお金にする計画が録音されていたからだ。さらに須賀はファイルに目を通した。

 

「辻君!政府に報告している金額と違うようだが・・・どうなっている?」

「こっ!これは!」

 

須賀は辻を見ると吐き捨てるように言った。

 

「君は解任だ・・・どうやら君は文科省に相応しい人間ではないらしい・・・それに・・・自分の金を得るために未来ある子供達から大切な物を奪うなど政府の恥さらしだ。こいつを引っ捕らえて警察に連れていきなさい。」

 

須賀がそう言うと警備員5人が辻を捕まえ引きずるように引っ張った。

 

「総理!もう一度チャンスを!」

「君にチャンスなどない。あるのはどん底の人生だけだ。」

 

須賀が辻にそう言うと、辻は魂が抜けたように崩れ落ちた。

須賀はラウダを見ると手を差し出し、お互い握手をした。

 

「ラウダさん・・・ご協力感謝致します。」

「これも息子を守る為です。」

「歳はいくつに?」

「16歳になりました。」

「あの小さい男の娘がもうそんな歳になりましたか。」

「えぇ・・・時の流れは早いですね。それでは、私はこれで」

 

ラウダが出ていこうとした時、須賀に引き留められた。

 

「ラウダさん」

 

ラウダが振り向くと須賀が笑っていた。

 

「セナちゃんに何かあったら私が後押しします。何せ・・・あの西住家に"捨てられた男の娘"ですからね。」

 

ラウダと須賀は笑うとお互い手を振り、ラウダはその場を後にした。

 




スランプに陥ってしまいました・・・あと眠る前に書いたので誤字脱字多いかもです。


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第21話 念願のスポットライト

いや寒いです~。皆さん頑張りましょう!


今日は、いよいよ待ちに待った、黒森峰との決勝戦である。セナはみほと一緒に試合前の挨拶を済ませた後、新しい相方であるポルシェティーガーへと乗り込み、セナは目を瞑り精神統一をした。やることは全てやった・・・後は全力を相手にぶつけるのみ・・・勝って必ずみほの居場所を守り、西住家に過去自分達がどれだけ愚かな事をし、今また同じ過ちを繰り返そうとしている事を勝って教え込む・・・。セナは目を開けるとゆっくりとスコープを覗いた。

 

大洗の戦車8両が発進すると、途中でセナが乗るポルシェティーガーが離脱した。何故ポルシェティーガーが離脱したのかというと、7両が作戦を決行する間、敵を揺動したり、援護射撃をする為だ。セナはハッチから身を乗り出すと、いつも行っているように神経を集中させ遠くの音を聞いた。後方からかなりの数の戦車が来ている・・・19両は居るだろう・・・この数がみほ達の元へ向かうとなると、みほは何個か練った作戦の内のモクモク作戦を行う筈だ。モクモク作戦とは、後ろ2両の車両から煙幕を出し、相手の視界を奪い逃げる作戦である。セナは状況を把握すると、チームメイトに指示を出した。

 

「ツチヤさん。後方から敵戦車19両が接近しています。茂みに身を隠し、エンジンを停止してください。」

 

ツチヤは少し笑うと返事をした。

 

「了解!」

 

ポルシェティーガーは茂みに身を隠すとエンジンを切り、セナは砲塔を構えた。大洗に迫る黒森峰の車両を減らす為だ。しばらくすると、2km先に黒森峰の車両が向かっているのが見えた。セナは前方にいる車両を確認する・・・前には中戦車が5両・・・撃破出来ると確信したセナは装填手のナカジマに指示を出した。

 

「ナカジマさん。5連続で砲弾を放ちますので、構えてください。」

「5連続!?・・・はぁ・・・わかったよ~相変わらず無茶するんだから」

 

その指示を聞いたナカジマは苦笑いをした。セナは続けて操縦手であるツチヤにも指示を出す。

 

「ツチヤさん。私が相手車両を5両撃破したら、すぐエンジンを始動して森の中へ逃げて下さい。」

 

ツチヤはニッコリと笑うと親指を突き立て返事をした。

 

「オッケー!」

 

セナは他の2人にも指示を出した。

 

「ホシノさんは双眼鏡で大洗の動向を確認。スズキさんは定期的にみほさんに連絡をいれてください。」

 

セナの指示にホシノとスズキは笑顔で返事をした。

 

「「了解!」」

 

セナは黒森峰の先頭車両が1.5km先に見えると砲撃を開始した。放った砲弾は5発とも5両の急所に吸い込まれるように飛んで行き、砲弾を放った直後ポルシェティーガーは敵に居場所を察知される事なく、素早く森の中へと入っていった。セナの技術にナカジマ ツチヤ ホシノ スズキの4人は驚いていた。特にナカジマはセナの正確な砲撃に感心している。

 

「セナは相変わらず容赦ないね~」

 

ナカジマは笑いながらセナを見た。セナは目を瞑り、人差し指を上に指して説明をした。

 

「当たり前です!相手は黒森峰で戦車の数はこちら側より倍以上居ますし、黒森峰には秘密兵器がありますから出し惜しみは出来ません!」

 

一方黒森峰は5両一気に減った事でパニックになっていた。

 

「すみません!撃破されました!敵の位置確認出来ません!」

 

その報告を聞いたまほは誰が砲撃したのか直ぐにわかった。自分の弟であり、自身がリベンジを誓っていた、走るコンピューター 二木セナである。しかし、まほの実力を持ってしても、セナがどの位置から砲撃したのか予測出来なかった。

 

「やはり、簡単に居場所は教えてくれないか。」

 

まほはそう言うと、唇を少し噛みしめた。

 

観客席でも軽く騒ぎになっていた・・・黒森峰の戦車がいきなり撃破されたからだ。ポルシェティーガーがテレビで確認出来ない位置から砲撃をした為、観客にはいきなり黒森峰の車両が撃破されているように見えていた。

 

セナが砲弾を放ったとわかっている、オレンジペコはピョンピョン飛び跳ねて喜んでいる。

 

「流石セナです!」

 

ダージリンも微笑みながら紅茶を飲んで戦いを見つめていた。

 

「セナ・・・中等部で私と出会った時、近距離で砲弾を当てれなかったあなたが、ここまで成長してくれた事を私はとても誇りに思いますわ。」

 

カチューシャとノンナも決勝戦に駆け付けていた。カチューシャはテレビ画面で大洗の車両が確認出来ないにも関わらず、黒森峰の車両がいきなり撃破されたのを見てセナが撃ったと確信したが、撃った位置が全くわからなかった。

 

「はぁ!?どこから撃ったの!?」

「恐らく画面に捕らえられない位置から撃ったか・・・森の中から撃ったのでしょう。」

 

セナの技を身を持って体験したノンナは、目視出来ない位置から砲弾を放ったと確信していた。そしてカチューシャは少し顔を赤らめながら笑った。

 

「流石!カチューシャが一目惚れした"男の娘"ね!」

 

ノンナがカチューシャを見ると、カチューシャは顔を真っ赤にして、そっぽを向いていた。

 

サンダースのケイ、アリサ、ナオミの3人も決勝戦を観に来ている。ケイもセナが砲撃したとわかっていた。

 

「なるほど・・・こうやって私達もやられちゃったわけね!」

 

ケイの言葉を聞いたアリサは立ち上がるとケイの方を向いた。

 

「やはり!誘拐してサンダースにいれましょう!」

 

それを聞いたナオミはアリサの頭を叩いた。

 

「だから!それは駄目だって言ってるだろう!」

 

そして・・・西住流の家元である西住しほも、いきなりの出来事に目を見開いて驚いていた。

 

「・・・一体どこから撃ったの?」

 

しほが驚いていると、セナの義理の父親である二木ラウダが横に並んだ。ラウダは横に並ぶと笑顔でしほを見た。

 

「素晴らしい選手でしょう?」

 

しほは、ラウダを見つめるとゆっくりと口を開いた。

 

「一体誰が・・・」

 

ラウダは真剣な顔で答えを言った。

 

「二木セナ・・・私の子供で、あなたが産んだ双子のもう一人・・・16年前西住流が男で戦車道が出来ないから要らないと言って捨てた"男の娘"ですよ・・・」




決勝戦でセナにスポットライトが当たり始めたー!


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第22話 16年後の真実

皆様、明けましておめでとうございます。今年もセナたんをよろしくお願い致します。


ラウダはセナの試合を見ながら、しほにセナの正体を明かした。

 

「あの子の正体は、16年前・・・西住流が男だからいらないと言って捨てた男の娘ですよ。」

 

その言葉を聞いたしほは、目を見開いて驚いた。驚きのあまり、声も出なかった。ラウダは表情を一切変えずに話を続ける。

 

「あの小さな赤ん坊が大きくなったでしょう。」

 

しほは、身体を震わせながらラウダを見て、声を荒げた。

 

「男に戦車道をやらせるなんてっ!戦車道に対する冒涜です!それに世間にバレたらあの子は普通の人生は歩めなくなるんですよ!?」

 

ラウダがしほを見ると、信じられないと言うような顔で怒っていたが、ラウダは真面目な顔でしほに言った。

 

「そこは問題ない。色々な人に協力を得ているから、万が一の時は早急に対処できる。」

 

ラウダはしかし・・・と続ける。

 

「何故そこまで怒る?あの子を捨てたのなら、あなたには関係ない。」

 

しほはラウダをキッと睨み付けた。

 

「戦車道を男で汚したからですよ!」

「それにしてもだ。」

 

ラウダは話を続ける。

 

「あなたは、先程セナの心配もしていた。戦車道を侮辱したから怒ったというのなら、セナの心配をするのはおかしい。」

 

ラウダの的確な指摘に、しほは言葉が出なかった。ラウダはしほの反応を見て、自分の中にあった疑問を解いた。

 

「なるほど・・・セナを捨てたのはあなたの意思では無いのですね?あなたの反応とセナの記憶を繋ぎ合わせたら16年前の全貌が見えてきました。」

 

しほはラウダのある言葉に反応した。

 

「セナの記憶?あの子に記憶があると言うんですか!?」

「えぇ・・・セナはこう言っていたのです。母親の顔が見えなかったと・・・覚えているのは、病室の外から聞こえた女性の泣き声と、長い髪で隠れた顔から涙が自分に零れ落ちて来たと・・・」

 

それを聞いたしほは俯いた。

 

「そうですか・・・」

 

しほが画面に目を向けると、そこには煙幕を上げながら丘の上へと逃げようとする大洗の姿が映っていた。大洗は、アリクイさんチームが忍び寄ってきた黒森峰の車両に撃破された為、大洗の戦車は7両へと減っていた。みほは、予定していたモクモク作戦を実施し、煙幕で相手を混乱させつつ丘の上の高台を陣取り、試合を有利に勧める作戦のようだ。黒森峰もそうはさせまいと、大洗の車両を一気に潰そうとする。黒森峰の副隊長であるエリカは、大洗の車両を一気に潰そうと全員に砲撃指示を出す。

 

「煙幕なんて忍者じゃあるまいし、小賢しい真似を!撃ち方用意!」

 

エリカが砲撃を指示しようとしたが、まほに止められた。

 

「撃ち方止め。」

 

まほの指示にエリカは反発した。

 

「一気に叩き潰さなくて良いんですか!?」

 

まほは興奮しているエリカに対して、理由を説明する。

 

「簡単に相手の作戦に乗るな。恐らく、無駄弾を撃たせるつもりだろう。相手の動きを見極めてから攻撃しても遅くはない。」

 

そして大洗の方は丘の頂上まで登ると、6両は黒森峰がいる方へ砲塔を向けた。みほは、黒森峰の車両の数を確認する。

 

「確か・・・セナさんが5両撃破したっていってたから14両に減ってる筈だけど・・・あれ?」

 

みほは、黒森峰の戦車の車両の数に違和感を覚えた。先程追われていた時よりも、さらに2両減っていたのだ。

そこへ、沙織にセナ率いるレオポンチームのスズキから無線が入る。

 

『こちらレオポンチーム。煙幕の中で黒森峰の隊列の最後尾の車両を2両撃破。2両とも撃破した後、ライフルで無線アンテナを破壊・・・相手の隊長、副隊長は撃破された事が報告されていない可能性があります。』

 

その無線を受けた沙織は、直ぐにみほに報告する。

 

「みぽりん!レオポンチームが煙幕の中で相手の隊列の最後尾の車両を2両撃破!その後無線アンテナを破壊したから、相手の隊長、副隊長に連絡が行ってない可能性があるって!」

 

その報告を聞いたみほは、攻撃のチャンスと判断し、黒森峰の車両12両が丘の麓まで来た瞬間砲撃を開始した。

 

「撃てっ!」

 

大洗の車両6両から放たれた砲弾は黒森峰の車両に当たり2両撃破した。まほは、フラッグ車の前にヤークトティーガーを出し、残りの戦車で大洗を囲むことにした。重戦車を盾にして反撃するようだ。

大洗が、ヤークトティーガーに砲撃するが、装甲が硬くてビクともしない、その上周りは囲まれている。その状況を見たみほは、この状況では不利になるため、一旦引くべきだと考え、レオポンチームに作戦開始の指示を送る。

 

「おちょくり作戦開始!」

 

指示を送ると、無線の奥から可愛らしいセナの声が聞こえてきた。

 

「こちょくり作戦開始ぃ♪」

 

それを聞いたみほはセナにツッコミを入れた。

 

「いや!おちょくり作戦だからね!?」

 

ポルシェティーガーは相手を錯乱する為、隊列に突っ込んだ。セナはまずヤークトティーガーを撃破し、ツチヤが黒森峰の戦車の間を縫っていく。そしてエリカはとある事に気が付いた。戦車の数を数えると、9両しか居なかったのだ、先程やられたティーガーを含めても、3両撃破されたから、11両残っている筈だが2両居ない。その事に気付いたエリカはまほに連絡を入れる。

 

「隊長!いつの間にか2両撃破されて計9両に戦車が減っています!」

 

その連絡を受けたまほの顔は険しくなった。恐らく隊列を組んで行進している時に煙幕の中で、こちらが混乱しているのに乗じて、最後尾の車両を撃破したのだろうとまほは解釈した。まほも、セナの対策をして来なかった訳ではないが、みほの柔軟な発想とセナの隠密性が予想以上にマッチして、かなり手強いのだ。

 

観客席は、また騒然としていた。いつの間にか黒森峰の車両が減っていたからだ。

 

「どうなってるんだ!?いつ撃破されたんだ!?」

 

聖グロリアーナのダージリンとオレンジペコは、セナが撃破したとわかっていた為、あまり驚いていない。むしろオレンジペコは大洗とセナの活躍を喜んでいた。

 

「みほさんの柔軟な発想とセナの実力がマッチして、黒森峰を押しています!セナぁぁ///」

 

オレンジペコは、両手を抱き締めるようにして身体をクネクネとさせていた。ダージリンは紅茶を飲みながら、オレンジペコに言った。

 

「ねぇ?ペコ?セナの作戦ノートを見たことある?」

「いえ?」

 

それを聞いたオレンジペコは正気に戻り、首を横に振った。

 

「セナはね?1試合の作戦を考えたら、ノートが丸々1冊

埋まるのよ?」

「えぇ!?」

 

それを聞いたオレンジペコは目を見開いて驚いた。

 

一方しほとラウダは戦いを静かに見つめていた。しほはラウダに話掛けた。

 

「私はあの子を手放したくありませんでした・・・ですが、あの子に対する西住家の対応を考えると・・・」

 

そこまで聞いたラウダは表情を一切変えずに頷いた。

 

「確かに、セナに対する西住家の対応を考えると、もし仮にセナが西住家にそのままいたら虐待されていただろう・・・」

 

しほはラウダに質問をした。

 

「私は間違っていたのでしょうか?」

 

それを聞いたラウダは、腕を組むとしほに言った。

 

「セナの今の精神状態を見ると、あなたの判断は間違っていたようにも思える。」

 

しほはそれを聞いて落ち込んだ。ラウダはしかし、と続ける

 

「君のおかげで、私と妻はセナに出会う事が出来た。」

 

しほが小さく頷くとラウダは話を続けた。

 

「君のおかげで、セナは虐待されずに済み、家の事に捕らわれずに生活出来ている・・・それも事実だ。」

 

しほはラウダの言葉に涙を流していた。

 

「セナを手放す時も、そのように泣いていたのでしょう?その時の心情・・・お察しします。」

 

ラウダが「ですが・・・」と言うと、しほはラウダの方を向いた。

 

「セナは、赤ん坊の時の記憶が鮮明に残っている為、今も16年前の出来事がセナの心を押し潰そうとしているのです。」

 

しほはラウダの目をじっと見つめた。ラウダは話を続ける。

 

「この試合が終わったら勝敗問わずにセナに会ってあげてくれ・・今セナが背負っている重荷を軽くしてあげて欲しい。これから先、あの子には西住家に捕らわれて生きて欲しくは無い。」

 

しほはラウダの言葉にゆっくりと頷いた。




いよいよクライマックスです。この先のセナと大洗の運命は?


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第23話 迫り来る恐怖

寒い・・・寒いです。頑張っていきましょう!


現在、大洗は丘の頂上を拠点に黒森峰を攻めているのだが、ヤークトティーガーを前に砲弾が通らず苦戦しており不利な状況に・・・さらには黒森峰の車両に全方位を囲まれ、絶体絶命の状態の為、みほは撤退する事を選択する。セナ率いるレオポンチームは、みほ達が逃げれるように、黒森峰の隊列に突っ込んで敵を混乱させる"おちょくり作戦"を実施し、退路を作っている最中である。セナは、ヤークトティーガーを撃破した直後にハッチから顔を出した。神経を研ぎ澄ませ全周囲の状況を把握する。セナは、最も車両の数が少ない場所を探し、そこへ向かう事にした。セナはツチヤに指示を出す。

 

「ツチヤさん!丘の裏の方は車両が少ないので、そちらへ向かってください!そこで退路を切り開きます!」

 

ツチヤはセナに笑顔を見せた。

 

「オーケー!しっかり掴まっててねー!」

 

ツチヤは、スロットル全開で丘の裏へと突撃していった。

そして、みほはどうやってこの状況を打破し逃げるか考えていた。ポルシェティーガーがおちょくり作戦で敵を混乱させようとしているが、中々退路が見えない。するとウサギさんチームから無線が飛んで来た。

 

『こちらウサギさんチーム!おちょくり作戦を実施していた筈のポルシェティーガーが突如消えました!』

 

その連絡を聞いたみほは、ハッチから顔を出して周囲を確認する。確かに前方にポルシェティーガーの姿は確認出来ない・・・みほがレオポンチームに確認を取ろうとした時、セナから無線が飛んできた。

 

『こちらレオポンチーム!後方の敵の車両数が少ない為、煙幕を撒いて敵車両に体当たりし、煙幕の中心あたりに退路を作ります!』

 

セナの無線と同時に後方から煙幕が上がり、ガンガンとポルシェティーガーが体当たりしている音が聞こえた。それを見たみほは、全車両に後方から逃げるように指示を出す。全車両撤退しようとした時、カメさんチームの38tが撃破された為、みほは怪我が無いか確認を取る。

 

『怪我は!?』

 

杏は笑いながら返事をした。

 

『大丈夫。大丈夫~』

 

そして全車両煙幕の中を潜り抜け撤退した。黒森峰の副隊長エリカは大洗に良いようにやられご立腹である。

 

「なんで!知らない間に戦車がやられてたの!?それに知らない間に丘の裏に行ってたし!ヤークトティーガーは撃破されるし!あの不良品戦車!もう訳わからない!」

 

エリカは、酷く取り乱し興奮状態になっていたが、まほはエリカに冷静になるように言った。

 

「あまり取り乱すな・・・興奮した状態で戦うと走るコンピューターの術中にハマるぞ?お前が取り乱すのも恐らくヤツの狙いな筈だ。とにかく・・・大洗を追う。」

 

観客席では、オレンジペコが大洗が危機的状況を出した事でホッと手を撫で下ろしていた。

 

「なんとか切り抜けましたね・・・でもセナは何故、退路を切り開く為に敵戦車を撃破せず煙幕を撒いたのでしょう?」

 

オレンジペコの疑問にダージリンが真剣な顔で答えた。

 

「恐らく・・・弾を温存するためですわ・・・後に出てくる黒森峰の秘密兵器に備えて。」

 

オレンジペコは何かわかったようでハッとした表情を浮かべた。

 

「そうでした・・・まだ黒森峰には!」

 

大洗の隊列の最後尾のポルシェティーガーの中ではセナが神経を酷使した時の副作用である吐き気に襲われ、ハッチから顔を出している。事情を知っているナカジマはセナの背中を心配そうに擦っていた。

 

「流石にやり過ぎだよ・・・常に神経集中させてる状態じゃもたないよ?」

 

セナはナカジマを見ると、ニッコリと笑った。

 

「えへっ♪」

 

セナの笑顔を見たナカジマはムッとした表情でセナの両頬を引っ張った。

 

「私がそんなお色気攻撃に騙されるとでも~?」

「痛い!痛いですぅ!」

「絶対に無理しないでね!」

 

ナカジマが強くそう言うと、セナは少し目に涙を浮かべながら頷いた。

大洗は、川岸にたどり着き、一旦停止した。川をどう渡るか、みほとリーダー間で話し合いが行われており、みほは上流に一番重いポルシェティーガーを置き、川の流れを緩くして、渡る事を提案する。みほの考えを予測していたセナは、会議には参加せず周囲を警戒している・・・近くに黒森峰が迫ってきているからだ。そして横に並び川を渡り終えようとしている時、ウサギさんチームのM3リーがエンストし、立ち往生してしまった。操縦手の桂利奈は何度もセルを回すが、かかる気配が一向に無い。M3リー車内から悲痛な叫びがセナに聞こえてきた。

 

「どうしよ!?エンジンが止まっちゃった!!」

 

桂利奈は、今にも泣きそうな表情で何度もセルを回している。その状況を見たセナは、直ぐにロープを手に外に飛び出した。直ぐ後ろに黒森峰が迫ってきており、砲撃もしてきていたからだ・・・セナは、一番端からロープを持ち、横に並んでいる戦車を足場にジャンプして行った。セナがM3リーに着地した頃、連絡を受けたみほがⅣ号の外に出て来ると、セナが知らぬ間にM3リーの上に立っている事に驚愕する。

 

「セナさんいつの間に!?」

 

セナは大きな声でみほに叫んだ。

 

「スターターモーター故障!押しがけでエンジンを掛けるのでM3リーを引っ張って下さい!」

「わかった!」

 

そう言うとセナは、ロープに小さな材木を巻き付け、勢い良くⅣ号の上に居るみほの胸元に投げた。みほがそれを掴むと、急いで車両を陸に上げM3リーを引っ張る。

その光景を見ていたエリカは、みほとセナに対して愚痴を溢す。

 

「全く・・・相変わらず甘いわね・・・」

 

エリカは状況を見る為、戦車から顔を出し双眼鏡を覗くと・・・そこにはM3リーの上で小動物の様に周りをキョロキョロしながらトテトテと歩くセナの姿が見えた。その姿は、少し危なっかしく、滑って川に落ちてしまいそうだった・・・その姿は何だか可愛らしい・・・。双眼鏡をしばらく覗いていると、隊員達の声が聞こえてきた。

 

「副隊長!副隊長!!」

「っ!?なっ!何よ!」

 

エリカは我を忘れ、双眼鏡を覗く事に夢中になっていたようだ。

 

「指示を!」

 

エリカは、頬を少し赤らめた状態で咳払いすると、指示を出した。

 

「大洗を攻撃しながら追いなさい!」

 

その頃Ⅳ号の車内ではセナの話題が上がっていた。沙織は、セナの隠密性に頭を悩ませていた。

 

「セナちゃんのおかげで、ウチは順調に黒森峰の戦車の数を減らせてるけど・・・突然消えて、急に現れるから心臓に悪い・・・」

 

沙織がそう言うと、優花里も口を開いた。

 

「セナ殿と西住殿は臨機応変に対応出来るから凄いですよね!」

 

それに対してみほは、少し笑いながら首を横に振った。

 

「ううん・・・セナさんの方が私より臨機応変に対応出来てるよ。」

 

みほの表情は少し悲しげだった。セナが凄すぎて劣等感を感じているのかもしれない。それを見た麻子が表情を変えずに口を開いた。

 

「いいえ・・・私より、臨機応変に対応出来ているのは、みほさんです。みほさんはその場で直ぐに案が出て来ますが・・・私は事前に沢山の予測や作戦を立てて、それにただ当てはめているだけ・・・もしみほさん相手に本気で戦ったら・・・予想外な作戦を立てられて、私が調子を崩して負ける可能性の方が大きいでしょう・・・。」

 

その言葉を聞いた華は、誰の言葉か予測が付いた。

 

「セナさんの言葉ですか?」

 

華の疑問に、麻子は頷いた。

 

「あぁ・・・この前セナと2人で出かけた時に聞いた・・・あっ」

 

麻子の発言にⅣ号の車内が静まり返った。沙織は麻子の背中を足で軽く蹴りながら言った。

 

「麻子!?セナちゃんを独り占めなんてズルいっ!」

 

優花里も華も同様に麻子に抗議をしている。

 

「冷泉殿!抜け駆けはズルいですよっ!」

「そうです!私だってまだ2人きりになった事が無いんですよ!?」

 

みほも小声でブツブツと呟いていた。

 

「今度、セナさんの部屋に夜這いしてみようかな・・・」

 

自分の失言に怠そうな顔をする麻子と、不満を吐露する4人だったが、後方から聞こえた砲撃音で目が冷めた。

ポルシェティーガーが、丁度橋に差し掛かった所で、セナがハッチから顔を出し、後方の黒森峰との距離を確認すると、ツチヤに指示を出した。

 

「フルパワーで履帯を空転させて橋を崩してください。」

 

ツチヤは笑いながら親指を立てた。

 

「ここが腕の見せ所!セナの手で!生まれ変わったポルシェティーガーの力を見るが良い!」

 

ポルシェティーガーが勢いよく履帯を空転させ、橋を渡ると橋が積み木の様にバラバラと崩れ落ちた。セナの改良でモーターに手を加えられ、少し軽量化されたポルシェティーガーは、物凄い加速で前方にいた戦車を追い抜いて行った。その光景を見た優花里は驚いた・・・

 

「いやいやっ!あれ!どう考えても本来のポルシェティーガーの性能遥かに超えてますよっ!?」

 

その後、ポルシェティーガーを筆頭に、大洗の隊列は山道ワインディングロードを抜け、住宅街へとやって来た。しかし・・・そこに待ち受けていたのは大きな鼠だった・・・




明日、何があるかわからないから生きるのが楽しいんだよ・・・坊や


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第24話 決着の時

更新が遅くなり申し訳ございませんでした。仕事多忙により、中々書く時間が出来ませんでした。


大洗の戦車5両が市街地へ到着すると、そこには超重戦車マウスが待ち構えて居た。マウスを見た優花里は、冷や汗をかきながら興奮していた。

 

「あれがマウス!動いている所を初めて見ました!」

 

マウスの登場に観客席に居るカチューシャとダージリンが声を上げた。

 

「ついに来ちゃった・・・超重戦車・・・」

「マウス・・・」

 

マウスは砲塔を大洗の方へ向けると、即座に砲撃を開始した。けたたましい爆発音と威力で大洗を威嚇する。大洗の戦車では歯が立たないと思ったみほは撤退の指示を出した。

 

「全員撤退してください!」

 

しかし、カモさんチームのRENAULT B1に乗るそど子はやられてなるものかと、無謀にもマウスに真向勝負を挑んだ。

 

「でかいからって!いい気になるなよっ!」

 

カモさんチームの放った砲弾はマウスに当たるもびくともせず、逆にマウスの砲撃でカモさんチームは宙を舞い大破した。カバさんチームの三突も、カモさんチームの仇を取ろうとマウスと応戦するが、撃破されてしまった。そしてマウスは標的をセナ率いるポルシェティーガーへと移す。セナは焦らず後退の指示をツチヤに出した。

 

「ツチヤさん。全速力で後退してください。」

「オーケーッ!」

 

ツチヤはセナを信頼しその通りに動いた。ポルシェティーガーが一気に後退するのと同時に、マウスも砲撃を開始する。マウスが砲撃を始めた瞬間、観客席もみほ達も流石に終わったと思った・・・しかし、マウスの砲弾は当たるどころか、ポルシェティーガーに届いてすらいなかった。何故ならセナが後退しながらマウスの砲弾に砲弾を当て相殺するという神業を使っていたからだ。

しかも一発だけではなく全弾相殺しており、その光景を見て皆大歓声を上げた。あんこうチームの優花里は声を上げて喜んでいる。

 

「忘れていました!ポルシェティーガーの砲手は走るコンピューター!セナ殿ですよ!何を我々は弱気になっていたんでしょう!」

 

沙織と華もセナの技術に驚きを隠せない。

 

「待って!?一度あの技見たことあるけど!何回も使えたの!?」

「あそこまで、正確に砲弾を当てれる人この世界に居るのでしょうか・・・?」

 

華の質問に対して麻子が答えた。

 

「世界中探してもセナ程の人材はいないだろうな・・・」

 

みほは、気を取り直し指示を出した。

 

「ウサギさんチーム!アヒルさんチームは私たちに続いて下さい!レオポンチームはそのまま敵を私が指定する場所まで引き付けて下さい!」

 

観客席では何が起こったかわからないと言うような感じで騒然としていた。

 

「何で弾が当たってないんだ?」

「俺にもさっぱり・・・ミスしたんじゃないのか?」

「こんな何回もするか!?」

 

ダージリンとオレンジペコはセナの技術はわかっているが、マウスの動きが妙だった。ポルシェティーガーに執着しているのだ。ダージリンは紅茶を飲みながら画面を眺める。

 

「どうしてあそこまでポルシェティーガーに執着するのかしら?」

 

オレンジペコもダージリンの発言に頷く。

 

「えぇ・・・確かにポルシェティーガーは装甲も強く、一番倒しておきたい敵ではありますが、マウス程の火力と装甲があれば、真っ先にフラッグ車を狙った方が良い筈です。何故ポルシェティーガーばかり・・・」

 

しばらくマウスとポルシェティーガーが打ち合いをしていると、マウスから銀髪の目が青い少女がハッチから顔を出した。セナはその顔に見覚えがあった・・・聖グロリアーナの中等部時代に、自分を倉庫に閉じ込め、自分の功績を全て我が物にしていた少女だ。セナはその顔を見た瞬間・・・昔の記憶がフラッシュバックし、吐き気に襲われた。慌ててナカジマがセナの背中を擦る。少女の顔を見たダージリンは驚き、オレンジペコは怒り心頭である。

 

「まさか・・・黒森峰にいたなんて・・・」

「どこに行ったのかと思ってましたが・・・あんなのが黒森峰に居るだなんてっ!」

 

マウスから顔を出している少女が声を張り上げて言った。

 

「あら!私の為に尽くしてくれていた奴隷さん♪お久しぶりですわね!あなたが私に功績をくれたおかげで黒森峰にヘッドハンティングされて、マウスの砲手を任されましたわ!今回も私の"踏み台"となって頂きますので、よろしくね~」

 

少女を見たレオポンチームの一同は嫌悪感を露にした。ツチヤはマウスを睨み付けた。

 

「うわ~嫌な奴!」

 

ナカジマはセナの背中を心配そうに擦っている。

 

「セナ大丈夫?」

 

セナは吐き気を堪えると指示を出した。

 

「あんなのを相手にしている暇はありません・・・ツチヤさん!旋回してみほさんの指定する地点へ急いで下さい!砲撃は私とナカジマさんでなんとかします!」

 

ツチヤはニコッと笑い親指を立てた。

 

「オーケー!」

 

ポルシェティーガーはマウスの砲撃を避けながらみほの指定する地点へと向かった。

一方あんこうチーム、アヒルさんチーム、うさぎさんチームは道路沿いの土手からポルシェティーガーがマウスを引っ張って来るのを待っていた。土手からマウスの上部の弱い所を集中放火し、撃破する作戦だ。

土手下の道路の先から2両のエンジン音が聞こえてきた。みほはポルシェティーガーとマウスがこちらに向かって来ているのを確認すると・・・Ⅳ号 、M3リー 、八九式が土手下から走ってくるマウスに標準を定め、みほが砲撃合図を出す。

 

「撃てっ!」

 

3両の放った砲弾はマウスへ集中放火され、マウスは撃破された。その光景を見た観客席からは大歓声が上がる。しかし、そう悠長にしている暇は無い。直ぐ後ろに黒森峰の戦車9両程迫ってきているのだ。みほは市街地戦で終わらせるには、フラッグ車と一対一に持ち込む必要があると考え、敵フラッグ車を学校の敷地内へと誘導し、その他のチームには他の戦車の足止めをお願いすることにした。みほは、レオポンチームに指示を出す。

 

「学校の敷地内に敵フラッグ車を誘導し!一対一の勝負に持ち込みます!他の戦車に邪魔されない為にはレオポンチームの協力が不可欠です!」

 

セナはみほに元気良く返事をした。

 

「わかりました!」

 

黒森峰の一団が市街地へ到着すると、ウサギさんチームとアヒルさんチームが敵を挑発し、ある程度分散させた。あんこうチームは敵のフラッグ車を引き付け、1つしかない学校の敷地内への入口へと入っていく。そして敵のフラッグ車の後方を走っていた3両の戦車が続いて入ろうとした時、ポルシェティーガーがその入口を塞ぐ形で登場した。ティーガーⅡに乗る逸見エリカは苛立ちを隠せないでいる。

 

「この!欠陥戦車の癖に!」

 

エリカがそう言った瞬間、ポルシェティーガーから煙幕が放たれた。

 

「また煙幕!?」

 

すると、ポルシェティーガーの砲弾が敵車両3両に命中し、あっという間に撃破された。ポルシェティーガーは白旗が上がっているのを確認すると、フラッグ車同士が一騎討ちしている学校の敷地内へと入っていった。

 

一方敷地内では激しい攻防戦が繰り広げられていた。

Ⅳ号に乗るみほと、ティーガーⅠに乗るまほとの一騎討ちだ。そこにセナも加わろうとしていた。

 

その光景を観客席から見ていたラウダはハッハッハ!と笑っていた。

 

「まるで姉弟喧嘩だな。」

 

みほは、車両の損傷状態を考えて、至近距離まで詰めて一発で仕留めるしかないと考え皆に指示を送った。

 

「優花里さん!装填速度を上げる事は可能ですか?」

「もちろんです!」

「華さん!至近距離まで接近しますが、一撃で仕留められますか!?」

「はい。ですが0.5秒程静止時間を下さい。必ず仕留めてみせますので。」

「麻子さん!ターンしながら一気に敵車両の真ん前まで行って下さい!」

「履帯が千切れるぞ・・・」

 

みほは真剣な顔で麻子を見た。

 

レオポンチームでも同じようなやりとりが行われていた。ナカジマはセナに弾の数を告げる。

 

「セナ・・・弾は後一発だよ?」

 

セナはクスリと笑いナカジマを見た。そしてみほとセナは同時に同じ事を言った。

 

「大丈夫・・・この一発でしとめるから。」

「大丈夫・・・この一発でしとめます。」

 

セナは狙いをティーガーⅠに定め1足速く砲撃し、Ⅳ号はドリフトをしながらティーガーⅠへと接近して、ゼロ距離まで詰めほぼ同時に砲撃された。

 

結果は・・・両者から同時に白旗が上がった。その為、ビデオ判定となり、どちらが先に撃破したか確める事となった。

皆祈るように結果を待っていた・・・そしてアナウンスが流れる。

 

『先程の両者の砲撃を確認致しました所・・・ほぼ同時でしたので・・・この試合は引き分けとし後日・・・』

 

そのアナウンスが流れた途端、観客席や黒森峰、大洗からはため息が漏れていた。しかしアナウンスが慌てて結果を訂正した。

 

『失礼致しました!先程の両者が砲撃される少し前に後方からポルシェティーガーからの砲撃がティーガーⅠの急所に着弾していた事が確認されましたので!勝者!大洗女子!』

 

その途端、観客席からは大歓声が上がり、大洗の皆は泣いて喜んでいた。

セナは結果を聞いた後、魂が抜けるようにゆっくりと倒れた。




皆様お疲れ様でした。またお会いしましょう。


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第25話 終焉へ

書けるときに書きます!


ビデオ判定の結果、セナの放った砲弾がⅣ号の砲弾が当たる少し前に当たっていた事が判明し、大洗女子学園の勝利となった。観客席からは大歓声が上がり、あんこうチームのメンバーも喜んで抱き合っていた。

 

しかし・・・遥か後方に停車しているポルシェティーガーの車内は大騒ぎになっていた・・・何故ならセナが倒れてしまったからだ。セナの身体的事情を知ってるナカジマは、汗をかきながらハァハァ言っているセナのおでこに手を当てると、手が火傷しそうなくらい熱かった。

 

「凄い熱!ホシノ!私のケースから熱さまシート持ってきて!」

「わかった!」

 

ホシノは慌ててナカジマのケースの元へと向かい、熱さまシートを取り出すとナカジマに手渡した。

 

「ありがとう!」

 

ツチヤは用意周到なナカジマに驚いていた。

 

「用意周到だね。」

 

ツチヤにそう言われると、ナカジマは頭の後ろをかきながら言った。

 

「セナは昔から精神的な負担があったり、集中し過ぎたりすると頻繁に熱を出してたからね。セナと行動する時は大体持ち歩いてる。」

 

ナカジマはセナのおでこに熱さまシートを貼ると、スズキに向かって叫んだ。

 

「運営本部に救護車寄越すように連絡っ!」

「了解!」

 

セナはゆっくり目を開けるとナカジマの手をゆっくり掴みナカジマをじっと見つめ、涙を流しながら言った。

 

「ナカジマさん・・・ここで呼ばないで・・・みほさん達に見られたくない・・・せっかく優勝したのに・・・その空気を壊したくないよぅ・・・」

 

シクシク泣いているセナを見てナカジマはでこに手を当て、溜め息をついた。

 

「後々バレるよ?」

「その時・・・その時までで良いから・・・」

 

ナカジマは優しく微笑むと、「わかった」と言ってセナの頭を撫でた。ナカジマはツチヤに車両を動かす様に言った。

 

「ツチヤ!西住さん達から見えない位置までティーガーを動かしてっ!」

「オーケーッ!」

 

ティーガーは学校の敷地内を抜けた所で停車し、しばらくして救護車が到着した。ナカジマはセナが運ばれていくのを確認すると自分達の陣地へ帰って行った・・・

 

セナが目を覚ますと、そこは救護テントのベッドの上だった・・・身体はほとんど動かない。テントの入口から父親であるラウダがやって来た・・・ラウダはセナを心配そうに見つめている。

 

「セナどうだ?気分は悪くないか?」

 

セナはニコッと笑うと、ゆっくり頷いた。ラウダはセナの横に行きセナの頭をゆっくりと撫でる。

 

「実はセナに会わせたい人が居てな・・・」

 

セナは不思議そうな顔をしてラウダを見た。

 

「誰・・・ですか?」

 

ラウダは真剣な顔付きでセナに言った。

 

「セナがとても会いたがっていた人だ。もし今日が無理なら日を改めよう。」

 

セナは首を横に振った。

 

「いえ・・・会います。お父様がそこまでして私に会わせたい方は、きっと私にとっても重要な方なのでしょう?会わせて下さい。」

 

ラウダは「わかった」と言うと、テントの外へと出ていった。ラウダと入れ替わりで入ってきたのは、西住流の次期家元であり、セナの産みの親である西住しほだった。

セナは彼女を見ても熱で怒りは沸いて来ない、沸いてくるのは悲しい気持ちと甘えたいという気持ちだった。セナはゆっくりと挨拶をした。

 

「お久しぶりです・・・お母さん」

 

しほは成長し、捨てた我が子を前に何も言えないでいた。セナは微笑むとゆっくりとしゃべった。

 

「私は、あなたに捨てられた時・・・凄く悲しかった・・・怒りよりも悲しみが強かった・・・ただ『何で?』って気持ちが頭の中を行き来してて・・・それは最近まで続いていました・・・」

 

しほはセナの言葉に泣きながら、ごめんなさいと言った。

 

「でもね?私知ってるよ・・・お母さんが私が嫌いで捨てたんじゃないって・・・私を引き渡す時泣いてたのも・・・私が産まれた時、抱っこして泣いてたのも・・・全部知ってるよ?だから・・・泣かないで・・・謝らないで?悪いのは西住家でお母さんは悪くないんだよ?」

 

セナはそう言うとしほの頭を優しく撫でた。

その後、セナはしほに甘えん仿の子供のような表情をして両手を前に出した。

 

「お母さん抱っこ♪」

 

セナにそう言われたしほは、微笑みながらゆっくりとセナを抱き上げ、セナは笑いながら「お母さん」と言いながら、しほに抱き付いた。

 

一方大洗では優勝した喜びをを皆で分かち合っている所へ、優勝の立役者達を乗せているであろうポルシェティーガーとⅣ号が帰って来た。まずはⅣ号のメンバーが降り、皆から拍手が送られた。続いてポルシェティーガーのメンバーが降りてくるが、みほはポルシェティーガーにセナが乗っていなかったのに気付き、レオポンチームのメンバーにセナの所在を尋ねた。

 

「セナさんは?」

 

セナの所在を聞かれたレオポンチームのメンバーは罰が悪そうにしており、ナカジマがセナの所在を話した。

 

「セナは今救護テントに居るよ。」

 

ナカジマの言葉を聞いた皆は心配そうな顔をしていた。特にみほはナカジマに掴みかかりそうな勢いで顔を近付けた。

 

「セナさんに何があったの!?無事!?」

 

ナカジマはみほの肩を掴みセナの容態を話した。

 

「西住さん落ち着いて?試合終了後に倒れたんだけど、大丈夫みたいだよ?さっきセナの親父さんから連絡があって、熱も下がってるみたい。閉会式には出られるってさ。」

 

みほは、セナが無事と知るとホッと手を撫で下ろした。

閉会式が始まる直前に体調が回復したセナが合流し、セナは皆に倒れた事を何も言わなかった為に怒られた。

閉会式も終わり帰る頃・・・黒森峰のトラックの前で、まほとダージリンとオレンジペコが何やら話し合いをしていた。どうやら、セナに対し異常に執着していたマウスの砲手について話をしているようだ。

 

「あのマウスの砲手はどう致しますの?」

 

ダージリンは目を閉じて紅茶を呑みながら、まほに尋ねた。まほは表情を変えずに淡々と口を開く。

 

「あの砲手については、こちらも問題視している。命令無視に他校の生徒に対する侮辱とも取れる発言・・・後に色々と問い詰めた所、チームメイトに対する脅しや、チームメイトの手柄を自分の物にしたりしていたそうだ。間違いなく黒森峰には居られなくなる・・・それにセナに対する発言は戦車道連盟からも問題視されていて、厳しい処分もあるそうだ。」

 

オレンジペコはホッとしたような表情を見せた。

 

「それなら安心ですね・・・」

 

セナとみほが、まほの方へゆっくり近寄るとまほがこちらに気付き、笑顔で歩み寄ってきた。

 

「2人とも優勝おめでとう。みほの戦車道は素晴らしい物だった。」

 

まほにそう言われた瞬間、みほは笑顔になった。

 

「お姉ちゃん!ありがとう!やっと見つけたよ!私の居場所!」

 

みほの言葉を聞いたまほも笑顔で「あぁ」と答えた。

そのやり取りを見たセナは自然と笑顔が溢れてきた。それはそうだろう・・・戦車道を再びやろうと思ったのは、みほの居場所を守りたいという想いからで、その役目を今日果たせたのだから。セナが2人の時間を邪魔しまいとまほに背中を向けた瞬間、まほに呼び止められた。

 

「セナ!」

 

セナが後ろを振り向くと、まほが深々と頭を下げていた。

 

「ダージリンから、ウチの部員の発言を聞いたせいで試合中に体調を崩したと聞いた・・・ウチの部員が迷惑を掛けて本当に申し訳ない。」

 

セナは優しい笑みで、下がっているまほの頭をゆっくりと起こした。

 

「まほさんが謝る事はありません。まほさんは悪くないのですから・・・。それよりも、マウスの乗組員の方々の心のケアをよろしくお願いします。」

 

まほはセナの優しさに涙が出そうだった。自分も辛い思いをした筈なのに、何故こんなに他人を気に掛け、優しく出来るのだろうと・・・。まほはセナの頭を軽くポンポンと叩くとトラックに乗り込み帰って行った。

 

その後。凄い剣幕でオレンジペコが歩いて来た。

 

「セナは甘すぎます!自分の事を後回しにし過ぎなんです!たまには自分を大事にしてください!今日だって・・・今日だって・・・マウスに乗ってたアイツに何か言われた時も体調崩したのに無理やり身体を動かしてっ!あんなに辛い顔をしながらっ!」

 

オレンジペコは途中で言葉が詰まり、涙を流した。それを見たセナは背伸びしながら、オレンジペコの頭を撫で謝った。

 

「ごめんね?ペコちゃん心配ばかり掛けて・・・私もペコちゃんを不安にさせないように頑張るから。」

 

その光景を見たダージリンは溜め息をついた。何故なら、またオレンジペコのセナへの想いが強まりさらに過保護になってしまうからだ。そしてセナも帰る時間になったので、オレンジペコとダージリンに挨拶をすると、腰に手を当て少し怒っているみほの元へ帰って行った。

その後学園艦へと戻った少女達は、ファミレスを貸し切り祝勝会を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

とある場所で、前文科省の辻大臣の一派がなにやら企んでいた。1人の男はニヤ付きながら仲間と話をしている。

 

「現大臣の弱みを握り、大洗を廃校にするように脅しをかける・・・やられっぱなしで居ると思うなよ?我が辻一派の恐ろしいさを思い知るが良い!」

 

男は高らかな笑い声を出しながら天井を見上げた。

 




とりあえず1章終了って感じかな?






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