サクラ大戦~来たれ次世代の戦士~ (ユウジン)
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第一章 新たなサクラが咲き出す時
桜舞い散る空の下で


「魔の活発化……か」

「はい」

 

高級そうなスーツに身を包んだ男達が並ぶ前に、一人の女性が立って言葉を発していた。

 

「もはや猶予はありません。あの計画を実行に移させていただきたいのです」

「だが予算はどうするのかね?」

「そもそもなにか問題が起きたら誰が責任を……」

「やはりアメリカに助けを……」

 

そう口々に言葉が発せられる中、ドン!と女性は机を叩き、視線を自分に集める。そして、

 

「言った筈です。もはや猶予はないと!ここ数年降魔の出現率が上がりつづけ、更には謎の魔操機兵も確認されております!降魔の増加は第二次世界大戦後にも見られましたがその際はGHQを介してニューヨークの華撃団が対抗してくれました。ですが今は違います。アメリカでも同様に魔の出現が増え、とても日本にまで手を回してくれる状態ではありません。日米安全保障条約なんて何時だって無視できるんですよ!故に今必要なのはアメリカの庇護ではない!日本独自の防衛……帝国華撃団なんです!」

 

そう一気に言った女性は一人の男に詰め寄る。

 

「総理、ご決断を。なにか問題が起きたら私が責任をとります。出資者は既に何人か見つけています!」

「……分かったよ。藤枝くん」

 

総理と呼ばれた男は、詰め寄ってきた女性を藤枝くんと呼ぶと、目の前に置かれた書類にサインをし、

 

「藤枝くん。これより君を帝国華撃団総司令に任命する。君には帝国華撃団に関する全ての決定権を有するがそれに対する責務を知った上で職務に励んでもらいたい」

 

その言葉に、藤枝と言う女性はしっかりと頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、あの人かっこよくない?」

「外人さんだよね?ちょっと話しかけてみたら?」

「私英語できないから無理だよ……」

 

そう小声で喋る少女たちの視線の先には、一人の男がいた。

 

歳は十代半ば程、すらりとした背丈に金髪の短めの髪型、そして碧眼から日本人ではないらしい。そんな男がサクラが舞い散る空の下立って居ると言うのは、中々絵になる光景だ。その男の元に駆け寄る少女が一人。

 

「あ、あのぉ……」

「?」

 

男が振り替えると、そこのいたのは腰まで伸ばした黒髪を、大きなリボンでポニーテールにした同じ年ほどの和風美少女だ。その少女はしどろもどりしながら、

 

「えぇと……はろー?いや、ぼんじゅーる?えぇと、まいねーむいず~」

 

どうもこちらにコンタクトを取りたいらしいのだが、言葉で悩んでいるらしい。それを読み取った男は笑みを浮かべて、

 

「日本語で大丈夫だよ?」

「……え!?日本語喋れるんですか!?」

 

普通に流暢な日本語で返事をされ、少女が眼を見開く。そんな様子に男はクスクス笑いながら、

 

「それでなにか用事?」

「あ、そうだ。えぇと、ローア・シャトーブリアンさん……ですよね?」

 

そう確認してきた少女に男は、

 

「そうだけど……なんで俺の名前を?あ、もしかして!」

「はい!初めまして!私は真宮寺 八重。帝国華撃団より貴方をお迎えに上がりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもまさか帝国華撃団からの使いが君みたいな女の子だなんて思わなかったよ。もっとこうお堅い軍人みたいな人が来ると思ったからさ」

「私もまさか日本の上野公園の桜を見たいからって言う理由で迎えの人が空港までいくはずだったのに断った人がいたって聞いたときは驚きましたよ

?」

 

二人は道中そんな話をしながら、道を歩いていた。話しているうちに判明したのだが、彼女はローアの一個下らしく、そこまで年が離れているわけではないらしい。と安心したのはローア。正直、日本人は年が分かりにくい。と言うのは、きっと自分だけではないはずだ。

 

「それにしても日本って良いよなぁ。ずっと憧れてたんだ!道も綺麗だしゴミもない!」

 

そうフランス在住のローアは、憧れの日本の地を踏みしめながら感激していた。だがそんな姿を見て八重は、

 

「でも私はフランスのパリとか憧れちゃいます。やっぱり世界のおしゃれの最先端ですし」

「パリって結構ゴミとかあって外国人が思うほど綺麗な街じゃないぞ?」

 

それでもです!なんて八重に詰め寄られ、ローアは苦笑いを浮かべる。お互い、ままならないものだ。そんな中、八重は少し表情を変え、

 

「そう言えばシャトーブリアンさんはどう言った経緯でここに?」

「ローアで良いよ。俺はフジエダって人が来てスカウトされたんだ」

 

訂正しつつ、ローアは答える。

 

ある日のことだ。フランスにある自宅に突然日本人がやって来て、自分をみるなり一言言った。

 

《君の力で日本を救う手伝いをしてほしい》

 

なんのことだか分からず困惑したが、ずっと憧れだった日本に行けることもあり、すぐにOK。まあ正直その後両親と大喧嘩一歩前まで言い合いになってようやく許可を貰ったのだが、それは割愛。

 

とにかく日本だ。ずっと憧れてた日本だ。もうそれが嬉しくてしかたがなかった。

 

日本のアニメやゲームはフランスでも大人気で、ローアも勿論大ファンだ。日本語も、アニメやゲームで覚えたものである。

 

とまあそんな感じで眼をキラキラさせて歩いていると見えてきた。二人の目的地の大帝国劇場が。しかし、

 

「ん?」

 

突如悲鳴が聞こえ、ローアが振り替えると、視線の先には道路にボールを落として、車が来てるのも気づかず飛び出した瞬間だった。

 

「危ない!」

 

八重も声を上げる中、ローアは少し息を吸うと一瞬体が発光し、

 

「っ!」

「え?」

 

ローアは子供を抱き上げながら、地面を転がり車を避ける。それを見た八重はポカンとしていた。

 

なにせ、ローアは八重の隣にいたはずなのだ。なのに、突如子供の背後に出現すると、子供を抱き上げ転がった。

 

いつの間に移動したのだ?というか、そもそもこの距離を気づいたタイミングから計算しても、走っても間に合わない筈だ。

 

そんなローアは子供に怪我はないかと微笑みかけ、頭を撫でてやっていた。それから母親と思われる女性にお礼を言われて、

 

「どうしたの?」

 

と言って戻ってきた。そう聞かれ、八重もいつまでもポカンとしているわけにもいかないので、首を横に振って何でもないという。

 

まあ自分より先に反応したし、多分自分が反応した頃には走り出した後だったんだろうと思うことにした。

 

勿論。そんなわけないのだが、真相が判明するのは、もう少し先の話である。




新サクラ大戦今から楽しみですね。いやもうキャラも主人公もそう取っ替えですが楽しみです。個人的には初穂ちゃんが……


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帝国歌劇団

さて色々騒ぎはあったものの、大帝国劇場に無事到着したローアは、八重に中を軽く案内されながら、支配人室を目指していた。

 

「大帝国劇場は第二次世界大戦時に焼けてしまったらしく、現在はそれを立て直したものらしいですよ」

「へぇ~」

 

そう言いながらローアはキョロキョロしている。舞台・売店・ホールと見て回ったが、どれも綺麗だ。八重はここの舞台に立ってるらしいので、いつか見てみたいなと思いながらここが食堂です、と案内されていると、

 

「あら八重さん。お帰りになってましたの?」

「あ、アツバさん!ただいま帰りました」

 

そう言って、八重を食堂で紅茶を呑みながらブロンドヘアのスタイルが良い少女。アツバと呼ばれた彼女は、ローアを見ると、

 

「貴方が新しい人かしら?」

「初めまして、ローア・シャトーブリアンです」

 

ペコリ、とお辞儀間でして挨拶。さっきは八重の行動が面白くて出来なかったが、日本のマナー本みたいな奴でこうするのが礼儀とあったのだ。だが、

 

「全く、外国の人ですら初対面の人間にたいしてこういう風に出来ると言うのにあの人と来たら……」

 

とブツブツ言っている。何だ?とローアが首をかしげると、アツバは慌てて、

 

「Ravi de vous rencontrer。私は神崎 アツバ。シャトーブリアン家の御曹司殿にお会いできて光栄ですわ」

「ありがとう。神崎家の御令嬢に会えてこっちも光栄だよ」

 

そうアツバとローアが言い合うと、八重は首をかしげていた。

 

「ローアさんの事、アツバさんは知ってるんですか?」

「知ってるもなにもシャトーブリアン家と言ったらフランスでは何代にも渡って続く大富豪の家ですわ」

 

何も知らないんですのね、とアツバが言うと、八重は眼を丸くしながらこっちを見て、

 

「ローアさんってお金持ちだったんですか!?」

「俺がじゃなくて先祖と親がね」

 

と、苦笑いして答える。実際事業やらなんやらをやって稼いでいるのは父なのだし、折角シャトーブリアンの名前を知ってる人間が少ないであろう憧れの日本に来たのだ。ノビノビしたい。何てちょっと思ったり。

 

するとそこに、

 

「騒がしいけどどうしたの?」

「レミィ!貴女も居たのね」

 

と八重はやって来た銀髪の中性的な少女を見て、ローアに紹介する。

 

「ローアさん。こちらはレミィ・アルベルジュェ《ガチッ!》あいったぁ……」

 

名前を言おうとした八重だが、思いっきり舌を噛んだらしく、口を抑えて涙目になってしまう。

 

「全く、八重さんったらダメダメですわね。彼女はレミィ・アルベルヴェ《ガチッ!》……」

 

静かにアツバも口を抑えて蹲る。それを見たレミィは、少しため息をしながらも、

 

「初めまして。レミィ・アルベルジェッティ。宜しく」

「ローア・シャトーブリアンだ。宜しく」

 

とお互い挨拶。それにしても見事にさっきから女性にしか会わない。男は居ないのだろうか?

 

「ひゅみまへん。しはいにんひつはこのさひでひゅ……」

 

口を押さえながら言う八重に、思わずローアは苦笑いを浮かべながら、アツバたちに声をかけながらその場を八重に続いてあとにし、

 

「こちらです」

 

そう言って見せたのは、支配人室と書かれたネームプレートが扉に付けられた部屋。それから八重がドアをノックすると、

 

「どうぞ」

 

と言う返事が帰ってきたので、二人が入るとそこには二人いて、

 

「新しい彼も来たのね」

 

そう言って一人がこちらにやって来た。高身長でスラリとした中性的な顔立ちだ。

 

その人はこちらに手を差し出し、

 

「初めまして、名前は柏木 舞。年は18歳で一応女よ」

「見れば分かりますけど……」

 

舞の自己紹介に思わずローアは突っ込むと、舞はごめんなさいと言い、

 

「外国人は日本人を見分けるのが苦手だって言うしね。たまに男と間違われるし……」

 

まあ見分けるのが苦手なのは否定しない。しないけど流石に性別を間違えたりはしない。特に美人をね、とローアが言うと舞は少し笑い、

 

「リップサービスだとしても嬉しいわ。ありがと」

 

そう言いつつ舞は八重に紙の束から一つ取り出し、

 

「新しい台本が来たんだけど、どうする?」

「え!そうなんですか!?あ、でも……」

 

舞の言葉に目を輝かせた八重だが、ローアの方も見る。それを見たローアが、

 

「ここまで送ってもらえれば大丈夫だよ。行ってきたら?」

「あ、ありがとうございます!」

 

八重は目をキラキラ輝かせ、支配人室を台本を手に飛び出す。それに対して舞は静かに礼を一つして、部屋を出て扉を閉めた。それからローアは残った女性を見て、

 

「お久し振りです。藤枝 撫子さん。会ったのは……もう二ヶ月前ですね」

「えぇ、要請を受けてくれて嬉しく思うわ」

 

そう言って藤枝 撫子とローアに呼ばれた女性はカーテンを閉める。それからこちらを見て、

 

「フランスにいったときにも説明したけれど、これは強制ではないわ。その為何時でもフランスに帰る権利を持つ。それは良いわね?」

「えぇ、命の危険もあるし、事件を解決しても表立っては何か報酬が出るわけでもない。ですよね?」

 

えぇ、と撫子は頷きリモコンを手に取りボタンを押すと、壁にスクリーンが現れ、映像が流れる。

 

「前にも説明したようにここ数年。急激に魔の力が世界的に伸びている。その影響か、この降魔と呼ばれる異形の怪物が日本でも増えているわ」

 

まぁ、降魔については今じゃ教科書にも普通に載ってるから知ってるわよね。そう言って撫子が映像に写したのは、確かにこの世界のどの生き物にも似つかない異形の怪物。頑張れば爬虫類の親戚となら言えなくもないが、やはり違うだろう。そう言って次に撫子が写した映像は、その化け物と軍服を着た男達が戦っている映像だった。

 

「今は霊力がなくても、降魔に対して有効にダメージを与えられる呪弾と呼ばれる装備があるため、自衛隊や警察も降魔と戦うことができた。でもこれを使ったとしても一体の降魔を倒すのに何十人も人員を配備しなければならない。それでは魔の力が増している今対処しきれない。そこでこの度ここ首都・東京の霊的な防護の要として、帝国華撃団が復活したの」

 

そうして撫子見せたのは、今度は金属の人型蒸気機械……これは、

 

「これも知ってると思うけど一応説明すると、これは魔操機兵。降魔の増加とほぼ同時期に確認されてた新型でね。魔操機兵は降魔と違って突然生まれたりしない。何者かの意図があって生まれる。つまり降魔の増加も何者かの意図の可能性がある」

 

それが何者かであれ、自衛隊や警察では対処しきれないものが相手になる可能性が高い。そう撫子は言い、

 

「だからさっきも言ったように何時でも帰って構わないわ。私は貴方に命を懸けろとは言えないし言わない。あくまでも君の善意に期待するわ」

 

そう言って来た撫子にローアは、

 

「まあこの間も言ったように、ずっと憧れだった日本に来れたので良いですよ?」

 

と笑っている。それから、

 

「でもなんで俺だったんですか?俺ってべつに軍人でもないですし」

「それは君には霊力があったからよ」

 

ローアの問いに、撫子は答えながら、

 

「降魔や魔操機兵には呪弾等の特殊武器よりも、もっと効果的なものがある。それが霊力を纏わせた攻撃よ。霊力は基本的に人間の内面に作用するのだけど、稀に外部に放出できる人間がいる。それが貴方たち。ただ言ったようにそれができる人間が少なくてね。昔はもうちょっと多かったのだけど、今ではホントに極少数。少な過ぎて日本の軍関係の人間ですらこの光武を動かせるほど霊力が秀でてる人は居なかった」

 

撫子はそう続けながら、今度は魔操機兵とは違う機械を見せた。

 

「そしてこれが光武。正式名称は神崎重工製・虎型霊子甲冑。降魔や魔操機兵との戦いのために作られたもので、これを動かすにも霊力が必要なの。しかも膨大なね。ただ効率的に霊力による攻撃を行えるし、戦闘員の安全も確保できる」

 

撫子はそう言い、映像を消してローアを見た。

 

「そして、貴方が言ったように貴方は軍人じゃない。それどころかこの帝国華撃団において軍人は私だけ。といっても私は書類上除籍扱いだけどね。しかし、現在世界的に降魔や魔操機兵が増えている。でもそれに対して霊力を持つものが激減しているのよ。だからどこの国も自国の華撃団を他の国に貸したくない。だから日本でもようやく華撃団を設立したのだけど、今度は霊力を持つものが減少した影響で、さっきも言ったように日本の自衛隊や警察、それに準ずる組織の中でも光武を動かせるものがいなかった。でも今言ったように他国の華撃団から人員を借りることはできない。だからどうするか……って考えた結果、民間から引き抜いた」

 

だが帝国華撃団だけじゃなく、華撃団は存在は知られているが一般的には人員が誰なのかも知られていない組織のはずだ。実際にローアの住むフランスにもパリを中心に活動する華撃団がいるが、どんな人なのかは知らない。

 

「えぇ、だから秘密裏に捜索したわ。街頭インタビュー、県単位での健康診断。他にも色んな方法でね。その時見つけたのが今ここにいる八重とアツバと舞の3人。あともう2人いたんだけどそれは別の機会で良いでしょう。とにかくこの3人がいた。その時気づいたの。最初舞と今いない二人のうち一人は気づかなかったんだけど、とある共通点があったことにね」

 

そう言って撫子が出した写真は、かなり古いもので、そこには沢山の女性と一人の男が写っていた。

 

「これは?」

「これは二代目……まぁ実質本格始動した時のだから初代とも言えるんだけど帝国華撃団・花組の写真よ」

 

撫子は静かに指を指す。そこにいたのは、

 

「八重?」

「八重じゃないわ。彼女は真宮寺 さくらさん。彼女の先祖に当たる女性よ」

 

そう言って次に指差したのは髪が短めの……

 

「アツバで……この銀髪のはレミィだ。髪色が違うけどこっちは舞だし」

「少しわかったでしょう?そう、霊力は遺伝する。特に高い霊力はね。そして貴女もそう。このイリス・シャトーブリアンさんの子孫にあたる」

 

その日から捜索が始まったわ。と撫子は言う。ある時を境に帝国華撃団は完全に離散しており、特に海外出身の者を探すのには苦労したらしい。勿論自分のように、住所が決まっていれば別だが、レミィは相当大変だった、と言う。

 

「そして幸運にも全員が霊力を持っているのが判明して集めた。ここまで言えばわかったでしょう?この帝国華撃団は二代目の子孫で構成された部隊なのよ。と言うか見つかった子孫が二代目しかいなかったのだけど……」

 

そう言われ、ローアは納得する。のだが、

 

「じゃあこの写真に写っている人の子孫がみんなここに集まってるんですか?」

「一部事情があって合流が遅れているものもいるわ。でもすぐに集まるはずよ。ただ一人だけ……欠けて居るものがいてね」

 

撫子はそう言いつつ、唯一の男性を指差す。

 

「大神一郎さん。帝国華撃団・隊長にしてこの大帝国劇場の総支配人を勤めていた男よ。まぁ帝国華撃団の解散を機に姿を消してね。その後は日本だけじゃなくてロシア、アメリカ、フランスに、ドイツとイタリア……まぁ色々な国で目撃情報があったらしいけど、未だにその子孫はわかってない……まあ子孫が必ず良いとは言えないけど、男性でありながら光武を動かせるほどの霊力の持ち主……子孫も持っている可能性はあるわ」

 

そこにローアは、ちょっと待ってほしいとストップを掛けた。

 

「そもそも……帝国華撃団はなんで解散したんですか?日本の歴史はちょっと疎くって」

「そうね、教科書とか文献にも色々書かれているけど、実際は第二次世界大戦がきっかけよ。あの時は人形蒸気兵器だけじゃない。霊子甲冑も戦争の道具になり、その時に帝国華撃団の光武に目を付けられた。幾度となく魔の侵略を防いだ日本の光武の性能は世界的にも高水準でね。だから軍は光武の設計図や技術者を奪い、軍人のみで構成される帝国華撃団を再編した。勿論その際の最高責任者だった大神一郎さんは真っ向から反対。帝国華撃団はあくまでも魔に対抗するためのものであって戦争の道具ではない……ってね。それが原因で彼は除隊されて、帝国華撃団からも追放された」

 

そう言いながら撫子は写真を見る。

 

「その後の足取りはさっき言ったように掴めてないわ。そしてその後帝国華撃団は再編され、第二次世界大戦でも多数の戦果をあげた。ただ強すぎたのね。余りの強さに戦後は出した被害や責任の全てを被らされて戦犯として処刑されたらしいわ」

 

そうだったんですか……とローアは言う。そうしながら撫子はローアを見た。

 

「帝国華撃団もね、GHQからの圧力もあって完全に解体。光武などの設計図も全て処分させられたらしいわ。まぁ控えを当時の神崎重工の社長が隠し持ってて、今帝国華撃団が使ってる光武はそれを今の技術でバージョンアップしたものよ」

 

でもね、と撫子は少し表情を固くすると、

 

「まあ正直戦歴は余り……って感じだけどね」

 

どう言うことですか?とローアが首をかしげると、

 

「装備が向上しても使う方がね……現在帝劇に所属している隊員は、一時的に離脱している二人を除けば四人。八重にアツバと舞とレミィ……この四人のうち武道経験者は八重とアツバ。でも戦闘経験不足が否めなくてね……何とか今までに数回だけど魔操機兵や降魔を倒してはいる。でもそれ以上に周辺への被害や光武の損傷が大きすぎるのよ」

 

そう言って撫子が見せてきた写真は、3体の降魔を倒すのに、周りの建物は倒壊or廃墟レベルにボロボロ。光武もベコベコで、確かに3体倒すのにこれでは、余りにも採算が合わない。いや、降魔3体を倒せるってのは、とんでもなく凄いのだが、確かに他国の華撃団と比べればかなり酷いものだ。

 

「元々一般人のみで構成されてるとはいえね。まぁ君も武道は……」

「全く経験ないですね」

 

まあそれでも人手は多いにことはないんだけどね。そう言い撫子は、

 

「とは言えここではいつも戦いと言うことはないわ。寧ろ普段は、帝国華撃団ではなく、帝国歌劇団としての業務が殆どよ」

 

と言いながら、チョッキとその他服一式をローアに渡す。

 

「君にやってもらうのはモギリの仕事よ。あとはまあ今はモギリの仕事はないから普段は雑用全般ってところかしらね。詳しい内容は他の職員に聞きながらやってちょうだい。皆こちらの事情を知ってるから遠慮はいらないわ。あと今日はゆっくり休んで構わないから」

 

何て話を聞きながらローアは、

 

(これが噂に聞く日本の社畜生活?)

 

と思ったのは、まあ余談である。



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光武起動

「ふぅ……」

 

大帝国劇場に住み着いてから数日。ローアはここについた次の日から舞台の裏方の準備をさせられたり、チラシ配りをやらされたりとバタバタと動いていた。

 

来週からは日本の高校に通うことになるので、昼間は雑用をしなくて良くなるが、それにしても皆揃って遠慮なく働かせてくる。もう少し遠慮と言うものがないのだろうかと思う反面、実家だと出来ない経験でもあるので結構楽しいのは秘密。それを言うと仕事増やされそうだからだ。

 

その中扉がノックされ、

 

「はい?」

「あ、八重です。今いいですか?」

 

八重さんか、と言いつつローアは自室のドアを開ける。するとドアの前には既に八重が待機していて、

 

「これから夜間訓練なんですけど大丈夫ですか?」

「夜間訓練?」

 

はい、と言いながら八重に促されローアはついていくと、

 

「明日明後日は土日で休みですのでそういう日は夜に光武の操縦訓練があるんです」

「へぇ」

 

光武は写真や映像で見たことがあるが、実際に操縦したことはない。少し楽しみだな。そう思いつつ八重に着いていくと地下に降りていき、

 

「あ、ローアさんこんばんわ」

「小春さんこんばんわ」

 

そこにいたのは撫子と昼間は売店の売り子をしている四季(しき) 小春(こはる)(20才)。彼女も帝国華撃団のメンバーで、主にバックアップを行うらしい。因みに、

 

「ローアさんこんばんわ~」

「ばんわ~」

「わ~」

 

上から順に千夏(ちなつ)秋菜(あきな)冬美(ふゆみ)とおり、見た目が同じな四つ子である。

 

正直、腕につけている腕章の文字を見ないと全く見分けがつかない。因みに主な業務はそれぞれ書類整理や来客の対応に備品の発注等々。

 

と言うわけで余談はここまでにして地下にあるトレーニングルームに訪れた訳だが、地下に作られているためか結構広い。そしてそこには、昼間自分に雑用をたっぷりと言い付けてきた裏方達等もいるし、こうしてみると結構大帝国劇場にはたくさんの人間がいるようだ。

 

「あら二人とも。遅刻ですわよ」

 

そこにガシャガシャ音を立てながらやって来たのは、一機の光武で声からして恐らくアツバだ。

 

更に、

 

「これで全員ね」

「……」

 

奥からガシャガシャと光武がやって来たが、声で判断する限り舞とレミィだろう。

 

「じゃあ私の光武を持ってきますね」

「あ、うん」

 

八重がいくのを見送り、ローアは撫子を見た。

 

「あれが帝国華撃団の光武ですか?」

「えぇ、神崎重工製霊子甲冑・光武。武装や塗装はそれぞれを反映してるけど殆ど同一の機体よ。まぁ乗り手に合わせて少しチューニングは施されてるけどね」

 

と言われて見てみると、確かに舞は黒でアツバは紫。レミィは青で今来た八重はピンクの塗装が施してある。

 

「そう言えばローア君はパリの光武を見たことがあるのよね?」

「えぇ、しかし結構似てる所もありますね」

 

そう言うローアに、撫子は苦笑いを浮かべて、

 

「元々霊子甲冑の技術は日本が一番進んでてね。パリの光武も最初は日本と共同で開発したものでそこから発展してるから似てて当たり前よ」

「あ、そうなんですか」

 

ま、今じゃ日本は世界で一番霊子甲冑の研究が遅れている国になったけどね。と撫子は肩を竦めた。それから、

 

「そうそう、取り敢えずローア君のはまだ光武が完成してないから今日は霊力量の検査とかをするわね。これが取れないと光武の仕上げが出来ないのよ」

「良いですけどどうやって?」

 

ローアがそう問うと、撫子はトレーニングルームの隅にある光武を指差す。それはあちこちの塗装が剥げた少しボロっちい光武で、

 

「元々ニューヨークの華撃団が使ってた旧式の光武よ。本当なら光武はさっきもいったように乗り手に合わせてチューニングするんだけど操作を覚えたり霊力量の検査とかならこれで大丈夫だからね」

「成程」

 

ローアはそう言いながら旧式光武に近づき、

 

「えぇと、どうやって乗れば?」

「そこの横についてるボタンで乗り口が開くわ。後は乗ったら自動で閉まるから中でロックしてね」

 

と言われ、それに従うと確かにスイッチがあり、それを押すとプシュっと言う音と共に乗り口が開く。

 

「よっと!」

 

ローアは掛け声と共に中に軽快に乗り込んだ。そして入り口が閉じると、

 

「それじゃローア君。まずは右下の赤いスイッチを押して頂戴。そうすれば起動するわ」

「これかな」

 

とローアはスイッチをいれると、目の前の画面が光り、光武から見た視界が映る。意外と視界は広い。

 

「それじゃローア君。画面に光武の操作方法を出すからそれに従って少し動いてみて」

「了解」

 

そう答え、ローアは画面のチュートリアルに従いながらまずは歩いてみる。ぎこちなく、ガチガチと変な動きだが、一応歩けてはいるようだ。

 

「結構難しいな……」

「慣れれば結構複雑な動きもできますよ?」

 

八重はそう言って腰に装備されている刀を抜くと、ビュビュ!と眼にも止まらぬ早さで二回刀を振るう。

 

「おぉ~。すげぇ」

「これでも北辰一刀流免許皆伝ですからね」

 

フフン、とドヤ顔してそうな八重の所に、

 

「そう言えばローアはどんな武器にするのかしら?」

「俺の武器?」

 

それぞれ使う武器は違うからねと言いつつ、舞は光武に装備されていた銃を見せる。

 

「私はこの拳銃と背中のライフルが武器だし、八重は刀でアツバは薙刀、レミィはランスよ」

「うぅん……」

 

そうは言われても、今まで武器を振り回すような生活をしていないので、全く想像がつかない。

 

「皆はどうやって決めたの?」

 

ローアは悩んだ結果、皆に聞いてみることにした。それに対して皆は、

 

「私は剣術が得意でしたので」

「私も元々神崎風塵流薙刀術の免許皆伝でしたから」

 

と言うのは八重とアツバ。だが舞とレミィは、

 

「色々試して一番手に馴染んだのが銃だったのよ」

「同じく」

 

そんな感じで全く違う理由だ。とは言え何かしらの武術を修めてないローアは、案外そっちと同じく色々試して手に馴染むのを探す方が良さそうだ。

 

「ローア君。そろそろ降りて良いわよ」

「あ、はい」

 

その中撫子の指示が届き、ローアは光武の電源を落として降りる。それから撫子の元に行き、

 

「どうでした?」

「そうね。男性としてはかなり高い霊力だったわ。初めてあったときも軽くは調べたけど予想以上ね。これなら光武の操作も問題ないでしょう」

 

よっしゃ、とローアはガッツポーズ。

 

「それじゃ次は全員でフォーメーションを確認しましょう。ローア君は取り敢えず見学しててね」

「はい」

 

それから撫子はそう指示し、ローア以外の皆でフォーメーションや全体の動きの確認を行う。

 

そうして、その日の夜は更けていったのだが、一方別の場所では、

 

「さて、準備は完了した。これより計画を実行に移す」

『はっ!』

 

暗闇の中にいる男は、その姿は分からない。だが声音的に40半ばくらいだろう。そしてその男の前には四人の男女がいた。

 

四人はそれぞれ龍・虎・鳥・亀を模した面を着けており、その体からは異様なオーラを放っている。

 

「最近帝国華撃団が復活したようだ。だが関係ない。お前たちも次から前線に出る。それならば返り討ちにすることなど造作もないだろう?」

「お任せを。所詮は年端もいかぬ子供でしょう」

 

そう答えたのは虎の面を着けた大柄な男。それに対して鳥の面を着けた女が、

 

「そう言ってお前はいつも油断するじゃない」

「何を!」

「やめないか!」

 

虎と鳥の面をそれぞれ着けた二人は喧嘩腰になるが、龍の面を着けた男が一喝して止めた。それを見た男は、

 

「ふむ。良し次の襲撃作戦。お前が行け、青龍よ」

「は!必ずや貴方のお役にたって見せましょう」

 

そう青龍と呼ばれた龍の面を着けた男は、膝をつきながらもそう答える。

 

こうして、ローア達が気づかぬ間にも、悪意が忍び寄っているのだが、それを知るのはまだ少し先の話し。



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魔の目覚め

「おはよう八重……」

 

光武の訓練があった次の日の朝。休日のため少し寝坊して起きてきたローアは、一階にある食堂にやって来ると、丁度八重がお茶を飲んでいた。

 

「あ、おはようございます」

 

二人は挨拶し、ローアは食堂に調理場から持ってきたご飯や味噌汁にオカズ諸々を持ってきて、

 

「いただきます」

 

と食べ始める。それを見た八重は、

 

「ローアさんって箸を普通に使われてますね」

「ふふ~ん。日本には郷に入りては郷に従えって言う言葉もあるからね。箸の使い方を覚えたんだ」

 

そう言いながらご飯を口に運ぶローアに八重は少し笑って、

 

「ローアさんって思ったんですけど結構日本オタクですよね」

「日本のアニメやゲームはフランスでも人気だからさ。 いやぁ、今でも少し実感がわかないもん。ずっと憧れだったからね。日本はさ」

 

ローアはそう言って最後の一口を放り込む。すると、

 

「それでは折角ですし今日はローアさんに東京案内しましょうか?」

「え?」

「他の皆はそれぞれ用事があったらしくて居ないんですよ。なので手持ち無沙汰だったんですけどローアが良ければ案内しますよ?」

 

八重のそんな提案に、ローアは考えてから、

 

「じゃあお願いしようかな」

「そうですか。じゃあ今からだと……11時集合で良いですか?」

 

あぁ、大丈夫だよとローアは答えると八重は席を立って準備してきますねと走り去って行く。

 

(こっちも急いで食べて準備するか)

 

それを見送ったローアは少し急いで食事を終わらせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、良い天気だなぁ」

「そうですね」

 

お互い支度を終えたローアと八重は駅を目指して歩いていた。

 

「それにしても八重。その桜色のワンピース凄く似合ってるね」

「そ、そうですか?」

 

そんな中突然のローアの言葉に、八重は照れながらも礼を言う。

 

「八重って結構そういう色の服や小物持ってるから好き何だろうなっては思ってたんだけどさ。八重の大和撫子の雰囲気と桜色って凄くマッチしてるよ。元々美人だけど今日は特に綺麗だ」

「ロ、ローアさん?そんなに冗談でも誉めても何も出ませんよ?」

「いやいや、冗談じゃないって」

 

ローアがそう言って誉めちぎると、八重は顔を赤くしながら少し眉を寄せて、

 

「ローアさんって意外と軟派なんですね」

「そう?女性を誉めるってのは普通じゃない?それに嘘言ってる訳じゃないし」

 

嫌だったら辞めるけど?そうローアは言うと、八重は嫌ではないですけど……と言う。嫌と言うか、照れてしまう感じが強いようだ。そんな中、

 

「それで最初はどこ行こうか」

「じゃあまずは浅草に行きましょう」

 

八重は気持ちを入れ換えてそう提案し、ローアは頷く。

 

それから地下鉄に乗って暫し揺られ、八重に案内されて着いたのは浅草の雷門。真っ赤な門をくぐり抜け、中には所狭しと店が立ち並んでいた。

 

「凄い沢山あるなぁ」

「ここなんかは美味しいお店も多いんですよ。あとここの近くにある高村屋って言う煎餅屋さんもおすすめですよ?」

 

食べ物ばっかりだね。とローアは笑い、八重はハッとなって頬を染める。それを見てローアは、

 

「じゃあ八重オススメの美味しいお店に連れてってよ」

「そうですか?じゃあまずは……」

 

と、八重が案内しようとしたその時!

 

『っ!』

 

ドン!と大気が震え、背後で爆発音が起きた。

 

ローアは咄嗟に八重を抱き寄せ、爆発音の方角から庇うように立つと、その方角を見る。そこに居たのは……

 

「魔操機兵……」

 

見上げるほど大きな鋼鉄で出来た感情の感じられない姿に、ローアは無意識に寒気を覚えた。すると、

 

「あ、あのローアさん。大丈夫ですので……」

「ん?あぁ、ごめん」

 

八重に言われ、ローアは彼女を解放。そしてさっきまで買い物や観光を楽しんでいた人々が、悲鳴を上げる中二人が魔操機兵を見ていると、魔操機兵は巨大なツボのような物を設置したかと思えば、

 

「なんだ!?」

 

突如逃げ惑っていた人々が地面に膝をつき、突然苦しみだしたのだ。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「う、うぅ……」

 

八重が慌てて近くの人に駆け寄るが、踞ったまま動かない。するとそこに他の魔操機兵とは明らかに違い、龍をモチーフにしたらしき造形の魔操機兵が現れた。

 

「ほぉ、魂喰いが効かないほどの霊力を持つものが今の世にも居たとはな。まぁ良い、【(おん)】よ!あのガキどもを殺せ!ただし周りの人間を巻き込むなよ!大事な贄なのだからな!」

『ギィ!』

 

そうして、ローア達は知らないが、青龍と呼ばれていた男に命令された、怨と呼ばれた魔操機兵達は、ローア達の方を見ると走り出してくる。

 

「八重!」

「え?」

 

それを見たローアは、八重の手を引くと、迫り来る怨の手にあった刀が振り下ろされる中、突然姿が消える。

 

「む?」

 

龍をモチーフにした魔操機兵に乗っていた青龍は中で眉を寄せながら、その視線を横にずらすと、そこには八重の手を引いて走るローアの姿がある。

 

そこに別の怨が刀を振り下ろすが、また姿が消えて、少し離れたところに現れた。

 

(テレポートか。だがあれは余程霊力が高くなければできないはず。あの小僧から感じる霊力は並程度だが……)

 

そう青龍が思っている間にも、ローアは八重の手を引いて怨達から逃げる。すると、八重の携帯が鳴る。

 

「はいもしもし!」

《八重!?いまどこにいるの!?》

 

そう電話越しに叫ぶのは撫子で、八重は今雷門にいること、更に謎の魔操機兵に襲われていることを伝えた。

 

《成程……分かったわ!とにかく貴方達は雷門の隠し通路から地下に来てちょうだい》

 

すると撫子が言った直後、ローア達を後ろから追いかけていた怨の頭が銃声と共に吹き飛ぶ。

 

「え?」

 

ローアが驚いて銃声が聞こえた方を見ると、黒がパーソナルカラーの光武が銃を構えている。アレは昨晩見た舞の光武だ。更に、

 

『帝国華撃団!参上!』

 

と、舞に続いてアツバにレミィの二人が登場。

 

「二人とも!このまま行ってください!」

「ありがとうございます!」

 

アツバに見送られ、八重とローアは更に奥に向かって走る。

 

「結構一般の人もいるね」

「二人とも、八重もすぐに合流できると思うけどまずは一般の方を影に避難させながら、あの周りの魔操機兵を撃破。その後に、リーダー格と思われる魔操機兵を叩くわよ!」

「それでは行きますわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか雷門の所に、こんな隠し通路があったなんて……」

「こういう隠し通路は東京中にあるんです」

 

そう言いながら二人は少し開けたところに出ると、そこには線路が敷かれておりその上には……

 

「電車?」

「はい。皆さんが何時も帝劇にいるとは限らないので、有事の際には各地にあるこの隠し通路に来て、この【風来丸】に拾ってもらってから目的地に全員で向かうんです」

 

そう八重は案内しながら、風来丸に乗り込むと、中には撫子や四姉妹がいた。

 

「二人とも、無事で良かったわ。それで八重、悪いけどすぐに出撃して」

「はい!」

 

八重は撫子の指示に頷き、別車両にすぐに移動。移動した先には様々な機材が置かれているが、その先の車両を幾つか越えていくと、光武が置かれている車両がある。その車両に置かれている自分専用光武の隣にあるポットに入った。

 

ブシュ!と一瞬蒸気が出て、ポットから出ると、八重の服が変わり戦闘用の服になっている。

 

それからスイッチを押して光武の乗り口を開けると、乗り込み光武を起動。そして風来丸から飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤァ!」

「ハァ!」

 

アツバの薙刀とレミィのランスが怨を破壊し、

 

「こっちです!」

 

舞が一般人を避難させながら、銃を撃って怨を撃破。それを見た青龍は、

 

「成程。流石に場慣れしてきたか……こうなるともっと怨の数と種類を揃えなければならないか」

「よそ見は禁物ですわよ!」

 

そこにアツバが薙刀を青龍に向けて振り下ろす。だが、

 

「だがまだ弱い!」

「きゃあ!」

 

青龍の魔操機兵は腰の刀を抜くと、アツバの薙刀を弾き、そのまま切り返して彼女の光武の腕を切り落とした。

 

「なっ!」

 

アツバは慌てて薙刀を切り落とされていない方の腕で持ち、距離を取る。

 

「ショット!」

「ふん!」

 

すると舞が背中に背負っていたライフルを構え、青龍に発砲。だが、青龍は刀を振るって一刀両断した。

 

「そんな……」

「どんなに速くても真っ直ぐしか飛ばないからな」

 

そう青龍は言い、舞に向けて走り出す。

 

「くっ!」

 

舞は銃を構えて発砲しまくるが、それを全て弾き落とされ、

 

「た、弾が……」

 

すぐに弾切れを起こし、舞は慌てて弾をリロードしようとするが、弾を落として拾い直そうとしている間に、青龍との距離を詰められる。

 

「させない!」

 

だがそこにレミィが舞と青龍の間には入り、ランスを突き出す。

 

「ちっ!」

 

それを青龍は刀で受け止め、鍔迫り合いになる。更に、

 

「レミィ!そのまま抑えてて!」

「むっ!」

 

八重が腰の大太刀を抜いて居合い抜きの要領で青龍を切る。

 

「ぬぅ!」

 

咄嗟にレミィの槍を弾いて下がるが、少し切られたようだ。バチっと火花が散る。

 

「成程。まだいたのか」

 

だが致命傷ではなかったのか、特に動きに変化はない。それどころか、

 

「まぁ良い、いつまでもお前達と遊んでいる場合ではない。あの御方の大願のためにもな」

 

そう言った青龍は、刀を掲げるとそれを中心に、おどろおどろしいオーラが集まる。

 

「闇に巣食いし暗黒の龍よ。我が呼び掛けに応え、今こそ森羅万象を喰い散らせ!」

 

その言葉と共に、青龍の刃から黒い龍が何匹も飛び出し、八重達に襲いかかった。

 

『キャアアアアアアア!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八重!皆!」

 

一方その頃、ローア達は風来丸にあるディスプレイから、雷門の監視カメラを使って八重達の戦いを見ていた。

 

「全員の霊子エンジン出力が大きく低下。このままでは駆動率が30%を切ります!」

「今の爆発で搭乗者もダメージを受けています。このままでは彼女達の身に関わります!」

 

そう叫んだのは小春と千夏で、撫子は眉を寄せて険しい顔になる。それを見たローアは、

 

「もう光武はないの!?」

「え!?えぇと一応皆さんの光武に何かしらの異常があったときのために、予備として昨晩も使った検査用の光武が……」

 

ローアに詰め寄られ、秋菜は驚きながらもそう答える。それを聞いたローアは後ろの車両に行こうとし、

 

「待ちなさい!貴方が行ったところで何もならないわ!」

 

撫子が叫びながら、ローアの腕を掴む。だが撫子の方を振り替えると、

 

「俺が日本に来たのは……誰かが戦ってるのに自分だけ安全な場所にいるためじゃない!」

 

と言って撫子の腕を振りほどき、後ろの車両まで一気にテレポートしながら移動。そして昨晩も使った旧式光武に乗り込むと起動していると、

 

【ローア君!】

「あぁもう!何言ったって出ますからね!?」

 

撫子の通信にローアが怒っていると、撫子はそうじゃないと言い、

 

【良いこと?それは旧式だしメンテナンスだって最低限しかしてないの!だから絶対無茶しないで!第一目標は全員の救助よ!】

「……了解!」

 

ローヤはニッと笑いながら、車両から飛び出す。光武でも余裕で通れる広さ道を通り、外を目指して走り出す。

 

(八重、皆……今行くぞ!)



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真の力

「う……うぅ」

【皆!聞こえてる!?返事をしなさい!】

 

撫子さん?と八重は眼を開けながら答える。それからさっきの攻撃で割れているディスプレイを見ると、青龍がこちらに歩み寄ってくるのが見える。

 

「と、とにかく動き出さないと……」

 

と八重が光武を動かそうとした次の瞬間、

 

「だぁ!」

「ん?」

 

八重の光武を飛び越え、旧式の光武が飛び蹴りを放ってきたのに少し驚きつつ青龍は横に跳んで避ける。

 

「おいおい、出てくるなら一回で全員出てこいよ」

「うるせぇよ」

 

と言いながらローアは、八重達に近付くと、

 

「皆、大丈夫?」

「ロ、ローア?」

 

舞が苦しそうに声を出す。そして他の皆も意識を取り戻したようで、次々と体と言うか、光武の機体を起こしていた。

 

それからローアは青龍を見ると、

 

「しかしそれは旧式光武か?余程金がないのか……」

 

だからと言って加減はしないがな。青龍はそう言って刀を手に走り出して来た。それを見たローアは、

 

「八重!刀借りるよ!」

「え?」

 

咄嗟に八重の光武の手から刀を取り、青龍に向けてブン回す。しかしそれを青龍は軽く止めると、

 

「お前素人だな?(それ)はオモチャじゃないんだぞ?そんな棒でぶっ叩くみたいな振り方をする奴があるか」

 

青龍そう言って刀を捻ると、ローアの光武が大きく体勢を崩してしまった。そしてその隙を見逃さず、青龍は流れるように刀を振り上げ、ローアの光武の首めがけて振り下ろすが、

 

「む?」

 

刀が当たる直前、ローアが光武ごとテレポートして避けた。

 

(今のテレポート……そうか、乗っているのはさっきの小僧か。それに今ので気づいたがあの小僧……普段はそこまでじゃないが、いざというときに霊力が爆発的に増幅する。元々霊力の出力量は感情に左右されるが、その振り切った瞬間の量が尋常じゃなかった)

 

恐らく普段は無意識か意識的にか分からないが抑えているんだな、と青龍は結論付け、ローアに向けて刀を構え直す。

 

「なぁ!なんでこんなことするんだ!?」

 

そんな青龍にローアは問う。まぁ正直に言うと、八重達が漸く立ち上がってこっそり撤退行動に入り始めたのを見て、そっちに意識が行かないように気を引いているだけだ。

 

しかし、

 

「お前に答える必要はない」

 

と言って刀を振るうと闇のオーラが斬撃に変化して飛んでいくと、こっそり移動していた八重の光武の体を切り裂く。

 

「キャア!」

『八重(さん)!』

 

そのまま地面に転がった八重を庇うように、皆は前に庇うように立ち塞がった。

 

「お前!」

 

ローアはそれに怒りを爆発させ、青龍に突っ込む。

 

「愚か者が!」

 

それを青龍は刀で受け止め、鍔迫り合いになった。だが、

 

「なっ!?」

 

青龍が驚愕するのも無理はない。何せ鍔迫り合いを始めたその後、ローアの乗っている光武が目が眩む程の発光。

 

ローアの爆発的な速度で上昇していく霊力に、光武の霊子エンジンが反応した結果なのだが、ここまでの反応が出るのが余程の霊力量じゃなければ起こらない。

 

それを見ていたのは、撫子達の方もで、

 

「霊子エンジン許容範囲を超過!110……120……130%!まだ越えます!」

「霊子エンジンがオーバーヒートしています!このままでは光武が持ちません!」

 

秋菜と冬美が叫ぶ中、撫子はローアに、

 

「ローア君!今すぐやめなさい!このままだと光武が持たないわ!」

 

しかし一方戦闘中のローアは、

 

「ウォオオオオオオオ!」

 

抑える所か更に霊力を爆発させ、

 

「ラァ!」

「ぐぉ!」

 

そのまま押しきって強引に腕を切り落とし、相手の刀を奪った。そしてそのまま、

 

「これはアツバの分!そしてこれは舞!」

「っ!」

 

二刀流で青龍を斬る。だが終わりじゃない。二本の刀で滅多斬りにしていく。

 

「レミィの!それに巻き込まれた人々の!そして八重の分だぁああああああああ!!!!」

 

斬って斬って斬りまくる。その間に光武のあちこちから火花が散っていき、光武の全身にヒビが入っていく。

 

「ぐぅううううう!」

 

光武の内部も火花が散り、小さな爆発が起き始めた。

 

「負けるかぁあああああああああ!」

 

ローアの咆哮。それと同時に光武が霊子エンジンの負荷が限界を超えた影響で大爆発を起こし、

 

「ローアさん!」

 

八重が悲鳴に似た叫びを上げる。すると、

 

「あちち!」

 

テレポートでローアが飛び出してきた。

 

「あっぶねぇ……もうちょっと遅かったら死ぬとこだった」

「大丈夫ですか!?」

 

皆はガシャガシャと駆け寄り、ローアは埃を払いながら立ち上がる。

 

「大丈夫大丈夫。まぁ、流石にこれは倒したんじゃ……」

 

ローアはそう気を抜く。だが、

 

「成程……油断するもんじゃないな」

『っ!』

 

立ち上る黒煙と炎の中には、ボロボロになった青龍の魔操機兵が立っていた。すると落ちていた自分の刀を拾い上げて鞘に戻すと、魔操機兵が霧のように消え、青龍自身が出てくる。

 

「我が名は青龍!黒華会四天王の一人!小僧、名を聞こう」

「ローア……ローア・シャトーブリアン!帝国華撃団の一員だ!」

 

ローアははっきりそう答える。それに対して青龍は、

 

「シャトーブリアン?成程……そう言うことか。まぁ良い、その名は覚えた。いずれこの決着は改めてつけてやる!」

 

青龍はそう言い残し、自身も霧に姿を変えて消えてしまう。そして今度こそ全身から力を皆は抜いて、

 

「敵は帰ったのか?」

「た、多分」

 

八重の答えを聞きながら、ローアはそのまま地面にヘタりこんだ。今頃になって恐怖を自覚してしまったらしい。しかし、

 

「ローアさん。まだ終わってませんよ?」

「え?」

 

ローアはポカンとしながら振り替えると、皆は光武から降りてきた。そして、

 

「戦いが終わると帝国華撃団は約束の締めがあるんです」

「へぇ?どうするの?」

 

ローアは立ち上がり八重に問うと、じゃあ合わせてくださいね?と言い、

 

『せーの!勝利のポーズ!』

 

皆はくるりと回ってビシッと決めポーズ。そして、

 

『決め!』

「……」

 

ローアはその光景を静かに見守っていた。

 

「ちょっとローアさん!ノリが悪いですわよ!」

「え!?今のやるの!?」

「意外とやると楽しいわよ?」

「じゃあもう一回やろうか」

 

アツバに怒られ、舞とレミィに押されてローアも強制参加である。

 

「い、いや良いって!」

「そう言わずに!それじゃもう一回!せーの!」

 

ローアは逃げようとするが完全に捕縛されて、八重はそんな様子を見ながら笑って音頭を取った。

 

一方撫子は、椅子に座り込んでその様子を雷門の監視カメラで見ながら、

 

「皆、監視カメラの削除をよろしくね」

『はい!』

そう指示をし、撫子は思案に耽る。

 

ローアの一件は想像以上だった。まさか彼にここまでの力があったとは……だが嬉しい誤算だ。しかし、

 

「黒華会か」

 

恐らくここ最近の謎の魔操機兵は恐らく黒華会の仕業だろう。そう考えると、

 

「まだ戦いは始まったばかりね」

 

これは急いで他のメンバーも召集するべきだ……撫子はそう考えつついると小春が、

 

「総司令!テレビ局の記者が集まり始めています!封鎖を無理矢理乗り越えて来そうです!」

「またマスコミの連中ね……」

 

撫子は頭を掻き、通信機をオンにすると、

 

【皆!急いで帰投して!テレビ局が来たわよ!】

『え!?』

 

一般的に正体が秘密の帝国華撃団なので、テレビに光武が写るくらいならまだしも正体がバレないように取材が来ても逃げるのが鉄則……と言うのは世界的にどこも同じである。

 

なので、

 

「ローアさんこっちです!」

「え?」

八重達は光武に飛び乗ると、八重が光武でローアをお姫様だっこにし、ローアに若干恥ずかしい思いをさせながら皆で逃走。

 

「あ!あそこよ!逃がすな!」

 

と後ろで聞こえるが、皆はそのまま隠し通路まで走るのだった。



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始まり

「大丈夫ですか?」

「うん……」

 

青龍との戦いから次の日。ローアはげっそりとやつれていた。

 

理由は単純。戦いから帰ってその日はすぐに休めたのだが、次の日の朝から早々に撫子に呼び出され、クラクラするほど怒られたのだ。

 

理由は先日の戦いで、安全第一だったのを危険な一騎討ちに臨んだ上に、光武を爆発四散させたのだ。旧式の使い古された中古品とは言え光武だってタダじゃない。と言うか高価なものだ。それはもうかなりこってり絞られた。

 

その為かげっそりとやつれたローアは、食堂のテーブルに突っ伏して居たところに、八重がちょうどやって来て心配そうに顔を覗き込んでくる。

 

「まぁ無茶した俺が悪いんだけどさぁ」

「でもあの時助けてくれて嬉しかったですよ?」

 

八重はそう言って笑みを浮かべる。それを見てローアも少し笑みを取り戻し、

 

「まぁ、八重が無事でよかったかな」

「ローアさんもご無事で何よりです」

 

そう言って二人は笑い会う。すると、

 

「邪魔だったかな?」

「ん?」

 

見ながらそう言葉を発したのはレミィだ。それを見たローアは、

 

「そうだね。せっかく二人で仲良く話してたんだけど」

「ちょ、ちょっとローアさん!?」

 

顔を赤くしながら言う八重と顔色ひとつ変わらないローアと言う、真逆の反応を見ながらレミィは八重を見て、

 

「まぁ、イチャイチャも良いけど八重はそろそろ舞台の練習だから来てね?」

「い、イチャイチャなんかしてないわ!」

 

八重はレミィに詰め寄るが、それをスルーしてレミィはそのまま行ってしまい、それを追いかけて行ってしまう。ローアはそれを見送り、手持ちぶさたで食堂の窓から外を見る。

 

青龍と名乗った男は言っていた。いずれ改めて決着をつけようと。

 

恐らくまたいつか戦うことになる予感がする。だがその前に強くならなければならない。そうしなければ、勝つことはできないだろう。昨日のはラッキーパンチにすぎないのだから……

 

そう思いながらローアは拳を作る。次会ったときは、実力で勝てるようになろうと。

 

そして決意を新たにし、ローアは窓から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか貴方がやられるなんてね。青龍」

「朱雀。わざわざ嫌みを言いに来たのか?」

 

腕の傷を抑えながら、青龍は隠れ家にいたのだが、ニヤリとしながら朱雀がやって来たので、不機嫌そうに返す。

 

「それにしてもそこまでの使い手がいたのかしら?今までの帝国華撃団の戦いを見ても貴方がそこまで苦戦するとは思えないのだけど?」

「新しい奴が居た。そいつが想像以上でな。それとそいつはシャトーブリアンと名乗った」

 

シャトーブリアン?と朱雀は顎に手をやり、

 

「確か帝国華撃団の初代及び2代目に同じ姓の奴がいたな」

「恐らく血縁者だろう」

 

もしかしたら今の帝国華撃団には他にも昔の華撃団の血縁者がいるかもな。と青龍は言いながら立ち上がると、

 

「だが次は勝つ。あの小僧にはこの借りを必ず返して見せる」

 

そう青龍は言いながら、奥へ消えていった。

 

こうして、長い因縁が生まれるのだが、その因縁の結末は……まだしばらく後に語るとしよう。



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第二章 集結する戦士たち
新たな仲間達


「疲れたぁ~」

 

校門を通り、ローアは深呼吸しながら歩き出す。すると、

 

「あ、ローアさん」

「ん?あぁ、八重。お疲れ様」

 

駆け寄ってきた人物に、ローアは笑みを浮かべてその方を見た。

 

「学校には慣れましたか?」

「まあね。ただちょっと授業で分かりにくい日本語とかあるかな」

 

とローアは言う。日常会話に問題がないため分かりにくいが、それでも分かりにくいニュアンスがあったりして、苦労するところもあるらしい。

 

「あと授業の進み方も向こうとは違うからね~。やっぱり文化の違いって大きいよ」

 

そう言いながらローアはスマホを弄り、

 

「メールですか?」

「うん。クラスの可愛い子と連絡先交換したからさ~。皆可愛くてまいっちちゃうよねぇ。うちの高校美人多くない?」

「……」

 

八重はジト目でローアを睨み付けていたが、画面に夢中のローアは気づいていない。

 

「ローアさんは可愛い女の子は口説くのマナーとか思ってそうですよね」

「そんなまさか。可愛いと思ったり良いと思えた所をそれを相手にちゃんと伝えるようにしているだけだよ」

 

なんだかなぁ……と八重はため息を吐く。どうも軟派な人なんだよなぁ……と八重は思う。しかし、

 

「八重も可愛いよね。特にこの黒髪が日本人的で綺麗だ」

「……」

 

こう言われて悪い気はしない。悪い気はしないがこの人はこういう人だからなぁ。でもなぁと八重は悶々としてしまう。すると、

 

「ん?」

 

スマホの画面を見ながら辺りをキョロキョロしている眼鏡の少女が、ローアの目に入る。

 

「大丈夫ですか?」

「は、はい!?」

 

ローアはその少女に駆け寄り、声を掛ける。しかし突然外国人の男に声を掛けられたせいか相手は驚いていた。そういう風に困ってる相手に平然と行けるところが格好いいんだけどな、と八重は思いながら自分も駆け寄り、

 

「驚かせたらすみません。なにかお困りでしたので声を掛けさせて……って!」

『あぁ!』

 

事情を説明。と思ったら、相手とほぼ同時に声をあげた。ローアが首を傾げると、

 

「八重はんやん!」

紅葉(こうは)じゃない!作業着姿じゃなかったから分からなかったわ!」

 

どうも知り合いだったらしい。キャーキャー言いながらお互いハイタッチ。すると紅葉と呼ばれた少女はこっちを見て、

 

「もしかしてあんたがローア・シャトーブリアンはん?」

「あ、うん。そうだけど……」

 

何故知っているのか?そう思ってからそう言えば八重と知り合いだった。と言うのを考えると、もしかしたら帝国華撃団の関係者?と思い至った瞬間。

 

「やっぱりあんただったんやな!うち可愛い子に無茶させて壊したっちゅうアホは!」

「はい?」

 

なんの話?と首を更に傾げてしまうと、

 

「とぼけたらあかん!うちの可愛い可愛い大切なもんを好き勝手にやって壊して爆発四散やと!?うちがどんだけ泣き腫らしたと思ってん!」

「え?え?え?」

 

爆発四散?と言われて一つ思い至った。それは、

 

「もしかして旧式光武の事?」

 

大声で言うわけにいかないので、こそこそ話すと紅葉は頷き、

 

「うちがおとんに初めて全部のメンテを任せて貰えた大切な機体だったん

や。なのにあんたが……あんたがぁああああああ!」

「ぐぇ!く、くるしい」

 

ちょ、ちょっと紅葉!と八重は慌てて紅葉をローアから離し、

 

「待って落ち着いて?周りの目がね?」

「あ……」

 

紅葉はコホンと咳をして、

 

「初めまして。うちは釧灘(くしなだ) 紅葉や。八重はんと同い年の16才。ほなよろしゅう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、久々に大帝国劇場に行こうとしたら迷ったなぁ。ほんまここら辺は迷路やで。すーぐ新しい建物やらお店が出来るから暫く来ないでいるとぜーんぜん分からんようになるわ。でも八重はんに会えて良かったでぇ」

 

電車に揺られながら紅葉は八重に言う。どうも似たような名前の駅やら目印がわりの店で、グルグル変なところをさ迷っていたらしい。

 

「うち最近の店とかぜーんぜん興味ないからこの店を目印に~とか思ってもちんぷんかんぷんやったんよ」

「相変わらず紅葉は機械弄りばっかりなのね」

 

なんて二人のやり取り見てから、ローアは電車の中吊り広告に眼を移した。

 

(ほうほう……ん?)

 

ローアはある方を見てから、静かに歩き出し、

 

「ローアさん?」

 

八重が首を傾げる中、ローアは腕を伸ばすとそのまま男の腕を取った。

 

「おい痴漢野郎。そこまでにしな」

『っ!』

 

ザワッと電車内がザワツキ、視線が集まる。

 

「な、なんの事だ!」

「ちゃんと見たぞ、間違いない」

 

ローアはそう言うが、犯人?は首を横に振って、被害者?の女の子に詰め寄る。

 

「おい!俺がやったのか?どうなんだよ!」

「そ、それは……」

 

女の子は完全に萎縮。すると、

 

「俺も見たぜ」

「え?」

 

あぁやれやれ、やっとここまで来れた。と人ごみを掻き分けて出てきた、身長2mはある大男に、犯人?は少し後ずさりつつ、

 

「う、うるせぇ!黙ってろ!」

 

そう言って男はローアを振りほどくと、そのまま大男に殴り掛かるが、

 

「よっ!」

 

パシッと相手の拳をキャッチしてそのまま反対の手で拳を握ると、

 

「チェストぉおおおおおおおお!」

「ぐぎっ!」

 

脳天に拳骨を落とし、男はゴクシャ!と変な音を立てながら地面に潰れる。

 

「やれやれ、全く大丈夫か?」

「は、はい……」

 

女の子は震えながら頷く。それから大男はローアを見て、

 

「なあ外人さん。あんた良い奴だな。俺は桐島(きりしま) 蠡豢(らかん)って言うんだ。そっちは?って日本語大丈夫だよな?さっき日本語で話してたし」

「あぁ、俺はローア・シャトーブリアンって言うんだ。あんたも……凄いな」

 

痴漢の男もさっきからピクピクと痙攣しているから死んではいないんだろう。なんて思っていると駅につき、駅員が入ってきた。

 

「お、来た来た」

 

誰かが次の駅に連絡してくれたのだろうか?そう思いつつ蠡豢と名乗った大男は犯人を引っ張っていくと、

 

『あぁ!』

「ん?お!八重に紅葉じゃねぇか!」

 

また知り合いか?そう思いつつローアは八重達に問うと、

 

「あ!もしかしてお前が新しいやつか!まさかこんなところで会うとは思わなかったぜ」

 

と、蠡豢がアッハッハと笑うと、駅員に何故か蠡豢の方が捕まり、

 

「あれ?」

「悪いんだけど君には少し話を聞かせてもらうよ。大男が電車内で暴れてるって言う通報が来てるからね」

「……」

 

何でじゃあああああ!そう蠡豢の叫び声が辺りに響く。

 

因みにその後八重達の説明もあって、痴漢の犯人は捕まったものの、犯人は病院送りになってしまい、結局やり過ぎという事で警察にも厄介になってしまい、最終的に撫子に迎えに来て貰う羽目になるのだが、それはまぁ余談である。




新サクラ大戦面白いですね。ゲーム実況やってる友人の動画横目に私は取り合えず一周終わらせました。私は最初のヒロインは普通にさくらでしたね。二週目は推しの初穂かな。


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犬猿?

「全く。貴方達と来たらやってくれたわね」

『すみません……』

 

警察から無事解放され、ローア達は大帝国劇場に撫子につれられて帰ってきた足でそのまま支配人室に引っ張られ、説教を受けていた。

 

「まぁ、今回は状況だけなら誉めてあげたいんだけどね。でも蠡豢。貴方は馬鹿力なんだから少し加減とか覚えなさい」

「はぃ……」

 

ショボン、と2m越えの大きな体を蠡豢は小さくさせていた。そこに、

 

「ちょっと撫子さん!蠡豢さんがヤクザと大立ち回りをして全身に銃弾を喰らって病院にいったって本当ですの!?宜しければ神崎重工の力で世界的な名医でも……ってあら?」

『……』

 

血相を変えて飛び込んできたのはアツバだ。皆がびっくり(まなこ)で見つめ、アツバは蠡豢を目視して3秒ほど沈黙したのちに立ち姿を直し、

 

「あ、あら元気そうですわね。蠡豢さん」

「んーまぁヤクザと喧嘩なんてしてねぇからな」

 

すると蠡豢の言葉にキッとアツバは睨み返す。

 

「は、はぁ!?人が心配して差し上げたんですからまずはありがとう心配かけたな、とかが先なんじゃありませんの!?」

「あぁ?そいつはどうも。だけどなお嬢様。普通そこまでの事態があったらテレビでニュースになるしもっと大帝国劇場が慌ただしくなってるっつうの!どこでそんなコートームケーな話聞いたんだよ」

「噂になってましたのよ!と言うか貴方は荒唐無稽もちゃんと言えませんの!?私より年上の癖に!」

「年上は関係ないだろ!?別に言えれば問題ないんだよ!」

 

そうしてぎゃいぎゃい喧嘩し出す二人を、八重はため息を吐き、紅葉はケラケラ見て笑う。そしてローアは、

 

「あれっていつもなの?」

「えぇ、あの二人すーぐ気がつくと喧嘩するんですよ」

 

ほほぅ……そうローアは言いながら二人を見ると、

 

「嫌よ嫌よも好きのうちーって奴だね」

『全然違(う)(いますわ)!』

 

蠡豢とアツバはギロッとローアを見ると、ギャーギャー言いながら猛抗議……した次の瞬間、

 

「貴方達!いい加減にしなさぁあああああああい!」

 

撫子の怒声が帝劇に響いたのは……まぁ仕方ないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁあああ!」

「はぁ!」

 

コォーン!と帝劇の中に、綺麗な音が木霊する。

 

「いってぇええ!」

「はい、ローアさんこれで5戦中0勝5敗ですね」

 

ローアは八重に木刀で打ち据えられt額を擦り、八重自身は笑っている。

 

「ちぇ~。もうちょっと行けると思ったんだけどなぁ」

 

そう言いながらローアは、木刀を二本それぞれの手に持つ二刀流の構え。するとそこに、

 

「お?修行中か?」

「あ、蠡豢さん。えぇ、今ローアさんに……」

「隙ありいいいいいいいい!」

 

 

蠡豢が顔をだし、八重が対応して隙を見せたところにローアが襲いかかった。だが、

 

「はぁ!」

 

ローアの方を見ずに木刀横に振って脇腹を叩く。因みにこういった行為は八重が16歳と言う若さで、北辰一刀流免許皆伝の腕前を持つほどの天才剣士だからこそ、ローアに怪我をさせず、更に怪我をさせられることもなく行えるので、一般人は止めておいた方がいい。

 

「うぐぅうううう……」

「お前不意打ちまでしてあっさりカウンター喰らった挙げ句蹲ってるとかカッコつかねぇなあおい。騎士道精神はねぇのかよ」

「騎士道精神はイギリス。俺はフランス人だから違うよ蠡豢さん……」

 

だが紳士の国ではあるだろ?と蠡豢は笑ってローアの手を引っ張って立たせる。

 

「しかしなんでお前らこんなことしてたんだ?」

「撫子さんに乗り手も鍛えた方がいいって言われたから……」

 

そう言うことか、とローアの返事に蠡豢は頷く。光武は乗り手の力が反映される。つまり乗り手が強ければ光武もその分強くなるのだ。まぁ勿論運転の技量も関わってくるが、腕っぷしが強いに越したことはない。

 

「でも素人が二刀流はキツくねぇか?」

「私もそういったんですけどローアさんが聞かなくて」

 

蠡豢に反論したのは八重。八重もそれに関しては言っていたものの、青龍との時にガムシャラになった際にやった二刀流が手に馴染んだのもあるのだが、

 

「だって1本より2本のほうが強そうじゃん!」

『……』

 

ドーン!とローアは胸を張って言い、蠡豢と八重はため息をつく。正直二刀流はロマン剣術の要素が強いのを、二人は分かっているのだが、ローアが楽しそうな顔をしているので余り強く言えない。なので、

 

「分かったローア。少し触るぞ」

「え?ごめん蠡豢さん。俺そういう趣味は……」

 

は?と蠡豢がジト目になる間にローアは安全圏に、

 

「アホかちげぇよ!そういう意味じゃねぇ!」

「そうなの?」

そうだよ!と言いながら蠡豢はローアの体を触ると、

 

「お前細いな……まず二刀流したいなら全体的に鍛えた方がいい。特に足腰はな必須だ。あと左を多めに鍛えろ。左右で筋肉量が違う。これだと二刀流やったときにバランスが悪くなる」

「さ、触るだけで分かるの?」

「一応これでも琉球空手桐島流の継承者だぜ?あと俺、スポーツインストラクターとかそっちの道も良いなって思っててさ、大学もそう言うの行きたいんだよ」

 

意外と既に将来の道は決めている蠡豢に、ローアは思わず感心してしまう。いやまぁ18歳の高校3年。決めていても可笑しくはないのだが、それでも関心してしまった。

 

そんな和やかな時間が流れていた時、

 

『っ!』

 

ビー!ビー!っと警報が鳴る。3人は互いに顔を見合わせてから走りだし、帝劇内に隠して設置してあるダストシュートみたいな所に3人はそれぞれ飛び込むと、滑り台のように滑りながら、自動で服を脱がされ戦闘服に変わる。

 

そしてそのまま外に出されると、そこは帝劇の地下にある作戦司令室だ。

 

「皆集まったわね」

 

既にそこには撫子や風組の4姉妹 。そして舞やレミィにアツバと紅葉がいた。

 

「襲撃ですか?」

「はい!場所は東京スカイタワー。ですが前回の襲撃とは違い、今回は青龍と名乗った幹部の姿はなく、魔操機兵のみです」

 

ローアの問いに4姉妹のうち小春が機械を見ながら答え、

 

「それでは皆にはすぐにでも東京スカイタワーに向かってもらい、魔操機兵の撃破をお願いするわ」

「よっしゃ!久々に暴れてやるぜ!」

 

撫子が指示を出す中、蠡豢は燃えていたものの、

 

「あ、蠡豢はんの光武はまだ修理終わっとらんで」

「なにぃ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程ね。蠡豢さんの光武は前の戦いで破損してたんだ」

「厳密には修理は終わっとるんよ。でも前に破損したのは、蠡豢はんの動きに光武が着いていけなくなったからなんや。光武は乗り手の力が反映される。通常のチューニングでは蠡豢はんの人間離れした反応速度や動きに光武が遅れてしまうんよ。そうなると段々エンジン系統に負担がかかって……ってなってまう。せやから今蠡豢はんが使っても大丈夫なように改良してる最中なんよ」

 

風来丸にて運ばれる中、ローアと紅葉は光武についている通信機でそんな話をしていた。 すると通信機に撫子からの通信が入り、

 

「さぁ二人とも、雑談はそこまでよ。到着しだいすぐに出てもらうわ。ローア君武器はどう?」

 

ローアは撫子の通信を聞き、光武を操縦して、左右の腰に取り付けられた刀に触れる。

 

「はい。大丈夫です」

「光武にも使われとるウルトメウス鋼製の太刀二本っちゅう注文やったけどほんまに二刀流でいくんか?ローアはん」

 

ダイジョブダイジョブ。とローアは笑い、風来丸が止まる。目的地に到着したようだ。

 

「さぁ皆!行くわよ!」

『おぉ!』

 

そして舞の号令を合図に、皆は光武を走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん……」

 

東京スカイタワーの天辺に立つ、虎の面をつけた大柄な男が地面を見下ろしていた。その視線の先には、巨大なツボが設置され、周りには人々が倒れていた。

 

「虚弱・軟弱・貧弱……どいつもこいつも弱すぎる。ん?」

「そこまでよ!」

 

すると突如ツボが撃ち抜かれ破壊。そして、

 

『帝国華撃団!参上!』

 

それぞれの武器を構えながら、ローア達は魔操機兵の前に降り立つ。

 

「まずは一般人の保護を優先。それと同時に魔操機兵の撃破。ローアと八重とアツバは前に!援護は私がするわ。紅葉はまだ攻撃はダメ。保護に専念して!」

『了解!』

 

舞が素早く指示を出し、それぞれが一般人を保護し始める。そこに魔操機兵が襲いかかるが、

 

「はぃ!」

 

アツバは折り畳まれた薙刀を取り出し、変形させると薙刀で魔操機兵を倒す。

 

「あぁもう!これじゃ保護も間々なりませんわ!」

「俺に任せろ!」

 

そう言うと、ローアはテレポートしてどんどん一般人を安全圏に引っ張っていく。

 

「こういう時も便利ですね!」

八重も魔操機兵を斬りながらそう言い、

 

「取り敢えずこんなもんかな」

「そうね」

 

とローアは全員避難させ、舞は魔操機兵を撃ち抜きながら頷く。だが、

 

『きゃあ!』

「うぉ!」

 

上空から銃弾が降り注ぎ、全員なんとか回避。

 

《気を付けて!新型の魔操機兵よ!上空からマシンガンを撃つタイプのようね!》

「ならそろそろうちの出番やな!」

 

撫子からの通信を受け、紅葉は腕や両肩に取り付けられた砲身を上空に向けると、

 

「全弾発射!」

 

バシュバシュ音を立て、砲身からミサイルが飛んでいき、上空を飛んでいた新型の魔操機兵が爆発と共に破壊されていく。

 

「どうや!」

 

上空の敵を一掃し、紅葉はフン!と鼻を鳴らした。

 

「取り敢えずこれで良いかしら……」

 

舞は周りを見回しながら、そう言って一息……だが次の瞬間。

 

「ふははははははははは!流石に少し場慣れしたようだな。帝国華撃団!」

『っ!』

 

その場に響いた声に、皆は警戒態勢を取ると、

 

「人間どもの余りの貧弱さに嘆いていたが、少しは楽しめそうだ」

 

虎の面をつけた男の登場に、ローアは眉を寄せ、

 

「その格好……もしかして青龍の仲間か?」

「おぉ!俺の名は白虎。黒華会四天王の一員にして四天王随一の喧嘩好きよ!」

 

そう言うが早いか、白虎は虚空から魔操機兵を出すとそれに乗り込み、此方に突っ込んできた。

 

龍を模した青龍のとは違い、全体的に大きく、全身が鋭利な棘等がついている白虎の魔操機兵は、舞に突っ込む。

 

「くっ!」

 

舞は咄嗟に避け、銃を撃つがなんと白虎はそれを素手で弾いた。そこにレミィが入り、ランスで突く。

 

「おっと!」

 

それを白虎は掴んで止め、レミィをそのまま振り回してハンマー投げの要領で東京スカイタワーに叩きつけた。

 

「ぐっ!」

「レミィ!」

「行きますわよ!」

 

今度は八重とアツバが飛び出し、白虎を攻撃するが、2人の攻撃をスルリと避け、カウンターを叩き込む。

 

「この!」

「ん?」

 

全員が離れたところに、紅葉がミサイルを撃ち込む。だが白虎はミサイルを避けながらその一つをキャッチし、

 

「おらぁ!」

「嘘やろ!?」

 

そのまま投げ返して逆に紅葉のほうが爆発。

 

「さぁて、おい!お前か?青龍をぶっとばしたって言うやつはよ」

「あ、あぁ!」

 

ローアは刀を抜き、白虎に突撃。

 

「おもしれぇ!来な!」

「おぉ!」

 

ローアは白虎に飛び込む……と見せ掛けてテレポート。一瞬で白虎の背後に飛ぶと、不意打ちで一発!っと思ったのだが、

 

「甘い!」

「がはっ!」

 

白虎はそのまま後ろにいたローアを蹴り飛ばし撃墜。

 

「なんだなんだ!ちったぁ骨があるかと思ったがこの程度かよ!」

 

白虎はそう言って大きくため息を吐き、

 

「まぁいいや、ツボ壊されちまうしここまでだな」

 

白虎はそう言って空間を歪ませると、その中に入っていき、

 

「お前ら、もっと強くなってくれねぇと俺が楽しめねぇんだ。頼むぜ?」

 

それだけ言って、白虎は静かに消えていくのだった。



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