モモンガさんの童貞脱出大作戦 (田島)
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モモンガさんの童貞脱出大作戦
「悪いが俺とロバーは二人部屋に移らせてもらうぜ」
突然のブレインの宣告に、既に人化を解いて嫉妬マスクの姿に戻ったモモンガは首を捻った。
「えっ何で?」
モモンガは素直に疑問を口にしただけなのだが、ブレインとロバーデイクは、うわっマジかよこいつ本当に気付いてないのか、みたいなドン引きした顔をしてみせた。一体自分は何に気付いていないというのだろう、それがモモンガにはさっぱり分からなかった。何も心当たりがない。
「何? 何で二人で別の部屋に行くの? ……まさか、俺の事嫌いになっちゃった? 寝ないからいびきとか歯軋りとかもしないしそういうんじゃないよね……」
「あのな……気付いてないだろうなとは思ったが、本当に全然気付いてないんだな。俺達二人は命が惜しいから別の部屋で寝る」
「えっ? 何、俺達何か狙われてるの? じゃあ防御魔法ちゃんと部屋にかけるから」
必死にモモンガは訴えるがその返答にブレインは盛大な顰めっ面をして頭を抱えた。
「……くそっ、何でこういう説明は俺担当なんだ? 当人同士でちゃんとしろよな……お前は全然気付いてなかったみたいだが、クレマンティーヌは最初から俺の事邪魔だと思ってたぞ、ロバーも例外じゃない、邪魔だと思われてた。お前途中からクレマンティーヌの部屋を分けようとしてたみたいだが、三人部屋とか四人部屋ってのはクレマンティーヌにしてみたら最大限の譲歩だったんだぞ」
「気付いてたなら気を利かせればいいのにねー」
「今の見てて分かんねえか、こいつに説明すんのが面倒だろうがよ、お前が自分で言え。そこまで俺が責任持てるか」
クレマンティーヌが譲歩? 何を譲歩してたんだ? それもモモンガにはさっぱり分からない。どうしてクレマンティーヌがブレインとロバーデイクを邪魔だと思わなければならないのだろう。
「モモンガさんは大勢の方がお好きだろうと思って今まで言わなかったんですけど、私は宿はモモンガさんと二人っきりがいいです」
「えっ何で?」
「私モモンガさんの事を男性として好きなので。人になれるようになったなら、子供も作れますよね? 私モモンガさんの赤ちゃん欲しいです」
は? え? 何?
子供? 赤ちゃん? えっ? 何? 何で?
満面の笑顔を湛えたクレマンティーヌの告白を聞いたモモンガの頭の中は真っ白だった。強烈な動揺が次々に襲い掛かってきて沈静化が追い付かない。何も答えられないでいる内に、これ以上はないという程苦い顔をしたブレインとロバーデイクが荷物を纏め始めた。
「えっ、ちょっと、待ってブレイン、ロバー行くな、助けてお願い」
「これ以上聞いてられるか。今まで待たせたんだ、ちゃんと責任取ってやれ。行くぞロバー」
「すみませんモモンガさん、これ以上聞いていられないというのは全くもって同感なので。悪く思わないで下さい」
「ちょっ、まっ、まって……まっ……」
モモンガの必死の訴えも虚しくブレインとロバーデイクはそそくさと部屋を出ていった。パタリと音を立ててドアが閉まり、後にはモモンガとクレマンティーヌが残される。
どうしろっていうんだよ!
叫び出したくなるのを必死にモモンガは堪えた。彼女いない歴イコール年齢の(既に
「ご迷惑でしょうか……?」
「いや、あのなクレマンティーヌ、まずは落ち着こう、落ち着こうな……迷惑じゃないよ? だけどこういう事には順序や段階ってものがあるだろう? 何でいきなり子作りなんだ?」
少しばかり表情を曇らせて尋ねてきたクレマンティーヌにオタオタ慌てながら言葉を選んでモモンガは答えた。
「いきなり子作りでは何か問題があるでしょうか?」
「問題があるっていうか! そうじゃないんだ……いきなりは無理だ、俺にはハードルが高すぎる……」
「大丈夫です、私に任せて頂ければ上手くやってみせますので」
「そういう事じゃないよクレマンティーヌ……こういうのは、お互いの気持ちが大事だろう? 俺はまだ心の準備が出来てないし、そもそもこのアンデッドの体じゃそういう感情はよく分からないんだ……俺は、好きかどうかもちゃんと分からないのに無責任にそんな事したくないよ」
「私には、そういう感情を抱いて頂けるだけの魅力が足りないのでしょうか……」
しゅんとなって俯いたクレマンティーヌを前に、今度こそ本格的にモモンガは慌ててしまう。
「違う! 違うから! お前は十分魅力的だよ! めちゃくちゃ可愛いしスタイルいいし! サイコパスだって事を除けばほんと最高だと思うよ! でもだからこそ言うけど、お前は自分を大事にしなさすぎる! もっと自分が女の子だって事を大事にしないと駄目だよ!」
「大事にしてますよ、だからそこらの有象無象にはさせません。モモンガさんだから、したいんです」
言いながらクレマンティーヌはモモンガとの距離を詰めてきて、両手を伸ばしてモモンガの顔から嫉妬マスクを外し背伸びをして、髑髏の顔の歯列にそっと口付けをした。唇を僅かに開き潤んだ目で見上げてくるクレマンティーヌの表情は例えアンデッドだろうが理解できる程非常に淫靡で、モモンガの動揺が頂点に達してまた沈静化が追い付かなくなる。
「私はこちらのお姿でもいいですけど、こちらのお姿だとそういった欲求がないんですよね?」
「いやあの……えっ、ちょっ、まっ……いやその、いや、あっ、だっ、ちょちょっ……だ、だからっ、物理的に無理だから! しようにもアレがないから!」
「指でもいいですよ?」
「先が尖ってて危ない……じゃなくて! 駄目だよ! そっ、そんなの愛がないよ!」
「私は、愛していただけないですか……?」
嫉妬マスクを片手に持ったクレマンティーヌは頚椎に腕を回して縋り付いてきて柔らかい唇などないただの歯列に幾度も口付けを落とす。上気した頬は仄かに染まり、唇の隙間から短い間隔で吐息が漏れ出している。
信じ難い事だがクレマンティーヌは骨に欲情しているのだ。クレマンティーヌだしそういう特殊性癖か? と一瞬考えるが人間の姿になって子作りをしてほしいと言っていた事を考えれば多分違うのだろう。どうすればいいのかなどさっぱり分からず硬直したままモモンガの思考までもが固まってしまう。何せ欲情した女性を前にした事など生まれて初めての経験だ、頭は真っ白だし思考も混乱しきって回らないし一杯一杯という言葉がまさに相応しい状況にモモンガは陥っていた。無理、こんなの無理。誰かに助けを求めたいが薄情な二人の仲間はモモンガを見捨てて既に部屋を去ってしまった。あいつら絶対許さねぇ、その決意だけがモモンガの混乱した思考の中でただ一つクリアだった。
「……クレマンティーヌ」
「何ですか?」
「その……俺、骨だよ?」
「分かってます」
「いや、普通恋愛対象にはならないよね? 俺の感覚おかしくないよね?」
「スケルトン系のアンデッドかどうかなんて些細な問題です。私は、モモンガさんが好きなので」
至極真剣な瞳でクレマンティーヌに見上げられ、モモンガはたじろいだ。クレマンティーヌのこの気持ちは本当に本物で心から真剣なのだという事が嫌でも分かってしまう。それならばモモンガの方だって真剣に考えなくては失礼というものだろう。でもついさっきまで仲間としか思っていなかったのにいきなり真剣に恋愛対象として考えろと言われても正直困ってしまう、急展開過ぎる。
クレマンティーヌは美人だし可愛いしスタイルだっていい、頑張り屋さんでフォロー上手で、サイコパスな点を除けば文句の付けようがない女の子だ。もしモモンガがアンデッドになっていなかったら好きに……なっていただろうか、相手はサイコパスだしその点はちょっと疑問が残る。だがしかしモモンガにはこんなに必死に自分を求めてくるクレマンティーヌを突き放す事など出来はしない。全然好きじゃないかと言われたらそんな事はないだろう。好ましく思っているしとても大事だ、何に替えても守るべきものだとも考えている。ただそれが恋とか愛とかそういう呼び名のものなのかがモモンガには分からないし、そんなあやふやな気持ちのままで行為に及んでいいものかという躊躇は強い。
はっきりしている事は一つ。今のクレマンティーヌは、アンデッドでもはっきりと分かるほどえっちだ。
こんな可愛い
いじらしい、とモモンガは思った。モモンガに対してはクレマンティーヌは元々いじらしいけれども、こんなにも強い愛情を抱いてくれていたなんて全然知らなかった。応えてやらなきゃ可哀想、なんて失礼だろうけれども、応えてやりたい、と思った。与えてくれただけのものを何かの形で返せるならば返したい、存在全てを肯定するようなこんなに深い愛情を返せるのかどうか分からないけれども、少しだけでも返したいと思った。
「一つ……確認したいんだけど」
「何ですか?」
「人間になると俺はレベル一……そこらの村人と同じ弱さになる。もし子供が出来ても多分レベル一のめちゃくちゃ弱い俺の子供になると思うんだけどクレマンティーヌはそれでもいいの?」
「強さなんて関係ありません、私が欲しいのはモモンガさんの子供だけなので」
「……こういう事するの、初めてだからきっと上手くできないよ?」
「モモンガさんは横になっていて頂ければ私が全部やります」
「それは駄目だよ、そんなの愛がないだろ?」
「そこ拘りますね?」
「拘るよ、一番大事だから」
答えながらモモンガはアイテムボックスを開き時計を取り出した。人化を解除してから二時間……経っている。人間になれば恐らく精神作用無効の助けは借りられない、どれだけ動揺しても混乱しても今以上に助けのない状態になる。精神作用無効にすっかり慣れ切って頼り切っていたモモンガには過酷すぎる試練だがやると決めたのだ、やるしかないだろう。腹を括って時計をアイテムボックスに戻す。
「クレマンティーヌ、俺は、お前の事を女性として愛してるかって聞かれても正直すぐには答えは出せないよ。それでもいいの?」
「真面目ですねモモンガさんは。私としては身体を愛して頂けるだけで十分満足です」
「そういう事を言うから自分を大事にしてないって思うんだぞ……」
「身体から始まる愛っていうのもあるんですよ? それを期待してるんです」
にっこり笑ってそう言うとクレマンティーヌはモモンガから離れ、身に着けているものを脱ぎ捨て始めた。そうだよね、童貞が鎧脱がせるとかちょっとレベル高いもんね、と現実逃避気味に考えてしまう。今はまだアンデッドだから綺麗な身体だなという感想で済んでいるが、人間になったら大変な事になるだろうなという予感をひしひしと感じこれから先に待ち受ける試練にモモンガは心密かに恐怖していた。
彼女いない歴イコール年齢の童貞にいきなりハードルが高すぎるって言ってるだろ、と叫びたい気持ちを必死に抑える。
ええい、ままよ、なるようになれだ。半ば自棄っぱちになりながら人化の腕輪の力を起動する。
とりあえず指輪は多分邪魔だろう、イルアン・グライベルを外してからアイテムボックスを開き小物入れを取り出して指輪を外してしまっておく。後はローブを脱げばモモンガも素っ裸だ。恥ずかしい話なのだが人間になると素肌ローブ、フルチンである。骨が下着を着けているのはシュールすぎるし食事の間だけだから許してほしい。
それにしてもさっきから心臓の鼓動の音がうるさい程耳の中に響いていて動揺が半端ではない。血が頭に上っているのか顔も矢鱈と熱い。視線を部屋の隅に彷徨わせながらモモンガはローブを脱ぐべきか迷っていた。こういう時は先に脱ぐべきなのかまだ脱がなくていいのかまずそこから分からない。
「モモンガさんも脱いでください」
声を掛けられたので思わずモモンガはクレマンティーヌの方へと目線をやってしまった。そこには一糸纏わぬ美しい全裸の女体があった。
激しい動揺と興奮が全然沈静化されず限界などないかのようにどんどん高まっていく、当たり前だ、今はモモンガはアンデッドではないのだ。思わず後退ってしまうが目線をクレマンティーヌの身体から離せない、まじまじと見つめてしまう。そして実戦使用しないまま消えた筈だった息子は今は元気モリモリである。ごくりと唾を飲んで、それからゆっくりとモモンガは頷いた。喉が張り付いて塞がってしまっているような感覚があるし、それ以前に頭が回らなくて言葉など発せられそうにない。鼓動の音は耳の中でやかましく響き渡っているし、頭なんて湯気が上がりそうな程血が上っている。
引き締まった身体はそれでも女性的な美しい曲線で構成されていて、思っていたよりも大きい胸は動きにつれて柔らかそうに揺れている。こんなに華奢なのにあんなに強いんだな、と思うと不思議な心地がする。覚悟を決めてゆっくりとローブを脱ぐ。裸を見ただけでめちゃくちゃ元気になった息子とあまりに貧弱な身体を見られるのは恥ずかしいがクレマンティーヌだってきっと裸でいるのは恥ずかしいだろう……多分……恥ずかしい、かな? いやどうだろう、クレマンティーヌだしな? 考え続けると思考の迷路に嵌まり込んでしまいそうだったのでモモンガは考える事を放棄した。
ローブを脱いで床に落とすが恥ずかしさの余り閉じた目を開けられない。気が付くとモモンガはクレマンティーヌの腕に腰を引き寄せられて逆らうべくもなくベッドの上に倒れ込んでいた。レベル推定四十以上の腕力恐るべしである。
「くっ、くくくっ……くくっ、くれっ……ちょっ、あの、あっ、これはその、待って……」
背中からベッドに倒れ込んだクレマンティーヌを押し倒すような形でモモンガはクレマンティーヌを見下ろしていた。待ちません、と悪戯っぽい笑み混じりに言ってクレマンティーヌは腕をモモンガの頭にかけ引き寄せる。じきに唇と唇が合わさり、得も言われぬ柔らかい感触と熱い吐息の温度が伝わってきて甘い香りがモモンガの鼻をくすぐる。幾度か啄むように口付けを重ねられ、やがて緩く開いたクレマンティーヌの唇の間から誘い込むように舌先が出てきてモモンガの唇をなぞるように掠めていく。
これ、もしかしてディープキスってやつ? エロゲでしか知らないけど! た、多分舌を絡め合ってこう……!
エロゲがソースの偏った性知識は多分大して役に立たないだろうなというのはモモンガがいくら童貞でも分かる。しかし今は頼れるものがそれしかないのだ。とりあえずモモンガも舌を伸ばしクレマンティーヌの舌と擦り合わせるように絡め動かす。これが腰にくる気持ち良さだった。触れ合った舌から痺れに似た甘ったるい感覚が生まれて、他人の唾液なんて舐めたくない筈なのにいくらでも飲みたくなってしまう。甘いような気さえしてしまうから不思議だ。夢中でお互いの口内を貪り合い唾液も吐息も混ぜ合って一つにしてしまう。
ああ、おっぱい触りたい。今ものすごくおっぱい触りたい。
いきなりおっぱいに触っていいものかという躊躇もモモンガの中にはあったのだが、強い欲求には逆らえなかった。半身になっていた下半身をベッドに乗り上げ、体勢が安定したところで徐ろに右手を動かし乳房に触れる。まずは軽く触れるが、乳房の感触は初めて感じるものだった。水の入った革袋のような柔らかさだが、張りと弾力がある。乱暴にならないように気を付けて優しく揉んでみると、何とも心地良い感触が掌に返ってくる。軽くしっとりとした肌は肌理が細かく滑らかで吸い付いてくるし、掌の動きに合わせて自在に形を変える乳房から返ってくる柔らかさと弾力が心地よくてたまらない。おっぱいにハマってしまいそうである。
呼吸が浅く荒くて頭がくらくらする、こんな感覚もいつぶりだろう。アンデッドの身体では触覚も間に布を一枚挟んだように鈍かったが今ははっきりと感触や温度を感じる。感じるのがまさかクレマンティーヌの体温になろうとはモモンガは考えてもいなかったのだが結果オーライという事にしておこう。何がオーライなのかは全然分からないしオーライではないような気もするが。赤ちゃんが欲しいなんて言われてもモモンガは父親になる心の準備どころかえっちな事をする心の準備さえ出来ていなかったというのに、結果としてこうなっているのは流されやすいということなのだろうか。忸怩たるものを感じないでもないが全身に感じる心地よさの中にその思いも紛れてしまう。
「あっ……んんっ、は、あっ……」
息が続かなくなり口を離して大きく息を吸う。とろんと蕩けた顔をしたクレマンティーヌは甘えたような高い声を開いたままの口から小さく漏らしている。めちゃくちゃかわいい、どきりと胸が跳ねてしまう。もっとこの声が聞きたい、胸の奥底がきつく締め付けられるような奇妙な感覚にモモンガは支配されてしまって、誘い寄せられるように白い首筋に吸い付いた。どこをどうすればいいのかなどまるで分からないが、久しく失っていた本能に急き立てられるままに舌を這わせ甘く食む。柔らかく滑らかな白い肌は誘い込んで離さないようないい香りがして、貪るのに夢中にさせられてしまう。
「あっ、ああっ、い、いいっ、あぁっ、もっ、モモンガさぁ……っ」
鼻にかかった高い声に呼ばれて何か正体が分からないもので胸が一杯に満たされてしまう。クレマンティーヌの腰はもどかしそうにうねり動いて、まるで早く迎え入れたいと誘っているようだった。鎖骨から肋骨の薄く浮いた胸を辿り降りて一際柔らかな乳房を食んで、ぷっくりと膨らんだ乳首に吸い付いた。ちゅうちゅうと吸い上げ舌先で転がし甘噛みすると、クレマンティーヌの背中がびくりと震えた。もう片方の乳房も揉みしだきながら指先で乳首を弄ぶ。おっぱい最高だな、その思いが一層強くなる。ペロロンチーノさんとフラットフットさん、おっぱいは適度にある方がいいですよ、感触と反応が最高です。懐かしい仲間をこんな事で思い出したくなかったが教えてあげたい気持ちで一杯だった。正直いつまででも吸って揉んでいられそうな気がする。
「あんっ、あ、あぁっ、だめっ、だっ、あぁっ、や、ああっ、あっ、もっ、モモンガさぁっ……おっぱい、ばっかり……っ」
「クレマンティーヌのおっぱい最高、ハマりそう」
「んんっ、それは、うれしいですけどっ……、ん、ほかの、とこも……、触ってほしいです……」
少しばかり拗ねた様子で唇を軽く尖らせて訴えてくる表情があまりにも胸に刺さりすぎて、おっぱいに夢中でようやく忘れかけていた胸の高鳴りがまたぞろ戻ってきた。
他のとこってどこをどうすればいいの……?
うるさい位の強い鼓動が頭の中に響いて戻ってきた強い緊張と狼狽が頭を真っ白にしてしまう。確かエロゲでは……いやエロゲはあまり参考にならない! 特殊プレイ多かったし! 必死に考えるが何が正解なのかまるで分からなかった。目線の先にはクレマンティーヌの裸。気持ちが昂ぶって興奮してしまって全然落ち着けない。分からないのでとりあえずおっぱいを揉む事にした。
「あっ、んんっ、だからっ……モモンガさんっ……」
「ごめん、今頑張って考えてる。こうすると少し落ち着くんだ」
「何か、考えるような事、あります……?」
「次どうしたらいいのか分からん……どういう順序でいくのが正解なんだ……?」
至極真剣にモモンガは悩んでいたのだが、それを聞いたクレマンティーヌはおかしそうにふふっと笑いを漏らした。
「順序なんて、そんなの、ないですよ。頭の天辺から爪先まで、どこだっていいです、モモンガさんの、好きなところで」
「……じゃあおっぱい」
「他のところは、好きになってくれないんですか?」
「そんな事ない……どこもその……何ていうか……あれだ、綺麗だから」
そう、綺麗なのだ。正視すると心臓がバクバク跳ねてしまうのでまともに見られない位に。だからモモンガは見慣れたクレマンティーヌの顔を見ていた。顔にしてもとろんと蕩けたしどけない表情だから劣情を掻き立てられるのだが身体よりはマシである。
「そうですね……じゃあ、とりあえず、順番に下に降りていったらいいんじゃないですか? 次はお腹です」
「お腹って、触られて気持ちいいの?」
素直な疑問をモモンガは口にした。お腹に性感帯というイメージはあまりない。
「さあ、分からないです。いつもすっ飛ばされる場所なので」
「そんな適当な……」
「でも、モモンガさんには触ってもらいたいなって思います。身体中全部、触ってほしいです」
そっと微笑んで告げたクレマンティーヌの表情に、また胸の奥底がきつく締め付けられる思いがする。胸を震わせるこの感情の名前をモモンガは知らない。決して嫌な感情ではないけれども正体が分からない。緊張も動悸も収まった訳ではないけれども、胸を締め付けるものに突き動かされるように身体を沈め薄く腹筋の浮き出た引き締まった腹に唇を這わせる。舌先でなぞると、びくりと腹筋に力がかかったのが分かった。反応があったのに気を良くして滑らかな肌に吸い付き舐めしゃぶる。
「あっ、あぁっ、おなかっ、おなかも、きもちいい……っ、はっ、あ、あぁっ、ん、んんっ、うんん……っ」
びくびくと腹筋が張り詰めて震える。腰がうねって内腿が擦り合わされるのを見てモモンガはつい好奇心から内股の間に手を差し込んでしまったのだが、そこはじっとりと汗で湿り熱をもっていた。
「ああっ! あ……っ、は……」
「あっ、ご、ごめん……嫌だった?」
「ちがい、ます……あぁっ…………もっと、さわってください……」
上がった高い声にモモンガはびっくりしてつい謝ったが、クレマンティーヌは物欲しそうに腰を揺すり内腿をモモンガの手に擦り付けてきた。エロすぎではないだろうか、彼女いない歴イコール年齢の童貞には刺激が強すぎるのだが勘弁してくれないだろうか、思ってみたところで誰が助けてくれるわけでもない。内腿を撫でなぞるとクレマンティーヌの顎が上がり腰が揺れる。引き込まれるようにモモンガの手は鼠径部に当たっていた。
そこは、ぐっしょりというよりはヌルンヌルンだった。えっここってこんなヌルヌルになるの? 濡れるってこんなヌルヌルなの? と誰かに聞きたかったが答えてくれる人などいる筈もない。孤独な戦いである。
「おねがいです……そこ、さわってください……すごく、ジンジンして、熱くて……がまん、できません……」
潤んだ瞳のクレマンティーヌに哀願されモモンガは進退窮まってしまう。
そこって、あれだよな? いわゆるあれだよな? せ、性器……だよな? を、触れ、と?
何度も同じ事を思ってしまうが心の準備の出来ていない童貞にはハードルが高すぎる。でも(何でこんなになってるのかが分からないのだが)こんなにしておいてここで辞めるなんて事をするなんてどんな鬼畜だとも思うし、そんな酷い男にはなりたくないのでやるしかない。それにしてもクレマンティーヌはやる気満々すぎではないだろうか、モモンガはこんなにヌルンヌルンになるようなスーパーテクニックの持ち主ではないので要因はクレマンティーヌ側にある気がする。
クレマンティーヌが脚を開いたので脚の間に移動し恐る恐るモモンガは手を伸ばした。ぬるりとした粘液の奥には複雑な構造をした襞が何枚も折り重なっていて、ここは一体何がどうなってるんだとモモンガは女体の不可思議さが奥深いものである事を痛感させられていた。襞をなぞる度にクレマンティーヌの体が跳ねるように震え甘やかな高い声が上がる。
「あっ、あっ、あっ、ああっ、いっ、いいよぉっ、んんっ、もっ、モモンガさんのゆびっ、あぁっ、あ、きもちいいよぉっ……!」
くちゅくちゅと卑猥な水音が立ち、頭がぼうっとしてくるような妙に惹き付けられる独特の匂いが立ち込める。匂いの元を辿ると脚の付け根に行き着いて、吸い寄せられるようにモモンガは頭を近付け陰部に口を付け愛液を啜った。汚いとか嫌だとかは不思議と全然思わず、ただそうしたくてたまらくなった。本能の赴くまま小陰唇を舌先を使って舐めなぞり、夢中でしゃぶる。じゅぶじゅぶといやらしい音が響いて耳の中で響き匂いと相俟って興奮を掻き立ててくる。
モモンガから見て上の方、腹側に他の襞とは違うぷくりと膨らんだ豆のような箇所があり、これが噂のクリトリス……と思いながら舌先でぐるりと舐め回すとクレマンティーヌが高い声を上げてびくびくと身体を震わせた。敏感だから優しくだよな、と数少ない役立ちそうな知識を頭の中で浮かべながら舌の腹を使いクリトリスを刺激していく。
「やっ、あっ、あっ、ももんがさぁっ! ももんがさ……っ、アタシのオマンコっ……なめてるよぉっ! だめっ、あっ、あぁっ、ああっ、イっちゃうっ……オマンコイっちゃうよぉ……っ!」
クレマンティーヌエロすぎでは? と思い劣情を掻き立てられつつ緩やかに責め立てるようにクリトリスを舐め回し続ける。いざという時に分からなかったら困るのでちゃんと場所を把握しておこうと思い並行して指でそれっぽい所を探ると、襞に埋もれた奥まった所でそれっぽい箇所を探り当てたので指先をそっと挿し入れてみる。ちゃんと指が入ったので多分正解だ。粘液の助けもあり指一本なら楽に入るが中はきつく狭く、確かにそんなに大きい訳ではないけどここに本当に俺のチンポとかちゃんと挿れられるの? と疑問に思わずにはいられなかった。でもここから赤ちゃんが生まれてくるならかなり大きなものが通れるわけで、きっと伸縮性があるのだろうと思う事にする。挿れてはみたもののどこが感じる箇所なのかなど分かる筈もないので指先の当たる箇所を適当に押し込んでみる。
「だめっ、もっ、イクっ、あっ、あっ、イクっ、オマンコイっちゃう……っ、イク……――っ!」
びくりと大きく背中が跳ね、その後ぐったりとクレマンティーヌは脱力した。指は一本しか挿れていないというのにきゅうっと締め付けられる。これ本当に挿れて大丈夫? と再度モモンガは不安に思ってしまった。
頭を上げ様子を窺ってみると、クレマンティーヌは陶然としてぐったりと身体を横たえ荒い息を整えていた。もう満足したならここで終わりでいいのでは、とモモンガは日和ってしまいそうになるが、多分それは許可してもらえないだろうなという確信と言っていい予感もある。それにしたいかしたくないかといえばしたい。勿論初めてなので上手くできるかという不安とか色々あるのだが、ぼんやりと首を巡らせてこちらを見たクレマンティーヌとかエロすぎるのでかなりムラムラきている。とりあえず落ち着こうと思っておっぱいを揉む事にした。
「モモンガさん」
「待って」
「まだ何も言ってませんよ」
「落ち着きたいから待って、初めてだから緊張してるんだから」
「早く、モモンガさんのおちんちん、欲しいです」
だから! そういうえっちなのはいけないと思います!
叫びだしたくなるのをモモンガは必死に抑えた。こんな可愛い子がこんなえっちな格好でそんなえっちな事を言うのは良くない。いやとても良いんだけど良くない。落ち着けなくなってしまう。
「……どうしてもするの?」
「私に魅力を感じなくてモモンガさんが勃たないとかなら仕方ないですけどそうでなければしたいです」
「いやそれはないんだけどね……でもほらさっきので満足……したよね?」
「モモンガさんのおちんちんが欲しくてアソコがキュンキュンしてます」
「だから! そういうえっちな事を言わない!」
「……そういう事を言う女は、嫌いですか?」
不安げにクレマンティーヌの瞳が揺れるのを見て、またモモンガの胸の奥底がきゅうっと締め付けられる。この感覚が何なのか答えがモモンガには分かってしまった気がするけれども本当にそうなのかはまだ分からない、急展開すぎる。安心させたくて身体を乗り出し唇に二三度口付けを落とすと、クレマンティーヌの瞳は和らいだ。
「クレマンティーヌの事が嫌いなわけないじゃないか」
「仲間としか思えないと言われてもそれでも、私は……!」
「もしそうならこんな事してないよ。本当は答えなんてとっくに出てたんだ。俺は臆病だから、関係が変わるのが怖いだけなんだ」
「モモンガさん……?」
「お前の事好きになっちゃったみたいなんだけど、惚れっぽい男でも嫌わないでいてくれる?」
そう尋ねると、クレマンティーヌは腕を伸ばしてモモンガの背中に回し縋り付いてきた。
「私が好きなのは、モモンガさんだけです。これから先もそれは変わらないです」
「分からないじゃないか、こんな骨じゃなくてもっと頼りになってかっこいい男がお前の事好きだって言うかもよ?」
「そんなゴミ虫の事は知らないです、私にはモモンガさんしかいないので」
そう告げて嬉しげに微笑んだクレマンティーヌに覚える感情、これは多分、愛おしさというものなのだろう。それをやっとモモンガは悟った。これが男女の愛なのか仲間意識の延長なのかはまだ分からないけれども、それでも胸を満たす暖かさは本物だ。それならこれを、正真正銘の愛に育てていってもいいのではないか、そんな風にも思えた。
感じる愛おしさのままに深く口付けをして、片手で根本を支えながら先程探り当てた辺りに先端を押し当てる。何回か試行錯誤した後でようやく入り口を探り当て、ゆっくりと押し入っていく。思ったとおりきついが、招き入れるように内壁がうねって誘い込まれていく。
「あああぁ……っ、あ……――っ!」
目を閉じたクレマンティーヌは感極まったような嬌声を上げた。きつい筈なのに根本まですんなりと入ってしまった事にモモンガは女体の神秘をまた感じたが、それよりも今の状況はかなりやばい。
気持ち良すぎて、こんなのすぐ出てしまう。
愛液で潤った蜜壺の中は熱く、きゅうきゅうと蠕動して男根を締め上げてくる。動かなくてもそれだけで達してしまいそうだった。三こすり半もせずにイっちゃう情けない結果には終わりたくない、その意地だけでただひたすらモモンガは発射を耐えていた。
「痛くない? 大丈夫?」
「すごくっ……硬くて……きもちいい、です……っ」
言いながらクレマンティーヌは両足をモモンガの背中に回しがっちりとホールドの体勢をとり自分から腰を揺らす。
えっ、まさかこれ、噂のだいしゅきホールド……? どこまでえっちなのクレマンティーヌ……。
こんな事をされてしまったらエロさに戦慄しつつも箍が外れてしまう。優しくしようと考えてゆっくり動くつもりだったのにそんな事もすっかり忘れてモモンガの腰は本能が求めるままに激しく動いて、理性などどこかに吹き飛んでしまうような心地を覚える強い快楽を齎す。きつく締め付けてくる内壁に全体を擦られ襞に雁首が引っ掛かり、抜き挿しの度に背筋へ快感が走り抜けていく。人間になったので疲労する為この激しい運動は運動不足でモヤシの鈴木悟の身体にはかなりきついのだが、それでも止めようとは思えなかったし止まらなかった。
「あっ、あんっ、やっ、あっ、あぁっ、硬いのっ……ゴリゴリってして……っ! ああぁっ、いいっ、いいっ、ももんがさんのっ、おちんちん、きもちいいよぉ……っ!」
クレマンティーヌの喘ぎ声がエロい。感じまくって何かに耐えてでもいるような表情も堪らないしおっぱいもぷるぷる揺れて大変にえっちだ。もう限界、まだ大して動いていないがモモンガは初めてなのだ、許してほしい。
「だめだ、も……イきそ……っ、きもち、よすぎて……」
「やだぁっ……あっ、は、ももんがさんの、おちんちんっ、もっと……っ、いっぱい、ほしい……っ!」
その発言は逆効果だぞクレマンティーヌ、とツッコみたくなるのをモモンガは必死に抑えた。でもこう言われてしまったらもう少し頑張るしかない。男はつらいよという言葉が身に沁みる。
こういう時は素数を数えるといいんだっけ? だが素数をそれ程知らないのでいきなり初手でモモンガは詰んだ。それに気を逸らすなんて何だか勿体ない。今一つに繋がって快感を共有して全身でクレマンティーヌを感じているいるこの瞬間を取り零してしまうのは嫌だった。そうなると残るは根性で頑張るしかないという結論に至る。根性も限界があるだろうが限界まで頑張る他ない。
全ての意識はクレマンティーヌを感じる事に集中していて、他は何もない。汗が止めどなく流れて肌を滴っていきむっとした熱気が辺りを包んでいる。誰か一人の事をこんなに必死に感じようとした事なんて今までなかった。誰でもいいという訳じゃない、何を引き換えにしたって、世界を敵に回したって守りたいと思う人だ。この気持ちの正体は何なのかなんて意味を考える前に、本当の事だけを積み上げていけばいつか真実に辿り着けるんじゃないか、そんな取り留めのない思考が快感を受け止めるのに必死な頭を過ぎる。
今はっきり言える事は、モモンガは自分を受け止めてくれてこんなにも悦楽に身を震わせているクレマンティーヌを愛おしいと感じているという事だ。愛おしいの意味なんて、もしかしたらそんなに重要ではないのかもしれない。意味合いや関係などいくらでも変化していくものなのだから。
「ももんがさ……っ、ももんがさぁっ……すきっ、すきです、あっ、あぁっ、すきっ」
「俺も、好きだ、お前の事、好きだよ」
気恥ずかしいほど真っ直ぐな告白を交わして口付ける。繋がっている部分も触れ合っている部分もどこも暖かくて気持ちが良い。気持ち良いと好きと愛しているはそれぞれ別の言葉で別の意味なのだろうけれども、今は区別が付かない、全てが一つに混ざり合っていた。
「もう、限界……イっていい?」
「あっ、はっ、きて、きてくださっ……あぁっ、あっ、なかに、いっぱいっ……だして……っ」
言う事が一々エロすぎるんだよ! ツッコみたい気持ちをモモンガは必死に抑え、クレマンティーヌの腰骨を押さえて奥まで腰を突き入れた。堪えに堪えたものが弾け解放され、頭の中が真っ白に飛ぶような快感が襲ってくる。半年以上ぶりではないだろうか、本当に久し振りの射精の快感は初体験という事もあり今まで生きてきた中で一番と言ってよかった。自分の種を相手の中に注ぎ入れているというのがこんなにも充足感を齎すというのは今までのリアルでの人生では知りようがなかったしこれから先も知ることもできなかったろう。
鈴木悟として生きていた頃も合わせたモモンガの体感としては半年以上ぶりなのだが、人化の腕輪で人間になっただけの身体にはその点は特に影響せず、射精の量は鈴木悟の並の量程度だった。何でこの身体鈴木悟仕様なんだろうなと非常に疑問なのだが平凡な村人並の弱さ(というか村人より明らかに弱い)ということであれば最適と言えなくもないし人間の姿になれるだけでも有り難いのでこれ以上文句は言えないだろう。
柔らかくなった男根を引き抜き、クレマンティーヌの横に横たわる。腕を回すと、クレマンティーヌは頭を上げて腕枕の体勢になってくれた。憧れのシチュエーション達成である。達成感に密かにモモンガは打ち震えた。
「こんなに、優しくしてもらったの、初めてです……」
「……えっ? 普通じゃない? というか一杯一杯過ぎてちょっと余裕なかったよ俺……今までどういうセックスしてたのお前……」
またクレマンティーヌの爆弾発言である。どういう環境だったんだ漆黒聖典と思わざるを得ない。
「ヘマやって敵に捕まって
「そんなの駄目だよ……やっぱりお前自分を大事にしなきゃ駄目だよ……」
「今はモモンガさんが私の事大事にしてくれますから」
やはり嬉しそうにクレマンティーヌは微笑んで、甘えて頬を腕に擦り付けてきた。別に普通なのにな、とモモンガは思ったがクレマンティーヌにとってはモモンガの普通も今までは普通ではなかったのだ。一杯優しくしてやりたい、一杯愛を与えてやりたい。そんな気恥ずかしくなってしまうような事を考えてしまう。
時は〈
翌朝、卒業おめでとうと冷やかしてきたブレインの鳩尾にモモンガの正拳突きが決まりブレインが半死半生の目に合ったのは余談である。
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