赤点0記念「膝枕」 (OA.studio公式)
しおりを挟む

赤点0記念「膝枕」

どうも、キリングです。
今回は赤点0記念ということで初心に戻って短編です。

日本軍人浪漫?
知らない子ですね。

取り敢えず、どうぞ。


今、自分はあぐらを掻いていた。

 

頭の上に広がる橙色のぼかしが掛かった空を見上げていると、ふと、膝元に柔らかい重みが乗っかった。

 

そっと見てみると、どうやら綺麗な女のようだった。

 

女はじっと此方を見ていたんで、その黒髪を梳いてやったら、まるで他人様の猫みたいに気持ちよさそうに目を閉じた。

 

どうして俺の膝に頭を乗せているのか分からなかったもんで、上からその顔を覗き込むかのように女を見た。

 

「お前さん、どうして俺なんか膝枕されてるんです。」

 

女は俺が声を出したのに驚いたようで、一回パチリと瞬きをした。

 

でも、すぐに絹のようなサラサラの声で返してきた。

 

「もう膝枕をさせてくれる親がいないから。」

 

当たり前のようにそう返す女に、チクリと胸が痛んだ。

 

「でも、なんで俺なんだ?」

 

女は一旦俺から目を離して器用に周りを見渡すと、また此方を見た。

 

「だって、ここにはあなたの他に生きている人はいないでしょう。」

 

その声で自分の周りに生者がいないのに気付いた。

 

何時の間にか、辺りは老若男女の骸で溢れていた。

 

「そうだったか、もう皆して死んだんだな。」

 

今一度女を見ると、まだ成人して半ばぐらいのようだったと見えた。

 

「どうしてお前はここにいるんだ?」

 

「だって、私の家がここの近くにあったから。」

 

俺はよくそれで生き残れたと思った。

 

今でも俺の鼻腔にはキツい煙の匂いがする。

 

喉なんかは熱さで焼けそうだ。

 

「お前は熱さが嫌じゃないのか?」

 

女は俺の左腕を見つめていた。

 

女は俺の声で顔を俺に向けた。

 

俺の左腕は黒く焼け焦げていた。

 

「煙は嫌だけど、もう熱さには慣れちゃったな。」

 

「そうか。」

 

女の服は少し煤けていたが、目立った傷は無かった。

 

運の良い女だと思った。

 

女は腕を上げて俺の頬を割れ物のように触れた。

 

どうやら俺の頬も傷を負っていたようで、触られた所が少し痛んだ。

 

知らない内にこんなにも傷付くものかと思った。

 

女の腕は少し震えていた。

 

もう何をする力も無いのかも知れない。

 

「眠ってもいい?」

 

女の声はとても弱かった。

 

俺は少し迷ったが、周りの骸を見るとその迷いも心から消えていくようだった。

 

「あぁ、いいぞ。」

 

女は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

その目に映る俺の姿が歪んでいった。

 

女は目を閉じると、ツーっと、涙が頬を垂れていった。

 

俺はまた空を見上げた。

 

何時までも赤い空だった。

 

黒い鷹が海に向かって帰っていった。

 

俺は女の髪に手を乗せた。

 

今はどうしようもなく眠かった。

 

誰かを膝枕しながら寝るのも悪くない。

 

そう思った。




台風キツいね。
皆さん頑張って!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。