空の境界 『TheLost・of・Newworld』 (レイノート)
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どーも作者のレイノートですぅ。
今回は主人公の設定情報について書きました。
どうでもいいおまけ設定もありますが、気にせずお願いします。


神野芸夢(カミノゲイム)

 

 

性別:男性 職業:自宅警備員兼何でも屋

 

 

身長:178cm 体重:60kg

 

 

年齢:18歳 血液型:AB型

 

 

異能力:『力の掌握』

 

 

イメージCV:細谷佳正

 

 

 

 

『人物』

 

 

 

あらゆる世界を観測し、その世界の物語を記録する事を目的している世界の無意識集合体。簡単に言うならば、あらゆる世界の人々の色んなことを知りたいという知識欲によって構成されたモノ。それ故に解析、観察することに特化している。

 

空の境界の世界において、あらゆる可能性から切り離され、世界の意思とは関係ない自立行動を取っている。(自身が神野芸夢という普通の人間だとおもっている。)

 

この世界のあらゆる物事に大して興味もなく、毎日を怠惰に過ごす。喧嘩を売ってきた不良から金を捲揚げるのが日課となっている。

友人の黒桐幹也が巻き込まれた連続殺人事件に関わったことより怠惰な日常から、異能者、魔術師達との戦いに身を投じていく。起源は「観測」。

 

 

 

『容姿』

 

黒髪のショートウルフヘアに、中性的な顔立ちが特徴。男性から見れば女性に、女性から見れば男性に見える程の整った顔。

普段着は灰色のパーカーに、紺色のジーンズ。

 

 

 

『異能力』

 

 

 

『力の掌握』

 

空の境界の世界の芸夢の異能力。あらゆる力(電力、風力、重力等)を掌握し、それらを自由に操る。その力の公式を解析し、理論を理解すれば、他者の能力を乗っ取ることも可能。

魔術もまた例外ではなく、これらも術式の発動条件さえ分かれば、掌握することが可能。

 

 

『人間関係』

 

両儀式:犬猿の仲。黒桐幹也が事件に巻き込まれた際は互いに協力をする。口では嫌いと言いつつも、彼女の在り方は好き。

 

 

黒桐幹也:中学校からの友人。自身を一人の人間として受け入れてくれた人。彼を傷つけた者に対しては、容赦なく半殺しにする。

また、給料が貰えない際は金の世話をしている。

 

黒桐鮮花:幹也の紹介で知り合う。幹也の事に対し、ことある事に突っかかってくるが、受け流している。

嫌いという訳ではなく、近所の野良猫を可愛がる感じで接している。

 

蒼崎橙子:ギブアンドテイクな関係。幹也の付き添いで知り合う。

金をよく借りに来るので面倒くさがっている。

 

浅上藤乃:後に公開。

 

白純里緒:『ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・だ。』

 

 

 

 

 

『おまけ設定』

 

 

 

・黒桐幹也の影響で、たまにハーゲンダッツのチョコ味を食べる。

 

 

 

・黒桐幹也とは中学生からの友人であり、自身の異能を初めて苦にせず受けいれたことから、普段は素っ気ない態度をとるが幹也に対しては甘い態度を取る。

 

 

 

・両儀式とは犬猿の仲であり、顔を合わせただけで殺し合いに発展しそうになる(その度幹也に止められる。)。幹也が何かしらの事件に巻き込まれると、仲の悪さが嘘のようになくなり、互いに協力し合う。

 

 

 




ふじのんって可愛くないですか?(唐突)
黒髪ロングで、CV能登麻美子さん、誰かに尽くせるタイプですよ。まあ、FGOじゃ当てられませんでしたが…(涙)
次話をなるべく早くかけるようがんばります。ご意見、ご感想のほうをお願いします。


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痛覚残留編
プロローグ「浮世の始まり(前)」


どーも作者のレイノートです。
空の境界は書き始めたばかりなので、知識が乏しい場合があるのでご了承ください。
それでも大丈夫な方はゆっくりと読んでいってください。


この世は退屈だ。

何をするにしても、面白味があると思う事ができない。

かけっこで一番をとる事は?、当たり前。

テストで100点をとる事は?、当たり前。

誰かと喧嘩した時は?、勝つことも当たり前。

 

特に努力をしている訳でもない。少しだけ話を聞いて、考えれは理解出来ることばかりだと俺は思う。

俺にとって、それら全てが当たり前だった。

逆に皆が、何故出来ないのか不思議で仕方がなかった。

1+1の答えを表すぐらいに簡単な事じゃないか。

少し頭の造りが違うだけで周りは天才だの優秀だの好き勝手に言いやがる。別に自分は天才なんかじゃないし、お前らのレベルが圧倒的にまで低いだけだ。

あぁ…だからつまんねぇ。この世界はよ…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

1994年6月25日。

ちょうど梅雨が過ぎたくらいだった。雨が降り、ジメジメした空気が張り付く時期であるが、珍しく今日は清々しい程の快晴だった。窓から入り込んでくる陽の光が眩しいぐらいに。

 

学生達が学業に謹む中、俺…神野芸夢(カミノゲイム)はソファの上で横になりながら、缶コーヒーを飲んでいる。

一昨年4月の始業式以来、学力テストの日を除けば、中学校に全くと言っていいほど行っていない。学校に行くのが面倒臭いという事もあるが、それ以前に中学校レベルの教育で学ぶ事など何ひとつも無かった。

小学校高学年の時に、既に高校レベルまでの学力は備わっていたし、今なら東大の模試すら片手間で解けるレベル。

教師達も最初こそ、学校に来るよう散々催促してきたが、今じゃこの通り音信不通。いや半ば放置されているだけか。

それもそのはず、学力テスト以外の時は完全不登校かつ毎回百点を取っていれば、教師たちも黙らざるおえない。

全く優秀過ぎるのも、またつまらないなァ。

 

 

「家でダラダラするのも飽きたなァ。」

 

 

俺は手に持っている缶コーヒーを一気に飲み干し、目の前の四本足で立つ机の上に空き缶を放置する。

テレビのリモコンを手に取り、テレビの電源を入れる。

暇なので、適当にチャンネルを回していると先日起きた連続殺人のニュースがやっていた。

 

 

『結局犯人は何の目的で殺人を続けているのでしょうか?』

『今まで被害にあったのは全員男性なんですよ。その男性達になんらかの恨みを持つ者の犯行だと私は思います。』

 

 

「(はぁ…馬鹿かこの司会者共は。こんなにヒントが出てンのに、答えがわかんねぇのかよ…。)」

 

 

俺はあまりにも簡単にすぎる答えが分からない司会者達に対し、呆れてため息をつく。それに加え、

頭の中じゃ、既に犯人の目的はだいだい分かっていた。

まず、殺されたのが全員二十歳前半の若い男性。先程恨みを持つ者の犯行だと言うのは、ここまでなら誰でも思いつくだろう。俺が言いたいのは、その二歩先。

 

俺が独自(警察のデータベースにハッキング)に調べた物もあるが、殺された全員が同じ暴力団の下部組織のメンバーだ。しかも、全員が婦女暴行の前科がある。

これらのヒントから、婦女暴行の被害にあった家族か恋人、または友達だと考えられる。

先の司会者やニュースを見て気になるヤツはこれぐらいやってから語ってくれとつくづく呆れる

まあ、既に誰が犯人かなんて調べはついているが、生憎と俺はめんどくせぇことはしねェ主義なんでなァ。

 

 

喉が渇いたなぁ。

手を伸ばし、缶コーヒーを取ろうと段ボール箱をあさるが───無い。アレだけ買い溜めしておいた缶コーヒーが無い。

 

 

「チッ、買いに行くしかねぇか。」

 

 

そう一人呟き、テレビの電源を消し俺はソファから起き上がる。

そのまま、玄関の方へと歩いていった。

 

 

「\ピンポーン/」

 

 

インターホンの音が部屋に響く。

 

 

「チッ…」

 

 

タイミングの悪さに思わず舌打ちをする。少しイライラしながらドアノブに手をかけ、玄関口を勢い良く開ける。

 

 

「ぐわぁ!?」(ガン!!

 

 

「あン?」

 

 

扉を開けたが、目の前には誰もいない。誰かのイタズラだろうか。

 

 

「いてて…」

 

 

扉の後ろから呻き声が聞こえる。声の発生源を覗き込む。

 

 

「そんな所で何やってンだよォ、コクトーくゥンよ。」

 

 

そこに居たのは黒い学ランに身を包み、鼻を手で抑えている眼鏡の少年。名を黒桐幹也(こくとうみきや)。普通、平凡という概念を纏ったようなヤツだ。

 

 

「勢い良く開いた扉に鼻をぶつけて、尻餅ついたんだよ…あいてて…。」

 

 

(あぁ…やっぱりそうか。さっきなんかに当たった感触あったんもンなァ…。)

 

 

「それで…一体なンの用かなァ、こちとらイライラしてンだよ。」

 

 

まあ、黒桐のヤツがなんの目的で来たかなんて、いちいち聞かずとも分かるんだけどな。学生ならこの時期にあるイベントだ。

 

 

「あはは…テスト範囲でちょっとわからない問題があってね。少し教えて貰えないかな?」

 

 

そう、テストだ。

そう言えばもうすぐ期末だったな。勉強なんてほとんどやらなくても覚えているもんだから忘れていた。

 

 

「チッ、コーヒー買いに行ったらでいいか?」

 

 

「別に大丈夫だよ。こっちが勝手に押しかけて来たようなもんだし。なんなら僕も付き合うよ。」

 

 

「そうかよ、勝手にしろ。」

 

 

玄関口の鍵を閉めて、黒桐共に階段を降りる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

歩くこと十分。芸夢と黒桐の二人は業務用スーパーへと足を運び、近くにあった買い物カゴを手に取る。

いらっしゃいませー!と元気の良さが前面的に現れてる定員の声を聞きながら、ドリンクコーナーへと向かっていく。

相も変わらず品揃えが豊富であり、数多のコーヒーが並べられていた。

 

買い物籠にガツガツと大量の缶コーヒーを入れていく。せっかくなので、いつも飲んでいる種類とは別の缶コーヒーも大量にだ。

みるみるうちに買い物カゴは缶コーヒーで溢れかえった。

 

 

「相変わらず凄い量買うなぁ…本当に大丈夫なの?」

 

 

「うっせぇ。別にいいだろうが。」

 

 

芸夢自身も何時からコーヒーを飲み始めたかはよく覚えていない。気づかぬうちに缶コーヒーを毎日何十本と飲むのが癖になっていた。はたから見たらカフェイン中毒で死なないか心配されるぐらいの量は飲むイカれたヤツ。

 

 

「前も思ったけど神野って案外力持ちなの?」

 

 

「俺がそんな力持ちに見えンのかよ。前にも説明した通りだよ。」

 

 

見る者が見れば、異常な光景であろう。缶コーヒー溢れかえったカゴを中学生の少年が軽々と持ち上げているのだ。

少し鍛えているからと言って、細身の肉体である芸夢にとって、力などとは無縁である。

では、何故、こんなに軽々しく重い物を持てるのか。

理由は簡単。彼の異能の力によるものだ。

 

 

力の掌握。

この世界で起きうる現象には必ず何らかの力が働く。電力、風力、重力など、頭で理解した力を掌握し自在に操ることができる。

芸夢は重力を操作しているため、軽々しく荷物が持てるのだ。

 

 

「いや、信じ難いって言うか、なんて言うか。あんな超人的なことをされると脳が追いつかないっていうか。まあ、未だに受け入れられてないんだ。」

 

 

「あァ…そうかい。寧ろ…信じろって言うのが無理だ。」

 

 

そのままレジへ缶コーヒーを持っていくと、店員が少し引き気味な顔をしつつ、品物をレジへ通していく。

 

 

「8400円になります。」

 

「……。」

 

 

芸夢は無言のまま財布から一万円札を取りだし、レジに置く。

買った本数はちょうど60本。加えてハーゲンダッツのチョコレート味を15個。

特大サイズの買い物袋を3つに分け、それぞれの袋に店員二人がかりで詰め込んでいく。

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

店員の声と同時に袋を持ち、外へ足を進める。他の客も芸夢達の荷物を見て驚く者はおらず、最早見慣れた光景として気にも止める人はいなかった。

 

 

「(つゥーかなんで俺、ハーゲンダッツまで一緒に買ってンだ?)」

 

 

いつの間に買い物カゴに放り込まれていたハーゲンダッツ。恐らく黒桐が入れたであろうもの。特に嫌いという訳でもないし、だからといって好きでもない。

あれば食べる程度のものなので、特に気にしてなどいなかった。

これから黒桐にテストの内容をどう教えるか、思案しながら芸夢は帰路へと着いた。

 

 

 

 

 




ハーゲンダッツは一日一つ。
皆さんもアイスは一日一つにしないとお腹を壊すのでやめましょう。ちなみに私が好きなのはクッキーバニラです。(※いやチョコじゃねぇのかよ。)
ご意見、ご感想をお願いします。


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プロローグ「浮世の始まり(後)」

亀更新につき、遅れて申し訳ないです。
作品を読んで、お気に入りやしおりを挟んでくれた皆様、約二週間近く間が空きましたことをお詫び申し上げます。
今回も駄作ではありますが、読んでみてください。


時刻は午後七時を過ぎた頃だった。

黒桐に勉強を教えることに夢中になっていたら、既に太陽は沈み、月夜に照らされた夜の世界へと変わっていた。

 

 

「今日は本当にありがとう。じゃあ、またテストの日に会おうよ。」

 

 

「あァ、またな。」

 

 

黒桐は急いで自宅へと走り去っていった。

芸夢も闇夜に消える黒桐の背中を見送り、部屋へと戻る。

体をソファーへと倒す。

久々の労働で疲れたのか、既に意識が落ちそうになっていた。

 

 

「(あぁ…眠みィ…)」

 

 

とうとう眠気がピークに達し、瞼が徐々に下がっていく。

夜飯もまだだし、シャワーも浴びていない。しかし、芸夢の体はソファの心地良さのあまり動けない。人間誰しもこの状況下では逆らえない。それは芸夢とて例外ではない。

既に意識は飛び、夢の世界へと誘われた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

少年はバケモノだった。

齢五才を越えた子ばかりの子が、その力を自覚をした時には…人々は彼に畏怖した。

自身を産んだ両親ですら、助けを求めた少年の手を振り払い、厄介者として遠ざけた。

 

 

どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?。

 

 

理解が出来なかった。

他人とは少し違うだけ。たった、それだけなのに…。

この力を使えば、誰かを笑顔に出来ると思った。悲しい顔を見ずに済むと思った。

だか少年が願った僅かな希望も、現実という鋭き刃は呆気なくそれら(理想)を斬り裂いた。

 

ある時友達に石をぶつけられた。疫病神、化け物、到底一人の少年が受け入れられるはずのない苦痛と暴言を容赦無く浴びせられる。

大人達も誰一人とてその行為を止めるように言う者はいなかった。

その目は異端者を蔑むような目だった。少年を救おうと思う者は存在しなかった。

 

 

少年の両親は、厄介者を追い払うが如く、手切れ金として僅かな金を渡し、母方の祖母に家へと送り出された。祖母も両親とは疎遠になっていたため、都合が良かったのだろう。

別段、両親と離れることに未練はない。それは向こうも同じだろう。

どこにいっても厄介払いされるだけだろう。そう、思いながら祖母の家へと足を進めた。

 

辺りを見回しても、目に映るのは一面に拡がった田んぼか遠くに見える小高い山々。時折鳶の鳴き声が響くくらい開放的な場所。

本当に何も無いところで、退屈そうだ。都会っ子では娯楽の少なさに数日で駄々を捏ねるだろう。

これと言って娯楽など必要としないので、俺にとっては関係ないがな。

 

歩く事数分。目的地である祖母の家へと着いた。写真と地図で場所があっているかを確認する。

写真にある通り、この辺りでは珍しい洋館風の建物。最近売り出されたゾンビの出てくるゲームにあった館と同じくらいあるんじゃないかと思うぐらいに広い。

所々に木の根が絡みつき、コンクリート造りの壁が侵食されている。

ただのボロ屋…いやこの場合は幽霊屋敷って言われても可笑しくないレベルか。

まあ、さっき道を聞いた農夫の話によれば、祖母は大層有名な地主らしい。

聖母のような優しさを持ち、大変慈悲深い。悪い噂などなく、近辺の人達からの評判も良い。

全くと言っていいほど非の打ち所がない。

 

 

「(まあ、そんな聖人君子みたいな人は大抵裏がありそうだけどな。)」

 

 

そんな思考を一旦やめ、インターンホンを鳴らす。

 

 

「はーい。」

 

 

元気の良い女性の声が聞こえた。

ドタバタと足音が近づいて来る。

ガチャと扉が開く。出てきたのはメイド服に身を包んだ若い女性。身長は170センチ前後で女性の平均として高身長に当たるだろう。清楚な雰囲気を晒しだし、穏やかそうに見える。

何より印象に残ったのはその見た目だ。銀色に輝き、風によって靡いた髪がとても幻想的だった。顔も人形と錯覚しても可笑しくないぐらいに美しい。

透き通った碧色の目は万人を惹き込む程だ。

下手なモデルでは負けるぐらいに完成されている美貌の結晶ではないか?。

 

 

「神野芸夢様でお間違いないでしょうか?」

 

 

「あ、はい。神野芸夢です。」

 

 

メイドの声で、意識が戻る。

魔性とも取れるその見た目に惹き込まれてた。メイドが声を掛けなければ、ずっと固まったままであろう。

 

 

「ご紹介が遅れて申し訳ございません。私奥様のメイドをしております、土御門美玲(つちみかどみれい)と申します。」

 

 

「こちらこそ、今日からよろしくお願いします。」

 

 

互いにお辞儀する。

メイドを雇っているとは聞いていなかったが、問題は無いだろう。これ程広い屋敷だ、メイドの一人や二人がいてもおかしくはない。

 

 

「それでは奥様のお部屋に御案内します。私の後に続いて来てください。」

 

 

「お願いします。」

 

 

土御門さんの後に着いて、屋敷の中へ入る。

中は外観とは違い、とても綺麗だった。フローリングの広い廊下から誰が書いたわからない絵の額縁、窓ガラスなど場所の隅々まで掃除が行き届いており、土御門さんの仕事の良さが感じとれる。

 

靴を下駄箱へと入れ、スリッパへと履き替える。

案内を受けて奥の部屋へと進んでいく。

これから会う祖母がどんな人間かを想像してみる。百聞は一見にしかずとも言うし、噂だけではわからない。

そんな期待と不安を胸にだき、思案をしているといつの間にか祖母のいる部屋の前に着いていた。

 

初めて会う祖母。どんな人間かもしれないし、分からない。これから知っていくにしても、多少の不安がある。

両親のように芸夢自身の異能を見たら、バケモノと蔑まれるかもしれない。

そんな不安を心の奥にしまい、ドアノブへと手を掛ける。

 

 

「ガチャ。」

 

 

そこにいたのは物腰柔らかな雰囲気を出している老齢の女性。安楽椅子に座り、窓から日が沈む光景を眺めていた。

 

 

「久しぶりね。芸夢ちゃん。随分とまあ大きくなったわねぇ。おばあちゃんの神野絵札(かみのえふだ)よ。貴方に初めて会った時はまだ小さな時だったから覚えていないでしょうけど、またこうして会えたのは嬉しいわぁ。」

 

 

安楽椅子から立ち上がり、老婆は芸夢の方へと振り向く。

杖をつきながら、ゆっくりと歩く。

足が悪いのだろうか。恐らくは安楽椅子に座っていたのもそのためだろう。

 

 

「ど、どうも。」

 

よそよそしい挨拶をする芸夢。

初めて会う祖母が今眼前にいるのだ。部屋に入る前に比べて、緊張の度合いが高くなったのが直ぐにわかる。

呼吸も荒くなってくる。鼓動が刻む心拍数も多くなる。

 

 

「あらあら~。そんなに緊張しなくてもいいのよ。家族なんだからもっと気軽に接して頂戴♪。」

 

 

甘ったるく、それでいて優しい声。

張り詰めた緊張が馬鹿に思えてしまう程硬直していた身体の張りが消えていた。

芸夢自身も何が起きたかわからなかった。

ただ話しをかけられただけ。何故か祖母の声を聞いていると不思議と気持ちが落ち着いていく。

暗示を掛けられているとか、催眠術とかそういう相手は操る類のものでは無い。

辺り一面に広がったお花畑に身を包まれているような、赤子を抱き上げる聖母の温もりような、そんな優しい世界を感じたのだ。

 

 

「貴方の力のことなら聞いたわ。ずっと辛かったでしょう。大丈夫よ、私は見捨てないわ。ずっとずっとここにいていいのよ。」

 

 

絵札はギュッと小さな芸夢の体を抱きしめた。

嬉しい。ただひたすらに嬉しい。

今日まで生きてきた中で一生得ることの出来ないと思ったモノ。

芸夢の目から雫が落ちる。涙だ。

 

 

「うっ…ぅぅぅぅぅ…」

 

 

涙は止まらない。

今まで心の奥底でせき止められていた感情のダムは、最早止めることなど出来ず決壊した。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!うっ…うっ…んっ…」

 

 

感情が爆発する。

どれだけ大人ぶって感情を隠しても、芸夢はまだ子供だ。子供であるならば、好きなだけ泣いて好きなだけ笑えばいいと絵札は呟き、優しく抱きしめる。

芸夢もまた力強く抱きしめる。

 

感謝。圧倒的感謝。

最早祖母を疑う余地などなかった。

誰よりも優しい人だった。誰よりも愛してくれる人だった。

 

この日、芸夢にとって一生忘れることの無い思い出となった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「またこの夢か…。」

 

 

随分と懐かしい夢を見た。何物にも変えられない一つの大切な(思い出)。五年前の出来事を懐かしむ。

 

 

「(つーか俺はどれくらい寝たンだ?)」

 

 

芸夢はソファから起き上がる。

時計の方へと目線を向ける。

時刻は朝七時を少し過ぎたころ。どうやら黒桐を見送った後に直ぐに寝てしまったようだ。

 

 

(グゥ~)

 

 

可愛らしい音が芸夢の腹から鳴り響いた。

そういえば、昨日の夜から何も食べていない。

なんやかんやで、何も食べず、朝になってしまっているのだ。

 

 

(シャワー浴びてねェが先に飯にするか。)

 

 

芸夢は机の上に置いてある財布と家の鍵をパーカーのポケットにしまい、家を出る。特に何も無い所だが、なんのために鍵を閉める。

 

 

「今日はファミレスでもいいか。」

 

 

一人でポツリと呟き、芸夢は歩き出す。

 

 

「……」

 

高層ビルの屋上。見晴らしの良いこの場所に似合わない全身黒ずくめの正体不明なモノ(アンノウン)。男か女かもわからないその者は自身よりも遠くにいる芸夢を見つめていた。

そんな遠くから見つめる影に芸夢は気がつくことはなかった。

 




止まるんじゃねぇぞ…(CV細谷佳正)
もうすぐとあるとFGOの新規イベがあるので、また少し間が空くかもしれません。
こんな作品ではありますが、お気に入りや評価お願いします!!


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第一話「灰色の少年」

やべぇよやべぇよ…物凄いアンチが来て怖いっす(焦)
とまあ、茶番はさておき、痛覚残留編に入っていきます。
みんな!!マルタ(裁)は持ったな!!行くぞ!!(小説の方をお楽しみください!!)


 

 

1998年7月。深夜の路地裏に怒号と絶叫と悲鳴が響く。

 

 

コンクリート造りのビルとビルに阻まれた、細長い直線的な場所だった。おそらくは両サイドに建っているのはマンションだろう。そこで十人ぐらいの少年らが、一人の少年を囲んでいる。

十人の少年達の手には金属バットや鉄パイプ、更にはバールなどが握られている。人を傷つけるには申し分ない武器だが、それらには汚れや使い込まれた様子はなく、買ったばかりの新品ですよと言わんばかりの印象を受ける。相手を傷つける勇気がない臆病者か、はたまた単なる脅しの道具にしか使っていないのだろうか。

数の差もあり武器もありと有利であるはず十人の少年達の目は獰猛な獣と相対しているかのように目が血走っていた。

それでも取り囲まれている一人の少年は、動じない。

寧ろ、自分を取り囲む十人が視界に入っていないかのように、何かを思案しながら虚空の夜空を見ながら歩いている。コンビニかスーパーに行った帰りなのか、ビニール袋をブラブラと揺らしながら道を往く。中身は大量に入った缶コーヒーとハーゲンダッツらしく、袋から溢れ出そうな程大量に詰め込まれていた。

 

彼は灰色。正義でも悪でも何でもなくただひたすらに中立。己の本能に従い行動する、言わば獣のそれに近い生き方だ。何故だか分からないがどこまでも灰色という色が似合う。それは服装から来るものなのか、それとも彼の人としての在り方のなのか。あるいはその両方かもしれない。

 

 

少年・神野芸夢は退屈していた。最近これといって楽しめると思うものがない。面倒くさがりの性質も災いしてか、自身から興味を抱けるモノを探しに行くことはほとんどなく、気分転換がてらにしか動かない。

スーパーコンピュータ以上のIQを持つ彼にとって、世の中の大抵の事は取るに足らない物事にしか思えないらしい。詰まるところ自信に出来ない事を欲している。

 

 

「(つまんねぇことばかりだなぁ…)」

 

 

つまらない。最早口癖になりつつある言葉。

事実、彼は退屈している。困難という言葉を知らないのだ。

勉学においては国家試験の問題を僅か十分足らずで解ける、スポーツにおいても基本さえ分かれば、後は勝手に応用へと結びつける。その他の分野においても結果は同じ。

あらゆる分野の才能の塊。聞こえはいいが言い換えれば、それらは怠惰に等しい。苦労や敗北もない、失敗もない。そう、挫折を知らないのだ。

毎日が苦悩の日々。新しい事に挑戦することすら無駄と思えてきた。

 

そんなことを考えている内に周りへと視線を向ける芸夢。

 

「ンぁ?」

 

 

いつの間にか芸夢の周りに横たわっている十人の少年達。あたかも今気がついたとばかりの反応を示す。

ある者は手首を抑えて蹲り、ある者は足を抱えて悶え苦しんでいた。

 

 

「(あァ…またか。)」

 

 

この光景を目にする何度目か。一体これで何回目の襲撃だろうか。最初に襲われた時もこうして買物帰りの時。カツアゲ目的なのか、単なる憂さ晴らしのターゲットにされたかは知らない。そもそものところ相手になどしてはいないが。

この様な惨状になったのは間違いなく芸夢の異能によるものだ。

 

 

力の掌握

 

 

文字通り力を掌握することだ。人間の身近な風力や電力、更には重量など様々な力を操る事ができる。向き(ベクトル)大きさ(スカラー)を自在にコントロールも出来る。

先程の惨状を引き起こしたのもこの力の掌握の力の一端。彼は自身を中心に半径1メートル前後の円型の力場を形成している。その力場に触れた外的要因、物体を跳ね返す性質を持っている。文字通り全てを反射をするのだ。

つまり彼らは反射の力に耐え切れず、ボキンと骨が折れたり、筋繊維がブチブチと鈍い音を立て切れていったのだ。十人の少年達の怪我は言わば自爆同然。芸夢に絡んだことが敗因だった。目先の勝利に駆られ軽はずみな行動したことがこの悲劇は起こったのた。

 

適当に遊ぶ金欲しさとストレスを解消したいから、適当に喧嘩を売ろう、などと言う。

数に頼れば勝てる。武器があるから勝てる。

この中で真の意味で勝てると思って挑んだ者は何人いたんだろうか。

答えは言うまでもなく零という無残な結果に終わったわけだ。何度潰しても何度蹴散らしても何度証明してもバカどもの襲撃は終わらない。うじゃうじゃと蛆虫のように湧いて出てくる奴ら。何度も挑んできては完膚なきまでに叩き潰される少年らはマゾヒストではないかと脳裏に浮ぶが、くだらないとその考えを一蹴する。

 

自分を取り囲む喧騒が静まったこと気づき、芸夢は再び歩き始めた。横たわった馬鹿どもと戯れる程の暇はなく、道を急いだ。

 

 


 

 

歩くこと数分。

たどり着いたのは高層の廃墟としか形容しようのないビル。工事現場などで使われる柵や赤いコーンが放置されており、人の気配を感じられないほど寂れた場所。正確に言うならば人が近づけられないような力が働いているのだが。分かる者には分かるが、明らかに他の場所と空気が違う空間と感じられるだろう。

 

特に気にする様子も無くビルの中へと入っていく芸夢。

慣れた足取りで階段を上がる。遮るものが何も無いので自身の足音が響きわたる。

四階のフロアに付き、廊下の奥の方へと足を進める。そして最奥の扉の前へと着く。

 

『伽藍の堂』。

 

 

この廃ビルにおいて唯一まともに使われている一室。人の生活している痕跡があり、とある人物が事務所として使っている場所だ。いや別段まともとも言いづらいか、と脳裏に浮べる芸夢。

ガチャっとドアノブを回し中へとはいる。

 

 

 

「おお、遅かったな。また襲われたのか?」

 

 

芸夢に声をかける女性。赤みがかった黒髪を纏めたショートカットが目立つ美女。十人中十人がモデルと言っても遜色のない程の容姿。

何処の銘柄かわからない煙草を吸い、こちらを見ている。

傍には灰皿からこぼれ落ちそうな吸殻の山が出来ており、彼女がヘビースモーカーである事が見て取れる。

美女と煙草。見る者が見れば、そのミスマッチさに見惚れるだろうが、芸夢はそんなことに興味はなく煙草臭いこの部屋にいたくはなかった。

 

 

「うるせェぞ()()。どうだっていいだろうがァ。」

 

 

蒼崎橙子(あおさきとうこ)。この伽藍の洞の入居者であり所長。建築デザイン事務所兼人形工房とは名ばかりの、よろず請け負い会社を営んでいる。表の看板の通り()()をつくる事がメインではあるが、大抵は橙子の面白いと思ったモノを何でも安請け合いする。

実際、芸夢も橙子の仕事を何度か請け負ったことはあるが、大抵は表沙汰に出来ない()()()()ばかりだ。

この蒼崎橙子という女性は紛うことなき変人だろう。廃ビルを買い取り、あまつさえ事務所まで建てているのだから擁護することもできない。

 

 

「まあ、そう怒るな。大方不良共にでも絡まれたってところだろう?」

 

「ちっ…」

 

 

イラついている原因を見事に当てられ、思わず舌打ちをする芸夢。何処ぞの国家錬金術師なら君のようなカンのいい○○は嫌いだよと言ってそうだ。

近くにある冷蔵庫の扉を開け、冷蔵庫には大量のコーヒーを冷凍庫の中に大量のハーゲンダッツを乱雑に放り込む。手元にハーゲンダッツを二つだけ残して、もう一個を橙子の方へと放り投げる。ついでにおまけで着いてくるスプーンも一緒に。

 

 

「おっ、サンキュー。ってまたこの味か。」

 

 

パシッと、少し勢いに乗ったハーゲンダッツとスプーンを器用に取る橙子。因みに彼女が渡されたのはミント味だった。前回も同じだったので、少しガックリと溜息をつく。

 

 

「嫌なら食うンじゃねェよ。こちとら未だにてめぇに貸した金を返してもらってすらねぇンだぞ。」

 

「すまんすまん。ちょっと面白い掘り出し物があってだな。それに金をつぎ込んでしまってなぁ。」

 

 

芸夢は呆れてものが言えなかった。自身の趣味の為に他人に金を借りてまで買うか普通と、思わずはァと大きな溜め息をついてしまうほどに。

何でこんなヤツに金を貸してしまったんだと少しばかり後悔する。幾らお金に余裕があるとはいえ、この手の金を作れるか怪しいタイプに貸すべきではなかった。

 

 

「(クソッタレが…)」

 

 

多少のイラつきを抑えながら、奥の部屋へと歩く。

 

 

「部屋借りんぞ。」

 

 

「お?もう寝るのか?。」

 

 

奥の部屋は主に倉庫として使われている部屋だ。芸夢が勝手に改造し、寝床として使用している。勿論、ちゃんと自宅はあるが、帰り道が遠いときや帰るのが面倒臭い時には、ここを第二の自宅として扱っている。橙子も金を借りているということもあり、それらを了承している。

 

そのまま部屋に備え付けてあるソファーへと寝転ぶ。そして買ってきたハーゲンダッツの蓋を開ける。

味はチョコ。別段芸夢の好きな味という訳では無いが、何故か毎回この味を買ってきしまう。あの平凡眼鏡(黒桐幹也)のせいだと八つ当たりじみた怒りをぶつける。

スプーンでアイスをすくい上げ、口の中へと放る。

美味しい。チョコレートの甘みとアイスの冷たさが交わり、旨味の二重奏を作り出す。

確かに美味いのだが、芸夢の顔には何処か上の空である。彼がこの様な顔する時は、決まって何かが起きる。

前兆の感知と言うべき未来予知に似た勘。先程までとは空気の流れが変わったことを感じた。この時、芸夢の顔は新しい玩具を見つけた子供のような純粋な笑みを浮かべる。

 

 

「面白ェ。どこのバカが暴れてやがるか知らねェが、暇潰しくらいにはなるか。」

 

 

中途半端に食べたアイスをカップから取り出しそのまま塊のまま口の中へと放る。

近くの窓を開け、勢いのまま飛び降りる。

当然ながら重力が働くこの惑星で、人間が飛べるわけがない。あくまでそれは常人という意味だ。だがこの少年…神野芸夢は規格外である。

 

 

「エヒャヒャヒャヒャー!!」

 

 

突如、芸夢に四つの翼が生える。

正確には小規模の竜巻。風の力を操り、即席の翼を作り上げた。鳥よりも早く、力強く飛ぶ姿はまるで天使のようにも思える。

彼は求める。己を楽しませてくれる何かを求め、夜の街を駆けていく。

 

 

 




イシュタルにハロウィンが奪われた!?
唐突のセイバーウォーズに驚きを隠せませんが、楽しめれば、大丈夫だ、問題ない。
今回は式と絡ませてみましたが、上手くかけていたか心配です。
こんな駄作ではありますが、次話も読んでみてください。


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第二話「歪曲の少女」

やべぇよやべぇよ…セイバーウォーズのミッションが全然終わらなかった。
まあ、強鯖のいない私には無理だったんだよ(諦め)
今回から皆のヒロイン?浅上藤乃ことふじのんが出ます。
上手くかけているか不安ですが、よろしくお願いします


とある地下のBAR。薄暗くベッタリと黒で塗りつぶされた場所。もう何年も使われずにいるのか、部屋全体が埃まみれであった。

使い込まれていたであろうテーブルや背もたれが壊れかけているの椅子が放置されており、現在では不良達の溜まり場として使われていた。

 

そんな場所に五人の少年と一人の少女がいた。

こんな人の目のない所で行われることは大抵ろくでもないことだけだ。今彼等がしている行為はそういうことだろう。快楽だけを求める愚か者が必死に快感を得ようと一糸もまとわぬ少女へと暴行を働いてた。その行為に愛があるわけもなく、少女はただの道具としてか扱われていない。

 

この光景を目の前で見ている少女は動じない。どんなに嫌がっても感覚というものは全身へと伝わる。だがどれだけ少年らが行為を行っても、少女は死人のように静まり、ピクリとも反応していなかった。まるで感覚がないように。

 

 

「(…………)」

 

 

その虚ろな目には何を写しているのか。この状況に絶望し、心を閉ざしたのか。それともこの行為そのものを何とも思っていないのか。

それを分かるのは少女一人だけ。少年らはそんな考えを頭の片隅にも置きはしないだろう。

 

ある時だった。なんの反応を示さない少女に痺れを切らしたのか、不良の1人が金属バットを持ち出してきた。ほかの四人の制止も聞かずに、少女の一糸まとわぬ背中に全力の一撃を叩き込んだ。

 

 

「ドガッ!!」

 

 

「カハァ!!?」

 

 

何か砕けるゴキッという鈍い音が辺りに響く。あまりの光景に不良達も唖然としてしまっていた。

先程までなんの反応も示さなかった少女がもがき苦しんでいたからだ。先程の音は骨か何か砕けた音だろう。

不良達もこの反応には笑みを浮かべていた。彼女の惨状が彼らの加虐心に火がつけた。頭の中では、どうやって少女を痛め付けていくかを考えている。

 

 

「(これが…痛み…久しく感じていなかった…なんでだろう…苦しくて…辛いはずなのに………どうして……どうして…こんなにも…心地がいいの…。)」

 

 

少女はこの状況を喜んでいた。本来であれば人として絶望しても可笑しい程の状況に笑みを浮かべる。

壊れている。この身が感覚を失った日から今日にかけて、ずっと分かっていたことだ。感覚を失ったのは、幼い時の自身が犯した罪の代償だと。ずっとずっと後悔していた。少女も理解していたであろう。己が常人とはかけ離れた異端(バケモノ)でしかない。石をぶつけられ、罵倒を受け、周りに蔑まれもした。だから……(あの人)は私の感覚を…

 

 

ハハッ…ハッハ…アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

 

 

一生分の笑いを使い切るかのように壊れた笑いを続ける少女。

この笑いは歓喜、悲しみ、憤怒の想いが込められたモノだった。良心という器から溢れ出す黒く染まった負の感情。最早止める事など出来ない。トリガーはもう既に引かれてしまったのだから。

殺す。殺す。殺す。

不良の五人に対する殺意が湧き上がる少女。

先程まで虚ろだった眼はそこにはなく、確かな色が宿っていた。血のように濃い深紅。まるで不良達の血みどろの未来を予言するかのように…。

頭の中に浮かび上がる一つの言葉。呪いのように纏わり付くナニカ。

本能の赴くままに視線の先にある一人の不良に眼を向け、頭の中に浮かんだ呪文を唱える。

 

 

『凶れ…』

 

 

グチュリという生々しい音。これが何を指したモノなのか容易に理解できた。

 

 

ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

絶叫が響く。

暗闇の中、赤い液体を撒き散らして、不良がのたうち回った。

少女はそれを確認してから、凌辱の限りを尽くされたボロボロとなった体を壁に手をつけながら立ち上がる。

不良は足をやられたようだった。

左足を力いっぱい絞った雑巾のようにねじ曲がっており、潰された肉の割れ目からは折れたであろう骨が露出していた。

先程まで持っていた金属バットが遠くへ転がっている。恐怖の余りに這いつくばった体を必死に動かして、逃げようとする。

その無様な姿は芋虫のようだった。

少女は逃げようとした不良の左足を踏みつける。

 

 

「ッ!!!!?じょ、冗談だろう…?」

 

 

「冗談?そうですねぇ…」

 

 

最早逃がす気など毛頭になく、少女は再び不良へと眼を向けて、

 

 

「今までの復讐(お礼)です。」

 

 

魔眼を発動した。

グチュリグチュリと鈍い音を立てながら、時計の秒針がゆっくりと進むように、不良の体は徐々にねじ曲がっていく。

 

 

「い、嫌だぁ!!死にたくない!!死にたくない!!」

 

 

どれだけ悲鳴をあげようと助けを求めようとも、彼の死ぬ未来に変わりはない。ねじ曲がる速度が早くなっていく。

 

 

「それじゃあ…サヨナラです。」

 

 

無慈悲な死刑宣告。

彼の声は途切れ、物を言わぬ愉快なオブジェへと変わり果てた。

少女は、自分の頬に温かいものが付着していることに気づいた。

舌を動かして口に含み、唾液と共に咀嚼する。

まずい鉄の味がした。

 

 

「あは」

 

 

思わず笑みがこぼれる。

ボロ雑巾と化した不良にいつまでも時間を割く必要はない。仲間の死を受け入れらず固まっている他の不良達へと体を向ける。

先ほどのようにじわじわと獲物を一人ずつなぶり殺していき、精神的にも肉体的にも追い詰めていくのが最善だ。

だが。

何だか()()()()なってきた。

駄目だと思っているのに、弾けるような高揚感を抑えられない。

彼女は不良達に、今まで見せたことないほどの満面の笑みを見せつける。

 

 

「それでは皆さん…さようなら」

 

 

今宵、抑圧され続けた浅上藤乃(カイブツ)が目を覚ました。

 

 

 

 




残酷な描写って書くのが難しいですねぇ…
藤乃の心情を自分が考えられる限りで書いたつもりです。
こんな駄作ではありますがご意見、ご簡素をお待ちしております。


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第三話「灰色と歪曲は交わる」

最近とんでもないアンチの方がきて、やべぇよやべぇよ…。
それでも作品を書くことを恐れず行きたいと思います。
さて、今回は主人公とふじのんの邂逅です。


芸夢は先程感じた力の残滓を追い、廃墟となった地下のBARに辿り着いていた。

 

 

「なんだこれは。」

 

 

数多の惨状を目にしてきた芸夢でも、思わず絶句した。

そこにあったのはつい数時間前までは人であったであろう肉片(モノ)。愉快なオブジェとなったそれは人としての原型を保ってはおらず、作られたばかりのミンチだ。

常人であれば吐き気を催す程の死臭の中で、芸夢は至って冷静な様子だった。最初こそ驚いたが慣れてしまえばどうということはない。

 

 

「残滓はもう追えねぇみてぇだな。」

 

 

芸夢の異能は街一つの範囲を力の反応を感知できる。ある程度あれば力の残滓も追えるが、感じたことない力の反応の場合は数分程度しか感じ取ることが出来ない。先程発生したモノも後者に該当する。

少しは興味深い何かが見れると意気込んで来てみれば、この有様だ。この惨状を引き起こした何者かに、死体処理を押し付けられたようなものだ。

 

 

「チッ。めんどくせぇなぁ。」

 

 

行き場の無いイラつきを抑えつつ、パーカーのポケットから携帯電話を取り出す。芸夢は慣れた手つきで番号を打っていく、。

プルルルル、プルルルルと鳴る機械音をBGMにし待つこと数秒。

 

 

『もしもし蒼崎です。』

 

 

「俺だ。」

 

 

『詐欺の受付はしてないが?』

 

 

「茶化すんじゃねぇ。事件だァ。」

 

 

芸夢は橙子に現場の状況を話した。

捩じ切られた四人の死体。僅かだが感じた力の残滓。

それらの要因から単純な殺人事件とはかけ離れたものだと、現場にいずとも容易に理解した橙子。

 

 

「やっぱり魔術師絡みの事件なのか?」

 

 

『まだハッキリとは断定できん。兎に角、あとはこっちに任せてお前は家に戻れ。分かったな。』

 

 

と言い、蒼崎は電話を切った。

芸夢の中ではある程度の考察ができていた。

一般人ではあのような殺し方など当然ながら不可能だ。どんな機械や拷問器具を用意したところで、あれ程正確に人体を曲げる事など出来ない。

となればそんなことをできるヤツに該当するのは三種類のカテゴリーに含まれる。

魔術師。人外。超能力者。無知な者からどれも似たよったものに見えるが、その実態はまったくと言っていいほど異なる。詳しいことは芸夢にも分からんないが、蒼崎に魔術のあれこれのことを聞いた際によく聞かされたものだ。

今回の事件がそれに該当するかはわからない。

 

 

「(ちっ、帰るとするか。)」

 

 

目的の人物ともあえず、芸夢は不完全燃焼の高揚感を抱いたまま、その場を後にした。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

 

息を切らした浅上藤乃は路地裏の壁に背をつけて休んでいた。不良達を無惨に殺した後、地下BARから自身の姿を隠しながら路地裏を移動していた。

身につけていた制服が返り血で紅く染まってしまい、表の通りを思うように歩けない。

血染めの着衣を身につけたまま町を歩けば、言わずもがな警察の御用となるだろう。ましてや殺人を犯した身である藤乃。余計に逃げなければならない。

 

 

「あと一人で…終わったのに…」

 

 

藤乃が暴行を受けた体を引きずりながら移動するのは理由がある。先程のBARにおいて、自身に暴行を働いた不良の生き残りの一人を追っていた。

気持ちの高ぶりが収まった際に死体の数を確認した時の事だった。殺したと思った五人の死体の内、四人分のモノしか残っていなかった。藤乃は辺りを見回した。

ここには隠れられそうな場所は特に無い。藤乃が殺すことに夢中になっている間に逃げ出したのだろう。

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

 

骨が軋み鈍い痛みが走る。不良によってつけられた傷が、再び痛み出してきた。

復讐というエンジンによって、辛うじて動けているものの藤乃の肉体はとうに限界を超えており、動けることすら奇跡とも言えた状態だった。

 

 

「あっ…」

 

膝から崩れ落ちるようにうつ伏せに倒れる。コンクリートの冷たさを感じることが出来ないほど意識が朦朧としている。

もう一歩も歩けない。

蓄積し続けた疲労と痛みが遂に限界を迎えた。

 

 

「(もう…だめ…)」

 

 

薄れゆく意識の中、彼女の目に映ったモノ。黒ずくめのナニカの輪郭をうっすらと見えた。

それが何かは分からない。

もしかしたら私を殺しに来た死神などというくだらない幻覚でも見てるのかもしれない。

そんな思考をしている内に浅上藤乃は糸が切れた人形に動かなくなり、その場で気を失った。

 

 

 


 

 

芸夢は夜の道をのんびりと歩いていた。生憎彼には散歩の趣味などは無い。

能力を使えば一瞬で帰ることは可能ではあるが、生憎と今の彼は非常に機嫌が悪い。モチベーションがだだ下がりの状態であり、能力を使う気分にはなれないのだ。

久方振りに面白いモノに出会えると意気込んで外に出てみれば、成果はなし。とんだ無駄骨に終わった。

触るな危険。それ故に今の彼に余計な事をすれば、半殺し確定コース直行となる。

 

 

「(気分転換にコンビニでもよるか…)」

 

 

この梅雨のようにジメジメと張り付く空気を入れ替えるために、コンビニへと足を進める。

丁度その時だった。

 

 

「ドサッ」

 

 

狭い路地裏に響いた何かの倒れる音。

鈍くそれでいて重みを含んだモノが倒れる音だ。

 

 

「……」

 

 

芸夢は目線を路地裏へと向ける。

今、何かの力が働いたのを感じた。既存する法則に引っかからないモノの揺らぎ。間違いない。

芸夢は数分前に感じたものだと直感した。

 

 

「果報は寝て待てってかぁ?」

 

 

芸夢は子供のような笑みを浮かべる。

待ちに望み漸く訪れた機会。今の彼に見過ごす考えなど脳裏にない。

芸夢は暗闇の路地裏へと足を踏み入れる。電灯等はなく、月明かりを頼らざるおえないほどに暗い。物の輪郭が薄らと見える程度であれば問題ない。視界が悪くとも芸夢の能力を持ってすれば、空気の流れでだいだいのことは把握出来る。

 

 

「あ?」

 

月を覆った雲は晴れ、暗闇を月明かりが灯る。

路地裏の最奥に到達した芸夢が目にしたモノ、このような薄汚い場所には到底につかわしくない女の子が倒れていた。

 

この時、芸夢は思わなかったであろう。

後に彼女が自身にとってに必要な人になるとは…。




久しぶりすぎて、どうにも感触が悪い感じがします。感想や意見や質問お願いします。


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