とある悪竜のファミリア・ミイス (丑こく参り)
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1話
「……はぁ。」
ダイダロス通りのとある場所で一人の少年がため息をついた。
少年は黒い髪に黒い瞳をしており、整った顔立ちをしているがどこか人を信じていない目付きをしている。
「日長一日……やることがない。お腹も空いた……。」
少年は立ち上がり、ダイダロス通りから出る。
やることもない少年はダイダロス通り全ての通路を理解しているため最短ルートで出る方法も理解しているのだ。
「……うわ、眩しい。」
少年は久々に見た街の賑わいを見て顔をしかめる。
あのダイダロス通りでは暴力は日常茶飯事だったため暴力も命の軽さも知らない奴等が多いからかもしれない。
「……どうしようか。」
少年は出てきたもののやることもなく、ボロ布を纏っただけの服で裸足で歩く。
すると
「なにやってんだクソガキ!」
バチンッ!!
軽快な音と共に大柄な男の平手が少年の顔に当たる。
(冒険者か。)
顔の痛みを隠しながら自然と相手を認識する。
冒険者とは神の力を与えられた人間。それだけわかっていれば十分だ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「まて、クソガキ!」
少年は大声を上げて全速力で走り、その後を冒険者の男が走る。
それは、少年の計算通りの結果である。
ああ言った社会的な弱者を痛め付ける奴はそんな雑魚が自分の目の前からどこかに行けばどうなるかは予想しやすいからだ。
「はぁ……はぁ……。」
「追い付いたぞ……クソガキ……!」
ダイダロス通りのとある場所の近くの行き止まりの隅に少年は隠れ、そこに男がやってくる。
(ここまでこれば……)
「こふ……。」
少年の予想通り、男は闇派閥の一員に殺される。
少年が逃げ込んできた場所は闇派閥のテリトリーの中。そこに冒険者が入ってこれば闇派閥の奴等が勝手に殺す。少年はそれを理解していた。理解した上でそれを行ったのだ。
「……出るか。」
少年は身を潜めるのを止め、男の隣を歩いて再びダイダロス通りから出る。
「さて、何をしようか……物取りで金を稼ごうか……。」
少年はぶつくさ言葉を言いながら辺りを歩く。
実際問題、少年は食事を取らなくても『問題ない体』ではあるのだが、それになったのは一年ほど前の事だ。
まだ、少年の感覚神経が麻痺していないため食事を必要だと錯覚してしまっているのである。
「おっと。これは失礼。」
「………………」
少年は金髪の少年とぶつかり、吹き飛ばされる。
その瞬間、少年の中で僅かに警戒心を高める。
「……誰?」
「あぁ、僕の名前はフィン・ディムナ。君は?」
「……コオウ・クロツキ。」
フィンに呼ばれたコオウは自分の名前を言い、その場から立ち去ろうとする。
フィン・ディムナ。それはよく闇派閥の人たちがよく言葉にする勇者
ただ――――
「ちょっと来てくれるかい、コオウ。」
相手がフィン・ディムナでなければの話しである。
フィンもまたコオウの存在を僅かながら知っていのだ。
『ダイダロス通りの案内人』。ダイダロス通り全ての通路、扉、地下用水路を網羅している黒髪黒目の少年がいることを。
「嫌ですよ。」
「ついてきてもらうよ。コオウ。」
強引にフィンに連れられてコオウは引きずられていく。
―――ここから、コオウの冒険が始まる
(………………
―――だろう
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悪竜の力
「お、フィンや~ん。どうしたんその子。」
「神ロキ、彼はコオウ・クロツキ。ダイダロス通りの案内人だよ。」
「……へぇ……。」
「そんなことよりさっさも離してくれないか?」
「これはすまない。」
コオウがフィンの手を振り払い、何とか立つ。
コオウとしてもここてファミリアに入ることはやぶさかではない。
それでも僅かながらの可能性を注意しているのだ。つまり……敵か、味方かを。
「あー、コオウたん?ウチのファミリアに入ってくれる?」
「……別に構わない。ただ、出来るのはダイダロス通りを案内することだけだぞ。」
「あー、わかっとるわかっとる。ほい、じゃあ始めるようか。」
コオウの背中に回り込んだロキは慣れた手つきでコオウのステータスを読み取っていく。
「ん?んんん?」
「どうかしたのか、神ロキ。」
「なんつーか、妙なステータスやとおもってな。」
「……どうゆうことだ?」
コオウは自分のステータスを覗き見しているロキとフィンから紙を奪い取り、ステータスを確認する。
========
コオウ・クロツキ
Lv1
力|0
耐久|O
器用|O
敏捷|O
魔力|O
魔法
『■■■■』
全■魔■を■■■、■■■で使える
スキル
『■■■■』
悪■を纏う。不■不■。悪■の丈に■■■を超強化
=======
「……なにこれ?」
あまりにもおかしなステータスを見てコオウは口を大きく開けて驚く。
おおよそのステータスは予想がつく。コオウとしてもその全てを
「うーん、これも下界の可能性と言えばそうなんやけど……。幾らなんでもこれをギルドに伝えれへんし……。」
「……取りあえず隠す方向で。」
「わかっとる。」
「取りあえず、君の部屋を案内するから夕食まで待機できるかい?」
「わかった。」
隠す算段を整えたコオウはフィンに案内され、そのまま部屋へ向かった。
========
「……ふう。やっぱり本性を隠すのは大変だぜ。」
俺はフィンが出ていった部屋の中で狂気じみた笑みを浮かべて椅子に座る。
あの神ですら俺の演技に気がつかないとか、演劇の才能でもあるんじゃないか、俺。
「さて、本来のステータスに書き換えますか。」
手に持ったまんまの紙を触媒にして
=========
コオウ・クロツキ
Lv20000
力|90000
耐久|∞
器用|30000
敏捷|80000
神秘|SSS
悪竜
魔法
『|二元宇宙』
全魔法を無詠唱、無魔力で使用可能。
『
自身のステータスを改竄可能。
起動式『神の罰を受けよ、悪竜』
『神穿ち』
対神特攻魔法
神、または眷属にのみ有効
当たった者に『即死』属性を付与
起動式『我が悲しみ、我が怒り、その全ての悪は貴様らが元凶、滅べ、滅べ、滅べ』
スキル
『
悪竜を纏える
疑似的不老不死
悪意と欲望の丈だけ全能力が超強化
人、または神がいる場所に転移可能
絶対悪。
不倶戴天
『神殺し』
全世界の神の恩恵の力が大きければ大きいほど全能力を強化
世界を壊す特権
『ヒトノアヤマチ』
悲劇の象徴
悲劇の数だけ魔法威力上昇
=========
「……うわあ……。」
予想以上におかしなステータスに俺は再び目を見開き外を見る。現実逃避である。
一応スキルと魔法は知ってたけどこのステータスは何?おかしすぎない?
「……取りあえず寝よ。」
証拠隠滅のため紙を灰に変えてゴミ箱に捨てて俺はベッドに潜り込む。
さて、寝よう。
……うん、チート過ぎる。
ベースとなったのは『問題児』に出てくる『アジ・ダハーカ』。主人公たち総出でかかっても最後は運の勝負になるようなキャラをベースに人間を作ったような感じ。
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悪竜と少女の邂逅
「……おい、起きろ小僧。」
「ん……。ガレスさんですか。」
俺は知識の中で知っているとある男の名前を言い、ベッドから降りる。
ガレスとはロキ・ファミリアの幹部の一人のドワーフで闇派閥の奴等も警戒していた人物の一人だ。闇の反対は善だと言わないがこいつもまた、俺の正体に気づきかねない存在。警戒に越したことはないだろう。
「む……儂と会ったことがあったのか?」
「……いや、予想しただけ。」
「こやつ……中々剛胆か性格をしておるのう。気に入ったわい。」
「なら結構だ。」
俺とガレスはそのまま歩き、食堂に向かう。
おおよそ、俺をファミリアの仲間たちに伝えるためだろう。……念には念を入れて使っておくか。
(『神の罰を受けよ、悪竜。【ゾロアスター】』)
俺は念じることで魔法を発動させ自らのステータスを一般的なLv1冒険者の状態に変える。
Lv6のガレスに小声で言えば高められた聴力で魔法がバレる可能性もある。なら、少し魔力の消費が多くなるけど念じて魔法を使ったほうがバレる心配もないだろう。
最も、魔力その物は消せないからLvの高い魔導師なら一発で分かるだろうが。
「おい、フィン。連れてきたぞ。」
「来たか。皆、食事の前に新たなファミリアの仲間を紹介しよう。」
「……どうも、コオウ・クロツキです。フィン団長に連れてこられて入った孤児です。産まれは極東、育ちはダイダロス通り。一応ダイダロス通りでは『案内人』をしていました。これからよろしくお願いします。」
俺は幾つか爆弾発言をしたあと適当に空いていた席に座る。
ちらりと団長たちの方を見てみるとフィン団長は少し苦笑いをし、リヴェリアは疑わしい目でフィンを見ており、ガレスは大笑い、ロキもまた不敵な笑みを浮かべていた。
やれやれ、早く飯にしてもらいたいのだが……。
(………………?)
俺は前にいる骨と筋肉、皮膚しかないまるで剣のような金髪の少女を見て僅かに妙な気配を感じる。
こいつ……精霊と人間の魔力を持っていやがる。しかも、神の悪意すら凌駕するとんでもない憎悪の炎が目に宿っている。なんなんだ、こいつは。少し話して見ようか。
「……なぁ、お前の名前はなんだ?」
「………………。」
無視か……致し方ない。後でロキかフィン団長に聞いておこうかな。
「……アイズ。アイズ・ヴァレンシュタイン。」
ポツリと少女は自分の名前を言う。
ヴァレンシュタイン……?あぁ、傭兵王『ヴァルトシュテイン』の名前を借り受けたのか。
となると、この少女は……いや、無駄な詮索はよそう。
取りあえず、今は飯を食おう
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アイズ
後半 リヴェリア
「ん……。」
俺はダイダロス通りで過ごしていた癖か夜明けよりも少し前に起きる。
あの後、質問攻めに合いながらも俺を歓迎されてそこそこ食べた後、風呂に入って寝たのだ。
俺には本来睡眠は必要ないけどするとしないでは体のコンディションに大きな差がある。けど、早く起きすぎたな、ちょっと窓の外でも見ようか。
「……ん?」
俺は窓の外、眼下にある中庭を見て、素振りをしている少女……アイズ・ヴァレンシュタインを見て少し奇妙な物を感じる。
あいつ……確か俺が寝る前に見たときも素振りをしていたな。ストイックに体を鍛えるのは別に良いことだとは思うが……行き過ぎた鍛練は体を壊すだけだぞ。
(大丈夫かよ、あいつ……。俺がいくら悪人だろうとも見過ごせないぞ……。)
「……………」
俺が心配して見ているとアイズの膝が急に地面につき、剣を支えにしながら立ち上がろうするも、木剣から手を離して倒れこんだ。
おいおい……くそ、ここからじゃまだ暗いからあまりよく見えないな……。仕方ない。
「『神の力は悪欲に塗り潰される』」
俺は
体の熱が異様に高い。体内を巡る魔力が幾つか歪んでいる。体に必要なエネルギーがあまりない。
もう体がボロボロじゃねぇか……!
「おい、しっかりしろ。」
俺は窓を開け、眼下の中庭に降り立ち、アイズを抱き抱えてもっと性格に体の調子を感じるためにおでこに手を当てる。
体から発熱、瞳孔も片目が僅かに開き具合が違う、魔力の流れもおかしい、体が異様に軽い。
こいつ、どんだけの時間を鍛練に使ってきたんだよ……!殆んど寝てないのではないか?それに、この鍛練は自分の体の不調とかを気にせずにやっているから病状が悪化しているじゃないか。
考え出したらきりがない。こういう時に頼りになりそうな人……フィンやガレスは詳しく無さそうだしリヴェリアさんに頼むのが一番良いか。
「はぁ……仕方ない、行きますか。」
=======
「ん……。」
私は何時もと同じ時間に起き、日課の朝の瞑想を始める。
昨日入ってきた少年、確かコオウ・クロツキだったか。彼からは少し変わった魔力を感じとることが出来た。恐らく、鍛え上げれば良い魔導師になるだろう。……と、いかんな、集中しないと……
「―――――ドアを破って失礼しまーす」
「ッ!?」
突如、ドアを蹴飛ばして件のコオウ・クロツキが部屋の中に入ってくる。
ここは女子の部屋がある場所なのに何故彼が……?私はともかく他の奴等が起きてしまうのではないか?
何故、どうやって蹴飛ばして入ってきたのだ……?あのドアはそれなりの硬度があったはずなのだが……。
「どうかしたのか、コオウ。」
「中庭で素振りしてたアイズがぶっ倒れたから連れてきた。」
見ると彼の腕にはアイズが力が死んでしまったように力無く腕をおろしていた。
「アイズ!?ッ、酷い熱だ。」
「そう言うわけでさいならー」
「行くな。……少し説教をしておかないとな。」
取りあえず、アイズをベッドに置き、コオウを正座させる。
これでも、私を慕う者たちからの私刑を実行させられるよりかは幾分か軽くなるだろう。ありがたく受け取った方がいいぞ、少年
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