場違いなんですけどぉ!? (メガネ愛好者)
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『神速の捕食者、新大陸に立つ』
どうも、メガネ愛好者です。
久しぶりの投稿。勢いとノリから生まれた完全なる息抜き作品。続くかは不明。
目を開けたらそこは、"大自然"だった。
何を言っているのかわからねぇ? 俺もわかんねぇ。まさか俺なんかにポルナレる機会が訪れようとは思わなんだぜ。
にしても……まぁ、見事なまでの大自然である。
見渡す限りの森、森、森。見たこともない動植物がひしめく大森林の真っただ中に、俺は立たされています。
……あ、いや、嘘。少し嘘言った。確かに俺自身、
すぐ傍に生える一つの植物。世間一般でいうところの"キノコ"に分類されるそれは————デカかった。
自分の記憶にあるキノコとは似ても似つかない大きさのキノコ。50㎝はありそうなそれは、見るからに毒々しい色をした紫色のキノコだった。
紫色のキノコだった。
紫色のキノコ……
そんでもって、毒キノコ……
あー……………………
(……毒テングダケ?)
おっと、ストップだ。それ以上はいけない。
まてまてまて。ちょっと待つんだ自分。確かに紫色の毒キノコって言ったら、真っ先に思い浮かぶのは某怪物な狩人の作品に出てくるキノコかもしれないけれど、現実にだって紫色のキノコはあるはずだし、何なら他の作品にだって数多くあるはずだし……
……もしもだ。もしもここが"あの世界"だったとしたら、俺はどうすればいい?
何処にでもいるような、至って平凡な一般人だった俺。社会人になっても尚ゲームの為に睡眠時間を減らしたり、欲しかったゲームの発売日には必ず有休を取ってでも休んで買いに行くようなゲーム大好き人間だった俺に、あのトンデモモンスターが数多く
無理。絶対無理。生きていける気が全然しない。
もしもこれがゲームなら太刀ブンブンかランスぐさぐさ、弓バシバシでいいのかも知れない。
でもそれが現実になったら? うん、普通にビビるわ。
その辺の不良に絡まれるだけでも委縮していた学生時代。そんな小心者の俺がモンスターを前にしてビビらずにいられるだろうか……
草食獣ならまだいい。生肉とか苔豚とか角鹿とか。でもそれがホーミングやらロケットやらの生肉、ロックオン猪だったら? 俺なら逃げるな。冗談抜きで。
言うなればゾウやサイ、猪が襲ってくるんだぞ? 立ち向かえるか普通? 無理だろ。
他の小型も駄目だ。肉食は当たり前。デカい虫なんて卒倒するまである。あの羽虫共とかゲームではイラつかせるだけだったが、それが現実になったら恐怖でしかない。女王? 死ねばいいと思うよ。
……え? 大型? 論外だろ。竜は勿論、獣でもアウトだわ。控えめに言って死ねる。悪即斬ならぬ
というかそもそもが色々ぶっ飛びすぎてんだよあの世界。なんで天災級の化物共がゴロゴロといやがるんだ?
何より制作陣が次から次へと種類を増やしまくるせいで有難みもクソもねぇ!! もう何十体いると思ってんだ!? 「とりあえずコイツ強いし、謎に包まれてる設定だから古龍種に加えとけ」みたいな安直な決め方してない!? 区別の仕方がガバガバすぎると思うんだけど!? よくわからないからって一つの種族にまとめすぎなんだよぉ!!
……コホン。と、とにかくだ。つい勢いで古龍種って言っちゃったけど、まだここがそうと決まったわけじゃないんだし、あの世界だって認めるにはまだ早い。
そもそもなんで俺はこんな場所にいるんだ? 俺、さっきまで自分の部屋でゲームをやってた筈なんだけど……え? 何のゲームかって? そりゃモンハ————
……え、嘘。嘘でしょ?
いやいやいや……そんな、え? は? マジで言ってる?
そんな理由? まさか直前にやってたゲームの世界だったからって? そんな大した理由でもなくここに連れてこられただけだったりする? 「ゲームの世界に招待するぜ! ただしチップはテメーの人生な?」ってか?
まさかこれって…………俗にいう"異世界転移"ってやつ、なのでは?
……………………は。
は、ははっ……あっははははは!! いやぁ流石にそれは無いわ!! 異世界転移とか夢見すぎだろ!! そんでこんな意味わからん状況になるとかどんだけ妄想拗らせてんだって————
…………ブゥゥゥゥ――ン…………
……………………うわぁ
……いや、俺は何も見なかった。
うん、見てない。見てないよ? 全然見てない。視界にすら入ってないぜ。
ホントだよ? 見てないったら見てないぜ。あんな
(回復ミツムシやんけ)
ダメだった。無視しきれなかった。目の前でこれ見よがしに回復液を揺らしながら飛ぶハチを無視出来るほど、俺のスルースキルは高くなかったようだ。
そしてここで、必死に目を逸らしてきた現実が遂に確定してしまったらしい。
あの虫にこのキノコ。もう確定だろう。
つまりここは————
(モンハンワールドの新大陸かよぉぉぉぉぉぉおおおおお!!?!?)
どうやら俺は、いつの間にかにモンハン世界へと転移してしまったらしい。訳が分からないよ……
□□□□□
モンハンの世界に転移してしまった。
何故そうなったかなどの原因は全くの不明。気がつけばここにいた。過程なんてありはしない。結果だけを唐突に突き付けられたことで俺の頭は既にパンク寸前だ。
だというのに、いるかいないか知れない神様は更なる追い打ちをお与えになってくれやがったらしい。クソが。
訳がわからん事態に混乱する中、俺は新たな問題に直面する。
一言で言うなら……そう。
(なんか……俺の体おかしくない?)
自身の身体に起きた"変容"である。
最初から違和感はあった。ただそれに気を向けるだけの余裕が初っ端の毒テングダケ、追加の回復ミツムシに掻っ攫われていたというだけで、気になってはいたんだ。
さっきから思ってたことが声に出せなかったり、そもそも体を動かすときの感覚に"ズレ"があったりと、何だか
そこでふと、頭によぎるはある言葉。
『モンスター転生』
二次創作小説、特にモンハンシリーズでよく見るそれは、所謂「モンスターに転生した主人公が異世界で大暴れ」といった感じの作品だ。俺も仕事の合間に暇潰しを兼ねてスマホでよく読んでいたよ。
……もう嫌な予感しかしねぇ。
俺はのそりのそりと森の中を進む。
現在地はモンハンワールドでいうところの"古代樹の森"。俺がいたところはマップでいうところのエリア11からエリア6へと向かう通路だった。
同じだったんだ。ゲームで実際に行き来した古代樹の森と、ここは全く同じ地形だった。
確認のために少し道なりを進んでみたんだが、ついた先は予想通りのエリア6。
画面越しに見た地形とまるっきり一緒。ツブテの実とかドクカズラ等の配置も変わらない。そのことに少しの感動を覚え、次いで全く見知らぬ場所ではなかったことにふつふつと安堵感が湧いたものだ。……まぁ次の瞬間には大量のランゴスタを見て半狂乱気味に逃げ出したが。
この世界に来て発遭遇したモンスターがランゴスタ……俺、虫は苦手なんだけど? 泣いてもいいだろうか?
何はともあれ、ここが記憶にある古代樹の森と同じ地形であることを確信した俺は、次なる行動に移った。
ズバリ、自分の姿を確認すること。
移動を始めたのも、そもそもの目的がそれだった。
おそらくだけど、俺はもう人間じゃない。
だって以前と比べて視線が高くなったし、何より体表が明らかに人のそれじゃないんだ。
血のように赤い鱗に漆黒の皮膚。鋭い爪が両手両足に備わっていて、腰の辺りからはにょろりと尻尾が生えている。
明らかに人間じゃない。それこそ見た目は完全にモンスターだ。
それなら俺は一体何なのか? 何になってしまったのか? ……知っておく必要があるだろう。
つまり目指すは水場があるエリア12だ。鏡代わりに今の自分の姿を確認しようてわけだな。
……ただここで一つ、疑問に残ることがある。
(こんなモンスター……モンハン世界にいたっけ?)
確認出来る範囲で確認した自身の姿が、どうにもモンハンの知識と合致しなかったんだ。
さっき言った特徴に加えてここが新大陸だと仮定すると、一番近い候補は"オドガロン"になるんだろうけど……
でも、違った。特徴は確かにオドガロンに共通するところが多々あるんだけど、それでもこの身体はオドガロンのそれではなかった。
何故なら――――
(
今の俺は、明らかに
オドガロンは四足歩行の牙竜種だ。決して二足歩行なんかじゃない。
加えて言うなら、鱗も赤いというだけでオドガロンのとは似ても似つかないし、尻尾もあんな大きくない。というか尻尾って言っていいのかこれ? ぶっちゃけ見た目は骨なんだが?
そんなわけで、俺はガロンのようでガロンではない"ナニカ"になってしまった。そしてその"ナニカ"を知るために水場へと向かっているわけなんだけど……
(いや、でもなぁ……"アレ"はモンハンの生き物じゃないし……)
水場に近づくにつれて膨れ上がる不安。
それは、この身体を確認するにつれて"ある作品の敵モンスター"が脳裏にチラつきだしたからだ。
しかし、それは本来ありえないことだった。何せその生き物は
竜種でもなければ獣種でもない。勿論のこと人でもない。
何より作品違いだし、言ってしまえば場違いだ。……いやまぁ、同じカプコン産ではあるんだけどね? それに一応、作品としてはゲームともコラボしてたし。加えて言うならウィッチャー3コラボであちら側の人型骨格モンスターが参戦してたりもするんだけど……
……って、なんか考えるごとに予想が当たりそうな気がしてきたんだけど?
いや、違うよね? そんなことないよね? だってあのモンスターは……まぁ確かに強いといえば強いかもしれないけど、それでもボスモンスターじゃなかったし、言ってしまえば雑魚モブ扱いだったし……まぁ個人としては好きなモンスターだったけども! 戦うのは正直遠慮したいが、見た目とか能力で言ったらめっちゃ好みだったけどもっ!!
そうこう葛藤するうちに、とうとう水場があるエリア12に着いてしまった。
……覚悟を、決めるしかないのだろうか? 確認してしまったが最後、俺はこの世界で生き抜くことを決意しないといけないんだろうか?
実は夢でしたとか、ドッキリだったとかしない? ……しないよなぁ。足の裏の感覚とか素足で土を踏みしめた時のそれだし、周囲の空気は植物特有の青臭さが鼻越しに伝わってくるし……何より身体から伝わってくる感触がなぁ……現実のそれなんだよなぁ……
(ハァ……もう、なるようになれだ)
一つ溜息を吐く。そして俺は意を決して水面を覗き込んだ。
そこに浮かび上がった姿は……
(——って、やっぱり"ヒューリー"さんじゃないですかヤダー!!)
それは『デビルメイクライ5』で登場した爬虫類型の中級悪魔。
『神速の
――この日、古代樹の森にて異世界の悪魔が突如として出現した。
果たしてこの先、一体何が起きるのか……それは、まだ誰にもわからない。
(場違いにも程があるだろうがよぉぉぉぉおおおお!!)
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