綺麗なクロコダイル目指したらロビンとビビに好かれました (花蕾)
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1話 砂の英雄 その名はクロコダイル

【砂の国 アラバスタ】

 

 

サー・クロコダイル

 

この世界では誰もが知る海賊。王下七武海にして、アラバスタの英雄。

若い時にはゴール・D・ロジャーのクルー、“鬼の跡目”ダグラス・バレットと戦い、引き分けに持ち込むという巨大な戦闘力の持ち主。

彼には誰にも知られてはいけない秘密があった。

 

それは彼が()()()であること。

 

彼は転生した際、主人公の敵キャラであることを自覚し、恐れた。そうならないため、努力した。その努力の結果、本来は秘密犯罪組織であったバロックワークスはただのホワイトな傭兵派遣会社になった。

 

「社長、アラバスタ国王コブラ様から警備のための派遣の依頼が!!」

 

「何人だ?」

 

「10人ほどだそうです!」

 

「あー、それならMr.3は…」

 

「Mr.3さんは現在、人員増強のため、東の海に出張中です!」

 

「あー、そうだったな。なら、Mr.5、ミス・バレンタインペアと、あとはビリオンズから適当に8人選んでおけ」

 

「オフィサーエージェントもですか!?」

 

「当たり前だろ。相手は上客だぞ。出し惜しみしてどうする」

 

「了解しました!」

 

伝令役の男は元気よく返事をし、社長室から出て行く。

オフィサーエージェントはバロックワークス社で上位5名、またその5人の補佐に送られる称号。その一人一人が実力者であり、その多くは能力者である。

 

「あら、今日も大繁盛ね」

 

「ミス・オールサンデー」

 

「あら、二人のときはロビンと呼んでくれるんじゃなかったかしら?」

 

「変わらんだろう。呼び方なんて」

 

「全然違うわよ。しっかりしてほしいわ」

 

「そうか、でロビン何をしにここに?」

 

「あら、Mr.0の秘書である私がここにいちゃダメなのかしら?」

 

「そうじゃないが、お前が見つかると色々と大変なんだが」

 

「わたしを勧誘したときのあの言葉は嘘だったのね」

 

ロビンは幼いときに7900万ベリーという高額の懸賞金をかけられ多くの人に裏切られてきた。そんな少女の心が濁らないわけがなく、他の人を信じられなくなっていた。そんな彼女をどうやって仲間にしたかというと口説き倒した。それはもう情熱的に。

 

「あー、俺の負けだ。悪かった」

 

「フフフ」

 

負けた、とクロコダイルが腕を広げるとロビンはおかしそうに笑う。

そこでデンデンムシが鳴る。

 

「こちらMr.3」

 

「どうした?」

 

「道化のバギーと金棒のアルビダのスカウトに成功しただガネ。ただ、首領クリークとその艦隊団は無理だった。どうやら、グランドラインにトラウマがあるそうだガネ」

 

「わかった。今回、スカウトに成功した人材連れてさっさと帰ってこい」

 

「了解」

 

どうやら、スカウトはうまくいったようだ。

 

「ん、デンデンムシを睨んでどうした?」

 

「いえ、なんでも…あの人は良い時に…帰ってきたらお仕置きね…

 

クロコダイルは怖っ、と肩を震わせる。ロビンが黒いオーラをだし恐ろしい笑みを浮かべている。

 

「あ、俺、コブラに呼ばれてるんだったな(大嘘)。すまんな」

 

こういうときは逃げるに限る。アラバスタ国王を理由に使い、ささっと社長室をでていく。

部屋に残されたロビンはさらに黒いオーラが増えたらしい。

 

◇◇◇

 

王宮まで逃げてきたクロコダイル。

本来、海賊は当然王宮に入れない。しかし、王下七武海であり、英雄であるクロコダイルは別だ。顔パスで王宮に入れる。

 

「あ、クロコダイルさん!?」

 

水色の髪色をした美しい女性、ネフェルタリ・ビビが嬉しそうな顔をして近づいてくる。

 

「珍しいですね、王宮に来るなんて。父に呼ばれたんですか?」

 

「いや、特に理由はない」

 

「なら、私とお喋りしましょう、私の部屋で!」

 

理由もなくきたと告げると、ビビは早口でそう言い、荒い息を吐きながらクロコダイルを引っ張る。流石に王女の部屋に入るのはまずいと思い、クロコダイルは逃げようとする。しかし、

 

(動けない…だと!?)

 

クロコダイルがピクリとも動けない。周りの大人はまたか、と微笑ましいように見る。一部はいつくっつくかで、賭けをしている。

 

「あ、コブラじゃないか!」

 

「え!!」

 

「さらばだ」

 

大声でビビの父の名前を呼び、力が緩んだ隙に逃げ出す。

自身の能力をふんだんに使い、王宮から飛び出していく。

 

「次は…絶対…」

 

そのとき、クロコダイルの背中がぞくっとしたそうな。

 

◇◇◇

 

おまけ

 

Mr.3のスカウト

 

【東の海】

 

「こんにちはだガネ。道化のバギー、金棒のアルビダ」

 

「誰だ、お前!!」

 

「申し遅れたガネ。私の名前はMr.3。君たちをスカウトにきた」

 

「Mr.3…まさか」

 

バギーはその名前に気づく。

 

「まさか、バロックワークスの!?」

 

「ご存知で何よりだ」

 

「なんだい、それは?」

 

よく知らないアルビダがバギーに問う。

 

「言わずと知れた王下七武海のクロコダイルが作った会社だぁ!そんなことも知らんのか、お前はぁ!それにMr.3といえば、オフィサー・エージェントの一人じゃねぇか!!」

 

「なら船長!ここであいつを殺れば名が…」

 

「やめとけぇ!クロコダイルはあの海賊王ゴール・D・ロジャーや白ひげと覇を競っていた海賊の一人だぞ!いくら、新世界から離脱して前半の海にいるとはいえあれは化け物だ!あれには手を出すなぁ!!?」

 

「よく社長のことを知っているだガネ。まるでその当時を知っているかのように」

 

「……まあな」

 

「…で、そんな化け物の元で働いているアンタが何のようだい?まさか襲撃かい!?」

 

アルビダの言葉で周りの雰囲気がガラリと変わる。

 

「違う。スカウトに来たと最初に言ったはずだ」

 

「スカウトォ!?まさかバロックワークス社にか!?」

 

「ああ、そう言ってるだガネ。報酬もきちんと出すし、やめるのも自由。ただし、堅気に手を出すだけがNGだ」

 

「どうします、船長!!」

 

「あたしは悪い話とは思わないよ」

 

(う〜む、どうしたものか。クロコダイルの庇護下に入れば海軍も下手に手を出せないはず。それにB・Wはとてもホワイトで入れたら毎日宴会できるくらい金払いがいいと聞く。あれ、これはやるしかないのでは???)

 

「勿論、その話、受けようじゃないか!」

 

「それは良い。なら早速、社長の元に行くだガネ」

 

「おい、ちょっと待てぇい。うちはグランドライン用のログ・ポースを持っていないぞ!!」

 

「安心するだガネ。お前たちがグランドライン専用のログ・ポースを持ってきてないことぐらい承知の上。だから、ここにアラバスタまでのエターナルポースがある」

 

「でかしたぁぁぁぁぁぁ!よーし、野郎ども、出航だぁぁぁぁぁ!!」

 

『はい、船長!』

 

こうして、B・W社に道化のバギー、金棒のアルビダが加入した。Mr.3はクロコダイルと連絡したあと、なぜか、足が震えたそうだ。




46歳で20代の女性に好かれてるってだいぶじゃねって思いながら書いた。クロコダイルの小説、増えろ

次回予告

「ゼハハハ、王下七武海の席空けてもらおうか!!」

英雄として輝かしい道を歩んでいたクロコダイルに現れたのは元白ひげ海賊団クルー、マーシャル・D・ティーチ。
さらにそこに黒ひげを追ってきた男も加わる。

第2話 黒ひげ

次回もお楽しみに


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2話 黒ひげ

黒ひげとエースの話し方わかんないのに、次回予告で下手に言っちゃたから頑張って書きました。おそらく、私と皆様の間で解釈違いがあります。それとなく、感想か誤字報告で教えてください。


「ビリオンズが壊滅?何言ってやがる」

 

それは突然の知らせであった。

ビリオンズといえば、オフィサー・エージェントの部下達。

簡単に言えば、Mr.13までいるエージェントとそのペアを幹部とするなら、ビリオンズは準幹部ぐらいに当たる。

 

「本当なんです!!!社長!!!とにかく、ナノハナに…ってうわぁ!」

 

「どうしたァ!!」

 

その連絡のあと、デンデンムシからは沈黙が流れる。ガチャっ、という音がしないため、通話が切れていないことは確かだ。クロコダイルは状況を掴むため、大声で呼びかけるが応答がない。

 

「くそ、どうなっていやがる。ビリオンズが壊滅だと」

 

あり得ない、そんな感想がクロコダイルの心を占める。

ビリオンズはエージェントには劣るが、折り紙付きの実力者。クロコダイルの庇護下から離れた場合、即刻海軍から指名手配されることは間違いなしの戦闘力は持っている。

 

「チッ、しょうがねぇ。ナノハナまで行くしかないか」

 

オフィサーエージェントを回すという考えもあったが、ビリオンズを壊滅した人物が相手と思うと些か危ないかもしれない。

クロコダイルはそう考えを纏め、ナノハナへ身体を砂へと変換し向かっていった。

 

【港町 ナノハナ】

 

ナノハナは見るに耐えない光景になっていた。バロック・ワークスの略、B・Wを帆に掲げた艦隊はバラバラになっており、町は何年も風化したかのように錆びれている。この光景はおかしいとクロコダイルは考える。

なぜなら、この町は昨日まで活気が溢れていたし、短期間でここまで()()()()()()()()()。少なくても十年は必要である。

 

「ゼハハハ、ようやく来たか!!」

 

「オメェか?うちの社員と町をここまで痛めつけたのは」

 

錆びれた町の中心にいたのは、五人の男達。

 

「その通りだ!!Mr.クロコダイル!!ゼハハハ!ちょいと頼みがあるんだが、いいか?」

 

「…なんだ?」

 

「ゼハハハ、難しいことじゃねぇ。王下七武海の席を一つ空けてもらおうか!!“闇穴道(ブラックホール)”!!!」

 

クロコダイルの足元に、黒い形状しがたいもの、否、闇そのものが広がる。クロコダイルはそれに捕まらぬよう、下半身を砂化させ、上空へと舞い上がる。

そこに

 

「ウィーハッハ!!」

 

プロレスのチャンピオンみたいな格好をした男、バージェスが瓦礫を持ち上げクロコダイルに向かって投げつける。それを冷静に、右手を瓦礫に添え『渇き』を与える。

さらに、黒ひげ海賊団 狙撃手であるヴァン・オーガーがクロコダイルを正確無比に狙い撃つ。しかし、『覇気』すら纏われてない弾丸は身体をすり抜けるばかり。

 

「舐めてんのか。“砂漠の宝刀(デザートスパーダ)”!」

 

クロコダイルはお返しと言わんばかりに砂の斬撃をバージェスとオーガーに放つ。二人は左右に避け、それを回避する。

 

「おい、テメェら!!勝手に手出しするんじゃねぇ!テメェらじゃ、どう足掻いても勝てねぇよ!!」

 

「察しがよくて助かる。で、テメェの名前は?」

 

「ゼハハハ、監獄に送るついでに教えてやるよ!!黒ひげ海賊団船長、マーシャル・D・ティーチ様だ!!!」

 

「俺を監獄に送ったところで七武海にはなれねぇ、と思うがな」

 

「いや、思っちゃいねぇよ。あくまで()()()()()()()()()()()()()()()!!何のためにこの町を襲ったと思う?」

 

「俺をおびき寄せるためじゃねぇのか?」

 

「それだけだったら、テメェの部下をぶちのめすだけで充分だろうが!!ゼハハハ、正解は目撃者をなくすためだ!!いくら、海賊といっても国の英雄であるお前を倒して、七武海につけるとは思っちゃいねぇ。だから、目撃者なしでテメェを倒し、そこにあるテメェの組織の船にダンスパウダーを乗せておく。こうしたら、いくら、アラバスタ王家だろうと庇いきれねぇ」

 

クロコダイルは、なんて恐ろしいことしやがる、と額から冷や汗を流す。

なぜなら、それは原作で捕まった罪状と同じであるからだ。これが、世界の補正なのかと疑う。

 

「そうか、ご丁寧にどうも。“砂漠の向日葵(デザート・ジラソーレ)”!!!」

 

黒ひげ一味を中心に、大きなアリ地獄が形成される。

 

「そういや、さっき、名前を聞いたな。すまねぇな、それは無駄になりそうだ。砂漠に墓標はいらねぇからな」

 

「舐めた口をしやがる。“闇水(くろうず)”!!」

 

クロコダイルの身体がティーチのほうに吸い込まれてゆく。クロコダイルが能力で逃げようとするが、

 

「無駄、無駄ぁ!俺のヤミヤミは能力すら無効化させる。分かるか!!!Mr.クロコダイル!!俺は能力者に対し、防御不能の攻撃力を得た!!」

 

クロコダイルの腹にティーチの拳が入る。

 

(…重てぇ…舐めてた。この頃の黒ひげならそこまで苦戦しねぇと思ったが…流石は未来の四皇)

 

クロコダイルの口からゴフッという音を出し、大量の血液が溢れる。しかし、

 

(だが、まだ甘い!!)

 

「能力を無効化するなんて大層なことだが、誰が能力にかまけてるって!“指銃”!!」

 

クロコダイルの右手の指から放たれる突きは、ティーチの身体を銃弾のように貫通させる。

 

「これは、CPの…六式!!なんで、テメェが!!」

 

「何、便利そうだったから、習得させてもらっただけだ。それに俺ばかり見ていていいのか?」

 

「何?ッ!!!」

 

「“火拳”!!!」

 

黒ひげ海賊団を炎の拳が包み込む。

 

「これ以上、暑くするんじゃねぇよ」

 

クロコダイルはただでさえ暑いアラバスタに、さらに気温を上げる炎に辟易とする。

 

「ようやく見つけたぞ!ティーチ!」

 

「チィッ!野郎ども、撤収だ!!流石にこの二人相手には、まだ無理だ!!」

 

そこからの黒ひげ海賊団の行動は早かった。急いで走り出し、丸太船に乗り組み、帆を広げ出港した。

 

「…は?」

 

クロコダイルはその行動に唖然を喰らう。

 

「待ちやがれ、ティーチ!!」

 

「じゃあな!!Mr.クロコダイル!()()()()()!」

 

エースはすぐに追いかけようとするが、

 

「やめておけ、お前じゃ、勝てねぇよ。白ひげ海賊団二番隊隊長“火拳”のエース」

 

「何を言って…」

 

エースはクロコダイルの言葉に反論しようと口を開くが、すぐに閉ざしてしまう。なぜなら、クロコダイルからは膨大な覇気が放たれており、エースは後ずさりしてしまう。

 

「実力差すら分からねぇのか、テメェは。船員は全然強くはねぇが、船長のあいつだけは別格だ。今までよく無名で通してきたなというレベルだ。あれには、俺でも勝てるかどうか分からねぇ」

 

クロコダイルの言葉は全て本当である。自身でも勝てる可能性は低い。能力を過信してはいないが、やはり、戦闘スタイルは能力ありきである。数十年寄り添い続けた砂の能力を使わないでとなると、今までの戦い方が身体に染み付いてる分戦いにくい。

 

「…それでも、俺はあいつを倒さなくちゃならないんだ」

 

「それなら好きにやれ。忠告はしたぞ」

 

エースは搾り出すように、決意の言葉を告げる。クロコダイルはそれに対し、最低限の言葉を返した。

エースとクロコダイルはそのまま、顔を合わせずそれぞれの道に着いた。

 

(原作通りなら、エースは黒ひげに負けて、捕まって白ひげと海軍の頂上戦争が起こる。そして、なんやかんやあってエースの腹にどでかい穴ができるわけだが…)

 

別段、クロコダイルはエースのファンではない。しかし、一度でもあった人物が死ぬというのは、好きではない人物でも心にくるものである。そのため、忠告をしたのだが、結果は芳しくない。

 

(しかし、頂上戦争が起きれば、自然と黒ひげに会うことになるか…)

 

実は、クロコダイルは黒ひげに対し今にも殺したいぐらいの怒りにかられていた。クロコダイルにとって、社員は部下であり、大事な仲間である。それに手を出されて、怒るなというのは無理な話である。

 

(そうなれば、そこでお礼してやるよ、たっぷりとなァ…)

 

この後、この件は世界中に報道され、黒ひげ海賊団の首に懸賞金がかけられた。船長のティーチには2億ベリー、船員たちには5000万ベリー前後の額がかけられたのだった。

 




次回予告

「んー、返ってきたわのね!」

長い任務から帰ってきたのはMr.2。彼?(彼女?)の船の傍らには麦わらの帽子を被った髑髏旗が…

第3話 麦わらの男
次回もお楽しみに

お気に入り人数900人突破、ありがとうございます

評価と感想お待ちしております。


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3話 麦わらの男

2ヶ月間おまたせして申し訳ありません。ずっと剣盾してました。完璧に私が悪いです

では、どうぞ


【ナノハナ】

 

汗をダラダラながしながら、バギーはツルハシ片手に工事をしていた。現場監督のおっちゃんにはよく頑張ってるな、と気に入られるまでで頑張っていた。

 

「ふー、今日も元気に工事を…ってなるかぁ!!オイィィ!」

 

1週間ぐらい工事してようやく自分の思い描いていた職場ではないことに気づいたようだ。遅すぎる。

 

「こんな感じだとは思わなかったぞ!オイ!」

 

「じゃあ、これ行くか?一応、オフィサーエージェント用だが」

 

クロコダイルがバギーに手渡したのは一つの依頼書。特に危険度が高く、生存率は限りなく低い。まあ、オフィサーエージェントの生還率は100%なのだが。あれはクロコダイルに地獄のような特訓を受けてきたやつらなので勝手が違う。

 

「あ、遠慮しときます…」

 

調子の良かったバギーすら引くレベルの依頼書。この会社、本当にホワイトなんだろうか。

 

「って、なんでここに!?」

 

ようやくクロコダイルがいることが正しく認識できたようだ。バギーは舌が伸びるほど驚いている。

 

「ただの出迎えだ。それに客も来てるようだしな」

 

「出迎え?客ゥ?」

 

バギーの頭の上にハテナマークが飛んでいると海のほうから大きな声が聞こえてくる。

 

「帰ってきたのねい!!」

 

「へぇ〜ここがボンちゃんの言ってたアラバスタかぁ〜」

 

バギーにとって聞き覚えがある声。片方のオカマの声は知らないが、もう片方は覚えてる。

 

「む、麦わら〜!?」

 

「あ、バギー…なんだ、バギーか…」

 

「フザケンなよー!!このスットンキョー!!」

 

「あら?麦ちゃんのお友達?」

 

「おい、麦わら!!なんだ、この珍獣!?」

 

「なんですって!?あーたのその鼻も珍獣みたいじゃない!」

 

「なんだ、やるか!このオカマ野郎!」

 

「テメェら、工事中のここ、荒らす気か…?」

 

「いえ、そんなつもりは滅相もありません!!」

 

「なら、いいんだが」

 

クロコダイルの地を這うような声に、バギーは敬礼と共に答える。

 

「で、Mr.2、お前、任務のほうは?」

 

「勿論、達成したわね!」

 

「そいつは重畳。しかし、すまんな。一回の航海で任務を5個もさせて…」

 

「別に構わないわね。あちしの任務報告は後で書面で渡すから」

 

「いや、そういうのは、ミス・オールサンデーの仕事だから…」

 

「おい」

 

それでいいのか、社長。ちなみに、クロコダイルが把握している仕事はそこまでない。基本、ロビンが切り盛りしている。個人経営のカジノもロビンが仕切ってる。半分、ロビンのヒモなんじゃないか、この七武海。

 

「しかし、ここまで出迎えなんて意外ね。てっきり本社のほうにいるとばかり…」

 

「…本社のほうはなぜか、ミス・オールサンデーがMr.3をしばいてるから…巻き込まれないように逃げてきた」

 

クロコダイルとMr.2の間に何となく悪い空気が流れる。

それを打ち破ったのは、

 

「なーなー、お前、ボンちゃんの友達か?」

 

麦わらだった。流石、原作主人公。

 

「馬鹿!ルフィ!あんた、あの七武海のクロコダイルを知らないの!?」

 

「七武海?なんだそれ、食えんのか、ナミ?」

 

「食えるわけないでしょ!!!いい、ルフィ。七武海っていうのはね、海軍が特別に略奪を許した七人の海賊のことを言うの」

 

「海軍が海賊を許すって、おかしな話だな」

 

「それだけ実力があるってことよ。ルフィ、絶対喧嘩売っちゃダメよ」

 

「わかった」

 

コクンと頷き、ルフィは

 

「よし、クロコダイル、でいいんだっけ?」

 

「ん?ああ」

 

「飯屋ってどこにあんだ?」

 

何をしでかすのか、とハラハラしていたナミ達がズコーと一斉に転ぶ。

 

「腹減ってんのか?」

 

「おう」

 

「…まあ、いいだろう。うちの社員も世話になったみたいだしな。俺の奢りで食わせてやる」

 

「え、いいの!?」

 

目を$マークに変えるナミ。

 

「構わん。それに見知った顔もあるようだしな」

 

「じゃ、あちしは行くわねーん」

 

「ボンちゃん、行っちゃうのか?」

 

「あちしにも用があるからね。また、逢おうぜ、我が心友」

 

「おう、またなー!!」

 

Mr.2ボンクレーは、奇妙な歌を歌いながら船員を引き連れアルバーナに向かった。

 

(いつ、聞いても慣れんな、これ)

 

クロコダイルの感想は尤もである。

 

◇◇◇

 

【緑の町 エルマル】

 

ナノハナから一番近くの町。船に乗って河を渡る必要があるが、そこまで時間はかからない。

 

「すごい。話には聞いてたけど、砂漠の近くにこんな緑溢れる町があるなんて」

 

ナミがそう言うのも無理がない。陸地のほとんどが砂漠であるアラバスタでここまで自然に囲まれているのは、エルマルぐらいである。観光地としても人気で、世界中から旅行者がやってきたりする。

 

「飯屋!飯屋!」

 

クロコダイルが案内したのは、エルマルで一番人気の食事処。高級なところではないものの、手頃な値段で美味しいものが食べられることから人気を博している。

 

「ほぉ〜すげぇ!いただきます!」

 

流れるように料理が出てき、水のようにルフィの腹に入っていく。

 

「ルフィ食べられるだけ食べなさい!!」

 

口からスパゲッティを垂らしながら右手には骨付き肉、左手には貝料理を持ったルフィは、それに応と頷く。

 

「どこにその量が消えてんだか…そして、久しぶりだな、ロロノアにくいな」

 

「え、何、ゾロ、くいな、お前ら、七武海と知り合いだったのか?」

 

「知り合いというか何というか、金欠の時にちょっと雇ってもらって…」

 

昔、クロコダイルはちょっとした気分でゾロをバロック・ワークスに誘った。自分だったら斬られても大丈夫だろうという判断で行ったら、ゾロだけじゃなく、くいなまで居たのだ。なんで生きてんの?と混乱したものの、まあそういうこともあるよね、と無理やり自身を納得させた。

 

「賞金稼ぎのお前らが海賊になるなんて面白いことになってんじゃねぇか」

 

「まあな」

 

「私はゾロについてっただけなんだけどね〜」

 

クロコダイルはワインを口に含み、

 

「ああ、そうだ。鷹の目から聞いたぞ。お前、あいつと戦ったんだって?」

 

「…ああ」

 

「面白いやつにあった、って言ってたぞ。良かったじゃねぇか、あいつに気に入られるなんて早々ねぇぞ」

 

「ウルセェ。俺はあいつを超えるんだ。それに俺も聞いたぞ。あんたが昔、刀使ってたって」

 

「昔の話だ。てか、なんで鷹の目の野郎は俺の情報を話してやがる!?」

 

「…さあ?」

 

ゾロもくいなも他の麦わらの一味も首を傾げるだけ。どうせ、あの鷹の目のことだ、なんとなく言ったのだろう。今度、殴ると密かにクロコダイルは誓った。

 

「ああ、そうだ。お前、俺の仲間にならねぇか?」

 

突如のルフィの勧誘発言に、一味は口の中身を吹き出してしまう。

 

「ルフィ、あなた何言ってるの!?」

 

「そうだぞ、ルフィ。相手はあの七武海だぞ!!」

 

「…フフフフフ」

 

ナミはあー怒っちゃった、と絶望的な目をするが、クロコダイルは怒ってなどいない。

 

「アーハッハッハッ!!お前、面白いこと言うもんだな!そんなこと言ったのは、今まででロジャーと白ひげのジジイくらいだぞ!!」

 

「おう、で、どうなんだ?」

 

「却下だ。お前さんの船には乗らねぇよ。俺は俺の道をいく」

 

「そっか、残念だ」

 

「ま、誘ってくれたことは嬉しく感じるぜ」

 

ナミとウソップ、チョッパーはほっとする。

 

「ルフィ、あんた、危ないことはやめなさいと言ったでしょ!」

 

「寿命が10年は縮んだぞ…」

 

「ハッハッハッハッ、すまねぇ」

 

一通り話が終わると、そこからはどんちゃん騒ぎだった。

 

海賊の大好きなものといえば、財宝と宴。小さい子供でも知っている常識である。

 

「ルフィ、それ、俺の肉!」

「知らねーよーだ」

「こいつ、一口で食いやがった」

「酒の追加頼む」

「あ、これのレシピ教えてくれないか…え、店の極秘?じゃあ、これは?OK。よし」

「ここに唐辛子をかけて、と」

「辛ーー!!!」

 

2時間ぐらい経ったころだろうか、店の中はごっちゃごっちゃになり、食材が尽き、腹を風船のように膨らませ寝転がるルフィやウソップ。

クロコダイルも酒を楽しく飲んでいたが、その時、くいなが指をチョンチョンと後ろの方に向ける。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「クロコダイルさん、後ろ、う し ろ」

 

「あ?何を言って、や、が、る…」

 

振り向けば

 

「あら、楽しそうに飲んでるわね、私に仕事を押し付けて」

 

怒ってるロビンがいた。

 

「なんで、居る?」

 

「誰かさんの帰りが遅いから迎えに来たのよ。じゃあ、この人もらっていくわね。あ、料金はこれで。お釣りは彼らに渡していいわ」

 

「か、かしこまりました!」

 

ロビンは店主に札束を渡し、クロコダイルを引っ張っていく。

ぽかーんとした顔で見送る麦わらの一味。

 

「七武海…」

「相手に…」

 

「すげー」

 

この後、麦わらの一味は物資を購入し旅立っていった。

 

◇◇◇

 

「で、なんであの一味と食事してたのかしら?」

 

「うちの元社員がいたからというのもあるが、あの“赤髪”が、あの帽子を託した男と話しておきたかったんだよ」

 

「そう。それでどうだったのかしら?」

 

「ハハハハ、あの海賊王ロジャーに相当似てたよ、あいつは。俺がもう少し若けりゃあいつの船に乗ってたな、こりゃ」

 

「そんなに…!?」

 

ロビンがクロコダイルの発言に言葉を失う。

 

「ハハハ、楽しくなってきやがった!」

 

「それは良いことね。でも、それはそうと、仕事はやってもらうから」

 

「はい」

 

ちなみに、ルフィたちと食事した理由を大層に言ってるが、ただ気に入られといておこう、という下心だけである。

 

◇◇◇

 

「ああ、そうそう、明日暇かしら?」

 

「あん?まあ、暇だな。特に予定もないし」

 

「デートに行きましょう」

 

「え?」

 

「いいでしょう?」

 

「まあ、構わないけど」

 

「決定ね」

 

その日中、ロビンの顔はゆっるゆっるであったそうだ。




次回予告

「楽しいわね」

ロビンとのデート。しかし、それは穏便に行かないようで…

第四話 デート

お楽しみに

お気に入り人数2500人突破、ありがとうございます。まさか、1600人も増えるなんて思いもよらなかったです


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4話 デート

デート描写分からん…無理やりねじ込んだ感がすげぇ…

今回は2500字程度で少なめです。なんとか3000字は超そうと思ったのですが厳しかったです。


【アルバーナ 】

 

アラバスタの首都、アルバーナ。この都市で一番待ち合わせに向いてる場所と言えば、こういうだろう。

『宮前広場』と。

 

「ああん、いねぇじゃねぇか」

 

クロコダイルとロビンもその例に漏れなかった。

広場にある大時計を見れば、約束の時間より少し早い。

とりあえず、時間を潰そうと周りを見渡すが、人人人人。暇を潰せるものは見つからない。

 

「帰りたくなってきたな」

 

「ダメよ」

 

思わず声を漏らすと、クロコダイルの肩ぐらいから手が生え背中を叩く。地味に覇気が纒われていて痛い。

 

「待ったかしら?」

 

「いーや、さっききたところさ」

 

「なら、よかったわ」

 

カップルの決まり文句のような会話。ロビンはそれに満足し頬を緩める。

 

「さあ、いきましょうか」

 

「お手柔らかにな」

 

まず、二人が向かったのは、服屋。

 

「これ、どうかしら?」

 

ロビンが試着といって身につけてきたのは、踊り子の衣装。普段の雰囲気と相まって艶っぽい。

 

「似合ってるじゃねぇか」

 

基本的にロビンは元が良いから何を着ても似合う。やはり、美人って役得だな、とクロコダイルは感じる。

いくつか試着をし、気に入ったものを買うことにする。

 

「さて、支払いを」

 

「ちょっと待って」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「あなたの服も見るのよ」

 

「えっ………」

 

予想外の発言にクロコダイルは固まった。

 

 

 

 

 

「うーん、この服もいいわね」

 

(あと、何着あるんだ…)

 

クロコダイルがチラリと見れば、服の山が。今の数着の試着だけで気が滅入っているのに、その倍以上となると目眩がしそうである。

 

「な、なあ、ロビン。そろそろいいんじゃないか…」

 

「ダメよ。あなた、オシャレに気使わないじゃない。同じ服何着持ってるの」

 

そう言われると、その通りだとしか言い返せない。事実、同じ服、もしくは似たような色の服しか、クロコダイルは持っておらず、それを知らなかったら同じ服を何日間も着てるようにしか見えない。

 

結局、服屋にいた時間は予定より数時間オーバーしていた。

 

「お昼ご飯のところはもう決まってるからついてきて」

 

「ああ、わかった」

 

着せ替え人形にされてグダッてしているクロコダイルと違い満足げな表情を浮かべてうロビンは、クロコダイルの大きな手を掴み先導する。

 

歩くこと数十分程度。

 

「ついたわ。ここよ」

 

ロビンが連れてきたのは、メインストリートから離れた場所にある穴場的な店。入ってみると静かな雰囲気でクロコダイルにとっても好ましい店である。

 

「さて、メニューは、と」

 

「私はこのサンドウィッチのセットにしようかしら」

 

「なら、俺もそれにしよう」

 

「それなら、すいません、サンドウィッチのセットを二つ」

 

「かしこまりました」

 

(なぜ、ここで給仕をしている、ツメゲリ部隊!?)

 

ロビンの注文を受け取ったのは、国王護衛部隊であるツメゲリ部隊の一人。よくみれば、後の三人もいる。

 

「こちら、サンドウィッチセットになります」

 

続いて料理を持ってきたのは、

 

「なんでおまえがここにいる、コブラァ!」

 

「何を言ってるのかね、クロコダイルくん?あ、お客さん」

 

「それで誤魔化せると思ってんのか!?」

 

まさかの国王に声を荒げてしまうクロコダイル。というか、本当になんでいるんだ、国王。

 

「ハッハッハッハッ。久しぶりに休暇を取れたからな。そんなときに、そこのロビンくんから良いお店を紹介してほしいと頼まれた。これは君関連に違いないと確信したのだ」

 

「休日は家族サービスするだろ、普通」

 

「…最近、ビビが冷たくてな」

 

「…なんか、すまないな」

 

結婚もしていないクロコダイルが言うのもあんまりだが、国王のあまりに寂しそうな姿に思わず謝ってしまう。

 

「ああ、料理のほうは大丈夫だぞ。テラコッタが作ってるからな」

 

「そういう問題じゃない!」

 

ああ、もう、と頭を抱えるクロコダイル。

 

そんなクロコダイルの様子を見ながらロビンはクロコダイルの服を掴み、

 

「私とのデート中なんだから、他の人に集中しないでちょうだい」

 

弱々しく頬を赤らめながらそう呟くロビン。普段のクールな姿とは程遠い。クロコダイルの胸はきゅんとしてしまう。これがギャップ萌えか。

 

「すまなかったな」

 

「うちの国の王族は、別に一夫多妻禁止してないからな」

 

「なぜ、今言ったぁ!!」

 

コブラはハッハッと笑いながら厨房のほうに戻っていく。

どうしたらいいか、分からないが、とりあえず料理を、と差し出されたサンドウィッチを食べることにする。

 

「はい、あーん」

 

ロビンは小さく千切ったサンドウィッチをクロコダイルに差し出す。

 

「お、おう」

 

それを戸惑いながらもパクりと口に収めるクロコダイル。

 

「…美味いな」

 

クロコダイルは自分の頬が赤くなっていることを感じ、誤魔化すかのように食事の感想を言う。ロビンのほうをみれば、林檎のように頬を赤く染めている。

 

「はあ、こっちを見ろ、ロビン」

 

無言でチラチラとクロコダイルのほうを見る。

 

「そこまで照れるんだったらやるんじゃねぇよ、ほれ」

 

「…あなたも同じような感じじゃない」

 

クロコダイルが差し出したサンドウィッチをほんの少し口に入れるロビン。

どちらも真っ赤に頬を染めていた。周りを見れば、コブラやテラコッタが微笑ましそうに見ている。

その視線で、さらに頬が赤くなっていく。

 

「う、うまいな」

 

「え、ええ、そうね」

 

食事中の会話は、どちらも上手く口を開けず、それっきり途絶えてしまった。

 

店を出たあと、香水などの買い物をしたが、頬の赤みは取れず、互いの顔を見ることはできなかった。

 

◇◇◇

 

それから、数ヶ月後。

 

「ほう、“黒ひげ”と“火拳”、それに“()()”が激突か…」

 

クロコダイルはいつもより真剣な表情で新聞を読んでいた。葉巻を口から外し白い煙を吐き出す。

 

「島は崩壊。ま、当然だな。そして、黒ひげ、火拳は捕まった、と。…戦争が始まるか」

 

葉巻を口に戻して口角を吊り上げる。そのとき、一つ重大なニュースがあったことに気がついた。

 

「…ん?黒ひげが捕まった?」

 

もう一度、読み返す。しかし、書いてあることに変わりはない。それはクロコダイルの予想していたことのどれにも当てはまらなかった。

 

「まじか」

 

信じられない、その感情がクロコダイルを支配する。

青雉は指折りの実力者に入る。しかし、どうしても能力の相性というのはある。

青雉の能力は、全てを凍らす“ヒエヒエ”だ。相手のエースの“メラメラ”とは相性が悪く、黒ひげの“ヤミヤミ”は全ての能力者に有利がとれる。片方のみが相手ならクロコダイルも納得するが、両方となると首を傾げざるを得ない。

 

「…はあ、ここで考えてもしかたねぇ」

 

まだ、情報は少ない。自分の考えが全て違っている可能性もある。

 

嫌な予感が胸をよぎりつつ、クロコダイルは準備を進めるのだった。




前回の更新の際に日間ランキング1位を獲得することができました。お気に入りも沢山増えていて励みになります。皆さまありがとうございます。


初めてデート描写をしてみました。難しいものですね。恋愛ものの小説を読むこともあるのですが、全然違います。これから上達していけたらな、と思います。

次回予告

「グララ、久しぶりじゃねぇか」

始まる海軍と七武海、白ひげ海賊団による頂上戦争。クロコダイルは数十年ぶりに四皇の一角“白ひげ”エドワード・ニューゲードと相対する。

第5話 頂上戦争

次回もお楽しみに


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5話 頂上戦争①

ギリギリ3月…
頂上戦争は数回にわけてだします


【マリンフォード 海軍本部】

 

海軍大将“青雉”により確保された白ひげ海賊団二番隊隊長、ポートガス・D・エースの処刑のため、世界各地から戦力が集結された。

 

島全体を夥しい数の戦艦が取り囲み、湾岸から見える軍隊の最前列には6名の曲者ーーー“王下七武海”が構えていた。

 

“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴ、“海賊女帝”ボア・ハンコック、“暴君”バーソロミュー・くま、“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク、ゲッコー・モリア

 

そして、“砂漠の王”サー・クロコダイル

 

いずれも世界中に悪名を轟かせる化け物たち。

王下七武海の名の通り、本来は七名だが、この場に最後の一名はいないため割愛させてもらおう。

 

さらに処刑台の手前でたち構えているのは、三名の“海軍大将“。

“赤犬”サカズキ

“青雉”クザン

“黄猿”ボルサリーノ

 

正に最強の布陣である。

 

◇◇◇

 

「お前の父親は“海賊王”ゴールド・ロジャーだ!!!」

 

これが、エースが“海賊王”ゴールド・ロジャーの息子であることが、白ひげ海賊団との全面戦争になる危険性を犯してでもエースを処刑せねばならない理由に他ならない。

 

残しては、残っていては許されない血筋。

 

存在するだけで災厄を撒き散らす悪魔の血筋。

 

いくら、エースが自分の“オヤジ”は“白ひげ”だと喚こうと、世界は決してそれを許してくれない。

しかし、世界が許さなくてもそれを認めるものは存在する。そして、そのものたちはすぐに現れる。

 

悪を拒絶するかのように天高くそびえ立つ『正義の門』。

開く予定のない扉は神の悪戯か、けたたましい音を伴って開いていく。

 

「来たぞォー!!」

「全員警戒態勢!!」

 

「突如、現れたぞ!一体どこから!!?」

 

“遊騎士 ドーマ”“雷卿 マクガイ”“ディカルバン兄弟”“大渦蜘蛛 スクアード”…いずれも“新世界”で名を轟かせる海賊船船長。

総勢43隻。今、“白ひげ海賊団”の傘下の海賊たちが海軍の前に現れた。

 

ゴボゴボ…ゴボボ…ゴボッ

 

最初に気づいたのは誰だろうか。

 

それは伝播していき、海軍全体に不安感を撒き散らす。そして、その不安感は間違いではない。

 

「…こりゃあとんでもねぇ場所に現れやしねぇか…!?」

 

「布陣を間違えたかねぇ」

 

三日月型の湾内から、自分の存在を主張するかのごとく気泡が何かの影と共に大きくなっていく。それに、海軍の英雄“モンキー・D・ガープ”、大参謀“おつる”は自分達の策の失敗を察知する。

 

「そうだったのか、あいつら全船…!コーティング船で海底を進んでいたのか…!!!」

 

気づいたときにはもう遅い。海上に気をとられるあまり、最も恐れていた事態を引き起こしてしまった。

 

極大の水飛沫を伴って白ひげ海賊団旗艦“モビーディック号”が湾内に飛び出し、連続して三隻の同型の海賊船も姿を示した。

 

「14名の隊長たちの姿を視認!」

 

無論乗船してるのは、白ひげ海賊団の幹部たち、そして、何より、この男ーーー

 

「おれの愛する息子は、無事なんだろうな……!!!」

 

居るだけで世界そのものを塗り替えてしまいそうな存在感を、覇気を撒き散らす巨漢。彼は最上大業物であり愛槍の“むら雲切”を片手にモビーディック号の甲板に降り立ち、自分の愛する息子の姿を視線に捉えて大胆不敵に笑った。

 

「オヤジィ!!」

 

『海賊王』の席に最も近いとされているエースが敬愛してやまない世界最恐の男が現れた瞬間である。

 

 

“白ひげ”エドワード・ニューゲートは虚空に拳を叩きつけると、大気にヒビが入り、海を唸らせる。ほとんどの海兵は何が起こったか理解できず、正しく理解したのはと海軍の一部と白ひげと交戦経験があるクロコダイルやミホークのみ。

 

「オヤジ……みんな、おれはみんなの忠告を無視して飛び出したのに、何で見捨ててくれなかったんだよ!! おれの身勝手でこうなっちまったのに……!」

 

エースは叫ぶ、自分の身勝手さを、自分の愚かさを。

 

そう叫ぶエースに白ひげたちは優しく語りかける。

 

「いや……おれは行けと言ったはずだぜ、息子よ」

 

「嘘つけ! バカ言ってんじゃねェよ!! あんたがあの時止めたのに、俺は……!」

 

「おれは行けと言った…そうだろ、マルコ」

 

「ああ、おれも聞いてたよい。とんだ苦労をかけちまったなァ、エース!!」

 

親の、家族の、優しい嘘。その思いやりがエースにとっては辛く、しかし、何より嬉しかった。

 

「何だぁ、この地鳴りは」

 

マリンフォードがズズズズズという音と共に揺れる。

 

「怯えんじゃねぇよ、これくらいで。あのジジイにとって、これくれぇはまだ軽いジャブだぞ」

 

「そら来たぞい。さっき、あいつが仕掛けた“海震”が…“津波”に変わってきやがる…!」

 

“グラグラの実”の「地震人間」

“白ひげ”エドワード・ニューゲート

懸賞金50億4600万ベリー

 

その能力は世界をも滅ぼすほどの力である。

 

「“氷河時代(アイスエイジ)”!!」

 

「青キジィ…若造が…」

 

青雉が津波を凍らせ、

 

「“砂漠の金剛宝刀(デザート・ラスパーダ)”!」

 

「グララ、久しぶりじゃねぇか。クロコダイルの小僧!!」

 

クロコダイルが攻撃を仕掛ける。

しかし、その攻撃は白ひげの振動でいとも容易く打ち破られる。白ひげの起こした振動は砂の刃を破壊し、

 

「チィッ」

 

クロコダイル自身の身にも影響を及ぼす。

落ちていったクロコダイルの身は青雉が凍らせた海面に叩きつけられる。

 

「始まってすぐ退場になるかと思ったぜ、クロコダイル」

 

「うるせぇ、余計なお世話だ」

 

 

「湾内も氷に!」

「船の動きが封じられたぞ!」

 

「砲撃ィ!!」

 

モビーディック号目掛けて砲丸が次々と打ち込まれる。動きが止まっている船などただの案山子でしかない。

 

しかし、氷程度で止まるなら困らない。

 

「いい足場ができた」

「行くぞ!!」

 

「俺たちの力を見せてやれ!!」

 

「隊長たちが出てきた!砲撃を休めるな!」

 

 

「うひゃひゃ、こっちも撃ち返してやれ!!」

 

海賊船から放たれた砲丸は命中する前に

 

「そう簡単には行かねぇか!」

 

海軍本部の中将たちに阻まれる。

 

「中将がこんなに揃う姿は初めて見るぜ!」

「“バスターコール”もまッ青だな!!」

 

バスターコールにて必要な海軍本部中将の人数は5名。しかし、ここには実に数倍の海軍本部中将が集っていた。

 

しかし、それがどうした?白ひげ海賊団はその程度の障害は打ち破ってきた。新世界の王者、四皇の名は伊達じゃない。

 

「さっさと倒して湾内に進めぇ!」

 

「とうとう始まったか…」

 

世界を揺るがす戦争がついに始まった。




次回予告

「海兵ども、巻き込まれても知らねぇぞ」

始まった頂上戦争。進撃する白ひげ海賊団の隊長たち。各々自由に動き出す七武海。さて、どうなる…

第6話 頂上戦争②

次回もお楽しみに


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6話 頂上戦争②

はい、二カ月ぶりの投稿です。すみません。


「やれぇ!リトルオーズJr.!!」

 

巨人族の数倍はある()()。白ひげ海賊団の切り札の一人。彼は海軍の軍艦を掴み、その軍艦を盾に推し進め強引に湾内への道を強引に切り開いた。突破口が開けたことにより白ひげ海賊団全体の士気が高まる。

多くの海兵がオーズとどう戦えばいいか、わからなかった。巨人族の海兵ですら見上げるという大きさは無慈悲な暴力として湾内の海兵に襲いかかる。

 

「“熊の衝撃(ウルススショック)”!!」

 

オーズの進軍に待ったをかけたのはニキュニキュの実の能力者である“暴君”くま。彼の両手の肉球から繰り出される衝撃波、否、衝撃砲は周りを巻き込みつつもオーズに大ダメージを与えた。

 

「せめて…七武海一人でも…!」

 

この傷で自身がエースの処刑台に行くことは不可能に近しい。そう考えたオーズは少しでも後続の白ひげたちの負担を減らすため、ドフラミンゴがいる湾岸めがけて巨腕を振り落とす。

しかし、その決死の攻撃も

 

「フッフッフッ!」

 

届かない。悪魔のような薄気味悪い笑い声をあげながら宙に浮くドフラミンゴは地面に降りたつのと同時にオーズの右足を切断する。

オーズは痛みに声にならない悲鳴を上げる。

 

「広場に踏み込んだぞ!」

 

「あど、もうすごし…!!」

 

オーズは足を引きずりながらもエースの処刑台へと進んでいく。

腕を伸ばし処刑台との距離がおよそ数十メートルとなったところだった。

 

「ドフラミンゴの野郎!コイツの死体は俺が貰うってのに!!」

 

モリアのカゲカゲの能力として、死体に生者の影をいれることで兵士として活用することができる。そういう意味で、オーズの死体とはモリアにとってとてつもなく魅力的なものであった。

 

「“角刀影(つのとかげ)”!!」

 

コウモリ状の影が劔のように連なりオーズの胸を貫く。その一撃が致命傷となりオーズは崩れ落ちる。

 

「オーズを踏み越えて進めぇ!!」

 

「ウォオオオオオオ!!!!」

 

死を嘆いている暇はない。

倒れた仲間の頑張りを無駄にするな、と鼓舞する白ひげ。オーズによって切り開かれた道と白ひげの鼓舞、そして仲間の仇を討つために、白ひげ海賊団はさらに勢いづく。

先程まで、拮抗していた戦線は完全に白ひげ海賊団側に傾いた。

 

「おい、何か降ってくるぞ!!」

「なんだあれ!?軍艦!?」

 

空から落ちてきた軍艦。そこは目を瞑ろう。だが、それにしても乗っているメンツがおかしかった。

 

「助けに来たぞー!!」

 

“麦わら”のルフィ

 

王下七武海が一角、“海侠”のジンベエ

 

ロジャーや白ひげと覇を競った空の海賊、“金獅子”のシキ

 

インペルダウンから消えた囚人、“奇跡の人”イワンコフ

 

それ以外にも、過去に名を馳せた多くの海賊たちにオカマ達。

 

「ガープ!また、貴様の「家族」だぞ!!」

 

「ルフィ〜!」

 

「ジンベエ!革命軍のイワンコフ!そして、“金獅子”のシキまでだって!?」

「後ろにいるのも過去に悪名を連ねたインペルダウンの脱獄囚たちだ!!」

 

現れた面子に戦場は騒然とする。

 

「ジハハハハ、数十年ぶりか、白ひげ」

 

「とっくにくたばっちまったと思ってたぜ、金獅子」

 

白ひげ海賊団とて新しい敵を増やしたくない。大将たちはもちろん、諸事情で大将になっていない中将数名に七武海と厄介な敵は多い。そこに、シキが第三勢力となると白ひげ海賊団は窮地に立たされてしまう。

 

「安心しろ、テメェに手を出す気はさらさらねぇよ。幸いにもこの戦争は中継されている。…本当の海賊の恐ろしさというのを世界中に教えてやる」

 

「…ならいい」

 

白ひげにとってある程度予想していた回答だ。しかし、金獅子のことをあまり知らない新入りたちにはこう明言化することが大事なのである。

 

脱獄囚たちの中心的な人物となっているのは、当然、シキである。彼は一人の男を呼ぶ。

 

「中継用のデンデンムシを奪ってこい」

 

海軍が中継を切る可能性がある。中継を切られてしまえば、どんな結末であれ海賊の真の恐ろしさを世間に知らしめることはできない。ならば、一つくらい確保しておいたほうがいい。

命令された男は嫌そうな顔をしつつも、メガネを手のひらで持ち上げ位置を整え了承した。

 

「旧世代も新世代もお揃いで面倒くせぇ」

 

「あん、戻ってきてたのか、ワニ野郎。てっきり、氷の上でおねんねしてると思ったぜ」

 

「ブチのめすぞ、クソ鳥」

 

「おお、怖い怖い」

 

「しかし、随分と遠くなった」

 

クロコダイルは初撃を白ひげに放った後、何度か攻撃を仕掛けていた。しかし、その全てを白ひげ海賊団の隊長たちに止められていた。傘下の海賊たち相手なら突破は容易いが、隊長格となるとやはり別格である。

 

「“ブリリアント・パンク”!!」

 

クロコダイルを追ってきた三番隊隊長のジョズによるタックル。ダイヤモンドの硬さとその速度、そして、熟練された覇気による一撃はとてつもない破壊力を持つ。

 

「ちぃ、追ってきやがって。ダイヤモンド・ジョズ!」

 

未だ健在なクロコダイルの姿を視認し、再度攻撃の姿勢をとるジョズ。しかし、それは

 

「フッフッフッ!手を貸してやろうか?」

 

ドフラミンゴのイトイトの能力によって止められる。

 

「手を貸してやる?手を貸させてください、の間違いだろうが。四皇のおこぼれ啜ってる野郎風情が」

 

「それはおまえもだろう、ネフェルタリ家の犬」

 

「テメェと違って依存してねぇんでな。“砂嵐(サーブルス)”!白ひげ海賊団と共に消えろ、フラミンゴ野郎!」

 

「血の気が多い野郎だ。“五色糸(ゴシキート)”!」

 

ここにダイヤモンド・ジョズVSサー・クロコダイルVSドンキホーテ・ドフラミンゴという奇妙な三つ巴の戦いが始まった。

 

 

世界中から精鋭を集めたからといって、この戦場にいる海兵全てが六式や覇気を会得してるわけではない。むしろ、そのような海兵のほうが数が多い。そして、海軍は白ひげ海賊団を包囲するように展開している。つまるところ、そのような海兵しかいない箇所が少なからずあるということだ。

 

例えば、中継用デンデンムシの周りだったり

 

突然、斬られ、倒れていく。また一人、また一人と血を流し地面に倒れていく。それもそのはず。その攻撃は六式の“剃”並の速度を誇る。

 

「どうなってやがる!」

 

フルボディは倒れていく仲間を見て、その不可視の脅威を振りほどくために怒鳴り声を上げる。一方、フルボディと背中合わせに周りを警戒しているジャンゴは唸り声を上げる。

 

「この光景、どこかで…?」

 

必至に記憶を探る。少なくとも海兵時代ではない。もっと前、一人旅時代よりも前。

 

「まさか!キャプテン・クロの“杓死”ッ!?」

 

答えにたどり着いたと同時にジャンゴは肩から胸にかけて切り裂かれ地面に崩れおちる。

そして、数分とかからず、その場を担当している海兵は地に伏せ、中継用デンデンムシが一体、海賊の手に渡ったのだった。

 

同じ頃、くまやモリアの妨害があったものの、イワンコフやジンベエの助けを受け着実に処刑台へとルフィは近づいている。錠の鍵はハンコックから受け取ったのであとはたどり着くのみである。

 

「悪いが赤髪…この力慎みはせんぞ…」

 

「“鷹の目”!!」

 

ルフィの前に立ち塞がるは最強の剣士であるミホーク。彼は旧知の仲である“赤髪”シャンクスに断りを入れつつも、ルフィを見極めるため、最上大業物12工であり愛刀である黒刀「夜」を構える。

 

「さて、運命よ…次世代の申し子の命、ここまでかあるいは…どう逃す…!」

 

ルフィはミホークのような難敵を相手にしている暇はないと判断し、ギアを上げ一気に距離をとり進もうとする、が

 

「射程範囲内だ」

 

戦場の間を縫うように放たれた斬撃はルフィを捉えた。ミホークはさらに追撃を重ねていく。ルフィはそれをギリギリで避けていく。

 

「“ゴムゴムのJETピス!!?」

 

ルフィは攻撃体制に入るものの直感したのは斬られた自身の腕。事実、このまま腕を伸ばしていたら切断されていた。

 

「ビスタ、援護しろよい!」

 

「了解した!」

 

マルコの指示でミホークを抑えに入ったのは隊長格の一人。

 

「5番隊隊長“花剣のビスタ”」

 

「お初にかかる“鷹の目のミホーク”。俺のことを知ってくれてるとは光栄だ」

 

「知らんほうがおかしかろう…」

 

こうなるとルフィへの攻撃を続けることは難しい。

ここで、ミホークはルフィの『本当の恐ろしさ』を見抜いた。

 

世界を揺るがす力か

 

 

それとも、どんなものでも魅了する神技か?

 

否である。

 

戦場にいるものを自身の味方につける力、それこそがルフィの力の本質である。

 

(まるで()()()()()()()()()のような…なるほど、赤髪やクロコダイルが目をかけるわけだ)

 

ミホークはルフィにかの海賊王の面影を感じたのだった。




海軍からはクロコダイルとドフラミンゴはジョズを挟撃してるように見えるけど、本人たちは三つ巴になってるという不思議。
七武海側にいると頂上戦争は書きにくい…

次回予告

「やれ!パシフェスタ!」

くまと同じ姿をした兵器が白ひげたちに襲いかかる。そして、動き出す“英雄”…

第7話頂上戦争③

お楽しみに


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7話 頂上決戦③

「元帥殿、準備が整いました」

 

「湾岸もか」

 

「はい」

 

「ならば、これより処刑を開始する」

 

「ハッ!」

 

予定の時刻よりも早めに処刑の準備に動き出す海軍に、シャボンディ諸島モニター前の記者や一般市民はざわつく。

 

「処刑が始まるのか!?」

「発表より大分早いぞ!!」

 

「直ちに映像電伝虫を切れ!我々に対し不信感が募るのは困る」

 

海軍、いや、“正義”への不信感はいずれ亀裂を呼び“正義”が築き上げた秩序を壊しかねない。そうなると、この戦いで勝とうが負けようがその先は地獄だ。しかし、非道なことすらしなければこの戦いに勝てない。

その“正義”の負の面を隠すため、センゴクは映像の切断を命じる。

それと同時に海軍は新たな一手を投じる。

 

「なんだ、あいつら!?」

「アレが噂の『人間兵器』か」

 

「さあ、おまえら、待ちくたびれたやっとの出番だぜ!」

 

大柄な体格に大きな鉞、まるで金太郎のような格好をした男、戦桃丸はそう劇を飛ばす。そして、彼の後ろにいるのは

 

「く、くまぁ!?」

「なんでくまがこんなにいるんだよ!!」

 

七武海のバーソロミュー・くまと同じ姿をしたものたち。その数は20を優に超す。その異様な光景に海賊たち、くまと親交があったもの、さらにはモニター前の人々は驚愕の声を漏らす。

 

「予定とは少し違うじゃねぇか。出番はまだ先じゃねぇのか、これ」

 

本来の海軍の作戦は、湾内で海賊を取り囲み一網打尽にすること。しかし、白ひげの采配のおかげで左右が崩され包囲されてない形となっている。

 

「予想の範疇だ!縦での挟み込みは可能だ!予定通り、傘下の海賊から狙え!」

 

「やれ!パシフィスタ!」

 

平和主義者(パシフィスタ)』の名を冠するものたちは悪を殲滅しようとレーザーを放つ。

 

「おいおい、ここにいたら巻き込まれるぞ」

 

「ちいっ、ダイヤモンド・ジョズ、決着はまた今度だ」

 

パシフィスタの攻撃に巻き込まれまいとクロコダイルとドフラミンゴは後方へと下がる。勢力的に言うとパシフィスタはクロコダイルたち側だ。しかし、パシフィスタは機械。敵を殲滅するだけの殺戮機。そんなものと連携は以ての外である。倒すことも選択の一つだが、それはクロコダイルたちの立場からすると無茶な相談だ。

 

「そういや、おまえの義手ってベガパンク製だったよな」

 

「そうだが」

 

「レーザーつけてもらえよ」

 

「頭沸いてんのか、フラミンゴ野郎」

 

 

 

 

「おい、映像は!」

 

「まだです!どうやら、一機、海賊たちに盗られている模様です!」

 

「なんだとぉ!」

 

海軍にとっては予想外、白ひげ海賊団や脱獄囚たちにとっては幸運だった。

電伝虫の映像が切らなければ海軍は次の作戦に進めない。しかし、最後の電伝虫はこの戦場において白ひげに次ぐ実力者、シキの手の中にあった。

 

「くそ、奴に生半可なやつでは話にならん。大将たちを向かわせろ!」

 

「いや、センゴク、儂がいく」

 

「ガープ!まて!」

 

ガープはセンゴクの制止を聞かず、弾丸のように飛び出し戦場に踊りでる。

 

「え、英雄だ…」

「英雄、ガープが動きだしたぞぉ!」

 

海で最も名が知られた海兵。海兵からすれば憧れの的であり、多くの海賊からは恐怖の対象。かの海賊王ともやりあった、正に生ける伝説。その名は、モンキー・D・ガープ。この世界で英雄と呼ばれている存在である。

 

「名前に躍らされるんじゃねぇよ、アホンダラァ!」

 

(と言った手前、ガープを止めれそうなのはマルコぐらいか。俺も早めに動いたほうがいいか)

 

白ひげは味方を鼓舞するものの内心では苦虫を噛み潰したような表情をする。

ガープはネームバリューに匹敵する実力を備えている正真正銘の英雄。彼を止めることは四皇内でも最大の勢力を誇る白ひげ海賊団にも厳しい。

 

「ジハハハ。久しぶりじゃねぇか、ガープ!」

 

「シキィ!!貴様、伝説のままでいればよかったものを!!」

 

「そりゃあ、こっちのセリフだ。テメェも英雄のままでいたかっただろうに!」

 

シキとガープが激突した。両者の強大な覇気のぶつかり合いは海賊海兵問はず吹き飛ばしパシフィスタをも壊すほどの威力であった。

 

(ガープはシキのほうに向かったか、よし)

 

「おやっさん」

 

「スクアードか、無事だったか。さっきテメェに連絡を入れたが」

 

「ああ、すいません。ちょっとたてこんでたもんで」

 

白ひげの思考を停止させたのは傘下の一人“大渦蜘蛛”のスクアード。

 

「後方の傘下の海賊は酷いやられようだ」

 

「ああ、俺もでる!こっちも一気に攻め込む他ねぇ」

 

「そうですね。俺たちは全員、あんたに大恩がある。白ひげ海賊団のためなら命を失ってもかまわねぇ。だが、その前に一つ質問がある」

 

「質問?どういうことだ」

 

「俺ァ、海軍の反乱因子からこの戦争はすでにあんたと海軍の間で話がついてると言われた。俺は信じなかった。だが、あいつが言った通り攻撃は俺ら傘下しか狙わってねぇ。アンタが、エースの命を買う為に傘下の海賊の首を売ったってのは本当なのか!?」

 

スクアードの怒号が響き渡った。

戦場を見ればその節はある。あれだけパシフィスタはレーザーを放っているのに、一度も隊長格を狙っていない。そのおかしさに傘下の海賊たちも、まさかという声を上げる。

 

「ウソだろ、んなわけーー」

「ほんとだ、こいつら、俺らしか狙ってねぇ!!」

「ウソだと言ってくれェ、おやっさん!!」

 

 

「どうなんだ、おやっさん!」

 

スクアードは大刀を虚空に振り下ろしながら糾弾するように叫んだ。

 

「俺ァ、どうしたらいいんだ!嘘じゃなかったら俺は死ぬ!おやっさんを信じて茶番劇をして死んじまう!」

 

今度は懇願するような叫び声だった。白ひげを疑う気持ちと疑いたくない気持ちがスクアードの中で競い合い、結果どうすべき分からず感情がぐちゃぐちゃになっている。

 

「スクアード、テメェは馬鹿野郎だ。だが、バカな息子をそれでも愛そう」

 

白ひげはそう言いスクアードを抱きしめた。

戦場とは思えない安らかな声音とその腕から伝わってくる熱にスクアードの迷いが、疑いが消えてなくなった。

 

「俺ぁ、あんたを疑っちまった…すまねぇ…あいつの言葉がなけりゃ刺していた…本当にすまねぇ…!」

 

「あいつ?」

 

白ひげがそう聞き返すとスクアードは海軍の反乱因子ーーー赤犬に語られたときに自分を踏みとどませてくれた人物のことを大雑把に話す。

 

「なるほどな」

 

(…そんなやつ、()()()()()()()()()()()()())

 

白ひげの頭に疑問符が湧くが今はそれどころじゃない。

 

「おれが息子たちの命を、売っただと……?」

 

その言葉にあるのは純然たる怒りだった。おもむろに振り上げた拳で空間を力の限り殴りつけた。

その一撃は空間を震撼させ、船で逃げるためには邪魔だった氷塊が砕け散る。退路が拓かれ、傘下たちはこれでいつでも逃げられる。

 

「海賊なら!! 信じるものはてめェで決めろォ!!!」

 

その行動は、その言葉は、その生き様は傘下の混乱や絶望が鎮まっていく。

 

「おれと共に来るものはーー命を捨ててついてこい!!!」

 

「ウオオオオオォォォォ!!!」

 

海賊たちの雄叫びが天を轟かせた。

 

ーーー戦場のとある一角

 

「ちぃ、余計なことをしおって。作戦が台無しじゃ!」

 

スクアードを唆し、白ひげと傘下に亀裂を産むことで戦争を有利に進めようとした手筈がここでひっくり返された。

 

「当たり前だろう。なんてたって()()()が乗っていた船だからね!」

 

()()()?一体、誰の話をしとるんじゃぁ!」

 

「君に教える必要はない!」

 

「だったらとっと死ねぇい!」

 

赤犬のマグマの拳と()()()()()()()()()()の金棒が激突した。




次回予告

「“切り札”を使うぞ!」

白ひげ海賊団がついに最後の切り札を切った。それは一体…

第8話頂上戦争④

お楽しみに

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閑話:アラバスタ

頂上戦争編はちょっとお休み


【アルバーナ宮殿】

 

アラバスタ王国の首都、アルバーナにあるアルバーナ宮殿。その一室の窓辺から水色の髪の少女は外を眺めていた。

 

「クロコダイルさん、大丈夫かしら…」

 

彼女の名前はネフェルタリ・ビビ。アラバスタ王国の第一王女だ。

分かりきったことだが、彼女はクロコダイルに好意を抱いている。彼女自身はバレていないと思っているが、実父である国王のコブラや幼馴染であるコーザ、はたまた王宮の末端の兵士にすら気づかれているのが現状だ。

 

件のクロコダイルは海軍の招集で戦場に立っている。

無論、ビビがクロコダイルの強さを疑っているつもりはない。

それでも心配なのだ。

何しろ、相手はあの白ひげ海賊団。

その恐ろしさはビビの耳にも届いている。

 

「デートの約束したのになぁ」

 

クロコダイルが頂上戦争にいく数日前、ビビはなけなしの努力を振り絞ってデートを申し込んだのだ。それが了承された先にこの戦争だ。

デートを早くしたいという気持ちはある。しかし、それ以上に怪我なく無事に帰ってきてほしいという気持ちが強かった。

 

「だったら信じて待つしかないだろ」

 

「…コーザ」

 

ビビの部屋に訪れたのは幼馴染であるコーザだ。彼はユバでの功績が認められ、アラバスタ王国の環境大臣に任命されていた。

 

「覚えてるか。あの当時のこと」

 

「当時?」

 

「クロコダイルさんがアラバスタに来た時のことだよ」

 

「ああ、あのときね」

 

◇◇◇◇

 

6年前、アラバスタは大いに荒れていた。

港町や複数の都市を海賊たちが占領しており、本来アラバスタに流通するはずの物資を奪う、商人を殺すなどの行為が横行していた。

もちろん、王宮は早急に軍隊を派遣した。しかしながら、結果は残念なものになった。

占領していた海賊の頭たちは、前半の海にしては珍しい5000万ベリーを超える懸賞金をかけられる程の危険人物たちだった。

 

コーザ率いる自警団のおかげでなんとか持ち堪えているが、それも直に厳しくなるだろう。

このまま、この国は滅びてしまうのか。その考えが過る人は少なくなかった。

 

「あん?良い国を見つけた、と思ったら、蛆虫が湧いてるじゃねぇか」

 

この現状を招いたのは海賊だが、この現状を打破したのも海賊だった。

 

「サー・クロコダイル!!?」

「なんで、七武海がここに!」

 

クロコダイルは七武海の一人であり海賊狩りをしていたことでも有名であった。

そこに、アラバスタの人々は、希望を、英雄を見た。

 

「テメェら、掃除の時間だ」

 

クロコダイルは部下ーー後のオフィサーエージェント達に海賊の殲滅を命じる。

 

アラバスタで狼藉を行なっている海賊団は計6つ。

1ペアにつき一つの海賊団だ。

こうして、B・W社の初仕事が始まった。

 

 

 

「おい、ありゃ、なんだ?女?」

「かなりの上物だ、捕らえてお楽しみと…」

 

「キャハハハ。あなたたち程度の雑魚相手に捕まるわけないでしょ。地面に埋めてあげる。“1万キロプレス”!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈ミス・バレンタイン〉“運び屋ミキータ” 懸賞金750万ベリー

 

 

 

「“そよ風息爆弾(ブリーズ・ブレス・ボム)”」

 

「ギャハハ!あいつ、弾が入ってないぜ!」

「間抜けだ、ギャハハハ!…ブヘラッ!?」

「な、なんだ、ば、爆発した!?」

 

「言い忘れたが、おれの“息”は爆発する」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈Mr.5〉“国境のジェム”懸賞金1000万ベリー

 

 

 

「おい、ここら辺穴だらけだぞ!」

「下手に動くな!落ちるぞ!」

 

「立ち止まらず、楽しんでいきな。この縄張りの名は“モグラ塚四番街”!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈ミス・メリークリスマス〉“町落としのドロフィー”懸賞金1400万ベリー

 

 

 

「い、犬か、あれ?」

「銃と合体してるぞ」

 

「へ…へ…イッキシ!」

 

「何だぁ!」

「ボールを吐き出したぁ!」

 

「フォー!!」

 

「返したぁ!?」

「逃げろ!爆弾だ!」

「避ければ…」

「馬鹿野郎!それは時限爆弾だ!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈Mr.4〉“キャッチャー殺しのベーブ”懸賞金320万ベリー

 

Mr.4の愛銃“犬銃ラッスー”

 

 

 

「“カラーズトラップ”『闘牛の赤』」

 

「テメェら、どこ狙って撃ってんだ!敵は目の前、地面じゃねぇぞ!」

 

「これ以上、街を傷つけられると社長に怒られるわ。あなたたちは赤いマントに突進する牛のようにその『闘牛の赤』に攻撃したくなるの」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈ミス・ゴールデンウィーク〉“自由の旗手マリアンヌ”懸賞金2900万ベリー

 

 

 

「出撃!“キャンドルチャンピオン”!!」

 

「なんだありゃ!」

「蝋の鎧?」

 

「それだけじゃないガネ。“チャンプファイト”!!『おらが畑』!!!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈Mr.3〉“闇金ギャルディーノ”懸賞金2400万ベリー

 

 

「来る日も来る日もレッスンレッスン!!磨き上げたオカマ拳法、おめェらごときに破れるものじゃないわよーう!」

 

「あのオカマ、他のやつと違って一人だぞ!」

「ああ、さっさと囲んで倒すぞ!」

 

「囲んだって無駄よーう。回る!回る!あちしは回る!!このトーシューズが情熱で燃え尽きるその日まで!!オカマ拳法!“あの夏の日の回想録”!!!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈Mr.2ボン・クレー〉“荒野のベンサム”懸賞金3200万ベリー

 

 

 

「あら、あなたたち、私と戦う気?」

 

「当たり前だ!」

「たった女一人に負けるかよ!」

 

「そう、すぐ終わらせてあげる。“トゲトゲ針治療(ドーピング)”!!“スティンガーフレイル”!!!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈ミス・ダブルフィンガー〉“毒蜘蛛のザラ”懸賞金3500万ベリー

 

 

 

「“殺しの手引き”その一、『標的は弱者より消すべし』」

 

「弱者が何だって!」

「ヒャッハー!殺せ!」

 

「確かにこの数は厄介だ。だが、全て、微塵に斬り裂いてやるっ!“微塵斬(アトミックスパ)”!!」

 

B・W社オフィサー・エージェント〈Mr.1〉“殺し屋”ダズ・ボーネス 懸賞金7500万ベリー

 

 

 

 

次々と各地の海賊が倒されてゆく。彼らの中には相対するオフィサー・エージェントよりも懸賞金が高いものもいた。しかしながら、懸賞金=強さではない。あくまで世界政府が定めた危険度であり、クロコダイルに従うようになってからはエージェントたちの懸賞金は上がっていない。

 

「はあはあ、同じ“自然系(ロギア)”なのに!」

 

「悪魔の実は訓練次第ではいくらでも戦闘能力になる。おれと能力にかまけただけのお前では海賊の格が違うのさ。沈みな!“砂漠の向日葵(デザート・ジラソーレ)”!!!」

 

“王下七武海”B・W社社長〈Mr.0〉“砂漠の王”サー・クロコダイル 元懸賞金8100万ベリー

 

 

こうして、数年にかけアラバスタを苦しめていた海賊たちはクロコダイル率いるB・W社により討伐された。コブラは国を救ってくれた礼として何か欲しいものはないか、と尋ねると

 

「アラバスタは良い国だ。フフ、拠点にしてかまわねぇか?」

 

コブラは即座に了承した。他の海賊であれば、首を縦に振ることはなかっただろう。王下七武海であり、海賊狩りを日頃からしていて民衆から英雄視されていたクロコダイルならでは、の話だ。

 

その後、クロコダイルはアラバスタの首都アルバーナにB・W社の本社を構える。アラバスタの復興が終わるまでは作業を手伝い、終わった後は職が見つかるまで面倒を見るなど手堅い支援を行った。そうしたことにより、アラバスタではクロコダイルを絶対視する傾向がある。

 

クロコダイルの庇護下にあることでアラバスタは外敵からの影響が受けにくく、順調に経済発展を遂げていった。

 

◇◇◇◇

 

「あのときは本当に酷かったね」

 

「ああ、だが、クロコダイルさんのおかげで助かった」

 

「でも、いきなりなんでこんな話を?」

 

「あのとき、俺たちは終わったと絶望した。だが、クロコダイルさんはそんな絶望から救ってくれた」

 

「そうね」

 

「クロコダイルさんは俺たちの英雄(ヒーロー)だ。負けねぇ、そうだろ」

 

「…ええ、そうね!」

 

コーザの言葉にビビは声をあげる。そして、同時に少しでもクロコダイルの強さを疑った自分を恥じた。

クロコダイルは必ず帰ってくる

そう確信があった。

 

 

 

「ふう」

 

コーザは吹っ切れたビビの顔を見てから部屋を出て行く。

 

「さて、やることが多いな。さっき、あった地震で倒壊した建物の修復。軍隊だけじゃ足りんな。B・Wの方に依頼を出して、と。あ、そういや、副社長の方も社員をいくらか連れて出て行ってたな。オフィサー・エージェントの誰かが残っていたら助かるんだが」

 

コーザは謎の地震の復旧作業に向け案を纏めていく。原因は遠く離れた地、マリンフォードで白ひげが起こした振動によるものだが、コーザには知る由もない。

 

「こ、コーザ様!」

 

「どうした?」

 

「砂漠の方に人が落ちてきました!」

 

「何!?すぐ医官の方に回せ!」

 

人が落ちてくる、そんな経験、今までにない。

連絡してきた兵士に治療するよう命じる。

 

「で、どんなやつが落ちてきたんだ?」

 

「こちらの女性です」

 

コーザは落ちてきた人物を見る。身体は傷だらけで痛々しい。服装を見るにこの国の国民では無さそうだが、コーザには女性の顔を見たことがあった。

 

「こいつは、確か。至急、B・Wの方に連絡を」

 

「B・Wにですか?なんと」

 

「元社員が落ちてきた、とな」

 

その女性は、B・Wの元社員で現麦わらの一味、霜月くいなであった。




久しぶりにビビ、というより過去回ですね。
頂上戦争より書きやすい、だと…
地味にMr.3以外のオフィサー・エージェント初登場回。
ほんとはもうちょい、早めに出したかった。



大学受験終わったらパソコン買うんだ…スマホはどこでも書けるんすけど、パソコンの方が書きやすい…


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8話 頂上戦争④

今回は4000字超え


「失敗してんじゃねぇか」

 

「フフフ、だからやめておけと言ったんだ」

 

白ひげ海賊団と傘下の海賊を狙った作戦だったが失敗に終わった。逆に白ひげ海賊団の結束を強めることになってしまった。

 

湾内を見れば、“白ひげ”が島そのものを傾け、巨人海兵であり海軍中将のジョン・ジャイアントを一撃で仕留めていた。

さらに地震の力は海兵を押し退け処刑台へと迫っていく。

それに動いたのは二名の七武海。

 

「ちっ、モリア、手伝え」

 

「キシシシ!しょうがねぇな!」

 

「“砂嵐”!!」

 

「“角刀影”!!」

 

砂嵐と影の刃が合わさりその一撃を止めた。

“白ひげ”の一撃を止められたことに白ひげ海賊団の面々は驚愕の声を上げた。

 

「七武海のクロコダイルとゲッコー・モリアだ!」

「クロコダイルとモリアと言えば、昔同盟組んでオヤジと同じ四皇のカイドウと戦りあったっつう話だ」

「昔の同盟相手だから連携もできるってことか」

 

そして、“白ひげ”は自身の明確な衰えを感じていた。いくら攻撃の余波であり、クロコダイルのスナスナとモリアのカゲカゲの累によるものだとしても、昔は止められなかった。さらに言えば、モリアは“四皇”カイドウとの戦いで精神的ダメージを受け覇気が使えなくなるなど弱体化していた。

 

「あのおっさん、敵も味方も関係なしか。氷の下に落ちるところだった!」

 

一方、麦わらのルフィ。グラグラの実の影響で海に落ちかけていた。それを愚痴りながらもジンベエたちと戦場を駆けていた。

 

「邪魔がなくなった!これで上に行ける!」

 

白ひげの方に海軍が集中しているため、広場への道が開けた。これ幸いとルフィは腕を伸ばし、広場へ上がろうとする。しかし、それは氷の下から突如現れた壁に止められてしまった。

 

「な、何だ!?」

 

思わず戸惑いの声を上げる。しかも、壁が現れたのは一点だけではない。湾内を囲むように一斉に現れた。

 

「な、なんだ、この壁!?」

「戦わねぇ気か、海軍!」

 

海賊たちが大砲や覇気を纏った拳で攻撃を仕掛けるが傷一つつかない。

白ひげも振動を叩きつけるが、凹みはするものの破壊には至らない。

 

“白ひげ”ですら破壊できないこの壁こそが、海賊たちを一網打尽にするために作られた海軍側の“切り札”、『包囲壁』だ。

 

「おい、どうなってるんだ!!完璧に作動させろ!!」

 

「それが、包囲壁がオーズの巨体を持ち上げきれず…!それにどうやら、奴の血がシステムに入り込んでパワーダウンしている模様です!!」

 

センゴクは策にできた穴に歯軋りする。しかし、この戦いのなかでオーズの巨体を退かしている暇はない。

 

「締まらんが…!始めろ、赤犬!!」

 

ならば、穴を突かれる前に殲滅するまで。

 

「氷を溶かして足場を奪え!」

 

「海賊は皆殺しじゃあ!“流星火山”!!」

 

包囲壁で逃げ場のない海賊たちに溶岩郡が降り注ぐ。避けても足場である氷の大地が溶け海へと戻り逃げ場を失っていく。

 

「畜生!」

「俺たちの船が…」

「何十年も白ひげ海賊団を支えた船…モビー・ディック号が……!!」

 

白ひげ海賊団の半身とも言える船、モビー・ディック号が業火に包まれ沈んでいく。

 

(……すまねぇな)

 

白ひげは心の中で、今まで支えてきてくれた船、仲間であるモビー・ディック号に詫びを入れる。

 

 

「熱い!海水がマグマで煮えたぎっている!」

「おい、あれ!!」

 

海賊の目に見えたのはこちらに狙いを定めた大砲。地上であれば逃げれるが、あいにく足を支える大地はすでに溶かされた。

 

「くそ、オーズの残した道しかねぇ!」

 

活路があるとすれば、オーズの残した道しかない。

 

「ジンベエボーイ、麦わらボーイは!?」

 

「さっきまで隣に…あそこじゃ!」

 

ルフィもそう考えた。

ジンベエが包囲壁がない唯一の突破口を見れば突っ込んでいくルフィが見えた。

そして、砲撃で狙い撃ちにされた。

 

「それ見たことか!!!」

 

予想通りの結末にイワンコフは大声を上げツッコミを入れた。

 

「一つ穴が空いてるところを敵が疎かにするワケナッシブル!むしろ罠よ!」

 

「ゼェゼェ、でもなんとかしねぇ…と!あいつら、もうエースを処刑する気なんだ!」

 

先程、エースの処刑開始の通達があった。それがルフィを焦らせる。

とはいえ、包囲壁の穴は砲撃のせいで一度に数人しか通れず、抜けたところで海軍全勢力が待ち構えている。

 

「ハア…ハア…、頼みがあるっ!!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

「ジハハハ!盛大にやってるじゃねぇか!」

 

「金獅子!?」

「どうやってここに!?」

 

包囲壁内に突然降り立ったのは“金獅子のシキ”。

 

「どうって、考えりゃ直ぐ分かるだろ。超えてきたのさ」

 

事もなさげにシキはそう言う。

シキはフワフワの実を食べた浮遊人間。空を飛ぶなど雑作もない。それがたとえ、マグマが降り注ぐ空だとしてもだ。

 

「しっかし、色々としてくれたな。ジハハ、たっぷりお礼をしてやらねぇとなァ!!」

 

「っ!!来るぞ!」

 

「“獅子威し”!!“地巻き”!!」

 

獅子の形に変化した地面が海兵を地中に沈めようと襲いかかる。

 

「ーーーここで戦力を減らされちゃあ、困る」

 

地面の獅子が()へと変わって砕けた。

 

「七武海にも少しは骨がありそうな奴がいるじゃねぇか。どうだ、政府の犬なんて辞めて俺の手下にならねぇか!?」

 

「ほざけ」

 

「残念だ」

 

次の瞬間、斬撃と砂の刃が空中で乱舞した。

 

 

 

 

 

「リトルオーズJr.!!」

「まだ息が残っていたのか!?」

 

七武海の猛攻撃を受け地に伏せていたオーズが起き上がった。

さらに驚くことが起きる。

 

「なんだ、あれは!!」

「水柱?!」

 

突如、湾内から海流が飛び出した。勢いを弱めることなく、包囲壁を飛び越え広場へと着弾した。

その中から現れたのは折れたマストを手にしたルフィだった。

 

「あららら……とうとう此処まで来たか。だが、お前にはまだ早いよこのステージには」

 

「堂々としちょるのぅ……ドラゴンの息子ォ…」

 

「怖いねェ~……その若さ」

 

海軍最高戦力である大将たちはここまできたルフィの心意気は認めるものの焦りはない。

なぜなら、戦力の差が激しすぎるからだ。これではジャイアントキリングも起こしようがない。青雉が言う通り時期尚早だ。

 

「エースを返してもらうぞォ!!」

 

荒げた声の勢いと共にマストを振りかざした。青雉が凍らせるが、ルフィはそのまま“ゴムゴムのスタンプ乱打“でマストを破壊しつつ青雉の氷の身体を砕く。

しかし、覇気のこもっていない攻撃に身を晒されたところで青雉に痛くも痒くもない。

それはルフィにもわかっていた。

“覇気”の知識すらもないルフィにとって自然系の能力者は触れられない、攻撃を当てられない無敵の存在。勝てたことがあるのは、ゴロゴロの実の雷人間であった空島“スカイピア”の元唯一神であるエネルのみ。その勝利もゴムゴムがゴロゴロの天敵であったからだ。

 

「“ギア2”!!」

 

だからこそ、ルフィは武器にもならないマストを目潰しのために持ってきた。だが、考え不足が否めない。ギア2で加速し三大将の横を走り去るが、

 

「んん〜、遅いねぇ」

 

ピカピカの能力者である黄猿には遅すぎる動きだ。光の速度で蹴られたルフィは大きな砂埃を立てながら転がっていく。

 

それを見ながらセンゴクは指示を飛ばした。

 

「やれ!」

 

「はっ」

 

目的であるエース処刑を開始しようとする。

ルーキーである麦わらのルフィが広場に入るために使った海流はジンベエのものであろう、とセンゴクはあたりを付けていた。そして、センゴクはジンベエがそれをあと何回使えるかがわからなかった。つまり、時間さえあれば広場に海賊を送り出される可能性があるということ。未だに映像が世界につながっているのだけが気がかりだが、手遅れになる前にした方がよい、という決断だった。

 

エースの首に凶刃がふるわれようとした瞬間、

 

「させねぇよい!!!」

 

猛スピードで空を駆けてきたマルコがそれを阻止する。その勢いのままエースを奪還しようとするが、

 

「お〜やるねぇ〜。でも、“火拳”は渡さないよ〜」

 

「っ!?そう簡単にはいかねぇかよい。“鳳凰」

 

「“天叢雲剣”!!」

 

「──印”!!!」

 

マルコは身体を反転させ黄猿の迎撃を開始する。対する黄猿は天叢雲剣で攻撃を受け止めた。

 

 

「3人の侵入者を許した!」

「能力者は壁を超えてくるぞ!!」

 

包囲壁を超えてきたルフィ、マルコ、シキはいずれも悪魔の実の能力者だ。海兵は能力者の壁越えを警戒し上空へと視線を向ける。

 

「グララ、ジョズ、“切り札”を使うぞ。準備しろ」

 

「了解」

 

白ひげは最後の切り札であり隠し札を切る準備を指示する。それを皮切りに白ひげ海賊団たちはオーズに向かって泳ぎ始める。

 

「オーズに向かって海を渡れェ!」

「広場へと渡るんだ!!」

 

包囲壁にて指示しているストロベリー中将は白ひげ海賊団の姿を見て格好の的だと笑い、砲撃を命じる。そのときだった。湾内から気泡が出てきたのは。

 

「!!?」

「なんだと!!?」

「まさか!!船が!コーティング船がもう一隻現れました!!」

「しまった!ずっと海底に潜んでいたんだ!」

 

完璧にその可能性を失念した。最初に現れたモビー・ディック号に白ひげ海賊団の主戦力たる隊長たちが乗っていたからこそ、もう船はない、と誤認してしまったのだ。

 

「ウチの船が出揃った、と言った覚えはねぇぞ」

 

白ひげは不敵に笑う。

 

「“外輪船”です!突っ込んできます!」

「撃ち沈めろ!モビーディック号のように!」

 

突貫してくる外輪船を沈めるよう砲撃を集中させる。誰もがこう命じるだろう。しかし、処刑台から戦場を見渡していたセンゴクだけは血相を変えた。

 

「いかん、船じゃない!オーズを狙え!」

 

「もう遅い」

 

「いくど、みんな!ウオオオオオオオ!」

 

オーズが船を掴み広場へと船を引き上げた。外輪船の外輪が周り広場の三分の一ほどの長さを進んだところで止まった。

 

「ネズミの穴一つ抜け目なく狙ってきおった!包囲壁はわしらの邪魔になりかねんぞ!!」

 

ガープは自軍の地形の有利を失い、不利にまでなったことを思わず呟いた。

 

「まだ首はあるか!?エース!!」

 

白ひげはエースの生存を確認する。確認が終わると広場へと侵入した。

 

「“白ひげ”が広場に降り立ったぁ〜!!」

 

「下がってろ、息子たち。ウェアアアアア!!」

 

グラグラの力を込め薙刀を振るい海兵たちをなぎ倒し、叫んだ。

 

「野郎ども!エースを救い出し!海軍を滅ぼせェェェ!!」

 

『うおおおおおお!!』

 

海賊の咆哮を耳にセンゴクは海軍の完全勝利は不可能であると苦い顔をした。

 




カイドウVS赤髪の戦いにバロックワークス絡ませるという案もあったけれど流石に実力差が…ので没に

次回予告

「俺ァ、白ひげだァ!!」

広場に乗り出した白ひげ海賊団。海軍の全戦力を持ってしても止められない。一方、クロコダイルとシキの戦いは激化していく

9話 頂上戦争⑤

お楽しみに


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