衛宮士郎で逃亡者 (朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次))
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冬木の章・完 いま語ろう!衛宮士郎18年の歴史!!

腰のリハビリの調子がいいので初投稿です。

いくつかの二次をこれまで書いていましたが、そのテキストが入っているフォルダに入っていた短編です。
いつ書いたかも謎です。

SNを無理やりはっぴーえんどにしたご都合主義でございます。
いつもの様に作者の悪癖により下品でギャグ時空寄りでございます。

アンチタグをつけたのは、カッコいいさーばんと達の退場が非常に雑だからです。
ごめんね。悪意はないんだよ。でもえごめんね。



「いいか、桜。年頃の娘が男を勘ちがいさせるようなマネはするな」

「先輩、勘ちがいってどういうことですか?」

「そ、その、なんだ、通い妻みたいな今の関係の事だ!」

「通い妻っ······そ、そういう風に見えるかもしれませんがっ、えっと、私、勘ちがいされても困りませんっ!」

「おっと、そう来ちゃう······じゃ、じゃあ俺も言わせて貰うが、男女のアレという意味でも桜、お前はどストライクだ。彼女がお前みたいな女なら最高だって思うっ!」

「せ、先輩っ!」

「セイセイセイ、待ちたまえ桜。焦るな。だが問おう。もし俺がお前を好きだとして、実は俺がド変態だったらどうする? 遠坂みたいな洗濯板なんか興味がねえ! 桜の豊満な桜ッパイが大好きだみたいな! あまつさえ隙あらば揉みしだいてやろうと考える類いの!」

「······す」

「ん? なんだって?」

「そ、そんな先輩でも好きです、愛しています!」

「な、なんだとォ!? な、なら揉むぞ? 今ここで!」

「も、揉んだらいいじゃないですか!」

「ほ、ほほう······ほら手をワキワキさせて近づけるぞ? いいのか? 桜ッパイ寄せて両成敗するぞ?」

「ふふん、そんな事言って先輩? そんな勇気なんてないんでしょう? 手が震えてますよ?」

「言ったな! 桜お前、考えるだけならいい。だが口に出したならもう戦争だろうがっ!」

「やーい先輩のい・く・じ・な・し♡」

「ヤロウオブクラッシャー!」

「きゃー♡」

 

 さて、いきなり何を言ってんだお前と思われた方も多くいるだろう。

 だがすまない。

 これをまずは知ってほしかった。

 俺のやってしまった取り返しのつかない出来事を理解してもらうためには……。

 

 衛宮士郎こと俺が、何故逃亡生活をしているのか。

 その理由がこれなのだ。

 これが始まりである。

 

 では話は遡る。

 実はこの俺、前世がある系男子である。

 まるで昨今流行の異世界ラノベの導入みたいに。

 

 いや実際そんな感じだった。

 社畜街道を爆走していた俺だが、当然の如く過労で逝った。

 享年32歳。短い人生だ。

 

 だがその死に方が酷かった。

 オフィスがあるのは新宿の中心にあるテナントビルの18階。

 俺が勤務する会社は17階と18階のフロアを占有しており、日に何度か昇り降りしている。

 書類のやりとりとかな。

 

 だがそれなりに多くの人間が勤務するオフィスで色んな人間が出入りしている。

 俺の様な正規社員もいれば、派遣社員もいる。

 なのでそれらの兼ね合いから、基本的に勤務時間内は出来るだけエレベーターを利用しないみたいなルールがあった。

 なので連絡階段を使って昇り降りする。

 

 過労で慢性疲労状態の俺は、17階から上に向かって昇っている最中にめまいがして、後ろにコロリンと落ちた。

 それだけなら怪我で済んだだろう。

 だが何故かけっこうな勢いで転がり、17階の踊り場まで落ちた。

 

 するとタイミング良く、17階の廊下へ続く扉が開いた。

 誰かが階段を使おうと開けたのだ。

 なので本来はドアで勢いが殺されたはずなのに、俺はコロコロと廊下に出た。

 

 そこにタイミング良く、悪く?

 宅配便業者がやってきた。

 ブラックと噂される大手の。

 その噂に違わず彼は台車を物凄い勢いで押しており、結果俺は台車に撥ね飛ばされ階段の方に。

 

 今度は16階側、つまり下に向かって階段を転がり落ちた俺。

 すると······みたいに、ワンフロアごとに同じような偶然が重なり、結果俺は1階まで同じように転がり続けた。

 そして外に続く自動ドアが開き、漸く勢いは止まった······と思ったら、そこにトラックがやってきてトドメを刺されたのである。

 

 最終的に空中をすっ飛びながら、俺の頭の中では「ピタゴラ~スイッチ♪」って流れたわ。

 まあその後、したたかにアスファルトに叩きつけられゲームオーバー。

 問題はその後の話だ。

 

 雲の上にいたのだ。

 そこにはいかにもテンプレ神様みたいなジジイがいて、涙を流して笑い転げていた。

 横には大きなモニターがあって、俺の間抜け過ぎる死にざまが何度も何度も流れている。

 

 神様は今日も世界を管理していたが、やはり悠久を生きる神様は退屈を覚えると言う。

 そこに何か普通では起こりえない出来事があると、神様パワーで映像が記録され、それを娯楽として見ると言う。

 で、俺の死に方はどんなふうに計算しても起こりえない事象らしい。

 これが起きる確率はなんパーセントみたいな数字が出せない程のレアだって。

 レアって······。

 

 なので楽しませてくれたお礼に転生させるとか言う。

 なるほど、テンプレっぽいが貰えるモノは貰うぞ。

 だって死んでるんだもの俺。

 

 でだ。

 転生とくればもう剣と魔法のパラダイスだろ?

 奴隷ハーレムでウッハウハみたいな。

 やったぜ。ラッキー。そう思った。

 

 だからチートをひとつくれるって言うから、北斗の拳に出てくる奥義とかそう言うの纏めて使える達人にしてって頼んだ。

 剣と魔法の世界だとて、最終的には肉体だと思うの。

 万年社畜で背が高い癖にもやしみたいな貧相な肉体の俺からすると、筋肉モリモリマッチョメンに憧れるの。

 

 で、北斗も南斗も満遍なく使える技能を貰っていざ転生!

 そしたらお前、物心ついて少ししたらいきなり孤児だもの。

 町全体が火の海になって、そのど真ん中で俺ポツーン。

 北斗の恩恵のせいで身体は丈夫だもんで、傷ひとつねえわ。

 

 そしたら黒ずくめのオッサンがやってきて、生きててくれてありがとうみたいな。

 何言ってんだオッサンとか思ったけどさ。

 なんやかやあって俺はそのオッサンに引き取られた。

 

 なんだよコレ。

 剣と魔法のファンタジーちゃうんかい。

 おもくそ現代やがな。

 

 まあそれでオッサンこと衛宮切嗣の養子になったんだが。

 で、衛宮士郎となった俺。

 けどなあ、割とあっさりオッサン死んだんだよ。

 僕は正義の味方になりたかったとか弱々しくいうし。

 

 でもま、人並みの暮らしをくれた恩もある。

 だから言ってやったんだ。

 正義の味方? 何言ってんだ親父、俺は救世主になってやるぜってね。

 あんな街1つ焼ける災害が起きるんだ。

 いつ世紀末になってもおかしかねえ。

 だったら北斗と南斗の先人に倣い、世紀末救世主か世紀末覇者、どっちかになったんぞと。ありがとうと弱々しく笑う切嗣。お陰で変な刺青みたいのされたけどよ。

 

 中二病も大概にせえよって話だけど、割とノリノリだったね当時。

 まあそれで立派な屋敷で独り暮らしさ。

 一応後見人として藤村組ってヤクザの親分が名乗り出てくれてさ。

 親父と関わりがあったらしい。

 娘の大河も親父が初恋みたいだしな。

 

 なんで独り暮らしつっても大河が入り浸るから騒がしいが。

 乳揉んだろかマジで。

 こいつ無防備過ぎて困る。

 こっちは人妻モノのエロ本で抜く思春期やぞ。

 

 まあそれでも二度目の義務教育に通っていた俺。

 中学の時かな?

 けっこうヤンキーがカツアゲとかするような時代でさ。

 うちのクラスの生徒がやられたんだよな。

 

 その現場に出くわしたから、そりゃね。

 助けるでしょ。

 こっちは北斗神拳伝承者、しかも無想転生を習得後くらいの感じだし、当然本気は出せないけど。

 で10人からいるヤンキーをやっつけてクラスメイトを逃がした。

 そいつ割と仲がいいってか話すやつで、間桐慎二ってんだけどさ。

 

 で、その時はそれで済んだんだけど、ヤンキー共に粘着されてさ。

 ある日の夜、買い忘れた食材をとスーパーに向かった。

 そしたらお前、後ろからバイクで撥ねて来やがった。

 まあそれで死ぬはずもないんだけど、流石に不意打ちで受け身が上手くいかず、民家のコンクリートブロック塀に肩を強打して脱臼したんだよ。

 

 一応北斗神拳で治癒力をあげる秘孔をついたけど、数日は肩を吊ってたんだな。

 そしたら慎二の妹の桜が飯を作ったり身体を拭いてくれたりとか甲斐甲斐しく世話してくれた。

 慎二曰く、俺に憧れてたんだと。

 まあこの身体能力だ。あちこちの運動部に助っ人に入ったりしてたんだが、その練習風景を桜は見てたんだとさ。

 甘酸っぱいねえ。

 

 その流れが現在まで続き、いつの間にか桜がうちで家事をするみたいなサイクルに。

 それを揶揄ってたんだな。

 ほらムラムラする時あるじゃん。

 だからさっさとエロ本でスッキリしたいのに、その日に限って桜は中々帰らない。

 で、むしゃくしゃしてさ。

 

 そしたら桜、お目目ぐるぐるしながら売り言葉に買い言葉みたいな感じで、俺が好きどころか愛してるとか言う訳。

 これで引くに引けなくなった俺。

 そうだろ? 可愛い後輩だと思ってたら、ガチな感じだった。

 それを揶揄ってたんですフヒヒーとか公開処刑みたいなもんじゃん。

 で、乳揉むぞ変態だぞ~って遠ざけようとしたら、気が付くとブラまで奪って生チチを鷲掴みしていた。

 

 何を言っているのかわからないと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……。

 いや乳を揉んでたんだが。

 勢いって怖い、素直にそう思った。

 

 手を後ろに回してブラのホックを外そうとしたら「あ、先輩、フロントホックです」と返され、「お、そっか」とやり直して外し、散々揉みしだいた後、あまつさえ先っぽを咥え、膝枕されながら俺は桜に頭を撫でられていた。

 愛情だとか包容力だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……。

 バブ味と言うもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……おぎゃあ。

 

 さて前置きはこんなもので。

 実はこの世界、とっても危険なんだな。

 既に事後ってか、色々終わってるからこうして呑気に桜でオギャってたけれども。

 

 北斗神拳を選んで正解だったわ。

 いまの俺、二度目の高校生やってんだ。

 慎二とも一緒にな。

 あいつ高校デビューでリアルハーレム目指すとか色々こじらせてるけども。

 

 それはそれでいいんや。

 二度目の高校生活たのすぃ。

 元オッサンとしては楽しい事ばかりよ。

 クラスメイトも可愛い女多いしな。

 

 綾子とかモロに好み。

 エッチな事をしてもサバサバしてそうで。

 そう言うの好き。

 

 でだ、問題はだよ?

 俺、北斗神拳伝承者モドキだし、割と色々出来ちゃうんだな。

 親父に教わった超能力でMMORPGみたいなマネも出来るし。

 

 見ただけのモノを解析したりできるんよ。

 ついでにコピーしたりな。

 ウケル。

 包丁とか買わなくていいとか。

 ついでに刃こぼれしない様に強化とかも出来るすぐれものよ。

 

 だから学校の備品とか壊れていると修理とかしてやるんよ。

 一応国立大目指しているから教師たちの心証とか良いに越した事はないだろうし?

 この辺は二度目の人生の利点やな。

 

 だって理系の進学校を出て北関東にあるそこそこ偏差値の高い国立大に現役合格してるしね。

 だから普段授業で習う部分は別に教科書開くまでも無くノートも取らず余裕だもの。

 なんで家では志望校に合格するための勉強だけで済む。

 いやー楽ちんですわぁ······。

 

 で、その日はストーブの修理をしてたんだが、けっこう手こずってすっかり遅くなっちまった。

 そしたらお前、真っ暗のグラウンドで赤と青の閃光が見えるやんか。

 映画のAKIRAのバイクシーン知ってる?

 テールランプが糸を引いたように見える演出。

 あんな感じでさ。

 

 興味を惹かれて行ってみれば、赤い槍を持った青い全身タイツと、浅黒い白髪の赤コートがバトルよ。

 ひゅんひゅーんって。

 やっべカッコいい……とか思って近くで見てたんだな。

 野球のバックネットの横あたりで。

 

 そしたら青タイツがこっちに気付いて「なんだァ……てめェ……」みたいな感じで睨む。

 ついでに遠坂凛もいたみたいで、何やってるの衛宮君みたいな感じ。

 いや何やってんのはお前らのほうやで?

 グラウンドのあちこち穴あいてるがな。

 

 で、青タイツが目撃者は消すみたいな事をほざいて突っ込んできた。

 槍で突きとかガチすぎて草。

 でもほら、そこは北斗神拳伝承者よ。

 殺気を感じた時点で転龍呼吸法で闘気を練ってたもの。

 

 明らかにこいつらヤバいって思ったし、出し惜しみは無いわ。

 命あっての物種。

 親父が生きていた時に口が酸っぱくなるまで言われたわ。

 超能力習う時にな、こういうの覚えたらヤバいのに付き纏われるかもしれんから、常に備えておくんだよ士郎って。

 親父ってゴルゴみたいな事言うんよ。

 

 で、槍を首を逸らして躱した瞬間、北斗七死星点をアタァ! とネ。

 極限まで気を練ってるから、それを北斗七星の形に秘孔を突き、あまつさえ闘気を中に流し込むもんで、言ったらガード不能だわ。

 その青タイツ、なんか喚いていたけど、グロい感じであべしってたな。

 

 そしたら赤コートが攻撃してきてさ。

 なんか白と黒の短剣? みたいなのビュンビュン投げてくる。

 でもなぁ······北斗神拳相手に飛び道具は駄目よ。

 

 二指真空把で全部カウンター。

 投げて来た速度のまま相手にそのまま戻っていくからね。

 百裂拳がポピュラーな技である北斗神拳にさ、20や30の短剣とかあくびが出るレベルだわ。

 そんであちこちブッ刺さって青い顔している赤コートに、岩山両斬波を叩きこんでフィニッシュ。

 

 そしたらお前……遠坂凛ガチ泣きですわ。

 どうしてくれるの衛宮君! とか。

 いや知らんけども。

 セーハイセンソーガー! とか。

 ほんと知らんけども。

 

 でもキャラ崩壊させてギャン泣きしてるからさ。

 仕方ないし背負って家に連れ帰ってさ、事情を聞こうかなと。

 そしたら桜がいてな。

 先輩……浮気ですかって。

 

 いや浮気も何もこの時点でそう言うアレは無い訳で。

 なんかベタなヤンデレヒロインみたいにハイライト消えていたけども。

 で、鬱陶しいから事情を話したら、桜も先輩何やってんですかってキレるし。

 いや知らんし。

 

 そしたら漸く落ち着いた遠坂が教えてくれたんだよ。

 何十年だかに一度、聖杯戦争ってのをこの冬木市でやると。

 7人のマスターに7人のさーばんと。

 それがバトルロイヤルをして、最後まで残ると何でも叶う聖杯が貰えますみたいな。

 

 で、御三家とか言う名家の一つが遠坂で、後は間桐とアイン……なんとかとか言う家が毎回参加してるんですわ。

 だから遠坂からは凛が出ると。

 ところが通りかかった俺が片手間にさーばんとを倒しちゃった。

 どないすんのコレ、みたいな?

 

 しかも俺の北斗神拳を見て、お前魔術師だろ……ショバ代払わないモグリ魔術師かよみたいな空気に。

 いや知らんし。

 俺の北斗神拳は体術だし。

 闘気だって純粋な生命エネルギーだし。

 

 とか色々いい訳してたらさ、どうやら俺の超能力が魔術らしい。

 なので俺、魔術師だったらしい。

 けどなあぶっちゃけ北斗神拳>超能力だし、便利な家庭の知恵みたいな扱いだしなぁ……。

 

 しかし遠坂に間桐……間桐ねえ……間桐って桜やん!?

 みたいな。

 瞬間、桜の目がすげえ泳ぎだして草。

 お前チラチラ見てただルルォ?

 な、なんで見る必要あるんですかねみたいな。

 

 だから俺は紳士の様なスマイルで言ったんだ。

 吐けって。

 正直に言うならおっちゃん怒らんからって。

 そしたら今回の間桐陣営のマスターは桜だってさ。

 

 でも慎二がなんかよく分からん方法でさーばんとをテイムしてるんだと。

 なんでもジジイの言う事は絶対みたいな。

 でもジジイやん? 無視すりゃええやん。

 みたいに言ったら、出来たらしてますよウワーンみたいなガチ泣き。

 

 情緒不安定すぎひん?

 なんか桜泣かすとかわりゃシバくぞみたいに遠坂キレるし。

 そしたらなんと桜は元遠坂だったらしい。

 養子っての? 俺と一緒やん。

 

 で、ヤケクソになったのか、逆らえない理由ってのを桜が暴露。

 なんか養子で間桐に行った時、桜は幼稚園に通うくらいの幼女だったんだが、行ったその日に地下の蟲風呂? に落とされて、毎日毎日どう見てもチ●ポにしか見えない蟲に犯され続けて今に至ると。

 で、その蟲が未だに体内にいるもんで、どう足掻いても逆らえないんだと。

 

 リアルでorzの体勢で俺らドン引きするほどの勢いで暴露祭り。

 蟲が聞いてるとか知らないもん! 

 先輩にばれた! もう生きてけない!

 ジタバタ……みたいな。

 

 俺と遠坂、さして親しくも無いのに心がシンクロしたね。

 うぅわぁ~って。

 いやチ●ポ蟲の件はどうでもええんよ。

 だって桜がどうこう言える話じゃないじゃん。

 幼女に選択権ねえだろ。

 

 で、聖杯を手にして妖怪蟲人間から、パーフェクト蟲人間になる為に、お前ら絶対に聖杯取れやみたいな。

 でも慎二がツンデレかまして、お前みたいなポンコツは役に立たないから衛宮のスパイでもしとけみたいな感じで言ったらしい。

 あいつ妹大好きだからなぁ。

 いっつも早く桜と付き合ってやれやクソがみたいな事言うし。

 

 ドン引きしたのがぶっちゃけ方が豪快過ぎてなぁ。

 ヤケクソになったら人間こうなるんやなぁみたいな。

 けど今度は冷静になった遠坂がブチ切れた。

 私の妹になにしてけつかんねんあの妖怪がー! みたいな。

 

 遠坂先輩……いいのよ桜、姉と呼んでくれても……。

 ユウジョウ!

 いいシーンだぁ······。

 ほっこり。

 

 で、まあ。

 俺は言ったわ。

 別に処女厨でもないし、俺は気にしないわって。

 実際そうだよ。

 面倒臭い処女より床上手な女の方がいい。

 

 それにだ。こいつは簡単に解決できるし問題無いのだ。

 そこで708ある経絡秘孔の一つ定神を突いて桜の意識を奪い、彼女の身体を見る。

 定神は錯乱した相手の意識を奪い、次に目覚めた時には身体スッキリとなる素敵な秘孔である。

 で、北斗神拳は気の乱れを見破れる。

 そしたら心臓辺りに淀みがあるんだな。

 あ、これかって事で……北斗神拳奥義天破活殺で身体を傷つけずに蟲を殺したったわ。

 

 天破活殺は北斗の奥義の中でもかなり知名度あるよな。

 だってサウザーを倒した時の技だもの。

 でもこれの真髄は、離れた場所から正確に秘孔を突くと言う部分。

 俺は闘気を練り、淀みの部分だけを狙って撃った事で蟲だけ殺せた。

 

 これで桜問題は解決。

 面倒臭いから暫くここに住めって事にしたわ。物騒だしな。

 慎二に連絡して、桜の着替え半月分くらい持ってこいって頼んで。

 悪態突きながらも持ってくる慎二マジツンデレ。

 

 でも来た途端、兄さん私の下着見ましたねとか桜にグーパンされてて草。

 俺の後輩理不尽過ぎるわ。

 で、慎二にも状況教えてやった。

 桜の中にいた蟲殺したから、ここに住まわせるぞって。

 

 そしたら慎二がデフォルトジャイアンから劇場版の綺麗なジャイアンみたいにクラスチェンジしていた。

 衛宮ありがとう! 桜よかったな! うおおおおお(号泣)みたいな。

 だからか爺が急に消えたのはって。

 なるほど、桜の中のを殺したからそっちも死んだのか。ごめんね。爺。

 

 で、なんやかやあって、この世知辛い状況は終了! 閉廷! 的な雰囲気になったんだが、遠坂が「私だけが割を食ってるじゃない!」とキレた。

 仕方ないので俺にある令呪? とかいうタトゥーあるし、これでさーばんと呼べるって言うから呼んださ。

 

 桜は俺の手にこれが出たからいつも家に来させられてたらしい。

 なるほど、でも関係ないね。それで桜っパイによるラッキースケベが味わえたのだから一向に構わんッ!!!

 そんで呼んだら小柄の女騎士出て来たわ。

 セイバーって言うんだと。

 

 問おう、貴方が私のマスターかとか言うし、そうだって答えた。

 そんでちょっと待っててと彼女を待機させ、直ぐに令呪ごと遠坂にパス。

 マスターは遠坂に。

 これで勘弁してクレメンス……。

 

 遠坂はさっきとは逆のキャラ崩壊してたわ。

 キャッホー! セイバーとか大当たりだわ! って。

 今度は俺と桜と慎二がドン引き。

 人間の欲深さというか、浅ましさ?

 

 まるで対人要素の無いソシャゲで最高レアをガチャで引き、誰も頼んでもいないのにSNSでマウントを取ろうとするキッズみたいだぁ……。

 その後取り繕う様にオホホホ……とかやってたけど残念。

 俺の中の遠坂凛像が確定した瞬間である。

 俺の周囲に綺麗な女性は多々いるが、こいつだきゃぁヒロインでは無いなと。

 

 で、今度はセイバーがキレた。

 呼んでおいてそりゃねえよおっかさん的な。

 でもなぁ、桜問題が図らずも解決しただろ?

 なら別に参加する理由も無いしさ。

 

 聖杯だっけ? んなもんに願う事も思いつかん。

 だってこっちは間抜けな死に方した上で拾った第二の人生を満喫中やぞ。

 しかもまるでエロゲ主人公みたいに未成年で独り暮らし。

 親父が遺してくれた財産のおかげで成人するまで金にも困らん。

 控えめに言って最高やろ。

 

 で、名前? セイバーの。

 アーサー王だって。

 んで俺が名乗ると眉を顰めるのだ。

 ん? ……エミヤ? みたいな。

 

 そしたら10年前にあった前の聖杯戦争に参加して、かつマスターが切嗣こと親父だったわ。

 セイバーから出るわ出るわ恨み節。

 親父外道すぎて草も生えない。

 目的のためにビル爆破とかマジゴルゴやんけ。

 

 しかもセイバーよんどいて英雄嫌いだから会話したくないとか。

 親父ェ……渋く決めてた癖にガキみたいな事してたんやなって。

 ほっこり。

 

 まあセイバーからしたら2連荘でマスターガチャ失敗で恨み節も言いたくなるわな。

 けど遠坂はやる気満々だしいいコンビだろ?

 それで取りあえずは納得してたけど。

 ただ鬼気迫る顔で「聖杯にエクスカリバれ! って命令だけは勘弁な!」って遠坂に迫ってた。

 

 どゆこと?

 聞いてみたら、親父は前回の勝利者らしい。

 けどいざ聖杯をって時に、セイバーに残ってる令呪全部つかって壊せって命令したと言う。

 んでふざけんな約束違うだルルォ!? と血の涙を流してセイバーは座に還ったってのが顛末。

 

 でもおかしくね?

 親父も何か願いがあったから参加したんやろ?

 それを破壊しろ?

 なんか理由あったんちゃうの。

 ゴルゴみたいな親父やぞ。無駄な事しないだろ。

 

 そう言うとセイバー、ガキみたいにそっぽ向きやがる。

 でもなぁ、10年前って俺が孤児になったあの火事の年やろ。

 って、あっ(察し)

 だから親父、生きててくれてありがとう言うてたんか。

 

 うーん……?

 その事を話すと、そこにいた全員で首傾げたわ。

 そうなるとなんかキナ臭いよなぁ? ってなり。

 翌日、元締めみたいな事をしている教会に行ったんだわ。

 遠坂と俺で。

 

 桜は何かあったら困るから、セイバーに守ってほしかったんだけどね。

 が、駄目。

 なんかさーばんとはマスターからあんまり離れられないみたい。

 アーチャー? だけが単独行動ってスキルで自由に動けるみたいだけど、「衛宮君が殺したしなぁ……」って遠坂に嫌味を言われたわ……スマヌぅ……。

 

 困ったなあと思ったら、物陰から目隠ししたボディコン美人登場。

 サクラの守りはお任せをとか何故か俺への忠誠心がクッソ高い。

 彼女、ライダーって言うんだと。

 桜があっさり名前をばらしてたけど、メドゥーサらしい。

 あれだ、見られると石になる系女子の人か。

 

 まあそんなんで教会に行き遠坂がキレ気味で、胡散臭い神父に「聖杯が怪しいから休戦して調べて、これはセカンドオーナーとしての意見よ、もし拒否するなら霊脈は使わせないから」とか言う訳。

 なんかイケボの神父が必死に話を逸らそうとしてたけど、「重ねて言うけど絶対にやって、やらないなら時計塔と聖堂教会に私から連絡をしますから」と押し通した。

 遠坂男前過ぎて惚れそう。女としては無いけど。

 

 トドメとばかりに文句を言うなら10年前の事を克明に調べてもいいんだけど? って。

 いやなんか、俺らサイドから出てくる話とさ、遠坂が神父から聞いた話に食い違い多すぎるんだと。

 前回の遠坂のマスターは凛の親父さんで、最中に死んでるんだわ。

 で、神父は親父さんの魔術の弟子で、普段から家に出入りしていた。

 ついでに言うと神父自身も参加していた。

 

 そう言う関係から、親父さんの死後の身元引受人を神父がしていたと。

 で、聞こえてくる話が実は嘘臭くね? となった。

 そうなると死因とかもホンマかいなと懐疑的になった遠坂。

 まあそんなんで一時休戦になった。

 

 遠坂の付き添いポジで横にいたが、神父が俺の名前聞いて薄く笑いやがった。

 しかも遠坂に譲渡なんかしないでお前が参加すればいいだろみたいな事を言う。

 意味がわからん。

 でも俺の名前聞いて反応してるって事は、前回の時に親父と面識あるって事だろ?

 ますます胡散臭い。

 

 だから帰りがけに遠坂の家に寄って着替えとか持ってもらい、そのまま家に連れ帰った。

 セイバーいようがヤバい気がするんだよな。

 北斗神拳伝承者として馴染んだせいか、直感が鋭いし、感じた時は大概外れないんだ俺。

 遠坂が魔術師としてどんだけ凄いか知らんけど、少なくとも北斗神拳以下だろ?

 だから目の届くとこにいろって言ったわ。

 

 衛宮君……ありがとね……とか目をウルウルしてたな。

 そしたら桜が先輩、そう言うとこですよって睨むし。

 それに何故かライダーからの好感度高いし。

 慎二ブチギレてたし。

 衛宮、そう言うとこだからって。

 お前ら兄妹リアクション一緒やん。

 

 そしたらその夜かな?

 ピンポーンって呼び鈴なって、出てみると全身真っ白の幼女がいた。

 オニイチャンコンバンハって。

 可愛い幼女にお兄ちゃん呼びとかパラダイスだけど意味がわからん。

 で、取りあえずお話があるからそこまで来て言うからホイホイついていった俺。

 

 近所の公園につくと幼女がいきなりガチムチのハート様みたいなのを呼びだして「殺っちゃえばーさーかー!」とか叫んで襲われた。

 けどデカいってだけじゃん。

 とりあえず適当な秘孔をついて頭ボーンさせたった。

 

 マジで見掛け倒しやろって呆れてたら、またむくりと起きて襲ってきた。

 だから別の秘孔であぼーん。

 またむくり。

 またあぼーん。

 

 あのさぁ……天丼もしつこいと笑えないの。

 で、10回以上かな? 繰り返したら金色の霧みたいになって消えたわ。

 幼女が「うそ……」とか絶句してたけども。

 挙句、信じられない程の号泣。

 

 さて深夜の公園。

 高校生男子の前に蹲って泣く幼女。

 これ誰かに見られたら確実にヤバいやつだろ。

 事案ですわ。

 なので仕方ないと幼女を担いで帰宅。

 

 また全員に怒られる。

 幼女を攫うとか衛宮、流石に親友の僕でもフォロー出来ないぞって。

 もうね、バカかとアホかと。

 こっちは襲われとんねん。

 

 なので例の如く全員に説明したさ。

 そしたら幼女がアインなんとかのマスターと判明。

 ちなみにアインと聞くと「やるじゃない……(ニコォ)」が浮かぶ俺。

 まあいい。で、桜が幼女をあやして泣き止ませたのち、彼女の口から諸々の話を聞かされた。

 全員ドン引きよ。

 

 

 俺にじゃないよ?

 俺の親父にだよ。

 この幼女イリヤスフィール、親父こと衛宮切嗣の実子らしい。

 で、10年前にアインのマスターとして親父は参加したらしい。

 けど裏切って親父の妻でイリヤスのオカンを殺し、聖杯も壊し行方知れずになった。

 ね? 親父の所業を羅列しただけだと草も生えないよね。さすがリアルゴルゴ。

 

 で、イリヤスの保護者から親父は悪党だぞーって言われてたから、その息子である俺にヘイトが来た。

 ついでにそいつはマスターっぽい。

 なら無様に殺してやるのさ! 覚悟しな! ってのが流れ。

 

 まあでも親父がとっくに死んでることや、聖杯戦争どころか魔術師云々についての事情も知らなかった俺、流石にそれは逆恨みが過ぎるぞと言うと、イリヤス、もうバーサーカーも死んだしもう駄目だ、おしまいだぁ……みたいな感じで五体投地。

 なんか空気的に俺が悪いみたいなアトモスフィアが漂いだす。

 

 ええ……。勘弁してよ。

 しかもだ。イリヤス、急に体調悪くなった。

 もうヤケクソ加減が天元突破したのか、イリヤスもぶっちゃけだした。

 自分が聖杯だから英霊いっぱい死んだもんでカラダガー! って。

 それ聞いた時の遠坂の顔芸凄かった。エネルみたいだった。

 

 なのでこの空気を変える為に北斗神拳でゴリ押す。

 桜と同じやり口でイリヤスの身体に闘気をドーン。

 ポロンと出て来たよ聖杯。うける。

 でもそれじゃまだ弱ってるから、自己治癒系秘孔をこれでもかと突き、回復させた。

 医療に精通しているトキの側面やな。

 パチモンのトキみたいに秘孔を間違ったりはしない。

 

 まあ結局、イリヤスも保護してとりあえずこの戦争終わるまで大人しくしてろと。

 終ったら家族問題を含め色々話すべと。

 そう言う事になった。

 

 で、つまるところ聖杯戦争を終わらせるには7人のさーばんとを殺さないと駄目。

 既に3人俺が倒している。

 遠坂からの情報から言うと、ランサー、アーチャー、バーサーカーの3人だ。

 で、遠坂にトレードしたセイバーが健在。

 桜のさーばんとであるライダーもいる。

 

 となるとアサシンとキャスターが残りって事。

 なら取りあえずはその2人を倒す事にした。

 セイバーがガンギマリになって一緒に行きますシロウとか言うから、お前は座ってろと。

 だって脳筋過ぎて言う事きかなそうだもの。

 

 遠坂と話し合いをした結果、親父が聖杯を破壊しようとした結果、冬木が核の炎に包まれた!

 だが聖杯を欲して参加するリスキーなお祭りに、それは理屈が合わないと。

 俺証言で、親父がリアリストな暗殺者、つまりゴルゴってのは判明している。

 それはセイバーが言うビル爆破とかも加味すると尚更。

 

 つまりセイバーがどう思うとか関係なく、ゴルゴ切嗣が土壇場で方針を変えるってのは重大な理由があったはずだ。

 ゴルゴ切嗣は立場上勝者なのにだ。

 こうなるともう結論は出てるだろ?

 勝者がその権利をふいにするほどに、聖杯がヤベー何かだった。

 そう言う事。

 

 なので敵対するだろうさーばんとを倒し、安全を確保した上で、聖杯の大元があるらしい所を遠坂たちと調べにいく。

 その後の事は色々はっきりしたら決めようと。

 今回の勝利者は別に遠坂でいいからさって。

 こっちは平和ならそれでいいのだ。

 可愛いおにゃのことえっちな事が出来る世界でいいの。

 

 で、万全を期した上でソロで俺は動いた。

 キャスターとアサシンは、既に結構なさーばんとが脱落したのを知っているだろう。

 なら俺がうろうろするだけで釣れると思うの。

 そう思ってとりあえず寺に向かった。

 

 結局大元の聖杯? がある所をチェックするべきと思ったからね。

 遠坂が冬木の土地を牛耳っている親玉らしいから場所を教えてもらってさ。

 最初渋ってたけど、じゃ同盟解消してガチでもええんやで? と言うと教えてくれた。

 なんか床の上をホバー移動してパンチしてきたけど、北斗神拳相手に何をしてるのかと。

 まあそゆこと。

 

 で、その元凶は山の寺の奥の方にある洞窟らしい。

 そこに向かうと寺の門に橘右京みたいのが通せんぼしてた。

 やたらと長いポン刀を持ってたから、こいつがさーばんとかどうかは知らないけど、敵だろ。

 なので何かを言いかけた瞬間に北斗剛掌波を開幕ブッパで。

 やはり金色になって消えたから正解だったね。

 

 で門を潜るとうちのガッコのセンセが出て来た。

 フードのおばさんと一緒に。

 おばさんの方がキャスターらしい。

 だってセンセがキャスターって呼んでるし。

 

 で、なんかキャスターがワーワー言うて魔法陣だしてきた。

 センセはファイティングポーズで突進してくるし。

 だからセンセの胸にある龍頷という秘孔をついてやった。

 これかなりエグくてさ、全身の痛覚を剥きだしにするんだよね。

 だからどこを触れられても死にたいくらいの激痛が走る。

 

 そしたらセンセ、寡黙なキャラ崩壊させてのた打ち回った。

 痛くて転がる→地面に触れてさらに激痛→さらに……→さらに……

 無限ループって怖くね? ってやつよね。

 センセはなんか武道家みたいな雰囲気醸してるからそれがダメだったね。

 この秘孔で死ぬ訳じゃないから、とっとと気絶すれば楽なのに、なまじ精神力が強いから痛みの連鎖で余計に苦しむ。

 

 そしたらキャスターが五体投地で「ソーイチロー様を助けて」みたいな事を言う訳だ。

 知らんがな。

 誰だよソーイチローって。おばさん、お前は一刻館の管理人さんかよ。

 素直に五代君にしとけや。

 

 でも俺としては別に敵意はないんだ。

 洞窟に行きたいのと、こっちに敵対しないならそれでいいの。

 殺意マシマシなのはそっちだけやでと。言ったさ。

 そしたら敵対しません何でもしますからって。

 ん? 今なんでもするって言ったよね?

 

 なのでセンセの秘孔をといてやり、彼の部屋に蹴り込んで、おばさんと一緒に洞窟に向かった。

 俺が超能力って思ってたのが魔術ってやつらしいし?

 聖杯戦争とやらは魔術の儀式らしいし?

 ならモチはモチ屋ってね。

 魔術のプロであるキャスターにアドバイザーになって貰おうと。

 

 で、行ってみたらエグい事になってた。

 キャスターがドン引きしてたわ。 

 さーばんとが近寄ったら確実にアカン系の聖杯だってさ。

 ま、実際ロマサガとかのラスボスがいそうな雰囲気のグロい空間だったし。

 じゃどうすればいいの? って聞いたら、レイミャクガーとか難しい事を言いだしたから、「あ、無理」って思ったね。

 なので連れ帰って遠坂に丸投げする事にした。

 モチはモチ屋(ry

 

 ただ遠坂の赤コートみたいに、単独行動? が無いとマスターから離れられないさーばんと。

 仕方ないのでセンセを布団で簀巻きにして家に帰ったわ。

 暴れたら面倒だし、でも離すとあれだし。

 そんで帰ったら遠坂が状況の変化についていけずブチ切れてた。

 

 とにかくなだめて話したさ。

 聖杯とやらはなんかくさそうって。

 これでお願いなんかしてもロクな事にならんだろうよ。

 そこで桜の頭の上に電球が出た。

 

 ゴルゴ切嗣こと親父が、セイバーに破壊させたのってこのせいじゃないですか? ってね。

 全員ポムって手を打ったわ。

 というかイリヤスよ、普通に飯食ってて草。

 馴染みすぎかよ。大河となんか楽しそうに喋ってるし。

 まあいいか。仲良きことはなんとやら。

 

 その後の事を話そう。

 え? 駆け足すぎ?

 いやだって消化試合だからええやろ。

 

 というか超能力あらため魔術は専門知識だらけで無理。

 フードおばさんがセンセの安全を確保した安心感からか、自分がコルキスの王女メディアだって言うし。

 ピンとこないけど遠坂がヘヘーッ! って畏まってたから凄いんやろ。

 だからあのグロいやつの処理は遠坂とメディアおばさんに任せたんよ。

 

 おばさんはおばさんで参加動機がいまの幽霊状態から人間になりたいと言う妖怪人間的な理由で、そんでセンセと夫婦になりたいと言う割とほっこりする内容で。

 だからグロいのをどうにか直して、それを叶えたいとさ。

 この街に被害が出ないなら別にいいよって事にした。

 桜が目をキラーンとさせて、私も清い身体に戻してほしいですっ! とか言いだしたがスルーした。

 

 まあそうして、グロいのをどうにかするまでの時間があるもんで、オレは「フッ、夜風に当たってくらぁ」と渋く決めて夜の冬木に繰り出した。

 行先は繁華街の裏通りにある大人のおもちゃとか人には言えない本とかDVDを置いている店だ。

 正直ここ一週間色々ありすぎたし、俺の家はギャルたちが居座っているからさ。

 察してよ。わかるでしょ?

 本を購入してどこかの公園のトイレかなんかで済ませたいんだよ。言わせんな恥ずかしい。

 

 そしたら住宅街を出た辺りで襲われた。

 あの胡散臭い神父と夜なのにキラッキラ光る鎧のDQN。黄金聖闘士のパチモンとか各方面に失礼だよね?

 俺の事を雑種とか呼ぶけどさ、自分から話しかけてきてマウント取りにくるってSNSにいるキッズかよ。

 顔とか良いんだからさ、もっと楽しい事に人生を使おう?

 そう言うと、雑種の癖に我を見下すかおのれェ……とか逆切れ。

 それを見て神父がニヤニヤ笑ってる。

 

 まあそんなんで問答無用で襲ってきた訳。

 あれ? さーばんとって全部で何人よ?

 7人? うーん? こいつはどれなんだよ。アサシンっぽく……ねえなぁ。

 あれか、裏ボス的なアトモスフィアかね?

 その割に闇討ちとか小物臭凄いんだが?

 

 すると金色とレスバトルをしてる俺に向かって神父が遠坂みたいなホバー移動で殴ってきた。

 俺が言うのもなんなんだけど、八極拳ってそう言うのじゃねえから。

 まあでもこの程度だと奥義を使うまでも無いよね。

 トキ譲りの柔の拳で対処可能。

 

 躱す度にギョっとしてたけど、金色が喚いて煩いから、神父には新膻中って秘孔をついて動けなくした。

 これって待てを命令したイッヌに「よし」と言わないと動かないみたいな効果がある。

 

 やーだって金色の背後がフワーンって波打ったと思ったら、槍とか剣とかビュンビュン飛んでくるんだぜ。空気読めよ。

 パラダイスを求めて繁華街目指して橋の上をスキップしていただけなのにこの仕打ち。

 でもまあ赤コートの時と一緒には出来なかったね。

 だって飛んでくる武器がデカすぎィ!

 流石に指ではつかめませんわ。

 

 ただ最初の舌戦でこいつの煽り耐性の低さは判明しているからね。

 煽りまくったわ。

 王ガーとかしつこいくらいに言ってくるから、凄い王様なのに武器飛ばすだけなんですね^^ 強い武器無いとよわそう(確信)

 みたいなことを武器を躱しながら繰り返し言い放つと、王様は「おのれおのれ」とか顔真っ赤。

 

 すると最初は街灯の上にガイナ立ちしてたのに、下に降りて来た。

 なんかモヤーンの中から剣を一本抜いて突進してきたわ。

 あれですな。そこで硬直している神父のが肉弾戦は強い?

 なんで北斗の拳でケンシロウによる舐めプにありがちな「ではこの人差し指のみで相手をしてやろう」みたいな事を言いつつ、剣を指で捌いてやった。

 

 それでガチ切れしたのか、結局はモヤーンから武器乱射に切り替えた。

 これはかっこわるい。

 なのでもういいだろと終わらせる事にした。

 せっかくだしと、北斗全部乗せで。

 

 無想転生で武器をスルーして近寄り、蹴りで金色を空中に浮かせ、飛び上がってトキの天翔百裂拳による手刀であかん方の秘孔を突きまくり、先に着地した俺は落下してくる金色に向かってラオウの天将奔烈でさらにカチあげ、最後はやはりこの技、ケンシロウの代名詞である北斗百裂拳でフィニッシュ。

 そして言葉はこれでしめようか。

 

 ――――金色、お前はもう死んでいる

 

 まああべしったりたわばったりもせず、泡の様に消えただけだけどさ。

 結局、これで打ち止めだったみたいだ。

 驚愕の表情で俺をみながら固まる神父を担ぎ、家路につく俺。

 仕方ない。エロ本は明日だ。

 襲われたしね、仕方ないね。

 

 で、帰ったらカオスだった。

 だってフードおばさんと遠坂が真剣に真・聖杯をどうするかと相談しているのに、その横でセンセに宿題の指導を受ける間桐兄妹。

 ボディコンは桜の背中にへばりついてる。

 

 さらにはさっきまでいなかったメイドが二人。

 イリヤスと台所で料理をしている。

 そして部屋の隅で三角座りをして不貞腐れているセイバー。

 

 そこに神父登場。

 まあ硬直は解いてやり、俺に金色と二人で襲ってきたから返り討ちにした話を説明したんだな。

 そしたらしょぼんとしていたセイバーが急に早口で喋り始めた。

 金色とのバトルの詳細を聞いてピンと来たってさ。

 そいつ絶対アーチャーだルルォ!? って。

 

 なんか前回もいたらしい。

 色々因縁があるんだネ。

 人に歴史あり、ってか?

 あ、こいつらもう死んでるんだっけ。

 

 すると遠坂がハッとした顔で言う訳。

 その話が本当ならおかしいよなぁ? って。

 だって赤コートがアーチャーだったんだから。

 聖杯戦争のシステム的に、同クラスが同時に来るとかあり得ないって。

 そうだよな。セイバーがSSRだって遠坂が言うんだ、だったらみんなセイバー呼ぶやろ。

 けど既にセイバーが出てたらもう出ないのが普通だと。

 

 まあこれでマヌケは見つかった様だなァ? となった。

 遠坂が問い詰めるも、神父は煽る様な表情でだんまり。

 だが残念。ここに北斗神拳の使い手がいるんですよ。

 ほあたぁッ!! と新一という秘孔を突く。

 これは本人の意思とは関係なく、なんでも聞かれた事を真実のみで答えてしまうと言う恐ろしい秘孔なのだ。

 

 結果、ちょとsYレならんしょこれは・・? って内容が出るわ出るわ。

 全員ドン引きどころの話じゃねえわ。

 みんな真顔で表情/ZEROだもの。

 

 なんと遠坂の親父を殺したのがこいつ。

 煽って桜たちのおじさんを死に追い込んだのもこいつ。

 まあそういうのもあるが、こいつ自身は既に死んでいるらしい。

 死んでいるのに秘孔が利くのもアレなんだがな。

 

 金色が聖杯の泥? とか言うのをカブって、そのマスターだったこいつに逆流した結果、止まった心臓の代わりを泥がしているらしく生き返ったとさ。

 で、人を追い込むのがとても楽しい神父は、今回は積極的に暗躍ムーブを愉しんでいたと。

 まあ話を聞けばもう用は無いって感じか、いやまあ遠坂ギャン泣きしてたから復讐だろうけど、人気のない場所まで俺に神父を担がせて運ばせ、令呪をつかってセイバーにエクスカリばらせて消滅させてたわ。

 

 ――――綺礼、てめぇの血は……何色だあぁぁッ!!

 

 教えてもいないのに遠坂が叫んでたね。

 泥とか言うし、セイバーの宝具? って聖属性っぽいし相性ばっちりやな!

 塵ひとつ残ってなかったわ。

 

 そしてとりあえずもう遮るものは何も無いって感じ?

 協議の結果、セイバーとキャスターは状態を維持できる限りこの地に留まる事になった。

 セイバーはどうしても聖杯に願いたい事がある。キャスターも。

 だから真・聖杯が浄化されるまで待つってさ。

 

 結局おばさんだけじゃ物理的に手が足りないってんで、遠坂がコネを使って時計塔ってとこに連絡して応援を呼んだ。

 どうも前回の戦争で負けはしたが五体満足で地元に帰ったマスターが、現在時計塔で講師をしてるんだとか。

 借金苦らしく、応援に来てくれるなら、遠坂が秘蔵の宝石をひとつギブユーするっていう対価で折り合いがついたそうな。

 

 まあそんなんで、どうにか真・聖杯はケリがつけられそうだが時間はちょっとかかるって感じ。

 困ったのはイリヤスで、どうも聖杯勝ち取って魔法とかを得ないと駄目とか。

 じゃないと家帰ったら殺されるかもとか物騒な事を言うのよ。

 幼女なのに可哀想じゃないか……。

 

 で、金はあるみたいだしさ。

 藤村の組長にお願いして法律関連の専門家を呼んでもらった。

 ヤクザとてコネはあるだろって感じで。

 で、バレちゃいかん魔術的な事はイリヤス本人が隠蔽をしつつ、死んだ親父ことゴルゴ切嗣が認知していたみたいな事をでっち上げた訳。

 

 結果、彼女の名前をイリヤスフィール・衛宮・フォン・アインツベルンとして日本に帰化させるって方向で動く事に。

 要はドイツに帰らなきゃ手出しできない事を逆手にとって開き直った。

 戸籍上、血縁は無くとも俺の姉となる感じだな。

 住むとこは冬木郊外に大きな館があるって言うし問題なし。

 今後は姉弟として関係を構築していきましょうと言う所で落ち着いた。

 

 まあイリヤス改めイリヤ姉は見た目はロリで中身は19歳と言うコ●ンの登場人物みたいになってるけど、実際はオカンのアイリスさんと切嗣の実の子で、でもアイリスさんはホモクルスとか言う謎生物で、イリヤも生まれてすぐホモクルス技術で魔改造された結果、寿命が短いとか言う結構重たい事情があるとこの事で判明し、俺もついつい情が湧いてしまった。

 

 なので魔法とやらも結局は聖杯が無いと云々な訳で。

 なら勝者不明のまま宙ぶらりんな今回、それを建前にここに居座っちゃえって感じよね。

 一応寿命云々に関しては、健康に纏わる秘孔を一通り試してあるから結果はいかに。

 例の湧いて来たメイド二人もホモクルスらしいので同じ事をしといたし。

 シロウ、ありがとうお姉ちゃん嬉しいと満面の笑みで言われたんだが、何とも形容しがたい感情が湧き立ち、何というかその……ほぼイキかけました。尊い。

 

 因みに認知関連の書類をでっち上げる際、必要な書類を提出していなかったと言う体で弁護士に処理してもらい、その書類は弁護士側に用意させ、それをメディアおばさんの魔術でごく自然に経年劣化した様な処理を掛けて貰った。

 ついでに弁護士側が作成した記憶はイリヤの魔術で記憶を改竄。

 おい、北斗神拳を使っておきながらなんだけど、魔術って何でもアリやな!

 

 これでイリヤの実家であるアイン何とかのお偉いさんの目を欺く準備は出来たって感じ。

 もし何かしらちょっかいを掛けてくるなら、俺がイリヤを守ればいい。

 それにメイドの片っぽが脳筋で強いらしいから普段の警護もばっちりだしな。

 

 まあそうして?

 これにて一件落着って感じでそれぞれ自分の居場所に帰っていった。

 はぁー静かになったわぁ……これでのんびり人妻モノで抜ける。

 と言っても気疲れもあってか、この日はそのまま寝オチしたんだがな。

  

 ところがだよ?

 翌日からも桜が普通にウチにくる訳。

 土曜だしガッコは休み。

 なのに朝やってきて、夕方になっても帰らんのよ。

 いっそド●キでT●NGAを買って豪勢なロンリープレイと洒落こむかとかも考えていたのに……。

 全然帰らねえんだ……桜ェ……。

 

 それで錯乱した結果、冒頭の台詞に繋がるって訳。

 そして桜のバブ味でオギャった結果、なし崩しで桜は俺の恋人となった。

 まあそれはいいんだ別に。

 

 正直彼女の見た目は好きだし、チ●ポ蟲により既に開通済みとかも気にならんし。

 健気過ぎて何でも俺に気を使って自己主張しなさそうって所はマイナスだが、それは付き合う内に我儘を言えるように調きょ……違う、許容するって態度を見せればいい。

 

 だがなぁ……色んな意味で桜は凄かったんだ。

 今まで抑圧されていた諸々を気にしなくて良くなったからか、その日の夜、結局彼女は帰らずに俺はおいしく頂かれた。

 わかる? 逆だろ普通。

 

 和室で布団を二つ敷いて彼女の今までの事とかを聞いたりしながらその内眠りにつく、そんな流れだったんだ。

 なのに突然桜が豹変して、野獣の様な眼光の桜に俺は貪られたのだ。

 何度も何度も! とても気持ちが良かった!

 

 だがすっかり忘れていたんだけど、ライダーも帰ってなかった!

 サクラ、私もいいでしょうか? そう言って彼女は現れた。

 じゃ一緒に先輩を愛しましょうってオイ。桜、俺の意思は。

 結果、かわるがわる俺は二人にパックンチョである。

 

 翌朝の俺、完全に干からびてたなぁ……。

 でもま、俺の中の人は大人だ。

 可哀想な人生だった桜を受け止めるくらいの甲斐性はあるさ!

 とか思ってたんだけどねぇ……。

 

 流石にこれが十日も続くとは……。

 死ぬわ普通に!

 だからね、俺は決めたのさ。

 

 

『少し自分探しの旅に出ます。 探さないでください。 士郎』

 

 

 ってね。

 そう俺は逃亡者衛宮士郎。

 現在、東に向かって失踪中である。

 俺の明日はどっちだ!

 

 

 Fin




誰だよ桜は不人気って言ったの。
くうくうお腹がなりましたとかクソポエムなんか知らない。
桜はシコい、それでいいじゃないか。

桜はなァ、姉より優れた妹なんだよ。
わかるかい? 凛になくて桜にあるモノを。

は? 胸? 違うよ。
圧倒的ヒロイン力なんだよ。

だがどう足掻いても原作では不遇。
だから贔屓してもいいじゃないか。

そう憤慨しながら書きました。
桜っぱい最高!


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神か悪魔か!? 地獄にあらわれた最強の女

ボチボチ書いてるんですが一話に収まる気配がないので少し投下
相変わらずアホみたいな内容です
頑張ってイキっていきませう


「なあ藤乃さん」

「なんでしょう」

「このカレー美味いですね」

「それは嬉しいですね。頑張った甲斐がございます」

「なあ藤乃さん」

「はい士郎さん」

「そろそろ帰った方がいいんじゃないですかね。年頃の娘が独り暮らしの男の家に入り浸るのは倫理的によろしくないと言いますか」

「私、士郎さんをお慕いしております」

「おっと流れをぶった切っての告白ゥ」

「士郎さん。士郎さん。――――私、もう抑えられません」

「なにが!? おっと藤乃さん、ステイステイ。ぐいぐい来てるけど貴女のキャラは清楚でしょう!? そ、それに俺、何というか故郷にステディなガールがいるんだよなぁ。正直藤乃さんの気持ちは嬉しいけど」

「ふふっ、ふふふふっ、士郎さん、倫理観……でしょうか? 貴方を慕う誰かがいる。ですが……それは問題ではありませんね。番が一組である必要など無いのですから。ですが……もし問題だと言うのなら……はい、捻り切ってしまいますね」

「(アカン)わかった。カムダウン。カムダウンだぞ藤乃さん。貴女が知る俺、けど見えてない俺の本質が見えたらどう思うかな? 俺はな、藤乃さん。故郷のステディに膝枕をされながらおっ●いを吸いつつ頭をナデナデされて喜ぶド変態野郎なんだ。どうだァ……? 気持ち悪いだろう? 藤乃っぱいも差別せずちゅーちゅー吸ってしまうクソヤロウなんだぞっ!」

「………………」

「ん? 何だって?」

「あはっ、それがどうしました? あはははっ、士郎さん、士郎さん!! 動かないでください。服が上手く脱がせられないじゃないですか。ああもう、このジッパーがっ、もうっ、凶れええぇぇっ!!」

「うっそだろオイ…………」

 

 テーブルを挟んで向かい合ってたはずが、何故か藤乃さんに馬乗りされている。

 おかしい……北斗神拳伝承者相手にマウントだと?!

 あまつさえお目目グルグルからのジッパーがねじ曲がって砕け散り、気が付けば全裸に剥かれている。

 ついでに藤乃さんのシスターみたいな制服も消し飛んだ。

 ちょっと待って、それケンシロウが怒りで全身がパンプアップした時の表現やろ……。

 最終的にはいつぞやの桜の時と同じく、全裸の俺が膝枕で乳を吸っているだと?

 どういう事なんだ…………おぎゃあ。

 

 しかしパターン化というのは得てしてマンネリ化というか、退屈を慢性化させる。

 例えば映画の初作が爆発的なヒットを飛ばし、それがシリーズ化したが、パート2以降が酷評されるみたいな。

 だがそれはエンタメにおける常套手段というか、ファンが一定の金を出す限りは続けられると言うビジネスモデルだから仕方がない。

 

 だがしかし俺の場合は如何ともしがたい。

 同じパターンを凝りもせず繰り返している訳だが、それはあくまでも俺の現実であり、進行形で流れていく日常という事柄なのだから。

 俺には女難の相でも出ているのだろうか?

 これでは着々と罪を積み重ねていくばかりじゃないか。

 近未来、この溜めこんでいくばかりのツケを払わされる時が来ると思うと思わずエズいてしまう。

 ふっ、このシロウにもまだ良心が残っておったわ……。

 

 では何故こんな事になっているのか語る必要があるだろう。

 ましてや間桐桜という素敵なヒロインがいるこの俺が、何故別の女とこんな事になっているのかを。

 

 さて現在俺がいるのは東京圏の観布子市。

 桜とライダーに絞られ物理的な身の危険を感じた俺はとにかく東に向かった。

 このままではミイラになってしまう!

 その危機感からだ。

 

 そこで! 桜とライダーにパックンチョされながらも必死に捻り出した妙案がある。

 俺はちょっと特殊な北斗系男子だが、この世界の住人の一人としてよりよい未来をと考えている。

 遠坂はイギリスの時計塔って所に留学をするらしいが、俺の場合は前世と同様に理系の国立大を出て、どこか無難な企業に就職をと考えているのだ。

 つまり現在の俺は受験生。

 

 ならば現在の穂群原学園も悪くないが、ガチでトップの国立を狙うなら、大阪や兵庫、或いは関東圏の進学校に通う方が正しいだろう。

 うちも私立だが、私立にも偏差値はピンキリであり、ガチ勢の進学校は予備校が鼻くそに見えるレベルだからな。

 それを逆手に取ったのがこの作戦である。

 

 つまり関西圏である冬木市とは距離的にも相当離れている関東の進学校に編入する。

 なにせ金はあるのだ。

 親父が遺してくれた財産と言う。

 

 そこで書置きを残して勢いのまま飛び出した風を装い、隣町に辿り着いた所で俺は例の弁護士に連絡した。

 内容は俺の代理人として関東の進学校への編入手続きをしてくれと言う物だ。

 その他の生活に関わる手続きも含めて。住居の準備とかな。

 

 当然藤村組の親分や大河にも電話で話してある。

 俺は本気で東大を目指しているが、そこにいては色々足りない。

 だから応援してほしいんだ藤ねえ! これで彼女は堕ちた。

 彼女は常々俺の大河呼びが気にいらないから姉と呼べとしつこかったからな。

 不意打ちで呼んだことではにゃーんってなってた。

 藤ねえマジちょろい。

 

 ついでにイリヤの事もあるので連絡してある。

 将来の為にを強調し、姉さんを守る一環であると。

 結果、お金が足りなかったら助けるからね! だってイリヤはシロウのお姉ちゃんなんだから!

 と鼻息あらく応援をしてくれた。

 受話器から伝わる幼女のドヤっぷりに……ほぼイキかけました(通算二回目)

 

 いやしかし、前世と今世は似て非なる日本。

 しかも時代が微妙にズレている。

 でもそれが逆に俺に味方しているネ。

 だってスマホどころかPHSや携帯が普及してないもの。

 つまり固定電話全盛期! ネットもISDNが精一杯! 最高や!

 なので電話に縛られない! 携帯が出始めてもしばらくは「あ、地下にいたから電波来てなかったわ」が通用する! やったぜ!

 

 ……そんなこんなでやってきました東京に。

 丸一日走りっぱなしだったぜ。交通機関は足がつくから避けた。いやー北斗マジ北斗。

 そしてビジネスホテルに取りあえず泊まり、弁護士からの情報を待つ。

 すると数日後、現在の状況で数校だが編入試験を受けられる所があった。

 もちろん穂群原学園よりも偏差値はかなり高い。

 その内の一校を選択し、見事編入完了である。

 

 そこに通うのに丁度良かった場所が観布子市なのだ。

 東京までのアクセスも良いし、東京圏なのに家賃が安い。

 近所にスーパーマーケットも複数あって生活面も安心である。

 

 まあそうして舞台は冬木から観布子市へと移った。

 とは言え桜がキレたら怖いので、準備が全て整った後に連絡した。

 ちょっと怖かったけれど、「桜との将来を考えるからこそ!」と強調した結果、許された……。

 まあ真・聖杯の事とか諸々の用件があるから定期的に戻ると言う条件は必要だったが。

 

 新たな学校生活は楽なもんだった。

 進学校ってのは全員が明確な目標を持っているから、苛めみたいな物はほぼ存在しないしな。

 そんな暇があるなら、テキストを埋める方が合理的、そう考えるのだ。

 

 そして俺の新たな城。

 小川マンションって言うんだが、円筒状のオサレなデザイナーズマンションっぽい感じ。

 内装もモダンでカッコいい。

 何よりこんな高級そうなマンションの癖に家賃が5万だぜ。

 マジかよ。

 

 キッチンも最新式で広い。

 いやー受験勉強の息抜きに料理なんかするんだけど、キッチンが多機能だと色々捗って楽しいわぁ。

 つー訳で生活も順調って訳よ。

 そんな時だった。浅上藤乃と言う少女と出会ったのは。

 

 夜になるとさーばんとが襲ってくる修羅の国である冬木と違って、ここは平和だ。

 なので授業が終わって志願制の特別講習を終えると19時を回ったりするが、暗がりも鼻歌混じりに歩いて行ける。

 平和って素晴らしい!

 

 そしたらお前、胸糞の悪いシーンを見ちゃったんだな。

 暴走族ほど突き抜けてないが、中途半端に悪ぶっているクソガキの集団が、腹を抑えて虚ろな目の女の子を囲んでる訳。

 これはマジで強姦する5秒前って感じさ。

 

 ふむ、これは行くしかないよな。

 また逆恨みされてバイクで撥ねられるかもしらんが。

 まあ悪ぶっているとはいえ所詮はキッズである。

 北斗神拳を使う訳にはいかん。

 

 ただねえ。

 中途半端なヤンキーはとてもタチが悪いんだよな。

 暴走族とかならまだ一応哲学は持っている。

 彼らなりのルールを作って、そこから外れるのはかっこわるい的な美学があるのだ。

 そうじゃないのもいるけどさ。

 

 けどただグレただけのヤンキーは、キレると何でもするからね。

 ほら目の前で女の子に絡んでいるけれど、誰も罪悪感を持っていない。

 互いに悪乗りを続けた勢いで、流れで彼女はレイープされるのだろう。

 まるで一方的な交通事故の様に理不尽。

 

 その後冷静になった彼らは追いつめられるまで開き直り続けるだろう。

 だってレイープまでした実績を作ったんだ。

 感覚がマヒして、レイープ程度ならセーフという謎の価値観が生まれるゾ。

 だからタチが悪いって言ってるんだ。

 故に喰らうがいいヤンキー共。

 てめえらに今日を生きる資格はねぇ!

 

『怒拳四連弾!!』

 

 ――――これは下校中に胸糞悪いシーンを見せられた俺の分

 ――――これは講習で疲れたストレスによる俺の分

 ――――これはコンビニで買った人妻モノムックをうっかり担任に没収された俺の分

 ――――そしてこれは……えっと、特に思いつかないけど、俺の怒りだァ!!!!

 

 まあ、うん。

 ジャギを追いつめたケンシロウが使った技だけどね。

 秘孔を突かずにただ殴ったり蹴ったりしたアレ。

 なので勢いはあるけど普通に追い払っただけよ。

 

 そんなんでヤンキーをKOした俺は、件の女の子、浅上藤乃を背負って病院に行ったのだ。

 脂汗が酷いしな。実は女の子の日でとても重いみたいな感じでも無い。

 まあ正解だったネ。

 診察結果は盲腸だもの。放置してたら腹膜炎になるぜ。

 

 まあそれで彼女との接点が生まれた訳だが、こっちとしては偶然見かけただけの出来事だ。

 なので麻酔で昏睡する彼女と、医者の家族に連絡をした発言からもう大丈夫だなと普通に帰った。

 良かったネくらいのノリで。

 礼なんかいらない。衛宮士郎はクールに去るぜ。

 

 そうして受験生という日常に戻った俺だが……。

 どうもこの街も冬木と同様に修羅の国だったかもしれない。

 具体的には我が家となった小川マンション、ここがどうも事故物件臭い。

 そう、幽霊が出る的なアレだ。

 

 だってここに住んでいる住人が全員うつ病みたいなノリなんだもの。

 あー死にたいとかならまだいいんだけど、急に奇声を発したりとか怖すぎィ!

 住人が軒並み人形っぽいというか。

 いかにも働き盛りのサラリーマン男性にしか見えないのに、廊下をゾンビみたいに徘徊してたりとかさ。

 あ゛~~とか言いながら。

 

 これには俺もハットオフである。

 そりゃ家賃5万だわ……。

 あの弁護士変な物件宛がいやがって……。

 

 これでムシャクシャした俺は、見かける住人達におせっかいを焼いた。

 いやまあ通りすがりザマに健康になる秘孔をつくのさ。

 そうやって善意の押し付けを2週間くらいやった頃かな?

 全員満面の笑みでどこかに引っ越していったわ。

 まるで憑き物が落ちた様な感じで。

 

 いやー凄かったね。

 一日中引っ越し業者のトラックが停まりっぱなしだぜ。

 家族連れの話し声を小耳に挟んだが、「なんでこんな辛気臭いマンションに住んでたんだろう?」だって。

 

 そうして平和になった我がマンション。

 いいねえ平和が一番だ。

 でも終わらなかったんだな。

 事故物件、その確信を得たって言うのかな?

 悪霊が襲って来やがったんだ。

 

 さーばんとと違ってもっとヤベー感じの。

 バトルアニメだと思って視ていたら、ホラーだったみたいな。

 学園モノだと思っていたら、実はシャベルを持って戦うポストアポカリプスなゾンビパニックホラーだったみたいな。

 

 というのもその悪霊さ、どっからでも出てくるんだよ。

 壁とか天井とか、酷い時は窓ガラスとか。

 とにかく神出鬼没でよ。

 お前のせいで云々と妙にイケボで因縁をつけてくるんだよなぁ……。

 まるで冬木のクソ神父の様な不快さ?

 

 ふざけんなこっちは正規の手段で契約しとんねん。

 出ていけじゃねえんだよバカヤロウ。

 居住権は保護されてしかるべき!

 絶対出て行かねえぞ!

 

 そしたらお前、家でくつろいでいるとこっちを小ばかにする様に出てくる。

 完全にこっちを煽ってやがる。

 だが殴ろうとすると消えるんだ。

 クソァ……。

 

 だがしかしだ。

 風呂で頭を洗っていた時に、目の前の鏡から出て来やがった。

 あのさぁ……風呂は命の洗濯って言うだろう?

 こっちはさぁ、一日きっちりと勉強に勤しんだんだ。

 このひとときは大事なんだよ。

 

 それをお前、オッサン声で「出ていけっ」じゃねえんだ。

 ここで俺の怒りは有頂天に達した。

 粘着っぷりが異常過ぎる。

 これがキレるって感覚か……。

 仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ。

 

 俺は恐らく無意識に無想転生を発動していた。

 ほあたぁ!! と悪霊に察知される前に秘孔を突いた。

 その名前は激振孔だ。それも闘気マシマシでついてやった。

 これはアミバが使っていた秘孔で、血管が破裂するほどに心臓が超鼓動する物だ。

 その結果アミバは本来の肉体からは考えられない程に巨大化してた。

 

 さてこの秘孔をアミバレベルじゃなく、世紀末救世主クラスが突くとどうなるか?

 しかも闘気マシマシ、マシマシマシマシくらいで。

 無意識に奴の露出している両肩の激振孔を突いたが、バカな!? とか狼狽えた後、10秒ちょいでアベシった。

 んー? これ幽霊じゃ無かったネ。血が飛び散ってたし。

 まあグロく爆散したあとに溶けるように消えたから人間では無いんだろうけど。

 

 その後、小川マンションはクリーンになったのである。

 悪は去った。とても清々しい気分である!

 でだ。これで終わったら苦労は無い。

 ここが冬木とは別のベクトルで修羅の国だと言ったのは。

 

 また別の日の事だ。

 その日は日曜で、補習の予定も入っていない。

 俺は午前中、桜に電話をしてご機嫌をとったり。

 遠坂に電話してご機嫌をとったり。

 イリヤに電話をして――――俺、人のご機嫌取りしかしとらんがな! 

 まあいい。男はマメさが大事だ。

 じゃないと痛い目を見る……。

 

 まあそんなんで家事と電話で午前中を潰し、午後は一週間分の買い物をし、夕方頃に漸く暇になった俺は、天気が良い事もあって街を散歩していた。

 ここはひとつ、ハイカラなカフェでシャレオツなティータイムでも、なんてね。

 いやあ完全に油断してたネ。

 

 夕方ってのもあるが、気を抜いてた俺の背後から突如迫るバイク! 

 そう、またである。

 懲りない連中よ……。

 北斗神拳は一度見た技はきかないのだ。

 つまり、冬木での失態で身体が覚えている!

 

 ヒョウ!

 俺は南斗六聖拳「義星」の男、レイの様に華麗に空中に飛び上がりバイクを躱した。

 きっとバイクを運転していたヤンキー小僧は「おお、ふつくしい……」と見惚れた事だろう。

 綺麗にスルーし、優雅に着地を決めた俺である。

 

 ところが、バイクはなんと2台いやがった。

 着地と同時にもう一台が突っ込んできた。

 す、隙を生じぬ二段構えだとォ!?

 結果、前回の様に脱臼こそしなかったが、勢いよくすっ飛んだ挙句、どこかの雑居ビルの入り口にぶち当たり、モダンなデザインの扉どころか枠まで派手に破壊してしまった!

 小僧どもはバーカとばかりに逃げ去っている!

 

 ついてないぜ……なんて日だッ!!

 だが俺の不幸は止まらない。

 いてて……と頭を掻いていた俺を見下ろす影がある。

 見ると赤毛でポニテの綺麗系おばさんがいる。

 眼鏡が知的な感じ?

 

 このオバサンと言う呼び方を俺はすぐに後悔することになる。

 調子に乗っていたんだろうな。

 北斗神拳万能説。

 チート転生万歳。

 そんな風に。

 

 この時点で俺は一言も喋ってはいない。

 だのにこのオバサンは知的だった印象の象徴であった眼鏡をチャっと外すと、ヤクザ以上のドスを利かせた台詞で俺を恫喝したのだ。

 トラウマがよみがえるので割愛するが、人の事務所を壊しておいてただで済むと思うなよ。

 きっちり修繕費を回収出来るまでお前バイトな?

 それに、今失礼な事を考えていただろ? それも上乗せな。

 

 受験生衛宮士郎。

 民法も労働基準法も関係なく、ブラックな企業に就職が決定した瞬間である。

 あれだな……類は友を呼ぶって言うだろ。

 地元で超能力ならぬ魔術を知った。

 

 で、魔術師の知り合いと言えば遠坂とかイリヤか。

 さーばんとだけどメディアおばさんもいるな。

 けどそんなチャチなもんじゃ断じてない。

 彼女たちは害が無かったからな。

 

 ――――トーコはヤバい、それ一番言われてるから。

 

 オバサンのパシりの先輩であるシキが、後に冷めた目で言ったのがこのセリフである。

 たまげたなぁ······。

 結局この日以降、俺はこの謎の事務所でのバイトを続けることになる。

 

 いやね、うちのマンションに出て来た悪霊。

 どうもトーコ様の同級生だったらしい。

 時計塔ってとこで。

 あれだな、遠坂が行くって言ってたとこだな。

 結構懐かしむように言ってた。

 

 待てよ。

 つーことはだ、トーコ様の年齢は……。

 

 ――――変だな、俺、今なに考えてたっけ?

 

 あれ、おかしいな。トーコ様のねんれ……うっ、頭が……。考えるのはよそう。

 で、まあその悪霊を除霊した事を彼女は知っていた様で、人でも殺せそうな悪辣な表情でお前やるじゃないかと褒めてくれた。

 コクトーパイセンがカットインしてくれなかったらションベンちびってたかも。

 

 そうだよ。コクトーパイセンだよ。

 この事務所唯一の癒し枠。

 この人がいるおかげで何とかやれてんだ。

 だってお前、バイト関連の人間を教えてやろうか?

 

 トーコ様→クソ外道。バイトの俺に酒代たかる。酔った勢いでルーン魔術を乱発し、こっちの自由を奪って逆レをしてくる。

 シキ→メンヘラ。服装のセンスが壊滅的。急に殺しにくる。

 アザカ→メンヘラその2。腹黒い。リアル近親相姦を目論むヤベーやつ。

 コクトーパイセン→器でかい。男だけど確実にヒロイン枠。メガネだし。上記二人に振り回されると大概助けてくれる。

 

 バイトするのはいいんだ別に金は一応くれるしさ、でもそのバイトの内容が酷い。

 活動時間は主に夜。

 俺が北斗神拳使えなかったら過労で死ぬぞ。

 んであそこに行ってあれをボコれ、とか。

 この事件の犯人を捕まえて来い、とか。

 いやいやいや、違うでしょ。

 探偵事務所じゃなくてデザイン事務所でしょ?

 

 なんか倉庫にリアルなラブドール並んでいたけれども。

 とにかく普通の高校生がやる様な内容じゃない。

 でもお前、アレを殺したんだろう? ってトーコ様に凄まれたらね。

 断れないんだな……。

 

 で、仕事するじゃろう?

 不思議! いくら仕事しても借金が減らないよ!

 それを聞くと、士郎、お前利息って知っている? って。

 俺に救いは無いんですか……。

 

 しかもだ。

 最近気が付いたんだけど、これにはコクトーパイセンも含まれるんだが……。

 ここの連中……酷い中二病を患っている。

 何というか会話についていけないんだ……。

 理解できないから説明も出来ないけれど、強いて言うなら、ダン・シモンズの有名なSF小説。

 ハイペリオンの四部作を小学生に読ませるみたいな感じ?

 俺が小学生よ。無理。こいつら何を言っているのかぜんぜんわからん。

 

 なので事務所の中の会話についていけないんや……。

 まあそれでもバイト内容以外はまあ、アットホームな感じだし。

 冬木のアレやコレを考えなくてもいい時間は、それなりに楽しめていたんだ。

 

 そう、謎の猟奇殺人事件の犯人を見つけろというオーダーが来るまで……。

 

 

 つづく。

 

 

 




設定はおそらくかなりガバいし、空の境界みたの5年前とかなのでうろ覚えで書いたのでお兄さん許して

次回はまたそのうち(すぐにとは言っていない)


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さらば愛しき魔術師たちよ……そして故郷へ……前編

入院→退院→コロナ→復活→妻コロナ→妻復活→いまここ

漸く落ち着いたっぽいので初投稿です。




「アニムスフィアさん」

「…………」

「アニムスフィアさん」

「………………」

「えっと、マリーさ「なにかしらシロウ」

「喰い気味……いや、えっと、そろそろオレ、帰国しようかと思うんですが」

「ダメよ。貴方は今やこのアニムスフィア家の執事なのよ? つまりこの私の傍に常にいなければならないの」

「えっと、その、確かに執事? にはなりましたが、それは何というか期間限定と言いますか、お仕事が終わるまでと言う契約だったかと」

「終わってない」

「えっと、ゲーティア? とかいうの倒しましたよね? 変な神父とか狐とかも退治しましたし……一応ドクターやダヴィンチちゃん的にもOK的な言質貰いましたし」

「終わってません。お仕事とはロンドンに帰るまでを指します。それがプロの執事です」

「えっと、はい、なので一応時計塔? にカルデア首脳陣は帰還ですよね。なのでオレはそのままヒースローからお暇しとうか「ダメ」あ、はい」

「ねえシロウ」

「はいマリーさん」

「さんなんて付けないで。ね、シロウ、捨てるの? 私を捨てて消えるの?」

「いや捨てるとかじゃなくて「捨てるじゃないっ! ねえ捨てるんでしょっ!? あ、あああ、す、捨てすてすて捨てられられ……レフには騙されシロウには見捨てられっ……あわっ、あわわわわ……」

「ちょ、待って、とりあえずその煌びやかな謎の短剣から手を離してっ落ち着いてマリー、あっかんコレ、リツカちゃん、マシュ、ドクター来てくれー!!!」

「す、すすす、捨てるなんて許さないからっ! へ、へへっ、捨てるなら私を殺してから行くことね! へへへへっシロウは私の執事だもん。おはようからおやすみまでいないとダメなんだもんっ!!!」

「やばっ、はい、マリー、抱っこしたげるよー! ほらおいでー?!」

「ふぇっ!? うん! 抱っこするー! えへへへシロウすきー♡ もう絶対離さないから……逃げたら追いかけて殺して私も死ぬんだから♡

「え? なんて? ぃてっ」

「なんでもないの。えへへ、シロウ、ぎゅー♡」

 

 そうしてオレは目が血走った銀髪美少女を抱きしめた。

 ついでにムツ〇ロウさんみたいにヨーシヨーシと撫でつつ。

 まあその最中のどさくさに、オレの脇腹に短剣が刺さってたけど些細な事だ。

 

 ははっ、いつになったら桜の所、帰られるんだろうなぁ……。

 思えば随分と時間が経ったが、オレ……すっかり汚れちまったよ……。

 

 そもそも東京にいた時点で、オレの持つ力が強い説は崩れ去っている。

 もちろんバトル的な意味で誰にも後れを取るつもりはない。

 実際、実績と言う意味でも、その後襲い来る修羅場をこうして無難に通り過ぎているのだから、それは間違いない。

 

 けれどだ。

 こと日常の中でと言う意味ではクソの役にもたたん。

 特に女性と書いて魔性と読む生命体の前では……。

 

 なんつーかオレはどこまで行っても根は小市民なの。

 だから目の前で可哀想な人とか見ると、放ってはおけんのよ。

 つい、大丈夫? って声を掛けちゃう。

 

 それは正義感かと言われれば違うと即答するけど。

 言うなれば限りなく偽善の善意と言うか。

 もしコイツを放置して、後にそいつがさらに酷い目に遭っていたって判明したら罪悪感ひどくね?

 多分そういうのが無意識に働くのが小市民なんだわ。

 変な目で見られたくないって感じ?

 

 嗚呼、そんな事より冬木に帰りたいです……。

 でもさ、今のオレ、南極にいるんだよなぁ……。

 わかる? 南極。

 

 南半球の一番下にある大陸。

 どこかの国には属していない場所で、各国がこぞって観測基地を置いているあそこ。

 そこの山脈のどこかにここ、カルデアはある……らしい。

 

 そもそもここに来るときもさ、どこかで飛行機に乗せられ、南米に連れていかれ、そこから軍用機に乗せられて南極入りしたからね?

 マリーも守秘義務云々で言わねーし。その時点でのオレと彼女ってそこまで親密じゃなかったしさ。

 

 んじゃこれまでの流れをざっくりと説明しよう。

 そもそもなんでオレがこの南極くんだりまで逃亡したのか。

 それは偏に魔術師の巣窟である時計塔のせいであり、ついでに遠坂のせいだ。

 

 今やすっかりと健康体となった(秘孔をついたせいか、メディアおばさんが何かやったかはわからない。その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるから割愛ぞ)イリヤ姉との家族計画の為に超進学校に通う……という「てい」で関東に逃げ出したオレ。

 

 その後順調に受験生生活を続け……られることは無く、逃亡した事への因果応報とばかりに、デザイン事務所と言う欺瞞を掲げた悪の魔術師とメンヘラ殺人鬼に絡まれ、「嗚呼……オレはこのままここでパシられ続けるのか……」と泣き崩れたところに、トーコサマの妹を名乗るトーコサマ以上の傍若無人な女が現れ、事務所の奥に隠してあるトーコサマの作った色々な便利アイテムを強奪。

 ビームとルーンが飛び交う大戦争に発展し、オレはせめてコクトーパイセンは守護らねば……と姉妹の間に飛び込み「ガ、ガイアッッッ!?」され、哀れ士郎は爆発四散。

 

 まあどうにか北斗神拳を駆使して事なきを得たが、その妹にロックオンされ、これ以上ここにいては死ぬよりも酷い目に遭うかもしれないという直感が働き、着の身着のままでさらなる逃亡を開始。

 もはやこうなれば形振りなんか構っていられない。

 

 でもだ、日本国内はもうダメかもわからんね……って事で、ベタではあるが海外逃亡を決めた。

 だがしかし、現在のオレは未成年だ。

 一応は親父の遺産も残っているし、決して金が無い訳じゃない。

 だが現在の状況的に、なぜ受験生として進学校に通っているはずがパスポートが必要なのか……そう言われると例の弁護士や藤ねえ経由でも許可を貰うのも無理。

 例えそう出来たとしても、待っている間に桜や藤ねえがこっちに来てしまう……。

 

 結果、密航しかない……この士郎、とうとうガチ犯罪者の仲間入りですわ。

 それでも命に関わる問題であり、しかし魔術だのなんだの、警察に駆け込めないオカルト案件……やむを得ないよなぁ……。

 

 そしてオレは横須賀にある港湾区に潜伏し、ヤクザのフロント企業みたいな胡散臭い倉庫街で日雇い労働をしながら機会を待った。

 その際に芭月*1って同年代のやつと知り合い、彼が巻き込まれていた騒動に手を貸す代わりに寝床を借りるという関係になったが、その後あいつはどうなったのか……。

 一緒に中国に密航したまでは一緒だったが……元気だと良いな。

 

 そうやって大陸に渡ったオレ。

 こうなるともう、ゴールなんて無い。

 無作為に飛び出しただけだもの。

 

 とは言え北斗神拳が備わっているからか、数日で大陸の言葉も理解できて、特に旅では苦労しなかったな。

 行く先々で小間使いみたいな事をして路銀を稼ぎ、とにかく西へ西へ。

 でもなぁ……なんつーか罪悪感で死にたくなるのよ。

 

 逃げたつったってさ。

 イリヤ姉や桜になーんも告げずにだし。

 そこまで悪人にゃなれんて……元々一般人だもの。

 いや今でもそのつもりだけど……と言うかそうじゃないって認めた瞬間、色々終わりそうでな……。

 

 結局開き直ったオレは、驚異の身体能力を十全に使い旅をつづけた。

 東南アジアから中東エリアは政治的にも不安定な地区が多い。

 だから旅先で気軽に話しかけられるとヤバい……ってインドで知り合った日本人から聞いたから、とにかく移動は夜だけとし、国境線はゲートがあるような場所を避けて横断した。

 

 だからガチの砂漠を越えないとダメなルートもあって、初見で砂漠に挑んだが死ぬかと思ったぜ。

 だって昼間はクソ暑いのに、夜は冬かよって位寒いんだもの……。

 アラブ人に気さくに話しかけて砂漠越えの極意を学んで、装いをマネしなきゃ死んでたわ。

 

 それでもイタリア辺りまでは観光気分もあったんだけどな……。

 だってさ、野営してるとヒマだし星空とか眺めるんだけど、東京みたいな不夜城なんか無いから、星なんか7等星くらいまで見えんじゃね? って位なんだよ。絶景だわ。

 

 そのイタリアのローマでさ、せっかくだしバチカンを見たい! とか思ってさ。

 その頃は丁度路銀も尽きててさ、あかん今夜の寝床ないやんと途方に暮れた結果でもある。

 

 そこでオレは露店をする事にした。

 これは今までもちょくちょくやってんだ。

 どこの街も少なからず闇市みたいな地区ってあるからね。

 こっそり売ればそこそこ稼げる。

 

 これまでの旅の中で、オレのバックパックには色々なアイテムを詰め込んである。

 特にキャンプ系のギアは豊富にな。

 そりゃパクられたら即御用の身分だもの。

 大陸に密航して以降、野営も多かったから……。

 

 でだ。

 東南アジアからトルコ位までに通って来た地域ってのは実はスパイス王国だらけなんだよね。

 どこいっても何かしらのスパイスが売っている。

 やはり熱帯だったり砂漠の乾いた気候だったりするから、食事で肉体を活性化させるんやみたいな思想があると思うんだ。

 

 そんでオレは料理は割と得意。

 高級フレンチみたいなのは作れんけどさ。

 いまある食材をアレンジして、それなりに食える物を作るってのは出来るんよ。

 

 だから露店をするときはおおむねカレーだ。

 カレーってのは要はスパイスを良い感じに調合した料理の事。

 まあ根底にあるのは日本のカレーだから、味はそれに寄せてるけどさ。

 

 そうやって旅の中で覚えたカレー作りを活かし、カレーを作って売るんよ。

 日本円で300円くらいで。

 まー売れる売れる。

 米もナンもどっちも選べるよ。

 

 米つってもインディカ米だからこっちは。

 なんで安価で買えるからね。

 300円で売っても利益は200円くらい出るんじゃない?

 数日も露店をやれば、次の国に行く資金は出来る。

 

 ああ、日本じゃタイ米とか言われてイメージ悪いけどさ、それ調理法が間違ってるからマズいだけだからね。

 日本の米はぬめりと粘りが強いけど、こっちのは吹きこぼしてぬめりを取る方が正解。

 それでもきちんと炊けるし、カレースープとコネコネして食べる際には逆に日本の米の方が合わないんだぜ。

 まあいい。

 

 けどさぁ……なんなのあの女。

 ローマの裏通りで露店やってたらさ、現地人も気に入ってくれたのか、2日目以降はローマっ子のリピーターが来たほどだ。

 だからオレも必死でカレーを作ったさ。

 

 なんつーか想定以上の客がきてな。

 けどこっちは生粋の日本人だ。

 せっかく来てくれたのに手ぶらで帰すとかありえない。

 だから日に300食分くらいつくったんじゃね?

 

 けどさ、3日目か4日目に変な眼鏡のシスターが来たんだよ。

 小奇麗な感じで、清楚? 薄いブルーの髪が似合っている感じで。

 

 オレは丁度仕込みをしてる所だった。

 まだ午前中だしな。

 そしたらそのシスターがさ、オレがカレー用の皿を丸太から削り出している隙に、勝手に鍋あけてカレーを食ってやがる。

 

 無銭飲食どころのレベルじゃねえが、こっちも密入国な上に無許可営業。

 大きい声で騒ぐ訳もイカン。

 なのでやんわり咎めたんだが無視。完全スルーですわ……。

 

 いくらオレが仏の士郎(自称)であっても、これは流石に我慢ならねえ。

 シスターやぞ。聖職者やんけ。

 いいんか、こんな事していいんか!

 オレは憤り、そいつの皿をひったくった。

 

 そしたらまさかの逆ギレですよ……。

 言葉遣いは丁寧なんだけど、ある種の開き直り?

 ならお金を払えばいいんですよねみたいな。

 全部買います、この3つの鍋でおいくらですか? だってよ。

 

 ふざけんな! こっちはさあ、路銀稼ぎはもう十分なんだけど、地元の人との触れ合い?

 そういうさー旅の醍醐味みたいなもんを重視してるんよ。

 大量に作ったカレーはお前みたいな大食い女に食わせる為につくってねーの!

 

 だいたいオレね、大食い自慢の奴とか大っ嫌いなんだよなあ。

 あれって食い物への冒涜だよ。

 人間一人の一日の消費カロリーなんてたかが知れてる。

 アスリートじゃなけりゃ、基本的に普通の量を三度三度喰ってりゃ事足りるわな。

 

 けど大食いの連中ってさ、不必要な食事をしてるわけじゃん。

 喰い方もきたねえしさ……。

 偏見もあるだろうけど、あれっていわば自分だけの自慰行為やろ?

 食わんでいいのに喰ってるんだから。

 

 それを飲食店とかでやられたら迷惑なんだよな……。

 他の客は純粋にそこの料理を食べたくて来てるのに、そういう奴のせいで割りを食うのは納得いかん。

 カレー女もそんな感じで、一瞬でオレの敵認定よ。

 けどシスター相手に北斗神拳は使えぬ……。

 結果、軽く秘孔をついて意識を奪い、教会に担いでいって悪事をばらしてやることにした!

 

 が、駄目……っ!

 

 首筋の秘孔をトンとしようとした瞬間、その女はひらりと躱し、あまつさえ反逆してきやがった。

 なるほど、お前もそっち側の人間かよ。

 オレはなあ……あの姉妹との絡み辺りから宗旨替えしたんだ。

 こっち側の女には躊躇しないってな。

 じゃなけりゃ死ぬ。もうね、世界は変わらず前世と一緒……とかいう幻想、今のオレには無いんや。

 そんな普通の日本っぽい「ガワ」のファンタジー世界じゃここはっ!

 

 かと言って全力の本気は出せなかったが、オレはカレー女と派手なバトルを噛まし、当然周囲に人が集まった所で無想転生で逃亡した。きちんと荷物も回収してな。

 あ、逃亡じゃない。戦略的撤退である(大本営発表)

 

 まあ逃げる際にな、「凶悪なシスターに殺されるぅ! 誰か助けて~!」って大声で叫んだからな。

 そしたらギャラリーが「ざわ……ざわ……」ってなってたわ。

 その後どうなったんだろうなあ?(ゲス顔)

 

 まあそうして面倒もあったが、オレは無事にさらに西へと向かった。

 次の目的地はパリだ。

 イタリアの食文化や芸術に触れたんだ。

 なら同じく芸能や食の歴史があるフランスは外せないだろ。

 地続きで移動が楽だし。

 

 けど流石に人目があるルートは取れない。

 なんでローマから北上してトリノを経由してさらに北に。

 綺麗な山を眺めながら森の中を移動したんだ。

 

 そしたらお前……何をどう間違ったのか、到着したのがルーマニア。

 どこだよルーマニアって。

 あれか、ドラキュラのとこか?

 

 まあでも街並みとかは綺麗だしな。

 丁度その辺で路銀も尽きたしカレーでも作るかなと。

 そしたら変な戦いに巻き込まれてなぁ……。

 

 いやー廃墟っぽいボロ屋を見つけてな。

 ここで一泊するかーと思ったらさ、変な露出狂の子供に襲われてな。

 最初はお嬢ちゃんこんなんしたらアカンで言うて説得したんよ。

 けどおかあさんおかあさん言いながらお目目グルグルでさ。

 つかそのパンツはあかんやろ……。幼女の癖に変態とかこれもうわかんねぇなぁ?

 

 結局交渉決裂でぼっこぼこにしたわ……。

 戦ってるうちに理解したけどこのメスガキも、冬木のさーばんとみたいな奴だわ……。

 だったらこの士郎、容赦せんッ! ヤベー奴だけどまだ辛うじて人間の例の姉妹は例外だが、さーばんと相手は油断したらダメ。

 

 つか身体に見合わないクソデカナイフで殺しにくるもんで。

 遠慮はいらんよな?

 だからまあ、霧で消えながら奇襲してこようが関係ない。

 

 ここはあえて北斗ではなく南斗でいく。

 南斗白鷺拳、そう仁星の男シュウの使う流派だ。

 何故か。向こうが霧に紛れて戦うのならシュウほど適切な男はいないのだ。

 

 何せ彼は視力がない。

 その上で五感を研ぎ澄ませ、見えている以上に周囲を細かに察知する。

 視えない相手とやるなら、これほどに適した男もいないだろう。

 

 そうやって手刀とカウンター的な足技で翻弄し、メスガキをわからせた所で乱入してきたのが全身革のバイカーファッションのオッサンに平たい胸族のガイジンの女。

 なんか「お前、協会からの応援か?」みたいな事を言ってるから、適当に話を合わせてたら赤の陣営? とかいう連中の仲間になっていた……どういうことなの……。

 

 まあその後色々あったが、胡散臭い奴がいたんだ。

 シロウ・コトミネとかいう白髪で浅黒い肌の青年。

 赤の陣営にいたんだが、聞けば言峰神父の養子だとかなんとか。

 既に死んでるから今はここにいるとか。

 へえ……そうなんだぁ……。

 

 セイバーの聖属性攻撃で昇天したから確かにあの胡散臭い男は死んでいる。

 横で見てたしな。

 けどさ、こんなデカい養子がいたらあの騒動の中で出てこないって変だよなあ?

 聖堂教会がいらん事したつって、遠坂がブチ切れて、教会のお偉いさんに抗議してたしさ。

 

 そりゃそうだ。

 監督役の人間が参加しながら場を引っ掻き回したんだ。

 ルール的にもアウトやろ。

 なので聖杯をどうするかって事でロンドンから前回の勝者がやってきて色々調査とかしたんだけど、その際に教会も大量に人を送って来たっていうし。

 まあ協会と教会、本来は相いれない組織っていうし。

 

 とは言えこの顛末もさ、イリヤ姉との定期連絡で聞いた話でしかないけど。

 関東に居た時は毎週電話してたしな。

 その辺突っ込んでたら横にいたおばさんに逆ギレされて草生えたわ。

 まあなんだかよくわからないが、クソみたいな一族がヤベー事をしてるみたいで、それをどうにかするために赤の陣営はいるらしい。

 なんにせよこれが本来の聖杯戦争ってやつかーって漸く理解したわな。

 

 冬木のアレはまあ……よくわからん間に終わっちまったし。

 結局、赤だの黒だの言ってるけど、どうやら遠坂の留学先と悪の魔術師の対立みたい。

 バイカーおじさんが色々言ってたけどポカンですわ……。

 まあ結局、なんやかや言ってる間におじさんとははぐれちまい、襲ってきた連中を返り討ちにしていたら全部終わってたわ……。

 

 途中で変なガキを拾ってな。

 金髪女と一緒に。

 こいつもイリヤ姉と同じくホモなんとかみたい。

 なんや心臓貰ったからちょっと丈夫になった言うてたけども。

 なんでせっかく知り合ったしってんで、健康になる秘孔をあらかた突いておいたわ。

 なんか力がモリモリ沸いてくるって大騒ぎしてたわ。横のパツキンもほっこりして……いやまて、野獣の眼光で見てないか? よそう、余計な詮索は……。

 

 まあそうして静かになった街で無事露店を出して終了。

 ちなみにさー両軍入り乱れてた時に、顔が白い幸薄そうな全身タイツのニーチャンがいてさ。

 ちょうど腹減ってカレー作ってたら、じーっとみてくるわけ。

 

 あれだな。

 腹減ってるときにカレーの匂いは麻薬よな。

 食うか? 言うたらうんうん言うてはるから。

 山盛りにしてやったらにっこにこで草ですわ。

 あのニーチャン無事だろうか? また会ったら食わしてやるかね。

 

 それでまあ……当初の目的であるパリに向かうわな。

 そもそもさールーマニアってな、元々いたイタリアより東なんだよな。

 トリノから西に向かったはずが東に行っていたというマヌケさに涙もでねえよ……。

 

 そしたら例のおっさんは流石賞金稼ぎを生業としているだけあってさ、西に向かう後ろ暗いトラックに渡りを付けてくれて、オレは無事に荷台に積まれてフランス入りした…………と、思うじゃん?

 

 オッサンさぁ……ついたら運転手が教えてくれるからそれまで勝手に外出るなよとかいう訳。

 ほらきっとね、バレたらヤベー何かを積荷にしてんだろ。

 こっちはもうね、密入国常習者だからさ、うんうんわかるよ、いう事聞くよって感じよ。

 

 そしたらお前、おいガキついたぜって起こされたらさードーバー海峡渡ってんじゃんアゼルバイジャン……。

 世界最高のメシマズの国、ゆないてっどきんぐだむにいたわ。

 しかもなんかこう……古臭い建物の倉庫みたいなとこでさ。

 

 なんじゃコレ思ってたら、変なオッサン連中に囲まれてなあ……。

 なんとここが時計塔らしい。

 聞けばあのバイカーおっさんの仕業よ。

 事情聴取的な。

 

 逃亡ではあっても、過酷な旅路を続けて成長したこの士郎の目をもってしてもオッサンの策略は見抜けなかったわ……。

 

 

 後半へつづく

 

*1
*1 シェンムー イキカエレイキカエレ…




コロナ渦でバタバタしてきた1年前後 空の境界編、つまり前話の続きのテキストがどこかに消えていました。
怒りに打ち震えるも、プロットから無い訳で、当時のテンションで続き掛けなくなりました。

結果、色々すっとばして、なんやかやあってFGO編に突入です。

続きは1週間以内。
 
ぶっちゃけ全部かけてるけど、思いついたら加筆を繰り返した結果、あちこち手直しと推敲が必須なので、もう暫くお待ち下さい。
おそらく1週間以内には後編だします。

粗品程度の作品なんでお願いします(;・∀・)


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さらば愛しき魔術師たちよ……そして故郷へ……中編

誰だよ次で終わるとか言ったバカは。
終わる訳ねーだろいい加減にしろ!
そんな訳で中編です。ご査収ください。


「…………おぇっ」

「シロウくん、だ、大丈夫?」

「先輩の先輩さん、医務室に行きますか?」

「大丈夫、持病の発作みたいなモンだから、少し休んでれば治るから」

「ふふふ……士郎さん、具合が悪いのでしたら遠慮せずに私の御膝へどうぞ? ネクタイが苦しそうですね、捻じり切ってしまいましょうか」

「先輩? 先輩はこっちですよね? ねえ先輩、私が悪い人になったら、困りますよね?」

「せーんぱい♡ 面白い事になってますねぇ? BBちゃんも仲間にいれてくださーい♡」

「うわすごーい! これが修羅場なんですね。マスターさん、がんばれーがんばれー」

「あーらあらあら、なんて無様だこと。どうしようかしら血が騒いできたわ」

「…………グエッ」

「先輩、先輩の先輩が白目を剥いて吐血しましたっ!」

「……マシュも成長したねえ。わたし嬉しいよ? けどね、死体蹴りはいけないと思うんだ」

「先輩、部屋の入口からさらに先輩の先輩を見てる人が! リップさんにプロテアさんまで!」

「マシュ、それ以上いけない。もうシロウ君のライフはゼロだよ?」

 

 ふう、暫く意識が飛んでいたが何があったというのか。

 あれ? せっかく帰国できるからっておニューのスーツを着ているのに、なぜかゲロ塗れだが……。

 

 まあ茶番はさておき、カルデアなる場所に、オルガマリー・アニムスフィア嬢の執事としてやってきたオレ。

 そこから約1年前後、オレはここに縛られる事となった。

 けれど冬木やその後の事を全部まるっと含めても、ここでの1年間の濃密さに比べればカスみたいなモンだったろう……。

 

 薄氷を踏む様な、なんて言い回しがあるが、オレの北斗神拳やその他諸々を持ってしても、何かひとつボタンを掛け違えたなら、本当の意味で世界が終わっていたのだ。

 大げさだと思うか? オレもこれが酒の席で久しぶりにあった友人にイキる為に吹いたホラ話だったらよかったって思うよ。だが現実だ。

 

 北斗の拳は世界規模の核戦争の結果、人類が死滅寸前に追い込まれ、残った人類の中は暴力によるヒエラルキーに支配された話だった。

 そのね、核戦争で人類が滅びた状態まで突き抜けた状態、それに似た状況に地球は一度追い込まれたんだ。

 

 その流れでオレは、冬木でセイバーを呼んだ実績から、このカルデアの一員として雇われる事になる。

 まあ元々マリーがオレの雇用主だったわけで、彼女がカルデアの主人である事から、契約事項にいくつかの内容が追加された、ってのが正解なんだけどさ。

 とは言えノーと言う選択肢は存在しないんだけどな。

 だってカルデアの外に出られないんだもの。

 

 そんな訳で茶番もそこそこに、前回の続きといこうじゃないか。

 聞くも涙、語るも涙な喜劇、オレ主観では悲劇!

 

 話を戻すと、時計塔で偉そうな連中に囲まれたのは、例のルーマニアの一件のドサクサの最中にオレ、時計塔から派遣された魔術師を何人もボコってたみたい……。

 いや知らんし。

 襲ってきたから返り討ちにしてただけだし……。

 そう主張するもダメ。

 結果的には悪の魔術師とか根絶やしになってたっぽいからワンチャン情状酌量っぽいが、何せ上から目線でさー。

 それで一番偉そうな爺の言い方にカチンと来てさ、「なんだァ? てめぇ……」とプチ切れたオレは、そいつをネックハンギングツリーで吊し上げたんよ。

 爺に北斗使うほど畜生ではないのだ。

 

 そのまま「どうすっかなーオレもなー」なんて考えてたら、なんか向こうから「士郎!!!!」ってめっちゃ聞き覚えのある声で呼ばれた。

 見れば遠坂だったわ。

 

 なんか青い顔して「その人はとても偉い人だから無礼な真似はやめ……いけませんのよオホホ」って。

 あ、そうなの……。つか急に猫被るのやめーや。お前以外全員知ってるから本性。

 まあそうして久しぶりに遠坂の顔を見たわけだが、長くなったけどもこれがカルデア行きに繋がったんだな。

 

 とは言えオレも「やー久しぶりだねー」なんてフレンドリーに言ったらおもくそグーで殴られたし。

 涙目でさ「士郎あんたね、何も言わないで消えんな! 私がどれだけ桜の対応に苦労したか……うっ、頭が……」って。

 いや気が付いたらあれから随分経ってたんだなって。

 遠坂も聖杯云々のゴタゴタも区切りがついて留学してきたんだと。

 

 一応ってか、実は旅の途中で何度かイリヤ姉には現状を伝える為にエアメールを送ってるんよ。

 それで一応オレが死んだりとかじゃなく、何らかの理由で海外にいるってのは桜に伝わってた様だ。

 もちろんオレは逃亡中だから常に移動しているし一方的に送り付けるだけで、会いにこれないのは分かった上でだが。

 それでも流石に罪悪感からイタリアで電話は一本いれたけど。なのでイリヤ姉にはあれよ。正しい意味で事情は知ってるんだな。

 東京で酷い目に遭って命からがら逃げたんだって。

 

 そしたら流石はイリヤ姉よ。伊達に魔改造された魔術師じゃないね。

 トーコサマに絡まれている件でピンときたらしい。久しぶりの会話でキャッキャしてたイリヤ姉が、急に「あっ(察し)」ってなったもんよ。

 だって「アオザキかー……シロウご愁傷さま、お姉ちゃん応援してるよ!」って。

 掌返しが早いっ。姉ェ……。諦めんなよ……。

 

 でもさ、流石に年単位で経過してるとか思わんやん。

 逃亡中ゆえスマホとかもねえし、気が付くと放浪旅楽しんでたオレが悪いんだけれども。

 まあそれで遠坂の留学は、聖杯の件が功績として認められたとかで良い空気吸ってるらしい。

 

 例の冬木の聖杯な。

 前回の生き残りの魔術師がさ、ここの講師なんだと。

 魔術師としてはポンコツなんだけど、教師としては優秀とかで、自分の講座を持ってるんだって。すごいねえ出世したんだねえ。

 

 その彼が直接やってきて、結局色々あって解体されたらしい。

 ただあれってガチでヤベー奴らしくてさ。

 魔術協会とクソ神父のいた聖堂教会と、どっちがどれだけ手に入れるかってのが今でももめてるらしい。

 

 ってのもさ、魔術師ってのはコンゲン? ってとこにいくのが目的なんだと。

 遠坂は違うらしいけどな。

 あいつは魔術師の家系としての遠坂家を、父親の時かそれ以上に盛り立てたいって。それも自分の手でって言う男前だし。

 

 で、その聖杯をちゃんと使うとコンゲンとやらに行けるかもって程にスゲーらしいんだ。

 けどさ、教会はそうじゃない。

 あそこは一神教で、全知全能の神の代弁者が例のメシアやん。

 

 つまりさ、聖杯が発動して神以上の奇跡なんか起こされたらたまったもんじゃない。

 教会の教義の真っ向からの否定だもんな。

 使いようによっちゃ。

 だからそういう意味で危ない代物だから回収したいしするべきってのが教会の主張。

 聞けばあのクソ神父の親父さんが、そういうヤベー遺物を回収する部署にいたとかなんとか。

 

 なので解体して、その部品的な奴は互いが監視できる中立的などこかに安置してあり、現在は政治的な駆け引きの最中だとさ。

 難儀なこって。

 

 そういうアレだから、冬木を仕切れる名家で、あまつさえオレがパスしたセイバーを連れている遠坂の面目も保たれたって寸法だ。

 遠坂の家はセカンドオーナーとか言う立場? らしいが、ようはあの街の魔術的な燃料みたいなのは、遠坂家の権利なんだと。

 だからそこで他の魔術師が何かをするなら筋を通すのがルールってなるんだって。

 

 ああ、だから校庭で詰め寄られたときに「モグリの魔術師め」とか最初切れてたのか。

 それで聖杯の権利も遠坂が一番強いって訳だ。イリヤ姉の中にあった奴じゃなく、洞窟にある方は土地にくっついてるから、その土地の権利者な遠坂は必然的に権利を有する的な。

 それを時計塔に絡ませた事で時計塔って組織の中での遠坂は出世する権利があるって流れ?

 まあ専門用語多すぎて話半分しか理解してないが……。

 

 例の生き残りの先生もさ、そのおこぼれに預かった形かね。

 元々遠坂が約束していた報酬の件もロハでいいってさ。

 解体の陣頭指揮を任された時点で相当ハクがついたとか。それで充分ペイするとか。

 

 でもオレは解放されんかったんだわ。

 まだ事情聴取は続くとかで。と言うよりも、時計塔の魔術師をボコった件がまずかった……。

 遠坂曰く、生身でさーばんとを倒すって部分を危険視されているとか。

 なのでそれっぽい身分を与えて時計塔の紐付きにする算段をしてんだと。

 

 面倒くせえなあ……とか思わなくもないが、遠坂の知り合いってバレちまったし、彼女にこれ以上迷惑かけたらイカンでしょ。桜の事で彼女の胃がアレだし……。

 なので時計塔が宛がってくれたアパートに住みながら暫くロンドン暮らしだわな。

 

 電話も引いてくれたしな。

 だから早速ビビりながら電話したわ。

 桜に……。藤乃さんの方は結果的に放置。だって電話番号知らんもん。

 

 桜にはめっちゃ泣かれた上にこっち来るとか言ってるし。

 まあでも暫くここから動けんし、これるなら来いって言っといたわ。

 謝らなきゃいけない事が山ほどあるし……胃がこわれそう……。

 だからとりあえず桜と藤ねえだけに連絡したわ。

 イリヤ姉は……裏切り者だから放置で。

 

 ただし再会は叶わなかったけどな。

 そらそうよ。この後カルデア入りしたわけだし。

 と言うのも、時計塔でのオレの処分が決まるまで、結構時間がかかるのよ。

 でも部屋とかそういう滞在に最低限必要な物は用意してくれたけど、当然のごとく金までは面倒を見てくれない。

 遠坂曰く、ここに通う連中ってのは大なり小なり古くから続く資産家ばっかだから、庶民のサイフの感覚ってのがわかんねえんだってよ。

 

 そうなると日々の食事もだけど家賃とか電話代が払えない。くっそ高いねん。ポンドって何円やねん……。

 そもそもこれまでは金が無くなりゃカレーの露店でどうにかしてきたからさ。

 でも時計塔の管理下にいる今、品位を下げる様な露店とかダメーって言われてよ……。

 

 そしたら寮に住んでる遠坂が「べ、別に知らない仲じゃないし、ここに住めばいいじゃない」とか善意で言ってくれたけどさ。でもぶっちゃけ遠坂の家もいう程に裕福じゃないからな。

 なのでそこは固辞させてもらった。

 遠坂の親友っぽいポジの縦ロールお嬢様にも誘われたけど、見知らぬ金持ちのヒモとかもっとねーわ。

 

 やー、金持ちのイリヤ姉に頼るのもアリだけどさ、せっかく身体も安定してきたっていうし、ならあんまり世話をかけるのもなあって事で却下。

 そんな時よ。バイトの話が出たのは。

 

 相手はなんか偉そうな貴族の子なんだけどな。

 彼女の家では表であまり言えないけど、とっても大変な家業を営んでいるらしくてね。

 けど親父さんが死んじゃって、彼女、遠坂と同じくらいの年なのに、貴族家の当主様になっちまったんだと。

 大変だねえ。

 

 その子が家業の関係で現場まで行かなきゃなんだけど、守秘義務の観点から使用人とかは連れていけないんだってさ。

 機密だらけの研究所みたいなとこだからって言うし、なるほど納得。

 で、彼女はオレの事情ってか状況を知っていて、なら腕っぷしもあるし料理も出来るし紅茶も淹れられるって事で、是非雇いたいってさ。

 報酬も一月で100万ちょいとか浮世離れした金額なんだぜ。貴族ってすげー、そう思った。

 

 彼女がこっちの事情を知っているのは、彼女の死んだ親父さんが時計塔のロード? とか言う教授っぽいポジで、政治的なヒエラルキーが高い地位にいたと。

 現在は亡くなっているけど、その関係のコネとかで現在も影響力はあるんだって。

 だから知ってたって言うか、そういう情報戦に強くないとここでは生き残れないんだって。サツバツ。

 

 けどそんな話をする切っ掛けはさ。

 なんかその、あんま言いたくないんだけど彼女ってボッチっぽいのよ。

 この頃のオレは、日中は大概時計塔の中のオレが入れない区画以外の場所を散歩して過ごす。

 ほかにする事もねえしな。時計塔ってか魔術協会って一般人に教えたらダメな組織らしく、外でバイトとかもできんし。

 

 そしたら明らかにいいとこのお嬢さんっぽい娘がさ、中庭みたいなとこでポツンと座ってるんよ。

 銀髪をサイドアップにした勝気そうだけど綺麗な子。

 時計塔は広いからさ、散歩してても結構な距離を歩く。

 なのでオレはよく小休止って感じでその中庭でティータイムをするんだな。

 

 遠坂の親友っぽい縦ロールお嬢様に、「シェロ、英国にいるのですから紅茶くらい嗜めないと恥ですわ」って言われてな。

 暇な時間に習ったんだよな。

 彼女が手配してくれた英国紳士っぽいオジサマに。

 

 で、中庭つっても相当広いもんで、その端っこで旅で使い込んだバーナーとクッカーでお湯を沸かす訳。

 沸いたらベンチに座って茶器を出して淹れる。ミルクも事前に準備してな。

 驚いたのは、英国の本格な紅茶ってストレートティーよりミルクティーのが多いんよ。カルチャーショックだわ。

 

 そしたらその子、オルガマリーが目に入ってさ。

 と言うかこっちチラチラ見てるんだよ。

 けど見た目通りプライドが高いから向こうから声をかけてはこない。

 だから面倒になってな。こっちから「どうも~」なんつって挨拶してさ、一人で何してるのなんて声かけた訳。

 そしたら奴さん、別に意味なんかないですけど、静かに休憩してるだけですけど? とか震え声で言うんだ。

 色々察したオレは、「せっかくこうして出会ったのですから、紅茶を振る舞わせてくれますか? レディ」とかカッコつけて道化を演じたわ。

 

 それも縦ロールからの薫陶?

 とにかく淑女を立てるのが英国紳士なんだと。

 外国人とは言え、遠坂の様な貴種の係累なら、遠坂がヘンな目で見られないようにちゃんとしなさいって。

 貴方自身はそうじゃないにしても、周囲はそう見ますのよだって。

 慈愛の微笑みでオレを撫でながら言うんじゃないよ。お前はオレのオカンかよ。

 

 まあそれで話す様になって、自己紹介を交わしたら、貴方がシロウ=エミヤですのねって繋がった訳だ。

 バイト代の賃金は驚くほどに多かったな。

 結局仕事を受ける事にしたのは、仕事内容的に数か月拘束されるけど、時計塔のいまの軟禁状態もいつ終わるかわかんないっていうからだ。

 けど彼女の仕事にくっついてボディーガードをしてくれるなら、その期間は時計塔で知名度のある彼女がお目付け役と言う体を装ってくれるし、それに必要な根回しもするってさ。

 具体的には仕事で出先にいる間の、アパートの管理とかそういうのとか、時計塔からの許可とか。

 

 なるほどな。

 金も貰えるし、この窮屈な生活を強いられなくて済むと思えばアリか?

 遠坂とか縦ロールにも相談したら、あそこの家とコネを持てるのは僥倖。

 数か月の労働で済むなら行くべきって。これが決定打だな。

 だから遠坂のせいでもある訳ヨ……。

 

 しかし遠坂のお嬢様然とした立ち居振る舞い、カッコいいぜ……。

 けどその後、縦ロールお嬢様との謎のマウントの取り合いから、ガチ過ぎるキャットファイトに発展するとか聞いてないけどな……。

 石畳の床におもくそバックドロップを食らった遠坂、お前涙目で済むとかゴリラかよ……。

 いくらオレが北斗系男子でも引くぞ?

 周囲で見ているお坊ちゃんたちに聞いたら、割としょっちゅうやってるらしく、様式美みたいなもんだよって横にいた金髪のショタガキがニッコニコで教えてくれたわ。

 

 まあそれでオルガマリーお嬢様の仕事を請け負ったオレ。

 肩書としては臨時雇いの執事って感じで。

 桜とかにも連絡して、時計塔の偉い人絡みで数か月仕事しなきゃいかんと伝えたしな。

 なので遠坂に鍵を預けとくから、もし来るならオレの部屋で待っててといった。

 怒られるかな? とか思ったけど、なんかムフーと鼻息荒くご機嫌だったからヨシ!

 

 ちなみに冬木のさーばんと関係だけど、セイバーとメディアおばさんはイリヤ姉が契約した状態だってさ。

 ライダーは座に還ったってさ。

 桜が無事ってなったし、魔力を貰い続けるのもアレだからって自分から戻ったらしい。

 遠坂がセイバーを連れてこないのは、時計塔だと狙われて面倒くさい事になるからだって。

 そりゃそうか……アーサー王がロンドンにとか笑えねえ。

 本人も王様の選定をやり直したいって願いでやってきてるし、未来のブリテンをみるのは複雑なんだろ。

 

 そんな流れで謎の雪山にやって来た訳だ。

 もし神様が見ているなら、こんなオレに楽させる訳ないんだよなぁ……。

 クズムーブし過ぎたわ。インガオホーやね。

 

 そう、つまりだ。

 今までとは比べものにならんレベルの出来事に遭遇したんだわ。

 なんつーか今まではさ、オカルトチックではあったけど、おおむねその発端はオレ自身の女難のせいだ。

 

 人外バトルもしてきたけどさ、規模的には街単位で収まってたさ。

 まあルーマニアの一件を果たして街レベルと言って良いかはこの際置いといてだ。

 けどなあ……。世界レベルて……。

 

 仕事の現場にマリーの執事として赴任したオレ。

 なんか守秘義務があるとかで、目隠しされたまま飛行機に乗ったんだけど、到着したのが雪山だったの。

 もちろん施設の中で解放されたけどな。

 

 なんでも標高がクッソ高い場所にあるとかで、その施設でまず高度順応訓練を1週間くらいやらんとダメなんだって。だからここが目的地じゃなくて、ここで身体を慣らしたら初めて現地に行ける。

 マリーは何回も来てるっていうけど、速攻でヘロヘロになってた。

 もしかしてこの娘、ポンコツなのでは?

 

 そんなこんなで上に到着したんだ。

 いきなりキナ臭い感じよな。

 マリーが世話になっている教授? にまずは紹介されたんだが。

 そいつ、レフ何とかっていうチリチリ頭の紳士風の奴でな。

 

 何というかマリーは絶大の信頼を置いている感じだけど、例の冬木の神父みたいなうさん臭さを感じるんだよな。

 糸目でさ、顔は笑ってるし柔和な雰囲気なんだけど、顔は笑ってるけど目は笑ってない。

 北斗神拳をなんやかんや扱う様になって結構経つけどさ、感覚が鋭くなるって言うの?

 

 ほら北斗神拳って気を多用するじゃない。

 闘気が具現化してたりさ、それで秘孔ついたりとかもする。

 多分その影響だと思うんだよな。

 これって貰いモンの力だけど、逃亡旅の最中に野営した時とかね。

 原作のケンシロウ達みたいに座禅しながら瞑想してたんよ。

 力を自分の物にするには馴染ませないとみたいな感じで。時間だけは山ほどあったから……。

 

 そうすっと経絡を流れる不思議な力が、どう流れてどう集まってるかとか理解できたんだな。

 それが感覚をどんどん鋭くしていくっていうか。

 そのセンサーでさ、この糸目の男は信用ならねえって感じた訳。

 

 まあ顔見せはそれで終わって、どこかSFっぽい雰囲気のある施設をマリーに紹介されながら、オレが寝泊りする部屋を与えられたんだな。と言うかマリーの部屋だわ。

 そもそもオレの仕事つったって、ぶっちゃけるとマリーお嬢様の世話だけだわ。

 

 紅茶淹れたり、服を着せてやったり。

 後は眠るまで添い寝して寝物語を聞かせたり。

 年頃の娘がそれでいいのかと突っ込んだんだけど、彼女曰く、貴族の家じゃ当然で、異性だろうが使用人風情に頓着しないんだと。

 なるほど、一般人のオレには理解できん世界だけど、高いギャラ貰ってるからやるさ。

 

 その翌日以降は彼女の後ろを影の様に歩きながら、何かあったら身を護る様にって感じさ。

 まあ何も無かったけど序盤は。

 なんかチョビ髭の胡散臭いニーチャンが何か因縁つけて来たけどな。ホント糸目ってロクなのいねーわ。

 まあ殺気を込めて睨むとそれ以降絡んでこなくなったけども。

 

 そんな時におもしれー女に話しかけられた。

 淡いオレンジ色の髪が似合う、遠坂やマリーとかと同年代風の日本人。

 藤丸立香って名前で、マリーが会議とかで傍に居なくてもいい時に、暇だからカルデアの広いカフェラウンジでパンケーキを突いていると横にいたんだな。

 

 外国人だらけで不安だったから、日本人の君がいて安心したとか。

 あーわかるわ。

 オレも中国に入った頃そんな感じだったもの。

 言葉とかコミュニケーションは慣れればどうにかなるけど、ホームシックはなあ……。

 案の定メニューの日本食が乏しかったり、英語は話せてもヒアリングで苦労したりとストレスが多いとさ。

 

 だからお互い頑張ろうぜと鼓舞し合い、それ以降はよく話す様になったな。

 なんでもレイシフト? とか言う訓練があるとかで、毎日ヘロヘロになってたね。

 そう言えばいつも立香の横にいるマシュとかいう女の子が最初オレを敵視してきて笑った。

 

 と言っても剣呑な様子でもなくて、どうも立香を尊敬している様で、先輩先輩と見るからに懐いている。

 だから急にやってきて立香と親し気に話している異性なもんだから警戒されたって感じ?

 毒のある感じじゃなくてさ。

 子供が癇癪起こしてるみたいな感じでほっこりする。

 

 なのでオレにはステディなハニーが故郷で待ってるんやとドヤ顔で言うと警戒されなくなった。

 むしろマシュ曰く、オレの武勇伝とやらを聞きたがってきたな。完全に年の離れた親戚の子みたいなノリで。

 まあ要は冬木での無知過ぎる聖杯戦争から始まり、女難の日々を送り、無様に逃亡し、また別の聖杯戦争に巻き込まれ、何やかやあってロンドンに至る旅の話だな。

 冷静に考えたらオレ、何やってんだろう……自己嫌悪になるわ。

 

 マシュ曰く、私は外の世界を知らないのですだって。

 まあ望んで、では決してないが、オカルト系修羅場の場数は踏んでいるオレだ。

 そんなオレが見てもマシュって娘は普通じゃない。

 純粋そうだが無知過ぎな。

 日々生きる為の最低限な常識は知っているし、さーばんとの元である英雄達の話には妙に詳しかったりするけれど、彼女の見た目的な年齢までの人生を歩んだ事で自然と手に入る自己ってか我みたいなもんが一切ないんだもの。

 

 ある種のデジャヴュ?

 オレの身近にとんでもなく似ている人がいるからね。

 誰ってそりゃ……イリヤ姉だ。

 

 今でこそホモなんとかの短命はクリアしてるけど、出会った頃はアレだったもんな。

 オレが北斗系男子じゃなかったら死んでたぜ?

 聞けばあのでっかいの、イリヤ姉のさーばんと。

 ギリシアの大英雄で、死後は神様の一柱にもなったヘラクレスだってよ。

 

 なんかヘラクレスの逸話に関連して、あのバーサーカー状態でも12回だか殺さないと倒せないんだって。

 ヘラクレスは名前の通りヘラの栄光って意味で、ゼウスの妻で大御所女神のヘラに気に入られ、試練と言う名の無理ゲーを強いられたんだな。

 試練って言ったら聞こえはいいが、ぶっちゃけ全殺しを12回クリアしたみたいなモンで。

 

 生まれながらに英雄の資質があって、ヘラの乳を吸った時の吸い方が痛いからって突き飛ばされて天の川が出来たり、それでキレられてエグい毒蛇をけしかけられたら絞め殺したり。

 やがて王様になるってんで妻も子もできたのにヘラに狂気を吹き込まれて子供も殺し……。

 そうやって酷い目に遭いつつも10の試練をクリアせえ言うて神託が下り、神のいう事は絶対やし逃げられんからクリアはした。まあ追加されて12になったらしいが。

 で最後はハッピーエンドかと思いきや、嫁をケンタウロスにNTRされそうになったからヒュドラの毒で殺したら、逆恨みされて死に際に奥さんにウソを吹き込まれ、その毒をパンツに仕込まれ発狂せんばかりの酷い死に方。

 可哀想すぎてなんもいえねえ……やっぱ神話の神ってクソやな。

 

 まあその無理ゲーをクリアしたってのがミソで、12回倒すにしても、一度倒した方法は一つの試練をクリアした認定をされるだけなんよ。

 つまり同じ倒し方は通じない。

 これアレだな。708ある経絡秘孔を利用した暗殺拳である北斗神拳だからあっさり倒せたけど、これがセイバーとかだったら詰んでたやん……。

 剣しかねーんだもの。いやそういう意味じゃヘラクレス相手にしたら他のクラスは全部アウトやね。

 

 なんか話それたな……。

 まあそんなエグい英霊と契約していたイリヤ姉は、聞けばゴルゴ切嗣と、ホモなんとかのアイリスさんと言う母親の間に生まれた子なんだな。

 けどね、イリヤ姉の家のアインツなんとかの宿命とかで、生まれてすぐに魔改造されたんよね身体。

 そうしないとヘラクレスなんって大物をさーばんととして維持できんのだと。

 だからこその魔改造だった訳で、じゃなきゃ契約した途端死んでるってさ。

 

 あのポロンと飛び出た聖杯があったでしょ。

 あれはシステム的に聖杯戦争に呼ばれたさーばんとが死ぬとその中身がプールされる充電池みたいなモンなんだと。

 山の洞穴にあったグロい方が本体でさ。

 だからまあ本体がサーバーで、イリヤ姉が端末みたいな? アイポンみたいなもんだって。

 

 で、魔術師としての素質を底上げして、聖杯を埋め込んで、最終的に聖杯の化身みたいなモンに覚醒して、最後はアインツの悲願である魔法を得る為の道具だったと。

 だから短命なのはどうせ死ぬから寿命なんかいらないよねみたいな考えの下らしいぜ。

 

 オレも使える解析とかコピーとか強化が出来る魔術と、連中が言う魔法の違いがオレにはわからんのだけどね。

 なんかスゲー説明されたけども。

 ドヤ顔のイリヤ姉に。可愛いかよ。

 

 だからまあ、本来ポロンと取れるはずも無かったんだと聖杯。

 そこは北斗スゲーって事で結果オーライ。

 そのイリヤ姉もさ、マシュと同じく必要な事しか知らんかった訳。

 聖杯戦争の宿命から外れた途端、生真面目メイドとアホメイドと3人で目キラッキラさせながら毎日のように冬木観光してたもんな……。

 

 魔術に特化してるけど、それ以外の事をなんも知らない。

 そのくせ年齢は見た目のロリさからは信じられない年数生きてる。

 オレよりも2つとか上とか言ってなかったっけ……。

 

 まあそんなんでさ。

 マシュを見てるとイリヤ姉を彷彿とさせんだよな。

 その辺の倫理観とかは知らんよ。

 現実としてイリヤ姉もマシュも存在してるわけだし。

 いるもんを今更になって是非を考えてもしゃあないべ。

 非だったら殺せって出来ないでしょう実際。

 

 そもそもね、前世のオレも身近に外国人結構いたんだよ。仕事関連で。

 その中にはドイツ系アメリカ人とかイタリア人とか、アイルランド人とかいたわな。

 要は白人系の外国人。

 

 で、それぞれの容姿に違いはあるけど、共通してるのは割と産毛が多かったり、そばかすが目だったりするのよ。

 彼等の肌は白いからね。

 紫外線から守るためにだと思うけど、結構毛深いんだよ。

 色素の兼ね合いで目立たないだけで、近くで見ると金色の産毛がもっさりとあったり。

 毛穴も結構目立つしなあ。

 

 けどさ、イリヤ姉もマシュも、肌が綺麗すぎんだよ。

 体毛自体少ない感じ? むしろ無いレベル。

 これってアルビノだったとしてもおかしいレベルだぜ。

 不自然過ぎる。イリヤ姉とは一緒に風呂に入ったってか、入れてやった時に全身見たけど、やっぱちょっと違うもんな。ガチでシミひとつない。

 

 それを突っ込もうと思ったけどやめた。

 そりゃそうだ地雷要素だったらヤベーもん。

 とりあえずは無知なお子様と思って接する事にしてだ。

 

 そんで夜にマリーに聞いたんだな。

 あのマシュって子、普通じゃないよなって。

 そしたらお前、マリーってば生まれたての小鹿みたいにプルプル震えながら目が泳ぎまくった。

 ビビり過ぎやろ……。

 

 ガタガタ震えながらオレにしがみついてさ、何かあったら絶対に守ってとか絶叫してんだ。

 なので泣いてる子供をあやすみたいにして宥めて、とりあえず事情を聞いた。

 やっぱ地雷だったわ。

 

 なんでもマリーの父親ってのがこの近未来施設カルデアを作った。

 そこでいろんな実験とかやってんだけど、オレが知るさーばんと的な奴を人間に合体さすみたいな事もやってたんだと。……邪教の館かよ。

 けどいきなり人間にやったら失敗しても目も当てられんってなり、そこで「せや! だったら失敗してもいい人間っぽいの作って実験すればええんや!」って思い付き、それに最適な肉体を設計して作ったのがマシュ達デザインチャイルドなんだって。

 

 あれだな。

 巫女の神降ろしをガチでやるやつだな。

 このマシュ達っての達ってのが意味深でな。

 ほとんどが失敗して、残ったのがマシュだけみたいな。

 つまり他の奴は死んでるみたいな。

 

 えっぐ……。

 

 だから外道過ぎる親父の所業の結果、それを逆恨みされているのでは? とマリーは怯えているって訳。

 結果がどうあれ、マシュの中に何かインストールされてるのは間違いないし、殺しに来るとか思ってたらしい。

 まあでもその心配はねえだろ。常識的に考えて。

 だってあの無知っぷりだぜ?

 あれ、子犬みたいなもんだろ。

 

 でもなぁ……付き合いが長くなるごとにはっきりしてきたが、こいつコミュ障だしな。

 普通に話せばそんな訳ねーって気が付きもするんだが。

 けど出来ないからこうなってると。

 

 つかさ、こいつ何かにつけて貴族マウント取ってくるけどさ、ちょいちょいチラチラこっち見ながら、小声で構ってちゃん発動するってか、割と強気の癖に弱点を自爆するからな。

 その中でやたら死んだ親父にガキの頃に褒められた話とか急に大声で行って来たりするんで。

 察したわ。こいつ典型的なネグレクトの子供やって。

 

 貴族って割りに人間臭いってか。

 他に味方おらんから、ビビッて周りにキャンキャン吠えるタイプの犬みたいな。

 そう思うと普段の情緒不安定な感じも気にならんくなるわな。

 そう言うもんだって理解しとけばさ。この辺は中身が元オッサンのオレの利点やね。

 

 で、もうすぐレイシフトとやらの大規模実験が近いとかで、施設内もピリピリしてるしさ。

 なら今のうちにその辺はスッキリさせとこうやって事で、翌日立香たちがランチしている所を狙って、喚くマリーを丁寧にお米様抱っこしながら運搬して一緒に飯食ったんだよ。

 

 なんかテンプレツンデレキャラみたいで大量の草が生えたが。

 まあなんにせよ、どうにかマリーは逆恨みされてない事が分かったようでスッキリしたな。

 

 そう言えばダ・ヴィンチとかいう巨乳に絡まれ、レイシフトの適性とやらを調べられたな。

 けど微妙だったわ。出来なくも無いけれど、存在証明の演算が面倒臭いレベルとか。

 魔術師としての才能ってか、魔術回路? とか言うのも太いみたいだが、数は大した多くないっていうし。

 けどさーばんとを殴り殺すとかどうなってんのキミとか興味持たれて色々調べられたわ。

 あれだな、マッドってこういう奴よな。

 

 そのせいでマリーに余計懐かれたんだわ。

 マリーは魔術師としてはかなり凄いらしいんだけど、オレとかわんねーか、それ以下のレベルでレイシフトの適性が無いとか。

 そのせいで実験に参加できないんだと。

 

 すげえ必死に「シロウも残念ね。出来なくはないですか。設備に負担をかけてまでする事はないのだから、貴方は大人しく私の護衛に専念しなさい」って、嬉しさ爆発って感じで。

 これにはオレも思わず吹きそうになったけど、雇い主に恥をかかせらんねえからまあ、顔を逸らして誤魔化した。

 ドクターはおもくそ吹いて腹パンされてたけど。

 

 そのレイシフトってのは、なんか過去の歴史とかにいけるらしいぜ。

 タイムマシンかよ。ドラえもんかな?

 まあそれだけじゃなく、なんか色々理由があってやってるらしいけどオレは護衛だから関係ねえわ。

 むしろギャラ以上の仕事はしたくないな……。

 

 でだ。そろそろ本題に……。

 

 カルデア生活も2か月が過ぎたころか。

 そろそろ桜もロンドンのアパートに来てるかなと部屋でぼんやりしていた。

 ここの立地の関係と、魔術的な結界云々で、ここから気軽に電話とかもできんからな。

 

 その日は大規模な実験をやるとかで、リツカちゃんやマシュも集められたな。

 だから余計にすることもなくてさ。

 そしたら実験を仕切ってる筈のマリーが部屋に飛び込んできたんだな。

 

 聞けば実験はスタートしたらしいんだが、彼女はレイシフトとかいうのを出来ない。

 だから演説みたいな事をした後、他の人らはカプセルみたいなのに入ってレイシフトをするんだと。

 そしたら彼女は管制室ってとこで監督するわけだが、なんかAチームとかいうエリート連中の中のヴォーナントカって男に「所長とか言いながらレイシフトも出来ないのか。お可愛い事ですな」的な目で見られたとかで、シロウ慰めてと来たらしい。ああ、貴公子っぽい奴か。あいつすげえ良い奴だったけども。

 

 でも、え、ちょ、え? それ言われてませんやん。

 ぶっちゃけマリーの被害妄想やん。

 とか思ったけど、それを口にする程オレはお可愛くないのだ。

 女難ってのはな、こういう時に思いついたまんま喋ると起こるって学んだんだよ!

 

 まあマリーを慰めたり甘やかしたりすることも、どうやらアニムスフィア家の執事の仕事と主張しているし、仕方ないなと頭をナデナデしてたんだ。

 そしたらお前、ドーン!言うて。

 あちこち照明も消えるしやね。

 地震みたいにグラグラ揺れてるわ。

 

 マリーってば生まれたての小鹿みたいにプルプル震えながらベッドの下に潜るしやね。

 これアカン奴やと思ったオレは、急いで騒動の原因だろう方向に走った訳。

 ああ、マリーが騒ぐから独りで行こうとしたら、それはそれで無理とかいうんで、しゃあないからお米様抱っこで走ったわ。こいつクソ軽いからいいんだけどさ。

 

 そしたら分厚い扉が降りててそれ以上行けないんだわ。

 なんかアナウンスで安全確保のために隔壁をおろしたとかなんとか。

 とは言えリツカちゃんとか心配やし、まあ行くわな。

 

 分厚い鉄の扉とは言え、南斗水鳥拳の前ではナイフでバターを切るようなもんだわ。

 いちいちリアクションのデカいお米様はスルーして現場へ。

 そしたら誰もおらん。

 

 あちこち血だまりがあるけどな。

 あとから聞いたら、爆破テロだってよ。

 だもんでバックアップの職員さんも含め、マスター候補なる魔術師連中の大半か重傷か死亡かみたいな状態。

 まあカプセルに健康維持機能がついてるとかで、ほとんどはそこで落ち着くまで保存しとくとかなんとか。

 

 そしたらドクターとかダ・ヴィンチがマイクでこっち来い言うから行ったら、20人くらいの職員とドクターとダ・ヴィンチが唯一の生き残りで、リツカちゃんとマシュは、謎の場所にレイシフトをしたとかでさ。

 連中は必死でリツカちゃん達をバックアップしてるんだと。

 

 ただ所長が見当たらないとかで大騒ぎよ。

 ま、肩に乗せてるしな。

 ヘイっ! パスっ! ってなもんで、椅子に降ろして見たら、白目剥いて気絶してて草。

 

 その後はまあ……目まぐるしかったな。

 リツカちゃんとマシュは、その後特異点Fって名づけられた場所で無事だった。

 オレも管制室のモニターから見てたけど、マシュがハレンチ過ぎる姿になってて草。

 巨大な盾持ってさ。

 

 で、よく見ると見た事ある光景なんだわ。

 Fって冬木のFかよ。

 燃えてるしガイコツとか不良さーばんとしかおらんけども。

 

 そこでなんやかやあって、リツカちゃん達は最後に待ってた黒いセイバーとガチンコして勝った。

 つっても、オレが冬木で最初に倒したクーフーリンの別バージョンが味方になってて、そいつがトドメ刺したんだけどな。

 まあ勝てば官軍負ければ賊軍言うし、終わりよければなんとやら、だ。

 

 そしたらさー例の糸目の紳士が出てきてさ。

 糸目だったのにすげえドヤ顔で、お前らもう終わりやーいうて。

 地球燃えとるし未来はもうねえ!! とか大騒ぎよ。

 

 そしたら急にキョロキョロし始めてさ。

 なんか首傾げてるし。

 マリーいなくね? みたいな。

 いやマリーならそこで白目剥いて気絶してるし。

 

 それオレがマイク経由で教えてやったら、すげえキレてて草。

 ワンピースのエネルみたいな顔芸してたぞ。

 

 まあその後、リツカちゃん達は戻って来たけど、マジで外に出られなくなってたんだよ。

 外をモニターしたら、よくわかんない空間みたいになってるしやね……。

 

 で、リツカちゃんが黒いセイバーから聞いた、グランドオーダー云々。

 要は特異点Fみたいなんが後7つあるから、それらをどうにかして未来を取り戻せ的な。

 だから今後、オレ達にはそれをどうにかする以外選択肢が無くなったんよ。

 規模大きすぎて草。

 

 ただ生き残った奴らが全員そこに集まってシリアスな会話してんのに、マリーだけが間抜けな顔で気絶してるだろ?

 仕方ねえからビンタしてたたき起こして、お前まとめろや所長やろ言うたら、なんかすげー偉そうなことを言った後、ここは適材適所で行く方が建設的とか言い出して、結果ドクターとダヴィンチに丸投げしたわ。

 

 いっそ清々しいわな。

 で、部屋に戻ったらボロボロ泣いてレフに裏切られたーシロウ、貴方は捨てないでーみたいな。

 はい、マリーがその後、あんなことになった分岐点はここでしたね……。

 それでもほら、一応は年頃の少女だし?

 見捨てる選択はねえだろ。オレじゃなくてもそうじゃね? 知らんけど。

 

 まあそうして、カルデア危機一髪を結果的に切り抜けたオレ達は、7つの特異点を巡る旅に出たって訳だ。

 

 ここでオレの契約も切り替わる。

 マリーの護衛もそうだが、カルデア側で何かあった際の防衛担当的な役割として。

 もちろん情はあれどロハではやらんぞ。

 マリーにはきっちりと報酬の割り増し交渉をした上でだ。

 

 何より、やっと桜と会えると思っていたけど物理的に外が燃えている。

 オレにしても、ここでイモ引く訳にはいかんのだ。

 悪いが、こんな状況にしやがったクソは、奥義を開帳する事も辞さない思いですよ……。

 

 そんな決意を新たにしたオレだったが、まさかこの先、最悪の展開が待っているとは思ってもみなかったぜ……。

 

 あの蒼崎姉妹が子供の喧嘩に思える連中に囲まれるとか想像できる訳ねえだろ……。

 

 

 

 

 

 

 

 後半へつづく。

 

 

 

 

 

 




FGOのボリュームあり過ぎて前後編で終わりませんでした……。
ボリュームありすぎなんだよなぁ……一部だけでも。
私得意のダイジェスト商法で駆け抜ける予定なのに無理だった。
おそらく次か、その次くらいで終わると思う。




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さらば愛しき魔術師たちよ……そして故郷へ……中編2

おわんねーよ!


 ベイカーストリートにある古びたアパートがオレに宛がわれた家だ。

 ここは古風な住宅街で、前世ではシャーロキアンの聖地だったが、こっちではそうでもない。

 閑静な、って言葉通りの場所だ。

 

 とは言え住むって点で言えば悪かない。

 少し歩けばリージェンツパークがあるし、買い物する場所も近所にある。

 最近は生活も落ち着いたせいか、ロンドン市民モドキって感じで、生活自体を満喫している感じがする。

 おっつけイリヤ姉たちもこっち来るって言うし、それまではのんびりしよう。

 

 そんな感じで日々を生きているオレは、今日も日課の散歩に出る。

 3月のロンドンはとても寒い。

 それこそ前世で旅行に行った北海道と変わんないんじゃないかって程に。

  

 本場のレザー、ルイスレザーズのジャケットに、足元はジョージコックスのラバソで決め、スカした感じで街を流す。

 時計塔の貴族達には鼻で笑われるだろうが、そこはそれ。

 オレは間違いなくオノボリさんなのだ、これくらいは許してほしい。

 

 何より、欧米での日本人なんて大概は中国人と思われる。

 つまり多くのアジア人の一人としか見られなく、場所によってはぞんざいな扱いを受けたりもする。

 だから尚更、郷にいては郷に従えじゃないが、英国ファンションを身に纏い、舐められないように肩を怒らせて歩くのはある意味で正解かも?

 

 それでも帰って来たのだ。無事に。

 それは素直に喜ぼう。こんな日常を送れる事自体が幸せなんだってな。

 確かにひと悶着で済まない程に、いや時折記憶が飛びがちになる程にエグい別れの儀式があったからこそ、この平和を心から実感できるのかもしれないな……。

 

 カルデアから戻って来たのは先月の事だが、戻ってきたら戻って来たで面倒な事が山ほど待っていた。

 そもそも元々は、時計塔の魔術師をボコった件で軟禁されてたわけだが、それはまあカルデアでのあれやこれを加味し、お咎めなしって事になった。

 当たり前だよなぁ? これでギルティとか言われたら、あのガンダルフめいたジジイの髭を全部抜いていたとこだわ。

 

 けどやはりオレ単体で、さーばんと、いやサーヴァント(この辺のワードは1年チョイのカルデア生活で少し成長したぜ)を人間が屠るって所が魔術師的に野放しに出来ないらしく、結局は時計塔所属の非常勤魔術師的なポジに収まった。

 その際にギアスなんたらって羊皮紙で、守秘義務の件を魔術的に縛られてだけど。

 

 当然サーヴァントとガチンコいけるって事は、たかが人間の魔術師程度に負ける道理はない訳で。

 サーヴァントとバトルしている時の速度って、はたから見た一般人目線だと、漫画みたいに残像しか見えないみたくなってるらしいしな。

 つかカルデアのシュミレーターでのオレの実践シーンを、復習がてら映像で確認すると乾いた笑いしか出なかったもの。

 やってるときにそういう感覚って無いからな。普通に戦っているつもりだけど速度域がおかしい。

 

 だいたいさ、あのカルデアの一年は、オレ達主観では苦難の日々だったが、それ以外の燃えてた場所は、アレが起きた瞬間から、カルデアがゲーティアをボコって帰還するまでの間、まるで何も無かったかのように空白状態なんだわ。

 

 だから当然、連中にはオレ達の行動を理解できない。

 ただ1年の空白期間で、人の記憶以外の部分は劣化したり朽ちていたりするわけで、何かしらが有った、と言う朧げな認識しかないのだ。

 

 そうなると必然的に、マリー達の功績は認めらんないってなる。

 オレ自身の功績とかはクソどうでもいい。あそこで一番頑張ったのは、間違いなくドクターを筆頭とした首脳陣とそれをバックアップしたAチームの一部の連中、そして最前線のリツカちゃんだしさ。

 オレの雇用主はマリーだし、帰ってきてきっちりと報酬も貰ってるから満足なんだわ。

 

 つっても常に主導権争いの内部ポリテックス祭が常な時計塔は、カルデアを丸ごと接収したいって腹積もりなんだろう。

 だから功績を認めるよりは、まず難癖をつけて主導権を取るって思惑だったんだな。

 

 聞けばカルデアってさ、現状、時計塔系の組織扱いだけど、実際はアニムスフィア家の私設組織なんだわ。

 けど魔術協会には時計塔以外もあってさ、その一派でエジプトだかにあるアトラス院からも技術提供を受けているらしいんよ。

 なのでむしろそっちの方がカルデアに貢献しているまである。

 

 だから余計に時計塔は真っ先にカルデアを召し上げようと画策してたっぽいぞ。

 大まかに三つに分かれてる魔術協会の派閥、その中でもマウントの取り合いをしてるんやなって。

 だもんでオレ達の帰還が決まる前に偉そうな太ったオッサンと、胡散臭いキャリアウーマンを送り込んできたけれど。

 

 まあその頃ってゲーティアの謎の神殿から戻って来た頃で、最前線で戦ってたリツカちゃんやマシュを含め、バックアップチームとかも精神的にボロボロだったからさ。

 勝った? 多分勝ったな? それはそれとして色々しんどい……みたいな感じよ全員。

 普段生きててさ、多少ヒリつく出来事があると新鮮だったり刺激的に感じるけど、何かトチったら即世界終了みたいなヒリつき方は洒落にならんって事やね。

 だから護衛役で、基本的には前線に行かないオレですらピリピリしてたんよ。

 

 やー、うん……八つ当たり……かもしれんが。

 うっ……胃が。

 リツカちゃんだけじゃなく、カルデアの防衛的意味で、オレも幾人かサーヴァントを呼んでるんだが、そいつら、終わったのに帰らんのよ……。

 おえっ……あかん、思い出すとえずくわ……。

 

 まあ結局、なんやかやあって帰ったからオレがここに居る訳だが。

 それもあってキツかった……。

 

 そしたら案の定、オッサン以外の連中は武力を持って制圧するぜみたいなノリだったわ。

 なんや……ロシア風の名前名乗った例の神父がいて胡散臭い事山のごとし。

 だからまあ、久しぶりにサツバツとしちゃおうかしら?

 みんな疲れて祝杯すらあげらんないトコにこれだからさ。

 リツカちゃん、毎日ドクターにカウンセリングだぜ? そらそうなるわ。ただの女の子やぞ。

 だからね、そういう漁夫の利をさらうとか許されねえよなあ? そう思ったんだ。思ったんだが……。

 

 知ってるか? サーヴァントってさ、魔力のパス? ってので繋がっててさ。

 割とオレの感情とか考えとか筒抜けなのよね……。

 キャリアウーマン風狐が夜ごそごそしてるのを見つけて、ならまあ遠慮なくいくか気配が人間ちゃうし会話も無く処そうか、そう身構えた瞬間、オレの背後からどんどん出てきてさぁ……。

 

 ゴレンジャイのコントみたいに登場してだ、問答無用で襲い掛かってなあ……。

 いきなりゴーって津波みたいの出して狐を押し流した所で、どSバレリーナが狐を蹴りまくり上空にカチあげ(屋根吹っ飛んだ)、そこに分身しながら槍を振り回して、周囲に雷まき散らすインドのサリー姿の桜(微笑んでるけどコメカミに青筋アリ)、もうこの時点で狐の身体はボロボロよ。

 

 なんか狐はキレちらかして怒りの顔芸披露してデカくなりかけたけど、そこに背後からナース服姿のメスガキがやってきて、ぶっとい注射を刺したんだが、その結果、狐の力が全部封じられて、地面にぽてりと落ち、メスガキは好機とばかりに延々と全集中煽りの呼吸で精神的デバフを入れる。

 

 そこに吹っ飛んで空が見える上空から、全身包帯巻いた巨大ハレンチ桜が掌でドーン。

 メスガキもインド桜も巻き込まれて消えかかってて草。

 お前ら仲間っぽく見えていつも殺意高すぎんよぉ!?

 

 するとそこにロリっぽい桜がやってきて、またも無数に分身したと思ったら、巨大桜とメスガキもろとも(インド桜はオレの背後に避難済み)弓で集中砲火してだ、最後は物陰からスっと現れた藤乃さんが周囲一帯を捩じ切った。

 テンアゲ状態で高笑いする藤乃さん……ちょっとチビったが。

 

 なんでオレが無事かって?

 そらリップちゃんが巨大な手でカニみたいに移動してオレを逃がしたからだわ。

 背中にひっついてさ。男の癖に情けないか? ふざけんな。鉄骨の雨が降ってる場所で北斗なんて役にたたんわ! 

 そうしてカルデアを奪おうとする連中は跡形も無く吹き飛んだ訳。

 

 

 だからそう、オレなんもしとらんのよ……。

 オレの契約したサーヴァント達が呼んでから日常的に繰り広げられてきた、トムとジェリーも苦笑いする喧嘩。

 それがちょーーーーーーーっとばっかり規模が大きくなったんよ。

 カルデアの3分の1くらい切り取られたけど……あれ、これ本末転倒じゃね?!

 

 まあそれで有耶無耶になったってか、ダヴィンチがゲス笑いしながら、これを利用して上手く立ち回るよ、えらいぞシロウ君って。

 お前いっつも良い空気吸ってんなオイ。

 

 それよりもオレ、太ったオッサンに懐かれて草。

 マリーと同レベルのポンコツでさ。

 ビビりまくって「わ、私を守ってくれ給えっ、帰ったらいくらでも払うからっ」って必死過ぎか。

 

 まあ聞けばこいつも狐とかに騙されて来たっぽいし情状酌量や。

 つか狐が死ぬ前にボヤいてたけど、本当はもっと上手く行くはずなのに、お前のせいで計画変更したんやぞコラ、ふざけんなみたいな呪詛漏れてたな。

 よう分からん……いや、オレがやった事なんて、ぜいぜい北斗神拳を使って死にかかってた職員とかAチームの人らとか治したくらいやぞ? 

 

 そのAチームの連中も、動けない職員の代わりに管制室でお仕事してたしな。

 一部を除いて良い奴やでホンマ……。なんかBBほどじゃないけど、周囲を煽ってあるくアホがおったから、そいつは申し訳ないけど秘孔をついて悪さ出来ない様にしといたけども。

 まあリーダーっぽい貴公子君にはロンドンでメシ奢って貰う約束だしな!

 ガチ貴族の食事とか気にならん? オレはなる。

 

 それでシュババっと動いたダヴィンチは、これまでのカルデアの記録とか、カルデアス自体のログとか全部持ってロンドン入りよ。

 何せドクターって魔術王ソロモン本人だし、ダヴィンチはダヴィンチだし。

 聞けば魔術協会ってもともと、ソロモン王の弟子の一人が立ち上げたらしいぜ。

 なら始祖様やんけ。

 

 2人が記録を開示しながら理詰めで説得……と言う名の恫喝を行い(まあドクターは性格的にそういうのは出来んが相棒の方がな)、リツカちゃん達の功績は認められたのだ。

 

 で、色々あってサーヴァントである2人が世間と隔絶された状態での居場所としてカルデアを利用するとゴリ押したんよ。

 リツカちゃんも物理的に守らないとだし、ダヴィンチとマシュのマスターとして、カルデアの顧問役に据えて。

 

 そんでカルデアは今後、人類にも魔術協会にも聖堂教会にも、つまり俗世のどの組織にも一切与しない中立を貫き、人類の危機の際にだけ出張ります。

 それまでは神代からの魔術の研究や記録なんかをしている巨大な魔術工房ですみたいな感じになった訳。

 

 マリーはもう自分で組織を舵取りする許容量を超えているから、ドクターに所長の座を完全に譲り、自分はオーナーとして出資はしても口は出さない方針を打ち出した。

 けど現実としてソロモンを傘下に置いているとも言える訳で、これでマリーの帰還後も、時計塔での地位は安泰って感じよね。

 まあ彼女自身も、この1年の経験で成長したって事よ。ぽんこつなのは変わらんが。

 

 結局はゴリ押しな訳だが、オレの方もどうにかパールと藤乃さん以外は帰って貰って……やば、マジで吐きそう……こうやってロンドンに帰還したって訳だ。

 

 マリーの執事の件は、中身大人として断固として契約終了にした。

 いやまあ生い立ちとか聞けばそらね、同情は出来るよ?

 けど彼女は異性に父親像を求めてるからね。

 それを恋愛と混同しちゃダメよ。

 

 つってもね、今のオレ、住んでるのがベーカー街だからって訳じゃないが、フリーランスの魔術師として、アパートを事務所みたいにして仕事してんだよ。

 だからアニムスフィア当主サマのご友人枠として、今後も付き合う事になる。

 で、戻ったオレが後ろ盾に選んだのは、遠坂でもマリーでも縦ロールでもない。

 

 そう、前回の生き残りマスターこと、ウェイバー・ベルベット氏だ。

 まあうん、生き残ったからこそ恩師の借金とか責任とか全部背負わされてな、今はロード・エルメロイ二世を名乗ってるけれど。

 

 結局どうやってもオレが時計塔のひも付きになるのは避けられない。

 けど言いなりのままどっかの派閥に関わると、オレみたいな武闘派は、間違いなく小間使いにされる。

 遠坂にしたって縦ロールにしたって、まあマリーもだけど、結局はここで生きるなら、どっかの派閥に与しないとダメな訳で、そこに普段の付き合いからの情みたいなモンが混じるとグダるのは確定やん。

 

 だったらさ、所属はするけど時計塔の目の届く場所にいて、けどずぶずぶにならない距離感ってのがベターだと判断したんだ。

 なにより法政科ってとこからのスカウトがしつこくて、二世に泣きついたってのが正解かもだけど。

 化野さんとかいう胡散臭い雰囲気のお姉さんが毎日のように来るんだわ……桜たちと無言のままギスった雰囲気かもしつつ。もうやめてくれよ(白目)

 で、事務所を開いたんだけど、内容はね、霊祓いみたいな感じか。

 オレはカトリックでもプロテスタントでもないから、エクソシストとは違うけど。

 

 昔からイギリスって土地は幽霊とか大好きな国なんよ。

 日本じゃ事故物件とか言われる曰く付きの建物とか、家賃高くてもすぐ埋まるレベルで。

 だから霊媒師とかそういう胡散臭い仕事が普通にやれる。

 オレと言えば、霊より怖いのを見て来たから、そういうのを北斗も使ってどうにか出来る。

 なので魔術師とは大っぴらに出来なくとも、表の商売で金を稼げるって寸法だ。

 

 その事務所を開設にあたって後見人と言うか保証人? を二世にお願いした形となる。

 存在が今や爆弾扱いになってるオレを管理するってだけで、彼のハクもつくってんでウインウインだわ。

 二つ返事で受けてくれたよ。

 彼も多額の借金を返すのに、いろんな無理ゲーを強いられてるからさ、突然出来た義理の妹には日々可愛がられ(物理)、どうもオレとしても謎のシンパシーを感じる訳。

 

 ある夜に彼とサシで呑んだんだが、朝まで愚痴り合い、今では親友と呼べる関係かもしれない。

 年齢差はあるが、顔を合わせると無言でうなずき合い、彼の執務室で隠れるようにスコッチを飲む。

 そして弟子のグレイちゃんに怒られるまでがテンプレよ……。

 やっぱあれやね。同性の友人っていなきゃダメよ……。

 いくら綺麗でも女性だらけは精神が疲れるんだ。

 嗚呼、シンジお前にも会いたいわ……。

 

 事務所の仕事自体も表の顔としては開店休業状態で、ぶっちゃけ二世が依頼で出向いた際にヤバかったらオレが呼ばれて、戦闘面とかで助けてやるってのが殆どだしな。

 弟子のグレイちゃんも、戦闘面はかなり強いんだけど、力を十全に発揮するにはかなり面倒くさいリスクがあるもんで、二世的にもあんまり開帳したくないからな、そこは持ちつ持たれつ。

 

 アホほど借金抱えてるくせに、オレへの報酬払えないじゃんと思うでしょ。

 けどオレが動くってなると、二世の依頼者側に結構畏怖されんのよね。

 

 なんつーか時計塔がオレを囲う際に「祭位(フェス)」って言う位を授けられたのね。

 なんかあそこって古めかしい組織だから、体質もかなり保守的でさ。

 階級みたいなんがあって、それを持ってると魔術師としての名刺代わりになるんだわ。

 ちなみに二世も同じ階級やね。

 

 しかもカルデアやらドクターの件やらで、バックに新カルデアがいるのは知られている。

 なので二世のクライアントが、オレが動いた際には別途報酬を用意してくれるから二世に負担はないんだ。

 ……まあ、奴は弟子を山ほど抱えてるし、家の借金もあるんで金回りクソだから、あからさまにオレに酒代たかってくるけどな。でもそこは無下には出来んわ。世話になってるし。

 面倒な事があれば「話はロードエルメロイ二世にオナシャス^^」って丸投げできると思えば投資としては安い安い。

 

 さて、冬のロンドンを動物園に向かって散歩中のオレだが、これを語らなければなるまい……。

 そう、藤乃さんとパール桜を連れ帰った件だ。

 

 これさぁ……胃が裏返るかって思ったけど、まだ特異点としてはオケアノスとかいう場所に関わっていた時期なんだけど、オレはマリーの護衛として、基本的には彼女の近くにいるじゃない。

 でモニター越しにリツカちゃん達の様子を見てるんよ。

 そん時にさ、イリヤ姉が連れてた筈のヘラクレスに遭遇してな。

 リツカちゃん達がピンチになったんよ。

 

 そん時にオレ、モニター眺めながらなんとなく零したんだな。

「そういやあいつって普通にやっても倒せないんだっけか」って。

 そしたらそこにいた全員がバッってこっち振り返ってさ。

 

 この頃はまだ、Aチームとか復活させてなかったから、現場はいつもデスマーチだったんだわ。

 だからなおさら、レイシフト適性とマスター適正とやらがクッソ高いリツカちゃんが前線にいくしかない。

 まあ本人はただの正義感が強くてお人好しな女の子だからさ、彼女に協力を申し出てくれたサーヴァント達が守らないとあっさり死ぬんだろうけれど。

 

 だからダヴィンチが突然、シロウ君、行って! って。

 ドクターも必死でボクも精一杯バックアップするからお願いするよって。

 まあ、実際のオレの実力がどんなもんか、それは事前にシュミレーターで英霊とガチンコやって見せたから、その辺の理解があっての事だけども。

 

 そしたらシロウが離れるとか無理とかマリーがゴネだしたけど全スルーされてて草。

 彼女、部屋の隅っこで(´・ω・`)←こんな顔してたぞ。

 で、まあ行ったさ。

 

 オレってレイシフト適性はかなり低いから、疑似地球の中に本来いない筈のオレを存在証明する時の作業がクッソ多いんだって。マスター適正だけは高いのにな。

 けど最長30分ならいける! ってダヴィンチが言うし、まあ行ったわな。

 そんでリツカちゃん達とヘラクレスの間に落ちて、後は任せて先に行け! と言う、ちょっと言ってみたいセリフの上位に入るワードを叫んでさ。

 まあうん、デビルリバースを倒したケンシロウみたいに処理して帰還した。

 

 で、その後。

 マリーが今後はカルデア側でなんかあっても困るし、シロウはアーサー王呼んだ事があるって言うし、なら何体か、電力の許す範囲でシロウもサーバントを呼びましょうとかドヤ顔で言うんだ。

 まあ理屈は分かるけど、本音はオレが今回みたいに現場に行った時の護衛的な意味なんだろうが。

 こいつホントにぽんこつやしな……。

 

 それも一理あるねなんつってダヴィンチが相乗りしてきたが、こいつオレがどんなの呼ぶか気になるだけだと思うの。

 なのでオケアノスが終わって、リツカちゃん達が戻ってきてからやったんだわ。

 

 フェイトって言う召喚装置でやるんだけどさ。

 なんつーか魔術ってよりもメカメカしいのな。

 マシュ嬢の盾を使うって所がまあアナログ感が少しあるけど。

 

 そんでやってみたら、すんげープラズマが光った。

 バッチンバッチン言うて。

 色なんか虹色みたいな? あれだなパチンコの確定演出やね。

 

 そしたらお前……桜おるやん。

 青っぽいインドの踊り子の服、サリーを着てさ。

 いつも制服着てるイメージから思えばかなり派手だし、なんか枝分かれした槍とか持ってるし。

 

「……先輩っ!」

 

 なんつって、砲弾みたいなタックルされたわ。

 聞けばロンドンのアパートには来てたらしい。

 そこで新妻気分でオレを待っていたら、急に目の前が暗くなって、気が付いたらここにいたんだと。

 はえーすっごい。でも意味分かんね。

 

 大興奮のダヴィンチを交えて事情を掘り下げていくとだ、どうも生身の桜にパールバティーって言うマジモンのインドの神様が降りてきて合体事故を起こした的な状態?

 いや相手神様なんだけど、桜の方が強かったみたいで、逆に主導権を奪った状態だとか。

 桜の方が強いってどういうことだよ……。

 

 つっても頭の中でパールさんとお話が出来る様で、権能の使い方とかも教えてくれるんだってさ。

 これで先輩と一緒にいれますね♪ とか超ご機嫌で草。

 そしたらマリーがキレた猫みたいに桜に絡んでてさらに草。

 

 でもま、形はどうであれ、放置した状態になってた桜に再会できて、オレの心労が一つ消えた、この時のオレはそう思った。

 そしたらさードクターが「シロウ君、知り合いだから逆にやり辛いかもしれないね。ならもう一人、行ってみるかい? まだ備蓄魔力に余裕があるし」とかいう訳。

 まあダヴィンチも目キラッキラで賛成。オレに拒否権はない。

 

 で、やったさ。

 そしたらお前……

 

「…………士郎さん。ふふっ、漸くお会い出来ましたね」

 

 藤乃さん来たわ。いやいやいや……いやいや、ほんと、いやいやいや……。

 気まずい事火の如しや……。

 しかも桜とは違ってテンションはいつもの藤乃さんと変わらん。

 ただ何というか、言い知れない”スゴ味”って奴を感じる。

 

 だからオレはもうなりふり構ってらんなかった。

 速攻で桜と藤乃さんに土下座しつつ、これまでの顛末を洗いざらい喋ったわ。

 ええい、ままよ! って感じでヤケクソや。

 

 でも次の瞬間、オレの着ていた全身タイツめいた礼装が吹き飛んだ。

 藤乃さんの必殺お目目ぐるぐるですわぁ……。

 マシュ見過ぎや。オレのなんて粗末なもんやぞ。

 

 なんかね、藤乃さんの場合は、オレがやむを得ず逃亡した後、結構波乱万丈あったらしい。

 オレがいなくてピリピリしちゃって、何やかやあって同じくピリピリしていたトーコサマのパシリ一号こと、メンヘラ殺人鬼と邂逅し、蒼崎姉妹のバトルと変わらん程のガチンコやらかして、彼女の魔眼がエグい事になったんだってよ……。

 完全にオレのせいやんけ……。

 

 まあそれに関しては、殺人鬼ことシキ側にも事情があったとかで、トーコサマが収めたんだけど、藤乃さんの実家絡みの事情とかもあって、さて藤乃さんをどう扱うか? と伽藍の堂で話し合いしてた時に、桜と同じように目の前が暗くなってここにいたってさ。

 

 ドクターは悪気はないんだけど「シロウ君の縁は凄いね。信頼されているんだろうね」とイケメンスマイルしやがった時には、思わず【人中極】を突きそうになったわ……。

 流石に3秒後にボンだ! は出来んから踏みとどまったが。でも次はねえからな?

 

 まあそれでその時はそれで終わったんだが、特異点をリツカちゃんが終わらせるたびに余剰魔力を使ってオレも一人か二人呼ぶみたいな流れになったんや。

 いやまあ桜も藤乃さんも、サーヴァントとしての側面はクッソ強いから、カルデアとして盤石な体制でいられるからまあ、理解できなくも無いよ?

 

 けどさぁ……出てくるサーヴァントが何かしら桜に似てるってどういうことなの。

 どいつもこいつもヤベー連中でさ。

 可愛げはあるんだよ? それ以上に色々エグいんだよ。

 何より桜以上に情緒が不安定すぎんねん……。

 

 どうも気質も桜に似てるから、オレへの感情をどストレートにぶつけてくる。

 でもね? 考えても見てよ。

 サーヴァントの馬力って奴をよー。

 

 一般ピーポーにわかり易く説明するなら、朝起きたら同じ部屋に巨大なメスゴリラがいて、ウホウホと発情しながら全力でハグされるって言えばわかるかな?

 大げさ? 皆さん全然わかってない。

 サーヴァントってそういう連中なの。

 くしゃみのついでにその辺更地に出来ちゃうの。

 

 だから一人増えるごとに心労が増えていくんだわ……。

 みんなこっちに好意を向けてくるけれど、どSバレリーナは基本一切デレの無いツンデレ。

 構ってほしいって気持ちを伝えるのに殺しに来るんだわ。

 それをどうにか北斗神拳でいなしつつ、どう付き合ったもんかと思案してたら、マスター貴方やるわねとかなって、今度はデレを見せて来た。

 ずっと一緒にいましょう! だから溶かすねみたいな……死ぬやん。オレが死ぬ前提やん……。

 

 その後出て来たBBを名乗る桜……つかメスガキ。

 無理。どんだけ可愛くて、お茶目を発揮しようと無理。

 こいつほんとメスガキ。

 

 エロい見た目してるけど、それはアレや。

 食虫植物が甘い匂いで虫をおびき寄せるみたいなモンよ。

 オレとその周囲がギスってると、それを煽ってゲラゲラ笑うんや。

 ガチのメスガキはヤバイってそれ一番言われてるから……。

 

 そんでメルトリリスにパッションリップがやってきて、カーマにキングプロテアも来て……みたいな感じで、密かに桜族と呼ばれるメンバーが集合したんやなって。

 オレがカルデアの中を歩いていると、すれ違う職員さん達に憐みの目で見られるんだぞ?

 無言で砂糖たっぷりのコーヒーを淹れてくれたりさー。

 

 それでもまあ、一応はオレをマスターとして認めて、ここぞって時は手を貸してくれるから、それはまあサーヴァントってだけはある。

 けどな、毎晩寝る時に、オレってマリーと同室だから、そこでパール桜と藤乃さんがマリーを圧迫面接みたいに囲むんや……。

 

 何かを訴えかける子犬の目でオレを見てくるけども。

 ごめんマリー。北斗系男子でもこれは無理なんやな。悲劇なんやな。

 つか桜と藤乃さんさ。この2人はギスって無いんだよな。

 普段から一緒にいるし、割と仲良さげに見える。

 

 これに関しては、最初の頃になんか2人で話し合いを持ったらしく、それ以降一緒にいるようになってんだよ。

 そしてオレの呼んだサーヴァント群において、パール桜=藤乃さん>それ以外ってヒエラルキーが出来ている。

 これも謎や。

 

 ギスった結果、毎日のように煽り合いを繰り返す彼女たちだけど、上2人が睨みを利かすと収まる。

 これに関しては追求するのはやめた。

 オレは学習したんだ。これは突いたらヤベー奴だってね。

 

 余談だが、リツカちゃんが契約したサーヴァント(正確にはカルデアのシステムとの契約だけど、サーヴァント達はリツカちゃんとの関係を重視している)の中に、オレが冬木で岩山両斬波で倒した遠坂のサーヴァントがいたんだ。

 まあサーヴァントってシステム上、別個体っぽいらしいけど、なんか記憶を引き継いでるみたいでさ。

 

 冬木終わった後にリツカちゃんが呼んだんだけど、出てきて速攻オレに絡んできて草生えた。

 まあその後、遠坂も桜も無事で、あまつさえイリヤ姉の寿命問題も解決した件を知ると軟化したけど。

 

 ただ「お前のせいで酷い目にあってきたんだぞたわけ。カレーの英霊って呼ばれたり、女難の英霊って呼ばれたりするんだぞたわけ。詳しい事は言えないけど全部お前のせいだぞたわけ」って恨み節が凄い。

 なんだよカレーの英霊って。それと何回たわけって言うんだたわけ。

 

 ま、今日はここまでって事で。

 機会があればそうだな、7つの聖杯に纏わるオレと言う道化の話でもしてやるさ。

 いま話せって? 無理だっての目的地についたし。

 

「……おー。今日も可愛いなあ」

 

 オレの名前は衛宮士郎。

 事情があって逃亡生活を続けていたオレだが、今は毎日ロンドン動物園でペンギンを眺めるのが趣味の男である。

 ちなみに家にあまりいないのは、美しすぎるが欲望に忠実過ぎる、清楚の皮を被った魔性の妻2人に絞られるからだ。

 

 二世よ、早く依頼(オーダー)を寄越せ。

 特に日数のかかる地方がいい。

 ハリー! ハリー! ハリー!

 

 問題:この地球に、オレが逃げられる場所は残っているのでしょうか?

 

 




後編が出せない理由はおもに2つ。

①FGOのボリュームがデカい。


私「結局書き足すしかないんやなって……ん? なんやグーグルプレイストアに通知? ウマ娘? なんやサイゲ、またしょうもないアプリ作りよって。事前登録はしてたようだが……いや待て、そんな時間ねえんだ。小説書かな……」

<バクシン!バクシン!バクシンシーーン!!

私「えっと、次のプロットなんだっけ。二世が……うーん……スピードの3因子ついたな……あ、ちと原作確認してっと……事件簿どこや?」

                          テイオー!テイオー!テイテイオー!!>

私「あかんあかん、小説書く言うたやん……くっそステ足りてるのに決勝でどんづまりで負けたっクソァ! あーもうむしゃくしゃする! 落ち着け、こういう時は息抜きにバクシン周回で心を落ち着けるんや。やっぱりサイゲは神だな! これからもついていくぜ!(オメメグルグル)いくぞ、バクシンシーン!!」

書きたいことは山ほどあるのに、ウマ娘のせいで筆が遅くなる……。

ま、それは冗談ですが、おそらく後2話はかかりますので、週明けくらいに次の更新できたらなと思います。
では皆様の良きウマ娘ライフを応援しています。
 


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