魔法科高校の劣等生 零の物語 (Touli)
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プロローグ
転生&人物紹介


初めまして!Touliです。
ずっと書きたいと思っていた魔法科高校の劣等生を書いていきたいと思います。
文才のない私ですが、目に留めていただけたら嬉しいです。


「ごめんね?こっちのミスで君死んじゃった☆」

「へ?」

気が付くと目の前に、頭の上に輪っかがあるおっさんが座っていた。

「誰?」

「ワシ?神様じゃよ。カ・ミ・サ・マ♡」

「へえ・・・」

「『へえ・・・』って何それ?!神様だよ?!」

自分を神様だと言う奴にろくな奴はいない。

 

【閑話休題】

「うん。それでなんで死んだはずの俺は、こうしてあんたと話してるんだ?」

当然に抱く疑問だ。

「こっちのミスで死なせちゃったから、転生させてあげようと思ってさ」

キャピと擬音でもつきそうな顔で言った。

「・・・」

「君が転生するのは『魔法科高校の劣等生』

の世界!!そして3つの特典が付いてくる!!!」

「魔法科かー、特典3つねー」

「なんでも出来るよ」

「ほんとになんでも出来るのか?」

「そりゃあね。神様ですから。」

 

なんでも出来るって言うならやってもらおう。

 

「んじゃあ、まず1つ目。零野家の人間として第一高校に通う。零宮あやなも第一高校に。」

「うん?!」

「なんだよ?神様だからできるよな?

2つ目。《精霊の眼(エレメンタル・サイト)》みたいな能力。達也のよりも性能ちょい上ぐらいにしてくれ。」

「ううん?!」

「最後3つ目。想子保有力を深雪の10倍にするのと学力達也と同じくらいにしてくれ」

「随分なことを言うね君。まあ、いいや。それと原作に関わって貰うために幼少期に四葉に関わってもらうからね。」

「りょーかーい。ところで、赤ちゃんの時から過ごさなきゃいけないのか?」

「ん?いや、ある程度大きくなったところから始めて貰うつもりだよ?」

「あいわかった。」

「それじゃあ、いってらっしゃい」

「ああ。また。」

~完~

登場人物紹介

零乃陸久(ぜろのりく) 零乃家に転生し、当主になる。

スマフォアプリ「魔法科高校の劣等生LOST ZERO」とは違い

魔法による戦闘ができる。ただし、は使う。

実験により記憶がないのは同じですが、魔法の才能は失っていない。

達也と同じく、国防陸軍第101旅団独立魔装大隊に所属している。

特務士官時の名前は暗道零夜(あんどうれいや)

口癖「ゼロから始めよう」

 

 

 

戦略級魔法

〇《万物零化(ソウル・コンバージョン)

主に物体や魔法式を対象に使用する。

対象物の記憶(記録)を辿って、消滅させる 。

雲散霧消(ミスト・ディスパージョン)》と同義

〇《悪魔星裁(エーテリオン)

フェアリーテイルと同じ。

多少の誤差はあるが 並の魔術師27億人程度の魔力と複数の属性で

構成された莫大なエネルギーを一転に照射する魔法である

(何言ってんだこれ、フェアリーテイルのエーテリオンの説明から無理矢理説明変えました。ご容赦くださいw)

質量爆散(マテリアル・バースト)》と同義

 

 

〇《零式行列(マイナス・パレード)

対象者のエイドスを読み取り完全に再現し、実体化させる。

ただし、再現する対象の保有する想子分、自分の想子を消費する。

実体化させた情報体は自我を持ち、行動することが出来る。

性格は少し激しくなることが・・・

九島家のパレードを基にして作られた魔法。

 

零宮あやな (ぜろみやあやな) 零宮家当主

陸久のことが好きではあるが、恋愛感情ではない。

(どこかで聞いた覚えが・・・)フラグてはありません。

陸久の従姉

陸久の言うことをなんでも言うことを聞いてくれる。

 

 




この作品において、まやかは出しません。
理由は作者が書こうとしている作品において、扱いづらいからです。
申し訳ありません。

また、魔法の名前はネットで調べて出てきて、
かっこいいと思ったやつを選んで使っています。


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入学編
入学編 Ⅰ


プロローグだけで、お気に入りに登録して下さった方がいます。ほんとにありがとうございます。皆さんが楽しめるような作品を書いていきたいと思います。これからもご愛読のほどよろしくお願いします。


魔法。

それは伝説やおとぎ話の産物ではなく、今や現実の技術となった。

魔法が個人の能力となってからというもの、核兵器すらねじ伏せる強力な魔法師は国家にとって兵器であり力そのものだ。

二十一世紀末ー西暦二〇九五を迎えても、未だ統一される気配すら見せぬ世界の各国は魔法師の育成に競って取り組んでいる。

☆陸久side☆

「納得できません。」

「まだ言っているのか」

高校入学式開会二時間前の早朝。入学式の会場になる講堂の前にして、真新しい制服のに身を包んだ一組の男女が何やら言い争っていた。

しかし、その制服は明確に違いがある。女子生徒の制服には八枚の花弁がデザインされた第一高校のエンブレムがある。男子生徒の制服にはそれが無い。

「なぜお兄様が補欠なのですか?入試の成績はトップだったじゃありませんか!本来ならば私ではなくお兄様が新入生総代を務めるべきですのに!陸久さんも、あやなもそう思いますよね?」

おおっとこちらに話を振って来た。俺は読んでいた本を閉じて口を開く。

「この学校では筆記試験よりも実技試験の方が優先されるんだよいくら筆記の成績が良くてもな。それは仕方ないさ。」

窘めるように言う。そう言うと、隣にいた女子生徒も口を開いた。

「 達也君の実力は私達が一番よく知っているじゃない。」

「それに仮に辞退したとしても代わりに俺が選ばれることは無い。同率1位になったのに答辞を辞退する陸久はどうかと思うがな」

「「それは・・・・・・」」(深雪、陸久)

「それにな、深雪。俺は楽しみにしているんだよ。可愛い妹の晴れ姿をこのダメ兄貴に見せておくれ。」

兄貴だけあって扱いが上手いなコイツ。

「お兄様はダメ兄貴なんかじゃありません。わがままを言って申し訳ありませんでした。ちゃんと見ていてくださいね。お兄様、陸久さん、あやな。」

「ああ。」

「お姉ちゃんにまっかせなさい!!」

 

ここは国立魔法大学付属第一高校。ここへの入学を許された時点で魔法の才能を認められたエリートである。

 

☆達也side☆

深雪達と別れたあと、3人でベンチに座りそれぞれ読書していた。「やーねー。ウィードといるなんて、ブルームのプライドがないのかしら。」なんてことを言う生徒がいる。恐らく上級生だろう。

そんなことを思っていると、突然頭上から声が降ってきた。

「新入生ですね。そろそろ開場の時間ですよ。」

「ありがとうございます。すぐに行きます。」

「関心ですね。皆さんスクリーン型ですか。さらに読書。私も読書好きだからなんだか嬉しいわね。」

左腕に巻かれたCADに目がついた。生徒会役員か?

「申し遅れました。私は生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさ、と読みます。よろしね。」

数字付き(ナンバーズ)しかも七草か。

「俺、いえ、自分は、司波達也です。」

「私は零宮あやなです。」

「零乃陸久です。」

2人も挨拶をした。

「ぜろ・・・」

「やっぱりご存知ですよね。すみません。」

「い・・・いいえ、こちらこそごめんなさい。あなた達が総合成績同率1位の零乃陸久君と、総合成績2位の零宮あやなさんと、入学筆記試験第1位の司波達也君だったのね?」

よく生徒の成績を知っているな。それにしても、やはり零の名前には反応してくるか。

「ペーパーテストだけです。情報システムの中だけの話ですよ。」

達也は自分は実技ができないということを左胸を指さしながら言った。

しかし、真由美は首を横に振りながら言った。

「そんなすごい点数、少なくとも私には真似出来ないわよ?私も実は理論系も結構上の方なんだけどね。同じ問題を出されても司波君のような点数は取れないんだろうな。零乃君と零宮さんも2人とも凄い成績だったしね。3人とも真似出来ないなー」

「そろそろ時間ですので失礼します。」

「私も失礼します。」あやなもそう言って振り返った。

3人歩きながら話し始める。

「2人のの名前に反応していたな。」

「零家は禁忌の魔法実験を行ったからね。仕方ないよ。その全て魔法を完璧に使うことができるのは今じゃゼロくんしかいないけどね。」

 




あやなを第一高校に入学させた理由は、他校だと絡ませづらいからです。さて禁忌の魔法?なにそれ零式行列ぐらいしか考えてない。作者自身も考えますが、なにかご意見・お考えがある人は感想にくださると嬉しいです。丸々採用するか、少し変えるかは分かりませんが、参考にさせていただきます。


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入学編 Ⅱ

2人とも答辞にしたら、ほのかや、雫との絡みが難しいですからね。主人公は辞退させていただきました。さて、零の名前がどれだけ周りに影響もたらすのでしょうか。(全く考えておりません。笑)
それではどうぞ!


さて、七草会長と別れ、俺たち3人は入学式が行われる講堂に入った。

 

「見事に分かれているな。」

「なによ。くだらない。ゼロくんも、そう思うよね?」

「ん?ああ・・・」

「どうしたの・・・?」

「いや、なんでもない。ここで悪目立ちするのも良くないだろう。一旦、俺たちも分かれよう。」

「ああ、そうだな。陸久、あやなまた後で。」

「うん。またね〜。」

達也と別れ、俺とあやなは、空いてる席に並んで座った。俺は一科、二科に別れたと言っても、実力の差は無いと思う。事実、達也がそうだし原作そうだったし。なんか、自分がいる世界なのに原作とかいうの気持ち悪いな。今度から辞めよう。そんなことを考えていると。

「すみません、隣いいですか?」

隣から、元気な声が聞こえた。うん。そうだろう。ほのかだ。with雫

「ああ、どうぞ。」

「やったあ、いいってよ。雫!」

元気なのはいい事だ。しかし、TPOは考えなきゃいかんよな。

「ほのか、分かったから静かにして。周りに迷惑。」

静かに注意する雫。

「あ、ごめんなさい・・・」

「突然、ごめんなさい。私は北山雫。雫でいいよ。それでこっちは・・・」

「光井ほのかです。よろしくお願いします。」

雫って礼儀正しいんだな。ほのかはうん。元気だ。(2回目)

ちょっと和んでいると、後ろの女性から声がかかる。

「ちょっとゼロく〜ん?入学早々に、女の子と仲良くなってるの?」

あやなだ。

「そんな言い方は失礼だろうあやな?自己紹介するよ。」

「初めまして、零乃陸久。よろしく。んで、こっちは」

「初めまして、零宮家当主、零宮あやなです。ゼロくんとは小さい頃からの仲で・・・。」

パシッ、軽くチョップする。

「そういうこと言わなくていいから。それと、学校ではゼロくん呼び禁止な。」

「そんな~」

「え?零?」

「ほのか、知らないの?零家は5年前ある実験を行なって社会的に抹消された家系だよ。」

「その実験って?」

「それは・・・」

「おっと、答辞が始まるよ。」

一旦、話題を切った。

「――新入生総代、司波深雪。」

深雪の答辞が終わった際どいワード多かったな。大丈夫か?あれ

「今年は司波深雪さんと同率で総代の方がいらっしゃいます。のでその生徒にも話をしてもらいたいと思います。零乃陸久くん、壇上へどうぞ。」

はい?あーちゃん、なんか言った?。空耳だ。ウン。キットソウダ。ウン。

そうやって深雪を見ると、ぺこりと頭を下げた。ヤラレタ。

シカタネエ、ハラククロウ。黙ってその場を立ち、壇上へ上がる。

「ええー、本来この場に立つつもりはなかったのですが、少しだけ話をさせていただきます。ただいまご紹介に預かりました、零乃陸久です。」

ザワザワと騒ぎ出す、生徒達。気にせず続ける。

「さて、式的な言葉は司波さんに述べていただいたので、俺からは3つほどお話をさせていただきます。まず初めに、気になってる人がいると思うので自分のことを話したいと思います。式の緊張を緩めるぐらいの気持ちで聞いていてくだされば結構です。百家の方であれば少なくとも1回は聞いたことのある名前ではないでしょうか。魔法界における禁忌の実験を行い、社会的に抹殺されたイリーガルナンバーと。その禁忌とは『人口魔法演算記憶領域化』です。それが私に行われました。」

一人称を私に変えることで印象をさらに強くする。

「2つ目に、零家は死体を操る、死霊魔術師、ネクロマンサーなんて呼ばれたりもして、随分と迫害されてきました。しかし、私はそんな社会に対して、何も思う所はありません。家柄関係なく、ただ、平穏な学校生活を送って行きたいと思っています。最後に、私の従姉も入学していますのでぜひ仲良くしてやっていただければと思います。私も、高校生活をゼロから始めて行きたいと思います。以上、零乃陸久。」礼をする。完璧だろ。

「あ、ありがとうございました。席に戻ってもらって結構ですよ。」

あーちゃんに言われたので、戻ろうとすると。

「なーなー、ちょっと質問いい?」

男子生徒が手を挙げて立った。

「お前が禁忌の実験のモルモットなんだろう?」

「ええ。そうですが。」

「実験前と実験後、そして今の禁忌くんの感想聞きたいんだけどー」

「はは、そりゃいいや。」

「「「「言え言えー」」」」

「それはですねー・・・」

☆あやなside☆

 

「ちょっと何よ!あれ!」

「酷い・・・」

雫とほのかだ。

「あんなこと言われて、陸久さん悔しくないんですか?!」

ほのかが顔を真っ赤にする。

「仕方ないよ。それに気にしなくて大丈夫だよ、ほのかちゃん。だってゼロくん・・・」

 

2人の声が重なる

 

「『覚えてない』んですよ。(んだもん。)」




答辞辞退したのに、あーちゃんによるハプニング発生。
辞退させたのは、ほのかと雫の絡みが書けないなあと思ったからです。それでも結局話させれば、その分印象に残るでしょう?
読者の皆さんも、脇役生徒も。
口癖を「ZEROから始めよう」にしたから無理矢理ぶち込みました笑
いかがだったでしょうか?やりたいこと全部やった気でいます。
1話執筆する毎の達成感がなんとも言えない。(※まだ3話、本編2話)
さて、次話もお楽しみに。感想・意見、気軽にお書き下さい。
待ってます。


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入学編 Ⅲ

前話の「2人の声が重なる」ってやってみたかったんですよね。笑
あとはヒロインを誰にするか問題ですね。
まあ、ある程度決めているのですが、
これに関しては読者さんの意見を優先します。意外と閲覧者数は多いみたいなので。
それ以外にも、気軽に感想書いてくれたら嬉しいです。励みになります。どんどん書いてください。感想欄、真っ白でさみしいです。(´TωT`)



「さっきの話どういうことですか?!」

「なんだなんだ?やけに興奮してるな。ほのか。」

「さっきの記憶がないっていう話です。実験台になったったいう話も・・・」

「そうだな・・・」

俺は腕を組み少し考え込む。その時間約10秒。

「その話が聞きたいのなら・・・2人ともこのあと暇?」

「はい」

「うん。特に予定はないよ。」

「ほのかは?」

「私も」

「いいんですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます。お邪魔します。」

「そっか決まりだな。」

ん?何か忘れてるような気がする・・・。

「ねえ、ゼ・・・ゼロくん。達也くんたちと帰る約束してなかったっけ?」

あ・・・すっかり忘れてた。それにさっき禁止したのに呼び方、まあいいや

「・・・・・・後でメールしとくよ。」

「忘れてたでしょ?」

「・・・」

「ちゃんと謝っときなよ?」

「うん。よし2人とも行こうか。」

「「はい」」

 

~帰宅中~

「さあ、どうぞ。」

「「おじゃまします。」」

 

「かしこまりました。あやな様」

「じゃあ座って話を始めようか。まず、第一に俺には9歳までの記憶が無い」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「その理由は学校でも言った通り、俺に実験が行われたからだ。」

「なんでそんな実験が陸久さんに行われたの?」

「・・・陸久くんは零家の中でも特別な想子を持っていたの。」

「特別な想子?」

「うん。零家の魔法に最も適した想子。もともとは零乃、零宮とは別にもう一家、『零式』という名前があったの。令式家は超整体の家系だったんだけど、身内同士で自分たちを強化しようと実験始めたの。だけど身体が耐えられる者はいなかった。その中で唯一適正持っていたのが陸久なの。無理矢理、実験台にするために連れて行かれちゃったの。2人で遊んでいる時にね。私も必死になって止めようとしたんだけど、大人には適わなくてね・・・」

「行われた実験は、「人口魔法演算領域化実験」。その結果、俺は零家に伝わる禁忌魔法を使えるようになり、その代償として実験行われる以前の記憶を失ったってことだ。あやなにそう聞いて調べてみたら、どうやらその頃に戦争が起きていたらしいんだつまるところ、俺は戦争用の兵器として改造されたってことだ・・・。まぁ、今は少し違うけどな。」

「社会に対して、何も思うところがないっていうのは?」

雫はそのワードが引っかかっていたようだ。

「零家を社会的に抹殺したのは今の十師族なんだよ。」

「え?!十師族が?」

「どうして・・・」

雫とほのかはそれぞれ、驚いたようだった。それはそうだろう。

一般には社会的に抹殺されたとだけしか伝わらず、事の詳細は十師族、百家にしか伝わらなかったからだ。

「十家全部ではなかったよ?一条、二木、三矢、五輪、六塚、七草、八代、十文字の八家。四葉と九島は中立していた。いくら、十師族の中で四葉と、九島が力を持っていると言っても、零家に限っては2家の加護に入れるわけにはいかなかったんだ。仕方ないよ。」

「あやなさん・・・」

「陸久さんはどう思ってるの?」

「十師族のやったことは間違ってないとは思うよ。十師族の面子にも関わるしね・・・。ごめんね暗い話になっちゃって。お詫びに夕飯食べていきなよ。俺が作るからさ。」

「陸久さん、料理できるの?」

「最近はあまりやってなかったけど、できるよ」

普段は、あやなが作ってるくれるから心配もいらないしな。




十師族の八家から批難された零家。
それにも関わらず零家を容認した、九島、四葉の目的とはなんだったのでしょうか?秘密が明らかになっていきます。皆さんも、どうなるか予想しながら、読んでいって貰えると楽しめると思います。


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入学編 IV

今更ですけど、入学式に初めて会った人の家に普通上がりますかね?いや、上がりませんね。まあ、細かいことは気にしない。さあ、本文です。


高校生活2日目、今はお昼の時間だ。

さて、ここで一悶着。達也たちE組の生徒が昼食を食べているところに深雪がやって来た。一緒に昼飯食べようとしたんだろう。しかし、A組のクラスメイトが深雪と相席することに執着して、無理矢理交流を測っているのだった。

「あいつも大変だな。」

「司波さんのことですか?」

「ああ。」

「深雪ちゃん、美人さんだから人気でるよね〜。ちょっと気の毒。」

「陸久とあやなは司波さんと知り合いなの?」

「うん。5年前からね。」

「助けなくていいんですか?」

「まだ、口で言い合ってるだけだからいいんじゃない?口でオニイサマに叶うわけないよ。適当にあしらわれると思うよ。」

達也たちが出て行ったのを見届けて、俺達も昼食を食べ始めた。

【放課後】

「さて、どうしよう。」

「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないですよ!?」

ほのかからツッコミが入る。まあ、そうだろう。何故なら、達也たちと、A組生徒が対峙しているからだ。さあ、また一騒ぎ起きるぞ。ここで、レオ達と知り合いになるきっかけを作っておきたい。そんなことを考えていると。

「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというんですか!」

美月の声が響いた。お互いが手を出すきっかけのセリフとなる。

「どれだけ優れているか、知りたいなら教えてやる!!」

「ハッ、おもしれえ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか」

「だったら教えてやる!」

売り言葉に買い言葉だ。森崎とレオ、両者のCADから魔法式が構築される。

「あやな。」

「うん。気をつけて。」

そう言った瞬間に、自己加速術式を展開し、騒ぎの中心へと向かう。

両者の間に入り込み(この時の両者はエリカと森崎だが)森崎のCADを蹴り飛ばす。そして、エリカの振り下げられる手首を掴む。

一瞬のうちに何が起こったのか分かっているのは、達也、深雪、あやなそして当人のエリカ、4人だけだった。

「ふぅ。危ないところだった。」

「な、なんだお前は!?」

「自己紹介はいらないほど、有名だと思っているんだが・・・自営目的以外の対人魔法攻撃は犯罪行為だと知ってるだろう。だいたい、くだらないと思わないか?」

一科生(ブルーム)のくせに二科生(ウィード)の肩を持つのか!」

そういった一科生のの何人かは魔法式を展開した。視界の端にいる、ほのかも展開していた。それを確認した瞬間に、ほのかの式が霧散した。

「止めなさい!自営目的以外の魔法による対人攻撃は校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」

うん。今言った。七草会長だ。お粥あんま好きじゃないんだよな。いや、なんでもない。失礼。

「風紀委員長の渡辺摩利だ。1-Aと1-Bの生徒だな。事情を聞きます。ついてきなさい。」

さあ、達也言っておやりなさい。

「すみません、悪ふざけが過ぎました。」

「悪ふざけ?」

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学のために見せてもらおうとしたんですがろあまりにも真に迫っていたので手が出てしまいました。」

「では、そこの1-Aの生徒が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのは?」

「驚いたんでしょう。しかし、魔法自体は威力の十分抑えられた、閃光魔法でした。」

そこで俺も口を挟む。

「条件反射で起動プロセスを実行できるとは、さすが一高の生徒ですね。」

ここで俺が一科生とか言うと角が立つからな。

「ほう、どうやら君たちは展開された起動式を読むことができるらしいな。」

「実技は苦手ですが、分析は得意です。」

達也が答える。

「摩利、もういいじゃない。2人ともただの見学だったのよね?」

「ええ。俺もみてましたが、見学でしたよ?」

「そうか、今回だけは不問にしよう。お前たち2人の名前は?」

「1年E組司波達也です。」

「1年A組零乃陸久です。」

俺の名前知らんの?入学式前でたのに。寝てたのかな?

「覚えておこう。」

さあ、ここからが重要だ。

「借りだなんで思わないからな」

「貸してるだなんて思ってないから安心しろよ。」

達也が言う。俺は黙ってよ。

「僕の名前は森崎駿。僕はお前たちを認めないぞ!司波達也!零乃陸久!」

は~、やっぱり俺も入るか。まあ、これでレオ達とも仲良くなれるだろうし良しとするか。

「ケガ人もでずによかったな、達也。」

「ああ、お前が止めてくれたおかげだ。感謝する。」

「いやいや。それより、一緒しても構わないか?」

「ああ。もちろん。」

 

 

〜下校時〜

 

「じゃあ、深雪さんのCADを調整しているのは達也さんなんですか?」

「ええ。お任せするのが、一番安心ですから。陸久さんにも、見てもらうこともあるわ。」

「陸久さんもですか?」

「ああ、そうだね。達也が忙しいときに、俺が見ることもあるよ。深雪は処理能力が高いから、手がかからないんだ。」

「その処理能力が高い深雪より、上の陸久ってなんだよ・・・」

呟くようにしてレオが言うが、聞こえているぞ。

「ねえ2人とも、アタシのも見てくれない?」

「無理。あんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」

「あはっ、やっぱりすごいね。これがホウキだって分かっちゃうんだ。」

「え?その警棒、デバイスなの?」

「普通の反応をありがとう。美月。陸久くんはどう?」

「見たところ、柄以外は全部空洞だな。刻印型の硬化魔法が組まれてる。それと、さっきの一件の動きから考えると兜割りの原理かな?すごいね。」

「すごい、一目見てそこまで分かっちゃうんだ。でも、兜割りだからねそんなに消耗しないわ。ってみんなどうしたの?」

呆れ顔の周りを見て尋ねたエリカに全員を代表して深雪が答えた。

「エリカ・・・・・・兜割りってそれこそ奥技とかに分類されるものだと思うのだけど。単純にサイオン量が多いより余程すごいわよ。」

「うちの高校って一般人の方が珍しいのかな?」

「魔法科高校に一般人はいないと思う。」

美月の天然気味な発言と、それまで発言していなかった雫の的確すぎるツッコミで、色々と訳ありの空気は霧散した。

「今度、機会があったらね。みさせてもらうよ」

「うん、よろしく」




はい。ということで、主人公、人間やめたんですかね?
自己加速術式使ってCAD蹴り飛ばして、手首掴んで。
感想を書いていただけると嬉しいです。
ではまた。


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入学編 Ⅴ

どーも、お久しぶりです。Touliです。
iPhone復活しました。6sから、8へレベルアップです。
また投稿してくのでよろしくお願いします。
ところで、このサイト、ルビ振れるじゃないですか?
それがどうやっても術式解体《グラム・デモリッション》ってなるんですよね・・・
他の方は
グラムデモリッション
術式解体 って上に小さくなってるんですけどやり方がわからない。誰かわかる人教えてくださーい!!
(既に解決しました。(⋆ᵕᴗᵕ⋆))
それでは本編です。


第一高校生が利用する駅の名前は「第一高校前」。

駅から学校まではほぼ一本道だ。

そのため駅から学校までの通学路で友達と一緒になる、というイベントは、この学校に関して言えば頻繁に生じる。

「達也さん、陸久さん・・・会長さんとお知り合いだったんですか?」

そんなことを聞くのも仕方の無いことかもしれない。なぜなら、会長が手を振りながら笑顔で駆けてきているのだから。

「一昨日の入学式の日が初対面・・・の、はず」

「上に同じ。」

美月の疑問に達也と一緒になって首を捻っている。

「そうは見えねえけどなぁ」

「わざわざ走ってくるくらいだもんね」

「深雪を勧誘に来てるんじゃないか?」

「ああ、そうだな」

「会長さんはおふたりの名前を呼んでいますよ?」

美月から鋭いツッコミ?が入る。

「達也くん、陸久くんオハヨ〜。深雪さん、あやなさんもおはようございます。」

妹、従姉に比べ随分扱いがぞんざいだ。まあ、所詮男なんてそんなもんか。

「おはようございます、会長」

達也が挨拶をしたので俺もそれに続くように口を開ける。

「おはようございます、今日はおひとりですか?」

このまま一緒に来るのか、という問いかけでもある。

「うん。朝は特に待ち合わせはしないんだよ」

言外の質問にも肯定する、真由美。

「少しお話したいこともあるし、ご一緒しても構わないかしら?」

「それは構いませんが・・・」

「あっ、別に内緒話をするわけじゃないから。それとも、また後にしましょうか?」

そう言って目を向けたのは1歩離れたところに固まってる3人、エリカ、レオ、美月である。

「お話というのは生徒会のことでしょうか?第一高校では主席入学者が生徒会に入るのが通例と聞いていますが。」

「!!・・・ええ、その通りです。一度ゆっくり説明したいと思って。4人はお昼はどうするご予定かしら?」

「食堂でいただくことになると思います。」

「俺もそうですね。」

「ゼロくんと一緒に食べます。」

達也、俺、あやなの順だ。

「深雪さんは?達也くんと一緒に?」

「いえ、兄とはクラスも違いますし・・・」

「変なことを気にする生徒が多いですものね」

チラッと横を見ると美月が大きくうなずいている。

「じゃあ、生徒会室でお昼をご一緒しない?ランチボックスで良ければ自配機もあるし」

「生徒会室にダイニングサーバーが置かれているのですか?」

普段、物に動じない深雪が、驚きを隠せず問い返す。

呆れ気味でもある。本来、自配機は空港や長距離列車にあるものだからだ。

「入ってもらう前からこういうことあまり言いたくないんだけど、遅くまで仕事をすることもありますので」

バツが悪そうに言う。

「生徒会室なら、達也くんが一緒でも問題ありませんし」

「問題ならあるでしょう。副会長と揉め事なんてゴメンですよ、俺は」

達也が気安く生徒会室で昼食など摂っていようものなら、喧嘩をうりつけられること、ほぼ間違いなしだ。達也が少し、感情的になっているため、まあ仕方の無いことだが、フォローする。

「達也、落ち着け。何かあったら、俺が何とかするから」

「はんぞーくんなら、大丈夫」

「・・・それはもしかして、服部副会長のことですか?」

「そうだけど?」

達也の質問にそれがどうかしたの?と言わんばかりの顔で答える。

この人にだけはあだ名を付けられたくない。

「はんぞーくんは、お昼はいつも部室だから」

にこにこしながら真由美は言う。

「なんだったら皆さんで来ていただいてもいいんですよ。生徒会の活動を知っていただくのも役員の務めですから」

「せっかくですけど、あたしたちはご遠慮します。」

遠慮したにしてはやけにキッパリと拒絶したな?なんかあったか?

気まずい雰囲気が流れる。

「そうですか」

だか、真由美の笑顔は変わらない。

「じゃあ、陸久くんたちだけでも」

達也に目配せすると、うないずいたので返事をする。

「わかりました。4人で昼休みに伺います。」

「そうですか。よかった。 じゃあ、お待ちしてますね。詳しい話はまたその時に。」

 

 

☆昼休み☆

早くも昼休み。

俺とあやなの前を達也と深雪が、歩いている。

前を歩く2人の足取りは対象的で、達也は重く、深雪は軽い。

あやなも緊張しているみたいだ。

「あやな、そんな緊張しなくていいんじゃないか?話を聞くだけだろう?」

「もー、そんなこと言えるのはゼロくんだけだよ〜。」

そんなことを言っているうちに目的地に着いた。

4階廊下、突き当たり。他の教室と違うのは中央に埋め込まれた木彫りのプレートと、壁のインターホン、そして巧妙にカムフラージュされているであろう数々のセキュリティ機器。

プレートには「生徒会室」と刻まれていた。

深雪がインターホンを押す。

微かな作動音と共にロックが外れ、ドアが開く。

「いらっしゃい。遠慮しないで入って」

奥の机から声が掛けられた。

深雪、達也、俺、あやな、の順で入る。

達也はドアから一歩、3人はドアから二歩で立ち止まった。

手を揃え、目を伏せ、深雪とあやなが礼儀作法のお手本のようなお辞儀を見せた。

2人の作法は故人、司波深夜、零宮愛香にそれぞれ仕込まれたものだ。

「えーっとご丁寧にどうも。」

宮中晩餐会でも通用しそうな所作を見せられ、真由美も少したじろいでいる様子だった。

「どうぞ掛けて。お話は、お食事をしながらにしましょう」

「お肉とお魚と精進、どれがいいですか?」

呆れたことにメニューも複数あるようだ。

深雪と達也が精進、俺とあやなが魚を頼んだ。座ってる順番もこのとおりだ。

「入学式でも紹介しましたけど、念の為、もう一度紹介しておきますね。私の隣が会計の市原鈴音、通称リンちゃん」

「・・・・・・私のことをそう呼ぶのは会長だけです。」

「その隣は知ってますよね?風紀委員長の渡辺摩利」

「それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん」

「会長・・・・・・お願いですから下級生の前で『あーちゃん』は止めてください。わたしにも立場というものがあるんです。」

「もう一人、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが、今期の生徒会役員です」

「私は違うがな」

「そうね。摩利は別だけど。あっ、準備ができたようです。」

出てきたプレートは合計五つ。一つ足りない。摩利が弁当箱を取り出した。

「そのお弁当は、渡辺先輩がお作りになられたのですか?」

あやなが急に聞いた。会話をしようとしたんだろう。他意はなかったはずだ。

「そうだ。意外か?」

俺がフォローするべきか。

「いいえ、先輩の彼氏さんのために練習されているのでは?その方は幸せ者ですね。」

摩利の顔が赤くなって、黙ってしまった。

「そろそろ本題に入りましょうか」

真由美が話を切り出す。

「当校は生徒の自治を重視しており、生徒会は学内で大きな権限を与えられています。これは当校だけでなく、公立高校では一般的な傾向です。当校の生徒会には伝統的に、生徒会長に権限が集められています。大統領型、一極集中型と言ってもいいかもしれません。生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長が選任します。解任も生徒会長の一存に委ねられています。各委員会の委員長も一部を除いて会長に任命権があります。」

「私が務める風紀委員はその例外の一つだ。」

「今朝、陸久くんが言っていたとおり、新入生総代に生徒会役員になって貰っています。後継者育成ですね。」

「会長も主席入学だったんですね?さすがです」

「あ〜、まあ、そうです。」

歯切れ悪く答える真由美。

「コホン・・・深雪さん、陸久くん私は、貴方たちが生徒会に入ってくださることを希望します。引き受けてくださいますか?」

「会長は兄の入試の成績をご存知ですか?」

「ーっ?」

「ええ、知っていますよ。すごいですよねぇ・・・正直に言いますと、先生にこっそり答案を見せてもらったときは自信をなくしました。」

「おいっ、み・・・・・・」

「デスクワークなら実技の成績は関係ないと思います。むしろ、知識や判断力のほうが重要なはずです。わたしを生徒会に加えていただけるというお話については、とても光栄に思います。喜んで末席加わらせて頂きたいと存じますが、兄も一緒というわけには参りませんでしょうか?」

深雪が珍しくオーバーヒートしている。俺とあやな忘れてないか?

「残念ながら、それはできません。生徒会役員は第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です。」

「申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許しください。」

「なら風紀委員はどうだ?」

「風紀委員は、縛りがない・・・ナイス、ナイスよ摩利!

摩利!生徒会は達也くんを風紀委員に推薦します」

「ちょっ・・・」

「それと」達也が口を出す前に決着をつける。

「俺も、風紀委員に入らせていただきます。恐らく、先日のトラブルで森崎の風紀委員の教職員推薦が崩れたのではないですか?」

「な、なぜそんなことまで知っているんだ?」

「ただの予測です」

「そ、そうか」

「じゃあ、あやなさんに生徒会に入って貰おうかな」

「あやな、いいよな?」

「うん。お姉ちゃんにまっかせなさい!!」

「よろしいですか?」

「わかりました。では続きは放課後にしましょうか。」

 

 




久しぶりの投稿で、張り切っちゃいました。
いつもの倍以上の文字量です。笑
まあ、キリが悪いのが嫌なので、今度から文字数気にしないで書こうと思います。
今回、達也空気でしたね・・・あやなも若干・・・
弁当がどーのこーの、2人で食べる場所が〜
の所は省きました。(めんどかっただけ笑)
だって、嫌というほど知ってますもんね?
次回はオリジナル展開なので楽しみにしていてください。
出来れば早めに上げるようにします。


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入学編 VI

今回はクラスに帰ってからの出来事です。
主人公がA組なので、あいつとの対決をオリジナル展開で書いていきたいと思います。


昼休みが終わり、授業の時間だがお互いの親睦を深めるための時間となっている。高校生にこの時間は必要だろうか?俺がそんなことを考えていると

「なあ、零令!風紀委員にスカウトされたって本当か?」

クラスの男子生徒が声を掛けてきた。どうして、知っているんだろう?誰か盗み聞きしてたのか?まあ、いい。

「ああ。どうやら、教職員推薦枠に選ばれた生徒が問題を起こしたらしくてな。それが取り消されたらしい。自分の行動には責任を持たなきゃいけないな。」

森崎を見ながら言う。

「な、なんだと?!ふざけるな!!」

森崎が胸ぐらを掴んでくる。

両手をあげながら、降参だという顔をして

「おお、恐い。」と言うと

「お前、調子に乗るのも大概にしろ!!」

俺の挑発に簡単に乗ってしまう森崎。

「ガラガラッ」教室の扉が開いた。

「なんだ?トラブルでもあったか?」このクラスの先生だ。

「モブ崎くんが、零令くんにちょっかいだしてるみたいでーす。」

「風紀委員奪られたのが悔しいらしいでーす。」

 

森崎が顔を赤らめる。

「なら、模擬戦をしよう。先生、この時間使用できる部屋はありますか?」

生徒達がザワザワと騒ぎ始める。

「演習室なら使えると思うが・・・会長の許可証が必要だぞ?」

「うーん、困ったなあ。」

「それなら、心配しなくていいよ?」

「あやな?」雫がきょとんした顔で言う。

「今、七草会長からきょかがおりました。」

「「なんだ、なんだ!?」」

「今の状況を説明したら模擬戦を認めてくださるそうです。先生が後で書類を提出して貰えればOKだそうです。」

「分かった。書類の方は俺に任せろ。全員演習室に移動しろ。」

「「「「「「はーい」」」」」」

 

演習室

「よし、これより森崎対零令の試合を始める。審判は俺が務める。相手に捻挫以上の負傷を与える術式、直接攻撃は禁止だ。それでは、始め!!」

「さあ、ゼロから始めよう。」

「ふん、直ぐに終わらせてやる。」

森崎がクイックドロウを発動させる。魔法は問題なく発動した。

・・・が、陸久の姿がなかった。

「クイックドロウっとは言っても、所詮はこんなもんか」

そう言って森崎の首に手刀が降ろされた。

森崎は気を失って倒れる。「ドサッ」

「森崎、慢心するな。この世にお前より強い魔法師はごまんといるぞ・・・。」

「しょ、勝者、零乃陸久!」

「ゼロくん、お疲れ様。」

「ねえ、陸久さん。今何したの?」

雫だ。

「クイックドロウが発動する前に森崎の後ろに回ったんだよ。」

「凄かったですね。ビックリしちゃいました。

ほのかの目がキラキラしている。

今の説明をしてるとあやなが飲み物をくれた。

「ありがとう、あやな。」

それを受け取って飲む。

相川香織という女子生徒が話しかけてきた。

「ねえ、イチャイチャしてるところ悪いんだけどさ?」

「ん?どうした何かよう?」

何か聞くことがあるのか?

「零乃くんじゃなくて、零宮あやなさん。あなたのほうよ。」

「え?わたし?」

「あなたも調子に乗ってるんじゃないの?」

「へ?」

「たまたま、入試の結果が2位になって、従弟が同立で1位で・・・彼が今森崎に勝ったことも、何もかも当たり前のように調子に乗って・・・零宮あやな私と勝負しなさい!!」

目立っているから気に食わないのか、言いがかりにすぎないが

「あなたっ!何を言っているんですか?!」

ほのかが何故か、激昴する。

「いいよ、ほのかちゃん。」

あやなは、ほのかを手で制し落ち着いた、明るい声で言った。

「じゃあ、勝負しよっか?」

「負かしてあげるわ!」

俺はあやなの耳に口を持っていき、ボソッと言った。

 

相川香織VS零宮あやな

「始めっ!!」

「零宮家当主零宮あやな尽力して参ります。」

「行くわよ!」

お互いエアブリットを発動する同じタイミング、同じ威力で。

零家固有魔法《憑依(トランス)》。相手の記憶情報をを読み取ることで相手の癖や、使う魔法が分かる。ただ、あやなの場合、読み取るのに5秒ほどかかる。(《憑依(トランス)》をには他にも効果があるがまた今度話そう。)そのため、《憑依(トランス)》を使うときは時間稼ぎに口上を述べるのだ。

「お、おい。相川のエアブリットを全て相殺してるのか?」

「そ、そんな・・・」

「ねえ・・・らちがあかないから次で終わりにしよっか?」

「へ?」

そう言ったあやなは無情にもエアブリットの量を4倍にした。

相川のエアブリットを25%を相殺し、残りの75%が彼女に降り注いだ。

「キャー」

案の定、目を回してしまった。

「勝者、零宮あやな!」

「目立ちたいなら自分で努力しなきゃね。努力以外で得た力なんて結局呪いでしかないんだから・・・」

陸久の方を見て言った。

 




ふう、どうにかして、モブ崎くんと相川さんを倒す。というオリジナル展開を終えることが出来ました。相川に関してはオリキャラでしたが、今後は出てこないので覚えなくて大丈夫です。ところで担任って一科生はいるんでしたっけ?一科生は書かれてないからな次回はちゃんと服部先輩VS達也書きます。
「お姉ちゃんにまっかせなさい」って、LOSTZEROやってる人じゃないとわからないですかね?あれ好きなんですけど「私がゼロくんの未来を照らしてあげる。お姉ちゃんにまっかせなさい」ってやつ笑
もし良かったら、見てみてください。あやなの出会いコミュで見れますので。
感想どんどん書いてください。質問や不服などもなるべく返信します。


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入学編 Ⅶ

ちょっとプライベートが忙しくて書けませんでした。
すみませんでした。
大変長らくお待たせしました。(待ってくれていた人がいると信じています)
今回、模擬戦の話なんですが、アニメ、小説と色々順番が違うので、それを踏まえて読んでください。



放課後になって、約束通り?生徒会室へ訪れた。

「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、零宮あやなさん、生徒会へようこそ。」

握手をしようとして思いとどまったからか、右手が小さく動いた。服部はそのまま俺と達也を無視して席に戻った。

「よっ、来たな」

「いらっしゃい、4人ともご苦労さま」

摩利、真由美の順で挨拶される。

「早速だけど、あーちゃん、お願いね」

「・・・ハイ」

こちらはもう諦めたのか、一瞬目を伏せ、ぎこちない笑顔を見せた。

「じゃあ、あたしたちも移動しようか。」

「どちらへ?」

達也が問う。

「風紀委員会本部だよ。この真下だ。といっても、中で繋がっているんだがね」

「変わった造りですね、生徒会との交わりもあるでしょうから、便利ですね。」

「あたしもうそう思うよ。実際、皆よく利用している。おっと、お喋りが長くなってしまったな。さあ、行こうか。」

そう言いながら、席を立つ。が、腰を浮かせたところで制止がはいった。

「渡辺先輩、待ってください」

呼び止めた人物は服部副会長。摩利はその声に、今時耳慣れない名称で応じた。

「何だ、服部刑部少丞範蔵副会長」

「フルネームで呼ばないでください!」

達也を見ると驚いた顔をしている。達也のこんな顔は滅多に見ない。

「じゃあ、服部範蔵副会長」

「服部刑部です!」

「そりゃ名前じゃなくて官職だろ。お前の家の」

「今は官位なんてありません。学校には「服部刑部」で届けが受理されています!・・・・・・そんなことが言いたいのではなく!」

服部は顔を赤くしながら言った。

「渡辺先輩、そこの2人を風紀委員に任命するのは反対です。過去、二科生(ウィード)を風紀委員に任命した例はありません。そして、零令の方には不安があります。」

「禁止用語だぞ、服部副会長。風紀委員長の私の前で堂々と使用するとはいい度胸だな。彼らには展開中の起動式を読み取り発動される魔法を予測する目と頭脳がある」

「・・・何ですって?そんなことがで・・・」

きるわけがと続く言葉を切ったのはあやなだった。

「服部副会長・・・。お2人の実力に問題があると思っているんですか?」

「身びいきで判断してはいけないと言っています。」

「ゼロくん、服部副会長に負けませんよ?」

とても明負けずの声で言った。

続いて深雪も

「お兄様は実戦ならば誰にも負けません」

俺はため息をつきながら言った。

「服部先輩、模擬戦をしませんか?」

「な、なに?」

「1戦目は達也と、2戦目は俺と。まあ、俺達ごとき2戦しても全然へっちゃらですよね。」

「思い上がるなよモルモットの分際で」

ついに手を上げそうなあやなの腕を制止しながら低い声で言った。

「じゃあ、そのモルモットに足救われないように頑張ってください。」

 

「ごめんね。ゼロくん。」

「ん?何が?」

「服部副会長を煽るようなことを言っちゃって」

「何だ、そんなこと気にしなくていいよ。俺も実力を見せておくいい機会だしね。しかし、俺やれるかな〜」

「だ、大丈夫。ゼロくんなら勝てるよ」

「ありがとう。でもそうじゃなくて、服部副会長が達也を相手に戦って、その後に俺と戦えるのかっていうのが心配なんだよね。まあ、また煽ればいいか」

 

 

☆演習室☆

「始め!」摩利の合図の声が響く。

・・・が、勝敗は一瞬で決した。服部が倒れた状況を見て摩利が言った。

「・・・勝者、司波達也」

達也は軽く一礼して、CADを置いたケースの元へと向かう。

「今のはなんだ?」

「酔ったんですよ」

「酔った?何にだ?」

「予期せぬ想子の波動に晒された魔法師は、実際に自分の体が揺さぶられたかのように錯覚するんですよ。」

「そんな、信じられない。一体どうやって」

「後ほど説明しますよ。2人の試合が終わったら・・・」

「さて、服部先輩、俺と2戦目出来ますか?」

「ああ。問題ない。」

「じゃあ、お願いします。」

「双方準備はいいか?!」

「「はい!」」

「始め!」

「さあ、ゼロから始めよう。」

「今度は油断しない。行くぞ!」

服部が術式を組み立てる。

砂塵流(リニアサンドストーム)》か、口だけではなく、実力はちゃんとあるのだろう。まあ、でも。

刹那、服部の目の前に陸久は移動していた。

服部は驚愕した。

「なっ・・・」

「これで終わりです。」

服部の体に手を当てて言った瞬間に倒れた。《砂塵流(リニアサンドストーム)》は強力ではあるが、起動式の処理時間が長い。そこが弱点だ。まあ、深雪や、俺のような処理能力があれば別だが・・・

「な、何だ今のは?」

うん。デジャヴ。

「服部副会長に手を当てた音を増幅させて流したんですよ」

「音を流す?」あずさがきょとんとした顔で言った。

「ええ。そもそも音ってどんなものか、説明出来ますか?」

「空気の振動・・・」

「正解です。会長。その振動を体の中で増幅させて大音量で流したんです。通常、音は空気中では約340m/sの速さで伝わりますが、水中では約1500m/s。4倍の速さになります。人体の60%は水で出来ています。もうお分かりですね。」

「増幅させた音が、その速さで体中を流れたってことか・・・」

説明し終えたら、服部がよろよろ立ちながら言った。

「司波さん、零宮さん。身びいきなどと失礼なことを言いました。」

「いいえ、こちらこそ失礼な口を聞いて申し訳ありませんでした。」

「生意気申してしまい、申し訳ありませんでした。お詫びします。」

あやな、深雪も謝ったことにより、事態は解決。

と言いたいところだが・・・

「あの、もしかして、2人のCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」

目をキラキラさせながら、CADについて質問をしてきた。

「シルバー・ホーン?シルバーって、あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」

「そうです。フォア・リーブス・テクノロジー専属、その本名、姿、プロフィールの全てが謎に包まれた奇跡のCADエンジニア!世界で初めてループキャスト・システムを実現した天才プログラマ!

あっ・・・ループキャストシステムというのはですね、通常の起動式が・・・」

「ストップ、ストップ!ループキャストは知ってるから」

「そうですか・・・・・・?シルバー・ホーンというのは、そのトーラス・シルバーガフルカスタマイズした特化型CADなんです。ループキャストに最適化されてるのはもちろん、最小の魔法力でスムーズに魔法を発動できる点でも高い評価を得ていて、特に警察関係者の間ではすごい人気なんですよ!現行の市販モデルであるにも関わらず、プレミア厶付で取り引きされているぐらいなんですから!しかも、通常のシルバー・ホーンより銃身が長いモデルですよねっ?それに、陸久くんに限っては色違いなんて聞いたこともありません!!何処で手に入れたんですか?」

怒涛の説明と質問がプツリと終わった。

「ねえ、リンちゃん。それっておかしくない?いくらループキャストに最適化された高性能のCADを使ったからって、そもそもループキャストじゃ・・・」

話を振られて、鈴音も真由美も摩利も首を傾げる

「一つずつお答えしましょう。まず、自分と陸久の持っているCADはシルバー・ホーンで間違いありません。それと先程、自分が行ったのは・・・」

「『波の合成』・・・ですね」

「お見事です。市原先輩」

「しかし、ループ・キャストはあくまでも、全く同一の魔法を連続発動する為のもの。それでは波の合成に必要な振動数の異なる複数の波動を作り出すことはできないはずです。振動数を定義する部分を変数にしておけば同じ起動式で『波の合成』に必要な振動数の異なる波動を連続で作り出すこともできるでしょうけど、座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変数化するとなると・・・・・・まさか、それを実行しているというのですか?」

驚愕し、言葉を失った鈴音の視線に達也は軽く、肩を竦めながら言った。

「他数変化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても、評価されない項目ですからね」

「・・・じゃ、じゃあ、そろそろ部屋にもどりましょうか」

真由美のこえかけにより渡辺先輩、達也、陸久は風紀委員本部へ

真由美、服部、市原、あずさ、あやな、深雪は生徒会本部へ戻って行った。




主人公のシルバー・ホーン全体の色は薄めの黒色と思ってください。
イメージとしてはこんな色を考えてます。
https://pics.prcm.jp/8b684b252091b/42021644/jpeg/42021644.jpeg
遅くなってすみませんでした。感想、意見、気軽に下さると嬉しいです。


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入学編 Ⅷ

新年あけましておめでとうございます。(10日になろうとしていますが)
ちょっと難しいシーンだったので、「どう絡ませようかな〜」と考えておりました。
本音もどうぞよろしくお願いします。



ここは生徒会室の隣。なににも使われていない部屋。

あやなと真由美の2人がいた。

「久しぶりだね。真由美ちゃん」

「9年ぶりかしら、あやなさん」

「うん。そうだね。あの時はたのしかったな。いっぱい遊んだよね。」

「え、ええ、そうね。あやなさん、ひとつ聞いておきたいことがあるの。陸久くんは本当に記憶を失くしてるの?」

「うん。そうだよ。陸久くんは本当に記憶が失くなってるよ。私たちが初めて会った日のことも、それからのことも全部。」

「そう・・・ それで、他の魔法師を恨んだりは・・・」

「してないよ。」

「じゃあ、あやなさん、あなたは?」

「ううん。それはないよ。ゼロくん、言ったんだよ『記憶が失くなってもまた零から始めればいい』って。ゼロくんがそう言うなら私はそれでいい。」

「そう・・・。」

「これからよろしくお願いします。七草生徒会長!」

「ええ、よろしくね。あやなさん」

 

 

風紀委員室

「2人とも適当に掛けてくれ」

「委員長、ここ片付けてもいいですか?この状況は魔工師志望としては耐え難いものがあるんですよ」

「俺も手伝おう」

「あ、ああ、片付けるのは構わないが、魔工師志望?あれだけの対人スキルがあるのに?」

達也のセリフに、摩利は本気で首を傾げた。

「俺の才能じゃ、どう足掻いてもC級までのライセンスしかとれませんから」

国際ライセンスの区分はAからEの5段階。

選定基準は魔法式の構築・実行速度、規模、干渉力の3点。

つまり、学校の実技評価と同じ。と言うより、学校の実技評価基準が国際ライセンスの評価基準に沿って設定されているのである。

警察や軍のように特殊な基準を採用しているところもあるが、その場合も評価はあくまで『警官として』『軍人として』であり、魔法師としての評価ではない。

「・・・・・・それで、片付けても構いませんか?」

「あ、ああ、あたしも手伝おう。話は手を動かしながら聞いてくれ」

「じゃあ、やるか」

チラッと俺と達也が渡辺先輩の方に目をやる。

小さく、ため息。

摩利は諦めて手を止めた。

「すまん。こういうのはどうも苦手だ」

一見しっかり者に見えるが、整理整頓は出来ないのか。

この部屋の現状は彼女に最大の責任があるのだろう。

「そういえば、君をスカウトした理由はもうほとんど説明してしまったな。」

「未遂犯に対する罰則の適正化と、二科生に対するイメージ対策・・・でしたよね?整理整頓のためではないと記憶していますが、たしか」

「憶えていますが、イメージ対策の方はむしろ逆効果ではないかと。・・・中を見てもいいですか?」

本を並び終え、端末の整理に取り掛かる。作業中のデータを見てもいいかどうか訪ね、首を縦に振る摩利の了解を取ると端末の点検が始まる。2人でやるので単純に速さは2倍だ。

「どうしてそう思う?」

「自分たちは今まで口出しできなかったのに、同じ立場のはずの下級生にいきなり取り締まられることになれば、面白くないと感じるのが普通でしょう」

「だか同じ一年生は歓迎すると思うがね。クラスメイトに話くらいしたんじゃないのか?」

「一科生方には歓迎に倍する反感があるだろうな。けどその点は多分大丈夫だよ」

「なにか当てがあるのか?陸久くんは」

「ええ。達也の妹は深雪ですよ?達也を少しでも悪く言ったら、瞬間氷漬けですよ。『お兄様を侮辱する方はこの深雪が許しません』とかなんとか言って」

自分でも言い方が悪いとは思ってるが、間違いじゃないからな。

「そこまでするのか。恐ろしいな」

 

~生徒会室~

「クシュン」

「深雪さん、大丈夫ですか?」

「ええ。失礼しました。中条先輩」

「誰かが深雪さんのことを噂してるのかも知れませんね」

 

~再び風紀委員室~

「・・・・・・ここ、風紀委員会本部よね?」

階段を降りてきた真由美の、開口一番がこのセリフだった。

「いきなりご挨拶だな」

「だってどうしちゃったの?摩利。リンちゃんがいくら注意しても、あーちゃんがいくらお願いしても、全然片付けようとしなかったのに」

「事実に反する中傷には断固抗議するぞ、真由美!片付けようとしなかったんじゃない、片付かなかったんだ!」

やっぱりそうか、片付けができないんだなこの人・・・。

「女の子としては、そっちの方がどうかと思うんだけど」

同感です。片付けはできた方がいいですよ?女性なら尚更ね。

真由美が目を細めて斜に睨むと摩利は咄嗟に顔を背けた。

「別にいいけどね・・・・・・ああ、そういうこと」

並んで、固定端末のメンテナンスハッチを開いて中をのぞき込んでいる俺たち2人の姿を目に留めて、七草先輩は納得顔で頷いた。

「なるほど、早速役に立ってくれてるわけね」

「まあ、そういうことです」

ハッチを閉じ、振り向きながら達也が答えた。

「委員長、点検終わりましたよ」

「傷んでいそうな部品を交換しておきましたから、もう問題はないはずですよ」

「ご苦労だったな」

本当に苦労しました。

「達也くんと陸久くんが摩利を委員長って言ってるってことはスカウトに成功したのね」

「最初から俺に拒否権はなかったように思いますが・・・・・・」

深雪に言われたもんな。

「2人とも、おねーさんに対する対応がぞんざいじゃない?」

とりあえず俺たちには姉はいない。

自称「おねーちゃん」はいるが彼女は従姉である。

そんなことを考えていると、達也が

「会長、念の為にといいますか、確認して起きたいことがあるんですが」

「んっ、なあに?」

「会長と俺は、入学式の日が初対面ですよね?」

言外に、馴れ馴れしくないですか?と問うている。

すると、

「そうかぁ、そうなのかなぁ・・・ウフフフフ」

七草会長は笑顔で答えた。

「達也くんは、私ともっと前にあったことがあるんじゃないか、とおもっているのね?入学式の日、あれは、運命の再会だったと!」

「いえ、あの、会長?」

うわぁーテンション高いなあこの人。

「遠い過去に私たちは出会っていたかもしれない」

「いえ、あの、会長?」

凄い演技だなー(棒)

「遠い過去に私たちは出会っていたかもしれない。運命に引き裂かれた二人が、再び運命によって巡り会った、と?」

君の前前前世から僕は〜♪ってか?

「それが本当なら、先輩との出会いはFateではなく、Doomですね」

ノリノリだった真由美に対して、辛辣な達也の言葉。

「チッ」

「陸久くんは以前に会ったことない?私と」

「覚えている限りではありませんね。もしだったら、あやなに聞いてみてください。」

「そ、そう。そうね、分かったわ」

(やっぱり、あやなさんの言った通りなのね・・・)

「じゃ、じゃあ、お先にね」

そういって真由美は生徒会室へ引き返していった。

 

 

 

あとは、PCのスイッチを切って終了というところでタイミング良くか、悪くか、2人の男子生徒が入って来た。

「ハヨーッス」

「オハヨーございまス」

威勢のいい掛け声が部屋に響く。

「おっ、姐さん、いらしたんですかい」

「委員長、本日の巡回、終了しました。逮捕者、ありません!」

直立不動で2人の生徒が報告をした。

「ご苦労、そうだ。紹介しよう。新入りだ。1年E組司波達也。1年A組の零乃陸久だ。」

「へぇ・・・・・・零令の倅と紋無しですかい」

「辰巳先輩、その表現は、禁止用語に抵触する恐れがあります!この場合二科生と言うよりべきかと」

もう1人の男子生徒も、そう言いながら、ひやかすような、値踏みするような態度を注意しようとしない。

「お前たち、そんな単純な了見だと足下をすくわれるぞ?ここだけの話だが、さっき服部が足下をすくわれたばかりだ」

摩利の言葉に2人は急に真剣味を増した顔になった。

「そいつが、あの服部に勝ったってことですかい?」

「ああ、正式な試合でな」

「何と!入学以来負け知らずの服部が2人の新入生に敗れたと?」

「大きな声を出すな、沢木。ここだけの話と言っただろう」

まじまじと見つめられて居心地の悪いことこの上なかったが、印象は悪くないようだった。

「3-Cの辰巳鋼太郎だ。よろしな、腕の立つヤツは大歓迎だ」

「2-Dの沢木碧だ。君達を歓迎するよ。司波くん、零乃くん」

それぞれ握手を交わしながら言った。




今回、話進んでいませんね。九校戦ならアイディアたくさんあるんですけどね笑
ではまた次回。


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入学編 Ⅸ

やっとの思いで、書き上げました。
今回、達也の方は書いていませんが、達也は原作通り(アニメ通り)桐原先輩とヤッたと思ってください。(深い意味はありません)
主人公は、今話で衛星回線を超えます。笑


色々と特殊なところのある魔法科高校だが、基本的な制度は普通の学校と変わらない。第一高校にも、クラブ活動はある。

九校戦と呼ばれる学校間の対抗戦に優秀な成績を収めたクラブには、クラブの予算からそこに所属する生徒個人に至るまで、様々な便宜が与えられている。

そのため、この時期、各クラブの新入部員獲得合戦は、熾烈を極める。・・・・・らしい。

 

 

「というわけで、この時期は各部間のトラブルが多発するんだよ」

ここは生徒会室。昼食を摂りながら話を聞いていた。

「勧誘が激しすぎて授業に支障を来たすことも。新入生勧誘活動には一定の期間、具体的には今日から一週間という制限を設けてあるの」

摩利と真由美のこのセリフに、達也は訝しげな表情を浮かべた。

「CADの携行は禁止されているはずでは?」

CADが無くても、魔法自体が使えなくなるわけではない。

だが、激しすぎる?

「新入生向けのデモンストレーション用に許可が出るんだよ。一応審査があるんだが、事実上フリーパスでね。この時期は、学校が無法地帯化してしまう」

「新入生の引き込みですね?普段、CADの使用が禁止されてる分羽目を外してしまい生徒同士のトラブルとなる。と。」

また、森崎みたいな奴が出なきゃいいけど・・・

「そういうことだ。物分りが良くて助かるよ。2人とも、授業が終わりしだい本部に来てくれ。」

「了解」 「了解です」

摩利の言葉に俺と達也が返事をすると

「会長・・・・・・わたしたちも取り締まりに加わるのですか?」

と深雪が言った。もちろん、この『わたしたち』というのは生徒会役員のことだ。

「巡回の応援はあーちゃんに行ってもらいます。何かあった時の為に、はんぞーくんと私は部活連本部で待機していなければなりませんから、深雪さんはあやなさんとリンちゃんの3人でお留守番をお願いしますね」

「分かりました」

「・・・達也、どうした?」

達也があーちゃん、もとい中条先輩の方をじっとみていた。

「ん?いや、なんでもない。」

「あーちゃんの外見で不安になるのは分かるなぁ。でもね、達也くん、人は見かけによらないのよ」

「それは分かりますが・・・」

達也が問題視してるのは恐らく、外見ではなく、中条先輩の気弱な性格だろう。いや、外見も不安要素の一つではあるが。

「ちょっと、いや、かなりかな?気の弱いところたまに瑕だけど、こういう時にはあーちゃんの魔法が頼りになるのよ」

「そうだな。大勢が騒ぎ出して収拾がつかない、というようなシチュエーションにおける有効性ならば、彼女の魔法《梓弓(アズサユミ)》の右に出る魔法はないだろう」

現代魔法は技術であり、多くの魔法が定式化されている。もちろん、非公開の術式も存在するが、大多数の魔法が公開されデータベースに登録されている。それらの魔法は通常その系統と効果で識別されているが、独創性の高い魔法には固有の名称が与えられる。俺と達也はその『全て』をおぼえている。

「梓弓・・・・・・?正式な固有名称じゃありませんよね?系統外魔法ですか?」

非公開の魔法には系統外魔法が多いため達也は訊ねたのだが、

「君はもしかして、全ての魔法の固有名称を網羅しているのかい?」

「達也くん、実は衛星回線か何かで、巨大データベースとリンクしてるんじゃない?」

摩利からは呆れ顔、真由美からは本気で目を丸くして言われている達也。

梓弓(アズサユミ)というのは、は、情動干渉系魔法だな。

プシオンを震わせた波動で、一定のエリア内にいる人間をある種のトランス状態に誘導する効果がある。意識を奪ったり意思を乗っ取るわけではないので相手を無抵抗状態に陥れることまではできないが、精神干渉系の魔法では珍しく、同時に多人数を相手として仕掛けることができ、興奮状態にある集団を沈静化させるにはもってこいの魔法だ。補足すると、中条先輩しか使えない属人的な間法だよ」

「ど、どうしてそのことを?!達也くんにも、驚かされたけど・・・」

「それが零の力ですからね。視た相手の魔法、その特性を知ることができるんですよ。記憶なんかも」

「じゃ、じゃあ、私の秘密も分かっちゃうってことですか!?」

「中条先輩の記憶を視れば可能ですが?試してみますか?」

「い、いえ、結構です・・・」

「俺の魔法は相手との信頼関係が重要です。勝手に覗き見て、言いふらす。なんてことはしませんのでご安心ください」

「陸久くんの魔法?どんな魔法なんだ?」

「あやな・・・」

「うん。摩利ちゃん。簡単に説明するね?今、陸久くんが言った魔法の固有名称は《術師増幅(マギカ・ブースター)》。対象者の身体能力、魔法規模、演算速度を上げる効力を持つ魔法。ただし、誰にも使えるわけじゃなくて、術者と対象者の信頼関係が重要なの。だから、会ったばかりの人に使ったりできるものじゃない。と、こんなところかな」

「な、なんだか、難しいな」

「簡潔にまとめると、『己の力で他者を強化する』という感じですね。」

「さすが市原先輩、その通りです。まあ、この魔法は使わないに越したことはないんですがね。」

 

 

~放課後~

早速、騒ぎが起こった。

雫とほのかが、スケートボードに乗った2人の女にそれぞれ抱えられて

攫われている。部活の勧誘?だろうが、明らかに過剰であり、違反行為だ。

「ハァ、バイアスロン部だっけか?雫とほのかは成績上位者だからな、奪い合いになるのか」

「もしもし、委員長ですか?違反行為発見しました。制圧に向かいます」

そう言いながら、端末型CADに手をやる。

発動したのは《自己加速術式》。その速さは摩利や、エリカと比べても遜色はない。

「へえ、あの子なかなか、やるじゃない」

「ここで摩利が来るとまずいわね。振り落とされないように、しっかり捕まってなさいよ」

「いやぁぁぁぁぁぁぁっ」

ほのかの声が響く。

「っ?チッ・・・、スピード上げたか。ならこっちも」

 

 

 

「この2人、部活見学者だ。よろしくな」

「へ?風祭先輩?萬谷先輩?」

「じゃあ、私たちは逃げるから、あとよろしく」

2人は自己加速術式をで逃げていった。

すぐに陸久は追いついた。

「お?おっと、やっと解放されたか、大丈夫だったか?」

「陸久さん、助けてくれても良かったんじゃないの?」

雫口をとがらせて言った。

「追いつけなくはなかったが、無理矢理助けようとすると2人が必要ない怪我を負う可能性があったからな。悪いが、あとほのかのこと頼めるか?」

「それはいいけど、大丈夫なの?あの2人、あの速さだともう遠くへ逃げちゃったと思うけど」

「ああ、心配しなくていいよ」

「あ、あの先輩がご迷惑かけたみたいですみませんでした」

「バイアスロン部の方ですか?」

「は、はい」

「新入生勧誘、頑張って下さいね。応援しています」

「あ、ありがとうございます。風紀委員の仕事頑張って下さい」

陸久の人となりが周りから言われているような雰囲気ではなかったからか、このバイアスロン部員は意外感を覚えた。

「じゃあ、2人をよろしくお願いします」

そう言いながら、再びCADで魔法式を展開。しかし、先までの自己加速術式とは違う。魔法の名称は《流星(ミーティア)》。ここからは手加減はなしだ。

「俺はあの2人を捕らえますから。それでは」

その言葉を残して、消えた。

 

「ハァハァ、ここまで差をつければ大丈夫だろう」

「あの1年生、相当な実力差じゃない?」

「そうね。九校戦で相当な結果を残すでしょうね」

「お褒めに預かり光栄ですよ?」

虚をつかれたように上を見上げると木に座っている人物がいた。

「「!!??」」

言わまでもないだろう。陸久だ。

「名前が名前のため、悪く言われることの方が多くてね。参っちゃいます」

「い、いつの間に!」

「ですが、風紀委員会は結構居心地のいい場所なので、面子は保ちたいんですよ」

2丁のシルバー・ホーンをそれぞれ2人に向けながら言う。

「大人しくしていてくださいね」

引き金が引かれた。

使用した魔法は《幻衝(ファントム・ブロウ)》。

 

摩利が駆けつけたのは、1人の新人風紀委員の前に2人が倒れた後だった。

 




1巻終わりました。次話から2巻です。
引き続きよろしくお願いします。
風紀委員、自分のCAD使っていいんすよね?
達也の場合、委員会の備品使ってたけど・・・。大丈夫だよね。
ウン。キットダイジョウブ。

《流星》はフェアリーテイルと同じやつです
感想お待ちしてます。


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入学編 Ⅹ

2巻入りました。
2巻のはじめに達也は壬生先輩と会ってますが
オリ主は会いません。話がめちゃくちゃになってしまうので。




閉門時間際の部活連本部。

「以上がバイアスロン部で起こったことの顛末です」

「それにしても、あの風祭と萬谷の2人を捉えたんだ。凄いじゃないか、期待以上だよ」

「ありがとうございます。委員長」

「うんうん。とっても優秀じゃない。うちで、ボディガードとして雇っちゃおうかしら」

「会長、それはお家的にもあれですし、あやなに何を言われるか。その話はまたの機会にさせて下さい」

「零令・・・。いくつか質問いいか?」

「なんでしょう?十文字会頭。」

十文字克人。師族会議十文字家代表代理、第一高校部活連会頭。

第一高校の3巨頭の1人で巌の様な男だと言われている。

実際会ってそう思うほど厳格な男だ。

「まず初めに、四葉殿はお元気か?」

「・・・・・・」

「ちょ、ちょっと!!?」

「お、おい、十文字。いきなり何を言ってるんだ!」

叫んだのは摩利だ。

「5年前、零家は四葉の庇護下に置かれた。そして、十師族が2人いるこの第一高校に入学してきた。四葉と少なからず関係のある者がいるんだ」

「続きをどうぞ」

「零令、何が目的で第一高校に来た。四葉は何を企んでいる。」

「随分と突っ込んできますね」

陸久は苦笑しながら言った。

「じゃあ、一つずつ答えていきましょうか。まず、俺自身の目的ですが」

空気が硬直する。

「・・・『楽しい高校生活を送りたい』です」

十文字が眉間に皺を寄せる。

「四葉との関係ですが、あの時は中立という立場でしたが、仲良くさせていただいてますよ。あやな共々。俺は別に十師族に零家を復活させるとかそんなことは考えていません。第一高校で友人を作り、楽しい高校生活が過ごせればいいんです。」

ほかの2人から見れば笑顔かもしれないが、真由美違った。

過去に自分は会ったことがある。それは事実なのに、それを陸久は覚えていない。彼女の目には陸久が『失われた時間がある分、これからの時間を充実させる。』というふうに言ってるように思えた。

「話はこれで宜しいでしょうか?」

「ああ、ご苦労だった」

「それでは、失礼します」

 

 

「ゼロくん、お疲れ様。」

「ああ、あやなも生徒会の仕事、お疲れ。あれ、雫とほのかも一緒なのか?」

「うん。あの時、使った魔法のことが聞きたくて・・・」

「すごく速くて、雫と2人でビックリしちゃって」

「そっか。んー、じゃあ、どこかで夕飯でも食べながら話そうか?奢るよ」

「いいね!みんなで食べようよ」

「魔法の話が聞けるなら」

「はい!ありがとうございます」

あやな、雫、ほのかの順。

 

 

~喫茶アイネ・ブリーゼ~

「2人を追う時に使った魔法はなに?」

「みんな、速く動く時は自己加速術式を使うよね。」

「それが普通じゃないんですか?」

「自己加速術式の定義って覚えてるかい?」

「え、えーと」

「・・・自分自身を対象として加速度ベクトルに干渉し、特定方向へ急加速させる・・・?」

「そうだね。あくまで『加速』なんだけど、俺の使った《流星(ミーティア)》はその名の通り星の速さ秒速300000㎞の速さまで出せるんだ。さすがにそこまでの速さに体耐えられないから、まだ全力の体現は出来ないけどね。」

嘘だ。できるが、使うと不味いというのが本音だ。

「ねぇ、陸久さんととあやなの得意魔法って何?」

「俺は領域干渉魔法、天体魔法、熱量系魔法かな。他系統の魔法も使えなくはないけど」

「私は振動・加速系魔法だよ。」

「今度、魔法教えてくれない?」

「いいよ。ほのかは?」

「わ、私もお願いしていいですか?」

「もちろん。俺かあやな空いてる時なら声をかけてもらえれば、魔法の稽古を見てあげるよ」




最近、本編の方にオリ主関わってませんが、一応進んでいるのでご心配なく。今後ともよろしくお願いします。


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入学編 XI

ゆっくり書き上げましたー。
あやな、からませづらい。
書きにくい。(自業自得)



生徒会室で昼食を摂るのも大分慣れてきた。と言ってもまだ二週間も経っていないが。いや、別に毎日生徒会室にいるってことでもない。だって、ほのかと雫とも仲良くさせてもらってるからな。

「達也くん」

「何でしょうか、委員長」

「昨日、2年生の壬生を、カフェで言葉責めにしたというのは本当かい?」

「言葉責め?ハハハハ!!マジかよ達也」

「・・・先輩も年頃の淑女なんですから、『言葉責め』などという、はしたない言葉は使わない方がいいと思いますが」

「ハハハ、ありがとう。あたしのことを淑女扱いしてくれるのは達也くんぐらいのものだよ」

「そうなんですか?自分の恋人をレディとして扱わないなんて、先輩の彼氏はあまり紳士的な方ではないようですね」

「そんなことはない!シュウは・・・」

そこまで言いかけて、摩利は「しまった」という顔で口をつぐんだ。

「・・・・・・」

「なぜ何も言わない」

「何かコメントした方が良いですか?」

七草会長が背中を向けて、肩を震わせていた。まあ、俺も人のことを言えたもんじゃないが。

「じゃあ、私から質問するね?摩利ちゃんの彼氏さんのフルネームは?」

「あやな、こんなところで天然爆発させなくていいから」

あやなはたまにホントたまにだが抜けることがある。

「へ?」

「はい、じゃあ、話を元に戻しましょうか。達也くん?壬生さんを言葉責めにしていたのは本当なの?」

七草会長が笑っていたのを誤魔化すように話を元に戻した。

すると達也は

「ですから、『言葉責め』などという表現はやめた方がよろしいかと・・・・・・深雪の教育にもよくありませんし・・・」

「あの、お兄様?わたしの年齢を勘違いされていませんか・・・?」

ここで再び始まる沈黙という名のバトル。

しかし、この手の戦いは、住々にして千日手にしかならない。

将棋なら、仕掛けた側が手を変える。

だがこの場のローカルルールでは残念ながら、達也の方が手を変えざるを得ない。

立場というのは理不尽なものだ。

「・・・そんな事実はありませんよ」

「おや、そうかい?壬生が顔を真っ赤にして恥じらっているところを目撃した者がいるんだが」

摩利がそんなことを言うと、不意に冷気が漂って来たのを感じた。

「お兄様・・・・・・?一体何をされていらっしゃったのかしら?」

深雪だ。物理的に、かつ局所的に、室温が低下している。

「ま、魔法・・・?」

あずさの呟きには怯えが混じっていた。現代魔法学は超能力研究の延長線上にある。それはつまり、現代魔法は超能力と呼ばれた異能を持つ性質も潜在的に受け継いでいるということだ。

「事象干渉力がよっぽど強いのね・・・」

真由美の呟きに、達也は苦笑いを浮かべた。

魔法の暴走は、未熟の証であると共に、卓越した才能の証でもあった。

最も、他にも理由はあるのだが。

「落ち着け、深雪。ちゃんと説明するから。」

「とりあえず、室温戻そうか。」

そう言って魔法で俺は室温を戻した。

「申し訳ありません・・・」

深雪は恥ずかしげに目を伏せ、ゆっくり息を整えた。

「夏場は冷房要らずね」

「真夏に霜焼けというのも間抜けな話ですが」

「ゼロくんに温めてもらえば?」

「陸久に頼んだら、火達磨にされるだろう」

達也はそう言ってるが、そんなことは無いぞ?諸君。今だってできてたし。

「どうも、風紀委員の活動は、生徒の反感を買っている面があるようですね」

達也がそう締めくくると、摩利と真由美が同じように顔を曇らせた。

「しかし、点数稼ぎに強引な摘発、などという事が本当にあるんですか?少なくともこの一週間、そういう事例は見聞きしていませんが」

「俺も聞いていないですね。」

「わたしもです。わたしの場合はモニター越しにしか現場を見ておりませんが、あの無秩序ぶりからすれば、風紀委員会の皆様の活動は、むしろ寛容だと思いますが」

達也と深雪の指摘に、真由美はいっそう沈鬱な表情になり、摩利は首を振りながら口を開いた。

「それは壬生の勘違いだ。思い込み、なのかもしれないかもしれないが。風紀委員会は全くの名誉職で、メリットはほとんどない」

「あやなさん、どうしたの?」

「風紀委員会が名誉職といっても、校内で高い権力を持っているのも事実だよね。今の一高生から見ると面白くないんじゃないかな」

あやなの言ってることは正しい。だが

「正確には、そういう風に印象を操作している何者かがいるんだけどね」

真由美の回答した。

「正体はわかっているんですか?」

達也としては、当然の質問だった。

「えっ?ううん、噂の出処なんて、そう簡単に特定できるものじゃないから・・・」

「・・・張本人を突き止められれば、止めさせることも出来るんだがな」

だが、真由美と摩利にとっては予想外の質問だった。

さっきの真由美の発言も、つい口を滑らせてしまったもの。

達也は真っ直ぐに真由美の目を見た。

真由美はすぐに視線を逸らした。

「俺が訊いているのは、末端であることないことデマを流して印象操作をしている下っ端の正体ではなく、背後で操っている連中の正体なんですが」

達也に続いて、低い声で言った。

「それは例えば、『ブランシュ』のような組織ですか?」




ちょっと、中途半端な終わり方だったでしょうか。
もし、不評だったら書き直します。
タブンキットオソラク。(*´・д`)-д-)))ソゥソゥ


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入学編 XII

お久しぶりです。Touliです。
3ヶ月とちょっとぶりですね。
高校卒業だったり、就職だったり、忙しかったので。(言い訳)
新型コロナウイルスの影響で卒業式も簡潔ものになったりしたんですがね。
みなさんも、コロナに感染しないように自宅で過ごしましょう!
ちなみに、私は「Amazon prime」登録しました。ありゃいいよ。
オススメです。


「1010ms。エリカちゃん、一気に40も縮めたわよ!本当にもう一息!」

「よ、よーし!なんだが、やれる気になってきた!」

「1016ms。迷うな、レオ。的の位置は分かっているんだ。いちいち目で確認する必要はない」

「わ、分かったぜ。よし、次こそは!」

達也と美月が計測器をリセットしている傍らで、目を閉じる、腕を振り回す、それぞれの方法で精神を集中し、気合いを高めるエリカとレオの2人。

その時、背中から声がかかった。

「邪魔するぞー」

「陸久くん、深雪にあやな・・・・・・と、光井さんと北山さんだっけ?」

「エリカ、気を逸らすな。すまん、次で終わりだから、少し待ってくれ」

「お、そうか。悪かったな」

「よし、2人とも、これで決めるぞ」

声を張り上げたわけではない、が、有無を言わせぬ口調。

「応!」

「うん、これで決める!」

2人は気合いを漲らせて、CADのパネルへ向かった。

 

「ようやく終わった〜」

えりかの歓声が課題の終了を告げる金の音となった。

「ふぅ・・・・・・ダンケ、達也」

補足だが、魔法科高校のCAD端末は手をかざして掌紋を読み込ませれば、自動で出た結果が記録される。だから、課題をサボってもすぐにバレるわけだ。掌紋を読み取ってから、他の人にやらせることも出来ないよう、プログラムされている。

「2人とも、お疲れ様。お兄様、ご注文の通り揃えて参りましたが・・・・・・足りないのではないでしょうか?」

「いや、もうあまり時間もないし、このぐらいが適量だろう。深雪ご苦労様。陸久にあやなも助かった。光井さんに北山さんもありがとう。手伝わせて悪かったね」

既に顔を合わせれば言葉を交わす程度の間柄にはなっていたが、俺たちを挟んだ知り合いであって、達也にとってはまだ友達未満の2人だ。彼の口調がやや恐縮気味だったのも、無理はない。

「いえ、この程度のこと、なんでもないです!」

「大丈夫。私はこれでも力持ち」

予想外に力の入っている答えを返したほのか。

本気なのか冗談なのか判断に迷う答えを返した雫。

 

こりゃ、ほのかは達也に惚れてるなあ。たしか、光井は光のエレメンツだったの家系だったか。可哀想に。よりによって相手が達也とは。

ここでエレメンツとは何か説明しておこうと思う。

 

エレメンツとはこの国で最初に計画されたプロトタイプの魔法師

現代魔法の四系統八種の分類・体系化が確立する前

地 火 水 風 雷 光 などの属性分類に基づき、開発がアプローチされた。

しかし権力者は未知数な要素の多い魔法使いや魔女の反乱を迷信的に恐れ遺伝子レベルにおいて魔法の才能以外にあるものの付与を試みた。

ーそれは主への絶対服従。

性格が遺伝するか否かは今尚答えの出ていない課題だが

現にエレメンツの末裔には高確率で「依存癖」が観測されている

忠誠心とも言えるが彼らもまたそれを『遺伝子に刻まれた宿命』と考えている。

 

「深雪さん達のクラスでも同じような実習が行われているんですか?」

「多分、美月たちと変わらないと思うわ。ノロマな機械をあてがわれて、テスト以外では役に立ちそうもないつまらない練習をさせられているところ」

達也、あやな、陸久を除いた5人が、ギョッとした表情をを浮かべた。

淑女を絵に書いたような外見にそぐわない、遠慮のない毒舌に。

「あ、そうだ。ねぇねぇ、深雪と陸久くんも参考までに、どのくらいのタイムかやってみてくれない?」

「えっ、わたしが?」

自分を指差し、目を丸くする深雪に、エリカはわざとらしく、大きく、頷いた。

「いいんじゃないか」

苦笑いを浮かべながら頷く兄を見て、

「お兄様がそう仰るのでしたら」

「よし、やろうか」

機械の一番近くにいた美月が、2つの計測器をセットする。

深雪はピアノを弾くときの様に、パネルに指を置いた。

陸久はパネルに覆い被さるように手を置いた。

計測、開始。

余剰想子光が閃き、

美月の顔が強張る。

「・・・・・・深雪さん、320ms。陸久さん、316ms・・・・・・」

「えっ・・・・・・・?」

「何回聞いてもすごい数値よね・・・」

「2人の処理能力は、人間の速度の限界に迫っている」

ため息を漏らしたのは、ほのかと雫も同じ。

ただ、その兄、従姉だけが驚いていない。

「やはり、お兄様の調整したCADでないと、深雪は実力を出せません」

「う~ん。やっぱ、気持ち悪いな」

ここは深雪と同じくらいの結果と反応にしておけば自然だろう

「まあ、そういうな。そのうち学校側に掛け合って考えてもらうから」

 

 

『全校生徒の皆さん!』

ハウリング寸前の大音声が、スピーカーから飛び出した。

「きゃあ!」

「ビックリ・・・」

ほのかに比べると全然驚いていないように感じる雫だが

『ーー失礼しました。全校生徒の皆さん!僕達は学内の差別撤廃を目指す有志同盟です』

「・・・有志・・・ね・・・」

スピーカーから出た男子生徒の声を聞いて陸久はシニカルに呟いた。

『僕達は生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』

「ねぇ、行かなくていいの?」

雫が聞く。

「委員長と会長から連絡来るだろう。」

『ブーブー』連絡が来た。噂をすればなんとかって。

「あやな、深雪、行くぞ」

「はい、陸久さん」

「うん。ほのかちゃん、雫ちゃん、また後でね」

 

 

「あ、お兄様」

「深雪?お前達も呼び出しか?」

「ああ、委員長から、放送室前まで行くようにと」

途中で達也と合流し、放送室へと向かう。

「これは、ブランシュの仕業でしょうか?」

「団体は特定できないが、その手の輩には違いないだろうね」

「人の弱いところにつけ込むなんて最低だね」

「おしゃべりはそこら辺にして、とりあえず急ごうか」

放送室前には、既に摩利と克人と鈴音、そして風紀委員と部活連の実行部隊が顔を揃えていた。

「遅いぞ」

「すみません」

ポーズだけの叱責にポーズだけの謝罪を返す達也。

「現在の状況は?」

話を戻すため俺は聞いた。

「マスターキーを持ったまま立てこもっている」

「明らかな犯罪行為じゃない」

あやなが言った。

「その通りです。だから私たちも、これ以上彼らを暴発させないように、慎重に対応するべきでしょう」

「こちらが慎重になったからっといって、それで向こうの聞き分けが良くなるかどうかは期待薄だな。多少強引でも、短時間の解決を図るべきだ」

 

どうやら、みんな方針が違うらしい

「十文字会頭はどうお考えなんですか」

達也の質問に意外感をたたえた視線が返ってきた。

しかし、会頭は答えた。

「俺は彼らの要求する交渉に応じてもいいと考えている。元より言いがかりに過ぎないのだ。しっかりと反論しておくことが、後顧の憂いを断つことになろう」

「ではこの場は、このまま待機しておくべき、とお考えですか?」

あやなが問う。

「それについては決断しかねている。不法行為を放置すべきではないが、学校施設を破壊してまで性急な解決を要するほどの犯罪性だとは思わない。学校側に警備管制システムから鍵を開けられないかどうか問い合わせてみたが、回答を拒否された」

一礼して引き下がった達也は内ポケットから携帯端末を取り出して、音声通話モードを立ち上げた。

コールは5回で繋がった。

「壬生先輩ですか?司波です。・・・それで今どちらに?」

ギョッとした視線が達也に集まる。

「はぁ、放送室にいるんですか。それは・・・お気の毒です」

直後、顔を顰めたのは、ボリュームコントローラーの制御が間に合わない大声で返された所為か。

「いえ、馬鹿にしてるわけではありません。先輩も、もう少し冷静に状況を・・・ええ、すみません。それで、本題に入りたいんですが」

周りにいる数人が聞き耳をたてる

「十文字会頭は、交渉に応じると仰っています。生徒会長の意向は未確認ですが・・・いえ、生徒会長も同様です」

鈴音のジェスチャーで達也はすぐに言い直した。

「ということで、交渉の場所やら日程やら形態やらについて打ち合わせしたいんですが。ええ、今すぐです。学校側の横槍が入らないうちに。・・・いえ、先輩の自由は保証します。我々は警察ではないんで、牢屋に閉じ込めるような権限はありませんよ・・・では」

達也は苦笑しながら、通話を切った。

「すぐに出てくるのか?」

「ああ、壬生先輩はそう仰っていた」

「どうして、達也くんが壬生の番号を知っているんだ?」

「待ち合わせの為にとプライベートナンバーを教えられていたのが

思わぬところで役に立ちましたね」

「手が早いな、君も・・・」

「誤解です」

「それはともかく、態勢を整えましょう」

「態勢?何を言ってるんだ?陸久くん」

「中のヤツらを拘束する態勢ですよ。鍵まで盗み出す連中ですし、CADは持ち込んでいるでしょうし、それ以外に武器を所持していてもおかしくありません」

「達也くんはさっき自由を保障するという趣旨のことを言っていた気がするのだが」

「達也は先程「『先輩の』自由は保証する」と言いました。よね?」

「それに俺は、風紀委員を代表して交渉しているとは一言も述べていませんよ」

摩利だけでなく、鈴音、克人までもが、呆気に取られてる中で

この場にいる2人の例外の内、1人が2人を軽く非難した。

「も〜、悪い人だね。2人は」

「今更だな、あやな」

「フフ、そうですね」

ただしそれは、楽しげな口調を伴っていた。

「でも、お兄様?壬生先輩のプライベートナンバーをわざわざ端末に保存されていらした件については、今更ではありませんから、後ほど詳しくお話を伺わせてくださいね?」

 

 

「どういうことなの、これ!」

案の定と言うべきか当然と言うべきか、達也は紗耶香に詰め寄られていた。

放送室を占拠していたのは、彼女を含めて5人。

予想通り、CADを所持していたが、それ以外の銃器、刃物は持っていなかった。達也と陸久から見れば、覚悟がまるでなっていないが、悪いことをしているという意識がないのだから、中途半端になってしまうのも当たり前かもしれない。

紗耶香以外の4人は風紀委員によって拘束されていたが、紗耶香はCADを没収されただけにとどまった。

摩利が達也の名誉に配慮した結果だった。

紗耶香の手は達也の胸元に伸びており、その手首を達也の手に掴まれている。

「あたしたちを騙したのね!」

「司波はお前を騙していない」

重く、力強い響きに、紗耶香の体がビクッと震えた。

「十文字会頭・・・」

「お前たちの言い分は聞こう。交渉にも応じる。だが、お前たちの要求を聴き入れる事と、お前たちの執った手段を認める事は、別の問題だ」

紗耶香の態度から攻撃性が消えた。

「それはそのとおりなんだけど、彼らをはなしてあげてもらえないかしら」

「七草?」

「真由美ちゃんどういうこと?」

「壬生さん1人では、交渉の段取りも打ち合わせもできないでしょう。当校の生徒である以上、逃げられるということも無いのだし」

真由美の言葉に、紗耶香は反射的に噛み付いた。

しかし真由美は、直接には紗耶香の言葉に反応しなかった。

「生活主任の先生と話し合ってきました。今回の件の措置は、生徒会に委ねるそうです」

遅れてきた事情と、彼らが現在置かれている立場について説明した真由美だった。

「壬生さん。これから貴方たちと生徒会の、交渉に関する打ち合わせをしたいのだけど、ついて来てもらえるかしら」

「ええ、構いません」

「十文字くん、お先に失礼するわね」

「承知した」

「摩利、ごめんなさい。何だか、手柄を横取りするみたいで気が引けるのだけど」

「気持ちの上では、そういう面も無きにしも非ずだが、実質面では手柄のメリットなど無いからな。気にするな」

「そうだったわね。じゃあ、達也くんたち4人は今日は帰ってもらっていいわ」

そう言って真由美は去っていった。

 

 

陸久、あやな宅

「ねぇゼロくん、どう思う?」

「ん?何が?」

「真由美ちゃんと、二科生の討論会。何も起きなければいいんだけど」

「ああ。ブランシュが関わってるんだ、なにか行動を起こしてきてもおかしくはない。その時になってみないと分からないけど《術師増幅(マギカ・ブースター)》を使うことを考えておいた方がいいかもしれないな」




誤字あるか確認してないので、もしあったら誤字報告でお願いします。


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入学編XIII

討論会前日、喫茶アイネ ブリーゼ

 

カランカランッ ドアが開いて赤髪の女子高生が入ってくる。

「「ゲッ」」

指定された席には見知った男の顔があった。

「どうしてお前がここ来るんだよ!」

「それはこっちのセリフよ、なんであんたがあたしの呼ばれた場所にいるのよ?!」

「俺は達也にここにいるように言われたんだよ」

「あんたも?あたしもそうよ。達也くんに今日この時間にここに来るように言われたのよ」

そう言って、レオの隣に座った。

「そうか・・・。何があるのか聞いてるか?」

「いいえ、あたしは何も聞いていない」

「「・・・・・・」」

カランカランッ

2人の沈黙を破るようにまた、新たな来訪者がやってきた

「お待たせ、エリカ、レオ」

「陸久」「陸久くん」

「急に呼び出してすまなかった。今日は奢るから好きな物を頼んでいいよ」

 

しばらくすると、陸久の前にはコーヒー、エリカの前にはアイスティーとデザートトースト、そしてレオの前にはナポリタン、ハーフピザ、チョコレートパフェ、コーラが置かれていた。

 

「ははっ、いい食べっぷりだね」

「あんた、遠慮ってもんを知らないの?普通、こういう時は簡単ものを頼むのよ」

「うるせえな、そういうお前は甘いもんばっか食ってていいのか?」

ここで太ると言わなかったのはレオがデリカシーというものを知っていたからだろう。(恐らく)

「な、なんですって?!」

「いいからエリカ、遠慮はいらない。エリカも足りなかったら追加してもいいんだよ」

「いいえ、ありがたいけど私はコイツみたいに常識知らずじゃないからね。これだけで十分よ」

「お、おい常し」

「そっか、じゃあそろそろ本題に入ろうか」

レオが突っ込もうとしたところで話題が切り替わった。

 

「単刀直入に言う。明日の公開討論会まず間違いなくテロが起こる。そこで2人にも手を貸してほしい。」

「テロ?」

「おいおい、随分、物騒だな」

「詳しいことは話せない。だが、間違いなく相手の中には壬生沙耶香がいる。」

エリカの顔が変わり、低い声で言った。

「それ、本当?」

「ああ、それで2人にも頼みたいことはそれぞれにひとつずつ。レオは俺と一緒にテロの鎮圧。エリカは壬生先輩の相手を頼みたい。」

「おう、任せとけ」

「ええ、わかったわ。けどなんで?陸久くんが相手した方がはやいんじゃないの?」

「恐らくだが、壬生先輩はマインド・コントロールを受けているでは無いかと思っている。そうなると、エリカ、君に相手をしてもらうのが1番いい」

「わかった、詳しいことは聞かない。」

「ありがとう。それともうひとつ。2人が交戦する時、俺の魔法を使おうと思っている」

「陸久の魔法?」

「『零令』の魔法だ。《術師増幅(マギカ・ブースター)》。この魔法は大前提として術者と対象者との間に信頼関係があることが大前提なんだが、」

「はん、疑ってんのか?陸久は他の一科生とは違う。信頼してるぜ」

「ありがとう。《術師増幅(マギカ・ブースター)》は対象者の強い感情や記憶を鍵に潜在的能力を底上げすることが出来る魔法だ。とは言っても、テロリストが相手だからな。危険だと思ったら、すぐに撤退するように。」

「わかったわ」

「おう」

エリカとレオの返事を聞いた陸久は満足したような顔で席を立った。

「よし、それじゃあ明日はよろしく。あ、会計は済ませておくから、ゆっくりしていってな。」

「おう、ありがとな」

「ごちそうさま」

 




なかなか進まないんだよな・・・
入学編だけで何話いくんだろ・・・


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入学編 XIV

内容考えるの結構大変なんですよね。
仕事もあるし。
遅くなって申し訳ありません。


全校生徒の半数が、講堂に集まった。

「意外に集まりましたね」

「予想外と言った方がいいだろうな」

「当校の生徒にこれ程、暇人が多いとは・・・・・・学校側にカリキュラムの強化を進言しなければならないのかもしれませんね」

「笑えない冗談は止せ、

市原・・・・・・」

順に、深雪、達也、鈴音、摩利の台詞である。

「壬生さん見当たらないよ?摩利ちゃん」

「実力行使の部隊が別に控えているのかな・・・・・・?」

あやなの言葉に聞いて、摩利は独り言のように呟く。

あくまで「ように」であって、独り言ではないのは明らかであったが。

「同感です」

達也も同じことを考えていたようだ。

会場を見渡し俺は呟いた。

「放送室を占拠した面々もいませんね」

一科生と二科生の割合は、ほぼフィフティ・フィフティ。鈴音の冗談はともかくとして、思ったよりも多くの生徒がこの問題に関心を持っているということだろう。

その中に同盟メンバーと判明している生徒は、10名前後。

先ほど言った通り、放送室の占拠したメンバーの姿はない。

「何をするつもりなのかは分からないが・・・・・・こちらから手出しはできんからな」

摩利の言う通りだった。

先手は常に向こう側にあり、こちらは出方を窺うことしかできない。

風紀委員という立場もあり、こちらから手出しすれば職権乱用になってしまう。そんなことをすれば、この討論激化してしまうだろう。

「専守防衛といえば聞こえはいいが・・・」

「渡辺委員長、実力行使を前提に考えないでください。始まりますよ」

 

 

 

「生徒会長、今季のクラブ別予算配分に着いて質問します。私たちが手に入れた資料によりますと、一科生の比率が高い魔法競技系のクラブは二科生の比率が高い魔法競技系のクラブより、明らかに手厚く予算が配分されていますが、これは一科生優遇が、授業のみならず課外活動においてもまかり通っている証ではないんですか!生徒会長が本当に平等な待遇を考えているのならば、この不平等予算はすぐに是正すべきです」

「クラブ別の予算配分において魔法競技系のクラブに予算が手厚く配分されているように見えるのは、各部の対外試合実績を反映した部分が大きく、また非魔法系クラブであっても全国大会で優秀な成績を収めているレッグボール部などには魔法競技クラブに見劣りしない予算が割り当てられているのは、お手元のグラフでおわかりいただけると思います。クラブの予算配分が一科生優遇の結果と言うのは誤解です」

 

同盟側は何か具体的気な要求があったわけではない。

予算配分一つ取っても「平等に」と言うだけであった。

討論会は、やがて、真由美の演説会の趣を呈し始めた。

「『ブルーム』と『ウィード』・・・・・・生徒の間に、同盟の皆さんが指摘したような差別の意識が存在するのは否定しません。ただし、それは固定化せれた優越感であり、また、劣等感です。学校も生徒会も、風紀委員も禁止している言葉ですが、残念ながら、多くの生徒がこの言葉を口にしています。この意識の壁こそが問題なのです。一科と二科の区別は学校の制度として厳然と存在するものですが、これは全国的な指導教員の不足を反映した、すぐには解決しがたい背景によるものです。全員に不十分な指導を与えるか、それとも半数の生徒に十分な指導を与えるか。当校では、後者の方法が採用されています。そこに差別は、確かに存在します。そして、私たちにはどうすることもできません。当校で学ぶにあたり、当校の生徒に受け入れるべく強制されているルールですから。しかしそれ以外の点では制度としての差別はありません。もしかしたら意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、第一科と第二科のカリキュラムは全く同一です。進捗速度に差が生じることはあっても、講義や実習は同じものが採用されています」

そう。レオとエリカの2人が課題をクリアできていなかった時に俺と深雪が手本を見せてやれたのは、一科生も全く同じ内容をやっていたからということだ。そこに担当教員がついているかいないかだけ。

「制度上の差別を無くすこと、逆差別をしないこと、私たちに許されるのは、このふたつだけだと思っています。ちょうど良い機会ですから、皆さんに私の希望を聞いてもらいたいと思います。実を言えば、生徒会には一科生と二科生を差別する制度が1つ残っています。それは生徒会役員の指名に関する制限です。生徒会長以外の役員は一科所属の生徒から指名しなければいけないということになっています。この規則は、生徒会長改選時に開催される生徒総会においてのみ、改定可能です。私はこの規定を、退任時の総会で撤廃することで生徒会長としての最後の仕事にするつもりです」

どよめきが起こった。生徒たちは、野次を飛ばすことを忘れ、前後左右の生徒同士で囁きだした。真由美はそのざわめきが自然に収まるのを無言で待っていた。

「私の任期はまだ半分が過ぎたばかりですので、少々気の早い公約になってしまいますが、人の心を力づくで変えることはできないし、してはならない以上、それ以外のことで、できる限りの改善策に取り組んでいくつもりです」

満場の拍手が起こった。そこには少なからず、アイドルに対する声援と取れる雰囲気が漂っていたが。

 

 

 

 

突如、轟音が講堂の窓をを震わせ、拍手という一体行動の陶酔に身を委ねていた生徒たちの、酔いが醒めた。

動員されていた風紀委員が一斉に動いた。

普段、訓練などまともに行っていないとは信じられない、統率の取れた動きで、各々マークしていた同盟のメンバーを拘束する。

俺も一人拘束している。

「ク、クソ。離せ。お前こそこちら側にいるべきなんだ。お前は・・・」

「はい、おやすみ。」

CADの引き金を引いて《幻衝(ファントム・ブロウ)》を発動させる。

同盟生徒は意識を失う。

どうやら、向こうでも服部先輩が活躍したみたいだ。

「ん。あれは・・・。」

「零令、そいつは!」

「森脇・・・。こいつよろしく。手柄はお前にやるから。」

そういって、その場をあとにする。

「僕の名前は森崎駿だー」といっているが。キコエナイキコエナイ ウン オケ

走りながら、あやなに連絡をする。

「あやな?いまどこにいる?」

「ゼロくん?雫ちゃんと、ほのかちゃんと今講堂を出たところだよ」

「2人を絶対に守ってくれ、できる限り早くそっちに向かうから」

「わかった」

 

 

 

 

 

レオが多人数を相手にしているところに遭遇した。

達也と深雪、あれは・・・エリカか。

深雪が、CADを操作しレオを取り囲んでいる敵を吹き飛ばした。

「「「「うわあぁぁーー」」」」

「達也、陸久!」

「レオ、ホウキ!・・・っと、援軍が到着してたか」

「敵だ。生徒以外は手加減なしで構わない」

「これ、達也くん?それとも深雪?」

呻き声をあげて緩慢に這いずる侵入者を同情の欠片もない眼で眺めながら、簡潔に問うエリカ。

「深雪だ。俺ではこうも手際よくいかない」

「この程度の雑魚にお兄様の手を煩わせるわけにはいかないわ」

「ハイハイ、麗しい兄弟愛ね・・・。それでこいつらは、問答無用でぶっ飛ばしていいわけね」

「生徒でなければ手加減無用だ」

冷やかしをアッサリ、サッパリ無視して微妙に方向性の異なる答えを返した達也に、エリカはにっこり笑った。

「アハッ、高校ってもっと退屈なトコだと思ってたけど」

「お~怖え()え。好戦的な女だな」

「だまらっしゃい」

エリカの右手が半ばまで上がりかけたが、さすがに特殊警棒でド突くのは自重したようだ。

 

 

 

 

 

「エリカはついてきてくれ!レオ、陸久、ここは任せたぞ!」

「おう任せとけ」

「ああ」

そういって達也たちは去っていった。

「囲まれてるな」

「人数は15人ってとこか。レオ《術師増幅(マギカ・ブースター)》を使うぞ。」

「おう、頼むぜ!」

「さあ、ゼロから始めよう」

 

術師増幅(マギカ・ブースター)》発動。レオに向かって引き金を引く。

「バシュン」

そして達也についていったエリカにも。

「うお?!スゲエ、力がみなぎってくる感じだ!行くぜ《パンツァー》!」

レオが5人吹っ飛ばしてくれた。

残るは10人。

「《ニブルヘイム》・・・」

俺の発動した魔法は振動減速系広域冷却魔法《ニブルヘイム》深雪の得意とする魔法でもある。

お株奪っちゃったかな?

「レオ、俺たちも手分けしてほかにテロリストを始末するんだ。」

「おう、わかったぜ」

そう言ってレオは去っていった。

 

「|W Why are you here.You were not a USNA magician《な、なぜ、お前がここにいるんだお前はUSNAの魔法師ではなかったのか》」

1人まだ、話せる奴がいたみたいだ。俺がUSNAの魔法師?

Hey what does that mean?(おい、それはどういうことだ?)

「I・・・・・・」

「どういうことだ?いや、考えるのは後にしてあやなたちを探さないとな」

流星(ミーティア)》を発動し俺もその場を後にする。

 

sideエリカ

 

「あたしに任せて!」そういって私は飛び出した。

?! これは・・・。そっかこれが陸久くんの言ってた《術師増幅(マギカ・ブースター)》ね。

「ハァ!」

体が軽い。それだけじゃない、魔法の技能も上がってる?

「なによ?これ・・・反則じゃない・・・」

そんなことを考えていたら、足音が聞こえてきた。

ポニーテールが特徴の女子生徒は私の前で足を止めた。

「セーンパイ。はじめまして~」

「・・・誰?」

警戒心をむき出しにした声。

それに対して私は朗らかに返す。

「1年E組、千葉エリカでーす。一昨年の全国中学女子剣道大会」優勝の、壬生紗耶香ですよね?」

「・・・それがどうかしたの?」

「いえいえ、どうもしませんよ。ただ確認したかっただけです」

「急いでいるの。あとにしてもらえるかしら」

「一体、どちらへ?」

「あなたには関係ないでしょ?そこをどきなさい。痛い目を見るわよ!」

「これで正当防衛成立かな?まぁ、そんな言い訳するつもりはないけど・・・。あとは・・・!」

そう言った途端、《術師増幅(マギカ・ブースター)》が消えた。ふーん、気が利くのね。陸久くんって。

ちゃんとした条件で勝負したいものね。

 

 

side陸久

講堂付近、テロリストに囲まれている女子生徒たちがいた。

「きゃああ!」

ドカッ!殴って気絶させる。

「え・・・?」

「ふう、間に合った」

「ゼロくん!」

「陸久さん!」

「ええっと、とりあえずお前たちは座ろうか」

そう言うとテロリスト達は跪いて動かなくなった。

重力制御魔法である。

「助かった・・・ありがと」

「ん、どういたしまして」

『ピローン』俺の端末が鳴った。

「一段落したみたいだ。俺は壬生先輩の話を聞きに保健室まで行くけどどうする?」

「ついていくよ。ゼロくん。」

「私は、少し休みたいです。」

「私も・・・」

雫はともかく、ほのかはとても疲弊しているようだ。

「じゃあ、講堂に戻ってくれ。風紀委員を中心としたメンバーで警護をしているから、万が一があっても安心だ。」

「わかった」

「わかりました」

 

 

 

 

保健室

 

 

保健室では、紗耶香の事情聴取が行われていた。

話は紗耶香が彼らの仲間に引き込まれたところから始まった。

去年、彼女が入学してすぐ司にこえをかけられたこと。剣道部には、その時既に司の同調者が少なからずいたこと。そして、摩利に試合を挑んだ紗耶香はすげなくあしらわれたということ。

「すまん、心当たりが無いんだが・・・それは本当か?」

狼狽の滲む声で摩利は問うた。

「今にして思えば、あたしは中学時代『剣道小町』なんて言われて、いい気になっていたんだと思います。だから入学してすぐの、剣術部の新入生向けの演武で渡辺先輩の見事な魔法剣技を見てご指導をお願いしたとき、すげなくあしらわれてしまったのがすごくショックで・・・相手にして貰えなかったのはきっと、あたしが二科生だから、そう思ったらとてもやるせなくて」

「チョッと待て。去年の勧誘期間というと、あたしが剣術部の跳ね上がりにお灸を据えてやった時のことだよな?その時のことはお前に練習相手を申し込まれたことも含め覚えている。だが、あたしは、お前をすげなくあしらったりしていないぞ?」

「傷つけた側に傷の痛みが分からないなんてよくあることです」

「エリカちゃん、しっ・・・」

あやなが静かにエリカのそれを制止した。

「待て、それは誤解だ、壬生」

「『すまないが、あたしの腕では到底、お前の相手は務まらない。あたしの剣は魔法ありきのものだから、お前には敵わない。だから、お前の腕に見合う相手と稽古してくれ 』ですか?」

「・・・え?」

「あ、ああそうだ。けど何故それを陸久くんが?」

「委員長、俺は零令ですよ?」

「ッ!!」

そう。俺に限らずあやなもそうだが零家は他者の記憶を視ることができる。

当時の記憶を視たところ、委員長の言っていることが正しい。

やはり、壬生先輩はマインド・コントロールをされていたのだろう。

「そう、零令くんがそう言うってことは、本当なのね・・・。なんだ、あたしバカみたい・・・。勝手に、先輩のこと誤解して・・・自分のこと、貶めて・・・。逆恨みで1年間も無駄にして・・・」

ただ、紗耶香の嗚咽だけが、沈黙の中に流れた。

「無駄ではないと思います。」

その沈黙を

破ったのは達也だった。

「司波くん?」

顔を上げた紗耶香の瞳を真っ直ぐにのぞき込んで、達也はっ噛んで含めるような口調で続けた。

「エリカが先輩の技を見て言っていました。エリカの知る先輩の、中学校の『剣道小町』の剣技とは別人のように強くなっている、と。恨みや憎しみで身につけた強さは、確かに、哀しい強さかもしれません。ですがそれは、紛れもなく、壬生先輩が自分の手で高めた、先輩の剣です。己自身を磨き高めた先輩の1年が

、無駄であったはずがないと思います」

「・・・・・・」

「紗耶香ちゃん、強くなるきっかけなんて様々だよ。努力する理由なんて、数えきれないほどいっぱいあると思うの。その努力を、その時間を、その成果を否定してしまった時にこそ、努力に費やした日々が本当に無駄にないちゃうんじゃないかな?」

「あやなさん・・・ありがとう、ありがとう」

そういって紗耶香は大声で泣き始めた。

 

 

 

 

 




コロナで亡くなられた方々。
心よりご冥福をお祈り致します。
コロナ闘病中の方々応援を申し上げます。

夏に一旦収まるとか言ってましたが、逆に増えて来ました。
緊急事態宣言の解除というのは「病院の寝床の数が確保されました。」というもので、決してコロナに感染する危険性が無くなった訳では無いので、これからも不要不急の外出を避け、マスクをつけ過ごす、手洗いうがい消毒をするといった行動して、対策をしましょう!


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入学編 XV

なんか、どんどん文章書くのが下手になってる気がするんですが。
どうか、御容赦ください。


「危険だ!学生の領分を超えている!」

「私も反対よ。学外のことは警察に任せるべきだわ」

真由美も厳しい表情で首を横に振った。それは生徒会長としての立場上、生徒を危険にさらすわけにはいかないからだろう。

だが

「そして、壬生先輩を、強盗未遂で家裁送りにするんですか?」

達也の一言に、顔を強張らせて絶句してしまう。

「なるほど、警察の介入は好ましくない。だからといって、このまま放置することはできない。同じような事件を起こさないためにはな。だがな、司波」

炯々たる克人の眼光が、達也の眼を貫いた。

「相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わる。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に、命を懸けろとは言えん」

「当然だと思います」

「最初から、委員会や部活連の力を借りるつもりは、ありません」

「1人で行くつもりか」

「本来ならば、そうしたうところですが」

 

「お供します」

「俺も行くぞ」

「ゼロくんが行くなら、私も」

「あたしも行くわ」

「俺もだ」

深雪、陸久、あやな、エリカ、レオの順。

「司波くん、もしもあたしのためだったら、お願いだから止めて頂戴。会長の仰るとおり、警察に任せましょう。あたしは平気。罰を受けるだけのことをしたのだから。それより、あたしの所為で司波くんたちに何かあったから、そっちの方が耐えられない」

紗耶香が慌てて止めに入るが、振り返った達也の表情は、彼女の誠意に応えるには、相応しからぬものだった。

「壬生先輩の為ではありません」

紗耶香がショックを受けた顔で黙り込む。

「自分の生活空間がテロの標的になったんです。俺はもう、当事者ですよ。俺は、俺と深雪の日常を損なおうとするものを、全て駆除します。これは俺にとって、最優先事項です」

「しかし、お兄様。どうやってブランシュの拠点を突き止めればいいのでしょうか」

「分からない事は、知っている人に聞けばいい」

達也と視線を合わせ、俺は出入口の扉を開く。

「ですよね?小野先生」

「九重先生秘蔵の弟子と一高の代表には敵わなかったか」

「隠れているつもりもなかったようですが?」

「あんまり嘘ばかりついていると、その内、自分の本心さえも分からなくなりますよ」

俺と達也からツッコミが入る。

達也くん。君はブーメランって言葉知ってるか?

「気をつけておくわ。もう大丈夫みたいね」

「小野先生・・・・・・」

「ごめんなさいね、力になれなくて」

首を横に振る紗耶香の肩に手を置いて、そういった。

小野先生が壬生先輩から離れたところで達也が問う。

「小野先生。ここに至って、知らないふりはしませんよね?」

「・・・地図を出してもらえるかしら?その方が早いわ」

地図データを確認すると、ブランシュの拠点は目と鼻の先ということがわかった。

「達也、すぐに行くのか?」

「ああ、そんなに時間はかけない」

「車は俺が準備しよう」

克人が車の準備をすることになった。

 

車はオフロードタイプの大型車だった。

そしてその助手席には、見覚えがある顔があった。

「よう、司波兄」

「桐原先輩」

「あんまり驚かねえのな。俺も参加させてもらうぜ」

「どうぞ」

 





感想、応援書いてくれたら嬉しいです!


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入学編 XVI

書き上げました。
感想書いてくれる人が増えてきました。
嬉しいですね。
励みになるのでどんどん書いてください。


「《パンツァー》!!」

「レオ、ご苦労さん」

「何の。チョロイぜ」

「陸久くんのおかげだからね。あんたの素の実力じゃないから」

これからなのにへばってもらっちゃ困るので《術師増幅(マギカ・ブースター)》を使っている。

「うるせえ、分かってるよ。ありがとな、陸久。」

「ああ。それとエリカ、あくまで対象者の潜在的能力を底上げする魔法だから、全然可能性はあるよ」

いきなり、時速100キロ超で悪路を走行中の大型車全体を、衝突のタイミングで硬化するというハイレベルな魔法を今の実力で要求されて出来ないのは仕方がない。しかし、将来的にできるようになる可能性はぜんぜん否定できない。

「司波、お前が考えた作戦だ。お前が指示を出せ」

克人に委ねられた権限と責任に、達也は尻込みせずに頷いた。

「レオ、お前はここで退路の確保。エリカ、レオのアシストと、逃げ出そうとするヤツの始末」

「・・・捕まえなくていいの?」

「余計なリスクを負う必要は無い。安全確実に、始末しろ。会頭は桐原先輩と左手を迂回して裏口へ回ってください。俺と深雪、陸久とあやなは、このまま踏み込みます」

「分かった」

「まあいいさ。逃げ出すネズミは残らず斬り捨ててやるぜ」

「気をつけてな」

「無茶しちゃダメよ」

居残りを指示されたのに、レオも、エリカも、不平不満を言わないなんていい奴らだな。

「頼んだ!」

 

 

 

「ようこそ、はじめまして、司波達也くん!」

「お前がブランシュのリーダーか?」

「おお、これは失敬。仰せのとおり、僕がブランシュのリーダー、司一だ。」

「司一。国立魔法科大学付属第一高校3年E組卒業。二科生ながらにその優秀さがみられたが、大学進学後中退。その後ブランシュに干渉。リーダーを務め、現在に至る」

「光栄だね。そこまで僕のことを知っていてくれているとは。零令陸久くん」

「どーも」

情報を調べたのは俺じゃないけどね。

『カチャ』達也が銃口を向ける。

「大人しく投降しろ」

「司波達也、零令陸久、お前たちは仲間になるべきだ。二科生と差別され、一科生であるのに仲間はずれ(イリーガルナンバー)として、迫害されている君たちはぁ!!!」

メガネを投げ捨てて、前髪をかき上げて正面から目を合わせる。

「司波達也、零令陸久、我が同志となるがいい」

「意識干渉型魔法、邪眼(イビルアイ)と、称してはいるが、その正体は催眠効果を持つパターンの光信号を、人の知覚速度の限界を超えた間隔で明滅させ、指向性を持たせて相手の網膜に投射する光波振動系魔法。」

「洗脳技術から派生した、催眠術だな。映像機でも出来るやつ。確かこれ、新ソビエトが成立する前にベラルーシが開発した手品だった気がする」

達也の言葉で攻めにさらに追い打ちをかける。

「壬生先輩の記憶も、これですり替えたのか?」

「お兄様、では・・・?」

「紗耶香ちゃんの記憶違いは、不自然なほど激しかった。断られた時は動揺しているだろうから、あんな極端な思い込みに囚われたんだね」

「だが、普通は時間の経過と共に、冷静になっていくものだ」

「・・・この下種ども」

深雪の端正な唇から迸った、怒気。その熱が氷を溶かしたのか。

「・・・貴様、なぜ・・・」

喘ぐように、司一が呻く。その顔には、初めのような恐怖の笑みはない。

あるのは、ただの恐怖といったところだろうか。

「つまらんヤツだな」

達也はもはや、侮蔑を隠そうとしなかった

「眼鏡をはずす右手に注意を引きつけ、CADを操作する左手から目をそらす、そんな小細工が俺に通用すると思ったか」

「種が分かっているマジックのほどつまらないものはないな」

「バカな・・・そんな真似が・・・貴様、一体・・・」

「ところで、二人称は君、じゃなかったのか?大物ぶっていた化けの皮が剥がれているぞ」

「う、撃て、撃てぇ!」

威厳を取り繕う余裕はなかった。

恐怖という感情に駆られて、司一は射殺を命じた。

だが、

「な、何だこれはっ?何が起こったんだ?」

弾丸は一発も発射されなかった。

パニックがフロアを満たした。

床にはバラバラに分解された、拳銃、サブマシンガン、アサルトライフルの(たぐい)のものが散乱している。

男たちが引き金を引こうとした瞬間、彼らの武器は、部品に戻っていた。

パニックの中、それを鎮めようともせずに、司一が逃げ出した。

「達也、追え」

「分かった」

達也は何もせず、司一が逃げて行った通路へたどりついた。

そのまま彼を通していれば、残されたブランシュのメンバーは、捕まるだけで済んだはずだ。

だが、メンバーの1人が、ナイフを手に達也の背に襲い掛かった。

「愚か者」

「ほどほどにな」

「はい、お兄様」

 

「お前たちは、運が悪い」

だが、命じ、裁く、権威と共にあるその言葉遣いに、いささかの違和感もなかった。

男たちの顔が、恐慌と、絶望に染まる。

「わたしはお兄様ほど、慈悲深くはない」

白い霧は、首の下まで這い上がった。

「祈るがいい。せめて、命があることを」

男たちの頭頂まで達した冷気が、一気に、厳しさを増した。

《ニブルヘイム》

声なき断末魔の絶叫が、霧の中に満ちた。

 

「深雪やりすぎだ」

「申し訳ありません」

 

ドンドンドン!ドアをノックする音が響く。

「おい、おい、どうした!」

「どけ!」

ドアを破って、ブランシュの残党が乗り込んできた。人数は6人か。

「お、お前たち、何をしている?!」

「まだいたんだ。今度は私が・・・」

「いや、あやないいよ。俺がやる。」

「ゼロくん?わかった」

あやなを手で制す。

「餓鬼がかっこつけやがって!」

 

「非魔法師のキャストジャミングなど効かん」

どこかで聞いたようなセリフだが。

「ここは、寒いだろう?温めてやるよ。」

《ムスペルスヘイム》

 

「「「「「「ぎゃあああああ」」」」」」

「喜んでくれてなによりだよ」

「ゼロくんも少しやりすぎじゃない?」

「うん。八つ当たりだ」

 




入学編はあと1話で終わる予定です。
その後は九校戦に入ります。
よろしくお願いします。


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入学編 XVII

今話が入学編の最終話になります。
長かった。(まだまだ、これから)




5月になった。

今日は、紗耶香の退院の日。

達也と深雪と一緒に4人で一緒にお祝いに病院を訪れた。

そこには・・・

「あれは、桐原先輩ではありませんか?」

紗耶香は既に、入院着から、普段着に着替え、エントランスホールで家族や看護師に囲まれている。

その輪の中で、紗耶香の隣で談笑のに加わっている桐原の顔は、照れ臭げであり、また少しばかり浮かれ気味のようにも見えた。

「随分親しげですね」

一連の騒動の発端となった「剣道部乱入事件」の顛末は、深雪も当然知っている。

その当事者である2人があそこまで親しげにしているのは、確かにちょっと変な感じがした。

「桐原先輩、毎日来てたんだって」

何の前触りもなく掛けられた声に振り向いていると、エリカがつまらなそうな顔で立っていた。

「ちぇ、やっぱり、驚かすのは無理かぁ」

「いや、驚いたぞ。桐原先輩がそんなにマメな性格だったとは」

「そっちじゃない!」

無論、達也も分かった上で話しているのだが。

「フンだ。そんな風に性格悪いコトばかりやっているから、さーやにもフられちゃうのよ」

「エリカ、そう言ってやるな。性格が悪いコトばかりやっているんじゃなくて、本当に性格が悪いんだから」

フォローを入れると見せかけてのカウンターパンチ。

「・・・」

お、おいスルーかい

「エリカちゃん、『さーや』ってもしかして、紗耶香ちゃんのこと?」

余談ではあるが、あやなも先輩の女子は真由美ちゃん、摩利ちゃんと呼ぶのがデフォである。

「んk?そうだよ」

「随分親しくなったのね」

「任せて」

おどけるようにして言うエリカ。

「それよりいいのか、今日は退院をお祝いに来たんだろう?」

「ああ、そうだな。壬生先輩」

「司波くん!来てくれたの?」

少し、ビックリした顔で、ちょっと意外だと、表情で語りながら、驚きもまた喜びの中に溶かし込んで紗耶香は満面の笑みで達也を迎えた。

「退院おめでとうございます」

深雪が両手に抱えていた花を渡す。

女子高生同士のお喋りか一歩引いたところで、相槌役に徹していた達也と陸久に壮年の男性が声をかけてきた。

「君たちが司波君と零令君かね。私は壬生勇三、紗耶香の父親だ」

「初めまして、司波達也です」

「初めまして、零令陸久です」

 

「2人には感謝している」

「自分はなにもしていません。壬生先輩を説得したのは妹と千葉です」

「入院中に先輩の力になったのは千葉と桐原先輩です。結局自分は先輩に何もできていません」

「いや、今回のことは娘から一通り聞いたよ。司波君の話を聞いて『久しぶりに迷うことを思い出した』と言っていた。それと、千葉さんが『自分を娘と引き合わせたのは零令くんだ』と言っていたんだ」

「エリカのやつ・・・」

「君達は風間に聞いた通りの男なのだな」

「・・・風間少佐をご存知なのですか?」

「私は既に退役した身だが、兵舎で起居を共にした戦友だよ。歳も同じでね。未だに親しくさせてもらっている」

「っ!」

勇三の記憶が視えた。とても、濃密なそれでいて過酷な日々が。

「どうかしたかね?」

「い、いえ」

「・・・そうか、君は零の魔法師だったね」

「は、はい。申し訳ありません。」

「フッ、謝ることはない。今日は君達に感謝を伝えに来たのだから。本当にありがとう」

そう言って、返事を待たずに勇三は妻のところへ戻っていった。

「あっ、司波君、零令君。お父さんと何を話していたの?」

「俺たちが昔お世話になった人が、お父上の親しいご友人だった、という話をしていたんですよ」

「へえ、そうなの」

「ええ、世間さ狭いですね」

「達也くんとさーやってやっぱり深い縁があるのね。」

そこへすかさず絡んでくるエリカ。

「ねえ、 さーや。どうして達也くんから桐原先輩に乗り換えちゃったの?達也くんのこと、好きだったんでしょ?」

「チョ、チョッとエリちゃん?」

2人は余程気が合うんだろうな。

「エリカ、貴方今日は調子に乗りすぎよ」

「エリカちゃん、絶好調だね」

深雪とあやなの言葉なんて気にも留めない。

「ルックスだけなら、達也くんの方が上だと思うんだけどな」

「つくづく失礼な女だな、お前」

「ドンマイ。桐原先輩、男は顔じゃないよ」

「・・・マジに泣かしたろか、コイツ」

「まあまあ。それで、さーや、やっぱり決め手は、まめまめしさ?不器用な男の優しさって、グッとくるよね?」

紗耶香の顔は耳まで赤くなっていた。

「うん・・・・・・司波君に恋をしていたんだと思う・・・・・」

「おおぅっ?」

紗耶香の告白に、一番目を白黒させていたのは何故か、エリカだった。

「あたしが憧れた揺らぐことのない強さを持っていたから。でも憧れると同時に怖かったんだと思う。あたしがどんなに一生懸命に走っても

司波君にはきっと、追いつけない。司波君みたいになるには、あたしはずっと走り続けなくちゃいけなくて、多分、どんなに走っても、あんな風に強くはなれない・・・。いっぱい力になってもらった司波君には失礼な言い方だと思うけど、そう思ったわ」

「分かる気がするよ。達也くんには確かに、そんな風に思わせるところあるね」

「桐原君は・・・・・・まともに会話したのは、お見舞いに来てくれた時が初めてだったけど、多分この人なら、喧嘩しながらも同じ速さで歩いてくれると思った。・・・・・・だからかな」

「・・・ごちそうさま」

おちゃらけた言い方ではあるが、同感である。

「ねえ、桐原先輩は?いつからさーやのこと好きだった」

「・・・・・うるせー女だな。別に良いだろ、そんなこと。お前にゃ関係ねえ」

「そうだぞ、エリカ。いつからなんて、関係ない。大切なのは、桐原先輩が本気で壬生先輩に惚れているということだ」

「なっ!おまっ?」

「へぇ・・・・・・」

「詳しいことはプライバシーにも関わってくるから言えないが・・・・・・。ブランシュのリーダーを前にした桐原先輩の勇姿には、男として叶わないと思ったな」

「そっか・・・・・・。ねえ、達也くん」

「なんだ?」

「後でコッソリ教えてね」

「千葉、テメエ!司波も、喋りやがったら承知しねえぞ!」

「喋りませんよ」

「えーっ、いいじゃない。」

「この(あま)ぁ」

「そうだ、陸久くん人の記憶をみれたよね?それを見せてもらうことってできない?」

「できるかできないかで言えばできるよ」

「じゃー、お願い!明日のお昼奢るから!」

「・・・手を打とう」

「てめー、零令」

その場に笑いが生まれた。

「それでは、そろそろ失礼致します」

深雪の挨拶でその場後にした。

「俺たちは学校に戻るが2人はどうする?」

「ああ、あとから行くよ。まだ、用事が残っているんだ。」

「?わかった。」

「それでは、また後で。陸久さん、あやな」

達也と深雪は学校へ戻った。

俺は端末を取り出し電話かける。

「もしもし、陸久さん。」

「亜夜子か、司一含めブランシュの情報助かったよ。ありがとうな」

「いえ、お役に立てたのなら光栄です。」

「文弥にもよろしく言っといてくれ」

「分かりました」

「2人とも頼りにしてるよ」

「ありがとうございます。失礼します。クレセント」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『クレセント』というのは三日月のことです。
正確に言うと新月から半月までのことを指します。
陸久とあやなが四葉預かりになった時に、黒羽姉弟たちと一緒に活動してた時の名前です。亜夜子の『ヨル』文弥の『ヨル』みたいな。
この名前にしたのも、ストーリーを考えてのことなので楽しみにしていてください。自由に妄想してくださいw
本当は、月にしたかったんですが、満月、フルムーンってダサいですよねww

次回から、九校戦編に入ります。
お盆休みなので時間があるんですよ。


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九校戦編
九校戦編 Ⅰ


超久しぶりの投稿です。
誤字脱字等あったらまた教えてください。(弱気)




魔法科高校の定期試験は魔法科高校の定期試験は魔法理論の記述式テストと魔法の実技テストにより行われる。

一方、語学や数学、化学、社会学等の一般教科は、普段の提出課題によって、評価される。魔法師を育成する為の高等教育機関なのだから、魔法以外で競わせるのは余計なことだ、と考えられているのだ。

 

そして、成績優秀者は学内ネットで氏名を公表される。

理論・実技を合算した総合点による上位者は

 

1位 零令陸久 

2位 司波深雪

3位 零宮あやな

4位 光井ほのか

5位 北山雫

 

 

 

だが、理論のみの点数になると、大番狂わせが起こった。

 

1位 司波達也 零令陸久

2位 司波深雪

3位 零宮あやな

4位 吉田幹比古

5位 光井ほのか

6位 北山雫

 

17位 柴田美月

20位 千葉エリカ

32位 西城レオンハルト

となった。

普通なら、実技ができなければ理論も十分理解できない。感覚的に分からなければ理論的にも理解することが難しい概念が存在するからだ。

それなのに、二科生が2人もトップ5に。

これだけでも前代未聞だが、更には達也と陸久の場合、平均点で2位以下と10点以上引き離したダントツの1位だったのだ。

それもそうだろう、2人はこの時代を代表する魔工師『トーラス・シルバー』なのだから。

このことについては、おいおい説明していこう。

 

場所は1年A組

 

「なんで?なんでだよ?!」

「ったく、どんなズルをしたんだよ?」

「実技の感覚が分からないのに理論ができるはずがない。しかも4位も二科生なんて」

 

 

達也たち二科生が上位に入ったことを嘆いている、一科生。

そこに雫の鶴の一声。

「成績が良かった相手を貶めて何か得るものがある?授業の機会に恵まれない二科生が、自分より結果が良かったことには貶すより自分の努力の足りなさを、恥じるべきだよ。私も含めてね」

騒いでいた生徒たちは雫の言葉に何も返せなかった。

 

 

 

 

 

試験が終了してから、陸久と達也は毎日、放課後を風紀委員会本部で過ごしていた。

夏休みが終わればすぐ、生徒会長選挙。

新しい会長が決まれば、新たに選任された風紀委員の互選により新しい風気委員長も決まる。

伝統的に、といっても悪しき伝統だが、風気委員の引継ぎまともに行われた試しはない。ほとんど整理されていない活動記録と共に丸投げ、大体がこのパターン。

それでも摩利は1年の頃から委員として活動していたので、引継ぎなしでもそれほど困らなかった。

しかし、彼女が次期委員長にと目をつけている2年生は風紀委員経験がないので、できるだけ困らないような引継ぎをしてやりたいと摩利は考えていた。

その為の資料作りを、2人に丸投げして。

「なんだか自分たちがお人好しみたいですね」

「・・・・・・」

達也の言葉には同感だが

「今回は君たちのお人好しな人格に感謝だな」

「しかし、随分前もって準備するんですね」

「九校戦の準備が本格化すれば、資料作りの時間なんて取れなくなくなるからな。メンバーが固まったら出場競技の練習も始まるし、道具の手配、情報の収集と分析、作戦立案、やることは山積みだ」

「九校戦はいつから開催されるんでしたっけ?」

「8月3日から12日までの10日間だ」

「結構長丁場ですね」

「んっ?観戦に行ったことがないのか?」

「ええ、夏休みは毎年野暮用で忙しかったですから」

「陸久くんは?」

「俺が観に行けるわけないでしょう」

「っ!すまない。それもそうか」

「いいえ、気にしないでください。俺には関係ないでしょうし」

そうどうせ運動会みたいなものだろう。観戦してればいい。

「関係ない?何を言っているんだ?陸久くんも出場するんだぞ」

「へ?どういうことです?」

「入試同率首席、試験の結果も1位。出さないわけにはいかないだろう。勝ちに行くんだ。ルールを要約したパンフレットがあるんだが、見るかい?」

「ありがとうございます」

そう言って、受け取ったパンフレットに目を通す。

「今年も順調にいけば当校が優勝なのだがな。」

摩利は困った顔でそういった。

「何か、不安材料が?」

「まあな。選手の能力面に不安はない。新人戦の順位も加算されるとはいえ、大きく転けなければ、本戦のポイントで勝てるだろう。不安要素があるとすれば、エンジニアの方か」

「エンジニア?CADの調整要員のことですか?」

「ああ。九校戦の公式用語では、技術スタッフと言うんだがね。今の3年生は選手の層に比べてエンジニアの人材が乏しい。真由美や十文字はCADの調整も得意だから不自由はないだろうが・・・」

どうやら摩利は調整が苦手らしい。

 

 

夜。あやなをバイクの後ろに乗せ走り出す。行き先は九重寺。今日は達也と深雪が行くらしいから、紹介してもらおうということだ。

「九重八雲、どんな人だろうね」

「達也によると、深雪に手を出そうとする変態だそうだ」

「え、お姉ちゃんも手を出されちゃうのかな。出されちゃったらどうする?ねぇ、ゼロくん?」

「ああ、今日は多分ない。今日は『ミラージ・バット』の練習をするらしいから」

「へえ、そうなんだ」

「もうすぐ着くよ」

 

九重寺

 

「さっきぶり、達也」

「ああ、来たのか。陸久、あやな」

「深雪ちゃん、さっそくやってるんだ」

「ああ、『アイスピラーズ・ブレイク』は強引にやっても勝てるだろうが、「ミラージ・バット」は「空中に浮かぶ立体映像の光球をバトンで叩き割る」というアクションが必要になる競技だ。楽観視していいものではない」

「それもそうだね」

「っ!!!」

急に後ろから何者かからの攻撃。

降ろされた手刀を左手で払い、相手のみぞおちに拳を当てる。

「いいね。合格だ。僕はこの九重寺住職、九重八雲だ」

「初めまして、『今果心』九重八雲殿。零令陸久です」

「零宮あやなです。お会いできて光栄です」

2人が挨拶をすると、どうやら歓迎してくれたようだ。

「『イリーガルナンバーゼロ』君たちはとても興味深いね」

「恐縮ですが、お弟子さんにストーカーさせるのは、いただけませんね?」

「なんのことだい?」

「最近、背後をつけさせていたでしょう?今もほら」

「おや、遥クン」

その気配に、八雲が気安く声を掛けた。

その名にはここにいる全員覚えがあった。

暗闇から、ゆらゆら揺れる明かりの中へ歩み出てきた、深雪やあやなよりも少し大人びたシルエットのその人物は、魔法科大学付属第一高校カウンセラー、小野遥。

深雪と同じような暗色のツナギを着ている為か、胸や腰の辺りが随分強調しているように感じるが。

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。特に達也くん。彼女は僕の教え子だ。」

「司波くんのように親しく教えていただいたわけではありませんけど」

彼女の声色は闇に溶け込む今の不穏な恰好に似合わぬ、軽くお道化たものだった。

「それで彼女は何者なんですか?」

「君ならもうわかっているんじゃないかい?」

「大体の推測なら、陸久は?」

「ああ、軍関係者ではないのなら、公安(警察省公安庁)か、内情(内閣府情報管理局)だろう。それ以外だと外国のスパイになるから。なぜ一高にいるのかは分からないが」

「うん。2人とも見事な推測だねえ。けれど」

遥が続いた。

「私が公安のスパイというのは事実だけど、カウンセラーは偽装じゃないわよ。時間的な前後関係でいえば、カウンセラー資格を目指していた私に今の上司が接触してきて第一高校に配属になったあと秘密捜査官になった、という順番。先生の教えを受けたのは2年前から1年間のことだから、達也くんの方が兄弟子になるわね」

「それにしては、見事な隠形ですが」

「小野先生はBS魔法師ですよね」

達也の疑問に対してあやなが答えた。

「そっか、零令くんと零宮さんは視れるのよね。」

「不快にさせたのなら、謝ります」

陸久は頭を下げようとしたが、遥はそれを止めた。

「ううん、やめて頂戴。確かにその肩書はあまり好きじゃないんだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

魔法科大学付属高校では夏の九校戦は秋の論文コンペティションに並ぶ一大イベントだ。

だが、そのイベントにあたり、いくつかの問題が挙がる。

「一番の問題はエンジニアよね・・・」

真由美がぼやく。

「まだ、数が揃わないのか?」

摩利の問いかけに、真由美は力なく頷いた。

「ウチは魔法師の志望者が多いから、どうしても実技方面に優秀な人材が偏っちゃってて・・・今年の3年生は、特にそう。魔法工学関係の人材不足は危機的状況よ。2年生はあーちゃんとか、五十里くんとか、それなりに人材がいるんだけど、まだまだ頭数が足りないわ・・・」

「五十里か・・・・・・あいつも専門は幾何学の方で、どちらかといえば純理論畑だ。調整はあまり得意じゃなかったよな」

「現状はそんなこと言ってられないってかんじなの」

生徒会長と風紀委員長である2人が揃ってため息をついているという光景事態の深刻さを物語っていた。

「私と十文字くんがカバーするっていっても限度があるしなぁ・・・・・・」

「お前たちは主力選手じゃないか。他人のCADの面倒をみていて、自分の試合が疎かになるようでは笑えんぞ」

「・・・・・・せめて摩利が自分のCADくらい自分で調整できるようになってくれれば楽なんだけど」

「いや、本当に深刻な問題だな」

そういって真由美の眼差しから摩利は顔を背けた。

「ねぇ、リンちゃん。やっぱり、エンジニアやってくれない?」

九校戦前の修羅場で、昼休みも生徒会室に釘付けの鈴音にアプローチが飛んだ。が

「無理です。私の技能では、中条さんたちの足を引っ張ることになりますから」

すげなく謝罪された。

深雪と達也はアイコンタクトして達也は腰を浮かせ・・・

「あの、だったら司波くんがいいんじゃないですか?」

「ほぇ?」

真由美が奇妙な声で応答した。

「深雪さんのCADは司波くんが調整しているそうです。一度見せてもらいましたが、一流メーカーのクラフトマンにも勝るとも劣らない仕上がりでした」

真由美が勢いよ良く身体を起こした。最初の気の抜けた返事が嘘のように、真由美の顔に生気が戻った。

「そうか、私としたことがうっかりしてた」

そこに同調する摩利。

「CADエンジニアに一年生が加わるのは過去に例がないのでは?」

「何でも最初は初めてよ」

「前例は覆すためにある」

「進捗的なお二人はそうお考えかもしれませんが、俺は色々と悪目立ちしていますし、嫌がる選手もいるんじゃないですか?」

そういって逃げようとする達也だったが

「達也くんはもう過去の例を色々覆してるよね?」

あやな経由追い打ち。

「私は九校戦でもお兄様にCADを調整していただきたいのですが」

思いがけない深雪の裏切り?により達也の運命は決まった。はずだった。

「それでしたら、条件があります」

「条件?なんだいってみろ」

「陸久もエンジニアとして使ってください」

「そんなのむr・・・」

「陸久の技術力は自分と変わりません。むしろ、思い掛けない発想により驚かされることばかりです」

おい、嘘をつけ。人を巻き込みやって。

「いいんじゃないか」

「ええ、ただでさえ絶対数が少ないんだもの。頼りがいがあるわ」

はぁ、この2人には敵わないとさっき分かったからな。言い訳するだけ時間の無駄だ。

「分かりました。ですが、それでしたら俺の出場種目を『アイスピラーズ・ブレイク』のみにしてください」

「え、どうして?」

「九校戦は生徒の代表だぞ?」

「まぁ、理由はいくつかありますが、一番の理由は名前が名前だからってことですね。出るからには優勝を狙いますが、異端者が何度も出るのは好ましくないでしょう」

 

 

昼食を終えた後、深雪とあやなの2人は山積みになっていたデスクワークに取り掛かっていた。

 

達也は、ショルダーホルスターから銀色のCADを抜き出して、カートリッジのドライブや起動式切り替えのスイッチの他、物理的に可動部分のチェックを始めた。

「あ、今日はCADを持って来ているんですね」

それを目敏く見つけて近寄ってきたのは、さっきまで課題に唸っていたはずのあずさだ。

達也が何となく視線を鈴音の方へ向ける。

達也の声無き声を正確に理解した鈴音は、器用に、眉毛だけで肩をすくめるのと同じ感情表現をして見せた。つまり、今のあずさは手をつけられない状態ということだ。

「ええ、ホルスターを新調したんで馴染ませようと思いまして」

「えっ、見せてもらってもいいですか?」

勢いに負け、達也はCADをホルスターごと渡した。

「うわーっ、シルバーモデルの純正品だぁ。いいなぁ、このカット。抜き打ちしやすい絶妙な曲線、高い技術力に溺れないユーザビリティへの配慮。ああ、憧れのシルバー様・・・」

嬉々して受けとったあずさは、今にも頬ずりそうな勢いだ。

「中条先輩、シルバーモデル、よろしければお譲りしましょうか?」

ここで助け船を出してやると

「本当ですか?」

そのままの勢いでこちらにやってきた。

「えー!ホントですか?」

本当に好きなんだな。

「ええ。家にいくつかあったはずなので、持ってきますね」

「はいっ!ありがとうございます」

「達也もモニターかなんか回してあげたらどうだ?」

「そうだな、今度手に入れたら差し上げます」

「司波くんまで、ありがとうございます」

「ねえ、あーちゃん、それくらいにしたら?2人とも困っているわよ?」

真由美が白熱したあずさをなだめにかかった。

あずさは落ち着きを取り戻し、急に真面目な顔になって、

「じゃあ、もしかして司波くんは、トーラス・シルバーがどんな人かも知っていたりしませんか?」

などと質問してきた。

だが、これは達也にとって答えにくい質問である。

「・・・いえ、詳しいことは何も」

壁際でビーブ音が鳴った。

深雪が使っているワークステーションの、不正操作のアラームだ。

誰にでもミスはあるが、深雪がミスをするのは珍しい。

「深雪さんがミスをするなんて珍しいですね」

「たまたまでしょう」

もちろんたまたまではないのだが

「いくら正体を隠してるといっても、同じ研究所の人たちは知ってるはずですよね?それとも全部1人でやっているのでしょうか?」

「中条先輩はトーラス・シルバーの正体が気になるんですか?」

「気になりますよ。むしろ司波くん、気にならないんですか?トーラス・シルバーですよ?ループ・キャストを世界で初めて実現し、特化型CADの起動式展開速度を20パーセントも向上させ、スイッチの誤認識率を3パーセントから1パーセント未満へ低下させた、トーラス・シルバーですよ?しかも、そのノウハウを惜しげもなく公開し、独占利潤よりも魔法界全体の進捗を優先させた、あのトーラス・シルバーですよ?魔工師を目指す者なら、わずか1年の間に特化型CADのソフトウェアを10年は進捗させたといわれているあの天才技術者がどんな人なのか。興味が湧かないはずはないと思いますけど」

不覚にもたじろいでいる達也の横で腹を抱えて笑いを堪えている陸久。

あとでお灸を据えてやろうと考えながら達也はこう言った。

「認識不足でした。それほど高い評価だったとは」

「ねっ、ねっ、司波くんは、トーラス・シルバーって、どんな人だと思いますか?」

純粋な好奇の瞳。

「そうですね・・・・・・意外と、俺たちと同じ日本人の青少年かもしませんね」

「日本人ですか?」

「ええ、彼は日本企業のFLT専属ですから」

「零乃くんは、どう思いますか?」

「え?ああ、はい。トーラス・シルバーは達也の言う通り日本人だと思います。今の時代、他国の技術力をあげてやろうなんて物好きいませんから。」

「なるほど」

あずさは首を大きく縦に振った。

「年齢は分かりませんが、仮に俺たちと変わらない歳でもおかしくはないと思います。三校にも『カーディナル・ジョージ』がいますし、国大付属校に通ってたりしてるんじゃないですか?もしかしたら、会えるかもしれないですね」

目の前に2人いるんだが

「そ、そうですね。憧れのシルバー様に会いたいです!!」

いや、だからいるって

「ねぇ、あーちゃん」

椅子を反転させて、あやなが話しかける。

「だから、あやなさん。あーちゃんはやめてください。なんですか?」

「お昼休みのうちに課題を終わらせるんじゃなかった?」

「あっ、あぁ~」

泣き出しそうな顔で助けを求めるあずさ。

どうやら、彼女はかなり煮詰まっているらしい。

「すみません・・・実は、『加重系魔法の技術的三大難問』に関するレポートなんです・・・・・・」

シュンとした顔で告げたあずさの元へ、真由美、鈴音、摩利、達也、陸久の視線が集中した。

「な、なんですか?」

「ほほう・・・」摩利は興味津々の目付きであずさを、正確には彼女の手元にあるタブレットを見詰めた。

「毎回上位5名から落ちたことのない中条が随分と悩んでいるから何かと思えば」

「毎年必ず1回は出題される定番のテーマじゃない。あーちゃん、今回の設問は?」

この手の設問はバリエーションも既に出尽くしているくらい豊富にある。校内の課題だけではなく、魔法大学の受験過去問集にも収録されている程にポピュラーなテーマだ。

「課題の内容は『三大難問』の解決を妨げている理由についてです。他の2つは分かったんですけど、汎用的飛行魔法が何故実現できないのか、上手く説明できなくて・・・」

それを聞いて、なるほど、と頷いたのは鈴音だった。

「つまり、中条さんは、これまで示されてきた解答に納得がいかないということですね」

「そうなんです!重力に逆らって自分の身体を浮遊させる魔法は、4系統8種の現代魔法が確率された初期から実用化されていますよね」

「そうね。落下による死傷は最も身近なリスクの一つだから」

相槌を打った真由美へ、あずさの視線が移動する。

「加速・加重系統を得意とする魔法師は、1回の魔法で数十メートルをジャンプすふことができますし、世界には100メートルを超える高飛び記録を樹立した魔法師もいます。飛び降りる方はもっと凄くて、2000メートルの高度から、素潜りならぬ素飛び降りを成功させた魔法師もいます」

「それなのに何故、飛行魔法・・・・・・空を自由に飛べる魔法が実現できないのか、でしょ?」

「正確には、誰にでも使えるように定式化された飛行魔法が、何故実現できないのか、ですね。古式魔法の術者の中には、小数ですが、飛行魔法を使いこなしている人たちもいますので」

真由美のセリフに鈴音が補足を加える。

その言葉に対して、あずさは首を横に振った。

「でもそれは、BS魔法師の固有スキルに近いものです。共有できなければ、技術とは言えません。理論的には、加速・加重系統で重力の影響をキャンセルして、空を飛ぶことは可能です。実際に跳んだり浮いたりする魔法は技術として定式化しています。なのに何故、飛ぶことはできないのか・・・・・・」

「その設問に対する答えは、少し高度なら参考書なら載ってるんじゃない?」

何が納得できないの?と真由美があずさに、目で訊ねる。

「魔法式には終了条件が必ず記述され、終了条件が満たされるまで事象改変は効力を持ち続ける。魔法による事象改変が作用中の物体に対して、その魔法とは異なる事象改変を引き起こそうとすれば、作用中の魔法を上回る事象干渉力が必要になる。魔法による飛行中に、加速したり減速したり昇ったりする為には、その都度、新しい魔法を作動中の魔法に重ね掛けしなければ鳴らず、必要になる事象干渉力はその度に増大していく。1人の魔法師に可能な事象干渉力の強度調節はせいぜい10段階程度であり、10回の飛行状態変更で魔法の重ね掛けは限界に達する。・・・・・・これが一般に言われている、飛行魔法を実用化出来ない理由ですよね?」

あずさの長い説明に真由美は間髪入れずに答えた。

「なんだ。あーちゃん、理解してるんじゃない。論点もよく整理されているし。なにをそんなの悩んでいたの?」

「これって結局魔法が作用中の物に魔法をかけようとするのが問題なんですよね?だったら移動中の魔法をキャンセルしてから新しい魔法を発動させればいいと思うんですけど」

あずさが自信なさげに言う。

「でも、その程度だったらすでに誰かが試しているはずよね?自己的に領域干渉を展開するみたいなものなんだし」

それを聞いて鈴音がカチャカチャと調べると

「一昨年イギリスで会長の仰ったようなコンセプトの実験が行われていますが・・・結果は失敗です」

「理由は何ですか?」

「ここには書いていませんね」

「うーん・・・。達也くんはどう思う?」

真由美が後ろを振り返り達也に聞く。

「そのその実験は基本的な考え方が間違っています。魔法式は魔法式に作用できません。それは、領域干渉で。あっても同じです。魔法式を直接消し去る術式でない限り、対抗魔法であってもその例外ではありません」

さらっと答える達也に呆然と皆が見つめる。

「つまり、余分な魔法をかけてしまっているということ?」

「ええ、実験を錯覚してしまっていたのでしょう」

「補足すると、仮にそれが成功したとしてもそれは飛行魔法とは言えません」

達也の補足程度に口を出させてもらう。

「え、どうして?」

真由美が驚きながら聞く。

「飛行魔法と定義するには、一つの魔法式でなければなりません。『領域干渉と対抗魔法を交互にやる。』というのでは定式化できません。わかりやすい例で言うと会長、《ドライ・ブリザード》お得意でしたよね?」

「ええ」

「《ドライ・ブリザード》という魔法は、『空気中の二酸化炭素を集め、ドライアイスを作り、凍結過程で余った熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、ドライアイスを高速で射出する。』という魔法です。大まかに段階分けすると収束・発散・移動の3つになります。この3つの要素をまとめたものが《ドライ・ブリザード》です。なので、この方法は飛行魔法の定義は出来ないということですね」

「うーん」

あずさはがっかりしながら、まだ悩んでいた。

「でも、考え方は良いと思いますよ?」

「ありがとうございます。でも、課題どうしましょう?」

慌てるあずさ

「参考書丸パクリすればいいんじゃないか?」

「渡辺委員長、他人事だからと勝手なこと言ってはいけませんよ」

「そうよ、摩利。大体あなたも図書館でっ・・・」

そういった瞬間に摩利は真由美の口を押えた。

「おっと真由美そこから先は言うなよ」

まあ、俺とあやなは言わなくても、強く思い出せば視えるんだが。これはエリカのお兄さんだっけ?

 

ごちそうさまでした。

 

「それじゃあ、以前自分が今まで行われた実験内容を踏まえてまとめたものがあるのでよかったら、差し上げますよ」

「そ、それはだめですよ」

「どこかに出す予定はないですから、安心してください。ご自分で手直してくださいね」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最初の方は3000文字とかだったのに、9069文字ですってw
また、時間はかかるかもしれませんが、やめたわけではないので応援してくれると嬉しいです。


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九校戦編 Ⅱ

2年とちょっとぶりです。
久しぶりの投稿なので誤字脱字あれば誤字報告で教えてください。
自分でも気づいたら直していきます。
あと、今回はざっくりです笑


「それでは、九校戦メンバー選定会議を始めます」

「会長、なぜこの2人がこの場にいるのですか?!」

会議が始まると1人の生徒が立ち上がり、大きな声で言い放った。2人とはもちろん、達也と陸久である。

「2人とは誰のことでしょう」

「そこの二科生と、マーベリックですよ!」

零家には蔑称がいくつか付けられている。『イリーガルナンバー』『マーベリック』などが代表的なものだ。

一般的に使われてるのは『失われた零(ロスト・ゼロ)

イリーガルは非合法な。 マーベリックは異端者という意味である。

「それは、2人が我が校が優勝するために必要な戦力となってくれると判断したからです。司波くんは技術者(エンジニア)として、零令くんは選手と技術者(エンジニア)両方担当してもらいます」

「「「なにっ?!!」」」

その真由美の発言で騒ぎ始めた。が、

「要するに」

不意に重々しい声が議場を圧した。

「司波と零令、両者の技能がどの程度のものか分からない点が問題になっていると理解したが、もしそうであるならば、実際に確かめてみるのが一番だろう。」

発言したのは克人だ。

広い室内が一気に静まり返った。

「・・・・・・最も意見だが、具体的にはどうする?」

「今から実際にやらせてみればいい。何なら俺が実験台になるが」

だが、克人の発言は自らの発案とはいえ勇気のあるものと言えた。

「いえ、彼らを推薦したのは私ですから、その役目は私がやります」

すかさず、真由美が代役を申し出た。

だが、

「その役目、俺がやらせてください」

立ち上がり、立候補したのは剣術部2年の桐原だった。

「わかりました、お願いします。でも、2人いるから零令くんは私のCADを調整してもらいます」

真由美のこの発言は、生徒が立候補しないことと、自分が推薦したという責任からだろう。

 

~実験棟~

 

「課題は、競技用CADに桐原先輩のCADの設定をコピーして即時可能な状態にする、ただし起動式そのものには手を加えない、でまちがいありませんか?」

達也はテストの条件を再確認した。

「ええ、それでお願い。・・・どうしたの?」

「スペックの違うCADの設定をコピーするのはあまりおすすめ出来ないんですが・・・・・・仕方ありませんね。安全第一で行きましょう」

「?」

真由美を含め多くのメンバーが首を傾けた。

CADの設定のコピーは、機種変更の際、普通に行われていることなので、何をら問題視しているか分からないのであろう。

実は、CADは物、サイズ、種類によって、使われている感応石の量や大きさが異なる。そのため、スペックの違うCADの設定をそのままコピーするとらサイオン信号と電気信号のやり取りの中のどこかで異常を来たす可能性がある。

つまり、今この場は達也の腕の見せ処なのだ。

 

(以下略)

 

 

結果的に言わせてもらうと、達也の評価は上々だった。

 

 

 

 

「じゃあ、次は陸久くん。お願いね」

「はい。調整内容はどうしますか?」

「そうね。お任せで」

なんと、真由美は爆弾を投下してきた。指定された内容をこなすのではなく、技術者のお任せ。

 

「・・・っ!分かりました。では、少し魔法式をいじってもよろしいですか?」

「ええ。構わないわ」

「分かりました。では始めます。」

 

真由美が魔法式を起動させる。すると、彼女は驚いた様子でこう呟いた。

「魔法式の処理速度が格段に速くなってる!!!!」

 

「会長の場合、《マルチ・スコープ》があるため、照準補足の式が省略出来ます。また、会長の魔法師としての実力をみてもトップクラスのため、術式のところどころを改良して、七草会長専用魔法式に書き換えました。」

 

「そ、そんなことができるわけがない!!」

1人の2年生が吠えた。

「・・・・・・」

「もちろん、これと同じことを全員にやるのは無理です。ただし、自分が担当させていただく選手には、最高の活躍ができるように務めさせていただきます」

 

言い終わったところで、十文字が立ち上がり言った。

「司波と零令は我が校の代表メンバーに相応しい技量を示した。俺も、2人のチーム入りを支持する」

 

 

 

 



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九校戦編 Ⅲ

久しぶリの投稿なんで誤字、脱字多いかもです。

あと、今回陸久・あやなは話の内容的にメインじゃないので

どうやって絡ませるか、難しかった。
(ほぼ絡んでいない)



 

コンコンッ

「どうぞ」

ドアをノックしてあやなが入ってくる

「ゼロくん、見せたいものってなぁに?」

 

「あやな、この魔法式を起動してみて」

そう言って陸久はCADを渡した。

「うん、分かった。・・・これって」

魔法式の作用により、あやなの体が宙へ浮かぶ。

「ああ、《飛行魔法》の術式がついさっき完成したんだよ。今度、トーラス・シルバー名義で発表するつもりだ。明日、FLT(フォア・リーブス・テクノロジー)に行くつもりだけど、どうする?達也と深雪も来るよ」

「うん。一緒に行くよ」

 

 

-明朝-

 

「あ、先生!!」

FLT(フォア・リーブス・テクノロジー)社に訪れると、1人の男性職員が声をかけてきた。

「先生、おはようございます。上に御曹司もいらっしゃってますよ。」

ここでいう『先生』は陸久の呼び名。『御曹司』は達也の呼び名である。

トーラス・シルバーとはソフトウェアの達也、ハードウェアの牛山、メカの陸久で成り立っている。

 

 

-2階-

「バカヤロウ!T-7型、たった10機しかねえのかよ。何で補充しとかねえんだ!」

 

「それなら、大丈夫ですよ。ここにも10機デモ機があります。」

アタッシュケースを開いて、陸久は言った。

「お待たせ!牛山さん」

 

「先生!!姉さん!!」

「お待たせしました。主任。」

 

 

 

 

『テスター・ワンより、乾燥室へ。僕は今、空中を歩いて・・・いや、宙を、飛んでいる。僕は・・・自由だ!!!』

 

 

牛山と別れ、研究所を後にした廊下での出来事。

「これは深雪お嬢様、零令殿、零宮嬢、ご無沙汰致しております」

その挨拶にあやなだけが頭を軽く下げた。

「お久しぶりです、青木さん。こちらこそご無沙汰しております。ただ、ここにおりますのは、私達だけではありませんが。お父様も、お元気そうですね。先日はお電話ありがとうございました。しかしたまには、実の息子にお声をかけていただいても罰は当たらないかと存じますが?」

可憐な声で発せられたのは茨の如く棘だらけのセリフだった。

「お言葉ですがお嬢様、この青木は四葉家の執事として、一介のボディガードに礼を示せと仰られましても。家内にも秩序と言うものがございまして」

「わたしの兄ですよ」

深雪の声は平成を保っているように聞こえるがそろそろ限界が近いことだろう。

「畏れながら、深雪お嬢様は四葉家次期当主の座を家中の皆より望まれているお方。お嬢様の護衛に過ぎぬそこの者とは立場異なります」

「青木さん、横から失礼します。深雪と達也の立場が違うのは重々承知していますが、次期当主直属と言っても過言ではない。深雪を仰ぐのであれば達也にも相応の経緯を払うべきなのでは?それが本当に、真夜さんのご意向ならば・・・」

「真夜様はまだ何も仰せになられていない」

陸久の発言に青木がそう返すと達也はわざとらしく、目を丸くして言った。

「これは驚いた!四葉家内序列4位の執事が次期候補者に、家督相続について自分の思い込みに過ぎない憶測を吹き込んだというわけですか?

そこで話が終わればまだ良かったが。

「憶測などではない。同じ家中に仕える者同士、なんとなく思いは通じる。心を持たぬ似非魔法師風情にはわからぬかもしれんがな」

「その心を持たぬ似非魔法師を作ったのは、俺の母にして四葉家現当主の姉である司波深夜。旧姓四葉深夜ですが。実験体である俺を否定するということは四葉家現当主十の姉が行った魔法実験が贋作作りだったと誹謗している、とういうことになるんですが、その点は当然理解しておいでですよね?」

「・・・・・・・」

「達也、止めなさい」

論争を止めたのは達也の父、司波龍郎だった。

「お母さんを悪くいうものではない。お前がお母さんを恨む気持ちもわからないでは無いが」

しかし、そのセリフは頓珍漢なものであったが

「親父、それは勘違いだ。俺は母さんを恨んではいない」

そう言って達也は歩いていった。

続き深雪。

「失礼します。」

「龍郎さん、青木さん失礼します。叔母様によろしくお伝えください」

それに続き陸久、あやなが挨拶をしその場を去った。

 

 




ソフトウェアはそのままソフト、内部。
ハードウェアは外部分、機体。
メカは完成品という意味です。

ここでは、全体的なサポートぐらいで捉えてください。




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