すぺーすびーすと!~ネクサス怪獣擬人化作戦~ (ヒッポリト星人バロー)
しおりを挟む

#1最恐のスペースビースト現る!(朝から晩までマリオネットにされちゃうよ!?)

光と闇。

それは常に反発しあう存在。
この墨色に染まった夜空、帰り道の炭色に染まる無機質なコンクリの地面、そしてわたしの歩く影というところに闇がある。

それに対して眩い電灯、一軒家やマンションから漏れる光、そしてわたしが触れているスマホから溢れるブルーライトという光が反発している。



この時のわたしはまだ気付かなかった。
いや、気付けなかったのかもしれない。
この光と闇の果てしなきバトル(反発)に白黒を付けるのはわたしだったということを。



 

 

どうしたものなのだろうか。

 

「ぐふぇふぇふぇ〜♡ アキちゃん様ァ〜〜!!」

 

その日、わたしがベッドで目覚めたら、目の前に変な少女がいた。まるで痴漢をするオッさん顔をして、薄気味悪くニタニタしながら、目を離さずにマウントポジションを取っていたのだ。

 

その容姿を見るからにはわたしと同じくらいの20代辺りの年齢らしい。見た感じ、現在進行形で感じる姿と重さから推測しても、恐らくわたしと同じくらいの身長と体重で間違い無いだろう。一般的に見ても違うところは彼女の目が死んだ魚のように白く、ボサボサな青髪で、何よりバストがわたしよりもちょっと大きいところだ。いいなぁ……。

 

じゃなくて! この状況普通に怖いんですけど。ついでに彼女の服装は全身薄い桃色のコート。その姿のまま見ず知らずの人にマウント取ってくるあたり、やっぱり普通じゃない。単純に怖い。

 

「はぁっ!? もしかして、もう起きちゃった感じですか? 昨日はアンナに大胆だったのにぃ〜」

 

しかしこの子は社会人であろうに、不法侵入という言葉を知らないのだろうか。あるいはわたしが寝ている目の前で堂々とコソ泥を? それに彼女はなんでさっきからよだれを垂らしてわたしを美味しそうな目で見てるの!? てかさっきの言葉の真偽はなんなの!? ――まさか、この人そういう系の人……。てことはわたしはもう一線を――。

 

当然ながらわたしの脳内はかなり混乱していた。

 

「えっ、あのちょっと、一体わたしはどうなって……!?」

 

ぐるぐるに目と頭を朝から回してベッドから寝た姿勢で数分程硬直していたことにようやく気付いたわたしは一旦冷静になる。もしかしたら、幻を見てるのかもしれない。とりあえずガバッと上半身を起こして思いっ切りほっぺをつねってみる。でもやっぱり彼女はいる。ああ、もう……。

 

わたしの様子をしばらく見つめていた彼女は、突然突拍子も無いことを言い出した。

 

「おはようございまぁーす、アキちゃん様! 改めて今日からずぅっーとお邪魔しまぁーす♡」

 

 

はい?

 

あなたが?

 

この家にお邪魔する?

 

今日から?

 

ってずっと!?

 

え? この子と一緒に暮らせと? なんで? いつわたしがそんな許可を? ってかあなた誰?

 

 

 

 

自己紹介をしよう。

わたしの名前は古紋(こもん) アキ。23歳の女性。半年前にTLT社という世間の仕事の売り上げやデータを一括に収集して、管理するみたいな仕事に勤めているOLだ。今は物価がいいこの安アパートで暮らしている。しかしこの謎の女性、わたしの仕事の知り合いにも、学生時代でも、変な色をした髪の娘と知り合ったことなんてない。

 

じゃあ一体全体何がどうなってこんなことに……。

 

「あのぉ、あなたは……どちら様でしょうか?」

 

「え? 私のこともう忘れてしまったんですか!? ノスフェルですよ!  ノ・ス・フェ・ル! 闇の勢力の! 昨日の夜にこの家にずっと住んでいいって言ってくれたじゃないですか!」

 

のすふぇる。一体どこの外人だろう。しかもなんかアニメっぽい居候話を語ってるんだけど、そんな約束をした記憶がまるでない。なんせ昨日は仲の良い先輩and後輩と一緒に飲みに行ったので、酔いに酔ったわたしはあんまり覚えていないのだけど……。

 

「ええっと、とりあえずその昨日の夜の経緯を教えてくれませんか…?」

 

「あっ、はい、分かりました! 実はですね……」

 

 

 

「ということなのです♡ これでOKですか、アキちゃん様?」

 

「はわわわ……嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょーー!!」

 

あー。なんてことだ、些細な過ちだ……。

 

だんだん思い出してきた。確かにそんなことを言ったような感じがする。わたしのおぼろげな記憶とノスフェルが言うことには、昨日のわたしは酔っ払いながら家に帰り、ベッドにダイビングしようとした時にチャイムが鳴った。ドアを開けてみると物凄い形相をしながらこの娘(ノスフェル)が飛びかかって、

 

「お前の恐怖を喰わせろ……さもなければ肉ごと喰い殺す!」

 

と言ってわたしの首を掴んで襲おうとしたそうだ。彼女はどうやら闇の勢力(?)とかいう光のなんちゃらと対立している銀河の何処かにある組織に所属するスペースビーストで、光と闇が常に交わり合う星、即ち地球を制圧して闇の天下を取るべく、ノスフェルは仲間達と共に世界を闇に墜とそうとやってきたのだ。

ちょっと情報量が多いなぁ……。ってかすぺーすびーすとって?

 

「うーん。人間はまだ見たことないでしょうしねぇ……まぁ簡単に言うと、異生獣です! ちなみにわたしはスペースビーストの中では一番強いですよ! ……多分」

 

異生獣、ってことはノスフェルはモンスターァァア!? なんで人外がこんなところに!? これって最近の夜中のアニメでよく見る擬人化ってやつ!? 本当にヤバいよどうしたらいいのコレ……。

 

「突っ込むところそこですかー?」

 

あぁ、確かにそうだ。なんで異生獣であろうノスフェルがこの人型になっているのか? あろうことかわたしと同じくらいの年齢の女性に。

 

「その質問、待ってました! 実はですね……私もよくわかりません!!」

 

「分からないの!? 話振っといて!」

 

「今まではみんないつもカッコイイ怪獣のような姿だったんですが、どわああー! って、宇宙から地球の中に入った途端、わたし達みんなこんな感じの姿に変わっちゃったんですよ……」

 

原理は分からないけれど、さすが地球はオタクの星だ。こんなバケモノ達でも擬人化するとは。いやいやちょっと待って! そんなのが一杯地球にいるってことなの!?

 

「良いから話を進めますよ!」

 

あっごめん。

それでノスフェルは、手始めに人間の恐怖を得るべくたまたま付近を歩いていたわたしに目をつけて、家を特定、そうして始まった闇への勧誘(どう考えても脅迫だったけど、本人は勧誘と言い張っているのでそういうことにしておこう)に対して、寝ぼけていたわたしは、

 

「あ? わたし? うーん……恐怖よりぃ〜わたしの心奪って〜あはははー!!!」

 

と狂った発言。え? わたしそんなこと言った? ってか全然思い出せないわ……昨晩の記憶全部飛んでるし。

 

「貴様……舐めた真似を。まっ、良いだろう。記念すべき最初に目を付けた女だ。喰われ様ぐらい選択させてやる……。さて、どのようにお前の心、いいや心臓を奪ってやればいいのだ? 爪でえぐり抜けとかか? それともお前の故人の幻影に心臓そのものを捧げるとかか? フハッハッハッハァッ! さぁ決めるがいい!!」

 

とノスフェルは片腕だけを怪獣の姿に変えながら叫び散らした。それにわたしは、

 

「ちーがーうよ〜例え〜ば〜、わたしと一緒に暮らしてー、恋に堕ちちゃうとか? アハハハ〜〜」

 

と更に大いに狂った発言。道理で昨日少し変な夢を見たわけだ、わたし。

 

「なんだコイツ……。ふん! そんなノタノタとやってられるか! わたしには……時間が、時間がねぇんだよぉ!!」

 

とノスフェルはわたしを拘束して締め上げようとする。まっかっかな顔色のわたしはふにゃふにゃしながら聞く。

 

「でも……大変なんでしょ……? わたしの家に来なよ、世話してあげる。」

 

はは……ちょっと待ってよ。確かその変な夢は、捨てられたハムスターを家に連れて帰るようなものだけど、なんか展開がそのまんまな気がする。でも夢だよね……うん。ただの夢……。

 

「そ、それは……。だがそんな悠長なこと……」

 

寝ぼけてる人に図星されるってどういう気持ちなんだろう。わたしはそのままノスフェルの顔に手を触れる。

 

「ほら、ちゃんとわたしの顔見て」

 

そのままわたちは唇に顔を近づける。え……何やってるの、わたし? 嘘……でしょ!?

 

「お、おう……」

 

ちょっ……ノスフェルも駄目だって……!?

 

「んっ」

 

ああああああなにしてんだわたしいぃぃ!?!?!?!?

 

「……なんだ…………この感触は……!?」

 

柔らかい感触が伝わり、ノスフェルの顔色が少し赤くなる。わたしはノスフェルと唇と唇を重ね合い、キスをしてしまっていた。多分ノスフェルにとってもファーストキスだよね。わたしにとっても……。その後すぐにわたしはふらふらとしながらベッドに戻って眠ったらしい。これに心打たれた(勝手に恋に落ちた)ノスフェルが今日、いや正確には昨日の晩からこの家に居候することになったわけね……。

おかげで昨日の夢の経緯まで全部思い出しちゃった……百合百合しい、悪夢だ……。

 

「と、いうわけで、これからおねがいしますよ? アキちゃん様ぁ! 早速一緒にやりましょうよぉ♡」

 

駄目だこりぁ……昨日はすっごい殺意の気迫があったらしいのに、今はメロメロ。しかも性的な発言にしか聞こえないことばっか言ってる。とりあえず誤解を招くような発言はやめて! わたしはそっち系じゃないから。というか頼むから家からででってほしい! ……なんて言えない。さもなくばいろんな意味で襲われそうだ。 仕方ない。

 

「……まぁ、一応良いけど……」

 

「わぁ〜〜!! ありがとうございますぅ、アキちゃん様! ……それなら今晩はもう合意ってことですね?」

 

「断じて違う! 昨日のは寝ぼけてただけなんだからね! 勘違いしないで!!」

 

「むぅ……。わかりました、でも私は闇の勢力でありながら一度アキちゃん様に心を奪われた身。だから決っっして諦めませんよ!!! 必ずアキちゃん様の心も奪ってあげますからねー!!」

 

はぁ……。でも悪くない、独りぼっちじゃないのも。

 

 

こうして、わたしと『すぺーすびーすと』のノスフェルとの奇妙な生活が始まったのだった。でもなにか忘れてるような……。そう思いながらスマホを持って時計を見………

 

「あっっ!?!? 会社! 今日もあるじゃん⁉︎ やっば遅刻するぅ!」

 

完全に忘れてたぁっ!?

 

「アキちゃん様? 私も手伝いますよー! はい、バッグです!!」

 

おおありがとう……、ってそれは画用紙! とっ、とにかく行ってきまーす!

 

「はーい‼︎ でも早く帰ってきてくださいよ〜♡♡」

 

「はいはい分かってるわよ。言われなくたってノスフェルが誤った使い方して、家のものを沢山荒らすかもしれないしね!」

 

「そっ、そっちですか〜⁉︎」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#2人間生活って何ですか?(教えるのは大変!もうロスト・ソウル寸前……)

わたしの名前は古紋アキ。どこにでもいるような新人OLの女性!
ある朝、今日も仕事しに会社に行こうとベットから起きたら、自分のことを異生獣(スペースビースト)と名乗る変な娘・ノスフェルと出会い、そして暮らすことになってしまった。
今日はそんな記念すべき生涯後悔しそうな初晩。人間じゃないノスフェルのことだから絶対家の物々荒らしてる気がしてならない。なのでわたしは今日はなるべく早くに帰ってきたわけだけど……。



「ただい…はぁ、もう勘弁してよ……」

 

ある程度予想していたとは言え、ゴチャゴチャに散乱している本棚や小道具。その中心でノスフェルは子供のような純粋な仕草で木っ端微塵に学生時代に描いた絵を粉砕する。掃除嫌いなわたしですら嫌悪しそうな汚れっぷりにわたしは絶句した。まさかここまで無茶苦茶にされてしまうとは……。

 

「いてて……なんですかコレ?…………あっ、アキちゃん様ァ♡お帰りなさい!」

 

 

案の定、ノスフェルは家を荒らしていた。まぁアニメや漫画でよく見る異種族との生活ギャップあるあるのド定番かもしれないけどさっ……。怒りをなるべく露わにしないよう心に押さえ込んで返事をした。

 

「うん……ただいま……ノスフェル」

 

とりあえずわたしはまだ荒らされていない安全圏に荷物を置いて、片付けられそうなところから目を配る。するとどうであろうか、冷蔵庫が空きっぱなしで野菜や果物が床に転がり込んでいるではないか。嫌な予感がしたので、さっとノスフェルの方を再び向いた。

 

「アキちゃん様、ところでこの黄色い棒みたいなのはなんですかー? もしかして私とアキちゃん様の練習用のアレですか? もぉーアキちゃん様って積極的♡」

 

わたしがノスフェルの言いたいことを理解するまでそう長くはかからなかった。なんでこの娘は胸だけじゃなくこうもそういうネタも豊満なの? それに冗談でもわたしは女なんだからノスフェルなんかとしたくなんかない! 私は少し赤面になりながらも私は叫んだ。

 

「腐るからさっさとバナナを冷蔵庫に閉まって!」

 

「えー、もぉう、アキちゃん様ったら意地悪♡」

 

ううう……。なんでこんな目に……。このままじゃいつわたしの貞操を奪われてもおかしくないよ。なんとしてでもノスフェルと異種姦の関係になるだけは避けないと。第一わたしもノスフェルも女性なんだし、そっち系の道には間違っても行きたくない!!

 

「わたしはそぉーゆうエロ発言は嫌いなの! というかどうして異星獣の癖にそんなこと詳しいのよ!」

 

「なに言ってるんですか! 生命を次世代に繋ぐには大事なことですよ! それと私達スペースビーストは振動波でお互いの得た情報を共有することが出来ますからね!!」

 

「いやいやそう言うことじゃなくてね、ノスフェル……」

 

___________________________

________________

______

 

「――でもって、この道具はこう使うの。分かった、ノスフェル?」

 

「なぁぁーるほど! わっかりましたぁ! 家事のことはオールインプットしました! あとはお任せください!!」

 

ふぅ……人に物を教えるってこんなに大変だっなんて。ノスフェルが日本語を理解していたことが不幸中の幸いだよ、なんせ海外ならワン、ツゥースリーで統括してるものをいっ『ぽん』、に『ほん』、さん『ぼん』。いちまい、にまい、さんまい。そしてひとり、ふたり、さんにん……って細々と分けたりしてるもんね。親が子供に基礎的な教育をする際の辛さが気持ちが見に締めて理解したよ。でもノスフェルが覚えが早いお陰で助かった。これもスペースビーストの特徴なのかな? 色々と部屋も片付いて落ち着いてきたのでわたしは気になったことをノスフェルに聞いてみた。

 

「そう言えばノスフェルはスペースビースト、、、なんだよね? わたし達人間と違って何か凄いこととか出来るの?」

 

「はいっっ! よくぞ聞いてくれました!!もっちろん沢山ありますよ! 私の場合、例えば……」

 

「ひぃっっ!!!」

 

ノスフェルがそう言った途端、とんでもないことが起きて思わずギョッとしたわたしは腰が抜けてしまった。なぜならば一瞬で彼女の爪が人技とは思えない速さで長く、そして鋭く変わったのだ。恐る恐るわたしは聞いてみる。

 

「そそ……それって、どう使うのよ?」

 

「そうですねぇ……昔は無作為に動いてる肉達を適当に斬り刻んでましたけど、今はアキちゃん様に刃向かう愚弄ども全員にですかね!!」

 

うっふぇ……。あとお願いだからもうやめてっ! 気持ちは嬉しいけど色んな法律に引っかかっちゃう! 爪だけに!!

 

「ほ……他には?」

 

続いてノスフェルは舌を長く伸ばして、わたしの顔をぐるぐる巻きにする。息苦しくなり、思わず喘ぎ声が出そうになる。

 

「うふぇっと、ふぉんにゃひゅうに、アキちゃん様をペロペロしぇきるひょどひぃしゃをにょびゃしゅこともしぇきます!!(えっと、こんなに風に、アキちゃん様をペロペロできるほど舌を伸ばすこともできます!)」

 

「うっふぇ……気持ち悪いし、苦しいからさっさと離して!! それで他には?」

 

ノスフェルは舌を元に戻して、少しうずくまってから答えた。

 

「うーーん……あ! ダークボウルって個人的に私は呼んでるんですけど、手からドス赤黒い球体をぶつける飛び道具もあります♡これでいつでもアキちゃん様を守れますよ!!……あれっ、これってダークじゃなくてアームって言うんでしたっけ? まぁ……どっちでもいいですけどねっっっ!!!」

 

そう言いながら窓を開いたノスフェルは手から闇のオーラがぷんぷん纏った球体を作り出して投げ飛ばした。物凄い勢いと爆発音がわたしの耳をつんざき、慌ててベランダに出て見上げてみれば、雲にぽっかりと空いた穴が出来ていた。コレはヤバイ……。

 

「ホントに物騒だからそれもこれも使用禁止!!」

 

「えーそんなぁ……あっ! でも戦い以外にも使える能力ありますよぅ♪」

 

ノスフェルは残念そうにしながらもポンと手を叩いてから、ほんの少しだけ頬を赤くした。そんなことには目も触れずに、わたしは興味津々に聞いてみる。

 

「え、ホント? 例えば例えば?」

 

するとなんということだろう。

 

ノスフェルがヒョイと手をクロスしてから怪しいポーズをしたかと思うと、なんとわたしそっくりの人間みたいなものが目の前に現れたのだ。

 

……っえ!?

 

 

こ……これはどういう………???

 

「これはビーストヒューマンって言って、私が念じた人間の分身をそっくりそのまま召喚出来るのですよ! 私はビーストヒューマンを使って光の勢力との戦闘前によくシュミレーションをしてました!」

 

なるほど……元々戦闘民族みたいなノスフェルから見れば凄い便利な機能だ。待てよ、これって上手く活かせばわたしの仕事にも役立つんじゃ……!!

 

「おぉ〜、それは凄いね! わたしも上司に大事なプレゼン発表する前に使ってみたいよ!」

 

「わっかりましたぁ! いつでもお貸ししますよ! あ、でも、昼の時間帯はちょっと私の方でも使っているのでその時は無理ですよ?」

 

「え? ノスフェルも本番に向けて何かの練習してるの? それも誰に?」

 

「え、えっと……」

 

 

途端にノスフェルの顔色が真っ赤っかになってもじもじし始める。ノスフェルが強いことは既に他の能力を見て充分理解したつもりだけど、それでも練習無しじゃ勝てない相手がいるのかな? 数分程もじもじしてから、ようやくノスフェルが口に出した。

 

「それはっ……アキちゃん様です!」

 

「え」

 

「だって〜、今晩〜、共に夜を過ごすじゃないですか〜! その時に〜、しっかりと成功出来るように〜色々と練習しておいた方が……グへへへ〜〜!!」

 

ノスフェルが自らなにを露見したのか、さっきのバナナよりも早く判断したわたしは、とうとう恥じらいや恐怖を超えて、感情がぷつんと切れてしまった。わたしはゆっくりとノスフェルの元へ足を進める。

 

「ノォスゥフェルゥ……」

 

「ん? もも、もしかして早速してくれるんですか!? ありがとうアキちゃんさっ………」

 

 

 

 

「てめぇよぉ……やっていいこととダメなことがあんだろうよぉっ! 調子に乗ってんじゃねぇ!!!」

 

「ひぇっ!? アキ…ちゃん、様……?」

 

「第一、なんだその気持ち悪い呼び方は……ぼくに対してどの面下げて言ってんだゴラァァッッーー!!!!!!」

 

「ごぉ……ごめぇんなしゃぁぁぁぁい!!!!」

 

この後むちゃくちゃ説教した。

 

ノスフェルはまだ知らなかった。わたしには二つの性格があるということを。決して多重人格というわけではないが、ゲームなどをしてると夢中になって口調が変わる人や、ストレスが溜まったときにドスの効いた声調になったりする人がいるように、わたしにも過大なストレス又は嬉しい物事が蓄積してしまうと、性格が変わってしまう人間だったのだ。

 

どうやらわたしはストレスが溜まると、わたしの場合、男の子のようなヤクザ口調になるらしい。どうしてこんな風になってしまったか、はっきりとは覚えてないけど、多分子供の頃からそうだったとは思う。きっと親の遺伝だろう。怒りが収まったわたしははっと我に返り、ボロ泣きさせてしまったノスフェルを見て少し複雑な罪悪感が出てきてしまった。

 

「ぐすん……」

 

「まぁ、なんだ。その、わたしも……ゴメン。ストレスとか溜まると、わたしって気が付いたら男気が溢れる性格になっちゃうんだ。……変だよね、こんなの」

 

ノスフェルの目の不元には涙が流れたあとが付いていた。その白い目をぐしゃぐしゃにして泣き続けていたんだ。こんなにわたしのために涙を流しくれた人なんてお母さんやお父さんの次だ。なんで自分の感情をセーブできなかったんだろう。異生獣相手に申し訳ない気持ちが湧いて居心地が少し悪くなってしまった。

 

「いえ……私もすみましぇん……練習は今度から週に一度だけにします」

 

 

だめだこりゃ……。

 

でももう自然と怒りは湧いておらず、寧ろちょっとした嬉しさが込み上げてきたような気がしていた。

ノスフェルっていう『すぺーすびーすと』がどんな娘で、どういうことが出来て、どんなにわたしのことを愛してくれるか分かった気がする。いいや、はっきりと分かった。あんまり人には知られたくなかったわたしの悪い性格めこんなにもすんなりと受け入れてくれたし。恋人は流石に嫌だけど、ずっとずっと友達でありたいとちょっとだけ思っているわたしがいた。

 

「……それなら許してあげる」

 

さて、と。

とりあえず家事については基本的な点は大体分かってくれたようだし、次は外に出て人と会ったらどういう対応をすれば良いのか教えないと。ふとした拍子にノスフェルが人に向かってあのダークボウルとか投げ付けたり爪や舌で近所の人を殺したり、、、なんてことがあったら大問題だ。人間のマナーを守りつつ、尚且つどのように人と接するのか早いとこビシバシ鍛えとかなきゃ。でも今は真っ暗で遅いし、明日は珍しく仕事がお休みだから、今日はもういっか。

 

「じゃっ、今日はもう遅いから、さっさとお風呂に入って、一緒に寝よっか。ノスフェル」

 

「一緒に寝れる……♡。で、でも、私なんかが寝て良いんですか? 絶対私、感情を止められませんよ……」

 

「何言ってるの、いまベットは一つしかないし、これから一緒に暮らしていくことになるんだよ? わたし達もう家族みたいなものだよ。勿論そういう意味じゃないけど…….」

 

ノスフェルは少し前までわたしに怒られて落ち込んでいたが、数秒ぐらいわたしを見つめてから出会ってから一番の笑顔になって答えた。

 

「………はいっ! アキちゃん様!!」

 

「じゃあ明日は朝から外に出かけるからね! 人間のルールを学ぶためにも!!」

 

「りょーーかいですっ!!」

 

 

 

たまには寝てばっかの休日を過ごさなくたって良いだろう。今晩わたしがノスフェルに色んな基本的な点を教えてあげて、ノスフェルがそれら全部を受け入れてくれた。ヤバい性癖は心配しかないけれど、これほどわたしを想ってくれる人は親以外にほんっっとうに今までいなかったよ。

 

なら、しっかりとおもてなししなくちゃ!!

 







しかしこの時、わたしは気付かなかった。
ノスフェルがダークボウルを空に投げ飛ばしてから、遠くのビルからずっとわたし達の様子を見つめていた謎の少女がいたことを。


「……あの人間。俺達スペースビーストの強力な戦士であるノスフェルを服従させるとは……、




絶対に許さん!! 覚悟しておけ、人間。貴様は絶対にこの俺がブッ殺す!!!」


そこまで言って彼女はまるで幻影だったかのように一瞬でその場から消え去っていったのであった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#3最初の刺客、ダークガルベロスの奇襲!(この星のレリックまでは壊さないで!)

なんで?


「アキちゃん様、下がっててください!! ぐううっ……」



どうして?


「何故だ、ノスフェル? 何故なんだ? 何故人間を守る? はぁっっ!!」



なんでこうなっちゃっうの……?



「私は……、私はアキちゃん様と、この場所が好きだからぁぁぁ!!!!」



時は遡ること半日前、家でノスフェルが作った朝食をとるところから物語は始まる。

 

「おはよーノスフェル……どうしてそんなにニコニコしてるの?」

 

「おはようございます、アキちゃん様! 当たり前ですよ、だって今日はアキちゃん様との初デートの日なんですから♡ あっ、ちゃんと昨日言われた通りに早速朝ご飯を作ってみましたよ! 是非食べてください♡」

 

「だからそれは人間社会のルールを学ぶためであって、決してデートじゃないからね!……おー! ホントにノスフェルが朝食作ってくれたんだ! ありが……」

 

そう言って、わたしは思わず膠着してしまった。テーブルの上にあったのはわたしが見たこともない不気味な食べ物の数々。う、嘘でしょ……。そもそもこれって、地球上に存在する物質なの……?

 

「うん……、まぁ、そうだよねぇー。料理なんて始めてだろうし……、最初は誰だって仕方ないよ……」

 

でもだからといって食べないのは折角作ってくれたノスフェルに対して失礼だ。わたしは早々に覚悟を決めて椅子に座る。箸を握るだけで震えてくる指をノスフェルに気づかれないように

 

「い、いただきます……」

 

やっぱり……まっっっっずぅぅぅぅいっっっ!!!!

 

「どうですかぁ?」

 

ノスフェルがニコニコで答える。気分はまるでメイドさんのようだ。でもわたしの気分は給食で脱脂粉乳を飲まされたあとみたいな感じだ。まるで切り株を食べさせられてるような味だった。なんとか吐き気を抑えながら必死に笑顔を作ってわたしは答える。

 

「うっ……うげぇ………美味しいよ、でもゔぇ……まだまだだね」

 

うん。あとでもう一度、御飯の作り方をノスフェルに仕込んで置かないといけないな。

 

 

対してノスフェルはと言うと、わたしの気も知れずに、

 

「えー!? そんなぁ……気合入れて作ったんですよぉ〜」

 

と可愛子振って悔しがっていた。しかしそのときに彼女の目には、何か悔しさだけではない何か……不安なものを感じさせた。

 

……気のせいだよね。

 

 

 

「アキちゃん様とデート〜♡ぐへへ……」

 

「だからっ、デートじゃないのっ!! 全く……マイペースなんだから!」

 

「まぁまぁいいじゃないですか! さっ、次行きましょうよ!」

 

「ちょっーと待った!! 今は赤信号、止まれだよ!!」

 

「えー!! でも赤は大チャンスですよ? 点滅し始めたときとか特にそうです!!」

 

「郷に入っては郷に従え。屁理屈は言わずにちゃんと覚えること!」

 

なんとか朝食を完食してひと準備をしてから、わたし達は外に出かけた。駅や公園、お店にコンビニやらと、色んなところへ巡っては満喫して楽しむ。ノスフェルに地球のルールや暮らし方を教えるためだ、でもつまらないんじゃもったいない。だからこれは決してデートではない……何度も言うけどノスフェルは女の子なんだし。

 

「なるほど! これが公衆トイレですか……中に入ってもいいですか?」

 

「良いけど……」

 

「やりましたぁ! わーーい!! さっ、アキちゃん様も一緒に……」

 

「ごめん、そっちは男子トイレだよ。あと滑りやすいから走らないでね」

 

「えっ……っていたぁっ!! そう言うことは先に言ってくださいよ……」

 

「ごめんごめん笑」

 

とまぁ、こんな風にわたし達はなんだかんだで楽しいひと時を過ごしていったのであった。そして時は流れる。

 

「じゃあ次はショッピングモールに行こっか」

 

「ショッピング……ってなんですか? スーパーマーケットと同じじゃないんですか?」

 

「うーん……そう言われるとちょっと難しいなぁ。とにかく大きな建物で、古今東西、色んなものが種類別に売ってあるの。食堂とかもあるんだよ」

 

「うわぁぁ……。それは楽しみですっ!」

 

「そうだね」

 

ノスフェルのスマイルにわたしも笑顔で返して、ふと思った。こうしてわたしは地球のことをノスフェルに教えていて、彼女はそれを全て受け入れてくれている。けれどもしもこれが真逆の立場だったらどうなっているのだろうか。わたしはスペースビーストが群がる暗黒の世界を受け入れられるのだろうか。闇の勢力とやらに身を任すことが出来るのだろうか。正直、わたしはそんな自身はない。太陽が輝くこんな昼間から堂々しながらノスフェルは、わたしとこの星を受け入れたんだ。考えてみれば信じられない話だ。

……そういえば、以前ノスフェルが言ってた闇の勢力だの光の勢力だのって……あれって一体どういうものなのだろう。

なんで光とか闇とかはは対立しているのだろうか。

 

 

――そうか。わたしは、ノスフェルのことをもっと知りたかったんだ。

 

そう考え込みながらデパートに着く。

 

「おー! これがエスカレーターですか!! 凄い、勝手に上がっていってます!」

 

「……ねぇ、ノスフェル」

 

「ん? どうしたんですか? アキちゃん様?」

 

「前から気になってたんだけどさ、闇の勢力とか光の勢力とかって一体なんなの?」

 

「えー、今それ聞いちゃいます?」

 

「聞いちゃいます。ほら、エスカレーターに乗ろう」

 

「一緒にエスカレーターに乗りながら秘密を赤裸々する……♡分かりましたっ! じゃあ早速乗りましょ!!」

 

「えっ、わたし今なんか意味深なこと言った?」

 

わたし達はデパートの最上階を目指して、エスカレーターに足を踏み入れた。

 

 

 

「それでは説明します。えっと……闇の勢力にいる者はみんな暗い、真っ暗な世界、そして負の感情がある場所でしか生きられないんです」

 

「要するに、恐怖ってこと?」

 

「そうですね。反対に光はその逆。明るいところや、幸せの感情があるところだけです。だから、お互いの住処を守護し、繁栄する為に対立しているんですよ」

 

「ちょっと待った。この星は明るいよ? どうして闇の勢力のノスフェルがここにいられるの?」

 

「それはですね、地球には光と闇が同じくらいあるからですよ!……いろんな意味で」

 

色んな意味で……なるほど。確かに心の中に闇を抱え込む人達は多い。それに夜になれば光と闇は逆転するしね。

 

「もしかしたら私以外にも既に地球に潜伏してる異星獣達がいるかもしれませんねぇ……でも、」

 

「でも?」

 

「私が何よりこの世界で生きていけれるのは、他ならぬアキちゃん様のお陰です。始めてアキちゃん様の家に来てから私は暖かさと優しさを知りました。光や闇なんて関係ない。ここが私の家なんだなって」

 

「ノスフェル……」

 

「だから一生この私を下僕にして、いっぱいいっぱいやっていきましょうね♡」

 

「ノスフェルゥ……」

 

最上階に降りて、付近のお店を見ながら回る。10年に一度の感動を一瞬にして壊された気分だ。憎たらしい程にキラッキラッに輝いているノスフェルの笑顔に、わたしは拳骨を与える。

 

「あいたっ! 何するんですかっ!」

 

「なんとなく。じゃあ他にはなんかないの?」

 

「他にですか。そうですね….…闇の勢力には異星獣ことスペースビーストの他にも、ウルティノイドという私達を使役できる闇の種族がいますよ。それに対して光の勢力には、ネクサスと呼ばれる受け継がれる光の種族や、来訪者とがいう……あれ? アキちゃん様、どうかしました?」

 

やば……話の途中だけど、めっちゃお腹が痛い。どうしようどうしようどうしよう。やっぱ朝のノスフェルのご飯が来ちゃったんだなぁ。

 

「ごめん……ちょっとトイレ。ノスフェル、そこの洋服屋さんを見て待ってて! 話は出てから聞くよ!」

 

「……分っかりましたぁ! 待ってます!!」

 

わたしは猛ダッシュで更衣室を探す。女子トイレ女子トイレ……。あった!

 

___________

_____

___________

 

ふう、助かった……。

 

 

数分後にトイレの個室から出たわたしはふうと少し安堵してから、急いで洗面所へと向かった。ノスフェルはきっと何かしら変なトラブルを作り出してそうだし、面倒なことが起きる前に、早いとこ戻らないと。そう思って手を洗い、トイレを出た。

 

「やっと見つけたぞ人間、貴様に話がある」

 

「ふぇっ……!?」

 

どうやらトラブルに巻き込まれていたのはわたしの方だったようだ。

 

 

更衣室を出たわたしの目の前に、茶髪な髪の毛に右目は白色、左目は黒色。真っ黒色の時期外れな癖のある形のマフラーを身に纏い、ボロボロな紺色のユニフォームを着た高校生くらいの少女が、まるで対戦相手を探し回る飢えたボクサーのようにわたしを睨みつけていた。

 

 

なんだ、この娘のこの格好……。普通じゃない。明らかに人間じゃないよ。だってよくよく見たら、彼女の背中に尻尾が生えてるもん。

 

――間違いない。この娘は異生獣(スペースビースト)だ。

 

まさか話って……。

 

「何が目的なの……?」

 

その少女は足が少し震えているわたしを見逃さずに言い放った。

 

「ほう……貴様、俺の正体に気付くとはな。流石ノスフェルを従わせているだけはあるようだな。」

 

その格好じゃ誰でも怪しむよ。あと従わせてなんかない、本人がわたしと暮らしたいって言ってるから一緒にいるんだ。

 

「今更自己弁護をしたって無駄だ。闇の勢力の重要な戦力、ノスフェルをたぶらかした貴様を絶対に許さない……」

 

 

あ……なんか嫌な予感。わたしは目を逸らして逃げられそうな場所を探しながら後退りする。

 

 

「俺が貴様をブッ殺す!!」

 

やっぱりぃーー!

 

「ま、待ってよ!? 話せば分かるって!!」

 

「人間ごときが図に乗るな。俺を怒らせるんじゃ……ねぇぇっ!」

 

彼女はマフラーの両端から火炎弾的なのを放射してわたしに襲いかかる。

 

「うわぁっ!?」

 

間一髪で少女の攻撃を避ける。トイレの入り口が真っ黒に焦げた。流石に周りの人もこれには驚いてるよね。わたしは周りを見回した。

 

人々はわたし達に見向きもしてない。

 

……おかしい、誰も気付いてないなんて。それどころかデパートの空間が徐々に歪み始めている。何が起こってるの?

 

 

「残念だったな、人間! 俺は今なぁ、俺とアンタだけしかいない空間、ダークフィールドを展開してやったんだ。だから貴様はここから逃げられない。ついでに言うと、焼け焦げたトイレは俺が貴様に見せている幻影だ。」

 

 

な、にそれ……つまりはわたし、閉じ込められているってこと!? 脱出不可能じゃない! 幻影って、ノスフェルが持ってる能力じゃなかった。スペースビーストって他にも色んな力を持っているんだね。てか、これってマジでヤバくない!?!?

 

「俺の名はダークガルベロス。さぁ、絶望を味わって死ぬがいい……喰らえっ!」

 

ダークガルベロスと名乗る彼女はそう言ったと同時に、わたしに狙いを定めて飛びかかってくる。

 

「やっ、やめてぇっ!!」

 

わたしは覚悟をして目を瞑った。

 

 

ああ……どうすれば……わたしはこのまま、死んじゃうのかな……

 

 

 

 

 

まだ話の続き、聞けてないよ。

 

 

ノスフェルっ……。

 

 

もう一度、もう一度あの憎たらしくて、キラキラしたノスフェルの笑顔が見たい。

 

 

見たいよ……。

 

 

 

 

 

グシャァッと音が響いた。とてつもなく体中が痛………くない!?

 

わたしは目を開ける。

 

ダークガルベロスの手を抑えていた彼女(ノスフェル)の背中があった。

 

 

「ノスフェル……?」

 

 

「ごめんなさいアキちゃん様。私は待つのが嫌いなんですっ……」

 

ノスフェルの白い目から1滴、涙が出ていた。でも、憎たらしいくらい最高にキラキラしていた目だった。

 

「ノスフェル……。貴様、どうして人間を守る俺がアンタを助けようとしているんだぞ……」

 

「………ガルベロス。君は間違ってるよ、確かにこの町は私達が住むには眩し過ぎる。けど、それ以上に……私はそれ以上にっ―― ――なんだ!!」

 

 

「きゃっ!」

 

二人が衝突した衝撃で激しい爆発音がして、そのあとはよく聞こえなかった。でも既にその答えは知っているような気がする。

 

「アキちゃん様、下がっててください!」

 

「うん……ありがと」

 

ノスフェルを信じよう。わたしを信じてくれたんだから。

 

「ぐううっ……」

 

 

「何故だ、ノスフェル? 何故なんだ? 何故人間を守る? はぁっっ!!」

 

 

「私は……、私はアキちゃん様と、この場所が好きだからぁぁぁ!!!!」

 

 

わたしを殺してかつての仲間を取り戻そうとする者と、わたしを守ってかつての仲間に理解させようとする者。

 

ノスフェルとダークガルベロス、二人の『すぺーすびーすと』は人並みとは思えない、驚異的な速さと動き戦闘を始めたのであった……。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#4ガルベロス、高校に通う!?(もうダークネスから抜け出したの?)


わたしの名前は古紋アキ、どこにでもいるような新人OLの女性。
ひょんなことから異生獣(スペースビースト)と名乗る娘・ノスフェルと暮らすことになってしまった。そんなノスフェルとデパートに行っていたある日、闇の勢力の刺客であり、二人目のスペースビースト、ダークガルベロスにわたしは襲われてしまい、そんな絶体絶命の中でわたしを救ってくれたノスフェル。しかしわたしを狙うダークガルベロスとわたしを守るノスフェルという二人の異性獣が遂に対峙する結果となってしまった。

そして今ここに、スペースビースト同士の激しい戦いが幕を開けるのであった……!



二人の異星獣は勢い良く走り出して、人間では不可能な動きを次々に展開する戦闘が始まる。

 

 

「ぐりゃあああああああ!!!!」

 

「ぐぐぐ……はっああああ!!!!」

 

激しい……。言葉では表現の仕様がないよ。俊敏な動きで互いの攻撃が繰り出されている。普段のタランとしたノスフェルとは大違いだ。……もしかしたらわたし、本当に大変なモノが懐に入ってしまったのかもしれない。

 

「目を醒ませ、ノスフェルゥ!!」

 

ダークガルベロスのマフラーの両端が猛犬の如く荒れ狂い、火炎弾を連続発射してノスフェルに仕掛ける。

 

「だぁっ! はぁっっ! お断りするよっっ!!」

 

ノスフェルは火炎弾を華麗にかわしながら、いつか(と言ってもたった昨日の話なのだが)見せた赤黒い球体、ダークボウルで迎え撃つ。

 

一見戦況は互角かのように見えるが、自分の意思でわたしを防衛するノスフェルに困惑を隠せないのか、ほんの少しだけダークガルベロスの方が押されている。

 

 

よし、これならもうだいじょ……。

 

 

 

 

待って。

 

 

 

でも、これでいいのかな……?

 

 

 

 

本当に、これだけでいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このまま、ダークガルベロスが倒されて良いのかな?

 

 

 

 

 

 

「……これで! お仕舞いですぅっっ!!!」

 

ノスフェルの長く鋭い爪がダークガルベロスのお腹を突く。

 

「がひゃあぁぁっっーー!!!!」

 

お腹から粒子のような返り血が飛び、ダークガルベロスは呻き声を上げながら倒れ込む。その顔の様子からは今にも息絶えそうなほどの苦しさが伝わってくる。

 

「ぐはっ……ぐがあぁ……」

 

「ダークガルベロス、アキちゃん様に牙を向けた罪はとてつもなく重いものです。悪いけどあなたはここで死んで償ってもらいます……」

 

ノスフェルの爪が上半身を起こしたダークガルベロスに牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

このまま倒せば、わたしを殺そうとした娘はいなくなる。

 

 

 

 

でも………でもっ……。

 

 

 

こんなの……

 

 

 

 

こんなの良いはずがないっ!

 

 

 

 

戦って倒して終わりじゃない。それだけじゃ根本的に何も解決なんでできやしない、しないのよ! 彼女の価値観や使命のために、彼女達の種族のために私を襲ったことは、彼女にとっては間違ってない筈なんだ! 例え違う種族でも……わたし達はきっと分かり会えるはずだ!

 

 

今ここで誰の生命(いのち)が果てようと、誰も喜ぶことなんてできない、虚しいだけなんだ。

 

 

わたしは走り出し、ノスフェルの片手を掴んだ。

 

「待って! もう辞めよう? こんなのおかしいよ!!」

 

予想外の事態にノスフェルはもちろん、傷ついたダークガルベロスも驚愕している。でも構わない。今止めなきゃわたしは、いやわたし''たち''は絶対に後悔する。

 

「何故ですかアキちゃん様……? ダークガルベロスはアキちゃん様をっ……ふひゃっ!?」

 

わたしはノスフェルの頭を撫でた。

 

「ノスフェル、助けてくれてありがとう。嬉しかったよ。わたしとノスフェルは全く違う生き物なのに、こんなに温かい絆を感じられたから。……だから、さ。ダークガルベロスだって、確かに異種間の差異は大きいかもしれないけれどもきっと、分かり合えると思うの! だから殺しちゃダメ!!」

 

「ず……ずるいです、アキちゃん様……」

 

照れるノスフェルを他所に、ダークガルベロスはわたしに問う。

 

「なんだと貴様……。俺はアンタを殺そうとしたんだぞ!? 目を離せば必ず殺しにいくぞ? それでもまだ俺を許すとでもいうのか?」

 

わたしは振り向いて笑顔で答える。

 

「その時はその時。お互いに理解出来合うまで付き合うよ。ノスフェルと一緒にね。だからわたしは……あなたを許したい」

 

 

「人間……お前……」

 

「アキちゃん様、なんて優しいんですか! 流石私だけの唯一の正妻です……」

 

ノスフェル、今すぐその長い舌も一緒にお口にチャックして。わたしはダークガルベロスに手を差し伸べた。

 

「ほら、今日の敵は、明日の友だよ……!!」

 

ダークガルベロスはわたしの手を見つめる。

 

「俺が……俺なんかが掴んでも良いのか? 俺は闇の勢力、貴様の恐怖を喰らうモノなんだぞ……」

 

隣でノスフェルがニコッとして代わりに返す。

 

「良いんですよ。私なんかハートまで奪われてしまいましたから♡」

 

「……そうか、そうなんだな……」

 

ガルベロスは漸くわたしの手を掴んだ。

 

 

すると突然、禍々しいダークガルベロスの服装が輝きだす。

 

 

「まっ、まぶしっ……! 急に何なの!?」

 

「まさか……。ダークガルベロス、あなた光を?」

 

光? 闇の勢力であるはずのダークガルベロスが光の勢力になっちゃうってこと?

光堕ち的な? ってそれアリなの!? こういうのってもう少し話が進んでからなんじゃ!?

 

眩い光が解き放たれ、ダークガルベロスの服装が眩しくなくなった。そこにはボロボロな紺色のユニフォームではない、まっ黄色に染まった綺麗なユニフォームを着こなすダークガルベロスがいたのだった。でもダークらしさは無いよね……。傷まで全て癒えた彼女はゆっくりと立ち上がる。

 

「ダークガルベロスじゃない、今日から俺の名前は……ガルベロスだ」

 

「……まさか、そんなことが……」

 

「改めて……よ、よろしくな、人間」

 

「うん……よろしく」

 

ノスフェルが茶化しながら謝罪をする。

 

「さっきはごめんなさいね、ガルベロス。でもまさか貴女が光を手にするなんて驚きですよ!」

 

「俺も謝る。………ごめん。それと、人間。……その、えっと……」

 

そしてわたしの方を見て、赤面で口をモゴモゴし始める。

 

「どうしたの? ガルベロス?」

 

「ふ……ふんっ! け、決して、俺は負けたんじゃねーんだぞ! 次会ったら今度こそ俺はアンタらに勝ってやる! 絶対勝つからなぁー!」

 

ガルベロスは逃げるように去って行ってしまった。逃げ去る彼女にわたしは言った。

 

「拳を振るわないものなら、なんでも受けて立つよ〜!!」

 

まっ。こういう分かち合いも、悪くないよね。

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、ハプニングもあったものの、その後も十分に羽を伸ばしながらノスフェルに色んな物事を教えることができた。無事ノルマ達成ってところだ。でも空はもう夕焼け。時間とは、あっという間に過ぎるものなんだなぁ。わたし達は他愛もなく話しながら歩いていた。

 

「あの時のガルベロス、すぐに行っちゃいましたね……」

 

「そうだね、……また会えるといいね」

 

「きっと会えますよ。ガルベロス、素直じゃないだけの娘ですから。それと……」

 

「それと?」

 

「……私、彼女から、ものすごく暖かい光を感じました。それもどちらの勢力にも属さない光……。アキちゃん様、光ってなんなんですか?」

 

あっ、ガルベロスは正式な光の勢力に寝返った訳ではないのね。でも、ノスフェルだって同じなんじゃないの? そう言いたいところだが、なんとなく今はやめて、代わりに違う言葉を返した。

 

「そうだねぇ……光って、温もりなのかな?」

 

「温もり……ですか。私にはまだはっきりとわかりません。あのときなら分かったと思ってたのですが……」

 

彼女の白い目は黄昏ていた。なるほど。きっとノスフェルもわたしの見えないところで沢山苦労してきたんだね。

 

「わたしもよくわかんないよ、そんなこと。でもさ、わたしはノスフェルに感じてるよ。温もり」

 

「……そうですよね! その内見つければ良いですもんね!! じゃあ私取り敢えず、今のの温もりもアキちゃん様です!」

 

「そうだね。じゃっ、帰ったら一緒に今日買ったものでも食べよっか」

 

「はい♡」

 

_______________________

_______________

____

 

 

「えぇ……どうしたの……ガルベロス!?」

 

翌朝、週明け。それはいつもより早く余裕を持って会社に向かった道中のことだった。なんとセーラー服を着たガルベロスに遭遇してしまったのだ。早速遭遇出来たのはいいけれど、一体これはどういうことなの!?

 

「こっ、これはだなっ……そ、そのぉ……俺だってせっかく地球に来たんだ、だから……そう! この星を調査しようと思ってだな、今日からJKとやらになってあの江抜高校に潜伏することにしたんだ!!」

 

「ええっーー!?!? そんなのってアリ!?」

 

「別に良いだろ! いかんせん俺はノスフェルより若い体付きなんだ、生きてくにはこれしか職がねぇだろ!!」

 

確かに始めてあった時はガルベロスって女子高生っぽい容姿だなぁー、っとは思ってたけど……。これはびっくりだよ。しかも以外と似合ってる……。可愛い。……写真撮ってもいい?

 

「う、うるさい! 忘れんなよ、俺は絶対アンタ……えぇっと、」

 

「古紋 アキ。アキでいいわよ」

 

「よ、よしアキ! この俺、ガルベロスこと軽部 露乙津(かるべ ろおず)が絶対に今度の期末テストでアキをぶっ倒してやるからなぁ! 今に見てろよ!!」

 

「あっははは……」

 

何処から突っ込んで置けばいいのやら。取り敢えず今度ガルベロスと同じ枝抜高校に通ってる親戚の子から問題用紙でも見せてもらうとするか……。確か、アイツもガルベロスと同年齢だし、もしかしたら同じクラスになっちゃったりして。まー流石にそんな偶然はないか。

 

「言っとくけどわたし、青春捨てて勉強全振りしてた人だから、それなりに強くなってきてから勝負しなさいよ?」

 

「もっ……もちろんだ! 人間のアキが出来ることなら俺だって出来るさ! とっ、とくと怯えるがいいっっ!!」

 

「……はいはいっ」

 

やはり少し恥ずかしかったのか、はたまた妙なやる気に満ちたのか、ガルベロスはそう言い終わったあとすぐにもの凄い早さでいざ高校へと走って行った。わたしは少し呆然としつつも、すぐに満面の笑みとなった。やっぱりあのとき、ちゃんと止められてよかったよかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそっ、もうこんな時間!? 折角早く出たのに〜〜!!」

 

何気無く時計を確認したわたしは今日も慌てて走り出したのであった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。