蒼い輝き (真神楽)
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鉄の城
デスゲームの始まり


《Sword Art Online》、通称SAO

完全なる仮想世界を構築するナーヴギアの性能を活かした世界初のVRMMORPGだ

 

*****

 

「…帰ってきた…この世界に…!」

 

SAOにログインし、最初の街である「始まりの街》に降り立った僕は裏道にある武具店に足を運ぶ

武具店が見えてきたところで、武具店には先客がいる事が分かった

 

「久しぶりだな」

 

なんと、先客は知り合いだった

 

「久しぶりだね」

「キリト、知り合いか?」

 

バンダナを頭に巻いている男性が青年、キリトに聞いてきた

 

「あぁ、…キャラネームは変えてないよな?」

「うん、変えてないよ」

「クライン、彼はショウ。俺と同じβテスト経験者だ」

「クラインさん…でいいかな?よろしくね」

 

クラインさんは一歩前に出て、手を差し出してきた

 

「クラインだ!よろしくな!ショウ!」

「こちらこそ」

 

クラインさんの手を握り、握手する

 

「ショウ、クラインはビギナーだからよければクラインにレクチャーするのを手伝ってくれるか?」

 

キリト君からお願いされたが、初日だからレベルを上げておきたい

 

「ごめんね、初日だからレベルを上げておきたいんだよね」

「そうか…」

「βテストみたいにフレンドになろう?クラインさん、何かあったら言ってね?出来るだけ力になるから」

「あぁ」

「いいのか?」

「別に構わないよ、楽しくやりたいからね」

 

キリト君とクラインさんとフレンドになった後、2人とは別れてレベル上げをしていた

すると、突然鐘の音が鳴り響き僕のアバターが光に包まれた

 

*****

 

「…ここは…始まりの街だね…」

 

視界がクリアになり、目を開けると始まりの街の大広間にいた

周りにいるプレイヤーの会話を聞いている限り、ログアウトボタンが存在しないようだ

前プレイヤーがその大広間に転移し終わったのか、いきなり巨大な赤いフードを被った人?が現れた

 

『プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ』

 

突然、演説が始まった

 

「もしこれがGMならば…」

『私の名前は茅場晶彦、今やこの世界をコントロール出来る唯一の人間だ』

「やはり、茅場さんか…」

 

僕の呟きは消え去るように茅場さんが演説を続ける

 

『諸君らは既にメインメニューからログアウトボタンが消失してる事に気付いてるだろう。しかし、これはゲームの不具合ではない」

「…まさか」

『繰り返す。これはソードアート・オンライン本来の仕様である』

 

殆どの人が盛り上げるための演出だと思ってしまっている

 

「諸君は自発的にログアウトする事は出来ない。このゲームはあらゆる蘇生手段は存在しない。HPが0になった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅すると同時に、諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。また、外部の人間の手によるナーヴギアの停止、あるいは解除を試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる』

「…確かに脳は破壊出来るけど…」

『残念ながら、現時点でプレイヤーの家族や友人などが警告を無視し、ナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり、その結果、213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からの世界から永久退場している』

 

茅場さんがそう言うと、現実世界のの各種メディアのニュースが映し出された

殆どの人が信じられない、信じたくないという表情をしている

落ち着いてる僕がおかしく感じる

 

『ご覧の通り多数の死者が出たことを含め、この状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。よって、ナーヴギアが強制的に解除される可能性は低くなっていると言っていいだろう。諸君らは安心してゲーム攻略に励んでほしい』

 

多くの人が茫然した

 

『諸君らが解放される条件はただ一つ、このゲームをクリアする事だ。現在、君達がいるのはアインクラッドの最下層、第1層である。各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒せば上の階に進める。第100層の最終ボスを倒せばクリアだ』

 

唯一の脱出方法を聞いたプレイヤーは絶望した

βテストでの到達層はたったの8層まで、それを考えると当然の反応だろう

 

『最後に諸君らのアイテムストレージに私からのささやかなプレゼントを贈ってある、確認してくれたまえ』

 

アイテムストレージを確認すると、手鏡というアイテムがあった

手鏡を手に取ると、突然僕のアバターが光に包まれた

光が収まると僕はなんともなかったが、周りのプレイヤーがさっきのアバターとは全くの別人になっていた

 

「…リアルと同じ容姿にしてあるって事かな…?そしたら僕のアバターが変わらなかった事にも納得がいくね」

 

周りの人達が混乱してる中、茅場さんは言葉を続ける

 

『諸君は今、何故と思ってるだろう。何故、茅場晶彦はこんな事をしたのかと。私の目的は達成した。この世界を創り出し、鑑賞するためのみにソードアート・オンラインを創った。そして今、全て達成した』

「…それだけのために1万人をデスゲームに…」

『…以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する、諸君の健闘を祈る』

 

茅場さんが説明し終わると、アバターが消え去り元の空間に戻った

…そして、僕は誰よりも先にこの場を後にした



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自分の立場・責任

デスゲームが始まって1ヶ月

第1層迷宮区

僕はそこにいた

 

「…ふぅ…」

 

モンスターを倒し、剣を鞘に納める

フィールドよりモンスターは強いが、苦戦するほどではない

僕はそう感じてた

迷宮区に来たのには理由がある

それは…

 

「…ここがボス部屋…」

 

一際大きな扉の前に僕は立っていた

 

・・・・・

 

僕は街を飛び出す前に気付いた事があった

それは…

 

「…未読のメールが一件…?」

 

自分に誰かからのメールが届いていた

差出人は…

 

「…不名…」

 

謎に包まれたメールを読んでみる

 

『君に剣を贈っておいた、有効に使ってくれたまえ』

「…茅場さんしかいない…いや、それ以外はありえない…」

 

・・・・・

 

「君にゲーム製作を手伝ってほしい」

 

親戚のおじさんにそんな事を言われた

昔の僕は力になれるなら嬉しかった

それよりも…

 

「自分なんかでいいんですか?」

 

そこが疑問だった

 

「君のVR適性は人では異常なほどいいんだ。寧ろ君より適任の人はいないよ」

「…手伝う替わりに1つお願いがあります」

 

その時からだったのだろうか…嫌な予感がしてたのは…

だから僕は…保険をかけた

 

「自分だけの剣を作ってください」

 

・・・・・

 

「『無敗の剣』…敵のレベルが高ければ高いほど威力が上がる…また、敵のレベルと所有者のレベル差があればあるほど威力が上がる…この剣、異常でしょ…まだ続きがある…」

 

僕は茅場さんと思わしき人物から送られたメールの続きを読んだ

 

『予備としてもう1つの剣も贈っておいた、いずれこの剣も使う事になるだろう』

「『進化の剣』…レベルが高ければ武器の性能が上がり、使うスキルの熟練度が高いほど威力が上がる…」

 

僕は自分の立場を考えていた

 

「…僕は茅場さんと共にこのゲームを作ってしまった責任がある…このゲームを終わらせる事、このゲームでの死者を減らす事が自分に出来る唯一の方法…」

 

・・・・・

 

「…僕はそれしか償う事を知らない…それなら、それを実行して達成してみせる…僕にはそれしかない!」

 

僕は大きな扉を開いた

扉の先は大広間

一歩、また一歩と歩みを進める

すると、突然明かりがついた

 

「…ボス…と、取り巻きのモンスター…」

 

部屋の最奥の玉座に腰掛けるモンスター

それに、突然現れた取り巻きのモンスター

僕はボスモンスターに向かって駆け出す

すると、ボスの取り巻きのモンスターが僕に向かってメイスを振り下ろしてきた

 

「…取り巻きのモンスターは邪魔だね…」

 

僕はそうポツリと呟くと、取り巻きのモンスターの兜と鎧の間を狙いソードスキルを使って薙ぎ払う

すると、取り巻きのモンスターが光の粒になり散っていく

 

*****

:キリトside:

 

第1層迷宮区、ボス部屋前

昨日行われたボス攻略会議

その参加者全員がボス攻略に参加している

 

「…みんな、俺から言える事はたった1つ…勝とうぜ!」

 

大きな扉の前に立ち、攻略参加者を鼓舞するリーダーのディアベル

 

「行くぞ!」

 

ディアベルは大きな扉を押して開く

大広間、玉座と見えるがボスの姿がない

 

「…どこだ?」

 

余りに妙だ

ボスの部屋に入ったのに、戦闘が開始されない

すると…

 

「…これ…確か、ボスが使うという情報にあった武器じゃないか!?」

 

誰かが驚いて言う

プレイヤーが装備出来るサイズを超えた斧

それが地面に落ちていた

そして…ボスは倒されていた



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月夜の黒猫団

その後、どれくらい経っただろう…

20層を超えても僕は単独でのボス撃破を続けていた

全てではないが…

 

「…?どうしたんですか?ショウさん」

 

考えていた僕に話しかける1人のプレイヤー

そして、その言葉に反応する数名のプレイヤー

彼らは月夜の黒猫団

いろいろあり、こうして同行していた

 

「何でもないですよ、少し考え事をしてただけです」

「主役なんですから、しっかりしてくださいよ〜?」

 

周りから笑いが溢れ出す

月夜の黒猫団のメンバーは、小さなグラスを手に…

 

「…では!我ら!月夜の黒猫団に乾杯!」

『乾杯!』

 

5人のプレイヤーが僕の周りを囲み、1人が音頭をとった

 

「そして!命の恩人であるショウさんに乾杯!」

『乾杯!』

「…乾杯」

 

僕は乾杯を返す

そして、月夜の黒猫団のメンバーからお礼を言われる

 

「…お礼はいりませんよ?たまたま通りかかっただけですから」

 

僕がフィールドで狩りをしていた時、敵に囲まれていた彼らを助けた

…ただ、それだけ

 

「…ショウさんからしたらそうかもしれません。ですが、俺たちからしたらショウさんは命の恩人なのです」

「…そしたら、受け取っておきますね」

「はい!」

 

僕からしたら単なる作業だったかもしれない

だが、彼らの目を見てると本心だと悟れるほど真っ直ぐな目をしていた

 

「ショウさん。失礼ですが、レベルってどのくらいなのですか?」

「…49だよ」

 

僕は悩んだ

だが、彼らの目を見てると嘘を伝える事が出来なかった

 

「49…俺たちの倍近く…凄いですね」

「凄くはないですし、敬語はいりませんよ。いつもの口調であれば構いませんが…」

 

すると、敬語を使わずに話しかけてくれた

そこは自分にしたら嬉しかった

だが…

 

「…ショウさん。もしよければ、うちのギルドに入ってくれないか?」

 

急なギルド勧誘に、少し時間が停止した感覚に陥った

 

「…申し訳ないですが、ギルドに入る事は出来ません。どのような理由でもギルドには入りたくないんです…」

「…そうか…残念だが、諦めるよ」

 

少し空気が重くなったが、最後にはみんなと仲良くなった

 

*****

:キリトside:

 

『乾杯!』

 

俺は今、乾杯を返している

助けた、月夜の黒猫団と一緒にいた

 

「でも、まさか『また』助けられるとはね…」

 

俺は疑問だった

 

「…?またってどういう事だ?」

「助けてもらったのが2回目なんだよ、前はショウさんだったね」

 

ショウ、その言葉を聞いただけで過去を思い出してしまう…

デスゲームが始まってから全く連絡が無く、デスゲームと宣告される前から会っていない…

手がかり1つすら掴めていなかった

 

「ショウはどこにいるか知ってるのか!?」



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白竜狩り

…いつからだろう

白竜を狩り始めたのは…

…いつからだろう

攻略が難しくなったのは…

…いつからだろう

自分から感情が無くなったのは…

 

*****

 

僕は『いつものように』白竜と戦う

白竜は素材のイベントボスだ

レベルも上がるしレア素材は手に入るしで、ずっと白竜と戦って狩っていた

 

「…何回見ただろう…この白竜を…」

 

僕はまた、白竜と戦う

 

*****

:エギルside:

 

今日もいつも通り、店を開けて買い取りをする

 

「いらっしゃい」

 

全身蒼い装備の、年で言うとキリトぐらいのプレイヤーが来た

 

「中層プレイヤーを支援しているエギルさんで合ってますか?」

「…あぁ、合ってるが」

「買い取ってほしいものがあります」

 

そして、少年はアイテムを見せてきた

 

「《クリスタライト・インゴット》…お前さん、それを1人で集めてるのか…?」

 

最近この素材が出回っている

 

「そうですよ」

 

大手ギルドがパーティを組み、何度も素材を集めてるとの噂

だが、大手ギルドに動きは無いとアルゴが話していた

誰が集めているのか…それが今、謎が解けた

 

「いつくか買い取ってください、言い値で構いませんので」

 

俺は驚いた

言い値で売るプレイヤーは中々いないのだ

 

「言い値だと!?お前さん、マジで言ってるのか?」

「中層プレイヤーの生存率が上がれば問題ないです」

「!?」

 

俺は悟った

…こいつは金目的で売りに来たわけじゃねぇ…

俺が中層プレイヤーの育成に支援してると知ってこの少年はここに来た

個人1人1人まで支援しようとしてる

命懸けでなにを…

 

「お前さん、1人でそんな事続けてたらいずれ死ぬぞ!?」

 

ついそんな事を言ってしまった

すると…

 

「…忠告は受け取っておきますが、やめるつもりはありません。そして、死ぬつもりもありません」

 

少年は表情を変えずに俺に向って言った

これ以上言っても通じないと悟った俺は、渋々言い値で買い取らせてもらった

俺はひたすら考えていた

すると、キリトから言われた事を思い出した

 

「…!?まさか、キリトが言ってた少年か!?」

 

キリトが言っていた、1人の少年

自己犠牲をずっとしてると言っていた

名前は…

 

「…ショウ…だったか?」

「…はい、ショウですよ」

 

そして、少年は俺の店を抜けていった…

 

*****

:キリトside:

 

「アスナ、1つお願いがある」

「?なに?キリト君」

 

俺はアスナに頼みたい事があった

 

「もう少しで74層のボス部屋を発見出来るだろう、だから…」

 

それは…

 

「ショウを攻略組の仲間に入れたいんだ」

「?その人ってどんな人なの?」

「あいつはいつも周りの事を優先して、自分の事を疎かにするやつだ。だからこそ、見ておかないとどうなるか分からない。それに彼の実力は俺よりも高い。レベルもそうだが、プレイヤースキルは圧倒的にあいつの方が上だ」

「!?キリト君よりも強いの?」

「あぁ。だが、1つ問題があってな…」

「問題?」

「あいつとはフレンドになってるが、連絡が全く無くてな…。探すのを手伝ってほしいんだ」



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軍と一般プレイヤーの関係

「…キリト君、ショウ君。…覗いてみる?」

「…あぁ…、転移結晶を持ったままなら…」

「…戦ってもいいと思うけど…?」

「「それはダメ(だ/だよ)」

 

僕は今、ボス部屋の前にいる

キリト君とアスナさんと一緒に

 

「…開けるぞ…」

 

中は暗く、なにも見えない

少し足を踏み入れると、端から青い炎が灯された

そして、ボス部屋が明らかになる

…中央にいたのは…はっきり言うと悪魔だった

人型をしているが、頭もで脚も山羊のようだった

身体全体が青く、眼すらも青かった

ボスがこちらに向かって威嚇した

 

*****

 

「…2人共、逃げるの早すぎ…」

「あ、すまん」

 

それよりも、僕はさっきのボスについて考えていた

あのボスの武器は大型剣が1つ…

特殊攻撃があると見るべき…

僕のように1人で攻略しないとなると、盾装備の人が最低10人はほしい…

 

「さ、遅くなっちゃったけどお昼にしよっか」

 

少し考えすぎていたようだ

 

・・・・・

 

僕の元に2人のプレイヤーが来た

 

「…僕に何のようかな?キリト君」

「久しぶりだな、ショウ」

「…嘘…」

 

女性プレイヤーの様子がおかしい

 

「アスナ?どうかしたか?」

「…ショウさん、第1層の時にフードを被ったプレイヤーを助けた事はありますか?」

「…ありますね」

 

僕がそう言うと、急に頭を下げてきた

 

「…その時はありがとうございます、感謝してもしきれないです」

「…あの時のフードを被ったプレイヤーが君って事かな…?」

「はい」

「…お礼は受け取っておきたいのですが、名前すら分かってないので…」

「…名乗る前にいなくなったのは誰ですか…」

「知り合いのようだけど、言っておく。彼女はアスナ、閃光の異名を持ってる血盟騎士団の副団長だ」

 

…本題がまだ聞けてない…

 

「…本題を教えてくれるかな?」

「…あぁ、ショウには攻略に参加してほしい」

 

・・・・・

 

「僕は…力を求められるのが好きだったのかもしれないね…」(ボソッ)

「何か言ったか?」

「何でもないよ、それより…誰かくるよ」

 

僕が言った直後、何人かのプレイヤーが来た

 

「…おぉ、キリト!しばらくだな」

「まだ生きてたか、クライン」

 

…その中には、クラインさんもいた

いや、キリト君がそう言ったのだ

間違いなくあのクラインさんだろう

 

「相変わらず愛想のねぇ野郎だ」

「クラインさん、で合ってるかな?」

「お前は…ショウか!?」

「リアルと同じアバターにしてた事が役に立つとは…」

「よく生きてたな!ショウ!」

「…少し暑苦しいですよ」

 

クラインさんが近づいてくるので、僕はクラインさんから距離を取る

 

「ところで…何だよ、ソロのお前が女連れってどういう事なんだ…」

「…一応、僕もソロだけどね…」(ボソッ)

「…!?」

「あー…アスナはボス戦で顔は合わせてるだろうけど、一応紹介するよ。こいつはギルド《風林火山》のクライン。で、こっちは《血盟騎士団》のアスナ」

「…!」

 

アスナさんはクラインさんに向かって1回頭を下げる

だが、クラインさんはラグっているのか固まっている

 

「おい、何とか言え。ラグってんのか?」

「こっ、こっ、こっ、こんにちは!く、く、く、クライン24歳独身恋人募集中…」

 

…クラインさんが口走ったが、キリト君がお腹を殴って沈めた

 

「「「「「リーダーが殴られた!?」」」」」

 

クラインさんがリーダー、という事はここにいるメンバーが風林火山なのかな?

風林火山のメンバーがアスナさんに詰め寄ろうとするが、キリト君に阻まれる

 

「…ま、まぁ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく」

 

キリト君がそう言うと、クラインさんがキリト君の足を踏みつけた

 

「へへっ、おい、このやろう!顔がどうしたってぇ?」

「ふっ、ふふふっ…」

 

その様子がおかしかったのか、アスナさんが笑う

 

「で、どう言う事なんだよキリト!?」

「こんにちは。しばらくこの2人とパーティ組むので、よろしく」

「キリト、てんめぇ…」

「どうして俺だけなんだよ!ショウいるだろ!」

「…誰かくる」

 

僕がそう言うと、10数人の人達が来た

 

「…あれは、軍の奴らか?」

「1層を支配している巨大ギルドがどうしてここに?」

 

そして、僕達の前を通ろうとした時だった

 

「休め!」

 

リーダーらしき人が10数人のプレイヤーを止めた

そして、指揮をしていた人がこちらに歩いてきた

 

「私はアインクラッド解放軍、コーバッツ中佐だ」

「キリト、ソロだ」

「もし、この先のマッピングデータがあるのなら提供してもらいたい」

 

その言葉にクラインさんが突っかかった

 

「た…タダで提供しろだと!?」

「我々は一般プレイヤーに情報や資源を平等に分配して秩序を維持するとともに、一刻も早くこの世界からプレイヤー全員を解放するために戦っているのだ。故に、諸君が我々に協力するのは当然の義務である」

 

その言葉に、アスナさんも突っかかる

 

「貴方ねぇ!」

「よせ、どうせ街に帰ったら公開しようと思っていたデータだ」

「キリトよぉ、それは人が良すぎじゃねぇか?」

「キリト君が渡してもいいと言ってるんですから、キリト君に従ってください」

「ショウまで…」

「協力、感謝する」

「ボスにちょっかい出す気ならやめておいた方がいいぜ」

「…それは私が判断する」

「ボスの部屋を覗きましたけど、生半可な人数でどうにかなる相手ではないですよ。それに、メンバーさんも消耗してるじゃないですか」

「…私の部下は、この程度で音を上げるような軟弱者ではない!行くぞ!さっさと立て!」

 

そして、軍は進んでいった

…後を追ってみた方がいいだろう

嫌な予感がする…



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2本の青(蒼)い剣

僕達は軍を追っていた

 

「…いないわね」

「ひょっとして、もうアイテムで帰っちまったんしゃねぇか??」

「ぎゃぁぁぁ…!?」

 

突然聞こえた悲鳴に僕の身体は反応した

 

「ショウ!?」

「ショウ君!?」

 

僕は全速力で走った

すると…

ボスにやられている軍が目にはいった

 

「早く転移結晶を使ってください!」

「ダメだ!結晶が使えない!」

「ショウ!」

 

どうやら、キリト君達もきたようだ

 

「キリト君、ここでは転移結晶が使えない…」

「!?」

「今すぐに助けたいけど…人数が足りない…」

 

すると、1人の声が響いた

 

「我々に撤退の2文字はありえない!戦え!戦うんだ!」

「!?」

「全員、突撃!」

「やめろ!」

 

キリト君の声は、届かなかった

ボスがブレスを吐いて、軍の動きを止める

そして、ソードスキルを放った

指揮をとっていたコーバッツさんが宙に浮いた

そして、僕達の前まで飛んできた

 

「…おい!しっかりしろ!」

キリト君が声をかけながら近づくも…

 

「…あ、ありえない…」

 

光の粒になって散っていった

 

「…そんな…」

「うわぁぁぁ!」

 

軍の1人が叫んだ

ボスに剣を振りかぶられてるからだ

 

「…ダメ…ダメよ…もう…」

 

そして、ボスが振り下ろそうとする

 

「ダメー!」

 

アスナが飛び込んでいった

 

「アスナ!」

「アスナさん!」

「…どうとでもなりやがれ!」

 

僕達はアスナさんが飛び込んだ事で飛び込んだ

アスナさんがソードスキルをボスに撃った

すると、ヘイトが軍のプレイヤーからアスナさんに変わり殴られる

倒れてるアスナさんにボスが追撃しようとする

それを僕とキリト君で軌道を逸らし、アスナさんに当たらなくした

 

「下がれ!」

「クラインさんは軍をお願いします!」

 

ボスがクラインさん達、軍にブレスを放とうとしている

それを僕とキリト君のソードスキルをボスに当てて撃たせなかった

だが、ヘイトがこっちに向いた

何とか2人で受け流すが、少しずつダメージが蓄積する

 

「…人前でこのスキルは使いたくなかったが…」(ボソッ)

「?ショウ?」

「キリト君!アスナさん!クラインさん!10秒程持ち堪えてください!」

「分かった!」

 

僕は下がってタブの操作をした

そして10秒も経ってないが…

 

「よし!終わりました!」

 

そして、僕はボスに向かって走り出す

 

「キリト君とクラインさんは回復してください!僕がボスの正面を押さえます!キリト君は後ろから攻撃してください!スイッチした後、アスナさんは回復してクラインさんと待機してください!スイッチ!」

 

アスナさんがスイッチの合図と共に下がる

僕はボスの攻撃を剣で受け流しながら、背中に現れたもう1本の剣でボスを攻撃した

 

「…ショウ…お前、俺と同じスキルを…」

 

周りが驚いているが、ヘイトは僕に向いている

後ろからキリト君も攻撃してくれると信じて、僕は…

 

「…スターバースト・ストリーム…」

 

ボスに攻撃する!

スキルを撃ち終わった後、ボスは光の粒になって散っていった…

僕の意識も消えていった…



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黒の剣士と蒼い英雄

「…みんなは…?

「ショウ君!よかったぁ…死んじゃうんじゃないかって…」

「アスナさん…」

 

どうやら少し気絶してたみたいだ

 

「…はぁ…気絶して目が覚めたらすぐに赤の他人の心配って…、少しはお前自身の心配したらどうだ?」

「軍は転移結晶で本部に帰ったぞ」

 

僕は心の底から安心した

 

「死人は何人ですか?」

「…コーバッツと、後2人死んだ…」

「こんなのが攻略って言えるのかよ…、コーバッツのバカヤロウが…。死んじまっちゃぁ、何にも何ねえだろうが…」

「…」

「ショウ、お前も《二刀流》スキル持ってたんだな」

 

キリト君がスキルについて聞いてきた

視界の片隅だったが、キリト君も2本の剣でスキルを撃っていた

 

「違うよ、僕のスキルは《双剣》だよ」

「《双剣》…聞いた事ないな」

「そしたらよ、キリトもショウもユニークスキルなんじゃねぇか?」

「多分同じ気持ちだと思うから言うが、俺もショウも嫉妬とかされるのを嫌って人前では使ってなかったんだ」

「…まぁ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ。若者達よ」

 

…クラインさんは気楽でいいものだ

 

「…ショウ、アクティベートしてくるからな。後は2人でごゆっくり」

「そういう訳だ、気を付けて帰れよ」

 

その言葉を残してクラインさんとキリト、風林火山のメンバーは上に上がっていった

 

「…アスナさん」

「…怖かった…ショウ君が死んじゃったらどうしようかと思って…」

「…何言ってるんですか?先に突っ込んだのはアスナさんですよ」

 

少し無言になり…

 

「私、しばらくギルド休む」

「休んでどうするんですか?」

「ショウ君とパーティ組む」

「…分かったよ」

 

*****

 

『軍の大部隊を全滅させた青い悪魔。それを撃破した双剣と二刀流使いの50連撃』

事の発端は尾ひれが付きすぎたこの言葉にある

そのせいで僕達は今、血盟騎士団の本部にいる

 

「君とこのゲームで会うのは初めてだったかな?ショウ君、キリト君は67層の攻略会議以来かな?」

「ヒースクリフさん、呼び出した用件を聞かせてください」

「…では、用件を話そう。君達と私で決闘をしてほしい」

「…ただ戦うだけではないですよね?」

「その通りだ。君達2人のどちらかが勝てばアスナ君を好きにしていい。だが、どちらも私が勝てば君達はギルドに入ってもらう。どうかな?悪い話ではないと思うが」

「僕はやりません」

 

ヒースクリフさんは驚いている

 

「…何故かね?」

「賭け事は嫌いなんですよ、特に人を賭けるのは尚更です」

「…キリト君はどうしたいのかな?」

「俺は貴方と戦ってみたい、だから俺は受ける」



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黒の剣士と聖騎士

僕は75層の競技場にいる

何故かというと…

 

「もう!バカバカバカ!なんでそんな事言ったのよ!」

「…キリト君、すいません…。内容全て言ってしまいました…」

「…成る程な…」

 

キリト君がヒースクリフさんと決闘をするからだ

アスナさんはキリト君に詰め寄る

 

「悪かった、悪かったってば。つい神聖剣を見てみたくて…」

「…この間、キリト君の《二刀流》やショウ君の《双剣》を見た時は別次元の強さだって思った…。でも、それは団長のユニークスキルだって…」

「まぁ、俺も何度か間近で見たよ。攻防自在の剣技、《神聖剣》。攻撃もそうだが、特に防御力は圧倒的だ」

「団長のHPバーがイエローゾーンに陥ったところを見た者はいないわ。あの無敵っぷりは、もうゲームバランスを超えてるよ…」

「分かってる」

 

ヒースクリフさん…ユニークスキル《神聖剣》の使い手…一体何者なんだろうか…

 

「どうするの?負けたら私がお休みするどころか、キリト君が血盟騎士団に入らないといけないんだよ?」

「あぁ…簡単に負けるつもりはないさ」

 

*****

 

決闘が始まる前、観客は相当集まっている

ヒースクリフさんとキリト君が喋ってるようだが、声は聞こえない

…決闘が始まった

キリト君の反応速度は凄いの一言だ

だが…

 

「…異常な程硬いね…」

 

ヒースクリフさんはそれを盾で受け、チャンスがあれば剣を払ってくる

そして…決闘はすぐに終わった

キリト君が使った二刀流のソードスキルがヒースクリフさんを上回った

…いや、そう見えた

 

「!?」

 

絶対に間に合うはずが無かった

だが、ヒースクリフさんの盾は戻っていてキリト君の攻撃を防ぎ硬直した時攻撃された

決闘はヒースクリフさんの勝利に終わったのだ

ヒースクリフさんはキリト君を睨み、そして去っていった

 

*****

 

僕は今、55層の荒野を走っている

嫌な予感がものすごくするのだ

そこにはキリト君もいる

それに、アスナさんも合流して走っていた

曲がると誰かが見えた

その瞬間、アスナさんがさらにスピードを上げて突進した

 

「ヒール!」

 

僕がその言葉を唱えると倒れていたキリト君のHPが回復した

 

「…間に合った…」

「…間に合った…間に合ったよ…神様…」

「解毒結晶を使いますね」

「キリト君、待ってて。終わらせてくるから」

 

アスナさんはキリト君を殺そうとした人に向かって歩き出した

アスナさんはリナアーを撃ちHPを削っていく

 

「わ、分かった!悪かったよ!俺が悪かった!もうギルドはやめる!あんたらの前にももう現れねぇよ!だから…」

 

アスナさんは刺そうとしたが…

 

「あぁ…死にたくねぇ!」

 

その剣が止まった

躊躇ってしまった

するとアスナさんは剣を弾かれた

 

「甘えんだよ!副団長様!」

 

アスナさんは剣を持ってない

そして、アスナさんに剣が振り下ろされたが…

 

『キィィィン!』

 

それを僕が受け止めて、そのまま突き刺した

 

「…この、人殺し野郎が…」

 

その言葉を残して光の粒になり散っていった

 

「…キリト君アスナさん、帰ろう」



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軍の事情

「…犯罪してどうしたの?」

「だから違うって!」

 

僕は22層のキリト君の家にいた

 

「…成る程ね…それで、キリト君はどうするの?」

「《始まりの街》で家族を探してみる」

「その方がいいだろうね」

「ショウ君も来てくれる?」

 

僕はやる事がある

それに、キリト君達は攻略を休んでいる

少しはお願いしたい

 

「残念ながら、少し用事があるからいけないんだ。途中からなら手伝えると思うけどね…」

「それでもありがたいよ、感謝するぜ」

「感謝するならやってからしてほしいね」

「あぁ、分かった」

 

そして、僕はキリト君の家を去った

 

*****

 

「…ヒースクリフさん、話とは何ですか?」

 

僕は血盟騎士団の本部にいる

 

「君に75層のフロアボスの偵察をお願いしたい」

「…理由を聞いてもいいですか?」

「君の力を信じているからだよ。ショウ君」

「…その話、受けましょう」

「君ならそう言ってくれるのを信じていたよ」

「僕からもお話があるのですが、いいですか?」

「何かな?」

「ヒースクリフさん、…」

 

*****

 

「元々私達は…いえ、ギルドの管理者シンカーは、決して今のような独占的な組織を作ろうとしていたわけではないんです。ただ、情報や食料をなるべく多くのプレイヤーで均等に分かち合おうとしただけで…」

 

僕は…いや、僕達は1層にいた

キリト君達と合流したからだ

ユリエールさんの話を聞いていた

 

「だが、軍は大きくなりすぎた」

「はい。内部分裂が続く中台頭してきたのがキバオウという男です。キバオウ一派は権力を強め、効率のいい狩場の独占をしたり、調子に乗って町税と称した恐喝紛いの行為すら始めたのです。でも、ゲーム攻略を蔑ろにするキバオウ一派に批判する声が大きくなって、キバオウは配下の中で最もハイレベルのプレイヤー達を最前線に送り出したんです」

「コーバッツさん…」

「成る程ね…」

「最悪の結果にキバオウは強く糾弾され、もう少しで彼をギルドから追放出来るところまでいったのですが…追い詰められたキバオウは、シンカーを罠にかけるという強行策にでました」

 

酷い話だ

 

「…シンカーをダンジョン奥深くに置き去りにしたんです」

「転移結晶は?」

「!?まさか手ぶらで?」

「…彼はいい人すぎたんです。キバオウの、丸腰で話し合おうという言葉を信じて…3日も前の事です」

「3日も前に…それで、シンカーさんは?」

「…かなりハイレベルなダンジョンの奥なので、身動きが取れないようで…全ては副官である私の責任です。ですが、とても私のレベルでは突破は出来ませんし、キバオウが睨みを利かせる中、軍の助力はあてに出来ません。そんなところに、恐ろしく強い2人組が街に現れたというのを聞きつけ、こうしてお願いをしにきた次第です。キリトさん、アスナさん、そしてショウさん、どうか…私と一緒にシンカーを救出に行ってくれませんか?」

「…私達に出来る事なら力をかして差し上げたい…と、思います。でも、こちらに貴女のお話の裏付けをしないと…」

「無理なお願いだって事は私にも分かっております。でも…彼が今どうしているかと思うと…もう、おかしくなりそうで…」

「大丈夫だよ、ママ。その人嘘ついてないよ」

 

ママ…いつの間にそんな呼ばれ方になったのか…

 

「ゆ、ユイちゃん、そんな事分かるの?」

「うん!…上手く言えないけど、分かる!」

 

少し、沈黙が流れた

 

「ははっ、疑って後悔するよりは、信じて後悔しようぜ」



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死神

僕達は今、《始まりの街》の地下に来ている

 

「…まさか《始まりの街》の地下にこんなダンジョンがあるなんて…」

「βテストにもなかったね、キリト君」

「あぁ」

「上層攻略の進み具合によって、開放されるタイプなんでしょうね。キバオウは、このダンジョンを独占しようと計画していました」

「専用の狩場があれば儲かるからな」

「それが、60層クラスの強力なモンスターが出るので殆ど狩りは出来なかったようです」

 

そして、下り階段のところまで来た

 

「ここが入り口です」

 

ユイちゃんは興味津々に見ている

 

「ユイ、怖くないよ」

 

…どうやら、心配したのがバレたようだ

 

「大丈夫です。この子、見た目よりずっとしっかりしてますから」

「うんうん、きっと将来はいい剣士になる」

「…では、行きましょう」

 

そして、僕達は階段を下り、ダンジョンを進んでいく

カエル型のモンスターと遭遇したが…

 

「はぁぁぁ!」

 

キリト君は1人で突っ込んでいった

ユイちゃんは楽しそうな表情でキリト君を見ている

 

「…なんだか、すいません。任せっぱなしで」

「いえいえ。あれはもう病気ですから、やらせとけばいいんですよ」

「…キリト君って戦闘狂だからね…」

「…大分奥に来たけど、そろそろかしら」

「…シンカーはこの位置から動いておりません。多分、安全エリアにいるんだと思います。そこまで行けば、転移結晶が使えますから」

「戦った戦った」

 

キリト君がモンスターを倒し終わったようだ

 

「すいません」

「いや、好きでやってるんだしアイテムも出るから」

「へぇ、何かいいもの出てるの?」

「あぁ」

 

…さっきのカエルからのドロップだと、見た目はもしかして…

 

「ひぃ!?…な、何それ」

「…さっきのカエルのモンスターの肉かな?」

「そう、スカベンジトードーの肉。ゲテモノ程美味いって言うからな、後で料理してくれよ」

「絶対嫌!」

 

アスナさんはそう言いながら肉を遠くへ投げた

 

「あぁ!な、何するんだよ!」

「…ふん!」

「…くそ!それなら…これでどうだ!」

 

キリト君は大量の肉を出した

…この後、何となく予想できるが…

 

「いやぁ!嫌!嫌!嫌!」

「あ、アスナ!貴重な肉!」

「ちょっと!キリト君!」

「だから!美味しいんだって!」

「笑った!」

 

確かに、ユリエールさんが笑っていた

 

「お姉ちゃん、初めて笑った!」

 

…こういう時にユイちゃんがいると本当に空気が和む

 

「…さっ、行きましょう」

 

そして、僕達は進んでいき…

 

「あっ!安全エリアよ」

「…奥にプレイヤーが1人いる」

「!?シンカー!」

 

ユリエールさんは走りだした

僕達はその後を追いかける

 

「ユリエール!」

「シンカー!」

 

どうやら、シンカーさんだそうだ

緊張の糸が緩んだが…

 

「来ちゃダメだ!その通路は!」

 

その言葉を聞いた僕はユリエールさんに全速力で走った

 

「ダメ!ユリエールさん!戻って!」

 

ユリエールさんに鎌が振り下ろされる

…が、ユリエールさんを庇い受け流す

 

「キリト君!あのモンスターを追って!」

「分かった!」

「ユリエールさん、この子と一緒に安全エリアで退避してください」

「は、はい!」

「…ママ?」

 

僕とアスナさんはキリト君を追う

すると、見えたのは…

 

「…まるで、死神ですね…」

 

死神だった



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絶望的な攻撃力

「…アスナさん、キリト君。今すぐユイちゃん達を連れて、転移結晶で脱出してください。僕の識別スキルでもモンスターのデータが見えないんです。恐らく、90層クラスです。僕が時間を稼ぎます、早く逃げてください!」

「何を言っている!ショウも一緒に…」

「後から追いつきますよ」

「…ユリエールさん、ユイちゃん達と一緒に転移結晶を使って脱出してください!」

「アスナさん!?」

「早く!」

「キリト君まで…死なないでくださいね!」

「そっちこそ!」

 

死神が鎌を振り下ろす

標的は…キリト君!

 

「うわぁぁ!」

 

キリト君とアスナさん、2人が受け止めても飛ばされる…

HPはアスナさんが半分削れて、キリト君が4割持ってかれている

…強いにも程がある

 

「はぁぁ!」

 

ダメージも全然入らない

 

「!?躱せない!?」

 

僕は身体と鎌の間に剣を入れたが、ダメージを受けた

飛ばされ、僕のHPは…

 

「…!?9割削られた!?」

 

しかも、ヘイトは僕に向いている

 

「ショウ!」

「ショウ君!」

「…立てない…!」

「ユイちゃんダメ!」

「戻ってくる…」

 

転移されたようだが、ユイちゃんは転移されてなかった

そして、ユイちゃんは僕の前に立つ

 

「バカ!早く逃げろ!」

「ユイちゃん!」

「逃げてください!」

 

僕だけに、ユイちゃんの声が聞こえた気がした

 

「…大丈夫だよ、パパ、ママ、お兄さん」

「!?」

 

そして、鎌が振り下ろされる

…だが、その鎌はユイちゃんには届かなかった

 

「破壊不能オプジェクト!?」

「…成る程ね…ようやく分かったよ…」

 

ユイちゃんは空中に浮かび、炎を纏った剣を出した

すると、服装も変わっていた

ユイちゃんが剣を振り下ろし、死神は鎌で受けるが…

剣で鎌ごと切った

すると、モンスターは炎に包まれ消えていった…

 

*****

 

僕は今、75層のボス部屋の中にいる

ユイちゃんの正体は何となく分かっていた

だからあの場をキリト君達に任せたのだ

その後、ボスの偵察をしに来たのだ

来たのはいいのだが…

 

「…タンクが一撃でHPを持ってかれる攻撃力…まともに喰らったら自分も…」

 

ボス部屋が閉まっており、転移結晶も使えない

ボスはとても速く、攻撃も鋭い

不利にも程がある

それに偵察は20人なのだが、僕も含めて10人が入ったところ扉が閉まったのだ

転移結晶も使えない事は確認済みだ

 

「…生き残ってるのは僕1人…ね…」

 

すると、扉が開いた

 

「!?他の人はどうした!」

「そのボスモンスターにやられました!それも一撃で!」

「!?」

「攻略組に伝言お願いします!生半可なタンクだと一撃でやられるので攻撃力重視のメンバーで来てください、とお願いします!」

「君はどうするんだ!」

「僕はこのモンスターを相手にしています!攻略組が来る頃まで無理しないでHPを削っておきます!」

「無茶だ!」

「無茶でも僕はやります!それに、今いるメンバーでこのモンスター相手に時間を稼げるのは僕しかいません!僕は貴方達がすぐに戻ってくれる事を信じます!」

「…分かった!それまでお願いする!」

 

偵察隊が転移結晶を使って戻っていった

…さて、

 

「…僕は生き残る、たとえどんな相手だろうと負けるわけにはいかないんだ!」



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創った責任

「…避けるのに精一杯なのはちょっと辛いね…」

 

僕はボスモンスターからの攻撃を躱すのに精一杯だった

その時…

 

「ショウ(君)!」

 

キリト君達が来てくれた

偵察隊の人が言ってくれたようだ

 

「…結構ギリギリだったね…キリト君!アスナさん!スイッチ!」

 

自分のHPゲージは後一撃…いや、ほんの少しでも掠ったら無くなる程しかなかった

 

「よく耐えたな、ショウ」

「エギルさん…死ぬわけにはいかなかったですからね」

 

僕はそう言いながら回復薬を飲む

 

*****

 

ボスモンスターは倒したが、空気は重かった…

 

「…何人死んだ…?」

「…12人が死んだ…」

 

キリト君の言葉に、周りは絶望した

 

「…嘘だろ…」

「…後、25層もあるんだぜ…」

「本当に俺達はテッペンまで辿り着けるのか…」

 

…僕は考えていた…

だが、1人の少年が動いた

キリト君はヒースクリフさんにソードスキルを撃ったのだが…

 

『キィィィン!』

「!?」

 

僕の剣に阻まれた

 

「キリト君!何をやってるの!」

「…気付かれてますよ、ヒースクリフさん。いや、茅場晶彦さん」

 

僕の言葉でこの場にいる全プレイヤーの視線がヒースクリフさんに集まる

 

「君がバラしてしまったら元も子もないだろう、ショウ君」

「…よく言いますね。僕が止めてなかったらキリト君の攻撃で気付かれる筈ですよ」

「…キリト君、君は気付いていたのかね?」

「…あぁ、気付いていたさ」

 

ヒースクリフさん…いや、茅場さんは諦めたのか…

 

「確かに、私は茅場晶彦だ。付け加えれば、最上階で君達を待つ筈だったこのゲームの最終ボスでもある」

 

プレイヤー全員が驚いた

それはそうだろう

最強のプレイヤーが最悪のラスボスになったのだから

茅場さんは言葉を続けた

 

「《二刀流》スキルはプレイヤーの中で最大の反応速度を持つものに与えられ、その者が魔王に対する勇者の役割を担う筈だった。だが、君は私の予想を超える力を見せた。まぁ、この想定外な展開もネットワークRPGの醍醐味というべきかな」

「…俺達の忠誠…希望を…よくも…よくも…よくも!」

 

血盟騎士団の1人が斬りかかろうとしたが…

 

「…麻痺?」

 

茅場さんが麻痺させ攻撃が当たらないようにした

そして、茅場さんは僕とキリト君以外で今いる全プレイヤーを麻痺させた

 

「どうするつもりだ、この場で全員殺して隠蔽する気か?」

「まさか、そんな理不尽な真似はしないさ。こうなっては致し方ない。私は最上層の《紅玉宮》にて、君達の訪れを待つ事にするよ。ここまで育ててきた血盟騎士団、そして攻略組プレイヤーの諸君らを放り出すのは不本意だが…なに、君達ならきっと辿り着けるさ」

 

僕は大事な事を忘れていた

 

「…自分が知ってた理由も話さないといけないね。僕が知ってた理由…それは、僕が製作を手伝ったからだよ」

「まさか…ショウも?」

「いや、自分はデスゲームになるとは思っていなかったんだよね…。だけど、このデスゲームを作ってしまった責任があったんだ。それでプレイヤーの支援をしたりしていたんだ」

「…成る程な」

「話は終わったかな?」

「終わりましたよ、茅場さん」

「キリト君、君にはチャンスをあげよう」

「…チャンス?」

「今この場で私と1対1で戦うチャンスだ。無論、不死属性は解除する。私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界きらログアウト出来る。…どうかな?」

「…その話、自分にも通用しないですか?」

 

僕が話に割り込んだ

 

「…君が私と戦うという事かな?」

「そうですよ」

「…よかろう」

 

そして、キリト君も麻痺状態になった

僕は茅場さんの方へ歩き出す

 

「ショウ!」

「…エギルさん、今まで中層プレイヤーの育成ありがとうございます。知ってますよ、儲けたものを殆どを中層プレイヤーの育成に注ぎ込んだ事は」

「…っ」

「…クラインさん、初心者ながらみんなを引っ張ってよく頑張ってくれました。貴方のお陰で攻略の進み具合が上がったのは間違いないでしょう。ありがとうございます。そして、お疲れ様です」

「…ショウ、受け取らねえぞ!向こうでお礼を追われるまでは受け取らねえからな!」

「はい、向こう側で会いましょう。…キリト君、心配を沢山かけてしまって申し訳ないです」

「…心配はいくらでもさせても大丈夫だ。だが、悲しませる事はするな」

「…そうさせてもらうね」

 

そして、アスナさんを一度見て茅場さんに向き直った

 

「茅場さん、最後に1つお願いがあります」

「…なにかな?」

「簡単に負けるつもりはありませんが、もし僕が負けたら…しばらくでいいです。アスナさんが自殺出来ないように計らってほしいです」

「…ほう、よかろう」

「ショウ君!」

「僕はアスナさんに惹かれた…。だからこそ、アスナさんには死んでほしくない」

「ショウ君、ダメだよ…そんなの…そんなのないよ!」

 

茅場さんと僕は剣を抜き、戦闘体勢を整える

そして…戦いは始まった



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終わらないデスゲーム

「ふっ!」

 

僕はラッシュをかける

だが、茅場さんは崩れない

 

「!?」

 

隙を見せてしまった

そのせいで僕は頬に剣を当てられて何も考えれなくなった

そして…ソードスキルを使ってしまったのだ

茅場さんの口元が緩む

キャンセル出来ない《双剣》のソードスキルを打ち込むが、分かっているのか全て読まれる

ソードスキルを打ちきり、硬直になったところに攻撃してきた

攻撃は当たる…僕自身もそう思った

攻撃が当たる直前、何かが起こった

僕自身も何なのか分からない

茅場さんも分かっていないようで焦っている

そして、お互い距離を取り僕は突っ込む

茅場さんは焦っている

そしたら僕は…

 

「そのうちに決める!」

 

僕はラッシュをかけた

いつもの茅場さんなら崩れてないだろう

だが、今の茅場さんは簡単に崩れた

 

「はぁ!」

 

僕は剣で茅場さんを貫いた

そして、茅場さんは気付いたら消えていた

 

*****

 

「…」

「ショウ君っ!」

「ショウ!」

「アスナさん…キリト君…」

「バカバカバカッ…ほんとよかった…ショウ君…」

「アスナさん、ごめんなさい…僕は生きてますよ」

「よかった…ショウ君…生きてる…本当によかった…」

「茅場さん…ヒースクリフさんは?」

「…分からない…どこにも見当たらないな」

「…僕は茅場さんを倒した…のかな…」

「おい…おいおいおいっ!やったじゃねーか!ショウ!」

「クラインさん…」

「何ボサッとしてんだ!倒したんだよ!ラスボスを!お前は勝ったんだよっ!」

 

クラインさんはそう言いながら僕を叩く

すると周りのプレイヤーが騒がしくなる

 

「お…おおっ!本当にやったのか!?」

「これでクリアなのか…!?」

「…どうなんだ?」

「俺は見た!倒したのを!勝っただろ!これっ!?」

「そうだよ…これで俺達は解放されるぞ!」

「勝った、勝ったんだよ!終わったんだ!」

 

全プレイヤーが歓喜に包まれる

 

「ショウ君…よかった…」

「アスナさん…」

「ウホン…あー、お2人さん?見つめ合うのはエンディングテーマが流れてからにしてもらえますかね?」

「見せつけんなよなー、ご両人」

「羨ましいな、このっ!」

「そういう関係じゃないですから!」

「…むぅ…」

「…?どうしたんですか?アスナさん」

「何でもない!フンッ!」

 

アスナさんが不機嫌になった

 

「ショウ…勘付いてやれよ…」

「キリト君、何のこと?」

「はぁ…」

 

キリト君や周りにいたクラインさんや他のプレイヤーがため息を吐く

 

「…ところで、キリト」

「…ん?」

「…俺達、いつ戻るんだ?現実によ…」

「…いつって…それは…」

「…」

「ヒースクリフは倒したんだよな…それで終わりじゃねぇのか?」

「茅場さんは自分を倒せばゲームはクリアされて全プレイヤーが解放されると間違いなく宣言してましたね」

「私も…そう言ってたの聞いてたよ…」

「けど…何も起こらない…何か嫌な感じがするな…」

「じゃあ、なんで終わらないんだよ。本当は…元に戻る方法なんて無いんじゃねーのか?」

「いや、ヒースクリフ…茅場はそんな嘘をつきはしないはずだ」

 

何故終わらないのか…僕は頭の中で考える

 

「ショウ!」

 

すると口論は終わったのか、僕に話かけてきた

 

「ごめんね、考え事をしてたよ。どうしたの?」

「先に進む扉が開いたらしい。どうする?」

「ゲームが終わらない以上、今は先に進むしかないよ」

「…そうだな。行こう!76層へ!」



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ホロウ・エリア

「スカル・リーパー!?」

 

僕は今、森にいる

何故森なのかというと、転移させられたからだ

そこで、謎のオレンジプレイヤーとスカル・リーパーと遭遇した

 

「このモンスターの相手は僕がします!君は逃げてください!2人でどうこうなる相手じゃありません!」

「!?なんで私を庇うの?あいつらの仲間じゃないの?」

「貴女はオレンジプレイヤーなのは分かってます!ですが、僕からしたら生きてほしいだけです!」

 

僕は本心を伝えた

 

「…分かった」

 

さて…

 

「どう倒そうかな…」

 

*****

 

「…はぁ…はぁ…何とか倒せましたね…」

「スカル・リーパー…こんなモンスター初めて見た」

「!?逃げてなかったんですか!?」

 

あのモンスターは75層のフロアボスだ

あの時戦った時とステータスが同じだったらとても1人2人では勝てない

 

「どうして私を助けたの?あいつらの仲間じゃないの?」

「貴女を助けたのは単なる自己満足ですし、誰の事を言ってるのかさっぱり分かりません。仲間ってどういう事ですか?」

「あいつらの仲間ではないようね。でも、見えてるんでしょ?私のカーソル」

「オレンジプレイヤーですね」

「それを見て何とも思わない?なんで助けたの?」

「力になってあげたいんです」

「…私、人を殺したの」

「!?」

「…そういう事、だから私に関わらない方がいい。それじゃ、さよなら…さっきは助けれくれてありがとう」

 

そう言うと、女性プレイヤーは去ろうとする

 

「ちょっと待ってください!」

「…なに?関わらない方がいいって言ったでしょ?」

「それは分かりました。ですが、1つだけ聞きたい事があります。ここは一体どこなんですか?SAOの中、というのは間違いないでしょうけど」

「…分からない。私は1ヶ月前にここに飛ばされたんだけど、生き残るのに精一杯で殆ど探索出来ていないから」

「…《クリスタル無効エリア》ですか?」

「ここの階層は分からなくなってるけど、アイテムやメッセージは通常通り使える」

「転移結晶が無いのであれば、あげますよ。いくつか持ってますから」

「…遠慮する」

「貴女は…」

『《ホロウ・エリア》データ、アクセス制限が解除されました』

 

僕の言葉を遮るように、何かのアナウンスが流れた

 

「…何のアナウンスだろう…」

「…あんた、それ…」

「…?何ですか?」

「その手に浮かんでる紋様は…」

 

僕は自分の手を見ると、謎の紋様が浮かんでいた

 

「!?いつの間に…さっきまでは無かったんですけど…。さっき、アクセス制限が何とかとアナウンスと関係あるのですか?」

「…あんた、一体何者?」

「どういう意味ですか?それよりも、ここは一体どこで何なんですか?」

「私も…よくは知らないけど…ねぇ、その手。よく見せてくれない?」

「…いいですよ」

「…やっぱり同じ」

「何が同じなんですか?」

「これと同じく紋様がある場所を知ってる」

「そこに行けば何か分かるかもしれませんね。他に手がかりはありませんし、行ってみます。貴方がよければ、そこへ案内してくれませんか?」

「…別に構わない。でも、そんな簡単にオレンジ…いいえ、レッドを信じていいの?」

「カーソルがオレンジなのは気になりますね。でも、僕がスカル・リーパーと戦っている時や倒した後に攻撃をしなかったんです。なので、信用に値しますよ。僕はショウと言います。貴方は?」

「…フィリア」

「フィリアさんですね、よろしくお願いします」

「ふふ…」

 

フィリアさんが急に笑った

 

「?」

「あんたって、よっぽどのお人好しかよっぽどの馬鹿よね」

「…人を見る目はあると思うんですけどね…」

「それは光栄…と言うべきかしら?さ、案内するわ。行きましょう」

 

*****

 

『クリアを確認しました。承認フェイズを終了します』

 

僕達は《ホロウ・エリア》を進んでいた

そして、またこのアナウンスが鳴った

 

「…承認フェイズって何だろう…」

「また出た、このアナウンス」

「…」

「ねぇ、どうしたの?」

「あ、すいません。少し考え事してました」

「何を?」

「《ホロウ・エリア》の事です。気になる単語が出てきたので」

「ふぅん…それで、何か分かった?」

「いくつかの仮説はあるのですが、決め手に欠けていますのでもう少し情報を集めないと…」

「そう」

 

フィリアさんは不満そうな顔をしていた

 

「どうしたのですか?不満そうな顔をしてますけど…」

「だって、私がずっと調べてても分からなかったのにさ、ここに来て数時間のあんたが謎を解いちゃったら…悔しいに決まってるでしょ?」

「まだ解いてないですよ」

「あーあ、これじゃトレジャーハンターの名が廃るわ」

「トレジャーハンターなんですか?」

「まぁ、自称だけど。SAOに職業って無いし、モンスターと戦ったりクエストクリアしたりするより…ダンジョンに潜ってお宝を見つける方が私には向いてると思ってるから。それが…生き残る為に重要なアイテムである事多いしね。だから、トレジャーハンターになる事にしたの」

「…そうだったのですね。でも、危険ですよね?ソロでの戦闘はキツいですよ?トラップ対策や、探索スキルは伸ばしているのですか?」

「まぁ…ね。一応自分の身を守れるくらいには、あげてるつもり」

 

フィリアさんの戦闘力は高いだろう

出逢ってすぐに切りかかってきた時の攻撃は鋭かった

 

「さーてと。ちょっと順番が変わったけど、この先に例の転送装置があるわ。ここを抜けると例の装置よ。行きましょう」

「そうしましょうか」

 

そして、転送装置のようなものの前にきた

 

「ほら、これ」

「確かに…この紋様と同じですね…」

「ね?見間違いじゃないでしょ?ここが球体の入り口だと思う。ねぇ、試してくれる?」

「了解です…これでいいですか?」

 

すると、紋様が光っている

 

「多分…ほら、紋様が光ってる…」

「どうやら、フィリアさんの考えが当たっていたみたいですね。流石、トレジャーハンターですね」

「…私も、球体の中に何があるのか知らないんだけど…きっと…この先には《ホロウ・エリア》の秘密があると思う」

「見るからに怪しいですからね。僕もそう思います」

「ねぇ、私も…行っていい?」

「当たり前ですよ。一緒に行きましょう」

「…うん」

 

そして、僕とフィリアさんは転送された

 

「ビンゴ!やっぱりそうだった」

「ここが球体の中なんですね」

「恐らくね」

「敵の姿はないようですが…」

「!?ねぇ、ここって…《圏内》だね」

「…確かに《圏内》ですね。でも、ガーディアンが…」

「…来てない、みたい」

「どうなってるんでしょうか…やっぱり、いつものルールとは違いますね」

「でも、これなら安心して調べられる」

「そうですね、手分けして探索しましょうか」

 

僕とフィリアさんは手分けして探索する

 

「これは…」

 

コンソールがある

何かのリストも載っている

 

「…実装…エレメント…?」

 

ここは管理区みたいだ

 

「ねぇ!ちょっとこっちに来て!」

「どうしました!?」

 

僕は慌てて向かう

 

「これって、転移門…かも。ちょっと見た目が違うけど」

「間違いないですね…よかったですね、フィリアさん。ここから出れますよ」

「…出られるか…よかったね」

「どうしました?フィリアさん。余り嬉しそうに見えないですけど…」

「そう見える?」

「…フィリアさんは一緒には行かないのですか?」

「一緒には行かない…から、あんたは帰りなよ。だから…ここでさよなら。あんたと一緒で結構楽しかった」

「そうですか…分かりました。とりあえず戻ります。でも、アクティベートしたら大丈夫でしょうしすぐに戻ってきますよ」

「…」

「僕は、この《ホロウ・エリア》に興味があるので。まだ謎も多いですし、ボスクラスの強力な敵がフィールドを徘徊しているのも不思議です。それに、途中見かけたモンスターも特殊でしたから。本来であれば、どこからでも見えるはずこ迷宮区塔が見当たらないのも不思議ですね」

「そう…不思議だよね」

「それに…これだけ特殊な場所なら新しい武具や強力なスキルが見つかってもおかしくないですから、攻略も進むと思いますしね」

「ふふっ…その気持ち、何となく分かるかな。…もし来る事があったら私にメッセージを頂戴。ここに来るようにするから」

「この紋章が無くても、管理区に出入り出来るのですか?」

「へぇ…ここ、管理区?っていうんだ。試してみたけど、一度開通したら通るだけは出来るみたい」

「分かりました。来る時は連絡しますね」

「…期待しないで待ってる」

「またです。気を付けてくださいね」

 

そして、僕は転移した



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生還

光が収まると、僕の知る景色が見えた

 

「アークソフィア…よかった…戻ってこれましたね。転移門の設定は…大丈夫そうですね。ホロウ・エリアにも行けるみたいですね」

 

気になる点が1つ…

 

「フィリアさん…いろいろと事情があるように見えましたね。PKをするような感じは無かったですし…彼女は一体何者なんでしょうか…」

 

すると走っている足音が聞こえてきた

そして、どんどん大きくなり…

 

「ショウ!…よかった…」

 

キリト君が僕は見つけて、安心している

…何で安心するんだろう…

 

「キリト君、そんなに血相を変えてどうしたの?」

「ショウの位置情報が長時間ロストしたんだ…だから、もしかしたらと…」

「《生命の碑》を確認したら…確認出来ませんね…という事は…」

 

僕は物凄く嫌な予感がした

 

「シ、ショウ君!」

「…アスナさん…」

 

アスナさんも僕のところに駆け寄ってきた

 

「だ、だだ、大丈夫だったの…!?」

「…落ち着いてください、アスナさん」

「よかった…なんか胸騒ぎがしてショウ君を探してたんだよ。こんなに長い間、誰にも連絡が無いなんて…。丸一日ロストしてたんだよ!メッセージだってみんなで送ったんだから!」

「…メッセージの存在を忘れてました…」

「もう…ショウ君のバカ!う、うぅぅ…」

「…泣かないでください…アスナさん…」

「…」

 

アスナさんと一緒に来たユイちゃんが不機嫌そうな顔をしている

 

「パパ!」

「…僕の事かな?」

「そうです!」

 

…何故、いつのまにか自分がパパになってるのだろう…

ユイちゃんは心からこの姿に戻ったそうだ

 

「キリト君がパパじゃなかったの?」

「ママが好意を寄せているのはパ…ムグッ」

 

アスナさんがユイちゃんの口を塞ぐ

 

「…よくは分からないけど、アスナさん。事情は説明します」

「…ほんと?」

「勿論ですよ。とりあえず、宿に戻りましょう」

「うん…」

 

アスナさんが僕に抱きついてきた

 

「アスナさん!?」

「このままにさせてやれよ。アスナ、ずっと泣くのを我慢して探してたんだからな」

「…分かりました…」

 

*****

 

僕は宿に戻った

戻ったのはいいが…

 

「あー!帰ってきた!」

 

キリト君の仲間達がいた

 

「…ダンジョンを探索していたら突然転移させられました…」

「えー?そんな事ってあるの?」

 

彼女はリズベットさん

何回か会ったことはあるが、基本的に知り合い止まりだ

 

「…強制転移、ね。もしかして私やリーファと同じ現象なの?」

 

彼女はシノンさん

別のゲームから来たらしい

 

「そ、それって別の世界に飛ばされたって事…?」

 

彼女はリーファさん

リーファさんもシノンさん同様、別のゲームから来たらしい

 

「僕が飛ばされた先は間違いなくSAOの一部でした。だだ、隠しエリアのような感じなんですよ」

「隠しエリア?そんなものがこの世界にあるの?」

「通常のアインクラッドの各層とは違う感じでした」

「モンスターも強いのが多かったですので、高難度エリアという感じですね」

「高難度エリア…」

 

彼女はシリカさん

何回か顔を合わせたことはある

 

「運もあると思いますが、強いモンスターを倒したら強い装備やレアアイテムが手に入る可能性が高いですね。なので、《ホロウ・エリア》を探索してみようと思っています」

「でも、そんなエリアがまるまる未発見で残されているなんて事があるのかしら…。ねぇ、ユイちゃん。ユイちゃんなら何か分かる?」

「確かに、アインクラッドには様々な事情で一般のプレイヤーにら公開されていないエリアがあります。でも、それはゲーム開発時に封鎖しれ誰もアクセス出来ないようになってます」

「プレイヤーが非公開エリアに入る手段は無いって事だね」

「はい。ですが、今はカーディナルシステムが不安定になっています。それを考えると…絶対にないとは言い切れません」

「そうなんだ…ありがとう、ユイちゃん」

「いいえ、現在の稼働状況などが分かればよいのですが…」

「今の説明で十分ですよ。ユイちゃん」

「パパのお役に立てたなら嬉しいです!」

「ねぇ、ユイちゃん。さっきショウが言っていたように、そこって新しい素材アイテムとかあったりするのかな?」

「可能性はあると思います」

「そうかぁ…まだ見ぬレア素材…新しいスキル…ウフフ…」

「だったら、ピナのパワーアップも…」

「きゅるるっ!」

 

シリカさんはビーストテイマーだ

だからこそ、使い魔の育成も大切なんだろう

 

「私の武器も、もっと強くなるかもしれない」

「私も、もっと…」

「行ってみるしかないな」

「ちょっとみんな、もしかして行くつもりなの?」

「僕が戻ってこられたんです。行っても問題無いかと思いますよ」

「うぅぅ…でも…なんか引っかかるのよね」

「高難度エリアで手に入るアイテムでみんなを強化出来れば、この先の攻略だって楽になるだろう。そうすれば、100層クリアだって現実味を帯びてくる」

「キリト君の言ってる通りですね」

「そ、それは確かにそうね。なら、私も行くわ。ショウ君だけを行かせるわけにはいかないもの」

「それに…向こうで知り合った人もいますからね」

「もしかして…」

「「「「…」」」」

「…パパ、その人って」

「もしかしなくても…女の人よね」

「よく分かりましたね。フィリアさんと向こうで知り合ったんですよ」

「ほらねぇー!」

「女の子を口説いてたんだ」

「砕いてないですけど…」

「どうせ、『力になってあげたいんです』とか言ってきたんでしょ?」

「…その通りです…」

「ショウ君…私が泣くほど心配して必死に探していた時に、女の子と…」

「道に迷っていた僕を案内してもらっただけですよ!」

「…うぅ、ショウ君のバカ!」



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ホロウ・エリアの転移条件

「キリトと同じでトラブルに巻き込まれる体質だな。ショウは」

「エギルさん、聞いてたのですね」

「ここは俺の店だぞ」

「しかし、面白い情報だな。ホロウ・エリアか…。隠しエリアとかそういうところには大抵お宝がごっそり眠っているもんだ」

「もしそうなら、アインクラッドの攻略も少しは楽になるかもな」

 

僕は男性メンバーで会話していた

 

「もう何人かは向こうに行ってるんだろう?だったら俺達も負けてられないぜ」

「僕も行ってみたいですけど、今日はやめておきます」

「何だよ、だらしねぇなぁ。でも、アクティベートはしてあるんだろう?」

「はい、さっき済ませました」

「だったら何人か集めてさっそく乗り込んでみるか!」

「僕が行った時はスカル・リーパーが出たので、気を付けてください」

「おいおい、マジか…。まぁ、今日のところはちょっと覗くだけにしておくわ」

「マップデータも無いですし、じっくり攻略した方がいいですね」

「あぁ、それじゃ行ってくる」

「気を付けてな」

 

クラインさんは走り出して店を出ていった

 

「アスナ達はどうしたんだ?」

「部屋にいると思いますよ」

「ショウ、アスナは大分お前の事を心配していたぞ」

「ショウが悪い訳ではないが、今日くらいは一緒にいてやったらどうだ?」

「…そうします」

 

走っている足音が聞こえてくる

クラインさんが戻ってきた

 

「おい、ショウ!」

「どうしました?」

「ホロウ・エリアなんて転送先、存在しねーぞ!」

「アクティベートしましたし、確認もしま…」

「疑うんだったら一緒に来い!」

「クラインさん!?」

 

クラインさんは僕の手を取り、引っ張っていく

 

*****

 

「ホロウ・エリア管理区…間違ってないよな!?」

「合ってますよ」

「転移!ホロウ・エリア管理区!」

 

クラインさんは光に包まれるが…

転移出来てなかった

 

「「…」」

「…おかしいですね…」

「だろ?ショウがいい加減な事言うとは思わないけどよ…」

「クラインさん、避けてもらってもいいですか?…転移、ホロウ・エリア管理区」

 

僕の身体が光に包まれて…

 

「…普通に来られましたね」

 

僕はホロウ・エリアに転移出来た

 

「…フィリアさんは、いなさそうですね。どこかを探索しているのでしょうか…。それにしても…クラインさんは何故転移出来ないのでしょうか…。もしかしたら、この紋様と関係があるのでしょうか…?一度戻りましょうか」

 

僕はアークソフィアに戻った

 

「行けましたよ」

「あぁ…そうみたいだな。しかし、こりゃどういう事なんだ?」

「僕にも分かりません。少し試してみましょうか」

 

*****

 

僕達はエギルさんのお店に戻った

 

「帰ったか、遅かったな」

「色々と試してきました。結果は…」

「ショウ以外のプレイヤーはホロウ・エリアに転移出来ない」

「そして、一緒に行けるのは1人だけでした」

「1人だけか…厳しいな。それで満足に戦えるのか?」

「向こうで知り合ったフィリアさんはソロでも何とかなってるそうでしたから、無理って事はなさそうですね」

「でもよぉ、これは公開出来ないな」

「あぁ、無用の混乱を招くだけだろう」

「くぅー!せっかくお宝が目の前にあるってのによぉ!」

「おいショウ!向こうへ行く時は俺の事も誘えよな!」

「ショウにそんな余裕あると思うか?あれだけの女の子を相手にするんだぞ?」

「…ははは、確かにそうだな」

「向こうで何か分かれば、クラインさんにも教えますよ」

「絶対だぞ!男の約束だからな、ショウ!」

「はい、約束します」



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