常に余裕を持って優雅たれ(震え声) (常に余裕を持って優雅たれ──)
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優雅転生

気づいたらFate/zeroの登場人物の一人である遠坂時臣となっていた。何を言ってるかわからないと思うが私もわけがわからない。これがはやりの異世界転生ってやつですか。

 

遠坂時臣。彼は第四次聖杯戦争時の遠坂当主で、御三家の遠坂家の魔術師として根源到達を目指して聖杯戦争に臨む人間だ。「常に余裕を持って優雅たれ」という信念に基づき修練をする努力の人であり、魔術師として優秀で、冷酷でありながら情も持ち合わせたという人間。

 

まあどんなに優秀でも最終的には弟子の外道麻婆神父の言峰綺礼に裏切られて後ろから遠坂時臣自ら与えたアゾット剣で刺殺されるというあまりにも酷い最後を迎えるんだけど。

 

………………。

 

いやいやいやいや。なんで遠坂時臣に憑依しちゃうん??

言峰綺礼にアゾられて死にたくないんだけど。あの神父先に殺してやろうか。でもあの化け物神父のことだから寧ろ返り討ちにされそう()

 

いや、冗談はさておき。マジでどうしようかな。

 

生き残る為にはやれることは冬木から逃げるか、魔術を原作以上に鍛えるか、武術を鍛えるか。この三つか。

冬木から逃げれば、少なくとも聖杯戦争に参加すること、巻き込まれることはないだろう。しかし、この世界は魔術と神秘に満ち溢れており、どこにいても危険だ。ならば逃げても結局変わらない。聖杯戦争についてはある程度知っている為、対策が立てやすいしな。

 

魔術を原作以上に鍛える。これは大いにありだ。遠坂家には師父キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグから貰った家宝、宝石剣ゼルレッチの設計図がある。現実的じゃないけど、生き残る為に目指すのはありだ。

 

武術を鍛える。これも良い、ありだ。型月世界の武術は正直言って頭おかしい。言峰綺礼のマジカル八極拳や、剣の修練だけで第二魔法に至ったオルレアンのドラゴンスレイヤーこと佐々木小次郎、最新のサーヴァントなのに異常に強い李書文、宮本武蔵の削り落として、それでもなお残る“何か”。無二と言われる究極の一。そのさらに先にある0、「 」の概念の斬撃とかいう訳の分からない剣術。

いや、なんなの君たち(困惑)。

 

加えて祖先の遠坂永人は武術と魔術を対等に見ており、もともとは「無の境地」から根源に触れようとしていたという。Fate/Apocryphaの遠坂家も聖杯を諦めて武術で根源を目指している。

 

つまり、何が言いたいかと言うと。魔術と武術両方鍛えた方が生存確率が上がるってことだな。魔術と武術、故に最強っていう感じ。

まだ私は子供だし、聖杯戦争までまだまだ時間はあるので今から熱心に修練すればなんとかなると信じてる(震え声)。

 

後はそうだな。サーヴァントを召喚する為の触媒探しもしておかなくては。生き残る為に優秀で地雷が少なく、良いサーヴァントを引かないといけないしね。

原作通り英雄王ギルガメッシュを召喚?冗談じゃあない。ギルガメッシュ王と言峰綺礼とかいう遠坂時臣にとっての即死コンボ二人を揃えて溜まるか!

ギルガメッシュ王は絶対駄目だ。となると、思いつくのは……ケイローンやクー・フーリン、ヘクトール、シャルルマーニュあたりが当たりサーヴァントかな。

 

この辺のサーヴァントの触媒を今のうちから探しておこう。金なら充分にある。遠坂家は商才に優れているので、一般人相手に土地を貸し付けることで得るテナント料収入や魔術式の特許料があるのだ。この戦い、勝ったなガハハ(フラグ)。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

皆さんどうもこんばんは、遠坂時臣です。

憑依した日以来からめちゃくちゃ、めっっっちゃ頑張りました。こんなに努力したの初めてだわ……死ぬほど疲れた。武術は八極拳を始めた。態々本場の中国にまで渡って修行したんだけど、師範強すぎ。やっぱ武術怖えよ。

 

え?なんで八極拳かって?型月で武術といったら八極拳でしょ… ビームなんか撃てなくたって、八極拳士は無敵だい!(遠野志貴の妹並感)

 

魔術に関してはなんとか宝石剣ゼルレッチの再現できそうだけど、あくまでできそうってだけで絶妙にできてない。いやこの魔術理論組んだやつほんと頭おかしいなって感じ。師父ゼルレッチヤバすぎでしょ。流石月の王、紅い月のブリュンスタッドを倒しただけのことはある。

 

まあ、その宝石剣ゼルレッチは私の娘が原作で完成させるんですけどね。私の娘ヤバイな、好き(親バカ並感)。

 

あ、触媒は無事ゲットできました。家の資金力からすれば結構安かったです。遠坂家の財力やべぇな……私の商才が怖いわ……。

 

家族については原作通り葵さんと結婚して、凛と桜の二人の子供ができました。葵さん綺麗だしめちゃくちゃ可愛いんだが。好き。凛と桜も二人とも可愛いですね……子供ってサイコーだなって。こんな可愛い子をよりにもよって虫翁のとこに養子に出すとか原作の時臣くんの目は節穴だったんですかね……。節穴かフラウロス(適当)!

 

まあ原作の時臣くんが桜を養子に出したのも家族として桜を守る為でもあるからあまり責めるもんじゃないんだけど……養子先がねぇ……よりにもよってマキリ・ゾォルケンではねぇ。

 

本人が持つ稀有な資質のせいで一般人にもなれない桜には魔術協会や怪異に脅かされ続ける未来しかないからの判断なんだけど、ちゃんと調べなかったのはお得意のうっかりですね、ほんと。

 

ちなみに、私は絶対に養子に出す気はないよ。変な虫(ゾォルケンとか)が付くかもしれないし。稀有な資質によって起こる事件とか敵については、まあ私と凛で守っていけばなんとかなるだろう。楽観的な考えだけど。

 

最悪、私が死んだら嫌だが遠縁のエーデルフェルト家に預けるしかないがね。死なない為に今まで頑張ってきたし、死ぬ気はないからそんなこと起こらないだろうけど。あとエーデルフェルト家に預けるとバスターゴリラなプロレス狂になるからなぁ……できるだけ預けたくねぇなぁ……ってのもある。

 

 

 

おっと、そろそろ召喚する時間だ。そろそろ行かねば。

 

 

 

☆☆☆

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

祖には我が大師シュバインオーグ。

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

遠坂時臣が、サーヴァントを召喚するために言葉を紡ぐと、床に敷かれた魔法陣が僅かな光を帯び始める。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する」

 

風が吹き、光は強く、より強く。

 

「────告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷しく者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ────!」

 

極光と強い風が吹き、思わず遠坂時臣は目を瞑ってしまう。

長いようで短い時間が経ち、風と光が落ち着いた為時臣が目を開くと、そこには圧倒的な存在感を持つ人型の神秘がいた。

 

彼は太陽神ルーの息子にして、ケルト神話の半神半人の大英雄。

 

アイルランドを象徴する青い装束と紅の槍を手にした戦士。

 

そう、光の御子クー・フーリンである。

 

その圧倒的な神秘、肌にビリビリと感じる強大な強さを感じだ時臣は思わずニヤケてしまう。

 

「勝ったぞ。この戦い、私の勝利だ……!!」

 

 

 

 




槍ニキほんと好き

きのこははやくパーフェクト仕様な槍ニキ出して

槍ニキもはやく城とか戦車とか剣とか持ってきてホラホラ

2021/7/19 酔拳から八極拳に修正


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クー・フーリンは誰にも負けない…、世界で一番強いんだからっ!!(イリヤ並感)

幼女優雅「ずるーい! ズルイズルイズルイ! キリツグずっとズルしてた!」


「よう! サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。ま、気楽にやろうや、マスター」

 

狙った通りに最強のランサーを召喚しちまったよ……!

遠坂のうっかりとはこれでおさらばだな(フラグ)! それにしてもFGOそのままの召喚ボイスで感動もひとしお。

 

「よろしく頼みます、光の御子クー・フーリン殿。私は──」

「おいおい、殿なんて付けなくて良いぜ。オレは別に王侯貴族ってわけじゃあねぇからな。気楽に行こうや」

「え、ええ。わかりました。ではクー・フーリンと呼ばせて貰います。私は遠坂家第5代当主、遠坂時臣と言います」

「おう、よろしくな!」

 

クー・フーリンと握手できたのでこの手はもう洗いません(鋼鉄の決意)。そしてやっぱりクー・フーリン良いな(感動)。これはムーンセルで「兄貴になってほしい英霊」ナンバーワンになるのも頷ける親しみやすさに人懐っこさですね……。

政治にかまける陰険で陰湿な時計塔の魔術師とは大違いだぁ……少しは時計塔の魔術師たちも見習ったらどうですかね。

 

あ、でも時計塔のロードの中でも創造科学部長イノライ・バリュエレータ・アトロホルムとかは好きだよ。強キャラおばあちゃんとか強キャラおじいちゃんとか良いよね。柳生但馬守宗矩とか新宿のアーチャーとか好きよ。

 

てかいい加減 FGOは強キャラおばあちゃんサーヴァントを実装しろ(憤怒)。ヴィクトリア女王とかドイツの某"鉄の女"とか来ねぇかなぁ……。

 

イラノイは好きだけど、法政科の学部長バルトメロイ・ローレライと降霊の学部長ルフレウス・ヌァザレ・ユリフィスだけは駄目です。死徒憎し女は強烈な貴族主義者だし……第一魔法の使用者だけに敬意を表するらしいんだが、どうしたらあんな女が月姫2のヒロインになるんですかね……。ルフレウスに関しては極東の田舎貴族とかって見下してきやがって許さねぇ(激怒)。何がロードだ。こちとら優雅やぞ、 Fateの舞台装置やぞ!!

 

私は貴族らしく誰にだって礼儀正しいですけどね。その方が優雅やん。ああ、そういやクー・フーリンにも言っておかなきゃいけないことがあったわ。

 

「クー・フーリン。この聖杯戦争の創設者の一角、御三家の一つ遠坂家として貴方には聖杯戦争の仕組みについて言っておかなければならないことがあります。聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントが争い、六組を排除し最後に残った一組にのみ、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。これが聖杯戦争と言われています。しかし、これはあくまで表向きの聖杯戦争」

「……表向き、ねぇ」

「ええ。本来の聖杯戦争は魔術師が七騎分の魔力を持って穴を開けて根源へ赴く為のものなのです」

「七騎ってことは、勝った一騎のサーヴァントは自害でもさせられるってわけか、その為に作られた令呪で。よくできたシステムだな」

 

クー・フーリンの言う通りよくできたシステムだけど酷いシステムだわ、ホント。英霊は願いが叶えられると思ってるんだぜ? 態々人類史に貢献してきた過去の偉人を騙して呼び出してそれはないよな。

 

「その通りです。私は根源に行く気も聖杯にかける願いも特にありませんが、一応礼儀として説明しておかねばならないかなと思いまして」

「なるほどな。ま、オレは戦えるだけで良いし、聖杯にかける願いなんてねぇから問題ねぇんだが……良いな。気に入ったぜ、マスター。オレはどうやら当たりのマスターを引き当てたらしい。幸運のステータスも当てにならねぇもんだ」

「かのクー・フーリンに当たりのマスターと言っていただけるとは光栄ですね」

 

クー・フーリンに当たりって言われるとか心臓止まるかと思った(小並感)。今まで頑張ったこと全てが報われた感じがするわ。

 

 

☆☆☆

 

 

とりあえず、遠坂の屋敷の内部構造をクー・フーリンに把握してもらう為に案内しながらクー・フーリンと話をしたんだけど、このクー・フーリン、ただのクー・フーリンじゃないわ。いつも幸運Eで弄られたり、「ランサーが死んだ!」「この人でなし!」とかのネタで弄られてる槍ニキじゃない。

 

この光の御子、パーフェクトクー・フーリンだった。

 

突然だが説明しよう! パーフェクトクー・フーリンとは。

 

原作の聖杯戦争では知名度が低い日本で召喚されてしまったため能力が劣化してしまったが、Apocryphaの聖杯戦争のように、知名度が高い欧州が舞台だったのならヘラクレス、アーサー王クラスの存在になったらしい。

 

加えて、クー・フーリンの母国であるアイルランドで召喚されればパラメーターの上昇と城、戦車(チャリオット)の宝具に、スキル(不眠の加護)が追加されるとか。宝具を多く所持しているサーヴァントと同じようにランサーでありながら城と戦車の宝具を持ってこれるらしいのだ。

 

これが伝説に語られるパーフェクトクー・フーリンである。

 

今回私が召喚したクー・フーリンも、いつもの槍であるゲイ・ボルグはもちろん、クー・フーリンの城、馬二頭が引く戦車を宝具として持っていて、加えて剣も持ってきてるらしい。スキルも増えて、ステータスも上がっているとか。

 

もしかしてここアイルランドか何かか? なんでそんなパーフェクトな状態でクー・フーリンが召喚されたか全く理解できないんだけど嬉しさがヤバイな。

パーフェクトクー・フーリンが見れることが純粋に嬉しいし、聖杯戦争も勝ち確じゃん。

 

これはヤバイですね!

 

 

あの時臣さんの伝説のセリフ、『勝ったぞ綺礼。この戦い、我々の勝利だ!』って言いてえ気分だぜ……。まあ、言峰綺礼は弟子にとってないけど。だって弟子にとったら情が移って気を許しそうだし……私割と型月キャラの中では言峰綺礼好きな方だし……。言峰綺礼とクラウディア、カレンの言峰一家尊いので好きなんだよなぁ。でも正直現実に居たら関わりたくないよね。

 

あ、でも綺礼の父親の言峰璃正さんとは同盟結んでるよ。

 

やっぱり、聖堂教会とは力を合わせていた方が生存できる確率は上がるうえに私の父親と仲良かったからな。

しかも璃正さん自体は苦行によって悟りを目指す修道士で、深い信仰心を抱いている人物だから。型月でも数少ないまともな聖職者の一人だと個人的には思ってる。サイボーグ神父ハンザ・セルバンテスとか、ディーロ神父、強力な魔眼持ちのカラボー・フランプトンに並んで。

 

勿論、璃正さんとある程度仲良くなると綺礼の弟子入り話とかされたんだが、テキトーに凛の教育で忙しいとか理由付けて断ってたので、綺礼とはほとんど関わったことがない。

 

このまま上手くいけばアゾられずに済みそう(安堵)。

 

パーフェクトクー・フーリンを召喚できて、言峰綺礼にアゾられる心配もない。これ本当に勝ちなのでは。このまま今の勢いに乗って明日の夜、勝負を仕掛けに行った方がいいかもしれない。

 

 

 

 

 




クー・フーリンは良いぞ(聖杯捧げてます)

どうでも良いけど私の聖杯捧げてるサーヴァントはセイバーオルタ、柳生但馬守宗矩、槍ニキ、エレナママとインフェルノと李書文です


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光の御子vsヘラの栄光

誰もが寝静まった深夜── 。

極東日本の地方都市の冬木市の港湾区にある広大なコンテナターミナルにて膨大な戦意を撒き散らしている戦士がいた。

 

深夜であるため、明日の仕事や学校に備えて一般人たちは夢の中にいるから問題ないだろうが、この戦意を少しでも感じ取ってしまったらトラウマになるだろう戦意だ。

 

さあ、戦いだ、闘いだ、闘争だ!殺せるものならばかかってくるが良い!オレを殺せなければオレがお前を殺す。

 

こんな殺意と戦意を一般人が叩きつけられれば一生の心の傷になるのも道理であろう。何せクー・フーリンはガッッッ!!と士気を高める目的で叫んだだけで周りにいた人間が何十人も死んでしまったのだから。

 

そしてサーヴァントといえども、こんなあからさまな挑発に容易く乗りはしないだろう。故にクー・フーリンは手持ち無沙汰であったが──どんな罠があっても己の力でぐしゃりと、踏み潰す自信と結果がある高潔な武人がゆっくりとコンテナの陰から現れ、戦意をぶつけ返す。

 

現れたのは世界一有名であまりにも高名な英雄。

神々や数多の怪物を倒し、最後には神の座に至った最強の男。

そう、ギリシャ神話の頂点に燦然と煌く男──大英雄ヘラクレス。

 

圧倒的な戦意と戦意。今にも地面が割れそうな幻覚さえ見えるほどの戦意で空間がギチギチと歪んだ。好敵手を見つけたアイルランドの大英雄とギリシャの大英雄はお互いに笑みを浮かべながら闘争を始める。

 

クー・フーリンはランサーという最速のクラスらしく己の卓越した敏捷性で一瞬の隙にヘラクレスの懐に入る。しかし、ヘラクレスは回避の動作すら見せない。

 

「シッ───!」

 

クー・フーリンの槍による必殺の連続の突きがヘラクレスに刺さったかに見えた。しかし、その最速の連撃はヘラクレスが体に掛けている異質な布によって一ミリもダメージを与えられていない。

 

攻撃が失敗したことを攻撃を放った直後すぐに悟ったクー・フーリンは一時身を引くために後ろに飛ぼうとするがヘラクレスはそれを許さない。即座にクー・フーリンをかち割ろうと巨大な石斧を叩き付けた。

 

「チィッ!」

 

クー・フーリンは己に迫る速さに避けるのは不可能だと判断し、逃げようとした体勢を立て直さんと槍を地面に突き刺した。そして逃げるための勢いを槍を起点にして回転することで殺し──開いた片手に淡く光り輝く剣を出現させて迎え撃つ。

 

ギィィィィン……!!

 

斧と剣がぶつかり合っただけとは思えない爆音が冬木市の港湾区に響く。まるでジェット機のエンジン音のような爆音だ。

 

光り輝く剣と無骨な石斧の鍔迫り合い。どちらの英雄も巨大な力を持つ英雄である。その鍔迫り合いは無限に続くかと思われたが、突然力を強めたヘラクレスによりクーフーリンは体勢を崩した。なぜなら、ヘラクレスは筋力A+、クー・フーリンは筋力A。ヘラクレスは瞬間的にクーフーリン以上の力を発揮できるのだ。

 

クー・フーリンがぐらりと揺らぐのを見たヘラクレスは再び力を込めたが──クー・フーリンはその増大したヘラクレスの力をも利用して下からヘラクレスの顎を蹴り上げた。

 

ヘラクレスに一時の隙が生まれ、クー・フーリンはその隙に一瞬で距離を取った。

 

クー・フーリンは歓喜していた。まさかこの大男のような戦士とこの聖杯戦争で出会えるとは予想だにしていなかったからだ。

その高まり続ける戦意と歓喜と、興奮はクー・フーリンの体に変化を齎す。

 

身体は皮膚の下で回転し、髪の毛は頭から逆立った。

一つの眼は頭にのめり込み、もう1つの眼は頬に突き出る。

そして筋肉は巨大に膨れ上がり、今にも破裂しそうなほどだ。

 

そしてクー・フーリンは好敵手に敬意を込めて宝具を使わんと飛び上がり、魔力を魔槍ゲイ・ボルクに込めて全身の力を力動させる。

 

ヘラクレスもまた歓喜していた。ギリシャの頂点たる己に匹敵しうる戦士に。敵の"ねじれの発作"を見て敵の名前がクー・フーリンだと確信を得たヘラクレスは己も本気を出さねば負けると右腕に『戦神の軍帯(ゴッデス・オブ・ウォー)』を巻く。

それはギリシャ神話における軍神アレスの分体である軍章旗を帯の形に直したもので、ヘラクレスの宝具の一つ。

 

ヘラクレスはその宝具により神性と筋力、耐久、敏捷、魔力の値を大きく引き上げ、弓を取り出した。

 

其につがえるは百の首を持つという不死身の蛇──ヒュドラの猛毒を含む不死殺しの矢。生きたヒュドラに近づいた人間はその毒に肺が爛れて死に至り、その毒によりケイローンとヘラクレス本人という不死身の人間を二回も死に至らしめた魔矢。

 

ヘラクレス最強の宝具──ヒュドラの毒矢である。

 

ギリギリと己の強烈な力を持って弓を引く。加えて力を込めながらも、先ほどの宝具『戦神の軍帯(ゴッデス・オブ・ウォー)』の効果を発動させ、神気を矢に纏わせる。

 

その神の気は、並のサーヴァントならばかすれただけでも五体が砕け散るであろうほどの力。

それを最強宝具のヒュドラの毒矢に纏わせる。

ヘラクレスはクー・フーリンを真正面から打ち破る為に己の最大最高の一矢を放たんとしているのだ。

 

両者とも宝具を放たんと限界まで込められたその力を解放する。

 

 

突き穿つ(ゲイ)───』

不死殺しの(ヒュドラー)───』

 

 

真の名が解放され、宝具が放たれんとした瞬間。

 

 

突然真横から極大の閃光がコンテナを破壊しながら彼ら二人目掛けて飛んできた。

 

「ムッ!?」

「チィッ!」

 

ヘラクレスとクー・フーリンは即座に宝具の発動を停止し、極光の外に跳躍する。極光に込められた膨大な魔力はクー・フーリンとヘラクレスという大英雄をしても避けることを強要するものだったのだ。

 

なぜならその輝ける光の波は星に鍛えられた神造兵装にして数多ある聖剣の頂点に立つ聖剣の王から出た極光であったから。

 

そう、その剣の名は『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』。

 

地球という惑星を脅かす外敵の出現時にこそ真の力を発揮すると言われるこの剣を真名解放した時に放たれる究極の斬撃には、どんな英霊だろうと即死させる程の威力が備わっていた。

 

その究極の斬撃を放った下手人に対して、警戒を強めるヘラクレスとクー・フーリンの間にあるサーヴァントが降り立った。

 

降り立った人物こそはセイバー、アルトリア・ペンドラゴン───イギリスの誇る世に名高き円卓の騎士たちの王、騎士王であった。

 

 

 

 

 




輝ける彼の剣こそは

過去・現在・未来を通じ戦場に散ってゆく全ての兵たちが今際の際に懐く、哀しくも尊き夢

その意志を誇りと掲げその信義を貫けと糾し今常勝の王は高らかに手にとる奇跡の真名を謳う

其は・・・(唐突な不意打ち聖剣アイリポエム)

戦闘シーン難しい……難しくない?


2021/7/19 二騎の筋力A+とAに対する描写の修正


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二人の友

「まさか誰にも当たらないとは。不意打ちだったとはいえ、流石は光の御子とヘラの栄光といったところでしょうか。見積もりを誤りました」

 

もちろん不意打ちで簡単に倒せるとはアルトリアも思ってはいなかったが、2人同時に狙える絶好のチャンスを逃すほど馬鹿ではない。アルトリアは騎士道を大事にはするが、目的のためなら騎士道を捨てるほどの現実的、合理的な人物であった。

 

なぜなら合理的にならねばあのブリテンを王として治めることができなかったからだ。国は凶作が続き、軍を維持することもままならないのに、突如現れたピクト人や大陸から渡ってきたサクソン人の侵略に対応せねばならなかった。

彼らに対応する為に小さな村を干上がらせることで軍を維持させることなどはよくあること。

 

非常な判断をしなければ神秘が失われ続けるブリテンを、守ることなどできなかったのだ。彼女は伝説に謳われるように高潔な騎士でもあるが、時として現実的、合理的な判断をしなければならない王でもある。

 

「ハッ! かの騎士王サマに褒めてもらえるなんて光栄だな!」

 

クー・フーリンとヘラクレスは宝具を発動しようとしたことにより、アルトリアに真名が看板されていたが、アルトリアの真名もまた、ヘラクレスとクー・フーリンにバレていた。

 

先程の聖剣の輝きはあまりにも有名すぎるのだ。聖剣の頂点の輝きを見たならばある程度の知識を持つ者ならすぐに理解できるだろう。

 

「……とぼけても無駄なようですね。ええ、かつて私は騎士王と呼ばれていました」

 

クー・フーリン、アルトリア、ヘラクレス。彼らはただ会話をしているだけのように見えるが、3人が3人とも相当な実力者。一歩でも誰かが動いてこの均衡を崩せば、どうなるか分からない。お互いに相手の出方を窺う膠着状態となってしまっていた。

 

しかし突然その膠着状態が崩れる出来事が起こった。何者かの声が港湾区に響いたのだ。

 

「我を差し置いて王を自称する不埒者が現れるとは。嘆かわしいものだな。真の王たる英雄は天上天下に我唯一人、あとは有象無象の雑種に過ぎんというのに」

「ちょ、ちょっと!なんで今現れる必要があるんだよッ!」

 

 

3人の視点がその声をした方に向かう。視線の先には黄金とエメラルドで形成された空飛ぶ輝かしい船があった。そしてそこに存在するのは黄金の王。そう、人類最古の英雄たちの王。王の中の王たるギルガメッシュとその王に抗議するが頭を押さえつけられて黙殺されるマスターがその船に乗っていたのだ。

 

その傲岸不遜な態度を取ることが当たり前と言わんばかりの王の存在感は何故3人がいままで気づかなかったのか理解できないレベルであった(3人とも頭を押さえつけられているウェイバーのことはスルーした)。

 

「王を自称するもなにも、私は騎士王アーサー・ペンドラゴン当人なのですが……」

「たわけが。この我に対して同じことを二度も言わせようというのか?不愉快だな、雑種!」

 

眉を顰めたギルガメッシュは己の宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を発動し、自身の背後に黄金の波紋を出現させる。

 

三人とも未知のサーヴァントの未知の攻撃に対して警戒するが──ギルガメッシュはいつまで経っても攻撃を開始しない。

 

「……いや、特別に今は不問に付そう。それよりも……今ここにいるのだろう!友よ!」

 

何故がギルガメッシュは思いとどまり、ここにはいない誰かに向けて声を上げた。その言葉に反応するかのように、大気が揺れる。

 

「⬛︎■⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎───ッ!!!」

 

怪物のような声がその場に響き渡る。この場にいる全てのサーヴァント、全ての大英雄たちを超える強大な霊器を持つ泥の獣がその場に降り立った。その姿を見てギルガメッシュは哄笑する。

 

「フ、フハハハハハハハッ!まさか生まれた当初の姿で相見えようとは!」

 

そう、彼はギルガメッシュの親友にして天の鎖──エルキドゥ。

しかし、そこに現れたのは聖娼シャムハトの姿を真似た人型ではなかった。シャムハトに出会う前の、神々に作られたばかりの頃の泥の獣の姿。理性も知性も持たない神霊クラスの化け物の姿であった。

 

ギルガメッシュの声により現れたエルキドゥはギルガメッシュに対して大地を槍や剣、弓など千差万別の武具を大地から作り出し、変形させて放つ。ギルガメッシュもそれに応じるように自らの蔵から数多の宝具を発射するが──基本出力が違う。圧倒的なエルキドゥの手数にギルガメッシュは幾らか対処しきれずに己の身にエルキドゥの攻撃を近づかれてしまう。しかし、その攻撃をギルガメッシュは空飛ぶ船ヴィマーナに搭載された自動防御宝具を使い防ぐ。

 

攻撃を仕掛けた当人のエルキドゥはギルガメッシュと撃ち合いをしているが、他の三人にも攻撃を仕掛けていた。エルキドゥにはかのギルガメッシュと戦いながらも他の三人にも攻撃を仕掛ける余裕があるというのだ。

 

彼ら三人は各々飛んでくる宝具を剣や槍で弾き、対処する。三人を持ってしても対処するのが精一杯のエルキドゥの攻撃。流石は神霊クラスといったところであった。

 

気分が乗ったギルガメッシュはエルキドゥと撃ち合いながらも蔵からあるものを取り出す。

 

英雄王が蔵から取り出し、手に持ちたるは円柱状の刀身を持つ突撃槍のような形状の異形の剣。宇宙を表しているその剣の名は乖離剣。剣という名前を持つが武器として生み出されたわけではないその神造兵器の三つの石版がそれぞれ別方向に回転し出す。その回転により発生する強大な力場に他の三人は気付くものの、エルキドゥの攻撃により退避が難しい。

 

そして遂に、高まり続けたそれが放たれる。

 

「さあ行くぞ、我が友よ!受け止めて見せよ! 『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』ッ──!」

 

圧縮され鬩ぎ合う暴風の断層が起こり、擬似的な時空断層が現れた。

その一撃は混沌とした世界から天地を分けた究極のもの、“世界を切り裂いた”剣撃。

 

その剣撃を放った友たるギルガメッシュに呼応するように理性もなく、狂化されているはずのエルキドゥも宝具を使用する。

そう、それは『人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)』。

エルキドゥ自身を一つの神造兵装と化す宝具であり、"抑止力”を自身に流し込み撃ち放つ、天地を貫く巨大な光の槍となり、対象を繋ぎ止める宝具である。

 

二つの全力の"エヌマ・エリシュ"が衝突する。

 

まるで世界が崩壊したかのような光景だった。世界の終末──ラグナロクのような。

 

 

 

 

 






使い魔で見ていたその頃のトッキー「アイエエエエ!? 英雄王!?英雄王ナンデ!?何故アーチャーが二人? ええ?バーサーカーのエルキドゥ(白目)?」



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効いたよね、早めのアヴァロン♪

二つのエヌマ・エリシュがぶつかり合い、莫大な破壊が周りに広がっていく。

 

アルトリアは二つの攻撃が放たれた直後、すぐさま防御の為にある宝具を取り出した。

 

「『全て遠き理想郷(アヴァロン)』──」

 

アルトリアがその宝具の真名解放をすると、持っていた鞘が数百のパーツに分解してアルトリアの周囲に展開される。

この鞘は、世界では無い妖精郷に自分を隠すことであらゆる攻撃・交信をシャットアウトして対象者を守る宝具。聖剣をも上回る騎士王最強の宝具である。

 

一方、クー・フーリンは最速の名に恥じぬ速度でとにかく離れようとする。そしてかなりの距離を取ったが二つの宝具の衝突は強大であり、その余波の規模は大きくクー・フーリンでも逃げきれなかった。ここで終わりかと思われたが、しかし──クー・フーリンにはまだ手があった。

 

「クソッ、仕方ねぇ……『戦士の大城(クー・フーリン・カスラーン)』ッ!」

 

突然、クー・フーリンを中心に巨大な城郭が構築される。クー・フーリンが住んでいたとされるアイルランドの城が現れたのだ。

 

そして勿論ヘラクレスもクー・フーリンと同様に跳躍して距離を稼ぐ。しかし、アルトリアやクー・フーリンと違ってヘラクレスは防御宝具を持っていない。故にできるだけ多くのコンテナの後ろに回り、石斧と剣を顕現させて、自身の前にガチリとクロスさせて突き立てた。

 

三者とも、お互いできるだけの方法を使用して防御を固めたのだ。そしてその防御を瞬時に固めた彼らにも宝具の衝突の余波が訪れる。

 

二人の宝具の撃ち合いで多少相殺されてるとはいえ、世界が断裂するほどの攻撃の余波が。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

時臣視点

☆☆☆

 

 

………は?????

 

いやいやいや、初手エヌマエリシュとか色々突っ込みたいことあるんだけど、まずなんでアチャクレスいるん?

 

あんなの勝てるわけないじゃん、誰だよ召喚したの。絶対許さん(激おこ)。めちゃくちゃ燃費悪そうだが、まあアインツベルンならホムンクルスを魔力タンクにできるし、ケイネスさんならロードだからまあ大丈夫か。ロード・エルメロイII世みたいなへっぽこロードとは違って普通のロードは本当に化け物揃いだからな。それくらい余裕だろう。

 

そういえばエルメロイで思い出したけど、ウェイバーはギルガメッシュを召喚してたが、アーチャーがヘラクレスならなんでギルガメッシュがいるんだ?まさかバビロニアみたいにキャスターになっているんだろうか。いや、あのギルガメッシュのことだから「我になれないクラスなぞないわ、たわけ」とか言いそうだし、実際なんでもできるからなぁ……。キャスター以外のクラスの可能性もある。

 

ええと、とりあえず整理しよう。

まず、セイバーが騎士王アルトリア・ペンドラゴンで、鞘持ち。

なんでこいつ鞘持ってるんだ。生きてるから持ってこれないんじゃないんか???

 

アーチャーがギリシャの大英雄ヘラクレス。無理ゲーかな?

 

ランサーは光の御子クー・フーリン、パーフェクト仕様。強い(確信)。

 

ライダーは不明。

 

アサシンも不明。

 

キャスターはワンチャン、英雄王ギルガメッシュ? 友が一緒に召喚されてるのでテンション上がってるし、これクソゲーや。

 

バーサーカーは天の鎖エルキドゥ。なおランサーの状態でも強いのにバーサーカーで召喚されたため神霊クラスの最強泥人形な模様。なんで神霊クラスが聖杯戦争で呼ばれてるんですかね……帰ってくださいお願いしますから()

 

 

うーん、頭が痛いですね……。これもはや最強決定戦みたいな感じでキングハサンとかこねぇかな(やけくそ)。

 

 

マスターについては、ウェイバーがギルガメッシュってことは確定したな。原作だと衛宮切嗣はアルトリアだけど、今回はどうなっていることやら。監視カメラ(地主の特権)と使い魔で街をくまなく監視してるんだけど衛宮切嗣は警戒してるのかぜんぜん捉えてられないんだよね。これもうテレビ局とかの昔の知り合い探してもらう番組とかで探してもらった方がいいのでは……。

 

なお、ケイネス先生は奥さんのソラウと一緒に冬木に入ってくるのを目撃したぜ。まあそれ以来見かけないんだけどな。ケイネス先生はかませに見えてめちゃくちゃ優秀なので、こちらも警戒しているのかもしれん。原作でかませっぽくなっちゃったのは、まじでケイネス先生に対して衛宮切嗣が致命的に天敵だっただけだから……。

 

ケイネス先生が生き残ってる世界線欲しい……欲しくない?

なんかどの世界線でも死んだりしてウェイバーがロード・エルメロイII世になってるみたいだし。頼むからウェイバーとケイネス二人とも生きて仲良くやる世界線をきのこ書いて(叶わぬ夢)。

 

ゾォルケンとかいうクソ虫も特に外出する様子はないんだが、こいつほんと何企んでるかわからんからな。安心できん。

 

他にも第四次に介入しかけたフランチェスカ・プレラーティとかいうやべーやつの動向も全く掴めないし、正直お手上げですね……。

 

あ、麻婆神父に関してはずっと監視してるけど特に動く様子はないし、しかも驚くことにどうやらマスターですらないらしい。令呪もないし、召喚した魔術的痕跡も見当たらない。

 

………よし。

とりあえず、今のところはクー・フーリンが帰ってくるのを待って、傷を癒してから作戦を考えよう(思考放棄)。

 

ん?璃正さんから連絡が来たぞ。定時連絡の時でもないのになんなんだろうか。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

「あ。目が覚めた? ちょうど良かった。今から作品を作ろうと思うんだけど是非君に見てもらいたいんだよね。コトネちゃんも見たいだろうし」

「……!」

 

優男風の青年に優しく語りかけられたコトネは自分の今の状況に混乱していた。体を縛られ猿轡もされて、声も出せないし体も動かせない。そして、住みなれた自分の家のはずなのに──もはや別ものと言ってもいい血だらけの自分の家。

横を見れば血まみれになって倒れている両親の姿が見える。

 

優男は突然そんなコトネの両親を躊躇うことなく持っていた包丁で解体し始めた。鼻歌交じりに。

 

皮膚を剥がされ、腕、足、眼球、内蔵。

 

全て壊されていく。

 

コトネの視界を埋め尽くす赤、赤、赤。真っ赤な血とかつてヒトガタだったものの中身。

 

そして態々この優男はコトネの目の前にその中身を持ってきてニヤニヤと笑いながら随分楽しそうに見せるのだ。

コトネは恐怖と絶望と悲しみとでどうにかなりそうだった。生暖かい物が股の当たりを濡らし、辺りに広がる真っ赤な液体と交じり合う。

 

そしてどれくらい時がたっただろうか。コトネにはわからなかったが、優男は遂に作品を完成させていた。

己の芸術性、哲学性を存分に込めた作品──人間オルガンを。

 

「は、はは。できた!できたよ、コトネちゃん!!君のお父さんお母さんのおかげだ、ありがとう!」

 

異様にはしゃいで夫婦の人間オルガンを見せてくる優男。コトネが全てに諦めてなんの反応も返さないでいると、突然コトネの腕を両断せんとなんども、なんども切りつけてきた。

 

あまりの苦痛にコトネは目を見開き、口を猿轡で塞がれてるというのに絶叫した。優男はその悲鳴を無視して、両断した腕から流れ出る天然の赤のインクを使ってコトネを中心になんらかの絵を描き始める。

 

痛みに悶えるコトネにはわからなかったが、それは俗に言う魔法陣のような物であった。魔法陣を描き終わった優男はコトネに近づいてきてまた脈絡のないことを語りかけてくる。

 

「今から悪魔を召喚するんだけど、君はその生贄ね。ほんとはオルガンとか椅子とかにしようと思ったんだけどさぁ……前家の蔵漁った時に悪魔の召喚書みたいなの見つけてさ。これは確かめてみるしかないじゃん?」

 

そして、軽い調子で優男はブツブツと召喚の呪文みたいなものを唱え始めた。

 

 

すると驚くことに、成功したのか眩い光が辺りを満たし───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死がそこに存在していた。

 

 

 

 

 



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深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ(適当)

今回は短め


優男── 雨生龍之介は召喚されたサーヴァントにより、生まれて初めて"本物の死"を理解できた。暗殺者の深淵。死を齎す者。それらを体現するサーヴァントに対して、龍之介は生贄にと用意していたコトネを放置し、興奮しながらそのサーヴァントに話しかける。

 

「COOOOOL!!!最高だ、超COOLだよ悪魔サン!たった今、俺はアンタに魅せられたんだ!アンタについて行って、アンタの殺し方をもっと見た─────」

 

興奮しながら話しかけた龍之介は途中で言葉を止めた。気づかぬ間に体を両断されていたことに気づいたのだ。コトネも、龍之介もサーヴァントが持っている巨大な剣が振るわれたことを一切認識できなかった。召喚されたサーヴァントは、召喚された時と一切変わらず格好のまま、動いていない。

 

ブシュウゥッ!っと龍之介の体から血が吹き出し、龍之介が崩れ落ちる。

 

──ああ、これが死。やっ、と理解できた……。

 

龍之介は遠のいていく意識の中ようやく死を得ることができ、加えてその死を与えた者が死の体現者であったことに感謝し、その一生を終えた。

龍之介という悪夢をもたらした殺人鬼がようやく消えたことで安心したのか、コトネの両眼から涙がとめどなく流れてきた。

 

龍之介に死を齎した深淵の暗殺者は、未だ縛られたままの泣くコトネに目を向ける。

 

「山の翁、幽谷の淵より召喚に応じ姿を晒した」

 

その重く響く声を持つ、大角の付いた髑髏の仮面、胸部に髑髏をあしらった甲冑を身につけた恐ろしい姿を持った死を纏う者がコトネには自分を救いにきてくれたヒーローにしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

爆弾が何発も落とされたかのような、巨大な爆心地が冬木の港湾区にできていた。警察や、自衛隊に規制されたため、メディアがなんとか撮影しようとしているその巨大な爆心地がある港湾区を、二人の男が歩いていた。調査している警察や、自衛隊は規制しているはずなのに入り込んでいる部外者であるその二人の姿を見ても、一切注意しない。そもそも見えていないように反応すら誰もしていない。

 

その二人とは、20代程に見える若い風貌を持った理知的で、穏やかに見える青年マリスビリー・アニムスフィアと、マリスビリーの友にして三つ編みに結ばれた髪を持つ魔術王ソロモンの二人だ。

 

マリスビリーは時計塔の一二人いるロードの一人であり、天文学科を束ねているロード。魔術師らしからぬ燃えるような人類愛と信念を持ち、魔術師らしく冷血で、冷徹で人間の倫理が欠けているような人物とソロモンは彼のことを思っている。

そしてそのソロモンは言わずと知れた魔術の祖。その死と同時に神秘の衰退が加速したとも言われていて、人物的にはやや気概が足りないという欠点があるが、賢さ、優しさと愛を待ち合わせて全ての人々に敬愛された偉大なる国王である。

 

「どうやら私たちが冬木に来る前から戦闘が行われていたようだね」

「ああ、そのようだ。しかし、妙だな……」

 

首を傾げるソロモンに対し、マリスビリーは何か気になる痕跡でも見つけたのか、と問いかけた。ソロモンは首を横に振って否定する。

 

「いや、これほど大きな被害をもたらした戦闘が、どのような戦いだったか過去を見ようとしたんだが……何者かに私の千里眼が妨害されているようだ」

 

マリスビリーはソロモン王の千里眼を妨害できる何者かがいることに驚愕する。なぜならソロモンの固有スキルである「ソロモンの指輪」は十の指輪が揃っていると、人類が行う全ての魔術を無効化し、また配下に納める能力を持っているからだ。

 

とてもじゃないがソロモンの千里眼による過去視と未来視を邪魔することは不可能と言っていい。

 

事前に時計塔の現代魔術科の学部長、ドクター・ハートレスとマリスビリーが協力して参加者や聖杯戦争の情報を探った時に得たある程度信頼できる情報は幾つかある。

 

あの法政科のロードに喧嘩をふっかけたと噂される遠坂時臣の参加。まあ、これは遠坂時臣は御三家の一角遠坂家の当主なのだが当たり前の情報だが。

アインツベルンがフリーの魔術使い"魔術師殺し"を雇い入れたこと。

時計塔きっての若き天才、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが英雄王の触媒を収集していたこと。

 

第三次ではナチスや帝国陸軍、アメリカ、御三家やその他外来の魔術師など様々な勢力の絡んだ戦争が起こったこと。そして、再びアメリカが秘密裏にこの聖杯戦争に介入しようとしていることなどなど、多岐に渡る。

 

持っている情報の中で多少なりとも可能性があるとすれば。この世全ての財を持つという英雄王の妨害だろう。槍や剣、弓、盾に船、果ては酒や聖杯まで多岐に渡る宝具を持つ英雄王ならば、ソロモン王の指輪能力を掻い潜って千里眼のスキルを妨害することも不可能ではあるまい。

 

──もしくは。マリスビリーは別の可能性も思い至った。

 

誰かの妨害というわけではなく、この冬木という場所が、過去や未来などというモノが見れないほどの不安定さを持つ特異点だとしたら。

 

千里眼が機能しないこともあり得るのではないか、と。

 

 

 




一応整理

セイバー*騎士王(鞘持ち)
……マスター:?

ランサー*光の御子(パーフェクト仕様)
……マスター:時臣

アーチャー*ギリシャの大英雄
……マスター:?

ライダー*英雄王(友がいるので慢心なし、やる気もりもり)
……マスター:ウェイバー

アサシン*初代山の翁
……マスター:コトネ

キャスター*魔術王
……マスター:マリスビリー

バーサーカー*天の鎖
……マスター:?


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普通の聖杯戦争、一度も行われたことがない説

生存報告

鉱石病患者を治療したり、うまぴょいしたり、七柱の神を探したり、厄災ガノンに立ち向かったりしてました。許してください


☆☆☆

時臣視点

☆☆☆

 

冬木教会。新都郊外の丘の上にある教会に私はランサーを連れ秘密裏に訪れ、璃正さんに会いに来ていた。

 

「璃正さん、定期連絡の時間ではないはずですが……どうしたのですか? ましてや今すぐ教会に来てくれなど……今この状況で教会に出入りするのは厳しいので控えると話したではないですか」

「申し訳ないが時臣くん、それどころではないのだ。私でも理解が及ばない事態が生じている」

 

あのナチスやら旧日本軍やらアメリカやらが関わった第三次聖杯戦争の監督役を務めた璃正さんの理解の及ばない事態???

え、どういうことだ……?

 

「簡潔に言えば、霊器盤に異常が発生した。新たに7騎のサーヴァントの召喚が確認されたのだ」

「新たに7騎……!?まさか、大聖杯の予備システムが起動したのでしょうか」

「おそらくそうだろうが……アレはマスターが徒党を組んで聖杯戦争が立ち行かなくなった時のためのもののはず。なんらかの誤作動が起こってしまったのかもしれん」

 

え、マジで何?この世界zeroの世界じゃなくてApocryphaの世界だったのか(錯乱)。

そんな風に璃正さんと頭を抱えていると、ノックの音が響く。璃正さんが入室を許すと、麻婆神父が部屋に入ってきた。傍にロムルス・クィリヌスを連れて。

 

 

…は??????(宇宙猫顔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

璃正が霊器盤の異常に気づいたその時、冬木市の各地で新たなサーヴァントが次々に召喚されていた。冬木市には既にマスターである御三家やアーチボルト家、アニムスフィア家以外に様々な魔術師や魔術使いが聖杯を狙い侵入している。

 

今現在必死に逃げている銀狼を追いかけている魔術師もその1人であった。彼はただのサーヴァントを呼ぶ気など無く、エジプトで神となった者たちを呼ぶべきだと考えていた。それまでの聖杯戦争の話を聞き、平凡なサーヴァントでは勝ち抜けないと思ったからだ。

 

故に、創造した銀狼の合成獣(キメラ)を触媒に召喚しようとしたのだが──何の因果か、そのキメラに令呪が宿ってしまった。

 

そのため、銀狼は激怒した魔術師に追われているわけだが、銀狼はその魔術師には敵意も何もない。ただ単に殺されそうだから逃げているだけ。生きたいという普通の渇望で逃げているのだ。

 

しかし、所詮はキメラであり、相手はその創造主だ。癖も能力も把握されており遂には追い詰められてしまう。

 

怒り狂う魔術師に痛めつけられながらも抵抗し、逃げようともがき、咆哮する。その咆哮を最後にこの世から去るはずだったが──突然光と共に現れた褐色の肌を持ち、黄金の鎧を一部に纏った男がその攻撃を防いでいた。

 

「余のマスターを誅せんとするとは……万死に値するぞ、貴様ッ!」

「なッ、お前は……!?サーヴァントか!この土壇場でサーヴァントを召喚するだと!?だが使い魔風情に邪魔される私では……ギャアアァァッ!」

 

突如現れた黄金の男──ファラオを排除しようと魔術師の男は魔力を通しシングルアクションの魔術を発動せんとしたが、魔力を通そうとした瞬間、部分的に空間から出現した箱舟の舳先からの放射光で焼きつくされた。

 

消し炭になった魔術師を横目にファラオは此度のマスターを抱き上げ、ネフェルタリの物を探すが全く見つからないという事態に困惑する。何故なら彼はネフェルタリゆかりの品でなければ召喚することが叶わないからだ。彼───神王オジマンディアスゆかりの品物、例えば彼自身のミイラや石板を触媒にしたとて召喚することはできないのだ。故にオジマンディアスが召喚された場合、ネフェルタリの触媒か縁による召喚になる。

 

つまり、ネフェルタリの触媒がない今回は銀狼のキメラによる縁召喚で呼ばれたことになるのだ。オジマンディアスは銀狼をチラリと一瞥した。

 

「ふむ……人ならざる者がマスターとは。それに、この太陽の化身の気配……おそらく他のファラオが召喚されたか。此度は中々愉快な聖杯戦争になりそうではないか」

 




神王と神祖のエントリーで風呂敷を広げていくスタイル(馬鹿)


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残党の蠢動

聖杯戦争開催中であるにも関わらず冬木市ではなく、その隣のとある市に一人の人間と二人のマスターが潜伏していた。

 

そのうちの一人、修道服と赤い外套を身に纏う白髪の褐色肌の青年が口を開く。

 

「セミラミス──アサシンが宝具の準備詠唱に取り掛かりました」

「準備が早いな。しかし、彼女の宝具は時間と手間がかかり過ぎる。やはりアーチボルト家かアニムスフィア家あたりから令呪を奪って通常の七騎で召喚しておくべきだったと私は思うがね」

 

既に滅びたはずの第三帝国の軍服に身を包んだちょび髭の男が攻めるような視線を修道服の青年に向ける。

しかし、それを庇うように紳士然とした男が述べた。

 

「いや、それは難しいと言わざるを得ません、総統(フューラー)。アニムスフィア家もアーチボルト家も共に時計塔のロード。いくらヘルト・クリーガーがあると言っても下手に藪をつついて蛇を出してしまっては大きな損失を受ける可能性が高いと思われます」

「フム……君が言うならばそうなのだろう。残念ながら私は魔術に詳しくはない。私の役目は私の聖杯を返してもらうことであって、魔術組織対策は君たちに一任しているからな。ところでその対策は順調かね?」

「ええ、順調です。時計塔への対応はダーニックが。聖堂教会への対応は私が行っていますが、どちらも順調といえるでしょう。聖堂教会は今冬木市にいる人員はそのままですが、それ以上に派遣しないことを確約してくれましたし、時計塔の方もダーニックの処理により新たに七騎を召喚する計画など、騒動を知るのは聖杯戦争が終わってからになるでしょう」

 

第二次世界大戦でとっくの昔に死んだはずのちょび髭の男──総統(フューラー)と呼ばれた男は修道服の男の報告に満足げに頷く。

 

「うむ、素晴らしい。しかしまあ、時計塔と聖堂教会の動きがわかったとなると新たな七騎を召喚する為の協力者達──自衛隊とアメリカの動向が気になるな。自衛隊の陸将補の不気味さも気になるが、特にアメリカだ。魔術的後進国といえども今はあの国の魔術的なバックにプレラーティがいる」

「では、私とセイバーで彼らに対し一度仕掛けてみましょうか?私のサーヴァント……太閤殿下(ロード)ならばどのようなサーヴァントでも負けることもないでしょう」

「そうだな。一当たりしてみてくれ。ああ、それとヘルト・クリーガーに関してはまだ温存しておきたいから連れていくな。もっと敵戦力の全貌がわかった時に運用したい」

了解(ヤヴォール)!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

衛宮切嗣とセイバーが次の戦略を話し合っているところにアイリスフィールが突然駆け込んできた。切嗣は彼女の尋常じゃない様子に戸惑いながら声をかける。

「どうしたんだい、アイリ。突然…」

「ねえ、切嗣!もう既に七騎が召喚されているはずよね?」

「ああそうだ。僕が召喚したセイバー。ロードから触媒を奪った狡猾なウェイバー・ベルベットが召喚した英雄王ギルガメッシュ。その友のエルキドゥ。そしておそらくランサーのクーフーリンとクラスは不明だがヘラクレス。6騎も召喚されていると考えると神殿を作る準備がいるから一番最後に召喚する馬鹿はいないだろうキャスターも所在不明ではあるが、既に召喚されていると見ていい。となると既に七騎は召喚されているね」

 

切嗣の発言にアイリスフィールは頭を押さえてふらつき倒れかけた。切嗣とセイバーはアイリスフィールに何かあったのかと慌てて近づき、支える。

 

「大丈夫ですかアイリ!」

「ええ、大丈夫よセイバー。とんでもない事実に眩暈がしただけだから……」

 

アイリスフィールを支えた時に切嗣は偶然さっきまで袖に隠れていた彼女の手の甲にあるものを見つけてしまった。そしてアイリスフィールの言うとんでもない事実。七騎は既に召喚済みかという質問。以上の事実から切嗣は聖杯戦争にかつてないほどの異常事態が発生していることに気づく。

 

「アイリ。その手の甲の令呪は……もしかしてそう言うことかい」

「ええ。おそらく。何故かわからないけれど、大聖杯によって新たに7騎が召喚されたわ」

 




冬木市「私の中で第二次世界大戦の続きしないで」

遠坂家+聖堂教会(冬木市の人員のみ)
アインツベルン
アニムスフィア家
アーチボルト家
ウェイバー・ベルベット
ナチス残党
自衛隊
アメリカ
銀狼
コトネ

今現状判明してる勢力はこんな感じです……もう勝手に戦え!(エイリアンvsアバター)
ちなみに陸将補はもちろん原作キャラです。組織も階級も微妙に違いますけど。


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New Glory

 

 

 

 

冬木市新都に不自然にも白人たちが集まっているビルがあった。彼らの中には銃の形態が許可されていない日本の都市に居るのに銃を携帯している者もいた。

白と黒のゴシックロリータを着た10代の少女──銃を持った厳つい人間の集まりには似合わない少女が水晶玉を覗き込んで愉快そうに笑う。

 

「んーどのサーヴァントも真名を隠す気がないのかな?アハハハハハ!聖剣の中の聖剣、捩れの発作、ヒュドラ、泥の人形を友と呼ぶ自称真の王。ファラオは誰だかわからないけど……ファラオというと呪いで有名なツタンカーメンか、三大ピラミッドのクフ王、異端者アメンホテプ4世、建築王ラムセス2世、征服王配下のプトレマイオスとか……他にもいるけど誰だろうね?まあ誰にせよみーんなトップサーヴァントだから彼らのマスターから令呪もサーヴァントも奪わなければならない君は大変だね!」

 

「フランチェスカさん、貴女との契約が無ければ私がマスターになっていたはずなのですが……まあ我らが合衆国の為ならばなんでもやってみせますとも」

 

続けて水晶を覗き込みながら二十代半ばの青年、ファルデウス・ディオランドを揶揄うフランチェスカ・プレラーティ。

 

「でも私がいなきゃ冬木市の聖杯戦争に介入することすら難しかったでしょ?新大陸の新興国家にはそこまで魔術のノウハウは無いんだグガッッ!?」

「どうかしましたか、フランチェスカさん」

 

突然変な声を挙げて黙り込んだプレラーティをファルデウスが訝しむように見るとそこには血を流したプレラーティだったものと、プレラーティの手の令呪が消えていくことを確認している日輪を模した黄金を背負った男が居た。即座にファルデウスは周りにいた兵士にハンドサインを用いて指示を出し包囲、発砲するも、全て片手間で塞がれてしまう。

 

「ふむ、フランチェスカとやらはこの程度か。マスターから警戒すべき相手と言われていたからどんなものかと思っていたが……」

 

周りの兵士達を一刀の元で切り裂き、ファルデウスをも始末するために黄金の男が斬撃を放つ瞬間、ツノの生えた泥の人形が突然現れ黄金の男に殴りかかった。

 

エルキドゥの拳を黄金の男は手に持った刀で受け流す。もちろん黄金の男は武力で名を残したわけではなく、武器の扱いもそれほど得意ではないが戦国時代を生き抜き遂には日の本全てを統べる天下人にまで成り上がった男である。それ故にある程度の武の心得はあるため、バーサーカーで召喚された理性のない存在の攻撃ぐらいならばいなすこともできるのだ。

 

攻撃を受け流した黄金の男は何故か固定されている圧倒的な(7日目の)ステータスが豊臣秀吉という日本におけるトップレベルの知名度により強化された結果高まった暴力的なまでに規格外の筋力と速度で殴り返した。

 

「⬛︎⬛︎⬛︎■■■■■ッッ!!」

 

殴り返された結果高速で飛ばされてしまったエルキドゥはビルの壁を派手に破壊して外に出て落下していく。

豊臣秀吉は魔力消費が莫大な自分と同じ神霊クラスのバーサーカーがマスターであるフランチェスカを失った後の今の活動により、現界すら困難になると判断し合衆国魔術師の首魁たるファルデウスを今度こそ始末しようと刀を振り上げるが先ほどのエルキドゥの一撃により限界が来ていた刀の刀身が折れてしまう。

 

「儂の一期一振が……ヌウ!?」

「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎──!!!」

 

宝具ではないとはいえ自分の愛した刀が折れた事に気を取られた豊臣秀吉は落下した地面から跳躍して戻ってきた消えかけのエルキドゥの一撃をモロに喰らってしまった。秀吉が吹っ飛ばされている間にファルデウスは脱兎の如く別の拠点に向かって逃げ出す。

 

逃げ出すファルデウスを横目に見つつ、逆にビルの外に吹っ飛ばされる形になった秀吉は地面に落ちる前に隣の低いビルの屋上になんとか着地する。

 

武器を失った秀吉はエヌマエリシュの衝突のどさくさに紛れて英雄王から奪った宝物庫の財を取り出そうとするが、予想以上にしぶといがマスターを失い、なんらかのスキルか宝具でかろうじて耐えているように見えるもう消滅寸前の神霊バーサーカーなぞ手札を明かして倒すほどの存在でもないと考え直し、その場から撤退した。

 

そう、マスターが脱落すると令呪は大聖杯に回収されるため令呪は消失するのだ。プレラーティの令呪も消滅していることを秀吉は確認している。そのため現段階のエルキドゥははぐれサーヴァントだが、ファルデウスも撤退しているため新たに令呪が配られたとしてもマスターになり得る魔術師が近くにいない。よって再契約する暇もなくすぐに消滅すると秀吉は判断したのである。

 

 

 

 

 

 




秀吉実装してくれ(遺言)

一臨が木下藤吉郎、二臨が羽柴秀吉、三臨が豊臣秀吉でワンチャンいけないかね、某妖精騎士はスキルで再臨変えれるからそんな感じで(無茶振り)

最初の7騎
セイバー:騎士王 マスター:衛宮切嗣
ランサー:光の御子 マスター:遠坂時臣
アーチャー:ギリシャの大英雄 マスター:不明
ライダー:英雄王 マスター:ウェイバー・ベルベット
アサシン:初代山の翁 マスター:コトネ
キャスター:魔術王 マスター:マリスビリー・アニムスフィア
バーサーカー:泥の人形 マスター:フランチェスカ・プレラーティ(死亡)

新たな7騎
セイバー:日輪太閤 マスター: ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア
ランサー:帝国神祖 マスター:言峰綺礼
アーチャー:不明 マスター:不明
ライダー:太陽王 マスター:銀狼
アサシン:アッシリアの女帝 マスター:シロウ・コトミネ
キャスター:不明 マスター:不明
バーサーカー:不明 マスター:不明



なんか日刊ランキングみたら87位にこの小説がいて草生えた、ありがとうございます


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