DEMONSTER HUNTER (ウボァー)
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DEMONSTER HUNTER

 金属が軋む音が静かな森に響く。いや、軋む音ではない。擦れ合う音だ。

 音の主は獣ではない。人間でもない。では、一体何なのだろうか。その答えはすぐにわかるだろう。

 

 草木を踏み倒し、ソレはゆっくりと歩く。猪よりも、熊よりも大きな身体。巨体を支えるのはがしりとした太い脚。身体は青黒く厚みのある鱗に覆われ、その目は爛々と輝き飢えを満たせる獲物を探している。

 

 もしソレと出くわしたのならば、牙でもなく、爪でもなく。ある部分に目を奪われるだろう。身体の半分を占める長大な尾――いや、『刃』に。

 研ぎ澄まされたそれは一個の武器として完成され尽くしている。

 歩くとともに『刃』は揺れ、偶然にもそこにあった木はすぱりと切れた。断面に歪は無く、『刃』の鋭さを物語る。

 

 

 

 熱し、斬り、己の牙で磨き上げる。

 刀鍛冶であり、剣士である。

 そう、その名は――。

 

 

 

「あああぁぁああぁあ!? 何ダァお前はぁ!?」

 

 ある日の夜。闇の中、ソレは人影と出会った。

 辛うじて服と分かるようなぼろ切れを身に纏い、汚い声を上げるのは人に似た姿をしているが人ではない。人は口元に血をこびりつけたまま、夜に歩く事などないからだ。

 

 ――鬼。とある鬼を祖とし増えるモノ。人を喰らい、力を増し、また人を喰らう。日の光に当たると死んでしまうため、日の届かない場所や夜に活動する。

 鬼は問いかけたが、ソレは鬼ではないことは明白だ。ソレは人を喰らった事などないのだから。ソレが鬼と同列になど、なる筈もない。

 

「グゴォォオオオオオオオォォォッッ!!」

 

 吠えた。それは怒りであり、威嚇であり、開戦の合図でもある。青黒い巨体は鬼を真正面に睨みつける。

 

「ひっ――お、俺はなあ、この山で一番強えんだぞう! 鬼狩りだろうと食っちまえるんだぞう!」

 

 必死に強がろうとする鬼だが、完全に気圧されている。それを見て巨体は力を込めて後ろへと跳んだ。

 

「な、なんだあ? この俺にび、びびっちまったかぁ!?」

 

 それは逃げるための行為ではない。攻撃の為に距離を合わせるための行為だ。

 巨体がごぼり、と吐き出したソレは放物線を描き地面に落ちると――炸裂した。

 それの正体は尻尾を研いでこそぎ落とした欠片を、喉元の火炎嚢の熱で溶かしたもの。

 

 その攻撃は鬼に直撃はしなかった。だが、無傷と言うわけでもない。弾け飛んだ破片は鬼に突き刺さり、じゅうじゅうと音を立てて鬼の身体が溶け始める。

 

「ぎあぁああ!! 俺が! と、とけ」

 

 言葉の続きを鬼が喋ることはなかった。

 ぱっかりと真っ二つになったからだ。

 

 ほんの数秒。かの巨体は飛び上がり、その刃を落下とともに鬼目掛けて振り下ろした。炸裂した弾丸の影に隠れて動いていたために、鬼はソレの行動を見る事ができなかった。もし見れたとしても、身体が溶けていた事により回避は満足にできなかっただろうが。

 

「グゴォォオオオオオオオォォォッッ!!」

 

 再び響く咆哮。今度は勝利を知らしめるものだ。

 朝日に照らされはっきりと見えたその姿は、力強く生きる命そのものだった。

 

 

 

 熱し、斬り、己の牙で磨き上げる。

 刀鍛冶であり、剣士である。

 そう、彼こそは陽光山で産まれた故に猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石を帯びた『刃』を持つ特異個体。

 

 

 

 ――その名を呼ぶとするならば『陽光煌くディノバルド』。

 

 

 

「(何こいつ怖……急に叫んだし……ハンターほどの強度なかったけど何これ? 溶けるって何? 俺の尻尾とかブレスそこまで破壊力あったっけ、えっ怖いんだけど)」

 

 ……に、なってしまった人間のお話である。





転生したけど昔の記憶そこまでない。猪肉うめ。精神は人間に近いけど人間じゃない。熊肉うめうめ。原作知識なんてなかった、いいね? 鬼は殺すべし。
通常時は人間強め、戦闘時はディノバルド強めになる。
鬼を狩る理由は「行く先々で飯の邪魔されてムカついたし、頑丈な試し切りできる相手が欲しかったから」
……お前頭ガルルガかよ(偏見)

Q.なんでこいつ陽光山じゃなくてそこから離れた森にいるの?
A.陽光山、日当たりが良すぎて寝れないの。


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怪物の始まり

投稿してから一日しか経ってないのに感想、評価ありがとうございます!
需要あるんですね、鬼滅×モンハン。


 ――雲一つない晴空の下、怪物は生まれた。

 

 

 我輩はディノバルドである。前世は人間であったが名前は忘れた。最期がどうだったのかもあやふやだ。だが、人生改めディノバルド生の始まりは卵の殻を破ってがおーと吠えた時だというのは覚えている。

 

 周りを見渡しても見えるのは石ばかり。ディノバルドの父も母もいなかった。育児放棄はよろしくないが、もしかしたらモンスター的にはコレが普通の子育て方法なのかもしれない。

 

 つまり、生きるか、死ぬか。

 

 強ければ生き、弱ければ死ぬ。狩りができるか。強者から逃げ切れるか。ディノバルドの本能がどうすべきかを何となくで示してくれたのがせめてもの救いだろう。

 

 

 生まれて初めて食したのは自身の卵の殻だった。無駄に硬いそれの味もよくわからないまま、必死に食らいついていた。何でもいいから何か口に入れなければ、とがむしゃらに。

 ……何が栄養になるのかさっぱりだが、とりあえず腹は満たせた。この行動を異常だ、と人間は思うのだろう。俺も前世は人間だけだったから、そのぐらいはまだ分かる。

 だが、俺はその時、これについて何の疑問も抱かなかった。思ったのは「次はもっとおいしいものが食べたいなあ」という、実に怪物じみたものだった。今思い返すともうちょっとマシな食べ物探しにいけよ、とは思う。

 

 

 ――ゆっくりと大地を踏みしめ、怪物は動き出した。

 

 

 腹が減ったら小鳥だか兎だかを喰らって腹を満たした。生まれたてほやほやディノバルドでは大きな獲物は早すぎる。逆に食べられる可能性が大きいからだ。確実に成長せねばならぬ、と人間としてもディノバルドとしても意見は一致した。

 

 岩盤に尻尾を擦り付けてごりごり尻尾削って鋭くして、牙を使って削り、細部を整える。これは毎日の習慣である。そこらじゅうに尻尾でつけた傷は縄張りの主張にもなる。ここにはこんなところに傷をつけられる大きな生き物がいるんだ、と。

 

 

 ――怪物は、慢性的な寝不足であった。

 

 

 寝れない。この山ずっと日が出てるから眩しくて寝れない。寝れたとしてもほんのちょびっとだけだ。

 ……よし! 縄張りの中心をこの山にして、寝る時は他の所行くか!

 にく! にく! たべる! とりうさぎしかきつねいのししくまー!!

 

 

 

 

 ある者は陽光山で奇妙な音を聞いたという。金属の擦れる音。削れる音。山の中でどうしてかは分からない。常に日が差している陽光山に鬼がいるわけもなく。

 

 ある者は日輪刀の元となる砂鉄と鉱石を採りに行った時、大きな傷跡を見たという。とうてい人の手の届く高さではない位置に付けられた跡は、刀で切りつけたようなものだという。

 

 日毎に、月毎に、年毎に。音と傷は大きくなっていった。分からない、というのは人の不安を煽る。陽光山には鬼よりも大きい、恐ろしい何かがいる。出会ったら最後、命は無い。そんな風に話が広がっていくのも仕方がないだろう。

 日輪刀の材料集めに陽光山へと足を運ぶ者は一人、また一人と減っていった。

 

 

 そんなある日。陽光山へ出向いた勇気ある一人の刀鍛冶が、偶然、それを見た。

 

 

「なんだぁ、ありゃあ」

 

「鬼じゃねえ」

 

「尾が日輪刀と同じになってやがる」

 

「地面に擦り付けて、色が――ッ!?」

 

「ああ。綺麗だ。なんて綺麗なんだ」

 

「あれを使えたらきっと、緋色の色変わりの刀になるかもしれねえ」

 

「いや、かも、じゃねえ。なる。絶対に」

 

「ああ、あの化け物で刀を打ちたい」

 

「でもあれは鬼じゃねえ…………いいや、鬼かもしれねえ」

 

「鬼なら、鬼狩りだ」

 

「鬼狩りに頼めば狩ってくれる」

 

「異形の鬼だ、うん、そうに違いねえ」

 

 その刀鍛冶は皆にこの出来事を伝えた。本当なのかと怪しむ者もいたが、その刀鍛冶に連れられた場所で大きな怪物が尻尾を研ぐところを見たら一転。興奮止まぬ様子でいかにあの尻尾の切れ味が素晴らしいかを語るようになったという。

 

 

 

「――ってえ訳だ! あれは鬼! だから狩れ!!」

 

「いや何言ってるんですか皆さん正気に戻ってください! あれは! どう見ても! 鬼じゃ! ないです!!」

 

 

「(何話してるんだろ奇面族の皆さん。俺優しいからさ、そっちから危害加えないなら俺も危害加えないよ? ……いや逃げるべきなのかコレ。天鱗探し求めて乱獲するハンターの気配がする。おっしゃ逃げよ!!)」

 

 

「鬼が逃げたぞぉ!」

 

「鬼狩れよ役目だろうが!」

 

「えっ、ええー……」




奇面族の皆さん:ヒャア!素材に足が生えてゲフンゲフン。

鬼狩りの皆さん:日光浴びてる。めっちゃ日光浴びてるよアレ。どう見ても鬼じゃないよね。なんで怒られないといけないんですかね?

ディノバルド:肉が美味しくて今日も元気です!


〜ディノバルドこそこそ噂話〜
エリア移動中、気が付いてないけど高級そうな壺をがっしゃんがっしゃん壊しているらしいよ。いやーなんで壺から鬼の香りがほんのりしてるんだろうなー、なんでだろうなー?


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鴉は何故鳴く真夜中に

 肉……うめ……うめうめ……生肉うめ……。

 

 つい先ほど仕留めた熊にがっつくディノバルド。それとは違う血の匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。これは、そう――人の匂い。

 

 

「あっはっはあ! 鬼狩りといえどこの私に敵う訳ないのよ!」

 

 

 ゆっくりと、声の主に気付かれないように。木の陰に隠れつつこっそりと覗いてみる。

 赤を流して倒れ伏す人間と、その周囲で慌ただしく羽をバタつかせる(おやつ)。この惨状を作り出したであろう女の鬼は、綺麗な着物を何枚も無理やり羽織っているという奇妙な格好をしている。

 

「カアァ! カアァ! 起キロ、起キテクレ! 死ンダナド、コノ斎賀ハ認メナイ!」

 

「は? 何よコレ。煩いわ。汚いわ。だから消えてちょうだい」

 

 鬼は鴉に手を向け、腕を伸ばした。あの鋭い爪で引っ掻かれたらただでは済まないだろう。

 本日のおやつになる予定の鳥肉(未遂)に攻撃を仕掛けようとしている。つまり――敵だ。

 

「ガアアァァッ!!」

 

 吠えながら突進。(今日のおやつ)から離れろ貴様!

 

「何よ! 汚い、煩い、汚い煩い汚い煩いぃっ!」

 

 こちらに首をぎゅるん、と音が出そうな速さで向け、伸ばした腕はこちらへと標的を変えた。だが、鬼の爪はディノバルドの鱗に弾かれる。

 

「硬いっ……私の爪をぉ、よくもぉ!」

 

 感情に任せてニ撃、三撃、と攻撃を続ける鬼。だんだんと力が強くなっているのが分かるが、こちらにダメージはない。ならば、と尻尾を研ぐ動きに入る。

 だがいつもの様に綺麗に研ぐのではない。振り回したら鱗や破片がすっ飛んでいくように、あえて取れかけにして残す。もしこの予想が当たっているならば、これはかなり強力な武器になる。

 

「ゴアァッ!」

 

 あえて今から大振りをするぞ、という隙を見せ、鬼を回避に入らせる。これは尻尾を当てる必要はない攻撃。この行動の真の目的は破片を飛ばすこと。

 

「なによ鈍間! この私に触れようなんてっ、!?」

 

 遠心力で吹っ飛ぶ破片の群れ。油断もあるのだろうが、緩急をつけたことで鬼の目は対応できていない。細かい破片が鬼の顔に、腕に、腹に、足に突き刺さる。それだけではない。刺さった部分がじゅうじゅうと音を立てている。

 

「い、だあああぁぁああ!? なんでよ、なんで焼けているのぉ!?」

 

 突き刺さった破片を取ろうと手で触れ、その手もじゅうじゅうと焼ける。

 

「ああ! 顔、わたしのかおが! なんてひどいことをするのおぉおお!!」

 

 やはり、この尻尾には人間に似ているが人間ではない生き物に対してよく効く何かがあるらしい。

 

「嫌、嫌よ! こんな汚いのは私じゃない! 誰よ、誰なのよ! 綺麗じゃないと、綺麗じゃないと、わた――」

 

 

 綺麗じゃないと価値なんてなかった。綺麗じゃないと売れなかった。汚いモノになんて誰も目を向けないから。

 静かじゃないと価値なんてなかった。静かじゃないと売れなかった。煩いモノになんて誰も耳を傾けないから。

 

 汚したからと殴られて。余計なことは言うなと殴られて。なんの理由もなく殴られて。

 

 だから、だから、今度はやり返したっていいじゃない。綺麗になっていいじゃない。たくさん喋っていいじゃない。昔の私を殺したっていいじゃない! 見たくないの、もうあんな惨めな頃を思い出したくないの!

 

 

 

 でも、なんで。どうして。私が何をしたと言うの?

 こんな化け物に殺されるなんて、いやだ。

 

 

 ――斬。

 

 

 

 人間もどきが何か言っていたような気もするがよく覚えていない。なら重要なことではないのだろう、とすぐに記憶から追い出しておく。

 そう、一番大事なのは(にく)だ。

 

「カ、カアッ!? 肉デハナイ! 我ニハ斎賀トイウ名ガアルノダ! ヤメ、ヤメロ! ソノヨウナ目デミルナァ!」

 

 カラス田楽なる料理があると風のうわさで聞いた。そう、カラスは食える。でも食べるならもっと美味しく食べてみたい。誰か味噌持ってきて味噌。おでんでんででん、おでんでんででん。

 

「奇妙ナ歌ヲ歌ウナァ! ホントウニヤメテ」

 

 ……んあ? 俺の言葉わかってるの?

 

「ナント恐ロシイ怪物、早ク柱ニ伝エナケレ……ピッ、我、ナ、何モシヨウトシテナイゾ!」

 

 本当?

 

「ホ、本当ダトモ! コノ斎賀、嘘ヲ吐イタコトハ一度モナイカラナ!」

 

 おっそうか! じゃあ一緒に熊食おうぜ! 一人だと寂しいんだよやっぱりさ! さっき仕留めたばかりだから新鮮! まあ俺が食い散らかしたからモツとか散らばってるんだけど許して。

 

「くわー、くわー」

 

 哀れ、鎹鴉の斎賀くん。担当の鬼殺隊員の死を悼む暇などなく連れられたのは熊の惨殺死体。しかもそれを作った犯人がすぐ隣にいるのです。しかもそれは、鬼をあっという間に倒せるほどの力も持っています。

 彼は精神的なショックから一時的に幼児退行してしまいました。数時間したら元に戻るでしょう。がんばれ。この世は地獄だ。




現在、陽光山にてディノバルドの落し物(天鱗)が発見されたので隠れ里では誰がこの素材を使って刀を打つかを決める大乱闘刀鍛冶ブラザーズ開催中です。負傷者多数。ストッパーの行方は不明とのこと。


感想で他のモンスター余裕があれば出して欲しい、と要望がありましたので作者が前に呟いていたヤツをまるっと後書きにもってきてまいりました。

どこからともなく飛んできたバルファルクが無限城に激突!バゼルギウス追い打ちの爆撃!あーっと無限城揺れている!こ、この振動は……大いなる存在だーっ!!古龍の存在を感知したネルギガンテも襲来!かかってこい大自然!そう軽々しく口にしてはいけないと無惨様に誰も教えなかったのか!

うん。モンスター達が無限城をいかに解体するかで芸術点競うのでダメですねこれは。


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斬竜と鴉の何気ない会話

だれも前話で死んだ隊士さんとか可哀想な鎹鴉の心配してないの、流石鬼滅って感じがする。


「くわー、オ母チャン、オ母チャン」

 

 斎賀という喋れる不思議鴉、さっきからたまに雛みたいになってる。なんかショックなことでもあったんだろうね。そっとしておこう。あ、飯食ったら元気でるかな? ひとっ走りして猪でも獲ってこようか。

 

「ソレハヤメテ」

 

 え、ご飯はいいの? そう……。また何か食べたい肉あったら言ってね、俺すぐ獲ってくるからさ!

 

「会話ガ通ジテルヨウデ通ジテナイヨウ。怖イヨウ、オ母チャン…………カアッ! ソウダ、何故鬼ヲ倒スノデスカ? 益ガ有ルトハ思エナイノデスガ……」

 

 鬼? 鬼って何? そんなファンタジーなのがいるのここ?

 

「ワ、ワカッテナカッタ、ダト……!?」

 

 がちょーん! みたいなポーズで硬直する斎賀。

 

「先程オマ……ンンッ、貴方様ガ倒シタ存在ノコトデス」

 

 あ? ……あー! あれ鬼なの!? えっだって角なかったし! 虎の毛皮パンツも履いてなかった! 金棒も持ってなかったし……うっそぉ。イメージと全然違う。

 

「パ、パンツ? トハ一体……オホン、ドウヤラ鬼ニツイテ詳シク知ラヌゴ様子。デハ、コノ斎賀ガオ教エシマショウ。鬼トハ――」

 

 ほーん? 鬼って元々人間なんだ。で、ある鬼の血を貰って鬼になって……でここまで増えたんだ。日光がダメで? 人間食べて強くなって? 一部の鬼は血鬼術って不思議パワーが使えて?

 ……ほうほう成る程。じゃあ鬼は見つけたら即コロコロでいいな! とても良くわかった! ありがとうね斎賀くん! お礼に一番美味しい部分のお肉あげるね!

 

「本当ニワカッテルノカナァ……ソレハソウトシテ! モウ一度聞キマス。何故鬼ヲ狩ルノデスカ?」

 

 理由かあ。理由聞かれてもなあ。うーん……邪魔だから?

 

「ジャマ」

 

 だってさーアレうるさいから。あいつらのせいで獲物逃したこと何回あると思ってんの? 飯の邪魔されるんだよ? 怒っていいと思わない? あー、あと試し切り相手? ほら俺ディノバルドだしさ、強さで張り合えるのいないからさ。暇なの。分かる?

 

「ワケガワカラナイヨ」

 

 まあでもディノバルドより強いモンスターとかゴロゴロいるだろうからなあ。世界は広いからなあ。

 

「……例エバ、ドノヨウナ?」

 

 単純に強くて怖いのはイビルジョーとか、ラージャンとかかなー? イビルジョー設定だと生態系崩壊させるぐらいの大食漢だし、ラージャンはキリンを食うだとかなんとか言われるぐらいに強い猿。

 そいつら以外だとしても二つ名とか歴戦は勘弁してほしいかな。フロンティアはよく分からないけどあそこもやべーやつらゴロゴロいるから出会いたくない。

 あとは古龍全般? もしあいつらとやり合う事になったらさー、流石に俺に勝ち目無い思うんだよね。嵐呼んだり炎纏ったり雷落としたり洪水起こしたり、天変地異が襲ってくるようなもんじゃん。

 

「ヒ、ヒェーッ」

 

 こてん、とひっくり返る。驚きの表現にしては古典的だなあ。……こてん、で古典? 凄いよ斎賀。お前お笑い芸人狙えるよ。

 

「アワワワ、モシソノヨウナ存在ダラケデアレバ、コノ日本ハ沈ンデシマイマスゥ!」

 

 まだ沈んでないなら沢山はいないんじゃない?

 

「ア゛ーッ! 柱へ連絡スレバ何トカナルカモシレヌト考エテイタ斎賀ガ愚カデアリマシタァ!」

 

 柱? なにそれ。なんか凄い称号?

 

「ア゛ッ……」

 

 お、おう……何だその声。大丈夫? 肉食べる?

 

「イエ、遠慮シテオキマス……カァ、コノ斎賀、一生ノ不覚……。人の世ニハ、鬼ヲ狩ル組織ガアルノデゴザイマスゥ……」

 

 その名も鬼殺隊。なにそれかっぴょいー! その中でも強い柱ってのが九人いるんだ。へー。呼吸でパワーアップして夜な夜な鬼を退治してるんだ。かあっくいー! 俺も出来るのかな、その呼吸ってやつ!

 

「コレガ呼吸ヲ覚エ……? ――オソラキレイダナア」

 

 で、強いんだよね。その柱って。

 

「ハ、ハイ……」

 

 

 

 ちょっと会ってみたいんだけどいいかな?

 

 

 

「エ゛ッッッッ」




このディノバルド頭ガルルガだった!(今更)

あと鬼滅の刃の時代には日本にパンツは伝わっていないとか何とか風の噂で聞きました。
つまり無惨様はふんどし。

〜嘘予告〜
次回『狩猟環境:不安定』
見様見真似で呼吸覚えるんじゃねえ!!


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緊急クエスト

実は鬼滅の単行本まだ買えていないから本編に関われないという重大な不具合があってな……。どこの本屋行っても売り切れてるのすごい。


 最近、妙に鬼が減っていく。

 

 死んだ鬼共は雑魚も雑魚。十二鬼月には何も影響はない。だが、意識を傾けると「助けて」だの「死にたくない」だの叫びながら逃げ惑う音が聞こえてくるのは不愉快極まりない。

 そうして騒ぎながら散る鬼達から見、聞こえた景色には共通しているものがあった。

 

 

 咆哮と金属音、高熱による光だ。

 

 

 まず、鬼殺隊ではない。どれも人が起こせるようなものではないからだ。

 鬼でもない。血鬼術なら可能かもしれないが、死んだ鬼達の近くに更に鬼がいた、という気配は感じられなかったからだ。

 私の知らぬ何かがいるのは間違いない。だが、その正体が掴めていない。……腹立たしい。煩い声がどこから聞こえてくるかで『何か』がいる大体の方向は掴める。

 

 

「――正体を突き詰めろ。そしてそれを殺せ。殺した者には褒美として私の血を分けてやろう」

 

 

 私の血、という極上の餌をぶら下げれば役立たず共も少しはマシな働きをするだろう。

 

 ……そういえば最近玉壺の姿を見ていない。壺は送られてくるのだが、肝心の玉壺はあちらこちらへと移動を続けている。……それに何故か奴の作った壺の価値も段々と上がっている。芸術、とやらに磨きでもかかったのか? 資金が尽きないのは良いことだが、何故玉壺は移動を続けて……? まあ、どうでもいいことだろう。

 

 

 

 

 

 ――あ、ふ……ふぇっくしょん! ……ずび、誰かウワサした?

 

 のっしのっしと移動しつつ、鬼を見つけたら即殺。もし俺に練気ゲージあったら多分ずっとマックス状態ですよ。

 

「も、もしかしてアレのことか……? 大金星じゃねえの俺! 血、あのお方の血ィをォ……!」

 

 ヒャア! 何故か最近(試し切り相手)が向こうからやってくる! これは狩るしかねぇ!

 

「チョ、マッ、走ルノ早ッア゛ァーーーーーッ!!??」

 

 あ、斎賀君が背中にいたの忘れてた。メンゴ☆

 

 左側から尻尾を回して噛み付く。ぎ、ぎ、ぎ、と研ぐと同時に力を溜め――一気に放出する。

 左側から右側に一回振り回し、脚で急ブレーキをかけて、反動を利用して次は先程と反対回転で同じように振り……あー綺麗にコンボが続かない! くそう! プリーズワンモアセッ!!

 

「……ヒエエ……自己研鑽ヲ止メナイ……」

 

 ん? ごめん鬼がうるさくて何言ったか聞こえなかったー!

 

「ナンデモナイデスゥー!」

 

 そっか! ……ところで本当に柱ってこっちにいるの?

 

「オ、恐ラク……多分……キット……」

 

『おお……日々研鑽を積む、なんたる美しき姿……! これぞ芸術家よ! これは私も負けておれぬ。ヒョッヒョッ』

 

 

 ………………待て誰だ斎賀君の後で喋ったの!?

 

 バッと振り返ってみると、そこにはよく分からない色使いのへんちきりんな壺が転がっているだけだった。あらまあマカ不思議。

 

「壺? デスカ」

 

 これ、マカ練金ツボだったり……しないか。そっかー。ちょっとしょんぼり。まあ俺ディノバルドだから使いこなせはしないんだけどね!

 あ、もしかしてコレ斎賀君にちょうどいい大きさじゃない? コレ持っていく?

 

「ソノ、トテモ嫌ナ気配ガスルノデスガ、ッテヤメテ魚クサア゛ア゛ア゛ア゛――」

 

 うん、似合ってる似合ってる。で、このツボの歪みを利用して上手いこと背中の突起の隙間にこう……ハマった。よしよし。

 これが斎賀君の今日からの巣、兼シートベルトだ。いやあいい拾い物したなあ! いい事したらいい事あるもんだね!!




どこでも玉壺、欲しい? 作者はいらない。


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わっしょいわっしょい

このタイトルで全てを察している読者も多いだろう。
まあそういうことですね。


 もうそろそろ柱に会えるかもーなんてウキウキステップしてたらツタ罠に引っかかってしまった。いやあうっかりうっかり。よそ見危険。

 

「シ、振動ガ……酔イ……ウェップ」

 

 斎賀君ごめん。こればっかりは俺に非があるわ。

 

「吐キソウ……」

 

 何とか脱出しようともがいて、うっかりブレスぶっ放しちゃったり。まあ山火事にはならなかったんだけど。生きてる木は水分含んでいるからそう簡単には燃えないのだ。これディノバルドの豆知識ね。

 

 で、暴れまわった結果。ブレスが着弾、その爆風でぽーんと吹き飛んできたのがこのサツマイモとなります。……あれ、サツマイモのツルってここまで空高く伸びないよね。あ、さっきのは正確に言うとツル罠だった……?

 

 ……ん? 待って? このサツマイモは爆風で飛んできた。このサツマイモ、形は崩れていない。そう、崩れてたり焦げたり炭化もしていない。

 つまり俺のブレスを耐え抜いた。……なんだこのサツマイモ!? 火耐性と爆破耐性強すぎないか!?

 

「ホクホクデ御座イマスネ……」

 

 ぱっかり割ったら綺麗な黄金色してた。出来立ての焼き芋だぁ……。うん、甘い匂い。

 甘い……甘い……美味い……。何年振りの甘味だろうこれ。

 

 

 そんな俺に唐突と蘇る記憶! ウッ頭がー!

 

 

 ――そう、あれは蒸気機関管理所出力マックスで流れるムービー。

 

 うみゃー、ふみゃー、わぁー! と爺ちゃんの背に乗っかるアイルーと受付嬢。爺ちゃん、その重さに負けじとふんぬと背を反らす。

 

 ふひい、と疲れた様子の爺ちゃん。限界ポッポーしている蒸気機関へ、石炭、石炭、サツマイモをぽいぽい放り込んでいくアイルーと受付嬢。

 限界ポッポー見てテンション上がった奴らを止める術は爺ちゃんにはなかった。石炭をくべられ、限界突破ポッポーした蒸気機関は大爆発。皆仲良く吹っ飛んだ。

 その後、受付嬢は放り込んでいた元サツマイモ、現焼き芋を回収し――。

 

 

 …………もしかしてお前あのサツマイモかぁ!?

 思い出したらそーだ! あの芋そのまま放り込まれてた! 何かで包む、とかせずに蒸気機関にそのままだ! あれ確か蒸気機関の爆発にも焦げ一つなく耐え切ってたなあ!!

 

 あの謎サツマイモ……ここでたくましく生きていたんだな……。焼き芋になった分は俺が責任持って食べるね。うまうま。

 

「ヌ、斎賀モ食ベトウゴザイマス!」

 

 おう一緒に食べるぞ焼き芋! うんうん、斎賀君強くなってきたなあ。ちょっと前の斎賀君ならこんな熱々のサツマイモ食べれなかっただろうし。

 

「美味シュウ御座イマス! 甘味! 甘味!」

 

「――しょい――」

 

 ……ん、何の声? また鬼?

 

「わっしょい! わっしょい!」

 

 えっ誰? わっしょい言いながら歩いてる。こわ。手に持っているのは……焼き芋かな?

 じゃあ悪いやつじゃないな。焼き芋好きに悪い奴いないし!

 

「……ソノヨウナ事、聞イタコトゴザイマセンガ……」

 

 今俺が決めた。

 

「ハア……? ――待ッテ、チョット待ッテ。サツマイモ? ワッショイ?」

 

 ん、あの人が誰なのか知ってるの? 斎賀君。

 

「ハワワ……アノオ方ハ、炎柱、煉獄杏寿郎様デハァアリマセンカァ!?」

 

 マジで? 改めて見るとすごい髪色してるねあの人。黄色と赤? 本当に日本人なのかなあ。

 そして柱なのかー、そうかそうか。

 

「ア゛ッ」

 

 

 

 へい煉獄さーん! ちょっとバトろうぜー!




ちょっと(モンハン基準)


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燼滅の目醒め

サブタイトルでオチてる?気にすんな!


 さすが柱。さす柱。俺の攻撃を避けたりいなしたりしてダメージ殆ど受けてないわ。人間の技術の勝利ですねクォレは。鬼はパワーでゴリ押す奴しかいないのか全く。人間を見習え!

 

「炎の呼吸――」

 

 炎柱、煉獄杏寿郎が構える。成る程、これが型ってやつか。

 

「伍ノ型、炎虎!」

 

 …………なにあれかっちょいー!

 炎がブワーってなって、虎になって一撃を――でも本当に燃えてるわけじゃない。彼の燃えるような闘気が虎のように見えているだけ。

 うん、男心をくすぐる良い技だ。ディノバルドポイント1つ贈呈したい。でも致命傷にはしたくないんだよね!

 

 体を捻って真正面から受けるのは避けつつ、尾を咥えて力を溜める。飛びかかるようにして切り掛かった煉獄の足はまだ地面についていない。回避行動は取れないだろう。

 溜め込んだ力を解放、一閃! 全力の峰打ちだ!

 

 

 ……避けられた。まじか。

 

 

 俺の振るった尾をほんの一瞬だけ足場に使い、叩きつける速度よりも速く後ろへと跳んだ。なんてダイナミックな受け身。本当に人間なのかこの人……?

 やはり同じ技術の高みに昇らないとまともなバトルにすらならないのだろうか? イヤ、ソレハオカシイという声がした気がするが無視。

 えーと、呼吸ってどうすればいいんだろ。ひっひっふーはラマーズ法だし。

 まあ適当に何かやってみるかー!

 

 

 

 

「くっ!」

 

 任務終わりに焼き芋を買い、次の任務へと向かう道すがら食べていこうとしたらこれだ。俺の声を聞きつけてこれは俺の元へ現れたのだろう……さつまいもを食べるとついわっしょいと声が出てしまうのがいけないのか?

 

 目の前にいるのは、鬼の気配がするが鬼ではない奇怪な生物。なぜか背中の棘の合間にすっぽりと嵌まっている珍妙な壺がとても気になるが、それを狙う隙など微塵も与えられない。

 全身を硬い鱗で覆っているために刀は通らない。刀の通りの良さそうな目や関節部分に狙いを定めて一撃を放つも、当たる直前で体をずらし攻撃を避けてくる。野性の勘、というものだろう。

 

「ゴルルル……ごぽグルル……」

 

 命をかけた綱渡りを何度繰り返したかは数えたくない。一瞬とも数時間とも感じられる死合の中、唸り声に混じって妙な声が聞こえてきた。聞き間違いなどではない、あの生物の口から漏れ出ている音だ。

 何をしようとしているのか分からないが、きっと良いことではないのは確かだ。

 

「スゥウウウ……ごぼ、ごば、ごぼぼ……」

 

 ……嗚呼。それの正体が声ではないと気付いた時の絶望を、なんと表すべきなのだろうか。

 

「――よもや!」

 

 まさか、と冷や汗が頬を伝う。

 

 刀はまともに通らず、体力は無尽蔵。しかも時間をかけるほどに強くなっていく。そして今、自分の炎の呼吸を真似ようとして新たな呼吸を編み出そうとしている。

 

 ――だからこそ、こいつを野放しにする訳にはいかない。

 

 

「炎の呼吸、奥義――」

 

 ――燼滅の呼吸 壱ノ型

 

 

 呼吸を整えろ。最高の状態を保てるように。

 刀を構えろ。最大の一撃を振るえるように。

 

 

「玖ノ型、煉獄――!」

 

 ――廻転・斬竜気刃!

 

 

 互いの全力が、交差した。




戦闘に熱中しすぎて斎賀くんの声が聞こえていない2人。斎賀くんかわいそう
そして技同士のぶつかった余波で壺は壊れました。明日、新しい壺が届く事でしょう……。

『燼滅の呼吸』
溶岩が爆ぜる用な呼吸音が特徴。燼滅とついているが燼滅刃の動きだけじゃなく、ディノバルドくんオリジナルムーブかましてくるようになる。
常中が出来るようになったらどうなるのかオラわくわくすっぞ!

『壱ノ型 廻転・斬竜気刃』
見た目はよくある回転斬りだが、ただの回転斬りではないのだ!
すいませんこれ気刃斬りなんですよ。
呼吸による身体能力向上により気刃斬りI〜III→気刃大回転斬りが出来るようになってしまった。やばい
もちろん練気ゲージの色も変わる。やったね!

〜ディノバルドこそこそ噂話〜
最近、岩柱が不思議な歌を聴いたらしいですよ。


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混線する世界

やらかしは加速する


 金属の割れる、音がした。

 

「――くっ」

 

 日輪刀は鬼に対して有効である、というだけの日本刀。切れ味を求め薄く鋭く鍛えられた刀。それが強度の違う金属塊と真正面から全力で打ち合ったのだ、折れるのは当然だった。

 

 煉獄は膝をつく。体力が底をつこうとしている。呼吸を整えて……無理だ、化け物の顎が近付いてくる。最早これまでか、と覚悟を決め――。

 

 

 

 ――いやー呼吸なんとかなったね! 突然の練習申し込みだったけどありあっしたー!

 

 

 

 怪物はぐい、と器用にその顎を使い煉獄の上体を起こした。その目はすでに殺気は無い。それどころかこちらの体調を心配されているような……そんな気がする。

 

「誰カ話ヲ聞イテ……クスン、くわぁー」

 

「斎賀、元気出セッテ、ナ?」

 

 翼で目を押さえシクシク泣く鎹鴉と、それを慰める煉獄の担当の鎹鴉。

 

「…………なんと?」

 

 先程まで死闘を繰り広げていた化け物に心配され、鴉が話を聞いてと泣く。

 様々な修羅場を潜り抜けてきた煉獄でさえも意味がよくわからない光景が広がっていく。これには首をかしげるしかなかった。

 そうして妙な光景を眺める中、はっと折れた刀のことを思い出す。

 

「……っ」

 

 新たな任務へと向かっていた最中、この怪物に襲われ、本気を出し――そして刀を折ってしまうという不覚。柱としての名折れだ。新たな刀を用意して……それは無理だ。時間がかかりすぎる。十全な状態からは程遠いまま、鬼を倒しに行かねばならない。

 

 普段と様子が違う炎柱を見た斎賀、何があったのかを尋ねる。すると帰ってきたのは、炎柱が受けていた新たな任務についてだった。

 命からがら逃げてきた猟師の話曰く、『森の中にいた鹿のような頭を持つ植物の化け物が村を襲った』とのこと。襲われたその村は壊滅状態にあり、一日経たずにこれほど事態を起こした強力な鬼を倒すには柱が適任だ――とまだ話が終わってないにもかかわらず、そこまで聞いて斎賀の涙腺はぶっ壊れた。

 

「くわー、任務ノ邪魔シテゴメンナサイ……ゴメンナサイ……」

 

「斎賀! オ前ガ謝ル必要ナイカラ、ナ! ダカラホラ泣クナッテ!」

 

 ――あれっなんだろう、俺そいつ知ってる気がするんだけど。えっアレもいるの? マジで? 混ざりすぎでは? うん。これ俺が責任取るしかなくない?

 

 

 刀が折れてしまった柱の代替え品として、ディノバルド、出陣するってよ。

 

 

 

 

 

 それは、鳥居の上にいた。

 

「(……何、アレ)」

 

 紫色をした蜥蜴の化け物が、鳥居の上に器用に寝そべっている――その事実を柱である彼が全く気が付かなかった。それが問題だった。

 出目金のように飛び出した二つの目が無一郎を捉えたが、ふああと欠伸をして直ぐに目線をずらした。

 

 

 ――無一郎に興味が無い。それだけの事だ。

 

 

 少しだけムッとした無一郎だったが、斬りかかる程の怒りではない。何かこちらに害を加えようとしたならば、それ相応の対応をするだけだ。

 それは長い舌を伸ばし、社に供えられていた供物を丸ごと絡め一口で飲み込む。満足そうに喉を鳴らすと……どこか痒いのか、足で身体を搔く。長い年月を経て劣化していた鱗の破片がパラパラと地面に落ちる。紫色をした、不思議な鱗だ。

 

「霧、いや……霞……?」

 

 何処からともなく発生した霞と共に消えゆく紫色。消える、と言っても移動しているわけではない。身体が透き通っていくようにして消えているのだ。

 身体を透明にして消せる生き物など、とんと聞いたことがない。はてさて一体全体何なのだろう、と考えている間に紫色は完全に消え、それに伴い霞も薄れていく。

 

 

 

「――無一郎ゥーッ! ドコ行ッテタノカシラ? 私心配シテタノヨ!」

 

 慌てた様子で飛んできたのは無一郎の鎹鴉。いつの間にかはぐれていたようだ。

 

「…………神隠し? まさかね」

 

 人知を超えた何かが、ほんの気まぐれに見せた非現実的な世界。駄賃でもくれてやる、とばかりに落としていった鱗。拾い上げたそれからは鬼とは違う力を感じる。

 

「ソーヨッ! 大事ナ話ガアルノヨッ!」

 

 ぐるぐると忙しなく無一郎の周囲を回る鎹鴉。

 

「鬼ノヨウナ強サヲ持ツ、デモ鬼デハナイ謎ノ生キ物ガ発見サレタッテ連絡ガアッタノヨ! シカモ一体ノミデハナク、複数体確認サレタソウヨ!」

 

「ふうん、そうなんだ」




あ、むきむきねずみは謎の猫たちに出会いカルチャーショック!してニャンターへの道を歩みだしました。
この場合ニャじゃなくてチュウター?それともチュンター?どっちにしろ語呂が死んでるぅ


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天に星を、地に慈愛を

 夜空が星に覆いつくされるとき
 楽園と地獄の狭間より輝く龍出づる
 その龍は全ての大地に不幸をあたえ
 全ての大空に不幸をあたえ
 全ての生命を根だやすだろう

 やがて夜空の星星は消え
 最後の星(ミオガルナ)だけが地上に残る


「――あ、相棒! 大変です、緊急事態です!」

 

 受付嬢が慌てた様子で『君』を呼んでいる。側にいたオトモは突然の声で驚いてしまい、バランスを崩し椅子から転げ落ちた。重力に従い落っこち、ぶみゃあ、と痛そうに鳴く。

 

「あの、淵源の孤島に――新たなアン・イシュワルダの個体が発見、並び新大陸へ輝龍ミオガルナが飛来する可能性アリ、と古龍観測所より報告が!」

 

 その名を聞き、勢いよく立ち上がる。

 前者は忘れるはずのない相手。後者は……名前だけは記憶にある古龍。その存在を信じる狩人は少なく、ただのおとぎ話、架空のものだと一笑に付すものもいる。

 

 

 だが、『君』は知っている。この新大陸において、あり得ないという事こそがあり得ないのだと。

 

 

 導きの地。あらゆる環境を凝縮した、多種多様なモンスターが住まう狩人にとって夢のような場所。そこへ辿り着き、見、聞き、調べてきた経験がある。それだけでなく、別の世界からこちらへと来たモンスターを討伐するという偉業。

 

 また――『新大陸の白き風』、『導きの青い星』。調査団の象徴として呼称されるほどの腕前を持つ類まれな狩人である『君』だからこそ、今回のクエストを一人と一匹で受注しても良い、と判断されたのだと団長は語る。

 

「かつてミオガルナを狩った経験のあるハンター達もこちらへと向かっているらしいが……到着を待つ猶予は我々にはない。一刻も早くミオガルナ、及びにアン・イシュワルダは狩らねばならない存在だ」

 

 世界を揺るがす力を持つ二頭を同時に相手をし、どちらも討伐せねばならない。このクエストは一度きりであり、このクエストの失敗は、即ち……いいや、始まる前からそんなことを考える狩人はいない。

 

「速やかに準備を整えてくれ、我々も全力で支援を行う」

 

 ばたん、とボックスを開く。使い慣れた武器を携え、最も信頼する防具を身に纏い、装衣を選び、狩りに欠かせないアイテムの最終確認も忘れず。

 なぁおん、と君の隣のオトモが鳴く。狩人を補助する道具のメンテニングを済ませたようだ。

 

「ミオガルナ、古代の言語では『最後の星』と称される古龍……。いいえ、最後に残るのはミオガルナではありません! 我らが導きの青い星は不滅です!」

 

 ぐ、と受付嬢の手に力がこもる。

 

「――信じてますよ、相棒!」

 

 出航する為の全ての準備が整ったことを知らせる角笛が調査拠点に響き渡る。

 

 ――さあ、狩りを始めよう。

 

 

 

 

 

 

 ――ふあ……なんじゃこの夢。今からレーシェンを狩りに行くってのに縁起でもない……。もしかしてエンシェントだったりするのか? うーんこわこわ。

 

 どうやら先ほどまでの描写は斬竜が見た夢だった……ようだ。

 

 

 だから。

 

 誰も知らぬ孤島で、三頭の古龍が争い、死力を尽くし――全てが生き絶え、島もろとも海に沈み、鱗や牙、爪が流され、水で削られ、浜辺に打ち上げられ、人の手によって拾われ、売られ、誰かの手に辿り着き、そして刀へと姿形を変える運命があったとしても――。

 

 きっと、関係のないことなのだ。




明けましてこれ鬼滅じゃなくてモンハンじゃねーか!鬼滅要素ないじゃーん!

なんで三頭になってるのかって?古龍食べる古龍君が乱入してきただけだよ!


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