♂俺はグランのはずだよな?♀ (Wuming)
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プロローグ

 目が覚めたら、ないはずのものがあって、あるべきところにあるはずのものがありませんでした。

 いつもの通り頼まれた依頼をこなしてグランサイファーの中で眠りについたはず。よくある妙な夢を見るだとか、身体が熱いとかそういうことは全くなく爽快な目覚めを迎えた……のに目を開けたら妙に髪が伸びてた。おかしいなと思いながら胸のあたりに視線を落とすとあるはずのない膨らみがあって慌てて前のボタンを外してみたら女の子みたいな胸があって、そのまま全部脱いで下を見てみると股間にあるはずのものが、綺麗さっぱりない。挟んでるとかそういうのではなく根本的にない。嘘だろ、これじゃまるで女の子だ。あわてて鏡の前に立つ。そこには俺の姿ではなく……肩より少し上のショートカットの、俺と同じ髪の色をした可愛らしい女の子が驚愕の表情を浮かべて裸でつっ立っていた。

「うぇえええええええ!?」

 思わず悲鳴が出たけど明らかに俺の声じゃなくてもっと高い。なにこれ。俺の悲鳴を聞きつけたのかドタドタ走ってくる音がする。あ、でも俺まだ裸でこの足音は明らかに野郎の……

「おいグラン!どうした!」

「うわぁああああああ!!!馬鹿!!いきなり開けるなぁ!!ドア閉めろおおおおお!!!」

 案の定駆けつけたラカムが勝手に部屋のドア開けた。シーツまであとちょっとのところで。注意するために叫んで、あわててシーツをひっつかんで身体に巻きつける。前は見られてないけど裸を見られた。たぶん。振り向くとラカムは目を瞑ってそっぽを向いていた。

「……なぁラカム、俺の裸……見た?」

「……お前、もしかしてグランか?」

「見た?」

 今大事なのは俺がグランかどうかより悲鳴を聞いて駆けつけたとはいえこいつが女の子の裸を見たか見てないかだ。気まずそうにこっちを見てすぐにまた視線を逸らしたラカムは頭をボリボリ掻いて、少し考えてから口を開いた。

「……見えちまった。けど一瞬だぜ?」

「わかった。そのままいますぐドアから部屋から出てってカタリナとルリアを連れてこい。いいな?」

「ハイ、ワカリマシタ」

 俺の剣幕におされたのか、ラカムはそれ以上言い訳をすることなくくるっと踵を返して部屋を出て行った。ってあいつ、ドア閉めずに行きやがって。

 とりあえずドアを閉めて脱いだ服を着ることにした。なんか変な感じはするけど、裸にシーツ引っ掛けてるよりかはマシになるはずだ。服を着てへなへなベッドに倒れこむ。はぁ、なんてこった。とんでもないことになった。一体どうしてこんなことに……



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