強き信念を抱いて/新説 鬼となった竜の道 (橆諳髃)
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プロローグ 見た目は子供、頭脳は死んだ時相応→見た目も頭脳も大人、それと鬼……えっ? +オリ主の設定

もう私もどうしようもないんだ‼︎ だって書きたくなったんだから仕方ないじゃあないですか‼︎

「この作者はもう駄目だな……」

という事で……始まります。


 俺は死んだ……でもどうやって死んだか思い出せない。

 

 後……俺の家族のことも……

 

 それ以外の知識は覚えている。俺の名前、俺の好きな事、俺の好きなアニメ、俺の趣味……そんな事は覚えているのに、大切な家族との時間を覚えていない。

 

 でも今はそんな事を必死こいて思い出す時間ではなさそうだ。何故なら……

 

「お母ちゃん! お母ちゃん‼︎」

 

 血溜まりに倒れた母親を、子供が必死こいて起こそうとしていたからだ。それを見つめるのは、まだ状況が理解していない俺と、額から角を生やし、下卑た笑いを上げている存在だ。

 

 奴は目の前の親子に集中しているのか俺には気付いていないらしい。奴は下卑た笑いを続けたまま、親子に近付いていく。

 

(何でだろうな……こんなにイラついてしまうのは)

 

 胸の奥が……凄く煮え滾っている感覚がした。そう感じた時には既に親子の前に飛び出していた。

 

「待て! お前は一体何してるんだ‼︎」

 

「おぉっ? 何が来たかと思えばただの子供じゃないか。これは運が良い。まさか食料が態々自分から出向いてくるんだからな!」

 

 食料? 一体何のことだろうか?

 

「にしてもお前……なんかそこにいる奴らとは違う匂いがするなぁ。っ‼︎ まさか稀血か⁉︎ これは本当に運が良い‼︎ だが本命は後で頂くとして、まずはそこの親子から食ってやろう! ギャハハハハハッ‼︎」

 

「お母ちゃん! 起きて‼︎ お母ちゃん‼︎」

 

 未だに子供は倒れた母親を起こすのに必死だった。目の前の存在は、親子の前に飛び出した子供を無視して親子の元に一歩ずつ近づいていく。

 

 親子の目の前に飛び出した少年、明日照灯(あすてらあかり)には正直、未だにこの状況が分からないでいた。分からないでいたが……

 

(……コイツムカつくな)

 

 目の前の下卑た存在に怒りが積もりに積もった瞬間……灯の身体が光り出した。

 

「ぐぉっ⁉︎ な、何が起こって⁉︎」

 

 その光量に下卑た存在も目を瞑った。そして光が収まったのを見計らって目を開けると……

 

「よぉテメェ……今から自分がどうなるか分かってるよな?」

 

 そこには親子の前に飛び出した子供の姿はなく、代わりに成人した男性が黒衣を纏って立っていた。

 

「なっ……き、貴様! なんだその姿は⁉︎ それにこの匂い……き、貴様も俺と同じ鬼だったっていうのか⁉︎」

 

「はぁっ? 鬼? あぁそうか。お前鬼だったのか? 通りで額から角生やしてる訳だな。んで? 後ろの女性をやったのはお前か?」

 

「お、俺と同じ鬼の存在でそんなわかり切った事を知ってどうする⁉︎ 貴様も鬼ならば人間を襲うのは当たり前だろう‼︎ なのに何故人間を庇う⁉︎」

 

 それを聞いた灯はチラッと後ろで倒れている母親と、母親を起こそうとした子供を見た。確かに今の灯の嗅覚は……目の前の鬼が言うように鬼寄りなのだろう。先程から良い匂いがすると自分の頭がそう告げている。目の前の親子を食べてしまえと……

 

 

 

だが……

 

 

 

「確かにさっきから頭の中でガンガン鳴り響いてやがるよ。鬼の本能……ってやつか?」

 

「そうだ! その本能に従え‼︎ そうすれば楽になれるぞ‼︎」

 

「確かにな……この本能に従ってしまえば、この頭もスッキリするだろうさ」

 

「その通りだ! だから「だが‼︎」っ⁉︎」

 

「それよりも今は……目の前のお前が気に食わねぇ! だからまずはお前だ‼︎」

 

「な、なんだとぉ⁉︎ 貴様血迷ったか⁉︎」

 

「血迷ったも何も……俺は俺の本能ではなく、俺の信念で今動いている。貴様の様に……快楽で他者を弄び殺す貴様に説法を説かれる筋合いなど無い! 恥を知れ俗物‼︎」

 

「こ、こうなったら……まずは貴様から始末してやる! 血鬼術、真空波‼︎」

 

 目の前の鬼から鋭い風の爪が灯に襲いかかる。しかし灯は避けようとはせずただ左手で防御の姿勢を取るだけだ。

 

「俺様の真空波は例え硬い物質さえも豆腐を切る様に切断する! 貴様の軟弱そうな細腕など……」

 

 と鬼は嘲るが……

 

「な……た、ただ腕に傷が付いただけだと⁉︎」

 

 鬼の放つ真空波は確かに灯の身体を傷付けたものの、ただ左腕の衣服の一部を破いたのと、腕を少し傷付けるだけだった。それに既にその傷も塞がっていた。

 

「う、嘘だろ⁉︎ 傷がもう塞がっているなんて⁉︎ それにその身体の硬さは……」

 

「へぇ〜……派手な割には案外弱いなさっきの。それで……血鬼術といったか? どれ、俺も試しにやってみるか……血鬼術、発動」

 

 今灯は目の前の鬼が繰り出した血鬼術について考えていた。多分あれは、自分の最強の技だと……それをイメージして繰り出しているのだと……

 

(なら、イメージ次第でなんでもできるはずだ)

 

 灯は右手を突き出してそう唱える。すると灯の右手に時代に光が集まってきた。やがてそれは1つの形なっていき、灯の右手に握られていた。

 

「そ、その刀……ま、まさか貴様⁉︎」

 

「ん? この刀がどうかしたか? まぁ今から斬られるお前には関係ない事だな」

 

 その刀をゆっくりと鞘から抜くと、そこには月明かりの輝きをそのまま刃に映す……曇りなき日本刀があった。

 

「や、やめろ! その刀を俺に近づけるな‼︎」

 

 鬼はゆっくりと灯から離れる。

 

「おい……何逃げてんだよ? 先に仕掛けてきたのはお前だろうがよ?」

 

「わ、悪かった! ま、まさかあんたがここまで強いとは思わなかったんだ! だからここは見逃してくれ! そ、そうだ‼︎ ならあんたにそこの親子をやろう! 俺は違う獲物を探すから、だから……」

 

「ゴチャゴチャウルセェんだよ。それに……」

 

 

 

 

 

「もうテメェの事は()()()から後ろの親子どうこうは既に関係ねぇ話だな」

 

「へっ……?」

 

 灯は……いつの間にか日本刀を鞘に納めているところだった。そして鞘と鍔がぶつかり合うと、鬼の体は幾重にも斬り刻まれていた。

 

「ゲハッ⁉︎ そ、そんな……俺はこんなところで死にたく……」

 

「……なるほど。貴様も元は人間だったと言うわけか。まぁ人を殺めた時点で地獄行きは免れんだろうが……来世とやらがあるのなら善人になっている事を祈るよ」

 

 鬼が塵となって消えたのを確認すると、今度は親子の方へと向き直る。

 

「ひっ⁉︎」

 

 さっきの鬼と灯の話をなんとなく理解したのだろう。子供は怯えながらも倒れ伏している母親を庇う様に抱き付いていた。

 

「別にとって食らおうとは思わない。だからそこを少しだけどいて欲しい。良いかな?」

 

「う、うん……」

 

 子供は灯の言葉を素直に聞いて母親から離れる。

 

「脈は……まだ動いてる。息は荒いが、それでもまだ心臓の鼓動が鳴っている」

 

(だが……ここからどうやって助ければ良い?)

 

『本能に従え‼︎ そうすれば楽になれるぞ‼︎』

 

 灯の頭に先程鬼が言っていた言葉が蘇る。そして再び鬼の本能が灯を刺激する。

 

(うるさい……うるさいうるさいうるさい‼︎ テメェの指図なんて受けねぇんだよ!)

 

「テメェは俺の信念に黙って従ってろ‼︎」

 

 灯は鬼の本能を黙らせる様に自分の左手首を伸びた爪で掻っ切った。左手首からポタリポタリと血が滴り落ちる。それを側で見ていた子供は、母親のことを心配そうにしつつも灯のことも心配になっていた。

 

 そして灯が手首を掻っ切った瞬間、頭の中に誰かの声が響いた。

 

(見事だ。鬼になりながらもよく本能に逆らったな)

 

(あ、あんたは……誰だ)

 

(僕か? 僕は君がこの世界に生を受けた際、君の体に僕の一部が混ざった。まぁ君の陰ながらの助っ人という形で捉えたら良い。それでだ……目の前の母親を助けたいか?)

 

(そんなの……当たり前だ。俺は……何も悪いことしてない人が傷付くなんてとこ見たくねぇしほっとけねぇんだよ!)

 

(なら僕のいう通りにしろ。君の左手首から流れる血を目の前に集めるイメージを思い描け)

 

 灯は謎の声に導かれるがまま、滴る血を自分の目の前に集める様にイメージした。すると滴る血は地面に落ちずに灯の目の前に集まってきた。

 

(よし、それを今度は球状にするんだ)

 

 言われるがままイメージする。そして整った球の形ができた。

 

(それを目の前に倒れている人に押し当てろ。だがただ押し当てるだけではダメだ。全ての神経をそこに注ぎ込め。目の前の人を助けるためにと)

 

 灯は言われた通りにする。しかしその通りにしても中々自分の血で出来た球は反発してか押し当てても何も起こらない。

 

(全ての神経を注ぎ込めってそういうことか……)

 

 改めて先程よりも神経を研ぎ澄まして球体を母親の中に入れようとする。するとさっきとは比べ物にならないほど球は入っていった。

 

 だが……

 

(クッソ! 俺にかかる反動がデカイ⁉︎)

 

 その反動のせいか、さっきまで母親の中に入っていきそうだった球が俺の手を押し返してくる。

 

(こんっの⁉︎ これしきの反動で俺の信念が砕け散る訳に行くかよ‼︎)

 

「けっ、鬼術ゥ‼︎」

 

 いつのまにかそんな事を叫んでいた。まぁそう叫ばないとダメだって思ったんだろうな。そしたら背中から何かが出てくる感じがした。そしたらだんだん球の押し返しや反動も無くなって、俺は無事にその球を母親の中に入れることができた。

 

 母親の脈を調べると、さっきとは比べ物にならないほど正常になっていた。心音も平常時に戻っている様で、母親の傷も塞がっていた。にしても……

 

「つっかれた〜!」

 

 俺は先程の鬼との戦闘によって生じたものか、それとも母親を治した時の反動によるものか分からないがその場でどさりと座り込んだ。いやホントマジで疲れた‼︎

 

「こ、これでお母ちゃんは大丈夫?」

 

「あぁ、これで大丈夫だ。後は君とお母さんを家まで連れて行かないとな。家まで案内してくれるかな?」

 

「う、うん!」

 

 そして俺は子供の先導で母親をおぶりながら道を歩いて行く。それから数十分後に親子の家まで辿り着いた。親子の帰りを待っていた父親ともう1人の子が出迎えてくれて、父親からは感謝された。ありがたく受け取っておこうと思う。

 

 それから助けてくれたお礼をしたいと言われたが、まだ用事があると言って断った。

 

(あっ、一応これも作って渡すか)

 

「血鬼術」

 

 俺が作ったのは、少し無骨ではあるが紅色の首飾りだ。これもイメージで作った物ではあるが、このお守りを持っている限り寿命以外で命を落とす事はない……はずだ。この首飾りにはそうイメージして作った。まぁ確証は無いが……

 

 それを出迎えてくれた父親に渡しておいた。こんなものまで貰えませんと言われたが、俺はそれを無理矢理父親の手に握らせてそのまま立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 〜数年後〜

 

 あれから色々と分かった事ではあるが……どうやら今は平安の終わり頃の時代の様だ。確か俺が死んだ時代は令和になって数ヶ月だったはずだが、どういう原理かここにいる。

 

 他に分かったことといえば、俺が人と鬼の混血になっていたということで、平常時は子供の姿であると言うことだ。そして強く念じれば鬼の体にもなれる。だがいかんせん日の当たるところでやると焼けるほどの熱さを覚えた。これは不便だから、今でも鬼の体で日の光が当たれる様に克服しようとしているが、耐えられたとしても数十分程だ。やはり数年ちょっとで克服できるものでは無いらしいが、めげずにやっていこうと思う。

 

 それと……食人衝動か? これがすごくすごく辛い。どれくらいかといえば鬼の体で日に当たるよりも辛い。夜普通に鬼の体になって、暇だからそこら辺を散歩したり血鬼術の練習をしているが、目の前を人が通ると、あの時と同じ様に本能が人を喰えと叫んでくる。それも身体中伝播する様に……勝手に俺の意思に関係なく動こうとする。

 

(ふざけるなテメェ‼︎ ただそこを歩いてる善良な人を襲うとか例え地獄行きだとしても死にきれねぇぞ⁉︎)

 

 その度に、勝手に動きそうになる体をどうにか信念だけで押さえ付けて、そのまま森の中へ。そしてきりのいいところまで行くと、大きな木に頭突きを何回もして本能を鎮める。最近はこの繰り返しだ。そうやって本能を鎮めてはいるものの、やはり鬼でもお腹はすくようだ。

 

 だからこれも俺がこの世界に来たからだが、森の中の動植物を食べてどうにか飢えは凌げている。鬼だから動物の肉も生でいけるのだろうが、最初生で食べた時はあまりにも不味かったから次からは火で十分に焼いてから食べるようにした。それでも味自体変わらなかった事は残念でならなかったが……火を付けるたび血鬼術の練習にもなったし、やはりイメージすればその精度も増すようだ。これはこれからも普通に続けていく。

 

 といった感じで気が付けば数年経っていたのだが、偶に、極々たま〜に鬼が俺を襲ってきた。どうやら俺が人間の姿である時(最初は子供の姿だったが今は青年の姿になっている)、俺の中の血……確か稀血とか言ったか? それに反応して来ているようだ。

 

 それで襲い掛かってくるものだから、俺も鬼の姿になって返り討ちにして来た。その際「お前も自分と同じ鬼なのか⁉︎」みたいな感じで反応されるが……まぁ平常時と鬼の時は自分の中に流れる血も変化するようで……そんなことがあるから平常時では日が昇っている時も全然暑くないし、普通に人の味覚だから動物のお肉も美味しく食べれる。

 

 なら何で鬼になる必要があるかといえば……平常時では血鬼術が使えないからだ。まぁこれは当然の話になってくるんだろうが……だから平常時、今の時代では他の人達よりも知識はあるんだろうが、出来ることが鬼の時よりも格段に少なくなる。

 

 それも何とかしようと色々と試したりはしているのだが、やはり鬼の時に出せる血鬼術は万能すぎる。何せ傷ついた人や、病に犯された人も治せるくらいなのだから……

 

(だけど何故だろう……血鬼術で誰かを助ける度に自分の中にある大事なものが失われている気がする……)

 

 俺の名前や好きな事とかは勿論覚えている。だが前にも思った様に……家族との思い出が思い出せない。それも、前までだったらまだ所々その思い出の断片を思い出せていたのに……今では霞がかって全然思い出せない。

 

 これが……鬼の存在であるのに人を助けるという矛盾を犯しているからだろうか……

 

(いや……俺はもう既に死んだんだ。何で死んだかも思い出せねぇけど、でも今は今なんだ。俺に出来る事を……この力でできる事をしよう)

 

 結局灯はそれからも誰かを助けては大切な何かを失っていくのだが……それを救ってくれる存在が現れるとは、この時灯自身は考えもしなかったのである。

 

 

 

 

 

 

オリ主の設定

 

名前:明日照 灯(あすてら あかり)

男性

年齢:18(死亡時)

 

容姿

テラフォーマーズの膝丸灯と瓜二つ。子供の時と青年時の服装はその時代に合ったものを着用しているが、基本的に黒色が多い。鬼の時には黒衣を纏って平常時の服装は一旦無くなる。

 

CV:細谷佳正さん(作者のイメージとして)

 

好きなもの:アニメ(特にガンダム)、料理(特にお菓子作り)、知識を集める事

嫌いなもの:何もしていない人を傷つける輩、大切な思い出を思い出せない自分

 

現段階で使える能力

 

血鬼術《想像》

その名の通り、灯がイメージした物はなんでも作れる。しかし強くイメージしなければ使えないというデメリットも持っている。

 

血鬼術《奏術》

血鬼術でまるで呪文の如く超常的現象を引き起こす事が出来る。灯が母親を治した時、火を起こす時もこの血鬼術を使っている。

 

どちらとも強力な物だが、共通したデメリットとしては鬼の時でしか使えない。

 

 

 

余談

 

灯が母親を助けた時、子はとある現象を見ていた。それは……灯の背中から赤い翼が生え、その翼からピンク色をした羽が噴き出しているところを。その時子は無意識にもその羽に見惚れていたという……




何故鬼滅の刃まで書いてしまったのか……もうある意味衝動的ですこれは……

アニメで下弦の五と戦った際の挿入歌とか聞いたら……もう涙出そうなくらい感動しましたよ……

何ですかあれ⁉︎ 視聴者泣かせる気ですか⁉︎ 本当に感動しました‼︎

という作者の感想はともかくとして……普通に完結してないのに色々書くとかもう私はダメだぁ〜……状態です。

正直な話本文から何書いてるか分からないんですが……でも伝えたい。何かを伝えたい思いや、自分が描きたい内容描いてたらゴッチャになりました。本当にすみません……

続くかどうかは……私のモチベーション次第にはなりますが、何卒読んでいただいた皆様には感謝をしております!

批判ばかりしか来ないのだろうと勝手ながら思っておりますが……それも仕方ない事ですので、どうにか鋼の精神で読ませてもらおうと思います!

ではでは……


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本編前
壱話 自分本位(エゴ)信念(エゴ)


微妙な感じで書き上げたこの作品……本当はこんな形で進行するはずではなかったのですが……

いや! ここは我慢する時! 少し無茶振りでも、どうにか自分の思い描いている作品に繋がるように描くのだ‼︎

「この作者は本当にもうダメかもしれない……」


 

 

 

 〜400年後〜

 

 この世界に飛ばされて既に400年……俺は日本を巡り歩いて色んなものを見てきた。と言っても争い事が殆どだったがな?

 

 平安から鎌倉へ……平氏から源氏へ……そこから鎌倉から室町、源氏から足利氏へ……戦に駆り出される人達と、引き離される家族。それぞれの想いを抱きながら……死にたくないと思いながらも刀や槍、弓を持ってぶつかる兵達。そして……死にゆく人々……

 

 時には外国から日の本を守るために戦った時もあった。その時も……どちらともに多くの犠牲が出た。

 

(こんなに……過酷なのかよ)

 

 俺は日本史が好きだ。それも戦国時代あたりが物凄く好きだった。歴史上に出てくる有名な人、有名な合戦、有名な策略……それがゲームになって追体験できる。俺が日本史を好きになったのは、歴史を追体験できるゲームをした事で興味を持ち始めて好きになった。

 

 だけど……まさかここまで過酷なんて思っちゃいなかった。所詮は追体験……リアルではなくてフィクションの世界だ。

 

 だからこそ実感なんて湧かなかった……目の前で大勢の人が死ぬ事がどれほど悲しくて、この世界が一部の人にとってのエゴによって作り出されているのか……

 

 でも……そのエゴがなければ時代が次に進まないのも確かで、だからといって全ての人に罪があるかと言われればそうではない。そこで救える命がどれだけあるかは分からないが……もし少しでも生きたいと思って鼓動を止めていないものがいるのならば、俺は少しでも助けたいと思った。

 

 所詮その想いも自分のエゴだ。だがそれで俺は自分の信念を曲げるつもりはない。少しでも……助けれる命があるのなら俺は助けたい。

 

 今日も自分にそう言い聞かせながら、戦場になった地を闊歩する。そして少しでも息があるものは助け、安静に出来る場所まで移動させる。その際に自分の血で作った球体を相手に入れる事は忘れない。脈や息、心音が正常値に戻った事を確認して安全な場所まで連れていく。

 

 んで、この時には既にいくらか日の当たるところに出ても大丈夫な様になった。一時凄い眠気に襲われて、日の当たらない場所で寝ていて次に起きた時には季節が変わっていた。その周期が何回かあった後、急な眠気に襲われる前の状態に戻った。それからまたいつもの様に日の光に慣れる練習として、普段通り鬼の姿で(もうこの時には平常時だろうが鬼の時だろうが容姿に変わりは無くなったが)日の中を歩いたのだが……

 

(あれ? 全然痛くないし身体も崩れないぞ?)

 

 そう、日の光をどうやら克服したらしい。そっからは殆ど鬼の姿で歩いている事が多くなったが、今度は逆に平常時に戻れなくなってしまった。まぁ日の光を克服したらしい今ではどちらでもいいが……

 

 という事で、こうして誰かを助ける時も鬼の姿で助けている。

 

 因みにその安全な場所も灯が作ったものなので、例え何者かが壊そうとしてもびくともしない強度で作られている。

 

 だがいかんせん……そんな中でも沢山の人が死んでしまった事を良いことにワラワラ鬼が湧き出る始末……

 

「ここにいる人達は貴様らの食料でも何でもねぇ‼︎ 分かったのならここから居ね‼︎」

 

 

 そう言いながら血鬼術であの時の日本刀を呼び出し、襲いかかってくる鬼から斬っていく。俺はここ400年この世界で嗅覚とかほかの感覚が敏感になってしまっていた。鬼も元は人間だった。だからこそ、鬼を斬る度に後悔と悲しみの匂いがする……

 

(皆……ごめんな……後でしっかり墓を作って弔ってやるからな)

 

 斬る度に……まだ生きたかったという思いと後悔を感じながらも俺は目の前に来る鬼を斬り続けた。そんな時だ。

 

「ほぅ……なにやら珍しい存在がいるな」

 

 そいつは急に現れた。黒髪で肩より長い髪。それとは比例した形で白い肌と、まるで吸血鬼のような赤い目と、縦に細長い瞳孔が、月明かりに照らされて男は立っていた。

 

「まさか人間の身でありながらこれだけの鬼に襲われても動じず、逆に立ち向かっていくとは……それも一切の息切れないように見える。これは人間のままにするのは勿体ない」

 

「はぁ? テメェなに言ってやがる? 誰にでも分かる様に話せや」

 

「あぁ、すまない。先程のは単なる私の独り言だ。それで早速なんだが……私の部下にならないか?」

 

「部下? どういう事だ?」

 

「先程から君の戦いぶりを見ていて思ったのだが……君は何かを求めている様に見えたものでね。それが何かまでは分からないが……だが人間の寿命はいかんせん短すぎる。人間である君が生きている間に、求めているものが見つかる可能性も低い。その前に死んでしまうだろうな。そこでだ。私はとある目的の為に同志を募っている」

 

「……だから?」

 

「あぁ、だから君の求めるものが見つかる為にも、私の求めるものが見つかる為にもお互い同じ存在となって協力しようと言っているのだ」

 

「同じ存在? つまりあんたは人ではないと言うことか?」

 

「そうとも。私は鬼と呼ばれる存在でね。私もこうして各地を練り歩き、まだ生きていたいと願う人間を見つけては、私の血を与えて鬼にしているんだ。そして生きながらえさせる代わりに私の目的を果たす手伝いをしてもらっているがね」

 

「鬼……人に血を分け与えてか」

 

「そうとも。そして生きながらえる為にと私の血を欲し、そして賛同してくれる同志達がこんなにいるのだ」

 

 そして男の後ろには、何百以上もの鬼が立っていた。

 

「その鬼達は?」

 

「あぁこやつらか。ここの地で無残にも散ってしまいそうだった人間達だ。まだ生きていたいと願っていたからな。私の血を与えたのだ」

 

「……他の方法で助ける事は出来なかったのか?」

 

「助ける? 無論助けているだろう? 違う存在ではあるが、彼らも生きながらえているから目的は達している。そして彼らには今度私の目的を達成してもらう為に力を貸してもらうのだよ」

 

「……その人達に重説とかちゃんとしたか?」

 

「……ん? なに? 重説とはなんだ?」

 

「その様子じゃあ何も言ってねぇ様だな。重説……自分がこうなる変わりに色々と条件があるって説明だよ。まぁテメェの口ぶりじゃあただ甘言だけで鬼にしてるった事か……」

 

「それがどうした? 彼らはただ生きながらえた事に喜びを感じている。見ろ! 彼らの顔を! 良い顔で笑っていると思わないか?」

 

 灯はその男の背後にいた鬼達を見た。確かに皆顔が笑っている様に見える。見えるが……

 

 

 

 

(タス……ケテ……)

 

(こんな姿になってまでイキタク……ナイ……)

 

 

 

 

(あぁ……聞こえるよ。お前達の悲しみが……)

 

「テメェ……その鬼達が本当に笑っていると思うのか? 心の底から」

 

「心の底から? 何を言い出すかと思えば……鬼になったのならば後は鬼の本能に従うまで。心の声は私にもある程度は読めるが、それを読もうとする気は無いな」

 

「……そうか」

 

 そこから灯の纏う気が変わった。それを間近で受けた男は……

 

(な、なんだこの威圧は⁉︎ それにこの感じ……ま、まさか既に私と同じ鬼だとでもいうのか⁉︎ だが私がさっき感じていた稀血の人間の気配が何故いきなり変わった⁉︎)

 

「貴様がこんな悲しい存在を生み出している親玉という事は分かった。それも十分にな」

 

「貴様の様な存在がいるからいつまで経ってもこの悲しみの連鎖が消えない! だからこの世から失せろ!」

 

「な、なんなんだ貴様は! なんなんだお前という存在は⁉︎」

 

「鬼だよ……今の俺は貴様と同じ存在だ。ただ在り方が違う……貴様とは真逆にいる存在だ」

 

「な、何を言っているんだ⁉︎ 私と真逆だと⁉︎ 私と同じ鬼である貴様が⁉︎」

 

(なんなのだこいつは! この存在は⁉︎ こいつをこの場で殺さねば私がやられる‼︎)

 

「どうした? さっきまで余裕そうな顔してたのに……やけに心は焦っている様だが?」

 

(こ、心も読めるのかこいつは⁉︎)

 

「え、えぇい‼︎ こんな奴に声をかけた事自体失敗だったか‼︎ こいつを始末した鬼は私の血をさらにやるぞ‼︎」

 

「「「オォォォォォッ‼︎」」」

 

 男のその言葉で本能的に動く有象無象の鬼達が灯に一斉に飛びかかった。

 

 その様子は……灯にとってはスローモーションに見えた。まるで走馬灯でも見ているかの様だ。

 

 しかしながら……灯はここで命を散らすつもりはない。

 

「血鬼術……」

 

 血鬼術を使う時には、既に灯の身体は鬼に覆い被されて男からは見えなくなっていた。

 

「ふ、フンッ! 所詮は口だけだったと言うことか」

 

(ならば先程の戦い振りは一体なんだったと言うのだ?)

 

 そう思っていた時だ……

 

 

 

ダーーンッ

 

「「「グァァァーッ⁉︎」」」

 

「な、なんだ⁉︎」

 

 鬼達は吹き飛ばされる。男はその光景をただ呆然と眺めていた。そして見たのだ。灯の両手1つずつに持たれていた大剣を……

 

「あなた達の苦しみを……今断ち切る‼︎」

 

 両手に持った大剣が桃色の刃を灯した。

 

「な、なんだその光は⁉︎」

 

「テメェは知らなくてもいいことだよ‼︎」

 

 そう言いながら灯は近くの鬼から斬りに行く。

 

「デヤァァッ‼︎」

 

「ギャァァァッ……」

 

 灯に首を斬られた鬼は、当然ながら胴体と首が分かれた途端に身体が崩れ始めた。

 

「ば、馬鹿な⁉︎ まさか私が殺す以外の方法で鬼を滅するなど⁉︎」

 

「やっぱテメェは部下だと何だと言っておきながら自分の手で同胞を手にかけているじゃねぇか‼︎」

 

「今貴様がやっている行為とどう違うと言う! 所詮貴様も同族殺しだろう‼︎」

 

「確かに同族殺しだ。エゴだよこれは。だがな……」

 

「俺は彼らの悲しみと後悔を断ち切ってんだよ! その分の悲しみと後悔を背負ってんだよ! 自分本位の貴様と一緒にするな‼︎」

 

「減らず口を‼︎」

 

「減らず口だとしてもこれは俺の信念だ! 誰に何と言われようと変わる気はねぇよ‼︎」

 

 そう言いながらどんどん鬼を斬っていく。周りに陣取っていた鬼達は、灯の嵐の様な猛攻で数を減らしていった。

 

「だ、だが私がここで生み出した鬼はこれだけではないぞ!」

 

 男が言う様に……男の後ろにまたワラワラと鬼が湧き出す。これは消耗線に入るか……

 

「血鬼術ゥ‼︎」

 

 灯は大剣を一度連結させて片手を自由にすると、また新しい得物を取り出した。それは赤い小さな持ち手だった。そこに力を入れると大剣と同じ様な桃色の鋭い刃が出来る。

 

「ハァァァッ‼︎」

 

 それを横投げで前に放つ。するとそれも勢いよく横に回りながら前へと飛んでいく。それは男の頬を少し擦り後ろへと飛んでいく。男は正直何が起こったのか分からなかった様だ。

 

 その男の後ろでは鬼達の断末魔が聞こえ、今度は男の反対側の頬を後ろから擦り灯の手元へと戻った。

 

「な、何が……っ⁉︎」

 

 男が後ろを振り向くと、さっきまで大勢いたはずの鬼が既に3分の1をきっていた。

 

「あ、あれだけで私が生み出した鬼が……たったあれだけで……」

 

「アァァァァッ‼︎」

 

(な、なんなんだこの光景は……私は夢を見ているというのか⁉︎ こいつは一体何だというのだ⁉︎)

 

そうこうしているうちに上から灯が鬼の残党を攻撃していた。それを現実逃避で見ていた男だったが……

 

「さぁ、後はお前だけだな?」

 

「っ⁉︎」

 

 その言葉で現実に戻された。周りを見れば月明かりの下……灯と男の2人しかいなかった。

 

「さっきからずっと思っていたんだが……テメェをすぐあの世にっていうのも、ただテメェは楽して死ぬからな。だから……」

 

「血鬼術」

 

 灯は今まで手に持っていた大剣を消すと、今度は無骨で身の丈ほどの大きなハンマーを取り出す。鋒はトゲトゲしく……かするだけでも骨が折れてしまいそうなものだった。

 

「お前は人を鬼にした事を……長い時かけて悔いながら……反省しながら生きていくんだな」

 

「私が……この私が悔いるだと? 反省するだと? そんな下らぬ事を誰がするものか‼︎」

 

 男は灯から飛び退きながら、まるで口だけがある肉塊を背後から出して襲い掛かる。

 

「はぁ……まぁそんな事を言う事は分かっていたさ。だが……」

 

グッシャァ‼︎

 

「これはもう決定してんだよ。大人しく自分の行った事を黙って償え」

 

「ガハッ⁉︎」

 

 肉塊はハンマーによっていとも容易く潰され、男もハンマーで空に飛ばされていた。

 

「パイルバンカー……セット」

 

 ハンマーの中から何やら音がした。だが別段形状などは変わっていない。そこから灯はハンマーをまるで投げ槍をするかの様に構えて……

 

「穿て鉄血‼︎」

 

 ハンマーは投擲された。それも空に飛ばされた男目掛けて……

 

「グフゥァ⁉︎」

 

 男の腹に吸い込まれるかの様にクリーンヒットした。

 

「貫け鉄血‼︎」

 

 ハンマーが男に当たったのを確認すると、さらに灯はそう叫ぶ。

 

「グバッ⁉︎」

 

 男の腹に当たったハンマーの先端から鋭い刺が迫り出し、男の腹を貫いた。それだけでなく、ハンマーは男を貫いたまま速度を落とさず真っ直ぐ飛んでいく。

 

「その体制で最低でも何百年か自分のやってきた事を悔い改めろ。そうしたら綺麗に首を跳ねて楽にさせてやるよ」

 

「オノレェェェェッ‼︎ 悔いなどするものかぁぁっ! 貴様の容姿、この憎悪とともに覚えておくぞぉぉぉっ‼︎」

 

 男は遙か彼方へと飛ばされていく。それを姿が見えなくなるまで灯は睨み続けた。

 

「これで奴も悔い改めたらいいが……さて、じゃあ今からアンタ達の墓を作るからな」

 

 灯はお墓を作り始めた。この地で散った兵達と、男によって鬼にされた人たちも含めて1個ずつ作っていった。そのために灯は三日三晩……お墓を作り続けたという。

 

 そして灯は……また大切な何かを失う感覚を覚えた。




次回……鎌倉〜室町を経ていよいよ戦国時代へ

日の呼吸を使いし侍……灯の前に立ちはだかる。


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弐話 鬼の目にも涙

長い期間が空きましたが、2話目となります。では、ご覧下さい。


 

 

 

 

 〜100年後〜

 

 

 

 あれからも各地を練り歩いていた。勿論人を助ける為に……

 

 ただ……おかしな事に鬼の数が前よりも多くなっている気がする。いく先々の町で出会すのだ。

 

(まさかあの野郎が出てきたって言うのか?)

 

 いや、それは多分ないはずだ。何せあいつを封じている血鬼術には、まだ平安だった頃にとある陰陽師から習った術式を組み込んであるからだ。だから数十年で簡単に出れるはずがない。

 

 まぁ封印を施した自分が対象をどこに封じたか分からなくなる……っていうヘマはしない様に印は付けたが……思ったよりも地下深くまで突き刺さっているらしい。だからこそ簡単に出れるはずはない……と鷹を括っているのかもしれないが、封印を解いたなら解いたで俺が知らないわけがない。だから気のせいか程度に思う事にした。

 

(だが……微かに奴の力が抜け出ている様な……そんな感じがする)

 

 そう思う事にして、やっぱり1回様子を確認しに行ったほうが良いのかもしれないと、既に夜ではあったが思ったら即行動、そこから大まかにではあるが、封印されたところに行こうとした矢先だ……

 

「貴様……鬼の類だな?」

 

 目の前にいつの間にか侍がいた。それも奇妙な形の痣を顔に作ってはいるものの、かなりの美形だと思わせる侍が……

 

「確かに俺は鬼だが……」

 

「そうか……ならば」

 

 ちょっと瞬きしただけだった。その間に侍は俺の間合いに入ってきて……

 

チャキッ……

 

「っ⁉︎」

 

 俺の第六感がマズいと告げたのか、無意識のうちに飛び退った。すると少しだけ胸元が一閃されていた。

 

「今のを避けるとは……貴様、強いな」

 

「おいおい! いきなり斬りかかるのはやめてくれ‼︎ 俺が何をしたって言うんだ⁉︎」

 

「珍妙な事を言う……貴様も鬼ならば分かるだろう?」

 

「た、確かに俺は鬼だけど……でも誰も襲ってもないし人も食べたりしねぇよ‼︎」

 

「……確かに貴様からは他の鬼と違う感じがするな」

 

「だがそれでもだ。他の鬼と同じ様な術で誤魔化しているだけかもしれない。問答無用だ」

 

「この分からず屋‼︎」

 

「鬼は平気で嘘をつくからな……もし貴様が本当に誰も襲っていないと言うのなら……俺と斬りあって証明して見せろ」

 

「……分かったよ。やれば良いんだろやれば」

 

 そして俺は、あの鬼と戦った時に出した大剣を血鬼術で出した。

 

 そこからはまさに死闘だった。町中と言うことでもあったし、ビームの刃は出せない。それでも高質量の鉄の塊だ。そんじょそこらの金棒ではへし折れない程の強度は持っている。

 

 そのはずなのにあの侍なんなの⁉︎ 普通に両断してくるんですけど⁉︎ 常識疑うよ‼︎ 俺が言うのもなんだけどさ‼︎ だから途中から腕を増やした上でそれぞれに武器を持たせて対応したよ……えっ? 生身の腕を増やしたらグロイって? 何勘違いしてるか分からないけど、これも血鬼術で増やしたからね? しかも腕8つ。えっ? その時点でもグロイ? 知るかそんな事! じゃないとやってられなかったんだよ!

 

 とりあえずまぁそれでやり合ってたんだけど、どこからともなく悲鳴が聞こえた。それに気を取られていると左腕を斬られた。初めてまともに斬られたから痛かったけど、その侍との斬り合いは中断して現場に向かった。そしたら侍も付いてきた。というかこの速度について来るとか速くね?

 

 それで現地に着いたら、男が倒れていた。近くにいた女の人を庇ったのだろうか。まぁそんな事よりも……その場には鬼が2体いた。倒れている男ごと女性を襲おうとしたのだろう。なにやら血鬼術を発動していた。それが当たる前に、侍に斬られていない右腕で持っていた武器で全て掻き消した。

 

 その際鬼2体に、自分達の獲物を横取りするつもりかと言われたが、そんなものに対しては何も返事をせずに持っていた刀、大剣、ハンマー、ハルバート×2で一閃ずつした。すると鬼は消えていった。それと同時に左腕も回復したのでもう1体の方をやろうとしたのだが……既に侍が鬼の首を斬っていた。ホントいつの間にという感じで……

 

 そこからは、俺が傷を負った男をいつもの様に助けた。自分の左腕から血を流し、それを球体状にして男の中に入れ込んだ。

 

「貴様……何をした?」

 

「何をしたって? そんなの……ここに倒れてる男の人を治したに決まってるだろ?」

 

「なぜ鬼であるはずのお前がそんな事をしている? 鬼は人を喰らうのではないのか?」

 

「確かにそういうもんかもな……だが俺は、俺の中にある信念で行動してる。それに、確かに最初は俺も人の血を嗅いで頭の中を鬼の本能が囁いてきた。食べたちまえってな。だが俺はそんなことよりも目の前に傷ついた奴がいたなら助ける……その信念で今まで生きてきたしこれからも誰に何言われようが変わるつもりはねぇ。それでも鬼だからって理由で俺を襲うのなら……俺はテメェの武器がなくなって気を失うまで戦ってやるよ」

 

 それからは……その侍は俺を攻撃しなくなった。逆に謝ってきたから、俺は別に過ぎたことだから気にしないと言って許した。

 

 んで俺たちが助けた人達……炭吉さんとすやこさんって名前なんだが……あの後侍と一緒に家に招かれた。あっ、因みに侍の方は縁壱って名前だ。それでご飯を食べていって欲しいと言われたが、俺は前と同じ様にさっさと断って去ろうとした。

 

 しかしそこで思わぬ所から援護攻撃を食らってしまった。なんと縁壱も一緒に食えと言い出してきた。

 

(なんか思惑があるのか?)

 

 まぁ……結果としては前の様にはいかず炭吉さんの所にお世話になってしまったが。しかも数日間も……

 

 数日間に伸びてしまった理由としては……炭吉さんとすやこさんの間に子供が産まれたからだ。前世含めてそんな経験に立ち会った事は無いはずだが……そこは俺の血鬼術を使って、すやこさんが感じている痛みを和らげつつこれから産まれてくる赤ちゃんを取り出す手伝いをさせて貰った。その時縁壱はというと、結構あたふたしてたかなあれは……それでも産まれたばかりの赤ちゃんを持った時は穏やかな顔してた。

 

 俺は……自分が鬼だから、やすこさんが赤ちゃんを産んだ後はどこ吹く風でさっと去った。その時は……赤ちゃんを無事生まれてくるのを見届けたら去るつもりだった。あの優しい人達の事だから俺にも赤ちゃんを抱いて欲しいと言ってくるかもしれないが……常時鬼の状態の俺がもし抱いたとして……その後の事を考えると何故か怖くて、その時は去った。

 

 でも翌日になると……今度はまた縁壱も子供を抱けと言ってくる始末で

 

(アンタら俺が鬼って事を忘れてないか?)

 

 勿論その事は話したはずなのに……

 

「縁壱さんと灯さんがいたから、僕達とこの子の命があるんです。だからあなたが鬼だからとかは関係ないんです! 抱いてやって下さい‼︎」

 

 炭吉さんにそう言われて根負けした俺は……やすこさんから渋々と子供を受け取って抱いた。

 

 そしたら……その赤ちゃんはキャッキャッと笑ってくれたんだ。それを見た時……なんだか懐かしい記憶を思い出した気がした。前世で生まれたばかりの頃……まだ満足に何もする事が出来ない俺を、慈愛ある笑顔で抱いてくれた母親らしき人の記憶を……

 

「灯さん……泣いているの?」

 

「えっ? ……っ⁉︎」

 

 気付いたら俺は……涙を流していた。どうして流しているのかすぐには分からなかった。だけど……

 

(ほんの少しだけど……大切な事を思い出したからかな)

 

 この記憶も多分……血鬼術で人を助けていたらすぐに薄れてしまうかもしれない。それでも俺の中には……まだ大切な記憶が残っている。いつ消えてしまうか分からないけど……大事にしたいと思った。

 

 それと数日の大半を占めたのは……縁壱が俺に日の呼吸とやらを教えたいからだ。正直身体が崩れて死んでしまうかと思ったが……どうにか耐え抜いて呼吸を覚えた。後は全集中・常中も覚えた。

 

 にしても本当にきつかった……。特に全集中・常中は寝ている時もやれと言われて、出来ていなかったら問答無用で木刀で叩き起こされる。しかもめちゃくちゃ本気で叩かれた。俺の身体が鬼の身体である事を良い事にだ。ま、まぁ……これで戦い方に幅が出てくるのだろう。

 

 そんな時が過ぎて俺と縁壱は、同じ日に炭吉さん達と別れる事になった。確か炭吉さんも縁壱から日の呼吸を教わっていた様で、護身のためにとの事だが……優しい彼らや彼らの子孫が、その呼吸を生涯戦いに使う事はしない様にと願いたい。

 

 それで縁壱は自分の耳飾りを渡していた。まぁお世話になったお礼も含めてなんだろうが……後なんか俺の方にも縁壱は渡してきた。見ればそれは、炭吉さんに渡した耳飾りと、そして予備で持ち歩いていた縁壱の刀だった。そういえば刀で斬られた時は傷が直ぐに治らなかった。後から聞いた話でもあるが、その刀はどうやら鬼にとっては弱点となる素材が使われているらしい。

 

(貰ってばかりと言うのもあれだから……俺も何か渡すか)

 

 それでまず炭吉さん達に渡したのが、血鬼術で作った紅色の首飾りと紅色の珠を付けた簪である。お世話にもなったし、そのおかげで忘れていた記憶の断片も思い出す事が出来た。そのお返しに、首飾りと簪をつけている一族を守って欲しいという想いを込めて作った。

 

 縁壱に渡したのもまぁ……炭吉さん達に渡した首飾りであるが、効果は一緒だ。

 

(確か……500年前くらいにも同じ様なことしたな)

 

 あの親子は元気に育ったのだろうか? 今となっては分かりはしないが……どうか無病息災を願いたい。

 

「世話になった」

 

「あぁ。鬼の俺にまでこんな優しくしてくれた。あなた達と次代に生まれる子孫が無病息災である事を願うよ」

 

「いえ! 僕達もあの日縁壱さんと灯さんに助けてもらわなければ、今ここにいない訳ですし……それにこの子も無事に生まれる事はなかったと思います。だからお礼を言うのは僕達の方ですよ。本当にありがとうございます」

 

 炭吉さんとやすこさんがお礼を言いながら頭を下げる姿を見て……俺はまた泣きそうになっていた。この数日のうちに涙腺が脆くなったのかな……? でも……こんな鬼がいても許してくれるよな?

 

 そして炭吉さんとやすこさんが送り出してくれる中俺と縁壱は別々の道を歩む。縁壱は鬼を滅するために……俺も基本的に一緒ではあるが、それ以外に助けを求めている人達を助ける為に。

 

(まぁその前に……)

 

 俺はある所に行った。縁壱が鬼に遭遇する確率と、俺達が炭吉さん達を助けた時に同じ町に2体鬼がいた事……これを加味するに、あいつは何らかの形で封印から一部分だけでも脱している。その為に封印した場所に赴いた訳だが……

 

「……クソッ‼︎」

 

 封印した場所は、とある山の麓にある。そこにがっぽりと開いた大きな洞窟。勿論それは、俺が封印した時にハンマーが止まるまで掘り進めたやつだと思うが、それが随分下まで続いた。

 

 そこで見たものは……目だけを見開いた肉塊がウネウネ動きながらハンマーによって封印されていた。だがこれだけは分かる。あいつはどんな方法か知らないがこの封印からすんでのところで逃れたんだと。

 

 だから……最低でもこいつは滅しきる。ただ……多分こいつは俺の血鬼術だけでは消え去らないと考えた。だからここで縁壱から貰った刀を構えた。そして縁壱から教わった日の呼吸……それを俺なりに改良した呼吸を用いて目の前の鬼を滅ぼす。

 

 右手で刀を持ち、そこから突きを繰り出す構えでいると、刀の周りに次第に空気が集まり、刀に沿って循環し始め、やがてそれは赤い稲妻を伴った。

 

 それを相手も気付いたのだろう。どうにか肉塊から出てくる触手みたいな物がウネウネしながら俺に伸びてくるが、封印のせいで全然届いていない。まぁ封印したままでは完全に滅する事は出来ないと考えているから、一旦ハンマーは消した。

 

 俺の血鬼術は、作った物は基本的に俺が念じなければ消えない。そして作った物は基本的に真新しく、今回施したハンマー付きの封印も、全然錆びつかず綻びもなくいつも新品な状態だ。それをどんな方法かは知らないが、アイツは逃げ出した。予測としては飛んでいる最中にアイツ自身が千切れて逃げおおせたぐらいだが……まぁ今は考えない様にしよう。今は……目の前のこいつを滅するだけだ。

 

 ハンマーを消すと、肉塊は物凄い勢いで身体ごと触手を伸ばして俺を貫こうとしてくる。

 

(だが……もう遅い)

 

「機の呼吸……衝動の章……赤雷爆風(せきらいばくふう)‼︎

 

 赤い稲妻を伴う風圧が肉塊を襲った。巻き込まれた肉塊は触れた箇所からどんどん塵になっていき、風圧が収まる頃には最早何も無かった。

 

 それを見届けた灯は改めて決心した。悲しき鬼という存在を生み出す元凶をこの手で滅すると……




解説

機の呼吸・衝動の章・赤雷爆風(せきらいばくふう)

赤い稲妻を伴った風圧を相手に向けて突きを繰り出す。突きから放たれた風圧は、飲み込まれた相手は塵すら残らない。

次回……戦国時代から江戸時代初期の時代へ

元凶に鬼にされた1人の女性。願いはたった1つ……家族との時を過ごす為。だがその想いは無残に踏みにじられる形に。その時偶々出会した灯は……


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新説 鬼の始祖を滅ぼさんとする復讐者
新説 プロローグ 新たなる竜の道+オリ主設定


本日新たに新説として『鬼滅の刃』のプロローグを書かせて頂きました。基本、こちらも主人公最強設定で行なっております。

これは鬼滅の刃ではない思われたらすぐに引き返す事をお勧め致します。

それでは、どうぞご覧下さい。


 

 

 

 

 

(ここは……どこだ?)

 

 俺はさっきまで病院のベッドで寝ていた筈だ。病気にかかって入院していたものの、そこまで辛くはなかった。所謂寿命みたいなものだ。

 

 俺は義理の妹である美佐と結婚して、そのまま家庭を築いて、子供も生まれて健やかに育てた。その子供も大人になって、家庭を持って、孫も生まれた。

 

 俺が……いや、俺達がここまで来るのに激動の人生だった。俺と兄を引き取ってくれた夫婦がいて、その数年後には美佐も生まれて、地域の運送会社で幸せに暮らしていた。

 

 でもそこに霧島という男が現れて、運送会社は霧島に吸収されて俺たち家族は一気に職を無くした。数日後には夫婦は自殺して、家族は俺と兄の竜一、妹の美佐だけになった。

 

 竜一は刃物片手に霧島に復讐しようと待ち伏せするが失敗、それからは親戚の家に住まわせてもらったものの、扱いは酷かった。

 

 そして俺達が大人になる頃には、俺たち兄弟は別々に暮らすことになった。俺は大学を卒業して交通省に入省へ。美佐は教師になるために大学へ。

 

 まぁ俺が交通省に入るのも、全ては霧島に復讐するためだが……そんな矢先に兄が焼身自殺を図った。家族は俺と美佐だけになった。

 

 だがそれから数年後、顔を変えた兄がやってきた。そして俺達兄弟2人で霧島に復讐することを誓う。俺が表からで、竜一は裏から……

 

 上手くいかない事も多々あったが、それでも最後には霧島に復讐できた。その後は竜一が裏でやってきた事を自首する事になった。まぁそれが原因で俺達にも被害が及ぶ事にはなるが……昔みたいにこの家族3人なら生きていけると。

 

 そして最後皆で食事をしようって決めていた日……竜一が死んだ。路地裏で誰かに刺された様だったが、誰が刺したのか分からない様で……俺達はまた家族を失った。それでも何とか生きようと決めて、俺は美佐と結婚した。

 

 確かに深い傷跡が心の中にあったが、懸命に生きようと支え合いながら前を向いて進んだ。

 

 そんな激動の人生を歩んで冒頭まで戻る訳だが……

 

「ここどこなんだ? ん? 声もいつもの感じじゃ無い?」

 

 そこは洞窟らしくて、どうにか手探りで進んだ。そうすると視覚が慣れてきたのか、ようやく鮮明に見えて来た。それで外に出れた。

 

 今は夜らしく、月明かりと星が空を彩る。

 

 耳を澄ませば川の流れる音が聞こえた。その音に導かれる様に俺は足を進める。着くとそこには綺麗な川があった。ちょうど喉も渇いていたために、俺は両手で水をすくって飲む。

 

 その時、ようやく俺の顔が見えた。その顔は……俺の子供時代と一緒の顔付きだった。

 

(っ⁉︎ まさか時間が戻ってる⁉︎ いや……そんなことは……)

 

 でもそう考えなければ辻褄が合わない。という事は竜一と美佐も時間が巻き戻っているかもしれない!

 

(そうすれば……今度こそ3人で幸せに暮らせる‼︎)

 

 そう思えると、今の状況も悪くないと思える。今日はもう遅いし、さっきの洞窟に戻って一休みしよう。

 

 この時の俺はこんな短絡的な思考だったが、だがこの後俺はその思考を呪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝……洞窟内で休息を取ったが、中々に休めたものだった。急場しのぎでそこら辺の雑草とか集めて敷いて簡易的な寝床を作ったが、意外と休めた。

 

(まぁ子供の身体だから、大人の頃の様に敏感でないだけかもな)

 

 そう思って俺は朝のうちに移動しようと洞窟を出ようとした。出ようとしたが……

 

(なんだ? 身体が思う様に進まない……)

 

 何故だか俺の身体は、急に重りを付けられたかのように足取りが重くなった。昨日は全然平気だった筈なのに……

 

(しかも近付いていくにつれてどんどん重くなっていく様な……)

 

 それでも何とか俺は出口付近についた。そこまで動くのに疲れてしまった為、壁に寄り掛かろうとした……

 

「っ⁉︎ アァァァァァァッ⁉︎」

 

 寄り掛かろうとした右手が急に痛み出して、壁から離れる様に倒れ込んだ。しばらくの間右手に激痛が走って、その痛みを和らげようと無意識に左手で右手を覆った。

 

 それが数分続いて、ようやく痛みがひいた。それは良かったが……

 

「……右手が……ない?」

 

 手首より先の掌が無くなっていて、手首は赤いヒビ割れを起こしていた。

 

「な、何だこれ⁉︎ どうして⁉︎」

 

 そう思ったのも束の間、赤いヒビが徐々に治っていき、最終的に右手が“生えた”。

 

(お、俺の身体……一体どうなって……っ⁉︎)

 

「うっ……うぅっ……ガァッ⁉︎」

 

 治ったと同時に急に激しい頭痛に見舞われた。両手を頭に強く当てて痛みが引くのを待つが効果は無く、次第に痛みが増して気付いたら俺は地面をのたうち回っていた。

 

 それと同時に見えたのは……俺とは違う男の記憶だ。貴族だったが生来より身体が弱く、医者に見せても良くならない。そこでとある医者が特別な薬を処方するも治らなかった男は、我を見失って医者を殺す。

 

 だがその男に後から変化が起きた。だるかった身体が急に軽くなり、体調もみるみるうちに良くなった。これに関しては医者に礼を言いたかった様だが、殺した後だから遅い。

 

 体調が良くなった男はこれを機にあまり出たことが無かった外へと行こうとしたが、そこでさっき俺が受けた現象が男にも起こった。どうやら日の光に当たると身体が吸血鬼の様に崩れるらしい。

 

 そこで男は医者が何の薬を処方したのか調べた。それを摂取する事で完全に外に出れる様にと思っていた様だが、そこで気になるものを見つけた。

 

“青いヒガンバナ”

 

 どうやらそれが薬の原料になっている様だ。夜のうちは出歩いても大丈夫だったみたいで、その時間帯で探そうとしたが1日数日で見つかる訳もなく、しかも今まで食べていた物が不味く感じた。

 

 その代わりに……そいつは人間を襲って食べた。あの薬はどうやら外も中身も凶悪に変えてしまうらしい。

 

 そこで男は思い付いた。自分と同じ存在を作ってその青いヒガンバナを探させようと……

 

 そこからの映像は……最早地獄にも等しかった。自分の血液を人間に入れ、それと同時に自分と同じ様な存在にする。男は自分の事を鬼の始祖と呼んでいる様だが……その通りでどんどん仲間を増やしていく。

 

 人を襲い、血肉を分けて仲間にし、仲間にした鬼は人の血肉を求めて彷徨い襲って喰らう。その繰り返し……そして、

 

(っ⁉︎ あれは俺……)

 

 その映像は、俺が恐れを抱きながら誰かを見ているシーンだった。

 

『ほぅ……さっき殺した子供の顔と瓜二つだが、お前は中々に何か持っている様だな。あの兄妹の様に殺すつもりだったが気が変わった。私と同じ存在となり、私の手足として働け』

 

 俺の顔が映ったシーンから別のシーンに切り替わった。そこには……

 

(りゅ、竜一⁉︎ それに……み、美佐?)

 

 あれは……忘れるわけが無い。あの顔は子供の頃の竜一と美佐だ。だが2人とも……ピクリとも動かなかった。それも2人が倒れている所には大きな血溜まりが出来ていた……

 

『さぁ……恐れる事はない。私の血を受け入れろ』

 

 男の指が俺の首をなぞった。そして俺はもがいて苦しんで……

 

「思い……出した……俺は……」

 

 俺は……あいつに鬼にされたんだ。あいつに無理やり血を入れ込まれて……人間を襲いたい衝動に駆られた。だが俺は……どうにか理性でその衝動を抑え込んで、その状態でここまで来た。

 

 でも、そこまで思い出して何になる?

 

「この世界に竜一と美佐は……いない……」

 

 今がいつなのかすら分からない。あのシーンを見た以上、服装も現代ではなかった。それよりももっと古い……戦国時代くらいだ。

 

(それでも……俺は今度こそ3人で幸せに暮らしたかった。ただ……それだけ願っただけなのに……)

 

「うぅっ……ぐぅっ……あぁっ……」

 

 涙が出た。どうやら鬼になっても涙ぐらいは流せるみたいだ。そこからは……感情に任せてあられもない声で叫んで泣いた。岩の地面に何回も何回も拳を叩きつけて……その度に血が飛び散るが……痛みなんて無かった。

 

 それが数時間続いた。その頃にはもう泣き止んでいて……地面に叩きつけたことによってぐちゃぐちゃになった拳も……元に戻っていた。

 

「あぁ……俺はもう人では無くなったんだな……」

 

 大切な家族2人を失った喪失感が俺の心を支配しようとした。もうどうにでもなれと……俺の頭に住んでいる悪魔がそう囁いてくる。

 

 だが……

 

「……そんなわけねぇだろ?」

 

 この世界でも……前世と同じ様に霧島みたいな奴がいる。そいつは自分勝手に……霧島と同じ様に他人の幸せなど関係なく何もかも踏み潰して……勝手に自分と同じ様な存在を作り出している。

 

 そして鬼に作り替えられた奴らも……人を食べなければやってらないといって他人の幸せを踏み潰す。そのサイクルだ。

 

「そんなの……誰かが止めなくちゃならねぇ筈だ」

 

 だから……

 

「俺がその負の連鎖を……断ち切ってやる……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんでもってアイツに……復讐してやる……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう決めた俺は、まず自分の身体をどうにかしようと考えた。各地を練り歩いて鬼を作るくらいだ。作り出した鬼が何してるのか……それが分かるような細工をしているに違いない。謂わば呪いだ。

 

 なら……

 

(そんな呪いを打ち消す程の事を……俺の身体でやれば良いんだろう?)

 

 人は食わねぇ……人と同じ様に動物や植物を食べる。ただその前に……

 

「俺の中を駆け巡っているこんな汚ねぇ血を身体から全て抜き取る」

 

 そんな事できる筈ない……そうだな。本来なら出来るわけねぇって俺も思う。ただ……

 

(あの記憶を見ていた時……俺の中を何か不思議な力が巡ってる気がした。それにその使い方もご都合主義みたいに見せてくれた)

 

 あれは何かのアニメ映像だったのだろう。全部見えた。だから試してみることにした。

 

「クレイジー・ダイヤモンド。ゴールド・エクスペリエンス」

 

 口に出した瞬間、人型の何かが俺の目の前に現れた。その2体は同じ人型ではあるものの、色合いや格好が違う。まぁ今はそんな詳しい部分まで突っ込む必要はない。

 

 それよりも今は能力を試してみる。まずはクレイジー・ダイヤモンドからだ。さっきの様に日の光に自分の左手を当てた。すると先程と同じ様な激痛が、身体全体を駆け巡る。

 

「っ⁉︎ あぁぁぁっ⁉︎ クレイジー・ダイヤモンドォ‼︎」

 

 俺は空かさずクレイジー・ダイヤモンドで欠損した腕を治していく。コイツは本来自分自身を治す事は出来ない。

 

 だが今俺の身体を構築しているものと魂は別々だと思っている。だから俺の魂が完全に消滅しない限り……この腐った様な血が流れている身体は治せる筈だ。

 

 その考えは……どうやら的を射たみたいだ。未だに痛みは引かないものの、左腕は構築できた。

 

「次に……ゴールド・エクスペリエンス」

 

 コイツは他の物質を生物や人体のパーツに作り変えれる。それならさっきはクレイジー・ダイヤモンドで腕を直さずにゴールド・エクスペリエンスで作り変えれば良いと思うかもしれないが……俺の予想では、それは普通の人のパーツになってしまうかもしれないと思った為だ。まぁ念には念をという奴だ。

 

 それに、人間のままの身体では奴には勝てないと思った。だから鬼の体細胞を残したまま、奴の血だけを抜き出す。

 

 そして今回のゴールド・エクスペリエンスの役割は……そこらにある岩などを動植物に作り変え、その血肉などを摂取……または身体に打ち込む。それからアイツの腐った血に頼らない、全く新しい自分の肉体を創造する。

 

 考えるのは容易いが……実際に実行に移すとなると難しい。それに失敗の確率は物凄く高いだろう……だが……

 

(俺は決めたんだ。アイツに復讐してやるって……竜一と美佐の仇を取る……!)

 

 

「くっ……あぁぁぁぁっ……⁉︎」

 

 だからこんな激痛……死ぬ程の激痛すら今の俺には生温い。

 

(竜一や美佐が死んだ時に感じた苦しみに比べたら……全然生温い……‼︎)

 

 そう思っている間にも、クレイジー・ダイヤモンドで身体を修復しつつ、飛び散った血液は別で集めさせる。ゴールド・エクスペリエンスはその場の岩などを砕いて動植物を創造し、その血肉を俺に摂取させる。

 

 摂取の仕方は、生肉のまま口の中に突っ込むか、若しくは摘出した血を俺の身体に流し込む。

 

 身体の……あんなグズったれの血が染み込んだ身体の構築と、新しい身体の再構築の同時併用で、俺の精神にはかなりの負担がかかっている。そのせいで今自分が何をしようとしているのかすら分からなくなってくる。

 

 それでも……

 

 

 

 

 

 

 

 奴への復讐は……絶対に忘れない‼︎

 

 そんな思いで俺は……その行為を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 あれからどれだけ時間が経ったか分からないが、漸く身体が安定してきた。今は真夜中で……あともう少しで夜明けだ。

 

(この陽を浴びて身体が崩れるかどうか……)

 

 今の俺はそれだけが知りたかった。この身体の隅々まで行き渡っていた奴の腐った血が、完全に俺の中から消え去ったのか確かめたかった。

 

(これでもし失敗したら……俺は死ぬ。そうなったら俺は……多分地獄に堕ちるんだろうな)

 

 前世で死んだ俺が、なんでこんな可笑しな世界に生を受けたのか分からない。そもそもこの身体は、俺とは違う竜二という人間のものだ。多分俺の意識が乗り移る前の竜二という人間の意識は……アイツに腐った様な鬼の血を入れ込まれた事によって死んだ。

 

 そんな空っぽな状態の身体の中に、入れ違いで俺の魂が入り込んだんだと思う。だからその時点で俺はこの世界の竜二という存在を間接的に殺めている。

 

(この太陽の光が、この世で見る最後の光景……か。そうなったら仕方ない)

 

 竜一と美佐は……天国に行っただろうか? まぁそうなってくれていたら良いな。あの世で2人仲良く暮らしてくれたら……

 

 もし2人が……何かの間違えで地獄に堕ちていたのなら、そんな事はないだろうと思うが……

 

(もし……そうなっているのなら、毎日苦しいだろうが……3人で暮らしていけるかもしれない)

 

 基本苦しむ事に間違いはないだろうが……それでも……あの時の様に3人で苦しみを分かち合って、慰め合って……短絡的ではあるが、そんな風に生きていければと思う。そこに……少しでも幸せを感じられるのならば……

 

(……そんな事、あるわけないのにな)

 

 あぁ……そんな事分かってる。それでも……そんな生き方を思い描いてしまう自分がいる。

 

 だがこれだけは言える……

 

 

 

 

 

 

 

(例えどんな形でこの命が尽きたとしても……タダでは死なない。あの腐った様な鬼の始祖を……何でも良い……この俺の中に渦巻く怨嗟だけでもアイツに一矢報いてくれれば最低限それで良い……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていると同時に夜が明けて……陽の光が俺に差し込む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……崩れて……ない」

 

 俺は……久方振りに太陽の光を全身で浴びた気がした。そしてその陽の光を浴びても俺は……死んでいない。

 

(あぁ……この世界に神様というものがいるのなら、感謝する)

 

 陽の光を浴びながらそう思っていると、クレイジー・ダイヤモンドが何かを持っていた。それは木で出来た桶の様なもので、その中にはドス黒い液体が……

 

「そうか、これが俺の中に流れていた奴の血か」

 

(……なる程。そういう事か)

 

 俺は桶の中に入っている血を地面に垂らした。それも複数回。そして……

 

「ゴールド・エクスペリエンス、この血に生命を与えろ」

 

 ゴールド・エクスペリエンスが血に濡れた地面に生命を与え始めた。それらは様々な小動物の姿に変えられていく。そして動物に変えられたものはすぐ様散らばる様にここから移動していく。

 

(この動物達を辿る事で、奴に辿り着ける筈だ)

 

 そして俺も移動する為に歩き始める。鬼になったとはいえ、実戦は皆無だ。だから各地を練り歩き、まずは劣悪な鬼どもを討伐していく。そうして実戦経験を積む。

 

(いつ奴に辿り着けるか分からない。だが……)

 

「俺は……必ず奴に復讐する」

 

 この時代の竜一と美佐は……そんな事は望まないだろうが……やると決めた。

 

 それともう1つ……俺の様な思いをする人達を……1人でも減らしていきたい。

 

 俺は復讐心とその想いを胸に……この時代を一歩、歩いていく。

 

 

 

 

 

 

オリ主の設定

 

名前:矢端 竜二

容姿:竜の道 二つの顔を持つ復讐者に登場する矢端竜二と一緒

 

 現世にて寿命により一生を全うした筈の矢端竜二が『鬼滅の刃』の世界に転生した。家族構成についても原作、ドラマと同じ設定だが、鬼舞辻無惨に自分以外の家族を殺され、また自分に対しては無惨の血を入れられて鬼化してしまった。

 

 竜二は家族を殺した無惨への復讐の為、自ら無惨の呪いを断ち切り、復讐の為……そしてこれ以上自分と同じ様な思いをする人達を出さない為に、どこの時代かも分からないまま歩んでいく事を決める。

 

プロローグ時点での能力

 

幽波紋

・クレイジー・ダイヤモンド

・ゴールド・エクスペリエンス

 

血鬼術

・???




タグには付けていない幽波紋を出させて頂きましたので、投稿させて頂いたのち、小説情報を幾分か修正致します。

また、幽波紋能力については、最初から最後までオリ主にしか出さない設定で行わせて頂きます。

尚、こちらにつきましても作者の気分次第で続けるかどうかを決めますので、悪しからず……


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新説 1話 鬼となり各地を放浪す

 

 あれから無惨の居場所を探ってどれくらい経っただろう……。といっても数十年くらいかもしれない。

 

 探っていると、無惨の血を分けられた鬼に遭遇した。平気で人を襲う者もいれば、鬼になった時の衝動で肉親を食べてしまい、後悔している者達もいた。

 

 前者は、このままいても平穏に生きている人達に害が及ぶだろうと思って滅しておいた。後者の方は……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 人の身でこんなことをしたら絶対に死ぬ行為だ。それに時代が時代だ。そんな都合良く医療器具など存在しない。だが俺には幽波紋(スタンド)がある。

 

 まずは俺の血を鬼に注入する。すると鬼の身体が拒絶反応を起こしてのたうち回る。そこをクレイジー・ダイヤモンドで激痛を和らげながら奴の血を抜く。それから数分……奴の濁り切った血は俺が作った筒の中に全て入り、鬼にされてしまった者は生前と同じ姿にまで戻る。そして人を食べたいという衝動も起こらないし、日の光に当たっても消滅はしない。

 

 想い人と寿命を迎えるまで添い遂げたいと希望がある者には、俺の血を分け与えて鬼にした。しかしながら食人衝動は怒らないし、日に当たっても身体が朽ち果てる事はない。

 

(大切な人とは……何年も添い遂げたいよな)

 

 自分勝手なエゴだと理解はしている。それでも俺は……俺の様な想いをしてほしくなかった。

 

 ただ鬼に一度されてしまっているから、何十年何百年と生きてしまう。だからこそ俺は作った。鬼と人間が一緒に暮らせる村を……

 

 

 

 広大な土地を切り開き、その周りを藤の花を咲かせる木々で覆わせた。その木々にはゴールド・エクスペリエンスの生命の力を与えている為に、年中藤の花が咲き乱れ、枯れる事もない。

 

 こんな風にしながらも、最初はそんな生活をしながら各地を転々としていた。

 

(まぁ人を襲っていると勘違いされて攻撃された事もあったな……)

 

 しかもついこの前の事だ。ただ、そうされた事で収穫もあったな。今回はその話をしよう。

 

 

 

 

 

 

数ヶ月前……

 

 

 

 

 

 

 とある田舎道を歩いていた時だ。周りを田畑と細い道しかない長閑な土地だった。そこに1軒小屋がポツンと建っており、ここら一帯の田畑を世話している人が住んでいるんだろうと思った。

 

 夜の帳が下りたばかりなので、今が夕食どきなのだろうか。灯が見える。

 

(だが妙に騒がしいし……この不穏な匂い……)

 

 急ぎ早でその小屋に近付いた。中を覗いた。するとそこには、飢えた鬼とそれに襲われている女性がいた。そしてお腹あたりが膨らんでいる事もあり、多分身篭っているんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

おい……

 

「っ⁉︎」

 

 鬼に殺気を放ちながら声をかける。

 

「お前……何をしようとしている?」

 

 鬼は振り向く。しかしながら俺を自分の同類と思ったのだろう。俺を認識するとホッとした顔になった。

 

「な、なんだ〜……俺と同じ鬼じゃねぇかよ。腹減ってるのか? 多分飢えてここまで来たんだろう? 俺もコイツを襲って食べるところだったんだよ」

 

(……あっ?)

 

「だからな? 半分分けてやるからよ。その殺気をしまってくれよ。じゃないと落ち着いて食事もできねぇからよぉ」

 

(……)

 

 ここにも、絆を引き裂く輩がいた。今から産まれてくる我が子との絆を……それも普通の事と同じ様に……

 

「ガッ⁉︎ な、何を⁉︎」

 

「……」ギリギリッ

 

 俺は無言で鬼の首を片手で持ち上げた。その時に万力を込めるのを忘れない。

 

「……貴様みたいな奴が」

 

「っ⁉︎」

 

「貴様みたいな奴が他者の幸せを踏み躙るな……‼︎」

 

「ガァァァッ⁉︎」

 

 そのまま奴の気を失うまで力を込めた。やがて鈍い音と共に奴は気を失った。それを確認して明後日の方向へと放り投げ、その後血鬼術というもので作った大きな鉄柱を2本作って空に放った。

 

 放り投げた鬼は、多分東の方角の比較的開けた人などが微塵も寄り付かないところで、俺の作った鉄柱が腹と頭に刺さっている状態だろう。抜けたとしても明け方で日の光で消滅しているだろう。

 

 それをして俺は小屋に戻る。すると、さっきまで襲われかかっていた女性が少し怯えた様子で見ていた。

 

 まぁそれもそうだ。あんな怪物を片手で持ち上げ、しかもどこぞと知らない土地まで放り投げたのだから。

 

「怖がらせてしまって申し訳ない」

 

「えっ?」

 

 俺はその場で土下座をした。

 

「あんな異形なものがあなたに襲いかかって、その上で俺みたいなどこの馬の骨かも分からない奴がそんな化け物を何処かへ放り投げた時点で怖がる事は分かる。怖がらないで欲しいというのも無理がある」

 

「そ、その……」

 

「だから俺はこのまま立ち去る。今回の事は……どうか悪夢にでもあったと思って欲しい」

 

 俺は相手の言う事を聞かずに立ち上がり、小屋から一歩踏み出した時だった。

 

「っ⁉︎」ザシュッ

 

 俺の左腕が宙を舞った。何かに感づいて半歩右にズレたのが幸いしたのだろう。それがなければ胴体ごと真っ二つだった。

 

「……うたに何をしようとした?」

 

 黒髪を後ろで結った男の人が、血に濡れた斧を持ってこちらに問いかける。それは静かな声ではあったけれども、怒りと殺気をこれでもかと言うほど内包されたものだった。

 

 少し黙っていた瞬間にいつのまにか懐に入り込まれ、下から上へと斬撃を振りかぶっていた。俺はそれを避けようとせず、逆に鉄の部分を持ってそれ以上降らせない様にしする。

 

 それを男は察知したのか、急に振りかぶっていた動きをキャンセルして、俺の右手を真っ直ぐ真っ二つに斬り裂かれた。

 

「もう1度言う……うたに何をしようとした?」

 

 さっき以上の殺気を放っていた。しかしながら怖くはなかった。家族を失った事に比べれば……

 

「……ただその人に謝っていただけだ」

 

「なに?」

 

 俺の放った一言が、自分の想像したものと違ったのだろう。少し怪訝そうな顔になる。

 

「その人の言っている事は本当だよ!」

 

 うたと呼ばれた女性が、男の人に必死になって弁明する。

 

「……そうか。その……すまなかった」

 

 ぎこちなさそうに俺に対して謝罪してくる。別に勘違いというものはいつの世にもあるから仕方ない事だと言っておいた。

 

「で、ででででもどうしましょう縁壱さん⁉︎ 助けに来てくれた事は嬉しいけれど、この方の腕が……」

 

「あぁ、それについては大丈夫です」

 

 俺はそう言いながら斬れた腕と切断された腕を元に戻した。

 

「鬼……と呼ばれる者か?」

 

「そうだな。俺は鬼と呼ばれる存在だ。それで女の人を襲おうとした奴も、俺とは違う鬼だった。そいつについては人がいないところに投げ飛ばして、鉄の棒で貫いて身動き取れない様にしてある」

 

「……ならばお前も人を喰ったのか?」

 

「いや……俺は今までと、人間だった頃と同じような生活をしている。各地を旅しながらな」

 

「まぁ、旅の人だったのね! なら立ち話もなんだし、それに助けてくれたお礼もしないといけないから入って下さいな。縁壱様も」

 

「……俺も色々と聞きたいことがある。中で話そう」

 

 竜二は縁壱の言葉に従い、小屋の中へと入っていった。




中途半端に終わって申し訳ありませんが、自分としてはキリが良いところだと思っております。もう少し読みたかった方々には申し訳ありませんが、また次回をお楽しみ下さい。


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新説 2話 鬼となり鬼殺隊へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 縁壱さんに言われて、小屋の中に入る。それで夕食もご馳走になってしまった。

 

 それで俺は夕食を取りながら、今日の事までの生活を掻い摘んで話した。

 

「本当に鬼がいる事は驚いたけれど、でもそんなにもいるのねぇ。それに鬼と人が自由に暮らせる場所か〜」

 

「あぁ、まさか俺も旅をして自分でそんな場所を作るなんて考えていなかったな。鬼にされた奴の中にも、今のままでいいのか葛藤する奴もいたから、そいつらについては俺の血を分けて人を襲う習性や理性は抑えたよ」

 

「……なるほど。そしてそうこうしているうちにここへ来たと」

 

「あぁ」

 

「それにしてもその、人と鬼が自由に暮らせる場所、私も行って住んでみたいわね」

 

「だがうた、この土地はどうする? うたの両親、そして先祖が丹精込めて開墾した土地だ。それを手放すとなると……」

 

「それなら問題ない」

 

「なに?」

 

「まぁ論より証拠だな。ゴールド・エクスペリエンス」

 

 竜二の背後にスタンドが現れる。

 

「っ⁉︎ なんだその生物……いや、お前の闘気か?」

 

「そう、スタンドと呼ばれるものだ。簡単に言えば縁壱が言ったもので間違いないが」

 

「だがそれを使って何をする?」

 

「少しみていれば分かる」

 

 竜二は持っていた石ころに生命を宿した。するとその石は綺麗な一輪の花になる。

 

「わぁ〜‼︎ 凄いわね‼︎」

 

「……確かに先ほどまでただの石ころだったものが本当に一輪の花になっている」

 

「後こんな事もできる」

 

 今度は別の石を蛇に変えてみせた。

 

「っ⁉︎ 本当に蛇の身体になっている⁉︎」

 

「まぁ大体こんな感じで、ここの土地一帯に生命を宿してそのまま人と鬼が暮らす村に行けるって話なんだけど……行くかい?」

 

 と言う話になって、両人とも了承してくれた。そしてこの土地一帯の田畑と縁壱達が暮らしていた小屋を大きな蛇に変えて、鬼と人が暮らす村へと案内した。勿論出来るだけ人目につかない場所を選んで移動したが……

 

 そして村へと到着した。今回は土地一帯を移動させたから、それに比例して藤の花も土地に沿って増やして埋めた。

 

「まさか……本当に鬼と人が諍いなく暮らしているとは……」

 

「凄いわねぇ〜」

 

「あぁ。俺が考えたんだ。例え鬼になったとしても……大切な人を傷つけたくないと思う鬼がいる。人を食べたくないと葛藤する鬼がいる」

 

「そして人も……鬼にされた人と離れ離れになりたくない者達がいる。俺は……できればその絆を傷つけさせたくない。断ち切らせたくない。だから作った」

 

「……お前は優しい奴だな」

 

「自分ではそう思わないが……褒め言葉として受け取っておく。まぁそもそも、そんな思いをするのは……俺だけで十分だからな」

 

「家族を鬼に殺された事……か」

 

「あぁ……あんな思いは、2度とする事ないって思ってたんだけどな」

 

「ん? 2度と?」

 

「いや、こっちの話だ。それでこっからどうするんだ?」

 

「私はここで今まで通り過ごしていきたいと思います。でも周りにいっぱい人がいるから、最初は仲良くなれるように頑張ります」

 

「俺は……鬼を狩ろうと思う」

 

「普通に暮らす事は可能だぞ?」

 

「俺は元武士の家系でな……出家している身とはいえ、残してきた家族が鬼という存在に襲われてしまえばひとたまりもない。それに竜二が言う事が確かならば、その鬼を倒す術を編み出さなければな」

 

「各地を放浪していた時、鬼だけを狩る存在に何度か襲われた事がある。まぁ全て刀を折って気を失わせて、近くの宿屋にほっぽり出してた事が殆どだが」

 

「ともかくその術を身につけたいなら、その組織に入った方がいい」

 

「そうか。竜二は行かないのか? これからも付け狙われるのは嫌だろう?」

 

「……そうだな。今までそんな事考えてこなかったが、そうした方が良さそうだな」

 

 と言う事があり、俺達は鬼を狩る組織である鬼殺隊に入った。

 

 かなり簡単には入れた様に感じるかもしれないが、自分の正体を明かした時は問答無用で攻撃された。まぁそれが1日中続いた……というか日があるのに消滅しない俺の身体を見て結構首を狙ってきた。

 

 そんな生活が幾らか続いて、ようやく俺が無害な鬼だと分かったらしい。まぁ約2ヶ月もの間狙われ続けるとは思わなかった。それに悪ふざけなのか縁壱も参加してきて……

 

(正直疲れた……)

 

 意図しているか分からないが……ローテーションを組んで攻撃するものだから、ご飯食べる時も寝る時も気が抜けなかった。

 

 だが2ヶ月も経てば流石に諦めたのか、それとも俺が無害な鬼とやっと認めてくれてか……どちらにしろようやくこれでちょっとずつ行動できそうだ。

 

 




本日も少なめですが、キリのいいところで終わらせて頂きます。また次回をお楽しみ下さい。


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