強き信念を抱いて (橆諳髃)
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プロローグ 見た目は子供、頭脳は死んだ時相応→見た目も頭脳も大人、それと鬼……えっ? +オリ主の設定

もう私もどうしようもないんだ‼︎ だって書きたくなったんだから仕方ないじゃあないですか‼︎

「この作者はもう駄目だな……」

という事で……始まります。


 俺は死んだ……でもどうやって死んだか思い出せない。

 

 後……俺の家族のことも……

 

 それ以外の知識は覚えている。俺の名前、俺の好きな事、俺の好きなアニメ、俺の趣味……そんな事は覚えているのに、大切な家族との時間を覚えていない。

 

 でも今はそんな事を必死こいて思い出す時間ではなさそうだ。何故なら……

 

「お母ちゃん! お母ちゃん‼︎」

 

 血溜まりに倒れた母親を、子供が必死こいて起こそうとしていたからだ。それを見つめるのは、まだ状況が理解していない俺と、額から角を生やし、下卑た笑いを上げている存在だ。

 

 奴は目の前の親子に集中しているのか俺には気付いていないらしい。奴は下卑た笑いを続けたまま、親子に近付いていく。

 

(何でだろうな……こんなにイラついてしまうのは)

 

 胸の奥が……凄く煮え滾っている感覚がした。そう感じた時には既に親子の前に飛び出していた。

 

「待て! お前は一体何してるんだ‼︎」

 

「おぉっ? 何が来たかと思えばただの子供じゃないか。これは運が良い。まさか食料が態々自分から出向いてくるんだからな!」

 

 食料? 一体何のことだろうか?

 

「にしてもお前……なんかそこにいる奴らとは違う匂いがするなぁ。っ‼︎ まさか稀血か⁉︎ これは本当に運が良い‼︎ だが本命は後で頂くとして、まずはそこの親子から食ってやろう! ギャハハハハハッ‼︎」

 

「お母ちゃん! 起きて‼︎ お母ちゃん‼︎」

 

 未だに子供は倒れた母親を起こすのに必死だった。目の前の存在は、親子の前に飛び出した子供を無視して親子の元に一歩ずつ近づいていく。

 

 親子の目の前に飛び出した少年、明日照灯(あすてらあかり)には正直、未だにこの状況が分からないでいた。分からないでいたが……

 

(……コイツムカつくな)

 

 目の前の下卑た存在に怒りが積もりに積もった瞬間……灯の身体が光り出した。

 

「ぐぉっ⁉︎ な、何が起こって⁉︎」

 

 その光量に下卑た存在も目を瞑った。そして光が収まったのを見計らって目を開けると……

 

「よぉテメェ……今から自分がどうなるか分かってるよな?」

 

 そこには親子の前に飛び出した子供の姿はなく、代わりに成人した男性が黒衣を纏って立っていた。

 

「なっ……き、貴様! なんだその姿は⁉︎ それにこの匂い……き、貴様も俺と同じ鬼だったっていうのか⁉︎」

 

「はぁっ? 鬼? あぁそうか。お前鬼だったのか? 通りで額から角生やしてる訳だな。んで? 後ろの女性をやったのはお前か?」

 

「お、俺と同じ鬼の存在でそんなわかり切った事を知ってどうする⁉︎ 貴様も鬼ならば人間を襲うのは当たり前だろう‼︎ なのに何故人間を庇う⁉︎」

 

 それを聞いた灯はチラッと後ろで倒れている母親と、母親を起こそうとした子供を見た。確かに今の灯の嗅覚は……目の前の鬼が言うように鬼寄りなのだろう。先程から良い匂いがすると自分の頭がそう告げている。目の前の親子を食べてしまえと……

 

 

 

だが……

 

 

 

「確かにさっきから頭の中でガンガン鳴り響いてやがるよ。鬼の本能……ってやつか?」

 

「そうだ! その本能に従え‼︎ そうすれば楽になれるぞ‼︎」

 

「確かにな……この本能に従ってしまえば、この頭もスッキリするだろうさ」

 

「その通りだ! だから「だが‼︎」っ⁉︎」

 

「それよりも今は……目の前のお前が気に食わねぇ! だからまずはお前だ‼︎」

 

「な、なんだとぉ⁉︎ 貴様血迷ったか⁉︎」

 

「血迷ったも何も……俺は俺の本能ではなく、俺の信念で今動いている。貴様の様に……快楽で他者を弄び殺す貴様に説法を説かれる筋合いなど無い! 恥を知れ俗物‼︎」

 

「こ、こうなったら……まずは貴様から始末してやる! 血鬼術、真空波‼︎」

 

 目の前の鬼から鋭い風の爪が灯に襲いかかる。しかし灯は避けようとはせずただ左手で防御の姿勢を取るだけだ。

 

「俺様の真空波は例え硬い物質さえも豆腐を切る様に切断する! 貴様の軟弱そうな細腕など……」

 

 と鬼は嘲るが……

 

「な……た、ただ腕に傷が付いただけだと⁉︎」

 

 鬼の放つ真空波は確かに灯の身体を傷付けたものの、ただ左腕の衣服の一部を破いたのと、腕を少し傷付けるだけだった。それに既にその傷も塞がっていた。

 

「う、嘘だろ⁉︎ 傷がもう塞がっているなんて⁉︎ それにその身体の硬さは……」

 

「へぇ〜……派手な割には案外弱いなさっきの。それで……血鬼術といったか? どれ、俺も試しにやってみるか……血鬼術、発動」

 

 今灯は目の前の鬼が繰り出した血鬼術について考えていた。多分あれは、自分の最強の技だと……それをイメージして繰り出しているのだと……

 

(なら、イメージ次第でなんでもできるはずだ)

 

 灯は右手を突き出してそう唱える。すると灯の右手に時代に光が集まってきた。やがてそれは1つの形なっていき、灯の右手に握られていた。

 

「そ、その刀……ま、まさか貴様⁉︎」

 

「ん? この刀がどうかしたか? まぁ今から斬られるお前には関係ない事だな」

 

 その刀をゆっくりと鞘から抜くと、そこには月明かりの輝きをそのまま刃に映す……曇りなき日本刀があった。

 

「や、やめろ! その刀を俺に近づけるな‼︎」

 

 鬼はゆっくりと灯から離れる。

 

「おい……何逃げてんだよ? 先に仕掛けてきたのはお前だろうがよ?」

 

「わ、悪かった! ま、まさかあんたがここまで強いとは思わなかったんだ! だからここは見逃してくれ! そ、そうだ‼︎ ならあんたにそこの親子をやろう! 俺は違う獲物を探すから、だから……」

 

「ゴチャゴチャウルセェんだよ。それに……」

 

 

 

 

 

「もうテメェの事は()()()から後ろの親子どうこうは既に関係ねぇ話だな」

 

「へっ……?」

 

 灯は……いつの間にか日本刀を鞘に納めているところだった。そして鞘と鍔がぶつかり合うと、鬼の体は幾重にも斬り刻まれていた。

 

「ゲハッ⁉︎ そ、そんな……俺はこんなところで死にたく……」

 

「……なるほど。貴様も元は人間だったと言うわけか。まぁ人を殺めた時点で地獄行きは免れんだろうが……来世とやらがあるのなら善人になっている事を祈るよ」

 

 鬼が塵となって消えたのを確認すると、今度は親子の方へと向き直る。

 

「ひっ⁉︎」

 

 さっきの鬼と灯の話をなんとなく理解したのだろう。子供は怯えながらも倒れ伏している母親を庇う様に抱き付いていた。

 

「別にとって食らおうとは思わない。だからそこを少しだけどいて欲しい。良いかな?」

 

「う、うん……」

 

 子供は灯の言葉を素直に聞いて母親から離れる。

 

「脈は……まだ動いてる。息は荒いが、それでもまだ心臓の鼓動が鳴っている」

 

(だが……ここからどうやって助ければ良い?)

 

『本能に従え‼︎ そうすれば楽になれるぞ‼︎』

 

 灯の頭に先程鬼が言っていた言葉が蘇る。そして再び鬼の本能が灯を刺激する。

 

(うるさい……うるさいうるさいうるさい‼︎ テメェの指図なんて受けねぇんだよ!)

 

「テメェは俺の信念に黙って従ってろ‼︎」

 

 灯は鬼の本能を黙らせる様に自分の左手首を伸びた爪で掻っ切った。左手首からポタリポタリと血が滴り落ちる。それを側で見ていた子供は、母親のことを心配そうにしつつも灯のことも心配になっていた。

 

 そして灯が手首を掻っ切った瞬間、頭の中に誰かの声が響いた。

 

(見事だ。鬼になりながらもよく本能に逆らったな)

 

(あ、あんたは……誰だ)

 

(僕か? 僕は君がこの世界に生を受けた際、君の体に僕の一部が混ざった。まぁ君の陰ながらの助っ人という形で捉えたら良い。それでだ……目の前の母親を助けたいか?)

 

(そんなの……当たり前だ。俺は……何も悪いことしてない人が傷付くなんてとこ見たくねぇしほっとけねぇんだよ!)

 

(なら僕のいう通りにしろ。君の左手首から流れる血を目の前に集めるイメージを思い描け)

 

 灯は謎の声に導かれるがまま、滴る血を自分の目の前に集める様にイメージした。すると滴る血は地面に落ちずに灯の目の前に集まってきた。

 

(よし、それを今度は球状にするんだ)

 

 言われるがままイメージする。そして整った球の形ができた。

 

(それを目の前に倒れている人に押し当てろ。だがただ押し当てるだけではダメだ。全ての神経をそこに注ぎ込め。目の前の人を助けるためにと)

 

 灯は言われた通りにする。しかしその通りにしても中々自分の血で出来た球は反発してか押し当てても何も起こらない。

 

(全ての神経を注ぎ込めってそういうことか……)

 

 改めて先程よりも神経を研ぎ澄まして球体を母親の中に入れようとする。するとさっきとは比べ物にならないほど球は入っていった。

 

 だが……

 

(クッソ! 俺にかかる反動がデカイ⁉︎)

 

 その反動のせいか、さっきまで母親の中に入っていきそうだった球が俺の手を押し返してくる。

 

(こんっの⁉︎ これしきの反動で俺の信念が砕け散る訳に行くかよ‼︎)

 

「けっ、鬼術ゥ‼︎」

 

 いつのまにかそんな事を叫んでいた。まぁそう叫ばないとダメだって思ったんだろうな。そしたら背中から何かが出てくる感じがした。そしたらだんだん球の押し返しや反動も無くなって、俺は無事にその球を母親の中に入れることができた。

 

 母親の脈を調べると、さっきとは比べ物にならないほど正常になっていた。心音も平常時に戻っている様で、母親の傷も塞がっていた。にしても……

 

「つっかれた〜!」

 

 俺は先程の鬼との戦闘によって生じたものか、それとも母親を治した時の反動によるものか分からないがその場でどさりと座り込んだ。いやホントマジで疲れた‼︎

 

「こ、これでお母ちゃんは大丈夫?」

 

「あぁ、これで大丈夫だ。後は君とお母さんを家まで連れて行かないとな。家まで案内してくれるかな?」

 

「う、うん!」

 

 そして俺は子供の先導で母親をおぶりながら道を歩いて行く。それから数十分後に親子の家まで辿り着いた。親子の帰りを待っていた父親ともう1人の子が出迎えてくれて、父親からは感謝された。ありがたく受け取っておこうと思う。

 

 それから助けてくれたお礼をしたいと言われたが、まだ用事があると言って断った。

 

(あっ、一応これも作って渡すか)

 

「血鬼術」

 

 俺が作ったのは、少し無骨ではあるが紅色の首飾りだ。これもイメージで作った物ではあるが、このお守りを持っている限り寿命以外で命を落とす事はない……はずだ。この首飾りにはそうイメージして作った。まぁ確証は無いが……

 

 それを出迎えてくれた父親に渡しておいた。こんなものまで貰えませんと言われたが、俺はそれを無理矢理父親の手に握らせてそのまま立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 〜数年後〜

 

 あれから色々と分かった事ではあるが……どうやら今は平安の終わり頃の時代の様だ。確か俺が死んだ時代は令和になって数ヶ月だったはずだが、どういう原理かここにいる。

 

 他に分かったことといえば、俺が人と鬼の混血になっていたということで、平常時は子供の姿であると言うことだ。そして強く念じれば鬼の体にもなれる。だがいかんせん日の当たるところでやると焼けるほどの熱さを覚えた。これは不便だから、今でも鬼の体で日の光が当たれる様に克服しようとしているが、耐えられたとしても数十分程だ。やはり数年ちょっとで克服できるものでは無いらしいが、めげずにやっていこうと思う。

 

 それと……食人衝動か? これがすごくすごく辛い。どれくらいかといえば鬼の体で日に当たるよりも辛い。夜普通に鬼の体になって、暇だからそこら辺を散歩したり血鬼術の練習をしているが、目の前を人が通ると、あの時と同じ様に本能が人を喰えと叫んでくる。それも身体中伝播する様に……勝手に俺の意思に関係なく動こうとする。

 

(ふざけるなテメェ‼︎ ただそこを歩いてる善良な人を襲うとか例え地獄行きだとしても死にきれねぇぞ⁉︎)

 

 その度に、勝手に動きそうになる体をどうにか信念だけで押さえ付けて、そのまま森の中へ。そしてきりのいいところまで行くと、大きな木に頭突きを何回もして本能を鎮める。最近はこの繰り返しだ。そうやって本能を鎮めてはいるものの、やはり鬼でもお腹はすくようだ。

 

 だからこれも俺がこの世界に来たからだが、森の中の動植物を食べてどうにか飢えは凌げている。鬼だから動物の肉も生でいけるのだろうが、最初生で食べた時はあまりにも不味かったから次からは火で十分に焼いてから食べるようにした。それでも味自体変わらなかった事は残念でならなかったが……火を付けるたび血鬼術の練習にもなったし、やはりイメージすればその精度も増すようだ。これはこれからも普通に続けていく。

 

 といった感じで気が付けば数年経っていたのだが、偶に、極々たま〜に鬼が俺を襲ってきた。どうやら俺が人間の姿である時(最初は子供の姿だったが今は青年の姿になっている)、俺の中の血……確か稀血とか言ったか? それに反応して来ているようだ。

 

 それで襲い掛かってくるものだから、俺も鬼の姿になって返り討ちにして来た。その際「お前も自分と同じ鬼なのか⁉︎」みたいな感じで反応されるが……まぁ平常時と鬼の時は自分の中に流れる血も変化するようで……そんなことがあるから平常時では日が昇っている時も全然暑くないし、普通に人の味覚だから動物のお肉も美味しく食べれる。

 

 なら何で鬼になる必要があるかといえば……平常時では血鬼術が使えないからだ。まぁこれは当然の話になってくるんだろうが……だから平常時、今の時代では他の人達よりも知識はあるんだろうが、出来ることが鬼の時よりも格段に少なくなる。

 

 それも何とかしようと色々と試したりはしているのだが、やはり鬼の時に出せる血鬼術は万能すぎる。何せ傷ついた人や、病に犯された人も治せるくらいなのだから……

 

(だけど何故だろう……血鬼術で誰かを助ける度に自分の中にある大事なものが失われている気がする……)

 

 俺の名前や好きな事とかは勿論覚えている。だが前にも思った様に……家族との思い出が思い出せない。それも、前までだったらまだ所々その思い出の断片を思い出せていたのに……今では霞がかって全然思い出せない。

 

 これが……鬼の存在であるのに人を助けるという矛盾を犯しているからだろうか……

 

(いや……俺はもう既に死んだんだ。何で死んだかも思い出せねぇけど、でも今は今なんだ。俺に出来る事を……この力でできる事をしよう)

 

 結局灯はそれからも誰かを助けては大切な何かを失っていくのだが……それを救ってくれる存在が現れるとは、この時灯自身は考えもしなかったのである。

 

 

 

 

 

 

オリ主の設定

 

名前:明日照 灯(あすてら あかり)

男性

年齢:18(死亡時)

 

容姿

テラフォーマーズの膝丸灯と瓜二つ。子供の時と青年時の服装はその時代に合ったものを着用しているが、基本的に黒色が多い。鬼の時には黒衣を纏って平常時の服装は一旦無くなる。

 

CV:細谷佳正さん(作者のイメージとして)

 

好きなもの:アニメ(特にガンダム)、料理(特にお菓子作り)、知識を集める事

嫌いなもの:何もしていない人を傷つける輩、大切な思い出を思い出せない自分

 

現段階で使える能力

 

血鬼術《想像》

その名の通り、灯がイメージした物はなんでも作れる。しかし強くイメージしなければ使えないというデメリットも持っている。

 

血鬼術《奏術》

血鬼術でまるで呪文の如く超常的現象を引き起こす事が出来る。灯が母親を治した時、火を起こす時もこの血鬼術を使っている。

 

どちらとも強力な物だが、共通したデメリットとしては鬼の時でしか使えない。

 

 

 

余談

 

灯が母親を助けた時、子はとある現象を見ていた。それは……灯の背中から赤い翼が生え、その翼からピンク色をした羽が噴き出しているところを。その時子は無意識にもその羽に見惚れていたという……




何故鬼滅の刃まで書いてしまったのか……もうある意味衝動的ですこれは……

アニメで下弦の五と戦った際の挿入歌とか聞いたら……もう涙出そうなくらい感動しましたよ……

何ですかあれ⁉︎ 視聴者泣かせる気ですか⁉︎ 本当に感動しました‼︎

という作者の感想はともかくとして……普通に完結してないのに色々書くとかもう私はダメだぁ〜……状態です。

正直な話本文から何書いてるか分からないんですが……でも伝えたい。何かを伝えたい思いや、自分が描きたい内容描いてたらゴッチャになりました。本当にすみません……

続くかどうかは……私のモチベーション次第にはなりますが、何卒読んでいただいた皆様には感謝をしております!

批判ばかりしか来ないのだろうと勝手ながら思っておりますが……それも仕方ない事ですので、どうにか鋼の精神で読ませてもらおうと思います!

ではでは……


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本編前
壱話 自分本位(エゴ)信念(エゴ)


微妙な感じで書き上げたこの作品……本当はこんな形で進行するはずではなかったのですが……

いや! ここは我慢する時! 少し無茶振りでも、どうにか自分の思い描いている作品に繋がるように描くのだ‼︎

「この作者は本当にもうダメかもしれない……」


 

 

 

 〜400年後〜

 

 この世界に飛ばされて既に400年……俺は日本を巡り歩いて色んなものを見てきた。と言っても争い事が殆どだったがな?

 

 平安から鎌倉へ……平氏から源氏へ……そこから鎌倉から室町、源氏から足利氏へ……戦に駆り出される人達と、引き離される家族。それぞれの想いを抱きながら……死にたくないと思いながらも刀や槍、弓を持ってぶつかる兵達。そして……死にゆく人々……

 

 時には外国から日の本を守るために戦った時もあった。その時も……どちらともに多くの犠牲が出た。

 

(こんなに……過酷なのかよ)

 

 俺は日本史が好きだ。それも戦国時代あたりが物凄く好きだった。歴史上に出てくる有名な人、有名な合戦、有名な策略……それがゲームになって追体験できる。俺が日本史を好きになったのは、歴史を追体験できるゲームをした事で興味を持ち始めて好きになった。

 

 だけど……まさかここまで過酷なんて思っちゃいなかった。所詮は追体験……リアルではなくてフィクションの世界だ。

 

 だからこそ実感なんて湧かなかった……目の前で大勢の人が死ぬ事がどれほど悲しくて、この世界が一部の人にとってのエゴによって作り出されているのか……

 

 でも……そのエゴがなければ時代が次に進まないのも確かで、だからといって全ての人に罪があるかと言われればそうではない。そこで救える命がどれだけあるかは分からないが……もし少しでも生きたいと思って鼓動を止めていないものがいるのならば、俺は少しでも助けたいと思った。

 

 所詮その想いも自分のエゴだ。だがそれで俺は自分の信念を曲げるつもりはない。少しでも……助けれる命があるのなら俺は助けたい。

 

 今日も自分にそう言い聞かせながら、戦場になった地を闊歩する。そして少しでも息があるものは助け、安静に出来る場所まで移動させる。その際に自分の血で作った球体を相手に入れる事は忘れない。脈や息、心音が正常値に戻った事を確認して安全な場所まで連れていく。

 

 んで、この時には既にいくらか日の当たるところに出ても大丈夫な様になった。一時凄い眠気に襲われて、日の当たらない場所で寝ていて次に起きた時には季節が変わっていた。その周期が何回かあった後、急な眠気に襲われる前の状態に戻った。それからまたいつもの様に日の光に慣れる練習として、普段通り鬼の姿で(もうこの時には平常時だろうが鬼の時だろうが容姿に変わりは無くなったが)日の中を歩いたのだが……

 

(あれ? 全然痛くないし身体も崩れないぞ?)

 

 そう、日の光をどうやら克服したらしい。そっからは殆ど鬼の姿で歩いている事が多くなったが、今度は逆に平常時に戻れなくなってしまった。まぁ日の光を克服したらしい今ではどちらでもいいが……

 

 という事で、こうして誰かを助ける時も鬼の姿で助けている。

 

 因みにその安全な場所も灯が作ったものなので、例え何者かが壊そうとしてもびくともしない強度で作られている。

 

 だがいかんせん……そんな中でも沢山の人が死んでしまった事を良いことにワラワラ鬼が湧き出る始末……

 

「ここにいる人達は貴様らの食料でも何でもねぇ‼︎ 分かったのならここから居ね‼︎」

 

 

 そう言いながら血鬼術であの時の日本刀を呼び出し、襲いかかってくる鬼から斬っていく。俺はここ400年この世界で嗅覚とかほかの感覚が敏感になってしまっていた。鬼も元は人間だった。だからこそ、鬼を斬る度に後悔と悲しみの匂いがする……

 

(皆……ごめんな……後でしっかり墓を作って弔ってやるからな)

 

 斬る度に……まだ生きたかったという思いと後悔を感じながらも俺は目の前に来る鬼を斬り続けた。そんな時だ。

 

「ほぅ……なにやら珍しい存在がいるな」

 

 そいつは急に現れた。黒髪で肩より長い髪。それとは比例した形で白い肌と、まるで吸血鬼のような赤い目と、縦に細長い瞳孔が、月明かりに照らされて男は立っていた。

 

「まさか人間の身でありながらこれだけの鬼に襲われても動じず、逆に立ち向かっていくとは……それも一切の息切れないように見える。これは人間のままにするのは勿体ない」

 

「はぁ? テメェなに言ってやがる? 誰にでも分かる様に話せや」

 

「あぁ、すまない。先程のは単なる私の独り言だ。それで早速なんだが……私の部下にならないか?」

 

「部下? どういう事だ?」

 

「先程から君の戦いぶりを見ていて思ったのだが……君は何かを求めている様に見えたものでね。それが何かまでは分からないが……だが人間の寿命はいかんせん短すぎる。人間である君が生きている間に、求めているものが見つかる可能性も低い。その前に死んでしまうだろうな。そこでだ。私はとある目的の為に同志を募っている」

 

「……だから?」

 

「あぁ、だから君の求めるものが見つかる為にも、私の求めるものが見つかる為にもお互い同じ存在となって協力しようと言っているのだ」

 

「同じ存在? つまりあんたは人ではないと言うことか?」

 

「そうとも。私は鬼と呼ばれる存在でね。私もこうして各地を練り歩き、まだ生きていたいと願う人間を見つけては、私の血を与えて鬼にしているんだ。そして生きながらえさせる代わりに私の目的を果たす手伝いをしてもらっているがね」

 

「鬼……人に血を分け与えてか」

 

「そうとも。そして生きながらえる為にと私の血を欲し、そして賛同してくれる同志達がこんなにいるのだ」

 

 そして男の後ろには、何百以上もの鬼が立っていた。

 

「その鬼達は?」

 

「あぁこやつらか。ここの地で無残にも散ってしまいそうだった人間達だ。まだ生きていたいと願っていたからな。私の血を与えたのだ」

 

「……他の方法で助ける事は出来なかったのか?」

 

「助ける? 無論助けているだろう? 違う存在ではあるが、彼らも生きながらえているから目的は達している。そして彼らには今度私の目的を達成してもらう為に力を貸してもらうのだよ」

 

「……その人達に重説とかちゃんとしたか?」

 

「……ん? なに? 重説とはなんだ?」

 

「その様子じゃあ何も言ってねぇ様だな。重説……自分がこうなる変わりに色々と条件があるって説明だよ。まぁテメェの口ぶりじゃあただ甘言だけで鬼にしてるった事か……」

 

「それがどうした? 彼らはただ生きながらえた事に喜びを感じている。見ろ! 彼らの顔を! 良い顔で笑っていると思わないか?」

 

 灯はその男の背後にいた鬼達を見た。確かに皆顔が笑っている様に見える。見えるが……

 

 

 

 

(タス……ケテ……)

 

(こんな姿になってまでイキタク……ナイ……)

 

 

 

 

(あぁ……聞こえるよ。お前達の悲しみが……)

 

「テメェ……その鬼達が本当に笑っていると思うのか? 心の底から」

 

「心の底から? 何を言い出すかと思えば……鬼になったのならば後は鬼の本能に従うまで。心の声は私にもある程度は読めるが、それを読もうとする気は無いな」

 

「……そうか」

 

 そこから灯の纏う気が変わった。それを間近で受けた男は……

 

(な、なんだこの威圧は⁉︎ それにこの感じ……ま、まさか既に私と同じ鬼だとでもいうのか⁉︎ だが私がさっき感じていた稀血の人間の気配が何故いきなり変わった⁉︎)

 

「貴様がこんな悲しい存在を生み出している親玉という事は分かった。それも十分にな」

 

「貴様の様な存在がいるからいつまで経ってもこの悲しみの連鎖が消えない! だからこの世から失せろ!」

 

「な、なんなんだ貴様は! なんなんだお前という存在は⁉︎」

 

「鬼だよ……今の俺は貴様と同じ存在だ。ただ在り方が違う……貴様とは真逆にいる存在だ」

 

「な、何を言っているんだ⁉︎ 私と真逆だと⁉︎ 私と同じ鬼である貴様が⁉︎」

 

(なんなのだこいつは! この存在は⁉︎ こいつをこの場で殺さねば私がやられる‼︎)

 

「どうした? さっきまで余裕そうな顔してたのに……やけに心は焦っている様だが?」

 

(こ、心も読めるのかこいつは⁉︎)

 

「え、えぇい‼︎ こんな奴に声をかけた事自体失敗だったか‼︎ こいつを始末した鬼は私の血をさらにやるぞ‼︎」

 

「「「オォォォォォッ‼︎」」」

 

 男のその言葉で本能的に動く有象無象の鬼達が灯に一斉に飛びかかった。

 

 その様子は……灯にとってはスローモーションに見えた。まるで走馬灯でも見ているかの様だ。

 

 しかしながら……灯はここで命を散らすつもりはない。

 

「血鬼術……」

 

 血鬼術を使う時には、既に灯の身体は鬼に覆い被されて男からは見えなくなっていた。

 

「ふ、フンッ! 所詮は口だけだったと言うことか」

 

(ならば先程の戦い振りは一体なんだったと言うのだ?)

 

 そう思っていた時だ……

 

 

 

ダーーンッ

 

「「「グァァァーッ⁉︎」」」

 

「な、なんだ⁉︎」

 

 鬼達は吹き飛ばされる。男はその光景をただ呆然と眺めていた。そして見たのだ。灯の両手1つずつに持たれていた大剣を……

 

「あなた達の苦しみを……今断ち切る‼︎」

 

 両手に持った大剣が桃色の刃を灯した。

 

「な、なんだその光は⁉︎」

 

「テメェは知らなくてもいいことだよ‼︎」

 

 そう言いながら灯は近くの鬼から斬りに行く。

 

「デヤァァッ‼︎」

 

「ギャァァァッ……」

 

 灯に首を斬られた鬼は、当然ながら胴体と首が分かれた途端に身体が崩れ始めた。

 

「ば、馬鹿な⁉︎ まさか私が殺す以外の方法で鬼を滅するなど⁉︎」

 

「やっぱテメェは部下だと何だと言っておきながら自分の手で同胞を手にかけているじゃねぇか‼︎」

 

「今貴様がやっている行為とどう違うと言う! 所詮貴様も同族殺しだろう‼︎」

 

「確かに同族殺しだ。エゴだよこれは。だがな……」

 

「俺は彼らの悲しみと後悔を断ち切ってんだよ! その分の悲しみと後悔を背負ってんだよ! 自分本位の貴様と一緒にするな‼︎」

 

「減らず口を‼︎」

 

「減らず口だとしてもこれは俺の信念だ! 誰に何と言われようと変わる気はねぇよ‼︎」

 

 そう言いながらどんどん鬼を斬っていく。周りに陣取っていた鬼達は、灯の嵐の様な猛攻で数を減らしていった。

 

「だ、だが私がここで生み出した鬼はこれだけではないぞ!」

 

 男が言う様に……男の後ろにまたワラワラと鬼が湧き出す。これは消耗線に入るか……

 

「血鬼術ゥ‼︎」

 

 灯は大剣を一度連結させて片手を自由にすると、また新しい得物を取り出した。それは赤い小さな持ち手だった。そこに力を入れると大剣と同じ様な桃色の鋭い刃が出来る。

 

「ハァァァッ‼︎」

 

 それを横投げで前に放つ。するとそれも勢いよく横に回りながら前へと飛んでいく。それは男の頬を少し擦り後ろへと飛んでいく。男は正直何が起こったのか分からなかった様だ。

 

 その男の後ろでは鬼達の断末魔が聞こえ、今度は男の反対側の頬を後ろから擦り灯の手元へと戻った。

 

「な、何が……っ⁉︎」

 

 男が後ろを振り向くと、さっきまで大勢いたはずの鬼が既に3分の1をきっていた。

 

「あ、あれだけで私が生み出した鬼が……たったあれだけで……」

 

「アァァァァッ‼︎」

 

(な、なんなんだこの光景は……私は夢を見ているというのか⁉︎ こいつは一体何だというのだ⁉︎)

 

そうこうしているうちに上から灯が鬼の残党を攻撃していた。それを現実逃避で見ていた男だったが……

 

「さぁ、後はお前だけだな?」

 

「っ⁉︎」

 

 その言葉で現実に戻された。周りを見れば月明かりの下……灯と男の2人しかいなかった。

 

「さっきからずっと思っていたんだが……テメェをすぐあの世にっていうのも、ただテメェは楽して死ぬからな。だから……」

 

「血鬼術」

 

 灯は今まで手に持っていた大剣を消すと、今度は無骨で身の丈ほどの大きなハンマーを取り出す。鋒はトゲトゲしく……かするだけでも骨が折れてしまいそうなものだった。

 

「お前は人を鬼にした事を……長い時かけて悔いながら……反省しながら生きていくんだな」

 

「私が……この私が悔いるだと? 反省するだと? そんな下らぬ事を誰がするものか‼︎」

 

 男は灯から飛び退きながら、まるで口だけがある肉塊を背後から出して襲い掛かる。

 

「はぁ……まぁそんな事を言う事は分かっていたさ。だが……」

 

グッシャァ‼︎

 

「これはもう決定してんだよ。大人しく自分の行った事を黙って償え」

 

「ガハッ⁉︎」

 

 肉塊はハンマーによっていとも容易く潰され、男もハンマーで空に飛ばされていた。

 

「パイルバンカー……セット」

 

 ハンマーの中から何やら音がした。だが別段形状などは変わっていない。そこから灯はハンマーをまるで投げ槍をするかの様に構えて……

 

「穿て鉄血‼︎」

 

 ハンマーは投擲された。それも空に飛ばされた男目掛けて……

 

「グフゥァ⁉︎」

 

 男の腹に吸い込まれるかの様にクリーンヒットした。

 

「貫け鉄血‼︎」

 

 ハンマーが男に当たったのを確認すると、さらに灯はそう叫ぶ。

 

「グバッ⁉︎」

 

 男の腹に当たったハンマーの先端から鋭い刺が迫り出し、男の腹を貫いた。それだけでなく、ハンマーは男を貫いたまま速度を落とさず真っ直ぐ飛んでいく。

 

「その体制で最低でも何百年か自分のやってきた事を悔い改めろ。そうしたら綺麗に首を跳ねて楽にさせてやるよ」

 

「オノレェェェェッ‼︎ 悔いなどするものかぁぁっ! 貴様の容姿、この憎悪とともに覚えておくぞぉぉぉっ‼︎」

 

 男は遙か彼方へと飛ばされていく。それを姿が見えなくなるまで灯は睨み続けた。

 

「これで奴も悔い改めたらいいが……さて、じゃあ今からアンタ達の墓を作るからな」

 

 灯はお墓を作り始めた。この地で散った兵達と、男によって鬼にされた人たちも含めて1個ずつ作っていった。そのために灯は三日三晩……お墓を作り続けたという。

 

 そして灯は……また大切な何かを失う感覚を覚えた。




次回……鎌倉〜室町を経ていよいよ戦国時代へ

日の呼吸を使いし侍……灯の前に立ちはだかる。


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弐話 鬼の目にも涙

長い期間が空きましたが、2話目となります。では、ご覧下さい。


 

 

 

 

 〜100年後〜

 

 

 

 あれからも各地を練り歩いていた。勿論人を助ける為に……

 

 ただ……おかしな事に鬼の数が前よりも多くなっている気がする。いく先々の町で出会すのだ。

 

(まさかあの野郎が出てきたって言うのか?)

 

 いや、それは多分ないはずだ。何せあいつを封じている血鬼術には、まだ平安だった頃にとある陰陽師から習った術式を組み込んであるからだ。だから数十年で簡単に出れるはずがない。

 

 まぁ封印を施した自分が対象をどこに封じたか分からなくなる……っていうヘマはしない様に印は付けたが……思ったよりも地下深くまで突き刺さっているらしい。だからこそ簡単に出れるはずはない……と鷹を括っているのかもしれないが、封印を解いたなら解いたで俺が知らないわけがない。だから気のせいか程度に思う事にした。

 

(だが……微かに奴の力が抜け出ている様な……そんな感じがする)

 

 そう思う事にして、やっぱり1回様子を確認しに行ったほうが良いのかもしれないと、既に夜ではあったが思ったら即行動、そこから大まかにではあるが、封印されたところに行こうとした矢先だ……

 

「貴様……鬼の類だな?」

 

 目の前にいつの間にか侍がいた。それも奇妙な形の痣を顔に作ってはいるものの、かなりの美形だと思わせる侍が……

 

「確かに俺は鬼だが……」

 

「そうか……ならば」

 

 ちょっと瞬きしただけだった。その間に侍は俺の間合いに入ってきて……

 

チャキッ……

 

「っ⁉︎」

 

 俺の第六感がマズいと告げたのか、無意識のうちに飛び退った。すると少しだけ胸元が一閃されていた。

 

「今のを避けるとは……貴様、強いな」

 

「おいおい! いきなり斬りかかるのはやめてくれ‼︎ 俺が何をしたって言うんだ⁉︎」

 

「珍妙な事を言う……貴様も鬼ならば分かるだろう?」

 

「た、確かに俺は鬼だけど……でも誰も襲ってもないし人も食べたりしねぇよ‼︎」

 

「……確かに貴様からは他の鬼と違う感じがするな」

 

「だがそれでもだ。他の鬼と同じ様な術で誤魔化しているだけかもしれない。問答無用だ」

 

「この分からず屋‼︎」

 

「鬼は平気で嘘をつくからな……もし貴様が本当に誰も襲っていないと言うのなら……俺と斬りあって証明して見せろ」

 

「……分かったよ。やれば良いんだろやれば」

 

 そして俺は、あの鬼と戦った時に出した大剣を血鬼術で出した。

 

 そこからはまさに死闘だった。町中と言うことでもあったし、ビームの刃は出せない。それでも高質量の鉄の塊だ。そんじょそこらの金棒ではへし折れない程の強度は持っている。

 

 そのはずなのにあの侍なんなの⁉︎ 普通に両断してくるんですけど⁉︎ 常識疑うよ‼︎ 俺が言うのもなんだけどさ‼︎ だから途中から腕を増やした上でそれぞれに武器を持たせて対応したよ……えっ? 生身の腕を増やしたらグロイって? 何勘違いしてるか分からないけど、これも血鬼術で増やしたからね? しかも腕8つ。えっ? その時点でもグロイ? 知るかそんな事! じゃないとやってられなかったんだよ!

 

 とりあえずまぁそれでやり合ってたんだけど、どこからともなく悲鳴が聞こえた。それに気を取られていると左腕を斬られた。初めてまともに斬られたから痛かったけど、その侍との斬り合いは中断して現場に向かった。そしたら侍も付いてきた。というかこの速度について来るとか速くね?

 

 それで現地に着いたら、男が倒れていた。近くにいた女の人を庇ったのだろうか。まぁそんな事よりも……その場には鬼が2体いた。倒れている男ごと女性を襲おうとしたのだろう。なにやら血鬼術を発動していた。それが当たる前に、侍に斬られていない右腕で持っていた武器で全て掻き消した。

 

 その際鬼2体に、自分達の獲物を横取りするつもりかと言われたが、そんなものに対しては何も返事をせずに持っていた刀、大剣、ハンマー、ハルバート×2で一閃ずつした。すると鬼は消えていった。それと同時に左腕も回復したのでもう1体の方をやろうとしたのだが……既に侍が鬼の首を斬っていた。ホントいつの間にという感じで……

 

 そこからは、俺が傷を負った男をいつもの様に助けた。自分の左腕から血を流し、それを球体状にして男の中に入れ込んだ。

 

「貴様……何をした?」

 

「何をしたって? そんなの……ここに倒れてる男の人を治したに決まってるだろ?」

 

「なぜ鬼であるはずのお前がそんな事をしている? 鬼は人を喰らうのではないのか?」

 

「確かにそういうもんかもな……だが俺は、俺の中にある信念で行動してる。それに、確かに最初は俺も人の血を嗅いで頭の中を鬼の本能が囁いてきた。食べたちまえってな。だが俺はそんなことよりも目の前に傷ついた奴がいたなら助ける……その信念で今まで生きてきたしこれからも誰に何言われようが変わるつもりはねぇ。それでも鬼だからって理由で俺を襲うのなら……俺はテメェの武器がなくなって気を失うまで戦ってやるよ」

 

 それからは……その侍は俺を攻撃しなくなった。逆に謝ってきたから、俺は別に過ぎたことだから気にしないと言って許した。

 

 んで俺たちが助けた人達……炭吉さんとすやこさんって名前なんだが……あの後侍と一緒に家に招かれた。あっ、因みに侍の方は縁壱って名前だ。それでご飯を食べていって欲しいと言われたが、俺は前と同じ様にさっさと断って去ろうとした。

 

 しかしそこで思わぬ所から援護攻撃を食らってしまった。なんと縁壱も一緒に食えと言い出してきた。

 

(なんか思惑があるのか?)

 

 まぁ……結果としては前の様にはいかず炭吉さんの所にお世話になってしまったが。しかも数日間も……

 

 数日間に伸びてしまった理由としては……炭吉さんとすやこさんの間に子供が産まれたからだ。前世含めてそんな経験に立ち会った事は無いはずだが……そこは俺の血鬼術を使って、すやこさんが感じている痛みを和らげつつこれから産まれてくる赤ちゃんを取り出す手伝いをさせて貰った。その時縁壱はというと、結構あたふたしてたかなあれは……それでも産まれたばかりの赤ちゃんを持った時は穏やかな顔してた。

 

 俺は……自分が鬼だから、やすこさんが赤ちゃんを産んだ後はどこ吹く風でさっと去った。その時は……赤ちゃんを無事生まれてくるのを見届けたら去るつもりだった。あの優しい人達の事だから俺にも赤ちゃんを抱いて欲しいと言ってくるかもしれないが……常時鬼の状態の俺がもし抱いたとして……その後の事を考えると何故か怖くて、その時は去った。

 

 でも翌日になると……今度はまた縁壱も子供を抱けと言ってくる始末で

 

(アンタら俺が鬼って事を忘れてないか?)

 

 勿論その事は話したはずなのに……

 

「縁壱さんと灯さんがいたから、僕達とこの子の命があるんです。だからあなたが鬼だからとかは関係ないんです! 抱いてやって下さい‼︎」

 

 炭吉さんにそう言われて根負けした俺は……やすこさんから渋々と子供を受け取って抱いた。

 

 そしたら……その赤ちゃんはキャッキャッと笑ってくれたんだ。それを見た時……なんだか懐かしい記憶を思い出した気がした。前世で生まれたばかりの頃……まだ満足に何もする事が出来ない俺を、慈愛ある笑顔で抱いてくれた母親らしき人の記憶を……

 

「灯さん……泣いているの?」

 

「えっ? ……っ⁉︎」

 

 気付いたら俺は……涙を流していた。どうして流しているのかすぐには分からなかった。だけど……

 

(ほんの少しだけど……大切な事を思い出したからかな)

 

 この記憶も多分……血鬼術で人を助けていたらすぐに薄れてしまうかもしれない。それでも俺の中には……まだ大切な記憶が残っている。いつ消えてしまうか分からないけど……大事にしたいと思った。

 

 それと数日の大半を占めたのは……縁壱が俺に日の呼吸とやらを教えたいからだ。正直身体が崩れて死んでしまうかと思ったが……どうにか耐え抜いて呼吸を覚えた。後は全集中・常中も覚えた。

 

 にしても本当にきつかった……。特に全集中・常中は寝ている時もやれと言われて、出来ていなかったら問答無用で木刀で叩き起こされる。しかもめちゃくちゃ本気で叩かれた。俺の身体が鬼の身体である事を良い事にだ。ま、まぁ……これで戦い方に幅が出てくるのだろう。

 

 そんな時が過ぎて俺と縁壱は、同じ日に炭吉さん達と別れる事になった。確か炭吉さんも縁壱から日の呼吸を教わっていた様で、護身のためにとの事だが……優しい彼らや彼らの子孫が、その呼吸を生涯戦いに使う事はしない様にと願いたい。

 

 それで縁壱は自分の耳飾りを渡していた。まぁお世話になったお礼も含めてなんだろうが……後なんか俺の方にも縁壱は渡してきた。見ればそれは、炭吉さんに渡した耳飾りと、そして予備で持ち歩いていた縁壱の刀だった。そういえば刀で斬られた時は傷が直ぐに治らなかった。後から聞いた話でもあるが、その刀はどうやら鬼にとっては弱点となる素材が使われているらしい。

 

(貰ってばかりと言うのもあれだから……俺も何か渡すか)

 

 それでまず炭吉さん達に渡したのが、血鬼術で作った紅色の首飾りと紅色の珠を付けた簪である。お世話にもなったし、そのおかげで忘れていた記憶の断片も思い出す事が出来た。そのお返しに、首飾りと簪をつけている一族を守って欲しいという想いを込めて作った。

 

 縁壱に渡したのもまぁ……炭吉さん達に渡した首飾りであるが、効果は一緒だ。

 

(確か……500年前くらいにも同じ様なことしたな)

 

 あの親子は元気に育ったのだろうか? 今となっては分かりはしないが……どうか無病息災を願いたい。

 

「世話になった」

 

「あぁ。鬼の俺にまでこんな優しくしてくれた。あなた達と次代に生まれる子孫が無病息災である事を願うよ」

 

「いえ! 僕達もあの日縁壱さんと灯さんに助けてもらわなければ、今ここにいない訳ですし……それにこの子も無事に生まれる事はなかったと思います。だからお礼を言うのは僕達の方ですよ。本当にありがとうございます」

 

 炭吉さんとやすこさんがお礼を言いながら頭を下げる姿を見て……俺はまた泣きそうになっていた。この数日のうちに涙腺が脆くなったのかな……? でも……こんな鬼がいても許してくれるよな?

 

 そして炭吉さんとやすこさんが送り出してくれる中俺と縁壱は別々の道を歩む。縁壱は鬼を滅するために……俺も基本的に一緒ではあるが、それ以外に助けを求めている人達を助ける為に。

 

(まぁその前に……)

 

 俺はある所に行った。縁壱が鬼に遭遇する確率と、俺達が炭吉さん達を助けた時に同じ町に2体鬼がいた事……これを加味するに、あいつは何らかの形で封印から一部分だけでも脱している。その為に封印した場所に赴いた訳だが……

 

「……クソッ‼︎」

 

 封印した場所は、とある山の麓にある。そこにがっぽりと開いた大きな洞窟。勿論それは、俺が封印した時にハンマーが止まるまで掘り進めたやつだと思うが、それが随分下まで続いた。

 

 そこで見たものは……目だけを見開いた肉塊がウネウネ動きながらハンマーによって封印されていた。だがこれだけは分かる。あいつはどんな方法か知らないがこの封印からすんでのところで逃れたんだと。

 

 だから……最低でもこいつは滅しきる。ただ……多分こいつは俺の血鬼術だけでは消え去らないと考えた。だからここで縁壱から貰った刀を構えた。そして縁壱から教わった日の呼吸……それを俺なりに改良した呼吸を用いて目の前の鬼を滅ぼす。

 

 右手で刀を持ち、そこから突きを繰り出す構えでいると、刀の周りに次第に空気が集まり、刀に沿って循環し始め、やがてそれは赤い稲妻を伴った。

 

 それを相手も気付いたのだろう。どうにか肉塊から出てくる触手みたいな物がウネウネしながら俺に伸びてくるが、封印のせいで全然届いていない。まぁ封印したままでは完全に滅する事は出来ないと考えているから、一旦ハンマーは消した。

 

 俺の血鬼術は、作った物は基本的に俺が念じなければ消えない。そして作った物は基本的に真新しく、今回施したハンマー付きの封印も、全然錆びつかず綻びもなくいつも新品な状態だ。それをどんな方法かは知らないが、アイツは逃げ出した。予測としては飛んでいる最中にアイツ自身が千切れて逃げおおせたぐらいだが……まぁ今は考えない様にしよう。今は……目の前のこいつを滅するだけだ。

 

 ハンマーを消すと、肉塊は物凄い勢いで身体ごと触手を伸ばして俺を貫こうとしてくる。

 

(だが……もう遅い)

 

「機の呼吸……衝動の章……赤雷爆風(せきらいばくふう)‼︎

 

 赤い稲妻を伴う風圧が肉塊を襲った。巻き込まれた肉塊は触れた箇所からどんどん塵になっていき、風圧が収まる頃には最早何も無かった。

 

 それを見届けた灯は改めて決心した。悲しき鬼という存在を生み出す元凶をこの手で滅すると……




解説

機の呼吸・衝動の章・赤雷爆風(せきらいばくふう)

赤い稲妻を伴った風圧を相手に向けて突きを繰り出す。突きから放たれた風圧は、飲み込まれた相手は塵すら残らない。

次回……戦国時代から江戸時代初期の時代へ

元凶に鬼にされた1人の女性。願いはたった1つ……家族との時を過ごす為。だがその想いは無残に踏みにじられる形に。その時偶々出会した灯は……


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