ふぁいぶすたー物語【小国はつらいよ】 (ふぃるもあ)
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1話

 これはおとぎ話で語られるファンタジーな世界のお話。モーターヘッドという名のロボットを駆る騎士と妖精ファティマたちが綴る物語。

 とはいえ現実にはもっと泥臭い国と国の喧嘩やいさかいが絶えない世界なのです。

 

 ボォス星のハツーダン大陸にその小さな国があります。

 小国を挟むように南と北には大きな国がありました。さらに西の海を越えたところにも大きな国があります。

 三つの大国に挟まれて、昨日はあっちにつき、今日はあっちで、明後日は寝返ってまたあっちと忙しい日々を過ごしているのです。

 

「ああ、もう派兵なんていやじゃいやじゃ。おい大臣、いつものように金庫を開けろ!」

「王様、それが金庫はからっけつです。どころか借りたお金の請求書でいっぱいですが……」

「気に入らんっ! 今夜の飯は豪勢にせよ!」

「そのようにいたします」

 

 王様の周りにはイエスマンばかり。いさめる人がいても気に入らないのですぐに処刑してしまいます。

 

「道化、踊れ!」

「それほれー」

「つまらんぞ。お前はクビだ!」

 

 このとおり気分次第で自分より下の人間は処刑決定です。

 ポチっと、ボタン一つで床に穴が開いて道化は真っ逆さま。王様の始末ボタンは今日も絶好調。一日一殺です。

 

「ふう、すっきりしたわい! しかし金がない。金がない。借金をチャラにしたいがいい案がないものか……」

 

 脂肪肝もっさりのでっぷり腹を叩きながら、ズレた王冠を直して当面の悩みをぶちまけます。

 

「陛下、ここ数百年の借金をチャラにする方法はございます」

「よし、言えっ!」

「今回の戦で西のメヨーヨについて、南のガマッシャーンをやっつければいいのです。勝ち馬の尻に乗って奴らの領土を奪ってやりましょう。領土返還をちらつかせて借金の証文はそれでチャラ。ずーっと返済を引き延ばしてくれたお人よしとはコレで縁が切れます」

「おお、しかしガマッシャーンは昔からうちを支援してくれた連中だぞ。そう簡単に裏切れるものではない……が、借金はチャラにしたい……」

 

 目先の借金が目の上のたんこぶ。そのせいでガマッシャーン国には頭が上がりません。

 押さえつけて圧制するのが大好きな王様としては誰かに媚びへつらうなど我慢できないのです。

 

「こうしましょう。王太子をガマッシャーンに派兵して油断させるのです。その間、こっそりとメヨーヨをこちらに引き込むのです。我が王国は要所ですから大軍を引き込めば手出しもできずに奴らは撤退するはずです」 

「そう上手くいくものか? だいたい、それじゃあ王太子が死ぬじゃないか。あいつはわしの息子だぞ?」

 

 大臣のひそひそ声はさらに小さくなって王様に耳打ちします。

 

「始末するなら今しかありませんが? あの兇状持ちの人殺しを始末するチャンスですぞ。去年の誕生パーティーで豚足一〇〇人分用意すると言って一般参列者を王太子は全員皆殺したんですから。あれで国王の立場も非常に難しいものになりました」

「そういや、そうだな。あいつは腫物、ノケモノだ。大暴動に発展する前に市民軍をお前に始末させたんだった」

 

 大臣の悪い顔がもっと悪くなってそそのかします。

 

「王太子を排除し、王女殿下を後継ぎにすればよろしい」

「うむ……お前の案いいな! 王子を始末してわしの可愛い可愛い娘を後継ぎにしよう! メヨーヨに電文を飛ばせ! 今日から味方いたしますとな! その前に戦に出るからガマッシャーンの連中に金を出させるのだ。もっとも返すつもりは毛頭ない金だがな!」

「ではそういたしましょう。らっぱ!」

「は! ここに……」

「この暗号電文をメヨーヨの若ちょび髭王子に渡すのだ」

「おお、まるですべて用意万端の運びじゃのう!」

 

 用意周到な大臣に感激した王様が椅子を叩きます。

 

「それでは王様。兵を動かす許可を頂けますかな? すぐに出立させますぞ」

「うむ、いくらでも動かすが良い。良きに計らえ! わしはこの後ダイエットのプールに香油マッサージと夕食の酒池肉林が待っておるからな!」 

「よし、待機している王子に出立するよう伝えるのだ!」

「王国安泰万歳じゃあ!」

「では陛下失礼いたします。仕事が山ほどありますので」

「仕事が終わったらお前も酒池肉林するがよいぞ!」

「ふん。あんぽんたんを口車に乗せるのも容易きことよ」

 

 王の間を退室し誰もいないところで大臣が呟きます。彼の狙いは国の乗っ取りでした。

 浪費屋の人望のない王と殺人狂の王子。大したこともできない姫君を排除するなどちょろいものです。

 

「アサシン、おるか?」

「……ここに」

 

 闇の空間から魔導士(ダイバー)が顔だけをにゅっと出し驚いた大臣は尻もちをつきます。

 

「あいたた……」

「あら平気?」

「ああ、もう! 手助けなんていらんわ! 良いか、貴様は手はず通りに事を運ぶのだぞ……ガマッシャーンに援軍に出した王子を亡き者にするのだ。余計なことをされる前にお前たちの使う魔道で永遠に復活できないようにするのだ。亡命などされては困る。事故死に見せかけよ」

「承知……」

 

 またにゅっと空間に引っ込んで魔導士は消えました。薄気味悪い連中なので大臣は連中が大嫌いですが、こんな仕事にはうってつけです。

 

「ふふふ、メヨーヨとは話はつけてある。事がなりし暁には国の半分は吾輩のものよ」

 

 ぐしし、と笑いを残して大臣は立ち去ります。

 しかしその呟きを聴いていた人物が柱から姿を現わします。彼女はこの国のお姫様です。

 

「何てことかしら。大臣が国を裏切ろうとしている。お父様に……うーん、くそ大臣を信用しきってるし今頃バカみたいにお酒飲んでるから聞いてくれないかも……じゃあ、お兄様に……報せたらきっと国中ひっくるめて皆殺し確定よね。でもやるしかないわ! って電話つうじなーい。混線とかやめてよね!! まったく!」

 

 電話を叩き付けドレスをぽいと脱ぎ捨てると侍女らの部屋から服を借りて、馬……じゃなくて車にダイナミックに飛び降りてエンジンを吹かせます。

 

「ああ!? ボクの新車ドロボー!」

「ごめーん、借りるね~~! 大臣につけといて~~!」

 

 こうして緊急事態を知らせるべく姫は走り出すのでした。  



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2話

「ボクはこの国の王子。とっても食い意地が悪いし、民はおもちゃだけど、王様になったらパパみたく殺して殺して殺しまくるんだ」

 

 彼は小さな国の王国の跡取り息子。性格は……まあこの世界ではよくいるタイプのサイコパス。自分より立場のない人を殺してもなんとも思いません。

 本編原作では立派な王族とか貴族も多いのですが、星団広しと言いますか、数百の国がありますのでこんなクズも結構いたりします。

 

「どうぞ、王子。小さな国の民からむしり取った税で取り寄せた最高級ワインとチーズです」

「美女よ食わせるのだ。あーん」

 

 なまけものソファに座る王子の側に侍る美女がお口あーんする王子に食べさせます。

 

「戦争なんてくだらないね。バスター砲とか撃てるならガンガンぶっ放してみなごろしにしてやるのにさ」

「殿下、土地と民がいなきゃ搾取できません。荒野の王様になっても贅沢できませんよ」

「ワインおかわり!」

 

 近習も王子の翔んでる思考回路に修正を試みますが改まったことはありません。

 

「おい出立はまだかー? ボクのロボットがさびついちゃうだろ。手柄はまだかー?」

「では出立いたします。飛行機飛ばせ!」

 

 王子を載せた飛行機が滑走路を走り出しますが、黒い影が機内にこっそり乗り込んだシーンは読者さんだけが目撃しています。

  

「んー、ぐふふ」

 

 もうすっかりお酒で酔っぱらい、いい気持で王子は鼻歌を歌います。

 

「殿下。隣国から電報です」

「よし出せー」

「これは殿下ご機嫌麗しゅう。此度の戦への参戦歓迎いたします」

「ガマッシャーンの大臣殿、泥船に乗ったつもりでごゆっくりどーぞだ。フハハ」

 

 モニタの向こうにいる大臣に飲み干したグラスを見せて笑いました。

 

「いやいや、お前には消えてもらうのだ王子よ」

 

 その声はひっそりと王子の耳元で呟きました。

 

「あん?」

「危ない、王子!」

 

 大臣が警告すると同時に酔っぱらいフラフラになった王子が剣を抜いて振り回す。すぐ後ろにいた小姓の頭が真っ二つになります。

 攻撃は吹き出した血の中から伸びた無数の手から繰り出されました。放たれた血の刃が王子に襲い掛かかる。

 それを王子はワンツーステップでかわし、首無し小姓の体を剣で八つ裂きにし倒れたところで手足ももぎ切って部屋のあちこちに蹴飛ばします。

 周りはすっかり血の海べったり惨劇場となりました。

 

「んー、誰だ? 誰がお前に命令したんだぁ?」

 

 首無し、手足なしの〇るまの腹に剣を何度も突き立て、突き立て餅のようにふるいます。

 応えようにももう答えられない〇るま餅小姓からこぼれ出た大量の血が集まって王子の背後で人の形を作りました。

 この攻撃の本体はこっちですが王子は死体をいびるのが楽しくて気が付きません。

 

「兄上、危ない!」

「は?」

 

 迸った光が血の暗殺者を貫くが元より実体と言えるものがないので突き抜けました。

 

「ガフン」

 

 ブンブン回転した光剣が王子の首を貫いて、勢い余って首を刎ねました。ええ、そりゃ首を刎ねれば即死確定です。

 お医者さんでも脳みそまでは再生できませんから王子はこのお話から退場です。

 

「兄上!? なんてこと」

 

 実体のない血の塊が人の形となって剣を投げた相手の前に立ちます。その相手は誰あろう、兄を追いかけて王宮を飛び出した王女でした。

 

「ああ!? 小さな国の王太子を妹王女が殺した!? 何てことだ。何てことだ。評議会に報告しようそうしよう」

 

 王子が繋いでいた回線はまだ繋がったままだったのです。顔を青くした大臣が慌てて消えました。

 

「おお、こいつは手間が省けたというものだ。しかし、私の依頼主も人使いが荒くてね。王子を始末した後は王女も消せと命令したのだよ」

 

 王女の頭に魔導士のテレパシーが響きます。

 

「何ですって?」

「おっとついつい本音を漏らしてしまった。テレパシーでは嘘がつけないのだ」

 

 ホントはうっかり依頼人への愚痴を言ってしまっただけですが、これから王女も始末するのだからかまいません。

 

「死ね、王女!」

「よくも兄上を殺したな!」

「いや……ヤッタのは王女」

 

 剣と魔法のチャンチャンバラバラが始まりますが、王女は飛行機が傾いていることに気が付きます。

 

「うわぁ!?」

 

 機体が傾いて足元のバランスを保つので大変です。

 魔導士はなかば浮きながら飛び技をくり出しますが、銃でも光線も撃ち落とす王女の反射神経に徐々にパワーがダウンしていきます。

 接近戦したら到底かないませんので第二の策で仕留めます。

 

「乗り込んだ時にパイロットとフライトシステムに工作しておいたのだ。この飛行機は墜ちる!」

 

 魔導士が息を吸い込んで体内の血を爆弾に変えます。迫る王女に勝利の宣言の高笑いをして、流体が切り裂かれ魔導士の体は力を失いました。

 元々実体ではない精神体を飛ばしていたのです。使った血は殺した男のものでした。

 エネルギーが尽きてアサシンは消えたのデス。

 

「コ、コクピットっ!!」

 

 機内は大揺れ落下真っ最中、パイロットたちは血を噴き出して死んでいます。自動操縦システムはウィルスが撒かれて全滅状態。

 

「手動~~~~!」

 

 切り替えまであと数秒──うなりを上げて飛行機は暗い闇に包まれた山に落ちました。そして轟音を上げて爆発の炎が上がるのでした。

 はたして王女は死んでしまったのか!? このお話は続くかもよ! 



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3話

 悪い大臣が小さな国の王太子を殺そうと暗殺者の魔法使いを送りこんだ。

 その動きを知ったこの国のプリンセスが兄の危機に駆け付けるも王大子は首ちょんぱにされてしまう。

 復讐に燃える姫君は魔導士を倒すのだが、姫を乗せた飛行船は墜落してしまうのだった。

 

「まだか。殺した。殺せなかった。殺した。殺せなかった……」

 

 乙女の願いよろしく悪い大臣が白い花をむしる。

 暗殺者が戻って成功と聞くまで小心者の大臣の胃はご飯を受け付けず、ジュースばかり飲んでいたので次のおしっこに行こうと思っていたところです。

 

「首ちょんぱ!」

「ひえ!」

 

 いきなり声を掛けられ大臣はひっくり返って花壇に頭を突っ込みました。

 

「おい誰だ!? いきなり声をかけるんじゃない!」

「王子は死んだ……」

 

 黒いローブの魔導士がいつのまにか地面に立って大臣を見下ろしています。

 

「お前、顔色が悪いぞ? エステに通うといい」

 

 大臣は助け起こされて痛めた腰がピシピシ痛むので思う限りの悪口を言い立てました。

 持病の椎間板ヘルニアはつらいのです。

 

「本当に王子は死んだのか?」

 

 大臣は青っ白い顔の魔導士に詰め寄りますが、男があまりにも陰気臭い顔なのでローブを掴んでグルグル回転させてやります。

 回転しながら男は言いました。

 

「王女が殺した」

「待て、なぜ王子を殺したのが王女なのだ? 意味不明だぞ」

「再生モード」

 

 ぼわんと魔導士から出た煙が映像を作ります。

 一部始終を観終わってこれは予想外だわいと大臣は呟きます。

 

「しかし好都合だな。王女が王太子を殺したなら、我が国の王位簒奪の意志ありということで謀反人として手配しするしかあるまい。幸いなことにガマッシャーンの大臣が証言してくれよう。このスキャンダルでこちらへの警戒は薄まるはず。その間にメヨーヨを引き込んでガマッシャーンの連中を一網打尽とするのだ。ぐふふ」

 

 想定外も都合よい陰謀に変えて大臣はこの国の乗っ取りが少し早まったわいと有頂天です。

 最終的には王様の首を挿げ替えて大臣がこの国を仕切る野望で満々なのでした。

 

「ボス」

「何だ。まだいたのか?」

「報酬を支払ってください」

「うむ良かろう。後腐れなく消えるがよい!」

 

 大臣が手を上げると控えていた騎士たちが剣を抜いて魔導士に襲い掛かりました。

 初めから暗殺者を生かしておくつもりはなかったのです。

 ざっくり!

 剣が衣を引き裂いて魔導士は倒れました。

 

「ひえ! ただの布切れだぞ?」

 

 騎士が衣を掴んで震えます。

 ビュンビュンと音を立てて黒い影が庭を飛び回り騎士の体に降りたかと思うと、ビリビリ雷撃がほとばしり、騎士は骨とチリだけになって倒れました。

 次々に黒い影が騎士たちに襲い掛かって全員骨とチリだけになってしまいました。

 

「ひゃあああ!?」

 

 尻もちをついて大臣はお漏らししてしまいました。

 

「約束を反故にするとは許せんのだ。大方こういうつもりだったのだろうが」

「いや、待て! 命だけは助けてくれ!」

「お前の命など不要だ……だが、この国は我らが主に献上することにしよう……たかる蛆虫どもを全員始末してな」

 

 黒いローブが立ち上がって黒い影が入るとまた魔導士の姿に戻るのです。

 

「お、お前はいったい何者だ!?」

「フシュー。我は偉大なる御方のしもべなり……」

 

 そう告げて魔導士の姿はかき消えてどこかへ飛んでいってしまいました。



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4話

 小さな王国はただいま危機一髪絶賛中です。

 悪い大臣が王国を乗っ取ろうと企み。

 跡継ぎの王子を助けようとした王女は王族殺しで指名手配。

 加えて大国に挟まれて存亡で大ピンチ。

 そこに謎の組織が現れ……王国はいったいどうなってしまうのでしょう?

 

「むにゃ……腹いっぱいじゃ、もう食えん……」

 

 ぽんぽこでべそむき出しに、くがーといびきをかいて、王様はぼりぼりとお尻をかきます。

 しゅちにくりーんしまくってあちこちで同じように客が酔いつぶれて寝ています。

 食器やら食べかすが転がって、おこぼれに預かった鼠君たちが「よいしょよいしょ」と食べ物を回収するのです。

 

「おーい娘ー、わしの大事なお姫ちゃんや、ねんねこころりん歌ってやーい」

 

 ここにいない王女を呼びますがとっくにお城にはいません。王女が王子殺しで指名手配されていることすら知りません。

 でっぷりな王様のボディを抱えて小姓たちがベッドに放り込みます。

 

「ぐがー、すぴー」

 

 鼻提灯で王様は夢の国へいざなわれます。

 さてその頃王女様はといえば……

 

「ふがー!」

 

 どーんと音を立てて鉄の扉が吹っ飛びました。

 落っこちた飛行機は崖間際、墜落現場の森はバキバキなぎ倒され、飛行機はどうにか崖にひっかかってる状態です。

 

「あー、死んだわ……」

 

 顔を真っ黒にして機上に立ち上がったのは王女殿下です。あの状況で生きてるなんて悪運が強いんでしょう。

 ともあれ生き残ったのは自分一人だけと知って王女はどうするか考えました。

 

「国が危ないわ。腐れ大臣が王家に反逆しようとしてる。すぐに戻ってお父様に警告しないと」

 

 しかし足がありません。ハイウェイに出て車強奪するにも時間がかかります。

 

「確かここに……」

 

 この飛行機にはアレが積んであるはずです。ファチマはいなけど、うちみたいなビンボー国がファチマなんて持ってるわけないでしょう?

 

「あった、あった。壊れてない?」

 

 力技でハッチを開き、どーんと目の前に鎮座するのはロボットです。全長16メ―トルほどの巨人に積んででるのはエトラムルなのでファチマはいりません。

 免許はなくてもどうにかなるでしょう。

 

「これが起動スイッチ? おっと動いた……」

 

 エンジン音を響かせてジョーカー星団最強のロボ「もーたーへっど」が動き出します。

 

「ザブ・ン・グール起動!」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ、と音を立ててザブ・ン・グールが立ち上がります。

 立った。立ちました! 一兆馬力のマシンが!

 

「ひゃー! さいこーね、これ! 飛べ! ザブ・ン・グールっ!」 

 

 今は一応戦時中。モーターヘッド空に飛ばしてるなんてすぐに引っ掛かりますが単細胞なプリンセスは気にしません。

 そして朝を迎えるのです。その頃、同時刻の小さな王国では……

 ドーン! 王城手前の広場に転送されてきたモーターヘッドが降り立ちました。

 

「あひゃ、ひゃ、アシュラテンプルだー! メヨーヨ軍だぞー!」

 

 敵であるはずのメヨーヨの主力モーターヘッドが周囲を取り囲み、出撃しようとした騎士たちは同じ制服の自軍の騎士に制圧されます。

 

「敵が自軍に……裏切り者め!」 

 

 吐き捨てる将軍はお縄になってパラライズワームで拘束されました。

 

「黙るのだ将軍、年金貰うまでは口を閉じていたまえ!」

 

 してやったりという顔で悪い大臣が捕まった騎士たちの前で笑うのです。今や軍の半分は大臣の思うがままです。

 

「これは王も承知。長いあいだ我らを助けてくれたお人よしガマッシャ-ンと手を切って、狡猾非道に隙あらば何でも奪うメヨーヨに組することにしたのだよ!」

 

 ぐふふ、と大臣が悪い顔をさらに真っ黒に染めます。

 

「人聞きが悪いぞくそ大臣。大方あってるが、小さな王国を我々は助けに来たのだ」

 

 メヨーヨの騎士たちが敬礼して出迎えたのはちょび髭の王子です。そう彼がクラーケンベール・メヨーヨ王子その人なのでした。

 その後ろからメヨーヨーお抱えのファチマたちが続きます。

 

「今日は大変めでたい日だ。この国の王女とメヨーヨの王子殿下が婚約をする日でもあるのだ!」

 

 大臣が衝撃発言をしてみんな仰天です。いったい何を考えているのでしょう?

 



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