インフィニット・ストラトス~アイズ・オブ・ソウル~ (真神牙)
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第一話 始動

初投稿です。文章が見苦しいかもしれませんがよろしくお願いします。


「今日は転校生を紹介しま~す」

「え?」

そんな気軽な声で副担任……山田真耶は俺たちにそういった

「あのちょっと待ってください」

「どうしたんですか相川さん?」

「転校生ってさっきの2組の子じゃ?」

そう、今日来る転校生は丁度今このクラスを騒がせた俺の幼馴染、凰 鈴音の筈だ

そう疑問に思っていた所、千冬姉が捕捉した

「もう一人転校生が来るんだ、急な決定で私たちも対応を遅れてたし、正式発表もまだだからな」

「正式発表?」

「見ればわかる……入れ」

 

コツコツ、足音を立てて入ってきた人を見てクラスのみんなが固まった

銀髪の髪と眼鏡の奥の鋭い目つきが印象的だが固まった理由はそこではない

「自己紹介だね。僕は森近霖之助、君たち風には世界二人目の男性操縦者と言うべきかな?」

「「「「お、男の人ぉぉ!?」」」」

そう、この学園において珍しい男だからだ

 

「凄い二人目の男子!」「しかも眼鏡クール系!」「長身で銀髪でイケメンとか二次元のキャラかよ!大好き!」「私1組で良かったぁ!」

瞬く間にクラスがざわつく

 

「静かにしろ!全く、なんで毎回大騒ぎできるんだ……」

「あはは……森近君は織斑君の隣でいいかな?」

「えぇ、かまいませんよ」

今のこのクラスの話題の中心が俺に近づいてくる

「やぁ、君が織斑一夏君だね。よろしく」

「あぁ、こっちこそよろしく、それと一夏でいいぜ、苗字読みだと千冬ね…先生と一緒だしお互い数少ない男子なんだ呼び捨てで構わないぜ」

「そうかい?じゃあ僕も霖之助でいいよ」

そうやって握手しようとしたところ、霖之助の腕に見慣れないものが目に留まった

「ん?髑髏の指輪……?」

『お?俺様に気づいたか俺様はザルバ、よろしくな』

「指輪が喋った!?」

「驚かせてしまったかい?こいつはザルバ、何分男性操縦者は希少だしね、IS関連のサポートをしてくれるように配備してもらったAIデバイスさ」

「あぁ、俺も初日苦労したしなぁ……なんで俺にはないんだ?」

「単純にサンプルケースの問題だろう、条件の違う男性操縦者二人で検証を行うためじゃないかい?」

「うーん納得できるんだか納得できないんだか……俺にもそういうの欲しいなぁ」

『仮に俺様と同じようなもの作っても俺様には遠く及ばないぜ』

大した自信家だなぁ…AIにしては感情豊かに感じるのは気のせいだろうか

「とにかく!お前ら全員席に付け!授業を始めるぞ!」

千冬姉のその一言で今日の授業の始まりを告げた

 

 

 

 

 

 

 

昼休みの時間、昼食の為に食堂なる物に行き食事を頼みに来た

まぁ、僕の場合は昼食を食べなくてもいいのだが、入学早々怪しまれる可能性もあるためなるべく人間らしく振舞うべきだろう

食堂に来ると先ほどの一夏が3人の少女と愉快な事になっていた

 

「ふむ、一夏もそうだが()()とも接触したかったが、今のあの雰囲気に入り込めそうにないね」

『お、霖之助でもそういう空気の読み方ができるのか』

「一々うるさいよザルバ、それに時間はあるんだ、急ぐ必要もない」

「君が噂の森近君?一緒にご飯食べない?」

僕に声をかけてきたのは1組で見覚えのない子だ、おそらく2組や3組と言った別のクラスの子だろう

「あぁ、良いよ、遠巻きに見ている子たちも一緒に食べるかい?」

「いいの!?」「やった!」「二人目の男性凄い気になる!」

騒がしいのは苦手だが、今は我慢するべきだろう、それに霊夢や魔理沙たちと違い煩い以外は害はなさそうだ

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、さっきから向こうがなんだか騒がしいんだけどなんなの?」

鈴が俺に疑問を投げつけた

「いや多分霖之助のことだろう」

「霖之助?男みたいな名前ね」

「いや男だよ、今日二人目の男性操縦者が転校したの知らねぇのか?」

「え、そうなの?」←一夏以外眼中になかった女

「そうでしたわ、森近霖之助さん、彼も1組ですのよ」

自然と俺と鈴の話題から話題の霖之助の話題となった

「名前からして日本人かしらね、髑髏の指輪が悪趣味だわ」

「あれはザルバと言ってISのことをサポートしてくれてるAIらしいぜ?」

「うん?あれってISじゃないのか?」

俺の発言に反応したのは箒だ

「箒さん?あんなに小さいISはさすがにないですわ」

「それにいくら男だからって希少なISコアをあんな使い方はしないでしょ、どうしてそう思ったのよ」

「なんだかISっぽく感じたんだが……」

 

『お、俺様の話題か?モテる男はつらいぜ』

件の人達が俺たちの会話に参加していた

「霖之助?あっちの子たちと食事してたんじゃないのか?」

「あぁ、一夏と話がしたいって言ったら理解してくれたよ」

なんだか先ほどの子たちから変な視線を感じるが気のせいだろう

「そちらの三人は?二人はクラスで見たがもう一人は見覚えがないね」

「あぁ、こっちの子が俺の幼馴染の箒、こっちがもう一人の幼馴染の鈴、でこっちがセシリア」

「改めまして自己紹介を、わたくしがセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生ですわ!」

「一応私も紹介するわ2組の凰 鈴音!中国の代表候補生よ!」

「えっと……篠ノ之箒だ、その、私は代表候補生ではない……」

「これはご丁寧に。知っていると思うが僕は森近霖之助、二人目の男性操縦者さ」

『そして俺様がザルバだ』

互いに自己紹介を終えて最初に言葉を発したのはザルバだ

『代表候補生が二人もいるとはな、どちらも有名な代表候補生だ、とくに凰 鈴音は中学三年からわずか一年で代表候補生に上り詰めた期待の新星だ、対するセシリアもずば抜けた射撃成績を持っている、射撃成績だけなら代表レベルに匹敵するとも言われてるくらいだ』

「あら、確かにISのサポートAIデバイスとして優秀らしいですわね」

『これぐらいなら少し漁れば分かる範囲だろうさ』

「なぁ、わずか一年で代表候補生になるのってすごいのか?」

「凄いってレベルじゃないですわ、わたしですら三年はいりましてよ」

「へぇ~すげーじゃん鈴」

「フフン、当然でしょ!」

鈴が得意げに胸を張った

「まぁ、話はこのあたりで昼休みももうすぐ終わりだ次の授業は一組は実習だったはずだし早めに行った方がいいじゃないのかい?あの織斑先生だろう?」

「いっけね!霖之助も早く行こうぜ、男性更衣室って割と遠いんだよ!」

「ふーん、じゃ一夏!また放課後会いましょ!」

「おう!」

そういって俺たちの昼休みは終わった




ザルバ「白き騎士と赤き竜の激突!
    刃と刃の応酬を黒き鉄人は冷たく見張る
    次回『対抗』
    白銀の剣よ!雄々しく突き立て!」


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第二話 対抗

「どうだいザルバ、彼女は?」

『俺の事をちゃんと理解できているようだ、自覚はないようだがな。どうする?』

「今は様子見だね、まだその時ではないさ」

「おい霖之助?早く着替えないと千冬姉に叱られるぜ」

「あぁ、わかってるよ」

 

一夏の呼びかけにそう答えISスーツに着替える

「ふむ、初めて着たがなかなか機能性に優れてるスーツだね」

「ちょっと慣れないが、IS動かしやすくなるように必須らしいぜ?」

取り留めのない雑談をしながらアリーナに入る

「来たか、よし全員集まったな、今日は前回のおさらいだ。織斑、セシリア、専用機を展開しろ」

「?霖之助には専用機ないのか?」

一夏が疑問を投げつた

「あぁ、政治的な理由で専用機の選定が遅れてるらしいよ。なんせ男性操縦者なんて希少な存在が両方日本人なんだ、海外の企業やらから『うちが開発したい!』っていうメールが沢山来てるようだ」

「そういうことだ、わかったらさっさと専用機の展開しろ」

 

一夏が言われて慌てて専用機を展開する、見ればセシリアはすでに展開していた

(ふむ、さすがは代表候補生、素早い展開だ)

恐らく2秒ほどの展開速度だろう、代表候補生での平均は3秒ほどらしいので彼女は1秒ほど早いことになる

ちなみに代表レベルで平均1秒、織斑千冬ほどになると0.05秒ほどで展開するらしい

 

「よし、まずは飛行から始める!」

始めの合図とともにに一瞬にして二人の姿は上空に飛んだ

 

「ザルバ、貴様がISのサポート用のAIデバイスならあの2機の説明をしろ」

『仕方がない、まずはセシリア・オルコットのブルー・ティアーズは第三世代のBT試作壱号機、BT兵器、即ちblue・Tears兵器とは遠隔無線誘導型の武器で全方位射撃を可能としたイギリスの次期主力兵装だ、対して織斑一夏の白式は打鉄でお馴染みの倉持技研の第三世代の専用機、武装は雪片弐型のみ、だが単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)零落白夜(れいらくびゃくや)はISの武装の中でも最強の火力を誇る、カタログスペック上では白式の機動力が上だ、それでもブルー・ティアーズの方が先導しているのは単純な熟練度と技量の差だな』

「わぁ~ザルルは賢いよ~」

感嘆しているのは確か布仏 本音だったか、昼休みの時に話掛けてきた子の一人だ

「ザルル?」

「ザルバだからザルルだよ~?」

『愛称って奴か、文字数は変わらないが有り難く貰うぜ』

「よし!二人とも前回と同様急降下後に急停止しろ!」

その号令と共に二人は着地した、セシリアは接地する直前に急停止し一夏は地上から離れたところから減衰しながら着地した

 

「織斑、それでは急停止とは言えん、最低限地上から3mほどの距離から減衰しろ、グラウンドに穴をあけたのがそれほど気にしてたか?」

なにそれ見たい

 

「森近、初日に専用機の動きを見た感想を述べろ」

急に織斑千冬に話を振られた。なるほど、これが今日の一番の目的か

「率直に言えばオルコット君の動きは物凄く模範的、熟練度の高さが伺えるね、対照的に一夏は乗り始めてから日がたっていないからか動きがぎこちない、というより専用機に振り回されてる感じだね」

「辛辣だなぁ……」

「僕に至ってはいまだ満足に操縦したことがないんだ、それを考慮すれば一夏以上に僕の方がぎこちないだろう」

まぁ、実際乗れば今の一夏よりも上手く乗れる自信はある、裏技もあるし

「これで今日の実習は終了する!他の生徒は見た感想をレポートとして明日までに完成させるのを宿題とする」

織斑千冬のその号令で今日の授業は終了した

 

 

 

授業が終わり更衣室に居た頃

「お、霖之助。今度のクラス対抗戦の特訓に放課後箒とセシリアが付き合ってくれるんだよ、箒が打鉄を一機借りてるから一緒に付き合わないか?」

 

一夏から放課後の誘いがあった

「すまない今日は先生に寮内を教えてくれるために職員室に用があるんだ、誘ってくれたのはうれしいが辞退するよ」

「それじゃあ仕方ねぇか、じゃあな!」

言葉を発し去っていく一夏を見送った

『クラス対抗戦か奴が水面下で動く可能性があるな』

「どちらにしろ準備はしておいた方がいいだろうね」

僕はザルバと話しながら職員室に向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏と再会できて上機嫌!放課後には甲斐甲斐しく世話してアピール!そんな健気な(自己評価)私が今直面している問題

「というわけで箒さん、部屋変わってくれる?」

一夏との相部屋を賭けた死闘が始ま……

「え?俺と霖之助の相部屋になるんじゃないのか?」

らなかった

 

「まぁ、いいわ一夏とあの霖之助って奴が相部屋なのは分かるわ、だけど……」

今私は自分の部屋にいる、ボストンバッグ一つで来たので私物が少ないため用意自体は簡単に終わった

「なんでアンタと相部屋なのよ!」

私の部屋は先ほど死闘(予定)していた篠ノ之箒だった

「仕方ないだろ、部屋割りが急に決まったもんで空いた部屋にねじ込まれのだからな」

「だからって、その、恋敵の……あんたと一緒の部屋に住まないといけないの!?」

「その気持ちは分かるが寮長があの千冬さんだ、私たちでどうこう言える問題じゃないだろ」

「それはそうだけど……あぁもう!絶対あんたと会話なんてしないからね!」

「それはこちらのセリフだ」

絶対こいつなんかと仲良くなれない!

 

___一時間後

「……ねぇ、あんた一夏のどこが好きなのよ」

「会話しないんじゃなかったのか?そ、それに私は一夏のことがすきなわけじゃ……」

「うっさい!てかそんなの通じるわけないでしょ!素直に言いなさいよ!」

____二時間後

「それで!?一夏はどうしたのよ!?」

「そんな時にな一夏がやってきて助けてくれたんだ、いつもつかかっていた私にも関わらず、それが当然だという感じでな」

_____三時間後

「そんなときにね、一夏が『うっせー!鈴は鈴だ!』って言ってくれたのよ」

「あぁ、あいつはそういう時そういうだろうな」

______四時間後

「勇気を出してデートの約束をしたんだ、なのにあいつ当日になると当時仲の良かった男子を連れてきて『みんなで遊んだほうが楽しいだろ?』って言ってきたんだ」

「あぁ……あるわねそういうの」

_______五時間後

「それでね私その時に約束したのよ『私が料理上手くなったら将来酢豚を毎日食べさせてあげる』って」

「そ、それではプロポーズではないか!?」

「それでさっきその約束を覚えてる?って聞いたら『あぁただ飯食わしてくれるって約束だろ?』って言ったのよ!?ひどくない!?」

「ひどいぞ!すっごくひどい!」

_______そしてクラス対抗戦当日

「鈴ぅー!がんばれー!」

「えぇ!今までの事を全部ぶつけて一夏をコテンパンにしてやるんだから!」

私と箒は親友になってた

「……なぁ、なんで箒が二組の鈴を応援してるんだ?」

「さぁね、女の友情かなにかじゃないかい?」

「鈴と話し合ったんだが一夏は一度痛い目に見るべきだ!」

『こいつはまた愉快なことになってるな』

「傍目で見るとものすごく楽しいよ」

そんないろいろな思いが交差してクラス対抗戦が始まったのだった




ザルバ「黒き鉄人が降り立つとき
    沈黙を続けた力が目を覚ます
    次回『闇照』
    それは闇を照らす闇」


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第三話 闇照

原作読んでても思ったけど甲龍って欠点ないし燃費良しで正直第三世代の中で最高傑作機だと思う


クラス対抗戦が始まり一夏と鳳の勝負が始まった

流れは鳳がつかんでいた、理由はたくさんあるが一番の理由は鳳 鈴音の専用機『甲龍』の特徴だろう

 

「龍咆……噂には聞いておりましたがこれほどとは」

「空間自体に圧力をかけ砲身を作り、左右の翼から衝撃を砲弾として打ち出す衝撃砲。故に砲身も砲弾も見えない上可動域に限界はなく360度砲撃可能。衝撃砲だから燃費も良く持続性もある、さらに大型の青龍刀を二刀持っていて接近戦もこなせる、高水準に纏った万能機だね」

「それに青龍刀と龍砲は互いに干渉せず使えますわ、近距離では龍砲と青龍刀の四刀流ですわね」

『そして鳳 鈴音は近距離も遠距離も得意な相手だ、近距離しかない白式は遠距離では一方的に嬲られ、近距離でも四倍の手数が相手と辛い戦いだ』

「正直あのレベルの相手に接近戦しかできない機体で一か月程度しか乗り慣れてない一夏が勝つのはほとんど無理だろう」

「そんなに一夏では勝つのは無理か?」

箒が質問してくる鈴を応援していたが、一夏にも勝ってほしいという複雑な思いなのだろう

「一応、弱点ともいえることを昨日アドバイスしておいたが、それで勝てるかどうかは別だね」

「あら?あれに弱点なんてあるのかしら?」

「あぁ、人間であることがある種の弱点さ」

 

___対抗戦前日

 

「なぁ、霖之助これ俺勝てなくね?」

放課後のアリーナで僕は一夏にザルバを通して甲龍の性能を説明した

「ハッハッハ、99%負けるね」

僕にハッキリそう言われて一夏はぐったりしている、仕方がない助け船を出そう

「なに、龍砲の性質上見過ごせない弱点がある」

「龍砲の性質?」

「龍砲は『砲弾だけではなく、砲身すら目に見えない』だろう?じゃあどうやって鳳君は照準を付けているんだい?」

「たしか第3世代型兵器といって搭乗者の意志による操作装置で狙いをつけるんだろう?」

「そうだ、だが搭載した第3世代型兵器を稼働させ制御するにはかなりの集中力が必要だ。龍砲の場合狙い付けるのに狙う方向に向かって空間を圧縮するという集中が必要だということだね、砲塔が見えないのは搭乗者自身も変わらない、彼女自身が砲塔を向けるイメージを相手に向けなきゃそもそも当たらないんだ、人間はそういう時は撃つ方向に居る相手を見てしまう」

それは言うなれば相手の目線が一種の砲塔という事だ、相手の視覚を注視すればある程度の狙いが分かる

「人間の性質はそう簡単に変わらない、ハイパーセンサーで背後を視認できても咄嗟の時には振り向いてしまうようにね」

『お前とセシリアの戦闘記録を見たが、あいつがBT兵器を使用する際ハイパーセンサーがあるにも関わらず人間の死角から攻撃していただろう?あれは熟練者でも死角からの攻撃は数刻反応が遅れるからだぜ』

なるほどなぁと感心している一夏にもう一つアドバイスをした

「一夏、ISのコツは『自分を人間からISに変えること』だ、人間は空を飛べないし背後も見れないし物を注視するとその方向を向いてしまう、そういった人間の感覚を捨てて初めてISは本領を発揮する」

故にISの腕前はISの起動時間と正比例する、感覚が人間からISへと変化するからだ

 

()()()()()()()()()()()()()()()のならISの腕前は飛躍的に上昇するわけでもある

 

「でもよぉ、人間の感覚を捨てるつってもそう簡単に捨てれねぇだろ、俺はそういうの簡単に捨てたくねぇし」

 

……ふっ

 

「それは君が人間の感覚を大切にしてるからさ、ISに乗って人間の感覚との誤差に狂乱してしまう子もいるがそれは悪い訳ではないからね、でも君は勝ちたいんだろう?」

「あぁ、もちろん。やるからには絶対勝ちたいし、強くなりたい」

「だったらいい方法がある、一時的に感覚を切り替えれる手段をね」

 

______

 

そして現在に至る

「それで?一時的に感覚を切り替えれる手段ってのはなんですの?」

「あぁ、その手段の事気になるぞ」

「あぁ、簡単だよ、ちょうど一夏もその手段を使うようだ」

 

 

 

 

 

 

 

霖之助のおかげで龍砲の射線の予測自体はできていた

(だけど攻めあぐねる!)

鈴もこちらの零落白夜を警戒し二刀の青龍刀、双天牙月と龍砲の波状攻撃でこちらからの攻撃をさせる隙を与えない

(こうなったら霖之助の言ってた感覚を切り替える手段を使う!)

そして一時的に停止してスゥーと息を吸い込む

「……?一夏あんた何をする気……」

「俺は鳥!俺は鳥!俺は鳥!俺は鳥!俺は鳥だぁぁぁぁ!」

力一杯、自分にそう言い聞かせた

 

 

 

 

 

 

 

一夏の鳥発言の後アリーナ内は静寂に包まれた

「あ……あれが森近さんの言っていた方法……」

「あぁ……だがあれは……」

「「「「ただの自己暗示だぁぁぁぁぁ!?」」」」

アリーナ全体が一斉にツッコんだ

 

「ク、ククッ……本当にするとはね、フフッ」

「森近君結構いい性格してますよね……」

「でもなにより酷いのは……」

「本当に効果があったところだな……」

「……まったくあの単純バカは……」

 

 

 

 

 

 

 

一夏のバカ発言に呆気に取られてたが何よりムカツクのが効果があったのか動きが良くなったことだ

「なによバカ一夏!あんな単純なのでなんで動き良くなるのよ!?」

「うるせぇ!良くなったんだからいいじゃねぇか!」

すっごい納得いかない!納得いかないが流れが一夏にあるのは間違いない

(なんとかしてアンタの動きを止めなくちゃ……っ!?)

距離を取ろうと動いた瞬間、一夏の起動が数段早くなる

(これは瞬時加速(イグニッション・ブースト)!?やばっ、やられる!?)

私が一夏の攻撃を受けると確信した瞬間

___上から謎の光が降り注いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナにアラートが鳴り響く

「何が起こった!?」

「アリーナのシールドを突き破って正体不明機が侵入!データに照合ありません!」

「すぐに観客を避難させろ!」

千冬さんたちは騒がしく指示をだしている

そんな頃私は現れた三機を見て

 

(……?無人……機?)

___なぜそう思った?

(わからない、だけどあれは間違いなく無人機だ)

(それにアレは私を狙っている?)

___なぜそう思った?

(わからない、でも私を狙っているのだとしたら!)

 

気が付けば私はアリーナのピットに向かっていった

 

 

 

『どうやら動いたようだな』

「あぁ、こちらも動こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴!お前のISのエネルギーは!?」

「まだ大丈夫!エネルギーならあんたの方が……」

先ほどの瞬時加速の為にエネルギーを使用したため俺のISのエネルギーは少ない

「一夏!あんたは下がりなさい!そのエネルギーじゃ危険だわ!」

『一夏!鳳!すぐにそこから退避しろ!』

専属回線から千冬姉の声が聞こえる

「千冬姉!あれはなんだ!?」

『わからん、とにかくそこから離れろ』

「でも千冬姉、あいつはアリーナのシールドを突き破ってきたんだろ!?このままじゃ皆があぶねぇ!」

みれば観客席の人は避難しようとしているが出入り口を封鎖されているのか混乱状態だ

『わかっている、だが今のお前じゃ無理だ』

「いや……方法はある」

『なに……?』

「鈴と力を合わせれば恐らく」

「どういうこと?」

 

鈴と千冬姉に自分の作戦を喋った

「……バッカじゃないの!?」

『確かにそれなら一撃与えれる、だがそれの実行を許すと思うか?』

「でも避難の時間稼ぐのは俺の機体じゃ難しい」

『救援を呼んでいる、戦う必要はない』

「でも鈴は逃げないんだろ?」

「……えぇ、私の甲龍はまだ戦えるし、私は中国の代表候補生だもの」

「だったら俺も逃げない、幼馴染が戦おうとしてるのに逃げるのは格好悪いから」

『……危険だと思ったらすぐに退避しろ』

千冬姉のその言葉で通信が途切れた

「鈴準備を……ッ!?箒!?」

「なんですって!?」

 

見れば箒がアリーナのピットから先ほどの正体不明機を見つめていた

「お前の狙いは私か!?なら皆を狙うな!」

箒に気づいた正体不明機は箒に狙いを定め拳をかざして……

「鈴!早く!」

「わかってるわよ!」

 

 

 

 

突然だが龍砲についておさらいしよう

龍砲とは空間を圧縮して空間そのものを砲身に変えに左右の翼から衝撃を砲弾として打ち出すのだ

だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

原理的には翼から衝撃をだすのと同じ要領で作られた何かでも同様に打ち出すことができる

 

(イメージするのよ私!空間の圧縮は通常の龍砲と違いもっと大きく白式を包めるほどに!)

つまり白式自身が砲弾変わりとし、その白式が加速すれば……

___超高速で発射されるカタパルトに代わるのだ

 

「「間に合えぇぇぇぇぇぇ!」」

 

鈴は一夏を打ち出し

一夏が正体不明機を切り裂いた

 

 

 

 

 

「やりましたね織斑先生!」

山田先生にそう言われ、張り詰めた緊張がほぐれていく

「あぁ、本当……」

一息付こうとした瞬間

 

___またアラームが鳴りだした

 

「なに!?」

「また接近する機体……ッ!?先ほどと同じ反応が!しかも2機!?」

「なんだと!?」

 

 

 

悪夢を見ているのか

先ほど倒した正体不明機がさらに二機降ってきた

「そんな……」

「ッ!?箒!早く避難を!」

箒の方を見る、だが正体不明機に狙いを定められていて逃げるのは間に合わない

(動け白式!なんで動かねぇんだ!)

もはや白式はエネルギーを枯渇し鈴は通常よりもでかい空間圧縮した疲労で動けない

誰も箒を守れない

無慈悲に正体不明機の手が箒に振りかざされたその時

___空から漆黒が舞い降りた

 

 

 

 

 

 

『あの一夏たちのコンビネーション、さすがのお前でも予想外だったんじゃないか?』

「そもそも、この世界に来て予想通りだったことの方が少ないよ」

そういって僕はアリーナのピットに向かい、箒の隣に立つ

「森近!?なぜここに!?」

「一夏たちは先ほどまで懸命に戦った」

正体不明機は僕と箒に拳を振り上げ

 

「次は僕の番だ」

 

振りかざしたその拳は空から舞い降りた漆黒の存在に阻まれた

「ありがとう、僕の声に応えてくれて」

名も知らぬIS(きみ)に、僕の為にきてくれたIS(きみ)

「さぁ、君の名を教えてくれ」

___そうか

「なら今日からその名は君と僕の名だ」

さぁその名を吠えよう誇り高く気高き名を

「我が名は闇照(やみてらす)!闇を照らすものなり!」




ザルバ「闇を照らす漆黒の戦い
    そして漆黒の中に眠る金色の輝きを見逃すな!
    次回『金色』
    輝け!黄金の剣!」


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第四話 金色

タグに主役は霖之助と書いててなんだけど主役つうか敵か味方か胡散臭い櫻井孝宏枠だなこれ


時刻は少し遡り

「上空から新たなIS反応!」

「なに……?またあの機体か?」

「いえ、照合あり!モニターに出します!」

モニターに映ったその機体に私は絶句していた

 

「闇照……だとぉ!?」

 

バカな、あの機体は()()()()()()()()()()()

「誰が乗っている!?」

「それが……誰も乗ってないんです!無人で動いてます!」

「何……だと……?」

 

 

 

 

 

 

 

「ザルバ、最適化(パーソナライズ)による一次移行(ファーストシフト)の所要時間は?」

『最速で一分ってとこだな』

「遅いね40秒で終わらせてくれ」

『そういうと思って20秒かさ増しした、どうやら魔理沙はお前さんに似たらしいな』

そいつは心外だ

 

_10秒経過

とはいえ初陣で2機と相手するのは手間取る

片方に近づけばもう片方からビームを打たれる

「だからオルコット君は片方の相手をしてくれないかい?」

そういって頭上を見やる、見ればセシリア・オルコットがブルーティーアズを装着しやってきていた

「了解ですわ。ですが森近さん、その機体は……?」

「説明は後だよ」

これで1対1の状況に持ち込む

(闇照の武器はこの剣『金狼剣』と尖端がリング状のマフラー型多節鞭『ディバインフレイム』のみ……やはり近づかなければいけないか)

 

__20秒経過

正体不明機が拳を正面に向け構えをとる、腕のビーム兵装を使用するつもりだろう

「いまだ!借りるよオルコット君!」

そう言ってディバインフレイムをセシリアのビットに絡ませる

「え!?何をしますの!?」

「君はブルーティアーズを固定すればいいさ」

絡ませたビットを支柱にしてこの身体をスイングの要領で飛ばす

 

___30秒経過

正体不明機の拳に目掛け、金狼剣を突き立てる!

____35秒経過

刻一刻と正体不明機の腕からビームが収束する

_____36、37、38、39……

「ジャスト40秒だ」

 

その瞬間闇照のファーストシフトは終わり、僕と闇照は一体化した

そして剣に込められた力を強くして

正体不明機を切り裂いた

「……次!」

 

 

 

 

 

 

突然のことでなにがなんだからわからないが、霖之助が正体不明機を倒したのは確かだ

もう一体の方を見るとセシリアの攻撃を掻い潜り、霖之助に向けて今まで最大の収束をもってビームを発射した

 

「っ!?森近さん!?」

「危ない霖之助!」

その言葉が届く前に無慈悲に巨大な光の洪水は霖之助を包み視界から霖之助が消えた

「そんな、アイツは……!?」

「霖之助ぇぇぇぇぇ!」

巨大な光りの洪水が晴れるとそこに

 

『さぁ、闇を照らす者よ、金色になれ!!』

 

ザルバのそんな言葉と共に

漆黒から金色に姿を変えたISが目の前に立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

≪システム:ゴールド・ストームの発動を確認。稼働限界時間残り99.9秒≫

声が脳内に響く、ファーストシフトにより鮮明に闇照の声が聞こえるようになった

今闇照は先ほどまでの漆黒の姿から金色に輝く姿をしている

「行くよ、闇照、ザルバ」

了解(ラージャ)

『あぁ、行くぜ!』

金狼剣の刀身をザルバに噛ませる

ザルバからエネルギーが放出され、刀身を緑色の炎を纏わせた

左手を前に、腰を下ろし、前方の敵に狙いを定める

「これで終わりだ!」

跳躍で急接近する

敵は反応し拳を突き出してくる

 

___だが、遅い

すでに僕は剣を横に斬っており敵を通り抜けた

金狼剣を鞘に戻しカチッと音を鳴らす

その瞬間正体不明機は上半身と下半身が分裂した

≪残り98.7秒、戦闘終了です、ゴールドストームを解除します≫

金色に輝いた闇照が再び漆黒の姿に戻る

「ふぅ、なんとか終わったようだ、やはりこういうのは苦手だ」

『だが、後戻りはできないぜ、苦手でもやると決めたんだろう?___の為に』

あぁ、そのために……ここにいるのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乱入事件もおわり、対抗戦は中止となった

俺は箒、鈴、セシリアと一緒に保健室にいた

「一夏、怪我はないのか?」

「あぁ、箒こそ大丈夫かよ、あそこで生身だったのは箒だけだろ?」

「セシリアも大丈夫?あんたも随分ボロボロのようだったけど」

「あら、鈴さんの方こそ慣れない龍砲の使い方で疲労が溜まってません事?」

そんな風に四人の無事を確認したところ、霖之助がやってきた

 

「皆、怪我はないかい?」

「森近さん!それよりもあの時のあなたのISの事について事情を聞かせてくれません事?」

そうだあのIS、闇照といったアレはなぜ霖之助が使ってるのだろうか

「あぁ、彼女かい?彼女は……」

「あれは闇照、IS史上最も欠陥のある機体だ」

千冬姉がそう割り込んできた

「欠陥?白式以上に欠陥なんてあんの?」

「敬語を使え鳳……まだ起動できるだけ白式の方がマシだ」

そう言って一呼吸置いた後千冬姉は口を開いた

 

「アレはな、誰も起動できなかったんだ、動きもしないのだから欠陥以外の何物でもないだろ?」

「え?」

「色んなIS乗りがあれに乗って起動しなかった、私でもな、まるで乗せる相手を決めていたかのように、まさかそれが森近だったとはな」

「彼女は偏屈でね、あんな状況でもなきゃ乗せてくれないさ、たまたま僕の所に来てくれてよかったよ」

「たまたまか……無人のISがたまたまこの学園に向かって動き出したのもたまたまか?」

「無人でですの!?ありえませんわ!?」

「そうよ無人って……そんな技術まだアメリカ製以外テスト段階にも行ってないでしょ!?」

鈴とセシリアが異論を出した時に箒が口をはさんだ

「いや今回の正体不明機も無人機だったろ?」

「え?そうなのか?」

あの時はたしか相手のことを考える暇もなく、倒した後すぐ教師陣の救援がやってきてあの正体不明機の事を考える時間はなかったはずだ

「……なぜ篠ノ之がそれを知っている」

「えっと、なんといいますか、見た時脳裏にあれは無人機だ、と感じて」

「ほう、他に何か感じたかい?」

霖之助が箒の発言に疑問を投げる

「なぜかあれは私を狙っている……そんな気がしたんだ」

「篠ノ之を……か?」

千冬姉が意外そうにその発言を聞いていた

「はい、私が目的なら私が前に出れば他の人に手を出さないんじゃないかって、だから……」

「はぁ……無事だったものの危険な行動をするな」

「す、すみません……」

「まぁ、結果的には皆無事だしいいじゃないか、それより彼女の話題からズレて彼女が拗ねてる」

「さっきから気になってたんだがよ、霖之助、彼女ってもしかして」

「あぁ、闇照のことさ、ISコアには人格があるからね」

まるで直にISコアと話してるかのような口ぶりだ

「あぁ、闇照の事だがまず起動できないといっただろう、故にどこかの技術部のバカどもが競技用に囚われない机上の空論で出来る限界の追求のため改修されたんだ、まず一つにこいつは空を飛べないんだ」

「空を飛べない?それはISとして機能していないんじゃないか?」

「あぁ、あの闇照は通常時はエネルギーを消費が0なのさ。絶対防御やシールドエネルギーすらない」

「はぁ!?」

さすがに絶句する空を飛べず絶対防御がないとなるとほとんどただの鎧だ

「あぁ、ですから最初の時私のブルーティアーズにあのマフラーみたいのを絡ませてのは高速移動のためのスイング移動でしたのですね」

「でもそれってもうISじゃなくない?空を飛べて絶対防御で守れるのがISでしょ?」

「確かにね、故に一つの仕掛けがある」

仕掛けというとアレのことか?

「それってアレか?いきなり金色になってた奴」

「あれこそが闇照のシステム、ゴールドストームによる疑似形態移行(フォームチェンジ)だ。通常の形態移行(フォームシフト)を半ば意図的に起こす」

「あの状態は正式名称は闇照・金色と呼ばれてる、逆に通常時は闇照・漆黒だよ」

「金色モードはあらゆるエネルギーの消費を0にした状態から一気に全身から放出、あらゆる攻撃をエネルギーの鎧で相殺する、いわば纏う零落白夜だ」

「あの正体不明機の攻撃を受けて無傷だったのはそんなカラクリでしたのね」

「だけど零落白夜と同じく消費が激しくてね、時間で言うところ99.9秒でエネルギーが0になる」

あぁ、だから漆黒ではエネルギー消費が0なのか、金色での起動時間を増やすために

「ついでに言えば一度エネルギー0になるまで起動し続けると24時間システムの冷却が必要だ」

「それって一日に一回しか使えないじゃん!」

確かに欠陥機と言っていいかもしれない、金色に代わるのはすっげぇかっけーと思うけど

「冷却とエネルギーの供給の両立のため、漆黒にはエネルギーが自動供給されるシステムが組まれてる。供給量が少ないため漆黒のエネルギー消費量を最大限迄落としたんだ」

「闇照に関しては以上だね」

「まぁ、一番の問題はよりにもよって二番目の男性操縦者にアレが動かせてしまった事だ」

「どういう事?」

「競技用ではない上漆黒の仕様でISの行事に参加できるか?」

「なるほど、絶対防御がないからISの攻撃に丸裸なのね」

「あぁ、死ぬ程痛いよ?」

いや死ぬだろ

「故に行事では量産型ISを使用してもらうつもりなんだが……」

珍しく千冬姉が歯切れが悪い

「……誰も動かせなかったISが動いた、それの解明の為に専用機として受理するべきだという意見もあるんだ」

「たしかに……言ってしまえば技術分野じゃ一夏がISを動かしたのと同レベルの衝撃よね」

しかもひとりでに勝手にやってきて

「でも行事の時に漆黒状態でもしものことがあったら……」

「それらの調整を考えると頭が痛い……まったく……専用機受理の書類の為についてこい森近」

「じゃあね、一夏」

そういって二人は出て行った

 

 

 

 

 

 

 

 

闇照が動いた事も謎ではあるが、私の中で一番腑に落ちないのは他にあった

未登録のISコアの正体不明機……いつまでも正体不明機というのもあれだからゴーレムと名付けよう……の目的

そして……篠ノ之箒の発言

(【私を狙っていた気がする】……か)

ゴーレムは未登録のISコアが使用されていた

つまり現存するISコアじゃなく新たに作られたのだ

それができるのは篠ノ之束のみ

(だがならなぜ篠ノ之を狙う?)

あれの目的が一夏や鳳であればまだ奴の可能性もある

だがもしも篠ノ之が目的なら、自分の妹を狙うのなら

(やり方が束らしくない)

「織斑先生?大丈夫かい?」

「……すまない考え事をしていた」

「ほう、考え事……それは例えば未登録の新しくコアが作れるのは篠ノ之束だけ、だけど妹を狙う理由がわからないって考え事かい?」

「!?」

『随分と顔に出るじゃないか織斑千冬、図星か?』

「……なぜあのISが未登録の新しいコアだとわかった?」

「何単純な事さ、ザルバはこの世界のすべてのISコアの情報がインプットされている、彼が見て分からないのなら新しいISコアだと推理した、そしてそれを作れるのは篠ノ之束だけだろ?」

筋は通っている、だが私は森近に何か得体のしれない何かを感じた

「安心していいよ、()()()I()S()()()()()()()()()()()()()()()さ。それより書類の受理を願いたい」

そういって彼は私に書類を渡した




ザルバ「こんな時期に転校生とは何やらきな臭いな
    なに?二人?
    次回『転校』
    また新しいトラブルの始まりだぜ」


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第五話 転校

「邪魔するぜ香霖!」

そんな煩い声で俺は目覚めた

「魔理沙、ここは店だ物を買わない人は邪魔だよ」

「だから邪魔するっていっただろ……ってお前何見てんだ?」

「あぁ、これは……」

そういって銀髪の男が俺を見る

「朽ちていた道具だと思ってたがどうやら違うようでね、これから道具の世界を見ようとしてるんだ」

「?お前の能力って道具の名前と用途を知る事だけだろ?道具の世界って何だ?」

「道具の世界ってのは言うなれば付喪神になる前の付喪神がいる世界の事さ、付喪神

それぞれに世界があって、僕の能力は道具の世界に僕の魂を飛ばしてその世界の名、つまり道具の名前が分かり、そこに住む付喪神になる前の付喪神に触れることでその記憶を見ることができるんだ、その結果僕の脳に用途を知ることができるという事だね」

「道具の記憶見ることでどうして道具の用途が分かるんだ?」

「道具の記憶というのは言ってしまえば使われている所を知るから使われた結果を知るということだ、だがどう使われてるかまでは分からないから使い方までは分からない」

「例えば前に紫に聞いたゲーム機壊そうとした時とかか?」

「あれはゲーム機の記憶がゲームの世界しか見えないから僕には何者かに世界を操られる結果しか見えなかったんだ」

そう言って俺に銀髪の男……香霖と呼ばれてたか……そいつは俺を見ながら言った

「最初は記憶をたどってもなにも見えなかった、それはこの道具が朽ちてて記憶に欠損があったからだ、修復してもう一回見ようと思ってね」

なるほど、俺が目が覚めたのはそれが原因か

「まぁ、良いぜ暇だから見学してやる」

「別にみても何も面白くないよ」

そう言って香霖と呼ばれた男が俺に触れ記憶をたどった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザルバ?どうしたんだい?」

『うぁ?どうしたんだ霖之助?』

「いや、君が反応しないから聞いたんだ」

『あぁ……どうやら眠って夢を見てたようだ、お前と初めて出会った日の事をな』

「君でも夢を見るんだね、それにしても僕と出会った頃か、あの頃はこうなると思ってなかったよ」

そして今日も

「これまた予想外な事が起きそうだね」

それは入ってくるなり少し困惑気味の山田先生を見てそう思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は転校生を紹介しま~す……えっと、転校生は二人です」

私はなるべく平静を装いながらそう説明した

「え?二人?普通クラス分けない?」

「それにこの時期に?」

クラスに困惑の空気が漂う、まぁ私もそう思うけど

「入ってください」

「はい!」「了解した」

一人目は金髪の少女でもう一人は銀髪の少女

「フランスの代表候補生、()()()()()()()()()()()です!皆さんこれからよろしくね?」

「デュノア?デュノアってあの?」

「はい、あのデュノア社です!」

デュノア社は世界有数のIS企業だ、第二世代ISラファール・リヴァイヴは私も愛用する機体でシェア率も高い

「ラウラさん?あなたも紹介を……」

「……」

「あのー?」

「……」

……助けて織斑先生!

「はぁ……ラウラ、自己紹介をしろ」

私の思いが通じたのか織斑先生のフォローが入った

「了解した教官、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「……それだけ?」

「あぁ」

…………助けて織斑先生!

そう思っていたらラウラさんは突然織斑君の前に立った

「お前が教官の……!?」

突然ラウラさんは頭を押さえて蹲る

「!?お前大丈夫か!?」

織斑君がラウラさんに駆け寄る

「……ッ!触るな!私はお前を許さない!お前は絶対に……!」

ラウラさんはそう言って外に出た

「ラウラさん!まだ授業が……行っちゃた……」

「あれは私が面倒をみる、みんなは授業を続けてくれ」

織斑先生がそう言ってラウラさんを追いかける

「と、とにかく!授業を始めますね!」

そう言ってなんとか授業に戻ることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霖之助、一緒に昼飯食わねぇか」

昼休み、僕たちは学園の屋上に来ていた

僕と一夏のほかには篠ノ之と鳳、オルコットにそしてデュノアの四人が来ていた

 

「あの、誘ってもらったのはうれしんだけど、僕がこの中に入ってよかったかな?」

「いいんじゃないかい?転校したばっかだし打ち解けるのも大事だろう?」

「箒!その唐揚げおいしそうね、私の酢豚と交換しない?」

「いいぞ鈴」

「おっ?箒と鈴も手作りか?」

「あぁ、朝に作ったんだ。最近は鈴に中華料理を教えてもらったりしてるぞ」

「私も和食を教えてもらってるわ、味噌汁って意外と奥深いわね、一夏も食べる?」

「箒も鈴も料理上手いからな、ありがとよ」

「一夏さん、わたくしのもお召し上がってくださいませんからしら」

そういってオルコットがサンドイッチを持ってくる、見た目は良い、そう見た目は

(こ、これは……)

「お、美味そうだな、いただきまーす」

「待て一……」

パクリ、一夏はサンドイッチを食べる

あぁ、一夏、君のことは忘れない

「ンッ゛」

「一夏、水」

「ゴクゴク……フゥー……ありがと霖之助……」

「どうでした?一夏さん」

危うく殺人現場になる所だが、そんなこと知らずかオルコットは感想を聞いてくる

「お、おう……よかった……ぞ」

「一夏、少しは抗議したらどうだい?」ヒソヒソ

「あんな目で見られたら言い出せないだろ」ヒソヒソ

「……君、これから苦労すると思うよ」ヒソヒソ

少なくともセシリアは今回の一件を失敗ではなく成功と思っている、つまり矯正されないという事だ

(まぁ、僕が食うわけじゃないし、良いか)

 

 

 

「そういえば今日のもう一人の転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒはなんで一夏君に詰め寄ったんだろ」

デュノアが食事を終えてそう切り出す

「あぁ、確かに。千冬先生を教官と呼んでたな」

「名前からしてドイツの人でしょうか?」

一夏はドイツで教官という単語を考え、思い当たる節があったのか顔を上げた

「アレかもしれない、第二回モンド・グロッソ」

「……なんでその話になるのよ……」

……?鳳は何か知っているのか?

 

「第二回モンド・グロッソ……優勝候補にして初代王者、織斑千冬が突如棄権してその後ドイツに従軍したと聞きました。ですが、それがなにか……」

「棄権した原因は……俺なんだ」

そこで聞いたのは、一夏がモンド・グロッソで誘拐され、その誘拐犯から一夏を取り戻すために織斑千冬はドイツの助力を得て、それによって織斑千冬が試合を棄権したという事だった

「なんだ、それは……」

篠ノ之は愕然としている、自分の知らなところで思い人が危険な目にあっていたんだ、気持ちは分かる

「俺が誘拐されなきゃ、千冬姉は優勝できたはずだったんだ、きっとアイツはそれが許せない」

「ですが!それを一夏さんに当たるのは筋違いの筈ですわ」

「そうだよ!一夏君は誘拐された被害者なんでしょ!?」

「そう思う人はたくさんいるのよ、女尊男卑に凝り固まった奴が千冬さんのことを神聖視してね。どこで聞きつけたのか『千冬様の未来を邪魔する男だ!』って言ってきて、胸糞悪い」

重い沈黙が流れ出す

 

「……ハイハイ!この話はおしまい、一夏もそういうやつのことよりも午後の授業の事気にしなさいったら」

そんな鳳の一言でこの昼休みは終わった




ザルバ「こいつはちょっと厄介なことになったな
    数々の思惑が交差して事態は加速する
    次回『共闘』
    ……悪意が忍び寄る」


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第六話 共闘

多分のほほんさんの一夏以外の呼び方は大体オリジナルです


「だからギューとして、ドドーンとやればいいんだ!」

「こうキュピーン!って感覚よ!時が見えればいいのよ」

「右腕を左に15度曲げて180度ターンですわ!」

「君ならできるよ(笑)ほら、しっかり(笑)」

「箒も鈴もセシリアも説明が分からねぇ!てか霖之助、テメー適当言ってるだろ!」

「アハハ……」

放課後、俺はアリーナで皆に教えられるながら特訓をしていた

「ところで霖之助、前の時のヤツに文句言いたいんだが、あとから知ってくっそ恥ずかしかったんだぞ」

「効果があったんだからいいじゃないか、それより君の動きは射撃への動き、つまりは避け方に問題はありそうだ、デュノア君、手を貸してくれないかい?」

「いいけど何をするの?」

「それはゴニョゴニョ」

「えぇ……大丈夫それ?」

「まぁ大丈夫だろう、最大限安全に気を付けるし」

ちなみに今霖之助が使ってるのは量産型のラファール・リヴァイヴだ

曰く「打鉄の方が性に合うがラファールの方が特訓に向いてるだろうしね」とかなんとか

「じゃあやろうか、こういうのは彼女たちの領分だが今回は特別だ」

「やるってなにを……」

 

瞬間

霖之助の機体は6本足になって4門のガトリング砲を携わった

 

「なにそれ」

「これはクアッド・ファランクス、ラファール・リヴァイヴ最大の攻撃力を誇る武装さ、僕の攻撃に合わせてくれよデュノア君」

「もう!一夏ごめんね?」

「ちょ……」

「見様見真似『弾幕STG』!」

 

4門のガトリング砲による銃撃の嵐が俺を襲う

「さぁ、一夏!これを5分間避けて一太刀入れたまえ!」

「無理無理無理無理ぃ!こんなの5分どころか1分も持つか!」

「ホラホラ僕の攻撃を避けるのもいいがデュノア君にも気を付けなよ?」

「え?」

見るとシャルロットが一際大きなミサイルを俺に向かって撃った

「うそぉ!?ガトリング四つでも避けるの無理なのに避けれるかぁ!」

「落ち着いてくれ一夏、弾幕をよく見るんだ!君のこれまでの動きと合わせれば問題点はおのずと分かるだろう?」

弾幕を……?

言われてよく見る

(……ん?)

四門のガトリングは俺に向かって撃ってるわけじゃなく上下左右への移動を遮る壁のように撃ち続けているのが分かった

その壁はどんどん狭まっていくように見える

そしてシャルロットのミサイルだが

(これは俺に向かってまっすぐ飛んでる……?)

つまりガトリングで動きを封じ、ミサイルを当てるのが霖之助たちの思惑だ

近づけば弾幕は濃くなり避けるのは困難、遠ざかればガトリングの密度は低くなり避けやすくなるかもしれない

だけど遠ざかれば攻撃できない

いや……違う

(これが問題点か!近距離型だからってただ近づくのはダメなんだ!)

白式は雪片一本しか武器が持たず必然的に近づかなきゃ攻撃することができない

その為に俺は攻撃するのに近づいていたがその動きは相手に向かって一直線に移動するだけだった

(だからここは一度距離をとる!)

距離を取りまた弾幕を見る

(上方向の弾幕の薄い?だったら!)

ミサイルをギリギリまでひきつけ、タイミングを読んでガトリングの弾を避けつつ上方向に上昇する

(いまだ!ここでイグニッション・ブーストを使って距離を詰め……)

その瞬間

___ガトリングの弾幕の中に青い突起物があることに気づいた

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うわぁ……」」

篠ノ之と鳳が同時にそんな感想を抱いた

「ハッハッハ、問題点は改善したがまだまだだね一夏、一つだけ避けやすそうな場所というのは警戒するべきだ」

「いや待てウェイト、なんでブルーティアーズがあそこにあるんだ」

「それはプライベートチャットで僕がオルコット君に頼んでおいたんだ」

「そのすみません一夏さん……」

そういってオルコットは頭を下げた

「いや今のは森近が全面的に悪いと思う」

「ほんといい性格してるわよねアンタ」

「失敬な僕は一言もデュノア君と僕の攻撃だけとは言ってないよ。まぁ大人げない自覚はある、お詫びに今度の昼食奢るで手を打たないかい?」

「Aランチ大盛な」

「あ、私ラーメンセット!」

「いや鳳君には奢る理由ないじゃないか」

「ちぇー、あと私の事鈴でいいわよ。私も霖之助って呼ぶし」

「おっ、折角だし皆名前で呼び合っていいじゃないか?」

「まぁ、一夏もそういってるし、私も箒でいいぞ」

「わたくしもセシリアでいいですわ」

「えっと僕もシャルロットでいいかな?デュノアで呼ばれるの少し苦手で……」

「そうかい?ならこれからはそうしよう」

 

そうやって談笑するなか

 

「織斑一夏!私と戦え!」

 

そんな声がアリーナに木霊した

 

 

 

 

 

 

「あれってドイツの専用機?」

「ロールアウトされた噂は本当なんだ!」

そんな野次馬の声を聴きながら先ほどの声の主を見る

(あいつがラウラ……)

ドイツの代表候補生であり、そして一夏へ恨みを持つ少女

「断る、俺はお前と戦わない」

「お前に無くても私にはある、貴様さえ居なければ教官は今頃……」

「ふざけないで」

ラウラの言葉に私は反応した

「私にある……?あんたが千冬さんをどう思ってるのか知らないけど一夏に当たるのは筋違いよ」

「それは……!?」

突然ラウラはうめき声をあげ蹲った

「……違う、そいつが弱いからだ、弱いのがいけないんだ!」

(……?なんだろ、この子……)

「消えろ!」

突然ラウラは肩のレールカノンで一夏を撃った

「おっと、それは看過できないね」

霖之助が闇照の待機形態である剣でその攻撃を受け止めた

「霖之助、すまん」

「いいさ、それとラウラ・ボーデヴィッヒ、そんなに一夏と戦いたいなら次の学年別個人トーナメントで戦えばいい。闇討ち同然の勝利で君の教官に誇れるのかい?」

「……良いだろう」

ラウラはISを解除してアリーナを去った

 

「学年別個人トーナメントか……セシリアや鈴にリベンジできる機会だな」

『それなんだがどうやら今年度の学年別個人トーナメントはタッグマッチらしいぜ?』

ふとセシリアと目が合った

(一夏さんと組むのは私ですわ)(あら、ここは幼馴染の私がやるべきでしょ?)(あら近距離型と遠距離型、私の方がISのバランスがいいですわ)(ちくわ大明神)(テスト段階のブルー・ティアーズよりも甲龍との方が安定するわよ)((というか誰だいまの))

そんなアイコンタクトで通じ合っていたところ

「なぁ、霖之助タッグ組まねぇか?」

まぁ、予想の範囲内である一夏ならそういうだろうと思ってたし

「それなんだが、僕は一夏と組むつもりはないよ」

「うん?なんでだ?」

「理由はいろいろあるが……一番は君とまともに戦う機会だからさ」

「あら意外ですわね。霖之助さんそういう戦うの嫌いそうですのに」

確かに私もそう思う、なんとなくだけど苦手っぽい

「確かに荒事は苦手だが、こういうときくらいはそういうのも悪くないと思ってね」

「へぇーじゃあ誰と組むかは決めてるのか?」

「いや?というより立場的に誰かを選ぶと面倒な事になりかねないしね」

『自分で決めないなら最終的に抽選になるらしいしな』

「うーむ、霖之助以外ならだれと組むか……」

「一夏、私と組みなさい!」「一夏さん、私と組みませんこと?」

時間がたてば一般の生徒もタッグトーナメントの概要をしる、そうなると競争率が高くなる

「鈴とセシリアか……俺的にはリベンジしたい相手だしなぁ……」

いつもなら一夏は大抵最初に誘った奴に即答で「いいぜ」とかいうのだが、珍しく歯切れが悪い

とはいえこういう男だという事は嫌と言うほど知っている、相手が女性だからとかそういう事と関係なく負けず嫌いな所は昔から変わらない

「トーナメントまで一週間、じっくり考えたらいいさ」

チャイムが鳴る、今日のアリーナでの特訓は終わりを告げる合図だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は一人放課後の剣道場で黙々と竹刀を振る、だが今の私の頭には素振りとは違った事を考えていた

(タッグトーナメント……一夏と一緒に出たい……だが専用機を持たない私を一夏は選んでくれるだろうか?専用機持ちなら鈴やセシリア、それにシャルロットも私よりも戦力となるはずだ)

三人の事を思い浮かぶ、鈴は私ほどではないが一夏との付き合いの長さによるコンビネーション、セシリアは遠距離型によるバランスのいい組み合わせ、シャルロットは柔軟なフットワークでの連携

恐らく誰と組んでも一夏は良い結果を残す

(それにまたあの無人機が来たら?)

あの時乱入した無人機が私が感じた通り私を狙っていたのなら

(私は誰とも組むべきではないかもしれない)

でも

(もしも一夏が他の誰かじゃなく、私を選んだのなら、私を選んでくれたのなら)

「うれしいな……」

ポツリと出た独り言に気づいて私は我に返った

「いかんいかん、素振りの時に雑念など、これでは篠ノ之流の名折れだ」

そう思い気分転換に剣道場を出ようとしたとき外が騒がしくなっていることに気づいた

「どうしたんだ?」

外に出るとクラスメイトの布仏本音と目が合った

いつもはのほほんとした少女だが今の彼女は荒立ててる様子で何か嫌な予感を感じてしまう

「あ、しののん!?大変なのリンリンとセッシーが!」

 

 

 

保健室の一室を走る

息を切らし無我夢中に

目的の場所の扉を開けて中を見る

「大丈夫なのか!?鈴、セシリア!」

そこには怪我によってベットに寝ている鈴とセシリアの姿だった

「イタタ、箒少し静かにできない?」

「す、すまない、でも大丈夫なのか鈴!」

「どうってことないわよこんな怪我……っ!?」

「安静にしておくんだね鈴、ISの機体維持警告域(レッドゾーン)を超えた状態でダメージを受けたんだセシリアのように救命領域対応による昏睡化してないだけ奇跡みたいなものだ」

霖之助が横から鈴に忠告してくる

「霖之助、鈴たちは何でこのような怪我を」

「発端は不明だがラウラ・ボーデヴィッヒと鈴とセシリアが戦った結果だ、戦闘不能後もラウラ・ボーデヴィッヒが攻撃を加えたところを一夏が止めに行ったんだ」

「発端なんて些細な物よ、ただ一夏の事を何も知らないくせに一夏を馬鹿にしたことが許せなかっただけ」

一夏がうつむいてる、一夏はおそらく自分の名誉の為に鈴とセシリアが傷ついたのが許せないのだろう

『保険医の話によると全治は一週間、トーナメントには参加は無理となるだろうってさ』

「そんなことないわよ、こんな怪我一日で治すから!だから一夏は気にしない!」

「だけど……鈴がそうなったのは……」

友達が傷ついて、それが自分のための行動で、その傷つけた相手の目的が自分だと

一夏は自分のせいだといいたげな顔をしているのを見て

もしも、私が一夏と同じ立場なら同じ顔をしていただろうなと感じていた

「……ハァ……自分が悪いって思ってるなら一夏、次のトーナメントで箒と二人でラウラに敵討ちしなさいよ」

「え?」

「あんたたち、まだパートナー決まってないんでしょ?ちょうどいいじゃない?」

「……いいのか?」

それは何に対しての問いなのか私自身にも分からなかった

「えぇ、よくよく考えたら一日で怪我直しても千冬さんは絶対参加を認めないだろうし、それに……」

鈴が少し逡巡した後口を開いた

「あんたは私の友達なんだから、そんな顔しないの」

「鈴……」

「その代わり、負けたら承知しないんだから!」

鈴が手を差し出す

「……あぁ!」

私はためいらなくその手をつかんだ

 

 

 

保健室を出た私は一夏をまっすぐ見つめた

「一夏、頼む一緒に戦ってくれ!」

そこに先ほどの剣道場で思案した雑念はなかった

ただ単純に友達の為の思いが私の胸を満たしていた

「箒……わかった。一緒に戦おうぜ!」

トーナメントまであと6日間、私と一夏の特訓が始まった

「特訓に手伝わせて悪いなシャル」

「いいよ、二人とも真剣なんだもん、絶対勝ってよね」

「「あぁ!」」

そしてトーナメント当日がやってきた

 

「箒、大丈夫か」

「あぁ、大丈夫だ」

ラウラとの決戦が近くなる

「俺たちはラウラと戦うわけだが」

「ラウラにもパートナーがいるはずだ、いったい誰に……」

電光掲示板にトーナメント表が表示される

「……え?」

「……嘘だろ?」

そこにあったラウラのパートナーを見て絶句した

【ラウラ・ボーデヴィッヒ&森近霖之助】

表示されたのはそんな表だった

 

「……さすがに今日は僕の不運を呪うよ」

『冷静に考えれば抽選になればこの結果になる可能性があるのがわかるだろうに、肝心なところで疎かになるなお前は』

「全くだね、彼女の態度で特定のパートナーが決まるはずがなかったよ、まぁでも……」

「直接対決は()()()なのはまだマシと言えるだろうね」




ザルバ「ドス黒い悪意が学園をめぐる
    少女を蝕む毒が徐々に牙をむく
    次回『暗躍』
    そして静かに状況が悪化する」


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第七話 暗躍

長くなったので次回予告変えました
投稿が遅くなったのはGジェネと風邪のせいです


「一夏、対戦表は見たかい?」

「ああ、よりにもよってお前とラウラが組むのか……」

僕と一夏が話し合ってたところにラウラがやってくる

「貴様、織斑一夏と友情ごっこでもして3対1にでもする気か?」

「まさか、やるからには全力で戦うさ、とはいえ専用機は使用禁止を受けてね、打鉄に乗るのは許してくれよ」

「ふん……」

ラウラは興味もなくこの場を去った

「だがまずは一回戦だぞ一夏、ここで勝たねば戦うこともできんのだからな」

ちなみに僕たちはシード枠……というより不参加になったセシリア・鈴ペアと対決なので不戦勝扱いである

緑川(みどりかわ) 切絵(きりえ)紫山 調之(しやま しらゆき)……?知らない名だな」

「たしか3組の子じゃないかい?」

「そうですよ」

そう言いながら近づいたのはどこか幼さを感じる二人の少女だ

「世界初の男性操縦者と戦えるなんて光栄です。私は切絵、緑川 切絵です」

「私が紫山 調之……」

「今日は全力を出し切って戦うですよ!」

「あぁこちらこそ」

【まもなく第一試合を始めます。出場選手はピットに待機してください】

「時間ですね、行きましょう調之」

「ん……わかったよきりちゃん」

「俺たちも行こうぜ箒」

「あぁ」

そういって四人はアリーナのピットに向かった

「ふむ……」

『何か気になるのか?』

「あぁ、ラウラについてね」

『ほう?』

「彼女が向かった先は鈴とセシリアがいる保健室……後を付けた方がいいだろ?」

 

廊下を歩きながらモニターで第一試合の様子を見る、切絵と調之という少女たちはどちらもラファール・リヴァイヴに乗っているようだ

「きりちゃん、おねがい」

「任せろです!」

ラファール同士の弾幕が一夏と箒を襲う

ラファールは武器種の多さが特徴だが彼女たちは動きやすく取り回しの良いサブマシンガンやハンドガンによる撹乱しながらの波状攻撃を主としている

「あの子たち、なかなかコンビネーションが良いね」

『その分単体の動きはぎこちない。個々の熟練度で言えば一夏と箒の方が分があるだろう』

「なによりあの弾幕の戦法は僕がラファールに乗って弾幕STGと同じ要領だ、一度見た戦術は一夏ならなんとかするだろうしね……っと、付いたようだね」

保健室から見えない角で伺う、ラウラは保健室の前で立ったままジッとしていた

「……」

(あの感じ、追い打ちに来た……という訳ではないようだ)

むしろ逆、謝りに来た……と見える

「ふむ……」

我ながららしくない行動だとは思う、だが考えるより先に行動に出てしまった

「謝りたいなら入ればいい」

「!?後をついてきたのか」

「少々君が気になってね、どうしたんだい?その様子だと鈴たちを追い打ちに来たのではないだろう?」

「……ただ気になっただけだ」

「ほう?」

「なぜあの時私に憐れみを見せたのかそれが気になっただけだ」

「憐れみ?」

鈴がなぜラウラに憐れみをみせたのだろうか

「あの時私は奴らを挑発した『織斑一夏は弱者だ、強者足り得ぬ弱者をなぜ慕う』とな、そうしたら奴……中国の代表候補生はこう言ったのだ」

【アンタ……千冬さんを強者だから慕ってるの?だとしたら可哀想ね、アンタ千冬さんの事を何も見てないんだから】

鈴はそういったようだ、その言葉に乗せられラウラと鈴たちは戦ったらしい

「私にはわからん、教官殿はこの世で最強の強者だ、それを慕うのが当然のはずなのにどうしてアイツは私を憐れんだのだ」

少しの沈黙の後僕は大笑いした

「なぜ笑う!?」

「すまない、少し鈴の事を侮っていただけさ」

あの子は意外と本質を見ているようだ、なるほどそう来たか

「君は強者になりたいのかい?」

「そうだ、人は強者でなければならない、そして弱者は蔑まれ排他される」

なるほど、彼女はおそらくそういう経験があったのだろう、出来損ないと言われて蔑まれてきたそしてそれが彼女のゆがみとなった原因だ

「君は織斑千冬をどういう存在だと思う?」

「愚問だな、教官殿はこの世で一番の存在だ」

「そうか、では()()()()()()()()()()()()はどういう存在だい?」

「それは……」

ラウラは言い淀んだ、それもそのはず、彼女の中には織斑千冬がどう思いどう考えるか、その部分が欠けている。故に彼女は千冬(きょうしゃ)に足り得ない

「君にとって織斑千冬は強者(なりたいもの)だ、だが君は織斑千冬を知らない、知らないものにはなれない、なれるはずがない」

「き、貴様はどうなんだ!貴様は教官殿の何がわかる!?」

「ん?わからないよ、だけど僕は森近霖之助だ、織斑千冬じゃない、だからわからなくていいのさ」

「な……」

「君だってそうだろう?君はラウラだ、織斑千冬じゃない」

一瞬の沈黙の後にモニターに放送が流れる

【第一試合決着!勝者は織斑一夏君と篠ノ之箒さんです!】

どうやら一夏たちは勝ったらしい、他の試合が終わった後僕とラウラが彼らと戦うことになった

「あぁ……やっとみつけましたよ」

恰幅の良い男がこちらにやってくる、IS学園に男性は少なく尚且つ面識がないためラウラの関係者だと思われる

「……シロヒか」

「えぇ、ISの調整に来ましてね……っとあなたは確か世界で二番目の男性操縦者、森近____なんたらでしたっけ?」

「霖之助です、ラウラとはタッグですね」

「これはこれは私はゲイリー、ゲイリー・シロヒと言うものです失礼ですがISの専用機は国家機密、少し席を外してもらっても?」

「あぁ、ちょうど一夏が勝ったところだからね祝いの言葉でも言いに行くよ」

踵を返しアリーナのピットに向かう

「ラウラ、また第二試合で会おう」

「……あぁ、また」

そういったラウラは少し柔らかい顔で別れを告げた

 

 

 

 

 

 

森近霖之助と別れた後私は専用機用の整備室に向かった

「私は教官じゃない……か」

なぜだろう、不思議と嫌な気持ちではなかった

「変わりましたなぁ、先ほどの男のおかげですか」

「……かもしれんな」

「そうですか、それは良かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかげでわざわざ用意しておいたシステムが無駄にならずにすみましたよ」

「……?シロヒなにを____っぐぁ!」

頭が痛い

痛い

イタイ

「いやなに、うちのクライアントさんきっての頼みでね、あんたに新VTシステム【グンナル】のテストしてほしいってさ、そしたら丁度使用機会が来たっての、こいつは僥倖だったぜ」

イタイ

ナゼイタイ

「通常のVTはあんたの規定の感情の高ぶりが一定値を超えりゃ発動するシステムであり、かの高尚なお方ブリュンヒルデと謳われた織斑千冬の動きをトレースする、しかしこの新型VTはその先、()()()()()()()()()()()()()()()()()つまりはあんたの思考を操作するってわけだ」

ナゼイタイ

ソウダ、アイツノセイダ

「そうそう、そういう表情してる方が似合ってるぜ、被検体R-0013よぉ」

_____

____

___

__

_

ターゲット<オリムラ・イチカ>ノハイジョヲモクテキトスル

「さぁあんたの大事な教官殿を汚した憎き男を排除する聖戦……やってくれますね?」

「……無論だ」

ワタシハ、ソノタメニココニイル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「____あぁ……機嫌取りも楽じゃねぇな」

一人の男がぼやくと二人の少女が近づいてきた

「……その様子だとまたろくでもない事をやってたですね」

「お?どうだったよ、まぁ負けたんだったか」

「……アレに乗ってたら勝ってた」

「贅沢なしですよ、今アレを使うのはミッションに支障がでるです」

「ま、今回の所はこのくらいで、あんたらは次のお祭りを見学でもしてるんだな」

コツコツと男が消えていく

「……私アイツ嫌い」

「我慢するですよ、私たちの目的のためにはああいう男も利用するしかないです」

「わかってるよ。きりちゃん」

「……私たちから全てを奪った元凶に復讐するためにも今は雌伏の時です」




ザルバ「一人一人がもつ譲れない思い
    それは時にとても厄介な物に変わるものさ
    次回『暴走』
    心が滅びる時、白は黒に染まる」


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第八話 暴走

前回までの書き方だと戦闘描写が厳しかったので、文章の型式をなるべく変えました
あと○○sideみたいな書き方もやめました


時間は少し遡りアリーナで一夏たちと切絵たちが戦いを見てみよう

切絵たちは両方ともラファール、つまりは白式に苦手な遠距離戦に分がある万能機だ

対する一夏と箒は白式と打鉄、両方とも接近戦を得意とする機体だ

勝負は常に距離を置いてる切絵たちに分があった

「くっ!近づけねぇ!」

「焦るな一夏!焦りは勝機を見落とす!」

「調之!ごーとぅでるです!」

「きりちゃん、それをいうならゴートゥヘルだよ」

弐機のラファールは同じ機体という事もありその連携は見事である、片方が威嚇射撃を行う傍らもう片方は本命の一撃を与えるなど動きに迷いがない

ジリ貧と言える状況で一夏と箒は窮地に立たれた

 

「調之ちゃんに切絵ちゃん、チームプレーだけなら一年生でもトップですね」

観戦室で山田真耶と織斑千冬が戦闘の評価をしている、これもこの対抗トーナメントで必要な業務でもある

「あぁ、だが機体性能と乗り手の腕前は織斑たちに分がある」

比較対象が専用機持ちの代表候補生のため下に見られるが一夏も箒も腕前は悪くない、箒は専用機持ち以外ならばトップレベルの腕前だし一夏は短期間で上級スキルをマスターしている(座学の方はからっきしだが)

「スタンドか、チームかですか勝敗を決めるのはどっちでしょう」

「それはもちろんチームだ、それを学ばせる意味合いでも今回はタッグマッチにしたんだからな」

「では織斑先生は調之ちゃんたちが勝つと?」

そう聞いた真耶だが千冬が少し意地悪そうな顔をしていることに気づいた

「いや?そうとは限らんぞ?見てみろ」

 

「箒!エネルギーの残量は大丈夫か!?」

「あぁ、まだ大丈夫だそっちは?」

「少し減ってきた、やべぇな。零落白夜を使うエネルギーがなくなりゃジリ貧だ。せめて箒にも零落白夜がありゃ……」

そこで少し一夏は思案して

「うし!箒!あとは頼んだ!」

「一夏!?」

一夏はそういうと弾幕に向かって瞬時加速(イグニッション・ブースト)を行った

「やぶれかぶれです!?」

「無駄……このまま弾幕で落とす」

弾幕のダメージそして瞬時加速の消費で白式のエネルギーはレッドアラートになる

だが、たしかに距離を縮めることに成功した

「よし!いまだ!」

一夏は零落白夜を纏った雪片弐型を振り上げる

「調之!」

「わかってる」

それを確認してすぐに回避行動にでる二人

(大丈夫、零落白夜は当たれば怖いけどそれに注意すれば避けれる、エネルギー残量からして撃てて一撃、避ければ勝ち!)

振り上げた雪片弐型を二人に振り下ろ____

「なんてな」

さずに振り上げた勢いでそのまま後方に投げ捨てた

「「なっ!?」」

「言っただろ。『あとは頼んだ』ってな」

「あぁ、確かに頼まれた!」

投げ捨てた後方から一夏を飛び超えるように箒が飛び立ち()()()()()()()()()()の雪片弐型を手にとる

超火力の白式は常に警戒をしなければならない、さらに打鉄は防御よりの機体であり火力に関してはラファールに分がある、故に無傷の状態なら打鉄の攻撃でエネルギーが0になることはない

故に零落白夜を起動したとき否が応でも篠ノ之箒の存在は意識の外にでた

「くっ!?シュルシャ……」

「調之ダメです!今は!」

反応ができたあたり彼女たち二人も優秀ではある

だが一瞬の隙は最大級の一撃を当てる事は容易かった

「篠ノ之流の壱の型!風の太刀!」

ISでの最大火力と言って等しい一撃は無傷のラファール二機を容易く落とすこととなった

 

【第一試合決着!勝者は織斑一夏君と篠ノ之箒さんです!】

決着のアナウンスが鳴り響く

「負けたでーす……」

「ナイスプレイだったぜ二人とも」

一夏たちが切絵たちに駆け寄る

「そっちこそ最後のプレー……あの連携はいつ打ち合わせしたの?」

「打ち合せなんかしてないぜ?俺は思いついてすぐにまっすぐ飛んだだけだし?」

「「えぇ……」」

「練習の時にさ、武器のロック外せば他の人にも使えるって聞いてよ、だから残りのエネルギーを全部与えた零落白夜を纏ったまま箒に渡せば少しの間そのまま使えるんじゃないかと思ってな」

「だからって相談もなしに……私に伝わるかどうかわからないだろ?」

「だがちゃんと伝わっただろ?」

「あ、当たり前だ!お前が『頼む』といったんだ。必ず応えるに決まってるだろ!」

「……」

「調之?」

「なんでもないよきりちゃん……んっ」

調之が箒に手を差し出した

「ん?」

「握手」

「あぁ、わかった」

二人が手を握り合った瞬間歓声が会場を包んだ

 

「あはは……すっごい無茶苦茶なチームプレーでしたね」

「もはやチームプレーではないな、スタンドプレーから生じるチームワークだ」

呆れながらもどこか嬉しそうな顔である

「織斑先生も一夏君が勝って嬉しそうですね……」

ふと出入口の監視カメラの映像を見る

「……」

見ると恰幅の良い男が退出しているのを目撃した

「山田先生?どうしたんですか?」

「え……あ!?いえこの監視カメラに写った人が気になって」

「む?こんな時間に退出だと?確かに気にはなるな」

「データベースで照合しますか?」

「あぁ頼む」

「はい……」

 

 

【今の試合で第一ラウンドの試合は終了です!お次は今大会メインイベント!二人の男性操縦者の戦いである第二ランウド第一試合だぁ!】

アナウンサーの熱がいつにもなく高い、否が応でもこの試合が今大会の目玉と言えるのは確かであるが

「ラウラ、少し良いか」

アリーナのピットで霖之助がラウラに近寄る

「……黙れ、私に話しかけるな」

「取り付く島もない……僕と別れてた後何かあったのかい?」

「黙れと言っている!」

そう言い残しラウラは先にピットから出撃した

『やれやれこいつは困ったことになったな』

「あの様子だと洗脳か二重人格か……どちらにしても先ほど会話した子とは思えないね」

『とはいえ今の段階じゃどうすることもできない、とにかくあいつと一夏との衝突だけは避ける事を考えるべきだろうな』

方針が決まったところで打鉄に乗り込みアリーナに向かって出撃する

アリーナに来ると一夏と箒はすでに準備を終えて待機していた

「霖之助……手加減はなしだぜ?」

「あぁ、全力で行こう」

「貴様は私が倒す……絶対に!」

「……なんだこの感覚は?」

【一つ目のグループは織斑一夏と篠ノ之箒!そしてもう一つは森近霖之助とラウラ・ボーデヴィッヒだぁ!男と男の熱き戦い!やがて夕日の海岸で友情を高めいつしかそれは愛となるぅ!】

先ほどのアナウンサーのテンションはさらに上がっていた……いやさすがにテンション高すぎないか?このままだと文章にできないようなテンションになるぞ、そもそも夕日でも海岸でもない

【この試合決して見逃……あぁ!ちょっとマイク取らないでぇ!?】

案の定止められたようだ

【えぇ~……とにかく!第二ラウンド第一試合開始です!】

締まらない展開でこの戦いは始まった

 

 

「いくぜ霖之助!箒!」

「あぁ!」

「僕から狙うかい?道理だね」

ラウラの機体、シュヴァルツェア・レーゲンにはAIC___アクティブ・イナーシャル・キャンセラーによって1体1での戦いは自殺行為だ

「だがそう簡単にやられる僕ではないさ」

一夏の刃を霖之助は持ち前の剣で弾き、二の太刀の箒の突きを躱し刀身を踏む

「なっ!?」

「まずは君を先に倒す」

打鉄の装備であるアサルトライフル『焔備』を構え箒に照準をあわせる

「邪魔だぁぁぁぁ!」

「うお!?」

突如霖之助は後ろからワイヤーに絡まれ上空に投げ出される

(ラウラか!?随分と荒っぽい!)

霖之助はなんとか体制を整えたが

「ここだぁ!」

「一夏!?」

霖之助に零落白夜が当たる

「くぅ!」

「このまま攻め切る!」

「させはしない!」

霖之助はあえて焔備で零落白夜を受け止める、中に火薬があることもあって小規模な爆発がおこった

「なにぃ!?」

白煙の中一夏は全神経をハイパーセンサーに集中した

「……っ!そこっ!」

背後から来る霖之助の一撃と返しの一撃が交差する

≪エネルギー残量0≫

「負けた……ようだね」

「よし!早く箒の加勢に……!?」

箒とラウラを見るとI()S()()()()()()()()をレールカノンで撃たんとするラウラの姿を見た

 

 

時間を遡りラウラが霖之助を飛ばした時……

「ラウラ!?あいつ仲間を!?」

「一夏!霖之助を頼む!」

「だけど1対1じゃ箒が!」

「この好機は逃せん!ラウラ相手なら白式よりも打鉄の方がまだ有利だ!」

「……わかった!耐えてくれよ!」

「織斑一夏ぁ!!貴様は私があああぁ!」

「くっ!一夏の所には行かせない!」

ラウラに立ちはだかるように立つ

「そこをどけえぇぇ!」

ラウラのISは両腕手首から出現するプラズマ手刀を構えこちらに迫りくる

咄嗟に剣を構え互いの武器が接触した瞬間

 

 

暗い、暗い空間に私は居た

 

「……ここは?」

暗い空間に何かが光る

「あれは……」

___ラウラのIS?

そう感じた瞬間、そのISに抱かれているラウラを見た気がした

そして見ればここが暗い理由が分かった

周囲にが蠢いている何かが囲んでいるのだ

それは誰かの悪意

そして身勝手な欲望

それらがISを、そしてラウラを飲み込んでいく

「……!誰だ!誰がラウラたちをこんな目に!」

突如意識が覚醒する

ラウラと私、互いに先ほどの感覚があるのだろう見ればラウラも困惑の表情だ

「……なんだ今の感覚は!貴様の仕業か!」

ラウラがこちらに敵意を向ける、それに対してこちらは先ほどの光景の見た矢先ラウラへの動きを一瞬鈍らせた

「がっ!?」

私は地面に倒れこむところをなんとか立て直した

いや()()()()()()

ラウラはAICによってこちらを固定したのだ

「ラウラ……目を覚ませ……」

ラウラがプラズマ手刀を私を刺した

「黙れ!ダマレ!だまれ!」

何度も、何度も、何度も、何度も

「ねぇ……あれやばいんじゃ……」

観客の誰かがそう呟いた瞬間、私のISはレッドゾーンに入り強制解除された

「消えろ!キエロ!きえろ!」

ラウラは肩のレールカノンをこちらに向ける

その銃口に光の収束が始まった

 

「織斑先生!」

「わかってる!ラウラ!今すぐ止めろ!周りの教員は今すぐ止めに……」

___なんだアレは?

「織斑先生?」

この前からありえない現象が続いていただが今回は

「アレはまさか!?」

織斑一夏に変化が起きていた

 

『まずいぞ!あのままじゃ箒が危険だ!』

___なんだって?

脳裏に浮かんだのは保健室に居る鈴とセシリアの姿だ

あの時と同じ光景が目の前に繰り広げられている

いや、それだけじゃない

ISが強制解除された今の状態で

あのレールカノンを喰らったらどうなる?

 

 

 

箒が死ぬ?

ほうきがしぬ?

ほうき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

error:20090531

深刻なエラーを確認

マスターの精神状況___劣悪

白式から操作権を奪取___完了

白式からの操作権の返却命令___拒否

レイを起動します

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏……?」

「■■■■■ーーー!」

突如白式が黒く変色していく

「一夏君のISが!?」

「黒くなってる!」

「どういうこと!?」

観客がざわめく

「なんだ……これは……」

『俺にも分からん、あれはいったい……』

「___■■■」

完全に白式が黒く変化した瞬間

白式は突然姿を消えラウラを殴り飛ばした




ザルバ「闇に落ちる白き翼
取り戻すは金色の光と赤き願い!
次回『一夏』
決してあきらめるな!」


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第九話 一夏

遠目に見えていたはずの織斑一夏が突然目の前に現れ攻撃してきた

「くっ!?なんだこのスピードは!?」

あまりの速さにこちらの対応が遅れる

「___■■■!」

こちらに飛び掛かってくる先ほどと違い黒くなったISを纏う織斑一夏

「舐めるな!」

応戦するため停止結界___AICを起動するが

「チィッ!速すぎてAICが追い付かない!?」

AICの弱点、つまりは強く相手を意識する関係上発動のタイムラグが生じる

普段なら特に気にならタイムラグだが、今はその弱点を突かれている

「______■■■■!」

人の言語とは思えない咆哮でこちらを狙う織斑一夏

(くそ、なんだこれは!!なんなのだ一体!!!)

想像しなかった劣勢のまま、刻々と時間が過ぎて行くままであった

 

 

 

≪聞こえるか森近≫

通信で聞こえたのは厳格だがどこか焦りを見せた声だった

「織斑先生?一夏のアレは一体……」

≪わからん、だが可能性は一つある、しかし……その可能性はありえないはずなんだ≫

「それは?」

亜種形態移行(オルタナティブ・シフト)……二つのISコアによる拒絶反応による暴走形態、その現象に酷似している≫

「何?」

二つのISコア?それはおかしいじゃないか?

「待ってくれ。白式に二つのISコアはないはずだろう?」

≪あぁ、だがそれ以外説明がつかん。かつてISの実験においてデュアルコアシステムは研究されていたがISコアの人格データ同士の衝突と搭乗者のバイタルが不安定になった瞬間暴走する事件があった、それ以来ISにはコアを二つ以上使う事は禁じられいる≫

「一つだけ聞かせてくれ、アレは止まるのかい?」

≪エネルギーが0になれば止まるはずだ、だがISコア二つ分のエネルギーが存在する以上その内部エネルギーも莫大だと思われる≫

そうやって一夏を止める手立てを考えていた瞬間

「ふ、フハハハ!捕まえたぞ織斑一夏!」

見れば翻弄されていたラウラがわざと攻撃を受け、その間に無理やりAICの効果範囲に押しとどめていた

「これで終わりだ!」

肩のレールカノンを一夏に照準を合わせる

「_______■■■」

先ほどまでの咆哮と違う何かを唱えるような声が一夏から聞こえた瞬間

「___え?」

一夏は姿を消した

「な!?どこに……!?」

消えた一夏を探そうとするがその隙にラウラの背後から一夏の蹴りが迫る

「馬鹿な!?停止結界中に動けるはずが!?」

普通なら物体の動きを止めるAICを受けて動けるはずがない

ならばあれは、動かずに動く行動手段____

「あれはまさか……単距離ワープなのか!?」

「____■■■■■!」

「ガハッ!」

一夏がラウラを吹っ飛ばす、ダメージ量が限界に近いのかラウラのISはボロボロだ

「___■■■」

ボロボロのラウラに追い打ちをかけるかのようにストンピングを仕掛ける

___普段の一夏ならやらない行為だ

「ぐぅぅぅぅあぁぁぁぁ!」

ラウラが苦しみだすと同時にラウラのISが溶け出すかのように形状を変え……

「_____ダメだ!」

今まで人の言語でなかった咆哮だった一夏の言葉が鮮明に聞こえた気がした

そして形状を完全に変える前にラウラのISからISコアを引きはがし投げ捨てた

「_____?私は一体……」

(今のは……ラウラの精神操作の元凶か?ならば今のラウラと一夏に戦う理由は……)

「!?___■■■!」

悶えたような一夏が地面に刺さった雪片弐型を手にしラウラに迫る

(まずい!今のラウラに雪片で斬られたら……)

迷う暇はない

「来い!闇照!」

僕は漆黒の鎧を見に纏い一夏とラウラの間に立ちはだかった

「え、森近!?」

「ラウラ、君は早く避難してくれ、彼は僕が食い止める」

対峙している一夏を見つめる

「今の君は力に飲み込まれている、目を覚ますんだ!」

「■■■■!」

≪マスター、織斑一夏の白式は暴走状態です、このまま戦いますか?≫

「いや、あれが道具によって引き起こされた現象ならば、僕がそれを取り除く」

前に言った裏技を使うときが来た

「闇照、君にIS教本の用途を()()()()、操縦を変わってくれるかい?」

≪了解、マスター≫

僕の能力「道具の名称と用途が分かる程度の能力」はもう一つの側面がある

それは道具から用途を抽出し、他の道具に溶かすことができる能力だ

例えばマイナスイオンを発生するという用途を持つ空気洗浄機はその用途を抽出しミニ八卦炉に溶かしたりできる

今僕はISの教本の用途である「ISを上手く操縦できるようになる」という用途をISそのものに溶かした

これによりISがIS独自に上手く操縦する事ができるようになる、自分は何もせずとも操縦してくれて楽ができるようになる僕だけができる裏技だ

『何をするつもりだ森近?』

「今から白式の道具の世界に侵入する、そこで原因を突き止める」

そうこれは僕にしかできないことだ

操縦が変わり闇照の動きが変わる

「______■■■!」

闇照に反応する一夏

≪攻撃パターンを予測、先ほどの戦闘データの分析から有効な戦術を選択≫

一夏の反撃を闇照が自動的に回避する

≪ターゲットを中央に固定…≫

闇照はマフラー型の多節鞭『ディバインフレイム』で一夏を拘束する

≪円の動きで追いつめる≫

そのまま円を描く動きでディバインフレイムで縛り

≪単距離ワープを行わせる前に一点突破をしかける≫

縛られた一夏が暴れだすがその前に闇照が接近し終える

≪今ですマスター≫

「でかしたよ闇照」

一夏に手を伸ばす

「さぁ、白式……君と対話しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____白い/黒い空間だ

そんな矛盾する感覚が浮かぶ

「おかしい、なんだこの記憶は」

今まで道具の記憶をたどってもこんな感覚は初めてだった

_____虚無/怒り/悲しみが混ざる

「これは……複数の記憶が混在している?」

瞬間、先ほどと違い鮮明な空間に出る

『こいつが■■■■なんだな?』

二人の女性が子供を見ている

『えぇ……■■■■に気づかれる前に早く済ませましょう』

気を失っているのか眠っている子供に見覚えがあった

「……一夏なのか?」

ならばこれはモンドグロッソの誘拐時の記憶なのか?

……いやおかしい、そんな筈はない

僕は白式の記憶をたどった筈だ、白式から一夏の記憶が見えるはずがない

『これ以上入り込むな!』

「!?」

誰かからの声を聴いた瞬間また別の空間に出る

_____先ほどと変わり澄み渡る青空の空間だった

湖には二人の少女と眠っている一夏が居た

一人は白いワンピースを着てもう一人の子を止めようとしていた

そしてもう一人黒いドレスを着て怒りに顔を歪ませていた

『邪魔をするな白式!』

『一夏はそんなの望んでない!森近さん!レイを止めて!』

レイと呼ばれた少女は白式と呼ばれた少女を突き飛ばしこちらをにらんだ

『貴様も!ラウラも!一夏を傷つける者はすべて敵だ!』

青空だった空間がヒビ割れ黒く染まりだす

ひび割れた亀裂に気を失っている一夏と僕が落ちていく

「一夏!」

無意識に手を伸ばした瞬間急激に元の世界に戻る感覚に陥った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「____今のは……!?」

意識を覚醒させ周りを見た時一夏に異変が起こる

「______■■■■!!!!!!」

雪片を天に掲げ咆哮する

零落白夜……ISの最大の攻撃手段であるそれは普段行われているリミッターをも解除した状態で起動された

アリーナをも覆い潰すような巨大な剣のようにエネルギーを放出し振り下ろされる

(まずい……!まだアリーナには避難していない観客が大勢いる!アレがそのまま振り下ろされたら被害が!)

考えてる暇はなかった

「闇照!ゴールドストームだ!ザルバ!闇照とコアをリンクしてくれ!」

≪了解≫

『わかったぜ!』

漆黒の鎧から金色の鎧に姿を変える

(ゴールドストームはいわば纏う零落白夜!こちらもリミッターを解除しぶつかり合う事でエネルギーの対消滅による相殺するしかない!)

I()S()()()()()()()()()()()()()()()()()

「_____■■■!」

巨大な振り下ろされる漆黒の一撃に金色の剣がぶつかる!

「ぐぅぅぅぅ!?」

地面に足がめり込む

≪ゴールドストーム限界時間残り60秒≫

(まだか!?あれほどのエネルギーだ、耐えれば停止するはずだ!)

≪残り30秒≫

「うぉぉぉぉぉぉ!」

制限時間が刻一刻と過ぎて行く

≪残り10秒……9、8、7、6、5、4、3、2……≫

残り僅かな瞬間、先ほどまで感じた力を感じなくなった

≪1、0……ゴールドストーム活動限界です≫

金色の鎧が漆黒に戻る

「ハァ……ハァ……終わったのか?」

一夏を見れば黒い白式が静止していた

「______■■■!」

だが再び動き出し雪片を掲げ零落白夜を起動する

(なっ……!?馬鹿な、あれほどのエネルギーを何処から!?いやそれよりももう耐えられる手段がない!?)

そのまま振り下ろそうとしたその時

「一夏ぁ!やめてぇ!」

ラウラにやられ気絶していた箒が一夏を止めた

「________ほ、う、き」

黒い白式が元の姿に戻り一夏が倒れる

___アリーナ全体に思い沈黙が流れる

『観客の皆様にお知らせします。ただいまトラブルにより大会を一時中断とさせていただきます、職員の指示に従ってください、繰り返します……』

僕はそんなアリーナ内の放送を聞きながら意識を手放した




ザルバ「戦いが終われば安息は訪れる
    今はただこの静寂に身をゆだねよう
    次回『安息』
    いつかはそれも終わってしまう」


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第十話 安息

___白い空間だった

先ほどの白式の中で見た空間と似た世界だ

この空間に僕は見覚えがある

「これは過去の記憶か」

走馬灯か何かか、随分と縁起の悪い夢だ

だが最後に見る夢がこれなら悪くないのかもしれない

「____優しいんですね」

少女が僕に語り掛けている

「僕がかい?」

「はい、こうやって毎日私に話を聞かせてくれます。外を知らない私に外のことを教えてくれて、そういうのを優しいって言うのでしょう?」

「……僕が居るところなんて本当の外に比べたら狭い所さ」

それはこうやってIS学園に来た今でもそう思う

「それでも私にとってはすごく広い世界です、私は外に出ることが許されないから……私が外に出ることは世界にとって良くないことだから」

「君は僕を優しいというけど、君の方が随分と優しい性格だと思うよ、■■とは思えないほどさ」

「私はその自覚はないんですけどね」

そういって少女は苦笑して

「……お話また聞かせてくださいね」

それは出来ない約束だった

「あぁ、また明日来るさ」

____明日が彼女の____

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは?」

「ここは保健室だよ、どうやら気が付いたようだね?」

声のした方を見ると椅子に腰かけ本を読んでいる霖之助の姿が見えた

(なんだ?さっきの夢は?)

何か自分以外の人の夢だった気がする

「俺は確か……」

おぼろげな記憶をたどる

「端的に言うとISが暴走して暴れていたね、君は」

「あぁ……っ!?そうだ、箒とラウラは!?」

「箒君なら君の隣にいるだろう?」

ベットの横を見るとずっと看病し続けてくれいたのかベットを枕に眠っていた

「んっ……一夏!?」

飛び上がり俺を見つめる

「ほ、箒?」

「よかった……無事で……」

安堵したように微笑む

「あ、あぁ……」

「それとラウラ君なら、ホラあっちの方に」

そういって扉の方を見る

そこには扉を盾のようにして覗いているラウラの姿だった

「!?」

目が合ったとたん慌ててドアを閉めて隠れようとするラウラに

「あぁ、もう!さっさと入って言ってきなさいよ!」

___ラウラの後ろからもう一人の幼馴染がラウラを引っ張ってきた

「ま、まだ心の準備が……」

「私たちに言えたのですから一夏さんにも箒さんにも言えるでしょう?」

そういってセシリアもラウラを後押しして

「あぅぅ……お、織斑い、一夏、し、篠ノ之箒、そのえっと……」

しどろもどろになっていたラウラだったが意を決したのか俺と面と向かい

「ご、ごめんなさい!」

そういって謝罪してきた

「「え?」」

「私はあなたに沢山酷いことを言ってしまいました、だからご、ごめんなさい!」

「あ、あぁ、別にいいけど、でも一体どうしていきなり?それに口調も変わってるし……」

「それについては私たちが答えよう」

そう言ってやってきたのは千冬ねぇと山田先生だ

「ラウラ・ボーデヴィッヒさんのIS……シュヴァルツェア・レーゲンにはVTシステム、その発展型が搭載されいたんです」

「VTシステム?」

「使用者にモンドグロッソ優勝者の動きのトレース、つまりはこの私の動きを真似するシステムだ、本来なら国際的に禁止されているソレがラウラのISに付けられていた」

「千冬さんの動きを!?」

「あぁ、そしてシュヴァルツェア・レーゲンに搭載されていたのはその発展型と言っただろう?その発展とは搭乗者の思考を操作する、即ち洗脳に近い技術だと判明した」

「なっ……洗脳だって!?それじゃラウラはずっと誰かに操らていたって事か!?」

「そうだ、ラウラはそのシステムに心当たりはあるか?」

「おぼろげながら……森近と大会前に会話したあとIS技術顧問のゲイリー・シロヒとの会話した後痛みを感じました、確かその時VTシステムの応用型『グンナル』とも」

「ISの……?」

「どうした山田先生」

「あっいえ、男の人がISの技術顧問になるのは珍しいと思いまして」

「あぁ……こいつがゲイリーという男だな?」

そういって見せた映像はラウラと霖之助と一人の男が出会ってる映像だ

「はい、この人がシロヒです」

『やはりこの男か、俺たちから見てもあの時点でのラウラは洗脳が解けかかっていた』

「これは推測だが鈴君との私闘での一件で洗脳が弱まっていたんじゃないかい?」

「このゲイリーという男だが、実際にデータを確認した結果、そういった男の存在を確認できなかった」

「え?」

『だとすれば偽名か?おそらく来歴や国籍も偽物ってところだな』

「そうだ、私たちは依然追跡しているが行方は不明、現状はドイツに再三の情報提供を要請中だ」

「そういったことで織斑君への態度はそのグンナルによる行動なんです」

「それでも私が言ってしまった事や傷つけたことに変わりません、だからごめんなさい」

「あぁ、でもそれを言うなら俺も……そうだ!俺のアレは一体なんだったんだ!?」

そう、俺はあの時何かにとりつかれたかのように暴れていたはずだ

「詳細は不明だが恐らくは二つのISコアによる拒絶反応、オルタナティブ・シフトだと思われる」

「二つのISコア?じゃあ白式にはISコアが二つ搭載されているのか?」

「いや……そんなはずはない、ないはずなんだが……その究明の為に次の休日に倉持技研に出向してもらえないか?」

倉持技研は確か白式を作ったところで打鉄の生産企業だったはずだ

「僕も同行しよう、闇照のデータのフィードバックもしたいしね」

「そういや闇照って」

「あぁ、白式と同じ倉持技研制作だよ」

「……白式や闇照みたいなIS作る企業がよく打鉄を作れましたわね」

「ぜ、全体的に見れば白式や闇照が特殊なだけだ……」

少し目をそらしながら千冬ねぇが答えた

「……それと篠ノ之、聞きたいことがある」

千冬ねぇが箒に向かい合ってそう切り出した

「お前はラウラのVTシステム……グンナルについて知っていたのか?」

「……いえ、ただラウラと剣を交えた時、見えた気がするんですラウラとシュヴァルツェア・レーゲンを取り囲む悪意のようなものを、それを見てしまったから私は……」

相互意識干渉(クロッシング・アクセス)に近い現象か?」

クロッシング・アクセス?確かそれって……

「IS同士の情報交換ネットワークの影響から、操縦者同士の波長が合うことで起こる現象だね」

(もしかして先ほど見た夢も?)

「話は以上だ、各自しっかり休養することだ、あぁ、そういえばもうすぐ臨海学習だがだからといって羽目を外し過ぎないようにな」

そういって千冬ねぇと山田先生が退出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰もいないアリーナで私は思いに耽っている

(クロッシング・アクセス……本当にそうか?)

あの時の感覚はソレとは違うと理解している

___なぜわかる?クロッシング・アクセスを体験したことなどないのに?

最初から知っているかのように

いやそれはISそのものに言える事だ

まるで知ってて当然かのようにスラスラと感覚的に理解できてしまう

「姉さんが作ったからか?」

そう考えてると突然電話がなった

「誰からだ……!?」

電話主は篠ノ之束、私の姉だった

「……姉さん?」

『ハローハロー!アレ?日本だと夜だっけ?まぁいいや束姉さんだよ!箒ちゃん!』

「姉さん、どうして電話を?」

『うーん家族で電話するっておかしいことかなー?』

「姉さん……せめて教えてください」

一呼吸おいて

「ISとはなんなんですか?」

『___臨海学習で会おう箒ちゃん、そこで全部わかるよ、そしてこれだけは信じて?』

 

 

 

 

 

 

 

『私は箒ちゃんを絶対守るから』




ザルバ「次は臨海学習ときたか
    色々と準備をしてそれから……
    おっとこれは珍しい奴と出会ってしまったな
    次回『支度』
    そんな嫌そうな顔するなよ霖之助」


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第十一話 支度

滅茶苦茶遅れたことに理由が
理由が



特にありません、誠に申し訳ございませんでした


「えーと……ここだよな?霖之助?」

「あぁ、ここが倉持技研のはずだよ」

「まさか俺の実家からすぐ近くにあるなんて思わなかったぜ」

ここから1時間ほど近く歩けば俺の実家に付く、ともすれば篠ノ之道場よりも近い

「確か織斑先生が使っていたIS、暮桜は倉持技研製だったはずだ。倉持技研が織斑家に近かったから都合がよかったのか織斑家の近くで設立すれば何かと都合がよかったからなのかはわからないがそういう事情があるんじゃないかい?」

「うーん当時はISのことに興味がなかったからか俺の周りにISの企業があるなんてしらなかったぜ」

そういって中に入る

「あ、ようこそおでいくださいました。織斑一夏様と森近霖之助様ですね?森近様は2階のメンテナンスルームに織斑様は5階のコア研究室に向かってください、施設内ではISコアで認証されますのでそのままエレベーターに向かって大丈夫ですよ」

受付にそう言われ俺たちはエレベーターに向かう

「じゃあ霖之助、先行ってくぜ」

そういって俺はエレベーターに乗って5階のボタンを押した

(そういや学園の生徒は今頃臨海学校の用意でもしてるのかな?)

自分も何か準備しないといけないかと思いながら5階に付きエレベーターの扉が開いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<では森近君準備は良いですか?>>

「あぁいつでもいいよ」

僕はそう言い闇照の待機状態である剣を天に掲げ円を描きISを展開する

漆黒の鎧が虚空から飛来しISを纏う

<<何度見ても独特な展開ですね闇照、それでいて国家代表と同等の展開速度とは>>

『独特なのは君のせいだと思うがな、闇照も少し他のISと違う事を気にしてるようだからな』

<<ふむふむ、ISコアと会話できるという噂は聞いていましたがザルバさんの性能は数世代先のデバイスですね、一度解体しても良いですか?>>

『悪いが俺の内部は世界機密情報SSSランクだ、俺の存在に触れない事が俺と霖之助の協力する条件だったはずだぜ』

<<残念ですね~ではおしゃべりは終わりにして始めますね>>

そう言って殺風景な部屋に多くの振り子型のギロチン、所謂ペンデュラムが降ってくる

全領域格闘訓練(オールレンジ・インファイト)と言われるISによる特訓兼テストの一つ『ペンデュラム・スイーパー』だ

<<ルールはご存じですよね?すべてのペンデュラムを破壊、その経過時間を測定するものです、ただし使用武器は近距離兵装のみです、銃や飛び道具の使用は禁止されています>>

「了解、ゴールドストームはどうするんだい?」

<<まずは漆黒での撃破タイム、次に金色での撃破タイムを取りたいですね~どれほどのパワーアップが起こるのかの指標にはなります>>

「なるほど、ところでこれの世界的な記録はどうなんだい?」

<<ブリュンヒルデの1分37秒ですね、国家代表の平均だと2分10秒弱といったところでしょうか>>

「ふむ、99.9秒の金色ではブリュンヒルデを超える必要があるのか」

<<怖気づきました?>>

「いや、闇照となら僕は誰にも負けないさ」

そういって迫りくるペンデュラムを剣で砕いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁーすごい成績ですね。漆黒状態は3分37秒なのに金色モードはブリュンヒルデ越えの1分36秒、単純に考えても2倍以上の強化幅ですよ」

そういって目の前の白衣の女性、冴島ミツキはそう呟いた

僕たちはテスト運動とデータ提出を終え倉持技研の備え付けのカフェで喋っている

「僕としてはかなり稼働限界ギリギリで焦ってたけどね」

『あんな大口叩いて途中で金色解けたら盛大に笑ってやる所だったぜ……痛いぞ霖之助』

当事者が僕でなければ同意するが気に障ったので指でザルバをコツく

「そういえば冴島さんが闇照の設計担当だったな、闇照の事をよく知りたいんだがどういった経緯で闇照の機体コンセプトを考えたんだい?」

「う~ん、昔の憧れみたいな奴?」

「憧れ?」

「うん、子供の頃にね、実家の蔵で絵本を見つけたのよ」

その絵本にはこう書かれていたらしい

 

 

光の中から

一人の黄金の騎士が現れました。

黄金の騎士はまるでオオカミのようなうなり声を上げると

黒い影の一群の中に突進していきました。

黄金の騎士の剣がキラリと光ったかと思うと

黒い影はまるで木の葉のように吹き飛んでいきました。

 

ズドーン

大きな音をたてて

黒い影の王はたおれました。

黄金騎士が、闇の光を

王からとりもどせたのです。

これで、人間はもう黒い影に

おそわれることはありません。

黄金騎士の戦いは終わったのです。

 

そして、ボロボロになった

黄金の騎士を待っていたものは……。

 

「その絵本の事が昔からずっと憧れててね、使用できずに廃棄するわけにもいかないコアを無理言って再現しようとしたのが闇照なの、絵本に出てきた闇を照らす黄金の騎士のようにね」

「興味深い物語だ、そのラストはどうなったんだい?」

「忘れちゃった」

「何?」

「その絵本だって一回だけ読んだきりで次に蔵に入った時にはなくなってたしねー私の見た幻だったのかもしれないわ」

でもと冴島ミツキはつづけた

「もしも私がラストを考えるならきっと最愛の女性が黄金騎士を待っていたと思いたいかも」

「随分とロマンチストな考えだ」

「あら、ロマンチストじゃきゃ絵本の騎士をISで再現しようとなんてしないでしょ?」

そういっていたずらが成功した幼子のように笑顔でそういった

「じゃ、私は闇照のテストレポートを提出に行くから織斑君を待つならここでゆっくりしていってね」

そう言って冴島ミツキはカフェを後にした

「ふむ……じっと待つだけも暇だな」

「向かいの席、よろしくて?」

ネットでも見て暇をつぶそうかと思案したところ声をかけられた

「えぇ、連れを待ってますがまだ時間がかかりそうなので……」

「そうよかったわ、よければゆっくり話でもしましょうか。霖之助さん?」

そこに居たのは

「……ここのセキュリティは万全だと聞いたのだが」

「えぇ、ですので色々境界をいじりました」

そういって先ほどの冴島ミツキがしたいたずらが成功した笑顔とは違うこれからいたずらするような笑顔を見せながら

大妖怪であり僕の苦手な存在である八雲紫は向かいの席に座った

 

「ふふここのコーヒー結構おいしいわね、こんど取り寄せておきましょうか」

「そう簡単に外の世界から取り寄せるのはどうなんだ、そもそも何の用だ紫」

「ザルバも久しぶりね」

『紫も楽しそうで何よりだ』

「聞けよ人の話!」

「あなた半人半妖なんだから話半分聞きませんわ」

こいつ……

『そう熱くなるな霖之助、相手は妖怪なんだから話全部聞かなくていいってことさ』

「あらお上手、ここはそんなザルバに免じて本題に参りましょうか」

……やっぱ苦手だ彼女は

「本題ですがまぁわかってるでしょうけど篠ノ之の事ですわ」

「それは分かるがそれがどうしたんだ」

「話としては簡単、あなたはどういう結論を出すのかって事よ」

……

「知ってるでしょう?すべてはアレが原因だと」

「あぁ、この世界の常識を全て変えた者だ」

「あなたはそんな者をどう思うかよ臨海学習は良くも悪くもターニングポイントでしょうね」

「率直に言うと僕としては彼女のことには同情的だよ」

「あら?」

「確かに彼女は世界を変えた変えてしまった、でもISは決して世界を悪くするための物じゃないさ」

だから僕は闇照に乗っている、決して悪い力じゃないから

「それに……一夏はきっと彼女を受け入れるよ、なら僕も力になるよ」

「随分とあの子に入れ込みますわね、どうしてかしら」

「ただ似ている気がしただけさ」

「似ている?」

「僕の知る好ましい人間によく似ている、真っすぐで自分を曲げないただ歩み続けるそんな人間に」

「彼が____だとしても?」

「あぁ、彼はどこまでも僕の知る人間だよ」

「フフっ」

初めて含みを持たない笑みを紫から見た気がした

「そろそろお暇しましょうかしら、あぁそれと」

「うん?」

「……ミカゲという男には気を付けなさい」

「ミカゲ?」

「えぇとっても危険な存在、あなたが闇を照らす者になるまで決して戦ってはいけません」

「?どういう意味だいゆかり……」

目を離した一瞬に向かいに座っていたはずの八雲紫は姿を消した、まるで最初からそこに居なかったのように

「……まったく、謎だけ残して消えるのをやめてくれないかな彼女は、だから苦手なんだ」

『お前は幻想郷の女なら大体苦手だろ?』

「お、居た居た!おーい霖之助!」

「検査は終わったのかい一夏?」

「あぁ、その話はあとでするとしてさ、霖之助はこの後暇か?」

「特に用事は無いがどうしたんだい?」

「この近くにショッピングモールがあるんだよ、今度の臨海学習の用意とか買いに行こうと思ってな、それにこれ」

一夏が差し出した端末には篠ノ之箒たちがショッピングモールで買い物をしているように見える

「皆そのショッピングモールに居るらしくてな、晩飯を俺の家で鍋パーティでもどうかって提案したんだ」

「その招待という訳か、いいね僕も行こう」

鍋か……そういえば久しく食ってないと少しの期待を胸にショッピングモールに向かった




ザルバ「男と女ってのは難しい関係だ
    特に今の世の中はな
    次回『男女』
    こんな世の中にしたのは誰だろうな?」


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第十二話 男女(大幅加筆)

加筆しました


「よーし皆集まったわね!じゃあしゅっぱーつ!」

鈴が皆をみてそう言い出しショッピングモールへと歩んだ

ここに集まったのは私と鈴、セシリアにシャルロットそして

「ほ、本当にいいのか?私が一緒に買い物なんて……」

ラウラがそう言いだす、この前までの高圧的な態度で負い目があるのだろう

「いーのいーの!こういうのは大勢で行くのが楽しいんだし!」

「このような広大な売り場が庶民の場にあるのですね、初めて来ましたわ」

「じゃあ僕と箒と鈴くらしか来た事ないのかな?」

「いや、私もショピングモールに来るのは初めてだぞ?」

「え?そうなの?」

「このショッピングモールは転校した後にできたしな、他のショッピングモールには……要人保護プログラムで転校続きで……友達と一緒に買い物もできなかった……から……」

過去を思い出しだんだん気持ちが沈んでいく

「ハイハイ!この話はヤメヤメ!楽しい時間ぐらい悲しい事は忘れましょう!」

鈴が手を叩き私たちに号令をかける

何はともあれ人生初のショッピングモールだ、私もいつになくテンションが上がっている

「あぁ、行こう」

自然と笑みを浮かべ鈴の後についていった

 

 

 

 

 

 

臨海学習の準備でも一番大事であろう水着売り場に着いた

「水着のサイズが合わないな……まて鈴!何をする!」

「当てつけか!私とラウラに対する当てつけか!箒もセシリアもシャルも大きすぎるのよ!」

「ラウラー?君ってこういうのが良いんじゃない?」

「デュノア?それはちょっと過激じゃ」

「シャルロットかシャルで良いよ。それにこういうのが霖之助君とかに受けると思うけど」

「待て!なんでそこで霖之助の話題が……」

シャルロットがそう言いだす、学年別個人トーナメントからというものラウラは霖之助を意識しだしてるのでは?がクラス内の主な認識だ

同時に鈴とセシリアと顔を見合わせる、見ればどちらも面白いおもちゃを見つけたようなニマニマした顔だ。多分私も同じ顔をしている

「シャル、こっちのほうもラウラに似合うんじゃないか?」

「そうそうこういのも良いわよ?」

「これなんてどうですの?」

「「「霖之助に受けるんじゃないか(じゃない)(ですの)?」」」

「な、なんでみんな霖之助を出しながら迫ってくるんだ!?や、やめろー!!」

そんなこんなで急遽ラウラのファッションショーが始まった、ちなみにきちんと自分たちの水着もちゃんと選んだ

 

 

 

 

 

水着を買った後は鈴の提案でゲームセンターというところに来た

初めてのゲームセンターで少し戸惑いとワクワクで一杯だ

そんなゲームセンターはかなりの賑わっているのがわかる

「むぅぅぅぅぅぅ」

「ラウラは何してるのよ?」

「なんでもあのクレーンの商品であるうさぎ人形が欲しいらしくてね、いま10連敗」

「ふーん、ちょっと貸しなさいよラウラ」

「鈴?何を……」

「ほいっと、ほらコレ」

「あ、ありがと……」

(鈴ちゃん、割と織斑君ぐらい女たらしの才能あるんじゃないかな)

「ふっふっふ、箒さん?この勝負私の勝ちですわね!」

「待て射撃ゲームなんてセシリアに有利すぎるだろう!次は剣のゲームで勝負しないと不公平じゃないか!?」

ラウラがUFOキャッチャーというゲームで苦戦していたころ、私は制限時間でどれだけのゾンビを倒せるか競う射撃ゲームでセシリアと勝負していた

結果はボロ負けである、射撃の腕は国家代表レベルとザルバに称されていたのが実感する

そうやって騒いでると

「オラオラ!ウオラ様に道を開けろー!」

周囲から謎のモヒカン頭の男たちが現れた

「なにあれ」

「へいそこの姉ちゃんども!このゲーセンの主たるウオラ様に話を通さねぇでゲームするとはどういう了見だ!」

「え、誰?」

鈴がキョトンとした顔で首を傾げてると

「むぅん、奴らはゲーセン殺しのウオラの親衛隊!」

物知り顔で劇画タッチな顔の男がそう言いだした

「いやおっちゃんも誰よ」

「通りすがりのタネモ・ミーじゃ、ウオラはここら一体のゲーセンで所かまわず勝負し、奴に負けてゲーセンに来なくなった奴は700人を超えるといわれる凶悪プレイヤー!その親衛隊は初心者狩りを行う極悪軍団!」

「ただの迷惑な軍団では?」

「ヒャッハー!てめーら全員俺たちと射撃ゲームで勝負しやがれー!」

「じゃあわたくしと全員戦ってもらいません事?」

そういって白熱のバトルが

「あべし!」「ひでぶ!」「アバーッ!」

終わった

「いや雑魚じゃんこいつら」

「ウオラはともかくこいつらはただの初心者狩りだからな」

セシリアが強すぎるだけだと思うが

「むぅん、うぬらが我の親衛隊を倒したのか」

ゲームの筐体を超えるほどの大男、ウオラが話しかけてきた

「あんたがウオラ?」

「いかにも俺こそがゲーセン殺しのウオラ!私に歯向かうプレイヤーはすべてこのIS《インフィニット・ストラトス》バトル・アリーナ(AC版)で応えるのみ」

彼が示したのは少し大きめの筐体のゲームである

「ISBAはもとは家庭ゲームで発売してたがアーケード化に伴い全国対戦化、操作方法も現実のISと遜色ないように作られたゲームになりさらに白熱としたゲームとなる」

「ISBAですわね最近ではISテストパイロットのシミュレーションに採用する企業も増えたとかなんとか」

「デュノア社がそうの筆頭だね」

「これまでウオラ様はISBAで男のプレイヤーに勝利してきた!ここで女に勝てば男だってISに乗りさえすれば女に優れてることの証明になるぜー!」

……

「箒?」

「いやなんでもない」

「この吾輩こそがウオラ!掛かってくるがいい!」

「私が行く」

「箒さんが?」

「ふぅん、じゃ任せたわよ箒」

「が、がんばれ!箒!」

友に任された私は筐体に乗り込んだ

 

 

「ふぅ……」

「ウ、ウオラ様ぁー!?」

なんとか勝てた……ウオラの手からビーム出したときは死ぬかと思った

「お疲れ箒」

「あぁ鈴」

「ウオラ様が負けるなど……男女の差はやっぱり覆せないのかよ……」

そういってモヒカンたちが項垂れるとウオラは私を見つめ

「おぬしの名を教えてくれぬか」

「箒……篠ノ之箒だ」

そういうとモヒカンたちはいっせいにどよめいた

「篠ノ之だぁ!?てめぇ!あの篠ノ之束の家族か!」

「そうだ、束は私の姉だ」

「てめぇの姉のせいで……!」

「っ!」

襲い掛かるモヒカンたちに

「待てい!このウオラが負けたのは篠ノ之でも女でもない!箒という一人の戦士に敗れたのだ!」

「ウ、ウオラ様ぁ!」

「ところであんたさっきから一人称と二人称のころころ変わってない?」

鈴がツッコミを入れてるがあえて無視しておこう

「篠ノ之箒、おぬしは間違いなく強敵(とも)だった」

「あぁ……お前も私の強敵(とも)だ」

固く握手をする

「我が生涯に一片の悔いなし!」

「ウオラ様ぁぁぁ!」

「うん、一片の悔いなくていいからこれから初心者狩りとかやめようね」

「アッ、ハイ」

どうも閉まらない最後だった

 

 

 

 

 

 

ゲーセンの激闘を終えた私たちは一つの専門店に立ち寄った

「ISの専門店なんてあるのか」

「といってもこういったところで取り扱ってるのは過去のモンドグロッソの映像やら各国のPRとか代表生や候補生のブロマイドとかの販売だけど」

「おう、いらっしゃ……!?セシリア・オルコットさんに鳳鈴音さん、ラウラ・ ボーデヴィッヒさんにシャルロットデュノアさんまで!?」

店主の男性が私たちを見たとたん驚いた

「そっか候補生のブロマイド迄揃ってるんだからそりゃ私たちのもあるか、迂闊に来るべきじゃなかったかも」

「そう思うと候補生ではない私は少し居心地が悪いな……?鈴の所だけ完売してるのか?」

見れば鳳鈴音と書かれたプレートにはブロマイドが一枚もなかった

「ほんとだ、だれかが買いあさってるのかしら?」

「そいつは台湾の代表候補生様が買いあさってたぜ(まぁ、鳳鈴音さんの従妹の鳳乱音のことだが)」

「ふーん、他に売り切れてるといえばやっぱり千冬さん関連は売り切れね」

「まぁそりゃそうでしょうねぇ。なんといってもブリュンヒルデだもの」

織斑千冬の人気は別格だ、こうやってIS関連のものをあされば実感しやすい

「いやーすごいです、こんなにも候補生たちがやってくるなんてIS学園の近くに店を構えてよかったですよ」

「男性のお方にしてはISに熱心ですのね、先ほどのウオラさんたちとは大違いですわ」

「まぁ変わり者だという自覚はありますね、私自身男性差別の被害は受けましたしねぇ……」

店主はポツポツ語り始める

「この店もほとんどの客は女性なのですがよく言われますよ『なんで男風情が』って」

「それは……」

「まぁ言われたこう返しますがね『うるせぇIS大好きで悪いか』って」

「ISが大好き……ですか」

「えぇ、空を飛んで宇宙を駆ける、そんな姿に憧れを抱くのは男だからとか女だからとかなんて必要でしょうか?だから私はこの店を出したんです、ここは男でも女でも憧れを見つけていい場所だと」

店主の姿にどこか見覚えがあった

(昔の姉さんがしてた顔だ)

憧れて手を伸ばし続けていた人の顔だ

「どうでしょうか記念に写真を撮っても?」

「いいわね!みんなで取りましょう!ほら箒も」

「い、いや私は候補生じゃないし私以外のみんなで取ったほうが……」

「こういうのは大勢で取ったほうがいいに決まってるじゃない!ホラホラみんな固まって!」

「ハイチーズ!」

シャッターの音がなって写ったのは私たちの忘れられない思い出だった

 

 

 

 

「綺麗に取れてるわね」

私たちは店を後にし、モール広場のテーブルを囲んで談笑していた

「なぁ、やはり私だけ場違いな気がするのだが……」

「箒さんなら、試験を受ければ直ぐに代表候補性になれると思うけどね、成績だって悪くないんだし」

「とはいっても……?鈴、何をしてるんだ?」

「んー?さっきの写真、一夏に送ってるの、丁度ここの目と鼻の先が倉持技研だし」

「あの暴走した白式の事……何かわかったのでしょうか?」

「どうだろうな、あの時の白式の戦闘ログははっきり言えば異常だ、今だ理論すら仮説段階の短距離瞬間移動といえる超現象でなければ私の停止結界を抜け出せた事に説明がつかない」

「白式って拡張領域(バススロット)がないはずだよね?単一仕様の零落白夜と引き換えに射撃用センサーリンクもつけてないって聞いたけど」

「でしたら短距離瞬間移動が使える理由がわかりませんわ、白式がそれを使えるはずがないですわ」

(白式が短距離瞬間移動を行えないのなら……)

____()()()()()()()()()()()

(……何を馬鹿なこと言ってるんだ私は)

ありえない、そう結論づけた時鈴の携帯が鳴った

「あ、一夏から返信が来たわ、えっと……」

<件名:re:ショッピング楽しみ中>

<本文:みんな楽しそうだな!そこって倉持技研近くのショッピングモールだろ?だったら俺の家も近いし霖之助も誘って晩飯にみんなで鍋を食うとかどうだ?>

「だって、皆はどうす……」

「「「行く!」」」

即答する当たり、私たちはかなり肉食系女子(二つの意味で)である

「あ、僕一緒に食べるの誘いたい人がいるんだけど一夏君に頼めるかな?」

「ん、えっと《いいぜ、鍋は複数人で食う方がうめぇからな!》だって」

「よかった」

「提案があるのだが」

ラウラが珍しく自分から意見を言い出した

「何?」

「知り合いに聞いたのだが日本の鍋を食う時はそれぞれ食材を持ち寄ってくるのが習わしと聞いたのだが、ここで皆で各自別々の鍋の具材を買うのはどうだ?」

……どうしてだろう、嫌な予感しかしない

「闇鍋ってやつね面白そ……」

「鈴、鈴」

私は鈴を呼び止めた

「何よ箒、さすがに闇鍋で変な具材いれるなんてベタな展開危惧してるんじゃ……」

1人そういった展開になる心当たりがあることに鈴も気づいたようだ

「あぁ、あのセシリアだ」

「さ、さすがに具材だけなら変なのにはならないと思うわよ、さすがに」

さすがにを二回言うあたり自信がないのが伺える

「でも見なさいよラウラの顔、滅茶苦茶キラキラしてて断れないわよアレ……」

「なーべ、なーべ、なーべ」

日本の鍋料理に興味があるようでさっきから鍋を連呼しながら携帯で鍋について調べてるラウラがそこにいた

「それを言われると断れない……」

「さ、最悪セシリアには理由付けて具材買わせないようにすれば……」

「い、いや鈴、その場合一番怖い展開はな……」

『鍋はわたくしの出番がありませんでしたが、食後に私の自家製デザートをお召しになるのはいかがでしょう♥』

「といって安心したところに来るぞ」

「ありそう」

しばらく鈴とセシリア対策を練っていると

 

「そこのあんた!私の荷物持ちになりなさいよ!」

 

突然大声で叫ぶ女性が現れた

「?何かあったのでしょうか?」

皆で振り向くと男性が女性に荷物を持たされそうになっていた

「……なんで俺が見ず知らずの人の荷物もたないけないんッスか」

「はぁ?あんたが男でわたしが女だからに決まってるでしょ!?あんた女に逆らう気!?」

凄く理不尽な要求だ、あまりにも身勝手すぎる

女尊男卑の風潮の今の時代じゃよくある光景なんだろう

「……」

 

【男だってISに乗りさえすれば女に優れてることの証明になるぜー!】

【このウオラが負けたのは篠ノ之でも女でもない!箒という一人の戦士に敗れたのだ!】

【よく言われますよ『なんで男風情が』って】

【ここは男でも女でも憧れを見つけていい場所だと】

 


 

 

「私の夢はね箒ちゃん」

「この宇宙の先を見てみたいの、何があって何がないのか、何を見つけて何を見つけられないのか、全部わからないから見てみたいの!」

「そんな夢をいつか叶えたいって、そう思ってるの」

 

 


 

「やめろ、その人は連れじゃないんだろ?だったらあなたの要求を呑む必要はない筈だ」

気づいたらその二人の間に割って入っていた

「何よあんた、女のくせに男の味方する気?ISに乗れない男なんか……」

「ISは男を蔑む道具じゃない!そんなことの為にISはあるんじゃない!」

姉さんの事が苦手だった、ISが苦手だった

自分から父さん母さんを別れさせた姉さん(IS)が苦手だった、一夏と別れさせたIS(姉さん)が苦手だった

だけど

姉さんの夢を、ISに乗せた夢を

こんなことで汚されたくない!

「はぁ?私に説教?あんた何様のつもり……」

「あら、IS学園の生徒のISへの認識に何か間違いがございまして?」

「え」

「やめなよセシリア、彼女もIS学園の生徒かもしれないじゃない、私この子見たことないけど」

「ちゅ、中国の代表候補生の鳳鈴音!?それにセシリアって……」

「うーん、すぐに代表候補生の名前言える所を見るとISの勉強自体はしてるようだね、多分IS適正ないから入学できなくて拗らせたんじゃない?」

「シャルノット・デュノア!?」

「おーい、気になったんだがおでんは鍋料理の一種なのか?」

「ラウラ・ボーデヴィッヒまで!?し、失礼しました!」

セシリアたちが彼女にとって天上の人たちだからか即座に退散していった

「ありがとう……皆」

「礼を言われる事じゃないですわ」

「そーそー、私もちょっとムカついたしねー」

「……『ISは男を蔑む道具じゃない』っスか」

「え?」

「……助けてくれてありがとうっス、こんな世の中で女に感謝したのは久しぶりっス」

そう言って男はこの場を後にした

「ああいうのってよくある事なのかな……?」

「そうですわね……私も一夏さんに会うまでは彼女と同じ事をしてたのかもしれませんわ」

ISによって世界は変わった

あの夢を語っていた姉さんは今の世界を望んでいるのか?

「お、いたいた、おーい!」

考え事をしていると一夏と霖之助がやってきた

「何かあったのか?」

「ううん、少し人助けしてただけだよ」

「一夏は……」

「うん?」

「一夏はISを作った姉さんのことをどう思ってるんだ?」

「なんだよ急に、でもそうだな……」

少し思案して一夏は応えた

「多分感謝しているだと思う」

「え?」

「だってISがなけりゃきっと俺はここいるみんなと出会えなかった、IS学園で皆とあって箒や鈴と再会して、確かにISで嫌な思いだってたくさんあったけど……」

「それだけではないものも確かに生まれてるさ、道具はいつだって捉え方だよ。刀は人を斬るが人を守れる武器でもあり、逆に包丁は料理で人を幸せにすることも殺す事もできる」

霖之助も続いて言葉を発した

「君がISにどんな思いを持つのかは知らない、だけどこれだけは覚えてほしい」

『ISによって100回悲しみが生まれたとしても、僕たちはISで101回幸せを作れるんだ。それがISに選ばれた僕たちが持つ力だよ』

霖之助を諭すように、そして私を励ますかのようにそういった




ザルバ「お前ら鍋料理は好きか?
    みんなで食べるのに最適な料理のアレさ
    なんにしたって美味い事に越したことはないだろ?
    次回『料理』
    ま、俺は食えないがな」


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第十三話 料理

今さらですが今作の原作の設定はかなり改変してます
ストーリーのメインはISと東方のクロスですが設定面ではある作品とかある作品とかある作品とかがちょっと繋がってたり
そのうちの一つはかなりメインに食い込んでるので知ってる方はニヤリとしてもらえれば
まぁ、ザルバの時点でバレバレでしょうけどね


コツコツと足音が室内に響く

「……で、これが前回のグンナルの実験データっつー訳だ、ご期待に沿った機能でしょう?」

音の正体はラウラ・ボーデヴィッヒの暴走を引き起こした人物、ゲイリー・シロヒ___その偽名を名乗っていた者である

「えぇ、あなたのおかげで遺伝子強化試験体の完成度はさらに上がりましたわ、惜しむらくはあのような男に後れを取ったことでしょうが、そこはこれからの事」

彼の依頼人と思われる妙齢の女性がうなづく

「さすがは女性主義……いえ織斑千冬主義のドイツ首相であるメレッセ・シュタインマイアーですね、遺伝子強化試験体の思考制御とVTによる織斑千冬の再現、実現すればかなりの戦力といえるでしょう」

織斑千冬という存在は女性主義の中で神格化されている。その中でもドイツ首相は狂信と言っていいほどの傾倒ぶりであり女尊男卑の体現者と言えるだろう

そして彼女らにとって織斑一夏はこの世で最も嫌っている男だ、男というだけで許せないのに千冬様の弟なのだから

「まぁ、織斑一夏に関しては俺の依頼対象外なんでね、報酬はいつも通りって事でいいか?」

「いいでしょう、ですがそれをあなたが手にするかどうかは別の問題ですがね」

そういうと彼女の後ろにISに乗った少女が現れる

「……用済みとありゃ始末ですか」

「あなたが女性ならば手元に置いていましたが……所詮男でしょう?」

そういって後ろのISに構えを取らせる

「あなたのおかげで世界は変わる、私たち女性が君臨する世界がね!」

そう言い終えると同時に銃声が響いた

 

 

 

 

 

 

「一夏、これで大体の用意はできたね」

「あぁ、後はみんなを待つだけだ」

僕と一夏は一夏の家で鍋の下準備をしていた

それというのもあの後鈴に相談された結果である

 

 

「ねぇ霖之助」

「ん?なんだい」

「鍋って聞いてラウラが皆で食材を一人づつ足したいっていうのよ、セシリアがいるし穏便な形にしたいから良いアイデアない?」

「ふむ、そうだね……」

概要を聞く限り、一種物に近い宴がしたいということだろう

さすがに一品だけでやばいものが出来上がるとは思えないが相手は僕の目ですら料理とは違う名称を浮かばせたあのセシリアである

「ラウラ、少しいいかい?」

「どうしたんだ鍋之助?鍋が楽しみだろう鍋」

この子大丈夫だろうか、鍋が楽しみすぎて言語野に障害が起き始めているぞ

「何、君は皆で食材を一つづつ持ち込みたいのだろう?」

「あぁ、副隊長のクラリッサが『日本の鍋は闇鍋という学園物の定番イベントがあるのです!』と言っていたぞ」

何かズレてるだろうその女

「ラウラ、少し考えてくれ確かにそういった催しはあるが今やってしまうとシャルロットの連れてくる人が仲間外れになってしまう。君だって誰かを仲間外れは嫌だろう?」

「む、確かにそうだな」

「だがこのショッピングモールで食材を買い出し合うというのも魅力的な提案だ、ということで役割分担というのはどうだろうか?」

僕はここにいるみんなに聞こえるように提案した

「まず僕と一夏は一夏の家で鍋の準備等行う、次に箒とラウラが野菜類を買い出し、鈴とセシリアで肉や魚といったメインを買う、シャルロットは連れて来る子と一緒に食後のデザートなどを用意する。これならだれも仲間外れにしないで協力して鍋料理を作れる。どうだろうか?」

これでセシリアは鈴が見張れば余計な行為が入らない、右も左もわからないラウラは箒がサポートする、シャルロットがデザートを買うことで鍋後にセシリアがデザートを出してくる懸念も解決する

「おう、いいじゃねぇか皆もそれでいいよな?」

一夏が真っ先に同意した、最初の提案者がそういえばおいそれと否定意見も出にくいだろう

「私もそれでいいじゃないかな(よくやった霖之助)」

「えぇ私もそう思うわ(うまいわ霖之助)」

箒と鈴の二人が安堵したような表情で同意する

「いいですわね、鈴さん早速一緒に行きましょう?」

「箒、鍋で食う野菜とは何がいいんだ?」

セシリアとラウラが早速買い出しに行ってきた、ああやって相談する以上失敗することはないだろう

「じゃあ、僕も準備しに行ってくるね。一夏に霖之助、またね」

「よし、じゃあ俺たちも行くか霖之助」

そういって現在に至る

 

 

 

 

『フッフッフ。ただ楽に鍋を食べたいだけだろう霖之助?』

「さてどうだか」

皆が満足する条件を出したのだ、ならば僕の都合のいい条件にするのは現世風に言うならwin-winってやつだ

「霖之助ーさっきから何見てんだ?」

一夏は僕が準備を終え暇つぶしに見ていた物が気になるようだ

「あぁ、Yチューバーの動画さ」

投稿者名は『ナグスケ』という男の動画だ

「へぇー霖之助ってそういうの見るんだな」

「彼はなかなか公平で正確な情報を素早く動画にしてくれるからね、最近では一番のおすすめだ」

現在の彼の動画はある都市伝説のゲームについての情報を発信していた

「こういうのってデマが多いってイメージだな」

「たしかに瓦版の頃からそうだがこういったものは情報の正確さよりも情報の衝撃度が優先されやすいからね」

だから内容はともかく僕は射命丸の新聞を評価している、内容はともかく

「衝撃重視な話題ならば例えば白騎士事件のある噂についてとかがあったね」

話のタネに少し興味を持った情報を挙げてみよう

「白騎士事件の噂って?」

白騎士事件とは約10年前、突然全世界から()()()()()()()()()()()()()()()()()に向かってミサイルが2341発以上発射されるも、その約半数をIS『白騎士』が撃ち落とした事件の事だ

「あぁ。一夏はワームというものを聞いた事あるかい?」

「ワーム?」

「なんでも突如現れた正体不明の生物……一部では絶対天敵(イマージュ・オリジス)ともいわれてるらしい、ミサイルがその場所に撃たれたのはそのワームを撃退する為でありワームを撃つ為に白騎士は現れたって噂さ」

「正体不明の生物……SFみてぇな話だな、たしかに衝撃重視だな」

「ISという存在の時点で僕からしたらSFだがね」

『俺からしたら一夏が持ってる物の方が気になるぜ』

ザルバに言われて見れば一夏は手でパズルのようなものを解いていた

「いやな、鍋をどこにしまってたか部屋を漁ってたら昔誰かに貰ったパズルを見つけてよ。誰に貰ったかも忘れたけど昔は変に躍起になって解こうとして結局一度も解けなかったんだ」

「そういうの苦手そうだからね君は」

「うるせぇ、逆に霖之助、お前ってこういうの得意そうだし解いてみるか?」

ふと、パズルの名称を見る

「……ふむ、それは一夏君が解くべきパズルのようだ、なぁにIS学園に在学してる間に解けるさ」

「3年解けねぇって言いてぇのかよ!」

 

 

 

そうやって他愛のない雑談をしていると玄関の呼び鈴が鳴った

「お、来たか」

一夏が玄関を開けると最初に来たのは箒とラウラだった

「ここに来るのも久しぶりだな、懐かしい気持ちだ」

そういった箒の袋の中身は

「鍋の野菜といえば白菜や葱が最適だろう」

ふむ無難な選択だ、だからこそ良い

「鍋の用意は出来ているのか!?」

ラウラは最早我慢が出来ないようだが

「まぁ、待ちなさい、セシリアたちがまだだからね」

噂をすれば影というべきか、セシリアの名を出した途端呼び鈴がなりセシリア達が来た

……心なしか鈴の顔色が悪い

「どうしたんだい鈴」

「いや、ちょっと……ね……価値観の違いに打ちひしがれたわ」

「お、肉も買ってきたのか……!?」

一夏がセシリア達が買ってきた肉を見て固まってる

どれどれ名称を見てみよう……あっ

「値段は……ヒエッ」

「ままままて一夏、とととととにかくおちつこう?」

一夏と箒があまりの驚きに挙動不審になっている、無理もないが

「あら、肉を買ってきただけですがどうしました?」

セシリアは特に疑問なく答える、多分いつも食ってるからだろうか、むしろ彼女にとっては1ランクぐらい下の買い物かもしれない

「やっぱ住んでる世界違うわよね……」

「?」

セシリアとの価値観の違いによる騒ぎは呼び鈴が鳴るまで止むことはなかった

「僕たちが最後かな?」

「お、おうシャルロット……それと誰だ?」

彼女が連れてきた子は幼い少年だ、外の基準でいえば中学1年くらいだろうか

「この子は僕の弟だよ、ほらシャルル」

「はい、()()()()・デュノアですお姉さんがいつもお世話になっております」

礼儀正しく少年はお辞儀を行う

「おう、よろしくな!これで全員揃ったし飯にしようぜ」

「うむ!私は早く鍋が食べたいぞ」

(なんかラウラさんのポンコツ化がすさまじい気がしますわ)

そんなこんなで鍋料理会が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、頼まれた情報持ってきたわよ」

少女……IS学園の生徒会長『更識 楯無』は教師陣に話しかけた

「ありがとうございます、さすが対暗部用暗部更識ですね」

「ドイツ諜報部でも捜索が困難であったゲイリー・シロヒといわれた経歴不明の男と思われる存在の情報……」

彼女たちの前には一人の男の写真を見つめていた

「アーシェス・サー・アルリ……あのアーシェスで間違いないわ」

「この世界で知らない人間はいない人物……」

「この人がこの前の事件を裏から操ってたのよね……」

楯無は男の経歴と今回の事件の繋がりが分かった、それもそうだこの男は

「女尊男卑の撤廃に尽力してた男の救世主と言われたアーシェス、ISに乗れなくてもISに乗る女性をコントロールするのが目的か」

千冬の結論に異を持つ者はこの場には誰も……いや()()しかいなかった

「アーシェス……」

誰にも聞かれず山田真耶は一人つぶやいた




ザルバ「そろそろ休息の時間も終わりのようだ
やがて逃れられない戦いが始まってしまう
次回『親睦』
後戻りはもうできないぜ」


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