藤襲山で暮らす鬼 (夢食いバグ)
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暮らすことになったわけ

山にきたわけだけを書いたため今回短い


藤襲山それは、最終選抜に使われる人一人二人喰っただけの弱い鬼が閉じ込められている山。

 

そこでずっと殺されることにびびりながら、暮らしている弱い弱い鬼がいましたとさ。

 

 

墓守(はかもり)

それが多分名前である、最初に目覚めた頃なぜか回りの身内らしき人を喰っていたのでもう血の繋がった者はいない。

最初は喰ったあとすぐに逃げたと思う、お腹が減っても逃げた。頭がぐるぐるした、初めての血が美味しいと感じてしまったことに違和感と共に得体の知れない恐怖を感じた。

 

最初に考えたのは、自殺者やそこら辺で死んでいる浮浪者の死体を見繕って喰らうことだった。でも幸運か不幸か喰らうとすぐに腹が満たされしばらく長く食べる必要がなかった。

 

そしてだんだん死体が見つかることが無くなってきた、同じような喰らう鬼が増えたのかそれとも人が死ななくなったのかわからないが。

 

そうして考えに考えてある村の墓守として暮らし、そこで死んだものの遺体をすこしづつ喰らうことにした。多分これは少食だったからできたことなのだろう。多分そこで初めての 墓守 という名前がついた、いまでも気に入って使っているというより名前がついたのがこれしかない。

 

…………その生活を気に入ってはいたが当然長くは続かない、そろそろ人間の寿命やらで怪しまれる前に沢山食いだめをしようとしたとき。

 

「……キャァァァァァァー」

 

その様子を村人の一人に見られてしまった、本来ならば口止めのために殺すのが正しいのだろうだがそれができなかった。

 

只放心していた、何をしていいのか分からなかったコロスイガイノ方法をひたすらに考えていた。

 

でもそれは無理だった、そのあとすぐに刃を持った人が来て腕や足を切り飛ばし山に連れていかれたとても痛かった。だけど死なないのならまだよかった。

 

そうして藤襲山、と呼ばれる山でこれからずっと過ごすことになる。

 

死体とか食べ物は、他の集められた鬼によってさらに少なくなるそして人も来ない。だがある程度残飯が出ることがわかり人の骨等を集め砕いて腹を満たしている。

 

娯楽もなくずっと暇で近くの木などを折って拓き、掘っ建て小屋と食べるわけではないが小さな畑やら見るための池を作った。

畑で育てているのは、ほとんど綿だ。ここでは服は殆ど着れないだから新しい服がほしいと思ったら作るしかないのだ。

 

個人的には鶏の牡と牝があれば、増やして更に残飯集めをしなくて楽なのだがと考えている。

 

後最近同じ衣服の人がよく来ることがわかった、食い荒らされていた人が着ていたものが似ているのだ。もしかしたら閉じ込めた人達と同じものたちなのだろうか?よくわからないし比較的生きてはいけるので気にしてはいないが。

 

ちなみに最近の趣味は色々な色をした刀集めである。あの人たちが元々持っていたのととてもにていて綺麗、夜の残飯集めを兼ねた散歩で折れたものやそのままの物色々見つかる。

 

「にしても本当に綺麗な色だなぁ……」

 

もしここに人間が来たらどうしようか、殺されたら嫌なので盛大にもてなして見逃してもらうために野菜やら魚やらとれるようにしといた方がいいかもしれない。



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家に墓守とつけてみようか?

それなりに自由にくらしてます。


「今日もいい夜だ、月が綺麗だなぁ。」

 

昼や朝だと、太陽で炙られて死んでしまうので主に行動するのは夜だ。睡眠する必要がないため、昼間は掘っ建て小屋で夜や雨などの日に集めた人骨を砕いて粉にしたり、ほぼ綿用の畑の肥料を作ったりなどをして暇を潰している。

 

あとごろごろもする、なにもしないことも良いことだ。暇で暇で死にそうになる。本当に死にたくはないけど。

 

「すこし川に畑用の水汲みと、散歩行ってこようかな。」

 

ついでに骨集めも、いまのところざっと見て一年間はなにもせずに過ごせそうだが、なるべく食糧……余命は増やしておいた方がいい。

 

いつまたご飯が尽きるかわからないからだ。

 

それにここには飢えた鬼が多くいる、こっちと違って少量では満足できないし、共食いのものもある勝てる気がしないし、戦っている最中で日が出たりしたら大変だ。

 

人間今回出ているのなぁ……たまにやっぱり人が来る、何度も殺されかけた。でもたぶん襲ったら他の鬼たちと同じようにより殺される。

 

とてもコワイ。

 

「でも、長く生きたほうなのかなぁ?」

 

もう数えることをやめてしまった。只恐ろしかった。

 

でも殺すための刀は綺麗に感じたのだから、本当は死とやらでも求めているのだろうか……それは飛躍のしすぎというものか。はたまた暇すぎて変なことでも考えているのか。

 

「あっ骨みっけ……やっぱり好き好んで骨食べる人は少ないのかな、固い肉として部分部分残す人もいるし。」

 

飢餓とも言えど、食べ物と思っていないものは残す。人間でも蟲を喰うものは少ないように。………なんかこっちがゲテモノ喰らいみたいに思えて悲しくなってきた。

 

 

「………なんだここ、やけに整ってるな。」

 

この鬼だらけの山で7日生存する。弱い鬼だがずっと連戦するのはきつい。しかもここから夜になる………つまりやつらの行動範囲が広がるってことだ。

 

日の当たる場所でさけることはもうできない。なら一ヶ所にとどまるより移動をし続けたほうがいいだろうと考えた。

 

そうして見つけたのが、明らかに入りやすいように草が刈られている道。ここが普通の山ならば人が住んでいると思うだろう。だがここは鬼が集められた山だ。

 

………まさかここに鬼が住んでいるとでも言うのか?

 

聞いた話によると、ここの鬼は基本短命だ。俺たちが殺したり衰弱した結果日に炙られたり鬼同士で殺したりして自然に数が減る。

 

定着できているだけ力があると言うことだろう。ここから離れたほうが……

 

「………あっ……きゅうっ。」

 

頭に桶を乗せた男がこっちを見た瞬間気絶した………刀を持っていないから恐らく鬼だが……鬼かこいつ。向かう方向はこっち方向だが…。

 

切り落としたほうが良いが………。

 

「向こうから襲ってきてからでも遅くはないか……」

 

気絶した鬼とも言えない奴を抱え整えられた道を歩く。服が濡れて気分が悪い。

 

進むと開けた場所に小屋と小さな畑が見えた。とりあえず放っておいて手間賃として、勝手にキュウリを一本でももらって退散しようとしたが。

 

「あー死ぬかと思った、首とんでない?大丈夫、てかここどこ自分の家だ。なに転移転生ってまた……転生はしてないうんで……だぁぁぁぁ

 

殺さないでください!痛いのは嫌なんです、少食なのでお腹すいてません只飛び散った血の吸い込んだ土を食べるような生活してます。助けて……神様仏様っていたらこんな状況になってへんわ!

 

もうここでお陀仏か……」

 

なんだこの鬼。

 

起きたとたんに首を確認して、叫んで必死に命乞いをしている。こっちを襲うようすも素振りも見せない。

 

「………襲わない、キュウリやらを何本か貰っていく。」

 

「どーぞどーぞお好きなだけ。」

 

畑からキュウリを何本か貰う、7日の間の毒が入ってない食糧は大丈夫だろう……

 

「……たしか、ぼくたちみたいなもの殺す人達ですよね?あんまり時間過ぎちゃったので腕や足を切り飛ばされてここに入れられたのしか覚えてないんですけどね………

 

ちょっと休みたかったらここの場所しばらく使ってもいいのですこしお願いがあります。

 

あと自己紹介忘れてました、墓守といいます。」

 

 

「墓守?」

 

来てしまったのなら仕方がない、餓集したはいいが量が多すぎて部屋がひとつ埋まりそうになってしまった。あの綺麗な刀たちは誰かの持ち物だろう。なら持ち帰れるだけ持ち帰って貰おう。

 

「ええそうです。すこしついてきてください、怪しい行動をしたら首を跳ねてもいいです。」

 

「花の呼吸」

 

確かに鬼の家だし、首跳ねてもいいとはいったが最初っから殺意高くてコワイまた意識飛びそう。呼吸とかわからないけど確実に殺そうとしているのははっきりわかる。

 

えーと刀部屋はどっちだっけな…………。

うんこっちだな。

 

「これは……!?」

 

「ここです、貴方のような人達がこの山で残していった物です。」

 

そこには様々な日本刀、折れたものは引き出しに綺麗なものは立て掛けられる物を用意して壁などに至るところにかけてある。

我ながらなかなかの作りだと思っている、もしここを降りられたらこういう作る仕事なんてやってみるのもいいかもしれない。

 

「お前が殺したものか……!」

 

なんでそうなるん。

 

「拾ったんですよ、貴方のような人達がここに来てくれるのを待って。ここにあるのは遺品か、運よく刀が折れても生還できたものたちの落とし物です。」

 

「それがどうした、お前が嘘をいっていない保証はあるまい。」

 

なんで信じてくれないの、悲しいよあったばっかりだけど。さてここからどう話を回そうか、人とも鬼とも話すことは最近というか全くしてない墓守として仕事をしていたときをはいいいえぐらいのものだった。

 

そう考えると現時点でもそれなりに言葉回しはできているのではないか?絶体絶命だが。

 

「じゃあなんで今の時点で貴方を殺していない、そして襲っていない理由の証明もできますか?

 

それと同じですよ、見えないものをあるやらないやら言っても表には証明できませんよ。

 

お願いはこの刀の一部を麓に持ち帰ってほしいのです。」

 

「どうして……」

 

「簡単ですよ、もとある場所に返した方がこの刀も喜ぶでしょう。中々の名刀達ですし……刀は好きですよ綺麗で。

 

これを受けてくれれば、7日まで支援しますよ。」

 

部屋の整理ができる。刀の荷物減らそうとすると鬼が武装して襲ってくるかもしれないし、それなら確実に持っていってくれるだろう人にそのまま外に出してもらった方がいい。



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人の子を見るのは楽しいがこっちも元人である。

記憶は忘れたけど。


「7日もいらん!そして刀も貰うお前のところにあるべきでないものだっ!」

 

あー確か7日間までだったもんなぁ、もう過ぎている可能性方が高いのか………うんなんか物凄いこと言われている気がするこれ頼みやめても無理やりぶんどっていきそう……あれお気に入りのやつとかあるけど抑えない方が身のためだねこれ。

 

「受けてくれるんだね、ありがとう!」

 

でも荷物整理はできるから、うん良しとしよう。

毎回人来てからしばらくすると五本はだいたい見つかるからね、ここに来て大分たったし………

 

「お前に、何か得ようって訳じゃない!刀を届けるだけだ。」

 

うんなんか利害が一致している感じだね、刀が欲しいみたいだ………でも怖いなもう少し気を緩めてくれてもいいのに。でも鬼だしなぁ仕方がないところが多いか。

 

「それでも受けてくれて嬉しいよ、刀もきっと喜ぶでしょう。」

 

「………………」

 

なんかやっぱりものすごく睨まれてるな……

 

 

「…………何で縛ってる被虐趣向か?」

 

 

「いや人いや鬼を人に痛め付けられて興奮する変態みたいに言わないでくれるかな?悲しいよ泣くよ?

 

昼間になにもなくて暇で全裸躍りして虚しくなってすぐにやめた事はあるけど。」

 

あのあと昼にこの鬼が入れない庭の日向にずっといた、山の中にしては静かで比較的警戒しなくてもよく体力を回復させていった。服も綿から結って作ったものを渡された。

 

って全裸躍りってなんだ、聞かなかったことにしよう。

 

ご飯はキュウリやら大根やらかってに抜いたりもぎったりして、腹を満たす。あの鬼に肉いるかとウサギのそのままの姿をした干し肉を顔面に投げ渡されたときはすこし一閃したくなったが。

 

しかも一部にカビが生えていた。

 

そして今目の前にいるのが全裸躍りをしてたといい恥の上塗りを勝手にしたコレである。

 

夜になって警戒して見てみたが、柱に自身の体を縄で縛っているあの鬼がいた。

 

「やっぱり首落とした方がいいようだな。」

 

「や め て」

 

理解ができない。

 

「いや、君当たり前だけど警戒してるでしょだから。夜は動かない方がいいかと思って。本当にあの刀達持って帰ってほしいだけだからね食べようとしてないことの証明的な?」

 

そりゃ当たり前だろう、警戒以外の何をすることがあるのだ。こいつは鬼だいつ裏切って腸綿食い荒らされるか分かったものではない。

この柱に自らを縛り上げた被虐思考の鬼であろうといつ縄を引きちぎるかわからない。

 

「………」

 

とりあえずひたすら蹴った。

 

「ちょっとまっ、痛い痛い。やめ、腹じゃないからまだいいけど、足の脛だけひたすらに蹴らないでちょっまあー」

 

普通に痛がっていた、どうやら頭がそこら辺が可笑しいわけではないようだ。相手は鬼なのだが。

 

「本当にお前は何が目的なんだ。」

 

その様子がどうにも可笑しかった、普通ならば確実に殺そうとする。刀の切っ先を喉に引き抜いて向けた。

 

「痛かったじんじんする……本当に、刀持って帰って貰いたいだけ後個人的にはなるけど話すの楽しい。ここの鬼ずっとお腹へって話し相手にならないし娯楽もないし、あっなんか一人で遊べるいい娯楽ないかな?」

 

「最初はまともに返答していたが後から、話が完全にずれてるぞ。」

 

「痛い!?えっちょっとまって今何で蹴ったの?一応ここの家主だぞ!入った経歴からすると完全に占拠に近いだろうけど。」

 

ずっと見てみたが、行動が肉体とは違い完全に幼子のようだった。寂しくてついてきて遊ぶのが好きな幼子、こいつにもし双六でもやればずっと宝物のように保管し遊ぶように思えた……

 

……もしかしてあの刀達も……!?

 

俺は襲ったか何かして集めたものであると考えていたが、こいつは幼子がただ綺麗な石ころを宝物とするように、落ちていた刃を集めて保管していた………?

 

「うん?どうしたそんなに考えて、腹でも下した?下したなら畑に穴あるからそこで糞すれば。」

 

「そんなわけねぇわっ!」

 

「うわぁっ!?」

 

今ので完全にわかった、鬼だと警戒していたがこいつはただのアホなガキと同じだ。たっぱが完全に成人かそこらだが………

 

「…………何もできる遊びなら言葉遊びがある、物語ともいうが。聞いておけ…………」

 

ならすこしぐらいは、紙芝居にたかるガキを相手にするように話しても良いだろう………

 

 

「こんなのがあるんだねーあと江戸となったというが天皇様じゃないのかい?」

 

外にはこんなのが新しくできたのか……!全く人と墓守のときいがい関わる事が無かったから気が付かなかった!

 

で徳川様って誰……全く聞いたことのない、新しい天皇様なのかなちがう?

 

「今は江戸だ………、まぁこういう物もあるってことだ。弟が琵琶の弾き語りをしていた。」

 

「していた?」

 

しているのかと思ったけど……していたなのか別のところで働いていたりするのかな?お寺に入っているとかもありそうだなぁ……江戸時代になったってことは大きな何があったのかもしれないし。

 

「………お前達のような鬼に食い殺された。」

 

「……なんかごめんね、身に覚えがないけど。」

 

「この山で喰われた訳じゃないから、お前の口には入っていないことは俺でもわかる。気にするな。」

 

そうじゃないとこんなところにわざわざ来ないよね、これから話すときに気を付けないとなぁ……

でもあの物語ってお話楽しかったな……弟さんも物語をずっと言ってたのかな?もし人間だったら話を聞きにいけたのかなでもその頃にはもう死んじゃっているか……

 

こういうことを一長一短と言うのかもね?

 

 

そうして最終選別の7日に、彼は刀を十何本ほど持っていって山を下っていった。

 

……………それからその後の選別を何回か行われたのち、

 

選別で生き残りたいのであれば、まずどこかにある小屋を目指せ。そうすると何本かの刀を背負って降りてくる。

 

という噂がたつのはその鬼の耳に届かないところで、密かに語られ紡がれていくのだろう。




まだつづくよ!


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これはいいお手前で。

多趣味になれば楽しい。


あれからしばらくして、刀を来た人達に山の下に運んで貰う代わりにお世話をしていた……何度か首を落とされかけた。

 

泣いた。

 

あとそれで致命的に調味料と塩が無いことに気がついた、一度料理を振る舞ったとき鬼のため味見が致命的に出来ず生で食った方がましな汚物ができた、食った人は腹を下してた。

 

「でもやっぱり何かを作るって楽しいなぁ………」

 

あれから最初に会った人から聞いた物語を自分なりに何個か作ってみたり………例えば鬼と人の恋とか、鬼を狩るもの達の日々の話とかまぁ身近なところに題材があるものからチマチマ書いていった。

 

そうしてまた来た人に見せていった、感想とか貰うの楽しいなぁ聞いていた人はほとんど固まってたけど。

後この山に来ている人間はやはり鬼に身内や友人を喰われてしまったものがほとんどだった……でも寂しいし怖いけどとても楽しいから止められない。

 

「……やっぱり味がわからないからなぁ。」

 

人間の骨の味ならば鬼で一番わかっているという妙な自負ならあるが……ちなみに今作っているのは味噌である。野良のなにかよくわからない豆を見つけて育てて塩ぽいものと一緒に混ぜてる……これを味噌汁?みたいなものにしたら前の二の舞にならないであろうか?

 

完全に土みたいな色をしているが、コレが食べ物なのか?

 

「さて仕込みはコレで良いだろう……」

 

そうしてまた昼間の楽しみの刀部屋に向かう、最近見るだけではなく手入れにも拘っている……植物から油を取って刀に塗る。本来ならば椿油を使うとが聞いたが無いため花を育ててそれで代用している……

 

「やっぱりこの刀綺麗だなぁ……」

 

運んでもらっていることもあって、すこしづつ減ってはいるがやはり全部を手入れすることも考えると結構な量だ………だからこそ壮観であり見て楽しめるのだろうが。

 

「赤 青 黄 緑 灰………本当に綺麗だなぁ、集めかいが本当にあるよ

あっやってみようかな……」

 

唐突に思いつき、青い刀身を持つ刀を手に取り掘っ建て小屋で一番に広い場所に向かう。

 

呼吸というものを目の前で見せてもらった事がある、動きがとても綺麗だった……刀身が水のように炎のように揺らめいたり、雷のように轟くように岩のように……さまざまな姿を見せてくれた。

 

それでちょっと自分でも刀を振ってみたいと思ったのだ、基本的には倒すとかそういうのではないので観賞や趣味に近いのは当然であるが。

 

「よいっしょっとこんな感じでいいかな……?」

 

見よう見まねで構えを取って、刀を振るう………使うと刀身が水のように揺らめいて見えて只見るだけとは違う美しさが確かにあったでも見せてもらったときのあの感動には遠く及ばない。

 

「やっぱり、経験者とかっていろいろ違うものだなぁ。」

 

何回もやればあの綺麗さ自分で何度でも見られるのなかぁ………お月様が出たときに外で降ってみようかな、ここ室内だし。

そうやって足元を気にせず、カランと置くと。

 

「いってぇっ!足の指が足の指がすっぱりっ取れてる取れてるじゃんコレ。」

 

足の親指をすっぱり落とす、この鬼は刀を芸術品のように見ていたが鬼を殺すための武器しっかり凶器なのだそれは主が死のうが変わろうがその本質は変わらないというのに。

 

「あー人だったら重症だなコレ……」

 

でも怪我をしたのは鬼、そして振るったものも今は鬼である。その切っ先は首には向かず、それ以外はすぐに直る人間にとって絆創膏を貼れば終る擦り傷のようなもの。

 

それはコレにとっても例外ではない。

 

「部屋汚したくないし、ついでにご飯も取るか……」

 

じわじわ痛む足を刀を置き去りにしながらちょっと引きずり、いろいろな物を雑多においてある物置から自分の畑取れた綿から作った布と糸で足を包み止血する。

 

「さてここだっけな……」

 

多くある小箱のひとつを開けて、粉を指でつまみ口にいれて食べる……人間の骨であるがまぁ殺して取ったものではなくもともと死んでいた者をとったやつだ。

食べ残しを取っている……命は大切に頂くとここの人間達もそうなのだからこっちも同じだろう。

 

あっ骨ばっかり食べているわけではない、野うさぎや猪の血は飲んでそれ以外は干し肉にして骨もきちんと最後まで食べている。

 

人間の骨は本当に必要な分だけだ……この山ではいくらでも手にはいるわけではないし、これが切れた瞬間から自分の命が危うくなる……だからある程度もう貯まっていてもずっと人間の骨や肉の食い残しを見たら集めている。

 

「今日はこれで満足だね……後2から3日まで食べないようにしよう。」

 

食べないように、血で印をつける。気を付けないとつい食べそうになってしまう。

 

「今日はまた、なにしようか。」

 

夜になったら畑の手入れをしよう、そしてまた骨集め………骨集めは人が来たとわかった後の方がいいかな……

 

来なければ当然ないわけだしそっちの方が明らかに効率がいいよなぁ………って何で今まで気が付かなかった!長生きし過ぎて頭がボケてたかっ!

 

「今まで、少ないときにでも探してたなアホかよ……」

 

でもこれで趣味やらに更に時間を割けると考えたらまだいいのかなぁ……これを思い付いた偉いっといった方がいいか。

 

「………夜になるまで刀を見てよ……」

 

自分の足の指を斬った刀を回収してまた刀部屋に戻る、いくら見てても飽きがこない。

刀鍛冶さんにあって話がしてみたいなぁ………

 

あっ最近鬼の数増えてきたなぁ……外の人達に捉えられたのなぁ……なるべく食べ残ししてくれると助かるけど。




狐面サーチのお方入りました。


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お医者様はいませんかー?

いやいない場所で言われても………


夜になり丸々お月様が出てくる。

 

部屋が暗いし鬼になって夜目が効くようになっても暗いから、油を器にいれて紐に火をつけて灯りを灯し外に出る。

 

一番に視野が効くのは、雨の日だ……それなりに明るいのに死ぬ心配がない。木製の手作りの鍬を持って、畑を耕し広げていく……ちょっと最近使う量が多くなってきて足りなくなったのだ。

 

「相変わらず……の用だな。あの泥水からどうにかなったか?」

 

おうちに天狗が来た。

 

「えっまさか直々に首はねですか、猟奇ですかっ!?」

 

「何でそうなるんだ、すこし鬼をここに流したついでに様子を見に来ただけだ。」

 

あーもう島流しするほどの腕前かー、島流しじゃなくて山流しだけども………こっちはまとめて袋叩きでおくられたからなぁ。一応味噌?をみて貰う。

 

「あっ前に言ってたやつ、作ってみた。」

 

「これ只の酷く腐った豆だろ。味噌といったらこの世すべての味噌に失礼だ。てっ臭っ早く捨てろ。」

 

やっぱりなんか違っていたようだ。味見ができないのだから仕方がない、というかしてもよく分からない。

 

「やっぱり来ててよかったな……これでなにか食い物でも作ろうとされたらたまったものではない……あの泥水喰わされたあと山を降りたときに医者の世話になった。」

 

「はじめての料理だったから、勝手が掴めなくてねうん。」

 

いつもは、キュウリやら大根やら川で洗ってそのまま出していたが何かやってみようという気になりやってみて失敗した。

失敗は、成功のもとだというし何度も恨み言言わなくてもいいと思う。

 

とりあえずこの作った味噌擬きは、後で畑に捨て土に混ぜよう肥料ぐらいにはなるだろう。

 

「で………塩と砂糖だけ持ってきた。」

 

「二つとも、とても白い砂だね。ジャリジャリしてる。」

 

天狗のお面の青年は、小さな袋と大きめの袋をこっちに渡した中身を見ると二つとも砂が入っている。二つとも指に唾液をすこしつけ舐めてみるとジャリジャリしてる、これはやっぱり砂のようだ。

 

「砂ではない調味料だ!」

 

「人ってこんなものでやるのかい、まぁいいやどっちがどっちなんだかわからないや二つとも同じに見える。」

 

シオとサトウと分けて言うのだから違いはあるのだろう、同じであれば分けて渡さずに一つの袋で十分なはずだし。

………料理の時に調理せず、渡してもいいかもしれない。

 

「……大きい方が塩、小さい方が砂糖と覚えておけ。あと漢字一文字が塩二文字が砂糖だ………これだけ言ってもお前の場合間違えそうだがな。」

 

「いやぁそれほどでも……」

 

「誉めてはないからな。」

 

誉めてないことはこっちでもわかるけど、そうでもしないと精神面が持たないからだから許して。このサトウとシオっていう砂は物置にでもいれておこうかな容器が違うから自分の食糧の人骨とは間違えないだろうし……

 

「あっ刀持って帰る?折れたのとか新しいのいろいろあるよ、本当に個人的なことなんだけどその天狗の仮面すごいねーおうちで飾りたくなるなー。」

 

「刀は持って帰る。面は手作りだ……掘っ建て小屋たてられるぐらいに器用ならお前が勝手に作れるだろう。」

 

「ケチだなぁー直接とっちゃうぞー。」

 

本当にいいお面だ、刀部屋と同じところに飾ってならべたくなる。そういえばちゃきっと刀を引き抜く音一つした。

 

「首落とすぞ……?」

 

「や め て 泣くよ本気で?」

 

あれは本気で首落とそうとしてた、なんか沸点やけに低くないかな?なんなの鬼だからかな、まぁ鬼殺す人達だしおかしくはないんだろうけど。

 

「分かればいい。」

 

「じゃあ折れた刀一箱持っていくねー、ゆっくりしてて待っててー。」

 

その場の話を切って逃げるように刀部屋に向かう。

あのまま下手に会話を続けていたら首を落とされてもおかしくはないからだ。

 

刀部屋にある折れた刀を詰めた箱は3つ、そのうちの1つを持って渡す。鉄の塊だから当然重いが男は軽々と持っている、人ってすごいなぁ……外にはこんなのがうじゃうじゃいるのだろうか?

 

そう考えると逆に山中は安全なのかもしれない。

 

 

はじめて会ったときからこいつは、可笑しな鬼だった。

 

あの最終選別の時、偶然この掘っ建て小屋を見つけ昼間だったこともあり警戒しながらも体を休めていたときだ。

 

「天狗さんかー?あっお面か、この山で天狗見掛けたことないし……見られたら楽しいのだろうけども。」

 

小屋の中から、物珍しそうな物を見るような目でこちらを見つめていた。

そこにはこの山の鬼の雰囲気では明らかに無かった、喰らおうとする様子や素振りが全く見えなかった。

 

「鬼か!」

 

「鬼だよ?」

 

なんとも不毛な会話である。

 

こんな緩い会話をする鬼と鬼狩りの卵が今いる。

 

「……喰うつもりか?」

 

「そう思うなら、こっちの気が変わらないうちに夜になる前に逃げた方がいいよ?」

 

嘘だ、それははっきりと分かった。

喰うつもりならば、夜のうちに外に出て昼間でも暗い場所で獲物を待てばいいのだ。

 

「……分かった逃げはしない。」

 

「よかったよかった。そんな君にお願いがあるんだ、料理作ってみたんだけど味見してくれないかな?」

 

そうして、腹を下して一日を過ごした。あの味はずっと忘れられない、簡単に言えばドブ以下のヘドロのような味だった。

 

そうして詫びがなにか知らないが七日たつまでひたすらに鬼は慌てていた。そうして体調が治ったとき刀を持たされ下山した……

 

それでまた、塩と砂糖を持って来た。

 

あの鬼は変わらなかった。




基本的には、刀みて楽しんでます。


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ヒト想わば、夢をカタル

生きていれば儲けものである、誰が儲けてるかは知らないけど。気にしても仕方がないけどね?


シオとサトウを貰って、庭に混ぜてすこし置くとアリが集まって綺麗にサトウだけを身繕い咥え持っていく。

 

その様子を見るのがとても楽しい。

 

一応白い砂は調味料らしいので無駄遣いは出来ないが、大分暇を潰せる………3日ぐらいずっとそれだけを眺めて減る様子を楽しんでいた。

 

でもサトウが失くなってしまったらしく、アリが寄ってこない……もう楽しめなさそうだ。

 

「さて……散歩にでも行くか……」

 

鬼も大分集まってきて、そろそろ鬼狩りの子供達が来る頃で鬼とかも興奮し危ない時期ではあるが……

 

別に獲物の横取り等をしなければ共食いにはほとんどならないし、人もある程度避けられる。この山にずっといたからある程度の暗黙の規則やそれぞれが集まりやすい場所等肌で分かっている。

 

たぶんこの知識は、食糧を多く得るつまり殺すことに大きく役に立つだろう。だけどわざわざ食らう分以上とっても吐くだけで美味しくもない。

 

つまりわざわざ痛い思いして、狩りに行く必要性を全く感じてない。必要とあらば、遠慮はするつもりは全くないが。

 

「さて……ネズミやらウサギでもあればいいが。」

 

そうやっていろんな所に仕掛けた罠を確認する、ここにいる他の鬼は人の肉ばかりに飢えて代用品を探さないからもともと山にすんでいる鬼が食べられる動物は減らないから食い潰してしまう心配がない。

 

実際、主食を動物にして人を減らしているものなぞこの山では自身しかいないだろう。

 

「おっ一匹……スカよりはいいな。」

 

縄に足をとられじたばたしているウサギが一匹……大きさは子供ではなく成長しきってる。ならこれから赤子も増やさないだろうし逃がす必要もないだろう。

 

折れた刀の先を木と縄で挟んだだけの簡単な刃物でウサギの喉元を突き刺し絞める。死後の直前の痙攣か体が震えていた。

 

かわいそうと思うがまぁ仕方がない、食べなければ生きてはいけないのだから。一滴も無駄にしないように、血は木で作った箱にいれる……干し肉にも出来ない生ものだからしばらくはこれで生活することになるだろう。

 

「今度は別の場所に後で仕掛けることにしよ、たぶんしばらくしないと取れない。」

 

しばらくはここでウサギやらは掛からないだろう、野性動物は勘が鋭いし頭は悪くはない特に自身の危機には……何度も同じ手は通用しないと言うことだが。

 

「……人の血の匂いか……誰か怪我したんかな、鬼がいる場所でもないし。行ってみようかな……」

 

 

「後すこしなのにっ、なんで!なんで!」

 

俺はこの山で6日間でいたんだ、終わりが見えかけていたんだ………

 

「やっとここまできたのに……クソッ」

 

足が抉られ、大量に出血している。飢えた鬼からやっとのことで撒いたがこのまま出血が出血を服とかで抑え一命をとりとめたとしても………

 

この足では、鬼から身を撒くことも戦うことも出来ない………死ぬだけだ……

 

「………………」

 

寒い……鬼に生きたまま喰われるよりは、このまま安らかに死んだ方がいいかもしれない。

 

ごめんごめんごめんお母さんお父さん出来なかったよ……そっちに今逝っちゃうね、早すぎるよね?

 

「うわぁっこれはひどいねぇ……」

 

俺がぼやけた視界で最後に見たのは、

 

白い服を着た鬼だった。

 

 

 

 

「…………?!」

 

二度と目を覚まさないと思っていたが、見たことのない天井だった。俺は布団に入って寝ており、部屋は普通のものとは違い完全に日の光が遮断されていてほの暗い。

 

「服が変わって……いっつぅ……」

 

服があの最後に見た鬼のような白い浴衣に変わっている。すこし体を動かすと酷い痛みが走る。

 

あの世までの長い夢でも見ているのかと思ったが、それは足の喰われて抉れた様子から現実だと認識する……

たがその足には血のにじんだ白い布が縛ってあり止血をしていた、誰かがやったのは間違いがなかった……

 

「刀はどこだ……」

 

足を引きずるように布団から出て周囲に自身が持った刀無いか探すが…………

 

「武器は取り上げられたか……」

 

刀は見当たらない、どうやら武装は許されないようだ……というか本当にここはどこだ?

俺は山にいたはずだ、山に建物があるなんて聞いたことがな……いやあった本当に噂程度の物だが。

 

選別で生き残りたいのであれば、小屋を目指せとそうすると刀を持って山から降りてくるという話だ。

 

「……いろいろ見て回るか……」

 

もしあの鬼の住居だとしたら、きっと何かあるはずだそして俺の刀を早く取り戻さないと……痛む足を抑えながら歩く。

 

まずは刀を見つけないと話にならない。人はあの刀が無いと鬼に歯すらも立たない。

 

「ここがまず一つか。」

 

一つめの部屋を見つけ開ける、そこは雑多に物がおいてあった……木製の農具。

そしていろいろな箱……それを一つ一つ開けてみてみると白い粉が入っていた……人を殺すための毒かもしれない。

 

そのとなりには不自然に塩と砂糖と書いてある袋が置かれている……正直に言えば訳がわからない。

 

出ようそして次の部屋を探そう。

 

「にしても……修復痕が多いな……」

 

注意深く見ると、新しい木と古い木が混在している……何度もダメになった部分を直して棲んでいるのだろう……この山にいる鬼は短命の者が多いはずなのに。

 

「次はここか……」

 

そこには、さまざまな日輪刀が飾られていた………色別に壁に立て掛けられていて素人目から見ても日々の手入れがよくされていることがはっきりとわかった。

 

だが家主は恐らく鬼だぞ……なんで……でも、これは俺の物とは違うが刀はここで手にはいる。

 

俺は立て掛けられてあったものを一つ手に取り振るう、俺がいつも練習していたものとは感覚が違うがないよりはまだいい……

 

「ここにも箱か……まだ痛むか……」

 

中をあけると折れた日輪刀が大量に詰め込まれていた………飾ってあるのは状態のいいものだけということなのだろう……

 

まだ足が痛い、とても走れないだが……不意打ちをすればまだ先は見える……

 

「…………次は……」

 

それ以外にも部屋を見ていったが……明らかにほとんどつかわれていない台所以外は只作っただけのなにもがらんどうなものばっかりだった……

 

「部屋には居ないか……」

 

……部屋はこれですべて見たはずだ、後は外に行っているかこの中を移動しているか……

 

「いやぁ……この刀、波紋が美しいね……乱れ刃が珍しい夕暮れのような赤の色の動きも美しいし……今日の月によくあう。

 

折れてなくて良かったよ……目覚めるまで飾っちゃおうかな……?」

 

いた、最後に聞いた声と一緒だ……

 

そいつが俺の刀を観賞していた。

 

完全に言い方が、刀か何かを趣向とする人のそれであるが鬼である。訳がわからない、人生で一番混乱しているかもしれない。

 

だがここは一番の隙だ逃がすわけにはいかないっ!

 

「(ゆっくりと気づかれないように近づいて首を落とせ。)」




今回はちょっと長めになってしまった。


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鬼の目にも涙という。

こっちはいっつも泣いている気がする、いやぁ固定概念は強いものだね。


「うーん目を覚ますかは運次第かなぁー」

 

とりあえず身に付けていたもので出来るだけの止血をして、運んでできる限りのことをして布団にいれたが……

血の流れ方が酷かったこともあり、目覚めて生きるかはよく分からない。

 

まぁ死んだら死んだでゆっくりとチマチマと骨まで余さず頂こう。お互い命は大切にしないといけない、こっちも食べないと死ぬのだから。

 

「刀は一旦こっちで預かるか……」

 

目を覚ましてすぐに刀持ってまた出ていったりしたら本末転倒ぎみになるし……さてあんまり考えずに行動したがどうするか。人骨は持っているものは全部粉にしているし。

 

深く考える前にゆっくりと腹ごしらえでもしておこうかな……ウサギの血腐ってしまう。

 

「やっぱりここから見る月が一番綺麗だなぁ……」

 

ここの掘っ建て小屋を建てるときに一番気を付けたのは月が綺麗に見える場所があるかどうかだ。鬼になってから月が好きだった、最も身近な明るくて綺麗な物だったからだ。

 

今では刀集めや、お話を考えたりとかあるが……あの頃のほとんど趣味がなかった頃は月を見ることが生きる意味であり動機だった。

 

「さて……」

 

預かった刀を横におき、ウサギの血を飲む。血は残念ながら保存が効かない、だから今日一日で何回かに分けて一匹分すべてを飲む………

 

「上手くいったら、近くでお魚でも取ろうかなシオやサトウとやらもあるし間違いはないだろう。」

 

もし目を覚ましたらその分の人のご飯を用意しないといけない、足が動かないうちに出したらすぐ殺されることが目に見えているからだ。回復するまでは出さない。

 

「やっぱりそれなりに量もあるなぁ……、干し肉にするためには無駄な血抜かないと腐るけどさ……」

 

適当に四回ぐらいに分けるか。吐くと勿体ないどころではないし……さて……

 

「いやぁ……この刀、波紋が美しいね……乱れ刃が珍しい朝焼けのような赤の色の動きも美しいし……今日の月によくあう。

 

折れてなくて良かったよ……目覚めるまであそこで飾っちゃおうかな……?」

 

刀を引き抜き、眺める………乱れ刃の物は長く刀を集めてきたがはじめて見る。

赤のいろ……夕暮れいや朝焼けの色だ、まさに日に弱い鬼を殺すのにふさわしい刀のように見えた。

 

折れてなくて良かった、折れているときちんと飾れないから……本当に。

 

「あれっ?」

 

刀を振るう音がして後ろを振り向く、そこには刀を持ったあの人が首に目掛けていた。

 

「ゆっくり休んでないとダメじゃないかー、ここまで歩いて痛かったでしょー血も更に滲んでるし。これはまた布が取り替えないとかなぁ……」

 

本来感じる恐怖も無いぐらい楽に反応できる鈍い一閃だった。

向けられた刀を二つの指でつまむ。

 

ここに来る鬼狩りの基本ぽい呼吸とやらも使ってないようだし……

 

それに毎日欠かさず手入れしているお気に入りの刀の力が入りやすい部分や重心などの特徴ぐらいはしっかり理解している。

 

「………………」

 

なんかものすごく絶望というのかなそんな感じの表情していらっしゃるけど……そのまま死んだりしたらめんどくさいし嫌だよ?こっちが殺したとかナンヤカンヤやられて復讐とかになったら怖いし。

 

「取って食ったりはしないよ、食べるならあの時にとっくに喉元に噛みついているだろう?刀下ろしてくれるかな、君の刀はまだ預かるけど………

 

君の足の怪我がしっかり治ってから返すよまたは奪えるようになりなさい。だから早く刀返して欲しかったらまずちゃんと歩けるようになるまで寝てたほうがいいよ。

 

たぶん家にある刀持ってそのまま外に出ても……死ぬだけだし。」

 

すこし離れて、刀をしまう。足を怪我しているから動くのも辛いだろうし。

歩くたびに痛み止もここにはろくにないため激痛が走るだろう、そう考えるとここまで歩いてこられたのは彼の一種の才能みたいなものなのかもしれない。

 

「わかった……俺がこのまま外出ても死ぬだけなことは俺にだって分かっている。」

 

「うん分かれば良し、あと刀ちゃんともとの場所に戻してねめんどくさいなら置いてって。

 

あっ名前言うの忘れてた、墓守っていうよ頭のすみにでも置いておいてね。」

 

刀部屋から刀持って来たんだろうなぁ……他の刀の配置変わってないといいけど色順に頑張って揃えて配置したのだから。

 

こっちがそう言うと彼は刀を置いてって去っていく、素直に布団に入ってくれるといいなぁ………あっ足の布を変えるの忘れてたまぁ寝ているときに勝手に取り替えればいいか。

 

「さてご飯と刀観賞の続きだ。」

 

全く殺す気が無いのに刀向けられるし、当然殺す気でも刀向けられるだろうし………お話って楽しいけど難しいなぁ……

 

 

あの後、布を何度も取り替えてやっと血が収まってきた辺りで走る等の身体能力を戻す行為をさせた。

 

治っていないうちにやると、運動で血の巡りが良くなりすぎる。そしてまた出血する……それがめんど……うん大変だからね。

 

それなりには走れるようにはなっているようだ、呼吸とかは全くわからないため彼次第な所はとても多い。後ご飯は彼が勝手に台所を使って食べてる。

 

ちなみに食材はこっちが魚やらを調達している、まぁ外に出ることをちゃんと戦えるように戻るまで禁じているから仕方ないけどさ。料理の作り方もある程度わかってきたからまだいいかな。

 

「呼吸ってどんなかんじなの?」

 

「……………………」

 

「なに無視?家主だぞ、鬼だけど。」

 

昼間で出れない庭で、座禅を組みただいた。一時間もずっと同じ姿である、人の集中力は侮れないなとも感じた……まじまじと呼吸とやらの修行風景を見るのははじめてだ。

 

「よしっ刀を返して貰うぞ、墓守。」

 

「ここに来てから10日目だねー治りとしては早めかなぁ、鬼一人や二人ぐらいなら相手出来るぐらいには回復したかな……

 

まぁここに君の刀持ってくるよ。」

 

刀を持ってきて渡す、もちろん中身は入れ換えてはいない。いくら好みともはいえ持ち主がいるならばそれに降るって貰う方が刀は綺麗に見える。

 

「はい、コレ間違ってはないとは思うよ。」

 

「…………確かに俺の刀に間違いはないな。」

 

彼は刀を引き抜いてしっかり確認をとっていた。そこで疑われたら大変だからすんなりすんで良かった良かった。

 

「あっもう君がやっている最終選別?の期間終わってるだろうし言っておくね。ここを出て曲がらずに、まっすぐいけばそのまま下山できるよー。」

 

「…………ありがとう

 

「おいちょっと聞いてるー」

 

あっ行っちゃった、まぁいいか……終わってるってことは死骸大量に出来てるだろうし夜になったら骨やら食い残し集めにいこ。



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はっきり言ってコレはねぇわ。

怒るよ、やってらやぁっ!


あの後外出したら……家ぶっ壊された……。

 

何言っているかわからないが本当に事実である。たぶんこの山や鬼達だな……獲物取られと思ったかでも逃がしたのはそっちの方なんだよなぁ……。

 

「とりあえず、何日かに分けて必要なもの出すか……」

 

水はぶっかけられてないようだし、ある程度の物は大丈夫だろう……液体の必要なもの全くないし。

 

せっかく集めた食べ物に土がついてしまうのは取っても悲しいが……骨の粉はしっかり蓋をしているからコレぐらいであればまだなんとかなるだろう。

 

「4日ぐらいはかかるかなぁ……」

 

同じ場所にまた家を建てても、同じようにぶっ壊されるだけなのははっきり分かっている。

 

「また月が綺麗なところ見つけないとなぁ。」

 

今度は拡張がしやすい掘っ建て小屋建ててみようかな、しばらく暮らして手先やらも器用になっただろうし。

探すのは、刀何本と干し肉や骨もサトウやシオの食糧。刀折れていないと良いけどなぁ……。

 

「よいしょっと……」

 

瓦礫を外して、見つけては日陰になる場所に置いてを繰り返す。昼間になったら壊れた家をボーっと眺めているか土がついてしまった刀を服で拭っているかだ。

 

ちなみに集めた刀のお気に入りの何本かはおれてた、正直に殺してやろうか?という気になったし機会があれば首跳ねてみようと思う。

 

「しばらくは、放浪生活か……」

 

ぶっちゃけ寝ることがないから家の意味のない家であったが、それなりに気に入っていたのだがなぁ。

壊されたのは仕方がない。

 

「さてここから離れるか。」

 

月が綺麗な場所を探そう。……たぶんコレだけの荷物を一人で持てるって鬼としての身体能力なのだろう。普段あんまり使わないし当たり前だったから気にしてなかったが。

 

どれぐらい離れたところがいいだろうか? とりあえず人を多く喰らい始めている長と見られそうな鬼からはちょっと離れた方がよさそう、また壊されたりしたらこまるし。

 

「そういえば……下のほうの藤も綺麗だそうだなぁ……。見てみたいけどこれから見れるようにならないかなぁ……」

 

鬼にとっては毒でこの山から降りられない原因でもあるが……花は綺麗だ。綺麗な物は好きだし一目見てみたい。

 

「さて次はここでいいかな……日陰を辿ってきたがここで開くと日に炙られるな。夜になってからここの木倒そ。」

 

そうやって夜になってから木を斬り倒して……あっ刀あるやん。斬れるんかな……なまくらってことは個人的な見立てだけど無いだろうし……

 

「さて……そのままやってもつまらないし、これで斬ることにしよう。」

 

刀は使ってこそだからね、いつも通りに見よう見まねで構える。目の前にあるのは比較的細い木である……。最初に建てたとき殴り倒してたからなぁ……。

結構いろいろ構え見てきたけど、コレが一番しっくり来る。独学以外の何物でもないけどね。

 

「よいしょっと。」

 

まずは横に刀を振り斬る。刀本来の落ちない切れ味と鬼独特の身体能力も合わさり折れるように斬れるが……。

 

「うーん切断面が……この刀としては荒すぎるな、やっぱり技術的なものが足りないんだろうなぁ。

 

美しく揺らめいても居なかったし。刃零れしちゃいそうな切り方だね……うん。」

 

刀は血濡れ等もあり三回も人を切ればろくにきれないというが、この刀はすこし別のようだ……。たしかに血痕などは拭う必要はあれど連戦に対応できる耐久はありそうだ。

 

木を今切った感覚からわかるのは、確実に鬼の首を斬るには技術もろもろが足りなすぎるという事実だ。

 

「あの家を壊したやつ皆殺しにしたいんだけどなぁ…!」

 

鬼同士の戦いは不毛である。日光以外にろくに倒す方法が無いのだから。だがこの刀を使えるようになればかなり優位に進められるだろう。

 

個人的に平和主義であるが、今回のは本気で怒っている。

 

「……全部これで切ればそれなりにはなるようになるだろ……呼吸?っぽいものもやるか。」

 

たしかなんか空気とやらの吸ってやる奴だよな? 手順やらなんやてんで見当もつかないし分からんが。

 

「すーはーすーはー」

 

コレで強くなるのか? なにかあったりするのか、てかコレで身体能力上がるってすごいな人。うん人かこれ。人という名のナニカじゃないのか………

 

そこら辺気にしたらダメな気がしてきた。

 

「どっこらしょ……」

 

やっぱり変わらねぇなコレ……荒いままだ。でも人とやらはコレを使って鬼を退治しているというし嘘ではないと思うから続けるしかないか……。

 

その後広げるまで呼吸して切っては、夜になるまで日陰にいて切っては夜になるまで日陰にいてを繰り返した。そしてだんだん荒いままのため日陰にいるときに斬る動作を脳内でやりはじめた。

 

何百回何千回も脳内で繰り返していた。

 

呼吸をして人が強くなるのだから、鬼だけが例外ではないとずっと思った。そして……。

 

「…………! やった木目が荒くない!」

 

今までとはちがい木目を荒くせず斬ることができた。そして鬼狩り達がつかう呼吸を覚えられたと思っているがそれは違う。

 

鬼狩り達が使う呼吸ではない。つまりただの吸って吐くを無意識に行うのをやめた深呼吸をして斬っているだけである。だからろくに成長も何もしなかったのである。

 

じゃあなぜ今回は上手くいったのか? それは、そう思い込んだということが大きい。鬼としての能力の無意識下でしている制限をはずす行為を深呼吸という動作を用いてしてしまったのである。

 

だがそれは本人は全く気がついていない。

 

「さてそれなりにいい空間確保できたし……家もう一度たてますか。その後前のやつ壊したのぶっ殺す。」

 

だってその間違いを訂正する人が誰一人として居ないこの飢えた鬼だらけの山なのだから。




お引っ越し。そして(深)呼吸の習得。理論的には呼吸術でもなく只のプラシーボ効果である。

アンケートは10話までにしたいと思います。


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鬼が鬼を殺すとき。

共食いとかあるから可笑しくはないけど、変なものって特別扱いされやすいよね。


無事鬼狩り達の技である呼吸を習得した為、とりあえず家壊したやつの首を跳ねようと思う。

 

というか跳ねる、確定事項だ。

 

いくら距離を離したところに建てても、また見つかったら壊されるだろうし……別に鬼狩りが殺しているのだからとやかく言われたりしないだろう。

 

「さて……いるであろう場所はもうアタリはつけてある。」

 

前の家から、何となく拾った物があるあたり。山の場所は長くすんでいるから把握している。

殺したら、ついでに前に仕掛けて回収し忘れた罠も確認していこう。

 

「残らず……いや残さず。」

 

悪意ってものは根本から殺すか、なだめるかの二択しかない。ここの飢えた鬼たちは話が通じない。楽しいお話が出来ないのだ、だから根本から潰す。

 

「さてさてここまで待ち構えるか……」

 

よっぽどの修練者出ないと気配で気づくとか気違いじみたことはしてこないだろう、何回かそれをしてくる鬼狩りの卵は見かけたが…………

呼吸関連ならば、いつか出来るようになるかもしれない。

 

「さて……すー」

 

一つ呼吸をしてから自分の腕を刀で切り落とし、餌とする。

 

本当は人間の肉の方がいいだろうが飢えた鬼だコレでも食い付くだろう。

とても痛いが、血も垂れてはいるが………家壊された怒りを解消できるとおもえばものすごく安い。

 

あっちょうど食らいついた。

 

「お前か!家壊したやつシネやっ!」

 

登った木から飛び降りて、首を跳ねる。すると燃え尽きるように体をすべてが消えた……

 

「そういえば鬼が死ぬ様子始めてみたな……」

 

なんか死体やら残るものかと思ったら何にもなくなるんやなぁ……いやぁ不思議不思議。

 

質量問題とかどうなってんだこれ。食っていた人間のものすらも残らないのか………

 

「こっちも死んだら同じか……よくよく考えれば人も置けば腐る。ならあんまり鬼も人も死に様は変わらんな。

 

さて次行くか。」

 

まだ殺さないといけないやつはたんまりいる。恐らく家は何回かに分けて壊されたいや何人かが壊した……鬼は協力ができないから最初に壊したやつで後から来た奴何人かだろう。

 

壊し方からだいたい六人来たのか………

 

後五人ぶっ殺せば安全だし、スッキリするのかなぁ。最初に殺したときに何かあるか思ったが思ったよりも何も思わなかった……なんというかウサギの殺すのとあんまり変わらん。

 

人の子だとそれもまた違うのだろうか。

 

「さて」

 

後五つか……もう5回分腕ここで斬っちゃおうかな……、でももって歩くの面倒だしなぁ殺す前罠仕掛ける直前に斬って新鮮な状態で提供するか。

 

最後のご飯だしね、新鮮な方がいいよね。

 

それぐらいの慈悲はある、だから楽に殺してほしい抵抗してくれない方がいいねー。

 

「だから………さっさと殺されて死ね。」

 

鬼がここら辺で見ていた気がした、正直に勘ってものは案外当たるものだ木を斬り倒したら鬼が潰れた。

 

「ぐぁぁあ?お前……お前っ」

 

「お家壊したよね?」

 

念のためお話ししてみよう、こいつがお家壊したことはほぼ確実だけど……

これからお家壊さないのであればちょっと内臓弄ったり切った肉を直接食べさせるとか痛い目見せるだけで許してやろうと思う。

 

「お前が獲物を横取りにするからだっ!お前が食べたんだっ美味しかったろっ!」

 

「いやだからお家壊したの?」

 

「お前が悪い、お前が悪いんだっ!」

 

話がやっぱり通じないなぁ、でもこの様子だとまたお家見つかったら壊されるだろうしなぁ……五月蝿いし。黙らせよう永遠に……

 

「お肉いる返答は聞かないけど。ちゃんと味わってね、久しぶりの肉の味だろうから喜んでもいいんだよ?」

 

とりあえず自分の腕を斬って口に入れてあげる、突っ込んで出さないようにもしてあげる。

 

「ハハハ、下手に動かないでね。きちんと斬れないだろうから。」

 

何度も刀振り下ろすのは、こっちも疲れるからね。

 

 

あの後呼吸を使って見つけては追いかけ回し鬼を殺して、昼になった……

 

変な日陰に入ってしまったせいでろくに動けない。夜になるまで体育座りで我慢するしかない……

 

動いたら死ぬ、太陽で。

 

思ったが傘とやらを作ったら昼間でも自由に動けるのではないのだろうか……かなり危ない試みではあるが。

 

「うん刃零れなし……にしても呼吸って大分疲れるなぁ、鬼でこうなのだから下手に使うと呼吸で死んでいる奴もいてもおかしくはないなぁ………

 

関係のないことだが。」

 

呼吸を使って鬼を殺したが、大分に疲れた……何も考えもせずに変な日陰に入ってしまったことからも言える。コレで家を立て直す体力残っているだろうか………

 

「ご飯家建てる場所に置いてきちゃったなぁ……、戻ったらすぐ食べよ珍しくたくさん食べたい。」

 

ウサギの干し肉三匹分は軽く食べられる気がする。普通の鬼って人間一人ぐらいはペロリと食べられるってすごいと思うんだよねー、そこまで食べられる気がしないし……

 

強くなるって言っても、体が受け付けないものを無理矢理食っても面倒くさい。

 

「さてさて……いつ日がくれるかな。」

 

それまでに体力が戻ったら万々歳だ。

 

そうして夜になって、建築予定地(仮)で初めて鬼を殺した記念にウサギの干し肉を大量に食べる。カビとかは気にしない気にしたらほとんどの奴喰えなくなる。

 

「明日から頑張ろー」

 

骨の粉を舐めて一息つく、今日は頑張ったし次の日の夜になるまでだらけてしまおう。

そんな日も必要だ、眠る必要がない鬼でも。精神が死んでしまえば生きてはいない。精神は肉体とは違いすぐにはなおらない、だからこそ赴くままに動く。

 

「時間を無駄する、それこそが贅沢だからね。」

 

うん今日も月が綺麗だ。三日月だな……ここも月が綺麗に見える場所だ。

家を建てればコレが毎日見れる至福だねなぁ。




(しているのはただの深呼吸である、疲れはリミッター外した反動である。)


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破片を組み合わせる。

良いものなんだけど何故か壊されてるんだよね、あれもほしかったけどコレもまたアリ。


家を建ててしばらくは特に壊されることもなく、平和だった。まぁ人がポンポン鬼もポンポン死ぬこの山で平和というなんて頭にお花畑と蝶が飛んでいるかナニカでしかないのだが。

 

「にしても最近食い残しが少ないな……」

 

人の骨とかは三年分は軽く見積もってあるが、この山の鬼が骨までバリバリ食う奴が増えたかまたはそれぐらいの軽くできるぐらいに図体が大きいものがでたか。

 

「でも食い残し自体は見つかるからあんまり困らんかなー、備蓄できんのがあれやけど。」

 

ここでは人は貴重だ、食糧的な意味がほとんどを占めるけど。

 

「鬼とか食べてみたいけど、首切ったりすると消えちゃうんだよなぁ……なに踊り食いだけ可能な食い物ってものすごく大変な気がする。

 

って鬼って食い物か?人喰ってるんだからそこら辺は深く考えなくていいか。」

 

上手く食べられれば食糧なんて気にしなくてよくなるのにな……集めるのそれなりに大変だし。

 

家のなかに鬼一匹とらえて脚とか首とかに杭打って動けなくしたらいけるかな……集めた刀の試し切りとかに使うのも面白そう。

 

いけそうだけど、ギャーギャー五月蝿そうだから嫌だなぁ……刀や月を見るときは静かなときがいい。

 

それにもし襲ってきたら怖いし、せっかく家壊させる可能性減らしたのに増やしちゃうし。

 

「獣用の罠の確認と仕掛け増やしてこよ、これからより人のもの少なくなるだろうし。」

 

場所が変わろうがしていることは前とあんまり変わってはいない、刀を見て月を見て……猪やらネズミやらウサギの獣を取って血肉を啜る。

 

そしてたまに来たりする人達を首切られないように気を付けながら気まぐれに話したりするだけだ。

 

……前とすこし違うのはお気に入りの刀を前の家ぶっ壊されたときに何本か折れてしまって飾れていない事だが。

 

「今回はスカか……」

 

猪用の罠を見てみるが全く掛かっていない、というか今回のは獣用の罠全く掛かっていない……干し肉はまだあるし焦る時じゃないか、ちょっと残念な気がするけど。

 

しかも大分荒れている、ここで鬼とドンパチでも起きて獣でも逃げてしまったのかもしれない。

 

「うんコレをは模様つきの破片?」

 

すこし気になって拾うと周囲にそれっぽい木の破片が多くあることに気がついた、血痕がへばりついててそれぞれの模様は見えずらいが………

 

「上手く嵌めるとはまるな……集めるだけ集めて、家で合わせてみるか……血も温めた水で拭けばそれなりに落ちるだろう。」

 

ある程度の破片を集めてやれば、想像はつくからなぁそこを木片を砕いて接着剤で混ぜたものを詰め込んで成形すればそれなりのものにはなるだろう……

 

山で取れる塗料にろくなものが少ないのが難点だが。

 

「白は骨、朱や黒は血、緑は草を煮出すか、ミカン色はこの山のなる奴で何かあったかなぁ……」

 

拾った破片をすべて袋に入れる。

 

さて、罠増やしてから家に帰ろう………

 

 

「おっコレは……楽しい。」

 

出来上がったのはこの狐面だ……なんか前天狗面の青年が簡単に作れるとか言ってたから弟子か何かに渡したものかな?

 

だいぶ外の時間はたったんだなぁ、育手にでもなったのかな天狗面の青年育手ってなにかよく知らないけど。

 

でもやっぱり破片からの修復はちょっと無理な部分ができるなぁ……塗料不足も相まって破片が無い部分はちょっと歪んでるし当然色も違うし。

 

「刀部屋に飾っとこ……、修復するのに余った木で個人的に狐面でも作ってみるかぁー」

 

その後、お面の破片は人がくる度に見つかった。刀部屋にある修復した仮面は数が増えていった。

 

人とも話した。盲目の住職、抜けた忍者、蝶々のようなお嬢さん、燃える炎のような少年、力が強い桜の子、それなりの夢を目指す少年。

 

他にも話したけどあんまり覚えていない、今思い浮かんだのもあんまり覚えていない。

 

首落とされかけたけどとても楽しかった、後どぶから料理が薄味でまずい自然の味に振る舞ったときの感想や評価が変わった進展だね。

どれもが何かを抱えていた、まぁ話しても解決しないこともあるが話してある程度なら傷は埋まる。

 

それから自分で狐の面を、顔につけるようになった。誰かが顔で鬼だと思うと言われたから隠せば普通にお話しできると考えたからだ。

 

今のところその成果はわからない、積極的に会うわけでもないし気まぐれだからだ……自分の心はよくわからないから。

 

刀も増えてそして、渡して減って……いくつ集めたのかもう忘れてしまった。狐のお面だけは増えていく、刀と違ってそのまま捨てても近くの鬼に武器を与えないし危険も少ない。

 

「だけど捨てられないんだよなぁ。」

 

増えすぎたら捨てる、それが一番いいんだ……だけど何故か壊し土に戻すことが出来なかった。餓集癖がなすものかそれとも何かを思っているのか。

 

「……ここにお面の人がきたら渡すことにしようかな。」

 

刀は、同じ鬼狩りだから渡していたならお面は同じ修行場で育ったものに渡そう。きっと快く受け取ってくれるだろう。

 

「ハハハ、ここに来て寂しくなってきたかなもうずいぶんといるのにな……なんで生きてるんだろ。

 

でも生きるまでは生きよう、いつかは死ぬさ。」

 

精神的な死が目の前に迫っている妙な不安感にかられる、なんのために、生きてなんのために死んでいるのだろうか。問いの答えは考えても見つからなかっただから仮初めでも……

 

月を見て、自然を感じ、綺麗なものを沢山集めて、話を楽しむ、流れを見つめる。

 

そんな下らないこと達を答えとして出してもいいのだろう。




すこしメンタルナイーブに

今回でアンケート締め切りになります。


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錆びた刀

今日は運気が悪そうだ。


今日もいい月だ、曇りで全く空が見えないが……最近湿気が多い。刀の手入れにはかなり気を使っているが二本ほど長く持っていることもあり錆が出てしまった。

 

「雨の日は好きだが……それに付随する不便が嫌いだ。」

 

洗濯物が全く乾かないし、乾かせない。今はあらかじめ乾かしておいたものをひたすらに消費していく毎日。

 

血の汚れもとれりゃしない……

 

あっ勘違いさせたら悪いが人を殺し回っているというわけではない、刀の練習とかやるとよく自分の体を斬ってしまって血だらけになることがある。

独学以外の何者でもないから……自身で自身の首を撥ね飛ばしそうになったときはヒヤッとした。

 

でもちょっとやるぐらいなら自衛にもなってるしだいぶいい。

 

「雨の日って刀見るぐらいしか本当にない……空から水か降ってくるって幻想的で綺麗なんだけどな、実際に好きだし。」

 

今日は何を食べようか、猪でも食べようか獣の肉は心臓が一番好きだ。食感と味が強くて美味しい、だいたい生で喰ってる、人だったら腹でも確実に壊している自信がある。

 

まぁ死体喰らいで、新鮮さとかそういうものに最初っからあまりこだわってはいないのだが。

 

「……」

 

基本的に獣も食べるときは骨ごとバリバリ食べる、別に酷く硬いとは思わないし……気になりもしないでもさすがに皮までは食べないから。

 

ウサギやらの獣の皮をどうするか悩んでいる、今までは乾かし引っ張り伸ばして布団やらに直していたが……だいたい必要なものは作ってしまった。

 

「普通に捨てるか。」

 

そう短く決めた。思い返せば、餓集癖があるとはいえどそういうものを集める趣味ではないし特に必要もなかった。

 

「今日はすこし騒がしいなー、人さんが来てるのかな?大根とかはあるし干し肉は渡しても大丈夫だね。」

 

何となく人がいつくるか分かる、来るのは定期的だし……何より飢えた鬼達が騒がしい。だいぶ前では警戒の意味で使っていることが多かったが今はどんな話し相手がくるかの楽しみが多い。

 

首落とされかけるのは、相変わらず困るし怖いが。

 

それ以上の収穫がある、この山では娯楽が少な過ぎてなにもしてないと生きた屍になってしまう………

 

「いや 鬼 という時点で人の子にとっては生きた屍だ、我ながらなかなか面白く滑稽なことを思い付いた。

来たときに話の肴にしよう。」

 

とはっはっはと個人的に笑って噎せる、あーこの滑稽さを誰かと共有したい。だが今いるのは鬼一つ、返す人もここにはいない。

 

その事にまた鬼は嗤った。

 

「さて……来客か……」

 

おもえば人としていた頃もあったはずだが全く覚えていない、他の鬼たちもそんなものなのであろうか?

 

話さないし話にもならない奴ばかりなので分からないが、とりあえず狐の面で顔を隠し念のため刀部屋から一番使い慣れている刀を持ち出し呼吸をする。

 

「こんな雨の日に、登山とはなかなか大変だねーあと濡れた様子で家に上がらないでくれないかな木が腐る。」

 

「誰だっ!」

 

刀が引き抜かれる、だけども疲れもあるのか鈍く見える……たしかに雨のなかずっといるのは体力を持っていかれるのだろう。

こちらも刀を引き抜き、向かう刃を防ぐ………何回したんだろうかコレ深く考えると信用が全くなく悲しくなりそうだ。

 

「ここの家主だよ、山に住んでるんだ。あといきなり斬りかからないで…………ビックリするよ?というかビックリしてる。

 

お面つけてもダメかぁ……」

 

ここでお面の力が全くなかった事を知る、やっぱり一番は殺されかけること前提でそれなりにやっていくことらしい。うん泣きそう、というか泣きたい。

 

「……鬼だろ、お前……」

 

「いやぁ、こっちにも事情はあるもんだよ?」

 

「返答になってないぞ。」

 

「そちらだっていきなり斬りかかってきて返答になってないじゃないか、お互い腹を割って話そうじゃないかー

 

普通は腹を割ったら死にそうだが。」

 

お互い刀をギリギリとさせながら話をする、端から見たら片方は必死で斬りかかり……もう片方は余裕をもって煽るように捌いているように見えるだろうだが……

 

冷や汗は家主である鬼の方が凄い。

 

「鬼の言うことは、聞くに値しないっ!」

 

だいたいはそんなのが多いのに気がついた、当然と言えば当然なのだが……あんまり外を見ていないから感覚がずれていることははっきり分かる。

 

「いやいやそんなこと言わずに、ここで腹かっさばいて見せようか。」

 

敵意がないと思わせるためには、こういう風にやった方がいいのだろう多分きっと。

 

「頭おかしいのか?」

 

「いやだって、君は鬼に傷ついて欲しいのだろうからそれをするのが一番いいと思ったんだけど……?違うのかい。」

 

「俺は鬼がいるのが我慢ならないだけだ!」

 

なかなか難しい問題だ……どれを答えても鬼である時点で不正解とは、うん話ながらこの刀見ていたがなかなか波紋が綺麗だ……緑の線がよそ風のようにおぼろげに入っている。

 

どうしても話にならないし……アレやるか。

 

「わかったすこし……」

 

少し力をいれて、刀を弾き懐に入り込み肘で腹を突く……本来は刀でやる行為ではあるが。人間だと下手したら死んでしまう……ただ話し相手が欲しいだけなのに。

 

悲しいじゃないか。

 

「寝ててね。」

 

そして刀を持った相手の手首を強く掴み少し捻る……軽い捻挫ぐらいであれば三日ぐらいすれば治るだろうから許してほしい。

 

それから、頭を持っていた刀の柄の底で殴打した。

 

ちゃんと這ってはいるが大人しく寝ててくれたので、刀を取り上げ家の柱に縛っておく。何回ごだごだ言ってはいるが気にしない、今は雨だ晴れたらすぐに外に出す。

 

珍しく人が来ても……こんな風に追い出す回数の方が明らかに多いからなぁ……

 

気分転換に晴れるまで、新しい刀見てよ……ゆっくり見れるし。




たぶん女とか男とか墓守気にしてねぇぞ(性別忘れた。会話のドッジボールしてるよ……

話がつかなさすぎる人は、気絶させた日向に追い出します。


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人間だった頃どうだろう

よく忘れたものは夢に見るというけど、寝たことないや。


とりあえずしばらく縛り上げていたが、刀眺めてたらだいぶ時間がたっていたようで起きたようでバタバタしている……そうだ大根茹でよう。

 

肉も殺したばかりの猪の奴いれて、グツグツ煮よう。

 

まだ雨が降っているから追い出そうとしても、追い出せないし。湿ってると火石打ちにくいからあらかじめ毎日燃えるようにしている火から取ってっと……

 

この山燃料となる、木とか葉っぱとかならいくらでも取れるからね……乾かす必要があるけど。

 

「………………♪」

 

ひたすらに煮る、ごぼごぼと沸き立つのがいいとかどこかで聞いたことがある知らんけど。さてコレは熱いのだろうか寒いのだろうか……肉を焼いて食べたことがないからあんまり熱を感じることは少ない。

 

さて、人の子は草のねやらも喰うが人だった頃は何をしてたのだろうか?こちらだって普通だったはずだ、今ではとっくに血肉以外の味を感じられなくなってしまったが。

 

「なかなか面倒だな……でも前に出したとき冷たいやら火が通ってないやらさんざん言われたからなぁ……」

 

水に火いれて大根切って煮たら怒られたから、ごぼごぼに煮れば今度はいいのだろう。

 

「後シオーシオー。」

 

で最後に大きい袋に入った白い砂を鍋のなかにぶちこんだ。白い砂は水に溶けて消えた小さい袋に入っていた砂もそうだが溶けるようだ。

 

「うーんこれでいいかなー、持ってこ。」

 

とりあえず鍋を掴み、縛った人の場所にいこう。

 

 

「………」

 

いま目の前で起きているそして生きている事実に混乱している。状況を整理しよう、俺は鬼と戦って首を落とせずに気絶いや倒されたはずだ。

 

鬼は人を食らうだからこそあそこで死ぬと思っていたのだが……

 

「はい口開けろー!煮込んだー」

 

目の前にいるコレはなんなのだろう、先ほど俺を気絶させられて縛り上げた鬼だが……何で地獄のように沸騰したお湯に浸かっている大根を鍋ごと持ってきているんだ。というよりは鍋の中身が赤いどす黒いほどに赤い。

 

「……………なんなんだコレは…なんなんだコレ!」

 

「えっ大根と猪そのまま突っ込んで塩で煮込んだー?まぁ味見してないけどというかできないけど大丈夫だと思うよー、とりあえず口開けろー」

 

鍋のなかで地獄のように煮たつ謎の物体を箸で口に突っ込まれる……始めに感じるのは只の熱さだ、鼻から抜けるのは圧倒的な獣臭さ。

 

煮え湯をそのままの方がまだましだ

 

そして最後に感じるのは、異常な塩分。海水でも使ったのだろうか……ジャリジャリとした砂の感触も混ざる。

 

「…………………夢か?夢だよな?」

 

訳がわからない、熱病の時に見る悪夢と非常に状況が似ている。だが動けない状況や頭の痛みが現実だと意識を引き戻す。

 

「うーん夢じゃないよー、というか選抜中だったかなぁー、いやぁ雨だし外にいきなりほっぽりだしても只喰われるだけだろうし……

 

日向でてから、追い出すから安心してねー

 

刀も後で返すよー飾りたいほど綺麗だけどねー。

 

ゆっくり眺めてみると少し刃零れしてだからちょっと研ぎ直したよーホラっ人を一人二人斬ると刀ってすぐ切れ味落ちるからねー

 

正直、刀の手入れ方法とかも教えた方がいいと思うんだけど。」

 

この鬼はやはり頭がどこか可笑しい、師匠から聞いた鬼もこんなものではなかった……というよりはまだ口のなかが獣臭い。

一言で言うならば、何を考えているのか全くわからない。

 

恐怖とは二つあるという、圧倒的な強者かそれとも理解不能なナニカか……俺が感じているのは明らかに後者だ。

 

そのナニカは、笑いながら俺の刀を引き抜き一閃を放ち薪を豆腐のように斬って見せる。

 

「どういうつもりだ。」

 

「何って得意意味ないけど?あえて言うのなら……

 

これから君に戻す刀は、研ぎ終わったよってだけ。刀って鈍器とかと違って消耗しやすい武器とも言えるからねー」

 

会話が通じていない…………

 

 

あっ天気晴れた、外に追い出そう。

 

ポカーンと何故か青ざめながら縛られている、奴を外して引きずり刀とともに日向の方に放り投げる。

 

疲れた様子だが……まぁここから先は死のうが生きようが別に興味はない。

 

「……なにもすることないからずっと煮込んでよ。」

 

焦げても洗うから気にしない。

 

ちなみに何回か家が火事になりかけたことがあった……それは山の狼煙やらと勘違いされた規模になりかけるところだった、まぁ焼畑として畑に直したけど。

 

ここに来てからだいぶ畑も広がってきたから、刀以外にも特に食べもしないのにやたらと増えているさつまいもやらを渡したりしている。なぜ選抜にくるひとは困惑しているのだろうか?

 

後盲目の住職さんにはものすごく喜ばれた、あと桜の子も喜んでくれた。甘くて美味しいしらしいね、さつまいも。

 

ゆでて小さい袋に入った砂を混ぜたものが、一番評判が良かったなー。やっぱり単純なのが一番いいのかなー。

 

「で余ったこれ、畑にでも捨てよ。」

 

いやー今日は雨ゆえに大変だった……、さて刀磨いでようかな手入れ大事にしないとだし。




柱に縛られて強制おでんチャレンジをさせられたあげくに外に放り出される鬼狩りの卵。


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記録の交差

アレどこかで見たことあるかな?


後々また雨が降った、すぐにやんだりまた降ったり忙しい天気だもっとゆっくりすればいいのに。

 

「ふぅ……この刀の名前結局なんなんだろうな?」

 

鬼を日光以外で殺せる武器やらとは分かるが、まぁいいか綺麗だし……磨いで楽しいし。ここに飾ってある刀はすべて使える、名刀をなまくらにはしていない……

 

「これどれぐらい時間たってるんだろうかなぁ?」

 

刀を集めだしてから、結構時間がたっている気がするから古いものも多い気がする……よく見てみるとだんだん刀の形も変わっているものだなぁ

 

新しいものになるにつれ、堅いものを割るというよりは肉を切り裂くのに適した形になっている。

 

外がどんな風になっているのかは知らんが……前まではまげやらもあったけ髪も変わってたなぁそういえば。

 

「ここから出てみたいな……外どんな風になってるんだろう、あと藤の花綺麗だから見たいでも苦しい。

 

苦しいものも慣れればいいのかな?」

 

綺麗なものは好きだ、いくら毒であろうとも見たいものは見たい。

 

「あー誰か藤の花こっちに持ってきてくれないかなぁー来ると苦しいからすぐに分かるし。」

 

簡単に言えば吐きそうになる、頭がぐるぐるする、目が真っ白になる。あっ目が真っ白になったら藤の花見れないじゃん……やっぱり少しずつ慣れるしかないのかなぁ。

 

「木を斬ってこようかな、薪用に乾かさないといけないし。」

 

 

あの後密集しすぎたかなと思う木を斬って、家に持っていく。持っていく際には小さくして終わる。前までは殴って倒してたが斬る方が楽だと思った。

 

「あーこれ……そういえば初めて見るかなー。」

 

それは鬼が人を喰らう光景、腹が裂かれ頭が砕かれている。鬼は久しぶりの食事に乱れている、喰われている人は死んだばかりなのか痙攣している。

 

いつもは死体ばかりなので新鮮なものだ、二つの意味で。

 

目がこちらを見る、内臓の様子からもう事切れているだろうが……手が救いを求めるように延ばされた。

 

「……………………………」

 

この光景をどこかで見たことがある気がした、鬼が直接喰っている様子を見るのははじめてのはずだ。そうはじめてのはずだ……

 

景色が白くなり、懐かしい?声が聞こえる。女性の声だ、それか男の声だ。祭りの音かシャンシャン鈴の音がなり、ドーンと叩く音や風のような笛の音が重なる。

 

幻聴か、そして今目の前に広がる光景は幻覚か。

 

「ミコ様、ミコ様。」

 

そこにはさまざまな物があった、土で作られ焼かれた人形と稲穂のついたお米色の糸が編み込まれた布と豪華なのは見て分かる。底の中心にいた。

 

祭りごとだろうかと思わせるが、それは明らかに違う……目の前にあるのは……大量の血痕

 

生きたまま人が火になる斬られ肉になる。祭りのような音に叫び声が混ざり耳に残る、横にいる人達が死んだと確認するなりに勝手に肉体が動く……

 

そして焼けて皮膚などの肉が縮れ、焦げた臭いと血の臭いが混ざる。

 

「……♯♯♯♯♯♯♯♯」

 

口が勝手に開くでも、何を言っているのか理解ができない……目だけで手元を見ると手首に石が飾られており服も刺繍が凝っていた。

 

意識とは違う、やっぱり幻覚だ。

 

「ミコ様……かのものに♯♯♯♯♯♯を。そして大地に恵みの雨を、豊作を。」

 

無理だ、無理だ、そんなこと出来るわけがない。何で目の前で人が死ぬんだ。

 

「神の恵みあれ。」

 

それを最後に、視界が戻る。目の前にあるのは食い殺されたいや食い荒らされた只の死体。助けを求める手もおられたのかねじ曲がっていた。

 

「………おぇ……」

 

はじめて死体を見て吐き気を感じた、いや死体にでは無いことははっきり分かる。あの幻覚や幻聴だ、あれば人間の頃の記憶か何かか?

 

「何をしてたんだ?」

 

生前何をしてたのか全くわからない。いや理解したくはない………でも確実に言えることは、死体をいや死体になる様子を見てきたことだそれははっきりわかった。

 

「ミコサマか……それが名前か、それとも名称か。ご飯は持って帰ろう……、死んだのなら最後まで。」

 

……うんどう考えても墓守の方が耳に馴染む、ミコサマよりも墓守の方がな。目の前にある食い残しは貰おう、そのままにしても他の鬼が喰らうだけだろう。

 

人間だった頃を思い出してもろくなことがないかもしれないことが今わかった。

 

何で今少し思い出したのか全く訳がわからない。

 

 

「さて、帰ったが……」

 

奇妙な幻覚を見たせいで、刀を見る気力すらない。あの持ってきた食べ物もまだ見たくはない……いつもならば食料だと喜ぶのだが。

 

しばらくは食べたくはないな……純粋にあの幻覚や幻聴がもう一回来そうだ……正直に言えばもう一回見たくない。だけど今まで見たことがなかったいや、見ててもすぐに忘れたのか。

 

「あーどうするか……」

 

もう寝るか……寝れないが。そう布団に入って目を閉じる、ただ目を閉じるだけそうやって時間が過ぎるのを待つだけ。

 

鬼の体に疲れはない、睡魔はない。

 

それは良いことだと思うが、それは地獄にもなり得る……意識を捨てる行為が全くできないことと同じとも言えるからだ。

 

「………………………………………」

 

目を閉じると暗くなる、そして音だけを感じる。そういえば、死ぬ前は音……聴覚が最後に残る感覚とどこかで聞いたことがある。

 

ならばあの過去らしいものを思い出したとき、音から思い出したのは死と同じように音からきたのだろう。

 

よく知らないし、考えることもないだろうと考えていたが……まさかこんなところでなるとはなぁ。もう夢は見られない、鬼は夢を見ない、生き地獄は慣れていたはずだったのになぁ……

 

「……弱いなぁ本当に。」




突然現れる、生前の記憶。


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魂が宿るとは言うが。

壊れたらどうなるんだろうね、しらんけど。


あの奇妙な多分生前いや一応生きてるなだからえっと……何て言うんだ?

 

鬼になる前でいいのか?まぁそうしておこう難しいことをこねくりまわすのは苦手なんだ。

 

「うーん水ー」

 

とりあえず喉が乾いた、血以外にも飲むのもはある……食べ物は味が全くしないが。

 

サトウとシオはいつまでも白い砂としか感じない………なんか変なことおきたしもしかしたらなっているかも知れないから、後で砂二つ口にいれてみよう。

 

「川の水はここら辺にくんであったはず……、めんどくさいし井戸とか掘ってみるかな……やり方全くわからないけど。」

 

川からあらかじめ汲んだ水を飲んで、だらだらと考える。基本的に水は川から直接持ってきている。たまに血が大量に混ざってたりして綺麗じゃないこともあるが……

 

そもそもが上流に近いこともあり、水は基本的には綺麗だ。

 

たまに死んだ人やらの血やら肉やら服やら流れることもあるが美味しいお水だ。

 

近いとはいえ毎回汲むのは大変だから、井戸つくれないかとか考えているのだが。

 

「あーそろそろ来た人間たち降りるだろうから、食料集めしないといけないけど疲れるなぁー。」

 

今回も大量の死体が出来ていることだろう、どこにいくつあるのかは探さないとわかりもしないが……。

 

それなりに刀扱えるようにはなったから鬼がもし襲ってきてもある程度の対処ができるようになったし……食べ物持って少し行動範囲広げて食料探すかぁ。

 

普段は日帰りで帰れるところしか行かなかったけど。

 

「あっそうだ、持って帰ったやつまだ肉とかついてたから腐る前に食べないと……家が汚れる。」

 

干し肉として、うさぎや猪の獣肉と同じく加工して保存するのもいいかもしれない。基本的には人間の肉なんかほとんど残らないのばっかり集めてきたからなぁ………

 

でも肉よりも残るものもあったりするんだよね、食べるの少し面倒くさい所になるけど。

 

「アレにもたしかあったな……トンカチ持ってこ、後肉削ぎ落とす用に刃物も。」

 

色々積めた道具部屋から、トンカチと折れた刀を弄って作った簡易的な刃物を持ってきて。

 

前に取った食糧を置いた場所に向かう……ちなみにうさぎやら猪やらの干し肉を作っている場所も同じだ。

普通の人間だったら、獣臭さやらですぐにお香を焚きたくなるような悪臭が出ていると思う。

 

よくわからんけど。

 

「さーて、解体するかぁー」

 

残った肉を削いで、大きく取れたものは干し肉にするために同じように干す。

 

小さいものは別に移し分ける、骨はいつも通りに粉にするため砕くと湿ってそうだから乾かしてから粉にしよう。いつもはだいたい骨だけだったし……こんなに肉あるのははじめてだなぁ。

 

後は…………………

 

「これだなぁ、えーと目抜いて後は……たしか中身詰まってるから。よいしょっと……」

 

内臓類は十分喰えるが、日持ちがしないからしばらくはうさぎや猪を食べずにこれになる。

 

肉類はまだ日持ちがするが……まぁうさぎや猪も取ったら内臓や血から食べてるからなぁ。そう思いながら、皮を剥がしてからトンカチで割る。

 

「今回は水入ってた、えーと中にあるもの出して。骨はここだな。」

 

そういえば墓守やってからの最初の頃、柔らかい部分から食べてたなぁ……いくら鬼とも言えども腐りきったものは食べられない事もあるし。

 

新しく死人が出たときは真っ先に、内臓とか食べてたなぁ……それと腐らせないように必死だった。今だと堂々と天日干しやらして干し肉にできるけど周囲の目があったしばれたら不味かった。

 

普段食べるのは、埋葬が古い死体からだし……新しいものは本当に腐るものをさっさと食べる感じ……

 

「あの頃もあの頃で楽しかったなぁ……」

 

真昼から墓荒らしなんてなかなかするやつは居ないから、昼間に居なくても疑われなかったし……

 

夜に墓荒らしするやつも頑張って追い払ったし、寝る必要がないから上手くいったのかも知れないけど。

 

寿命とかでなんやかんや言われ始めたら、さっさと食いだめしてから腕の一本持ってトンズラしてから次の墓守とかになれる場所探してたからなぁ……

 

基本的には、多分給金無しで働いている人になるし。

 

ご飯も宿も要らなかったから、二束三文な給料でも自然と貯まったし……たまーに墓にくる子供にあげてたなぁ、親に取られてたかどうかは知らないけど。

 

「おっと今解体中だ。」

 

昔を懐かしんでしまった、怒る人も鬼も居ないから問題事態はあまり無いのだが。

 

取ったの二つの眼を頬張り。

 

「さてもう少しやってから、ご飯にしよ。」

 

まだまだ干すの肉切れるところとかあるし、早くしないと日が昇っちゃう。そうしたら作業はまた日が暮れてからになるし、なるべく手早く済ませないとー

 

そうやって肉を取った後、骨も乾かす為に置いて日持ちしない内臓や干し肉にもならないほどの小さな肉を持って部屋を出る。

 

「今日はお腹一杯になるなぁーあっシオとサトウかけてみよ、試しに。太陽出るから刀部屋で食べるかぁ。」

 

道具部屋から、サトウとシオの袋も持っていく。

今度はちゃんとこの白い砂の味が分かるかなと淡い希望を抱いて、結果は勿論。

 

「………二つともジャリジャリしてる、かけても変わらないなコレ。やっぱり白い砂だな。」

 

特に変化も、無いのであるが。

 

一度肉を煮たり焼いたりもしてみたが、生肉が一番美味しく感じる。まぁそれと同じなのだろう、鬼と人の根本的な違いだ。

 

「うまいうまい、獣肉よりもやっぱり合ってるんだろうなぁ、でもわざわざ身の危険を犯すほどでもないし。

 

食事よりも刀見たり月見てる方が楽しいからなぁー」

 

そうやってお腹一杯だなぁ、と思いながらまだまだ残っている内臓や肉片を見つめた。




食事シーン(別の意味でメシテロ)


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新しい狐面

………へー壊れてないやつはこんなののか。


しばらく、うさぎや猪やらをとらなくても良くなったが一応取りすぎないように取ったり死体も普通に拾っている。

 

保存できるのなら、いくらで持っておいて損はない。人骨も粉にし終えたし。

 

貯めすぎたのなら刀見るなり、動くなり、だらけるなり好きにすれば良いだけだし。

 

「最低一ヶ月ぐらいはゆっくりできるかな、ここでは食糧がどれだけあるかと寿命は同じみたいなものだし。」

 

病気にはかからないし、怪我もすぐに直るからねお腹すくと大変なことになるけども自分以外でも。死体集めの時に、刀をまた集めたが今回は折れてないのが一本で折れたのが五本分かぁ……

 

折れてない刀って下手な死体よりも貴重なんだよね、だいたい見かけるやつは折れてるか錆びてるかの二択でとても飾れるものじゃない。

 

「集めた刀もすぐに手入れしないとダメになるしなぁ。」

 

刀が集まって部屋が埋まるやらなんやらあったが、実際によく集まるのは折れた刀でありそのまま使える形状などに問題のない刀は少ない。

 

問題のない刀だとしても刃零れ等を起こしているものがほとんどだ、だからこそ磨ぐ事もやりはじめたのだが。

 

あっ今回は狐面の破片は1つほど見つかった。

 

「いつものように夜になるまでだらけるか。」

 

えっ仕事しろ?昼に外出たら死ぬんだから仕方ないやん!昼にする事だいたい終わらせちゃったから暇なんだよ。

 

 

「うーん、今回大分静かだなぁ……というよりはもといた鬼が急速に減ってる?

 

今回来た鬼狩りの卵、大分会うの危ういかもなぁ……ずっと引きこもってようかな。」

 

今回人間が来て同じ空気の変わりかたをしたが、今までのような騒がしさは消えているいや……その騒がしさをだす鬼がどんどん消滅している。

 

よっぽど鬼自体に怨念があるのか、基本この山に来る人自体に抱えてること多いけど。

 

自分でも分かるよ、選別って生き残ることでしょ何でバンバン遭遇して致死率あげてるの理解できない。

 

「でもどうしても外に出ないといけないときにあったら、なるべく逃げるか弁明頑張るか。

 

口は、それなりに回る自信はあるし。」

 

あくまで口は回る自信があるだけなので、今回は必死に逃げるだけになるのは自身でも分かりきっているが。

 

最悪一時的に家を明け渡す事も考えている、つまり野宿するって事だ……というかこの山の鬼家作って住むって考えしているの自分以外いないと思う。

 

一応普通の人間が使っても、ある程度畑もあって便利だし回りの日がでると日向で囲まれるから安全地帯だし……壊されることは少ないとは思うんだよね……

 

刀折ったりしたりとか、荒らされる可能性はものすごく高いけど。

 

「さてはて今回はどうなるかなぁ……念のため刀はお気に入りの二本は持っておこ。」

 

折られても大丈夫なようにね。

 

ちなみに一番のお気に入りは、刀に銘が一切掘られていない色は黒色吸い込まれるような綺麗な黒だ。

 

コレは拾った時からのお気に入りで、いやコレを見つけたときから刀集めを始めたんだっけ。

 

「さてはて、今回の者はどうなるか。」

 

今回拾えそうな食料は確実に少なくはなりそうだが、特に問題にはならないだろうまたいつでも拾えるあせる必要はない。

 

まず首を落とされないことを前提に動こう、死ぬまでは生きていきたいしそこまで無謀でもない。むしろ堅実な方だと思う。

 

「…………外出たくないし寝るか。」

 

鬼だから眠たくないし、眠れないけど。昼の何もできない時間を潰すのには横になるだけの行為が一番良かった。

 

…………何か読み物でもあればもっと楽しく暇が潰せるのだろうが、来た人の子の中で読み物を持ってきている人はいるのだろうか?

 

いるのなら畑で育てている野菜とかたんと渡したりするのだが、そんな下らないことを考えているうちに時間は過ぎる。

 

独りになるのは寂しいと言うが、馴れてしまえば時間だけは無限にあるから暇を潰そうとおもえばいくらでも潰してしまえた。

 

「あっこっちに来たヤバい。」

 

やっと布団から出て、足音のした方向から離れる。

 

昼になれば、人はあんまり動かない……夜になれば人は喰われないように動き回り鬼も人を喰らうために動き回る。だからそうやって中に入る人も結構いる。

 

「って夜だから寒いなぁ、布団くるまっていってもいいかぁ。久しぶりの野宿かぁ………あーさむさむ。

 

あっお面つけてこ。」

 

結構探るように歩き回ってるなぁ、そりゃあ当然か見たことないだろうし普通あるとも思わないだろうから。

 

食料は一応人っぽく無いように骨は乾かして粉にして、身は干し肉に加工中大丈夫かな。

 

匂いさえ気にされなければ、荒らされたりはしなさそうだな……ばれたら問答無用で殺される可能性高くなりそうだけど。

 

「ここまで危ないの来るの想定してなかったからなぁ……、裏口とか用意しておけば良かった。

 

というか家主なのに無断で入ってきた人間に怯えるとかいいのかコレ、言うところに言えばこっちが勝ち拾えそうだな。

 

その前に晒し首の刑にこっちがなるけどなっ!

 

この世は地獄だな全く。ポックリ死んでもあの世でも地獄行きだろうが。」

 

そうやってぶつぶつ呟きながら、出口に布団を引きずりながら二本の刀を持って向かう。正直後で直せるし、壁ぶち破って即席出口ってやってもいいが音が気になる。

 

たぶん、逃げるんじゃなくて鬼を殺しまくってる辺りすぐこっちに音でも出したら来るだろうからな!本当に殺意が高い、飛び火する恨みほど災厄な物はこの世に無いとも思う。

 

「さーて、夜のうちにここから離れないとなぁ……。」

 

手頃な部屋の窓から外に出る、空気が冷えて寒い。ちょっとかさばるが布団を持ってきた事は正解だったようだ。

 

野宿は池のそばがいいだろう、寒すぎるが魚取り遊びができる。あと純粋に手とか色々洗える。

 

「………ここに鬼がいな……!?」

 

家を漁った帰り道だろうか、ちゃんと獣の干し肉と持ちやすい野菜を持った割れていない狐面の二人組と遭遇する。

 

狐面の人の子は、同じ青い澄んだ色の刀を持っていた片方は刀が歯こぼれやらでぼろぼろだ。

 

その瞬間思った、なぜこの家を出てしばらく野宿しようと思った時に遭遇するんやとしかも歯こぼれから鬼殺し筆頭に。




二人の狐面の子どもと遭遇、墓守はこの先生きのこれるのか!


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噂の鬼

へー人間って面白いこと考えるね、こっちも元はと言えば人の子だけど。


「ちょまって、えー。丁度人の子くるから野宿してしばらくやりすごそうと思ったのに。まさかここで首斬りもうやだ、泣きたい泣いていい?

 

来るならやるぞー、こっちだってやる時はやるからだからね見なかったことにしてどっか行って本当にさ。」

 

…………始めにこの鬼を見た感想はなんだこいつだった。

 

手作りしたのか継ぎ接ぎの布団にくるまり、髪をひとつに糸で結って止めている。人を見て直接襲うのではなくピャーピャーと鳴いていた。

 

「動きにくいか………さっむっやっぱり寒っ、よくこんな真夜中に薄着でいられるね風邪引かないのちょっと心配になるよ?あーも何もないなら逃げるからねついてくるなっ!

 

というか本当にさぁ、こっち来ないで。暖かい布団あげるから来ないで。」

 

「オイ!ちょっと待て。逃げるなっ!」

 

その鬼は視界を塞ぐように布団をこちらの方に放り投げて、後ろも視ずに一目散に逃げ出していく。

 

俺は、義勇を連れて勝手に言葉を捲し立てて逃げたその鬼を追いかける。確か師匠の鱗滝さんが言っていたやつだ、それに間違いはない。

 

あの最終選抜での噂の鬼。

 

この飢えた鬼ばかりの山で、ずっと生き続けている。不思議で可笑しな鬼。

 

 

「なぁ知ってるか、必ずこの最終選抜では一人は生き残るんだってさ。本来ならば大怪我して帰った人が隠としてつとめたり、とかさぁ……

 

この山で暮らしているやつがいるとかさ、本当に暮らしてるんだったら鬼殺隊が調べてると思うんだけどなぁ……」

 

それは、訓練中ちょっとだけ他の鬼殺隊になるための訓練している奴から聞いた噂話のようなもの。

かなり前々から語られており……もし住んでいるというやつが人間だったら何回か寿命で入れ替わっている。

 

死んだと思われる奴が毎回入ってきているのか、それとも………

 

理性を持った鬼が、この山を根城にしているのか。

 

だが真偽は定かではない、鬼殺隊だろうとあの山に鬼は送りはするがわざわざ中に入ってみたりはしない。

 

「うん、知らないけど……鱗滝左近次師匠なら何か知ってるかも?」

 

静かに聞いていた義勇は、首をかしげてうーんと唸った。

 

「……そうかぁ?」

 

そんな感じで、軽い話をしていた。俺と同じ鬼殺隊を目指す仲間だ、ちょっと口下手な所がたまに傷であはるが…………

 

「後二日で最終選抜の日か、お互い鬼殺隊になろうな。」

 

「うん」

 

いいやつだ。しばらく寝て、鱗滝さんも熟睡する頃に起きる。そうやっていつもの修行をする場所に向かう。

 

「マコモいるか?」

 

「うん、いるよ。」

 

俺が修行した時からいつのまにかいる、不思議な少女。俺は彼女から色々な事を教えてもらったそのお陰であいつよりも今は強い。

 

義勇にも聞いたがあいつはマコモなんていないと言う、何故なのだろうかわからない。

 

「後二日で、最終選抜なんだ今まで教えてくれてありがとうな。」

 

「うん、二人とも鱗滝さんからの岩今までの人で一番早く斬り割ったきっと大丈夫。」

 

そうやって彼女は、木からふわりと落ちる。まるで水がポチャンと音をたてて静かになるように。

その体使いは、見た目とは違い何年も鍛練されたようなものを見せる。

 

「そうか、また手合わせいいか?最後まで教えてもらいたい。」

 

俺はまだ、鍛練が足りない。一日一秒でさえ休む暇等ない彼女から教えてもらう事はまだまだある。

 

呼吸、鱗滝師匠から教えてもらった水の呼吸。

 

それを彼女は俺よりも遥かに知っている。

 

「うん、もちろんいいよ。」

 

そうやって彼女も刀を構える、それはお互いに木刀。真刀は彼女は使わない俺も、岩を割れと言われたときに渡されたが、真刀は今は最終選抜まで取り上げられている。

最初の頃はよくマコモにぼこぼこにされた、呼吸は使えてたが練度がまるで月とすっぽんのように違う。斬ろうと向かうとまるで水に刀を奮うかのように流れていってしまってた。

 

「なぁ、あの山の鬼の話を知ってるか?」

 

「うん?義勇君と話していたのかな、知ってるよ。鱗滝さんも知ってる。不思議な鬼、人に近い鬼、お話はしたことないけど。」

 

「実際にいるのか?それは驚きだな………俺はてっきり鬼に喰われない変な験担ぎの噂だと。」

 

軽い会話をしながら、木刀がお互いに打つ音がバシンバシンと静かな森に響く。最初からマコモは疲れを知らない、汗すら流れない、呼吸を極めればこうなるのかといつも感じている。

 

「嘘じゃないと思うよ、鱗滝さんも昔鬼あの山に放つとき刀の破片もって帰ってた。」

 

「そうなのか…………」

 

こんな軽い会話をしながら、打ち合い続けてた。

 

「錆兎そろそろ戻らないと、鱗滝さんが起きる頃だよ?」

 

「あぁそうだな、怒られてしまうな。ありがとう。」

 

そうやって打ち合いを終わらせて、戻り狸寝入りに入る。何度か失敗してこっぴどく絞られた事がある…………今ではばれることは無くなったが。

 

「後一日か………」

 

 

「はっやっ他の人よりはっや、なんなの?呼吸でも使ってるのそれとも素で?人間とは?

 

俺鬼だけどさ、鬼に追い付いてるって技術って恐ろしいね。このやろー動けや足ー、まだ首斬られたくないんじゃー

 

…………あたぁっ」

 

義勇と二人で追いかけると、その鬼は目の前の木に顔面からぶつかり倒れた。

 

どうして死んでないのだろうこの鬼は、他の奴等に今すぐ殺されてもおかしくはない。

 

「いや今は首を斬る目的じゃない。」

 

「今ってことはそのうち首斬るって事じゃないですかやだー泣いていい?俺泣くね今から?」

 

ちかずくとずりずりとその鬼は後退した、情けない声出しながら言っているがその手は拾ったのであろうか刀を持っているのに手を掛けてすらいない。

 

俺は、そのあまりにも情けない様子に少しいらっときた…………とりあえず頭に一つ拳骨を落とす。

 

「男がビャービャーいうなっ!」

 

「ヒィン、頭痛いー」

 

本当になんなんだこの鬼。




シリアスかギャクかわからなくなってきたぜ。
錆兎ドン引き鬼。


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料理は、もう無理あきらめた。

まぁ世の中そんなもんさ、人は脆い。だけれども鬼はそれ以上に脆い。精神的な意味では特にね。


「とりあえず、君たちが襲ってこないって言うのはわかったけどね。でなに?俺追いかけ回して楽しいの?ビックリしたよ?」

 

あの後に拳骨を一つ少年に落とされて、落ち着いた。なんかざっと話を聞いた限りでは、最終選別においてそれなりに噂になってるそうで…………

 

いやなにそれ初耳、俺って有名人かやだー。

 

って下手したらむっちゃ殺されそうな立ち位置やんそれ………暫く選別来たら家空けてよ……寝込み襲われたりとかしたら普通に嫌だし、寝ないし寝れないけど。

 

「いや、こんな鬼がいるとは思わなかったんだ……」

 

「まぁ俺みたいな奴は、特例中の特例だとおもうよ。あんまりお腹すかないし。多分お腹とてもすいていたら、多分今でも人間やら襲ってる。」

 

只お腹が余りすかないから、他の鬼の残り物や獣肉で誤魔化せているだけであって。並みの鬼の食欲があり飢えていれば平気で人を襲うのは俺でもはっきりわかっていた。

 

特別な力を持つほど、特別じゃない。

 

何か特殊な術を使う鬼もいると聞いたことはあるが、この山ではほとんど縁の無いことだろう。

 

基本的に人を喰わねば、その術は得られない。

 

「お腹がすかない……?」

 

「だからさ、とりあえず今回の選別力は貸すから殺さないで下さい。普通に毎回切られるの痛いし、苦しいし、嫌だし、まだ楽しみたいことたくさんあるもん!

 

何で鬼になったかわからないし!時間だけはある体だから、色々見られると思うんだ!」

 

「うんまぁ、そうか、うん。」

 

なんか少し引かれているような気がするが、気にしないことにしておこう……………あれ。

 

狐の面を着けた二人の刀を、そっと見る一人だけやたらと消耗が激しい。確か山が騒がしくなってからある程度はたってはいるがまだ選別中だし、これでは最後まで持ちそうにないのは俺の目でも明らかだった。

 

もし剣の腕がよくても、これではその前に折れるだろう。

 

「刀ずいぶん荒く使ってるね。あと持って四回から五回ぐらいかな………折れそうだから家にあるのと変えていけば?

 

こう見えても結構ここにいるからね、使える刀は結構あるよ。多分全部日輪刀だっけかな。

 

色が綺麗で集めてるんだよね、まぁでも使ってこその刀とも言うし予備として一つ二人とも持っていきなよ。」

 

そうやって俺が話せば、驚いたような顔を見せた。そもそも鬼とそうやって話すこと事態無いだろうから仕方がない。だいたいは不意打ち目的か、それか飢えてそれすらせず襲うかの二択しかない。

 

「…………何で、鬼が日輪刀を!?」

 

「えっ綺麗だから、それに刀って格好いいよね。それ以外の理由は特にないよ。

 

強いて言えば、ここに来てからもの集めが趣味になったということかなぁ、狐面とかもそうだし……残念ながら割れてるのしかまだ見つけたことないけどね。

 

ここで話すのもなんだし、お家戻る?一回多分君達が勝手に入り込んだ所だけど、いらっしゃいますかーの一言もなく入るなんて非常識この上ないよね!

 

まぁそもそもこんな山に、あんなものがある時点で可笑しいと思われてるだろうから特に俺としては何も言わないけどさ。」

 

そろそろここで話すのも、疲れてきた。足が寒いし体も寒い、とっくに人間の料理が理解できなくてもお湯ぐらいなら出せるし問題ないだろう。

 

リュウリやらダイコンやらは、生で齧れるからな!それにシオとサトウとやら出せば良いだろう。

 

特に寝ていかないとは思うし、だって鬼だしねぇ………警戒解くってどうすればいいんだ?鬼って時点で最初最悪だぞ。

 

「まぁとりあえず、いこうか案内はしなくても大丈夫かな。じゃあ先にお家帰ってるわ。」

 

そうやって二人を置いていく、気になったら来るだろうしそのまま来なくてもどっちでもいいからね……必ず来てほしいって訳でもないし。

 

おもてなしっていうことをしなくてはならないものでもないし、全体的に人が来たら楽しいってだけだからね。俺にとっては。

 

 

「ふぅ……やっぱりお家は心地いいなぁ。でもダイコンやらキュウリやらなんやら抜いて洗わないとなぁ………獣肉は普通に渡せばええやろ勝手になんかしてくれるわー。」

 

まずお家にはいって、目一杯転がる。木の匂いが心地よい、心配など吹き飛ぶほどだ…………いやそれは言い過ぎた、心配なんていつでもくすぶっている。

 

食料や、いつ首切られるかわからない、正気を失ってあの鬼たちのようにならないか………そんなものだ。

 

でも今気にしても仕方がないだろう、これでも並みの鬼よりも生きてそして正気を取り戻してそして保っている。

 

まずそれを誇ろうではないか。

 

「うん、俺すごい頑張る。」

 

よし、ダイコンとキュウリ取りに行こう。備蓄していたゴボウもあったはずだ、それも出そう。

 

日が出る前に行わなければ、普通に死んでしまうからなぁ………そう考えると追いかけられたとき日が沈んでてよかった、普通に焼かれて死ぬ可能性も高い。

 

「……………♪」

 

適当に実った野菜を洗ってから井戸水をはった桶のなかにぶちこむ。そして部屋のなかにおいた。本当ならば縁側とかにおいた方がいいのだろうが……普通に焼ける、この時間だと焼ける。

 

「……失礼します。」

 

「うん、いらっしゃい。野菜とってきたけど食べるかい?大丈夫大丈夫、毒なんて混ぜ物じゃあるまいし入れられないから。」

 

ちょうど二人が来たようだ、さてこの二人に渡す刀はどうするかなその前に二人の腹ごしらえからだけど。




お家にご招待。


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二人の刀 故人の刀

人の出会いは一期一会、ならば鬼の出会いは?

そんなことを考えても意味はなく、同時に人であったのならばと考えるのも意味はない。

もう鬼であるのだから、そのようにしか生きられないだろう。


「これ、シオとサトウ。干し肉は適当に焼いたし喰えるとは思うぞ。腹壊したら知らないけど頑張れなんとかるやろ。」

 

そうやって二人の前に、適当に準備した料理というか食べ物とはちゃんと言えるであろうものをだした。

 

すると二人は、それぞれおもいおもいに肉や野菜に手を出してかじっていく。山ではそれなりに長くいるがやはり食料を探すのも一苦労なのだろう。

 

「野菜育ててたんだな、お前は喰わないのに。」

 

食べながら少年はこう聞いてきた、普通の鬼であれば家を建てたり野菜を作ったりとかはしないだろうから疑問になるのは当たり前のことであるが。

 

「そりゃあここにいれば、暇以外の何者でもないからね。ただ食ってるだけじゃ心が死んでしまう。」

 

鬼は野菜は喰わない、というよりは血と肉以外は受け付けない体だ。だが、ただ獣を狩り鬼の食べ残しを漁るだけでは精神が死んでしまう。

 

只でさえ、ここには娯楽が全くないのだ。野菜でも種まで採れば綺麗な花や身が心を潤してくれるような気がする。

 

食わないのに育てる理由はそれで十分だろう。

 

「ここに来る前の外で、種なんかはそれなりに持ってたからなぁ………ここの野菜にも山で直接取った奴はあるけど。

 

大体は、山以外で育ってた種を偶然持ってたからできた感じだなぁ……あと君たちのような人に渡されたりとかで。」

 

少し思い返しながら、勝手に話す。本当に毎回喋れる人がいないからこういう交流は勝手ながら楽しいものだ。

 

そもそも鬼ならばこう言うことさえも、毎回餓えて出来はしないのだから幸運と言うべきなのだろう。

 

「………本当にお前、この山に馴染んでるんだな。」

 

狐面の傷がついた少年は、呆れたような安心したような声で話してきた。

 

というかもう一人の子全く喋らないんだが、怖いのか俺が怖いのかそれともつまらなすぎて飽きてるの?!心配になってきたよ、特になにもできないけど。

 

「来てからずっとここにいるからね、居心地悪ければ何とかするようにするさ。

 

最初の最初は雨が寒かったから穴蔵探してそこに居座る事からだったからね。」

 

さて結構話したし、見てると野菜やらはまだあるのに手が最初より遅いし止まりかけてる。本来の二人の目的であろう刀を渡そう。

 

確実にあのままだと、残りの選別のためにこの山にいる期間で使ったら損傷が酷くて折れるだろうからね。

 

使える程度の拾った刀なら結構あるし渡しても特に損はない、同時に特もあまりないけど。

 

楽しそう、面白そう、気まぐれ の三つで大体動いてるから今更だろう。

 

「腹ごしらえもすんだかな?足りなければ、勝手に畑から引っこ抜いて野菜いくつかもって行けばいいさ。

 

さて集めた刀はそれなりにある、拾ったものでもある程度の管理は毎回している。切れ味は、見た目が綺麗だから集めてるだけだし保証はしないが使えはするだろう。

 

刀部屋を案内しよう、少し奥にあるからね。それに勝手にあるかれると困るし。」

 

そういって俺は立ち上がり、その部屋に歩いていく。その度にギシギシと床が音をたてる。作り方はきちんとしているのに不安定そう等もし言われたとしたら俺は怒ると思う。

 

人がもしこっそり入ったときにすぐ気づけるようにしているんだと、一人で建てた割りには立派だとも思うし。

 

よしここだ、ここ。

 

「ここだね。この中から選ぶといいよ、ある程度量はあるししっくり程度はくる刀は見つかるとは思うよ。」

 

俺は、しきいを引いて二人を刀部屋の中へ誘う。二人は大層驚いたように部屋をじっくり見ている。

 

どうだ凄いだろと思いきって言ったりしてみたいが、刀の形状とかの話はあまり詳しくはないだろうし。

 

興味のない話を長くされることの辛さはよくわかる、墓守をしていた頃こんな職ついてるからに、まともな職ない浮浪人やらごたごた言われて面倒くさかった。

 

「……この量集めるのに、何年いたんだ?」

 

「ずっと、でも今はまず君達に刀をあげるそれが大切だしね。」

 

実際数えてないし、今が何年なのだかここにいると分からないのだからそう言うしかない。実際刀集めし出したの、来て最初の頃じゃないし。

 

まだ最初の頃だったらある程度ははっきり答えられたかもしれないけど。

 

返答を聞くと、二人はめぼしい刀を取っては強く握り締め呼吸の型であろう動作をする。

 

その間に適当に試し切りする?と聞いて薪出して試し切りさせたりやってある程度時間がたった頃。二人は貰うらしい刀を決めたようだ。

 

「……俺はこいつと、義勇はこれを貰うらしい。」

 

二人は、そうやって貰うであろう刀を二つ手にとって見せた。蒼い刀、とても二人の最初に持っていた刀に似ている刀だった。

 

まるで同じ人物が渡した刀が何本も存在したかのように、そういえば天狗面の人もそんな刀使ってたっけ。

 

「うんそうか、そうか。蒼くて綺麗だよね、空いや水かな?君達の二人のもそうみたいだし、いいよ!持ってって。」

 

そうやって貰われて困るような特にお気に入りの刀はもう自分の手にあるので当然のごとく了承した。

 

二人は、また外に出ていくだろう。日が出てもいるしね、外に出ても安心出きる場所がある時間だ。

 

「後選別終わってから帰るとき、この場所から木が開けてる場所というか開いた場所があるから。そこに太陽の登る昼から帰れば安全に帰れるよ。

 

ある程度の止血とか怪我は治せるし怪我したりとか疲れたらいつでも来てね。

 

応援してるよ頑張ってね。」

 

元気に外に出ていく二人少年を見送る、そうやって自分が一度藤の花は綺麗だと言われて見ようと辿って失敗した人間であれば安全に帰れるだろう道を教えた。




さてこのあとどうなるのか、お楽しみに!


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