GAMERA ガメラ2 (AS365 )
しおりを挟む

2つの隕石

本作品では福島第一原発事故を連想させてしまう場面があります。
ご了承下さい。


1999年

地球に2つの隕石が向かっていた。

その2つの隕石のうち、1つは北アメリカ大陸に、もう1つは東アジア方面に落下して行った。

 

 

日本 宮都県

雀路羅市

ゴォーーーー!!!

「「「「「「?」」」」」」」

「何?」

雀路羅市の人々は空から鳴り響く轟音に視線を空に向けた。

ドーーーーン!!!!

隕石は、原子力発電所の近くに落下した。

 

 

雀路羅原子力発電所

「原子炉に異常はないか?」

「ありません!」

雀路羅原子力発電所の専属技術、ジョー・モートンは隕石落下に伴う対応に追われていた。

「隕石落下で被害が皆無なのはかなりの救い

だな」

発電所の所員達は実害が皆無なのに胸をなで下ろしたが、ジョーだけは違った。

「だが何故だ?隕石落下ならかなりの衝撃になる。1キロ地点なら発電所が吹き飛んでもおかしくないはずだ」

「速度が落ちたからじゃ?」

「………どう言う意味だ?タカヒロ」

「その隕石、どうやら制動がかかったようなんだ」

「制動?つまり、隕石が自分から速度を落としたってことか?」

「そう言うことに……」

『ジョー、聴こえる?』

そこに、ジョーの妻で同じ専属技師のサンドラから無線で連絡が入った。

『今から第2原子炉に入るわ』

「わかった、気を付けろ。放射能を浴びたら防護服でも防げないぞ」

 

第2原子炉

「カウンターは?」

「反応ありません」

「放射能漏れは無さそうね」

サンドラ達はガイガーカウンターで放射能を測定し、数値から放射能漏れは起きていない事を確認した。

 

発電所制御室

「サンドラ、念のため原子炉の様子を直に確認してくれるか?」

『了解』

「ジョー、これを見てくれ」

「何だこれは?」

タカヒロがジョーに見せたのは電磁波の波形グラフだった。

「さっきからこのパターンの波形が観測されてるんだ」

「この波形はいったい」

ザーー!

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

ジョーがタカヒロと観測された電磁波パターンについて話していると、制御室のモニターが全て乱れた。

「何だ!?」

 

 

第2原子炉

ドゴーーン!!

「「「「「「「!?」」」」」」」」

ガーーガーーガーーガーー

「カウンターの数値が!」

第2原子炉では奥から巨大な轟音がし、ガイガーカウンターの数値が急激に上がり始めると、原子炉の方向から放射能の煙が迫って来た。

「逃げて!早く!!ジョー!緊急事態よ!放射能が漏れ出した!」

サンドラ達は迫り来る放射能から急いで逃げた。

 

発電所制御室

「緊急退避だ!」

「はい!」

ビーー!!ビーー!!ビーー!!ビーー!!ビーー!!

ジョーが指示を出し、発電所の全フロアに緊急警報が鳴った。

 

雀路羅市

ウーーーーーーー!!!

雀路羅市全域にも警報が鳴った。

 

 

雀路羅原子力発電所

発電所制御室

「隔壁を閉鎖しろ!急げ!」

「待て!まだサンドラ達が!」

「だが閉鎖しないと街が!」

「………私が迎えに行く、操作を隔壁前にまわしてくれ!」

「おい!待てジョー!危険だ!」

ジョーはタカヒロの警告を無視し、サンドラ達を迎えに避難する職員達とは逆方向の第2原子炉に走った。

 

第2原子炉 隔壁前

「はぁ、はぁ、はぁ」

ジョーは第2原子炉の隔壁前に到着したが、サンドラ達はまだ来ていなかった。

「サンドラ…………サンドラ聴こえるか?今隔壁の前に居る」

ジョーは無線機でサンドラに呼び掛けたが、誰も答えなかった。

『ジョー!』

「サンドラ!」

『隔壁を閉じて!もう間に合わない!』

「ダメだ!頼む諦めるな!」

『もう放射能がそこまで来てる!早く!』

『ジョー!早く隔壁を閉じろ!街が汚染されるぞ!』

「………」

サンドラとタカヒロからの無線を聞く中ジョーは葛藤した。

今隔壁を閉じればサンドラ達を見殺しにしてしまう、かといってこのままでは放射能で雀路羅市が汚染されてしまう。

状況から見て、街かサンドラ達か、二つに一つだった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

ジョーの方へ放射能の煙が迫って来た。

「………………ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

バン!

ゴォーーー!

ガン!

ジョーは葛藤の末、放射能が出る寸前の所で隔壁のボタンを叩き押し隔壁を閉鎖した。

中に居るサンドラ達を残して。

「…………ぅ…………ぅぅ」

バンバンバンバン!

サンドラを見殺しにした負い目からジョーは泣き崩れていると、叩く音が聞こえた。

立ち上がり扉に付けられた覗き窓を見ると、逃げ遅れた職員達が助けを求めて窓を叩いていた。

「……………済まない…………」

雀路羅市を救う為には彼らを見殺しにするしか方法がなかったジョーは許してもらえないとわかっていたが、ただ謝る事しかできなかった。

「ジョー!」

「サンドラ!」

もう助からないと悟ったサンドラはガスマスクを外して、窓越しにジョーと対面した。

「……済まない………済まない」

「良いのよ…………」

シューーー

隔壁の最後の扉が閉じ、サンドラ達とは完全に寸断された。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「!?」

その直後、地鳴りのような音が発電所全体を包んだ。

『ジョー!発電所が崩壊するぞ!早くそこから逃げろ!』

タカヒロからジョーの無線に発展が崩壊を初めている事が伝えられた。

 

 

ゴゴゴゴゴゴ!!!!

「逃げろ!」

「急げ!」

発電所から職員達が避難する中、雀路羅原子力発電所は崩壊を始めた。

ドジャン!!!!!!

ガシャン!!!!!

「崩れるぞー!!」

発電所は跡形もなく崩壊し、ジョーがサンドラ達を見殺しにしてまでも閉じた隔壁も意味を成さくなく、放射能は雀路羅市を汚染し、住民は問答無用で避難させられ政府によって封鎖された街はゴーストタウンへと変貌した。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

日本へ

お気に入り登録、ありがとうございます。


2020年

アメリカ合衆国

カリフォルニア州 サンフランシスコ

ガチャ

雀路羅原子力発電所の崩壊から21年後。

そして南太平洋でガメラと人類の遭遇から2年後。

元隊に戻ったニック・モートンは従軍を終え1週間の休暇を貰い、サンフランシスコにあるマンションに帰って来ていた。

「あ、お帰り」

「ただいま」

メグミは、ウチキド博士が国連直轄に移管したモナークにリクルートされた事によりハワイ大学の研究室が閉鎖され、ニックとルームシェアをしていた。

 

プルルルル プルルルル

二人は寛いでいると部屋の固定電話が鳴り、メグミは電話に出た。

「はい、もしもし………はい、そうですが…………え?………はい、今替わります。ニック、日本の領事館から電話よ」

「領事館から?」

ニックはメグミから受話器を受け取り、電話に出た。

「はい、お電話替わりました、ニック・モートンです…………はい…………えぇ、ジョー・モートンは確かに自分の叔父ですが………あの叔父が何か?……………逮捕された?」

 

「…………」

在日アメリカ総領事館から叔父のジョーが日本警察に逮捕されたと聞いたニックは、身元引き受け人になってほしいと頼まれ悩んでいた。

「………行かないの?」

「叔父さんとは疎遠になってたんだ」

「そうなの?」

「あぁ…………」

「………ニック、その叔父さんってあなたの唯一の肉親なんでしょ?」

「あぁ、親父が死んで俺の身元引き受け人になってくれたからな」

「…………行って来たら?私も行くから」

「……………」

 

 

日本

宮都県 宮都市

メグミに説得されたニックとメグミは日本に訪日し、宮都県の県庁所在地、宮都市の警察署でジョーが保釈されるのを待っていた。

「和宏!」

「このバカ息子が!」

「………」

警察署の待合室で待ってる間、ニックは警察から保釈される不良とその両親らしき人物達を見た。

子供の頃に両親を失ったニックには、あの様に叱ってくれる両親の存在を今でも羨ましく思っていた。

そんなニックに気付いたメグミはジョーについて今のうち聞いておこうと考えた。

「………ねぇ、あなたの叔父さんジョーさんって、あなたしか肉親が居ないの?例えば奥さんとかは?」

「20年前に雀路羅原子力発電所が崩壊した事故覚えてる?」

「えぇ、チェルノブイリ以来の原発事故で、今でも雀路羅市は放射能汚染で立ち入り禁止区域になってるって。確か原因は隕石の衝突だったかしら?」

「その時に原子炉の調査に向かった原発作業員数名が漏れ出した放射能を浴びて死亡した。その死んだ作業員の1人が、叔父さんの奥さん、サンドラさんだったんだ」

「………」

「叔父さんは再婚とかは一切考えなかった。今でも死んだサンドラさんを愛しているんだろうな………!」

「?」

ニックが何かに気付いたような顔をし、メグミも同じ方を見ると、警察署の奥からジョーが保釈の手続きをしていた。

「……!」

ジョーも、待合室に居るニックに気付いた。

 

 

ガチャ

「入ってくれ」

「お邪魔します」

ニックとメグミはジョーが住むマンションの部屋に案内された。

ジョーの部屋は大量の資料や計測機器、更には生物音響学の参考書等があった。

「済まない、最近掃除を疎かにしてしまってな」

「いえ」

「ニック、軍の仕事はどうだ?」

「それなりに順調だよ」

「そうか」

「あの、これって何の資料ですか?」

メグミが大量の資料の事でジョーに質問した。

「20年前原発事故の調査のだ」

「20年前って、雀路羅のですか?」

「あぁ、それで調査の為に立ち入り禁止区域に入ったらいきなり逮捕だ。やはりあの地区には政府が隠したい何かがある」

「隠したいって」

「叔父さん」

「あぁ、20年の事故はただの隕石衝突じゃ「叔父さんいい加減にしろよ!」」

「………ニック?」

ニックはジョーに対して言葉を荒げた。

ニックとジョーが疎遠になったと言っていたが、理由は20年前の原発事故に陰謀論を懐くジョーに対して愛想を尽かしてしまっていたからだった。

「サンドラさんが死んで20年だ。目の前でサンドラさんを失った叔父さんの気持ちは俺にはわからない程辛いとは思う。だけど20年も根拠のない陰謀論を追ってどうするんだ?」

「……………済まない、私の勝手行動にお前を巻き込んでしまって………」

「…………」

「…………」

ニックとジョーの関係に不穏な空気を残したまま、その日は終わりを迎えた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

侵入

翌日

「そうか…………あぁ」

「「?」」

ジョーの部屋で一晩過ごしたニックとメグミは翌早朝、ジョーが誰かと電話する声で目を覚ました。

「わかった…………では予定の場所で」

「叔父さん?」

「あぁ、起こしてしまったか?」

「いや、どうかした?」

「実は、立ち入り禁止区域の近くまで船を出してくれるという男が居てな。今日もう一度入る」

「雀路羅に?」

「あぁ」

ジョーが電話していた相手は雀路羅まで密航を請け負ってる人物からで、ジョーはその男の船で再び雀路羅へ侵入しようと試みていた。

「私一人で行ってくる」

「一人でって」

「危険過ぎます!」

ニックとメグミは一人で行こうとするジョーを止めた。

「私は…………どうしてもサンドラが死んだ理由が知りたい………それだけだ」

「「………」」

 

 

雀路羅市

ニック、メグミ、ジョーは侵入を請け負ってくれた男の船で廃墟と化した雀路羅市に到着した。

「悪いが、俺が運べるのはここまでだ。この先は放射能の汚染区域だ。行きたければ後は自分達の足で行ってくれ」

「あぁ、わかった。これは約束の報酬だ」

「どうも」

「帰り道、気を付けてな」

「ありがとう」

ジョー達は男に報酬として札束を渡すとボートを降り、放射線装備を身に付けて廃墟まで歩き出した。

 

 

雀路羅市

ニック達はゴーストタウンと化した雀路羅を歩いて行った。

辺りの建物はガラスが割れ、車や自転車は道路に放置されており、商店には売り物がそのまま残されており、街の人々は荷物を持つ事も許されずに避難を余儀無くされたと想像出来た。

「で?どうするんだ?叔父さん」

「一先ず、私の実家にある当時の資料を取りに行く」

「じゃあ早くしよう。また警察に見付かれば、俺と叔父さんは強制送還、メグミはおそらく一生日本から出れなくなる」

ワン!ワン!

「………」

ジョーは廃墟を走って行く野良犬を見て、即座にガイガーカウンターのスイッチを入れたが、カウンターのメモリーは微動にしなかった。

「ジョーさん?」

メグミはその場に立ち尽くしたジョーに呼び掛けた。

「叔父さん?どうした?」

「…………」

バッ!

「おい!」

「ちょっと!」

ジョーは突然防毒マスクを外し、ニックとメグミは悲鳴を上げた。

「やっぱり………」

「何がだよ!」

「見ろ、カウンターが反応していない。ここが汚染区域だって言うのは嘘だったんだ!」

ジョーはニックとメグミにガイガーカウンター見せ、カウンターが反応していないと説明した。

ジョーは先程の野良犬を見て、放射能汚染されているのに野良犬が何の問題もなく走り回っているのはおかしいと考え、ガイガーカウンターで放射線を測定し、反応が無い為実際にマスクを外して、雀路羅が汚染区域である事が嘘だと確信した。

「やっぱり、ここには政府の連中が隠したい何かがあるんだ………なんとしても突き止めないと」

そう言うとジョーは自分のかつての家まで歩き出した。

「取り敢えず、俺達も外すか」

「そうね」

ニックとメグミはジョーに習って、防毒マスクを外した。

「でも、もしジョーさんの言うとおり政府が汚染区域にしてしてまで人を遠ざけたい理由って何かしら?」

「…………もしかしたら………怪獣の可能性って無いか?」

「え?」

ニックはメグミの疑問に、考察として政府が怪獣の存在を隠蔽する為ではないかと推測した。

「まさか、日本に怪獣が?」

「俺達が出会ったのはガメラとギャオスぐらいだが、あの島だけとは限らない、世界中に似たような生物が居ても不思議じゃない」

「確か島の事は……」

「ホワイトハウスが国家機密として隠蔽した。だが国連や各国の政府、軍には通知されてる、勿論日本にもだ」

「じゃあ、日本政府は怪獣の存在を知って封鎖を解消しなかった?」

「あるは………最初から知っていたとか」

 

 

その頃、ニック達を運んだ男は船で待っていた。

「今日はたんまり貰えたな。にしてもあのねーちゃん、スッゲーいい女だったな。一度で良いからあぁ言う女とやってみたいぜ」

ギュヂュヂュ

「?」

大金を受け取って有頂天になっていた男は、外から妙な音が聞こえた気がして操舵室の窓から外の様子を見た。

「……………」

グェェ!!

「!?」

ドサッ

外を見ていたら、突然目の前に人間の眼球のような目が1つだけついた体長3メートル程のアリとザリガニを掛け合わせた真っ黒い甲殻類のような生物が現れ、男は腰を抜かした。

キィィィィ

シュュュ

「あぁ……」

ギチュウギチュウ

生物は船の窓のガラスを眼球に吸い込むと、操舵室に押しって来た。

ギチュウギチュウ

「あぁぁぁ!!」

ブシャ!!

カチャ

男が絶叫すると大量の血が操舵室に撒き散らされ、床にフレームだけになった男の眼鏡が床に落ちた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

雀路羅の実態

雀路羅のジョーの家に着いたニック達はジョーが目的の資料を探すのを手伝っていた。

「あった」

ジョーは目的の物を発見し、バッグに一式入れた。

「これで目的は達した。帰るぞ」

ブロロロロロ!!

「「「?」」」

帰ろうとした矢先、外からヘリのローター音が聞こえて来て三人は家を出た。

ブロロロロロ!!!

三人が外に出ると、頭上を一機のヘリが通過した。

三人はヘリが飛んで行った先に向かうと、その先には原子力発電所があった場所にタワークレーンや足場が組み建てられていて、何か作業をしている光景が見えた。

「何だ?」

キィィ

「「「?」」」

「お前達何だ!?どっから入って来た!?」

「ここは立ち入り禁止だぞ!」

彼らの後ろに一台のトヨタ製のメガクルーザーが停車し、中から防毒マスクをした男達が下車し、持っていた89式自動小銃をニック達に向けた。

「座ってろ!」

ニック達は手錠で拘束され車に乗せられた。

 

元原子力発電所

ブゥーーーン

車は発電所だった場所向かって走り出し、車は発電所に到着した。

発電所に到着した時にはもう既に日は沈んで夜になっていた。

「侵入者3人を拘束しました」

「了解、9番ゲートへ」

車はセキュリティーを通過すると中に進んで行った。

「何あれ?」

メグミが外を見て、ニックとジョーも外を見ると、発電所の中央にオレンジ色の巨体な花のような物が咲いており、その周りでは酸素マスクとボンベを着けた作業員達が作業をしていた。

 

発電所を一望できる作りになっている指令室から、モナークに移籍した古生物学者のグラント博士は発電所の中央に咲いた花を見ていた。

「グラント博士。先程市内を巡回していた警備が侵入者を拘束したのですが」

「グラント博士は今お忙しい。ウチキド博士に対応してもらえ」

「いえ、そのウチキド博士からの要望でして」

「カティアの?」

「えぇ、捕らえた侵入者の1人が、以前の職員だった者で」

「ここの?崩壊した当時のか?」

「はい」

 

グラント博士は警備隊長に案内され、地下の取調室まで来た。

「あ、アラン」

取調室の前ではグラント博士と同じくモナークに移籍した海洋生物学者のウチキド博士がマジックミラーごしに中を見ていた。

「彼がか?」

「えぇ」

グラント博士も取調室をマジックミラーごしに見ると、ジョーが取り調べを受けていた。

「これは?」

グラント博士はマジックミラーの前に置いてあったジョーの所持品の中から発電所が崩壊した当時の電磁波パターンのグラフを手に取った。

「20年前に観測された電磁波パターンよ」

「当時のデータは残っていないと思っていたが……」

「意外だったわね」

 

取調室

ジョーは事務机を隔てて取調官から侵入した理由を問い質されていた。

「どうしてここに居た?放射能汚染区域だと知らなかったのか?」

「…………放射能汚染?……お前達、あれを隠してたんだろ?あれを国民、いや、世界中の人間の目から遠ざける為の嘘だったんだろ?…………おい、こっちを見てるんだろ?」

ジョーは壁の鏡がマジックミラーだと見抜き、そこから見てるであろう人物に話かけた。

「あれを隠す為に20年間も騙してたんだろ?…………良いか?私の妻は、ここで!死んだんだ!!そして、お前達はその本当の理由を隠し続けたんだ!」

ジョーはマジックミラーの向こうに居る、グラント博士とウチキド博士に訴えた。

 

「身元が判明しました。彼はジョー・モートン。20年前は発電所の専属技師で現在は英会話塾の講師をしています。彼の妻、サンドラ・モートンは20年前の事故で死亡しています」

グラント博士とウチキド博士は警備隊長からジョーの身元を教えられ、グラントはジョーのフルネームを聞いてあることに気付いた。

「モートン?…………確か侵入者は後2人居ると言ったな?」

「はい、そちらの身元も確認されてます。1人はジョーの甥,、ニック・モートン。現役のアメリカ陸軍大尉。もう1人は日本人のメグミ・フジムラ。2人とも昨日サンフランシスコから入国している事が確認されてます」

「何ですって!?」

ウチキド博士は、侵入者の内2人が知り合い、それも1人は元教え子だったこともありかなり驚いていた。

「これは何かの運命か?」

 

その頃、ニックとメグミはメガクルーザーに乗せられたままだった。

「ジョーさん、大丈夫かしら?」

「少なくともいきなり殺すことはしないだろ」

「そう………」

「…………不安か?」

ニックはメグミが顔色を悪くしてることに気付き、声をかけた。

「嫌な予感がするの………何かが起きるような」

メグミは首にかけた勾玉を握りしめながら不安を募らせた。

 

伊豆大島沖

ブロロロロロ!!!

伊豆大島の沖合いでは海上自衛隊の哨戒ヘリ

SH-60Kが哨戒活動を行っていた。

『こちら護衛艦 むらさめ。伊豆大島沖にて未確認の潜航物を確認。間もなく浮上する。そちらで確認可能か?』

「………イルカじゃないか?」

ヘリのパイロットは窓から海面を見ると、イルカの群れがジャンプしている事を確認し、むらさめがイルカの群れと誤認したと考えた。

「…………?」

海面を見ていると、とてつもない巨大な影が海中から上がって来た。

サバーーン!!!!

キュュュュュュ!!!!

影は海から飛び出すと、円盤状の物体が高速回転しながら飛び去った。

 

海上自衛隊 護衛艦 むらさめ

艦橋

「アルバトロス!?どうした!?」

『目標を視認!潜航物はガメラと確認した!宮都方面へ飛行!指示をこう!』

「………ガメラだと?」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ガメラ飛来

ガメラの形状に関しては、映画ガメラ2の形態のイメージで書きました。


宮都県 雀路羅市

元原子力発電所

「…………彼と話たい。当時の状況を詳しく話してもらおう」

「そうね」

ドーーン!!!

「「「「「「!?」」」」」」

グラント博士とウチキド博士がジョーに協力を要請しようとした矢先に、振動音が発電所全体に響き照明が一瞬点滅した。

「ほら、20年前と同じだ。今の電磁波で発電所全体の電子機器に異常が発生したんだ」

ジョーは20年と同じ現象が起きたことで、長年の独自の調査で電磁波による電磁波障害が発生したと推測した。

「博士!草体に異変です!」

 

グラント博士とウチキド博士は急いで指令室に戻り発電所中央の花、草体を見た。

「あの草体から異常な数値の電磁波パターンが計測されました」

研究員が観測された電磁波パターンのグラフを2人に見せた。

「これは………!」

グラント博士とウチキドは持って来たジョーの資料を比較し、観測された電磁波パターンが20年と全く同じ周期であった。

「酸素濃度78%に上昇!」

「通常の4倍!?まさか、種子を発射するき!?」

「遂に繁殖の時が来たんだ……全員避難させろ」

「はい!」

グラント博士が指示を出すと、研究員が警報ボタンを押し、発電所全体に警報が鳴り響いた。

 

ビー!!!ビー!!!ビー!!!

「急げ!」

「早くしろ!」

バン!

外に居た作業員達は避難を開始し、最後に出た作業員は避難完了を知らせるボタンを押した。

 

「しかし侵入者は!?………了解!」

バン!

「え!?ちょっと!」

「おい!何なんだよ!」

メガクルーザーに乗せられてたニックとメグミは警備隊員が2人を残したまま退避してしまい、2人は手錠をされたまま取り残された。

「ニックどうするの!?」

「ちょっと待ってろ!」

ニックは隠し持っていたピッキング道具を取り出し、まず自分の手錠の鍵を開けようとした。

「できるの?」

「これで学費を稼いでた」

「………泥棒だったの?」

 

「草体からの電磁波が増加してます!」

「何ですって!?」

指令室では草体からの電磁波が増加している事を観測した。

「電磁波来ます!」

研究員がそう報告したのと同時に、草体から電磁波が放出され、発電所内の全ての電子機器がダウンした。

 

ウィーン

カチャ

「?」

草体からの電磁波ってシステムがダウンしたことにより、地下の取調室の扉の電子ロックも解除された。

 

カチャ

「よし外れた!」

車の中ではニックがメグミの手錠を外した所だった。

「出るぞ!」

バン!

ニックがメガクルーザーの後部ドアを蹴り開けて、二人は外に出た。

「…………」

「メグミ?」

車から出たところでメグミが空を見上げた。

キュュュュュュ

「…………?」(この音………フィリピンで、いやあの島で……!)

ニックも、空から聞いたことがある音が聞こえてきて空を見た。

 

キュュュュュュ!!!!

ゴォーーー!!!!

雀路羅上空に飛来したガメラは、甲羅の回転飛行から頭と海ガメのヒレのような腕と短い尻尾を出した形態に変形した。

 

「…………ガメラ」

指令室から空を見たグラント博士とウチキド博士は飛来したガメラを見た。

 

ドーーン!!!!

ガメラは発電所の一角に着陸し、ジェット噴射をしていた穴から脚をだし、腕の飛膜を畳んで歩行状態に移行した。

そのガメラの形状は2年前の面影があるが、以前のずんぐりした体格からシャープになっており、頭も小さく首も若干長くなり、腕もウミガメのヒレに似た形に変化し、肘の爪も以前は格納されていたのが肘と一体化したような形であり、2年前がヌマガメを二足歩行にしたような形状だったのが、今回はウミガメを二足歩行にしたような形状になってた。

ガァァァァァァ!!!!

着陸したガメラは吠えると、草体に向かっ歩き出した。

 

「何だあれは……」

取調室から脱走したジョーも、草体付近の足場からガメラを見た。

 

ドーーン!!!

ガメラが草体の付近まで接近し、草体を見据えた。

ガァァァァァァァァァ!!!

ガメラは口を大きく開けて、空気を吸い込み出した。

 

「きゃっ!?」

「何かに掴まれ!」

ガメラが息を吸い込んだことにより、下に居た人間はガメラの方へ引き寄せられそうになり、車の影に隠れたり、足場の柱にしがみ着く等した。

「何する気!?」

ニックとメグミも車の影に隠れたて、やり過ごそうとした。

 

「酸素濃度低下中!」

「ガメラが酸素を吸い込んでるのか」

指令室ではモニターしていた研究員が酸素濃度が低下していることをグラント博士達に伝え、グラント博士は濃くなった酸素をガメラが吸っていると直感した。

ガメラは息を吸い終わると喉が一瞬赤く光った。

ガァァァァァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!!

「「「「!?」」」」」」」

ガメラは火球を草体目掛け発射し、火球が命中し草体は爆散した。

その光景を見ていた人間達は爆発の閃光の眩しさで顔を背けた。

 

ドーン!!!ドーン!!!

ガァァァァァァ!!!!

ガメラは草体に歩み寄ると、草体に掴みかかり、草体をそのまま薙ぎ倒した。

ガァァァァァァ!!ガァァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!!

ガメラは薙ぎ倒した草体に向かって火球を発射し、草体を完全に焼き払った。

 

「ガメラが………種子の発射を止めた………」

「………?」

指令室でウチキド博士が呟くと、グラント博士はガメラの足元で蠢く影に気付いた。

 

ギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウ

草体が薙ぎ倒されて、地面に開いた穴から船の男を襲ったのと同じ生物の大群が地上に這い出てきた。

地上に出てきた生物の群れはガメラの脚を伝って登り、ガメラは身体中を生物の群れに包まれた。

ガァァァァァァ!!!!ァァァ!!!!

ガシャン!!!ドシャー!!!

ガメラはもがき苦しんだ。

ガメラからは纏り付いた生物が攻撃しているのか時折閃光が放っていた。

 

「主が、『お前が何かと』お尋ねになるとそれは答えた。『我が名はレギオン。我々は、大勢があるがゆえに』」

「聖書か?」

「マルコ、第5章よ」

ガメラにまと割り着く生物を見たメグミは、新約聖書のマルコによる福音書第5章9節に出てくる、悪霊レギオンに例えた。

「……………レギオン」

 

ガァァァァァァァァァ!!!!ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!!

ガメラは生物、レギオンの群れの攻撃に耐えきれなくなり、その場に倒れた。

ギチュウ

ガメラが倒れると、レギオンの群れはある方向を一斉に見た。

その視線の先にはヘリの離発着場にあるレーダーサイトがあった。

ギチュウギチュウギチュウギチュウギチュウ

レギオンの群れは急にガメラから離れ、レーダーサイトに向かって移動を始めた。

ガァァァ……ガァァ!!!

ドーーン!!!!

ガメラはレーダーサイトに集まったレギオンの群れに向かって火球を発射し、レギオンを全滅させた。

ゴォーーー!!!!

レギオンの群れを全滅させると、ガメラは手足の穴からジェット噴射を出し空中に浮き上がった。

キュュュュュュュュュュュュ!!!!

ガメラは高速回転で飛行し、発電所から飛び去った。

「…………うわ!?」

指令室の窓ガラス一面に緑色の液体が流れ落てきて、研究員の一人が悲鳴を上げた。

「ガメラの……血」

ガラスに付着していた緑色の液体はガメラが飛び去る際に吹き付けて行ったガメラの血液だった。




マルコ第5章の文は現実のものとは違いますが、今回はあえて映画のセリフを引用しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

巨大レギオン

「無事か!?」

「あぁ」

ゴゴゴゴ!!

「「「「「「!?」」」」」」

ガメラが飛び去った発電所では作業員が負傷者の確認を行ってたら突然、発電所全体に地響きが鳴り響いた。

「何!?」

「………下だ!」

ニックはその地響きが自分達の直ぐ真下からだと気付いた。

ゴゴゴゴ!!

草体が生えていた穴から一本の巨大な角のような物が伸びて来た。

「何だ!?」

「どうなってるんだ!?」

ググググググ

角は穴の真上にあったワイヤーに引っ掻けると、ワイヤーを真下に引っ張って行った。

そのワイヤーは周りのタワークレーンと繋がっており、続々とタワークレーンがマストから折れ、足場も次々と倒壊を始め、倒壊したタワークレーンが直撃した建造物も倒壊して行った。

「急げ!」

ジョーの後ろを作業員が数名走って逃げて行ったが、進行方向先の真上からクレーンが崩れて来ていた。

「おい待て!そっちはダメだ!!」

ガン!!!!

「「あぁぁぁぁ!!」」

ジョーは逃げる作業員達を止めようとしたがタワークレーンは作業員達を直撃した。

そのうち2人は直撃を免れたが、衝撃で足場から転落した。

 

「車に入れ!」

「え?わっ!?」

ニックは迫り来るタワークレーンに気付き、メグミをメガクルーザーに押し込んだ。

ガン!!!!

「きゃぁぁ!」

「ぐぁっ!」

ガシャン!!!

クレーンのワイヤーが車を弾き飛ばし、二人が逃げ込んだメガクルーザーは横転した。

 

「ニック!!メグミ!!」

足場から二人が逃げ込んだ車が横転したのを見ていたジョーは大声で二人の名前を叫んだ。

 

「大丈夫か!?」

「えぇ」

二人は車の中に居たことにより、ワイヤーの直撃は免れたていた。

ガガガガガ!!

メグミが倒れて穴へと引き摺られるタワークレーンを見ると、クレーンの運転手が運転席のフロントガラスを叩き助けを求めて居たが、運転手はそのままクレーンごと穴に落とされた。

ガガガ

ニック達の後ろで金属が強引に曲げられる音がし振り替えると、先程タワークレーンが直撃した足場が引っ張られ始めており、その足場にはジョーが立っていた。

ガキン!!!!

「っ!あぁぁ!!」

足場が倒壊し、ジョーはそのまま地面に落下した。

 

「叔父さん!!」

ガシャン!!!

ニックが叫んだ直後、更に上から崩れた建造物の瓦礫が落下して来た。

「そんな………」

キショォォォォ!!!!

「「!?」」

ニックとメグミがショックを受けていると、穴から甲高い鳴き声がし、その穴から白い体表にカブトガニのような胴体、胴体脇からパラボラ状に広がった甲殻類の脚に似た爪と、頭に長い角と生やし、青一色の目を2つ着けた顔の口には前に伸びた外殻があり、鎌のように伸びた後脚とザリガニの鋏のような前脚を持った体長46メートル程の生物が穴から這い出てきた。

 

「何あれ………!?」

「あれも、奴らの同種なのか?」

指令室で突然這い出てきた巨大生物を見たグラント博士とウチキド博士は巨大生物がレギオンと同種なのか疑った。

外見は甲殻類に類似していると言う点を覗けばレギオンとだいぶかけ離れており、別種と言われれば誰も疑わない程違っているため無理もない。

 

キヨォォォォォ!!!!

生物、巨大レギオンは再び吠えると歩きだした。

その際下に居た人間を何人も踏み潰したが、巨大レギオンは全く気していないのか、それとも気付ていないのか、そのまま歩いた。

ブン!!!

「危ない伏せて!!」

巨大レギオンは外殻を指令室目掛け振り回し、警備隊長がグラント博士とウチキド博士を無理矢理伏せさせた直後に、外殻は指令室を直撃した。

 

バッ!!

巨大レギオンは背中にトンボのような透明な翼を広げた。

「まさか……飛ぶ気か!?」

ブブブブブブブブ!!!

「嘘………」

ニックが考えた通り、巨大レギオンは翼を高速振動させるとその巨体に見合わない程軽々と飛び上がり、メグミは言葉を失ってしまった。

ビュン!

飛び上がった巨大レギオンは、ジェット機にも比例する速度で発電所から飛び去り、人間達はそれを見送るしかなかった。




2019/11/5 タイトルの文字が間違っていたので修正しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

レギオンの目的

『この施設は、アメリカ軍の監視下に入ります。研究員、作業員は米兵の指示に従って下さい』

翌朝、崩壊した発電所では負傷者の手当てや遺体回収が行われ、同時にモナークは軍の指揮下に置かれる事になり、発電所には続々とアメリカ軍が現地入りしていた。

そんな中、グラント博士とウチキド博士は自分達を庇って犠牲になった警備隊長の遺体の前に居た。

「グラント博士、ウチキド博士ですね?」

グラント博士とウチキド博士にアメリカ海軍の迷彩服を来た軍人達が歩いて来て、一番前に居た黒人の海軍士官が2人に声を掛けた。

「海軍のハンプトン大佐です。あなた達にはオブザーバーとして軍の作戦に参加していただきたい」

「わかった」

「OKよ」

「では、何か必要な物資や人員は?」

2人からオブザーバーの了承を得たハンプトン大佐は必要な人や物が無いか聞き、グラント博士は救出されたジョーと彼の容態を見ているニックとメグミを見た。

「彼らを」

 

ブロロロロロ!!!!

グラント博士に指名されたニック達は海軍のSH-60Fヘリに乗り込み、ヘリはゴーストタウンになった雀路羅の上空を飛行し、海へ出た。

ニックとメグミは担架に乗せられたジョーを心配そうな顔で見た。

ジョーは救出こそされたものの重態であり、予断を許さない状態だった。

「叔父さん………俺謝ることが」

「何だ?」

「俺………知ってたんだ、あの亀の怪獣のことを………でも………軍の規定で言えなくて」

「良いんだ…お前は悪くない………」

ニックはジョーにガメラの存在を知っていて、それを隠して居たことを謝罪したがジョーは消え入りそうな声でニックを許した。

「私は……大切な者を………守れなかった…………ニック………お前は……必ず守りきれ………」

ピー!ピー!ピー!

ジョーがニックに伝える言葉を伝えると、生体情報モニタから警告音が鳴り出した。

「ジョー、ジョー!しっかりしろ!」

ヘリに同乗していた衛生兵は即座にジョーの治療にあたった。

「…………っ」

メグミは勾玉を握り締めてジョーの回復を祈った。

 

アメリカ海軍 第7艦隊

ジェラルドRフォード級原子力空母 サラトガ

ニック達を乗せたヘリは第7艦隊旗艦、サラトガに着艦した。

サラトガ 戦闘指揮所(CDC)

「ガメラの現在位置は?」

「硫黄島沖に潜行後消息不明です」

「巨大レギオンに関しては?」

「巨大レギオンは新島上空にてレーダーから消失。以後消息不明です」

サラトガのCDCにて第7艦隊提督であり、今回の怪獣対策の全件を委任されたステンツ海軍少将は部下からガメラとレギオンの動向の報告を聞いていた。

「ガメラは深海に潜ったからだと思われるが、レギオンは何故レーダーから消えた?」

ステンツ提督はレギオンが消息不明になった理由をグラント博士とウチキド博士に聞いた。

ガメラはソナーでは探知出来ない深海に潜ったからだと推測出来るが、レギオンは空を飛んでおり、余程の低空飛行でもしてない限りはレーダーによる追尾から逃れることは出来ないはずだった。

「雀路羅で回収された小型レギオンの死体を回収して調べたら、彼らの体構造はケイ素で構成されたケイ素生物で、体表の甲殻は未知の絶縁体だとわかったわ」

「未知の絶縁体?」

「あぁ、奴らの甲殻はレーダー波を含むあらゆる電磁波と電波を吸収してしまう性質だと判明した。おそらくレーダーから消えたのもそれが理由だ」

「つまり、奴はステルス能力を有していると言うことか?」

「そう言うことになる」

ウチキド博士とグラント博士からの小型レギオンの体構造の情報を聞いたステンツ提督はレギオンはステルス能力を有している為、レーダーの追尾を振り切ったと推測した。

「博士」

メグミがCICに入って来た。

「メグミ、どうしたの?」

「…………亡くなりました」

 

サラトガ 医務室

「………」

容態を急変させたジョーは衛生兵の懸命の処置やニックとメグミの祈りも虚しく、回復することなくそのまま息を引き取った。

ニックは艦内の医務室におり、ジョーの遺体が遺体袋に入れられる場面に立ち合っていた。

「ニック………」

消沈していたニックにCICから戻って来たメグミが声を掛けた。

「辛いとは思うけど………グラント博士達が来てほしいって」

「…………わかった」

 

ニックとメグミは水兵にグラント博士達が待っている部屋に案内された。

「ニック、久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「彼のことは………気の毒だったな」

「………本題に入りませんか?」

グラント博士はニックにジョーが亡くなったことに冥福を祈ったが、ニックは本題に入らせた。

「そうか、わかった」

「グラント博士。先に質問しますけど、あいつらは一体何なんですか?少なくとも大統領と握手して記念撮影できるような関係を築くのは無理なのはわかりますが」

ニックはレギオンのことを皮肉も込めて質問し、グラント博士とウチキド博士は資料を広げながら答えた。

「率直に答えると奴らは、これからは便宜上メグミが名付けたレギオンと呼称する。そのレギオンは地球の生物ではない」

「それって、エイリアンと言うことですか?」

「その通りよ。雀路羅の発電所が崩壊理由は聞いてるかしら?」

「はい、隕石落下が引き金になったと」

「そう、レギオンはその隕石に乗って来たのよ」

「レギオンの目的は?」

「レギオンの目的それは………地球の生態系を乗っ取ることつまり、繁殖だ」

ステンツ提督が聞いたレギオンの行動理由をグラント博士は地球での繁殖の為だと答えた。

「これを見てくれ」

グラント博士はプロジェクターで草体の映像を見せた。

「この花、発電所に咲いてた」

「私達はこれを草体と呼んでいる」

「草体………草の体ですね」

「そう、そしてこの草体と共に確認されたのが小型レギオンだった」

次にプロジェクターには小型レギオンの死体の映像が映った。

「私達は今まではレギオンはこの小型だけだと思ってた。でもまさか40メートル以上もある奴まで居るとは思っても見なかったわ」

「我々はこのレギオンと草体は地球で言うハキリアリのような関係だと推測している」

「ハキリアリ……確かキノコを栽培するアリだったな?」

ステンツ提督はハキリアリの生態を自分が知っている限りで答えた。

「あぁ、ハキリアリはキノコが無いと巣を維持出来ず、キノコもアリが世話をしないと生きていけない。即ち共生関係であり、そして草体はキノコ、小型レギオンはアリで言う兵隊アリ、巨大レギオンは女王アリと言ったところだ」

「…………繁殖と言いましたけど、どうやって繁殖を?」

「奴らの繁殖方法はこの草体を爆発させて種子と卵を発射する。おそらくガメラはそれを阻止すべく現れたんだ」

「何で今まで発射しなかったんですか?」

「それがまだわからないんだ……」

「爆発の威力はどれくらいあるんですか?」

「おおよそだが…………戦術核に匹敵する爆発をおこす」

「「「「「「「!?」」」」」」

ニックの質問に答えたグラント博士の答えにウチキド博士以外の全員が驚愕した。

「もし、レギオンが地球で繁殖したら………どうなります?」

「……………地球の滅亡だ」

メグミの質問にグラント博士は正直に答えた。

「我々が生き残るには奴らとの殲滅戦を臨まなければならないな。グラント博士達は引き続きレギオンの行動及び生態の調査を。レギオンへの攻撃は我々が担当する。ハンプトン大佐、艦隊の全艦と大平洋に面した国々の軍に協力を要請しレギオンの捜索に当たれ」

「イエッサー」

グラント博士の話を聞いたステンツ提督はレギオンを殲滅する方針でうち固め、ハンプトン大佐ら軍人はレギオン捜索に戻った。

「ニック。ジョーは何か調べていたことはないか?何でも良いんだ」

グラント博士はニックにジョーが調べていたことで気になることがないか聞き、ニックはあることを思い出した。

「…………生態音響………確か叔父の部屋に生態音響学の参考書があった」

「音響学?………レギオンは特定の電磁波パターンで群れと交信をしているのかもしれない」

「それって、イルカやクジラが超音波でコミュニケーションをするみたいに?」

「あぁ、もう一度彼の資料を調べてみよう」

「わかったわ」

グラント博士とウチキド博士はジョーの資料を見直すべく部屋から出て行った。

「ニック、あなたどうする?」

部屋に残ったニックとメグミは今後はお互いにどうするのか話し合った。

「………部隊にも非常招集が掛かると思う、俺は一足先に戻るよ。メグミは?」

「私は博士達に協力しようと思う………ガメラの助けになりたいの」

ニックは召集に備えて帰国を、メグミはグラント博士達に協力する意識を伝えた。

「わかった………じゃあ、先に帰るよ」

「えぇ気を付けて」

「サンフランシスコで会おう」

ニックとメグミは別れと再会の約束をし、それぞれ反対方向へ歩いて行った。

 

サラトガ 飛行甲板

バババババババ!!!

「ホノルルまではこのヘリで!そこからは民間機でサンフランシスコに向かうんだ!」

「了解!ありがとうございます!」

ニックはハンプトン大佐が手配してくれたUH-1Nに乗り込みホノルルに出発した。

 

2時間後

アメリカ合衆国

ハワイ州 オアフ島

ホノルル

ホノルルに到着したニックはハワイの最新鉄道、ホノルル・レール・トランジットに乗り、ダニエル・K・イノウエ国際空港(旧ホノルル国際空港)まで移動していた。

「ヨシキ!」

「ヨシキ!」

「「「「「「?」」」」」

その際、空港に向かう途中の駅で、突然大声がし乗客達は何事かと見ると、日本人観光客と思われる家族の子供が電車の中に取り残され、父親と母親がパニックになっている場面に遭遇した。

しかし、電車は自動運転の為プログラムに従ってそのまま発信しようと動き出していた。

「隣の駅で下ろします!そこで待ってて!」

一連の光景を見ていたニックは子供を保護して、両親に子供の頃に培った流暢な日本語で隣の駅で待ってるよう両親に伝えた。

「大丈夫。必ずまた会えるから」

「うん」

「取り敢えず椅子に座ろう」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ホノルル上陸

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「確かか?」

「はい」

「わかった。提督、ミサイル追跡艦ハワード・O・ローレンツェンがオアフ島付近で消息を断ちました」

サラトガのCDCに居たハンプトン大佐はアメリカ海軍のミサイル追跡艦が消息不明になったことをステンツ提督達に報告した。

「ミサイル追跡艦?」

「弾道ミサイルやロケットをレーダーで追跡する艦だ。今回はレギオン捜索に使用されて居たが」

ステンツ提督はメグミにミサイル追跡艦の説明と今回の任務内容をざっと教えた。

「…………ねぇ、レギオンは電磁でコミュニケーションをしているのよね?」

「あぁ、そうだが……それがどうした?」

「イルカは超音波で仲間とコミュニケーションを取るんだけど、その時に別の超音波を発する物があるとイルカはコミュニケーションを妨害されて混乱することがあるの」

「もしかして、レギオンがレーダー波を敵対信号だと思って襲った?」

ウチギド博士とメグミは海洋生物学の知識を生かして、レギオンに対する仮説を経てた。

「ではハワードはレギオンに襲われたと?」

「その可能性はあるかと、雀路羅でもガメラを襲った小型レギオンがガメラを離れてレーダーサイトを優先して攻撃してたし」

「…………ハワードの捜索は?」

「現在、SEALsチーム1が最後に信号を受信した地点を捜索中です」

 

オアフ島

海軍特殊部隊、Navy SEALsチーム1は行方不明となったハワード・O・ローレンツェンの捜索を行っていたが、何故かオアフ島のジャングルをM4A1カービン銃を構えて警戒しながら歩いていた。

「で?何で俺達はジャングルを歩いてるんだ?」

「信号がこの近辺から出たんだから仕方ないだろ?」

SEALsはぼやきながらも任務は任務と割りきって捜索を続行した。

しばらく歩くと先頭を歩いて居た隊員がハンドサインで止まるよう合図した。

先頭を歩いて居た隊員がM4A1に装着したライトを点けて見つけた物を照すと、それはオレンジ色の救命艇だった。

「何でこんな所?」

ガサガサ

「「「「「「?」」」」」」

救命艇の存在に困惑していると頭上から木が折れるような音がし上を見ると、そこにはあったのは船のスクリューだった。

「おい………嘘だろ…………」

あまりにも現実離れしている光景にSEALs隊員全員が呆然とし、更に上空から捜索していた海軍のヘリがサーチライトを点けると、彼らが探していたハワード・O・ローレンツェンの船体が丸々、ジャングルの木々に引っ掛かっていた。

 

「おい、マジかよ……」

ヘリのパイロットもその光景に絶句した。

ガシャン!

そして船体は巨大レギオンが壊している真っ最中で、この艦船は巨大レギオンが大平洋からわざわざ持って来た物だった。

 

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

サラトガにはヘリから送られて来たレギオンの映像が流れていた。

「やはり、船のレーダー波を敵と認識したのか」

映像を見たグラント博士は巨大レギオンが襲った理由をウチギド博士とメグミの仮説通りだと確信した。

「市街地の目と鼻の先だ、もうこれ以上は野放しに出来ない。博士、異論はないな?」

「あぁ、始めてくれ」

ステンツ提督はグラント博士に確認を取ると命令を出した。

「総員戦闘配置」

ビー!ビー!ビー!

ステンツ提督が戦闘命令を出すと、艦内全域にサイレンが鳴り響いた。

「………!」

「メグミ?どうしたの?」

「甲板に出ます」

艦内が戦闘体制に入る中、メグミは何かを感じ取ったようにCDCを出て、グラント博士とウチギド博士はメグミを追った。

「ちょっとどうした?」

「ガメラが………ガメラが近くにいます」

 

サラトガ 飛行甲板

ゴォーーーー!!!!

飛行甲板からは艦載機のF-35Cが続々と発艦し、巨大レギオン攻撃に向かった。

 

オアフ島 ホノルル

バババババババ!!!

ホノルル市街の上空に軍のヘリが飛来し、浜辺にあるレストランのオープンテーブルで食事をしていた民間人は、低空飛行する軍のヘリに注目した。

ハワイには海軍や空軍の基地がある為、たまに軍用機が飛行することがあったが、それでもかなりの低空飛行であり、皆が不思議がって居ると、近くのビルにヘリの一機がホバリングし、良く見るとヘリからロープが垂らされていた。

 

バババババババ!!!!

シュルルルル

「よし!射撃用意だ!」

カチャカチャ

ビルの屋上には第七艦隊所属のVBSSチームの水兵が降下し、射撃体制をとった。

 

ダニエル・K・イノウエ国際空港付近

ゴォーー!!!

ゴォーー!!

国際空港の付近をサラトガから発艦した戦闘機が通過して行き、列車からニックと、ニックが保護した子供 ヨシキも飛んで行く戦闘機を見ていた。

 

「目標発見」

ホノルルを通過したF-35Cのパイロットはジャングルに居た巨大レギオンを目視で確認した。

ゴォーーーー!!!!

ゴォーーーー!!!!

戦闘機がレギオンの上空を通過すると、レギオンは船の破壊をやめ、戦闘機を見た。

『全機攻撃用意』

「了解。ウェポンベイ展開」

サラトガから攻撃用意を命令されたF-35Cは機体内にミサイルを格納しているウェポンベイを開いて準備をした。

グゥゥゥゥガギギ!!!

レギオンは吠えると、角の根元が蒼白く点滅した。

バヂヂヂヂヂヂヂ!!!

そしてレギオンは角の根元を一瞬強く光らせると、胴体脇の爪からマイクロ波を発生させてた。

ドーーン!!!!ドーーン!!!!

戦闘機がマイクロ波を受けると、戦闘機は空中で爆発した。

「危ない!!」

ドン!!!

「うわ!!」

撃墜されたF-35は次々と墜落し、そのうち1機の破片が下に居たSEALsの近くに墜落し爆発した。

 

バババババババ!!!

「こちらホーク8、海面を何かが移動している。サラトガに接近している」

艦隊の上空を飛行していたヘリは海を移動している影に気付き報告した。

 

サラトガ 飛行甲板

メグミ達は飛行甲板に出て、双眼鏡で接近する移動物体を見た。

「ガメラ」

メグミ達が見た移動物体はガメラの甲羅だった。

ガメラはサラトガに近付くと、先行し海中に潜った。

 

ホノルル

ホノルル市街では突然山の方でおきた爆発で、ただ事ではないと気付いた。

ガァァァァァァ!!!!

「「「「「「!?」」」」」」」

海の方から突然聴いたこともないような大きな音がし、市街に居た全員が海の方を見ると、ガメラが海から姿を現した。

「「「「「「わぁぁぁぁぁ!!」」」」」」

人々は見たこともない巨大な怪物に一斉に逃げ惑った。

「撃て!」

ダダダダダダダ!!!

ダダダダダダダ!!!

ビルの屋上に居たVBSSチームはガメラを見ると敵と判断し、M4A1で一斉に銃撃を開始した。

ダダダダダダダダダダダダダダ!!!

ガァァァァァァ

銃弾は確実にガメラに命中していたが、ガメラはダメージを受けた様子はなく、そのまま空港の方へビルを壊しながら歩いて行き水兵や、民間人はそれをただ見送るしかなかった。

 

「負傷者の確認!」

SEALs は墜落に巻き込まれた隊員が居ないか確認作業を行っていた。

キヨォォォォォォ!!!!

「「「「「「「!」」」」」

「あいつ、街に向かいやがった」

レギオンの鳴き声がし、全員が声のした方角を見ると、レギオンが歩いて折られた木々で線が出来ておりその進行方向先がホノルルに向かっていることから、レギオンが市街地に向かったことがわかった。

 

ダニエル・K・イノウエ国際空港

ドン!!

キショォォォォ!!!!

「「「「「「!?」」」」」」

山から市街地へ飛翔したレギオンはニック達が乗車している列車の進行方向先に着地した。

「おい!何で停まらないんだよ!?」

列車は自動運転のプログラムに従ってレギオンが居る国際空港に向かって走りレギオンに徐々に近付いて行き、列車の中は一気にパニックになった。

ダダダダダダダ!!!

「伏せろ!!」

列車の外から銃声がし、ニックはヨシキを伏せさせた。

 

ダダダダダダダ!!!

列車の横を2機のUH-60がレギオンに銃撃しながら通過したが、レギオンには全く効果がなかった。

ゴォーーーー

列車はレギオンの目前まで迫った。

「奥に行け!!」

ニックはヨシキ列車の奥に避難させた。

グシャン!!!!

レギオンは近付いて来た列車の先頭車両を頭の外殻で叩き潰し高架橋ごと破壊した。

その際に列車の先頭部分に居た乗客の何人かもレギオンによって叩き潰された。

ガガガ

「うわぁぁぁぁぁ!!」「いやぁぁぁぁぁ!!」

列車は停車したが、高架橋が破壊されたことにより宙吊り状態になっ先頭車輌は地面を向く形になり、壊されて空いた穴から次々と乗客が地面に落ちて行った。

「ぐっ」

ニックも先頭車両に居たが、近くの手摺に捕まり落下は免れた。

「あぁ!」

「ま、待て!ダメだ!」

ニックが奥に避難させたヨシキが掴んで居た手摺を離してしまい、床を滑り落ちて行き近くに居た老人が掴もうとしたが、掴まえられずヨシキは穴に向かって滑って行った。

「あぁぁ!!」

「っ!」

ガッ!

穴に落ちる寸前でニックがヨシキを掴まえて、ヨシキは急死に一生を得た。

 

「攻撃再開!撃て!」

ダダダダダダダ!!!

ヘリは搭載した機関銃で再びレギオンを銃撃したが、やはり効いてる様子はなかった。

キヨォォォォォォ!!!!

「避けろ!!」

ガン!!!

ヘリの1機がレギオンに接近し過ぎて角に激突し、炎上しながら空港の滑走路に墜落した。

ドン!!!!

キヨォォォォォォ!!!!

ヘリが墜落した直後巨大な足音がし、足音の正体に気付いたレギオンが相手を威嚇するように吠えた。

ガァァァァァァァァァァァァァァ!!!!ガァァァァ

同じく、足音の正体であるガメラもレギオンに向かって吠えた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

激突

キショォォォォォォ!!!!

ガァァァァァァ!!!!

ダニエル・K・イノウエ国際空港で対峙したガメラとレギオンはお互いに吠えると、レギオンは飛んで、ガメラは走って向かって行った。

レギオンはガメラの顔に飛び掛かり、ガメラはそれを振り払おうともがいた。

 

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「ガメラ、巨大レギオン、国際空港にて交戦状態に入りました」

「戦闘機編隊は?」

「巨大レギオンのマイクロ波により全機撃墜されました」

「マイクロ波を攻撃手段としても使えるのか……」

「駆逐艦に対艦ミサイルを用意させろ」

「しかし、空港のターミナルにはまだ民間人が居ます。今攻撃すれば巻き添えにする可能性が」

ステンツ提督は随伴の駆逐艦にミサイル攻撃をさせようと命令したが、即座に部下が意見を申し立てた。

「八方塞がりか……」

アメリカ軍は民間人を巻き添えを懸念して、ガメラとレギオンの戦いを静観するしかなかった。

 

ガァァァァァァ!

ガッ!

ブン!

ガメラは纏わり付いてたレギオンを振り払り、レギオンは滑走路に叩き付けられた。

ガァァァァァァ!!!!

キヨォォォ!

ガメラはレギオン目掛けて火球を発射したがレギオンは寸前で飛び立ち、火球は滑走路を直撃し爆発した。

ガッ

バジジジジジ!!!!

ガァァァァァァ!!!!

レギオンは再びガメラに纏り付くと胴体脇の爪から青白い稲妻状のマイクロ波をガメラに浴びせ、ガメラから煙が上がった。

ガァァァァァァ

ドサッ

マイクロ波を浴びせられたガメラは手足を地面に着いた。

 

「大丈夫ですか!?」

その頃、レギオンに破壊された列車では、乗客達が駆け付けたレスキュー隊に救出されていた。

「この子を」

「わかりました。さぁこっちへ」

ニックもヨシキを先に救出してもらい、自分も救出された。

ガァァァァァァ!!!!

キヨォォォォォォ!!!!

救出された乗客達は空港で戦ってるガメラとレギオンを見た。

戦況はガメラが劣勢を強いられていた。

「………っ」

ニックは出来ることならガメラを援護したいと思ったが、今は拳銃すら持っておらず、ただ見ているしか出来なかった。

 

ガァァァァァァ……ガァァァァァァ!!!!

ガッ!!

ガメラは立ち上がるとレギオンを掴んで駐機していた旅客機に叩き付け、レギオンは飛行機の爆発に巻き込まれた。

グゥゥガギギ!!キヨォォォォォォ!!!!

バジジジジジ!!!

ガァァァァァァ!!!!

レギオンは再びガメラに向かってマイクロ波を照射した。

ガァァァァァァ!!!!

マイクロ波を浴たガメラはよろけて、滑走路から海に出た。

キヨォォォォォォ!!!!

レギオンも海に出たガメラを追って飛行した。

 

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「ガメラ、巨大レギオン、真珠湾に出ました」

「全艦砲撃用意。目標、ガメラ及び巨大レギオン」

ステンツ提督はガメラとレギオンが空港から離れると艦隊に砲撃準備をさせた。

「待ってください!ガメラまで攻撃するんですか!?」

メグミはガメラも攻撃すると聞き、ステンツ提督に反論した。

「無論だ。既にガメラ上陸によってかなりの被害が出ている。ガメラも純分脅威になりえる」

ステンツ提督が言った通り、ホノルルにはレギオンだけではなくガメラによっても人的被害が発生しており、攻撃理由としては充分だった。

「ですが!」

「我々の任務は、アメリカ合衆国と人民をあらゆる脅威から守る事だ」

「全艦、砲撃準備完了」

「話は終わりだ。全艦撃ち方始め」

「撃ち方始め!」

「撃ち方始め!」

ハンプトン大佐から準備完了を報告されたステンツ提督は攻撃命令を下し、ハンプトン大佐、通信手の順で攻撃命令を全ての艦船に伝えた。

 

ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!

艦隊の全ての駆逐艦と巡洋艦が船首の主砲を発砲し、 発射された砲弾は真珠湾に居るガメラとレギオンに向かって真っ直ぐ飛翔した。

ドーーン!!!!

ガァァァァァァァァァァ!!!!

キヨォォォォォォ!!!!

砲弾はガメラとレギオンに命中し、二方は悲鳴を上げた。

 

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「全弾命中。しかし目標は健在」

「第二次攻撃開始」

「了解。第二次攻撃開始!」

 

ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!

ドーン!!!!ドーン!!!!ドーン!!!!ドーン!!!!ドーン!!!!

再びガメラとレギオンに向かって砲撃が開始された。

キヨォォォォォォ!!!!

ビュン!

攻撃を受けたレギオンは分が悪いと判断したのか、東に向かって飛び去った。

ガァァァァァァァァァァ!!!!

ゴォーーーー!!!!

ガメラも飛行形態に変形し、レギオンを追って飛び去った。

 

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「ガメラ、巨大レギオン、ホノルルより離れます」

「巨大レギオン、レーダーから消失。見失いました」

「逃げられたか………ガメラを追跡しろ」

「了解」

レギオンを見失なったステンツ提督はレーダーに映るガメラを追うよう命令した。

 

翌朝

ホノルル

夜が明け、壊滅的被害を受けたホノルルでは市警や消防局、州軍による被災者の救助活動が行われ、人々は救護テントで身元確認の手続きを行ってた。

「すみません、この子迷子なんですが」

「これに名前を記入して下さい」

ニックはヨシキを連れて救護テントを訪れたが、忙しいのか係員にあしらうように名簿を渡されたニックは名前を記入しようとした。

「えーっと、君名前は……!」

ニックはヨシキの名前を記入しようとフルネームを聞こうとした矢先にヨシキが居ないことに気付き、辺りを見回した。

「ヨシキ!」

「パパ!ママ!」

しかし、直ぐに両親と再会したヨシキを見つけたニックは、これ以上自分が関わる必要が無いと判断しその場を離れようとした。

「お兄ちゃん!」

「?」

「ありがとう!」

ヨシキは立ち去ろとしたニックにお礼を言い、両親もニックに頭を下げていた。

ニックも会釈をしてその場を離れた。

その場を後にしたニックは陸軍の歩兵部隊が移動しているのに気付いた。

「すまない。第82空挺師団のニック・モートン大尉だ。君達は陸軍か?」

「はい、第25歩兵師団のアレン上等兵です」

ニックは身分証を見せながら、歩兵の一人アレン上等兵に声をかけた。

「陸軍にも出動命令が出てのか?」

「はい、東に向かうよう命令されました」

「では怪獣は東に?」

「えぇ、狩りの始まりです」

 

キィーーー!!!

ゴォーーーー!!!!

オアフ島から空軍の輸送機や戦闘機、海兵隊のヘリ、海軍の艦船がガメラとレギオンを追って、続々と東へ出発して行った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2体目のレギオン

大平洋

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「ガメラ、海に着水。現在海上を60ノットで東に向け移動中」

ガメラは飛行するエネルギーを使い果たしたのか海を移動し初め、第7艦隊はガメラと並走しながら追尾を続けた。

「何で東に向かってるのかしら?」

メグミはガメラが東に向かってる事に疑問を感じ、それを口にした。

「レギオンが東に向かって飛んで行ったからでしょ?」

「まぁ、そうですけど、そのレギオンも何で東に行ったのかと思いまして」

「お友達でも居るのかしら?」

「…………友達………」

「アラン?どうしたの?」

グラント博士はウチキド博士が言ったジョークである可能性に気付いた。

「21年前、雀路羅にレギオンの隕石が墜ちた日、北米にも隕石が落下したというデータがあった」

「まさか……それもレギオンだって言うの?」

「おそらく……」

「巨大レギオンは……1体だけじゃなかった……」

「グラント博士、その隕石はどこにあるんですか?」

ハンプトン大佐はもう1つの隕石がどこにあるか聞いた。

「あなた達軍が持って行ったわ。未知の生体の可能性があるとか称して」

「どこに?」

「ネバダ………エリア51だ」

 

アメリカ合衆国

ネバダ州 グルーム・レイク空軍基地

「降車!」

ネバダ州のグリーム・レイク空軍基地こと、エリア51では第七艦隊の通報を受けた空軍が特殊部隊を基地に派遣し、地下の隕石保管庫に向かっていた。

ガラ!

「クリア!」

「クリア!」

特殊部隊は沢山ある保管庫の小窓を開けて、中に異常がないか虱潰しに調べた。

ガラ!

「っ!おい!」

「「「「「「!」」」」」

隊員が保管庫の1つの小窓を開けると、そこから光が射し込み、開けた隊員は他の隊員を呼び止めた。

「開けるぞ」

隊員は扉を開け、他の特殊部隊は銃を構えて警戒した。

しかし、扉を開けるとその先は壁に巨大な穴が開いており、そこから塩の砂漠で有名な、グルーム乾燥湖が広がっていた。

特殊部隊は双眼鏡で塩砂漠の先を見ると、巨大レギオンが歩き去って行くのが見えた。

 

大平洋

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「UAVからの映像入ります」

サラトガのCDCには無人偵察機から送られて来た、もう1体の巨大レギオンの映像がモニターに映された。

「奴はこのレギオンと話していたのか」

彼らは映し出された巨大レギオンの映像を見て困惑した。

「100メートル以上はあるわ。もう1体よりずっと大きい」

「こいつには翼が無い」

ウチキド博士とステンツ提督が言った通り、ネバダの巨大レギオンは形こそ雀路羅から出現したのとほぼ同じだが、全長が140メートルあり、背中には翼が無く、常に歩行している点が違ったが、グラント博士は即座にその答えを見つけた。

「そうか………私達は最初に現れた巨大レギオンがアリで言う女王アリだと考えて居たが、そもそもそれが間違っていんだ」

「どういうことだ?」

「あれは雄だったんだ。そしてネバダの巨大レギオンこそが女王、雌だ。地球の生物でも雄雌で形態や大きさが違う生物は多数いる、レギオンもそれと同様なんだ。雀路羅の草体が21年間も種子を発射しなかった理由もこれで説明がつく。雄のレギオンと草体は雌が目覚めるまで休眠して待っていた。そして雌は繁殖が可能な状態になり、雄も活動を開始した」

「じゃあ、雄と雌が合流したら……」

「………今度こそ繁殖を始める、卵を産む前に雌だけでも倒さないと」

 

「ガメラと雌レギオンの進行方向を検討した結果、3体はサンフランシスコに集結する可能が最も高いと推測される。よって、サンフランシスコを最終防衛ラインとし、ここを決戦場とする」

ステンツ提督はガメラと2体のレギオンをサンフランシスコで迎え撃つ計画を説明した。

「サンフランシスコまでは野放しにするき?」

「勿論、雌レギオンの進路にも軍を配置し攻撃する。それと、3体に対する戦術核攻撃も準備中だ」

「核だと!?」

「ちょっと本気!?人口密集地域で核攻撃するなんて!」

ステンツ提督は核兵器使用も辞さないと伝え、グラント博士達、特にメグミは反論した。

「提督!いくらレギオンを倒す為とは言え核兵器を使用するなんて!」

「安心しろ、今の核兵器はメガトンクラスの威力がある、確実に3体を抹殺出来る」

「そう言う問題じゃない!核爆弾を使えば放射能が撒き散らされて何千、いや、何万何億ともいう人達が原爆病に犯される!それに放射性物質でサンフランシスコ全体が死の街になり、風で他の地域にまで運ばれて影響が及ぶ!あなた達それを考えて使うつもりなの!?」

メグミはハンプトン大佐の核兵器を過信する言葉に対して激しく反論した。

「メグミ君、君は日本人だから核兵器に強い反感を持つ気持ちは理解出来る。だがこれは大統領命令だ」

「………結果あなた達は、戦争をしてもその後のことなんてこれっぽっちも考えていないのね」

「では他にいい策があるのかね?」

「ガメラなら、レギオンを倒せます」

「そのガメラだが、人間の味方とは限らないのではないか?」

「え?」

「現にガメラによって多数の死傷者が出ている。2年前も今回も」

「ですがガメラはわざとそうした訳では」

「わざとでなければ、例え大勢の人間が死んでも許せるのか?残された家族や友人はガメラを許せると思うか?」

「それは……」

メグミはステンツ提督の反論に上手く言い返せなかった。

実際ガメラによって死傷者が出ているのは隠しようのない事実であり、ステンツ提督の意見も最もであった。

「………各自持ち場に着け」

ステンツ提督達は話を終わらせると会議室を出た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

出兵

カリフォルニア州上空

オアフ島から第25歩兵師団を乗せた空軍のC-17輸送機は、カリフォルニアの上空を飛行していた。

「みんな、新しい目的地と命令が出た。降りる準備をしてくれ」

予定より早く着陸するとC-17の乗員の空軍兵に言われて陸軍兵は荷物をまとめ始めた。

歩兵師団と共に輸送機に乗り込んでいたニックは何故予定より早く降りる訳を聞いた。

「どうかしたのか?」

「レギオンがもう一体出たんです。第25歩兵師団にはサンフランシスコの防衛ラインに配置されることになったそうです」

 

アメリカ合衆国

カリフォルニア州 インディペンデンス

ネバダからカリフォルニアに入った雌レギオンはインディペンデンスに到達していた。

ガン

ウィィィィン

だがインディペンデンスには既に陸軍のM1A1戦車大隊が待ち構えおり、レギオンに砲口を向けた。

ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!

ガン!!!!ガン!!!!ガン!!!!

キショォォォォ!!!!

戦車大隊はレギオンに向かって一斉射撃を開始し、レギオンに命中した榴弾は爆発はするが表皮がかなり硬い為か、時折金属音のような音が混じっていた。

 

カリフォルニア州 ローン・パイン

インディペンデンスから約25キロ程離れたローン・パインには多数の軍の車両が集結しており、線路にはサンフランシスコへ戦車や兵士を輸送する軍用列車が停まっていた。

ローン・パイン空港に着陸したC-17輸送機からM939トラックに乗り換え、ローン・パインに到着したニックと第25歩兵師団はトラックから降りた。

(メグミに電話しとくか……)

ニックはメグミに連絡を取ろうとスマホを取り出した。

「…………ぁ、もしもしメグミか?ニックだ。そっちは今どうだ?」

『あまり乏しくない………』

「………何かあったのか?」

メグミの声に違和感を感じたニックは理由を問い質した。

『……………ガメラも殲滅対象に入った』

「本当……なのか……?」

『軍は核攻撃も辞さない構えよ』

「核だと!?まさかグラント博士達が言ったのか!?」

『博士達は反対したわ………でもガメラも被害を出してるから仕方ないってステンツ提督は………』

「…………わかった。俺は俺で何とかする」

『何とかって?』

「……ガメラと一緒に戦う」

ニックは私服から陸軍のACU戦闘服に着替え、防弾ベストを着用し、頭にヘルメットを被り、M4カービンと拳銃を携えて第25歩兵師団と共に軍用列車に乗り込みサンフランシスコへ向かった。

 

インディペンデンス

ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!

ガン!!!!ガン!!!!ガン!!!!

グゥゥゥゥガギギギギ!!

ガーーー!ビィーーン!!!

戦車隊に攻撃されたレギオンは反撃に転じ、顔の外殻を左右90℃に開き、両方の外殻の先端と、頭の角の先端から出したマイクロ波の稲妻を、開いた外殻の間に集束させ青い光の帯を形成し、戦車大隊に向かって集束させたマイクロ波の光線、マイクロ波シェルを発射し、一撃で戦車隊の半数を消し飛ばした。

 

太平洋

サラトガ 戦闘指揮所(CDC )

「ガメラ急速潜航!」

その頃、太平洋のガメラは潜航を始め、あっという間にソナーの探知圏外まで潜って行った。

 

カリフォルニア州

日が沈んだアメリカ西部では、ニック達が乗り込んだ軍用列車が山間部の線路を走っていた。

時折、レギオンに壊されたと思われる渓谷に架かる橋が幾つもあった。

「あの橋、やっぱり怪獣がやったのかな?」

「インディペンデンスの戦車大隊が壊滅したらしいぞ」

「本当か!?」

その傍ら、米兵達は怪獣に対する話をしていた。

「大尉」

「何だ?アレン上等兵」

「怪獣ってかなりの強敵ですかね?」

「多分。でもガメラは大丈夫だ」

「え?何でです?」

「ガメラは、俺達の敵じゃない」

「……何でそう思うんです?」

ガギィィィ!!

「「!?」」

ニックとアレンが話していると列車はトンネルの前で停車した。

ドーーン!!!

そのトンネルの向こうの山から砲撃音と銃声が聴こえてきた。

「こちらエコー中隊、ブラボー大隊応答を」

『………』

「こちらエコー中隊、ブラボー大隊応答を」

『…………』

部隊長は山の向こうに居る筈の部隊と交信をしたが、相手の無線からは雑音しかしなかった。

「様子を見に行こう。」

ニックはアレン上等兵の他、2人の陸軍兵と共にトンネルの先の偵察に出た。

4人はトンネルの先の渓谷に架かる高架橋に出た。

「何もありませんね」

「…………!」

カチャ

ニックは一瞬何かの気配を感じ、下の渓谷に銃口を向けた。

「大尉、何か居ましたか?」

「………いや、気のせいだ。フューリー軍曹とランド一等兵は下を見て来てくれ。アレン上等兵は俺と橋の上を調べるぞ」

「「「了解」」」

 

フューリー軍曹とランド一等兵は梯子を伝って下に降り、川岸を調べた。

「何も無いですね」

「あぁ………ん?」

「軍曹どうしました?」

フューリー軍曹が何かに気付き、ランド一等兵も同じ方向を見ると、河の方からやけに明るい物体が近付いて来た。

「何だ?」

「……………!伏せろ!!」

ガン!!

フューリー軍曹が近付いて来る物体に気付き、2人が後ろに飛び退くと、物体は川岸にぶつかった。

「戦車!?」

迫って来た物体の正体は、炎上する戦車であり、そのまま燃えた戦車は河の流れに流されて行った。

2人は河を再び見ると、河上から多数の燃えた戦車や装甲車が流されて居る光景を目の当たりにした。

「………早く通過した方が良いな」

グゥゥゥゥ

「「?」」

フューリー軍曹とランド一等兵は頭上から音がしたのに気付き、上を見た。

 

「合図無いですね」

「あぁ」

橋の上を調べてたニック達は下に居るフューリー軍曹達からの合図が無いことを不審がっていた。

グゥゥゥゥ

「「!」」

2人が渓谷の下を覗き込もうとしたら、下から雌レギオンが頭を上げて来た。

「隠れろ」

ニックとアレン上等兵はレギオンに見つからないように、線路に隠れるように寝そべった。

グゥゥゥゥ

レギオンは2人に気付いてはいないが、橋を探るように動いた。

ガァァァ

「これ消さないと」

「静かに」

アレン上等兵は背負ってた無線機から通信音がし、慌てて消した。

 

「エコー3応答せよ」

『…………』

「エコー3、異常はあるのか、無いのか?」

『…………』

トンネルの反対側にいる列車では、部隊長がニック達に連絡をとろうとしたが、無線機はアレン上等兵が切っている為通信は出来なかった。

「…………出発だ!」

痺れを切らした部隊長は列車を走らせるよう命令した。

 

パワァーーーン!!

グゥゥゥゥ!

レギオンは反対側から聴こえて来た列車の汽笛に反応し、橋から離れた。

「……………ふぅ、もう大丈夫だ」

ニックとアレン上等兵はレギオンが居なくなり、起き上がった。

ドーーン!!!!

「「!?」」

トンネルの方から突然爆発音がし、2人はトンネルの方を見た。

2人が後ろを見ると、トンネルからレギオンに攻撃され炎上する列車が2人目掛けて突っ込んで来た。

「走れ!!」

ニックとアレン上等兵は列車から逃げようと線路を走ったが、高架橋の脇に再びレギオンが現れた。

「大尉!た」

ガシャン!!!!

「っ!くそ!」

レギオンはニックの後ろを走るアレン上等兵ごと高架橋を破壊し、ニックは高架橋から渓谷の河目掛けて飛び降りた。

ボチャッ!

ニックは河に飛び込んだ。

河はある程度の深さがある事と、空中で体制を整えた事で河に入水する事は出来た。

ドン!!!

ニックが飛び込んだ直後、直ぐ近くに炎上した列車が橋から河に落ちた。

「ぶはっ!」

ニックは水面に上がり、顔を出した。

キショォォォォ!!!!

ドーーン!!!!

ニックがレギオンを見ると、レギオンは山肌を突き破って地中に潜って行った。

 

大平洋

サラトガ 戦闘指揮所(CDC)

「消息不明………!?」

「あぁ、おそらく雌のレギオンに襲われたんだろう」

メグミはハンプトン大佐からニックが乗った軍用列車が消息不明になったと伝えられていた。

「ニックは……無事なんですか!?」

「残念だが、兵士の安否は不明だ」

「そんな……」

ハンプトン大佐から現実を突き付けられたメグミはショックのあまり椅子に座り込んでしまった。

「落ち着け、安否不明なだけでまだ死んだとは決まってない。モートン大尉が見つかったら君に知らせる……元気を出せ」

「………はい」

ハンプトン大佐から励まされたメグミは完全とは言い切れないが、立ち直ることが出来た。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

サンフランシスコ防衛線

アメリカ合衆国

カリフォルニア州 サンフランシスコ

『サンフランシスコ全域に緊急避難命令が発令されています。市民の皆さんは警察や軍の指示に従い、速やかに避難を開始してください。繰り返します』

早朝からサンフランシスコ全体に避難を誘導するアナウンスが流れ、市警や消防局のみならず、アメリカ連邦軍やカリフォルニア州軍を総動員して避難活動が行われており、人々は続々とサンフランシスコからの脱出を始めていた。

「オーライ!オーライ!ストップ!」

同時に市内の彼方此方に軍が配置され始め、道路は歩兵や戦闘車輌が往来していた。

 

『24番ストリートで強盗事件発生。付近の車両は至急急行してください』

『こちら14号車!ショッピングモールで略奪が起きてる!直ぐに応援を寄越してくれ!』

「くそ!これで何件目だ!」

市内では混乱に乗じた略奪や強盗、放火が多発し、警察はそちらの対応にも追われ収拾するのにパトロール警官や機動隊だけで手が足らず、SWATや州兵まで動員されていた。

 

カリフォルニア州

オークランド 戦闘指揮所

サラトガもサンフランシスコに到着し、戦闘指揮所はサンフランシスコの対岸に位置するオークランドに移された。

その戦闘指揮所ではウチキド博士がパソコンを使ってある計測を行っていた。

「これが発電所のレーダーサイトの波形、そしてこれが襲われたミサイル追跡艦のレーダーの波形」

「似てないな」

ウチキド博士はレーダーの波形図をパソコンの画面に出したが、お世辞にも同じ波形には見えなかった。

「えぇ、でもこれに特殊なフィルターを掛けると」

ウチキド博士は波形図にフィルターを掛けた状態にし、波形図を重ねると今度はピッタリ一致した。

「レギオンはこの波形に反応したのよ。だからこの波形を流せば小型レギオン位なら誘導出来るかも」

「よし、では小型レギオンを誘導する手は出来たが、どこに誘導する?」

「そうね………」

「ストロタワーはどうです?あそこなら電波を流せます」

メグミは、サンフランシスコにある電波塔、ストロタワーから電波を流し、そこに誘導する作戦を提案した。

「そこに小型レギオンを誘き寄せて一網打尽、行けるわ」

「じゃあ、私はストロタワーに行って準備して来ます」

「大丈夫?」

「念のため護衛を付けよう」

「いえ、大丈夫ですよ」

メグミはそう言うと、護衛も無しにサンフランシスコへ向かった。

 

一方、レギオンに襲われた軍用列車は多数の死体と共に川岸に打ち上げられていた。

「………っ」

同じく川岸に打ち上げられてたニックは目を覚ました。

「大尉!」

そこにフューリー軍曹とランド一等兵が駆け付けた。

「大尉!無事ですか!?」

「フューリー軍曹、ランド一等兵。2人も無事だったか」

「えぇ、頭の上にレギオンが居たんで隠れてました」

「他に生存者は?」

「ダメです。我々以外全滅です」

「そうか………」

バババババ!!!!

ヘリのローター音が近付いて来た。

ババババババババババ!!!!

川岸に音信不通になった列車を捜索しに空軍の救助ヘリが飛来し、中から空軍の救助部隊が降りて来て捜索を開始した。

「ひでぇ」

「生存者居るのか?」

「兎に角探すんだ」

「了解………?曹長!」

救助隊員が何かに気付き、曹長も同じ方向を見るとニック達が歩いて来ていた。

「衛生兵ーー!!」

 

カリフォルニア州 サンフランシスコ

「えーっと、ストロタワーは確かこの道を通って」

オークランドからサンフランシスコに出向いたメグミは車や公共交通機関は市民の避難でごった返して使えず、スマホのナビゲーション機能を使ってストロタワーまでの道を歩いていた。

「え?」

メグミが使って居たスマホが突然フリーズした。

「もしもし?もしもし!?あれ?」

「こちら3-8。こちら3-8応答を。何だ?」

よく見るとメグミのスマホだけではなく、他の市民のケータイや避難誘導に当たっていた軍や警察の無線機も使えなくなっていた。

ゴゴゴゴゴ

「「「「「「?」」」」」

街全体に地響きが鳴り響いた。

ガシャーーーン!!!!

ドーーン!!!!

サンフランシスコのランドマークであるトランスアメリカピラミッドのガラスが割れ、ビルの壁も割れ始め、そこからオレンジ色の茎が見え隠れし、ビルの40階から上が倒れ、地面に落ちた。

「草体!?」

屋上に草体の蕾が鎮座し、地響きは止んだ。

 

オークランド 戦闘指揮所

「トランスアメリカピラミッドに草体出現!」

「付近一帯に電波障害が発生しています!」

戦闘指揮所にも草体の情報が入って来た。

「避難の状況は?」

「市内にはまだ多数の市民が残っています」

「草体の花が咲きました!」

「何!?」

グラント博士達は戦闘指揮所から外に出て、双眼鏡で草体を目視すると、確かに草体のオレンジ色の花が咲いていた。

「速すぎるぞ」

「温暖な分、花の成長が速いのかも」

「近接航空支援を繰り上げ要請」

「了解」

ステンツ提督は箇所に指示を出し、草体に対する対応を行っていた。

その際、ゴールデンゲートブリッジを映したモニターを見た。

「橋にまだ人が居る」

 

サンフランシスコ湾 ゴールデンゲートブリッジ

ゴールデンゲートブリッジではサンフランシスコを脱出しようとする車で渋滞が発生していた。

「まだかかるのか?」

「えぇ」

車のドライバーは文句を言い、サンフランシスコ市警の警官はその対応に追われてた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

橋の左側の道路には軍の兵士が配置されており更にM1A2戦車とM1128ストライカー自走砲の車列が走って来て、一例に停車し砲塔を海に向けた。

その下のサンフランシスコ湾にも海軍第3艦隊の駆逐艦や巡洋艦が配置されていた。

ガァァァ!

「「「「「?」」」」」

サンフランシスコ湾に生き物の唸り声が響いた直後、海鳥があちらこちらで飛び回った。

 

「左舷方向!!500メートル!!」

駆逐艦の甲板に居た水兵が左から接近してくる物体に気付き、大声で全員に伝えると、海面に浮き出ていたガメラの甲羅が迫って来た。

「来るぞーー!!」

ザァァァァ

ガメラは駆逐艦の手前で潜航した。

ザパーーン!!!

「「「「「!?」」」」」

ガメラは潜った反対側から浮き上がった。

ドン!!!!ドン!!!!

目の前にガメラが浮上した駆逐艦の一隻が焦って砲撃を始めてしまい、更にミサイルも発射し、外れたミサイルがゴールデンゲートブリッジをかすって行った。

「橋にまだ民間人が居る!撃ち方止め!撃つのを止めろ!!」

バシュッ!!!!バシュッ!!!!

橋に居た陸軍の指揮官が駆逐艦に攻撃中止を通達した直後、更にミサイルが橋への直撃コースで飛んで来た。

ドン!!!!ドン!!!!

飛んで来たミサイルは体を起こしたガメラに命中し、橋への直撃は免れた。

ガァァァァァァァァァ!!!!

「撃ち方始めー!!」「撃て!!撃てー!!」

ドン!!!!ドン!!!!

ダダダダダダダダダ!!!

ガメラが現れて、橋に居た歩兵や戦車もガメラに銃撃や砲撃を開始した。

ガァァァァァ!!!

「車から降りるんだ!」「走るわよ!早く!」

民間人達は車を走らせ、中には車を捨てて脚で走って橋を越えようする者もいた。

ダダダダダダダダダ!!!ダダダダダダダダダ!!!

ドン!!!!

ダン!!!ダン!!!

軍は民間人が避難する時間を少しでも稼ごうと攻撃を続けた。

ガァァァァァァァァァァァ!!!!

ドーーーン!!!

ガメラはゴールデンゲートブリッジを通過するように破壊し、サンフランシスコ湾に侵入した。

 

サンフランシスコ

市内では6機のF-35が草体への攻撃を行おうとしていた。

「目標確認。SDB投下用意」

F-35編隊はGBU-38精密誘導爆弾で草体を焼き払おうと投下準備をした。

キショォォォォ!!!!

ガン!!!

投下しようとした矢先に、軍の追跡を逃れてた雄レギオンが飛来し、戦闘機の1機を叩き落とした。

『くそ!レギオンだ!』

「目標変更!先にレギオンを叩く!」

戦闘機隊は草体を一旦止め、レギオン攻撃を優勢した。

『ロックオン、FOX2!』

バシュッ!!!!

F-35の一機が対空ミサイルをレギオンに発射し、命中したがレギオンは健在だった。

『ちょこまかと!』

ガシャン!!!

『ぐぁ!!』『あぁ!!』

『ラプター3と5がやられた!』

「追え!見失うな!」

バシュッ!!!!バシュッ!!!!

キショォォォォ!!!!

バヂヂヂヂヂヂヂ!!!

ドン!!!!ドン!!!!

レギオンはマイクロ波を放出し、更に2機撃墜した。

「FOX2!FOX2!」

バシュッ!!!!バシュッ!!!!

ドン!!!!ドン!!!!

バヂヂヂヂヂヂヂ!!!

「ぐぁぁぁ!!」

ドーン!!!!

残った最後の戦闘機もレギオンのマイクロ波の直撃を受け撃墜された。

キショォォォォ!!!!

雄レギオンが戦闘機を全滅させた直後、地中を掘り進んでた雌レギオンがサンフランシスコに姿を現した。

グゥゥゥゥ

グゥゥゥゥ

対面した2体のレギオンは再会を喜んでいるのか、顔を擦り合わせる行為をした。

グゥゥゥゥガギギ!

雌レギオンは草体に向かい、産卵菅を草体にくっ付け卵を産み始めた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

HALO降下

オークランド 戦闘指揮所

「市内に!?」

「えぇ、草体が現れて以降は音信不通よ」

空軍に救助されたニックは、オークランドの戦闘指揮所にヘリで送ってもらい。

そこでウチキド博士からメグミがサンフランシスコに向かったまま行方不明だと教えられていた。

「……………草体への攻撃は?」

「雌が産卵しているから親は何がなんでも草体を守ろうとしてる。現に爆撃しようとした戦闘機が全滅させられた上に、電波障害がより強力になって誘導兵器も上手く作動しなくなってる。街には多く人が取り残されているから、絨毯爆撃をする訳にもいかないし」

「気付かなかった……で済ましますよきっと」

ニックはもしサンフランシスコ全体を爆撃して、民間人に死傷者が出れば軍は言い訳をすると言い放った。

これは過去に米軍兵士だった父親を、同じ米軍の誤爆で失ったニックなりの嫌味だった。

「それ………お父さんのこと?」

「えぇ、その時言われたんです。爆撃地区に父が残っていたことに気付かなかったって………本当はわかっていたはずなのに、当時の司令官は味方の犠牲より作戦成功を優先したんですよ…………すみません、話が逸れました」

「良いのよ」

「それで?まさか、このまま指を咥えて黙ってるつもりはないですよね?」

「今ステンツ提督達が新しい作戦の説明をしているわ。あなたも来て」

戦闘指揮所の中ではグラント博士とステンツ提督、ハンプトン大佐が草体破壊作戦のブリーフィングしていた。

「精密誘導兵器は草体からの電磁波によって妨害される為、高度1万フィートからHALO降下で市内に突入する。諸君らの任務は種子の発射を阻止する事だ」

「グラント博士、草体の活動を止めるのに最適な攻撃ポイントは推測出来ますか?」

「根だ。草体は基本的には地球の植物と変わりない、根を破壊すれば草体の活動を大幅に制限出来る」

「それに草体は種子の発射の際に酸素を増やす、上手く行けば少ない爆薬で大ダメージも与えられる、ですよね?」

「あぁ」

ニックがグラント博士の後を引き継いで話した。

「彼は?」

「彼は空挺師団のニック・モートン大尉。2年前はガメラと遭遇した部隊の隊員だった」

突然入り込んだニックの身元を聞いた、作戦を担当するNavy SEALs隊長 アンダーソン海軍中佐に対してハンプトン大佐が説明した。

「あの島の生存者?」

「そうだ。モートン大尉は怪獣との実戦を経験している、何か役に立つかもしれない。中佐、彼にも作戦に参加してもらう、構わないか?」

「勿論です。モートン大尉、私はSEALsのアンダーソン中佐だ、今回はよろしく頼む」

「モートンです、中佐」

ニックは隊長のアンダーソン中佐と自己紹介をした。

「諸君、この任務は非常に重大だ。この任務の失敗はサンフランシスコのみならず、アメリカひいては世界の滅亡に繋がる。人類の命運は諸君らの手に掛かってる、心してかかれ。健闘を祈る」

「30分後に出発する。直ぐに準備に取り掛かってくれ」

「「「「「「了解」」」」」」」

「ニック」

ステンツ提督の訓示を聞いたNavy SEALsは出動の準備にかかり、同じ準備に入ろうとしたニックにグランド博士が声をかけた。

「ジョーの事だが、我々がレギオンを早く抹殺しておけば、彼は死なずに済んだはずだ。本当に済まなかった」

「……………あれは博士のせいではありません。それは叔父さんもわかってくれてると思います」

「…………そうか」

「グランド博士、これが終わったら一杯奢らせてください」

「あぁ、喜んで」

 

サンフランシスコ

ビュン!!

キショォォォォ!!!!

雄レギオンは高層ビルの屋上に着地した。

ガァァァァァァァァァァァ!!!!

その反対方向から、サンフランシスコ湾から上陸したガメラが現れ、2体は対峙した。

「シェルターだ!シェルターに入れ!」

街に居た市民は2体の怪獣から逃れようと緊急時に設置されて居たシェルターに一斉に駆け込んだ。

その中にはメグミもいた。

キショォォォォ!!!!

ガァァァァァァァァァァァ!!!!

メグミがシェルターに避難した直後にガメラとレギオンは戦闘を開始し、メグミはシェルターの扉が閉じられるギリギリまでその様子を見ていた。

 

1時間後

サンフランシスコ上空

ガメラとレギオンがサンフランシスコで戦闘を開始してから1時間後、サンフランシスコの上空1万フィートにはNavy SEALsを乗せたC-17が旋回していた。

 

C-17 貨物室

「主よ、此度は仲間と共に戦う機会を与えてくださった事を感謝いたします」

貨物室ではNavy SEALsの隊員達が降下開始までの間、武器の点検や聖書を読み上げていた。

「モートン大尉、1つ聞かせてくれ」

降下を待っている間にアンダーソン中佐はニックにある質問をした。

「はい、何でしょうか?」

「ガメラは、信用出来る奴か?」

「……自分はガメラと共にギャオスと戦いました。その時確信しました………ガメラは信用出来る戦友だと」

「そうか、ならその言葉を信じよう」

「ありがとうございます」

ビー!

「降下用意!」

貨物室に降下準備のブザーが鳴り、アンダーソン中佐の命令で、全員椅子から立ち上がり、ゴーグルと酸素マスクを着用した。

ゴォーーー!!!!

貨物室の搬入口の扉が開き、機内にマイナス50度の凍り付くような冷たい空気が流れ込んで来た。

扉が開ききると、外には日の入りが見えた。

ビー!ビー!ビーー!

降下開始の合図が鳴り、SEALsの隊員達とニックは外に飛び出し、脚に着けた位置を知らせる赤いスモークで尾を引きながら時速100㎞の速度で降下して行った。

 

サンフランシスコ

SEALsは雲を通り抜け、街の彼方此方から火の手が上がるサンフランシスコに迫って行った。

ガァァァァァ!!

その際、戦っているガメラとレギオンのほぼ真横を通り抜けて行った。

ピン!バッ!

ニックは高度300メートル以下まで降下し、背中に背負ったHALO降下用のパラシュートを展開し、地面に着地した。

カチャ

着地したニックはパラシュートをしまい、M4カービンを取り出した。

ドン!!!

ニックはビル群の奥へ行く、ガメラの尻尾を見送った。

「大尉!こっちに来い!」

アンダーソン中佐に呼ばれたニックは他のSEALs隊員達と共にアンダーソン中佐の下に集まった。

「状況は?」

「ビルに激突し、2人失いました」

「………認識表は回収したのか?」

「勿論です。身体も必ず連れ帰ります」

「よし、では予定通り、草体にC4を設置する。巨大レギオンはガメラが相手してくれるが、小型はこちらに向かって来るだろう。油断するな」

「「「「「「「了解!」」」」」」

「行くぞ!」

SEALsは草体が生えているトランスアメリカピラミッドまで走り始めた。

 

サンフランシスコ市内地下シェルター

「おい!あんた正気か!?」

「危険過ぎるわ!」

その頃、サンフランシスコにある地下シェルターでは、避難していた市民達の間で揉め事が起きていた。

「承知の上です」

その揉め事の発端となったメグミは荷物を持って地下鉄を通じて出ようとしていた。

「あんた状況解ってるか!?外にはバカデカイ怪獣が3体も居るんだぞ!?直ぐに踏み潰されるぞ!」

「ここで助けを待っている方が安全よ」

「でも行かないといけないんです」

メグミは周りの説得をしても外に出る決心を曲げなかった。

ストッ

メグミは地下鉄の路線に降り、ストロタワーを目指して歩き出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

共闘

サンフランシスコ

トランスアメリカピラミッド

SEALsは目的地に到着したが、トランスアメリカピラミッドにはまだ雌レギオンが草体に卵を産み付けており、迂闊に近付けないため、SEALsは見つからないように一旦車や建物の影に隠れた 。

「…………?」

ニックは後ろに気配を感じ、振り向いた。

その後ろでは霧の様に舞った粉塵に巨大な影が映っていた。

ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!ガァァァ!!!

影の正体であるガメラはガラスが割れる程の鳴き声で吠えた。

キショォォォォォォォォ!!!!

産卵を終えた雌レギオンもガメラに向かって吠え、ガメラに向かって行った。

「今だ!」

SEALsは雌レギオンが離れた隙にトランスアメリカピラミッドに突入した。

「酸素濃度は?」

「………危険濃度です」

「よし、全員ボンベ装着」

SEALs隊員の1人が検知器で酸素濃度を測定し、危険範囲だった為酸素ボンベを装着した。

 

27階

「開けろ」

ビルに突入したSEALsは3チームに別れ、1チームは根がある地下を、もう1チームは花がある屋上付近、そして卵があると思われる展望台を担当するチームに別れてC4爆弾をセットする手筈になっており、ニックとアンダーソン中佐は卵を担当するチームに入っており、SEALs隊員が部屋の扉を開けると予想通り、卵鞘で包まれたレギオンの卵が産み付けられていた。

「凄い数だ……」

「………これが孵ると思うとゾッとするな」

ニック達が見つけた卵の数はざっと見ただけだが、400は軽く超しており、それが全て孵るのかと想像するだけで身震いした。

「取り掛かるぞ」

 

ガッ!!

ガァァァァァ!!!

その頃、市内ではガメラと雌レギオンが激しい戦いを繰り広げており、2体が戦う度に近くのビルが破壊されていた。

ガァァァァァ!!!

キショォォォォ!!!!

ガッ!

ガメラの背後から雄レギオンが飛び掛かり、戦闘はガメラとレギオン2体の2VS1になった。

ガァァァァァ!!!!

ガッ!!!

バヂヂヂヂヂヂヂ!!!

ガァァァァァ!!!

ガーーービィーーー!!!!

ドーーン!!!!

ガァァァァァ!!!

ガメラに向かって雄レギオンがマイクロ波を浴び、間髪入れず雌レギオンがマイクロ波シェルを発射し、ガメラは爆発に巻き込まれた。

ガァァァァァ!!!ガァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!

バシュッ!

ガメラは火球を雌レギオンに向かって発射してが、雌レギオンが胴体脇の爪から発生させたバリアで火球を防いだ。

ガァァァァァ!!!!

ガメラは雌レギオンに体当たりした。

 

トランスアメリカ・ピラミッド

地下2階

ギチュウギチュウギチュウ

「レギオンだ!」

カチャカチャ

地下で爆薬の設置作業をしていたSEALsの前に草体の警備にあたっていた小型レギオンが姿を表し、レギオンを確認した隊員はM4A1を構えた。

「撃て!」

ダダダダ!!!ダダダダ!!!

ダダダダダダダダ!!!

グェェェ!!!

隊員はレギオンに銃撃を開始し、前にいた2体を射殺した。

「セット完了!」

「後退!後退!」

ダダダダ!!!

爆薬の設置が完了し、SEALsはビルの外に後退を開始した。

 

27階

「セット完了」

ギチュウギチュウギチュウ

「レギオン接近!」

「撃て!」

ダダダダ!!!ダダダダ!!!

ダダダダ!!!

ニック達が居る27階にも小型レギオンの群れが現れ、交戦を開始した。

「まだか!?」

「もう少しで………セット完了!」

「後退!」

ダダダダ!!!ダダダダ!!!

ニック達も爆薬を設置し後退しようとしたが。

ギチュウギチュウ

「入り口から!?」

ニック達が出入りに使用した通路からも小型レギオンが現れ、完全に退路を経たれてしまった。

「突破出来るか!?」

「数が多過ぎます!」

「…………全員窓から離れろ!」

ニックはおもむろに手榴弾を取り出した。

「グレネード!!」

コン

ドーーン!!!!ガシャーン!!

ニックは手榴弾を窓付近に投げ、爆発した手榴弾により展望台の窓が粉々になり、展望台と外を隔てるガラスがなくなった。

「全員パラシュートを用意しろ!」

「成る程な」

アンダーソン中佐達もニックの意図に気付き、HALO降下に使用したパラシュートを準備した。

「行け!」

アンダーソン中佐の一声でSEALs隊員達は次々と外に飛び出し、外に出た隊員からパラシュートを展開し、地面に降りて行った。

ダダダダ!!!ダダダダ!!!

ダダダ!!!

「全員出ました!」

「よし!大尉行くぞ!」

「了解!」

殿を務めていたニックとアンダーソン中佐も全員飛び降りたことを確認すると2人も窓から飛び降り、パラシュートを展開した。

 

オークランド

戦闘指揮所

「提督、ガメラの行動は明らかにレギオンの進行を阻止しようとしています」

「………」

その頃、オークランドの戦闘指揮所ではガメラが何度も草体へ向かおうとし、レギオンの進行阻止という、自分達の目的と同じだと気付いていた。

「…………大佐」

「はっ」

「ガメラは味方だと思うか?」

「私は……少なくともガメラには、人類と敵対する意識は無いと思います」

ステンツ提督に質問されたハンプトン大佐は自分の考えを正直に答えた。

「そうか……………火力をレギオンの頭部に集中しガメラを援護せよ」

「了解!」

ステンツ提督からガメラ援護を命令されたハンプトン大佐の顔はどことなく嬉しそうだった。

 

サンフランシスコ

「セーフティ解除!」

ステンツ提督からの命令で、市内に侵入した海兵隊がTOW対戦車ミサイルの照準を2体のレギオンに合わせた。

TOWミサイルは旧式で、現在主流になっている一度目標を決めたら内蔵されたコンピュータが自動的に軌道修正するミサイルとは違い、ミサイルと照準器を繋いだワイヤーで誘導する仕組みであり、当たるまで照準を合わせ続けなければならない欠点があるが、今回はサンフランシスコ全体に発生している電波障害の影響を受け難いと判断され、使用される事になった。

「発射!」

バン!バン!バン!

海兵隊は数発のTOWミサイルを発射し、2体のレギオンに向かって行った。

バヂヂヂヂヂヂヂ!!!

ビュン!

ドン!!!!バン!!!!

レギオンはバリアを張りミサイルの軌道を剃らせたが、ミサイルは軌道修正しレギオンに着弾、胴体脇の爪を何本か破壊した。

ガァァァァァ!!!ガァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!

バヂヂヂヂビュン!

ガメラは火球を発射し、レギオンは残った爪でバリアを張ったが、爪が少なくなったことによりバリアの強度が低下しレギオンは何とか火球を防げたと言った感じだった。

キショォォォォ!!!!

2体のレギオンは角の根元を発光させた。

 

トランスアメリカピラミッド

「全員退避完了!」

ギチュウギチュウギチュウ

「レギオンが!」

トランスアメリカピラミッドではSEALsが爆破しようとした矢先に、ビルから大量の小型レギオンが出てきた。

ババババババババババババババババババ

小型レギオンは翼を広げて、一斉に飛んで行った。

「まさかガメラに向かっているのか!?」

ニックは小型レギオンの群れがガメラを攻撃しようとしていると気付いた。

 

ストロタワー

一方、地下鉄を通じてストロタワーに到着したメグミは小型レギオンを誘導出来る周波数を流そうとしていた。

「お願い」

カチ

ウィィィィィィ

メグミは電波を流し始めた。

 

サンフランシスコ

ババババババババババババ!

キショォォォォ!!!!」

ガメラに迫った小型レギオンの群れは突然コースを変え、雄雌のレギオンの呼び掛けにも応じず、明後日の方向へ飛んで行った。

 

ストロタワー

ババババババ!

「来た」

ババババババババババババ!

小型レギオンの群れは全てストロタワーのアンテナに群がり、アンテナを敵と認識し破壊しようとした。

 

トランスアメリカピラミッド

「爆破!」

カチ

ドーーン!!!!ドーーン!!!!ドーーン!!!!ドーーン!!!!

SEALsはセットしたC4を連鎖爆発で爆発させ、濃くなった酸素濃度も相まって火は瞬く間にビル全体に燃え広がり、草体は爆発炎上した。

 

ドーーン!!!!

キショォォォォォォォォォ!!!!

草体の爆発に気付いた雌レギオンはガメラとの戦闘を放り出し、草体の方へ向かった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

攻撃準備

オークランド 戦闘指揮所

「通信回復!」

草体が破壊されたことによって、サンフランシスコ全体に発生していた電波障害が解消され、無線通信も回復した。

『こちらスカル1、こちらスカル1。草体の爆発に成功』

「よし、よくやった」

『それよりも、小型レギオンの群れがストロタワー方面に向かったのですが、一体何が起きてるのかわかりますか?』

「ストロタワーに?」

「………メグミだわ」

アンダーソン中佐からの報告を聞いたグランド博士とウチキド博士は、小型レギオンがストロタワーに向かった理由がメグミが電波を流しているからだと気付き、同時にメグミが生存していることも確信した。

 

サンフランシスコ

『おそらく、それはストロタワーからの電波に小型レギオンが反応しているからだ』

「電波?」

「………メグミか………」

グランド博士からの通信を聞いたニックも電波を流しているのがメグミだと気付いた。

「アンダーソン中佐。ストロタワーに民間人が居ると思われます、至急救助の必要があるかと」

「………戦闘指揮所、ストロタワーへ向かう許可をください」

 

オークランド 戦闘指揮所

「わかった。スカルはストロタワーへ向かい、民間人の救出と攻撃ヘリの誘導を行え」

 

サンフランシスコ

「了解、スカルアウト」

ステンツ提督から新しい命令を受けたSEALsはストロタワーへ向かおうとした。

キショォォォォ!!!!

「「「「「「!」」」」」」」

グゥゥゥゥ!

ストロタワーに向かおうとした矢先に、雌レギオンがビルに駆け付けて来た。

雌レギオンは無残に破壊された草体や卵を見た後、ニック達を見つけ、睨み付けた。

「あれ………怒ってる?」

「だろうな……」

雌レギオンが卵を破壊されて激怒しているのは明白だった。

ガーーー

雌レギオンは顔の外殻を左右に開いて、ニック達にマイクロ波シェルを撃つ用意をした。

「退避しろ!!」

「ダメだ間に合わない!」

戦車を一撃で破壊しガメラにもダメージを与える程の威力を持ったマイクロ波を人間が食らったら文字通り蒸発させられるのは言うまでなく、防弾チョッキを着ていても意味が無いのはわかりきっており、SEALsは急いで退避しようとしたが人間の足で走っても安全圏に逃げるには間に合いそうになかった。

「撃て!」

ダダダダ!!!ダダダダ!!!!ダダダダダダダ!!!!

「発射!」

バシュッ!

悪足掻きにしかならないと思いつつもM4カービンで銃撃を加え、M136無反動砲の対戦榴弾も撃ち込んだが、やはり効果はなかった。

ガーーー!

「マズイ……」

「もうダメだ!」

「神よ……」

「……っ!」

レギオンはマイクロ波シェルを発射する手前まで来て、全員が腹を括った。

ガッ!

ガギギギギギ!!

「ガメラ!」

レギオンがマイクロ波シェルを撃とうとした寸前で、ガメラがレギオンの外殻を両手で鷲掴みし発射を阻止し、レギオンをニック達から離した。

ガァァァァァ!

ジュュュュ

外殻はかなり高温なのか、ガメラの手から肉が焼けるような音と煙が出て、ガメラは手の平から出血した。

それでも構わずガメラは外殻を掴み続けた。

グゥゥギギギ!

ガァァァァァァァァ!!!

バキバキ!!

ガギギギギギ!!!

ドーーン!!

ガメラが渾身の力を込めると、2つの外殻が根元から折れ、雌レギオンは力尽きるようにその場に倒れた。

「………今の内だ!ストロタワーに向かうぞ!」

アンダーソン中佐は本来の命令を思い出し、SEALsはストロタワーに向かって走り出した。

 

ガァァァァァ

ドン!ドン!

キショォォォォ!!!!

ガッ!

ドーーン!!!!

ガメラが折った外殻を捨てた直後、雄レギオンがガメラに飛び掛かり、ガメラが倒れた拍子にビルを倒した。

 

オークランド 戦闘指揮所

「海兵隊へ通達、攻撃ヘリ編隊をストロタワーへ向かわせろ」

「了解」

「提督、ワシントンより緊急入電です」

「回せ」

ステンツ提督は受話器を取りワシントンから緊急入電に出た。

「ステンツです…………はい、現在ガメラとレギオンは市内で戦闘中です…………は?今何と?」

 

ネバダ州 ネリス空軍基地

ステンツ提督が電話に出ている頃、ネバダのネリス空軍基地では3機のB-2ステルス爆撃機がサンフランシスコに向け離陸しようとしていた。

その爆撃機には1機につき、16発のB83核爆弾が搭載されていた。

 

カリフォルニア州

オークランド 戦闘指揮所

「待ってください!サンフランシスコには多数の市民が取り残されています!今核を投下すれば民間人を巻き添えにします!」

ステンツ提督に掛かって来た電話は、国防総省(ペンタゴン)がガメラとレギオンに対して戦術核による攻撃を決定した事を伝えるものだった。

それに対して、ステンツ提督は民間人が取り残されている事を理由に反対した。

「………では夜明け、夜明けまで待ってください…………はい、感謝します」

ステンツ提督は何とか説得して夜明けまで待って貰えることになった。

「提督、あんた本当に民間人だけが理由か?」

グランド博士はステンツ提督が核攻撃に反対した理由が民間人が居ることを理由にしていたが、勿論それも理由だがステンツ提督は民間人以外にも、内心ではガメラを守ろうとする気持ちも入っており、グランド博士はそれを見抜いていた。

「だが、ペンタゴンはサンフランシスコを焦土にしてでも事態を打開する気だ」

ステンツ提督が出来たのは爆撃開始時刻を引き延ばしただけであり、ガメラとレギオンの戦いが続く限り核攻撃は取り下げないと言うのが国防総省からの返答だった。

「ガメラが、レギオンを倒すことを祈るしかない」

「あぁ………」

グランド博士が今出来ることはなく、ガメラに全てを託すしかなかった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

憤怒

ストロタワー

(よし、軍にもレギオンが集まったのは知れてるはず、後は攻撃してくれれば)

ギチュウギチュウ

「!?」

ストロタワーに居たメグミは背後から奇妙な音がするのに気付き振り向くと、制御室に侵入した小型レギオンがいた。

「あぁ………」

メグミは逃げることが出来ず死を覚悟した。

ガン!

「!?」

シュルル!

ダダダダダダダダダダダダ!!!

突然天井の通気ダクトの点検口が落ちてきて、そこからロープを伝って米兵がM4A1で小型レギオンを銃撃しながら降下してきて、米兵はメグミの前に降りた。

「大丈夫か?メグミ」

「ニック!」

降下して来た米兵はニックであり、振り向いてメグミに怪我がないか聞いた。

「後ろ!」

「!?」

グェェェ!!!

ガッ!

カチャン!

ニックが銃撃した小型レギオンは絶命しておらず攻撃して来たニックに襲いかかり、ニックはその際に持っていたM4A1を落とした。

「ぐっ!」

カチャン

ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!ダン!!!

ニックは落としたライフルの代わりにベレッタM9を至近距離から装弾数15発の内14発をレギオンに撃ち込んだ。

グェェェ!!!

ダン!!!

最後にレギオンの目に残った1発撃ち込み、レギオンは後ろに下がった。

カチャ

ドサッ

ニックはベレッタのマガジンを交換し、再びレギオンに向けたところで、レギオンは今度こそ絶命した。

「モートン大尉!」

ニックがレギオンを射殺したところで、アンダーソン中佐達も駆け付けて来た。

「中にいるレギオンは全て掃討した」

「了解、メグミ直ぐに退避するぞ」

「待って!群れがガメラに向かったらガメラは太刀打ち出来ないわ!今この施設を離れる訳には行かないの!」

ニックは施設からの退避を命じたがメグミは小型レギオンの群れを足止めする為に反対した。

それに対してニックは

「群れはここで一気に殲滅する」

 

サンフランシスコ

ブン!!!!

その頃、ガメラは雄レギオンとの戦闘を続けており、ガメラはしがみついた雄レギオンを振り払おうとした。

ビュン!!

雄レギオンは飛行しガメラからある程度離れると、今度はガメラに向かって顔の外殻を突き刺そうと向かって来た。

それに対してガメラは雄レギオンから目を離さずその場に留まった。

ガァァァァァ!!!

ガッ!!

キショォォォォ!!!!

ガメラは雄レギオンをギリギリまで引き寄せると雄レギオンの外殻を鷲掴みに、更に角も掴んで捕獲した。

キショォォォォ!!!!

ガッ!ガッ!ガッ!

雄レギオンはガメラから逃れようともがいたが、ガメラは離そうとしなかった。

ガァァァァァ!!!ガァァァァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!

ガメラは雄レギオン首目掛けて火球を発射した。

ガギギ……ギギ

雄レギオンは身体の中でもかなり柔い箇所に火球を撃ち込まれた為に頭が千切れ、青い目の光が完全に消え絶命した。

ガァァァァァ

ドン!

ガメラは雄レギオンの死体をその場に捨てた。

キジョォォォォ!!!!

ガァァ!

ガメラが雄レギオンを倒したのも束の間、今度は外殻を折られ死んでいたと思われていた雌レギオンが再び立ち上がった。

その目の色は青から赤に変わっており、外殻を折られ、雄も殺され、卵と草体まで破壊された事により、雌が激怒しているのは明らかだった。

ビシューーー!!!

雌レギオンは外殻を失って発射出来なくなったマイクロ波シェルに替わり、今度は外殻を折られ露出した顔の器官から何本もの赤いレーザーのような触手、レッドロッドを放出し、レッドロッドが触れたビルや信号は紙のように容易く切断された。

ビシューーー!!!

レギオンはレッドロッドを集束させて、ガメラ目掛けて放った。

ビシュ!ビシュ!ビシュ!ビシュ!

ガァァァァァ!!!ガァァァァァァァァ!!!!

レッドロッドはガメラの身体をも容易く貫通し、ガメラは悲鳴を上げた。

 

オークランド 戦闘指揮所

「雌レギオン、新たな触手でガメラを攻撃中」

「艦載機にガメラを支援させろ」

ガメラが圧されてると聞いたステンツ提督は、サラトガからF-35を発艦させようとしたが。

「発艦に、後10分を要します」

「準備が出来た機から発艦させろ」

しかし、ハンプトン大佐から直ぐには発艦出来ないと伝えられ、爆装した戦闘機から逐次発艦させるよう命令変更した。

「提督!スピリットが離陸しました!0700時を持って空爆を開始します!」

「「「「「「!」」」」」」」

戦闘指揮所全体に、通信兵からB-2爆撃機の離陸と核攻撃の開始時刻の伝令が入った。

 

サンフランシスコ

ビシュ!ビシュ!ビシュ!

ドン!

レギオンはレッドロッドを一旦引き、ガメラはレッドロッドを刺された箇所から煙を出しながら膝を着いた。

ビシューーー!

ガァァ!ガァァァァァ!!!

再びレッドロッドがガメラに突き刺さり、ガメラは悲鳴を上げた。

 

「マルティネス少尉!レギオンにもう一度ミサイルを撃ち込みましょう!」

「自分も二等軍曹に賛成です!」

ガメラが再び圧されているのを見た海兵隊のナンツ二等軍曹とロケット伍長は、小隊長のマルティネス少尉にTOWミサイルによる援護を申し立てた。

「わかった。モートラ!戦闘指揮所に通信を入れろ!」

「了解!」

マルティネス少尉は小隊の通信兵のモートラ上等兵に通信を入れるよう命令した。

 

オークランド 戦闘指揮所

「提督。海兵隊2-5小隊がレギオンへのミサイル攻撃の許可を求めています」

「よし、攻撃を許可する。ただし攻撃をしたら即座にその場から離れろ」

 

サンフランシスコ

「了解!アウト!少尉!攻撃の許可が出ました!ただし、攻撃をしたら即座に後退せよとのことです!」

「よし!TOWミサイル準備!」

「もう出来てます!」

「何時でもどうぞ!」

マルティネス少尉はミサイル準備の命令を出したが、既にナンツ二等軍曹達はミサイルを用意していた。

「攻撃開始!」

「了解!Fire!」

バン!バン!バン!バン!

2-5小隊は再びレギオン目掛けてTOWミサイルを数発発射した。

ドーーン!!!!ドーーン!!!!

ミサイルは全弾レギオンに命中したが、今度はレギオンに対してダメージが全く無かった。

「効いてないぞ!」

「さっきは爪をへし折っただろ!」

攻撃が効いて無かった事に2-5小隊の面々は驚愕した。

「頭に血が昇って、痛みを感じなくなってるんだ」

ナンツ二等軍曹は効果が無かった理由が、レギオンが怒り狂った影響で神経が麻痺しているからだと見抜いた。

「命令だ!後退するぞ」

「了解!後退だ!」

2-5小隊は戦闘指揮所からの命令に従い、その場から後退した。

 

ガァァァァァ!ガァァァァァ!!!!

ドーーン!!!!

キショォォォォ!!!!

ガメラも反撃に転じ、火球をレギオンに発射し命中したが、怒りに狂ったレギオンには最早ガメラの火球すら効果が無かった。

ビシューーー!!!

ガァァァァァァァァァ!!!!

ドーーン!!!

レギオンは再びレッドロッドをガメラに突き刺し、ガメラは背中から地面に倒れた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

光の輪

ストロタワー

ニックとメグミ達はストロタワーから全員が退避した。

ストロタワーのアンテナには無数の小型レギオンが集まっており、小型レギオンの出すマイクロ波で時折火花が散っていた。

ババババババババババババ!!!

ヘリのローター音が聴こえて来て、空を見ると、ステンツ提督が派遣した海兵隊のAH-1Wの編隊が飛行していた。

パシュ

パン!

攻撃ヘリ部隊を確認したアンダーソン中佐は、攻撃開始の合図として照明弾を空に打ち上げ、攻撃ヘリのパイロット達は照明弾を確認し、ロケット弾の照準をストロタワーに合わせた。

バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!バシュッ!!

攻撃ヘリはロケット弾をストロタワーのアンテナへ発射した。

「伏せろ!」

ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!ドン!!!!

発射されたロケット弾は全弾命中し、アンテナに群がっていた小型レギオンの群れは殲滅された。

 

サンフランシスコ

グゥゥゥゥ キショォォォォ!!!!

ドーーーーン!!!!

夜明けが近付き空が群青色になり始めた頃、怒りに狂った雌レギオンがガメラの方を振り向くと、爆破を背景にガメラがゆっくりと立ち上がった。

ガァァァァァァァァ!!!!ガァァァァァァァァ!!!!

立ち上がったガメラは天空に向かって吠えた。

 

ストロタワー

バン!

「っ!」

ガメラが吠えたのと同時にメグミが手に握り締めていた勾玉から破裂音がし、手を広げるとガメラの勾玉が砕けており、メグミは手の平から出血していた。

「メグミ!大丈夫か!?」

心配するニックを余所に、メグミは何かを感じとりガメラが居る方を見た。

「…………?」

ニックやアンダーソン中佐達が空を見上げると、空にはサンフランシスコの中心部へ向かって光の帯が集まって行くのが見えた。

 

国際宇宙ステーション

「おい!あれを見ろ!」

「何あれ?」

「………光の……輪?」

同じ頃、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士達が窓から地球を見ると、地球全体から光の輪が波のようにサンフランシスコに集まって居る光景が見えた。

 

アメリカ合衆国

カリフォルニア州 サンフランシスコ

地球全体から集まった光の輪はガメラの頭上に集まっていき、ガメラは光に包まれた。

ガァァァァァ!

バン!

ドーーン!!!!

キショォォォォ!!!!

ガメラが光に包まれると、ガメラの腹部が開き、そこから発射された特大の火柱が雌レギオンに命中した。

ガガ!ガガガ!

ガメラは腹部から出た火柱の反動によって後方へ押されていたが、ガメラは踏ん張って反動に耐えた。

キショォォォォ!!!!

バーン!

ガメラから発射された火柱は、雌レギオンの胴体を貫通し、レギオンに大穴が開いた。

キショォォォ!

バーーン!

胴体を貫かれた雌レギオンは、青紫色の粉塵と断末魔を上げながら粉々に粉砕された。

 

オークランド 戦闘指揮所

「市街の中心部からだ」

戦闘指揮所からもサンフランシスコ中心部から光が出ているのが見た。

 

サンフランシスコ

ガァァァァァ ガァァァァァァァァ!!!!

レギオンを倒したガメラは吠えると、サンフランシスコに展開していたアメリカ兵達を見た。

ガメラとアメリカ兵達が目線を合わせて居ると、ガメラの後ろから朝日が昇ってきた。

ガァァァァァ!!!!

バーーン!!!

ガメラは再び吠えると脚から煙を出した。

ゴォーーー!!!

飛行形態に変形したガメラは空に向かって飛んで行った。

アメリカ兵達は飛び去って行くガメラに向かって敬礼し、ガメラを共に戦った戦友として見送った。

 

オークランド 戦闘指揮所

「スピリット、帰投しました」

「………作戦終了」

「作戦終了!」

「作戦終了!」

戦闘指揮所では爆撃機が撤退したと報告を受けたステンツ提督が作戦終了を宣言し、ハンプトン大佐達は握手をしたり、お互いに健闘を称えあった。

 

ゴォーーー!

グランド博士とウチキド博士は、外でサンフランシスコから飛び去って行くガメラを見送った。

「…………ガメラが勝ったのね」

「あぁ」

 

ストロタワー

「…………」

メグミは砕けて散った勾玉を見た後、飛び去って行くガメラを見送った。

「…………さようなら」

メグミは空の彼方へ飛んで行ったガメラに別れを告げた。

 

1か月後

アメリカ合衆国

バージニア州 アメリカ国防総省

サンフランシスコの戦いから1ヶ月後、陸軍の制服を着たニックと、女性用のビジネススーツを着たメグミはペンタゴンに居た。

「メグミ、モナーク入りは決めたのか?」

「えぇ、ガメラのことをよく知る為にもモナークに入るのが一番だと思って、ニックは軍に残るの?」

「あぁ、今回の一件で怪獣の存在が全世界に知れ渡った。モナークは勿論、軍の行動方針も変わるだろうな」

ニックとメグミは廊下のテレビで放映していたサンフランシスコの戦いのニュースを見た。

そのニュースにはガメラの映像と共にIs he a savior?(彼は救世主か?)と見出しが出ていた。

「救世主ね。ガメラ本人はそんなつもりは無いと思うが」

「多分ね。それにガメラは地球の守護神なのよ」

「守護神?」

メグミはニックの言葉に対してガメラを地球の守護神と説いた。

「そう、ガメラはあくまでも地球の為にギャオスやレギオンと戦った」

「じゃあ、人間が地球に害になると判断されたら……」

「ガメラの敵には、成りたくないよね」

「そうだな」

二人はガメラと敵対する日が来るかもしれないと思いつつ、そんな日が来ないことを願った。




この作品はフィクションです。登場する人物名、組織名、建造物名、企業名は現実の物とは一切関係ありません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。