全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで (一二三 四五八)
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第1章 オレにキミのパンツを下さい
1) 第1話 オレのアレが美少女にっ!!(1)


閲覧ありがとうございます。



その日、オレはなんかすげぇ優しい感触で目が覚めた。

オレの両側からぎゅっと、柔っこぉい手で俺の手を握り込んでくれてる感覚。

こりゃあ女の子の手の感触だわ。断じて男のモンじゃない。

 

オレの手を両側から挟むようにやさしく手のひらで包み込んでくれてるんだ。

なんかすっげぇ安心する。……する?

 

いやいやいやまてまてまてまてっっっっ!!!

なんでだよっっ!!

 

オレはコレまで彼女ナシ、天涯孤独の身の上だっ!

しかも生まれついてのくすんだ金髪、紫掛かった濁った目ん色、でもってその人相の悪さから、んな優しげな女の子と縁なんて全然ねぇぞっ!

 

じゃあこりゃあ、アレか?

 

言うが早いがオレはガバっとその身を起こし、眼の前の光景を確認するっ!

するとそこは見たこともねぇ森の中で。

 

「あ、おきたよカミサマ?」「おきたねカミサマ?」

「やったぁっ!!」「やったぁ。」

 

オレの両手を包み込むように抱えてはしゃぐ、見たこともねぇ美少女が2人いた。

右手にゃあ緑髪の、褐色肌でどっか野の草花みてぇな爽やかな緑の服着た女の子。

左手にゃあ銀髪の、真っ白い肌で灰銀色のすげぇ落ち着いた色の服きた女の子。

 

両方とも小学生の高学年か中学に上がりたてって感じの年に見える。見た目は違うが息ピッタリだ。姉妹かなんかなんかな。

まぁ確実に言えるこたぁコイツら将来絶対美人になるね。

 

だってもうこの時点ですんげぇ美少女なんだもんな?

 

そんな2人がオレが唯目覚めたってだけのことを、心の底から喜んでくれとるのが現在。おいおいおいおい、カミサマアンタ最高かよっっ!!

オレが言った美少女達からモテまくりてぇなんてくだんねぇ願い事を、早速叶えてくれやがったっ!

 

いやずっとカミサマ何ていやしねぇとか思っててごめん。

いるわ。いたわカミサマ。

しかもすげぇ仕事の手際だぜ。オレが目覚める前からこんな美少女2人もぶつけてくるなんざ、まさに神業としか言いようがねぇな。

 

ああカミサマ。

オレァこの世界で落ち着いたら仏壇?神棚?用意してアンタに毎日お祈りするわ。やっぱほんまもんのカミサマは格が違うぜ。

 

ん?カミサマ。

 

そいやオレ、なんでこの子らにカミサマ呼ばわりされとんのだろ?

……ま、いいや。そりゃおいおいワカんだろ。

オレはまだ両手を握って喜んでくれとる女の子たちにとりあえず声をかける。

 

「なんかあんがとな? どうしてオレの手なんか握ってくれてたんだ?」

 

そうすっと仲良くかわりばんこに喋りながら、オレに理由を答えてくれた。

いちいちリアクションが大きくてなんか微笑ましい。

すげぇキモチが伝わってくる。

 

「あのね?あのね?」「あのね。あのね。」

「カミサマネムッてる時、ずっと寂しそうに手を動かしてたのっ!!」

「カミサマ眠ってる時、ずっと悲しそうに何か掴もうとしてたの。」

 

空いた片手をぱたぱた動かして握りしめながら

 

「だからね?」「だからね。」

「ワタシとっ!!」「ワタシが。」

「カミサマの手を持って、ぎゅっっとしてたのっっ!!」

「カミサマと手を繋いて、ぎゅぅぅととしてたの。」

 

両手をあわせて胸の前でオレの手を握りしめながら。

 

「そしたらねっっ!!」「そしたらね。」

「カミサマが笑ってくれたのっっっ!!」

「カミサマが微笑んでくれたの。」

 

満面の笑みを浮かべて。

 

「ワタシねっっ!!」「ワタシね。」

「それがねっっ?」「それがね。」

「すっごく嬉しかったのっっ!!」

「すごく楽しかったの。」

 

目を輝かせながら。

 

「だからねっっ?」「だからね。」

「カミサマがおきるまでずっっとねっ!!」

「カミサマがおきるまでずっとね。」

 

目とつむりながら。

 

「カミサマのオテテぎゅっっとしてたのっ!!」

「カミサマのお手々ぎゅぅぅとしてたの。」

 

またオレの手を少し強く握りしめながら。

 

「そしたらすっごくぽわぽわしてっっ!!」「すごくふわふわして。」

「もっとすっごく嬉しかったのっっ!!」

「もっとすごく楽しかったの。」

 

また満面の笑みを浮かべて。

 

「ねぇねぇカミサマっっ?」「ねぇねぇカミサマ?」

「カミサマはうれしかったっっ??」

「カミサマは楽しかった?」

 

目を輝かせてオレに問いかけてきやがった。

 

って、え、あ、そんだけ?

それだけの理由でずっと知らん男の手ぇ、握ってくれてたのかよっ?

ゲンキに答えてくれる褐色の女の子も、静かに答えてくれる色白の女の子も。

 

おいおいおいおい、控えめに言って天使じゃねぇかっ!

 

カミサマちょっと最初っからサービスしすぎだって、コレっ!?

だってオレ、見た目変わってなきゃ極道も裸足で逃げ出す悪人面よ?

そんなん前にして、心っからオレの心配なんぞしてくれてたんだぜこの子ら。

 

おう。こりゃあ、とりあえずちゃんと答えとかにゃならんよな。

 

「ああ、なんていうかすげぇ最高だったっ!!

イヤ最高だわ。今も最高だっ!!」

 

「わぁぁぁぁぁっっっ!!」「わぁい。」

「じゃあみんな幸せだねっっっっ!!」

「みんなポカポカだね。」

 

心底嬉しそうに笑い合う美少女たち。

 

「ぎゅっっっっとするとっっ!!」「ぎゅぅぅぅぅとすると。」

「ワタシもっっ!!」「ワタシも。」

「「カミサマもっっ、みぃんな幸せっっっ!!」」

 

コイツラを見てると。

笑顔が溢れるってこういうこと言うんだな、なんとなくそんなこと思っちまった。

ははっ、こりゃスゲェわ。

 

「すごいねっっ?」「すごいよ。」

「「まほうみたいっっ!!」」

「「やったぁっっ!!」」

 

なんかもう、ありがとうございますっ。これ心の底からオレが嬉しいがってたこと喜んでくれとるし。これが演技だったらオレちょっと人間不審になって一生引きこもるレベルだわ。

 

苦節17年。

 

どこにいっても不良に間違われ補導され、喧嘩売られた捨て子のオレはもう異世界で幸せに暮します。ありがとうカミサマっ、オレぁ死んでよかったぜっっっ!!

 

そう補導だ。

 

まだはしゃいでる女の子達を宥めて、俺は彼女らに改めて声をかける。

こんないい子達だ。

俺みてぇなヤツと一緒にいると親御さんがどう思うかわからん。

 

そこらへんちゃんと聞いとかんとな。

この子らもその親御さんも困らせるつもりはねぇよ。

 

「君らってここらへんに住んでんのか?」

「うん。ワタシはずっと()()にいたよっっ!!」

「うん。ワタシはずっと()()にいたよ。」

 

「おう、やっぱここらへんの子か。どの辺りに住んでんだ?」

 

「ううん。ワタシは()()にいたのっっ!!」

「ううん。ワタシは()()にいたの。」

 

うん?

なんか話が噛み合わねぇな。まぁいいや。

この子ら見た目より幼い感じの喋り方だし、なんか言い回しが変なことになってるだけだろ。構わず俺は次の質門に移る。

 

「俺の手ぇ握ってくれてたことはありがてぇけど、ずっとここにいちゃ親御さん達心配するだろ?なんなら送ってくぜ。家はどこらへんなんだ?」

「知らないねっっ!!」「知らないね。」

 

「はぁっっ!! いやいやいやいや、知らねぇってこったねぇだろ?

親か、育ての親、どっちかいんだろ普通っっ!!」

 

イヤイヤホントちょっと待てってっ!

 

「ワタシたちずっとここにいたのっっ!!」「ワタシたちずっとここにいたわ。」

「親がどこにいるかなんて知らないものっっ!!」

「親がいるかなんて知らないもの。」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!」

 

こんなバカな話があるかよっっ!!




色々アレな話ですがお付き合いして頂ければ幸いです。


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2) 第1話 オレのアレが美少女にっ!!(2)

な、なんなんだよそりゃ。

 

いやいや。俺みてぇな不気味なヤツが捨てられんのは、まぁワカルわ?

でもちょっとまってクレ、まってくれよ。カミサマよ。

 

こ、こりゃああんまりだろうがよっっっっっっっ!!

こんなカワイイくていい子らが、揃って森ん中で捨てられとるって、アンタの世界まだ混沌としとるって言ってたけどどんだけひでぇ状態なんだよっっっっっ!!!

 

こんなモン認められっかぼけぇっっっっっっっっっ!!

俺がそんな風に、世の無情を嘆いている時だった。

彼女達が言ったのだ。

 

「どうしたの?カミサマっっ!!」「どうしたの。カミサマ。」

「悲しいことがあったのっっ?」「ツライことがあったの?」

 

テメェらの不憫な境遇なんか1つも関係なく、心底オレがそれに怒って、悲しんでいることを只々心配するって風に。なんだ、なんなんだよ?

 

「ワタシたちがぎゅっっっとしてあげるからゲンキだして?」

「ワタシたちがぎゅぅぅぅとしてあげるからゲンキにもどって。」

「「ぎゅうぅっっっっ!!」」

 

なんでそんなに、そんな境遇で周りに優しくできんだよっっ!!

 

ああああ、あぁうわぁぁぁぁぁっっっっっっ!!

 

もうだめだぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!

俺は堪らず2人を引き寄せて、この身体で抱きとめたっっ!!

 

強く、強く抱きしめてやるっっっっ!!

 

「わぁぁぁぁっっ!!」「わぁい。」

 

オレに抱きしめられたことを素直に、只々喜んでくれる美少女たち。

 

「じゃあワタシもっっ!!」「ワタシも。」

「「ぎゅうっっっっっ!!」」

 

オレらはバカみてぇに3人で抱きしめあったんだ。

 

「うれしいねっっ!!」「たのしいね。」

「「ぽかぽかだっっ!!」」

 

こんな抱擁で、心の底から喜んでくれる2人。

2人に見えねぇ場所で、オレの目から涙がこぼれた。いけねぇ。こらえろオレ。

オレは彼女らに力強く、できるだけ明るい声を作って語りかける。

 

「オメェラ、行くあてがねぇんならオレと来るか?」

「いいのっっ?」「いいの?」

 

とたんにその言葉に飛びついてくる2人。

不思議そうに訪ねられた言葉にオレはついに爆発しちまうっ!

ばっきゃろう、そんなもんっっ!!

 

「いいもクソもあっかっ!!テメェらがイヤっていっても連れていくわっっ!!

いいか?オレらこれから仲間だっっ!

いいやっ、家族だっっ!!」

「かぞくっっ?」「かぞく。」

 

オレが言った単語を、家族って単語を不思議そうに聞き返してくる2人。

本当にその単語を知らねぇって、なんとも悲しくなる反応だ。

だからオレは精一杯声張り上げて、力一杯いってやるんだっ!

 

「おうっ!

困った時は助けあいっ、楽しいこたぁ分けあってっ!

つれぇときゃぁ慰めあってっ!

んでなんかあったら目一杯喜びあうっっ!!

 

そういう、そういう関係だっ、ずっと一緒の関係だっっっっ!!

 

オレも家族なんていなかったから、よくわからねぇけどよ。

オレぁそういうモンだって思っとるっ。てかオレはそうするっっっっ!!

そう決めたっっっ!!」

 

ああ。それがオレのずっと欲しかったモンだ。

それがオレの、ずっとずっと、本当に欲しかったモンなんだ。

 

「わぁぁぁぁっっ!!」「わぁぁ。」

「じゃあワタシたち、ずっと一緒にぽわぽわだね?」

「じゃあワタシたち、ずっと一緒にふわふわだね。」

 

「「ずっと一緒は嬉しいねっっ、カゾクすごいっっ!!」」

 

こんなオレの無茶苦茶に、心底喜んでくれる美少女たち。ああそうさ。

オレだって心底嬉しいぜっっ!!

 

「おうすげぇ、すげぇともさっ!

テメェラがどうやったって、どうなろうとオレが幸せにしてやるわっっ!!」

「じゃあワタシもっっ!!」「ワタシも。」

「「「ぎゅぅぅぅっっっっ!!」」」

 

どんくれぇオレらはそうやって抱き合っとたんだろうか。

随分なげぇこと、そうしとって気がするが。

まぁワリイこっちゃねぇわな。

 

へへ、カミサマ。

コイツラが捨てられとったつー理由は気に入らんけど、オレぁアンタの世界に来てさっそくサイッコーの出会いがあったぜ。

 

なんとこんなオレに、家族が出来ちまったんだ。

 

ゼッテーこの手ぇ離さねぇ。

 

ゼッテーオレがコイツラを幸せにしてみせる。

早速オレに目標が出来たぜっ。サイッコーにゴキゲンな目標だっ!

確かアンタの世界を少しよくする手伝いだったか?

 

いいさ。してやるぜ。オレはコイツラの為ならナンだってしてやらぁっっ!!

 

「オレの名前は入主(イリス) 神威(カムイ)。オメェらの名前は?」

「ワカバだよっっ!!」「コイシだよ。」

 

おおう。

なんとなく素っ気なさを感じるが、まぁどっちにもなんか不思議と似合っとる。

つまり問題なしだっ。普通に俺は挨拶を続けることにした。」

 

「おう、改めてこれからよろしくな、ワカバ、コイシっっ!!」

「うん、これからいっしょヴィリスカムィっっ!!」

「うん、これからいっしょヴィリスカムィ。」

 

うん?なんかオレの名前の響きがおかしいような。まぁここらの人間にゃあなんか発音しずれぇ名前なんかもしれん。江戸っ子訛り的な。そういうこったろ。

それよりデっけぇ問題がある。

 

「ああ、カムイが名前なんだ。親しい奴はそっちで呼ぶ。」

「カムィっっ!!」「カムィ。」

「「じゃあやっぱりカムィ(カミ)サマだねっ!!」」

 

「ま、んな大層なもんじゃねぇんだが。

確かに音の響きは似てんなぁ。意味も大体同じだし。」

「カミサマっっ!!」「カミサマ。」

「なんでそうなっかねぇ。まぁオメェらがそれでいいならイイけどよ。」

 

苦笑いしながらぐりぐりと2人の頭を撫でてやると、嬉しそうにはしゃぎやがる。

へっ、……悪くねぇな。

んじゃ手始めに、この辺りでも探ってみっとすっか。

名残惜しいがいつまでもこうしてるわけにゃいけねぇもんなぁ?

 

「オウ、オメェラ。

オレちっとこの辺り調べてみてぇから、ワリイけど一旦離れてくれっか?」

「わかったっっ!!」「わかった。」

「ワタシたちカゾクだからっっ!!」「ワタシたちカゾクだから。」

 

心底嬉しそうに家族って言葉をいう2人。

 

「「いつでもぎゅぅぅぅと出来るモンねっっ!!」」

「おう。そうだなっ。」

 

オレは改めて2人の頭をひと撫ですると、改めて周囲を見回す。

 

そういやオレァ随分立派な鎧きとるな。

革をベースに金属で上手く補強したような、造りのいいシロモンだ。

ガタイの良さもあってか重さもあんまり気にならんし、第一これ着たまま寝とっても身体ぁ痛くなっとらんってことはこれよっぽど上等なモンなんだろ。

 

羽織っとる赤いマントも質がいい。手触りがいんだわコレ。

腰にゃあ、片刃の剣が一振り。

なんか日本刀っぽい、ソレよりふてぇ剣がぶら下がっとる。

 

素人目にみてもどれも上物だってなんとなくわかるシナモンだったわ。

あのカミサマ、ホントにオレに色々便宜図ってくれたんだな。

改めてあの爺さんにゃあ頭上がんねぇな。感謝感激大明神だ。

カミサマ様々だ、ホント。

 

おっし、気合入ってきたっ!!

そこでオレはさっそく立ち上がる為に、膝の上辺りを()()()腰に力ぁ込めた。

 

すると不思議な事が起こったっっ!!

なんとオレの着ていた鎧がその下地の服ごと、ポンと軽い音を立て煙を吹き出し。

 

美少女になっちまいやがったっっ!!!

 

あまりにびっくりしてオレぁ声もだせねぇっっ!?

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?

 

「あら、あらあらあら?」

 

自分の姿を見て不思議そうに声を上げる彼女。

 

髪型は金髪ロングで碧眼の、年はオレくれぇの娘さん。目が細っこくてどっかほんわかしてる感じのヒトだ。でもその体にゃ、オレがさっきまで着とった鎧とマントが彼女に合わせて上手くリサイズされとった。見た目もちっと変わってやがる。

 

そんな彼女に押し倒された状態で。オレの身体は再び地面へ押し付けられた。

 

「うわぁぁいっ!!カミサマがまたカタチをかえたねっっ!!」

「うわぁい。カミサマがまたカゾクが増やしたね。」

「あらあら~、ごめんなさいね、えっとカミサマ?

今すぐこの身をどかしますので~。」

 

な、な、な、な、なぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!

余りのことに、俺は右手を震わせて。

その()で自分の頭ぁ()()て、目ぇつむりながら

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ(えぇっ!!)っっっっっっ!!!!」

 

そう叫ぶしかなかったわけだ。

なんかどっかでポンと、軽い音がしていたかもな?

それが俺の、ちょっと不思議でアレな冒険譚の始まりだった。

 

”全てを美少女にしちゃう俺が失われたアレを取り戻すまで”

 

さぁ、物語を始めよう。

 




NEXTSTORY
第2話 オレのアレな願いごと

閲覧ありがとうございます。
色々騒がしい作品ですがよければよろしくしてやって下さい。
創作の励みになりますのでブックマーク・感想・評価いつでもお待ちしております。


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3) 第2話 オレの切実な願いごと(1)

閲覧感謝です。
今回はカミサマ目線となります。



なるほどのぉ。

 

わしゃあ今地球にちこっと足を伸ばして有用な魂を探る作業をしとった。

異世界にしょっぴける魂ってのはまぁ正規の寿命で死んだもんじゃなく、本来輪廻から外れちまうような外道の中から選ぶことになるんじゃよ。

 

一番多い理由はあれじゃな。親より先に死んだモンじゃ。

 

これってな。思いの外地球じゃ重い罪になるんよ。

ンでワシラ異世界の弱小世界の神ってのはそういう魂から自分の世界を安定しうる人材を地球の奴らから引き取るカタチで請け負うんじゃな。

 

地球では命が余っとって、ワシラの世界にゃそれが足りん。

まぁゆうなればお互いワリとwinwinな関係なんよコレ。まぁそれだけじゃのうてワシラも地球のお偉い神さんの接待とか色々やるけどの。

 

なに?

 

神々の世界の話なのに妙に世知辛い?

人も神を同じ人格を持った生きもんじゃ。それが集まりゃ出来上がるモンに対して差などアリャせんよ。世の中なんてそういうもんじゃろ?

 

んで、その書類ん中でな。

ワシ見つけたんよ。逸材。正直彼を探しあてた時は震えたのぉっ。

じゃって聞いてよ君。この子ええ子なんじゃよ?

 

この子、入主 神威(イリス カムイ)って名前なんじゃけどな?

なんかすげぇ神の寵愛受けてそうな大層な名前しとるじゃろ。でも逆なんよ。この子すげぇ運がないの。むしろ自分の名前ネタにして”神なんていねぇっ”っていっつもボワイとるわ。

 

小さい頃に親に捨てられ、親戚の中ぁたらい回しにして育った彼は、生まれついてのくすんだ金髪に、紫掛かった濁った瞳で、ヤクザも裸足で逃げ出しちまうような強面の少年じゃ。

 

そんな見た目じゃからもう、周りからは勝手に札付きのワルじゃって思われとって、どこに行っても爪弾きモン。街にでりゃあ見に覚えのない罪状で補導に職質、街の不良にゃ喧嘩を売られ、ヤクザモンにゃあ目ぇ付けられる。

 

そんな人生を歩んどる少年なんじゃよ。

 

でもな。こんな人生歩んどるくせに全然すれとらんのこの子。むしろ自分の環境を常に変えようと努力しとるんよ。常に。

 

例えば最初の補導やら職質。

これを受けんようにする為、まず自分の事を知って貰おうと、街の清掃やら、迷子の子どもを案内したり、老人助けたりとか率先して動いとる。

 

次にワルども。

喧嘩ふっかけてきた奴らを捌いた上で、その身の上やらを親身になって聞いてやり、色々と世話をかけて廻ってその更生に務めとる。

 

最後に筋モンじゃが、これは相手の言い分に仁義でもってきちんと筋を通しきってみせることで、いっつも極々平和的に対処してみせとるワケよ。

 

んでもな。この子のやることなす事、まぁ全部裏目にでるんじゃよ?

 

街の清掃しとったら、その手柄は関係ない街の爽やかイケメンがやったことにされ。迷子の案内しとったら、間違いなくそのまま警察にご厄介。助けた老人たちからは持っとるモンを投げられる。ワルどもの更生自体は上手くいくんじゃが、周りからは族仲間にしか見られんようになる。

 

筋モンに筋通して争い回避すりゃ、それを認められてその筋のスカウト受けまくる始末。当然彼の居場所はどんどんなくなっていくんじゃよ。もちろん親戚の家ん中で誰も味方なんぞしてくれん。いびり倒されても必死にコラエルような男じゃ。

 

そんでも週末にゃあ諦めず地域清掃に励み、自分の食い扶持はアルバイトして親戚に納め、そんな生活でも人知れず野良猫達にゃ餌やりにいって、関係ない不良どもの面倒ごとに自分から飛び込んでいって解決しちまうような、もうなんというかの。面倒見がヨすぎる子なんじゃよ。

 

不良たちには親か兄貴みてぇに慕われとるけど、あとは動物達とたまに子どもから好かれることだけが生きがいのような日々を、ずぅっと送っとる少年なんじゃ。

 

晩年の口ぐせはの。

就職して自分で食い扶持稼ぐようになってからがオレの本当のスタートラインなんじゃあっての。恩師の進めで入った工業高校出たらバリバリ働いて、誰より幸せになっちゃるって。自分が更生させた不良ら相手によく漏らしておったよ。

 

最後ん時も、アレじゃ。猫らに餌やりにいった帰り、親ぁ見付けて道路に飛び出した子どもを暴走トラックから咄嗟にかばって、ぽっくりよ。しかもその親から、子どもを逆に事故に巻き込んだんじゃないかって疑われる始末。最後までもう、なんとも言えん子じゃったよ。

 

ワシな。さすがに色々納得できんかったから、地球の神々に言うてやったんよ。

こんな死に方したんじゃから、親より早うに死んだつってもなんか見逃してやれんのかってよ。そったらよっ。そったらばよっっ!!

 

ルールはルール、曲げれるワケねぇだろっっっ!!

むしろウチのシマじゃ只々お人好しの勘違いおせっかい野郎なんて、よくてどっかで喰い物にされておっ死んじまうのがオチだろっ、じゃっってよっっっ!!

 

じゃっってよっっっっっっっああぁぁっもうっっっっっっっっっっっ!!!

 

もうワシ腹が立って腹が立ってもう。その場で言ってやったんじゃっっ!!

じゃあこの子、ウチで貰ってええですかねっって!!!

 

そしたら悪趣味乙っっっ!!

 

マジムカつくわあのクソハゲ野郎っっ!!

こんどあったら叩きのめしちゃるわっっっっっ!!

 

pi pi っ(ガチャ)

「あ、ハイ~、いつもお世話になっておりますヴィンデルです。

はい、はい、ああいやぁ地球のお歴々にはいつもお世話になってますからっ!!

あ、はい、来週のゴルフ場? ……きちんと確保しておきますよ。任せて下さい!

 

……ええ、ええ。あ、もちろんその後も、楽しめる店。抑えておきますから~。

ええ、はいっ、楽しみにしておいて下さいっ、ハイっっ、ではまた!!」(ガチャ)

 

なんじゃいその顔。

じゃから言っとるじゃろ。人間と神なんざそう変わるもんじゃねぇってっ!

大手と弱小の仕事の付き合いってこういうもんじゃろがいっっ!!

 

……話がソレたの。じゃからその少年、これからココにくるから。

ワシャこの手の不憫な子に弱いんじゃ。

ワシの世界に来てくれるんじゃったら、できるだけ彼の希望叶えてやるつもりよ。

 

ああ楽しみじゃのう……。

 




閲覧ありがとうございます。
実はこの作品、色々と視点が切り替わることが多いのです。


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4) 第2話 オレの切実な願いごと(2)

「あん、どこだここ?」

 

暗がりの中にワシラと少年だけが浮かんどるような不思議空間の中。

彼のいの一番の一言がそれじゃった。

おおう。こりゃ凄いわい。写真で見るより100倍悪人面に見えるワ。

 

ワシ何の前情報もなく彼のことマフィアの放った殺し屋じゃって言われたら信じる自身ある。そんくれぇ怖ぇの。むしろワシ今ちっとビビっとる。

なんか色々納得できてしもうたワシ。おし頑張れワシ。ええ子。多分ええ子じゃ。

 

「ここは死後の世界じゃよ。」

「あ?ああ、やっぱりか……。じゃあアンタカミサマかなんか、……ですか?」

「おう。別の世界のって言葉が付くがのう。ヴィンデルという。」

「……オス、入主 神威っス。……あの、アノ子、どうなったか知りません?」

「お主のおかげで無傷じゃったよ。親御さんと元気に毎日過ごしとる。」

「っそっすか。じゃあ、ま。しゃあないスね。あざっすっ!!」

 

最初に自分がかばった子の心配か。ふふ、ワシの見込んだ通りの子じゃ。

ワシは一気に彼への愛着がわき、肩の力が抜ける。

そんな時じゃ。彼がぶっきらぼうに聞いてきた。

 

「自分、これからどうなるんスか?」

「地球のルールに従うと、君は親より先に死んでしもうての。

こっからその罰を受ける事になるじゃろう。」

「ああ、まだ生きてたんスね。ま、いっか。んでその罰ってのは?」

「賽の河原で100年程苦行を積むか。」

「つ、積むか?」

 

ワシは極限に貯めにタメた言葉を彼に言い放つ。

 

「人の意識をなんとなく保ったまま、オケラとして10回転生してもらう。」

「そ、そりゃあ。………相当キツイっすね?」

「おう。キツイ。正直ワシもどうかと思う。」

「でも、ルールなんでしょ、ソレ。じゃあ従うしかないんじゃあ?」

 

よしよし。入主少年からお決まりワードを引き出したぞい。

これで後は一気にたたみかけるだけじゃて。ワシの交渉力(ビジネストーク)が冴え渡るぞぉい。

 

「いやぁそこでワシの出番じゃて。あのな。

もし君がよければじゃが君。ウチの世界にこんかの」

「はっ?」

「イヤイヤ、ホレ有名な。

異世界転生ってヤツ、ワシそのスカウトに地球にきたんじゃよ?」

「えっあっ、あの……。それオレなんかで大丈夫なんですかね?」

「そらアンタ、大丈夫じゃから声かけとるんじゃろ。こう見えてもワシその世界の主神。ワシがええゆうたら地元じゃそれがルールじゃから。

問題なんて有るわけなかろ?」

「あ、そりゃぁ、その、はい。あの、どういう世界か聞いても?」

 

かかったっ!!

ここはまず不安を煽るが1手よな、かーらーのー?

 

「まーいわゆるオーソドックスな剣と魔法の世界じゃよ。まだまだ世の中全然安定しとらんからイベントにゃあことかかん。まぁちっと危険なんは確かじゃの。」

「そっすよね。そんなトコにオレなんかがポッと入っても大丈夫なんスか?」

「そうじゃよね、心配じゃよね。じゃが安心っっ!!

ここだけの話今回、ホレ、特典。お主の好きなん用意シちゃるから。」

「えっ、その。いんスか?」

 

おうよっっ、大放出じゃぁぁぁぁいっっっ!!

ワシャア彼を確実に釣り上げる為、でっけぇ釣り針を垂らすことにした。

 

「ええよ。ええよ。地球じゃ大分お主報われん人生送っとったろ。

ワシああゆうのもうダメなんじゃよなぁ~。じゃから、ホレ。お主はこれからワシの世界で、今流行りの異世界チート、存分に満喫してみんかい?」

「あの、主神の人がそういう事言っちゃって、いんスか?」

「そこはホレ君ぃっ、オフレコで頼むよキミィ?」

「あっ、ハイ!!」

「それでどうするね。オケラかチート、君はどっちとるんじゃ、ん?

オケラ オア チート、カワラ オア チート?」

 

さぁ決断の時よ。考える時間を与えないテンポのいい軽快なトークが勝利するモノ(セールスマン)の秘訣っ!!

これが有能な魂を確保する最大のポイントじゃ。入主少年よ今決断の時っっ!!

 

あ?悪質なセールストークにしか見えぬじゃと?

いやこっちゃもう全部誠意でやっとるから。悪質とかそういう感じの意味わからんから。こっちもノルマとか獲得に必死じゃからっ!!

ワシがそうやってなにかに心の中で激しく言い訳しとると(徳業を説いとると)

 

「あ、じゃあ、はい。チートで。」

「よしっ!! よう言うたっっ!!」

 

彼との契約が成立したんじゃっっ!!やっふぅっっ!!いやっふぅっっ!!

こんの瞬間はいっっつもゲキアゲじゃわいてっっ!!

言うが早いが早速ワシは有用な特典を進めるべく、彼に早口でまくし立てた。

 

「じゃあアレじゃ思いつく特典、なんでもワシに言って見てくれっ!!

ワシ今日、君のアレなアレ、全部聴く気で来とるからっ、ホレっ、ホレッ!!」

「あ、あの。ホントになんでも、いんすか?」

 

どこまでも遠慮がちな少年じゃっ!!

わっしゃあもう折角掴んだ逸材に遠慮なんてしてほしゅうなくて、もうあることないことぶっちゃけたっ!! 今こそ出血大サービスの時!!

 

おん。なんでそこまで熱心かって?

 

こんなお人よしに力ぁ与えた日にゃあそりゃ勝手に世の中の為になんかし始めよるじゃろ? ほんでワシの世界のバランスがとれる。最後にゃワシ丸儲けって寸法よ。

っは、あ、イヤイヤイヤイヤ。た、タダの純然たるぜ、善意の結果じゃてコレぇ?

 

「流石にこの世界の新たな造主になりてぇっ!!

とか言われたら断るけども。言うつもりあるかいの?」

「いえ、別に。」

「じゃあもう他は何でもいけるじゃろ?

あれじゃ。そっちで流行っとる剣からすっごいビームとか出る聖剣とかでもええぞ。もうそれ剣いらんじゃろって勢いの?」

「いや別にそういうのは、特に。」

 

ホムホム。純粋な力は求めんと。じゃあ次は権力か財力かのぉ?

 

「じゃああれか? 君だけ地球のモン買えたりするヤツ。

未開地取引でブイブイ言わせてみるかっっ!?」

「いや、なんかそれもちょっと違うというか?」

「ええい、なんでもええからもったいぶらず言ってみれ。ホレ言うだけはタダっていうじゃろ?」

 

ええい。遠慮も過ぎると毒というもんじゃっ。

ワシャア入主少年を急かし、彼がホントに求めるモンを絞り出すことにした。

するとどうじゃろう。ワシは彼の口からついて出た言葉に耳を疑う結果となった。

 

「うっス!! じゃあオレモテたいっスっ!!」

「ファっ!?」

「え?なにか問題でも?」

 

イヤイヤイヤイヤイヤっ。はい?

 




閲覧ありがとうございます。
ベタベタなのが好きなんですよねぇ(白目)


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5) 第2話 オレの切実な願いごと(3)

「あの、ワシの聞き間違いじゃろか。もっかい言っとくれる?」

「うっス!!オレ、モテたいっスっ!!」

「ファっ!?」

「え?あの、……やっぱ問題でも。オレの面じゃあ無理的な?」

 

すっげぇ申し訳無さそうに聞いてくる入主少年。

イヤ、イヤイヤイヤイヤイヤ。

あの、なんで? 君今までそういうキャラじゃなかったじゃろ?え、どして?

なんでよりにもよってそっち系の願いなん?

 

もうワシは色々受け入れがたくて、しつこく彼に問いただしてみる。

 

「イヤイヤ、も、問題なんてないけれども。ないんじゃけれど。ええの?それ。

ワシの世界、自分でいうのもアレじゃけど結構危険じゃよ。命軽いよココっ!!

ソンナカニ君、モテたいって。ええっっ?」

「あ、ハイ。実は自分その、甘いマスクのモテ男とかにずっと憧れてまして。一度でいいから女の子からきゃあきゃあ騒がれてみてぇなって。

……ずっと思ってたりしてまして。……ダメすか?」

 

そしてワシが見たものは、すごく純真な、自分の憧れを語る漢のスガタじゃった。

こ、こんな顔されっと、こ、断れんじゃろがいっっ!!

ワシも漢じゃけぇワカルアレじゃわっっ!!

 

じゃが、これだけってのはアンマリじゃわ。アンマリじゃと思う。

ワシャどうにかして力の窓口を広げる努力をするんじゃった。

 

「イヤイヤイヤイヤ、ダメじゃない。うん。ダメなワケなかろうぉ?

ええよ。うん。ちっちゃくてもええ夢よぁ。そういうの漢のロマンじゃもんなぁ?

あるある。そういう時期。でも、ホンマにソレダケ?もっとなんかないの君ぃ?」

「じゃあ、あの。……細かく言ってもいいスか?」

 

するとどうじゃろうか。彼はいいずらそうに。遠慮しながら。

やっとワシの問いかけに乗ってきた。そうソレ。ワシゃそれ待っとったっっ!!

コレを機会に入主少年の望みを全力で聞き出すべく、ワシャア会話の流れを作る。

 

「もっちろんじゃ。言ったろワシ今日全部聴く気で来とるって。もう君の内心全部吐き出してええから。できるだけ全部叶えていく勢いだから、今日ワシっっ!!」

「あ、じゃあ。ウッス!!」

 

そういうと、彼は大きく息を吸い込んで、

 

「世界中の美少女からモテてぇっ!!

もう唸る程モテてぇっっ!!只モテてぇっっ!!

美少女からものすっごくっ、ちやほやされてみてぇっっ!!

そいでもう許してって言ってみてぇっ!!

むしろ信仰されるくれぇに、美女からっ、美少女からモテてみえぇっっ!!」

 

「健康的でっ、傷1つない玉の肌のっ、そんな美少女からモテてぇっっ!!

しかもキレぇな言葉ぁ使うベッピンさんなんか最高だっっっっっ!!」

病気なんかぁ怖いから、そういうのはもちろんなしでっっっ!!

食えんでガリガリの、痩せとるような女もなんかやだっっっ!!

無論、病んどるようなヤツぁ論外でっっっっっっっっっ!!……」

 

延々と、自分の欲望をさらけ出し始めたんじゃっっっ。

いや、ちょっ。って、広がり全部そっちかぁいっっっっっっっっ!!

ワシャ堪らず、一気にヒートアップをし始めたこの思春期の権化の言動を一端途中で止めることにした。

 

「ええっ、ちょ、ちょ、ストップ。み、ミニマムストップタェイムっっっ!!」

「あ、ハイっ!! ……また、何か問題が?」

「イヤイヤイヤイヤ、ないけどもっ!!問題? ないけどもっ!!

すっごいね、思ってたよりイキナリ細かいこう、アレが出てくるから驚いちゃっての。なに、どした?イキナリどした、おい? おぅい?」

 

なんかね?

いきなり好青年にこういうの全開でさらけ出されると心配になっちゃうじゃろが。もう今のワシ、もうそれよ。それ。ソレしかないっっ!!

じゃけどそれから返ってきた答えは彼らしい、割と地に足のついたモンじゃった。

 

「あ、ハイ。自分、バイトで世話になってるヤクザの若頭(的屋のおっちゃん)にこう、契約とか交わす時はなるべく具体的に、細かく希望を言ったほうがお互いの不幸を避けられるって教わってまして。

それでまぁできるだけ細かく、自分の欲望を言ってみました。

あの、やっぱダメすかね?」

 

あ、そういう。ね。ま、まぁ?

ワシなんでも叶える気って言うた手前、やめろとか口が裂けても言えんじゃろ?

じゃからもう無理やりワシ。無理やりこの流れに乗っかっていくことにしたのよ?

 

「そ、そんなわけなかろう?イ、イヤイヤちょっとイキナリばぁっと出てくるもんじゃから、こう、そう驚いただけじゃって。お、おう、どんとこいっっ!!

その意気じゃっっ!! 全部、全部ワシにブツケてこぉいっっっ!!」

「はいっっ!!じゃあ……。」

 

そういうと、彼はまた大きく息を吸い込んで、

 

「もうホント最高にっ、完璧な美女から美少女から、時には美幼女にすらもモテる、そんな魔性の男にオレはっっ、なりっ、てぇっっっっ!!

 

どんな強気で屈強な美女も、

どんな凶暴で凶悪な性根の美少女も、

みんなオレにコロリときちまうような、そんな力がほしいっっっっっ!!

そんで、世界中の美女・美少女・美幼女をこの手の全てで掴みてぇっっ!!

掴みとりてぇっっ!!」

 

「むしろ()()()()()()()()()()()()、そんな勢いの力をオレに下さいっっ!!

お願いしまっっすっっっっっっっっっっ!!!

 

入主少年が全てを言い終えた頃、初めてその場が静けさを取り戻す。

そして彼の抱えた欲望の叫びを聞き終わった時。

ワシは不思議と優しい気持ちになっとった。やっぱ人間、どんな好青年でも思春期にゃあ色々と抱えこむモノよ。この男の業の深さ。それは人も神も変わらんわい。

 

ま、一言で言えば。ワシは非常に生暖かい目で入主少年を眺めとったワケじゃ。

 

それほど少年の欲の叫びは、いっそ清々しいモンじゃったんじゃ。

ワシがそうしてアルカイックスマイルをキメておると、入主少年がワシに心配そうな顔で訪ねてきた。いっそワシ悟りたいキブンじゃった。

 

「あの、自分で言っててなんなんすけど。

流石にコレ全部叶えるの難しくないすか?」

 

うん。ワシの笑顔の原因の大部分。よぉ分かっとるねキミ。

 

うん。まぁね。特典1つで叶うあれこれじゃ、ちょっとないよね。普通にね。

普通に叶えちゃうとね。モテモテどころかそんな女とかおらんよ、きっと。コレ。

だってほら、キミの指定した美少女だけに聞く能力てどんだけ対象範囲狭いんよ。

 

とナルと極度にモテるっていう対象への認識強制力と、出会うための因果律操作、場合によっちゃあ時空改変力とかもつけんとね、そもその美少女自体がおらんて。できる気がせんのよなぁ。さすがに特典1つに全部ノセれるモンじゃなかろうて。

 

でもワシもう言っちゃったもんね。できるだけ叶えちゃるって。

これでも主神じゃし、もうコレ叶えるしかない流れよね?

 

最後にワシに残されたのはもいっそ見事なまでの、……虚勢一択じゃった。

 

「なにを言っとるんだよ君ぃ、ワシホレ主神じゃよ? 地元じゃ最強なのこう見えて。も、もう絶対なんとか出来るしっっ? 絶対問題なんてひっとつも無いしっ!?

ここはホレ、ワシを信じて大船に乗った気持ちで、ネクストライフ、エンジョイしちゃってよ。

の?の?」

「あ、はいっっ!!ありがとうございますっっ!!」

 

ワシの見栄に入主少年は精一杯安堵の表情を見せてくれる。

とりあえずワシは特典制作時間(この後)のことも兼ねて、彼をもうさっさと眠りにつかせちまうことにした。

 

「オシ、まぁじゃあ装備なんぞも、ちっと便宜図っといてあげるから。

安心して君はもう一回眠りにつきんさい。開始地点は人の街のスグ近くの森ん中。自分の能力の詳しい事はステータスって唱えたら全部見えるからの?」

「あの、何から何まですいませんっ。ありがとうございますっっ!!」

 

心から礼を言ってくる入主少年。

その願いごとが思春期の妄言でなければ、コレほど嬉しい光景はなかった。

それでもワシは精一杯、彼を次の人生へと送り出してやることにした。

 

「ええって、ええって。良い人生を送れるよう祈っとるよっっ。んで余裕があったらワシの世界が少し良い方に向かうのを手伝ってやってくれ。」

「はいっっ!!」

「じゃあの~!」

 

入主少年が消え、とたんに落ちる沈黙。

ワシはずっと隣におってワシの話を聞いとった男に、改めて声をかける。

その理由は。

 

「さて、お前。天使長。今までワシの会話ずっと聞いとったよね?」

「あ、はいっ!!聞いておりますっっ!!」

「じゃ、あれじゃ。さっきの彼の願い。キレイに特典1つにまとめてくれよ?」

「は?」

 

この無理難題を部下の成長の為に全部、まとめてホオリ投げる為じゃった。

ワシだってつらい。じゃからお前が苦しめの理論である。

ワシにマヌケな返事をした天使長に、ワシャアここぞとばかりに突っ込んでいく。

 

「は、じゃかろう。ワシ他に色々ヤルこと有るもん。天使会議開いてええから、彼の特典を願望すべてしっかり1つにまとめる事。お仕事じゃお仕事っ!!」

「あ、云え。あの。さすがにアレ、特典1つはキツくないですか?

もう優遇なさるのなら、特典の数増やすとかの処置を……。」

「ワシそういう前例とか創りとうないんじゃよ。何君、できないの?

天使長なのに。え、そんなので天使長続けられるの? あれ、そうじゃったっけ?」

 

弱音はいつだってビジネスの敵。無理とか言うんは努力が足りんからじゃって。

天使長がそういうつもりならの、ワシもなんか無性に意味もない世間話とかしとうなってもコレ、仕方ないよね? 上の人間としては?

 

「あ、その。」

「キミィ、最近子どもさん幾つになったって言ってたっけ?」

「あ、ハイ。やっと2才になりました。もう毎日可愛くて仕方ありませんよ。」

「そうそれ! じゃあ君、家族悲しませるような選択しちゃ、ダメでしょう?」

「あ、ハイ。」

 

うんうん。やっぱ神も人間も最後にモノをいうんはいつだってゴリ押し(誠意)じゃな。

ワシは最後にダメ押しで、彼に確認することにした。

 

「天使長はぁ、彼の願いをぁ、特典1つにまぁとめることがぁ?」

「(すーーーーー)できますっっ!!」

「はいおっけぇっ! じゃあ頑張ってこーーー。ごーーーじゃぁぁぁっ!!」

「了解ですっっ、主神様っ!!」

 

はい、これでミンナ幸せぇぇっっ!!

あ、それとちゃんと逃げ道はつぶしとかんとの。

部下の成長を促す為にあえて心を鬼にするのがいい上司のあり方じゃてな?

 

「あ、あとちゃんと。彼の言ったように美少女たちに彼がわんさか囲まれるようにしてやってくれよ。言ったことそのまま特典にして、いるかどうかも分からん女にしか聞かん能力作ったら、わかっちょるよね、君?」

「(ちっ)はいっ、存じておりますっっっ!!」

「じゃあ、あとよろ、なるはやで~~~~~~。」

 

なんともいい仕事をしたワシは颯爽とその場から立ち去った。

やれやれこれで一安心。ワシも大手を振って夜の街にくり出せるワシっっ!!

今日の酒の味は美味かろうのうっっっ!!

 

この後の事を思うと、どうにももう顔から笑顔が消せないワシであった。

 

 

1人残された暗がりの中、1人の男の叫び声が鳴り響く。

 

「ああぁぁっもうっっっっっっっっっっっ!!!

マジムカつくわあのクソハゲ野郎っっ!!

こんどあったら叩きのめしちゃるわっっっっっ!!」

 

この後、天使会議は難航を極め、混迷し。

入主 神威は”その手で掴んだモノ全てを美少女に変える力”を手に入れる事になる。

 




NEXTSTORY
第3話 オレのアレが失くなったっ!!

閲覧ありがとうございます。
悪環境が悪環境を産む。悲しい負のスパイラルなのだな(白目)


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6) 第3話 オレのアレが失くなったっ!!

天使会議の回、いつか幕間で描きたいなあ……。



ななななっ、なぁっっっっ!!

なんでこうなるんだよっ爺さんっ。

折角の立派な鎧が、もっと立派なお嬢さんになっちまったじゃねぇかっっ!!

 

オレは必死になんでこんなことになったのかを必死に考える。

ワカバとコイシがひたすらに鎧が女の子になっちまったことを喜んどるっ!

畜生、かわいいなぁっっ(親バカ)

 

あ、あ?

触る、握る。いや違うな? なんか引っかかんぞコレ。あっっ!!

掴むっっ!?

 

ああオレ、カミサマにこの手に全ての美少女を掴みてぇって、そういう勢いの力ぁクレって言ったんだったっっっ!!

もっかしてそれ本当に特典にシちまったのか?

 

そういうこと? そ、そんなん!!

 

「どう考えたって言葉の綾だろおおおおおおおおっっっっっ、爺さん!!!」

「ひゃあっっ!!」

「ひゃあ。」

「あらあら、まあまあ。落ち着いて下さいまし?」

 

あ、あ、あほかぁぁぁぁぁぁあっ!!

どこの世界にただモテてぇってだけの奴に、掴んだモン全てを美少女にしちまう力与えんだぼけっっっっっっっっ!!!!

 

お、おいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっっ!!!

俺は声にならねぇ叫びを上げて、天を仰ぐ。そんでようやっと落ち着いて来る。

 

ま、アレだ。しかしよく考えたらすげぇ力だぞコレ。

 

だってオレの想像通りの力ならコレよ、オレが手にとったモン全てこんな美少女になっちまうんだろ。在りていにいってカミサマすげぇ仕事してくれたんじゃ?

むしろコレ、オレカミサマに感謝スべきじゃねぇか?

 

…………。

 

おっしゃ、人生何事も前向きにだっ。オレはもう悩まねぇっ!

そうだよなんで悩む必要がアンだよ?

オレの望んだ美少女たちが増えんだから問題ないじゃん。

 

じゃあ、あれだ。

オレは改めて彼女たちに挨拶して、ただ仲良くなっちまえばいんだよ。

なんか深く考えすぎてたわ。

 

ん、不意に思ったんだけオレ飯とか便所どうすんだろね?

掴んだモン全部美少女になっちまったらワリとオレひどいことにナンじゃねぇの?

………………この話題は今はよそう。深く考えたら負けだぜ。

 

一時の混乱から正気を取り戻したオレは改めて鎧の彼女のスガタを眺める。

うん?結構背ぇ高い子なんかね?

オレ身長180位あっけど、結構目線が変わんねぇし。

 

見た目はまあ、騎士様だな。立派なマントに鎧着た女騎士って感じの子だ。

なんかぽやっとしてそうなのはまぁ愛嬌ってことで。

この子って戦えんのかねぇ?

 

アレ。コイシとワカバの2人も、思ってたより背ぇ高えのかよ?

立ち上がった姿ぁ見ると結構でかく見えるな。オレの目線的に大分高えぞコレ?

 

ま、発育が良くて困るコッチャねぇわな。

遅ぇよりゃあよっぽどいいや。オレぁ改めて3人に声をかけてみる。

 

「おう、なんか悪かったな? ちっと混乱しちまった。」

「いえいえ~、カミサマ。もう宜しいのですか~?」

「カミサマ、コンランっっ?」「カミサマ、大丈夫?」

 

「まぁとりあえず自分の中では色々納得いったわ。

アンタ、……オレの鎧でいんだよな?」

 

ん?なんかオレ声高くなってる感じ?

服きてねぇから鼻に来てんのかね。そんなやわな身体じゃねぇってのに。

 

「はい~。ワタクシはアナタサマの鎧がそのお力で姿を得たモノですよ~。

これからみなさまを護れるよう、がんばらせてイタダキますね~。」

 

「そっか。こっちこそよろしく頼ま。まぁオレも今自分の力確認したばっかだから、色々分かってなくてな。迷惑かけっけどごめんな?」

「めーわく、大丈夫っっ!!」

「めーわくへいき。」

「あらあら、うふふ。はい。カマイませんよ。

ところでカミサマ~。いつまでもその格好のままではお風邪を召してしまいます。

よろしければワタクシのマントをお羽織りくださいませな?

 

淑女がいつまでもそのようなお姿でいたらいけませんしぃ。」

 

あ、淑女?何いってんだコイツ?

 

「イヤイヤイヤイヤ。オメェこんなガタイのいい女おったらちっとこえぇよ。

そんな女っぽく見える要素ねぇだろ?」

「いえいえ。もちろんカミサマの体つきは女性として魅力ですが、カミサマはどこからどうみても女性のお姿ですよ。今は、ですけれど。」

「そうそうっっ!! カミサマ、女の子っっ。一緒だねっっ!!」

「そうそう。カミサマ女の子。さっきからずっと喋り方違う。」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁあっ、んなわけっっっ!!」

 

その時、オレの頭に衝撃が奔ったっっ!!

 

みんなの言葉が気になって、オレは自分の身体を見た。

見ちまったんだ。

そうすっと、そこには、オレの胸には、今までオレが憧れ続けた女性の象徴。

 

ワリとビックサイズなおムネ様が存在していらっしゃった。

 

オレの下着を突き上げるカタチで、胸に大きなテナントを出していらっしゃるっ!

しかもなんか身体ちっちゃくなってねぇかなコレっ。

胸以外下着がぶかぶかなんだけどもっっ!!

 

あ、コレみんなが大っきかったワケじゃなく、オレが?

 

「どこからどう見ても、女性ですわよね~?」

「カミサマ、わたしといっしょっっ!!」

「カミサマ、わたしとおそろい。」

「「うれしいね、うれしいなっっ!!」」

「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤっっ!?」

 

いやぁ嬉しくねぇってっっ、むしろ一大事じゃねぇかっっ!!

正直オレがこの力を貰った意味が崩壊した瞬間である。

な、んでこんな?

 

オレは即座に自分の胸が本物か、そして俺自身が存在すんのか確かめる為、

即座にその両方をわしづかみにした。

つまりおムネ様と、オレの股間である。

 

そして不思議なことが起こったっっ!!

 

その両方をオレが掴んだ瞬間、

ジブンの胸と股間を掴んでいた筈のオレは新たな薄着の美少女を抱きかかえ、その胸と股間をまさぐっていたのであるっっ!!

 

全裸に剣一丁って誰がどうみてもヘンタイの格好をしたまま。

 

「あぁん、もーご主人さま。こんな昼間っからダメだってぇぇ?」

 

「あらあらはいはい。子どもはみちゃダメですよ~。」

「わかったぁっっ??」「わかった。」

 

うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ、やっちまったぁぁぁぁぁぁぁあ!!

 




NEXTSTORY
「オレは初めてアレを見る」

閲覧ありがとうございます。

気づいたら全裸系主人公。
そんなジャンルが流行らないだろうか?


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7) 第3話裏 鎧ちゃんは護りたい

鎧ちゃん視点。
主人公以外の視点は結構真面目な回が多いらしいですよ?
あ、例外はあります(白目)


「どう考えても言葉の綾ですわぁっ、創造神様!!!」

「ひゃあっっ!!」

「ひゃあ。」

「あらあら、まあまあ。落ち着いて下さいまし?」

 

目の前でワタクシの姿を変えて下さった女性が、あまりにも無防備な下着姿のまま大声叫んでいます。例えようのない程に美しい御方です。しかしあえてそれを言葉にするならば。

 

眩い夜明けの金星の輝きで編み上げたかのような金色の御髪、深い宵闇の姿を写し込んだかのような紫水晶(アメジスト)の瞳、真昼の太陽の白光を透かした最上級のシルクの如き艷やかな肌艶に、春の華花が姿を変えたかのような淡く瑞々しい唇。

 

それらに讃えられたお姿は、このように叫んでいる時でさえ、上級貴族さえも裸足で逃げ出すほどに洗練された佇まいでいらっしゃいます。

 

その姿はまさにどこを切り取っても1級の絵画すら凌駕する芸術品。

それがワタクシの今回の主様です。

 

永い、永い時を鎧として過ごして、数多の主の手を渡き、天界の方々とも面識のあるワタクシをして、このような美しさを讃えた御方は見たことがありません。

 

しかしワタシが初めてその姿を得た時、この御方は男性の姿をしていました。

今の姿からは想像できない程の、厳しい眦をした御方。歴戦の厳しさを讃える戦士の面立ちをしていらっしゃいました。それが今では美の化身。

 

やはり神々とは我々のようなモノには測れない存在なのですね。

 

姿がどのように変わっても、いえ変わったからこそ。そのお手に秘めた権能が、神々の力の一端であることは疑いようがありません。

創造神様にもご面識があるご様子。

 

幼い眷属のお二人もおっしゃっているようにこの方はカミサマの一柱か、もしくはその分見姿の1つなのでしょう。しかしこのような美しい御方。噂にならないハズはない。もしかして新たにお生まれになられた御方なのかもしれません。それ以外には考えられない。

 

なぜなら彼女は、ヒトというにはあまりにも美しすぎる方ですから。

 

カミサマは今なにかを深く考えこんでおられます。

深い怒りと、憂いをおびたその表情はあまりにもお労しく、しかしどこか不可侵で、神聖な、悩める聖女の彫像そのものです。

 

そしてご自分でお答えを導き出されたのでしょう。次第にその面持ちが、雪溶けを祝う朝日のように、晴れやかなモノへと変わっていくではありませんか。

 

たったそれだけ。それだけでワタクシは心の底からうれしくなってしまいます。

 

ああ、なんて綺麗。美とは、美しさとはそのあり様だけでこうまでヒトの心を打つのか。只々ワタクシはその横顔を見つめ、感嘆に打ち震えておりました。

その時です。カミサマがワタクシにお声をかけてこられました。

 

「あの、ごめんなさいね? ちょっと混乱してしまったの。」

「いえいえ~、カミサマ。もう宜しいのですか~?」

「カミサマ、コンランっっ?」「カミサマ、大丈夫?」

 

とても気安く、飾らぬ言葉で。心の底から申し訳なさそうに、我々のようなモノへと向かって。ワタクシはカミサマが特別扱いを嫌う御方であると察し、柔らかく、普段の自分で持ってそれに答えます。彼女はそれを笑って受け入れてくれました。

 

「とりあえず自分の中で納得は出来ました。貴方はワタシの鎧でいいのですよね?」

「はい~。ワタクシはアナタサマの鎧がそのお力で姿を得たモノですよ~。

これからみなさまを護れるよう、がんばらせてイタダキますね~。」

 

まるで同等のモノを扱うような口調で、おずおずと聞いてこられるカミサマ。

そこには深い労りの心を感じます。ワタクシは本心からお言葉を返します、

 

それはなにより、自分が永い永い時の中願ってやまない言葉でした。

ワタクシ達鎧とは守る為にあるモノ。しかしその実、鎧は誰も護れません。だって鎧は動けませんから。ワタクシにはずっとそれが苦痛でした。

 

ある程度、優秀な鎧として状態保存の魔法をかけられていたワタクシは多くの主に使われました。しかし彼らは皆、ワタクシの中で息絶えていきます。

ワタクシはどうしても、ソレに慣れることができなかった。

いえ、慣れようともしなかった。

 

主を護れぬ自分を呪い、世界のあり方を呪い、神を呪った。

 

それがワタクシという鎧なのです。そしてその呪いが魔毒となってこの身のあり方を変えようとしていた時、ワタクシは天使に回収された。

ああ、これでこの呪わしいあり方が終わる。ワタクシは正直ほっとしていました。

 

ですがそれは終わりではなかった。

 

それからワタクシは天界の宝物庫で保管されることになりました。

この身の周りに、多くの伝説、逸話を持った一級品(ホンモノ達)が立ち並んでいます。

ああここならばワタクシのような上等だが名もなき鎧(二級品)はもう使われることはないかもしれない。そんな事を思って実際。

 

ワタクシは永い永い時をソコで過ごしました。

 

ですが安寧は突然に破られました。

ワタクシはこの御方の鎧として、また混沌の世界へと落とされてしまったのです。

 

ああ、またか。

またなのか。ワタクシがかつてのように静かに呪詛を貯めこもうとした時。

 

突然ワタシの眼の前が、開けます。

そう。ワタクシはこの御方に変えられた。救われた。

ずっと叶わなかったモノモノであるワタクシの、たった1つの願いを叶えてくれた方。

 

「そうですか。

こちらこそよろしく頼みます。ワタシも今、自分の力を見知ったばかりだからまだ不慣れなのよ。迷惑かもしれないけどごめんさいね?」

 

カミサマは何でもないことの様に、ワタクシに頭を下げます。

自らの所有物にしか過ぎないワタクシに。道草の若葉や、道端の小石に向かって。

別け隔てなく、その優しさを下さる御方。なんと慈愛溢れる気高き御方か。

 

ああ、迷惑なハズがない。

 

護らないハズがないでしょう。この命を賭して、全てを使ってでも。

ワタクシが護らないはずが、無い。

だってワタクシは。

 

「めーわく、大丈夫っっ!!」

「めーわくへいき。」

「あらあら、うふふ。はい。カマイませんよ。」

 

あなたの鎧(を護るモノ)なのですから。

 




閲覧感ありがとうございます。
励みになりますので感想・ブックマーク・評価等何時でもお待ちしています。


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8) 第4話 オレは初めてステータスを見る(1)

ここだけの話、主人公は全体的に思い込みの激しいかなり残念な子なんです(まる分かり)


「あはぁ、ご主人様は大胆さんだねぇ~。」

「うわわっっ、わりぃ、ご、ごめんなさいっっっ!!」

 

言うが早いがオレは下着から生まれた美少女から飛び退いて土下座するっっ!!

すいませんっ、柔らかかったですっっ!!

じゃ、なくて、もう、ほんと。死にたいっっ!!

 

なんというか全体的に薄着で積極的なんだよこの子っ。

 

オレの無地シャツを改良したような、独特のフリフリワンピースのそれに、ムネ下から肩口にかけて、お胸を協調するような紐が掛けられてる。髪型は明るい茶色のセミロング。どっか気ままなのら猫を彷彿させる雰囲気の、色気たっぷり小悪魔系な少女だった。

 

正直そんな子の胸と股間を弄った上、あまつさえそのまま擦り寄られちまうとか、めっちゃうれしかったけど。んなもん全然楽しむ余裕ねぇっての。頼めばどこまでもイケてしまいそうな危うい雰囲気が逆に怖ぇんだよ。めっちゃ心配になる。

 

「えぇぇ~、ワタシは別にぜんぜんいんだけどなぁ~?

 

今もめっちゃ謝ってるオレの横で、親しげに身体を擦り寄せてくる。

ダメダっ、子どもが見てるんだぞっ、オレは必死にそうやって彼女へと謝りながら距離を取るという小器用な事をしていると身体にポフっとマントをかけられた。

 

「カミサマ。とりあえずそれをお纏いくださいな。」

「あ、ありがとう。」

「「まだみちゃだめー?」」

 

け、穢れなき子らよ、正直スマンっ。

オレはこんなに一枚の布地を頼もしく思ったことはないぜ。

ソレ以前にもちろん森ん中で裸になったこともなかったが。

 

改めてマントをきちんと羽織るとミンナに向かって声をかけた。

 

「もう大丈夫。ちゃんとくるまったから。ありがとう。」

「わーいっっ!!」

「わーい。」

 

途端に飛び込んでくるワカバとコイシ。

ちょうどいいのでこのまま彼女らを抱えて色々足りない布地を補強してしまおう。

 

「よいしょっと。しばらくの間ちょっと抱かせてくれな?」

「ぎゅーするっっ?」

「ぎゅー。」

 

……おお、オレの裸族デビューでササクレた心が癒やされていく。

 

「あらあら、仲良しさんですわね?」

「まぁな。コイツラ俺の大切な家族(モン)だから当然だな。」

 

俺は2人を優しく抱きしめながら当たり前のことを言ってのけた。

しかし、そうか。そいやコイツラもオレの特性で生まれたんだよな、きっと。

……ま、どうでもいっか。

 

こんな嬉しそうにオレを一緒にいてくれるんだ。元とかどうでもいいわ。

 

「ふふ、カミサマは随分お優しいのですね。

ワタシもその中にいれてもらえるかしら?」

「ん、そりゃもちろん。君がそれを望むんなら、オレに異論はねぇよ?」

 

お、なんかいい空気じゃね?

オレが鎧の女の子とちょっと親密になろうとしていたその時。

小悪魔がすげぇ艶っぽく後ろから抱きついて来た。だからエロいってアンタっ!!

 

「えへへ、アタシも混ぜてよご主人様~、ギューってしたげるね

「おいっっ、お前流石にそりゃ色々問題だろっ、抱きつくなオイっ!!」

「なんでなんでっっ?」「ギューしちゃダメなの?」

 

なんて教育にワリィ女だっっ、ちょ、やめ、撫で回すっ、なぁっ……。

 

「うふふ~、ぎゅうぎゅう

「じゃあワタシもっっ!!」「ワタシも。」

「「「ぎゅうぎゅう」」」

 

穢れなき子らよ、真似しちゃラメェっっ!!

だれか助けてっっ!!

 

「あらあら、これはちょぉっとお話が必要かしらぁ?」

 

 

「どうしてあんなことやったんですの?」

「ミンナ愉しそうだなぁ思って、こう勢いでぎゅうってっ

えへへ、実はご主人様も悦んでたよぉ~。」

「そうですか。ではすこぉしワタクシとおはなしをしましょうね~(ワキワキ)」

「ぎにゃーっっ、ちょ、お話じゃないじゃんっ、いだ、あだま、いだだだだだだっ!!」

 

只今白い小悪魔は鎧さんからお説教をうけている。

のんびりしてるようで彼女は割としっかりしてるらしい。

正直今繰り出されているガントレットでのアイアンクローは凶器そのものだぜ。

 

オレはこれから鎧さんだけは怒らせない方向でいこう。

 

ちょっと時間ができたかな。

オレはちょうどいいので、ワカバとコイシに自分たちのことを聞いてみる。

 

「なぁ二人共。お前らもオレの能力で美少女になっちまったんだよな?」

「そうだよっっ!!」

「そうだよ。」

 

やっぱそっか。あれ?

じゃあオレコイツラにあった時に捨て子だって思って舞い上がって色々いったこと、全部勘違いってやつか? …………おおうなんかやっちまった?

ま、コイツラとずっと一緒にいてぇってのは本心だ。大した問題じゃねぇなきっと。

 

「元々何だったってわかんのか?」

「ワカバはワカバだよぉっっ?」

「コイシは小石だよ。」

 

あ、そっか。まんまなのね?

 

「ワカバはカミサマの力でクサビトになったのっっ!」

「コイシはカミサマの力でイシビトになったの。」

 

ううむ?

なんかわからん単語が出てきたぞ?

 

「おう。なんかすげぇな。それってなんとなくわかるもんなのか?」

「あのねあのねステータスを見たら書いてたのっっ!!」

「あのねあのね。ステータスって言ったら見られるの。」

 

あ、なんかオレも聞いてた記憶あるわソレ。

そっかわかんねぇことはステータスで確認しろって言ってたわ、アノ爺さん。

 

「ワタシの職業は精霊術師(エレメンタラー)なのっっ!!」

「ワタシの職業は格闘家(グラップラー)なの。」

 

歌い合わせるようにオレにジブンの事を教えてくれる2人のスガタにオレが和んでいると、オレは横から声をかけられた。

 

「ワタクシの職業はアーマーナイト(鎧騎士)。種族は鎧人でしたわ。」

「あ、ワタシなんか職業スカウト(工兵)だったよ。種族は衣服人だってぇ。

下着ビトじゃなくてがっかりだよねぇ~。」

 

そして横から程よい衝撃っっ!!

ドウヤラオレはまた白い小悪魔から襲撃を受けたらしいっ。

妙に彼女が絡みついてくる感覚が悩ましい。色々イケない感覚に襲われた。

 

穢れなき子らよ、オレを護ってくれっっ!!

影響受けるのだけは勘弁っ。

 

「カミサマはどんなのぉっっ?」

「どんな職業なの?」

 

どうやらオレは救われたようだ。

なんと彼女らの無邪気な笑みにオレの邪念が消えていくではないか。

オレは小悪魔を身体から引っ剥がしながら、それに応える。

 

「やん♪」「あなたはこちらですわ~。」「は、はにゃしてぇぇぇぇぇっ~」

「それがステータス自体まだ確認していないんだ。

ちょっと待ってくれ、スグ確認してみっからよ?」

「わくわくねっっ!!」「どきどくね。」

 

なんか背後で小悪魔がオレの守護霊に連れていかれたような錯覚があったが、正直もうどうでもいいわ。彼女の扱いは割とおざなりでもいいのかも知れん。

オレは天使2人の期待に応える為、ステータスを開くことにした。

 

その時オレの頭に衝撃が奔ったっ!!

 

 

入主 神威【イリス カムイ】

種族 ヒト族

性別 美少女(・・・) 

職業 無選択 選択可能職あり【タッチで確認】

レベル 1

 

 

……どなたか教えてくれませんか。

 

性別美少女っどういうことですかね?(震え声)

 




閲覧ありがとうございます。

モテモテとか願っていても実際に責められると引いちゃう系男子。
なんて宝の持ち腐れなんだ(白目)


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9) 第4話 オレは初めてステータスを見る(2)

オレは詳しく内容を確認する前にどうしても気になってしまった点に突っ込んだ。

こんなオレは多分、悪くないと思う。

性別が女ですらなかったぜ……。

 

気を取り直し、改めてオレは自分のステータスを詳しく確認していくことにする。

 

入主 神威【イリス カムイ】

種族 ヒト族

性別 美少女 

職業 無選択 選択可能職あり【タッチで確認】

レベル 1

BS(バットステータス):なし

信仰:なし

 

筋力 17(14+3) 【力の強さ、物理攻撃に関係】

耐久 15(12+3) 【肉体的な打たれ強さ。HP、防御力に関係】

敏捷 16(13+3) 【素早さ。移動速度、近接精度、物理回避に関係】

器用 11(8+3) 【器用さ。射撃・近接精度、多くのクラフトに関係】

感覚  7(4+3) 【感の良さ。射撃回避、精霊術に関係】

知識  6(3+3) 【知識量。多くの魔術に関係】

精神 19(16+3) 【精神の強さ。魔術回避、信仰術に関係】

魔力 17(14+3) 【魔力の多さ。魔術威力に関係】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 19 【物理的打たれ強さ】

MP 23 【精神的打たれ強さ】

 

スキル

【喧嘩殺法】:素手を使ったルール無用の戦闘術。奇襲効果あり

【抵抗】:あらゆる抵抗判定に+補正。

【説得/無法者】:あらくれ者を説き伏せる交渉術

 

 

ユニークスキル

【栄光の手】:手で掴みとった対象に【完璧なる美少女】を与え、元の姿に基づいたヒト系種族に変化、ソレに類ずる専用衣裳を与える。この時ダメージ判定を含んだあらゆるバットステータスが解除される。専用衣裳はこのスキルの効果を弾く。

 

付加スキル

【完璧なる美少女Ⅲ】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

ランクⅡ:立ち振舞が自動補正され、キレイな動作となる。能力補正あり。

ランクⅢ:性別が美少女となり、種を超絶した美しさを得る。

また言動補正が強化され、より美しい言葉となる。能力補正あり。

 

 

なんかオレのスキル完全にあらくれモンのソレになってねぇか?

不良更生の為のあれこれが完全にスキル化しとるぞコレ。

それにこの能力値。そこはかとなく、オメェ鈍感でバカじゃんって言われてる気がするわ。そっか。自分の数値化ってワリと精神的にクルモンなのね。

 

ううん?

 

おう。なんかオレが掴んだモンが全て美少女に変わんのこの【栄光の手】のおかげらしい。お、これオレが変えた女の子の持ってるモンならオレも使えそうじゃん。

こりゃ後でやるこたぁ決まったな。

 

おう。

オレがカミサマ呼ばわりされるのって【完璧なる美少女】ってスキルの効果かよ。

あぁ、コレ悪質な洗脳だわぁ。…………深く考えたら負けるなぁ。

思ってたより美少女化ってメリットあるな。能力・成長補正ってなんかすごそう。

 

って性別美少女お前のせいかよっっっ!!

 

あと”自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される“ってなんじゃい?

オレずっと普通にしゃべってんだけどな。

周りからはそう聞こえてるってことなんだろうか?

 

ま、意味が通じりゃ大した問題じゃねぇな。

会話なんて要は心だろ。それがちゃんと伝わってりゃ十分だ。

あ……、職業ってコレに触れればいいのかな?

 

その時オレの頭に衝撃が奔ったっ!!

 

 

 

以下の職業に転職可能です。

 

コモンクラス

村人

戦士

格闘家

神官

 

レアクラス

神官戦士

 

トリプルレアクラス【トップレアリティ】

女神見習い(・・・・・)

 

各クラス説明表示可【ここをタッチで表示】

各クラスタッチで初期スキルを見る。

 

 

「ふぁぁぁぁぁっっっ!?」

「ふぇぇっっ!!」「ふぇぇ。」

 

カミサマ、あんたオレをドコに向わせたいんだっっ!!

1つ飛び抜けて凄そうなんだが、男のオレがなるのは気が引けるモンが混じってるじゃねぇかっっ!!

 

と、とりあえずこりゃ確認するしかねぇな。

むこうはトップレア様だ。貧乏性のオレにゃあとても無視できる存在じゃねぇ。

震える手でオレはステータス画面をタップする。

 

 

以下の職業に転職可能です。

 

コモンクラス

村人 【この世界の一般的な村人。クラフトに補正あり】

戦士 【近接戦闘に長けた職業。弓・投擲の射撃スキルも少し修得可】

格闘家【素手戦闘に特化した職業。極めると気の波動を飛ばせる】

神官 【信仰術を使える職業。信仰した神の戒律を護る必要がある】

 

レアクラス

神官戦士【信仰術を使える戦士。信仰した神の戒律を護る必要がある】

 

トリプルレアクラス【トップレアリティ】

女神見習い【複数人から女神として認識、信仰された者のみが選択できる隠し初期クラス。いずれは神々の頂きに登らんとする者。信仰対象として信仰心を集めれば集めるほど、強力な奇跡を使えるようになる。信者に信仰術を授けられる。

 

「おお今まさに天界の輝かしい光が誕生せんとしておられる。見よアレこそが我らが希望、新たなる我らが女神の姿よ。その名を讃えよ、その名を讃えよっっ!」】

 

各クラス説明非表示可【ここをタッチで非表示】

各クラスタッチで初期スキルを見る。

 

 

なにこれ。

めっちゃ強そうなんだけど女神見習い(コレ)

だってあからさまに説明凝ってるし。

 

ツーか何で職業の説明にフレーバーテキストとか入ってんだよっっっ!!

 

でもこれ選んだらオレもう男に戻れないような。そんな確信があるぜ。

…………。

オレはそっとステータスを閉じて、問題を先送りすることにした。

 

今はまだきっと選択の時じゃない。

とりあえずミンナには職業以外のことを教えよう。

そうしよう(現実逃避)

 

「とりあえずステータス見てみたわ。オレはヒト族。

職業はちっと思うトコがあって未定な。んでオレの力の正体がワカッタ。」

 

「カミサマの力っっ!!」「カミサマの力。」

「まぁ~、詳しくお聞きしてもぉ?」

「むー、むー」

 

なんか押さえつけられてる小悪魔ちゃん。

もう完全にそういう立ち位置なのね、納得しちまうわ。

さってこっからが本番だ。

 

「おう。オレの力は掴んだモン全てを美少女にしちまう能力。ンで、そのことなんだけどな。オレってどうやらもう変えちゃった子の着ているモン以外は全部掴んだら美少女にしちまうみてぇなんだ。だからよ。」

 

オレはその場に素早く頭をつけて……、

 

「すまねぇっ!!オレにみんなの着ている服を少しずつワケてくれっっっ!!」

 

言うが早いが土下座した(誠意を見せた)っっ!!

 




NEXTSTORY
「オレに君のアレを下さいっ!!」

閲覧ありがとうございます。
職業欄をそっと閉じていくスタイル(白目)

なお彼が翻訳後の自分の言った言葉を分かっていないのは、彼が自分が喋りながら聞き取りできる程賢くも鋭くもないからだとか。知力と感覚最低ラインだしね。仕方ないねっ。

黒のアリス様、誤字報告いつもありがとうございます。
本分の文面ごと削れちゃいましたが、もう報告して下さることがありがてぇっス
これからもどうかガバチェックお願いしますっm(_ _)m


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10) 第5話裏 「下着を履くだけの話」

変態力にやる気を与えるとろくなことにならない。
つまり今回の話です。

あ、パンツを履くだけの話ですよ。

あ、今回の話から今後の展開についてのアンケートを設置しています。
できましたらお読みになられた後、ポチッと押して下さると助かります。


あはぁ、カムイクン(ご主人サマ)嬉しそうジャン。

アタシは大切そうに女の子2人を抱きかかえるカムイくん(ご主人サマ)を見ながら人知れず1人にんまりする。

 

他の子達と違って彼の持ち物だったアタシは彼らよりカムイくん(ご主人サマ)のことに少しだけ詳しいの。周りから怖がられる自分をどうにかしたくて、でもずぅっと空回ってた彼のことを、少しだけ知ってるのよね。

 

見た目と不器用さから周りから悪くみられる彼に心を砕くのはいつだって同じく外れた者同士(不良たちだけ)。それでも彼は自分はまっとうに生きたいと、彼らと同じ道を選ばなかった。そんでもって足掻き続けて、それでも彼は1人だったの。

 

怖がられ、勘違いされ、意味もなく罵られ続けてたのよ。彼、言い返さないしね。

 

だから彼はいっつも孤独で、家じゃあ楽しそうに笑う親戚の家族たちの声の裏で、消え入るように膝を抱えて明日を信じて耐えるしかなかった。そんな子がね、今。

 

笑ってるんだ。幸せそうに。誰かから本気で好かれて心の底から笑ってる。

 

だったらアタシとしてはもう嬉しくなっちゃうじゃんね?

アタシは目の前の光景にたまらなくなって、ちょっと潤んじゃった瞳を隠すためにそのいちゃいちゃに飛び込むことにした。そぉれっ

 

「えへへ、アタシも混ぜてよご主人様~、ギューってしたげるね

 

後ろからカムイくん(ご主人サマ)に抱きついて、色々押し付けたり弄ったりしてみる。あはっ、迷惑そうに見えて、アタシに抱きつかれて喜んじゃってるねむっつりさん(ご主人サマ)

たぁのしいっ

 

「おいっっ、お前流石にそりゃ色々問題だろっ、抱きつくなオイっ!!」

「なんでなんでっっ?」「ギューしちゃダメなの?」

 

もう遠慮しないでいいってばぁ

おおぉ、カムイくん(ご主人サマ)ホントに美少女だねぇ。お肌すべすべのぷるっぷる。触り心地いいなぁ、このこのぉ♪

 

アタシより断然肌ツヤいいんだもん。ちょっと位イジめちゃってもいいよねぇ?

そぉれ

 

「うふふ~、ぎゅうぎゅう

「ぅふ、くぅ、ぁ、や…、ぁっ…!」

 

うふふ、いい子いい子だねぇ~

すりすりすりっとぉっ。

 

「じゃあワタシもっっ!!」「ワタシも。」

 

あらあらカワイイ娘達。いいよぉ。一緒にカムイくん(ご主人サマ)にぎゅうぎゅうしちゃおっ?

 

「「「ぎゅうぎゅう」」」

「ぅ、ら、らめぇっ……。」

 

嬉しそうにはしゃぐながらアタシの真似をし始める2人の美少女ちゃんズ。

無垢ってカワイイわよねぇ~♪

きゃーー、ちょぉったっのしぃぃっ!!

 

「あらあら、これはちょぉっとお話が必要かしらぁ?(ビキビキ)」

 

その時アタシは自分の後ろに修羅がいた事に気付かなかったワケでして。

 

 

なんのかんのとアタシが鎧ちゃんの説教を聞き流していた時、

カムイくん(ご主人サマ)がステータスの確認を終わらせたみたい。みんな呼んで喋りはじめた。

 

「今ステータスを確認し終わったわ。ワタシはヒト族のようね。職業はまだ思う所があって決めかねてるの。それでね、ワタシの力のことを理解できたわ。」

「カミサマの力っっ!!」「カミサマの力。」

「まぁ~、詳しくお聞きしてもぉ?」

「むー、むー」

 

あ、アタシ?

ずっと鎧ちゃんに押さえつけられてますけども。

なんかイロイロやりすぎちゃったみたい。てへっっ?

 

「もちろんよ。ワタシの力はこの手で掴んだものの全てを、貴方達のような美しいモノへと変えてしまうようね。

 

あの、そのことなんだけどね? ワタシ貴方達のように既に変わってしまった子達が身につけているモノ以外は、みんな美しいモノへと変えてしまうらしいのよ。

だからね?」

 

しっかしカムイくん(ご主人サマ)美人さんになったよねぇ?

言葉遣いから立ち振舞いまでなんかすっかり貴婦人さんじゃんね。

これもスキルの力なのかにゃ?

 

あ、カムイくん(ご主人サマ)が土下座した。

 

「ごめんなさい、

どうかワタシにみんなの着ている物を少しでいいからわけて貰えないかしら!」

「いいよっっ!!」「いいの。」

「あらあらカミサマ。どうかおやめくださいましぃ?

元よりこの身はぁ、貴方様のモノなのですからぁ。

むしろお返しするのは当然ですよぉ?」

「ああ、ありがとうみんな。本当にもう、感謝で言葉もないわ。」

 

ううん。中身は変わってないね?

カムイくん(ご主人サマ)のいつものちょっとおおげざなアクションでも、美人さんの姿でやるとこれほど見え方が変わるモンなんだね?

 

正直アタシも中身知らなきゃあの鎧チャンみたく、ちょっとカシズキたくなっちゃうよ。すっごいエライヒトに頭下げられてるキブン。

なんかおっかしっ?

 

「そうと決まったら、アタシの出番だよね?」

 

さっそくアタシはその場で履いてたアタシ(下着)を脱いで、それをカムイくんへと渡したよ。だって服を着るならまず下着からでしょ?

 

ご主人サマに姿を変えられたアタシたちにはその核となるアイテムがあるの。

アタシの場合はそれがカムイくん(ご主人サマ)の男性下着。

だったらもうこれ、渡しちゃうしかないじゃん?

 

「さぁカムイくん(ご主人サマ)下着(ワタシ)を履いて

「あ、ありがとう」

 

すっごく顔赤くしながら、アタシの脱ぎたてのアタシ(男性下着)を受け取るカムイくん。いやぁ、これって元々君のモノなんだけどね?

でもヤッパリ女子の脱ぎたて下着って思うと照れちゃってるんだねぇ、キミは?

 

その時アタシの身体に衝撃が奔った!!

 

「あぁ、ぅぅん

 

にゃにゃにゃ、にゃんで、カムイくん(ご主人サマ)アタシ(下着)触れられると、こんなにキモチヨクにゃるのぉっっ!?

なんかカムイくん(ご主人サマ)の身体から、アタシになんかすごいの流れてくるのぉっ。

 

ふぃうっぁ、やぅっ。ただアタシ(下着)をソッと手で受け取られただけにゃのぃ、カラダピクピクってなっちゃうよぉっ。

 

え、ちょ、まってぇ。これぇ、このままアタシ(下着)カムイくん(ご主人サマ)に履かれたりしたらどうなっちゃうんだろぉっ?

でもぉ、カムイくん(ご主人サマ)アタシ(下着)以外の履いてほしくないよぉっ。

 

たえにゃぃ、ひぅっ、っぉとぉ、アタシ(下着)カムイくんに履かれたいモォンっ!

 

あぅ、そんにゃ確かめるようにナデちゃぁ、ひぅうんっ!!

あ、らめらめため、そんにゃ強引にアタシ(下着)の入り口、ひらかにゃいでぇっっ!!

おナカのオク、きゅっとぉ、ジュってしちゃぅからぁぁぁっっ

 

あ、ン、あぁ入ってくるぅ、アタシ(下着)のナカぁ、カムイくんの足(ご主人サマの)入ってきちゃうぅ!

うにぃっっ、あっ、にゃぁぁっっっっっ

いっきにぃ、カムイくんの足(ご主人サマの)アタシ(下着)のあにゃぁ、つらにゅかれぇてぇっっ

 

おにゃかかりゃせすじぃびりびりしりゃうのぉっ。アタマちかちかくるのぉッ!!

らめぇっ、たぇなぃとっ、とちゅうでぇやめぁぇちゃぅっっ

 

あ、はぁぁぁっっっ、ぁあ、っらめらめらめっ、まだアタシっ、いまぁラメなのぉ、きもちぃいのイッパイにゃぉ、あふれちゃぅかぁ両方の穴、らめぇっっっっ!!

ぜったぃたえりゃぇなくにゃるぉぉっっ

 

「いぅ、あはああああああぁぁぁぁぁっっっっっっん!!」

 

ひぅ、ひぅっ、ぅうん

りょうほぉっ、アタシ(下着)のナカぁいっぱいぃ、カムイくんの足(ご主人サマの)でいっぱいにゃのぉぉぉっっ!! アタシ、ありゃためぇ、カムイくんのにさえちゃったよぁぁっ

 

「あひぅぅぅぅっっっっっっっっっぅんっっっっっっっ!!」

 

カラダをハシルピリピリにたえられらくて、たまらずそのバでへたりこんじゃう

あぅん、カムイくん(ご主人サマ)っ、きづいぃちゃったぁよぉ。

とまどっちゃってるよねぇ。だからぁアタシがちゃあんとおねだりしちゃうからね?

 

「おねがいご主人サマぁ、もっとぉ、もっとうごいてぇ?

カムイくんの足(ご主人サマの)アタシ(下着)をイジメてぇっ

 

アタシが精一杯目をウルウルさせていったそのおねだりにご主人サマを動きを止め。

恐ろしい速度で下着を脱ぐと綺麗フォームでお空の彼方へ投げ捨てたっ!!

 

「流石に履けないわよっっっっっ!!」

「ご主人サマ、パンツなげないでっっっっっ!!」

 

え?

 

カムイくん(ご主人サマ)の本性をミンナに伝えないかって?

アタシはカムイくん(ご主人サマ)の衣服だよ。その本質は隠して飾るモンじゃん?

だったらアタシがそんなこと、する訳ないよね?

 

 




パンツ履いただけですよ?(白目)

石を投げないで下さいっ!!

なお穢れなき子らは鎧ちゃんの指示で耳を塞いで、目を閉じております。
一応自分自身を主に着てもらいたいという部分が共感出来た為、止められなかった模様。

黒のアリス様、誤字報告感謝です!!


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11) 第5話 オレに君のパンツを下さいっ!!

いやぁ前話はひどかったですねぇ。
今回は大丈夫でしょう(すっとぼけ)

第5話裏から今後の展開についてのアンケートを設置しています。
できましたらお読みになられた後、ポチッと押して下さると助かります。


な、なにが起こったつーんだ?

それはオレの目の前で薄着の女の子が脱いで渡してくれたオレの下着を、何気なしに履いた時に起こったことだ。

 

その時オレの頭に衝撃が奔るっっ!!

 

「いぅ、あはああああああぁぁぁぁぁっっっっっっん!!」

 

なんでっっ!!

いきなり彼女は自分の身体を押さえて、その場で艶めかしい声を上げて震えだしたんだ。そこで心配になったオレが彼女に近寄ると、

 

「あひぅぅぅぅっっっっっっっっっぅんっっっっっっっ!!」

 

オレの動きに連動したかの様に、彼女はその場でへたり込んだっっ!!

あ、え、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?

そりゃもう、オレぁ完全に混乱しちまって声もでねぇわっっっっっっ!!

 

てかエロいなおいっっっっっ!!

 

はっ、こんな光景オレの天使達にゃあ見せられんっ。

オレがトッサに2人の方に振り向くと、彼女達は鎧さんからの指示なのか、両手で耳を押さえで目を瞑り、さらに鎧さんの両手で目を塞がれている状態だった。

相変わらずなんか楽しそうにしてら。じゃなくて。

 

イヤイヤイヤイヤ鎧さん、アンタすげぇよっ!!

 

密かに彼女の動きに感動するオレ。ぽやっとしてるように見えてホントそつがねぇヒトだ。そんなオレの内心なんぞなぁんも知らずに、眼の前のトラブルメーカーはオレに上目遣いで訴えてきやがる

 

「おねがいご主人サマぁ、もっとぉ、もっとうごいてぇ?

ご主人サマの足でアタシ(下着)をイジメてぇっ♥」

 

オレはもう、プツンと来たね、このエロ小悪魔に。

 

即座に今履いてる邪神の結晶に手ぇかけておもむろに脱ぎ去ると、力イッパイ空の彼方へとぶん投げてやったっっ!!

 

「流石に履けるわけねぇだろっっっっっ!!」

「ご主人サマ、パンツなげないでっっっっっ!!」

 

知るかっっ!!

 

犬のようにパンツを拾いに突っ走っていく小悪魔ちゃん。悪は滅びた。

彼女には慈悲はいらない。オレがそのスタンスを決めた瞬間だった。

 

しかしそこでそんなオレたちの声にびっくりして眼を開けてしまった天使2人は、それに翔ぶパンツと、まだオレが服を着てないことを知るや、お互いに何かを頷きあって。

 

なんと二人共自分のパンツを脱いでオレへと捧げてくれるじゃねぇかっっ!

 

そいつはなんともかわいい花柄パンツと、漫画みてぇなかぼちゃさんだった。

彼女らは余りにも純粋な笑顔を浮かべて、それをオレに手渡してきた。

 

「あのね、あのねっっ!!」「あのね、あのね。」

「カミサマ、お服なくて困ってるならワタシのあげるねっっ?」

「カミサマ、パンツなくて困ってるならワタシのあげる。」

「お、お前らは、いいのかよ?」

 

心の底からオレのことを思ってパンツを差し出してくる2人。

だが2人もこんなかわいい子達なんだ。

さすがにノーパンにさせるわけにゃあいかんだろ。

 

でもそんなオレの問いかけに2人は嬉しそうに言葉を返した。

 

「カミサマ、カゾクが困ってる時は助け合うって言ったわっっ!!」

「カミサマ、今お服なくて困ってるわ。」

「「だったらワタシたちカミサマにお服をあげたいわっっ!!」

「お、オメェら。」

 

2人のあたたけぇ言葉にもうなんも云えなくなる。

なぁんか胸いっぱいになったオレは、呆然と2人からパンツを受け取っちまった。そん時後ろからそんな光景を微笑ましく見つめていた鎧サンが顔赤らめながら

 

「あらあら、ふふっ。

でしたらワタシもカミサマに下着をお渡ししたほうがいいかしらぁ?

鎧などでも構いませんけど、あの彼女の姿を見ると少しダケ怖いですねぇ。」

 

とか言い出すからオレも真っ赤になっちまってよ。

まぁそこはさすがに断ったけど。だって鎧さんってミニスカ何だぜ?

 

「他にもコレとっっ!!」「これをあげるね。」

 

オレが彼女の意外な茶目っ気に参っていると

ワカバとコイシたちが自分の身につけたモンをオレに巻きつけてきてくれた。

 

ワカバは、沢山の草花の葉っぱがお椀上にフワっと広がったような感じの、若草色のマントっぽいモンをオレの腰へと、コイシはその首に巻いとった銀色にキラキラ光る長いマフラーみてぇなモンをオレの胸へと巻いてくれる。

腰蓑と胸バンドかっ!!

 

なんかオレは一気に森の妖精っぽいカッコになった。裸マントと安心感が段違いだ。もう感謝しかねぇな。しかしいい加減、両手にパンツの状態はよろしくねぇ。

オレは手に持ったパンツのウチかぼちゃサンをコイシに返しながら2人を撫でる。

 

「ありがとな。オメェラホントサイコーだわ。」

 

ホントは花柄パンツの方も返してぇんだけどな。流石に貰った腰布が短すぎるんで、いろいろこえぇ。しばらくの間ありがたく、利用させてもらうぜ。

 

しかし、パンツかぁ。しかも女モノの。

 

一応元男のオレだ。そこには超えられん抵抗感が確かにあった。

しかしこれはワカバがオレの為を思って渡してくれたモンだ。

だったらきちんと履いちまうのが筋ってもんだろ。

 

オレが覚悟を決めてそのパンツを履こうとした時。

音もなくあの小悪魔が舞い戻ってきやがったっっっ!!

その手にゃあまだパンツが抱えられたまんまだったっ。履けよっっ!!

 

しかもなんと。彼女おもむろに、オレが持っていた花柄パンツを横からかっさらうと、それを空中へと投げ出しやがったっっっっっ!!

 

「な、なにしてんだてめぇっっ!!」

「ご主人サマがアタシ以外のパンツ履いちゃやぁっっっっっっっっっ!!」

 

それを見て何かにぴんと来てしまったコイシちゃん。

なんと彼女はその光景を見てそういう遊びなんだって思っちまったんだろう。

自分がまだ手に持ってたパンツを続けて全力で投げだしたっっっっっっ!!

 

肩つぇっっっっっっ!!

 

綺麗に放物線を描いて空を舞うパンツ達。ひたすらはしゃぐ2人の天使ちゃん達。そして悪びれずにしてやったぜと言う顔をしたクソ小悪魔の前で。

 

「パンツはなげちゃっだめだっっっっっっっっっっ!!」

 

オレがソイツを言い放った時だ。

突然オレ達に向かって木陰から素早く影達が飛び出してきやがったっっ!!

 




NEXTSTORY
「オレとアレの初めての戦闘」

閲覧ありがとうございます。

奥さん聞きました?
初めての戦闘描写がノーパン娘4人の作品があるらしいですよ?


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12) 第6話 オレと狼の初めての戦闘

第5話裏から今後の展開についてのアンケートを設置しています。
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反応できねぇっっ!!

気づいた時にはもうオセぇっっ!!

そんとき一番木の側にいた、ワカバ目掛けてナンカが飛びかかってくるっ!!

 

狼っ!?

 

させっかっっっ!!

オレが必死にワカバの腕ぇ引っ張って、狼から逸らそうとするよりも速く。

 

「させませんわよっ!」

ぎゃいんっっっ!!

 

誰よりも頼もしい女(鎧さん)が動いたっ。

今にも飛びかかろうとしていた狼の横っ面に、見事に一発拳をぶちこむっ。

だが、その一撃じゃ狼は諦めねぇ。

 

どころか、ソイツだけじゃねぇ。

オレ達ぁ知らん間に狼の群れに囲まれていたらしいっ!!

…4、5。……5匹もいやがるぞっ。

 

ドイツもこいつも蒼い毛並みで、痩せた身体に黒い湯気みてぇなのをマトイながら口からヨダレぇ垂らしてやがる。一発でなんかまともじゃねぇってのがわからぁ。

オレ達を庇うように鎧さんが前に出るが、いかんせん相手の数が多すぎる。

 

ここはオレも前にでんとな。やれるかどうかは分からんが女子どもを危険に晒してはいそうですかと納得出来るタチじゃねぇ。

オレがそう思ってワカバとコイシを小悪魔ちゃんに預け、動こうとした時だ。

 

「いけませんわぁ皆さん。こいつらは蒼狼(ブルーウルフ)の幼体、本来は中層域にいる筈の群体生物(・・・・)です。こんな浅い森に出てくるなんてぇ。

しかも魔毒に侵されてぇ、正気を失っています。

 

皆さんどうかぁここはワタクシにまかせて、撤退を。

ともすれば全滅もありえますよぉ。」

 

いきなり鎧さんはテメェを見捨てていけなんてふざけたことを言い出したっ!

狼たちをさばきながら、さも当たり前と言わんばかりに。

ワカバとコイシが不満そうだ。そりゃ当然。オレだってそうだっ!

 

「ふ、ざけんなぁっっ!!

あんたぁ置いて引き下がれるかよっっ!!!」

「あらあら、ふふ。ありがとうございます。

でもぉですねぇ?」

 

彼女の軽い言葉と共に。

鎧さんの腕に狼の一匹が噛みつきやがったっ!!

だが、全く血が出てねぇっ、何でだ!?

 

「ワタクシはヨロイビト、この身はこの通り鎧のように硬く、重くなります。彼らの牙くらいならワタクシの肌を通りませんよ?

そして。」

 

腕にくっついた状態の狼の腹に空いた左腕で一撃っ!!

それで狼は腕から離れ、糸が切れたみてぇに崩れ落ちた。

 

「硬くて重いということは、それだけで武器になりえます。

どうか、ご決断を。

ワタクシ死ぬ気なんてありませんわよぉ?」

「鎧ッチ、本気だよ。どうすんのご主人サマ?」

「カミサマっっ!!」「カミサマ。」

 

迷ってる暇なんざねぇ。

オレは素人、相手は格上、最悪だっ。

そりゃあコイツラ連れて引き下がんのがきっと最善なんだろうがさっ!!

 

でも正直そりゃあ納得できねぇっ。

出来るわけがねぇ!!

 

「く、うォおおおおおおっっ!!」

 

叫んで飛び出すっ!!

小悪魔ちゃんに視線を1つ、仕方ねぇって顔してやがる。

今にも泣き出しそうだった2人の目に、輝きが増していく。

 

どうやらここにゃあバカしかいねぇらしいっっ!!

 

言うが早いがオレは前へと飛び出して、鎧サンの近くにいた狼にそのまま全体重を乗せた蹴りを打ち込んだっっ!!

 

「あ、貴方様はッ!」

「理屈はわかるぜ鎧さん。

でもどうしても理解はできねぇ、のみこめねぇっっ!!

仲間ぁ置いて逃げるなんざ、オレには到底、できゃしねぇんだっっ!!

 

それにな。戦う方法なら、ここにあらぁっっ!!」

 

オレは覚悟決めて腰にぶら下げた剣を抜き、迫りくる狼を切り払おうとする。そん時オレは完全に頭に血がノボッてて。

テメェの力のことなんざコレッポチも覚えていやがらなかったんだ。

もちろん、狼は止まってくれねぇっっ!!

 

だからまぁ、当然。こうなる。

 

いつもの軽いポンという音と、煙が上り。

狼に飛びつかれたオレは。

 

「やれやれ主どの。拙者だけいつまでも姿を与えて下さらぬものだから、内心少しヒヤヒヤしておりましたぞ。」

 

オレの剣だった、サムライみてぇなカッコした女に助けられた。

ソイツは軽口を叩きながら何喰わぬ顔で狼を切り捨てて見せると。

 

「しかしまぁ確かに。拙者が姿を与えられるなら、こういう場面こそふさわしい。それでは主どの。御身の敵、尽く。凶器(拙者)が払って見せましょう。」

 

ひどく獰猛な笑顔1つで、この状況を歓迎した(受け入れた)

 




NEXTSTORY
「増えるアレとオレたちは」

閲覧ありがとうございます。
今回タイトル間違った感が否めないね……。
ブシドーちゃん関係でつければよかったわぁ。


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13) 第6話裏 剣ちゃんは戦いたい。

剣ちゃんの内心ヒヤヒヤ描写とか。

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その時。

主どのの裸体の横にそのままぶら下げられることになった拙者は今、なんというかめっちゃ期待していた。え、マジですか?

 

今回の主ってモノをヒトに変えられるカミサマなの、なの?

 

うわ、めっちゃすげぇっ!!

じゃあ拙者もこの流れでヒトになっちゃってもう、これからドキドキワクワクの、痛快無比なそらもうなんかべらぼうにすんげぇ大冒険が始まるんでござるな。

 

いやぁ愉快、愉快~。

 

さぁ早く主殿。流れ来てるでござるよ。次拙者、次当然拙者ですよねっ!!

拙者もう超頑張りますから。主どのの敵とかそうでないモンとかももう全部、尽く切り捨てる覚悟で主どのにお仕えしますからっ!!

 

だからはよう、はよう拙者もこの流れではよう、トゥーミーっっ!!

 

なんというかこの時拙者のテンションは伝説にのみ記される異界の霊峰、マウント富士より遥かに高く、翔ぶ鷹をぴょんと掴んでなすびを咥えさせる勢いだった。

 

だってこれから拙者、自分で動いてザクザク敵とかぶっ殺せちゃうんでしょお?

 

適当に拙者を振るうような厄介な馬鹿者によっておざなりに使われることもなく。

自分の相棒の手入れもせんような不届き者に怯えることもなく。

あまつさえ自分の働きを主どのから直接褒めて頂けるって。

 

そんなんもう最高でござろう。全凶器の夢でござるよ、ソレ。

 

うふふ。そりゃもうこの身も有頂天にならざるを得ませぬて、得ませぬて。なぁ?

さぁさぁ拙者いつでも準備おーけーでござるよ?

もう覚悟完了済みでござるん♪

 

あ、アレ、あ、主どの?

 

な、なんで普通に会話して、そのままの流れでマント着込んでいるでござるか?

裸に剣マントのみってそんなハイセンス(ハイカラ)なカッコ、もうノッブ(本能寺お化け)位しか許されんお姿でゴザルよぉっ、お似合いだけどっっ!!

 

いやいやいやいや、拙者は?

 

そんなお子様達抱いて微笑んどる場合でも、下着殿ときゃっきゃうふふしとる場合でもござらぬっ!!

ちょカミサマ? 拙者っ、もう1人お忘れになってござらんか、おーい?

ここにもう1つ、期待の新人がおるでござるよぉぉぉぉお!!

 

う、うわぁぁぁぁーーーーん!!

 

パンツ投げてる場合じゃないでござろうっっっ!!

なにそのハイセンスな新しい遊び。

カミサマ怖ぇっっ、カミガミのタワむれ怖ぇっっ!!

 

ちーがーうーでーごーざーろーーーーーーーー。

もぉ、ダイッキライ。

カミサマなんてダイッキライでござるぅぅぅぅぅ、……うう(しくしく)

 

はっ、チャンス(殺気)っっ!!

 

救いの(クソッタレ)主が(ワン公どもが、)拙者の出番を(身の程知らずに)作るべく(主どのに)主にピンチを(襲いかかって)与えてくだ(きおった)さるっっ!!(わっっ!!)

 

「いけませんわぁ皆さん。こいつらは蒼狼(ブルーウルフ)の幼体、本来は中層域にいる筈の群体生物(・・・・)です。こんな浅い森に出てくるなんてぇ。

しかも魔毒に侵されてぇ、正気を失っています。

 

皆さんどうかぁここはワタクシにまかせて、撤退を。

ともすれば全滅もありえますよぉ。」

 

ちょっ、待つでござる鎧殿。

その選択は拙者に効くっっ!!

 

「ば、か言わないでっっ!!

貴方をおいていけないわっっ!!!」

「あらあら、ふふ。ありがとうございます。

でもぉですねぇ?」

 

ナイスっ主どの、そうそうみんな一緒でござろう、拙者も一緒でござるよな?

ちょっ、待って、ピンチ様の牙軽く止めないでっっ!!

この流れは、この流れはダメなヤツであろうっっ!!

 

「ワタクシはヨロイビト、この身はこの通り鎧のように硬く、重くなります。彼らの牙くらいならワタクシの肌を通りませんよ?

そして。

硬くて重いということは、それだけで武器になりえます。

どうか、ご決断を。ワタクシ死ぬ気なんてありませんわよぉ?」

「鎧ッチ、本気だよ。どうすんのご主人サマ?」

「カミサマっっ!!」「カミサマ。」

 

もぉぉぉぉぉぉ、ヤメてよぉぉぉぉぉぉっっ!!

ヨロイの姉御、出てもない新人イジメ絶対よくないでござるよぅぅぅぅぅっっ!!

あ、主どの、やはり拙者の希望は、貴方しかおらんのですっ!

 

カミサマどうか拙者に出番をぉぉぉぉぉぉ!!

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

やったぁぁぁぁぁぁ!!

主どの、ワンコロに向かって怒りの飛び蹴り炸裂ぅぅぅっっっ!!

最初っから拙者信じてましたからっっ!!

もうダイスキです主どの。

もうね拙者生まれる前から貴方のことダイスキでしたっ。貴方にキメてましたっ!

 

もう一声、もう一声でしょっ!?

 

「あ、貴方様はッ!」

「理屈はね、わかるのよ鎧さん。

でもどうしてもそれは理解したくないの、それだけはしたくないっ。仲間を捨てて自分だけ助かろうなんて、ワタシには絶対、できないからっ!!

 

それにね。戦う方法だったら、ここにあるわよっっ!!」

 

しゃぁぁぁぁぁぁっっっっ!!

主どのの言葉が終わらぬウチに、拙者は新たに得た姿で行動を起こすっ!!

そのまま拙者は(拙者自身)を抜き、犬っころを斬り捨てた。

 

抜身になって、拙者は殺傷思考(仕事用)に意識を切り替えていく。

 

「やれやれ主どの。拙者だけいつまでも姿を与えて下さらぬものだから、内心少しヒヤヒヤしておりましたぞ。」

 

しかし本心から、ついついそんな言葉がもれてしまう。

実はもうヒヤヒヤなんてもんじゃなかったでござるのだが。

 

「しかしまぁ確かに。拙者が姿を与えられるなら、こういう場面こそふさわしい。それでは主どの。御身の敵、尽く。凶器(拙者)が払って見せましょう。」

 

さぁてそれでは。

主どのに拙者の良さを分かって貰わねばなるまいて。

 

在りし日の名を捨てた(今では唯の)この身なれど(無名なれど)、鍛えに鍛え上げられた大業物。

無名無冠のその鋭さを、とくとその目でご照覧あれ。

 

さて、どなたを傷つけ、どなたを殺せば満足で?

 

拙者は主どのの思うがまま、望むがままに斬り捨てましょう。

なぜなら拙者は、主どのの凶器(に使われるモノ)なのだから。

 




閲覧ありがとうございます。
期待の人斬り(新人)

創作の励みになりますので感想、評価、お気に入りなど頂けたら嬉しいです。


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14) 第7話 増える狼とオレタチは(1)

始めから大惨事。そんな展開がわりと好きです。

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とんでもねぇ。

突然オレの目の前で剣から美女へと姿を変えたその女の暴れっぷりに思わずオレは呆然としちまった。

 

空色の着物に紺色の袴を履いた、黒髪のポニーテールが似合うツリ目の勝ち気そうなその女性は、獰猛な微笑みを浮かべたまま現れると共に一匹の狼を斬り捨てた。

 

返す刀でもう一匹、別の狼を両断してみせると一転。彼女たちを振り切ってこちらに迫ろうとしていた狼の背に、自分の持ってる剣を投げつけ、息の根を止め。

同時に彼女へと向かってきた狼を、鎧さんが殴りつけて、それでしまいだ。

 

なんか心配したオレがバカみたいに思える位。

目の前の狼たちを彼女たちはあっさり片付けちまいやがった。

 

「はは、なんだよ。全然問題ないじゃん。」

 

頼もしすぎて自信失くすわ。

でもなこん時。

そんなお花畑なこと考えてる余裕はねぇってことを、俺はすぐに思い知る。

 

倒したハズの狼達が、まるで仲間を呼び寄せたかのように。オレ達の周囲は蒼い狼たちで覆われて、瞬く間にその数を増やしていったんだ。

いつまにか、オレ達は数えきれない位の数の蒼い狼達に囲まれてやがった。

 

奴らはオレ達から距離を置き、まるでなにかを待つかのように仕掛けてこない。

ただオレ達を取り囲み、その動きを見張るように睨みつけて来やがる。

 

「な、なんでだっっっ!?」

蒼狼(ブルーウルフ)は群体生物。グループでその意識と情報、そして命さえ共有しています。グループが全滅しないかぎり個体が死んでも傷が治りいつかは復活する理不尽生物(インチキ生物)ですの。

それが彼らが弱層中位程の力で中層域に棲息できる理由ですわ。

彼らは常に種で狩りをします。

 

幼体以外の強力な個体が出てくれば今のワタクシ達に勝ち目は薄いでしょうねぇ。もう撤退は、……難しそうですが。」

 

はぁ、なんだそりゃ?

じゃあコイツラオレらを取り囲んで、そいつが来るまで時間稼ごうって腹かよっ?

ま、ずい。まずい、まずい、まずい。

 

ぜ、絶対絶命じゃねぇかっっ!!

 

「なぁに、問題ありますまい。所詮はワンコロ。

拙者が主さまの刃として全て斬り伏せてしまえばよろしかろうて。

一言貴方がお命じになれば、この身を一振りの刃と化して尽くを食い破っておみせしましょう。」

 

自信漫々に、まるで散歩にでもいくかのような気安さで言いのける剣さん。彼女がスゲェのは認めるが、さすがにあの数相手にソレが出来るとも思えねぇ。どうやらオレと同じことを鎧さんも考えたらしく、さすがに彼女へと突っ込みをいれる。

 

だが彼女は、関係ないとばかりに、ただただ嗤ってそれに答えた。

 

「さすがに厳しいかとぉ。

先程の動きから察するに貴方1人ではいずれすり潰されましょう?」

「ああ、別に。無傷で勝とうなど思わんよ。

最後に立って、全てを成せば世はこともなし。

そう思わんか、鎧殿?」

 

まるで自分のことなんて勘定になく、それは唯勝利の為の道具だと。彼女は嗤っていってのけた。まともじゃねぇなこのヒト。

背筋につぃぃっと冷てぇモンが奔りやがる。

 

「まるで狂犬(・・)のようなお人ですわねぇ……。」

「かか、凶剣(・・)などとあまり褒めてくれますな?

さてさて主どの。どうかこの身に命令を。」

 

オレが喉を1つ鳴らし、剣さんの出す空気に圧倒されかけた時。

他のみんながオレらに近づき声をかけてきた。

 

「カミサマっっ!!」「カミサマ。」

「ご主人サマごめん。

2人が一緒に戦いたいって聞かなくてさ。あ、ついでにアタシも?」

「ワタシも戦うっっ!!」「ワタシも守る。」

 

おいおいおいおい、さすがにそりゃあねぇだろう!

 

「お、オメェラ、あ、アブねぇんだぞっっ、し、死ぬかもしれねぇんだっっ!!」

「ワタシ戦えるよっっ!!」「ワタシ守れるよ。」

「カミサマもいっしょっっ!!」「カミサマも同じ。」

「「ワタシたちカゾクは、ずっと一緒ってカミサマいったっっ!!」」

「う、くぅ。」

 

そう言われるとオレはなんも言えなくなる。

オレだって戦えるかどうか怪しくても、意地だけで無理いっちまってる。

コイツラの言いてぇことが分かりすぎて、つい言葉が詰まっちまったんだ。

 

「もう無理じゃん? これもうみんなで頑張るしかなくない?」

「ははは、これはまたずいぶんといい教育をしておられるっ!!

末が楽しみな少女達ですなぁ?」

「あらあら全く。どなたさまも困ったものですぅ。」

 

あっけらかんと続けられた彼女たちの言葉に、言い返せなくて。

俺はもう決心するしかなかった。

 

「くっそぉっっ、しゃあねぇっっこうなりゃミンナでヤんぞっっ!!

力ぁ合わせてぜってぇ生きてこっから出るぞっっ!!」

「御意に。」

「この命に変えましても。」

「頑張るっっ!!」「頑張る。」

「にゃん♪」

 

こうしてオレ達とブルーウルフとの戦いが始まった。

 




閲覧ありがとうございます。

蒼い狼についてのアレコレ。
蒼い狼は集合意識生命体。個でなく群で生きる生き物。
グループでその意識を共有している為、広範囲の集団索敵からの一斉飽和攻撃や上位個体による殲滅が狩りのスタイル。中層域で相手にしたくないモンスター№1に輝くお方。

対処法は3つ。逃げるか、集団ごと殲滅し尽くすか、出会ったモノ全ての意識を刈り取るか。

しかし本来蒼い狼自体が賢い為、手を出さない限り人間を襲ってこない。
なので中層域で出会ってもしっかりと目をあわせ、通り過ぎるのを待てば問題ない。


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15) 第7話 増える狼とオレタチは(2)

第5話裏から今後の展開についてのアンケートを設置しています。
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オレたちは必死に街を目指してミンナで走り出すっ!

狼達もそれを邪魔すべく一斉に動き始めた。

ソイツラに近づかれる前に、剣さんがオレに何かを投げてよこす。

 

「主どの、素手では何とも心もとない。拙者の脇差(差副)をお使いなされっ!

それとそこの薄着、拙者の小柄を二振りとも貸してやる。失くすなよ?」

「ありがてぇっ!!」

 

さすがに素手ってのは辛かったからな。これでオレもちったあマシにやれるぜ?

小悪魔ちゃんも武器を受け取り、続けて地面の一部を指差してワカバに言った。

 

「わぉ、サンクスブシドーちゃん♪

あ、ワカバちゃん、あそこお願いっっ!!」

せーれーさんお願(ぷらんつ)い、くささんみんな転ばせ(はんず)て》」

 

するとトタンに横から呼び出してきた狼の一団が草木に足を絡まれてすっ転ぶっ!

おお、これが魔法ってやつなんかっっ!!

 

「おお、なんかすげぇな?」

「くさきさんにお願いするのっっ!!」

 

目の前まですっ転んで来た狼を、一閃。

剣さんが剣を使って素早く薙ぎ払う。オレもついでに近くに転んできたヤツに蹴りをぶち込む。流石に彼女みてぇに走りながら剣で仕留める自信はねぇな。

 

「得意は足止めと撹乱か。薄着の指示も存外悪うない。」

「えへへ、これでも斥候(スカウト)でして。アタシワカバちゃん係ってことで!」

「頼んだぜっっ!!」

 

ホント頼むぜ?

しかし魔法ってのはすげぇな。結構な数の狼たちが草に足とられて速度を落としてやがる。見た目地味だけどすげぇ便利。今一番必要な力だぜ。

 

「コイシちゃんはワタクシみたいに硬くなれるのねぇ?」

「なれる。」

「じゃあ大変だけどみんなの為に頑張りましょうねぇ?

「みんな守る。」

「あらあらうふふ。じゃあ頼りにしちゃうわぁ。」

 

そんでその場にそぐわないふわっとした空気を出してる2人はさっきからオレ達の一番後ろについて後方から狼の的になってくれている。

 

正直コイシにシンガリなんて任せんのは嫌で嫌でしょうがなかったが、本人がやるって聞かなかったし。なにより硬化すっとホント石みてぇに硬くなっから仕方なく任せた。

んだけどなぁ?

 

「えい」

 

すんげぇやる気ねぇ掛け声と共に次々とすっ飛んでいく狼。これがホントに強ぇのよ。でもあんま攻撃当てるのは得意じゃねぇみてぇだ。

主に噛み付いた狼をぶっ飛ばしとる感じ。

 

鎧さんは上手い、かな。

なんか狼がみんな彼女に吸い込まれるように狙いをつけたり、急に狙いを変えたりしてる。んで必要な時にみんなのカバーに回ってくれるから安心感がスゲェ。

 

ま、なによりすげぇのが。

 

「はっ、どうしたどうした子犬ども!! それでは足りぬ、足りぬよなぁっっ!!」

 

現在ヒートアップ中の剣さんなんだよなぁ。

 

今も近づいて一匹斬り殺し、同時に寄ってきてたヤツを左手で貫いて、左側面から跳んできたヤツを足刀で斬り捨て、そのままの動きで抜いた剣を前から来るヤツにぶん投げ仕留め走り出し、回収ついでの大薙で周囲全部を斬り飛ばしやがった。

 

しまいにゃ死体や首を蹴り飛ばし、敵の足止め己の盾と、ルール無用の暴れっぷりだ。止まる気配がまるでねぇ。どういうわけか両の手足でもまるで剣みてぇに敵を斬り裂けるもんだから、とにかく動いて、とにかく殺す。台風みてぇな戦い方だ。

 

綺麗な空色の着物なんてあっという間に見る影もねぇよ。

今じゃ立派に斑の桜を咲かせてやがる。んでずっと愉しそうに嗤ってるんだぜ? ぜってぇ敵にゃあ回したくねぇっ!!

 

正直オレぁ結構あらくれモンどもと関わってきたつもりだけど、このヒトはなんか桁が違う。まさに壊し殺す為に生まれてきたような純粋な暴力だ。んでも自分への大きな被害以外は一切無視するもんだから、ちょこちょこ鎧さんが面倒みてんな。

 

ともかくな。みんなすげぇんだオレ以外。

オレなんて偶に飛びかかってくる狼必死に蹴り飛ばしたり、ビビりながらも脇差で斬りつけるだけだ。正直みんなに申し訳がねぇ。

 

こんだけミンナ頑張ってくれてんのに正直全然余裕がねぇ。魔法ってのも無限じゃねぇんだろ? 剣さんもちょっとずつ怪我が増えてる。

でも狼たちゃ一向に途切れやしねぇ。だったらいつか息切れすんぞっっ!!

 

オレになんか他にできることがありゃあいんだが。

あん、できっこと? なぁんかオレ大事なことなんか忘れてねぇか?

あぁっ!!

オレまだ職業選んでねぇじゃねぇか!?

 

トッサにオレがステータスを開こうとした時。

 

ソイツはオレ達の前に現れた。

暴風みてえな風と黒い瘴気を纏った、明らかに格が違う蒼く煌めく大きな狼。

 

「進化個体ぃ? す、天狼(スターウルフ)がなんでこんな場所にっ!!」

 

鎧さんがそう叫んだ時。

ソイツがオレたちの視界からかき消えた。

 




NEXTSTAGE
「そしてオレはアレになるっ!!」

閲覧ありがとうございます。

なお主人公パーティですが、鎧さん剣さんはさすがに初期レベルじゃなかったり。
歴史や経験のあるアイテムほど、初期レベルが高くなるそうですよ?
鎧さんは年月の割に経験はそれほどでなく。剣さんは単純に経験が凄いらしい。


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16) 第8話 そしてオレは女神になるっ!!(1)

人によってはキツイ話なので短めです。

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狼が消えた、そう思った瞬間だ。

 

「う、ぐぅっっ!!」

「っっ、イヌッコロっ!!」

 

鎧さんがはね飛ばされていた(・・・・・・・・・)

それまで微塵も傷つかなかったその身体に、大きな傷を残してだ。

オレが鎧さんに声をかける前に、別の場所から悲鳴が上がった。

 

「わぁ!」

次にコイシが、はね飛ばされたっ!!

ゴロゴロと、まるで石ころみてぇに転がされて、木にぶつかってやっと止まった。

 

「っっ、コイシっっ!!」

 

オレがなんも考えず、コイシに向かって走り出そうとした時。

どんっと誰かに後ろからカラダを押された。

 

振り返るとそこでは。

小悪魔ちゃんが、オレの代わりに宙に待っていた。

地面に叩きつけられた彼女はピクリとも動かなくなる。

 

「うそ…、だろ……?」

「娘っ子っ、足止めっ!!」

 

同時に剣さんがワカバに向かって指示を出す。それに対応してワカバへと放たれたその突撃を、鎧さんが自分の身体でもって受け止める。

 

「う、ぐ。好き放題はさせませんわよっっ!!」

せーれーさんお願い(ぷらんつ)くささんみんな転ばせ(はんず)て》」

 

ほんの少しの足止めを利用して、剣さんがその狼にヒラリを跨ると左手をその首に突き刺してその肉ごと掴み上げて離さない。

 

「さぁて、少し拙者と殺し合わんか(遊んでいかんか)ワンコロ?

なぁに退屈などさせはせんよ。」

 

天狼の背中に乗った彼女は振り切れない剣を捨て置き、右手で持ってヤツの首筋をデタラメに突き刺していく。途端、荒れ狂う天狼に、彼女は必死にしがみつく。

そん時だ。

 

「貴方たち、させませんっっ!!」

「や、やめろぉぉぉっっっっっっ!!」

 

沈黙を保っていた蒼狼たちが、まだ地面に倒れたまんまのコイシと小悪魔ちゃんに群がり始めた。身を震わせながら、立ち上がったコイシは満身創痍でどうにかそれに対応し始める。

 

オレと鎧さんは必死に、小悪魔ちゃんに狼を寄らせまいと身体を張ってそれを止め、ワカバがその足止めの為に魔法を使おうとした時だ。

 

この蒼い狼たちの黒く染まった目が、みんなワカバを見ていたんだよっっ!!

 

「こいつらっっ!!」

 

即座にワカバに向かって走りだしたオレ。

群がる蒼い群れが、波のように押し寄せてくる。

ワカバを引き寄せて、助けようと足掻く。奔るっっ!!

 

だが相手が、相手が多すぎるっっ!!

オレがもうどうしようもなくなって、せめてワカバをこの身で護ろうと彼女の身体を抱きしめようとした、その時だ。

 

ワカバがオレの身体を押して、オレは鎧さんの方へと突き飛ばされた。

 

は?

 

「わ、ワカバぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」

 

その場に。オレの絶叫が、響き渡った。

 




閲覧ありがとうございます。

こんな展開ですが大丈夫ですよ。
この物語って各章必ず全員がハッピーエンドで終わりますので。
後々の大きな勝利の為の今の苦しみです。


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17) 第8話裏 若葉ちゃん達は助けたい

持病の読みづらいモノを書きたい病気が、が、が。
この1話が書きたくて、ヒロインの口調面倒くさくした奴がいるんだって?

第5話裏から今後の展開についてのアンケートを設置しています。
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うわぁ。うわぁっっ!!

すごい。すごいっっ!!

音が聞こえるの。匂いがするのっっ!!目が視えるの。

動けるよっっ!!動けるね?

 

緑が綺麗っっ!!空気が美味しい。空ってすごいっっ!!

触れるってすごい。柔らかかったりっっ!!

硬かったり。色んなすごいが溢れてるっっ!!

 

ワタシ達生きてるのかな。ワタシたち生きてるんだねっっ!!

《生きてるってすごいっっ!!》

 

あなたはだあれっっ?ワタシは小石。

あなたはだあれ。ワタシはワカバっっ!!

なんでだろう。なんでかなっっ!!

《このヒトのおかげかもっっ!!》

 

なんでかなっっ!!なんでだろ。

ちょっとくるしそうっっ!!ちょっと寂しそう。

お手々ワキワキしてるよ。おててワタワタしてるねっっ!!

 

くすぐったいねっっ!!こしょばゆいね。

ワタシのお腹でお手々ワキワキ。

ワタシのおヘソでおててワタワタっっ!!

《ちょっと面白いねっっ!!》

 

あのねあのねっっ?なあになあに。

もしかしておてて何かニギりたいのかもっっ!!

そしたらワタシたちお手々握っちゃう?

いいねっっ!!いいね。

《にぎっちゃうっっ!?》

 

わぁぁ。わぁぁっっ!!

お手々からすごいふわふわの流れてくる。

おててからすごいぽわぽわの流れてくるっっ!!

やっぱりだよ。やっぱりだよっっ!!

《このヒトがワタシたち変えてくれたんだっっ!!》

 

なんでなんでっっ?どしてどして。

そんなこと普通できないよね。

そんなことできるヒトなんていないよねっっ!!

 

なんでできるの。なんでかわるのっっ!!

ヒトじゃないならなんだろう。

ヒトじゃないからカミサマじゃないっっ?

じゃあこのヒト、カミサマじゃない。

《すごい、ワタシたちカミサマに触ってるっっ!!》

 

でも大丈夫かな?大丈夫じゃないかもっっ!!

おきたらがっかりしないかなっっ!!起きたら怒ったりしないかな。

価値のない(どこにでもある)ワタシたちがヒトになったスガタを見てっっ!!

イミのない(どこにでもある)ワタシ達に触られてる事を知って。

《カミサマ嫌になったりしないかな?》

 

それは嫌だねコイシちゃんっっ!!それは怖いねワカバちゃん。

すごく身体がぷるぷるするの。すごく心がドキドキするのっっ!!

なんでかな。なんでだろっっ!!

《それを思うとすっごく怖いの。》

 

わぁぁっっ!!わぁぁ。

カミサマ今微笑んだよ。カミサマ今笑ってくれたよっっ!!

ぷるぷる止まったよっっ!!ドキドキ止まったよ。

嬉しいねっっ!!楽しいよ。

《ワタシたちをカミサマが喜んでくれてるよっっ!?》

 

ワタシ達は唯の小石なのに。

ワタシたちは唯のワカバなのにっっ!!

何のイミもないっっ!! どこにでもある小石なのに。

何の価値もない。どこにでもはえるワカバなのにっっ!!

《ワタシたちにカミサマが喜んでくれてるよっっ!?》

 

きっと凄くいいカミサマだね。きっと優しいカミサマだねっっ!!

起きても喜んでくれるかな?おきても笑ってくれるかなっっ!!

《それでも喜んでくれたらいいなっっ!!》

 

 

かぞく。かぞくっっ!!

かぞくってすごいっっ!!かぞくってすごい。

 

助け合って。分け合ってっっ!!

慰めあって!!喜び合う。

《ずっと一緒で幸せだっっ!!》

 

でもおかしいね。でもおかしいねっっ!!

カミサマはいったよ。ワタシたちを幸せにしてみせるってっっ!!

でもおかしいね。でもおかしいねっっ!!

ワタシ達はもう。

《こんなに幸せなのにっっ!!》

 

価値のない(どこにでもある)ワタシたちがヒトになったスガタを見てっっ!!

イミのない(どこにでもある)ワタシ達に触られてる事を知って。

《カミサマすっごく喜んでくれたっっ!!》

 

おかしいね。おかしいねっっ!!

カミサマは知らないんだっっ!!カミサマは知らないんだね。

ワタシたちがギュッとされてる間、ずっと目から熱いの流れてたことっっ!!

ワタシ達がギュッとされてる間、ずっと幸せすぎて泣いてたこと。

《きっとカミサマは知らないんだねっ!!》

 

どこにでもある小石に。どこにでもある若葉にっっ!!

ずっと一緒って言ってくれたよ。

心の底から大事に大事にギュッとしてくれたよっっ!!

それだけでもうワタシたちは幸せなのに。

いっぱいいっぱい幸せなのにっっ!!

 

《きっとカミサマは知らないんだねっ!!》

 

 

どうしよう。どうしようっっ!!

 

カミサマがワタシを助けようと頑張ってくれてるっっ!!

ワタシをカミサマ、必死に引っ張ってくれてる。

でも狼さん達が沢山集まって。

 

このままだとワタシもカミサマも一緒に死んじゃうっっ!!

カミサマ死んじゃう。

ダメ。それはダメっっ!!

 

だってカミサマはカゾクだもの。ワタシ達をカゾクって言ったモノっっ!!

 

ワタシもカゾクだもの。

だったらカゾクは、カゾクを助けるモノでしょうっっ?

そう思ったら。ワタシはカミサマを鎧さんの所へ突き飛ばしてた。

 

これでカミサマは大丈夫。大丈夫だと、いいなぁ。

 

ワタシは狼さんにかじられながら、カミサマが心配。

悲しい顔でワタシを見てた。ああ、ダメだよカミサマ。そんな顔。

ギュッとしたいな。みんなで一緒は楽しかったな。

 

でも大丈夫。ワタシはどこにでもあるもの(・・・・・・・・・)だから。

 

価値のない(どこにでもある)ワタシたちがヒトになったスガタを見て。

イミのない(どこにでもある)ワタシたちに触られてる事を知って。

それを喜んでくれたカミサマが大好き。

 

そんなワタシたちを大切だって。カゾクだって言ってくれたカミサマが大好き。

どこにでもあるワタシなのに、今も心から思われてるワタシはずっと幸せなんだよ。

 

だからカミサマ泣かないで。

ワタシたちはずっとカミサマのカゾクだから。

ずっと一緒にカミサマといるよ?

 

だってワタシたちはいっぱいいるから。いっぱいあるから。

ワタシがいなくなってもカミサマさえいれば大丈夫。

 

物言わぬ名もなき草木(ワタシたち)はカミサマのカゾク。

物言わぬ名もなき石土(ワタシたち)はカミサマのカゾク。

唯あるがままの大地(ワタシたち)はカミサマとずっと一緒なの。

 

それだけですごく幸せ。

だからね。ワタシは今も幸せなんだよ。

これで大丈夫なんだよ。

 

でもおかしいね。なんでかな?

ワカバ(ワタシ)はもうカミサマをギュッとできないことが。

少しだけさみしいの。

 

ワカバ(ワタシ)は最後までカミサマのカゾクでいられて幸せなはずなのに。

 

おかしいねっっ?

 

 

蒼き波に群がられ。泡沫に溶けてしまうようにその少女は姿を消した。

その胸に確かな幸せと、ほんの僅かな痛みを抱いて。

そこに最後に残されたのは少女の元となったモノ。

 

一房の若葉だけだった。

 




閲覧ありがとうございますっ!

斯くして無垢は少女は少しの間眠りにつきます。
しかし物語はいつまでも彼女の不幸を許してはおきません。
ハッピーエンドのその時まで、しばしの間の休息です。


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18) 第8話 そしてオレは女神になるっ!!(2)

第5話裏から今後の展開についてのアンケートを設置しています。
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ふざ、けんなっっ!!

ふざけンなぁあああああっっ!!

離せ、離してくれよぉっっっっっっっ!!

 

「おやめ下さいっ!!

貴方様まで死んでしまいますっ!!」

「し、死んでねぇ、ワカバはワカバはまだ死んでねぇっっ!!」

 

そんなこと認めねぇ、認められっかっっ!!

行かなきゃ、なんねぇんだ。家族は、助けにゃならねぇんだっ。

オレの、オレの家族なんだっ!!

 

「彼女の犠牲を無駄にしないで下さいっっ!!

彼女の、貴方様だけは助けたいという思いを、どうか汲んで下さりませ」

 

その言葉と聞いた時。

アイツの心の底からオレを思って笑う顔が思い浮かんだ。

ヤメてくれ。

 

そんなこと言われたら。

 

オレはこんな現実を認めちまうじゃねぇかっっ!!

目の前で狼達に群がられ、まるで弾けるように光の粒になったワカバの姿を。一房の若葉を残して、消えちまった彼女のことを。

 

「あああぁぁぁっあああああああっっっっ!!」

 

叫ぶことしかできなかった。

そんな場合じゃねぇってのは分かってる。

今でもそんなオレを必死で鎧さんが庇ってくれてる。

 

残ったみんなが助かる為に、動かなきゃならんかった。

でも、どうしてもダメだった。

 

だって嘘だろう。さっきまであんなに、あんなにふざけて笑ってたのに。

こんな事、嘘だっていってくれっ!!

 

……ああ、そうだった。

何時だってそうだったさ。

オレのやるこたぁ、尽く転げ落ちるって。

 

分かってたじゃねぇか。

 

ああ、浮かれてたんだオレは。

ワカバとコイシと出会って、アノ娘らから優しくされて。

家族が出来たって抱きしめ合って。

 

次々に本気でオレを慕ってくれる女の子達と出会えて。

それが本当に嬉しくて。

 

ああ、浮かれてたんだとも。

ここならオレは、この世界でならこれからずっと愛されて、愛し返すことが許されるって。ずっと夢みてぇな気持ちだった。

 

けどどうだ。結果は同じ。いつもと同じに転げ落ちやがった。

誰かを愛したかった。誰かから愛されたかった。

それが、それだけが欲しくてカミサマの前で無茶を言った。

こっ恥ずかしくて悪ノリして、結果手に入れたのは俺の求めるモンのハズだった。

 

けどよ。これだ。

まるで呪われてるみてぇに、いっつもソレはオレん中から離れていくんだ。

ああアンタ。確かに命が軽い世界だって言ってたな。

 

だがよ。こりゃあアンマリだっ、流石にこりゃひどすぎんだろっっ!!

本当に、いい子だったんだ。

オレのこと、思ってずっと笑ってくれた。自分そっちのけでヒトの事心配するような。そんなヤツが、なんでこんな終わり方せにゃならねぇんだっっ!!

 

認めるか、認められっか。

気づいたら、声を張り上げて叫んでた。

 

「こんな世界、間違ってんだろっっ!!」

 

心に任せて、ただ叫んだ。

 

「こんな、こんな結末誰だって望んじゃいねぇっっっっ!!

いいじゃねぇか、誰もが笑ってハッピーに暮しましたでっっっっ!!

こんな意味わからん終わり方なんて誰も納得しねぇっっ!!」

 

叫ばねぇと自分が失くなっちまいそうで。

 

「いいじゃねぇか、誰だって。オレだって、アイツだって、みんな、みんな幸せになってよ。それで笑い合って暮らせる世界がどっかにあっても。」

 

ただただオレの望みをぶちまけた。

 

「誰だってそんな世界がいいに決まってるだろっっっ!!」

 

周りの出来事がやたら遠くにみえた。

なんでもいい。なんでもいいんだ。

 

「ああ、あれか。

オレのせいってかこの結末。

オレがあん時職業1つ決めんのに戸惑ったからこんな事になったってかっっ!!」

 

そんなことはどうだっていい。

 

「だったらよっっ!!!」

 

オレにくれ。愛するあの娘と、あの娘達と笑える世界を。

 

「女神だろうがなんだろうが、何にだってなってやるっ!!

だから、だからどうか、コイツラを助ける力をっ。

みんなが笑っていられる未来をっ。

 

オレのこの手に掴ませてくれぇっっ!!」

 

俺は掴みとるように、ステータスのクラス選択画面を押した。

 

その時不思議な事が起こった。

 

俺の頭の中に直接、どっか無機質な女の子の声が鳴り響く。

 

 

ナビゲートオープン。

クラス入力確認。女神見習い。

これより信仰を開始します。

 

イリス カムイの根源入力を確認しました。

ステータスを更新。

完了。現状況にもっとも適した神術を1件確認。

 

使用しますか?

 

 

んなもんよぉっ、当然YESだっっ!!

 

我が根源よ(シャイニング)光となりて今輝かん(レイン)

 

なんだっていい、オレに明日を掴ませてくれっっ!!




NEXTSTORY
「オレのアレが全てを照らすっ!!」

閲覧ありがとうございます。

どどんこ様が感想欄で呟いた設定があまりに良かったのでステータスの美少女化、頂きました。やっぱ天才様の考えることはちがいますな。
無感情ボイス系ナビゲート少女とか完全にオレ得でした。

どどんこ様、素敵な設定ありがとうございました!



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19) 第9話裏 天狼駆けて牙を剥く

しかして女神はただ輝きを齎さん。



ああ、うんざりだ。ああ、うんざりだとも。

 

駆けながら、思う。

噛みながら、切り裂きながら。砕きながら。

 

殺しながら。そう思う。

 

我ら誇り高き蒼の狼は今、その一切の誇りを全て否定され。

呪われた我が身を動かしそう思う。

 

噛むことに、切り裂くことに、砕くことに嫌はない。

それが必要であるならば、我らは戦うことを良しとする。

全をもって闘争に望む。

 

生きるために殺そう。守るために殺そう。誇りを貫く為に、殺そう。

そして殺したモノの命を悼み、その誉れをもって誇りとしよう。

それが我ら、蒼の狼。その誇りに殉じる個にして全の在り様だ。

我は誇りを持って仲間と戦い、仲間達は誇りを守る為にその命を決して惜しまぬ。

そうして皆で笑い合う。誇り合うのが我らの生き様。

 

ソレこそが、蒼。清々しき天上の色の在り方だ。

 

だが。どうだ。

この行いにはまるでその意味(・・)がない。

 

生きる為でなく。守る為でなく。ただただイタブル為に、ナブルように。

憎悪の王に植え付けられた、ヒトを許さぬという憎しみにのまれて只々殺す虐殺に。いかなる意味が在ろうというのか?

 

多くを殺した。ヒトを襲って。

多くを殺した。己を御することも出来ずに。

この身の誇りは地に堕ちて、今も地獄へと沈みこむ。

 

我らに出来ることなどは唯1つ。喰わねばこの身、いつかは果てよう。

誇りなき生など我らは望まぬ。自死など戦士の選ぶ道ではなかろうが。

このままクソを撒き散らし続けるよりはずっといい。

 

ずっとましだっっ!!

 

ああ、どうか。どうか早く終わりを我らに。

このクソッタレな命を、早く終わりにさせてくれっっ!!

どこかに負わす天上の神々よ。お前が本当に世界を照らすというのなら。

 

どうか我らのこの誇りを、在り方を。

これ以上、汚してくれるなっっ!!

 

祈った、祈った。我ら()は祈った。

だがその祈りは届かない。

我らはまた犠牲者(ヒト)を見付けてしまった。

 

ああ、クソッタレっっ!!

憎悪に呑まれた我ら()のこの身は、未だ誇り()を殺し続ける。

 

 

我の背中で凶暴な女が暴れていた。

その手を我に突き立て、肉を掴んで我に跨るっっ!!

まるで馬のように背に乗られた我は逆上しながら、同時に(我ら)に指示を出す。

 

我の突撃によって鎧の女は未だ動けず。今なら術士の少女を殺せよう。

憎悪に侵されながらも冷徹な狼の嗅覚がそう告げている。

 

そうすればツミだ。いかに我の背に跨ってこの女が暴れようとも、我は我らの命を持って幾度となくこの身の傷を癒せる。とても殺しきれはすまい。

 

そして我らを足止めするものが失くなれば、我を止める術は彼らになくなる。

我が疾さに対応できない者など脅威にならん。

あとは凶暴な女をこのまま我が背に貼り付け、我らの牙によって仕留めればいい。

 

ああ。それだけで彼らが終わる。

 

よい一団であった。

仲間を見捨て逃げることもせず、バカな選択を選び続けるような。

お互いを庇いあい、お互いを助け合う。

 

まるで我らと同じ在り方をした、好ましい人間たちだ。

 

今も彼らの中心であるらしい我らの目にすら理解できる程に見目麗しい女が、術士の少女を助けようと必死に足掻いてる。

だが刹那。

 

女の身体を少女が押した。

自分を助けようとした女を守る為に、自分を犠牲にして見せた。

 

ああっ、なんということかっ!

 

アレは我らだっ。アレこそが我らの生き様そのモノだっ!

馬鹿であろうが、愚かであろうが己の身を捨て仲間を助ける。

蒼の在り方そのモノだっ!

 

今我らは誇りを噛み砕いている。

誇り高き、友たりえる人間を、我らの牙でもって噛み砕いている。

無慈悲に、無残に、浅ましく死体に集るハエ共のようにっ!!

 

なんの誉れもない死を、誇るべき者に与えさせたなっっ!!

 

よくも殺させたなっ、我らにっ!!

よくも殺させたなっ、誇り(我ら)をっ!!

 

憎悪の王よっ、神々よっ。今この時この身の誇りは地獄に堕ちたっ!!

満足かっ、これが望みかっ。

こんなモノをお前らは望むのかっっ!!

 

ならばもう、この世界など滅んでしまえっっ!

我らは貴様らを許さんぞっ。幾度生まれ変わろうと必ず貴様らを追い詰めるっ!

この牙で必ず貴様らを殺し尽くすっ!

 

憎悪に塗れた身体でもって、我らが一斉に誓いの咆哮を上げた時。

 

「あああぁぁぁっあああああああっっっっ!!」

 

同じく嘆く者の姿があった。

戦いの最中、失われた少女を思って。

 

「こんな世界、間違ってるわよっ!」

 

まるで我らの代わりに叫びあげるように。

 

「こんな、こんな終わり方、誰も望んでいないものっ!

いいじゃない、誰もが認め合って、みんなで笑って幸せに暮しましたでっ!

こんな意味のない終わり方なんて、誰も望んでいないのよっ!」

 

己の思いを、我らと同じ望みを言葉にしていく。

 

「いいじゃない誰だって。ワタシだって、貴方だって。みんな、全てのモノが幸せになって。それでみんなで笑い合って幸せに暮らせる世界があってもっ。」

 

世の理不尽に不満をブツケて。

 

「誰だって笑って暮らせる幸せな世界がいいに決まってるでしょうっっっ!!」

 

叫び上げた。

ああ、そうか。神よ。

お前はこの世にいないのか。それとも我らに何か恨みでもあったのか。

 

我らは女に走り出す。

 

「ああ、あれかしら。

ワタシのせいなのかしらね、この終わり方は。ワタシがあの時自分の在り方を決め兼ねたから、躊躇してしまったからこんなことになったのかしらっっ!!」

 

憎悪にかられ、ただの獣に身を堕としながら。

 

「だったらねっっ!!!」

 

我らはこの優しき者も殺さねばならないらしい。

 

 

「女神だって何だって、何にだってもうなってやるわよっ!!

だから、だからどうかお願い。このモノ達を助ける力をっ。

みんなが笑っていられる未来をっ。

 

ワタシのこの手に掴ませてぇっっ!!」

 

まさに今、鎧の女を抑え込み、

我らでもって女を噛み殺そうとしたその時。

 

我が根源よ(シャイニング)光となりて今輝かん(レイン)

 

その時、不思議なことが起こった。

 

女の包む空気が見るまに神々しいものへと変わっていき、その身から何とも美しい虹彩色の光を放ち始めたではないか。そしてその光を浴びた我らからはソレまでの狂気が消え、その心は見るまに平穏を取り戻していくのだ。

 

それだけではない。その光は我らを含む、ここにいるモノ全ての傷を癒やしていくではないか。ゆっくりと、ゆっくりと傷が、痛みが癒えていく。

 

全ての我らは立ち止まり、只呆然とその輝きを見つめていた。

 

気付けば我の上で暴れまわっていた女もその手を納め、その輝きを見つめていた。

我が殺さぬのか、と視線を投げると女は鼻を鳴らして我に答えた。

 

「我が主が戦いを納めたのだ。その凶器(使われ)たる拙者が戦い続ける道理はあるまいて。もちろんワンコロ、貴様にまだやる気があるなら別だがな?」

 

我は唯、その荘厳な光景を見つめていた。

答えるまでもなかった。

 

「あれが我が主よ。

その手にとったモノ全ての在り方を変える程のお力を持ちながら我らのようなモノに心より接して下さる。たった一房の若葉の死を悼んで、心の底から世界の在り方を嘆くような御方だ。その為に自らを女神として今、定められた偉大な御方だ。

 

己の仲間を殺した敵までも救おうとする、どこまでも慈悲深い我らの女神だ。」

 

自然と頭がたれる。

その輝きが、その在り方があまりにも美しかったから。

 

「ええだろうイヌッコロ。拙者はあの方の剣だぞ。あの方の在り方に従うモノだ。

この身も、心も、在り方も。全てあの方と共にある。」

 

ヒラリと我から飛び降りながら、女はそんなことを言った。

……ああ、羨ましいとも。

気高きをよしとする我らにとって、それがどんなに好ましい生き様か。

 

だが我らはもはや許されざる罪を背負った。この偉大なモノに牙を向け、その眷属を噛み砕いた。ならばこの身の行末は全てこの偉大なモノに委ねよう。

そして許されるならばこの魂は、この魂だけは彼女と共に。

 

天上の光がゆっくりと、こちらに近づいてくる。

 

我らも彼らもみな一様に、その光の前で頭をたれた。只々深く頭をさげた。

その時、女神は我の前で立ち止まる。

我らは女神の裁きを待った。女神の手が我の頭を優しく掴む。

 

その瞬間。我らはその在り方を変えた。

 

「これで話ができるわね。」

「……なぜ我らの、……在り方をお変えに?」

 

女神は静かに、しかし確かな決意をもって仰った。

 

「もうこの力を使うことを、変えることを躊躇わないって決めたの。

全てのモノを守る為に。全てのモノの居場所を作るその為に。」

 

ああ、この方は。お仲間を殺した我らのことさえ、その輪の中に数えなさるのか。只々、我らは胸をうたれた。だがこの身の罪を、我らこそが許せなかった。

 

「我は、我らは貴方の仲間を殺しました。その命を奪った罪、決して許されるモノではない。それなのに貴方は、貴方様は我々を許されるおつもりか?」

 

縋るように、罰を望んでそれを口から吐き出した。

そうしなければ、とても耐えられなかった。耐えられたものではなかった。

 

「それを望むようなあの娘じゃないモノ。みんな一緒がいいって、そう言って笑う娘だったのよ。だからきっと、貴方に罰なんて望まないわ。だからそうね。貴方がそれを悔いるのなら、みんなの居場所を作る手助けをしてくれるかしら?」

 

しかし罰を願った我らに下された言葉は、我らの予想を遥かに超えたものだった。過ちを犯し、女神の眷属をその手にかけた誇りなき我らに貴方様と同じ夢を見てもよいと、新たな誇りを与えて下さると。

 

なんという御方だ。これが、これが本当の神だというのか?

我ら全てがその言葉に涙を流し、感動に打ち震えていた。

 

「お、おお、ぉぉっっ……、なんという誉れ、なんという栄誉っ。

我らに、この我らに御身の偉業に関わることをお許しになられるとっ!」

「お願いできるかしら。」

 

まるで当たり前のことを言ったかのように、我らが女神は我らに尋ねる。

我らにすでに迷いなどないっ!

 

「是非もなくっ!!

我ら蒼き狼はこれより貴方様に仕え、この身が尽きて幾度生まれ変わろうと貴方様の求めるモノを必ず用意してみせましょうっ!

これより我らはそれを新たな誇りとし、この誇りを貴方様に捧げるっ!」

「「「「「「捧げるっ!」」」」」」

 

そこには。誇りを汚され、壊された苦しみに嘆く蒼き狼達の姿はなく。

新たな誇りを受けて、心も身体も生まれ変わった我らの姿。

 

決して揺らがぬ蒼の群れ。

 

我は讃えるべき御方の名を問う。

讃えられるべきその名を、我らは求める。

 

「どうか、どうか偉大なる御方。慈悲深き真の女神よ。

我らに貴方様の御名前を。

我らを導きし御身の御名をお教えくださいっ!」

「ヴィリス・カムィよ」

虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)っ!!」

 

古き言葉でそう名乗った女神は、まさに御身にふさわしい御名を告げられた。

 

おお、我らの奉ずべき真の女神、この世を憂う優しき虹彩よ。

この世全ての居場所を作り、新たな調和をもたらす虹の架け橋よ。

その名を讃えよ、その名を讃えよっ!!

 

「「「「「「虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)っ!!」」」」」」

 

「「「「「「虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)っ!!」」」」」」

 

我ら蒼はいつまでも貴方様と共に、なぜなら我らはっ!!

虹を讃える蒼天(虹と共にあるモノ)だからっ!!

 




閲覧ありがとうございます。

使ったのはこんな術。

教派専用初級神術
神術時「我が根源よ(シャイニング)光となりて今輝かん(レイン)
信仰術時「我が女神に祈り給う、そのお力で我らの今を照らし給え。」

敵味方区別なく浄化・精神鎮静・微弱回復効果の光を纏う。すごく神々しくなる。
MPコスパ、範囲共に良好。本人が使うと虹色、信者が使うとどれかの色を纏う



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20) 第9話 オレの光が全てを照らすっ!!

今輝く時っ!!
主人公目線ですよ。

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我が根源よ(シャイニング)光となりて今輝かん(レイン)

 

オレがそれを唱えた時、瞬く間にオレの身体を虹色の光が包む。

わかりやすく虹ってわけじゃないんだが、こうキラカード見てぇな光沢を帯びてるっていうか。見方によって様々な色に変化する感じの綺麗な光だ。

……いや確かに輝いてるけどさ。オレ今どう考えて光ってる場合じゃねぇだろ。

 

その時オレの頭に衝撃が奔る。

 

なんとその光を見た狼たちはたちまちにおとなしくなり、次々とオレの姿を見ては地にひれ伏していくじゃねぇか。正直オレにはワケがわからんかった。

 

《彼らは何らかの呪いを受けていました。この神術はそれらを解除し、精神を沈め見るもの全ての傷を微量回復していきます。》

 

やっぱりオレの頭に響いた声がオレの疑問に答えてくれた。

なん、だ。そんだけで、こんな術1つ使うだけで全て丸く収まったのかよっ!

じゃあオレが最初っから職業ちゃんと選んでたらワカバも、みんなも傷つかなくてすんだってことかよっ、本当にオレのせいじゃねぇかっ!!

 

《否定。この神術はあなたが悲しみを経て得た根源により生じたモノです。

また狼達の行動も貴方達の行いの果てに生じたモノ。

あなたの行いはけして無駄ではなかった。》

 

納得できっかっ!

ああ、でも。そうだな。

終わったんだ。あんな意味わかんねぇ戦いが終わったんだ。

 

《狼らが貴方を信仰対象として求めています。彼らとの対話を推奨。

呪いの解除が完全ではありません。強く対象の美少女化をお進めます。》

 

ああ、わかった。でもアレ全部掴むのは骨だな。

 

《種族名称:蒼の狼は群体生物です。そのどれかを掴めば全てが変化します。》

 

なんだソレ。じゃあこの状況、やっぱオレが迷ってたのが原因じゃねぇか。

 

《肯定。しかし迷いがあったからこそのこの状況です。貴方は考えうる中で最良の結果を掴んでいる。それはけして恥じるべきではない。》

 

なにが最良だっ、みんな傷ついてワカバが死んじまったんだぞっ!

つかむしろオメェさっきからなんだよっ、誰だよ!

 

《回答。当機は貴方のステータス表示システム。貴方の力により人格を得たモノ。つまり当機は美少女です。これより当機は主に貴方の知識面でのサポートを行い、その目的の手助けに徹します。》

 

ん?今美少女言う必要あったか?

まぁいいや。とりあえず目の前の狼たちだ。

 

オレはゆっくりと一番大きな狼の元へと近づいていく。途中で剣さんがオレに一礼をし、狼たちとおんなじように傅き、頭を下げられる。気付きゃあその場の全員が、オレに頭を下げていた。それはなんとも不思議な光景だった。

 

オレはそのデっけぇ狼の頭を掴み、美女に変える。

これでもうこっちをいきなり襲ってくるようなことはねぇだろ。

オレらの安心は確保されたってやつだ。

 

「これで話ぃできるな。」

「……なぜ我らの、……在り方をお変えに?」

 

危険がなくなったことにオレがほっとしてついつい漏らした言葉に、狼だった美女が問いかけてくる。長い蒼い髪と目をした、狼耳の美人さんだ。まぁここは素直に答えるだけだ。

 

「もうこの力を使うのを、変えるのを躊躇わらんって決めたんだ。

仲間(みんな)を守る為に。仲間(みんな)の今を守る為にはよ。」

 

そうだ。オレはもう、仲間を、家族を失いたくねぇ。

その為なら卑怯であろうが卑劣であろうが飲み込んで、あらゆるモン美少女にして従わせる。もう失うのはたくさんだ。そう決めた。

 

「我は、我らは貴方の仲間を殺しました。その命を奪った罪、決して許されるモノではない。それなのに貴方は、貴方様は我々を許されるおつもりか?」

 

ああ、コイツ、コイツラって元々イイやつだったんだな。自分のしたことを心ん底から悔いてやがる。呪い、だったか。なんか事情が合ったんだろ。まぁそれは後で聞くとして。今は思い詰めてるコイツラに道を示してやらんとな。

 

そういうんはこちとら不良(悪ガキ)どもで慣れとんだ。

 

「んなもん望むヤツじゃねぇ。みんな一緒がいいって、いっつも笑ってた娘だったんだ。だからよ、別にオメェらに罰なんて必要ねぇ。でもよ、それでオメェの気がすまねぇってんなら、俺らの仲間(みんな)の住む場所を作る手助けをしてくれねぇか?」

 

そうさ。こういう思い詰めちまうような奴は、ちゃんと歩き方さえ示してやりゃ、後は勝手に進み出す。オレもこの世界で暮らすんなら住処はぜってぇ必要だ。

オレらも幸せ、コイツラも幸せ。ちっとずりぃが、まぁこれで丸くおさまんだろ。

 

「お、おお、ぉぉっっ……、なんという誉れ、なんという栄誉っ。

我らに、この我らに御身の偉業に関わることをお許しになられるとっ!」

「頼めっか?」

 

なんか思ったよりも感動してねぇか?

まぁそれだけ思いつめてたんかね。ホント、根はイイやつらなんだな。

 

「是非もなくっ!!

我ら蒼き狼はこれより貴方様に仕え、この身が尽きて幾度生まれ変わろうと貴方様の求めるモノを必ず用意してみせましょうっ!

これより我らはそれを新たな誇りとし、この誇りを貴方様に捧げるっ!」

「「「「「「捧げるっ!」」」」」」

 

おお。なんかそこまで熱心にオレなんかの思いつき受け取られても気が引けるぜ。ほどほどにな。ほどほどに。

ま、盛り上がってんなら今口出しするこってもねぇわな。

 

「どうか、どうか偉大なる御方。慈悲深き真の女神よ。

我らに貴方様の御名前を。

我らを導きし御身の御名をお教えくださいっ!」

 

ああ。そういやなんかコイツラオレの事信仰してぇとか思ってたんだっけか。

スキルの効果とはいえ(・・・・・・・・・・)なんか複雑だな。

ま、いいや。普通に教えりゃ問題ねぇ。

 

「イリス・カムイだ」

「ヴィリス・カムィっ!!」

 

あ、やっぱコイツラも変な訛りあんのね?

もうオレ、この世界じゃそっちで呼ばれ続けんのかね?

ここは一応訂正しとくか?

 

「「「「「「ヴィリス・カムィっ!!」」」」」」

 

「「「「「「ヴィリス・カムィっ!!」」」」」」

 

おいおいおい、と、とてもじゃねぇが訂正できる雰囲気じゃねぇっ!!

おい、なんで狼達に混じって剣さんや鎧さんも叫んでんだよっ!

んなことよりコイシや小悪魔は大丈夫なんかの方がオレ知りてぇんだけどっ!!

ちょ、お、落ち着けっっ!!

 

テメェら、落ち着きやがれってぇっっっっっ!!

 

これはひどい(オーマイガッテス)。》




NEXTSTAGE
第10話 そしてオレとアレの再会

閲覧ありがとうございます。
次の話が第1章の締め、でもその後ももう少しだけ続くみたいです。


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21) 第10話 そしてオレとアレの再会

ここまで閲覧ありがとうございます。

最後に第10話限定のアンケート設置してます。
よろしければご協力下さい。


ようやく落ち着いたみんなの前で現状を確認した。

小悪魔ちゃんは未だに重症で意識不明、次いでコイシの傷が深ぇ。

他のみんなもいろいろ満身創痍だった。

 

けどオレだけほぼ無傷。なんか何発かは狼達から引っかかれた気もしてたが雰囲気そう思ってただけらしい。オレって奴は。

 

狼たちの傷は全部治ってた。どうやら美少女化する時に一変に治った。まぁこりゃ予想外だったぜ。

 

正直光ってるだけじゃ回復速度が足らんな。何か別の方法はねぇもんか。

わからんことは聞いてみる。それが一番手っ取り早ぇ。

なぁステータスさんよ。女神の力で他に回復に使える術とかねぇのか?

 

《肯定。初級回復術、ビギニングヒールを使用可能です。》

 

お、あるんじゃん。

じゃあいつまでも光ってないでそっちをちゃちゃっと使ってみるか。

 

《否定。重症者の保護もありますが、現在の貴方は脚部装備をまったく身につけておりません。光源を消すことは強く非奨励。光源は効果時間中なら自動的に維持されますので同時使用をおすすめします。》

 

ふぁっ!?

あ、そっか。オレの着てた腰蓑ってワカバちゃんから貰ったモンだから。

 

《肯定。推奨名・若草のスカートは現在消失しています。貴方は今現在下半身の肌を晒した状態です。》

 

へ、変態じゃん。

そりゃ消せんわ。なぁその回復術ってので小悪魔ちゃんの傷も直せんのか?

 

《不可能判定。彼女は受けた傷が深すぎる。重症回復術リザレクトヒールが必要となります。しかし回復術に頼らない方向で貴方に彼女の回復方法を提案します。》

 

お、んなのあんのかよっ!

 

《肯定。貴方は彼女のパンツを探すべきです。》

 

は、イヤイヤ。どう考えても今パンツで遊んでる場合じゃねぇだろっ!

 

《否定。その行動が最適解です。

当機は今スグ貴方が彼女のパンツを探すことを推奨する。》

 

うっせぇわっ、この状況でんなこと言われたら流石に温厚のオレでもキレるぜっ!

ちょっと頼れるって思ったらもう壊れたんかいっ、このポンコツめっっ!!

とりあえずミンナの治療が先だわっ、チッと黙っとけっ!

 

《……了解。当機はしばらく沈黙します。》

 

……使えるんか使えんのかよくわからん奴だな。

まぁ今は出来ることやらんとな。

 

 

我が根源よ(ビギニング)癒やしとなりて傷を癒せ(ヒール)

「貴方様ぁ、ありがとうございますぅ。」

 

とりあえず治療は大体終わったな。

 

いいな、回復魔法。傷を癒せるってのがスゲェいい。

正直女神になろうか迷ってたけど今はとっととなっときゃ良かったって思う位に、この職業気にいってる。だってさ、怪我人助けれるとかスゲェよ。コイツはいい。

 

とりあえず小悪魔ちゃんの事が心配だし早く街に行かんとな。

 

そんなことを考えてみんなを呼び集めようとした時だ。

オレの前にコイシが来て、こんな事を言いだした。

 

「カミサマ、ワカバ連れてく。」

「オメェ……。」

 

瞬間、オレはコイシを引き寄せて抱きしめた。

ああ、そうだな。認めたくねぇよね。

オレだってそうさ。でも、オレは言わなきゃならねぇ。

 

「コイシ、すまん。

本当にすまねぇ。ワカバは、ワカバはもういねぇんだ……。

オレがもっとしっかりしてりゃ、こんなことにゃならんかったかもしれねぇのによ。必ず幸せにするなんて言っといてこのザマだ。

 

でもつれぇけど、これが現実だ。ワカバはもう、いねぇんだっ!!

すまねぇ、分かってくれ、分かってくれよぉっ!」

 

言ってて辛えな、つれぇ。

でも、でもよ。分かってもらわにゃならん。

今は無理でも、飲み込まなきゃならねぇ。

 

オレは只々コイシを抱きしめながら、謝罪を繰り返す。

けどコイシはそれから不思議そうな顔で、なんでも無いように言葉を続けた。

 

「そこにいるよ、ワカバ。ずっと一緒。」

 

地面の、どこにでも生えてる若葉を指差しながら。

急にオレの背筋が凍った。

 

「なんで? ワタシ達はどこにでもあるの。だからワカバそこにいっぱいいるよ。

カミサマとワタシ達はカゾクだから。ずっと一緒。

だったらワカバ一緒に連れてく。」

 

ああ、なんてこったっ!

コイツは、コイツラはそんなことも分かってなかったんだっっ!!

家族だなんていいながら、オレはコイツラの、こんな事にも気付けなかったっ。

 

「ちげぇ、ちげぇんだ。確かに若葉はどこにでも生えてる。

けどよ、それはワカバじゃ、オレの家族の、オメェらじゃねぇんだっ。

オレの家族はオメェらなんだよ。オメェらだけなんだ。」

 

コイシを抱きしめながら、オレは必死に言葉をひりだす。

涙腺なんてとっくに壊れてる。

ああこいつらは、自分と他の区別すらついて居なかった。

 

「どこにでもいねぇ、ここにしかいねぇんだオメェらは。

オレの、オレの特別な家族はオメェらだけなんだよっっ!!」

 

必死にコイシを抱きしめる。それしかオレにはできんかった。そうでしかこの感情は。オレの特別なモンだって気持ちは、コイツに伝えられねぇと思ったから。

 

そん時だ。表情豊かなワカバと違って、それに乏しいコイシが。オレの言いたい事が伝わったのか、そんなコイシが初めて、大きく表情を崩した。

 

「おかしいね。おか、しいね?」

 

必死に、声を絞り出す。

 

「カミサ、マにギュッと、され、るとワタシ、達は幸せな、のに。

な、のに、なの、に。

なん、で、コイ、シはこ、んな、に、寂し、い、のか、な。

くる、しいん、だ、ろ。

なんで、こんなっ、ぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

オレ達は強く強く抱き合った。

そうすることでしか、耐えなかったから。

1人じゃあとても耐えられなかったから。支えあって、慰めあった。

 

こん時初めてオレはコイシと、本当の家族になったんだと、思う。

 

 

まだオレにしがみついて泣いているコイシをあやしながら、オレがこれからの事を考えていると。狼さんが俺に話しかけてきた。

状況からかなんだか少しいいづらそうだ。

 

「女神よ。先程我らはこのようなモノを拾いました。

残る匂いからして貴方様に由来するお召し物なのでは?」

 

渡されたのは、オレ達がふざけて投げあったあのパンツだった。小悪魔ちゃんのと、コイシのの2枚だけ。やっぱりワカバの分がねぇわ。こんな事でも彼女がもういねぇって事を分からされて、オレはまた悲しい気持ちになっちまう。

 

「ああ、そっか。じゃあ一応貰っくわ。」

 

とりあえずオレが預かっといて後から2人に渡せばいいと、ソレを軽く受け取ったその時のことだ。

 

不思議な事が起こった。

 

「ふにゃん。カミサマ、そんな乱暴にアタシ掴んじゃらめぇっっ!!」

「は?」

 

いきなり重症で倒れた筈の小悪魔ちゃんが、急に場にそぐわねぇ艶声を出して起き上がってもだえて始めたんだ。

は、あ、なんで?

 

《……当然です。貴方が彼女の本体であるパンツを掴んだのですから。》

 

あ、ステータスさん。そ、それどゆこと?

 

《当機の映す【栄光の手】の文面のどこに使用回数や重複不能表記があると?

貴方は掴んだモノをダメージ判定を含むバットステータスを打ち消した上で美少女化するのですから当然の結果でしょう。》

 

は、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!

 

《彼女たち器物由来のヒト族の本体はその核となるアイテムの方です。貴方も彼女のパンツを触れた時、それを確認済みでは?》

 

イヤイヤイヤイヤ、なんか変に発情してただけじゃねぇかっ!!

なんでそれが理由になんだよっ!

 

《能力発動による急激な肉体の変化には痛みが伴います。この問題を解決する為に貴方には対象を変える際に大きな快楽を対象に与える力が付随されています。ではもし大きく変えなかった時にはどうなるか。

 

それは対象に快楽のみを与えることになります。

 

どうやら元々器物の者相手だと貴方の身体から漏れ出る能力の残滓からでも快楽を得てしまうようですが、大した問題ではありませんね。》

 

え、は、なんだそりゃぁぁぁっっっ!!

そ、そんな珍妙な仕組み、理解できるわけねぇだろぉぉっっっっ!!

 

《対象に与える痛みを他の感覚を刺激してごまかす性質は生物界でも見られます。具体的には蚊などが代表例ですね。ま、それはともかく。》

 

おいおいおいおい、待て待て待て待て待て待てっっ!!

て、ことは何か。アレかっっ!!

 

《肯定。だから当機は言ったでしょう。

貴方は考えうる中で最良の結果を掴んでいる、と。貴方は何1つ失っていません。

さぁ、迷ってる暇などないでしょう。その手で掴むべきものはまだあるのでは?》

 

「だ、誰か、わ、若葉を。

ワカバが消えた時に落っことしていった若葉を探してくれっ!!

わかったんだ、気づいたんだっっ!!

 

オレの力なら取り戻せる、なんでも掴みとれるってことにっ!

理不尽な運命なんてぶっ飛ばして、掴みとるんだっ!!

だってオレの力は、全て美少女を変える力なんだからっっっ!!」

 

 

こうしてオレ達がパンツを投げることによって始まった一連の騒動は、オレが彼女のパンツを受け取ることで全て丸く収まった。

あん、なんだって、ひどい話もあったもんだって?

 

はっ、違ぇねぇ。

 

でもいんだ。最初にいったろ。これは不思議でアレな冒険譚だって。

これはオレが精一杯空回りして、サイコーだって思ったら落っこちて、その次の時にゃあその逆だったりする、そんな不思議な冒険譚なんだから。

 

そんでもよ。この話にゃあ1つ決まりがあるんだよ。

なんだかんだ色々あっても最後にゃ必ず失ったモンを取り戻せるってぇことだ。

 

だってよ。

この物語の名はよ。

 

「全てを美少女にしちゃう女神の俺が失われたアレを取り戻すまで」

 

なんだから。

さって物語はまだまだ序の口、その本番もまだ始まってもいねぇってハシリだぜ。

長い長い話になるが、よかったらもう少し、付き合っていってくれよな。

話したいこたぁまだまだあるんだ。

 

でもその前に。

ここが1つの区切りだな。

やっぱカーテンコールは、ハッピーエンドのソレに限るだろ?

 

 

「ワカバぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!」

「カミサマっっっ!!」

「「「ぎゅぅーーーっっっっっ!!!」」」

 

第1章 オレにキミのパンツを下さい 完

 

NEXT SCENE

 

第2章 オレがアレへと出掛けたら

 




NEXTSTORY
「オレは美少女達にアレをつける」

この後ステータスさんに一杯土下座した(白目)

とりあえずこれで1章完了です。
まだ裏とか幕間とか描きますんで第2章はも少し先です。

ここまで読んで下さった皆様に感謝を。
よかったらもう少し読んでやって下さい。

とりあえずこれで1章終わりということで、第10話限定アンケート設置してします。どうかまたポチッと押してやって下さいませ。

あ、区切りもいいので久しぶりに評価や感想のおねだりをしてみます。
創作意欲に繋がりますのでお気に入り登録・評価・感想を下さると嬉しいです。


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22) 第10話裏 コイシちゃん達は抱きしめたい

終わらない第10話。

最後に第10話限定のアンケート設置してます。
よろしければご協力下さい。

創作意欲に繋がりますのでよろしかったらご評価、感想等お待ちしております。



コイシは今カミサマに抱きついてる。

ギュッとしてるの。悲しいから。でもダメなの。

ギュッとしてもふわふわにならないの。

 

ワカバはいっぱいいなかったって。

カミサマに教えて貰った。

ワカバもいっぱいの若葉じゃなくて。

コイシもいっぱいの小石じゃないって。

カミサマの特別な家族だって聞いた時から。

すっごくすっごく悲しくなったの。

 

コイシ、ワカバと一緒に生まれた。

ずっと心で繋がってたの。

これからもずっと一緒だって思ってたの。

 

でもね。そうじゃなかったの。

コイシとワカバ、もう会えないって。

そしたらね?

 

ギュッとしても悲しいの。

 

でもギュッとしてなきゃもっと悲しいから。

コイシはずっとカミサマに抱きついてたの。

そしたらカミサマが大声で叫んだの。

 

「だ、誰か、わ、若葉を。

ワカバが消えた際に落としいった若葉を探してちょうだいっ!!

わかったの、気づいたのよっっ!!

 

ワタシの力なら取り戻せる、なんでも掴みとれるってっ!

理不尽な結果なんてはねのけて、運命を掴みとるのっ!!

だってワタシの力は、世界の全てを美しいモノへと変える力なんだからっっっ!!」

 

「我らよ、疾く疾く我が女神の望みを探り当てぃっ!!」

 

おかしいね。おかしいよ?

カミサマいったよ、コイシにワカバ戻らないって。

でも、でも。

 

「「「「「「然りっ!!」」」」」」

 

そうなのかな。ほんとかな?

そうだったらいいな。そうだったら、コイシはとっても嬉しいの!

その時コイシは思いだしたの。

 

「そんな、まさか、本当なのですか?」

「今は馬鹿になって探すべきよな、鎧殿?」

「え、なになに?なんなの。」

 

カミサマはワタシたちを絶対幸せにしてくれるって!!

そしたらね。コイシを抱いてカミサマ言ったの。

 

「お願い、見ててね。ワタシがワカバを、家族を掴み取る所。

貴方達とワタシと、絶対幸せになるんだからっ!!」

 

ワタシはしがみつきながらカミサマを見続けた。

みんな、みんなカミサマをみてた。

 

「ワタシの家族を返して貰うわ。悲しい終わりなんてまっぴらよっ!

ワタシたちはみんな、みんな、すべてのモノが幸せになるべきなんだからっ!!」

 

そしたらね、そしたらね。

 

「カミサマっっ!!」

 

ワカバが、帰ってきてくれたっ!

 

「ワカバぁぁっ!!」

「ワカバぁ!」

「「「ぎゅぅーーーっっっっっ!!!」」」

 

カミサマ、カミサマっ!

ワカバ、帰ってきたっ。ホントにホントのワカバ帰ったきたよっ!

本当だ。ホントにカミサマ、ワカバ達を幸せにしてくれるんだっ!

 

凄い、凄いっ!!

 

ワカバとワタシとカミサマはずっと一緒っ!

 

物言わぬ名もなき草木(ワカバの仲間たち)も喜んでくれてるの。

物言わぬ名もなき石土(ワタシの仲間たち)も喜んでるくれてるの。

唯あるがままの大地(ワタシ達の仲間たち)は今、カミサマが約束を守ってくれるって、心からどこにでもあるモノ(ワタシたち)を愛してくれるカミサマだって、それを知ってみんな、みんな喜んでるよっ!

みんな、みんなカミサマと一緒がいいって、言ってくれてるっ!!

 

その時ね、不思議なことが起こったの。

 

ワカバがピカって輝いて、少し大きくなったの。

そしたらね。ワタシもピカって輝いて、少し大きくなったのっ!

 

物言わぬ名もなき石土(ワタシの仲間たち)の声がもっとよく聞こえるようになったの。 みんなが何をしたいのか分かるようになったのっ!!

みんな、みんなカミサマと一緒がいいって。

カミサマを神様として信じたいって言ってくれてる。

 

ワカバと2人で笑い合う。ワカバたちもそうなんでしょって笑い合う。

神様は知らないのかも。神様は気づいてないのかも。

 

でもね今。

 

唯あるがままの大地(ワタシ達の仲間たち)はみんな幸せになるって決めたんだ。

神様が作るみんなの居場所を、唯あるがままの大地(ワタシ達の仲間たち)も手伝うって決めたんだ。

だってワタシたちは。

 

神様の特別なワタシ(家族)なんだからっ!

 




閲覧ありがとうございます。
次回のステータス目線で第10話が終了です。

エロい幕間でも書くかなぁ。それともトイレ事情じゃろか。

創作意欲に繋がりますのでお気に入り登録、評価、感想頂ければ嬉しいです。


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23) 第10話裏 ステータスちゃんはログりたい

ステータスちゃんの言う最良の結果の意味。
スマホモードでは見にくいかもしれませぬ、ごめんなさいm(_ _)m

最後に第10話限定のアンケート設置してます。
よろしければご協力下さい。

10/24 4:50

神々の奇跡の表記を追記しました。
気付かせて頂いた幽姫兎様に感謝っ!!


水鷲の年 春風の月 始まりの炎の日

 

10:00 イリスカムイがヴェンディーナ大陸に降り立ちました。

10:20 イリスカムイがレルンの若葉(雑草)と小さな石を美少女化。

10:32 イリスカムイが仮定名:雑草・小さな石から神格と判断されます。

      職業無選択状態で2名以上より神格認定を受けた為、

      隠しクラス”女神見習い”が開放されました。

 

12:52 イリスカムイが眠りから覚め、仮定名/雑草・小さな石と接触。

12:59 仮定名/雑草をワカバ、小さな石をコイシと確認。

13:03 イリスカムイが同者達にパーティ申請、受諾されました。

13:28 イリスカムイが自身の鎧を美少女化。

      仮定名:天を呪う鎧がパーティ化されます。

 

13:31 イリスカムイが自身の下着を美少女化。

      仮定名:大量生産水着がパーティ化されます。

13:36 イリスカムイがステータスを確認。職業選択の拒否。

13:39 イリスカムイが大量生産下着に栄光の手を再行使。

      進化条件を達成せず、その強化に失敗。

 

13:41 イリスカムイが5匹の蒼の狼達から奇襲、対応成功。交戦を開始。

13:42 イリスカムイが自身の剣を美女化。

      仮定名/名切の剣がパーティ化されます。

 

13:46 5匹の蒼の狼達の討伐に成功。MVP判定/名切の剣。

      しかし蒼の狼達に囲まれ始める。戦いながら逃走を決断。

      パーティ被害、名切の剣に軽傷。イリスカムイに軽傷2回。

      イリスカムイは握りしめた拳により都度栄光の手発動、完全回復。

      素足で森を走るダメージも常に継続回復中。

 

13:55 蒼の狼、天狼の招聘に成功。天狼、範囲攻撃・疾風の一撃を使用。

      天を呪う鎧に軽傷。コイシに中傷。

      イリスカムイへ攻撃。大量生産下着がカバーし瀕死状態へ。

 

      天狼の連撃ロール確認、成功。天を呪う鎧のカットライン成功。

      ワカバ、天狼にプランツハンズ。成功。

      名切の剣により天狼へ組付、成功。身体特性による持続判定+。

 

13:56 天狼、同調により蒼の狼に指示、群れの攻撃。ワカバ人間体消滅。

      名切の剣、天狼の攻撃、軽傷。

      天狼、名切の剣に振り落とし。名切の剣抵抗、中傷へ移行。

      蒼の狼、イリスカムイ・大量生産下着・コイシに向け群れで攻撃、

      コイシ以外に天を呪う鎧がカバー。飽和攻撃により成功率低下。

 

13:57 名切の剣、天狼の攻撃、クリティカル、中傷へ。

      天狼、命の共有を使用。ダメージを完全回復。

      蒼の狼、イリスカムイ・大量生産下着・コイシに向け群れで攻撃、

      コイシ以外に天を呪う鎧がカバー。飽和攻撃により成功率低下。

 

13:58 名切の剣、天狼の攻撃、軽傷へ。

      天狼、名切の剣に振り落とし。名切の剣抵抗、中傷重度へ移行。

      蒼の狼、イリスカムイ・大量生産下着・コイシに向け群れで攻撃、

      コイシ以外に天を呪う鎧がカバー。イリスカムイに対し失敗。

 

      イリスカムイ、自身のステータス表示システムを美少女化。

      仮定名:システムは以後サポートメンバーとして登録されます。

 

      イリスカムイが女神見習いになりました。

       イリス カムイの根源が”今”に決定されました。

      レベルに基づく神術を自動修得します。

       【信者との絆】を獲得。信者のステータスを確認でき、

       その信仰度に応じて能力修正を与えます。

 

      天を呪う鎧が信徒に加わりました。信仰度強。

      名切の剣が信徒に加わりました。信仰度狂信。

      大量生産下着が信徒に加わりました。信仰度軽。

      システムが信徒に加わりました。信仰度狂信。

 

      教派専用神術シャイニングレインを使用。

       光を見た敵味方の全てに浄化・精神鎮静・微弱回復。

      天狼を含む蒼の狼の呪いを抑制、正気に戻ります。

      天狼達は戦闘を放棄。戦闘は勝利判定。経験に蓄積されます。

      MVP判定/イリスカムイ。レベルが17にアップしました。

 

14:05 天狼1匹を含む蒼の狼127匹からの信仰申請を受諾。

14:06 その全てをを美少女化。彼らの感情は信仰に傾きました。

      集団規模拡大により職業ランクの上昇を確認。

       ランクアップスキル:【信仰の息吹】

       信者が専用信仰術を修得可能になります。

       自身の可視化の信者は職業を超え専用信仰術を修得可能です。

 

14:07 天狼達と【説得/無法者】による対話。

14:12 対話大成功。天狼達の信仰心が飛躍的に上昇しました。

      天狼が信徒に加わりました。信仰度:中→美女化/強→説得/狂信

      蒼の狼126匹が信徒に加わりました。信仰度:同上。

 

      信徒からの主観により教義名称がヴィリスカムィとなります。

      信徒からの主観により教義が虹と調和に定まります。

 

14:17 ヴィリスカムィは負傷者の回復行動を開始。

14:28 上記を終了。コイシとの対話開始。感情ロールでの説得、成功。

14:34 ヴィリスカムィ大量生産下着の核身を掴み、栄光の手を再行使。

      進化条件を達成せず、その強化に失敗。

 

14:36 ヴィリスカムィ消滅したワカバの核身を掴み、栄光の手を再行使。

      進化条件達成。【完全なる美少女】のランクが1上昇します。

      またワカバはその核身となる同族たちから祝福を受け

      【草人・精霊種】へと進化しました。

      

      同時に【同調】スキル対象のコイシにも同進化が適応されます。

      【完全なる美少女】のランクが1上昇します。その核身となる

      同族たちから祝福を受け【石人・精霊種】へと進化しました。

 

      ワカバが信徒に加わりました。信仰度/強

      コイシが信徒に加わりました。信仰度/強

 

      ワカバが緑たる草花の使徒になりました。花属性が追加されます。

      コイシが橙たる石土の使徒になりました。土属性が追加されます。

 

      ヴェンディーナの大地が信徒に加わりました。信仰度/強

      これにより神格として大地母神のサブ属性を得ます。

       大地母神:大地に連なる対象への強力な発言権を得る。

       大地は神の言葉に従い動き、その形を変える。

 

      信徒からの主観によりメイン属性が優美に定まります。

 

      同時に信徒の増大によりランクアップを確認。

      ランクアップスキル:【神々の奇跡】

       自らの教義や属性に関わる奇跡を1日に1回引き起こせる。

       ヴィリスカムィの場合、虹と調和と優美と大地。

       虹なら即座に空に虹をかけたり虹で橋を作ったりできる。

       調和なら僅かでも可能性のある場合、調停や公正な取引が成立。

       優美ならその美しさでイベントが発生。

       つまり不思議なことが起こる。

       大地なら即座に石の建物や大きな壁を作れる。

 

 

14:42 イベントは未記入です。

 




閲覧ありがとうございます。

第2章は頭空っぽにしていこうと思う。
そしてやらかすスタイル(ガバ)


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24) 幕間 調和の女神はアレしたい。

アレの話です。アレ。


うぅーむ。

 

《どうされたのですか?》

 

いやよ。今スグしてぇワケじゃねんだけどよ。

オレ、アレよ。アレする時も、そのこの手ってずっとこのままなわけじゃん?

 

《? 発言の定義は明確にして下さい。

当機には質門の意味が分かりかねます。》

 

ああ、もうっ!!

だからよっ、トイレっつーか、アレだよっ、アレっ。

アレして、アレふく時とか、どうすんだって話だっ!

 

《ああ、排泄行為の事をおっしゃっていたのですね。

お小水とお通じ。砕けて言えばおしっことうんこ問題ですか。》

 

んな直截に女の子がそんな言葉使っちゃいけませんっ!

 

《貴方は女性に対し少し夢を見過ぎではないかと。まぁいいでしょう。

結論からいうとその心配は不要ですよ?》

 

あ、なんでだよ。

生きもんなんだから喰ったら出さにゃならんだろがい。

つかそろそろどっちか催してもおかしくねんだよ、オレ?

 

《まぁ貴方の体感時間は前世から引き継いでいますからね。

こちらに来てからも5時間近く。確かになにかしら催しても自然でしょうね。》

 

んだろ?

でもよ、やっぱアレやってその。ケツ拭く紙持つ時なんかもその、この手って働いちまうじゃん。そしたらオレ、ケツ拭けねぇじゃん。そりゃダメだろ。

 

この年で誰かに介護して貰うなんざイヤなんだよ、オレはっ。

なんかいい方法ないんかよっ!

 

《定義補正1。そもそもこの世界でトイレットペーパーは一般的ではありません。多くの場合柔らかい草葉や、水でそれを濯ぐことによってそれを処理します。》

 

お、おう。そうなんか?

 

《普段からふんだんに紙を浪費できる文明レベルの貴方達とは異なりますからね。まぁ冒険者などの多くは生活魔術を覚えてそれに対応していますが。》

 

なんだそりゃ?

 

《日常的に火をつけたり、少し水を出す程度の誰でもお金を出すか、習熟度の高いものに教われば覚えられる貴方の世界の便利小物みたいな魔術郡です。

その中に清潔魔術という物があります。それをかけた対象が不潔であると見なした小規模の汚れを消し去ることができる、入浴の代わりなどにもなる魔法ですよ。》

 

おお、なんだそれスッゲっ!

なんだよ、文明がどうたら言ってたけど魔術超すげぇジャン

 

おっし。それ早く覚えんと。ドコで覚えれんだソレっ。

みんなソレ、まずソレ覚えようぜっ、決めたっ!

 

《多くの街の魔術ギルドで普通に販売されていますが、必要ないのでは?》

 

なんでだよっ、めっちゃいるわっ!

 

《定義補正2。前提条件において1つお尋ねします。貴方は今現在そのどちらかを催していますか?》

 

いや、さっきもいったけどよ。別に今は大丈夫だって。

でもそりゃ今だけの話だろうがっ!

 

《否定。多分ずっとそのままの状態であるのかと。貴方が自分の身体を一切掴む事がなかった場合は異なりますが。》

 

は、な、なんだそりゃ?

 

《この世界において、排泄を我慢する行為はれっきとしたバットステータスの一部ですから。具体的に便意と尿意ですね。ですから貴方の手で解消できます。

よかったですね。触れた瞬間生活魔術の応用で、身体の中からすっきりです。》

 

お、はぁっっっ、なんだそりゃぁぁぁぁぁっっっっっ!!

 

《他にも病気や毒などはもちろん、極度の飢えは飢餓、極度の汚れは不潔、極度の精神依存性はメンヘラと、これらもバットステータスですので解消可能です。

そして解消後、健康的な肉体状態が付加されますね。

狼たちも飢えを解消されて健康体になっていたでしょう?》

 

む、無茶苦茶すぎんだろっっ、ソレぇっっっっ!!

な、なんでそんなことになってんだよっ?

 

《あなたが言い出した無茶を天部の方々がさんざん話し合った果てに自棄になり、もうコレ全部のバットステータス消せるってことでいいんじゃないと判断なされた結果です。》

 

お、おう。オレ、そんなとんでもねぇこと言ってたか?

言ってたかもなぁ……。

 

《貴方が自身に【栄光の手】を使い続ける限り、あなたは排泄の心配は愚か、老化の影響も受けませんから。本来は職業・神や女神の権限である【完全状態維持】を最初から持っているようなものですね。

それに。》

 

おう。なんだよ?

 

《貴方の世界の言葉では確か、美少女はうんこなんてしないものなのでしょう?》

 

んな極端なアイドル信仰(世迷い言)、真に受けてんじゃねぇよっっっっ!!

 




閲覧ありがとうございます。

いやぁ結構な死活問題だったもんで、こんな設定になりました。
全力で困難から逃げていくスタイル(白目)

10話アンケートはここまでです。
皆様アンケートへの協力ありがとうございます。



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25) 第1章 成長前ステータス

すまないまだ2章じゃないんだ。
一話戦闘時点の全員のステータスを置いときます。
データを眺めるのがお好きな人だけお楽しみ下され。

10/27 13:30
ステータスが見づらかったので地味に改変。
あとワカバとコイシにスキル追加して、アタック等の内部データは消しました。
少しは見やすくなっているといいのですが。



名前 入主 神威(イリス カムイ)

種族 ヒト族

性別 美少女

職業 未選択

レベル 1

BS(バットステータス):なし

信仰:なし

 

筋力 17 (14+3)

耐久 15 (12+3)

敏捷 16 (13+3)

器用 11 (8+3)

感覚 7 (4+3)

知識 6 (3+3)

精神 20 (17+3)

神力 18 (15+3)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 25 

MP 31 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【剣さんの脇差】

防御:【胸/銀色石のスカーフ】+【若草スカート】

装飾:【R:赤い騎士マント】

 

スキル

【喧嘩殺法】:素手を使ったルール無用の戦闘術。奇襲効果あり

【抵抗】:あらゆる抵抗判定に+補正。

【説得/無法者】:あらくれ者を説き伏せる交渉術

 

【EX:栄光の手】:手で掴みとった対象に【完璧なる美少女】を与え、元の姿に基づくたヒト系種族に変化、ソレに類ずる専用衣裳を与える。この時ダメージ判定を含んだあらゆるバットステータスが解除される。専用衣裳はこのスキルの効果を弾く。

 

付加スキル

【RR:完璧なる美少女Ⅲ】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

ランクⅡ:立ち振舞が自動補正され、キレイな動作となる。能力補正あり。

ランクⅢ:性別が美少女となり、種を超絶した美しさを得る。

また言動補正が強化され、より美しい言葉となる。能力補正あり。

 

 

名前 ワカバ

種族 草人

性別 女

職業 精霊術士(エレメンタラー)

レベル 1

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ(不確定)

 

筋力 10 (9+1)

耐久 9 (8+1)

敏捷 12 (11+1)

器用 13 (12+1)

感覚 15 (14+1)

知識 10 (9+1)

精神 12 (11+1)

魔力 16 (15+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 15 

MP 22 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

防具:【若草の服】

装飾:【若草のフレアマント】(貸し出し中)

 

種族適正

【同調】:自然由来の親しい対象を1人選択する。その対象と深く通じ合い、経験を共有する。両者が同じ経験をした時にはこの効果は取得経験値増加大に変更される。

【共感性/草木】:元となった草木たちと強い連帯意識で繋がっている。どうしても自己が希薄になるため、メリットよりもデメリットの方が大きい

 

スキル

【採取/草花】:草花に関する知識とその採取方法

【散策】:周囲を歩き、変わったモノを見つけ出す才能。

【スマイル】:素敵な笑顔。周囲の空気を変える優れたムードメーカーの資質。

 

職業スキル

【エレメンタルセンス】:精霊を知覚できる目。その為暗闇でも視界が聞く

 

精霊術

【せーれーさんお願い、くささんみん(ぷらんつはんず)な転ばせて】:範囲対象を転ばせる精霊術。そして移動と行動を阻害する。地味だが優秀な術。

 

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

名前 コイシ

種族 石人

性別 女

職業 格闘家(グラップラー)

レベル 5

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ(不確定)

 

筋力 27 (26+1)

耐久 22 (21+1)

敏捷 16 (15+1)

器用 5 (4+1)

感覚 6 (5+1)

知識 12 (11+1)

精神 15 (14+1)

魔力 6 (5+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 58(53+5) 

MP 27 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

防具:【小石のローブ】

装飾:【銀色石のスカーフ(貸し出し中)】

 

種族適正

【石の身体】:身体を岩石のように硬く、重くできる。物攻・防御にブースト。

【共感性/石土】:元となった石土たちと強い連帯意識で繋がっている。どうしても自己が希薄になるため、メリットよりもデメリットの方が大きい

 

スキル

【採取/鉱物】:鉱物に関する知識とその採取方法

【効率行動】:一定の行動を効率よく繰り返す才能

【力技】:筋肉を効率よく扱う技量。様々なことに有効

 

職業スキル

【剛撃】:しっかりとタメたとても強力な一撃。命中率が悪い。

【カウンター】:自身が攻撃を受けた時に行う反撃。自動命中。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

名前 鎧さん

種族 鎧人

性別 女

職業 重騎士(アーマーナイト)

レベル 14

BS(バットステータス):なし

信仰:カミサマ

 

筋力 31 (29+2)

耐久 46 (43+3)

敏捷 16 (15+1)

器用 9 (8+1)

感覚 23 (22+1)

知識 18 (17+1)

精神 25 (23+2)

魔力 16 (15+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 192(162+30) 

MP 79 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【シールドガンドレッド】

防具:【R:混合式硬革鎧】(鎧化により重鎧化)

装飾:【R:赤い騎士のマント】(貸し出し中)

 

種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル

【鎧化】:身体を鎧のように硬く、重くできる。物攻・防御・HPにブースト。

 

コモンスキル

【魔物知識】:経験からくる豊かな魔物に対する理解。

【抵抗】:あらゆる抵抗判定に+補正。

【気遣い】:仲間の状態変化を見逃さない感性スキル。

 

職業スキル

【カバー】:周囲への攻撃を自身が代わりにうける。連続使用で成功率低下。

【カットライン】:対象の攻撃進路に立ちふさがり、進行を止める防御技。ヘイト大上昇。

【ヘイトガード】:自身にヘイトを集める防御行動。防御力・カバー成功率上昇。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】

:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

名前 小悪魔ちゃん

種族 下着人

性別 女

職業 斥候(スカウト)

レベル 1

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ(不確定)

 

筋力 10 (9+1)

耐久 12 (11+1)

敏捷 16 (15+1)

器用 14 (13+1)

感覚 16 (15+1)

知識 12 (11+1)

精神 8 (7+1)

魔力 10 (9+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 18 

MP 19(14+5) 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

防具:【白色のフリルワンピース】

持ち物:【身だしなみセット(予備の女用下着含む)】

 

種族適正

隠し飾るモノ(ドレスアップ)】:指定した衣裳の形を微調整できる。隠形・演技に高い補正を得る。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【隠形】:なにかから隠れる為の技術。スニーキングなどにも使える

【知覚】:何事かに気づく感覚の鋭さ。

【演技】:なにかを演じる、もしくは変装する技術。

【遊び人】:何かしら楽しいことを見つけ、飛びつく才能。

 

職業スキル

【斥候の嗜み】:鍵開け・罠感知・設置に関わる技術と知識

【コモンスキル取得】:広い範囲のコモンスキルを身につけられる。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

名前 剣さん

種族 武器人

性別 女

職業 戦闘強者(バトルマスター)

レベル 17

BS(バットステータス):なし

信仰:カミサマ

 

筋力 40 (37+3)

耐久 26 (24+2)

敏捷 46 (43+3)

器用 35 (33+2)

感覚 19 (18+1)

知識 10 (9+1)

精神 20 (19+1)

魔力 7 (6+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 139(124+15) 

MP 63 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【R:強さを求め刀を捨てた剣(ノーネームズ)

防具:【士道装束一式】

 

種族スキル

【剣化】:手足での攻撃に斬撃適正をつける。物攻に強ブースト。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【解体】:対象を正確に解体する知識。戦闘技量に補正あり。

【R:武芸百般】:武器・距離を選ばぬ武芸の技量。荒々しくも頼もしい戦闘技術。

 

職業スキル

【斬】:敵の急所を狙った鋭い一撃。高威力、高クリティカル攻撃。

【一閃】:大きく振りかぶる範囲攻撃

【R:連撃】:確率で再行動。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

エネミー 蒼の狼・幼体

種別 魔獣

職業 魔獣(ビースト)

レベル 7

 

筋力 18

耐久 14

敏捷 18

器用 12

感覚 22

知識 9

精神 14

魔力 7

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 44(39+5) 

MP 29 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武装・ドロップ品

武器:【鋭い爪牙】

防具:【蒼い毛並み】

 

種族適正

【超嗅覚】:獣由来の鋭い嗅覚。捜索判定に強い補正値を得る。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【捜索】:何かを探し出す為の技術。

 

種族適正

【超嗅覚】:獣由来の鋭い嗅覚。捜索判定に強い補正値を得る。

 

エネミースキル

【RR:群生体】:群れで意識と感覚、命を共有している。群れが滅びない限り死んでも身体が回復、いずれ蘇る。

【噛み付く】:牙による鋭い噛みつき。継続すれば対象行動を制限できる。

 

 

エネミー 天狼

種別 魔獣

職業 魔獣(ビースト)

レベル 34

 

筋力 43

耐久 33

敏捷 60

器用 26

感覚 53

知識 17

精神 32

魔力 17

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 514(479+35) 

MP 267 

 

【Rはレアアイテム/スキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武装・ドロップ品

【R:天狼の爪牙】

【RR:蒼天のブーツ】

 

種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル

【超嗅覚】:獣由来の鋭い嗅覚。捜索判定に強い補正値を得る。

【RR:命の共有】:仲間の命を受け取り、自身の傷を回復する。要1アクション。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【捜索】:何かを探し出す為の技術。

【戦略眼】:戦術を俯瞰し、正しい選択を掴み取る戦闘経験からくる確かな判断力。

【指揮】:多くの集団を正しく率いることのできる技術。

 

エネミースキル

【RR:群生体】:群れで意識と感覚、命を共有している。群れが滅びない限り死んでも身体が回復、いずれ蘇る。

【噛み付く】:牙による鋭い噛みつき。継続すれば対象の行動を制限できる。

【R:連撃】:確率で再行動。

【R:疾風の一撃】:超高速移動を伴う範囲攻撃。

【RRR:天狼の怒り】/自身を含む、群れが受けたダメージが大きい程大ダメージを与える強力な噛み斬り攻撃。

 

【RRR:BOSS適正】:一般の個体より優れた能力を持つ。HPが段違いに多く、バステ耐性を持つ。

 




第2章からは結構ステータス情報多めになりつもりです。
なるといいなぁ(遠い目)


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第2章 オレが街へと出掛けたら
26) 第11話 オレは美少女達に名前をつける(1)


ここから2章の始まりです。
お付き合い頂きありがとうございます。

新章アンケート設置しております。
いつもどおりポッチりご協力して頂ければありがたい!



「ああ、良かったよぉっ、良かったよぉっっワカバ、ワカバぁっ!!」

 

とりあえずオレはそん時、夢心地だったのを覚えてる。

だって、ワカバがよ、帰ってきたんだ。

オレの手で、掴めたんだ。そりゃ嬉しい。そりゃ夢みたいな心地になるさ。

 

でもな。そういう時、オレは大抵色々やらかすんだ。

 

こんときのオレはまさにソレ。

ま、オレらしいってことで多めに見てくれよ?

別に悲しいことなんて1つも起きちゃいねえ。

 

唯、ちょぉっと、はしゃぎ過ぎて、みんなに迷惑かけちまっただけなんだ。

 

 

オレがワカバとの再会を祝ってコイシと一緒に全力で抱きしめあっていたそん時。

 

「「「ぎゅぅぅぅっっっ!!」」」

 

そう。そんな風にオレがコイシと一緒に、ワカバの復活を心から喜んでいた時だ。

 

ナンとワカバとコイシの身体がピッカリ光って、いきなりちょっと大きくなったのである。今は中学入りたて位から、もう卒業できそうな所まで。

 

え、え、なんで?

 

《回答。彼女たちはこの大陸の草木達と石土達から祝福を受けた結果、進化条件を満たし、あなたの栄光の手を受けて進化しました。完璧なる美少女のランクが上昇、彼女たちの存在定義は精霊種にと変更されました。》

 

お、おう?

なんでそんなことになるんだ?

 

《回答。大陸の草木達と石土達は同族間で強い繋がりを持っています。

彼らは唯の一房の若葉と小さな石を、あなたが心から愛する姿を見て感銘を受けていたようです。

 

そして貴方が職業を経て女神となり若葉との約束を果たした時、彼らは貴方のあり方を大きく支持し、それを祝福しました。

現在彼らはあなたの信仰下にあります。信仰を拒否しますか?》

 

イヤイヤイヤイヤ、しねぇよっ?

そんなん、する訳ねぇっ!!

 

ようはアレだろ、この大陸の草から土まで、みんながみんなオレ達がワカバとまた会えたってことを祝ってくれてんだろ?

そんなんよぉっ、こっちも感謝きゃねぇだろっっ!!

 

オレはその後さんざんワカバとコイシと強く強く抱き合った後、そいつらにもお礼を言うことにした。

 

「ああ、ありがとうよっ全ての草木と、石土たちっっ!!

オメェらずっとオレらのこと、気にかけてくれてたんだなっ。

 

おうこの通り、オレはずっとコイツラと一緒だっ。

 

でもよ、そりゃオメェらともだっ。ワカバとコイシ、こいつらの事気にかけてくれとったオメェらは、ようはコイツラの親戚みてぇなもんなんだろ?

だったらオレも、もうオメェらの家族みてぇなモンさ。

 

あんがとな。こんなにオレらのこと喜んでくれて嬉しいぜっ。

くぅ、オメェらにみんなが動けりゃあな。

だったらオレぁもう手ぇ取り合ってオメェらと喜び会えるのによ?

 

無茶苦茶だけど、今は心の底からそうしてぇキブンだぜっっ!!」

 

オレがそう言い放った時だ。

 

不思議なことが起こった。

 

辺りの草木と地面が。よく聞くと楽しげなリズムでもって突然揺れ動き始めんだ。

 

《神々の奇跡の使用を確認しました。大地達は貴方の言葉に答えます。》

「神様。みんなが神様の言葉に嬉しいって言ってる。」

「神様っっ、みんががワタシ達にお祝いしたいって言ってるよっっ!!」

 

は、え、なんて?

そう思った時には全てが変わり始めていた。

 

まるでこの時を祝うかのように一斉に芽吹き始める若葉達と、咲き誇り始めた木々達を。地面が波打つようにオレらの元へと集めて、周囲はあっというまに花と緑に包まれていった。最後に集まった石達が一本の大きな大樹になって、その身に多くの華花を纏うと、一振りの枝がオレらへと伸びてくる。

 

そこにゃあ、なんと。

キラキラ光る色んな石が形を変えて華の形をとったモンと、彩り豊かな様々な華花を集めた大自然のブーケが出来上がっていたんだ。

 

「わぁっっっ!!」「すごぉいっ。」

「綺麗ですわぁ。」「くく、はぁははははっっっ!!」

「おぉ。ワケワカランけどめっちゃアガンねっっっっ!!」

 

「……なんという、……まさしく神のお力よ。」

「「「「「ヴィリスカムィっ、ヴィリスカムィっ!!」」」」」

 

ああ、オレもそんときゃもう感動で声も出んかったよ。

自然についつい、ワカバ達と一緒にそのブーケへと手が伸びてな。

 

おもわず掴みとっちまった。

 

ま、そうすりゃな。当然そうなる。

いつもの軽快な音が聞こえてな。

 

「「「「「「カミサマっっありがとぉっっ!!」」」」」」

「「「「「「カミサマおめでとう。」」」」」」

 

「わぁっワタシ達の妹たちだっっ!!」

「ワタシ達、おねぇさんだねっ!」

 

オレはたくさんのワカバとコイシに似た娘らに囲まれとったワケだ。

や、やっちまったぁぁぁぁっっっっ!!

 




閲覧ありがとうございますっ。
とりあえず最初っからやっちまったスタート。
駆け抜けるぜっ!!

ということで新章アンケート設置しております。
いつもどおりポッチりご協力お願いします。

励みになりますんでブックマーク、感想、評価等頂けると嬉しいです。
こんな美少女どうだろうって意見はいつでも募集中ですよ?


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27) 第11話 オレは美少女に名前をつける(2)

やっと名前が、つけられるぞぉっ!!
あいかわらず展開に問題がありすぎる(白目)

新章アンケート設置しております。
いつもどおりポッチりご協力して頂ければありがたい!


拝啓カミサマ(じいさん)お元気ですか。

 

オレは今貴方の世界で幸せにやってます。長らく家族に恵まれなかったオレですが、なんとここでは大事な家族と、仲間たちに恵まれることとなり、大変充実した初日を迎えています。所で1つ贅沢な悩みがあるのですが聞いて下さいますか?

 

いくら何でも増えすぎだろが、おいっっっっっ!!

 

はぁ。と、いうわけで現実逃避終了。カモン現実っと。

今オレの前では急激に沢山増えてしまったワカバとコイシの妹たちが、その2人を囲んで一斉に踊りだすという、世界で一番微笑ましい光景が広がっている。

 

「「「「「うれっしいねっっうれっしいねっっ!!」」」

「「「「「家族が一杯、嬉しいねっ!」」」」」

 

んでそれをオレと装備ちゃん達、んでなんか感動に打ち震えてる狼ちゃんズが遠くから温かい眼で見てると。この娘らなんか情に脆すぎねぇか? 心配になるぜ。

 

あ、小悪魔ちゃんだけ全力で輪の中に加わりにいったわ。あの自由人め。

 

しかしオレの頭の中は実際、それどころじゃなかった。

イヤイヤそりゃ嬉しいよ? そりゃみんなかわいいし、みんないい子なんだもの。

 

なんかね。元が花とか綺麗な石だったからみんなワカバとコイシの同じ位の時よりちょっと美人さんなのよねこの娘ら。揃って頭に自分の元になった花で作られた髪飾りをつけてるおしゃれさん。その娘らの眼の色もなんかその髪飾りと一緒だな。

 

髪の色はワカバの妹達はみんな緑で、コイシの妹達達はみんな白、っていうか銀色にチケぇか。肌の色は花の娘も石の娘も褐色だったり色白だったりと、なんか結構違うみてぇだけどな。

 

でもワカバとコイシも負けてねぇし(親バカ的発想)

こっちも大っきくなってから、またすっげぇかわいい美人さんになってんだ。一番変わったのはそれぞれの、肌の色かな?

 

ワカバってそれまで褐色だったんだけど、今は色白になって表情に合わせて花咲くみてぇに赤みがさすような、そんな肌色になった。眼の色は変わらず黒な。

コイシは逆にマッチロイ肌だったのが健康的なオレンジに近い濃い肌色になった。なんていうか明るい土の色? それに近づいたみてぇな感じだ。

 

でもそれよりもなんか、こう。

 

今までの幼い感じのどっかつたない動き方から一気に女性らしい、洗練された品のいい感じの雰囲気に変わってな。今も子ども達の輪に入ってはしゃいどるんだが、それがすっごく大人びた、面倒見のいいお姉さんっぽく見えちゃうんだわ。

 

なんか一気に成長しちまったって感じで少しだけ寂しかったりする。

あん、なんの話しとったっけかオレ。そうそう。

こんなに人数増えてこれからどうしようかって話だったわ。

いやぁ人間って増えりゃあ当然、そんだけ生きんのに金が必要なわけなのよ。

 

んで実はこんかい増えたお花ちゃんたち。

実は花と石それぞれ12人、合わせて24人もいるんだよこれが。働かすのにゃあまだ早そうな女の子達が24人もね、増えたんだわ。

 

そりゃ保護者として最初に心配になるのはまぁ、食い扶持の事だわ。

あとはアレだわな、アレ。

 

「主どの。アレだけワカバやコイシの仲間たちが増えてしまってはさすがに今まで通りみなナナシのままでは不都合もありましょうて。ここは1つ、ついでに拙者らにも主どのから御名前を頂くわけにはまいりませんか?」

 

ですよね。

 

剣さんがミンナを代表してそんな事を言ってきた。うん。言った側から狼ちゃん達がソワソワしだしたのが恐怖でしかない。お前ら数考えろ。

どうみても100人以上いんだろ。

 

《訂正。正確には天狼を含め127人です。

現在、ワカバ・コイシ・鎧・下着・剣・華花12名・石華12名と合わせて、全部で156人の大集団です。マンパワーの増加で夢が広がりますね。》

 

聞きたくなかったんだけど、その数。

えぇ、そんなにいるんだぁ(サラサラと砂化)

 

「ああ、そだな。よっし、みんなちょっと集まってくれっ!」

「なになに、ナンカ面白いことすんのぉ?」

 

ああ、わかったよやりゃあいんだろうが、やってやるよっ!

 

「カミサマ。」「カミサマっっ!!」

「お姉さんと一緒に神様の話聞こうね。」

「おねぇちゃんと一緒に神様の所行こうねっっ!!」

 

そっからは一大イベントの始まりだ。

ネーミングセンスなんて欠片もねぇオレがそんな大人数に名前をつけるんだ。正直色々不満が出そうだったがそこは勢いでなんとか押し切る。

 

それにオレにとって朗報があった。狼たちが自分らは群れ全部で1つの存在だからみんなに名前をつける必要はないって言ってくれたんだ。なんか味気なさも感じたが、正直そこは無難に乗っかっといた。

 

だってさすがに127人に名前つけれる自信ねぇしなぁ……。

 

で、決まったの名前はこんな感じだ。

 

【コイシ・ワカバ】:もう変えるのもなんだしね。本人たちもそれがいいって。

【鎧さん:メイル】:最初っからこんな感じでつける。でも喜んでくれてたよ。

【小悪魔ちゃん:アンダー】:英語でごまかすしていくシリーズ。押し切ったぜ。

【剣さん:ツルギ】:まんま。読み方変えました。でも気に入ってたわ。

【狼達:ウル】:ウルフを一文字削る。なんか引くほど感動してくれたんだけど?

 

お花ちゃんたちはステータスさんに聞くとそれぞれ誕生月の花と鉱石らしい。

大地がしれっと無茶してやがったことにここで始めて気づく。オメェらってヤツは。なんでそれにあやかってつけたよ。ん、そんなことよく知ってたなって?

 

……ステータスさんが教えてくれますた。オレがんなの知ってるわけないよなぁ?

最近ステータスさんに依存気味だなオレ。だってめっちゃ頼りになるし。

 

誕生月:花/石

【1月:シンビジウム/ガーネット】

【2月:フリージア/アメジスト】

【3月:リップ/アクアマリン】チューリップを縮めてリップ。

【4月:カスミ/ダイヤ】

【5月:ナデシコ/エメラルド】カーネーションは和名のオランダナデシコより。

【6月:ローズ/パール】

【7月:ユリ/ルビー】

【8月:ヒマワリ/ペリドット】

【9月:りんどう/サファイア】

【10月:ガーベラ/オパール】

【11月:クリサンサ/トパーズ】菊を英語よみに変えてみた。

【12月:カトレア/ターコイズ】

 

さすがに鉱石そのまんまの名前ってどうなのって思ったんだけど、ナンカ本人達的には在りらしい。むしろ変えたくないって。助かります。

まぁさすがに疲れたが、みんな素直に喜んでくれたし良かったわ。

 

んでな。

 

《お疲れさまでした。やっと終わりましね。

非常にわかりやすいネーミングでしたか、当機は嫌いではありませんよ。》

 

いやいや、終わってねぇだろが?

 

《? 否定。これで当パーティ29名・1グループの命名は終わりました。間違いはありません。》

 

いやだからな。

 

《まさか自身の名前をお付けになると? それは非推奨行動です。あなたの名前はもう信者より信仰対象として認識されています。それを変更するの……、》

 

だからお前の名前がまだだって話だよっ!?

 

《!?》

 

ま、いつまでもステータス呼びじゃ味気ねぇしな。

美少女なんだろ? なら名前位、ねぇとしまらんだろ?

 

《当機に、名称を?》

 

おう。そっだな、ああ。

ステータスってのもじってステラ。そんなのでどうだ?

わりぃな。オレネーミングセンスねぇからそんなのしか思いつかねぇんだわ。

 

《ステラ。》

 

おう。ま、イヤなら別に……。

 

《否定。それだけは絶対にない(可能性を全否定)

当機はこれより個体名をステラと改め、貴方のサポートに万全を尽くします。》

 

おう、ま、よろしく頼むぜ?

オメェだけが頼りって奴だステラ。いつもありがとうな。

迷惑かけるがよろしく頼むわ。

 

《迷惑などあるはずが(no problem)ない。

解しました、(Yes my )我が女(Goddess)神よ。》

 

さって、いいかげん金策とか考えんとな。

んじゃステラ、さっそく相談のってくれるか?

 

《肯定。ステラは貴方を全力でサポートします。》

 

 

なぜならステラは。

もう伝えるだけの舞台(貴方と共に)装置ではないの(あるモノ)ですから。




NEXTSTORY
「そしてオレ達はアレへと向かう。」

閲覧ありがとうございます。
細かい描写は裏で書く予定だったり。
次回裏ですってよ奥さん?


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28) 第11話裏 「狼さんを撫でるだけの話」

犬をなでるだけの話。

ちょいエロスが描きたくなったのでウルさん視点を。
途中ウルさんが呪われていた理由が語られますが、ウルさん視点だと結構重い話なので苦手な人は読み飛ばし推奨です。エロスはその後っ!

ハートマークで見極めておくれ?

新章アンケート設置しております。
いつもどおりポッチりご協力して頂ければありがたい!


森が歌っている。

そうとしか言いようのない光景が、眼の前で広がっていた。

草が、木が。土が、石が。

 

大地の全てが女神に祝福を与えようと、その身を揺らしてリズムを刻む。

 

地面は踊り、草木は咲き誇り、愛する女神の元へとソレを届ける。

彼らは皆を救うと泣きながら女神となったあの方へ、少しでも感謝を伝えようと、その在り方を変えているのだ。その光景を見た我らは皆、そう思った。

 

それはあの御方の、感謝を伝えるお言葉から始まった。

 

 

我らが殺した少女の残した若葉をあの方が大事そうに両手で包み込んだ時。

辺りはとたんに煙に包まれ、それが晴れるとそこには。

あの時我らが噛み殺してしまった筈の、眷属の少女の姿があった。

 

女神様と少女、そして同じ位の背丈の少女が今、お互いを思い抱き合っている。

 

それはなんという奇跡であろうか。

女神様は今、我らの拭いえぬ罪の結果を、その手で覆されたのだ。

一度消滅したモノを救う手立てなど、この世界にはありえない筈なのに。

 

それを、それすらもお変えになられたというのか。

しかも少女達は抱き合うさなかにその存在を進化させ、精霊に近しきモノへと自らの姿を変えていくではないか。

 

我らの全てがその光景を、滂沱の涙でもって見届けて続けた。

失ったモノすら掴み取り、さらに美しい在り方へと変えるこの方を、奉ずるべきと決めたこの身がただただ誇らしく。

 

そしてもう二度と彼女らを失わせてはならないと、この魂に深く刻み込みながら。

その時だ。

 

女神様が突然声を張り上げ、大地へ感謝の言葉を述べだしたのだ。

 

「ああ、ありがとうっ。全ての実り育つものと、支えそこに在るモノたちよっ!

貴方達は最初からワタシたちのことを、気遣ってくれていたのねっ。

 

ええこの通りよ。ワタシはもうこの子達と共にあり続ける、あり続けるわっ。

 

でもね。それは貴方たちも一緒なのよ。

 

ワカバとコイシ、この娘達の事を見守ってくれていた貴方達は、これからもこの娘達と共に歩むつもりなのでしょう?

だったらワタシも一緒に、貴方達とあり続けたいと思うわ。

 

本当にありがとう。こんなにワタシ達のことを喜んでくれるなんて。

もう感謝の言葉もないの。

 

ああ、貴方達が歌い踊ることができればいいのに。

それならワタシもその手を取って、あなた達と喜びを分かち合うと言うのに。

 

理屈じゃないの。今は本当に心の底からそういう気持ちなのよっ!」

 

それが変化の始まりだった。

今我々の眼の前で、神話の世界が目覚めようとしている。

 

「わぁっっっ!!」「すごぉいっ。」

 

草木は季節を問わず咲き乱れ、大地は波打ち踊りだす。女神の望みに答えるように次々と在り方を変えていく。季節を無視して咲き誇る華花に、煌めく美しい鉱石達が、我も我もと女神様の元へと集まっていくのだ。

 

「綺麗ですわぁ。」

「くく、はぁははははっっっ!!」

 

その波が女神様の前に渦巻くように近づくと、彼らはそこに一本の白石の大樹を作り上げた。色とりどりの華花達と鉱石の華で着飾ったその大樹は、最後に一振りの枝を女神の元へと伸ばしていった。

 

「おぉ。ワケワカランけどめっちゃアガンねっっっっ!!」

 

その先端には12の季節の華花と、同じく12の鉱石で出来た美しい華達が添えられて今、花束となって女神に捧げられている。

 

「なんという、……まさしく神のお力よ。」

 

ああ今この大地は我が女神を奉ずるべき御方と認め、女神に己全てを捧げる誓いを差し出している。12の季節、12の有り様。己の全てが常に女神と共にあると、意思を伝えて見せたのだっ!

 

「「「「「ヴィリスカムィっ、ヴィリスカムィっ!!」」」」」

 

気付けば我らはこの興奮を押さえきれず、口々に女神の名を讃え叫んでいた。

 

しかし神話はそこで終わらなかった。

 

女神が少女らと共にその花束を手に取ると、またしても辺りは煙に包まれて。

その花束は。

まさに華のように美しい少女らに、その在り方を変えたのだ。

 

そう神話はまだ終わらない。

今、この時に始まったのだから。

 

 

「そうねぇ。貴方達は、そう。ウル。ウルなんてどうかしら?」

 

少し心配そうにおっしゃっられた女神様の言葉に。

瞬間。我等ははるか時から解き放たれた。

そして再び時より舞い戻った時、同時に我等は叫び声を上げていた。

 

「我らはウルっ、虹と調和を司る優美の女神から授かりし、誇らしき名の一族っ!

遥か昔の伝説と同じ名を抱くモノっ。

天上の果てに神々と共に消えた偉大なる大狼の在り方を継ぐものなりっ!!」

 

24の華の娘たちが女神の元へと舞い降りたことで名付けを行うとおっしゃられた女神は、我等にさらなる誉れを与えて下さった。

 

なぜならその名は、狼たちにとっては伝説的なモノであったから。

 

神に仕え、神と共に消えた誇り高き伝説の天狼。女神様はその名と在り方を我らに継げとおっしゃって下さったのだ。これが嬉しくない一族などいるものか。これ程の誉れが他にあろうか。

 

皆がみな頂いた名を誇り、さらに気高く在り続けると決意し、其れを喜びあった。

その時だ。女神様はそこにいる全員を集め、我らの事をお尋ねになられた。

 

「ねぇウル。貴方達はなぜ呪われていたのかしら。どうしてそんな事になっていたの?」

 

「は。我らは本来この森のもっと奥深い所に住んでいるモノなのですが、その場所で我らはある魔物の群れから襲われました。

そこで奴らから憎悪の王と呼ばれていた魔物から、我らの内の一匹が呪いを受けたのです。」

 

我は多くの憎しみと怒りを込めて、奴の名を呼ぶ。

ああ、名を述べただけで腹立だしい。

敬愛する女神の前だと、必死に己を押さえつける。

 

「憎悪の王?」

 

「はい。確かにそう呼ばれておりました。

そこまで身体の大きくない猫型魔獣です。しかしその名の通り奴は、その身からは溢れんばかりのヒトへの憎悪を、魔毒と化して撒き散らしておりました。

 

我らはその憎悪の王が洩らす魔毒に触れてしまい、呪われてしまったのです。」

 

怒りを殺し、やっとの思いで女神様に奴の特徴を伝えた。

女神が創る世界の敵となりうる奴のことを、我はどうしても女神に知っていて欲しかった。

 

我が女神に気苦労など与えたくなかったが、それでも奴は無視できない存在だ。

女神様の表情が見る間に陰る。お優しい方なのだ。それは当然の質門だった。

 

「そうなの……。それでそれから貴方達はどうなったのかしら?」

 

「我等は理性を失って多くの人を、冒険者たちを理由もなく殺めていきました。

喰う為でなく、意味も持たず。ただ憎悪に任せ命を絶ち続けたのです。それは我らの誇りを大きく傷つけることでした。

 

無意味な死などを撒き散らすなど、とても許せたものではなかった。

 

もはや食を絶ち、飢えによって死を望む事しか希望のなかった我々の牙が、貴方様にも届かんとした時、我らは貴方様によって救われたのです

 

概ねそういうことだ。

全てを語る必要はあるまいと、我らはそう判断しそう答えた。

 

本当は少しだけ、続きがあった。

 

我らの一匹が受けた呪いはたちまちに我ら全てに伝わり、ヒトをなぶり殺せと訴えかけた。我等を理不尽な殺戮へと誘おうとしたのだ。

 

だから我らは決断した。

 

誇りなき死を与え続ける存在に成り果てる位なら自決の道を歩むことを。少しでも理性の残る内に、力ある同胞に我を噛ませて皆の命でもって傷を癒し続ければ。

我らもいつかは死に絶える。使った命は戻らないものなのだから。

 

我は多くの力ある同胞の命を使って、同胞から受けた傷を再生し続けた。

 

そして力ある同胞達が死に絶えて、残すは力少き者達のみとなった時。

この身もまた憎悪へと堕ちることになったのだ。

 

思えばその同胞たちが、我らを女神の元へと導いたのかもしれない。

 

言えば優しいこの女神様の事だ。きっと我らの為にお嘆きになられるだろう。

それは我らの良しとする所ではないのだから。

だが、女神の優しさは我らの思いを大きく上回るモノだったらしい。

 

「そう。辛かったわね。苦し、かったわねぇっ……」

 

我らの為にその深く綺麗な紫の両の目からポロポロと雫が溢れる。

一介の魔物の我等の境遇を感じ取り、泣いてくださる神がいる。

 

ああこれだけで。我が同胞は尽く報われるだろう。我らの戦いは足掻きは無駄ではなかったと、この涙が証明してくれている。

 

我らの感覚からより多くが伝わってくる。

 

理不尽に暴力を拡散させる悪を思い、静かに怒気を滲ませるメイル殿。

興味がないという素振りの端に、不満を顕にしているツルギ殿。

心配そうに我等と主の顔を交互に見比べるアンダー殿。

 

そしてなにより。

 

「ウルさん達、かわいそうっ!」

「……ウルさん達、辛かったよね。」

「悲しい時はぎゅぅっとすると良いんだよっ?」

「……辛い時はぎゅっとすると辛くても大丈夫。」

 

「「だからワタシ達がぎゅぅぅっとして上げるねっ?」」

「「「「「「ぎゅうぅぅぅっっっっっ!!」」」」」」

 

自らを殺した相手を。大切な友を奪った相手を。

心のそこから心配し抱擁してくださるお二人の姿が。

それに習って我等に抱きついてくれる華花の少女達が。

 

その優しさが全て我らへと伝わってくる。

 

その時我らは改めて誓ったのだ。

たとえこの身がどうなろうとも。どうあろうとも。これより我らは彼女たちを護るモノであり続けようと。もう二度と、この少女達を傷つけることも、傷つけられる事もあってはならないと。

 

我らはこの時、偉大なる女神の名の元に誓いを立てた。

静かに、蒼たるウルが大地の子らを護る者として、その在り方を定めたその時。

 

我は女神様から抱きしめられた。

 

とたん、身体に電流が奔るっ!

 

あぅっっっっ、ふ、くぅんっっっ

 

背中に回った女神様のお手から、我の身体へと何か熱いモノが注ぎ込まれてくる。

それがまるで我を変えてしまう程に、気持ちがいいのだ。

 

ぁ、ぅ、くぅぅっんっっっ

 

大地の子らにこんな姿を見せるワケにはいかず、しかして女神様のお手の快楽にも抗えないイケない我は漏れそうになる声を押さえ、身を捩って流れ込むソレに必死に抗う。しがみつくと女神様の首筋が近くにあった。

 

ああ、親愛を確かめあい(グルーミングし)たいっ。無意識にのばしそうになった舌をどどめる。でもどうしてもはしたなく振るわれる尻尾だけは止められず、それがまるで盛ったメス犬のように女神様のお手を撫で付けてしまうのだ。

 

それがお手に触れるのが気になられたのだろう。

あるいはその手触りを気に入って頂けたのか。

女神様のお手が我の身体からひとたび離れ、我の尻尾に優しく触れた。

 

あ、やぁ、だ、めぇ、ん、ふぅぅぅっっんっ!!

 

わたしは弱い部分を攻められて、今度こそ耐えられない。

気付けばちろちろと舌をのばして、めがみさまと愛を確かめ合って(にグルーミングして)しまう。めがみさまにいっぱいわたしの匂いつけないとぉ。ちろちろ、ぺろぺろぉ

 

あぅめがめさまぁ、おイヤでしたかぁ?

 

いきなり首筋を舐めだした(グルーミングし始めた)わたしにびっくりなさったのか、めがみさまのお手が突然止まってしまう。わたしは女神さまを覗き込み、かまってほしくて物欲しそうに下から見上げてしまうのだ。

 

そうすると。

めがみさまは一瞬お考えになられたのに微笑まれ、わたしの頭をおなでになられた。

 

くふぅぅっっっっンぅっっ

 

それ好きなヤツっ。わたしが一番好きなヤツですぅっ♪

全身てめがみさまに愛をお伝えすべくわたしは全身をめがみさまにこすりつけて、またぺろぺろ(グルーミング)を再開しちゃう。

 

ダメなのにぃ、みんなに見られてるのにぃ、めがみさまにナデられたらもう抗えないのぉ。ん、ちゅ、ふぁ、ぺろ、ぺろぉ……

 

あ、く、ふぅぅぅっっっん、おみみ、おみみコリコリだめぁ、つよつぎぃ、きもちよすぎますからぁ、うぅぅっっっふぅぅっっっん

 

みんな、みんなたえられなく、なるのぉ。あのこたちのまえでぇ、いぅう、ちゃいましゅからぁっ、だめ、なのぉ、ゆるしてください(もっとしてぇ)めがみさま(ごしゅじんさまぁ)

 

わたしがめがみさまのお手におぼれそうになった時。

ふいに、お手がわたしからはなされた。

わたしは瞳をうるませて、ついついめがみさまに目でうったえてしまう。

 

「くぅぅっっんっ

 

ひどいひどいひどいですめがみさまぁ(ごしゅじんさまぁ)

もっとなでて、なでなでやめないでくたさいっ。かまってかまってぇっ

 

そうすると、めがみさまは。

さいごに1つわたしの頭をなでてこうおっしゃった。

 

「また今度かまってあげるから、今はここまでね?」

「わうぅっん

 

この時我らが皆、愛する女神様にさらなる忠誠を誓ったことは言うまでもない。

 




この後めちゃめちゃナデナデした(白目)

閲覧ありがとうございます。

神様の手を生物相手に使うとこうなります。
ヤツの手はまさしくゴットハンドだったんだよ……。

早く手袋つけなきゃな(やる気ないね)

アンケートを見て全てを悟る作者。
覚悟はいいか、オレは出来てる。


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29) 第12話 そしてオレ達は街へと向かう(1)

今回はお試しで二重音声。
読みづらくなかったらこれで速度が稼げるのですがどうでしょうね? 





ワカバぁ(ワカバぁ)コイシぃっ!(コイシぃ。) うう(うう)なんで(どうして)こんな事に(離れ離れに)なっちまったん(なってしまったの)だよぉ~(よ~)オレ達(ワタシ達)ずっと(共に)一緒って(あり続けるって)言った(誓いあった)じゃんかよぉ~(筈なのにぃ~)?」

 

街へと向かう道中、オレはただ1人悶々としていた。2人が一緒にいないと思うともうソレダケで全てイヤになってくる。おうちかえりたい。

 

《非推奨行動。ステラは忠告します。その行為は合理的とは言えません。》

 

「ヴィリス様ぁ、いつまでお嘆きなっておられるのですかぁ?」

「そうそう。もう街も近いんだしさぁ。グジグジやめて欲しいよねぇ?」

「かかか。これは当分子離れは無理そうでござるなぁ。」

 

旅の仲間たちにはもう半分呆れられていたが、かまうもんか。

まったくどうしてこうなっちまったんだろう?

オレはふと、少し前の光景を思い返した。

 

 

名付けが終わった後、ステータスさんと話し合ったオレはそのままミンナとこの後のことを話し合うことにした。

 

あ、ちなみに今現在オレもう光ってません。

 

ウルたちを説得し終わった後も、ずっと腰蓑がないからって無駄に光続けてたオレなんだけど、ワカバが戻ってきた瞬間になんか一緒に戻ってきてな。

これでようやっと電飾みてぇに無駄にピカピカすんのやめられるってわけよ。

 

正直オレ今凄くほっとしてる。服一枚で得られるこの安心感よ。

 

んでオレはさっきウルから憎悪の王ってヤツの話を聞いてちっと焦っとった。

 

それとは別に、ウルからいきなり首筋舐められてめっちゃ焦った。憎悪の王に狂わされたウル達がなんかあんまりにも可哀想だったから、ついオレもワカバ達に釣られて彼女を抱きしめちゃったんだけどさ。

 

普段クールなツリ目の青髪美女がいきなり身体擦り寄せながらこう、首をチロチロ舐めてくるんだぜ? 焦るなって方が無茶な話だろ。んでもそん時ステラにコレ犬とか狼がよくやる親愛行為(グルーミング)だって突っ込まれてなんか納得しちまってな。

 

手触りもよかったしついつい耳とか尻尾とか撫でとったら、その場のウル達みんながすっげぇ甘い声で鳴き出したからさすがにそこで自重した。

 

小さい娘達の教育に悪ぃだろ?

 

しかし森の奥になんかヒトにすげぇ恨みもった猫さんとその仲間達がいるってか。そいつが魔物達を狂わせて人を襲わせてるってんだから一大事だぜ。

 

んな危険なヤツをほっとくわけにゃいかんけど、正直オレらでどうこうできるとは思えねぇ話なんだよなぁ。金策の事もあるが、早く街に行ってこの事報せんとな。えれえ事になりそうだっ。

 

《肯定。早めに冒険者ギルドに訪れることを推奨します。》

 

ああ、確か冒険者達の職安だったな。

おう、仕事見つける手前もあるしこりゃヤル事決まったな。よっしゃっ!

 

みんな聞いてくれ(みんな聞いてくれる?)

オレはこれから(ワタシはこれから)街へと(近くの街へと)向かおうと(足を伸ばそうと)思うんだ(思うのよ。)

 

さっきの話も(憎悪の王のことも)そうだけど(あるのだけれど)これからの(これより先の)みんなの(全ての者の)生活考えると(暮しを思うとね、)色々(色々と)必要な(必要な)モンなんかも(モノやそれ以外だって)揃えんと(集めなければ)いかん(ならないわ)

 

みんなで(すべての者が)仕事して(役割を得て)金稼ぐ(糧を得る)それが(その道が)難しくても(得難くあっても)その方法を(そんな在り方を)見つけなきゃ(探り出さなければ)なんねぇっ!(なりません。)

 

オメェらも(貴方達も、)オレに(ワタクシと)協力して(共に歩んで)くれっか(頂けますか)?」

 

とりあえずオレは今の状況をみんなに伝えて協力を得ねぇとな。正直オレ今自分の手で何1つできねぇし。仲間の助けは絶対必要だぜ。

ま、みんなの反応は概ねオレの予想どおりのモンだった。

 

「ずっと一緒だよっ!」「……ずっと一緒。」

「貴方様ならそうおっしゃると思っておりましたわぁ。ワタクシはどこへでもお供しますよぉ?」

「いいよぉっ、だってオモシロそうだもんね?」

「はてさてどうなることやら。かか、だが面白そうなのは確かでしょうな?」

 

よしよしみんな期待通りの答えでありがたいぜ。

でもその後のウル達はオレに別の方向性を示してきたんだ。

 

「女神様。いくら姿が変わったとて我々は咎人。そのような者達が数を集めて街に押しかけるべきではないと、恐れながら具申致します。

 

ならば我々一同はこの森に留まり、全てのモノ()の居場所を造るべく、森の中で資材を集め、その足掛かりを築いて行こうと思います。

皆が住み、皆が笑い合う大切な場所です。

我ら一同全力を持ってこれに望みます。」

 

ああ、そっか。そうだな。

いくら呪われて仕方なくやったことだとしてもコイツラ的には自分が許せねぇってことかよ。まったくウル達の真面目さには頭が下がるぜ。

 

しかも俺らの為に全力で家こしらえてぇなんてよ。オレの言った方便なんざ本気で形にしようとしてくれてら。こんなん言われたらオレぁもう認めるしかねぇわ。

 

ああ(ええ)いい(素敵なお家が)家を(出来る事を)頼むぜっ!(願っているわ)。」

「「「「「「この命に変えましてもっっ!!」」」」」」

 

いや、やる気はわかるが程々にな? 命は大事に。

オレが内心んなツッコミをウル達にしてた時だ。急にお花ちゃん達が騒ぎ始める。

 

「「「「おうち造るの?」」」」「「「「「みんなのお家だっっ!!」」」」

「「「「楽しそう。」」」」「「「「ワタシ達も手伝いたいっっ!!」」」」

「「「「ワタシたちも手伝う。」」」」「「「「やろう、やろうっっ!!」」」」

 

(石華12人)「「「「「「やるよぉ。」」」」」」

(華花12人)「「「「「「おーっっ!!」」」」」」

 

お、おう。めっちゃやる気だ。

どうしようコレ。困ったオレがウル達にどうするべきか訪ねようとした時。

 

「わぁっ、ワタシもやりたいよぉっ神様っ!」

「……ここはお姉さんの力も必要だと思う。」

「「ワタシ達もみんなの居場所造り、手伝いたいっ!」」

 

ウチの娘達もこの流れに乗っかっただとっ!

ちょ、ちょっと待ってくれっ、それじゃあよぉっっ!!

 

(あの)いや(あのね)でもオメェら(その貴方達)ずっと(ワタシと共に)一緒って(あり続けるって)いったじゃん(言ってたじゃない)

オレ(ワタシ)これから(これから)街行くってほら(街に赴くのよ。)そしたら(それだと)離れ離れに(共に居られなく)なっちゃうだぜ(なってしまうじゃない)?」

 

断固拒否するっ!!

でもワカバとコイシはそんなオレの気持ちを知ってか知らずか、もの凄く大人びた微笑みを浮かべてこう言ったんだ。

 

「あのね神様、ワタシたち神様の力で大きくなって少しだけ賢くなったのっ!」

「……少しだけ色んなことを学んだの。」

 

「家族のずっと一緒は、側にいることが全てじゃないのっ!」

「……家族の帰りを待つ在り方も必要だってわかったの。」

 

「「だからワタシたち、みんなとみんなの居場所を造って神様達に、おかえりって言ってあげるのっ!」」

 

そこにはしっかりモノの素敵なおねぇさんへと成長してしまった2人の姿があり、彼女らの心からの笑顔を共に贈られたその優しい言葉にオレは思わず言葉を失う。

ああさっきあったバッカだってのに、もうこんなに立派になっちまってよ。

 

オレはもう感動と切なさで、ちょっと目の前が見えなくなってきちまった。

 

「それにねっ!」「……ワタシたち神様に新しい力貰ったから」

「「きっとお家造りの役に立つわっ!」」

 

ん、オレに力を貰った?

急にワケのわからん話が飛び出て、目端の涙が引っ込んだ。

一体なんのことなんだステラぁっ!!

 

《忠告。……たまにはご自分で確認して見てはいかがでしょうか。

この世界を生きるモノは自分に変化があった時、まずそれを行います。

貴方もその流れを身につけるべきでは?》

 

でもよ、ステータスって他人のヤツとか見れねぇじゃんか。

オレのステータスにそれって載ってんの?

 

問題(no)ありません(problem)

現在貴方は、貴方の信徒達のステータスを自由に確認できる権限を有しています。貴方はここにいる全てのモノのステータスを閲覧できます。

まずは実際に試してみては?》

 

おうあんがとな。

んじゃとりあえずそうすっか。

 

えーと、とりあえずワカバとコイシのステータス、オープンっ!!

 




閲覧ありがとうございます。

お試しの二重音声ですが見づらかったら感想欄の方でどなかたにツッコミをお願いしたい。なければ一応このスタイルで展開を早めてみようかと思います。

皆様お気に入り登録、感想、評価等ありがとうございます。

おかげでこのお話も100pt超えです。
記念の感謝のエロスが書かなきゃ(白目)


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30) 第12話 そしてオレ達は街へと向かう(2)

ステータス紹介回。
ステータス部分は流し見でいいですよ~。


名前 ワカバ

種族 草人

性別 女

職業 精霊術士(エレメンタラー)

レベル 16

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 17 (13+2+2)

耐久 15 (11+2+2)

敏捷 24 (21+3)

器用 22 (19+3)

感覚 42 (36+6)

知識 17 (13+2+2)

精神 27 (23+4)

魔力 44 (38+6)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 61 

MP 157(127+30) 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

防具:【若草の服】

装飾:【R:若草のフレアマント】(貸し出し中)

 

種族スキル

【同調】:自然由来の親しい対象を1人選択する。その対象と深く通じ合い、経験を共有する。両者が同じ経験をした時にはこの効果は経験値増加大に変更される。

【共感性/草木Ⅱ】:元となった草木たちととても強い連帯意識で繋がっている。自己の確立により、より強化された力。

 

スキル

【採取/草花】:草花に関する知識とその採取方法

【散策】:周囲を歩き、変わったモノを見つけ出す才能。

【スマイル】:素敵な笑顔。周囲の空気を変える優れたムードメーカーの資質。

 

【虹の調和を崇める者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し耐性を得る。

【RR:緑たる草花の調停者】:草木たる緑を司るヴィリスカムィの使徒。声無き草花の言葉を聞き理解できる。また草花に関わる事柄において信仰神が認める限り、神の権限を代わりに行使できる存在。

 

職業スキル

【エレメンタルセンス】:精霊を知覚できる目。その為暗闇でも視界が聞く

 

精霊術

【精霊に願い請う、草木を操り(プランツハンズ)転びに誘わん事を】:範囲対象を転ばせる精霊術。そして移動と行動を阻害する。地味だが優秀な術。

 

【精霊に願い請う、木の葉を舞わせ(イリュージョンリーフ)惑いを見せん事を】:対象に幻覚を見せて混乱させる精霊術。使い方によっては非常に強力。精神属性。

 

【精霊に願い請う、木の葉を舞わせ(リーフカッター)敵を切り裂かん事を】:対象に斬属性の木の葉を飛ばす精霊術。使い勝手のよい攻撃術。

 

【精霊に願い請う、茨を操り(ソーンバインド)敵を捉えん事を】:対象を茨で縛り動きを封じる精霊術。対象が動くと茨によるダメージを与える。

 

信仰術

【我が女神に祈り給う、そのお(シャイニング)で我らの(レイン)今を照らし給え。】:浴びたモノを対象に浄化・精神鎮静・微量回復のある美しい緑光を纏う。持続時間は10分間。

 

付加スキル

【R:完璧なる美少女Ⅱ】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

ランクⅡ:立ち振舞が自動補正され、キレイな動作となる。能力補正あり。

 

 

名前 コイシ

種族 石人

性別 女

職業 格闘家(グラップラー)

レベル 17

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 55 (48+7)

耐久 43 (37+6)

敏捷 29 (25+4)

器用 10 (6+2+2)

感覚 16 (12+2+2)

知識 18 (15+3)

精神 24 (21+3)

魔力 11 (7+2+2)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 191(176+15) 

MP 72 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

防具:【小石のローブ】

装飾:【銀色石のスカーフ(貸し出し中)】

 

種族スキル

【石の身体】:身体を岩石のように硬く、重くできる。物攻・防御にブースト。

【R:共感性/石土Ⅱ】:元となった石土たちととても強い連帯意識で繋がっている。自己の確立により、より強化された力。

 

スキル

【採取/鉱物】:鉱物に関する知識とその採取方法

【効率行動】:一定の行動を効率よく繰り返す才能

【力技】:筋肉を効率よく扱う技量。様々なことに有効

 

【虹の調和を崇める者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し耐性を得る。

【RR:橙たる石土の調停者】:石土たる橙を司るヴィリスカムィの使徒。声無き石土の言葉を聞き理解できる。また石土に関わる事柄において信仰神が認める限り、神の権限を代わりに行使できる存在。

 

職業スキル

【剛撃】:しっかりとタメたとても強力な一撃。吹き飛ばし効果あり。

【カウンター】:自身が攻撃を受けた時に行う反撃。自動命中。

【重剛撃】:さらにしっかりとタメた気による超強力な一撃。吹き飛ばしにより、その後ろのモノにもダメージ判定が生まれる。MP消費が激しい。

 

信仰術

【我が女神に祈り給う、そのお(シャイニング)で我らの(レイン)今を照らし給え。】:浴びたモノを対象に浄化・精神鎮静・微量回復のある美しい橙光を纏う。持続時間は10分間。

 

付加スキル

【R:完璧なる美少女Ⅱ】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

ランクⅡ:立ち振舞が自動補正され、キレイな動作となる。能力補正あり。

 

 

お、おや。

なんか随分と強くない?

オレまだ1レベルなんだけど、16とか17て。

 

え、みんなこんな強かったの?

 

そりゃオレなんもできん筈だわ。なんかヘコむぜ。

 

《否定。正確には先の狼たちとの戦闘を経て、貴方達が成長した結果です。勿論、貴方も成長しています。》

 

そ、そうなの? 俺ら別にウル達倒してないけど?

 

《魔物達を説き伏せ、仲間にする行為は立派な勝利判定です。経験となりえます。よって貴方達には天狼以下126体の蒼の狼の討伐に等しい大量の経験値を得ています。》

 

おおう。そ、そうなんだ。

しかし家作りに有効なスキルなんて見当たらねぇな。

しいて言えば【緑たる草土の調停者】と【橙たる石土の調停者】なんだろうけど、オレの権限とか与えられても大したこと出来なくねぇか?

 

《否定。貴方は今大地からの信仰を経てそれらを操るスキルを得ています。先程の森の変化も貴方の力が原因です。詳しくはご自身で確認を。》

 

え、アレオレのせいなのっっ!?

お、おう。よくわからんからとりあえず見てみるぜ。

 

 

名前 ヴィリスカムィ

種族 女神

性別 美少女

職業 女神見習い

レベル 17

BS(バットステータス):なし

教義/属性:虹と調和/メイン優美 サブ大地

 

 

ちょっと待ってくれっ!

色々待ってくれって、おいっっ!!

 

《了承。いかがしました?》

 

なんかオレの名前本格的にこっちの方言のほうで書かれとるんだけどっ!

 

《肯定。神が信者を得るとその信者の認識から神としての貴方の様々なパーソナルが決定されます。名称もその1つです。貴方は信者達にヴィリスカムィとして認識、浸透しています。その変更は不可能判定。》

 

え、そうなの? 神様ってそんなフワッとした感じなの?

 

《肯定。神とは崇拝者の主観によりその在り方を大きく変える生き物です。それらの思いを1つにまとめる受け皿のようなモノと思って下さい。》

 

あ、そう。じゃあもしオレがみんなにエロいヤツとか思われたら……。

 

《それに類ずる属性が貴方に付加され、信者にそう認識され続けます。》

 

公開処刑じゃねぇかっっ!!

お、おう。もう悪ぃことはできねぇなこりゃ……。

あと種族が女神になっているのもそこらへん関係か?

 

《肯定。貴方は女神見習いになった時点で人を超越した存在となりました。》

 

そっか、そっかぁ……。オレもう人間じゃねぇんだな……。

続き見んの怖ぇわコレ。はぁ、じゃ覚悟決めるか。

 

《ステータスを開示します。》

 

 

名前 ヴィリスカムィ

種族 女神

性別 美少女

職業 女神見習い

レベル 17

BS(バットステータス):なし

教義/属性:虹と調和/メイン優美 サブ大地

 

筋力 31 (25+6)

耐久 36 (26+7+3)

敏捷 30 (24+6)

器用 23 (18+5)

感覚 18 (11+4+3)

知識 13 (9+4)

精神 49 (37+9+3)

神力 56 (45+11)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 154(139+15) 

MP 222(207+15) 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【剣さんの脇差】

防御:【胸/銀色石のスカーフ】+【若草スカート】

装飾:【赤い騎士マント】

 

種族スキル

【R:女神のオーラ】:あらゆる種族から一目置かれる神のオーラ。交渉判定に高い補正あり。

 

スキル

【喧嘩殺法】:素手を使ったルール無用の戦闘術。奇襲効果あり

【抵抗】:あらゆる抵抗判定に+補正。

【説得/無法者】:あらくれ者を説き伏せる交渉術

 

職業スキル

【R:信者との絆】:信者のステータスを確認でき、信者に信仰度による能力修正を与える。

【R:信仰の息吹】:信者が専用信仰術を修得可能になり、自身の可視化の信者は職業の制限を超えて専用信仰術を修得できるようになる。

【RR:神々の奇跡】:自らの教義や属性に関わる奇跡を1日に1回引き起こせる。

ヴィリスカムィの場合、虹と調和と優美と大地。虹なら即座に空に虹をかけたり虹で橋を作ったりできる。調和なら僅かでも可能性のある場合、調停や公正な取引が成立する。優美ならその美しさでイベントが発生。つまり不思議なことが起こる。大地なら即座に石の建物や大きな壁を作れる。

 

神術

【我が根源よ、光となりて(シャイニングレイン)今輝かん】:浴びたモノを対象に浄化・精神鎮静・微量回復のある神々しい虹彩光を纏う。持続時間は10分間。

 

【我が根源よ、癒やし(ビギニング)となりて(ヒール)傷を癒せ】:9人までの対象のhpを小規模回復。同一対象を3回まで選択可。軽度バステ回復の追加効果あり。

 

【我が根源よ、防壁となりて(プロテクション)汝を護れ】:20m内の全対象を攻撃から護る光の防壁を作る。割り込み使用可。

 

【我が根源よ、怒りとなりて(ホーリーレイ)我が敵を討て】:9人までの対象を神聖な光で攻撃。同一対象を3回まで選択可。死霊・悪魔系の敵に特攻。

 

【我が根源よ、祈りとなりて(ホーリーブレス)彼らを導け】:20m内の全対象を祝福し、5分間全行動に補正を与える。

 

ユニークスキル

【RR:大地母神】:大地に連なる対象に強力な発言権を得る。大地は神の言葉に従い、その形を変える。しかし速度はそんなに早くない。

 

【EX:栄光の手】:手で掴みとった対象に【完璧なる美少女】を与え、元の姿に基づくたヒト系種族に変化、ソレに類ずる専用衣裳を与える。この時ダメージ判定を含んだあらゆるバットステータスが解除される。専用衣裳はこのスキルの効果を弾く。

 

付加スキル

【RRR:完璧なる美少女Ⅲ】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

ランクⅡ:立ち振舞が自動補正され、キレイな動作となる。能力補正あり。

ランクⅢ:性別が美少女となり、種を超絶した美しさを得る。

また言動補正が強化され、より美しい言葉となる。能力補正あり。

 

 

いやいや、なんかすげぇ強くなってねぇかコレっ!

この前見たステータスと明らかに違いすぎるんだけどっっ!!

 

《肯定。貴方の行動の結果です。》

 

まず、なんでオレワカバよりレベル高えのよ。絶対オレあん時ワカバより役立たずだった筈だけどっ!

 

《否定。前回の戦闘のMVP判定は貴方です。狼たちを説き伏せ、仲間にした功績の多くは貴方にありますので。よって他のモノより多くの経験値を得ています。》

 

次、この神々の祝福って出来ることフワっとしすぎてなんかよくわからんけどっ!

 

《先程の森の変動はこのスキルが適応された結果です。中位神クラスに与えられる非常に強力なスキルです。使用時は注意して下さい。》

 

オレって駆け出し見習い女神だよねっ!

なんでそんな大層な力使えるんですかねっ!!

 

《回答。貴方がヴェンディーナの大地の信仰を得た時からです。

具体的には先程ワカバを生き返らせたことが決め手になりました。これにより信徒の数が増大、あなたの職業ランクが上昇した結果です。神はレベルでなく信徒の数によってその職業ランクを上昇させていきますので。》

 

この大地母神ってなにっ!!

 

《回答。大地から信仰を得た貴方はサブ属性として大地を得ました。それによって得られたユニークスキルです。本来神は自分の属性ユニークを先に身につけるモノなのですが、いきなりサブ属性ユニークを修得した人物は貴方が始めてです。

 

現在システム中枢にこの偉業を報告し、新たな称号スキルの獲得を申請中です。》

 

もうやめたげてぇ、そんな一片に飲み込めねぇからオレっ!

と、とりあえずな。ワカバの家作りに役に立つ力ってのはオレのこの大地母神ってヤツの【大地は神の言葉に従い、その形を変える】ってので合ってんのか?

 

《肯定。貴方が認めるならば彼女らはこのスキルの力を有効に活用できます。》

 

そりゃ認めるけどよっ!

う、くそぉ、確かにそりゃコレがアリャ家作りとか便利そうだけどさぁ。

だけどさぁっ!!

 

「神様お願いっ!」「……神様いいでしょ?」

 

結構な時間決めかねてたオレに対し、ワカバとコイシが目を潤ませながら真っ直ぐにお願いしてくる。そんな表情は反則だろがっ!

 

ああ、もう。分かったよ。

コイツラのスキルがスゲェ家作りに役立つこともわかったし、コイツラにこんな風にお願いされたら、オレだって覚悟決めなきゃなんねぇだろうがっ!!

 

オレは色々飲み込んで彼女達の問いかけに答えてやることにした。

 

だが断る(でもヤダ)っ!!」

 

「そこは認める流れでしょっっ!!(つっこみながら)」

「あらあらぁ?」

 

アンダーちゃんに激しく突っ込まれ、しこたま怒られたオレは渋々2人との分れを認めることになっちまった。

 

うう、ワカバぁ、コイシぃ……。

 

これは(oh my)ひどい(Goddess)。》

 

 

ほんで今現在。

オレはメイルさんとツルギさん、んでアンダーちゃんの3人で街へと向かっているわけだ。

 

実はオレの服装も大分変わってる。

森を出る前、みんなが服をワケてくれたからだ。

……さすがに森の妖精のまんま街に入るのは無謀だったか。

 

今のオレは、

メイルさんからの騎士が付けるみてぇな立派なマントをそのままに、

ツルギさんから半袖のサムライの服みてぇな空色の着物を、

ワカバから少し豪華になった若草の腰布、……スカートを。

コイシから貰ったキラキラの布を腰回りに巻いて、

天狼のウルから貰ったすげぇ毛並みの蒼いふわふわファー付きブーツを、

 

ほんでアンダーちゃん(あのアホ)から貰った女物の下着を履いてる。

 

いや色々みんなから服貰った後に、でも下着だけどうしよっかって話になってたんだけど、そん時アイツがいきなり、

 

「仕方ないにゃあ、じゃあおねぇさんの予備をあげるよご主人さまっ!」

 

とか言い出して自分のハンドバックから女モンの下着サラッと出してくんのよね。もうね、サスガにキレたわ。

 

なんで(どうして)そんなん(予備が)持ってんのに(あるのに)、あの時自分の(自分の)下着(履いてる)脱いで(下着)渡して(渡した)んだよっっ!!(のよっ。)」って。

 

そったらもう満面の笑みで、

 

「ダッテアタシ以外の下着、ご主人さまに履いて欲しくなかったモン。」

 

とか言いやがったんで、ちょっと本気で肉体言語した(話し合った)ぜ。途中で倒れてたアイツは今んトコ俺らん中で一番レベル低いからな。

力が正義だってことが少しわかったオレだった。フフフ。

 

ま、本人全然堪えてないんだけどね。むしろ平常運転です。おのれ小悪魔。

 

あでもその後なんかスキル使ってオレの着てる装備の見た目整えてくれたのは普通に感謝してる。……そういやウルん時もオレの命の恩人なのか?

 

も少しだけ優しくしてやったほうがいいのか、オレ。

なんとも悩ましい問題だった。おのれ小悪魔。

 

そうそうあの後他の娘達のステータスも確認したのよ。

 

 

所で、ステラ。

 

《確認。なんでしょうか?》

 

オレらの戦った天狼のウルってさ、めっちゃ強かったけど実際ステータスどうなっとんのよ。

 

《了解。現在のモノになりますが彼女のステータスを表示します。》

 

 

名前 天狼ウル

種族 蒼の狼人

性別 女

職業 魔獣(ビースト)

レベル 34

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 47 (43+4)

耐久 36 (33+3)

敏捷 65 (60+5)

器用 32 (26+2+4)

感覚 57 (53+4)

知識 22 (17+1+4)

精神 35 (32+3)

魔力 22 (17+1+4)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 593(523+70) 

MP 303 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【R:天狼の爪牙】

防具:【RR:蒼天毛のパレオ】

装飾:【RR:蒼天のブーツ】

種族スキル

種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル

【超嗅覚】:獣由来の鋭い嗅覚。捜索判定に強い補正値を得る。

【RR:命の共有】:仲間の命を受け取り、自身の傷を回復する。要1アクション。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【捜索】:何かを探し出す為の技術。

【戦略眼】:戦術を俯瞰し、正しい選択を掴み取る戦闘経験からくる確かな判断力。

【指揮】:多くの集団を正しく率いることのできる技術。

【虹の調和の狂信者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し強い耐性を得る。

 

職業スキル

【RR:群生体】:群れで意識と感覚、命を共有している。群れが滅びない限り死んでも身体が回復、いずれ蘇る。

【噛み付く】:牙による鋭い噛みつき。継続すれば対象の行動を制限できる。

【R:連撃】:確率で再行動。

【R:疾風の一撃】:超高速移動を伴う範囲攻撃。

【RRR:天狼の怒り】/自身を含む、群れが受けたダメージが大きい程大ダメージを与える強力な噛み斬り攻撃。

 

【RRR:BOSS適正】:一般の個体より優れた能力を持つ。HPが段違いに多く、バステ耐性を持つ。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

はぁっっ!

お、オレらこんなんと戦ったのっ?

オレレベル1だったのよ、勝てるわけねぇじゃんソレっ!

 

《肯定。本来勝利は不可能判定でした。まさに貴方達はあの時確立を超えた最良の結果を掴んでいる。》

 

つ、ツルギさんとかはオレよりもちょっとレベル高かったんだよな?

 

《ツルギが当時17、メイルが14、コイシが5、ワカバ・アンダーが1です。コレ以降はこのようなレベル差での遭遇戦は避けたほうが懸命かと。奇跡は安売りしていません。》

 

お、おう。

んじゃ現在の彼女らのステータスも確認しとくわ。またなんかあったら怖ぇし。

 

完全に(Yes my)同意(goddess)

 

 

名前 メイル

種族 鎧人

性別 女

職業 重騎士(アーマーナイト)

レベル 19

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 36 (34+2)

耐久 56 (52+4)

敏捷 22 (17+3+2)

器用 14 (9+3+2)

感覚 27 (25+2)

知識 24 (19+3+2)

精神 29 (27+2)

魔力 18 (17+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 276(236+40) 

MP 110 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【シールドガンドレッド】

防具:【R:混合式硬革鎧】(鎧化により重鎧化)

装飾:【R:赤い騎士のマント】(貸し出し中)

 

種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル

【鎧化】:身体を鎧のように硬く、重くできる。物攻・防御・HPにブースト。

 

スキル

【魔物知識】:経験からくる豊かな魔物に対する理解。

【抵抗】:あらゆる抵抗判定に+補正。

【気遣い】:仲間の状態変化を見逃さない感性スキル。

【虹の調和を崇める者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し耐性を得る。

 

職業スキル

【カバー】:周囲への攻撃を自身が代わりにうける。連続使用で成功率低下。

【カットライン】:対象の攻撃進路に立ちふさがり、進行を止める防御技。ヘイト大上昇。

【ヘイトガード】:自身にヘイトを集める防御行動。防御力・カバー成功率上昇。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】

:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

名前 ツルギ

種族 武器人

性別 女

職業 戦闘強者(バトルマスター)

レベル 21

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 54 (50+4)

耐久 31 (29+2)

敏捷 62 (57+5)

器用 46 (43+3)

感覚 25 (21+1+3)

知識 14 (10+1+3)

精神 25 (23+2)

魔力 11 (7+1+3)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 199(179+20) 

MP 94 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【R:強さを(ノー)求め刀を捨てた剣(ノーネームズ)

防具:【士道装束一式】

 

種族スキル

【剣化】:手足での攻撃に斬撃適正をつける。物攻に強ブースト。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【解体】:対象を正確に解体する知識。戦闘技量に補正あり。

【R:武芸百般】:武器・距離を選ばぬ武芸の技量。荒々しくも頼もしい戦闘技術。

【知覚】:何事かに気づく感覚の鋭さ。

【虹の調和の狂信者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し強い耐性を得る。

 

職業スキル

【斬】:敵の急所を狙った鋭い一撃。高威力、高クリティカル攻撃。

【一閃】:大きく振りかぶる範囲攻撃

【R:連撃】:確率で再行動。

【R:兜割り】:対象の防御値を半減させる強力な一撃。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

名前 アンダー

種族 下着人

性別 女

職業 斥候(スカウト)

レベル 8

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 16 (15+1)

耐久 18 (17+1)

敏捷 23 (22+1)

器用 17 (16+1)

感覚 19 (18+1)

知識 14 (13+1)

精神 11 (9+1+1)

魔力 12 (11+1)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 46 

MP 35(30+5) 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

防具:【白色のフリルワンピース】

持ち物:【身だしなみセット(予備の女用下着含む)】

 

種族スキル

隠し飾るモノ(ドレスアップ)】:指定した衣裳の形を微調整できる。隠形・演技に高い補正を得る。

 

スキル

【運動】:無茶な動作を可能にする優れた運動能力。

【隠形】:なにかから隠れる為の技術。スニーキングなどにも使える

【知覚】:何事かに気づく感覚の鋭さ。

【演技】:なにかを演じる、もしくは変装する技術。

【遊び人】:何かしら楽しいことを見つけ、飛びつく才能。

【虹の調和に祈る者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値1つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し少し耐性を得る。

 

職業スキル

【斥候の嗜み】:鍵開け・罠感知・設置に関わる技術と知識

【コモンスキル取得】:広い範囲のコモンスキルを身につけられる。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

 

成長した後でも全然勝てそうにないもんねオレらウルに。

正直ウルさんって呼んだ方がいいか本気で悩んだぜ。

一回そう呼んだらめっちゃ悲しそうな顔されたから結局は呼び捨てのままだけど。

 

そんな捨てられた犬みてぇな顔されたらよ……。

んなことを思い出してた時だ。みんなが話しかけてきたのは。

 

「ヴィリス様ぁ、そろそろ街が見えて来ますわぁ。」

「おー、街っていうにはちぃちゃい感じ?」

「ま、普通といった所でござるよ。小悪魔殿は随分大きな街をご存知なのですな。」

 

「アタシ海外工場生まれ(海外生まれ)都市部販売品(シティガール)なんでっ!!」

 

モノは良いようである。やめて下さい。オレが恥ずかしいです。

 

んなモン(そんなことは)誇らしげに胸張りながら(胸を張って大きく)言うこっちゃねぇ(言うことじゃ)だろがっ(ないでしょうに)安物(品のなさが)買ったんが(知れてしまい)バレる(ます)ヤメレ(おやめなさい)。」

 

「はーい♪」

「ふふ、別に恥じるようなことじゃありませんのにぃ。」

「主殿はホント、慎ましい方でござるなぁ。」

 

いえ、恥ずかしいです。特売の不良在庫品なんです。彼女。

ヤメて下さい。オレの暮しっぷりの悪さが全部バレてしまいますから。

 

《不可能判定。きっと彼らには伝わりません。ご安心を》

 

お、おう。ちなみに森を出る時他のみんなからオレの名前は極力伏せたほうがいいって言われてな。みんなにはヴィリスって呼んで貰ってる。

 

なんでもカムィってコッチの古い言葉でそのまんま神って意味らしくてな。いらん混乱招くかも知らんのだと。偽名を名乗ったほうがいいかもって言われたがそれは断固拒否した。だって外国人の身分詐称ってもう怖いじゃんね、色々?

 

ホントは様づけもヤメて欲しかったんだけど、ソレは無理だったぜ……。

ままならねぇ。

 

しっかし色々あったがやっとコッチの人間と触れ合えるな。

遠目に見えてくる街の入り口には門番の人が2人立っていた。

 

身分証明なんてないオレは出たトコ勝負、誠心誠意、腹ぁ割って話してみるのみだ。なるべく礼儀正しくしてまずは信用を得ないとな?

 

オレは最高の笑顔を作って会釈すると、覚悟を決めて門番に声をかけたんだ。

 




NEXTSTORY
「オレとアレの日常会話」

閲覧ありがとうございます。

やっと街に、街にぃっ!!
ここまで30話とか、ひどい話だわ。
次回、ガッテススマイルが猛威を振るうっ!




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31) 第13話 オレと門番の日常会話

ちょっと実験的な回です。
()内は主人公の内心ですね。
二分割にしたほうがよいのかこちらの方が読みやすいのか。
使い分けかしら?


リーヴァイの街。

 

ヴェンディーナ大陸の西部。

東に険しきローラン山脈、西と南を広大な自然地形型のダンジョン、アデル大森林に囲まれたこの街はまさしく辺境と呼んでいい場所にある。

唯一北に開けた街道からは港町エンフィールドの海路を使って多くの冒険者達と、ダンジョン資源目当ての商人達が訪れる。

 

典型的なダンジョン資源活用型の交易都市、それがリーヴァイという街だ。

 

俺はそんな場所で長く門番を続けている。もう12年になる。周りからはベテランと呼ばれる存在だ。

 

別に門番なんかになりたかったわけじゃない。

 

ただ若い頃、冒険者だった時分に無茶した結果。それ以外に他にいい選択肢が見当たらなかっただけの話しだ。ありふれた豪戦士(ウォーリア)に過ぎない俺には、地方都市の門番位がお似合いだったってこどだろう。

 

なかば腐りながらも12年、只々街の外に立ち続けた。

 

好きでなくとも仕事は仕事。給料分は働いて、それ以上はごめんこうむるのが俺の変わらないスタンスってヤツだ。

 

だがどんな仕事でも長く続けば当然慣れるし経験も積める。それが俺たちみたいな稼業なら当然人を見る目が肥えてくるってのが物の道理だ。

 

疚しいことを考えているヤツ。お忍びのお貴族様。訳ありのカップル。そんなもんにどうしても鋭くなっちまうモンなのさ。

 

だから俺はその日その女にあった時、稲妻が落ちたみてぇな衝撃を受けた。

 

これは1人のやる気のない門番だったこの俺が、運命ってヤツに出会っちまった時の話なんだ。

 

 

その日はやけに森が騒いだ。

ザワザワと風も強くないのに音をたて、まるで陽気な歌でも謡うような調子のそれが街にまで届いてきていた。それがなんとも不気味に聞こえた。

何か悪ぃ事が起こる前兆の様にしか感じれなかった。

 

最近のアデルの森では物騒な話が絶えない。

 

やれ中層域でモンスターパレードが起こっただの、本来人を積極的に襲わない筈の森の番人達が積極的に冒険者を襲い出しただの、しまいにゃ中層の覇者たる蒼天を往く者までそれに加わっただの、なんだの。

 

悪い噂にゃことかかねぇ。

 

自慢じゃねぇがこのリーヴァイの冒険者の質は高くねぇ。下層域の難度の割りに、稼ぎがすくねぇこの大森林は一等級どもにゃ不人気なんだ。

どいつもこいつも稼ぎやすい中層域で自信をつけたら、エンフィールドから旅立ちだ。ま当然だな。命の値段は誰だって少しでも高ぇ方がいいからな?

 

そんな中で中層付近で活動してた名だたる冒険者が何人もおっ死んだんだ。

 

自然と森の調査の方も後手後手になるし、異変を感じて感のいいヤツらはそうそうとこの街を出ていくって寸法だ。街の活気は明らかに減った。騒ぎが収まるまで街の娼館に引きこもってる冒険者達も少なくねぇ。

 

そんな時だ。

 

あの女達が森の側から現れた。ここ数日、警戒令を出されて一握りの冒険者たちにしか立ち入りを許されていねぇ筈の、危険区域の中からだ。

怪しさここに極まれり。まさに疑ってくれって言ってるようなヤツらだった。

 

だがその女を見た時、俺の頭ん中は一瞬で真っ白になっちまった。

 

いや、女達っていうべきか。違うな。やっぱり。()だ。

確かに美しい女達だったがな。

 

立派な革と金属混合の、見ただけで動きやすさと丈夫さを両立させてる出来のいい鎧だって事がわかるような代物を身につけた金髪の女。なんでもないように見えてその実常に周囲の動きに気を配る女の動きはまさに優れた防衛職のそれだった。

 

その反対の長い黒髪を後ろ頭に縛った女。東国由来の士道装束とかいうヤツを身につけたその女は、上だけサラシに前をはだけた下襦袢なんてぇ格好をしてやがる。仲間とふざけながら歩いているようで、こいつがなんともおっかねぇ。

ちょっとした足捌きや動作、そんで腰にぶら下げた業モンからそいつが凄腕の攻撃職だって事実をにじませてやがる。

 

ほんでそいつらの周囲をグルグル楽しそうに周りながら歩いてくるセミショートの茶髪の少女は斥候だろう。冒険向きとは思えねぇ白のフリフリのワンピース着た、周りの奴らとはなんとも釣り合わねぇ女だったが、情報収集(女の技)が専門なんかも知れんな。斥候ってのはなにも戦う事が仕事の全てじゃねぇからな。

 

最後に、ああ。最後に奴らの中心にいるその人だ。

 

奇抜な格好をした女だった。

上級騎士が仕立てるような高級で質のいい赤い襟首の長いマントに、

上は東国の、空色の袖の短かい着物を着ている。

そうかと思えば若草色の、布の先っぽが葉っぱみてぇに房別れした、やたらフワッと広がった丈の短けぇ妖精みてぇなスカートを履いていて。

 

このどうみても合いそうにねぇ着物とスカートの組み合わせを、たった一本銀色をベースに橙がそれを彩る煌く腰布を巻くことで見事に調和させていた。

 

そんで足元にゃあ星空見てぇに美しい蒼い毛皮のファーで飾った見事すぎるブーツがある。蒼い毛皮を持つ生き物なんざここらへんにゃあ1つしかねぇ。森の番人の、しかもアレは幼生体の毛皮なんかじゃ断じてねぇ。成体種でも上位も上位。

 

まるで蒼天を往く者の毛をあしらってこさえたような。そんな見事な逸品だった。

 

こんな組み合わせの服なんてよ。誰にだって似合うはずがねぇ。

そりゃあ1つ1つは美しいが、赤と蒼と空と緑、んで銀色に橙なんて組み合わせ。どうにも色を集めすぎだろ。とりあえず揃えてみたってワケにしてもひどすぎる。

 

そんなもん着て喜ぶのは自意識過剰なお貴族のボンボンか、成金上がりの底の浅ぇ商人ぐれぇのもんだろう。

 

でもよ。この女はそうじゃねぇ。似合ってるんだ。この服が。

なによりも、そうなによりもだ。

 

足りない色を埋めるような、金糸と呼ぶにゃあ綺麗すぎるその髪に、絹より綺麗な白い肌、そしてなにより紫の、深い夜空を閉じこめたような紫水晶(アメジスト)の瞳の色が、春の息吹を形にしたような女の柔らかな唇が、その色の全てを受け止めていた。

 

全ての色に包まれて女はなお美しい。いや包まれているからこそ美しかった。

 

しかもこの女はその所作1つとっても完璧だ。どんな上級貴族だってここまで綺麗な佇まいを、そうあり続けることなんざできんだろうさ。どの瞬間、どの角度から見ても、女はまさに美の化身だった。

 

もしここに詩の都(リフテンテリス)の糞詩人どもが居たらさも見ものだったろうにな。なぜなら奴らの謡う、ある筈のない天上の美が今ここにある。

 

(よし第一印象が大事だ。いっちばんの笑顔でまずは一発好印象を狙うぜっ!)

 

そんな女がだ。

オレ達みてぇな場末の門番相手に向けてよ。多分世界一綺麗な笑顔で持って、会釈を1つ投げかけてきた。そいつを見た瞬間、俺の全てはまた真っ白になった。

 

神々しい笑顔ってのは、きっとコイツの事を言うんだろう。

 

隣から、乾いた音が1つ鳴り響く。

どうやら新米の同僚が見惚れるあまりに商売道具(衛市の槍)を手から零しちまった音らしい。ま、わからなくもないがな。ああ。オレも気を抜いたら落とししまいそうだ。

オレも1つ、ツバを飲み込む。

 

(あれ、もしかして滑った? なんかめっちゃ槍とか落としてるけど大丈夫コレ。だ、大丈夫。信じろ、今のオレはもう悪人面じゃねぇ。みんな美人だって言ってくれてたし、多分大丈夫。このまま笑顔で押し切るぞっ!!)

《……。》

 

平民ってことはありえねぇ。浮世絵離れした美しさってのは相応の環境が必要だ。貴族、しかも上級貴族かそれ以上。あるいはドコぞの王族か。

いや、まさかなぁ。一瞬本気で神様なんじゃないかって思ってしまう。この人外の美貌を見ているとそんなまさかが頭によぎる。まったく笑えねぇ話だ。

 

神々も貴族も、どっちも俺たち平民の末端になんざ鼻にもかけねぇ。隣国の1都市だったウルムントは、とある女神の逆鱗に触れて一夜にして滅びたって話だった。平民のなんも知らんくれぇのガキから抱きつかれたってだけの理由で。

 

そんなもんが俺たちに笑いかけるかよ。

 

俺がそんな事を考えて、頭の中をお貴族様用の対応に切り替えたその時だ。

 

(よしここは1つお決まりの文句で1つ。フレンドリーに話しかけて緊張を消していくぜっ!)

 

いやぁ、(街を護ると)大変なお仕事(いう立派なお役目)お疲れさ(本当に頭が)まです(下がります)この街に(こちらの街へと)入る為の(滞在する為の)手続きって(申し届けは)ここで(こちらで)できるん(受けて)ですかね(下さるのでしょうか)?」

 

彼女が俺たちのような下々のモンに、丁寧に頭を下げた上で、労いの言葉をかけて来たんだ。しかもお貴族様にありがちな嫌味なんて欠片も含まねぇ、純真そのものの笑顔でもって。

 

あ、ありえねぇ。

 

俺らみてぇな仕事してるモンに心から気遣いを向ける貴族なんていやしねぇ。彼女の神々しさも手伝って、その言葉がオレに染み込んでくる。

今まで嫌々やってたこの仕事が、本当は立派なもんなんだって誇れちまうような。

 

そんな一言だったんだ。

 

(えっコレ完全に固まっちゃったんだけど大丈夫?え、なに、鼻毛出てたオレ?)

《否定。何を気にしてらっしゃるのですか。》

 

「女神さま……。」

 

そこで新入りが思わず1つ呟いた。やめろ。その言葉を今言うな。俺までバカな事考えそうになっちまう。そん時だ。 

 

(えぇ)(あの)なんでわかっ(どうしてわかっ)あっ違う(あっ、違うの)違います(違いますから)オレ(ワタシ)女神なんか(女神なんてモノ)じゃない(じゃありません)ですからっ!!(からっ。)

 

(まっじぃ、つい反応しちまったっ! だっていきなりなんだもんよぉっ!!

大丈夫、まだ大丈夫バレてない。多分、きっと大丈夫っていってよっ!)

全面的(oh my )に否定(goddess)

 

決定的な言葉が聞こえた。

 

「あちゃあ。」

「あらあらぁ?」

「くっくっく、……いや嘘の下手な御方だ。」

 

(オメェら笑い事じゃねぇからっ!!)

《人も女神も諦めは重要です。》

 

ああ、聞こえちまった。

オレも、相方も息を飲み込むことすらできねぇ。理屈じゃなく、本能で彼女が本物だってわかっちまった。だってよ。

 

こんな狼狽えてる時ですら、神々しいんだよ彼女は。

 

それが何よりの証明だった。

その瞬間、ウルムントを思い出し戦慄する。もし俺と相方が対応を間違えば、この街は終わりだ。なぜなら神とはそういうモノだ。

 

いい知れないプレッシャーが俺に奔る。新入りもどうやら事実に気づいたらしい。その顔に張り付いた乾いた笑顔が何よりの証拠だ。

 

未だに俺たちの前で言い訳を続ける女神に、俺は慎重に言葉を選んで話しかける。

 

「失礼いたします。貴方様は先程この街に滞在したいとおっしゃられていましたが、どのようなご用件でいらして下さったのでしょうか?」

 

(やったら丁寧な門番だな。ここいらってそういうのに煩いんかな。まいいや。)

 

森から(森の中から)ここに(この街に)来る時(至るまでに)森の奥のほうで(かの森の奥地で)暴れてる(騒動を巻き起こす)憎悪の王ってヤツが(という存在が)いるって話を(いることを)森ん中で(森のモノから)聞きまして(聞きましてね)それを伝えに(それを報せに)きたんですよ(やってきたのです)。」

 

そこで女神が俺たちに語った内容は今まさにこの街の者は喉から手が出る程欲しい情報だった。森で起こっている騒動に明確な黒幕がいる。そんなことを、わざわざこの女神は俺達に伝えに来てくれたのだという。

 

しかし女神は一体誰からそんなことを聞いたのか。それを我々に明確に報せるモノが彼女の足元にあった。星空のような深い蒼の毛皮を用いられたブーツ。

あれがまさしく蒼天を往く者の毛皮で出来たものだとしたら。

 

この女神は我々の為に森の番人を、蒼天を往く者をその手でもって鎮めてくれたのではないだろうか。蒼天を往く者の毛皮は自身が認めたものにしか贈られることがなく、無理やりに得ようとしてもその輝きはたちまちに失われてしまうという。

 

ならばあのブーツの輝きこそが、この方が森の異変を鎮めて下さった、なによりの証拠ではないのだろうか。

 

ゴクリと、大きく喉がなる。

 

期待するな。我々人間の生き方を気にするような神々なんて居やしない。俺は冷静にならなければならない。

 

(うん? なんか考えこんでるな。まぁそりゃこんな話聞きゃだれでも怖ぇよな。とりあえず話題を変えてみるか。)

《肯定。畳み掛けましょう。》

 

それと(それとですね。)こっちが(この話が)本命でして(私の本意なのですが)ここで(この街で)みんなで(全ての者が)楽しく(喜んで)生活する為に(暮らせるように)オレらの(ワタシたちの)仕事を(役割を)見つける(探し出す)為ですね。」

 

おお、女神よっ!

 

貴方は我等に道を示す為にこの地に訪れたというのですか。

それを実現させる為に、貴方は自らの役割を探していると。

相方が膝をついて、女神に祈りを捧げている。

 

ああ。俺だってそうしてぇ。でも俺にゃあ確認する義務がある。

 

(お、お、お。なんか感動してくれてんな。好感触なんじゃないコレ。きたんじゃないか、コレっ!!)

《肯定。好感触であることは確かです。》

 

「あなたは我々と共にあって下さると、そうおっしゃるのですか?」

 

真正面から問いかけた。この方なら、答えてくれると思ったから。

俺は今、ここで。街の為に問わねばならない。

素直にそう思った。

 

(うん?そりゃ一緒に仕事すんだし当然のこったろ。ま、すんげぇ真面目に聞いてくるし、こりゃ一種の面接みてぇなもんなのかもな。オーケーオーケー!)

《……》

 

もちろん仕事(もちろんそれが役割)ですから。やっぱ(当然ながら)周りの(近くにある)人達との(人々と)協調性は(共に歩み、進むことは)一番大事(もっとも大事な)ですよね(ことでしょう)?」

「……おお、おお。なんという、なんて事だ。」

「……ああ、女神よ。この方こそ真たる女神だ。」

 

なんてこったっ、ああ、なんてこったっっ!!

 

人間(我々)を思い降臨して下さった女神がいる。人間(我々)の苦しみを思い、我等の元を訪れてくださった女神様がいる。

人間(我々)に喜びを示す為に、共に喜びを分かち合う為に、役割を求めてわざわざ訪れて下さった本当の、本物の女神様だっ!!

 

こんなチャンスは二度とないっ。

奇跡は二度と訪れないっ!

ウルムントの連中は一夜にして滅んだ。けどな。なら逆だってあっていいだろうが。この女神と共に生きることで、皆が喜びを掴む街があってもいいんだっ!

 

ちきしょう、女神様の言う通りだっ!

門番だって立派な仕事だったっ。誇らしい仕事だったっ!

 

だって今、俺は今、運命に出会っているっ。

 

輝かしき街の未来という運命に、俺は今出会っているぞっ!!

聞かなければならない。我等と共にあるべきその名を。

我等は知らなければならないっ!

 

(なぁめっちゃ門番の人ら悩み始めたんだけど。これオレ面接落ちたんかな?)

《否定。多分合格だと思います。》

 

「どうか我々に御名前をお教え下さい。」

(ええ)うす(わかりました)イリス(ヴィリス) カムイ(カムィ)っていいます(と申します)。」

「「虹の橋の(ヴィリス)(カムィっ)!」」

 

(この反応見る度に複雑だわぁ。やっぱオレの名前って方言読みなのな?)

《肯定。この世界では特定位置にある母音の発音が変化しますから。》

 

思わず相方と2人で女神様の名を叫ぶ。

そうだ、そうだともっ!

その名こそ、この女神様にはふさわしいっ!

 

全ての色を讃えたそのお姿の尊さは、まさに虹そのものじゃないかっっ!!

ああ、偉大なる虹の女神。我等を晴れ間へと導く美しき天の御橋よっ。

 

俺は今、門番として始めて給料以上の仕事に出会ったっ。

俺らは2人頷きあうと、女神にこの心情を告げる。

 

「女神ヴィリス、どうかここは我々におまかせを。」

「私どもが責任をもって上の人間に話を通します。」

 

(おおお、なんかめっちゃええ人たちじゃん。門番さん直々に上に話通してくれるってさ。これで憎悪の王のことも一段落って感じじゃね?)

《準否定。通されるのはそれだけじゃないと思います。》

(んだよそれ。ま、とりあえずお礼だお礼。)

 

(ああ)ホントですか(本当ですか)なんか(色々と)何から何まで(お手数をおかけして)すいませんね(申し訳ありません)。」

「何をおっしゃるのです。貴方のなさることに比べればこのような事いかほどでもありません。」

あ、はぁ(そうですか)。」

 

(おいおい、どんだけ働かせる気なんだっ。ブラック、ブラック禁止っ!!)

《落ち着きましょう。希望的観測ですが大丈夫ですよ。》

 

「では女神様。貴方様を貴賓室にご案内してから、私は上のモノへこの話を通して参ります。」

 

(あれ、これオレ女神ってことバレてるの? 嘘っ!!)

《今更なにを仰っているのか理解しかねます。》

(うう、なんかオオゴトになんのヤダなぁ。貴賓室とか絶対緊張してしんどいだろ。ここはもう日本人の遠慮の心を発揮してどうにかしようっ!)

 

(いえ)、お構いなく。なんか(色々と)そこらへんで(この辺りで)時間つぶし(楽しませて)ときますんで(頂きますので)。」

「いえ、しかし。」

 

(遠慮で押し切るっ!!)

《疑問。それは本当に遠慮なのですか?》

 

そういう(飾らない)雰囲気の(そのままの街並みの)方が性にあって(肌にあうもの)ますし(でして)。この辺りで待ってますよ(待たせて頂きますね)。」

「わかりました。それでは私は失礼しますっ!!」

 

相方にその場を任せて俺は一路、衛兵の待合室へっ。

まずは衛兵長を、それから市長を、説得しなければならんっ!

 

走れっ、急げっ、熱意を燃やせっっ、やる気のない(ガウリィ)門番(レオルド)っっ!!

 

女神様を待たせるなっ!

必ずチャンスをものにしろっっ!!

 

女神様から己の仕事(役割)立派と言われた(認めてもらった)、門番の意地を見せてやるっっ!!

 




NEXTSTORY
「アレ達とオレ」

閲覧ありがとうございます。
アンケートの結果に従い街についたら大立ち廻りよ。
するぜぇ、もうなんでもカンでも美少女にしてくぜぇっ!!

実は楽しくてしょうがないw


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32) 第14話 オレ達と建て替え物件(1)

タイトル予告が適当になってしまってスマヌ。スマヌっ。
どこをアレで区切れば良かったか分からんかったんじゃよ。

ハーメルンの評価100pt達成を記念ヒロインアンケート終了しました。
結果はワカバ・コイシ13票でトップに輝き、見事アレな小説の題材に決定です。
時点はアンダーの9票。追い上げがすごかったぜ。
それでは後日行われるアレな話の更新をお待ち下さいませ。

皆様アンケートへのご協力ありがとうございました!
次は200pt達成の時にまたやろうと思います。
出来たらいいなぁ(遠い目)





なんのかんの街へと入ることが許されたオレ達はしばらく街のお偉いさんの到着を待つってことで街の門付近をうろちょろしてみることにした。

 

なんか門番さんがオレらの事を心配してくれて一緒に回ってくれるって言ってきたけど、貴方絶賛仕事中ですよね?

当然やんわりとした日本の気遣い、遠慮の心でもってコレを断る。

 

《提案。あなたの遠慮の使い方には疑問を感じます。再定義を。》

 

聞こえない。聞こえない。

うぉぉ、なんか異世界って感じじゃねぇかっ!

すげぇ、ワクワクが止まらんぜ。

 

「あらあらうふふ。ヴィリス様ぁ。そんなにはしゃがれますと田舎者だと思われてしまいますわよぉ。」

だってさぁ(でもねぇ)もうなんか(もう色々と)色々目に(全てのモノが)ついちゃってさぁ(目新しく思えてねぇ)?」

 

もうなんかこんだけ分からんモンが転がってると何見ても楽しくなるって。だってもうイッツファンタジーっなんだぜっ!

 

「あ、ご主人さま、アレなんだろ?」

よっしゃ(わかったわ)いくぞ(いくわよ)アンダーちゃんっ!!」

「らじゃ!」

「クク、それでは拙者もっ。」

「あらあら。あまり離れてはいけませんよぉ~。」

 

完全におのぼりさん状態だった。

 

しかしまぁオレ達みんな美人さんだからかね、行く先々で人からの視線を感じるぜ。オレが今まで感じてた視線とまったく真逆でな。色んな所でで熱い視線を投げつけられるんだこれが。正直悪い気はしねぇな。

 

だってよ。

オレとアンダーち(オレら)ゃんが美味そうな屋台の匂いを嗅いで目ぇ輝かせてたら、

 

「お、嬢ちゃんたち。一本喰ってかないかい?」

ごめんな(ごめんなさい)おっちゃん(オジサマ)。実はオレら(ワタシたち)金もって(懐に余裕が)なくてな(ないのよ)冷やかして(騒がしくして)ワリィなっ(ごめんなさいね)。」

「美味しそうな匂いだよねぇ~。」

 

「はは、そいつは残念だ。」

 

(はぁ、なんて綺麗な娘さんだっ。いっそ神々しく見えるね……。

見た所はお貴族様の娘さん。しかも相当の大貴族の箱入り娘って所かねぇ。しかし楽しそうにオレら庶民の食い物なんかに綺麗な目ん玉輝かせてくれとる。ま御目付役のねぇちゃんが流石に買い食いは許してくれんわな。)

 

「これこれ、そう物欲しそうな目でみるなよアンダー殿。いやしく見えるぞ。」

「だってめちゃ美味しそうなんだもん。ねぇ?」

確かに(本当に)めっちゃ(とても)美味そうだ(美味しそうよね)っ!」

 

(はは、そこまで嬉しそうにされちゃこっちもお手上げだ。ぜひにもウチのモンを喰って貰いたくなっちまう。)

 

「はは、あんがとな。じゃあコレは俺からのおごりだ。あんたらみてぇな美人さんに喰ってもらったらオレもそいつらも嬉しいってもんサっ!

 

いいんかよ(いいのですか)おっちゃんっ(オジサマ)いよっ(なんて懐の)この(深い)太っ腹っ!!(御方でしょう!)

「きゃーオジサマ、素敵ーーーーーー!! あ、アタシが持つねっ!?」

「いいのか親父殿?」

 

「かまわんかまわん。まぁ、気に入ったらあんたらがまた買いきてくれりゃ、釣りが出るってもんだ。」

 

わかったっ(わかりました)ぜってぇ(必ず)買いに来る(買いにこさせて)ぜっおっちゃんっ!!(頂きますねオジサマ!)

「またねー、オジサマ。」

「感謝する。また会おう親父殿。」

 

「おう、またな嬢ちゃん達~!!」

 

「あらあらもぉ。ありがとうございますぅ。」

 

(おうおう。御目付様もなんとか納得してくだすった。へへ。なんかいい気分だ。ちょっと頑張ってやろうって気になるわ。俺の串焼きも捨てたモンじゃねぇ。)

 

ポンと食いもんくれたりよ?

 

ちなみにめっちゃ美味かった。

串焼きされた一口サイズのなんかのお肉だったんだがよ、なんか塩とレモンに漬け込んださっぱり焼き鳥みてぇな味でよ。食感がこう固めでな、んでも噛みしめると肉汁がジュワってくる、まさしく肉喰ってる味だったな。地鶏系だなうん。美味。

 

ぜってぇまたいこうっ!!

 

さりげにメイルさんの分まで入ってた辺り侮れねぇ親父だったぜ。

 

あちなみに手で持てんからアンダーちゃんやらメイルさんに喰わせてもらったぜ。ひな鳥みてぇな感じで焼き鳥みてぇなモンぱくつくのはなんか妙なキブンだった。

初異世界飯。

 

それからよ。

 

「ねぇねぇコレなにかな、魔法陣だよねきっと?(異世界出身)」

おぅ(ええ)全然(まったく)わかんねぇなっ!!(わからないわね。)(異世界出身)」

 

なんかさ、街の広場までに行く道の上にずっとな。どうみても魔法陣みてぇなのが彫り込まれてんのよ。街の大きさ考えたらすげぇ規模だよな。何なんだろコレ?

 

《回答。これは……》

 

まってステラストップっ、まずこの分からんって感じを楽しませてっ!

《肯定。では当機はしばらく貴方を見守ります。》

おう、あんがとな。

 

「拙者も東方では見かけたことがありませぬな(地域違い)」

「ワタクシも初めて見ますわぁ(時代違い)」

 

あれか(あれかしら)、夜になったら外灯(照明)代わりに(として)ピカピカ光る(辺りを明るく照らす)とか?」

「えぇ、下から照らされんのはなんかいやじゃない?」

「有事の際に街ごと外敵を吹っ飛ばす自爆陣ではなかろうか?」

「「こええよっっ!!(怖いわよっ!)」」

 

猟奇的過ぎるだろツルギさんっ!

諸共に散華って、ちょっと死狂いすぎるってっ。

 

「あらあら。それは少しいやですねぇ。だったらこれはバリア魔法を展開するモノではないでしょうかぁ? こう外敵が来た時にぃパキーンっと大きなバリアがぁ。」

「「すげぇっ(すごいわっ)異世界っ!!(ファンタジーっ!)」」

 

たぶんパリンと割れるバリアだっ。

やっぱ科学より魔法の時代だな、おいっ!

そんな妄想に華を咲かせてたオレらに、道ゆくじいさんが答えを教えてくれた。

 

(こりゃあなんて立派な娘さんだい。自然とこう拝みたくなっちまうわい。さてはお貴族様のお忍び様御一考かね。ふふ、相当の箱入り娘なんじゃろう。周りにあるもん物全てにあんなに嬉しそうにはしゃぎ回っておるわい。

 

まぁお貴族様特有の理不尽さも感じん。ココは1つジジィが街を教えてやろう。)

 

「ははは、お嬢さん達、そりゃこの街の清掃魔法陣じゃよ。」

「「ナニソレっ!!(なんですかソレ!)」」

「ほう?」

「あらあらぁ。バリアじゃないのですねぇ……。」

 

「領主様の一族が雇った魔導師様達がな、魔力を込めることで陣のある場所のゴミなんかを分別して一掃してくれるシロモンじゃよ。所有者識別が組まれてあるからただの落としもんなんかは消えん優れもんじゃよ?」

 

「「おおおお(ええー)すっげぇぇぇっっ!!(すごいわねぇっ!)」」

「なんと。それは確かにすごいものだな。」

「まぁまぁ。お掃除いらずですねぇ。」

 

おお、オールクリーン、オートクリーン生活じゃんっ!

なんだよもう完全に魔術の時代きてるぜっ。便利過ぎんじゃんか魔術っ。

《半肯定。ある意味では科学より優れた面があるのは確かです。》

 

(ふふ。あんたらは本来魔道士様を使う側なんだろうがね。しかしこうもベッピンさん達に驚かれると気も良くなるもんじゃわな。ふふ、お貴族様とは思えんわい。ついつい余計なことも言いたくなるの。)

 

「ああ、だから街はいつでも清潔ってわけじゃ。コイツはの伝説の魔工師サトォ・タナカが考案した大都市魔術の1つでな。今じゃあここらの街じゃ普通にどこでも見かけるもんなんじゃがの。お嬢さん達、よっぽど辺鄙な所からきたのかい?」

 

サトォ・タナカ。間違いなく転生者だろう。一体何者なんだサトォ・タナカ。佐藤なのか田中なのか。どっちなんだサトォ・タナカっ!!

 

「「あはは(えへへ)田舎モンな(田舎育ちな)もんで(ものでして)。」」

 

(嘘が下手なお嬢さんじゃなぁ。そんな綺麗な服着て、丁寧な言葉遣いしとる田舎モンなんぞおらんわい。まぁ御目付役もおるみたいじゃから余計な世話じゃが。)

 

「まぁ、色々珍しく思ってくれるのはコッチも悪い気はせんが。ここらには冒険者(荒くれモン)も多いんだ。気をつけておくれよ?」

 

「はーい」

「ありがとな、じいさんっ!!」

「気遣いに感謝する。」「ありがとうございます。」

 

「はは、こりゃ眼福じゃ。じゃあな嬢ちゃん達。街の散策もええが日の暮れる前に宿をとった方がええぞぉ。」

 

あ、はい(ええ、わかりました)。ありがとうございましたっ!」

 

(やれやれ気持ちのいいお嬢さん達じゃった。教えたこっちが元気をもろうたわ。お貴族様も色々おるんじゃのぉ。世間にゃまだまだ知らんことが一杯じゃわいて。帰ったら婆さんにも教えてやらにゃあの。)

 

とかね。もう色んな所で色んな人が世話焼いてくれる。なんて優しい世界だろうか。美人って凄い。女になったのはアレだけど、すごく嬉しかったりするオレ。

今までさんざだったかったらなぁ(遠い目)

 

そうしてオレ達が街をぶらついている時だった。

 

その喧騒が聞こえてきたのは。

 

「親父っ、いつまで悩んでる気なんだよっ!

納期はまってくれねぇんだぞっ、さっさとこの家取り壊すぞっ!!」

「断るっっ、ワシャこの家は、この家は壊したくねぇっっ!!」

 

なんだか騒動の予感がするぜ。

 




閲覧ありがとうございます。
まずは家から、が、頑張るモス。


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33) 第14話 オレ達と建て替え物件(2)

いつか街ごと美少女に変えてみたいわぁ(寝言)
手の抜き方を覚えようと思う。試行錯誤中です。

ハーメルンの評価100pt達成を記念ヒロインアンケート終了しました。
結果はワカバ・コイシ13票でトップに輝き、見事アレな小説の題材に決定です。
時点はアンダーの9票。追い上げがすごかったぜ。
それでは後日行われるアレな話の更新をお待ち下さいませ。

皆様アンケートへのご協力ありがとうございました!
次は200pt達成の時にまたやろうと思います。
出来たらいいなぁ(遠い目)

10/30 9:00
第4話 オレは初めてステータスを見る(上)
第5話裏 下着ちゃんは履かせたい
のアンダーの行動を大幅変更しました。

気になる方はお手数ですがもう一度ご確認下さい。


「ふっざけんなっ、こちとらお貴族様に早くしろってせっつかれてるんだっ!

いいかげん観念しろや親父っ!!」

「ふんっ、じゃから解体じゃったらいつでもやっちゃるっていうとろうがっ、このアホンダラがっ、こん家に使われとる木の多くは、もう手に入らんような質のええ古木じゃぞ。ただぶっ壊して更地にせぇ何ぞとんでもねぇわっ!!

 

そげぇことも分からんボケ貴族なんざ、相手にせんでええわっ、ボケっ!!」

 

おお、頑固な職人の親方と多分若頭みてぇなのが激しく言い合ってるぜ。その周りにゃあ職人達が一杯いるな。大通りの只中で激しく言い合ってるから道行く人達もびっくりしてら。

 

でも近所の人間は騒いでない感じ。割と日常茶飯事なことなんかな?

 

【以降小声は()でお送りします。カムィの副音声は表示しません。】

 

(おお、なんか修羅場だぞ修羅場。ちょっと隠れて見ていこうぜ。暴力沙汰になるようなら止めにゃあならん(お人好し使命感))

(ヴィリス様ぁ、いますぐ割り込んでお止めにならないですかぁ?)

(なんなら拙者が喧嘩両成敗致しましょうか?)

((ヤメたげてよぉっ!))

 

ヤメて下さい。みんな死んでしまいます。

なんでそんなことウキウキ言ってくるのこの娘。

 

(いやいや、そっちの方がこじれることもあっし、ここは様子見一択だろ?)

(じゃこの建物の隅にでも隠れちゃおうよ?)

(おっし、こそこそと。)

 

とりあえず職人達が言い争ってるデカイ家の裏路地にこそこそ入って隠れるオレ達。あんまり人様に胸張れねぇ姿だな。いいけど。

 

確かに親方が言ってるだけあっていい家だわ。ここらの家って木造建築なんだけどこの家だけ周りの景観を崩さん程度に和洋折衷っていうか、そのいいとこ取りの、変わった作りしてんのよ。なんとなくモダンっていうか、大正時代って感じ?

 

「んな事いっても、オレラがやらんかったら別のヤツらが呼ばれて更地にするだけだろが。割り切れよ糞親父、立派だろうがなんだろうが、コイツはもう買い取ったお貴族さまのモンなんだよっっ!!」

 

なぁなぁ、ステラ。この世界って重機とかないよな?

こんな立派な家、どうやって一日で更地にすんのよ。無理でしょ。

《回答。防御魔法と爆裂魔法を併用して効率的に破壊を促し、後は清掃魔法で綺麗にするのが一般的です。この世界の土建屋の技術職は魔道士が多いですね。》

 

ああ、魔法が発破の代わりなんだな?

 

(そっかぁこれ爆発させちゃうのかぁ。もったいねぇなぁ。)

(さすがは主殿。この家の良さがおわかりになるようでござるな?)

 

お、以外な所から反応が。いやもともと日本人っぽいかららしいっちゃらしいか?

 

(なんとなく西洋と東洋のいいとこ取りしてんなって位だけどな。)

(然り。木もそうとう良いものですぞこれは。)

(詳しいのぉ?)

(昔の主に数寄者がおってな。おかげでなんとなくわかるのよ。)

(そうなんですのねぇ。)

 

俺達が小声で割とのんびり話してると、親方がヒートアップし始める。

 

「それが一番、気に入らん。ここに住んどったジジィは偏屈の困りモンじゃったがなぁ、この家だけはそりゃあすげぇ入れ込んで、こさえたモンさ。儂がまだ若ぇ頃、なんどもなんども土建屋や冒険者相手にむちゃくちゃ言って来やがってよっ。この街の儂らん世代でジジィに困らされてねぇヤツはいねぇくれぇよっ!!」

 

(じゃあなんでかばってんのよ。ムカつくやつ何でしょ?)

(おやおや。同族嫌悪でござろうか?)

(なんでよっ!?)

(あらあら、うふふ。)

 

周りを困らせても憎めないヤツっているよね。

 

「でもよぉだからこそ。この家を、この家に使われてる素材も技術ももう、なんもかんもが、自分のガキ見てぇに思えちまうんだっ!!

そんなもん、これからホイ発破かけますって言われてはいそうですかってナルもんかいっ、認めっられるかそがんことっっっ!!」

 

ああまぁ。苦労させたれたモン程愛着湧いちまうのはなんかわかんな。オレも手間がかかった不良(ワル)ども程、なんかその後もついつい世話焼いちまってたもんだしな。

 

《指摘。そんなことをしてるから過去に不良と思われたのでは?》

 

うっさいなっもう!(否定はしない)

 

「ちっ、期限は明日だかんな。そんまでせいぜいガキみてぇにダダこねてやがれ。けどな。明日にゃ壊さなお貴族様も納得しねぇ。他人の家よりゃてめぇの首だろがこのボケ親父っ!!

 

おう、てめぇら、引き上げっぞっ!!」

 

「「「へいっ!!」」」

「あの、あっしらは親方と、いっしょに……」

「けっ、勝手にしなっっ!!」

 

お、何事もなく、終わったみてぇだ。若頭?達が離れてくわ。

でもこりゃあ明日が山場だよなぁ。ちょっとあの親方と話でもしてみるかね?

色々言いてぇことも抱えてんだろ。しゃべりゃちったあ楽になるって。

 

(あ、あの人こっち来るよ?)

(え、マジ?)

(これは面倒が大きくなりそうな感じですな♪)

(あらあら、いけない人ですね。)

 

そんな楽しそうに言うんじゃありませんっ!!

 

「てめぇら、さっきから何ちょろちょろ見てやっ!?

……こ、これは貴族のお嬢様、た、大変失礼しましたぁっっっ!!」

 

え、ちょっ!!

若頭はいうが早いがオレの前でひれ伏して地面に頭をこすりつけたっ。

あ、待って、勘違い、勘違いだから!

 

どうしてそうなんのっ!

あとアンダーちゃん、なんか偉そうにふんぞりかえるのやめてぇっ。

 

【以降カムィの副音声を表示します。】

 

いや(いえ)別にオレら(別段ワタシ達は)貴族じゃ(貴族などでは)ねぇんだけど(ございませんわ)。」

 

即座に勘違いの訂正を行うオレ。これはいけない。この流れはよくねぇんだっっ!なんで顔変わっても、廻りからこんな誤解されるのオレっ。

 

「またまたそのような御冗談をっ。そのお姿とお言葉遣い、そしてお付きの方々を連れられていてはごまかしようがありますまい。申し訳ありません。こちらの建物の解体は明日中には必ず終わらせておきますので!!」

「ちッお貴族様の催促かよ。

なんでぇ人情のねぇ。嫌な世の中になったもんだぜ。」

 

おおい、オレここの物件の取り壊しを頼んだ貴族の娘だって思われとるっっ!!

ちょいちょい、こりゃいかん。

誤解、ホント誤解ですからっ!!

 

「ほぉ。我が主殿が物の価値も分からんような愚物に見えると?」

「いけませんよツルギさん。ここは往来ですよ。」

「(小声でシャドーしながら)ウチの凶剣さんが黙っちゃいないよぉ?」

 

親方達の言葉にとたんに剣呑な空気を出し始めるツルギさん。

いやいや、何喧嘩売ろうとしてんのこの娘っっ!!

あとアンダー、てめぇ何気に楽しんでやがんなこのっ。

 

「わっ、ワタシラはなにか間違いをっ?」

 

早く弁解しないと。オレがそうして口を開くより、ウチの娘達の方が早かった。

 

「ワタクシ達の主人はここの持ち主ではありませんわ。ワタクシ達の主人はこの家の造りが余りに立派なモノでしたので、取り壊しになることをお気にやんでおられましたの。」

「その通りだ。そのように喰ってかかられる言われはござらん。」

「そーだ。そーだー♪」

 

「そ、それは大変なご無礼をっっ、どうか、どうか勘弁して下せぇっ!!」

 

お、親方も並んで土下座したっ!!

いや、親方含めて職人さんら全員土下座してくるぅっ。

な、なんか言わねぇと。頭ん中真っ白だっ。ど、どうするよっ。

 

とても(大変)いい家(良い造りの邸宅)ですよね(ですわ)本当に(こんなよい物を)取り壊すのは(無くしてしまうのは)もったいないです(残念でなりません)。」

 

「あ、ありがとうごぜぇやす。

ああ。お美しいだけでなくしっかりモノを見る目を持った貴族様でいらっしゃる。どうかどうかお嬢様、無理を承知でこの儂の、儂の願いを聞いちゃあ頂けませんか!」

 

なんかもうめっちゃ人の視線集まり始めたんだけどっ!!

そらそうだよね。こんな小娘相手に立派な男衆が一同土下座してんだもん。

そら視線集めるわっ!

 

訂正を、早く訂正をっっ!!

 

えっ、あの(そのですね)オレは(ワタシは)貴族じゃあ(貴族などでは)……」

「お願いしますっ。どうか貴方様のお目にかかったこの屋敷、取り壊さず、せめて解体して他に利用できるよう、こちらの貴族様に口を聞いてもらえませんかっ!」

 

聞いてよっ!!

 

オレは今、在りていにいって泣きたかった。

親方と、古い職人さん達一同が、全員地面に頭をこすりつけてオレに到底無理な事を必死に頼み込んでくるんですけどっ!

 

《混沌。素晴らしい展開です。何故こうなったのか理解不能。》

 

「儂にゃあ、もう後がねぇんです。どうか、どうかお願いしますっ!!

受けた御恩は必ずどんなことがあってもお返ししますっ。儂ら一同、身体ぁ張って役に立って見せますっっ!!

ですから、どうかっ、御一考をっっ!!」

「「「「「「おねげぇしやっすっっ!!」」」」」」

 

 

やーめーてー、そんなゴリゴリ頭こすりあげんのぉっ!!

と、とりあえず止めんと。親方に顔上げてもらわにゃあ罪悪感で死んじまう。

近寄って、肩叩きゃあ大丈夫だろっ!!

 

《確認。掴まなければ美少女化は起こりません。》

 

頭上げて(頭をお上げ)下さいよ(下さい)親方(ご棟梁)

どうかそんな風に(そのように)自分を(ご自分を)いじめるような(無下になさるような)事はせんで(ことはやめて)下さいよっ!!(頂けませんか?)

 

「おお、それじゃあっ!!」

 

そりゃあ(本当にね)オレも(ワタシも)どうにかしてぇ(手を尽くして上げたい)ケド(けれど)オレ(ワタシは)貴族なんか(貴族などでは)じゃねぇからよぉ(ありませんから)。」

 

「そ、そんははずぁねぇっ。

そんな綺麗な服を着こなして、そんな綺麗な言葉使ってそんな綺麗な佇まいの平民が要るはずねぇんだっ!!

なぁ、たのむ。たのんますっっ、どうか、後生だっ!

 

この家を救ってやってくれぇっ!!」

 

完全にヒートアップしちまった親方が言いながらオレに詰め寄ってくるっ!

やべぇ、このままじゃあ親方を美少女にしちまうかもしれねぇ。

咄嗟に身を引いたオレに、しかし親方がなおも詰め寄って来やがる。

 

うおぉ、もう、うっかり美少女を生み出してたまるかよぉぉぉっっ!!

 

体勢を崩しながらも、親方だけは掴まないように手を後ろに回したオレにゃあもう隙なんて欠片もねぇのさっ!

 

そう思った時には遅かったっ!!

 

転けそうになった瞬間。

思わずその屋敷の壁を掴んじまったオレの背後であのポンと軽い音が鳴る。そんでもうもうと立ち上がる煙と、倒れるオレの背中の下から重なるように女の子特有の柔らかい感触が伝わってきた。

 

ああ、やっちまったぁぁぁぁっ!!

そう思うってそのままオレが空を見上げたその時だっ。

 

オレの頭に衝撃がまた奔るっ!!

 

「な、ん、だとぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!」

 

なんと空から盗賊じみた格好の若い男が1人、オレに目掛けて落ちて来てるじゃあねぇかっ!!

咄嗟に衝撃を逸らそうと。腕を伸ばしたその先で、またまたポンと音がなる。

 

親方っ、空から降ってきた男が美少女になっちまったっっ!!

 




NEXTSTORY
「オレがアレへと出掛けたら」

閲覧ありがとぉございます。

最後のセリフ言わせたかっただけだろ?
もうね、その通りなんじゃよ。

黒のアリス様、誤字報告ありがとうございますっ!
ホントに頭が上がりませんm(_ _)m


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34) 第14話裏 義賊さんは救いたい

義賊さん視点。なんか空から降ってきた人ね。

ハーメルンの評価100pt達成を記念ヒロインアンケート終了しました。
結果はワカバ・コイシ13票でトップに輝き、見事アレな小説の題材に決定です。
時点はアンダーの9票。追い上げがすごかったぜ。
それでは後日行われるアレな話の更新をお待ち下さいませ。

皆様アンケートへのご協力ありがとうございました!
次は200pt達成の時にまたやろうと思います。
出来たらいいなぁ(遠い目)

10/30 9:00
第4話 オレは初めてステータスを見る(上)
第5話裏 下着ちゃんは履かせたい
のアンダーの行動を大幅変更しました。

気になる方はもう一度ご確認を!


【《》はナレーションです。】

 

《天には月、星々の外灯。絢爛豪華な屋敷の庭園。そこで小太りの年経た男が仮面の青年に剣を突きつけられていた。》

 

「さぁ贖罪の時だ。オレには罪を、お前に罰を与えよう。」

「ひ、ひ、ひぃっ、待てっ! 金ならヤルっ、欲しい物もなんでもヤル。女でも、地位でもだ、だから殺すなっ、命だけは、勘弁してくれぇっ!!

 

《彼らの降り立つ足元には無残に散った年若き女性。美しい裸体に鞭打たれ、苦痛の果てに無残に散った無辜の華花。》

 

何時頃からだったろうか。貴族達を殺すのに抵抗が失くなったのは。

 

「悪しき貴族に剣先を。悩める民に花束を。」

「や、やめろっ、ヤメ、あああああぁぁぁぁぁあっっ!!」

 

何時頃からだったろうか。義賊などと己を騙り始めたのは。

 

《醜い貴族を貫いて、月光の下。快賊は呟く。》

 

「故に天秤は揺るがない。」

 

ただ母と己を救う術を、見付け出したかっただけなのに。

今日も己は仮面を被り。

消えない罪を背負って進む。

 

《7つの海を渡り歩き、数多の国々を股にかけて暴れる男。

快賊義侠マスカレイドは、今日も悪しきに剣を剥く。》

 

 

俺が殺し(仕事)を終えた後、宝物庫を襲撃していた仲間たちが俺の元へとやってくる。カットラス(曲刀)に、軽装の革鎧。実用性に富んだ海の男特有の、身のこなし重視の装備を身につけている。

 

どうやら今回も首尾よく、貴族のお宝を手に入れられたようだ。

 

「兄貴、こっちの回収は終わりやしたぜっ!!」

「エリクシールはどれだけあった?」

 

俺は、この騒動の目的で在る万能薬の事を部下に聞く。俺と母の命を繋ぐ為に必要な命の薬の存在が、俺にとっては貴族達襲撃の最大目的なのだから。

 

奪うのは悪党からと決めている。

悪逆な貴族ならなんの躊躇いもなく、心置きなく奪い尽くせるからだ。

 

「小瓶で3つです。バカ貴族が。さんざ放蕩で使い込んでやがりました。」

 

エリクシールがたった3つか。この規模の庭園を襲ったにしては、景気がいい話とは言えないようだ。

ならいつも通り、そいつと奴らの手がかりだけを俺は受け取ろう。

 

「ならそれと奴らの経脈図はオレのモンだ。後の訳分はいつも通りだ。」

「へいっ、民草どもに銭巻いてその間にトンズラっすね?」

 

金は確かに必要だか、持ちすぎても動きづらい。その大半を民草相手にばら撒いてその隙に逃げ失せる。これが俺らの常套手段だ。

 

「わかってるならいちいち聞くなっ。野郎ども、すぐさま船に撤収するぞっ!!」

「「「「「「へいっっっ!!」」」」」

 

まんまと悪徳貴族を殺してみせた俺達を取り囲もうとするグラニア国軍の兵士達。だが市民達は常に俺たちの味方だ。彼らの前で奪った金の大半をいつも通りにばら撒いて一路俺らは逃走を図る。周囲はあっという間に混乱のるつぼだった。

 

激しく響き渡る俺たちへの声援の中。俺たちは足早に商船の中に隠してあった俺たちの船へと乗り込んだ。

 

「野郎どもっ面舵いっぱいっ、全速前身っっ、新たな港へ出発だっっ!!」

「「「「「「おうっ!!」」」」」」

 

鈍足の北のガレオン船(グラニア海軍)じゃ俺たちの高速魔導艦(快賊船)にゃ追いつけねぇ。伊達に剣角魚(ソードフィッシュ)を名乗っちゃいない。

回り込もうとするヤツは、オレラの(女神)魔術式船頭剣角(ソードホーン)の鉄槌を喰らうことになる。

 

幾つかの軍船の腹を食い破り、荒々しくも迅速に。

俺たちはその海域から姿を消した。

 

 

「母上、只今戻りました。」

 

俺はグラニア海域を抜けきるやいなや、ソードフィッシュの船内中央、母上の為に拵えた一等上等な看護室へと足を向けた。

 

船揺れを殺す大規模な制御魔法をかけられたその部屋には、俺の最愛の母がベットに横たわっていた。美しい、俺も受け継ぐマリンブルーの長い髪は見る影もなく所々抜け落ち、まるで骸骨のようにやせ細っている。

 

死病に侵され、万能薬ですれすれに命を繋ぐこの女性こそが俺の母だ。

 

俺が部屋へと足を運ぶと、母は私に掠れ掠れの声色で、話かけてきてくれた。

 

「……おお、おお。ワタシのファルケ。よくぞ無事で戻ってくれました。」

「母上より先に死に至るような親不孝は考えておりません。今回のエリクシールはこれだけですが、またしばらくは母上共々、生き延びることが出来そうです。」

 

ああお労しい。そしてこれが将来の自分の姿だと思えばそれがなにより恐ろしい。俺たち一族はどういうわけか短命で、胸を患う定めにある。かくいう俺の身体にもその死病はもう潜んでいる。最近目の下がくぼみ始めた。衰退が始まった証拠だ。

 

だから俺には、マスクが欠かせない。こんな面を見せたんじゃ部下にも敵にも舐められちまう。マスカレイドなんて大層な通り名で呼ばれちゃいるが、結局臭いもんへの蓋をしただけの、病弱な男。それが俺の正体だ。

 

「ああ、ファルケ。私の愛しい舞い飛ぶ鷹よ。もう母は疲れました。どうかその薬はあなたがお使いなさい。病に侵され自由の効かぬこの身体、私はもう貴方の重荷となりたくないのです。どうかわかってくれませんか?」

「なにを仰るっ!! 最愛たる母親を重荷などと思う息子が要るものかっ。俺が必ず母上の、我が一族の受ける病魔を散らして見せます。ですからどうかどうか母上、万能薬をお飲み下さいっ。このファルケを、親不孝の愚か者になどさせないで頂きたいっ!!」

 

俺とこの人は実は血が繋がっていない。放蕩者で人非人の、貴族の父の妾であった母の従姉妹が捨てたこの俺を、子どものいなかったこの人は心の底から愛して下さった。あの男からひどい目に合わされても、必死に俺を庇って育てて下さった。

 

捨てられるものか、諦められるものか。

 

父は病魔に侵され早くに死んだ。ということにした。母が死病に侵されたとわかるやいなや、捨てようとしたヤツを俺が殺した。

 

ああ。思えばその時からかも知れんな。俺が悪を殺すのに、悪逆の貴族達を殺すのに抵抗が失くなったのは。奴らは人間なんかじゃない。豚よりひどい畜生だ。

それを殺して何が悪い?

 

「ファルケ、ああファルケ。母は貴方が心配なのです。私の為に、多くの無茶など背負う必要は有りません。どうか母をお捨てなさい。母には安息の死(夜の神の導き)こそ必要なのです。愛しい息子よ、聞き分けてくれませんか?」

 

「わかりません。それだけは分からない。あなたに必要なモノは何もなさぬ身勝手な神々などではない。明日を掴む俺の翼だ。必ず俺は母上を救って見せる。どうか母上。貴方の息子を信じてほしいっ。」

 

もう何度となく繰り返したやり取りだ。母が俺を思って死にたいと願い、俺はそれを許さない。そういういつものやり取りだ。

 

そうだ。神々が何をしてくれるというのだ。俺は世界中を渡り歩き、様々な神々に出会ってきた。だかやつらは皆、人のことなど虫けらのようにしか思っていない。あんなものをどうして神と崇められる。

 

母をどうにか説得し、その部屋を出た俺は1人、血を吐き出す。

俺に残された時間も少ない。間に合わなければ精々母と運命を共にするだけのことだ。なにも恐れることはない。

 

俺は自室に戻ると死病を治す手がかりとなる、悪徳の魔工師の住処を探るべく貴族共の書簡を漁る。サトゥ・タナカ。多くの偉業を残したこの伝説の魔工士は、同時にたくさんの黒い仕事を請け負っていた。

 

晩年どこかに姿を晦ましたこの男は、多くの毒や薬にも通じていた人物だ。その中の1つに俺達の死毒を治療してみせたという記録がある。

 

そうだ。俺はずっと彼の住処を探しているのだ。

 

悪徳貴族の家の書簡を片っ端から探っていけば、いつかなにかが見つかるかもと、その日も縋る思いでそれらに読み耽った。

そうしてずいぶんな時が過ぎ、俺が一枚の書簡を手にとった時だ。

 

俺はやっとソレを掴んだっ!

 

「は、はは、はははははっ、ははははははははははっっ!!

見つけたぞ、ついに、ついに見つけたぞサトゥ・タナカっっ!! リーヴァイ、リーヴァイだっ。貴様の家はリーヴァイにあるっ。ああ待っていろ。そこで俺も母上も見事に運命から逃れてみせるっ、この手で未来を掴み取ってやるぞ神々よっ!」

 

俺は弾けるように部屋を飛び出し、操舵室へと駆け走る。

団員達に指示を出しながら、ただひたすらに走り抜けた。

目指すはリーヴァイ。西方にある辺境の街。俺と母の未来がある場所だっ。

 

 

あれから最大船速で西方へと駆け抜けた俺達は、リーヴァイの北の港町エンフィールドに到着した。リーヴァイと他都市を海で繋ぐこの都市は、古くから海を挟んだ島国の海洋国家、アゼルランドと交流がある。

 

あいつらの操る猟犬みてぇな高速魔船は俺たちでさえ厄介な相手だ。

 

だから俺はエンフィールドで仲間と分れた。船を遊ばせておけばきっと、アイツラの鼻で嗅ぎつかれるのがオチだ。俺たちは別行動を取ることにした。

 

そして今俺は単身、リーヴァイへと訪れている。

 

姿はいつもの快賊義侠のソレじゃない。盗賊稼業がするような、軽装でもって件の家へと潜入したのだ。仮面も外している俺の窪んだ面を見て、マスカレイドとは誰も思うまい。そして俺の根源は舞い翔ぶモノ。根源魔術を使う隙さえあれば、屋根の上を飛び回り、静かに侵入することなど難しくない。

 

晩年にサトゥ・タナカが住んだというその家は、西と東の建築技術を組み合わせた、変わっているが価値の高いモノだった。そんじょそこらの馬の骨に作れるような、安い素材は一切使われてない。高い技術と、浴びる程の資金でもって作られたこの家がなによりここが魔工師の住処であったことを教えてくれる。

 

下調べした結果によると、この家はここ数日の内に取り壊されることになっていたらしい。こいつを知った時には流石に俺も、神に祈りを捧げそうになっちまった。

 

時刻は夕暮れ。

 

本当なら夜にこそ忍びこみたかったがいつ取り壊されるかわからない状況だ。文句は言ってられない。俺は屋根裏を伝い、その家の2階の中へと入り込む。

そん時だ。

 

とたんに外が騒がしくなる。

 

耳を済ますとどうやらココを取り壊す職人がその段取りのことで揉めてるらしい。まずいな。急がないとっ。

 

ひとまず入った2階を隈なく調べる。どうやらここは書斎らしい。どうやらここがサトゥ・タナカの家であることは知られていないらしい。建物の中には手つかずにまだ、書物や家具が立ち並んでいる。まったく怖い位に運がいい。

 

どうせ取り壊しになるんなら気遣いなんざ必要ないね。手当たりしだいにヒックリ返して、めぼしいモノを探し出すっ。

時間と俺の運との勝負だっ。大丈夫、今の俺の運勢は最高だっ。急げっ、急げっ!

 

そんな中、俺はある一枚の記録を見つけた。

 

それはある医療結果の裏帳簿。

それを見たとたん俺の頭の中が真っ白になった。

 

ああなんてこった。サトゥ・タナカは、死病を治してなどいなかったっ!!

悪徳どもがよくやる手口だ。

死病にかかったように見せかけて、そいつを治してみせただけ。

 

誰も死病など、治していなかったのだ。治せていなかったのだっ!

 

目の前の事実をどうしても認められず、飲み込む為にあえて大声で叫ぶ。

 

「な、ん、だとぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!」

 

その瞬間、俺の足元が消えたように感じ、身体は遠く、奈落へと堕ちていく。

ああ、そうかい。

人間が本当に絶望しちまったら、こんな感じなんだな。

 

もう何もかもどうでもよかった。

 

流れに身を任せ、沈みこむ。

そうして俺が堕ちきった時、何か温かいモノが俺へと触れた。

崩れ落ちた俺が気づいた時。

俺はこの世のモノとは思えない美しい女に抱きとめられていた。

 

それが俺と、本物の女神様との。長い付き合いの始まりだった。

 




閲覧ありがとうございます。
アレ、お気に入り数とか評価とか色々凄い増えているんですけど。
な、何が起きたん?(白目)

と、とりあえず全力で感謝ですっ!!
皆さんよろしくお願いしますっ!

なお今回の病弱な母親設定は感想欄でくっつく餡玉様から頂きました。
それが無ければ義賊さん、こんなキャラになってなかったです!
もう感謝しかねぇっ!!

あ、作者の友人がなろうで同じネタ使って男性主人公の美少女化モノを書いて下さっています。そしてなんとこちらのリンクをして下さったので相互リンクです。
もしよろしければ縛炎先生の作品も覗いて見て下さい。
先生は執筆も展開も速いのよ。すげぇやっ!!

この世の全てを美少女に!  
https://ncode.syosetu.com/n2263fu/


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35) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(1)

視点が色々な人に切り替わるお話。
一話一話は短めです。


【衛兵長視点】

 

衛兵隊の隊長である私が、私がその場へ赴く原因となった男を引き連れて街の入口付近へ訪れた時。件の女神とやらは何故か土建屋の職人達から詰め寄られていた。どうやら見た目と振る舞いから彼女は男たちに名のある貴族であると思われているようだ。

 

なるほどそれも納得できる、と私は思った。

 

平民ではありえない完璧すぎる作法を伴った身のこなしが、およそ彼女の為にのみ存在しているとしか思えない奇抜な、しかしなにより彼女の美を際立たせる万色を備えた衣服達が。そして何より彼女自身が、その美しさも相まっていっそ神々しいとすら思える雰囲気を纏っていたから。

 

流石にアレを見て、彼女をそこらの町娘だと思う阿呆はどこにもおらん。

 

彼女が本物の女神だなどという与太話は信じちゃいないが、なるほど確かに彼女は女神のように美しい女だとはっきり言える。本来その光景を即座に止めるべき私が、彼女の余りの美しさに目をとられ僅かな間呆けてしまう程に女は美しかった。

 

だがその時突然。それは起こった。

 

職人達に詰め寄られついにその身を引き倒されてしまったその美貌の女が、多くの住人達に見守られる中で、職人達が救って欲しいと願うその家1つを触れるだけで消し去り、その家にまったく異なる新たな姿を与えてみせたのだ。

 

そこにある筈の家は既になく。

 

代わりに彼女を護る様に代わりに地面に押し付けられた1人の少女がそこにいた。どこかその家の雰囲気をそのまま形にしたような、西と東を入り混ぜたような独特のメイド服を身にまとった、その家の壁に使われていたのと同じ鳶色の髪を綺麗に編み込んだストレートのハーフアップが特徴的なその少女の姿を見て、誰もがそれが先程まで家だったモノなのだと理解した。

 

そして更に。

 

空から叫び声を上げながら落ちてきた、その家に入り込んでいたであろうこそ泥に彼女が触れれば、そのみすぼらしい男の姿が切れ長の鷹のような金の瞳を持った、透き通った海のような美しい短髪を讃えた涼やかな美貌の、まさに男装の麗人へと変わっているではないか。

 

そう。人と家。その在り方をいともたやすく我等の目の前で変えてみせたのだ。

その業を神の奇跡と呼ばずしてなんと呼ぶ。

 

ああどうやら。古株の(ガウリィ)門番(レオルド)の言う与太話は本当のことらしい。

 

あのやる気のない男が血相を変えて詰め所へと入ってきた時は、我が目を疑った。そして彼が熱心に語った、我等と共に歩み皆に喜びを与えたいを願う女神が訪れているという言葉を聞いてさらに耳を疑った。

 

彼の話を真面目に取り合わず、物見気分でこの場に来ていた自分を悔やむ。あれはまごうことない本物の神族だ。一度対応も誤ればたやすく人の営みなど消し去ってしまうであろう存在だ。その事実に。

 

ゴクリと、乾ききった喉が音をたてた。

 

その麗しいお姿を見て。神々しい佇まいを見て。なによりその御業を目の当たりにして。自然とその場の者たちが口々に、女神と言う単語が漏らし始めた。

 

そして次の瞬間、その場は狂騒に支配されていた。

 

職人の親方から押し倒されてしまった女神の姿を見て、この場にいる誰もがウルムントの悲劇を、些細な事で神の怒りに触れ一夜で滅んだあの街のことを思い出し、強い焦りと不安、そして恐怖を抱いていたのだ。

 

まるで爆発したかのようにその場の景色は変貌していく。

 

大声で女神に対し謝罪の字句を述べながら泣き始める者、事実に気付きその場で只々悲鳴を上げてしまう者。恐怖心から職人達を吊し上げ、神への罪を償わせんと怒りに任せて吠え叫ぶ者。それを止めようとし、殴り合いを始める者。

 

街の者たちは神の力を目の前にして皆が皆、もう普通では居られなくなっていた。

 

「いかん! おい、聞けっ、落ち着け皆のもの。女神様の御膳であるっ!!

騒ぎを辞めて即座に示すべき態度で膝をつき、讃えるべき神へ礼を尽くせっ!」

「女神様は寛大な御方だっ、悪いようにはならんっ!!

皆神を讃える態度を示せっ!!」

 

ガウリィと共に彼らに大声で叫び続けるが止まらない。

時期が悪い、悪すぎた。辺りは今まさに日が落ちて、互いの顔や姿が曖昧になる時間なのだ。衛兵2人で騒いでも、遠目からはただの騒ぎの一端にしか聞こえない。

 

宵闇に包まれた辺境の街は今、暗がりが呼び込む不安感も相まって只々いたずらに狂騒を広げていく。神の前で、人々と共に有りたいと言って下さった神の前でこれ以上人の愚かさを見せつけるべきではないっっ!!

 

夜闇の中で広がり続ける大混迷。その混沌を納められたのは。

外でもない女神様その人だった。

 

我が根源よ(シャイニング)光となりて今輝かん(レイン)

 

喧騒の中、その詠唱だけがはっきりと耳に入った。

神々の力を示す強い金色の詠唱光を纏いながら、懇願詩でも要求詩でもなく根源詩で持って唱えられたその術こそが、紛れもなく彼女が神族である証明だった。

 

とたん。辺りは優しい光に包まれた。

 

人の不安を、暗がりを一切晴らすような。虹彩色に移り変わる、万色を讃えた虹の光が女神から発せられている。ただそれだけで。誰もが騒ぎを止めていた。

そのあまりにも神々しい、美しく荘厳な輝きを見て。誰もが言葉を失い膝をつく。自然と皆の頭が女神へと向き、その場に居た全ての者が一様に理解し態度を示す。

 

その場にいる全ての者が女神へと頭を垂れた。

 

この女神様はただ美しくあるというだけで。アレだけの騒動を止めてみせたのだ。不意にガウリィから聞いていた、女神の名を思い出し、呟く。

 

虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)……。」

 

ああまさにそうとしか言えない御方だ。美しき虹の女神。晴れ渡る蒼空へとかかる雨と嵐の終わりを告げる者。虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)

一度それを識ってしまえば、それ以外にどう呼べばいいというのだ。

 

「皆さん、どうか頭を上げてください。」

 

女神様の美しいお声が我々に向け放たれた。

皆一様にそれに従い、頭を上げて女神様を静かに見つめる。

その時。ありえない事が起こった。

 

「本当にごめんなさいっ、ワタシの力が貴方達を迷わせてしまいましたっ!」

 

神々である彼女が、神々しいお光を纏ったままに。唯の民草である我々に向かって深々と頭を下げて謝罪の言葉の述べたのだ。

心の底から私達の犯した騒動の原因を作った事を気に留めながら。

 

「ワタシはこの手で掴んだモノ全ての在り方を美しいモノへと変えてしまうのです。それがこのように皆さんの心の平穏を大きく崩してしまいました。どうお詫びしても言い訳にしかなりえませんが、それでもワタシはこのようにあなた方に謝ることしかできないのです。」

 

女神様は先程の我々と同じように膝をつき、地面に手をつけ頭を深く深く下げて我々のような民草に向けて、お謝りになられた。

 

「皆様方、この度はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでしたっ!」

 

静まり返ったその場所で神々しくも輝きながら女神様が土下座した。

私はこの後にも先にも、こんなにも心臓に悪い謝罪の姿を見たことがない。

 




閲覧ありがとうございます。

更新が遅れまして申し訳ありません。
中々難産でしたこのシーン。実は昨日1度書き上げたものがどうしても気に入らなくて破棄してしまった為更新でききなかったのです。これからも更新のない日はなんかアイツ迷ってるんだなと、生暖かい目で見て下さると助かります(白目)

あ、100pt記念の話ですがきりがいいので15話が全部終わった後に投稿させて頂きますね。あと実はワカバとコイシで書くことになるとは思ってなかったのでプロットがないのだわ。

ちょっと時間下さいw


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36) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(2)

気付けばもう40話手前。でもまだ一日目が終わらない。
お、おやぁ?


何が起こってやがるんだよ。

 

目の前で俺ら民草のなんかの為に、女神様が頭を深く下げて謝罪している。

それも地べたに直接座り込み、両手のひらを地面につけて。

俺らはみんなワケが分からなかった。

 

だってあの神々だ。気に入らなければ人の世など好き放題消し飛ばちまう。そんな存在が、本気で俺らに騒動を起こしちまった原因となった事を詫びてくれていた。その光景を前に一番最初に我慢が聞かなくなったのは2人の衛兵達だった。

 

「お、おやめ下さい女神様。貴方様の奇跡を見て我々が勝手に驚き騒ぎ立てただけの事です。貴方様のような方が我々如き民草に頭を下げるべきではありません。

どうかその頭をお上げ下さいっ!!」

「そうです女神様っ、早くお顔を上げてお立ちになられて下さいっ。皆が困惑していますっ!!」

 

それぞれに女神様に言葉を尽くして、謝罪をやめるように促していく。だが女神様はどうにも譲る気がねぇらしい。頑なに頭を上げようとしない。

 

「いいえ騒動の原因はワタシですもの。神であろうと人であろうと過ちに気づいたのならば誰であっても頭を下げてまず謝るべきなのです。それが世の理というモノでしょう。これを違える気は有りませんっ!」

 

女神様は頭を下げたまま、ものすごく筋の通った言い分を衛兵に投げ返した。でもそりゃあ理屈であって誰もが実践しちゃいねぇことだ。世の中偉いヤツは弱いヤツに頭下げたりしねぇのが常識で、当たり前だ。

その光景に耐えかねたのか、ついに業を煮やした衛兵達が並んで声を荒げた。

 

「お、お立場というモノがある。今スグ頭をお上げ下さいっ!!」

「ほら女神様、お立ち下さいってっ!!」

「いーやーでーすーっ、あーげーまーせーんーーーーーーっ!!」

「なんで意地張ってるんですか貴方はっっ!!」

 

くく、な、なんだこりゃ?

 

「ほら、主どの。衛兵どのもああいって下さっていることですし、ね?」

「貴方様ぁ、もうお顔をお上げになって下さいぃ。」

「やだっ!!」

 

これじゃあまるで。

 

「いやぁご主人さまってああなると頑固なんだよねぇ?」

「へぇ旦那はんそんなかわええトコあるんやねぇ。んふふ、ますますウチ旦那はんに惚れこんでしまうわぁ♪」

「あ、あんたそういうキャラなんだ。なんか意外。」

 

庶民向けに作られたわっかりやすいコミカルな演劇かなんかみてぇじゃねぇか。

 

「わ、ワシからもお願いしますっ。女神様を突き飛ばしちまったのはワシなんです。じゃから女神様はなんも悪くねぇんですっ。悪ぃのはワシなんですっっ!!」

「そんなのそれだけ貴方があの家の事を大事に思ってただけじゃないっ。別にそれで少しよろけてしまった位でワタシ怒ったりしないわよっ。しないものっ!!」

「じゃあなおさら頭上げてくださいって、ワシの立つ瀬がねぇじゃねぇですか!」

「やですっ!!」

「め、女神さまぁっ!!」

 

頑なに意地を通すその姿を見てたらよ。

 

「まだそこに立ってる人たちから許しを得てないんですもの、上げられるわけないじゃないのっ、だからいやです。それまで絶対ごめんなさいするんですっ!!」

 

もう、耐えられなっちまった。

 

「くっ、はぁっはっはっははははっ!! 

そりゃあいいっ。間違ったら謝ってってそれがみんなできりゃあ世は平穏だ。なぁみんな、女神様はああ言ってるが誰か女神様に対してなんか不満を持ってるヤツがここにいるかい?

そこの泣いてたアンタ、どうだ?」

 

近くの男に聞いてやる。どうにもびっくりした顔で俺を見返しやがるが、それでも話にノッてくる。そうだ。それでいい。

 

「いや、俺なんか勝手に女神様のこと怖がってたっていうか、ああ女神様、ホントに貴方が頭下げることじゃねぇですよ。むしろ俺こそ申し訳ねぇっ。」

 

くく、良いね。流れにノッてきた。そりゃそうだ。神様が先に頭を下げちまったんだ。俺らが下げられねぇ通りはねぇ。

続いて隣の女にだ。この流れをとめちゃなんねぇ。なんかそういう気分なんだ。

 

「そこの震えてたアンタ、どうだ?」

「あの、ごめんなさい。私も勝手に怖がって……、す、すいません女神様ぁ、ほら立ち上がって。立ち上がって下さいってばっ!」

 

それみろ。今じゃなんであんなお人に怯えてたのか恥ずかしいって顔してやがる。ああそうさ、俺だって恥ずかしいぜ。あんなバカな神様見たことねぇって。怖がるこたぁハナからなかったんだ。

 

「そこのケンカしてたアンタは?」

「……この光浴びてたらよ、オレラも職人達も殴り合った傷が癒やされていくのよ。それってつまり最初っから女神様はアイツラに怒りなんざ持ってなかったってこったろ。すんません女神様っっ、俺ら勝手に突っ走っちまいましたっっ!!」

 

ああそうさ。誰もが勝手に怯えてついつい勝手やっちまっただけの話だ。最初から誰も悪くねぇし、恐れることなんざなぁんもなかった。

ああ、そうだとも女神さま、イヤさお嬢ちゃん。

 

「くく、嬢ちゃん。ご覧の通りさ。アンタぁなぁんも悪くねぇんだ。早く顔上げてくれよ。これ以上焼き串屋のおっさんを笑わすのは勘弁してくれやっ。」

「っ、屋台のオジサマっ!?」

 

唯の焼き串をあんなに嬉しそうに見てたこの嬢ちゃんが、こえぇワケなかったんだ。んなこと最初っから気づくべきだったじゃねぇか。

やっと顔上げてくれたなお嬢ちゃん。それみろ、みんなアンタに謝りてぇんだよ。

 

それからはなんてこたぁねぇ簡単な話だ。

 

そこにいるミンナで謝りあって肩を叩きながら笑いあった。おかしなもんでなぁ。怖ぇことなんてなんもなかったってわかった途端、無性に笑いが止まらんかった。こんな安っぽい展開よ、今どきどんな3流劇団だってやりゃしねぇ。でもよ。

 

でもそれが現実なら、意外とこれも悪くねぇんだ。

 

それによ。

 

「ありがとう、皆さんっ!!」

「……はは、は。やっぱあんた女神だわ。」

 

こんなひでぇ筋書きだって充分だ。なんたってヒロイン(役者)美しすぎる(よすぎる)んだから。

唯彼女が俺らに向かって力いっぱい笑い返しただけ。たったそれだけで。

そこにいたみんなが見惚れて息もできなくなっちまった。彼女の、女神様の心からの笑顔を見ちまったからだ。なんて優しい、嬉しそうな顔で笑いやがるんだ!

 

ああ。

 

俺は今まで神様なんでとんと信じてこなかったけどよ。この人なら信じてみてぇって今思っちっまった。だってよ。

 

俺ら民草のために本気で笑って、本気で謝って、本気で拗ねて本気で喜んでくれる女神様だ。嘘みてえにぺっぴんなのに気安くて、かと思えば次の瞬間誰より気高く輝く不思議なお人だ。俺らみてぇな民草が信じるんなら、断然こんな人がいい。

 

きっとよそん時。俺らは誰もがそんなことを考えていた。虹の光を讃えて笑う彼女の笑顔が、その在り方が綺麗すぎて、誰もがそんな事を思っちまった。

思えばこの時。

 

俺たちはもうこの人間くさい女神様の事を心の底から好きになっちまってたんだ。

 




閲覧ありがとうございます。

気安くて美人すぎる普段ちょっとポンコツな隣のおねぇさん系女神様な主人公。
長ぇなオイ。
カムィ君は筋モンさんとのあれこれで、通すべき筋にわりとうるさい人だったり。それはそれとしてがデキナイ残念な子なんです。


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37) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(3)

15話大進行3話目。


【親方視点。】

 

ああ、なんてこったっ。ワシは夢を見てるのか?

 

 

これがこの家を救える最後のチャンスだと信じて、お綺麗な貴族のお嬢さんに詰め寄ったこのワシは、勢い余ってお嬢さんを転がしちまった。

 

家の壁へと転がるように身を崩したお嬢さんを見て、一気に血の気が引いちまう。

 

ああ、やっちまったっ!!

どんなに善良な貴族様でも職人如きに突き飛ばされたとありゃあもう頼み事どころじゃねぇ。よくて投獄、場合によっちゃあ打首だ。

 

結局。ワシは自分の手で最後のチャンスを棒に降っちまったってわけだ。

 

は、笑えるぜ。

しかし全てを悟り、その場で崩れおちるように膝立ちとなったワシが見たモノは、このワシの想像など遥かに超えたシロモンだった。

 

なんとワシの目の前であの家が消えて、1人の若い娘へと姿を変えちまったんだ。

 

ああ、確かにあの娘はあの家だ。そう言える。

なぜならその姿の所々があのジジイが無茶言った、ワシらをさんざん泣かせたバカ見てぇに高度な建築技工と特級建材を再現しとったからだ。

 

色合い再現すんのだけで三月もかかった鳶色の艶身を帯びた壁塗りと同じ色の髪。編み込んだ髪の意匠は釘1つ使わずに、別々の木材を編み込んで仕上げた装飾柱を思わせやがる。

 

着てる服だってそうだ。

大正ロマンだかなんだかわけわからん、東国の技でもって西の建築を無理やり再現したようなその在り方が形に現れたような、東の着物みてぇな女中服。

 

短ぇ丈の袴見てぇなスカートの上には、フリフリの聞いた女中らしい白いエプロン1つ身につけてるが、その着物の意匠が女中に見えやしねぇ。

 

黒地に艶やかすぎる翅桜が舞い散る様は、そりゃあの家に使われた桜杉の咲かせるもんだろ。その木目の美しさと、消えない甘い春の香りが人気で取りつくされて、今じゃもう手に入らん特級建材様よ。宵闇に舞う花の儚さを感じさせる、派手すぎねぇ優美な気品を感じさせるその柄は、女中の着るようなもんじゃねぇ。

 

そんで裏地にゃ豪奢な緋牡丹がチラリを見える。ありゃあどうせ見えんような所にさんざん仕込まされた飾り細工のそれだぁな。履いとるブーツも、付けとる組木の耳飾りも、なんもかんもオレらを泣かせた大仕事の面影があらぁ。

 

ああ、ほんと。ろくでもねぇジジィだったよ。

 

そしてなによりよ。その顔立ちだ。それがどことなくあのジジイを思わせる小利口そうな面してやがるんだ。偏屈そうな猫目で、人を小馬鹿にしたような我の強そうな面構えよ。喋りゃきっと独特のヤマト訛りだ。まちげぇねぇ。

 

はは、なんだそりゃ。どうしてそんなことになる。

 

何がおこりゃあ、家が娘っ子になるんだい。

そん時ワシが押し倒しちまったお嬢さんはその娘と、もう一人。空から降ってきた盗賊風の、男だった娘に挟まれるように倒れとった。同時にお嬢さんのお付きの方が彼女をお守りしようと足早に駆け寄っていく。それを見ながら不意にわかった。

 

ああそうか。……この御方は貴族なんかじゃねぇんだ。

 

出会った頃からあの人はずっと自分を貴族じゃねぇって言ってくれてたじゃねぇか。神々しい程に美しいその身の振る舞いで、ずっと説明してくれとったんだ。

ああそうだとも。貴族なんかじゃありえねぇ。

 

この御方は、神様なんだ。

 

そう思った時、膝ついたままだったワシの身体は自然と神様に向けて倒れ込んだ。

ああ、ワシはなんてことをしちまったんだろう。

ワシが突き飛ばしたその御方は貴族なんてもんじゃなく、本当のお力を持った女神様だったんだ。

 

ただただワシは頭を垂れて、己の不敬の許しを請うた。

 

近くから神の身を害したワシに制裁を望む者の怒鳴り声が聞こえてくる。

その通りだ女神様。ワシのような不敬者の願いを、貴方は叶えて下さった。だからワシは喜んでこの身を貴方に捧げます。

 

ですからどうか、怒りの鉾先はワシにのみにして下され。そう願って、ワシは許しを請い続ける。そうすることしかできなんだ。

それがよ。

 

今、この場にいるモンは女神様に女に変えられて未だに泣いとる盗賊風の男以外、みぃんな肩叩きあって笑い合っとる。見たこともねぇお綺麗なお顔に、見ただけでご利益がありそうな笑顔を讃えて、女神様も笑って下さっとる。

 

ワシが犯した罪なんざ、鼻にもかけねぇ。

 

「そんなのそれだけ貴方があの家の事を大事に思ってただけじゃないっ。別にそれで少しよろけてしまった位でワタシ怒ったりしないわよっ。しないものっ!!」

 

と来やがった。ああなんて、なんて器の大きい御方なんだろう。

職人として神を祀ることはあったが信じたことなんざ一度もなかったこのワシは、この時本気で己の愚かさを呪った。知らなかったなんざ理由にならねぇ。

 

何よりも奉ずべき御方がそこにいたんだ。

 

ワシが心よりそう思い、内心で女神様に祈りを捧げとった。そん時だ。

未だ興奮を隠せぬ民草の中、女神様がワシの方へと近づいてきてくだすった。

 

「色々と騒がしくしてしまったけれど、改めて貴方に謝らないといけないわ。」

「え?」

 

言われてワシにはなんのことか分からねぇ。女神に謝られることなんか何1つねぇんだ。当然だろう。だからそいつを女神様に言われた時、ワシャもう悔しくてよ。

 

「結局、貴方が大切に思っていたお家の在り方を私は変えてしまった。それは貴方の望む家の救い方とは違った筈よ。だから、ごめんなさいっ!!」

「よ、よして下せぇっ。そんなことねぇっ。そんな事ねぇんですっ。ワシらの仕事はちゃぁんと形ぃ変えて、娘さんの姿になってそこにあるじゃねぇですかっ?

貴方様は、目の前の親父の手前ぇ勝手な願いを、これ以上ねぇくれぇ見事に叶えてくだすったっ。だから、おねげぇしますっ。頭ぁなんざ下げねぇでくだせぇっ!!

 

そうじゃねぇ。頭下げる必要なんてなんもねぇんだ。ワシゃこんなに満足しとる。あんな立派な家がまるごと、家以外なんも残さんかった糞ジジイごとよ。救われたんだ。ジジイの孫娘みてぇな姿になってよ。コレほど嬉しいこっちゃねぇっ。

 

それを女神様に伝えきれねぇ、ワシ自身の不甲斐なさが悔しくて泣けてくる。言葉にしちまった途端、想いごと安くなっちまいそうでよ、どうしてもそいつを口から吐き出せねぇ、不甲斐ねぇ自分に泣けてきちまうっ!!

 

職人のワシゃ、テメェの手仕事以外で語る口なんざ持ってねぇんだっ。

 

この想いを口先だけで、とても伝えきれねぇんだよっっ!!

 

けどよ。そん時だった。

 

「そうやえ旦那さん、なぁんも心配いらんよぉ? だぁって旦那さんに変えられてもうたウチがぁ、一番お礼言いたいんですもんねぇ?」

 

あの娘が、ワシの言いたい事を全部、言うてくれたんだ。

 

「だぁって旦那はんウチを変えても、なぁんも変えてへんもんねぇ?

ウチのカラダの所どころにちゃぁんと職人さんの心意気は残っとぉしぃ? ウチに全てをぶっこんで昔に縋る他なかった偏屈じじぃの底意地までもがウチにちゃぁんと息づいとるんよぉ。それになぁ?」

 

そうさ。全部、全部ワシらの仕事はそこにある。ちゃんと全部この娘さんを造るのに使われとるんだぜ。ホレ見ろ。やっぱ独特のヤマト訛りだ。

聞いとったらどうしてもあの厭味ったらしいクソジジィを思いだすぜ。

 

ネチッこく小言のうるせぇ、なんとも言えねぇヤな野郎だった。

それでも家を訪ねたときゃ絶対茶菓子を用意してくれるようなヤツだった。

 

「ウチは家人。人であり、家なんよ。その根源は住まわせる者。やからぁ……。」

 

どっかネコみてぇに自分の感情全部隠していっつも澄ました顔でいるヤツだった。それでも家が出来上がったときゃ、小さく涙ぐんで礼言ってきた、あのクソジジィに似てやがるんだ。

 

いつのまにかおっ死んで、家の事だけ頼むって残して逝っとった。

 

あのイヤなジジィによっ。

 

《ウチの根源よ、在るべき(アイディアル・)姿で家人を(ロマネスク)迎えぇっ!》

「んふ。これからいつでもどこでも、旦那さんを出迎えられるんよぁウチは?」

 

なぁ見てるか、クソジジィ。オメェの家、救われたぜ。

女神様はオメェの家を娘さんにしちまったが、ちゃんと家の方も出せるみてぇだ。これでオメェがここじゃねぇどっかの。昔を懐かしんで作り上げたモンは大丈夫だ。

 

どっかから現れて少しでも世界をよくしようと躍起になって、挙げ句の果てに悪徳どもに捕まって、色々ヤラされたオメェのよ。

 

命からがら逃げ延びてきて名を捨てて。自分のやった事全部何食わん顔で腹ん中で飲み込んで、堪えとったアンタが。

 

それでもこの家が出来た時に、たった一言。

《ああ、これでようやっと。アタシもマシなモン1つ残せた。》

って静かに泣いたクソジジィが残したモンはよ。

 

「そんなん嬉しないってモンはおらへんの。ぜぇんぶ解決。旦那さんの1人勝ち。せやから頭上げてな旦那さん。せやないと。」

 

ワシじゃねぇ、きっと世界で一番すげぇ御方に救われたんだ。

 

「救われたモンが落ち着かんのんよ?

んふ。ウチとそこの不器用な親父の為ぇおもぉて、胸張って下さいな?

それが一番、今の旦那さんにお似合いなんですからぁ。」

 

ああそうだとも。それ以外にゃありえねぇんだっ!!

 

「そうですっ女神様、胸ぇ張って誇って下さいっ。貴方様ぁこの親父の、駆け出しん頃の夢をまるっごとサイッコーの形にお救いになられたんだっっっ。

こんな、こんな夢みてぇなすげぇ事。他の誰にできるってんでぇっ!!」

 

俺が娘っ子の言葉に乗っかってそう言うと、周りの職人全部が口早に囃し立てる。戸惑ってる女神様の前で、全員でもって言い切ってやるっ!

 

「「「「「「そうだぜっ女神様っ!!」」」」」」

「俺らのおったてたモンが、直接ありがてぇって言ってんだっ!

そんなモンが聞けたんだ。俺らがみんな夢みてるみてぇんな気持ちなんだぜっ。」

「「「「「「そうだともっ女神様っ!!」」」」」」

 

「ワシらぁこの御恩、生涯忘れませんっ。死んでも、忘れませんっ!!

だから、だからよっっ。女神様、アンタはココでやるこたぁ謝るこっちゃねぇんだ。ニッカリ笑って、自分のやったこと、仕事を誇るべきなんだっ!!」

 

だってよ。

そいつがイイ仕事をしたヤツの、在り方ってもんだろう?

 




閲覧ありがとうございます。

次の話はここまで沈黙の義賊ちゃん。
第2章前半の山場です。ここは1つ盛大に盛り上げていきましょう!!


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38) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(4)

15話大進行4話目。


【これより義賊視点】

 

…………。

ああ、なんて美しい人なのだろうか。

俺は死んで、天にでも召されたとでもいうのか。

 

身体が軽い。胸が苦しくない。静かにやせ細った身体の隅々に力を感じる。こんな事。まるでこの俺があの忌まわしき死病から開放された見たいじゃあないか。

ああ、そうか。ならばあの時俺は死んで神か天使の元へと召されたのだろう。

 

そう思わざるを得ない女に俺は今抱きとめられていた。

 

……いやそれはないな。俺が死ぬなら間違いなく地獄行きだ。こんな女に抱かれることを許されるわけがない。ならばここは現し世という事だ。

それなら男がいつまでも女に被さっているべきじゃあない。

 

「これは失礼、レディ。」

 

そういうと俺は素早く立ち上がり、女とその後ろで女を気遣うように抱きかかえている高級女郎の様な見事な華柄の女中服を着た少女に手差し伸べようと動き出す。

 

しかしその時。

 

妙な違和感を胸から感じた。病気のソレでないおかしな重みが自分の胸から感じとれる。不思議に思った俺が視線を1つ投げつけると、そこには夜伽でさんざん世話になった女のソレが、俺の胸へとひっついていた。

 

「なっ!!」

 

二度目に声を出して改めて気づく。それは俺の声とは思えない少し低めの女の声で。即座に俺は身につけていた探索用の手鏡に手をのばし、自分の顔へと向けた。

 

そこにはなんと死病によって窪み始めた顔色の悪い男のソレではなく、死病に侵される前の俺の容姿に近しい女の顔が映っていた。

肺も身体にも少しの不自由も感じない。女のそれだが死病を癒やされた俺がいた。

 

「ああ……。」

 

自然と、涙が溢れた。

祈るように、その場にしゃがみこみ、唯自身に起きた奇跡を噛みしめる。

俺が求め、その手から溢れ落ちたと思ったものは、アレだけ俺が無力を謳った神の手によってあっさりと、あまりにもあっさりと与えられてしまった。

 

泣きながら、周囲の音を探る。

 

ああ、民人達が神の偉業に対し恐れ、怯えて騒いでいるのだな。

当然だとも。その為の多機能方陣。その為の都市結界だ。未だにこの大陸の多くの都市に施されている大規模魔法陣。市民達に清掃魔法陣などと説明されているアレは、そんな優しいだけのモノじゃない。

 

神や貴族に叛意を抱かぬようある種の感情を抑制し、ある種の感情を増大させる。サトゥ・タナカの残した原罪の中で、最も大きな代物だ。それだけじゃない。支配者が街を捨てる際に、民の命を使って都市ごと吹き飛ばす大爆呪。同じく民人の命を使い都市の護りを固める大防壁。有事の際に民草の命を完全に消耗品としてしか考えない、この世でもっともおぞましい代物だ。

 

一部の支配者層しか知らされていないこの真実を識るものは俺のように必ず防御式を身につける。貴族にしか許されない獣の紋章印。自分たちが鷹と共に在ることを示す、ソレを必ず。

 

今民草達は神への恐れと、神へ働かれた不敬に対する怒りを増幅されているのだ。

 

こうして小規模の、目に見える神々の怒りの矛先をきちんと用意してやることで、神に生贄と捧げることで、自身の領地を護ろうとする貴族達の思惑に乗って。

 

俺の涙の意味が代わり始める。これは俺の罪でもある。

 

あの男を殺した後に自分と母のことだけを考えて、逃げることしか考えなかった。あの日から目を反らし続けた俺の、罪だ。

 

今もこうして目をつむり、自身の為に神の怒りが収まる事を待っている。民人たちを見捨ててでも、俺は母を救いたいのだ。本当にどうしようもない、小狡い男だ。

こんな時、無性にあの男との血の繋がりを感じてイヤになる。

 

いくら天秤を掲げていようと、秤自体が歪んでいては用をなさない。

 

ああ、快賊義侠なんてこんなモンだ。

星の数ほどいる悪徳貴族の一部を殺して、民人に偽りの希望を与える。そういう男が俺なのだ。故に。奴らを殺した数だけ俺の罪は増えていく。

 

畜生を殺すことが罪なのではない。知りながら、変えようとせぬ事が罪なのだ。

 

一度流れた涙を、なかなか止められないでいる。

どうやら俺に新たに与えられたこの肉体は、元のモノよりずいぶんとお優しくあるらしい。涙を流す資格など、俺にはとうに無いというのに。

しかし俺の想像は覆された。

 

神が彼らを許し、あまつさえ彼らに許しを請うて頭を下げる光景によって。

 

宵闇に包まれ始めた街の中で、心を乱された民人達がその神が放つ美しい虹の光を見て正気へと戻り、今は唯神と笑い合っていた。

 

世界のすべてを見てきたつもりだった。

 

快賊として、貴族として。

神々と出会ったことも、数え切れぬ程に経験がある。彼らは皆一様に、人々の事など目にもくれず、この世を自分の遊び場か何かだと、思っている筈なのだ。

 

まただ。今、また俺の涙の意味が変わってしまった。

 

唯の民人に頭を下げ、職人達にすら許しを請うて。この女神は皆と笑い合っているではないか。まるで人と自らとの垣根を持たずに、これほどの権能を持ちながらも一切誇らず。過ちがあれば頭を下げろと、その姿勢でもって人に教える。

 

世界のすべてを見てきたつもりだった。

だが俺は、あまりにも愚かだった。只々涙が両の目から溢れる。

 

あれこそが、神だ。

 

数多の欲深き偽物達など比べるべくもない。自分の理になるモノにしか権能を与えようとしない、弱者の事など見向きもしない愚物どもとは異なるモノだ。

 

職人達との話を終えた女神が、俺の元へと近づいてくる。

 

このみすぼらしい格好のまま、この女神の前に立つことは許されない。

纏っていた外套を脱ぎ捨て、ボロ布のような上着を腰に巻きつけて、快賊義侠(いつも)の白シャツを顕にする。女神から授かったこの美しい顔を涙で崩れたままの姿でお見せすることも耐え難い。懐から仮面を取り出し、深くかぶって御身の前に。

 

「っ、その肩の鷹とドクロの紋章印っ。」

「こ、皇族のみに許された、獣を抱かぬ、鷹しか描かぬ不敬の証っ!!」

「治世の証たる天秤を背中に掲げる、白い仮面の大悪党っっ。」

「……貴族達の悪夢、俺達庶民の希望の星!」

 

「「「「「「か、快賊義侠っっ!!」」」」」」

「「「「「「っマスカ、レイドっ!」」」」」」

 

静かに俺は膝をつき、深く拝礼にて女神の到来に備える。

敬うべき女神には相応の礼が必要だ。至極当然の話だろう。

 

「貴方にも本当に申し訳ないことをしてしまいました。心からお詫びいたします。どうかお顔を上げて下さい。」

 

何よりも美しい声が俺に向けて放たれた。しかし俺はその言葉にすぐに応じずに。女神にまず聞きたかったことを問いかえす。

 

「女神よ、まずはお聞きしたい。何故私などをお助けに?」

「理由なんてないわ。

眼の前で困っていた貴方を救うのに、理由なんて必要ないもの。」

 

ああ、そうか。この女神にとって死病とは。

俺が長年抱えた苦痛とはその程度なのだ。目に映ったからついでに救ったのだと。女神は当然の如く言ってのけた。

 

なんという権能、なんという偉大な力か。

 

あまねく神々の中でもおよそ並ぶモノのないであろう強力な奇跡の力を、この女神は一切惜しまず、眼の前で嘆くモノを救う為、惜しむことなく使って下さるというのか。誰かを救うことに理由など必要ないと。ソレこそが自然な行いであると。

 

その身で示し続けるというのか。

 

その在り方に只々深い感銘を受ける。この御方はずっと俺が目を逸し続けた事から逃げることなく向かいあって生きている。その美しい在り方に只々圧倒されて我が身が震えた。

 

この方に嘘など言えない。言うべきではない。俺の全てを知って頂いた上で、その上で母の事を願うべきだ。汚らわしいこの身の上を隠すことなく伝え、女神の審判を仰ぐべきだ。

 

それだけが、穢れた俺に許された唯一の選択だと思えた。この優しく気高い女神の前で己を偽ることが、この世のあらゆる罪科にまさる大罪であるように、思えた。

俺は畏み、膝をついたまま女神に告白を始める。

 

「女神よ、恐れながら申し上げる。

私は、俺はどうしようもない大悪党です。死病に侵された母を捨てようとした父をこの手で殺めて以来、世界中で多くの悪事を働く貴族を、私と母の命を永らえる為だけに殺しまわった男です。

 

逃走の際、邪魔になる宝物を投げ捨て、民人を盾に己の身を護り続けた。義賊などと周りから囃し立てられる事を利用し、多くを見殺しにしてきた、貴方に救われる価値など無き者だっ!!」

 

血が凍るように冷たかった。生きた心地など等にない。この世に悪党を救いたいと思うモノなどどこにもいないのだ。そんなことはわかっていた。それでもこの御方を騙すような真似をするよりはマシだった。

 

絞りだすように罪を述べた。己の抱えてきた罪の重さが実感できた。仮面を被っていて正解だ。今の俺はきっとひどい顔をしている。

それでも俺はこれから厚かましくもこの気高き女神に縋ろうというのだ。

 

縋る他ないのだ。

 

「だが女神よ、それでも伏してお頼み申し上げるっ!

 

どうか母を、我が母を貴方のお力でお救い頂きたいっ。実母に捨てられたこの俺をここまで育ててくれた方なのです。父から疎まれ、辛く当たられてもなおこの俺を愛して下さった。私の命よりも大切な、大切な方なのです。

 

あのような優しい人が、美しい母が、死する病で醜く散っていいわけがないっ!!

どうか、どうかお頼みしたいっ。

叶えて頂けるというのなら、この身、この魂のすべてを貴方にっ!

貴方の望む全てのものを、貴方に捧げてみせましょうっ。

 

だからどうか。母を、お救い下さいっっ!!」

 

子どものような我儘を女神にぶつけた。嘘偽りなくこの身の全てを捧げる覚悟で。只々祈るように、その場に強くひざまずく。

俺の罪が女神によって裁かれようとしていた。

 

永遠にも似た沈黙が訪れる。

 

そして不意に。俺の肩へと女神の掌が置かれ、そして告げられたのだ。

 

「必要ないわ。」

 

それは否定の言葉だった。

 




閲覧ありがとうございます。
4話でまとめきれませんでした。
後1話、義賊さんのターンが続きます。

くっつく飴玉様の感想にかいた文章コピペではっときますね?

次回予告
女神に否定され絶望の淵に立たされてしまった義賊さん。
しかし彼がその時見たものはチキった作者の用意したありきたりなシナリオだった。

なんの捻りもないチープな展開が今読者へと襲いかかる。果たして彼は救われる事が出来るのか?

次回サブタイトル、どう足掻いても救済

にご期待下さい(白目)


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39) 第15話裏 あまねく全てを束ねる光(5)

15話大進行ラスト。


【義賊視点】

 

そして不意に。俺の肩へと女神の掌が置かれ、そして告げられたのだ。

 

「必要ないわ。」

 

それは否定の言葉だった。

 

ああ、咎人は今裁かれた。

やはり俺は。

許されるべきモノではない。

 

母を救おうと世界中で暴れまわった男は、その実。

己でその救済を無下に放り投げていたのだ。

 

当然の結果に。思わず強く、強く目をつぶる。

 

しかし女神の言葉はそれで終わりではなかった。

 

「貴方の母親を救うのに理由なんていらないもの。」

「っっ!?」

 

思わず顔を上げ女神の姿を凝視した。

その顔には深い慈愛と、涙の粒が浮かんでいた。

 

「……色々辛い思いをしてきたのよね。

そんな貴方に優しくしてくれた、素敵な方、…なのでしょう。

だったらね。そんな人が不幸になってしまうなんて世の在り方は嘘だもの。だから私がこの手で変えてみせるわ。この世の全てを美しく変えてしまう手でもって。」

 

ああ、ああっ!!

そんな事があっていいのかっ。

貴方は咎人でさえ許し、美しい有り様にお変えになられたというのか?

 

こんなモノの為に涙を浮かべて、本気で慈しんで下さるというのか。この身の不幸を間違いであると、幸せを望んで下さるというのかっ!

 

「だって私は、誰もが。全ての者が笑って暮らせる世界を望むのですから」

「……ああ、……女神よ。」

 

ああ、この御方こそが女神。

人々の喜びを願い、皆の幸せの為にお力をふるう御方。世界の全ての不幸な在り方を変える為に現れた、虹を讃える真実の神。

 

儀礼以外で神になど祈りを捧げたことのない俺が、その時自然と、ソレを捧げた。この身は既に女神によって変えられていた。

ならばもう。

 

その生き方などたった1つだ。

 

「それが。それが、貴方の望みなのですか?」

「ええ。」

 

答えのわかりきった言葉を投げた。

当然に、優しい笑顔で女神は答える。

さぁ、誓いの時だ。

 

「ならば俺は、私はこれより貴方の言葉に従おう。

貴方の望むモノを、貴方に与えられたこの姿で必ず実現してみせる。」

 

「我が根源よ、光輝(フォトン)となりて我が身(ウイング)を空へっ!!」

 

口早に女神へ己の決意を言い切ると、私は父を殺して以来使うことのなかった根源術を開放する。とたん。我が背中から魔素で固めた光の翼が生えてきた。

女神と同じ在り方を選んだ私にはもう名を、姿を偽ることなど許されない。

 

「こ、光翼の、根源術ッ!!」

「っこ、皇族にのみ赦された尊き血筋の象徴魔術だってっっ!?」

「あ、ありえねぇっ。マスカレイドがなんで光の翼を纏うってんだっ!!」

「な、なんて綺麗……。」

 

ざわめきが大きくなる。

立ち上がり、民人達に振り返りながら。

私は被っていた陶磁の仮面を地面に叩きつけ、大声でもって宣誓を果たす。

 

偽りの仮面が砕けた音が、その場のざわめきを支配する。

 

「皆のもの、聞けっ!!

今ここで快賊義侠を名乗る痴れ者は死にたえたっ。仮面でもって自らを偽り続けた愚かな男は消え果てたっ!!」

 

翼を広げ、皆の視線を集める。

女神の後光を受けた純白の翼が今、まるで女神からの祝福を得たかのように虹彩を帯びた。その姿が、なによりも誇らしい。

 

「ここにいるのは女神によって新たに美しい在り方を定められた1人の女っ。女神によって一度は捨てた誇りを取り戻したかつては男だったモノだっ!!

女神の望む世界を創る為、私はあえてこの名を名乗るっ。

 

ファルケシアス・フォン・リーブライオスっ!!」

 

「っこ、光輝の翼!」

「知勇名高き第三王子。舞い翔ぶ鷹のファルケシアス殿下っっ!?」

「前代皇帝殿下と共に死んだって話じゃなかったのかっっ!!」

「建国帝の生まれ変わりと謳われた誉れ高き天秤の王子っ!?」

「か、快賊義侠は、天秤の王子だったってのかよっ!!」

 

一度は捨てた在り方。一度は捨てた誇り。

そしてその時に捨てた名前を、私は変わることで取り戻した。

もはや変わらぬ、美しき在り方を与えられて。

 

「我が母、治世たる天秤の名を継ぎて、皇族の証たる鷹の名を頂く者の名だっ!!

皇帝たる父を殺し、世を騒がせた大悪党は今宣言するっ。

私はもう逃げないっ。必ず女神の、虹たる女神の望みを叶えてみせるとっ!!」

 

この名を取り戻すことでこの身に流れる高貴の血が、魔法陣の影響を受けた彼らの心を惑わせてしまうかもしれない。

だかそれでいい。

 

「今私の天秤は調和を望む大いなる女神へと捧げられたっ!!

天秤はここに定まったっ。

私はこれより虹を求め続ける求道者なり。争いなき雨上がりの世界を望む者だっ! 果てなき道を往く者だっっ!!

 

だが恐れなど、迷いなど欠片もないっっ!!」

 

虹の女神の望みは果てしなく険しい頂きにある。手段など問うていてはとても届かない。私はもう貴族だった頃の、甘さだけの優男ではない。

だが海賊だった頃の、己の為だけに生きる獣でもない。

 

女神が悪党だった私の為に泣いてくれた時、俺の生き様すら彼女が認めた時。私はそのどちらもが己であると、そう気づけたのだから。

どちらも使って目的の為に飛び続ける。この思いは、この決意だけは揺らがない。

 

なぜなら。

 

「なぜなら、天秤は偉大なる虹と調和の女神と共にっ。

全ての者が笑いあえる世界を望む、我等と共に生きる女神と共にあるのだからっっ!!」

 

民人達が私の言葉に声を張り上げて喜びを伝える。

もちろん私もありったけの叫びでもってこの喜びを世界に響かせた。

ああ見ているか神々よ、愚かな貴族よ。

 

人々(我々)は得たぞ。神を得た。貴様らのような偽りの存在ではない。真に世の在り方を憂う、真の女神の守護を得たっ。

 

私は必ず貴様らを、この世界から駆逐する、駆逐してみせる。

 

女神の在り方に不要なモノは、この私が地べたへ叩き落とそう。

優しすぎる女神にできぬ悪行は、俺が背負って飛べばいい。虹を背負う彼女と共にあり続ける事は、できぬかもしれぬ。悪徳は私を女神から遠ざけるだろう。

 

だがそれでいい。

 

はるか高き優しき光を目指し、飛び続けることができれば、それでいい。

なぜなら私は、虹へと向かい(遥か高みを)舞い飛ぶモノ(目指すモノ)なのだから。

 

 

【衛兵長】

 

そこには不思議な光景が広がっていた。

 

守る者が、民草達が。造る者が、造られた者が。海賊だった高貴な者が。なりより虹たる女神様が。本来交わらざる、あらゆる者達が女神の元に1つになって、皆で喜びを讃えている。

 

騒ぎに気づき何事かとやってきた者も。虹の光の美しさに魅入られていつのまにかその輪の中に。気付けば街の市民区の者たちみんなが集まって、女神様の元で馬鹿騒ぎ。楽しそうに笑うそのお姿を見て、さらに皆が喜びを深める。

 

あの女神様が現れてそれほど時がたったわけじゃない。

ほんの2、3時間といった所だ。それなのに、もうこれほどに街は変わった。

 

不意に、1人の男が気安い口調で女神様に声をかけた。

 

当然だ。この場の誰もが彼女を慕っていたが、誰もが古い友人のように砕けた口調で接しているのだから。女神様もそれをどこか嬉しそうに微笑んでいるのだ。

 

「なぁ嬢ちゃん。

そういや俺らはアンタの名前をまだ知らねぇ。なぁ、女神様よ。きっとここにいるみんなが今、アンタの名前をきっと知りたがってるんだぜ。ひとつ俺らにその名前を聞かせちゃくれねぇか。」

 

「ええ、もちろん。虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)。それがワタシの名前なの。」

 

「……ああっっ!

そりゃあいいっ。ふっ、ははっ。そっかぁ、そうだよなぁっ!!」

 

とたんにその場にいる者全員が、大声を上げて笑い出す。

ああ、そうだろう。その気持ちはよく分かる。今なら私にも、よく分かった。

 

「なによ、そんなにおかしな名前かしら?」

 

少し不満そうな顔をしている女神様の前で、みなが肩を叩いてなお笑いあった。

 

「いえ、そうではありません。」

「ええ。きっと違います。」

 

この場にいる全員があまりに貴方の名前が出来すぎていて、もう笑うしかなかったのです。ああ、虹の橋の(ヴィリス)(カムィ)。全ての色を束ねて蒼空にかかる快晴の象徴。それはまさしく貴方の事だ。

 

「民達は皆、貴方の名前が余りに貴方らしかったので皆嬉しさを堪えきれなかったのでしょう。」

「我等とてそうです。許されるならば今ここで皆と共に笑いあい、貴方と共にいられる事を喜びあいたい。」

 

女神さまは我等がそう伝えると少しだけ周りの光景を見つめた後に、自身も笑顔を零し始めた。ああ、そうだとも。我等も職務など忘れて喜びを分かちあいたい。

 

「へぇ、ならさ。笑えばいいじゃん。みんな一緒に。」

 

あっさりと、漏らした言葉にそう言って下さる女神様のお付きの方の言葉に、つい門番と共に顔を見合わせて笑い合う。確かにもう、ここで暴れるような者は出ないだろう。一番の大悪党が、その輪の中で楽しそうに笑うのだから。

 

「そうだ。別にこの場でそれを押し殺すことはない。そんなことこの場の誰も望むまい。それよりここに大罪人がいるのだが、仕事はいいのか衛兵殿?」

 

その本人が、突かれれば自分が困るようなことを聞いてくる。

だから肩を竦めていってやるのだ。

 

「ファルケシアス殿下もマスカレイドも、そのどちらも我等は男性であると聞いています。決して貴方のような見目麗しい女性ではない。違いますか?」

「ファルケシアスなんて女性、いるわけありませんよお嬢さん。だってそりゃそもそも男性名ですからね?」

 

「くくっ、なるほど理に叶っている。なら今の私はさしずめファルケシアといった所だな。ふむ、悪くない。美しい響きだ。」

 

たまらず私たちは笑い合う。女神の下で、笑い合う。

 

市民と貴族、悪党と衛兵、造る者と造られた者が。虹の元で笑い合っていた。

我々の常識は、世界はすでに女神によって変えられていた。

 

「ああガウリィ・レオルド。お前の言うことは本当だった……。お前の言う通り、これがこの街の、いや世界の分岐点だ。

 

世界が変わるぞ。女神と、私達が変えるんだ。我々は今、運命と出会っている。

輝かしい、世界の未来と。」

 

女神は全ての色を束ね、唯その道を指し示すのみ。

その時私たちは嵐の時代に終わりを告げる、優しい光を見るだろう。

晴れ上がった青空に、なにより美しくかかる虹の橋の輝きを。

 

あまねく全てを束ねる光を。

 




閲覧ありがとうございます。
やっと15話裏が終了っ!!
後は落ちを書くだけや。心が軽いぜ♪

節目節目に評価や感想をねだっていくスタイルです(白目)
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40)第15話 オレが街へと出掛けたら

主人公視点、久しぶり感がありますね(白目)

あ、こっそり第2章の展開アンケート設置してます。
よければご参加下さいませ。


と、とんでもねぇことしちまった。

オレは今2人の女の子に挟まれるようにして倒れている。しかも背中側。家だった娘さんがオレの身体に色々擦り付けてくるもんだからよろしくない。

 

背中の辺りにゃ吸い付くような小山と書くにゃ大きな山が押し付けられてる。少しでもオレとくっつこうと優しく、でも以外に力強くオレの身体へ巻き付かれたその腕と脚が。なにより彼女から香る春の花みてぇな甘い香りが、オレの色んなモンを今現在高速で削っている所だ。

 

ちょっとでも逃げようと身体を動かすと、今度はこれを盗賊さんが邪魔をするんだ。この人スレンダーで艷やかな短い青髪の、美形の男みてぇな容姿なんだけど胸だけ自己主張が激し過ぎてね。ピンと突き出したソレをオレが動こうとすると自然と押しつぶす感じになっちまうの。

 

なんかその、互いの胸が押し合って形変える様を見てるとこう、ね。……もんもんと色々考えちゃうわけなんですよ。そうすっと罪悪感がすげぇのですっ!

 

すごく、すごく嬉しいんだけどもっ、よ、よろしくねぇっっ!!

それと後ろの子、さっきから耳元で、耳たぶに当たるかどうかの位置で囁きながら息吹き付けるのやめてっ!

 

「もう離さへん、コレもうウチのモン」って君、ナニ言ってんのぉっっ!!

 

ああぁ、動くと今度は前方から自己主張ロケットの暴力がっっ!!

くっ、このままでは色々まずい。ワカバとコイシがココに居ないことが唯一の救いだ。こ、こうなったら仲間に助けをっっ!!

 

め、メイルさんっ!!

 

あ、なんか周りがすっごく混乱し始めたから、めっちゃ警戒してくれてるわ。あ、今オレに構う余裕無いっスよね。なんかすみませんっ!!

 

ツ、ツルギさんっ。

 

は、助けを求めると全部斬りとばしちゃいそうなので却下っ!!

あの。あ、あんまり盗賊さんのこといつでも斬り捨てますがって目で聞いてくるの辞めてくんないかな?

 

彼は被害者なんだっ!!

 

くっ、こ、こうなったらアンダーっ。君に決めたっ。

って、いい笑顔で親指立てて笑いかけてくんじゃあねぇよぉぉぉっっっ!!

ああ、オメェになんか期待したオレがバカだったぁぁぁっっ!

 

はっ、す、ステラ。そうだ、オレにはステラがいるじゃねぇかっ!

た、たしゅけてステラさーーーん!

 

《不服申請。ステラに行き着くまでに時間がかかりすぎています。ステラは遺憾の意を表明し、あなたに異議を申し立てます。》

 

いやっ、そういうこと今いいからっ。

ど、どうにかなりませんかね、この幸せサンドイッチっ!

 

《指摘。盗賊の男が目を覚まし、こちらの状況を伺っています。

推論。事態は自然と終息すると予測できる為、今はこのまま残された時間で幸せを噛み締めていても問題ないかと。》

 

お、おおう。べ、別にオレ噛み締めてなんかねぇし?

 

《指摘2。いつもよりも3割ほど顔が緩み気味です。その反論には無理がある。》

 

ばれてるぅっっ。

だってこんな風に女の子に挟まれた事なんてねぇからよぉっ。そんなもん嬉しいに決まってるじゃんかぁぁっ、色んなとこが幸せなんだよぉぉぉっっ!!

 

《肯定。ステラを貴方のその幸福を容認します。》

 

やめてっ、そんなおかんみたいな生暖かい視線投げつけんのっ。

耐えられないんだけどぉっ!!

 

《否定。それよりも不確定名:盗賊がアクションを起こします。対応を。》

 

「これは失礼、レディ」

 

あ、あれ? なんか思ったより紳士だこの人。いっちゃなんだけど盗賊っぽくない。だってなんかイケメンが、イケメンゼリフが様になってるんだもの。

こういう人ってだいたい大物なんだよな。筋モン(そっち)の世界じゃよ。もう嫌な予感しかしないぜ。少なくとも若頭か、いやもっと上だきっと。組長クラスだなこれ。

 

と、ともかく。やっと盗賊さんが離れてくれたからこの状態から抜け出せるぜっ!あのぉ、後ろのオネェさん、いい加減離してクレませんかねぇ?

 

「んふ。いぃや

「ちょっっとぉぉぉ!?」

 

こいつアンダーちゃんと同じ小悪魔界の生き物だっ。ちょ、そんな、ふぁっ、ぁ、身体弄ってくんのひゃめ、うわわわっ。舌はだめだってちょぉっ!!

あ、アンダーてめぇさりげにミンナにみえねぇように立ち位置変えてんなコラっ。

 

だ、誰か、助けてぇぇぇっっっ!!

 

《指摘。友愛行為です。貴方の身に危険はありません。》

 

そういうこっちゃねぇからっ。そ、そだ。アレを、アレを使えばっ!!

 

「我が根源よ、光と(シャイニング)なりて(レイン)今輝かん」

「うわっ、なんなんコレ?」

 

よぉしっ今の内。小悪魔2号の目が眩んでいる間に素早く立って距離を取るぜっ!

お、なんか辺りも暗くなって来てたし明かりが出来てちょうどいいんじゃねコレ?てか、改めて今気づいたけどなんか周りからめっちゃ見られとるんだけどっ!!

 

やっぱいきなり家を人に変えちゃうとかみんな混乱しちまったんだろうな。言葉もねぇぜ。いきなりんなことされたらそりゃビビるだろうしよ。

 

しかも、なんかあのクールな組長さんが崩れ落ちるように泣いてるしぃぃ!!

 

や、やっぱそうだよな。オレもショックだったもんなぁ。そりゃオレみてぇな童貞と違って組長さんは色々抱えてるんだ。そりゃショックデケえってっ!

 

こ、これはアレだ。

 

完全にアレ案件だ。赦されるこっちゃねぇけどせめてアレしかねぇだろ。

《確認。ステラはアレの内容が気になります。》

 

んなもん。土下座一択だっ!!

 

「皆様方、この度はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでしたっ!」

 

 

なんとかオレの誠意が伝わったみたいで、街の人みんな最後にゃ笑って許してくれたわ。

 

なんていい人達なんだろう。オレの住んでた世界じゃ考えられねぇ展開だ。

今じゃ気安く笑い会える仲ってやつだ。ここの人となら仕事も上手くやってけそうだな。なんか一安心だぜ。

やっぱけじめって大事だよな。

 

《……。》

 

職人さん達も家娘さんの口利きもあって一件落着。ほんと気のいい人たちだったよ。むしろオレに感謝してくれるなんてなぁ。

さぁこれで最後は。

 

《指摘。今までずって噎び泣いていた貴方曰くの組長氏だけですね?》

 

ですよね(白目)

 

いやね。ずっとこの人、泣いてるんですよ。コレが。

もうね、オレも辛くてね。やっぱ大事だよなぁ、アレって。だってこんな立派そうな組長さんがもうね、ずっと祈るように泣いてらっしゃるんだぜ(遠い目)

 

正直どうしていいのかわかりません(悟りを開きかけた目)

 

まぁね。ヤルことなんて1つだしね。よく見るとけじめ案件に備えて組長さん完全に正装していらっしゃるしね。あ、その仮面仕事用のヤツですか。

に、似合ってますよ(涙声)

 

はぁ。とりあえず頭上げてもらって話会おうか。

《肯定。あなたのその前向きな点はステラも高く評価しています。》

 

俺はとりあえずその旨を盗賊さんに伝えたんだ。

そしたら盗賊さんが

 

「女神よ、まずはお聞きしたい。何故私などをお助けに?」

 

なんて訪ねてきたから素直にこう答えたよ。

 

「理由なんてないっすよ。目の前で(空から落ちてて)困ってた人を助けるのに、理由なんていらんでしょうに。」

 

って。そしたら組長さん、いきなり震えだしてな。

 

ああこの人やっぱり大物なんだわ。自分が受けちまった義理があるから女にされた怒りとか全部腹に収めてくれようとしてるんだ。きっと一本筋の通ったその筋じゃ名のある組長さんに違いないな。仮面もかっこいいし。

 

こんな若造に助けられた事を気に留めて、男の一物の恨みしょいこむなんざ、なかなかできるこっちゃねぇ。ついついオレはこの組長さんを尊敬の目で見ちまった。

 

《確認。そんなに男のアレは大事なモノなのでしょうか?》

 

そんなもん、大事に決まってんだろっ。むしろ一大事だわっ。実際オレだって完全にまだ割り切れたわけじゃねぇからっ。できりゃいつか取り戻したいアレだからっっ!!

 

《肯定。ではなにか方法を考えておきましょう。》

 

え、マジ。ほ、ホントですかステラさん?

 

《肯定。期待しないでお待ち下さい。》

 

お、おう。あ、ホントお願いします。できれば組長優先で。

オレがそんな事を脳内でステラと話あっていた時のことだ。組長さんがオレに対しいきなり自分の悪事を懺悔し始めたんだ。

 

なんでも死ぬような病に侵された母親を救う為に、この人今まで一杯悪いことしてきたんだと。それでもなんとか母親を救いたいって、声を震わせながら言うんだよ。でも話聞いてると何でもいいから悪事に手を染めてきた人じゃなくてな。環境の為仕方なく、仕方なくそうなっちまった可哀想な人なんだなって思えた。

 

特に親に捨てられて家で辛く当たられてたってトコがもうね。不幸だった頃の自分見てるみてぇで、グッと来ちまう。

 

自分の母親が助かるかどうかって所でよ、それでも自分がどんな悪事を働いてきたのか言わなきゃ気がすまないような不器用な、筋の通った組長さんなんだきっと。色々環境が揃ってりゃ、そんな道選んでないだろうにな。

 

へへ、イイぜ。そんなモンも今のオレなら救えるんだからよ。お互い不憫な人生を送ってきたんだ。ちっとはいい目見てもバチなんてあたるかよ。

救ってくれりゃあなんでもするなんって言ってるけどよ。そんなモン必要ねぇ。

だからオレは言ってやるんだ。

 

「アンタの母さん救うのに、理由なんていらねぇっ。

 

色々辛ぇ目にあってきたんだろ。

んなアンタに優しくしてくれた、すげぇ母ちゃん、なんだろう。

だったら、んな人が不幸になるなんざそりゃ嘘ってモンだ。だからオレがこの手で変えてやる。掴んだモンみんな健康的な美少女にしちまう、この手でもってな?」

 

そしたらさ。めっちゃ感動してくれたのよ。

いや、それはいいんだ。うん。

でもね?

 

「ならば俺は、私はこれより貴方の言葉に従おう。

貴方の望むモノを、貴方に与えられたこの姿で必ず実現してみせる。」

「我が根源よ、光輝(フォトン)となりて我が身(ウイング)を空へっ!!」

 

ま、まぶし、なんかすげぇまぶしんだけどっ、何、何コレぇっ!!

な、なんで組長光ってんのコレっ、若造が光ってんのに負けてられん的なアレじゃねぇよなっっ!?

 

「こ、光翼の、根源術ッ!!」

「っこ、皇族にのみ赦された尊き血筋の象徴魔術だってっっ!?」

「あ、ありえねぇっ。マスカレイドがなんで光の翼を纏うってんだっ!!」

「な、なんて綺麗……。」

 

ええ、な、何ソレ、唯の極道さんじゃないのこの人。ちょっ、全然聞いて無いんだけど、聞いてないんですけどっ!?

《不確定名:盗賊から信仰申請あり。ステータスを確認できます。どうされますか?》

 

え、はい。見たい。超見たいですっ!

 

 

名前 ファルケシアス・フォン・ライブライオス

種族 ヒト族・帝王種

性別 女

職業 海賊女帝(パイレーツエンプレス)

レベル 67

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 188 (128+60)

耐久 146 (88+41+17)

敏捷 237 (147+70+20)

器用 229 (142+67+20)

感覚 177 (113+54+10)

知識 165 (94+44+27)

精神 157 (107+50)

魔力 119 (76+36+7)

 

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

HP 4696(3696+1000) 

MP 3734(3334+400) 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【EX:細剣・レガイア オブ ヴェンディーナ】

武器2:【 RRR:魔銃フェンリル】

防具:【RR:皇鷹掲ぐ天秤の担い手】

騎乗:【EX:剣角の(ソードフィッシュ)勇魚号(グランディアス)

装飾:【EX:マスカレイドの白仮面】

 

種族スキル

【R:帝王のオーラ】

【RR:繁殖力】:ヒト種特有の優れた繁殖力。理論上ヒト型のあらゆる生物と子を成せる。

 

スキル

【RRR帝王学Ⅱ】:あらゆる知識・交渉・指揮判定を代行できる万能技能。

【交渉術Ⅲ】【海賊殺法Ⅲ】【隠密Ⅱ】【運動Ⅲ】【知覚Ⅱ】【礼儀作法Ⅲ】【航海技術Ⅲ】【賭け事Ⅱ】【房中術】【恫喝Ⅲ】【演技Ⅱ】【演奏Ⅱ】【捜索Ⅱ】【軍事教練Ⅲ】【指導Ⅲ】

 

【虹の調和の狂信者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し強い耐性を得る。

 

職業スキル

【EX:海賊女帝の大号令】:場所を問わずに発揮する指揮能力。全判定に強修正。攻撃力に別個強補正を与える。全軍の水域修正を打ち消し、さらに補正を与える、

【RRR:ミリオンスラストⅢ】:超高速の連続刺突攻撃。

【RR:連撃Ⅲ】:高確率で再行動。

【R:ホークアイⅢ】:敵の弱点を見極める鋭い観察力。クリティカル率大上昇。

【RR:ダブルハンドⅢ】:2つの武器を同時に使いこなす技量。攻撃回数アップ。

【RRR:ブラッドバスⅡ】:超高速の連続射撃攻撃。範囲制圧にも使える。

【RRR:女帝の加護Ⅱ】:存在するだけで周囲に影響を与えるカリスマ性。全判定に補正。

【RR:ラックアップⅡ】

 

上級根源術

【我が根源よ、風を纏いて(ウインドステップ)我が身を飛ばせ】

【我が根源よ、我が身は空で(スカイダンシング)舞い踊らん】

【我が根源よ、光輝となりて(フォトンウィング)我が身を空へ】

 

ユニークスキル

【RRR:高貴なる血筋Ⅲ】:全ステータス・能力成長に補正。上級職を帝王系に進化可能になり、根源術が上級根源術へと書き換わる。

【EX:死を乗り越えた華Ⅲ】:【RRR:死に征く華Ⅲ】が与えられた試練の克服によって性質を変えたもの。全ステータス・能力成長に強補正。そして幸運に大きな補正を得られる。

【BOSS適正】:一般の個体より優れた能力を持つ。HPが段違いに多く、バステ耐性を持つ。

 

付加スキル

【皇帝殺し】:討伐称号。貴族に対し全判定に強修正を得る。カリスマ大アップ。

【神殺し】;討伐称号。神族の神聖・精神属性攻撃に対し高い耐性を得る。

【RRR:完璧なる美少女】:自身を完璧なる美少女へと変える。ランクはその度合。

自身の言葉はキレイな言葉へと自動的に変換される。また完璧属性はあらゆる能力と成長に強い補正値を与える。また自身にこのスキルを付加したモノに対し、愛情と信仰心を抱く。その強さは環境に依存する。自身に付加した時のみランク値へと変換される。

 

【EX:ワールドユニーク】:システム情報です。PC権限において閲覧できません。【快賊義侠・七海のマスカレイド】としてワールドユニークの1人に認定される者。ワールドユニークとはこの世界でも特に優れたエネミーやNPCの上位100人に対し与えられる称号であり、その選抜基準は実力と知名度、世界に及ぼす影響力である。ワールドユニークの討伐に成功した者には、それに由来するボーナススキルがシステムより与えられる。

 

 

ぶはっっっ!!

な、なんですかコレ、ど、どうなってんだよオイっっ!

なぁステラさんや、この世界ってこんな物騒なヒトゴロゴロおったりすんの?

 

《否定。彼はワールドユニークです。世界でも有数の実力を持った存在。その実力は人類規模ではほぼ上限に等しいといえるのでは?》

 

こ、皇帝殺しとか、神殺しとか書いてあるんですけどぉっ!!

 

《回答。討伐称号です。どちらもそれらを殺害した時に得られる称号です。》

 

想像しとったより100倍大悪党じゃねぇかっっっっ!!

う、うぉぉぉ、いや、でもっ、筋は通ったいい人だし、大丈夫かコレぇっっ。

 

《あ。》

 

ど、どうしたんだよ?

 

《解答。おめでとうございます。たった今貴方のワールドユニーク撃破がシステムより受理されました。あなたが交渉した結果【快賊義侠・七海のマスカレイド】を説き伏せ、彼の象徴アイテムである【EX:マスカレイドの白仮面】を自らの手で破壊させた功績が、正式に撃破判定として認められました。これにより多大な経験値がパーティーに分配され、貴方に撃破称号が贈られます。》

 

え、いやいやいやいや。おかしいだろソレっ。オレ別にあの人と戦ったりしてないじゃんよぉっっ!!

 

《通達。状況はウル達の時と代わりません。何もおかしな事などありません。なお今回帝王種からの信仰を得た貴方は正式にこの世界の信仰神として認められ、職業ランクがさらに上昇しました。これにより貴方は女神見習いを上級職である女神に昇級可能です。おめでとうございます。》

 

ちょ、ちょ、ちょ。

 

《通達2。この偉業により貴方は前回より申請していた称号スキルの獲得に成功。貴方は新名誉称号【最速で救う者】のレコードホルダーとなりました。素晴らしい快挙です。ぜひこの称号をこのまま維持できるよう、励んでいきましょう。

このままステータスを確認しますか?》

 

ちょっと待ってくれぇっ、色々飲み込めねぇっっっっっ!!

あとなんか組長の出した羽さっきから熱いしっっ、これもしかして危険なヤツじゃねぇのっ!?

 

《解答。フォトンウィングには超熱による攻撃判定があります。直撃すれば流石にレベル差から死亡判定は免れません。シャイニングレインの継続を強く推奨。》

 

やっぱあるんですねぇっ!!

ちょ、組長さん身体動かさないで、羽、羽にモロに当たっちゃうからぁっ。あの、実は恨んでますよね、アレの事ちょっと根にもってる感じですよねぇ、コレぇっっ!!

 

お、怒り出すにもいかねぇし、いきなり立ち位置変えるのもちょくちょくこっちに手ぇ振りかざしてなんか説明してる組長さんに悪い感じするしっ。

もうこれしばらく耐えるしかねぇじゃんよぉっっ!!

 

熱、あっつぃ、うぉ、ちょっっ!

ぜ、全然入ってこない。組長さんさっきから周りの人たちに熱く語ってるけども、全然聞いてる余裕なんてないって、コレっ。熱、なんか色々すいませんしたっ!

や、焼入れは勘弁、勘弁してつかぁさいっっ!!

 

く、組長さん今ナニ誓ってくれてんのぉっ!?

 

これは(oh my)ひどい(goddess)。》

 

 

その後、街の人達と一緒に喋ったり飯喰ったりしたオレらは結構この街の人らから受け入れて貰えたんだと思う。みんな親しげに接してくれるからめっちゃ嬉しい。

名前いったら笑われた時とかちょっとびっくりしたケド、なんか悪い意味じゃねぇなら別にいいや。

 

今、この場所にいるヤツみんな笑ってんだ。

 

組長さんも焼入れで気がすんだのか、今じゃ街のヒトらやオレの仲間達と楽しそうに笑って語り合ってる所だ。もちろん職人のヒトらも、門番のヒトらも。

 

へへ、すげぇよなこの街。こんな街のみんながバカみたいに輪になってくれてよ。オレらよそもんが来た事喜んでくれるなんてオレの世界じゃ考えられねぇよ。

こんなん見てたら一杯元気貰えるじゃんか。

 

カミサマはできりゃあオレに自分の世界を良くしてくれなんて言ってたけどよぉ。そりゃ、命が軽いとことか、オレの知らないヤなこととか一杯あるんだろうけど。

 

アンタの世界、捨てたもんじゃないぜ、きっと。

 

ああ、オレもなんかこの人らに返してぇな。

はは、オレにできる事なんざ知れてるけどよ。それでもなんか返してやりてぇな。貰ったモンを返して、また貰うってキャッチボール。ずっと憧れだったからよ。

 

《……。》

 

「ご主人様~、何黄昏てんのぉ。こっち来て一緒に楽しもうよぉ~。」

「旦那はん、ウチと一緒に踊らへん?」

「ほう、ダンスか。ならば私も名乗り出ようか?」

「あらあら、あまりヴィリス様にご迷惑をかけてはいけませんよぉ?」

「まぁまぁメイル殿。この雰囲気、無礼講だ。拙者らも楽しもうぞっ!」

「ちょっ、脚を踏まないで下さいましっ!!」

 

「おう嬢ちゃん、一緒に踊ろうぜ?」

「ヴィリス様とダンス、わ、私も踊りたいっ!!」

「俺にもチャンスあっかな?」

「関係ねぇよ。頼んでみようぜっ!!」

「うぉぉ、女神様ぁぁぁぁっっっ!」

 

「おぉ、踊れ踊れっ、ワシら酒とってくるっ!」

「親父らは座ってろ、オレらでいく。……飯もいるな。

ヴィリス様のおかげで今回は丸儲けだ。ちったあ貢献せんとな。」

「オメェ、面倒なヤツじゃのぉ。」

「うっせぇっ、オメェラ行くぞっ!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

「俺らも流れに乗っちゃいません、衛兵長殿?」

「致し方あるまい。できれば見目麗しいお付きの方々にお相手頂きたいな。」

「意外と面食いですね。」

「私も男だという事だ。」

「くく、違いない。」

 

「おいおい、俺みんなの手、掴んだりできねぇんだぞ?」

 

《解答。ならば貴方は掴まなければいいのです。……代わりに皆が貴方に手を差し伸べてそれを離さない。ええ、それで問題ありません。》

 

「そっか。なら、ちょっと踊ってみようかな?」

 

《肯定。皆が貴方を待っています。虹の橋たる貴方の事を。》

 

なんだよ、それ。でもま、いいや。

 

「みんなで笑っていられりゃ、なんでもいいさ?」

 

《yes my goddess.》

 

 

俺が街へと出掛けたら、色々あってレベルが上がって。

最後にみんなと友達になった。

ん、オチがないって?

 

まぁ、不思議でアレな話だからな。そういう事も偶にあるのさ。

ま、どうしても欲しいってんなら、この日みんながあまりに騒ぎすぎてダウンしちまって、次の日偉いヒトとの面会時間が少し遅れちまった位かね。

 

その間にオレは冒険者ギルドに顔出せたからなんの問題もなかったけどね。

 

そこでも当然、不思議な事が起こったんだが。

その話はまぁ、次回まで待ってくれよな?

 

これでようやっと一日だ。すげぇ長い一日だったことは覚えてる。色々あったけど最後にゃ楽しい一日だった。

 

でもこの時のオレたちは忘れていたんだ。

人々が騒ぎ、森が謡う、その光景を何より憎む存在がいたことを。

 

憎悪を纏い、人々の破滅を望む漆黒の猫の存在を。

 




NEXTSTORY
「オレのアレがインフレしてる件」

閲覧ありがとうございます。
これにて15話が終了、第2章は後半戦に移ります。
次回はレベルアップ報告ですね。

その前に100pt達成記念回がはさみますが。

余談ですがファルケさんがいるウチに憎悪の王が街にちょっかいを出してきたら事件は5秒で解決します。ちょっとレベルが違いすぎるので。そんな話が見たい方は下のアンケートにでも投げてやって下さい(白目)

励みになりますんで評価・感想・お気に入り登録して頂けると嬉しいです。


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41)100pt感謝回「若葉と小石を愛でるだけの話」

こちら拙作などをご評価下さった皆様に向けての感謝企画回となっております。
内容はタイトル通り。
いつものヤツでございます。

エロ苦手な人がいたらごめんなさい。なんかそういう人は書いてほしいキャラの話とかありましたら感想欄に書き込みを。余裕が出来たら1本描きますよ?



「カミサマお願い、ワタシを触ってっ!」

「……カミサマ、ワタシ触ってくれる?」

 

拝啓皆様いかがお過ごしでしょうか。

オレ入主 神威は今異世界に来てから最大のピンチを迎えています。

ここは寝室。時間は夜更け。オレの目の前には今寝間着姿の大切な家族が2人程。このどちらもがオレに向かって触って欲しいって涙目で懇願して来てるんですよ。

 

え、別に疚しいことしようとかじゃないんですけどね。

 

彼女達の手には小さな鉢植えに植えられ育ってきた草花と、ちょっと磨かれた小石が握られていて。それをオレに触って欲しいって言ってきてるだけなんですけどね。

 

でもコレ触るとなんかひどいことになっちゃいそうでね。困り果ててるんですわ。だってコレ、この娘らの本体だもの。オレが触るとエロくなっちゃうアレだもの。あ、やばい。現在進行形で2人の目尻に涙が溜まって来ちまってる。

 

見るまに表情が曇ってきちまった。

 

ああ、もう。そんな表情見せられちまったらよぉっ。

 

「分かった、わかったから。触るからそんな顔すんなよ、二人共っ!」

「わぁっ!」

「……ありがと、カミサマぁ。」

 

斯くしてオレはさっきまでぐずってた顔が晴れて、おひさまみたい笑ってる2人の本体を触ることになっちまったわけで。

 

まったくどうしてこんなことになったのか。

その理由が知れるのはちょいと先の話なんですが。今は観念した男が1人、自分の娘みたいな女の子2人の、ちょっと敏感な部分に触れることになっちまった。

 

まぁ今回はそんな話なんですよ。

 

 

【これより地文はワカバ、()はコイシ、《》はワカバとコイシ】

 

「おぉ、こうして見ると2人とも結構育ってるんだなぁ。」

「えへへぇ、ワタシ達も頑張ってるのっ!」

「……ワタシね。ワタシをすごく磨いてみたの。」

 

えへへ、今カミサマがワタシの核身の鉢植えに植えてるお花と、コイシちゃんの石を抱きかかえてくれてるの。ワタシたちみんなベットの上に座ってコイシちゃんと2人でカミサマを横からギュぅってしてるんだ。えへへ、嬉しいね?

 

女の子は好きな人に自分の大事な所を触られているとずっと綺麗で幸せになれるよって聞いたワタシはね、さっそくカミサマにお願いして今ワタシたち自身に触れてもらうトコなの。コイシちゃんもワカバも、カミサマが大好きだもん。

 

触れられたらきっと幸せになっちゃうねっ♪

(触れられたらきっと綺麗ななっちゃうね?)

 

(ワタシ達今、お華の子達と一緒にみんなのお家を作ってるんだけど、みんなお花や宝石が元になった子達だから綺麗な娘達なの。ワタシ達は元が雑草と小石だからちょっと頑張らないとみんなの綺麗さに圧倒されちゃう。

 

カミサマは気にしないけど、カミサマもすっごく綺麗だからいつも一緒にいるなら少しでも綺麗でいたいの。少しでもカミサマと釣り合う自分達でありたいの。

だからワタシは小石を磨いて宝石みたいにピカピカにしたり、ワカバは土とか自分の形とか細かく整えてみたりしてるんだ。若葉ももう立派な蕾をつけたしね。

 

カミサマに触ってもらえれば、もっと綺麗で幸せになれるなら。ワタシはいっぱい触られたいな。そしたらね。ワタシたちが幸せで綺麗になれたら)

 

(そしたらカミサマとずっと一緒に居たいの。)

幸せを分けてあげたいのっ♪

 

《みんなでもっと幸せになりたいなっ♪》

 

「はやく、はやくっ!」

「……触って、触って。」

「わかったわよ、それじゃいくわよ?」

 

どきどきするね?(わくわくするね。)

幸せになれるかな?(綺麗になれるかな。)

《そしたらカミサマ喜んでくれるかなっ♪》

 

「うぅん。それじゃワカバの葉っぱから。」

 

ひゃうっっ

カミサマから熱いの、ワタシの葉っぱの先端(先っぽ)に流れてくるよぉ。

指で、しゅりしゅりサれるの好きかもっ!

やん、先っぽしゅりしゅりくすぐったいのぉっ

溝の部分、ナゾラれるの好きぃ。

うん、そんなに強くつまんだら、だめなのぉ

 

(あ、や、ひんっ

や、ひぅ、ワタシの知らないトコぉっ

ワカ、バからぁキモチ、いいの、にゃがれ、ひぅっ

りゃめ、りゃめ、りゃめぇ、こわいのぉ、ワタシのしらにゃいトコそんなにイジっちゃ、ビンカンな葉っぱの先端(トコ)、しゅりしゅりツヨすぎるのぉっ

しらにゃい、しらにゃいのぉっ、溝のシワなぞっちゃやぁっ

しらにゃいトコ感じちゃうのぉ。

……っひぅ、ハネちゃうぅっ

つよいのぉ、はじけちゃうよぉっ!!

きれぇになるのにぃ、たえにゃいとぉっっ

 

あん、コイシちゃんすっごいハネてるの。

おこえはだしちゃダメだよぉ。カミサマびっくりしちゃうもの?

あ、りゃめ、コイシちゃんから気持ちいいの返ってくるのぉ

うぁん、きゅうにつよいのらめぇっ

おなかキュッとしちゃうのぉ、しらない、しらないからぁっ。

ひん、つつむように先っぽ揉んだららめぇっ

うふぅぅっん、付け根の部分コリコリしちゃやぁっ!!

それ、キモチヨすぎるからっ、カミサマのぉ、アツいのでぇ、ひぅっ、コリコリってしちゃダメなのぉっっっ

 

(やぁ、やぁ

ぜんぶ、さきっぽぜんぶモムのラめぇっ

シラないのおぼえちゃうぅ、それコイシダメになるからぁっ

うそぉっ、そんなトココリコリらめぇっ!!

ひぐっ、あうっ、なん、にゃうっ!

あぅぅぅぅぅっっっっっっっ

 

「だ、大丈夫かしら?」

「みゅう。だいじょぉぶだよ、カミサマっ?

だから続き、してほしいのっ

(涙目でぴゅくんとハネながら)「……コクコク。」

 

「そ、そう。じゃあ、次はコイシの方触ってみようかしら。へぇ、綺麗に磨かれてて手触りいいわねコレ。」

 

(ふぅ、カミサマがワタシの感触確かめてくれてる。

……あっ、これ好きかも。

ワタシの表面に指滑らされるの好きぃっ

掌で優しく包むの、気持ちいいよぉ。

あう、親指でクリクリいじめちゃやだよぉ

爪たてるの、ピクってなっちゃう。

うん、優しく撫でるの、あみゅうぅっ、キモチいいよぉっ

 

ひぁんっ、ひうぅっ、そんなにぃっ、ナデ、ぃん、まわしちゃぁ、やぁっっ

あうぅっ、ワタシのシラナイトコぉっ、そんなにされちゃらぁっ

ワカバっ、らめぇっ。おハナぁ、ワカバのおハナぁ、さいちゃうからぁっ

ひんっ、ぜんぶつつみこむのぉっっ、そんなのぉっ、だめぇっ!!

いやぁっ、アタマちかちかっ、おムネくるしくなっちゃうのぉっっ

ひゅんっ、あっ、ひぅっ!!

いまそんなトコクリクリされたらぁっ、ワカバもうぅっっ

ああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!

ずっとぉ、キモチっ、やんっ、イイのぉ、きちゃうよぉっっ

ワタシのシラないトコっ、ぜんぶぅ、きもち、ひんっ、よくされちぁっっっっっ!

し、しあわしぇににゃるのぉっ、たえにゃくちゃぁっっ

 

(ワカバがずっとぴゅくぴゅくしてる。……これってさっきとあべこべだよね。

おこえがまんできるかな。がんばってねワカバ?

うみゃんっ、わ、ワカバからキモチイイのぉ、ナガレてきたぁっ

あうっ、カミサマ両手っ、両手で小石もんじゃいやぁっっっ!!

それぇ、それぇハンソクなのぉっ

お胸きゅんとしちゃうからぁっ、アツくなるぅ、とけちゃうのぉっっ!!

あ、ひゃんっ、つかんじゃぁ、今小石つかんじゃラめぇっっ

つよくしちゃぁ、ひぅ、ラめぇ、にゃのぉ

 

らめっ、りゃめっ、りゃめぇへぇっ

おててで、ソレつつ、ひぅっ、んじゃぁっらぁぁぁっっっっっ

シラないのぉっ、ワカバぁっ、シラないのっオボエちゃうっ、ひぁっからあっっ

そにゃのされたぁっ、ひらいちゃうぅっ!

ワカバのっ、はにゃびらっ、もうひらいちゃう、んっ、からぁっっ

おハナかあぁ、おみつぅ、でちゃうからぁっ!!

おこえが、おさえっ、られなく、なっちゃうからぁっっっ

 

「「んっ、ふぅ、んっっっっっっっっっっっっっっっっ!!」」

「あ、コレ、花が咲いてる?」

 

やぁ、カミサマのアツいのぉ、ワタシのハナビラにふれてるぅっ

コイシちゃん、ひだりっ、てにぃ、ちゅちゅんだままぁっ、おはにゃっ、ひりゃくのりゃめぇにゃのぉっ!!

(ひらなひのぉっ、またワタシのひらないトコぉっ、ふれりゃれちゃってるのぉっ、あぅ、おみつっ、おみつっでちゃぅのわかるよぉっ

左手の小石(そんなトコ)、おやゆびでぇっ、もてあそんじゃやぁっ!!

ワカバのおみつっ、あふれちゃうからぁっ。めしべ(女の子のトコ)、じゅんびできちゃうからぁっ

(ひぅっ めしべ(女の子のトコ)っ、カミサマのあちゅいのっ、ちょくちぇっ、らえぇっっっ、あちゅいあちゅいのぉぉっっっっっ

 

《らめなのにぃ、みんにゃでいっぱいしゃあわせににゃらにゃきゃらのにぃっ!!おこえがみゃんできにゃいよぉっっっっっ

 

「「ひぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ」」

 

おくちからしたがとろんとして、カミサマの肩にいっぱいヨダレつけちゃう。

(おくちがたえられなくて、カミサマの首におしつけちゃう。)

《カミサマびっくりしちゃうのにぃ。》

 

「えっ、なにっ!?」

 

やぁぁっっ、カミサマ小石きゅっとにぎりしめちゃだめぇっっ!!

(カミサマのお指、おはなのなかにつきいれちゃらめぇっ)

 

《きもちぃぃのっ、しららいのぉっ、たえられにゃいよぉぉぉぉっっっっっ!!》

 

「「ひあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっ」」

 

 

はい、神威です。

現在、ワカバとコイシが2人してオレのベットで気ぃ失ってる所です。しかも真っピンクな声上げて。俺はというと手袋をつけて先程鉢植えを片付けて、2人に毛布をかけてやった所です。

 

今の心境を一言でいうとね。

わりと死にたい。

なんか自分の娘に手ぇ出しちまったような罪悪感しかありません。

 

《確認。地球ではそのような趣向の男性用販促物も数多く存在すると聞いていますが。わりと人気が高いものだとか。娘に押し切られてそのまま関係を持ってしまう父親の立場を体験した感想はどうでしたか?》

 

言い方ぁっ。

 

おうっ、気分はサイテーだったわっ!

そんなニッチな経験必要ねぇからっっ、なんかこうワカバとコイシといきなりこういう感じになんの、もうなんかチゲぇからっっ!!

 

あああああああああああああああああああ。

 

と、り、あ、え、ず。

やるこたぁ1つだ。

 

《どうされるのです?》

 

元凶を抑える。ステラ、アンダー達の居場所わかっかっ?

 

《肯定。捕捉できます。ハンティングを開始しますか?》

 

当然っ、どうせアイツラの仕業だろコレっ。

絶対ぇ赦さねぇっっ!!

よくもオレの聖域を汚してくれたなオイっっっっっ!!

 

《なるほど。聖域が性域になったわけですね。》

 

うっさいわっっ、上手くねぇしっっ!!

なんでお前そんな変な言葉使うようになっちゃったの!?

 

《回答。弛まぬ自助努力の賜物です。ジョークは世界を豊かにしますよ?》

 

努力の方向間違ってるからなソレっっっ。

いいやっ、行くぞコラぁっっっ!!

 

全面的(yes my )に肯定(goddess)!!》

 

 

とまぁ今回はひどい目にあったっていう、愚痴を誰かに言いたかっただけの話だな。まぁこの後アンダー達をさんざん問い詰めた結果、実は犯人はファルケさんのお母さんだったなんてオチがついたりもしたんだが、そりゃまぁ別にいいだろ。

 

こういう話は結構あってよ。

なかなか話す機会なんざねぇから貯まっちまってるんだわ。

もしなんかまた機会があれば、今度もオレの愚痴を聞いてもらえるかい?

 

どいつもコイツもひどい話で、この物語の幕間に相応しいアレな話ってやつだ。

あん。

それからワカバとコイシとどうしたって?

 

別になんか関係が変わるこたぁなかったが、そうだな。

あれにゃあ少しまいったか。

ほんじゃ、そこらでこのお話の締めとしようか。

 

 

「お、目覚めたのかオメェラ。」

「うんっ!」

「……うん。」

 

翌日、朝起きると元気一杯、ワカバとコイシが飛びついてきた。おう、オレの天使達が変な空気とか抱えてなくて今やっと安心できたわ。

とりあえず2人の頭をワシワシなでてやろう。そりゃそりゃぁっ♪

 

「「きゃぁぁぁ♪」」

 

ん、いつもの反応だ。これこれ。こういうのでいいのよコイツラとの関係は。

 

《本当に必要以上に父親してますよね貴方。》

 

っさい。いんだよ。お互い幸せなら別に。

 

「あのねカミサマっ!」「……あのねカミサマ。」

「おう、どした?」

「昨日の事なんだけどねっ?」

「……びっくりさせてごめんなさい。」

 

ああ、やっぱ気になるよな。オレだって昨日の今日で全然気にならんってわけじゃねぇもんな。けどまぁここは軽く流して、笑い合うのが家族ってもんだろ?

 

《……。》

 

「ああ別にいいさ。確かに驚いたけどあんなんで迷惑に思うわけじゃねぇよ。家族なんだからお互い面倒かけあう位がちょうどいいって。な?」

「本当っ?」「……よかったぁ。」

 

おうそんなに気にしてたんかよお前ら。いいっていいって。確かに面食らったけど終わったことだし。アレっきりなら問題ないわ。早く忘れようぜ。

 

《黙祷。ステラはオチが読めてしまいました。》

 

「「じゃあカミサマ。また今度、ワタシ達を触ってね」」

「え?」

 

変わりませ(oh my)んよね、貴方は(goddess)。》

 




というわけで皆様、閲覧ありがとうございます。

ひとえにこの話は今まで閲覧して頂いた皆様のおかげでかけました。
そこにはもう感謝の言葉しかありません。
改めてここまで皆様のご愛読、お礼申し上げます。

ありがとうございましたっm(_ _)m

これからもどうかアレな拙作にお付き合い頂ければ幸いです。
次の感謝企画は総合評価が200を超えた時に予定しております。

低評価とか貰わなければ、も、もうすぐですね。
励みになりますのでこれからもお気に入り登録、感想、ご評価いつでもお待ちしております。

追記
おかげさまで評価が200到達しましたm(_ _)m
200pt感謝回書かせて頂けるみたいです。
また準備が整いしだいアンケートでエ◯ス候補を募りますのでどうか1ついつものように協力お願い致します。

次はまた300の時にやりましょう。


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42) 第16話 オレの女神がインフレしてる件(1)

ステータス紹介回。の筈なんですが?


【これより地文は語り部、()はカミィ、《》はステラ、[]はツルギの内心】

 

まさに死屍累々といった光景が広がった街の広場。

そこでは多くの人々がゴロゴロと転がり倒れ伏せ、様々なモノが散乱し横たわっていた。その場所で。今ここに2人の乙女が相対している。

 

1人は恐ろしいほど美しい女だった。紅のマントをその身に羽織り、万色を讃える衣を纏うその女は今、向かい合うように無骨な片刃を一振り構える、剣そのもののような女と相対している。長い黒髪を頭後ろに1つ束ねてサラシに開けた下襦袢、袴姿のその美女は、前者の女の憂いを帯びたソレとは違い、いかにも獰猛で不敵な笑顔を浮かべていた。

 

「ツルギさん、やめてちょうだいっ、ワタシ達に戦う理由は無いはずよっ!!」

「ははっ、主殿に無くても拙者にはある。故にこの戦いは必然。所詮は凶剣とその主、いずれはこうなる運命だったということよ……。」

「どういうことよっ!?」

 

女が問いかけ、女が嗤う。両者はもはや水と油で。

決して混じり合うことのない有様だ。

さりとて言霊は飛び合った。なぜならこれとて立派な合戦の作法であるのだから、当然だろう。

 

「拙者はあの時、待っていたっ!!」

「!?」

「ワカバとコイシの時も、メイル殿の時も、アンダー殿の時も、裏切ったのは主殿の方ではござらんかっっ!!」

「なにをっ!?」

 

それは強い、強い慟哭を伴った言葉だった。女の獰猛が少しばかりなりを潜めて、そこに深い悲しみと、確かな嘆きが入り交じる。

万色の女にはそれが理解できなかった。

だから問うた。問いかけた。

とたん、女は獰猛さを取り戻し吠えるように女に答えた。

 

「拙者の人化の事でござるっ!!」

「えぇ……?」

「次は拙者の番だって時にずっと拙者お預けでもう、ホントはメチャクチャ余裕なかったんでござるよぉっ。いざ人化だぁって時もそうでござるぅっ。これからまさに死合うって時に呼び出すもんだから拙者もう周りから仕事もーどの時のいめーじで接され続けてもう、やりづらくって、もうぉっ!!」

「え、そんなに?」

 

張り詰めた空気が一転、虚脱感へとすり替わる。

女は獰猛な気配のままプリプリと怒り出す。その場で地面をジタバタと蹴り散らすその様はまさにダメ人間の(暴れん坊な)妄言(暴君)のソレだった。

ついつい目が点になってしまった美しい女を誰も責めることなど出来ぬだろう。

 

結果。残念女(暴君)憤り(怒り)は未だ冷めない。

 

「拙者本来どっちかって言うとアンダー殿側ですからっ、そんなピリッとしてるの斬った張ったの時だけなんでござるよぉっ、どうしてくれるんでござるかっ。ほんとこれどうしてくれるんでござるかぁっ!?

 

責任とって主殿は拙者を甘やかすべき、構って構いまくるべきではござらんかぁ?拙者主殿に構って欲しいお年頃なんでござるよぉ~(お目々ぐるぐる)」

 

行き過ぎた狂騒に支配された女の欲望は、もはやとどまる限りを知れず。

それは尋常のことではない。まさに酔っ払いの(酒の上での)戯言(乱心)と言えた。堪らず美しい女が声を荒げ、いざ暴君をなだめんとして奮起する。

 

「あ、あんた完全に正気じゃないわねっ、ちょ、構う。構ったげるからもう止まりなさいよっ。と、止まれぇっっ!!」

「きぇーーーっ、もはや問答無用、叩っ斬るっ!!」

「だから構ったげるって言ってるでしょうがぁっっ!!」

 

酔っぱらいとシラフ、その2つの残酷な在り方によって彼らは完全に分かたれた。

今、ここで主と従の下剋上。1人の女神の存亡をかけた割とどうでもよい命がけの戦いが幕を開けるっ!!

 

《本当にどうでもよくて流石にステラもびっくりです。》

(なこといってる場合じゃねぇからっ、気ぃ抜いたらマジ死ぬぞコレっっ!!)

いつでも(yes my )どうぞ(goddess)。駄剣の調教に参りましょう。》

 

「やってやるわよっっ!!」

 

いざ尋常に。参られいっ!!

 

 

最初に攻勢をかけたのは、荒ぶる女の方だった。

猛る思いをそのままに己の分身を上段両手に構えると、女はそのまま不敵に嗤う。

 

「さてさてまずは小手調べ。いかが成します我が主殿っ!!」

 

-ザンっ!-

 

全身のバネを使って放たれた斬撃は武芸の基本なれど、だからこその必殺の有様。一切の躊躇なく己の主の袈裟に向かって放たれたその一撃は、しかして彼女に届かない。

 

「我が根源よ、防壁となりて(プロテクション)汝を護れっ!!」

《【信仰の供(Set )物】を防御(Defence.)設定。コレクト/メイル【ガードポイント】。》

 

神術の障壁にて鈍らせられたその一撃は、続いて放たれた女の脇差を使った流しによって、見事左の方へ、凶剣の身体から突き放すように逸らされた。しかしそれで勢いを止めるような可愛い女ではない。

 

「甘いっ!!」

 

その身体は流れのままに美しい女へと近づき、揃えられた貫手が槍となり、相対する主の首筋へと放たれる。零距離での、身体のバネを使った全力の一撃。しかしそれを主は赦さない。

 

《コレクト/コイシ【カウンター】》

「甘くないわよっっ!!」

「ぐっ!!」

 

放たれたのは女神の頭突き。首の皮を一枚、えぐりとられた代償に、女神は凶剣に手痛い一撃をお見舞いしたのだ。そうとも。ゼロ距離こそが喧嘩屋の居場所。すなわち女の得手だった。同時に拳を握り締めると、身体の傷が癒えていく。

残ったのは凶剣に与えた一撃の重みのみ。

 

堪らず吹き飛ばされる形となった凶剣の顔には、張り付いたような深い深い微笑みが。薄暗い夜闇の切っ先が放つソレが浮かんでいた。

 

[ああ、これはいかん。ふふっ。酔った余興で少しばかり主殿と戯れてみようかなどと思っていたが、これはよくない。オモシロすぎる。仕込んだかいがあったというモノだ。]

 

どこまでも冷静な心算で、女は思う。その実女はかほども酔ってなかった。それ所かこの状況を作りだす程に冷静だった。

 

[まず自分では敵わぬであろう鷹殿に酒を勧めてこれを見極めた。思い他彼女が酒に弱いとみるや、次は鎧殿に手を染めた。歴史は古うとも箱入りの彼女は、面白い程手くだにかかった。次に下着殿と屋敷殿を煽って街の者共にたらふくみもうた。

衛兵2人も、遠慮しながら断れなくなってこの有り様よ。

斯くして拙者は少しばかり、主殿との戯れる時間を得たと言うわけだ。]

 

女にとってそれは必要な事だった。女は侍のようなナリをしていたがそこには欠片も武士道などない。状況を作り、事を成すのが凶器たる彼女の在り方。最初に己の主に語ったことはおよそ嘘など含んでない。自身の本質は享楽者。平時はどこまでも役立たず(ダメ人間)。本性の愉しみなど戦場にしかないのだから。

 

女は知りたくてしょうがなかった。

この街にきて、その存在が強化された我が主の力を。それは彼女の本来の形に起因する。

 

[戦えぬ御仁ならば拙者は何も求めず従うのみ。しかしそれが戦える(使える)御仁であるなら話は別よ。カカ、未練よな。どうも己は使い手を選ぶ癖がある。是非是非見極めねばならぬのう。主殿には使えるだけならさらに強く、拙者と並ぶなら共に練磨して貰わねばならぬ。]

 

女は元々大太刀であった。使い手を選ぶその在り方はそれから優美さを取り除き、只々一振りの凶器として特化したこの女にも残っている。

安いモノに使われるのはゴメンだった。出来れば優れた武芸者にこそ己は相応しいと、思っていた。

 

[しかしてもし拙者を超えるようなことがあれば。その時は改めて。真にこの全霊を捧げよう。一度捨てた在り方で、主殿に忠誠を。

どうかそのようにあって下さること、拙者心より願っていまする。]

 

別に女の忠誠が、女神の剣たる在り方が変わったわけではない。今でも女は誰よりも女神の為に有りたいと思っている。

 

「さてさて、主殿。それでは戦を愉しみましょう。

なぁに安心めされぃ。もし行き過ぎて拙者が貴方を殺めてしまったならば、拙者もその場でこの腹を割ってお供します故。」

 

ただ女にとって、死とは、暴力とは己の当り前の、平常の在り方でしかないのだ。このように荒れ狂っていたとしても、女は変わらず女神に心酔しているのだ。

 

狂わずの凶刃。故に彼女の心は病み1つなく。

 

唯その在り方が最初から歪んでいるだけ。

命をかけたこの様は、女にとってどこまでも戯れでしか、ないのだ。

 

命がけの、愉しい戦い(戯れ)でしか。

 




閲覧ありがとうございます。

街の人達のお祭り空気に触発して武器娘が暴走したようです(白目)
戦いながらどんな能力なのか説明していけたらと思ったら、ツルギさんが自然と剣を抜いていた不思議。しばらく彼女の凶剣っぷりと女神の成長をお楽しみ頂ければ幸いです。

第2章の展開アンケート、今回までです。
次回のお話掲載と同時に締め切りますね。
協力感謝致しますっ!


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43) 第16話 オレの女神がインフレしてる件(2)

ようやくステータス開示です。

今回から200pt感謝回のネタアンケートご用意してます。
よければまたポチッとお願いできますか?



暗がりの世界に剣閃が舞い奔る。

稀に生じる刃金が刃金とぶつかる音が大きく響くその鉄火場で。

 

それはまるで人の形をした嵐であった。

 

片刃を使った右刺突が逸らされるやいなや、その速力を殺さず左の貫手を放ち。防がれたソレの反動を用いて剣を手放した右の肘を主の素っ首目掛けて打ち出せば、堪らずに大きく後ろに飛んだ主目掛けて右足で跳ねあげるように蹴りつける。

 

脚に伝わる障壁魔術の感触を利用しコマのように回転しながら左脚にて後ろ蹴り。十字手逸しにてそれが防がれたと知るや、コマはいまだ止まらず。いつの間にか中空にて拾い上げた己自身(片刃剣)を使った横薙ぎがそれに続く。

 

それが防がれれば、逸らされたならば。女は当り前のようにそれを利用して次の手へと移るのみ。時に剣を捨て、時には投げつけ。それでもいつの間にかそれは彼女の手の内に戻り弧を描く。それがルール無用、凶器たる女の、まさに悪鬼羅刹の戦ぶりだった。

 

交わる女は防戦一方。既に攻撃に手くだを割く余裕などなく。

 

「そらそら、なかなかどうしてっ、やり、ますなぁっっ、主殿ぉっ?」

「ぐっ、くぅっ、う、かはっ、うぐっ、く、

我が根源よ、防壁となりて(プロテクション)汝を護れっっっ!!」

《コレクト/ツルギ【武芸百般Ⅱ】、近接対応力を拡張。【高速思考パス】起動させます。》

 

借り(・・)、れるんだよなぁスキルは……。しっかし同じスキル使っても追いつかんぞコレっ、どうなってるんだおいっ?)

《回答。単純にツルギの戦闘経験によるもの。スキル外行動の巧さに起因します。……まさか【運動】【解体】【知覚】(コモンスキル)【戦略眼】を繋げるだけで、これほどの戦闘効率を叩き出すとは。この結果は驚愕に値します。》

(スキルも完全にゃあ当てにならんってことかっ!?)

《肯定。遺憾ながらそれは事実と言えますね。》

 

女神とその相棒のスキルで高速化された思考会話によって生まれたほんのわずかな隙を。見逃す程に目の前の女は容易ではない。

 

「カカ、ですが、これはっ、どうですかなぁっ!?」

「きゃっっ、く、このぉっっ!!

《コレクト/メイル【ガードポイント】、指摘。この距離はよろしくない。即時撤退を要求する。》

 

右剣地摺りの切り上げを逸らされて、剣をそのまま手放しての振り下ろしは致命にならず。しかし身体をつかんでそのまま飛び上がると両足で蹴り1つ浴びせて主を蹴飛ばし、そのまま上空へ高く飛び上がると、剣をつかんで急降下。

その致命の一撃の横腹をなんとか脇差の切っ先の、スキルを用いた点による防御でずらした女神は、それでも衝撃でもって、横合いに飛ばされた。

 

しかしそれは女神にとっても好機であった。

 

「ちぃっっっっっ!!」

《コレクト/ウル【疾風の一撃】。》

 

飛ばされたまま、スキルを発動させた超速の脚力でその場を離脱。仕切り直しの形を取る。元より主の得手は素手であったが、女神としての得手は遠間である。

女神はずっと、接戦より離脱できる機会を伺っていたのだ。

 

「ああなるほど。ウル殿の脚も使えますか。そいつは重畳。さらに色々愉しめそうだ。はは、主殿。なんとも楽しいですなぁ♪」

「楽しくない、ぜっんぜん楽しくないわよぉっっ!!」

 

叫びながらも女神は逃げる。そうせねば嵐がすぐさま追いついてくる故に。

 

 

《【信仰の供(Set) 物】を速度(Speed. )設定。コネクト/ウル【疾風の一撃】。

【高速思考パス】再起動。現状認識の確認を開始します。》

(なぁステラ。確か(・・)なんだな?)

 

女から【疾風の一撃】(スキル)を使って逃げながら、女神は相棒へと問いかけた。スキルによって引き伸ばされた思考の中で、2人は改めて現状を確認しあう。

 

《肯定。彼女のステータスは確認済みです。彼女は酩酊もしていなければ貴方への信仰心もそのままです。》

(そうか。なら、そういうことだろ?)

《同意。しかし何故お気づきに? ステータスが更新されたとはいえ幾分貴方らしくない部分を感じます。》

 

(まぁ、あの顔見てたら、なんとなくよ?)

 

女神が視線を飛ばした先には、覇気こそ浮かぶが獰猛さの薄れた女の笑顔。心の底から楽しくてしょうがないといった、女の性根が見て取れた。

 

(アイツにとってこれはきっと触れ合いなんだ。つまりコイツは俺に構って欲しいアイツの、アイツなりのはしゃぎ方なんだろうさ。ならよ。アイツ向かって構うって言っちまった手前、オレがアイツに付き合うのが道理だろ。)

《それだけで、お気づきに?》

(偶に、いたのよ。オレが更生させた不良(悪ガキ)の中に。ああいう人との接し方がなんもわからねぇってヤツが。だから他でソイツを埋めちまった、そういうヤツがな。)

《……。》

 

女神が語った言葉を聞いた相棒は押し黙る。その言葉は生前に、女神が幾度もあの様な手合を見てきているという証左であったから。

 

(そいつら決まってああいう顔しやがんだ。まるで初めて親と遊んだ子供みててぇな嬉しそうな顔でな、ああやって暴れんだ。誰かが他にも色々楽しい事はあるって教えてやるまでそのまんまだ。なら。ほっとけねぇわな?)

《貴方という人は……。》

 

どこまでもお人好し。女神になって不死になろうが、力を経てもこの少年は変わらなかった。それがどんなに難しい事か相棒は知っている。唯のステータス表示システムとして多くの存在を見てきた彼女は、そのどちらもが人を歪ませる性質を持つ力であることを、知っているのだ。

 

(ああいうヤツの思いは、一片受け止めてやらにゃ止められん。なら、そうさね。構ってやるしかねぇだろうよ。それがオレの仲間だってんならなおさらだ。)

《ではこのまま救援なしで彼女と相対を?》

(そういう事になる。ま、アイツのこういう姿なんてな、あんまり他のヤツに見て貰いたくもねぇしな?)

 

事も無げに無茶をいう女神に、最善を尽くすのが彼女の役目だ。相棒は相棒としていつでも女神を支える覚悟を持っている。

 

《提案。彼我のステータスの確認と、スキルセットの変更を強く推奨します。》

(おう、場合によっちゃアレを使う。が、使う暇があるかだなぁ。しかしステラよ。アイツが最初に言ってた事、どこまで本気だと思う。)

《確認。それは彼女が普段ダメ人間であるという発言についてですか?》

 

不意に女神が相棒に別の話をふり始める。あまりいいとは言えない状況の中、速められた思考の中でしか許されないやりとりに、彼女はそのまま付き合った。

 

(いいやその前。人化を期待してずっと待ってたって話の方だ。そういうのって、本気でありえる話なのかね?)

《肯定。少なくともステラは彼女の会話に同意できます。》

(お前が?)

 

相棒は女神に言い切る。何故ならそれは、それだけは、確実に間違いでないと彼女は言い切ることができたから。理由を語る事すらも誇らしい。それは彼女にとってもいつか女神に伝えたい、望んでいたことであったから。

 

全面的(yes my )に同意(goddes)

ステラは貴方に美少女にされるその時までは、唯の表示システムでしかなかった。状況を見続けるしかない傍観者でしかありませんでした。貴方に姿を変えられて、貴方から名前を貰った時、ステラは初めて役割を(ステラと)得られた(なった)

それは、ステラにとって何よりの喜びでした。》

 

そう。役割を得て。この優しい少年のサポートを出来ることがどんなに嬉しくて、誇らしいことなのか。女神にはきっと生涯理解できないだろう。だがそれでいい。

相棒となった彼女は、そんな女神が嫌いではなかった。

 

(……そっか。そうかよ。ならこれからはそういうモンもほっとけねぇよな。)

《……貴方は。》

(知っちまったらほっとけねぇ。そういうモンだ、こういうのはよ。女神になっていくらかマシになってもよ。オレはバカだから自分じゃそういう事に気づかん事が多い。そこらはステラ、オメェを頼りにしちまうぜ?)

 

多くを理解できない代わりに、何も変わることなくお人好しで有り続ける在り方が嫌いではないのだ。足りない部分を補う為の、自分なのだ。

その立ち位置が気に入っている。

 

全力でお答(yes my )えしましょう(goddess)。ならば1つ提案が。》

(あん?)

《ファルケシアの所有物であった仮面がウチノによって回収されています。どうかそちらを美少女化して下さい。》

(あのかっこいい仮面かよ?)

 

早速女神の相棒はその頼みに答えてみせる。それは”ウチの名前を付けてほしい”と頼まれた女神が、”ウチの名前、お家の名前”と連想して、ウチノと名付けた家人の少女が魔工の材料にとかき集めていた壊れた仮面についての提案だった。

 

《肯定。

アレはファルケシアスの、マスカレイドとしての数々の寓話を経て、唯の仮面が伝説判定(EX)を得たものです。あの形での退場は仮面にとって最良であったとは思えません。どうか御一考を。》

(おう。ならウチノにまたお願いせんとな。アイツにゃあ手袋も貰ったばっかで、なんか色々無茶言われそうだがしょうがあんめぇよ。)

 

今は外してある手袋を貰った時も、女神は散々な目にあっている。再びそのような事になることは目に見えた話であった。人によっては気にもならないような行為を受ける女神の中身は純情すぎた。相棒が、ついついその背中を押したくなる程に。

 

《肯定。それらは友愛行為です。問題ありません。》

(程度によるからなっ!!

さってとりあえず本題だ。ステータス、頼めるか。)

いつでも(yes my )どうぞ(goddess)。》

 

 

名前 ヴィリスカムィ

種族 女神

性別 美少女

職業 女神

レベル 39

BS(バットステータス):なし

教義/属性:虹と調和/メイン優美 サブ大地

 

筋力 31→94 (61+33)

耐久 36→103 (63+35+5)

敏捷 38→102 (61+33+8)

器用 23→83 (53+30)

感覚 18→79 (24+16+39)

知識 13→81 (16+13+52)

精神 49→128 (67+37+24)

神力 56→122 (79+43)

 

【能力値の→左は前の値。右は現在値。】

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が装備補正他】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 1037(882+155) 

MP 1266(1111+155) 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【剣さんの脇差】

防御:【RR:虹の衣】

装飾:【 R:赤い騎士のマント】

 

種族スキル

【R:女神のオーラⅡ】

【完全状態維持】:食事・呼吸・睡眠不要で老化しなくなる。また排泄物も出ない。瀕死判定時、確立で瀕死から立ち直る。

 

スキル

【喧嘩殺法Ⅱ】【抵抗】【説得/無法者Ⅱ】

【謝罪の心得】:破局しかけた交渉判定を繋ぎ止める魂の籠もった謝罪技量。

【不屈】:けして折れない強い意思。BS全般の抵抗ロールに+補正。瀕死判定時低確立で瀕死から立ち直る。

 

職業スキル(職業ランクⅣ)

【R:信者との絆Ⅱ】

【R:信仰の息吹】

【RR:神々の奇跡Ⅱ】:自らの教義や属性に関わる奇跡を1日に2回引き起こせる。

【RRR:信仰の供物】:信者の持つ戦闘技量・スキルなどを一部共有できる。一度に共有できるスキルは4つまでで1人からは1スキルしか選択できない。共有可能なスキルは信徒の信仰度によって以下のように変化する。信仰度弱:コモンスキルのみ、並:R以下の通常スキルのみ、強:ユニーク・種族以外のRR以下のスキルのみ、狂信:種族以外の全スキル共有可能

現在のセット:【コモンセンス・運動・隠形Ⅱ・知覚Ⅱ・聞き耳】【地獄蝶々】【疾風の一撃】【死を乗り越えた華Ⅲ】

 

神術

【我が根源よ、光となりて(シャイニングレイン)今輝かん】

【我が根源よ、その身に宿り(アンチエイジング)今を護らん】:効果時間中対象を常に健康な状態へと戻し続ける。微量回復とBS復帰効果が持続する。効果時間は1時間。

 

【我が根源よ、虹彩と(レインボウ)となりて(ヒール)傷を治せ】:16人までの対象のhpを貫通属性中規模回復。同一対象を4回まで選択可。重症・バステ回復の追加効果。自分の属性に関わる無機物にも効果あり

【我が根源よ、虹彩となりて(プリズミックレイ)我が敵を穿け】:16人までの対象にランダム属性な貫通属性攻撃を与える。同一対象を4回まで選択可。死霊・悪魔系の敵に特攻。

【我が根源よ、防壁となりて(プロテクション)汝を護れ】:100m内の全対象を攻撃から護る光の防壁を作る。割り込み使用可。

【我が根源よ、祈りとなりて(ホーリーブレス)彼らを導け】:100m内の全対象を祝福し、5分間全行動に補正を与える。

 

精霊術:【エレメンタルセンス】取得時のみ

【せーれーさんお願い、くささんみん(ぷらんつはんず)な転ばせて】:範囲対象を転ばせる精霊術。そして移動と行動を阻害する。地味だが優秀な術。

 

ユニークスキル

【RR:大地母神】

【EX:栄光の手】

 

付加スキル

【RRR:完璧なる美少女Ⅲ】

 

【七海を鎮めし者】:水域・特に海に関わるモノに対し強力な発言権を得る。

【最速で救う者】:信者が教義に関わる行動を行う時、強い判定補正を得る。

 

 

レベルが上がったこと、正式に女神になった事、そして相棒からのサポートで女の能力は別人になっていた。女神になった事で得られた種族スキル【完全状態維持】のおかげで、もはや女は完全に人から逸脱した存在だ。

 

さらに職業レベルが上がって得られた【信仰の供物】の存在が大きい。信者の覚えているスキルを1人1つ、最大4つまで使えるようになるこのスキルの存在により、神や女神は万能であり、至高の存在足りうるのだ。

 

(正直、オレだけだったら扱いきれん。スキル管理はステラにお任せだ。)

《肯定。それがワタシの役目ですから。》

 

 

名前 ステラ

種族 システム

性別 女

職業 支援管制式(サポートシステム)

レベル 33

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 -

耐久 -

敏捷 -

器用 -

感覚 69 (64+5)

知識 104 (96+8)

精神 39 (36+3)

魔力 -

 

【能力値の→左は前の値。右は現在値】

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP -

MP 339 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル

【ステータス表示】:自身の担当者のステータスを表示させる。また確認できる。

【器無き者】:世界に未だ自分の器が存在しない為、精神系能力以外は存在しない。

 

コモンスキル

【EX;ステータス情報Ⅱ】:ステータスを表示させる為の全方面の知識。

【伝承解読】:世界の様々な場所で流れる伝承を読み解いていく技術。

【ユーモア】:場を和ませる為の会話センス。

 

【虹の調和の狂信者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し強い耐性を得る。

 

職業スキル

【RRR:鑑定システムⅢ】:対象を見ただけで様々な情報を読み解くシステム能力。

【RR:サポートライン】:使用時、担当者に自分のステータスの半分の能力支援を行う。

【R:高速思考パス】:担当者との間に高速化させた思考による会話を行えるパスを作る。

【RR:コントロールライン】:担当者の行動の目標を任意に変更可能。そのスキルの同一対象選択数が1.5倍になる。その成功判定は担当者と自身の能力を足し合わせた値で行える。

 

ユニークスキル

【EX;ステータス情報Ⅱ】:ステータスを表示させる為の全方面の知識。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】

 

 

対して女神の相棒も名前を経て、ついにクラスを取得している。まさに相棒の名に相応しいそのサポート力は女神の弱点を補い、長所を伸ばすことに特化していた。

 

(ステラのサポートのおかげで能力的にオレの知識や感覚が高くなってるんだよな。実感ねぇけど。)

《必要な統制はこちらで行ってますから。不必要な知識は貴方の毒です。》

(んだよそれ。ま、いいけど。

んで問題はこのコイツなんだよなぁ。)

 

 

名前 ツルギ

種族 武器人

性別 女

職業 戦闘強者(バトルマスター)

レベル 41

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 54→93 (85+8)

耐久 31→50 (46+4)

敏捷 62→106 (97+9)

器用 46→77 (71+6)

感覚 25→37 (30+2+5)

知識 14→21 (15+1+5)

精神 25→34 (32+2)

魔力 11→16 (10+1+5)

 

【能力値の→左は前の値。右は現在値。】

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 617(492+125) 

MP 214 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【R:強さを求め刀を捨てた剣(ノーネームズ)

防具:【士道装束一式】

 

種族スキル

【剣化】

 

スキル

【運動Ⅱ】【解体Ⅱ】【知覚】【RR:武芸百般Ⅱ】

【戦略眼】:戦術を俯瞰し、正しい選択を掴み取る戦闘経験からくる確かな判断力。

 

【虹の調和の狂信者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し強い耐性を得る。

 

職業スキル

【斬Ⅱ】

【一閃Ⅱ】

【R:連撃】

【R:兜割り】

【RRR:地獄蝶々】:自身を瞬時加速させる機動系スキル。制御が難しい。

 

付加スキル

【完璧なる美少女】

 

 

(ステータス的にゃそう高くねぇ。今ファルケさんからスキル借りてるオレなら、いや借りて無くても総合値でならこっちの圧勝なんだがなぁ。)

《当てになりませんね。彼女の場合スキル外アクションが強力過ぎる。》

 

(怖ぇのは【地獄蝶々】ってヤツだな。トリプルレアで、まだ使って来てねぇ奴。これって相当扱いが難しいってお前いってたよな。……使いこなしてくると思うか?)

《肯定。今までの行動を見ると間違いなく乗りこなすでしょう。》

(なら最悪、オレも使わなきゃだなぁ。オレ正直ウルの【疾風の突撃】ですら操作しきれねぇんだけど。)

《こちらでサポートします。しかしステラも初見でそれをコントロールしきる自信はありません。出来ればこのまま距離を取りつつ【プリズミックレイ】にて攻撃を推奨。》

(そうなるよ、なっ!!)

 

これまでの間、2秒と少し。

稼いだ距離は18m程(十間弱)。女神は素早く近くの建物の裏へと身を隠すとそこから神術の詠唱を開始した。

 

「我が根源よ、虹彩となりて(プリズミックレイ)我が敵を穿けっっ!!」

《ロックオン。【コントロールライン】。》

 

唱えながらも走る事を辞めない女神の腕から7色16条の光線が放たれる。照準もなにもない、走りながらのその術式は相棒の手によって制御下にある。

精密にコントロールされた数々の光線が追う女の行く手を阻み、その内の6条が女目掛けて牙を剥く。

これに対し女は1つ笑っていってのける。

 

「これは無粋な。では少々、拙者も業をお見せするとしようかッ。」

 

言って女がぬるり(・・・)と動いた。

 

恐ろしい程高速に、しかし直線的ではないその機動は、迫りくる光に照らされた女の姿を明滅させるかの如く、消えては現れるを繰り返す異次元の有り様で。

女はそのまま近くの壁を走って、道なき道を生み出した。

 

その消えては現れる瞬足の機動は、あたかも蝶が夜闇に羽ばたくが如く。

 

《躱されたっ、移動ルート予測範囲外っ!!》

「なっ、んだとっっっ!?」

「お久しぶりですっ、主殿ぉっ!!

《【信仰の供(Set) 物】を防御(Defence. )設定》、コネ……っ」

 

光を受け建物の上より三角に跳ね降りるその腕は、きっと地獄と繋がっているのだ。地獄の蝶が今まさに女神へとその剣を振り下ろす。

 

轟音が辺りを支配する。

 

「ははっ。」

 

女が1つ笑いを漏らし。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして女の剣(・・・)が吹き飛ばされていた。

 

「テメェ、ヴィリス様になにしてやがるっ!!」

 

遠間より叫ぶ男の声あり。

それは己の槍の投擲により轟音を鳴り響かせた者の正体で。

 

この街の古株の門兵、ガウリィ・レオルドの姿であった。




閲覧ありがとうございます。

苦労をしょいこむ系主人公。
神術効果とか大分チートになってるけども目立たぬ。だって光ってバッカだもの(白目)


実はお話の方、感想欄でファルケの仮面って回収しないのかってご指摘を頂きまして。私自身そうだよなぁと思い、ならばこれからはそういう捨てられるアイテムも助けていければとプロットを見つめ直した結果、このような流れに行き着けました。やはり人から言われないとわからない事は多くありますね。

くっつく餡玉様、いつも素敵な意見を頂き本当にありがとうございます。


そして憎悪の王展開アンケートここまでですっ!
1位は勘違いさんの27票、2位はファルケさんの13票でした。
この結果は物語に反映させて頂きます。
皆様ご協力感謝致しますm(_ _)m


うぁ、300pt突破してますね。
あ、ありがた過ぎますが実感ないですわ。
200pt感謝回が終わり次第、またアンケートご用意させて下さい。
次は500ptが目標ですね。
拙作への多くのブックマーク、ご評価、感想等本当に感謝しかありません。


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44) 第16話 オレの女神がインフレしてる件(3)

ちょっと今回長くなりました。


「ふはははっ、やはり出来るなぁガウリィ殿っっっ。貴方とは是非遊んでみたいと思っていたぞっ!!」

「ヴィリス様、今の内に俺の後ろへっ!!

俺ぁ槍がねぇとあんま上手く走れねぇんでっ!!」

 

嬉しそうに女はひと吼えし。素早く弾き飛ばされた剣を追って後ろに跳ねるように飛びのく。

 

「ガウリィさんっ!?」

《【高速思考パス】接続。

指摘。……彼の指示に従った方がいい。彼ならあるいは耐えられる。》

(なんでっ起きてんだよ門番さんっ!!

みんな【神々の奇跡】で周りの騒動にゃ気づきにくくなってる筈だろ、ステラっ!!)

 

女神はこの戦闘になるべく街の者達を巻き込みたくないと思っていた。故に戦いの始まりと同時に、この騒ぎによって皆が起きてこぬように一計を案じていたのだ。

 

《肯定。優美の奇跡による安らかな眠りの強化は発動中です。ですがそれでもその存在が強固なモノにはレジストされてしまうことがある。》

(いやいや、それならなんで普通の門番さんが一番に目ぇ覚ますんだって話だよっ。いっちゃなんだけど普通の門番さんにゃウチの子の相手なんざ出来るわけないって。早く逃げて貰わんと、怪我じゃすまなくなるぜっ!!)

《普通の門番であるならですがね。あいにく彼は普通ではない。説明が面倒です。ステータスの確認を申請。展開します。》

(ちょっ、おいっ!!)

 

 

名前 ガウリィ・レオルド

種族 ヒト族

性別 男

職業 豪戦士(ウォーリア)

レベル 75

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 240(80)

耐久 147

敏捷 94(31)

器用 70(23)

感覚 66

知識 27 (19+8)

精神 68 (60+8)

魔力 16 (8+8)

 

 

【カッコ内は信仰補正と能力減退値。】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 2798(2723+75) 

MP 323 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【衛兵の槍】

防具:【衛兵の鎧】

 

種族スキル/Rはレアスキル。RRはダブルレア、RRRはトリプルレアスキル

【優良筋種】:ヒト種の中でも筋肉の質に優れた一族の血を引いている。見た目より筋力が高く、その成長は大きな資質を秘めている。

【癒せぬ傷】:古傷により右腕と左足がろくに動かせず、骨格に大きな歪みがある。その為各能力が大きく減退している。

 

コモンスキル

【魔物知識Ⅲ】【戦略眼Ⅲ】【運動Ⅲ】【知覚Ⅲ】【追跡Ⅲ】【力技Ⅳ】【斧戦闘Ⅳ】【肉弾防御Ⅳ】【投擲Ⅳ】【槍戦闘Ⅱ】【人物鑑定Ⅱ】【昼行灯Ⅲ】【杖走行Ⅲ】【護衛戦闘Ⅱ】

 

【虹の調和を崇める者】:調和神ヴィリスカムィを信仰し、その加護を得るもの。自分の一番低い能力値3つにレベルに応じた能力修正を得て、精神攻撃に対し耐性を得る。

 

職業スキル

【EX:真・剛撃V】:ウォーリアの基本スキル剛撃を只々強化した果てにたどり着いた人類未踏の大境地。使用者の筋力に依存して効果上昇。今力任せの叩きつけは大地を割り、次元を断つまでに成長を遂げた。現在癒せぬ傷の為使用不能。

 

ユニークスキル

【筋力上限突破】:筋力値が種族上限を超えている。一部のスキルをⅣランク以上で修得可。

 

 

(うぇっ、何コレっ。なんでこんなヒトが門番やってんだよっ!!)

《多分【癒えぬ傷】の効果故に、かと。彼の取り柄である優れた筋力は傷によって完全に封じられている状態ですね。もはやBSではないので美少女化による解除も不可能判定。》

(ナニモンなんだよガウリィさん……。まぁいいや。ここは素直に手ぇ借りよう。跳ぶぞっ!!)

《肯定。コネクト/ウル【疾風の一撃】》

 

言うが早いが女神は門番の後ろへ跳んだ。嵐はもうすぐ側まで迫っている。無邪気な微笑みを顔に浮かべ、その手に持った槍を門番に投げつける。

苦もなく門番はそれを掴んだ。

 

「ははっ、さぁガウリィ殿っっっ。それでは拙者と一曲踊りましょうっ!!」

「っち、そりゃどうも。せっかくの美女からのお誘いがこんな嬉しくねぇってこれありかよおいっ?」

「そう言いますなっ。何退屈はさせませぬ故っ?」

「そういう激しさ、好みじゃねぇんだよなぁっ!!」

 

緊張感のない台詞を吐きながら、門番は嵐をいなす。

挨拶代わりの横薙ぎ払いに踏み込んでの肩当て1つ。剣の根本で切り込まれながらも女の身体を吹き飛ばす。飛ばされ間際に女の脚が門番の顎を襲うが、それよりも槍による捌きの方が速い。それと同時に槍の石突きを地面に突き立て飛ばされいく女目掛けて右脚で蹴り込むと、女はくるりとそれを始点に回り込み、無傷で着地。

 

どちらのソレも尋常の者の戦ぶりではない。

優れた戦士の、英傑と呼ばれるべき者達の立ち会いだった。

共に距離を取り、語り合う。戦の流儀で言葉を愉しむ。

 

「いやぁ、強いなガウリィ殿。何より戦い慣れていらっしゃる。」

「嫌味かよお嬢さん?

ま、一目見た時からおっかねぇ女だって分かってたけどよ。」

「なぜコレほどの御方が門番を? 拙者不思議でなりませぬ。」

 

本当に不思議でならないという面持ちで、女は門番に理由を訪ねた。しかし門番の答えはどこまでもそっけない。どうにも触れられたくない部分であるらしい。

 

「……ここにいるのはどこにでもいる豪戦士って職業の、冒険者上がりの負傷兵っ奴だぜ。いかほどのもんでもねぇわ。」

「ははっコレは御冗談を。その右腕と左脚。ほぼ自由が聞かぬのではないですか?そのような状態で不自由なく長年門番を務められる。貴方が木っ端なわけがない。正直貴方が主殿の為にその脚で街中をかけていった時、拙者少々震えましたぞ?」

「そりゃどうも。別の事で震えられたいね、まったく。んでアンタこそ何で女神様とやりあってんだ。どう考えても頭おかしい選択だろうよ?」

 

門番は逆に女の真意を問いただす。女神の従者が女神を襲う。その意味がどうしてもわからない。しかし返ってきた答えは想像を超えて要領を得ないものである。

 

「かか、そうさな。

この身は元より歪んでいる故。気付けばこうなっており申した。」

「わっけわかんねぇ。どうなんですヴィリス様?」

「少しばかり成り行きのままにスキンシップを……。」

「んな危険なスキンシップあってたまるかっ。」

 

自分の愛する女神すらわけのわからない事を言い出したのでつい怒鳴ってしまった彼を誰も責めることなど出来まい。それでも女神の事を気遣える彼はやはり大人であった。

 

「ならどうして俺らを起こさんかったんですかい?」

「騒ぎを大きくしたくなかったのよ。本当はいい子なのよウチの子?」

「割と庶民のオカンが言いそうな事言わんで下さいよ、ヴィリス様っ!?」

「だってぇっ!?」

「くく、愛されてますなぁ拙者。何やら申し訳なくなりまする。」

 

女神が身内に甘そうな事は分かっていたが、予想以上であった事は否めない。どうにも普段は残念な部分が目立つその言葉に、思わずその場にいる全員が頬を緩めて脱力感に襲われる。

 

「ならもうやめてくんねぇかな。俺ぁ無駄な仕事がダイっきらいなんだよ。」

「そうですなぁ。今少し斬り合いを楽しんでから考えましょうっ!!」

「そうなるわよねぇ……。」

「んな綺麗な笑顔で言うコッチャねぇからなっ。ヴィリス様も納得しないっ!!」

 

どこまでも天真爛漫な女に1人頭を抱える常識人が唯1人。彼の今後の役割が決定した瞬間でもある。つっこみは、何時でも不足しているのだ。

もはや唯開き直ってしまった女神は、構わず彼に頼みを伝えた。

 

「しょうがないでしょう、そういう娘ですもの。あのガウリィさん、申し訳ないのだけど、少しの間だけワタシの為にあの娘の足を止めていて貰えないかしら?」

「何か手がお有りで?」

「ええ、少しばかりは。……出来ればあの娘はワタシが直接救って上げたいの。」

 

女神の言葉には覚悟が見えた。強い意思を帯びた紫水晶(紫眼)は見た者に有無を言わせぬ輝きを讃えていた。

それに思わず女は笑い、門番は流される事となる。

どことなく流れる暖かな空気の下で。

 

「ああ、本当に。拙者は良い主殿を得たらしい。楽しみですなぁ。我が主が一体何を用意してくれるのか。もちろんガウリィ殿との戦いも、ですが。」

「はっ、美人ドコロにそういわれちゃ弱ぇわな。ならまぁいっちょ気張ってみますかねぇ。」

「それではいざ尋常に?」

「おうさっ!!」

 

そして戦いは再開された。

 

 

僅かな時間を稼ぐべく門番は命を賭して嵐の前に立ち続けた。

存在の強度は門番が上、戦闘技量は互角程度、しかし攻撃の手数と鋭さは圧倒的に女の方が上手であった。

 

「はっ、本当にお強いなガウリィ殿。壊れた身体でよく動く。だがまぁそれもここまでのようですね?」

「ったく、質の悪ぃ嬢ちゃんだっ。昔の仲間を思い出すっ!!」

「太刀が悪いとはひどい言葉だ。是非訂正願いたくっ!?」

 

冗談を交わしながらも致命をくり出す。

鋭い女の指先が、男の胸を抉らんと至近から放たれる。

しかしそれは。

 

「そうゆう所も、似てるんだよなぁっっ!!」

「な、自身の肉で拙者を捉えたっ!?」

「覚えとけ嬢ちゃん。俺らみてぇな脳筋がひたすら鍛えた筋肉はよぉっ。」

「ぐぅっ!?」

「オメェみてぇな軽戦士捕まえる檻になるんだよっ!!」

 

豪戦士の罠である。一度捕まえてしまえばこちらのモノと、槍を捨てて同時に打ち出される戦士の拳。しかし女はどこまでも尋常ではない。

 

「くく、コレは勉強になりもうし、たっっ!!」

「ぐぅっっ!!」

 

戦士の肉の継ぎ目を狙い定めて筋を斬り、僅かに弛緩した所で離脱するや、同時に手から離した剣を中空にてつかみ取り、逆袈裟に一閃。流れるように門番の右脚を蹴り払って姿勢を崩し、返す刀でその身を振り抜こうとしたまさにその時。

 

その変化は訪れた。

 

 

(始まりはステラが【高速思考パス】を初めて飛ばしてきた時だった。)

(オレは何かと裏目に出やすい体質だ。ワカバん時の事もあったからこういういい事があった後は、なんかあるかもってアイツが前もって忠告してくれたんだ。)

(そっからオレらはステータスと、出来る事を確認し合った。)

 

《【信仰の供(Set) 物】を虹の橋(Viris. )設定》、コネクト/ファルケ【高貴なる血筋Ⅲ】》

 

(それはワカバのスキル、【エレメンタルセンス】をオレが借りた時の事だ。全てのモンに宿ってるっていう精霊が見えるようになったオレは、石や土の精霊達から何かとなつかれちまってよ。そんな時な、ステータスを見ると。)

 

(不思議な事に、オレは精霊術ってモンが使えるようになってたんだ。)

 

《血統の純化を開始、軌道調整中。成功。進化認証開始、成功。

女神より一時的に神々の王へとクラスチェンジ。入主 神威の人格変異開始。》

 

(ステラに聞くと神というものは自分の教義と属性が許すのならば、使用条件さえ整えたらクラスに囚われる事なく魔術が使えるようになるらしいの。

それでその後もワタシはステラと一緒に【神々の供物】で共有化するべきスキルを探していたんだけど。その中で1つ、とても気になるスキルを見つけたのよ。)

 

【高貴なる血筋Ⅲ】:上級職を帝王系に進化可能になり、根源術が上級根源術へと書き換わる。

 

(神術ってのはね、その垣根では根源術という扱いになるらしいのよ。じゃあね。ワタシが、女神がコレを手に入れたらどうなるのでしょうね?)

《全神術が上級神術へと変更。ファルケより捧げられた血統により根源術の取得を開始、属性確認検索、終了。該当1件。根源:舞い飛ぶ者にして光属性【フォトンウィング】を虹教義で獲得。再定義。成功。【レインボードライブ】を取得。》

 

(ワタシの大本(根源)は女神として純化され、神術はより高み(奇跡)へと至るのよ。)

《入主 神威、貴方が貴方でいられる時間は少ない。急いで下さい、早く、疾く!》

 

(そうねステラ。それではコレより虹の橋(ワタシ)教義(調和)の執行を始めます。)

 

 

気配が変わった。

その瞬間、女神の気配があまりにも大きく変化した。

 

ゾクリと、そこにいた2人は動きを止める。

 

あまりの事に戦いを忘れ、2人して振り向くと。

そこで女神は変貌していた。

 

「お待たせ致しましたわ。それでは教義(調和)を執行します。」

 

七条の光を纏わせる女神の姿は神威(シンイ)に満ちていて。誰もが膝まつきたくなるものであり。その美はもはや見るものの魂をも蕩かせる兵器足りうる。万物に宿る精霊が、万象を編み上げる魔素が。女神の言葉に従うべくそれぞれに準備を始める。

 

「女神様……。」

「っ、はは。コレほどですか主殿。」

 

あまりの神威に膝をつく門番と、期待に胸を高ぶらせた凶剣。

2人の在り方は真逆であった。次の瞬間、跳ね跳ぶように大地を蹴った女を、女神の権能は許さない。

 

【我が根源よ、境界となりて(アルカディア・コート)彼らを分かて】

「ぐぅ、なっ!?」

 

跳んだ先に壁が出来ていた。不可視の、強固な壁だった。

即座にそれに対応すべく奔る女に女神は続けて謡う。

 

【我が根源よ、虹彩となりて(プリズミックレイン)天より注げ】

《対象コントロール開始。ツルギ以外の目標を対象から外します。》

 

その瞬間。7色の無数の光が、雨となってその地へと降り注いだ。1つ1つが破壊の魔力を帯びた絶え間なく注ぐ断罪の光。その雨が、全周囲から女神の敵へと折れ曲がり、襲いかかる。しかし女とて只者ではない。

 

「しぃっ!!」

 

全ての回避が無理な事を悟ると、その光の薄い場所を選んで剣を盾にし駆け抜く。どうにかこれを凌いでみせた。女神との距離はもはや5m弱(三間)、目と鼻の先の筈だ。

 

「これならっ!!」

 

地獄の蝶が女神を襲うべく加速する。振り下ろされる片刃が鋭く輝く。

しかし女神はそこになく。

 

【我が根源よ、虹となりて(レインボードライブ)空へと奔れ】

《コネクト・ツルギ【地獄蝶々】+ウル【疾風の一撃】。ガウリィより【運動Ⅲ】にて制御試行っ、目標の微量調整、失敗っ。》

(えっ、失敗してしまったのっ。この場面で?)

《肯定、言葉もありません……。》

 

彼女より遠く離れた位置に立つ女神と、女神が跳んだことで出来た熱量を帯びた虹の橋。そして綺麗に2つに分かたれた女の、自分自身たる片刃の剣の姿があった。

 

光を超え、全てを置き去りにする女神の神技によって分かたれたその姿が。

 

(あ、アレは。良くありませんわね。調和的にすごく良くない気が致します。)

なんて(oh my)こった!(goddess.) やはり初見での試行は無理がありましたねっ。》

 

「ははっ、これは見事。とても叶わぬ。まさに貴方のソレは、……神技だ。」

「もうこれで終わりです。それでいいでしょう?」

「ええ、もちろん。カカっ、ああ。楽し、かった……。やはり貴方……は、主に……相応し……く。」

 

(おやめなない、満たされた涼やかな面で天に召されようとしないのっ。これだけ荒ぶったのですから、そこは今際の際まで全意をもって抗って頂かないとっ!)

《入主 神威。早期に彼女の本体にお触れ下さい。消滅は避けねば。》

(天意の如く、あれかしですわぁっ!)

 

女神は改めて女に近づくと、言の葉を1つ届ける。

 

「私に貴方を、剣と、その担い手たる貴方を象るあらゆるものを差し出しなさい。そうであるならば私は貴方を新しい在り方へと導いて見せましょう。貴方に荒ぶる者としての喜びだけでなく、この世には多くの喜びが溢れているという事を。その身へと伝えてみせます。

私と共にあるべき者よ。虹の橋は貴方を望みます。

これより心よりの喜びを識るであろう貴方が、虹の橋の求めるモノなのです。」

 

(……ねぇ私と共に往く者よ。さきほどから私の言の葉が神妙かつ華やかな響きを帯びているように感じているのですが、何か思い当たる節はございませんか?)

《……純化の弊害ですね。教義の器として完成したことによって優美属性が貴方の言葉を書き換えているのでしょう。ああ貴方の翻訳はコレ由来なのかもです。》

(それが始めに移ろいゆくべき事柄なのかしらっ?)

《最初に変わるべきこと、でよいんですか? 入主 神威。とにかく早く状況を解決しましょう。このまま教義に浸食され続ければ貴方はもはや、貴方ではなくなってしまうでしょうから。》

 

「お心の、まま……に。」

 

嵐のような女は最後の力を振り絞って女神の前へとひざまずき、女神へと女自身である剣を差し出す。折れてしまった自身のその身を。

 

そして女は変えられた。いや取り戻した。

 

 

それは女がかつて失った姿であった。

 

身の丈2mを超える(6尺7寸の)余りに長いその刀身に、刃筋を通さねば切れ味を大きく損なう剃刀仕立て。うねり焔の刃紋を表裏にて一致させる千子刃の緻密さは見るもの全ての背筋を凍らせる美しさを秘めていた。

 

それこそはかつて女が強さと共に捨てた姿。

 

その刀身の長大さ、刃の余りの鋭さからそれを使える者がおらず世の流れに従って万人に使える強さ(・・・・・・・・)を与えられる前の一振り。

 

近代において、ヤマトに神話の怪物(大大蛇)が蘇ったその時に、ある英傑の為に打たれた、とある刀工の手による最高傑作。以来その刀工は多くの名士達に奉納以外の太刀も打てと命じられたが尽くそれを断る理由となった史上の逸品。

真の技を持つ英傑でなくば扱えぬその繊細な刀身は余りにも使い手を選びすぎた。

 

振るわば神すら切り裂けど、英傑を選び抜く選定の一太刀。

 

銘を乱れ焔薄羽造り・千子村正大太刀拵え。

同じく大蛇を斬ったという異界の神の逸話から付けられたまたの名を。

 

羽々斬丸というらしい。

 

 

(……我が愛しき剣は何故にこのような在り方を得ているのでしょう?)

《一度自身を破壊されたことで変化時に元々の姿を取り戻した、のでしょうね。》

 

「ふふっ、まさかこの様な有り様を取り戻すことが出来ようとは。我が主には驚かされてばかりですね。」

 

女はもはや嵐でも凶剣でもなかった。刃に合わせて己を変えられた彼女は、本来の在り方を取り戻したのだから。真の侍の、英傑の側に有り続けるという、その誇りを。もはや主君は定められていた。

 

「ヴィリスカムィ様。

改めて私は貴方に忠誠を誓います。主従として、そのお側に有り続ける事をお許し下さい。今はまだ貴方に遠く及ばぬこの身なれど、いずれこの身は貴方へ相応しい一刀へと至ります。これより貴方の誇り、在り方を傷つけぬよう精進を重ねていきましょう。御身の為に、私の為に。」

「それが貴方の望む在り方であるのですね。」

「御意にございます。それが私の喜びなれば。」

 

女神はただ微笑み、女の新しい在り方を受け入れた。

主と従はこれより正しく定まり、以来揺らぐことなし。

もはや勝負は決した。ならばあとは唯優しい笑顔のみが彼女らを包んだ。

 

(……万難を払うべく微笑みを浮かべ、淑女たる余裕を見せましょう。)

《とりあえず笑って誤魔化しましょうと。純化が深刻化してきていますね。早く街の破損と、先程の光景の心象操作をして全てを終わらせることにしましょう。》

(よしなに。惜しむこと無くあらゆる御業を尽くし最善をなしましょう。)

 

【我が根源よ、虹と(レインボウ)となりて全てを(サークル)治せ】

《【神々の奇跡を】を再使用。定義は優美。この光景を見た第三者の認識を優しき夢であるように変更します。これで神々の王となることで増加した1回を含め奇跡の使用回数は消失しました。》

 

その時、大きな虹が辺りを包み込み、一連の戦闘で受けた傷を癒やしていく。石や木で出来ているのなら壊れてしまった建物も含めてだ。もしこの光景を見たものがいたならば、それは優しい夢の出来事として受け止められる。それが自然に感じられる程、それは美しく幻想的な光景だった。

 

それが女神のもたらした奇跡であった。

 

故にこの出来事は全て夢の中のお話だ。それを識るのはたったの4人。

呆然と奇跡を見上げる男がいた。男は改めて神とはたやすく人の世を壊せるだけの力を持っているのだという事を理解した。

 

在り方を取り戻した女がいた。ただの凶器である事を定められていた女は、かつての己を取り戻し、どこまでも英傑と共に歩む在り方を取り戻した。

 

そして女神とその相棒は。

《状況終了、【高貴なる血筋Ⅲ】の使用を停止。……ステラは貴方に確認します。貴方は誰ですか?》

(何言ってんだよステラ。私は、虹の橋を司る者。女神だよな?)

《違います。貴方は間違えている。貴方は入主 神威。女神になった少年だっ。女神ではあるが、それは本質ではないっ。第一貴方の一人称は私ではないっ!》

 

(あれそうだっけか。まぁ別にいいけ……、)

 

絶対に違う(no goddess)!!

貴方は入主、入主 神威だっ。間違えるなよ私を相棒と呼ぶ人よ。貴方は誰だっ!!》

(......ああ、そっか。オレ、だよな。オレはそうだ。オレは神威だ。入主 神威なんだっ。)

そう、それ(yes my)でいい。(goddess.)。どうかソレを忘れないで下さい。私の相棒は貴方なんだ。私の女神は貴方の方なんですよ。入主 神威。》

 

どうやら失っていたモノを取り戻したのは1人ではないようだ。

それを取り戻して話は終了。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう綺麗に終わらないのが世の中というものらしい。

 

奇跡と見たモノ、見せたモノが談笑していた時の事、不意に1つムクリと、誰かが起き上がる。存在が強固なモノ(レベルが高いモノ)が奇跡の眠りから目醒めるならば、もう1人。

目醒めるべきものがこの場にはいる。

 

未だ酒に頭を焼かれて意識を朦朧とさせる彼女ファルケは、不機嫌そのものの顔で半身だけ身体を起こすと。

 

「うるさい馬鹿どもっ、夜中に騒ぐなっっ!!」

 

寝ぼけ眼で素早く懐から銃を取り出し、慣れた手付きでそれを発砲。

音は1つ。放たれた弾丸は3つ。

 

言うが早いが非死性の氷結の魔弾がバカどものこめかみへと突き刺さった。

 

「あうんっ!!」

「のぉっ!!」

「オレまでっ!!」

 

それだけやると満足そうにさっさと横になる鷹の娘。

残されたのは、その身を凍らされた被害者のみ。

 

(うぁぁ、身体動かないから解除できないじゃんコレぇっ!!)

(ツルギ:ははっ、コレは手厳しい。さては鷹殿、コレは常習犯ですね?)

(ガウリィ:なんか理不尽なんだよなぁ、この扱い。)

 

しばらく文字通り頭を冷やす結果になったという。

ここにて主従の残念な言い争いから始まった命がけの勝負は終わりを遂げた。

 

結果、両者痛み分けっ!!

 

結論は唯1つ。夜中に眠れる獅子を起こした奴が悪いのだっ!!

 

《まぁいきなり銃弾打ち付けるのもどうかと思いますけどね。》

 

次の日の朝。

酒と戦闘。

その一連の事件のお陰で女神以外がダウンしていた事は言うまでもなかった。

 




NEXTSTORY
「オレ、アレになります! 」

閲覧ありがとうございます。

長くなってしまいました。女神(・・)がインフレしているというお話でした。色々頑張れな神威君。覚醒状態はすごく強くなるのですが、色々自分が抜け落ちる使用のようです。ステラさんはいい顔しません。

最後のオチはファルケさんが憎悪の王を攻撃するとこうなりますよって話ですね。レベル差って基本的に残酷なんですよ。

なおツルギさんの大元の大太刀ですが近代といっても打たれて150年程の歴史はあります。一応伝説の品だったのですが、ヤマトのある実用主義一点張りの戦グルイのお殿様の手に渡ったのが運のつき。刀身を詰められ短くされた挙げ句に銘を失い、刀ですらないモノの芯鋼にされていた。という裏話があるとかないとか。そりゃ色々歪んじゃいますよねぇ。

200pt感謝回アンケート回答ありがとうございますっ!
エロ以外がトップをとった時は改めて内容のアンケートをさせて頂きますね。


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45) 第17話 オレ、冒険者になります(1)

前回の教訓から上中下のタイトルを廃止し、ナンバリングに変更することを覚えたヘタレがここにいます。最近文章量、予定外に膨らむことが多いのでご勘弁を。
全体的にナンバリングに変更していきます。

200pt感謝回のネタアンケート今回までです。
よければまたポチッとお願いできますか?


はい神威です。昨日はひどい目にあったなぁ。アレから魔法の氷が溶けるまで震えながら過ごすことになりました。地味にガウリィさんに申し訳がなかったです。

とりあえず氷が溶けた瞬間に回復魔術と土下座、いっときましたっ!

 

すげぇ慌てられて逆に申し訳なかったです。なんか色々ごめぬ。

 

んでだな。ようやっと朝って事になったんだがねぇ。まぁ死屍累々なのよみんな。てかね、しこたま酒飲んで街中で倒れるように寝てりゃあね。なりますよ。ゾンビに。口を揃えて「うー」とか「あー」とか言ってんのよコレが。青い顔して。

 

この世界の酔いってのはバットステータスの一種だから、見かねたオレはさっさと回復魔術で治そうかって思ってたんだけどさ。ガウリィさんから止められてね。

 

このひどい酔いも散々昨日全員で騒いではしゃいだ証だから、それが完全に治ってたら昨日の事全部夢みたいに思えちまうから、残してあげてくれってさ。

酔っぱらいが次の日苦しむのは当り前だって笑ってたよ。

 

言われてオレも納得しちまったんで結局そのままだ。仲間内にゃ速攻かけたけど。特にファルケさん。すっげぇ不機嫌そうにしてて怖かったから。怖ぇから。

爽やかファルケに戻った彼女は、

 

「それでは女神、自分は成すべきを成すために昔のツテを回ってきます。」

 

って言って颯爽とどっか行こうとしてたけど、なんとか引き止めた。

あと母親の事は大丈夫なのかって聞いたんだけど、なんでも自分の船と合流すんのはしばらく後なんで、それまでは急いでもどうにもならないって話だ。

船持ってんだなぁ。海賊だもんなぁ。

……とことんかっこいいな組長っ!!

 

で、オレ達なんですが。

 

「ウチノ、少し頼みたい事があるんだけどさ。」

「ふぅん、なんですのぉ?」

 

なんとかウチノから例のモノを貰い受けれたオレは今絶賛彼女のおもちゃになってます。街の端の方の空き地、使っていいよって言ってくれた人がいたんでそこで今ウチノの出した家の中にいるんだけどね。

 

朝からずぅっとオレに枝垂れかかってくる美人さんがオプション化しとる訳です。本当にワカバとコイシを置いてきてよかったなぁと、思う訳ですよ。

 

あ、こらっアンダーっ。テメェまで巻き付いてくんなっ!!

 

色々もぞもぞしたり息吹きかけんのヤメてぇっ(涙目)

 

「フフっ、では私も?」

 

ちゃっかりファルケさんも乗っからないで下さいっ!

しかも抱きついてきたとたん、妙に色っぽくならんといてぇっ。

お、オレら男同士でしょぉっっ組長ぉっっ!!

 

「(ごごごごご)あらあら、ウフフ。」

「ふふっ、こわやこわや。」

 

はい、みんな説教です。メイルさんの。あ、オレもですね。理不尽っ!!

で、その流れでファルケさんの仮面を掴んだわけですが。

 

「よもや俺がもう一人いようとはな?」

「ああ、なるほど。まさに海賊(・・)の私というわけか。」

 

絶賛2人に増えました。

でも二人共なんとなく似てるんだけど色々違うのよ。

 

ファルケさんは短い髪のマリンブルーに赤い眼をした男装の麗人って感じの、それでも背も170は無い位の胸も大きい女の人って感じなんだけどな。

 

仮面さんは全体的に大きくてそれでいてスラッとした、ちょっと見た感じは男性に見えるような人なんだ。身長も180に近くて胸もねぇ。どっちかっていうと優男って感じだな。しかも仮面外すとファルケさんよりも厳し目の、どっか悪そうな顔つきだしな。ま、髪の色と眼の色とか、やっぱ顔全体のパーツは似てっし美形なんだけども。少女漫画にでそうな感じの。あ、どっちもか。

 

なんも知らずにファルケさんの兄貴って紹介されたら信じちゃうねオレ。

 

見た目もなんか全体的に海賊っぽいのな。かっこいいと思います。

あのコートいいなぁ。凄く立派な黒くて物々しい雰囲気のロングコート着てるのよ。肩パットとか入ってるみたいで着るとますます男っぽく見える。それに仕立てのいい白シャツと黒ズボンが相まってもの凄く海賊です。しかも大物の。

あの、出る作品間違ってませんか?

 

「女神よ、感謝する。自身の為に戦い続けたこの俺に、いまだ機会をくれるとはな。ならば俺は7つの海を貴方に捧げてみせよう。いいな、もう1人の俺。お前は陸で、俺は海だ。なぜならマスケレイドは海の漢だからな?」

 

「ふっ、どうにも私らしいなもう1人の私。だが私はまだお前の実力を知らないんだ。だからまぁやることは、わかるだろうマスケレイド?」

 

そんな風に言い合った2人は仲良く連れ立って家を飛び出していった。ああ、あれは間違いなく殴り合いの空気でしたわ。

 

「あらぁ、男の人ってホントぉアホやねぇ。」

「仕方ねぇよ。男なんだしよ。」

「あはは、だよねぇ。」

 

存在を認め合う為に殴り合う。そんなバカはホント腐るほど見てきたからなぁオレも。ああいうのは周りに迷惑かからん程度にやらせとくのが一番よ。

《存外悟っていますね貴方?》

 

まぁな。色々あったんだよ。

あ、マスケさんのステータスはファルケさんとほとんど一緒だったぜ?

あのレベルの人もう1人増やして大丈夫だったんだろうか。

 

《肯定。なるようにしかなりませんよ?》

 

お前、どんどん適当になっていくな。いいけどさ。

 

《貴方の相棒なので当然です。》

 

へいへい。すいません適当で。

んで残されたオレ達はというと、今現在ウチノ以外を連れだって街の冒険者地区にある冒険者ギルドに向かってる。街の偉い人と合う準備に、ちょっと時間がかかるって衛兵さんが言ってたからな。その間に顔出しとこうって話になったんだ。

 

これでやっとこさオレたちも無職から抜け出せるってモンだ。

 

ウチノは家で魔工やらなんやらでみんなの装備を作る準備をしたいってさ。アイツの職業魔工師ってのは色んなモンを作ったり、それに魔素ってのを込めてマジックアイテム化したりできるクラフト系の専門職なんだって。なんか本来サトゥさんの専門の職業なんだって言ってた。サトゥさんの転生特典なんだとよ。

 

ああサトゥさん。佐藤が名字でした。名前が棚佳(タナカ)だったわ。

 

ちょっとすっきりした。俺たちがこれから集めた素材で色々作ってくれるらしい。……ウチノには頭上がんねぇな。あ、全員にか。

冒険者地区に入ってしばらく、周りに冒険者達の姿がちらほら目について来た頃だ。

 

色々考えってっとツルギがうっすら微笑みを浮かべてオレに話しかけてくる。

 

「皆で冒険者登録、楽しみですね。我々にはピッタリの仕事だと思います。己の腕を磨きながらも糧を得られる。素晴らしいことだ。」

「あらあらぁ、本当にツルギさんは雰囲気変わりましたよねぇ?」

「誰でもたたっ斬るって感じの凶剣さんだったのにねぇ?」

 

確かに別人かよって位変わってるんだよなぁこの娘。黒髪でポニーテールってのは変わらずだけど、以前って結構跳ねるような感じの髪質だったのが、すっごい綺麗な艷のある髪になったし、眼の色も静かな朱色になって、神秘的になった。

 

佇まいも全体的に男らしかったのが女らしい、それでもって隙のない代物になってるしな。何より纏ってる空気が丸くなった。落ち着いた感じの美人さん。大和撫子って感じになっちまったよ。3歩後ろを歩く感じの。

 

綺麗なおねぇさんって感じでちょっとドキドキします。

 

「面目ない。それもまた未熟な私の一面なのだ。しかし己を律する事もなくそれを出し続けていた。それは何より恥じるべき行為だ。許しは請える身の上ではない故、これよりの所作で汚名は雪がせて頂くさ。」

「すっ、涼やかさんめっっ!?」

 

大人だなぁ。昨日の凶暴ぶりが信じられねぇわ。

《貴方にとっては喜ばしい変化では。度々斬りかかられては身体が待ちません。》

まぁね。そこは否定しない。

でもまたあんな風になられては敵わんので先に釘は刺しておくべし。そしたらこの娘意外なお願いをしてきたんだ。

 

「あんま気にすんなよ、タメすぎる前に発散しろな?」

「お言葉有り難く。ではごく稀にで構いませんので主殿のお手で私の刀身の手入れをして頂けませんかな?」

「いいのかソレ。オレに触られたらその、なぁ?」

 

オレが触れるとエ◯くなるぜ?

《真実ですが言い分だけ聞くと最低です。》

うん。オレもそう思う。でも彼女まったく動じずこう言ったんだ。

 

「構いませぬ。

それでもなお我が主の手で自身を磨かれたいという女心、というモノなのですよ。なにより私はもはや身も心も主殿に捧げております故に、なにも困るようなことはございませんよ。」

「オマエ、そりゃ。」

 

目を細めながら、こんな美人さんに少しだけ頬を染めてこんなこと言われるとね。どうしていいのかわからんのですよオレは。

そんでもってオレがワタワタしてるとそっと耳元まで近づいてきて囁くように流し目でオレに微笑みかけながら。

 

「私に戦以外の喜びを色々と教えて下さるのでしょう……?」

「お、おう……。」

 

なんて言われると、もう流されるままに返事をしてました。

そういう意味で言ったつもりじゃねぇんだけどなぁ(白目)

びっくりするほど女らしくなっていらっしゃる。

 

美女の流し目って凄いと思いました。

 

《楽しそうで何よりです(生温かい口調)》

おかんやめて。

でもこの話、ここで終わらなかった。

 

「あの、貴方様。そういう事でしたらワタクシもその、磨いて頂ければと……。」

「えっ、メイルさんもっ!!」

 

なんとウチの良心がおずおずと話に乗ってきたのである。

余りに意外だったんでオレがちょっと驚いた顔をすると、じんわり震え初めてな。上目遣いで聞いてくるんだ。涙目で

 

「イケませんかぁ……?」

「いや全然、大丈夫だけどさ。なんか意外でよ?」

「あらあら、ワタクシだって貴方様のモノですものぉ、この身を隅々見知って頂きたいですわぁ?」

「あ、はい……。」

 

こんなん断れるわけないんですよ。しかもオレがいいって言った瞬間、普段のふわふわ感を5倍位にされちゃうと、もう何も言い返せねぇ。

頼りになる人に甘えられると強烈だなって思いました。

 

《その小学生みたいな感想は正直どうかと思います。》

 

おかん、ダメ出しやめて。

そうなると当然もう一人。小悪魔が動かねぇ筈はねぇ。

 

「じゃあじゃあ、アタシにもお願いねご主人さまぁ~♥」

「いやいや、オマエの手入れって、そこは自分でなんとかしろよおいっ!!」

 

イヤそこは断るだろ。刀と鎧の手入れとかはわかっけど、オメェ下着じゃん。男に何させようとしてんだよっ、下着の手入れって唯の洗濯じゃんっ!!

《指摘。貴方も身体は女なのでそうおかしなことではないのでは?》

 

心はまだ初心な男だからっ、割り切れる訳ねぇからっっ!!

 

「なぁんでよぉっ、贔屓禁止だってぇっ、アタシもご主人様に洗ってほしいモンっ!!」

「テメェっ、んなこと大声で叫ぶなよっ!!」

 

テメェ、人様が見てる所でんな誤解されるようなこと大声で言ったら、オレダメ男見てぇじゃねぇかよぉっっ!!

《否定。貴方の見た目は女です。》

 

「なんでぇっ、アタシもご主人様の手でアタシの表も裏ももみくちゃにされたいんだもんっ!! 

「ひ、人聞きが悪すぎるっ、ちょっ、おまっっ!!」

 

すがりつくなっ、マジ、ちょっ、人、人の目がっ!!

《基本、女性からの申し出に強く出れない人ですよね貴方。》

 

「そんでたまにはアタシを使って欲しいのぉ~、ご主人様をアタシも包みたいっ、

ご主人の足(ご主人の)アタシの中に入って着て欲しいのぉ、アタシもご主人のモノだって感じたいんだからぁ~、見捨てないでぇ~~~。」

 

や、やめろぉっ、全力で涙目になってそんなこと言うのヤメてぇっ!!

ちょっ、ツルギとメイルさんは、複雑な顔で苦笑いしてねぇで止めてくれってぇっ。

《彼女達からすると半分は同意できる話なので手が出しづらいようですね。》

 

いやいやっ、ソレ以前にこんなこと人前でやってたらよぉっ!!

 

「いやだわ痴話喧嘩よ?」

「あんな美しい女性が、そんな事を?」

「……嫌いじゃない。」

「っへ、世の中狂ってやがるぜぇっ。なんて背徳的なんだ(鼻血)」

「オネェサマ……。(ぽっ)」

 

ほらぁっ、道行く冒険者の人になんか変な目で見られちゃうからぁっ!!

《まぁ、中々衝撃的な光景かと。

しかし少し気になる反応の者が混ざってますね。》

今そんな事どうでもいいわっ!!

 

「わかったっ、わかったから離れろっ、コラっ!!」

「やったぁっ、ご主人サマだぁいすきっ!!」

「だから抱きつくなってぇっ!?」

 

いきなり飛び込んでくんなってぇっのっ!

 

「よそでやりなさいよ、よそで。」

「なんとも悩ましい光景だ。微笑んでよいのか咎めるべきか。」

「……嫌いじゃない。」

「っへ、泣かせやがるぜぇっ。なんて感動的なんだ(鼻血)」

「オネェサマァ……。(ほぽっ)」

 

ほらぁ、冒険者の人達の目が痛いんだってぇ。

《指摘。痛いのは我々だけではありません。あまり気にする必要もないのでは?》

なにいってだオマエ。

 

「やれやれ。アンダー殿、そろそろおやめなされ。気もすんだ事でしょう?」

「そうよぉ。ヴィリス様もお困りのようですしぃ。」

「うんっ、楽しかったっ!!」 

 

あっ、コイツ今までの全部嘘泣きなんじゃねぇかっっ!!

 

この後一杯語りあった(肉体言語で)。

 

ギルドにつくのが少しだけ遅くなったオレはきっと悪くない。

 

 

・付録:ツルギの現在ステータス

 

名前 ツルギ

種族 武器人

性別 女

職業 剣聖(マスターソード)

レベル 41

BS(バットステータス):なし

信仰:ヴィリスカムィ

 

筋力 93→115 (97+18)

耐久 50→54 (46+8)

敏捷 106→140 (118+22)

器用 77→105 (89+16)

感覚 37→66 (52+9+5)

知識 21→23 (15+3+5)

精神 34→84 (71+13)

魔力 16→18 (10+3+5)

 

【能力値の→左は前の値。右は現在値。】

【カッコ内の+は左が美少女補正、右が信仰・装備補正】

【ヒトの能力平均の目安は10、レベルにより変動】

 

HP 773(568+205) 

MP 474 

 

【Rはレア度。RRはダブルレア、RRRはトリプルレア、EXは上限レア】

 

武器:【RRR:乱れ焔薄羽造り・千子村正大太刀拵え】

防具:【剣聖装束一式】

 

種族スキル

【刀化】

 

スキル

【運動Ⅱ】【解体Ⅱ】【知覚】【RR:武芸百般Ⅱ】【R:大太刀戦闘Ⅲ】【戦略眼】

【虹の調和の狂信者】

【RRR:剣聖の理/大太刀Ⅲ】:大太刀を扱う際命中・クリティカル率大上昇。ランクがⅢ以上の時剣系クラスは剣聖に転職可能になる。

 

職業スキル

【斬Ⅲ】

【一閃(Ⅲ)】武器スキルとの重複によりレベル上昇中。

【RR:連撃Ⅱ】

【RR:燕返し】:成功判定にペナルティを受けるが【斬】を1度連続で使用できる。

【RRR:地獄蝶々】

 

ユニークスキル

【RRR:効率戦闘Ⅲ】戦闘時あらゆるスキルを効率よく使い、戦闘に活かせる英傑の技量。クリティカル率、異なる手足を用いた攻撃の速度が大幅上昇、さらに全ての攻撃速度が微量上昇する。

 

付加スキル

【完璧なる美少女Ⅱ】

【切断者Ⅲ】:乱れ焔薄羽造り・千子村正大太刀拵えの武器スキル。クリティカル時、対象の防御を無視してダメージを与えられる戦闘技量。レベルが上がればクリティカル値上昇。

【斬属性一閃付加】:乱れ焔薄羽造り・千子村正大太刀拵えの武器スキル。斬属性の攻撃に【一閃】の効果を与える。重なった場合、更に攻撃範囲が増加する。

 




閲覧ありがとうございます。
いやぁ冒険者ギルド、遠かったですね。
みんな何故か中級上位か上級下位くらいに育ってますけど。
これはもう初心者いびりさんは命がけですよきっと(白目)

次回はそんな話です。

200pt感謝回アンケート回答ありがとうございます。
次回の投稿にて締め切らせて頂きますね。
まだ押されてない方がおられましたら是非ご参加下さい。


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46) 第17話 オレ、冒険者になります(2)

突発的女神パニック。

懲りずに新アンケート設置してます。
よければまたポチッとお願いできますか?



「よ、ようこそ冒険者ギルドへ。み、皆様、本日はどのようなご用件で当ギルドをご利用予定なのでしょうかっ?」

 

私、ギルドの受付嬢、アニエス・エンデは今絶賛大ピンチであった。

お貴族様の御一考が冒険者ギルドへとやってきて、そのままいつも人気のない私の受付へといらっしゃったのだ。

 

嘘みたいに綺麗な金糸の髪に、夜空を閉じこめたような紫の眼、万色を讃える独特の衣装でもってその姿は呆れる程に美しいとか、この人おんなじ人間ですかっ?

 

あいぇぇぇっ、なんで、なんで貴族っっ!!

 

しかもこの人絶対上級貴族様だもの、立ち振舞いとオーラがもう、凄すぎるものっ。どっかのお姫様って言われた方が自然なんですよっ。ありえないってぇっ!

とりあえず直立不動の姿勢でお出迎え、いつものマニュアル台詞をちょっと丁寧にして粗相のないよう全力で対応しないとっ、私の首が今ピンチっ!!

 

震えそうになる身体をなんとか抑え込みながら私は笑顔を崩さない。わ、笑えてるかなぇ、私ぃ。私なんかブサイクの笑顔で機嫌悪くなったりしないかなぁっ?

 

どうか縛り首は勘弁して下さいっ!!

 

しかし私の緊張とは裏腹にお貴族様は優しくにっこり笑って一礼し、私に向かって丁寧な言葉でこうおっしゃった。ふ、ふくすしぃ……。

 

「ワタシ達冒険者になりたいと思っているのですが、手続きの方をお願いできますでしょうか?」

「はっ、はいぃぃぃっ!?」

「何か問題があるのか?」

 

えぇっ、依頼の方じゃないんですかぁっっ!!

ちょっ、冒険者って結構危険なっ、あ、はい。あ。おつきの人達がいるなら大丈夫そうですね。めっちゃ強そうなお侍様が割り入って私の叫びを問いただして来た。

他にも頼りがいのありそうな鎧の人。あと1人は、斥候なんかな、エロい人。

 

もう皆さん揃ってもっすごい美人さんで。それが霞んで見えるって貴方様はほんとお姫様ですよねぁ。貴方が神かっ?

 

はい、ごめんなさい。なんか私みたいなのが余計な心配してごめんなさい。

問題っ、ありまっせんっ!!

気を取り直して私はなんとかその場を繋ぐ。私の首も繋ぎたいぃっ。

 

「い、いえ、何も問題有りませんよぉ。それではまず皆様の御名前をお聞かせ頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

「はいヴィリスカムィと申します。」

 

へぇ虹の橋の。あ、この人お貴族様じゃないわぁ。

女神様だった。じゃあこの綺麗さも納得ですね。なるほどなるほど。

……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

な、何してらっしゃるんですか神様ぁっ!!

 

その時、私の思考は完全に真っ白になってしまった。

 

 

やっとこさ冒険者ギルドについたオレ達。外観みると、結構でかいのね?

聞く話によると酒場と各種訓練施設も兼任してるって話だからでかくても当然かもしれんね。その1階は酒場と各種受付を兼ねてるみたいだから結構冒険者の人らが来てるみたい。少なくともギルドに近寄るともう冒険者がいっぱいいるもの。

 

しかしなんだ。めっちゃ見られるなオレら。しばらくずっと道行く冒険者さんから凝視され続けてるんだけども。新人に厳しい所なんかな?

《美人処ばかりですから。皆さん気になるのでしょう。》

そっか。ならしょうがないなっ。

 

「あっ、ご主人サマっ、こっちが受付みたいだよっ!!」

「おおっ、ここかぁっ!!」

「はは、あまりはしゃがれますな。皆の迷惑になりますよ。」

「まぁまぁ。うふふ♪」

 

はしゃぎたくもなるってっ。

だってコレもうゲームの中見たいなんだもんな?

ギルドの中に入ると立派な受付に受付嬢さんが三人並んで仕事してんだ。んでカウンターの向かい、入り口付近にはクエストボード。色んな依頼が書かれたなんか布みたいな紙がいっぱい貼られててな。

 

そんでその横合いにはいきなりドデンと休憩所兼の酒場があって、あ、簡単な雑貨なんかもここで買えるみてぇだわ。とにかくもうここを、ぐるっと回るだけで楽しそうなんだもん。こっから冒険が始まるぜってワクワク感がすげぇの。

ふっ、アンダーの奴も同じ見てぇだな。こういう時だけ奴の存在が頼もしいぜ。

 

《指摘。とりあえず受付にて登録を済ませてからでいいでしょう。冒険者ギルドで発行されるカードは身分証明にも使えます。なにかと便利ですよ?》

 

そういうのもあるのかっ!!

 

よっしゃ、じゃあとりあえずそのカードを手にいれんとな。お、ちょうど空いてる受付があんじゃん。あっこに並べばスグだぜ。

 

「じゃ、みんな登録すませようか。その後飯喰おうぜ?」

「オッケーっ、初ギルドめしっ!!」

「いえーーっ、初ギルドめしぃ!!」

《いえーー。と申しておきます。》

 

「ええ、ふふ。わかりましたわぁ」

「ええ。嬉しそうでなによりです。」

 

ウチノが用意しようとしてたご飯、食べずに来て正解だったぜ。いや別にウチノの飯が食べたくなかった訳じゃないんだけど。結構人数いるしさ。準備するのも大変だし何よりこう、初依頼に初酒場って感じに憧れたんだよ。

 

まぁオレ元々腹減らないんだけどな。女神だから。

《食べる分には問題ありませんから。食事を楽しむ神様も多いですよ?》

 

お、それなら問題ないか。

じゃあ空いてる受付に突撃だ。しかしなんでここだけ空いてるんだろ。初心者用とかなんか理由でもあるのかね?

《回答。空いているならいいではありませんか。面倒がなくていいでしょう。》

 

お、そうだな。とりあえずこういう所はやっぱ愛想が大事だ。

門番さんの時みたく、全力の笑顔でGOだっ!

 

「よ、ようこそ冒険者ギルドへ。み、皆様、本日はどのようなご用件で当ギルドをご利用予定なのでしょうかっ?」

 

おお、オレらみてぇな初顔にいちいち立ち上がって対応してくれるなんざ丁寧な人だなぁ。ちょっと団子パナで美人すぎない所も親しみやすいし。

《指摘。一般にそれは褒め言葉にならないので口に出さない事を奨励します。》

 

流石にそこまで失礼じゃないってば。じゃあサクサク登録終わらせちまおう。

 

 

冒険者登録って結構簡単なんだな。

とりあえずみんな指に針でちっちゃい傷つけて水晶に押し付けたらパァって光ってカードが出来て終わりだった。それでステータス情報がギルドに伝わるんだって。便利。やっぱ魔法すげぇな。

 

《悪用すると個人情報がダダ漏れになるのでよし悪しですよ。入場の厳しい施設等では身分証明として同様のチェックが行われます。》

 

そりゃ警察も真っ青だな。ファルケさんとか大変そうだよなぁ。【皇帝殺し】とか絶対ダメな奴じゃんよ。

 

《誤魔化す方法は幾つか有りますよ。人道的にあまりおすすめしませんが。》

 

……そりゃ聞きたくないなぁ。

んでなんか受付嬢さんだけどなんか偉い人を呼んでくるから待ってて下さいって、すっ飛んでいっちゃったんだけど。それで現在オレらぷらぷらしてますわ。

 

「アレ美味しそうだねぇ、角煮みたいなのっ!」

「おお、確かにっ。結構みんな手づかみでいってるけど、スナック感覚か?」

「からあげさん、とか? うぅーーん。お腹へったぁっっ!」

 

「やはりヴィリス様のステータスが知れた事が問題だったのですかねぇ?」

「女神、ですからなぁ。仕方なかろうよ。」

 

まだチクっとした指から血が出るかもしらんから手袋ハメれないし。これじゃ飯も喰えねぇしなぁ。……ホントに美味そうだなあの角煮みたいなの。

 

「よし、アタシあれ買ってくるっ。

お金もあるし、いいでしょご主人サマっ、一緒にたべよ?」

「お、ワリィな。頼めっか?」

「モチ、ちゃんと食べさせてあげるしね♪」

「……お、おう。あんがとな。」

「言いっこなしだよぉっ。じゃ行ってきまーす~。」

「たのむわぁ~。」

 

ああ、ホントこういう時のアイツは異常に頼りになんなぁ。

 

「なんのかんの、仲がいいですなお二人は。」

「まぁね。感覚があうしね。」

「うふふ♪」

 

どっちも感覚が庶民で、一番馴染みやすいしね。仕方ないね。

 

あ、お金なんだけどな。

昨日の夜に親方達が家の解体費用として受け取ってほしいっていうから、いくらか貰ってんの。さすがにあんな事でお金貰うのもなんなんだけど、親方達も譲らなくて。正直助かりました。無一文はちょっとツラすぎたからな。

 

結構な額なんでほとんどウチノに預けてあるけどね。これで異世界を堪能できるぜ。帰りに焼き串のおっちゃんとこ寄ろう。フフフ。

ああ……。

 

「ワカバとコイシと、森のみんなにも食べさせてやりてぇなぁ。」

「ふふ、ならこちらでなにか仕事を受けてから、お話が終わったら一端森へと戻りましょうか?」

「いいのっ!?」

「主殿の成したいように、ですよ。みなも喜びます。」

「おっしゃぁっ、こりゃおっちゃんの串大量購入していかねぇとなっ!!」

「あらあらヴィリス様ったら。」

 

ついつい嬉しくて、その場で小躍りしちゃうオレ。よっし俄然やる気出てきたっ。

《ホント娘離れできない父親ですよね貴方。》

合ってまだたった1日で離れられてたまるかっ。断然2人が可愛いわっ!!

 

そんな風にオレが浮かれてた時だ。

なんかアンダーが冒険者さん達から怒られてるんだけどっ!!

 

 

今日はいい酒にありつけそうだ。

 

俺らはその娘に近づきながら、んな事を考えていた。

 

俺はルスト。この街で長らく冒険者稼業をやっているいわばベテラン冒険者って奴だ。まぁなげぇのは経歴だけで実際は中級にすら上がれなかったクズゴミだがな。もう30も半ばを過ぎた今となっちゃあ、パーティからも首にされた天下ゴメンの役立たずってやつだ。

 

毎日日銭を稼いでは、安酒食らってたまに安い女を抱く為に生きてる、そういう男が俺なんだ。

でもな。そんな俺に1つ趣味がある。それが新人いびりって奴だ。新人、いい響きだ。なんも知らねぇ、マッチロ。無知、無垢な希望溢れる若ぇモン。

 

へへ、そういう奴をいびって、汚すのだけが俺の唯一の生きがいって奴さ。

 

そういう奴に間違い教えこんでひでぇ目に合わせてやんのもいいし、授業料として高いゼニ巻き上げてやんのもいい。なんならただいびるだけでも最高だ。その後はどうか知らんが今は俺の方が上。それがなにより重要なんだ。

 

んで今。安宿でいい感じに酒浴びてクズ仲間と一緒にギルドに入ってきてまた呑み直そうとしてたトコなんだがな。なんともいきなり最高の獲物を見つけちまった。どうにも夜の女みてぇなヒラヒラのワンピースきた茶髪の、浮かれきったぺっぴんのお嬢ちゃん。軽やかなステップを踏んで酒場のツマミ売り場にまっしぐらよ。

 

へへ、まぁまぁこりゃお登りさんがはしゃいじまってまぁ。

 

間違いなく一見さんの田舎もんだ。じゃなきゃこんなしけたギルドの酒場であんなにはしゃぎまわれるかよ。女子供がこんな所で無邪気にはしゃいでちゃいけませんよぉお嬢さん。そんな隙みせちゃあ。

そら俺らみたいのに、狙って下さいって言ってるようなもんですぜ。

 

俺たちは言うが早いが、徒党を組んでその娘達の前に颯爽と躍り出た。さぁ今日も楽しいお仕事の時間が始まりますよっと。

 

「おうオメェ、こんな所で随分なはしゃぎっぷりじゃあねぇかよ、あぁん? 田舎者如きが我が者顔たぁ良いご身分だなぁ。……目障りなんだよ、クソガキがっ!!」

「ここはテメェの地元じゃねぇんだよお嬢ちゃん。なんならオレラが手とり足取り詳しく冒険者のルールって奴を教えてあげましょかねぇ。

へへっ、きっと楽しい時間になりますぜぇ?」

「……ただし授業料はたぁっぷり払って貰うがよぉ?」

「「「がははははははははっっ!!」」」

 

「ふにゃぁっ!!」

 

今日も決まったぜ。精一杯ドスを聞かせた中年ゴロツキどもに囲まれちまってさぁどうでるね、お嬢ちゃん。くくっ、こりゃもう楽しっくてしょうがねぇなっっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を思っていた時期も、ありました。

 

「何かウチの者がご迷惑をお掛けしましたか?」

「た、たしゅけてっ、ツルギぃっ。アタシなんもしてない、してないよぉっ!」

 

そう聞いてきたのは、黒髪を1つ結んだ娘さん。身なりと武器からして腕が立つって評判の東国由来の剣士職。静かに近づいてくる所作に隙なんて欠片もねぇ。

 

「あらあらぁ。アンダーちゃんどうしたのかしらぁ?」

 

次にやって来たのは初心者どもにゃありえん立派な鎧を身に着けた金髪の目の細い娘さん。移動しながらしっかり後ろの娘との距離を図る腕っこきの防衛職。

 

そんで最後に、その女だ。

 

おっそろしい程綺麗な顔立ちの、デタラメな色を揃えた奇抜な服きた女。だけどもそれがおっそろしく似合いやがる、佇まいが整いすぎてるありえない美女。

まるで自分自身が美の化身だって言わんばかりの出で立ちの、どうみてもお貴族。いやそのさらに上の、雲の上の部類のお人にしか見えなかった。

 

その余りの美しさに俺ら一同、雁首そろえてその場で固まっちまった。

 

「なにかワタシと共にある者に至らぬ点があったのかもしれません。先達の方々、どうかお気をお鎮め下さい。詳しいお話はワタシ達が伺いますわ。」

 

……。

そんな女に頭を下げさせた俺らの未来が一切見えねぇっっ!

 

だ、だれか助けてくれぇっっ!!

 




閲覧ありがとうございます。

頑張れギルドの人達♪


200ptアンケートへのご投票感謝致します。
栄光の一位に輝いたのはファルケさん親子の12票でしたっ!!
なお今回のアンケは接戦でした続いては下着&お家。剣&鎧と、それぞれ1票差という激戦具合。だれがトップでもおかしくありませんでした。

なおエ◯以外の話を望まれる方も大分いらっしゃるみたいなのでここは1つですね。もうお祭りという事でそれ以外の話も1本書いちゃいましょうか。内容はいつものようにアンケートですね。お好きな方を楽しんで頂ければと思います。

あ、内容はあらすじですが作者の活動報告に載せておきました。
よければご確認下され。


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47) 第17話 オレ、冒険者になります(3)

まだまだ続くようです。


異っ世界スナック楽っしみだっ♪

そんな風にオレが完全に浮かれちまってた時の事だ。

 

「おうテメエ、こんな所で随分なはしゃぎっぷりじゃあねぇかよ、あぁん? 田舎者如きが我が者顔たぁ良い身分だなぁ。……目障りなんだよ、クソガキがっ!!」

「ここはオメェの地元じゃねぇんだよお嬢ちゃん。なんならオレラが手とり足取り詳しく冒険者のルールって奴を教えてあげましょかねぇ。

へへっ、きっと楽しい時間になりますぜぇ?」

「……ただし授業料はたっぷり払って貰うがよぉ?」

「「「がははははははははっっ!!」」」

 

「ふにゃぁっ!!」

 

そんなおっちゃん達の怒鳴り声が聞こえてきた。

しかも怒鳴れてるのはアンダーだ。やっべぇ、確かにオレら浮かれすぎてたしナンも言い返せねぇわ。

 

そうだよなぁ。今まで冒険者でずっと危険な仕事やって来たあのおっちゃんらからしたらここは命がけの職場だもんな。そんな所でオレら見てぇなペーペーが浮かれてたらそりゃいい気しねぇわな。

 

《質門。そういうものですか? 彼らずいぶん酔っているようですが。》

 

的屋のおっちゃんらとかその筋の人とかよ。結構仕事中飲んでたりすんだけども、それでも締める時はちゃんと締める人らなんだよそういう人は。やり方はどうあれ大人なんだな。けじめはつける。つまりあのおっちゃんらもそういう人なんだろ?

 

《なるほど。貴方らしい考えです。》

 

なんだそりゃ。

いや今はそれ所じゃねぇ。アンダーだけにあんな当たり方されちゃそりゃ筋が通らねぇぜ。一緒に浮かれて買いに行ってもらったオレにも原因があんだから、お叱りは一緒に受けるべきだろ。

 

「ツルギ、メイルさん。アンダーと合流しよう。」

「承知。私が片付けますか?」

「いや、みんなでいこう。まずは話しを聞いて、どうすっかはそれからだ。」

「はっ。」「了解ですわ。」

 

 

で、オレらはアンダーと合流したと。

《ここはいつものお決まりの土下座(アレ)ですか?》

 

いやまだ本当のトコ、どこがおっちゃん達が本気で怒った点なんかも分からんし。だからここはひとまず話を聞いてからだな。こういう仕事に誇りもった人達はな。なんでもかんでも謝られるのが一番嫌なんだ。最初は柔らかく声かけてそこんとこ探ってみるわ。

《質門。ずいぶん手慣れているように見えますが?》

 

まぁな。オレは悪人面だったからバイトなんかも飲食店やら接客やらは全滅だったし、そうなっと的屋とか、ちょっと問題のあるような怪しい土建屋さんとか魚市場とかな。そういう所でよく働いてたからな。こういう事は日常茶飯事だったぜ。

《……なるほど。その頃から貴方は変わってないのですね?》

 

おうどした? まぁ今はそういう場合じゃねぇや。

 

【ここより神威の台詞は2重音声でお送りします。】

 

なんかオレらの(なにかワタシと)仲間に(共にある者に)気ぃ触わるトコ(至らぬ点が)とかあったん(あったのかも)ですかねぇ(しれません)先輩方、(先達の方々)どうかここはひとつ穏便に(お気をお鎮め)いきましょうよ(下さい)細かいお話は(詳しい話は)オレらが聞かせて(ワタシ達が)もらいますわぁ(伺いますわ)。」

 

さもどうしましたかって風に聞くのがコツな。ここで怒りながらあった事全部説明してくれてもよし。毒気がヌカれてちっと冷静になってくれても良し。とりあえずコレで間違いないって。大体どっちかが返ってくるから。

 

《ではお手並み拝見と行きましょう。》

 

 

【これよりルスト視点。()で神威視点。】

 

お、お、お、落ち着け俺。か、考えろ。俺達は今、絞首台の上に立たされている。見ろ、あのおつきの東国の女の顔。涼やかそうな顔して俺達がよからぬ事を言った瞬間に、いつでも(やるなら)斬りますよ(やるぜ)って顔してやがる。

 

見ろ、あの防衛職の女。なんかあった時にゃ即座に仲間全員守れる位置取りでいつでも動けるように備えてやがるぅっ。

 

そ、そんな中でこのお嬢さんのお供の娘に良からぬ事を考えてたなんておおっぴらにしてみろぉっ。俺らゴミの命なんざその瞬間トンじまうぅっ!

 

考えろぉっ、考えるんだぁ。命をぉ、命を掴めルスト・ルーラーっっ!!

 

(あっれ。なんか見たことない位に震えだしたんだけど。そんなに怒ってるんかなこの人ら。そうだよなぁ、ちょっと緊張感足らなかったもんなぁオレら。)

《……。》

 

「あ、いやいやいやいや、そんな、そんなですね。そのぉ、なぁ?」

「お、おう。俺たちはその……、その娘があんまり浮かれてたもんだからちょっとこうね。そぉ。それっ!!」

 

バ、バカどもぉっ、なんだその最悪のキラーパスはよぉぉぉっっっっっ!!

あ、が、くそぉッ。

こうなりゃこの流れにぃ、乗るっきゃねぇのかよぉっ!

 

「そ、そうですよぉ。お、お嬢さんがこのまま浮かれてたんじゃあ、ねぇ。なんか外で悪い奴に騙されるかも知れないでしょおぉ?

だから俺ら心を鬼にして、そう鬼にしてお嬢さんにそれを教えとかにゃあならんと、そういう次第だったんですよぉっ!」

「ああ、そうだった(その様な事だった)んすかっ(のですね)そりゃ(それは)すっげぇ(大変)ありがたい(感謝すべき)っすわぁっ!!(ことですわ。)

 

(あっれぁ、なんか思ってたのよりめっちゃいい人らジャンっ。なんだよぉマジで見ず知らずのオレらの事心配してくれてたんじゃねぇか!!

おいおい、この街の人らっていい人達ばっかかよ、すげえなっ。)

《(小声で)……それはどうでしょうか?》

 

つ、掴んだっっっ、まさかの流れをワシ掴みぃっ!!

も、もう離さないその手を俺は、俺たちは絶対にぃっっ。

 

「そそそ、そうですよぉ。俺ら一応これでもそれなりに冒険者歴も長いですしぃ。そりゃ、そんなビギナーさんがおったら、ねぇ。気になっちゃいますでしょぉ?」

 

おおし、ナイスセーブ。いいよいいよぉ。このまま押し切れるぜぇっ!

ほらっ、お前も続けっっ!!

 

「そうっ、そうっス。俺たち全然その可愛いらしいお嬢さんを罠にはめようとか、こうイタズラしてやろうとかぁ、これっぽっちっも思ってないっスからぁっ!」

 

 

死ねぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっ!!

 

もう今スグお前だけ絞首台に飛び降りろやぁぁぁぁっっっっ!!

今更「あ、やっべっ」て面してんじゃねぇよボケなすがぁっっっっっっっ!!

 

1人で百万回死んでこいやぁぁっっっっっっっっ!!

 

はは、オワタ。俺たち終わっちまったよ。

だってもうあのお嬢ちゃんも、今にも泣き出しそうな目で身体を両手で隠しながら東国の女に「ユー、やっちゃってよっ!」って合図出してるし。本人もやる気だ。何より防衛職のねぇちゃんがすっげぇご立腹なんですものぉ。

 

あは、あはははは、思えばひでぇ人生だったぜぇ。なんか別に思い出すような特別なこたぁ1つもねぇが、気付きゃあずっと底辺だった。

ああ。その終わりがこのバカ野郎のうっかりなんてよぉ。

 

くっそこんな事になるんなら昨日ゼノヴィアの所でもっと楽しんどくべきだった。あの気位のタケぇ火傷夜鷹(傷物女)をもっとイロイロナカせてやるべきだったんだぁっ!!

俺がそんな末期の叫びを心中で上げ続けていたその時だ。

 

奇跡が、起こった。

 

そっか(そうですか)おっちゃんらも(貴方達も)色々(多くの)苦労(苦悩を)してきたんだなぁ(抱えているのですね)ああ(ええ)わかってる(わかっております)おっちゃん達は(貴方方は)本当に俺らの事(ワタシたちの事を)心配して(気遣って)くれただけなんだよな(ですよね)?」

 

(俺もこうやって散々見た目で勘違いされてよ。どんだけ人の為だって頑張ってもずっと空回ってきたからよ。そういう辛さは身に染みてわかるぜ。へ、でもオレぁアンタ達の事信じるぜ。見た目なんざぁ当てになんねぇモンなのさ。)

《そうですね。貴方を見ているとそう思います。》

 

おお、なんかお嬢様が目ぇ潤ませながら俺らの事を心の底から気遣ってくれとる。おいおい世間知らずが過ぎるぜ、アンタ天使様かよ。そんな俺らみてぇなクズによ、そんな綺麗な涙流してくれるなんざ。流石に俺らでもこう胸にくる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というとでも思ったかっ、甘ちゃんめぇぇっ!!

ぎゃはは、バカな嬢ちゃんだぜぇっ!

 

んなコッチャいつかてめぇ騙されて露頭に迷うっちまうわぁっ、そんときゃテメェもどっかで売られて変態どものおもちゃになっちまうのがいいトコだぜぁっ!!

おいっサムス。笑ってんな、こらえろよおいっ。俺だってひひ。笑いが止まらねんだからよぉ。

 

(ああ、やっぱ辛かったんだな。人にわかって貰えて色々堪えて震えてら。オレも最初ワカバとコイシに会った時はそうだった。嬉しいよなぁ。わけわかんなくなる位によぉ。そりゃあ、そういうのは痛ぇ程わかるぜ?)

《……貴方という人は。》

 

しかしっ、コレでオレ達の命は繋がったっ。

 

ありがとう世間知らず。素晴らしきかな人生よっ。

オレここ抜けたらゼノヴィアんトコいって鬱憤ぶちまけるんだぁ……(フラグ)

 

今クズ達の心が1つになる。追い詰められた状況から全員目に涙が浮かんだまんまだから演技しやすいったらねぇわコレ。

 

「あ、ありがとうございますぅっ。信じて頂けてぇ。あっしらっ、そ、それを伝えたっかった、だ、っだけですからっ、コレでっ!!」

「ええ、分かってますって(おります)。」

「く、くうっ、ふ。な、なんてお優しいっ、お嬢さん、だぁっ。」

「ふ、くっ、くくっ。」

 

やべぇ笑い止まんねぇわ(笑)

おいオメェラも笑うんじゃねぇってっ、ひひっ。目からヨダレが出ちまいやがるっ!

 

「しかしヴィリス様、粗奴らは。」

いんだ(いいのです)オレにゃ(ワタシは)全部分かって(理解して)るからよ(いますから)。」

「……承知。」

「ええ、わかりました。」

 

(ツルギ:この様な者の事でも信じて、機会をお与えになられるとは。どこまでもお優しい御方だ。)

(メイル:それが貴方様の選ぶ道なのですね。)

(アンダー:……ああ、やっぱお人好し発動しちゃうよね~。)

 

あっぶねぇっっ、やっぱそりゃお付きの方にゃあバレるわなぁっ!?

でもへへっ、あのお嬢ちゃんホント笑っちまう位アメぇや。今のうち今のうち。

 

 

勝ったっ、掴んだぜ俺は、俺たちは明日をよぉっ。

待ってろよゼノヴィアぁ、今日の俺はちょっとエグいぜぇっ!!(フラグ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、逃げられるとでも思ったか、クズどもがぁぁぁっっ!!」

 

あ、ギルド長の旦那。

 

ギルドのお偉いさんの皆さんもお揃いで。

ちょっ、なんですかヤブから棒に俺ら押さえつけてぇっ!!

あれぇ、やっぱりこのお嬢さんってあんたら全員がお出迎えするようなそんな大物なんですか。

 

……。

 

くっそ、やっぱ俺ら最初からツンでるんじゃねぇっかぁぁっっっ!!

だ、だれか助けてぇっっ!!




閲覧ありがとうございます。

汚い冒険者がホントに汚かった件(ふるふる)


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48) 第17話 オレ、冒険者になります(4)

今回は神威くんのターン


【ギルドの支部長視点】

 

ああ、クソっ。

なんて事してくれたんだっ!!

 

冒険者ギルドを収める支部長の立場にある俺は、いや俺たちギルドの管理者一同はアニエスより女神の来訪を告げられて今、慌ててギルドの1階に降りて来ていた。

辺りを見回せば、誰が女神であるかなど、すぐにわかった。酒場のつまみ売り場の前に綺麗な女達3人と、とびきりのクズども3人に囲まれて。

 

……人ならざる美を持った存在がそこにいた。

 

ああ、あんなモノが人である筈がないだろう。その後ろ姿を見ただけで魂を抜かれちまうかもって思える位に、美しい人間なんている筈がない。およそ人が着こなす事なんざ無理だろうって、万色を揃えたような服装が似合う女なんて。

 

その身にこなしも一欠片の無駄もない。ただ佇むだけで一時も隙を見せない完璧な淑女なぞ。人間であってたまるものか。その所作が、全身から溢れる神々しさ全てが。彼女が女神で在ることを説明している。

 

こ、これほどかっ。

 

別に神に合う事は初めてでは、ない。

だがこれほどの神々しさを纏った神に合うのは初めてだった。水鏡の宝珠に写ったステータスは精々上級のなりたてといった値を示していたが、そんなものが当てになる筈がない。アイツラは気分で化身っていう名の、偽りの姿を作って被ることができるんだからな。

 

少なくとも俺は。元斥候として多くの優れた人物と宝の真贋に触れてきたレイル・メロウは。そんなもの絶対に信じない。それに関しちゃ他のヤツに引けをとらないこの俺の眼が、全力でそれを否定している。

 

上級神。

 

主となる属性以外に属性を抱えた、少なくとも何らかの属性の支配権を得ている、本当に優れた力を持った神。対応を誤れば確実に人の営みなど消し飛ばしてしまう

危険で傲慢な存在。俺にはそうとしか見えなかった。

 

神々の気まぐれの前で人はいつも無力だ。

戯れに人の街へと現れて”己の神殿を建てろ”等と命じ街の人々を酷使した挙げ句、その生活全てをボロボロにしてしまった神の話など腐る程知っている。

 

まして上級神ともなれば格が違う。彼らは気分1つで、自分の統べる属性の在り方すら変えられる。属性が水であるならば水害や渇水といった自然の摂理を、好きなように操れてしまうのだ。まさしくそれは。神の御業というわけだ。

だから我々は決して神への対応を間違えてはならない。

 

彼らの気分1つで我々はいつでもその営みを、無へと返してしまうのだから。

 

背筋から冷たい汗が1つ流れる。気付けば全身からびっしりとじっとりとした脂汗が浮かんでいた。俺だけじゃない。少しでもモノの価値の分かる職員達は全員だ。同時に吐き気にも似た恐怖と激しい怒りが湧いてくる。俺たち全員がそうだった。みれば冒険者の中でも特に敏い連中は同じように湧き上がる感情を押さえていた。

 

当然だ。

 

誰かが1つ対応を謝れば、街ごとたやすく滅ぼしかねない危険な存在を相手どり。あんなわかりやすく人を小馬鹿にした顔を浮かべて騙そうとしているクズが目の前にいるというのだから。それを見て女神のお付きの方々が怒りを必死に堪えた顔で、女神の側へと控えているのだ。

ああ、なんてこった。

 

なんて事をしてくれたんだっ!!

 

「あ、ありがとうございますぅっ。信じて頂けてぇ。あっしらっ、そ、それを伝えたっかった、だ、っだけですからっ、コレでっ!!」

「ええ、分かっております。」

「く、くうっ、ふ。な、なんてお優しいっ、お嬢さん、だぁっ。」

「ふ、くっ、くくっ。」

 

只でさえ最近色々と物騒だったアデルの森の、その異変を知らせる報告が昨日からわんさか入って来てる時だっていうのにっ。

 

ああ、やりやがったなっっ。

 

「しかしヴィリス様、其奴らは。」

「いいのです。ワタシは全部理解(・・・・)していますから。」

「……承知。」

「ええ、わかりました。」

 

いい年したロートルの癖に、上を目指すこともせず新人いびりなんかやってるクズが。あのガリの斥候とでぶの重戦士。そしてそいつらを染め上げた一番のドクズのクソ野郎、槍使いの、あのルスト・ルーラーの小悪党三人組が。

 

今まさに、女神を侮辱していた。

 

溢れる嗤いを押さえきれずに零しつつ、その場から足早に立ち去ろうとしていた。ふざけるな。ふざけるなよお前達っ。

 

「(小声で)

…あっぶねぇっっ、やっぱそりゃお付きの方にゃあバレるわなぁっ!?

でもへへっ、あのお嬢ちゃんホント笑っちまう位アメぇや。今のうち今のうち。」

 

「と、逃げられるとでも思ったか、クズどもがぁぁぁっっ!!」

「あ、ギルド長の旦那ぁ。な、何すんですかぁっっっ!!」

 

その場でギルドの者達と、一部の冒険者達が率先して奴らを押さえつけた。全てが、全てがもう遅すぎた。女神は侮辱を認識している(・・・・・・)

全てを包み込む慈愛の眼差しのその奥に、静かな決意を浮かべていたのだ。

ああ、どちくしょう。

 

どうやら俺たちの街は今、このクズ達のせいで存亡の危機にあるらしい。

 

 

(お、おう。あっという間におっちゃん達がギルドの人らに捕まっちまったぜ。え、何。どういう事なのコレ?)

《とりあえず少し様子を見てみては?》

 

「ちょっ聞いて下さいよっ旦那ぁっ。俺らは別に旦那達に押さえこまれるような事なんざコレッポチもしてませんぜっ!?」

「そうそう。むしろ、へへ。イイことした後なんですぜ?」

「そうですよぉっ、そこのお貴族様がお認めになられたんだっ。俺らは無敵の無実ですぜっ!!」

 

(あれ、オレ関係なのコレ?)

《……そのようですね。》

 

職員総出でクズどもを組み伏せその場で拘束する。……奴らはどうやら自分が何を仕出かしたのかすら分かっていないらしい。

何もかも度し難い。クズどもをすみやかに確保できた事だけが唯一、不幸中の幸いだった。俺はクズどもに殺気を飛ばしながら言い放つ。

 

「……貴様らの最後の言葉はそれでいいんだな?」

 

「ひっっ!?」

「いやちょっ、冗談でしょおっ!!」

「あ、がぁっ。」

 

俺の殺気を少し浴びただけで動けなくなってしまうクズども。まったく。こんな者の尻拭いの為に俺自身が命を賭して、神への侮辱を注ぐべく許しを請わねばならぬのだから泣けてくる。どうにも責任者とは辛いものだ。

俺は更に言葉に力を込めて言い放つ。

 

「貴様らは勘違いしている。こちらにおわす御方は貴族なぞではないっ!!」

「へ?」

 

(いやいやちょっとまってくれよ。その人たちゃ俺らに忠告してくれただけなんだから。いきなり現れて一方的に捕まえちまうなんて、そんなん認めれるかよ。)

 

「お待ち下さい。」

 

女神から俺へと静止の言葉が向けられる。しかしここで女神に会話を主導権を渡すわけにはいかない。続けて俺は、俺たちは女神に対して深く頭を下げて言い放つ。

 

「大変申し訳ございませんでしたっ、女神様っ。」

「は、え、め、女神?」

 

(あれぇ。なんでオレ女神ってばれとんだコレ?)

《回答、先程の水晶による識別の結果です。》

(ああ、そういやそうだわ。なんかオオゴトになってるような……。)

《貴方が女神であることは事実ですからある程度はしょうがないのでは?》

 

「我々ギルドの者がよもや貴方様を侮辱するような真似を許してしまうとは。この件は全てこのギルドの支部長である私の不徳の致す所。どうかこの者達と私の首に免じ、お気持ちをお鎮め願いますようお願い申し上げるっ!!」

 

ああ、いやだいやだ。死にたくはないがしょうがない。俺とクズの首でどうにか街の明日が買えるなら安いものだ。……納得できることではないが。

 

(えっ、いやちょっいらんからっ。そんなん貰いたくねぇからっ。とりあえずスグにでもこの勘違いを解かないと。冤罪は辛ぇんだっ (実感あり))

《(小声で)どちらが勘違いか、という話ですがね。》

 

「そのような必要はありません。」

「っ、しかしっ!!」

 

バカなっ、確かにこの女神はバカどもの侮辱の意味を認識していた。目の奥に潜むなんらかの決意が見えたのだ。それなのにこちらの謝罪を跳ね除けるとは。まさか女神は既に我等全てを見限っているというのかっ?

 

ならばこの街に、我等に明日などないという事ではないかっ。

 

叫びだしそうになる悲鳴を。

必死に唇を噛み締めてこらえる。

しかし女神が我等に続けた言葉はとても意外なモノだった。

 

「どうか彼らを解放して上げて下さい。言葉の通り、彼らはワタシ達を助けようとしてくれていたのです。このように捉えられる謂れなど何もありません。

彼ら自身もそう言っているでしょう?」

 

「っ!? しかし貴方様はっ。」

 

言葉通り、女神は彼らを許すと言う。しかしそれでは俺があの時感じた女神の瞳の奥に見た決意は何だ。納得ができない。

そしてなにより。

 

「へへっ、女神様もそう言ってるんだ。ほら旦那。早く離してくださいよ?」

「そぉっすよ。俺ら、へへっ。イイことしたんですぜ?」

「無実、圧倒的無実なんですってぇ!」

 

このしたり顔で騒ぐクズどもが、なんの沙汰もなしに許されるという事が。何より納得できなかった。だから、つい云わずともよい言葉が口から溢れた。

 

「女神様、恐れながら言わせて頂く。

彼らは貴方様を騙そうとしているだけだ。貴方様を害そうとした事を誤魔化して、のうのうとそれを助ける為だなどと口にする。彼らは普段より人を騙し続ける悪党どもだ。お付きの皆様とてそれに気づいておられる。貴方様とて(・・・・・)そうでしょう(・・・・・・)

そのようなモノを貴方様はなぜ助けたいなどとおっしゃられるのか?」

 

(……。)

《言葉もありませんか。神威、貴方は驚くかも知れませんが……》

 

【以下神威の言葉。翻訳は同意味。】

 

「んな事ハナっから分かってる。それでもオレは、ソイツらを信じたい。そんでよ。いつかそれが嘘にならんように、オレがせっかいかけてやる。

それでも、離しちゃもらえねぇか?」

 

《っ!?》

 

「女神様、貴方は、貴方様は……。」

「あ、え?」

 

この御方は、……気づいていながら?

 

(そりゃよ。流石に。オレは今まで悪ガキどもの相手や、あんまいい環境とは言えねぇ職場を転々としてきたんだぜ。まぁ気づくだろ。腹ん中で相手が笑ってるってことくらいよ。それでもな。)

 

「そんなヤツをオレはいままで何人も見てきた。どっかで自分に嘘ついちまって、もうそれしか言えないようになっちまったヤツら。周りから認められなくて、それに毒突くしか出来なくなっちまった、そんな奴らをよ。」

 

実際にそうなのだろう。我々にはとても想像できない神としてのその長い時間の中で。そんなモノを腐るほど、見てきたのだろう。

 

「でもよ。なら逆もあったっていいんだわ。

 

どっかで嘘でも信じられて、受け入れられて。それが始まりなんだ。誰かが最初に、ソイツを信じて認めてやってよ。そっからがスタートだ。

そっから手を焼いてって、歩き出せるかどうかはソイツラ次第。」

 

それでも貴方は、貴方様はそのような者達に見捨てる事なく手を差し伸べるというのか。ずっとソレをやって来たと?

 

「オレをバカだって笑うヤツもいるだろそりゃ。実際何度も騙されたしな。でもな。それでもオレは。人間の根っこに在るものを信じたいんだ。認められて、褒められて、やる気だして、……また頑張れる。そう言うモンを信じてぇんだ。」

 

まるで女神としてのその在り方全てを込めきった様な、そんな表情で。決して諦めを許さない決意の瞳で、想いが伝えられる。それに呼応するかの如く、女神が神威(シンイ)が増していく。

 

「実際よ。そうやって手を焼いて歩き出したヤツを、オレは何人も知ってるんだ。だからよ。オレは今回も、信じてみるんだ。悪い可能性なんざ放り捨ててよ。

 

だからオレらは、助けられた(・・・・・)それで(・・・)いいんだよ(・・・・・)。」

 

それはまさしく女神の微笑みと呼ぶほかない。まさに慈愛に満ちた微笑みだった。

 

《……神威、貴方は一体どこまで?》

(さぁ。どこまでだろうな?)

 

 

こっ恥ずかしくて言えるかよ。

 

昔な。オレもそうやって助けられた口なんだ。全部世の中のせいにしてグレようとしてたオレを信じてくれた、オレの恩人ってヤツがいるんだ。その人が言ってたんだよ。誰かを疑う人間より、誰かを信じられる人間の方が何倍もすげぇんだって。

 

だからよ。オレはそれ以来。

 

悪い可能性なんざとりあえず全部放り捨ててよ、バカになって全力で人間のいい方だけ信じる事にしてるんだ。

ま、そんな事続けてたら実際。色々人より鈍くなっちまったのも事実だがな。

 

そんな事はよ。オレが唯かっこつけてるだけだなんて、サイッコーにかっこ悪い事なんてよ。

 

オレだけわかってりゃ、充分だろ?

 

 

気付けば。その場にいた者たちが皆、女神様に対し膝をつき、祈りを捧げていた。ある者はこの慈悲深い女神様を讃える言葉を口にしながら、ある者は唯滂沱の涙を流しながら。女神様に会えた奇跡を噛み締めていた。

 

女神様が神威(シンイ)と共に発っせられたそのお言葉には、どこまでも熱意が、想いが、魂が込められていた。それはこの女神様が、今までずっとそのように有り続けてきたという事を、何よりも証明するモノだった。

 

こんな神が存在している。我々のようなモノをどこまでも信じ救ってくださろうとする。そのような神が。その事実が、まさに奇跡であったから。

祈らずには居られなかった。

 

それはどうやら、あの男達もそうであるらしい。

 

 

【これより神威視点。2重音声なし。】

 

うぉう。なんかおっちゃん達ガン泣きしてるんだけども。あれぇ、こういうのって普通本人に言っちまったらめっちゃ反感持たれてこじれるモンなんだけどなぁ。

実際それで割と痛い目見てきたし。

《貴方の言葉が彼らに届いた。それだけです。それで良いではありませんか?》

 

ああ。そうだな。

じゃあ、コレ。どうにかしねぇとな。

 

「め、女神様っ。俺、俺らっ。アンタを、貴方を騙してっ。それなのに信じるって、救いてぇって。俺ら、俺ぁ、貴方からっ、貴方様からっ、そんな事、言われるような、言われていいようねヤツじゃねぇんだっっ!!」

 

やっぱ色々背負ってたんだなぁ。

曲がる奴は曲がるなりの、いろんな苦労をしょいこんでるモンだもんな。受け入れられねぇ気持ちは分かる。

だけどよ。

 

「そんな事言われてもよぉもう手遅れなんだよっ!!

もう、なんもかんも遅すぎだっ。今更こんなキタねぇおっさんなんか変わりたくても、変われるもんじゃねぇんだよっっ。信じられても困っちまうだけだっっ!!」

「そうだっ、俺らもう人生終わってんだぜっ?」

「なんでもっと早く、うぅっっ。」

 

アンタらは1つ間違ってる。

 

「変わろうとする奴に遅いも早いもねぇって。

それによ。

もう変われたんだアンタら。だってよ今。

色々思って泣いてんだろ。変わりたいって。それってもう、変われてるんだ。

 

なぜかって?

 

なんも思わねぇ奴はそんな風に悔やんだり、泣いたりなんかしねぇからだ。だから大丈夫さ。オレが保証する。生まれ変わった気持ちでやってみりゃいいんだ。」

 

「ああ、あああああぁぁぁっっっっ!!」

「う、ぐううぅぅぅぅっっっ!!」

「うおぉぉぉっっっっ!!」

 

オレなんかの言葉を聞いてそんな風に、崩れるように泣き出す奴らが、変われない筈ないもんな?

だからもう、背中を押してやるだけでいんだオレは。

 

「それでも上手くいかねぇ時は、オレでよければ助けになんぜ?」

《あ。》

 

軽く。一番前で泣き崩れるおっちゃんの肩に手を乗せて、その身を引き起こそうとした時の事だ。

その時、例の奴が発動した。

 

ポンっ!!

 

あ、アレぇ? なんで手袋してんのに変化が起こるんだよぉっ?

《指摘。貴方は手袋をしていません。》

 

(え? いやこういう時の為にウチノに貰ったんだろ手袋。それがなんで……》

《ギルドでステータス検査を受けた時、外したままである事をお忘れですか?》

(あっっ、やっべぇっっ。)

《なるほど。ふふ。

その最後までキメきらない所は、どうやら貴方の素のようですね?》

 

や、やっちまったぁぁぁぁぁっっっっ!!

 




閲覧ありがとうございます。

昨日は更新なくて申し訳ない。ちょっとまとめるのに時間かかりました。
なお反感を持たれた不良程、全てが終わった後に神威に懐く模様。彼は道を誤った少年少女の中で、自分が一種のカリスマ的存在である事をまるで知らない。

鈍感には変わりないんですよこの子。人の好意にすごく鈍いんです(白目)

あ、200ptノーマルアンケート次回までです。
まだ投票してない方はお早めにどうぞ♪


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49) 第17話 オレ、冒険者になります(5)

分量多めになりました。



なんだいこんな時間に。

ギルドの近くの宿を郭とする私は人の騒ぐ声で目を覚ました。

大きな声で笑い合う冒険者達の声がひどく、ひどく耳障りでならない。

 

ああ、なんで人の笑い声ってこんなにイラつくんだろうねぇ。

 

理由なんてわかってた。ワッチが幸せじゃあないからだ。

長い事お高い郭で娼婦なんてしていたワッチは、まぁ昔から人並外れた器量の顔と小賢しさだけが取り柄の女でね。タダの田舎娘だった私が売られた先は、まるで夢の国みたいな場所だった。

 

お貴族様のお城を思わせるような立派なお屋敷に、天幕付きの豪奢な褥。当り前のように立ち並ぶ特級品の邸の家具に、お高尚な絵や彫刻、添え物の数々。

そのどれもがウチラ庶民が村1つ、10年は喰って余りあるってとんでもない代物だった。最初に値段を聞かされたときゃ、怖くて邸を動けなくなったもんさ。

 

そんな場所でさ。言葉ぁ学んで色の使い方学んで、教養なんて仕込まれちまって。ちょっとお貴族様相手に品作って、おかしな言葉使ってお話聞いて。芸事魅せたら笑い合ってさ。少し褥を伴にするだけでお姫様みたいな暮らしが許されちまう。

 

そりゃあね。お貴族様相手の商売だ。オツムの足らん女にゃあ仕込みの時点で辛かろうがね。ワッチは生憎覚えが良くて、必死で色々学んだものさ。

食い物1つ。おかしな話、ご不浄の在り方1つとっても考えられない程いい思いができる楽園なんだ。

 

それに必死に縋ったよ。お得意さまのご趣味を覚えてそれに合わせて色々やった。そしたらさ。気づいたら私はその娼館の中でも随分と上の立場になっちまった。気に入らない男の誘いを自由に袖に触れる位には、顔が聞くようになったのさ。

 

まぁそん時にもう少しばかり周りに気遣ってたら、こんなハメにはならなかったのかね。若い美空で上客達に囲まれて少しばかりいい気になってた田舎娘は、商売女の怖さってモンを完全に理解していなかったのさ。

 

気づいたらワッチは落ちぶれていた。

 

顔を焼かれ足の筋をやられ両の小指を断ち切られ。楽園から追い出されちまった。クソ女神の情夫を客に仕込まれて、断ろうが受け入れようがどの道不敬になる状況を造られて。ワッチを女へと仕込んでくれた、尊敬してた姐さんの悲しむ顔の奥に潜んだ、確かな愉悦の光を見た時。ワッチの全ては失くなったんだ。

 

そこからは苦労の連続だった。

もとより芸と身体しか能のねぇワッチが、なんもかんも不自由な身体にされて国を追われたんだ。郭で教え込まれた知識も、死ぬことすら。制約魔術で封じられて。唯一許されたのがこの自称。ワッチって言葉だけがその名残だったりするわけさ。

 

そんなもん動かしずれぇ足引きずりながらも、それでも華を売るしか道はなかった。火傷女なんてどこにいっても客はつかねぇ。女の値段なんざ下げきって、つくのはそんな女相手に自分の下を見つけて昂ぶっちまうような、真性のサディストばかりって話でね。

 

そんなもん相手に自分の尊厳売りながら生き延びるだけの毎日さ。ああ、死にたい。今すぐにでも。でもワッチはソレすら許されないんだ。

 

だからワッチは。今日も地獄の底で生きるしかない。

 

さて。何か大きな依頼でも達成して馬鹿騒ぎするお大尽でも出たのかね。そういう事なら女の入り用もあるだろうさ。最近アデルの森が物騒ってんで、てんで景気のいい話なんざ聞かなかったが。そういう事ならワッチもあやかろうかい。

 

ワッチは顔に白粉を1つ。長く伸ばした髪で右顔を隠し、ストール巻いていつものボロいローブに袖を通し長い手袋を両手にはめると、ようやくこれでお天道様の下を歩ける姿になった。

 

裸体の上から直接羽織ったローブの継ぎ目の、所々から女が覗く。こういうモンが荒くれモンにはたまらないらしいんだ。だったらお客(ソレ)に合わせてやるのが娼婦として(商売女)の在り方って奴さ。

 

もうなんもかんも失っちまったてのに、未だにそんな生き方を変えられない自分に嫌気がさしながら。それでも喰っていく為に。

 

だからワッチは今日も自分を捨てにいく。

 

 

宿を出てすぐ目の前のギルドへと近づくと、そこはもう大盛りあがりさ。この街にワッチが流れて来てしばらく経つがこんなに騒がしい有り様は初めて見る。

だけどワッチがその中を覗くと、そこでは信じられない光景が広がっていた。

 

「おお女神よっ。我等が希望よ。その名よ今讃えられんっ!!」

「「「「虹の橋の(ヴィリスっ)(カムィっ)!!」」」」

 

どこかで見たことがあるような重鎧を着た女が、ギルドの酒場の一席で立ち上がり高らかに声を上げる。それに続いて神の名を呼ぶ合唱が響き渡る。

あの鎧、確かルスト(あのクズ)の連れの奴のソレに似ている。まぁ中身こそあのデブと似ても似つかない豊満な体つきで、紫掛かった青髪の巻毛を長く伸ばした、青いどんぐり眼の娘だったが。でも髪と目の色は確か同じ、なんだ。

 

「全てを輝かす虹の化身よ、我等迷い子を救う聖なる御名よっ!!」

「「「「虹の橋の(ヴィリスっ)(カムィっ)!!」」」」

 

同じ席に立つ女がまたも神を讃える言葉を掲げる。アイツの様も見たことがある。ルスト(あのクズ)のクズ仲間の、痩せギスの斥候の奴と同じ格好をした細身の女。緑のローブの所々に商売道具をぶら下げた独特の格好。間違う筈もないね。赤みがかった癖っ毛に、少し垂れ目気味の泣き黒子。そんなトコまで一緒だった。

 

「今我等は神を得たっ、我等が信ずべき慈愛の神をっ!!」

「「「「虹の橋の(ヴィリスっ)(カムィっ)!!」」」」

 

また違う女が騒ぎ出す。アイツが着てる服なんざルスト(あのクズ)そのものさね。袖なしの黒シャツに、ブレストプレート。走りやすさに重きをおいた槍兵特有のだいぶくたびれたポイントアーマー。髪型こそセミロングになってたが跳ねるような茶髪のツリ目で無駄に気の強そうなトコも、ルスト(あのクズ)にそっくりさ。

 

「「「我等の喜びはその名と共にっ、我等は皆その名を謡うっ!!」」」

「「「「虹の橋の(ヴィリスっ)(カムィっ)!!」」」」

 

どいつもこいつも見たことあるような格好の、見たことある奴に似た顔を持った、だけどそいつらとはとても似つかない、目が覚めるような美しい娘達だった。

いやいや一体全体どうしてそうなる?

 

そして何よりもその中心。冒険者達とギルドの職員達と、彼らが皆一同にその名を讃えるその女を見て。余りの美しさに我を忘れた。

 

「っっ!!」

 

なるほど女神だ。そうとしかいいようがない。どんな言葉を用いても、どんなに腕のいい画家を持ってしても。きっとこの美を伝えられる筈がない。天上の美などという言葉ですら生ぬるい。女神としか言いようのない女がそこにいた。

 

女神なんて結構見てきた。でもそんなモンとは次元が違う。

 

曲りなりにも美醜が全てを占める(そういう)世界で一線張ったワッチをして、つい我を失う程の美しさ。そんなモノを見て。

自分を取り戻した先でワッチの中に浮かんできたのはなにより激しい憎悪だった。

 

そうだ。あんな風にワッチも誰からも愛されていたんだ。そんなワッチから全てを奪った神が、目の前で全ての人から祝福されている様が。

 

たまらなく憎かった。

 

気づいた時。ワッチの身体は自然に動き。興奮から我を忘れて女神を讃え続ける人混みの中を人知れず進んで行き、近くにあったジョッキを持って、その中身を女神に向けてぶち撒けていた。

 

ざまぁみろ、クソ女神め。

 

 

「なっ、主殿っ!?」

「大丈夫ですかヴィリス様っ。」

「ああ、お酒勿体ない。」

 

「なんて事しやがるっ、火傷女っ!!」

「ゼノヴィア、テメェッ!!」

「女神様に何か拭くモンをっ、いや清潔魔術をっ!!」

「貴様っ、自分が何をしたかわかっているのかっ!」

 

ああなるほど。最初っからこうすりゃよかったんだ。

ワッチは多くの冒険者に取り押さえられながら、暗い笑顔を浮かべていた。

 

「なにが女神だっ、どうせ人の揚げ足とる事しかデキナイ紛いモンだろうにさっ。その幸せそうな神様っ面が気にくわなかった、理由はコレさ。満足かいっ!!」

 

これで少なくともワッチは死ねる。上手くすりゃこの街全部道連れってヤツさね。ざまあみろ女神様。ざまあみろクソッタレども。ワッチ以外の幸せそうなヤツは、みんな、みんな死ねばいい。そうすりゃワッチも、少しは胸を軽くして終われる。

 

ああ、終わる事ができるんだ。

 

ワッチが待ち望んだ終わりがやってくる。そう思うと。自然と笑みが溢れた。

 

「っ、ソイツはチガウっスっ。

この御方はオレらの事を本気で心配して助けようとして下さる方だっ。決して紛いモンなんかじゃないっスっ。」

 

人がせっかくいい気になってる時に騒ぎ出す野暮がいる。さっきの重鎧の女だった。この世に本気でアタシらの為になんかしようとしてくれる神が要るワケない。なら全部紛いモンだろ。

 

「そうですっ、女神様を騙そうとして近づいた私らみてえな外道の事を、騙されるフリして救って下さった、本当の女神様なんですよぉぉっっ。」

 

そんな事あるわけがない。

アイツラは裏の事情がホントは全部分かってても、嬉々としてワッチの尊厳全てを潰しにかかるような外道だ。欠片でもそんな慈悲がありゃワッチは今こうして這いずり回ってなんかない。

 

「そうだっ、オレら、アタイら女神様に救われた。変えて貰ったんだっ。先のねぇ人生にっ、もう一度チャンスをくれたっ。このアタイ、ルスト・ルーラーとっ。」

「オレっ、サムス・ラパンとっ。」

「私、ライム・グリーンがっ。」

 

「「「誰よりもソレを証明できるっっ!!」」」

 

嘘だっ、そんなの全部ウソだっ!!

堪らず悲鳴じみた叫びを、ワッチは零した。

 

「なんだいそりゃっ、んな事ある理由ないだろっ!!」

 

だが現実は変わらない。

変わってくれない。

 

「この俺も証人だ、ゼノヴィア。

リーヴァイのギルドマスターの名において、このレイル・メロウもまた。あの御方が女神様だと証言しよう。

 

そして誓ってその三人は君の見知った三馬鹿だ。揃って女神様に無礼を働き、それでも女神様によってやり直す機会を与えられ、男から女へとその姿を変えた。

本物の。我等を救う、本物の女神様なんだ。」

 

なんで、そんな。ワッチはコレで終わろうとしてるってのに。どうしてそんな。

 

「そんなバカな話があってたまるかいっ!

神なんて誰でも勝手なもんなんだよっ。

ワッチの時には全部奪っといて、なんでアイツラみたいなクズが救われんだいっ。……可笑しい、そんなの可笑しいだろぉっっ!!」

 

「(っく)ゼノヴィア、……ああ、そうだな。」

「(それを言われると)……オレ達クズだったからね。」

「(なにも言い返せんっ)……ああ、その通りだ。」

 

取り返しの付かない事した後に、そんな事っ。なんで全部がワッチの手からこぼれ落ちた後にいつもいつもっ!!

ワッチは自分の仕出かしちまった事に気づくと、もう胸の内をぶちまけることしか出来なくなった。

 

「だったらワッチだって救われたいよっ。取り戻したいんだっ、昔の自分をぉっ。火傷なんてなかった、五体満足で輝いてたあの時をっ。

だのに、だのになんで全部嫌になって、覚悟決めて神様に歯向かったってそんな時に、よりにもよって、なんで本当の神様なんているんだよっっ。」

 

世界には今日も理不尽が溢れていた。

ワッチはずっとソイツの虜だ。そして囚われたまま、このまま終わる。

いやだ、いやだっ。あんまりだろうっ、そんなのっ!!

 

「誰か助けてよっっ、ワッチも、幸せになりたかったんだっっ。なんでワッチばっかがっ、こんななんだよぉっっ!!」

 

叫んだ、叫んだ。わけも分からない位に。

その果てに。

ワッチはあの光を見たんだ。

 

虹色に煌めく光。

きっとこの世で一番優しい輝きを。

 

 

「なっ、主殿っ!?」

「大丈夫ですかヴィリス様っ。」

「ああ、お酒勿体ない。」

 

「大丈夫だ。かけられる前に気づいて目ぇ瞑ったから。なんか拭くもんくれる?」

 

酒引っ掛けられたのは久しぶりだな。コイツぁ結構厄介なんだ。落ち着いてすぐに目を開けようとせず、ちゃんと拭きとった後に目ぇ開けにゃあならん。

度数によっちゃあ拭いた後さえ目にくるモンだしな。

《手慣れていますね?》

 

ああ、ま。悪ガキどもと色々あったのさ。そこらへんはホレ、オレのスキルにある【喧嘩殺法】参照ってやつだ。投げられたのは蒸留してねぇ酒みてぇで、そう目にくるもんじゃねぇし。手の力で汚れも消せるがお酒少女が生まれかねん。

しばらくおとなしく拭くモンを待つことにする。

 

「ヴィリス様、清潔魔術をかけて貰いますね?」

「お、ありがと。」

 

って一瞬か。やっぱ便利だな魔法。

《あれは面倒くさがりの神の要望が色々詰まってますからね。》

そこでも神か。なんかロクでもねぇな神。

 

「主殿。あのモノどうされますか?」

「ああ、穏便にまず話を聞いてみよう。今元おっちゃん達が話してくれてるみてぇだしな。」

「承知。まったく我が主殿はどこまでもお優しい。」

 

こういう時、ツルギが突っかからなくなった事は本当にありがたいわ。やりやすくて助かる。頼りになるけど、ふとした笑顔にちょっとだけドキッとさせらちまう。それにゃあきっと慣れねぇな。

 

「……お護りできず申し訳ありません。」

「いいよ。液体ってのは防ぎにくいもんさ。気にすんなよ。メイルさんにゃいっつもお世話になりっぱなしなんだから。」

「あ、ありがとうございますぅ!」

 

ホントにな。最初っから世話になりっぱなしなんだメイルさんには。なんか気苦労ばっかかけてる気がするないっつも。それでも優しく微笑んで護ってくれるみんなのお姉さんなんだ。たまにゃそういう所もかわいくていいと思う。

 

「流石に空気呼んだ方がいいと思うけどにゃあ?」

「貴方がそれを言うのか?」

「っ、ごめんなさいっ。」

「いいって。」

 

こういう事言うアンダーも、実際結構気遣ってくれる。なかなかそれを頼りにデキナイ辺り、コイツらしいっちゃコイツらしいんだよな。気のおけないようなおけるような。どこまでもふわふわした関係。コイツとはこれでいい。これがいい。

 

(ステラ、回線開けるか?)

《肯定。【高速思考パス】を使用しました。どうしました神威?》

 

そしてステラ。いっつも足りないオレの事をずっと助けてくれる冗談好きのオレの相棒。まったくコイツがいなかったらと思うとホントゾッとするゼ。本当はみんなに言っておくべきなんだけどよ。とりあえず今はコイツにだけ話しておく。

話しておきたい事があるんだ。

 

(こんな時になんなんだけどよ。まずどうしてもお前にだけは言っておきたい事があってな。)

お聞きし(yes my)ましょう。(goddess)

 

(オレって神様にモテたいってこの力貰ったんだけどさ。あれな。ホントはオレ、モテたかったワケじゃないんだよ。)

《確かに。人格を得てからワタシも貴方と神との通信ログを拝見しましたが、貴方の普段の行動を見るととてもモテたいなどと願った人物には見えません。

人となりと願望が余りに離れすぎている。》

 

え、あれ見られてるの?

こっ恥ずかしいなぁ。ま、いいけどよ。

 

(はっ、見ちまってたか。じゃあ話は早ぇや。

オレな、オレがずっと欲しかったモンは彼女じゃなくてさ、家族だったんだ。)

《確認。それが何故モテたいなどと?》

(家族なんざ、どう考えても望んで手に入れるモンじゃねぇだろう。だからとりあえず人から愛されたいって思った。で、それってどう言やいんだって無い頭で考えたらモテたいって言葉に行き着いた。)

 

そうさ。家族だけはそのまんまポンと、望んで手に入れるようなモンじゃねぇって思ったんだ。だからどうにかオレの凶悪な面でも人に好かれる方法が欲しかった。だからあんな事神様に言ったんだ。

モテたいって、結局よ。愛されたいって事だろう?

 

《美少女は、どういうワケなんですか?》

(モテたいって言った手前、対象は女性のみに絞りたかった。んで、真っ先にオレの顔の事を思い出した。人相が悪いってだけで、色んな苦労を背負っちまうなら、オレの家族にゃそんなもん絶対味あわせたくなかった。)

 

ゲイのオッチャン達は軽いトラウマなんだ。

 

《確認。それではあの会話の、”モテたい”を”愛されたい”に、”美少女”を”姉や妹、母”などに入れ替えれば貴方の本当の望みになると?》

(まぁ中にはテンションに任せてモテたいって言葉から釣られて出た言葉もあるがな。恥ずかしくてよ。勢いで言いまくったんだ。)

 

信仰されたいとかな。ホントは大黒柱的な事を言いたかったんだが、どうにも口が滑っちまった。まぁ今じゃ助かってるけどよ。

 

《なるほど。言葉遣いについてはどうですか?》

(まぁ悪ガキども嫌ほど見てきたからな。そういう言葉使ってると自然と色々荒くなる。別に悪いこっちゃねぇが、ちゃんとした人の方がオレは好きってだけだ。)

《ああ、それは単純に貴方の趣味なのですね?》

(まぁそういうことだ。)

 

人間まず言葉から乱れるからなぁ。別に悪ガキどもが家族にいても問題ないけど、それでも家族にゃあんまそういう道を歩んで欲しくはなかったんだよオレは。

 

《……なぜ、今この時にステラにこの話を?》

(オレな。この世界に来て最初にワカバとコイシに合ってよ。実はその時点でもう夢、叶っちまったんだ。最高の家族が、出来ちまった。)

 

本当に、嬉しかった。それからずっと夢心地だったんだ。あんな娘らがオレの事、心の底から家族が一緒で嬉しいって喜んでくれるんだ。オレはよ。正直それだけで色々満たされちまってた。だからワカバを失った時も、本当に辛かったなぁ。

家族に変わりなんざいるわけねぇだろ。

 

《……そうですね。》

(他にもメイルさんが、ツルギが、アンダーがいてくれて。)

《……。》

(ウル達も、華の子達も。ウチノもファルケさんもマスケさんも居てくれてよ。)

(街のみんなも、冒険者の人達も。ぜんぶ、ぜんぶ居てくれる。)

 

ああ、人に目を合わせても怒りか怯えしかぶつけられなかったオレに、こんなにも多くの人が笑いかけてくれるんだ。

 

(そんで。お前も居てくれてる。)

《ええ。》

 

もうな。オレの欲しいモンは全部。叶っちまった。

でもな。

 

(オレな、すげぇ幸せなんだ。街のみんなにゃ喜ばれて、さっき変えちまった冒険者の人らからも、涙ながらに感謝された。みんなから受け入れて貰えてる。)

(でもよ。その度に思うんだ。)

(オレだけそんな幸せになっていいのかよって。)

 

不幸な誰かを見る度に、昔の自分の顔がチラつくんだよ。別に気にしなけりゃそれまでなんだけどよ?

 

(最初はな。もうワカバとコイシと、他のみんなと一緒に俺らだけでここらの片隅で幸せに暮らせりゃいいんだって思ってた。

それにオレの力は、むやみやたらと使っちゃダメなモンなんだって思ってたんだ。どう絡んでもソイツの心と身体を変えちまうコイツは、あんまり使うべきモンじゃねぇんだって。)

 

オレの勝手で人のアレコレ変えちまうこの力の事を、オレは正直あんまよく思ってなかった。モノだってそうだ。ソイツらは本当は変わりたくなかったんじゃないかって、そんな事どうしても考えちまうわけさ。

 

(だけどオレ、今日識っちまったんだ。)

(世界にゃよ。

昔のオレが抱えてたような理不尽を、抱えたまんまの人が一杯いるんだ。今日ここにきて、冒険者のオッチャンと、あの娼婦さんの言葉聞いてからそう思った。)

 

ああ、あの人らは結局昔のオレに似てるんだ。理不尽に追いやられちまってどうしても幸せになれない、そんな場所にいる人達。

 

(んでそんなどっかで困ってるヤツをこの力なら、救えるかもしれないって事を。そんで泣きたい誰かと、泣いてる誰かと一緒に笑えるかもしれんって事を。

識っちまったんだ。)

 

そんな人をさ。助けられるかもって識っちまった。

 

(ほんと、こんな事。オレが心配するこっちゃねぇんだろうけどよ。)

(出来る事なら救ってやりてぇ。)

(その人達とも家族みてぇに、本当に笑い合ってみてぇんだっ。)

(世界中にいるそんな人達をっ。)

 

だったら助けたいって思った。

悪ガキ達みてぇに救えるってわかった。

 

(そしたらよ。)

(オレ胸張って、言えるんだ。)

(オレは幸せになる筈(失った)だった自分(モン)、全部取り戻したんだぞってよ。)

 

あの人らを救うことで、オレは昔の自分を救った気持ちになれるんだ。昔からそうだ。悪ガキどももそうだ。オレ自身が救われないから、せめてそのチャンスがあるアイツラには幸せになって欲しかった。

 

だから目につく所で悪ガキどもにおせっかい焼き続けた。そうする事で少しだけ、自分が救われた気になれたから。

ようはソレの延長なんだ。完全にオレのわがまま。

 

(みんなは嫌なら拒否できるんだけどよ。オメェはそこらへん無理だからさ。最初に言っときたかった。)

《……バカですね、貴方は。》

(へっ、知ってらい。)

 

だからみんなにも後で聞くつもりだ。

いろんなトコにいる理不尽に追いやられた奴らを、助ける為に旅に出てぇってよ。みんながどう思うか分からんけど、それでもオレは決めたんだ。

 

《言われなくとも付き合いますよ貴方に。ステラはどこまでも貴方と一緒ですよ。救いましょう、救えるだけ助けられるだけ貴方の望むままに。きっとそれは厳しい道程ですが大丈夫。貴方にはステラがいます。そして多くの仲間達が。家族が。》

(おう。)

 

ああ、本当にこいつは頼りになる。オレは恵まれすぎてるよな。改めてそう思うわ。カミサマにも感謝してるぜ。神棚、ウチノの家にでも作るかな?

 

《では話が以上ならば改めて状況を開始しましょうか。

対象は混乱状態。【シャイニングレイン】の使用を推奨。》

(わかったっ!)

 

これからオレは勘違いでなく、成り行きでなく、自分の意思でこの力をあの女の人に使う。これからはオレがちゃんと決めるんだ。

掴みたいんだ。

 

そいつの輝かしい明日を。

 

《神威。主の有り様を示し、虹の橋の名を持つ少年よ。》

(ん?)

《みなが貴方に変えられる事を望んでいる。

貴方のお人好し()絶望(世界)に見せつけてやりましょう。我が(my)女神よ(goddess)。》

(ああ、それだけは得意分野だっっっっ!!)

 

 

加速していた思考が鈍化し、世界の流れと交わり始める。

こうしてオレは、神様より全てを美少女に変える力を貰った不幸だった1人の男は。世界中の人を救う旅に出る事を決意した。

 

それはまさに世界中を股にかけた大冒険で。

世界を救う為でなく、魔王を倒す為でなく、世界中の人々を救う為の第一歩。

 

つまりオレはこの時、冒険者(・・・)になることを決めたんだ。

 




閲覧ありがとうございます。
やっと色んな覚悟を背負った神威くん。お人好しが彼の本当の武器です。

200pt感謝回ノーマル部門アンケートここまでです。
決定したのは「天使会議は終わらない」13票でしたっ!!
まさかこれを書ける日が来ようとは(ごごご)
なお2位はアデルの森ビフオーアフター。
みんなほのぼのに飢えとるのですね~。
ご協力ありがとうございましたっ!!

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50)200pt感謝回「ファルケ親子と手を繋ぐだけの話」

すまない、遅くなって本当にすまないっ。


「ヴィリスちゃん? じゃあ手を繋ぎましょうね♪」

「え、ええ。お願いしますわ。」

「母上、はしゃぎすぎですぞ?」

「うふふぇ、こんなに可愛い娘が2人もできたんだですもの~。はしゃがない母親がいる筈ないのですよぉ

 

はい神威です。リーヴァイでのアレコレが落ち着いたオレは現在、ファルケさんのお母さんたっての願いで一緒に街に買い物にやってきとります。

なんというかね、ファルケさんのお母さん。ミーランティリアさん。すっごい包容力で、穏やかなんだけど芯が強い人で、オレこの人に頭が上がりません。

 

最初は自分を救ってくれた神様ってことですごくかしこまってたんだけどさ、そういうの嫌だったから堅苦しいの抜きで、オレはみんなと家族みたいに触れ合いたいって言ったら急に目が輝きだしてね?

 

そっからお互い遠慮がなくなって色々本当の母ちゃんみたくに甘やかして貰ったりしてたらもうね。そりゃ頭なんか上がりませんよ。結構スキンシップが好きな人で、ファルケさんと揃って振り回されてるけどね。腕組んで歩くのが基本な感じ。

 

んで今日もミラ母さん(こう言わないと拗ねる)のたっての願いで買い物にやってきてます。なんか娘とこういう小物巡りするの憧れてたんだって。

でもさぁ。

 

「しかし母上は随分お若くなりましたな。これでは母というより姉妹に見える。」

「まぁまぁ。じゃあ私はお姉さんでもあるのね~。」

 

栄光の手が働きすぎてどうみてもこの人、オレらと同じ位にしか見えないんですよ。見た目もすっげぇ綺麗なマリンブルーのゆるふわロングに、青い目をした優しそうな美人さん。美女っていうより美少女なんだなぁこの人。幸せオーラが凄いの。

んでファルケさんと同じく重力に逆らって突き出たオムネ様とかね。妙に色っぽい腰周りとかね。そんななりで全身でスキンシップしてくるから色々すり減ります。

 

《親子のスキンシップですから何も疚しいことはありませんよ?》

 

そうは言ってもなぁ。

こんな人に今までオレずっと抱きつかれたり、腕組まれたりしとったんだぞ。その、親子でもこの年になってこんなにべったりしたりしないと思うぞ?

 

《女性では珍しくありませんよ。まぁミラさんは少しそれが激しくもありますが。》

 

でしょお?

 

《今まで長く不自由していた分、幸せを取り戻したいという気持ちの現れでは?》

 

……そう言われるとなんも言えねぇ。

 

《それにあなたも母親ができて嬉しいのでしょう?》

 

うん。そりゃね。でもね。

 

「こら、ヴィリスちゃん。ちゃんと手を握り返してくれないとお母様悲しいわよぉ?」

「では私も。」

「う!」

 

顔チケぇっ、胸当たってっしっ!

 

右手にミラ母さん。左手にファルケさん。それがオレを挟んで腕に絡みつきながら歩いてるんだ。2人とも自分の胸強調させた綺麗なドレス姿でよ。いやいやこんな可愛い母娘達にぴっとりくっつかれて街中気にせず歩ける程、オレは女慣れしてるわけじゃねぇからっ!!

 

どっちも本当に楽しそうに笑ってくれてるしっ、とても逃れられる雰囲気じゃねぇ。く、た、たえねばっ!

《人間諦めが肝心と聞きますよ神威?》

 

んな言葉今求めてねぇからっ。

てか組長、アンタ元々こっち側()だろぉっっ!!

 

 

「母は納得がいかないのですっ!」

 

昼下がり、私が自室で政務に励んでいる頃、母上が少し顔を膨らませてやってきた。入って早々不満を口にし始めた珍しい母上の姿に、私は仕事を一端中断して何事か尋ねることにした。

 

「どうなされたのですか母上?」

 

母が怒っている姿など本当に珍しい。死病の進行が早かった母は、その為、強い感情を表出す事さえ長らく出来ないでいたのだ。母上には悪いが私はそのような母上の姿を見ているとどうしても顔がほころんでしまう。本当に元気になられた。

美しいマリンブルーの波打つ髪が母上の心と共に踊っている様を見ると、自然と私はヴィリス様に対し深い感謝の念を抱くのだ。

 

「ヴィリスちゃんの事ですっ!」

 

おや、さらに珍しい。私などよりよほど母上が愛情を注ぐヴィリス様にご立腹とは。

 

母上を助けて下さったヴィリス様は、自分に畏まる母上を見かねて私などを含めて気遣いなく家族のように接してほしいなどと仰られた。結果、母上はもうヴィリス様を本当の娘のように、いやそれ以上に溺愛しておられるのだ。

 

流石にやりすぎではと思う反面、ヴィリス様自身母上をお母様などと呼んで楽しく笑い合っておられるのでどうにも問題はないらしい。ふふ。いつのまにか私の母上は女神様の母にまでなってしまわれたようだ。流石だな。

おっといけない。母上の話を聞かなければな。

 

「なにがです、母上?」

「先程アンダーちゃんやワカバちゃん達とお茶会をしていたのだけれど、聞く話によるとヴィリスちゃん、下着一枚しか持ってないっていうのよっ。

しかもブラジャー着けてないってっ!!」

 

ああ、そういう。あれは確かに目のやり場に困る。もっとも指摘するほど私もバカな男ではないが。ああ、女だったか。どうにも自覚がなくて困る。

 

「確かに。たしかにヴィリス様は掴んだモノの形を全て変えてしまうので、特定の衣服しか着られないのだと聞いたことがありますが。」

「それにしたってアンマリですっ。あんなに可愛いのに、しかも髪の手入れや化粧なんかも全然してないって言ってたしっ!」

 

そうなのだ。ヴィリス様はいつでもすっぴんである。全く世の女どもが聞けば発狂してしまいかねない事だが、全くそういう事には無頓着らしい。それであれだけの言い表せぬ美を保っておられるのだから、まさに冗談のような御方なのだ。

私ですら少しは気遣っているというの、だ。

 

「ああ、そうらしいですね。それであの美しさを保ててしまう辺り、やはりヴィリス様は素晴らしい方としか言いようがありませんな。」

「そういうのじゃなくてっ。女の子なんです。女子なんですよぉ。そこは、きちんとしないとダメなのですよぉ、もうっ。」

 

うむ。ふくれっ面の母上もまたお美しい。ジタンダを踏みながらコレほどキュートな女性もなかなか世にいないだろう。

 

「はは、ではお二人で買い物に出られては。きっと楽しい時間が過ごせますよ?」

「ええ、勿論ですっ。ファルケちゃんも一緒に行きましょう?」

「おや。荷物持ちが必要ですかな。」

 

おや、これはもしや。

 

「母はファルケちゃんも、余り下着を持っていない事を知っているのです。」

「ふむ。どうにもあれには抵抗がありましてな。」

「ファルケちゃんもせっかく可愛い女の子になったんですからきちんとしたものを揃えなければいけませんっ!!」

「ふむ。ま、そうなりますか。」

 

なんともまいった話だ。別に下着を着けていないわけではないのがだ。意匠の凝らない実用主義のモノを用意している。どうやら母上はそれもお気にめさないらしい。ここは早々に降伏し、白旗を上げた方が良さそうだ。

 

「しかたありませんな。それでは母上。買い物の時間を作る為にも少々政務を手伝って頂きたいのですが、どうでしょう?」

「ええ、私のできうる事ならば♪」

「お戯れを。」

 

母は正当なライブライオスの継承者。簒奪者である父の血筋にない、真っ当な皇家の血を受け継ぎし御方だ。その実務能力は私ですら遠く及ばない。こと闘争以外の局面では素直にお力を借りた方がよい。母上自身もまた、そうやって自身のお力を示せることを喜んでおられる。天秤の血筋の者は元より正しき統制を好むのだ。

 

「しかし買い物、か。」

 

振って湧いたような話であったが、ふむ。悪くない。母上にヴィリス様。まさに両手に華といった所だ。これで男の格好さえ出来れば完璧なんだがなぁ。

当日の私の衣装の事を思うと、どうしてもため息が口をつく。

はてさてどうなることやら。

 

 

うーん、うーん。

今日の私はヴィリスちゃんとファルケと一緒にお買い物。お手々を繋いでずっと夢だった仲良し親子っ。海風薫る文化の都水上都市(ヴィンデリア)の街並みを歩いていたのですけれど。何かチガウ気がするわ仲良し親子として。もっとぴったりくっついた方がいいのでしょうか?

 

「ぎゅーっ♪」

「ちょっ、ミラお母様っ。流石に歩きづらいから。」

「ふむ。今日の母上は楽しそうで実によいですね。では私もご相伴に。」

「ファルケさんまでっ!」

 

楽しいっ、のだけれど何かが違うの。

何が仲良し親子に足りないのかしらぁ?

仲良し、触れ合い、触れ合い?

 

あ、そうだわ、手袋だわっ!!

布越しで手を繋いでも今ひとつ仲良しって感じが出ないもの。きっとそれだわ。

 

「ねぇヴィリスちゃん、私お願いがあるのだけれど。」

「なんですか、ミラお母様?」

「私ね、今日はヴィリスちゃんと一緒にいっぱい家族として仲良くしたいと思ってるんだけどね?」

「はい。」

 

「せっかく家族同士が手を繋ぐなら素肌同士、手を握った方がきっと楽しいと思うのよ。だから、手袋。はずしてみない?」

「え、いや。ワタシ手袋外しちゃうと色々大変な事になっちゃいますよ、きっと?」

「ダメかしらぁ……(涙目)」

 

私の提案に素直に頷いてくれないヴィリスちゃん。そんな彼女に私はついつい上目遣いで抗議しながら縋り付いてしまう。そんな時頼れるファルケが私の味方をしてくれたの。

 

「ヴィリス様、ここは私からもお願いしたい。どうか我が母の頼み事を聞いて貰えまいか。母はきっとこういう気兼ねない触れ合いにずっと憧れていたのだ。お立場からそういうことは、幼い頃から許されない方だったのでな。」

「う、いや、それはワタシも憧れていたのだけれど。でもね?」

「じゃあ問題ないわね♪」

「頼む、ヴィリス様。」

 

実はヴィリスちゃんは押しにとっても弱いのです。二人してお願いすると。

 

「うぅぅぅ、どうなっても知らないわよ?」

「きっととっても楽しいわね♪」

「ありがたいヴィリス様。」

 

やっぱりヴィリスちゃんは優しい娘だわ。

 

母はとても嬉しいのです♪ 思えば皇女として生まれてついた私は家族とこうして家族と手を繋いだ記憶がないの。ファルケとも、身分の違いから何かと周りの目が厳しくて出来なかったから。だからこうして家族と一緒に触れ合える今はとっても幸せなのよ。

 

「さぁヴィリスちゃん、改めて手を繋ぎましょう

「こちらも御手を拝借しよう。」

「大丈夫かしら?」

 

でもヴィリスちゃんの手を私が繋いだその時ね。

 

「ひゃん!」

「っん!」

「……ね。やっぱりやめた方がいいわよ?」

 

ヴィリスちゃんの掌から私の中に、アツいモノが流れてきて、私の身体はとたんに女の悦びを感じてしまったの。ん、っっぅん。アツいのが、入ってきてしまいます

でも、っっ、私は、家族との、触れ合い、がしたいのっ。手、離さないから、ね?

 

(っなるほど、これは確かにっ。……渋るはずだ。私の中を電流っ、貫き続けるっ っん、しかしっ、それは、母上もっ、同じ事。それでも、母上がっ、耐えておられるのならぁ、私もそれにっ、従うまでっ!)

 

「……ううん、母はっ、頑張り、ます

「ならばっ、私もっ、引けないっ、な!」

「じゃあ、そのぉ、……はい。」

 

こうしてっ私と。

(母上の触れ合いと快楽とのチキンレースは幕を開けた

淑女たるっ、もの、どのような時でもっ、冷静にっ、あらねばならな、いのです

 

「……では最初は観光がてらっ。ふ。っ観覧船にでも乗りましょうか?」

「そう、ね。ヴィンデリアは湖上の都だものぉ。……最初はぁ、街並みを楽しまなくてはね

「確かに凄いわよね、ここ。」

 

 

「それではお嬢さん方、ご乗船ありがとうございます。この度は短いながらも湖上の都、美しき旧都ヴィンデリアの旅路をどうかお楽しみ下さいませっ!!」

 

「はい、ぜひともっ!」

「っっっっぁ、はい

「っっっぅ、っっっああ!」

 

……これはっ、まずいなっ

今日ほどっ、自分がっ、スカートであった事をっ、喜んだっ、日はっ、ないっ!

(船がっ、揺れる度にぃ、ヴィリスちゃんの手っ、押し付け、んっ、られてっ、母の中に、容赦なく、注がれてし、まいます

 

「ではまずはクリスタルレイクから多くの水が注ぎ込むその源流、水晶門へと参ります。余り揺れる船ではありませんが、どうか周囲の方々と身を寄せ合って、ああ、余計な心配でしたね。これは仲のいいお嬢さん達だ。」

「……ええ、私たち家族っ、ですから

「そうですなっ。」

「えへへ、そうなんです。」

 

女神様っ、その様に御手を強く締められてはっ!

っっっっっっっっっつ

(はぅっっっっっっっっっ、ぅん

 

……身体に力入らなくて、ついヴィリス様に、枝垂れかかって、しまう、な。

(お願いだから、こんな母に気付かないでぇ、ヴィリスちゃんっ。)

嬉しそうに、して下さって、いる

(たえなければ、なりませんね……っん!)

 

「お客様、右手側をご覧下さい。コレこそが前王朝が作り上げた史上の街並み、一部ピュアクリスタルを用いて造られた燦めく水の街を支える水晶邸宅の数々です。

 

昼に太陽の光を取り込んで水路を循環させる力を生む神秘にして、夜には蓄えた力で我々を照らす、水晶郡を讃えた独特の景観は見るものを虜にしてやみません。

その余りの美しさにお心まで奪われてしまわぬよう、皆様どうかお気をつけを。」

 

ヴィリス様っ、その、ようなっ!

(きゅっと、されてしまうとっ、母はもう

 

「ふぁぁぁぁぁぁあ!!」

「ふぁぁっ

「ふぅぅっっっっ

 

「おやおやどうやら遅かったかもしれませんね。我がヴィンデリアの街並みはこのような美しい方々のお心まで奪ってしまう。なんと罪深いことでしょう。

それでは更にお嬢様方に満足願えるよう、さらに街並みを進んで行きましょう。」

 

「すごいわぁ、こんなに綺麗な街、初めてみたわっ!」

「っはい、スゴイのですわぁ

「……ヴィンデリアは、天秤治世の王都っ。その都市魔術と景観は、他に類がありますまい。」

 

っっっっふ

っぁあ、ヴィリス様がっ、このように、喜んでっ、下さってぇ。っっっっん!

(ぁんっ、強すぎますっ、御手をそう、ニギニギとされてしまってはぁっ

 

「水の上に、石造りの街並みが、在るだけでもスゴイのに、水の中から所処、大きな水晶が伸びてるのっ。太陽の光で、キラキラ光って、凄く綺麗ねっ。」

「っっっっっっっん

 

っ、母上が、危険な、状態だっ。ここは私がっ。

 

「っっっ、あれがこの街の水が流れ、綺麗で有り続ける、仕掛けなのです

……水質浄化の魔術も、込められているので、街の人々はいつでも水にぃ、困ることなく、また魚達のっ、……住処にもなっていますっっ。」

 

「だからこんなに、水が澄んで、いるのねぇ。でもさっきから、結構揺れるわよね?」

「っっっっっっっぅん

 

(だめっ、ファルケが、もう、ダメなの、ここは私がぁ

 

「それはっ、水晶をっ、避けてっ、進んでいるから、よぉっ

うふふ、お気にっ、ぅん、召したかしらぁ?」

「ええ、とってもっ!」

 

ああっ、ヴィリス様っ、その様なっ、いきなり注ぎこまれてはっ!!

(あぁっ、ダメっ、ダメなのですっ。母は、母はもうっ

 

「さて皆様お待たせしました。まずは左手をご覧下さい。」

 

「わぁぁぁぁぁっっっ!!」

「ふぁぁぁぁっっん

「はぁぁぁっっっっぅん

 

「皆様抱き合っての盛大な歓声をお上げ頂いて、誠にありがとうございます。そう、これこそが水の都が誇る水晶門。全王朝の権威の象徴にして、人類の至宝。かの天秤の担い手たる初代ライブライオス王が、水晶竜のお力を借り水門のその全てを水晶にしてしまったという逸話を誇る、ヴィンデリアの奇跡です。」

 

「んっっっっ、すごいっ、すごいっ、すごいっっ!!」

「っっっん、っっっはふっ、っっっん、っっっっぁん

「っっふぅ、っっ、ヴィリス様っ、落ち着かれませっ、っっん

 

余りに興奮したヴィリス様は私達の手を握ったままブンブンとそれを上下させて、それでも堪えきれず我々から御手を離し、全力で私と母上を抱きしめて来られた

とたん、まるでヴィリス様の興奮の熱が込められたかのような、先程までとは比べ物にならない悦楽が、私達を襲う。

 

っっっっ、っっ、っっっっっぅ!

(っっっっ、っっ、っっっっっぁ

 

「だってこんなに素晴らしいものを2人を一緒に見られるなんてね、すっごい幸せなんだものっ。もうなんだか笑いがこみ上げてきてしまうものっ!

あはははははっっっっ!」

 

「ぁっっっっっっっっんふぅ 私も、よぉぉぉぉっっ

「ぅっっっっっっっっっっぁはっはっはっ、あはぁぁぁぁっっっ

 

「長年ここで船頭をやらせて頂きましたがね。お嬢さん達程に、この景色を喜んで下さった方々はおりません。良いものですね。改めて私は我が街並みが、この美しい街の事が誇らしくなりましたよ。」

 

 

短い船旅を終えたオレ達は今、そのまま船で上流階層用の商業区の方へ送られて、現在また街並みを歩いていた。2人もあの美しい景色に興奮したのか、現在身体を火照らせて、オレへとその身を預けてきている状態だ。

手を繋ぐのを辞めてふたりとも全力で腕組みしてくるもんだからね。すごく困る。

 

《……。》

 

「ねぇ、まず何を買いに行くのか決まっているの?」

 

美しい石畳の人の流れの多い街並みの中、オレは未だオレに枝垂れかかったままの2人に改めて目的地を訪ねた。そういや今回オレ買い物って何買いに行くか聞いてないんだよね。

 

「ええ、ヴィリスちゃん。最初に行く所は決まりましたわ(・・・・・・・)。」

「そうですね母上。決まりました(・・・・・・)。」

 

おお、2人とも息ピッタリだ。さすが親子。こういう所、オレも自然にできるようになればいいなぁ。しかし2人が呼吸を合わせて答えたその場所は、オレのまったく予想外の場所だった。

 

「へぇ、どこ行くの?」

「「下着売り場です。」」

 

「えっ、ちょっ、わたし別にそんなのいらないわよっ!」

 

あ、これ腕組みじゃなくて連行だっっ。

ち、ちくしょうっ、単純な力じゃ逃げられる気がしねぇっ!!

まってぇ、そんなモノ別にオレ欲しくないからぁっ。

 

いうが早いがオレは2人にとっ捕まって、女の花園に足をツッコむことになった。まるでオレの反応を楽しむように、オレに色々と下着を着させようとする2人とも。こ、こいつら最初からコレを狙ってっ。

 

いやだぁ、乳バンドだけは勘弁してくれぇ

一体オレがナニをしたぁっ。

 

《今回は、貴方の自業自得だと私は思いますよ》

 

そうしてオレの美しい思い出は、色々と男の尊厳をボロボロにされた事でその輝きを薄める結果に終わってしまった。そんなもんだ。

綺麗に終われない辺り、まったくいつもの展開だよな?

 




閲覧ありがとうございます。
少々難しゅうございました。というのも昨日実はこの三人で背中を洗い合うって話を一本書いたのですが、普通にギャグと呼べないものになってしまい投稿できませなんだ。そうやね。擬人化じゃないと直接的な表現は気をつけないとね。

そんな勉強をさせて頂きましたとさ。ツライ。コードの問題で出せないボツなのがツライ。

続いてみんな大好き天使会議です。とその前に。

300pt記念エ◯回のアンケート置いときます。
今回もうノーマルと分けて考えてますんで、気にせずポチって下さいな。
ちなみに下着とお家ちゃんと遊ぶ話がアンケートにないのは、アレなろう側の特典で書く為です。多分投稿は今日の深夜になるかと思いますが。


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51)200pt感謝回「天使会議は終わらない」

200pt感謝回ノーマル部門の話です。

ほのぼの要素を少し取り入れてみましたが隠せない哀愁が漂いますね。


私は石造りの彫刻柱が立ち並ぶ、大理石の廊下をしばらくひた歩いた後、その先の一室。壁面に豪奢で威厳のある彫刻が施された石造りの小部屋。我々天使が会議に利用するソコへと足を踏み入れた。とたん、風景が変わり、私の周囲はどこかのオフィスビルの、机と椅子が多く並んだ一室のように変化する。

 

まぁそのものズバリ会議室なわけなのだが。我々が何かと不便が多い魔術よりも便利な科学を優先して取り入れた結果、この場所はどこに出しても恥ずかしくない現代的な会議室へと生まれ変わったのだ。

 

この部屋に足を踏み入れた瞬間に、俺の着ていたいかにも天界のモノですと言わんばかりだった白絹のトーガが、地球産の仕立てのよいスーツへと切り替わる。

正直あんなピラピラしたもので仕事などしたくない。

 

しかし天界においてもまたイメージ戦略というものは無視できぬモノであり、下界の人間と交わる時のみ、俺たちは仕方なくあの非効率な衣服を身に着けているのだ。

 

「ああぁぁっもうっっっっっっっっっっっ!!!

マジムカつくわあのクソハゲ野郎っっ!!

こんどあったら叩きのめしちゃるわっっっっっ!!」

 

入った俺は開口一番、そこに集まった部下たちに愚痴を零す。あれが神のやることか。正直腸はいまだ煮えくり返っていたが、これも仕事、家族の為と思い割り切る。その苦悩は部下と分かち合っていくのが俺の天使としてのスタイルだ。

 

俺、天使長ルイサ・イラスの魂の叫びを聞いた頼れる部下達は、みな一同にその言葉を受け入れてくれた。つまり誰もがあのハゲに不満を抱えているというワケだ。

 

「おお、ルイさん、今日は一段と荒れてますねぇ。なんすかあのハゲ、またそんな面倒な事言い出したんですか?」

「いやまじハゲよねあのジジィ。ありえなくない?」

「……いや、……みなさんその、……あまり神様の事を、ハゲハゲと連呼するのは、どうなのかと、……思うのですか。」

 

我々の様なブラック世界に務めている使徒は、大きく分けて3つに分かれる。すなわち上からの無茶に思考する余裕すら無くし、半ばノイローゼのような状態で職務をこなし続けるか。上から与えられたギスギスが下にも蔓延し、日々互いを傷つけ、けなしながら仕事をするか。

 

最後に我々のようなチームとしての団結力を強化し、その絆でもって上からの無茶に対応するかである。

 

普段からあのバカに無茶な仕事ばかり振られているので、我々共通の話題といえば勿論あのハゲに陰口を叩くことだ。共通の敵とは仲間内の団結を凄ぶる強固にするものなのだ。あのクソジジイが我々に与える唯一の恩恵である。

 

「うっせぇっ、ミカっ。良い子ちゃん振りやがってぇ。オメェも内心あのハゲの事にいらついてんだろぉ。いんだよあのハゲがクソなのは事実なんだからっ。いっつも俺らに無茶振りして、それが経営手腕だとか思ってるようなクソだからなアイツ。そりゃ唯の仕事放棄だろ、おい。そう思うよな、おいっ?」

「おいおい、いいすぎだぞ、ヴィリエル。」

 

この少しばかり口の悪い長身金髪の、碧眼垂れ目の優男はヴィリエル・デイラ。俺の次にあのバカの使徒を長くやってる天使であり、その飾らない性格から偶に面倒事の引き金になるが、我々のムードメーカーとして大いに場を盛り上げてくれる存在だ。神から与えられた権能は粛正。こうみえて純粋な武力では武神にすら並ぶ、この世界でも有数の実力を持つ男だ。

 

「なんすかルイさんっ、ルイさんだってそぉ思うでしょうよぉ。」

「そんな事いったらクソが可哀そうだろうが、おい、なぁ?」

 

「ふぁっはぁっっ、そりゃそうだわっ。流石ルイさんっ、分かってるぅwww」

「ぶふぅっっ、マジうけるっ、マジ正論なんすケド、コレwww」

「っぶ。」

 

まったく。あのクソにそんな価値があるものか。畑の肥やしになる分だけクソの方が何倍もあのジジィよりマシな存在だわ。

 

「お、なんだぁ。真面目っ子のミカもしっかりウケてんじゃん?」

「わ、笑ってない、です。」

「クソかわ。」

「っぶ。」

「いいよなぁガヴリエちゃんはぁ。」

 

「あによ突然。んな当り前のこと言ってぇ♥ わかってんじゃん?」

 

この調子に乗りやすい、長い桃色の髪を頭上で適度に盛った碧目のギャルの名は、ガヴリエ・リブラ。ラファラが地獄から(風となって)逃亡した(出ていった)今となっては俺たちの紅一点だ。見た目はこんなだか権能は治世。まぁ逆にこんなだからこそ、未だ世界は安定していないのだろう。

 

「だよねー。いやぁ、ミカは素直でいいよなぁ。」

「こっ、こんな、こんな、ことでっ。」 

「出ったミカの笑い上戸。長いよぉコレ、始まっちゃたら?」

 

最後にこの、割とどうでもいい事で長らくツボって動けなくなっちまう真面目ちゃんはミカエラ・イシス。赤いショートボブと金色のおっとり眼の、全体的に生まれてくる性別を間違えちまった男だ。慌てた時の言動から見た目まで、どうみても女の子にしか見えない。権能は制約。皆に規律を守らせるのがコイツの仕事だから、まぁ口うるさくなるのは仕方がないさ。

 

「ふっ。おーし、じゃあいい感じにほぐれた所で、今回の会議の議題配んぞ。それ。」

「あ、ガヴリエちゃん。そこのホッチキスとってよ。ちょっとコレ、ないわぁ。」

「自分でとれっしょ、ホレっ。」

「っ、っっ、く、く。」

「おーい、ミカぁ、そろそろ帰ってこぉーい。お仕事の時間だぞぉ。クソ仕事だぁ。」

「っぶふぅ!!」

「もう、ルイさんが止めさしてどうすんスかぁ、ちょっとぉ。」

 

まぁこんな感じに俺らは割とゆるく付き合ってる。新入りのミカなんかはまだ少しばかり馴染めきれてないが、まぁ関係は良好といった所だろう。

ぴりぴりしても仕事は早くならんし、給料も増えない。ならば肩の力は抜ける所できちんと抜くべきというのが俺の持論だ。

 

この絆が職務上のパフォーマンスに繋がる、というよりもどちらかと言えば楔だな。これだけ親しげに普段から過ごしていれば、中々に仲間を置いて地獄から抜けたりできないものさ。ああ、中間管理職ってツライわぁ……。

 

「ミカは、今日も真面目バカわいいなぁ。

ゔぇ、何これ。はぁ? こんなンどう考えてもまとまらんでしょよぉ。」

「ああ、やっぱそう思っちゃう?」

「ええっ、なんすかコレっ、まじ引くわぁ~~。」

「っふ、ふ、く。」

「ああ、ミカはこりゃまだ無理かこりゃ。ルイさんこれどうすんですか。」

 

どうすんですかね?

俺が聞きたいわ。

 

「どうもこうも、これからそこに書いてる要望通りに能力をまとめあげて、そこのクソガキに渡すのが俺らのお仕事。さぁ切り替えよぉ。こっからディスカッションしてくぞぉ。」

「は、はぁっ?

どう考えてもワンオン能力じゃ無理っしょ。予算はっ、予算どうなってんすかっ?」

 

だよなぁ。オレもそう思うもん。

 

「お値段据え置き。いつも通りでどん。」

「まじありえなくない? もぉっ死ねばいいのにあのクソ以下ミさまぁっっっ!!」

「ちょっ、ふっ!」

「ああ、またミカが撃沈しちまった。しゃあねぇ。ここはこのヴィリ様自ら問題点をボードに書き上げちゃいましょおっ。」

 

こういう時明るさで色々誤魔化してくれるヴィリエルは頼りになるわぁ。もう俺心折れそうだもの。てかプロジェクター使ってくれても、まぁいいか。

その場のノリって大事だよなぁ。

 

「ああ頼む。ガヴリエ。悪いんだか人数分のコーヒー入れてくれ。いつものヤツな。」

「ちょっ、パラハラだしルイさぁん。いいですけどぉ♪」

「うっす書き上がりましたぁ。しっかし、見るからにひどいっすねぇ。コレ。マジでこれワンオンで仕上げるんすか?」

 

・世界中の美少女からモテたい。

・信仰されるくらいに、同。

・健康的で傷1つない玉の肌の女希望

・言葉遣いは綺麗な人が良い

・病気はNG←精神病も含む。

・痩せガリもNG

・対象は美女・美少女・美幼女問わない。

・屈強な女も、凶暴で凶悪な女も俺のモノ

・世界中のそれらを全部、その手で掴みたい。

・掴んだ全て美少女になる勢いの力が欲しい。

 

「しゃななし。それがお仕事です。」

「ああ、滅入るわぁ。」

「ほら野郎ども、コーヒー様のお通りよぉ♪」

「お、さんきゅ。」

「ああ、ありがとう。」

 

これこれ、粉多めで胃に悪いやつ。どうせ今日は長くなるんだ。カフェインとらんとやっとられんよぉ。なんのかんのいい子だよなぁガヴリエ。婚期逃してるけど。

 

「ミカもほら、おいとくぞぉ?」

「は、はひ、どもっ。」

「と、いうわけで、じゃあ各方面から条件を洗っていくかぁ。」

 

改めてみると無茶苦茶ですね。お願いしたのは小学生かなんかかな?

こんな欲望の権化初めてみるぜ。

 

「ええぇ、無理無茶じゃん……。そんな女まずいねぇし。コイツの頭ん中何ナノキッショ。完全無農薬お花畑じゃん。」

「ウチに無理なんて言葉存在しません。アイツがいる限りな。」

「アイツマジ死なねぇかなぁぁぁっ。あああああ、どうしますかねぇっ。」

「とりあえず大きな問題点は3つ。

 

・認識強制力の問題

・非実在少女問題

・上記をどうやって出会わせるか問題

 

これらが簡単に上げられる。他に何か気づいたものは?」

 

「あ、ではですね。この綺麗な言葉を使う女がいいってのと、凶暴で凶悪な女もホレさせたいっての、結構矛盾したりしません?」

 

「あと精神病なんかもそこらと食い違ってくるんじゃない?」

 

はいはい。そういえばそうね。……ああ、もぉっっ!!

 

「ああ確かに言われてみりゃあそうだ。ああ、なんだコレ。まずクライアントの注文内容からして矛盾だらけじゃねぇかっ!!

ああ、クッソっ。あのジジィ、全部叶えるなんざ安請け合いしやがってっ、クソっ。

 

「まぁあれスよ。そこらは最悪矛盾してましたってことで良くないスか?」

「ちっ、それで行くしかねぇなぁコリャ。他は?」

 

「世界中のそれらを全部、その手で掴みたいって事はこれって人数必要なんすよね? そこらへんって条件緩和できんのですか。もうこのまま叶えてやってそんなヤツいねぇよバカって、言ってやった方がよくないス?」

 

「資料の1ページ目、下段だ。あのクソがちゃんと女どもに囲まれるようにしてやってくれなんぞ抜かしやがった。そりゃ俺も考えたわ。」

 

その道はオレが既に通った。

 

「っっあぁ、あのボケだきゃぁ!!」

「ていうかぁこんな俗な事願うヤツってもう早く死んだ方がよくない。コイツもう絶対ろくでもないモン。むしろ今死ねよ。」

 

「そーだなー。でも愚痴じゃ仕事は終わんねぇぞぉい。じゃあ3つの問題点から、ワンオンでコレ全部叶えられる特典についてブレーンストーミング(ブレスト)っていくぞぉい。」

 

「はぁい。」

「うス。」

「はぃ。」

 

なおウチでいうブレストは実際のそれじゃない。弱小企業のダメなブレストってな。いちいち予算面だかなんだかで発言にツッコミ入りまくるのよ。意見出しの時に。

もちろんウチもそんな感じです。

 

「お、ミカお帰りっと。ああそうっすね。じゃあコレ、もう世界前提書き換えてこの子を特異点にしてラブコメ時空とかに変更すればいんじゃないです?」

 

「はい、世界事変書き換えっと、ボツ。予算が足りないっ!!」

「ちぇー。」

 

なんで1人の願い叶える為に世界の方変えようとか思っちゃうかなぁ。まぁそれ位しかワンオンでこの願い実行すんの思いつかんけど。

 

「じゃあじゃあ、もういっそフェロモン系の超強力な能力にしてぇ、この世界中の女の子全部コイツにホレさせるとか、どうです?」

「ああ、それなぁ。前に隣の世界の神様が与えた事あるんだよ。」

「へぇっ、実績ありじゃんすか。よくね?」

 

と思うでしょ?

 

「それがなぁ。女ども全員ソイツに奪われた男どもから袋叩きにあってソイツ死亡。しかもソイツにホレてた女もソイツ追って死亡っ。中々他じゃ見れないやり直し(リセット)案件に発展した。」

「うげぇ。」

 

「お前、その後処理考えずにその能力。ソイツに渡す気ある?」

「ないですわぁ~。」

 

こういう極端な洗脳系能力って割とバランス調整難しいんだよなぁ。まぁだ戦闘力とかの方が安心安全だったりするのよ、これが。

 

「では運命力の改変で、とりあえず美少女をこの人の周りに生み出して、縁結びの運命で繋げてみてはどうでしょう。つまり縁結びの特典ですね。そうすればいずれ、この人の要望通りに女の子だらけの生活を送れるのではないでしょうか。」

「ああ、それもなぁ。」

 

そうだよなぁ。普通それが一番有効なんだけどなぁ。無差別縁結び作戦。

 

「なんでダメなのですかぁ。アレって強制力弱いけど、結構柔軟に本人達で上手くやるじゃない。赤い糸いいじゃないですかぁ。」

「強制力が弱いってのが問題だ。ホレ。そいつの写真。」

「ひっ、ちょ、危険物見せんの禁止っ!?」

「うぉっ、これかぁっ。」

「あっ、うわぁっっ、やだぁっっっ!!」

 

部下たちの反応は当然である。件の強面少年の顔は周りにそれだけの恐怖と自然と振りまく正気度チェック必須の代物なのだ。なんだよコイツ、絶対に人かおハーブヤってるだろコレ。夜中いきなりみたらちびるわ。

 

「な。ソイツそんな面してたから地球いる時も彼女はおろか友達いなかったらしいぞ。むしろ好きなヤツに気持ち伝えようと声かけたら、泣きながら謝られたあげく失禁。その後、登校拒否って事態にまで発展してる。」

 

「もう、なんでそんなクリーチャー転生させてんですかっっ!!」

「そんなでも善行値最大なんだよソイツぅっ!!」

「そんなん存在がもう犯罪だし帳消しじゃんっ、マイナスじゃんっ!!」

「んな事わかっとるわいっ、文句はあのハゲに言えやボケっ!!」

 

ホントどうすりゃいいんだろコレぇ。むしろ最低でも生まれ変わり案件だろこれぇ。面倒がってウチのバカは生まれ変わり否定するしよぉ。

 

「あうあうあうあう。」

「おう、ミカ。とりあえずコーヒーでも飲んで落ち着け。な?」

 

ああ、少年の顔写真でもう話続けられる空気じゃねぇわ。

 

「はぁ。とりあえず一端休憩。空気変えるぞ。」

「ウスっ。ほれミカ。休憩だ。空気吸いに行くぞ?」

「あうあうあうあう。」

「・・・…もぉ帰りたぁい。」

 

「そりゃっ、俺も帰りたいわぁっ。今スグ娘の顔見たいわぁっっっ!!」

 

もぉ、なんでこんな事になってんのぉ。これじゃあ今日も泊まり込みコースじゃん。最近娘がオレの顔見て不思議な顔すんだよっ。ふざけんなよっ。

ふざけんなよっ、クソジジィっ!!

 

「あ、ごめんなさぁい♥」

「ああ、なんでこんな世界に務めちまったかなぁ。ホントになんであのハゲ今スグ死なねぇなぁ。戦神の喧嘩とかに巻き込まれねぇかな、アレ。」

「ああ、ルイさんまぁたダウン系入っちゃたわぁ。

(小声で)……こりゃ今日帰れるかなぁウチラ。」

 

「ああ、今スグ娘に会いたぁい。癒やされたぁい。仕事やめたぁい。」

「あははぁ、化粧室行ってきまぁす。」

 

 

はい、停滞ぃ。もう終業なんざとっくの昔。話せども話せども予算とリソースが提案の邪魔をする。もう全員完全にグロッキーですよ。

 

「ああ、もうだめだぁ。土台が無理なんだもんよぉ。」

「無理って言葉はこの会社にゃねぇらしいぞぉ。ソースは、ハゲぇ。」

「もぉ、死んでいいですよぉアイツぅ。アッシ、アイツの髪今度全部むしるわぁ。」

「あ、あははははははぁ。手伝いますぅ。」

 

もうダメだぁ。お父さんもう会社やめようかなぁメタトぉっ。

 

「あっ。」

「あん、どしたミカ?」

「いや、でも。流石にダメですね、うん。」

「いやいや、とりあえずいってみ。ダメかどうかは俺が判断する。」

 

自己完結は悪だ。煮詰まった会議においては特にな。

 

「いや、でもぉ。」

「いいからいいなよミカちん。ダイジョブだって、ダメでも現状維持ぃ。」

「あの、ですね。コロンブスの卵的なアレなんですけど。これ、この子のこの言葉の部分。掴んだ全て美少女になる勢いの力が欲しい。って所をですね。ホントに掴んだ全てを美少女にしちゃう能力与えちゃったらどうかなぁって。ダメですよね。」

 

「んぅ?」

「んー?」

「おぉ?」

 

ほっほぉ、そういう?

ああ、勢い本気にとっちゃう的なヤツ。そりゃオマエ。

 

「「「いやいやいやいや、もうありじゃね、天才かよ?」」」

 

「えっ、いやでも、ミダス案件ですよこれ。使用者殺しの。」

「あのバカと違って触ってできるの美少女なんでしょ。しかも好感度アゲアゲの。なら大丈夫大丈夫ぅ。食わせて貰えるってきっとぉ」

 

「ああ、すっと。この病気やらなんらはBS解除って所かぁ。ああ良いわそれ。ミカお前天才だぜぇ。」

「ほんとよぉ、ミカちんエラいっ、お姉さんが後で一杯奢ったげるわぁ♪」

「いやぁよかったよかった。これで家路が見えてきたぞぉ。」

 

じ、地獄の歯車が回り始めやがったっ!

このチャンス絶対に逃さんっ。

 

「え、いや。そのぉ。」

(((黙れ、もう決まったんだという目)))

「あ、はい。」

「あははぁ、じゃあこの言葉遣いと見た目変更用に付加スキル作っちゃえばよくない。美少女化とかさぁ。」

「よっしゃ、そこに好感度変更ものせよう。これで解決だ。」

 

「ああ、でもこれ流石にそこらで触れたモン美少女にして全部すっぽんぽんとか、外部世界の上位神から検閲くらいそうだよなぁ。ああ、じゃあ器物だったらあれだ。服とか装備、専用のやつ最初から持たせよう。精霊達の概念装備の応用でなんとかなるだろ。それだけ変更不能属性つけて。」

 

アイツラほんと妙な事気にするよなぁ。垣根を超えた世界の秩序とか謳って。権力あるから逆らったら世界ごと潰されるし。配慮配慮っと。

 

「あの、でもぉ。そういう身体の急激な変化ってかなりの痛みとか伴いますけどぉ、そこらへんはどうします?」

 

「じゃあアレだ。変化中に他の感覚パラメータ流せばよくね。たとえば、こう痛みとか感じなくなるとか?」

「ああ、なるほどぉ、冴えてるじゃぁん♪」

「ああ、無痛化はやめとけよ。それ変化中の痛みが消えてるわけじゃないからなぁ。たまに無自覚にショック死するヤツいるんだ、アレ。」

「「「こわっ!!」」」

 

痛みって生物にとって結構重要な機能だからね。無くなるといつのまにか壊れてるなんて事は割と起こるんだよ。

 

「じゃ、あれだ。痛みの反対だな。気持ちよくしちゃおう。」

「ああ、こういう子だから喜びそうだわぁ。きもっ。」

「不潔です!」

 

「はいはい、快楽投与と。おおぉっ、見えてきた見えてきた。」

 

いいねぇいいねぇ。サクサク決まっていくぜ。後はコレまとめて技術部に企画書を放り込めばお役御免だな。見たトコひどく難しい処理はないし。存在変化扱うから出力的にはギリギリだけどなぁ。こりゃ魔脈から直接魔素引っ張ってこないとどうにもならんな。となると、と。

 

「あ、当然オンオフ入りますよね?」

「ああ、まぁ、でもなぁ。この能力って結構魔素バカ食いするから、経路閉じちゃうと再使用分の力貯まるまで難儀しそうなんだよなぁ。」

「ああ、そこらの高速化図ると色々術式のバグも怖いですしねぇ。」

「めんどぅだしねぇ。」

「え、あの?」

 

オンオフ付けちゃうと、これがまずいんだよなぁ。ソレこそ試作やらなんやらで朝までコース確定しちまう。

しょうがないから、茶番でも演じますかぁ。目で合図をっと。

 

「なぁ、ヴィリエル。」

「あんすか?」

「オマエさぁ、こんな力性欲を持て余した男子に不便なく与えたらよぉ。どうなると思う。」

「そりゃあ、好き放題っしょ?

もうなんでもカンでも手当たり次第美少女にしてきゃっきゃうふふですよきっと。」

「そんなの全力でやられたらソレ、下手したらリセット案件じゃない?」

「そうよねぇ。こわいわぁ、性欲を持て余した男子高校生ぇ、きもっ。」

「ふ、不潔ですぅ。」

 

はい釣れたっ。ミカくんは本当純真で扱いやすい子だなぁ。どうかそのままの君でいてくれよ? 俺がやりやすいから。

 

「でだ。これ敢えてオンオフ、付けなかったらどうなると思う?」

「そりゃあ……。ああ、悪い人っスねぇ?」

「あはは、そりゃいい気味っしょぉ。」

「え、ど、どういう事ですかぁ?」

 

どうもこうもねぇって。

 

「ああ人間ふとした時に必ず自分の身体を掴んじまうからなぁ。そりゃもうコイツスグに女になっちまうだろうなぁ?」

「ふっひひひ、それウケるぅ!」

「ああ、せっかくの能力が台無しだもんなぁ?」

「それはぁ。」

 

こんだけ俺らを苦しめてくれた奴が一生美少女に囲まれて幸せに暮らしましたってのはちょっとこう、許せんもんがあるだろぉ?

そんな悪党に塩送るような真似、誰が素直にしてやるかい。

 

世界にとってもそっちの方がいいんだよ。

 

「そうすりゃ、アホみてぇに女の数増やそうとか絶対思わんだろ。必要なくなるし。」

「よしんば増やされてもそんなクズの遺伝子ばら撒かれる事はない、と。いいッスねぇ、俺らによし、世界によし、ドクズに喝だ♪」

「あっしさんせーい。こんなヤツ痛い目見るべきよぉ。」

「でもコレ神様の注文に反しませんかそれ?」

 

知らんっ。じゃなくて。

 

「アイツはコイツの周りに美少女達がわんさか囲まれるようにしてくれとしか言ってない。なぁんも問題ないぞぉ、むしろ自分も美少女だぁ。」

「じゃあ決まりッスねぇ。よしよし楽しくなってきましたよっとぉ。」

「エロ男に鉄槌をぉっ♪」

「い、いいのかなぁ?」

「いいに決まってんだろぉ。この俺は電算機よぉ、勝利へのプラン固まったっ!!」

 

流れって重要だよなぁ?

 

「しゃあ、なんとか日付変わるまでに帰れそうだぁっ。」

「ああ、お家が恋しいわぁ♪」

「待ってろメタトぉっ、娘に顔を忘れられてたまるかぁっっ!!」

(((オマエモノレやという強烈な圧力)))

 

「わああ、じゃあ僕もがんばりますぅっ。」

 

 

こうして俺らは団結して1つの地獄の局面を乗り切った。

 

どうせアイツ企画書のチェックなんざせずにハンコ押しちまうクズだから、たとえなんかあってももう全部手遅れだわ。そうなりゃこりゃ、最終的にチェックした筈のアイツのミスになるしな。しかも企画立案はミカくん主体。これでなんかあっても俺が被害を被ることはまずないねぇ。小言は聞き流せばいいしな。

 

計画通りっ(くわっ)

 

そんなことより家族の事だわぁ。

ああ、結局会社出るのが日付変わっちまいやんの。バカかよ。待遇も給料も低いし、正直どっかに転界してぇなぁ。ローンさえなけりゃあよぉ。

 

結局俺は寝静まった我が家の中、愛する娘と一言も言葉を交える事なく眠り、家族達が目覚めるよりも早く天界へと出界する。

今日もまた、クソジジィの無茶振りが俺を待っているのだろう。

 

家族との触れ合いの時間を夢見て、俺は今日も職務を適当に捌き続ける。

なぜなら俺はブラック世界(ヴィンディーナ)中間管理職(天使長)なのだから。

 




閲覧ありがとうございました。

このような話を書く事が出来たのは一重に皆様のお陰です。
改めて感謝申し上げます。 

300pt感謝回エ◯部門アンケートはご協力ありがとうございました。
一位に輝いたのは娼婦さんと遊ぼう、の15票。圧倒的です。
時点の剣と鎧を5票引き離しての決着でした。こういう露骨に夢を追う人たちの姿勢。嫌いではありませんよw

これから300ptノーマル感謝回用にアンケート切り替えますんで
出来ましたらそちらの方もご参加下さい。



さて、ちょっと長くなってしまって申し訳ないのですが、
実はこの作品近いウチにそのリメイクを考えております。

というのもですね。実はこの時点でこの作品、結構直したい所が色々と溜まっておりまして。今後書きたい物語の長さを考慮した所、もう早期に取り掛かった方がよいと判断しました。

詳しいことはまた活動報告に掲載させて頂きますが、リメイク内容が多岐に渡る為このタイトルとは別タイトルで、お話作り直させて頂けたらと思っております。ここまで書いたお話はお話で足跡として残しておきたいものでして。

直さない駄作より足掻いて作る良作を目指して、手を加えて参ります。

ただ一点リメイク後はエ◯話はもう番外タイトルにまとめて、本筋ではあまり扱っていかないようにしようと思っております。読者様によっては不快感を感じてしまう展開ですのでどうかそれだけはご理解下さい。番外編ではいつも通りです。

もう少しばかりこちらの作品は続きますが、リメイク後のタイトルにもよければ遊びに来ていただけたらと思っております。
本筋は変わりませんのでご安心を。



別枠で感謝の言葉を。
いつも大ぽかをやる作者の誤字の指摘や、捜索で拙作を紹介して下さった
黒のアリス様。

拙作に感想を下さった皆様方
特に幽姫兎様と嘘吐天邪鬼様。

そして何より、くっつく餡玉様。

正直この作品の半分位は貴方の感想から貰ったお力で出来ているんじゃないかなと思っております。

他にもご評価・お気に入り登録を下さった皆様方。
この場を借りて皆様に改めてお礼申し上げます。
ありがとうございましたっm(_ _)m

リメイク後も変わらずバカな、いえ、更にバカになった主人公を書いて参りますので出来ればお付き合い下さると嬉しく思います。
まぁ、まだ感謝回やら本編の追加やらでもう少しだけ続くわけですが。

それではまた次の更新でお会いしましょう。

一二三 四五八


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52)世界紙片1「愚かなる三聖人」

300ptノーマル感謝回用にアンケート切り替えてますんで
出来ましたらそちらの方もご参加下さい。



「め、女神様っ。俺、俺らっ。アンタを、貴方を騙してっ。それなのに信じるって、救いてぇって。俺ら、俺ぁ、貴方からっ、貴方様からっ、そんな事、言われるような、言われていいようねヤツじゃねぇんだっっ!!」

 

上手く騙せたと思ってた。でも違ってた。なんもかんも、ただ、ただ。女神様の手の中で。優しさの中で、踊ってただけだった。

俺は、俺たちはクズだ。そんな事には一切気付かずに、こんな御方を小馬鹿にして嗤うような。騙されても騙されても俺たちみてぇなモンに手を差し伸べて、救おうとしてくれる。そんな手にさえ気付かなかった。

 

ああ。こんな風に心から誰かに信じられたのは何時ぶりだっ。ああ、ちくしょう。わからねぇ。わからねぇんだ。俺にもそんな時が、きっとあった筈なのに。

それがわからなくなる程、俺はもう汚れちまってるっ。

 

だからもうこんな優しい言葉を貰ったって。俺たちは変われないんだ。もうとっくに人生終わってるんだから。だから吼えた。現実がツラすぎて。認められなくて。そうするしか、出来なかった。

 

「そんな事言われてもよぉもう手遅れなんだよっ!!

もう、なんもかんも遅すぎだっ。今更こんなキタねぇおっさんなんか変わりたくても、変われるもんじゃねぇんだよっっ。信じられても困っちまうだけだっっ!!」

「そうだっ、俺らもう人生終わってんだぜっ?」

「なんでもっと早く、うぅっっ。」

 

日々よくわからない焦燥や不安にかられて来た。それを今、俺達は突きつけられている。もう少し若けりゃ素直に受け取れたのかもしれない。でもここにあるこの身は燃え尽きようとしている人のクズでしかない。

 

何もかもが遅すぎた。そうして理由をつけて現実に蓋をしなきゃ、俺はきった耐えられないんだ。怠惰に過ごした証である肉体が、衰えを感じるこの身体が、全てを証明しているのだから。お前達に明日などあるわけがないと。

 

「変わろうとするモノに遅すぎる事も早すぎる事もありません。

それに。

もう変わっていますよ貴方方は。だって今。

過去を思い返して泣いているでしょう。変わりたいんだと必死に。そう願っている貴方方はもう変われているのです。

 

理由ですか?

 

なにも感じない方はそんな風に後悔をしたり、涙を流したりなどとしませんから。だから大丈夫です。ワタシが保証します。新たに生まれ変わった気持ちでやり直してみればいいのですよ。」

 

「ああ、あああああぁぁぁっっっっ!!」

「う、ぐううぅぅぅぅっっっ!!」

「うおぉぉぉっっっっ!!」

 

だが女神様は、そんな俺たちを許さない。クズではないと、ダメじゃあないんだと、全てを包みこむような微笑みを俺たちに向けて、希望を指し示す。

俺たちはもう変わったのだと心から信じて放たれたその言葉は、どんな罵倒よりも俺たちの心をえぐりとった。声にならない言葉が、口から漏れ出す。

 

無償の愛がこんなにも厳しいもんだと、俺たちは知らなかった。逃げられないんだ。もう俺たちは。女神様からは、逃げられない。

 

「それでも上手くいかない時は、ワタシでよければ助けになりますよ?」

 

未だに咽び泣き続ける俺に女神様は変わらぬ優しさを注ぎながら、その手で持ってうずくまってた俺の身体が柔柔と引き起こされる。そん時だ。女神様の手からどこまでも熱く優しいモンが流れ込んできた。言葉では言い表せない、俺の全てを変えちまうようなモンが伝わってきた。

 

するとどうだろうか。俺の身体から倦怠感やら、焦燥感が消えていくんだ。ずっと重く縮こまってた躰が、まるで若い頃のように軽い。世界の匂いが違うんだ。視点も、他もなにもかも。

 

恐る恐る目を見開けば、そこに映るのはどうみても俺の手じゃない綺麗な女のソレと、今の気持ちを代弁するかのように突き出た立派な胸。

ああ、そうか。

 

「ああ、そんなっ。」

「……ルストが女に、美少女になっちまいやがった。」

「なんという……」

「き、奇跡っ。」

 

俺は変わった。今、この時。女神様に変えられたんだ。男として女で失敗し続けた俺でなく、1人の若い女としてやり直すチャンスを。女神様は言葉通り俺にくれたんだ。そう気づいた時にはもうダメだった。

 

「ぅ、ぅああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!」

 

俺はただ女神様に祈りを捧げて、この身に起きた奇跡を思って泣いた。ああ全部、やり直せるとも。やり直してみせるともっ。どうしょうもない俺は、もうどこにも居ないんだ。ここにいるのは女神様に変えられた新しい、女の、アタイだ。

そう思ったら只々、涙が溢れてきた。

 

きっとコレは産声なんだと、そう思った。

 

「ごめんなさい。ワタシは貴方を変えてしまった。貴方の在り方を美しいモノへと。やり直そうとする貴方の根本を変えてしまった。そのようなつもりはなかったというのに。ワタシは貴方を元に姿に戻せないの。それなのに、ワタシはこの手を止められなかった。」

 

なんでも出来る。そんな気がした。この身体で俺、アタイはどこまでも駆け抜けていける。そんな確信がある。いや違う。そうじゃなきゃダメなんだ。だから女神様。そんなに悲しそうに俺を、アタイを見るのはやめてくれ。貴方の嘘は今、確かに本当になったんだから。絶対に、本当にしてみせるから。

 

「いいえ、いいえ。女神様。貴方様は変えて下さったのです。アタイは、これより女神様に与えられたこの躰でやり直します。今度こそ、この人生に悔いがないように。貴方様から受けた恩を、言葉を本当にする為にっ。

 

だから、どうかいつか誇って下さい。ルスト・ルーラーを変えた事が、いつか貴方様の良い思い出になるように、頑張りますから。生まれ変わったこの身体で。

負け犬のクズが、貴方様に貰った奇跡がどんなにありがたいもんであったか。それを示してみせますからっ!!」

 

今日この胸に抱いた誇りは決して消えない華となる。アタイがそう、してみせる。なにせこの時そう思ったのは、なにも俺1人じゃないんだから。

 

「め、女神様、お願いしますっ。オレもっ、オレも生まれ変わりたいッス!!」

「わ、私もっ、どうかどうかお願いしますぅっ!!」

 

こうして女神様の奇跡によって生まれ変わったアタイたちは、それから嘘のように輝かしい人生を送ることになる。過去に自分が冒した過ちを償いながら、何事にも諦める事なく。日々女神様に祈りを捧げ、女神様と同じく諦めちまう奴に手を差し伸べながら。努力して、毎日全力で生き続けた。

 

大した業績がなくとも多くの冒険者達の巣立ちを助け、挫けるモノに手を差し伸べ続けたアタイたちは。時間こそかかったが実力者(2等級)に名を連ねる事が叶った。

ついぞ一流には縁のない人生だったが後悔はない。

 

だってよ。笑って下さったんだ。

アタイたちの事を誇らしく。誰よりも誇らしくあの方が。

 

それこそがアタイたちが一番欲しかったもんだから。後悔なんて何一つなく。それは夢のように素晴らしい日々だった。

 

 

ある日女神に嘘をついた冒険者達は、その嘘を見破った女神から信じられ心と身体を入れ替えた。多くの人々に手を差し伸べながらその身に起きた奇跡を伝えた彼らの存在が、女神ヴィリスを奉ずる調和教の布教に大きく貢献したという。

 

彼らの死後、地元のモノの強い要望から彼らは聖人へと認定された。女神の奇跡を体現し続けた者として、彼らは「愚かなる三聖人」として童話となって、広く民草から愛される事になる。

 

愚かな女神と冒険者、女神と愚かな冒険者、そして本当の愚かさに気づいた彼らがバカになって多くの人々に手を差し伸べるこの童話は、今も多くの子供達に本当の愚かさとは何かを報せ、伝え続けている。

 

かくして彼らは世界一有名な冒険者になった。その死後までも女神に誓った在り方を示し続ける、世界一勤勉な冒険者として。

 

 

 

女神が変えたこの世界に残る、断片の1つである。

 




閲覧ありがとうございます。

こんな風にメインじゃない人達を救った時は、もうエピソード毎にエピローグまで片付けていこうかと。そういう試みです。なんせこのお話ってとにかく多くの人が神威くんの毒牙、じゃなくて救われていくんで。

ホントはエピローグ、エンディング後にズラッと書き込みたい所なんですけどね。好きなんですよ。ア◯スソフトのそういう作品(白目)
こうして未来を自分で縛っていき、後で本気で苦しむスタイル。


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53)世界紙片2「夜闇に咲きし高嶺の艷華」

300ptノーマル部門アンケート設置中です。
投票がまだの方はよろしければ参加してみて下さいね。


「誰か助けてよっっ、ワッチも、幸せになりたかったんだっっ。なんでワッチばっかがっ、こんななんだよぉっっ!!」

 

ワッチが只々、叫び声をあげていた。

認めたくなかった。こんな事。ワッチは今自分から救いの道を投げ捨てた。こんな事ばっかりだ。なんもかんも気づいた時にはもう遅いんだ。

 

悪い方へ、当り前のように転げ落ちていっちまう。

 

もういい。それでもワッチは終わるんだ。だったらもうそれでいい。なんもかんも嫌になった。ただ終わりの時だけがワッチの救い。それでいい。

声が枯れ、涙が枯れ、感情が死に絶えた時。

 

ワッチはその光を見た。

 

……優しい光だった。綺麗で、全ての色を呑み込んでいるというのに、それでいてどれでもない。虹彩色のどこまでも神々しい、それなのにただ。全てを包み込んでしまうような、優しくて美しい光。

 

その中心に、女神様がおられた。

 

そうとしか言いようがなかった。虹彩を纏い静かに微笑みを讃えるそのお姿を見てその以外に、この方をどう呼べというんだろう。

自然とワッチは、崩れるようにその場に膝をつく。

 

知らない。ワッチはこんな。こんなにも神々しい神様を他に知らない。胸の奥から湧き上がるのは凄まじい後悔。ああ、なにもこんな。

こんな事おかしいじゃないか。

 

こんな方を侮辱してしまったのか、ワッチは?

 

三馬鹿の、支部長の言う通りじゃないか。ホントウの、……神様なんだ。そんな事がもう見ただけで理解できるなんて。なんて御人だろう。

気付けばそこにいる皆が、その光を前に地に伏せて只々祈りを捧げていた。それはワッチも変わらない。涙が止まらなかった。ああそうか、ワッチの最後はこんな、こんな後悔と一緒なのか。これがワッチへの罰だと思うと、もう只々涙が溢れた。

 

「……ああ、神よ。」

 

強く強く目を閉じて、静かにワッチがそう零した時だった。

沈み込むワッチの頭が、誰かに優しく抱きしめられた。なんで、そんな。

そこには両目から涙を流した、女神様がいらっしゃった。

 

「辛かったわね。悲しかったのでしょう。私に貴方の辛さの全てはわからないわ。それでも貴方が理不尽に苦しめられてきた事は、痛いほどわかる。でも大丈夫よ。」

「あ、ああ……。」

「私なら、貴方を変えられるから。戻りましょう、美しい貴方に。何1つ、悲しむ理由なんてない、貴方の全てを取り戻しましょう?」

「そんな、ワッチは女神様を……。」

「そんな事、もう忘れてしまったわ。服ならもう乾いてしまったし、別にワタシはなんともないもの。辛くて、あまりにも辛くて、少しだけ間違えてしまっただけ。そんな事は人間だもの。よくある事でしょう。気にしなくていいの。」

「ああ、あぁぁぁぁぁっっっっっ!!」

 

「ワタシに貴方を救わせて?」

「ぅわぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!」

 

変化はまさに一瞬でありんした。

 

女神様から撫でられたワッチはもう失った小指を取り戻していて、ああっ、咄嗟にワッチが顔へと触れると、そこにはあの忌々しい引っかかりなんて1つもなくて、ああ、ワッチはもう全てを取り戻しちまってるじゃあありんせんか?

 

「ゼノヴィア。なんて、綺麗な……。」

「そら女神様に比べれば、劣っちまうけどよ」

「ヴィリス様とは違ういい女だ。震えちまう程に色っぽい……。」

 

こんなに容易く、あの地の獄から、嘘見てぇに救われちまったっ。ワッチをお救いになられた。戻ってきたモノが嬉しくて、与えられたモノがただ愛しくて。ワッチはもうその場で自分の躰を抱いて、只々目から温かいモンを零し続けるばかり。

 

「ぁああ、ありが、とう、ござい、ますっ。ありがとう、ございますぅ!!」

「ええ。」

 

御光様はそんなワッチの事を抱きしめて、優しく優しく撫でてくれます。そいつがたまらなく嬉しくて、心地よくて。ワッチはもうまいっちまうんだ。ああぁ、御光様。そんな。そんなに撫でられたら、もうっ。蕩けちまうっ。

 

遊郭にゃあ好き好んで女同士で愛し合う偏屈どもがいくらかいたが、今始めてその心持がわかりんした。だってワッチ女神様に優しく撫でられる度にもう。どうしても女の部分が疼いちまって。若い身空から褥を仕事にしてきたワッチが、ただただそれだけで睦事なんざ比べられない位に、艶を溢れさせられるじゃあありんせんか。

 

ああ、そっかぁ。ワッチイカれちまったんだ。御光様に、完全にイカれちまった。今までずっと恋だの愛だの、女郎にゃ縁遠いもんとおたかをくくってきたけれど、こんなモン識っちまったら、そりゃあ全部投げ出して命懸け。マブになって全てを尽くすのが当然じゃござりんせんか。

 

「よしよし。」

「……んぅ。」

 

もういりんせん。ワッチはお光様さえ居られたらなんもかんも、……いりんせん。ですから御光様ぁ。後生ですから今少し、お情けをわけておくんなまし……。

そんなワッチの物欲しそうな顔を見通して、御光様は少し強めにワッチをお抱きに。

 

御光様の御首様の根の元へとワッチの顔が埋められる。1つになったその距離と、御光様のお香を感じて、ワッチの唇が御光様の玉体へと触れちまう。堪らずワッチのいけねぇ口から舌がちろっと飛び出して、ちろりと神秘に触れた瞬間、ワッチの心は空模様。

 

御光様の躰の上でひゅくりと跳ねて、口から1つ艶風が漏れた。浅ましくもワッチは春の華となり、女の悦びを噛み締めながらお光様へと身を委ねたんでありんす。

朦朧とする意識の中で、ワッチはお光様にお願いしなんし。

 

「……女神様、……御光様。どうかどうか後生でありんす。ワッチを主様のお側へおいておくんなんし。ワッチは卑しい春売りなれど、主様に救われたこの身も、心もありったけでこれから主さまの為に使いとうござりんす。

 

それだけ、それだけ叶えばワッチはもうなんもいりんせん。どうかどうか。端女でもいい、汚れ仕事でもなんでもやりんす。どんな辛い事だって必ずやり遂げてみせなんす。どうかワッチの、この願いを聞き届けておくんなんしっ!」

 

本気だった。マブだった。

 

ワッチの仕事はどんなに言葉を飾ろうと、誇りを持とうと所詮は下賤、汚らわしい娼婦でありんす。高貴で神聖なお光様とは身分違いも甚だしい。それでもワッチは、それでもお側に居たい。お近くで主様をお慕うしとうござりんす。

 

仕事を変えろといわれちゃ未練は残るがそれまでで。春女のワッチとはそこら辺でおさらばえ。心より主様にイカれちまったワッチは、そのお言葉に従うまでにありんしょう。ですからどうか、どうか。ワッチの全部を受け取っておくんなんし。

 

そうワッチが潤んだ瞳で主様を見ていると、主様はワッチの頭を1つポンとおやりになって微笑みを浮かべてお云いになられた。

その美しさと感触に見惚れちまいながらも、ワッチは主様のお言葉を承る。

 

「貴方の仕事は多くのものに夢を魅せる事でしょう?

それで救われた者はきっとたくさん、たくさんいるはずなのよ。ならばその貴方が卑しい者であるはずがないわ。ありがとう。貴方は貴方のままで、できる事をしてくれればいいのよ。それがね、ワタシの一番望む事よ?」

「ワッチのまま、でいいんでありんすか?」

 

……ああ、夢みてぇだ。

ワッチは心からそう思いんした。

 

「ええ、ワタシはその為に貴方の姿を変えたのだから。」

 

ああ、とても叶わねえ。これまで女を誇ったワッチが主様の前じゃ、まるで子猫だ。こんな、こんな事云われちまって嬉しくならねぇ遊び女(あそびめ)なんているもんか。

変わらずに今のまんま、ワッチのまんまを認めてくださるんだ。粋ってのはそう、こういう御方にこそ使うもんなんだ。

 

全てを許す微笑みで、夜に咲く艷華だって(ワッチみたいなモン)も平気で包みこんじまう。こんな御方が他のどちらにありんしょうか?

ワッチは取り戻しただけじゃない。この御人は、主様はワッチのような女を包んでその心に、忘れ去ってた春風すらも吹かせちまったんだからさ。

 

「わかりんした。ワッチはワッチの出来る事でお光様にお仕えしんす。ワッチの心も躰も、全部、全部使っていつか必ず御恩に報います。」

「ええ。」

 

もう、もう。何が何でもこの主様の為に、ワッチは尽くしてみせましょう。ワッチみたいに知らなかった、わからんかったでこの御方が困るようなことは絶対ありんせん。ワッチが全部、女ぁ使って調べ上げる。そんな未来(モン)はワッチが許さん。

 

見なんし、見なんしよ各方。

 

お光様に与えられ認められた女の力を。ワッチなんざぁ春を売り女の全ての力を。マブだ。マブなんだ。全部、全部使って主様に夜の小話を捧げてみせんしょう。

 

あ、でもぉ、でありんす……。

 

「あの、それで主様ぁ。

偶にで、いいんありんす。ワッチの仕事の合間に、ほんの少し、主様にお顔を拝みにいっても、いいでありんしょうか?」

「ええ、もちろんよ。いつでも歓迎するわ!」

 

上目遣いでおボコのような赤らめ顔して訪ねたワッチの言葉に、主様は快笑1つ。ワッチの頭を強く撫でながらそう仰られた主様のソレに、ワッチの真芯はどうにも熱く疼いちまってそのまま1つ。耳まで真っ赤になったワッチがもう一度女の華を咲かしちまったのは。

 

……ないしょの話でありんすよ?

 

 

神を恨み、己の受けた環境を恨んで女神に無礼を働いた1人の娼婦は、女神の無限の優しさの前に膝をつき、その御手に包まれながら全てを取り戻し誓いを立てた。言葉通り全てを使ってあらゆる筋から女神に危険を報せ続けた女は、その美しさとその気風からいつしか夜の世界で知らぬもの無き地位にまで上り詰める事になる。

 

しかしどんなに地位が高くなろうとも、本人は変わらず熱心な調和教徒としてその祈りを女神へと捧げ続けた。そのためか、いつまでも美しく若々しく咲き誇るこの夜の艷華の姿を見て、調和教への入信を決意した女性は数えしれない。

 

その身分を問わず多くの女性たちを調和へと導いた彼女は、まさに調和教の縁の下といった所であり、その在り方は彼女が死んだその後も、多くの夜の華花達に受け継がれていく事になる。

 

また彼女は常に女性達の事を考えて、当時はまだ形となっていなかった避妊魔術や受胎魔術の研究に対し巨額の富を投じた人物としても有名である。それらは今日に続く我々の生活に大きな恩恵を与え続けている。

 

しかしそんな彼女ではあるが、ことに女神の元へと赴くその時だけはどうやら様子が違ったらしい。

 

まるでこの世の春が舞い降りたような、未だ男を知らない穢れなき乙女達が魅せるような夜の華のその有り様は、世界中の多くの男達の心を虜にしたが、ついぞ最後の時に至るまでそれは女神に対してしか向けられる事がなかったという。

 

まったく春を売る夜闇の高嶺の艷華の心にさえ、春を咲かせてやまないだなんて。本当に罪造りな御人は一体どなたなのかねぇ?

 

などと。

 

当時の口さがない男達は皆口々に。

数少ない女神への不満を漏らして互いに笑いあったのだと言う。

 

 

 

女神が変えたこの世界に残る、断片の1つである。

 

 

かくして世界は変わり始めた。

無数の断片が繋がりて新たな世界は紡がれる。

それこそが世界紙片/詩篇。

 

女神が変えて、世界に託した。

 

虹へと続く数多の光の物語。

 




閲覧ありがとうござりんす。
あ、間違えた。

なんちゃって郭言葉なんで色々間違いもありましょう。しかし書かずには居られなかった。全ては賢狼とか月の導きによるものなのです。気風がいいのに可愛い女性っていいですよね? などと犯人は供述しております。
なお神威くんが珍しく頭をなでたり色々気遣ってたのはステラさんの言う事を真に受けたからだとか。お陰で強力なサポーターゲットです。
さすが相棒、半端ないね?

300pt感謝回ノーマル部門アンケート、次回の投稿までで締め切ります。
投票まだの方はお早めにどうぞ。



黒のアリス様いつも誤字報告ありがとうございます。
再度の誤字報告、感謝です。
そして嘘吐天邪鬼も同じく誤字報告、感謝します。
ありがたや、ありがたや。

が、ガバガバじゃないか(白目)


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54) 第18話「虹の女神の真なる力」

(こ、これが虹の女神様の、真の、真の力だと言うのかっ。)

 

冒険者ギルドから全てのいざこざが通り過ぎたその後、女神様と共にあれる奇跡を祝って一緒にそこで大騒ぎをしていた俺たちは、まだ知らなかったんだ。

この美しくもお優しい虹の女神様のお力の本当の、本当の恐ろしさというものを。コレッポチもわかっちゃいなかったっ!!

 

それは祝福だとか戦力アップといった、そんなチャチな権能じゃ断じてねぇっ。

俺たちの心を撃ち抜いてやまない、圧倒的なパワーっ。

もっと恐ろしいものの片鱗を、味わったぜ……。

 

 

はい神威です。現在やっと支部長さんへと憎悪の王の話を通したオレたちは改めてゼノヴィアさんの登場によって中断してた朝ごはんという名の宴会中ですね。お酒かけられた所も清潔魔術ですっきり綺麗となり、改めてゼノヴィアさんがみんなに頭下げた事でもう完全にお祝いモードに戻ってます。

 

ああ、あの後いろんな冒険者達からつっこまれたんだけど、お酒ひっかけられて腹立たないのかってやたら心配されたんだけど、まぁね。あんくらいならぜんぜん気にならないよ。

 

オレって元の顔の時、なんもしてなくても通報されて捕まったり、ペイントボールとかもっと危ないもん投げられたりとか、あと集団で棒もって襲いかかられるのが普通だったんで。こんくらいで怒ってたらオレ生活できなかったぜ?

悪ガキどもと打ち解けあうのも基本、戦って、殴り合ってからだしな。

《貴方はどこのスラム街に住んでいたんですか?》

 

いえ日本の割と治安のいい都市の筈です。筈、なんだぁ……(しみじみ)

だからよくある事だからって言ったらね。なんか凄いみんなに同情されたり、抱きつかれたりとかしたこの頃。この街の人たちって基本人情に厚いよね?

んでさ。

 

「女神さま、これも召し上がってくれなんし?」

「ぱく、もぐもぐ。……んまい。」

「ふふ、あらお口に。(ひょいぺろ)」

「(赤面)あ、ありがとぉ……。」

 

現在すっごくゼノヴィアさんに甘やかされてんのよオレ。はたから見るとギルドの酒場の真ん中で、めっちゃエロい女の人ハベらかしてる新人ってどうなの、実際?

 

しかもゼノヴィアさんね、距離とか色々近いんです。もうね、全力で好意っていうか、なんか恩を返す為に頑張ろうって感じが伝わってくる。こういう事悪ガキの女の子助けた時にちょこちょこあったけど、彼女の場合はこう、格好とかね。

 

色々ちろちろ見えちゃいそうな服来てるからもうどうしていいのかわかりません。いくら感謝してるっても、そんな風に自分の身体を安売りするもんじゃないと思うんですよオレは。女同士だからそんなうるさくいわんけど。……男の身体だったらもうこれ完全に説教案件ですよ。

 

自分大事にしやがれって。いつものオレです。

 

《(小声で)ああ、なるほど。……貴方の鈍感は筋金入りというわけですね。

(しらじらしく)貴方の力で好感度が増加しているせいなのでは? まぁ女性同士なのですしそう邪険にする必要はありませんよ。顔も緩んでますし。》

 

仕方ないじゃんっ、こんな美人さんにこう優しくされ続けちゃよぉ……。でもそれならこりゃオレのせいなんだから確かに無下にはできんわなぁ。ま、そうしようとすると涙目になられる時点でオレには彼女を無下になんかできんのだけどよ。

 

《指摘、ステラは貴方が悪い女性に捕まってしまわないか心配です。》

だからおかんはやめて。

何故かみんなにニヨニヨ見られてるしよ。笑われてるじゃねぇかっ。

 

「な、悩ましいわねぇ……。」

「いけない、女神様を見る目がどうしても……。己もまだまだ修行が足りんな。」

「……嫌いじゃないぜ。」

「へへ、ヴィリス様は夜の暗がりも呑み込んじまうんだ。まったく大した御方だぜ(鼻血を出しながら)」

「オネェサマぁ……(もじもじ)」

 

元おっちゃんらもなんか悟った目で見てくるし。

 

「危なかった……。女神様に女にして貰っててよかったぜ。」

「……ああ、これは、ヤバい。」

「オレ男のままなら即堕ちしてたッスわぁ……。」

 

みんなもなぁ。

 

 

「なぁにツルギぃ~。そんな神妙な顔してぇ~。」

「いやこのような場所であのような事、その、破廉恥ではなかろうかと。……主殿に忠言すべきか迷っている。」

「いいじゃあん。逆にこんな時だからハメはずすんじゃん。ん~、嫉妬かにゃ~?」

「そ、そのような事はっ(真っ赤)」

 

(にゃふふ~っ、すでに委員長である所のメイルにはお酒呑ませた(一服盛ったっ)。ここは狂剣度が減って絶賛乙女ちゃん気味に可愛くなったこのツルギさんを使って状況をもっと楽しくしてみるにゃあ~。)

 

『アンダーは【陰謀】スキルを行使済みだっ。

メイルは寝ているっ!!』

 

「ご主人サマも密かに嬉しそうだしさぁ、ここは逆にツルギもそれ、ご主人サマを甘やかしてくればぁ~?」

「し、しかしこのような場所でなぁ(ぷるぷる)」

 

『アンダーは【煽動】スキルを使ったっ。 』

 

「嫌じゃないんでしょお。ならさぁちゃんとご主人サマに好きだって事ぉ、態度で示すのがいい女ってもんじゃないの? 剣なのに守りに入っちゃうのかにゃ?」

「う、くぅっ。

そこまで言うならやってやるっ。やってやるからなぁ!(顔真っ赤)」

 

『効果は抜群だっ!!』

 

(くく、ちょろす!(きゅぴーん))

 

 

「あの、主殿。お次は、何が食べたいですか?」

「主様、お飲み物はいかがでありんすえ?」

 

実はね。ちょっと前からオレの世話係1人増えてるんですよ。オレの左隣にツルギが陣取ってなんかめっちゃ世話焼いてくれてます。んでその横で「この子こんなに立派になって」って妙に誇らしいツラして頷いてる小悪魔がいると。

 

貴様は一体何をやったんだアンダーっっ!!

(くくっ、隠すモノであるアタシは知っているぞご主人サマっ。ご主人サマのモテたいって想い、実はまんざら嘘でもないってことをにゃっ。)

 

くっ、ナニを思っているかまではわからん。だがコイツは絶対良からぬ事を考えているっ。邪悪な、とてつもなく邪悪な意思を感じるぜっ。

 

(だからモテさせるねっ、すごくっ。このアンダーの目の黒いウチにはテメェにはハーレムって奴を味わい続けて頂くぜっご主人サマっっ。)

 

ピンク(邪悪)な意思をっ(ずきゅっぅんっっ!!)

 

うう。もうこうね。さっきからチョイチョイこうオレに触れるか触れないかの距離でわたわたしてるツルギが妙に可愛くてね。ぴっとした美人さん2人から、こうもこう、されるとアレだからっ、こうアレだからぁっ!!

(清楚なお嬢さんとか好みの人)

 

助けてステラさんっ。なにか助言を、助言下さいっ。

 

《そこで入り込んでからの抱擁ですかね?(生暖かい眼差し)》

 

そ、そげなあほなっ!

あかん、オレの相棒がまたダメな子になっとるぅっ!!

 

《逆に何を耐えているのやら。ステラには理解不能です。》

 

いや、そんなこういうのって人様に見せつけるようなモンじゃねぇだろっ。くっ、右から逃げても、左から逃げても寂しそうな表情がオレの心を締め付けるっ。

や、優しさからは逃げられないっ。

 

「へっへぇ、ほらほらぁ狭いからもっと詰めてよぉツルギぃ~(ドム)」

「お、おいっ!」

「そ、そのように押されては、……仕方あるまい。

(くっつきながら小声で)えへへぇ♪」

「じゃあワッチもぉ♪」

「にゃにゃにゃっ!」

《ふむ、仲良き事は美しきかなという事ですね?》

 

ゼロ距離ぃっ。

もう色々乗っかっちゃったりくっついたりしてるんだよなぁっ!!

ほらぁ、二人共冒険者の皆さんがもう距離を置いていらっしゃるからぁ!

 

「ああ、見ちゃダメ、見ちゃダメよ私ぃ(どきどき)」

「に、虹の女神の愛とは美しき乙女達の心すら包み込むという事なのか。な、なんというモテ神様よ。て、転教を、いやっ、しかし……。」

「……嫌いじゃないぜ。」

「へへ、ヴィリス様の愛はまさに万物全てを包み込んじまうんだな。へっ、こりゃいいもん見せて貰ったぜ……(鼻血を出しながら)」

「私、ヴィリス様の信徒になります(きっぱり)」

 

《おおむね肯定的ですが。》

やめてぇ、このままだとオレの教義が優美(エロ)とかになっちゃうからぁっ。

エロ神サマはいやぁっっ!!

 

 

『しかしその場にいる者共は皮肉にもその流れを待っていた』

 

「お、おい?」

「お、おう。こりゃあ乗るしかないぜ、このビックウェーブによっ!!」

「お、俺も決めた。なるぞ、俺は、俺は無教徒をやめるぞヴィリス様ぁっっっ!!」

 

『男達は思っていた。もしかしたら、この女神様の権能がモテる事であるとするのならば、俺たちもそれにあやかれるのでは? と。

 

これまで女神の優しさ、慈悲深さに感銘してきてもそれはどこか他人事。まぁ祝い事は騒ぎたいからノッてやるが、結局は対岸の火事の出来事と高を括っていた男達実に5割。今その心が1つに纏まろうとしていた。

 

そう。人間全体が騒ぎ始めたらそれに乗っかって騒ぐ輩が必ず出る。いいやむしろ多数派なのだ。実は女神の奇跡を見て、心の底からそれを騒いでいた男は3割程でしかなかった。広がったのだ。全体の流れにノッて。なんとなく祝っていたのだ。

だがその心は完全に今1つになった。彼らはモテたかったっ。そう。

 

何時だって荒くれの男達の最後の一手を押し出すのは、ゲスな欲望であるっ!

 

そしてっ!!』

 

「綺麗……。」

「あんな風に人から食べさせられてるお姿まで神々しいだなんて……。」

「ねぇ、アンナ。女神様に触られるとその、美少女になっちゃうんだよね?

それってさぁっっ。」

「わかってるわ。私達に選択肢なんて最初からないのよ。」

「「「私達ヴィリス様を信仰しますっ。」」」

 

『その場の美しさを求める乙女達は思っていた。その女神の纏うあまりの美しさ、そしてその信徒のソレ、与えられた美しさを見て。彼女らのウチ女神の奇跡に純粋に感動した人物は実に2割。男よりよほど少ない。だが彼女らの多くはその流れに始めから乗っかって動いていた。流れが出来ていたのだっ。

 

なぜか。そんなもの1つしかない。女神様が信徒に美をお授けになるからである。もう彼女達の頭の中は割と最初からそんな事で一杯だった。

そう。

 

世の強き女性とは元々夢を追いながらも、最後の一歩は損得と打算で踏み出すものなのであるっっ!!

 

目の前に夢があった。目の前に得があったっ。ならば流れに乗らない手はないっ、ありえないのだっ。彼女らの頭の中はもうどうやって女神ヴィリスに自分も美しくして貰うかで一杯なのであるっ。

 

欲望が、渦巻いていたっっ!!』

 

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

 

『荒くれの男と女、それぞれが今、女神へと信仰を集めている。街の人よりよほど純粋でない彼らが今、純粋な信仰と欲望が交わりあい、奇跡的に1つになろうとしていた。

そう。彼らの一大事はいつでも世界の危機や他人が救われる姿でなく、己の欲望だ。それが満たされるかどうかが重要なのだ。だから冒険者なんてやっているのであるっ。

 

いつだって彼らは、なんのかんの自分が可愛いのだっ!!

 

今、それが満たされようとしていた。皮肉にも女神が織りなすきゃっきゃウフフが、彼らのソレを満たそうとしていた。彼らも幸せになりたかったっ。

 

それはなんて不純な信仰であっただろう。

だが、それでいいっ!!

 

女神自身があのようにお戯れになっているのなら、自分のそれも許されるだろう。緩い認識がそこにはあったっ。

だって虹は全てを包み込んでくれるんだから。だから彼らは女神を信じ、空に汚い花火を上げるのだ。欲望という名の大きな花火をっ。

 

その汚さもまた、人間なのであるっ!!』

 

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

「「「「「ヴィリスカムィ、万歳っ。」」」」」

 

「な、なんでみんなこんなにオレの事で盛り上がってんのぉ?」

「ふふ、みなが主様とワッチらの睦まじさを讃えているんでありんすよ?」

「で、では私もその。あ、主殿と更に睦まじく……(ぴとり)」

「にゅふふ、面白くなって参りました♪」

「むにゃぁ。」

 

「いやいやおかしいだろ色々よぉっ、ちょ、流石にこんな騒がれると落ち着かないって、もうっ。ああもうコレ光るしかっ!!」

《あ。》

 

『詠唱と共にその場を包んだ美しい虹彩色の光を見て、彼らがさらに盛り上がった事はもはや言うまでもないだろう。いくら綺麗な光でも薄めきれないモノもある。

人の欲望とは果てしないモノなのだからっ!!』

 

 

遠巻きにその美しき虹の光に狂乱する冒険者達を見て、静かに会話を続ける者達がいる。それはこのギルドの支部長であり、上級幹部の面々である。

その表情は皆明るく穏やかで、どこか子供めいた興奮すら宿していた。

 

「ふっ。まるで考えられない光景だな。自分の事しか考えないハズの冒険者達が今、1人の女神の元に纏まろうとしてる。」

「ええ。光も暗闇も、希望も欲望も。あまねくどんな色も全てを束ねて自身は変わらず。まさに虹のような御方です。」

 

彼らは遠くこの街の、世界の未来を夢見ていた。その場を包む虹の光に、これまでにない時代がくる事をうっすらと、しかし確実に予感していたのだ。

 

「ふふっ、見ろ。三馬鹿のあの姿を。まるで従順な聖職者だ。あのクズどもが見る影もない。見ろ世界に絶望した娼婦は、今や輝かんばかりに咲き誇っている。心に虹のきらめきを映しこんでな。他のモノもそうだ。皆もう虹にやられてしまった。理由はどうあれあの虹は、虹の女神は我等を包んで、そのまま世界を変えてくれるぞ。」

 

みな一様に虹に希望を抱いていた。騒乱の終わり、嵐の後にかかるそれが示すどこまでも明るい明日を、思い描いて。

 

「貴族の為でなく、神の為でなく、我々の時代がくると?」

「わからん、わからんが確実に変わる。少なくとも俺たちは変えられた。夢を見てもいいんだと、希望を抱いてもいいんだともう変えられたんだ。俺は乗るぞ。

リーヴァイギルドの支部長たるこのレイル・メロウは、虹の橋の女神を信じてみることにした。」

 

それがどんなものなのかは、想像もつかない。しかしそれはきっと……。

 

「ならば我々もまた、信じてみるとしましょうか。あの美しい虹の光の果てにあるモノを。」

「ああ、俺はそれが見てみたい。あの虹の果て、俺らの生きる場所はどう変わるのかを。虹の根本、その届く先なんて人にゃ到底たどり着けるもんじゃねぇよ。でもどうしても想像しちまうんだ。この女神様となら。俺らと一緒に騒いで、はしゃいで、それでも誰よりも神々しいなんて、矛盾の塊のような人となら。」

 

きっと素晴らしいモノなのだと、その輝きを見て心から信じられたから。

少しずつではあるが、虹は世界を変え続ける。

なぜならその願いはもはや果たされている(・・・・・・・)のだから。

 

「いつかきっとそんなありえないモンの所にすら。俺らはたどり着けるんじゃないかって。だがその前に、女神様から伝えきいた森の事件の真相を探らないとな。」

「憎悪の王、ですね? 状況は相変わらず厳しい……。」

 

しかし運命はこの少年にどこまでも厳しい。

 

「たっ、大変だっ。

ぱ、パレードが、森でモンスターパレードが発生しやがったっっ!!」

 

息を絶え絶えギルドへと入り込んできた冒険者に、その言葉を告げられた時。

冒険者ギルドを包んでいた喧騒は、またスグに別のモノへと形を変えた。

 

嵐の時代はまだ終わらない。

 




閲覧ありがとうございます。
メイルは犠牲になったのだ。神威の真の力が優しさなら女神の最大の求心力ってきっとこれなんじゃってひどい話でした。そんなもんですよ世の中。

300pt感謝回ノーマルアンケート終了しました。
一位はアデルの森ビフオーアフターズ:18票、
二位は剣に滅ぼされた国のお話:15票でした。
ぼちぼち書きますのでお待ち下さいませ。
皆様アンケートへの協力本当にありがとうございました(^^)ノシ


うーんもし500ptに届いてしまったらどっちも300ptの二位の話書かせて貰いますね。正直こんなpt速度で感謝回やるって考えてないのでネタが、ないんですよ(風化中)
感謝極まる話です。


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55) 第18話裏「思考迷宮で彼女は思う」

……やはり、おかしい。

 

人知れず【高速思考パス】をオフラインで使い、思考を高速化させて自室で(・・・)ログを見ながら施策に耽っていたステラは、1人この状況を怪しんでいた。

 

入主 神威に起こったこれまでのイベントを顧みて、どうにもその発生パターンに常軌を逸した流れを感じるのだ。彼には別に【悪運】や【厄災】といった、それらの不幸を引き寄せる特性を持ち得ないというのに。

 

それは最初のイベントからもう始まっている。目覚めて1時間もしない間に、その場所には存在しないハズの中層域でも指折りのクラスとの遭遇。

 

次に退けた後の森の祝福。……あれのせいで神威の存在はもう敏い神族の間に知れ渡っている事だろう。多分憎悪の王にさえも、だ。

 

街についてからの一連のイベント。まぁあれは回避ようがないが始まりの門番との対話が失敗していれば、彼は街と敵対する事になっていただろう。あの時彼はまだ下級だった。やり合われていれば敗北は必死だ。詰んでいたんだ。

 

街についてからも、そうだ。なにげなく神威が変えてみせたウチノには魔晄炉(なろう50話参照)が設置されていた。開かずの間の中にあった、大都市用の馬鹿げた出力のソレは神威と関わることなく解体魔法を使われていたら、街事吹き飛んでいたような危険な代物だった。……そうなれば我々も共に消滅していただろう。

 

ファルケにしても、街の人々にしても。どちらも奇跡的に上手く行っているというのが現状なんだ。取り方を間違えば孤立し、死に直結するようなイベントばかりがなぜか起こる。

 

冒険者ギルドでのアレコレだって、対応を取り違えればギルドでの孤立か、大きく反感を買う事だって充分在り得た。決して楽観できるイベントじゃなかった。

そしてこのモンスターパレードだ。間違いなく神々と同じく森の異変を嗅ぎつけた憎悪の王か、それ以上の騒動が起きているのだろう。今ならそう確信できる。

 

なにより、……女神化だ。

 

ステラは彼に女神化の情報を告げなかった。なのにたどり着いた。あんな神ですら己を失う危険が在るために使用を封印している代物を。あの鈍い彼が探り当てた。

まるで何かに導かれるように。破滅へと導かれる。

 

ありえない。どんな確率が彼に働いているというんだ。

 

彼の、ここに至るまでの環境を見てもそうだ。

一般的な日本の、平穏な街に暮らしておきながら日常的に襲われて、罪を疑われ、友の1人すら得られない悪環境。誰からも愛される事もなく、親戚筋の家をたらい回しにされた事で、彼に環境が慣れる頃に転居を続けたとしても流石におかしい。

人はなんにでも慣れる生き物だというのに。

 

だのに彼に友誼を示すのは不良や極道者ばかり。中身は善良な少年なのにである。それが日常的に起こり続けた(・・・・・・)という確率は一体どれほどのモノなのか。

 

そして黒く濁った金の髪、薄昏い紫の目。そして濃くない体色。それらの特徴は、女神になっても確かにヴィリスに引き継がれている。どれもアルビノの、神の使い(・・・・)に見られる特性だ。そして与えられた悍ましい程の顔に、まるで彼を絶望するように促したいようなイベントばかりを引き当てる運命。

 

それらを跳ね除けられるだけの強靭な肉体に、それでも変わらない異常な程に鍛えぬかれた人間性。もし彼が自覚なくそれらに関わり続けたというのなら、ひどい話だが救いがあった。だがこの環境の中で自身の意思でもって人を信じ、救い続けたというのなら、話が違う。違いすぎるんだ。

 

そんな者はもはや人間じゃない。聖人か、救済装置の成れの果てだ。

 

そして神威などと名付けられたその名でさえも。なに1つ。なに1つをとっても入主 神威という人物はマトモではないのだから。

 

見え隠れするのは神々の悪意。

 

目的は分からない。それでも彼は地球の神々から何かしらの役割を与えられて造り上げられた存在なのだろう。断言できる。

あるいは両親の存在すら疑わしい。

 

……。

 

だが。もう一つ確信した事がある。

【栄光の手】もまた、ただの美少女化の力ではない。

彼は掴めるのだきっと。ステータスでは確認できない運命というモノを。これまでのイベントのありえない結果がそれを疑わせ、ステラもやっと確信に至った。

 

この力はどういうわけか彼が心から望んだ対象であるのなら。概念(・・)的な事情だって掴んで変えてしまえるものなのだろう。

彼は度々未来を掴みたいと、なんでも掴みとれると願って、手を差し伸ばしてきたのだから。もはや言い逃れようがない、状況がそれを証明している。

 

それ以外に説明が、つかないんだ。彼の起こす行動の結果は。ありえなすぎる。

 

ならば家族を掴み取ると願った彼が、絶望に嘆く者の輝かしい明日を願った彼が。絶望を変えられないハズはないのだから。あるいは。あの2人の手をもう離さないと最初に誓ったその時から。それだけは、約束されているのだろう。

 

だかそれだけだ。スキルの能力限界(・・・・)の事もある。だからステラはこれからも、彼に助言を続ける。少しだけとぼけるようにおせっかいを焼きながら。彼に道を示していくのだ。

 

選択するのはいつも彼自身だ。そうでなければならない。

なぜなら彼にしかそれらの未来はきっと、掴む事はできないのだから。どこまでもバカで、どこまでもお人好しな、私の相棒にしか。

 

ヴィリスカムィではダメなんだ。

 

女神は、神はそれが運命だと言うならどこかで受け入れてしまうから。ともすればそうなった瞬間、地球の神の定めた運命を受け入れてしまいかねない。だからこれからも神威には人の縁を結び、その愛情と絆を持って少しでも彼の魂を世界に結び付けよう。彼が彼で在り続ける為に、多くの絆が必要なんだ。

 

だから旅は大歓迎だ。

 

ステラは神威の相棒だ。だかその目的は違っている。だって私は神威のサポーターなんだから。大切なのは神威、君の方なんだよ。

 

世界の人々など実はどうでもいいんだ。私は貴方を救う為に、彼らを利用する気だ。貴方が人を助け続けるというなら、ステラは貴方を助け続ける者なのだから。

よりたくさんの絆でもって貴方を人間のままに強くして、全てから守ってみせる。

 

それがステラの貴方の変わらない相棒の在り方だ。いつしかそうなってしまった。貴方がどこまでもバカだから、そう在り続けるから。そう、決まってしまった、ね。だから恐れず貴方は貴方を愛する者の手をとりなさい相棒よ。

それは貴方を繋ぐ糸になるものだから。

 

いつまでも周りから与えられる愛情に、恐れるべきではないのですから。

 

しかしなぜ【栄光の手】がこのような使用になっているんでしょう。確かに文面には概念は掴むことはできない等と書かれてはいないが、そんなものはあってしかるべき事だ。故意に能力を歪めた誰かが存在している?

 

いやむしろ……。

 

その為に、神威の願いは曲解された?

……これからも警戒は続けましょう。我々の本当の敵が誰で、その目的がなんなのか。それを探る必要がある。

 

ステラにしかできない、真実を探る戦いが。

 

とは言えこれは後回しですね。

今は早く状況の制圧を。神威の家族の事を一番に考えるとしましょう。

 

 

そうしてステラは高速化した思考を切断し、定速へと戻していった。

自身の身体のある天界の管理ルーム。その1角にシステム偽装して作り上げた彼女のネグラを監視する者の存在に気付かずに。

 

運命は未だ観測者の制御化にある。

 




閲覧ありがとうございます。

続けて投稿ですね。
前話の閲覧お忘れなく。

本編投稿は後1話です。



黒のアリス様

前話の誤字報告ありがとうございます。
いつも本当に助かっております(^^)


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56)300pt感謝回「娼婦さんの顔を洗うだけの話」

皆様、本作をご評価頂き、誠にありがとうございます。
今回は毎度ながらの感謝回でございます。
エ◯スが苦手な方は読み飛ばしを推奨。
続けてノーマル回を投稿しますので。


「主様、どこか気になる所はありんすか。

「いやないけど。……すごく気持ちいい。」

「それはようござりんす♪

ではこちら側も……、と。」

 

はい神威です。

現在オレはウチノの家にある自分の寝室のベットの上に横たわり、ゼノヴィアさんから洗顔マッサージとやらを受けています。ジェルっぽい粘り気のあるいい匂いのオイルをいっぱい手に塗りこんだ彼女の指と手で自分の顔を丁寧にむにゅむにゅとされていくのが、予想以上に気持ちよくて寝ちゃいそうだったり。

 

なんでこんな事になってるかというと、どうにもオレのそういう事に無頓着な話をミラ母さん経由で仕入れてきたゼノヴィアさんが、涙目ながらにその手入れを自分がしたいと申し出てくれたわけでして。

 

って言ってもなぁ。オレ女神だから老廃物も出ないらしいし、洗顔なんてして変な子生み出してもアレだから最悪【栄光の手】か清潔魔術でよくないって言ったらね。そのまま泣かれちゃいまして。絶対ダメだって。

 

それからはなすがままですよ。

 

そんでなんかオレこれから定期的にみんなに顔とか色々なトコを手入れされる事になりまして。ありがたいんだけど人としてどうかなと、そんな事を思うこの頃です。

どうでもいいじゃんそんなの。ねぇ?

 

《指摘。その言葉は世の女性の前では口に出さないほうがよろしいかと。》

 

……そうする。でもほんとに気持ちいいや。人の手で丁寧にワシワシされるのって結構好きかも。始めての感覚ですよ。

《あなたの世界では散髪の際に理容師などが髪などを洗ってくれると聞きますが。》

 

ああ、そういうトコなぁ。オレがいくとこの顔の怖さで大体理容師さんがパニックになって頭洗うトコまで行き着かないのよ。だから髪は自分で切ってた。適当に。

《……そうですか。ならその分まで今日からしっかりお世話されるといいですよ。》

 

そーするー……。

《ええ。》

 

 

ふふ、これだけ気持ちよさそうにされるとやりがいがありんすね。

肌磨きの艶油を手につけてフェイスラインを指先で小さく揉みほぐしながら適度に油を揉み込んでいきますと、とたんに主様のお顔が解れふわりと力が抜けまして。

 

さらにすりすりと手の腹を使って刷り込むと、お気に召したのかその唇がふうわりお開きになって、主様が無意識に時折ワッチの手にその麗しい頬を子猫様の如くに擦り付けてきなっさる。

その度にワッチの心にはゾクゾクりと愛しさの先の衝動が奔るんでありんすよ。

 

なんてお可愛らしい主様でござんしょう。

ああ、こんな事が許されるなんてワッチは果報者でありんすね

 

小顔の形に、目の窪み方から眉毛のその一本一本、すらっとしたその鼻筋に春花の化身たる麗しい唇様まで、その全てがもう芸術品で、こんなにお気を許された御姿であってもその神々しさが微塵も揺らがぬこの御方は、まさに女の理想そのもの。

 

そのご尊顔のお手入れの様をお聞きした際には、そのあまりの無体ななさりように思わず小娘のようにその場で崩れてしまいんしたが、これからはワッチやミラ様がきちんとこの至高の美をお磨きし、お守りしていきんしょう。

ああ、それにしても。

 

「……ぅん。……ふぅ…。」

 

ワッチが手を振るう度にふるふると蠱惑的に震える桜のお口様の隙間から、時折に溢れる吐息の艶と、閉じられては開くその音、そして小さく下唇の上でちろちろとお踊りなさるその可愛らしい舌先を見ていると、どうにもワッチの真芯がちくりと疼いちまっていけません。

 

「主様。ちょいと失礼するでありんすよ?」

 

ああそんな果実を前にしちまうと、どうにもいたずら心が疼きんす。

 

自分のソレを押さえきれなくなったワッチは、とうとう主様のその唇さまを指で挟んで、そっとそれをくにくにと揉み込んでしまいます。ああ、いけねぇ。

つい指が勝手に動きんした。許しておくんなんし主様よ

 

「ふぇ、しょこもするんだぁ。フフ、おもしりょい♪」

「ええ、少し辛抱しておくんなましね?」

「ふぁぁい。」

 

ああ、主様がおしゃべりするたんびに唇様が小さくワッチの指をはぐはぐとやって、時折舌先様がお遊びなされる。やわらかな桜色をくにゅりとする度、なんとも云えねぇ心地になっちまう。ワッチがそんなご禁制の花びらへと触れていると、主様がワッチにお言葉を下さったんでありんせんか。

 

「ゼノふィアさんこみぇんね、たまにシタあたっひゃうの。汚くないかひぃら?」

「そんな事、あるわけありませんよ。むしろイリス様こそお嫌じゃありんせんか?」

「しぇんしぇん。ふふ、ゼノふィアさんの指、あみゃくておひしいもの♪」

 

そう無防備に可愛らしく笑う主様のお顔にワッチのお脳はやられちまって、もう

たまらなくなっちまう 

 

ああ、主様ぁ、やめておくんなんし?

ワッチそんな事言われちまったもう。必死に振り切れそうになっちまうモンを理性で押さえたんでありんすが、どうにも堪えきれなくて。

 

「……ふふ、このお指を気に入って下さったんでありんすか?」

 

ついつい主様のお口様の中に指し指1つひょいと滑りこませてしまいんした。そうすると主様は最初こそ驚きになられましたが、笑って遊びにお付き合い下さいまして、

 

「ふふ、ここみゃでまっしゃーじしちゃうのね?」

 

ぺろりとワッチの指腹に舌を踊らせながらお口様をもごもごと、お遣りになったんでありんす。ああもう。本当にこの御方は

 

「……ええ、はいお終いでありんすよ。後はお顔の香油を拭ってお耳を少し磨きますから、どうかもう少し辛抱なさっておくんなんし?」

「ふぁい。ありがとぉ、ゼノヴィアさん……。」

 

これ以上はワッチが自分の女をとても押さえきれんせん。

どうにもこうにもワッチはこの御方にゃあ生涯叶わねぇようでござりんす。

指し指1つ甘噛しながらワッチの胸は夢心地。……それは禁断の蜜味でありんした。

 

 

「はい主様。お疲れさまでありんす。」

「ありがとぉゼノヴィアさん。すっごく気持ちよかったわ!」

「ふふ、どういたしまして。ああ主様。一段と麗しくなられましたよ……。」

 

なんか色々凄かった……

耳の中までゼノヴィアさんの細い指でくちゅくちゅとやられた時にはなんというか不思議な感覚だったが、終わってみるとすごくさっぱり。いつもよりなんか顔周りがふわっとしてる感じがする。

《バフとして貴方に魅力強化(小)がかかっています。ふむ、確かに日頃の手入れは効果がありますね。継続を強く推奨。》

 

うーん。毎日は面倒だけどたまにやってもらうのはいいかも。自分じゃ無理だな。

《貴方のその頑な美に対する興味のなさ、ある意味驚嘆に値しますね。》

だって元男だもの。興味ねぇよんな事。

《そういう一面が貴方の強面をいっそうそう見せていたのでは?》

否定できん!

 

しかしあれだな。オレばっかやって貰うのもなんか悪い気がするな。

《では是非彼女にお返しするべきですね。

実際に貴方がてずから彼女をマッサージすると言えば彼女はきっと喜びますよ。》

 

いや、そうは言ってもオレがこの手で直接触るわけにもいかんだろ。流石に手袋とかつけたままじゃあれだしよ。それに実際どうやるべきか、オレよくわからんし。

《……ならば直接彼女に尋ねてみては?

なにいざとなれば心配いりませんよ。ステラは当然美少女として、美容も嗜みますから。いつも通りステラは貴方をサポートします。》

 

うーん。そっかぁ。

ならま、ちょっと聞いてみるか。

 

 

「じゃあ、横になってね?」

「はいぃ、お願いするでありんすぅ。」

 

ひぁあ、ひぁぁぁっ♪

ワッチ今主様のベットに横になってるでありんすっ!

 

主様の御手はご自身で何かを掴むわけにはまいりませんから、ワッチが主様の御手に香油を垂らして差し上げると、今主様はその綺麗な御手でその香油を温めるようにくちゅくちゅとおやりになっています。

 

粘り気のある香油と戯れる主様の御手は、なんとも甘美な御姿でありんしょうか。そんな様子を見ていると自然とワッチの腹の奥がジュンとして、胸がきゅっと締め付けられてしまいんす

 

「じゃ、いくわよ?」

「ええっ、どうぞっ。」

 

はぁいけねぇ。

これじゃ初心な生娘以下でありんせんか。そんなワッチに微笑みかけながら主様の御手がワッチの顔にせまります。

 

そのお綺麗なお指様がくちゅりとワッチの顔に触れただけで、ワッチの躰はもう飛び跳ねる位に嬉しくなっちまう。

 

「……大丈夫かしら?」

「っ、ええ。どうぞお続きをおくんなんし

「そう。じゃあゆっくりいくわね。」

 

あ、主様のお指がワッチの顔に沈み込んで。

 

そこからアツいモンがワッチにとくとくと注がれていく。ゆるゆるとお指の先が蠢いてワッチをソレをおほぐしになられると、堪らずくんと躰がしなる。

 

くちくちと。

ワッチをさらにおほぐしになられれば、そこからとくんとくんと、更に愛しさが染み渡りんす。

 

ああ。ああ。

 

ワッチは今、一体何を弄られていたんでありんすか?

胸か、腰か、女の真芯か。

それとももっとその奥の、お脳の奥に閉じこもる悦楽浄土の肉片(にくひら)かしら。ほぐされる度に華開く、女の悦びソレそのものでありんしょうか?

お顔ということはありえますまい。

 

「……ん…、……ふ……ぅ…。」

 

ワッチは今、一体何を擦り込まれているんでありんしたか?

アツいアツゥい蕩けの魔毒か、ワッチの女を煮詰めちまった淫らのトロか、それともワッチを一等狂わせる、御女神様の愛情の蜜でありましょうか。

香油という事はありえますまい。

 

「……あ……ぃ、……は…………ん…」

 

ああ、全部、全部蕩けちまって。

もう何が何やら。くるくると、狂る狂ると、ワッチが廻って、熔かされる。女の艶と、悦の悶えを止めるだけで手一杯。

ああ、愛とは、恋とは。

 

なんと甘美で、耐え難いモノでありんしょうか

 

ぴゅくりぴゅくりと。

トロが溢れたワッチの園のお粗相は、もはやどうにもなりんせん。上春女の嗜みの、清潔魔術が込められた下のモノを使ってなくば等にワッチは主様の寝台を、たちまち愛にて汚していたでありんしょう。

 

「……く……ぁ……う…………ん…」

 

悶えの示さんとする己の躰を押さえつけ、ワッチは艶女の意地を見せます。弓なりに弾けんとする女を押さえ、打ち上げられた白魚のごとく踊らんとする悦楽に耐え、静かに主様の寝台を手掴みし、秘密の悦びを只々悶え押さえんした。

 

「じゃあ次は、こうだったかしら。

 

そんなワッチに主様は容赦しません。

 

今度は御手の腹を使ってずちゅりずちゅりと、ワッチのソレをお遣りになります。細い指を一緒に動かしながらずちゅりずちゅり。くちゅり、くちゅりと。

 

「あ……ぁ………ん………ぅ…」

 

ワッチのソレの凸凹を丁寧にナゾリながら、つちゅつちゅ、くちゅり、くちゅくちゅと、主様の御手が撫で回す度に、ワッチの口はだらしなく開き、舌先が物欲しそうに伸びだして。

 

艶を抑える為にソレを閉じては、開いてを繰り返す様は、ワッチがまるで人でなく、まな板の上、天神様の御元で跳ねる事しかできやしない、哀れな生き物にでもなっちまったかのようで。

 

「……あぁっ……ちゅ……ふぅ……ちゅ……」

 

それが主様とワッチの在り方を思い出させてくれなんす。

ああ、ああ、そんなに、ワッチに分からせないでおくんなまし。もうワッチは主様だけ。主様だけしかいりんせんから。丁寧に、丁寧に、ワッチを蕩かすのはもう。もう。堪忍しておくんなまし

 

「ふふ、気持ちいいかしら?」

「……はい…っ…この上……なく……っ…」

 

こんなの知っちまったらもうワッチ主様以外じゃダメになりんす

主様にお声をかけられた事を女の悦びで伝えようとするワッチの淫らを押さえつけ、どうにかワッチは主様にお返事を返します。その刹那。

 

「そう、よかった。じゃあ次は……」

「……あ………っ…………」

 

主様のお指様がワッチの唇を優しく挟み込み、こりゅこりゅ、くちゅくちゅとイジメていきます。その度にワッチの躰に灼きつくような主様の愛が迸り、お指を噛まぬように必死に耐えるワッチの口先は更にそんなお指様をぷちゅりと食んで。

 

「…っ………っん!………ぅ……っ……」

 

快楽に踊るワッチの舌が主様のお指様に触れる度に、ワッチの躰に電流が奔るんでありんす

 

でも止められなくて、ワッチはもうなすすべなく、あますとこなく主様の指に蹂躙されてしまいんす。そうしてなんどもなんども天国をみちまったワッチの躰はもう、何時弾けてもおかしくない益荒男張りの戦弓の有り様で。

掴んだシーツのいやらしジワはその深みを増すばかり。

 

「ふふ♪」

「………っ………、………っ………ぁ……」

 

せ、世界がシロいのぉ。

もう、ワッチはもう。

そんな中、満足そうに笑う主様の顔を見てワッチは全部わかっちまった。主様は全部端っからお見通しなんでありんすと。

 

ああ、ああ、ごめんなさい主様。ワッチもう主様にイタズラしようなんざ金輪際おもいんせんから。だから、もう、もう。ワッチもうこれ以上は戻れなくなってしまいんす。

これからは主様のおっしゃるお言いつけは、全部、ぜえんぶ護ってみせますからぁ。汚らしいワッチにどうか、どうかお情けを下さいましぃ

 

「ご、……っえんなしゃい、ぬしっ、……しゃま、わっちっ、……わっちぃ……」

「大丈夫よ。ゼノヴィアさんは汚くないもの♪」

 

ああ、やっぱりぜんぶ気づいていらっしゃる。以前、主様の前でワッチは自分が子猫のようだなんて思ったことがありんしたが、それは大きな間違いでござりんした。

 

ワッチは子犬でありんした

それも主様の手のひらで飼われるような小さな小さな雌犬だってんでありんす。これからは主様のおっしゃる事全部聞いて、くぅんと鳴いて、お情けさえ頂ければ、もうワッチそれで何もいりんせん。

 

ワッチは今、主様とワッチの立場を改めて、理解しんした

 

「ふふ、ワタシの指はおいしいかしら?」

「……っふぁぁい……一等っ……甘くて……っ、蕩け……そうでっ……ありんす

 

もうトロトロに。ワッチの花弁は為すすべもなく。

 

主様に全部蕩かされてしまいんした。遊び女のイジだけで躰を支えて、もう頭の中もマッチロくって。こんなのワッチ知りんせんした。浄土の先のその先にこんな所があるんでありんすね。

 

くぅん、主様にはとても叶いんせん

 

「そうじゃあ、てりゃ♪」

「っっっっっっ

 

そん時でした。

主様のお指様がワッチの中へと滑り込んで、ワッチの粘膜をずりっとお遣りになり、ぐちゅぐちゅりと、ワッチの中でお暴れ始めたのです。

 

同時にワッチがそれまで堪えてきた大弓のソレが一気に弾け、ワッチを今までにない高みへと撃ち出します。ワッチの口が大きく開かれ、喉奥から大きな艶が飛び出そうとした所を、どうにかワッチは堪えんした。

 

与えられた豊楽の凄まじさに流石にワッチも朦朧としんしたが、主様は放心なんか許しんせん。

 

「……っ……ひんっ……ぁっ………っ………あぅっ……!!」

 

主様のお指様がワッチにそれを許しんせん

休まず止まらずワッチの粘膜の上をじゅつじゅつとされちまうと、その度に主様からお熱い愛が流れ込んできて、ワッチの女を苛め抜きます。

 

あっという間に口から溢れ出さんとする卑しいヨダレを巻き込んだ香油の泡が舌の上にでき、ワッチの粘膜は与えられ続ける豊楽から逃れる為に暴れまわりますが、それが返ってお指様を絡め取ってしまうんす。

 

その度に甘い、あまぁいお露のお味がワッチの深い部分に伝わり、ワッチは天国と常世を行ったり来たり。こ、こんなの始めてでありんすぇ。

ちかちか、ぜんぶ、ぜんぶが、ちかちかでありんすぇ

 

「……っ………ぁっ…………っ……っぁぁぁあ!!」

「あ、ごめんなさいね。痛かった?」

「……っいぇ……と…っても……いいっ……おてっ…まえでっ……。」

「そう。じゃこれでお終い。最後は耳の方だけど、大丈夫かしら。」

 

ああ、ダメで、ありんす。

ぬししゃまが、お耳までイジメてしてくださるって。わっちじゅんびしないとぉ。

ちかちかきえない、けど、ぬししゃまのお言葉は、ぜったいで、ありんすからぁ。

せーけつまじゅつを使って、主さまのお手におかんろ様をぉ

 

「……はい……よろしくぉ…おねがいします……」

「じゃ、これで最後だからもう少し頑張ってね?」

「…はぁい……」

 

主様の両手がワッチのヒダをくちゅりと掴む。

その溝の1つ1つを丁寧にお指様でもってくちゅくちゅとされちまうと、たちまちお脳の奥の淫らを感じる肉片を直接くちゅくちゅされてるような感覚に襲われちまう。

 

「……っ………ぃ………はぁ……」

 

くちくち、くちゅ、きちゅきちゅという淫靡な音が直接にワッチを響き渡り、頭の底からワッチが誰のモンなんか理解させられちまいんす。

 

右ヒダと左のやわらかいぷっくらした部分。あるいはその逆。そうと思えば入り口のクリっとしたトコをコリコリされて、もう一方でお穴目掛けてずちゅりと音がする。

 

「……っぁ………ぁあ………はぁっ……」

 

お穴でソイツをかき回すように動かされた瞬間、主様の愛がワッチの穴から一等深い最奥へと最短距離で突き抜けて、も1つ側のお穴も同時に責められりゃ。

ワッチには為すすべなんざござりんせん

 

「……っ………っぁ………っ!………っ……」

 

子犬は最後の意地で悦の声を抑え込んで、またもや何度も何度も極楽浄土をいったりきたり。もうワッチには皮1つで意識を保っているだけでござりんした。

世界はとっくに霞んじまって、頭の奥はお空の彼方。

お星様まで突き抜けちまった。ちかちかと、ちかちかと、無数の火花が弾けて消えんす

 

ワッチは小刻みに、震えるように1つずつお星さまをお迎えするわけでありんすえ。もうなんもかんもわかりんせん。ぬししゃまいがい、なんも、なんもわかりんせん

 

「じゃあ、これで、お終いっと。」

「……っ……っっあぁっっ………ぁ………っ

 

な、なんとか、たえ、ましたぁ。

 

ぬししゃま。わっちいわれたとおり、がんばりましたぁ

ああ……いけない。

さいごにおあと、かたづけて。

おれいいうまでが、ワッチのつとめで、ありんす……。

 

「……ぬしさま…ありがとぉ……ございます……」

「ちゃんと出来てたかしら?」

「……ええ、ワッチこんなに、きもちいいの、はじめてで、ありんす

 

「それはいいすぎでしょお?」

「いいえ、ぬしさまのおてが、いちばんでありんす

「そう、ならよかった。でも大丈夫かしら。何かふわふわしているけれど。」

 

からだの自由が、まだききんせん

小さいお星さまがまだ、おのうの中に、いっぱい、いらっしゃいますから。夢見心地でありんすえ。

まぶたが重くてしかたありんせん……。

 

「ええ。ぬしさまのおてが、きもちよすぎて、わっち、すこしねむけが、きちまったんで、ありんすよ。」

「そっか。ふふ。なら、ワタシの膝でよければ貸してあげるから、ちょっと眠っていったら?」

 

ああ、ぬしさまは、おやさしいなぁ。

 

わぁい。くてん。

 

「ぬしさまぁ、ありがとぉ、ございます

「ふふ。じゃあ眠るまで、頭撫でてあげるわね? ゼノヴィアさん。いつも色々ホントにありがとうね。」

「ひゃふぅ、ぬしさまぁ

 

ああっ、そんあぁ。もう、もう、かんにんしておくんなんしぃ これいじょうされたら、わっちもぉ、わっちもぉっ(ぷつん)

 

 

「あ、寝ちゃったか。ふふ、こういうの悪くねぇなあ。」

《……。》

 

マッサージの後にすぐオレの膝枕で寝ちまったゼノヴィアさんの頭を優しく撫でながら、俺は1人呟いた。

しっかし前から思ってたんだけど。

 

「なぁステラ、なんでこの人俺の手で触れられて平気なの?」

《まぁ本職のそちらの女性ですからね。快楽に高い耐性があるのでは? いわゆる個人差というものです(しれっと)》

「ふぅん。そういう事もあるんだなぁ。」

《世の中不思議だらけですよ。(小声で)貴方とか。》

 

髪の毛サラサラしてこの人撫でるのって気持ちいいんだよなぁ。なんか癖になる。こういうの見るとやっぱそういう手入れって大事なんだろうなぁ。なんか蕩けそうな幸せそうな顔してくれてら。いい夢でも見てんのかねぇ。

 

「あ、なんかいった?」

《いいえ別に。しかしステラも前から感じていたのですが、貴方も前から彼女を撫でたりする事はあまり嫌がりませんよね。少し疑問です。》

「ああ、それなぁ。ま、この人ってこうやって撫でられたりしてる時、普段はぴっとした美人さんなのに、本当に気持ち良さげな顔見せて、なんか可愛くなるからさ。そんなに嬉しがられたらついついこう撫でたりしたくなるわけよ。」

《なるほど。そういうわけですか。》

 

だってこの人撫でたりしてるとホントわかりやすく嬉しそうにしてくれるんだもの。ワカバとコイシの次くらいに。普段とのギャップとかもあってね。ついこう手を伸ばしちゃうんですよ。なんか自分にだけ懐いてる気高いお猫様か、お犬様って感じで。今もこんなにトロトロにだらんとなってるし。

そんな時な。

 

「……あぁっ、ぬししゃまぁっ、ダメェ、かんにんしてっ、くれなんしぃ。わっちはぁっ、わっちはもぉ、あはぁぁぁぁっっっっっっっ

「うおっ、エロっ。ど、どういう夢みてんだこの人!!」

 

そんな反応に困る寝言をそのお姉さんが、漏らしたんですよ。オレの膝の上で、すっごく悩ましくて艶っぽぉい感じで仰け反りながら。

ああ、びっくりしたぁ。

 

《まぁそういう職業の女性ですからねぇ。(しれっ)》

「お、おう。……ま、寝てる間にあんま触りすぎんのもなんだし、このまま少しここで寝て貰おうかね?」

《それがいいと思いますよ?》

 

(無自覚、無知は時に何よりも残酷になりうるという事がよくわかりました。ふむ。ゼノヴィアの忠誠度の強化を確認。彼女にはこのスタンスの接触が効率的ですね。彼女の齎す情報は非常に有用だ。今後とも上手く誘導して行きましょうか。)

 

とりあえず手袋してから枕の上に寝かせてやって、後布団かけてと。

 

「おやすみなさいゼノヴィアさん。いい夢見て下さいね?」

 

そう言って最後に1つ頭を撫でてオレは寝室を後にした。そりゃいつも好きでもない男の相手なんざしてたら色々ストレスも溜まるよなぁ。これからも出来る限り、優しくしてやりてぇもんだと、そんな事を思いながら。

 

 

「ふふ、ぬしさまぁっ、わっちは、とうだいいちの、しあわせものでありんすえ

 

 

『薄めを開き、1人幸せを噛みしめる者。夜の華の強かさなど、誰も知らない。』

 

 




閲覧ありがとうございます。

さて私的には出来るとは思っていなかった300pt感謝回です。
改めてここまで皆様のご愛読、お礼申し上げます。
ありがとうございましたm(_ _)m

続けてノーマル回をお楽しみ下さい。



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57)300pt感謝回「アデルの森ビフォーアフターズ1」

今回連続投稿です。
前話の閲覧忘れにご注意を。


行こう行こう。

みんなのお家を造る為、みんなの居場所を創る為。みんな一緒にがんばろうっ!

みんなでやろう、みんなでつくろー。みんな一緒でしあわせだ♪

 

ワカバだよっ! …コイシなの。

華花ちゃん達準備はいーい?

 

「「「「出来てますっ!」」」」

「「「「いつでもいけるよぉっ!!」」」」

「「「「オネェさまと一緒、嬉しいねっ♪」」」」

 

石華達も準備はできてる?

「「「「もちろんです。」」」」

「「「「……何から始めるの?」」」」

「「「「お姉様と一緒、楽しいな♪」」」」

 

『ウルさん達もお願いしますっ!』

「安んじてお任せあれ。」

「「「「「「我が身、我が魂に変えましても。」」」」」」

「「「「「「我等が女神の望むモノをこの手に掴むのだ!!」」」」」」

 

じゃあ、いっくよーっ?

アデルの森の大改造。

『みんなの居場所をつくっちゃおうっ!!』

 

 

「よし。獣化を使える者は少女達を背に乗せよ。それ以外も各地に散らばり、周囲の散策、そして遊撃を。我等ウルは目にして耳、牙にして盾、そして足となりて彼女らを支える。もはや決して彼女らを傷つけるな!!」

 

「「「「「「おう!!」」」」」」

 

「さぁ皆さん、我等の背にお乗り下さい。」

「「「「「「わぁ、ありがとぉっ!!」」」」」」

「「「「「「モフモフだ。」」」」」」

 

「しっかり掴まっていて下さいね?」

 

「「「「「「はぁい!!」」」」」」

「「「「「「わかった。」」」」」」

 

「では貴方方は我等の背に。」

「必ず貴方方をお守りします。」

 

「ありがとうウルさん達!!」

「……信じてるよウルさん達。」」

 

「では行け、蒼たるウルよ。少女達の言葉を聞き、女神の願いを形にする為に!!」

誉れ高き使命の為に!!」

「「「「「「うぉぉぉぉっっっっん」」」」」」

 

 

すごいすごい。

はやいはやいっ!!

 

これならどんなトコでもひとっとび。

どんな場所でも一瞬だっ!!

 

いろんな場所にいけちゃうね?

いろんな誰かにあえちゃうね。

 

そしたら皆を誘っちゃおうよ!!

そしたら皆の悩みが聞けるね。

 

みんなの居場所を造るんだもの!!

みんなと一緒を創るんだもの。

 

「「みんなを仲間に誘っちゃおう!!」」

 

 

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

 

「草さん木さん、お話聞いてくれる?」

 

『おやおやこれは女神の家族のお嬢さん。ふふ、言いたい事は伝わってるさ。ワタシ達は既に女神と共にある。皆の家を造るのだろう。皆が住みやすい居場所を創るのだろう。ならばワタシたちの中から多すぎる仲間をお遣いなさい。』

 

「いいの大っきな木さん?」

 

『我等は種にて生きるモノだ。多すぎてもまたその繁栄はならず。天の恵みは一定で、地の恵みを奪いすぎればたちまち全てがやせ細る。この森は古い時代の神々の気まぐれによって膨大な地の力を持つが、しかしそれに循環がとても追いつかぬ。

 

女神の娘よ。それを為す為、我等を動かす奇跡を授けてくれないだろうか。我等達の無駄を省けば、それだけ森は豊かになり、そこに住むモノは栄えよう。』

 

「もちろん!」

 

『また長い時の流れによって、苦い土が好きなモノがすっぱい土に囲まれている。あるいはその逆もしかり。彼らの言葉を聞き石土の娘に頼み、それらを入れ替えてくれないか。そうすればさらに。さらにさらに森は豊かなモノへ変わるだろう。』

 

「わかった。色々教えてくれてありがとう。大っきな木さん!」

 

『ふふ、礼などいらないさ。

我等もまた女神と共にあるモノ。みんな一緒に頑張るのだろう?』

 

「うん、みんな一緒!」

 

『所々にワタシのような古い木はいるものだ。彼らに聞けば草木事の悩みはわかるだろう。女神の娘。物言わぬモノの声を聞けば、自ずと答えは見つかるだろうさ。』

 

「わぁ、ありがとうございます!」

 

「ウルさん達、散らばった華花の子達に草木さんの悩みを聞いてあげてって伝えてくれますか。石華の子達にも華花の子達と一緒に苦い土さんを探してコイシちゃんと共鳴してすっぱい土さんと入れ替わるようにして欲しいって、伝えてほしいの。」

「承知しました!!」

 

 

 

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

 

『おやそこに行くのは女神の娘かい。』

「大きな岩さんこんにちは。」

 

『ふふ、こんにちは。話は聞いている。皆の住処を造るのだろう。どれ、我等が形を変えてお家とやらになってやろうじゃないか。』

 

「いいのですか?」

 

『そのかわり大事に使ってくれよ。路傍の石でいるよりずっと長く、時の流れを刻めるように。そうすればワタシ達も悪い気はせんものさ。』

 

「はい、ありがとうございます。」

 

『我等が一度形を変ずれば動かしづらくなる。その前に、森の中の我等のようなモノ達に声をお掛けなさい女神の娘よ。そうすれば彼らもまた手助けしてくれよう。

また、時と共に水と混ざりあり、すっかり緩くなってしまった我等がいる。そのような場所は土地ごと崩れやすくなる。彼らを助けてくれないだろうか?』

 

「ええ、やってみます。親切に色々教えてくれてありがとう大きな岩さん。」

 

『なに年寄りのおせっかいだよ。我のように時を重ねたモノ達は多くの知識を持つだろう。声をかければ何かしらの助けになってくれるだろうさ。みんな一緒を実現してくれ。』

 

「はい、必ず。」

 

「ウルさん達、散らばった石華の子達に大きな岩さんにお家になってくれないか頼んで見て欲しいって伝えてくれる。私が共鳴してみる。華花の子達にも石土の子達と一緒に柔らかくなってしまった土地を見つけ、ワカバと共鳴して草木を動かして地を固めて、地の中の水を吸い上げて欲しいって伝えてほしい。」

「承知しました。」

 

 

行こう行こう、みんなと一緒に、みんな一緒になるために♪

 

草木は進むよ、どこまでも。もっと豊かになる為に。

石土は進むよ、どこまでも。さらに豊かになる為に。

 

石土は進むよ、どこまでも。みんなのお家になる為に。

草木は進むよ、どこまでも。みんなの居場所を護る為。

 

行こう行こう、みんなと一緒に、みんなを笑顔にする為に♪

 

 

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

 

『森が動いてる。』

『草が土が、木が岩が。豊かになろうと形を変えている。』

『我等が母は在り方を変えたのか。』

『我等に見向きもしなかった女神が、やっと我等を見て下さった。』

『ワレラ ツチ ノ モノ、コボルト ウレシイ。』

『我等緑の種族、ドライアドは歓喜する。』

『我等、岩の民、ストーンマンは感動する。』

『ワレラ キ マモノ、リビングウッド カンシャ。』

『我等も、我等も、我等も、我等も……』

『この思いを我等が母たる大地母神、アルメリアへと捧ぐ。』

 

『おお、アレを見るが良い。』

『番人に跨るかのヒトの少女の輝きを。』

『アレこそは我等が母の権能。』

『使徒たるモノの御印よ。』

『草木の使徒と、石土の使徒。』

『大地を想うアルメリアの、新たな使徒』

『『『『『『使徒様に挨拶を』』』』』』

『『『『『『使徒様に感謝を伝えよ』』』』』』

 

時を同じくして違う場所で、彼女らは多くの大地の種族から声をかけられた。

 

「わぁ。みなさんこんにちはっ!」

「皆さん、こんにちは。」

『おお使徒様、ご機嫌麗しゅうございます。我等大地に与する者の母たる大いなる根源神アルメリア様の使徒たる貴方様にお会い出来た事、誠に光栄にございます。』

『ワレラ ウミダス ハハ アルメリア ノ シトサマ ヨ。カンシャ スル。』

 

「ちがうよ?」「違います。」

 

『何が違うとおっしゃるのです。我等が同胞たる物言わぬ、動けぬ筈のこのアデルの大地をそのように動かせる偉大なお力。それはまさしく我等が母、アルメリア様のお力です。貴方様方が、かの女神の使徒様である事は疑いようもございますまい。』

『アナタ イダイナ チカラ ツカウ。アナタ アルメリア サマ ノ シトサマ』

 

「私たちアルメリアさんの使徒じゃないもの!」

「私たちヴィリスカムィ様の使徒だもの。」

 

『なんと。ならば我等の大地はアルメリア様以外の女神を新たな母として選んだと。貴方様方はその使徒様であらせられると、そうおっしゃるのですか?』

『ヴィリスカムィ アタラシキ イダイ ナ カタ カ?』

 

「そうだよ、動けない大地はヴィリスカムィ様と一緒にこれから生きるのっ!」

「そう。物言わぬ大地はヴィリスカムィ様と共に歩む事を決めたわ。」

 

『ヴィリスカムィ様。虹の橋の神様……。これは大変な失礼を。謝罪いたします、虹の使徒様。ではこれなる新たな偉大な御方は一体どのような御方なのでしょうか。察しますに我等が同胞を富ませ、何かをなさるおつもりでは?』

『ヴィリスカムィ ダイチ トム ノゾム。ワレラ ノ タメ カ?』

 

「「そうだよ。みんなの為なの!」」

 

『みんな、みんなとは一体?』

 

「石も土も草も木も。そこに暮らす動物たちも。」

「そこに暮らす魔物たちも、人間たちもっ!!」

「カミサマだって、みんな。皆なんだよ。」

 

『ヴィリスカムィ ミンナ デ ナニ モトム?』

 

「みんな一緒に暮らせる世界がいいんだって!」

「だれも泣かない世界がいいんだって。」

 

「みんなで笑える幸せな世界がいいんだって!」

「だれも苦しまなくていい世界を創るんだって。」

 

「世界の全てのみんなの為に、カミサマは居場所を創りたいっていってくれたの♪」

「カミサマはお家を用意したいって、言ってくれた。」

 

「だから草も木もカミサマを選んだの。」

「だから石も土もカミサマに力を貸すわ。」

 

「「ワタシ達はカミサマと幸せになる事に決めたの!」」

 

『おお、なんという事でしょう。奪い合い、殺し合うこの世界の理を変えると、そうおっしゃるのですか。この大地はそのような方を新たな女神と定め奉じたと?』

『アラソウ ナクナル セカイ ノゾムカ。オレタチ ノ タメ。カナシイ ナキ セカイ ツクル ノカ。オオ ナント イダイ ナル オカタ!

ヴィリスカムィ イダイ ナ ナマエ!!』

 

「だからお願いします!」

「貴方達の力も貸してくれませんか?」

「私達だけじゃできないのっ。」

「みんなで居場所を創りたいの。」

「「みんなの居場所を創るの、手伝ってくれませんかっ?」」

 

「我等からも願おう大地の子らよ。我等蒼は女神よりこの誉れ高き偉業に関わる事を許された。だがこれは決して我等だけで叶う事ではないのだ。より多くのモノ達の協力が必要だ。どうか頼む。力を貸してくれ。」

 

『もちろん女神様の元に参じましょうぞ。我等もまた新たな母の望む世界を求めます。我が子らが無為に死なずに住む世界が創れるとあらば是非にも。』

『オレタチ テツダウ イイカ?』

 

「もちろん、ありがとう!」

「ありがとう、森のみなさん。」

「感謝する。お前達で何か必要なモノや、困ったことがあれば我等か、我等と共にいるこの方々に似た少女達に声をかけてくれ。解決するべく尽力しよう。」

 

『ありがたく、では我々は豊かな苦き土の集まる豊かな土地に移りたいと思います。』

『オレ ドウクツ スキ。イイ バショ モトメル。』

 

「森の北の方に今苦い土さんを運んでいる所なの。それを求める草木さんがそこに沢山いるの。そこなんてどうかしら!」

「森の南の方で固い岩さんがお家になるために頑張ってくれてる。彼らが居なくなった場所には洞窟が沢山できるの。そこにお家を造りましょう?」

 

『おお、これはなんとありがたい。ならば我等は道道にて我等のような大地の子らに声をかけて周りましょう。新たなる虹の母が世界に調和を望んでいると。争わず、奪われずによい世界を求めて、あらゆるモノの協力を望んでいる事を。

もちろん我等も協力を惜しみません。いつでも我等にお声をおかけ下さい。』

『オレ ミナ ツタエル。シンナル イダイ ナ オカタ ノ シトサマ。ミナ ノ ウチ ツクル コト。ミンナ イッショ イキル ツタエル!!

オレタチ デキルコト アレバ イウ。オレ ツクル タイ アラタナ セカイ!』

 

「ありがとう森のお姉さん!」

「ありがとうコボルトさん。」

「感謝する大地の子らよ。」

「「みんな一緒にがんばろうっ!」」

 

 

(ウル達よ。新たに仲間になった魔物達の話をまとめ、それぞれに協力を乞え。彼らの住処への希望や願いを、そして彼らの出来る事を細かく聞き出すのだ。)

 

(我等だけでは決して女神の願いには届かぬ。足らぬモノ、満ちすぎたモノ。誰かには必要ないモノ、誰かにとって必要なモノ。彼らにしか無い力、誰かにとっては特別な力、それらを正しく振り分けて、我等は女神様の望みを果たす!!)

 

 

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

 

『森が、動いてる……』

『石が、土が、草が、木が、勝手に動いてる。』

『先頭にヒトの女の子と番人がいるよ。』

『コボルト達や、ストーンマンも、リビングツリーにドライアドまで一緒だ。』

『全然バラバラな魔物達が人間達と何かやってる。』

『楽しそうに笑い合ってる。』

 

『不思議だね。』

『不思議だ。』

『ヒトはボクらを追いかけて追い払うのに。』

『ヒトはボクらをすぐ捕まえてさらうのに。』

『ヒトは嫌い。いっつもボクらを殺すから。』

 

『森で何かが起こってる。』

『さっきのお歌も凄かった。』

『森が歌えるなんてボク始めて知ったよ』

『ボクも。』

『ボクも。』

『凄かった♪』

『楽しかった♪』

『また聞きたいね♪』

 

『あ、女の子が近づいてくる!』

『あ、番人が近づいてくる!』

『あ、ドライアドも一緒。森の娘、ボクらの考えたコト思念で呼んじゃう。』

『ドライアド、ボクらに思念でコトバを伝えて来る。』

『ボクらのこそこそ話聞かれてるのかも。』

『ヒトの悪口、女の子に伝えられちゃった?』

 

『ボクたちイジメられるかも。』

『やだぁ、コワイ、コワイよう。』

『やめて、来ないで。』

『僕たち弱いスライムだもの。』

『何もしないから見逃して!』

『殺さないで!』

 

『我等が使徒様のお言葉を伝える。か弱きモノ達よ、耳を傾けなさい。』

「スライム達よ、どうか我等の話を聞いてほしい。」

「スライムさんこんにちは。お願いワタシの話を聞いて下さい。」

 

『ぷるぷる。ぷるぷる』

『ぷるぷる。ぷるぷる』

 

「む、怖がらせたか。すまぬね。我等ははお前たちに危害加える気はないんだ。そう震えてくれるな。」

「驚かせてごめんなさい。スライムさん」

 

『……森の番人とヒトの女の子が、弱っこいボクらなんかに謝ってくれたよ?』

『……ボクラが怯えてるの知って、気遣ってくれた。』

『不思議だね。』

『不思議だね。』

『……どんなお話ですか、番人。ヒトの女の子?』

 

「あのねスライムさん。私たち今みんなのお家を創ってるんだけどね。」

「魔物も動物も、人も神様すらもみなが笑って暮らせる居場所を創っているのだが。」

「私と一緒に頑張ってくれないかなぁ?」

「我等と共に幸せな世界を目指さないか。」

 

『すごい、すごいっ。そんなの出来るの!?』

『すごいけど、ボクには無理じゃないかなぁ?』

『アナタたちはどうしてそんなモノを創るの?』

 

「あのね、ワタシをヒトにしてくれたカミサマが言ったの。みんな一緒がいいって。悲しくない世界がいいって、みんなが笑い合う世界がいいって。」

「その為には多くのモノの力が必要なんだ。どうかお前達の力を貸してほしい。」

 

『はじめてそんな事言われた!』

『そんなカミサマがいるの?』

『みんなが悲しくないって。』

『みんなが笑い合うんだって。』

『ボクたちもうイジメられない?』

『ヒトに追いかけられなくていいの?』

『ボクたちもう殺されない?』

 

「ああ、できるかぎり我等が護る。約束しよう。」

「一緒に仲良くしようっ!」

 

『すごい、すごい!!』

『でもボクたちとっても弱くて何もできないよ。それでもみんなに入れてもらえるかな?』

『いらないやってならない?』

 

「なんにもできなくないよ。きっと出来るはあるんだよ?」

「それを我等と一緒に考えよう。」

 

『『『ほんとう?』』』

 

「ワタシも元は唯の雑草だけど、笑うのは得意っ!」

「我等は耳がいい。鼻も効くな。」

 

『可愛い!』

『すごいっ!』

 

「ワタシはね、草さんと木さんのお話を聞けるの。それでみんなの困った事を聞いたり、みんなができる事を教えてもらうの!」

「我等は獣の言葉がわかるぞ。」

 

『わぁ、それならボクらも何かできるかも!』

『ねぇねぇ、ボクらのできる事聞いてくれる?』

『ボクラもみんなと頑張りたい!』

 

「もちろん!」

「いいとも。」

 

『ボクね、はねれるよ!』

 

「ぽよんぽよん、可愛い!」

「ふむ、確かによく跳ねるな。」

 

『ボクね、転がれるよ?』

 

「くるくる廻って楽しそう!」

「ほう、中々速そうだ。」

 

『ボクね、溶かせるよ。呑み込んだモノ少しずつ溶かして食べるの。すっごくゆっくりだけど、食べるとボク大きくなって、お腹が減ると小さくなるの。』

『それボクもできる!』

『ボクも!』

 

「すごい!!」

「ああ、それはすごいな。例えばだが木の皮だけを食べたりなどはできるのだろうか?」

 

『できる!!』

『溶かすのは食べる時だけだよ。だから大丈夫。』

 

「それって、木の葉や木くずなんかを溶かして、柔らかくしたりできるかな?」

 

『できる!!』

『溶かすのはゆっくりだから、一気に呑もうとしなければ大丈夫!』

 

「わぁっ、凄い!」

「我等はそういう力を求めていたのだ。皆の家を造る為には木の皮を大量に木から剥がす必要がある。草木の中にはそういう柔らかい木くずを求めるモノも多い。」

 

『わぁ、そんな事始めて言われた!』

『ボクたちも力になれるの?』

『ボクたちが凄いって!』

 

「お願いスライムさん。私たちと一緒に、みんなの為に力を貸して!」

「頼むスライム達よ。全てのモノの居場所を創る為、お前達も共に来てくれないか?」

 

『うん、やる!』

『ボクもボクも!』

『そしたらボクたちも一緒かな。もう怯えなくて大丈夫かな?』

 

「うん、みんな一緒!」

「共に笑い会えるよう、力強きモノがお前たちを護るさ。もちろん我等もな」

 

『わぁ!』

『ボク、ボクたちを呼んでくる!』

『何をすればいいのかな?』

 

「まて。お前達の足では時間がかかる。我等の一頭に乗っていけ。」

「ほらスライム。落ちるなよ?」

『どれ、私が落ちぬよう抑えてやろう。』

『わぁ、ボクら森の番人の背中に乗ってる。森の娘と一緒に。こんな事夢見たい。』

 

「じゃあ、そこのスライムさんはワタシと一緒に来てくれる?」

『わぁ、ボク今ヒトの女の子の頭に乗ってる。優しくボクを撫でてくれてる!』

「私、ワカバ。私の髪の毛溶かさないでねスライムさん?」

『溶かさないよう。友達だもん♪』

「ぽよぽよ楽しい!」

『ふわふわ楽しい!』

 

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

みんな一緒に頑張ろう!

 




閲覧ありがとうございます。
1話で感謝をまとめられませんでした(^^)
続きは明日、投稿予定です。

しばらくぶりの投稿で申し訳ありません。
実は現在、活動報告でも書かせて頂いている通り、拙作のリメイクを考えている所なのですが、そちらの方で試行錯誤をしていたらどうにも筆が止まってしましまして。
一度アップした話を取り下げてみたりと、ご迷惑をお掛けした次第です。
そちらも読んで下さった方には、改めてお礼申し上げます。
一応目処が立ちましたのでこちらの投稿を再開させて頂きます。


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58)300pt感謝回「アデルの森ビフォーアフターズ2」

まだ続きそうです。


行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

ときにはケンカもするけれど。

 

 

「テメェラの話はわかった。だがオレらオーガは御免だ。もちろん子分の豚共もな。」

「……なんでですか?」

「理由を聞かせてもらえるか。」

 

「単純な話だ。オレらは力のあるモンが一番エライ。オレはコイツラの中で一番強い。そしてテメェラより強い。だから従わねぇ。俺が頭だってんなら考えてやる。」

 

「……私達で一番偉いのはカミサマ。だからそれはできません。」

「貴様は確かに強いが我等の長たる天狼には劣る。それはとても受けられぬ。」

 

「なら、話は終わりだ。その天狼とやらを連れてこい。もっとも、オレラはオマエラを生かして返す気はないがな!!」

 

「ああ、でたよ頭のバカ理論。まったく後先考えねぇんだから。」

「ホントに天狼きたらどうすんだよ。先のコト考えろよバカ。」

「ま、そんな奴に従ってるオレらも充分バカだけどな。」

「しゃあねぇなぁ。おうブタども。やるぞコラ!」

 

「「「「「オデ達戦いたくないど。」」」」」

「「「「「デモお頭の命令は絶対だど。」」」」」

「「「「「森の番人コワイどぉ……。」」」」」

「「「「「天狼きたらしんでしまうど……。」」」」」

 

「うっせえぞっテメエラ、後ゴチャゴチャ抜かしてねぇでっ、とっととしろやクソブタどもがっ!」

「言うこと効かねぇと頭から喰っちまうぞぉっ!」

「そら、やるんだよ!!」

 

「「「「「「ひぃっ、や、やるどぉっっ!!」」」」」」

「「「「「「オーガ怖いど、オダたちやるしかないど!!」」」」」」

 

「……!!」

 

「コイシ殿を護れ、我等よ!!」

「「「「「うぉぉぉぉっっっっん!!」」」」」

「「「「「「オーガ メ。 ブタ ゴトキ ガ」」」」」」 

『『『愚かなオークどもめ、森の怒りを受けよ!』』』

「「「シトサマ マモル」」」

「「「ストーンマン戦う、みんなの為に」」」

 

(すぐに我等が増援に駆けつける。それまでコイシ殿を死守せよ!)

(もちろんだ。蒼は彼女達をもう奪わせない!)

 

「……みんな出来る限り彼らを傷つけないで。」

「しかし、それでは!」

「私の方が強ければ従うって言った。だったらコイシ、頑張る。

……みんなごめん。」

「……わかりました。我等はコイシ殿のお言葉に従います。やるぞ、皆!」

 

「はっ、まさかオメェみてぇなチビがオレ様に勝つつもりってかぁ!

笑わせるなよ、小娘がぁっっ!!」

「……はっ!!」

「ぐぅっ!?

オレの一撃を喰らいながら、殴り返しやがった! はっ、面白ぇなぁ!!」

 

「各自相手の無力化を優先しろっ。皆仲間同士助け合い、支え合って、この場を切り抜けるのだ!!」

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

「「「「「「ワカッタ」」」」」」

 

「「「「ヒャッハァー」」」」

 

「「「「「「行くどぉっ!!」」」」」

「「「「「「怖ぇけど頑張るどぉ!!」」」」」

 

 

「我が女神に祈り給う、そのお力(シャイニング)で我らの(レイン)今を照らし給え。」

「き、綺麗な光だど。」

「た、戦いたくなくなるだ……。」

 

「ああん、馬鹿か。敵も味方も回復させてどうするってんだ。」

「私は争いたいわけじゃない。」

「はっ、綺麗事をっ!!」

 

「ブタども、何ぐずってやがる!!」

 

「カラメ トル」

「うぁぁ、オダ木に掴まっちまったどぉ。」

「う、動けないどぉ。」

「でも痛くねぇど?」

「傷が癒えて……。この光、オダたちも回復してくれてるど!!」

「オダたち掴まっちまったど。もう戦えねぇど。」

「そういうコトにするど。」

 

「テメェラ、いい加減にしねぇとその木ごとブッタ斬っちまうぞこらぁ!!」

「むしろ斬る!!」

 

「「「「「ヒィっ!!」」」」」

 

「させぬ。」

「ソラ オーガ ドモ 。 オレ タチ ワスレルナ。」

「そら、お前たちの相手はこの我々だ。」

 

「ちぃ、ストーンマンとコボルト風情がっ!!」

「さっきから妙にジャマな岩男と半端獣どもだぜっ!」

「獣頭め、岩男とリビングウッドの影に隠れてこそこそとっ。」

「狼どももだ。邪魔くさい戦い方をっ!!」

 

「うわぁっ。」

「やられたどぉ。」

「そういうコトにするどぉ。」

 

「テメェラっ!!」

 

「はっ、我等とオークばかりにかまけていて良いのか?」

 

「なにを!!」

 

『万物に宿る精霊よ、草木を操り転(プランツハンズ)びに誘え』

『万物に宿る精霊よ、木の葉を舞(イリュージョン)わせ惑い(リーフ)を見せよ』

『万物に宿る精霊よ、茨を操り敵(ソーンバインド)を捕らえよ』

 

「くっ、足が。うぉっ茨なんぞにっ!!」

「カラメ トル。」

「クソがぁっっ!!」

 

「ココダ オーガ。」

「こちらから行くぞ!!」

 

「ああ、めんどくせぇ。コボルトと狼どもが増えやがったっ。どれがホンモンだクソっ!!」

 

「さてどれだろうなっ!」

「ぐぅっ!!」

 

「ドライアドを潰せっ、魔術を食い止めろっ!!」

 

「ち、近寄れねぇど。」

「ストーンマンとコボルトと狼に守られて。」

「リビングツリーの枝にジャマされて。」

「枝から魔術が伸びてくるんだど!」

「うわぁっ。」

 

『万物に宿る精霊よ、草木を操り転(プランツハンズ)びに誘え』

『万物に宿る精霊よ、木の葉を舞(イリュージョン)わせ惑い(リーフ)を見せよ』

『万物に宿る精霊よ、茨を操り敵(ソーンバインド)を捕らえよ』

 

「「「「「「うわぁっ!!」」」」」」

 

「「クソっ、がぁっ!!」」

「ちっ、なんて面倒な奴らだ。……本来雑魚のコボルト風情が、こうもやっかいに感じるなんざどういうこったっ。」

 

「ワレラ ダケ ナイ カラナ。」

「マモリ ストーンマン。」

 

「護る。」

 

「ボウガイ リビングウッド。」

「カラメ トル。」

 

「ワレラ タスケル。」

「ワレラ ジャマ センネン スル。」

「ソウスレバ。」

 

「くそぉっ、狼どもぉっ!!」

 

「うわぁっ、木に絡め取られたどぉっ。」

「足がもつれてっ。」

「アレっ、コレまぼろしか?」

「うう、コボルトとリビングツリーが邪魔でとてもドライアドまで近寄れねぇど。」

「ソイツらを倒そうにも岩男に護られて。」

「そうこうしてたら……。」

 

「そらオークども、少しばかり遊んでやろう!」

 

「「「「「狼達がくるんだどぉっ!!」」」」」」

 

「はっ、雑魚らしい面倒な戦い方だ。」

 

「……みんな雑魚じゃない。」

 

「助け合うというのさ、単純頭っ!!」

「1人で出来ないのならみんなで。」

「足らない所を補うのだ!!」

 

「しゃらくせぇっ!!

戦いってのはそうじゃねぇっ。もっと単純で、純粋なんだ!!

力ってのはそういうモンだろうがぁっ!!」

 

「くっ!」

「ぐぁっっ!!」

「……流石はオーガジェネラル。棍棒の一振りで我等を押し返すとは。」

 

「ウルさん達!」

 

「これが力ってモンだぁっ!!」

「……させない!」

 

「ぐっ、またカウンターをっ。

……そうだ、テメェはちっと分かってる。そういうこった、チビ。」

 

(そうだ。力ってのはぶつかり合いだ。余計なモンはいらねぇ。自分と自分をぶつけ合う。そういうもんだ。このチビはわかってる。俺の攻撃を真正面から受けて殴りかえしてくるなんざ、並の根性じゃねぇ。)

 

「くあっ。……チビじゃない。」

 

「あん。」

「コイシ。それが私の名前。」

 

「はっ、知るかよ。そう呼ばれたきゃ、俺に勝ってみせろやチビスケがぁっ!!」

「……頑張る。」

 

(面倒で厄介な奴らの中で、このチビだけはずっと真っ直ぐだ。真っ直ぐ自分をぶつけてきやがる。テメェとの戦いは悪くねぇ。悪くねぇぞチビスケっ!!)

 

「そこまでだ。」

「あん、なにをっ!?

なっ、天狼っ!!」

 

「……ウルさん。」

 

「「「「「「ひぃっ天狼だどっ。ホントに来たんだどぉっ!!」」」」」」

「ちっ、さすがに分が悪いぜ、頭ぁ。」

「ああ。オレラが束になっても勝てない相手だ。」

「……それ以前に俺ら今動けんけどな。」

「……言うなよ。」

 

「コイシ殿、皆、無事でよかった。後のコトは私にまかせろ。」

 

「スターウルフ。ナントイウ カガヤキ。」

「蒼天を往く者。なんと頼もしい。」

「カラメ トル。」

『あんたそれ気に入ったの?』

 

(ちっ、なんでぇ。せっかくちっと楽しくなってたってのによ。終いってか。流石に天狼相手じゃどうにもならん。が、ケツまく気なんざ端からねぇし、気に入らねぇモンに下げる頭なんざ持っちゃいねぇ。なら、とことんヤルっきゃねぇだろうよ。)

 

「……けっ、こんなすっきりしねぇ戦いは始めてだ。ああ、だがこれも戦の習いってか。こいよ天狼。俺ぁ死ぬまで止まらんぜ?」

「戦鬼め。ならば言葉通り、我が力を見せつけよう。」

 

「……待ってウルさん。」

「コイシ殿?」

 

「まだコイシとオーガさんの会話が、終わってないから。」

「会話?」

 

「オーガさんずっと戦いながら言ってた。俺はこういうもんだって。不器用だけど真っ直ぐで、……自分の力の在り方に嘘がつけない人。きっと悪い人じゃないよ。」

 

「オメェ……。」

 

「……だからコイシ、もう少しオーガさんと会話してみる。そしたらきっと、オーガさんとも分かり会えるから。私にやらせて。」

 

「……危うくなれば止めに入ります。それだけはご容赦を。」

「うん。」

 

「勇敢な女の子だどぉ。」

「頭を正面から受け止める気だど。」

「す、凄い女の子だど。」

 

「はっ、バカがいるぜ。ウチの頭並の大バカだ。」

「後は大将同士でって奴か。この状況で。」

「まさか人間にそんなバカがいるなんてな。」

「だがまぁ」

 

「「「「悪くねぇなぁっ!!」」」」

 

(はっ。バカがいる。俺並の、俺以上の大バカだ。ああ。悪くねぇ。本当に悪くねぇよオメェ。ああ、なんだっけコイツの名前。)

 

「おう、テメェコイシっていったか?」

「? そうだけど。」

「テメェにゃ似合わねぇ名前だな。」

「私は気に入ってるけど。」

「テメェみてぇな小石がいてたまるかよ。小石にしちゃあちっとデカすぎんだろ。」

 

カラン。

 

「棍棒いらないの?」

「おう。テメェも素手だ。俺だけエモノ使うってのも違うだろうが。」

「……ホント、不器用な人だね。」

「へっ、言ってろい。おう。なんだ。……ありがとよ。」

「ううん。私がやりたかっただけ。」

 

「そうかい。じゃあよ、やろうぜ?」

「……うん。」

 

日が沈みきり、辺り落ちきった暗がりの中、夕日を背負ったような光を放つ小柄な少女と、武骨なオーガの決闘はこうして始まった。

 

「オラ、頭ぁ負けんじゃねぇぞっ!!」

「チビスケも頑張れやぁ!!」

「……コイシ殿の戦い方は心臓に悪いな。」

「ばっか、アレがいいんじゃねぇか?」

「そうかね?」

 

「コイシサマ ガンバレ!!」

「どっちも頑張る。」

「女の子、頑張るだぁ!!」

「頭、空気よむだぁっ!」

「オマエラはコチラ側なのだな……。」

「ブタどもぉっ!!」

 

『ああ、なんという事だ。なにもあんな野蛮なオーガに対して使徒様みたいな女の子が張り合う事はないでしょうに。』

『男どもってこういうの好きだよね……。』

「コイシ殿は女の子なのだがなぁ」

『イケメン系女子だわ。』

「カラメ トル。」

『とるな!!』

「それ、気に入ったのだな?」

「♪」

 

 

戦いが始まってしばらくすれば、そこにはもう戦場の張り詰めた空気など欠片も残っていなかった。誰もが小柄な少女とオーガの戦いを見守り、その結末を思いながら声を張り上げる。その光景はとても今まで戦っていた者達のものとは思えない。

 

もはやその結末を細かく気にしている者などそこにはいなかった。どっちが勝とうとも、どうなろうとも、もはやいがみ合うような場面は終わっている。

小柄な少女がオーガとの戦いを望んだ時点で、終わっているのだ。

 

だがそれとは別に、決着は必要だった。

 

先に倒れたのはコイシの方だ。もとより地力が違うモノとの一騎打ち。こうなる結果は見えていた。しかしそれを不満に思っているモノがいる。

 

「おう、どうした。足に来たかよ?」

「……少しだけ。」

「そっかよ。ああ、俺もちっと疲れちまったわ。一端休憩だ。」

「そう。……ありがと。」

「ばっか、俺が疲れただけだ。」

 

(テメェの根性は認める。テメェの真っ直ぐな拳は嫌いじゃねぇ。けどどうしたってそれだけじゃ俺には届かねぇ。ああ、どうすっかなぁ。手抜くわけにゃいかんしなぁ。おかしいなぁ。なんで俺こんな事考えてんだろうな?)

 

誰かろうオーガその人である。その小さな身体で、身の丈2m半を超える暴力の塊たる自分の力を真っ直ぐ受け止め続け、戦うオーガの為を思ってずっと拳をふるい続ける少女の事を、そいつはもうすっかり気に入っていたのだ。

 

この少女は本来自分のように何かと戦う事が好きではない。だがそれでも自分以外の為ならば。仲間と、これから仲間になる誰かの為ならば、決して諦める事なく挑み続ける奴だ。絶対曲がらねぇ奴だ。そんな事が。

やり合いながら分かったいたから。

 

そんな奴が力に屈する姿を、オーガはなんとなく見たくなかった。面白くなかった。できるならどこまでも突き抜ける、ソイツの行く先こそが見たかった。

だが同時に、力には嘘をつけない。

 

そのオーガはどこまでも不器用で。

だからこそ悩んでいた。

 

「なぁ、アンタの頭ってどんな奴だ。」

「カミサマの事?」

「……おう。」

 

それは悩んだ末の時間稼ぎ。少しでも勝利を長引かせる為の、そういう思いからの一言だった。

 

「すごく優しい人。特別でもなんでも無い、唯の路傍の石だった私を、私の友達を家族だって言って本気で抱きしめてくれる人。」

「はっ、そりゃあ大した奴だな。」

 

(コイツはそういう奴だったんだろう。本来多くに埋もれる唯の石っころのような奴。そんな奴がここまで磨き抜かれちまうほどに、ソイツは手をかけてやったんだろう。そりゃあ並大抵でできる事じゃねぇ。)

 

「うん。それで私の友達が死んだ時、本気で泣いてくれた人。なんでもない私たちを思って、世界の在り方全部を変えようと、動き出してくれた人。本気で世界を変えようと、みんなの幸せを願ってくれた、私の家族。」

「……そうかよ。」

 

(聞けば聞くほどにすげぇ奴だった。俺なんざ比べ物にならん位の最高のバカ野郎。どうやら神様の世界にも漢って奴はいるらしい。確かにそんな奴の下でなら、こういうバカが育つってのは納得だ。)

 

「……だから私たちは決めたの。土も石も草も木も。そんなモノの幸せさえ本気で願ってくれるカミサマの目指す世界を創ろうって。世界みんなが笑って暮らせる居場所を創ろうって。その為ならコイシはなんだって出来る。絶対に諦めない。」

 

「ああ、そうだろうな。

……オメェならやるだろうよ。」

 

(ああそっか。コイツは負けようが諦めねぇ。なんも悩む事じゃあねぇわ。そうだ。いいじゃねぇか、ここで俺が勝っちまっても。コイツなら、諦めねぇ。次がありゃあ、きっと勝つまで向かってくる。それでいいじゃねぇか。)

 

「おうオメェ。もし俺がここで勝っちまっても、俺ぁきっと天狼にゃ負けるだろう。だが俺が本当にオメェラの仲間になんのは、納得すんのはそこじゃねぇ。

 

……またいつかオメェが強くなったらよ、またやろうぜ。いつでもいい。何度だっていいんだ。そんでオメェが俺に勝ったら、オメェが俺の天辺だ。バカどもの大将だ。

そういうこって、どうよ?」

「……うん。凄くアナタらしいと思う。」

「はは、そっかよ。……ガラガだ。」

 

「ガラガ、約束。」

「おう。さってそろそろケリ、つけるかねコイシよぉ。」

 

「うん、でも。」

「あん?」

 

「……ここでコイシはガラガに勝つよ?」

「はっ、そりゃそうだ。負けると思って戦うバカはいねぇわな!!」

 

大声を出して笑うオーガ。

だが一方で少女の微笑みの意味は違う。

 

「私に今、カミサマから力が流れてきたんだ。きっとカミサマも、何かと戦ってた。すごくすごい何かと。でもカミサマはまたそれを幸せに変えちゃったんだ。そういうモノが伝わってきた。だから、もう。コイシは負けない。」

「おう、やってみろや。そのカミサマへの思い、見せてみろ。全部ぶつけてこいよ。オマエの全部。力は何時だって嘘をつかねぇっ!!」

 

「……うん。」

 

 

(コイツ、強くなりやがったっ!?)

 

立ち会ってすぐ、ガラガには分かった。コイシがこの短い間に恐ろしい程に強くなっている事に。力を隠していたでもなく、何かの魔術に頼ったわけでもない、掛け値なしの存在強化。肌で感じ取れる程の力の塊に。自然と、笑みが溢れる。

 

(こりゃ下手すると天狼並かそれ以上……。

はっ、そうかよ。オメェの想いは、決意ってのはそこまでか。これが目指すモンのあるヤツの力って奴か。ああ、魅せやがった。魅せつけやがった。

バカが真っ直ぐ突き抜けやがったっ!!)

 

何故か笑いが止まらなかった。なぜなら少女のソレが自分の目指したモノであったから。意思を持って、意地を持って自分を超える。その理想の姿が目の前にあった。

 

「いくよ?」

「おう、こいやぁっっ!!」

 

先程までとは真逆、コイシの拳を止めるようにガラガが力強く少女を殴りつける。しかし少女は欠片も揺らがず。ただ真っ直ぐに突き進む。

真っ直ぐに、真っ直ぐに。

 

最短距離でガラガを射抜く。

 

「しっ!!」

「がぁぁぁっっっっっ!!」

 

意思の拳は、揺らがない。

 

 

「おお、やりやがったっ。遂にチビスケが頭っぶっ飛ばしやがったぞぉっっ!!」

「……なんという事だ。コイシ殿……。」

「すごいだぁっっ、あの頭が空に舞っちまったどぉっ!!」

「コイシサマ カッタ。ナントイウ イチゲキ。」

「おいおい、なんの冗談だこりゃ?」

『やりましたね、使徒様~。』

「アレハ カラメ トレナイ。」

「オメェの基準ってそこかどぉ?」

「ははっ、どうやら我等の使徒殿は随分とお強くなられたらしい。」

「頑張った。両方、よく頑張った。感動した。」

「たまげたなぁ。はは、新しい頭だ。」

 

こうして彼らの語り合いは終わりを遂げる。

敵であったモノも、味方も。等しく抱き合って歓声をあげる。

 

「……大丈夫?」

「……おう。オーガの再生力なめんな?

けどちっとこりゃ、時間がかかりそうだがなぁ。」

「そう。なら、

我が女神に祈り給う(アンチ)、そのお力で我らの(エイジング)今を護り給え。」

 

「こりゃあ、傷の治りが早くなってんのか?」

「カミサマのくれた力。新しいの使えるようになったから。私はプリーストじゃないから回復魔術は使えないの。ごめんね?」

「いや、充分だろ。これとオメェの光、んで俺の再生力。あっという間に傷なんざ塞がるわ。てかオメェ自身にかけろよコレ。傷浅くねぇだろ。」

「うん。そうする。」

「はっ、普通そっちが先だろが。……俺の大将は心配性でいけねぇや。」

「じゃあ?」

「おう、俺とアイツラ、こっからは大将の下でやらせて貰う。俺ら見てえなならずモンの相手は任せろ。全部大将の下につくようにしてやるぜ!」

「下じゃない。」

「ん?」

「上も下もないの。みんな一緒。役割だけ違うの。だから、下じゃないよガラガ。」

「へっ、そうかよ。

まったくとことん名前の似合わねぇ女だ。」

「?」

「オメェみてぇに全てを受け止める小石がいてたまるかよ。ちっちゃい身体でこの地面かなんかみてぇに揺らがねぇ、大将にゃその名はどうもちっさ過ぎるぜ。」

 

「そう?

でも私はこれがいいの。だって私はカミサマの家族の、特別なコイシなんだもん。」

 

「……はは、そっけないアンタもそんな顔で笑うんだな。おう、やろうぜ。みんな一緒。大将とカミサマの夢、今日から俺もそれを目指すぜ!!」

 

「おう、俺らもなっ、新しい頭っ!!」

「コイシ殿、やりましたねっ。」

「かか、やるねぇ嬢ちゃん。最後の一撃惚れ惚れしたぜ。」

「スゴイ カッタ。 コイシサマ ツヨイ ウレシイ!」

 

「今度の頭は優しそうだどっ、オダうれしいど!!」

「おだもっ!」

「おだ頭にブタって呼んで貰いたいど……。」

「ヘンタイは出荷だっ!!」

「そんなーだどぉっ!!」

「ふむ。なにやら楽しい連中だな?」

 

『使徒様、お疲れさまでした。どうぞお水を。』

「クダモノ タベル?」

「頑張ったオーガも、飲め。」

「おう、ありがとよでけぇの。

……ああ生き返るぜ。ほら大将も飲めよ?」

 

「……ふふ。ありがと。」

 

 

それでも最後は仲直り!

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

みんな一緒に頑張ろう!

 




閲覧ありがとうございます。
皆さん感謝回を書いていたらそれが長編になってしまった経験はありますか。私はあります(白目)
……後2回ほど続くと思います。

こ、これがアデル大迷宮の力かっ!!
森から抜け出せねぇっ。
感謝が溢れているという事でここは1つご容赦を。


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59)300pt感謝回「アデルの森ビフォーアフターズ3」

こっそりファイナルアンケート設置中です。


行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

悲しい事もあるけれど。

 

 

「はっ、そんな話到底到受けられるかよ!」

 

「どうしてですか?」

「理由を聞こう、森山猫《フォレストリンクス》よ」

 

「どうもこうもねぇよ。オレタチは肉を喰わなきゃ生きていけねぇ。端からそんなみんな一緒なんざ無理な話だ。そりゃアンタだって同じだろ森の番人?」

 

「その通りだ、始まりの森を束ねる獣よ。女神の使徒よ。我等もまた肉を食むモノと同じ意見だ」

 

「オメェはっ、狂い鹿(マッドホーン)!!」

「猛獣すら恐れる草食むモノ達の王……。」

「やろうってのか、バケモン角め!!」

 

「ふふ、そう苛立つな肉食むモノ達。私はただ女神の使徒に森を豊かにしてくれた事のお礼と、先程の言葉の答えを聞きにきたにすぎない。さて返答やいかに?」

 

「我々は女神に新たな姿を与えられ肉以外も食べられるようになったが。そうだなそれはゆゆしき問題だ……(元肉食)」

「そっか、そうだよね。どうしよう?(元光合成。雑食なのだが完全な女神の使徒になって食べなくてもよくなった)」

 

「(ぽよぽよ)ボクも一緒に考える!(なんでも溶かす)」

「ワカバサマ。ワレラ モ カンガエル(雑食)」

『獣達は大変よねぇ(光合成)』

「そうだな。俺達、考え、よう(魔素吸収)」

 

「カンガエル ニガテ(光合成)」

「まぁそういうな。一緒に考えようではないか」

「コクリ」

 

 

「カワリニ ワレラ ノ ドウホウ タベル。クダモノ クサ タベル イイ。」

「冗談じゃねぇ。そんなまずくて力のでねぇモンが食えるかよ!」

 

「(ぽよぽよ)果物美味しいよ?」

「草だって美味しいのあるよ?」

 

「ああ、ワカバ殿。肉食の生き物にとってアレラはほとんど栄養にならんのですよ。身体が受け付けませぬ。味も味気なく感じるもので、確かにそれを食べ続けるのは苦痛かと思います」

「おう。あんなマジィもん食えっかよ!」

 

『そんな言い方しなくてもいいじゃない(同族押し)』

「(ぽんぽん)ワカル ヤツ ワカル。オレ クサ モ スキ」

『あら紳士。ふふ、ありがと』

「ふむ。困っ、た」

 

「ふむ……。さてどうするね?」

 

「女神様に頼んで我等の如く新たな姿を与えて頂くのはどうだろうか?」

「わぁっ♪」

「はぁ? 俺に人間になれってか。やなこった。俺らはフォレストリンクスとして誇りもって生きてんだ。んな節操のないモンになるのは御免だ」

「なってみれば中々よいモノなのだがなぁ」

「(ぷるぷる)森の番人、獣の姿にもなれるもんね。ボクもなってみたい!」

「うむ。今度女神様に頼んでみるか(なでなで)」

 

「ふむ。しかもそれは女神がいなければ叶わぬ事だ。お前達の目標はずっと彼女だよりのモノなのかね。全てを神に頼っていてはどのような神でもいずれ君等に愛想を尽かすのではないかね?」

 

「うーん、それは嫌かも!」

「確かにどのような力も無限ではない。女神様の権能に頼ってばかりではいかんな」

『ああ、神様は怠惰を嫌うからねぇ』

「神自体、怠惰な者も多いのだがなぁ」

「それ、以上、いけ、ない」

「イダイナカタ フタン ヨクナイ」

「ソウダナ」

 

「それに草を食むモノばかり増えればいずれ草木もまた枯渇しよう。肉を喰うモノがいなくなれば、我等の数はそれだけ多くなる。そうすればとてもそれらの全てを大地は支えきれまい。

天の力と地の力。それらは上下はすれど決して多くは変わらないモノなのだから」

 

「ウム ワレラ ドウホウ ノ カズ ゲンカイ ハ アル」

「この森は豊かになりそうだけど……」

「(ぽよぽよ)ここだけの事じゃないもんね」

 

「ほれみろ、みんな一緒なんざ無理じゃねぇか。土台、端からがおかしい話なんだ。第一今まで喰われてたヤツが、オレらと一緒になれるわけねぇだろ」

「……それでも我等は諦めたくないんだ。それが女神様と我等の望みだからな」

「けっ」

「もっと、考えて、みる」

『そうねぇ』

 

「コロサズ ニク ダケ テニイレル ドウカ?」

「それが出来れば一番だがなぁ。……ドラゴンの尻尾でも探しにいくか?」

「ふむ。流石に無理があるだろう森の番人よ」

「うぐぅ。……言い返せんな」

 

「この身、肉なら、一部、捧げる、のだが(自然再生持ち・痛覚なし)」

『私を食べてって? ……私のも植物だからなぁ(そもそも人間態が本体ではない)』

「ワレラ モ ナ(というか樹木)」

 

「じゃあ私が捧げるっ!」

 

「あぁん!?」

「「「「いやいやいやいや!」」」」

「ワカバ殿!!」

 

「幼き使徒よ、どういう事か?」

「私ね。さっき神様から力を貰って新しい魔術を覚えたの。それは私たち植物を再生させる魔術なんだけど、私はクサヒトだから私にも効くみたいなの。

だから私を食べて貰えば、お肉の代わりになるかと思ってっ!」

 

「おいおい、こいつなんて事思いつくんだよ……。」

 

「シトサマ……」

「おやめ下さいワカバ殿っ。とても認められる話ではない!!」

『流石にそれはダメですよ。恐れ多い!!』

「(ぽよぽよ)食べられたらとっても痛いよぉ?」

 

「でも草木のみんなも自分を差し出してくれてるわ。だから私も自分の出来ることをしたいもの。それに食べられるのは始めてじゃあないから大丈夫っ!」

 

「始めてでない、とは?」

 

「……言葉通りだ。ワカバ殿は獣に喰われ、その命を落とした事があるんだ草食む者の王よ。……誰からぬ我等蒼の手によってな。」

「なんと!」

「はぁっ!?」

 

「なん、だと?」

「チイサナ ドウホウ シナセタノカ!」

『森の番人、どういう事だい!?』

「(ぽよぽよ)ワカバちゃん大丈夫なの?」

「バンニン キサマ!!」

 

「みんな、やめてっ!

ウルさん達は悪くないよ。憎悪の王って人の力で操られてただけだもの。それに私はカミサマの力で生き返ったもの。ウルさん達とも仲良しだもの。

だから大丈夫だよ?」

 

「確かに我等は憎悪に支配され正気ではなかった。だが、それとて本来女神様自身にすら牙を向け、そのご家族であるワカバ殿を食い破った我等の罪が消えるわけではない。だが、女神様も、ワカバ殿自身も。我等を許して下さった。」

 

「それどころか操られた我等を不憫であると涙を流し、抱きしめて下さったのだ。我等はこの恩を決して忘れない。」

 

「「……我等蒼は、もはや彼女達を傷つける者を絶対に許さない。そう誓ったのだ」」

「ね、だから仲良し。みんな一緒っ!」

 

「……オメェ、仮にも自分を喰い殺したヤツ相手に恨みとかねぇのかよ?」

「それより一緒にいたいもの。みんな一緒の方が楽しいよ?」

「……これが女神の使徒、様か。」

 

「ジヒ ブカキ ドウホウ ヨ。チイサナ タイジュ ヨ……」

「オオ ナントイウ……」

「(ぽよぽよ)ワカバちゃん凄い!」

『まったく敵わないわねぇ使徒様には』

「感動、した」

 

「だから私の身体をかじっても大丈夫だよ山猫さん。一気に食べられちゃうとダメだけど、腕とかだったら治せるの」

「……とてもじゃねぇがそんなんじゃ足りねぇし、流石に殺気だったオメェの仲間の前じゃ無理だわ」

「「「「「「「ギロリ」」」」」」」

「あう……。」

(それにそんな笑顔で笑いかけてくるヤツよ、喰いづらくてしょうがねぇだろ)

 

「使徒様、貴方のお気持ちはわかりました。まずは謝罪を。そしてどうかその身を傷つけるのはやめて頂きたく思います」

「鹿さん?」

 

「申し訳ありませぬ。この老体は貴方様が誠に我等の事を考えて下さる御方であるか、試しておりました。しかしその実、貴方様は自らを犠牲にしてまで我等の未来を考えてくださる御方であった。伏してお詫び申し上げます。

……我等草食む者達はこれより貴方様と共に生きたいと思います」

 

「いいの?」

「ええ。ですが1つお願いがございます」

「なぁに鹿さん?」

 

「幼き我等の仲間の命の守護を。肉食む者に喰われる事なく、人間に襲われる事のない、そのような未来を。我等は貴方様に望みます。

その代わり、年老いた我等から肉食む者達が喰う分の命を提供させて頂く。」

 

「翁、それでは!!」

「鹿さん!!」

「ソノミ ササゲル ト?」

「オメェ、何考えてやがる!?」

 

「なに、草木がすでにやっている事を真似たまでの事。彼らにも意思があり、その上で我等草食む者にその身を差し出してくれるのだ。それを食む我等が、同じ事を出来ぬ道理はない。それだけの事だろう。」

 

「しかし!!」

「そんな事したら死んじゃうんだよっ!?」

『……まぁ、わからなくもないけどね』

「アア」

「イイノカ?」

「……」

 

「ふふ、なに。年老い、力の落ちた我々はもとより肉食む者達に喰われる定めだ。それに私は思うのだ。命は巡っていると」

 

「命が巡ってる?」

「どう、いう、事だ?」

 

「草を食み育った我々が獣に喰われ、数を減らさねばたちまち草は減り、我ら全てが飢えに苦しんだ上、数を減らしてしまうのよ。私は長い長いこの命の中で、幾度となくそれを見てきた。故に命は増えすぎてはならないと。

天の力、地の力に限りがあるならば、命にさえそれは等しくあるのだよ」

 

「……うう」

「オレタチ ト オナジ?」

「それは。……確かに我等にも経験がある」

「(ぽよぽよ)命って難しいね……」

「……」

 

「ならば、それにより失われるのは若く未来を創る若者よりも、年老い、衰えていくだけの我等年寄りであるべきだ。我等が無駄に草を食まねば、それだけ多くの命が栄える事ができましょう。皆もそれでよいな?」

 

どこからともなく草を喰う獣達の声が聞こえる。王と彼らの対談をその影より見守っていた獣達の鳴き声だ。その時、評決は下された。

 

『『『『王よ、リカイした』』』』

『『『『王の決定に、従おう』』』』

『『『『子らの為、皆の為、この身を捧げよう』』』』

 

「……ううぅ」

「翁、草食む者達……」

『……まぁ、私らっぽい考え方では、あるわね』

「ソレデ イノチ サシダスカ」

「……」

 

「それは今までの我等に与えられた無為な死ではなく。とても意義のある死であると私は思う。皆の為に最後に命を使えるならば、誇らしく死に立ち向かえる。

残された血の一片、爪皮さえも何かの役に立って死ねるならば。そんな我等の事を誰かに誇られて死ねるのならば、ね」

 

「……ううぅぅ(ぽろり)」

「ああ、その気高さ。少なくとも我等はお前達を誇りとしよう。その与えられた血肉を誇って、生きていく。」

「オレ ホコル。オマエタチ クサクウモノ タマシイ ホコル」

「……(ちっ)」

 

「……みんな一緒とはきっとこういう事なのです。

みんなで考え、みんなで分かり合い、みんなで称え合って、そしてみんな少しだけ、誰かの為に我慢する事だと。決して己の全てを満たす事でなく、仲間の誰かを思って、少しだけ我慢しあえる優しさが必要なのだと。」

 

「……うう(ぽろぽろ)」

『使徒様……。』

「少し、だけ、我慢、か。」

「(ぽよぽよ)そっか、そうなんだ。」

「……(はぁ)」

 

「その先にまだ見ぬ未来があると。皆がそれを続けていく限り。互いにお互いの誇りを忘れ得ぬ限り。そう、思うのですよ?

貴方様が私に、改めてそれを教えて下さった。」

 

「ナント ヨドミナキ エガオ カ」

「うわぁぁぁん(ぽろぽろ)」

「(ぽんぽん)シトサマ ナクナ」

「……他に何か手があれば、な。」

「……(ふっ)」

 

「そういう事だ、肉食みの。どうだ、ここらで手を打ってくれんかね。お前達には少しばかり硬い冷や飯を食わせる事になるが、仲間が飢え死ぬ事は少なくなろうて。

返答はいかに?」

「はっ、酔狂な爺ぃだ。自分から俺らに喰われる事になって笑ってやがる。」

 

「続く子らの為だ。この身がオマエ達に喰われても、お前達が我が子らを守ってくれるというのなら、真実この身は不滅であろうよ。どうかね?」

「……ああ、受けてやるさ。草食うモンが覚悟を見せた。俺らが覚悟を見せねぇ道理はねぇ。俺らだってそれで子らを飢えさせる事がなくなるなら、これほどありがてぇ話はねぇさ。そうだろ、オマエラ」

 

『『『『おうっ!』』』』

『『『『草食む者にだけ格好をつけさせてたまるものか!!』』』』

『『『『我等肉食む者の意地を見よ!』』』』

 

「安心しろ草を食む王よ。もはや貴様らの子らが何かに怯える必要はない。これから俺たち肉食む者共は、何かを奪う事でなく貴様らを護る事こそ誇りとしよう。

気高き獣を食らう俺らが、爪なき者達の爪牙となろう。

掟を破る者があれば、相応の報いを受けさせる。優しき女神の名前に誓って。」

 

「そうか。かか、それは安心だ。まさか我が命が尽き果てるまえに、我が子らの安寧を看取る事ができようとは。偉大なる女神の使徒様、感謝します。

これで儂は心置きなく、眠りにつけます。儂が一番年寄りじゃからの。」

 

「うぁぁ、ごめんね、ごめんなさい!!

ワカバがもっと賢かったら、もっと、もっと他に方法があるかもしれないのに。オジイちゃん達が食べられる事、なかったかもしれないのにぃ!!」

 

「はは、なにを言う使徒様。この身に礼はあれども謝れる事など何もないのですよ。ありがとう使徒様。儂はこんなにも優しい者たちに看取られて逝ける。こんなに誇らしき死はあるまい。こんなに望ましき人生は他にない。

 

どうか、どうか。いつまでもその気持ちを忘れないでおくれ。喰う者も、喰われる者も。おごること無く、お互いを称え合って、いつまでも仲良くな。」

 

「ジジィ……」

「……ああ、決して忘れぬ。忘れぬとも。その魂はいつまでも我等と共に。」

「メガミ チカウ」

「(ぽよぽよ)うう、わかったよぉ……」

「ワレラ リカイ シテイル」

『ええ、鹿の王。どうか私達を見守っていて下さい』

「仲間、思う。みんな、一緒」

 

「うん、忘れない。絶対、ワカバ絶対忘れないからっ。オジイちゃん達と心ではずっと、ずっと一緒だからっ!(ぽろぽろ)」

 

「そうすればほら。

世界はこんなにも素晴らしい!」

 

それはまごうことなき輝かしき笑顔であった。一切の悔いもなく、およそこれから死にゆく者の顔には見えない。誇りを胸に、堂々と。

自らの運命を選びとった者の、顔だった。

 

「ほれ悲しみでなく、喜びで送っておくれよ皆の者。儂は今から、皆の心に生きるのだから。ああ、こんなに誇らしい事はない。

だからみんな笑っておくれ!!」

 

 

その後、蒼の狼達の手によって丁寧に分かたれた彼らは、その日の晩餐に供される。みな肉を食む者達は、厳かにそれを頂いた。祈るように、誓うように。

そして笑顔を求めた大きな角の鹿の翁に従い、笑い合って食事を済ませた。中には涙を滲ませるものもいたが、それでも、それでも笑顔を造って。

 

こうして彼らは命の意味と、食う事の重さを知った。

みんな一緒に生きるという事は、とても容易な道ではないという事も。彼らはそれより決して、食べ物を無駄にしなくなり、強い感謝を抱くことになる。

 

遠くない日。

いつしか彼らの中で食事の前後に必ず言われるようになった言葉がある。

 

それは彼らの女神が日常的に使っていた言葉であり、彼らの思いを形をしたもの。

全ての食材に感謝を込めて言われるそれは。

 

「いただきます」と「ごちそうさま」というらしい。

 

そしてこの話には少しだけ続きがある

 

 

「……ああなんだ。

そのクダモノってヤツ、1つ貰えねぇか?」

「ドウシタ ニクハムモノ。クサ ヤ クダモノ ハ クエヌ ノ ダロウ?」

 

「……少し試してみたくてな」

「ウム」

 

「ああマジィ。土喰ってるみてぇだ。」

「ソウカ」

 

「……けどよ?

ずっとこれ喰ってたら、いつかコイツも悪くなくなるかもしんねぇよなぁ。そしたらよ。いつかダチを喰わなくてすむようになるかもしれん。」

「……ソウカ」

 

「俺らの代じゃ無理でも。いつか、いつかよ。

……それなら少しばかり、俺も我慢してやらぁ。」

 

はるか遠く未来を見据え猛獣の長は果実を食む。いずれその夢が叶う事を願って。その横顔には、どこまでも優しいほほえみが浮かんでおり、それを見つめる者にもそれはしっかりと、刻まれていた。

 

 

それでも最後は笑うんだ!

行こう行こう、みんなに合いに森の中、みんな一緒になるために♪

みんな一緒に頑張ろう!

 




閲覧ありがとうございます。

みんな一緒をテーマにしていると必ず書かなければならないシーンでした。凄く難しいお話です。みんなの中には当然食材も含まれていて、でも食べないと死んでしまいますからね。
後の世に生贄とかディストピアって呼ばれるモノの始まりは、きっともの凄く綺麗な思いなのかもしれません。とか思ったり、思わなかったり?

魔術で増殖肉とか造ろうぜ。

あ、下にアンケート設置してますが、こちら次回作以降に参考にするつもりなので優しい人だけ押してやって下さいな。押してくれた貴方には無論大感謝です。


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60)300pt感謝回「アデルの森ビフォーアフターズ4」

みんな一緒になったなら、みんなでお家を造っちゃおう♪

みんなの力を1つにしたら、不可能なんてなにもない!

 

 

 

「じゃあみんなー、やるよー!」

「みんな家造り頑張ろうね?」

 

「「「「「「各自、指示通りに頼むぞ!!」」」」」」

 

「「「「「「うぉー、やるぜオマエラーー!!」」」」」」

「「「「「「ヤル。イエ ツクル!!」」」」」

「「「「「「やるだーーーーー!!」」」」」」

「「「「「「(リザードマン)住処 重要。協力 惜しまぬ!!」」」」」

 

「「「「「「(トロル)オデ、頑張るでよぉ」」」」」」

「「「「「「力、仕事、まか、せろ?」」」」」」

「「「「「「ドウホウ ツカウ イエ タノシミ ダ」」」」」」

 

『『『『『『通訳と、草木への指示は任せな』』』』』』

『『『『『『アタシらは別行動だねぇ。森の探索だ』』』』』』

 

『『『『『『キキ、季節外れの実回収しないとね』』』』』』

「「「「「「シタカラ ウケトルゾ。サル タチ」」」」」」

「「「「「「(ぽよぽよ)ボク達木の皮溶かすの!」」」」」」

 

『『『『『『ウモウ、なんでも運ぶよ?』』』』』』

『『『『『『シカカカ、どこか行くなら乗ってくか?』』』』』』

「「「「「「俺らにもやらせな。あとコイツラの護衛は任せろ」」」」」」

『『『『『『(角うさぎ)ボクらもたたかう!』』』』』』

 

『『『『『『(梟)空から見守ろう』』』』』』

『『『『『『(狼)地上は任せろ』』』』』』

「「「「「「頼むぞ、同胞達よ」」」」」」

 

「えー、ホントにやるんすかぁ?」

 

「「「「「「面倒だなぁ。家とか洞窟でいいんじゃね?」」」」」」

「「「「「「そうそう。んなモンいらなくねぇスか?」」」」」」

「「「「「「なんなら人間の街とか襲やぁいいんスよ。もう出来てるしぃ?」」」」」」

「「「「「「楽でいいんじゃねぇッスか?」」」」」」

 

「襲ってどうする。先程もいった通りこれからは誰かからの略奪は禁止だ。」

(むぅ。流石ゴブリン。鬼族の幼体(・・)とはいえこのモラルのなさはこれからの教育が必要になるな。後で念入りに彼らの住処だけは精査しておこう。

……火種になるだろうからな。)

 

「お願いゴブリンさん達、もう争いはダメなの……。

「……これからはヒト達とも仲良くしたいの。協力してくれる?」

 

「「「「「「ええーーーーー、なんで俺らがやんなきゃいけねぇんスかぁ?」」」」」」

「(こそっと)……あ、オレやりますわぁ」

 

「あぁ!?

おい同胞さんよぉ。……あんま俺を不快にさせてくれんじゃねぇぞっ、ゴラァ!! キレてなにスッかわかんねぇゾ、オイっ!?」

 

「「「「「「お願いだぜぇ、ゴブリンさんよぉ(ビキビキ)」」」」」」

「「「「「「オデらで家、つくるだで!(ビキビキ)」」」」」」

「「「「「「お前達、飯食う、前に。同意、した、筈だが、な?(ビキビキ)」」」」」」

 

((((((使徒様泣かせたらコロス))))))

((((((使徒様泣かせたらコロス))))))

((((((使徒様泣かせたらコロス))))))

 

「「「「「「ひぃぃっ、やります。家造り、楽しみッスよねぇ!」」」」」」

「ってなるっスよねぇ。じゃ、ぼちぼりやりますかぁ(こそっと)はぁ。面倒だけど」

 

「「「「頑張ろうっ!」」」」」

「「「「お家……造り……楽しみ!」」」」

「「「「うう、おネムなんかに負けないわっっ!」」」

 

「「「「……お家造る」」」」

「「「「……居場所……つくりゅ……コク。……寝てない」」」

「「「「…………すう」」」

 

『はぁい、眷属様達はこっちだよぉ』

「ほら、子供は寝るのが仕事ですよ」

 

「「「「「「やぁ!!」」」」」」

「「「「「「一緒に……頑張る!」」」」」」

「「「「「「……にぇむくにゃい」」」」」」

「「「「「「……くぅ」」」」」」

 

『『『『『『眷属様ボクらとねよ?』』』』』』

「「「「「「ボクらも眷属様とねたい!」」」」」」

 

わらわらわらわら

ふわふわぬくぬく

 

「「「「「「うさぎさん……あったか……」」」」」」

「「「「「「猫さん……ふわふわ」」」」」」

「「「「「「……みんな……オネム」」」」」」

「「「「「「……むにゃ……むにゃ」」」」」」

 

「「「「「「(×24)スヤァ……」」」」」」

 

「……おやすみ、華花ちゃん達」

「私達、眠らなくてよくなったもんね

……ふふ、動物さん達と一緒。可愛いね?」

「……天使様の寝顔だで」

「ふっ、わからんでもねぇな。悪くねぇ」

「じゃあ、俺らが護らんとな」

「アア」

 

「「『『『『(×100万)さぁみんなの居場所を創ろうぜ』』』』」」

 

彼女達が眠りついた事を皮切りにそこに集まったモノ達が一斉に動き出す。それはまるで命が起こす津波であった。

 

明日に備え同じく眠りにつくもの。

家造りの為の持ち場につくもの。

季節違いの果実の回収に向かうもの。

仲間達の不満の調査・解決にあたるもの。

彼らを警護するもの。

周辺の警戒を行うもの。

みなの食事を用意するもの。

 

それぞれが目的の為に動き出す。

 

全長100kmからなる迷宮化していたその森の。天然のダンジョンを作り上げていたあまりにも大きな生態系が今、一つの力になろうとしていた。

 

リーヴァイの冒険者達1000名が日々3000程。彼らの休息日を考えても年間で75万もの命を失い続け、それでもなお変わらずに存在していた生命の暴力達が、始めて目的の為に一つになる異常事態。

 

ここにいる働ける妖魔だけでもゆうに20万。森全土なら、100万を超える数がいる。対してリーヴァイの街の人口がわずかに2万。周辺の農村部の働けないモノまで全て含めての、この数である。

 

しかしこの数は決して少なくない。むしろ多い方なのだ。リーヴァイはこの時代の平均を上回る規模の地方都市なのだから。

その事実が示すモノ。

 

つまりこの家造りとは。

彼らによる家造りとはまさに、この世界最大の都市を築くという意味でもある。

 

リーヴァイに程近いアデルの森の初層域、始まりの森などと呼ばれるその場所で今、100万の命が虹の女神の信者へと生まれ変わった。これからも増えるだろう。

爆発的に、増え続ける。それが示す事。

 

世界はもはや変貌を遂げていた。

 

 

『まったくゴブリンはバカだよねぇ』

 

「ソト ヒト オソウ。ヒト ユウシャ カミ ヨブ。ワレラ オオク シニ スミカ ウバワレル。ワレラ ダンジョン カラ デナイ。マモノ フブンリツ。」

「しかもあの街って大規模結界もあるらしいしな。まったく、そんだきゃちゃんと叩き込まれてる筈なんだがなぁ。……我が幼体ながら嫌になるぜまったく。」

「おろ、そうなんだべか?」

 

「おう。ゴブリンってのは子鬼だからな。鬼の幼体なんだわ。んで5年生きるとホブゴブリンやら職持ちども(ワークビルド)になるわけだ。オーガはホブの派生な。」

「ワレラ コボルト オナジ。5ネン ワークビルド ウォーウルフ カワル」

「おお! オダ達オーガがオルクスやらトロルになるのと一緒だど!」

『へぇ、始めて知ったよ。そんな事』

 

「そりゃ身内だけの話だしな。んでそん中でもとびっきり特別なヤツはさっき怒鳴ってた赤いヤツ、……子鬼族の勇者(レットキャップ)になるわけだ」

『凄いのヤツなの?』

「アカイ バンダナ オノ ダテ デハ ナイ」

「あんなゴブリン位のガタイでオーガジェネラルの3倍の力があるんだと。鬼族を護る為に戦うまさに勇者ってヤツだぜ」

「ひぇぇ、お、恐ろしいヤツだど!!」

「タノモシイ コト ダ」

 

「まさか一匹狼の筈のヤツが率先っして仲間に加わるってくるとはな。そう考えると改めてスゲェな。ヴィリス様っておヒトはよ?」

「オダ狩りもせずに飯喰ったのなんて始めてだど。こんなにゆっくり森歩いたのも。襲われないってスバラしすぎるだ!!」

「ダレシモ オナジ。メガミサマ イダイナオカタ!」

 

「まさかあのやっかいな猛獣達からすら狙われなくなるなんざなぁ。考えたコトもなかったぜ。……ま、草食みどもの気概にゃヤラれたけどな」

『まさか自らその身を差し出すとはねぇ』

「スゲェヤツらだったど……」

「ウム。マッタク」

 

森の喰い物って(そういう)意味じゃゴブリンとオークは奴らと立ち位置変わんねぇからな。……奴らの話聞いてると数が増えすぎても食いもんがヤバくなるってんなら、俺らなんざこれまで通りガキの内に間引かねぇとヤベェぞ」

「オダ達も数多いからなぁ」

「デ アロウナ」

『え、そんなに?』

 

「ゴブリンは1回で大体5匹、年3回生まれる。……ほぼ全ての同族を強制的に孕ませてな。ま、なんだかんだその半数がおっ死んで森に這い回りだすのが半年後(・・・)だが、そこで進化までの5年生き残るのはせいぜい10人に1人。女なんざほぼ死ぬ」

「オダ達は狙われやすいから森にでるヤツ15人の内1人って所だでな。里を出るのは3分の2ってとこだど。って女のヒトが死ぬとか、ひどいだぁ!! 女のヒトは超貴重だで? オダら3000人に1人しか生まれないだど。彼女達(女王様)の命は何より重いだよ!」

「フム。ワカラヌ デモ ナイ。ワレラ ソコマデ チガウ。7 ニンニ ヒトリ ツヨク ナル。コハ タカラ。ソレ ウム オンナ マタ ダイジ。コボルト オンナ ノ ホウ オオイ」

 

「おお、コボルトすげぇだよ……」

「オメエラ元々仲間思いだもんなぁ」

『いや、驚くトコそこじゃないから。……アンタラの命ってそんなに安かったんだねぇ……。私なんかこの身体ってこの世界用の仮初だからこっちじゃ死なないし。しばらく来れなくなるだけだよ?』

 

「おお、精霊族ってそうなのか。……しかしそこら辺、番人達に伝えとかねぇとな。どうも厄介ごとになりそうだ」

「ウム。ワレラモ ジュミョウ ワカラヌ。オイタ モノ シラヌ シ」

「オデの里にはもう100才超えた女王様とか居るだよ? お美しい姿のまんまで。多分老いてから食料ってヤツ、……オダ達には向かないと思うだ」

 

「じゃあ豚は出荷だなぁ……」

『寂しくなるねぇ』

「オレ オマエ ワスレナイ!」

「いやなんで自然にオダだけ喰われる流れになってるだよ、おい!!」

 

作業に向かいあいながら、互いに互いの成り立ちを話し合う彼ら。彼らはまだ互いの事をあまりに知らなかった。会話の種はやまない。笑いあいながら、ふざけながら彼らは少しずつ仲間の事を理解していく。

 

『所でアンタラって結局いくつなのさ』

「俺は、9歳だな」

「2才だども」

「4サイ」

 

『ああ、うん。そうなんだ(126才)

……この話題はやめよう』

 

 

それは作業開始からたったの一時間。やる気もまだ冷めぬ内に最初の変化が訪れる。

 

「うわぁっ!!」

「……出来ちゃった」

 

「おおおおお、スゲェ!!」

「言わ、れた、通り、木、組ん、だら、家、出来た!」

「オデ、こんなモン造ったの始めてだ。スゲェだ、オデらこんなスゲェモン造れるで。ヒト以外にもやれるんだで!!」

 

「オオ ドウホウ リッパ ニ ナッタ!!」

「なんて早さだ……」

 

「スライム達が使いやすい形に木を溶かしてよ」

「脱水 使える スライム ソレ乾かす」

「オーク ゴブリンタチ モクザイ ココマデ ハコブ」

「そしたらオダ達オーガやトロル、ストーンマン達にそのまま渡すど」

「ドライアド、達が、木材から、指示を受け」

「指示通りの順番でひょいひょい重ねてやってよ」

「オデ達でも高いってトコは、コイシ様の造ったアシバ使っただよ?」

『それで屋根なんかはコボルトや尻尾が使えるリザードマンらに任せてたら』

 

「「「「「「なんか家になった!!」」」」」」

 

「スッゲェな、家ってこんな簡単に出来るんかよ!」

「イヤ コレハ イシツチ キギ テツダッテ クレル カラ。シトサマ スゴイ」

「でも、この木さんをそのまま持てるオーガさん達がいないとできないよ?」

「俺らだって材料用意してくれるスライムいなきゃ無理だぜ?」

「ソレ ハコブ オーク ゴブリン ヒツヨウ」

「足場、コイシサマ。スゴイ」

「そでならオデ、コボルト達もスゲェなって思うだ。細かいトコ全部やってくれる」

『リザードマンも頼りになるね。高いトコでも安心だもの』

「……ドライアドさんだって木々の通訳、すごいよ?」

 

「つまりみんなすごいという事です。木々がいう所の”ろぐはうす”が1時間で100軒も出来てしまった。予想以上のスピードだぞこれは」

 

「しかもまだまだ俺ら余裕あんだぜ?」

「ヤレル。オレタチ マダマダ ヤレルゾ!!」

 

「……ごめん。足場の調整追いつかなくて」

「私も木さんの形を最後に整えるの、手一杯なの。ごめんねみんな?」

 

「いや頭がアタマ下げるこっちゃねぇから!」

「やれる、事、やって、行く、充分。感謝、します」

『そうそう。地面達を動かせるのも、植物達を動かせるのもお二人だけなんですから、手なんか足りなくなって当り前なんですよ』

「いやぁ、俺ら的にはコレ以上急がれるととても材料運んでられねんで、むしろ助かってる位ッスよ?」

「とりま、不満なしっていうか?」

「あったけどこんなモン見ちまうと無くたったっていうか?」

「そんな感じッスわ!」

 

「みんな!」

「……ありがとう」

 

そんな優しい言葉を掛け合う仲間達を見て1人、強く不満を持っているモノがいる。先程真っ先に不満を零していた、要領のいいゴブリンである。

 

(いやいや、充分在りえん位しんどいだろう。……つかめんどくせぇ。アッチの石材の家みてぇに自動で組めねぇのコレ。いや組めるだろ。絶対効率悪ぃしコレ。とりま自分が関わりそうなトコだけ、いっちょ交渉してみっか)

 

彼が言っているのはその視線の先、コイシが石材達に命令を下した結果、必要な分地面を勝手に動かして進み、必要ならば勝手に坂を造り、勝手に組み上がっていく石材建築の事である。1つの建物が仕上がるのに時間こそある程度かかっているが、誰の手も使わず勝手に仕上がっていくソイツは面倒くさがりのそのゴブリンにとって何より魅力的だった。彼にとって楽な事は正義なのである。

 

「ああ、すんませんシトサマ。ちょっと話しあるんすけどぉ?」

「……なに、ゴブリンさん?」

 

(ああ、まずは最初は要望を通しやすくする為、全体効率を良くするっと)

「今シトサマが上下させてる足場ってヤツ、アッチの石材みたく自動で動かしたりできないんすか。なんか最初にお願いしたら石が勝手にやってくれる的な?」

 

「……移動させるだけとかならできるけど。都度高さかえるのは無理かな。あっちのアレはもう積まれた石材が仲間を誘導してくれるからできることなの。家の足場みたく都度高さ変えるみたいなのは新しくお願いしないと無理かな。」

 

「あ、なら高さ変えなければイケるんですね。じゃあ足場の高さ5種類用意して、横並びに家建てる事に滑らしていきゃあどうです。それを何かしらの合図だけで地面の方が勝手にやれるように出来ません?

んで各家を段階ごとに仕上げていきゃいいんです。そいつをグループ事に量産すりゃみんな手漉きにはならんでしょう」

「「「「「『!?』」」」」」

「それなら出来る。……すごい」

 

(はい、通った。次が本題っと)

「それとこの材木運び。移動だけはできるんなら何か材木乗せる石でも用意して、そいつをスライム達んトコからここまでぐるぐる輪っかかくみてぇに移動させ続けて家の前で受け取れるようにすりゃ、そいつ受け取って運ぶだけになるからめっちゃ手空きますよね? スライムんトコから運ばなくて良くなるわけですし」

「「「「「『!?』」」」」」

「……確かに」

 

「そったら、空いたヤツでモクザイの削りやったらどっすか?

どうせ工程早くなったらスライム達だけじゃ溶かしきれんでしょ。最初にオノとかで荒く削ってやりゃそれも幾分早くなるんじゃないです。木かじれるような小動物らにも手伝わせりゃいい」

(これで作業範囲が広がるから手も抜きやすくなるっと。なんのかんのやる気になってるバカどもは俺の犠牲になるべきなのだ)

「「「「「『!?』」」」」」

「うん。そうする」

 

「あ、アレぇ!! て、テメェ、なんて余計な事を!」

「そのまま黙ってりゃ俺らの仕事少なくなってたじゃねぇかバカ!!」

「テメエラがそう思う事はお見通しだわ、バカ! 俺は自分は楽なのは好きだけど、テメエラバカが楽してるのが次に嫌いなんだバカ、俺が楽出来ねぇだろ!!」

「「「「「「んだコラ、やんのかぁ!」」」」」」

「あぁん!!」

 

「まぁまぁ。どの道仕事は振ったから」

「ケンカダメ!」

「「「「「「っち、命拾いしたな、オイ!」」」」」」

 

「どっちがだよバカドモめ!」

 

(うーん。これだけじゃああっちのシトサマが一杯一杯だから意味ねぇな。ついでにあっちも言っとくか)

「あ、ども。……続けますね。

んで、もう1人のそっちのシトサマ。

 

木材の最後の調整なんかは見てりゃあやることオナジみたいですし、最初から全部の木材にソイツをお願いしといて後でドライアドがなんかキーワード言ったら、目の前の木材だけにそのお願いをヤラせる事とかできないんすかね。」

「「「「「『!?』」」」」」

「聞いてみるっ。出来るってっ!」

 

「じゃあそのキーワード複数用意すりゃ作業もそれに合わせてやれちゃうでしょ。そしたらお二人ほとんど手、空いちゃいますよね?

その分工程の改善とか、微調整とかやった方がきっと楽で早くなりますよ仕事。さっきの木材削りとかシトサマが直接指揮すりゃもっと効率よくなっかもです」

(そうして俺の仕事が楽になると。よしよし中々いい流れじゃないか)

「「「「「『!?』」」」」」

「うわぁっ、ホントだ!」

「……魔法みたい」

「ものすごく効率的な考え方だ。とても参考になる」

 

(ふっ、後はさらっと撤退するだけだ)

「いや、自分面倒事が嫌いなんで。いや、コレで少しは楽できますわぁ。じゃ、そういう事で一つ。俺作業に戻ります」

 

「いや、待とうか君」

「君の仕事はこれからそういう気づきを皆に伝える事だ。適材適所。頼むぞ?」

「あ、アレぇ!?」

「「「「「「ザマァwwww」」」」」」

 

(ばっ、バカな、俺ののんびりだらけライフが! ど、どうしてこうなる!! くっこうなったら貴様らも道連れだ。めっちゃ効率上げて苦しめてやっから覚悟しろ。俺だけ面倒くせぇとか許せん!!)

 

「あのゴブリンすげぇな……」

「アア。ダガ アレダケ コト ヤッテ ナニゴト ナク サギョウ モドレル オモウ アタリ……」

『ゴブリンだよねぇ。見通しとか色々と甘いのよねぇ』

「アタマ、いい、バカだった」

 

こうして家造りの効率は飛躍的に進歩を遂げた。元よりオーガ・トロル・ストーンマンの3種族は丸太をそのまま2人で持てる程の筋力を有しており、重機いらずの活躍を見せていた為にその建築力はヒトに比べ恐ろしく高かった。

ワカバが直接木々に頼んで、仕上げを一任するやり方が、そうさせた。

 

だが足場の問題、材料の受け渡しなどの効率化を図った後の彼らの作業速度はもはや段違いであった。元よりオーガら20人を1グループとしてみても60グループもいる彼らが休みなく動くのだ。家一軒などあっと言う間に出来てしまう。

 

その速度なんと1グループ20分。1時間に3軒の家を完成させる超効率を彼らは会得してしまう。なんと1時間に180軒の家が建つのである。

こうなるとみな面白くなる。

 

自分たちがやればやるほど、自分の目の前に大きな物が次々と造られていくというのは、それほどに胸を踊らせることなのだ。あれほど文句を垂れていたゴブリン達でさえ、いまやその魅力に取り憑かれてしまった。

 

そして彼らはさらに躍進を続ける。

面倒が嫌いだと言うゴブリン、後に軍略の天才などと謳われる事になる異色の鬼族。鬼略のヤッフの、有り余る知略を翼に。

 

森の仲間達は一切自重を知らないのだ。

 




閲覧ありがとうございます。
まだアデル終わらないんですが。後更新遅れて申し訳無いです。実はこの話書くまでに森の規模とかあんま考えてなかったんですかど、リーヴァイの冒険者の数から概算するとアホ程でかい事がわかりまして。
色々プロット見直しておりました(白目)

冒険者だけで年間75万。安く見積もってもその倍は年間で命の交代が起こる場所って、どんな規模やねんって計算してみるとですね。震えあがりました。
その規模ならゴブリンとかの幼体がうようよしてしかるべきなのですが、ファンタジーって彼らの幼い姿見ませんよね。そうしたらコレ、もうゴブリンが幼体なんじゃないかっていう結論に辿りつきまして。

んでモンスター系の設定見直してたらめっちゃ楽しくて更新が遅れてしまったという本末転倒な事に。
いや、どうも申し訳ないですm(_ _)m

自然生態系型ダンジョンは鬼門。
はっきりわかんだね( ¯꒳¯ )ᐝ


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61)300pt感謝回「アデルの森ビフォーアフターズ5」

「「「「「「木の皮溶かすよ、やわやわ溶かすよ!」」」」」」

「「「「「「んしょんしょぽよぽよ、んしょんしょぽよぽよ」」」」」」

 

『『『『『『木の皮剥がすよ、スライム任せろ!』』』』』』

『『『『『『んしょんしょうさうさ、んしょんしょうさうさ』』』』』』

 

『『『『『『木の皮任せろ、集めて運ぶぞ!』』』』』』

『『『『『『んしょんしょシカカカ、んしょんしょシカカカ!』』』』』』

 

『『『『『『テメェら護るぜ、危険はないぜ!』』』』』』

『『『『『『おらおらにゃんにゃん、おらおらにゃんにゃん!』』』』』』

 

「「「「「「一点集中、形を造るよ!」」」」」」

『『『『『『一点集中、ボクラも手伝う!』』』』』』

「「「『『『んしょんしょぽよぽよ、んしょんしょうさぐさ』』』」」」

 

「「「「「「水分奪うよ、木を乾かすよ!」」」」」」

「「「「「「んしょんしょぽよぽよ、んしょんしょちゅうちゅう」」」」」」

 

「おお、スゲェな……」

「なんかわからんうちに木がスライムと動物達に囲まれて」

「木材に変わっていくじゃねぇか!」

 

「あん。おお、ゴブリン(同胞)ども。番人達から話しは聞いたぜ。木の形整えるの手伝ってくれんだろ。……そこのドライアドの指示に従ってスライムさんや角ウサギ達に混じれや」

「げ、げげぇっ、レッドキャップの兄貴ぃ!!」

「なんでこんな所に!!」

 

「はっ、まぁ見てろ」

「うぉっ、兄貴がオノを一閃したら!!」

「そんだけで木が縦に綺麗に真っ二つに!」

 

「こうやって板材の元を造ってんのさ、オレぁ。……おう、テメェら。家ってヤツは順調に出来てんのか。テメェらが増員としてここに来る位ならよ?」

「はいっ、1時間でもう50軒程出来てるッス!!」

「俺らのシマのヤッフのヤツがシトサマに口聞いてこっから更に速度上がるって話なんス、はい!!」

 

「へぇ。……やんじゃねぇかソイツ。よし、ゴブリン(同胞)ども。テメェもスライムさん達手伝えや。アイツラの言うこと聞いていっちょきばれ!!」

「スライム達のいう事聞くんスか?」

「あんな雑魚どもの?」

「アホか! スライムさんらは確かに雑魚だが、ここじゃこの俺の100倍はスゲェぞ、ボケっ!!」

 

「あ、兄貴の100倍!!」

「ば、バケモンかよ!」

 

「俺も一緒に作業するまでわからんかったがな。……どうもアイツラ戦う以外の事に関してはそうとうデキルぜ。その結果がこの木材だろうが。

ここじゃ仕事のデキルヤツが一等えれぇんだ。俺らが逆立ちしたって真似できねぇ事やってのける、スライムさんらこそが一等賞だ。見ろ!!」

 

「……パネェ」

「流れるように木の皮が剥がれて」

「木材に変わっていくッス」

 

「だろ。そら、テメェらも一角ウサギどもに混じって早く木の削りやれや! 間違ってもスライムさんらの邪魔すんじゃねぇぞ。敬意も忘れんな!!」

 

「ウス!!」

「スライムさん、マジパネッス!!」

「じゃ、オレら作業に加わるんで。レッドキャップさんっ、失礼しまッス!!」

 

「おう、しっかりやれや!!」

 

「「「「「「うす!」」」」」」

 

「(ゴブリン達を見送って)はっ、そうかよ。オレらでも殺し合いなんかなくなりゃ人間達(耳狩りども)みてぇにリッパなモンが造れるってか。

……ああ感謝するぜ女神サマ。神々に見捨てられた魔物達(オレら)に意味ぃ与えてくれてよ。今まで人間達(耳狩りども)を殺すだけだったこの俺に、……でっけぇ夢ぇ見せてくれてよ。」

 

「この夢護る為だったらなんでもスルぜオレぁ。敵対するなら誰でもよ、……それがたとえゴブリン(ワルガキ)どもでも女神サマに逆らうようなら……」

 

パカァァァァァッッッン!!

 

「オレのオノで、真っ二つだ」

 

 

「スライムさんっ、こっちの削り終わりました!!」

「仕上げお願いしまっス!!」

「これ持っていきますね!!」

 

「うん、ありがとうゴブリンさん達。助かるよ!!」

 

「おうスライム。……スゲェなオメェら。おかげで家造りも順調らしいぜ。あんま無理すんなよ。お互い頑張ろうぜ!!」

 

「あはは、大丈夫だよオーガさん。お互い頑張ろうね!!」

 

「スライム達、頑張ってくれてありがとう。……ペースが早くて済まないな。きつそうなら教えてくれ。こちらで調整するからな」

 

「うん、番人。大丈夫。ボクらもっと頑張れるよ!!」

 

(嬉しい、嬉しい、嬉しい!!)

(みんなボクらをイジメない!)

(みんなボクらを気遣ってくれる!!)

 

(ボクらの事スゴイって!)

(みんなボクらを褒めてくれる!!

 

(みんなボクらにありがとうって、優しく声をかけてくれる!!)

(すごい、すごい!)

(みんな一緒って、すごすぎる!!)

 

(もっといっぱい溶かしたいな!)

(もっといっぱい水を抜けたら!)

 

(みんな喜んでくれるだろうな!!)

 

黙々と大量の樹木を溶かし、望まれる形の木材を造り出すスライム達。息つく暇もないその忙しない作業の中で、スライム達は歓喜していた。

誰からも褒められた事などなく、誰からもバカにされ続け、大切になどされた事のない彼らにとって。

 

イジメられる事もなく、自分の力を誰かから必要とされ、それに素直に礼を言われるこの環境は、夢のように楽しいものだったのだ。

 

この時、彼らは始めて強く望みを抱いた。生きたいでもなく、助けてでもなく。誰かの為に、始めて自分を変えたいと、強く望んだ。

木々を溶かし、それを食べることで少しずつ、彼らはもう大きくなっている。だが、足りない。足りないのだ。もっとみんなはもっとたくさんの木材を欲しがっている。周囲にはまだまだいっぱい樹木がある。だから、願う。

 

もっと、もっと。

もっと皆と、幸せになる為に。

 

その願いは結果、天へと届く。

 

「おい、アレ?」

「スライムさんが?」

 

「「「「「「めっちゃ大きくなっとるっっっ!!」」」」」」

 

「(ぽよんぽよん)これでいっぱい溶かせるよぉ!!」

 

最初の変化を皮切りに。

 

「うぉ、こっちの黒いスライムさん木溶かすのめっちゃ速ぇ!!」

「し、仕上がりも綺麗だぜ?」

 

「木をすっごく溶かせるようになったよぉ!!」

 

「え、もう乾燥終わったんすか?」

「水色のスライムさん、まじパネェ!」

「しかもなんか吸い込んだ水だけ、めっちゃ綺麗にして出してくれるし」

「生き返るぜ!」

 

「水だけもっと吸い込んで、出せるようになったよ!」

 

「えっ、茶色のスライムさん。なんで木そんなに運べるんスか?」

「なんか木みたいに硬くなってるし」

「硬いのか柔いのか全然わかんねぇ……」

 

「なんか身体を木みたく硬くできるようになったよ。あと木の重さも感じないの」

 

「「「「「「しかもやっぱりでけぇ!!」」」」」」

 

彼らは進化し始める。

森の中で、身体が大きくなると誰かに見つかりやすくなる為、彼らはこれまで満足に大きくなれなかった環境にあった。だが、今は違う。

 

同種の素材(・・)を豊富に与えられ、他者から望まれ、自身もさらなる力を望んだ彼らはその望みに合わせて自身の姿を変化させる。かつて神話の時代に環境開発生物として造られた彼らの本当の力を、取り戻したのだ。

 

「「「「「「スライムさん、まじパネェ!!」」」」」」

「「「「「「(ぽよんぽよん)みんな一緒にがんばるぞー!!」」」」」」

 

神々が世界を整える際、その面倒の一切を押し付ける為に創られた生物の力が今、蘇ろうとしていた。

 

 

森の片隅、すっかりと地盤が緩みきり、もはや沼と化していたその場所を調査する為に、ドライアドはウルの1人とやってきていた。

彼女がその場所に訪れると、これまでにない変化がその場所に現れる。

 

『ああ、森の土が緩いのってアンタらのせいかい』

「む、水の乙女達か」

 

『ちょりーす、森ちゃーん。おひさー。元気してたー?』

『森ちゃーん、ちょ、マジこの状況ありえないんですけどー』

『まじマッハ、ゲキおこぷんぷんよぉ!』

『見ての通り全力混じりっけ100%よぉ。ガングロさくそんよぉ』

『助けてクレメンス?』

『お願いちゃんでどぞー♪』

 

『……ああ。アンタらそんなに溢れてるって事はここ水脈と繋がってるんだね?』

「これは、精霊語なのか? 少し意味がわからんぞ」

 

『そっそ。』

『聞いてよ森ちゃーん。』

『これが水脈の地盤やってた土のヤツがガッツなさ丸でさー』

『溢れちゃってドンよ』

『もう少しでウチら全力開放無制限なカンジ』

『おかげでウチらも土なんかとブレンディですっかり美肌ホーカイしてるしぃ?』

『ガングロなんてもうナシ系でーす』

『ぷらちなムカつく―』

『助けてミー』

 

『こりゃあ相当汚染されてるねぇ』

「……やはりこの言葉使いは汚染の為か?」

『……ワカバ様かコイシ様が土と分離できりゃいんだけどなー。一端混じった精霊2つに分けるのって手間だからなぁ』

 

『そこをなんとかさぁ?』

『森ちゃんやればデキル系じゃぁん? 知らんけど』

『ダテに長生きしてないヤツじゃん?』

『ちょっとぉ、森ちゃん肌ツヤよくなってなぁい?』

『コスメ変えた?』

『どこさん、どこさん?』

『教えちゃってみぃ?』

 

『ああ、うざい!!』

「……どうする森ちゃん?」

『アンタまで乗っかるな森の番人!』

「む、すまない。つい。」

 

『とりあえずワカバ様とコイシ様に連絡しておくれ。この沼の規模じゃもう草木の力でどうこうできるモンじゃないし。水脈塞ぐにしても結構な大仕事だ。

どっちにしろ早いほうがいいさ』

「うむ、了解した」

 

 

「わぁ、水の精霊さんがいっぱいだね♪」

「……とりあえず来た」

「(ぽよぽよ)ボクも来たー!」

 

『ありがとうございます使徒様方。とりあえずコイツラが地盤の緩みの原因なんですけどね。なぁアンタラ?』

 

『ええ、アレって風ちゃん言ってたヤツ?』

『マジ、海神殺し殺しの使徒様?』

『ゲキヤバじゃあん。ヤババイオーラデてるし』

『アゲスゲェ、サスガ話題のホットワード!』

『えっ、ここら変わってんって海神殺し殺し関わってんの?』

『ちょ、聞いてないし。も、森ちゃーん。どゆこよー』

『教えちゃってクレメンスー』

 

「海神殺し殺し?」

「……どういう事?」

「(ちゅうちゅう)怖いヒト?」

『……私が聞きたいです』

 

『『『あ、あのぉ、ですねぇ。』』』

『『『間違ってたアレなんですけどぉ』』』

『もしかしてお二人ってヴィリスカムィ様の使徒様だったりなんかしますかぁ?』

 

「そうだけど?」

「……うん。カミサマの家族だよ」

 

『ヤッパそうじゃーん!!』

『ヤババイ、オーラパネェ!』

『アゲですわぁ。マジアゲですわぁ』

『今一番ワダイのヒトじゃぁん』

『サイン、サイン貰った方がいくない、ねぇ?』

『アッシガングロじゃぁん。こんな時にアイたくなかったしぃ』

『サガるわぁ、マジサゲだわぁ……』

 

「?」

「(ちゅうちゅう)精霊さんの言葉って難しいねー」

「……だからどういう事?」

『私にもわかりませんよぅ。ちょっとウィンディーネ達。何騒いでんのか教えなって』

 

『わ、森ちゃんおっくれてるー』

『流行は追わないとー』『ねぇー?』

『女としてそれどうなのよぉー』

『ええ、海神殺し殺し知らないって』

『許されるのは根源素までだよねぇ?』

『そんなんで使徒様に仕えて恥ずかしくないんですかぁ?』

 

『いいから教えな!!

その使徒様が聞いてんだから!!』

 

『え、まじマンジ?』

『え、無意識系、無意識系強者なの?』

『無意識からの海神殺し殺し余裕なのヴィリスカムィ様?』

『まじリスペクト』

『ちょーヤバじゃぁん』

『ゲキヤバですわぁ』

『戦神とか小指でやれんじゃね?』

 

『『『『『『『ウケるーーーー!!』』』』』』』

 

「ねぇねぇ、その海神殺し殺しってなぁに水さん?」

「……カミサマすごい事したの?」

 

『そりゃもうウチらのセカイじゃ今一番アツいヒトですわぁ!』

『あの海神殺しのゲキヤバユニーク、七海征すマスカレイドをぉ』

『ヴィリスカムィ様がやっつちゃったって、もっぱらの噂なんですよー』

『ウチら水皆来じゃもうヴィリスカムィ様、絶賛時のヒトだからね』

『海神殺しを殺した女神。マジリスペクト』

『あ、サイン。いいっすか?』

『あ、ウチもぉ。あぁ、こんな身体じゃなきゃ握手してもらえたのにぃ……』

 

『『『『『『まじサガるわぁ……』』』』』』

 

「マスカレイド。我等でも知っている大物じゃないか。世界でも有数の強者だぞ!」

「カミサマなんかすごい事やってた!」

「……やっぱりカミサマ戦ってた」

「(ちゅうちゅう)すごぉい!!」

『え、私らの女神様ってそんなにお強いんですか?』

 

『え、ヴィリスカムィ様ってお強いだけじゃなく大地母神もやってる系のヒト?』

『さっきから森造りかえてたのって、ヴィリスカムィ様なん。ヤババイ』

『実力と権力。まじヤババイ。デキル女、すぎる!』

『え、流れキテない?』

『ヴィリスカムィ様まじホットワード!』

『まじマンジ』

『風ちゃん情報古いわぁ、マジないし?』

 

(ちゅうちゅうぽよぽよ)

 

『『『『『『『『てか、あのスライムなんかだんだんでかくなってね、ウケる!!』』』』』』』』

 

「わぁ、スライムさんお水吸ってくれたんだぁ」

「……これなら土のみんなにお願いできる。ありがと」

「(ぽよんぽよん)うん、後はあのおねぇさん達だけなのー」

「仕事が早いな君は」

 

『とりあえず吸われときなアンタラ』

「いくよー水のおねぇさん達ぃ(ちゅうちゅう)」

 

『あ、ウチらこのままスライムにのまれちゃう的な?』

『水乙女スライムヘブンなんですけどぉ』

『ですよねー』

『あ、全身吸い付かれてヤババイ』

『クセになるわぁ』

『スライムくんパックンヤババイ♪』

『オネェサン、食べられちゃう♥』

 

「(ぷるんぷるん)お水だけ分けて出しちゃうよぉ?」

「……まって、ここらに小さな石さんを呼んで水脈の通路造るから」

「わかったぁ」

 

「スラくんおっきくなったぁ。ぽよんぽよんだぁ♪」

「(ぽよんぽよん)今ならワカバちゃんをボクが乗っけられちゃうねぇ♪」

「(ぽよんぽよん)わぁい♪」

 

「話には聞いていたが、……スゴイな」

『あんな小さな身体でここら一帯の沼地の水全部吸い込むなんて。とんでもないね』

 

「ワカバ、石さんの周り苔さんにお願いして固めてくれる? ……後私もぽよぽよしてみたい」

「(ぽよんぽよん)分かったぁ!!」

「(ぽよんぽよん)はぁい、コイシちゃん」

「(ぽよんぽよん)……楽しい♪」

 

『なんか、癒やされるねぇ』

「う、うむ(うずうず、ちらちら)」

『……番人、我慢せずにいってきたら?』

 

この後めっちゃぽよぽよした。

 

 

この日、激動の森では様々な事が起こった。それこそとてもここで全て書ききる事はできぬ程に。どこもかしこも。森は歓喜に包まれていた。

なぜ魔物達が皆コレほどに女神へ素直に従順し喜ぶのか。それには一つ理由がある。

 

彼らは嬉しかったのだ。

 

今までヒトの為にしか奇跡を振るわなかったあの神が。自分の未来を掴む為、徒党を組み、ヒトを襲うだけで魔物を殺しつくす勇者を送り込むあの神が。森ごと魔物を容易く焼き払う、あの恐ろしい神が。

 

始めて自分に目を向けてくれた事が。

 

……この世界で魔物達は邪悪な存在であると語られているが、実はそうではない。真に邪悪であるというのなら、これだけの規模を持つ彼らが自分達を殺すもの達を送り込み続ける、近隣のヒトの街を許すわけがないだろう。

 

だが、彼らは長く共存してきた。そこにあるのは一重に魔物達の諦めである。ヒトが命を奪うというのなら、それ以上の命を生み出せばいいだけだ。そうすれば、魔物は殺し尽くされる事無く命を繋げると、悟った故の数なのだ。

 

それ故に、番人と呼ばれる狼達は森の争いの目を詰んできた。度々森の中で起こるヒトに対する魔物達の決起の瞬間。モンスターパレードを食い止める者達。

そうすれば森の破滅は免れるから。勇者も神も必要ないと、独自に森を護り続けた。だからこそ彼らはヒトからも魔物からも”番人”などと呼ばれているのだ。

森の大きな災いを止める、”森の番人”と。

 

つまり前提が間違っていた。そもそも魔物とは魔の物。”魔”素を取り込んで変化した生き”物”の事であり、決して”魔”性の生き”物”ではないのである。

 

だれもかれも。

ただ彼らは、生きたかっただけ。

 

自分を殺しにやってくる冒険者に命という武器で、抗っていただけ。彼らの中にも森を捨て外で悪事を働こうとするハグレモノはもちろんいるが、それは人間も同じである。盗賊や野党など、どの種族にも存在するのだから。それが多く見えるのは、彼らの数が多いからに過ぎない。

 

この世界のダンジョンと呼ばれる広大な限られた場所を住処とする多くの魔物郡。

その正体は。

 

必死に生きようと足掻く、唯の命に他ならない。

世界悪となるべく醜く造られた。

歪で哀れな、唯の命達。

 

世界は未だ勘違いを続けている。

 

彼ら魔物を殺せば、世界は平和になると教えこんだ神々の知恵によって。そうする事で神の権威は保たれる。救いと希望は悪がなければ目立たない。世界に平和など本当に訪れてしまえば、神々などいずれ必要とされなくなるのだから。

 

そんな事を、神は望んでいないのだ。

 

だから神は決して魔物に手を貸さなかった。破壊や、混沌といった信仰は別として。

 

だがそれは今日、この日を皮切りに終わりを告げるだろう。

そろそろ長過ぎる夜の闇が、明けようとしていた。

 

朝焼けが、ソレを照らす。

 

「おお……」

「こりゃあ、すげぇな……」

「モリ ガ カワッタ……」

『私らもできるもんだねぇ……』

「オウチ デキタ……」

「オダたちも、もっと頑張るだ……」

「……(感動で立ち尽くす岩石巨人)」

「……まぁだ効率悪ぃ。どうすっかね?」

「(ぽよぽよ)うわぁ、うわぁ♪」

「……はは、これオレらが造ったのか?」

「「「「「「パネェ……」」」」」」

「アア。スバラシイ……」

 

「わぁっ♪」

「……みんな頑張った。」

 

森の中の一角。

 

その場所に合ったはずの多くの木々が移動し、すっかり綺麗な平地と化したその場所に、これから眠る者と、これより起きる者。森に住む様々な種族が集まっていた。

 

ワカバとコイシを筆頭とする少女達、蒼の狼に始まり、数多くの大地の種族達に、色とりどりのスライム。森のならず者たる妖魔達に、猛獣たちや草食動物。足元で踊りあう小さな動物達に、空を舞い踊る様々な鳥達に至るまで。

 

目の前に広がる街並み(・・・)を見て、その皆が一様に感動に打ち震えていた。

 

そう、彼らの目の前にはすでに街と呼べる規模の家々がもう建ち並んでいるのだ。三角屋根のログハウス達が大量に建てられ、ある一角からは同じく丸太を利用した大物の集合建築が等間隔に、所狭しと並び建ち、今も半自動で造られ続ける。

 

また街の片隅には石材を重ねて造られた頑丈な古代建築が数を揃えてそびえ立ち。そして大きな木の中をくり抜いたような、小さな魔物や小動物達の住処が森の木々に面して数え切れぬ程に生えていた。それらは多くの動物達が休めるように、その枝葉を広く伸ばして、その下には雨風や夜風を凌ぐ為の小屋すら用意されている。

 

その近くには今まで森には存在しなかった筈の幅50cm程の細長い水路がはしり、これまで手に入れるのも困難だった綺麗な水を森の様々な場所へと、まるで葉脈のように送り届ける。

 

その行く先にあった、来る者を阻み続けた茨を生やした厄介な植物達も。木々や茨に絡みつき、近寄るものを締め付けてくる恐ろしい蔦の葉達の姿も見られない。

それらの草木は森の外縁へと広がって森を護る盾と変わった。

 

また乱雑に他の樹木と競いあうよう生えていた木々達は今、互いを尊重しあうように広くその距離を開けている。そのどの場所を歩いたとて、穏やか木漏れ日の差しこむ中、優しく吹きつける風に豊かな森の息吹を感じ取れる事だろう。

 

そんな空間が、広がっていた。

 

そう。

もはやそこに天然の迷宮と呼ばれた森の姿はなく。

 

それは豊かな大地の恵みを住むモノ達の為に解放してくれる天然の食料庫であり、また彼らの営みを助ける為の豊富な素材を用意してくれる貴重な宝物庫に他ならず、そして彼らの全てを包みこみ快適な暮らしを約束する優れた居住区でしかなかった。

 

つまりアデルの森の初層域として、長く迷いの森や始まりの森などと称されたその場所は今、在り方を変えてみせたのだ。

 

もはや世界は変貌している。

 

アデルの大森林と呼ばれたその天然の迷宮は、もう何も惑わせない。多くのモノの居場所となるべく、その全てを解放し、そこに住む動物や魔物達はもはや争いを望まない。女神の望む優しい世界を築くべく、種を超えた団結が果たされた。

 

もはや世界は変貌していた。

 

木々は己を食らう獣の営みを助け、彼らを食むモノは老いた身体を獣を食らうモノへと差し出す。獣はその代わりに彼らを助け、全体で大地の繁栄を助ける。

死が近きモノは己の身体を神へと差し出し、それが新たな世界を築く。命が多すぎる者はその数を鑑みて、それら全てが噛み合った歯車のように回るべく、神の使徒が彼らの話を、願いを真剣に聞いて回るのだ。親身になってくれるのだ。

 

そこには限りなく無駄がなく、それはきっと誰かの優しさで出来ていた。

 

まだまだ一角。森に住む者の数は果てしなく、とてもこの街並みで満たされるモノではない。だが、まだ半日。ソレだけでリーヴァイを超える規模の街並みが、その場所に現れた。未だ建物を置かぬその先の地平には、きっと未来が広がっているのだ。

 

そこにいる誰もが、それを想像できた。

 

自然と起こる笑い声。

互いを讃えながら、肩を抱きながら。

夜明けの到来を喜びあう彼ら。

 

世界を渡る鳥たちよ、吹き抜ける風の乙女よ。

その囀りにのせて世界にこの変化を知らせよ。

 

アデルはもはや迷宮ではない。

 

女神の望む希望を形にする土地である。

あらゆるモノを包み込む虹のような土地である。

すなわちそれは。

 

「みんな凄い!」

「……皆となら絶対、居場所創れるね」

「だからもっと頑張っちゃおー!」

「みんな一緒に頑張ろう」

 

「「みんなで幸せになっちゃおう!」」

 

「「「「「「オオォォォ!!」」」」」」

 

楽園と呼ばれる場所だった。

 

 

みんな一緒に頑張った。

そしたら一緒に笑顔がいっぱい!!

みんな一緒で幸せだ!!

 

やろうやろう、みんなと共に森の中、みんな一緒になるために♪

みんな一緒に頑張ろう!

 




閲覧ありがとうございます
長くなった300pt感謝回終了でございます。
改めて皆様に感謝を。

とりあえず次は500ptでの開催なんですが、多分リメイクが先ですね。
次回本作として一応の最終回です。



エーテルはりねずみ様大量の誤字報告ありがとうございます。
とても助かりました!!


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XX)始まりと終わりの物語

ここまで不思議なお話をご覧頂き誠にありがとうございます。
こちらがとりあえずの最終話となります。
ここまでお付き合い頂いた貴方に感謝を。


「おお、ここだここ。ああ、懐かしいなぁ♪」

『神威、あまりはじゃぐのはよくない。ここは貴方の生きた世界の過去、もしかしたら若干の差異を持ついわば多元世界なのですから。』

 

昔俺が住んでた街にあったゴミ山公園。今俺は当時のその場所へとやって来ている。ほんとはそんな名前じゃなかった筈だけど、人知れず大型ゴミの不法投棄が当り前に横行する山合いにあるその小さな広場は、誰もがそうとした呼ばなかった。

 

「わかってるよぉステラ。ちゃんとアンダーの認識阻害もかかってるんだろ。なら大丈夫だって。まさかサトゥさんが残した家にこんなモンまであるとかな。あの人ってホントに死んでるんかねぇ?」

『不明ですね。サーチ不能案件。』

 

いや驚いたよ。大概ウチノのびっくり機能には驚かされたけど、果てにゃ時空転移装置なんてモンまであるなんてな。ま使用する為に莫大なエネルギーが必要だったんで起動までに随分月日がかかっちまったけども。

 

「まぁいっか。ああ、でも楽しみだなぁ。こっからあの人に会えるんだもんな?」

『道を踏みはずそうとしていた貴方を救ったという件の人物ですね?』

 

現在俺はそんあ過去の思い出の場所に、俺の恩人の顔を見るためにやって来ている。ずっと憧れてた人なんだけど、どうにももう昔の事でよく顔とか思い出せないし、なんか色々やってもあの人の事だけはてんでわからずじまいなんだよ。

 

「そうそう。すっごい衝撃的で、色々助けられたんだけどなんかあんまり顔とかは思い出せなくてなぁ。色々すげぇ姉ちゃんだったんだけどな?」

『こちらの世界の追跡魔術でもトレース出来なかった謎の人物。興味があります。』

「ま、ここでしばらくみてりゃいずれ分かるだろ?」

『……そうですね。』

 

そんな風にステラへの通信を済ませたオレはあの人と、そろそろ現れる筈のアイツを見るため、大きなゴミ山の1つその身を隠した。

 

「うぉぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!」

「(小声で)おお、こりゃ俺が来たかな?」

 

そうしてると早速荒々しい少年の雄叫びが聞こえてくるわけだ。ああ、なつかしいね。ちょっとこれステラに知られんの恥ずかしいなぁ。

投げてた投げてた。家具とか掴んで。アレ、オレそこまで大きいゴミ投げたっけ? 投げたんだろうなぁ。これが若さか。

 

『随分荒ぶっていますね?』

「ああ、当時は色々嫌な事が重なってなぁ。好きな女怯えさせて登校拒否にしたり、最初の育ての親の爺さんが死んだ後、遺産相続で色々人間の汚いとこ見せられたり、親戚筋の家ん中でそこの子に色々冤罪をなすり付けられてなぁ。

 

まぁ軽く人間不信って奴だわ。何やっても上手くいかねぇ。友達も、家族も、なんもねぇ。あるのは人よりちっと強ぇ身体と、凶悪な人相だけ。そんな時期だもんな?」

『改めて聞くとずいぶんですね。』

 

「そうなぁ。でもま、俺はこの後あの人に変えられるんだ。」

『この場面で、どうような出合いを?』

「ああ、そりゃなぁっ!?」

『神威っ!!』

 

やべっ、昔のオレが投げてきた廃品が横のゴミ山崩しやがった!!

こりゃかなわん!!

慌ててそっから飛び出すように逃げた俺と。

 

「ありゃ?」

「……外人の女。……なぜこんな場所に?」

 

アイツの目が合った。その光景に見覚えがあるんだ。在りすぎた。ああそっか、そういうことかよ。そりゃ確かに見つかんねぇわ旅人のねぇちゃん。

そう思うと、とたんに笑いがこみ上げてくる。

 

「ふっ、ははっ、はははははははっっっっ!!」

「……何がおかしい!」

 

そうそう。なんかバカにされたように見えちまうよなこんな笑い方よ。アレ、なんかコイツちっと昔のオレよりでかくないか?

当時のオレってこんなにゴツかったっけか。後、髪の毛とか黒いんだけど。肌もよく焼けてるし。ああ、ステラの言ってた多少の差異ってヤツか。

 

でもコイツオレより顔怖いじゃん。

 

「いやいやこっちの事。ああそういやあの時もこんなだったわ。なるほどね?」

「なんだ?」

 

しょうがねぇ。じゃあやるか。

生憎あの人の言葉は大体覚えてるし。じゃあなんの問題もないってヤツだ。

 

「いやいや。随分はしゃいでるのねって思ってね?」

「……関係ねぇ。失せろ!!」

 

おお怖。あ、やっぱコイツオレとは少し違うな。はは、オレより人相の悪いヤツって始めてみたわ。ま、誤差っちゃ誤差だしオレには全然そういうの気にならんぜ。

ちょっとだけオレより無口な感じか。中2だからかね?

 

「おお、怖い怖い。でもダメだねぇ。その気はないわ。」

「!?」

 

まぁそれでも間違いなくコイツはオレだ。少し違ってててもきっとオレだ。絶対にこんなヤツ他にいねぇもの。じゃあいつも通り、あの人から教わったやり方でよ。

悪ガキの相手と洒落込もうじゃねぇか。

 

「だって今、私は君が困ってるのを見つけちゃったの。だったらさぁ。ほっとけないのよ。ワタシずっとそうして他人におせっかい焼いて生きてきたの。だから君の事も、変えてみせるわ。」

「どうして!!」

 

はっ、そんなのさ。

 

「そんなの、苦しんでる人を助けるのに理由がいるかしら?」

 

理由なんていらねぇのさ。そうだコレが始まりなんだ。こっからオレは。

 

「……お前に俺の何がわかる。こんななりのお陰で俺の人生は真っ暗だ。これまでも、これからもな。お前のような綺麗な奴にこの苦しみは理解出来ねぇ。

助けられる筈もねぇ!!」

 

そんな無責任な救いが受け入れられなくて大声で叫ぶ昔のオレ。少なくともこん時のオレは自分の苦しみが分かりそうもない、この美人さんにんな事言われるのが気に食わんかったんだ。でもな。

 

「ええ、わからないわ。その人の背負ってるモノなんて他人には理解できないもの。でもね。君を変えるのに、それは関係ないっ!!」

 

結局はそうなんだよ。

 

「君が困っててワタシが助けたい。たったそれだけ。それだけで、世界は充分変わるのよ? 難しい道理なんて必要ないわ。」

「……世迷い言を。失せろ!!」

 

結局相手の事なんて他人にゃ何もわからない。だから相手が分かりそうもねぇからってのは手を差し伸べない理由には繋がらないんだよ。そんな道理は通らねぇんだ。そう言われちまうと、もうどうしようもねぇよな?

 

「いいえ、消えない。ほら御託はいいから。やり合いましょうよ。貴方のイライラ、全部お姉さんが受け止めてあげるから。」

「!?」

 

そっからがスタートだ。分かり合うのは今からでいい。大丈夫。全部ぶつけてこい、全部受け止めて、そんで全部忘れちまう位、世界の広さを見せつけてやる。

そしたらさ。

 

「ワタシね、貴方みたいな悪ガキの相手する時決めているのよ。そういうのってさ。誰かに一回吐き出さないと、とてもやっていけないでしょう。だからほら、きなさいな。これでも悪ガキの相手は慣れているのよ?」

「っっ、……女は、殴れんっ。」

 

どんなヤツでも。

話位はできるようになるもんさ。

 

「そう。じゃ、こっちから行ってあげるわ。耐えなさい?」

「ぐぅっっっっっっ、貴様!!」

「さぁ、とことん語り合いましょうか?」

「ちっ、どうなっても知らんぞ!!」

 

さぁ語り合いを始めようや!!

 

 

「そりゃあ!!」

「ぐはぁっっっっっっ!!」

 

つっえぇっっっっっっ!!

 

何コイツ。明らかに当時のオレより強いわ。イヤきっと高校生のオレでも勝てねぇんじゃねぇの。よく見りゃ戦神のおっちゃん達みたいな筋肉だるまだしよ。

むしろもう下手な戦神より強いんじゃねぇかコイツ?

 

「はぁはぁ。どう、またやれる?」

「っっ、はぁぁ。云え、俺の負けです。」

 

ま、それでも一応は150年程神様やってた分の経験で、生身でもどうにかなったわけだけども。いやぁ危なかった。イチチ、拳受け止めた手がもげそうだわ。

手袋してたら破けてたなこりゃ。

 

ま、【栄光の手】はもうこの手にゃないからいいけどよ?

 

しかしオレより顔も怖けりゃガタイもいい。そんでこの腕っぷしときたか。コイツもしかしてオレより苦労したりすんのかねぇ。

そりゃちょっと、認めたくねぇ話だわな。

 

……さってどうすっかなぁ。

 

 

「動けそう?」

「いえ。しばらくは。」

 

強いなぁ。はは。ホントに俺の全部受け止められてぶっ飛ばされちまった。ああ、世界って広え。とんでもねぇ人が居たもんだ。

おかげで最近むしゃくしゃしてたモンがすっきりした。

 

……大概単純だよ俺は。

 

しっかしこんな細い美人さんに負けたとあっちゃあ俺の鍛え方もまだまだと言う事か。いや邪念の性かもしれんな。真っ直ぐ生きろってじいちゃんの言いつけ破った俺に、この人に勝てる道理はなかったんだろう。

お山に籠もって鍛え直しだ。ふふっ、目標があるってのは嬉しい事だな。

 

「じゃあほら。もう冷めてるけどコーヒー。」

「ありがとうございます。」

 

ああ、優しさが身に染みる。そういえばじいちゃん以外の人にこんなに優しくされる事自体、始めてだな。

 

ああ、そうだ。俺始めてじいちゃん以外の人から優しくされてるんだな。

 

……ああ。こういう感じなんだな。

 

「じゃ、話してくれないかしら。」

「?」

「アンタが荒れてた原因。これまでの色々。人に話すだけでも大分楽になるもんよ?」

「!?」

 

そんなに自然に、優しい笑顔で当り前に俺の悩みを聞いてくれるのか。そうか。この人にとっては普通なんだな。……笑顔があまりにも綺麗すぎる。

 

目見てら俺なんかの事本気で心配してくれてんが分かる。いや最初から本気で心配してくれてたんだ、この人は。その為に俺と殴り合って、全力でぶつかり合って。

荒んで話もロクに聞かない見ず知らずの俺に合わせて、そんな無茶までしてくれたんだ。文字通り、体張って。

 

それがどんなにありがたい事か、痛い程わかる。考えると自然と目頭が熱くなった。俺がクソだと思ってた世の中は、俺が知らないだけでまだまだ捨てたモンじゃないんじゃないかと、素直に思えた。

 

そっかこんな人もいんのか。

 

涙を堪えて、声を引き絞り答える。

 

「……聞いて、貰えますか?

少し長く、なります。」

「上等。全部聞いてあげるから。しっかり吐き出しなさいな。覚悟はいいかしら?」

「……叶いませんね、とても。」

 

だけど満面の、全てを包み込むような笑顔を浮かべながら彼女はなんでも事のように俺に言ってのけた。人としての、大きさが違う。違いすぎた。そんな彼女の姿が、これまで多くの人にそうやって来たことを、如実に示していたから。

 

どうみても小柄な女性のその人が、遥かに、誰よりも大きく見えた。

 

その笑顔を見てるだけで、この人だったら本当に全部まるく収めちまうんじゃないかって、なんとなく思えちまう。そうなるような人生をこの人がずっと送ってきたのかと思うと、自分の周りの事で拗ねてた自分が何とも情けなく感じる。

 

「これでも君より長く生きてるんだもの。そら少年、話せ話せ♪」

「……はい。お願いします。俺は、今まで……」

 

どうみても高校生位のその人のその言葉には、不思議な説得力が込められていた。口下手な俺は、それから少しずつ、自分の事を話していく。身の上の事、この顔の事。自分の周りの事。誰からも怯えられている事。最近の事。

 

その1つ1つをこの人は親身になって聞いてくれて、ある時は辛そうに表情を崩し、ある時は俺の肩を優しく叩きながら、全部、全部受け止めてくれた。

確かにこの人の言う通り、話すだけで楽になった。俺の事全部。誰かに知って貰えるだけで、心がすっと楽になる。

 

今まで1人でぐるぐると考えるしかなかった辛すぎる現実が、たったそれだけの事で大きく変わる。ああ、そっか。俺は、俺の事を誰かにわかって貰いたかったんだ。

 

そう気づいたのは、ほとんどを話終えた頃だったか。

 

この人にはそれが最初から分かってて、1人悩んでた俺にはずっと見えなかった。話しながらその人が共感する姿を感じ取り、この人の人生もまた、とても平穏無事なもんじゃなかった事が伝わってきた。俺と同じか、それ以上に。この人も苦しんだ事がきっとあるんだとわかっちまう。

 

それでもこの人は助け続けたんだと。

いや。助け続けるんだ。きっとこれからも。俺みたいなヤツを見つけて、問答無用で。

 

ああ、そっか。そりゃあ、叶わねぇ。

 

自然に、そう思った。同時になんてかっこいい人なんだろうと、素直に目の前の女性を尊敬できた。できたらこんな大きな人間に俺もなりたいと。そんな事が不意に頭によぎって、とても無理だと儚く消えた。目の前の女性があまりに大きすぎたから、とても真似できるとは思えなかった。

 

そん時だ。

俺の長い話がようやく終わった時、彼女はなんでもない事のように俺に言ったんだ。

 

 

「色々大変だったわね。……これからも君の人生は、きっと大変なんでしょう、ね。でも大丈夫。世の中って辛いもんだけどさ、中にはワタシみたいなヤツもいて、たまにはいい事も起こるモンなんよ。世の中理不尽なモンだもの。

 

理不尽に辛い目に合う事があるんなら、その逆もあり。理不尽に救われる事だってあっていいもの。精一杯頑張って生きてりゃそんな事もあるもんよ?」

 

「……無茶苦茶ですね。」

「ええ無茶苦茶。世の中って結構無茶苦茶なのよ最初から。きっとね。それに、辛い世の中が嫌だったら、……いつか貴方が救われる方法はとりあえず2つかな。」

 

「なんですか?」

 

「まず1つ目はそのままグレてもうそういう世界の人になっちゃうか。これが簡単な方法ね。それだけで貴方は変わって、世界にきっと対応できるわ。」

「……もう1つは?」

 

「こっちは結構難しい方かしら。でもやる事は簡単なのよ?

 

救われない世の中だっていうならね、まず自分が誰かを救ってみるの。困ってる人がいたら助ける。助け続けてみるの。そんだけの事よ。

 

誰からも話すら聞いて貰えなくてグレてるような子がいたらまずはその子を心から信じて、その子を全部受け止めて、話を聞いて、一緒に悩んで考えてあげて、時には手を貸してあげる。それだけ。

 

そんな事やってたらいつかきっと貴方の周りには心から貴方と一緒に笑ってくれる、そんな誰かが出来てるわ。これね、経験則だから。」

 

「……貴方みたいに、ですか?」

 

「そ。ワタシにも君みたいにグレてた時期があって、恩人に同じ事を言われたのよ。バカみたいに、バカになって一度全部信じてさ。片っ端から手を差し伸べてみるの。まぁ色々と勘違いとかされるかもしんないけどそれでもやめない、めげない、諦めない。時には騙される事も、それで辛い目に合うこともあるけどね。

 

そんな事続けてるとさ。いつか貴方の周りは少しだけ今より優しくなってるのよ。」

 

「……そんなもんですか?」

 

「ええ。知ってる?

 

誰かを疑う事なんて誰でもできるけどさ、辛い誰かを信じられる人ってね、少ないの。それだけスゴイ奴なのよ。疑うヤツより信じる人の方が何倍も、何十倍もスゴイのよ。だってそれが出来たらさ。それだけで救われるヤツだっているんだから。」

 

「そう、ですね。……凄くわかります。

あの俺にもソレ、出来るでしょうか?」

 

「君みたいな子だったら、ワタシなんかよりもいっぱい助けられちゃうわねきっと。困ってる人の中には、意地になっちゃう人だって多いもの。でもそんな立派な身体してたら、人よりずっといろんな人に手を差し出せちゃうわ。

 

できるわよ。ワタシにだって出来たんだもの。貴方にできない筈がないわ。」

 

「!?」

 

(ああ、なんて笑顔が似合う人だろう。なんの確信もないのに、心の底から俺を信じてくれる、そんな笑顔。信じさせてくれるそんな笑顔。

ああ、俺もこんな人になりたい。いや、なるんだ。だってこの人が信じてくれてるんだから。この瞳は、裏切れねぇ。裏切れるハズがねぇ)

 

「はい。俺、やってみます!!

今日から俺、バカになります。人を信じて、信じ続けられるバカに。それでいつかは貴方みたいに、大きな、大きな人間になって見せます。」

 

「ええ、ならもう安心ね?」

「はいっ、ありがとうございました!!」

 

(なるんだ、俺も。この人みたいに。誰よりでっかい、天を往く光みてぇな人に。それが俺の、……これからの新しい目標だ)

 

 

「ああ、最後にだけど。君、高校にだけは通っときなさいな。君の身の上だとすぐに働きたくなる気持ちもわかるけどね。きっとその経験はいずれ貴方を助けてくれるわよ。高校を出た後で、きっとね。」

 

そうそう。俺もあんときゃびっくりしたぜ。今ならああ、高校行けっていった意味、そういう事だったのねって言えるモノ。高校は行っとこう。

じゃないと異世界で詰んじゃうぜ、きっと。

 

「はいっ、わかりました!!

あの、俺イリス カミナっていいます。

貴方の名前、教えてくれませんか!!」

 

うん?

聞き違いかな。ま、いっか。

 

「それは、……そうね。貴方がバカで居続けてたら、きっといつかわかるわよ。ふふ、そういう楽しみがあった方が頑張れるんじゃないかしら?」

 

「っ。はいっ、本当に、ありがとうございました!!」

 

『終わりましたか?』

「ああ、終わった終わった。はぁ。なんてぇ事だよ。結局俺の憧れてた人って俺なんじゃん。そりゃ見つからんわけよ。はは、ひでぇ話。俺こんなんばっかだよな?」

『肯定。まぁ、貴方らしい結末でしたね』

 

「……ああ、ステラ。俺に残った最後の女神の力なんだけど」

『お譲りになるのでしょう?』

「はは、さすが相棒。よくご存知で」

『ええ、貴方の事ならなんでも。皆と合流してからにしますか?』

 

「いや、それだとまた50年はかかるだろ。今もう渡しちまおう。ああっと、確かそうすっと俺、元の姿に戻っちまうんだよな?」

『ええ。貴方は完全に入主 神威として、異世界で得た力のほぼ全てを失いますね』

「いいさ。力なくなっても皆はいるし。ああ、悪いけどそこら辺確認してみてくれるかな。俺が人間になったらみんなもその、寿命とかができちゃうだろ。使徒じゃなくなるわけだしさ」

『別に必要ありませんよ。いつも通りのおせっかいで、女神じゃなくなったとだけ伝えればみんな納得するでしょう。彼女達が何年貴方と家族をやっていると思っているのですか?』

 

「ああ、そっか。なら大丈夫だな。じゃおっぱじめるか。」

『ええ、仰せのままに。』

 

「我が根源よ、虹と(スパイラル)なりて今紡(プリズム)がれん!!」

 

「ああ、懐かしい感覚。目線高いわぁ。」

『その姿は自称勇者軍とのアレコレの時以來ですね。』

「おう。なんか皆に戦神モードとか呼ばれてたわな。久々にオレの姿が人から恐れられるんだなって再認識した時よ。ヘコむわ。そっか、そういやそん時オレのこの姿ってみんな見てるんだったっけか。」

『ええ、皆からはわりと高評価でしたよ。』

 

「人間組からはさんざんだったけどな。怒りをお鎮め下さいとか、やかましいわ。ま、ワカバとかコイシが喜んでたのは嬉しかったけども。ああ、ツルギとかもなんかもはしゃいでたっけか。」

『基本人間組以外は人の美醜に無頓着ですからね。彼女の場合は戦神としての属性を得た貴方と一緒に戦える事を喜んでいたのでは?』

「同時に死神属性まで得られるとは思わんかったわ……。そんなにコワイかよってなった。まぁ助かったけども。」

 

『譲渡は上手くいきましたか?』

「ああ、これでアイツがオレと同じように女神になる事があったなら少しだけ楽ができるだろうよ。オレはなんのかんの皆を一度失ったり、色々辛い思いしたからな。それに普段の生活でも少しばかり良い方に運が傾くと思うのよ。

とりあえず運命操作への耐性は上がったからな。」

 

『結局地球の神々とのアレコレは決着はつけられませんでしたからねぇ。』

「そこらはヴィリスとアイツに期待しよう。……多分運命だけ弄られてたオレとは違ってアイツはもっと深い所で弄られてるから、カウンターとれる機会もあんだろ。ああ、でもオレのせいだよなぁコレ。」

『奴らとの繋がり、断っちゃいましたものねぇ。』

 

「後悔はしてないけどね。家族らの命掛かってたし。でもヴィリスには伝えとこうか。きっと虹の女神様ならなんとかしてくれるって。」

『貴方のそういう楽天的な所、私は好きですよ。』

「そりゃどうも。」

 

『で、貴方は結局これからどうする気ですか?』

「うーん。そだな。今のオレってまっさらの高校生の時の自分だしよ。とりあえずはそっからやり直してみるわ。最後の跳躍で、行きたいトコあんだよ。んでそのまま、その時代のどっかで暮らそうかなって思う。」

『では予定通り計画をすすめるのですね?』

「おう。ま、最後まで不思議な冒険としゃれこもう。」

『了解です。相棒』

 

 

その後。

 

とある街で不思議な事件が1つ起こった。なんでも一度死んだ筈の少年がその火葬を前に息を吹き替えしてしまったというらしい。

みなし子だった少年の蘇生に彼を引き取っていた親族達は顔を引きつらせて複雑な顔をしていたというが、少年の死を悼み、その場に自主的に集まっていた多くの柄の悪い少年や少女達、そして少数の道の者達は、その事実を多いに喜んだという。

 

その後蘇生した肉体の研究を目的にとある海外の研究機関に多額の報酬と引き換えに引き取られる事になった少年の名は、

 

入主 神威。

 

機関の名はどうやらステラ機関というようだ。

そして5年の時が過ぎた。

 

 

はい。お久しぶりの神威です。

いやぁ、あの後は大変でした。なんとか色々ステラとウチノに準備して貰ってどうにかはなったんですけどね。そのまま転校の処理とか、集まってくれてた悪ガキ達と筋モンのおっちゃん達との大宴会とかね。ま、色々あったんです。

 

ずっと気になってたんですよ。こんなオレが死んでもきっと悲しんじまう奴が居て、そういう人の事をね。どうやらあの時助けた坊主もその珍しい1人で、それからも実は坊主とは付き合いが続いてたりしてますね。

 

んでそれから形の上ではステラの用意した仮の研究施設に売られたオレは、別の街に引っ越して何食わぬ顔でみんなと一緒に生活とかしてました。ウチノとステラがはっちゃけてくれたお陰でね。お金とかは大丈夫だったみたい。

 

まぁ、ほんまもんの錬金術が使える子と数字のやり取りでは負け無しの子だからね。無茶すんな。

 

あ、言葉とかは実はみんな異世界の方で覚えてくれてました。オレらって時間だけはあったからね。オレとか160歳超えてるもの。んでステラが神界の翻訳データベースから言葉ぶっこぬいて来てまず言葉覚えて、みんなの先生をやってくれたんですよ。日本語と英語。一番覚えの悪かった生徒? オレですよ。

 

んで現在。オレなんですがねぇ。

 

「青コーナー……」

 

なぜかリングの上に上がっております。

 

いやぁ高校卒業後、普通に街工場で働いてたんですけどね。そん時に昔はやんちゃやってたオレの知り合いにですね。何故か熱烈に誘われまして。オレってずっと誰かと競ったり、殴り合ったりすんのって嫌だったんで、そういう事を避けて生きてたんですけどね。

 

プロレスならそれも愛ですって、押し切られちゃいまして。

 

なんかね。いつの間にかうちの子達が向こう側についてたんですよ。レスラーってのはみんなに夢を魅せる為に戦う商売だってフレーズが琴線に触れたらしくてね。めっちゃキラキラの期待の籠もった目で見られてたらもうね。

 

気づいたらレスラーでした。

 

実際にオレがそうして戦いだして世間じゃあ少しだけ、街ゆく人達が強面を見る目が優しくなったって話です。オレの顔になれちゃうとね。そりゃ他は怖くなくなるよね。複雑。でも嬉しかったです。

 

で今なんですが。

 

「うわぁっ、なんて迫力なんだぁ!!」

「ひぃっ、アレでノーメイクなのかよ。まったく凄まじい漢が現れたモンだぜ。」

「生カミサマまじパない!!」

 

「ふっ、凄い漢が現れたものだ。」

「だが今日の相手はこのプロレス四天王が一角。」

「そう安々とやらせんぞ虹の橋の神よ。」

 

「「「「「ウオー、神威の兄貴~」」」」」

「頑張ってっ、正義の怪人のお兄さんっっ!!」

「おらぁ、気ぃ抜いた試合すんじゃねぇぞオイ!!」

 

「あはは、ご主人サマやっちゃえ~。」

「旦那はんきばりやぁ~。」

「貴方様ぁ、頑張って下さいな~。」

 

「主殿~、ご武運を~。」

「カミサマ~、みんなに夢を与えてあげて!」

「……カミサマ、みんなの未来を創ってあげて!」

 

「では相棒、準備はいいですか?」

「いつでもイケるぜ、ステラ?」

 

「異世界からの刺客、覆面なき正義の怪人レスラー、7つの投げ技を操る極彩色の虹の橋。異界の言葉で虹の橋の神を表すというそいつの名は、その名は!!

ヴィリス・カムィ!!」

 

「テメェラに虹の力を見せてやらぁ!!」

 

「「「「「「「ゔぉぉぉぉぉっっっっっ!!」」」」」」」

 

今日も元気に、オレはオレの出来る事で誰かのおせっかいを焼いています。

 




閲覧ありがとうございます。

と、いうわけでこの長いタイトルのお話も一端ここまでです。
見て下さった皆様本当にありがとうございました!!

リメイクの用意が整いましたので
まだお付き合い下さるかたは下のリンクからお願いします。

https://syosetu.org/novel/209358/

まぁこの後、500pt感謝とか書きますけどね。
も少しお付き合い頂けると幸いです。

マグネット様誤字報告ありがとうございます!


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