ナイツ&マジック&B (ウジョー)
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「私の勝ちだな

今計算してみたがアクシズの後部は地球の引力にひかれて落ちる

貴様らの頑張り過ぎだ」

 

「νガンダムは伊達じゃない!」

 

「ラー・カイラムでアクシズを押すんだよ!!」

 

「艦長 無茶を言わないでください」

 

「地球が汚染されるのを黙ってみているのか!」

 

「待ちな! まだ負けちゃいねえ」

 

「藤原・・・」

 

「いくぞ!チャムしっかりつかまってろ!」

 

「レニー!マイク!オレに続け!」

 

「ミア!ランバ!パイ!いくぞ!!」

 

「緑の大地を汚させはせん!!」

 

「よし!いくぞ甲児君!!」

 

「ああ!!」

 

「ジャンジャジャーン!いーくわよ!」

 

「剣狼よ 導きを!!」

 

「みんな 一気に行くぜ!」

 

「ゲッターの力を信じるんだ!」

 

「私たちはどうするのダーリン?」

 

「決まっている それから その呼び方はやめろ」

 

「わお それじゃブライト艦長 またね」

 

「全機がアクシズに向かっている!?

やめるんだ!撤退命令は出ているんだぞ!!」

 

「アムロ おまえはまだアクシズにいるのか・・・」

 

 

 

「あきらめてはいけない!

あきらめたら・・・そこで終わる・・・!」

 

「駄目だ!摩擦熱とオーバーロードで自爆するだけだぞっ!」

 

「そう簡単に超合金Zが溶けるかよ!

・・・あちち!ガラスは熱くなってきやがったぜ!」

 

「甲児くん!もつのか!?」

 

「こっちよりもボスだ!

いくらなんでもボロットじゃもたねえ!!」

 

「へっ!心配すんじゃねえよ兜!

こんなこともあろうかとアストナージさんとセイヤさんに頼み込んで

V-UPユ二ット(U)にV-UPユニット(W)!

おまけにミノフスキークラフトにディストーションブロックまでつけてんだ!!

このボスボロットはマジンガーにだって負けねえってもんよ!!」

 

「ボス!こっちを補給してくれ!

グレートブースターの追加でアクシズの軌道を変える」

 

「グレンダイザーもだ!

反重力ストーム全開で少しでも軽くする!!」

 

「おうよ!まっかしとけえ!」

 

「ドモン!それが貴様の実力か!ん?」

 

「師匠!

俺は失いたくない!かけがえのない人々を!

みんなと生きてきたこの世界を!!

兄さんとシュバルツと師匠たちの愛した地球を!!!」

 

「ならば心して受け止めて見せよ!

お前たちの愛の力をぉ!!!」

 

「さあレイン!最後の仕上げだ!!」「ええ!!」

 

「獣戦機隊もいくぞ!やーーーーってやるぜ!!!」「愛の心にて悪しき空間を断つ!!」

 

「天よ地よ、火よ水よ、最後の力を与えたまえ・・・!」

 

「わおラブラブアタックね!ダーリン!」

「俺は幸せ者だな この場面 この舞台で命を賭けた大博打が打てる」

「この博打外れれば全部終わっちゃうわよ

まだアルフィミィちゃんを産んでないのに」

「だが当たれば億万長者だ 全賭けでいく」

 

       「石」「破」

      「「ラーブラブ」」

 \\\\ロンドベル全員天驚拳!!!////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

とある静かな夜

ボキューズ大森海とフレメヴィーラ王国の境界に位置する砦

バルゲリー砦に非常警笛が響く

魔獣の襲撃に備え宿直の騎操士(ナイトランナー)がいち早く幻晶騎士(シルエットナイト)に飛び乗り

砦の正門にかけつけた

そこにいたものは・・・・!?

 

「なんだこいつは!?

魔獣ではないのか!?」

 

「毛はないし皮膚はあきらかに金属製

こんな魔獣は見たことも聞いたこともないですよ

ひょっとして幻晶騎士(シルエットナイト)なのでしょうか!?」

 

まさに異形としか言いようのない存在に困惑していた

金属製の巨人が大の字になっているというまさに子供の絵本の世界である

 

「そんな馬鹿な!?

こんな子供のおもちゃのような丸っこい造形

学生が改造したサロドレアでもこんな形にはしないぞ!?」

 

「でもキュッヒルさん

このカルダトアと同じぐらいの大きさのおもちゃなんて

それこそありえないですよ!

幻晶騎士(シルエットナイト)だとしたら中に騎操士(ナイトランナー)が乗っているはずです

まずは呼び掛けてみましょう」

 

「まてステファン 隊長の到着を待ってからにした方がいい

この体だ 下手をするとカルダトア2体でも抑えきれるとは限らんぞ」

 

「は、はい」

 

戸惑う二人、いや二体の幻晶騎士(シルエットナイト)の前で

まるで寝ているような未知の物体が起き上がった

 

・・・う~~ん なんでい?

たしかアクシズって石っころをみんなで止めようとしてたような・・・

ここは地面か 地球まで落っこっちまったか?

 

「動いた!?

それに人間の声!?本当に幻晶騎士(シルエットナイト)なのか!?」

 

立ち上がった謎の存在はフレメヴィーラ王国制式幻晶騎士(シルエットナイト)カルダトアの10メートルを超え

やや大きい12メートルもある

 

「落ち着けステファン!

そこにいる幻晶騎士(シルエットナイト)騎操士(ナイトランナー)

こっちの声が聞こえているか!

こちらはフレメヴィーラ王国バルゲリー砦所属のキュッヒルである!

そちらの名前と目的を言いたまえ!」

 

おれさまはロンド・ベル所属のボスってんだ

本名は作者もおれも知らねえけどよ

そんでこいつは天下無敵のスーパーロボット!

ボスボロットよ!!




拙作のボスボロットはスパロボのイメージ優先です
一応原作アニメや激マン!なども参考にしています
ナイツ&マジックは基本アニメ準拠で隙間をコミック版や小説版を参考にしております
冒頭はスーパーロボット大戦IMPACTのEDから 
個人的に一番プレイしたスパロボであり
ボスボロットの使い勝手がシリーズ中このあたりからかなりよくなってきた印象だったので
まあロンドベル全員天驚拳は新スパのアンソロネタですが


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足かせ

おれさまはロンド・ベル所属のボスってんだ

本名は作者もおれも知らねえけどよ

そんでこいつは天下無敵のスーパーロボット!

ボスボロットよ!!

 

ボスが名乗ったところで砦の隊長含む全機がやってきた

 

「ボス君と言ったね

私はこの砦の隊長のカーンだ

詳しい話を聞きたいところだが 今はそれどころではないようだ」

 

砦の外遠くから 木々を踏み分けながら近づいてくる獣がいた

その姿はまるで小山か巨大な岩石が動くがごとく

ごつごつとした剣山のような甲殻をまとった全長80メートル高さ50メートルに達する亀型魔獣であった

 

なんだありゃ?機械獣?それともメカザウルスか?

 

「種別確認!師団級魔獣陸皇亀べへモスです!!」

 

師団級魔獣 それは倒すためには一個師団シルエットナイト約300機が必要といわれている魔獣である

この砦の戦力一個中隊に隊長機を含めた10機ではあまりにも戦力不足であった

 

「ステファン!おまえはそのまま伝令だ

ヤントゥネンへ知らせてくれ!」

 

「で、でも」

 

「命令だ 急げ!

結晶筋肉が砕けるまで走り抜け なんとしても伝えるんだ」

 

「はい!」

 

ステファン機がフレメヴィーラ王国中央部最大の都市ヤントゥネンに向かって走り出した

 

「ボス君 君も動けるようならやつについて行けば

このあたりの最大都市に行ける

あそこにはうちの10倍以上の戦力がある

ここにいても貧乏(くじ)だ」

 

「一人息子を死なせて あいつのお袋を泣かせるわけにはいかんからな

おまえさんも家族がいるだろう」

 

冗談いうなってんだ あんなやつにビビってロンド・ベルでやってけるかよ

このボスボロットの雄姿を見せたるぜ!!

 

呆気にとられる隊長たちが止める間もなく

砦に迫るべへモスに一騎駆けにつっこんでいくボスボロット

 

ジャンジャジャーーン!いーくわよ ボロットパーーンチ だわさ!!

 

   ガシャ--ン!!

 

「止まった!?拳一つで あのベヘモスが!?」

 

全身強化魔法で強固な肉体を誇るべへモスの顔面にパンチがめりこんだ

 

「好機だ!ボス君さがってくれ!

一斉放火を仕掛ける!!」

 

あいよっとっと!!

 

ボスボロットが距離をとったところで

 

「全員抜杖!法撃開始!!」

 

バルゲリー砦所属のカルダトア9機による魔導兵装シルエットアームズの

炎の槍(カルバリン)』一斉法撃が盛大な火柱を上げベへモスに炸裂した!

 

おうやったか!? ってそんなわきゃねえか!

 

べへモスが再び動き出した その光る目はカルダトアをとらえ

大きく口を開けて息を吸い込んだ

 

おっといっけねえ!

 

べへモスの必殺攻撃 魔術による猛烈な竜巻の吐息(ブレス)がその口から放たれる瞬間

カルダトアとの射線上にボスボロットが割り込んできた!

 

あいたあ!やりやがったなこんちきしょう!

 

「ボス君無事か!?」

 

あったりめえよお!!

 

ブレスの直撃をうけたボスボロットは激しくきしんだ音をたてたが

しっかりと2本の足で立っていた

その後方にいたカルダトア隊へのダメージはなかった

 

「ボス君!この狭い場所であのブレスは避けられない!

砦を完全放棄して屋外遅滞戦闘に持ち込む

まずは君から砦を抜けて下がるんだ

ベンヤミン!アーロ!彼のシルエットナイトを抱えてでも下がらせろ!

そして順次砦を通過し野外戦闘を仕掛ける!

キュッヒル!俺とお前でしんがりをつとめる

俺たちの命の恩人を下がらせるまで あの亀野郎を通すな!」

 

「おうさ!」

 

ボスボロットたちの速やかな撤退を支えるために

ボロットパンチによりできた傷口や脚部をねらい

2体のカルダトアがベへモスへの接近戦闘を仕掛けていった

一撃離脱によりベへモスの注意をひき最後のクラエス機が砦を抜けたのを確認し

自分たちも砦を通過するべく ベへモスに背を向けた瞬間

再びべへモスが大きく口を開けて息を吸い込んだ

 

「隊長!!?」

 

「キュッヒルさん!!!」

 

いけねえ!!イチかバチかのスペシャルボロットパンチ!!!

 

    ギュオォン!!

 

「なにィ!?腕が!!」

 

ここで解説しておこう

ボスボロットはそもそもスクラップを材料につくられたロボットである

当初、車やマジンガーZによって倒された機械獣などのものであったが

長い大戦の間に生じた敵味方含めた無数の様々なスクラップによる修理・強化が行われていた

その両腕にはゲッターロボのゲッター合金も使われていたのだ

そのボスボロットの両腕が伸び 砦を挟んで逆位置にいる

隊長機とキュッヒル機 2体のカルダトアを掴んで引き寄せた

 

べへモスのブレスがバルゲリー砦を粉砕したが

しんがりを務めていた2機は間一髪その猛威から逃れることができた

 

よっしゃあ 助かったぜ!!

 

   ブラン・・・

 

「ボス君 機体の腕が!?」

 

ボスボロットの本来の機能を大きく超えて伸びた両腕は

元の長さまで戻ったところで動かなくなった

 

    ガチャガチャ!

 

ありゃりゃ 動かねえ

 

「ボス君今度こそ逃げるんだ!

例えそのシルエットナイトを捨てて逃げても

俺たちが絶対に あの亀野郎の攻撃を止めて見せる!!」

 

へっ!冗談はよし子さんってな 根性がありゃどうとでもならあな!

それより亀野郎を止めんだろ やってやろうじゃねえのさ!やってやろうじゃねえのさ!

 

「ボス君・・・

野郎ども!こっから誰一人欠けることは許さねえ!

クロケの森を最終防衛ラインとして広く使って戦え!!

ヤントゥネン騎士団到着まで持たせるんだ!!」

 

   \\\\おう!!!////

 

バルゲリー砦跡地からの戦いは激しくまた長時間に及んだ

べへモスの進撃は明らかに鈍っていった

カルダトア9機の連携は時に法撃を 時には接近戦で

べへモスの脚部を 頭部を 傷口を的確にとらえ続けた

だがべへモスの足 胸の衝角 鋭く硬い尻尾 全身どれもが一撃必殺の威力を秘めた攻撃である

その巨体による攻撃を必死によけ続けながら

誰も欠けることがなく 夜を徹し日をまたいで戦い続けた

それを支えていたのがボスボロットだった

両腕が使えずその馬力を振るうことができなくなったものの

ボロットにはまだできることがあった

シルエットナイトの持つ魔力転換炉(エーテルリアクタ)による魔力(マナ)の自動回復だけでは

戦闘中に魔力貯蓄量(マナ・プール)切れにより動きを鈍らせた者からやられていただろうが

ボロットの補給装置がマナを回復し投擲して失った剣すら回復していたのだ

長期戦の中ベへモスにも変化があった あのブレスを使わなくなったのだ

その巨体を支え装甲を増しているのは自身の使う強化魔法である

敵を前にブレスの乱用によるマナの消耗を本能的に嫌ったのだろう

べへモスの足止めを行うもの 後方で休息し補給を受けるものが絶えず入れ替わり

互いに決め手を欠いたまま戦線は硬直しつつも少しずつ

クロケの森へ近づいていた

その森から先にはフレメヴィーラ王国中央部最大の都市のヤントゥネンがある

そこにべへモスをたどり着かせるわけにはいかない

 

「ハア・・・ ハア。・・・」

 

騎士団ってえのは いつ来るんでえ・・・?

 

「ヤントゥネン騎士団はシルエットナイト一個旅団(約100機)の大騎士団だが

伝令のステファンがヤントゥネンに着いたとしても・・・

師団級魔獣を倒せるだけの戦力を整えてここまでかけつけるには

どうしても時間がかかる、 今からでも逃げるかいボス君?」

 

水くせえぜ 仲間じゃねえか

 

「!・・・ありがとう!

さあ野郎ども!鈍重な亀野郎がさらにもたついてきたぞ!

あっちが魔力切れになれば もう動けるわけねえんだ!!

この森を使え! 頭を使え!! 気合をいれろ!!!」

 

   \\\\おおおおおおおおおお!!!////

 

ボスボロットを含めた10機はこの戦いですでにお互いに

信頼しあい激励しあえる友情が芽生えていた

まだ戦える この巨大な魔獣を前に誰一人心が折れることはなかった

 

 

 

 

・・・師団級魔獣べへモスの脅威は人間だけではない

他の魔獣にとっても恐怖の対象である

その脅威から少しでも離れようとクロケの森に押し寄せた魔獣の群れは

その逃走先にたまたまいた人間たちに襲い掛かり・・・

全て返り討ちにあっていた

それを成していた人間の中でもひと際戦果を挙げていた銀髪の少年の耳に

少し離れた戦場からあの声が届いていた・・・

 

ジャンジャジャーン!さあさあよってらっしゃい!みてらっしゃい!

オレさまこそ日本一のいい男ボス!

このボスボロットにビビらねえなら かかってこい!だーわさ!!

 

「!?まさかこの世界に!?」

 

少年は飛んだ 声の聞こえた方角へ大気圧縮推進(エアロスト)の魔法により

銀色の弾丸となって-------




仕事でクレーン運転中に
脳内で「ボロットパーンチ!」とか叫んだりしてます
2本のレバーにペダル ボタン操作と
ロボットのコックピットみたいでちょっとワクワクします


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挑発

「万が一にもヤントゥネンに踏み込まれるわけにはいかない

ベヘモスの注意をこちらにひきつけ進路をそらせ!」

 

そういうことならまかせとけってんだ!ジャンジャジャーン!さあさあよってらっしゃい!みてらっしゃい!

 

このボスボロットにビビらねえなら かかってこい!だーわさ!!

 

   ググ・・・  グオオオオ!!!

 

ベヘモスの目がボスボロットをとらえた

 

おっとっと 鬼さんこちら!手のなる方へ 屁のなる方へ ぷっぷくぷのぷー!

 

ボスボロットの挑発に乗ったかのようにベヘモスが動く!

その巨体が森の木々をなぎ倒しながらボスボロットに迫る!!

 

「全員抜杖!足元を狙え!!法撃開始!!!」

 

カルダトア9機の挟撃による『炎の槍(カルバリン)』一斉法撃が

ベへモスの足元に炸裂!その超重量が災いし地面に巨体の半身が埋まった!

さらに周囲の木々に着火!ベヘモスが炎に包まれた!

 

おお!こりゃきまったか 亀の丸焼きのできあがりってか!!

 

「あ!ああ!ああああ!この丸みを帯びたフォルム!

特徴的すぎる愛嬌のある顔!

本当にホン!モノ!」

 

ボスボロットの中のボスよりも興奮した声が

ボスボロットの外から聞こえた

 

な!?なんだあ?

 

銀色の妖精のような風貌の子供がボスボロットの口元に飛びついてきた

 

    コンコン!

 

「口に強化ガラスがあって 入れませんが・・・

やっぱり口の中には畳敷きのコックピット!

パイロットは・・・宇宙服?」

 

宇宙でのアクシズ落下を止めようとしていたため

ボスは宇宙服(ノーマルスーツ)を着ていたままだった

 

おお!!こんなところにカワイ子ちゃん!今窓をあけるわよん!

 

     ガララ!!

 

そんなとこにいちゃあぶねえぜ!こっちに入んな!!

 

「えーーと ボスさんでしょうか?

お招きいただきありがとうございます!

僕の名はエルネスティ・エチェバルリア!

あのスーパーロボット・ボスボロットに入れて感激です!!」

 

俺様のことをしってんのか?おっと宇宙服着てちゃ俺様の二枚目の顔が見えねえか よっと

 

ヘルメットを外し素顔を見せたボスにエルネスティの瞳が一段と輝く

 

「うわあ!憧れのロボットが!パイロットが!!

僕の!目の前に!!」

 

「お!そうか!?いっししし

サインでも書いてやりていけど

今はでっけえ亀とケンカの真っ最中だ

荒っぽくなるからこれかぶってろよカワイ子ちゃん」

 

ボスが投げてよこした宇宙服のヘルメットを受け取ったエルネスティが

 

「えっと 僕こうみえても・・・」

 

    グオオオオ!!!

 

炎に巻かれていたべへモスの咆哮が響き渡る

それは断末魔の叫びではない

大地を砕かんばかりに揺るがす激怒の咆哮だった!

暴れ回るべへモスの前に新たなシルエットナイトがあらわれた

 

「お!?援軍か あれがやっとんねん騎士団ってやつらか?」

 

「いえ あちらはヤントゥネン騎士団ではなく

僕の先輩達のシルエットナイトです」

 

「白い旧世代機(サロドレア)だと!?

こちらはバルゲリー砦所属隊長のカーンだ!

そこのサロドレア!いったいどこの所属だ!」

 

隊長機のカーンの声に 駆けつけた白騎士がこたえた

 

「こちらはライヒアラ騎操士学園 騎士学科 高等部

エドガー・C・ブランシュであります!

クロケの森で演習中の後輩たちの避難のために!

べへモスの足止めに参りました!!」

 

エドガー機白騎士(アールカンバー)を筆頭にさらに3機のサロドレアがやってきた

 

「学生だと!!??

・・・その意気やよし

だが相手は師団級魔獣 ここはあまりに危険だ!

諸君らは後輩の護衛に戻りたまえ

ここは我らとヤントゥネン騎士団に任せるんだ!!」

 

「お言葉ですがカーン隊長!

このデカブツは穴にはまって手も脚もでない状態ではないですか!

ならばここは仕留めるためにも一機でも多い方が得策かと

ご覧ください!カルバリン!!」

 

「まてよディー!このウスノロは俺の獲物だぜ!くらえカルバリン!!」

 

「よせ!ディートリヒ!ゲパード!!調子に乗るな!」

 

圧倒的な巨体のべへモスに威圧感にのまれまいと

エドガーの制止も届かず他の学生達は気を吐き

戦術級魔法による法撃を開始した

 

   ドドド!!

 

法撃に包まれたべへモスが首を巡らせ新手の学生機に

いまいましげな視線を送る

 

「あの体勢は!?」

 

「いけねえ!!嬢ちゃん!そいつをかぶって伏せてろ!!

舌をかむなよ!!!」

 

「いえ僕は・・・うわ!?」

 

べへモスが口を開けて大きく息を吸い込み・・・

学生機2機への必殺の竜巻吐息(ブレス)を放つその直線上に

ボスボロットが割り込んだ!

 

「「うわああああああああああああ!」」

 

「どっひゃああああああああ!!」

 

「ディートリヒ!ゲパード!!」

 

ベヒモスの竜巻吐息(ブレス)にボスボロットは耐えた

後ろにいた学生機は余波でひっくり返っていたが無事だった

ボスボロットに取付けていたディストーションブロックのおかげで

コックピットは無事だったが今の防御で完全に両腕が破壊された

 

「やべえ これじゃもうダルマだな!」

 

「友人を救っていただき感謝します!!

ディートリヒ!ゲパード!逃げろ!!!」

 

「ひえええええ!!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

エドガーの声が届いたのかゲパード機は一目散に逃げ出したが

ディートリヒ機紅い騎士(グゥエール)は動けないでいた

 

「どうしたってんだあの紅いのは?

とっとと、うごかねえか!」

 

「あれはディートリヒ先輩のグゥエールですね

見たところに損傷はないようですが・・・

ボスさん ボスボロットは腕がないようですが

お困りですか?」

 

「そりゃあ どうやってもパンチがだせねえからな」

 

では及ばずながら 僕が手を貸しましょう 先輩を『説得』してきます!

 

「そいつあ って おい!?」

 

エルネスティはヘルメットをかぶったまま

ボスボロットを飛び出し仰向けに倒れているグゥエールに飛びついた

 

   ガチン!プシュー

 

「なんだグゥエールの操縦席が開いている?誰か入ったぞ!」

 

「返事をしてディー!」

 

・・・・・・

グゥエールのナイトランナー ディートリヒは茫然自失としていた

ベヘモスと目が合い その口が開いたときから

完全に圧倒されていた

ふと幼いときに読んだ絵本を思い出していた

強大な魔獣に敢然と立ち向かう騎士の物語

それに憧れたかつての自分を思い出しながら

死を感じていた

 

「うわああああああああああああ!」

 

そのとき目前にあらわれたのは騎士ではなく

どこか子供のおもちゃのような巨人だった

その顔は笑っていた

かつて読んだ別の絵本を思い出す

子供の遊んでいた人形が意志をもち友達となり

最後はその子供を守って動かなくなる そんな話だった

 

   ガチン!プシュー

 

頭上で音がしてグゥエールの操縦席が開いていく

意識が飛んでいたディートリヒは反応もできずにいた

 

先輩 修羅場の真っ只中ですので少しグゥエールをお借りしますね

 

エルネスティに座席からどかされ 目の前で想像を絶するようなやり方で

グゥエールの操縦を奪われていくのをただ見ていた

 

さあて ここからがプログラマーの腕の見せ所です!

 

ーーーーーー

 

「学生諸君! 今のブレスが直撃すれば命がない!

倒れているあの機体を担いで早く逃げろ!

これは命令だ!!」

 

「わかりました ヘルヴィ手を貸してくれ!」

 

「わかったわ!」

 

ヘルヴィ機のトランドオーケスとアールカンバーが

グゥエールを抱えようとしたところで・・・

 

    ブオン!

 

グゥエールが突如立ち上がった

 

ふふふ あっ ははは あ!あははは!!乗っている!ロボットに!僕は今乗っている!憧れのロボットの前で!僕がロボットに乗っている!!

 

「ディー?」

 

「動けるなら下がるぞディー!」

 

これがべへモス・・・ これが戦!闘!いいえ!これが僕の!スーパー!ロボット大戦です!!

 

紅の騎士の中で悦びの声があがった




あけましておめでとうございます

少し更新が止まってましたがもうちょっとがんばります
マジンガーZのアニメ見てるとネタは結構でるので あとは書く時間さえあれば・・・



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補給

やっつけ作業にぶっつけ本番もいいところですけど

成功させるしかありません!!

僕の今世ナイトランナーを目指した日々は

いえ前世プログラマーの日々も含めて今この瞬間のためにあったのですから!!!

グゥエール ゴーーー!!!

 

立ち上がった紅の騎士グゥエールはそのままジャンプしてべへモスの顔面に剣で切りかかった

 

    ガィン!!

 

初撃は強固な面の皮にはじかれダメージはなかった が!

 

    ブシュ!!

 

2撃目が目に突き刺さった!

 

   グオオオ!!!

 

ヤントゥネン騎士団とのこれまでの戦闘で消耗していたべへモスだったが

この一撃で逆に活性化したように暴れだした

手負いの魔獣が命の危機を感じブレスに使っていた魔力を

自身の巨体を支えていた強化魔法に集中しているのだ

 

巨大兵器破壊の心得その壱です!!

 

軽やかに舞うグゥエールが脚の関節を狙った一撃!

 

  パキン!

 

まったく効いてなかった どころか剣が折れた

 

全身中身まで硬いです?

 

  ズル・・・

 

おっと 折角のロボット戦 ヘルメットをかぶったままやりたいのですが

流石にサイズが違い過ぎて邪魔にしかなりませんか

よっと

 

    ズポッ!

 

「エルネスティ!?」

 

「おや先輩 正気にもどりましたか?」

 

「ああ・・・ 兜でわからなかったがお前だったのか

それよりなんだこのグゥエールの動きは!?

お前のその変わった兜の力とかではないのか?」

 

「いえ このヘルメットではなく

僕がグゥエールの魔法術式を直接制御して動かしていました」

 

「馬鹿な!!

シルエットナイトの膨大な魔法術式を処理するなんて通常じゃ無理だ!

そのための操縦桿や鐙なんだぞ!

しかも戦闘しながらなんて人間技じゃないぞ!!!」

 

「そこは本職(プログラマー)の腕の見せ所です

それより先輩 もう剣がありません

グゥエールに何か隠し武器とかありませんか?

それに魔力(マナ)も持久戦をするには心許ないですね」

 

「はあ!?冗談ではない!

あのブリキの騎士に助けてもらった命

このままやられるなど・・・!」

 

   グオオオオオオ

 

  ズシン!  ズシン!

 

ボスボロットがべへモスの足踏みをどうにかかわしながら距離をとった

 

「どへえ!?

あの怪獣亀 まだこんな底力があんのかよ

あの目ん玉に刺さったままの剣が弱点になりそうなもんだが

ボロットの腕がとれちまったのはいてえなこりゃ

おっ?あの紅いロボットいい動きしてんな~

さっきのカワイ子ちゃんが乗り込んでいったヤツだな

おーーい!補給がいるならこっちにきてくれよ!」

 

ボスボロットからのよびかけに応えるようにグゥエールが隣接してきた

 

「お きたきた まってなよ ダメージは直せねえけど

エネルギーならこいつですぐに満タンでえ」

 

「おお 本当にマナが回復してますね

それに失った武器まで・・・

いったいどういう仕組みなのか非常に気になります!」

 

「お前の非常識さも大概だが・・・

あのブリキの騎士もおかしすぎるだろ!

べへモスのブレスをくらって腕がなくなってもピンピンしてるし・・・

何だ!どういうことなんだ!

もしや・・・・・・私はもう死んでるのか?

それとも夢!?」

 

「ちゃんと生きてますし起きてますよ先輩

まあ僕にとっては夢の真っ只中にいますけどね!」

 

戦う力を取り戻したグゥエールは再びべへモスに全力で向かっていった

 

「ボス君 こっちも補給を頼む!

いくら強くても学生の騎士に任せっぱなしにはできん!」

 

「隊長 あれを!!

あの森の木の上に見えるあれは!!」

 

「ヤントゥネン守護騎士団の旗!!

野郎ども!もうすぐ援軍がくるぞ!!」

 

「「「「おおおおおっ!!!!!」」」」

 

援軍の旗を目にし バルゲリー砦の騎士達の士気が天を衝くほどに上がった

夜を徹して戦い続け人機ともに疲労を極めた体が元気をとりもどしたのだ

そして長かった戦いはついに佳境をむかえる・・・




ようやくリアルの忙しさが一息つきまして短いながらもようやく更新できました
その間にナイツ&マジックは小説コミックともに新刊がでるし
他に書いてる拙作も原作が盛り上がってるおかげで 書きたいネタがたまる一方で嬉しい悲鳴です
やっぱり原作が元気だと二次創作もはかどります



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激怒

「総員、炎の槍(カルバリン)構え!

全軍、法撃開始!!」

 

  ドドドドドドドドド!!!!

   ゴアアアアア!!!!

 

ヤントゥネン守護騎士団のカルダトア数十機による一斉砲火がべへモスに突き刺さる

炎が巨躯を包み 攻め手を緩めぬまま騎士団長機ソルドウォートから声がかかる

 

「バルゲリー砦の騎士達!そして学生の騎士達にブリキの騎士よ!!

諸君の奮闘の甲斐あって学園の生徒は全員無事に保護した!!

このヤントゥネン守護騎士団団長フィリップ・ハルハーゲン心より敬意を表する

後は我らに任せて後方の学生達の護衛に回ってくれ」

 

接近戦中のエルネスティの操るグゥエール以外の学生騎士であるエドガーらは

すでに後方へさげられていたが・・・

 

「てやんでい!

ここまでやって はいそうですかってベンチで麦茶といくかい!

こっからがおれさまの腕の見せ所よ!」

 

「隊長!ボス君!みんなご無事でよかった!!」

 

「ステファン!

よくぞヤントゥネン騎士団を呼んできてくれた!

だがなにもわざわざこんな修羅場にもどってこなくてもよかったんだぞ」

 

「隊長さん そいつは野暮ってもんだぜ」

 

「そうですよ せっかく無理言って騎士団に同行してきたんです!

戦わせてください バルゲリー砦の騎士として!」

 

「・・・やれやれ 結局うちには愛すべき馬鹿野郎しかいなかったか

本物の騎士団様が来たんだ

俺たちみてーな半端ものは下がるべきなんだが

『アレ』のために この亀野郎の気をひくぐらいはやっておくか」

 

「『アレ』?って

おお!?アレかあ!」

 

「二番、四番、八番中隊、『鎚』用意、構え!!」

 

騎士団長機ソルドウォートが剣を翻し指揮をとる先には

対べへモスの『切り札』が姿をあらわした

それはロンドベルのエース機アルトアイゼンのリボルビングステーク

いやアルトアイゼン・リーゼのリボルビングバンカーを上回るサイズの杭打機

対大型魔獣用破城鎚(ハードクラストバンカー)幻晶騎士(シルエットナイト)が4機がかりで運用する決戦兵器である

ボスは一目でその威力を期待したがそれを実戦で当てる難しさも察した

当てる前にべへモスに狙われればひとたまりもないのだ

その命中率を上げるために全てのナイトランナーがべへモスの足止めを決意した

そしてボスボロットは戦場の一段高い丘に登り拡声器を全開で

大音量を響かせた

 

「さあさあよってらっしゃい見てらっしゃい!

ついに集結したバルゲリー砦の10人衆!!

まずはアーロさん!」

 

べへモスのつぶれた片目の死角からアーロ機が法撃を仕掛けた

 

    ボゥン!!

 

べへモスの注意がまとわりつくグゥエールからアーロ機に移った瞬間

 

「続いてベンヤミンさん!そしてクラエスさん!」

 

    ブン   ガンガン!!

 

  グオオオオオオ!!!!

 

ボスボロットが初撃のパンチでつけた傷口に両機が剣を投げつけ

べへモスが明らかに動揺した

 

「後は任せたぜ隊長さん!」

 

「全機抜杖!!

亀野郎の顔面にお見舞いしてやれ!!!」

 

「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」

 

バルゲリー砦のカルダトア10機による集中砲火

ヤントゥネン守護騎士団の一斉砲火にも劣らぬ強力な弾幕に

べへモスの視界は炎に包まれ 息苦しい様子で上を向いた刹那

 

「突けええ!!!」

 

    ズドオオオンン!!!

 

二番中隊のハードクラストバンカーが横っ腹に突き刺さった!

 

    ズドオオオンン!!!!

 

間を置かずさらに逆の横っ腹に四番中隊のバンカーが突き刺さった

シルエットナイトが4機必要な程の重量に見合うほどの威力が遺憾なく発揮され

誰の目にもわかるほどの致命傷となった

 

   アオオオオオオ!!!!

 

トドメとなる八番中隊のバンカーが迫る中べへモスが断末魔のような声をあげる

 

「いけねえ!!!!」

 

その声に不穏なものを感じて ボスボロットがとびだした、が

 

     ガッ!!

 

「ありゃ!?いっけねえ!?」

 

  ゴロゴロゴロゴロ!!

 

腕を失いながらの急なダッシュで体勢を崩し 転がりながら

 

   パッカーーーーン

 

べへモスの正面に陣取っていたバルゲリー砦のカルダトア10機を

ボーリングのピンのように蹴散らし

 

  ポーン    ズボッ!!!

 

その弾みで飛び跳ねたボスボロットがべへモスの口にちょうどハマった

 

「ああっ!?」

 

それは自らの死を感じたべへモスが最後っ屁の心境で放つはずだった

竜巻吐息(ブレス)を未然に防ぐ結果となったが

 

   グシャ!!!バキバキバキバキ!!!!

 

「ギャーーー!! おたすけーーー!!!」

 

ボスボロットの胴体が無残にも嚙み砕かれボスの悲鳴が響き渡った!

 

「ブリキの騎士!?」

 

「ボス君!!」

 

「ボスさん!?

許せません ロボットを破壊していいのは ロボットだけなのですよ!

先輩 ボスさんを助けにいきます!!」

 

 バッ!!

   グシュ!!!

 

グゥエールがべへモスの顔に飛びつきその頭を剣で突き刺すが

ボスボロットを咥えたまま離す様子はない!

既に強化魔法は弱まっていたが口を閉じる力は残っていたのだ

 

「先輩!操縦を代わってください!

このまま剣を離さないでくださいよ!!」

 

あまりの状況についていけないディートリッヒだったが

エルネスティから託された操縦桿を無我夢中で握り

 

「~~~~・・・??・・・!!!!!!!!」

 

悲鳴を上げながらも指示を遂行した

 

「紅の騎士のナイトランナー!何をする気だ!?」

 

エルネスティは胴体部の操縦席から飛び出し機体上で生身を晒しながらも

グゥエールの魔力を使い雷撃の戦術級魔法オーバード・スベルを放った

 

王手(チェックメイト)

 

   ピシ!ズガーーーーン!!

 

機体に残っていた全ての魔力と エルネスティの演算能力の全てを使い

構築された雷撃魔法はべへモスの脳髄を直撃した

 

  グラア・・・  ズシン!!!

 

さしもの師団級魔獣もこうなってはひとたまりもなかった

これまでのダメージもあり即死ではあったが

その口からボスボロットが解放されたときには

機体の胴体部はちぎれかけ まったく動く様子はなかった

その原型をとどめない残骸となった姿を見てバルゲリー砦の全員、

そしてヤントゥネン守護騎士団の面々やディートリッヒも言葉がなかった

だれもが操縦者生存の可能性は絶望的と思わずにいられない状況だった・・・

直接生身で顔を合わせることはなかったが 異形なシルエットナイトを操り

巨大な魔獣相手にともに戦い 自分たちを守りながら散った英雄に

戦場をともにした全てのナイトランナーが黙禱を捧げた

 

 

 

 

 

その近くで転がっているボスボロットの頭部にかけつけていったエルネスティを除いて・・・

 

   コンコン

 

「ボスさん 大丈夫ですか?」

 

「おー・・・ いてえ・・・

死ぬかと思ったが どうにか無事だぜ」

 

「流石 丈夫さに定評がある超合金Z製の頭部です!

あれほどの戦いでもビクともしませんね!」

 

「その様子だとやっぱりおれさまやボロットのことを知ってるみてえだな

やっぱりここは地球なのか?」

 

「どうやらお互いに情報交換が必要そうですね!

まずはここを出ましょうか お手をどうぞ」

 

「おおっと こんなカワイ子ちゃんから手を握ってもらえるたあ

これだけでも戦ったかいがあったってもんだわさ」

 

   ガシィ

 

「ええっと よく間違われますが

僕はれっきとした男子ですよ」

 

「ありゃあ!?」

 

 

 

 

 

この握手からはじまる二人の出会いがこの世界の

シルエットナイトの歴史を変えていくことになる

・・・・・・かもしれない

 




ようやくキリがいいところまで書けたのでチラシの裏から通常投稿に出してみました
より多くの方のお目に留まれば幸いです。


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友情

「お初にお目にかかりやす

生まれは日本 光子力研究所より

ロンドベル隊に出向中のボスボロットのパイロット

ボス と申します」

 

「わしがフレメヴィーラ王国国王、

アンブロシウス・タホヴォ・フレメヴィーラである

ほう、日本とは聞かぬ国の名だが・・・まあいい

此度は我が国の窮地を救った客人としてその方を招いたのだ、

むやみに堅苦しくても話しにくかろう、

この場は楽にするがよい」

 

「そいつはありがてい

なんせこんなしゃべりかた3分ももたねえもんで

イッシシシ」

 

国王の側近たちは驚愕を隠せなかった

べへモス討伐に際し騎士団とともに大きな功を上げながら

その正体は不明 乗っていた幻晶騎士(シルエットナイト)はまったくの規格外品

謎だらけの存在に国王自身が興味を持ち

城の会議室のような部屋で二人の側近のみを連れ

ボス一人を招き入れた

 

「わしを前にさして緊張しておらぬようだが

わしのような王族と会ったことがあるのかのう?」

 

「ロンドベルで女王様とかお姫様とかといっしょに戦ってたもんで

みんなとんでもねえ美人ばっかりでおれさま張り切っちゃってもう!」

 

「それはそれは豪気なことよ」

 

国王が笑顔で応えるなか側近たちは顔が青くなっていく

他国の見知らぬ王族の活躍を聞きつけ

若いころから無茶を続け 既に隠居が近い齢になってなお衰えぬ

国王の覇気にさらに火が付くことを恐れたのだ

 

「ところでボス、といったな

君は見たところドワーフのようだが

あのシルエットナイトはドワーフでも操れるものなのかね?」

 

国王アンブロシウスの探るような問いに

 

「ドワーフってのはよくわからねえが

ボスボロットはわりと簡単な操縦法になってっから

乗って歩かせるだけなら誰でもできるぜ

まあ一番うまく使いこなせるのはおれさまだがよ へっへっへ」

 

お調子者のように能天気に答えるボス

その顔に裏表をまるで感じさせないが

側近も含め国王側は警戒を解くことはなかった

そして・・・ところどころお互いに話が通じないところもあったが

いよいよ本題に入っていった

 

「・・・なるほど

ところで先の陸皇事変 べへモス討伐の件で君に国王として褒賞、

いや礼をしたいと思っておった 何が欲しい、申してみよ」

 

アンブロシウスの顔にはにこやかながら 人の悪そうな笑みを浮かべていた

その回答から未知の少年 ボスのことを少しでも探ろうと

生まれながらの王族として百戦錬磨の眼力が光っていた

そんなことを知ってか知らずかまるで出前でも頼むかのように

 

「そんじゃあ 壊れちまったボスボロットの修理の為に

人手と資材を都合してくんねえかな?

適当な量のスクラップとかでいいからよ」

 

   !?

 

国王と側近たちの表情が凍り付いた

大都市壊滅規模の巨大な魔獣による危機を

奇跡的にも人的被害なしで切り抜けた大事件の功労者が望むこととは

到底釣り合わない願いである

 

しかし ここで両者にはことの認識に大きなズレがあった

ボスにとってはべへモスはたしかに難敵ではあったが

自らがくぐり抜けた先の大戦ではそれ以上の強敵が次々とあらわれ

それらをボスボロットに乗り つい最近まで仲間達ともに戦ってきたのだ

その温度差が部屋の空気を更におかしなものにした

 

「それについてはこちらでも手配するつもりであった

なにしろ先に褒賞を授けるはずであったバルゲリー砦の騎士達や

エルネスティらは何よりもそなたの身の保障を求めたのだ

その程度の便宜をはかるのは当然のことだ」

 

「ありゃあ そうだったのか そいつはもったいねえ

って いっても ・・・ほかにほしいものっていえば

あっ! そうだ はぐれちまったおれの仲間が探してるはずだ!

もし そっちをたずねることがあったらおれに知らせてほしいんだわさ

アンテナを一本おったてるだけでも違うからその許可ももらいてえ」

 

「アンテナ? 詳しい話を聞かせてもらえるか?」

 

アンブロシウスの目が輝く 警戒し探るような気配が減り

子供のような好奇心を抑えきれなくなってきた

それからもしばらく会話は続き 謁見は無事に終わった

 

 

・・・

 

 

ボスとアンブロシウスの謁見後

後ろで控えていた側近たちが愚痴をこぼしていた

 

「・・・まったく 陛下にも困ったものだ

結局あの怪しい男の要望をそのまま受け入れてしまった」

 

「ですが 彼の要望自体は大したことはありません

それに彼が他国のスパイという可能性は限りなく低いでしょう」

 

「たしかに・・・

連絡をとる方法をあれほど明け透けに話すスパイがいるとは思えんが

あの男の話は荒唐無稽なものばかりでとても信用できるものではない!」

 

「空よりも高いところでべへモスよりも強大な敵味方が争う戦場にいたなどと

たとえその場しのぎの作り話としても明らかに常軌を逸しておりましたが

それだけに陛下の関心も高かったのでしょう」

 

「あのエルネスティ・エチェバルリアもべへモス討伐の褒賞に

あの男と謎のシルエットナイトをライヒアラ騎操士学園で預かり

その扱い一切に関わることを願うという奇妙なものだった

あのような得体の知れない存在を国として受け入れるべきではないのだ!」

 

「そうかもしれませぬが 彼らの功績は無視できるものではなく

最大の功労者であるバルゲリー砦の全員が彼の無事を願い

陛下自身が身の保障を約束したのですから仕方ありません」

 

「そのような約束をすること自体が問題だと言うているのだ!

そうじゃ!貴公の子らが学園に在籍しておるらしいではないか」

 

「ええ 確かに」

 

「さらに情報を集めた方がよかろう

何かよからぬ動きがあればすぐに報告させるのだ」

 

「・・・そのように」

 

「私からも人をだそう

これを放置するのは

べへモス以上の危険やもしれぬからな」

 

そのつぶやきがだれかに届くことはなかったが

その言葉が決して大げさではなかったことを

彼らはいずれ知ることになる

 

   ・・・・・・

 

「と いうわけで ボスさんとボスボロットは

僕達が通うライヒアラ騎操士学園で預かることになりました」

 

「おう あんがとよ 世話になるぜ」

 

王都カンカネンからライヒアラ学園街への道中

搬送されているボスボロットの頭部である操縦席の中で

ちゃぶ台を挟んでボスとエルネスティは話し合っていた

というより ボロットの中でのんびりしていたボスのところへ

エルネスティが押しかけてきたのだが・・・

 

「ん~~ 感激です!

あの光子力研究所のテクノロジーとボスさんたちの努力の結晶ボスボロット!

その存在はロボット界のパイオニアにして神秘のメカニック!

そして畳にちゃぶ台!

ここにはロボットの夢と日本人の魂の故郷が揃っています!

ボスさん!僕をボスさんの子分にしてください!」

 

「子分?」

 

「舎弟、家来、弟分、弟子、なんでもいいです

ボスさんがこのフレメヴィーラでボスボロットと共に生活できるように

万事整えてみせます!」

 

「子分にするのはいいぜ おれさまのことは敬愛をこめてボスとよべ!」

 

「OKボス!僕のことはエルと呼んでください」

 

「それはいいとして エルはずいぶんおれやボロットのことに詳しいな

王様たちは全然知らなかったみたいだったのによう」

 

「そうですね 僕のことをすんなり子分にしてくれたことですし

ボスには僕の秘密を明かしましょう

これはまだ両親やアディ達にも直接言ったことはないんですが・・・

僕には前世の記憶があります

前世での名前は倉田 翼、 日本人です」

 

「ほーん 同郷か

ありゃ ってことは ここってショウ達が召喚されたっていう

バ、バ バーサン・ネルとかいう異世界か?」

 

「バイストンウェルですね

ここではその呼称は聞いたことはありませんが可能性はあります

僕達にとってここセッテルンド大陸より外は完全に未開の土地ですから

もしくは似たような異世界かもしれません

ちなみに僕が転生した理由やボスさんを日本に帰す方法はまったくわかりません」

 

「なるほどなあ まあそれはいいだわさ

ところでエル 日本人だったときはいくつだったんだ?」

 

「僕の生前の記憶では28歳 プログラマーでプラモデラーでした」

 

「ありゃりゃ年上かよ 翼さんって 呼んだ方がいいか?」

 

「いえいえ 僕はもうエルネスティ・エチェバルリア12歳ですから

あくまで子分としてエルと呼んでください」

 

「そっか おれさまは死んだわけじゃねえみてえだから

ショウ達みたいに召喚されたのか うっかり入っちまったのか

まあなるようになるだわさ!

そんじゃよろしくな エル!」

 

「ええ あらためましてよろしくお願いします ボス!

そしてようこそフレメヴィーラ王国へ!」

 

こうしてボスにとってバルゲリー砦の騎士達に続き新たな友を得た

ロボットのこと 大戦のこと 日本のこと

そしてシルエットナイトやエルネスティの夢のこと

ライヒアラ学園街までの道中に話が尽きることはなかった

 

 

 

 

 

 

せっかくのエイプリルフールなのでウソ予告でもひとつ

 

ようやくついたライヒアラ騎操士学園

 

「ヘルヴィ アディ ノーラ ステファニア 

整備を手伝ってくれるドワーフにもカワイ子ちゃんがいるのに

ボロットにいっしょに乗ってるのはエル(男)だけかよ・・・」

 

「こらー!ボスさん!一番かわいいエル君を独り占めしないで!!」

 

そんなボスに運命の出会いが!?

 

「いいとこ見せちゃるわよ~!」

 

次回 ナイツ&マジック&B 

気合! でるか必殺 大雪山おろし!!!

 

「いや それ おれさまの技じゃねえよ!!」

 

 

 

ボス パイロット情報

 

地形適応 空C 陸S 海C 宇宙C

 

精神コマンド 自爆 ド根性 脱力 挑発 熱血 ???

 

サブパイロットに子分(男性)が乗ると友情補正 命中・回避 人数×30%

サブパイロットに女性が乗ると片思い補正 攻撃・防御 人数×30%

 

ボスボロット ユニット情報

地形適応

空C 陸A 海C 宇宙C

 

武器

補給装置

ボロットパンチ

スペシャルボロットパンチ

スベシャルDXボロットパンチ

全て射程1

 

強化パーツ

ミノフスキークラフト

V-UPユニット(U)

V-UPユニット(W)

ディストーションブロック




久しぶりの更新ですが・・・あまり内容進んでません
書きたいことはまだまだいっぱいあるのですがまた次の機会に

季節と年度の変わり目にコロナ第4波 体調にはくれぐれもお気を付けください


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気合

「ようやくついたようだな ボス君

あそこに見える建物がわしが学園長を務めるライヒアラ騎操士学園

国王陛下から君の生活や機体の整備については任されている

遠慮はいらないぞ」

 

「ありがとうよ ラウリさん」

 

「我が孫エルも随分と君に懐いたようだ

あの子が幻晶騎士(シルエットナイト)に関すること以外で子供らしいところを見るのは珍しい

できればこれからも気にかけてやってほしい」

 

「おおよ 子分の面倒をみるのはボスとして当然

任せとけってんだ」

 

「ボス! まずは学園に行きましょう!

ボスボロットの修理のためには親方たちの協力が不可欠です!

紹介しますよ」

 

「おや エルや その前に・・・」

 

「エル君はっけーん!

かくほー!!」

 

「おかえりエル」

 

「アディ キッド ただいま帰りました」

 

「おお 元気なかわい子ちゃんじゃねえか

そっちのボウズもエルの友達か?」

 

「ええボクの友人であり弟子でもある

アディとキッドです

二人は双子でボクと同じく騎操士学園中等部に通っています」

 

「エル君 このおっきい人はだれ?ドワーフ?」

 

「彼はボス ボクの憧れのロボット乗り・・・

騎操士(ナイトランナー)であり騎操鍛冶師(ナイトスミス)でもあります

王都からの道中で子分にしてもらえました」

 

「え!?そうなの!?」

 

「エルがシルエットナイトに関わる人を尊敬しているのは知ってたけど

いきなり子分になるなんてはじめてだな」

 

「ベヘモス戦ではボスとボスボロットの活躍がなければ

ボクもあぶなかったかもしれません」

 

「じゃあ エルの命の恩人か! 礼を言わなきゃな

ありがとうございました!

こいつ俺達が魔獣と戦っている間にあんな大物につっこんでいきやがったもんで」

 

「ありがとうございました!

本当に心配したんだよ エル君!

しかもすぐに王都に行っちゃって!

罰としてこのまま抱きつき刑よ!」

 

「なんかコアラみたいになってんぞエル」

 

「まいりましたね 王都に呼ばれたのは王命だったのに

そうだ 王様からのお許しもでたので学園で

ベヘモス戦で壊れた機体をいっしょに直すことになりました」

 

「ああ バトソンが言ってたやつか」

 

「王様の命令で 親方も見たこともないようなシルエットナイトを

学園で直さなくちゃいけないやつね

失敗したらどうしようって バト君たち頭抱えてたよ」

 

「そこはおれさまに任せとけば大丈夫よ~ん

ほんじゃ 早速ボロットのとこに行こうぜ

エル 案内してくれ」

 

「お任せください!

あのアディ そろそろ放してくれませんか?」

 

「ダ~メ!このままいくよ」

 

「エル 勘弁してやれ お前がいない間ずっと我慢してたんだ」

 

「うらやましいなエル カワイ子ちゃんがくっついてくれるなんて

アディちゃんにキッド そのまま行こうぜ

ボスボロットの秘密を色々と教えてやるぜ!」

 

「秘密なのにそんなに簡単に教えていいのかよ」

 

「わーい エル君行こう!」

 

「ボスボロットの秘密・・・これは聞き逃せませんね」

 

4人が学園内の幻晶騎士の整備施設『工房』に向けて歩いていると・・・

 

「おーいエルー!帰ってきたか

親方が呼んでるんだ 急いできてくれ!」

 

「おやバトソン ボス紹介します

僕の夢の同志で友人のバトソンです

鉄鋼と鍛冶の民、『ドワーフ族』で

僕達と同じ中等部で鍛冶師学科に属しています

そしてバトソン こちらはボス

僕達の夢の先駆者であり命の恩人です」

 

「ひょっとしてあの粉々になって運ばれてきたやつの・・・

エルの夢の先駆者って あれ自分で作ったんですか!?

あんなとんでもない夢を実現させている人がいたなんて・・・・・・」

 

「おれさまが書いた設計図で実際にボロットを作ったのは

光子力研究所の3博士達だわさ」

 

バトソンを加え5人が工房に踏み入れたところで

高等部の学生たちに取り囲まれた

 

ボスがとっさにエル達の前に立ち学生達に声をかけた

 

「おっとなんでい おまえら?」

 

「エルネスティ 彼がブリキの騎士のナイトランナーかい?」

 

「そうです」

 

「そうか・・・」

 

   ザッ・・・ バッ!

 

ボス達を囲んでいた高等部の学生達が一斉に頭を下げた

 

「なんだ!?」

 

「ありがとう

我々が今こうして全員揃って生きているのは貴君のおかげだ」

 

「本当にいくら感謝してもしたりない

あのときベへモスのブレスを君がその身でかばってくれたから

私達は生きているのだ

あの背中に騎士として本分を見た」

 

「あー あのとき後から来たロボットの!

なんでえ水臭い 一緒に亀野郎と戦った仲間じゃねえか

あぶねえときは体を張ってかばうのはあたりまえじゃねえかよん」

 

ボスにとっては戦場で仲間をかばう援護防御は当たり前のことで

その場で礼を言うならまだしも戦いが終わった後にわざわざ

こうして感謝されるようなことではなかった

 

「ボス シルエットナイトには脱出装置がありません

あのときのディー先輩たちは本当に死ぬところでしたよ」

 

もし機体が破壊されても脱出装置が完備されているのが当然であり

自身も散々戦場でボスボロットがやられても超合金Z製の頭部で守られて

これまで死ななかった(本人が丈夫なのもあるが)ボスにとっては初耳であった

 

「ありゃ!?

そいつはおっかねえなあ・・・

きれいなおねえちゃんもいるけどケガとかなかったのか?」

 

頭を下げている学生ナイトランナーの中で紅一点の胸の谷間に

つい目がいったボスが何気なく言った言葉に

当人のヘルヴィが頭を下げたまま返答した

 

「私も無事だったわ バルゲリー砦の騎士達の後ろにいたから

私の『トランドオーケス』はちょっと壊れちゃったけどね」

 

「まあ もう頭を上げてくれ

感謝してくれるのはうれしいが 流石に落ち着かねえ

ところでエル ブリキの騎士ってのは?」

 

「ボスボロットのことです

多分見た目でそう呼称されたのが定着したみたいですね」

 

「結構かっこいいじゃねえか

ちなみドイツ語でブリキの騎士っていうと

どうなるんだ?」

 

「ドイツ語ですか?

ええっと ブレヒリッターとかアイゼンリッター かな?」

 

「そいつはエクセ姉さんやキョウスケさんのロボットみたいでイカスだわさ」

 

「ボスボロットらしくはないですけどたしかにかっこいいかも

日本人にはわかるドイツ語マジックですね」

 

「おーーい!ちょっといいか!」

 

学生達が頭を上げたところで工房の主ともいえる男が呼びかけてきた

 

「あんたがあのブリキの騎士のナイトランナーだな

俺は騎操士学科高等部鍛冶師科3年のダーヴィド・ヘプケンだ」

 

「おう よろしく その貫禄でおれさまと同世代かよ

おれさまはボスってよんでくれ」

 

「そうか 俺は親方ってよばれてる

王様からのご命令であんたのシルエットナイトの修理を任されたんだが

何が何だかさっぱりわからねえ

魔導演算機(マギウスエンジン)どころか心臓部の魔力転換炉(エーテルリアクタ)すらねえ

ベヘモスに食われたのかもと思ったが・・・

結晶筋肉(クリスタルティシュー)もねえし

銀線神経(シルバーナーヴ)も俺の知るどんなものとも違う

このままじゃ手もつけられねえ!」

 

「そりゃアストナージさんみたいにはいかねえよな

ボロットの頭はあるよな?

おれさまが設計図とかとってくるから材料を揃えといてくれ

スクラップ山盛りと、ハイオクっていいてえが

とりあえずいくつか油を用意しといてくれればいいだわさ」

 

「スクラップって・・・

王様から予算はいっぱいでてんだ

そんなに気を使わなくてもいいんだぜ?」

 

「そういうわけじゃねえんだ

まあとりあえず頼んだぜ!」

 

そう言ってボロットの頭部に入っていくボスのために

エルが率先して頼まれた材料を集めていく

ダーヴィドも整備員達に指示を出しスクラップや油を用意していくが

その表情に迷いは隠せなかった

 

材料は揃ったがそこに戻ってきたボスの持ち物で謎がさらに深まった

 

ボスが抱えていた設計図はいい

元々ボスが書いたもので、これをもとに作られた機体である

文字は読めないが機体の原型すらわからなかった整備班にとって

非常に参考になる資料だ

 

それよりも気になるのはボスが持ってきた謎の機械である

クモのような脚がついた巨大な機器である

関節は二ヶ所あり胴体にあたる部分を持ち上げている 

胴体の上部は、タンクを二本背負っており、下部には金色をした突起が大量に付いている 側面には、光子力研究所のロゴが輝いていた

その装置の上部にボスボロットの残骸と他のスクラップを

整備班がクレーンで投入していく

そしてボスが手に持った板状のもの(タブレット)には

ボロットの腕が表示されていた

ボスがタブレットを操作しスタートボタンを押すことで

機械の上の回転灯が赤く光りだすと胴体が床面近くまで低くさがり

下部にある突起群から、激しい光が放たれた

胴体が次第に上にあがっていく するとその下にはさきほどタブレットに表示されていたボロットの腕と同じものが少しずつ形成されていった

大戦中破壊されることが多かったボスボロットを抜群の低コストでの

修理を可能にした光子力研究所の秘密兵器

『試作型 超合金光積層造型器』である

 

要するに巨大な3Dプリンターであり

入力されていたデータからボロットの腕のみならず

部位ずつではあるが全身を作ることができる優れモノであるが

親方を含め整備班は目の前の状況に理解が追いつかないでいた

完成したボロットの腕を呆然と見ていたがボスに

次の材料を投入してくれと頼まれたことで正気にもどった

自分たちのこれまでの常識や経験がひっくり返された気分だったが

この未知のシルエットナイトの修理は王命である

自分たちなりの最善を尽くすのが誇りであり使命であるのだ

ボスボロットの全身パーツが出来上がったところで

 

「おーい親方!

組み立てを手伝ってくれー!」

 

「くみたて・・・? あー組み立てか!!

おっしゃー!野郎ども!設計図をしっかり見とけ!

手抜きやがったらケツけっぱくるぞ!!!」

 

    \\\おーー!!///

 

「よし僕も!プラモデラーの魂が騒いできた!」

 

銀色坊主(エルネスティ)!?おまえもやるのか?」

 

「おいエル ここは親方達に任せとけよ」

 

「何言ってるんですかバトソン!

ボス自ら金槌振るってますよ

ここは子分として精一杯支えなくては!」

 

「エル お前があのシルエットナイトをいじりたいだけだろ」

 

「こうなったエル君はもう止められないのはわかってるけど

エル君がとられそうで悔しい!

エール―くーん!私も手伝う!

私だってやれば出来るんだからね!」

 

「俺達も手伝うけどさ

何かできることあるか?」

 

「私も手伝おう ブリキの騎士の修理が終わらなければ

私のグゥエールが鉄屑のままだからな!」

 

「そうだな 我々のシルエットナイトの修理は後回しなんだ

ここは恩返しも兼ねて積極的に手伝おう」

 

総掛かりの修理によりボスボロットの本体は頭だけ外れた状態だが

驚くほどの短時間でまるでダメージがなかったように

座り込んでくつろいだような姿になった

 

「信じらんねえ あんな魔法みたいな作り方でできたパーツが

ぴったりとあいやがった・・・

錬金術師科の連中がみたら頭抱えて寝込むんじゃねえか?」

 

「ボス これは他のロボットのパーツでも作れるんですか?」

 

「マジンガーチームのデータはみんな入っちゃあいるが

超合金Zや超合金ニューZがねえし光子力エンジンもないから

立つこともできねえハリボテにしかならねえぞ

ボロットは元々スクラップでできてっから

材料はなんでもいいけどよ」

 

「そういやあ ボス 結局こいつにはエーテルリアクタがなかったが

どうやって動かすんだ?

それに油も用意したが結局何に使うんだ?

関節周りにちょいと使った程度でまだたっぷりあるが」

 

「こいつはこうやって ドクドク飲ませてやるんだよ

せっかく色々種類があるみてえだから・・・

おうボロット まずはこいつを試食してみるか」

 

「おいおいそいつはランプ用の油だぜ

シルエットナイトに直接注ぐなんて聞いたことねえぜ!」

 

「まあ見てろって! よしとりあえずこんなもんか

お~い エル~ 試運転するから運転席にこいよ!」

 

「いきます!」

 

「あ~!エル君 私も行く!」

 

「アディ・・・ これは子分の特権ですよ」

 

「別にボロットは三人乗りだし 

カワイ子ちゃんならいくら乗っても歓迎するぜ」

 

「ほら!ボスさんもああ言ってるし

エル君が一番カワイイのは認めるけど

ボスさんに独り占めなんてさせないから!」

 

「いや エルは男じゃねえか

ちゃんと聞いてるぜ」

 

「エル君は男の子なんかじゃありません!

エル君はエル君です!!!」

 

「そ・・・そうか

おれさま今初めて異世界に来た気がしてきたぜ」

 

「あれはアディだけですよ

あの子はちょっと甘やかしすぎましたね

ボスいいんですか?いかにも日本風な操縦席を見せても?」

 

「そうか?まあいいや

別に隠しちゃいねえよ

とにかく乗った乗った」

 

「おいボス

頭に乗りこむならクレーンで体に乗っけて

くっつけてからにした方がいいぜ」

 

「その必要はねえよ親方 まあ見てなって」

 

「なんだ つなげるのはまだ後か

そういえばそっちはまだ修理してなかったな

手がいればいつでも言ってくれよ」

 

「おう ありがとよ!」

 

ボスとエル、アディがボスボロットの頭部操縦席に乗り込むと

アディが驚きの声を上げた

 

「わ~何これ!!

なんでボロットちゃんの頭の中に秘密基地みたいなのがあるの!?

シルエットナイトの中ってこんなのなの?」

 

「いえ これはボスボロットだけです

でもやっぱりこれは参考になりますね

こんな自由な操縦席なら僕の体にとって最適な形にできますし」

 

    パチパチ カチ・・・

 

ボスが各種のボタンを確認していく

 

「おーし 強化パーツも無事についてるな

あとは・・・ エルそこのヒモを引っ張てくれ」

 

「このぶら下がっているやつですか?」

 

「そうそうそう」

 

「えい!」

 

      ブオォン

 

「よーし みんな ボロットから離れてくれい!」

 

ボロットの拡声器からの声でみんなが離れたのを確認し

 

「おーし ミノフスキークラフト スイッチオン!ポチっとな!」

 

    グイーーーン

 

ボロットの頭部が浮き上がった

 

「なんだあ!?

頭が浮きやがったあ!?

銀色坊主の上級魔法か!?」

 

「いやいやいや いくらエルでもあんなでっけえもん

いきなり浮かべたりなんて・・・できるかもしんねえけど

魔法力を感じねえ!

エルとアディは大丈夫か!?」

 

「おお! なんか思ったよりウケてる!?

よっしゃ そんじゃエルいくぜ!」

 

「はい!それではご一緒に」

 

「え!?え!?」

 

操縦席ではアディが一人だけ状況についていけないまま

ボスボロットの体の上に頭が飛んでいく

 

「「パイルダーーーーオーーーーーーン!!!!」」

 

     ガシィーーン

 

 

ボスボロットがドッキングし本来の姿を取り戻した

 

「くーーーー・・・ これです これ!

合体こそまさにロボットの醍醐味!!」

 

「うう・・・ すっごい揺れたあ・・・

どうなったのエル君?」

 

「これこそ僕の夢!

男のロマン!!

この手でいつか作ってみせましょう

僕だけの為のロボット!!!

エルロボットを!!!!!」

 

銀色の妖精の咆哮が工房に響き渡った

 

 

 

 

 

 

超合金光積層造型器

 

劇場版マジンガーZ / INFINITYに登場した機器

作中ではマジンガーZの部品やボスボロットの武器を作り出した

スパロボではボスボロットの修理費が異常に安いことから

拙作では既にスクラップやジャンクパーツで使える試作品があることにした




祝 スパロボ最新作 スパロボ30にナイツ&マジック参戦決定!!
その喜びの勢いで更新しました
思ったより文字数かさんで時間も倍くらいかかりましたが・・・
原作も更新してましたしナイツ&マジック熱がますます上がりそうです
アニメ2期も期待できるかも?


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分析

「よし 頭はちゃんとくっついたな

エル そこのボタンを押してくれ」

 

「えーと ボス いくつもボタンがありますが

どれを押しましょう?」

 

「どれでもいいんだけどよ おっとその前に・・・

おーいちょいと動かしてみっからよく見てくれい!」

 

「わかったー!!」

 

「親方の返事が聞こえた

エル やってくれい!」

 

「ではこのボタンを」

 

     ポチ!

 

    ブオォン

 

  ガチャ ガチャ 

 

「ええーー!今度はなに!?

エル君何したの!?」

 

  グイーーーン グイ!  ギチ! グイ!

 

「おいおい なんだこりゃ!

これが組み立てたばかりのシルエットナイトの動きだってのか!?」

 

「なんだこの柔軟性!

鎧を着た騎士どころかまるで服を着た人間のようだ」

 

「あんな動きができるなら剣技や魔法戦だけでなく

関節技や投げ技もできるのではないか?」

 

「あれがブリキの騎士の動き シルエットナイトとは全然違うのね

ところで あれって体操? それともダンス?」

 

本来の姿を取り戻したボスボロットがいきなり踊りだした

愛嬌のある動きに合わせ表情まで変わる様子に

自分たちの目を疑うナイトランナーやナイトスミス達

 

「師団級魔獣と渡り合ったって話だから只者じゃねえとは

思ってたが ここまでとんでもねえとは思ってなかったぜ」

 

「常識はずれもいいところだな・・・」

 

「だが このブリキの騎士の常識外れの動きのおかげで

我々は命を救われたんだ」

 

「たしかに あのべへモスのブレスから一瞬で割り込んて

オレ達をかばってくれたから今生きてるんだよな」

 

「私達はあの戦い ほとんど有効打を与えることすらできなかったけど

砦の騎士達とともにべへモスと最前線で日をまたぐほど戦い続けるタフさ

ボスって人 本当に私達と同じくらいの年齢なのかしら?」

 

ボスボロットを見る人それぞれが様々な感情をもってその姿を見ていた

 

「おおっととのオットセイ!

おいエル 他のボタンも押してみてちょ」

 

「はい!じゃあそのとなりのこれを!」

 

     ポチ!

 

  グイーーーーン  ガシャンガシャン!

 

「うわ! これってラジオ体操!? 懐かしい!」

 

「エル君!?なんか楽しそうだけどすっごい揺れてるよ!?」

 

      ギュ!!

 

「エル アディちゃん あんまイチャイチャしねえでくれよ

うらやましいじゃねえか!」

 

「エル君はわたしませんよボスさん!」

 

「そっちじゃねえよ!」

 

目の前のボスボロットの不思議な踊りと操縦席からの楽し気な会話に

ボスボロットを見る畏怖に近い感情がやわらいでいく

 

「うーん、と 関節から変な音がするっぺえな

親方!ちょいと手を貸してくれ!」

 

ボスボロットが自分の手で頭を外して床に下ろし

ボスが工具箱を片手に出てくる

 

「お、おう!任せとけ!左肩と股関節だな!」

 

「僕も、って アディ 放してください

動けないですよ 僕もボスボロットの修理に・・・」

 

「んふふ~ エル君~」

 

アディにしがみつかれエルは操縦席に取り残された

憧れのロボットに乗って興奮していたエルだったが

ボスボロットの修理が順調に進んでいくことで気づいたことがあった

 

「まずいですね こんなに早く修理が進むなんて正直予想外でした

ロンドベルの迎えが来て帰ってしまうのはしょうがないですが

適当な油であれだけ動けるなら自分の足で旅立つ可能性があります

・・・ここにとどまっていただくか

最悪僕も旅に同行できるようにここは僕の有用性をアピールする必要がありますね」

 

「!?駄目だよエル君!

エル君はどこにもいかせないんだから!!」

 

    ギュウ!!!

 

「アディ!?流石にちょっと苦しい・・・

ん あれは・・・」

 

操縦席の一角に他の設備とは明らかに違う仕様の設備があった

 

「たしかあれは・・・ボスの話では

ロンドベルに配属されたときに新規でとりつけられた通信設備でしたね

アディ どこにもいかないので少し手をゆるめてください

あの設備を見るだけですから」

 

「・・・むぅ」

 

アディがしぶしぶ手をゆるめると

エルはスルリと抜け出し通信設備を確認した

大きさはパソコン程でモニターもある

自分が知る手のひらサイズのスマホですら通話だけでなく様々な機能があった

ボス自身 この設備を全て把握しているわけではないとも聞いている

エルの前世はプログラマーである

軍のしかも最前線の特殊部隊であるロンドベルで使われている設備は

エルにとってもオーバーテクノロジーであるが

この分野においてはボス以上にこなせる自信があった

 

「ボス!ちょっとこの通信設備さわってみてもいいですか?」

 

外で作業中のボスに許可を求め 二つ返事で了承された

 

   カタカタカタ・・・

 

すぐに使えるような仕様なのかロックもかかってなかったため

これ幸いとキーボード操作に懐かしさを感じながらエルは

機能の確認をしていく

 

「すごいエル君・・・

何が何やらさっぱりわからないけど」

 

アディは作業の邪魔にならないように腕をつかんだりはしていないが

それでもエルの隣りにピッタリとくっついてモニターを覗き込む

高速で流れ次々と切り替わっていく文字や映像にまったく理解が追いつかないでいた

エルもこれぐらいならとアディの好きにさせ操作に集中していく

まずは各種通信機能が生きていることを確認

現在どこにも繋がってはいないが発信と着信の機能自体は問題ない

対異星人用の同時翻訳も機能している 最新のレーダーも完備

これだけでも自身の知る通信機よりも高性能だが

勿論これで終わりではない

 

ロンドベルの共通データベースの閲覧が可能なことにすぐに気づき読み進めていく

大戦時の敵味方含めたロボットやパイロットのデータは

それだけでエルが一生楽しめそうな程の莫大な量が眠っていた

正直じっくり眺めたいほどの垂涎のデータの山だったが

この設備の機能の把握が本題なので泣く泣く画面を切替えていく

ロンドベルが経験した戦場は地球上に限らずコロニーや月

時には異世界のバイストンウェルや異次元宇宙にも及びその地形データもある

こちらの世界のデータはまだ入力されていなかったが

これらのデータと比較することができれば・・・

エルは好奇心を抑え深入りをできるだけ避け検索範囲を広げていく

その中で戦闘用シミュレータを発見した

しかもボスボロットに限らず

マジンガーチームやゲッターチーム MSパイロット用のものまである

機能はある程度限定されていたが

プログラムを少しいじればゲーム感覚で遊べるような可能性を感じ・・・

 

「そう、ここをこうして・・・」

 

  カタカタカタカタ!タン!

 

「お~い エル!」

 

    ガシ!

 

「わ!?」

 

ボスに肩をつかまれ 我にかえったエル

気づけばかなりの時間がたっていた

つかまれたのと逆の肩ではアディが寄りかかって眠っている

 

「外は少し暗くなってますね

ついついのめり込んでしまいました

ボス とりあえずこれまでわかったことを報告します」

 

エルの説明を聞いて感心したボスから改めて

通信機の扱いに関して一任されたエルネスティが再び張り付こうとしたが

目を覚ましたアディによって無理やり引きはがされ帰路についた

ボスもこの学園にいる間はエルの実家預かりとなり

寝食の世話になることになった

 

「ボロットの中には布団もトイレもあっから寝泊まりもできるけど

せっかくだから世話になるだわさ よろしく頼むぜエル」

 

「はいボス!

ボスは国の客人で僕の命の恩人ですからみんな大歓迎ですよ」

 

「そりゃ楽しみだ おれさまはらぺこよ」

 

「ところでボス!

明日はあの3Dプリンターのような機械も触らせてもらえますか!?」

 

「あれか 試作品で壊れてもおれさまには直せねえんだ

それでもよけりゃあいじってもいいぜ

ただあれもよくわからねえことが多いんだ

何か新しいことがわかったら教えてくれ」

 

通信機の分析でかなりの信用を得たのか

手放しの信頼ともいえる扱いにエルは舞い上がり

今にもボスボロットのもとに駆けつけんばかりだったが

母親のセレスティナ・エチェバルリアにやんわりと止められた

ボスはハード面に比べソフト面を苦手と感じたエルは自分のプレゼン資料をまとめつつ

明日への期待にワクワクが止まらず 遠足前の子供状態でベッドに入っていた

ボスはご馳走を腹いっぱい食べてボスボロットの修理がほぼ終わり安心したのか

ベッドに乗った瞬間に爆睡した

 

・・・ところかわって

王様からの勅命であった未知の機体の修理のプレッシャーから解放されながらも

自身の経験や常識をふっとばされた挙句 未知のテクノロジーの塊にふれた

ダーヴィド親方をはじめとした整備員達は泥のように眠っていた

明日からはじまる さらなる狂乱の鉄火場も知らずに---




スパロボ30の発売日が近づき ナイツ&マジック原作の更新も続き書きたいネタはたまる一方ですが書くペースがなかなか上がらない・・・
発売日までにもう少しキリのいいところまで書きたいところです


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偵察

   ―セラーティ侯爵家―

 

「ステファニア、アーキッド、アデルトルート

お前たちを呼んだのは他でもない

現在学園で保護している客人のことだ」

 

「ボスさんのことね」

 

「そうだ 既に面識があるならば好都合だ

彼はこの国の人間ではないが かのべへモス討伐に功があり

国王陛下から『礼』として褒美を許されたが遠慮深くてな

機体の修理とはぐれた仲間の捜索以外何も求めなかった

勿論陛下に恐縮し遠慮する気持ちもわかるがな」

 

「ボスさんってそんな感じだったか?」

 

「お前たちが近くで実習をしていたことも知っている

彼や砦の守備隊の奮闘がなければお前たちの身が危なかったろう

それゆえにあくまでお前たちの父親として

このヨアキム・セラーティ個人ができる範囲で『礼』をしたいと伝えてくれ」

 

「わかったわお父様」

 

「ボスさんに伝えればいいんだな」

 

「ああ できることなら友好的に

そして失礼のないようにな

『国王陛下の客人として学園にいてもらっている』

という認識でいるように」

 

「はーい」「わかったよ」

 

返事をしたキッドとアディが部屋を出たことを確認し

長姉であるステファニアが口を開いた

 

「お父様 それだけでしょうか?」

 

「・・・彼が恩人であることは確かだ

陛下自らが接し 陛下にとって好ましい人物と感じられたのは間違いない

だが詳しいことはまるでわからない」

 

「危険視されている方がいらっしゃると」

 

「べへモスと渡り合ったほどの実力者なのは間違いない

・・・せめて彼自身が何を求め何を喜ぶのか失礼にあたらない程度に

それを直接知ることができればそれに越したことはない」

 

「私達では主観が入った報告になると思いますが

客観的に見る方が他にいるということですか?」

 

「それは私が言うべきことではない」

 

「・・・わかりました 元々機会があれば私も

お礼を言っておきたいと思っていました

ボス様と会ってみましょう」

 

「ああそうしてくれ 話は以上だ」

 

キッドやアディ達が父親とそんな話をしているその時

 

 

   ―王城―

 

「藍鷹騎士団団員ノーラ・フリュクバリ

おぬしをライヒアラ騎操士学園騎操士学科に編入させ

ボス殿の護衛と彼が乗るシルエットナイトの情報収集を命じる」

 

「はっ 長きにわたり魔獣のみを相手としてきましたが

その間に我らの『技』が錆びてはいないこと、結果をもってお示しいたします」

 

「うむ。ではクヌートよ 後は一任する

必要であれば藍鷹騎士団の騎士の増員も許可する

言うまでもないことだが 彼は我が国の恩人であり

わしが認めた客人だ くれぐれも礼を失せぬようにな」

 

「はっ かの者が何処の国の者であろうとも

フレメヴィーラ王国が恩人に対し礼を欠くような国であったなどと

他国に伝えられるようなことは決してあってはなりません

ノーラ・フリュクバリよお主もそのことを肝に命じておけ」

 

「はっ」

 

「うむ その働きに期待する

わしが隠居の身であれば直接あのボスボロットとやらが動くところ

いや直すところからじっくりと見たいものじゃがな」

 

「陛下!」

 

「わかっておる クヌートよ」

 

 

 

   ―??????―

 

「ここに来てこんな代物が舞い込んでくるとはね・・・

このクソみたいな国に流されたあたしらにも漸く好機(ツキ)が巡ってきたようだ

できる限り情報を集めて『本国』に伝えな

『ブリキの玩具』・・・久しぶりにお人形遊びといこうじゃないか」

 

 

 

   ―エチェバルリア家―

 

「ボス 昨日ボスボロットの頭がミノフスキークラフトで飛びましたけど

ひょっとしてボスボロットの状態でも空が飛べるんですか?」

 

「おうよ バッチリ飛べるぜ!

まあ空中戦は得意じゃねえからあの亀との戦いでは

飛ぶヒマなかったけどよう」

 

「でしたらボス よっぽどのことがない限り

ボスボロットが飛べるのはナイショにしときましょう」

 

「なんでよ?」

 

「この世界では飛行機のような人工物で空を飛ぶ技術が確立されていません

ましてやロボットが飛ぶことなんて想像もしてません!

そんなときにたとえば・・・

空を飛ぶ魔獣に苦戦するシルエットナイトの危機に

颯爽と空を飛んで駆けつけるボスボロット!

カッコイイじゃないですか!!!」

 

「おお!いいなソレ!!

わかってるじゃねえかエル!!」

 

「そうでしょうそうでしょう!

それとですね 今日からのことですが・・・」

 

様々な思惑が取り巻く中心では

エルがボスにこっそりと悪だくみを吹き込んでいた・・・

 

 

  

   ―翌日 ライヒアラ騎操士学園 工房―

 

「おはようさん 親方!」

 

「おはようございます 親方」

 

「おう おはよう

あー・・・やっぱ夢じゃなかったんだな

たった一日であの粉々だった機体が組みあがってやがる」

 

「お疲れ気味ですね親方

よく眠れなかったんですか?」

 

「いや がっつり寝たんだが

朝っぱらから錬金術学科のやつらにつかまってな

国王陛下からの勅命だってんであの機体の部品を少し預けて

分析や複製を頼んでたんだよ

あんたが来る日はわかってたからな

できるだけ早くって せっついて無理を頼んだが・・・

昨日のうちに修理が終わったことで、どういうことかと

さっきまで散々毒舌かまされてきたぜ・・・」

 

まだ授業も始まっていない朝から渋い顔をするダーヴィド親方に

ねぎらうようにボスが声をかける

 

「昨日は本当に世話になったな 感謝するぜ

お礼と言ってはなんだけどよう

おれさまがここに世話になってる間は

工房仕事を手伝わせてくれ」

 

「なに!?

あんたは客人なんだ

たしかに昨日腕前は見せてもらったから仕事ぶりは問題ねえが

だからってなんも俺達に付き合うことねえだろ」

 

「何を水くせえことを言ってやがんのよう

それにあそこのロボット達はあの亀野郎と戦って壊れたんじゃねえの

戦友を直すのになんの遠慮があるってんだわさ」

 

「戦友か そこまで言われちゃ断れねえか」

 

「親方 僕も手伝いますよ!」

 

「おめえは授業受けろよ銀色坊主!」

 

「授業の後ならいいんですね!

わかりました!!」

 

「邪魔はさせねえからよ

あいつもいれてやってくれ

子分の責任はおれさまが持つからよ」

 

「・・・わかった整備員達には俺から言っておく

あてにさせてもらうぜ

正直猫の手も借りてえくらいだ」

 

「おうよ!まっかせてちょ!」「はい!お任せください!」

 

「そうだ銀色坊主!

ボスボロットの次にひでぇ状態だったグゥエール

ディートリヒに聞いたらあの原因はお前だって言うじゃねえか」

 

工房で一際破損している紅い機体グゥエールを親方が指さしエルを問い詰める

 

「たしかにありゃ外も中もぐちゃぐちゃだわさ

エルもディーもよく無事だったもんだ」

 

「・・・まあ無事っちゃ無事だが

ディートリヒのやつはしばらく入院してたがな

んで 一体何をしやがった!?」

 

「わかりました説明しましょう

こんなこともあろうかと資料を用意してきました」

 

エルが鞄の中から数枚の紙にまとめた資料をとりだし親方とボスに渡した

 

「なんでえ えらく準備がいいじゃねえか」

 

「エルがこええ顔してやがる

ああいうやつは光子力研究所やロンドベルで何度も見たことがある

とんでもねえことをやっちまう顔だわさ」

 

・・・

・・・・・・

 

「するってえと何か?

坊主が本気出しゃあ『どんな機体』も即潰れんのか」

 

「いえ ボスボロットなら大丈夫ですよ」

 

「おうよ 丈夫で長持ちおれさまのボスボロットなら楽勝よ!」

 

「あいつか・・・

そいつぁは何とかできねえとこっちの鍛冶師の面目ってのが立ちゃしねえか

だが今すぐどうこうできるもんでもねえし」

 

    スッ

 

エルが挙手をし

 

「あの そういうことならいいお手本があります

ねえ ボス」

 

「おうよ 協力するぜ!」

 

「だけどよ あんたの機体は材質からしてかなり違うぜ

結晶筋肉も使ってねえから手本にできねえぞ」

 

「いえ結晶筋肉自体は変えません

ですので使い方の工夫を参考にしましょう」

 

「・・・続けろ」

 

「ではこちらの資料をご覧ください」

 

「ん・・・こりゃ綱?

なるほど結晶筋肉を束ねて()ることで強度を上げるってのか

それが『綱型結晶筋肉(ストランドクリスタルティシュー)』か」

 

「それくれい だれか試したりしなかったのかよう?」

 

「授業を受けてるときも思いましたが

どうもシルエットナイトは『人体の模倣』『人の力の拡大』

というものに縛られすぎているようです」

 

「兜はマジンガーZを神にも悪魔にもなれるって言ってたが

その辺からそもそも違ってくるもんなんだな」

 

「たしかにシルエットナイトでロケットパンチの発想は生まれないでしょうね

僕にとってはどちらも『ロボット』お互いに参考になると思いますよ」

 

「『ロボット』か・・・ まあいいや

丁度いい 修理中のやつで早速試してみるか!」

 

そこにべへモス戦で自身の機体が大きく破損したナイトランナー

ディー、ヘルヴィ、ゲパードの三人がやってきた

 

「私のグゥエールが面白いことになりそうだな」

 

「当然私のトランドオーケスもよね!」

 

「ああ お前たちの機体は操縦席周りからほとんど作り直しになるからな」

 

「親方 だったらよお!真っ先に脱出装置を作ろうぜ!」

 

「なんだそりゃ?」

 

「ボスボロットの頭部のように機体が危機になったとき

ナイトランナーを脱出させる装置ですよ

べへモス戦で一番機体が大破したボスがこうして無事なのも

その装置のおかげです たしかに最優先に取り組みたいですね」

 

「そいつはありがてえな 絶対につけてくれ!」

 

ボスの提案にエルとゲパードが同意する

 

「あれにはそんな機能があったのか

そりゃナイトランナーの命を守る機能ってんなら必要だが

シルエットナイトから生身で放り出されたらかえってあぶねえし

かといって頭を操縦席にするってえと・・・

設計の見直しだけで何年、何十年掛かるかわかんねえぞ」

 

「いえ 操縦席の場所は変える必要はないと思います

戦闘中は胸部の方が保護に向いてる場合もありますし」

 

「ってえと胸部の強度を上げて外れるようにするのか

それはそれで難しいが 頭にするよりはマシか?」

 

「たしかにガンダムとかは胸に乗り込んでたな」

 

「ボス 参考にしたいので『例の装置』を使わせてもらいますね」

 

「おおいいぜ 脱出装置がねえと危なっかしくてしょうがねえ

使えるものはなんでも使ってくれ おれさまもできる限り協力するぜ!」

 

「さすがボス太っ腹! では早速!」

 

「いや銀色坊主は授業にいってこい!」

 

「むむむ・・・!!致し方ありません

ではまた後程!」

 

「ボスはこっちを手伝ってくれ

色々試すためにもやることはいくらでもあるからな」

 

「おれに任せとけい!」

 

・・・

・・・・・・

 

授業が終わってからエルはボスボロットの操縦席で

ロボットのデータを読み漁り アディはそんなエルにくっついていた

 

   カタカタカタカタ・・・

 

「ねえねえエル君 今何やってるの?」

 

「万が一のときナイトランナーの生存率を少しでも上げる為に

シルエットナイトを改造しようとしてるので参考になりそうなものを探しているのです」

 

「それができれば エル君が無茶しても無事に帰ってこれるの!?」

 

「いえ どんな装置でも絶対はありません

ですが人間の命に代えはききません

生還率の上昇は至上命題ですよ」

 

    ギュッ

 

「よかったぁ~

エル君 もしかしたら『シルエットナイトで死ぬなら本望です』なんて言って

とんでもない無茶した挙句帰ってこないかもしれないって心配だったんだから」

 

アディがエルを抱きしめ安堵のため息をついた

 

「それは一概に否定しにくいところもありますが

そうならないために最善を尽くしますよ」

 

「ねえねえエル君 これはなあに?」

 

「それは動画ですね 見てもらった方がはやいでしょうし再生しましょう」

 

    カタカタ タン!

 

【人は誰でも、宇宙を動かせるほどの、無限の力を秘めている。

しかし、その力を破壊と殺戮に使おうとする者もいるだろう・・・

創造に使うか、破壊に使うかは、人にゆだねられた最後の選択なのだ。

あらゆる生命の源である光を、絶やすまいとする心・・・

人、それを愛情という・・・!

クロノス族族長、キライ=ストールの遺子・・・ロム=ストール!

 

光のエネルギーが頂点に達すると剣狼は次元の壁を越えてケンリュウを呼び寄せるのである

ロムはケンリュウと合身することによりその力を数十倍に発揮することが可能になるのだ

 

闇あるところ、光あり・・・

悪あるところ、正義あり・・・

天空よりの使者、ケンリュウ参上・・・!!

 

パアァァァァイルフォォォォォウメェイション!!!

 

ロムの意思を受け剣狼が空中で光になると

時を越え 次元を越え パイルフォーメーションは完成する

バイカンフーは地上全てのエネルギーとシンクロし

自然現象さえも変えるパワーを出すことが可能となるのだ

 

バァイッカンフゥ――!!!!

 

闇の支配からこの世を守れとの命により、

ここに正義の鉄槌を下す・・・!】

 

「ええ・・・?何これ・・・?」

 

再生された動画に圧倒され呆然とするアディの横で

じっと画面を見つめるエル

 

「・・・・・・なるほどこれは参考になりますね」

 

「え なにが!?エル君これやりたいの!?

かわいくないよ!」

 

「かっこいいと思いますが そっちではなく

生身からケンリュウ、バイカンフーと合身を繰り返す方です

パワードスーツを着てロボットに乗り込む

直接参考にするならパワーライザーの方がいいでしょう」

 

   カタカタカタカタ・・・

 

「あっ こっちの女の子はカワイイ

これならエル君が乗っても顔が見えていいね」

 

「これをこのまま使う訳にもいきませんが これは・・・

シルエットナイトの新しいスタンダードになるかもしれません

よし!」

 

エルが立ち上がりボスボロットから飛び出すとアディもすぐに追いかけた

 

「親方ー!」

 

「なんだ銀色坊主 嬢ちゃんも」

 

「親方 服飾学科に伝手はありますか?」

 

「うちの学園のか そりゃあるがなんだいきなり?」

 

「例の脱出装置なのですが小型のシルエットナイトというべき

シルエットアーマー、シルエットスーツ?

それともシルエットギアの方がいいでしょうか?

名前はこれから検討していくとして・・・

それを装着してシルエットナイトに乗り込み

緊急時にはそのまま外に飛び出せるようにしようかと」

 

   カリカリカリ・・・

 

小さな黒板を手に 思いついた脱出装置の概要を絵で表現する

 

「・・・なるほど そうすりゃ最低限の戦闘力を保持できるから

外の魔獣から逃げるなり撃退するなりの手段がとれるわけか」

 

「そうです 実際べへモス戦で損傷したグゥエールから出るときも

歪んだフレームで脱出に手こずりました

それにこれがうまくいけば仮に僕の身長がこれ以上伸びなくなっても

シルエットナイトに乗れるようになりますから」

 

「エル君 ひょっとしてそれが本命の理由?

でもエル君がこのまま小さいのは賛成!」

 

「だがなんだって服飾学科なんだ?

どっちかってえと人間用の鎧を作ってる鍛冶師の領分じゃねえのか?」

 

「たしかにバトソンの家のテルモネン工房のお世話にもなるつもりですが

恥ずかしながら今までの僕はシルエットナイトのことばかりで

人間が直接着る服には無頓着だったものでそっちの方が学ぶことが多いと思いまして」

 

「エル君!私もいっしょにいきたい!」

 

「まあいいぜ 

俺も結晶筋肉を使っていろいろな編み方を見せてもらうつもりで

ちょうどこれから行くところだったからな

ただあいつらも職人気質だ

やるなら本気でって容赦がねえのは覚悟しておけ」

 

「おおっと それはナイスタイミングでしたね」

 

「エル君にカワイイ服着せたい!」

 

「嬢ちゃんが着るんじゃねえのかよ」

 

 

   ―いっぽうそのころ工房の一角―

 

「ボスさん こっちが俺とアディの姉で」

 

「お初にお目にかかります

私の名前はセラーティ侯爵家長女ステファニア・セラーティ

ご挨拶が遅れましたが先だっての『陸皇事変』ではボス様の奮戦で

バルゲリー砦の騎士様達 高等部の先輩方 私を含め中等部の皆

そして弟妹のアーキッドとアデルトルートがこうして無事だったと聞いております

ライヒアラ騎装士学園中等部生徒会長として 姉として

そしてこの国の国民の一人として 心からあなたに感謝申し上げます」

 

「ナハハハ こんなカワイ子ちゃんに感謝されるなんて

おれさま体張った甲斐があっただわさ」

 

「ボスさん照れすぎ・・・

一応言っておくけど ティファ姉には婚約者がいるぜ」

 

「そんなの関係ねえよ

もしステファニアちゃんがピンチになったら例え火の中水の中

どこだってボロットで駆けつけて助けに行くだわさ!」

 

ボスの言葉に嘘はない

ロンドベルには魅力的な女性が次々と加入してきたが

大抵は既に相方がおり そうでなくても自分の使命に邁進し

ボスのアプローチが実を結ぶことは一度もなかったが

そんな女性の為に体を張るのにまったくためらいはなかった

 

「まあ頼もしい もし他国の騎士でなかったら

是非とも私の専属騎士にスカウトしたいですわ」

 

「よっしゃあ おれさまの時代が来たぜ!!」

 

「ボスさん!帰るところがあるんでしょ!」

 

「わかってるわかってる

ちょっと忘れてただけだわさ」

 

「あのボス様 父がボス様に個人的にお礼をしたいとのことですが

何か 必要なものなどございませんか?」

 

「そんなこと言われてもなあ・・・」

 

ステファニアの申し出に頭を抱えるボス

 

「どうやらかえって困らせてしまったようですね

では個人的に私から何かお礼をさせてもらえませんか?」

 

「あ~んま断るのもわりいか

そんじゃステファニアちゃんの手料理とか なんちゃって」

 

「欲のない方ですね それでは腕をふるってみますわ」

 

「おおラッキー!」

 

「そんなんでいいのかよ・・・」

 

ボス達のそんなやりとりを物陰から見つめる怪しい人影が・・・

 

「成程 『ブリキの玩具』のランナーは女にガードが甘いか

一応『団長』に情報を回しとくか」

 

「おい そんなところでサボってないでこっち手を貸してくれ!

今親方が抜けて手が足りねえんだ!」

 

「おお 悪い悪い 今行くよ!」

 

 

・・・

・・・・・・

 

それからしばらくの時がたち

藍鷹騎士団団員ノーラ・フリュクバリがライヒアラ騎操士学園騎操士学科に編入し

離れて護衛と情報収集をしながらボスとの接触を模索していたころ

ボス達の学園全体を巻き込んだ(たくら)みの形が実機試験を迎えようとしていた




スパロボ30の最新情報にナイツ&マジック原作WEB版怒涛の更新ラッシュに大激戦と
創作意欲を燃え上がらせる燃料連続投下につい筆が乗ってしまいました
文字数の割に話がなかなか進まないのでまた近いうちに更新できれば


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努力

   ―学園内工房―

 

「いやあ 思ったより待遇がよかったな

銀色坊主や嬢ちゃんが着せ替え人形にされたおかげだったが

しっかりと技を仕込まれた甲斐もあって綱型結晶筋肉の出来も上々よ」

 

「いつもかわいいエル君をさらにかわいくできた至福の時間だった・・・

服飾科のお姉さんたち優しかったし」

 

「僕はかわいいよりかっこいい方が・・・」

 

「おれさまが鍛冶場でテルモネンのおっちゃん達と囲まれている時に

うらやましいじゃねえかおまえら!」

 

「ボスが行ってたら ここでは珍しいその服を脱がされてましたよ」

 

「そりゃ・・・嬉しいじゃねえのよ!」

 

「服飾科のお兄さん達にね」

 

「それはいやーん!」

 

学園長(おじいさま)に直訴して大々的に進められるようにして良かったですね」

 

「ああ ボスボロットの精密動作の試験の一環とか言って

ねじ込みやがったあれか・・・

銀色坊主の提案書見てただでさえひきつってた学園長の顔が

結晶筋肉であやとりしてるボロットを見て呆然としてたな」

 

「ボスボロットってあんなこともできるんだね

あれってほかのシルエットナイトにもできるの?」

 

「できねえよ まだな 関節の設計から見直して・・・

いつかはあんなマネもできるようにしてえが」

 

「あれはエルが同時に操縦してくれたおかげよ

流石に一人でボロットの指の一本一本まで動かしてられねえだわさ」

 

「『あやとりは哲学』という言葉が、

ようやく僕にもわかりはじめてきましたよ」

 

「ボロットの力と技術で編み込んだ強化綱型結晶筋肉は

想定よりはるかに高い出力と耐久性を達成した

もっともいずれはこれを俺達だけでできるようにならねえとな

くくくっ」

 

「まずは今日の実機試験ですね ふふふっ」

 

「うわー エル君と親方が楽しそう」

 

「今日は色々やること盛り沢山

あれぐれえ楽しまねえとやってられねえだわさ」

 

「親方ー!ヘルヴィ機 ゲパード機準備終わりましたぜー」

 

「おう じゃあみんな離れとけ!

動作試験始めるぞ!

ボスはボロットに乗って補助に入ってくれ!

まずはヘルヴィだ いっちょう頼んだぜ!」

 

「了解!それじゃあ始めるわよ!

・・・!あれ!?操縦桿が動かない!?

なにこれ!?」

 

ヘルヴィが機体を起動させ試験用の重りを掴もうとしたが

肝心の腕が動かせない

 

「どうしたんだヘルヴィは?」

 

「操縦席をまるっと新品にしたぐらいで

特にロック機能はつけてないはずですが?」

 

「ひょっとしておれさまが編んだ筋肉が硬くて動かねえんじゃねえか?」

 

「「あ!?」」

 

「・・・こんのぉおお!!

身体強化(フィジカルブースト)!!」

 

     バキッ

 

「あっ 折れた!?」

 

「ムキになってやりやがった!新品の操縦桿が!」

 

「本来 身体強化で操縦なんて想定してませんからね」

 

「銀色坊主の直接制御(フルコントロール)にも耐える機体を目指してたが

操縦回りも全部見直さなきゃならねえか?

まあこういうことを発見するための実機試験だ

おし次!ゲパード機だ ヘルヴィはそのまま休んでてくれ!」

 

「わかったわ・・・」

 

「おし!いくぜ!」

 

「こっちは俺達整備班で編んだ綱型結晶筋肉だ

せめてこっちは動いてくれよ・・・」

 

    グッ

 

ゲパード機は順調に綱型結晶筋肉に換装した左腕を動かし重りを掴んだ

従来の性能では両手でどうにか持てる重さだが・・・

 

    グググ!

 

  \\\おおおっ!!!///

 

片手でしっかり握り持ち上げていく

見守っていた整備班達が興奮した声を上げた

 

「こりゃあすげえ!」

 

「出力と耐久性の向上 うまくいきそうですね」

 

「へへっ この力がありゃあ あのべへモスにだって

ちったあいけたかも・・・ん?」

 

   ゴ ゴ ゴ ギシ ゴガ ゴ ゴゴ

 

「なんでしょうこの音」

 

「いけねえ!?」

 

横に立っていたボスボロットが異変に気づき

とっさに重りを支えたが!?

 

    バギン!!

 

ゲパード機の左腕が肩からもげた

 

「ああっ!?」

 

「あちゃあ・・・」

 

「あっちはあっちで大変そうね」

 

・・・

・・・・・・

整備班によるひとまずの検証を行ったところ

 

「・・・こりゃあ

換装した結晶筋肉は無事だったが支点となる骨格がぶっ飛んでやがる

出力だけを上げすぎて反動がモロにかかりやがったか

ハハハ・・・

全身の力学バランスから見直しだ・・・」

 

「骨格回りの筋肉にボスボロットで編んだ強化型を使うのはどうでしょう?」

 

「わかっちゃあいたが 一筋縄ではいかねえんだよなこれが」

 

「えええっ また図面ひくところから!?」

 

「もうーー!?」

 

整備班の悲鳴があがるが 今日の実機試験はこれだけではない

 

「おい銀色坊主 こっちはとりあえず一区切りだ

外の『あっち』の様子を見てきてくれ ありゃあお前の担当だからな」

 

「そうですね ボス アディ 行きましょう」

 

「おうよ」

 

「うん!行こうエル君!」

 

 

     ―工房外―

 

「工房の方はどうだったんだ?

何か先輩達の悲鳴が聞こえたけど」

 

「あちらは設計の見直しから、また頑張ってくれてます

『こっち』の調子はどうですかバトソン?」

 

「ああ問題ないぜ」

 

「保証してやるぜ」

 

「モルテンさんの太鼓判なら安心だぜ」

 

「ああ ここまで関わったからな

6体ともすぐに試せるようにしてある」

 

開発中の脱出装置の要となる幻晶甲冑(シルエットギア)

シルエットナイトを小型・簡略化したもので

シルエットナイトを構成する五つの要素

頭脳たる「魔導演算機 マギウスエンジン」

心臓たる「魔力転換炉 エーテルリアクタ」

筋肉たる「結晶筋肉 クリスタルティシュー」

骨格たる「金属内格 インナースケルトン」

鎧である「外装 アウタースキン」

このうち魔力転換炉・金属内格を外しそれを人間が担うのである

ナイトランナーが装着したままシルエットナイトを操縦することで

戦闘によるナイトランナーへの衝撃を軽減し

緊急時には機体から脱出し その状態での戦闘や離脱の為の戦闘力を有している

白と黒に色分けした物を操者のサイズに合わせた大・中・小 各一体

合計6体が並んでいる

全長はシルエットナイトに乗ることを前提にし、全て2.5mとなっていて

操縦用に両手に操縦桿、両足に鐙が仕込まれギリギリ収まる計算である

ちなみにシルエットナイトが約10m ボスボロットが12mである

開発はバトソンを中心とした学園の鍛冶師学科中等部生徒らであるが

協力者として高等部の服飾科とバトソンの父鍛冶師モルテンも加わり実機試験に参加している

ボスボロットやボスが着ていた宇宙服(ノーマルスーツ)を参考に想定よりも早く形になった

 

「ナイトランナーの命がかかっているからな

最後の調整はしっかり監督してやったぜ」

 

「父ちゃんの鉄拳が容赦なくとんできたぜ」

 

「シルエットギアにロケットパンチを搭載しましょうか?」

 

「お そいつはいい ボロットにはまだついてねえんだよな」

 

「まあ武装については後で検討するとして起動テストをしてみましょうか

ではまずはエドガー先輩が大きい白に

アディが白の中に

僕が白の小に乗って実験します」

 

「わかった」

 

「はーい」

 

「では・・・合身!」

 

   ガパ  ガシン!

 

それぞれのシルエットギアの前面が開き操縦者が中に入ると

包み込むように装甲が全身を体を覆った

 

(ヘルム)がまだ完成してませんが

とりあえず形になりましたね」

 

「頭まで覆うと熱が溜まるからな

実際動かして通気性の改善を探ってからだ」

 

「こうやってエル君と視線が合うの久しぶりだね」

 

「アディやキッドはどんどん背が伸びて頭ひとつ差がありましたからね

バトソンは相変わらずですが」

 

「オイラたちドワーフはもともと小柄だからな

横に大きくなるんだよ なあボスさん」

 

「おれは日本人だわさ

それよりまずは動いてみねえとなんもわからねえ

エドガーはどうでい?」

 

   がしゃん がしょん ギ・・・

 

「・・・・・・

たしかにこれはすごいものだと思う

だが・・・

いくなんでも動かしづらすぎる!

必要な魔法が上級魔法(ハイスペル)『身体強化』となると

負荷が大きすぎてとてもシルエットナイトの操縦に集中できないぞ!」

 

「うーん 僕がグゥエールを動かした時の直接制御(フルコントロール)に近いので

その練習にもなると思ったのですが・・・

僕やアディは問題なく動けますね」

 

「ふっ 情けないぞエドガー!

騎操士学科筆頭騎士ともあろう君がそんな弱音を!

私が変わろうじゃないか

直接制御のグゥエールの動きの訓練と聞けば黙っていられない!」

 

「そうですね ではディートリヒ先輩に代わってもらって

エドガー先輩には黒の大に乗ってもらいましょうか

そして黒の中にボス 黒の小にバトソンが乗ってそれぞれ試験しましょう」

 

「ああ わかった」

 

「おうよ」

 

「よいしょっと」

 

   ガシン ガシン ガシン

 

「どうですか?」

 

「・・・なるほど こちらは魔導演算機搭載型か

動きやすさが格段に違う」

 

「こりゃいいぜ 魔法がからっきしのオイラでも自由に扱える」

 

   ガシャン ガシャン!

 

「おお で 力だめしをするんだろ

この重りを持ちあげりゃいいのかよ?」

 

「では同じ大きさの黒と白で交互に重りを持ち上げて比較していきましょう

ひとつあたりが身体強化で僕が持てる程度の重さになってます

ではまず僕から・・・」

 

   ガシャ ガシャ

 

エル機が軽々と重りを片手で一つずつ持って見せた

 

「じゃあ オイラも」

 

   ガシャ ガシャ

 

「おお 結構持つのにコツがいるな

3つは難しいか?」

 

「そうですね・・・

僕が身体強化を高めれば4つぐらいいけそうですが

とりあえず ここまでにしましょう それではボス アディ

中型機を試してみてください」

 

「おう!」

 

「うん!」

 

それぞれの機体で重量挙げや短距離走 衝撃耐久テストを行った

魔導演算機搭載型の黒は搭乗者による差は小さく順調な結果がでたが

白は身体強化の術が優れているエル機が抜きんでいた

そして触媒結晶が内臓されているため他の魔法使用も確認できた

 

「これがあれば鍛冶仕事がはかどりそうだな なあエル

親方や鍛冶師学科の仲間達の分の黒いやつ作れねえかな?」

 

「それは難しいですね

エーテルリアクタ程ではないですがマギウスエンジンは高価ですから

白い方なら量産しやすいのですが」

 

「う~ん オイラ達ドワーフは魔法は得意じゃないんだよなあ」

 

「おい坊主共 動いたときの関節の具合はどうだ?」

 

「良好ですね ただ・・・」

 

     ガパッ

 

「あっつい ずっと動かしてると

中こもるんだけどー!」

 

「たしかに通気性に問題があるな

パワーが出る分 衝撃吸収材をかなり入れたから

こっちも色々詰める部分あるなあ」

 

「操縦者が着るインナーの方も工夫できそうだね

引き続き服飾科も協力するよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「そのかわり エル君とアディちゃん キッド君も

また服飾科に来てね!」

 

「おれさまも行っていいか?」

 

「ボス お前さんはうちの工房が欲しいぜ

うちのせがれがエル坊主にとられちまったからな

いつでも跡継ぎ候補待遇で歓迎するぜ!

故郷に帰るあてがねえんだろ 共に鎚を振るった奴は同胞

ドワーフの民は同胞の苦境を見過ごしはしねえぜ」

 

「ボスさん 父ちゃんにすげえ気に入られてる・・・」

 

「気持ちはありがてえんだがよ・・・」

 

戦いの中で光子力研究所やロンドベル隊の年上の研究者や整備員達と

互いに本音でぶつかり合い 命を預け合ってきたボスは

この世界のドワーフの職人たちともすこぶる相性がよかった

 

「ボス エドガー先輩 この後のメインイベントは

是非そのシルエットギアを着たまま行ってください

この機会にみなさんにお披露目です!

うまくいけばマギウスエンジンの追加購入も検討できるかもしれません!!」

 

「おいおい本気か!?

たしかに元々それを想定したものではあるが」

 

「おれさまはいいぜ エドガーも着ていった方がいい

その方が安全そうだ その分思いっきりやれるじゃねえかよ」

 

「そう言われては断れないな」

 

「羨ましいねエドガー

そっちも代わってやりたいものだ」

 

「現在相棒が無事なのは俺だけだからな

それにこればっかりは譲れないさ」

 

「ではこちらを片づけたら僕達も行きましょう!

フフフ・・・

公開模擬試合・・・

【ボスボロット対アールカンバー】

世紀の一戦を!」

 

「うわー エル君 とってもキラキラしてる

シルエットギア着たまま片付けはじめちゃったよ

私もこのままやろっと エル君待ってー!」

 

「こりゃ荒れそうだな 見に行ってみるか」

 

「父ちゃんも見に行っていいのか?」 

 

「いいんじゃねえか ティファ姉も見に行くらしいぜ」

 

「おっしゃあ そうと聞いたらいいとこ見せちゃるわよ~!」

 

学園内外からも注目を浴びる一戦が始まろうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

ー????????ー

 

「ついにスパロボ30の発売日まで一ヶ月を切りました

これは買わない理由はありません!

ああ どうにかなってしまいそうです

問題はこちらの世界にゲームのプレイ環境がないということ

仕方ありません ないなら作ればいいんです!

ボスこの通信設備を改造してもいいですか?」

 

「いいわけねえだろ!

大体ソフトはどうすんだよ!」

 

「通信機なんですからどうにかあちらの世界とリンクできれば

僕の生前のアカウントでDLできます ボスのお財布にご迷惑はかけません!

早速親方に相談です!!!」

 

「・・・ありゃあ止めてもやっちまうな

まあ帰れる手がかりになるかもしれねえし やらせてみっか

・・・おれさまもスパロボ30にでてるよな?」




公式でエル君がスパロボ参戦に歓喜の声を上げまくるPVに影響されたか今回エル君ばっかり喋ってる気がします
ボスもちゃんといるんですが活躍は次話で・・・


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奇襲

      ―演習場―

 

 

「それではこれよりボスボロット修理の動作試験の仕上げとして

ボスボロットとアールカンバーとの公開模擬試合を行う

なお模擬剣を使うとはいえ安全を考慮して操縦席となる

ボスボロットの頭部 アールカンバーの胸部を意図的に攻撃することを禁止とする」

 

ダーヴィド親方の号令が響き入場した両機が向かい合う

 

      \\ワー ワー!//

 

「やれやれ たかが模擬試合に なんて観客と歓声だ

お祭り騒ぎどころじゃないぞ」

 

「ジャンジャジャーン!

おお 女の子のお客さんもずいぶんといるじゃないのぉ!

エドガーを応援する声ばっかりなのが気になるが

おれさまの華麗な戦いぶりで魅了しちゃうわよん!」

 

「シルエットギアを通してシルエットナイトを動かすのは初めてだが

ケーブルを繋いだだけで操縦桿と鐙になるのは凄いな

今までのアールカンバーの感覚と大差ない

後は戦いを通じて慣れていくとしよう」

 

「ボスもエドガーも準備はいいな

双方 礼っ!!」

 

ボスボロットとアールカンバーが互いにお辞儀をして距離をとった

 

「べへモス戦の英雄ブリキの騎士

そのパワーや機体の耐久力は遥かに上だろう

だが一対一ならば勝敗を決するのはナイトランナーの技量だ」

 

「へっへっへ

久しぶりに張り切って動けるだわさ

それじゃいっくわよ~ん」

 

「始めぇっ!!!」

 

   ドカドカドカドカ!!

 

「ボロットパーンチ だーわさ!」

 

      ガシィイ!!

 

ボスボロットが初手から猛ダッシュでパンチを繰り出し

アールカンバーが左手の盾で威力をそらした

 

「!!! なんという威力!

まともに受けたら盾が砕けて機体が吹き飛ぶぞ!」

 

「おーーっとっとっと」

 

    \\オーーー!//

 

いなされたボスボロットが体勢を崩したが

片足ケンケン状態で持ち直した

そのシルエットナイト離れした動きに歓声が上がるが

立て直す隙をついてアールカンバーが右手で持つ剣を突き出す!

 

「うひゃあ~~っと!」

 

両腕でなんとかガードするボスボロットを

冷静に剣で攻撃しアールカンバーが優勢に進めていく

 

「これだけ激しく動いてもシルエットギアのおかげで

操縦の衝撃がほとんどない!

それでいて機体との操作性や一体感は前以上だ!」

 

「のわ~~っと!?」

 

 

 

    ―見学席―

 

 

「エドガーいつもよりさらにいい動きね アールカンバーは修理だけで

操縦周り以外改造してないって話なのに」

 

「エルネスティの直接制御ほどじゃないが

あれがシルエットギアを通した操縦か」

 

「なあエル なんでボスボロットはアールカンバーみたいな

剣や盾を使わねえんだ?素手じゃ不利だろう」

 

「まだ武器まで修理できてないの?

剣ぐらい貸せばいいじゃない」

 

「いえ 元々ボスボロットには武器がありません

それにボスが言ってましたが剣を持っても

チャンバラで騎士に勝てるわけないので必要ないそうです

ボスは魔法も使えないので杖も持ってません」

 

「でもそれじゃあいくらボスボロットにパワーがあっても

エドガーには勝てないわよ あ 逃げた」

 

「大きく距離をとったか 仕切り直すつもりのようだが・・・」

 

 

 

    ―演習場―

 

 

 

距離をとって一息つこうとしたボスボロットに対し

アールカンバーは右手に持つ剣を素早く杖に持ち替えて法撃を放った

 

     ボウ!

 

   ズガァン!!

 

「うぎゃ!おしりが2つに割れちゃったじゃないのさ!」

 

「後ろに直撃したのにまったく効いてないのか!?」

 

法撃の直撃をものともせず走り出したボスボロットに驚愕するエドガーを尻目に

ボスボロットはアールカンバーを中心に円を描くように走り回り攪乱を仕掛けた

 

「速い!?これでは法撃の狙いが定まらない!

ならば!!」

 

 

 

     ―見学席―

 

 

 

「また剣に持ち替えて真正面から突っ込んだ!

博打に出たわねエドガー!」

 

「エドガーの技量なら剣と盾でボスボロットのパンチに

対応できると判断したのだろう

一撃をしのげれば勝てると!」

 

「あ!?ボスボロットが腕で頭を抱えるように

防御の構えになった!

逆に一撃を耐えてから反撃するつもりか!?」

 

「いえ あれは!?」

 

 

     ―演習場―

 

 

「ボロット ストラ―――イク!!!」

 

    ブォン!!!

 

「何だと!?」

 

ボスボロットが自らの頭部をアールカンバーの頭部に投げつけた

 

  グシャアン!!!

 

アールカンバーの頭に直撃し潰されたことで

エドガーはシルエットナイトの視覚を破壊され

ボスボロットを完全に見失った

ボスボロットはすぐさま自分の頭を拾い上げ元の場所(うっかり後ろ向き)に戻し

 

「もらったぁ!!」

 

    グワーッ!

 

ボスボロットがアールカンバーを一気に持ち上げた

 

「そこまでっ!!!」

 

ダーヴィドの制止を受けて決着がついた

ボスボロットはアールカンバーを寝かせるようにそっと下ろした

 

ボスボロットの奇襲・・・奇行ともいえる攻撃に観客は唖然として声もでない

ボスとしては咄嗟の思いつきとはいえまんまと成功して勝ったのに

まったく反応がなく首をかしげた

とりあえずアールカンバーを握手して起こし上げ

操縦者同士無事を確認し合ったところで観客も気が付いたのか

拍手と歓声に包まれながら模擬試合を終えた

 

 

   ―打ち上げ会場(食堂)―

 

 

「あー、模擬試合で破損したアールカンバーの頭部は完全に

交換するしかねえほどグシャグシャになっちまったが

ボスボロットの頭部は無傷 動きも問題ねえことがわかった

国王陛下からの勅命は果たされたと言っていい

お疲れ!乾杯!!」

 

ダーヴィド親方の音頭で関係者を集めた打ち上げがはじまった

ちなみこの国では高等部から飲酒OKの文化である

 

    \\かんぱーーーい!//

 

「お疲れ様ですボス!

いい試合でしたね

あ 飲み物をどうぞ」

 

「おお あんがとよっと」

 

    グビッ

 

「ボス!」

 

エドガー ディートリヒ ヘルヴィ ゲパードの高等部4人がやってきた 

 

「俺の完敗だった ブリキの騎士との戦いはいい経験になったありがとう」

 

エドガーが求めてきた握手にボスが笑顔で応えた

 

「おう おれさまもおかげさんで必殺技を編み出したぜ

ありがとうよ!」

 

「必殺技か・・・

最近は常識を投げだすのにも慣れたつもりだったが

まさか頭を投げ飛ばしてくるとは思ってもみなかったよ」

 

「最後のアレには流石のエドガーも動きが止まったな」

 

「もしボロットの頭を剣で切り払ったり

盾で止めれば意図的な攻撃にとられかねない

ルールを逆手にとったうまい作戦だったね」

 

ボスとしてはあの一瞬でそこまで考えたわけではなかったが

笑ってごまかした

 

「そんな作戦思い立っても行動にうつすやつはいねえよ

ボスは大丈夫だったのかあれ?」

 

「ああ あの操縦服、ていうか鎧のおかげでなんともねえよ」

 

「いやいやたしかにシルエットギアのおかげで

衝撃は緩和されたが操縦席をぶつけてくるなんて正気の沙汰ではないぞ」

 

「どんな魔獣でも頭を投げてくるやつなんていないから

初見であれに対応できる騎士はなかなかいないとは思うけど

絶対真似できないわね」

 

「・・・ボロットの頭がアールカンバーの頭に直撃する瞬間

中のボスの顔が見えたが、正直あの気迫に呑まれた

あれが勝負の決め手だったな」

 

「あれもボスのセンスですね

ロケットパンチならぬロケット頭突き!

ボスとボスボロットの新必殺技に立ち会えるとは

模擬試合を組んだ甲斐がありました!」

 

「やっぱあの模擬試合もエルが関わってたのか・・・」

 

「それどころか学園長に直訴して学園ごと巻き込んだからな」

 

「でも これでボロットちゃんにとられちゃったエル君が帰ってくるね!

王様の命令は終わったんだから!」

 

「何を言ってるのですかアディ

新必殺技を編み出したとはいえボスボロットの弱点も浮き彫りになりました

今度はそれを補うためにたくさん改良をしていく必要があります!」

 

「おっ そりゃいいな!」

 

「おいおい銀色坊主

なにとんでもないこと言い出してんだ!」

 

興奮した声で喋るエル達の話を聞きつけたダーヴィドもやってきた

 

「親方!ちょうどいいところに

ボスボロットとシルエットギアの改良案があるので

是非見てほしいんです!!」

 

「おいおい まてまてまて!押し付けてくるな!!

ったく・・・・・・こりゃ隠し腕に複座での法術使用だ!?

シルエットギアの改良案って作ったばっかりだろ!?

ったく次から次へと何でもかんでも作ろうとしやがって・・・」

 

「何を言うのですか

ないから作るのです あったら作りません

せっかくなので人事を尽くして国王陛下の度肝を抜きましょう!」

 

「おめえの人事はまだ尽くされてなかったのかよ・・・」

 

「見て さっきから様子を伺ってた学園長が遠い目をしてるわ・・・」

 

「あ エチェバルリア教官が元気づけてる

あの人たしかエルネスティの父親だよな

まったく同じ表情してるぜ」

 

学園長(おじいさま)教官(おとうさま)は娘婿なので

直接血はつながってないのですが

最近は特に仲良くなっていますね」

 

「そりゃ共通の問題児(エル)のせいだろ」

 

「だな」

 

「おっしゃあ まだまだ食って飲むぜ 続けエル!」

 

「はいボス!」

 

ますます盛り上がっていく打ち上げ会場をそっと立ち去る人影あり

 

・・・

・・・・・・

 

 

    ―???―

 

 

 

「フン あの模擬戦はあたしも見てた

学生が乗る型落ちの改造機ごときに手こずるようじゃ

手土産には ちと軽いと思ってたが

ほっとけば改造するってのならまだ様子をみてかっさらえばいい

それと・・・そのシルエットギアは確保しときたいね

そいつは学生さんや魔獣番よりもあたしら向きの代物(ドレス)

改良中のデータを逐一報告しな

あたしらの牙を磨くには持って来いってもんさね」

 

「は・・・」

 

ボスボロットを見る不穏な目が人知れず輝いていく

 

 

 

 

ボスボロットに武装が加わりました

 

ボロットストライクⓟ 射程1~2 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―????????―

 

「ボス できる限りの情報を集めましたがいまだ確認できません」

 

「いや 大したもんじゃねえか」

 

「僕なりにメッセージも送りましたが 好転せず ・・・ですが」

 

「つながりは確認できてんだ ならば」

 

「ええ・・・ Xデーは間近

準備は完了しています

もちろん桧山セット 資金は僕持ちです」

 

「ありがとよ おかえしはさせてもらうぜ」

 

「いえいえ これくらい 僕の夢でもありますから

それではスパロボ30プレイ作戦開始します!」

 

 




スパロボ30発売間近のワクワクがおさまらなくて書き上げました
いよいよ発売間近ですがPV3弾DLC②体験版までありましたがいまだボスボロット確認できず
ワクワクもやもやしながら発売待機中です
いつの間にかこの拙作 連載開始から2年もたってました
まさかスパロボ30で本当に共演?することになろうとは・・・


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修行

  ―学園の会議室―

 

エルの呼びかけで集められたボスボロットの修理に関わる学園の

関係者たちに資料が配られていた

 

「それでは みなさんお集まりいただきありがとうございます

これより先の模擬試合で判明されたボスボロットの弱点を補うための強化改造と

シルエットギアの改良会議を行います」

 

「おお いいぞ いいぞ!」

 

会議の中心となったエルにボスが上機嫌で乗っかっている

 

「エルや・・・一応言っておくが

国王陛下からのご命令は先の陸皇事変で功績のあった

ボス君の保護とその機体の修理じゃ

強化改造まではやりすぎではないか?」

 

「いえ学園長 たしかに親方達ナイトスミスのおかげで

模擬試合では一応動けることは確認できましたが

ボスボロット本来の性能を取り戻したとは言い切れません

それに今回の修理を通じて学園に素晴らしい技術がもたらされました

これはひいては国益にもなるものです

さらに国家の恩人の機体の強化や操縦者を守る為のシルエットギアの改良は

陛下のお心にかなうことと確信しています!」

 

「・・・ハア まあ陛下であればそうであろうな」

 

ため息とともに諦めたように学園長が同意を示した

 

「ボスボロットの弱点か・・・

パワーがあっても距離をとって法撃をうたれると

防戦一方で攻撃手段がなかったな」

 

「そもそも素手じゃあ近接でもキツいわよ

魔獣相手ならともかく武器を持った相手なんだから」

 

魔導兵装(シルエットアームズ)を使わざるを得ませんね」

 

「でもエル君、

ボスさんは魔法使えないよね?」

 

「さっぱりつかえねえだわさ」

 

「そこで僕にいい考えがあります

ボスボロットには胴体部に武器を入れるためか余裕があります

ここに腕を仕込み 杖を持たせます」

 

    ザワ・・・

 

「ちょっと待て銀色坊主

百歩譲って胴体に腕を仕込んだとする

設計図には確かに杖と腕を仕込むだけのスペースはあるからな

だがボス本人が魔法を使えなければただの杖だ

それに三本目の腕なんてどうやって操作するんだ?」

 

「元々ボスボロットの操縦席は複数人が乗ることを想定されてます

ですから僕が乗って操作します!」

 

「それってエル君が乗りたいだけでしょ!」

 

「そこはあえて否定しませんが

ボスボロット修理用に国から支給されて結局使わなかった

エーテルリアクタをこの機会に使えば十分可能な範囲です

まあマギウスエンジンはシルエットギアに使ってしまいましたから

制御がフルコントロールなので補助操縦者がいないと使えない兵装ですね」

 

「ボスボロットは機体の維持にエーテルリアクタを必要としねえから

その分を丸々法撃に使えるとなりゃかなりの威力が期待できるな」

 

「エルなら上級魔法も自在に使えるし

ボスさんの攻撃に合わせてバンバン撃つこともできるってことか」

 

「そりゃ手強いなんてもんじゃないね

実際戦ってみたエドガーならどうする?」

 

「正直模擬試合ではボロットのパワーをいなすのが精一杯だった

あの状態でパンチと同時に法撃まで加わったら・・・

相打ち狙いでシールドバッシュか いや それでも・・・」

 

「相当厄介そうね でもそんなこと本当にできるの?」

 

「ではお手元の資料をご覧ください

仮にサブアームと呼称しましょう これを・・・」

 

エルが心から楽しそうにヒートアップしながら計画を発表していくたびに

ボスは調子に乗り 対照的にそれを実行するナイトスミス達

それを相手にする可能性があるナイトランナー達

それを許可し責任を持つ学園長が暗くなっていく

 

「よっしゃ こりゃじっとしてられねえ!

早速やろうぜ!!」

 

「お おう こうなりゃやるぜ!

銀色坊主の悪魔みてえな発想もボロットならいける!」

 

「親方・・・ まあわかる気がする

エルの無茶ぶりもボロットならやってくれそうな感じだよな」

 

「ボロットがナイトスミス達から謎の信頼を受けてるね」

 

「非常識のかたまりみたいな存在だからな

常識を投げ捨てるエルネスティとは相性がいいのだろう」

 

「ああ・・・

エル君がまた丸くてボロボロした物に夢中になってる」

 

 

 

    ―工房―

 

「ストランドクリスタルティシューでサブアームを作るとして

まずは・・・ボスこの胸部って開きますか?」

 

「おう ちょっと開けてくるぜ」

 

「僕もいきます!」

 

ボスに続いてエルもボスボロットの頭部 操縦席に乗り込んでいく

現在ボスボロットの頭部の中に入ったことがあるのは

ボス本人と子分特権を主張したエルとボス自身が許可したアディのみである

もっともそれはエルが機密保持の名目で中に入られないように手をまわした結果であり

ボス本人はあまりこだわっておらず出入口に鍵などもない

だが親方を含めナイトスミス達は好奇心を抑え中に入ることはない

またボスやエルが不在の時は学園から警備員がつき侵入者を阻んでいた

そんな一種の異世界となったボロット操縦席での作業がひと段落したところで

 

「ふ~ こんなところか

なんか小腹がすいただわさ」

 

「そうですね まだ夕食まで時間があります おやつをもってきましょうか」

 

「んにゃ あれでも食べるだわさ

これに水を入れてくれ」

 

ボスはエルにやかんを渡し電気コンロを用意した

 

「それは・・・  すぐに行ってきます」

 

エルが用意した水を沸かし

ボスがとりだした2つのカップラーメンにエルが

 

「ボス 僕にもひとつもらえますか?」

 

「おお いいぜ ちょうどこの2つで最後だからよ

食っちまおうぜ」

 

お湯を注いで3分待つ・・・

 

「おめえもカップ麺好きか?」

 

「どうでしょう? 前世では結構食べてましたけど」

 

「日本人だったんだろ

やっぱりラーメンが懐かしいんだわさ

おれさまも子分のムチャやヌケとバイクで

色んなラーメン屋に行ったもんよ」

 

       グ~・・・

 

ボスの腹時計が時間を告げた

 

「おっしゃ食おうじゃねえか」

 

「はい いただきます」

 

   ズズ――・・・

 

「んぐんぐ・・・ どうしたエル?」

 

エルは一口二口食べてボーッとしていた

 

「いえ 前世で仕事中に徹夜が続いていたとき

給湯室でこれを食べているときだけは息が抜けた

そんなことをふと思い出してました」

 

かつての社会人の闇に触れ

 

「そういや光子力研究所やロンドベルの

格納庫でもあんな顔した人が結構いたっけ」

 

ボスは苦楽を共にした大人達を思い出した

 

・・・ボスがエルから聞いた前世の話では

どうやらエルがいたのは自分たちがいた時代よりも未来の日本

それも戦争が終わった平和な時代に交通事故で不意な別れだったらしい

そんなエルがラーメンを食べた表情を見て違和感に気づいた

エル、エルネスティ・エチェバルリアは前世倉田翼への未練がない

自分や親友の兜甲児、剣鉄也 愛すべきロンドベルの仲間達が

必死で戦い続けた長い戦争の先に目指したはずの平和な世界に非常に淡泊で

自分たちやその相棒『ロボット』へ激しい執着を見せる

そこに何か納得がいかないものを感じた

そんなエルに 新しくできた可愛い子分に気づいてほしいことができた

そのためには・・・

 

「もうラーメンはねえな

やっぱりおれさまが作るか、

でもラーメンを一から作ったことはねえだわさ」

 

「あ 足りませんか

でも僕もラーメンは一から作ったことはないですし

作り方も知りませんね」

 

エルが通信設備の検索機能でラーメンの作り方を探してみるも・・・

 

   カタカタカタカタ

 

「残念ですが ラーメンの作り方はやっぱり載ってないですね」

 

「おう まあそうだろうな

ん?カップの方に原材料ってのが書いてあらあな

これはいけるんじゃねえか

・・・デキストリンってなんだ?」

 

「あ デキストリンの情報ならありますね

デンプンを加水分解した多糖類の総称です

工夫次第で材料はどうにかなるかもしれません

ただどう作ればいいのかはなんとも・・・」

 

「イッシッシ

上等じゃねえかよ 面白くなってきた」

 

ボスがやろうとしていることはひどく残酷なことかもしれない

奇妙な縁で出会った遠い地にいた自分を慕う同胞に対し

故郷の味で故郷への情を芽生えさせようとするようなものだ

だが それでも・・・

 

「まあラーメンの方はおれさまにまっかせとけ

そっちはあのシルエットギアの方もあんだろ」

 

「そうですね 改善点はいくつもあるのですが

それよりもフルコントロールの訓練用の白型ギア

マギウスエンジンを積んでいない方を高等部の

ナイトランナーのみなさんがあまり使ってくれないんですよ

白型の方が量産しやすく訓練向きなのですが

どうにかなりませんかね?」

 

「あれ着てディーやキッド達が鬼ごっこしてたじゃねえか

あんな風に遊びながらできる自主練をやろうぜ」

 

「なるほど 自主練なら一人でできるものがいいですよね

的当てとか?」

 

「お ボウリングとかどうだ?」

 

「いいですね ピンとボールは適当に用意できそうですし

ちょっと提案してみますね」

 

   ―工房外訓練所―

 

 ガシュン

  ブン!

 ゴロゴロゴロ・・・ パッコーーン

 

「おお あたった 流石エル

ピンが結構倒れたな」

 

「転がして当てるんだね

私もやってみていいエル君?」

 

「勿論 ボールの穴にギアの指をはめて投げてください

結晶筋肉の動きを意識して繊細なコントロールを磨く練習ですから」

 

「うん わかった! てい!!」

 

  ガション!

   ビュッ

 ゴロゴロゴロ・・・ カーン

 

「あ 一本当たった

ところでエル 練習はいいけどピンを倒す意味は何かあるのか?」

 

「よくぞ聞いてくれました!

あれはですねべへモス戦でのボスの活躍の再現なのですよ

ボロットがとっさに仲間の前に割り込んでべへモスの攻撃からかばった

あのシーンを自分の手で!」

 

「おれさまの活躍がついにゲームになったわよん」

 

「成程あのピンはあのときの我々で

ボールはボロットてことか」

 

「それを聞いちゃ黙ってられねえな

次は俺に投げさせてくれ」

 

「ディートリヒ先輩 ゲパード先輩

ちゃんと白型ギアでやってくださいね」

 

「おう!

やっぱり身体強化が結構難しいな よっと」

 

  がしょん

   ぶん

 ゴロゴロゴロ・・・

 

「あ 外れた」

 

「ガーターだなこりゃ」

 

「おし もう一回!」

 

「私もやるぞゲパード!」

 

「あれは・・・一体何をやってるんだ?」

 

「ん?何か新しいゲームかしら?」

 

「先輩方が盛り上がったおかげで他の先輩達も集まってきましたね

これは予想以上にウケるかもしれませんよボス」

 

「ウケるに決まってるだわさ

おーい! おれさまもまぜてくれー!」

 

ボウリングはこれ以降白型ギア専用競技として学園内で流行し

白型ギアも多数量産されることになり

シルエットギア開発とフルコントロール訓練が一気に進むことになった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ―?????―

 

「ようやくスパロボ30に俺様がでたー!!」

 

「・・・ですが残念ながら声がついてないようです

どうやら今作での参戦は・・・」

 

「ありゃ~ 折角あっちの俺様歳をとって

ますますハンサムになったてのに戦わねえのかよ!

甲児や鉄也はバリバリやってるのによう!

エルが羨ましいぜ エルロボット メチャクチャつええしよ!」

 

「たしかに今作は僕の相棒は強力で序盤から使えましたが

僕からすればこれまでほとんどの作品に参戦しているボスの方がうらやましいですよ

作品によってはマジンガーにも乗れますし」

 

「DLCってやつで でれねえのかよ」

 

「あ 会話イベントにボスが・・・」

 

「結局作らねえのかよボスボロット!

折角ムチャやヌケが提案したのにあっちの俺は何言ってんだ!?

シローが戦ってるなら尚更おれさまも戦いてえよ!」

 

「でもボスのサポーター能力すごい優秀ですよ

1ターン全味方ユニットに鉄壁はこれから重要です

特にシルエットナイトは小型で耐久力に難がありますから恩恵は大きいです

それに今回は前作と違いずっと同行するみたいですし

ある意味前線維持のみ参戦の陛下よりも優遇されているとも・・・」

 

「・・・しょうがねえ

こうなりゃおめえたちを守るためにアストナージさん側で頑張るか

『ぼすらーめん』も食ってけよ」

 

「これは僕のロボット『魂』が連発できそうですね

ボス合流に備えてとっておいたPPと資金がありますし

ああ おかげでますます最強に近づいていきます僕の相棒・・・!」

 

「おめえ本当に楽しそうだな・・・」

 




スパロボ30ボスボロット参戦ならず・・・
劇場版マジンガーZ / INFINITYでボスボロット活躍したのにTに続いて未参戦とは残念
機体余るしパイロット参戦だけでもしてくれたら


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献身

   ―カザトシュ砦―

 

「・・・これはいったいどういうことだ?」

 

クヌート・ディクスゴード公爵のもとに届いた二つの報告書

いずれもボスボロットの修理に関するものであるがその内容はまったくの逆

陸皇事変によって奮戦し破壊されたボスボロットの修復は

事変の功労者である操者のボスと国王陛下のあいだで約束されたもの

国の面子にかけて果たさなければならないものである

そのためにボスから許可を得て破壊されたボスボロットの右腕を預かり

国内唯一最大のシルエットナイト研究機関である国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)で修理のための研究を行っていた

報告書の一つはその国機研(ラボ)のオルヴァ―・ブロムダール所長からである

国内最高の技術者であるガイスカ・ヨーハンソン工房長が

まるでとりつかれたかのように先頭にたって取組み

孫が力技で寝かしつけるまで研究を続けながらも未だ詳細が掴めず

ラボが一丸となっても腕一本ですら修理のめどが立たないという内容であった

これだけでも頭を抱えるものであるが

さらに公爵の頭痛を増すのがもう一つの報告書

藍鷹騎士団のノーラ・フリュクバリからである

ライヒアラ騎操士学園において学生らの修理によりボスボロットが

学生機と模擬試合をできるほどになったというものであった

公爵自身も長年シルエットナイト開発に関わる身である

学生達が中心である学園でのこの結果 ボス本人が持つ技術力の脅威がわかる

しかも公開模擬試合である

その内容もとんでもないものであるが それがかなりの数の人目に触れた

これも予想外の事態だ 万一野心あるものがその技術力や

ボスボロット、ボス本人に目をつけ危害を加えるようなことになれば・・・

 

「・・・彼の安全を考えれば学生と教官が主体の学園よりも

朱兎騎士団のいるこの砦に招くべきか

修理がひと段落したならばできるだけ早い時期に・・・

それに報告書にあるシルエットギアも興味深い

この機会に開発に関わった者と現物を見るとしよう

まったく まさかこのようなことになるとはな・・・」

 

これが フレメヴィーラ王国においてその人ありと謳われ

長年王国を支え続け辣腕をふるってきた公爵にとって

さらなる苦悩のはじまりとなるのであった・・・

 

 

 

  ―ライヒアラ騎操士学園―

 

「ようし!

それではボスボロットのサブアームによる法撃のテストを行う!

ボス!銀色坊主!準備はいいか!!」

 

「おうよ!まっかしとけっ!」

 

「はい!準備完了いつでもいけます!」

 

ダーヴィド親方に応えボスボロットが胸部を開き杖と一体化した腕を出した

 

「おうしエル!ブレストファイヤー!!」

 

「了解!ボス!!」

 

    ゴアアアア!!!

 

強烈な火炎放射が訓練用の標的を焼き尽くした

 

   \\おお~~!!//

 

「凄まじい火力だな」

 

「あれならべへモスにも有効だろう」

 

「エーテルリアクタに直結するとあんなに威力あるのね」

 

「よし次の標的を用意しろ!」

 

新しく標的が設置された

 

「お次はサンダーブレーク!!」

 

「OKボス!!」

 

   ズガァーーーン!!

 

強烈な雷撃が標的に炸裂粉砕した

 

「うっわー・・・ エル君が直接撃つよりすっごい・・・」

 

「あんなの学園でうったらやべえやつだろ・・・」

 

「もうやめにしとかないとまずいだろ」

 

「べへモスにとどめを刺したやつだよな あれ・・・」

 

「おーーし!これで最後だ!!」

 

用意された最後の標的を前に・・・

 

「あと何ができるんでいエル?

ロケットパンチか?」

 

「それはまだ無理ですね いつかはやってみたいのですが

そうですね・・・では

グレートタイフーン!!!」

 

  ブオオオおおおおおお!!!!

 

「ゲ!?」

 

「やべえ!!!」

 

「ふせろーーーーー!!!!」

 

ボスボロットの巻き起こした暴風は標的どころかボスボロット自身も吹き飛ばした

 

「どっへええーーーーー!!!!?」

 

離れて見ていた親方たちは必死で地面に伏せて無事だったが

その惨状に絶句するしかなかった

 

「こりゃ・・・学園長になんて言ったもんかね・・・」

 

「ど~すんだこれ・・・」

 

片付けを考えウンザリしている整備班たちだった

 

吹き飛び転がったボスボロットからどうにか這い出してきたボスとエル

 

「お~い エル~ 生きてるか~」

 

「ボス~・・・ 生きてますよ~・・・

グレートタイフーンは駄目ですね・・・

しかし考えてみれば当たり前でした・・・

噴射の反作用でボスボロットがひっくり返りますよね

ですがうまく使えば空を・・・」

 

エルが無事な姿で思考に没頭しているのを見て

安堵しているボスに近づき声をかける女性が

 

「あの 大丈夫ですか?」

 

「おお カワイ子ちゃん!

へへ こんくらいどうってことねえぇよ!!」

 

女性の声に反応しガバッと立ち上がり

パイロットスーツとして着ていたシルエットギアを脱ぎ力こぶを見せピンピンしているボスと

こちらをまったく気にせずにぶつぶつと独り言を続けるエルに

困惑しながらも女性は表面上は平静にハンカチを差し出し会話を試みた

 

「私は騎装士学科のノーラと申します

あの 本当に大丈夫ですか?

シルエットナイトの頭がとれるほどの大事故のようですけど・・・」

 

「あんがとよん

ボロットの頭がとれちまうのはいつものことだわさ

それにこんなカワイ子ちゃんにハンカチを貸してもらって

今日はラッキーだーわさ!」

 

「そういえば模擬試合でも頭を投げてましたね」

 

「おっ!見てくれちゃってた!?

うっしっし

エドガーが手強くてやけくそでぶん投げたのがガーンとあたっちまったわよん」

 

「術式の規模と出力を考慮してあえて機能を絞り制御を・・・」

 

目前の常識を放り投げ続ける二人のことをどう報告したものかと頭の片隅で考えながら

ノーラは護衛対象であり観察対象であるボスとの初接触をはたした

 

 

 

   ―学園 特設ボウリング場―

 

シルエットギア総出による後片付けをどうにか終えて

ギアを脱ぐ前のついでとばかりにボウリングをしに来たボスに

ディートリヒとゲパードが声をかけた

ちなみにエルは片付けそっちのけで新しい図面を書こうとしていたので

親方につかまり説教を受けている

 

「ボス ちょっといいか?」

 

「なんだディー ゲパード ボウリング勝負するか?」

 

「それはちょっと待ってくれ

実は私とゲパードの二人を君の子分にしてほしい」

 

「お いいぜ!」

 

「え いいのか? そんなあっさり?」

 

「いいわよん おれさまのことはボスと呼ぶだわさ」

 

「わかっ・・・ 了解しましたボス殿」

 

「そんなかたっくるしいのはいらないわよん」

 

ディー達は陸皇事変でボスに命を救われてから彼に敬意を持っていた

自分たちをかばったブリキの騎士の背中に・・・

そのブリキの騎士はけっして無敵の装甲を持った超人が操るようなものではなく

この学園で再会し直接目にしたのは、

自分たちと同世代で魔法も使えないナイトランナーと

法撃試験の失敗でボロボロにひっくり返ったボスボロットであった

そんな彼が勇気を振り絞りべへモスから自分たちの命を守り

それを何でもないように振る舞い誇ろうともしない

騎士よりも騎士らしい気概を感じ より尊敬したのだ

そして先程の法撃試験、エルが補助に乗りボロットが法撃可能になったことで

弱点が補われただけではなく 危険性も跳ね上がった

常識を投げ捨てるエルは暴走の危険があり ボスは悪ノリする雰囲気がある

ボスボロットは本来3人乗りと聞いていた

子分となり同乗することができれば自分達がストッパーになれる

それがボスを守ることになる ディー達の狙いはそれだった

だがあっさり子分として受け入れられたのでそれをボスに伝えることはなかった

 

 

 

  ―学園工房―

 

学園長によりボスを含めボスボロット修理に関わった生徒が集められた

 

「おい銀色坊主 なんだって俺達が集められたんだ?」

 

「僕も聞いてません 先日の法撃の実験のお叱りでしょうか?」

 

「あれはなあ・・・幸い人的被害はなかったが

やっぱりお咎めなしってわけにはいかねえか」

 

「エルのじいさんに謝りに行ったときは渋い顔はされたが

一応許してくれだぞ」

 

「さて こうやって集まってもらったのは他でもない

ボスボロットの修理がとりあえずの成果がでたことで公爵から申し出があった

ボス君とボスボロットをディクスゴード公爵領カザトシュ砦に招待し保護したいと

合わせてボス君からの技術供与によって作られたシルエットギアの現物全機と

主に開発に関わった人物から直接話を聞きたいとのことだ」

 

学園長の言葉で学生達がざわついた

 

「何で公爵様が?」

 

「シルエットギアもってかれたらボウリングできねえぞ」

 

「また作ればいいじゃないか」

 

「あの砦は高名な朱兎騎士団がいるはずだ

護衛戦力としては学園(ここ)とは比べ物にならないほど強いことは確かだ」

 

「おれさまはここが結構居心地いいぜ」

 

「朱兎騎士団って私の憧れの女性騎士がいるのよね

美人で凛々しくて 会えないかしらね」

 

「急にそのカザン砦ってのに行ってみたくなっただわさ!」

 

ヘルヴィのつぶやきにわかりやすく気が変わったボスに学園長が改めて聞く

 

「ボス君 あくまで君は国王陛下の客人だ

公爵閣下といえどこれは決して命令ではなく

あくまで招待ということでその後の滞在やこちらへの帰還の自由も保障するし

これを断るのも君の自由だと聞いている

それでもいいのか?」

 

「おう せっかくの招待なら受けちゃうわよん

そんでこっから行けばいいんだわさ?」

 

「いや ボス君の返事をこちらから送って

あちらから朱兎騎士団を迎えに出すとのことだ」

 

「わかりました そんじゃ待ってるだわさ」

 

学園長(おじいさま) 砦には僕も同行します

シルエットギアの開発に一番関わっていますし

それにあちらがボスボロットを受け入れるのに必要な物資などもありますから

返事のときにそのことも添えましょう ボスが人の3倍食べることも」

 

「おし エル任せた!」

 

「了解ボス!」

 

「シルエットギアを持っていくなら私達も同行しよう

エルネスティだけよりもその方がいいだろう」

 

「よし今から準備しとこうぜ!」

 

「ディー、ゲパード本気か!?」

 

「「勿論!!」」

 

公爵の招待という前代未聞の事件に にわかに盛り上がる中

一人の男がその情報を外に持ち出した

 

 

 

 

   ―????―

 

「へえ 切れ者と評判の公爵があのブリキの玩具と甲冑(ドレス)をねえ

・・・ならあの事故で学園が厄介払いしたわけじゃないね

これは動く時がきたじゃないか」

 

「今のうちにシルエットギアだけでも盗んじまいますか?」

 

「馬鹿言ってんじゃないよ

いくら未知の新型とはいえ学園から玩具や鎧をかっぱらって献上しても大した手柄にはならないのさ

それにここからじゃ国元に持って帰るのに距離がありすぎる

ちょいと待てば師団級魔獣相手に戦える証拠に公爵が砦に囲うほどのお宝って箔がついて

ご丁寧に帰国しやすい距離まで運んでくれるんだ

至れり尽くせりで感謝してやりたいぐらさ

監察官殿に連絡をつけな!

公爵自慢の砦と騎士団が相手だ

『虎の子』が使えるようにしてくれってな!!」

 

 

 

 

 

エルネスティがサブパイロットに登録されました

 

サブパイロット能力

 

エルネスティ・エチェバルリア

 

与ダメージ 1.1倍

最終命中率、最終回避率+15%

騎操士

 

精神コマンド 集中 直感 ??? ??? ??? ???

 

騎操士 搭乗時ボスボロットの武装追加

ブレストファイヤーⓟ 1~3

サンダーブレーク   2~5




エル君がサブパイロットとしてボスボロットにのりかえ可能になりました
スパロボ30のハイスペックを考えればボスボロットのサブパイロットにするには・・・


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激励

   ―学園工房外―

 

シルエットナイトで研究中の綱型結晶筋肉(ストランドタイプ)を組み込み

強度が大きく向上したシルエットギアによる新しいテストが行われていた

 

「ロケットパーンチ!!!」

 

  バシュ!!     ドン!  キュルルル

 

「すごーい!エル君のギアの手が飛んで的に当たったら

すぐに戻っちゃった!」

 

「上出来ですね パワーも耐久力も上がったおかげです

ロケットパンチというよりワイヤード・フィストですが

いっそあいだを取ってゲキガンパンチと呼びましょうか・・・」

 

「エアロスラストの魔法で飛ばしてるのか

あれならある程度 方向も魔法で調整できるな」

 

「ええ グレートタイフーンの反省から

こういう使い方にしました」

 

「でもなんで法撃があるのにわざわざ手を飛ばすの?」

 

「いい質問ですねアディ 見ててください!」

 

    バシュ!   ガチ!

 

パンチを屋根に向かってとばしそのまま屋根のへりをつかみ

 

「ワイヤーを巻きながら出発!」

 

   シュルルル   バァアアン

         くる

        しゅた

 

「すごーい!一瞬で屋根まで登っちゃった!」

 

「なるほど とばした後でも【手】として使えるのか

使いこなせれば便利かも」

 

「ワイヤーの中に銀製神経(シルバーナーヴ)を縒り合わせてあるからな」

 

「ふむ これがボスボロットやグゥエールにも実装できれば

戦いの幅が広がるかもな

シルエットギアで新武装のテストをしたいから付き合ってくれと頼まれてきたが

なかなか面白いことになりそうだ」

 

「ディー先輩 そんなこと言ってるとエルの新ネタ試してもらうよ

まるでびっくり箱なんだから はいコレ右手と取り換えて」

 

「よっと ディー先輩 これはクセが強いですが強力ですよ~」

 

屋根から戻ってきたエルがニコニコ顔でディー機のシルエットギアの横に立った

 

「見たところ飛ぶ手が槍先のようになったものか

成程 より貫通性を狙うときに使うのだな」

 

「たしかにそれもありますが

まずはあの土壁の的に撃ち飛ばした後

巻き取らずにそのままにしてください」

 

「? わかった 任せたまえ」

 

   バシュ!    ズガッ!!!!

 

「おお いきなり的に命中した

先輩この武器はじめてですよね!?」

 

「まあこれくらいはね」

 

「先輩 その状態から殴りつけるイメージで魔力を込めてください!」

 

「わかった!」

 

     ズドォン!!!

 

「土壁ごとふきとんだ!?」

 

「的も粉々になったよ!?何アレ!?」

 

「うわっちゃあ~

あれ生き物に使ったらえらいことになるぞ

一瞬だけど 戦術級魔法並の威力ってことか・・・」

 

「・・・エルネスティ これはあのときの」

 

「流石ディー先輩 すぐに気づきましたね

これはあのべへモスに致命傷を与えた必殺兵器対大型魔獣用破城鎚(ハードクラストバンカー)

小型簡略化した上で連射も想定しています!

流石に腕につけたままで使うと肩が吹き飛びそうですが

これならシルエットナイトのサイズで使えば

あのべへモスにも通用するはず!

その名もリボルビングステークです!!」

 

「いいね これは・・・!

実用化したら是非ともグゥエールに搭載してほしいな

いや ここで使って問題点を洗い出せば実用化に近づくはず!

続けてやるぞ!!」

 

「いやいやディー先輩

流石にあの威力は街中でぶっ放すもんじゃないですよ!」

 

「たしかに土壁がああなっちまうんじゃなあ

エルがボロットでやらかした直後だし まずいかも・・・」

 

通気性の改善がいまだに難航しているものの

シルエットギア用に背面に2本のサブアームをつけたテストなどを行い

マギウスエンジン搭載型の黒い3機にはそのまま運用していくことが決まった

 

「それでは黒のSサイズをバトソン Mサイズをボス

Lサイズを親方に使ってもらってサブアームなどのデータをとり続けましょう

それぞれ自由な改造も試してもらえれば・・・」

 

「なるほど その3人ならほっといても自分でカスタマイズできるから

色々な成果がでるわけだ

ではこの白いLサイズは私専用機として預かってもいいかい?

新武装やシルエットナイトとのフルコントロールのデータもとろう」

 

「ありがとうございます!是非お願いします!!」

 

「礼には及ばないさ

私もボスの子分になったんだ

これくらいはやらせてもらうよ」

 

「・・・そうでしたね ボスやゲパード先輩も交えて

そのあたりもじっくり話し合いましょう」

 

「ああ!!エル君がまさかディー先輩と急接近!?」

 

「いや なんでだよ!落ち着けってアディ!」

 

 

 

それから数日後

 

   ―工房内―

 

学園長自ら足を運び工房内の学生を集めた

 

「公爵閣下からの連絡があった

砦は既にボス君の受け入れを整え二日後に朱兎騎士団の騎士3名

シルエットナイト3機 馬車3両 で迎えにくるとのことだ

こちらからはボス君とボスボロット 組み立て済みのシルエットギア全機

シルエットギアの開発の発案者と鍛冶師 テストランナー数人の同行を求めている」

 

「思ったより早い対応ですね

砦まではシルエットナイトの足で片道約3日といったところ

既にあちらは出発していることでしょう

こちらのメンバーを決めて準備を整えておきましょうか親方」

 

「そうだな こっちの面子は・・・

ボスと銀色坊主は確定

鍛冶師は俺達で選抜しておく

ギアのテストランナーは白いのが十分使えるやつとなりゃ」

 

「私とゲパードが行く」

 

「当然!」

 

「はいはーい!

私も!!」

 

「俺もいくぜ 白いギアの扱いなら俺達が適任だろ」

 

「おいらも行くぜ

何しろおいらのギアは作業用特化で親方のとも

結構違ってるからな」

 

「ディー先輩、ゲパード先輩、キッド、アディ、バトソン・・・

ギアが現在白黒合わせて10機ありますし こちらからも馬車がいりますね」

 

「おれさまのボロットにも積めるぜ」

 

「そうですね 僕と先輩方のだけでも載せてもらいましょうか

サブパイロットとして使えるように」

 

「食料買い込みに行かねえとな

ボロットの冷蔵庫いっぱいに買っていくか

旅先でラーメンの材料も探してえし」

 

「エル君エル君! おやつ買いに行こ!!」

 

「遠足じゃないですよアディ」

 

にぎやかになった工房からひっそりと抜け出す人影がひとつ

人目を避けつつ街へ出ようとしたところで もうひとつの影が重なり

 

「ぐ!?」

 

「捕獲完了・・・」

 

鼠を藍い鷹が捕まえた

 

 

 

   ―???―

 

「【伏せ鼠】からの連絡が途絶えたってのか

こりゃ 公爵が動くみたいだね」

 

「鼠はどうします?」

 

「逃がしてやりたいが監察官殿の目がある

すでに勅命が下った以上 すぐにここを引き払い

獲物をとったらそのまま本国に持って帰るのが最優先さ

あのブリキの玩具を砦に運ぶにはどうしたって目立つ

野郎ども!2度とここには戻らない

完全に痕跡を消して全員で追いかける手筈を整えな!」

 

この国の誰も知らないところで恐るべき牙が活動を開始した

 

 

   二日後

 

学園に到着した団長モルテン・フレドホルム率いる朱兎騎士団は

すぐにボス達と顔を合わせカザトシュ砦へと出立した

ボス達は操縦しながら先頭を行く団長機ハイマウォートに追従していき

シルエットギアは騎士団が用意した馬車に積み込み

学園の馬車に鍛冶師達が乗り込んだ

 

そしてボスボロットの操縦席では

 

「うわはあ!

僕の手でボロットが歩いてます!!

操縦結構簡単ですね!歩くだけなら車の運転よりも!」

 

「エルネスティよく動かせるな!?

ナイトランナーと違いすぎて何が何だかわからないぞ!?」

 

「何で足が動いてんだ!?

鐙踏んでないよな!?

操縦桿の形も違いすぎるだろ!今何で回したんだ?」

 

「エルく~ん ボスさん達ー! お茶の用意できたよー!

お茶菓子もあるよー!

このテーブルの形独特だよね」

 

「ちゃぶ台っていうんだわさ」

 

「ちゃぶだい!?なんかカワイイかも!」

 

「ボス 先輩方 先にお茶を飲んで来てください

操縦は僕にお任せください」

 

「そんじゃエル任せた」

 

「おいおい いいのかいボス

操縦したてのエルネスティから目を放しても」

 

「おうよ ディー達も慣れてくれりゃ道中かわりばんこで

ずいぶんと楽ができるだわさ」

 

「そうと聞いては休んでいられないな

ボロットの操縦法をしっかり学ばないと」

 

「こっちの子分は真面目なやつばっかだわさ

茶ぐれい・・・ん?うわっちゃあ!!??」

 

    グラララ・・・

 

ボスボロットを襲った激しい揺れで飲みかけのお茶をひっくり返したボス

 

「なんでい!?つまづいたか!?」

 

「いえ!外で魔獣が!!」

 

「あれは地砕蚯蚓(シェイカーアーム)か!?」

 

「でっかいミミズ!?気持ち悪い!!」

 

直径1メートル 全長20メートルの巨大ミミズが

街道の石畳を軽々突き破り一行を急襲

馬車が2両倒れ 中から鍛冶師達が這い出てきた

 

「あっ バト君たち大丈夫そうだね

って親方つよ!!」

 

   ゴアア   グッシャア!!

 

シルエットギアを装着したダーヴィド親方がドワーフの強力な筋力を倍化させ

巨大な鎚を二刀流で振り回し地砕蚯蚓に叩きこみ粉砕していた

 

「おうらぁ!!

よくもやってくれやがったな!!

馬車の仇だ!徹底的にぶちかましてやらあ!!!!」

 

「うわあ 親方こええ・・・」

 

「バト坊!てめえもギアがあるんだ続け続け!!!」

 

「もうこうなりゃヤケだーーー!!!!」

 

   ―ボロット操縦席―

 

「エル操縦かわれ!アディちゃんとギア着て馬車の連中守ってな!!

ディー!ゲパード!ギア着て奥の手使えるようにしとけよ!」

 

「はい!ボスもギア着てください!」

 

「あんがとよ!」

 

  ジャキン ジャキン ジャキン!

 

シルエットギアを装着しギアによる初の実戦に挑むエル達にボスが檄をとばす

 

「気合こめろ!根性だせ!!

さあ かっこよく暴れてやるわよ~ん!」

 

   \\\\おう!!!!////

 

エル達が飛び出した後はボスボロットが手当たり次第にシェイカーワームを

叩き潰していった

 

「ボロットパーンチだわさっ!!」

 

ボロット鉄拳がシェイカーワームを一撃でぶち抜いた

 

「各機散開しつつ警戒を続けろ!

奴らの出現は音を伴う!そこを狙え!!」

 

騎士団の指揮や連携 学生達の奮戦もありシェイカーワームの数が減ってきた

 

「どうだミミズ共!

これが俺たちの力だ!」

 

「ど~んなもんでい!」

 

   ゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!

 

「この地響きは・・・」

 

     ドゴオオ!!!!

 

「でかい!!」

 

直径6メートル 全長100メートルに及ぶ桁違いの

巨大シェイカーワームが地中からあらわれた

 

「シェイカーワームのヌシでしょうか」

 

「なんで銀色坊主(てめえ)はそんなに冷静なんだ!?」

 

「大丈夫ですよ どうやらあれはシルエットナイト達を狙っています

ヌシの相手はボス達にお任せしましょう

僕達は馬車を守りつつ後退しましょう」

 

「たしかに巻き込まれちゃひとたまりもねえ

オラ!さがるぞ!モタモタするやつぁケツけっぱくるぞ!!!」

 

小枝のように鎚を振り回し小型のシェイカーワームを叩き潰す親方と

法撃の雨を降らせるエル達が道を切り開いていく

 

 

 

 

「べへモスを思い出すデカさだな

あんなでかいシェイカーワームなんているのかよ!?」

 

「いるんだからしょうがねえよ!

ゲパード!ブレストファイヤー発射だ!!」

 

「了解!くらえミミズ野郎!!」

 

ボスボロットの胸が開きサブアームから

炎の法撃が発射 シェイカーワームのヌシに直撃した

カルダトアの法撃数発分の威力の業火にさしものヌシもあきらかにひるんだ

 

「よっしゃあいくぜ!

スペシャルボロットパンチ!!」

 

ボロットの一撃がヌシを捉え激しくもだえるように倒した

 

「逃がすな!!続け!!!!」

 

朱兎騎士団団長機ハイマウォートがその出力を生かした長柄のハンマーによって

ヌシに追撃を加え それに続いた騎士たちの剣や槍が串刺しにしていく

ついにたまりかねたヌシが最後の力を振り絞るかのように暴れまわり

まとわりつくシルエットナイトを蹴散らし地中に逃げ込もうとした、が

 

    ガシィ!!

 

「へへっ 逃がさないわよ~ん!」

 

そのヌシの頭(尻尾かもしれないが)?をボロットがつかみ抑え込んだ

 

「なんと あの巨体をブリキの騎士ひとりで止めた!?

俺のハイマウォートでも及ばぬ膂力よ!」

 

「ボス サブアームを打ち込んだ!

やってくれ!!」

 

「ディー、ゲパード! 行くわよ~っ!

サンダーブレーク!!」

 

   ピシッ ズガガァーーーーン

 

シェイカーワームのヌシがゼロ距離での雷の法撃を受けピクリとも動かなくなった

モルテン団長はヌシの死亡を確認し小型の掃討にかかろうとしたところで

ボスボロットも動かないことに気が付いた

ボスはとっさのことでうっかり忘れていたが

接近状態でのサンダーブレークは感電の恐れがあるため使用禁止だったのだ

もちろん操縦席内には感電防止措置がとられていたのだが

急造のサブアームを通じてほんのわずかではあったが

サンダーブレークの影響により室内のボス達にも感電してしまい全員目を回していた

どうにもしまらなかったが まもなくシェイカーワームは全滅し

街道は元の静寂をとりもどしたのだった

 

 

それを遠くから観察していたのは

呪餌(カースド・ベイト)によりシェイカーワームを襲わせた一団だった

 

「なるほど ブリキの騎士ってのはやっぱり

シェイカーワームごときにやられるようなヤワじゃなかったか

ああいう大型相手に真価を発揮するってことかい

なおさら我らの陛下がよろこびそうじゃないか

それにあのシルエットギア ますます欲しくなったね」

 

「この襲撃で馬車が破損しました

修復や積み荷の移動で数日は稼げたはず」

 

「よし あいつらが砦に入るまでに準備を整えな

そして砦に入ってやつらの気が緩んだところが賭け時さ

ブリキの玩具にドレスまとめてあたしらの手土産になってもらおうか」

 

闇に潜む獰猛な目が ボス達に向けられていた・・・

 

 

 

 

ディートリヒ ゲパードがサブパイロットに登録されました

 

 

サブパイロット情報

 

ディートリヒ

 

底力+1

援護攻撃+1

騎操士

 

精神コマンド 加速 突撃 ??? ??? ??? ???

 

 

 

ゲパード

 

カウンター+1

援護攻撃+1

騎操士

 

精神コマンド 根性 直撃 ??? ??? ??? ???

 

 

 

メインパイロット情報

 

ボス

 

地形適応 空C 陸S 海C 宇宙C

 

特殊技能

底力   Lv7

援護攻撃 Lv2

援護防御 Lv2

反骨心(HPが50%未満になると効果が発動 最終命中率+30%、装甲+200、被ダメージ時の気力上昇が2になる)

 

精神コマンド 自爆 ド根性 脱力 挑発 熱血 ???

 

 

サブパイロットに子分(男性)が乗ると友情補正 命中・回避 人数×30%

サブパイロットに女性が乗ると片思い補正 攻撃・防御 人数×30%




あけましておめでとうございます
本年も拙作をよろしくお願いいたします


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加速

「ボス殿 先の戦い見事でした

流石陸皇事変の猛者 ブリキの騎士の武勇たしかに目にしました」

 

「ありがとよ団長さん」

 

「ところでボス殿 先の魔獣からとれた魔石

小型のシェイカーワーム2体とヌシの分は君に権利がある

解体後受け取ってもらいたい」

 

「魔石?もらえるもんはもらっとくけどよぉ

どうすんだそんなもん?」

 

「俺も専門家ほど詳しいわけではないが錬金術の素材となるそうだ

シルエットナイトにも使われていると聞く」

 

その話を聞きつけたエルが話に割って入った

 

「失礼しますモルテン団長閣下 

それでは僕達が倒した魔獣の魔石は僕達が持ち帰ってもいいのでしょうか!」

 

「騎士が倒した魔獣の魔石は国の財産となるが

・・・学園の学生の倒したものは学園のものでいいはずだ

君個人のものというわけにはいかないがな

ボス殿はあくまで個人の権利として所有権があるということだ」

 

「それは仕方ないですね

錬金術学科の先輩方へのお土産にしましょうか

・・・後々のために」

 

強化素材を入手した

『地砕蚯蚓の魔石』×2

蚯蚓の主(マスターワーム)の魔石』

 

 

その後馬車の修理のため最寄りの村で一泊し予定より1日遅れで

王国北部に位置するディスクゴード公爵領玄関口カザトシュ砦に到着した

 

「カザトシュ砦へようこそボス殿

陛下の側で顔を合わせてはいるがあの時は名乗っていなかった

私が陛下より公爵の地位と砦を預かるクヌート・ディスクゴードだ」

 

 

  ―カザトシュ砦―

 

砦に入ったボス達を出迎えたのは公爵以下朱兎騎士団だった

フレメヴィーラに名高き公爵と騎士団の威容に学生達は圧倒されたが

立ち並ぶ朱兎騎士団のシルエットナイトに夢中のエルと

貴族どころか王族とも同じ釜の飯を食うロンドベルにいたボスはいつも通りだ

 

「お招き感謝するだわさ」

 

笑顔で公爵と挨拶を交わすボス

その後は砦を挙げての歓迎ムードだったが

公爵と団長はうまく席を外し道中の報告を受けていた

 

 

  ―砦の上級作戦会議室―

 

「なるほど

シェイカーワームのヌシによる襲撃か

べへモスに続き大型魔獣の事件が続くな

して例の件はどうか」

 

「ハッ ブリキの騎士の武勇、評判以上のものでした

かの機体の力もさることながら 戦場での立ち回り

また戦闘後 破壊された馬車の応急修理の手際など

外見の年齢にそぐわず歴戦の猛者を感じさせる一方

剽軽(ひょうきん)とも言える人柄であり学生からの人望も厚い人物でありました

魔石については知らぬ様子で特に執着は見せませんでしたが

討伐の功績が大きくヌシの魔石含め 彼にいくつか所有権をゆずりました」

 

「うむ やはり陛下が気に入るほどの人物であるか・・・

魔石についてもそれでよい 他国の騎士の権利として当然のものだ」

 

「また学生による新型機 シルエットギアも大変有用であると

ナイトランナーの命を守るための甲冑との話でしたが

ヌシを葬るほどの電撃を至近距離で使ったことにより

余波を受けたボス殿達が軽傷で済みました

それに単独での戦闘力も特筆すべきものです

ナイトランナーではなくナイトスミス鍛冶師学科の学生が

小型のシェイカーワームを圧倒していくのを直接見ております」

 

「なんだと!? ならば正騎士であればそれ以上の・・・」

 

「はっ!

魔獣相手の戦力としてはシルエットナイトに及ばぬでしょうが

騎士の生還率を上げ 戦力の底上げとしても期待できるほどかと

しかも傷ついた馬車馬に代わり馬車をひき 荷物を軽快に運ぶなど

戦闘以外でもその有用性は極めて高いものであると

あれを学生 しかも中等部が主体となって1から作り上げたとは

全く驚かされますな」

 

「彼があの学園に訪れてからのわずかの間にそれほどの物ができたか

かの新型機は我が国にとって益のあるもの・・・か

これもラボで検証せねばなるまい」

 

「まだまだ改良の余地があると学生達も手を加え続けているとのこと」

 

「なるほど いずれはその者たちからも直接聞くこともあるが

まずは彼と会い見定めねばならん

彼が我らの国フレメヴィーラに何をもたらすのか

私自身が彼の真意を探ろう」

 

 

  ―砦の格納庫―

 

砦に到着した翌日の朝

格納庫見学の許可が出たので

ボス、エル、バトソンの3人が見回っていた

 

「へえ 学園のロボットとは結構違うだわさ  あ!

あれはバルゲリー砦のカーンさん達が乗ってるのとおんなじだ」

 

「そうですね 一番多いのはそちらの制式量産機カルダトア

そしてあちらに少数あるのが隊長機のカルディアリア

そしてこちら1機のみの団長専用機ウォートシリーズの

ハイマウォートですね」

 

「へ~」

 

「大体の目安として・・・

カルダトア一機で決闘級魔獣一体の相手ができる戦力ですね」

 

「カルダトアは学園のサロドレアと大きく差があるわけじゃないけど

おいら達ナイトスミスにとっては整備性がいいらしいんだ

もっとも学園にはないからまだ触ったことはないけどな

勉強って意味ではサロドレアの方が向いてるんだろうが・・・」

 

「おや バトソン カルダトアを触りたいんですか?

そうでしょうそうでしょう!こんな目の前にあるのですから

触り倒したい!できるなら改造もしたい!

その気持ちわかりますよ!!」

 

「いや エルほどじゃないって・・・」

 

「カルディアリアはカルダトアに比べ性能が強化されている分

短くなった稼働時間を腕でカバーするため中級騎士向けと言われています

あの機体は槍斧(ハルバード)を使っているようですね」

 

「あの武器 シルエットナイトにはちょっと珍しいよな

父ちゃんの鍛冶工房では見かけるけど」

 

「カッコイイだわさ!」

 

「ウォートシリーズは各騎士団の団長機で

それぞれ隊長に合わせたカスタマイズと固有名称がついてます

あのハイマウォートは特に大出力・重装甲にハンマー装備という

スーパーロボットのようなコンセプトですね」

 

「ミミズ退治のときは頼もしかったな

親方のハンマーも怖かったけど・・・」

 

「ちなみにべへモス戦で活躍したヤントゥネン騎士団の

フィリップ団長の機体はソルドウォート 剣を使う豪奢な外見でしたね」

 

「エル いっぺんに言われてもわかりにくいわよん」

 

「そうですねロンドベルやガンドール隊でたとえると・・・

ザク改、シャアザク、グフカスタムのようなものかと」

 

「ああ そんなもんか」

 

「エル おいらにはさっぱりなんだが?」

 

「あのハイマット?ってやつは騎士のみんなと

お揃いのマフラーがおしゃれさんだわさ

ボロットにもつけてみっか マントとかどうよ?」

 

「いいですね唐草模様でこう首に巻いて・・・」

 

「・・・なあエル『トンマなマント』って逆から読んでも」

 

「それ以上は言っては駄目ですバトソン

僕は思っても口にしなかったのに」

 

   ゴン!  ゴン!

  「いて!」「あた!」

 

「それはもう言ってるのと同じだわさ」

 

ボスのげんこつがバトソンとエルに炸裂したところでモルテンがやってきた

 

「ハハハ 仲がいいな ボス殿

カーン殿から聞いたがボスボロットにはマナを回復できる能力もあるとか

機会があれば我がハイマウォートも世話になるかもしれん

そのときはよろしく頼む」

 

「任せてくれよ!

カーンさん達は元気でしたか?」

 

「ああ 彼らについては機密もあって私が言うわけにはいかないが

そのことも含めて閣下が話があるそうだ

案内をするので すまないがボス殿一人で来てほしい

後で学生の諸君たちからも話を聞きたいらしいがね」

 

「わかったわよ~ん」

 

「僕達はここで見学してますね」

 

 

  ―上級作戦会議室―

 

「現在バルゲリー砦は再建が進んでいる

本来あの砦は魔獣の巣窟ともいえるボキューズ大森海に接してはいたが

魔獣街道(ラビッドリィロード)からは外れた比較的小規模なものだった」

 

「おれがカーンさん達と出会ったとこか」

 

「なぜあんなところに貴公やべへモスがあらわれたのかは未だに不明だが

べへモスが通ったことであの戦場も魔獣街道となり

要地となったバルゲリー砦守備隊は騎士団へ昇格することも決まった」

 

「そりゃ忙しそうだわさ 気軽に会えそうにねえな」

 

「・・・そのことで貴公に相談がある

新設される騎士団の団長として守備隊の隊長だったカーンが決定され

そこで配備される予定のウォートに貴公の名を借りて

『ボスウォート』と命名したいとカーン達守備隊の希望があった」

 

「おお かっけえじゃねえの

おれさまのボスボロットに似てるしよ」

 

「死地をともにした戦友である貴公の名を是非使いたいと

貴公の許可がでれば本決まりとなるが・・・」

 

「許可なんて水くせえじゃねえか バッチリオッケーよん」

 

「・・・そうか ではその件はよいとして

先の陸皇事変 べへモス討伐によるブリキの騎士の活躍は疑いないものであるが

その戦利品ともいえるべへモスの魔石を含め各種素材に関しては

全権を我が国のものとしたい 異存はないだろうか?」

 

「そりゃもちろん

あのとき亀野郎をやっつけたのはヤットンネン騎士団やカーンさん達みんなだし

正直亀の死体なんてもらっても困るだわさ」

 

「・・・そうか」

 

公爵はあくまで可能性のひとつとして 疑っていたことがあった

べへモスとボスがあの場にいたのは偶然ではなく

ボスが他国からボスボロットで魔石等を求め魔獣狩りの為に潜入し

べへモスを狙ったが失敗した挙句領内に逃げ込み結果として

陸皇事変を引き起こしたというものだ

だがボスがべへモスの素材そのものに無関心である様子や

これまでの振舞いからその線はないと判断した

その後はボスがボスボロットに乗った経緯や

公爵が若い頃現国王とともにカルダトアの改良に取り組んでいたことなどを

和やかに話し込んでいると・・・

 

  コンコン

 

「お話し中 失礼いたします閣下」

 

「どうした モルテン」

 

「ダリエ村から狼煙による救難信号が

決闘級以上の魔獣の群れが襲撃していると推測されます」

 

  !!

 

「モルテン!

最低でも一個中隊を編成し

全速をもって守備に当たれ!!」

 

「はっ!我が朱兎騎士団は直ちに出撃いたします!」

 

「ボスボロットも出動するぜ!!」

 

「いかん!我々は貴公を守るためにこの砦へ招いたのだ!」

 

「わかってますよ!

だがおれは魔獣に襲われている人を一人でも多く助けることができれば

真っ二つにされても満足ですよ!!」

 

「・・・私には貴公を命令し止めることはできない

だが!現場ではモルテンの指示に従ってもらうぞ!」

 

「当然よ!モルテンさん よろしく頼んます!」

 

「わかった すぐに出撃する!機体に乗ってくれ」

 

「あいよ!」

 

飛び出していくボス達を見てディクスゴード公爵は得心した

国王やバルゲリー砦の騎士、学生達が何故ボスをあれほど気に入ったのかを

 

 

  ―格納庫―

 

ボスがボスボロットに乗り込もうとしたところへ

エルたちが駆けつけた

 

「ボス!僕達もいきます!」

 

「駄目だ!ボス殿は客人のため参陣する権利があるが

お前達は我が国の学生だ!

これは国民の命がかかった戦場である!

未熟な学生を出すわけにはいかん!

これは命令だ!!」

 

ボスに続きボスボロットに乗り込もうとしたエル達を公爵が止めた

 

「・・・公爵閣下にそう言われては仕方あるまい

おっとエルネスティ こっそり乗ろうとしないように」

 

「エル達は留守番しててくれ

ここはおれさま達にまっかしとけ!」

 

「・・・わかりました

ボス 念の為に戦闘中はシルエットギアを着てくださいね」

 

「おうよ!ボスボロットファイトー!!」

 

  \\ファイトー!!//

 

出撃するボスボロットと朱兎騎士団を見送るエルだったが

それでただ大人しくしているような人物ではなかった

 

「それではこの砦を指揮する公爵閣下に

是非ともシルエットギアの戦闘力について

しっかりとわかってもらいましょうか・・・」

 

手に持つ分厚い資料が本気を物語っていた

 

 

 

  ―???―

 

フレメヴィーラ王国は魔獣が生息しているため

こういった出動は珍しくなく砦の人間は

だれも疑問を持たなかったが・・・

 

「カザトシュ砦の連中はまんまと引っかかったようだね

しかもブリキの騎士まで おでましとは・・・

悪くても砦の戦力を減らせりゃよかったがノコノコ出てくるなんて

平和ボケしたこの国の連中にゃ本当に感謝しないとねえ

鼠の話じゃブリキの騎士のナイトランナーはギアを着ているはずさ

わざわざ鴨が葱を背負って来たんだ

うまくやろうじゃないか」

 

獰猛な牙が静かに身を潜めていた

 

 

 

  ―ダリエ村―

 

  ガシャガシャガシャ!

 

「村が見えた!

今助けに行くぜ!!

待ちやがれこんちくしょう!

このボスボロットが相手になるぜ!!」

 

村を襲う魔獣を挑発し自分に注意を向けようとしたが

構わず住居を狙うサル型の決闘級魔獣がいた

 

「野郎!くらえボロットスートライク!!」

 

  グシャア!!!

 

ボロットの投げた頭部が直撃したサル型魔獣は絶命し

挑発に乗ってボロットへ注意を向けたクマ型魔獣へ

ボロットの胴体が体当たりをかました

 

「食らいついたら離さねえのがおれの主義だ!!」

 

「ぬぅんッ」

 

  ゴッ!!!

 

ボロットの腕の中でもがく魔獣をハイマウォートのハンマーがとどめを刺した

 

「てめえら人の家に黙って入り込むなんてよくねえぞ!」

 

「全隊全速で村に入り込んだ魔獣を全て打ち倒し

村人を救出する!!

避難所である中央の砦に近づけるな!!!

魔獣共めがっ!村にこれほどの被害を!!

返礼をせねばならんなあっ!!!」

 

ボスボロットと朱兎騎士団一個中隊(団長機含め10機)が

村を襲う13匹の決闘級魔獣を含む多数の魔獣の群れと激突した!!




巨匠水島新司先生死去・・・
昭和 平成 令和と名作を書き続け「あぶさん」「ドカベン」完結後引退されていましたが
力士だろうとピアニストだろうとサルだろうと本格野球をやるスタイル大好きでした
いつか巨大ロボットで野球漫画書くんじゃないかとひそかに期待していましたが残念です
ひょっとしたら私がしらないだけであるかもしれませんが
最近ドカベンのOPテーマソングヘビーローテーションで聞きながらドカベン読み返してます

寒さのピークに加え 尋常じゃないコロナ拡大のスピード
くれぐれもご自愛くださいませ


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ド根性

   ―ダリエ村―

 

「全隊全速で村に入り込んだ魔獣を全て打ち倒し

村人を救出する!!

避難所である中央の砦に近づけるな!!!

魔獣共めがっ!村にこれほどの被害を!!

返礼をせねばならんなあっ!!!」

 

ボスボロットと朱兎騎士団一個中隊(団長機含め10機)が

村を襲う13匹の決闘級魔獣を含む多数の魔獣の群れと激突した!!

 

「中央の砦付近の魔獣から先に片付ける!

半数は中隊長が率い南側を防衛!

残りは北側だ 我がハイマウォートに続け!!!」

 

   \\了解!!!//

 

「ボス殿は遊撃を!ただしその騎士の法撃は強すぎる

村への被害を考慮してもらいたい

逃げ遅れた村人が民家に残っている可能性もある!」

 

「まっかせとけ!

どうせエル達がいなきゃ魔法は使えねえ

できるのは体をはるだけよん!!」

 

  ドドドドドドドドド! ガシイン!!!

 

砦の壁にとりついたトラ型魔獣、炎舞虎に組みつき

砦を背にするように立ち回り抑え込んだが

炎舞虎の猛り狂ったような咆哮が砦を震わせ中の住民を怯えさせ

抑えるボスボロットのボディをその吐き出した炎が焼く

 

「安心しな おれさまが守ってやるぜい!」

 

ボスの声が響くと同時に

 

「はッ!!」

 

   グサッ!!

 

中隊長機カルディアリアの操る槍が炎舞虎の急所を貫き仕留めた

 

「おっととと!クマさんこちら手のなる方へ!屁のなる方へ」

 

ボロットは炎舞虎の死体を手近なクマ型魔獣、鎧熊にぶつけ注意をひく

 

    ガブ!

 

目を爛々とした鎧熊に右腕をかじられたボスボロットだったが

砦の前から離れるわけにはいかなかった

 

「たっ たすけてくれ~い!?」

 

「ボス殿!」「ハッ!」

 

左右からカルダトア2機の剣が鎧熊の強固な皮膚を切り裂き倒した

 

「ふえ~ 助かったぜ ありがとよん」

 

全機体が砦を背にぐるりと囲むように布陣した

 

「大丈夫かボス殿!?」

 

「どっこい生きてるド根性!

まだまだいけるわよん!!」

 

右腕を振り回し無事をアピールするボロットに士気が上がる

 

「我らの後ろには民の命がある!!

一匹たりとも通してはならん!!

みな不退転の覚悟を決めよ!!!」

 

   \\了解!!!//

 

朱兎騎士団が陣形を整え更に気炎を上げるも

残った魔獣達は血の匂いに酔い さらに凶暴さを増し

暴虐な津波となって押し寄せた

 

    ―4分後―

 

最後に残った決闘級魔獣である鋭利な棘に身を包まれた鈍竜を

ハイマウォートが叩き潰したところで 手分けをして村の中に残る

中型以下の魔獣を探しボロットのレーダーも使い全て駆逐した

戦いを終えたときにはどの機体も傷だらけになりながらも全機健在だった

 

「ふぃ~ なんとかなっただわさ」

 

引き続きレーダーで村を調べ 砦以外の住民らの生命反応を探したが

結局住民全員の砦への避難は完了していたことと

迅速な魔獣掃討により人的被害はなかった

しかし魔獣の襲撃により多くの住居が踏み砕かれ 家畜の被害も大きかった

 

「どうにか片付いたか・・・

しかし 今回の魔獣は尋常な様子ではなかった」

 

「団長 ここは調査隊を編成し 狂暴化した魔獣の原因を探るべきかと」

 

「確かに ではボス殿

手数をかけるが機体のマナの回復を頼めるだろうか

消耗の大きい機体のみでよいのだが」

 

「おうよ!まっかせとけ!」

 

やや燃費に難がある団長機や中隊長機をはじめ

数体のカルダトアの補給を行った

 

「!?すごいものだな マナゲージが瞬く間に最大値に達した

ブリキの騎士のこの力、聞いてはいたが これほどとは

可能であれば朱兎騎士団に入ってもらいたいぐらいだ

いや それよりも中隊長!ボス殿とともにカザトシュ砦に帰還せよ

そして調査隊と村の防衛再建戦力として1個中隊を率い

現中隊と交代だ

それまでは残った我々で村の再建を行う」

 

「ハ!!」「わかったわよん」

 

戦後処理は朱兎騎士団に任せボスは帰り支度をはじめた

 

「ふい~ 暑くてかなわねえだわさ」

 

戦いを終え 汗だくとなったボスはシルエットギアを脱ぎ

操縦席に残したままになっていたエル達のギアと並べて置き

冷蔵庫から冷えたお茶をだし がぶ飲みした

 

「生き返るぜ~・・・」

 

「ボス殿 強行軍となって申し訳ないが

支度が整えばすぐにでも出発したい

既に昼過ぎ 原因不明の狂暴化した魔獣に

もし夜に遭遇しては 逃げることもままならない」

 

「わかったぜ隊長さん 早速帰ろうぜ

そんじゃ みなさんお先に~」

 

ボスボロットが大きく手を振り村を出た

それに対し朱兎騎士団のシルエットナイト達は敬礼で返し

見送りに出た村人たちは手を振り返した

 

 

 

 

   ―カザトシュ砦 工房―

 

ダリエ村救援へ向かったボスを見送ったエル達はただ待っているわけではなかった

 

「それではお手元の資料をご覧ください

シルエットギアはシルエットナイト戦において

ナイトランナーの保護を目的として作られたものですが

単独での戦闘力は・・・」

 

エルはディクスゴード公爵と砦の騎士達へシルエットギアのプレゼンを行っていた

不測の事態に備え待機中の騎士を巻き込んだのだ

 

「キッド!白のギアでこっちへ!」

 

「了解!」

 

  ガシャン ガシャン

 

「このとおり上級魔法(ハイスペル)『身体強化』が使えれば

誰でも自在に扱えます

人間用の剣や槍を扱うことは勿論可能ですが内蔵武器の使用により

中型から決戦級の魔獣にも対応可能です」

 

デモンストレーションを行う白いシルエットギアの動きに

砦の騎士達の感嘆の声が上がる

 

「さらに こちらをご覧ください バトソン!」

 

「あいよ!」

 

   ガシャン ガシャン

 

「この黒いギアはマギウスエンジンを搭載することにより

魔法が不得手なドワーフの学生でも扱えます

その分製造コストが上がるのが難点ですが

これによりナイトスミスの作業能力が大幅に向上します」

 

黒いシルエットギアが両手に大型コンテナを軽々と抱え歩く姿に

公爵が関心を寄せるのを察したエルが畳みかける

 

「ギアの特筆すべきところはその生産の簡便性にあります

組立は中等部の学生によって行われ整備や改造も

シルエットナイトに比べ遥かに容易といえます」

 

ダーヴィド親方が操る2本のサブアーム装備の黒いギアも加わり

シルエットナイト用の剣をあっという間に研いで見せた

公爵や騎士だけでなく工房のナイトスミス達も興味を惹かれ

いつしかエルのプレゼンの規模は大きなものとなっていった

 

 

 

 

   ―アキュアールの森―

 

カザトシュ砦周辺に広がるアキュアールの森に唯一開けた道を

中隊長機とボロットの2機が歩く

両機共に先の戦闘でのダメージが残っており

この状態で魔獣と遭遇すれば危険であるため

周囲を警戒し慎重に歩いていた そんなとき・・・

道の脇で傷つき倒れている女性を発見した

 

「待ってくれ隊長さん!

ケガ人がいるぜ!」

 

「!?こんな所で!?」

 

ここはダリエ村からカザトシュ砦までの道のちょうど真ん中にあたる

近くには村などはなくこの国では例え街道でも魔獣に襲われる危険があり

人間が一人で歩くことはできない

中隊長がそんな疑問を持ち警戒していると

ボスボロットが女性の前で止まり腰を下ろした

そして丸腰のボスが外に出ようとしていた

 

「待つんだボス殿!」

 

制止しようと声をかけたがそれに構わずボスは地上に降りて直接話かけていた

中隊長にとっては砦への伝令だけではなくボスの護衛も任務の内である

危険は覚悟で武装し自らも機体から降り合流した

 

・・・

・・・・・・

 

女性から聞き出した情報を整理すると

彼女の名前は〔ケルヒルト・ヒエタカンナス〕

フレメヴィーラ王国の出身ではなく他国の貴族だったが

内戦で没落し一時は山賊まがいにまで身をやつし

派手に暴れたことで国内にいることができなくなった

出国後は貴族の頃より磨いてきた自分の腕を生かせるだろうと

魔獣相手に戦い続けるフレメヴィーラで武功を積むことで

ヒエタカンナス家の再興を夢見ていたが魔獣相手に負傷し

命からがら逃げ出したところでボスに発見されたとのことだ

元貴族の証として貴族印も見せられた

中隊長やボスには見覚えはなかったがその作りは精巧で精緻であり

その女性の挙措も貴族の教養を感じさせるものであった

 

中隊長はなおも疑いを消さなかったがボスは彼女の保護を願い出た

彼女が自分の仲間に似ていると言うのだ

ボスの仲間ロンドベルには理不尽な侵略により国や星を追われた人が多かった

みんな祖国や母星を愛し 取り戻すために命がけだった

そんな逆境と戦い続ける仲間達と雰囲気が似ているとボスは感じたのだ

 

女性は実際にケガをしており もしここで放っておけば

血に誘われた魔獣に襲われ命を落とすことだろう

ここはひとまず居住性のあるボスボロットに彼女を乗せ

カザドシュ砦で治療を行うことにした

 

・・・これがボスとボスボロットにとって更なる危機を呼び込む

そのキッカケとなることを本人はまだ気づいていなかった




ヤングガンガン連載のナイツ&マジック コミック版も終わってしまいました
小説だけではわかりにくかったりアニメではカットされていた部分を丁寧かつ
迫力あるタッチで描かれるため非常に拙作の参考になっていただけに残念・・・


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信念

  ―ボスボロット頭部内―

 

ケガをしているケルヒルトをボスと中隊長が二人で肩を貸して

操縦席のうしろに敷かれた畳の上で中隊長が手早く応急手当を行い

出血の割に傷は浅かったが左目の傷など古傷も多く先の話の真実味を感じていた

 

「冷たい茶がありますんで どんぞどんぞ」

 

ボスが冷蔵庫からだした麦茶を二人にすすめた

 

「これはかたじけないボス殿」

 

「ありがとうございます  ・・・おいしいですね」

 

ケルヒルトは優雅にお茶を飲み 微笑んだ

 

「男ボス ケルヒルトさんを砦までお届けいたします

こっからは魔獣なんぞに指一本触れさせねえぜ!!」

 

「まあ 頼もしい」

 

美女の笑顔にボスはすっかり浮かれあがった

 

「イッシッシ 隊長さん!いきましょうぜ!

砦まで走っていけばすぐに着くわよ~ん♡」

 

「・・・そうだな」

 

中隊長はケルヒルトへの警戒は解かなかったが魔獣との戦いで武器を失ったらしく

手当の際にもこれといった武器を持っていなかったことは確認し

ここにいつまでも留まっていては魔獣の襲撃のリスクがある

自らのカルディアリアに他人を乗せるスペースはなく

仕方なく彼女をボスボロットに乗せたままにするしかなかった

 

・・・

 

    ゴゥン

 

中隊長がもどり起動したカルディアリアがカザトシュ砦へ向けて走り出した

まさにそのとき・・・!

 

  ガシャンガシャンガシャン!

 

後ろからついてくるはずのボスボロットが道を外れ森の奥へ走り出した!!

 

 

   ―カザトシュ砦―

 

エル自身も白いシルエットギアに身を包みギアの今後の課題の検討や

白いギアの習熟訓練を兼ねたボーリングの実演を行っていた

公爵は時にエルに質問をしつつ頭の中でシルエットギアの量産計画を検討していた

そしてふと 他国からの客人であるボスに子分となって近づき

その技術を積極的に吸収しながら この短期間で学園を巻き込み

既存の概念から大きく外れながらも有用なものを作り上げたエルに意識が移った

自身の経験から考えてもこれの実現がいかに困難であるか

不可能と言い換えてもいいほどである

もしエルとボスの立場が逆であれば最大級の危険人物としてマークしなければ、と

氏素性不明なボスより自国民のエルの方が得体が知れぬと感じながらも

目の前で玉を転がして遊ぶさまは年齢よりも幼く見える銀の鳳雛を

複雑な心境で眺めていると・・・

 

「伝令!物見より報告!

ダリエ村からの道半ば付近より救援要請の法撃を確認しました!!」

 

   !!

 

「詳細に報告せよ!」

 

「はっ!

最初は砦とダリエ村を結ぶ街道上から緊急性が最も高い信号の法撃が!

また2度目の法撃は街道から森に入ったところで上がりました!」

 

   ヒュバア!!

 

報告を近くで聞いていたエルがギアを装着したまま飛び出し

それに続く形でアディ、キッド、ディー、ゲパードもギアで出撃した

公爵が止める間もなくまさに一瞬のことだった

 

「直ちに一個中隊出撃!最大速度で現地へ向かえ!!」

 

    \\はっ!!//

 

残っていた砦の戦力を半分割く決断を下し

飛び出していった騎士の雛達を見送った公爵の心に

どこか懐かしいものを感じていた

 

 

 

  ―ボスボロット頭部内―

 

中隊長がボスボロットを降りてカルディアリアに乗り込んでいる最中

ボスはボロットのエンジンをかけてゆっくりと立ち上がらせた

 

「そいじゃ 砦までひとっ走り

なるたけ揺れねえようにするから ゆっくり休んでほしいだわさ」

 

「ええ お気遣いありがとうございます」

 

振り向いて声をかけるボスにケルヒルトは笑顔で返した

 

「それじゃあ いっくわよ~ん♡」

 

上機嫌で前を行くカルディアリアに追いかけて

ボスボロットも走り出した

 

  ガシャン!(ガシュン)   ガシャン!

 

    ガシャ・・・

 

「おっと そこまで 動くんじゃないよ」

 

「んな!?」

 

黒いギアに身を包んだケルヒルトがボスの首に腕を回し

すぐにでも絞められる状態で後ろから抱き着いていた

 

「右を向いて 森に向かって走らせな

このドレスの力はあんたが一番よくわかってるだろ

人間の首なんて簡単に 花を手折るようにさあ・・・」

 

耳元で囁く美女の声には ただの脅しではない凄味があった

 

「ぐええぇ・・・」

 

ボスの首は完全にロックされボロットはあっさり乗っ取られた・・・

 

 

 

    ―アキュアールの森深部―

 

森の深部へ走り出したボロットを追いかけながら

時折上空へ救援要請の法撃を打ち上げるカルディアリア

森はカザトシュ砦からはわからない程度に巧妙に拓けていた

明らかに人の手、シルエットナイトによるものだ

どう考えても罠である しかも狙いはボスボロットであろう

全速力で走り出したボスボロットと周囲を警戒しながら追いかけるカルディアリアとの距離が

みるみる広がりだした

これほど手の込んだ敵である 一度見失えば痕跡を消され追跡が不可能になるかもしれない

中隊長の焦りが大きくなっていった

 

 

 

   ―ボスボロット頭部内―

 

「そこで止まりな」

 

森に入り込み走り続けたボスボロットをケルヒルトが止めた

ボスをハンドルから引きはがしシルエットギアによるボディブローで沈めた

 

  ドズン

 

「ぐへえ!!?」

 

「随分と叩き甲斐のある太鼓腹だったねえ

今だ野郎ども!」

 

    ザ・・・  ザ・・・

 

森の中から特殊工作用機体ヴェンドバダーラが4機あらわれた

そのうちの一機が曲刀を使いボスボロットの頭部を外した

 

「思いのほか簡単にとれたもんだね

この機体 どう見てもあたしらのとは操縦性が違いすぎる

下手に乗っていくより体だけいただいた方が早いし

あんたにおかしな真似されるよりも ここで追手の足止めをしてもらうよ」

 

身動きができないボスをその場で捨て置き

ケルヒルトがギアを着たままボスボロットから出ようとする

 

「最後に言っておくよ

あたしの過去については大体は本当のことさね

このブリキの玩具(おもちゃ)と黒い甲冑(ドレス)はヒエタカンナス家の再興のための土産さ

さて こいつの礼替わりに馬鹿なあんたにいいことを教えてやろうじゃないか

どんな力があっても鼻の下伸ばして こうやって陥れられ負けちゃあしょうがない

勝つための手段に綺麗に汚いもないんだよ!」

 

冷たい美貌の口元が歪む

 

「・・・・・・

あ、頭のいいおれさまに言えることは・・・

あそこであんたを見捨てるなんざできねえ

たとえ何度生まれ変わっても おれさまは美女の味方よん・・・」

 

「チッ!!」

 

   ガラッ!   ピシャ!!

 

ボスボロットの口の窓から出た後に勢いよく閉めたケルヒルトが

 

「こいつをくらいなぁ!!

悪運が強けりゃ生き残れるかもね!!」

 

ボロットの顔に呪餌(カースド・ベイト)をぶちまけた

 

「ずらかるよ野郎共!

こんなクソみたいな国とはオサラバだ!!」

 

吐き捨てるような口調でボスボロットの体を4機で抱えたヴェンドバダーラと共に逃げ出す

ボスのギアを着た銅牙騎士団団長ケルヒルトの頭に

かつての屈辱と決意が蘇るのだった・・・

 

「どんな手を使っても 生き延びて 最後に勝てばいい

手段に綺麗も汚いもない

全て 勝ちさえすればーーー

・・・・・・チッ 汗臭いったら ないねえ」

 

 

 

   ―アキュアールの森―

 

一時はボスボロットを見失ったものの懸命な捜索で

ボスボロットの頭部を見つけ出した中隊長であったが

本当の危機はここからだった

なんとか見つけたボロットの頭にかじりつく魔獣

剣牙猫(サーベルキャット)の首をカルディアリアの槍が一閃!

瞬殺だったが中隊長に疑問が生まれた

ボスボロットはシルエットナイト離れの外見をしているが

金属製であることは違いない 魔獣がかじっても食べられるはずがない

しかし名前が象徴する牙は獲物を狙う時のようにのびて激しくかじりついていた

もしやと慌てて中をどうにかのぞきこむとうずくまって動かないボスが見えた

どうやら魔獣に食われているようではなかった

ホッとしたのもつかの間 森の奥から大小さまざまな魔獣があらわれた

しかもそのどれもがダリエ村を襲った魔獣のように凶暴性むき出しの状態だ 

魔獣といえど明らかに異常なのだがその原因を考えたり

ボロットの体を持ち逃げした賊を追っている場合ではない

中隊長にとって1体1であればこの場にいるどの魔獣であろうと

遅れを取るつもりはなかったが 数が違い過ぎる

カルディアリアは上空に最後となる救援要請の法撃を一発放ち、

徹底抗戦の覚悟を固めた

 

 

 

   ―ボスボロット頭部内―

 

ボスは意識があったもののボディブローで倒され身動きがとれなかった

しかし うずくまったままのボスには最後の手段ともいえるものがあった

・・・ボスボロット胴体部の自爆である

持ち去られたとはいえまだそう遠くではないはずである

その気になれば賊の機体も一瞬で粉々にするほどの威力があった

 

・・・ボスのハッキリした意識の中はケルヒルトのことでいっぱいだった

彼女の声が 顔が 言葉が その姿が・・・

外で吠える魔獣やそれと戦うカルディアリアのことよりも強く

そのことが自爆装置の起動をためらわせていた

 

 

 

   ―アキュアールの森 上空―

 

カザトシュ砦を飛び出したエルは時に大気圧縮推進(エアロスラスト)の魔法で飛翔し

救援要請の法撃を確認しながら 事件現場を探していた

できることなら飛んだまま急行したかったが

生身に比べシルエットギアを装着したままでは流石に重く

その力で走った方が速かったのだ

エルはギアの新たな改善点を頭の片隅で考えながらもさらに加速した

イレギュラーな救援要請の中心にボスが関わっているとエルは直感し動いたが

後ろに続くアディ達もそんな気がしていた

よくも悪くもボスとボスボロットは何かやらかしそうだと

エルを見失わないように追いかけるキッドとアディ

それにやや遅れてディーとゲパードも続く

日が暮れはじめ エルが最後に見た救援要請の法撃場所にたどり着いたとき

そこはまさに修羅場だった

 

 




べへモス戦以来の長期戦となってまいりました
書いてみるまでここまで長くなるとは思ってなかったのですが

スパロボで例えるとシーラ様を助けたつもりがシーマ様だったのでボスが手痛い目に
あっていますが17歳の女神のような声で猫を被られたらしょうがないでしょう
私なら100%騙される自信があります

それでは次回もお楽しみいただければ幸いです


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かく乱

  ―アキュアールの森深部―

 

度重なる魔獣との戦闘でカルディアリアの頭部が傷つき

視覚を得るための眼球水晶にヒビが入り中隊長の眼前の幻像投影機(ホロモニター)に乱れが生じた

 

「しまった!?」

 

一機でどうにか均衡を保っていたが視界不良では攻防に大きな支障がでる

 

「くっ・・・

こうなれば大きな音を発する中型以上の魔獣だけでも刺し違えるまで!」

 

シルエットナイトの生命線である魔力貯蓄量(マナ・プール)も半分を割り

カルディアリアは愛槍斧(ハルバード)を手に特攻を視野に入れて構えたそのとき

 

   ズガガガガガガ!!!

 

横からの上級魔法の乱れ打ちが小型魔獣をまとめて蹴散らし

中型の決闘級魔獣も完全に足を止めた

 

「助太刀参上!」

 

「うわ ボロット頭だけ!?」

 

「やっとエル君に追いついた~!」

 

エル、キッド、アディの3人が援護法撃とともにあらわれた

 

「なんだ!?まさか学生達か!?」

 

「あれはカルディアリア!

こちらは救援要請を受けてカザトシュ砦からやってきました!

状況を教えてください!!」

 

「まあ嘘は言ってないな」「勝手に飛び出してきたんだけどね」

 

エルのよびかけにキッドとアディは小さく呆れた

中隊長にはキッドたちのささやきは聞こえず

カザトシュ砦から緊急の援軍と判断した

 

「ボス殿は賊の襲撃を受けた模様!

本人は機体の頭部の中にいるが身動きがとれないようだ!

魔獣はなぜか狂暴化してボロットの頭部を激しく攻撃している!

可能であれば救出 撤退してくれ!」

 

「わかりました!

アディ!中に入ってボスの状態を見てください!

キッドは僕と共に魔獣の相手をします

魔獣にこれ以上ボロットを傷つけさせません!」

 

「「わかった!」」

 

シルエットギアの大きさ自体はシルエットナイトに比べれば4分の1ほどであり

決闘級魔獣を一撃で倒せるほどの力ではないがエルとキッドの操る上級魔法は

魔獣の群れを攪乱し カルディアリアが勢いを取り戻す

 

「先輩や朱兎騎士団のみなさんが駆けつけてくるはずだろ!

ならやりようはある!!」

 

「キッド ギアで決闘級魔獣を倒すのは無茶ですよ」

 

「エルなら無茶でもやるんだろ なら付き合うさ

もうべへモスのときみたいな置いてきぼりは御免だ!」

 

 

 

 

  ―ボスボロット頭部内―

 

「ボスさん生きてる!?大丈夫!?」

 

「あ・あでぃちゃん だ だいじょうぶよ~ん・・・」

 

「うわ 大丈夫じゃなさそう・・・

お腹いたいんですか?

ボロットちゃんの体はどうしちゃったの?

ちょっとお腹見せてくださいね」

 

   ベロン

 

「いや~ん 見ないでぇん・・・」

 

アディがボスの服をめくってみると腹に大きな拳の跡と大きな痣ができていた

 

「うわ ひっどいアザ!

これってひょっとしてシルエットギアで!?

よく見たらボスさんのギアがないし!

まさか泥棒に盗まれて殴られたの!?」

 

「・・・・・・面目ないわよん」

 

「許さない!

エル君がボスさんを守るために考えてみんなで作ったものを盗んで

よりにもよってそれでボスさんを傷つけるなんて、

エル君まですっごく傷つくんだから!!

ぜーーったいに許さないんだから!!!」

 

 

 

  ―アキュアールの森深部―

 

「ハァッ ハァッ・・・」

 

「キッド 全力疾走に上級魔法の連打は魔力(マナ)の消費が大きすぎます

魔獣は目の前だけではありません

マナ切れに気をつけてください!」

 

「そんなこと言ってもよ!

このギア大した武器もついてないし!

魔法なしじゃ あんまり倒せねえよ!」

 

「試作武器を搭載したギアはボロットの中に置いたままですが

今魔獣に背を向けて取りに行くのは危険です

せめてディー先輩達が来るまで・・・」

 

エルのギアがパンチで風蜥蜴(スタッカートリザード)を殴り飛ばした

風蜥蜴は涎をまき散らしながら近くの魔獣の群れを巻き込み動かなくなった

 

「なるほどそうやるのか!

ボーリングみたいに よっと!!」

 

キッドも風のように走り回る風蜥蜴の尻尾を掴み取って振り回し 近くの魔獣を蹴散らした

しかしギアと大きさのあまり変わらない風蜥蜴程度ならともかく

体格差の大きい棘頭猿(メイスヘッドオーガ)や鎧熊の数が増えてくると厳しくなってきた

 

「君達無事か!?」

 

「やっと着いた、って なんでこんなに魔獣が!?

縄張りとかどうなってんだよ!」

 

ディーとゲパードのギアも参戦したところで

ボロットの中から両脇にギアを抱えたアディが顔を出した

 

「エル君!キッド!

白いギアは中に3つあったけどボスさんの黒いのはなくなってた!

あとボスさんは泥棒に殴られて動けないの!」

 

「なんですって」

 

アディの報告を聞いたエルの返事にキッドとアディは戦慄した

幼馴染のエルがここまで怒った姿を見たことはなかった

周囲の温度がグッと冷え込むようなエルの言葉に魔獣ですら一瞬動きが止まった

それを見逃さずに仕掛けるディーとゲパード

その隙にエル、キッド、アディがボロットの中にあった試作武器搭載型のギアに乗り換えた

 

「アディ、キッド 携行用大型弩砲(スコルピウス)は魔力の消耗は少ないですが

予備の弾倉(マガジン)がありません 無駄撃ちはさけてください

そして撃ち終えたらただの重りです (パージ)してください」

 

「わかった!」「おっけー!」

 

   ガガガ!!!

 

キッドとアディのスコルピウスによる槍矢衾(やりぶすま)

魔獣たちの顔面や足に突き刺さり倒していく

 

「これはこれは頼もしいね」

 

「けどあの双子のって俺らのギアだよな

まあ いいけどよ!」

 

   ズバッ!ズバッ!

 

ディーとゲパードがギアの標準装備であるツーハンデッドソードの連携で小型殻獣(シェルケース)を倒していた

 

「いいですかみなさん!

ギアはマナ切れで身体強化が解けるとただの重い甲冑となり命取りです!

時折ボスボロットへ退避し休憩してください!

あと、畳の上は土足厳禁ですよ!」

 

  \\了解!!(タタミ?)//

 

「一際小さな外観な銀の少年騎士だったが 見事な統率だな

だが学生騎士に無理はさせられん

朱兎騎士団中隊長の誇りにかけて

誰一人 魔獣の餌食にはさせはしない!」

 

カルディアリアがハルバードを振るい迫りくるメイスヘッドオーガを倒す

 

「流石はその名高き朱兎騎士団の隊長機 なんとも頼もしい!

私達も続くぞ!」

 

  ガキン!!

 

岩盤状に発達した骨の板が鎧のように全身を覆った熊に

ツーハンデッドソードが跳ね返された

 

「うわっと!?ディー!

これじゃあ鎧熊に歯が立たないぞ!」

 

「ゲパード先輩 ここは巨大兵器破壊の心得その壱

足と関節を狙いましょう!

ゲキガンパーンチ!!」

 

2本足で立つ鎧熊の膝の裏に手をとばし突き刺した

 

「からの、ステーク!!」

 

  ズドン!   グラア・・・  ドシン!!

 

膝を砕かれた鎧熊が仰向けに倒れるとガラ空きになった腹に

カルディアリアがトドメを刺した

 

「決闘級魔獣にも効果はありますが決定打とするには足りません

やはりリボルバー式で連射ができるようにしなければ」

 

ワイヤーを巻き取りギアの手を回収したエルが次の獲物を捉える

 

「ボスを襲った賊は許せませんがここを離れるわけにはいきません

目の前の獲物に思いっきり八つ当たりさせていただきます!」

 

「よーっし やるか!」

 

「エル君に続くよ~」

 

キッドとアディがギアの手を飛ばして小型殻獣を蹴散らした

 

「ワイヤーの扱いに気をつけてください

丈夫に作ってありますから味方を巻きこまないように

それとキッド 一度ボロットへ休憩に入ってください」

 

「なんでだよエル!?まだいけるぜ!」

 

「まだいけるときに一度休んでおくのです

これはおそらくデスマーチとなります

僕の経験からこれを乗り切るためにもっとも重要なのは適度な休憩です

先輩方に休憩をとってもらうときにはキッドにがんばってもらいますから」

 

「おう、わかった・・・ 今は休んでおくぜ」

 

「アディもキッドの後に休んでもらいますよ」

 

「えー エル君を抱き枕にしないと寝られないよー」

 

「それは駄目です」

 

「ちぇー」

 

   ドスン!

 

会話をしながらも小型の魔獣を仕留めている姿は異様だったが

今はそれに構っている余裕はだれにもなかった

 

 

 

  ―ボスボロット頭部内―

 

「へー ボロットの中ってこんなになってるのか

ってボスさん 動いて大丈夫なのか!?」

 

休憩のために入ってきたキッドを見て

うずくまっていたボスが動き出した

 

「あったりめえよ・・・

子分たちががんばってるのに いつまでも寝てられね・・・

いてて」

 

「無理しないでくれボスさん!

エルが休憩が大事だって言ってたんだ

ボスさんの力が必要な時が絶対来る!

今は休んでてくれよ!」

 

「・・・ありがとよキッド

まあ そのギアを脱いで茶でも飲んでいきな」

 

「わかったよ」

 

  ガパッ

 

「・・・ふう すげえ汗だ」

 

シルエットギアを脱いだキッドから汗の湯気が上がる

 

「塩気もとりな たしかおやつが・・・」

 

ボスが冷蔵庫からおやつを取り出している間 座り込んだキッドの息が上がる

 

「ハァ ハァ・・・

たしかに意外と疲れてるな・・・

ちゃんと呼吸を整えねえと マナ切れになっちまう」

 

「へ~ そういうもんなのか

ほらよ くいねえ エルの買ってた菓子があったわよん」

 

「ありがとうボスさん」

 

キッドは菓子を食べ お茶を流し込むように飲んだ

 

「マナ切れってのは呼吸と関係あるのかよ?」

 

「ああ、マナってのは魔法を使うための燃料みたいなもんで

空気中にあるエーテルを取り込んで体内でマナに変換するんだ

だから呼吸が乱れるとエーテルを取り込みにくくなって魔法が使えなくなる

ギアは上級魔法で動かすから 呼吸の乱れは本気でヤバイ

ふー よし、 いける! そんじゃボスさん いってくるぜ!!」

 

「おう またいつでも戻ってこい!」

 

・・・

 

その後 アディ、ゲパードが順に休憩後

ディートリヒがエルを連れて休憩に入った

 

「いらっしゃーい!」

 

「ボス! 元気そうで良かった

居酒屋かラーメン屋みたいですね」

 

「イッシッシ 酒やラーメンはねえけど 茶でも飲んでいきな」

 

「エルネスティ 君は居酒屋に行ったことがあるのかい?」

 

「まさか 僕はまだ(今世では)中等部の学生ですよ先輩

それよりもボス 賊の襲撃を受けたと聞きましたが」

 

「あんぐらいどうってことねえだわさ

ボロットの体をもってかれて手も足もだせねえけど

てめえにできることを精一杯やらねえとよ お互いにな

はいおまたせ こいつでも食べときな」

 

ボスが冷蔵庫からエルが買い込んでいた菓子をとりだし

 

   ガパッ ガパッ

 

二人もギアを脱ぎ一息ついた

 

「このお茶も菓子もよく冷えてるな」

 

「ボス 冷蔵庫とかはまだ使えるんですか?」

 

「ああ ボロットのエンジンは頭にのこってっからよ

電気はそこから持ってきてんのよ

そこのレーダーで周りの状況も見えるわよん」

 

エルとディーが備えつけのレーダーを見る

 

「本当ですね

この様子ではアキュアールの森の魔獣がここに集まってくるようです」

 

「これは便利だね 是非ともグゥエールにもほしい機能だ

ひょっとしてこの10個ほどの集まりは砦から朱兎騎士団の援軍かい?」

 

「そのようですね ここに到着するにはもう少しかかりそうですが

それよりも位置関係からいってダリエ村から向かってくるこの一機

おそらく団長機ハイマウォートの方が先に来てくれそうです」

 

「おお あの団長さんか!

それは頼もしいぜ!」

 

「では私達も奮戦しなければな

ここで休んだら外で戦っているカルディアリアの援護に戻ろう」

 

「そういえば僕達の到着前からずっと戦い続けているはずですが

カルダトアよりも稼働時間が短いカルディアリアでよく持ちますね」

 

「ああそいつは・・・」

 

「ボス殿!また補給を頼む!!」

 

「はいよ マナいっちょう!

補給装置ポチっとな」

 

カルディアリアに隣接するボロットの頭からケーブルがのび

一瞬で消耗していたマナと武器を補給した

 

「頭だけでも補給できるんですね」

 

「おうよ もっとも隊長さんの疲れはとれねえし

こうやって中で休むってわけにはいかねえ

おめえたちにがんばってもらわねえとな」

 

「はい!できることを精一杯、ですね!」

 

「私もやるとしよう

べへモスの時は不甲斐ないところを見せたが

あのときに助けてくれたボスのため

そんなボスを助けてくれたあの騎士のため

そして私の騎士としての矜持のために・・・!」

 

「ところでマナってのは空気でできるって聞いたけどよ

補給装置はあのロボットには空気を入れてんのかな?」

 

「シルエットナイトは魔力転換炉(エーテルリアクタ)でエーテルをマナに変換しますから

一瞬で回復するあたり空気よりもマナそのものを直接結晶筋肉(クリスタルティシュー)に入れているのでは?

でもエーテルリアクタは僕や親方でも働きは知っていても作りは国家機密となっているので

流石によくわからないのですが」

 

「シルエットナイトの力は国の力だ

もっとも高価で重要な部分を機密にするのは国が管理するためにも当然のことだろう

だからこそそれを必要としないこのギアを公爵閣下は気にかけ、賊にも狙われたのか」

 

「僕としてはこれを叩き台にしてエーテルリアクタを積んだ

ボスのような僕専用シルエットナイトを作りたいんですけどね」

 

「それは夢があるねえ だがそれもこの戦いを無事に終えてからだ」

 

「そうですね さて、休憩はこれくらいにして戦いに復帰しましょうか」

 

「いってきな エル ディー

そしていつでも戻って休んでこいよ

みんな揃ってここを乗り切ろうぜ!」

 

  \\承知!//

 

ボロットの頭から迫りくる魔獣に駆け出していく2機のシルエットギアが群れを攪乱し

カルディアリアが各個撃破していく

小型~決闘級魔獣の死体が山となる勢いだったが

森を踏み潰す勢いの 通常よりも大きな鈍竜があらわれた

 

「なんだあのデカいのは!?」

 

「あの特徴的な鋭利な棘 鈍竜なのか!?」

 

「下がれ学生諸君!あれは危険すぎる!!」

 

カルディアリアが前に出るが 見上げるような体格差は明らかに不利だった

カルディアリアは牽制の法撃を放つがまるで効果がなく

鈍竜はゆっくりとだが確実にボスボロットの頭部へと向かって行く

 

 ズドドド!!!

 

エル達も一斉に法撃を撃つがその歩みは止まらなかった

それでも迎え撃たんとハルバードを構えたカルディアリアが鈍竜の後ろに頼もしき猛者を見た

 

「ぬぅぅぅぅえいりゃ!!!!」

 

  ズゴォオオオン!!!

 

暴風のような強烈な一撃が鈍竜を後ろから襲いかかり

朱兎騎士団団長機ハイマウォートのハンマーが鈍竜の半身を粉砕した

 

 グォオオオオオ!

 

「そこだ!!!」

 

 ズドォン!!!

 

絶叫し のけぞった鈍竜の喉をカルディアリアのハルバードが突き刺しトドメを刺した!

 

「団長!!」

 

「中隊長!報告を!」

 

「はっ!!」

 

中隊長から手短に状況説明を受けた団長・モルテンはハンマーを掲げ

 

「学生諸君!これだけの魔獣を前に一歩も退かずボス殿を守り通すとはな!

その意気や見事なり 微力ながら加勢しよう!」

 

「団長閣下にお伝えしたいことがあります

カザトシュ砦から一個中隊が向かってきており

もう間もなく到着するはずです

ボロットの補給装置を使いながら魔獣を迎え撃つべきかと!」

 

ディートリヒからの報告を受けた団長が改めて号令をかける

 

「了解した

では朱兎騎士団団長モルテン・フレドホルム

腕を振るうとしよう 中隊長遅れるなよ

さて学生諸君 騎士団の援軍到着までその新型の鎧とともに協力を頼む」

 

  \\\了解!!///

 

ダリエ村を襲った以上の数十匹を超える魔獣が集まる大規模戦闘だったが

その後合流した朱兎騎士団らとともに、存分に暴れ回ったエル達の活躍もあり

夜を徹した戦いは誰一人欠けることなく魔獣を全滅させ終結した

 

東の空がうっすらと白み始め 魔獣の死体の山とボロボロとなったシルエットナイトを照らし出した

しかしボスボロットの体を持ちさって行った賊の痕跡は見えなくなっていた

 

「・・・・・・砦に、戻りましょう

ボスの手当もあります」

 

「やはり 追跡は不可能かい エルネスティ」

 

「ええ 時間をかけ過ぎましたし

こちらの消耗も大きすぎます

逃げた獲も、もとい賊の用意周到さから見て罠や偽装工作も考えられます

無理な追撃は更なる被害を招きかねません」

 

「たしかに俺達も限界だな これ以上は流石にヤバイぜ・・・」

 

「ねむ~い・・・」

 

「なるほど よしカザトシュ砦へ帰還する!

ボス殿 もうしばらく我慢してもらおう

学生諸君はボスボロットの中に入ってくれ

ボス殿の応急手当を済ませたら そのまま休んでくれ

この頭は我々が担いでいこう」

 

魔獣の死体や倒れた木々で凄惨なありさまとなったアキュアールの森をあとにして

一行は整然と砦へ歩き出した・・・・・・




長かった戦いもようやく一区切り もっとも偉い人はこれからが大変ですが

今回活躍のカルディアリア アニメでは出番に恵まれませんでしたが今話では撃墜王です
乗り手の中隊長さんの本名は不明ですが朱兎騎士団随一の槍の使い手
人機共にやや不遇なところもありましたがこれくらいの実力はあるはずでしょう

ナイツ&マジックのBlu-rayBOXゲットで新たな設定資料も手に入れたので今回は
戦闘中なのに説明くさくなってしまった感もありますが次回からはもっと多くなるかも

春の訪れを感じながらも色々と忙しい時期になりました
お疲れのでませんように


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決意

    ―カザトシュ砦―

 

帰還した朱兎騎士団を迎えたクヌート・ディスクゴード公爵は

全機ボロボロになったシルエットナイトと頭だけになったボスボロットを見て

鋭い表情が更に厳しくなる

 

「我が朱兎騎士団がこれほど傷つき 護衛対象であるはずのボスボロットがこの有様

この一晩でなんということだ・・・」

 

先頭で砦に入ってきた団長機からモルテンが降りて敬礼する

 

「閣下 朱兎騎士団一個中隊並びに学生騎士全員 ボス殿と共に帰還しました」

 

「ご苦労 ボス殿は無事か」

 

「はっ しかし詳細についてはここでは」

 

「わかった 上級作戦会議室で待つ」

 

「はっ!」

 

団長機が格納庫に入り 続いて4機のカルダトアに神輿のように担がれたボロットの頭が運び込まれた

 

 

   ―上級作戦会議室―

 

「なんだと!?

ボスボロットの体と新型のシルエットギア1機を賊に奪われ

ボス殿は賊により負傷 しかも逃走を許すとは!?」

 

団長と中隊長から報告を受けた公爵は憤慨した

公賓であるボスの安全の為に砦に招いておきながら

賊に襲撃された挙句逃げられるというかつてない重大な失態である

 

「閣下 そのことですが賊の逃走後残されたボスボロットの頭部へ魔獣が殺到し

ボス殿を守るために完全に足止めとなり追跡は断念いたしました」

 

「魔獣が!?」

 

「私も不審に思い魔獣を撃退後調べました

・・・賊は逃走の際にボスボロットの顔面に呪餌(カースド・ベイド)を叩きつけていきました」

 

カースド・ベイドとは 特別な薬剤で調合し特定の臭いで周囲の魔獣を集め

その場が魔獣でひしめくことになるという餌であるが

同時に魔獣が興奮状態となりさらに狂暴化するという

フレメヴィーラ王国最大級の禁忌薬物である

 

「カースド・ベイドだと!!

正気か、痴れ者め!!

・・・まさかダリエ村の魔獣も?」

 

「その件についてはまだ調査結果がでておりませんが

魔獣の様子から間違いないかと」

 

激昂する公爵を前に 日々魔獣と戦う騎士であり民である団長と中隊長も酷く苦い顔をした

 

「・・・・・・ボス殿の機体や技術

それにより作られた新型 たしかに高い価値があるものだが」

 

国内では厳重に製法が秘匿され法律的にも倫理的にも感情的にも忌避されるやり口から

賊の素性について推察する公爵に駄目押しとなるような中隊長からの報告が続く

 

「閣下 逃走前に賊がボス殿との会話で他国の没落貴族を名乗っておりました

逃走時には盗品により貴族としての返り咲きを狙うとボス殿へ話したそうです」

 

「・・・・・・どうやらその言葉 嘘ではなさそうだな

軽々に結論を出せぬが まずはボス殿に謝罪し

陛下にご報告のためにお会いせねばなるぬ

モルテンは引き続き、可能な限り情報を集めよ

中隊長は学生らをまとめ情報を外部へ漏らさぬように

また奪われた新型についても詳しく調査せよ

奪われたことについては我らの落ち度であり

学生らの独断による出撃は不問とし

学生による新型機再開発などにおいてはできる限り便宜をはかるように」

 

   \\はっ!!//

 

 

 

    ―医務室―

 

治療を受けベッドで寝かしつけられたボスに

エル・キッド・アディが見舞いに来ていた

 

「まったく 全治1週間ですんだとはいえ

こんな体で徹夜で動き回るなんて」

 

「こんくれいで大げさな

ガンダムファイターやマシンロボに殴られたわけでもあるめえによ」

 

「いやいやいや!ギアに殴られたんだから大げさじゃないだろ!

実際魔獣と戦ってみてわかったけどあのパンチで でかい虫とかふきとんだぜ!」

 

「ケルヒルトさん手加減してたからよ どうってことねえんだわさ」

 

「ケルヒルト、それが賊の名前ですか?」

 

「おっとっと エル怖い顔してるわよん

あのときのケルヒルトさんより おっかないぜ」

 

「いえいえ そんなことはありませんとも

ですがそこのところはもっと詳しく聞いておきたいところですね」

 

ボスに詰め寄ろうとするエルをキッドとアディが抑える

 

「落ち着いてエル君!」

 

「あの泥棒が許せねえのはみんな同じだって!

ボスさんケガ人なんだしさ ここは抑えろって!」

 

「・・・・・・美人でしたか?」

 

「おう!・・・あ」

 

「やっぱりこの人まったく懲りてません!!」

 

エルがボスの胸倉をつかむがボスはこたえてない

 

「イッシッシ

まあみんな無事で帰ってこれてよかったじゃねえか」

 

「なんか ボスさん全然怒ってないな」

 

「うん エル君の方がよっぽど怒ってるね」

 

「まあ 悪かったな せっかく作ってくれた奥の手とギア

まんまと持ってかれちまってよ

またみんなで作ろうじゃねえか」

 

「・・・はぁ そうですね 盗まれてしまったものは仕方ありません

すぐによりよいものを作りましょうか

幸い実戦データも集まりましたし」

 

エルがボスから手を離し気持ちを切り替えたところで

 

     ガラ

 

「騒々しいなエルネスティ

ここは医務室だぞ」

 

「これはディスクゴード公爵閣下」

 

「うむ ボス殿と話がある

おまえ達は席を外せ」

 

「わかりました ではキッド アディ、先輩たちをよんで格納庫に行きましょうか

親方とバトソンがいるはずですから ギアの再設計を行いましょう!

それではボス 今度は新しい設計図を持ってまたお見舞いにきますね

では公爵閣下失礼いたします」

 

医務室をでていくエル達を見送り二人だけになってから

ディスクゴード公爵はボスに頭を下げた

 

「すまなかったボス殿

このたびのこと油断があった我らのせいだ」

 

「よしてくれい! おれのドジじゃねえかよ!

それに隊長さんたちがいなきゃおれさまや子分たちもただじゃすまなかった

この砦の皆には感謝しかねえよ!」

 

公爵の突然の謝罪に戸惑うボスだったが 頭を下げたまま公爵は続ける

 

「この失態について これより私が直接陛下に報告するために王都へ行ってくる

その間 貴殿はこの砦で傷を癒し 機体の修理を行っていてもらいたい

もちろん我が砦の人員や資材は遠慮せず使ってもらってかまわない

今はこれぐらいしかできなくて申し訳ないが

無論こちらで賊も捜しておる まずはゆっくりとしてほしい」

 

「わかったよん」

 

公爵はボスへの謝罪を終えるとすぐに砦を出て王都へ向かった

いつまでも寝ていられないボスはその日のうちにエルや親方達のいる格納庫に向かった

 

 

 

   ―格納庫―

 

「ボロットの頭に新しい傷がほとんどないのは流石超合金Z製

どうにか錬金術で複製できませんかね」

 

「朱兎騎士団のシルエットナイトがあんだけボロボロなってんのに無傷とか

どんだけ丈夫なんだよ!

錬金術師も鍛冶師も泣かせる素材じゃねえかよ」

 

「そんじゃ まずはボロットの体をなおすとするか!」

 

「「OKボス!」」

 

「けどよお あの機械をこの砦のナイトスミスたちに見せてもいいのかよ?」

 

「いいんじゃねえか親方 隠してもバレるときはバレるしよ

それにどうせ材料をもらわねえと直せねえんだし

お互い遠慮も隠し事もなしでいこうじゃねえか」

 

「そうですね 思いっきり巻き込んでしまいましょう!」

 

・・・

・・・・・・

カザトシュ砦のナイトスミス達は唖然とした

既にボスボロットの功績は聞き及んでおり

その未知の技術に触れる絶好の機会だと全員が詰め掛け 積極的に修理に参加し

目を皿のようにしてその一挙手一投足を見逃すまいと意気込んでいたのだが

光子力3Dプリンターにより 用意したスクラップから次々とボロットのパーツを生み出し

学生達がシルエットギアを装着し そのパーツを早々と組み立てていく姿は

参考にするどころか常識をぶち壊され自分を見失いかねないインパクトだった

 

「これで元通りと言いたいところですが 賊に体ごと盗まれたので

僕達が学園で新造したサブアームやギアでの操縦回路は作り直さないと・・・」

 

「待った おいエル、ボロットまでギアでの操縦は聞いてないだわさ」

 

「ええ 今言いました

戦闘中にハンドルやクラッチが壊れる可能性もあるので緊急装置として簡易的に作ってました

ボロットは操縦系統が簡単になるように設計されてましたから

解析して応用を効かせるのは難しくなかったですよ

とりあえず作ってみて調整の段階になったらボスに相談するつもりでしたが

接続するつもりだったギアごと盗まれてしまいましたね」

 

「未完成とはいえ その新技術ごと盗まれたってことか」

 

「そうなりますね どこのどなたか知りませんが

作り直すからにはもっといいものを作りましょう

もう盗まれないような工夫も盛り込まないと

経費は公爵閣下持ちですから遠慮をする方が失礼でしょうし

シルエットギアをいじり倒すにはもってこいですねっ」

 

「今まで遠慮なんてしてたか?」

 

「言うなバト坊 こうなりゃとことんやるまでだ

ボスのためにもな」

 

カザトシュ砦の戦いは更なるステージに進んだ

 

・・・

・・・・・・

 

「このマギウスエンジンはシルエットナイト用の魔術回路(スクリプト)が組み込まれていますが

シルエットギア用のものに書き換えるのは簡単です

今回の実戦で改善点を洗い出して改良したスクリプトを僕が組むので

親方達は2種類のギアを新たに作ってください」

 

「マギウスエンジンが付いてるやつ用と

ないやつ用か?」

 

「いえ 違います 戦闘用と作業用、

もっと言うとナイトランナー用とナイトスミス用ですね

今回はどちらもマギウスエンジンを搭載するつもりです

盗難防止策はこちらで試作しますから

通気性を含む快適性と安全性の両立の課題に取り組んでください」

 

「よし バト坊!

まずはディートリヒとゲパードのギアをバラしてデータをとるぞ

バラしながらナイトランナーの意見も聞きてえ

ディーとゲパードだけじゃなく双子もこっちだ」

 

「おれさまはボロットを磨いてくるぜ

おーい そっちのみんなも手伝ってくれい!」

 

ボスの声で呆然としていたカザトシュ砦のナイトスミス達が我に帰った

役目を思い出し道具をもって一斉に駆けだした

 

 

 

 

    ―王城・シュレベール城内―

 

国王アンブロシウスはクヌート・ディスクゴード公爵の報告を受けていた

 

「ふぅむ 賊によりボス殿が襲撃され負傷し機体の大半と

学生の作った新型の鎧まで奪われた、と」

 

「は、賊はそのために呪餌で近隣の村を魔獣に襲わせ陽動し

撤退時にも呪餌を用いました

死者こそでておりませんが賊を一人も捕らえることができず

各地の砦にも触れを回し捜索をおこなっていますが、

いまだその足取りをつかめずにおります

まこと申し開きもございませぬ

かくなるうえは、いかような処罰も覚悟して・・・・・・」

 

「早まるなクヌートよ 今はおぬしに働いてもらうことの方が多かろう

責任をとるつもりならいっそう注力し挽回することを考えよ

それにおぬしを厳しく罰すればボス殿も心苦しかろう」

 

疲労と焦燥に覆われ頭を下げる公爵だったがやるべきことを示された以上

そこにとらわれ続けているわけにもいかず切り替えた

 

「して、此度の賊の正体であるが・・・他国のものである可能性が強いと?」

 

「は 間違いないかと、

学園で藍鷹騎士団が捕らえた密偵と思しきものは

特殊な訓練を受けていると見え実に口が堅く 正確な情報を得るには今しばらく時を要し

賊との確たるつながりを得たとは言い切れませぬが

ボス殿と朱兎騎士団中隊長が賊と直接接触し得た情報によると他国の没落貴族であると

勿論まったくの偽情報である可能性もありますが

呪餌を使った手口 賊の練度からおおよそ間違いないかと

もし国内の賊であれば早晩燻りだしましょう」

 

「国外は東の無数の魔獣が生息するボキューズ大森林か

西に山越えして人がひしめく西方諸国(オクシデンツ)

どちらに逃げ込むか考えるまでもなかろう

厄介なことよのう 他国からの悪意のある干渉など

どれほどぶりのことか」

 

この世界にレーダーのような便利なものはなく 街道や関所を避けて山越えをされると

国外への賊の追跡をすることはほぼ不可能である

 

「我が国が魔獣を抑えているからこそ西側は安穏としていられるというのに

長き平穏が西側はそれを忘れさせ 我が国は警戒を忘れた

皮肉にもそれがこの事態を招いたと言えるでしょう

・・・他国のものがみなボス殿のような人物であればよいのですが」

 

「はははっ たしかに あれほどわかりやすい人物ばかりの密偵であればな」

 

ボスの名前が出ると国王から笑いが漏れた

若い頃からの長い付き合いでよく知った気難しいこの男も ボスを気に入ったようだ

 

「既に国外に出たとなれば賊を補足することは到底かなわぬであろう

そこにこだわるよりも我らは我らの道をとらねばならぬ

クヌート万事整えよ」

 

「ハッ」

 

 

 

   ―シュレベール城 謁見の間―

 

シルエットギアの試作が出来上がり調整をしていたところで

カザトシュ砦にいたボス達だけではなくライヒアラにいた

ボスボロット修理やギアの作成に関わった騎操士学園の学生ら

ほぼ全員が王城へ招かれた

ちなみに学園長であるエルの祖父は呼ばれていないため学園に残っている

式典ではシルエットナイトが並ぶこともあるため非常に広く大きい謁見の間では

ボスを先頭に学生達が整然と並んでいた

 

    カッ

 

    ザッ

 

国王が現れるとボス以外の学生達は一斉に膝をつき頭を下げた

 

「よい、楽にせよ」

 

国王が玉座に腰かけると ボスは床に胡坐をかき学生達は頭を上げた

 

「さて、まずはボス殿 此度の賊の襲撃

我が国内での失態はわしの失態である まことにすまなかった」

 

「いやいや

あれはまんまとひっかかっちまった こっちのドジだわさ」

 

学生達はもれなくガチガチに緊張していたが 既にべへモス事変後に国王と顔を合わせ

会話もしたこともあるため気楽で堂々としたボスを目にし わずかに緊張がほぐれた

 

「うむ この埋め合わせは必ずすると約束しよう

学生たちよ 本来なら未熟である学びの徒である諸君らが

わしからの命令であるボス殿の機体の修理を見事果たし

その上 まったく新しい型のシルエットナイトとも言える

シルエットギアを開発したこと 大変うれしく思っておる 大儀であった」

 

国王の言葉で学生達の多くは感激し 中には感極まって涙を流すものもいた

 

「無粋な横槍によりその内の一機も奪われてしまったことは残念だったが

あれはまだ未完成品と聞く

ボス殿 残りの機体やその後の開発はどうなっているだろうか」

 

「そいつは子分に任せてあるんでそいつに説明してもらうだわさ

エル 頼んだわよん」

 

「はい ではボスに変わりこの僕

エルネスティ・エチェバルリアが説明いたします

現在シルエットギアは新型を2種類

騎操士用のモートルビート 鍛冶師用のモ―トリフトが組み上がっております

モートルビートは今回の事件で奪われた要因となった

戦闘で熱がこもりやすく頻繫に脱がなければならなかった欠点と

単独で魔獣との戦闘を行うための内蔵武器

シルエットナイトを直接制御するための接続まわりの改善を行いました

モ―トリフトは鍛冶作業を効率的に行うためのサブアームの搭載 量産のための簡略化、

そして両機とも改造したマギウスエンジンを搭載することにより

操縦者の負担を軽減し 部外者が無断使用できないように鍵をかけることを可能にしました

詳しいことはこちらの資料にまとめてありますので

こちらを献上いたします」

 

「うむ この短期間に素晴らしい成果である

エルネスティ・エチェバルリアよ」

 

「いえ 恐れながら陛下 これはボスによる技術提供と

親方やディートリヒ先輩ら 学園の諸先輩達や カザトシュ砦のナイトスミスのみなさん

そして僕の友人達の尽力があってこそ

お褒めの言葉はなにとぞみなさんへ」

 

「うむ 道理である

諸君らの功績は我が国の例にないものであり歴史にその名を刻むものである

我が名アンブロシウス・タハヴォ・フレメヴィーラにおいてそれを称えるとしよう

みな大儀であった」

 

改めて国王の口からその働きを認めらたと感じた学生達は感激に震えた

 

「うむ ではこれからの話をするとしよう

此度のボス殿の機体とシルエットギアを奪われた『カザトシュ事変』

再発を防ぐ為にやらねばならぬことがある

賊の捜索や洗い出しは無論引き続き行うが、

おぬしらの最大の関心ごとであろうボス殿の今後についてだ

今回の賊は諸君らの成果物とボスボロットのみを狙ったが

今後ボス殿自身を狙わぬ保証はない むしろ危険は高まったと言えるだろう」

 

実際 賊の攻撃でボスは負傷し 当たり所が悪ければ

死んでいても不思議ではなかったのである

ディートリヒとゲパードは浮き上がっていた顔や心を引き締めた

 

「当初はカザトシュ砦で朱兎騎士団の元 ボス殿が国元に帰る目途がつくまで

護衛するつもりだった所へ 今回の事件とおぬしらの働きだ

クヌートからその活躍とボス殿との絆は聞いておる」

 

学生達の先頭に座るボスに全員の目が集まる

 

「このままボス殿には公賓として王城に留まってもらう、

という考えもあったがそれではどうしても不自由を強いることになる

それよりも互いに気心が知れ またボスボロットの修理が行え

護衛を任せることができる騎士 それだけの人員がここに揃っておる

そうよ、ライヒアラの学生たち我が国が誇る鳳雛たちよ

我が命により、ここに新たな騎士団を創設する

エルネスティ・エチェバルリア お主を騎士団長に命じ

カルダトア二個中隊(20機)とウォード1機を授ける

正騎士はそなたの裁量で学生の準騎士から命じ

同じく学生の鍛冶師らを含めみなを率いるのだ」

 

「僕が、ですか・・・

はっ 謹んで拝命いたします」

 

急な無茶振りではあったがもしこれを断ればボスとボロットは

王城に囲われ 会うことすら容易ではなくなる

そう判断したエルはすぐに返事をした

 

「名前を決めねばならぬのう

お主にちなんで『銀』わしからは『鳳』の名を贈ろう

『銀凰騎士団』

それがお主らが名乗るべき名前だ」

 

「銀凰騎士団・・・」

 

「かっこいいじゃねえかエル

これからもよろしくな」

 

「はい!ボス!」

 

「ではエルネスティよ

学生であるそなたに騎士団長という重責を命じるのだ

陸皇事変と新型機開発 カザトシュ事変とこれまでの功績を含め

先に褒美を取らせようと思う 何か望みはないか?」

 

見ようによっては国王からの更なる無茶振りである

エルネスティの返事にこの場の全員が注目する

 

「では、陛下にお願いいたします

僕が今一番欲しているものは知識・・・

魔力転換炉(エーテルリアクタ)の製造方法』の知識にございます」

 

何を言うかと冷や冷やしていた学生たちが凍りついた

国王の側で控えているディスクゴード公爵も言葉がでない

 

「ほう・・・

たしかにそれを求めるのであればわしに願うしかないが

何故そのようなものを望む?」

 

「は、僕はそもそも自身のためだけのシルエットナイトを欲していました

僕に合う僕だけのためのシルエットナイトを!

シルエットギア開発もそのための研究という一面もありました」

 

「成程 そこまではよい

ならば団長機をおぬしの望みのままに改造すればよいではないか

団長として当然の権利だ」

 

「たしかに以前の僕であればそこで満足だったかもしれません

しかしボスと出会いました

自分のための機体を設計し 仲間と作り上げ 実戦を重ね更に改良を加え

愛機と絆を深めていく

僕の憧れの さらに先を行く人の元でシルエットギア開発を通じ

僕も仲間達と共に作り上げるよろこびと楽しさを知ってしまったのです!」

 

「・・・・・・つまり、その理由は?」

 

「趣味にございます」

 

満面の笑みで国王に答えるエルに学生達は凍りついたままでどこか納得し

ボスはエルに同調するようにうなずいた

 

「ふはっ ははははっ なるほど趣味ときたか!

たしかに趣味であればどこまでこだわりたくなるであろう

その気持ちはわしにも心当たりがある」

 

国王と長い付き合いであるディスクゴード公爵が

昔の苦労を思い出したのか深いため息をもらす

 

「よかろう その願い聞き入れた!!

だがあれは秘中の秘であることは確かだがそれ以上に

理解するためには卓越した知識と知恵が必要となる

少なくともこの国一番と言えるほどのな」

 

国王の言葉にエルがうなずく

 

「我が国が誇るシルエットナイト開発の最高峰は知っておろう

国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)にその実力を認めさせるのだ

かつて陸皇事変で破壊されたボスボロットの片腕を渡し修理を命じていた

修理そのものは難航し 結果的に諸君らに後れを取ったが

その技術に触れたことで新型シルエットナイトの開発が進んだと聞く」

 

「なんと!?それは興味深い!」

 

「お主達の開発したシルエットギアが合わされば さらに開発が進むだろう

その国機研(ラボ)に対し お主たちの開発したシルエットナイトで実力を示し鼻をへし折ってやれ

やつらの度肝を抜き 従えてみよ これが条件だ

その舞台はわしが用意しよう できるな?」

 

「つまり銀凰騎士団の使命はボスの護衛とボスボロットの整備や改造

未だ見ぬシルエットギアやシルエットナイトを創りあげるということですね」

 

「うむ 魔獣の討伐を前提とする既存の騎士団とは異なる独立したものとなる

拠点となる砦は学園都市ライヒアラの近くに作ることにしよう

完成までは学園の設備を使うがいい」

 

「つまりしばらくはこれまでどおりってことだわさ」

 

「鳳雛、いや銀の鳳たちよ そなたらの活躍に期待する」

 

エルは後ろを振り返り 無言でうなずく学生達と

隣で親指を立てるボスを見て決意を持ってこたえる

 

「仰せのままに・・・・・・

人事を尽くし 事にあたりましょう」

 

 

 

 

     ―???―

 

「これが都市を潰すほどの魔獣を相手に立ち回る力を持った

異国のシルエットナイトの体か」

 

「なんと不細工な・・・

魔獣番の無骨なものよりもさらにひどい

わが国では子供の玩具でも相手にされぬ造形だ」

 

持ち込まれたボスボロットのボディやシルエットギアが

大勢の技術者 研究者により解析されている

 

「・・・」

 

持ち込んだ当人たちはあえて何も語らず じっと控えている

 

「だが使われている技術は注目する価値がある

特に内蔵されたサブアームともよべる機構

背中にとりつければ単純に手数が増やせるのではないか?」

 

「それにこのシルエットギア

量産がしやすく整備にも戦力にも使える

こちらの方が価値があるのではないか?

魔獣番らしい無骨さと気密性の劣悪さは直すべきだがな」

 

「・・・・・・」

 

研究者たちからの報告を受けたひときわ権威ある衣を着た男が

じっと控えていた者たちに重々しく言葉を発する 

 

「銅牙騎士団団長 ケルヒルト・ヒエタカンナス 大儀であった

この功績を認めヒエタカンナス家の旧領の5割を伯爵から復帰させる

ヒエタカンナス家を再興させ更なる忠誠を誓え

今後の働き次第では褒美は思いのままだ」

 

「ハッ 謹んで拝命し 我らが陛下に一層の忠誠を誓います!

(チッ あの下衆伯爵が一方的な割譲に納得するわけがない

半分の旧領じゃあ戦力が整う前に再び侵略されるのは明らか

国の思惑はどっちが生き残ろうと自分の腹は痛まないって算段かい

まあいい あたしだってあの頃の小娘じゃない

あたしは義理堅いんだ あのときの借りを倍返しにしてやるさ

最後に勝つのはこのあたしなんだよ!!)」

 

ケルヒルトの失った左目の古傷がうずき 血に染まり倒れた幼い弟妹や

腹をおさえうずくまる馬鹿な男の幻が一瞬浮かぶ

 

「(・・・・・・まったく ヘドみたいな国だよ)」




スパロボ30のDLC第三弾も終わり結局ボスボロット参戦なく残念
ガンダムからハイν ゲッターから変形可能の知らないゲッター と
DLCで追加要素あったのにマジンガー系はなしとか・・・ 次回作こそボロットを・・・

スパロボOGラジオで寺田神がいいものは時代関係なくいいと力説していたので
たとえスパロボがどれほど歴史を重ねてもボスボロットが再び登場することを信じています


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追風

   ―街道―

 

王都カンカンネからライヒアラ学園街への帰路

学生達を乗せた馬車を護衛するように朱兎騎士団の団長機を先頭に

カルダトア一個中隊が行軍する

団長機以外の機体はそのまま銀凰騎士団に配属される予定である

それと並びゲパードが操縦するボスボロットが街道を歩く

操縦席にはボス、エル、ゲパード、ディートリヒ、キッド、アディが乗っていた

親方やバトソンも乗りたがったが既に満員であり断念した

ボスの直接指導によりエル、ディートリヒに続きゲパードも

ボスボロットの独特な操縦による歩行に慣れてきた

 

「よーし ちゃんと歩けるようになったじゃねえかよ!」

 

「へへっ ようやくこの丸い操縦桿と鐙の感覚がわかってきたぜ」

 

「ハンドルとペダルはシルエットナイトどころか

この国のどこを探してもありませんからね

まあ それを抜きにしても・・・

コレでボスボロットをあれだけ自由に動かせるボスの神業には

まだまだ僕らは到達できてません」

 

「いやいや こんだけ動かせりゃ 後は慣れていくだけよん

これでおれさまも楽ができるだわさ

あと どんぐれいで帰れそうだ?」

 

「そうですね 王都を出発したのが朝でしたから

このまま順調に行けば夕方には着くはずです」

 

「もうお昼だから半分くらいは進んだね」

 

「朱兎騎士団に先導 護衛していただいているのだ 問題ないさ

このレーダーにもこれといった反応は見られない 順調そのものだ

ところでエルネスティ、

このレーダーは我々のシルエットナイトで真似できないのかい?」

 

「たしかに便利ですが難しいですね

そのままマネするより原理を学んで魔法で再現した方が早そうですが・・・」

 

「レーダーはおれさまが作ったわけじゃねえからよく知らねえよ

そんじゃここらで音楽でも流すか」

 

「音楽を流す?」

 

「あ カセット」

 

転生者のエル以外はボスの言葉の意味はわからなかったが

ボスは気にせずラジカセにカセットをいれる

 

「そんじゃポチっとな」

 

    ガチャ

 

  ♪~ ♪♪♪!♪♪♪!

 

「このイントロは!?やっぱりマジンガーZ!!」

 

「魔神がー?なんだか物騒な響きだな

知ってるのかエル?」

 

「っていうか どうやって音楽が流れてるの?

歌まで聞こえるし?」

 

ラジカセもこの世界にはなく ボスも説明できるわけではないので

アディの疑問はさておき歌についてボスが答える

 

「おれさまの親友 兜甲児が乗るスーパーロボット

【マジンガーZ】の歌だわさ」

 

「ちょっと待ってください ここをこうすれば・・・」

 

   カタカタカタカタ・・・

 

エルが通信設備を操作すると

歌に合わせるように戦うマジンガーZの映像が表示された

 

「これがくろがねの城 マジンガーZです!」

 

「・・・なんというか凄まじいな

大勢の魔獣を圧倒しているじゃないか

豊富な内蔵武器に的確な動き 圧倒的なパワーに装甲

本当にこんなシルエットナイトが存在するのかい?」

 

「いるんだって 本当によう!」

 

「なあエル まさか銀凰騎士団でこれを作ろうってんじゃないよな?

親方が発狂するんじゃないか?」

 

「いきなりマジンガーを目指すわけではありません

これを可能にするには少なくとも超合金Zのような超金属や

光子力エネルギーといった超エネルギーが必要になりますから」

 

「エル君そんなこと言いながら悪くてかわいい顔してるよ」

 

「・・・つまり 当面は素材を集めながら技術を磨き

いずれはこれを いやこれ以上の機体を作ろうとしているってことかい?」

 

「素晴らしいですディー先輩!

もちろんボスボロットやマジンガーZを参考に!目標に!

この世界で僕のための『本物』のスーパーロボットをつくります!!」

 

「豪気だね 団長閣下」

 

「でもよエル この魔神がー?とかボスボロットだって

王様とかが国を挙げて作ったようなもんだろ?

俺たちだけでそんなことできるのかよ」

 

「ボロットはおれさまの設計で三人の博士たちに作ってもらったもんだし

マジンガーZは兜のじいちゃんが一人で作ったらしいぜ」

 

「い!?それマジかよボスさん!?」

 

「そんな馬鹿な・・・」

 

「そんな天才に挑む!実にやり甲斐があるじゃないですか!」

 

「・・・我らの団長様は頼もしいね」

 

「まったくだ まだ騎士団が動き出す前だってのによ、

おっと やっぱボロットの鐙加減が難しいな

銀凰騎士団でカルダトアに乗れるんだよな

そっちも楽しみだぜ」

 

「それにしてもいい曲が次々と流れてくるね

歌声の力も合わせて 何かこう心の中の熱いものを震わせるというべきか」

 

「宙明節ですね」

 

「言葉の意味はよくわかんねえけど

たしかにこう なんか熱くて耳に残るよな」

 

「それじゃ みんなで歌おうじゃねえか

歌詞なんざわかんなくても適当に

ダッダッとかバンバンって合いの手でもいいからよ」

 

それから 拡声器を通じて外まで響き渡るにぎやかな歌声は

ライヒアラ学園街の城壁が見えるまで続いた

 

 

 

  ―フレメヴィーラ王城シュレベール城 謁見の間―

 

国王アンブロシウスの前にディスクゴード公爵とその後ろに数名の人物が控えていた

 

「ふぅむ 銀凰騎士団はライヒアラへと戻ったか」

 

「は 夕刻には学園街へ着くことでしょう

朱兎騎士団 一個中隊が護衛しておりカルダトアは

そのまま銀凰騎士団へ譲渡する手筈となっております」

 

「うむ 朱兎騎士団は今回のカザトシュ事変で被害も大きく

無傷の機体を銀凰騎士団に回すのはさらに負担が大きかろうが

各砦と連携して魔獣に対応するように

いずれはもう一個中隊を届けねばならぬがな」

 

「は ボス殿の護衛と新型機開発のために必要なもの

彼らが万全の状態であたれるよう手配はお任せください」

 

「ボス殿を危険にさらし機体の大部分を奪われたのは我が国の失態である

国内にまだ潜んでおろう獅子身中の虫を全て洗い出さねばならん

藍鷹騎士団 ぬしらに働いてもらうぞ」

 

「はっ 先行していたノーラと合流し全員の技を持って

結果をお見せいたします」

 

「うむ 諸君らの働きに期待する

しかしあのやんちゃ坊主 まさかエーテルリアクタの機密を欲するとはな

しかもこのタイミングで・・・」

 

「たしかに耳を疑いました

ほぼ同時期にラボからも同じ打診がありましたから

ガイスカ工房長が熱望していると聞いておりましたが・・・」

 

「うむ あやつは一時期老け込み

ラボの空気も停滞気味であったと聞いていたが

ボスボロットの腕を借り受け修理を請け負ったことが大層刺激となり

かつてないほど情熱を滾らせ鎚を振るっておるようだ」

 

「カザドシュ砦でのボスボロットの修理の様子の報告を受けておりますが

砦の鍛冶師の目にはまるで魔法のようで

直接手出しする間もなくみるみる組み上がったと」

 

「なんと それは面白い!

思えばボス殿をきっかけに我が国の鳳雛が頭角を現し 眠れる虎が目覚めた

そして彼らが競い合い未知の叡智を求め高め合う

実に楽しみだ」

 

「まことに(陛下が感化されるのも仕方がないが・・・)」

 

公爵にとっては目の前の獅子王の目が

昔日の王子時代のように輝いていくのが不穏だった

 

 

 

  ―エチェバルリア邸―

 

予定通り夕方に学園に到着し配属予定の半数カルダトア10機を受領し

その場で解散となり エルの実家エチェバルリア邸に

エルとその幼馴染であり家族ぐるみの付き合いのあるキッドとアディ

そして客人として部屋を借りて住んでいるボスが帰ってきた

 

「おー ひっさしぶりのエルん家だ

あー 歌い過ぎてのどいてー・・・」

 

「うん 家でゆっくりしたいねー」

 

「はらへったぜ~」

 

 バン!    ダッ!!     ギュ!!!

 

ようやく帰り着いたと騒いだ声を聞きつけてエルの母

セレスティナ(ティナ)・エチェバルリアが待ちかねたように

飛び出してきてそのままエルを抱きしめ、

エルもゆっくりと抱きしめ返した

 

「ただいま帰りました 母様」

 

「おかえりなさい エル

怪我はないのね?安心したわ

公爵様のご招待はどうだった?

皆で作ったお土産の幻晶甲冑(シルエットギア)は喜んでもらえたかしら?」

 

「はい!ボスのお供としてご相伴にあずかり楽しんできました

お土産も大変好評でお返しに幻晶騎士(シルエットナイト)もいただきまして

それを使ってもっと作ってほしいといわれました」

 

「まあ それはよかったわ

だったらエルがもっと頑張れるようにと、

ボスさんへのお礼も合わせて 今日の晩ご飯は

腕によりをかけて用意しなくちゃね」

 

「いや 今エルが聞き捨てならないことを言ったのだが!?」

 

エルの父親マティアスも共に出迎えにでてきたが

微笑ましくもどこかズレた会話をする妻と息子にツッコミをいれた

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

その日の夕食はエチェバルリア家とアーキッド家揃ってのものとなった

両家の母親 ティナとイルマタル(イルマ)は普段よりも腕によりをかけ

テーブルに広がる豪勢な料理に子供達とボスは大喜びでたべはじめた

騎士としてカザトシュ事変を戦い抜き 砦ではギアの製作や改造

王都では国王に謁見し騎士団に命じられるという 非常に濃密な時間を過ごし

そこからようやく帰ってきたことでリミッターが解除されたのか

子供達の旺盛な食欲は 元々人の倍食べるボスにも劣らぬ勢いで

テーブルいっぱいにあった料理は綺麗に食べつくされた

 

食後にエル達が新設した銀凰騎士団に入団し

エルが団長 キッドとアディが団長補佐に任命されたこと、

その任務がボスの護衛とシルエットナイトの新型開発であること

新たに砦が新築されるまで当面の拠点はライヒアラ学園であり

これまで通り卒業までは学生をしながら設備を使用することを告げた

学園の教官であるエルの(マティアス)と学園長である祖父(ラウリ)は衝撃を受けて固まった

学園にとって前代未聞の事態でありその中心にエルがいるのである

学園を乗っ取るとも聞こえるエルの発言に

どうにか硬直から帰ってきた二人は難色を示したが

銀凰騎士団は学生達の居場所を奪うものではなく

学生達と技術を共有し共に歩むものであることをエルが力説し

二人も納得して清々しい表情で協力を約束した

 

「共に歩めるというのであれば悪いことではないのう」

 

「我々もできる限りの協力はするぞ」

 

「ええ みんなと仲良くね」

 

「はい みんなで頑張りましょう!

きっと楽しいですよ!」

 

まばゆく輝く笑顔のエルを見て本当に嬉しくなったティナが

その要因の一つになったボスに

 

「ボスさんが来てからエルが毎日楽しそうです

私に何かお礼にできることはありますか?」

 

「それならティナさんとイルマさんに料理を教わりたいわよん!

おれさま食うのは筋金入りだけどよ作るのは素人だから

美人の先生に習いたいだわさ」

 

「あ ラーメン作りの参考ですね

この国に多分ラーメンはないと思いますが」

 

「いいですよ ラーメンが何かはわかりませんが

一から丁寧に教えましょう」

 

「私もですか?勿論いいですけど

アディ 折角だからあなたもどうかしら?

やんちゃも結構だけどお料理も習ってみない?」

 

「ホント!?じゃあ甘くて美味しいパイの作り方教えて!

ボスさんにエル君は渡さないんだから!」

 

「頑張れ母様・・・」

 

キッドのつぶやきをよそに

ボスのラーメン作りも動き出した

 

 

 

  ―城塞都市デュフォール―

 

ライヒアラから南へ馬車へ数日ほどの賑わいから切り離された森の中

他の街を遥かに超える規模の城壁に囲まれる都市に

街の過半を占める設備 国立機操開発研究工房(シルエットナイトラボラトリ)があった

ラボと呼ばれるこの工房群の第一開発工房に大勢の鍛冶師が集まり

すさまじい熱気の中 作業が行われていた

その中心にあるのは公爵が預かり持ち込まれた

10機以上のシルエットギア(操作練習名目のボウリングセット付)と

シルエットギアとの連動機能を持ったアールカンバー

ストランドクリスタルティシューを組み込まれた

ゲパード機のサロドレアとトランドオーケスだった

ボスによって持ち込まれた技術と学生達の情熱で作り上げられた

賊の手を免れてラボに持ち込まれたこれらの新型機はどれも粗削りのものであったが

フレメヴィーラ王国唯一最大の研究機関の熟練の鍛冶師達にとっても

強烈な刺激を与えていた

特にダーヴィド親方やバトソンが鍛冶作業のためにサブアームと

マギウスエンジン付きで自分用にカスタマイズされたギアはすぐに受け入れられ

量産され各々が改造を施しシルエットナイトの解体分析に用いられた

エルによって作られた設計書も添えられていたが

貪りつくすかのような丁寧な解体作業は昼夜を問わず続けられた

そんな熱意と意地のデスマーチの先頭で古びた鎚を振るうのが

第一工房工房長の老練なドワーフ ガイスカ・ヨーハンソンである

 

「よいかおまえたち!

我らは陛下より仰せつかったボスボロットの修理を既に失敗しておる!

しかしながらこのラボに完全新型機の開発という大仕事を受け賜わったのだ!

これが成功すれば100年ぶりの大偉業である!!

そのためにあのボスボロットから学生たちが吸収発展させた技術を

はるかに超えねばならん!!!」

 

「ガイスカ工房長 そんなに怒鳴り散らしてはいけないよ

工房長も そのご老体で何日も寝ていないと聞くが

そんな状態では逆に事故を起こし作業が滞るのでは?」

 

「これはこれはオルヴァー所長 王都から帰っていたのですか

例の件は陛下にお伝えいただけたのですかな?」

 

「それはもちろん 陛下から返書もいただいている

条件に付いては別室でゆっくりお話ししよう」

 

「それは素晴らしい!

どのような条件だろうと ものともしませんぞ!」

 

ガイスカ工房長の目が更に爛々と輝き

ラボの所長オルヴァー・ブロムダールは若干ひいていた

ガイスカ工房長唯一のストッパーとも言える存在を探したが

近くにはいないようである

 

「工房長、ご自慢のお孫さんはどうしたのかな?」

 

「あやつは専用のシルエットギアを仕立てるために第二工房に預けてます

おそらく明日には帰ってきますが 何か用ですかな?」

 

「いや とりあえず各工房長を会議室に集めておいてくれ

その間は鍛冶師達に休憩 いや睡眠をとるように徹底してもらいたい」

 

「所長、困りますな 鍛冶師達の監督は各工房長の領分

それを所長と言えど頭越しに指示を出されてはね」

 

「だからこそ工房長の会議中は一度ゆっくり休んでもらいたいのさ

勿論 各工房長も休んでほしいのだがね

それこそ それを指示できるのは所長の権限だろう?」

 

「・・・まあいいでしょう

大事の前に休みを挟むのも必要でしょう

では鍛冶師達に休みを指示しますので 失礼します」

 

足早に去っていくガイスカの後ろ姿を見てオルヴァーは肩をすくめた

 

「やれやれガイスカ君にも困ったものだ

元々 有能なのは間違いないが・・・

あのボスボロットの腕が持ち込まれてから力が入り過ぎだ

何事にも余裕が必要だというのに

特に今のように明らかに試されているときは・・・

エーテルリアクタの製造方法について陛下から

例の銀凰騎士団と競い合わせるという露骨な返事を受けたというのに

いや これを伝えたらさらに暴走しそうだ

陛下も存外 お人の悪い それとも私の伝え方が足りなかったかな?

これは久しぶりに『衛使』としての仕事が増えるかもしれないな」

 

最後のつぶやきはだれの耳に入ることのない小さなものだった

 

そして・・・

 

「ふふふ ついにエーテルリアクタの製造に手が届くところまできた

その秘術を習得すればその応用であの力を得ることができるかもしれん」

 

工房に今もボロボロながらその形を残すボスボロットの腕

それをにらむガイスカのくぼんだ眼窩の奥で瞳に危険な炎を滾らせていた




作曲家の渡辺宙明先生の曲を聞きながら書いてるウジョーです

偉大な作曲家がまた一人・・・ 非常に残念です
この機会に改めて意識して聞くと本当に幅広い楽曲で聞きごたえのある宙明節に震えます

連日の猛暑に背筋の冷えるニュースが続き なんとも言えない状態ですが
おつかれのでませんように


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闘志

   ―エチェバルリア邸 台所―

 

朝食の時間が近づき エルが起き上がる頃

スープを味見するボス

 

「うめえ!

出来立ての味見ができるのは飯炊きの特権だわよん」

 

「うふふ ボスさんのおかげで朝食作りもはかどったわ

食べるのが大好きで手先も器用だから料理人も向いてそうね」

 

エチェバルリア邸の台所の主 セレスティナ(ティナ)の指導を受けながら

早朝から仕込み じっくりと作り上げたスープは

どうやら朝食に出せる出来のようだ

 

「おれさまダシは肉や骨からとるもんだと思ってたけどよ

野菜だけでこんなにうめえなんておどろきだわさ」

 

「そうね お肉もおいしいけれど

お野菜からとれるお出汁も 時間や温度 塩加減で色々な味がだせるわ

そろそろ朝食の時間ね お手伝いありがとう ボスさん」

 

「イッシッシ いいってことよティナさん

美人の奥さんに料理教えてもらって 味見もできるとなりゃ

おれさま 楽しいだけだわよん」

 

「これで朝食はできたから・・・

ボスさん エルを起こしてきてもらえるかしら」

 

「まだ寝てるようなら ひっぱってくるだわさ」

 

・・・

・・・・・・

 

ボスがエルをヘッドロックしながら朝食にやってきた

 

「いたいですよ ボス~」

 

「やっかましい

アディちゃんといっしょに部屋から出てくるとか

何やってんだ おまえら」

 

「アディの抱き枕の刑でしたね

散々心配かけた罰とか何とか・・・

イイッタァイ!アタマガァ・・・」

 

より強く頭を締められエルが悲鳴をあげる

 

「おめえ おれさまが早起きして飯作ってるときに!」

 

「ボスさん ストップ ストップ!

エル君の頭が割れちゃう!!」

 

「あらあら仲良しね」

 

「やっぱり当然のように同じ部屋で寝泊りするエル達は

問題あるよな・・・」

 

食卓で待つティナ達の前でようやくエルが解放され揃って朝食となった

ボスが手伝ったスープも好評でボスは上機嫌だった

 

 

    ―学園 工房―

 

昼前のエルや親方達は授業中の時間帯

ボスはひとりでボスボロットの操縦席で料理をしていた

ボスは本来高校生であり学園長の許可もあるので

高等部の授業を受けてもよいのだが

翻訳機で会話はできても文字が読めないため授業についていけなかった

好みの美人教師がいればそれでも授業に行ったのだろうが・・・

操縦席に電気コンロと鍋 冷蔵庫に食材があったので

今朝ティナの指導で作ったスープを復習がてら昼食用に再現していた

食材は王都で公爵からの厚意で渡されたもので朝のものとは

全く同じものがそろっているわけではなかったが

同じ国のものであるし 食材には違いないと 適当に切って鍋に放り込む

適当に煮込んだスープを味見すると

 

「おっ はじめて一人で作ったにしちゃ うめえじゃねえかよ!」

 

ご機嫌でコンロを止め 鍋を下ろして 購買にパンを買いに行く

 

自分の頭半分ほどのパンを小脇に抱え工房に帰ってくると

 

「ボスさん よろしいですか?」

 

「ありゃ?

ノーラちゃん お久しぶりだーわさ!」

 

一般の生徒は授業中であり無人のはずの工房内だったが

ボスにとって同世代のクールビューティーに声を掛けられて

些細なことは気にならなかったものの

 

   サッ

 

「申し訳ございません!」

 

「へ?」

 

急に謝罪し頭を下げたノーラに戸惑った

 

「改めまして私の名前はノーラ・フリュクバリ

私は諜報を専門とする藍鷹騎士団に所属する密偵であり

素性を隠しボスさんの護衛としてこの学園に派遣されていました

しかしあなたを狙っていた賊の一味と思われる不審者に気付き

すでに捕らえていたのですが 情報を得る前に賊に先手を打たれ

機体を奪われ 国の恩人である御身が傷つきました

全ては私の不手際 本当に申し訳ございません」

 

「いや そんなことを言われてもよお」

 

カザトシュ事変については

中隊長に団長や公爵 果ては王様にまで謝罪されたが

ボスにとって今回の件は・・・

美人の盗人に鼻の下を伸ばしていたら しばかれた上に

まんまとボロットと鎧を持ってかれた挙句

子分や仲間が魔獣に襲われ危険な目にあったという

ある意味よくある 自身のやらかしといった認識なので

やたらと各方面で謝罪されるのは非常に居心地が悪く

適当にノーラの謝罪を打ち切ろうと

 

「それより 昼飯いっしょにどうでい?」

 

「わかりました ご一緒します」

 

「ありゃあ!?」

 

駄目もとのナンパが成功してしまった

操縦席であるボロットの頭部は体から外し床に置いてあるので

普段は工房内のボスの秘密部屋のようになっている

はじめて入ったノーラは既存のシルエットナイトの操縦席どころか

国内では見たことがない異国情緒溢れる光景に驚いた

職業柄表情にほとんどでていないが わずかに動きが止まる

とりあえずボスにならい 靴を脱いで畳に上がる

 

「パンを半分こにして スープを注いで・・・

はい お待たせ!

うぇへへへ お口に合えばいいんだけどよ」

 

ボスがちゃぶ台の上に料理を置き 座布団を用意しノーラを招く

自分の分の料理も持ってきて ノーラの正面に座った

まずはスープに浮かぶ野菜を食べると・・・

 

「かれえ!!?

ヒー なんだこの辛さはよお!?

さっき汁を味見したときは何ともなかったのに!」

 

「ああ この野菜ですね

生食だと辛みはないのですが 加熱すると激辛になります

毒性はないのであえて辛くして食べることもある一般的な食材ですよ」

 

   ドキーーン♡

 

自分がヒーヒー言いながら食べるスープを

涼しい顔で食べるノーラにボスがときめいていると

 

「あ!?ボスもお昼ご飯ですか?

おや あなたは・・・」

 

パンを片手にエルが入ってきた

 

「エルネスティ団長」

 

「おう エル おめえも一杯食え」

 

ボスがニヤニヤしながら例のスープを一杯エルに渡した

 

「はい いただきます

・・・ブフォ!? からっ!! 」

 

むせるエルに ボスが大笑いしノーラもこっそり笑っていた

昼食をしながらノーラが藍鷹騎士団の一人として

ここだけの話と前提し二人に報告することがあった

 

「銀凰騎士団と学園に所属する全員について素性を洗い出すことになりました

既に捕らえた異分子も経歴に不審な点があり連絡経路の特定も急いでいます

我々は国内より敵対勢力を排除しつつ 同時に

今後送り込まれるであろう間者を防ぐべく諜報網(けっかい)を敷きましたので

今後同様の事態を起こす心配はありません

また国内にボスさんの仲間と思われる異国の騎士があらわれれば

すぐに報告いたします」

 

「そいつは助かるぜ ありがとうよ」

 

「ありがとうございます ボスの仲間のロボ、

いえ変わったシルエットナイトの情報があれば

すぐに詳しい特徴を教えてください こちらで確認しますので」

 

「承知いたしました

それと これは銀凰騎士団で共有して頂きたいのですが・・・」

 

 

 

 

   ―学園工房―

 

「野郎共 カチ込みでい!!」

 

「おお ついに賊のアジトがつかめたのか!

先陣は私に任せたまえボス!」

 

「ディー先輩 今のはボスの冗談ですよ

現在国機研(ラボ)では僕達が作ったシルエットギアを参考に

カルダトアの後継機となる新型機開発が行われています

それに対し 僕達がこれから作るシルエットナイトで御前試合を行い

次期制式量産機を検討する予定です」

 

「なるほど ラボとガチでやろうってのか

相手にとって不足はねえ!!」

 

ダーヴィド親方が闘志を漲らせる

ラボに所属するのはドワーフの中でもエリート集団である

学園の卒業生も多く所属する学生にとって憧れの就職先でもある

学生の身分で腕を競う機会に恵まれたことで

隣にいるバトソンがひくほどの笑顔を見せている

 

「それと こちらからボスも参加して

国内に大々的な お披露目を提案されまして

秘密にするよりも 国内で存在をしっかりアピールした方が

ボスの自由と保護の両立がしやすいという国からの申し出です」

 

「オッケーしたわよん」

 

「いいのか ボス?」

 

「別に秘密にしてほしいわけじゃねえしな」

 

「それでは このお祭りまでに作る新型についてですが

カザトシュ事変を踏まえてコンセプトをはっきりさせようと思います」

 

エルが3枚の図面を広げた

 

「まずは機動力と戦闘力を兼ね備えた機体

この国の機体はどれも移動力に大差ありません

逃げる賊の追撃や 救援のための急行など必要な場面は多いですから

まずはこれを作り上げます」

 

「たしかにそうだね あのときそういった機体があれば・・・」

 

「確かに理屈はわかるが この形は馬の下半身に

騎士の上半身に見えるのだが・・・」

 

「冗談みてえな話だが 設計図見る限り真面目に考えてやがる」

 

「ゴーゴン大公みてえだわさ」

 

ボスがかつての敵 下半身が虎の巨人の騎士を思い出した

 

「それよりもゴッドやマスターガンダムの騎乗の方がカッコイイのですが

これぐらいやれば陛下やラボの度肝を抜くことも出来ますよ

そしてこちらが中隊長機、

現行機カルディアリアに相当する機体ですね

銀凰騎士団は2個中隊が配属予定なので2機作る予定です」

 

エルが図面を一枚 エドガーとディーに向けた

 

「見たところ これは!」

 

「そうです ディー先輩のグゥエールと

エドガー先輩のアールカンバーがモデルです

先輩方の個性に合わせてギアの武装や技術を応用した

カルダトアのカスタム機ですね」

 

「おおっ 私のグゥエールがようやく復活か!

勿論ナイトランナーは私なのだろうな!」

 

「はい

ディー先輩とエドガー先輩にはそのまま中隊長を務めてもらいます」

 

「了解だ 団長閣下」

 

「謹んで拝命しよう」

 

「おめでとさん 大出世じゃねえか」

 

「ありがとう これもボスのお陰さ」

 

「ゲパード先輩はディー先輩の隊長補佐、

ヘルヴィ先輩がエドガー先輩の隊長補佐、

キッドとアディが僕の団長補佐でやっていこうと思います

ナイトスミスの人事については親方に一任しますね」

 

「おっし 任せときな銀色坊主」

 

「エル君エル君!私もシルエットナイトに乗りたい!」

 

団長補佐に任命されたアディがやる気満々で手を挙げた

 

「いいですよアディ 大歓迎です!

それでは この人馬騎士をアディとキッドに担当してもらいましょう」

 

「えっ 俺も?」

 

「はい 上半身と下半身をそれぞれ操縦してもらいます

これは二人の息が相当合う必要があるので・・・

双子の二人が適任です」

 

「おおナイスアイデアじゃねえか 」

 

エルがアディの立候補を受け ガンタンクなどを参考に

咄嗟に二人乗りを思いついた

量産を見込むなら一人乗りが理想だがそのためには二人に協力を求め

作り動かしながら修正していく方がよさそうとの判断である

 

「おいエル この最後の一枚は おめえの?」

 

「はい これは団長機 つまり僕用のカスタム機ですね

ウォート機がまだ来てないので着手するのは最後になりますが

アイデアはこの通りたっぷりあります!」

 

分厚いメモ帳を片手に目が爛々としているエル

 

「これの実現に是非ともボスに協力してほしいことがあるのですが」

 

「いいわよん」

 

「即答!?ボスさん!エル君独り占めしちゃ駄目ですよ!」

 

「いやそんな気はねえし

アディちゃんが捕まえとけばいいじゃねえかよ」

 

「もちろん捕まえて離さないけど!」

 

「いや離してくださいよ」

 

「そんじゃ やるぜみんな!

おれたちのかっこいいところを見せてやろうじゃねえか!!」

 

    \\\\オー!!////

 

 

 

 

   ―ラボ第一工房―

 

「ガイスカ工房長、

御前試合にかのブリキの騎士の参加が了承されたよ

ナイトランナーと直接会うこともできるそうだ」

 

「おお それは何よりの朗報ですな!

ボスボロット!まさに未知の技術の結晶!

それを操るナイトランナー!

何と胸が躍ることか!何と楽しみなことか!!」

 

「ガイスカ君 また徹夜続きだそうだね

御前試合の前に倒れてしまうよ」

 

「ご心配なくオルヴァー所長 まだ後二日は鎚が振るえますぞ!

まあ 頭を整理するためにもこの後一度寝るつもりですがね」

 

「それは何より ・・・ところで

あきらかに異質な造形のシルエットナイトがあるようだが

あれについての解説はいただけるのかな?」

 

「あれは我が孫用の機体ですな

あくまで工房作業用に組み上げたものですが

詳しいことは完成してからにしてもらいたい」

 

「作業用?シルエットギアには見えない大きさだったけど?」

 

「シルエットギアとボスボロットの腕を参考に

ナイトスミスにも扱える操縦性

シルエットナイトも持ち上げる出力

鍛冶作業を行えるほどの精密性を目指した機体ですな

あれが完成すれば鍛冶作業は飛躍的に進化いたしますぞ!!

新型機開発も一気に進むことは間違いありません!」

 

「あれも立派な新型だと思うのだけど・・・

随分と資材もつぎ込んでいるようだが、これは荒療治が効きすぎたかな?

それでは失礼するが くれぐれも焦らずしっかり休んでもらいたい」

 

オルヴァーが離れるのを確認するとガイスカは

錬金術工房からの報告書に改めて目を通す

 

「ボスボロットの腕に使われている金属は八割はただの鉄 

残り二割はまったく未知の多種の金属が混ざり合ったもの

これが鉄に作用している可能性がある、か

いったいどんな秘密が隠されているのか!

かのナイトランナーに聞き出すことができれば!

ふはは 私の中の熱が上がる!やはり寝てられん!!

もう一仕事・・・」

 

  ふらっ・・・

 

「おっと!あぶねえ!!」

 

立ちくらみをおこしたガイスカを近くにいた孫がとっさに抱き支えた

 

「おお すまんな・・・」

 

若く丸太のような腕がしっかりと抱えガイスカを仮眠室へ運んでいく

普段は愛嬌のある孫の顔は祖父を心配しているものになっていた




ボスの声優さん大竹宏氏の訃報が・・・
弓さやか・ミート君(キン肉マン)の松島みのり氏の訃報があったばかりなのに
兜甲児の石丸博也氏は最近もワンピースのおでん役でよく聞きますが
昭和マジンガーを支えた名優の方々は鬼籍に入った方も多いのは残念でなりません


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重身

  ―ボスボロット 操縦席―

 

エルがキッド、アディ、バトソンを誘って

昼食を調理中のボスの元へやってきた

 

「ボス ここで昼食をとってもいいですか?

ボスの分のパンも買ってきてますよ」

 

「おお いいぜ!

鍋も食ってきな 結構イケるわよん」

 

「ありがとうございます」

 

「なあエル このへんだと魚はあんま食べねえのか?」

 

「そうですね・・・ この国は海に面していませんし

大きい川には水生魔獣がいますからあまり魚が流通していません

あ 通信設備のモニターで映像見てもいいですか?」

 

「そっちが目当てじゃねえか 好きにしとけ」

 

「では早速♪」

 

   カタカタカタカタ!

 

「おお よくわからんがすごいなエル

あ なんか映った なんだこれ?」

 

「そっか バト君はこれはじめて見るんだね」

 

「これはボスボロットの秘密のひとつですからね

親方や学園長(おじいさま)のことも信頼していますが

できるだけ知っている人が少ない方がいいんですよ」

 

「それをあえてオイラにも見せるってことは

厄介なことに巻き込もうとしてるな・・・」

 

「でもそれって ボスさんが決めることじゃないのか?

俺達はエルと違ってボスさんの子分ってわけじゃないのにさ」

 

「ボスは危機感がなさすぎて心配なくらいです

ここはカギもかかってませんし 特に女性にはノーガードですし

子分である僕がしっかりしないと

では こちらの映像をご覧ください」

 

エルが通信設備に記録されていた映像を編集したものを再生した

そこにはボスボロットの とある実験映像であった

 

「お!懐かしいもん見てるじゃねえかよ

まあ こっちで食べながら見な」

 

ちゃぶ台に鍋を置き 器によそっているボスが声をかけると

エルがモニターをちゃぶ台まで持ってきた

映像をみながらの昼食となったのだが・・・

 

「ボスさん これってひょっとして・・・」

 

「ボスボロットで空を飛ぼうとしてる?」

 

「うわ あんな高いとこから落ちた!?

あっぶなーい!?ボスさん生きてるかな?」

 

「ここにいるだわさ」

 

「いやいやっ」

 

「今のは流石にまずいだろ!」

 

「鳥人間コンテストの100倍危ないですよねこれ

あっ!今一瞬飛びましたよ!」

 

「元をただせば鉄の塊を自由自在に飛ばそうってんだ

そりゃ あぶねえだわさ」

 

本人の前で 映像の中 墜落を繰り返すボロットを心配するアディ達

楽しみながら高速でメモをとるエル 自慢気なボスだった

 

「エルより無茶な人っているんだな・・・」

 

「いっしょにいるこの人達はだれですか?」

 

「おれさまといっしょにいるのが子分のムチャとヌケ

こっちの三人がボロットを作った

せわし博士 のっそり博士 もりもり博士だわよん」

 

「それって名前なんですか?」

 

「本名は作者もおれも知らねえけどよ

みんなが力を貸してくれたんだわさ」

 

映像はボスボロット飛行実験の失敗が延々と続いていた

その衝撃映像連発でキッド達の食事の手は完全に止まっていた

 

「スープが冷めちまうだわさ

食いながら見ろようぜ」

 

「そうですよ 母様譲りのボスの料理

結構おいしいですよ」

 

「ああ・・・ いただきます

ブフッ!!! ゴホッゴホッ・・・」

 

ボスボロットがミサイルを手に持って飛ぼうとして失敗する姿を見て

キッドがはげしくむせた

 

「無茶苦茶だぜ これ・・・

まさかエルもシルエットナイトで飛ぶつもりなのか!?」

 

「ええ 勿論 御前試合に間に合うとは言えませんが

僕の機体にはその機能をつけたいな と思ってますよ」

 

「ダメだよエル君!」

 

「いくらなんでもこれは・・・

よくボスさんも いっしょにいる人達も生きてるよな

付き合うだけで命懸けだろこれ」

 

「オイラでもわかるくらい無理な実験に付き合うなんて」

 

「昭和の男たちに無理なんて言葉は通じませんから・・・」

 

「そういや 大戦中ロンドベルにいたときも

ブライトさんが『無理でもやるんだよ!』って言ってたもんよ

イッシッシ!なんだか懐かしいだわさ」

 

「なあ こっちの空飛んでるマジンガーZの翼を使えば

ボロットも飛べるんじゃないか?」

 

「それは実際やってみた あ ちょうど これだわさ

マジンガーZのスクランダーを勝手に借りて失敗した上に

壊しちまったわよん」

 

「うわ ひでえ」

 

「これだけ失敗して危ない目に散々あってるのに

よく懲りませんね」

 

「敵も味方もブンブン飛んでるんだぜ

ただ見てるわけにはいかねえだわさ」

 

「あ ここから成功例ですよ!

見てください この頭のプロペラ!!」

 

「なんだこれ 羽? 今のボロットにはないよな」

 

「へっへっへ 

空も陸も海もオッケーなおれさまの自信作よ!」

 

「うわ!ほんとにボロットが飛んだ!!

どうなってんだこれ!?」

 

「よくあのタケコプター式で自分が回りませんね」

 

「しかもなんでボロットがパンツはいてるんだ?」

 

「あれは浮き輪になって海を泳げるようになるんだわよ」

 

「あっ 頭の羽とれちゃった!?」

 

「急降下に耐えられる強度はなかっただわさ

次はまた違う方法で飛んだわよん」

 

「まだやるの!?」

 

「エルがボスさんに憧れるわけだ・・・」

 

ボスボロットのワンマンショー、危機一髪百連発を見ながらの昼食は

ボスにとっては懐かしの エルにとっては熱狂の

キッド達には驚愕の 手に汗握るものとなった

 

 

 

    ―工房外―

 

授業終了後 エルのよびかけで キッド、アディ、バトソン、

ディー、ゲパード、エドガー、ヘルヴィ、親方が集まっていた

 

「ボスはいないのか?」

 

「ボスさんはティファ姉が手料理を振舞うと聞いてすっ飛んでいったぜ」

 

「エル君何持ってるの?」

 

「どうですか!この新作の銃杖(ガンライクロッド)

シルエットギアひいてはシルエットナイトで扱う前提の特注品です!!」

 

「うわ!なっげえ!?」

 

「物干し竿みたい エル君こんなの振り回すの?」

 

エルのシルエットギアは自身の3倍の長さの魔導兵装を担いでいた

 

「物干し竿・・・ いいですね

僕の琴線に触れるいい響きです

槍をイメージしたオクスタンランチャーのつもりでしたが

これは『物干し竿』と呼称しましょう」

 

   ブンブン  ガチャッ

 

物干し竿を構え 遠く離れた的を法術で狙撃する

 

 

雷轟嵐(サンダリングゲイル)

 

    ゴキゥューン

 

圧縮された上級魔法が的の中心部を打ち貫く

 

「すごっ!?」

 

「おいおい 我らが団長殿は狙撃もできるのかい」

 

「・・・長射程を求めると

マナの消費が思ったより大きいですね

シルエットナイト用に作るときはそのあたりも調整しないと

それともいっそ一発にかけるスタイルも浪漫がありますね」

 

「銀色坊主、そのあたりの調整は後で付き合ってやるが

わざわざボス抜きで俺らを集めたのはこれを見せるためだけか?」

 

「いえ 無関係ではありませんが・・・

今度の御前試合ですが 僕達の作る新型とラボ製の新型による

制式量産機の座を狙う競作(コンペティション)となるのですが

これにボスボロットが加わるチーム戦になることが正式に決まりました」

 

「それは乱戦になるということかい?」

 

「おそらくそうなるでしょう

そこでボスボロットとの連携を考えた機体構成をしようと思います」

 

「それならボスがいるときの方がいいのではないか?」

 

「・・・僕はこの御前試合がこれからのこの国でのボスの扱いを

左右するものと考えています」

 

「扱い?少々物騒だね

国王陛下御自身がボスの身元を国内で保証しているものと思っていたが」

 

「既に国内の一部では陸皇事変の『ブリキの騎士』の存在は

噂されているでしょう

試合でボロットが大暴れしすぎれば危険視され

与しやすしと見られればよからぬ考えを持つ貴族が

いないとは言い切れません 実際 盗賊に狙われたわけですし」

 

「・・・まあ嫌な貴族ってのもいるだろうからな」

 

身内に根性悪な貴族がいるキッドが嫌そうな顔を浮かべる

 

「ボスがこの国に居心地の悪さを感じれば

最悪一人で出ていく可能性もあります

そこで!御前試合を銀凰騎士団の本分を示す場とするのです!」

 

「ボスの護衛と新型機開発だね」

 

「そうです ボスと銀凰騎士団の結束の強さと

騎士団の実力をラボを相手に堂々と示すことができれば

国内での余計な干渉を牽制できるはずです」

 

エルの力説に全員が同意を示した それについては異論はなかったが

 

「でもエル君 ボスさんには内緒なの?」

 

「はい 本人には内緒の方向で

ボスに知られるとそれはそれで居心地の悪さを感じるかもしれません」

 

「まあ 彼の性格からすれば気を使われ過ぎるのはね

その件は了解した それで具体的にどうするんだい?」

 

エルが地面に絵図を描きながら説明する

 

「キッド・アディが乗る騎兵が遊撃として走り回り

ボロットが前衛兼補給 その左右をアールカンバーとグゥエールが固め

僕の団長機が後衛から狙撃しつつ必要に応じて前に出る形を

基本フォーメーションにしようと思います

実戦練習は機体ができてからボスと共に行う予定です」

 

「なるほど そのための物干し竿か

ならばグゥエールの新装備は近接攻撃を重視しようか」

 

「ではアールカンバーは防御重視の盾役だな

責任重大だが・・・」

 

「そこはエドガー(あんた)の腕次第ね

ところで私とゲパードは御前試合どうすんの?

カルダトアででる?」

 

「いえ 流石にこれ以上手が回りませんし

無改造の既製品(カルダトア)を出すわけにはいかないので

お二人にはボロットに乗って法撃などの操縦補助をお願いします

ボスには許可をとってますから」

 

「わかったわ」

 

「任せろ!」

 

「ボスの為 そして陛下の命を果たすが為・・・

御前試合関係者全員の度肝を撃ち貫きに行きましょう」

 

      \\了解!//

 

 

 

 

     ―国機研(ラボ) 試験場―

 

    グォン!グォン!グォン!

     ガシャ! ガシャン!!

 

試験場では新型機の機動試験が行われていた

新型のテストランナーとして国内でも精鋭で知られる

守護騎士団(アルヴァンズ)』の騎士が乗っていた

 

「これは凄いな・・・

限界を知りたいから潰すつもりで扱ってくれとは言われたが

これが新型機の性能か!?」

 

「このシルエットギアを通じてまるで自分の体のように

動かせるだけでも革新的だと思うが、

シルエットナイトがその動きにここまでついてこれるとは驚愕だな

ツーヴァ!そっちはどうだ!!」

 

「こっちも問題ないイドラ!

これだけ走れば結晶筋肉(クリスタルティシュー)がもたないはずだが

柔軟性、強度、出力 カルダトアやカルディアリアとはまるで別物のようだ!!」

 

「ただマナの消費がカルディアリアよりも大きいのが難点だな

出力が上がれば消費も上がる 当然の結果ではあるが」

 

「それについてもラボには対策があるらしい

まったく『徒人(ただびと)』も侮れないものだな

『衛使』殿が機体の調整段階から我らを呼ぶわけだ

いずれ これに乗った隊長が驚くのが楽しみだ」

 

「俺はあっちの新型も気になるのだがな さすがラボだ

ナイトスミス用シルエットナイトなんてものがあるのだからな

しかし 人間どころか魔獣でもあんな姿は見たことないぞ」

 

「まったくだ どうやって動かしているのか聞いてみたいものだ」

 

    キューン キュン  ガガガー!!

 

独特な音を出しながら それ以上に独特な外見を持ったラボ特製

作業用シルエットナイトは歴戦の騎士達から注目されながら

力強く自らの仕事をしていた

 




グレンダイザーの新作が発表されました

最近のスパロボではご無沙汰ですがFCの第2次から参戦している最古参組であり
ボスボロットとの絡みも期待?できるので続報が楽しみです

それに合わせて電子書籍で永井豪先生の「グレンダイザー」を購入し初めて読みましたが
敵のやり口が想像以上にエグイ・・・ 流石にこれを映像化しないと思いたいですが・・・


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期待

   ―ライヒアラ学園 工房―

 

ずぶ濡れのボスと煤だらけのエルが揃って正座し

それを見下ろすように親方と学園長が並び立っていた

 

「するってえとなにか!

ボスはボロットに乗って一人で川に魚釣りに行って

水棲魔獣に襲われて命からがら逃げてきて

銀色坊主はやっと搬入されたばっかりの団長機のウォートで

飛行実験やった挙句失敗して大破させてきたってえのか!?

ハア・・・・・・」

 

工房で要修理状態の2機に目を移し ため息をもらす親方

 

「エルや 銀凰騎士団の務めはボス君の護衛であろう

それを忘れて危険な実験を強行して死にかけるとは言語道断

ボス君も一人で危険な川に行くなどもってのほかじゃ

二人とも謹慎処分として御前試合まで学園街から出るのは禁止とする」

 

「ええっ そんなあ~」

 

「息が詰まるぜ」

 

    ガン! ガン!

 

親方のゲンコツが正座している二人に振り下ろされた

 

「こんの馬っ鹿野郎どもが!!

ただでさえ御前試合まで日がねえってのに

まだロクにいじってもねえ団長機ぶっ壊してどうすんだ!!

下半身はグシャグシャ 顔面も潰れて頭ももげかけてるじゃねえか!

坊主にヒマをあたえるとロクなことにならねえ!」

 

「イタタ それでしたらいっそ 元通りにするのではなく改造しましょう!

幸いエーテルリアクタ周りは無事ですしウォート用の特別な仕様のものですから

綱型結晶筋肉(ストランドタイプ・クリスタルティシュー)の割合をかなり上げられます

設計は任せてください!」

 

「まあ どうせ坊主が乗る機体だ

図面ひいてる間は大人しくしてるだろうし

先に『馬公』を仕上げておくか

ボス!ボロットの修理が終わったら手を貸してくれ

双子もテストランナーで忙しくなるぜ」

 

「おう 任せとけって」

 

「わかった」

 

「エル君 乗るときは見に来てね!」

 

「それはもちろん!」

 

「・・・今回のことはわしから陛下にご報告せねばなるまい

どうせ隠すこともできん すぐに知られることになろう

まあエル達にこれ以上の処罰がないように

わしも学園長としてできる限りのことはするが・・・

陛下を納得させるには御前試合の内容も関わってくる

諸君らはまず人事を尽くしてほしい

わしからは以上だ」

 

 

 

   ―団長室(仮)―

 

  ガチャ

 

「おーい エル スープ飲まねえか?」

 

ボスが熱々のカップを手に入ってきた

 

「あ ボス いただきます」

 

   ズッ・・・

 

「あ この風味は例の魚?」

 

「おう さっき釣ってきた魚を焼いて食ってよお

骨でダシをとってみたんだわさ

やっぱ 魚があると違うわよん

ラーメンづくりに使いてえだわさ」

 

「魚一匹で水棲魔獣に襲われてたらコスパが悪過ぎますけど

ボロットは水中戦では分が悪いはずですがよく無事でしたね」

 

「おれさまカナヅチだから必死だったわよん

で 味はどうよ?」

 

「ふー おいしいですね 魚の風味がどこか懐かしい

ごちそうさまです」

 

「そいつはよかったぜ

今度はボロットにスクリューでもつけて釣りに行ってみるだわさ」

 

「そのときは僕もお供しますよ

ところでボス 僕が乗る予定の新型なんですが

この図面を見てもらえますか」

 

「おうよ どれどれ・・・

結構かっこいいんじゃねえか」

 

「うーん 僕が前世で作っていたプラモに比べると

どうも何か物足りない気がして・・・」

 

「そうか?

まあ これ設計図だからじゃねえの?」

 

「え!? あ! そうか!

プラモを買うときに見るのは箱の絵!

これはどちらかと言うと箱の中にある設計図!

まずは 乗りたい作りたくなるカッコよさでいくとすると・・・」

 

エルが机にかじりつき一心不乱に筆を走らせると

ボスはカップを回収し部屋を出た

 

完成したデザイン画はダーヴィド親方やバトソンら鍛冶師達を戦慄させたが

御前試合に向けて銀凰騎士団総出で完成を目指し取り掛かった

 

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

  ―王都カンカンネ 近衛騎士団演習場―

 

王都の郊外にある演習場を囲む観覧席には国王をはじめ

各地を治め騎士団を抱える貴族達が集まっていた

その面々の期待の眼差しを受けながら

銀凰騎士団の前身である学生達が作ったシルエットギアと

ボスボロットの技術を応用し ラボが作り上げた新型シルエットナイト

次期制式量産機【カルダトア2】が猛ダッシュで入場してきた

 

「速い!!しかもどの機体も一糸乱れぬ動き

これはナイトランナーの高い技量と

新型の操作性の確かさが窺えますな!」

 

「これが新型機の動き!?

あの速度を維持できれば魔獣へ迅速に対処でき

それだけ被害が抑えられる上に戦闘も優位に行える

これほどの機体を量産可能とは・・・」

 

カルダトア2の入場だけで貴族達は度肝を抜かれ

その新型機の性能とその可能性に胸が高鳴った

演習場の門が閉められ新型機6機が整列すると

その機体を造り上げたラボの代表として第一開発工房長である

ガイスカ・ヨーハンソンが機体の解説を行った

 

「如何でしょうか!

これが我らラボの総力をもって作り上げた

【カルダトア2】に御座います!

学生達によって開発されたシルエットギアを操縦機構に直結させたことで

ナイトランナーの優れた技量をそのまま活かすことができ

各関節及び重要な箇所 特に下半身を重視し綱型結晶筋肉を

配置したことで機体の柔軟性、耐久性を遥かに増大させ

機動力においては従来機の3倍近い速度を可能といたしました」

 

    \\ザワザワ//

 

「何と3倍!!

単純に考えれば移動時間が三分の一となるということか!?」

 

「特筆すべきはギアによりナイトランナーの生存率が飛躍的に高まっております

シルエットナイトによる戦闘中はもちろんのこと

仮にシルエットナイトが損傷し脱出することになったとしても

魔獣に対し対応できるほどの最低限の武力を維持し

帰還が可能となったことによるものであり

これを開発した学生諸君も賞賛されるべきものでしょう!」

 

ガイスカの言葉には学生達の技術への敬意も含まれながら

さらに熱が増していく

 

「そしてシルエットナイト自体の生存性を高める新技術こそが

カルダトア2の最大の特徴であるこちらでございます!」

 

ガイスカ工房長からの合図で

カルダトア2が前後に並び両者の背中と胸を接触させる

 

    ガシャーーーン!

 

「あのとおり機体を連結させることでエーテルリアクタ同士を接続し

マナを融通することが可能となりマナ切れに対応することができます

これはかのブリキの騎士のもつ技術を参考に

全てのカルダトア2に標準装備された機能となっております

カルダトア2は従来機カルダトアからあらゆる点で秀でており

我らシルエットナイトラボラトリの一同、

最上の結果を出すことができたと自負しております」

 

「うむ!流石は我が国が誇るナイトスミスの最高峰よ

見事である」

 

「ははあ!!」

 

国王アンブロシウスは満足気に笑みを浮かべ労を労った

 

「して 此度の催しにはその力を見せるにふさわしき相手を呼んである」

 

国王の言葉にガイスカがぴくりぴくりと反応しその瞳に危険な光が宿った

 

「門を開けよ!

すぐに『彼ら』がやってこよう!

シルエットギアを作り 我が命により新たに騎士団と成した者達と

我が国の危機を救った客人 新たな友 ブリキの騎士よ!」

 

  ダカッ ダカカ!!  ガララ!!

 

近衛騎士団のカルディアリアが演習場の門を開くと

異様な重量感のある馬蹄の音と車輪の音を響かせ

人馬騎士が幌付きの巨大な荷馬車をひきながら入場してきた

 

「なんだあれは!?」

 

「人と馬を合わせたシルエットナイトだと!!??」

 

疾走する人馬騎士に演習場の全ての目が集まった

そして人馬騎士はカルダトア2に劣らない速さで演習場内を一周し

中心部 国王が座る貴賓席の前で荷馬車キャリッジを切り離し停止した

そして荷馬車の幌が取り払われるとその荷台には

ボスボロットを中心に紅騎士と白騎士が左右を固め

幌をマントのように纏った団長機が先頭で国王に対し(ひざまず)いていた

 

そしてシルエットナイト全機の胸部装甲が開かれ

操縦席からナイトランナー達があらわれ 国王に向かい騎士の礼をとった

代表して団長であるエルが名乗りを上げる

 

「国王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう

陛下の命により ブリキの騎士ボスボロットの護衛として

最新鋭試作機 人馬騎士『ツェンドルグ』及び

紅の騎士グゥエール改 白騎士アールカンバー改

そして団長機エルウォート

銀凰騎士団ここに参上いたしました!」

 

「うむ ご苦労であった 壮観であるな

して エルネスティよ

そのボスボロット 操縦部の頭がないように見える

ここで皆に紹介するつもりであったが」

 

観客席の貴族達が国王の言葉でざわついた

 

「おお あれが かのブリキの騎士か」

 

「我が国のシルエットナイトとはまるで違う」

 

「ボス殿・・・」

 

荷台の中心で頭がないまま胡坐をかいているボスボロットに

観客席から注目が集まる中 どこからか声が響き渡る

 

「ジャンジャジャー―――ン!!

空にそびえる色男!

スーパーロボット ボスボロット登場だわよん!!」

 

「なんだあの丸いのは!?」

 

「風船か!?魔獣か!?」

 

「あれはボス殿の声、ということは」

 

地上に注目が集まる中 気づかれずに演習場の上空に

浮遊していたボスボロットの頭部が真下に急降下した

 

「パイルダ―― オ―――――ン!!!」

 

   ガキィ――――ン

 

体と合体し ボスボロットが立ち上がった

 

「おお なんと力強い!」

 

    ポロッ    

 

「ありゃあ!?いっけねえ!!」

 

   ドザン!!

 

接合が甘かったのか立ち上がった勢いで頭がとれて落ちた

 

「いってえ・・・」

 

演習場が何とも言えない空気になる中

地面に落ちた頭からボスが這い出てきた

 

「・・・・・・大丈夫か ボス殿」

 

「うぎゃあ おしりが2つに割れちゃったわよーん・・・」

 

「また死ぬかと思った・・・」

 

「もう ボス!陛下の御前で変な冗談言わないでよ!」

 

サブパイロットとして同乗していたゲパードとヘルヴィも出てきた

 

「お ヘルヴィのおむねも2つに割れてるわよん」

 

   ボカン!!

 

ヘルヴィのゲンコツがボスに炸裂した

 

「・・・・・・どうやら大丈夫のようだな

さて皆の衆よ、こちらがかの陸皇事変において我が国の騎士と共闘し

べへモス討伐に多大な武功を上げ マスターワームをも倒した豪傑であり

ブリキの騎士の設計者であり シルエットギア開発の協力者である

我が国にとっての賓客であり友人のボス殿である」

 

気を取り直して国王がボスの紹介をした

既に顔を合わせたことがあるディスクゴード公爵や

セラーティ侯爵ら以外の貴族達は 存在が噂されていた謎のブリキの騎士と

その操者に興味と驚愕の眼差しを向けていた

そして食い入るようにボスボロットだけを見ていたのが

先程までカルダトア2の解説を熱弁していたガイスカ工房長である

不気味な程沈黙してじっと見つめていたが

国王アンブロシウスが ボスボロット率いる銀凰騎士団と

精鋭アルヴァンズが駆るカルダトア2による模擬試合を行うことを発表すると

ラボの所長オルヴァ―とともに国王の元へ向かった

 

「陛下 この模擬戦にはラボからもう一機の新型を

参加させていただきたく お願いに上がりました」

 

「何と もう一機とな?」

 

「はっ まだ量産の段階には入っておらずこの一機のみですが

カルダトア2とはまったく異なる機体でございます」

 

「ほう そのような隠し玉を用意しておったとは

よかろう わしも実に興味がある 呼ぶがよい」

 

「はっ!直ちに合図を出します!

カルダトア3 出撃せよ!!」

 

   ゴ ゴ ゴ ゴゴ ゴゴ!!

  

  キューン キューン ガガガ!!!

 

カルディアリアが2機がかりで開けた門を1機で軽々と開けて

独特な音をたてながら新型機【カルダトア3】が入場してきた

 




水木一郎氏が・・・・・・
梁田清之氏やアントニオ猪木氏の訃報続きで空いた心の穴に
巨大ドリルをぶち込まれた気分です
ずっとメドレーで聞いてますが 穴が埋まるどころか悲しい風が吹くばかりで
でも聞かずにはいられない状態です
今年はこういうニュースが特に多い気が・・・

寒い日が続いています お体ご自愛下さいませ


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共鳴

   ―演習場の外 門前―

 

門の前でカルダトア3を降りて出番待ちをしている男に

フレメヴィーラ王国の王子(現国王の孫)である

エムリス・イェイエル・フレメヴィーラが声をかけた

 

「おう!久しぶり 今留学から帰ってきたぜ!」

 

「お帰り 若旦那 元気そうだな

後ろの護衛の人達はお疲れみてえだけど」

 

「はっはっは お前も相変わらずのようだが

後ろのそいつはすげえな!!

こんなシルエットナイトはクシェペルカ王国でも見たことがねえ!!

留学に行ってる間にラボがこんな物作っていたとはな!!」

 

「じいちゃん達が毎日頑張ったからな」

 

「はっはっは!ガイスカか!!

お前の『じいちゃん』も流石だな 元気そうでなによりだ!

それよりこれから御前試合だってなあ!

頼む!俺も乗せろ!!」

 

「まあ 工具箱とかをズラせばどうにか乗れるか

オイラはいいけどよ若旦那」

 

エムリスの強引さに慣れた男はそう返答したが

エムリスの護衛達が慌てて止めに入る

 

「殿下 それはご勘弁を・・・

まずは陛下に帰還の挨拶しなければ」

 

「じいちゃんに挨拶か

どうせ御前試合が終わった後になるんだ

新型シルエットナイトの中からただいまって言った方が

面白いじゃねえか!」

 

「そんな 殿下・・・」

 

「若旦那 乗るならこの予備のシルエットギアを着てくれ

あと 座席なんてねえから立ってどこかにしがみつくしかねえぞ」

 

「任せとけ!どんな暴れ馬だろうと乗れる!

要は気合だ!!」

 

嬉々として初見のシルエットギアを装着したエムリスは

カルダトア3に乗り込んだ

 

「変わらねえなあんたは 懐かしいぜ・・・

お じいちゃんの合図だ いくぜ」

 

「よし!俺のことは気にするな 行け!」

 

「いよぉーし! カルダトア3発進!!」

 

カルダトア3が動きだし 門を自ら開けて演習場に入場した

 

 

ゴ ゴ ゴ ゴゴ ゴゴ!!

  

  キューン キューン ガガガ!!!

 

「何だあれは!?」

 

「あの下半身 足ではないぞ!

車輪?しかし何か巻き付けてあるような?」

 

「あの腕はなんだ?肘にあたる関節がないぞ!?

まるでブリキの騎士のようではないか」

 

入場してきた形状からカルダトアとはまったく異なるカルダトア3に

観覧席の貴族達は騒然となった

何とも形容しがたい異質な下半身 武器をもたないが太く長い腕

不自然なほど大きな頭部と 背中には鞄を背負っているように見える

機体のシルエットは明らかに自分たちが知るナイトではない

強いて言えば先に登場した人馬騎士やブリキの騎士に近いか

とても自国のラボが正気でこさえた代物に見えなかったのだろう

だが この姿に見覚えがある人物がいた

 

「ボス あの下半身キャタピラですよね」

 

「おうよ それにあの形 どう見ても」

 

「ええ あれです」

 

ボスとエルだけは知っていた

この世界ではいるはずのない機体 その名前は・・・

 

「「ゲッター3!!」」

 

ボスがいた世界の日本でのマジンガーZに並ぶ

代表的なスーパーロボット ゲッターロボの水陸両用形態である

 

「・・・この国って戦車あんのか?」

 

「いいえ ボスがイメージしてるような戦車はありません

大砲や馬車などがありますから 他の国にはあるのかもしれませんが

もし戦車があればその発展型として・・・

ガンタンクやゲッター3のようなシルエットナイトが生まれるかもしれません

ですが いきなりあれができるとは考えにくいですね」

 

エルなりにカルダトア3を分析しながら

これを作ったであろうガイスカ工房長の解説に耳を傾ける

 

「このカルダトア3は 持ち込まれたシルエットギアのうち

騎操鍛冶師(ナイトスミス)用のモ―トリフトの発展型でございます!!

鍛冶師に多い我々ドワーフは魔術の使用が不得手ですが

下半身を履帯を装着した車輪にすることで操縦を簡略化し

さらに安定感を増したことで上半身に注力しております!

ギアによる直接制御をより精密に行うために

両手は工具を持つことを前提に両腕ごと新規で開発したため

製造コストがかなり高くつきましたが・・・

精密性、耐久力、そして出力はまさにシルエットナイトを作る上で

これからの時代に必要不可欠なものになると自負しております!!!」

 

ガイスカがさらに熱弁する

 

「うむ 見事である

ならばシルエットナイトではなくシルエットスミスと呼ぶべきか

まさに新たな時代を作る新型であるな!」

 

「ありがたきお言葉!!

今回は開発段階からテストランナーをつとめている我が孫が乗っております

勿論 模擬戦においてはアルヴァンズの精鋭にはおよびませんが

ボスボロットの補給装置を我々なりに再現した

補給用携帯型エーテルリアクタを装備しており

戦場での一時的な修理と補給を可能としております」

 

「なるほど 魔獣相手の遠征を想定しているということか

流石は我が国が誇るラボである

そしてあの機体にはお主の孫 そうかあやつが乗っておるのか

懐かしいのう 我が馬鹿孫とともに泥だらけで遊んでおったあの童か」

 

懐かしみながらもその馬鹿孫が共に乗っていることまでは知らない国王は

戦力の均衡をとるために

 

 銀凰騎士団側

ボスボロット

一個小隊(エルウォート グゥエール改 アールカンバー改)

騎馬一騎(ツェンドルグ)

 

 ラボ側

騎士二個小隊(カルダトア2×6機)

鍛冶師(カルダトア3 1機)

 

という編成で模擬戦を行うことを宣言した

 

 

   ―銀凰騎士団側―

 

「なんであっちとこっちで数が違うんだ?」

 

「定石として『1つの騎馬に対して歩兵3を当てる』ということさ

シルエットナイトにも当てはまるかは

やってみないとわからないがね」

 

「ラボが作った新型はギアの新技術を使っているとはいえほぼ未知数だ

正直 分が悪いとも言えるが・・・」

 

「はい!分の悪い賭けは嫌いじゃありません!

実に楽しみです 是非ともこちらの実力を見せた後に

あちらにも乗せてもらいましょう!」

 

「いいじゃねえか かっこいいとこみせてやるわよん」

 

「・・・まあ君たちが相変わらずなのは頼もしいとして

どう戦う?」

 

ディートリヒがラボの戦力を見ながら戦術を問う

 

「ボスボロットの補給装置を当てにして長期戦に持ち込み

じっくり新型の性能を堪能する・・・・・・

というのもアリですが

相手にも補給と修理の準備があることを考えれば

粗がでるのはこちらかもしれません

ならば こちらから仕掛けるとしましょう」

 

「あのゲッター3みたいなのはおれさまが当たる」

 

「ボス!?」

 

「そうですね もし仮にあの機体がラボ側の言う通り

鍛冶師のための機体なら騎士に守られる形になるので

突破できるのは力のボロットか速度のツェンドルグになります

キッドとアディは速度で攪乱して陣形を崩し

先輩方が脇を固めながらボスにつっこんでもらいましょう

そして僕は『これ』を初手から使います」

 

「了解だ」

 

「仰せのままに」

 

「任せとけ!」「行っくよー!」

 

「いいとこみせたるわよー!」「おっしゃ!」「サポートは任せて」

 

「さあ ロボット大戦を始めましょう!」

 

   ―カルダトア3内―

 

「こいつはぶったまげた相手だ ははっ!!

いよいよはじまるな!ワクワクしてきたぜ!」

 

「若旦那 乱戦になるぜ

ひっくり返ってもケガすんなよ」

 

「おう!(パワー)のぶつかり合いになりそうだな

俺に遠慮はいらん!思いっきりやれ!」

 

「任せとけ!!」

 

 

 

   ―演習場―

 

開始の合図の法撃が上空に上がるとラボ側はカルダトア3を中心に

囲むように6機のカルダトア2が陣形を組む

銀凰騎士団側からはカルダトア3が見えない程の鉄壁の布陣である

エルウォートの合図でツェンドルグが単騎で分かれながら

カルダトア3を側面から攻撃するように大きく曲がり疾走する

定石通りにカルダトア2 3機(第二小隊)が迎え撃とうと陣を離れる動きを見せると

ボスボロットとその両脇にグゥエール改とアールカンバー改の3機が

正面からカルダトア3を目掛けて走り出した

 

カルダトア3を守るように残り3機(第一小隊)が前と左右を固めると

ボロットの左側にいたグゥエール改が さらに左に分かれた

正面で構えていたカルダトア2の操者イドラは

グゥエール改の後ろ 開始から一歩も動いてない団長機、

エルウォートが こちらに向かい自らが持つ槍の2倍以上の長さの何かを

向けているのに気づいた

 

「何だあれは!?あんなものがどこにあった?」

 

エルウォートが馬車から幌を巧みに使い隠しながら下ろしていた

秘密兵器【物干し竿】が先制弾を放つ!

 

「集中して・・・ Eモード発射!」

 

  ドン! ドン!       ガガアン!!

 

大気弾丸系(エア・バレット)が従来機の倍以上の長距離射撃から

イドラ機の両足を打ち貫いた

 

「ぐうううっ・・・つ!!」

 

「そんな馬鹿な!あの距離から捉えるだと!?

しかも下半身を強化しているカルダトア2の足を破壊するとは

何の冗談だ一体・・・!

すぐに抑えなければ!!」

 

「いかん!正面の3機から目をそらすな!!」

 

イドラ機が戦闘不能になったことで浮足立つツーヴァだったが

第一小隊隊長であるアーニィスが押しとめる

そこにアールカンバー改がアーニィス機を

グゥエール改がツーヴァ機に襲い掛かる

 

「初手は狙い通り!」

 

「流石我らの団長!

ボス!ここは我々に任せてくれ!!」

 

「おうよ!!頼んだぜ!!

ゲパード!ヘルヴィ!!いっくわよー!!」

 

「やってやる!やってやるぞ!!」

 

「後ろは任せて!さあ!!いって!!!」

 

カルダトア3を守っていた第一小隊が完全に抑えられ

一直線に走るボスボロットが急接近した

 

「しまった!!?」

 

焦るアーニィスだったが自分と対峙するアールカンバー改の堅実な攻めに

背を向けるわけにはいかなかった

 

「ホイきたあ!オイラに任せろ!」

 

    ガチィイン!!!

 

ギリギリギリギリ・・・・!!!

 

ボスボロットとカルダトア3が正面からぶつかり合い

両手を組み合わせ力比べの体勢となった

 

「すげえ衝撃だ!!

こっちもあっちも大したパワーだ!!」

 

「舌噛むなよ若旦那!

うおりゃあああーー!!!」

 

カルダトア3がさらに力を込めるが・・・

ボスの狙いは力比べではなかった

ロンドベル、ガンドール隊の全機に搭載されている必須装備

極めて近距離でしか使えないが異星人や人外にも効果がある、

接触回線をカルダトア3へつないだ

 

「いよし!これで・・・

 

聞こえてるな!!生きてるかあ!! ムサシ!!!

 

「・・・・!?

オイラはこのとおり生きてるぜ!ギルギルガン戦以来だなボス!!

 

かつての戦友の力強い返事にボスは歓喜した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルヴィがサブパイロットに登録されました

 

 

 

 

 

サブパイロット情報

 

 

 

ヘルヴィ・オーバーリ

 

 

 

移動力+1

 

援護防御+1

 

騎操士

 

 

 

精神コマンド 加速 ひらめき 信頼 ??? ??? ???

 

 

 

 

 

 

 

ゲパード

 

 

 

カウンター+1

 

援護攻撃+1

 

騎操士

 

 

 

精神コマンド 根性 直撃 不屈 ??? ??? ???

 

 

 

 

 

 

 

メインパイロット情報

 

 

 

ボス

 

 

 

地形適応 空C 陸S 海C 宇宙C

 

 

 

特殊技能

 

底力   Lv7

 

援護攻撃 Lv2

 

援護防御 Lv2

 

反骨心(HPが50%未満になると効果が発動 最終命中率+30%、装甲+200、被ダメージ時の気力上昇が2になる)

 

 

 

精神コマンド 自爆 ド根性 脱力 挑発 熱血 ???

 

 

 

 

 

サブパイロットに子分(男性)が乗ると友情補正 命中・回避 人数×30%

 

サブパイロットに女性が乗ると片思い補正 攻撃・防御 人数×30%

 

 




あけましておめでとうございます

拙作では独自の開発路線に入っているラボの要因
スパロボIMPACTでは開始時に既にいなかったゲッターロボのムサシがここで登場です
詳しくは次回にて 本年もよろしくお願いいたします


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気迫

 

―演習場―

 

「ボス!

じいちゃんのためにもここは勝たせてもらうぜ!!」

 

「ムサシ!

おれさまも新しい子分たちにいいとこ見せてえんだ!

ボロットパーンチ!!」

 

力比べの体勢からボスボロットの右腕が

カルダトア3の顔面を狙う!

 

「もらったぜ!!」

 

その腕をつかみ 勢いを利用し一本背負いを仕掛けた

 

「おわー--!!?」

 

ボスボロットの背中が地面に叩きつけられるその瞬間

 

「任せて!!!」

 

     ブアア!!!

 

      ズシン・・・・・・

 

ヘルヴィが起動させたボロットの背部バーニアが

受け身となり 衝撃が大きくやわらいだ

ボスボロットがかつての大戦でロンドベルに出向する際に

宇宙での運用のためにボディに取り付けられた姿勢制御用のバーニアが

サブパイロットにより地上でも効果的に使えるようになったことが活きた

 

「ゲッパ!腕がつかまれたまんまはまじい!!

うて!!!」

 

「任せろ!」

 

  ガチャ!  ドン!!

 

ゲパードの操作によりボスボロットの腹からでた

サブアームによる法撃でたまらずカルダトア3の手が離れた

 

「逃がさねえぞ! ゲッターミサイル!!」

 

   ドン!!!

 

ムサシの声に応えるように カルダトア3の頭部

右耳に当たる部分から法撃が放たれボスボロットを襲った

 

「ぎえええ~~~!?」

 

直撃を受けたボスボロットが転がりながら離れていった

 

 

   ―観覧席―

 

「ご覧ください!

魔法に不慣れな我が孫のために開発した新技術の数々を!

接近戦においては従来機に倍する膂力と精密な動き

法撃のための術制御を特製マギウスエンジンで簡略化し

眼球水晶のすぐ横に魔導兵装をとりつけたことで自然に狙うことができ

さらには特定の言葉で法撃を放つ音声入力!

その有用性が今まさに発揮されております!!」

 

カルダトア3の活躍に 興奮するガイスカ工房長が

それを可能とした機能について熱く解説していた

 

「ラボがこれほど伸びていたとは・・・

荒療治が過ぎたか いや これほどの技術、

ボス殿があらわれる前からか

しかも孫のためと堂々言い放ちおった」

 

国王アンブロシウスもラボが見せる成果に驚いていた

 

 

   ―演習場―

 

両者の法撃により互いにダメージを負い 距離ができたところに

 

    ズドォン!!

 

エルウォートによる長距離法撃が撃ち込まれ大きく土煙が舞った

 

「いったん仕切り直しです!

キッドとアディはボスボロットを回収!!

先輩方はしんがりを!!」

 

「「「「了解!!!」」」」

 

人馬騎士ツェンドルグがカルダトア2の攻撃を振り切り

大きく旋回しながらボスボロットに向かって駆け出し

その後部から荷台を牽くために使っていた『牽引索(トーイングアンカー)』を射出し

すれ近いざまに倒れていたボスボロットの足をつかんで

そのまま引きずってエルウォートの元に向かった

 

「どえええ~~~!!」

 

引きずられていくボスボロットを追撃しようとするカルダトア2の前に

グゥエール改とアールカンバー改が立ちはだかる

数の上ではカルダトア2の方が有利だったが

既にボスボロットには逃げられていることに加え

紅白の両騎士と団長機による長距離援護射撃を警戒し

アルヴァンズのリーダー アーニィスは追撃を中止し

ダメージを負ったカルダトア3と足を撃たれたイドラ機を守る判断を下した

 

 

     ―銀凰騎士団側―

 

引きずられてきたボスボロットがエルウォートの前で解放された

 

「ボス!大丈夫ですか!?」

 

「おうよ!どってことねえわよん!」

 

「敵に投げられたときより

味方に引きずりまわされた方がきつかったわ・・・」

 

「まったくだ・・・・・・」

 

エルからの呼びかけに

ボスボロットの操縦席ではケロッとしたボスと

目を回していたヘルヴィとゲパードが答える

 

「ヘルヴィちゃんとアディちゃんのおかげで助かったぜ

あんがとよ」

 

「ボス 俺も活躍したんだぜ」

 

「お手柄だぜゲッパ 頼りにしてるぜ」

 

「ゲッパか いいなそれ 気に入った!」

 

ボスがとっさにつけたあだ名にゲパードが喜んでいる間に

ボスボロットがマナを消耗している機体の補給をすませていく

 

 

     ―アルヴァンズ側―

 

カルダトア3がこの場でのイドラ機の応急修理は不可能と判断し

破損した両足を外し補給用のエーテルリアクタを隣のフィリア機に接続した

 

「隊長さん 他に補給が必要なのはあるかい?」

 

「いや十分だ ムサシ君

それよりすまなかった 我々が不甲斐ないばかりに

ブリキの騎士の接近を許してしまった」

 

「気にしないでくださいよ

弾のとんでこない戦場なんてありませんから

それにこいつがあれくらい動けることがわかったんで

じいちゃんも喜んでますよ」

 

「まったく・・・ 今日は『徒人(ただびと)』に驚かされてばかりだな

む あちらも補給がすんだようだ

今度はこちらから仕掛ける まずはあの団長機を抑える

ムサシ君も可能な限りついてきてくれ

孤立すれば狙われるからな」

 

「わかったぜ隊長さん

カルダトア3いくぜ!!」

 

キューン キューン ガガガ!!!

 

駆け出していくカルダトア2を追いかけ

カルダトア3のキャタピラがうなりをあげる

 

 

 

    ―演習場 中央―

 

銀凰騎士団とアルヴァンズ第一小隊がぶつかり合い乱戦となった

 

「速い!これがラボの新型のスピードか!?」

 

「しかも くっ!?

ツェンドルグの死角からの攻撃が よけらんねえ!?」

 

「キッド アディ!距離をとって足を使い

ランスとアンカーを活かせる距離を保って!」

 

「了解!」

 

ツェンドルグが乱戦から離脱すると離れたところで待機していた

上半身だけとなったイドラ機とそれを前後から支えている第二小隊と目が合った

 

「あんなところに、壊れたやつを下げんのか?」

 

「キッド!こっちに杖を向けてる!」

 

「いや これだけ離れてたら法撃あたんねえだろって!

なんだこのマナの高まりは!?」

 

      ドォォン!!!!

 

「うそだろ!?」

 

「ヒヒーーン!?」

 

 

第二小隊から放たれた特大のエア・バレットがツェンドルグの巨体を

演習場の壁まで吹き飛ばし その衝撃で動かなくなった

 

「キッド!アディ!!」

 

「人馬騎士は第二小隊が仕留めた!

あとは我々第一小隊が大将首をいただいていく!!」

 

アーニィスの乗る隊長機がカルダトア2の速度を活かし

狙撃体制をとっているエルウォートに切りかかった

 

    ガキィン!!!

 

とっさに物干し竿で防御し持ちこたえた

 

「なんだ!?あの無理な体勢で耐えただと!

いや ちがう しゃがんでいたのではない!

この機体は!?」

 

激突の衝撃でエルウォートの姿を隠すマントとなっていた幌が外れ

その全容が明かされた

上半身に対し足が非常に短く逆に足先は非常に大きく

全体の大きさは三~四頭身ほどのものだった

 

「狙撃のために常にかがんでいると思っていたが

単に背が低いだけだったか

その体ならさぞ安定しているのだろうが

短い足でこのカルダトア2の動きについてこれまい!」

 

鍔迫り合いの状態からアーニィス機がバックステップで距離をとると

エルウォートにも動きがあった

 

「SD体型にはこういう技もあるんですよ!!

ウォートキー-----ック!!!」

 

   ギュオォン!!   ズシャアアン!!!!!

 

背部推進器が起動し、その勢いのままに

ビッグブーツがアーニィス機に炸裂した!

 

「なんだとぉ!!!???」

 

エルが開発を始めていた魔導噴流推進器(マギウスジェットスラスタ)は御前試合までに

想定していたレベルでの実用化までは間に合わなかったが

ボスボロットの制御バーニアを参考に短距離を飛ぶ(跳ぶ?)機能を実現した

この世界初の空飛ぶシルエットナイト誕生に向けての最初の第一歩を

まともに叩き込まれアルヴァンズの隊長機はふっとばされた

 

「!?」

 

     ガシィ!!

 

団長同士の激突に決着がつき 勝負あったかとだれもが思ったその瞬間

エルウォートの胴体を掴む手があった

 

「カルダトア3!!」

 

「いいぞムサシ!獲物を仕留めた瞬間こそ最大の好機!

狩りの鉄則だ!!さあ気合をいれろー-!!!!」

 

「任せろ 若旦那!!」

 

「そうはさせねえよ スペシャルボロットパンチ!!!」

 

    グワラグワシャアアン!!!

 

エルウォートに手を伸ばしたカルダトア3の横顔に

ボスボロットの鉄拳が決まった

 

「きまったあ・・・ おれさまかっちょいい!!」

 

これがガンダムファイトであれば即失格になるほどの頭部破壊であり

ボスボロットやマジンガーのような頭部に操縦席があれば

パイロットが失神し操縦系統が不能になるほどの衝撃だったが

カルダトア3にとっての頭部は重要な部品ではあるが

眼球水晶と魔導兵装がつぶれた程度でまだ十分に動けたのだ

 

   ブオン   ガシン!!

 

カルダトア3の両手がボスボロットを完全に掴んだ

 

「くらえっ!!」

 

パンチの勢いを利用しボロットの体が浮き上がり

直線の動きが円運動に変わり回転していく!

 

「だ・い・せ・つ」

 

  ミスミスミスミス!!!

 

その勢いは竜巻を生み出し 助けに入ろうとした

グゥエール改もアールカンバー改も近づけなかった

 

「ざ・ん」

 

   ビシ! ビシ! ビシ!

 

だがその威力にカルダトア3の腕も耐えられなかった

 

「おろーー  し! しまったあ!!?」

 

完全に千切れたカルダトア3の両腕から

すっぽ抜けたボロットが宙を舞った

 

「ぎいええええー--・・・」

 

「うわああー--・・・」

 

「だめ・・・目が回ってバーニアが・・・」

 

     ズガアアン・・・・!!

 

エルウォートの横に投げ出されたボスボロットは

名前以上にボロボロの姿だった

 

「いってえ・・・ あんにゃろめ・・・

エル! その物干し竿でうて!!」

 

「そんな!?ムチャです!

この物干し竿はそんな意味で名付けたわけでは!」

 

「あん?ムチャでもヌケでもいいからやるんだよ!!

ムサシに勝つにはそれしかねえんだわさ!」

 

「・・・・・・わかりました

この一撃にかけます!」

 

うつぶせに倒れていたボスボロットが頭を起こした横で

エルウォートが右バッターボックスで入ったような構えをとり

どこかピンときていないボスが乗った頭に物干し竿を・・・

 

「ボロット! ホーーーム・・・・・・」

 

「そこまで!!双方剣を納めよ!!!!」

 

これまで戦いに見入っていたアンブロシウスが

御前試合終了を宣言した

それにより素早く連続して銅鑼が打ち鳴らされ

終了の合図が戦場に木霊こだまし 全ての期待が動きを止めていく

 

「両者ともいずれ劣らぬ素晴らしき機体である!

その凄まじき戦い存分に見せてもらった!!

中でも聞きしに勝るブリキの騎士の武勇

前例なきナイトスミスの操るカルダトア3の奮闘

共に惜しみない賛辞を送ろう!!」

 

     \\\\パチパチパチパチ!!!!////

 

戦場に立つ騎士たちへ 観客席から盛大な拍手が送られる

それを浴びながら演習場の真ん中で仰向けに倒れ

大の字になって寝っ転がったボスボロットを見て

全ての騎士たちが終戦を感じ 戦場の空気から覚めたのだった




御前試合はこれにて終了 グゥエール改やアールカンバー改の見せ場がどうにも
バトル描写はやはり難しい ムサシについてはまた次回に詳しく

寒波厳しく日本だけでなく世界中で大変な被害があった模様
ようやく節分が過ぎて 春が待ち遠しいものです


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復活

   ―貴賓室―

 

「この!!

馬鹿孫がーーーー!!!!!」

 

御前試合を終え騎士達を労った国王だったが

そのときに姿を見せた(隠れきれなかった)自らの孫である

フレメヴィーラ王国第4王位継承者、エムリス・イェイエル・フレメヴィーラと

この貴賓室で二人きりになった途端に雷とゲンコツを落とした

 

「いってええ・・・ 久しぶりじいちゃん

今帰ったずべぐえ!?」

 

言い終わる前に2発目のゲンコツが脳天に直撃した

 

「この馬鹿孫めが・・・

相変わらずの言葉遣い、マルティナでも直せなかったか

まあ予定していた留学期間を前に呼び戻したのこちらだが」

 

「・・・その理由は 新型のシルエットナイトと

あのブリキの騎士か?イヤ デショウカ?」

 

「ふん まあそれについてはリオ(第一王子)がいるときにな

今は あのカルダトア3の乗り心地を聞くとしようか」

 

「じいちゃんも相変わらず好きだねえ・・・」

 

 

 

   ー格納庫ー

 

「若造!あの人馬騎士の動き!

さてはエーテルリアクタを複数搭載しているな!」

 

「その通りです!ツェンドルグは2基積んでおります!

それよりもカルダトア2はあの速度、出力を実現しながらも

現行機と遜色ない稼働時間でしたが合体前にどうやって?」

 

「ふふふ あれぞ長年におけるラボの研究と技術の蓄積と

新技術の融合による成果・・・

エーテルリアクタの改造によるものだ!」

 

「なんと!?それは実に興味深い!!」

 

格納庫ではエルネスティとガイスカが互いに顔を突き合わせ

議論に熱を上げていた

 

「すげえ エルと互角に渡り合ってる人がいんのかよ」

 

「たしかに団長殿の御同類だね あの御仁は」

 

「エル君 あんな風に齢をとっちゃうのかな・・・」

 

「・・・あの御前試合を戦い抜いて

国王陛下から直々に労いのお言葉をいただいた後で

よくもあれだけ喋れるものだ」

 

「本当だぜ、 あれ?そういやボスはどうした?」

 

「『食堂でメシを食う』って言ってたわよ」

 

「よく 食えるな あの後で・・・」

 

 

 

     ー食堂ー

 

「この国のメシもうめえよな!」

 

「おうよ たまに日本の飯も恋しくなるが

腹いっぱいうめえもんが食えるから最高だぜ!」

 

食堂では戦いを終えた二人の大食漢が大盛りの食事をたいらげていた

 

「それなんだけどよお

おれさまラーメンをつくりてえんだが

魚が手に入らねえか?

ボロットで釣りに言ったら水の魔獣に襲われて

やばかったんだわさ」

 

「オイラも経験あるぜ

あれはあれでうめえんだがな」

 

「食えるのかよ!?あれ」

 

「メカザウルスや機械獣と違って食えるんだよなあいつらは

まあクセはあるけどよ」

 

会話のなかでボスにとって自分の知るムサシだと確信し

気になっていたことを聞いた

 

「・・・ムサシ おめえはいつからここにいるんだ?」

 

「・・・・・・生まれた時から だな

もっとも 思い出したのはわりと最近だがな」

 

「そうなのか?」

 

「ああ おまえさんのボスボロットの腕が持ち込まれた時

あれに触れた瞬間 あの時の記憶がよみがえっちまったのよ

日本での、『巴武蔵』の記憶がな・・・

あの腕、オイラにはわかる ゲッターロボが・・・

ゲッター3がまざってるんだろ」

 

「そうそう ボスボロットは壊れるたびに敵味方色んなスクラップで直すから

ゲッターロボからも壊れたのや予備パーツとかもらったぜ」

 

「リョウやハヤトは元気だったか?」

 

「ああ ムサシの穴をベンケイってやつが必死に埋めて

ゲッターも乗り換えながら長いこと一緒に戦ってたわよん」

 

「そうか・・・」

 

「なあ おれさまは直接見てねえけど

ムサシは戦死したと聞いてたんだけどよ」

 

「オイラもよくわからねえが 今のオイラは・・・」

 

     ガラ!!

 

食堂のドアを勢いよく開けて 一人のドワーフが声をかけてきた

 

「やっぱり ここにいた! じいちゃんが呼んでるぜ兄貴!!」

 

「お かわいこちゃんだ! ムサシ紹介してくれよ」

 

「妹だよ 今のオイラはあいつ デシレアの双子の兄で

カルダトア2や3を作ったガイスカじいちゃんの孫

デシムサシ・ヨーハンソンって名前だ

今でもムサシって呼ばれてるからムサシでいいぜ

レア こっちはボスボロットのランナー ボスだ」

 

「よろしくレアちゃん!」

 

上機嫌で握手を求めるボスにデシレアも応じた

デレシアはボスやムサシよりも小さく

銀凰騎士団内でも小柄なエルと大差ない身長であるが

日ごろから槌を振り回し鍛え上げられた身体だと一目でわかる

 

「ドワーフがナイトランナーなんて珍しいね

体つきといい 兄貴みたいだ よろしく!

あのブリキの騎士について詳しく聞きたいところだけど

兄貴 じいちゃんが大事な話があるから来てくれってさ

私についてきて」

 

「ああ わかった ボス 残りは食べといてくれ」

 

「お いいのか んじゃもらうぜ またなレアちゃん!」

 

ムサシを連れ食堂を去るデシレアの編み込まれた長髪が見えなくなるまで

見送ったボスは食事を再開した

ムサシとの再会がこれからの大事の予兆とも知らずに・・・・・・

 

 

 

     ー格納庫ー

 

「よいか若造 ここからが本題だ

ブリキの騎士がこの国にあらわれた陸皇事件・・・

その陸皇亀(べへモス)の死体と魔石を見たときに

私の中に天啓のようなひとつの仮説が生まれた」

 

「仮説、ですか」

 

ガイスカはエルが持っていた黒板を受け取り説明していく

 

魔力ー【魔石】→魔法(エーテルとして空へ帰る)

 

「一般的には 体の大きな魔獣ほどその心臓に大きな魔石があると言われておる、

実際あのべへモスには巨体に見合った大きな魔石があった・・・

魔石とは触媒結晶の一種であり 生物が自ら生み出した魔力(マナ)を魔法と変えるものであり

あの巨体を動かすための身体強化魔法を可能にしていたのは確かだが

あの魔石こそがべへモスを生み出したと考えられるのだ」

 

「魔石が・・・」

 

「うむ そして長年ラボの研究によってエーテルリアクタには

触媒結晶が使われていることもわかっている つまり

エーテルリアクタとは極論すると・・・」

 

エーテル(空気内)ー【魔石】→魔力

 

「こういうものだと推察される」

 

「魔石はまったく逆の性質をあわせもつわけですね」

 

「うむ 何某かの条件下でこうなるのだろう

魔獣はこれを自然に行い それを再現したものが

一番肝となるエーテルリアクタの秘密であろう

この御前試合の結果次第ではそれに触れる機会を得られるはずだったが

今はそれはよい

若造よ 未来あるおぬしへ本当に伝えたいことはこの後、

エーテルの可能性についてじゃ」

 

エルと向き合うガイスカの目つきが少し変わった

 

「魔法やシルエットナイトを動かすことだけじゃないと」

 

「うむ

べへモスはつまるところ巨大な亀であるが、

亀がただ大きくなったわけではないことはお主も知っていよう」

 

「たしかにそうですね ただ大きい亀なら師団級とは呼ばれません」

 

実際戦場でべへモス相手にボスと肩を並べて戦ったエルにとって

初めてのロボ戦であるべへモスの威容はいつでも鮮明に思い出せる

 

「巨大な魔石が多くのエーテルを取り込み大きな魔力に変える

その過程のいずれかにおいて生物の肉体にもなにかしらの影響を与えた」

 

「エーテルやマナが生物の進化を促した、と」

 

エルの言葉にガイスカの瞳に怪しい輝きが増す

 

「進化か!?なるほど そういう見方もあるか

ふふふ 若造 やはりお前は面白い

私なりにこの持論をもとにエーテルリアクタの改造に着手した

エーテルリアクタの本体は極めて硬い金属で覆われていてな

伝説の精霊石と思われるが 我らドワーフの槌すらはねかえされ

内部に直接手がだせなかったのだが・・・

エーテルの取り込み方の工夫を行うことで炉の出力や稼働時間を上げることに成功した!

それを実戦投入したのがカルダトア2であり3なのだ!!」

 

「それは素晴らしいです!

なるほど!

カルダトア2の高速移動やカルダトア3の馬力を可能にしながら

現行機と遜色ない稼働時間を実現したのはそんなカラクリが!

たとえば空気中のエーテルを前もって分離濃縮 それとも

空気そのものを圧縮して大量に吸い込ませる・・・

いえ それよりもっと・・・・・・」

 

ガイスカの語るラボの実績に感心しながらもエルは自分なりに

エーテルリアクタの改造案を考え模索していた

そんなエルにガイスカも注目する 目の前のこの鳳雛、

いや銀の鳳なら・・・、と

 

   ガラ・・・

 

格納庫にデシレアに連れられてムサシがやってきた

 

「お~い じいちゃん呼んだか」

 

「おお ムサシ まっておったぞ

レアもご苦労

紹介しよう 我が孫でありラボの第一工房長補佐であり

カルダトア3のランナー デシムサシ・ヨーハンソンだ

そして隣の娘が同じく我が孫でありムサシの双子の妹であり

第一工房の鍛冶師デシレア・ヨーハンソンだ

ムサシ、レア この銀色の若いのが銀鳳騎士団の団長であり

あの人馬騎士や新装備を作り 短足の団長機で猛威を振るった」

 

「はい!ボスの子分 エルネスティ・エチェバルリアです!

お会いできて光栄ですムサシさん!

よろしくお願いします!!」

 

握手を求めるエルにムサシが応えた

 

「ああ よろしくな!」

 

     ガシィ

    

「おお ボスやバトソンともまた違ったごつい手

これが柔道家の手・・・」

 

ムサシの右手をエルの小さな両手で包むように握る

 

「ん?もうボスにオイラのこと聞いてたのかよ?

こんなかわいい子分がいるなんて ボスも・・・イテテ!?」

 

     グイッ

 

隣にいたデシレアがムサシの耳を怒ったように引っ張る

 

「兄貴!いくら可愛いからって小さな子供にデレデレしない!」

 

「あの 僕はれっきとした男子ですよ

ライヒアラ学園の中等部の学生です」

 

「ほんとかよっ!?」

 

「そうなのかい!?

人間であたしらドワーフ族と同じくらいの騎士ってだけでも珍しいのに・・・」

 

「これ二人とも!!

孫たちが失礼したな

エルネスティ団長 頼みがある

このムサシを銀鳳騎士団で使ってほしい

カルダトア3も込みでな」

 

「大歓迎です!!」

 

「そうきたか」

 

「じいちゃんいいのか!?

兄貴が抜けたらじいちゃんの補佐が!」

 

「幼い頃からムサシには鍛冶師としての誇りと技術をありったけ叩き込んだ

もう既に教えることはない 後は新しい現場で新たな知識と経験を積み

・・・さらなる高みを目指してほしい

それが次代のラボとこの国のなによりの力になる

行ってくれるなムサシ!」

 

「任せてくれよじいちゃん

レア オイラのかわりにじいちゃんを頼んだぜ

あんまり徹夜が続くようなら引きずってでも連れて帰ってくれよ」

 

「兄貴!?

あー・・・ もう!仕方ないねえ、任しときな

団長 兄貴を頼むよ!」

 

「お任せください!

改めてよろしくお願いしますムサシさん」

 

「ああ よろしくなエルネスティ」

 

「エルと呼んでください

それでは修理も兼ねて早速ゲッター、じゃなかった

カルダトア3に乗せてくださいね!

あ ボスも呼ばないと!食堂でしょうか?」

 

ウキウキしてしょうがない様子のエルはボスを呼びに格納庫をとびだした

 

「はやっ!?

何あれ魔法!?」

 

「身体強化魔法だな 上級魔法を難なく使いこなすあの技量

やはりただものではないわ」

 

「面白いことになりそうだぜ

・・・しかし エルは今 たしかにゲッターって言ったな

ひょっとして『オイラ』のことを知ってるのか?」

 

銀鳳の風がドワーフ達の未来も変えていくのだった

 

 

 




今回は難産でした
グリッドマンユニバースやニコ生のグリッドマン一挙放送を見た勢いで
書けるかな と思いきや なかなか・・・
ジャンク品からできたPCでグリッドマンが憑依できるなら
ジャンクの塊のようなボスボロットなら可能性も?

早くも5月になり 日ごとの寒暖差や新しいことへの疲労からの五月病など
色々としんどいこともあるこの時期 お疲れのでませんように


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気合 2回目

「って わけで

ラボからの出向のデシムサシ・ヨーハンソンだ

ムサシって呼んでくれ

そんでボス ラボから返すものがある」

 

「おりょ なんか貸してたか?」

 

「いや 修理のためにボスボロットの腕を借りてただろ

返す前に そっちでもうとっくに直ってたけどよ

オイラたちラボも本気できっちり仕上げてきたぜ

見てくれ!」

 

     バサッ

 

ムサシが巨大な布を取り払うと

そこにはボスボロットの両腕が並んでいた

 

「ありゃ!?預けてたのって片腕じゃなかったか?」

 

「片腕が作れたらもう片腕も作れるに決まってんだろ

それにただ作り直しただけじゃねえ

前より強くなってるぜ!」

 

「そいつはすげえ そんじゃ早速着けてみるわよん」

 

そう言ってボスはボロットに乗り込み 自らの腕を付け替えた

 

  ガチャン! ガチャン! ギュイン  グルグルグルグル!

 

「うわ 腕があんな簡単にくっついて動くとか

ボスボロットって どうなってやがんだ?」

 

ムサシがボスボロットの非常識っぷりに呆れていると

 

「ボスもゲッターチームに言われるとは思ってないでしょうね」

 

エルがムサシ以外には聞こえないようにこたえた

 

「やっぱゲッターって言ったよな?」

 

「ええ それについて詳しい話はボスを交えて三人だけで話しましょう」

 

ムサシの疑問にエルがシーっと 内緒話だと示すと

エルの素性に確信を持った

 

「わかった そんじゃまた後でな

カルダトア3の腕がちぎれたままだから

ちょいと予備と替えとかねえとな」

 

「わかりました 僕たちも手伝いますよ!

早速銀凰騎士団とラボの共同作業といきましょう」

 

「おう 助かるぜ」

 

「親方!ボス!いきましょう!」

 

「おおよ!

早速ラボの新型機をいじれるとは思ってなかったぜ銀色坊主!」

 

「いくわよ~ん!」

 

カルダトア3の修理を通じてあっという間に銀凰騎士団に馴染んだムサシだった

 

 

  ーライヒアラ学園街近くの川ー

 

銀凰騎士団にムサシを加え本拠であるライヒアラ学園に無事帰ってきた翌日

ボスボロットにボス エル ムサシの3人が乗り込みボスボロットだけで

街の外にある川に来ていた

 

国外からの賓客であり未知の塊ボスボロットの持ち主であるボス

次々と新技術を生み出す銀凰騎士団団長エル

国内最高峰の技術者集団であるラボで工房長の孫であり補佐として

幼い頃からその技術だけでなく多くの失敗や成功に触れてきたムサシ

まずはこの3人だけで銀凰騎士団内で共有できる

それぞれの知識や技術をすり合わせる秘密会談を行う、

ということで騎士団を説得し こうして周りに人がおらず

隠れる場所がない見晴らしのいい川のほとりで座り込むボスボロットの

口にあたる部分から釣り竿が3本でていた

 

「やっぱりエルは日本人だったんだな

オイラたちといっしょか」

 

「はい!前世では倉田翼という名前でした

一方的にですがムサシさんやボスのことも知ってましたし

もちろんゲッターロボやボスボロットのことも知ってました

僕が生まれ育ったのは少し先の時代ですけど」

 

「先?よくわかんねえけど

ボスみたいにロボットに乗って直接こっちに来たわけじゃないのか」

 

「そうですね 僕は幼いときから前世の記憶がありましたけどムサシさんは?」

 

「オイラは最近まで日本人だったときのことは忘れてたけどな

シルエットナイトを見たときは ロボットだ、って思ったけどよ」

 

「あ~!わかります!わかります!!

僕も幼い頃にシルエットナイトをはじめて見たときロボットだと思いました!

あのトキメキが僕のこの世界での原点とも言えますね!!」

 

「そういえばこっちだとロボットって言わねえよな

ボスボロットもゲッターロボもロボットから名前とってるのによお」

 

「そうなんですよね~

ここではロボットて言葉が通じないんですよ

まあそれはさておき ムサシさんが前世の記憶をとりもどしたきっかけはやはり?」

 

「ああ ラボに持ち込まれたボスボロットの腕を触った時だな

あの感触 ただの鉄の塊じゃねえ 何か・・・

懐かしい兄弟に呼ばれたような感覚というか

それと一緒にオイラが日本人だった巴武蔵の記憶がいくらか戻ったのよ

ゲッターチームや早乙女研究所のみんな ゲッターロボ・・・

ボスやボスボロットといっしょにあの宇宙怪獣と戦ったこともな」

 

「あのときゃ ゲッターが助けてくれるのが遅けりゃ

おれたちゃ おだぶつだったわよん

あらためて ありがとうよ!」

 

「あんなにつええ怪獣相手にボスボロットだけで囮をやってくれたんだ

こっちこそ ありがとうと言いたかったんだ!」

 

ボスとムサシの間でガチッっと 交わされる握手にエルが目を輝かせる

 

「記録映像ではない リアルでの 伝説の一戦の後日談!

僕はリアタイ世代ではないですが 感動です!」

 

「なんか 照れるな まあオイラにはずいぶん昔のような気がするけど」

 

「エルはいつもこんな調子よ

それよりムサシ ラーメンっておぼえてるか」

 

「ラーメン?

そりゃおぼえてるが そういやこっちでは食ったことねえな」

 

「こっちでもラーメン食いたくてよ 作りてえんだが

おれさま食うばっかで一から作ったことはねえのよ

作り方しらねえか?」

 

「ああ そういうことか

うーーーん・・・ たしか柔道部の合宿とかで作ったことがあるな

スープは粉を買ってたけど 麺は自分らで打ってたぜ」

 

「なるほど 柔道部とか いかにもいっぱい食べそうですから

手作りでコストカットですね!

 

これは完成にかなり近づきそうですね!」

 

「おうよ あ~ 食いたくなってきた

これで魚が釣れりゃ いい出汁がとれるかもしれねえぜ」

 

ボスが釣り竿をいじるが 今のところあたりはない

 

「ムサシさん 麵の材料はおぼえてますか?」

 

「えーーーー、と・・・

たしか・・・ 小麦粉 塩 水 重曹、だったような?」

 

ムサシが指折りながら記憶をひねり出す

 

「材料は揃いそうですね

重曹はないかもしれませんが」

 

「うどんやほうとうなら重曹はいらねえはずだ

そっちもやった、気がする

適当に混ぜて練ってりゃ それっぽくなったと思う

なんだか懐かしいぜ」

 

「・・・ムサシさんは 日本に帰りたいですか?

僕はもうそれほど未練はありませんが

ボスが帰る手段は必ずみつけるつもりですけど・・・」

 

「・・・・・・オイラは・・・・

難しいな 日本か・・・ なんともいえねえな

まあまた会えるなら いや・・・」

 

答えが出にくいことを考え込んだムサシ

エルも質問を誤ったかと考え話をかえた

 

「そういえば 新しいボロットの腕!

以前より強くなったと聞きましたがどんな秘密が?」

 

「あれか あの腕はゲッター3に近い構造だったし

実際ゲッター合金も混じってたからな オイラには相性がよかった

それにじいちゃんが研究中だった 高濃度のマナを当てて鉄を変質させたやつを

混ぜこむとすげえ馴染んでな

そいつを綱型筋肉結晶(ストランドクリスタルティシュー)で仕上げてあるから

カルダトア3の腕と比べても遥かに丈夫に出来上がったってわけよ

これでもう あの宇宙怪獣と戦ったときみたいな 殴った腕の方が壊れる、

なんてこともないはずだ」

 

「おおおー!! 素晴らしい!!!」

 

「ほーん」

 

ボロットの新しい両腕にラボの最新技術とボスボロット、

さらにはゲッターロボの技術まで秘めていることに興奮するエルと

大戦中に多くの研究所や軍や企業、果ては異星人の超技術まで集まってくる

ロンド・ベルの渦中にいてすっかり麻痺していたボスとで 反応は真逆となったがムサシは上機嫌だ

 

「よっと」

 

ボスが軽く操作すると

ボロットが腕慣らしをするように腕を回してみせる

 

「へえ~ 結構操縦が簡単そうだな」

 

「おっ ムサシもやってみるか?」

 

ボスが操縦席を譲るとムサシが座ってみる

 

「お いいのか どりゃどりゃ」

 

適当にハンドルを回し ペダルを踏みこむとボスボロットが動き出す

ボスボロットの動きを見ながら 感触を確かめるようにペダルを踏む

 

「なんだか懐かしいぜ

車の運転はしたことなかったが こう、

ボロットのいたるところに日本を感じるところがよっと!」

 

    ドスン

 

ボスボロットで後ろ受け身をやってみた

 

「おわっと!?

いきなり後ろ向きにひっくり返るなよ!!」

 

「いたた もう乗りこなせてませんか これ?」

 

「おお わりいわりい

お 釣り竿がひいてる」

 

   グイ!グイ!

 

「すっかり忘れてましたね」

 

操縦席の窓から 外の川へ垂れ下がっていた釣り糸が引っ張られている

一番近くにいたボスが釣り竿を引っ張ると

 

    バシャ!バシャ!!

 

「おおっとっとっと!? つええ! なんだこいつ!?」

 

逆にボスが川に引き込まれそうになるほどひっぱられる

 

「ボス!?」

 

「待てエル!!

ここはボロットで!」

 

ボスを助けようと駆け寄るエルを止めたムサシが

ボロットを操り釣り糸の先に手を伸ばすと、

 

  ガブリ!!!

 

川から飛び出した水棲魔獣川大蛇(リバーサーペント)にボロットの手がかじられ川に引き込まれた

 

「ぎええーーーーー!!?」

 

釣り竿を手放したボスだったが危うく外に落ちそうになり

慌てて窓ガラスを閉めようとしたが

 

    ガチ!!

 

「ありゃ!?いっけねえ」

 

釣り竿を挟みこみ 窓が十分に閉まりきらなかった

 

   バシャン!!

 

隙間から川の水が入り込んでくる

 

「まずいですよこれは!

溺れる前に なんとか窓を閉めないと!」

 

操縦席内にみるみる水が入り込んでくる

 

「オイラにまかせろ!!」

 

    グワシャン!!

 

ボロットのパンチがリバーサーペントの顔をとらえ

 

「よっと!」

 

   ボン!!

 

ボロットの動きが止まった刹那 エルが窓に挟みこまれた釣り竿を

法撃で破壊した

 

「今ですボス!!」

 

「おうよ!!」

 

   バン!!

 

ボスがなんとか窓を締め切り流水が膝下程度で止まった

 

「よーーし とどめだあ気合いれるぜ!!」

 

暴れるリバーサーペントをボスボロットがしっかりと掴み

抑えるのではなくその力を利用するかのように振り回す

その流れは川に渦を そして 水竜巻をつくり上げていく

 

  ゴォオオオオ―――――!!!

 

だ・い・せ・つ・ざ・ん・おろーーーーーし!!

 

ブオオーーーーーーン   グシャア!!!

    

川から高々と投げ飛ばされたリバーサペントが頭から地面に叩きつけられ動かなくなった

 

川からでてきたボスボロットからどうにか降りてきた3人が

河原に座り込み一息ついた

 

「ふいー・・・ひでえめにあったが なんとかなっただわさ」

 

「大雪山おろしを操縦席で体験できたのは感激ですが

流石に目が回りました・・・」

 

「流石!!丈夫な腕だったな 両腕ともなんともないぜ!」

 

   ぺしぺし

 

「ケガはなかったがずぶ濡れになっちまったわねん」

 

「まあボスボロットで川に行くとなれば

これくらいは想定内でしたけど

流石にこのまま帰ればみんなに心配をかけてしまいますね」

 

「とりあえず 服を絞って乾かしておくか」

 

   ぬぎぬぎ・・・

 

「いや~~ん みないで~~」

 

「ボス・・・ 男しかいないだろうがよ」

 

「さすがに濡れたままだと風邪をひくかもしれませんし

脱いでもらえれば僕が魔法ですぐに乾かしますよ」

 

「まあもう全部脱いだけどよ

・・・・・・エル おまえ本当に男だったんだな」

 

「あ ほんとだ」

 

「どこ見て言ってるんですか!」

 

「ところで このでけえ蛇は食えるのか?」

 

「リバーサーペントは猛毒がありますから

3ヶ月くらい土に埋めて毒を抜かないと死にますよ」

 

「じゃあ埋めとくか」

 

「魔石はとっておきましょう」

 

「なんまいだぶ なんまいだぶ」

 

・・・

 

「エルネスティ団長から密談をするため

近くに隠れるところがない川に行くとは聞いていましたが・・・」

 

ボスの護衛任務を帯びた藍鷹騎士団のノーラは手勢を連れて

どうにか視認できる場所からボスボロットに乗っていた3人を見つめていた

ボス達の声は聞こえず 他に人が近づかないように周囲も警戒していたが

ボスボロットが水棲魔獣に襲われ その後水竜巻が発生し

わけがわからないまま魔獣の方が動かなくなった上に

機体からでてきたボス達3人が裸になって何か話こみはじめている

という目まぐるしい現状に

 

「・・・・・・これを私がディスクゴード公爵に報告するのですか?」

 

無表情ながらも どうしたものか どうしてこうなったと

呆れるような諦めるような感情を抱えながら報告書を書き始めた

 

ちなみに学園に帰った後ボスたちは 機体の整備をした親方達に

水中戦をしたことがあっさりバレて3人はそろって拳骨を受けた挙句

銀凰騎士団全員と学園長からこってりお説教され

しばらくは学園街内でおとなしくラーメン作りに専念することになった

 

 

 

 

ムサシがサブパイロットに登録されました

 

サブパイロット情報

 

ムサシ

 

底力+2

水適応S

精神コマンド 気合 ド根性 努力 友情 激励 ???

ムサシがボスボロットにメイン・サブ搭乗時のみ大雪山おろし使用可能

大雪山おろし ℗射程1 空B陸A海S宇B バリア貫通 気力110必要

信頼補正  ・ライバル補正クリィテカル率30%アップ

 

強化素材を入手した

 

川大蛇(リバーサーペント)の魔石』




暑中お見舞い申し上げます
日本中すっかり暑くなってまいりました
梅雨は梅雨で蒸し暑さでどうにも息苦しさがありましたが
この暑さはシンプルにきつい・・・ 体が重くてしょうがないです
みなさんも無理せずお疲れのでませんように


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幸運

  ―銀凰騎士団 工房―

 

 

銀凰騎士団にムサシを加えて最初の方針を団長のエルから提案された

 

「人馬騎士ツェンドルグですが

これまでの二人乗りから 一人乗りに改造しようと思います」

 

「なんでわざわざそんなことするんだ?

二人乗りの方がつええんじゃねえのかよ」

 

「だよなあ?」

 

三人乗りの方が力を発揮できるボスボロットやゲッターロボに関わった

ボスやムサシは疑問を持つが

 

「たしかにそうかもしれませんが

それは双子で息の合ったキッドとアディのコンビだからこそです

量産を考えれば常に息の合うコンビを必要とする二人乗りよりも

一人乗りの方が運用面やコスト面で優れています

それに何より キッドとアディにもそれぞれ乗る機体があった方がいいと思いまして」

 

「まあそうだろうな」

 

「けどよ そもそも馬型は一人じゃ扱えねえから二人で乗ってたんだろ

そんな簡単に一人乗りなんてできんのか?」

 

「キッドとアディのおかげで実際に動かしてきたことで貴重なデータがとれました

改善点も見つかり再設計を行うことで一人乗りとして最適化は可能だと思います

もちろんキッドとアディにはこれまで以上にがんばってもらいますが」

 

「まっかせてエル君!」

 

「ま エルのことだから あれで完成とはいわねえよな やっぱり」

 

「私もあれ乗ってみたかったから テストランナーがいるときは声かけてよね」

 

やる気を見せるアディたちにヘルヴィも加わる

ツェンドルグは既存のシルエットナイトとは構造、操縦、サイズなどが大きく異なる上に

最も高価なパーツであるエーテルリアクタが2基必要となる

超高額機体となることから量産には不向きであるが

パワーと機動性、それを活かした馬車として複数機を運搬できる

特殊な運用性と可能性を秘めた機体である

銀凰騎士団が注力していくことに決定したのだが・・・

 

 

 

「ボス 陛下に呼ばれてお城に行くことになりました」

 

「王様にかよ?

それはいいけど馬ロボはいいのか?」

 

「国王直轄の騎士団ですから王命は無視できません

それに折角ですからツェンドルグの長距離移動のデータをとってきますよ

僕も乗ってみたかったのでちょうどいいです

もう一人はキッドかアディに」

 

「はい!エル君 私!私がツェンちゃんの足をやる!

エル君は上ね!」

 

「それは助かりますが ボスはどうします?」

 

「あ~ おれさまは いかねえよ

二人っきりを邪魔して馬に蹴られたくねえし」

 

「文字通りの意味ですか

しかし陛下からの手紙とともにエムリス殿下からの手紙には

ボスとムサシさんにも会いたいそうです

殿下は最近まで他国に留学していたそうなので

会ってみるのも面白いかもしれませんよ」

 

「エムリス・・・だれだ?」

 

「我が国の第二王子 陛下の孫にあたりますね

御前試合でムサシさんの機体に同乗していた方です」

 

「あいつか 他の国の美女の話とか聞けねえかな?

ま 会ってみるのもいいだわさ」

 

「いえ ボスが帰るための手がかりとかですね・・・

まあ ボスも同行するということで

ムサシさんも誘ってボロットとカルダトア3 ツェンドルグの3機もあれば、

王都との往復の戦力は十分でしょう」

 

「じゃあ準備してくるねエル君」

 

 

 

 

   ―王城シュレベール城―

 

ツェンドルグによる馬車移動はその到着の早さから王都側を大いに驚かせた

都市から都市への移動は常に魔獣からの襲撃の危険があるこの国において重大事項である

国王アンブロシウスはそれを表には出さずに謁見の間とは違う別室へと通された

それは秘密を要することであるという意思表示でもあり

また外国からの客人であるボスへの配慮でもあった

そしてアンブロシウスの横には近しい雰囲気を帯びた

荒々しい若者エムリス王子が立っていた

 

「足労感謝する ボス殿

そして大儀であったエルネスティ、アデルトルート、デシムサシよ

此度は国家機密に関わることもある 心して聞いてほしい

まだ内々の話ではあるが近いうちにわしは王位を王太子のリオタムスに譲るつもりである

その後の隠居生活で乗るシルエットナイトをおぬしたちに作ってもらおうと思うてな

国王機レーデス・オル・ヴィーラは王位と共に譲ることになっておるからのぅ」

 

「そのついでに俺の分も作ってもらおうか!

ムサシには昔 一人前になったら俺の専用機を作ってもらう約束がある

この機会にそいつを果たしてもらおうと思ってな

頼めるか 銀の長!ムサシ!」

 

現国王から王座の譲位という国の一大事と共に 普段着の注文のような空気で

専用機開発を命じられた

エルもこれには驚いたが 既に国内ではエムリス王子の帰還も含め

譲位に向けて動き出しており国民への発表ももう間もなくという段階である

その空気を感じ取りながらエルもどうすれば面白くなるかつい考えつつ返答する

 

「承知いたしました 尽力させていただきます

つきましてはどのような機体をご所望でしょうか?」

 

その言葉にエムリスが先に動く

 

「あのカルダトア3以上の(パワー)だ!

そしてあの馬モドキ!御前試合で実感した力もさることながら

手紙を出してから今日までの日数から相当の速さ(スピード)ってことがわかる

あれで遠駆けに出てみたい」

 

「なるほど力と速さですか」

 

「そうだな 出来れば馬よりは獅子を名乗れるような

すごく強そうなのを頼んだ!」

 

「わしからは よほど(かぶ)いておらぬ限りは好きにして良いぞ」

 

「王様 それはもったいねえぜ

せっかくの専用機なんだからド派手に傾かねえとよ!

イッシッシ例えばよ・・・」

 

ボスが翻訳機を兼ねたタブレット端末をエルに預けた

これはこれまでエルを含めボロットに乗った子分やアディ達にしか

直接見せていないものだったが 今回はエルも止めずに操作をした

 

「こちらはいかがでしょうか

エース機とよばれる団長機のような機体ですが

その外見は他を圧倒します」

 

タブレットの画面には黄金の鎧を纏った騎士のような外見の機体

『百式』が映し出された

 

「おお!こいつはすげえな!!

ボス殿の国にはこんなシルエットナイトがあるのか?!

それにこの板!いきなり精巧な絵があらわれたぞ!」

 

エムリスが大騒ぎしながらタブレットの画像に反応し

アンブロシウスも食い入るように見つめている

次に強さと機動性を両立させた機体として

モビルホース『風雲再起』に騎乗した『マスターガンダム』を表示させ

獅子を象った機体として『黒獅子』 次に『獣魔(黒獅子)』を見せた

ちなみに全て静止画であり動画にならないようにエルが操作している

 

「あんまり可愛いのはないね

これなんかほとんど魔獣だし」

 

「もっとよく見せてくれ」

 

「殿下 こちらはもし壊れれば僕達だけでなくボスにも直すことができません

お気を付けください」

 

興奮のあまりタブレットに触れそうになるエムリスをエルが牽制する

 

「おっと すまんボス殿 つい興奮してしまった」

 

「馬鹿孫が失礼したボス殿

しかし これほど多種多様なシルエットナイトが貴国にはあるのか」

 

「味方だけどよお みんな日本製ってわけじゃねえよ

国籍とかなんとか超えてよお みんなで戦っただわさ」

 

ボスも正直なところよくわからない機体が多く

逆にボスボロットも仲間からなぜ動くのか不思議だと言われるほど

ロンドベルが混沌とした部隊だった

 

「残念ながら銀凰騎士団でこれらの機体を完全再現することはできませんが

これから作る機体の参考になればと思ったのですがいかがでしょうか?」

 

「おお!?そういうことか! じゃあ 俺のは最初の黄金の騎士と

この黒獅子を合わせた『金獅子』って強ええ感じのを」

 

「まてい!若造が『金獅子』などと うそぶくなどまだまだ未熟よ

こういった傾いた機体を乗りこなせるのは『獅子王』たるわしこそ相応しい」

 

「じいちゃん 隠居のガウンにゃ派手過ぎんだろ!

歳考えろよ 『元』獅子王になるんだからよお!」

 

「ぬかせ小童(こわっぱ)!!」

 

「おっ ケンカか」

 

「ちょっと嬉しそうですねボス

さすがに国王陛下と第二王子のケンカはまずいですよ」

 

      パン!!

 

一触即発の状態を ムサシが両手を叩き 猫だましの要領で止めた

 

「なら オイラが預かろう」

 

「流石 柔道部鬼のキャプテン 一瞬で止めましたね」

 

 

 

     ―城 中庭―

 

場所を屋外に移し

向かい合うアンブロシウスとエムリスはシルエットギアに身を包んでいた

『金獅子(仮)』の権利を賭けて組手で決着をつけることになり

ムサシが審判をつとめることになった

エルはやり過ぎないようにとシルエットギアの機体制御の補助となる

マギウスエンジンを停止させることを提案し了承されて停止措置を行い

見届け人となったボスのもとへ戻った

 

「王様達の着ているのなんとかギアとムサシの着てるのは随分違うな」

 

「元々操者(ランナー)用のモータルビートと

鍛冶師(スミス)用のモ―トリフトは造りが違うものですし

モ―トリフトは自分でカスタマイズしますから個性が出るものです

・・・ムサシさんのヘルメットに鉄の前掛けスタイルも

鍛冶師と思えば それほど違和感がない、かもしれません

どう見てもゲッターチームのときの格好ですが」

 

「筋金入りなんだな あれ

お はじまった!」

 

一進一退の攻防にボスも盛り上がる

 

「すごいですね

エドガー先輩でもギアを着た最初のときは歩くのがやっとでしたが

両者ともすぐに使いこなしています」

 

「いきなりあそこまでできたのは

あたしやエル君 キッド ディー先輩くらいよね」

 

「武器は使わないって話だけどよお

どうやってケリをつけるんだこれ?」

 

「ムサシさんが決めるんでしょうね」

 

エムリスの勢いを利用してアンブロシウスが背負い投げをうった

かろうじて受け身が間に合い ムサシも止めなかった

 

「陛下の方が優勢でしょうか」

 

「いや 今ので逆に火がついたんじゃねえか」

 

ボスの言うように エムリスは底力を見せるが

逆にアンブロシウスからは僅かに息切れが見える

 

「おおりゃあ!!」

 

「ぐっ!?」

 

     ドオン!!!

 

「それまで!!」

 

激しい攻防の果てにエムリスのバックドロップが決まりムサシが止めた

双方礼を交わし 組手を終えた二人に改めて新型機の要望を聞いたところ

共通したのはギアによる直接制御(フルコントロール)を前提とした操縦系とパワー重視であること

エムリスは『金獅子』、アンブロシウスは『白虎』をモチーフとしたデザインとなった

そして十分なパワーを得るために騎士団長機(ウォートシリーズ)用のエーテルリアクタを2基搭載機

つまり4基用意してほしいとエルが提案すると

 

「ふむ たしかにその理屈はわかるが

流石にわしでもすぐに4基も用意するのは難題だな

あれは・・・ おおそうだな かつておぬしが希望しておった

エーテルリアクタの製造方法について

これまでのおぬし達騎士団の功績とボス殿の助力 そして今回の件も含めて検討しよう」

 

アンブロシウスの言葉にエルの目が輝いた

 

「輝いているエル君かわいい!」

 

「あれはわしが直接知識を持っているわけではないのでな手続きが必要なのだ

それが終わるまでにその知識を得る者を一人だけ選抜しておくがよい

秘伝を受けるには卓越した知恵と魔術への造詣が必要だと聞く

また国家の秘事であるゆえ ボス殿は立ち入れぬのはご容赦いただく」

 

「おれさまは気にしねえよ」

 

「では僕か、ムサシさんですね」

 

「そいつはオイラよりエルの方が向いてそうだな

オイラ魔法はさっぱりだしよ」

 

「ではエルネスティよ

然るべきときが来ればこちらから連絡をする

それまでは量産機のエーテルリアクタで試作してみるがよい

こちらも譲位で忙しいゆえに時間がかかろう」

 

「承知致しました 陛下」

 

「楽しみにしてるぜ銀の長!

とにかくパワーだ!

カルダトア2より速ければ なおいいがな!」

 

「わかりました 時間がかかりそうなので

とりあえず一人乗りのツェンドルグが完成したらお届けしますね」

 

「そいつはいいな!頼んだぜ!」

 

現役の国王と王子がシルエットギアを使った派手な組手が行われたことを聞きつけた

王太子のリオタムスによる二人への説教があったのは別の話である

 

 

 

 

   ―銀凰騎士団 工房―

 

「形だけは出来てきましたね 親方」

 

「ああ 錬金術学科には随分無理を言ったがな

国王陛下とエムリス殿下からの依頼となれば

全面協力でこの出来栄えよ」

 

『金獅子』と呼ぶにふさわしい金色に輝く獅子を模した

シルエットナイトの外装の試作ができた

実際に金が使われているわけではなく既存の外装を

錬金術でそう見えるように加工しているのもので

王族が乗るに相応しい姿を求め錬金術学科が総力を挙げた成果である

 

「あれいいよなあ

強そうでカッコよくてよお」

 

ロンドベルには百式以外にもゴッドガンダムのハイパーモードのように

光り輝くとさらに強くなる機体もあり ボスにとっても憧れるものがあった

 

「ボス ボロットを金色にするだけならむしろ簡単ですよ

あの3Dプリンターに色を変える機能がありますから」

 

「え!?そうなのかよ!?」

 

ボスは気づいていなかったが エルが操作パッドを操ると

確かに色変更機能があり カラーバリエーションに金色もあった

 

「この数値を変更すると大きさも変えられます

操縦席の頭部は作れないので あまり大きくするとバランスが崩れますね

とりあえず20メートルにすると 1.67倍ですから・・・

折角なのでやってみましょう!

親方!!このスクラップ使いますね!」

 

エルがスクラップから次々とボロットの各パーツを造りだし

それをボスボロットとカルダトア3が組み上げていく

 

金色のボスボロットの体にそのまま頭を乗せてみると・・・

 

「・・・なんか思ってたのと 違うな」

 

「頭がそのまんまってのもあるけどよ」

 

「なぜか 折り紙の金色の紙を貼り付けたような安っぽさがありますね・・・

まあ どっちも本物の金を使ってないのは同じですが」

 

12メートルから20メートルの大きさになった金色のボスボロットを見上げ

ボスたちから 何とも微妙な感想がもれた

 

「やっぱただ金色の体に いつもの頭が乗ってるだけだから変なんじゃねえか」

 

「ならペンキで腹にでっかく『金』って書いとくか?」

 

「金太郎って呼びますよそれ」

 

「じゃあグレートのときみてえに股間に『(キーン)』と」

 

「ぶっははあ それ意味が違うだろ」

 

「背中には書かないんですか?

金の一文字カッコイイかもしれませんよ」

 

「金の裏は無地なもんだろうよ」

 

「ああ 将棋の金将ですか

そう言われてみるとたしかにその方がよさそうですね

百式のように肩に一文字入れてみますか?」

 

「『金』、『猛』、『闘』もイイな!」

 

「ボロットには似合うか?」

 

日本出身の三人の会話は理解できなかったが

ダーヴィド親方が結局これをどうするのか聞いてきた

 

「肝心のボスがあまり気分が乗らないようなら

とりあえず実戦に出すのは見送りましょうか」

 

「きんきらきんの上にデカくなったしよお カッチョイイとこで使いてえし

どうせなら男らしいとっときの秘密兵器でも仕込んでから使いてえな!」

 

「なるほど たしかにそれは面白そうですね!

今回はこういったこともできると確認できたわけですし

とりあえず改造が済むまではまた分解してしまっておきましょう」

 

「先に王様や若旦那の機体を完成させとこうぜ

あのお馬さんもまだまだ手がかかりそうだしな」

 

 

 

 

一か月後、現国王アンブロシウスの退位と新国王リオタムスの即位のための

国を挙げての盛大な式典が行われ その祝いの一環とし

新型機『金獅子(ゴルドリーオ)』と『銀虎(ジルバティーガ)』『一人乗り人馬騎士(ツェンドリンブル)』が納入された

 

 




新長田町にリアルサイズの鉄人28号見に行きました
全長15.277メートルの大迫力!!
ボスボロットとシルエットや大きさが近いので色々参考になりました
こんなのが暴れたら馬鹿にできない

もう11月ですが夏日が連続する今日この頃
朝夕は逆に涼しく余計に・・・
お疲れのでませんように


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根性

  ―ライヒアラ学園 ボスボロット頭部内―

 

国にとって大事な儀式である譲位式に合わせて王族用のシルエットナイトを献上するという

設立早々大仕事を終えた銀凰騎士団はしばらくお休み状態となっており

ボス、エル、ムサシの三人は『巴武蔵』の記憶を元にラーメンの麺を試作していた

 

「まずはラーメンの味を知っているこの三人だけでやってみましょう」

 

「よくアディちゃんが乱入してこなかったな」

 

「アディには『ボスの国の料理を教えてもらって僕の手料理をご馳走したい』

と言ったら 喜んで『待て』してくれましたよ」

 

「そうかい

そんじゃムサシ 麺の作り方を見せてくれよ」

 

「わかった 小麦粉と塩、重曹、水をいれてまぜこねる

かたさは こんなもんか そんで麺棒でのばして

包丁で適当に切る」

 

ムサシが説明しながら実際に麵を打って見せた

 

「あの麺をひっぱって のばしながらぶんまわすやつはやんねえのか?」

 

「オイラはあんまやったことねえな」

 

「分量はどのくらいですか?」

 

「そんなのオイラ達は適当にやってた

こねながら適当に加減すればいいんじゃねえか」

 

「まあ そうですね そもそも小麦が違うでしょうし

重曹も錬金術科に食用としてわけてもらってますから

日本とは用意できる食材から違います」

 

「つくりながら さぐっていくしかねえか

とりあえず食ってみようぜ」

 

ムサシが打った麺を茹でてボスが作ったスープと合わせ

この世界にはじめて『ラーメン』が生まれた

 

「「「いただきます」」」

 

「箸でラーメン食うとか久しぶりすぎて涙がでてくるぜ」

 

「味はどうよムサシ?」

 

  ズルズル

 

「おお ラーメンっぽいな」

 

「たしかにラーメンっぽいですね」

 

「・・・まあぽいけどよ

あんまうまくはねえな

メンはボソボソ スープはべトベトだしよお

おれさまが店で食わされたら金払わねえぞ」

 

「オイラ達柔道部は質より量の方が大事だったからな」

 

「でも何度も作って工夫すればおいしくなりますよ」

 

「とは言ってもよお 腹減ったときの最初の一杯ならともかく

替え玉すればスープもぬるくなるし二杯以上はきついぜ」

 

ボスもムサシも人の倍は軽く食べるが この味で何度もおかわりはうんざりする出来だった

 

「あ そうだ! 最初の一杯ならまあ食えるんだからよ

騎士団のみんなに一度食わせてみてえな

まあ そんな量を用意する金がねえけどよ」

 

「それについてはボスによいお話があります

今回献上した シルエットナイトの納品についてボス個人に

国から謝礼金が出るそうですよ」

 

「お そいつあいいな」

 

ボスの貢献については護衛としての藍鷹騎士団と銀凰騎士団から

国へ報告が上がっているため ボス個人への報酬である

 

「僕達銀凰騎士団は陛下直属の騎士団ですから

シルエットナイトの開発・納入は業務の一環と言えますが

ボスは他国の善意の協力者となっているので

ちゃんとその功績に見合った報酬がでるようです

かなりの金額になると思いますよ」

 

「そいつはいいな そんじゃあエル その報酬でとりあえず

騎士団全員分のラーメンの材料を仕入れといてくれよ

あとエルとアディちゃんのおふくろさん達に料理を手伝ってもらうように頼めねえか?」

 

「そうですね 僕達三人だけでは騎士団全員分を作るのは大変ですし

母様やイルマタルさんなら味の工夫もいいアドバイスをもらえるかもしれません

頼んでみますね」

 

「二人とも美人だしな!

おれさまがんばっちゃうわよん!!」

 

「エルやアディちゃんに似てるならそりゃ美人だろうな

オイラもはりきるぜ!」

 

美人の母親二人の参加を期待し喜ぶボスとムサシ

材料の手配と食事会の段取りを計算するエル

三人とも何だかんだと久しぶりのラーメンを味わうのだった

 

エルによって買いこまれた食材をもとに

エルの母ティナ アディの母イルマを加えた試食会で味の改善を重ね

銀凰騎士団内での今回の大仕事の慰労会を兼ねたラーメン食事会が行われた

ボスボロットの頭部を床に下ろし即席の屋台としながらラーメンを振舞った

 

「さあ おれさまのふるさとの味

思う存分食べてってくれい!」

 

ボスもムサシもエルもこのときは知らなかった

ここが新たな戦場となることを・・・

 

 

「あっちい!!火傷した」

 

「ボス! すぐに水で冷やしてください!」

 

「こりゃうめえじゃねえか!おかわり!」

 

「あいよ!おかわり一丁!!」

 

「麺が残り少ないわ」

 

「オイラに任せろ!」

 

「野菜も残り少ないわね キッド アディおつかい頼めるかしら?」

 

「わかったぜ母様」

 

「エル君 もどったら私も手伝うわ!」

 

食事会はボス達の想定以上に好感触となり

調理場であるボスボロットの頭部操縦席は戦場となっていた

 

「電気コンロふたつじゃあ 間に合わねえぞ!」

 

想定外の消費速度に手も道具も足りなかった

スープを温める鍋と麺を茹でる鍋で埋まったコンロはフル稼働しながら

そう広くない上に修羅場となった操縦席にさらに二人が入ってきた

 

「水臭いぞボス 私達も手伝うぞ」

 

「おおディー、ゲッパ助かるぜ

そんじゃ その野菜をどんどん切り刻んでくれ

アディちゃん達が追加で野菜を持ってくるから

手を止めらんねえぜ」

 

「任せてくれボス このラーメンってやつ結構うまかったからな

まだおかわりしてくるやつはいるぜ

このフルーツも切っていいのか?」

 

「ああ そのミカンみてえなやつもスープに入ってるんだぜ

ティナさん達のアドバイスだわさ

おかげでだいぶ味がよくなったからな」

 

「それでこの大繁盛か

ボスの国の料理と我が国の食材や知恵は相性がいいのかもな」

 

「それはあるかもしれねえな

あ!整備班の連中酒盛りはじめやがった

吞んだドワーフは食うぞ

オイラに小麦粉をどんどん回してくれ!

まだまだ打ちまくるぜ」

 

「ムサシさん 持ってきました!

僕はこの大鍋の水 魔法で沸騰させてみます!」

 

「できんのかエル!?」

 

「あまりやったことはありませんが

魔法の制御には自信があります!」

 

「ムチャよエル君!

炎系の魔法を料理に使うなんて!」

 

「ムチャでもやれエル!

色々足りねえんだ おれさまが許す!!」

 

「OKボス!」

 

「おかわり!」

 

「あいよ!ちょっとまっとくれい!」

 

「エル君お鍋グラグラ煮えすぎ!」

 

「包丁は剣とは随分違うな・・・」

 

「水が足りねえ!!タル3つ分持って来い!!」

 

「はいたーる!」

 

「これ酒樽じゃねえか!もどしてこい!!

水でいいんだよ!」

 

「うぷっ お酒のにおい気持ち悪い・・・」

 

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 

「おわったーーー・・・」

 

「しんどかったー・・・」

 

「ボスさん お水どうぞ」

 

「ありがとうございますティナさん

グビグビ、ああ うめー・・・」

 

「ほんとにただの水がこんなにうめえ

ごちそうさまですイルマさん」

 

「後から来た私達よりも最初から働いてるご婦人二人が一番元気とは」

 

「母は強し、ってか」

 

片付けを終え 慣れない食事会開催で疲れ果てたボス達にくらべ

前世の記憶持ちでナイトランナーを目指し過剰な修行をするエルを育てたティナと

ほぼ孤立状態でキッドとアディの双子を産み育てたイルマにとっては

何ら問題ないように 平然と水をふるまっていた

 

「母様あんなにタフだったんですね

・・・ふう、こっちにきてからロボットのことを忘れて

こんなに熱中したのははじめてでした」

 

「エル君、学校に入ってからシルエットナイトを追いかけてばかりだったもんね」

 

「・・・エル

王様からのご褒美はあとどんぐらい残ってんだ?」

 

「そうですね 1%も使ってませんよ 全然減ってませんね」

 

「よし!エル 騎士団全員に号令をかけろ

ラーメンを学校のやつら全員に食わせるんだわよ!」

 

「え!?全員!?本気ですかボス!?」

 

「おうよ 今回の王様へのお祝いは学校巻き込んでやったんだろ

だったらそのご褒美も学校に振舞えばいいじゃねえか

どうせこの国の金を日本に持って帰ってもしょうがねえんだしよお

ムサシ 鍛冶師にでかい鍋とかザルの用意を頼むぜ

あの麺をゆでる ちいせいザルみたいなのもよお」

 

「・・・ああ あれか あれなんて名前なんだろうな?

あと長い箸も追加で作っとくか あとは・・・」

 

湯切り道具『てぼ』や『菜箸』『圧力鍋』『麵きり包丁』等々

鍛冶師達に頼む調理道具を書き出しまとめていく

 

「流石にこのボスボロットの中だけでは手狭だろう

学院の調理室を使った方がよいのではないか?」

 

「そうね 学園長(お父様)の許可が必要だけど

エル 夕食の時にお話してみましょう」

 

「そうですね では我々銀凰騎士団全員で食事会を開催しましょう

場所は調理室を中心にラーメンが冷めない範囲の近い教室を借り切り

対象は今回の献上品で協力してもらった学院の中等部と高等部の全学生と教官

時期は年末あたりでどうでしょうかボス?」

 

「おう その辺は任せたわよん みんな頼むぜ!」

 

    \\おう!!//

 

 

  ―エチェバルリア邸食卓―

 

「と、いうことで 調理と食事場所として

調理室がある校舎を丸ごと一日借り切りたいのですが

どうでしょうか学園長(おじいさま)

 

「なるほどのう」

 

「こちらがボスさんが振る舞う『らーめん』ですよ」

 

ティナが夕食として全員分のラーメンをだした

 

「ほう これが

たしかにはじめて見る料理だな」

 

「ズルズル、

・・・母様 これ ボスがつくったのよりおいしいです

ラーメンというよりスープパスタみたいですけど」

 

「なるほど これはたしかに熱いうちがおいしそうだ」

 

「・・・・・・わかった 申請書をまとめておきなさい

監督教官として婿殿をつけよう

エル 肝心のボス君は今日はここにいないようだが?」

 

「ボスは整備班のみなさんと調理器具をつくっています

そしてこれが申請書です

監督教官にすでに父様の署名はもらっています」

 

「準備がいいのうエル 婿殿も」

 

「エルとティナに頼まれたら断れませんし

日頃からエルが世話になっているボス君には感謝してますから」

 

ラウリは申請書が流し見る

勿論食事の後に精査するつもりであるがふと気になったことがある

 

「エルや この食事会 予算はどうなっておる?」

 

「それについては表向きはボスの意向である

王家専用機献上の謝礼としてボスが国王陛下からいただいた報奨金を使う予定です

勿論 現在銀凰騎士団は学園を間借りし 今回も大変お世話になりました

本来学園への感謝の宴をひらくのは団長である僕が言い出すべきことでした

ボスの男気に水をさすような真似はしませんが

恥をかかせるようなことにもなりませんよ」

 

ラウリはラーメンを食べながら考える

ラウリはボスに対しやや複雑な感情を抱いている

彼があらわれてから中等部に入って間もない(エル)を取り巻く世界が激変した

在学中の学生の身で強力な魔獣との大乱戦 新型機の開発 

国王直々の騎士団の設立に団長就任 王族への新型専用機を開発献上と

学園長として多くの学生を送り出してきた自分でも前代未聞のことばかりである

旧友である国王アンブロシウスも昔から突拍子のない人物であり、

ボスやエルと出会った事でかつての茶目っ気を取り戻したようだ

勿論 エル自身がボスを慕い ボス本人も型破りなところはあるが、

気のいい好漢であるだけに けっして悪い感情はもっているわけではない

幼少の頃から非凡な資質を感じ努力を惜しまない姿を見守りつつも

他人の機微に疎いところがあり潜在的な危うさがあったエルが

親分肌のボスからいい影響も受けて成長する姿には素直に感謝することもある

 

エルが目指し 学園でも学び育てているナイトランナーという職業は、

自国にとって柱ともいえる国策・魔獣相手の生存競争の最前線に立つものである

自分よりもはるかに若い卒業生が戦死することも何度もあった

エルが取り巻く環境はそれ以上に過酷なものとなる可能性が高い

 

「・・・食事会にはわしも参加するとしよう」

 

学園を預かる教育者として そして孫を持つ祖父として

 

 

  ―ライヒアラ学園―

 

銀凰騎士団を挙げての食事会がはじまった

学園の中等部から上の学生全員と担当教官全員を対象にした

ラーメンパーティーは大盛況となった

長年国王として君臨し国民からも人気があるアンブロシウス先王陛下と

その孫であり面影を強くうつしたエムリス王子に王族専用機を献上したという

学園はじまって以来の大偉業を果たした興奮が冷めやらない学生達にとっての

大規模な打ち上げ会でもある

 

「へえ! これが異国の料理か!?」

 

「あっつ!!」

 

「ちょっと食べにくいけど結構うまいな!」

 

未知の料理の食事会は全員参加の勢いで次々と集まってきた

 

「ボス!メン茹で上がりました!!」

 

「あいよ!器 足んねえぞ!

手の空いたやつは食べ終わったやつから受け取ってこい!

次々やってくるわよん!」

 

「具が減ってきた!カット係 増産頼む!」

 

「あっ ステファニア姉様」

 

「そりゃティファ姉もくるか」

 

「お~うティファちゃんいらっしゃい!!」

 

「お久しぶりですボス様

アーキッドとアデルトルートもがんばってるわね

私も『らーめん』をいただきにきましたわ」

 

「ありがとよ~ん♡

まっててね~~ん」

 

「姉様 外で待ってもらっている人たちはどう?

学年によってはまだ時間かかりそうだけど」

 

「大丈夫よ

外で待っている学生たちは異国の遊戯『ボウリング』に夢中だから

私もやってみたけどあれは楽しいわね

ボスボロットの頭を模したボールも可愛いわ」

 

「整備班のモートリフトを全部つかって

暇つぶしにするエルのアイディアがうまくいったな」

 

「元々 上級魔法の身体強化魔法の練習用だったから

姉様ならマギウスエンジンなしのモートルビートでもできそうだよね」

 

「エル君のアイディアだったのね

そのエル君はどうしたの?」

 

「エルは野菜きざんだり 出汁をとったりしてる

ちょっと手がはなせないんだ」

 

「お構いなく ボス様とエル君

何より可愛い弟と妹たちの手料理 ありがたくいただきますわ」

 

「よろしくめしあがっておくれよ ティファちゃーん!」

 

「ええ 楽しみですわ」

 

丸一日かけた食事会は盛況のまますすんでいたが

 

「鍋見てたやつが倒れたぞ!」

 

「水飲ませてすぐに医務室へ運べ!!」

 

「手が足りません!!」

 

「交代要員すぐに呼んで来い!!」

 

鍛冶仕事や騎士の鍛錬とは性質の違う熱気に疲労で体調を崩す者があらわれたり

 

「ボス!スープが残り少なくなってきました!

補充が間に合いません!!」

 

「いっそ焼きそばみてえにするか!?

それとも汁へらすか!?

おし!具を多め 汁少なめでいくぜ!

ディー!ゲッパ!頼むわよん!」

 

「任せておけ!」

 

慣れない大量の調理で様々な不足が発生しながらも

 

「ちょっと!もう次のお客がきてるわよ!」

 

「すまない!皿洗いの手も足りない!

ヘルヴィも手が空いたらこっちに加わってくれ!」

 

「わかったわ!こっちもテーブル拭いたらそっちに行く」

 

「ボスさん 我々も手を貸します」

 

「おおノーラちゃん♡助かるぜ!!

お~し カワイ子ちゃんが入ったからには 根性入れるわよん!」

 

調理室では銀凰騎士団が入れ替わりを繰り返しながら

目の回るような忙しさで料理していた

 

「父様!追加の野菜きました!千切りお願いします!」

 

「エル、監督教官という仕事は調理するものではないのだがね」

 

「父様 ボスの国では『立ってるものは親でも使え』ということわざがあるそうです

これもひとつの異文化交流ですよ」

 

「そうですよあなた

それにこうして親子揃ってお料理するのも楽しいじゃないですか」

 

「いや もちろんこうして手伝うのはいいさ 手が足りのはわかるから

ただこうして朝から休みなく野菜を切り続けていると本来の仕事ができないのだが」

 

「婿殿 その件は大丈夫 他の教官で埋め合わせをしておこう」

 

「学園長・・・」

 

食べ終わって器を返しに来た学園長が声をかけてきた

 

「ボス君 らーめんご馳走様じゃ よい味だった」

 

「ありがとさんよ エルのじいちゃん

おかわりはどうよ?」

 

「いやいや 流石に二杯目を食べれるほど若くない

この食事会 みな楽しんでおるようじゃ 学園長として

またエルの祖父として 感謝しておるぞ」

 

「そりゃどうも

こっちは忙しくてこき使ってばっかりだけどよ」

 

「周りを振り回してばかりのエル(あの子)を振り回すボス()が必要なんじゃよ」

 

器を返し学園長へ戻る学園長ラウリはすっきりした顔となっていた

(エル)の未来を信じて

 

 

 

 

  ―国立機操開発研究工房―

 

「フフフ ハハハ ハッハハ!!ついに完成したぞ!見よ!!

これぞ これまでのカルダトアを超えるフレメヴィーラを守る新たな制式量産機

『カルディトーレ』じゃ!」

 

「終わった・・・ ようやく 眠れる・・・・・・」

 

工房に並ぶ出来立てほやほやの次世代新型機

 

『カルディトーレ1』『カルディトーレ2』『カルディトーレ3』

 

各4機ずつ計12機を前に歓喜の声をあげるガイスカ工房長と

憔悴しきったデシレアをはじめとしたナイトスミスや研究員達

 

「まずは3機をこのラボへ残し

陛下が待つ王都(カンカネン)

アルヴァンズが守る山峡関要塞(アルチュセール)

そしてムサシがいる銀凰騎士団の本拠地ライヒアラ!

それぞれに3機ずつ送る、ということでよろしいですなオルヴァ―所長!」

 

「ええ お疲れ様でした

手配はこちらでしておくから みんなはゆっくり休んでもらいたい

特にガイスカ君 目が怖い、

その目の輝きは怖すぎるよ・・・ 頼むからしっかり寝てほしいな」

 

ラボの長い戦いもようやく終わったのだった

 




ちょうどこれを書いてるときに今週のスパロボOGラジオにてボスボロットの話題がでました
スパロボの神様寺田さんもマジンガー以上のテクノロジーを感じる謎のロボットでゲームでもムチャやってるとか言われてるあたり流石のボロットクオリティ


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