孤独の大戦 (COTOKITI JP)
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決められた終戦の日

何の予兆も無く深海棲艦は現れ、何の予兆も無く艦娘が生まれた。

まるで最初から決められていたかのように双方は互いに砲口を向け、戦った。

 

人類は深海棲艦を完全なる悪と見なし、艦娘を正義の味方、救世主と讃えた。

 

このような戦争、結果など既に目に見えていた。

正義の象徴である艦娘が深海棲艦を殲滅し、人類が勝利したのだ。

 

強大な深海棲艦の力に押されつつも艦娘の力によって戦況を大きく覆し、数年後には深海棲艦の占領地で勝利の旗を掲げた。

 

これのお陰で正義の勝利などと囃し立てられ、艦娘という存在は最早、国の守護者のような扱いだ。

 

戦後には平和が訪れ、各国は皆それぞれの国の復興事業へと舵を切った。

 

そう、これが物語であるなら正に見る者の望むような最善のエンド、ハッピーエンドだ。

 

台本でも用意されていたのかと思う程にこの戦争の行く末は余りにも捻りの無いベタ過ぎる結果であり、つまらない三文芝居に等しい。

 

あんな……アンナ戦争ノ為ニ同胞ハ海中ニ没シ、息絶エタトイウノカ……?

 

━━━━━━━━━━━━━━━

〈1945年 8月 9日 太平洋〉

 

艦娘達は我々の海上基地の位置を突き止め、二個艦隊相当の戦力を以て潰しにかかってきやがった。

 

近海の警備を行っていた警備隊からの無線で敵情と進撃してきている方角を知った基地司令部は直ぐに防衛の為に我々第8機動部隊を出撃させた。

 

第8機動部隊はここでも頭一つ抜きん出た実力を誇っており、敵艦隊を撃退した事は何回とある。

 

仲間達は皆艤装の点検を行い、配布された実弾を装填している。

こうしている間にも艦娘は近付いてきている、急がねばならない。

 

「エルメサス隊長殿!各隊員の艤装の点検及び実弾装填が完了致しました!何時でも出撃出来ます!」

 

……と思っていた矢先に出撃準備を知らせる報告が来た。

我ながらとても仕事の早い部隊な事だ。

とても頼もしい。

 

『エルメサス』……私の名前だ。

副官である彼女は『カニウス』という名前だ。

 

人間達や艦娘は俺達のことをイロハの五十音順に『○○級』と名前を割り当てているそうだ。

 

俺達には一人一人ちゃんとした名前がある。

アイツら人の形をした軍艦とは違う、俺達はれっきとした一つの『生命』であり、この地球に古くから住まう一つの種族だ。

 

…………まぁ、同じような見た目の奴が多いから偶に見間違えそうになることはあるが……。

 

「現在組織的抵抗が出来ているのはここだけだ。 例え負けると分かっていても、最後までその砲は決して手放すな!!!」

 

「了解ッ!!!!」

 

「総員、出撃せよ!!」

 

こうやって部下を鼓舞しつつ海上基地から勢いよく飛び出す。

 

かなりのスピードで海上を滑るように移動し、敵艦隊の方角へと向かう。

 

白い航跡を残しながら緊急の出撃という事もあって全速で目的の海域へと向かう。

 

暫くすると、基地司令部から通信が入る。

耳元に着けた無線機から聞こえてきた声はオペレーターを務めている、『フルオシス』の物だ。

 

《敵は未だ進路を変更せずにこちらへ真っ直ぐ向かってきます》

 

「了解、接敵まであともう少しだ」

 

《敵艦隊の規模は二個艦隊を合わせた連合艦隊です。 多方面のゲリラ化した部隊にも既に増援を要請しましたが……来るかも分かりません…………どうか、お気を付けて》

 

「生憎、『レスタリオス』から生きて戻れとの命令が来ているから死ぬ事はないと思うぞ」

 

《レスタリオス様が言うのであれば確実ですね》

 

無線機越しのフルオシスの苦笑いに俺も思わず口角が釣り上がる。

 

「あぁ、全くだ…………っと、敵艦隊を視認、交戦開始する」

 

水平線の向こうへと目を凝らすと、そこに黒い何かの点のような影がポツポツと見える。

 

先手を打ったのは艦娘の方だ。

僅かな発砲炎を目視で視認するとすぐさま部下に回避行動を取らせる。

 

「来るぞ!回避運動を取れ!」

 

体を大きく傾けて左へスライドするように動くと、飛来した砲弾が自分の僅か十数メートル先に着弾した。

 

「初っ端から至近弾……!相手はやはり精鋭か!!」

 

水しぶきによって顔に着いた海水を左手で拭い、目前の敵艦隊を睨み付ける。

今この時が、『この力』の使い時だ。

 

「最期まで全力で行かせてもらうぞ!」

 

両手に持った縦2連のクロスボウを構え、引き金を引き、先ずは2本の矢を発射した。

 

風を切りながら進む矢はやがて炎に包まれ、10機の艦上戦闘機に分裂した。

 

どうやら相手も艦載機を放ったらしく、対空レーダーが新たに敵機を複数捉えた。

 

「総員、対空戦闘用意!真正面から来るぞ!!」

 

海上で響く怒号と共に一斉に手持ちの火器や体に纏った大砲を上空へと向け、敵機の迎撃準備を整える。

 

だが、やってきたのは敵機だけでは無い。

今俺達がいる場所は戦艦の有効射程に収まっていたのだ。

 

エルメサスは敵の弾道を砲弾の数問わず読み取る事が可能だ。

それだけでなく、砲で迎撃も出来る。

 

その為、エルメサスはその巨大な砲弾の接近に気付く事が出来たのだ。

 

「……っ敵弾だ!!回避!!」

 

そう叫んだ時には遅かった。

第8機動部隊と言えども、連日の戦闘で隊員は次々戦死し、新たに入って来たのも忠誠心は高けども練度の低い新兵ばかりであった。

 

耳を劈くような爆音、辺りが凄まじい規模の爆炎と水柱に包まれ、周りが一切見えなくなる。

 

「大丈夫かっ!?」

 

他とは桁違いの装甲のお陰で無傷であったエルメサスは即座に周囲を見渡す。

 

しかし、目に映ったのは地獄絵図だった。

 

「ぎゃああぁぁぁアア!!!!」

 

「腕が!!私の腕がァァァ!!!」

 

「クソっ!!何も見えないぞ!!敵はどこだ!?」

 

海は真っ赤に染まり、五体満足だったはずの隊員達は今となっては四肢を爆風と砲弾の破片でもがれた者、爆風で肺をやられて死んだ者、目を焼かれてもがき苦しんでいる者、自らの腸を晒しながら水底へ沈んて行く者ばかりだった。

 

これ程までに強力な砲弾。

俺はそれを知っていた。

戦ったことも一度あった。

 

「『大和型戦艦』……!!」

 

こんな地獄絵図、大和型の46cm砲でしか生み出す事は出来ないだろう。

 

しかも砲弾の数は目視で18発確認した。

つまり、同じ大和型が2隻いるという事だ。

 

これは俺にとって軽くピンチだ。

何しろ初手で僚艦を壊滅させられたのだから。

 

「……クソっ……またか……」

 

溜息をつきつつもクロスボウを強く握り、突撃の体勢を取る。

ついでに体に艤装を纏わせておく。

 

《ダメです!いくら貴方とはいえ、連合艦隊相手では! それに敵の増援を先程確認しました!今すぐ撤退して下さい!!》

 

そんな指示に従う気など最早無い。

 

「そうか、なら予想通りだ。 突撃する」

 

《何故そこまでして……!?》

 

その問いに俺は数秒考え、そして屈託の無い笑顔で答えた。

 

「すまねえな。 でも最期なんだ、命令の一つぐらい無視させてくれよ」

 

《エルメサス!》

 

最後の制止を無視して俺は敵艦隊へと突撃する。

なるべく全速力で、飛んでくる砲弾と艦載機の爆撃と雷撃を掻い潜りながら。

 

「これしきで!!俺が倒せるかぁぁぁ!!!!」

 

体に纏った4門の4連装砲を空へと構え、一斉射撃を行う。

爆音と共に空が爆炎によって覆い隠され、周りにいた敵機の大編隊は一瞬にしてバラバラのスクラップへと加工された。

 

しかし、恐らく別の鎮守府から来たであろう別の艦隊が新たに艦載機を放つ。

その結果、数百機もの敵機が俺一人に向かって殺到した。

 

撃ち落としても撃ち落としてもまるでゴキブリのようにワラワラ湧いてきては爆弾や魚雷を浴びせかけてくる。

 

「ウザったいんだよクソッタレがァ!!!」

 

怒りに身を任せ、俺を最強たらしめている力の一つ、『特殊艤装』を展開した。

 

特殊艤装は身に纏う物ではなく、単体で独立して動く事が出来る艤装である。(島風の連装砲と同じような感じ)

 

手に持っていたクロスボウが数百もの光の粒へと変化し、遥か上空へと上がるとそれは突然光を強め、最終的には太陽と同じぐらいの光で大海を照らした。

 

そして光は次第に収まっていき、太陽の如き光は消えた。

代わりにそこには一つの物体が浮遊していた。

 

それの形を例えるなら、『傘』。

しかし、その大きさは凄まじく、島一つ覆えるのではないかと思う程の面積を持っていた。

 

その特殊艤装の上部分には、幾つにも重ねられた滑走路が傘のように広げられており、根元と下部の柱のような構造物と滑走路の間には夥しい数の連装砲、単装砲、その他対空火器が備え付けられていた。

 

艦娘達は唖然としてそれを見ていた。

だがそれが敵によるものだと分かると即座に攻撃対象を特殊艤装へと変えた。

 

何十発もの砲弾と艦載機が特殊艤装へと向かっていき、その際の砲声は宛ら花火大会と言ったところだろう。

 

先程とは比べ物にならない爆発が空中で起こり、特殊艤装を爆炎で包み込んだ。

最早オーバーキルとも思える一斉射撃によって特殊艤装は呆気なく墜ちる………………

 

…………訳がなかった。

 

晴れた爆煙からは、五体満足の特殊艤装が顕になった。

艦娘達は絶望で顔を染め、ただ呆然とその巨体を見ている。

 

「どうやら、試作品は上手くいったようだな……」

 

何もしていない筈の俺は海の上でフラフラとよろめき、今にも死んでしまいそうな雰囲気を醸し出している。

 

これほどの大きさの物体を動かしているのだ。

出した本人は相当な無理をしている。

それも戦闘に支障をきたすレベルで。

 

今度は攻撃命令を特殊艤装へと出す。

命令を受け取った特殊艤装は、全ての火砲の砲口を艦娘へと向け、発砲準備を整えた。

 

「…………テェェェェェェェッッ!!!!」

 

瞬間、海域一帯を炎が包んだ。

まるで隕石でも落ちたかのような衝撃が発生し、大災害クラスの大津波が大海を荒らした。

 

俺は決して動くことは無く、ただその光景を爆炎を身に纏いながら見続けていた。

数十キロメートル範囲で海が焼かれるその光景を何時間も見続け、炎と煙が止むまで動くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特殊艤装の形状はACfaに登場するアームズフォート、『アンサラー』がモデルです。

感想、お気に入り下さいな。


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戦線離脱

冷たい海の上で、俺は目覚めた。

微睡みから意識を取り戻した俺は周辺を見渡す。

 

といってもあの時から移動していないので、先程と同じ場所であるのは間違いない。

先程まで遠くにいたはずの艦娘達はあの特殊艤装の砲撃で消し飛んだのか、影も形もなくなっている。

 

「へっ、ざまあみやがれ」

 

海中に没したであろう艦娘達を罵りながら無線機を起動する。

しかし、周波数を基地司令部の物に合わせても聴こえてくるのはけたたましいノイズばかり。

 

最悪、基地が陥落したというケースも考え、取り敢えずその場から動く事にした。

 

特殊艤装を使ったせいか、やけに体が重い。

それだけでなく、艤装も大したものは出せなくなっている。

 

今体に纏っているのは57cm4連装砲が4門と15cm3連装高射砲が8門だ。

これだけでも充分規格外な装備なのだが、実を言うとあの時の対空戦闘で4連装砲は弾切れを起こしている。

 

だから実際に使用可能な兵器は高射砲しかない。

なので、基地の状況を確認と出来れば補給という目的で基地へと向かおうと……したのだが。

 

「羅針盤が吹っ飛ぶとかついてねえな……」

 

そう、海戦どころか船の航行には必ず欠かせない『羅針盤』が、艦娘の攻撃で木っ端微塵に吹き飛んでいたのだ。

 

しかも太陽は現在雲で覆い隠されており、時刻も夜中だ。

つまるところ、方角が分からない。

 

このまま明朝を待つのも考えたが、こんな所にいれば敵に見つかる可能性も考えられるので取り敢えず周囲の警戒をしつつどこか隠れられそうな場所を探す事にした。

━━━━━━━━━━━━━━━

数時間の探索で、ようやく隠れ場所に良さそうな孤島を見つけ、全速で上陸した。

 

上陸するや否や艤装を解除し、すぐ側の木にもたれ掛かった。

 

「ハァ……だるいな……」

 

体の奥底から込み上げてくる倦怠感。

それに耐え切れずに木陰で座り込む。

 

最初こそ特殊艤装は素晴らしい物かと思っていたが……メリットもデメリットもデカ過ぎる。

 

正直二度と使いたくない気分だ。

 

まぁ、あんなものを使うような機会なんてそうそう無いだろうから安心するとしよう。

 

時刻は既に朝を迎え、水平線の向こうから太陽が顔を出し始めている。

 

お陰で方角も分かったのでいざ行かん……と思った所に見覚えのある集団が『海の上』を通り過ぎ、俺はそれを無意識に目で追っていた。

 

そこに居たのは、艦娘。

 

艦娘だと分かると一目散に近くの森林の中に飛び込み、見つからないようにする。

 

規模は一個艦隊に相当する。

この状況から察するに、残党狩りにでも来たのだろうか?

 

いやしかし、相手の艦隊の編成を考えるとおかしく思う。

 

敵艦隊の編成は軽巡一隻とあと全部が駆逐艦という今までの戦闘では余り考えられない編成だった。

 

怪しく思いながらも敵艦隊を観察していると、突然彼女達は停止し、俺が今いる孤島を軽巡の眼帯を付けた艦娘が指さした。

 

「オーイ!チョイとここら辺で休憩にしようぜ!」

 

「賛成なのです!」

 

「……まずいっ!」

 

島に上陸し、此方に近付いてきた事を確認し、更に森林の奥へと隠れる。

 

近くの岩や流木に腰掛けた艦娘達は何やら話を始めた。

何を話しているのかと聞き耳を立て、会話の内容を聞き出そうとすると、聴こえてきた会話に俺は拍子抜けした。

 

「ここ最近遠征ばっかで退屈ったらありゃしねえ!あぁー暇だ!」

 

「でも平和が実感出来るから良いじゃない」

 

「だけどよ、こうも毎回資源運ぶだけってのもなぁ〜……」

 

何だ、何を話しているんだコイツらは。

てっきり残党狩りでもしていたのかと思えば、資源運びだと……?

 

幾ら我々が瀕死とはいえ、こんなご時世に呑気に遠征なんかする奴があるか。 と叫びたかったが、何とか喉元で抑え込んだ。

 

奴らは暫く談笑をした後、立ち上がり、再び海へ戻ろうとした。

 

やっと帰ってくれる。 と思っていた時だった。

 

鼻先に大きな蜂がけたたましい羽音を立てながら止まったのは。

 

「どわあぁぁっ!?」

 

「!?」

 

「何だ!?」

 

蜂から逃れようと茂みから飛び出した俺を驚いた形相で見つめる艦娘。

 

暫しの沈黙が辺りを包み込む。

沈黙を破ったのは軽巡の艦娘だった。

 

「なんでこんな所に深海棲艦なんていやがんだ!?」

 

訳の分からない事を叫びながら砲口をこちらに向け、警戒する彼女らを一瞥し、溜息を一つ吐く。

 

これはまずい。

幾ら俺とて消耗している身だ。

駆逐艦数隻と軽巡の集中砲火に今の体力で耐えられるかかなり不安が残る。

 

一瞬の内に頭の中から出た選択肢はといえば

 

①大人しく降伏する

 

②全力で逃げる

 

の2択に絞られた。

 

どちらかというと後者の選択を選びたい所だ。

 

前者では今の所は命は助かるかもしれないが、問題は捕まって後送された場合、良くて捕虜、悪ければ即処刑か何かしらの実験材料にされかねない。

 

結論、出た答えは……。

 

「あっオイ!逃げんな!!」

 

三十六計逃げるに如かず、だ。

 

規格外なレベルにまで改装に改装を重ねた俺の体は駆逐ですら追い付けないスピードで艦娘達の目前を通り過ぎ、猛スピードで海の彼方へと去っていった。

 

「『天龍』さん!あの方角には街が!」

 

「分かってる!鎮守府に急いで通達しろ!」

 

この後、鎮守府から出撃した主力艦隊やその他の兵員数千人規模で十何時間にも及ぶ大捜索が行われたが、結局深海棲艦が見つかる事は無かった。




感想は私の活力となります。
どんどん下さいな。


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擬態

逃げ出してからの時間はとても長かった。

いつまで経っても陸が見える気配は無く、羅針盤も無い為に現在位置も分からぬまま大海を彷徨い続けていた。

携帯食糧も食べ切ってしまい、次第に空腹が脳内を侵食しつつあった。

 

それでも、生きる為にエルメサスは進み続けた。

彼女……『レスタリオス』から与えられた使命を全うする為に。

 

空腹や水分不足で悲鳴を上げる身体に鞭打って、休憩を挟みつつも朝昼晩殆ど休み無しに前へ前へと進み続けていたが、ある日それが功を奏した。

 

水平線の先に見えたのは間違いなく陸地だ。

極度の空腹と脱水症状による幻覚等では無い。

 

陸地だと分かった瞬間、脳内が歓喜に満ち溢れ、無意識に艤装の速力を上げる。

 

「ハッ……ハッ……ハァッ」

 

息絶えだえな状態で海岸に辿り着き、艤装を全て解除したと同時に砂浜に倒れた。

 

陸に着いたは良いがまだこれからだ。

 

陸地は人間の領域。

つまり敵だらけである。

 

今すべきことはまず、安全圏を確立する事だ。

重い体を無理にでも立ち上がらせ、海岸の向こうへと歩く。

 

すぐ目の前にあった道を進み、辺りを探索する。

だがこの姿のままでは人間では無い事がバレてしまう為、『ある能力』を使う。

 

それを使うと、肌が突然変色し、死人以上に白かった肌が一瞬で人間と同等の肌色へと変わった。

 

エルメサスの能力の一つに体の色素を自在に操る物がある。

これを使う事で人間に化ける事は勿論、周囲の景色に溶け込む事だって出来る。

 

それを駆使して東南アジア辺りの鎮守府に潜入して工廠とドック、弾薬庫等を爆破してやった経験もあるので信頼性はとても高い。

 

だが、まだ問題は残っていた。

 

その問題とは…………服装である。

 

黒に統一されたトレンチコート、ブーツ、ズボンにトレンチコートの裏には数々の勲章が付けられた軍服。

 

こんなの、どう考えても怪しまれるに決まってる。

 

つまり、今必要なのは…………

 

「マトモな服……だな」

 

目の前にあったボロいアパートを見ながらエルメサスは一人呟いた。

 

見知らぬ人間の民家の服を勝手に拝借したエルメサスは二階の部屋にあったテレビを付け、見ていた。

 

来た服はたまたま入った部屋に男物の服があったのでそれを着ることにした。

 

あの自前の服は畳んで置いておき、クローゼットの中にあったジーンズと灰色のシャツの上に黒のジャケットを身に付けた。

 

エルメサスは女っぽい物が苦手であり、昔から男物の衣服を好んで着る事が多かった。

 

そんな格好のエルメサスの前にあるのは、皆のよく知るテレビ。

 

しかし、そのテレビはエルメサスが知るものとはかなりの違いがあった。

 

まず、彼の知るテレビは白黒テレビしか無かった筈……なのだが、今現在目に写っているのは紛れもない色彩に溢れた映像ばかりだ。

 

それにこんなに大きくて且つ薄型なんて見た事も聞いたことも無い。

 

とてつもなく綺麗な映像に見とれていたエルメサスは、何とか目的をちゃんと思い出し、テレビ番組……ニュースから情報を出来るだけ手に入れる事に専念した。

 

結果、粗方見終わったエルメサスはひたすらに混乱していた。

たった今見、聞いたことが信じられず、カーペットに座りながら顎に手を当て俯いた。

 

「一体……どういうことなんだ……?」

 

エルメサスはただ混乱し、困惑した。

まさか無意識の間にこんな事になっていようとは、理解出来る筈もなかった。

 

「今年は2019年……だと?」

 

ポツリと驚愕の表情で呟いたのと、玄関が開く音がしたのは、同時だった。

 

 




今回は短めです。

感想はいい……私にはそれが必要だ……。


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灰色の民

我々は常に、ありとあらゆる状況を想定して訓練を積み重ねて来た。

故に、戦場において我々に想定外という状況は存在しない。

……だが……

 

「…………」

 

「……あぁー……何故ここに?」

 

こんな状況は流石に想定していなかった。

 

「えっと……まさか生きてたとはな……驚いたよ」

 

唐突過ぎる急展開に言動がおかしくなってしまっているが、そんな事を気にしている場合ではない。

 

目の前で硬直しているのは、エルメサスの嘗ての上司であった同胞、『レスタリオス』だった。

 

だがレスタリオスは1944年の艦娘による大規模攻勢の際、戦闘中に消息を絶ち、戦死と言う事になっていた。

 

彼女の姿を一年ぶりに見た訳だが、少々変わっている所がある。

海に適応した末に変形した馬の蹄のような足は立派な人間の足に変わっている。

 

我々は環境への適応能力に優れており、たった一年程度で進化し、環境に適応する事が可能なのだ。

レスタリオスの足もそれによるものだろう。

 

それと、今は灰色だが玄関を閉めた直後は肌が肌色に変色していた。

これも進化によるものである事は間違いない。

 

エルメサスと同じように特殊艤装を手にしたレスタリオスは彼女同様に環境に応じて新たな能力を得る。

 

先程も述べたように我々は環境への適応能力が凄まじく高い。

だからエルメサスが一々こんな事に驚く筈もなかった。

 

暫しの時を経て、漸くレスタリオスが開きっぱなしの口を動かし始めた。

 

「え、エルメサス…………本当に、お前なのか?」

 

その表情は驚愕と歓喜が混ざった微妙な感じの表情であり、目は見開かれていた。

 

無理も無い。

もし本当に今年が2019年なのだとすればレスタリオスは73年ぶりにエルメサスと再開したのだ。

 

「おまえ……お前っ……本当に……生きっ……て……」

 

驚愕の表情から更に顔を歪ませ、滝のように涙を流しながら一歩、また一歩と歩み寄ってくる。

 

それを拒む理由は無い。

 

彼女の前に堂々と立ち、口角を上げながら帰還報告を告げた。

 

「エルメサス・バル二 、ただいま帰還致しました」

 

涙で潤んだ彼女の瞳を一心に見つめ、一糸乱れぬ敬礼をした。

 

その敬礼を目の当たりにしたレスタリオスは急いで涙を真っ黒なパーカーの袖で拭い、その身の丈に似合わぬ答礼をした。

 

「レスタリオス・リギア、貴官の戦線復帰を歓迎する!」

 

今日をもって、深海を照らす新たな光がこの世に生まれた。

1945年の大敗から70年以上の時を経て…………。

 

「さっ!お前が来てくれたんだ、今日はパァーっと行くぞ!」

 

「折角本土に来たんだ。 肉が食いたい」

 

「何が飲みたい?……って聞く必要は無いか。 どうせウォッカだろう?」

 

「分かってるな」

 

 

 

 

 




今日は結構短めです。
レスタリオスの正体に気付けた人はきっと多いことでしょう。

それと、エルメサスやレスタリオスの使用する特殊艤装の名称を感想にて募集します!
生涯のパートナー的存在なので良い名前を付けてやってください!(但し、名付けは英語以外でお願いします)


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5話

〈2019年 8月 9日〉

 

今日は深海棲艦と艦娘の戦争が終わった『終戦記念日』と言う奴らしい。

薄型テレビの電源を入れるとどこのチャンネルも『あの戦争』の事ばかり話題になっている。

 

番組の映像では、悪逆非道な深海棲艦を糾弾し、それとは逆に艦娘を正義の味方と讃えるまぁ予想通りな内容だった。

 

当時の映像や写真が解説の声とやたらデカいテロップと共にダイジェストで流れる。

そこには艦娘と深海棲艦の交戦記録や、それによって死んだ深海棲艦、艦娘の日常生活等が映されていた。

 

ついでに戦闘の映像と写真の幾つかは直ぐに合成だと分かった。

特に開戦当時なんか艦娘があんなに優性な筈がない。

 

エルメサスの記憶では開戦当初は艦娘はどれも貧弱で攻めて来た所を返り討ちにして砲弾と艦爆で物言わぬ肉塊に変えてやったものだ。

 

それに写真の中には深海棲艦によって虐殺された罪の無い民間人という解説と共に本物の人間の死体とも言えぬ血肉の塊が写った写真が出てきたが、これも全くの嘘っぱちだ。

 

彼等は深海棲艦に殺されたのではなく、深海棲艦と対話を試みようとしたが為に反乱因子として艦娘の手によって射殺されたのだ。

 

過去に東南アジアに潜入した時に同じ光景を見た事がある。

 

艦娘と深海棲艦の武装は大して変わらない。

だから人間の使う銃で射殺するよりもでっち上げやすい。

 

これらの番組を見ていく内に怒りを通り越して呆れてくる。

"奴ら人間は我々から地上を奪い、それさえも忘れてのうのうと暮らして自分が最も上であると思い込んでいる"

 

政府もそうだがそれに踊らされる大衆も愚かなものだ。

 

溜息を一つ吐きながらテレビの電源をリモコンで消すと、レスタリオスが大きな機械を持ってリビングに入って来た。

 

「これは?」

 

長い事戦場で戦ってきたエルメサスは直ぐにそれが無線機だと分かった。

所々造りが甘いことからして恐らく手製だろう。

 

「まぁ見てな」

 

無線のダイヤルを回し、周波数を調整し、スケルチで雑音を取り除くと、そこからは若い女性の声が聴こえてきた。

 

《お、おはようございます!エルメサス殿》

 

「ん?その声は……」

 

一瞬何故自分の名前を知っていると言いかけたが、その声には聞き覚えがあったので言わないでおいた。

 

《第79補給部隊の》

 

「あっ!!お前もしかして『エリオス』か!?」

 

彼女の声を遮って叫んだが為に無線の先のエリオスは《きゃあっ!?》と可愛らしい悲鳴を上げ、椅子が倒れたのか大きな音が聴こえた。

 

「ハッハ!オイオイマジかよ!エリオスお前生きてたのか!!」

 

《は、はい!今は他の仲間と一緒に中東で武装勢力に匿って貰っています》

 

エリオスは教育隊時代からの後輩であり、戦争が始まった時には太平洋戦線のエルメサスとは違ってヨーロッパの方へ補給部隊として派遣されていた。

 

ヨーロッパ戦線もヨーロッパ戦線でなかなか酷い有様だったようだが、彼女が生きていたのは嬉しい誤算だった。

 

無線越しに再会を喜んでいると、隣にいたレスタリオスが口を開いた。

 

「俺は毎日こうして世界中に散らばった同胞達と連絡を取っているんだ」

 

自慢げに話すレスタリオスを驚いた形相で見つめ、問いを投げ掛ける。

 

「世界中って……そんなに沢山残っているのか?」

 

「確認出来ただけでもまだ五百万人は生きている」

 

「艦娘とは違って俺達はちゃんとした生物だ。 繁殖くらいするさ」

 

我々の戦力は開戦当時は凡そ千万人程だったが、今では桁が一つ下がってしまったようだ。

だが、まだ万単位で残っているのは驚きだ。

 

「それで?こんな嬉しい再会をさせてくれた目的は何だ?」

 

レスタリオスの事だからただ仲間と再開させただけという訳は無いだろう。

何らかの目的がある筈だ。

 

「あぁ、その事なんだが……近い内に世界各地で人類に対して反乱を起こす」

 

「……成程」

 

目的を打ち明ける途端に声のトーンが下がり、レスタリオスが本気であることを察したエルメサスも真剣に耳を傾ける事にした。

 

「まず、俺達の最初の標的は……」

 

「……横須賀鎮守府だ」

 

 




そろそろ感想乞食のタグでも付けようかな?
という事で感想下さい。(意味不明)


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『彼の者』たちについて 一式

博識な方に丁寧な御指摘をして頂いたので、ガバガバな知識ですが、設定集的なものを書きました。


●『彼の者』達とは?

人類は深海棲艦と呼称している彼等は正確な起源は不明。

しかし、かなりの大昔。 それも文明が誕生したばかりの頃から存在していた種族の可能性もあるとされている。

だが人類も彼の者たち自身も、その事についてはあまり知らない。

 

○彼の者たちの特徴

彼等は凄まじいスピードで進化をし、環境に適応する。

その為、余程の極限環境でない限りは生存が可能。

しかもありとあらゆる言語を喋る事が出来、人間との対話には困らない。

人間の文化を積極的に取り入れようとする習性があり、現在彼の者たちが使っている武装等も、人間の作った軍艦や艦娘、その他の兵器を真似て作っている。

それと何気に娯楽を楽しむといったような人間らしい所も多くある。

 

●エルメサスやレスタリオスが名前の後に付けていた『バル二』や『リギア』について

 

バル二というのは名字とかそういうものではなく彼の者たち間で使用する階級である。

彼等の階級制度は結構単純であり、バル二は一つの部隊を指揮するだけの権力を持っている。

リギアは基地に所属する全ての部隊を指揮する権限を有する。

つまり、レスタリオスは上官であり、エルメサスは部下であるという事だ。

 

●『特殊艤装』について

特殊艤装とは簡単に言うなら物理法則ガン無視のトンデモ兵器である。

似ている物を挙げるならばACVシリーズに登場する『オーバードウェポン』に一番近いだろう。

特殊艤装にも様々な種類があり、単純に防御力を爆上げする物や、機動力を高める物、他には本来は運用など到底不可能な規格外兵器を使用する物などがある。

因みにこれらに共通する事は、本来は不可能な筈の事を、"法則を無理矢理捻じ曲げて"可能にしているという事だ。

 

特殊艤装は一種のモジュールであり、レスタリオスはそれを三つ付けている。(防御力強化と規格外兵器、機動力強化)

 

その点、エルメサスはというと………………。

六つ搭載している。(機動力強化、規格外兵器、防御力強化、索敵能力強化、通信距離強化、生命力強化)

 

その結果、普通の身体では特殊艤装による身体的負担に到底耐えきれなくなり、本人の頼みで身体強化手術を行った。

それでも負担はあまりにも大きく、特殊艤装……特にあの『規格外兵器』は生命活動に支障をきたすレベル。

 

特殊艤装をフルで展開出来る時間は最長五分が限界である。

それ以上展開すると某逆流王子みたいな死に方をする。

 

再現映像

『特殊艤装から生命エネルギーが吸い取られる……!ギャアアアアアアアアアアアァァァ!!!』

 

 

 

 

 

 




ガバガバな知識ながら書かせて頂きました。
今後もきっと無知であるが故に指摘を受けまくると思いますが、どうか愚かな私の作品を見ていってくださいな……。


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合流地点

〈2019年 8月 11日〉

 

我々はよく深海棲艦と呼ばれる為、深海が住処だと思われがちだが、本当は違う。

深海はあくまで人類から身を守る為の隠れ場所なだけであり、地上での生活は可能だ。

 

「これは……」

 

そして深海にある隠れ場所が正にそこだった。

小型潜水艇にレスタリオスと共に乗り、海の底へと辿り着くとそこには視界に収まりきらないほどの巨大な要塞があった。

 

所々、古びているのか錆びやら大量の苔やらが見えるが、防御用の砲台や魚雷発射管等が稼働している事からこの要塞はまだ生きていると分かる。

 

「驚いたか? 七十年以上前に軍が敗走を想定して残存戦力を守る為に作った海中要塞だ」

 

「まさか……これが世界中にあるのか?」

 

「そうだ、これ一つで凡そ十万人は住めるな」

 

最初、レスタリオスの話を聞いた時、五百万人も生き残っていたことがそこまで信じられなかったが、これを見てそれが真実だと改めて認識した。

これを見ただけで何となく勝てるような気さえしてくる程だ。

 

《管制室よりサムエル01。 聞こえるか》

 

「こちらサムエル01、感度良好」

 

小型潜水艇の操縦手と要塞の警備隊が無線で連絡を取り合っている。

暗くてよく見えないが、エルメサスの索敵能力で凡そ五十もの潜水用の艤装を纏った兵士がいる事が分かった。

 

《管制室よりサムエル01、第三ゲートを通過し、第二ドックへ入れ》

 

「サムエル01了解」

 

兵士達が遠ざかったのを確認すると、潜水艇は再び進み始め、見上げるほどの巨大なゲートの前に出た。

ゲートの上には大きく『3』と書かれている。

 

暫くするとそのゲートが重々しい音を立てながらゆっくりと開き、潜水艇をそれを通過する。

それから基地の周りを少し遠回りするように進み、これまた『2』と上に書かれた先程のゲートよりも小さな扉が既に開いており、潜水艇はその中へと入った。

 

完全にドックの中に潜水艇が入ると扉が閉まり、天井から伸びたクレーンが潜水艇を固定した。

 

クレーンが潜水艇を固定すると、今度はこの部屋の水位がどんどん下がってきた。

どうやら排水が始まったらしい。

 

そんな道程を経て海中要塞に辿り着いた俺達が中で見た光景は凄まじいものだった。

 

道行く所に同胞が沢山いて、船や装備の整備を行っている者やそれを指示する現場監督のような格好の同胞。

隅っこで木箱をテーブルと椅子代わりにして酒を飲みながら談笑している者もいる。

 

そこにあったのはまさしく日常。

今までずっと忘れていた物だった。

 

「あっ!!」

 

「ん?」

 

その中で突然一人の同胞がエルメサスを指さし声を上げたと思えば周囲に怒鳴り散らし始めた。

 

「みんなぁぁ!!エルメサスが来たよぉ!!英雄の帰還だ!!」

 

とんでもない声量で叫ぶ彼女に僅かに体を仰け反らせつつも気を取り直して辺りを見渡すと、既にエルメサスは同胞達によって包囲されていた。

 

「な、なんだぁ?」

 

困惑するエルメサスに彼女らは次々と捲し立てる。

 

「エルメサス殿!本当にあの『太平洋の死神』なんですね!!」

 

「え?え?太平洋?死神?」

 

「太平洋で連合艦隊とその増援を単騎で全滅させたと聞いております!それは本当なのですか!?」

 

「いやまぁ、それは本当だが……」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!!!!」

 

真実を述べた途端に大声を上げてはしゃぎ出す彼女達。

そしてそれにひたすら困惑するエルメサス。

 

たったの十数秒でそこにはカオスが出来上がっていた。

 

それを有難いことに鎮めてくれたのはレスタリオスだった。

 

「まぁまぁ、俺はこれからエルメサスにここを案内するんだぞ。 "今は"慎んでくれ」

 

そう言うと彼女達は素直に引き下がり、道を空けてくれる。

背中に彼女達のギラギラとした視線が被弾しながらなるべく急ぎ足でその場を去った。

 

「ここは人間の街みたいな構造をしている。 ここは商業区だな」

 

ただひたすらに案内されながら要塞の中を歩き回り、

 

「こっちは工場区だ。 兵器やだけでなく民需品も充実している」

 

「上の階には居住区だ」

 

「あっちは……」

 

「ここは……」

 

アホみたいに広い街をただただ歩き続けること数時間。

 

「あぁ〜疲れた……」

 

「戦闘部隊との挨拶も済ませたし、あとはもうやる事無いな」

 

「それなら俺はもう寝るぞ……」

 

半ば投げやりに言いながらベッドの中へ潜り込むエルメサスを見ながらレスタリオスは苦笑いした。

 

「ま、横須賀の襲撃だともっと疲れる事になるだろうがな」

 

そうポツリと呟き、レスタリオスも眠りについた。

 

 

 




あぁ^〜感想が欲しいんじゃぁ〜


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投げられた賽

〈2019年 8月 15日 〉

 

時刻はまだ明朝を迎えておらず、しかし海上に真夜中の静けさは存在しなかった。

激しい暴風雨が吹き荒れ、荒波を立て続けていた。

その海の中に、幾十もの人影が、音も立てず、静かにゆっくりと突き進んでいた。

 

《レイダー01から各隊へ、作戦開始時刻だ。 行動を開始せよ。 人類共に我々を絶滅させなかった事を後悔させてやれ》

 

《ヴィクター01了解。 土産は提督の首にしましょう》

 

《こちらダスラー01、首だけでなく提督その物を磔にして艦砲射撃の的にするのをライブ配信なんてどうです?》

 

《ヴィクター01、ダスラー01、口は慎め。 そんな事をしても余計に人類の反感を買うだけだ》

 

冗談を言ってくる部下を叱り、潜水艤装の動力を入れると推進力が働き、体が前へと進み始めた。

人間とは違い、彼女等は海水の冷たさをものともせずに前方にある攻撃目標、『横須賀鎮守府』を目指し、速力を上げた。

 

《もうすぐ横須賀だ。 速力と深度を落とせ、敵に気付かれるぞ》

 

《日本海軍の主力艦隊や艦娘だけじゃなくて米海軍の艦艇までいるってのにやけにザル警備だな》

 

《大方、俺達は無力な絶滅危惧種とでも思っているのだろう》

 

《海底数千、数万メートル下に何百万と潜んでいるとも知らずに……馬鹿な連中だよ》

 

《レイダー01から各隊へ、目標地点に到達。 総員潜水艤装を投棄、浮上し戦闘態勢を整えろ》

 

()()()

 

纏っていた潜水艤装を海の底へ沈め、徐々に海面へと上がっていく。

海の中からも天候が激しく荒れている事がハッキリと分かる。

 

ブリーフィングでもあった通り、大型の台風が現在進行形で横須賀を含む範囲に直撃しているようだ。

これでは空母の艦娘はまず使い物にならない。

それに他の艦娘も荒波に呑まれて真面に戦えたものでは無いだろう。

 

これは我々にとって不利な状況となり得るが、同時に艦娘共にとっても不利である。

勿論、ある程度のリスクは付き纏う。

だが台風が敵を妨害している今こそがあの憎き日本の主力艦隊の一つを排除する好機なのだ。

その為にこの精鋭達を連れて来たんだ。

 

負けも、引き分けも許されない。

 

絶対的な勝利をもって敵を撃滅しなければならない。

 

《各隊、周囲を警戒しろ》

 

《こちらヴィクター01、敵影を見ず!》

 

《ダスラー01、魚雷艇一隻いません!今がチャンスです!》

 

ここが!、今が!!

 

《良し!ならば……》

 

我々の自由の獲得への第一歩である!!!

 

「総員!!全兵装の安全装置を解除!!初弾装填せよ!!」

 

「戦闘態勢に移行せよ!!我々はこれより横須賀鎮守府を奇襲し主力連合艦隊を撃滅する!!」

 

The die is cast.




ついつい筆が乗ってノリノリで書いちゃいました。
感想・お気に入りよろしくお願いします。


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横須賀鎮守府奇襲

横須賀鎮守府の住民を叩き起したのは雨音をかき消す砲声と爆発音だった。

 

「な、何事だ!?」

 

突然の爆音により眠気も吹っ飛んでしまったその鎮守府の未成年と見紛う若き提督は大急ぎで制服に着替え、自室を飛び出して執務室の扉を半ば乱暴に開け放った。

 

そこにいたのは彼の秘書艦であり、その他重要な仕事を担っている『大淀』が既に提督を待ち構えていた。

 

「提督、緊急事態です!!」

 

「そんな事は分かってる!何が起きているんだ!?」

 

数十年の平穏が突如として破られた事によって混乱した秘書艦に提督は声を荒らげつつも状況説明を求めた。

 

「それはまだ確認が取れていません!ですが……攻撃方法からして十中八九深海棲艦だと思われます」

 

その答えを聞いた提督は困惑し、更に怒鳴り声を発した。

 

「な、何を言ってるんだ!?深海棲艦の生き残りなんて中東にほんの僅かしかいなかった筈だろう!?」

 

深海棲艦による大規模な奇襲等予想していなかった為に余計に混乱を招いた。

 

「そんな事私にも分かりません!それよりも早く艦隊の出撃許可を!!」

 

「わ、分かった!」

 

 

真夜中の鎮守府を覆う炎。

それらを生み出していたのはエルメサス率いる奇襲部隊だった。

 

砲弾と魚雷が何十発と放たれ、停泊した護衛艦やイージス艦、その他の艦艇に直撃し、爆炎を上げる。

 

船体が紙屑のようにぐしゃぐしゃにひしゃげ、爆沈していく。

艦艇だけでなく港の港湾施設まで標的とし、砲弾を浴びせる。

 

「タイムリミットは三十分だ!!全て破壊しろ!!」

 

エルメサスもレスタリオスから借りた部下へ怒号を撒き散らしつつ五十六cm四連装砲四基の一斉射撃で火の海を更に拡大させ、甚大な被害を与える。

 

タイムリミットがもうすぐ二十分に減ろうとした時、

エルメサスの電探が複数の動体を感知した。

 

「総員警戒!艦娘のお出ましだ!!」

 

相手もこちらを視認したらしく、遠くから発射炎が光ったのが見えた。

 

「敵弾来るぞ、気を付けろ!」

 

とは言ったものの、艦娘達の放った砲弾は明後日の方向へと飛んで行った。

まぁ無理も無い。

現在横須賀は大型の台風の直撃により、海の方では荒波が荒れに荒れており、照準なんか真面に合わせられない。

 

そもそも、こんな状況で海戦を行う時点で異常なのだ。

 

しかし、エルメサス達にはアドバンテージがあった。

それは新装備である。

 

工廠が新たに開発した装備とは『砲口安定化装置』である。

生存した同胞が中東で戦っていた主力戦車、『MBT』の砲の高い命中率を見て真似た事によって生まれた装備だ。

 

これによって荒波に晒されても尚、正確に照準を合わせる事が可能となる。

 

「目標、敵艦隊!!」

 

数十人の同胞が目前の敵に照準を合わせ、合図を待つ。

彼等は大砲の砲弾を放つ火薬であり、それに火を付けるのはエルメサスだ。

 

「テエエエェェェェッッ!!!」

 

瞬間、爆炎が敵艦隊を覆い尽くし、視界が一時遮られた。

あまりの火力の高さに衝撃波で津波が発生した程だ。

 

「煙晴れます!」

 

黒煙は時間と共に薄れてゆき、敵艦隊の姿が顕になる。

 

「……敵艦隊の殲滅を確認!!」

 

「おっと、タイムリミットだ。 撤退するぞ」

 

かくして、横須賀に大災厄を齎した彼等は荒れ狂う水平線の先へと消えて行った。



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『生物』と『兵器』の違い

奇襲に成功し、鎮守府の機能を完全に無力化した我々は、上陸部隊を乗せた揚陸艦や上陸用舟艇等を連れた艦隊の旗艦である戦艦シャルンホルスト級擬き(見た目はシャルンホルストだが所々魔改造が施してある)の中にてまた横須賀へと戻される間、束の間の休息を取っていた。

 

何時間も経つと台風も過ぎ去ったのか風は弱まり、海も大分穏やかになってきた。

横須賀近海にて待機していたので横須賀まではそこまで時間は掛からなかった。

 

横須賀に入港&上陸する前に生き残った敵が待ち伏せを行っていないか確認する為に偵察隊として我々が送られる事となった。

 

「これはなかなかひでえもんだな」

 

前はきっとさぞかし綺麗な洋風の建物であっただろう瓦礫の山を眺めながらエルメサスが呟き、隣にいたレスタリオスが終戦間近の俺達の方が酷かったとそれを否定した。

 

「おい見ろ、あそこ。 艦娘の死体だ」

 

普通の人が目を凝らすと見えるぐらいの位置に、確かに十数人位の死体が浮かんでおり、その辺りが血で若干赤く染まっていた。

 

「ヴィクター隊、生死確認をしてくれ」

 

「了解……と言ってもここから見ても酷い有様ですがね」

 

ヴィクター隊が艦娘の生死確認を行う為に死体に近付き、エルメサスとレスタリオスもそれに続いた。

 

間近で『ソレ』を見たエルメサスは確かにこれは生死確認の必要も無いな、と心の中で呟いた。

 

海に浮かんでいるのはどれも体の一部が欠損しているか、原型を留めておらず、波に揺られた艦娘の腸が他の艦娘の腸と絡み合って最早誰の腸なのか見分けがつかなくなっている。

 

顔に関しては皆一様に虚ろな目をしているが、表情はそれぞれで死ぬ間際にしていたであろう表情がうっすらと浮かび上がっているような気がした。

 

ある者は恐怖し、ある者は絶望し、ある者は怒り、ある者は悲しんだ。

 

それを平然と見れてはいるが、我々とで感性は人間と大して変わらない。

人間、それも年端も行かない少女、或いは幼女の死体を見て良い気になる筈も無い。

 

ふと足元に浮かんでいた腕を見たレスタリオスがあっと声を上げた。

それに何事かと腕を拾い上げ、レスタリオスの指さした場所が指の所だったのでそこを見るとエルメサスは途端に表情を歪ませ、嫌悪感を丸出しにした。

 

雲の隙間から顔を出した太陽に照らされ、光り輝く薬指に嵌められていた『指輪』を見て。

 

「あのシステム、まだ健在だったのか……」

 

レスタリオスが指から指輪を引き抜き、吟味しながら呟いた。

彼女もまた、エルメサス同様にあのシステムを毛嫌いしている。

 

「兵器と『ケッコン』……ね。 悪趣味なもんだよ、こればっかりは俺でも理解しようがない」

 

レスタリオスが持っていた指輪をひったくると、海の中へと投げ捨てた。

 

「何故、人間は『兵器』なんかに愛情を抱くのかね?」

 

「そら見た目が女だからな」

 

「人間は女だったらなんでも良いってのか」

 

「さぁな、俺にも分からんよ」

 



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彼の者達について 二式

●彼の者達の種類

彼の者というのは皆が皆エルメサス達のように艤装を用いて戦うのではない。

彼等は主に二種類に分けられる。

 

一つはエルメサスやレスタリオスのような艤装を装備し、使用する事が出来る『有艤種』と呼ばれる者達。

 

もう一つは肌色以外は人と大して変わらない『通常種』だ。

 

有艤種というのは数百万いる彼らの中でもとても希少であり、その数は一万にも満たない。

 

有艤種は対艦娘や、敵戦力の掃討を主任務としており、通常種は普通の歩兵だけでなく、整備士から軍の指揮までその仕事は多彩。

 

因みに通常種は有艤種と違い、近代の軍と同じような階級制度が存在する。

 

●通常種の装備

 

一式の方で前述した通り、彼の者は人間の作る全ての物を真似て来た為、文明レベルは"殆ど"人間と同じである。

 

大戦開戦時の連合軍の報告書には、『黒塗りのIII号戦車M型』や『黒塗りの九七式中戦車(新砲塔搭載型)』と交戦したと記されていたという。

 

しかし、彼の者達の技術には未だ謎に包まれているのだ。

 

1943年の東ヨーロッパ戦線でのソ連陸軍の報告書によれば、ソ連軍の機甲師団が"未知"の重戦車、駆逐戦車によって壊滅したというのだ。

 

そして終戦後、撮影されたそれらの写真を解析するとその戦車が何なのか直ぐに分かった。

 

それらは1943年には実戦に参加どころか完成すらしていなかった筈のARL-44と試作のみで結局東ヨーロッパ戦線に送られる事のなかった筈のT34とまだ未完成だった日本軍の駆逐戦車、試製五式砲戦車だった。

 

それだけではない、終戦が間近に迫っていた1945年の太平洋戦線では、米海軍の何百機もの四発爆撃機、B-29で構成された爆撃隊が作戦区域上空に向かっている最中に『レーザー』によって攻撃を受けたという。

 

結果は二百機余りのB-29が撃墜され、爆撃隊は撤退している。

 

レーザーを除くこれらの兵器に言えることは一つだ。

 

これらは全て試作段階か、実戦にすら参加していないということだ。

 

最終的には艦娘の力によって勝利を得る事が出来たが、未だ彼の者達は驚異となりうる力を持っている。

 

●『有艤種化』

 

嘗ての大戦で、通常種が突然、なんの前触れもなく有艤種に変異するという現象が起きた。

 

その後の観察では、有艤種へと変異した通常種は一般的な有艤種のように艤装を扱えるようになり、身体能力も増大していることが分かった。

 

この有艤種への変異の原因は大戦時の戦局の悪化もあり、未だ不明である。

 

変異した者は複数おり、エルメサスはその変異現象の前例の一人である。

 

 



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本土決戦

〈2019年 9月 1日 日本列島強襲上陸作戦開始から数日経過〉

 

現在エルメサス達は歩兵隊と足を揃えて侵攻しており、歩兵隊と日本軍が戦っている最前線の前線司令部にて味方の無線から聴こえてくる銃声やら爆発音やら怒声を聴きながら地図を机の上に広げ、状況を確認していた。

 

《こちら第182歩兵大隊!中隊規模の敵歩兵部隊と接敵!!》

 

《敵の機関銃陣地に足止めされている!!戦車の支援が必要だ!!》

 

《怖気付くな!!どうやらアイツら実戦経験は無いらしい!!》

 

《ヤバいっ!!ヒトマルだ!!伏せろっ!!伏せろっ!!》

 

《ジャベリン、それが無けりゃRPGを持ってこい!!》

 

《バックブラストクリア!!発射ァ!!》

 

《よっしゃヒトマルの撃破を確認!!クソ喰らえ!!》

 

《敵増援を確認!先程と同じ中隊規模だ!!》

 

《第3中隊から大隊長へ!指定の座標への砲撃支援を要請します!!》

 

最後の中隊長からの砲撃支援の要請に答えるように司令部の天幕のすぐ隣に並ぶ榴弾砲が火を噴く。

 

レーザーポインターによる座標指定と榴弾砲の射撃統制装置の組み合わさった事によって生まれる高い命中率は中東での試験的運用で既に証明されている。

 

それはさておき、天幕の中では机上に広げられた作戦区域の地図をエルメサスとレスタリオス、それと他の参謀将校達、そして軍司令官が取り囲んで現状を把握しつつ作戦を練っていた。

 

「思いの外、日本軍の動きが早いな」

 

地図上に配置された自軍を示す駒と敵軍を示す駒の位置を交互に見て、陸軍の行動の早さが目に見える。

 

事前に予測されていたよりも早く敵との戦闘が始まり、また、その勢いも苛烈極まりない。

 

無線から味方の状況を察するに、相当の損害を被っている。

 

このままでは最悪、海岸まで押し返される可能性がある。

 

それを踏まえてエルメサスは一つ、冗談を交えつつも提案をする。

 

「ここは一つ、俺達が出るとするか?」

 

この言葉を聞いた参謀将校達の驚きの表情と言ったら!

 

レスタリオスは後ろで吹き出しかけていた。

 

こういう場合、何も知らぬ人はレスタリオスやらエルメサスやらが参戦すれば良いと思うかもしれないが、実際はそうもいかないのである。

 

エルメサス達はあくまでもそこらの上級将校よりも少し権力を持ってる位の幹部の一員に過ぎない。

 

本作戦に限らず、このような大規模作戦では実質的に全部隊の指揮権を持つのは軍司令官等の高級指揮官であり、エルメサス達には発言権はあれど部隊を指揮する権限は持っていないのだ。

 

幾ら実力があった所で、権力には従わざるを得ない。

 

それにエルメサス達は軍においては最終兵器のように扱われている。

 

例えるならば第一次世界大戦の英国海軍のドレッドノートみたいな物だ。

 

そのような強力な戦力をやたらめったらに使い過ぎれば、いずれガタが来てしまう。

 

だから嘗ての大戦でもエルメサスやレスタリオスが参加した作戦といえば大規模な侵攻作戦とか海上基地の防衛とか、とにかく実戦の機会がかなり少なかった。

 

とはいえ、それを知っていて自ら名乗りを上げたのは別に戦いたいからという訳ではなく、単に敵との戦力差に対する警戒だった。

 

少しの間とはいえ、日本に滞在していたエルメサスはある程度日本軍の戦力に関して把握していた。

 

ここ最近で日本軍の軍事力は昔よりも遥かに増強されており、一つの軍事国家として見ても差し支えなかった。

 

過剰とも思えた軍備増強の要因はどうやらアジア諸国間での対立らしい。

 

矛先が自分達に向いていなかったとしても、この膨大な戦力は目に余る程だった。

 

だからこそ、エルメサスはこの戦力差を手遅れになる前に埋めておきたかったのだ。

 

それだけではない。

 

現在敵との交戦状態にあるのは横須賀から北の方角にある金沢区辺りだ。

 

つまり、現在我々が最も首都である東京に近いのだ。

 

敵が準備を整えてしまう前に防衛線を突破し、首都を陥落させなければならない。

 

その為にも、エルメサス達の力が必要だった。

 

エルメサス達の艤装を使用するには海底基地の司令官の許可が無ければならない。

 

「基地に繋げて欲しい」

 

「……いいだろう、俺が許可を求めているという事にしてやる」

 

「助かる」

 

早速電話の受話器を手に取り、基地の電話番号へとかける。

 

何度かコールした後、誰かが出たのか受話器に向かって淡々と話し始める。

 

その姿を後ろで見ていたレスタリオスも、エルメサスの考えには賛成だった。

 

これで許可が降りれば我々を邪魔している奴らを直ぐに航空隊による空爆で一掃できる。

 

と、思っていたが、彼の電話を聴いていると何やら不穏な空気が流れ始めた。

 

「メルス上級大将でありますか。 至急頼みたい事が……」

 

「はい、我々有艤隊の出撃許可をエデル中将は求めておられます!」

 

「艦娘ですか……まだ確認はされていませんが……」

 

「待って下さい!現在、明らかに敵の反撃は苛烈さを増してきています!今ここで叩かねば最悪押し負けます!」

 

「敵は我々の予想を上回っている!押し負ければ海岸から追い出されて上陸作戦はパーだ!!」

 

「至急スパルス基地司令に許可を取って頂きたい!」

 

「何!?スパルス基地司令は今寝ているだと!?」

 

突然の怒鳴り声にエデル中将以外の者がビクリと肩を震わせた。

 

「こんな真昼間からか!?」

 

「そんな事はどうでもいい!!早く叩き起してでも許可を取れ!!」

 

それから暫くして、相手の返答を聞いたエルメサスはホッと一息つくと受話器をそっと戻した。

 

「ど、どうだった?」

 

先程のあの気迫に若干ビビっていたレスタリオスは結果を恐る恐る問い掛ける。

 

「……降りたよ、許可が」

 

「そうか!」

 

期待通りの返答にレスタリオスも喜び、エデルは二人の方を向き、言った。

 

「これより、敵大部隊の掃討を開始する。 二人は至急、出撃し敵を撃滅せよ!」

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

 



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