我が神を讃えよ! (AZAZERU)
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1話 布教をするために

思いつかないから新作に走ってしまった·····。


 (わたくし)、この度転生するらしいです。

 特に特別な人間であった訳でも、とんでもなく不幸であったわけでもなかったのですが……。まあこれも神のお導きというものでしょう。

 

 あ、神らしき人物には会いましたよ。真っ白と真っ黒を同時に表したような、なぜそう認識できているのか分からない感じでしたね。

 その方には特典を頂きました。

 その特典は、我が神であるヴァンダルー・アーク・ヒルウィロウ・ソルダ・ザッカートの御力である。

 しかし私は我が神に成り代わりたい訳では無いのだ。私がしたいことは、我が神への信仰を広めることである。また、その為に加護を任意でも授けられるようにしてもらった。

 これで皆が我が神の存在を疑うこと無く信仰してくれるだろう。

 

 ちなみにこの態度は興奮しているからであって、いつもはもっと軽いです。

 ちょっと落ち着いてきたので、今の現状を話しましょう。今はどうも日本以外の国に産まれているようです。あと私は特典の効果によってなのか、吸血鬼の父とダークエルフの母から産まれたダンピールとなりました。ただどちらも神格を持っている訳では無いのですが……。

 まあ我が神も、御母上であるダルシア様が女神の化身として復活なさった時よりも前に加護を振りまいておられだったので、特に問題はありますまい。

 それはそうと、ダンピールとして産まれた私の容姿も、我が神と同じように白髪に赤と紫の瞳、青白いと言える程白い肌と共通点が多く感無量であります。

 

 ですが我が神とは違い私は捨てられてしまいました。まあ理由はお察しですがね。しかし私は恨みませんとも。彼らの思考が理解出来るものであると同時に、我が神が信仰している『生命と愛の女神』ヴィダはヒトを愛しており、その意図を汲んだ我が神は基本的に人助けをなさるからです。

 もちろんこれからは我が神に習い、恨みを忘れず、自らの幸せを追求する為に敵を排除する事を躊躇したりは致しません。

 

 まあまずは霊の方達にお願いしてネズミやらを取って来てもらいましょう。このままでは餓死してしまいますからね。霊の方達に魔力を送ってゴーストになってもらいました。そうしないと触れないので。

 

 さて、栄養()も取れましたのでこのスラムらしきところで生き抜く拠点を探しましょう。それが無ければ少々辛いですからね。まあ我が神は【状態異常無効】スキルを持っておられるので、その御力を頂いている私もまた、スキルのお陰で毒や病気になったりはしませんが。更に言えば【超速再生】スキルもあるので怪我も一瞬で治るのですが。

 

 さあ、生き残って布教しましょう。



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2話 我が神の御力は

434話現在のヴァンダルーのステータスです。
四度目は嫌な死属性魔術師が更新されたら、こちらのステータスも更新します。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

・名前:ヴァンダルー・アーク・ヒルウィロウ・ソルダ・ザッカート

・種族:ダンピール(女神)

・年齢:12歳

・二つ名:【グールエンペラー】 【蝕帝】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【鱗帝】 【触帝】 【勇者】 【大魔王】 【鬼帝】 【試練の攻略者】 【侵犯者】 【黒血帝】 【龍帝】 【屋台王】 【天才テイマー】 【歓楽街の真の支配者】 【変身装具の守護聖人】 【女神の解放者】 【巨人帝】

・ジョブ: 冥界神魔術師

・レベル:3

・ジョブ履歴:死属性魔術師 ゴーレム錬成士 アンデッドテイマー 魂滅士 毒手使い 蟲使い 樹術士 魔導士 大敵 ゾンビメイカー ゴーレム創成師 屍鬼官 魔王使い 冥導士 迷宮創造者 創導士 冥医 病魔 魔砲士 霊闘士 付与片士 夢導士 魔王 デミウルゴス 鞭舌禍 神敵 死霊魔術師 弦術士 大魔王 怨狂士 滅導士 冥王魔術師 ペイルライダー  混導士 神導士 神滅者 虚王魔術師 神霊魔術師 ダンジョンマスター クリフォト デーモンルーラー 整霊師 魔杖創造者 匠:変身装具

 

 

 

 

・能力値

 

・生命力:928,349+(64,983)

・魔力 :16,165,047,521+(16,165,047,521) 

・力  :90,341+(2,257) 

・敏捷 :83,544+(2,088) 

・体力 :93,961+(2,349) 

・知力 :122,815+(3,070)

 

 

 

 

・パッシブスキル

 

超力:2Lv

超速再生:8Lv

冥界神魔術:6Lv

状態異常無効

魔術耐性:10Lv

闇視

末那識誘引末那識誘引

詠唱破棄:10Lv

導き:末那識

魔力常時回復:10Lv

従群超強化:10Lv

猛毒分泌:牙爪舌:9Lv

身体無限伸縮:舌

無手時攻撃力増強:大

身体超強化(髪爪舌牙):2Lv

魔糸精製:4Lv

魔力増大:10Lv

魔力回復速度上昇:10Lv

魔砲発動時攻撃力増強:大

生命力増強:7Lv

能力値増強:君臨:2Lv

能力値強化:被信仰:10Lv

能力値強化:ヴィダル魔帝国:5Lv

自己再生:共食い:4Lv

能力値増強:共食い:4Lv

魂纏時能力値増強:小

殺業回復:7Lv

自己強化:殺業:7Lv

杖装備時魔術力強化:大

全能力値増強:小

 

 

 

 

・アクティブスキル

 

統血:6Lv

限界超越:10Lv

ゴーレム創成:9Lv

虚界神魔術:1Lv

魔術精密制御:6Lv

神霊理:1Lv

錬神術:4Lv

魂格滅闘術:8Lv

同時多発動:8Lv

手術:10Lv

具現化:7Lv

群隊:5Lv

超速思考:7Lv

将群:4Lv

操糸術:10Lv

怨投術:2Lv

叫喚:9Lv

神霊魔術:6Lv

魔王砲術:8Lv

装影群術:9Lv

欠片限界超越:4Lv

整霊:4Lv

鞭術:4Lv

霊体変化:雷

杖術:4Lv

高速飛行:3Lv

楽器演奏:4Lv

舞踏:2Lv

筋術:4Lv

魔闘術:3Lv

 

 

 

 

・ユニークスキル

 

神喰らい:10Lv

異貌多重魂魄

精神侵食:10Lv

迷宮創造:8Lv

大魔王

根源

神敵

魂喰らい:10Lv

ヴィダの加護

地球の神の加護

群体思考:9Lv

ザンタークの加護

群体操作:9Lv

魂魄体:5Lv

魔王の魔眼

オリジンの神

リクレントの加護

ズルワーンの加護

完全記録術

魂魄限界突破:5Lv

変異誘発

魔王の肉体

亜神

ボティンの加護

ペリアの加護

体内世界

 

 

 

 

・呪い

 

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能



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3話 物語の始まりの1

まだトータスには行かんぜよ。


 スラムに捨てられてから十数年、私は高校生になることが出来ています。戸籍に関しては七歳ぐらいの時に、旅行に来ていた老夫婦を助けた所、養子にしてもらうことが出来ました。

 正直、とても御都合主義な展開だとは思いましたが、自身が転生した事から現実は小説より奇なり、と思い気にしないようにしています。

 

 それはさておき老夫婦と共に帰国した後、地元の小学校に編入したのですが、まあこの見た目ですので基本的に気味悪がられまして。私は気にしないのですが、周りが可哀想だったので先生に相談したところ「特に何もしなくていいよ」と言われましたので、そのまま放置していると、何故か普通になりました。何故なのでしょうか?やったことと言えば、勇気を出して勉強を教えて貰いに来た子に教えたり、効率のいい身体の動かし方を簡単ながら説明したり、病弱なことを気にしていた子に【殺菌】を付与したマジックアイテムを上げたりしたぐらいなんですがねぇ。

 まあ人に好かれることはいいことです。布教には人脈も多少必要でしょうし。

 

 それはさておき、初めは気味悪がられ、何故か普通になり、たまに布教に成功する。そんな生活をしていると、すんなり高校に入ることが出来ました。まあ【完全記憶術】を持っているので勉強は得意だったんです。

 高校に入ってからは仲のいい友達が出来ました。彼の名前は南雲ハジメと言うんですが、彼はとても知識が豊富で、しかも将来の事も明確に決めているようなのです。もちろん私も布教をしていくつもりですが、そこまで具体的には考えていないので。

 

 そんな風に考えながら彼と楽しく過ごしていると、彼に明らかな好意を向けている人が近寄ってくるんですよ。その人は白崎香織さんというのですが、学校で二大女神と言われるほど人気の美少女で、彼女が近づいてくる事をハジメはだいぶ迷惑しているようです。彼女に話しかけられる彼への嫉妬で周りが騒ぐからですね。

 あと、このクラスで気に入らない人がいます。彼は天之河光輝というのですが、彼は我が神の敵である【蒼炎剣】のハインツを劣化させた様な奴なので、どうしても敵意を僅かながら持ってしまいます。しかも彼は現実を見ていない様な発言を良くするので、端的に言えば見ていてイラつきます。

 そんな彼のストッパーである八重垣雫さんはとても常識人で助かっています。ただ、彼女は可愛いものが好きなのですが、その事を周りに知られるのが恥ずかしいのかあまりそういう物を持っているところを見たことがありません。たまに私の従魔にしている猫型の魔物を触らせてあげています。その関係で彼女とはハジメの次に仲がいいですね。



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4話 物語の始まりの2

待たせたな!(待ってない)


 他に坂上龍太郎(脳筋)、谷口鈴、中村恵里がいます。

 坂上龍太郎(脳筋)は別に絡んでこなければ煩いだけなので、好きでも嫌いでもありません。

 谷口鈴はクラスのムードメーカーを務めてくれているので、いてくれると何かと便利です。

 中村恵里さんは小学生の時に少しお節介をやいた所、我が神を信仰する同士になってくれたので、ハジメや雫さんと同じぐらい好きですね。

 この三人に天之河と白崎さん、雫さんを合わせて、私は彼らを勇者パーティーと呼んでいます。だって天之河(勇者)雫さん(剣士)白崎さん(僧侶)坂上(格闘家)谷口(魔法使い)恵里さん(呪術師)とバランスのいいパーティーになるんですよね。

 

 まあそんなことは置いておいて、どうも今日は胸騒ぎがしますねぇ。我が神は【直感】スキルは持っていないのですが·····。

 もしかしたらという事があるので今日はできるだけハジメの近くにいるとしましょう。ついでに白崎さんがいますが、それも好都合。彼女がいるなら雫さんも一緒にいて、今は勇者パーティーが勢揃いしているので守りたい者を纏めて守りやすい。

 

 しかしハジメは良くアレだけの食事で満足出来ますね。良く「十秒チャージだッ!」と言ってゲームの合間に飲んでいましたが……、まあ今日は二徹している様なのでいつもは注意している白崎さんを意識から外して寝始め様としまったようですね。そんな油断しては……。

 ほら捕まった。

 そして恒例の絡みですか。幾ら物事の負の面を教わる前に父親が死んでしまったとしても、あそこまで考え足らずになるでしょうか?ちなみにこの事は亡くなった彼の祖父に聞きました。

 まあ私や私の友達に直接の被害を出さなければナニをしようとどうでもいいのですがね。

 

 そうやって観察を続けていると、突然魔力を感じました。我が神やこの世界の人外の魔力とはだいぶ違うので、異世界の魔法でしょう。一応妨害は出来ますが、その場合発動せず残留した魔力がどんな影響を及ぼすか分からなかったので、迂闊に動けません。

 

 とりあえずハジメに霊体を繋いで【超速思考】で現状を説明しておきましょう。

 

 

『ハジメ、聞こえますか?』

 

『ヴァ、ヴァンッ、何これどうなってるの動けないんだけど!?』

 

『どうやら異世界に召喚されているようです。後動けないのは思考のみ加速して話しているからですね。』

 

『あ、そうなんだ……、ってなるか!えぇ、異世界……えぇ?』

 

『まあ妨害したらどうなるか分からないのでそのまま召喚されようと考えまして、ハジメにはその事を言っておこうかと。』

 

『えっ、妨害とかできるの!?ヴァンって何者なの!?訳が分からないよ。』

 

『こんな時にネタに走るとは余裕ですね。』

 

『ネタに走らないとやってられないよ!?』

 

『まあ言うことは言ったので後は召喚されたあとに直で話しましょう。』

 

『分かったよ。』

 

 

 そして【超速思考】を切った瞬間、世界は光に包まれた。



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4話 信用出来ない

筆が乗ったので書いた。後悔はしていない!


 光が収まれば、そこは大理石のような光沢のある建物だった。目の前には縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれている。

 背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画だ。

 その様は世界を愛し包み込んでいるように見えるが、何故かそうは見えず。世界は自身の腕の中なのだと言っているように思えてしまう。

 

 まあ自分は常人では無いので、怖いとかは思わないのですが。ハジメも同じように感じたのか少し顔色が悪くなっています。が、すぐに周りを確認し白崎さんが無事であることを確認して安堵しているようです。

 近くには三十人ほどの豪華な服装をした人達が両手を組み跪いて祈りを捧げているようでした。その集団から七十代に見える一際豪華な服装の老人がこちらに進んできました。

 ……この人達から私と同じ様な雰囲気を感じます。つまり狂信者。あまり話は信用せずにいましょう。

 

 そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺(こうこうや)然とした微笑を見せた。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 その後十メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通された。この部屋も例に漏れず煌びやかな作りだ。

 上座に近い方に畑山愛子先生と光輝達四人組が座り、後はその取り巻き順に適当に座っている。ハジメは最後方なので私もその近くにいます。というか隣です。

 丁度いいタイミングなのでハジメと情報を共有しましょう。

 

 

『ハジメ、聞こえますか?』

 

『うん、聞こえるよ。』

 

『それは良かった。これから情報を共有しませんか?私も知っておいて欲しいことがあるので。』

 

『分かったよ。』

 

『とりあえず現状として差し迫る驚異は無いと思っていいと思います。ただ召喚の場にいた聖職者風の人物達は私と同じ狂信者の雰囲気を感じました。なのであまり信用はしない方がいいでしょう。彼らの話は話半分で聞いておいてください。』

 

『分かった。一つ質問いいかな?』

 

『なんですか?』

 

『召喚された時にあった壁画、なんか変じゃなかった?』

 

『やはりハジメもそう感じていましたか。私はあの絵を、世界は私の腕の中だ、と言っているように感じました。』

 

『僕も何だか違和感を持ってたんだけどそう言われるとそう感じるね。それでソレを信仰していそうな聖職者……特にまとめ役っぽいイシュタルさんは信用しない方がいいって事だよね?』

 

『はい、十分に気をつけてください。私も含め狂信者は自身の神の為ならなんでもしますからね。』

 

『でもヴァンは大丈夫でしょ?えーっと、『生命と愛の女神』ヴィダだっけ?を信仰してた神様だから。』

 

『えぇ、我が神は無意味な殺戮は望みません。敵には容赦なく、しかし身内は大事に、復讐は自身の幸福のために必要な生産的行為である。身内の神はほぼ無条件で敬い、その主神であるヴィダが望むから博愛を行う。これは私の解釈ですが、我が神の行動はこれに沿っていますからね。元々お人好しな事もありますが。』

 

『なら大丈夫だね。』



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5話 やはり奴は愚かだ

書けたので連投です。


『ある程度認識を共有できましたし、一度念話を切ります。』

 

『あ、うん、分かったよ。そういえばこれってどうやってるの?』

 

『これは私の霊体をハジメに繋いでいるんですよ。それでは。』

 

 

 さて、ハジメもきちんと危機感を持ってくれていましたし、あとは勇者(笑)が暴走しなければ愛子先生がなんとかしてくれるでしょう。あの人は普段は押しが弱いので頼りにはならないですが、こういう時は生徒の為に動いてくれますからね。

 と言っても今回は勇者(笑)がクラスメイトを纏めていましたが。やはりハリボテとはいえカリスマがあるからでしょうかね。

 

 さて、ハジメが喜びそうな……というか、男子が現に喜んでいるメイドさん達が飲み物を配ってくれた所で、イシュタルが話し始めましたね。

 

 要は、魔人族と戦争してたけど魔人族が魔物を使役し始めて負けそうだからアイツら殺して。それが"神の意思"だから。

 

 ざっくり言うとこんな感じですね。

 

 これを聞いた愛子先生が、

 

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

 

 まさにその通りである。

 ちなみに彼女は今年二十五歳になる社会科の教師で、非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに、庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない……らしい。

 

 まあそれは置いておいて、こういう展開の時のお約束って帰れない、帰らせ方を知らない、知っているが帰らせない等、自力で見つけるか創るかしないといけなかったりします。

 私たちの場合は、

 

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です。」

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな。」

 

「そ、そんな……。」

 

 

 なるほど、自分達の神が呼んだから私達を返すことが出来るのはその呼んだ神だけだ、というパターンですか。

 あの壁画がその神─エヒトと言いましたか─だったとすれば少し不味い状況ですね。先程予想したようなタイプの人は基本的に自分に届きうる何かを持つものを嫌いますから、この中に強い力を持っている者がいたとしても、それが適うとは言えないですね。

 

 これで勇者(笑)がおかしな事をすればもうヤバいですね。何人か死ぬことを想定しておかなければ……。



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6話 よし、何かあったら見捨てよう

間違えて投稿しちゃったからそのまま行きます。


 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

 

 あ、勇者(笑)がアホな事言い出した。もうダメだお終いだぁ(棒)。

 

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

 

 ……とりあえず勇者(笑)は何かあっても見捨てましょう。魔人族を打倒してとか言われた時点で殺す事を考えないといけませんが、彼がそんな事を考えているとは思えませんし。

 というか私が助けるとすればハジメ、雫さん、白崎さん、恵里さん、愛子先生ぐらいですね。あ、あと遠藤くん。他は余裕があったり、その6人が助けて欲しいと言ってきたりすれば助けます。

 

 まあ理由は、そもそもそんなに交流が無かった事と、今の勇者(笑)のセリフに感化されて盛り上がり始めているからですね。

 こういう人達は自分の思い通りにならなかったり、自分の失敗でピンチになった時に自力で抗わずに人を頼りますからね。異論は認めて、自力で抗う人がいればその人には謝ります。

 

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」

 

「龍太郎……。」

 

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ。」

 

「雫……。」

 

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

 

「香織……。」

 

 

 あ、不味い。脳筋(龍太郎)はいいとしても雫さんと白崎さんが行くのは面倒くさい。生きていて欲しいのでフォローをしたいのですが、勇者(笑)の近くに行きたくありません。

 ……後で我が神のように使い魔王を作っておきましょう。それかテイムしている魔物を護衛役に渡しておきましょう。

 

 あと、イシュタルは早めに排除しないと悪影響がありそうなんですよねぇ。でも結構上のポストにいるっぽいですし……【老化】ではバレそうです。いいタイミングを探して【死弾】で殺しておきましょう。

 まあそれも後の方でよさそうですから放置しましょう。タイミングがあれば、です。



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7話 これは……

書ける時に書きまくってやる心境で連投!
ちなみに感想で勘違いしていた方がいたので言っておきますが、主人公は男です。


 面倒な事にクラスメイト全員が戦争に参加することになりました。愛子先生は止めていましたが、あの状況では無理でしょうね。

 

 ……そういえば勇者(笑)がこちらに来てから力が漲っているとか言っていましたが、私はそんな風に感じないんですよね。我が神のステータスは変動していませんので、恐らく私自身にその能力とやらが付与または発現していると思うのですが……。

 

 そんなことを考えていたら今いる聖教教会本山がある【神山】から麓にある【ハイリヒ王国】に移動するみたいですね。まあ正直どうでもいいのですが。

 

 大きな門をくぐるとそこには雲海が広がっていました。高山特有の息苦しさなど感じていなかったので、魔法か何かで環境を整えているようですね。もしかしたら【ダンジョン】かもしれません。まあ違うとは思いますが。

 

 そのままイシュタルに促された先には、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきました。大聖堂で見た物と同じ素材で出来た回廊を進みながら、促されるままその台座に乗ります。あ、もちろん油断はしていませんよ?きちんと【危険感知:死】を使って確認しています。

 

 するとイシュタルが恐らく魔法の詠唱だろうものを唱え始めました。

 

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」

 

 

 そして足元の魔法陣が輝き、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに降り始めました。それにクラスメイトは大興奮。イシュタルはドヤ顔である。

 

 やがて、雲海を抜け地上が見えてきました。眼下には大きな町、否、国が見えます。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都らしいですね。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようです。

 

 これは多分イメージ付けでしょうね。天から降りてくる神の使徒。この演出では、クラスメイトにその認識を無意識に感じさせ、聖教信者達はそのことを受け入れ希望を見出す。なんともまあ美味いものです。

 

 にしてもそのエヒトとやらは鬱陶しいですね。多分勇者(笑)を観ているんでしょうが、私も観てしまっている事で、【根源】スキルの力で見返してしまうんですよ。端的に言ってウザイです。まあもう観ていないので、新しく呼んだ玩具を観ただけでしょうね。

 見返した感じ、アレは肉体を持たない【神】の方ですね。でもそれが安定していない。多分【亜神】だったが何かしらで肉体を失いましたね。私達を召喚したのも、玩具以外に依代に相応しい者を呼べるか試したのでしょう。今観ていたのはその確認。すぐに視線を切ったことから恐らく見つかりませんでしたね。



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9話 これは神の贈り物かっ! その1

 王宮に着くとすぐに王座の間に連れていかれた。王座の間に着くまで間は正直どうでもよかったので【死角】の魔術を使ってスルーしてもらう。

 

 王座の間に着いてからはちょっとした事がありましたが、分かったことはイシュタルがこの国の国王よりも上位にいることだけですね。これで更に殺すタイミングがなくなりました。

 

 その後は晩餐がありましたね。見た目がアレでしたが【危険感知:死】には反応がありませんでしたから、その事をハジメに教えた後美味しく頂きました。

 

 晩餐が終わった後、王宮ではハジメ達の衣食住が保障されている旨と、訓練における教官達の紹介もなされました。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようですね。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということでしょう。パッと見でですがスキルレベルで表すと一番上で6lv程度でしょうか?C級冒険者程度ですね。騎士としては妥当といったところですか。

 

 それが終わり、それぞれ与えられた個室に案内してもらいました。天蓋付きのベッドでしたが私は比較的どこでも寝れるタチですので気にせず就寝しました。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜

 

 翌日から早速訓練と座学が始まりました。

 

 まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られました。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めます。

 

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 

 非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいです。

 まあ私としては丁寧でも気楽でも横暴でもどうでもいいんですがね。嫌だったら存在感消しますし……遠藤くん並に。

 

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ。」

 

「アーティファクト?」

 

 

 アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属けんぞく達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな。」

 

 

 なるほどなー、と思いながら血を一滴魔法陣に捩じ込みます。誰も見ていないので茶目っ気を出してみました。……誰得でしょうかね?

 

 すると……



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10話 これは神の贈り物かっ! その2

=======================

ヴァン・坂戸 17歳 男 レベル:1

天職:信仰者

筋力:85

体力:88

耐性:120

敏捷:80

魔力:160

魔耐:160

技能:信仰・言語理解

=======================

 

 ……ふふふふふ、やりました!これは我が神からのプレゼントでしょうか!?私の事を信仰者と認めてもらったようなものでは!?

 おっと失礼。冷静に冷静に。ふむ、まあ弱くはないのではないですか?我が神の【ステータス】と比べるとゴミのようにも見えますが、恐らく基準が違うのでしょう。

 

 それから直ぐにメルドからステータスの説明がされました。

 

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない。」

 

 

 どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしいですね。

 

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

 

 むむ?それは可笑しくないですか?レベルが上限に達しても訓練すれば筋力や俊敏は伸びそうですし、剣を振り続ければその扱いだって上手くなるはずです。うぅむ、レベルとは一体……。まあ聞いても分からないことは仕方がありません、諦めましょう。

 

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな。」

 

 

 ……生産職ではないですね。戦闘でもありませんし、何系なんでしょうか?

 

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな。」

 

 

 面倒臭いですねぇ。訓練内容の参考と言いながら私達の能力を把握しておきたいのでしょうね。セコい。

 まあ私も逆の立場ならそうしますがね。

 

 さて、他の人達のステータスはどんな感じなんでしょうか?

 勇者(笑)は……

 

 

=======================

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

=======================

 

 

 ……ぐふっ、失礼つい吹いてしまいました。まさか本当に勇者(笑)だったとはっ!。私の目も捨てたものではありまっ、せんねっ。

 それはそうと、ステータスは一部勝っていますし、勇者ってそんなに強くないんでしょうか?

 

 あ、ちなみに技能=才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。唯一の例外が〝派生技能〟だそうです。

 これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる〝壁を越える〟に至った者が取得する後天的技能であり、簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということらしいですよ。分かるような分からないような……。

 

 そういえばハジメはどうなのでしょうか?あ、ハジメの番ですね。さっきから微妙な顔をしているので恐らくそういう事でしょうが……。

 

 

=======================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

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 ほら、やっぱり。



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11話 理解できない

 メルドがハジメのステータスプレートを見て、呆気に取られてますね。あ、プレートに異常がないことが分かって自分の正気を疑いだした……後に物凄く微妙な顔でハジメにプレートを返ました。

 

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……。」

 

 

 ほう。ハジメはそこら辺得意ですから凄いものを作りそうですね。例えば近代兵器とか。もっと言えばファンネルみたいなSF系。

 まあステータスが低いので長時間弄れないかもしれませんが、別に問題は無いですね。ハジメはその辺のペース配分は得意ですからね。

 

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

 

 檜山大介(アホ)が絡んで来ました。此奴はこんな時まで絡んで来るなんて、やはり頭がどうにかしているのではないのでしょうか?全く持って理解できませんね。ちなみに勇者(笑)も頭がどうにかしている判定です。

 

 

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

 

 やはり現実を認識していないのではないでしょうか?こういう奴が勝手な行動をして危機的状況を招くんですよねぇ。ちなみに勇者(笑)も(略

 

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

 

 そんなことを考えていたらアホが余計ウザイ絡みをしていました。周りの男子達はニヤついて止めませんね。

 まあハジメならこの程度普通に流すでしょう。度がすぎる様なら……毒で下痢にしてやろう。

 

 ハジメは投げやり気味にプレートをアホに渡しました。

 

 アホはハジメのプレートの内容を見て、爆笑しましたね。その後取り巻き(斎藤達)に投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。

 

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

 

 次々と笑い出す生徒に白崎さんがが憤然と動き出します。しかし、その前にウガーと怒りの声を発する人が。愛子先生ですね。

 

 

「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲君に返しなさい!」

 

 

 小さな体で精一杯怒りを表現する愛子先生。その姿に毒気を抜かれたのかプレートをハジメに返してきました。。

 

 愛子先生はハジメに向き直ると励はげますように肩を叩いた。

 

 

「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」

 

 

 そう言って「ほらっ」と愛子先生はハジメに自分のステータスを見せた。

 

 

=======================

畑山愛子 25歳 女 レベル:1

天職:作農師

筋力:5

体力:10

耐性:10

敏捷:5

魔力:100

魔耐:10

技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解

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 明らかにトドメを刺しに来てますねコレ。

 流石のハジメも死んだ魚のような目をして遠くを見だした。



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12話 許”せ”ん”

 「あれっ、どうしたんですか! 南雲君!」とハジメをガクガク揺さぶる愛子先生。あなたがトドメを刺したんですよ……。

 

 

「あらあら、愛ちゃんったら止め刺しちゃったわね……」

 

「な、南雲くん! 大丈夫!?」

 

 

 反応がなくなったハジメを見て雫が苦笑いし、香織が心配そうに駆け寄ってきます。愛子先生は「あれぇ~?」と首を傾げて不思議がっていますね。相変わらず一生懸命ですが空回る愛子先生にほっこりするクラスメイト達。

 クラスメイト達は切り替えが早いのか、話が(結果的にとはいえ)逸らされている事に気が付いていないのか……。まあ気付いてないんだろうなぁ、アホばっかだし。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 召喚されてから二週間が経ちました。

 

 この二週間は訓練をしたり勉強をしたりしていましたが、正直あまり為にはなっていません。

 我が神の力を使わずとも、大体のクラスメイトに勝てますし、勇者パーティーにもほぼ"負けた"事はありません。避けて防いで逸らして、時間か体力で引き分けに持っていってますからね。

 体力が付く訳でもなく、技量が上がる訳でもなく、知識が増える訳でもない。うーん、無意味とは言いませんが成果というのかはありませんねぇ。

 

 もっと知識を集めようとかしないんでしょうか?ハジメは「ステータス的に弱いから知識で貢献出来るようにする。」と言って、時間があれば王立図書館に行って勉強しているというのに。

 やっぱりアレだろうか?自分が死なないと思っているんだろうか?今の訓練期間はチュートリアルで、迷宮に行ったら……、みたいに考えて?もしそうならアホだなぁ全く。

 まあ勇者(笑)は無自覚ながらそう考えてるだろうけど。特にステータスが一番よかったから。

 

 おや、ハジメが帰ってきましたね。そろそろ勉強も疲れてきたと言わんばかりの表情です。何か気晴らしをしてさせてあげたいところですが……。

 

 あ、前にハジメが小悪党四人組と呼称していた檜山大介(アホ)達が近付いてきましたね。もしや虐めようとしているのでは?

 ……直ぐに行きたいですが、今後のことを考えて証拠が出来てからボコリに行きましょう。

 

 よし、ある程度痣がでてそうになりましたね。行きましょう。

 

 

「おいアホ共、誰の友達虐めてるんですか?アァ?」

 

「ゲホゲホッ、あ、ヴァン。」

 

「ええ、あなたの友達のヴァンですよ?此奴ら殺してもいいですかねぇ?」

 

「いや流石にダメだと思うよそれは。僕もそこまでやり返したいと思ってないし。……悔しかったけどね。」

 

「そうですか?じゃあ此奴らをハジメよりも酷い程度にボコって許しましょう。」

 

「ボコるのは確定事項なんだね。だから喋ってる間も殴り続けれるの?」

 

「いえ、これは殴り続けないと我慢できないぐらい私が怒っている証ですね。もうこのまま殺そうと思っていました。我が神も殺傷は特に禁止していません。むしろ原因がハッキリしているなら、推奨に近いですね。敵は殺す、はっきりわかんだね!です。」

 

「なるほどなー。」



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13話 やっぱり勇者(笑)は頭おかしい

だいぶ遅れました。
早く落ちないかなぁ。


「な、何やってるの?」

 

「あ、白崎さん、こんにちは。」

 

「えっ、うんこんにちはハジメ君。……そうじゃなくて!」

 

「あ、これ状況はね?情けない話だけど、僕が虐められてた所にヴァンが来てくれて、ブチ切れてそのままボコボコにしてる途中なんだよ。ちなみに僕よりも全員酷い状態にするらしい。」

 

「そ、そうなんだぁ。あっ、えっ!?ハジメ君虐められてたの!?見せて直ぐ治してあげるからね!?」

 

「え、あ、うん。よろしく?」

 

 

 後ろで何か言っているようですが後でいいでしょう。今は此奴らをボコってもう二度とイジメなど出来ないように精神をへし折らなければ。

 

 

「ね、ねぇ。もういいんじゃないかしら?もう元の顔がわからないくらいになってるし、その……手とか変な方向に向いているし。」

 

「……そうですね。雫さんがそう言うならもうこれで終わりにしましょうか。

 おい、お前ら次何かしたら「生きているのが辛い殺してくれ」と懇願するレベルでヤるから覚悟しておいてください。……聞こえてないか。まあヤるんですけどね。

 おや、白崎さんも来ていたんですね。ハジメの治療をしてくれたのですか?ありがとうございます。」

 

「えっ、ううん、いいよ私がしたかったからしたんだし。」

 

 

 檜山大介(アホ達)を殴り終わり、ハジメの方を振り返ってみると、雫さんや白崎さん、勇者(笑)に脳筋と勇者(笑)パーティーが勢揃いしていました。ハジメのことも治療してくれたようなのでお礼を言い、何故か険しい顔をしている勇者(笑)の方を向いてみます。脳筋は無視で大丈夫です。

 

 

「何か言いたげですね、天之河光輝(勇者(笑))。言ってみればいいじゃないですか?どうせ聞かないといっても言うんでしょうし。」

 

「なら遠慮なく言わせてもらう。いくら南雲が虐められていたからってあそこまでする必要は無いだろう!

 それにいつも訓練をしている時協調性が無い!もっと周りに合わせるべきだ。

 それから南雲も、もっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう?

 聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ。南雲も、もう少し真面目になった方がいい。

 檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

「……はぁ。話になりませんね、やっぱり。聞く意味も無かったです。それじゃあ失礼します。ほらハジメ行きましょう。」

 

「あ、うん。ってこれから訓練だよ?皆も行こう?」



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14話 嫌な予感がします

遅くなりました。
次はさらに遅くなるかも……。
申し訳ございません。


 訓練が終了した後、いつもなら夕食の時間まで自由時間となるのですが、今回はメルド団長から伝えることがあると引き止められました。何事かと注目するクラスメイトに、メルド団長は野太い声で、

 

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ!

 まぁ、要するに気合入れろってことだ!今日はゆっくり休めよ!

 では、解散!」

 

 

 ふーむ、やっとですか。

 まあ今のクラスメイト達が生物を《きちんと》殺せるかは微妙な所ですが、まあ人型でなければ大丈夫でしょう。

 

 さて、明日向かう【オルクス大迷宮】は全百階層からなると言われている大迷宮で、七大迷宮の一つ。階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する……らしいです。

 

 正直この世界は【ラムダ】世界よりも魔物だけでなく全体的に弱いんですよね。ランク5もあればメルド隊長含めこの国の上位陣以外普通に殺せそうですし、もしもを考えてもランク8数体でこの国を滅ぼせますよ。

 その事を考慮すると、この百層あると言われている大迷宮も、そこまでの難易度ではないのかもしれません。勿論【ラムダ】世界基準でですが。

 

 まあそんなことは置いておいて、明日に備える事などないので友達の所を回ってみましょう。

 

 

「ハジメ、起きていますか?」

 

「ん?ヴァン?起きてるよ。どうしたの?」

 

「いえいえ、明日のことで眠れなくなったりしていないか確認しに来ただけですよ。」

 

「そっかー。まあ僕は大丈夫だよ。」

 

「では失礼します。

 ……明日の事をどう思いますか?」

 

「どうって……不安には思うよ。皆みたいに強くないし、"錬成"は戦闘では使いずらいからね……。」

 

「そうですか。良かったですよ。ハジメはちゃんと考えれていたんですね、安心しました。

 他の人達は戦いについてあまり考えていない人も多いですからね。」

 

「あはは、まあ生産職の僕は色々考えるぐらいしか出来ることが無いから。」

 

「……まあハジメがそう思うなら《今は》そう思っていてもいいですよ。

 あ、そうです。ハジメ、これを持っていてください。御守りです。」

 

「ありがとう!大事にするよ。」

 

「ええ、けして捨ててはいけませんよ?」

 

「うん。」

 

「それでは、後のことは彼女に任せるとしましょう。おやすみなさい、ハジメ。」

 

「彼女……?あ、うんおやすみヴァン。」

 

 

 さて、後は近くまで来ている白崎さんに任せるとしましょう。ハジメの不安がより減れば幸いです。それに使い魔王と《悪魔を数体》入れた【装影群術】の効果を付与した御守りも渡せましたし、何かあっても大丈夫でしょう。

 雫さんや恵里さん、あと愛子先生にも同じ物を渡しておけば、まあ大体のことに対応できるでしょう。



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