ログ・ホライズン ~落ちた浮遊城アインクラッド~ (マスカルウィン)
しおりを挟む

始まり
第一話


というわけで最初はキリト視点のプロローグになります。
この物語の主人公はキリト・アスナ・シロエと個人的に分けています。
文章の前書きか、サブタイトルでわかるようにしているつもりです。

亀更新ですのでチラシ裏に投稿でやらせて頂きます。
ご了承をお願いします。



「そういえばキリト、今日って確か大規模メンテの日でしょ?」

 

 リズは現実世界の宿題をこなしながら話しかけてきた。

 

「ん、あぁそういえばそうだったな……確か――、マップ拡大とか世界が大きくなるとか言ってたな」

「ふーん……これ以上マップ広げてどうするんだろうね? それでなくても前に行ったクジラが出てくるクエストも、辺境も辺境、マップの端だったのにね?」

「俺に言うなよ……流石に遠すぎるから何か移動手段でも出来るんじゃないか? こう転移門とか……」

「バギーとかいいかも? キリトまた運転してよ」

「俺たちは、空飛べるだろ……地面走るよりよっぽど早いよ」

 

 シノンにそういうと、少し口を膨らませて不満そうだ。

 まぁ確かにバギーで走りまくるのは面白そうではあるが。

 

「でもまぁ確かに転移門とか、あったら便利かもねー」

 

 そうリズが答えると、シリカ達と共に宿題に戻ってしまった。

 なるほど――、リズはアスナにいい笑顔を見せられたんだな……

 俺もそういえば宿題があったか? と一瞬頭に過ぎったがまぁ多分大丈夫だろう。

 アスナが注いでくれたカップに手を伸ばす。

 擦るだけでいろんな種類のお茶が飛び出す、マジックアイテムだ。

 手に入れた当初は、アスナの入れたお茶の方が美味しいと思っていたが、これも中々悪くない。

 勿論アスナが入れたお茶の方が美味しいのだが――

 

「ってあれ?」

 

 お茶の味がしない、というか水?

 家に居たほかのプレイヤーにを見ると、どうやら同じ症状らしい。

 

「……お茶じゃないよな?」

「水ですね」

「水だわ」

「水だな」

 

 各々首を傾げる、そもそも九十九種類のお茶をランダムに出すというマジックアイテムだ、全員同じ種類のお茶が出る可能性はあるのはあるのだが、確率的には天文学的数字だろう。

 となるとだ、俺たちに対する味覚エンジンが狂ったのか……?

 そんな事を考えていると、今まで俺の膝の上で寝ていたユイが急に飛び起きた。

 

「どうしたんだユイ?」

「パパ、ママ、皆さん大変です!」

 

 何時にも無い表情に俺たちは息を呑んだ。

 

「このアインクラッドが落下しています!」

「……は?」

「ですから! このアインクラッドが落下してるんです!」

 

 この浮遊城アインクラッド落下してる?

 

「いやいや、まずいんじゃないかそれ!」

 

 クラインが最初に慌てだして、自体の異常さに気づく。

 

「ユイ! 何かのGMの宣言はあったか? それとも何かクエストが起動したのか?」

「GMの宣言はありません! クエストも確認できてないです! 今はまだゆっくりと落下してますけど……」

 

 俺は慌ててシステムメニューを開き、GMコールを迷わずクリックするが、応答は無い。

 

「ユイ! 今すぐ警戒モードでログアウト促してくれ! アスナ達は知り合いに連絡を!」

 

 幸いと言っていいのか悪いのか、現在ALOに接続しているプレイヤーの数はメンテナンス前だったせいか、少なく、さらにアインクラッドにきているプレイヤーはもっと少数だった。

 

「キ……キリト君」

 

 青ざめた表情でアスナ達がこちらを見てくる。

 

「ど、どうしたんだ皆、何か問題が?」

「――ロ、ログアウトボタンが押せないって、サクヤさん達から連絡が……」

「何だと!?」

 

 悪夢が蘇る、ログアウトが押せない……死のデスゲームの悪夢が。

 俺も慌ててログアウトボタンを押すが、機能せずこの世界に取り残される。

 ガクンとジェットコースターで急に落ちるような感覚が身体に走る、それと同時に俺たちの眼前にあったウィンドウが全て消え去った。

 

「窓から脱出だ!」

 

 俺がそう声を出すと、全員が窓から妖精の翅を羽ばたかせて飛び出す。

 消えたウィンドウを出そうと、右手を動かすがメニュー画面が出てこない。

 一体何がどうなってるんだ!

 心の中でそう叫ぶが、今はどうする事もできない。

 とにかく今は、簡単に死ぬわけには行かない、もし死んだ場合どうなるかわからないのだ。

 落ちてゆくアインクラッドから、数千のプレイヤーが飛び出しているのが判る。

 どんどんと高度が下がっていくアインクラッドを見つつ、俺は一つ思った。

 

 『どうしてアインクラッドが、こんなに高い位置にあるんだ?』

 

 そもそも新生アインクラッドは、妖精の翅でもいけるちょっとの高さにあったのだ、それが雲の上にあること自体おかしいのだ。

 落ち行くアインクラッドと共に、雲を突き抜ける。

 

「に……日本?」

 

 それは地図でよく見る日本が、足元に広がっていた。

 幸いアインクラッドはコース的に、海に落ちると思うのでとりあえず一安心する。

 

「ど、どうなるんだこれ……」

 

 クラインが困惑した表情をこちらに向けてくる。

 

「俺が聞きたいよ……」

 

 空に飛びながら、アインクラッドを見続けていると、一つのシステムウィンドウが表示された。

 

 『飛行時間の限界です』

 

「んなっ」

「馬鹿なっ!」

 

 キリトとクラインは少しハウス近くで、空中戦闘をしていたせいなのか、皆より先にこの表示が出たらしい。

 

「アスナ、今すぐアインクラッドに戻れ! ここは無制限飛行じゃない! 限界があるんだ!」

「キリト君はどうするの!」

「俺と、クラインはこのまま翅を消して、自由落下する! もう翅が持たないんだ! 多分秋葉原あたりに落ちると思う!」

 

 いう事だけ言い、クラインと頷きあう、大丈夫だアミュスフィアは、大丈夫のはずだ。

 そんな事を考えていると、シノンが俺に抱きついてきた。

 

「ちょ、どうしたシノン……お前まさかっ」

「お察しの通りよ、キリト私も行くわ、3人だと着地ギリギリで羽ばたいたらなんとなるでしょう?」

「死んでも恨みっこなしだからな!」

「アスナ! 皆を頼む!」

 

 涙を少し浮かべながら、アスナは皆を率いて落ち行くアインクラッドに戻った。

 

「しゃ! 行こうぜキリト!」

「なんとかなるでしょう」

「行くぞ二人とも!」

 

 声をかけ3人同時に翅を消す、すると身体は自動的に落下を始めた。

 どんどん加速して、どんどん地面が近づいていく。

 するとクラインが、必死に空中を泳いで俺たちの下に回って、上を向いた。

 

「おい、クラインどうした?」

「わりぃなキリト、多分この作戦は無理と思うわ、俺はアミュスフィアでログインしてる問題ないだろ、だからさ」

 

 クラインはそういいながら、腰から刀を抜く。

 

「お前達は武器をアイテムウィンドウに直しちまってるからな、この役割は俺がする、頑張れよ」

 

 刀を逆に向けて構えると、刀が淡く輝き始める。

 その時点でクラインが何をしようとしてるか判ってしまった。

 

「やめろ! クライン!」

「シノン、キリトの事……頼むわ」

 

 翅を広げ、クラインは一瞬制止し、俺たちに向かってソードスキルを発動させた。

 反動でクラインは方向を変え、さらにスピードをあげ落ちていった。

 

「クライン!!」

 

 声を上げ手を伸ばすが、届くはずも無い、空中で上に打ち上げられた俺たちは、落下スピードが少し遅くなった。

 地面ギリギリで、翅を広げて地面に降り立つ。

 

「馬鹿野郎……かっこつけやがって」

「キリト……とりあえずクラインもそうだけど、アスナたちも」

 

 あぁそうだった、とりあえず動き出さないと。

 アスナ達は多分、大丈夫だろう翅も余裕があるし、あのアインクラッドがそうそう沈むとも思えない、とりあえず先に優先すべきなのは……クラインか。

 恐らく北海道の方角に飛んでいったのだろう……

 

 ガサリ、と森の茂みから音がし、慌てて背中の剣を握ろうとする、がそこには剣が無かった。

 そういえば、システムウィンドウに全て直したのか……いや大丈夫だまだ体術スキルがある。

 シノンを庇うように前に出ると、茂みから二人のプレイヤーが現れた。

 一人は三白眼のいかにも魔術師! と言った白いローブを来たプレイヤー、もう一人がガチガチの鎧を来たプレイヤーだ。

 

「君たちは、さっき落ちてきた城の関係者ですか?」

 

 白いローブを着たプレイヤーが、杖を構えながら、警戒しつつこちらに質問してきた。

 こちらも彼の顔をじっと見る、一見普通のプレイヤーに見えるけど……

 すると眼前に、いつも見慣れないシステムメニューが色々表示され、相手のプレイヤーネームが見えた。

 

 『シロエ』『直継』

 

 

 キリト達は、エルダーテイルの世界に落ちてきたのだ――。




キャラがつかみにくい云々。
誤字脱字ありそう(震え声)
一度投稿して見直させていただきます。 ヾ(:3ノシヾ)ノシ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話

シロエの目線? のお話をイメージして書きました。
早速キャラ崩壊していますね。
あとがきに独自設定を少々書かせていただきました、参考にしていただけると嬉しいです。


「じゃぁ、さくっと帰ろうか」

「了解した」

 

 シロエの言葉に反応して、直継と、アカツキは身支度を始める。

 シロエは周辺警戒をしつつ、敵がいないかチェックする役目だ。

 本来ならばアカツキにやってもらったほうがいいんだろうけど……

 そんなことを少し考えながら、あたりに敵の気配がないか見る、幸い敵は居ないようだ。

 

「こっちは準備ができたぞ 主君」

「こっちもあらかた終わったぜシロエ」

「それじゃ、戻ろうか」

 

 シロエは二人の言葉を聞いて、アキバへの帰路に着いた時だった。

 

「なぁシロエ、あれ何だと思う?」

「あれ?」

 

 直継が空を指差しながら何かを言ってきた。

 シロエとアカツキが目を凝らすと、そこには空中に浮かんだ城が浮かび上がった。

 シロエは自身の知識の引き出しと言う引き出しを開け、過去に似たようなイベントがなかったか考える。

 しかし、思いつく限りでは存在しない、つまり今回初めて遭遇した事だ。

 

「――城かな? 凄く大きな……少しずつ大きくなってる?」

「なぁ、シロエそれって落ちてきてるって言うんだよな? 大丈夫か?」

「たぶん……あの位置から落ちても……」

 

 シロエは鞄から地図を取り出して、位置を確認する。

 

「とはいっても、あの空飛ぶ城の大きさがわからないから、なんともいえないけど……多分海に落ちると思う」

「そうか……しかし聞いたことも、見たこともないイベントだな、これもノウアスフィアの開墾のせいか?」

「わからない……けど確立として一番高いのはそれだと思う」

 

 シロエの出した結論はそれだ、ここは異世界なので、何が起きてもおかしくはない世界だが、基本的にはエルダーテイルと一緒である、ならばあれもそうだろう。

 

「けど……ハーフガイア・プロジェクトをやっている運営とは思えない、なんとうかファンタジーな感じではあるけどね……」

「確かに……なんつーか、こう……別世界の城が紛れ込んだみたいだぜ!」

 

 そういう話をしていると、少しずつ落下しつつある城が、真上を通り過ぎていった、それでもかなりの高度があったが。

 

「まぁ、ヤマトに落ちなくて助かった祭りだな」

「そうだね、一応これで一安心ですね」

「主君、城が通り過ぎたところに小さな光点が一瞬見えた気がしたのだが――」

 

 アカツキが空を見上げて言うので、シロエも空を見上げる、が光の点なんてシロエには見えなかった。

 目を凝らしてみる、やっぱり光点なんか……ってあれ?

 空に薄く光が走ったように見えた、ほんの一瞬だったが……

 

「見えたか主君」

「みえたけど……一体何の光だろう……何かのイベントのフラグでも手に入れたのかな?」

「まぁ行ってみればわかるんじゃないか? おそらくこの近くだろうし」

「それもそうか……ちょっと帰るのが遅くなるけど付き合ってくれるか二人とも」

 

 シロエがそう聞くと、二人は頷いて答えた。

 

「確かこっちのほうだった気が……アカツキさん、何かあるかわからないんで、一応姿隠してもらってもいいですか?」

「訓練にもなるだろうしな、心得た」

「それでその、その主君ってのやめない? 普通に「シロエ」って呼んでほしいんだけど、仲間なんだし」

「じゃぁ、私のことも『アカツキ』って呼び捨てにして?」

 

 見上げてくる視線にため息だけを吐くと、横で直継が笑っていた。

 

「直継笑うな……」

「……それじゃぁ、いくぞ主君」

 

 そういうと音も立てずにアカツキは姿を消した。

 

「さすが……」

「あのちみっこは、強いちみっこだな!」

 

 そう直継が言うと、音もなく視覚外から飛び膝蹴りが直継にヒットし、今度こそアカツキは姿を消した。

 

「大体この辺りだと思うんだけど……」

 

 茂みをひとつ越えると、そこには二人の<<冒険者>>と思わしき人物が居た。

 

「君たちは、さっき落ちてきた城の関係者ですか?」

 

 できるだけ、警戒心を煽らないような言葉で声をかける。

 シロエの言葉をどう受け取ったのか、黒を主体とした防具を身につけている少年は、もう一人を庇うように前に出た。

 

「あんた達は?」

 

 この反応を見る限り、NPC……大地人ではないらしい、とはいえ、完全にNPCではないと否定できないのだが。

 ステータス画面を開き、名前を確認する、黒いほうが「キリト」緑の女の子は「シノン」となっていた。

 

「僕はシロエ、そしてこっちは……」

「俺は直継。よろしくな! 時にキリト君は……オープンなのか、むっつりなのかどっちなんだい!」

「直継……、ごめんねこういう人なんだ」

「こういうってどういう事だよ! シロエはむっつりだからな! もっと開放的にオープンにならないと!」

「はぁ……」

 

 直継の話を聞いた後、キリトが纏っていた警戒心が幾らか解けた気がする、直継に目配せをして、喋る主導権を渡してもらう。

 

「それで、君たちはあの城から落ちてきたんですか?」

「そうです、浮遊城アインクラッドから来たんです、ここはどこですか? メニュー画面も違うものになって非常に使いにくくて」

 

 ……どうにも話がかみ合わない、確かにあの事件の後メニューは使いにくくなってる、けど「アインクラッド」なんて名前聞いたことがない――

 考えられる可能性は……

 

 一つ、このキリトとシノンというプレイヤーがノウアスフィアの開墾によって導入されたNPC

 二つ、あの城とこのプレイヤーが何らかの方法でログインした別のMMOプレイヤー

 三つ、僕たちと同じように、事件に巻き込まれた別のMMOプレイヤーとその場所

 

 この辺りか……共に行動する方がデメリットよりも、メリットのほうが間違いなく多いだろう。

 知らない場所の情報、そして見たことのない種族……この世界になってからは攻略サイトや、情報サイトなんてみれなくなったし……

 情報を手に入れれる手段は、やはり多いほうがいいのは間違いない。

 

「なぁ、シロエ俺は数年このゲームを離れていたからわかんねーんだけど、アインクラッド、なんて場所ないよな?」

「うん……そもそも空を飛ぶ城なんてこのハーフガイヤ・プロジェクトが採用されている、エルダーテイルの世界には……」

「エルダーテイル? ここはアルブヘイム・オンラインの世界じゃないのか?」

 

 シロエがその言葉に反応する、間違いない彼らはこの世界に巻き込まれた別のMMOプレイヤーだ。

 

「キリト君、とシノンさんよかったらこの数日の話をこちらからしたい、そのかわり……」

「俺たちの話をしろってことだな?」

「頼めるかな?」

「……わかった」

「それじゃ、僕たちから話させてもらうよ」

 

 シロエは近日に起きた出来事をキリト達に話をし、ついでにメニューの使い方を教えた。

 するとキリトはインベントリから剣を一本だし、背中に装備した。

 シノンは弓を装備している。

 

「なるほど……この世界はエルターテイルというゲームの世界だと……」

「キリト、でも私たち……」

「わかってる、可能性としてはありえなくもないけど、そんなゲームやアニメみたいな話が……」

「と思っていたんだけど、現実問題僕たちの意識はゲームと一体化してるから……、それでキリト君そちらの話も教えてもらってもいいかな?」

 

 キリトは頷いて、キリトがすごしていた世界の話をし始めた。

 

「なるほど……VRMMOが確立した世界か……少なくとも僕が知っている現実ではないね、直継は?」

「そんなものあったらMMO祭りだな!」

「というわけです」

「なるほど……少なくとも俺たちが知っている世界ではないのか……」

「そういえばお仲間とは念話はできませんか? できるようでしたら一度していただいたほうが……」

「ね、念話?」

 

 シロエが念話について解説すると、キリトは慌ててメニュー画面を開いて、フレンドリストを確認する。

 キリトとシノンは少し離れたところに居て、会話の内容は聞こえてこないが、表情から見ると無事のようだ。

 

「ありがとうございます、シロエさんおかげで仲間と確認が取れました、しかし……海の上に落ちたらしく、今どこにいるかぜんぜんわからないそうです。いく手段もありませんし……」

「そうか……」

「参謀! キリト達をアキバの街に招待しないか?」

「え?」

「このまま分かれても後味悪いし、何かすべきごとがあったほうが俺はいいと思うんだけどな!」

 

 ――直継言葉を聞いて、シロエは考えた、確かにキリト達を仲間の下へ案内する、導くというのは人助けにつながるし、何より僕達なら出来るかもしれない。

 

「申し出は嬉しいんですけど、仲間の一人……クラインというプレイヤーがススキノという街で復活したらしいので、俺とシノンはそっちに向かいたいと思います」

「ススキノに……? 確かに歩いてはいけなくはないだろうが、425キロあるぞこの世界では、準備なしで行くのはちょっと厳しいぞ!」

 

 直継が代弁して言ってくれた、するとキリトとシノンの表情が一層暗くなった気がした。

 

「とりあえず、二人とも一度アキバの街にきませんか? ススキノに行くとしても、一度準備してからじゃないと、クラインさんって方は念話が通じてるところを見ると、無事みたいですし」

「そ……そうですね、すいませんがお世話になってもいいですか?」

「もちろん、パーティー結成祭りだぜ!」

 

 シロエは一歩踏み出して手を差し出す、キリトはそれを握り返し、握手をした。

 

「改めて、僕の名前はシロエ、職業は〈付与術師〉《エンチャンター》レベルは90」

「俺は直継、職業は〈守護戦士〉《ガーディアン》同じくレベルは90だぜ!」

「そういえば自己紹介がまだだった……、名前はキリト、ステータスを見る限り職業は……アインクラッド流剣士? レベルは90」

 

 アインクラッド流? とシロエが口に出しそうになるが、まだシノンの自己紹介が終わっていない。

 

「私はシノン、職業は……〈暗殺者〉《アサシン》になってるわね、レベルはキリトと同じ90、っていうかキリトアインクラッド流剣士って何?」

「お、俺が聞きたいよ」

「少なくとも、キリト君に関しては、公に職業は言いふらさないほうがいいね」

「だな、嫉妬祭りになるぜ!」

「あぁ……やっぱりそういう扱いなのね……」

 

 キリトがため息を吐くのを見たシノンが笑っている。

 

「どうやら、悪い連中ではなさそうだな」

 

「僕達冒険者とほとんど変わらないみたいだね」

 

 お互いが、お互い聞こえないように会話する。

 キリトの職業については少し考えることが必要かもしれないが、プレイヤーとしては気になったところはあまりない、どちらかといえば好印象な感じだ。

 

「そういえば、シロエさん、俺のことはキリトで呼び捨てで構わないよ」

「僕もシロエって呼んでくれたらいいよキリト」

「わかった、それじゃすまないけど、あんない頼めるかシロエ」

「わかった、話をしながらアキバの街を目指そうか」

 

 シロエ達はキリトを引き連れて、アキバへの帰路についた。




キリトからすれば、シロエや直継は見た目年上なので、丁寧そうな口調で話すのかな?と思って書きましたが、
MMOの中なのでそんなことはないかも? とか思いつつ……
敬語使わないかなぁ……やっぱり。

SAOのメンバーって基本的にログ・ホライズンのメンバーより年下なんですよねー

独自設定云々
Q&A

Q.職業アインクラッド流剣士とは?
A.ソード・アートオンラインの時代から使われているアバターを使用した場合出現できる職業、スキルスロットが二つ開放され、攻撃用のスキルと、補助スキルをセット出来る。
 ユニークスキル持ちは、三つのスキルスロットを持ち、二刀流 片手剣 隠蔽 といったスキルスロットになる。この場合 片手剣と隠蔽は自由に変更できるが、二刀流は固定である。

Q.アインクラッド流剣士にはなれないの?
A.アインクラッド22層に出現したNPCに話しかけると、サブ職業「アインクラッド流見習い」を所得することが可能、それを使い込むことで「アインクラッド流剣士」になることが出来る。
 ただし、セット出来るスキルは一つ、尚且つゾーン保有者が、「アインクラッド流剣士」及び「アインクラッド流師範」でないと、「見習い」はスキルの使用は出来ない。
 その代わり、浮遊城アインクラッドでは、見習いでも自由にスキルの行使が出来る。
 見習いは、エルダーテイルの世界の住人でもなれることは可能。

Q.ALOで使えた魔法は?
A.サブ職業「スプリガン」「ウンディーネ」等の場合は種族専用の魔法は可能、威力はエルダーテイルに合わせている。
 エルダーテイルの住人は浮遊城アインクラッドに赴き、NPCからクエストの達成報酬で、「スプリガンの弟子」「ウンディーネの遣い」等のサブ職業を取得できる。
 
Q.現在のキリトの職業は?
A.職業:アインクラッド流剣士 スキルスロット 二刀流 片手剣 索敵 サブ職業:スプリガン 種族:妖精族

Q.妖精族?
A.空を飛べることが出来なくなった妖精と言う設定です、しかし空は飛べませんが、推進力を得ることは出来るので、壁走り等が練習すれば出来るようになります。

次はPK戦を経て、ススキノに向かう原作に沿って行きたいと思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話

相変わらずのキャラほうかーい。
そしてキリトが全然活躍できてねぇ!
まぁ仕方が無いと言うかうん……


 カンダ用水路に入ったシロエ達は、鬱蒼とした森を歩いていた。

 

「じゃぁキリト達は、そのモンスターと戦うのに慣れてるんだ?」

「まぁ、そうだなVRMMOは自分で体感できるのが売りだからな、こうやって体を動かして戦闘することには慣れてるよ」

 

 階層攻略には絶対に大型モンスターとの戦闘もあったし、ALOに移動してからもそういうモンスターに挑んでは、殺されたのもいい経験だ。

 

「と言うことは、戦闘自体にキリト達は違和感がないのか」

 

 シロエは眼鏡の位置を調整しつつ考える。

 キリト達はこの世界ではおそらく、上位プレイヤーに匹敵する力を持っていると。

 

「逆にシロエ達はこういうゲームじゃなかったのか?」

「あぁ、うんそうだね。 僕達は普通にパソコンでキーボードやマウスを動かしてゲームをプレイしてたんだ……って判る?」

 

 シロエは恐る恐る聞く、もしかしたらそういうゲームはキリト達の世界では存在しないかもしれない、いやあったのかもしれないが古い時代の物なのかもしれない。

 

「わかるさ、俺が小学校のころはそういうタイプのゲームやってたからな」

「キリトってそんな子供のころから、ゲームやってたの? 友達居なさそう……」

「うぐっ」

 

 シノンの言葉に傷ついた2名の廃人プレイヤーを見て、直継は笑っていた。

 

 

「ちょっといいか? 試したいことがあるんだ」

 

 歩いていたシロエと直継に声をかけ、キリトは背中の剣を抜いた。

 独特な構えを取ると、剣が薄っすらと光りだす。

 

「せいっ!」

 

 目の前にあった木を切りつけると、木が音と共に倒れた。

 

「これが、俺達の世界で主流だったソードスキルって技だ」

「見た目では、直継達の攻撃職とあんまり変わらないね」

 

 すると直継が剣を抜き、キリトと同じように木を切りつけた。

 

「だな、特殊な職業がばれるかもって思ったけど、大丈夫そうだな」

「そうか、シノンそっちはどうだ? 前と違ったところはある?」

「そうね……」

 

 弓を構え、シノンは放つと少し遠いところにあった木に矢が刺さる。

 

「基本的には変わらないわ、けどこのリキャストタイムがやっかいだわ」

「リキャストタイム? あぁ次に使えるようにする時間か、こっちのはそのシステムがあるんだな」

 

 キリトはそういうと、自身のスキルリストを開けて確認しているようだった。

 

「うーん、お前達はこういつも体を使って戦闘をしているせいか、剣や弓を使うのが慣れているな、羨ましい限りだぜ!」

「だね、僕たちはパソコンを触っていると、この世界に連れてこられたから、自然と言うか、体の感覚で技を使うことに慣れてないからね」

 

 普通の大学生がいきなりモンスターと戦え、その肉体には強靭な力があるから大丈夫だ!

 と言われても、そんな急には戦えるはずがない。

 

「私は、ソードスキルは使えないようね」

 

 ダガーを握っていたシノンはそう言う。

 

「やっぱり、このアインクラッド流剣士の職業を持ってないと、使えないのか? あれ? でもシノンさっき弓使えてたよな?」

 

 キリトは先ほどの弓に、なんらかのスキルが宿っていたことに気づいていた。

 

「体の感覚で、技をだしたらでたって感じ?」

「シノン……さんは、アサシンだからその系統のスキルが発動したんでしょうね」

「シノンでいいわ、アサシンってこう忍者とか、そんな近接職のイメージなんだけど?」

 

 一般的な認識と言うか、隠密行動をし敵対勢力を一撃で倒すイメージがある。

 

「アサシンには、武器を持って攻撃するタイプと、弓を持ってスナイプするタイプがあるんですよ、シノンは後者なんだろうね」

「でも私、この世界でスキルビルドとか決めてないんだけど?」

 

 当然の疑問にシロエは少し考える。

 

「――確か、キリト達の世界にはコンバートシステムがあったんだよね? それが動作したって考えるのが妥当じゃないのかな?」

「なるほど、ALOで私のスキルビルドに近い形が、この世界で再現されたと」

「一番それが可能性が高いと思うよ、一度キリトとシノンは自分のスキル確認したほうがいいかもしれないね」

「あぁ、それもそうだな」

 

 シロエの意見に頷き、慣れてない様子でスキルの確認をする二人。

 

「どう思う直継?」

「そうだなー、どうにもこうにもわからん、そういうのは任せた祭りだぜ!」

「少しは考えてよ」

 

 苦笑しつつ少し思考を働かせる。

 では何故、キリトはもともとこの世界になかった職業を手に入れた、と言う話になるのだが――

 その辺の話は追々していくとしよう。

 

「そういえばシロエ、街まであとどのくらいなんだ?」

「もう少しだよ、そろそろ街が見えてくるはずなんだけど――」

「っ――下がれ!」

 

 直継がそう叫び、シロエはステップを踏み距離を開ける。

 キリトは剣に手をかけたまま、直継の後ろに、シノンはシロエの横で弓を構えていた。

 

「鎖っ!?」

「直継!」

 

 シロエは間髪入れず、ディスペル・マジックを使用し、直継かけられた魔法を解除する。

 

「敵か!」

 

 キリトは剣を抜いて、構える。

 

「敵は、敵だけどこいつは――」

 

 直継が歯切れの悪い言葉で暗闇を見つめている、キリトも同じように見つめると、なんとなくだか「人」の気配を感じる。

 

「PKか!」

「直継! 直列のフォーメーション! 人数は視認4つ! 位置を特定する、マイドボルト!」

 

 シロエが放った魔法により、敵の姿が浮かびあがる。

 キリトはそのシロエと直継の連携を見ながら、心の中で凄いと叫んでいた。

 二人はVRMMOをプレイをしたことがないといっていたが、この連携を見る限りそんなことはないだろうと言いたい。

 

「位置確認した!」

「位置特定! はっ、PKだなんていい度胸だな、ママが恋しくてケダモノ直行か!」

「――私対人戦得意じゃないんだけど」

 

 静かに4人は歩いてくると、シロエ達に向かって声をかけてきた。

 

「黙って荷物を置いていけば、命まではとらないぜ?」

「またえらく、時代かかった言い方だな、漫画の読みすぎじゃないか?」

 

 キリトは笑いながらそういうと、シロエを見た。

 

「直継はどうしたい?」

「他人様を殺し、遊ばそうって連中だ! 当然同じことがされる覚悟なんてとうの昔に出来てるだろうさっ!」

 

 その言葉を聞き、キリトは改めて武器を構えなおした。

 PKもその言葉を聞き、同じく武器を構える。

 

「僕は一度くらいならお金払ってもいいんだけどね、争いごと嫌いだし」

 

 シロエの言葉に驚き、キリトは振り返る。

 PK達の構えも少しゆるくなった。

 そして、キリトは見た、シロエの邪悪に満ちた笑顔と、それに対して恐怖を感じた自分を。

 

「けどまぁ、僕達に勝てるのならね? 第一目標右前方の剣士! 直継牽制も任せた! キリトは直継のフォローに、シノンは弓の準備をお願い!」

「任せろ!」

「おう」

「わかったわ」

 

 直継が侍風の男に切りかかり、キリトは二刀持ちの戦士に攻撃を開始する。

 すると残った、女戦士がシノンとシロエのほうに向かった。

 

「こいつらの相手は任せろ! お前は魔術師とスナイパーを狙え!」

 

 PKのリーダー的存在の奴が叫ぶと、シノンは弓を女戦士に向ける。

 

「シノンはそのままで、合図がするまで待機で」

「――わかったわ」

「アストラルバインド!」

 

 シロエが魔法を唱えると、女戦士の足に鎖のような者が絡み付き、身動きが取れなくなった。

 

「俺がそっちをやる、お前は戦士をやれ!」

「わかったわ」

 

 そういうと、二人は立場を入れ替えようとした。

 

「させるかよ、アンカー・ハウル!」

 

 直継は叫び、敵の目線が直継に向く。

 キリトはその様子を見て、直継がヘイト操作系のスキルを使ったんだと理解し、一度距離を取り、どの敵に攻撃するのが最適か判断しようとする。

 

「かまわねぇ! 先にこっちをやっちまえ!」

「はっ、俺の守りは破れねぇよ!」

 

 とはいう物の、3人の攻撃に直継のHPはガンガン削られていく、30秒もしないうちに直継のHPはこのままだと削られてしまうだろう。

 キリトは慌てて、武士風の男に攻撃を仕掛けようとすると、シロエが魔法の詠唱しているのが見えたので、慌てて下がる。

 

「エレクトリカル・ファズ!」

 

 シロエの魔法が3人に当たり、電気の塊が、3人の顔辺りをぐるぐると回りだす、がダメージはほとんど与えているようには見えない。

 

「シロエ!」

 

 キリトはたまらず叫ぶと、シロエは頷いたような気がした。

 

「ソーンバインド・ホステージ! キリト、その茨を斬るんだ!」

「わかった!」

 

 PKの周りにまとわり付いた茨を、装備した剣で斬ると、

 

「うわあああああああ」

 

 武士風の男は叫び、膝を付いた。

 キリトがHPバーを見ると、凄い勢いで削れて行くのがわかった。

 

「ヒーラー! さっさと武士を回復させろ! 数はこっちが有利なんだ!」

 

 その言葉にキリトはすぐさま反応し、魔術師の男を攻撃しようとする。

 

「させるかよ!」

「待て!」

 

 シロエはそれをなぜか、静止させた。

 

「そっちのヒーラーがきちんと活動していればの話だけどな!」

 

 直継はそう言いながら、茨を斬り、武士のHPが全て無くなりエフェクトが弾けた。

 

「もういい、ヒーラーは働いていないんだ! こい二人共! こいつらを焼き払え!」

 

 暗闇に向かって、リーダーが叫ぶ、それにあわせてキリトはそちらに目が取られる。

 

「任務完了だ 主君」

 

 言葉とともに、暗闇から小さい少女が現れた。

 反射的にキリトは剣を向ける。

 

「キリト待った。シノンも、アカツキさんは味方だよ」

「主君 良い援護だった、目の前にあんな光をされていればこいつらは暗闇は見えまい、おかげで速やかに二人を排除することが出来た」

 

 武士と魔術師二人が消えたときには、女性の戦士とヒーラーはその場から逃走している。

 残されたのはリーダーの男。

 

「すまなかった、助けてくれ! これ以上PKはしない約束してくれ!」

 

 地面に頭を下げ、きれいな土下座。

 さすがのシロエも、そんなあっさりと土下座するとは思ってなく、どうしようか? といった風に直継に視線を向けている。

 そして、シロエがPKから目線をはずした瞬間、立ち上がりシロエに襲いかかろうとするが、

 後ろから飛んできた矢が突き刺さり、エフェクトを散らしながら消滅した。

 

「ああいう輩は、基本信用できないのGGOで学んだわ」

「シノンさんマジパネェッス」

 

 キリトが苦笑しながら言うと、シノンは少し自慢げな顔をキリト達に向けた。




なんというか読みづらい気がするのが不思議、
会話の改行なくしたほうが読みやすいのだろうか。

まぁ純粋に文章力足りない気がするけどね!
気がするんじゃなくて、きっと足りてないんだろうね!

精進します _(:3」∠)_


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話

ログ・ホライズンみて一気に衝動で書いてしまった。
キャラの話し方の特徴が全然捕まえてなくて、キャラ崩壊がマッハでやばい。
あ、アスナというかアインクラッド編です。


 遠くで電話が鳴っている音が聞こえる。

 その音で目を開けたアスナは、眼前にTELLマークが点滅していることに気づきそれを無意識のまま押した。

 

「アスナ!」

「―――キリト君!?」

「無事のようだな、よかった」

 

 こちらこそ、と話した後キリトとシノンが無事であることを教えてくれた。

 そこでようやく周りを見る余裕ができ、仲間達が倒れていたので揺さぶり起こしていく。

 その間キリトとが先に、この世界のことについて教えてくれる人と出会ったので、この世界でキリトが知っていることを教えてもらっていた。

 

「ちなみにキリト君」

「なんだアスナ?」

「その教えてくれた親切な人って、女の人?」

「いや、二人共男だけど――」

「あっ、そうなんだ。なんが意外で……」

「どういうことだよそれは!」

 

 なんて場違いな会話をしつつ、アスナはキリトが無事なことを知り、安堵した。

 ログアウト不可という状況には、嫌な思い出がどうしても付き纏う。

 アインクラッド……HPが全てなくなれば現実世界の自分も死ぬという、デスゲームの事をどうしても思い出してしまう。

 メニュー画面のレクチャー等簡単にしてもらった後、お別れをいいキリトとの念話と呼ばれる機能を終えた。

 

「とりあえず、キリト君とシノンさんは無事でした!」

 

 起き上がった仲間達に声をかけると、皆がみんな安堵の表情を浮かべる。

 あんな別れ方をしてしまったのだ、誰もが心配していたのだろう。

 ――誰か忘れているような。

 

「そういえば、クラインの奴はどうなったんだ?」

「あ」

 

 エギルの言葉に全員の声が波紋する。

 

「多分、大丈夫です。この世界で死んでも復活できるみたいなんで……」

「なるほど――少なくともデスゲームではないのか。がログアウトが出来ないって言うのがな……」

「あんまり気持ちいい事件じゃないよね、とりあえず今から皆に変わったメニュー画面の使い方を教えます、といってもキリト君に聞かされた程度なんで自分で色々試してください」

 

 全員が頷き、念話機能を利用し領主を通じ沢山のプレイヤーに、情報は送られた。

 異常事態という事で、残った領主達と、有名なプレイヤーでの緊急の会議が執り行われる事になった。

 現在アインクラッドにいるプレイヤーは、5000人程度その中でログイン中の領主は二人。

 シルフ領領主、サクヤ ケット・シー領主、アリシャ・ルー

 そして、人々に影響を与えるとして呼ばれたプレイヤー、

 サラマンダー領主・モーティマーの弟 ユージーン 数々の新生アインクラッドにて数々のボス攻略の指揮を担った、アスナ。

 そのアスナが推薦した クリスハイト 異世界の住人として呼ばれた アリス

 かくして6人が集まり、今後の展開についての会議を始めた。

 

 

「で、なんで私もよばれてるの?」

 

 アスナは不服そうな声を少しあげる、その言葉が向けられた相手はサクヤとアリシャである。

 

「新生アインクラッドにすんでいる住人は、私達領主より、アスナやアリスのほうが有名と思ったからだよー」

「だな、俺達はどちらかというと地上の種族ごとに有名だが、アスナやアリスの方がボス攻略で名が通っている、ここでは呼んでおいた方がいいだろうという判断だ」

「まぁ、今後の対応というわけでもないが、アスナはキリトからこの世界の事を聞いたのだろう? その情報も教えてほしいと思ってな」

「アスナ君はともかくとして、なんで僕も呼ばれたんだろうか、僕の方がかなーり異質の存在と思うけど?」

 

 そう言いながらクリスハイトは、椅子に座っている。

 

「まぁ、確かにクリスハイトは別段有名なプレイヤーではないが……アスナの推薦があったのでな、呼ばせてもらった」

「アスナ君のせいか……まぁこの状況は気になるから、呼ばれて嬉しいとは思うけどね」

 

 その台詞に領主二人と、ユージーンはどういうことだという顔をする。

 

「でだ、領主が司会だと領主の私見が入りそうなので、どうだろうか アスナ?」

「わかりましたよ、サクヤさん とりあえず皆が持っている情報提示して貰いましょう、まずは私から、リーファちゃんこの資料皆に配ってくれる?」

「あ、はいわかりました」

 

 この世界は、ALOではなくエルダーテイルと言うMMOである。

 おそらく、コンバートシステムによりALOに近い職業になっており、それに近いスキルビルドに設定されている。

 しかし、これらの職業スキルは自動的に保持していたスキルリセットPOTを飲む事により、スキルビルドの再設定が可能。

 SAO帰還者は特殊職業を保持、詳細は別記入の資料を参照。

 ハーフガイアプロジェクトという世界観により、海の向こうには日本と同じ形の大地が広がっているが、アインクラッドが何処に落ちたのか不明なのと、翅を使い飛ぶ事ができないので、現在あちらの大陸に行く手段は無し。

 尚、キリト、シノン、クラインの3名がそちらの大陸に事故があり上陸済み。

 キリトとシノンの両名は、エルダーテイルでのプレイヤー最大の町アキバに向かって移動中で続報を待っている状態。

 

「こんなところですか、数時間程度で集めた情報なのでこの程度しか集める事が出来ませんでした」

「いや、中々の情報だった、参考にさせてもらう。 しかしSAO帰還者限定の特別職業か……」

 

 ユージーンが唸るように言うと、アスナに目線が集まる。

 

「SAOからコンバートしたプレイヤーはそう多くありません、嫉妬妬みの対象になるかもしれませんが、皆さんも同じ職業に就くことも可能です、その辺りの資料はもう一つを参考にしてください」

「なるほど、把握した、 丁度いい私からも資料を提供しよう、カゲムネ頼む」

「了解っと」

 

 アインクラッドに居る殆どのプレイヤーはレネゲイド……(言い方がひどかったが分かりやすい言葉と思う)のプレイヤーが大半であり、サラマンダーに至っては、偶々こちらに来ていた、ユージーンと配下の数人のプレイヤーだけだ、よって種族間の争いはそうそう起きないだろう。

 逆に、この世界での影響力が大きいのはアスナやアリス、黒の剣士の友人達の方が影響力が多いだろう。

 次に、転移門はこの22層と21層しか行き来できないように設定されていた。

 そして、22層と、21層以外に居たプレイヤーについてだが、強制的に22層の転移門に移動させられていた。

 つまり、この二つの層に居るプレイヤーが恐らくこのアインクラッドに居る、全プレイヤーだと思われる。

 過去のMAPデータを参照し、ボス部屋に行ったのだが、そこにボスが居座っていた。

 21層より下は海に浸かっており、ウンディーネの援護無しでは進行不可だったので行っていない。

 後致命的に飲食が不味い、不味いと言うか味がしない、料理スキルを持っているプレイヤーが調理コマンドを使用しても無駄だったので味覚エンジンが働いてない可能性がある。

 

「こんな所だな、塔まで行ってたのでそれほど情報が集めれなかった、すまん」

「まぁサラマンダー達はすくないし、しょうがないか、次は私から報告させてもらおう、頼む」

 

 サクヤはそう言うと控えていた従者っぽい人に資料を渡した。

 

 シルフの領民は大体30人程度、この場所は中立者が多いので種族間での戦闘はまず起きないだろう。

 死亡した場合は、22層の転移門広場で復活する事を確認した、同時にフィールドに出てくるモンスターが変更されている事を注意したほうがいいのと、

 ALOでは無かったが、ステータスにレベルがあることを注意されたし、基本的に合計のスキルポイントによってレベルが決定されているらしいので確認を。

 個人的な意見なのだが、ALOよりもリアルになっている気がする。

 サブ職業によっては使えない魔法が存在するので、おのおのスキルの確認。

 分かりやすく言うと、スプリガンならスプリガンが得意だった魔法しか使えない状態になっている。

 

「ソードスキルについては省いてくれ、アスナの資料の方が情報は多い」

 

 OSSについては発動可能、ソードスキルは基本的に発動する事は出来ない。

 

「OSSについては、考えて無かったわ、私達は殆どSAO帰還者だったから……」

「逆にそういう状況だからこそ、見える事もあるんじゃないか? えーっとアリシャさんでしたっけ? 何か話す事あります?」

 

 クリスハイトがまじめそうな顔をして、ケット・シーの領主に問う。

 

「んー皆に殆ど言われたしなー、基本的にはないなー、強いて言うのならば――念話機能はフレンドリストに登録しているプレイヤー同士じゃないと無理、なのでフレンドリストにはここのメンバー全員登録してた方がいいかなー? ってぐらかねー」

 

 言われてみれば確かにそうだ、お互い頷きフレンドリストに加える。

 

「で、クリスハイトさん何かいう事あります? もちろん仕事や私情を含めてでもいいですよ?」

「うわっ、そういう役目で呼んだの? ひどいなーアスナ君は、まぁ異常事態だからね仕方が無いといえば仕方ないな」

 

 おちゃらけてた顔が、急にまじめになり、あたりの空気が少し重たくなった。

 

「役職はあるんだけれども、とりあえず緊急事態なので省きます、国の仮想科に所属している人間だ」

「なるほどね、アスナが呼んだ理由がなんとなくわかったわ」

「まぁ、そういう事です」

「僕が今ログインしていた環境は、皆のアミュスフィアと違う状況でログインしたはずなので、本来異常が発生した場合は、自動的に回線が切られるように設定してあるはずなんだけど――」

 

 そういいつつ首をかしげる。

 

「今この状況に巻き込まれている。 故に可能性は二つだと思われる、一つはアンダーグラウンドになんらかの影響で移動したパターンもう一つは――ここが現実世界だっていうパターンだ」

「――この世界が現実だって? さすがにそれは……」

「それを確認する方法がある、ユイさん居ますか?」

「はい、なんでしょうか」

「率直に聞きます、カーディナルはこの世界に存在してますか?」

「いえ、存在しないです」

「とまぁ、そういうわけだ、さてどうする? 少なくともこの世界では私達のゲームの知識が生かされる場所ではない可能性があるが……」

「――、上を目指しましょう」

「上……?」

「そうです、仕様が変更されて、22層のボスがいるのならば、その上に何かがあるかもしれません」

「まぁ確かにそうかもしれないが……」

「アスナそんな不確かな情報で皆を戦場に駆り立てるのか?」

 

 今まで黙っていたアリスが口を初めて開いた、そしてアスナを見据える。

 

「えぇ、目的が無くこの場所に閉じこもっていると、SAO時代の始まりの町みたいになってしまうかもしれない、なら目標を作るべきです、SAOみたいに死ぬわけでもない、トライ&エラーを繰り返せます」

 

 するとアスナはくるっと後ろを向き。

 リーファ、エギル、リズベット、シリカ、エギル、そして椅子に座っているアリスと、クリスハイトに少し頭を下げた。

 

「宣言します、ここに居るメンバーと、キリト、シノンを含めたプレイヤーでギルド「血盟騎士団」を再結成します! このギルドの目標は一つ、このアインクラッドの最上階を目指す事です!」

「……僕も巻き込まれるのか――」

「一つ聞かせてもらいたい、何故そうまでして君は上に登りたいと言う? 確かに目標の話はわかる、わかるのだが――」

 

 ユージーンが唸る様に言う、サクヤとアリシャも興味津々のようだ。

 しかし、アリスは何かを悟ったような顔をしていた。

 

「キリト君ががんばってるのに、ここで腐ってるなんて出来ないからです!」

「―――、っはははははは、これは一本とられたなユージーン将軍、そういわれたら何も言えないだろう?」

「わかってるけど、こう宣言されるとやっぱりちょっとイラッってくるわね、自慢しているみたいで」

「そうですねー、ほーんと相思相愛なんですからお二人とも、悔しいです」

 

 シリカとリズは苦笑しながら話をし、アリスはやっぱりかという表情をして、アスナを睨んでいる。

 

「攻略の事は把握した、私にどれほど影響力があるかわからないが、サラマンダーとして協力を約束しよう」

「無論、シルフもだ」

「もちろん私もね、ここで待機なんて面白くないしねー」

「しかし、いきなりボス攻略とか馬鹿な事は言わないで欲しいな? とりあえず皆で協力して更なる情報収集が今後の目標だ、クエスト等でボス攻略の糸口があるかもしれん」

「それは――そうですね、わかりました」

「他のプレイヤーにはどう説明する? まさか一人ひとり口頭や念話で話すわけにもいかないだろう」

「――とりあえず湖の傍の広場に集まってもらって、説明するのはどうでしょうか? 中立のプレイヤー達ばかりですし腕はいい人もおおいですし、祭りが好きなプレイヤーが多いと思います」

「だね、その意見については同意するよ、まったあのときの作業といったら本当に無茶を言われたものだ――」

「でもそのおかげで、アンダーグラウンドは救われたんですよ?」

「まぁ、そうなんだけどね、文句の一つも言いたくなる」

 

 クリスハイトはため息を付きながら言う。

 ともかく方針は決定した。

 新生アインクラッドに残されたプレイヤーたちは、上を目指す。




もう少し会話と考えを思考させる文章を書きたいかなとか思いつつ
しかしそういうのはオリジナル回ですべきだと思っていても
今回はログ・ホライズンアニメ視聴した勢いで書いてしまったので、若干後悔しつつ……
次からは本気出す(フラグ


雑記
_(:3」∠)_  ←ログ・ホライズンが始まる時間にテレビの前に待機してる私
ヾ(:3ノシヾ)ノシ ←ログ・ホライズンが始まって喜んでいる私
_(:3」∠)_  ←終わって余韻に浸っている私

(´‐`)←衝動で書きすぎてどうしようかと悟りを開いている私


まぁいいか_(:3」∠)_
いやぁアニメ面白かったですね、個人的には報酬の話が無かったのが悲しかったですが。
アニメスタッフさんはがんばっていると思います後残り少ない話数ですががんばって欲しいですね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話

スンスンスーンと更新です。
評価を投票不可にしております。
理由は多々ありますが、察してくださると嬉しいです。

前話での修正部分をみつけたので、後日数行を変更させていただく予定です。

キャラ崩壊注意! 


「ここがアキバか……なんというか想像してたのと全然違うな」

「もっとビル群とか想像してた? 僕達からするとこのアキバがエルダー・テイルのアキバの街なんだけどね」

 

 シロエが苦笑しながら言うと、そのまま街の中に入り道路を歩いて行く。

 

「そういえばシロエ、アカツキさんの事なんで俺たちに言わなかったんだ?」

「敵を騙すなら、まず味方からって言うでしょ?」

「まぁおかげで助かったんだし、キリトも愚痴々言うなって!」

「まぁ、そうだな疑ってすまないシロエ」

 

 直継のフォローのおかげで助かったけど、アカツキさんは完全に保険だったんだよね。

 キリトとシノンか、あの二人は何を考えているかまださっぱりわからないし、あの二人が言っている事が正しいかどうかもわからない、何か問題があったら不味いからっていう事で、アカツキさんを別行動にさせてたけど……それが今回は良かったものの、次からはキチンと付き合うようにしないと。

 それにしてもアカツキさんは、仕事人だなぁ……何も言わずともこちらに合わせてくれるというか――。

 

「どうしたんだ? 変な妄想しまくり祭りか!」

「え、シロエって割と真面目そうなのにそんな事考えているのか?」

 

 引き気味にキリトが言うと、シロエは慌てて首を振って否定する。

 

「そんなんじゃないよ、ちょっと考え事を……ね、っと念話だごめん」

 

 一同は歩みを止めて、緑に包まれつつあるビルに背中を預ける。

 

「けど、なんていうか――」

 

 シノンが頭を捻りながら言葉を捜す。

 

「なんとうか、町全体の雰囲気が重たいというか、活気が無い気がするのは私だけ?」

「いや、俺も感じた。 なんというかこう静かじゃないんだけど――」

「目的が無く、何をしていいかわからない」

 

 アカツキがキリトの言葉に付け加えるように言った。

 

「目的が無いって……ゲームからの脱出とかは? 」

「それがとっくにわかっているなら、誰もがそれを目指すだろう」

「それじゃ、レベル上げをするとか――」

「一部の<<冒険者>>は積極的に街に出て、レベル上げとかしているだろうが――今までパソコンのモニター越しにゲームしていた奴らが、いきなりこの世界に連れてこられて、じゃぁ目の前の敵と戦ってくださいといわれても戦えると思うか? ましても目的も無く」

「……確かに言われてみればそうか」

 

 俺達は茅場という存在によって、現実世界のゲームに閉じ込められた、それはある意味帰る場所があり、尚且つ脱出する手段が残されていたから俺達が攻略組みとして戦う事が出来た。

 100層を全て攻略すれば俺達はゲームから脱出し、あの仮想空間から脱出でき、そして現実世界に帰る術があるからこそ、俺達は戦う事が出来た気がする。

 では、今のシロエ達はどうだろうか?

 何の理由も説明も無く、この世界に入れられて死ぬ事も出来ず、ただ生きるだけ――

 目的を持たない生というのは、それは人と呼べるのだろうか?

 ……わからないな、そんな物に答えなんて出ない。

 

「……リト、 キリト!」

「あ、あぁどうしたんだ、シノン」

「何がどうしたんだ? よ シロエが知り合いのギルドに呼ばれたって、一緒に行く?」

「そうだな、行こうか。何か情報があるかもしれない、クラインを迎えに行くとしても、この世界の情報がもっと必要だ」

 

 あぁ、そうか旧アインクラッドでは、「脱出」と言う目標があった。

 ALOでは、アスナを助けるために。

 GGOでは死銃を探し出すために……。

 考えれば目標と言うのは常に存在してた。

 アンダーグラウンドに至っては、天職が存在しその天職を死ぬまでやらないといけないという絶対的な命令が存在した。

 しかしこの世界では、命令される事も無く、明確な目標も無くそれでも生きなければならない。

 人々が暗くなり、どん底になるのも無理はないと言うのか。

 この世界にクィネラがいれば、さぞ恐ろしい事になっただろう。

 間違いなく、神にも等しい力を手に入れていた可能性がある。

 いや――、もしかしたらそういう風に企んでいる人間がいてもおかしくは無い。

 ……そうか、この世界には<<禁忌目録>>は存在しない、故に「罪」が無いんだ。

 犯すものが無いければ、罪は発生しない。

 何処の世紀末だよここは――。

 死ぬ事が許されないが、何でも出来る世界、その事により罪が発生しない世界。

 

「キリト行かないの?」

「あぁ、ごめんちょっと念話するからさ、先に言っててくれ」

「わかったわよ」

 

 シノンに催促されてある決断をする。

 何かあってからは、遅いかもしれない手は打っておくべきだろう。

 そう考え、なぜかフレンドリストに登録されていた名前を押した。

 

 

「そもそも、キリトはギルド会館ってわかならなかったよね?」

 

 シロエが苦笑しながら言う、それもそうだ先に言ってくれと言ったのはいいが、結局シロエ達に戻ってきてもらった。

 

「地図見ればいいって、思ってました……」

「とりあえず、こっちに三日月同盟ってギルドのギルドマスターに呼ばれたんだよ」

 

 

「こんばんわ、マリ姉どうしたの?」

 

 キリトはあわただしく動き回る、恐らく三日月同盟のギルドメンバーを観察していた。

 いくらなんでもこの深夜に、バタバタするのはちょっとおかしいよな? 何かの準備かそれとも――。

 

「あー、えーとな」

 

 呼び出したのは確か相手側だったはずだ、しかしどうにも口が開くのが遅い。

 メンバーが気を使ったのか、奥の部屋に入ったのだが、それでもマリ姐と呼ばれたプレイヤーは口を開かなかった。

 仕方が無いので、何か話題が無いかと考えた結果、自己紹介をする事にした。

 

「始めまして、マリエールさん? でいいのかな俺はキリト、そしてこっちが……」

「シノンです」

「そういえば、始めましてですね、森の中で知り合ったんだけどどちらも腕の立つ信頼できる<<冒険者>>だよ」

 

 そうシロエに紹介されたので、あわせて頭を下げる、しかしなんというか冒険者という肩書きには慣れない。

 どちらかといえばプレイヤーと、呼ばれるほうがしっくりくる感じがする。

 

「始めまして、三日月同盟のギルマスのマリエールです。気軽に呼んだってな、そしてこっちが」

「ヘンリエッタと言います、よろしくお願いします」

「それでマリ姐、僕達に何か用――、いやどこかに遠征に行くつもりなの?」

 

 シロエは慌しいギルメンを見て、遠征にいくと判断したのだ。

 それもそうか、いくら日本の半分の大きさとはいえ、歩いていくとなると何処に行くのにも時間がかかるだろう。

 

「エッゾ――というかススキノにな」

 

 シロエが俺を見た。

 その意図は読めないが、とりあえず今は黙っておく。

 

「トランスポートゲートは現在使用不可、ススキノに行くのには遠征しかないのです」

「それはわかります、しかし何故今?」

 

 トランスポートゲートは恐らく、都市と都市をつなぐ転移門的な物だろう、それが使用不可となると歩いていくしかないのか。

 

「ススキノな、ここより治安悪いらしいねん、そんで大災害の当日運悪くススキノに行っているプレイヤーがいてな……」

 

 そこまででキリトは把握した、このギルドはススキのに遠征し、そのプレイヤーを助けに行くつもりなのだ。

 

「そんでな、シロ坊にはアキバに残る人たちの様子を見て欲しいよ? アカンかな?」

 

 その言葉を聞いたシロエは悩んでいる気がする、いや実際に何かと葛藤しているのだ。

 

「勝手なお願いなのは重々承知しています、しかしどうかシロ様、直継様、アカツキちゃんどうかお願いします」

 

 言葉が出せる状況ではない、俺はこの世界の事をまったく知らないのだ、付いて行きたいと言った所で同行は許可してくれるかもしれない。

 それは足を引っ張る行為になるんじゃないか?

 それと色々考えて、見て分かった事がある。

 ここはVRMMOなんかじゃない、俺たちが過ごしてきた世界とは根本的に違う。

 ここは異世界なんだ、根本的な考えを改める必要がある。

 シロエが何か言いそうになったが、それを押し留めようとしたとき

 

「いえ、シロ」

「主君の出番だ」

 

 シロエの仲間二人からシロエに向かって声がかけられた。

 

「僕らが行きます」

「え?」

「僕らが行くのがベストです」

「そんなっ、シロ坊うちらそんな事をねだっているわけじゃっ……」

 

 マリエールの言葉を無視するかのように振り向き、仲間を見るシロエの顔は何かを吹っ切れた顔をしている。

 

「モチのロンだぜ!」

「主君と我らにお任せあれ」

 

 マリエールとヘンリエッタに答えられないように返事をする二人、こうなる事はなんとなく予想は出来たのだが――。

 

「シロエその旅に俺達も同行させてもらいたい、ススキノにははぐれた親友がいるんだ」

「……言われると思った、けどそれは出来ないんだ、すまないキリト、シノン、けどその親友も一緒に迎えに行くからこの街で待ってて欲しい」

「何故だ? やはり足手まといだからか?」

 

 シロエの顔は本当に申し訳ないという色が出ていたのだが、それでも俺は聞いてしまった。

 

「それは違う、人数が多いほうが間違いなくいいんだけど、キリト達は僕や直継が持っている移動手段を持ってないんだ、だから……」

「いや、そこまでで大丈夫ありがとうシロエ、そして無理を言ってすまない」

「そこでマリ姐この二人を三日月同盟で保護じゃないけど、様子を見て欲しいんだけどいいかな?」

「ええけど、二人はそれでええの?」

 

 よくはない、がクラインを救出するのに俺たちが居ては邪魔になるのならば引き下がるしかない。

 不本意だが、ススキノにはシロエだけで行ってもらい、俺とシノンはアスナ達に連絡する情報を集めるべきだろう。

 

「このギルドにお世話になっていいなら、ね? キリト」

「あぁ――すまないが頼めるか、三日月同盟のギルドマスター」

「あぁ、もちろん……!?」

 

 マリエールが驚いてソファーから立ち上がるのと同時に、シロエ達やキリト達も慌てて視界の上を見た。

 

「これは……システムコール!?」

 

 <<アインクラッドにて22層ボス「死霊の王」の攻略に成功しました、アインクラッド23層の開放とラストアタックボーナスを該当者に送付しました>>

 

「アインクラッド――アスナ達か! けど死霊の王なんてボスじゃ、一回目も二回目とも違うはずだ、また別のボスが配置されているのか」

 

 同時にアスナがじっとせず、動き回ってる事に少し喜びを得ていた。

 アスナ達も頑張っているんだな――。

 状況を説明しようと、シロエ達のほうを見ると、シロエと直継が驚きの表情を浮かべていた。

 

「死霊の王? ハデスズブレスのボス……もしかしてっ! キリトその貰ったアイテムを、教えてもらえるなら教えて欲しい!」

「ど、どうしたんだ慌てて、わかった少し待っててくれ」

 

 シロエの驚き方に押されつつ、恐らく攻略をこなしたアスナに連絡と付ける。

 

「アスナ! ボス攻略をしたんだな、突破おめでとう!」

「キリト君、あのシステムコール聞こえてたんだね。ありがとう」

「早速で悪いんだけどさ、LAって誰がとったんだ?」

「私が取っちゃいました! けどALOの時には無かったアイテムなんだよね、よく分からないNPCも助けに来てくれたし」

「ボス攻略戦でNPCが助けに来るって……本来ありえないよな?」

「うん、私ビックリした、それでアイテムなんだけどワイバーンの笛ってなってる、3人乗り用のモンスターらしいよ?」

「そうか、ありがとう」

 

 念話をつながったままシロエに話す。

 

「シロエ、どうにも騎乗系モンスターを召喚する笛らしいんだ、丁度俺のフレンドが貰ってて……どうしたんだ?」

 

 シロエは話を聞くと、非常に難しい顔で悩んでいる。

 

「現状そのアインクラッドの場所はわからないんだよね?」

「海の上周りはなーんもないから、皆は何処にいるかも分かってないと思う」

「そうか、ありがとう マリ姐僕達は早朝街を出ます。帰ってきたら詳しくアインクラッドのことを教えて欲しいなキリト」

「移動手段が無い以上、俺たちが一緒についていけない……ってそうか」

「アスナ、ちょっと借りるぜ!」

 

 そう言い、お互い共有化しているアイテム欄を覗き込む、アスナが持っているのならば、俺のイベントリにも――あった!

 それを選択し、実体化させる。

 

「これが、ワイバーンの笛だ、これがあるなら一緒にススキノに行けるだろ?」

 

 その笛を見たシロエ達は絶句していた。

 それはそうだろう、持ち主が遠く離れているはずのアイテムをキリトは自身のイベントリから取り出したのだ。

 

「キリト結婚システムに付いて説明したほうがいいと思うよ?」

 

 シノンは呆れながら言うと、キリトは思い出したかのように言う。

 

「俺達のVRMMOでは結婚システムというのがあって、結婚するとアイテムを共有化されるんだ」

「つまり、キリトのそのお嫁さんがそのアイテムを保持していて、キリトがそれを貰ったと」

「だな、これでも一緒に行けないか? シロエ」

「騎乗系ペットを持ってるなら別だ、一緒に行こうキリト」

 

 

 シロエが手を差し出してくるので、それをつかみ握手をする。

 

「無理言ってすまない、シロエ」

「水をさして割るいんやけど――、俺達のVRMMOってどういう事なん? シロエ、キリト?」

 

 シロエは少し困ったかをでこちらを見てきたので、俺は頷いた。

 そもそもあんなに大きくアインクラッドの名前が表示されたのだ、今後ばれる可能性がある、秘密にしておく理由はもう無い。

 

 かくかくしかじか。

 

「はー、そないな事が……ヘンリエッタ、これは私たちの胸のうちにしまっておこうな?」

「わかりました、事が事ですからね、秘密にさせて頂きます」

「それはそうと、リアルでも結婚しているわけじゃないよな? そうやとお姉さん悲しいやけど――」

「さすがにまだ学生だからね、16歳ですし、あーでももうすぐで17歳ですね」

「16歳!? なんかすっごい昔に感じるわー」

「マリ姐も十分若いよ、気にし過ぎだって」

「せやけどなー、ゲームの世界とはいえ結婚してるなんてうらやましーわ」

 

 その言葉にシノンの耳がピクリと動いた気がした、いや多分気のせいだろう。

 

「いやでも、キリトって現実世界でもアスナと交際してるんだよねー? それなのに、私を抱きしめたりとか、他の人を無意識で口説くから本当に……何か言ってあげてくださいよ」

 

 どうやら気のせいではなかったようだ、というか爆弾発言!

 

「えっ、ちょシノン!? いや確かに抱きしめたのは間違いじゃないけど! それとそれとは話が別物というか……」

「キリトくーん? そんな話私はっ――」

 

 とりあえず一番の問題である念話を切る。

 

「へぇ、キリトって女垂らしだったんだ――」

 

 引き気味に言うのはシロエ。

 いや違うんだ、彼女いるのに全国ネットで、シノンを抱きしめたのは間違いないけどっ!

 

「16歳やのに、そんな多人数とお付き合いを――? 不健全な人? シロ坊信用できる冒険者って言ってたのに……」

「ごめんマリ姐そんな人には、見えなかったんだよ」

「え、ちょシロエ! シノン早く訂正しないと大変な事に!」

「事実でしょ?」

 

 

 キリトが直継とアカツキに弁解している間に、シロエはマリエールと話していた。

 

「悪い子じゃないね?」

「そうやね」

「マリ姐お願いがある、アキバの街で流れ星か何か落ちてくる物体を見た人がいるか聞いて欲しい、それも大手ギルドには見つからないように」

 

 シロエはキリト達を見ながら、表面的には笑顔で話を続ける。

 

「難しい事言うなぁ、あの子達の城だよね? まぁ期待はせんといてよ?」

「頭の片隅程度で、多分あの子達の城が今後未来に関わって来ると思う」

 

 眼鏡を直しつつ答えるシロエ、少々黒いオーラが見えたのは多分気のせいではない。

 

「わかったわ、そのかわり――」

「そのかわり、ススキノにいるプレイヤーは任せてください」

「頼んだわ、名前はセララちゅうねんお願いするな」

「はい」

 

 笑顔で頷くシロエを見たキリトは。

 

「も、もしかして信用してくれたか?」

 

 と少し疲れた表情で話しかけてきた。

 

「少なくとも、キリトのいう事よりシノンのいう事のほうが信用できるかな、あんなに可愛いプレイヤーに抱きついておきながら、彼女持ちって……」

 

 酷く落胆したように言うと、キリトが項垂れる。

 

「そういえば、アリスに聞いたんだけど、幼い子のおでこにキスをしたって話も――」

「ちょ、アリス何話しているんだ! しかも一番話してはいけない人に!」

「えぇ……ねぇ直継、キリト連れて行くの止めた方かもいいかも知れないね?」

「そうだな、女の子口説きすぎ祭りだぜ」

「シノン、他にそういう話題はないのかい?」

 

 シロエはこれ以上無い黒い笑顔でシノンに問いかける。

 それに答えるかのように、最上級の笑顔でシノンは答えようとした。

 

「そうね、そういえば――」

「もう勘弁してくれぇ!」

 




キャラ崩壊MAX祭りだぜ!
色々簡略化しすぎて違和感MAX祭り。
そんでもって、視点がかわりまくりで、混乱させてるかなとか思いつつ。
キリトとシロエが別行動し始めたら、多少は見やすくなると思うのでそれまで我慢していただけると幸いです。

次はアスナ視点の予定ー


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話

SAOのネタバレ全開です。
WEB版なんで、小説とは無関係かもしれませんが
先に注意しておきます。

シリアスが行方不明です。
どこかに行ってしまったので、探してくれると幸いです。


 と、言うわけでシロエ達ご一行はススキノに行く事になりました。

 

「とりあえず、キリト達がワイバーンを手に入れたので、一緒に来てもらうとして、メンバーは 僕、直継、アカツキ、キリト、シノンで」

「目的は、セララという三日月同盟の女の子の救出と、ススキノからの脱出、それとキリト達の仲間の一人であるクラインの救出で、皆さんお願いします」

 

 シロエの宣言にPTメンバーは頷く。

 

「と、言っても数日は移動になると思うから、その間に連携をしっかり取れるようにしないと……キリトとシノンはどう? ここでの戦闘は?」

「どうだろうか――、モンスター相手に慣らしていくしか、基本的には俺は一緒だけど、シノンは?」

「私も、特に問題ないわね、というか覚えてないはずの技が体に染み付いている感じがするから、後は心を慣らしていくって感じかしら」

「……?」

 

 シロエとキリトは頭にはてなマークを浮かべている。

 しかし、直継とアカツキは頷いていた。

 

「こうなんとなーく、体が覚えているというか、なぁちみっこ?」

「ちみっこ言うな! が言いたい事はわかる、後はそれを自分の意思で自由に出せるようになれば、戦いやすくなるぞ」

「そんなもんなのか? 体にSAOの時の動作がって……」

「キリト何言ってるの? 私はSAOに居なかったのよ?」

「あぁ、そういえばそうだったな悪い」

 

 改めて気づかされるが、シノンはGGOというゲームの住人で、ALOにはキャラクターをコンバートしてるだけなのだ。

 つまりSAOの事件の事は知っていても、SAO時代のソードスキルを完全に知っているわけではない。

 そもそも俺たち、SAO帰還者は2年もの間異世界に捕らえられていたんだ、ソードスキルが体に染み付いていて当たり前といえば、当たり前だ。

 逆に、ALOつまり今回の事件の舞台になったアインクラッドに居る大半のプレイヤーは、異世界に慣れているわけではないのだ。

 もしかしたら――、そこが俺のようなソードスキルを使う用の職業についている俺と、その職業についていない差なのかもしれない。

 

「アスナ達大丈夫かな……」

 

 

 

 アスナ達がボス攻略をする数時間ほど前

 

「ごめん! なんか勢いで言っちゃって!」

 

 アスナは巻き込んだ仲間に謝っていた。

 

「気にしてないですよアスナさん、皆一緒のギルドって結構楽しみだったので、頑張りますよー」

 

 シリカがそういうと、横に飛んでいたピナも同意するかのように声を上げる。

 比較的にソードアート・オンラインに閉じ込められた経験がある人たちは、どちらかというと落ち着いているというか、そんなに慌てている様子は無い。

 

「何簡単に受け入れてるんですか! ログアウトできないんですよ!? この場合はやっぱり助けが来るのを待つ方が……」

「まぁ、リーファちゃんのいう事もわかるんだけどね、私たちはそれで、助けが来なかった事を知っているから」

「それはっ……」

 

 それを言われたら、リーファは何も言い返せない、そもそもこの人たちも心のどこかで怖がっているのを、無理やり奮いたたせてるのかも知れない。

 それに、SAOの時はキリトの――お兄ちゃんの活躍で脱出できたと聞いている。

 

「まぁ――100層まで続いてるかもわからないし、上に登った所で脱出できないかもしれないけどね」

 

 アスナが苦笑しながら言うと、エギルが首を捻る。

 

「だな、俺達の翅は使えないし、周りは完全に海ばっかり、船を作ろうと思っても俺たちの記憶の限りでは、製作アイテムに船は無い、無論飛行機も」

「クジラさんなら、いたんですけどねー」

「そういえば、そだったな」

 

 ユイの言葉に、エギルは笑顔で答える。

 するとクリスハイトは、そのユイに向かって質問した。

 

「ユイちゃんだったかな? この状況どう思う?」

「貴方の意見を先に聞きたいです、仮想科の菊岡さん」

 

 笑いあってた仲間達の表情は固まる、同時にアスナは少し頭を抱えていた。

 

「菊岡――ってあんた死んだんじゃ、いや殉職って言葉だったかしら?」

「えぇ、ニュースではそう聞いたんですが」

 

 クリスハイト……菊岡はやれやれといった風に肩をすくめる。

 

「その件に関しては、とりあえず放置でお願いするよ皆さん、不本意かもしれないけどね?」

「……」

 

 アリスが特にクリスハイトに対して睨み付けるような視線を向ける。

 が、クリスハイト自体はあまり気にしていないようだ。

 

「とりあえず、このアバターを使用している時はその名前で呼ばないことわかった?」

「まぁ、わかったわ、納得はしてないけど」

 

 リーファが不満そうな声をあげながら、了承するとそれに仲間達は同意し、頷いた。

 

「あの会議では、ああ言ったけど、可能性は結構あるんだよね?」

「と言うと?」

「確かに、現状カーディナルが保持していないサーバーでVRMMOは基本的に存在しないと個人的には思ってる、けどまぁ世界は広いから、新しいVRMMOが開発されててもおかしくないよね?」

 

 ――言われてみればそうだ、世界の種子なるVRMMOキットで私たちの世界では手軽にVRMMOを作る事が出来る、しかしそれを使わずにVRMMOを開発する事だって不可能ではない。

 

「とはいえ、茅場先生以外にそんな真似が出来るとは思わないから、可能性としては低いね? もう一つの可能性なんだけど――アリス君なら気づいているよね?」

「気づくとは、違う気がするが――」

 

 その言葉にアリスは難しい顔をする。

 

「アンダーグラウンドに近い感じがする、けどお前達が居る世界と同じ感じもする」

「???」

 

 アリスの言葉に一同はてなマークを浮かべる。

 

「それがもう一つの可能性じゃないかなと、僕は考えるんだけどね。 つまりこの世界がネットの世界と現実世界が融合した異世界……とかね?」

「なにその安っぽいSF小説みたいな――」

「あくまで可能性の話だよ、とりあえず今は情報が少なすぎてなんともいえないし、早めにもともとこの世界の住人だった<<冒険者>>だっけ? その人たちの話を聞きたいものだね」

 

 結局はそこに行き着いてしまう、現状は情報が少なすぎて判断が付かない。

 ここで茅場先生みたいに、チュートリアルを発表してくれればわかりやすいのだが、それもない。

 つまり、「これが人災の場合だと、何の目的て私たちをこの世界に連れてきたのかわからない」

 人の手によって、この出来事が起こされた場合、閉じ込められた人間がなんらかのアクションを起こす人物だと推測される。

 すなわち、私たちが以前にキリト君を捕らえたのにも何らかの理由があった。

 茅場先生が、1万人ものプレイヤーを捕らえたのにも理由があったはずだ。

 だがしかし――この状況をした者が存在するなら、それの理由はなんだ?

 

「人災ならば――」

「え?」

「人災ならば説明が付かない、この世界をただ作り出したかっただけと言われたらそれまでだが、天災ならば、台風や地震と一緒ならば納得が付く」

「天災って……この状況が自然災害と一緒だと?」

「わからない、やはり情報が少ないんだ、それを探すためにも上か下どちらかに行くしかないだろうな」

 

自然災害か……、もしかしたら我々が住んでいた世界の自然災害ではなく、この世界の自然災害で私たちが呼ばれたのかもしれないな。

あくまで、可能性の一つだが。

「とにかく、このままじっとしても助けがくる可能性が少ないって事ですよね?」

「そうだな、私がこれでも国の重要ではないが――そういう人物なのでね、助けが来ているのならば間違いなくここに存在して無いだろう」

「つまり、クリスハイトがログアウト出来るようになるまでは、ここでなんとかしないといけないんだよね?」

「そういうことだな、まぁ悲観するなもしかしたらALO側が要したGMイベントなのかもしれないしね」

「いやぁ……さすがにその線はねぇだろ? 可能性としてはゼロではないのが、悲しいところだが」

 

 エギルの言葉に、仲間達は考え込んでしまった。

 

「とりあえず! クラインさんはキリト君とシノンちゃんに任せるとして、私たちは宣言通り上を目指すって事で!」

「あいよ、それなら早速いくか? 地図貰ってるんだろう?」

 

 エギルの言葉に、アスナが頷くとクリスハイトは嫌な顔をした。

 

「普通にボス攻略は、クエストなり、情報を収集してからと聞いたんだけど?」

「まぁ死んでもキリト君の話によると生き返るみたいですし、大丈夫でしょう」

「僕は死ぬのは嫌なんだけどなぁ……」

 

 

 

「うーん、ダンジョン部分はSAOの時と一緒?」

「なんとなーく変わっているというか、なんというかリアルになっているというか――」

「気になったところは全部言っていきましょう!」

 

 アスナがそういうと、リズベットは頷いて言葉を続けた。

 

「SAOやALOの時よりも、匂いとか石とかこうリアルになってると思わない?」

「あーわかります、花の造型とかなんかリアルなんですよね」

 

 そういわれて、エギルとクリスハイトは花に顔を近づける。

 

「俺にはわかんねぇなぁ……」

「右に同じく」

「以前にキリトさんと一緒にフローリアって街に行ったんですけど、SAOの花ってこう、枯れてる部分ってないですよね? この世界の草木って枯れてる部分があるんですよ、ほら」

「あぁ、なるほどな言われてみれば――」

 

 花を見ると、枯れている花と枯れていない花等、自然に生えている様に見える草木がある。

 

「それが何かおかしいのか? 草木は普通枯れるもんだろ?」

「現実世界ならそうですよ、でも仮想世界でわざわざ枯れてるように見せる必要性ってあります?」

 

 そうシリカがいい、クリスハイトとエギルは納得したように頷く。

 

「それもそうだね、わざわざ枯れてるテクスチャを用意するより、綺麗な風景の方が断然いい」

「だな、容量の節約にもなるし」

「ところで、シリカちゃん」

「なんですか? アスナさん」

 

 エギルはそのアスナの顔を見て、辺りを探索してくると一言言うと、アスナの様子を見たほかのプレイヤーがそれに便乗する。

 シリカはアスナに捕えられ、キリトとフローリアに言った事を恐ろしい笑顔でシリカに聞いていた。

 

 

 アリスはダンジョンの隅に咲いていた一輪の花を取り天命を見ようとウィンドウを開ける。

 花を選択肢開いた詳細情報は、花の名前とその説明文しか書かれていなかった。

 

「アンダーグラウンドだと、枯れると言ったものはなかったな、使えばその役目を終え、消滅していたからな」

「と言う事は、この世界はアンダーグラウンドではないという事か」

 

 アリスの言葉にクリスハイトはそう答えると、アリスは複雑そうな顔をしていた。

 それもそうだろう、アリスはアンダーグラウンドに帰りたいのだ、何百年経過して姿かたち人たちが変わっていたとしても、あそこはアリスの故郷なのだ。

 

 

「さてと、ボス部屋の前まで来たけど――」

「ようこそ、妖精族の皆さん、ここのボスに挑むんだね? 僕も協力させてもらってもいいかな?」

 

 アスナの声は、第三者によって止められた、アスナをはじめとするプレイヤーは驚きながら武器に手をかける。

 

「戦うつもりは無いよ、だからその武器に手にかけるのやめてくれると嬉しいんだけどね?」

 

 そう言いながら、ボス部屋のほうからゆっくりと一人の少年が歩いてきた。

 アッシュブラウンの柔らかそうな髪をしている、年は16から17辺りだろう。

 

「お前はっ!?」

 

 アリスは声を荒げながら、近寄る。

 しかし少年は苦笑いをしながら、口元に指を立て、しーっとアリスに向かって皆には見えないように言った。

 

「アリスの知り合いなの?」

「い、いやよく似てるだけで別人だったようだ――、すまない」

「どうにも、他人の空にというか、前にも同じリアクションがした人が居たよ」

 

 苦笑いをしながら、言葉を続ける。

 

「とある人から君達に協力して欲しいって頼まれたんだ、僕の名前は「ユージオ」よろしくね」

「協力して欲しいのは助かるけど――、とある人って誰なの? ユージーン将軍とか? 名前似てるし」

「僕の方がその人知らないんだけどな、まぁそのうち顔を出すと思うよ? それに皆知ってる人だし」

 

 アンダーグラウンドではない、けど何故彼がここに、それに彼は――ユージオは……

 アリスは言葉に出すことなく、心の中で必死に考える。

 

「とりあえず、君達だけじゃこの階層のボスは倒せない、というわけで僕が呼ばれたんだよね」

 

 ピクリとアスナの眉間が上がった気がした。

 

「そんなに強いの? ここのボス」

「強さだけはそこまで強くないんだけど、その扉が君達だけじゃ開かないように設定されてるんだ」

「え?」

 

 そういわれて、リズベットが扉を押そうとするが、びくともしない。

 

「あかない、ユージオだっけ? どういうこと?」

「簡単に言うと、パーティにNPCが居ないと開かない仕様」

「クエストフラグって奴? それなら街に戻ってクエストやらないと……」

「待ってリズ、さっきユージオさんは君達だけじゃ倒せないって言ったよね? もしかして君は――」

「そのとおり、僕はNPCだよ。あとユージオって普通に呼び捨てで大丈夫」

 

 その言葉にアリスを除く全員がユージオを見る、その後アリスを見て、全員が納得した。

 

「なによ」

「まぁ私たちはアリスを知ってるからね、最初は驚いたけど別に……」

「だな、ぶっちゃけNPCと俺たちとの違いは全然無いからな」

「というわけで、協力したいんだけどいいかな?」

「わかったわ、よろしくユージオ」

「こちらこそよろしく」

 

 PTメンバーにユージオの名前が確認し、リズベットが再度扉を押すとゆっくと開き始めた。

 

「お、開くようになった!」

「あー、開いちゃった、自動的にボス部屋に転送されるから、覚悟していたほうがいいよ?」

 

 ユージオが言うと、アスナ達8人は、ボス部屋の前から転送させられた。

 

「すいません……」

 

 ボス部屋にたどり着いたアスナ達の聞いた第一声は、リズベッドの謝罪の言葉だった。

 

「まぁ着ちゃった以上、頑張るしかないよね? リーダーさん?」

「ですね、皆敵の動きを注意して観察! ユイちゃんは敵の行動パターンの解析お願い! 皆勝ちましょう!」

 

 各々返事をし、戦闘が開始される。

 敵の名前は死霊の王、どう見てもアンデッド系列のボスだ。

 

「これは苦戦しそうね……」

「そう?」

 

 ユージオは軽い口調でアスナの独り言に答えると、先に一人でボスに向かって突っ込んでいく。

 

「馬鹿! 無茶よ!」

 

 アスナがユージオに対して、叫び声をあげるがその言葉ではユージオは止まらない。

 

「エンハンス・アーマメント 咲け! 青薔薇!!」

 

 ボスに近づいたユージオが、剣を地面に突き立てながら叫ぶと、ボスの足元から薄い氷の蔦が巻き付く。

 アスナ達が息を呑んでいる間に、ボスは完全に氷の蔦に絡めとられ、さらにそのHPもガンガン削られていく。

 

「8割ぐらいまでは僕でも削れるから、後はアスナさんに任せる、このボスのラストアタックボーナスはキリトに必要なはずだ」

「今なんて!? キリト君の事を知ってるの!?」

「ボス攻略が先です、アスナさん言っているうちに8割までHP下がったから後はお願いしますね?」

 

 アスナはユージオが言った台詞が気になったが、ボスが拘束されてるとはいえ、今はボス攻略中だ終わってからいくらでも話をする事は出来る。

 そう決意したアスナは皆に合図をし、一斉攻撃を開始する。

 とはいえ、身動きが取れない敵に対してたこ殴りにするという、SAOやALOにも存在しない本当に簡単な作業であったが。

 最後にアスナがレイピアを凍った死霊の王に付きたて、あっさりとボス攻略が終わった。

 

「さて、色々と聞きたいことがあるんだけどユージオ」

 

 ボスが砕けるエフェクトにまぎれながら、振り向くとそこには消えかかっているユージオの姿があった。

 

「僕も話したかったんだけど、どうにも時間切れみたい、とりあえずそのLAはキリトが欲しいものに違いないから後は――」

 

 言葉を最後まで言わずに、ユージオという少年は姿を消した。

 同時に、ボス攻略の成功のシステムアナウンスがエルダー・テイルの世界を駆け巡った。




とりあえずこの話で、アスナ視点、もといアインクラッド視点はしばらくお休みです。
キリト達がススキノでセララとクライン回収したら、チラ裏解除予定です。
あくまで予定ですが。

んでもって、ススキノで書きたかったことの一つをかけます。
故に早足で内容がないようです。
もともとから無かったんですけどね(白目

あ、ユージオは諸事情によりログ・ホライズンで言うイヅモ騎士団並それ以上の力を持っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話

パルムの深き場所を探索中のシロエ達です。
次にはススキノある程度まですすめたらいいなぁ……




 シロエ達一行は、グリフォンとワイヴァーンを使い、一気にティアストーン山地にある、パルムの深き場所に向かっていた。

 その道中、キリト達はこの世界の食事を食べ、なんともいえない顔になった。

 

「……なんだこの味」

「――私の食べ物だけじゃないのね」

「あはは……」

 

 シロエの乾いた声で、キリトはこれが現在のこの世界の食事と瞬時に判断してしまった。

 にしもて、おふをふやけさせた様な味は……

 

「本当にこのまず飯だけはなんとかなれねーもんかな……何を食べても同じ味! 何を飲んでも同じ味! ありえねーだろ!」

「味覚エンジンが壊れている感じではない――、そういえばアインクラッドがおかしくなった時もお茶が同じ味になっていたような……」

「そういえばそうだったわね、アインクラッドがおかしくなる前までは、味はしてたから、機械の故障とか、私たちがおかしくなったわけじゃないと思う」

「そっちのゲームには、料理システムもあるんですね、ちなみにどんな感じなんですか?」

 

 シロエの質問にキリトとシノンは固まる。

 

「いやぁ、俺はアスナに作ってもらう専門だったから……」

「私はそもそも料理するようなゲームに居なかったし――」

「キリトはそのアスナさんに、依存しすぎではないだろうか?」

「いや、ほらね? 俺は食べる専門というか胃袋を掴まれたというか……」

「なるほど――攻略されてしまったのか」

「キリトが攻略され祭りってわけか!」

 

 そういう風な会話をしつつ、味のしない煎餅のような、ホットドックを食べていると、

 一歩離れた所で話を聞いていたのか、アカツキがちょこちょことシロエに近づいて行った。

 

「主君はやはり、料理が美味しい人の方がいいのか?」

 

 ピクリとシノンの耳とキリトの体が動いた気がした。

 直継は聞こえたのか、聞こえてないのかわからないが、笑っている。

 

「そりゃ、こういう料理だと味気ないし――アカツキさんは毎日こういう料理だと嫌でしょう?」

「――そうだな、やはり美味しい料理の方がいいな」

 

 シノンがあからさまに、残念な顔をしており、キリトも少し残念そうな顔をしていた。

 

「なんだ――、味のする料理の話じゃないのか……」

「そっち! いや、そういえばキリトだったわね」

 

 シノンが驚いた声をキリトにぶつけて、キリトは持っていた食べ物を落としそうになる。

 キリトは頭にはてなマークを浮かべていたが、シノンは呆れた顔で見つめた後、アカツキの元に行った。

 

「なんなんだ一体」

「あれだな、キリトはもう少し女心をわかったほうがいいかもしれないな!」

「……?」

 

「アカツキさん!」

「なんだ?」

「その――、シロエさんは鈍感じゃないですけど……こう回り道をして攻めるのは」

「いや、私は単純に主君が料理上手と料理上手じゃない人がどっちの方が好みか聞いただけだ、ちょっと気になっただけで、他意はないぞ? そもそも私は<<暗殺者>>だからな、サブ職業を変えるつもりはないし、料理は作れないだろう」

「――? アカツキさんってその、シロエさんを狙ってるんじゃないんですか?」

「そのつもりはないぞ、ただ単純に主君のことが気になっただけだ」

 

 シノンは心の中で、それは恋心なのでは? と思ったが口には出さなかった。

 アカツキさんって私より、年下なのかな? 女の子は見た目ではわからないけど……

 

「そうだシノン、私のことはアカツキで」

「了解、アカツキ」

「こちらこそ」

 

 なんというか、言葉足らずなんだよね、アカツキって。

 シノンがアカツキに抱いた感情は、そんな感じであった。

 

「それじゃ、そろそろパルムの深き場所に入ろうと思う、皆準備して」

 

 各々野営していた場所から、荷物をまとめ洞窟の前に立つ。

 キリトはその洞窟を見上げながら、ALOと比べての改めて情報量の差に驚いていた。

 人は五感により辺りの情報を集める。

 すなわち、目で見て、耳で聞いて、肌で触れて、味を確かめ、匂いを確かめる。

 ALOでは、その五感をネット空間にダイブさせ、擬似的に触ってるような感じを脳に認識させてた。

 現実世界の俺は一歩も動いてないが、仮想世界の俺は、飛び跳ねて敵と戦っていると言った感じだ。

 しかし、いくら優れた機械といっても、五感全てを再現するのは難しいものがある。

 仮想空間に慣れ始めてからは、その違和感が完全に消えるのだが、現実世界のものと比べると感触がなんとなく違うと言った感じは良くある。

 一番わかりやすい例がお風呂だろう。

 SAOではお風呂が存在したが、ナーヴギアでも水の表現は限界があるらしく、肌等に違和感を感じた。

 無論数回も入っているうちにその違和感は、無くなったのだが――。

 つまるところ、VRMMOでは絶対的に再現できない物が多数存在するはずなのだが――。

 この世界では、それが少ない気がする、地面を踏んだ感触、木々の匂い、細部にいたって違和感を感じることが出来ない。

 逆にメニュー画面や、HPバーが見えるのが違和感に感じるぐらいの情報量だ。

 

「キリト? どうしたの、行こうキリトの知り合いも待ってるんだろ?」

「あ、あぁそうだなシロエ、行こうか」

 

 とりあえずその思考はおいて置こう、クラインを救出して、クリスハイトにも一度相談してみなければ――。

 洞窟を進んでいると、独特の目線を感じ、剣を構える。

 

「敵か――?」

「<鼠人間>だ。 こちらから仕掛けなければ攻撃してこないよ、僕達はレベル90相手はレベル40ぐらいだからね」

「バッドステータス、疫病をばら撒く面倒なモンスターだぜ、キリト、シノン二人共渡した対病毒ポーションは飲んでるか?」

「あぁ、飲んでるよ」

「同じく」

「とはいえ――、完全に防ぐわけじゃないし、出来れば戦闘は避けたいよね」

 

 シロエはそういうと、進行方向とは別のルートを歩き始めた、シロエ達の説明によると、バッドステータス疫病は、HPの回復を妨げ、持続的にダメージを与ええるらしい、気分も悪くなるだろうし出来るだけ俺自身避けたい。

 周辺警戒をしながら地図を持っているシロエについていくと、進む方向に小さな子部屋が見えてきた。

 子部屋の中に入ると、天井に大量の赤眼の<鼠人間>がおり、その下に通路が広がっている。

 

「強行突破するか?」

「――いや、やめておこう疫病は怖いし、さっきも言ったけど出来れば戦闘は避けたい」

「倒せないか?」

 

 キリトが剣を構えながら言うと、シロエは小さく首を振った。

 

「倒せないことはないけど、バッドステータスを被りたくないし、僕達のパーティーには何より回復職が居ないから……」

「あぁ、そういえばそうか」

「とりあえず、一度戻ってもう一回違うルートで行こう、この先に少し休憩できるポイントがあるはずだから、一度そこで休憩して行こうか」

「わかった」

 

 その場所に着いたのか、直継は何も言わずに焚き火の準備をし、傍に腰を下ろした。

 シロエはその明かりを頼りに地図を見ているようだ。

 

「僕はマリ姐についでに提示連絡してくるよ、アカツキは――」

「偵察してくる」

「お願いします、出来ればこのフロアと、その先に通路があるか確認して欲しいんだけど」

「心得た」

 

 そういうとアカツキは、音も無く消えた。

 キリトとシノンはどうしていいかわからず、顔を見合わせていると。

 

「お二人さんこっちで、軽食取ろうぜ食べる時に食べとかないと――まず飯だけどな……」

「あはははは……」

 

 力なく笑いながら、用意されたピザを食べる――、ふやけたお煎餅の味がした。

 3食これは……中々辛いものがある。

 そしてこの食事は食べれないものではないというのが、また悔しいところだ。

 

「料理人が調理してもこの味だったしなぁ……」

「料理人?」

「あぁサブ職業の一つだな、これを持っていると料理が出来るようになる、けど料理人が調理しても同じ味だったんだよなぁ……」

 

 もそもそと直継いわくマズ飯を頬張る。

 こういう味の食事を食べていると、アスナが作ってくれた食事が恋しくなる。

 

「ただいま戻ったぞ主君、この先のフロアは――」

「おかえりアカツキ、ありがとう……うん基本的な構造は変わってないみたいだね」

「直継サブ職業って?」

「ん、あぁそうかキリト達は知らないのかえーっとな……」

「僕の場合は筆写師、こういう地図とかを作成する事ができるのが主な特徴かな?」

「俺の場合は辺境巡視だな! 簡単に言うと今このゾーンに誰が居るのかって言うのを見ることができる」

「私の場合は追跡者だな、隠密行動に必要なスキルを会得することができる」

「へー、職業は12で、サブ職業は沢山あるんだな」

「そうだね、サブ職業は無限にあるといわれてるから――、そういえばキリトとシノンのサブ職業って何になってるの?」

「そういえば――、前にステータス画面で見たことがあるような……あった「スプリガン」だ」

「私は、「ケットシー」だね」

 

 その言葉を聞いて直継は頭を捻る。

 シロエも同じように考え込んでいた。

 

「聞いたことあるか? シロ」

「いやないね、キリト達は聞いたことある名称なのか?」

「あぁうん、スプリガンとケットシーっていうのは俺達のゲームの種族だな」

「ALOでは火妖精族(サラマンダー)、水妖精族(ウンディーネ)、風妖精族(シルフ)、土妖精族(ノーム)、闇妖精族(インプ)、影妖精族(スプリガン)、猫妖精族(ケットシー)、工匠妖精族(レプラコーン)、音楽妖精族(プーカ)、9つの種族に分かれているうちの二つだね」

「ここでの、ハーフアルヴとかと一緒の扱い? いやそれならサブ職業にはならないか」

 

 キリトがシロエの言葉にはてなマークを浮かべていると、シロエが慌てて、続けてといってきた。

 

「俺の場合はスプリガンだな、ここでのメニューを見る限り、ダンジョン探索とかそういうのに強い魔法だけ使えるみたいだ、例えば……オース・ナウザン・ノート・ライサ・アウラ!」

 

 キリトの周りに英語の文字が舞った後、光が各々の体に吸い込まれていった。

 が見た目はどうにも変わった様子は無い。

 

「それで?」

「焚き火を消して暗闇を見てみたらわかるよ」

 

 その言葉に直継は焚き火を消す。

 

「おぉ! 暗視時でも見えるようになるのか!」

「俺達の世界でスプリガンが得意な魔法だけは、ここでも使えるようになるのが俺達の種族のサブ職業らしい、俺達のゲームではどの職業もやろうと思えばどんな魔法も唱えられたからな――」

「という事は、戦士職でも魔法が唱えられるのか」

「いや、それは違うぞシロエ、さっきも見たと思うが詠唱するには意味を理解して、きちんと発音しないと魔法は発動しない、戦いながら前衛で魔法を唱えるのは不可能かな? それに詠唱する時は手か杖を魔法を唱える方向に突き出して詠唱しないと多分発動しないと思う」

「中々面倒な制約がありそうだね。 キリトの言い方を考えると、魔法の詠唱は暗記式?」

「YES」

「うわぁ……僕には無理そうだね」

 

 シロエは苦笑いを言いながら、再度焚き火を開始させた。

 

「シノンの魔法は? えっとケットシーだっけ」

「私は魔法を全然覚えてないからわからないけど――」

 

 小さくスペルを詠唱し、弓を構えて何かを狙い、矢を打つ。

 タンという小さな音が響いた後、シノンは矢から伸びた糸を引っ張った。

 

「っと、これが私の使える魔法」

 

 少し重そうに引っ張ってきたのは、少し大きめの宝箱であった。

 

「何引き寄せてるんだよシノン!」 

「え? えーっとあれか、お正月にコタツに入りながらボタンを押せるって奴か!」

「どちらかというと、矢を無駄に消費させないような魔法だと思うけど……?」

 

 シロエがキリトに同意を認めるように言うと、キリトは小さく頷いた。

 

「本来近くのものを引き寄せる用途が本来の扱い方だからな、こういう使い方は間違ってるが――、せっかく手に入れた宝物だ開けようぜ!」

 

 いそいそとキリトが宝箱を開けるのを、他のメンバーが後ろから見つめる。

 キリトが宝箱を開けると……

 

 『対病毒ポーション』が数個宝箱に入っていた。

 

「お約束といえば、お約束か」

「だね、使えないこともないしありがたく保存しておこうね?」

「なんというか理不尽だな」

 

 そんな会話をした後、荷物をまとめてダンジョンを進む準備をする。

 

「そういえば筆写師といっても、地図書くのが急に上手くなるわけじゃないだろ? 何かリアルでやっていたのか?」

 

 キリトがチラリとシロエが持っている地図をさっき見たが、見事な完成度だった。

 

「あぁうん、大学でCADを使ってたから――、あCADってわかる?」

「確か、パソコンでやる製図のことだったか? 俺は触ったことないが」

「主君は大学生なのか、では私と年齢は同じなんだな」

 

 ピタッと歩み続けていた足が、アカツキ以外止まる。

 

「え、アカツキって大学生だったの!?」

「冗談だろ!? どう考えてもおこちゃま、グフッ」

 

 壁に叩きつけられた直継の姿を見て、キリトは言葉を飲み込んだ。

 

「――主君、主君も私のことを子供だと思っていたのか?」

「いやまぁ、別に子供っていうか――、困るなぁ」

「背が低いのを羨ましい人も居るから、アカツキ気にしすぎとは思うけど、私はアカツキぐらいの背丈の人嫌いじゃないよ?」

 

 シノンがそうサポートしてくれ、シロエはため息を出した。

 ナイスサポートシノン! けどシロエこの借りは多分シノンに使われ始める第一歩だぞ!

 とキリトは言いたかったが、シノンに何を言われるかわかったものではないので保留にしておいた。

 

「長かったけど、ようやく外だ」

 

 大きなトラブルも無く、ようやくダンジョンの外に通じる穴を見つけ、外に出る。

 

「すげぇ」

「うん」

 

 キリトとシノンはそんな感想しか、声に出すことはできなかった。

 地平線から昇り始める太陽を見つめながら、小さく感想を漏らす。

 

「風が冷たいっ」

「やっと抜けたな、難所越え祭りだぜ!」

 

 シロエ達がそんな感想をあげてるときに、キリトはこの世界について認識を改めた。

 この世界は――、VRMMOに近い異世界の認識の方が今後過ごしていくのに、いいのかも知れない。

 いや、違うなアンダーグラウンドはもう一つの世界という認識があった。

 茅場が言っていた言葉ある。

『キリト君、私はこうも思うのだよ、あの鉄の城はもしかしたらどこか別の世界にあるかもしれないと』

 その時に俺は、そうだといいなと答えた。

 そんな世界は無いとわかっていても、そんな世界があれば嬉しいなという言葉だったのかもしれない。

 しかし――、この世界にはVRMMOではなく、もしかしたら本当にアインクラッドがあるのかもしれない、そう少し考えてしまった。

 

「僕達が、この異世界でこの風景を見た――、最初の<<冒険者>>だ」

 

 異世界、シロエが言ったこの言葉が、ストンと自分の胸に落ちる気がした。

 あのアインクラッドはもしかしたら、この世界に昔から存在して物で、何らかの原因で茅場が再現したかもしれないと。

 そんな事はありえないのに、そんな風に考えてしまう自分が居た。

 真実はわからない、何故この世界に俺たちが来てしまったのかも。

 

「そうだな、こんな景色は<エルダー・テイル>の時だって見た事がねぇ」

「私たちの始めての戦利品」

「今度は……」

「キリト?」

「次はアインクラッドに居る皆で来よう、俺が始めてこの世界が異世界を思った景色を皆に見せてたい」

「いつか、実現できるといいねキリト」

 

 何秒、何分その光景を見つけたかわからないが、シロエがまず鞄から笛を取り出し、高らかに笛を鳴らした。

 それにあわせて、直継とキリトも笛をならし、各々召喚したモンスターたちに飛び乗る。

 

「目指すはススキノ! 待っていろよクライン!」

 

 シロエ達は、一同ススキノを目指す。

 

 

 

 

 その頃

 

「レイネシアよ、前に聞こえた声の話だが――、どうにも大きな城が海の上に落下したようなのだ、民から空飛ぶ城が落ちてきたという話を聞いてな」

「城が……ですか? 最近の冒険者のこともそうですが、問題が多発しておりますね……」

「そうだな――。 いやだがそれだけではないぞ、どうにもその城には<<冒険者>>は居ないらしいのだ」

 

 レイネシアは少し首をかしげる、そんなところから落ちて無事なのは<<冒険者>>しか記憶に無い。

 

「その噂の城に居る人々は、背中に羽を持つ、妖精族という種族らしい」

「すると、可愛い外見の方ばかりなのでしょうか?」

「いや、そうではないらしい、<<冒険者>>と同じぐらいの力を持ち、冒険者と同じように死しても復活することができるらしいのだ」

 

 そこまで話を聞いて、レイネシアは疑問が沸いてきた。

 

「おじい様、どうしてそこまで知っておられるのです?」

「どうにもその城からやってきたという人物に接触できてな、こっちに来てくれるか「キリト」殿」

 

 そう声をかけると、扉を開き、一人の黒ずくめの少年がこちらに向かって歩いてきた。

 

「お初にお眼にかかりますレイネシア姫、始めまして「キリト」と申します。 そして改めてセルジアット公爵には、私のような者のいう事を聞いていただき、ありがとうございます」

 

 物語は、少しずつ動き出す。 




あ、一応補足です。
最後の登場人物はSAOWEB版の登場人物です。
設定とか面白そうなのでそのまま引っ張ってきました。

シリアスが行方不明なので誰か捕まえてくれると嬉しいです。

では亀更新なのはお察し。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第八話

ススキノ脱出まで。
早くオリジナル書きたいビクンビクン

一時的に全体に公開し始めます。
そのうちチラ裏に戻りますのであしからず。

インフルB型→A型という異種コンボを食らって数日ノックダウンでした。
先日父親が新型にかかって苦しんでいます。
3コンボくるー? きっとくるー?


「セララさん、ただいまもどりましたにゃ」

「ふぃー、流石に街の様子がこうなると、ちょっと寂しいな」

「おかえりなさい、にゃん太さん、クラインさん」

 

 にゃん太は、手に持った荷物を机に下ろす。

 クラインはよろいを解除し、過ごしたい軽装に着替えていた。

 

「街は、そのどうでした?」

 

 その言葉に、にゃん太は少し考えたのか、間を空けて答える。

 

「よくも無く、悪くも無くと言った所かにゃ」

「いやいや、あの街の様子は――、っとそうだな、良くは無いな」

 

 クラインはにゃん太の言葉を否定しようとするが、にゃん太の視線で何故伏せたかわかったので、言葉を濁した。

 

「とりあえず、お茶にでもしませんかにゃ?」

 

 にゃん太はそう言いながら、今回の外出で手に入れたアイテムを使い、アップルティを作り始めた。

 その匂いにつられて、セララとクラインは席に座る。

 

「うん、美味しいな、さすがにゃん太だ」

「はいー、美味しいです」

「そう褒めないで欲しいですにゃ」

 

 しかしと――クラインは考える。

 現在キリトがこの世界の信じれる人たちと、俺を助けるために此方に向かっているらしいが、

 この街の現状を見たときに、アイツはこの街を放置し、出る事はできるのだろうか?

 にゃん太の話によると、大地人と呼ばれる人間は元々NPCだからと言う話だが……

 人身売買していい訳ではない。

 平たく言えば、「ユイ」や「アリス」を人身売買したり、痛めつけたり、無理やり従わしている事になる。

 そりゃぁ、俺もソードアート・オンラインの時は、自分が生き残るためにNPCを囮にって多少は考えた事あるが、やろうとは思わなかった。

 そういや、アスナがそれをボス攻略会議で提案した時、反発したのはキリトだっけか。

 にゃん太の話を聞いていて、わかった事がある。

 この世界の<<冒険者>>はNPCに対して、機械や、人間じゃないと思っている節がある。

 それは、人身売買とか、痛めつけたりだけではなく、もっと根本が違うって言うか……なんていうのか――

 VRMMOでの、NPCに話すって言うのは――こぅなんつーか、「一緒」なんだって言う認識がないんだよな多分。

 上手く言葉にできなくて、ため息を吐く。

 

「どうかしたのかにゃ?」

「いやなんでもねーよ、やっぱり俺はバカなんだなぁと認識してたところだ」

「? そういえばお二人を迎えに来ている救出班は順調ですかにゃ?」

「もう直ぐススキノに入るって連絡がありました」

「そうですかにゃ……ずいぶん早い遠征ですにゃ」

 

 目を細めながらにゃん太は、何かを考えているようだった。

 まぁ、俺っちはキリトが何かしたいなら、それを手伝うだけだ! この街を助けたいって言うなら手助けするし、逃げるって言うならそのまま逃げるし。

 ただ――、できれば俺っちは、どうにかしたいなこの街を。

 

 

 

「雪もそうだけど、目に見えて倒壊している家屋が増えたな」

 

 キリトが雪道を歩きながら、倒壊した家を見ながら言う。

 シノンもそれに小さく頷いて同意する。

 

「この辺は、NPCの家があったんだけど、どうやら全部壊されたみたいだね」

「壊されたって……住んでいた人は?」

「さぁ――、居ないってことは消えたのか、違うところに移動させられたのか」

「移動させられたって……」

「エルダー・テイルがまだゲームだった頃は、NPCは雇えたんだよ」

「それで、自分の好きな場所に設置する事ができると?」

「基本的には、個人のゾーン……自分の家の掃除とかだね」

 

 それは、人身売買ではないだろうか?

 いや――どちらかと言えば、家政婦とか、アルバイトとか言うほうが認識としては正しいのだろうか。

 

「とりあえず、作戦会議だ」

 

 壊れた家の近くで、簡易キャンプをはり、焚き火を囲んで座る。

 

「とりえず、地図はこんな感じで、メインストリートが中心にある街で……僕達は西側から侵入する、話によるとクラインさんと、セララさんは親切な人と一緒に居るらしいので、その親切な人と一緒に合流する予定です」

 

 地図の場所を指差して説明するシロエに、キリトが手を上げる。

 

「外で落ち合うって言うのは無しなのか?」

「それは愚作だぜ、女垂らし」

「俺は、垂らしじゃないよ……」

「あはは…、でも直継の言うとおりなんだ、セララさんとクラインさんは、ススキノで復活するけど、僕達はアキバの街で復活してしまう、一度ススキノに入って、ススキノで復活できるようにしないと」

「万が一の事を考えてか――」

 

 自身が死ぬとは、毛頭考えてなかったが――、何があるかわからないからな。

 壊れた家屋を眺めながらキリトはそう思った。

 

「それで、各々の役割なんだけど、アカツキ……は最初から気配をけして付いてきて欲しいんですが、お願いでき」

「敬語禁止」

 

 その台詞を聞いた、他の3人は声が出ないように笑っている。

 そんな3人の様子を知っているのか、知らないのか、アカツキはシロエを下から見上げるように見つめている。

 

「うー、あー、アカツキは最初から気配を消して付いてきて、街中に入ることを忘れないように、何かあったら随時念話で」

「心得た」

「それで、直継は建物の入り口を守って欲しい、悪意が無い人も近づけないようにして欲しい」

「わかったぜ」

「シノンは僕と一緒にセララさんと、クラインさんを迎えに行って欲しい」

「わかったわ」

「それで、キリトは直継と一緒に行動をお願いしたい」

「了解、シノンクラインの事頼んだ」

「とりあえず基本はこれで、直継に連絡を基本的にするから、直継はキリトに情報を提供して欲しい」

「了解だぜ。 それじゃ脱出作戦決行祭りだぜ!」

 

 

 ススキノに入ってキリトが思った感想は、アキバの街より酷いと言う事だった。

 町全体が暗く、なんというか本当にここは街なのか? と疑問に思うほど酷く感じた。

 

 ガッシャーン!

 

 物が崩れる音が、メインストリートに響き、一同はその方向を見る。

 

「ちっ、素材アイテムこんだけしかねーのかよしけてやがる……なっ!」

「大地人の癖に、俺達から金取るつもりかよっ!」

 

 言葉とともに、冒険者が商人と思わしき人間を蹴っていた。

 

「っ!」

 

 キリトは背中の剣を抜き、切り込もうとするが、直継にとめられる。

 

「落ち着け」

「だけどっ!」

「街中では戦闘行為禁止だ、やったところで衛兵に殺される」

「……」

「それに、今街中で目立つわけにはいかないんだ、キリト」

 

 シロエに優しい声色でそうなだめられ、剣を鞘に戻す。

 

「ごめん、キリトでもセララさんと、クラインさんを助けるためには――」

「わかってる、行こう」

 

 シロエの言葉に、今は了承し待ち合わせのビルに向かおうとする。

 何もできないキリトだったが、商人と思われる大地人に頭を下げる。

 すると、大地人の商人の娘だろうか、こちらに向かって少し笑みを浮かべているように見えた。

 キリトの中に生まれる、葛藤を必死に押し殺しながら、シロエ達の後に続いた。

 

「それじゃ、直継と、キリトはここで待機、また後で念話で連絡する、それじゃシノン行こうか」

「わかったわ。キリト、クラインのことは任せて」

「頼んだ、シノン」

 

 シロエとシノンがビルの内部に入る様子を見ながら、ビルの入り口の階段のような所に、直継と一緒に腰を下ろす。

 

「さっきは、そのすまなかったな、キリト止めて」

「いや、俺のほうがすまなかった。 止めてなかったら今頃神殿に送られてるよ」

 

 しかし、目を瞑るとあの商人の女の子の笑顔が目に焼きついている。

 助けれる術はなかったのだろうか? と考え込んでしまう。

 

「なぁ、直継」

「なんだ?」

「直継にとってNPCってなんだ?」

「なんだ? って言われてもな……システム? としか考えてなかったな」

「俺達と同じ容姿をしているのに?」

 

 いやこんな事を聞きたいわけじゃない、直継を攻めたいわけではない。

 しかし直継は別にその攻めるような俺の口調に動じるわけも無く、普通に答えてくれた。

 

「キリトが言いたい事は、なんとなーくわかるんだがな、俺達からすればNPCはこう、システムっという認識しかないんだよな、例えばアイテムを売買できる、銀行にお金を預けて管理してくれる、クエストを発注してくれる、話しかけたら同じことを繰り返す」

 

 直継はそこで一度言葉を切り、水筒の水を飲む。

 

「何を話しかけても、同じ答え、よくある据え置きゲーで最初の町で、「装備アイテムは装備しないと効力を発揮されない」って繰り返すNPCそういう認識なんだよ」

「だからと言って!」

「そう、だからと言って、そのNPCを傷つけていい理由にはならない。 けどさ、現実世界ではできなかった事がここじゃ、色々できるんだ、そしてそれに対して罪が発生しない、そんでもって<<冒険者>>は何をしていいかわからなく、ストレスを貯めていってる。 ならNPCに八つ当たりする連中が出てきてもおかしくはないだろ? その行為が正しいか正しくないかは別としてな」

 

 直継のいっていることも理解できる、できるのだが、それで納得しろとか、だからNPCが苛められているのを目を瞑っておけと言う話にはならない。

 

「まぁ、そんな難しく考えるなよキリト」

 

 直継の口調が明るくというか、軽くなった。

 

「キリト達の世界のNPCと、今俺達のNPCって多分近いと思う。 というかこうやって等身大として見れるようになった、という認識をしている連中はまだ多くないだろう、そもそも触って実際に話せるNPCなんて、エルダー・テイル……いや、俺達の世界じゃ本来ありえない事なんだよ。 キリト達の世界のNPCはなんていうかVRMMO用に作ったNPCなのだろう? 俺達のNPCの感覚と少し違うんだよ」

「……そうかも、しれないな」

「後あれだ、参謀が何とかしてくれる、シロエを信じろ」

 

 そう言って直継は、笑顔を此方に向けてきた。

 言葉の内容自体に安心感は無かったが、その笑顔は本当にシロエを信頼していると言うのは感じた。

 一度シロエに相談するのもいいかもしれないな。

 

「っと、シロエから連絡だ」

 

 そういうと直継は立ち上がり、念話で何か連絡を取り合っているらしい。

 

「よし来た、了解」

「キリト、シロエは無事セララとクラインと合流できたらしい、裏口から脱出するってさ俺達は先回りして、出口付近の森の中に待機だ」

「わかった、そうかクライン無事だったか――」

 

 とりあえずは、一安心だ。

 ススキノに来たおかげというか、なんというかそのせいで助けないといけない人たちは一気に増えたけどな。

 

 森の中で隠れて待機していると、数十人の団体がシロエより早く出てきた。

 隠蔽スキルは保有していないが、このゲームには探索スキル持ちは殆ど居ないのだろう、恐らく気づかれる事は無い。

 そうして隠れながら待機し、数分経過したのだろうか、街のほうから、シロエ達がやってきた。

 クラインの姿を発見し、安堵する。

 さて問題はここからだ、直継からには隠れながら、簡単に作戦の説明を受けていた。

 

「班長とデミクァスと戦わせて、多分班長が有利になるだろ。 それで慌てた敵が全戦力投入してくるから、魔法使い達は最初はヒールに忙しいから放置、後ちみっことシノンに任せる、俺達は前衛の対処だな、俺がヘイト稼ぐからキリトはあぶれた奴の遊撃を頼む」

 

 というわけらしい、シロエとは打ち合わせをした様子がなかったのだが、とは思っていたのだが猫人と敵の格闘家、デミクァスとの戦闘が始まったので、直継から聞かされた作戦は、概ね当たっているのだろう。

 今のうちに、町の人たちを脱出できないかと考えたが、NPCの数は数百人それ以上かもしれない、その人数を一気に移動し別の都市に連れて行くのは不可能だ。

 そもそも俺には土地勘が無い。

 

「行くぞ、キリト!」

 

 直継の声がかかり、考えていた思考をとめて、森から飛び出す。

 

「アンカー・ハウル!!」

 

 直継の技が発動し、敵の前衛たちが直継を無視できなくなる。

 見る限り敵の前衛職の連中は、全て直継のアンカー・ハウルの射程に入っていたらしく、直継に攻撃を仕掛けていた。

 俺は、その中でも攻撃力が高そうな奴から攻撃を仕掛ける。

 タゲをとっているタンクのためにも、早めに倒さなければ――。

 

「まずはっ!」

 

 刀を装備した男に、まずは攻撃を仕掛ける。

 最初の一撃は、直継のほうを見ていたせいか、綺麗にクリーンヒットしHPバーを減少させる。

 

「てめぇ!」

 

 無論そうなると、ヘイトの値が変更され、俺にも敵が俺にも攻撃できるようになるのだが、仕方が無い。

 敵の攻撃のモーションを読み取ろうとする。

 ソードスキルとは違い、此方の世界のスキルは、 決まった型が存在してなく、自分の都合に合わせて自分のスキルを出す事ができるという利点がある。

 逆にソードスキルはシステムアシストが立ち上がるのを待たないといけないので、構えのモーションが必要になる。

 つまり、敵が上段に構えてるからといって、あのスキルを使ってくると決まっていないのだ。

 ソードスキルの場合は、上段、中段、下段、独特の構え等から次に来るスキルが予想できる、がここでそれは通用しない。

 敵が刀を振り上げて攻撃しようとしてくるのを、俺はステップで回避する。

 

「かわされたっ!?」

 

 敵の驚愕の目を見ながら、ステップで回避しつつ、ソードスキル発動の構えに持っていく。

 あの程度の刀のスピードならば、スグの剣道のスピードよりは遅いっ!

 

「はぁっ!」

 

 片手剣三連撃ソードスキル「シャープネイル」技後硬直が少なく、すぐに次の行動に移れる優秀なソードスキルである。

 このゲームのソードスキルの立ち居地は、スキルよりは使いづらく、しかし威力が従来の職業よりはあると言った特徴がある。

 理由としては、属性ダメージが発生するのである。

 物理属性5割、炎属性5割と言った風なダメージを敵に与える事が出る。

 敵がガチガチの物理特化装備ならなおさらその効果を、期待する事ができる。

 

「俺のHPがっ! くっ下がる!」

 

 幾度か攻防を繰り返し、敵が一人下がる。

 下がる途中で、後ろからの弓に射抜かれて神殿送りにされていたが。

 戦闘訓練慣れしてなかったのか、それともVRMMOに慣れてない相手だったせいか、此方のダメージは少ない。

 直継の様子を確認するが、HPが一気に下がっており、半分以下に達していた。

 

「なお」

「シロエ!」

 

 直継名前を言おうとすると、直継がシロエの名前を叫び、俺の言葉を防いだ。

 その言葉にシロエは頷き、この戦闘に入って、初めて杖を取り出した。

 

「<キャッスル・オブ・ストーン!>」

 

 直継がそう叫ぶと、直継全身が輝き、敵の攻撃を受け付けなくなる。

 同時に体が緑色に包まれ、HPバーが少しずつ回復していく。

 恐らくシロエの傍らに居る少女の仕業だろう。

 直継にまとわり付く、戦士職の一人にもう一度攻撃を開始する。

 

「<ソーンバインド・ホステージ>」

 

 シロエがそう叫び、敵の攻撃をあしらってから、シロエ達を見ると、デミクァスのHPがドットまで減っていた。

 何が起きたっ!?

 いやシロエ達は何をしたんだ!

 

「ヒ、ヒーラーデミクァスに回復……」

 

 灰色のローブを着た青年が、慌てた口調で叫ぶのを聞いて、慌ててキリトは魔法職達に攻撃を仕掛けようとする。

 この状態で回復されたら面倒この上ない。

 しかし、魔法使い達のポリゴンが弾ける。

 その魔法使い達のポリゴンが弾けた後、その場所に立っていたのはアカツキだった。

 

「あれが、<暗殺者>の力……」

 

 感心しつつ、アカツキを見ていると、目の前を弓矢が通り過ぎる。

 思わずその矢の行き先を見ると、戦士風の男が俺に向かって走ってきていたのだ。

 その戦士風の男はマヒ状態になったのか、地面に転がって痙攣しているが……

 大丈夫なのかアレ。

 ちなみにシノンはドヤ顔ではないが、仕事を終えて、満足そうな顔をしている。

 

 そうこうしているうちに、指揮官を失いさらには魔法職を失った戦士職達の攻撃の手が緩んでくる。

 プレイヤー達はこれからどうする? どうしたらいい? と困惑の表情を浮かべている。

 やる事が無く、何をしてもいいわからず、ただ言われるまま略奪や、人を痛めつけるといった行動をしていたとそういう人間を見ると、嫌な気分に陥った。

 

「この場は、僕らの勝利です。 ――残りの首は預けて置きましょう」

 

 そういいつつ、シロエは倒れているデミクァスの首を取り出した短剣で斬った。

 シロエは一瞬、嫌そうな顔をしたが、それを行った。

 やったところで復活地点で復活するだけかもしれないが、それでも人の首を斬るのはやりたくない事だろう。

 そしてその行動をとったおかげか、周りの連中もどうしていいかわからず、顔を見合わせている。

 直継が懐から、グリフォンを呼ぶ笛を取り出して鳴らしているのを見て、俺も慌ててワイヴァーンを呼び出す。

 お互いが動けず、場がしばらく硬直していたが。

 その空気を破ったのは、シロエ達が呼んだグリフォン達だ。

 

「シノン!」

 

 俺はワイヴァーンに乗りながら、シノンに手を伸ばす。

 クラインとも話をしたかったが、クラインは直継のグリフォンに乗ったようだ。

 とりあえず今は脱出が最優先だ、デミクァスを初めとするほかのメンバーもいつ復活するかわからない。

 町を上空から見る。

 別に探したつもりではなかったのだが、女の子のNPCが居るところを見てしまった。

 その女の子が俺達の騎乗ペットに向かって、手を伸ばしているように見えた。

 

「キリト」

「わかってる、今は脱出が最優先だ、けど絶対に助けに来る」

 

 キリトはそう胸に決意を抱き、ワイヴァーンを羽ばたかせた。

 数ヵ月後、ギルド 〈黒剣騎士団〉とともに、救出作戦にキリト達が参加するのはまた別のお話である。




静かに仕事をこなしていくシノンさんマジパネェッス。
ちなみに麻痺属性の攻撃は、パラライジングブロウというエルダー・テイル側の技です。

クラインのモノローグがクラインに見えない件、私の限界_(:3」∠)_
直継のススキノに行ったときのNPCについての考えがわからなかったので、私の中での脳内設定。
不快な方はすいません。

どうでもいいけど、クラインが空気過ぎてやばい。
まぁどうでもいいか……
ススキの帰還の時に、ログホラメンバーと一緒にソードアート・オンラン側の詳しい説明の予定。

「俺が二本目の剣を抜いたとき――立っていられるヤツは、居ない」(キリット

のお話をしていく予定です。あくまで簡潔的にネタバレにならないようにですが。

んでもって書きたかったNPC視点のお話の補填。
この作品で私が書きたかった一つ目「NPCについて」です。

ログ・ホラのNPCの目線は今の私達に近いと思います、プレイヤーがいないシステム的存在。
しかし、ソードアート・オンライン側のNPCの目線は一人の人間、システムなんだけどシステムじゃない存在そんな目線、その辺を書きたいなと思って、書き始めたのがこの作品を書き始めた理由の一つです。
堅苦しいスキップでも問題ないと思われ。

それでは、皆さんもインフル気をつけてください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第九話

いや、本当に時間がかかって申し訳ないです。
そして多分この話が一番脳内補完頑張ってもらわないといけない話になると思います。
そして予約投稿。


「うめぇ!」

 

 猫の人が作り上げた料理に、感激しながら食べる。

 食べ続ける。

 シノンも味気ない料理に、流石に嫌気をさしていたのか、鹿肉を美味しく頂いていた。

 

 

 ススキノを脱出し、それぞれの騎乗ペットで南下しキャンプをはった。

 しかしながら――、ソードアートオンラインでもALOでもそうだったが、アイテムをクリックをし使用だけでキャンプなり、寝袋なりすぐに作り上げられていたのだが、ここでは一から作らなければならないのは非常に面倒であった。

 最初の頃は、シロエや直継達に作ってもらってばかりだったが、流石に回数をこなしているとその作業にも慣れてきた。

 この世界が、VRMMOにとっておかしい点がにゃんた班長が教えてくれた。

 それは、自身の手で作るという点である。

 例えば料理であれば、SAO、ALOでは見てる限りでは簡単に作成できていた。

 いちいち、煮込む時間が長いほうがシチューが美味しくなるとか、数時間に込まないと料理ができないといった制限はなかった。

 この世界では、卵焼きを作るのには鶏から卵を取り、火をおこし、割って、焼かなければならない。

 そういう事を理解する事ができた。

 ちなみに、これらの事は全てアスナには連絡済である。

 

 

「いやー本当にシロエと直継とアカツキさんには、感謝しきれないっす。マジ感謝!」

 

 そう言いながら頭を下げるクライン。

 合流した後、ススキノで何かあったのかと聞くと、基本的にずっとにゃん太班長の個人ホームで引きこもっていたらしい。

 なにはともあれ、無事でよかった。

 

「しかし、料理人が現実世界で料理を作るように料理を作れば、キャンプセットをキチンと組み立てれば、ちゃんと使えるのか」

 

 串に刺さった鹿肉をほおばりながらつぶやく。

 割と簡単に見てたけど、冷静に考えたら非常に大事な事なんじゃないか?

 

 にゃん太がセララの自己紹介を促すと、セララが簡単に自己紹介をし、シロエや直継、アカツキと言った面々が挨拶をしていく。

 俺とシノン、クラインの自己紹介が終わり、ふとした疑問が出てきた。

 

「ちょこちょこ、話に出てくる〈放蕩者の茶会〉《デボーチェリ・ティーパーティー》ってなんだ?」

「主君と老師が所属していた、伝説のギルドのお話だ」

 

 アカツキが話してくれたのを聞きながら、納得する。 

 なるほど色々何かした、ゲーム内で有名なギルドなのか。

 

「いやちみっこ、俺もだからね! 俺もティーパーティーの一員だから! それにあれはギルドじゃねーよ、パーティーだ。 なんていうか居心地がいい場所っていうか、まぁそん感じだよな班長!」

「そうですにゃ、あそこの居心地は最高でしたにゃ」

「なぁキリト、俺達みたいだな」

 

 クラインがそう呟くのに頷く。

 俺達は別段ギルドに所属しているわけではない、けどいつも冒険や何かをする時はパーティーを作って行っている。

 一度ギルドの話は出たのだが、いつの間にか無くなっていたな。

 目を瞑ると、アスナが、ユイが皆がすぐ傍に居るような気がする。

 俺を救ってくれた皆が。

 

「シロエ、皆丁度いい機会だ、話そう俺達の『歴史と世界に』について」

 

 パチパチと焚き火が音を立てるのを聞きながら、俺は話し始めた。

 

「この世界での年数ではどうなのかわからないが、俺達の世界で始めてVRMMOが発売される事になった、そのゲームのタイトルが「ソードアート・オンライン」と言う。 ゲーム開始の時の人数はソフトが約1万本発売されて、プレイヤーは大体1万人ぐらいだったと思う」

「約? 1万人ならプレイヤーは1万人ぐらいじゃないのか? 大体そんなゲーム発売した時に買う連中は廃人が多いだろ」

「ゲームしたくて買ったけど、プレイできない連中と、βテスターは除いてる」

「ちなみに、キリトは全世界で千人しか選ばれなかった、βテスターの中の1人なんだな!」

 

 クラインがまるで自分の自慢のように話す。

 

「そういえばにゃ。 我輩もβテスターだったにゃ。 もう20年も前のお話だからすっかり忘れてたにゃ」

「そんなに、このエルダー・テイルは続けられていたのか――」

 

 20年前からエルダー・テイルは続けられていたのか。

 いやちょっとまて、にゃん太班長ってリアルじゃいくつなんだろう。

 ちらりと班長の顔を見る。

 

「どうかしたかにゃ?」

「いや、なんでもないです。 えーっと話を戻すな、そこで一つの事件が起こった。 俺達プレイヤー達はゲームの中に捕えられ、ゲームで死ねば現実世界で死ぬというデスゲームになってしまったんだ。 ちなみにソードスキルはその時に実装されてた技だな」

 

 そう言いながら、ソードスキルを発動させる。

 

「それじゃ、キリト達はデスゲームの最中にこの世界に?」

「いや違う、俺達はそのデスゲームをクリアし、その後出来たVRMMOの世界でプレイしていると気が付いたらこの世界に来ていた」

「おいおい、キリトよぉ大事な事忘れてるんじゃねーよ。 そのデスゲームをクリアしたのはお前って事飛ばすなよな!」

「えっ?」

「いや、あれは俺だけがクリアしたわけじゃないしな」

 

 キリトは申し訳なさそうに首を振る。

 そんなキリトに、シノンがキリトを覗き込むように見る。

 

「なんだよシノン」

「私達もその辺の話ちゃんと聞いてないから、聞かせて欲しいな」

「あぁそうか……当事者のアスナとクラインしかあの時のことはしらなかったもんな。 ゲーム開発者であり、デスゲームを始めた張本人である茅場を75層で倒したんだ、それでデスゲームはクリアされたそれだけだよ」

 

 そういうと、シノンはクラインに本当に? と聞きに言った。

 その様子を見ながら、シロエ達に話しかけられた。

 

「つまり、キリト達は何ヶ月かわからないけど、仮想世界で過ごしていたと」

「ソードアート・オンラインの時間だけでも約2年間ゲームの中で過ごしていた、その後をあわせると……もっといってるな」

 

 実際問題200年単位で仮想世界で、暮らしていたんだが……まぁその話は今する必要はないだろう。

 

「しっかし、ゲームや小説のような話が実際にある世界か、シロエが行ってたら間違いなく廃人まっしぐら祭りだな!」

「否定できないのが辛いね」

「また話す機会があれば、俺達の世界の事話すよ。 今日はもう夜も遅いし寝ないか?」

「そうだね、アカツキとセララさんはもう夢の中だし」

 

 班長が二人に毛布を掛けながら、優しそうな顔をしていた。

 シノンのほうを見ると、クラインの話を聞いてはいるが非常に眠そうな目をしている。

 

「だな、明日もキャンプだろうしな、話す機会もあるだろう」

 

 そう言ってその日の夜はお開きになった。

 

 その後も数日間、空を飛び地面を走りキャンプをし、アキバの町に帰るためのたびが続いた。

 夜になり、火を囲み、エルダー・テイルの世界の事をキリト達が聞いたり、

 ソードアート・オンラインの事をシロエ達が聞いたり、MMOならではの他愛のない話をしつつ、旅は続けられた。

 そんなある日、かなりアキバに近づいてきた時に山の向こうで雨雲が見えた。

 

「シロエ! 雨雲が見えるどうする!」

 

 キリトは同じく空を飛んでいるシロエに、念話を飛ばしてこれからどうするか聞く。

 少し間が空いて後、返事が返ってきた。

 

「近くに村がある、そこで一休みさせて貰おう」

 

 村の世話係を名乗る大地人の男性に、倉庫を貸してもらえる事になり、ご一行はその倉庫に転がり込んだ。

 

 ユージオと旅をしたときのことを思い出すな。

 ふと頭の中に、かつての親友の顔がよぎった。

 

「皆さんはツクバの町から来た冒険者ですかな? こんな辺境までご苦労な事です」

「あぁいや、アキバの街に帰る途中なんですけどね」

「そうでしたか、かなりの大人数の旅、さぞかし面白い物になったんでしょうね、我々大地人は旅はあまりしないものですから」

 

 そう言いながら、男性は俺達の近くに椅子を持ってきて、腰を下ろした。

 すかさず、台所から班長が出てきて、お茶を男性に出す。

 

「中々いけるでしょう?」

「確かに、これは美味しいですな」

 

 その様子を見ながら、ススキノに戻りあの少女だけでも助けるべきかと、キリトはまた悩み始めた。

 大地人はNPC? そんなバカなっ! こんなにも会話ができてる。 ソードアート・オンラインのほうがまだNPCらしかったぞ。

 心の中で、冒険者を罵倒するような声をあげる。

 会話をすればするほど、大地人が人間にしか見えなくなってくる。

 俺達と考え方なんて何も変わらない、普通の人間。

 作物を育て、家畜と共に行き、自然と生きる……なるほど大地人という名は間違いなく正しいのだろう。

 

「シロエ、俺には大地人がNPCになんか見えない。 どちらかと言えば人間に見えて凄い力を持ち、死んでも復活できる俺達の方がありえない存在じゃないか?」

「僕も感じていた。 多分人間なんだよ。 僕達冒険者が本来ありえない存在なんだよきっと」

 

 <<冒険者>>のシロエからそういう言葉が出てきて、安堵のため息をつく。

 一度アキバの街に戻ってから、言おう。

 ススキノに遠征に行き、あそこに居る大地人と冒険者たちを救おうと、シロエなら賛成してくれるはずだ。

 あの少女を助けえるためにも、もう一度ススキノに行く必要がある。

 そこまで考えて、思考を一度とめる。

 この世界に借りはない、脱出する手段を探すほうが先決ではないか?

 俺、シノン、クラインがこの世界の情報を収集できる唯一の存在だ。

 ならば、余計な事をせずアインクラッドに居る人たちのために、尽力を尽くすべきではないか?

 スグもログアウトできないこの状況に巻き込まれているんだ。

 いや、でもしかし――。

 答えが出る事が無く、まどろみの中に落ちていった。

 

 朝、一気に空を飛び俺たちはアキバの街に戻ってきた。

 三日月同盟の面々が俺達を迎えてくれる。

 アキバの様子は変わった感じはしない。

 けどなんとなく更に暗くというか、人が減ってる気がする。

 その夜、三日月同盟で盛大なパーティーが執り行われた。

 あらかじめ班長の手によって伝えられた、味をする料理の事を教えていたので、味のする料理でのパーティーである。

 クラインは数々の女の子に手を出そうとして、マリエールに手を出すなと叱られており、シノンは静かに端で飲み物を飲んでいた。

 そんな楽しい時間が一気に過ぎ、全員が夢の中に入った時に、俺はその会場から抜け出した。

 

「さてと、どうするかね」

 

 空を見上げて、独り言をつぶやく。

 俺だけの一存では決まらない、というか決めて良い訳がない。

 

「何を悩んでいる」

「えっ?」

 

 独り言のつもりだったが、突然後ろから声を掛けられ振り返る。

 そこには赤い鎧を装備し、白い盾を持った男性が立っていた。

 

「ヒースクリフッ!?」

「久しいなキリト君、まさかこの世界で会うとは思っていなかった」

「俺もだよ、ヒースクリフ。 またお前の仕業か?」

「そうとも言える、だがそうとも言えない」

「どういうことだ? 自分で答えを探せという事だ、答えはこの世界にある」

「相変わらず面倒な言い回しだな」

「ふっ、そう言うな私は再びこの世界に来られて、歓喜してるのだよ?」

「再び? おい茅場お前どういうことだ!」

「話はここまでだ、だがそうだな。ヒントを一つ」

 

 ヒースクリフは誰も居ない方向にソードスキルを発動させる。

 光り輝く盾は、軌道を残しながら盾を横になぎ払った。

 

「さてと、これだけのヒントでキリト君がどれだけ気づけるかと思うが、私の元にたどり着ける事を祈っている」

「それだけかよ! 他に何か!」

「転移、紅玉宮! あぁそうだキリト君、50層より上は現段階では行けない様にしてあるから」

「ちょっと待て!」

 

 その声を掛けるも、ヒースクリフは転移してしまった。

 

「ったく、何考えてるんだあいつ……。そもそも転移結晶使えるのか。ALOでは転移結晶がないから、俺たちは持ってないが」

 

 愚痴ばかり言っていても、仕方がない、ソードスキルがヒント? わけがわからないぞ。

 わけのわからないヒントの答えを探していると、後ろから足音が聞こえて、振り返る。

 

「シロエか、どうしたんだ?」

「キリト頼みがある」

 

 この旅では見たことのない表情に、キリトは少し身構える。

 

「キリト、君の知識とそのスキルを……貸して欲しい。 アキバの街を変える為に」

 




滅茶苦茶急ぎ足、スキップ多発なぅ。

猟期が終わったので更新速度が多少回復すると思います。
リアル大地人ですので私……時期が来ると忙しいのです。
次は田植え時期に間がかなり空くと思います……。
猟期終わるのは嬉しいけど、罠回収に時間かかりすぎて禿る。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十話

遅くなりました。
円卓会議設立のお話です。
基本的に原作に沿ったお話になっておりますので、知ってるよ!
って言う人はスキップしたほうがいいと思います。
かなり簡略的にしています。


 シロエのその言葉を聞いた俺は悩んだ。

 今俺がすべき事。

 アスナ達との合流、それとこの世界からの脱出世界の模索だ。

 そのヒントは恐らく、茅場が保持しているはずだ。

 今俺がシロエに協力すれば、その行為自体が遅くなる。

 

「キリト?」

「すまない、少しアスナと会話させてくれ」

 

 そうシロエに言い、アスナに念話を繋ぐ。

 シロエは近くにあった石に腰掛けて、俺の答えを待つらしい。

 

「アスナ? 夜遅くにすまない少し聞きたい事があって」

「キリト君? うん大丈夫だよ、私も話がしたかったから」

 

 アスナにこの世界の現状と、<<冒険者>>の一人から協力を申し込まれた事を説明する。

 

「ふーん。 でキリト君は迷ってるんだ?」

「あぁ、皆の事もどうしていいかわからなし――」

「ストップ! ねぇキリト君、SAOの時に私を昼寝に誘った時の事覚えてる? ALOで私を助けてくれた時の事も覚えてる?」

「そりゃ勿論……」

 

 アスナが何かいいたいことがあるのはわかるのだが、それがなんなのかわからないので話を聞き続ける。

 

「キリト君は、キリト君がしたいようにしたらいいと思うよ? それが結果的にプラスに繋がってるから。 こっちの事は心配しないで」

「いや、でもしかし――」

「じゃぁこういう風に考えて、多分私達の居るアインクラッドの正確な場所を知る為には、<<冒険者>>の力が必要」

「それってどういう事?」

「キリト君に貸してた、ワイヴァーンで周辺を飛行時間限界まで飛んでみたけど、大陸が見えなかったの」

「そう……か」

 

 なるほど、ならばどうにかして<<冒険者>>の力を借り、アインクラッドの場所を特定する必要があるのか。

 そのためにもシロエに借りを作っておく必要があると。

 そんな関係で、力を貸し借りはしたくないんだけどなぁ。

 

「わかった、シロエに協力してくる」

「うん。 頑張ってねキリト君」

「アスナも」

 

 そういい念話を切る。

 

「シロエ」

「話はまとまった? キリト」

「あぁ、条件がある」

「条件?」

 

 シロエの眼鏡が光ったように見えた。

 正直こういう交渉ごとはあまり得意ではないのだが、アスナに頑張ってといわれた以上頑張るしかない。

 

「一つ、俺はアインクラッドの場所が知りたい、そのために<<冒険者>>の力が借りたい」

「二つ、<<冒険者>>も同じだろうが、俺たちはこの世界から脱出手段を探したい」

「三つ、ススキノの街の開放をしたい。 基本的にこんなかんじだ、また追加があるかもしれないが」

 

 俺の言葉にシロエが思考しているようだった。

 そんなに難しい問題を言ったつもりでは無いのだが。

 

「一つは、協力関係になる場合こちらから場所を教えて欲しいとお願いするつもりだった、二つ目はこのアキバの街を変える事は、そこにも直結している。 三つ目はアキバの街が変え、ススキノにも救出部隊を送り込むつもりだ」

「シロエ、お前は一体何をしようというんだ?」

 

 キリトはシロエの真意が聞きたくなり、問いかけると薄く笑うだけで誤魔化された。

 

 そこからのシロエの行動力の高さには驚かされた。

 三日月同盟に協力を求め、味がする料理を提供する店クレセントムーンをオープンさせ、味がする料理を餌にお金を生産系ギルドに提供してもらった。

 ちなみに俺はエギルのように商売をしたことがないので、店員ではなく料理を作る素材アイテムの収集に剣技を使い協力した。

 シロエ曰く、キリトは戦っているほうが合ってそうという事だったので、その言葉に甘えて今自分ができる事でシロエに協力した。

 シロエはその過程で、ギルド『記録の地平線』を設立。

 後に直継からシロエが今までギルドに所属していなかった理由を聞いて、なんとなく共感でき、それでもなおギルマスになって責任者になろうとしたシロエを心の中で賞賛した。

 

 そんな色々な事があり、シロエ達と俺とクラインとシノンはギルド会館に備え付けられた階段を登っている。

 数えている限り現在の階層は15階だったはず、非常に長い階段だ。

 

「シロエ~ なんだよこの長い階段わよぉ……おれっちそろそろ疲れてきたぞ」

「ごめんなさいクラインさん。次が目的地なんで」

 

 クラインの言葉にも律儀に返事し、シロエは目的地と言った16階に到着する。

 シロエがコツコツと足音を立てながら、大きい扉を開けると非常に広い空間が広がっており、その中に何人ものプレイヤーが中央に備え付けられた椅子に座っている。

 クラインとシノンは俺の顔を見るが、シロエに協力したというのならば前に進むしかないと腹を括り、その部屋に踏み込む。

 シロエが前置きを話してくれるのを、俺たちは班長と同じ位置で見守る。

 内容は、ここに居るギルドをまとめて、ギルド連合を作ろうと言うお話だと思う。

 だが、それを作る理由は始めて聞かされた話も出てきた、アキバの街の改善はシロエが当初目指していたものだと理解していたが、EXPポットについてはこの会議で初めて聞かされて衝撃を覚えた。

 その会議の最中、俺達には関係ないと、ギルドシルバーソードは足早に会議室から出て行った。

 会議の内容について議論を交わされる中、俺も気になっていた内容を黒剣のギルマスアイザックとクラスティが指摘した。

 実行力の弱さ、現実味の無さ、つまり非協力的名ギルド、「法」を無視するギルドが現れた場合対処方法は見つからない。

 そんなことを言った二人に……いやこの場に居るギルドの人たちにシロエはこう言い放った。

 

「ギルド会館ゾーンを購入させていただきました。 この意味わかりますよね?」

「なっ!」

 

 思わず声が漏れてしまったが、それは仕方が無い事だと思う、この場所のゾーンを購入するつまり俺たちが良く使う倉庫を初めとしてギルドの設立、ギルドの加入脱退等の操作が、シロエの操作一つで出来なくなるのだ。

 

「それと、私はノウアスフィアの開墾のアップデートと同時に追加された都市の情報を得ており、新たなダンジョン新たな職業と種族を確認しています」

 

 シロエの台詞をよくよく考える、それはつまり俺達の事ではないのか?

 会議室に居るプレイヤーが各々声を上げ、それがざわざわと広がっていく。

 話の中心に居るシロエが、無言で机を少し強めに叩く。

 

「キリト君」

 

 静寂に包まれた円形に設置された机に、俺はシロエの後ろ側から近づいていく。

 ぶっちゃけ、この場所から逃げたしたくないといえばうそになる、けどなんでもいいから少しでも情報と力が必要なのは間違いない。

 

「始めまして、浮遊城アインクラッドから来た。 キリトと言います」

 

 キリトが来た場所を説明するのは簡単だ、別のゲームからログインしている。

 そういえば皆納得はしないと思うが、理解は示すだろう。

 なんせ、この世界に来たプレイヤーが自分達だけと言う決定的な証拠は一つもないのだから。

 その上、新たな職業と種族は新しいキャラクターを作らない限り発見する事はできない、つまるところ新しいキャラクターが作られる事がないこの世界では、本来ありえない事なのだ。

 そのことを理解したのか、してないかはわからないが、この場所に呼ばれたギルドマスターたちは各々何か考えているようだ。

 

「キリト君だったかな? 私はクラスティと言う。 失礼だが何か新しい種族と認識できるものか、職業の情報を提示してもらいたい。 言葉だけでは納得できないので」

「スキルの詮索はマナー違反ではないのか?」

「君の言い分もわかるが、この場でその新しい物を提示できない場合は、シロエ君の話と、キリト君の話を信じる事は出来ないとは思うのだが」

 

 にこやかに話しかけてくるクラスティだが、目が笑っているようには見えない。

 シロエにアイコンタクトをすると小さく頷いたので、妖精の翅を羽ばたかせる。

 黒を主にした装備に、黒い翅を広げたキリトはまさしくゴキ……

 

「それだけか? 確かにそういうスキルを持った<<冒険者>>は確認できてないが――」

「いえ、この翅には瞬間的にではあるが、浮力を持たせる事ができる、つまり」

 

 この世界に来てから全ての妖精に追加された共通スキル、壁走りを発動させる。

 妖精の種族とステータスにより、走れる距離は違うが、飛ぶ代わりに備え付けられたものだろう。

 

 「ふっ!」

 

 小さな掛け声と共に、周りに設置された像を蹴りながら、円形のこの部屋を一周する。

 もう少しで一周という所で、スキルアイコンが点滅したので元の場所にジャンプし、着地する瞬間翅の浮力を使用し、慣性を殺し着地をした。

 シノンとクラインは此方を見て笑っているが、

 シロエを初めとするギルドマスター達は、驚きを隠せないようだ。

 

「へぇ面白いスキルですね、他にもあるのですか?」

「さて、それはどうだろうか? 一番わかりやすいのを選択したつもりなんだけど」

「そうですか。 まぁおいおい見せてくれると期待しておきましょうか」

 

 クラスティと初めとする、ギルドマスター達は先ほどの壁走りで納得してくれたみたいで、俺達の存在が新たな<<冒険者>>として誤認してくれたようだ。

 

 ギルド会館の購入と俺達の存在を知らしめたシロエは淡々と言葉を続ける。

 シロエのやりたい事は単純だ、このアキバの街を活性化させること、元気にさせる事だ。

 それにあわせて、初心者狩り等を取り締まる治安の向上だ。

 地域の活性化は、唯一味をする店をレセントムーンを運営している三日月同盟のマリエールが答えてくれた。

 現実世界で行っている循環を、このアキバの街にもやればいいという事だ。

 つまり、料理を作るそのための材料を得るために狩りをする、狩りをするために食料や回復アイテム武具を買う。

 ただ狩り続ける毎日では面白くないので、ストレス発散や気分転換として娯楽物を買う、作る。

 レセントムーン少ない日数だが運営し、その兆しが見えてるのはここに居るギルドマスター達は把握しているだろう。

 マリエールがそのまま、作り方をその場で提示し生産系ギルドの皆はそのやり方を生かし、本来ゲームに無い仕様である蒸気機関の開発が出来たと言った。

 つまり需要と供給市場が回り、アキバの街が活性化するというお話だ。

 

「そんなわけで、俺達生産系ギルドは円卓会議設立に賛成する」

「そりゃ、こんな美味しい話乗らないわけが無いですよねー」

「この数ヶ月は生産ラッシュになります。 今にでもギルドホールに戻りたいぐらいですよ」

 

 生産系ギルドが談笑しているところを見て、キリトは一つため息をつく。

 とりあえず第一目標クリアと言うところかシロエ?

 そう思いながらシロエの顔見たら、まだ終わっていないといった風な顔をしていた。

 

「次は治安の問題です」

 

 自由権を持ち、今死ぬ事ができないこの世界での拉致、監禁は非常に重たい罪にするといった意見に、キリトを初めとするその場にいた人達は大きく頷いた。

 シロエはその後に、異性に対して性行為の強要は極刑です。

 まぁ確かにそうなるな。

 ソードアート・オンラインでは、異性に対して胸を揉むなどの性行為をした場合でも問答無用で牢屋に投げ込まれていた。

 今のこの世界では、牢屋なんて存在しないし、ましては論理コードでアバターを守ってくれているわけではない。

 全員が全員論理コード解除済みの状態なのだ。

 確かにそう考えたら恐ろしい事ではある。

 

「そして最後になりますが、この人権問題については<<大地人>>にも適用されます」

 

 ピクリと眉が動いたのは許してほしい、つまりこのシロエの提案が通れば大手を振ってススキノに救助に行く事が出来る。

 その話題には反対ではないが、難色を示す<<冒険者>>が数人現れた。

 同行者の中からは、あいつ等はノンプレイヤーキャクターだ! という言葉も上がっている。

 その言葉に反論するために一歩踏み出しそうとしたとき、シロエが手で制してきた。

 

「この中で大地人ときちんと会話をした人たちは居ますか? 僕達は先日ススキノに遠征に行きました。 そこで酷い現状を見ました、あんな事がアキバで起ころう事なら、この街も腐敗していくに決まっています」

「あの、うちからもすこしいいか? クレセントムーン運営してる事は知ってると思うけど、買いに来たのは<<冒険者>>だけじゃないんよ。 <<大地人>>の人らも来てたんや。 だからそのあの人等も美味しいもん食べたかったんちゃうかなーって」

 

 マリエールの言葉に少し笑みが出たのは許してほしい。

 俺は知っている。

 たとえ肉体の無い仮想世界の住人だろうと、俺達と同じように悩み、苦しみ笑える事を、そしてシステムにも抗える精神が宿る事を。

 だから俺たちが人間だからと言って、大地人をないがしろにしていい理由にはならない、なるわけがない。

 マリエールの発言に静まった会議に、シロエの手をどけ、一歩踏み出す。

 

「発言いいか? シロエの言うように大地人が各々考え持ち、各々生きているとしたらどうなると思う? 簡単だ今まで見たいに話しかけたらアイテムを売ってくれる、買い取ってくれるそういう行為が出来なくなる可能性がある。 俺達だってそうだろ? 気に入らないプレイヤーにはアイテムを売らないし、高く買い取ってくれるプレイヤーに売りたいだろ? そういう事が起きてくる可能性があるんだ」

 

 そう言って生産ギルドが座っているほうを見ると、困ったような顔を見せる。

 思い当たる節はあるのだろう、そりゃ商売人だ美味しい話には乗りたいし、美味しくない話には乗りたくない。

 

「つまりだ、いい加減この世界に来て数ヶ月がたつ、<<冒険者>>より圧倒的に人数が多い<<大地人>>と友好的な関係を結ぶべき時期に来ているはずなんだ。 そもそも<<大地人>>からすれば急に来たのは俺達のほうかもしれない」

 

 俺の発言にまた会議は静まり返る、少し言い過ぎたかと考えながら話は終わりだという風に一歩下がる。

 

「つまり、キリト君…・・・シロエ君もか、君たちは大地人と戦争の可能性があると?」

「それはっ……」

 

 俺が言いよどんでいると、シロエが再度立ち上がる。

 

「それは、円卓会議が考える事であり、今我々が考える問題ではない」

 

 流石に無責任すぎるのではないだろうかと思っていると、

 言われたクラスティの方は少し笑っているように見えた。

 

「我ら、D.D.Dは円卓会議の設立に賛成し、協力しよう」

 

 クラスティの参加表明を皮切りに、その場に居た11のギルドは全員円卓会議の設立に賛成し、

 かくしてアキバの街に円卓会議が誕生した。




円卓会議設立✧*。◝(。╹▿╹。)◜✧*。
時間かかったよママン。
しかし会議の内容はぺらっぺらな気がしてならないです。
皆さんに脳内補完していただけると期待して……

次は夏季合宿では無く、その間に発生したと思われるススキノ遠征にアイザックと共にキリト達に出向いて頂きます。
時系列的には合ってるとは思いますが、アニメで一瞬描写があっただけですので妄想の産物になるのでご了承をお願いします。
時系列的に
6月に円卓会議設立、7月にイースタルから招待状が届く、8月に夏季合宿&宮廷に呼ばれてのゴブリン王の帰還ですので、恐らくゴブリン王の帰還には間に合っているはずです。
というわけで次から2章になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キャラクターエピソード
第十一話 キリト編


次から2章と言ったな! アレは嘘だ!
というか、一話の為に章つけるのもったいないので
次からタイトル付けます。
今回はオリジナル? ストーリです。

6000文字……前半後半とかに分けて更新スピード上げたほうがいいのか
それともこのままで行ったほうがいいのか難しい。


 俺とクラインの二人は、黒剣騎士団のギルドメンバーとそのギルマスと共に、ススキノに再度向かっていた。

 その理由はただ一つ、ススキノを開放するためである。

 

「でなんで俺たちは、黒剣のギルマスと同じ馬車なんだよ」

「いやぁな? やっぱりギルマスとか言われてるけど根っこはゲーマーだからな」

「つまり、俺たちが持ってるスキルに興味があると」

「そういう事だな」

 

 あの会議ではどちらかと言えば不正容認、NPCに感情は無いといっていた人がここまで丸いというかなんというか、面食らってしまった。

 こういうおおらかな性格だからこそ、ギルドマスターを張っていると言うべきなのか。

 

「クラスティにも言ったが、スキルの詮索はマナー違反だぞ」

「いや、そうは言うけどさぁ。 気になるだろ? な? お前さんたちだってゲーマーだからこの気持ちわかるだろ?」

「そりゃわかるが……。 しゃーないキリト俺がソードスキルを見せるわ」

 

 そういうとぐらつく馬車の中でクラインは立ち上がる。

 

「いやしかし、俺がススキノに同行したいと言ったから、俺がやるべきではないのか?」

「ままま、俺だって注目浴びたいしさ、アイザックさん。 俺が使うスキルは他言無用だぞ? 勿論馬車を操作してる彼も」

 

 いつの間にか振り返って中の様子を見ていた、レザリックが苦笑いをしていた。

 クラインは腰に装備されていた霊刀カグヅチを抜く。

 アイザックが嬉しそうな笑顔を見せる中、キリトはいやな予感がした。

 クラインの刀が光り、キリトは慌てて頭を下げる。

 キリトの予想通りというか、風の力を纏ったクラインの刀は、俺たちが乗る馬車の荷台部分の布を吹き飛ばした。

 その後クラインとアイザックは、レザリックに野宿するポイントで叱られていた。

 

 シロエは三日月同盟が遠征する場合は1ヶ月半ぐらいかかると言っていたが。

 黒剣騎士団の皆は、それ以上のスピードでススキノに到着した。

 日数にすると片道15日、往復するだけなら1ヶ月で出来る計算になる。

 それでもワープポイントがあるときに比べたら面倒だとアイザック達は言っていたが。

 

 ススキノの城壁が見える地点で静かに野宿をする。

 

「さてもうすぐでススキノに到着するわけだが、何か策はあるか?」

 

 アイザックはレザリックを初めとする、幹部プレイヤーと俺に問いかける。

 

「ここに居るプレイヤーでススキノにせめて、一気に全員救出じゃダメなのか?」

 

 クラインが一番簡単、何も考えないという作を提示するが、レザリックはそれに対して首を振る。

 

「その作戦は今回は使わないほうがいいでしょう。 理由はススキノでは戦闘が出来ませんした場合守護者が現れ、私たちが殺されてしまうのです」

「ダメか……」

「んじゃ<<冒険者>>を囲って行動するのは?」

「それでもいいですが、範囲魔法を使われると全員もろともやられません? その場合は相手も神殿送りされるとは思いますが」

 

 中々いい案が出ないので悩んでいると、森の奥から感じる視線に違和感を感じる。

 俺は索敵スキルを使い、違和感を確かめると、何も書かれていない地図に小さい緑色の光点が見えた。

 今俺が居る場所が真ん中だとすると……多分こっちのほうか。

 

「悪い皆、ちょっと周辺探索してくるわ、なんか抜け道とかあるかもしんねーし」

「おう、気をつけろよ!」

 

 アイザック達に見送られ、野宿の場所を少し離れる。

 何度か索敵スキルを使いながら、緑色の光点、恐らく他のプレイヤーが居る地点を目指す。

 少しだけ開けた場所に、一人の<<冒険者>>が座っていた。

 確か……シルバーソードのギルドマスターのウィリアムだったか?

 円卓会議の後姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのか。

 

「それで何かようか?」

「明朝脱出を願っている<<冒険者>>をススキノから脱出させる。 お前らで助けてやれ」

 

 驚いた言葉だったが、頷こうとした時に考えにブレーキを慌ててかける。

 

「信用していいのか?」

「好きにしろ、どちらにしても明朝多くの<<冒険者>>が路頭に迷う事になる」

「そうか、条件を追加して欲しい<<冒険者>>だけではな<<大地人>>にも声をかけて欲しい」

「<<大地人>>も? デミカァスに悟られないように動かすのは少々骨が折れるが、まぁ大丈夫だろうわかった約束しよう」

「再度問いかける事になるが、信用していいのか?」

「――、俺は放蕩者の茶会に憧れてレベルを上げていた。 それだけでは信用の証にならないか? 円卓会議ではあんな言い方で席は立ったが、それなりにシロエ達のことは凄いと思うし、尊敬してるんだぞ?」

 

 ティーパーティ……確かシロエ達が所属していたところの名前か。

 なんだろうこう、男のツンデレ以上に面倒な事はないな。

 まぁこれで相手が女性だったら、後でアスナにとやかく言われそうな予感がするが。

 

「わかった、信用しよう」

「助かる、そして円卓会議には俺達がここにいる事を絶対に教えて欲しくないんだ、少々理由があってな」

「わかった。 それについては約束する」

「そして次からが本題だ、何故お前を呼び出したかだ」

 

 やっぱり、アイザックなら円卓会議に報告せずに協力したのだろうが、何故わざわざ俺にわかるように居たのか気になっていたのだ。

 

「俺達はお前達が円卓会議を作っている間も、レイドボスに何度か挑んでいたのだが、その中で現れたお助けキャラ……古来種にお前に伝言を頼まれたんだ」

「お助けキャラって言うとNPCか?」

「今でこそNPCと人間の区別はつかねーけどな、ちなみにそいつも俺達からすれば人間にしか見えなかった。 話を戻すぞ?」

 

 俺にはこの世界に友人なんて居ない、更に言えばこのゲームに限っては初心者も同然。

 チュートリアルキャラにもあった事が無いんだが、一体誰が。

 

「キリト、君の剣と青薔薇の剣は今セットで僕の手元にある。 預かっておくから時期が来たら返すね。 だそうだ」

 

 息を呑む。

 そんな事を言うやつはひとりしか知らない、そもそも青薔薇の剣の存在と俺の剣の存在を知ってるやつはそんなに多くないのだ。

 

「なぁウィリアムさんだっけ? その言葉を言った奴の名前は『ユージオ』だったか?」

「あぁ、そうだ。 やっぱり知り合いだったか」

「あぁ、大切な……大切な友人だ――」

「そうか、とにかく俺達はユージオに借りがある、その友人であるお前の手伝いはさせてもらうさ。 明朝まで待っててくれ」

「わかった」

 

 そういうとウィリアムは暗い森の中を駆けていった。

 さてと、後は明朝までここに待機させるのはどうしたものか……まぁ普通に真実を話せば問題ないか。

 黒剣のメンバーたちに先日ススキノに来た時に知り合ったプレイヤーに、脱出作戦を手伝ってもらう事を伝えると、アイザックはおおそうか! 楽になるな! と簡単にそれを受け入れてくれた。

 なんというか、アイザックが何故ギルマスを勤めているか判った気がする。

 

 そんなこんなで明朝ウィリアムが指定した場所で待っていると、ススキノから次々と<<冒険者>>と<<大地人>>が出てくる。

 アイザック達はその人たちを、あらかじめかなり余裕を持たせて用意した馬車に乗せては、出発させていく。

 とりあえずは予定通りだ。

 数百人単位の<<冒険者>><<大地人>>を場所に乗せ、キリトは違和感を感じだ。

 圧倒的に<<大地人>>の数が少ないのだ。

 ススキノに前回遠征してきた時に、虐げられていた<<大地人>>はもっと居たはずだ。

 

「悪い! 後1時間、いや2時間待ってくれ頼む!」

「それはいいけどよ黒いの、どうするんだ?」

「<<大地人>>の様子を見に行ってくる!」

 

 そう言い俺は単機ススキノに乗り込んだ。

 

 町は早朝という事なのか、静まり返ってきた。

 そのなか俺は出来るだけ音を立てないように疾走する。

 着地する瞬間、踏み込み瞬間に翅に浮力を発生させ、いつもよりも高く遠く、いつもよりも静かに町を走る。

 行く場所は決まっている、あの時見えあげた女の子が居る場所だ。

 角を曲がったところで、今から店の準備をするために出ていたのか、そこにあの時の少女が居たので話しかける。

 

「ごめん! 今日の明朝アキバの街の話は――」

 

 いきなり現れた俺の存在にびっくりしていたが、少女は俺の問いに答えてくれた。

 

「はい、知っています<<冒険者>>の人がアキバの街に送ってくれると言うお話ですよね? ここに住んでる人は多分殆ど知ってると思います」

「じゃぁなんで君はここに……、今からなら間に合う!」

 

 そう言って俺は手を引いたが、少女の足は動く事はなかった。

 驚いて俺は少女の顔を始めてまじまじと見た。

 紫色をした少女の髪の毛は、腰まで伸びており、遠目では気づかなかったが、少々小柄だが非常に美人さんだ。

 特徴的なとがった耳をしているところを見ると、エルフの血が混ざっているのだろう。

 しかし、なんというかどこかで見たことがあるような気がするのだが、どうにも思い出せない。

 

「<<冒険者>>さんは先日竜に乗っていた人ですか?」

「あ、あぁよく覚えていたな。 あの時は知り合いしか助けれなかったから、今度は皆を助けに来たんだ」

 

 そういうと、少女は申し訳なさそうな顔をしながら首を振った。

 

「いやでもここに居たら……」

「大丈夫です、前にアキバの街から来た人がかなりよくしてくれました。 普通に商売できてますし<<冒険者>>さんが心配する事なんてないですよ」

「じゃぁ、なんで君は……俺を見上げていたんだ? 助けて欲しかったからじゃないのか?」

 

 こんな事を聞くつもりは無かったのだが、言わずにはいれなかった言葉を吐き出す。

 その言葉にも少女は首を振った。

 

「確かにあの時のここは、非常に居心地が悪くて、嫌だったですけど、今はそれなりに安定してるから大丈夫ですよ」

 

 そう笑顔で言うが、その笑顔に対して何もしてやれない無力な自分をのろった。

 

「ここは私のご先祖様がずっと暮らしてきた町です。 ずっとすんでた街から<<冒険者>>さんだって移動したくないでしょう?」

「――しかし……」

「<<冒険者>>さん気にしないで下さい。 それ以上言うとおせっかいになりますよ?」

「……」

「それに……ご先祖様の遺言というか、家訓? のような物がありましてそれを守る為に、この場所から移動するわけにはいかないのです」

 

 少女は照れくさそうに笑いながら喋る。

 しかし喋りながらいつもやっているのだろう、店の準備も同時に行っている。

 キリトとしては、そんな昔からの束縛なんて守る必要なんてとこのときは思っていた。

 

「<<冒険者>>さんは「パルムの深き場所」というところをご存知でしょうか?」

「あぁ、俺たちはそこを通ってきたんだ」

「そうでしたか! 昔このススキノの周りには私のご先祖様に当たる、種族や国家が多数あったらしいのですけど、いきなりそれらが空に浮き上がったのです! その時の名残があのパルムの深き場所という所なのですが、その時のご先祖様の遺言がこの指輪を先祖代々継ぎ、この地で空に浮き上がった大地が戻ってくるのを待て! という物なのです」

 

 そういうと少女は照れくさそうに手を見せてくれた、そこには人差し指に指輪が一つ装備している。

 朝方という少々薄暗い中でもしっかりと緑色に光る指輪は……どこ、かで……。

 頭の中にひらめきと言う衝撃が入り、少女の顔をもう一度じっくりと見てしまう。

 なるほど誰かに似ていると思っていたが、俺の予想が正しければ。

 

「もしかして君は、リュースラの民……祖先はもしかしてダークエルフなのか?」

「何故リュースラ民の事を? <<冒険者>>さんはもしかしてどこかで同じダークエルフの民に会った事が?」

「えっと、説明すると長くなるが、その指輪を授かった人と一緒に戦った事がある、かなり前の話だが――」

 

 キズメルのことを思い出す、今思い出せば確かに髪の毛の色は同じだし、肌の色は薄くはなっているが褐色肌だ。

 何より見た目が瓜二つとは行かないが、非常に似ている。

 

「そうでしたか……その人は今何処にいられるかわかりますか? 出来ればお会いしたいのですが」

 

 少女の言葉に返事をしようとしたときに、眼前にシステムウィンドウが急に開いた。

 『クエスト:浮遊城アインクラッドを受諾しますか?』

 このクエストで確信した。

 この世界とアインクラッドは繋がっているんだ。

 

「前回あってみた場所に行ってみるよ、もしかしたら其処にいるかもしれないし」

「ありがとうございます。 もしその方が空に浮き上がった大地の末裔なら、一度会いたいとお伝えしてもらっても良いでしょうか?」

「勿論、約束する」

 

 その少女の台詞に連動してか、『クエストを受託しました』と言うウィンドウが流れた。

 クエストは受けたのだ、彼女かここに居る理由は無い。

 出来れば色々聞きたい事があるのでアキバの街に来て欲しいとは思うのだが、多分来てはくれないだろう。

 

「アキバの街に来る事があれば言ってほしい、案内とか護衛とかさせて欲しい」

「その時は是非、あ、えっと<<冒険者>>さんのお名前は?」

「俺はキリトと言う、すまないが君は?」

「すいません、先に名乗るべきでしたね。 私の名前はティルネル。 薬師のティルネルです。 薬の事はお任せください」

 

 俺は彼女が名乗った名前に、今日何度目かの衝撃を受けた。

 

 

「なぁキリトよぉ、ススキノの街に走り出してからずっと考え込んでるじゃねーかどうかしたのか? もしかして可愛い子が居たとか?」

「そんなんじゃないよクライン。 ただちょっと思うことがあってな」

 

 あの後ティルネルさんに、キズメルの事を聞いたが、ティルネルさんはキズメルのことを知らず、アインクラッドの事も知らなかった。

 つまるところ、あの城で無くなったティルネルさんでは無い、という事になる。

 ただ今回のススキノ遠征は、かなりの大きな収穫があった。

 一つ、この世界とアインクラッドは何故かつながりがある。

 二つ、クエストマーカーだ。

 クエストマーカーとは次のクエスト目標が何処にいるのかを指すのだが、そのマーカーが海を指している。

 つまりその先にアインクラッドがある可能性が高いという事だ。

 とりあえずは、帰ってからシロエに相談だな。

 そう思いながらなれない馬をアキバの街に向けた。

 

 

 

 

 キリトがススキノから帰還中コーウェン家にて

 

「キリト殿、本当に円卓会議なるものに招待状を送ってよかったのか?」

「えぇ、まぁ問題ないでしょう」

(思うのですけど、この<<冒険者>>さんはなんと言うかかなり適当なところがありますよね)

 

 レイネシア姫は、祖父と会話している一人の<<冒険者>>をそんな風に見ていた。

 

「セルジアット卿、お願いがあります。 エターナルアイスでは我々は他人という事でお願いしたい」

「それは?」

「こちらにも色々と都合がありますのでね。 勿論私がセルジアット卿に協力している事は他の諸侯には……」

「言っておらん、そもそも言えるわけが無かろう」

「まぁそうでしょうね。 とにかくしばらくアキバの街に身を隠します、そして円卓会議と共にエターナルアイスに向かわせていただきます」

「わかった。 <<冒険者>>ならばモンスター如きに遅れはとらないだろうが、気をつけてな」

「お心遣い感謝します。 それでは舞踏会でお会いしましょう」

 




原作ではクエストマーカーなんて(ry
いやぁまぁ一番わかりやすいMMOでいうマーカーかな? っていう安直な考えでありオリジナル要素です。
ちなみに地図は表示されないので、方角だけを印すだけの物になっています。
(ぶっちゃけ方向ぐらいわからないと広い海の上で探すなんて……)

Q.何故キリト達は帰りは馬?
A.行きも途中まで馬&グリフォンとかでした。
  途中の村や街に立ち寄り、馬車を購入しススキノに向う。
  あまりにも多くの戦力をススキノに割く訳にはいかなかったので、一部の冒険者(キリトやアイザック)を早く帰還させる為馬車隊とは別行動で先に帰還するために馬で移動してもらいました。 
 これならアキバの出来事にも間に合う&オリジナル話入れる時間作れそうという考えです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十二話 シノン編

('A`)<ヴァー
2章ではなく、外伝に近い形の2章に設定する事にしました。
というわけで今回はススキノに遠征している間置いていかれたシノンのお話です。



 キリト達がススキノでの遠征中、アキバの街では。

 

「暇ね……」

 

 シノンは空を見上げながらつぶやいた。

 キリトとクラインは私に気をつかってか、私をアキバの街に留守番させたのだが。

 正直なところ退屈で仕方が無い。

 今日もこうやって空を見上げながら、のんびりと過ごしている。

 とはいえ、やはり知り合いも無く、用事があるわけではないので暇なんですが。

 エルダーテイルの世界に来て、殆どキリトと一緒に過ごしてきたので、他に知り合いなんて居るわけがないのだが――

 

「姉ちゃん、シノン姉ちゃん!」

 

 そうやって空を見上げていると、知り合いが少ないはずのアキバの街で声をかけられた。

 振り向くとそこには、武士の少年と巫女服を着た少女が居た。

 

「トウヤどうしたの?」

「シノン姉ちゃん暇してるんなら、一緒に冒険いかねーか? 直継師匠と一緒に色々教えてもらうつもりなんだ!」

「シノンさんすいません、トウヤが空を見上げてるシノンさん見つけて、急に走っていって……」

「気にしてないよミノリ、そうね私もこの世界の戦闘に慣れたいから、丁度良い」

「そっか! 30分後ログ・ホライズンのギルドホールに集合で!」

「わかったわ」

「無理言ってすいません、それじゃまたシノンさん」

 

 用事が出来てしまった。

 まぁ楽しめそうだからいいか、それにお姉ちゃんと呼ばれて慕われるのは嫌いじゃない。

 

 20分後

 ログ・ホライズンのギルドホールに行くと、アカツキがその場に居た。

 

「こんにちはアカツキ、アカツキも一緒に?」

「あぁ、ミノリとトウヤに頼まれてな。 シノンもか?」

「うん 大体同じ」

「そうか」

「ギルドはどう?」

「皆良くしてくれる」

「そっか」

 

 アカツキと二人っきりになると、シノンではなく朝田詩乃として会話してしまう……素が出てしまいことがある。

 見た目が幼いというのもあるのだろうが、近い年齢と言うのもあるのだろう。

 それか朝田詩乃がリアルでは静かというのもあるのだろうか。

 けどしかし私自身アカツキという女の子は嫌いではない、むしろ好意を抱いている。

 そうこうしていると、5分が過ぎギルドホールから4人が現れた。

 ミノリ、トウヤ、直継、アカツキ、シノン、シロエ。

 このパーティーでミノリとトウヤの指導に当たるらしい。

 

「そういえばシロエさん今日は一緒なんですね」

「うん。 シノンが参加するって聞いてちょっと気になってね」

「何? 私に興味でもあるの?」

「うん。 まぁ色々聞いてみたい事もあるしね」

「主君はああいうタイプの女性が好みなのか……、そうなのか?」

「へぇ、シロエはシノンみたいなタイプの女性が好みだったのか。 むっつりと思っていたが意外にオープンだったのか!」

「え? いやいや、そうじゃないよ! アインクラッドのことか色々――」

「――へぇ、そうなんだ。 やっぱりシロエって私や、アカツキ、ミノリのような幼い容姿の子が好きなんだ?」

「そうなのか主君!」

「そうなんですかシロエさん!」

「いや、そうじゃなくて! そもそもやっぱりってなんだよシノン!」

 

 直継が笑いながら先導し、その隣にトウヤは楽しそうに一歩一歩歩いている。

 私はシロエ達の一歩前を歩きながら、恐らく三角関係の後ろの様子を見ている。

 でもまぁ、三角程度ならまだ可愛いものよね。

 キリトは何角って話よ。

 でもうん、キリトはアスナ一筋だからね。

 

 トウヤとミノリのレベルに近い狩場に到着し、改めてパーティーを組む。

 今度は師弟システムを使ってだ。

 レベルが一番低いミノリにあわせて、高いレベルのプレイヤーがレベルを合わせる。

 使えるスキルは普通に使えるのだが、威力が全然違うので注意が必要とシロエからシノンに注意された。

 

「今回の目的は、トウヤとミノリのレベル上げと戦闘訓練もあるんだけど、親睦会も兼ねてるからね。 楽しくやろう」

 

 シロエのぎこちない宣言に、ようやくシノンがこの場所に呼ばれた理由がわかった気がする。

 知り合いの居ないこの世界で、シロエは気を使ってくれたのだ。

 直継を見ると最初からわかっていたといった風な顔をしている。

 アカツキは……表情無くこくこくと頷いている。

 トウヤとミノリはこれから狩りという事なので、気合を入れているようだ。

 

 

「うーん、確かに弓系ビルドとしてのシノンはかなり優秀だし、そのままでもいいとは思うんだけど」

 

 しばらく戦闘をした後、シノンの戦い方を見てシロエはつぶやいた。

 丁度休憩を入れようと思っていたタイミングだったのか、シロエの呟きからなし崩しに休憩に入る。

 

「なによ? また口説くつもり?」

「口説くといえば間違いじゃないんだけど……」

「主君は大人しく年上っぽい女の子の方が好みなのか!」

「いやだから、アカツキさん? 言葉どおりに受け取ってほしくないんだけどね?」

 

 こほんと一つシロエが咳をすると、解説を始めてくれた。

 

「シノンは超遠距離からのスナイプが得意みたいなんだけど、恐らく近距離の回避スキルも高いんじゃないかなーって思うんだよね見てる限り」

「へぇ、どうしてか聞いてもいい?」

「さっき後ろから攻撃された時の、回避テクニックかな。 僕達<<冒険者>>は基本的にモンスターの攻撃をよけるっていうのが苦手だから」

「あぁ、なるほどね」

 

 基本的に遠距離戦しかしてないが、それでもGGO等ではやむ得ず近距離戦をする時がある。

 ――決してアイツの真似をして光剣を使おうと思った影響じゃない。

 そもそも<<冒険者>>はモンスターと敵対するのに慣れてない気質がある。

 SAO帰還者の人たちの戦いを見れば、シロエとかは驚くのではないだろうか。

 

「私たちにとっては並以下の回避スキルなんだけどね、私の場合はスナイパーだから集中力が高いから少しの時間はよけれるだけであって、前衛は脳筋に任せるわ」

 

 主に、キリトやクラインの事を言う。

 

「そうですか、もったいないと思ってね」

「直継は攻撃を防御するタイプだし、アカツキなら私と同じ動きが出来るかもしれませんよ?」

 

 軽くシノンがいうと、シロエを初めとする<<冒険者>>が驚いてシノンを見る。

 

「それってどういう事?」

「簡単な話です。 シロエ達がやっていたエルダーテイルでは目線はありましたか?」

「キャラクターの向きはあったけど目線……?」

「私達のやっていたゲームでは、いくつかシステム外スキルって言われる物があるのだけど、その中の一つが目線なんです」

「目線っていえば、俺がこうやってシロエを見る事をいうんだろ? それが何が大事なんだよ?」

「えーっとそうね……。 アカツキ直継を攻撃してみてくれる? 勿論威力が無い武器で」

「心得た」

「え、ちょおまっ!」

 

 アカツキは二つ返事で頷くと、小太刀を取り出し直継を斬りつけた。

 勿論キチンと約束を守っていたらしく、ダメージは少ししかない。

 

「アカツキはアサシンなんだぜ? そんな勢いのある攻撃急に出されても、回避も防御も出来ない祭りだぜ!」

 

 その言葉に、シロエとトウヤは頷く。

 今までのエルダーテイルの世界だと、ステータスの値によって回避が出来、盾を持っていれば防御が出来る。

 それはシステム上絶対に起こりうる事で、即ちゲームだった頃のエルダーテイルだと、ボーっと突っ立っているだけでも敵の攻撃は避けれるのは避けれたし、盾を持っていれば防御も可能だった。

 

「じゃぁ直継、次はアカツキの目線を見て行動してみて、アカツキは好きなときに攻撃してみて」

「心得た」

 

 すぐに攻撃するかなと思ったが、アカツキは一定時間おいてから直継に斬りかかった。

 直継はそれを辛うじて剣で受け止めた。

 それを見たシロエはなるほどと頷いた。

 

「さすがシロエ理解が早いわね」

「おぉ! なんだかわからないがちみっこの攻撃を受け止めれたぜ! これで最後までおぱ――」

 

 言い終わる前にアカツキにけられて、直継は宙を舞う。

 

「つまり、どんな達人でも攻撃をする瞬間は敵のほうを向く、目線を向けるって事?」

「そう、これはモンスターとかにも該当する。 タゲが直継から私に移ったとしたら、目線は直継から私に向けるでしょう? その目線を利用すればなんとなく次の攻撃が予測する事ができるってわけ。 私も完全に実践で使えてるわけじゃないから……でも少しでも使えるようになるとかなり便利なスキルよ」

「……」

「システム的必中のスナイパーの射撃を、スコープ越しの目線だけで弾丸を斬るプレイヤーも居るのよ? 不可視の魔法の攻撃を斬るプレイヤーだって居るのよ。 そこまで出来るプレイヤーが居るなら、その真似事ぐらいって……何よ?」

 

 直継のにやけた笑顔に不満そうな声を出してしまう。

 

「いーや、シノンも大変そうだなってな、 青春祭りだぜ!」

「何その言い方、またアカツキに蹴られたいの? アカツキお願いできる?」

「任せろ」

「ちょっっとまって!」

 

 シロエは少し考えた間が合ってから、直継の言葉を理解したが、他のメンバーは頭にはてなマークを浮かべてるようだった。

 

「参謀、シノンをうちに引き込むのは無理そうだな」

「そう、だね。 口説くの失敗したみたい」

「まぁ仲間で居てくれるのなら問題ないんだけどな」

「うん、こういう関係でいてくれるほうがあってるのかもしれないね」

「ケット・シーだけに猫みたいに自由気ままってか?」

「そうかもしれない」

 

 

 その後アカツキは目線を利用した回避、攻撃の仕方をなんとなく理解したようで、稀にモンスターの攻撃を視線だけで避けれるスキルを身につけた。

 また攻撃に至っては、同じスキルを持っている相手に対して発揮できる、視界に入っていれば、目線を変えずに攻撃することが出来ると言った、面白い攻撃方法を思いついた。

 思いついただけで成功率はどうしても2・3割程度で実践で使えるレベルではないとアカツキは嘆いていたが。

 直継は防御に転用できないかとあれこれ頭で考えて実践をしているが、どうにも上手くいかないと頭を捻っていた。

 この異世界に来てから、数回の戦闘をしたが防御に関しては体が勝手に動いてくれるという感じで意識的にここに防御する! というイメージがなかったからだ。

 

「でもまぁなんとなーくシノンの言いたい事はわかるんだけどなー」

 

 と直継は笑顔で答えていたので、シノンはコツさえ掴めば何とかなるのではないか? と感じていた。

 

 ミノリとトウヤにはまだ早いと判断したシロエは、目線の事は頭に入れてる程度でいいと説明し、今までどおりに狩りをしてもらった。

 そんな中一番成長したのはシロエだとシノンは評価していた。

 即ち、杖で着弾点を指すことなく意識した場所に魔法を放つ事が出来るようになったのだ。

 杖で目標を指し、魔法を詠唱し撃つと言う動作の中に、途中で目標を変更できるという汎用性が生まれたと、シロエはシノンに語った。

 

 SAOの世界では、この事をシステム外スキルという。

 エルダーテイルでは、口伝と呼ばれるスキルに該当するのに気づいたのは、後の話だ。

 

 

 帰路でシロエと話す機会があったので聞いてみた。

 

「ねぇシロエは、アカツキとミノリどっちの方が好きなの?」

 

 シロエは飲み物を噴出した。

 

「シノン急に何!?」

「いや、明らかに二人共シロエに好意抱いてるでしょ? あっちにふらふらこっちにふらふらだと誰とも幸せにならないからと思って」

「それはまだ後回し……というわけには行かない程度には理解してるんだけどね」

「そっか。 まぁ二人を不幸にしたら怒るから」

「うぐっ……」

「まぁゆっくりと考えたらいいんじゃないかしら? あんまりゆっくりしすぎたら手遅れになるかもしれないけど」

 

 シノンはトウヤ達に誘われる前みたいに空を見る。

 澄み切った綺麗な青空だ。

 

「シノン姉ちゃん! まだキリト達帰ってこないんだろ? 一緒に飯食おうぜ!」

「トウヤ勝手にそんな事言っちゃ、ダメでしょ。 にゃん太さんの都合とか……」

「大丈夫だよミノリ。 班長にはシノンの事も連絡済だよ。 シノンさえ用事無ければ」

「わかったわよ。 ここで断ったら私が悪者みたいじゃない、お邪魔するわ」

「やったぜ! やっぱり人数多いほうが楽しいもんな! 今日は飯はなんだろうなー!」

 

 そう言いながらトウヤは我先にと走ってログ・ホライズンのギルドホームに向かう。

 ミノリはそれを追いかけて行った。

 

「新しい居場所……か」

 

 そうつぶやきシノンはトウヤ達の後を追った。




シノンの喋り方と、朝田詩乃喋り方は若干違う気がする云々。
気のせいだったらすいません。
シノンって非常に書きにくい判明、書いていて一番楽しいキャラだったりします。
書きながら、姉ちゃんと呼ばれて照れくさそうな笑顔を見せているシノンを想像しながら書いていました。
別に私変態じゃないですよ? ✧*。◝(。╹▿╹。)◜✧*。

Q.システム外スキル?
A.SAOやALOプレイヤーが生き残るために編み出した技術のことを言う。
  SAOで一番有名なシステム外スキルは、スイッチではないだろうか。
  エルダーテイルの世界では口伝は強いスキルというイメージが強いが、手料理等も広い意味で、口伝に分類されるらしいので、システム外スキルは口伝に近い位置づけと個人的に解釈させていただきました。

 次の話はクラインのお話→アインクラッドのお話を経て、合宿に繋げて行きたいと思っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十三話 クライン編

色々とすいません。
かなり長い間放置してしまいました。
というわけで今回はクライン編です。
あっさりとしたお話になってると思います。


 俺が森の中を散歩していると、突然二人のプレイヤーに囲まれた。

 

「おいそこのお前! 名前はクラインか……武器とかアイテム置いていかないとPKするぞ!」

「まだPKしてるやつが居るのかよ、いい加減やめよーぜそんなの。 円卓会議が設置されて、PK行為に対しても罰則厳しくなってんだろ?」

「うるせぇ! 俺はこれしかしらねーんだよ! 行くぜカツオ丸! 挟み撃ちだ」

「お、おう!」

「ったく……」

 

 同時に攻撃すると合図したくせに、二人の呼吸はばらばらで後方から来た、カツオ丸と呼ばれた武士風の男の剣を避け、その鎧に蹴りを入れる。

 この攻撃は当たらなくてもいい、あたったらあたってでかなり今後の展開に助かるのだが、かわす為に後ろに避けてくれるだけで非常に助かる。

 クラインの後ろに繰り出したけりは、かつお丸に当たりかつお丸はダメージこそ無いが、尻餅をつく。

 そして前から来た、〈盗剣士〉名前はスマッシュと呼ばれるプレイヤーの攻撃を手首に装備している手甲で受ける。

 ダメージこそ食らうが、この状態ならば片手を開ける事ができる、つまりソードスキルを発動するために時間稼ぎが出来る。

 

「おりゃぁ!」

 

 クラインは叫びながらソードスキルを発動させる。

 

(敵のHP半分ぐらい削れたらもっけものっ!)

 

 敵のHPがガクンと減り、驚いた事に半分以上HPが削れていた。

 

「なんだよこの防具! 物理ダメージに強いんじゃなかったのかよ!」

「あー……」

 

 クラインは与えたダメージに驚いていたが、敵の一言でその理由がすぐにわかった。

 MMORPGでの常識である、いや全てのRPGに共通する理屈といっても過言ではない。

 物理特化の防具は、魔法防御にはそれほど強くない。

 

「だーもーやってられっか! 逃げるぞ!」

「お、おい待てって!」

 

 スマッシュというプレイヤーは、一人を置いてさっさとその場所から去ってしまった。

 俺は刀を構ええながらかつお丸と退治すると、相手が武器を捨てて、両手を挙げた。

 

「前にも攻撃してましたよね? 多分、PKするなりアイテム追いはぎするなり自由にしてやってください」

「襲ってこない奴を殺す趣味はおれにはねーよ」

「そう、か……」

「……」

「――、なぁ? どーしておめぇそんな事をした?」

「PK――のことですか?」

「そうだ」

「わからない。 ただ……何をしていいかわからなくて、でも腹は減るし、眠たくもなる、水も飲みたくもなる。 とかいってモンスターと戦うなんて……」

「怖いか?」

 

 クラインの言葉にカツオ丸は一つ頷く。

 それはそうだろう――いきなりMMOの世界がいきなりVRMMOに変わったら、望んでもなく、この世界に捕らえられてしまったら――。

 誰かに縋りたくなるだろう、知ってる人と一緒に居たくなるだろう、そんな事は当たり前の事だ。

 まぁ、そんな世界でも一人でクリアしようと先に進んだのが、キリトの野郎なんだけどよ、人は皆アイツみたいに強くない。

 

「だったらさ」

 

 おれがこいつに教えれることなんて無い。

 俺はSAOでは、仲間で一緒に「攻略」と言う目標に向かって互いに励ましあって進んだ人間だ。

 風林火山があったからこそ、俺は今ここにたっていると思っている。

 そして未だにキリトの友達で居られている気がする。

 

「だったら、人にありがとうって言われる事しようぜ。 なんでもいい狩りを手伝うのでもいい、毎日1回ありがとうって言われる事をしてみようぜ」

「ありがとうって……でも俺達は――」

「『俺達』だから出来ることもあるんじゃねぇか? 考えてみろよ仲間でさ」

「けど俺達は――沢山の人を傷つけた」

「だからさ、その沢山の人と同じだけありがとうって言われるのを目標にしてみたらどうだ? 明確な『目標』があればなんとかなるだろ」

 

 そうして笑う。

 俺達はその目標のために、幾人の人間を目の前で死んでいった。

 でも――この世界での死は死じゃない、やり直しができる。

 目の前で死んでしまった謝れなくなった奴を俺は何人も知ってる。

 あの時助けれなくてすまなかった、あの時一歩踏み出しておけば……って言える事が出来る世界なんだ。

 

「大丈夫さ、カツオ丸。 お前はまだ一人も本当に殺しちゃいねーんだ、頑張ってたらわかってくれる人もいるさ」

 

 そう言うと俺は立ち上がる。

 そろそろログ・ホライズンで班長が美味しい料理を作り始める時間だ、これを逃すわけにはいかない。

 

「さて、俺は上手い料理人が飯作ってくれる時間帯なんだ、そろそろ行くぜ?」

「あ、えっと――はい。 その、ありがとうございました」

「お礼を言われるようなことはしてねぇさ、じゃーな」

 

 そういうとクラインはアキバに向かって歩き出した。

 あれで良かったんだろうか、もう少し掛ける言葉はあったんじゃないかと考えてしまうが。

 今の俺がかけれる言葉は全部掛けたと思う、後は――後はあいつ等の問題だ。

 

 

「はんちょ~うまた今日も美味しい飯くれよ! 飯!」

「はいはい、クラインさんもう少し待つにゃ」

 

 ログ・ホライズンの拠点に行くと、少し時間が早かったのか誰もその場所にはおらず、班長とセララが料理を作っていた。

 

「クラインなんで俺達よりはえーんだよ! 俺達のギルドメンバーより夕食に席に着くなんておかしいだろ」

 

 そういうと狩りから帰ってきたのか、トウヤが笑いながらこっちに歩いてきた。

 

「そういうなよトウヤ、おれっちハラへってたまんなかったんだよ!」

「クラインはいつもメンバーより早いもんなー。いつも何してんだよ?」

「いつも辺りをぶらぶらして戦闘になれてんだよ。 今日は、あれだな迷える子羊を一人聖人の道に歩ませてしまったな……」

「クライン、頭大丈夫か?」

 

 そういう話をしていると、キリト達も戻ってきたようだ。

 

「うっせー、大体キリトとシノンお前等二人で何やってたんだよ、俺だけ除け者にしやがって……」

「シノンに弓を撃って貰って斬る練習、クラインもやるか?」

「イエエンリョシテオキマス」

「はいはい、お話はそこまでにゃー皆さん料理を運んで欲しいにゃ。 そうだにゃトウヤとクラインはちょっといいかにゃ?」

「なんだよ班長。はっ! まさか俺だけ飯抜きとか……?」

「いやいや、そうではないのにゃ。 トウヤ、クラインにタメ口に呼び捨てはどうかと思うにゃ。 クラインの方がとしうえですにゃ」

「あ、あぁ! 待った班長トウヤが悪いわけじゃないんだ。 俺がそういう風に呼んでくれって頼んだんだよ」

「やっぱりまずいよな? 他の知らない人から見たら子供の俺が年上に向かってこんな口調は」

「全然まずくねーから安心しろおめぇはそのままでいい! トウヤは俺の分の料理も頼んだ!」

「あいよー 任せておいてくれ!」

 

 そういうとトウヤはみんなの後を追う様にログ・ホライズンの拠点に入っていった。

 

「どういうことですにゃ」

「まぁ、なんだ、年上一人ぐらい気楽に話せる奴いてもいいだろ? そーいうこった」

「しかしですにゃ」

「わーってるよ、でもまぁ、あいつら自分でお金も稼げてないって思ってるだろうし悩みを聞ける気楽な先輩って言うの必要じゃないか?」

「話しはわかったにゃ。でも節度は守ったほうがいいにゃ」

「節度か、わかったちょっと考えてみるわ」

「クライン……さん! 料理持ってきました!」

「おう! サンキューなトウヤ。後さんはいらねー!」

「中々難しい問題ですにゃ」

 

 班長はそう笑うと、セララが持ってきてくれた料理に最後の味付けを施していく。

 そうして野外に設置されたテーブルで俺達は班長に作ってもらった料理を食べ始める。

 勿論どれもかなり美味しい物ばかりだ。

 

「なぁキリト」

「なんだよクライン」

「ここの料理は美味いな。 アインクラッドじゃここまで美味い料理なかった」

「そうだな、って言いたいところだが。 残念ながらアスナの作ってくれた美味いシチューが最高だな。 あれは美味かった」

「そりゃ愛妻料理にはかてねぇーよ……」

 

 空を見上げると、アインクラッドでも、ALOでも現実世界でも見た事が無い星空が広がっている。

 

「キリト。 絶対に帰ろうな」

「当たり前だ」

 

 親友と拳を合わせる。

 どうやって帰還できるかなんてわからない。

 そもそもこの世界がなんなのかもわからない。

 それでも前に進もうと――、元の世界に帰ろうと今一度決心した。




クラインって心じゃ色々考えている個人的なイメージ
後表舞台には出てないけど、かなり心はイケメンだと思っています。

カツオ丸を出したのはなんとなくです。
いうなれば武士つながりです。
リコピンにして、フラグにでもしようかと一瞬考えましたが、
リコピンはあの美味しいハンバーガーの味を知っているので却下させて頂きました。
スマッシュはまぁアニメだとネタキャラだから別にいいよね?

次の話はアインクラッド在住の皆さんのお話にする予定
そろそろ合流したいですしね。

戦闘描写が何度書いても上手くならない件。
もうログホラのストーリーが主軸だから戦闘省いても……ダメですよね。
頑張りますorz


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十四話 アインクラッド編

序盤の露天風呂は趣味で露天風呂入っている時に思いつきました。
特に書く必要ないけど書きたかった。
とりあえずこれで原作のストーリーに戻ります。
基本的にオリキャラは出てない……はず。

この作品ではユージーン将軍が滅茶苦茶頑張ります。
何か虐げられてるぐらいに頑張ります。
台詞ばっかりの回で少々読み難いかもしれません。


 カポーン

 露天風呂にいい感じの音が鳴り響く。

 

「いやぁ、やっぱりここのお風呂は何度来ても気持ちがいいですね」

「そうねぇ」

「クラインの馬鹿がいないから、覗きに来る連中もいないしね」

「後はキリト君と一緒に入れたら最高なのに……」

「アスナさんそれはここでは思っても言わないで下さいお願いします」

「探索の疲れが取れるようだ、気持ちが良いな」

 

 アスナ、アリス、リーファ、シリカ、リズベットの女性陣は最近オープンした露天風呂にご熱心だ。

 

「んー、でもやっぱりSAOの時のお風呂とはやっぱり違うわね」

「違うってどう違うんです? リアルとは殆ど大差ないと思うんですけど」

「そこが違うの、SAOの時はやっぱり違和感があったんだけど、この世界のお風呂は違和感がまったくないもの」

「私は、SAOにログインしてないからその違和感がわからないですけど、つまりどういう事なんです?」

「アミュスフィア……ううん、ナーヴギアよりも情報量が多いのかな」

「アリスはどう? なんか違和感を感じる?」

「そうだな……。身体自体に違和感を感じる。 受け取るものが多いと言うか、説明が難しい」

「んー? なんだろ」

「感じる部分が増えたと言うか――、うんやはり難しい。 だが、なんとうか面白いな……ひゃっ!」

 

 アスナとアリスが真剣に話しをしている間、リズベットが後ろに回りこみ、アリスの胸を思いっきり揉む。

 

「ほほぅ、可もなく不可もなくといった具合ですかねぇ……」

「リ、リズベット! 何をする!」

「リズって呼ぶまで揉み続けますー」

「そんな事のために胸を揉むな!」

 

 そんな不幸なアリスを横目にシリカは考えていた疑問を吐き出した。

 

「どうして私達のアバター、現実世界に近い物になってるんでしょうかね?」

「そういえばそうよね、SAO帰還者のアバターってはっきり言えば成長する前に取ったやつだもんね」

「はい、そうなんです。 だから現実世界の身体より小さいはずなんですけど……」

「変わんないじゃない」

「むー、リズさんだって殆ど変わってないですけど私はキチンとこの数年で成長してたんです!」

「何よ! 私だって成長してたわよ!」

「あーあの、リズさんもシリカさんもその辺でー……」

 

 リズベットとシリカの目がキラーンと光る。

 あれは獲物を目標に定めた目だ。

 

「リーファちゃんはいいよねぇ……スタイルもいいし、 む・ね! もあるしぃ……」

「本当ですよぉ……アバターだけかと思ったら私より年下のはずなのに、背も高いし胸もあるなんてぇ……」

「「そんな人は! こうしてやる!」」

 

 リズベットとシリカは二人で勢いよくリーファに向かって飛び込む。

 

「こら二人共、やめなさいって!」

 

 アスナがそう叫ぶと、銭湯の入り口から人の気配を感じて振り向く。

 そこには黒髪のどちらかと言えば可愛い系列の女の子が立っていた。

 

「こんにちは、楽しそうですね」

「あはは、すいません。 リズ! シリカちゃん他の人の迷惑になるからストップ!」

 

 アスナがそういうと、リーファがようやく拘束から開放され、洗い場で倒れこんでいる。

 

「やりすぎちゃったかな……」

「やりすぎです!」

 

 知らない人の乱入によってか、その後は粛々と小さい会話があるものの、静かなお風呂になった。

 アスナが入ってきた人の名前を確認するとサチとなっていた。

 

「サチさん。 初めましてですよね?」

「はい、はじめましてアスナさん」

「えっと、血盟騎士団団長アスナさんにお願いがあってちょっとお風呂一緒にさせて頂きました」

「――、なんでしょうか?」

 

 アスナの声のトーンが一段階下がって、和気藹々としていた空気が一瞬で固まる。

 他のみんなも普通にお風呂に入っている様に見えるが、アスナとサチとの会話に耳を傾けている。

 

「そんなに難しいお話じゃないですよ、ただ、キリト達が試練を迎えるので助けてやって欲しい、との事です」

「……それは誰に頼まれたお願い事ですか?」

「貴方達をこの世界に招き入れる要因になった人物――『茅場晶彦』です」

「貴方は――何者?」

「茅場晶彦によって、貴方達より早くこの世界に来たプレイヤーですかね」

 

 

 その後風呂から出た、アスナ達は緊急会議を開いた。

 

「つまり――、キリト君達がいる大陸で何かしらの問題が起きそうになってて、それを解決して欲しいと?」

「と、茅場晶彦は言っています」

「――ここで茅場先生の言葉を聞く事になるとは、ちょっと予想外の展開だね」

「えぇ、あの人が原因か……まだまだ厄介ごとになりそうな気がするわ」

「茅場先生が直接キリト君を助けるわけにはいかないから、我々に協力を命じた、その上で君をここに寄こしたってことでいいかな?」

「それで合ってます。 前にユージオさんに会っていますよね? 私はあのユージオさんと似た境遇が私です」

「なるほどね。 ユージオ君も茅場先生に言われて我々を助けに来た、というわけだ」

 

 クリスハイトは納得をしたのか、サチさんにこれ以上質問がないといった風に手を広げて席に座った。

 

「でも助けに行くって言ったって、どうやって? アスナとキリトが共有しているドラゴンじゃ限界があるでしょう?」

「サチさんからそれも貰ってる、向こうの大陸の人たちが作ってる蒸気船……の小さいやつの設計図」

「茅場先生は凄いね、どうやってそんなものを――ってあの人なら作れそうではあるけど」

「それで、ここのメンバーに問いたい、この話しに乗るか、乗らないか」

 

 他の5人のメンバーにアスナは問いかける。

 ちないにアスナは言わずともわかるだろうが賛成側の人間だ。

 

「んー、私は賛成かな? 向こうの大陸には渡る術があるならさっさと渡っておきたいね」

「私も賛成側の人間だ。 しかし――向こうの大陸に私達の存在が知られるという事は、向こうの大陸の問題に巻き込まれる可能性があるという事も忘れないで欲しい」

「俺は勿論賛成だ。 キリトとはもう一度戦いたい」

「えー……そういう理由なんですか」

 

 アスナが少々困った風にユージーンに聞くと、大きく頷いた。

 

「あ、僕は反対だよ。 茅場先生がこの状況を作ったのならば彼の話しに乗り続けるのは正直怖いからかな? でも茅場先生の話に乗らないとこの状況が打破できないのはわかってるから……しょうがないから行ってよしって所かな?」

「私は――、私は反対だ。 向こうの大陸の問題に巻き込まれる可能性があるのはさっきも言ったとおりだが、何かこう嫌な予感がする流されたままと言うのは、やはり怖い」

「アリスのいう事はわかるんだけどさー。現状ボス攻略が上の階層も、下の階層も出来ない状態じゃ、打開策求めて行くしかないんだよねぇ……」

「それを言われると思ったので、とりあえず反対と言う言葉だけは言わせて貰った。 それに私もキリトに会いたい」

「そ、それを先に言うのはずるい! アリスさん! 私だってキリト君に会いたい! というか呼び捨て止めてくれます? 前にも言ったと思いますけど」

「アスナがキリトの恋人を宣言するなら、アスナだってキリトって呼び捨てにすればいいだろう?」

「そっ、それはっ!」

「あー、はいはいとりあえずその辺で終了で、この議会に選ばれた6人キリトに思いいれ多すぎるだろう、俺も含めて」

 

 ユージーンは大きくため息をつきながら言うと、アリスとアスナは大人しく席に座った。

 

「どちらにしてもキリト達とは遅かれ早かれ合流しないといけなかったんだ、階層攻略のためにも」

「え、えぇそうね、私もそう思ってたわ」

「絶対嘘ですよね」

「絶対嘘ね、キリトに会いたい一心だったわ」

 

 リズとシリカはしきりに頷きながら言う。

 リーファはそれを見ながら苦笑……複雑な表情を浮かべていた。

 

「これ以上ややこしくしないでくれ頼む……。 とりあず探索は後回しにして……というか階層ボスが突破できない以上探索に割く人数は少なめでいいだろう。 この小さい蒸気船の作成を急ピッチに行わせてもらう。 そして蒸気船に乗るメンバーは俺が一任して勝手に決めさせていただく。 正直こうなると思っていたからある程度人数は絞ってきた。 異論は認めん」

 

 ユージーンはブーイングが飛び交うなか、疲れた表情で淡々と議題を進めていく。

 

「そういえば、サチさんは同行するんですか?」

「いえ私はこの役目が終われば、茅場さんの元に戻ります」

「それならば話しが早い、メンバーを発表する」

 

 ユージーンが提示したメンバー一覧をいつの間に用意したのか、ホワイトボードに張り出す。

 

 先遣隊

 アスナ エギル サクヤ タカシ

 

 本隊

 アリス シリカ リズベット クリスハイト ルクス リーファ タカシ

 

 ※タカシは船の操舵として同行する。

 

 

「……なんとなく理由がわかる組み合わせなので文句が言えないです」

「私とシリカは後の方がいいよね、やっぱり邪魔になるしなにより人数乗ると船のスピード落ちるし」

「だとしても何で俺が先発隊に選ばれているんだ」

「そりゃ、エギルさんだからね」

「エギルさんですもん」

「俺ってなんなんだ――」

「私としては不服が残る組み合わせですが、ユージーン将軍、騎士タカシには一刻も早く帰ってくるようにお願いします!」

「お、おう伝えておく」

 

 アリスとユージーン将軍が話している間サチがゆっくりと出口に向かう、役目が終えたと言わんばかりに何も言わずに去ろうとする。

 その背中にアスナが声をかけた。

 

「サチさん! もう……行くんですか?」

「私の役目はもう終わりましたから、貴方達にコンパスと図面を渡すのが私の今回のお仕事です」

 

 静かに笑う彼女の笑顔には悲しみが感じられた。

 

「アスナさん、一つだけお願いがあるんですいいですか?」

「私に叶えられる事なら――」

「――キリトの事、お願いします」

「えっ?」

 

 サチはそれだけ言うと会議室の出口から外にでる。

 アスナも慌てて出かけるが、そこにはサチの姿はなかった。

 




ユージーン将軍「俺戦闘厨だったんだけど……」
サクヤ「頑張れ、応援しているぞ」
将軍「(´・ω・`)……」


ユージーンは間近でモーティマーの様子を見てたから、内政とか空気とか読める勝手なイメージ。
後領主だし、色々面倒事頑張ってもらう予定です。
アインクラッドに残るのは、ユージーンとアリシャです。
アリシャも連れて行って、キリトハーレムパーティーとか思ったんですけど、アリシャさんにはちょっと役目があるのでアインクラッドに居残りです。
会話メインになると誰が喋ってるかわからないんですよねー、難しいです。
正直読み辛い……。

※ルクスはガールズ・オプスに登場する彼女です。
※タカシは アリシゼーション(WEB版)で登場するモブAぐらいの立場のプレイヤーです。

ルクスに関しては使えるキャラはどんどん使っていこうって感じです。
タカシは――、なんかここでオリキャラ出すのもどうなの? って思ったので無理矢理引っ張ってきました。
カゲムネでもいいかなー? って思ったんですけど、普通の扱いやすいキャラ欲しかったのでタカシを(ry

次回からは、年少組みの合宿と、イースタルからの招待状……そしてゴブリン王の帰還をやっていきます。
全10話ぐらいで終わればいいですね(白目


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

異世界の守護者
第十五話


第二章開幕、
二章のタイトルを考えるのが一番時間かかった気がします。
アインクラッドから来た3人は、別れて合宿と、領主会議に挑みます。
原作では『ゲームの終わり』のところですね。
長くなりそう(白目



「さて、イースタルから招待状が届いたわけですが……生産系ギルドの中の3人から一人来てもらうとして、私は行くとして――シロエ君は来てくれますよね?」

「……拒否権が無いのでしょう? わかりましたよ。 それでなんですかアインクラッドのメンバーから一人来て欲しいのですが……」

 

 クラインとシノンが俺を後ろから押す。

 いや待て、確かにシノンなら役不足かもしれないが、クラインでもいいだろ!?

 

「いやぁ、おれっち難しい事と面倒事は勘弁なので、キリトよろしくな」

「私はあの城のことあんまり知らないから……」

 

 逃げ道は無い、という事か……

 いやでもそういば、念話で――

 

「わかったよ、俺が行くよ……。 その代り食料を3人分追加で頼む」

「3人? クラインさんとシノンさんと君で3人という事なのかな?」

「あぁいや、クラインとシノンには初心者の合宿のほうに向かってもらうつもりなんだ、この世界の戦闘にまだ慣れてないから特にシノンは」

「では、何故3人分?」

「エターナルアイスの古宮廷に俺の仲間に来てもらう、あいつ等の方が交渉役なら適任だと思う」

「ほぅ……まぁ確かにキリト君はどちらかと言えば戦闘タイプのプレイヤーに見えるからね。 その判断は正しいのかもしれない」

「向こうに着いたら紹介するさ、名前は『アスナ』『エギル』『サクヤ』だ」

「わかった、しかしくれぐれも大地人にはアインクラッドの事は――」

「内密だよな? わかってるさ」

「各々選出されたリーダーは達は、キリト君を除いて同行者を最低でも1名決定しておく事でいいかな?」

「了解した。 料理に関しては生産ギルドが料理人と材料を用意させていただこう」

「助かります。 ではこれにて解散。 出発時間は厳守でお願いします。 マリエールさん合宿の方がお願いします」

「任せておいてや。 キリトもそんな顔せんと、シノンちゃんの事はまかせてーな?」

「え、俺そんな顔してました? すいません。 シノンの事お願いします」

「おれっちの事は放置プレイですか……そうですか」

「クライン」

「なんだよ、急に改まって」

「何かあったら、皆の事を頼む」

「――わーってるよ。 任せろ」

「さーってと、アスナと久しぶりに会うからなちょっとお土産でも買っていくか、クライン、シノン先に宿に戻っておいてくれ」

「相変わらずお熱い事で、まぁ久しぶりに会うからそれぐらいは男して当然だよな。うんうん。それじゃ先に戻っておくわ、行こうぜシノン」

「……わかったわ、それじゃね、キリト先に戻ってる。 ――お土産期待してるから」

「お、おう」

 

 そう答えると、クラインと、シノンを円卓会議から出て行くのを見送り、背中に独特の光を放つ剣を背負い戦闘態勢を行う。

 俺は商店が並ぶ街中には行かず、フィールドのほうに歩いて行く、勿論誰にも見られないように気をつけながら。

 数時間歩いた所で、もう間近で待ち合わせ場所という所で、急にポップした数対のモンスターにターゲットされる。

 

「はぁ……もう少しだって言うのに」

 

 ため息をつきながら背中に装備している、一本目の剣を抜く。

 キリトの剣を中心に剣独特の黄金色の発光が広がっていく。

 それを気にすることなく、まずは、棘茨イタチに向かっていく。

 

「ふっ!」

 

 空中でソードスキルを発動させ、ソードスキルの勢いに任せて敵に突っ込む。

 ソードスキル、ソニックリープ。 キリトは目標としていたイタチに砂煙を浴びせながら突き刺す。

 

「次っ!」

 

 続けてもう一本背中に装備してあった黒い剣を抜く。

 出来るだけ体勢を崩さないように流れるように、連続でソードスキルを発動させる。

 二本の剣を薙ぎ払い周りにダメージを与える二刀流スキル、エンド・リボルバー。

 周りに居た敵に見事に命中し、辺りに居たモンスターが一掃される。

 

「絶対的レベル差のおかげだな、同じレベル帯であんな戦いをしたら確実にやられてるな」

 

 自らの戦闘結果に苦笑いを浮かべながら、左右に剣を振って、二本とも背中の鞘に納める。

 ため息を吐き、戦闘モードを終える

 

「しまっ!」

 

 視界が急に動いて、何がなんだがわからないうちに、空中に宙吊りの状態になってしまったようだ。

 

「このっ」

 

 身体を動かしてみるが、どうにも動かない。

 仕方がないので足に絡みついた蔦を切ろうと、ソードスキルを発動させようと構えると丁度俺の真下にあった草が開いた。

 

「ちょっ! マジかよ!」

 

 慌ててソードスキルを発動させようとするが、敵に足を取られている状態で尚且つ下から口を開いた植物が襲うそんな状況で、ソードスキルなんて発動するわけもなく――。

 

「食われるっ」

 

 ザンッと言う音と共に、ソードスキルの輝きを持つプレイヤーが一人人食い植物に襲い掛かった。

 HPはそんなに多くなかったのか、一発で敵が消滅した。

 その後俺は蔦の支えがなくなり、まっさかさまに地面に落下したわけだが。

 

 

「助かったよ、ありがとう」

「待ち合わせの時間になっても来なかったからな、心配になってこの辺を散策していたんだ」

「――そうか、お前が、念話では何度か会話した事あったが、直接話すのは初めてだな」

「あぁ、改めて言うのもおかしいが始めまして『キリト』」

「こちらこそ、『キリト』」

 

 それは――本来ありえない出会い。

 

 

 合宿出発日

 

「それじゃ皆頑張ってきてね」

「はいシロエさんも頑張ってください!」

「僕としてはあんまり頑張る自体になって欲しくないんだけどね……」

 

 シロエは出発する記録の地平線のメンバーに声を掛けて回っている。

 まぁ、シロエとアカツキは領主会議の方に行くようだし当たり前と言えば、当たり前か。

 俺もそろそろ、クラインとシノンに挨拶しないとな。

 

「クライン、シノンいるか?」

「おー、キリトじゃねーかわざわざ見送りか? 嬉しいぞ俺は」

「下手すると数週間以上別れる事になるからな、挨拶ぐらいはな」

「何かあったらすぐに連絡してくれ、こっちはき……、じゃなかったアスナ達とも合流する予定だしな」

「そういえばそうだったわね。何かあったらすぐに連絡する」

 

 馬車から離れようとすると、背中から服を引っ張る力を感じて振り向くと、そこには黒髪ロングの少女が居た。

 

「えっと――、どちら様でしょうか?」

「キリト……また女の子をたぶらかしたの? これで何人目よ……」

「言い掛かりだ! 俺だって始めて会う子だよ! えっと、ど、どうしたんだ?」

「ここにくれば、強くしてくれるって聞いて……」

「あー、急な参加……か? マリエールさんに確認しないと」

「いやいや、将来有望な女の子じゃないか、強くなりたいだなんて……キリト俺に任せろ! 俺が面倒を見るぜ!」

「――、シノン頼んでもいいか?」

「っておぃ!」

「私が断っても、他の誰かに頼むんでしょう? わったかわよ その代りマリエールさんに連絡しておいてよ、キリトの方から」

「うっ、ま、まぁ俺の勝手で言ったからな、連絡いれておくよ。 えっと、名前教えてもらえるかな?」

「お、私は、えーっと、み、翠です」

「翠ね、この合宿のリーダーにはキチンと連絡入れておくから安心して強くなってきて」

「わ、わかりました。 ありがとうございます」

「クライン、シノン」

「言わなくてもわーってるよ。任せろ」

「それじゃ行ってくる。 キリトも頑張ってね」

「あぁ、こっちは任せろ」

 

 クライン達を見送ってから、マリエールさんに一人追加した事を伝え、

 翠には食料や、身の回りのものはあらかじめ用意してある事もマリエールに伝える。

 

「さってと、行きますか」

 




短くなりましたが、物語を1話として切るポイントならここかなぁと
次は少々長くなる予定です。
相変わらずの戦闘シーンの苦手っぷりである。
私個人としては会話シーンとか考察シーンのほうがすきなのかなぁ。
いや戦闘シーン書きたいんですよ? キリト君TUEEしたいんですよ。

(´・ω・`)あやまって?
(´・ω・`)……
(´・ω・`)らんらん♪

FEZ面白いですよ? (白目になりつつ……


知らない人用の、二人のキリトの簡単な解説
シロエとロエ2みたいな関係をイメージしていただけるといいと思います。
ちょっとっていうか、かなり違うけど、そんなイメージで、別のキャラだけど、操作している桐ヶ谷 和人中の人は同じそんなイメージでお願いします。
Q.ロエ2って?
A.シロエの同アカウントのサブキャラです。詳しくはログ・ホライズンwikiかRoute43を読んで頂ければ……


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十六話

アスナ・エギル・サクヤ合流。
んでもって、領主会議編に突入。
初心者側の合宿はある程度領主会議が終わったら書いていく予定です。
流石に毎回別々の話を投稿するより、一気に片方終わらしたほうがいいかなぁ? と思ってです。



「なーんだろうな、キリトお前……」

「なんだよ、ミチタカさん」

「馬乗り慣れてるな、アインクラッドにも馬がいるのか?」

「ん、いるな結構コツいるんだけどな乗れたら結構楽しい」

「ほー、いつかは行ってみたいな、その浮遊城ってやつに」

「多分、近くない未来に叶えられますよそれ」

「ん、そうか楽しみにしておくぞ?」

「勿論、その時は歓迎させて頂きます」

 

 馬車を走らせながらそのような話をする。

 敵も出ず、平和なものだ。

 これからの事を考えると、非常に胃が痛くなるが……

 

「そういえば、キリト君のお連れの方々はどの辺りで合流予定なのかな?」

「エターナルアイスの古宮廷の手前の海岸辺り……らしいんですけど大陸が見えたらドラゴンに乗って、俺達の事探すらしいです」

「ほぅ……了解した」

「多分……直ぐに見つかるとは思いますけど」

 

 現実世界の恐らく高速道路跡地を進んでいくと、あちら此方に車だと思わしき物体がそこら中に放置されている。

 休憩時間に一度調べてみたが、凄い年月が過ぎてるぐらいしかわからなかった。

 昔はこれ使えたのだろうか?

 シロエ達に車の事を聞くと、ゲームだった頃にも車らしき残骸は存在したという答えだった。

 このゲームの設定はわからないが――、昔はこの世界には高度な文明が存在した……という事なのだろうか?

 

「さて、もう少しでエターナルアイスに到着するわけだが、キリト君のお連れから連絡は?」

「無い……ですね。時間がかかってるのかもしれません」

「先に古宮廷に入ってもいいのだが――」

「クラスティさん、その心配は無いようだぜ、後キリトから一歩下がったほうがいい」

 

 クラスティは俺の後ろを上方を見た後、眼鏡をスチャとしてから一歩下がった。

 俺は不思議そうな顔をして後ろを振り向くと、アスナが剣を輝かせながら突っ込んできていたのを、スローモーションで確認した後吹っ飛ばされた。

 

「キリトくーーーーーーん!」

「ゴハッ」

 

 一撃でHPが半分以上吹き飛ばされたのは、本当に久しぶりだ。

 

 

「えー……と改めて紹介する。 アインクラッドの攻略組みギルドの一つ血盟騎士団団長アスナ、シルフの領主……リーダーのサクヤ、そして商人のエギルだ」

「はじめまして、円卓会議リーダーのクラスティと申します、以後お見知りおきを……そして」

「同じく円卓会議の一人で、生産系ギルド海洋機構の総支配人ミチタカ」

「はじめまして、円卓会議所属、記録の地平線のシロエと言います」

「血盟騎士団団長を勤めさせていただいています、アスナといいます。 キリト君がお世話になりました」

「いやいや、彼は非常に私達に情報を頂いたので、こちらとしても助かりました」

「しかし、でもなぁ、彼女持ちかぁ……、んでもってシノンちゃんもキリトには興味ありそうなそぶりだったんだろ? キリトお前どんだけたらしなんだよ」

「たらっ……いや待て、俺の彼女はアスナだけなんだが」

「いや、垂らしだろキリトは」

「そうじゃな、垂らしだな、私の胸も触ってたぐらいだしな」

 

 ぷるんとサクヤは胸を揺らすと、アスナの顔が笑顔に変わる。

 その瞬間一番最初にその場所から逃げたのはミチタカ、次にシロエ、最後ににこやかにゆっくりとクラスティが離れていく。

 

「その事、私、初耳なんだけどキリト君?」

「ご、誤解だそもそも押し付けたのはサクヤさんと、アリシャじゃないか!」

「へー……アリシャさんにも押し付けられたんだ?」

「しまっ」

「すいません、円卓会議の皆さんちょーっとだけキリト君と話させてもらってもいいですか?」

 

 そのにこやかな笑顔に、クラスティは笑顔で頷いて、シロエとミチタカはそっぽを向いていた。

 

「あれは、怖い」

「おう、あれは怖いな」

「いやぁ、楽しそうな方ですね」

 

 なお、終始クラスティは楽しそうに笑っていた。

 

 

「さて、アインクラッド側の皆さんも集合して、にこやかな団欒を過ごされたとは思いますが、領主会議まで時間が無いので聞いていただきたい事があります」

「はい。なんでしょうか」

「まず第一に守ってほしい事があります、アインクラッドの事は絶対に公言しない事、向こうから問い詰められた場合は公表しても構いません、ですが基本的に秘密にして欲しいのです」

「わかりました。 次に何かありますか?」

「自由都市同盟には参加しないでいただきたい。 しかしこれはお願いです」

「――何故ですか?」

「簡単なお話です、冒険者と同等の力を持つ皆さん。そうですね<プレイヤー>と呼びましょうか、その人たちが大地人と手を組んで、冒険者を攻撃する可能性が出て来るからです」

「俺達が戦争すると?」

「そこまでは言いませんが……あくまで可能性の問題です」

「――サクヤさん?」

「わかっている。 その条件了解した。 しかし見返りが欲しい」

「見返りですか?」

「こっちがお願いを聞いているのだ、流石に報酬ぐらい欲してもよかろう?」

「……わかりました、それでなんですか?」

「まずは相互に連絡船を走らせ、貿易活動だろ? アインクラッドだけじゃできることに限りがあるからな、まぁそれでもアインクラッドは広いから殆どの事は出来るんだが」

「えぇ、今キリト君が言った事、行きたい人はアインクラッドにいけるようにします、そしてその逆も、これが一つ目のお願いです」

「一つ目? アインクラッドの事を公表しないという事の見返りですね、僕達からしても、そういう交流は随時やっていくべきと思っているので、歓迎します。 そしてもう一つは?」

「決まっています」

 

 その時点でクラスティは一歩下がったのを俺は見逃さなかった。 俺も慌ててクラスティの後ろに隠れるが、クラスティににこやかに避けられる。

 

「キリト君がこっちに来て、女の子に手を出していなかったか教えて欲しいです!」

「「…………」」

「愛されてるなぁ? 羨ましい限りだぜキリト」

「いやぁ、まさかそんな事を見返りに要求するとは――」

「シロエさんは最初に出会ったプレイヤーと聞いています! だから色々教えてくださいね?」

「教えてくださいって言われても――キリトはそんな女の子に手を出してるようには見えなかったけどなぁ」

「いーえ! だってキリト君なんですよ! 何か手を出している女の子がいるはずなんです!」

「――ねぇキリトいつも女の子に手を出しまくってるの?」

「そんな事するわけ無いよ……」

 

 とりあえず、色々あったが話は纏まったので、宮廷に向かおうとすると首根っこを掴まれる。

 何をするんだと言おうと振り向くと、アスナが笑顔で純白の服を俺に渡そうとしていた。

 

「えーとアスナさんそれは?」

「血盟騎士団の制服」

「もしかしてあれですか?」

「あれです」

「……いやまぁ、シロエにスーツ貰ってるからそれじゃダメですかねアスナさん」

 

 笑顔で此方に制服を持ったまま固まっている。

 後ろを見ると、エギルとサクヤはやれやれといった風に血盟騎士団風の純白のスーツっぽいのを着こなしていた。

 ていうかエギル断れよ! お前の容姿じゃ白スーツは似合わないだろ!

 数秒悩んだが、結局断る理由が思いつかず、その制服を受け取ろうとする。

 

「アインクラッドの皆さんは申し訳ないんですが……此方の制服に合わせていただけると嬉しいです。 なにせ相手には一緒の所属のメンバーと思わせたいので」

「むー」

 

 いやそんな顔されても、そもそも別々の制服を着るという選択肢はなかっただなと助け舟を出してくれたクラスティに感謝する。

 エギルはさも嬉しそうにミチタカから頂いた制服に早速着替えていた。

 俺もあらかじめ貰っていた制服に着替えると、アスナが嬉しそうな悲しそうな複雑な顔をしている。

 

「ど、どうしたんだよアスナ」

 

 そんなにこの服装似合ってなかったか?

 

「むー、なんとなく似合ってるのが悔しい。 やっぱりキリト君には濃い色の服の方が似合ってるのかなぁ……」

「俺はそんな純白の服装、あんまり着たくないんだけどな……」

 

 

 そして久しぶりにセルジアット公爵に会った俺は、軽く会釈をする。

 向こうが気づいたか、気づいてないかはわからないが――まぁ俺がここにいることはわかっているだろう。

 さてと、これからどうするか……

 

 まず第一の目標として、アキバの街と大地人の人たちの協力関係にする。

 ただし、協力関係であって、自由都市同盟には入れない事、じゃないとアインクラッドの事を内緒にする事ができないからな。

 次に――、ヒースクリフいや、茅場の動向を探る事だ。

 とりあえずこれが今後の目標であるが、『キリト』が教えてくれた、アインクラッドとこの世界の関係もできるだけ調べたいんだがそれはまぁ、後ででも大丈夫だろう。

 

「キリト君のスーツ姿……いいなぁ」

「アスナのドレスも似合ってるよ」

「そ、そぅ? ありがとうキリト君」

「やっぱりアスナは白とか赤のイメージがあるのかな? そういう系列の色のドレスが似合うんだろうな」

「そうだな、よく似合ってるぞアスナ」

「サクヤさんも素敵ですね。 ……けどちょっと胸強調しすぎじゃないですか?」

「使える武器は使っていく主義だからな」

「サ……いやなんでもないです」

 

 ここでサクヤさんも似合っていますね、素敵ですね的な発言をしたら間違いなく地雷だったろう。

 深呼吸をして、アスナにわからないほうにサクヤさんに手でグッドと伝える。

 するとサクヤさんは、笑顔で返してくれた。

 ふぅ……これが正解だろう。

 

「で、なんでサクヤさんに素敵って言わないの?」

「ちょっ!? 言ったらアスナ怒るだろ!」

「こういう場所だから、それぐらいわきまえてます!」

「……理不尽だ……」

「なぁエギルさん、二人はいつもあんな調子ですか?」

「ん、そうだなミチタカさんあれに周りに女の子がマシマシなのがいつもの常態だな」

「うへぇ……」

 

 クラスティとセルジアット公爵の話が終わったのか、受け入れてくれたのかわからないが、

 セルジアット公爵が、俺達にダンスを踊らないかと誘い始めた。

 確かに心地よい音楽ではあるが――、このような場所で現実世界で普通に暮らしてた人間が、ダンスを踊れといわれても踊れないだろう。

 そうこうしているうちに、シロエに白羽の矢が立ち、しぶしぶダンスをしに行った。

 

「他には行きませんか? そこの純白のドレスをきたお嬢さんとかは?」

「いえ、私は――」

「アスナ、一緒に踊ってくれないか? 二人なら大丈夫だと思う」

「キリト君……わかったわ任せて!」

 

 正直なところ目立つ行動はしたくない、しかし冒険者のイメージを払拭するのにはいい場所なのは間違いない。

 とはいえ――、最近やってなかったからどうだろうか、綺麗に踊れるだろうか、こんなことならもう少しキチンと練習しておくんだったな。

 先に踊っているシロエのほうを見ると、ヘンリエッタさんがリードする形でなんとか形になっている。

 まぁあの程度でいいのなら、アスナにあわせて踊るぐらいでいいだろう。

 本来ならば、男性が女性にアドリブを伝えて踊るのが社交ダンスなのだが――、そんな作法とか気にしている程上手くはない。

 

 アスナの動きに合わせてステップを踏み、ダンスを踊る。

 激しい動きは基本的にせず、ゆったりとして動きを選択してくれるアスナにあわせる。

 数分踊っていると、アスナが怒った顔で見つめてくるようになった。

 まぁ大体予想は出来る、なんでこんな事が出来るのか? と言ったところだろう。

 これぐらいは練習したからな、後で適当に言い訳考えないとな……

 




キリト「いやぁ、アスナと結婚考えてるならこれぐらいは……な」
アスナ「キリト君!!」

あえて入れなかった二つの文章。
別に入れても良かったんだけど結婚するって決まったわけじゃないですからね。

おや、後ろに誰かの気配が……


次の話は、
社交会? の後の夜のお話です。
ログ・ホライズン原作や、アニメではスキップされた部分ですが、そこでアインクラッドメンバーの会議じゃないですけど、会話を追加しようと思っています。
領主会議までの集合時間が無かったため、感動の再開を後回しにしたので、それの補填というか云々。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一七話

更新遅くなって申し訳ないです。
今日は合流後の夜のアインクラッドメンバーのお話。
基本的に現状のやり取りの交換って感じです。


「さてと、とりあえず久しぶりの再開を祝って」

「「かんぱーい!」

 

 ダンスパーティーの後の時間で、俺たちはアインクラッド組みに当てられた部屋に集まって食事会のようなものを開いた。

 俺は久しぶりにアスナにあうんだ、それぐらいしたって、文句は言われないだろう。

 

「まぁ、キリトなら無事だと思っていたが、まさかこんな状態になってるとはな」

「こんな状態?」

「この世界の政治のあれこれに巻き込まれてるって話さ」

 

 エギルが呆れつつ言うので、それに小さく頷く。

 

「俺だって、こんな事してるとは思わなかったからなぁ。 とはいえ明日もまだ領主会議は続くんだ、早めに切り上げて明日に備えよう」

「そのためには、お互いに保有している情報を交換しないとね」

「あぁ、アスナ頼めるか?」

「キリト君の頼みなら! そのかわりキリト君もこの世界の事教えてね?」

「あぁ、もちろん」

 

 するとアスナは何処からか、眼鏡を取り出して黒板を用意してくる。

 一体あのセットは何処で調達してきたのだろう。

 いやまぁ、似合ってはいるんだけど、こう若い教師みたいで

 

「とりあえずほとんどは前回報告したとおり、階層攻略は上にも下にもいけない状態になってて、ボスがとてつもなく強いの。 この世界の戦闘に慣れてないからアインクラッドの住人だけじゃ、ボス攻略は多分難しいじゃないのかな?」

「エギル、そんなに別格なのか?」

「んー、そうだな、SAO時代のボスをALOで強化されただろ? あれを更に強化した感じか」

「――、殆ど攻略不可能ってレベルだろそれ、あれ? そういえば23層のボスは……」

「23層のボスは、ヒースクリフがお助け人物を送ってくれて攻略できたんだ。 名前は確か――ユージオと言ったか」

「なっ!?」

 

 ガタンと椅子から立ち上がり、喋っていたサクヤに詰め寄る。

 エギル、アスナ、サクヤその場に居た全員が驚いていたが、そんな事を気にしている余裕は無い。

 

「ユー、ユージオだって? その武器とか姿とか教えてもらってもいいか?」

「あ、あぁ、武器は氷で出来た剣を使っていたな、後氷の魔法のような物も使っていた、防具は――、アリスさんに雰囲気が近かったか……?」

「あ、そういえばそうね、アリスの防具の雰囲気が似てた。 とは言っても銀の防具の下に青い防具を装備していたな」

「……ユージオがなんでこの世界に――」

「キリト君、ユージオの事を知ってるの?」

「――あぁ、『あの世界』の親友だ」

 

 けどユージオはあの時死んだはずなんだ。

 フラクライトはあの時に完全に消滅したはず、何故今更この世界に――

 そもそも、茅場と一緒にいる?

 

「キリト、そのユージオなる人物がどうかしたのか? 凄い難しい顔をしているぞ」

「あ、あぁいや――なんでもないんだ。すまないエギル」

「ねぇキリトユージオの事は聞きたい事があるんだけど、もしかしたらって可能性があるから聞くね」

「あぁ、どうしたんだよアスナ」

「サチって人知ってる?」

「え?」

「キリト君知ってるの?」

 

 何も答えず小さく頷く。

 遠い、非常に遠い記憶。

 『俺』からすれば、200年以上昔の記憶、いや『記録』と言ったほうがいいのか。

 

「知ってる。 けどまだこれ以上は話せない。 ごめんなアスナ」

「キリト、君……? うん、わかった。 話してくれるのを待ってる」

 

 間違いなく――、これは『俺』が話をしていい話ではない。

 いや、感じた事は間違いなく『俺』自身の体験だ、けどこのアスナは、『俺』のアスナではない。

 だから……二人のためにも、『俺』は今ははぐらかすしかない。

 

「とりあえず、明日も領主会議が続くので……俺達アインクラッド組が取るべき手段を考えよう」

「とるべき手段? 普通に冒険者と協力関係じゃダメなの?」

「基本的に、冒険者と協力関係を見せるというか、俺たちは『冒険者』として今は認識してもらったほうがいい……が」

「が? なんだよキリト、そんな意味深で止めるなよ」

「正直な話、『冒険者』よりも強い位置にいるのが俺達だ」

「何故そういい切れる? 俺達のスキルも、この世界にあわせて変更されてる。 そこまで差があるように思えないが」

「どちらかと言えば、慣れているこの世界の住人の方が強い気がするのだが……」

「まぁ俺達は実際に戦って、MMOを楽しんでいたと言うアドバンテージはあるが、それも慣れてきたら同等になるんじゃないか?」

「普通のプレイヤーは」

「普通の?」

「俺たちは知ってる、心意の力を」

 

 俺は心意の小太刀をイメージして放つと、SAO、ALO、アンダーグラウンドで発動した心意が発動する。

 その心意の小太刀は同じく、心意の小太刀を放ったアスナの心意で遮られる。

 

「少なくとも、俺たちはアミュスフィアか、ナーヴギア、もしくは、STLでログインしている事になる」

「心意の事は私にはよくわからないが――、少なくとも現実世界ではないという事か?」

「だと思うんだが……なんだろう、ただ、現実世界じゃ無いと言う一言では終わらせるわけにはいけない気がする」

「どういう事だ?」

「――まだこの世界の情報が少ないんだ、もう少し考えるべきだと思う」

「結局はそこに行き着くしかないか、とりあえず現状は冒険者に協力する事で決定だな」

 

 エギルがそう宣言し、そこにいるメンバーは大きく頷いた。

 その後、冒険者達の話をざっくりと話、こういう状況という事を伝えた。

 3人の質問等に答え、この世界の現状と言うのはある程度は理解できただろう。

 少し、『キリト』より情報量が多いかもしれないが、後で報告しておけば問題はないだろう、多分。

 

 アインクラッド組の会議が終わり、各々用意された一人じゃ大きすぎる部屋に戻りベットに飛び込む。

 さて、明日からが大変だ――。

 寝ようとしていたときに、寝室のドアが勢いよく開け放たれる。

 そこには寝巻き姿のアスナの姿があった。

 

「やぁ、アスナさん、どうしてそんなにお怒りモードなんですかね?」

「久しぶりの夜だからきっとキリト君のほうから、来てくれると思っていたのにいくら待っても来ないからです!」

「だって、明日は忙しいんですよ?」

「それでも!」

 

 そう言いながらアスナは布団にもぐりこんでくる。

 慌てて脱出しようとするが、既に逃げられないように手を持たれている。

 よこしまな考えが出る前に寝ようとするため、寝返りをうちアスナと反対の方向を向く。

 アスナは潜り込んで、枕辺りに顔を出したのだろう、耳元に息遣いが感じられ、ぞくっっとしたが意を決して寝ようと目を瞑る。

 

 スチャ

 

 布団の中でアスナのレイピアが俺の背中にいつでも攻撃出来ると言ったアピールなのか。

 

「アスナどうしたんだ? そんなに俺が怒らせたのか」

 

 そう言いながら体を起こそうとするが、アスナの声に止められる。

 

「動かないで! そのまま質問に答えなさい」

「本物のキリト君はどこ?」

「どうしたんだよアスナ、まるで俺が偽者みたいに……」

「うんん、あなたはキリト君に良く似てる。 うんん、違う。偽者じゃないけど、私が念話で話してたキリト君じゃない」

「……どうしてそう思う?」

「質問に質問で返すのは好きじゃないんだけど、じゃぁなんで貴方が、キリト君を庇う必要があるの?」

「伊達にキリトと共に、崩壊せずに生き続けた訳じゃない……か」

 

 心意の力を持って、レイピアと布団を蹴り上げ、そのままベットに座る。

 

「流石キリトの恋人……強い人格と言うべきか、すまないアスナ……さん。 俺はキリトであってキリトじゃない」

 

 アスナはレイピアがはじかれ、得物が無くなったというのに少しも折れずに俺を見据えている。

 

「じゃあなんだって言うんですか?」

「アスナ……さんには聞いててもらったほうがいいのかもしれない、少々長いけど大丈夫?」

「――最初に確認です。 キリト君は元気なんですか?」

「そもそもこの作戦考え付いたのは、そのキリト君なんだぜ?」

「え――?」

 

 その夜はアスナに向かって、数時間俺とキリトの関係を話す事になった。

 アスナは俺の話を聞いた後、皆には内緒にしないとねと、納得してくれた。

 

「そういえば……なんで今キリト君に連絡付かないの?」

「あー、名前変えてるからじゃないか?」

「名前を? どうやって?」

「そりゃ心意の力を使って、今は『翠』って名前の女の子プレイヤーだよ」

「お、女の子!?」

「あぁ、性別と見た目と名前をちょっと弄ってるんだ」

「……見たい」

「え?」

 




この世界にも心意の力はありました。
と言うか、この二次創作の設定の中では、
口伝=心意に近いものと言う認識だと嬉しいです。
オーバースキル=心意に近いもの、そんな認識でお願いします。

基本的に物語が動かないお話ですが、
それでもまぁ色々頭を捻るお話でした。
次はゴブリン襲撃の一方……と行きたい所なのですが、
リ=ガンとのお話をして、ちょっとこの二次創作の設定を公開していきたいと思います。
リ=ガンとの会話は、絶好の公開するチャンスですので……
基本的に原作のお話のあれこれはスキップで云々。
(多分次の投稿は遅れると思うので……すいませんがよろしくお願いします)


キャラクターネーム 『翠』
レベル  24
職業   守護戦士
サブ職業 片手半剣使い

もう一人のキリトによって、オーバーレイされたキリトの姿。
守護剣士という職業でありながら、盾を持たず、バスタードソードと呼ばれる重たい武器を両手や片手で操る。
盾で攻撃を受けるのではなく、剣で攻撃を受けると言った前衛のスタイル。
もう一人のキリトによって、見た目から全てを変更されている。
ガンゲイル・オンラインのキリコに近い容姿と想像していただけると嬉しいです。
ちなみに私の独断により性別は女の子にさえていただきました(ゝω・)テヘペロ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十八話

前回リ=ガンを通じて設定を公開するといったな、あれは嘘だ!
魂魄理論や、魔法の説明はざっくりカットしています。
気になる方はログ・ホライズン小説だと第3巻を、
Web版だとゲームの終わり(上)の025を視聴してください。
ここから独自設定をぶっこんでいきますが、真実かどうかは内緒です。
矛盾点ありますからねー。
キリト君はこう考えたんだーって程度で読んで頂ければ幸いです。


「それじゃ、昨日打ち合わせたとおりのの行動でお願いします」

「えーっと、シロエが学問ギルドとの食事会だったよな?」

「はい、そうですね。 クラスティさんには若手騎士との夜会に行ってもらう予定で……」

「俺はダルテ候との、晩餐会だな」

 

 スチャ

 キラン

  

「いやぁ、シロエ君、キリト君が俺役割なかったーって顔してるんだけど、他にお誘いされてた事ってありましたっけ?」

 

 スチャ

 キラン

 

「えぇ、本来は冒険者だけで大事な話は聞こうと思って、断ったお話があったんですよ、キリト君『達』にはそっちに行ってもらおうかと」

「げ……」

「アカツキを初めとするほかのフリーのメンバーは、できるだけ情報収集をお願いします」

「心得た」

「俺もそっちの方が嬉しかったんだけどなぁ……」

「まぁ、そんな仰々しいお話ではないから安心してください、いやキリト君にはぴったりの舞台かもしれません」

「そ、そうか、なんか不安なんだけどまぁ役割にあってるなら……。 皆悪いけど付き合ってくれ」

「あ、エギルさんはダルテ候との晩餐会……ミチタカさんと一緒に行動してください」

「ん? あぁわかったがなんでだ」

「商人の損得は一人で決められたら困りますから……ですわね?」

「まぁ、ミチタカさんは一人で利益を独占するような人ではないから大丈夫とは思いますけども」

「信用されているのか、されてないのかわからねぇなぁ……まぁ頼むわ、エギルさん」

「さん付けはいいですよ、エギルと及びくださいミチタカさん」

「俺もさん付けはいいぜ、ミチタカと読んでくれ」

「了解した」

 

 そういうと、エギルとミチタカは二人で今後の予定について話し合っているようだ。

 あの二人は、なんとなーく雰囲気が似てるんだよな、性格は多分似てないだろうけど。

 

「それで俺達は何に参加すればいんだ?」

「ちょっとした立食パーティですよ」

 

 その時の、シロエとクラスティの黒い笑顔を俺は永遠に脳裏に焼き付ける事になった。

 

「だー疲れた」

「ほんと、疲れたー」

 

 日が暮れた後、ようやく立食パーティーから開放された俺達は、中庭でだらしなく二人で座っていた。

 簡単に言うと、別に冒険者にお願いをする為のパーティーではなく、只の立食パーティーであったのだが……

 ほぼ全員の参加者が若い女連れと言う所で、俺は非常に嫌な予感がしたんだ。

 立食パーティーの参加者に話を聞くと、妻の紹介会のようなもので、話をすると自分の妻の紹介が始まるのだが――。

 そんな場所に俺は、アスナとサクヤさんを連れて参加したのだ、それにアスナは勿論可愛いのはわかりきっていることなのだが――、サクヤさんも和服を着こなし、アスナは洋服を着こなし、和洋美しい二人が俺と一緒にいたのだ。

 ……色々と本当に疲れた。

 

「サクヤさんは先に?」

「うん、先に戻ってもらった、サクヤさんはリアルじゃ普通の大学生だからね、こういう事には慣れてない見たいで……」

「まぁ、慣れてるほうが普通じゃないんだけどね、でもまぁあの視線は疲れた」

 

 この世界でもやはり、女の子を二人も、しかも綺麗な二人を連れているとなると……それなりに嫉妬の目で見られるらしい。

 そうしていると、舞踏会の音楽が風に乗って流れてきた。

 俺はその音と、風に目を閉じる。

 冷たい風が肌に当たって、心地よい。

 薄目を開けて隣に座っているアスナを見ると、アスナも同じように風と音楽を楽しんでいるようだった。

 

「SAOやALO、アンダーグラウンドとか色々な世界を見たけど、この世界もいいね」

「そうだな」

 

 音楽が止まり、数秒が経過した時、上の階のテラスからアカツキの声が聞こえた気がしたので上に登ると、アカツキとシロエが噴水の近くにいた。

 一瞬邪魔かなとは思ったが、流石に今日の立食パーティーの文句を一つでも言いたかったので、近づいていこうとする。

 シロエとアカツキは俺達の事には気づいていないらしい。

 

「キリト君、やっぱり止めておかない? アカツキさんなんていうか……二人っきりにしてあげたほうが――」

 

 遠目で二人の様子を見ると、アカツキがシロエに気があるのはなんとなくわかった。

 こう距離が近いのだ、アカツキとシロエが、俺もアカツキには敵意なんて向けられてないが、あそこまで近くで会話する事なんてないし、そもそも二人っきりと言うシュチュエーションは、この数ヶ月体験した事がない。

 

「だな、邪魔したら悪いし……っ!」

 

 言葉は引き下がる事を言っていたが、身体が真っ先に反応し剣を引き抜きながら通路を走り抜ける。

 アスナも同じように反応し、同じように魔力の力を感じたのだろう、レイピアを装備しシロエとアカツキの元に駆けつける。

 

「シロエっ!」

「キリト!」

 

 何がどうヤバイかは説明は出来ない、けど背筋に来る悪寒のようなものを感じた。

 シロエとアカツキも同じような感覚だったらしく、突然現れた俺達ではなく、気配を感じるほうを見ている。

 そこには少しよれよれになったローブを着た人が立っていた、青年と言うと少し違うが、とかいって中年でもないそんな齢の大地人が。

 

「はじめまして、ミラルレイクのリ=ガンと申します。 今宵はシロエ様を言葉を交わしたく参上しました」

 

 シロエ達ご一行は、リ=ガンと自己紹介をした人についていき、本棚が沢山の部屋で言葉を交わした。

 魔法の説明から入り、動作級、戦闘級、作戦級、戦術級、戦略級、国防級、大陸級、世界級に分類されるという話をした。

 シロエ達はピンときてなかった様で、リ=ガンの話を聞いていたが、俺はすぐさま理解できた。

 つまり、上位整合騎士の力が恐らく戦術級か、戦略級に当てはまるのだろう。

 試した事は無いが、心意の力を持ってすれば、国防級、いや大陸級の魔法だって可能だろう。

 

「リ=ガンさんだっけ? 概念は理解できるが、世界級の魔法になると――、あぁそうか<大災害>か」

「そうです、そちらの……キリトさんですね。 ご理解が早く助かります。 私のことはリ=ガンと呼び捨てで……」

「わかった、俺の事もキリトと呼び捨てにしてくれ」

「いやいや、私はさん付けが普通なので、そのままにさせて頂きますね」

 

 呼び捨ての方が気が楽なので、呼び捨てでと再度お願いしようと思ったのだが、愛嬌のある顔で言葉を呑みこまされてしまう。

 

「ちなみに、世界級魔法と言うのは森羅変転、ワールドフラクションと呼ばれています」

 

 その後はシロエのエルダー・テイルの公式サイトの情報を交えながら、歴史のお勉強だ。

 正直な話現実世界での歴史の点数は悪くない程度だったが、そこまで興味があって勉強はしていない。

 学校卒業後、大まかな歴史以外は忘れてしまうものだ、SAOやALOの歴史なら長々と語れるのだが。

 話は進んで行き、六傾姫が倒され、最初の森羅変転が発生し、亜人間が誕生した所まで来た。

 

「シロエ確認なんだが、シロエが始めた頃にはもう亜人間……ゴブリン系列はいたのか?」

「居たね、多分βテストからいたと思う」

「そうか」

「話を続けても?」

「すいません、どうぞ」

 

 そしてその亜人間に対抗されるために作られた数多くの種族、猫人族を初めとする4種族が作られたと、そして新大陸で人間達の力をもって生まれたのが古来種、ゲームで言うNPCのお助けユニットと言うわけか。

 ふと、ユージオもこの分類に配置されるのかと考えたのだが、今は考える議題ではないと頭を振って忘れようとする。

 どちらかと言うと、キズメルとかあっちの方がお助けユニットとしては一致している気がする。

 

「そしてこの世界の住人が希望を失って、絶望した240年前、冒険者が現れました……の前にですが」

「前に? 何かあったのですか?」

「えぇ、世界級の魔法とはいかないんですが、大陸級、もしくは国防級の魔法が行使された記録が残っているんです、たった一人の古来種によって」

「たった一人? シロエ公式にそんな情報は?」

「無かったと思う……そもそもそんな凄い事をした古来種なら名前ぐらいなら聞いた事があるような気がするけど」

「その古来種は、盾と剣を魔法を操り、神に匹敵する力を持っていたといいます、しかしそれでも国を一人では守りきる事ができなかった、だからその古来種は国の人々を、大陸の人々を呼べるだけ呼んで逃げたのです」

「逃げた? 何処に」

「空にです。 国、城と民と共に浮遊したのです。 我々はそれを浮遊城と呼んでいます」

「浮遊城アインクラッド……、リ=ガン、その古来種の名前は『ヒースクリフ』か?」

「ご存知でしたか、やはり冒険者知識もすばらしいですね」

 

 繋がった、いや繋がってしまった。

 茅場は何らかの手段を持って、この世界に来て浮遊城を作り出したんだ。

 そしてそれをネットゲームとして持ち帰ったという事になるのか? いや違う――、何かが違う。

 

「その後その古来種の姿は見ておりません、兎も角その魔法が行使された後、冒険者達がこの世界に降り立ったのです。 その後のお話は皆さんの方が詳しいと思いますが……?」

「そうですね、貴重なお話をありがとうございます。 お話の途中に出てきた魂魄理論についてお聞きしたいのですが」

「えぇいいですよ、少し長くなりますがよろしいでしょうか?」

「僕は問題ないです、キリト達は?」

「あ、あぁ大丈夫だ続けてくれ」

 

 魂魄理論と言うのは非常に興味深い内容であった。

 ただ――、その理屈で行くと俺達がこの世界で復活するたびに、記憶が失うというリスクが判明してしまったのが、非常に問題点であったが。

 確かにその理論で行くと、ALOでもGGOでも普通のMMOなら復活しても記憶を失うリスクは無い。

 そして、それがMMOと言うゲームであり、そういう物なのだと、皆が認識しているものだろう。

 しかし――、なんだろうかこの気持ち悪さは、のどに魚の骨が詰まったような気持ち悪さだ。

 気づかないといけない問題に、気づいていないと言うか……。

 

「でもキリト君、その魂魄理論から行くと、旧のアインクラッドや、アンダーグラウンドは何か違うね」

 

「それだっ!」

「えっ?」

「それなんだよ! アインクラッドは死亡すれば本物の肉体が脳が焼かれて死亡した、そのせいで大勢の死者を出した。 アンダーグラウンドはあの世界の住人は、死亡したら二度と復活する事はできない。それはクライン達に限っても同じことが言える」

「あ、そういえば、アンダーグラウンドにコンバートできたALOのプレイヤー達は……」

「ALOサーバーに残っていたデータを復元させた」

「キリト一体どうしたの?」

 

 シロエ達が不安そうに俺を見るが、それを気にしている余裕は無い。

 あの世界とアインクラッドは非常に似ている、そしてこの世界に通じるものがある。

 即ち何かが繋がっているのだ、俺達の知っている世界とこの世界で。

 

「そ、そうか……アインクラッドの設定やプログラムは天才と呼ばれた茅場が一人で作り上げたというのを雑誌で見たことがある、そして後から聞いた話だが、アンダーグラウンドはザ・シードを使ったのではなく、アインクラッドのデータを流用して作り上げたと聞いている」

「つまりキリト君、アインクラッドと、アンダーグラウンド、そして……エルダー・テイル全ての世界に共通している人物が……」

「ヒースクリフ、茅場晶彦という事か」

 

 ふぅと一息をついて冷静になると、シロエとアカツキとリ=ガンが此方をじっと見ていた。

 説明しようかと思ったが、流石に長くなるし、そもそもこの問題は聞いてる人間が多いほうがいいと判断しその場では言わないようにした。

 

 次の日、テラスでのんびり座っているシロエとアカツキを横目に、俺は一人になれる場所を探した。

 野外に丁度いいテーブルがあったので、そこに座っていると、追いかけてきたのかアスナが俺の隣に座った。

 

「それでキリト君、魂魄理論とは何かが違うって思ったんだけど、何が違うかキリト君わかるの?」

「ん、あぁえっと仮説だけどな」

「わかりやすい例がアインクラッドだな、あの世界は元々は復活が出来る世界だった。 魂魄理論で行くとアバターと操作している人間は別の場所にいたからな」

「でもあの世界、SAOは実際に操作してるよね?」

「そうだな、でも考えている脳はその世界にはなかった、つまりシロエが考えた、PCを操作自分と、操作されているアバターに区分される。 まぁそういうシステムだったからと言う一言ですむかもしれないが、でも本サービス開始にあの世界で死ぬと、現実世界の脳がつまり魂が壊される事になった」

「だね、HPがゼロになった瞬間ナーヴギアから電磁波が発生させられ、脳を焼いたんだよね」

「だな、でもアインクラッドではALOと違い、復活猶予時間はなかった。 アバターから魂が抜け落ちる前に、プレイヤーの脳を焼き切っていた。魂魄理論とは何かが違う部分だな」

「そもそも、アインクラッドはゲームの世界だったんだよ? 魂魄理論が立証されるわけがないと思うんだけど」

「俺もそう思っていた、けど大事な事を忘れていたんだ」

「大事な事?」

「俺達はアインクラッドで死亡したプレイヤーは、脳をナーヴギアによって焼き切られていたと考えていた、いや実際にナーヴギアの大出力の電磁波で殺されたのだから間違いじゃない」

「何が言いたいのか話が見えてこないんだけど……」

「もしだ、もしもの話だがそれが、魂と魄をアインクラッドから抜き取るための演出だとしたら?」

「どういう事?」

「アバターはデータが残っている以上消える事はない、そしてもし……何らかの形で魂をコピー保存する事ができたのならば……、この世界でユージオとサチが居た事も納得がいく」

「だからキリト君、あの世界は仮想世界であってゲームの世界なんだよ? 魂魄理論とか……、そもそも世界が違うのに」

「だから大事な事を忘れたいたんだ。 ナーヴギア、アミュスフィア、STLさまざまなマシンで俺達は仮想世界に乗り込んでいた」

「それがどうしたのよ、仮想世界は仮想世界でしょ?」

「いや違うんだ、ナーヴギア、アミュスフィア、STL……ナーヴギアとSTLだけに共通する特徴があるんだ。 それは現実世界の身体を一切認識できない事、アミュスフィアは電磁波を弱めているせいで、GGOの時に確かにアスナに握られている感触をゲームの中で感じた、けどもし根本が間違っていたら?」

 

「つまり、俺達は仮想世界じゃなく、エルダー・テイルの世界に……別の世界にログインしていたのかもしれないと言う話だ」

 

「これは仮説であって、まったく違う検討違いなのかもしれない、けど魂魄理論、森羅変転……そしてヒースクリフ」

「そもそも、ヒースクリフ一人であの世界の全てをプログラムで作り上げるのことが本当に可能なのか? 一人で作り上げるとなると何十年かかると……いくら天才でも限度がある」

「でも全部想像上の仮説……だよね?」

「あぁ、実際にヒースクリフに話を聞いてみないとわからない。 もしかしたら何を言ってるのだキリト君と笑って蹴られる話題かもしれない、そもそも矛盾点が多く存在するし、なので他のプレイヤーには内密で頼むアスナ」

 

 リ=ガンとの会話中、アスナとの会話中熱くなってこれが真実だと思い込んでしまったが、違うかもしれない、というか多分違うのだろう。

 笑ってヒースクリフに蹴飛ばされる未来が微妙に見える、なのでこの過程が真実だと思える事態があれば、皆に言う事にしよう。

 

「本当のキリト君にも?」

「内緒で」

「わかったわ」

 

 わからないことだらけだ、それに俺の仮説は間違ってるかもしれない。

 魂魄理論……森羅変転……浮遊城アインクラッド、そして――ヒースクリフいや茅場明彦、真実を見つけ出してやる。

 アンダーグラウンドを一日でも長く生存させるために、茅場の知識が、理論が必要なんだ。

 

 ピロピロピロピロ

 決意を新たにしていると、いきなりの電子音にビックリする。

 それが念話という事に気づきあわてて通話のボタンを押す。

 

「キリトか!」

「キリト君かどうしたの?」

「緊急事態だ! サファギンが初心者の合宿を襲っている! 援軍をっ!」

「何? 何対ぐらいだ? 数百対ぐらいならそっちにいる引率のメンバーでなんとかなるだろう!」

「数千を超えてるよ! 問題はそこじゃないっ! はぁっ!」

 

 途切れ途切れに剣の音が響く、恐らく戦闘中に念話を繋いでいるのだろう。

 

「山の向こうに数万の規模でゴブリンも接近中だ! くっそこれ以上念話が……円卓会議に急いでっ!」

 

 その言葉を最後にキリト……今は翠だったか、翠からの念話が途絶えた。

 

「どうしたの?」

「……少なくとも俺達の世界の事を考えている余裕は無くなったみたいだ。 直ぐに円卓会議に相談しないといけないと!」

 

 俺は足早にシロエ達が恐らくいるであろう、テラスに向かう。

 その途中にひらめきの様な物を感じ、此方に向かっているだろうタカシに念話を繋ぐ。

 

「騎士タカシかっ! 今すぐにザントリーフ地方に向かってくれ!」

「でも、地図が」

「そうかしまった……地図が無いのかっ」

 

 今すぐ俺がタカシにこの辺の地図を渡すか? いやしかし俺はキリトではないので空を飛ぶ移動手段が無い、かといってアスナに頼むか……。

 

「あれ? いえ地図に書いてあります、ザントリーフ地方の事も」

「何? なら直ぐに向かってくれ!」

「み、皆はどうします?」

「その皆が必要なんだ!」

「りょ、了解しました」

 

 恐らくアインクラッド組として出来る最善の、尚且つ最速の手だろう。

 後は――、大地人と、冒険者の問題だ。

 シロエは死んだ時のデメリットを知ってしまった。

 つまり、円卓会議は死のデメリットを知ってると考えたら、大地人がお願いします! と言う一言で冒険者が動き出すわけには行かないだろう。

 まだ、大地人と、冒険者が互いの事を知っていない状況で……。

 

「けど、それでも俺は、護ってみせるこの世界の人間も、あの世界の人間も全部!」

 




ログ・ホライズンの脚本? にはシロエ達が眼鏡を光らせる事をスチャルとなっているらしいです。
スチャルと書こうか、2分ぐらい悩みましたという話。

後もう1話書いてから、合宿組みに移る予定です。
若干キリト君と性格が違うのは、やっぱり別の人生歩んでるせいだからと思ってください云々。
(キリトなら迷わず助けに行くと思いますはい)

魂魄理論のあれこれについて、
初めてに言っておきますミスリードです。
こうやって書くミスリードはミスリードといえるかどうかわかりませんが、
こう書いておかないとおかしいと感想や、評価されるんじゃないかな? と思ったので書かせていただきました。
(評価はあらすじに評価しないで>< でとは書いてるんですけどね)
まぁここにこう書くこと事態が、これって違うんだーって思わせること事態ミスリードかもしれませんが(白目
お遊び設定かもしれませんが、第四世代型フルダイブ実験機で別の世界に云々。

1話が長くなってしまいましたね、まぁ一つの山場という事で……
同時に非常に読みにくくなっていますけれども……、
次の話も山場になる予定ですのであしからず。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第十九話

とりあえず異世界の守護者編はこれにて終了。
次は、合宿組みのお話で、アインクラッド組が少し合流予定です。
ざっくり紹介しすぎですね。
レイネシア姫の演説聞きたい人は、ログ・ホライズン見てどうぞ。


 ザントリーフ地方襲撃の一報は、大地人と冒険者双方に伝わったらしく。

 俺達も朝から<<冒険者>>の一人として円卓会議用に誂えた会議室に集まっている。

 そして今、俺は円卓会議が得た情報を、念話ネットワークを通じて、聞いている所だ。

 

「イベント、ゴブリン王の帰還ね」

 

 シロエ達からの情報を頭で整理する。

 この世界がまだゲームだった頃にあった、定期イベントで、それまでの準備期間をキチンとしておけばそれほど脅威になるクエストではなく――。

 そももそもレベル90の冒険者にとっては、それほど難しいイベントではないと。

 しかし――、ゴブリン襲撃とサファギンの襲撃ポイントが不味すぎる、『キリト』達がいるとはいえ上級プレイヤー数十人単位では、初心者プレイヤーを護れる数ではないか。

 それにプラス……場所的に村が狙われる。

 大地人達の村が。

 

「キリト君、二陣の事――」

「で、円卓会議としては、派兵するのですか? するのでしたら俺も一緒に行きたいんですが」

 

 アスナが、船で向かっている仲間について言おうとした所、言葉を重ねて封殺する。

 別に言っても問題は無い――、問題はないが、シロエ達にはいや、大地人の連中には知らせたくない。

 そして恐らく、現状では円卓会議は派兵する事はしない――、いやできないはずだ。

 

「キリト、わかってて言ってますよね?」

「さて……な。 何のことかかわからないな俺には」

 

 あえて首を竦めて答えると、シロエの厳しい目線が俺に突き刺さる。

 

「確かに、我々はあそこの村等を救う力を持っています、けど同様に助ける義務はありません。 可哀想だからと言う理由だけで助けたら大地人とのこれからの関係が面倒な事になってしまいます」

 

 だよな。 ここまでは概ね予想通りと言った所か。

 さてどうするかと椅子にもたれ掛ると、横に座っていたアスナが立ち上がった。

 

「だからと言って、大地人の人たちを放置するのですか! あの人たちだって生きているんですよ! この世界で」

「……」

 

 SAO時代に、NPCを犠牲にしてボス攻略をしようとしてた人間とは思えない言葉だな。

 成長した――、という事になるのだろうか。

 

「アスナ、別に円卓会議のみんなは助けたく無いって思っているわけじゃないんだ、そこは酌んであげてもいいとは思うんだが」

「けどっ!」

「ま、アスナの言いたい事もわかるんだけどな。 円卓会議に伝える。 我々は独自のルートを使って数人の腕利きをザントリーフ地方に援軍を送り込む。 これで少しは時間稼ぎが出来るはずだ。 その間に大地人との話を付けよう」

「独自に……? それはクラインさんやシノンさんの事か?」

「いや――、俺の大切な仲間達だ」

「アインクラッドから派兵という事で?」

「腹の探りあいになりそうだから、援軍の事はこれからノーコメントで頼む。それよりもシロエ、どのような形であれ派兵になれば、冒険者側も無傷ではすまない。この意味わかるよな?」

 

 シロエに意味ありげな視線と、言葉を向ける。

 シロエは難しい顔をした後、ぽつぽつと不死身の冒険者に降りかかるリスクについて円卓会議に話し始めた。

 

「俺たちの復活、不死ともいえる力には、リスクがあると、シロエが言った仮説は多分合っていると思う。 俺もその話を聞いている時、傍にいたからな」

「そうでしたか、なるほど派兵を断るのには最高の武器……と言った所ですか」

「そこまでは言わないけどな、俺たちの援軍で多少なりとも時間は稼げると言ったが、時間は殆ど無い。 大地人は俺たちに派兵をお願いするしかないはずだ、先ほどのシロエ達の話によると、イズモ騎士団は存在しないだろうしな」

「それで、キリト君、君はどうしたいのですか?」

 

 クラスティににらみつけられるような視線を投げられて、それに対してにらみつけることでやり返す。

 そんな、腹の探りあいなんて、『王』としていた時に、何度もさせられたんでね。

 こんな修羅場何度も乗り越えてるだよクラスティさん。

 

「どちらにしても、今領主会議を行っている大地人の人たちに、俺たち冒険者も領主会議に参加しろと打診があるはず、そのときにその領主会議で俺たちが取る選択を今のうちに決めた方がいいと思うのだが」

「もっともの意見ですね、キリト君はどうしたいと思っているので?」

「俺は「アインクラッド」としては賛成も反対もしない」

「ほぅ……?」

 

 アスナが何かを言いたそうに此方を見てくる。

 まぁ大体予想できる「キリト君」なら絶対に出助けしていたのに! と言った内容だろう。

 

「個人としては、派兵には賛成だ。 しかし戦うのは恐らくアキバの町に居る冒険者になるだろう、ならば俺たち余所者がとやかく言う筋合いは無い」

「なるほど、逃げの口上としては最高の一言ですね」

「言うなよ、クラスティさん、『アインクラッド』をまだ<<冒険者>>の一員になっていない以上、こうするしか出来ないんだよ」

「わかってますよ、多分『アインクラッド』からすれば、それは最高の一手だ。 それにキリト君なら困った時には手助けしてくれると信じていますよ?」

「信用してくれて助かるよ、クラスティ殿」

 

 その後の話し合いの結果、とりあえずあいての腹を探り合って、どうするか決めようという事で落ち着いた。

 シロエは派兵に賛成するという形で、話を持って行き、相手の情報をさぐる。

 逆にミチタカさんは、反対するという形で、相手が冒険者の派兵をしてくれそうな情報等を引き出すという形らしい。

 円卓会議がそう決めたのならば――、別に構わないが、なんだろうか腑に落ちない部分が俺の中に渦巻いていた。

 

 そうこうしているうちに、大地人に呼ばれて、俺たちは領主会議に参加することになった……のだが。

 

「話が進まねぇ……」

 

 大地人から教えられた話は、明らかに話を長引かせて、冒険者側に何とかしてもらおうと言う魂胆が見え見えだった。

 シロエが、イズモ騎士団の事を問うと、向こうはまるで派兵しないこちら側に非があるのかというぐらいの勢いで話し始める。

 確かに、気持ちはわかる、が<<冒険者側>>の立場としても困ってます? じゃぁ助けます! と言いずらいのが現状なのは間違いではない。

 

「それではいったい何のための<<冒険者>>ですかっ! 不死不滅このような能力を神から授かり、更には貴方方は我々とは違い力を持つもの! 大地を救う義務があるはずだ!」

 

 領主会議の中で、一人キリヴァ候が焦りを併せ持った顔で、俺たち<<冒険者>>を攻め始めた。

 ゴブリンが出現した位置から考えると、次に狙われるのはツクバの街、そりゃ焦るもするだろうが――、その発言はいけない。

 

「そんな義務聞き覚えはありませんね」

「なにっ! 死ぬ事を知らない身体を持ち、大地人よりも屈強な身体を持ち、この世界への義務を放棄するつもりかっ! どうしてこう<<冒険者>>は怠慢なのだっ! 人々を助ける力を持ちながら、何もしない……、恥を知れ!!」

 

 キリトはすかさず言葉を入れようとしたが、ミチタカさんがその腕力を使ってテーブルに拳を無言で叩きつける。

 

「ふざけるな……。 俺たちは死なない、力を持っている。 だからその能力と力を持って、大地人に命令されるようにゴブリンたちを討伐して来いだぁ? 大地人が不死の存在ならば、自分達の民にそんな命令ができるのかお前達は! お前達は死なない、だからやられても何回も挑んで、ゴブリンたちを討伐しろとそんな命令が許されるのが領主と言う存在なのか!」

 

 まだまだ何かいいそうなミチタカさんであったが、シロエが腕を引きミチタカを椅子に座らせる。

 

 沈黙。

 ミチタカさんの怒りは最もであったが、その怒りのせいで話をし辛い空気を作ってしまった。

 シロエのほうとチラリと見るが、困った笑みを浮かべられてしまった。

 どうしようか? と思考する。 どうにかする手はある、しかしその手札のカードは一度きってしまうと二度と使えないものになる。

 報酬は、大地人とアキバの円滑な関係か……。

 

「意見いいだろうか?」

 

 俺はそう言いながら席を立つ。

 セルジアッド候に手でどうぞとされたので、発言を開始する。

 

「まずキリヴァ候、ツクバの街の事を考えての発言、感服いたします。 自らの民の為に自分を犠牲にするその心、領主として……上に立つ人物として、尊敬に値します」

 

 無論キリヴァ候は、そこまで考えて発言したとは思えないが、民の事を思っての発言なのは間違いではない。

 

「ミチタカ殿、ミチタカ殿はキリヴァ候の発言は容認できないものだとは思いますが、見方を変えてみては如何でしょうか?」

「見方を?」

「民の上に立つ者として――、冒険者の力を借りなければツクバの街が滅ぶ、と」

 

 キリヴァ候の立場としては、これで俺の意見に乗っからないと、自分が不利になったと気づいたはずだ。

 

「上に立つ者としては、偶には泥を被らないといけない時がある、キリヴァ候としては、先ほどがその泥を被る時だったのだろう」

「あぁ、その通りだ――」

「しかし、キリヴァ候に問いたい。 キリヴァ候の領地がもし力を持つ者達として、アキバの民が力を持たぬ者達だとして、キリヴァ候は民に人の領地に行って、戦って死んで来いと命令が出来るかね?」

「それはっ……」

「命令は出来るが、そんな事では民からの信用は落ちるだろうな。 それとキリヴァ候を初めとして、領主の方々は勘違いをしていらっしゃる」

「勘違い……だと?」

「<<冒険者>>は確かに強い、力を持つ者達だ。 しかしこの者達は彼等のリーダーと言う形を取っているが、彼等には民に命令権は一切無い。 そもそも騎士団なんてものはアキバの街には持っていない」

 

 そう、アキバに居るのはギルドに所属しており、ギルマスの『お願い』を聞くメンバーか、自由に動き回っている人たちしか居ない。

 ギルマスの命令は絶対ではない、断ろうと思えば断ることが出来るし、そもそも気に食わないならギルドから抜ければいい。

 故に、ギルマスからの絶対的な命令は基本的に存在せず、『お願い』であると俺は思っている。

 

「ではどうすればいいのだ――。キリト殿、我々大地人は<<冒険者>>のような力を持ち合わせておらず、騎士団はゴブリンの襲撃に耐えれる者ではない。 そうなれば、冒険者の力を借りたいと思ってしまうのは当然の事であろう!」

「……落ち着いてくださいキリヴァ候」

「そもそも、キリト殿はどちらの味方なのですか、どちらにも付かないような発言をして、我々を試しているのですか? そもそも援軍等する気が――」

 

「落ち着けと言っている! そなたは領主という立場の下、民の上に立つ人物であろう。 その民の上に立つものが慌ててどうする!」

「なっ……、慌てるに決まっているだろう! このまま傍観していると、その民が殺されてしまうのだぞ!」

「だから落ち着けといった! 民の事を第一に考えているのならば――、民の事を考える上に立つ人間ならば、冷静になんとかするしかないと何故わからない! 貴様の発言と行動には、ツクバの民の命がかかっていると何故わからないのだ!」

 

 キリヴァ候が椅子に座るのを横目に見ながら、言葉を続ける。

 人の上に立つ者は何事が起きても冷静で居ないといけない、それはアンダーグラウンドで『王』と言う存在に居た時に、皆が教えてくれた事だ。

 そう――、この議会を傍観し続けているセルジアッド候のように。

 

「ここにいる円卓会議のメンバーも、そして俺も間違いなく誰も死んで欲しくないと思っている、しかし円卓会議は貴方達とは違う、民の上に立つ人間ではない。民と同じ地位の一人の人間だ」

「で、ではキリト殿は?」

「当たり前だ、人に死んで欲しいと、何とかできるのにそれをしない人間が何処にいる。 それに俺は――、人の上に立った事がある人間だ。 キリヴァ候の焦るもわかるが、一度落ち着いてみたらどうだ?」

「お、落ち着いて事態が好転するのか? しないだろう? ではどうすればいいといいのだ」

 

 しかし――、しかしながら、俺はセルジアット候の笑みを見逃さなかった。

 恐らく、愛娘が暴れるタイミングがやってきたのだろう、キリヴァ候が少し落ち着いた良いタイミングと言わざる終えない。

 

 ここまでは予想通り――、後は……<<冒険者>>の『善意』に賭ける。

 キリヴァ候が椅子に座り込む、そしてやってくる静けさ、誰も発言しないこの瞬間。

 この瞬間を俺は待っていた。

 

 手札と言うのは、場面を間違えると只の普通のカードになる。

 しかし、場面を読み、空気を読みカードを切るとそれは『切り札』となる。

 これも皆が教えてくれた事である。

 

 扉がゆっくりと開けられ、ドレスに包まれた少女がこの領主会議に挑んできた。

 

 その名は、セルジアット候の娘『レイネシア』

 そして、俺がこの世界に来て、手に入れたカードの一つである。

 

 突然の登場に、他の候達は、口をあけてレイネシアの褒め言葉を口にした。

 美しいお嬢さんや、今日の召し物もお似合いである等――。

 まるで、今まで話し合ってた議題に関してレイネシアは関係が無いような話し方だ。

 いや実際問題関係が無いのだろう、貴族社会において女性は、表舞台でないのが一般的だ。

 此方をちらりと見た気がした、多分気のせいではないだろう。

 このタイミングで入ってくるように連絡したのは、俺なのだから。

 後はこの領主会議中、『お供』をしているクラスティに任せよう。

 恐らく、そういう展開になって行く筈だ。

 

 レイネシアはクラスティに向かって、アキバの町に義勇兵を募る事を伝えると――、他の候からは否定的な意見を口にした。

 それはそうだろう、そんな事は<<大地人>>のTOPたちには考え付かない事だろうだから。

 レイネシアには義勇兵の事は伝えた、可能性の一つとして、義勇兵を誰かがアキバの町で募る事は出来ると。

 それしか俺はレイネシアには伝えていない、その後の事はレイネシア自身が何かを考えて行動するだろう。

 

 イズモ騎士団という物が存在しない事を領主会議の場で発現し、候達から避難の声が会議室に木霊する。

 ――、此処まで来て俺はレイネシアが何を考えてるか図れないレベルまで達した。

 義勇兵の事だけでは、若輩のレイネシアではきつかったか――?

 

「何を考えているのですか?

「……クラスティさんにもわからないことがあるのですね、なーんにも考えて居ません。けど、私はコーウェン家に連なる身分として失礼をしたくはないのです」

 

 そこまで言って俺は、黒い大剣を実体化させ床に突き立てる。

 同時に、シロエが指をぱちんとならして静寂をこの場所に用意させた。

 シロエを見ると、口元だけの笑みを返してきた。

 考える事は一緒だったか。

 

「<<冒険者>>は自由なのです。 私達より自由な人間なのです。 私達は<<冒険者>>より弱い人間です。 けど、だからってその弱さに居座っていい訳が無い、我等が弱いからだと言って、その弱さを理由にして自由な<<冒険者>>を道具として扱っていいはずが無い!」

 

 静寂が続く、多分候達には自由と言う言葉が理解できないのだろう。

 我々よりも強い人間達が、一人一人自由だなんて、そんな文化に触れたことが無い人間からすると、ありえない事なのだろう。

 恐らく喋っているレイネシア自身も、理解はしているが――、想像なんて出来てないだろう。

 だけど、それでも――、レイネシアにその事を教えた<<冒険者>>は間違いなく自由だったのだろう。

 とある町の一番上の者でありながら、自由な行動を行ったのだろう、それをレイネシアは見たのだろう。

 

「クラスティ様は仰いました。 <<冒険者>>は自由だと。 そして<<冒険者>>は自由だと仰ったのはクラスティ様です、ならば私が直接アキバの街に行って、直接<<冒険者>>達にお願いするのは止めはしないでしょう。 <<冒険者>>は自由なのですから!」

 

 そう――、冒険者というか、俺達は自由なのだ。

 たとえばクエストでも、○○を助けてくださいというクエストは、気に入らなかったら受けないし、受ける義務は無い。

 それを選択するのはその冒険者なのだ。

 レイネシアの場合も同じである、レイネシアのお願いは、聞くか聞かないかは、<<冒険者>>一人一人の意思なのである。

 

「10人でも、15人でも力を貸してくれる『人』を探します。 自由な彼らにお願いするのならば、命令と言う形じゃだめなんです。礼を尽くすのは当たり前なのです。 礼を尽くすのは言葉を飾るという事ではありません、その事は祖父から教えられました。 だから――、だかれこそ私は人として、人に懇願したいと思います!」

 

 口角が上がる気がした。

 

「後は任せて良いか? シロエ君」

「お断りします。そんなもったいない」

「ではキリト君は?」

「残念ながら、仲間達が向かっているので合流をしたいですね」

「……では、ミチタカ殿だ」

 

 クラスティは、レイネシアをエスコートし、バルコニーの方角に走る。

 その後ろにシロエとアカツキ、俺はその後ろからアスナを手を引っ張りながらバルコニーに走った。

 

「アスナワインバーンの笛を!」 

 

 シロエとクラスティの笛の音を聞きながら、アスナもようやく見つけた召喚笛を吹き鳴らし、召喚したワイバーンに飛び乗る。

 

 夜の空に3匹の騎乗竜が飛び出した。

 

 

 アキバの街だけが、街灯などの影響で光り輝いている。

 夜にワイバーンに乗ることが無かったから、夜のアキバを空から見ると言うのは初体験だ。

 

「ねぇキリト君聞いていい?」

「何だ?」

「何で、円卓会議も領主会議も素直に助けて欲しい! 助けてあげる! っていえなかったの?」

「……簡単な話だ、円卓会議は兵を持っていない。 領主会議の連中は、無条件に<<冒険者>>に戦場に出てもらうしかなかった」

「え?」

「円卓会議側から言うと、シロエ達はアキバの上に立つ人間だが、アキバの人たちに命令権があるわけじゃない、それはシロエ達もアキバの街にいる一人の自由な冒険者だから。 もし円卓会議の『命令』と言う形でアキバの皆に助けて欲しいといった所で、反発する意見が出てくる可能性がある。 だから本心はどうかは知らないけど、二つ返事で助けるといえない立場だったんだ」

「えーっと……、SAOの時に私がNPC利用してフィールドボスを倒そうと皆に命令したらキリト君が反発したのと同じような感じ?」

「かなり違うと思うけど、まぁイメージ的には合っているのかもしれない、自由に生きている人たちに、命令するのは反発を生むのは間違いないから、ほらイベントクエストがきても、受ける受けないのはプレイヤーの自由だろ?」

「まぁ、そりゃそうね。 それじゃ領主会議側はなんでお願いが出来なかったの?」

「俺はそっち側じゃないから、憶測になるんだけど、貸しを作りたくなかったという事だと思う。 後あれだろうな、<<大地人>>からしたら<<冒険者>>は無能で報酬さえ出せば、ほいほいとクエストを受注して、戦場を駆ける物だと思ってるからというのもあると思う。 それに……こういう『イベント』には<<冒険者>>は頼まなくても動いてたのは今までのゲームだった時代の話もある。 というのもあるだろうな」

「あぁそっか、今まで何も言わないで駆り続けていたモンスターを、急にやらないようにやったら、領主会議側はビックリしただろうね」

「だからこそ、あの発言だったのだろう、何か大変な事が起きれば今まで<<冒険者>>達はその力を持って、その脅威を払ってきたからな」

 

 無論、他にも色々理由がありそうだが、詳しい事はシロエに聞いて欲しいなと思ったのは内緒である。

 俺が喋ると偏った意見に成りそうだし、シロエのほうが正しい見方をしている気がする。

 眼鏡をキラーンとさせながら、うきうきと語ってくれるだろう。

 

「だったらキリト君!」

「話は後だ、そろそろアキバの街に到着する」

 

 振り返ってまだ疑問が残っているアスナが質問しようとしてくるのを遮り、ワイバーンの操作に集中するように促す。

 アスナはワイバーンを操り、クラスティが着地し、シロエがその後ろに着地した、アスナはその後ろにワイバーンを降ろす。

 

「どうするの?」

「アスナはレイネシア姫のサポートを、多分『いろいろ』忙しくなると思うから!」

「わかったわ!」

「俺は置いてきた、サクヤとエギルに今後の事を話しつつ、恐らく広場で人を集めて演説になると思うから、そのときに合流しよう」

「了解!」

 

 サクヤとエギルには、難しい議題だろうがミチタカさんのサポートに回ってもらうように指示し、もう一人の俺に連絡を付けた。

 

「そっちはどうだ?」

「結構しんどいな、今ログ・ホライズンのミノリが指揮をしていろいろ頑張っているけど、中々しんどいのが現状だ」

「そうか……、明日にはアインクラッドから何人かの援軍がそっちに行くからそれまで持ちこたえてくれ」

「あぁ、わかった――。 それとさ、俺のこの姿いつまで女の子のままなんだ? スキルも全然違うし正直使いにくくて仕方が無いんだが」

「心意の力だから、心意の力で願えば元の姿に戻るよ、けど今はその姿で我慢してくれ、『キリト』が二人も居るなんておかしいからな」

「……わかったよ、っと敵が斥候だ切るぞ!」

「あぁ!」

 

 あっちはあっちでとりあえずは何とかなる――、と思う。

 というか何とかしてもらわないと、ようやくこっちが動き出せるんだ、頑張ってくれ『キリト』

 

 後はタカシとか、ザントリーフ地方に向かっている仲間に連絡をいれていたら、いつの間にか<<冒険者>>がぞくぞくと広場に集まってきている。

 恐らくもう直ぐ、レイネシア姫が言う『お願い』が始まるのだろう。

 

「キリト君!」

「アスナか、どうだった?」

「うん、可愛かったよレイネシア姫、あれなら『お願い』大丈夫じゃないかな?」

「そっか、期待しよう」

 

 シロエが、現状のイベント進行状況、もとい、現在の状況を舞台で説明を開始する。

 今どのようなモンスターが現れて、どんな事態なのか、その説明をするたびにその広場に集まった<<冒険者>>達はその言葉を理解し、対策はどうするべきかと考えているようだ。

 それは――、俺達からすれば当たり前の事だが、恐らくレイネシア姫からすれば間違いない異形の姿に見えたのだろう。

 緊張で引きつっている顔が、驚愕の色を出している事を舞台の下から伺える。

 

「――助けなければならないわけではない。損得で云えば、助ける必要はない。繰り返しますが、助ける必要はありません。しかし、――その上で、聞いていただきたい話があります」

 

 そういうと、クラスティはぽんとレイネシアの背中を押し、一歩前に踏み込ませた。

 するとあらかじめスタンバイしてた、召喚された精霊達が、いっせいにレイネシアを照らす。

 明らかに狼狽していたが、一度の深呼吸で驚いた表情は消え、まっすぐに広場に居る冒険者を見つめていた。

 

 レイネシアが広場に居る冒険者に向かって語りだす。

 自身がクラスティと一緒に居て一週間で気づいた事、思った事をそして、まっすぐに守りたいという気持ちを冒険者の皆に語る。

 

「わたしは臆病で怠惰で、お飾りですけど……。戦場へ……行きます。ですから、それでも良いと思う方は、一緒に来てはくれませんか? あなた方の善意にかけて、自由の名の下に、助けてくれませんか? わたしはわたしの力の限り<<冒険者の自由>>を守りたいと思います……」

 

 その後の静寂、レイネシア自身、どうしていいのかわからないだろう、あの様子だと本当に心に思った事を喋っているだけだろう。

 誠意をこめて、言葉を飾らず、自身の言葉で。

 レイネシアは一歩踏み出し、静かに頭を下げた。

 

「どうか……、よろしくお願いします」

 

 俺はこれから起こる事を予測して、インベントリから鞘と黒い剣を実体化させる。

 そうして、ゆっくりと剣を鞘に納め、キンという剣を鞘に直すときに発生した一つの音が、広場に響く。

 それを合図として、クラスティがギルドマスターを勤めるD.D.Dが武器を突き立てて、音を作っていく、他の<<冒険者>>もそれに習う。

 それが水の波紋のように広がって行き、広場には大きな歓声が響いた。

 

「これより、この街は。――我々の初めての遠征へと出陣する!。出征条件は、レベル40以上。これは〈円卓会議〉からの布告クエストでもあるが、報酬には期待をしないで欲しい。 姫が言った通り、このクエストの報酬はただ一点。 ここに立つ一人の<<大地人>>からの敬意であるっ。 我こそはと思う者は、マイハマへと出発せよ! 遠征の指揮はこのクラスティがとる!」

 

 そりゃ姫からのお願い事のクエストなんて、ゲームじゃ王道の王道、それプラス滅茶苦茶可愛いというおまけ付きだ。

 盛り上がらないわけが無い。

 

「キリト君私達は?」

「俺達はザントリーフ地方で、皆を待つまだ事態の好転はしてないんだ! アスナ、ワイバーンを!」

「わかったわ」

 

 そう、確かに事態はまだ何も変わっていないのだ、勿論事態の好転は目に見えてることではあるが、まだ好転しているわけじゃない。

 しかし、護る所まで手が伸びている、あと少しで護れる筈なんだ。

 茅場……、俺はあのフラクライトの中で誓ったんだ。

 

『アンダーワールドのためにのみ戦う。なぜなら俺は……あの世界の、守護者なのだから』

 

 その障害になるなら茅場、貴様にも剣を向ける。

 だからそのために――、俺はこの剣を抜かせてもらう。

 俺と言う存在を、この世界に呼び出した理由、聞かせてもらうぞ茅場っ!

 

 <<夜空の剣>>を実体化させ、腰に装備し、アスナが召喚したワイバーンに跨った。

 目指すはザントリーフ地方、『キリト』が居る場所である。




かなり簡略化しすぎて焦っている私。
とか言って、コピペはNGなので、かなり改変変えてたりします。
後『キリト』が万能キャラ過ぎて、辛い。

話の内容としては、原作に沿っていますが、
色々と改変しているつもりですが、やっぱり焼きまわしにしか見えない件。
さっさとスキップしてきちんとしてクロス話書きたいけど、ここら辺の話は大事なので、適当にカットしつつ書いてみたり。

次の話からちょっと過去に戻って、女体化キリト『翠』の視点のお話で。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ラグランダの杜
二十話


えらく期間が開きました。
申し訳ございません。


 さて、今おれは、クラインとシノン達と一緒に馬車に揺られながら、初心者メンバー達の合宿に向かっている。

 

「翠ちゃん、そんな不安な顔しなさんな、俺達が守ってやっからさ!」

「あ、うん、ありがとうございます……」

「こら! クラインそんな怖がらせないで! 翠ちゃん何かあったら相談してね?」

「ありがとうございます、シノンさん」

「うん!」

 

 別に不安な事があるわけではないのだが――、

 強いて言えばこの状況自体が不安の塊でしかないと言った所だな。

 

 どうしてこうなった!

 

 俺は『キリト』からおまじないが掛かった、<外観再決定ポーション>と言う物を貰い。

 姿を隠すため、キリトが二人居るのはおかしいという事から、それを貰い一気に飲み干した。

 身体の痛みを感じた後、気がつけば俺は、名前と職業と容姿がまったく違う『翠』という人物になっていたのだ。

 文句の一つも言おうと思ったが、時既に遅し、馬車にクラインとシノンと一緒に押し込められたという自体に陥っている。

 

 クラインとシノンが話をしているのを横目で見ながら、改めてステータス画面を開く。

 

 キャラクターネーム 『翠』

 レベル  24

 職業   守護戦士

 サブ職業 片手半剣使い

 

 どうでもいいけど、翠って、母さんの名前じゃないか……

 背中にある背にあって無い剣を馬車の中で取り出す。

 バスターズソード……か、SAOでいう両手剣に分類される……ってわけじゃないんだよな。

 守護剣士のスキルを確かめながら、サブ職業の特徴も一緒に調べる。

 多分だけど――、このサブ職業になったのは偶然じゃないとは思うんだけど……。

 

「張り切ってるね翠ちゃん」

「あ、ごめんなさい危ないですよね?」

 

 そう言って鞘から抜いていた剣を、背中の鞘に戻す。

 

「あぁごめんね、邪魔しちゃって、でも今からやる気あっても疲れるからね?」

「うん。ありがとう」

 

 ――、さてと。

 俺は今一つやってみたい事を考えてしまったのだが――。

 それを実行した場合、俺の身体が元に戻ったときに、シノンがどのような反応をするか……。

 多分GGOの時みたいに怒るんだろうが――。

 

「どうしたの? 何か心配事? アイテムとかが足りなかったら私が――」

「う、うんん。 大丈夫。 ありがとうシノン――、お姉ちゃん」

 

 幾ら重度の廃人と呼ばれるVRMMOプレイヤーの俺でも、俺達の世界では異性になることは出来なかった。

 GGOでは少し女の子の真似事みたいな事はしたが、それでもそんな台詞に慣れてる訳でもなく、色々考えて言ってしまった為、キチンと言えたか不明だ。

 とはいえ、SAOをするまでは、色んなアバターで、色んなMMOを渡り歩いてきたのだ、こんな経験二度と出来ないのだから――、楽しまないと!

 

「おねっ!? えーっと……」

「いいじゃねーかシノンおねーちゃーん!」

「クライン。アキバの街に戻りたい?」

「駄目……ですか?」

「駄目じゃないんだけど……、あー、もうわかったわよ」

 

 そういうとシノンはその場所から離れて、御者に話しかけに行った。

 シノンの尻尾が勢い良く動いてたのを、俺は見逃すはずがなかった。

 とりあえず、そうだな――、キリトに戻るときはシノンに見られたらまずいって所か。

 

 

 シロエ達が担当したのが、確かイースタルから招待された領主会議といわれる奴で、

 俺も当初はそっちに参加する予定だったが、『キリト』から内政とかは任せろといわれたのでお願いした次第だ。

 ぶっちゃけ、経済とか経理? とかは俺にはわかんなかったし……な。

 その仕打ちが「これ」なんだけども。

 自分の小さくなった手を見て軽くため息をつく。

 

 新人プレイヤー達を鍛えるための夏季合宿。

 決してバカンスではない! とマリエールさんは言っていたが――。

 クラインとシノンはこの世界での戦い方を覚えるため兼引率に。

 俺は正体を隠して、この世界の戦い方を覚えるためにのと、『キリト』が二人居る事態を避けるために合宿に行く事になった。

 

 そして俺は、人生でプライドを捨てるか、それとも面白みを取るかの選択肢に立たされている。

 何故か俺の鞄の中には、水着なるものが存在し、『キリト』が用意したのだろう黒ワンピース系の水着だ。

 いや、それはいい、泳ぐという話もしてたし、用意するのはある意味当たり前なのかもしれない。

 更衣室の中で立ち、これを来て海に行くか、それか海を諦めるかという極限の選択肢なのだ。

 

「女の子の身体なんだから、女の子の水着を来て海に行くのは当然の事だとは思うのだがっ……!」

 

 更衣室で云々唸っていると、外から無情にも声をかけられる。

 

「翠ちゃん。 一緒に泳ご?」

 

 この声は、シノンか。

 俺は色々諦めて用意されたワンピースを着た。

 シノンや、クライン曰く、非常に似合ってたらしい。

 この場にアスナが居なくて、本当によかった。

 

 

 なんやかんやで、親睦会が済み、俺は<ラグランダの杜>に挑む初心者パーティの一段に、入れられる事になった。

 マリエールさん曰く、皆良い子ばっかりやから、直ぐに仲良くなるわー。 だそうだ。

 殆どの連中の事は知ってるんだけどな、とは言わない。

 

 グループ編成は前衛は俺を含めて二人、中衛が一人後衛が三人の構成だ。

 

「俺トウヤ、職業は武士でレベルは29。前衛は俺に任せろ」

「セララっていいます、職業は森呪遣い、レベルは25です。攻撃は苦手ですけど、回復は任せてください」

「五十鈴でーす。職業は吟遊詩人、一応攻撃にも参加しますよー。レベルは24よろしくね」

「ミノリです。職業は神祇官、ダメージ遮断系の魔法が得意です。セララさんと上手く協力して、皆さんの体力管理が上手く出来ればと思います。レベルは……21です」

「翠です。職業は守護剣士……ですが、サブ職業のせいで盾を持たない守護剣士ですので、前衛はトウヤ君に任せることになります。レベルは24です」

「盾を持たない守護剣士とは、本当に守護するつもりがあるのかね?」

「その辺は一度戦闘見てもらうしか無いとはと思っています、貴方は?」

「あぁ最後は僕だったね、僕の名前はルンデルハウス=コードだ! ルディと呼んでくれて構わない。 職業は見ての通り妖術師だ! レベルは23だ」

 

 一番高いのはトウヤの29か、やっぱりトウヤに前衛をしてもらうのがいいのだろうな。

 パーティ振り分けたのは……マリエールさんでは無いし、直継でもないだろうな。

 とりあえず、この世界での同レベル帯の戦いは初めてだし、慣れる為にも頑張らないとだな。

 

「自己紹介も終ったしこれからどうするんだ?」

 

 普通に考えたらパーティーの連携やらを考える場面なんだろうけど……

 このゲームはMOB相手に連携やら、フォーメーションとかいるのかわからないし、様子見で。

 

「じゃぁ、まず基本的なフォーメーションの事なんですが……」

「気合を……」

「え?」

「気合を入れたらいいんじゃないかなぁ!」

「おぉそうだな! これからダンジョンに行くんだからな!」

 

 ルディとトウヤが二人燃え上がるように熱くなって、結託している様子を見ながらため息をつく。

 ダンジョンのMOBがどれほどのものかわからないが――、一応パーティが個々で動いても倒せる程度なら口出す必要ないよな。

 ミノリが言おうとしてた事を考えたら、間違いなくパーティーでの連携は必要なんだろうけど。

 大変な事になりそうだが、色々と勉強になりそうだとも感じながら、ダンジョン入り口に向かった。

 

 ソードアート・オンラインを初めとするどのオンラインゲームでも敵と対峙するときに心がける事が幾つか存在する。

 幾らレベル差があっても、油断をしない事、一人対多人数は避ける事等。

 この辺りは、基本的にソロプレイ……つまり一人でやるときの死なないための注意事項みたいなものだ。

 しかし、多人数対多人数になると、守るべき事柄ややるべき事柄、やっておくべき事柄等一気に増える。

 全てを全て実践できるプレイヤーは居ない。

 なぜなら、前衛のプレイヤーが、後衛のMPをチェックするなんて出来ないし、

 逆に後衛のプレイヤーが、MPチェックするのは当たり前ではないが、推奨されている行為だ。

 つまるところ、役目に合ったプレイヤーが役目に合った事柄をこなす事で、ソロでは勝てない敵でも倒していくことが出来る。

 それがパーティ戦と俺は思っている。

 

 まぁ、俺はSAOではソロプレイヤーだったんだが……。

 ソロプレイヤーはソロプレイヤーで仲間に左右されないと言うメリットと、経験地を総取りできるというメリットがあるんだけどな……。

 

 洞窟系ダンジョンの内部は、やはりというか洞窟だった。

 まぁ、RPGゲーのお決まりと言ってもいいダンジョンだからなぁ。

 周りの気配を読みながらダンジョン内を進む。

 

「ちょっと暗いですね――」

 

 私がそう呟くと、今まで黙って行軍していたパーティーの緊張が少し緩む。

 

「そうだな、僕が灯りを出そうか?」

「いや、少し試したい術があるんですが……いいですか?」

「しかし、君は守護剣士だろ? 魔法なんて使えるのかね?」

「えぇ、それを確認するんです」

 

 『キリト』だった時に感じたあの感覚を再現する。

 すると俺の身体の周りにALOで魔法を使うような光る文字列が回転を始める。

 

「おぉっ!? 戦士なのに魔法がっ!?」

「オース・ナーザ・ノート……」

 

 パンッ!

 固めようとしていた『何か』が弾けて俺の体の周りに合った光る文字も消滅する。

 

「やっぱりダメか、ごめんルディ灯り任せていいですか?」

「おぉ、勿論なんせ僕は魔術師だからな! 魔法は僕に任せてくれればいい!」

「ごめんね」

 

 ルディに謝ると、気にするなと返され、魔法使い達が基本的に使える魔法

 灯りをともす魔法を唱える。

 

「セララさんもお願いしてもいいです? 灯りは複数合った方が……」

「わっかりました! バスク・ライト!」

 

 二人の灯りで辺りがかなり明るくなる。

 灯りのせいで敵に発見されるかと考えたが、よくよく考えればこのダンジョンの敵は基本的に目で俺達を見ない系列の敵ばかりだ。

 なら、こっちが見えなくて不利になるぐらいなら、灯りが沢山あったほうがいいだろう。

 

「そういえば、翠さんさっきの術は?」

「えっと、あー、前のサブ職業が冒険職で、その時に使っていた魔法なんだけど使えるかなーなんて、サブ職業変えてるから当然無理だよね」

 

 たははー、と笑いながら言う、するとミノリはそうですか? と少し引っかかっているのか、複雑な顔をしつつ隊列に戻って行った。

 

 サブ職業、スプリガンのときに使えていた、魔法の一つ、暗闇でもネコみたく目が見える魔法だ。

 使えないとは思ったのだが、もし使えるのならば戦闘に利用できないかと思ったんだが……、

 けどさっきの失敗は――魔法の発動に失敗した時に発生したエフェクトに見えた気がした。

 そもそも、俺はALOでも殆ど魔法を使わないので、そこまでわからないのだが。

 けどなんだろうか、『何か』が足りない気がした。

 夜にでもリーファに魔法の詠唱合ってるか、確認してもらおうか。

 

 ダンジョンを静かに奥に進んでいくと、通路にスケルトン数体分の骨が散らばっていた。

 先に入ったパーティーはここで戦闘になったのだろう。

 他のメンバーは気合を入れなおしていたが、俺は踏んだらどんな音がするのだろうとか考えながら先に進んだ。

 

 ずんずんと進んでいくと、モンスターに一度も遭遇することなく、直継達が言っていた、T路地に到着した。

 ルディとトウヤは左側を見つめて、少し悔しそうな顔をしている。

 ミノリとセララは二人の様子を見て、首をかしげていた。

 まぁ、女の子には男の子の気持ちはわかんないだろうな。

 

「今日は右に進まないとね、次からは左に進めたらいいね」

「だな!」

「いつまでも右に進むとは思わないでほしいものだ!」

 

 そういうとトウヤとルディは右側に踏み込んだ。

 すると踏み込んだ瞬間ピタリと足並みを止める。

 どうかしたのかと、慌てて後を追うと、俺も右側に足を踏み込んでトウヤ達と同じように足を止めてしまった。

 

「空気が違うな、トウヤ」

「あぁ、そうだなルディ」

 

 何かが変わったわけじゃない、単にモンスターが倒されてた安全なエリアから、

 モンスターがわんさかいる、本当のダンジョンに足を踏み入れただけだ。

 それだけなのだが……。

 空気が違ったのだ、まるでここからは俺達の縄張りだとモンスターが叫んでるようなそんな空気。

 

「とはいえ、ずっと立ってるだけにはいかないからな、行こうトウヤ、ミス.ミドリ」

 

 ルディが一言で硬直から解放してくれ、俺とトウヤは一歩を踏み出した、後ろに五十鈴、セララ、ミノリと続いてくる。

 

 そのまま数分進んでいくと、カシャと小さな音が聞こえた、気がした。

 辺りを見渡してみると、敵の姿も無く一本道だ。

 一本道の先を目を凝らしてみると、突き当たりは少々広い空間になっているようだ。

 

「少し広い空間が前に見えっ…」

 

 最後まで言葉が続く事はなかった、通路の先右側の死角からひょっこりとスケルトンが顔を出してこっちを見つめてきたのだ。

 

「前方スケルトン確認!」

 

 俺が後衛に敵が発見したのを伝えるのと同時に、トウヤが飛ぶように一本道を駆けて行く。

 

「トウヤ! 猪みたいに突っ込んじゃダメ!!」

 

 ミノリの声も虚しく、トウヤは我先にと言わんばかりにスケルトンに向かって走っていく。

 少々距離があったのか、トウヤが駆けて行く間に、死角に居た4体ものスケルトンが此方に向かって走ってくるのが見える。

 俺も遅れながらトウヤの後ろを追いかける、トウヤの行動によってはアンカーハウルを使うんだが――。

 トウヤは敵の目の前で止まる、のではなく少し離れた所でブレーキをかけつつ、駆けて得た加速力を利用するかのように刀を一閃した。

 

「飯綱斬り!」

 

 トウヤの刀の切先から衝撃波が出て、一番先頭を走っていたスケルトンに命中する。

 するとルディのほうに向かっていたスケルトン達が、一斉にトウヤの方を向く。

 

「さぁ! かかってこい! 俺が相手だ!」

 

 トウヤの意図をようやく理解できた俺は、発動しようとしていたアンカーハウルの発動をやめ、どう行動するか思考する。

 トウヤの特技により、3体のスケルトンがトウヤを囲むように攻撃をしている、トウヤも防御しているが流石に3対1に少しずつHPが削られているが、セララが回復魔法を使ったのだろう、HPが徐々に回復しているのが見えた。

 そして最後の1体は、弓を引いてトウヤを狙っている。

 俺はその1体をターゲットにしつつ駆けるように近づいていく。

 

「旋風斬り!」

 

 囲んでいた3体のスケルトンが吹っ飛び尻餅をつく、俺はその横をすり抜け後ろで弓を構えているスケルトンに近づく。

 

「タウンティング……シャウト!」

 

 敵を1体だけ挑発しタゲを取るスキル、発動した瞬間自分の身体を中心に、空気の波が洞窟内に広がっていく。

 弓を構えていたスケルトンが、思い出したかとように此方に弓を構えなおす。

 

「ちっ!」

 

 放たれる前に攻撃しようと思ったのだが、いかんせん距離があり俺の攻撃範囲にはスケルトンは入っていない。

 ダッシュを仕掛けて近づこうとするが、スケルトンの手から矢が放たれそうになる。

 放たれる瞬間、俺は背中に背負っている片手剣というのには大きすぎる剣を『スケルトンの目線の先を斬った』

 少々重たかったその剣は、狙った空間を切り裂き、丁度そこに向かって飛んできた矢を弾いた。

 二射目を打たせる前に、背中から抜いた剣の反動を利用して、前に飛び出す。

 空中に飛び出しながら、腰に装備してある、先ほどと比べると小さな片手剣を抜く。

 

「クロス・スラッシュ!」

 

 空中から落ちる力をこめて、スケルトンを縦に斬る。

 着地と同時に、足にズシンと体重がかかるが、体勢を崩すわけにはいかない。

 

「ふっ!」

 

 スケルトンの胴体を狙って、横に斬る。

 スケルトンがノックバックされ、距離が離れる。

 

「ちっ、また距離が!」

 

 弓を弾かれる前に近づこうとした時だった。

 

「離れたまえ! ミス.ミドリ!」

 

 ルディの声が聞こえ、バックステップを行い、防いでいた弓スケルトンと、後衛たちの軸から退く。

 

「次は僕の番だ! オーブ・オブ・ラーヴァ!」

 

 ルディの杖の先から、溶岩の塊が射出され、弓スケルトンに向かって真っ直ぐに飛んでいく。

 弓スケルトンに命中した溶岩は、半分以下になった弓スケルトンのHPを全て削り取り、トウヤを囲っていた3体のスケルトンにも命中しそのHPを食った。

 しかし、最後の1体だけはHPを全て削り尽くす事ができず、ルディの威力の高い魔法によってヘイトトップが変更され、ルディの方を向いた。

 

「ルディ!」

 

 走りながら、途中で投げ出した剣を拾い最後のスケルトンをターゲットしながら挑発スキルを発動させようとする。

 すると、ルディの杖から先ほどとは違うエフェクトが走り、光の弾がスケルトンに向かった。

 その光の弾がスケルトンに命中し、最後に残ったスケルトンのHPを削り取った。

 

「あれは、吟遊詩人の特技か」

 

 ルディが五十鈴を手を握りながら、喜んでるのだから、ルディの特技ではないのだろう。

 剣を背中に直し、少し安堵しながらルディの元に合流したトウヤとともに向かう。

 この様子なら、ヘイトをきちんとしていたらなんとかなる難易度かな?

 そんな事を考えていると、通路の先で何かが光ったように見えた。

 すると頬を掠るように、矢がルディに飛んでいった。

 一発目はルディは偶然避けることが出来たが、二射目からは確実にルディのHPを削る。

 

「こんにゃろ!」

 

 トウヤは弓スケルトンに向かって走っていき、少々拾い空間の部屋に出る。

 

「待てトウヤ!」

 

 俺の叫び声も虚しく、通路から部屋に飛び出したトウヤは弓スケルトンではなく、俺達から見えない場所をを凝視している。

 

「スケルトンが! だけど大丈夫HPは回復している!」

 

 トウヤはタウンティング特技を使用し、タゲを取る……が、その後直ぐにルディの魔法が飛んできてタゲがルディに移る。

 剣を持っているスケルトンは、俺達で5・6体ぐらいならばとめることが出来るが、弓スケルトンまではタゲもとれないし、俺達が弓スケルトンに届く攻撃を持っていないし、近づこうとするのは、剣スケルトンが許してくれない。

 

「逃げるぞ! この陣形じゃ後衛が持たない!」

「えっ! でもHPは!」

「弓スケルトン数体を対処する方法が無いんだ! HPがあるうちに撤退だ!」

 

 トウヤに怒鳴りつけるように言うと、大きい片手剣を両手で持ち、特技を発動させる。

 

「オンスロート!」

 

 剣を振り回すように周囲にダメージを与え尻餅をつかせようとする、それを確認する間もなく、大剣を背中に戻し後衛の元を目指す。

 

「先に逃げて! しんがりは任せて!」

 

 ミノリ、セララ、ルディにそう叫び通路の先を見ると、数体のスケルトンが此方に向かって走ってくる。

 ちらちらと後ろを見ながら、飛んでくる矢を対処しつつ入り口を目指す。

 

 入り口付近で、先発の人たちが倒したスケルトンがリポップしており、ただ撤退するだけだがえらく時間がかかりながら入り口に戻った。

 

 こうして俺達の始めてのダンジョンが幕を閉じた。




というわけで、ラグランダの杜。
初心者メンバー+翠でのラグランダの杜攻略です。

Ms.ミドリにするか悩みました。
いやーうん、どうでもいいといえばどうでもいいのですが。

後この話を投稿した後、投稿速度の低迷を理由に、チラ裏に戻らさせて頂きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十一話

かなり時期が開いて申し訳ございません。
右手が痺れから開放されたので投稿。


 初めてのダンジョン攻略後何度か挑んでいるが、結果は似たような物だ。

 長くて3時間、戦闘回数は潜ってる時間が長くとも1・2戦多いぐらいだ。

 

 

「はぁ、疲れた」

 

 ダンジョンのとある一室で壁に寄りかかりながらため息混じりに呟く。

 通路での死闘を乗り越えてここまでたどり着いたが、前衛のトウヤに至っては休憩するまでHPの3割を切っていた。

 同じく俺もHPバーがイエローゾーンに突入していた。

 HP以上に前衛をし続けると言うのは集中力が半端じゃなく削られる。

 それもパーティーがパーティーとして機能してない場合は特にだ。

 疲労の中トウヤが入り口側に陣取って通路を警戒している以上、出口側の警戒を俺がしないわけにはいかない。

 

 よくよく考えれば、この世界でどうレベル帯のモンスターとの戦闘というのはコレが始めてだったりする。

 勿論レベル的にもかなり余裕が有り一人なら負ける要素はないのだが、パーティーとなれば話は別だ。

 MMOでいうインスタンスダンジョンはフィールドの敵とステータスが段違いだ。

 そのため、パーティーで挑んでいるのだがこのパーティーでは各々力を発揮できずに居た。

 

 さてどうしたものかと考えながらメニューを開くと装備の欄が光っていた。

 頭を傾げながら開くと武器に修理マークが付いていた、 慌ててバッグから簡易の砥石を取り出して武器を修復する。

 そりゃそうか盾を装備してない守護戦士だからな、剣の負担も結構大きかったんだろう……。

 黒い大剣に謝りながら砥石で丁寧に研磨していく。

 

「ボクらはなんでこんなに弱いんだ!」

 

 魔術師の少年は声を声を荒げながら決して大きな声ではないが、感情を爆発させるように言った。

 その問いに完璧な答えではなく中途半端な答えなら用意できる。

 連携、パーティーとは何ぞや云々。

 けど俺自身この世界でのパーティープレイと問われると完璧に答えれる自信は残念ながらない。

 口で言うのは非常に簡単だ。

 お互いをお互いのことを知ればいい。

 そしてお互いがお互いのことを気を使ってプレイをすればいい、ただそれだけの事。

 だが、自身の少なくなっていくHPバーや、仲間のHPバー、敵の姿を見ながらそれだけのことが出来るか? というとそれは俺自身難しい部分がある。

 言うのは簡単だ、だが出来るかどうかは間違いなく別の問題なんだ…。

 そう思いこんでしまった俺は、先輩プレイヤーとして言わないといけない事柄を自分の内に留めてしまった。

 

「ひたすら……修行するしかないのか…」

 

 悲痛な呟きと共に座り込んだ若き魔術師。

 その後モンスターと接触を2回ほどし戦闘した後に午前中でダンジョンを後にした。

 

 

 その次の日朝、魔術師であるルディは必死に練習している所を見た。

 テントの前でアイテムを広げ、メモを取りながら必死に考えているミノリを見た。

 朝すれ違ったトウヤの真剣な眼差しを見た。

 五十鈴が皆に気を使っている姿を見た。

 すれ違ってるパーティーのために毎朝食事を持って来てくれるセララを見た。

 

 各々一生懸命なんだ、目の前に事に、形は違えどただ目の前の出来事に一生懸命取り組んでる。

 確かにそれはすれ違っているのかもしれない、それでも頑張ってる。

 

 

 みんな必死にやってる、アインクラッドの皆も、もちろんもう一人の『俺』も。

 なら俺がここで得るべきことはなんだ?

 

「あぁ……そうか、俺が今やるべきことは――」

 

 

 食後の休憩中で話を切り出す。

 

「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」

「何かなMs.葵?」

「私のスキルビルドについて。 守護剣士だけど盾ないし扱い困ると思うから一度説明させてほしいんだ」

「確かにMs.葵の戦闘スタイルは一度話を聞きたいと思っていた、しかしダンジョンから帰ってきてからもいいのではないか? 今日はボスまでいけるかもしれないしな!」

「確かにそうかもしれないけど――」

「いえ、葵さんの話を聞きましょう、ダンジョンに入っても長くても3時間、それなら午後から入っても大丈夫のはずです」

「わかった、それじゃMs.葵の話を聞こうじゃないか」

 

 盾を持たない守護剣士、例を出したのはD.D.Dのクラスティ。

 HP吸収系の両手剣を扱い、盾を持たず敵を粉砕するスキルビルド。

 このアバター『葵』はそのビルドに近い形になっている。

 敵単体のタウンティングスキルを持ち、攻撃系スキルを数多く所得している。

 敵との単体との戦闘を主に置いたスキルビルドで敵の攻撃は剣で防ぐというスタイル。

 

「つまりMs.葵は単体と戦うのが得意ということか……」

「はい、なので出来ればトウヤに前衛を任せて、トウヤのタウンティングから外れた敵の討伐、遊撃のような事をやらして欲しい」

「つまり俺が敵のパーティー全員の注意を引いたらいいのか」

「しかしMr.トウヤの職業は武士、相手全員の注意を引く技なんて持ってないのではないのか?」

「いや俺にも武士の挑戦というスキルがあって――」

 

 そこから先は俺自身すごく勉強になる時間であった。

 他の職業の勉強、どの職業がどんな動きをしたいのかと言うのが勉強になった。

 これについてはALO出身の俺たちにはわからない事だ。

 俺にとってはこの世界でのパーティープレイの重要性とそのやり方。

 初心者チームの皆は連携の仕方という発想自体がなかったのである意味丁度いいタイミングで勉強になった。

 

 

 次の日。

 俺たちは何度目かのダンジョンに挑もうとしていた。

 しかし一昨日までの俺たちではない、テントでシュミレーションをして動き方を皆で考えた。

 どのような状態でどのように動くか研究し皆で話し合った。

 今度のダンジョンはパーティーで挑む、仲間ともに挑むのだ。

 

 ラグランダの杜の入り口で仲間を見て頷き一歩踏み出した。




キリが良いのでちょっと短いので投稿。
次は模造のラグランダの杜の攻略になります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十二話

設定と、この話をサルベージできたので。


 五十鈴が手信号を送ってくる。

 奥に敵が1グループ、後60秒ほど

 

 これもパーティープレイを前提で覚えてシステム外スキルだ。

 必要じゃないかもしれない、けど必要になる時がくるかもしれない。

 役割は頭に叩き込んである俺のやることは遊撃だ。

 前衛がピンチだったら前衛の、後衛が危なかったらセカンド盾として。

 

 こうやって仲間としてパーティーを組んで話し合ってダンジョンに挑むなんてSAOの時には無かったことだ。

 いや、階層攻略の時は話し合ったがあれは何かが違う気がする。

 自分のステータスなんて公開するものでもなかったし、むしろ公開するべきものではななかった。

 周りを疑って、アスナと一緒になるまではそんな戦い方をずっと続けてたきがする。

 ようは忘れていたんだ。

 PCでキーボードを操作しながら戦って即席のパーティーだろうがいやな部分があったら言い合って、次の日同じパーティーで挑んだり、街に座り込んで戦わずずっとチャットしてた時代があった事を。

 あの時とは違うのは、操作しているのはキーボードではなく、おれ自身の体と言う事、

 正直なところ、最近ではVRゲームの自分が『なんとかすればなんとかなる』とずっと思っていたので、こういう体験は本当に懐かしい。

 

 五十鈴の合図ににトウヤが頷き、岩陰からスケルトンに向かって走り出した。

 

「お前らの相手はこの俺だ! 飯綱斬り!」

 

 勢い良く飛び出したトウヤは、敵グループ全体にヘイトをばら撒く為遠距離攻撃を行う。

 トウヤ曰く、ダメージは全然だけど、ヘイトを集めるにはうってつけの遠距離範囲スキルだそうだ。

 守護剣士のアンカーハウルより射程距離は長いが、範囲は狭い、しかしこういう洞窟の通路での戦闘ではそれでも十分。

 トウヤは全員が付いてきてるのを確認しつつ、後方に後退、俺達が居るところに走ってくる。

 無論敵も追いかけてくるし、弓スケルトンは弓を撃ってくる。

 飛んでくる矢は予めミノリがトウヤに掛けておいた禊の障壁でカバー、安全地帯付近までトウヤは敵を誘い込むと、射程距離外になったのか、弓スケルトンがトウヤを追いかけて隠れていた私達の前までやってくる。

 

「セララさんはトウヤのHP管理! ルディさんと五十鈴さんは弓を! 葵さんは弓のヘイトを!!」

 

 ミノリの言葉を受ける前に、行動を開始する。

 ダンジョンに入る前に散々話し合ったフォーメーションの一つだ、初めての試みだが、練習も重ねた。

 

「お前の相手はこっちだ! タウンティングシャウト!!」

 

 敵一体のヘイトを集めるスキルを使い、弓をこちら側に向ける。

 これでトウヤは近接型の敵だけを相手をすればいい、辛いかもしれないが、これが一番安全な立ち回りだ。

 そして俺の仕事は、弓の攻撃をいなしながら、弓を即効で倒し、直ぐにトウヤの援護に向かう。

 

「弓スケルトン、お前の相手は俺だ」

 

 弓に狙われると言うことは、矢を撃たれるとう事だ。

 骨の空洞に怪しく光る目がじろりと俺の左胸を見つめた。

 この葵の筋力では、矢を叩き落すことは出来ない、だが……、矢を防ぐ手段はある。

 

 カン。

 

 軽い音が洞窟に響く、放れた矢は敵の狙い通り俺の左胸を撃った。

 そこに大剣がなければだが。

 

「ルディ!」

「わかってるさ! フラッシュニードル!!」

 

 ルディの攻撃にあわせて、五十鈴の特技『マエストロエコー』が発動し、魔法をコピーして発動する。

 その上昇するヘイトは臆病者のフーガでヘイト管理をし、近接スケルトンを五十鈴やルディの方に行かないように調整する。

 

「敵視認0! 遊撃隊はそのまま前衛の援護を!」

 

 ミノリの周囲警戒の報告を受け、もてる全力でトウヤの元に急ぐ。

 

「待った葵さん! 武士の挑戦を数回済み! ルディ兄!」

「僕のソーサーラーの魔法の出番と言うことだな! オーブ・オブ・ラーヴァ!」

 

 火球が次々と敵に襲い掛かりその威力を持って、すべての敵を殲滅できた。

 ほんの数分の戦闘、しかし初めて、そう初めてパーティー戦での勝利であった。

 

 

「いやー、上手く行ってよかった、ダンジョン攻略も順調だし、もう少しでボスなんだろう?」

「はい、事前に貰っていた地図によるともう直ぐボス戦になります、障壁貼りなおしておきますね」

 

 最初の戦闘後、順調にダンジョンを攻略し、ボス部屋の間近まで来た。

 所謂ボス前の安全地帯である。

 何気なくメニューを開くと、特技アイコンが二重に…ぶれて見えたような気がした。

 

「どうしたミス葵? なにか問題でもあるのか?」

「いやなんでもないよ、ルディ」

 

 ステータスに以上はない、なにか変なデバフがかかってるわけではない、なら問題ないはずだ。

 ルディと話した後、再度特技アイコンを見ると、いつものアイコンに戻っている。

 

「それでは、ボスモンスター、『燃え盛る悪霊(バーニングデッド)』の特徴の再確認の後、ボスに挑みましょう!」

 

 『燃え盛る悪霊(バーニングデッド)』の戦いの注意点は大きく3つ

 魔法攻撃、バッドステータス、骸骨兵だ。

 

 魔法攻撃、怨嗟の青き炎は遠距離攻撃&範囲攻撃と言う結構強烈な効果を持っているが、それはタンク担当のトウヤが前衛で引き付ける。

 痛みもあるし大変な役目だが、トウヤは任せろ祭りだぜ! と胸を大きく叩いた。

 ダメージソースはルディと五十鈴の二人組みで挑む。

 氷関係の技は弱点らしく、ヘイトコントロールをしつつ、ルディの氷魔法と、五十鈴のマエストロエコーを組み合わせてダメージを稼ぐ。

 ミノリは後衛で全体を監視しつつ、パーティー全体のHP、MPを管理する、バッドステータスの管理も含まれるが…。

 

「火炎のバッドステータスなら、ルディに水魔法掛けて貰えば解決するのでは?」

 

 と言う俺の発言のお陰で、バッドステータスを受けた時は水魔法を受けに行くというパターンも用意された。

 そして最後の俺の役目だが、ボスモンスターと共に召喚される、骸骨兵の相手と、トウヤのHPが危険域に入った時にタンクを交代する役目だ。

 

 各々『燃え盛る悪霊(バーニングデッド)』の情報を頭に叩き込む。

 そして、自分がどんな役割をしたらいいか、どういう風に動くかもう一度思い浮かべる。

 

「それじゃ、ボス戦頑張ろう!」

 

 初心者パーティーの1つは、初めてボスの扉に手をかけ、その扉を勢いよく開け放った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む