けものフレンズ[Redo] (Alantheporty)
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予告

【重要】職員各位へ

ビーストについて

この紙は必ず持ち歩いてください

セントラル研究所 より


職員各位へ通達

 ビーストについて   筆者 カコ

 

1.概要

 ビーストとは、野生動物、或いはフレンズのサンドスター値とセルリウム値がほぼ同じ量になると発生する「フレンズの姿をした飢餓状態の野生動物」です。

 ビーストのサンドスター値とセルリウム値は常に衝突し合い、その値はフレンズの野性解放時よりも急激に下がり続けます。両値が0になると元の動物の姿へ戻ります(極端に値が偏るとフレンズ化、またはセルリアン化すると考えられますが、どちらも現在未確認です)以上のような特性からサンドスターとセルリウムを常に摂取しようとし、フレンズとセルリアンを狩りますが『輝き』を奪うような挙動は確認されていません。

 フレンズを圧倒的に上回る身体能力を持っています。実際に、フレンズの数倍の大きさのセルリアンを一撃で倒した目撃例もあります。仮説としては「ビーストが触れた際にサンドスターとセルリウムを吸収する能力がある」説もありますが現在のところ不明です。

 サンドスターとセルリウムが常に衝突しあい、体外にあふれるため、常に体が輝いています。そのため夜でもビーストを発見することは容易でしょう。

 

2.対策、対処法について

2-1 対策法

・エリア内に常駐している生命体に対するサンドスター&セルリウム検査は1週間に1回行ってください。この検査は利用客は対象外となります。異常反応の出た生命体は研究所が保護しますので、すみやかに対象の動物を捕獲の上、報告をしてください。

・各エリアのサンドスター&セルリウム測定は毎日行ってください。異常反応が出た場合は「ビーストがこの地方に発生する、或いは発生している」可能性が高いのですみやかに研究所に報告をしてください。この場合、生命体に対する検査を1週間に限り毎日行います。

2-2 対処法

・ビーストの発生が確認された場合、すみやかに発生エリアにレベル4以上の警報を発令してください。

・発生エリア内のパークガイドは他の人間や動物の避難指示をしてください。以後、警戒が解かれるまでは発生エリアへ入るのは許可されません。

・発生エリア内の警備隊は救護係を2名以上含めた10名以上のビースト捕獲隊を3隊以上結成し、エリア内を捜索してください。

・ビーストを発見次第、麻酔銃を使用しビーストを眠らせてください。その後は専用の檻に入れ、地方研究所に引き渡してください。

・フレンズがビーストに襲われた場合、野生化していないならすぐにサンドスターの補給を行ってください。また、1週間以上エリア内の病院にて入院させてください。野生化してしまった場合はセントラルの総合病院で1ヶ月以上入院させます。

・概要にて述べた特性により、ビーストがフレンズ以外の生物を襲うことは滅多にありません。ですが万が一フレンズ以外の生物が攻撃された場合はエリア内の病院で治療、1週間以上の入院をさせてください。なお、ビーストの攻撃によるビースト化現象、及びサンドスター値セルリウム値の変調は確認されていません。

 

3.まとめ

 ビーストが発生した場合、甚大な被害は免れません。フレンズ、生物たちのためにも常に発生させないように心がけ、万が一発生した場合は迅速な対応をお願いします。



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第一話「Be a friends 前編」

【重■】■員■■へ

ビーストについて

■の■■■ず持■■■■■ださい

■■■ラ■■■■ より

「これは・・・!?」


「ご主人様ご主人様!」

 

「わわ! イエイヌちゃんなになに?」

 

 ある日の事、あたしとイエイヌちゃんはおうちのおそうじをしていた。あたしが本棚を整理していたら、つくえをかたづけていたイエイヌちゃんが何か珍しいものを見つけたようで、コーフンしながら駆け寄ってきた。手にはほこりまみれのひらたいふくろをもっていた。

 

「ご主人様! これなんですか??」

 

「……なんだろう。あたしも初めてみたよ」

 

『ビーストについて』と書かれてある。ビースト……最近出没しているといわれていて、フレンズやセルリアンをよく襲っているらしい。その強さはフレンズよりとっても強い。ビーストと聞けばみんな顔が青くなる。恐らくそのビーストのことだろう。なかには紙が入っていた。もじがかかれているのはわかったが、びっしりと書かれていて…

 

「びーすとについて……かこ……? びーすととは…………???あたしにはわっかんないや!」

 

「じゃあかばんちゃんにも見せに行きましょう!ご主人様」

 

 イエイヌちゃんがしっぽをフリフリしながらおでかけの準備をする。

 

 かばんちゃんはあたしのそんけーしている人で、とにかくあたまのいい人だ。お料理から実験、セルリアン退治までなんでもできる。あのかばんちゃんなら、このもじを読むことはかんたんだろう。

 

「いいね! かばんちゃんに聞けばいろいろわかるかもしれない。いこーいこー!」

 

 とっくにおそうじを忘れていたあたしたちはおでかけの準備をぱぱっと済ませておうちを飛び出した。これは新発見の予感! あたしたちは急いだ。

 

 

 

 ともえちゃんたちから渡されたのは、一通の手紙だった。

 

 

 これはジャパリパークの職員に宛てて書かれた物に違いない。

 ビーストについて…………なかなか興味深い。

 筆者カコ。カコさんという人が書いたのだろう。

 カコと言う名前……どこかで聞いたことあるような? なんだか懐かしい名前。

 

 

「ふむ……なるほど……へぇ~……」

 

 びっしりと書かれた手紙を読み進めていく

 

 

 サンドスター値? セルリウム値? なるほど……

 対策や対処法もちゃんと確立されている……

 麻酔銃? そんなのもあるんだ……

 

 

 長い手紙を読み終えて、僕は机の上に手紙を置いた。

 

「かばんちゃん、なにかわかった?」

 

「うん。ビーストがどうやってできるかがわかった。ジャパリパークのスタッフがどのようにビースト対策をしたかもわかった。なによりも……」

 

「「なによりも?」」

 

 なによりも……

 

 

「ビーストをフレンズにできるかもしれない」

 

 衝撃の一言に、二人は驚いた。

 

 

「び、ビースト、を?」

 

「わー! どうやってフレンズにできるんですか!?」

 

 ともえちゃんはなんだかうれしそうだ。ともえちゃんはフレンズが好きだ。いつかビーストもフレンズになって欲しいと願っていた。そう、私も願っていた。願いがかなうのかもしれないから、嬉しいはずだ。

 

「やろうと思えば可能です。ビーストのセルリウム値を減らしてサンドスター値を増やすだけです」

 

 そう、これだけだ。ここだけ見れば簡単だ。

 

「でも、どうやるんですか?」

 

 イエイヌちゃんの疑問は僕の疑問でもあった。どうやるか? 

 

「ビーストに一撃でも当てられたらひとたまりもないですよ。それに足が速くて逃げ切れなかったフレンズも多いと聞きます……」

 

 そう、そこだ。ビーストは圧倒的に強い。セルリアンより強いと思う。

 

「わかっています。でも、僕に思いつきがあるんです」

 

 僕は続けて、

 

 

 

 

「今夜、作戦会議をしましょう。ロードランナーちゃんにも協力してもらいます」

 

 

 

 

 

 

 机と椅子のセットが並んでいる。正面には「ほわいとぼーど」があり、かばんちゃんたちやはかせたちが立っていた。あたしたち3人は椅子にすわる。

 

「きたきたー! ともえちゃんたちもきたから「さくせんかいぎ」はじめちゃおう!」

 

 サーバルちゃんがあたしの右隣に座っている。もう準備はできていた。はかせたちがしゃべりはじめる。

 

「では、さくせんかいぎをはじめるのです。はじめに、こんかいのがいようをせつめいするのです」

「我々の目標はビーストのフレンズ化、です」

「ビーストのおそろしさはもうしっているはずなのです」

「念を押しますが、失敗したら逃げることに専念するのですとくにサーバル、お前はいつも先走るのです」

「じしんかじょうはきけんなのですよ、サーバル」

 

「へーきへーき! なにかあってもぴょーんって逃げられるから!」

 

 不安そうな視線が一点に集まる。サーバルちゃんはさばんなちほーのトラブルメーカーとしてよく知られている。

 

「なんでそんなカオするのー? へーきだってー!」

 

「ま、まぁサーバルちゃんのジャンプ力ならビーストが相手でもなんとかなりますから……」

 

 かばんちゃんがフォローする。実はサーバルちゃんのジャンプ力もよく知られている。そのジャンプ力で様々なトラブルを乗り越えてきたらしい。

 

「さて、ちゃばんはそこまでにしてつぎにさくせんをはっぴょうするのです、かばん」

「発表するのです、かばん」

 

 

「はい。まず、ビーストの中には『サンドスター値』と『セルリウム値』がいつも同じくらいあります」

 

 ビーストの絵が貼られた。私がこの前に描いた物だ。

 

「『サンドスター値』と『セルリウム値』がどっちかが多くなりすぎたり少なくなりすぎたりすると、フレンズになったり、セルリアンになってしまうことがあるそうです」

「ですからビーストはフレンズのサンドスターやセルリアンのセルリウムをほきゅうしているのです」

「襲われたフレンズが野生化するのは、サンドスターのみを奪われたからなのです」

 

 今度はなにか、複雑な形をした物の絵が出てきた。

 

「そこでちょっと乱暴ですが、サンドスターをビーストに向けて射ちます。そのための道具がこれ、『バリスタ』です」

 

 その複雑な形の物を指した。『バリスタ』というらしい。かっこいい。あたしも描いてみたい。

 

「これは今ビーバーさんたちに作ってもらっています。としょかんに置いてあった『古代の兵器大全』を参考にしました」

 

 その本、かばんちゃんが読んでいる所を見たことがある。曰く「人類(じぶんたち)を知るためには、人類の叡智(つくったモノ)から学ぶと面白い」だそうだ

 

「ちょっと痛いかもしれませんが勢い良くビーストにサンドスターの塊をぶつけてサンドスターを浴びてもらいます。」

「ふんかでサンドスターがふってきて、どうぶつなどにぶつかってフレンズがうまれるのはしっているはずです」

「その原理の応用みたいなものなのです」

「勢いよくぶつかればサンドスターが活性化し、急激に『サンドスター値』が多くなり『セルリウム値』も減らされます」

 

 つまりは『ふんかの再現』……?難しそうだ。

 

「ただし、バリスタは大きくて持ち運びが難しく、チャンスも一度きりです」

「にはつもうつとかのんびりやってたら、ビーストにたべられちゃうのです」

「一撃なのです。ブラックジャガーのように一撃なのです」

「はい。そこで・・・・」

 

 ジャパリパークの地図が貼られる。その地図には星のシールが何枚か貼ってある。

 

「このようにあらかじめ狙いやすい位置を決めて、フレンズさんたちがそこまで誘導します。今回の作戦の重要なポイントです」

 

「つまり、フレンズとビーストでおいかけっこするということなのです」

「ですがビーストはフレンズより速い個体が多いし、なにより爪が当たったら即野生化なのです」

「はい。ですがちゃんと逃げるときの工夫も考えています。逃げる係はサーバルちゃん、イエイヌちゃん、ロードランナーちゃんにお願いします」

 

「はいはーい! 私1番行ってみたーい!」

 

 サーバルちゃんがまた先走る。

 

「誘導はリレーごっこのように何人かでやります。サーバルちゃんは2番目がいいかな。1番目は……」

 

 ロードランナーちゃんの挙手。ロードランナーちゃんはかけっこが大好きな鳥のフレンズだ。

 

「このロードランナー様が1番目を受けてやるぜ。俺様は毎日走っているからへっちゃらだぜ」

 

「わかりました。ロードランナーちゃんは1番目ですね。じゃあ、3番目はイエイヌちゃんですね」

 

 イエイヌちゃんは自信満々に

 

「ハイ! 3番手は任せてください!」

 

 と返事をした。イエイヌちゃんもかけっこは得意だ。

 

「はい。イエイヌちゃんよろしくお願いします」

 

 でも、ちょっとだけ不安だ。万が一ビーストにひっかかれるようなことがあったら……

 へーきへーき、きっとなんとかなる……

 

「このビーストは姿勢がネコ目に近く、行動もネコ目寄りの行動が多く見られます。なので走り方もネコ目のような走り方、つまり『まっすぐにはやく走れるけど、曲がることが苦手』です」

「ロードランナーは小回りが効くので、ジグザグにまがりながらはしることができるのです」

「同じネコ目のサーバルやイエイヌは同じ走り方になってしまうので、今回のビースト相手だと必ず不利になるのです」

「でも、サーバルちゃんはジャンプ力でカバーできますし、イエイヌちゃんの番になるころには恐らくビーストも疲れているでしょう。もちろん支援は惜しみません。ですから、みなさん全力で逃げてください」

 

「わかったよかばんちゃん。まかせて!」

「応! まかせておけ! このロードランナー様、ビーストだろうと翻弄してやるからな」

「私も頑張ります! ほんろーしてやりますよ!」

 

 3人はやる気に満ち溢れていた。心強い。

 

「ありがとうございます。そして……」

 

 そういうとかばんちゃんはあたしの方を向く。

 

 

「ともえちゃんには射手を任せようと思います」

 

 

 え!? 

 

 あたしがこんなオオトリを任されるとは思ってもいなかった。た、たしかにバリスタには射手も必要だとは思うけど、えっと、でも、

 

「あ、あたしですか、あのバリスタを、つかうのは?」

 

「はい。今このバリスタを使えるのは僕とともえちゃんしかいない。それに、僕とラッキーさんはジャパリバスを運転しないといけないです。だから、ともえちゃんには頑張ってもらいます」

「バスノ ウンテン ボクラニ マカセテネ」

 

「わかりました……でも大事な場面を任されるって緊張します……」

「大丈夫です。ともえちゃんの絵の正確さと観察力は、バリスタをうつときも生かされるはずです。僕はそれを見込みました」

 

 確かに絵は得意だ。でも、あたしに絵以外のとりえなんて

 

「大丈夫ですよご主人様! 私達だってなんとかなりますから、ご主人様もできますよ!」

「えへへ……ありがとう、イエイヌちゃん」

「そーそー! へーきだよ!」

「ビーストは一人だが、俺達はたくさんいるからな!」

 サーバルちゃんやロードランナーちゃんまで励ましてくれる

 

「ありがとう。あたし、頑張る」

 

「ありがとうございます。はかせとじょしゅは明日かざんへ行って、サンドスターのかたまりを作って持って来てください。それとビーストを探すのと、ビーストから逃げているときに上からてだすけもお願いします」

 

「やれやれなのです。やることがたくさんなきがするのです」

「ビーストに追われるよりはマシなのです。お任せなのです」

 

「これで作戦は整いましたね。実行は明日にしましょう。そうだ、わたしたいものが……」

 

 そういって鞄からなにかを取り出す。小型でくの字、筒がくっついているモノと、先が丸くなった円柱型のモノが2個。

 

「これは信号銃、フレアガンともいいます。そしてこれはこの弾。もしもの為に一人一個二発はもっておいてください」

 

「これは……むずかしいこうぞうをしているのです、かばん」

「使い方を教えるのです、かばん」

 

「そうですね。これは危ないので、外で使いましょう」

 

 みんなで外に出て、使い方を実践し始めた。

 

「まず弾を込めて、このレバーを引きます」

 

 よっこいしょ、とかばんちゃんがレバーを引いて見せた

 

「あとはこのひきがねを引くだけです」

 

 プシューッ。射出された弾はバチバチと綺麗な火花を散らしまぶしく輝いて空に軌跡を描いた。

 でも火だ。フレンズがみんな怖がった

 

「なんてことですかかばん! われわれにひをつかわせるつもりですか!?」

「本能で火を怖がる事はわかっているはずですかばん」

「えっと……マッチでいちいち火を付けるよりはずっと楽で安全だし、野生開放すれば火を克服できますから……」

 

 慌てて説明をするかばんちゃん。後ろでは火花がまだ輝いている

 

「まったく、『ひ』と『ひと』ははおそろしいのです」

「上手いことを言っても克服はできないですよはかせ」

 

「せっかくなんで、みなさんこれを撃って見てください」

 

 試しうちをするフレンズたち。道具がうまく扱えなかったり火がこわかったりでみんな発射することすらままならなかった。

 

「じゃあ、あたしもうってみます」

 

 かばんちゃんがやったような動きをし、ひきがねを引く。プシュー。火花はまた軌跡を描いた。やっぱりフレンズ達は怖がっていた。

 

 

 

 夜。寝床につくあたしとイエイヌ。イエイヌちゃんが嬉しそうに話しかける。

 

「もし成功すれば新しいフレンズですよ、ご主人様」

「そうだね……何のフレンズか楽しみだな。何のフレンズだろうね?」

「うーん……トラ?」

「かばんちゃんはネコやらなにやら言ってた気がします。トラもネコの仲間だったはずです」

 

 こんな感じにお互いに期待を膨らませていたら、いつのまにか寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オハヨウ ゴザイマス カバン アサノ 5ジヲ オシラセシマス オハヨウ ゴザイマス カバン アサノ 5ジヲ オシラセシマス」

 

 

 ラッキーさんの声で目が覚めた。既にはかせたちは行ったようだ。

 じゃぱりまんよし、フレアガンよし、資料よし、車の電池よし。すぐに身支度を済ませ、僕たちはビーバーさんたちの家に向かった。

 

 

 

「おはようの挨拶をするであります!」

 

 家から出てきたのは、意外にも早起きのプレーリーさん。勢い良く『挨拶』でお出迎えする。

 

「!!!//////」

 

 不意の『挨拶』には、いつでも動揺する。じかんがゆっくりなようにかんじ、くちのなかがとろけて、ってやってる場合ではない。すぐに体制を立て直す。

 

「おはようッス! 依頼のブツはできたッスよ!」

 

 つづけてこれまた早起きのビーバーさんが迎える。昨日いきなりこの二人にバリスタの製作を頼んだわけだが、さすが製作のプロ。もうバリスタそのものが出来上がっている。完璧な出来。続けて池に試しうちをする。手ごろな岩をセットし、対岸の木に標準を向け、おもいっきり弦を引き絞る。そして、

 

「発射!」

 

 ぴょーん! と弾丸の岩は軽々と池を飛び越えた。幸い対岸にフレンズはいなかったが、予想以上の飛距離だ。

 

「いきなりでごめんなさい。本当にありがとうございます」

 

「気にするなッス! いつでも引き受けてやるッスよ!」

 

「かばんさんは我々の命の恩人であります! いつでも頼るであります!」

 

 お礼にじゃぱりまんをたくさん渡して、バリスタをバスに乗せてその場を後にする。

 

「カバン イヨイヨダネ」

 

 ラッキーさんも期待しているようだ。

 

 

「コレハ パークノ キロク ニモナイ ココロミ ナンダ ダイジョウブ キット ウマク イクサ」

 

 

「ええ、あの子たちならやってくれます。信じてます。後は…………ビーストさんを、フレンズとしてお迎えできますように」

 

 

 

 希望を抱きつつ作戦場所へと向かう

 

 

 

 

「おっはよ~~~~~~!!!!!!」

「わあああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 せっかちなあたしはイエイヌを勢い良く起こした。今日は騒がしい朝だ。

 

「ご主人様!?まだ行くのには早すぎませんか!?」

「今日はさくせん実行の日! 待ちきれないの! さあ支度支度!!」

 

 興奮するあたしと振り回されるイエイヌちゃんはチーターのような早さで支度をすませた。

 

「くぅ~ん、もう少し寝ていたかったのに……」

「寝ているヒマはないよ!さあしゅっぱーつ!」

 

 ロードランナーちゃんを迎えにスキップで向かうあたし、走るイエイヌ。どういうわけかあたしの方が速い。

 

 

 

「おーはーよーう!!! ロードランナーちゃーん!!!」

 

 さくせん開始までまだ長いというのに、早すぎるお迎えに対してロードランナーちゃんの嘆きが中から返ってきた。

 

「と、ともえちゃん! 早すぎるよ! このロードランナー様もまだ支度してないのに!」

 

 慌ててロードランナーちゃんが支度を済ませる。パンをくわえたロードランナーちゃんが出てきたが、お構いなく

 

「じゃあ、いこうか!」

 

 と、興奮しつつさくせん場所にむかって走り始めた

 

「お、オイ……あれいつものともえちゃんの速さじゃないぞ!?」

「走っても走っても追いつけないです~! まってくださ~いご主人様~!」

 

 どういうわけかイエイヌちゃんとロードランナーちゃんより早く走るあたし。こういうときのお決まりである。

 

 そう。今日は新しいフレンズが増えるかもしれないという大事な日。けものが大好きな、フレンズが大好きなあたしが興奮が抑えられるはずがない。

 

 

 

「ビーストさんを、フレンズとしてお迎えできますように」

 

 

 

 

 つづく。



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第二話「Be a friends 後編」

結局、全てのビーストは

サンドスター値、セルリウム値全てを消耗しきっても

野生に戻ることはなかった。

ビーストの頃の激しい消耗が原因と考えられている。

墓が増えていく中、私は思った。

もし、ビーストをフレンズにできるとしたら?


遺体にサンドスターをぶつければ、理論上はフレンズ化は可能



死体からフレンズ化させるのは倫理に反している。



絶滅種やUMAを無理やり復活させたくせに、倫理とかよく言えたものだ。





じゃあビーストになっている時にフレンズ化は?



暴走の危険性がある 施設への甚大な被害が予測される



結局、ビーストのフレンズ化の試みは全て却下された。




でも、私は信じている。

奇跡はある。


 かがやきのまぶしいサンドスターをちょいとばかり…

 

「…………ふぅ、しんせんなサンドスターのかたまりのできあがりなのです」

 

 われわれはかざんのてっぺんで、かばんにたのまれてサンドスターをとっているのです。

 

「大きさを確認するのです」

 

 あらかじめつくっておいた『うつわ』をとりだして、はめてみたのです。われわれはかしこいので。

 

「ふむ、ぴったりなのです。」

「申し分なしなのです」

「さて、そろそろいくのです、じょしゅ」

「みんな寝坊してないといいですね、はかせ」

 

 フレアガンよし、サンドスターよし、わすれものはなし。いつだってわれわれはかんぺきなのです。

 

 

 

 

 どれくらい待っただろうか、全員があつまった。あたしはバリスタを前にして、不安と緊張を感じはじめた。

 

「これがサンドスターのかたまりなのです、ともえ」

「チャンスは一回限り、失敗は許されないのです、ともえ」

 

 サンドスターをバリスタにセッティングする。ちょうどいい大きさだ。引っ掛けて……準備よし。あとはこれを引けば発射できる。

 

「では、われわれはビーストをみつけてくるのです」

「見つけたら私が戻ってくるのです」

「わかりました。気をつけていってきてください」

 

 かばんちゃんは二人を見届けると、地図を出し、赤い星のマークを指す。

 

「ぼくたちが今いるのがここです。ここは高く、遠くからも見えるので逃げる方向がわかりやすいです」

 

 遠くから見ても分かりやすい、そして周辺は林地帯で逃げやすい。これ以上ない立地だった。

 

 かばんちゃんは続けて

 

「走る距離はビーストの場所次第なのでまだわかりません。長くなるかもしれませんが、平気ですか?」

 

「まかせておけ! 長距離はなれっこだぜ」

「わたしもがんばっちゃうんだから!」

「サーバルちゃん、ロードランナーちゃん、今の内にかけっこしちゃいますか??」

「えーやめとくよー。本番のときに疲れちゃうもん」

「なんでだよ~、ロードランナー様は全然平気だぜ~」

 

 談笑する三人を横に、かばんちゃんはあたしを見る。

 

 

「ごめんねともえちゃん、こんな危険な事をまかせちゃって」

「大丈夫です。あたしだってビーストをフレンズとして迎えたいです」

 

 今日、それはあたしが待ち望んでいた日。

 

「そして、ビーストちゃんを迎えたら、みんなで遊んで騒いでる楽しい絵を描きたいんです。楽しい時間をすごしたいんです」

 

 けものはいても、のけものはいない。だからビーストちゃんは、のけものにはしない。

 

 

「だから、あたしはビーストちゃんのために、成功させます!!」

 

 

 イエイヌちゃんが、あたしの決意を聞いて振り向く・

 

「ご主人様なら、きっとできます!私達は信じてます!」

「ああ、それにこのロードランナー様がいる。俺達(みんな)がいる」

「そーだよともえちゃん!だからへーきへーき!なんとかなるって!」

 

「えへへ……みなさん、ありがとうございます!」

「僕も、ともえちゃんならできると信じています。応援しています」

「ありがとうございます!!」

 

 と言っている間にじょしゅが帰ってきたようだ。

 

「ビーストを発見できたのです。地図に印をつけておくのです。はかせもそこにいるのです」

 

 青い星を地図に貼るなり、じょしゅは急いではかせのもとに向かった。

 

「ありがとう。じゃあ……」

 

 自分たちの居る所の星、はかせの居る所の星、その間に青い星が2つ貼られた。

 

「ラッキーさん、この青い星をたどってください」

 

「ルートサクセイチュウ・・・・ルートサクセイチュウ・・・・ デキタヨ ウンテンハ マカセテネ カバン」

「ありがとうございます、ラッキーさん。じゃあともえちゃん、いってきます」

 

「「「いってきます!」」」

 

「気をつけてくださいねー!」

 

 4人はついに行ってしまった。久しぶりに、一人になってしまった。

 さっきにも増して緊張に襲われている。

 いや、緊張というよりは、恐怖だろうか?

 一人になるのは目覚め以来かな。

 一人は寂しい。

 独りは寂しい。

 それは、あたしが目覚めて最初に思った感情。

 それを、イエイヌちゃんが救ってくれた。

 ビーストだって一人。

 ビーストだって独り。

 独りぼっちは、寂しいもんね。

 だから、今度はあたしが救う番。

 あたしたちが、ビーストを救う。

 

 

 だから、あたしに怖がっている暇はない。

 もう、あたしは怖くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「ダイイチ ポイント トウチャク イチジ テイシ スルネ」

 

 バスが停止した。私はここでおりるみたいだ。

 

「じゃあこれ、フレアガンと弾2個。使い方は覚えてる?」

 

 昨日も今日もふくしゅうした。使い方はばっちり覚えている。

 

「もちろんです!」

「よかった。でも気をつけてね。じゃあ、サーバルちゃんが来るまでイエイヌちゃんはここでまっててね」

「よろしくねー!イエイヌちゃん!」

「はい!わかりました」

 

「ソレジャア シュッパツスルヨ」

 

 バスはまた出発した。サーバルちゃんとロードランナーちゃんが手を振る。お互いに見えなくなるまで、手を振り合っていた。

 私はみんなのためならなんだってできる。命令は絶対こなす。そうしている。そこに不安や恐怖はない。

 でも、今日の私はなんだか違う。

 近くに居るはずのご主人様がいない。

 ご主人さまは今も寂しがっているはずだ。だって、私も寂しい。

 でも、こんなに不安がっていてはご主人様に、みんなに迷惑をかけてしまう。

 へーきへーき、きっとできる。

 

 へーきへーき、私達はきっと成功させる。

 

 怖がってたら、できるものもできない。

 

 

 でも、それでも、ただご主人様が心配だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ダイニ ポイント トウチャク イチジ テイシ スルネ」

 

「わーい!やっとついたー!私はここで待ってればいいんだね!」

「うん。じゃあサーバルちゃんにもこれ、気をつけてね」

 

 かばんちゃんがフレアガンと弾を2こわたしてくれたー!紙ひこーきよりも難しいけど、へーきへーき!

 

「ありがとー!かばんちゃんにおそわったから使い方もばっちりだよー!」

 

 グット!なサインをだしたんだ!そしたらかばんちゃんもグット!って返してくれたの!

 

「じゃあ、よろしくね!サーバルちゃん!」

「サーバル、よろしくな」

「へへん。まかせてー!あたしはかりごっこではまけないよ!!」

 

「ソレジャア シュッパツスルヨ」

 

「ロードランナーちゃんも頑張ってねー!」

「任せとけ!このロードランナー様は負けないからな!」

 

 バスが見えなくなるまでロードランナーちゃんと手を振り合った!

 

 本当は、私はちょっとだけ不安だった。

 ちゃんと逃げ切れるか分からない。

 いつもかばんちゃんに助けられてきた。

 私だけでできるのかわからない。

 でも、やるしかない。

 

 へーきへーき!どうにかなるって!

 いままでもなんだかんだ言ってどうにかなったから!

 だから、ただ私は全力でやり遂げる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おいかけっこは得意だ。

 逃げるのも追いかけるのもかかってこい。

 いつも走っているから余裕だ。

 このロードランナー様がかけっこにおいてロードランナー様とチーター以外に動揺する日は来ない。

 そう思っていた。

 ビーストを目の前にするまでは。

 

 

「サイシュウ ポイント トウチャク ジドウ ウンテンヲ シュウリョウ スルネ」

 

 バスが止まった。上からはかせとじょしゅがお迎えする。

 

「だいぶまったのです。ビーストはこのちかくにいるのです」

「気をつけるのです。何時何処から襲われてもおかしくないのです」 

「わかりました。ロードランナーちゃん、準備はいいですか?」

 

 そんな問い、答えは決まってる。

 

「ああ、このロードランナー様、いつでも行けるぜ!」

 

 周りは木だらけで、どこから襲われるかわからない。俺はいつでも逃げられるよう、クラウチングをする。

 

「気をつけてください!今からビーストを呼びます!」

 

 かばんさんがそう言うと、鞄からなにかを取り出す。フレアガンじゃない。紐を中心として、棒が何本も繋がった何かに、かばんちゃんは火をつけ、逃げ出した。

 パンパンパン!!!パンパンパンパン!!!!!

 その何かが光り始める。耳を突く音が森中に鳴り響く。そして、

 

「キケン キケン ビースト セッキンチュウ ビースト セッキンチュウ」

 

「ガォォォォォォ!!!」

 

 ビーストの叫び声。その恐ろしい声を全身で感じて鳥肌が立つ。いけないぞロードランナー、ここで動揺しては狩られてしまう。

 

「では、ロードランナーちゃん!よろしくおねがいします!」

 

 音の元をビーストが襲う。 音は既に止んでいた。 かばんちゃんはバスを走らせて、既に遠くにいた。

 そして、ビーストはこちらを向いた。おいかけっこの始まりだ。

 

「おい! ビースト、このロードランナー様とおいかけっこで勝負するんだな!」

 

 挑発が聞こえているのかいないのか、ビーストはこちらに突っ込んでくる。しかし想定外だ。

 

 

 

 速すぎる。

 

 

 瞬きしてるうちに、目の前にビーストがいた。

 

 

 辛うじてひっかきを回避する。ビーストは回避されて倒れこんだ。そのまま逃げ足を加速させる。それでもビーストはこのロードランナー様を超えるスピードで追ってくる。だが俺には秘策がある。

 

「そこだ!!」

 

 またギリギリで急カーブ。そのまま森の中に逃げ込む。ビーストは木をなぎ倒しながら追ってくる。そこでまた急カーブ。道に戻り、また反対側の森に入る。

 そう、ジグザグに走る事で小回りの効かないビーストを翻弄する。これでスピード差を埋める。

 だがビーストのスピードは木や枝の妨害ごときで緩まるほど軟弱ではない。ここまでやってもビーストに追いつかれてしまうのは必然。だが、このロードナンナー様にはもう一つ秘策がある。

 

 

 

 野生開放だ! 

 

 

 

 野生開放で少しだけ速くなったが、それでもビーストの方が速いに。だがこのロードランナー様はただ足を速くするために野生開放をつかった訳ではない。

 フレアガンだ。

 道に出た俺はすぐさま飛んで、真上にフレアガンを放った。

 

 プシューッ! バチバチバチ!! 火花に気を取られるビーストを背に、このまま突っ走る! 

 

 火花の音が消えた。ビーストは再びこのロードランナー様に向かって走ってくるだろう。だが俺はずっと先にいる。

 サーバルが見えてきた。あと一息。

 

「ロードランナーちゃーん!ここだよー!!」

 

 声が聞こえる。が、その声に気を取られた瞬間

 

「あっ!!!!」

 

 服がビーストの爪に触れた。本能からか、急カーブしたのだろう。

 

 混乱した。このロードランナー様自身でも何をやっているのかよくわからなかった。多分、がむしゃらに走っていたのだろう。

 

 冷静になった頃には木の枝に足を引っ掛けていた。このロードランナー様がこうなるわけがない……たまたまビーストに引っかかれて周りが見えなくなった。

 

「Beep!Beep!Beeeeep!」

 

 泣き叫ぶ哀れな食事に襲いかかるビースト。

 

 

 食われる。

 

 

 食われる。

 

 

 食われる。もはやこの言葉で頭がいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 プシューッ! 

 

 バチバチバチ!!!

 

「まったく、われわれがいないとだめなのです」

 

「全く、さっきまで順調だったのに締まらないのです」

 

 火花が飛んだ。サーバルのいる方向に飛んで行った。ビーストが火花を眺めている内に、枝を外して飛んで逃げた。ビーストは俺を諦め、サーバルを睨んだ。

 

「サーバル! あとはよろしくたのんだぜ!」

 

 冷静を欠き、枝に引っかかった事が悔しかった。でも、今生きていることが嬉しかった。

 

「あ、ありがとう、はかせ、じょしゅ」

 

「だれだってビーストにひっかかれればああなりますよ」

 

「消耗した体ではすぐ落ちるのです。とっとと休憩するのです」

 

「ロードランナーちゃん!お疲れ様です!」

 

 かばんちゃんが下にいた。バスに連れてってもらい、揺れるバスの中でジャパリまんをたべて休憩することにした。

 

 

 

 

 

 

 

「よーし!狩りごっこだね! 負けないんだから! 」

 

 早速野性解放していくよー!

 

「うー、がおー!!」

 

 ジャンプで枝から枝に!ビーストには真似できないんだから!

 

「ガオオォォォォォ!!!」

 

 なんでなんで!?ビーストも私の後を追って枝をとんでいるよ!

 

 そうだ!今度はもっと足に力を込めてにジャンプして!

 

 勢いよく枝を踏んで~ジャンプ!うみゃ~!

 

「!?!?!?!?!?!?!?」

 

「うみゃ~!私の後を追うから落っこちるんだよ!」

 

 狙ったとおり!枝が折れてビーストは落っこちちゃった!

 

「サーバルちゃーん!もう少しですよ!!」

 

 イエイヌちゃんが見えてきた!このまま走って行くよー!

 

「うーみゃみゃみゃみゃみゃみゃ!!!!」

 

「ガオオオォォォォォォ!!!!」

 

 近づいてきた!よーし!またやっちゃうんだから!

 勢いよく枝を踏んで… バリィ!!

 

「ええ~~!?!?!?」

 

 今度は私が落っこちちゃった!でも私にはフレアガンがあるんだから!

 とっさにだして、ひきがね?を引いた!火は怖くない!

 

 かちゃ

 

 あれ?何も出ない?

 

「うみゃー!?弾を忘れちゃった!!」

 

 それでもビーストは待ってくれない……慌てて逃げようとしたときにはもう爪が目の前に……

 

 

 プシューッ! 

 

 バチバチバチ!!!

 

 

 

「食べないでくださーい!!!!」

 

 

 

 かばんちゃん!?かばんちゃんが助けに来てくれた!!ビーストの目の前にいた私を抱えて森の中へ走り込んだ!

 

「ありがとう!かばんちゃん!」

 

「間に合ってよかった……サーバルちゃん、けがはないですか?」

 

「ぜんぜんへーきだよ!ごめんね、かばんちゃん!」

 

「怪我がないならよかったです。バスに乗っていきましょう」

 

 

 

 

 

 

 ご主人様、待っててください。今行きますからね。ビーストを連れて!

 

「ガオオオォォォォォォ!!」

 

 野性解放!

 

「ビーストさん!こっちですよ!」

 

 私は高台を目指して、そこにいるご主人様を目指して全速力で走り出した。たくさん走ってきたビーストは動きが鈍くなっているはずだ。

 だがそれでも、私の逃げる速さより、速い。

 でも、突っ走る!!差はまだ開いている。この速さなら、ギリギリ……!

 

 

 ただ走っていた。

 

 何も考えず、前を見て走っていた。

 

 いや、ご主人様の事を考えていたのかもしれない。

 

 とにかく走っていた。

 

 ご主人様が見えた。

 

 私はなぜか、安心した。

 

 ご主人様が見える。

 

 ともえさんが見える。

 

 それだけでなんだかほっとする。

 でもほっとしてる場合じゃない!

 ビーストが近くなっている!

 そこでジャンプ!そして、フレアガン!

 下に向けて放った火花は、ビーストの注意を引いた。

 

「ご主人様~!今行きます!」

 

「イエイヌちゃん!!」

 

 高台から手を振っている。火花が消えない内に、高台にのぼることにした。

 

 

 

 

 

「ただいま、ご主人様!」

 

「おかえり、イエイヌちゃん!」

 

 イエイヌちゃんが来た。

 

 ついに本番だ。

 

 イエイヌちゃんが隣に居てくれるお陰で、今まで、心の底で感じていた緊張と不安が吹っ飛んだ。

 

 あとはもう、狙って、うつ。

 

「イエイヌちゃん、気をつけて!フレアガンを撃つよ!」

 

「は、はい!」

 

「ビーストちゃん!こっちを向いて!」

 

 プシューッ!

 

 バチバチバチ!!

 

 狙い通り、ビーストはこちらを向いた。

 

 ビーストを狙う。

 

 さぁ、いつでも来い。

 

 チャンスは一回。

 

「ガオォォォォォォォ!」

 

 おたけびをあげてビーストが襲い掛かってきた。

 

 あたしとビーストの間にはバリスタ。

 

 

 

 引き金を引く。

 

 

 

 サンドスターが勢いよく飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぱっかぁーん! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サンドスターが弾けた。

 

 当たった。

 

 ビーストはなおも止まらなかったが、爪を当てようともせず、私の後ろまで飛んだ所で倒れ込んだ。

 

 みんながビーストの周りに集まり始める。

 

 真っ先にあたしに声をかけたのはイエイヌちゃん。

 

「ご主人様!すごかったです!」

 

「ありがとう!イエイヌちゃんも速かったよ!」

 

 続いてかばんちゃんも声をかけてくる

 

「ごめんなさい、こんな重荷を背負わせてしまって。そして、ありがとうございます!」

 

「こちらこそありがとうございます。お陰で、ビーストをフレンズに……あっ! 見てください! ビーストが……」

 

「サンドスターが輝いている……!」

 

 見たことがある。これは、フレンズが生まれる時に発する輝きだ。

 

 つまり……

 

「これでビーストちゃんもフレンズになれるはず!」

 

 ビーストは輝きに満ち溢れた。

 

 

 

 みんなは、ただじっと新しいフレンズの誕生を見守っていた

 

 あたらしいフレンズへのごあいさつは?

 

 みんな、言わずとも分かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ??? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、どこ? 

 

 なぜ、私はここにいる?

 

 わたしはアムールトラ。

 

 それ以外の事はなにもわからない。

 

 怖い。分からない。怖い。たくさんのにおいがする。怖い。

 

 

 

 ……重たいまぶたを開ける。私の目に映し出された景色は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ! ジャパリパークへ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 End

 

 



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第三話「Extinct」

アテンションプリ~ズ。ハト目ハト科の渡り鳥、リョコウバトでございま~す。今回案内するのは、絶滅種の理想郷。不可能とされていた絶滅種の再現がサンドスターの力によって成功し、フレンズとして復活した幻の動物たちをご案内いたしま~す。まずはこちら、ネコ目イタチ科、ニホンカワウソちゃんで~す。コツメカワウソと大変似ていて可愛いですね~!こちらは鯨偶蹄目カバ科、ゴルゴプスカバさ~ん!ゴルゴーンという名前からきているらしいですよ~。かっこいいですね~。次の動物は~・・・・・・・・・・・・


「あれ?ここは?」

 

 どこ?

 

 いつのまにかわたしは、いや、わたしたちは迷い込んでいた。

 

 さっきまで、イエイヌちゃん、ともえちゃん、ロードランナーちゃんとおいかけっこで遊んでいた。みんな、きっと夢中だった。今まで気づかなかったのが不思議だが、わたしたちはそれだけ夢中になっていたのだろう。

 気づいたら、みんないない。まいごになってしまった。

 周りはもやもやしていて、あまり遠くが見えない。かろうじて、周りにたくさんのたてものがあることがわかる。風の音が耳を通る。ここは、一体どこなんだろう?

 

「ともえちゃーん!ともえちゃーん!」

 

 みんなに聞こえるよう、おもいっきり叫んだ。聞こえるといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、一人になってしまった。夢中になりすぎたのがいけなかった。建物と霧に囲まれて、しかし誰も隣にはいない寂しさがあたしを覆う。こんなに建物がたっているのに、生き物の気配すらない。ここは、一体……

 

「ともえちゃーん!ともえちゃーん!」

 

 寂しさを飛ばすように、建物の間からあたしを呼ぶ声がやってきた。この声は、アムールトラちゃんだ。

 

「アムールトラちゃーん!いまいくよー!」

 

 あたしは声の方向にむかって走り出す。建物の間を通り抜け、霧をかきわけ進んでいく。

 

「イエイヌちゃーん!ロードランナーちゃーん!」

 

 みんな、無事だろうか、怪我はしていないだろうか。

 心配で心配でならない。

 大丈夫、あの子たちは自分でどうにかできるから……。

 

 

 

 

 

 

 

 目を疑う。

 

 このロードランナー様、目の前の光景に腰を抜かしている。

 

 いつのまにか、迷った先で、こんな奴に会ってしまうんだ。

 

「オイオイオイ、こりゃないぜ?」

 

 隣のイエイヌすらも、驚いている。

 

「お、おおきい……そんな……」

 

 一つ目の怪物(セルリアン)が、目の前を覆っている。大きな、丸い、怪物。おびえる俺達に、ゴロン、容赦なく突っ込んでくる。

 

「に、にに逃げましょう!」

 

「わわわかってる!どう考えたって逃げるしかねぇ!」

 

 その通り、逃げるしかなかった。とっさに坂道を二人で駆け下りる。でけぇセルリアンもゴロゴロ、恐ろしく速く転がってくる。

 

 ゴロゴロと、まるで落石のように、俺達を追う。いや、ただ転がっているだけかもしれない。どちらにしよ、当たれば潰れる。たてものが

 

「横だッ!」

 

 横にまがろう。あの速さで転がっては急に横にはまがれまい。たてものとたてものの間に逃げ込む。

 

「は、はい!」

 

 イエイヌも逃れた。セルリアンは予想どおり、まっすぐに転がっていってしまった。行き着く先は想像できない。

 

 

「セルリアンはなんとかなりましたけど、どうしましょう」

 

「ともえちゃんたちの場所が分からない事には、ここをうかつに動くこともできねぇ。さらに迷ってしまう」

 

「ご主人様なら、きっと大声でわたしたちを呼んでくれるはずです」

 

「だったら呼ばれるまで待つしかないな」

 

 まもなくして、呼び声が聞こえてくる

 

「ともえちゃーん!ともえちゃーん!」

 

「アムールトラちゃーん!今行くよー!」

 

「イエイヌちゃーん!ロードランナーちゃーん!」

 

 間違いなくアムールトラ、そしてともえの声だ。行くべき方向がわかった。

 

 その方向とは、セルリアンが転がっていった先だ。

 

「行くぞ!ともえたちが危ない!」

 

「はい、早くいきましょう!二人のところへ!」

 

 急いで二人のところへ向かう。

 

「ともえー!アムールトラー!気をつけろー!」

 

 走りながら叫ぶ。セルリアンは、もうすぐあいつらの前に現れる。

 

 

 

 

 

 

「アムールトラちゃーん!さびしかったよー!」

 

「ともえちゃーん!」

 

 再会。なんとかアムールトラちゃんと合流できた。あとは、イエイヌちゃんとロードランナーちゃんがどこにいるか。

 

「ともえー!アムールトラー!気をつけろー!」

 

 遠くから声が聞こえる。ロードランナーちゃんだ!

 え?気をつけろって?

 そしたら、同じ方向からゴロゴロゴロ、音が鳴り響く。何かが転がってくるが、見えない。まもなく、転がるような音が消える。

 嫌な予感がした。

 

「ともえちゃん!危ない!」

 

 とっさに後ろに身を引く。その瞬間、目の前に『岩』が落ちてきた。

 『岩』。そう呼びたかった。ただの『岩』ならよかった。

 それはまさしく『岩』のような、丸くてでかいセルリアン。一つ目がこちらを睨む。

 まずい。転がってくる。本能からだろうか、セルリアンが転がってくるであろうことは分かった。

 

 しかし、体が思ったように動かない。

 恐怖で、体を動かしたいのに、動かせない。

 

「い、嫌!嫌ああああああ!!」

 

 一つの目しかないセルリアンに叫ぶ。そんなことしても、あたしに転がってくるだろう。声はだせても、体がいうことを聞かない。

 

 

「やれやれだね……」

 

 横から石が三つ、丸いセルリアンの体に突っ込んでくる。セルリアンの体を押し出すのに十分な勢い。セルリアンの注意は、その石が投げられた方に向かった。

 

「いまだよ」

 

 パチン、指が鳴る音がした。

 

「はああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 反対方向から、何かが出てくる。その爪は、セルリアンの石を正確に、潰した。

 

 ぱっかぁーん!

 

 

 

「あ、ありがとうございます。

 

「あぶなかったですね~、人間さんたち」

 

「どうやらこの研究所区域にまよいこんでしまったみたいですね、あなたたちは」

 

 イエイヌちゃんと、ロードランナーちゃんが合流した。目の前には、二人のフレンズ。

 

 まるでコツメカワウソちゃんのようなフレンズ、片やタイリクオオカミちゃんのようなフレンズ。しかし、『色』そして『声』が違う。そして、『冷たそうな目』をしていた。

 

「あ、あなたたちは何のフレンズちゃんですか?」

 

「私はニホンカワウソ。よろしく……」

「ニホンオオカミです。よろしくね、人間さんたち!」

 

 あたしたちも自己紹介をする。

 

「あたしはともえです、よろしくおねがいします」

「イエイヌです~!よろしくおねがいします!」

「俺様はロードランナー!よろしくな」

「あ、アムールトラです。よろしくおねがいします!」

 

「さて、あなたたちが迷いこんだ研究所区域だけど、まぁ私達の『アジト』に案内するから」

「道中ゆっくりと話すとするわ!わたしもよくわかってないけど」

「ついてきて。仲間にあわせてあげるわ」

 

 仲間……?ここには他にもいるのかな?楽しみだ。ついていかない理由はない。案内してもらうことにした。

 

「まず、ここは研究所区域。常に霧で覆われていて、サンドスターの濃度も濃い。地形と天候の制御がされない区域らしい」

「らしいって、誰から聞いたの?」

「そのうちわかるよ!その人にも一度あってもらうから」

「人って、ともえちゃんみたいな人か?」

「ご主人様みたいな人間ですか?」

「人間、そうね。人間よ」

「人間がまだ居るんですね!ともえちゃん!」

「うん。かばんちゃんと、あたし。これで三人目の人間だね」

「「かばんちゃん?」」

「うん、あたしたちはかばんちゃんって呼んでいる。人間のフレンズだって言ってたよ」

「そうか、人間のフレンズか」

「人間のフレンズ、もう一人いたなんて……」

 

 そんなお話をしているうちに、『アジト』についた。ひときわ高い建物。霧に覆われていても、高さがなんとなく分かってしまった。

 

「あわせてあげる。もう一人の人間のフレンズにして、私達のリーダーに」

 

 

「こーんにちわー!わぁー!いっぱいきたぁー!」

「初めましてぇ、新入りかなぁ?」

「…こんにちは」

「こんにちは、ようこそ、アジトへ。ありがとう、来てくれて、四人も」

 

 いろんなフレンズが出迎えてくれる。しかし、その目はみんな、冷たそうな目をしている。いくら暖かそうな仕草をしていても、冷たい目が見えてしまう。

 

「カコさん!ただいま!」

「迷子を連れてきた……」

 

「えっと……カコさん……ですか?」

 

 青くて長い髪をした、白衣をまとう女の子。小さいのに、かばんちゃんよりずっと大人のような、そんな雰囲気があふれ出ている。

 

 鋭い目を見開き、あたしに話しかけてきた。

 

「こんにちは、人間の子。そして、イエイヌちゃんとロードランナーちゃんとアムールトラちゃん」

「す、すげぇ。なんで俺様の名前が分かるんだ?」

「わぁ~!物知りですね!」

「こ、こんにちは。あたしは、ともえです」

 

「ともえちゃん、いい名前。よろしくね」

「よ、よろしくおねがいします!」

 緊張する。きっとやさしい人なのに、なんだか恐ろしい雰囲気が緊張を誘う。

 

「改めまして、私の名前は『カコ』ヒトのフレンズよ」

 

 カコ、その女の子は、両手を広げ、あたしたちを迎えた。

 

「ようこそ、私の研究所『EXtinct Eden(EXE)』へ」



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