自己中で愛されてる鬼殺隊員との物語 (chuniis)
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主人公設定(追記あり)

名前:雨園 飛鳥(アマゾノ アスカ)

性別:女

年齢:16歳

外見

燃えるような赤髪

セミロング

可愛いより綺麗系

 

「生きているのは自分のためだけど、死ぬ時は誰かのためよ!!」

 

階級:癸→庚→丙

誕生日:7月7日

身長:160cm

体重:46kg

趣味:陶芸

好きなもの:トマト

 

【人物】

 

主人公・炭治郎の同期に当たる鬼殺の剣士。

炭治郎らが赴いた鬼殺隊士の最終選別に同じくして立ち向かい、たった六人の生き残った精鋭隊士の一人である。

生来は黒髪だったのだが、トマトの食べすぎで赤髪なったというトンデモ体質を持つ。

 

王様気質でポジティブで、トラブル製造機

 

常にテンションが高くて騒がしく、自分本位な王様気質の持ち主。

底抜けにポジティブで、大胆で怖いもの知らず。

ところかまわず、豪快に人様のそれは繊細な領域に踏み込んではキレられることもしばしば。

任務に対しては鬼を見つけるまでは通常運転。

しかし、鬼を前にすると人が変わり、初対面の人達は恐れおののくのがお決まり。

口調も目つきも雰囲気も、全てが怖すぎる。

 

明るさに反して鬼狩りとなったのは、家族を鬼に全員殺されたから。(父、母、兄、妹)

自分だけは街に出ていて無事だったという炭治郎と似た過去を持つ。

禰豆子との初対面時は鬼である事を知りながら既に炭治郎のことを仲間だと認識していたため、日輪刀を片手にしばらくは近寄らなかったのだが、亡くなった妹と禰豆子を重ねて無事和解。

それ以来、炭治郎と並んで禰豆子のセコム。

一般隊員であれば、近くにいるだけで怯える程の威圧感を放つ柱に対しては、きっと人類みな兄弟の精神でいるためか舐めた態度である。

 

鬼には問答無用で容赦ない最低最悪の自己中

 

心根はとても優しいが、敵とみなした相手には残忍非道で、戦闘時には誰より冷静。

自分のような思いをする人がこれ以上増えることは嫌だという信条のもとに、常に自分より他人優先である。

そのためどこか死に急いでる印象を与え、仲間達を不安にさせている。

 

【能力】

 

霊感

 

第六感が発達しており、特に霊感は異様なまでに優れていて霊を見ることは出来ないが、鬼の気配を感じたり、遠く離れた情報を霊達の声から知ることが出来たりする。

 

身体能力

 

人並外れた身軽さ、まるで背中に羽でも生えているのかと思わせるほど木々を自由自在に飛び回る。

 

全集中 雪の呼吸

 

壱ノ型 羅雪扇(らせつおうぎ)

弐ノ型 牡丹の花(ぼたんのはな)

参ノ型 雪崩(なだれ)

肆ノ型 吹雪の舞(ふぶきのまい)

伍ノ型 氷結閃光(ひょうけつせんこう)

陸ノ型

漆ノ型

捌ノ型

玖ノ型

拾ノ型

 

【装備】

 

日輪刀

 

色は“白と赤”であり、鎬に桜に雪が積もったような文様で色が入っている。

 

隊服

 

意外とが身だしなみにこだわるタイプで自分の美的センスが許さないと、縫製係のゲスめがね改め、前田を半場脅して作らせた専用隊服。

両手首に金のブレスレットで、首には金のネックレス、そして、両手両足に真っ赤なネイル。

桜が散りばめらたような赤模様のサラシを胸にリボン状で巻いており、菊が施された金と黒の羽織に、真っ赤な袴と黒いベルトと黒い下駄を履いている。

隊服としては見る影もないが、機能性は普通の隊服となんら変わらないとのこと。



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もしも君が死んだら(玄弥視点)

「もう一度言ってくれ、兄貴」

「…雨園飛鳥が、死んだ」

 

 

聞き間違いかと思ったが、どうやら違う。それではこれは何の冗談だろう?

 

 

「ごめん兄貴、俺、疲れてるんだ」

「玄弥、そこに座れ」

「今回の任務は結構キツかった、情けないけど、呼吸を使えないからボロボロでさ」

「さっさと座って話を…」

「聞きたくねえよ!!」

「玄弥ァ…」

「聞いたら、現実になるだろ!!信じねえ!!俺はそんなこと絶対に信じねえ!!」

 

 

子どものように泣きながら癇癪を起こす俺を、兄貴はその傷だらけの腕で乱暴に抱き締めた。

情けないことに、声が枯れるまで俺は涙が溢れて止まらなかった。

 

 

「玄弥なら絶対に柱になれるって!この私が言ってるんだから、まあ確実よね~?」

 

 

最終選別を生き抜いて、たった六人の同期となったうちの一人の雨園飛鳥。

飛鳥は本当に無茶苦茶な奴だった。

どんなに悪態をついて拒絶を繰り返しても、せっかくの同期なんだからと付きまとってきた。

そんなことを繰り返すうちに絆されて、自然と時間を共有することが当たり前になった。

 

 

「無理に決まってるだろ?俺、呼吸使えないし」

「あらあら?そんなことで諦めるの?どんな時代にも先駆者っているものよ?誰かが通った道をそのまま進むの?主体性ないの?つまらないわよ!」

「面白いかどうかの問題かよ」

「当たり前よ!人生は常に波乱万丈と冒険に満ち溢れているの!大昔の大将軍様達も道を切り開いて国を守ったのよ?そんなことではね、この国を引っ張っていけないわよ!?」

「話がズレてねえか?」

 

 

あの人格者である炭治郎も真っ青の飛鳥の自由奔放ぶりは俺達同期の、いや、冗談抜きで鬼殺隊全体の頭痛の種だった。

自分の領域に引き込んでは間を挟む暇を与えないことが飛鳥のやり方だった。

そんな飛鳥を本気で恨んだのは兄貴の件だ。

俺と兄貴を気絶させて、後から聞いた話では猪に運ばせて3つも先の山に投げ捨てた。

あの時の空気の悪さは死んだ方がマシだと思わせるぐらいのものだった…

けど、それが結果的に功を奏して、俺は兄貴の本音を知ることが出来て、謝ることも出来た。

そして、帰った後の兄貴の飛鳥への怒り狂いぶりは冨岡さん、煉獄さん、宇髄さんの柱3人に合わせて同期全員を巻き込んだ大騒動に発展した。

しかし、当人達は無傷で、怪我をしたのは周りの止めに入った人間ばかりだった。

その後で、怪我人が蝶屋敷に担ぎ込まれた時の胡蝶さんの背後には般若がいた。

今でも鬼殺隊内で世にもおぞましい事件として語り継がれてしまっている。

 

 

「玄弥は柱になって、実弥っちとお互いに背中を預けながら鬼と戦うの!これ決定事項よ?」

「分かったから、頼むから兄貴の呼び方どうにかならねえか?」

「私はそれが見たいんだってば!この私がこんなに頭を下げてるんだから絶対に叶えてよね~?」

「本当に話聞かねえし、まずどこが頭下げてんだ」

「心の中ではいつだって土下座してるわよ?」

 

 

どんなにやり方が無鉄砲で後先を考えていなくても、そのことがきっかけで兄貴と仲直りが出来た。

今こうして悲鳴嶼さんの屋敷を出て、兄貴と以前のように暮らせるのも全部飛鳥のおかげなんだ。

飛鳥には感謝してもし切れないんだ、これからずっとこうやって振り回されるんだと思ってた。

 

 

「なあ、兄ちゃん!兄ちゃん!全部嘘だよな!?頼むから、嘘だって言ってくれよ!!」

「…鬼に殺られたんだァ」

「そんなわけねえよ!!飛鳥は殺しても死なねえような奴なんだよ!俺よりずっと強いし!兄ちゃんも知ってるだろ!?」

「遺体は蝶屋敷にあるそうだ」

「俺、約束したんだ!一緒に柱になるって!!それまで絶対に死なねえって約束したんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

(俺はまだ飛鳥に何も返せてねえよ)

――何を泣いてんの?と俺を笑いに来てくれよ

 

 

 

 

 

 



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もしも君が死んだら(カナヲ視点)

「カナヲ、出て来て話を聞いて?」

「ごめんなさい…」

 

 

お願いです、神様、本当に神様という存在がどこかにいるのならこの夢から覚まして。

 

 

「カナヲ?これは大切な話なのですよ」

「今は…出来ないです…」

「もう部屋にこもって3日目ですよ、アオイ達も心配していますし、せめて食事を…」

「師範」

「…何ですか?」

「あの子は…飛鳥ではないですよね…」

「カナヲ、入りますよ」

 

 

襖を開けて入って来た師範は、少し驚いた顔をしてからすぐにまた悲しそうな顔をした。

私の目から水がひとりでにポロポロと零れ落ち、これが涙なんだと考えていた。

 

 

「よし、また笑ったね!?さすが私!貼り付けてる笑顔なんかより、カナヲはそんな風に素直に笑った方が可愛いんだからね~?」

 

 

最終選別を生き抜いて、たった六人の同期となったうちの一人の雨園飛鳥。

私にとって初めての友達で大好きな子。

飛鳥曰く私は笑っていないらしく、何度も私を笑わせようとたくさんの策を講じてきた

いつしか、心が鈴の音を鳴らしたような感覚に襲われて笑うと飛鳥はものすごく喜んでくれた。

 

 

「飛鳥も可愛いよ」

「カナヲ?私が可愛くて美しくて太陽も霞むほどの存在なんてことは知っているわよ?けど、カナヲには私とは違った魅力があるの!」

「魅力?」

「ありもありまくりだよ!?私が太陽なら、カナヲは月なのよ?闇夜に浮かぶ唯一無二の目を覆いたくなるほどに光り輝く宝石のごとくなのよ!」

「飛鳥、言葉いっぱい知ってるね」

 

 

玄弥は飛鳥を見てると頭痛がすると言ってるし、師範も飛鳥は鬼殺隊の要注意人物の中に入ってるって言ってたっけな。

私からしたら、飛鳥は人の心の囲いを壊すのが人よりすごく上手いんだと思う。

そんな飛鳥がとても羨ましかった。

ある時は、師範に来る日も来る日も小さいことから大きなことまで悪戯を仕掛けていた。

そのことに周りは常にハラハラしていて、冷や汗を大量に流していたな…

そして遂に、笑顔を絶やさずに冷静だった師範は烈火のごとく飛鳥を叱った。

その事が一部の柱や鬼殺隊員に多大な影響を与えて餅を喉に詰まらせるなどの、日常的なことで負傷する隊員が3倍に増えてしまった。

けど、全ての元凶である飛鳥はそれはそれは満足そうに師範に対して笑うだけだった。

霞柱が動揺して額にたんこぶを作ったり、恋柱は天丼を30杯くらい食べるのに12杯しか食べないでお腹を壊していたりしたのに。

その日が、蝶屋敷の最多怪我人数の最高記録として未だに抜かれることはない。

 

 

「カナヲと私がコンビを組んだなら、太陽と月で最高で最強だと思うのよね!どうかな!?」

「私は飛鳥と一緒なら、何でも出来る気がする」

「そうだよね!?さすがカナヲ!私の全人類を超越した思考を理解出来るのはカナヲだけ!」

「うん、私だけ」

「もうもうもう!何でそんなに可愛いのよ!?」

 

 

どんなに周りから嘆きや苦情がきても、結果的に師範は抑えていた感情をさらけ出すことが出来た。

私には出来なかったこと、大切な人の心を解き放ってあげることが出来たのは飛鳥がいたから。

これからだって、隣で一緒に過ごして一緒に大人になるんだと当たり前に思っていたの。

 

 

「師範?あの運ばれて来た子って飛鳥と同じように赤い髪だけど、飛鳥じゃないですよね?」

「…赤い髪はすごく珍しいんですよ」

「帰ってきたらトマトがいっぱい食べたいって、飛鳥言ってたんですよ?トマトのためなら絶対に飛鳥は帰って来ます…ぜったい…かえ…」

「あのままにしておけないんです、しっかりとお別れをしてあげなければ飛鳥さんも可哀想ですよ」

「…おわか、れ…あ、すか…うああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

(私は飛鳥と未来を生きたかった)

――私の頭を撫でる優しい手を返してよ

 

 

 

 

 



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もしも君が死んだら(伊之助視点)

「またそんなにドロドロで!傷が癒えてないから安静にと何度言ったら分かるんですか!?」

「うるっせえよ!!」

 

 

どこかに必ずいるはずだ、どんなに時間がかかっても絶対に見つけ出す。

 

 

「一体、こんなこといつまで続けるのです!?」

「お前は黙って、アイツの!!好きな…あの赤い野菜の料理でも作っとけ!!」

「伊之助さん、もう意味ないんです…」

「黙ってろ!!俺様がアイツを探してここに連れて来るまで、黙って待ってろ!!」

「一緒に見たではないですか…」

「あんなの偽物だ!!鬼共が作ったんだ!!俺様は絶対に認めねえ!!」

「伊之助さん…」

 

 

アカイは俺の猪の被り物を外してから、その震える弱っちい手で俺の頬にふわりと触れた。

何度拭いても両方の目から零れ出る汗を、力任せに俺は痛くなっても擦り続けた。

 

 

「伊之助!すぐに人を殴るな蹴るな!少しは思いやりを山の王なら学べ!攻撃していいのは、鬼とこの私に刃向かってきた奴だけよ!」

 

 

最終選別を生き抜いて、たった六人の同期となったうちの一人のあけぼのあずき(雨園飛鳥)

何度も俺様に刃向かってくる根性はある。

あずきは子分のくせに、ニヤつきながら偉そうに親分の俺にセンセイ?というものをしてきた。

文字、計算、挨拶、しつこいくらいに教えてきて出来たら褒めてきて、俺をホワホワさせた。

 

 

「ああん!?何で俺が、子分のお前に指図されねえといけねえんだよ!!」

「子分だからよ?こんなに才能に溢れた何百年かに1人の逸材の私を親分なら守りたまえよ!」

「守られるタマじゃねえだろが!!」

「伊之助?この世界は山にこもってるだけでは知ることの出来ない未知の世界なの!これはね?そんな世界の素晴らしさと尊さを神の啓示のごとく、この私が直々に伝授するための忠告なのよ?」

「は?お前は分かる言葉で話せや!!」

 

 

紋逸の目が血走ってるのはコイツのせいだ、他の奴らもあずきと目を合わせないようにしてるしな。

あずきは、他の誰にも俺にもないものを持ってるようなよく分からない人間だ。

どうしようもなく俺をイライラさせやがる。

そういえば、アカイの手伝いをしてはその度に何かをやらかして怒鳴られてたな。

料理をしてるはずがボヤ騒ぎになって、掃除をしてるはずが装飾品を壊しまくってな…

終いには、アイツはどこからか毒蛇を捕まえてきては噛まれてたよな弱味噌が。

その時は3人娘は泣き出すからアカイが1人で薬を調合して事なきを得たけど、今思い出しても紋逸を筆頭にしてあの光景は地獄そのものだったよな。

けど、騒ぎの戦犯のあずきは呑気に余裕ぶっこいて縁側で寝転んでたけどな。

あまりの事実に柱の蛇野郎が倒れて、それを柱の岩みたいなデカい奴に運ばれてたな。

あと、紋逸が天まで届くほど叫んだ声で、そこらじゅうに鳥が落ちるまくるって異常現象もあったな。

 

 

「伊之助の中の幸せは否定しないけどさ、もっと楽しいことも美味いものもあるって知ってても、損はしなくない!?」

「それがお前を守るのと、どう関係すんだよ!!」

「本当に伊之助はアホアホだよね?」

「ああん!?ぶっ飛ばされてえのか!?」

「伊之助の良さを活かしつつ、世界を知るにはやっぱり思いやりを持つことが大事なのさ!伊之助の優しさはかなり分かりずらいからね~?」

 

 

自分を犠牲にして、鬼殺隊員として戦えないアカイに自分に出来ることを気づかせて、勇気と自信ってやつを与えてくれたってアカイが言ってた。

三太郎もあずきは誰より他人を思いやれる奴だって泣きそうになりながら言ってたな。

意味不明でイラつくのに、隣にいないともっとイラつくから俺の前から消えたらぶっ飛ばしてやる。

 

 

「アイツは簡単に鬼なんかに殺られねえ!!俺様があの生意気によく動く口から参りましたって、絶対に言わせてやるんだ!!」

「…飛鳥さんは、二度と話しませんよ」

「イラつくけどな!?アイツは怪我したって誰より早く治してケロッとしやがって、生意気にヘラヘラ笑って高みの見物してるんだ!!」

「伊之助さん!飛鳥さんは、もう…この世のどこにもいないんです!」

「それ以上喋ったら許さねえぞ!!アイツは山で迷ってんだよ!!親分の俺が迎えに行かなきゃいけねえんだよ!!待ってんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

(雨園飛鳥は仲間だった)

――騒がしいくらいがちょうど良かったんだ

 

 

 

 

 



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もしも君が死んだら(炭治郎視点)

「よりによって、飛鳥が死ぬわけありませんよ」

「嘘ではないんだ…」

「何かの間違いですよ、きっと」

 

 

必死に顔の筋肉を動かして笑顔を作る、今の俺に出来る精一杯の防衛だった。

 

 

「朝一番でここを出る」

「また飛鳥の遊びですよね?すみません、まさか冨岡さんまで付き合わせるとは思わなくて」

「禰豆子には、お前から話した方がいいと思う」

「帰ったらよく言って聞かせますね?」

「お前が見る時には綺麗になってるはずだ」

「お手を煩わせました、二度とこんなことしないように飛鳥にもしっかり謝らせますね」

「竈門炭治郎、俺の目を見ろ」

 

 

冨岡さんは俺の肩を掴んで、無理矢理に自分の方に向かせるとその目から色をなくした。

何も考えたくなくて、必死に笑い飛ばそうとしても雨のように涙は止まってくれなかった。

 

 

「ねえ、炭治郎…私にも禰豆子のこと守らせて?禰豆子を人間に戻すことを私の目標にさせて?」

 

 

最終選別を生き抜いて、たった六人の同期となったうちの一人の雨園飛鳥。

とても世話の焼ける妹みたいな子。

飛鳥がその場にいるだけで周りは花が咲いたように明るくなるし、存在に何度も救われた。

俺は長男なのに、落ち込んだりすると飛鳥は1番に気づいてその温かい笑顔で何度も包んでくれた。

 

 

「急にどうしたんだ?似合わないそんな真面目な顔になるなんて…拾い食いでもしたのか?」

「う?」

「伊之助じゃないの!そんなことしません!それに私はいつだって冷静沈着で有名な鬼殺隊の頭脳ってのは私のことよ?」

「初耳なんだが…」

「あす、か…あす!あす!」

「ふふっ、どうした~?はあ…禰豆子を見るだけで今までの疲れなんて吹き飛ぶのよね!雄大な大地とどこまでも続く青い空よ!守りたいこの笑顔よ!」

「やっぱり、疲れてるんじゃないか?」

 

 

カナヲの感情の起伏の矛先は飛鳥だ、他の鬼殺隊員も飛鳥のせいでパニックになる時が多々ある。

飛鳥は俺と似てるようで全く似ていないから、掴みどころが分からなくて不安になる。

明るい光に暗い影を落としているのが証拠。

今では笑い話だけど、初めて飛鳥と鬼との戦闘を繰り広げた時は本当に驚いたな。

普段はよく笑って口が回る騒がしい子だけど、戦闘中の飛鳥を言い表すなら閻魔様とか?

鬼がどんなに命乞いしても最初から飛鳥に情なんてあったもんではないし、むしろ逆に鬼が気の毒になるような豹変ぶりだ。

初めて飛鳥のそれを見た時はあまりの変わりように誰もが腰を抜かすし、善逸は過呼吸になるし、伊之助は警戒して近づかないし、玄弥は諦めたのか遠くを見ていたな…何故か、カナヲだけは見惚れていたみたいだけど。

けど、戦闘が終わった途端に、飛鳥は元に戻るから傍から見ていたら置いてけぼりなんだよな。

そういえば、冨岡さんと不死川さんも初めて飛鳥の戦闘中のそれを見た時に血鬼術か!?って、それは見事に声を揃えていたな。

あと、どんな噂が広まったかは知らないけど、鬼は飛鳥を見ただけで泣き叫ぶんだよな…

 

 

「前々から考えていたのさ!もちろん、最終的な目標は鬼共をこの世から全滅させて、拘束して、死なない程度にいたぶって、生まれてきたことを後悔させまくることだけど」

「年々目標の残酷さに拍車がかかってないか?」

「むうー!むうー!」

「けど、もっと素敵な目標があったの!それが禰豆子を人間に戻して、立派な白無垢を着せること!」

「え?ね、禰豆子にはまだ早いぞ!!」

「将来の話でしょ?まあ、それは置いといて!本当のこと言うとね?炭治郎は兄に、禰豆子は妹によく似てるの…2人を幸せにすることが守れなかった私の贖罪になる気がする、それに2人は誰より幸せになるべきだと私は思う、大好きだから」

「ありがとう…あと、俺は、きっと禰豆子も、飛鳥にも幸せになって欲しいぞ?」

 

 

家族を殺されて鬼を憎んでるはずなのに、無条件で飛鳥は禰豆子を守りたいと言ってくれた。

本当の妹のように可愛がってくれる。

どうしてこんなに優しい子に、神様はひどく苦しい試練を与えたのだろうか。

平和になった未来で、飛鳥の幸せを禰豆子と一緒に見守ることが当たり前と疑わなかった。

 

 

「…もう一度、確認してくれませんか?」

「俺も見た、飛鳥で間違いなかった」

「自分のこの目で見るまで信じません、飛鳥は禰豆子をお嫁に出すまで生きると言ったんです」

「子どもを守って犠牲になったそうだ…鬼殺隊員として、立派な最期を…」

「あす、か…は、まだ、幸せになって…!!幸せになっていないんです…!!これから…」

 

 

 

 

 

 

(禰豆子は何度も飛鳥を呼ぶ)

――また大切な家族を俺は失ったのか

 

 

 

 



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もしも君が死んだら(善逸視点)

「善逸!また泣き叫んで恥さらしてるの?それって趣味?特技?私の隣を歩くんだからさ、もう少し偽物でもいいからシャキッとしてよ!」

「うるせえよ!?俺はな、明日に死んでもおかしくないぐらいものすごく弱いんだぞ!?飛鳥みたいに鬼の前だと豹変して我を忘れて最凶になるような、怖いもの知らずの心臓にマリモでも住み着いてるような図太い神経じゃないの!!」

「ごめん、飛鳥ちゃんはよく分かんない!」

「聞く気がまずないよね!?俺が恐怖に打ち震えた思いをさらけ出してるっていうのに、お前は呑気に栗饅頭を食ってるよね!?ちょっと!?それって俺の分の栗饅頭じゃないの!?」

「世の中、取るか取らないかだよ!そもそも、この私に食べられて栗饅頭も満足だって~!ほら、自慢の耳で栗饅頭に聞いてみてよ?」

「栗饅頭がどうやって喋るんだよ!!」

 

 

最終選別を生き抜いて、たった六人の同期となったうちの一人の雨園飛鳥。

鬼殺隊に嵐を巻き起こす少女、伝説の問題児、最重要注意人物、監視対象、最低最悪の自己中少女。

そして、俺が生まれて初めて好きになった子。

 

 

「飛鳥、好きだよ…すごく!すごく!」

「え?あ…え!?」

 

 

あの時の、驚いて君のその真っ赤な髪のように赤くなった顔を俺は一生忘れないと思う。

夕日が綺麗な帰り道で、俺は飛鳥に告白をした。

君の真っ赤な髪は夕日に照らされて星みたいにキラキラと輝いていて、それを独り占めしたいと思った俺は止まれなかった。

自分中心に世界が回ってて自信満々で散々周りを振り回すくせに、それなのにいざって時は誰より人を優先して平気で傷つきにいく。

 

 

「突然何?あ、善逸も、やっと私の溢れ出す魅力に気づいたわけね?まあまあ苦しゅうないぞ!」

「うん、とっくに気づいてた!そんで、俺は飛鳥を好きになって、誰にも渡したくないんだ!」

「う…あ…何で、そんな素直なの?」

「そうだよね!?思うよね!?俺だって飛鳥には誰より優しくしたかったし、甘えて欲しかったけど、自覚したらもう何か素直になれないの!!素直って何!?って状態なの!!」

「は、はあ…」

「そんで会う度に飛鳥だって意味不明なことばっかり言うからさ!!喧嘩ばっかりで、その度に炭治郎の布団に入って枕を濡らして、伊之助には弱味噌がって殴られて、カナヲちゃんには氷みたいな目を向けられて、玄弥からは毎日俺の長所を褒めてもらうみたいな生活をしてたんだよ!!俺の生活は無茶苦茶なの!!」

「地味に玄弥のがキツいかもね…」

「冷静な分析と感想なんていらないんだよ!!」

 

 

最初は気まずそうにしてた飛鳥も今は心底ドン引きしてる、その顔って炭治郎に似てるね!!

ごめんなさいね!?けどね、好きな子に告白したのにそんな顔向けられたら俺死んじゃうからやめて?

飛鳥からは苦しくなるような切ない音がする。

普段の様子からは想像も出来ないような、消えてしまいそうな切ない音が鳴り響いている。

飛鳥を好きになったのはいつだろう?

正確になんて分からないけど、気づいた時には手遅れになるくらい溢れてた。

飛鳥が笑顔を向ける全てを俺も分かち合いたかったし、飛鳥の涙や怒りの原因になる全てのものから守ってあげたかったし、隣にいたかった。

鬼に家族を殺されて、鬼を憎んで、他人の幸せばかりを優先して、自分の命をどこか粗末にする飛鳥を幸せにして、人生をかけて支えたかった。

誰からも心配されないぐらいに、せめて大好きな子は守れるぐらいに強くなりたかった。

 

 

「善逸、すごく嬉しいよ?嬉しいけど…」

「自分には幸せに出来ないって?」

「さすが善逸!分かってる~、あと、善逸のことをそんな風に見たことなかったし?」

「知ってたよ!!俺を意識してないことなんて百も承知ですよ!?片想い舐めんじゃねえよ!?」

「あ、ごめん…ね?」

「謝るなよ!!余計に虚しいわ!!そもそも、飛鳥は無防備なんだよ!!俺の布団で寒いから一緒に寝ようとか、寝巻きで俺の前ウロウロするとか、ところ構わず平気で抱き着くとか、俺がどれだけ理性と戦ってると思ってんの!?鬼と戦ってた方がマシ…前言撤回!!やっぱり、鬼は嫌だ!!」

「以後気をつけます…」

 

 

こんな俺を見捨てずに、どんな時も手を伸ばしてくれる優しくて温かい太陽みたいな子。

好きにならない方がおかしいよこんなの…

 

 

「善逸?息切れしてるところ悪いけど」

「誰のせいだと…」

「私はどうしたらいいかな?」

「え!?」

「あまりにも突然でびっくりしたけど、嬉しかったのは本当だし、これからはいやでも善逸のこと意識しちゃうと思うし…どうしたらいいかな?」

「可愛すぎ」

「は?」

「何でもないよ!!それに、俺は飛鳥にも俺を好きになってもらいたいの!!」

「…分かった」

「え、分かった?分かったって言った!?」

「とりあえず、手繋ご!」

「まままままま、待って!!心の準備を…!!」

 

 

今までの俺の人生の中で、あんなに幸せだった瞬間はきっとなかった。

これからだってずっと、大好きでたまらない飛鳥を守って2人で幸せになるって思ってた。

 

 

「飛鳥、飛鳥、起きて?目を開けて?」

「善逸…行こう」

「嫌だよ、飛鳥?嫌だ!!こんなの嫌だ!!」

「なあ、善逸!!」

「待て炭治郎、今はいいだろ」

「玄弥、けど…」

「好きだよ!!誰よりも好きだよ、飛鳥…」

「伊之助、あれは飛鳥じゃないよね?」

「ああ、絶対にちげえよ…」

「カナヲも伊之助も、そっとしとこうぜ」

「ねえ、飛鳥!?目を開けてよ!!分かったって、俺のこと好きになるって言ったじゃんか!!」

 

 

 

 

 

 

(愛しい君は眠ったまま)

――君のいない世界なんて生きる意味ないよ

 

 

 

 



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