吸血鬼はダンジョンに潜るか? (ユーベル)
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エピローグ(終わり)からのプロローグ(始まり)

私逹の所持する神骸を除いた全てを取り込み、髄骸の王から降誕せし者へ変貌したシルヴァを倒すことに成功した。

私は転生者で、このゴッドイーターと同一の世界に存在する赤い霧の檻に囲まれた世界“ヴェイン”で吸血鬼(レヴナント)として生き返った。

女王討伐の際、仕方無いとはいえクルスの血を吸ってしまったことで最初の神骸の継承者となってしまった。

その後即座にジャックに殺され、次に目覚めた時には全てを忘れていた。

だが、ミドウが外の様子を映し、赤い霧が晴れた時現れたソイツ(・・・)を見て全て思い出した。

ヴァジュラ神属の接触禁忌種に指定される大型アラガミ(・・・・・・)ディアウス・ピター(・・・・・・・・・)

自分が何時死んだのかも、審判の棘がどうして出現したのかも。

赤い霧の檻の外が今どんな状態なのかも今までどんな人生を生きてきたのかも全て思い出した。

勿論、このヴェインにおける4つ、いや、3つの結末も思い出した。

だから、私は………………

 

「第4の選択をする」

「何を言っている?新入り」

 

あの時クルスは私に言った。

 

『みんなを助けて』と。

 

だから、イオが選択するように、私も自分自身を血涙の源流の樹に変質させる。

その為には………………

 

「イオ、力を貸して」

「あなたがそれを望むのなら貸しましょう」

 

ありがとう。

これで条件はそろった。

だから…………

 

「まって」

 

今此処で…………

 

「おい、何を」

 

枯れ木に花を…………

 

「まさか!?」

 

咲かせましょう。

 

私逹は神骸の放つ蒼白い光に飲み込まれた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

真っ白な空間に居る。

床は澱んだ血の牢獄のままだけど。

なにも言わず自身の剣を床に突き立てる。

そうしてできた穴に棺の種を植える。

そこに自分の血を垂らす。

これで媒体は準備完了。

 

「新入り、お前のしようとしていることは………まさか」

 

そのまさかだよ、ジャック。

私とイオは人柱になる。

 

「そんな!」

 

この世界を…ヴェインに住まう吸血鬼逹を救うには誰かが犠牲にならなければならない。

ただそれだけの事だよ、ミア。

 

「だがよ、人柱になって何をするつもりなんだ!」

 

全てのヤドリギを活性化させ、新たな血涙の源流をここに作る。

ここなら守りやすそうだし、赤い霧の結界の中心だからね。

源流が枯れないように対策もした。

外界に闊歩するアラガミ共(・・・・・)からヴェインを護り、吸血鬼と人間逹を守る。

こんな好条件の場所は他にないからね。

 

アラガミ共(・・・・・)?なんの事だ?」

 

ジャック、ミドウが見せたでしょ?

あの黒くて大きな化け物を。

あれがアラガミ(・・・・)

あれは(・・・)その中の一体、ヴァジュラ神属接触禁忌種ディアウス・ピター(・・・・・・・・・)

オラクル細胞と呼ばれる自ら思考し補食する細胞の集合体(・・・)

如何なる攻撃も一度喰らえば耐性を持ってしまう最強の生物。

生命を再分配するための地球の抗体そのもの。

アラガミの偏食作用を応用したアラガミ装甲壁以外で人類を守る最強の盾。

それがあの赤い霧。

 

「なぜそのような事を知っている?」

 

思い出したから、全てを。

なぜ私が吸血鬼として復活した時、拒絶反応が少なかったのか。

なぜ血骸の継承者として復活できたのか。

元々そういったモノへの適応性が高かったからだ。

そうだ、私はかつてゴッドイーターとして生きていた。

アラガミを倒すためにオラクル細胞を埋め込み、アラガミを倒して行き、そして戦死した。

そして生まれ変わり、アラガミが現れたあの大崩落の日に死んだ。

そして、オラクル細胞を使用したマルグナーガ計画と平行して研究されていたBOR寄生体を使ったレヴナント計画の被検体として復活した。

そうだ、私の中にはオラクル細胞が残っている。

だからこそ高い適合率を叩き出した。

ならば、その適合率を逆手に取ってコントロールしたら?

それがカレンの、心骸の継承者の力による血涙の泉だ。

それを護りと救いに応用する、ただそれだけの事。

 

「それだけって。それじゃあ、貴女は…」

 

この身体を源流そのものに変質させる。

おさっしの通り、私とイオは死ぬ。

だが、それは何時もの事。

吸血鬼になる前から転生を繰り返しているんだ。

また別の世界に旅立つだけ。

ああそうだ、私の使っていた部屋に手紙と資料を残しておいた。

霧の外に行くなら、フェンリル極東支部かイムカ・オリガに接触するといい。

その時、その手紙を渡せば色々と便宜をはかってくれるはずだ。

 

 

長話してたらいい感じに棺が育ったな。

新しい人生の始まりだ。

そうだろう?アリエス(・・・・)

 

「相変わらず鋭いネ。この棺の門を潜れば新たな世界がまっていル」

 

そして通れるのは一度だけ。

そう言う訳だ。

だからさ、ここでお別れ。

ルイ、カレンとアウロラによろしく。

『研究に没頭しすぎるな』って。

 

「ああ、伝えておこう」

 

ミア、ニコラに伝えといて。

『君の精神はどんな騎士よりも黄金に輝いている』って。

 

「分かった」グスッ

 

ジャック、エヴァとお幸せに。

 

「お前な」(呆)

「もう」

 

ヤクモ、メアリーの想いに気付きなよ。

あの娘、あんたの事異性として好きみたいだからさ。

 

「なんで俺だけ!?」

 

鈍感だからだよ(笑)。

 

「どちくしょーーーーーーーーー」

 

あははははは。

最後に一つ、教えてあげる。

オリガ・エストフィリア、これが私のフルネーム。

それじゃあ、来世で縁があれば会おう。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

光が収まったそこには、棺を飲み込む様に大きな血涙の源流の樹が存在していた。

その根元には彼女らの武器がなにも言わず、突き刺さっていた。

その持ち主は最早存在しない。

残された武器と吸血牙装が墓標の替わりでしかない。

 

その持ち主逹は現在……

 

「ここ、どこ?」

 

森の中に居た。



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オリ主&イオ紹介

感想で「オリ主の容姿教えてくれ」と言われたので載せます。
テレビ画面もろ写メったから画質悪いけど。


オリガ・エストフィリア

身長∶172cm

体重∶68㎏

スリーサイズ∶B116W58H100

誕生日: 9月9日(おとめ座)

血液型無し

種族:吸血鬼(レヴナント)

年齢:不明

所持ブラッドコード:『不明』→『▩◌○◤●◈』→『女王殺し』→『吸血鬼の女王』

 

【挿絵表示】

 

複数回転生した転生者で、血骸の元継承者にして現女王。

コードヴェイン自体全てのエンディングを見る程やりこんでいたため、そのステータスを保持したまま吸血鬼として再スタートした。

女王討伐の際の一番の功労者にして最初の継承者。

女王として覚醒暴走したシルヴァから神骸を全て受け継ぎ、自身の身体そのものを血涙の源流の樹に変化させ、ヴェインに住まう吸血鬼全てを救った。

源流の樹に変質する際に現れた光の中で仲間逹と別れを告げ、イオと共に現れた扉を潜って旅立って行った。

その後のヴェインがどうなったかは知らない。

年齢が不明なのは死体から吸血鬼として生き返ったためである。

最初の継承者となったせいか、自身のブラッドコードを損壊させている。

その後、自身の変質したブラッドコード『女王殺し』を復元した。

なお棺の塔でディアウス・ピターの映像を見るまで、回収した女王討伐時の記憶以外、自身が転生者であることを含めて全て忘れていた。

記憶を取り戻した直後のミドウ戦では鬼気迫る程の猛攻撃だったと言う。

 

あれは女王討伐の時の女王の先兵の騎士と戦ったときみたいだった。byジャック

 

━━━━━━━━━━━━

イオ

身長/体重:165cm/62kg

誕生日: 不明

血液型無し

スリーサイズ:B108W62H97

種族:吸血鬼(レヴナント)

年齢:不明

所持ブラッドコード:『エーオーエス』→『女王の伴侶』

複数存在する神骸の伴侶の一人。

女王であるクルスの想いから産まれた存在であり、それ故に神骸の継承者に寄り添い、継承者の居る棺を守ることを使命としていた。

しかし、オリガ逹との交流によって『寄り添うのではなく共に歩みたい』と言う想いが強くなり、伴侶としての使命から逸脱した行動をするようになった。

オリガが血涙の源流の樹に変質する際力を貸し、共に樹の一部となった。

源流の樹に変質する際に現れた光の中で仲間逹と別れを告げ、オリガと共に現れた扉を潜って旅立って行った。

自らに関する記憶を一切喪っていたが、姉妹逹の記憶に触れその想いを受け継いだ。

吸血鬼(レヴナント)の能力やヴェインに関する豊富な知識を持つ。

その代わり一般的な知識に乏しく、なんにでも興味を示す。



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始まりの吸血

迷ったけどミア投入します。
ニコラはいません。
まさ0408さんから武器の血液化案いただきました。
ありがとうございます。
あれ?血液?血剣?
よるのないくに?
ソウルイーターの黒血?
なんかデジャヴ。


状況を確認しよう。

私とイオは棺の門を潜った。

出口が森の中なのはいい。

ランダムだから。

問題は………

 

「なぜいる。ミア」

 

なんでサヨナラしたはずのミアがここに居るわけ?

 

「えっと、イムカに頼んで………」

 

あっちの私か!

そういえばそう言う能力持ってたっけな。

てことは、ここに居るミアは分岐した方の存在ってことか。

無事あっちと接触したんだな。

ま、こっちに来たことによる時間のズレは気にしない事にする。

しょっちゅうあることだから。

 

 

ざっと確認する限り、武器は絶対なんかしら魔改造されてるはずだから無視。

ミアとイオは見た限り変化無し。

けど、私の吸血牙装が変わってる。

問題無く使用できるけど、全部盛りですか。

そうですか………

……

………

…………

……………

………………

…………………

……………………

やり過ぎだ馬鹿野郎!!

てか、作ったの誰だ!

絶対サイモンだよな!

後武器の冥血化って何?!

絶対面白がって詰め込んだよなアイツ等!

会うことが有ったら絶対顔面凹ましたるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!

ゼエゼエ

あ、武器の冥血化は元からだった。

 

「落ち着きましたか?」

 

なんとか。

で、どうした?

 

「ミアが道を発見したそうです」

 

でかした。

道が有るって事は町や村につながってる。

この森から抜け出せる。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

吸血鬼(レヴナント)の身体能力は極めて高い。

本気で走ればMGSVのクワイエットと同等かそれ以上の速度を出せる。

個人差はあるが、基本的に重量級を武器を片手で持ち上げる事が出来る。(最軽量武器:隷属の鉄管(ただの鉄パイプ)、重量5kg。最重量武器:隷属の槌(コンクリート柱)、重量95kg)

そんな身体能力で森の中をひとっ飛びすれ(突っ走れ)ば、あっという間に森から脱出できてしまう。

無論、ゴブリンを始めとする出会ったモンスターを殺しながら。

倒されたモンスターは均しく灰になり、少量のヘイズが回収された。(ゴブリン一体10ヘイズ)

倒したモンスターが灰になる世界はいくらでもある。

その筆頭がダークソウルシリーズだ。

全く思考の選択肢に入らないが。

ダークソウルシリーズの世界ならば、其処らじゅうに亡者が溢れて荒廃しているはずだから。

ならば討鬼伝の世界?

それも違う。

あの世界は鬼の影響で時代がごちゃ混ぜになっているからだ。

なら何の世界なのか?

その答えを出すには情報が少なすぎる。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

しばらく走っていると下卑た声が聞こえてきた。

吸血鬼の視力をもってすれば確認は容易だ。

見たところ、荷馬車を数人の小汚ない男逹が囲んでいるようだ。

状況的に『商人を襲う盗賊』ってところだろう。

はいはい異世界テンプレ天ぷら。

ちょうど渇いて(・・・)きてたし潤そうか。

 

「イオ、ミア。このまま突っ込むよ」

「分かった」「はい」

 

では、イタダキマス。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

何時もの仕事の筈だった。

所謂闇派閥(イヴィルス)に所属している俺達はリーダーと共に手頃な荷馬車を狙って襲撃した。

護衛の連中も弱く簡単に片付いた。

護衛と馬車で震えている女共は当たりだと思った。

御者台の男の目の前で犯そうか、何処かに売り飛ばそうかいろんな事が浮かぶ。

何せ俺達はレベル2、リーダーはレベル3だから、恩恵の無い奴は良いカモでしかない。

レベルに差が有る限り抗うのは難しく、抵抗する事は無駄な事だ。

それが常識(・・)だ。

だが………俺は夢を見ているのか?

俺達のパーティーメンバーが全滅しているこの光景は現実なのか?

あり得ない。

あり得ない、あり得ない。

あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない。

こんなことは絶対にあり得ない。

化け物の口を象ったマスクと禍々しい籠手を身につけた女がものすごい勢いでリーダーを串刺しにして、その反動で上半身と下半身が泣き別れるなんて……あり得ない!

後から来た女二人もおかしい。

顔面を殴っただけで何故首がもげる?

何故衣服から刃や尻尾みたいなのが現れるんだ?

その狼の頭は何だ?

そうだ、俺は夢を見ているんだ。

こんなのは夢じゃなきゃあり得ないんだ。

でなきゃ俺の目の前にリーダーを殺した女の顔が有るわけねえんだ!

 

「現実逃避も程々に。あとは貴方だけ。サヨナラ」

 

女の禍々しい籠手が視界一杯に写り、俺の意識は暗転した。

 




人物紹介
ミア・カルンシュタイン
身長/体重:151cm/43kg
誕生日: 不明
血液型無し
スリーサイズ:B80W56H82
種族:吸血鬼(レヴナント)
年齢:不明/享年18歳
所持ブラッドコード:『アルテミス』『アストレア』→『氷月の狙撃手』
幼い弟を連れてヴェインの地を彷徨っていた女性吸血鬼。
唯一残された肉親である弟を護るためならば、他の吸血鬼との闘いも辞さないほどの女傑。
実際には、継承者となった弟に守られていたのだが。
オリガに返しきれぬ恩を感じており、オリガの前世であるイムカに接触したとき、土下座して頼み込み彼女らの後を追った。
その際イムカの力によって二人に別れ、片方は弟と仲間逹と共に今を生き抜いている。
なお、いきなりの土下座にイムカはしばらく思考停止したそうだ。


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オラリオへ

なんか誤字報告有ったけど、オリガは「ヘファイストス」の事を「ヘファイスト」で記憶しているので無視してください。


私達は今、商人の荷馬車に同乗させてもらっている。

あの戦闘と言う名の蹂躙の後話しかけて見たところ、商人と冒険者志望のグループだったようだ。

迷宮都市オラリオ(・・・・・・・・)へ向かう途中で、腕に自信の有る男二人が戦ったが歯が立たずあっという間に殺されてしまったそうだ。

恩恵(・・)を授かっていないから、このまま輪姦されて殺されるか奴隷として売り飛ばされるかってところだったらしい。

ここまで話を聞いて、私はここが何処なのか理解した。

“ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか”、通称“ダンまち”の世界だ。

ならば、行き先は決まったも同然だ。

死んだ男二人の替わりに護衛するからオラリオまで同行させてほしいと頼み込んだ。

すると商人は「命の恩人だから良いですよ」と快諾してくれた。

女性逹はどうやら私逹の強さに興味があるようで、レベルは幾つなのか聞いてきたが、恩恵無し(レベル0)と言うととても驚かれた。

と言うか、私逹からしたら当たり前の事(・・・・・・)でしかない。

私の旅してきた世界はどれも基本的に神は存在しない。

アラガミ(地球の抗体)とかシオン(全知存在)とかサイモン(自称人間のエゴ)とかを除いて。

ヴェインにおいてもそうだ。

アラガミの侵入を防ぎ、誰も外へ出ることを拒んだ赤い霧の壁。

ある種の蠱毒の壺となっていたあの場所には、少数の人間と多数の吸血鬼(レヴナント)堕鬼(ロスト)が暮らしていた。

そこに神は存在しない。

存在するのは人類滅亡の恐怖、ただそれだけ。

私逹吸血鬼は堕鬼を倒した時に手に入るヘイズと言うもの(経験値兼お金)をヤドリギを介して自身に還元し身体とブラッドコードを強化した。

だからこそ強靭な肉体と驚異的な身体能力を手にしたのだ。

それに対して神の恩恵は魂の階位を上げ、それに見合った肉体に強化するだけ。

私の推測だけど、おそらく合ってる。

だから身体能力が上がったとしても、神の恩恵が無効になった(消失した)とたん一気に身体能力が低下する。

つまりこの世界の人類は、技術と自身の体を鍛えず神の恩恵に頼りきったごり押ししかしていないと言うことになる。

まあそこらへんは都市最強とレベル5辺りを軒並みボコせば分かることか。

聞いた話では、さっき殺した盗賊逹はあの威張りくさってたリーダーがレベル3で、それ以外がレベル1と2だったそうだ。

あの程度の速さに着いてこられないなんて、なんて貧弱なんでしょう。

 

「大剣両手に持って暴れまわって、カウンターで武器奪って心臓一突きした人が言うと説得力有るわね」

 

なんかトゲ入ってない?ミア?

 

「何かしら武器を両手に持って堕鬼の群に飛び込むだけの事はあります」

 

それ、褒めてるの?貶してるの?

どっちよ、イオ?

 

チェッ( ・ε・)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

~ミア~

 

あ、いじけた。

オリガは一度いじけるとしばらく戻ってこない。

それこそ食事時になるか戦闘になるか目的地に着くか、それぐらいしか戻ってくる切っ掛けが無い。

それまではずっと考察しているか、ゲーム、読書、工作、不貞寝のいずれかをしている。

勿論、周囲を警戒しながら。

この時彼女は、凄まじい勢いで最低でも四つの(・・・・・・・)思考をしている。

聞けば、あと数時間程でオラリオって言う都市に着くみたい。

そこで“ファミリア”ってのに入れば冒険者に成れるそうだ。

つまり、今オリガはオラリオに着いてからの行動を考えていると言うことだ。

オリガの思考パターンからすると、大手に入ろうとしないわね。

長いとは言えないけども、それなりに付き合いだからわかることもある。

彼女は大手特有の空気を嫌う。

そしてこの世界の常識、レベルが高ければ高いほど強者と言う空気。

それら全てを嫌う。

殺したくなる程に(・・・・・・・・)

実際に彼女が殺しをしたのを何度か見ている。

間接直接問わずに。

 

オリガの前世であるイムカに会った時聞いた話しなのだが、生き延びるために在りとあらゆる技術を学び、数多の人生の中で、文字通り死線を潜り続けてきたそうだ。

それを天才ともてはやされている馬鹿や、才能の一言で片付ける輩がその努力を馬鹿にし、貶すのを一番嫌っている。

実際に希代の天才と言われ周りを小馬鹿にし、世の中を舐めきった奴を正面から叩き潰し、在りとあらゆる罠にはめて、富みも名声もプライドも何もかも全てを奪い磨り潰して、最終的に廃人にまで追い込んだそうだ。

何でもそう言う奴等はメンタル面が弱い傾向にあるそうで、そこを上手くつつけば簡単に追い込めるそうだ。

 

なんとも恐ろしい話よ。

彼女ほど「触らぬ神に祟り無し」と言う言葉が似合う人は居ないわね。

実際「アンタッチャブル」の二つ名を持ってたそうだし。

色々とやらかしまくってる性で、二つ名が大変な事になったりもしたそうだ。

「理不尽大魔王」「戦場の死神(ジェノサイド)」「正論撲殺者」とか。

 

まあ、とにかく敵に回すといろんな意味で手に終えなくなる人ってことね。彼女は。

でも、ニコラの事も有るし、色々と助けてもらった恩が有るからね。

堕鬼(ロスト)に堕ちるまで付き合うわ。

それが私なりの恩返し。

 

~ミアend~

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

大分長く行動方針を考えていたようだ。

ただ、考えている最中に根本的な事を忘れていた。

お金が無い。

正確にはヴァリス硬貨を持っていない。

一応、アカシックレコードによると

 

1ヴァリス=1ヘイズ=1フェンリルキャッシュ(fc)=1セメタ=1ハク

1.000ヴァリス=1セメタ

 

となるそうだ。

そして、現在私の所持資金は

 

0ヴァリス

562.873.995ヘイズ

897.563.274fc

1.375.113.958セメタ

1.563.744.386ハク

合計1.378.138.139.655ヴァリス相当

 

であり、ヴァリス硬貨の形状が解らない限り換金できないのだ。

ヘイズは身体強化にも扱うから保留とするが、取り敢えず手持ちの物資から何か売りに出して資金を手にする必要が有る。

と言うか、ヘイズ抜いても1.377.575.265.660ヴァリス相当の大金になるんだけどね。

そしてシオンの情報によると、主人公たる「ベル・クラネル」は9才。

つまり原作開始の5年前になる。

それと同時に、釜の神「ヘスティア」が降臨しているのも確認した。

原作ではいつ頃下界に降りてきたのか解らなかったからちょうどいい。

鍛冶神「ヘファイスト」に仲介を頼もう。

ヘスティアとヘファイストは血縁関係だしね。

ついでに鉱石や収納の肥しになってる武器も売っぱらおっと。

よし、プランは決まった。

 

オラリオに着いたらギルドへ行き、ヘファイストに紹介状を書いてもらう。

ヘファイストで物資の買い取りとヘスティアの紹介を頼む。

ヘスティアに恩恵を刻んでもらう。

ギルドへ結成の報告とパーティー?

 

こんなところかね。

 

「そう言えばお嬢さん方、名前を聞いていませんでしたね」

 

確かに自己紹介してねえや。

オリガ・エストフィリアよ。

よろしく。

で、そっちの二人が。

 

「イオです」

「ミア・カルンシュタインよ」

 

でどしたの?

 

「いや、そちらのイオさんはともかくお二人の身なりが綺麗なので、どこぞの貴族の出なのかと思いましてね。」

 

なわけ無い無い。

私達は探索者、冒険者みたいな事をしていただけよ。

 

「女王討伐隊の第一功労者が何言ってんだか」

 

弟の為に危ない橋を渡り歩いたあんたも似たようなもんでしょうが。

話がずれたわね。

 

「そうですか。ちょうどオラリオの外壁が見えてきたんですがね、お嬢さん方、先立つものお持ちですかい?」

 

一文無し、の一言につきる。

いらない物をいくつか売ろうかとも思っているけどね。

 

「それはそれは。後で見せていただけませんかね?ってそうじゃなくて。検問を抜けたあとでですが、いくらか御礼金を渡そうと思っていたのですよ」

 

あー、適当に包んどいて。

手持ちの嗜好品を幾つか売るんだからその分は別で。

 

「解りました。でわそのように」

 

簡単な商談は成立した。



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ギルドへ

今回はミア視点


私達は無事オラリオに入ることができた。

大崩壊以前の風景とは違うが、どこか懐かしい気がした。

で、私達を運んでくれた商人はというと………

 

「この厳選した素材で巻き上げられた上物の葉巻(プレミアムシガー)、1箱10本入り8千ヴァリス、計20箱。はい、試供品」

「う~ん、確かにこの香りは上物、いや、最上物だ。だが、計16万ヴァリスは安すぎる。1箱1万ヴァリス!」

「いいや、1万1千だ!」

「こっちは1万3千で買う」

 

オリガと商談合戦を繰り広げている。

と言うか、容赦なく高値で売り付けているわね。

こりゃしばらく掛かりそうね。

他の商人まで混ざってセリが始まってるし。

嗜好品をここぞとばかり放出してるし。

あ、おでんパン美味しい。

一応広場の端っこでやってるけど、周りの視線がすごいわね。

取り敢えず護衛費は貰ったでいいけど。

オリガのストレージ内には大量の物資が保管されている。

それも最高の品質でだ。

それを考えると小出し程度に押さえているのかもね。

それでもしばらくはここから動けない。

て言うか、売り出した葉巻吸いながらやってるし。

 

「次はこれ。20年物のブランデー、1本2万4千ヴァリスから」

「5本で12万!」

「いいや、1本3万で木箱2つ!」

「だったら1本3万5千!」

「おいこら主神、予定が入ってるんだからさっさと行くぞ!」

「1本だけでも「ダメ!仕事が先!」そんな~」

 

なんか商人じゃないのも混じってきてるわね。

それにしても、オリガの声ってよく響くわね。

あまりしゃべろうとしないけど。

屋外だから簡単にしか淹れれなかったけど、いい感じになったわ。

紅茶美味しい。

 

「おい!有るだけy」

ドゴシャァ

「土に帰れ」

 

あ、馬鹿がでた。

おーおー、金目のもの全部没収されてやんの。

服ひんむかれて晒し者になったわね。

あの様子だと、引きこもるか自殺するわね。

ケンカ売った相手が悪すぎるしね。

オリガの前世であるイムカに聞いた話では、武闘派商人をしていた頃も有るそうだ。

その時扱っていた商品は、嗜好品から武器、消耗品まで何でも取り扱っていた。

それこそ、非合法ギリギリな品まで。

それでも、麻薬と人身売買だけは扱わなかったそうだ。

『人をただの犬畜生に落とすような商品や取引はしない。それが商人だった頃の矜持』だと、言っていた。

つまり、商人としての品位や信頼を揺るがす様な輩には問答無用で一切の加減無しに、根こそぎ資金を奪い正攻法で潰して行ったそうだ。

逆に誠心誠意を込めて取引した商人達は最高の商品を手に入れて大きく成っていき、彼女の商会といい関係を築き上げたそうだ。

そうして着いた二つ名が『怒らせてはいけない商人(アンタッチャブル・マーチャントゥ)』『幸運をもたらす商人(ハッピー・バイヤー)』。

まあ、副次的に治安が良くなったのは嬉しい誤算だったと楽しそうに言っていたけどね。

本人としてはいい取引をするために走り回った結果らしいけど、周りはどう思っていたのかしら。

 

「セリ終~了~。まいどあり~」

「いや~良い品が手に入ったぜ」

「嬢ちゃん、またやってくれよ!」

「次は掲示板に何処でやるか貼っとく」

「頼むぜ!」

「そんな………速く仕事終わらせて来たのに………」シクシク( ;∀;)

「あんたがチンタラしてるからだろうが馬鹿神」

 

あ、終わったみたい。

で?幾ら儲かった?

 

「6億ぐらい」

 

儲かりすぎ!?( ゚Д゚)

いや、嗜好品と消耗品が多かったから妥当なのかしら?

 

「予想より時間かかった。ギルドに行くよ」

 

あれだけ白熱すれば当たり前でしょ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

オラリオの街並みはどこか懐かしい気がするのは、もう名も忘れてしまった故郷にどこか似ているからかしら。

騎士(ナイト)に成りたがってたニコラと遊んだ公園、買い物に出掛けた街の喧騒。

どこか懐かしく感じる。

イオは生まれが生まれ故に珍しく感じているみたい。

オリガは…………無関心、なのかしら?

むしろどこか苛立っているように感じられる。

彼女は私の知らない人生をたくさん歩んできた。

そのなかでここと似たような街を見たことがあるのだろう。

それは彼女しか解らない事。

だけど、こういう街には彼女の嫌うことも多い。

例えば…………

 

「よお、姉ちゃん達。ちょっと俺達と付き合っちゃあくれんか?」

「安心しな。そこまで時間は取らせねえよ」

 

こんな馬鹿共。

しかし声を掛ける相手をおもいっきり間違えたわね、このお馬鹿さん達。

私には解らないけど、今オリガの目には犯罪者の表示が見えている(・・・・・・・・・・・・)でしょうね。

そんな相手に対して彼女は容赦しない。

泣こうが命乞いしようが、周りの抑制を無視して痛め付ける。

 

「犯罪者風情が、ジャマ」

ゴスッ

「お……ご………」チーン(タマキン蹴り潰された

「あ、兄貴ぃ!このアマァ!兄貴の息子になn「ウザイ」」

ガシッメキメキメキメキメキメキ

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア」(アイアンクロー

 

うん、こうなる。

オリガは握力を始め、在りとあらゆる身体能力は全吸血鬼(レヴナント)の中でもトップクラスのものだ。

さすが女王陛下、といったところね。

ジャックに聞いた話では、元々Q.U.E.E.N.計画の披検体としてクルスさんと共に参加していたみたい。

なんでも、クルスさん以上の適合値を弾き出していたみたいで、二人のおかげで研究がかなり進んだみたい。

そんなある時、クルスさんが実験に耐えきれず暴走してしまい、Q.U.E.E.N.計画はクイーン討伐戦にシフトしてしまったと聞いた。

勿論、オリガも討伐戦に参加した。

もう一人のクイーンとして、吸血鬼の未来は拓くために。

そして、その終盤でクルスさんに致命的な一撃を与えたのがオリガだった。

でも、女王を討伐した代償は大きかった。

オリガは最後の一撃を吸血牙装でおこなったため、クルスさんの血を大量に飲んだそうだ。

そう、もう一人のクイーンの血を。

2つのクイーンの血は混ざろうとして、強烈な拒絶反応を引き起こした。

そして、新たなクイーンが生まれないように、ジャックの手で止めを刺されたそうだ。

ただし、心臓を外しさえしなければ。

うん、心臓から逸れていたみたいで復活できたみたい。

名前以外の記憶を全て無くし血骸の継承者として。

新たなクイーンの候補として。

その結果が、血涙の大樹なのだけど。

 

「このゴミ共の有り金全部置いて連れてけ、ゴミクズ社会不適合者共」

「「は、はいーーーーーーーーーーー」」

 

あ、終わった。

何人か股間から血が出てるけど大丈夫かしら?

ま、私には関係無いか。

でも、あいつ等の血不味そう。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

トラブルは有ったものの、ギルドに到着した。

ギルドの外見は大崩壊以前にテレビで見た何処かの神殿に似ていた。

でも、視線がウザイ。

珍しいのかもしれないけど、正直値踏みされる視線は嫌いだ。

少しだけオリガの気持ちが解ったかも。

こんな視線を向け続けられれば不機嫌にも成るわね。

ましてや、私達は血生臭い(・・・・)

でも、それが私達の普通。

堕鬼に堕ちた同胞を殺し、血涙を巡り同胞同士で殺しあってきた。

姿形が変わっても、人間同士で殺しあっていた事にはかわりないのだから。

ああ、オリガの事だから絶対になにかやらかすわね。

ここでも。

ま、何時もの事か。

 



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ギルドで一悶着

はっはっは、風邪が腹に入って上も下も決壊したぜ。
最高38度8分、死ぬかと思った。
あ、今はもう大丈夫です。
因みにノロウイルスでした。


~???~

「ねえ、オッタル」

「どうかなさいましたか?フレイヤ様」

「面白い魂を持った子達を見付けたの。この子達に会いに行くから着いてきて。今ギルドに居るから。それと、レベル1と2でいいから二人選んで連れてきて。勿論貴方もよ」

「かしこまりました」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

~イオ~

 

「ご用件は何でしょうか?」

「冒険者になりに来た。ファミリアを紹介してほしい。できれば零細の探索系」

 

どうも、イオです。

あの方(オリガ)が今ファミリアというものを紹介してもらおうとしています。

あの方は変にしがらみを嫌います。

特に大手と呼ばれる規模の組織特有の上下関係を嫌います。

なんでも、「同い年でも自分より早く入っただけで先輩風を吹かす奴が嫌い」とのことです。

ようするに、変に上下関係を強要されるのが嫌いなようです。

上下関係を強要されたせいでストレス性の不整脈を患ったそうです。

 

(作者は自衛隊の集団生活でストレス性の不整脈を患いました)

 

なにか妙なことが聞こえた気がしますが気のせいでしょう。

その様な経験をするとはどのような状況だったのでしょうか?

私には解らない事です。

私はクルスさんの思いから産み出された存在。

神骸の継承者に寄り添い痛みを和らげること。

それが私達『神骸の伴侶』の本来の使命。

故に知らないことだらけです。

あの方達に教わった一般的な知識と、ヴェインと吸血鬼(レヴナント)に関する知識だけしか持っていません。

ですが解る事もあります。

それはあの方が大手の組織を嫌う理由の一つ。

『組織と言う名のルールに縛られたくない』と言うこと。

つまり、自由に生きたいと言うこと。

自身の自由が害されるなら、その原因を排除しに掛かること。

その結果が虐殺行為。

いささか殺りすぎではないでしょうか?

 

「ありがとう。イオ、ミア、行くよ」

 

あ、終わったようです。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

~ミア~

え~と、何から話せばいいのかしら?

オリガに呼ばれて一緒にギルドから出たのはいい。

だけど、問題は今目の前に居る人物。

よりによってオリガの行く手を遮るように現れたと言うこと、これが一つ目にヤバいこと。

オリガは、何か目的が有る時に邪魔されると酷く不機嫌になる。

意図的に邪魔されると余計にヤバい。

何時だったか忘れたけど、血涙の探索中に襲撃され妨害された事が有ったのだけど、その襲撃者全員心臓を潰されたわ。

それも容赦無く命乞いを無視して。

二つ目に、他の人間と纏う雰囲気が違うローブで顔を隠した人の視線。

この都市に来てからオリガが不機嫌な空気を纏っていた理由が解った。

この人の視線が原因だ。

何処か無邪気で、それでいて何処か粘着質な視線。

常人の数倍視線に敏感なオリガからしたら、迷惑どころか殺意を抱くレベルだ。

おかげでオリガのストレスは我慢の限界に達していて、何時堪忍袋の緖が切れるか解らない状態だ。

もう、血の雨が何時降って来ても可笑しくない状況。

だって、オリガの表情が無表情で血管が何本も浮かんでいるんだもの。

ここまで解りやすくぶち切れてるの初めて見たわよ。

それ解って無いよね、この人達。

どう考えても。

と言うか、ローブ被った人それ気づいているよね?

気付いていながら気付いてないふりしているとしたら相当な馬鹿よね?!

自殺願望者としか言い様無いよね?!

 

「あの、ミアさん。途中から本音漏れてますが………」

 

いや、そうとしか言い様無いでしょ、絶対。

しかもオリガの強さと言うよりも、危険性を感じる事ができない時点で雑魚確定だし。

この世界には『神の恩恵』と言うモノの、レベル差と言う規準でしか計ることのできない弱者しか居ないって事じゃない。

現に私達、ここに来る前に恩恵持ちの犯罪者を殺してるじゃん。

 

「ついでに言うと、目の前に居る大男はオラリオ現最強(・・・)のレベル7、フレイヤファミリア所属のオッタル。だけど、こうして対面して思った」

 

予想道理だったの?

それとも予想外?

本音でどうぞ。

 

「期待ハズレ。想定よりも弱すぎる。ダンジョンの最大到達階層が60階で止まっているのも納得出来た。この都市のみならず、この世界に生きる者全てが『神の恩恵』に頼りきっている性で力任せの雑魚に成り下がっている!

 

大声でハッキリと言いやがったよこの人。

 

「正~直、そこで気持ち悪い視線向けてる美と豊穣を司る糞駄女神フレイヤを嬲りまくってから、殺したい位にイラツイテル」

 

敬称すら着けずに糞駄女神呼ばわりしちゃったよ。

 

「貴様!フレイヤ様を侮辱したな!万死に値するぞ!」

「糞を糞と呼んで何が悪い?教えてくれない?負け犬のク・ソ」

 

煽るわね。

と言うか、煽りすぎ。

少しはオブラートに包みなさいよ。

まあ実際、紅茶煎れる片手間で処理できる程度の雑魚でしかないけど。

でも糞は言い過ぎよ。

 

「他にどう呼べと?ゴミクズ?塵芥?底辺の床?それとも便所の床?」

 

ごめん、無茶言った私が悪かった。

 

「貴様等~!万死に値すると言っt」

ドスッ

「ゴフッ…あ……え…………?」

「五月蝿いからもう一生黙ってろ、カス」

 

あ~あ、殺っちゃった。

と言うか、堪忍袋の緒が切れちゃった。

これ、もう手が付けられないわよ?

どうするの、女神フレイヤ?

 

「私としては貴方達のスカウトに来ただけよ?その子の事は謝るわ。で、どう?私のところに来ない?」

「あんたの所の人員、皆殺しにしても良いのなら考えてやる」

 

貴方の大手嫌いは筋金入りね。

でもどうしてそこまで嫌うの?

自由に行動したいってのは知ってるけど。

 

「どんな組織も大きくなればどこかしら淀む。水槽と一緒。定期的に掃除して水を入れ替えなきゃ汚れるし、水が腐る。だから、一度大掃除しなきゃいけない」

 

だから殺すと?

何処が腐っているのかも解らないから、疑わしいモノを全て処分してしまおうと?

罪悪感を感じないの?

 

「そんなの犬に食わせた。ついでに言うと、貞操概念も同じように棄てた」

 

一番捨てたらいけないものまで棄ててるわね。

道理で風呂上がりに真っ裸でうろつくわけだし、裸見られても叫ばない訳だ。

 

眷属(こども達)を全員殺されるのはごめんこおむるわ」

「なら諦めろ。それと、私の入った所に変なちょっかい出すなよ?その時はあんたの小飼を殺処分する」

「そうさせてもらうわ。手を出さないことも約束するわ」

「ならいい。ああ、後死体の片付けよろ」

 

話は終わり?

予定より時間かかってるから急いだ方がいいんじゃない?

 

「そうだね。急ぐよ」

 

ハイハイ、行きm「待ってくれ」

 

オッタルさん、だっけ?

まだ何か用でもあるの?

 

「ああ、オリガと言ったか?貴君の挑発に乗った二人と違って、貴君と私では実力差が在るのは気付いている。しかし、それでも武人として、一冒険者として勝負を申し込みたい」

 

とんでもないチャレンジャーがいたもんよね。

実力差を理解していながらも勝負を挑むなんて。

で?どうするの?

 

「良いよ。遊んで(・・・)あげる」

 

ハイハイ、受けるってことで良いのね。

なら、私が審判をするわ。

言っとくけど、この勝負はあくまでも模擬戦とするわ。

つまり、殺しは禁止。

勝敗は『降参を宣言する』『審判が判断した場合』の二つの内、どちらかに該当したら終了とする。

良いわね?

 

「うむ」

「良いよ。でもその前に一つ質問」

 

オリガ、どうしたのよ。

 

「貴方の持ってる剣、『不壊属性』ってのが付いてるみたいだけど、それの効果を教えて」

「む、『不壊属性(デュランダル)』の事か。文字通り、幾ら使い続けても壊れない剣だ。ただし、壊れる事は無いが使い続ければ切れ味は悪くなるがな」

「フーン、『聖剣デュランダル』の劣化版か。なら、素手で十分だね。ミア、合図」

 

OK、じゃあいくわよ。

こうして私は開始のコングを鳴らした(合図を振り下ろした)

 




次回、オリガVSオッタル。


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オリガVSオッタル

このような駄文を読んでいただきありがとうございます。
今回は戦闘から入ります。
上手く書けるかな?


~三人称~

ギルド前の広場。

二人の人が対峙していた。

片方はがっしりとした大男。

片方は顔に刺青をした長身の美人。

そう、オラリオ現最強(レベル7)猪人(ボアズ)【猛者】オッタルと吸血鬼(レヴナント)女王(クイン)オリガである。

事の発端はオッタルがオリガに勝負を申し込んだ事である。

その場に居た人々は一定の距離を置いて見守っていた。

何せ【猛者】が見知らぬ、それも無名の冒険者志望に勝負を挑む(・・・・・)のだから。

この世界において、『神の恩恵』によるレベル差は絶対(・・)なのだから、恩恵無し(レベル0)が冒険者に勝負を挑むのは自殺行為に等しいとされている。

まあ、それでもレベル2がレベル3に下克上する時も有るが。

しかし、今回は事情が違う。

レベル7が表情を固くしながらレベル0に勝負を申し込んだ(・・・・・)のだから。

そしてオッタルは二振りの『不壊属性(デュランダル)』の大剣を構え、オリガは無手で自然体のまま立っていた。

その二人の中間地点にいる小柄な女性―ミアは片手を上げ、振り下ろすと同時に一言告げた。

 

「始め!」

 

まず動いたのはオッタルだった。

雄叫びを上げながらオリガに肉薄し、左の剣を振り下ろした。

しかし、オリガは右手で無造作に剣を掴み(・・)、そのまま握り潰した(・・・・・)

そう、折れることの無いはずの『不壊属性』が付与された剣を、片手で破壊(・・)したのだ。

これにはさすがのオッタルも面食らい一瞬動きが止まるが、すぐさま折れた剣を破棄して残った剣を両手持ちで振り下ろした。

だがしかし、これも左手で無造作に掴まれて止められてしまった。

また握り潰すのかと思いきや、今度は壊さずただ掴み止めたにすぎなかった。

二度も、ましてや両手で渾身の力を込めて振り下ろした二撃目が片手で止められた事実に思考停止してしまい、完全に硬直してしまったオッタルはオリガの右腕の動きに気付かなかった。

一見無手で、両足のホルダーに仕舞ってある4本の短刀と左腕の籠手以外何も武装しているように見えないオリガだが、最大の武装は身に纏っている服その物であることに誰も気付いていない。

すれ違ったり対面した人々は、服その物が濃厚な血と死の臭いを発している事に誰もが不思議に感じただろう。

それもそのはず。

吸血鬼(レヴナント)たちの吸血の為の牙になる衣服型の装備『吸血牙装(ブラッドヴェイル)』。

4種の中から自身に合った物を身に付け、数多の堕鬼(ロスト)と同胞の血を奪ってきた牙。

オリガの物はその4種全てを組み合わせた特注品。

そしてその右腕は『吸血牙装』の一つ、禍々しい巨大な爪を展開する『オウガ型』。

射程は腕の長さ分と言う短さだが、それを差し引いても攻撃へ転じるまでの早さが売りである。

何せ、腕を振るうだけ(・・・・・・・)で相手にダメージを与えられるのだから。

そう、オリガはオウガを展開して、右腕を振り上げただけなのだ。

その行動に、今まで硬直していたオッタルは反応するのに遅れた。

とっさに武器を手放して後ろへ跳んだが、間に合わず左腰から右脇下辺りまで大きな傷ができてしまった。

 

「そこまで!」

 

ミアはそこで終了の合図をだした。

そう、オリガはオッタルが反応できるギリギリの速度で攻撃していたのだ。

それを見てミアは、『実戦だった場合は死亡した』と判断したのだ。

それにオリガ達吸血鬼勢は気付いていないが、『吸血牙装』で傷付けられると例えエリクサーを使用しても完治しないのである。

なぜなら、『吸血牙装』は相手の血を奪う為の装備であり、攻撃した箇所の細胞ごと削り取って行くからだ。

まあ、吸血鬼の再生能力による治癒は別だが。

 

終了の合図を聴いた両者の反応は対称的であった。

オッタルは悔しそうに顔を歪め、オリガは片手で剣を玩びながら欠伸をしていた。

一応オリガのイライラは治まったようだが。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

~ミア~

あ~~、どうにかオリガの機嫌が治ってくれて良かった~。

あの不機嫌な空気を纏ったままだったら流石に気分悪くなってたわ。

と言うか、オリガがどれだけキレてたか解って良かった。

まさか、『不壊属性』と言うのが付与された剣を素手で握り潰す程だったのは予想外だったけど。

それでも前々から似たようなの見かけたわね。

確か前見た時は………大型の堕鬼(ロスト)の持っていた『ヒュージハンマー』の物凄く固い打面を素手で殴り砕いて(・・・・・・・・)いたわね。

拳砕けてたけど…………その後、何事も無いように堕鬼を素手で撲殺して廻ってたわね…………回復もせずに。

と言うか、『ヒュージハンマー』の打面ってダイアモンドの3倍の硬さ(モース硬度30)じゃなかったけ?

あれ砕くってどんな力してるのよ。

まあいいや。

これで先に進むことができるわね。




オッタルの負け。
オリガにかかれば、『不壊属性』は只のナマクラだったようです。
モース硬度30の物質を殴り砕く時点で色々おかしい。


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オッタルの独白

今回はオッタル視点です。
オリガに敗けた彼は何を思ったでしょうか?


~オッタル~

負けた…………。

この私が負けるとは。

このオラリオでたった二人しか居ない頂点(レベル7)に立ち、はや数ヶ月。

自惚れがなかったとは言わない。

それでも、その座に相応しい鍛練を続けて来た。

だがしかし、此度の敗北は…………………悔しい。

彼女(オリガ)とは実力に差があるのは解っていた。

だが、レベル差を考えればこちらが有利なはずだった。

しかし結果は、双振りの愛剣を奪われ破壊され、致命傷を負ったと判断された。

彼女は一歩も動かず傷一つ無い。

それに対して私は、左腰から右脇に掛けて傷を負った。

止血の為にハイポーションをかけたが、抉られたかのような痕が残ってしまった。

そう、彼女の最後の鍵爪による一撃が、そのまま残ってしまったのだ。

普通、この程度の傷ならばハイポーションで完治するはずだ。

しないと言うことは、再生を阻害されているのか、若しくは再生出来ないと言うことだ。

つまり私は、敗者の烙印を刻み込まれたのだ。

だが、再生を阻害されているのなら傷はふさがらないはずだ。

ならば再生する部位が消失していると言うことになる。

だがどうやって?

あの鍵爪が原因か?

あの鍵爪には何かがある。

だがそれは解らない。

今は捨て置くとしよう。

しかし、胸中には悔しいと言う感情が渦巻く。

ああ、何時ぶりだろうか。

このような感情を抱くのは。

忘れていたモノを思い出すこともできた。

「悔しい」と言う感情とは裏腹に、何処か清々しく感じる。

 

彼女は仲間と共にファミリアを探していると言った。

つまり、冒険者になると言うこと。

神の恩恵無しでレベル7である私に勝てる強さを持つ。

そんな存在が恩恵を手に入れたらどうなるのか、恐ろしくも楽しみでしょうがない自分が居ることに思わず笑みが零れる。

だから、私の目標は定まった。

初心に戻り、一から鍛練をし直そう。

そして、彼女に勝てるように力をつけなければ。

彼女は恐らく素の状態で、レベル8以上の強者と言うことだ。

その素の状態の彼女に傷一つ付ける事ができれば、それは立派な偉業と言えるだろう。

まずはそれを目標として鍛練をし直そう。

むしろ彼女自身に鍛練の教官役を申し込んだ方が効率が良いのではないか?

それよりも、彼女達を案内した方が良いかもしれん。

今の時期は闇派閥(イヴィルス)の手の者が何処に居るか解らない以上、色々と絡まれるだろう。

ならば、せめてもの詫びとして彼女達が行こうとしているファミリアの入り口まで案内しよう。

フレイヤ様は…………一緒に来ていただくか………。

その方が守り易いからな。

彼女達の方は全くいらなさそうだが。

しかし………あれ程の身体能力と技術はどうやって手に入れたのだろう。

想像を絶する鍛練と数多の死線を潜り抜けたに違いない。

そうか、私は今の地位に満足してしまい腐っていたのか。

組織が大きくなるにつれて人の心は腐ってゆく。

そして強くなるにつれて、その強さに酔いしれてしまい助長してしまう。

だが彼女にはそれがなかった。

もしかしたら、彼女の様な人間が『英雄』と呼ばれるようになるのだろう。




オッタルさん、オリガはすでに英雄と呼ばれてますよ。
と言うか、本人からしたら足掻き続けた結果でしかないんですけどね。


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オリガの独白

今回はオリガの独白になります。
足掻き続けたこれまでの人生の一端をお見せしましょう。


~オリガ~

オッタル………。

オラリオの頂点の一角。

まあ、そこそこ楽しめたかな?

だけど弱い(・・)弱すぎる(・・・・)

これでは最弱のダーカー『クラーダ』ですら苦戦するだろう。

でもまあ、普通にアラガミと堕鬼(ロスト)には勝てないか………。

堕鬼(ロスト)は全身BOR寄生体に侵蝕されてるから時間経過で復活するし、現状私が喰い尽くさなきゃ永遠と鼬ごっこだし。

それ以前に、アラガミは顕在化した抑止力であり、地球の抗体で生命の再分配を行う浄化装置だ。

そんなの相手に、神の恩恵を受け取っただけの人間が勝てる訳がない。

そう、文字通り死に物狂いで生き抜いて来た私からすれば、オラリオのダンジョン何て生温い(・・・)

モンスターが大量に涌き出る『怪物の宴(モンスター・パーティー)』で仲間が全滅した?

闇派閥(イヴィルス)にはめられて仲間を殺された?

それが何?

ゴッドイーターの時なんか、目の前で同僚がアラガミに頭から丸かじりされたの見たわ!

それに、単独で接触禁忌種とかの超絶危険な奴等を討伐したわ!最低限の補給で!連続で!

その後で上司の部屋に「休暇寄越せ」って突撃かましたけど、神機片手に。

アークスのブラックさを舐めんな!

毎日毎日、調査調査の討伐討伐!

休暇ほとんどどころか全く無かったっつうの!

あの手この手とクエスト回しやがって~!

シオンのバッカヤロ~!

て言うか誰だよ、私の所に書類仕事押し付けるような真似しやがったヤツは?(報告書等の書類は早急に片付ける人です、この人)

そして吸血鬼(レヴナント)舐めんな!

クイーン討伐戦以来、何度死に戻りしたと思ってンだ?

しかもクルスの血飲んじゃったから拒絶反応で痛いわ苦しいわで、その上記憶無くすわブラッドコード破損するわで散々だったし!

クルスもクルスだ!

勝手に人に女王としての役目を押し付けやがって!

お陰でどうやって救おうか悩むはめになったし。

ミドウの糞野郎は違法な研究繰り返していやがった上、面倒臭い事引き起こしやがって!

絶対ブッ殺す!

あ、もう既にブッ殺してあったっけ。

心臓潰しちゃったから灰化しちゃってたっけな。

心臓潰さずヤドリギで復活したところを飽きるまで殺し続けときゃ良かったかな?

 

◆●◆●◆●◆●◆●◆●

私は転生者だ。

それも、何度も転生をした事がある。

忘れてしまった所も有るが、幾つかは覚えてる。

 

一つはSAO。

この時は『桐ヶ谷和人』として生きた。

デスゲームと化した世界初のフルダイブゲーム『ソードアート・オンライン』、通称『SAO』のクリアに貢献したり、VR犯罪の調査に奔走したりした。

その過程でかなりモテた。

あの時は重婚何て法律的にできなかったから一人を妻として娶り、残りを愛人として囲うことにしたっけ。

昼は仕事、夜は妻達の相手と忙しかったな。

乾く暇もなかったし。

 

一つはPSO2。

オラクル船団のアークスの一人で、最高戦力のガーディアンを拝命されたっけ。

この時はヒューマンの男性で、名前は確か………ああ、思い出した。

『ケイン』だ。

それと、デューマンの女性『エスト』だ。

正式なアークスとなった最初の任務でマトイを保護したっけ。

『仮面』の野郎は問答無用で殺しにかかって来たしな。

それから、ゲッテムハルトの馬鹿が『巨躯』の封印を解くわ、『若人』がユクリータに残った残滓っだったりだとか、『双子』がダーカー因子を大量に注ぎ込んでくれたから『深淵なる闇』が復活しかけたっけねえ。

まあ、その後も地球上での調査にオメガの調査。

終いには改悪されたアカシックレコード模倣体『深淵なる闇』の本体、『終の女神シバ』まで出てきたっけね。

そんな仕事漬けの日々でも、モテた。

何故か異常なまでにモテた。

マトイを筆頭に、イオ、アザナミ、パティ&ティア、メルランディア、サラ、三代目クラリスクレイスことイリス、フィリア、ユクリータ、クーナ、ストラトス、アイカ、フランカ、後意外だけどリサとフーリエ。

キャストでも性行為ってできたんだね…………。

てか、後何人居たっけ?

多すぎて覚えて無いや。

この時は女性陣に押しきられて重婚したっけな…………。

人が二年もダーカー因子浄化の為にコールドスリープしてる間に整えやがって。

シャオとシエラ主導の下、アークス全体が団結しやがったし。

てか、元々マトイを救う為だけに足掻き抗い続けただけなのに、いつの間にか英雄視されたたっけなあ。

実際、英雄扱いだったな。

シバは面倒臭かったです。

永遠に消えろ。

 

一つは崩壊3rd。

崩壊と戦う戦士(ヴェルセルク)の一人であり、戦艦ハイペリオン号の艦長『ライガット』だった。

崩壊獣もゾンビも機甲も何もかも、片っ端から叩き潰してきた。

天命のトップも蛇の頭も、勿論ぶん殴った。

老若男女関係無しにぶん殴った。

整形手術かと言うぐらいしこたまぶん殴った。

そう言えば、何人か骨の形がおかしくなったって言ってきたな。

肋骨が折れて内臓に刺さったってのも有った。

で、ここでもモテた。

戦乙女(ヴァルキリー)達に異様にモテた。

メイド兼特殊部隊『不朽なる刃』副長のリタまで上司裏切ってこっちに来るほどだったなあ……………。

そしたら何故か…………私をお飾りのトップに据えた新組織が何時の間にか発足していた。

この時の仕事は、書類・戦闘・飯・風呂・性行為、だった。

あれ?睡眠は……………一応有ったな。

3時間だけ……………。

誰だよ、人のスケジュール管理しやがったの。

どうせ、リタとテレサ辺りだろうね。

後、メイとフカだな。

 

一つはフリーダムウォーズ。

この頃から女性で固定されるようになったっけ。

で、名前は『リア・“ハウンド”・カークライト』。

懲役100万年の刑期を史上最短で完済し、天獄を地に落とした功労者(・・・)

試作のWill'Oドライブのテスターを勤めたり、低資源・低コストの新型アブダクターを開発したりしたっけな。

………よくよく考えたら、この世界以降の転生先の性別が女に固定されたんだよな。

サイモンの仕業だな、絶対に。

 

ここ(オラリオ)に来る二つ前のGOD EATER。

この時は『イムカ・オリガ』と名乗り、ブラッドに配備された第3世代型に似た特殊な神機を扱うゴッドイーターだった。

私がこの時使っていた神機の運用データのお陰で、第2世代型が完成した。

だから、極東支部にて第2世代型の教官を勤めた。

因みに所属部隊は第一部隊。

でも極秘任務にリンドウさんが遅刻してくるは、たった一人で大型種と接触禁忌種の連続討伐をやらされるとか、マジでふざけんな!

お陰で色々な所から物資パクるはめになるし、神機の整備がろくにできなくて死にかけた。

それが縁でリッカと仲好くなれた。

榊博士とシックザール支部長の無茶振りも多かった。

まあ、任務終了後に、神機片手に突撃かまして休暇もぎ取ったけどな。

序に出撃拒否りました。

せっかくの休暇を台無しにされてたまるかってんだ。

さすがに防壁突破された時は出撃したけど。

 

これが私の歩んできた人生。

そして、コードヴェイン。

今の私、『オリガ・エストフィリア』。

実を言うと、吸血鬼(レヴナント)になった後に『イムカ・オリガ』と一度だけ接触しているんだ。

そして、『クルス・シルヴァ』と供にQ.U.E.E.N.計画の為に改良されたBOR寄生体の実験で蘇った第一世代の一人。

クルス以上の適正値を出し、研究に貢献し、更に改良した寄生体の実験をしようとした矢先だった………。

………クルスが暴走したのは。

それがクイーン討伐戦。

元々は再生治療の為のBOR寄生体の研究は、アラガミの驚異に対抗するための軍事研究に移行し………、そしてクイーンを討伐する為の死の研究へと変化した。

まあ、アラガミに関しては、オラクル細胞の研究から神機開発にシフトしたから良いのだけども。

でも、クイーン討伐戦は苛烈を極めた。

女王の瘴気にヤられて自我喪失(ロスト)する者が続出し、戦力が足りないからと多くの人が墓場から叩き起こされた。

これが第二世代。

私は第二世代の吸血鬼達に混じって参加した。

そして死に、また戻ってきた。

二度目の出撃ではジャックとバディを組んで女王の騎士を討伐した。

そして、強襲してきたクルスと戦い、マスクを破壊された。

瘴気を諸に吸い込んでしまったために、強烈な渇きに襲われた。

ジャックの投げた剣にクルスが気を取られた時、覚悟を決め、クルスの血を奪った(吸った)

その結果は二人の女王の血が混ざった性で、激しい拒絶反応を引き起こした。

そして、ジャックに心臓を破壊されて灰になったはずだった。

だが、心臓はほぼ無事だった。

そのため、討伐戦から数日?数ヶ月?解らないけどかなり時間たってから復活出来た。

ほぼ全ての記憶の欠損とブラッドコードの破損と引き換えに………………血骸の継承者として………………。

完全に混ざり合った女王の血を持つために、私には神骸を鎮める力とヤドリギと血涙の泉を復活させる能力を持つ。

そして、他者のブラッドコードを取り込み、自分の力として扱えるようになった。

その頃には、討伐戦以降に復活した第三世代が多く居た。

血涙探索、堕鬼討伐、源流探索と活動してきた。

極めつけはミドウの糞野郎の人体実験。

流石にこれは、本気でキレた。

赤い霧が晴れた時出現してきたディアウス・ピターを見たら、今までの記憶を思い出した。

で、もう一度言う。

ミドウの非道な行いに対して、本気でキレた。

強化に強化された身体能力と、これまでの戦闘経験をフルに使って、反撃も許さない猛攻を仕掛け、一方的に蹂躙しつくした。

そして、かつての討伐隊の拠点であった臨時総督府に向かい、再臨した女王の騎士を倒した。

総督府の内部では、グレゴリオ・シルヴァを守る神骸の伴侶の襲撃に会ったけど、これを撃退し、シルヴァの下へとたどり着く事が出来た。

でも、到着した時にはほとんど手遅れだった。

それでも、どうにか倒す事はできたけど、神骸全てを取り込んで異形な姿で復活したのは面倒臭かった。

かなり苦戦したけど、どうにか倒す事が出来た。

で、最後は血涙の大樹に変化した。

 

◆●◆●◆●◆●◆●◆●

ああ、そうだ。

邪魔する輩は潰す。

潰す潰す潰す潰す潰す潰す!

ことごとく潰す!

逆らえなくなるまで潰す!

仲間を守る為には、ある程度手段は選ばない。

それが私の覚悟。

その為の足掛かりをこの世界に作る。

それが私の作るファミリア。

私の仲間に手を出すなら覚悟しろ。

その恐怖を、転生しても忘れないように魂の奥底に刻み込んでヤる。

さあ、始めよう。

私達の新たな物語を。

この世界に刻もう、私達の詩を。

私は此処に居る。

さあ、事象の観測を開始しよう。

世界を楽しむ為に。

 




と言うわけで、オリガの人生の一端でした。
ほとんど自慢話みたいなモノになっちったけど。


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ようやっと先進めるよ。byオリガ

ファミリア結成まで行けるかな?


あ~~~~~~~~、武器壊したら何かスッキリした。

思いの外時間取られたけど、この世界の冒険者の実力の程度が解ったから良しとするか。

素の状態でレベル7に簡単に勝てる事が解ったし、神の恩恵に頼りきっている事を確認できた。

これじゃあどこぞの黒蜥蜴(*1)に負ける訳だ。

当たり前だよね。

借り物の力におんぶにだっこの状態で勝てると思うなんて、馬鹿としか言いようがないよね。

本当に時間取られたけど、ヘファイストの所へ行きますか。

 

「ちょっといいだろうか?」

 

負け猪のオッタル君、まだ何かご用で?

 

負け猪…………ってそれはどうでも良くて、今のオラリオは色々と物騒な所が有ってな。そちらは冒険者になりに来たのだろう?君たちの行きたいファミリアまで案内しようと思って声を掛けさせてもらった」

 

なるほど、ね。

フレイヤはそれで良いの?

 

「構わないわ。勧誘はしないけど、貴女達とお話したかったもの」

 

そ、なら、道案内宜しく。

行き先はヘファイストファミリアね。

 

「ん?………ああ、解った。それならばこちらだ」

「ヘファイスト?ああ、ヘファイストスね。貴女、大手のファミリアは嫌いじゃなかったかしら?それに、あそこは鍛冶系ファミリアよ?」

 

それは十分承知。

それに、用が有るのは鍛冶神ヘファイストの方じゃない。

その兄弟神…………こっちじゃあ姉妹神か。

その竈神ヘスティアの方だ。

 

「あら?ヘスティアの方なの?ああ、そう言えばあの()降りて来てたわね」

 

そう、眷属がいないからフリーの神として登録されてるのはギルドで確認済み。

それに、私は大手が嫌いだ。

下手したら、壊滅させたくなる位大っ嫌いだ。

ならば「中堅は?」と、問われれば首を傾げざるおえない。

何せ、中堅と言ってもピンキリだ。

例を上げるなら、アポロンの所みたいな低俗な所とかざらだし。

だったら、自分でファミリアを立ち上げれば良い。

そうすれば、自分の好きなようにルールを決められる。

変なしがらみに囚われる事もない。

自由に動くにはそれが一番だ。

 

「なら、団長は貴女しか居ないわね」

 

そりゃそうでしょ。

面倒臭い事も多いけど、それが最適解だ。

だが、団長補佐はやってもらうぞ?

ミア・カルンシュタイン。

 

「解った」

「あら?貴女、家の子(私の眷属)と同じ名前なのね。ミア・グラントって言う子なのだけど、機会が合ったら会ってみない?」

 

ああ~、そう言えば居たな。

元団長の肝っ玉母ちゃん。

『豊穣の女主人亭』だっけ?

金貯めてからになるもんで、しばらくは行けそうに無いな。

て言うか、店の名前からしてあんたの眷属ですって、大々的に宣伝してンじゃん。

美と豊穣(・・)を司る女神フレイヤ様?

 

「よく知っていたわね。地上の子達は美の女神としか知らないのに」

 

有名処の神は大概知ってる。

北欧神話の悪神ロキとその子供、神喰狼フェンリルとかね。

序に言うと、私がかつて所属していた組織の名前が「フェンリル」だったりするし、その時相手にしていた化け物共の総称は「アラガミ」だから、神や妖精等の名を関していたりしたからね。

気になって調べたと言うのも有る。

まあ、話がずれたけどそう言うわけで大概は知ってる。

特に有名なのはゼウスの浮気性だな。

 

「そう言えば一晩のお相手してあげた事があったわね」

 

で、次の日ヘラに折檻されたと。

 

「ええ、その通りよ」

 

予想を裏切らねえな、あのエロ神。

そんなに節操無しなら貞操帯付けて管理した方が良いんじゃね?

もしくはウラノスみたいにナニ(・・)切り落とすか。

キル姫にアマンダスの大鎌がいたから、よくその話聞かされたし。

 

「そのウラノスの話もっと詳しく」ガシッ(肩掴んだ

 

うん、話すから取り敢えず落ち着いて。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

~ギルド地下 祈祷の間~

 

「うっ」ゾワ

「どうした、ウラノス?」

「嫌な悪寒が走った。それも一番知られたくない事が知られた様な気がする」

「神々の言うところの『黒歴史』というヤツか?」

「ああ、その類いだ、フェルズ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

~オリガ~

いや~、他()の黒歴史暴露するって楽しいね。

機会が合ったらウラノスに確認しよっと。

 

「うふふ、本当に良いことが聞けたわ。何時か二人でウラノス弄りに行きましょうか?」

 

それ良いね。

奥さんのガイアも呼んでウラノスの目の前で女子会でも開きましょうか?

赤裸々発表会的な感じで。

 

「賛成ね」

「「「「「「可哀想だから止めたげて」」」」」」

 

ちぇっ。

じゃあ、機会が合ったらどっか店借りきって飲み明かさない?

 

「そうね、そうしましょう」

「程々にしてください、フレイヤ様。それと、もう少しでヘファイストスファミリアに到着します」

 

楽しい時間って直ぐに過ぎ去るよね。

長く続けば良いのに。

 

「本当、その点に関しては同意するわ。クロノスの仕業かしら?」

 

それは無いでしょ。

キッチリ時間厳守しているイメージより、むしろ時間を引き伸ばしてぐーたらしていそうな気がするし。

似たようなことやった馬鹿叩き潰した記憶有るし。

 

「…………それもそうね」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

~オッタル~

 

これは予想外だ。

まさかフレイヤ様が気に入られるとは。

何と言う魂胆の持ち主だ、オリガ。

フレイヤ様の発せられる“魅了”は無意識に垂れ流しになっているものだ。

私個人は耐えれるが、他の者は耐えきれず堕ちてしまう。

それ程までに神々の魅了に耐えれる者は少ない。

しかし、オリガとその仲間二人は普通に耐えきれている。

このような逸材は逃したくない。

だが、勧誘は無理だ。

本人達に拒否られたばかりで、現在在籍している団員を「殺す」とまで言われてる。

だがしかし、個人的には友好関係を築いて置くべきだと思った。

対応さえ間違えなければ、これ以上に頼もしい人材は居ない。

色々と便宜をはかるのもいいだろう。

なんなら同盟を組むのも良いかもしれない。

いや、それは早計だな。

だが、彼女達は神ヘスティアを主神とし、新たなファミリアを結成するそうだ。

ならば、どこか土地と建物を進呈しよう。

そうすれば、仮住まいとしても十分だろう。

そうと決まればさっそくフレイヤ様に進言しよう。

むしろ神ヘファイストスも巻き込むか。

彼女達の様な人材は本当に貴重だ。

よし、闇派閥のクソ共とそこら辺の馬鹿共は、彼女達の恐ろしさと頼もしさを宣伝する為の生け贄になってもらおう。

治安も善くなって丁度いいだろう。

 

 

あ、ヘファイストスファミリアの門が見えてきた。

 

 




ファミリア結成まで行けなかった。
家のオッタルさん苦労人です。
ストレスの溜まりすぎで黒くなっております。


(*1)黒蜥蜴とは世界三大クエストの黒竜の事。
ちなみにオリガは、攻略済みの2体はリバイアサン=大海蛇、ベヘモス=大亀呼ばわりしてます。


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