アインズ・ウール・ゴウンが幻想入りしたようです。(再投稿) (TubuanBoy)
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プロローグ(前)

最初はほぼ前と一緒なのでサクサク行きます。


DMMORPG『ユグドラシル』日本のメーカーが満を持して発売した体感型MMO。

このユグドラシルというゲームは数ある。

DMMORPGの中でもその膨大なデータ量と作りこみ要素によりDMMOといえばこのゲームを指すと言って良いほどの人気を日本で誇った。

 

だが、それも一昔前だ。

 

時が過ぎ、かつて一世を風靡したその輝きはサービス終了と共に忘れ去られた存在(幻想)に誘われようとしていた…

 

 

 

 

 

 

【ナザリック地下大墳墓】

10階層によって構成される巨大な墳墓であり、凶悪を知られる事で有名なダンジョンである。

嘗て1500人と言うサーバー始まって以来の大軍で最下層を目指したにもかかわらず、第8階層で全滅したという伝説を残す難攻不落の場所だ。

そして、このナザリック大地下墳墓こそDMMO『ユグドラシル』において最高ランクのギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の居城であった。

 

-----ナザリック地下大墳墓の最奥地にある玉座の間-----

そこには最恐最悪のギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルド長を務めたプレイヤーモモンガ(本名:鈴木悟)はたった一人で最後の瞬間を待っていた。

 

彼のゲームでの姿はリッチの中でも最上位者「オーバーロード」。

肉も皮も無い骸骨のような姿、眼球の部分は赤黒く光りが揺らめく。

肩には豪華な装飾、そこから体を覆い尽くすほどの黒いローブを羽織っていた。

 

『アインズ・ウール・ゴウン』への加入条件は二つ。プレイヤーが異形種である事、そして社会人である事。つまりみんな生活がかかっている。

嘗て41人が在籍していたこのギルドも今は三人だけ、その三人も前にあったのはいつの事やら。

夢を叶えた者もいる、転職で忙しくなって来れなくなった者もいる。身勝手な理由で辞めていった者は一人もいなかった。

 

 

「過去の遺物か…」

 

 

モモンガは思う、もうかつての輝きは無いがここには沢山の思い出が埋まっていると。

目を動かし、天井から垂れる大きな旗を数える。計41

 

 

「でも楽しかった…」

 

 

他に趣味もなく、交友関係も希薄であった彼にとってこのユグドラシルというゲームには深い思い出があり、『アインズ・ウール・ゴウン』こそ自分と友達達の輝かしい結晶なのだ。

 

みんなで作った努力の結晶であるギルド武器『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を握り締める。

 

 

視界の隅に映る時計には23:57。サーバー停止までごく僅か、空想の世界は終わり、普段の毎日がやってくる。

当たり前だ。()空想(・・)の中では生きられない。

 

23:59:35、36、37……………

 

モモンガはゆっくり目を閉じる。

 

57………58…………59…………

 

時計と共に流れる時を数える。幻想の終わりをーー

 

0:00

 

サーバーからの強制排出により彼の意識が現実に戻ると思われた瞬間、彼の頭にある声が響いた。

 

《ようこそ幻想郷へ…………幻想郷は全てを受け入れる。…………》

 

女性の声であった、声を聞いただけで世の男達を魅了してしまうと思えるほど綺麗で可憐で麗しい声であった。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----隙間空間-----

 

そこはどちらが上なのかさえわからない不安定な空間、時より開閉を繰り返す瞼のような無数の亀裂、そしてその中から覗き込む今にも飛び出しそうな眼球。そして底光る紫色の光がその空間の異様さを引き立てていた。

 

 

怪しげな異空間の中で一人の女性が時が経つのを待っていた。

 

 

 

「57………58…………59…………0:00………………

来たわね。幻想より生まれし死の王………【オーバーロード】……………」

 

 

女性は長い金髪を靡かせ、紫のドレスを着ていた。

シミひとつ無い見事にまで美しい肌にこの世の女性が羨む肉体をもち、少女の面影を残しながらも美しさと面妖さを兼ね備えた顔立ちからは仄かに笑みがこぼれていた。

 

彼女こそ幻想郷の創造者の一人であり、妖怪の賢者、幻想郷を成り立たせる『博麗大結界』の管理人。

 

スキマ妖怪【八雲 紫】

 

 

すると空間が裂け、中から彼女の従者が姿を表す。

最強の妖獣にして九尾の妖狐、【八雲藍】である。

黄色のショートカットで狐の耳を隠す特徴的な帽子に古代道教の法師のような格好をしている。

 

「いかがなさいますか?紫様。」

「そうね…………とりあえず貴方は手筈通り動いて。」

「かしこまりました。

それで紫様はどちらに?」

 

「私はそうね。

彼に会いに行ってくるわ………………」

「お一人で大丈夫でしょうか?」

 

 

「大丈夫よ。」

「かしこまりました。」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

-----玉座の間-----

 

 

「………………ん?何だ今のは。」

 

ほんの数秒、意識が薄れた瞬間に頭の中に流れ込んだ声。

 

モモンガは目を開けあたりを見渡す。強制ログアウトのタイミングで誰かが語りかけてきたのかと思ったからだ。

 

しかし、眼前に広がるのは見慣れた自室の風景ではなく、ナザリックの玉座の間の風景。

しかし、0:00は過ぎている。

 

「サーバーダウンの延期かな?」

真っ先に考えた要因を確認しようとしてシステム画面を開こうとするが何も反応しない。

 

「一体どういうことだ。」

 

「いかがなさいましたでしょうか?モモンガ様?」

 

玉座の横に佇んでいた女性型のNPCが声をかけてきた。

 

しかし、NPCは設定されている行動しか出来ないはず。システムが機能しない上に意思の無い筈のNPCのこの反応、モモンガは困惑しながらも相応の態度をとる。

 

 

「すまない、アルベド。GMコールが機能しない様なのでな。」

 

 

アルベドとはこのNPCの名前であり、仲間がナザリックを守る為に各階層内に配置したNPCの一人である。

 

彼女はその中でも守護者統括の地位を与えられている設定のキャラである。

 

非常に美しく、白いドレスに雲の様なネックレスをつけた女性であるが、頭にある異様な形の角と背中から生えた翼を見るに人では無いのであろう。

 

「申し訳ありません。モモンガ様、私共ではGMコールが何なのか判りかねます。私は何をすればよろしいのでしょうか?ご命令をおっしゃってくださればすぐにでも行動に移しますが」

 

自分に縋り付くほど近づいてきたアルベドに多少の性的興奮を覚えながらもすぐに落ち着いて思考を巡らせる。

 

「(ありえない!)」

 

会話が成立しているだけでもあり得ないのにNPCであるアルベドからは臭いから触感手首からは脈まで取れて会話中においては口まで完璧に動いている。まるで生きている様に…

 

今までの常識が次々と崩れていくこの状況に喚きたくなる気持ちをぐっと堪える

 

「どうすれば良い……。何が最善だ…………」

 

理解できない状況だが、八つ当たりしても誰も助けてくれない。

 

「まずは……情報だ。」

 

モモンガはそばにいる強面の執事、セバス・チャンに目を配る。

 

「(命令しても大丈夫なのだろうか…………)」

 

そんな不安を抱えながらモモンガは勇気を出して威厳のある態度で命令した。

 

「セバス!」

「はっ!」

執事、セバスが頭を垂れる。

 

「大墳墓を出、周辺地理を確かめ、もし仮に知的生命体がいた場合は交渉し友好的にここまで連れてこい。交渉の際は相手の言い分をほとんど聞いても構わない。行動範囲は周囲1キロだ。

戦闘行為は極力避けろ。」

「了解しました。モモンガ様……直ちに」

 

現状、セバス以上にこの仕事に適した者はいない、戦闘能力的にも容姿的にも知能的にも。

 

まずは一つ手を打った。

この異常事態に情報収集は最も大事だからだ。

しかし、それ以外にもやるべき事が有るべきだ。

 

まずは自分の身のことだ。

果たしてユグドラシルの時の様に魔法が使えるのか、それが出来ないならば自分の身一つ満足に護れない。

 

次にNPC達の忠誠だ。

セバスとアルベドにはどうやら忠誠心がある様だが他のNPCは?

仮に魔法が使えるとしてもこのナザリックには自分に匹敵するであろう戦闘能力を持つものが5.6人はいる。

状況次第では苦戦する者も多い。彼らに会う必要性がある。

 

「アルベド!」

「はい。」

「今から一時間以内に第四、第八を除く全守護者を第六階層の闘技場に集めよ。」

 

モモンガは指にはめたマジックアイテム『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』の有する能力、『転移魔法を制限されたナザリック内での転移』を発動させ第六階層に向かった。

 

 

※※※※※※※※※※

 

-----隙間空間-----

 

幻想郷に置いて外から訪れたものを外来人と呼ぶ。

存在が否定され、幻想入りした妖怪達にはその名を使うことは無いが元々が人間であるモモンガ(鈴木悟)からすれば外来人という表現が近いかもしれない。

 

そんな彼に会いに向かっている八雲紫は現在彼女の支配領域である隙間空間を伝い、ナザリックに侵入しようとしていた。

 

バチっ!

 

手を伸ばしナザリックの中に侵入しようとした紫の手が不思議な力により弾かれた。

 

紫は弾かれた手を見つめる。

 

「……」

 

先程も記述した様にナザリックには特定箇所間以外の転移を抑止する力が働いている。

それは紫の能力にも反映されている様だ。

 

紫の能力『境界を操る程度の能力』は世界の事象に干渉する力であり神に等しい力である、ゆえに無理にこじ空けることもできるのだが……

 

「…面倒なものを作ったものね。」

 

紫はため息混じりに言葉を漏らす。

諦め、正面から入ることにする。

 

※※※※※※※※※※※※※

 

-----ナザリック近郊-----

 

モモンガに言われ外を探索していたセバスは驚いた。

 

確かにナザリックは以前の通り湿地帯にあったがその周りに群がる森の木々は明らかに以前とは違っていた。

 

湿地及びその周辺の木々は元のままなのだがあり一定の距離を境に明らかに植性が変わっている。

 

何らかの方法でナザリックが転移したと考えてまちがい無いだろう。

 

地上の異変を確認し、次に上空からの景色を見る為に「飛行」の魔法を発動させた。

 

《「ちょうど良かったわ。あなた、そこの墳墓の者でしょ?……その格好から執事かしら?」》

 

声が聞こえ、セバスは飛行を止め、上空に停滞した。

 

すると目の前の空間が歪み、割れ目が生まれ、中から女性が現れた。

日傘をさし紫のドレスの様な服を着た怪しげな雰囲気を漂わせる女性であった。

 

「(……〈転移門〉(ゲート)?…………)」

 

セバスはその現象を上位転移魔法だと思ったが、どうも雰囲気が違う。

 

セバスは身構える。

妙な術を使い、いかにも怪しげな格好。

更にあの第一声から自分達がどういう状況かも把握している様ではないか。さらに

 

 

「(正確なスキルを使ったわけでは無いがかなりの高レベルの存在だろう………………)」

 

初見であるが相手の実力をある程度感知したセバス。

一瞬二人の間には緊張が走るがその空気を紫が打ち破る。

 

「警戒しないでよ……という方が無理でしょうけど落ち着きなさい、戦う意思はないわ」

「では我々に何のご用でしょうか?」

 

 

「私を貴方の主人の元に連れて行きなさい。

私はこの世界の管理人、貴方たちの知りたいこと全てに答えることが出来るわ」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

-----第六階層-----

 

場所は変わってモモンガがむかった第六階層の闘技場ではモモンガに集められた守護者達が順に跪く。

 

「第一・第二・第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に……」

「第五階層守護者、コキュートス御身ノ前ニ。」

 

一人は白すぎる肌、少女のような背丈、しかし胸だけは見た目年齢に合わず異様な膨らみを見せる赤いドレスを着た銀髪の少女。

もう一体は白い吐息を吐き、人の声を無理やりだしてある様な声を出す2.5メートル近くあるカマキリとアリを複合した様な怪獣がモモンガの前に跪く。

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ」

「同じく第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーロ」

「「御身の前に」」

 

次に跪くのはこのエリアを守護する双子のダークエルフ、緑と赤のオッドアイ。ひとりは活発そうで男の子の様な格好をしており、もうひとりはおとなしそうな雰囲気で女の子の格好をしている。

因みに性別は逆である。

 

「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に。」

「守護者統括、アルベド。御身の前に」

 

スーツに丸いサングラスをはめる男性、デミウルゴスは第七階層守護者にして緊急時はNPCの指揮官と言う設定を持つ悪魔。

そして、先ほどもいた全ての守護者の統括を命じられた女性アルベドが跪くことで第四、第八階層を除く全ての守護者達がモモンガの前に跪く。

 

モモンガはNPC達の忠誠を深く感じ、高らかに声を上げる。

 

「素晴らしいぞ!お前達ならこの不測の事態に対処できると強く確信した。」

 

 

彼らの忠誠に答えれる様にモモンガは上位者として彼らに威厳のある態度で話し始めた。

 

「現在、ナザリックは不可思議な状況に陥っている。私はそれを感知し、現在セバスに外の探査を命じている最中だ。」

 

守護者達は最高戦力の一角を投入したことに違和感を感じたがモモンガ的には最良の選択だったと言えよう。

 

モモンガが各階層に異常が無いか確認していると魔法による通信が入る。

 

外を探索しているセバスからだ。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

セバスは悩んでいた。

確かに主人であるモモンガから知的生命体に遭遇の際は友好的に交渉しナザリックに連れてくることを命じられた、情報収集としては目の前にいる女性は十分な存在であることも確かであろう。

 

交渉の際は相手の要求を可能な限りのんでいいと言われ、主人の元に連れて行くことが彼女の要求でもある。

 

しかし、あまりにも都合の良すぎるこの状況。

更に相手は自分にも匹敵するであろう力を有していると考えられる存在、未知の力を使う人ならざるもの、疑う材料は余りある。

 

罠であることも十分考えられる。

内部に入れたが最後、先ほどのゲートの様な能力を使い大群に侵入されるなんてことになったら目も当てられない。

それ以外に要求もモモンガに危害を加えるためとも考えられる。

 

流石に自分一人では判断しきれない状況ゆえに主人であるモモンガに判断を仰ごうと思い通信の魔法をつかった。

 

通信はつながりセバスは全てを話した。現在ナザリックがどの様な場所に立っているのか、そして目の前の女性とその者の要求とそれに伴う危険性も示唆した上で。

 

モモンガはセバスの話を聞いた後、少し考え答えた。

 

「かまわん、連れてこい。

場所は第六階層の闘技場、守護者も全員集めている。」

 

 

モモンガ(鈴木悟)は非常に慎重な男だ。

その注意深さは石橋を叩いて渡るどころか石 橋を鉄筋コンクリートに改装してから渡るぐらいだ。

 

しかし、慎重に行動するだけでは何も得られないことも知っている。

リスクとメリットを天秤にかけ最良の選択を下す。

セバスの言う怪しげな女性を招き入れることにしたのだ。

どこかでリスクを背負わなければならないなら今、この場、守護者が集まるこの状況なら対処できると考えたからだ。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----第六階層-----

 

そして今、セバスに連れられその女性がモモンガの前に現れた。

 

 

堂々と可憐に美しき金髪をなびかせ。

 

 

 

「初めまして【オーバーロード】…

いろいろ話しておきたいことがたくさんあるけどまずは…

《ようこそ幻想郷へ幻想郷は全てを受け入れる》と言って置こうかしら。」



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プロローグ(後編)

プロローグ2

-----第六階層-----

 

 

「初めまして【オーバーロード】……

いろいろ話しておきたいことがたくさんあるけどまずは…

《ようこそ幻想郷へ、幻想郷は全てを受け入れる。》と言って置こうかしら。」

 

 

モモンガはその言葉、その声に早くも驚いた。

それは転移直後頭に過ぎった声であった。

 

「話しをする前にちょっと確認したいことがあるのよ…」

 

女性は傘を閉じ畳み終わるとそれを槍にの様にしてモモンガに襲いかかった。

 

そして、それを阻止しようと守護者全員が女性の命を絶ちにきた。

 

女性の攻撃はモモンガの首元で止まった。

 

「全て急所、迷いなく私の命を絶ちに来たわね」

 

守護者の攻撃は全て女性が出したと思わしき異空間で無効化されていた。

 

「その辺の設定(・・)もちゃんと機能しているようね」

 

聞き慣れた単語、モモンガは彼女が自分と同じ立場の存在なのではと考えた。

 

「皆、武器を下ろせ

心配しなくとも今の攻撃で私が傷つかない事はお前たちも知っているだろうが」

 

モモンガにはデータ量の少ない武器での攻撃を無効化するパッシブスキルがある。

 

彼女がモモンガの前に現れる前にその手の道具であると調べがついていた。

彼女も方も普段使っている傘ではなく、姿形がそっくりなただの傘に変えて来ていた。

 

「ありがとう、じゃあ始めるわね」

 

女性はこの世界について語り出した。

ここは幻想郷と言う地であり、外の世界で存在が否定された者たちが集う地であると。

それを可能にしているのが博麗大結界であり、自分はそれを管理する者で八雲紫という者で気づいてると思うがただの人間ではなく妖怪である。

 

「…幻想郷、幻想?、ここはゲームの世界なのか?」

「いいえ、ここは現実よ。」

 

「……では、外の世界と言うのはもしかして……」

「そう、あなたが一番よく知っている世界よ。」

 

 

「(この女の言葉を信じるなら、異世界に転移したというよりはユグドラシルの姿のまま、元の世界に戻ってしまった…というところか)」

 

サービス終了とともに存在が否定されたユグドラシルの一部がこの幻想郷に引きずり込まれた。

…ということになる。

 

 

他にも紫からこの世界の事を幾つか聞いていたが、聞けば聞くほど疑問が増えていった。

一通り話し終わると今度はモモンガが紫に問いかけた。

 

「更に追加で2、3質問しても構わないか?」

「どうぞ」

 

「我々の他にもユグドラシルから移動した者はいるか?」

 

仮に他にもユグドラシルから転移した者がいるならこの世界に自分たちに脅威となる存在が増えることになるだろう。

 

「さぁ…絶対にないとは言えないけど私が認識しているのはあなた達だけよ。」

 

「では我々だけだと仮定して、何故我々だけなのだ?それについて考えを聞きたい。」

 

「そうね…幻想郷にはかつて人々に怖れられ、もしくは崇められた妖怪や神と言った存在が流れ着くわ。

時代も方法も違うけどあなた達が前の世界でやっていた事は妖怪たちのそれと同じじゃなくて?」

 

アインズ・ウール・ゴウンはPKをメインとした悪評で有名なギルドであり多くのプレイヤーに怖れられていた。

その上、行動理念が基本【悪】であり。ナザリックの守りは鉄壁かつ凶悪。

彼らはそこに君臨したユグドラシルの魔王と言って差支えないだろう。

更にはメンバー全員が異形種であり凶悪な姿をしていた事も拍車をかけている。

 

まさに全プレイヤーの恐怖の対象であった彼らは現代の妖怪と言っていい存在であった。

 

「では、次の質問だ。

今、貴様が言った事を証明する方法はあるのか?」

 

 

見ず知らずの怪しい女性の言葉をただ信じるほどモモンガは甘くない。

 

「信じないのであれば他の人にも聞いて回るといいわ。

少し飛べば人里もあるし、知性のある妖怪なら大抵は知ってることだしね。

でも結界をブチ破って外の世界を確認するのだけはやめてね。こっちも迷惑だし今の姿のままではあなたも無事では済まされないから。」

 

信用するにも疑うにも情報が足りなさすぎる。モモンガはまた少し考え、最後の質問をぶつけた。

 

「では最後に…何のためにここに来た?

ゲームのチュートリアルじゃないんだ、わざわざ説明だけをしに来たのではないのだろう?」

 

 

 

「チュートリアルね…あながち間違いじゃないわね。

私があなた達の前に現れたのはさっきも少し話したけどこの幻想郷にもルールが存在してね、それを守ってもらうために来たのよ。」

 

幻想郷の妖怪達の間には暗黙のルールがある。

その一つが人里には手を出さないことだ。

幻想郷において人間の勢力は最も小さく弱い、幻想郷にある他の勢力ならば、たやすく壊滅できるほどだ。

しかし、人里は幻想郷において最も重要なファクターである。

妖怪は人々から恐れられなければ存在できない、神は人々から崇められなければ存在できない。

そのためにも人間には弱い存在でありながらも決して滅んではいけない存在なのだ。

人里に必要以上の危害を加える者は最終的に自分の首を絞めるだけではなく周りの者も巻き込んでしまうため知性のある妖怪はこのルールを守っている。

 

「もし、そのルールを守らなかったらどうなるのかな?」

 

軽く脅すような口調で言ったモモンガに対し紫は余裕で面妖な表情を一変させ逆に脅し返した。

 

「そのときは幻想郷の総力で貴方を潰すわよ。」

 

幻想郷に点在する各勢力は基本協力しない。

しかし、こと幻想郷の存続に関わる問題ならば話は別であろう。

 

 

 

ルールの代表的な幾つかを教えた紫は更に詳しく記述された書物を幾つかを取り出しすぐ横にいるセバスに渡した。

 

「ちゃんと読んでおく事をオススメするわ。

ゲームのルールを覚えるのは得意でしょ?」

 

「(…さっきから俺を知っているような口ぶりだな…)」

 

紫は語りながらモモンガとの距離を詰め出した。

 

「何はともあれ幻想郷は特殊な経緯をもつ貴方達を受け入れたわ……私としてもルールさえ守ってくれれば何も文句を言わないわ。貴方達がもたらす変化を見届けてみたいし。」

 

不用意に近づいてくる紫を静止させようと動こうとする守護者に対し「問題ない」と言うかのようにアイコンタクトを送るモモンガ。

 

紫は更に近づき、モモンガの耳元で周りには聞こえない程度の声で囁いた。

 

「それでも帰りたいっていうのであれば私が送るわ……勿論、元の姿でね」

 

そのリスクを紫はモモンガだけに小声で話した。

 

でもそのときはこの子達(NPC)たちも同時に消えちゃうけどね。(ボソッ」

 

「!!」

 

 

 

仲間たちと作り上げた愛すべきNPCたちが今度こそ消えてしまう。

そう思うとモモンガは悲しみでいっぱいになる。

 

紫は振り返り、立ち去ろうとする。

 

 

「そろそろ帰らせてもらうわ。

あまり遅いと心配して式神が殴り込んでくるかもしれないし、送って頂戴。」

 

「セバス、また案内してやれ。」

「かしこまりました。」

 

 

 

1分近く沈黙の空間が守護者とモモンガの間に広がる。

 

「モモンガ様、このまま帰してよろしいのでしょうか?」

デミウルゴスがモモンガからの紫の抹殺命令を待ち望む。

 

主人に対する失礼の数々、その上彼女の力を見て将来このナザリックの脅威になると可能性があり生かして返すにはあまりにも危険とデミウルゴスは考えている。

 

 

「何もしない…………下手に手を出すとこの地の者を丸ごと敵に回すことになる。」

 

紫がいなくなったのを確認したモモンガは守護者各員に命じた。

 

「ナザリックの警戒レベルを最大まで引き上げろ!特に第一から第六階層は特に気をつけるように。

それからアルベド、デミウルゴス!」

「「は!」」

「二人でより強力な情報共有システムを構築しろ。」

「「かしこまりました。」」

 

「私は部屋に戻ってやることがある。」

モモンガは指輪の能力で自室に転移した。

 

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

 

モモンガが去った後、闘技場に残された守護者たちは思いを口走った。

 

「ほんと頭にくる!あの女。

モモンガ様に上から目線で失礼な物言いしちゃってさ!」

 

アウラが腰に手を当て頬を膨らませる。

アウラは紫の自分がモモンガと同等かそれ以上の立場だと言わんばかりの挑発的な態度に怒りを燃やす。

 

それは他の守護者も思うところがある。

 

「マッタクダ!モモンガ様モアンナ脅シヲ無視シテアノ女ヲ捕縛シテシマエバヨカッタノニ」

 

自分達が最強であると信じきっている彼らからしたらあの女は確かに強いが我々には届かないと。

たとえ彼女率いる軍勢が攻めてこようが負けない自信があった。

 

 

「モモンガ様は慈悲深いお方、この世界の先達の顔を立てたのでしょう。」

 

執事のセバスが付け足す。

 

「君達、あの女性を軽んじるのはいささか早計ですよ。」

 

「どういうことでありんすか?デミウルゴス

確かに一対一ならともかく私達全員を相手取って打ち負かされるとでも?」

 

ナザリックの知将デミウルゴスの言葉に皆が疑問に思う。

 

「そこまでは言わないが……

君達、あの女とモモンガ様の会話、ちゃんと理解出来た者はいるか?」

 

「え〜〜と、この世界のルールについてだと思ったけど違うんですか?」

マーレがちょっと引き気味に答えた。

 

「ええ、概要はそれであってますがモモンガ様からもあの女からも聞きなれない単語が幾つか飛び出していた。」

 

モモンガは今回、PC(プレイヤー)としての観点で紫と会話した。

これは与えられた知識しか持たないNPCには理解できなくて当然だ。

それはナザリック1の頭脳をもつデミウルゴスにもあてはまる。

どんなに頭が良くても知らない言語を理解することはできない。

 

 

あの時の会話は至高の方々同士の会話にも似たものを感じた。

デミウルゴスはそこで推測を立てた。

 

「さっき、アウラが上から目線と言ったが彼女はもしかしたら至高の御方々と同じ立場の存在(PC)かもしれない。」

「なるほど…………それならモモンガ様の対応にも納得がいくでありんす。」

 

幻想郷で唯一外の世界と行き来出来る存在である。

ゆえに外の世界の人間の観点で話ができるのである。

 

他にも色々な仮説・予想を議論し合うが結論から言うと彼らの気持ちは主人(至高の41人)を信じ命令に従うことに帰結する。

 

「何にせよ、見知らぬ地に飛ばされたこの異常事態、モモンガ様は我々を信じて幾つかの仕事を任せてくれました。その思いにお応えするためにも慎重かつ確実に任務を遂行する必要があるのです、心するように。」

「承知シタ。」

「わかったでありんす。」

「ボ……ボクも解りました。」

「わかってるわよ。」

 

デミウルゴスは他の守護者達にその旨を伝えると一向に話に加わってこないアルベドを気にした。

 

「ところでどうしたんですか?アルベド

珍しく黙りこんで、そろそろ指示をして欲しいのですが?」

 

アルベドは思いつめたように考えこんでいたようで戸惑うようにデミウルゴスに返事をした。

 

「え?…あぁ、そうね。では…」

 

アルベドは気を取り戻すように守護者統括としての仕事に戻った。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----第9階層モモンガ様の自室-----

 

転移で自室に戻ったモモンガは肩をなでおろしていた。

 

「疲れた………………」

 

現在、モモンガはアンデッドと化しているため『疲れ』というバッドステータスは発動しないのだが未だに残る鈴木悟の部分が引っ張られているのであろう。

 

守護者の手前、創造主として相応しい態度で接してみたが元々がただのサラリーマンであるモモンガとしては苦行でしかない。

 

おまけに八雲紫というわけのわからない存在が乗り込んできたのだ無理はない。

 

「しかし、元の世界に戻る方法…意外にも早く見つかったな…」

 

八雲紫を呼び出し外に連れてってもらう。

それだけで済む話だ。

 

しかし、それには大きな代償を払うことになる。

 

このナザリックの消滅、創造主が消えればここのもの達は存在が否定され消滅する。

 

この幻想郷での消滅は完全なる否定、文字通り「なかった事に」されるらしい。

 

普通なら元々存在しないもの(ゲーム)の存在なのだから気にすることでもないのだろう。

 

しかし、モモンガは目の当たりにしてしまった。自分達が作り上げたNPC達が意志を持ち動いている有様を、NPCそれぞれが思考し自分の命に応えようとしている姿を。

 

まるでアインズ・ウール・ゴウンが最も栄えていた時のような高揚感を得ていた。

 

コンコンコン!

 

モモンガが考え事をしていると戸を叩く音が響く。

誰かが尋ねてきたのだ。

 

「アルベドでございます。」

「入れ。」

 

 

「何の用だ?アルベド」

「…………はい、デミウルゴスと共に新しい情報伝達網を構築しましたのでその報告に…………」

 

アルベドは書類をモモンガに渡した。

モモンガはその内容に目を通す。

 

 

「仕事が早いな…ふむ、問題なさそうだ

直ぐに配備してくれ」

 

書類を返されたアルベド。

しかし、直ぐに行動しようとはしなかった。

 

 

「どうしたアルベド、まだ何かあるのか?」

 

アルベドの顔には不安がにじみ出ていた。

 

「モモンガ様……モモンガ様も他の至高の御方々同様に【外の世界】という場所に行ってしまうのでしょうか?」

 

「!………………」

 

アルベドはモモンガと紫との会話の最中、【外の世界】と言う言葉にモモンガが動揺した事に気がついていた。

 

そしてその直後に感じた寂しい表情を読み取り、そしてその後に会話を元にアルベドは推測を立てたのだ。

今のモモンガの反応からあながち間違いではなさそうだ。

 

モモンガがアルベドの言葉に応えようと口を開いた瞬間、アルベドは倒れこむように頭を垂れる。

 

「そうだ」と言われてしまえば自分の中で何かが壊れてしまうそんな恐怖に心を震わせモモンガの元で両手を地につけ頭をさげる。

その瞳には涙が溢れる。

 

「モモンガ様……最後まで残られた慈悲深き君。どうか、この地をさらないでください!」

 

アルベドに組み込まれている設定に「モモンガを愛している」と言うものがある。

これは転移直前にアルベドの「実はビッチである」と言う設定を見たモモンガが最後だからと冗談半分で書き加えてしまったのだ。

しかし、再度変更が不可能になってしまった現状ではモモンガの悩みの種にもなっている。

 

しかし、今アルベドが涙を流し引きとめようとしているのはモモンガが意中の相手だからだけではない。

廃れてしまったこのナザリックに残されたNPC達にとってモモンガは最後の希望の光なのだ、そんな存在を失うわけにはいかない。

たとえ、自分の命を失おうとも。

 

モモンガは自分の不甲斐なさで部下を不安にさせてしまった事を反省する。

そして、迷いを振りはらい覚悟を決めた。

 

 

「泣くなアルベド。」

 

モモンガはアルベドの瞳から流れる涙を拭った。

 

寂しかっただろうに…アルベドに限った話ではない。

生みの親に会えなくなってからしばらく、彼女も他のNPC達も至高の41人の帰還を信じナザリックを守ってくれた。

意識はなくとも記憶には刻まれている。

 

そんな彼らを置いて去れる訳がない。

 

「(そうだよ……何も変わらないじゃないか、今までも……これからも…………)」

 

親も既に亡く、友好関係に乏しいモモンガにとってユグドラシルこそ現実であった。

 

その現実が本当の現実になっただけで何を迷うことがあるのだろう。

 

「では……」

「ああ、安心しろ。私はどこにもいかない……」

 

子供を見捨てる親がどこにいる。

現実では家族も子供いないモモンガにとってはナザリックこそ宝であり、NPC達は子供のような存在であった。

 

モモンガはアルベドを優しく起こし、アルベドに新たに用意した部屋に送る事にした。

 

 

「私共の言葉を聞いてくださりまして、感謝で胸がいっぱいです。」

「お前達が私達(至高の41人)の事をどう思っているか真意を聞けた気がしたよ。」

 

アルベドだけじゃない、さっきの言葉はナザリックのNPC皆の気持ちでもあるとモモンガは認識したのだった。

 

「お前のおかげで腹が決まった。

気持ちが落ち着いたらまた、皆を集めてくれないか。

今度は守護者だけではない、皆だ。」

「かしこまりました…………それではしつれいします。」

 

アルベドを部屋に入れ、扉を閉めようとすると再びアルベドが声をかけてきた。

 

「モモンガ様…………」

「ん?…………」

 

「愛しております。この世の誰よりも……」

「そうか…………」

 

言葉はいつもと同じ。しかし、その表情には狂気や性的な曇りが一切ない純粋な喜びからくる笑みを浮かべていた。

 

その純粋な笑みを見れてモモンガはここに残ると言って、残ると決意して良かったと心の底から感じるのであった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

-----玉座の間-----

 

あれから時間が小一時間程すぎた玉座の間、そこにはNPCの全員が集められていた。

その光景は圧巻でありその多種多様な姿は百鬼夜行といったところだ。

 

皆の前に立ったモモンガは声を大にして皆の前で宣言した。

 

「皆にも伝わっていると思うが、このナザリックは幻想郷と呼ばれる地にたどり着いた。

そこで私から至急、この場の者、そしてナザリック地下大墳墓の者に伝えるべきことがある。------〈上級道具破壊〉(グレーター・ブレイクアイテム)

 

モモンガは天井から垂れ下がる大きな旗を破壊した。

その旗のサインは「モモンガ」を意味するもの。

 

「私は名を変えた。

これより私の名を呼ぶときはアインズ・ウール・ゴウンと呼ぶがいい!

異論あるものは立ってそれを示せ」

 

モモンガ……いや、アインズの言葉に対して何かを言うものはいない。

アルベドが満面の笑みで声を上げる。

 

「御尊名伺いました。アインズ・ウール・ゴウン様、いと尊きお方、アインズ・ウール・ゴウン様、ナザリック地下大墳墓すべてのものより絶対の忠誠を!」

 

「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」

「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」

「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」

「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」

 

NPCたちが、シモベたちが唱和し、万歳の連呼が玉座の間に広がる。

 

「これよりお前たちの指標となる方針を厳命する…………

 

(何故この世界に導かれたかはわからない……

だが、なにかの意志によるものならばその思いに応えてやろうではないか。)

 

アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ!

 

(人々に恐怖を植え付けることが存在理由ならば喜んで悪を演じよう…………)

 

全ての人間が名前を聞くだけで恐怖で震え上がる程に!

知らないものが誰一人としてないほどの領域まで!

 

(いずれこの世界に来るかもしれない仲間達のためにもナザリックの繁栄と栄光をこの名に誓う。)

 

かつて至高の41人が統べ、ナザリックが最も栄えたあの栄光を……いや!それ以上の栄光を…再び!

 

(他にどんな化け物がこの地に居ようが関係ない…ナザリックの…アインズ・ウール・ゴウンの恐ろしさを幻想郷中に轟かせる!

そのためには……まずは…………)

 

さあ、我々の手で幻想郷に誰もが恐れる天変地異を…【異変】を起こそうではないか!」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----隙間空間------

 

ナザリックから戻った紫は隙間空間に漂っていた。

 

「…さぁ、見せて頂戴…

貴方が幻想郷にどんな変化をもたらすのか…

私はずっと貴方を見ている…今までも…これからも…」

 

 

 

------白玉楼-----

 

冥界の管理人、亡霊お嬢様こと西行寺幽々子が魂達の騒めきのような異変を感じる。

 

「魂達の動きに異変が生じてる…………

動き出した魄を司る者に惹かれているのね…

紫の言うとおりね……」

 

すると庭師の魂魄妖夢が心配し駆け寄る。

 

「如何なさいましたか?幽々子様。」

 

しかし、幽々子はふざけた感じでその場を濁した。

 

「ようむ〜お腹がすいた〜何か作って〜。」

「またですか!?さっき食べたばかりじゃないですか!?」

 

 

-----永遠亭-----

 

迷いの竹林の最深部、月から逃げてきたかぐや姫こと蓬莱山輝夜と月の頭脳と言われるほどの薬師、八意永琳の統べる屋敷。

 

「姫様、良い加減起きてください!」

「んあ〜後、一時間〜」

 

「起きる気がないのはよくわかりました。腹が立ちますね。

ほら、変な眼鏡外して顔を洗ってくださいな。」

「変な眼鏡じゃないわよ〜コンソールよ〜

これがないとDMMOが出来ないのよ〜」

 

「また、【あーるぴーじー】とかいうやつですか?」

「ん…今は違うやつ…

そっちは最近やってない…あれ?そう言えばサービス終了いつだったっけ?…」

 

 

-----紅魔館------

 

湖のほとりに聳える赤い洋館、吸血鬼が統べるその屋敷の名は紅魔館

 

紫からの使者、式神の藍からの情報を聞いた館の主人レミリア・スカーレットは他の勢力とは違い早速動き出そうとしていた。

 

「運命が大きく動き出したわ。

破滅か繁栄か…

さあ、私たちはどちらに向かうのかしら

咲夜!」

 

レミリアが一声かけるとメイド長の十六夜咲夜がどこからともなく現れる。

 

「はい!お嬢様」

「彼等をここに呼びなさい。

そうね。お茶会のご招待とでも銘打つかしらね。」

 

「かしこまりました。」

 

 

 

「さあ、楽しいお茶会を始めましょう」

 



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紅魔館-1

-----第九階層・アインズ自室-----

 

 モモンガがアインズに改名して数日、アインズは遠くの風景が見える大きな鏡のようなアイテム〈遠隔視の鏡〉(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を使い周囲を探索しながら考え事をしていた。

 

「(異変を起こすとは言ったがまずは情報を集め無いとな)」

 

 紫からの情報によれば力を持った妖怪が幻想郷入りするとまず最初に異変を起こすらしい。

妖怪が人間の恐怖心を糧とするなら異変は重要だ。

 

 

 これは我々ナザリックのもの達が幻想郷中にその名を知らしめるための第一歩であり最も重要なデビュー戦だ。

 下手なことをして失敗したり恥を掻くようなことは避けなければならない。

 

「(できれば妖怪と人間、両方の視点からの情報が欲しい…

 

 人の方は人里に降りるしか無いな…

位置は特定できたし八雲紫からもらったアレ(・・)もあるし、変装して潜り込むか。

共は出来るだけ人間に近い容姿を持つものを選んでと……

 

妖怪の方は近隣を捜索しているアウラとマーレに期待するしかないかな…)」

 

 現在ナザリック近郊には森林が広がっている。

 アインズは双子に周囲の植生や生態系、近隣の妖怪や妖精の探索を命じている。

 

 これは情報収集と共にナザリックの防御面の強化が目的だ。

 地の利を知れば守りやすくなるし、周囲の勢力を利用することも取り込むことも出来る。

 

 だが、情報収集と言う面ではこの数日は結果が出ていなかった。

見つかる妖怪は知能が低く会話こそできても反抗的でこちらの力も理解できない愚か者ばかり、そんな妖怪は捕まえてアインズの魔法の実験の被験体になってもらっている。

 

 どんな魔法が効いてどんな魔法が効かないのか、など様々な用途に使っている。

更にアインズのスキルにより殺した後もアンデッドにして支配する鬼畜っぷりである。

 

 これはアインズがアンデッドになったことによる精神的な変化が影響している。

 

 

「(あんな雑魚妖怪なんかじゃ話にならない…

あれでは八雲紫からの情報の嘘偽も確認できない……

できればある程度の知識を持った妖怪から情報を引き出さなければ…………)」

 

 知識のある妖怪はその殆どが何処かの勢力に属しているし、それ自体も強力な力を持っている為リスクが高い。

 

 何処かの勢力に接触することも含め、アインズはどう動くべきかを考えていると鏡にある建物が映った。

 

 

 霧が立ち上る湖のほとりに聳え立つ洋館。

 屋根も壁も血のように紅く薄気味悪さを引きたてていた。

 

「(妖怪の根城か?…趣味悪いな…)」

 

鏡の表示を近づけると突如、画面に大量のノイズがかかり見えなくなった。

 

「ほう、ジャミングか、攻性防壁では無さそうだが当たりだな…」

 

 ユグドラシル時代でも情報は非常に重要なものであり相手の情報収集(サーチ)系の魔法に対策を立てるのは常識であり、ギルドでも対策込みの情報収集が重要視されていた。

 

「(魔法かスキルかはわからんがそういった事が出来る輩がいるとわかっただけでもまずは収穫だな。

だが、どう出ようか…)」

 

 異変もまだの新参者である自分達ではあまり強気に出るのは好ましく無い。

 争いになるとしても最低でも不可抗力的な大義名分が欲しい。

 

アインズが策を練っていると守護者の一人が部屋を訪ねた。

 

こんこんこん!

 

「だれだ?…………」

「アインズ様、シャルティアでありんす」

「そうか、入れ。」

 

シャルティアは部屋に入るとスカートを少し上げ、お辞儀した。

 

「至急、アインズ様にご報告したい事があります。」

「何だ?」

「これでありんす。」

 

シャルティアはポッケから一匹の蝙蝠を取り出した。

 

「眷属の蝙蝠がどうかしたのか?」

 

吸血鬼であるシャルティアは眷属である蝙蝠や魔獣を召喚する事が出来る。

 

「わたしのではないでありんす。」

 

 シャルティアは訳を説明し始めた。

 先程、第一階層に侵入者が確認され、その侵入者こそ、この蝙蝠であった。

 

大した戦闘力もなくNPCに攻撃を受け絶命していたが、シャルティアがこの蝙蝠が持っている手紙に気がつき回収したのだ。

どうやらこの蝙蝠には『此処の主に手紙を届ける』と言った命令が下っているようだ。

 

 シャルティアはそこまで話すとポッケから手紙を取り出しアインズに渡す。

 

「これが手紙でありんす。」

「かしてみろ。」

 

すると蝙蝠は消え去り、手紙にかかっていた魔法が発動した。

 

 その魔法は攻撃性のあるものではなく、ただ立体的な映像と音声を伝えるもののようだ。

 

『御機嫌よう【死の王】(オーバーロード)

あなたの事は隙間の式から聞いたわ。』

 

 手紙から飛び出た映像は少女のものであった。

 水色髪、紅と白を基調としたドレス風の服、背中には蝙蝠の翼が聳え立ち瞳は血のように赤く。ニヤつく顔には飛び出た犬歯が見え隠れする。

 

「(隙間の式?…会ったことはないが

それより子供…いや、あの翼に牙はやはり吸血鬼だな…ならばさっきの蝙蝠はこいつの眷属か。)」

 

子供かと思い少し拍子抜けるが吸血鬼……いや、アンデッドなら見た目と実年齢に差異があっても不思議じゃ無い、アインズは再び気を引き締める。

 

「(にしてもこの世界にも吸血鬼がいたんだな、妖怪って言うんだからてっきり東洋が起源のものばかりだと思ったが…

きっと西洋の魔物や怪物もひっくるめての【妖怪】という括りなんだな…)」

 

 

『私は湖のほとりにある洋館【紅魔館】の主にして【夜の王】レミリア・スカーレットよ。

我々、紅魔館一同は幻想郷の先達者としてあなた達を歓迎するわ。

つきましては交友の証として貴殿を【お茶会】にご招待いたします。

日時と場所につきましては手紙をご参照に

では、お会いできる日を楽しみにしているわ。』

 

 

そうして手紙からの映像が終わった。

 

「(どう、アプローチをするか悩んでいたが向こうから招いてくれるなら都合が良い。)

シャルティア…」

「はい。」

 

「私は手紙の返事を書く、そうしたらお前の眷属の蝙蝠に手紙を運ばせて貰いたい。」

「かしこまりました。では出席なさるのでありんすか?」

 

「ああ、ただ一人で行くのも心もとない。

同伴者をつれて良いかの質問も込めての返信だ。

問題なければシャルティア……私と共に出席してくれないか?」

 

シャルティアも同じ吸血鬼の上、アンデッドに強い信仰系魔術師(マジック・キャスター)である為、同伴としては最適だ。

 

シャルティアは待ってましたと言わんばかりに元気よく答えた。

 

「勿論でありんす。アインズ様とご一緒なら何処えたりとも。

(よっし!!アインズ様と二人でお茶会ぃ!!これであのゴリラに一歩リードね!!)」

 

 ゴリラとはアルベドの事であろう。

 あの華奢な体つきに反してとんでもない怪力を振るうところからつけた悪口だ。

 

 シャルティアもアインズに対して恋心を抱いている。

 アルベドが設定からくる恋心ならシャルティアはアンデッドとして最高級の造形(シャルティアの主観)、美意識からくる気持ちだ。

 

 

「後は私の周りを世話をするという名目で執事のセバスと戦闘メイド(プレアデス)からも誰か一人連れて行こう。

メイド長のユリにでも頼むか。

このぐらいにするか、あまり大勢で行くのも何か言われるだろうからな…」

 

「………………」

 

「どうした?シャルティア。」

 

「いえ、何も…

(二人っきりじゃありませんの…)」

 

 

OTL

 

 

「…おそらくだが言葉の通りのお茶会だと思わないほうが良いからな…」

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----紅魔館-----

 

返事の手紙が届いた紅魔館、メイドの咲夜が手紙を主人に渡した。

 

「お嬢様、先日の手紙の返事が届きました。」

「ご苦労、咲夜。で?返事は?」

「数名の同伴者と共に期日定刻に参るとの返事です。

それとあちらも眷属の蝙蝠で手紙を返してきました。つまり、あちらにも吸血鬼がいる可能性が高いです。」

 

「へぇ、そう……なら妖怪の山の連中や隙間と白玉楼の連中よりは気があうかもね。」

 

 妖怪といえども多少の同族意識がある。

 レミリア達が幻想郷に移ったのも外の世界で個体数が激減し居場所が確保できにくくなった為だ。

 そんな状況で同族同士争っている場合じゃない。

 今回の相手が本当に仲間ならの話だが。

 

 

※※※※※※※※※※

 

-----お茶会当日-----

-----紅魔館正門-----

 

 メイドに執事に部下を連れ、アインズが紅魔館にやって来た。

 

「ここか……………

(うわ〜〜近くで見ると本当に薄気味悪いな………真っ赤だし。)」

 

 シャルティアが正門に人が立っていることに気がつく。

 

「アインズ様、門の前に立っているのはおそらく門番かと…話して門を開けてもらいましょう。」

「では私めが…」

 

セバスは門を開けてもらおうと門番に近づいていった。

 

「失礼……ここの屋敷の人でしょうか?我々は今日、ここの主人に招待されたものです、よければ門を開けてもらいませんか?」

 

セバスが丁寧にお願いしても反応がない。

 

「zzzzzzzzzzz」

「(寝てる……………)」

 

 中国式の服を着た赤毛の女性、顔もなかなか整っている、遠目ではわからないが肉体もなかなか鍛えてある。

 しかし、門番が昼寝をしてるとか本当に大丈夫かと逆に心配してしまう。

 

「お嬢さん、?失礼………」

セバスが触ろうとした瞬間、女性が急に目を覚ました。

 

「はっ!!」

 

女性は直様数メートル程後ずさりし、戦闘体制に入った。

 

彼女は紅美鈴、紅魔館門番であり【気を使う程度の能力】を持つ妖怪だ。

セバスの強大な気に当てられ目を覚ましたのだ。

 

「(しまったーーーーー!!!また、昼寝をしてしまったーーーーー!!また咲夜さんに怒られる〜〜〜〜〜〜。そんなことより目の前の相手だ。)」

 

美鈴は目の前の相手をキッ!っと見つめる。

 

「(もの凄い気をこの人から感じた…いつもならこれだけの大きな気なら離れていても気づくのに…触られるまで全く感じなかった…)」

 

目の前の男とその後ろにいる怪物一人と女性二人どれからも半端ない気を感じる。

それに反応するように美鈴の肌にはタラタラと汗がにじむ。

 

「(なんだ?…………この状況は!

四人ともかなりの強者…………しかも、うち三人はやばい…………

お嬢様や妹様クラスじゃないと相手にならない…こんな連中が幻想郷にいるなんて…)」

 

自分に向かって殺気は放っていない………しかし、ここにいるのだから無関係ではないだろう……

美鈴は極限状況からなる集中力により思考が巡る。

 

「(困りましたね。こちらにその気がないのに向こうは戦闘体制に入ってしまったな…

しかし、隙の少ない良い構えだ…)」

 

「(来るか…!!)」

 

 この屋敷に住んでいる人は大抵自分より強い、大抵の場合は適当に相手して最悪通してもいいと言う方針なのだが今回は別だ。

 門番としてこんな危険な存在を通すわけにはいかない。

 

セバスの手がほんの少し動いた瞬間、美鈴が力強く踏み込んだ。

 

《『ザ・ワールド』!!》

 

プスッ……………………

 

美鈴の後頭部にナイフが刺さり、美鈴は倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ございません。うちの門番が失礼しました。」

 

 銀髪で両サイドに三つ編みをしたメイド服を着た女性がどこからともなく現れた。

 

「(時間操作系の魔法か……………)」

 

 ユグドラシルにもいくつか存在する魔法、使うことも対策も立てられる類のもの故アインズは驚きもしない。

 

「何をするんですか〜咲夜さ〜ん」

「それはこっちのセリフよ。このお方はお嬢様の大事なお客様よ。」

「え〜聞いてないっすよ〜。それなら早く言ってくださいよマジで決死の覚悟をしちゃったじゃないですか〜。」

「言ったわよ?どうせあなたのことだから居眠りでもしてたんでしょう?」

「む〜〜〜〜〜〜。」

 

メイド服の女性はモモンガ達の前に立ちお辞儀をした。

 

「ようこそ、紅魔館に。私はこの屋敷のメイド長 十六夜咲夜と申します。

主人のもとに案内しますわ。どうぞ、こちらに。」

 



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紅魔館-2

-----紅魔館-----

 

「どうぞ、こちらに…」

 

メイド長十六夜咲夜に導かれ邸を歩くアインズ一向、横を歩くセバスにアインズが小声で訪ねた。

 

「セバス…お前から見て門番とメイド長……どう思う?…」

「門番の方は眠っていたのには驚きでしたが無駄な体力を使わないと言う考えでなら納得できます。

我々には無意味でしたけど察知能力にもよほど自信があったのでしょう。

反応速度にも優れ、戦闘力も低くはありません……あくまでもナザリック以外ならですが…………まぁ、門番としては合格でしょう。

メイド長の方は先ほどの時間操作の魔法が〈時間停止〉(タイム・ストップ)と同等のものとするならあれは第10位階の魔法……たとえ特化させていたとしてもナザリックのメイドより上位の存在というわけですね。」

 

 十六夜咲夜が先ほどの使ったちからは第10位階の魔法、〈時間停止〉(タイム・ストップ)に似ていた

 戦闘メイドの中で魔法に長けたウォーウィザードのナーベラル・ガンマが使える魔法が第8位階であるのなら咲夜はそれ以上の使い手と考えられる。

 しかし、戦闘メイドをはじめとするナザリックの強者の多くはその対策を立てている為、直接戦闘になればどう転ぶか分からない。

 

「(その二人の主人なんだから当主のレミリア・スカーレットは更に上の力を持っているんだろうな〜〜下手したらこちらのレベル(100Lv)を超えてきたりするかもな……)」

 

アインズはこの世界に来てから最優先で調べていることは自分達の強さがどのぐらいの位置にいるかである。

 

 自分たちの力はユグドラシルでは最高レベルであるがこの世界でも最強である保証はないからだ。

 

 

 ただ、ユグドラシルの最高レベルは現実世界において『その存在が習得し得る最大値』であり、それを超えることは妖怪であろうが神であろうと存在しないのだがその事を今のアインズは知らない。

 

 

 

 

 メイドに連れられ目的の部屋に行き着いたアインズ一向、メイドが扉を開けると既に準備を整え当主であるレミリア・スカーレットがテーブルに着き、アインズたちを待っていた。

 

 レミリアは席を立ちアインズの元にやってきて挨拶した。

 

 

「ようこそ、我が紅魔館へ。

改めまして初めましてアインズ・ウール・ゴウン、私はここの主人レミリア・スカーレットよ。」

「こちらこそ初めまして、私はこの度幻想郷にやってきたナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウンです。

気軽にアインズとお呼びください。敬語も必要ありませんよ。」

 

 

「そうさせて貰うわ。あなたも気軽に話しかけてちょうだい。」

 

 なんとか最初の印象としては及第点といえよう。

 アインズはレミリアが自分の姿を見ても驚きかなかった事に少し安心した。

正直相手が妖怪といえど女の子に泣かれでもしたら立ち直れんかもしれない…

 

 

「なる程、隙間が気にするだけのことはあるわね

私も気に入ったわ、その運命」

「どうされましたか?……………」

 

 

(子供の考えてることはよくわからん…)

 

 

「いえ、こちらの話で……

ところでそっちの人が手紙を届けてくれた吸血鬼?」

 

レミリアがアインズの横にいるシャルティアに気がついた。

「よろしくでありんす。私はナザリック地下大墳墓の第1〜第3階層の守護を管理するものでシャルティア・ブラッドフォールンでありんす。」

「守護?…………管理?…………

えっ?つまり門番みたいなものかしら?……」

「だいたい、その様なものでありんす。」

 

 吸血鬼はそれだけで高い能力を保有し、自我も強いものが多い。

 レミリアのようにトップに立つことはあっても誰かの下に着くのは珍しい。

 

「わざわざお茶会に連れてくるんだからそういう(・・・・)関係かと…」

 

シャルティアはフフッと笑い小声でレミリアに言った。

 

「確かにそうであれば嬉しいんでありんすが、何分ライバルが多いのですよ。

それもアインズ様の魅力の前では仕方の無いことでありんすけど。」

「フフッ……確かに完成された究極の存在は美の結晶と言っても過言ではないかもね。」

 

レミリアは自身の能力ゆえに普通の人には見えないものが見えてるとされている。

先ほどから意味深な言葉を使っているのは彼女の気質ゆえだ。(厨二病ではない)

 

 

「(なんか、無駄に俺の評価高くね?

……まぁ自分で作り上げたこの姿が褒められるのは嬉しいけど…………)」

 

「貴女…中々話がわかるじゃない。」

「そうね……仲良く出来そうね。」

 

吸血鬼同士既に意気投合していることに驚いているとアインズは二つの視線の的にされている事に気がつく。

 

一つはメイド長・十六夜咲夜。

 

まるで品定めをする様にこちらの動向を見極め、こちらが少しでもおかしな行動をすればすぐさま首を刈り取りに来るといった感じである。

 

自分の視線にアインズが気づくと彼女はすぐさま表情を和らげにこりと笑顔で返す。

大したポーカーフェイスだ。

 

もう一つはレミリアの横に座っていた紫髪の女性だ。

 

この屋敷の者なのだろうか招待客にしては少し緩い格好をしている。

特徴的な帽子をかぶり、きている服は寝巻きの様なローブの様な………

肌は白く紫髪も多少痛んでる様にみえ全体的に不健康そうな印象を持つが、整った容姿をしている為そのギャップが好きと言う人間もいそうだ。

『仕方なくここにきているんだ』と言わんばかりの態度をしているのにジト目でこちらの様子伺っている。

 

 

「あぁ、紹介が遅れたわね。

こっちが私の友人で同居人のパチュリー・ノーレッジよ。」

 

レミリアからその女性を紹介される。

 

「よろしく…………」

「こちらこそ……」

「貴方も魔法使いかしら?」

 

パチュリーはアインズの容姿から職業を言い当てた。

 

 アインズの肉体は魔力により活動をし続けられる状態にあり逆に魔力さえあればどんな肉体に成り果てようと活動し続ける体である。

ゆえに肉体そのものは朽ち果て骨になろうが関係ない状態だ。

 

 その姿は幻想郷でもユグドラシルの設定でも死霊系の魔法の研究をし続けた魔法使いの成れの果てとなっている。

 

 パチュリーもアインズに興味がある。

 いや、アインズの姿をみて興味がわいた。

それはアインズそのものではなく、その体になるまで研鑽を積んだ魔法にである。

 

「一応、魔術師(マジック・キャスター)を名乗らせてもらっております。」

 

 

自分が蚊帳の外になりそうな気がしたレミリアが皆に席につくことを勧めた。

 

「立ち話はそのくらいにしてお茶にしましょうよ。

アインズは、その体じゃ飲めないわね……

気にしなくても良いわ。

お茶会は会話を愉しむのもありよ。」

「いえ、ご心配には及びません。」

 

アインズは懐からあるお札を取り出した。

 

突如アインズは光だし、アインズの体は一回り小さくなった。

 

光が治り、アインズは頭のローブをまくる。

 

その中から出てきたのは…………

 

「お茶会ということで用意してきました。

この姿で参加してよろしいでしょうか?」

 

そこにいたのは生者、生きた人間の姿であった。

 

「幻術?…………いや、実体があるから人化の術かしら。」

 

しかもこの姿はアインズの現実の世界での姿、鈴木悟の姿であった。

 

 

魔法に疎いレミリアがアインズに尋ねた。

 

「これも、貴方の魔法なの?」

「いえ、これはこの世界に来た時、八雲紫に渡された式ですよ。」

 

 

 

幻想郷の強力な妖怪は皆人型の姿をとっており、アインズの様な異形種はない。

その事を気遣って最初に会いに来た時に紫が渡していたのだ。

 

「【生者と死者の境界を操る】式と八雲紫は言っておりました。」

 

もちろんアインズが人の姿になる為の専用の式であるが、正確には【仮想と現実の境界を操る】式である。

 

 

 

「へぇ……あの隙間妖怪が…

珍しいわね。あいつがそこまで世話を焼くなんて…………」

「(隙間って八雲紫の事だったんだ…………)」

 

 

 

 

四人は席に着き、咲夜に淹れてもらった紅茶を飲みながら会話を楽しむことにした。

 

 

 

 

「お嬢様、シャルティア様、紅茶に希少品(人の血)を混ぜますか?」

 

咲夜が吸血鬼の二人に人の血を入れるかを訪ねる。

 

「ありがとう、咲夜。頂くわ。」

「頂くでありんす。」

 

「(紅茶に人の血…………

ビターズボトルの様なものか?…………)」

 

本来はお酒を一滴入れて香りづけをするものである。

 

「…………この血はあなたの血?」

シャルティアは咲夜に目を向ける。

「いえ、外の世界から連れてこられる食用の人間の血です。」

 

「それは残念。貴女の血、凄く美味しそうなんですもの。」

「おい、シャルティア。」

 

食料を見る様な目で咲夜を見るシャルティアをアインズが注意する。

 

「手を出したらダメよ。うちの大切な子なんだから。」

「しないわよ。そんなこと」

 

「ところでシャルティア、変な事を聞く様だけど貴女は何がきっかけでアインズの部下になったの?…………」

「理由も何も創造主に尽くすのは当たり前でしょう?」

「創造主?」

 

「正確にはシャルティアを作ったのは私の友人です……

ナザリックとは私と私の友人達で作り上げたものなのですよ。

今は私しかいませんが彼らが残してくれたシャルティアを含む子らが私を支えてくれています。

全く、私には勿体無いくらい良い子達ですよ。」

「わたくし達は敬意を表し創造主達を【至高の41人】と読んでおりますわ。

アインズ様はその中の長を務めていたお方です。忠義を尽くして当然でありんす。」

 

「血統でもなく、眷属化でもない純粋な吸血鬼……もしかして【真祖の吸血鬼】(トゥルーヴァンパイア)?」

 

 血統でも眷属化でもなく生まれた吸血鬼、突然変異によって生まれた人間の上位種、もしくは人為的に作り出された劣化が一滴も混じらない純粋な吸血鬼のことである。

 この世界とユグドラシルでは事情が違うがシャルティアの種族としての強さはこの世界のそれと比べても遜色はない。

 

「あっていますが、我々は別の世界からやってきた様なのであまり考え込む必要はないですよ。」

「異世界?……魔界とも違うのかしら?……」

「ん〜多分違うと思います。

(この世界には魔界まであるのか……)」

 

そもそもゲームの世界からやって来たとかどうやって説明すればいいのだろうか……

 

「ところでアインズはいつ異変を起こすのかしら?」

「それについてはただいま作戦準備中と言ったところなんですよ。

やるなら派手にそれでいてやりすぎない様にしたいので情報を集めているところで……

特にこの世界のルールは特殊なものが多いので苦労します。」

 

「それってスペルカードルール…通称【弾幕ごっこ】の事かしら?」

「はい。」

 

 弾幕ごっことは幻想郷に伝わる特殊な決闘法であり博麗の巫女が妖怪が異変を起こしやすく、そしてそれを人間がそれを解決しやすくするためのものである。

 ナザリックが起こそうとしている異変もこの形式を採用するつもりである。

 

 お互いにカード名を宣言し、特定のパターンの弾幕をはる。相手はそれをいかにかわすか耐えるかが勝敗のカギとなる。

 撃つ弾幕に種類は問わないが絶対に避けられない攻撃をしてはならないなどの特殊なルールが存在し、必ずしも強さが絶対的な存在にならないことが挙げられる。

そして最も特徴的なことは【美しさ】が求められる競技であり精神的な要素が含まれていることだ。

 

「どうもあやふやな部分が多くて理解しがたい……」

 

ゲームルールとしては三流以下だ。

しかし、このルールを知ってからなんとなくだがアインズは気づき始めていた。

幻想郷(この世界)において強いだけの存在がなんの意味も持たないことに』

 

「確かにそうかもね。でも私は好きよ。この遊び。

そこでアインズ、私と『弾幕ごっこ』しましょ。

やって覚えるのが一番だと私は思うわ。」

「私と貴女がですか?」

 

 レミリアはニヤリと笑い、続けた。

 

「貴方にとって損はないと思うわ。

弾幕ごっこの経験を積めるし、貴方が今一番知りたい幻想郷トップクラスの妖怪の力が垣間見えるのだから。」

 

 レミリアの言っていることは確かに的中しているが、誘いかもしれない。

 アインズが返事を少し躊躇していると他のメンバーが横槍を入れてくる。

 

「アインズ様が出なくても代わりに私が出ればすむことでありんす。」

「レミィ、同じ魔法使いとして私が相手したい…………」

 

 

「ちょっと二人とも邪魔しないでよ。私はアインズとやってみたいのよ!」

 

珍しくパチュリーも好戦的になっている。

異世界の魔法とやらがそんなにも気になるのか…

 

場が困惑しそうになっためアインズはある代案を提案した。

 

「それでは少し変則的になりますが2対2のタッグ戦などはどうでしょうか?」

「ああ、永夜異変の時みたいなやつね。良いわね。」

 

 

アインズは一対一の直接戦闘は得意ではない、どちらかと言うと搦め手の方が得意であり優秀な前衛がいた方が力を発揮する。

そして、二人ならば切り札を晒しきらずに済むかもしれないし、お互いにフォローができる。

 

アインズはシャルティアの能力を知り尽くしており、相性が良い。

しかし、相性が良いのは相手も同じであった。

 

 

お互いに前衛と後衛、吸血鬼と魔法使いのコンビ。

全く同タイプの組み合わせ故にこの戦いの結果はナザリックと紅魔館のレベルの違いがはっきり出てしまう組み合わせとなってしまった。

 

話はまとまり、四人は準備を始めた。

双方の従者が取り囲む様に部屋の端に寄った。

 

「お二人方、準備は良いですか?」

「良いわよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、楽しい弾幕ごっことやらを始めようではないか!」

 



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紅魔館-3

 魔法使いと吸血鬼のコンビ、アインズとシャルティア、パチュリーとレミリアの弾幕ごっこが始まった。

 

「弾幕ごっこなのだから弾幕を張らないとな。

魔法最強化(マキシマイズマジック)千本骨槍(サウザンドボーンランス)〉!!!」

 

 大地を割って、アインズを中心とした広範囲に無数の骨槍がレミリアとパチュリーに向かって放たれる。千や二千をゆうに超える数である。

 

 骨槍は着弾とともに土煙を立てる。

 

 煙が晴れると二人は何事もなく佇んでいた。

 

 

「数はあるけど規則的な弾幕、最小限の動きと最低限の防御で回避しきる。

ここの奴らは平然とやってのけるわよ。」

 

レミリアは回避しきり、パチュリーは苦もなく魔法陣の障壁で耐え切った。

 

「の様だな……参考になるよ。」

 

 日常的に弾を避けることに慣れているここの連中の回避能力は非常に高い。

 

「だが、避けるのに夢中で後衛が疎かになっているんじゃないか?」

 

 アインズの攻撃をかわしたレミリアの目の前にシャルティアはいなかった。

 

「〈上位・転移(グレーターテレポーテーション)

連鎖する雷龍(チェイン・ライトニング・ドラゴン)〉!!」

 

 パチュリーの背後に回ったシャルティアはパチュリーに雷の魔法を放つ。

 コンビ戦において火力になりうる魔法使いを最初に潰すのは定石、接近して押しつぶせば魔法使いは怖くない。

 

 

「『エメラルドシティ』!!」

 

パチュリーは自分の足元に宝石の柱をつき立たせ、雷を防ぐ。

 

「水符『プリンセスウンディネ』!」

「きゃぁあ!!」

 

切り返しに水の魔法でシャルティアを翻弄する。

 

「吸血鬼の貴女に流水は効くでしょう。

五行を知り七曜を操る魔女に死角は無いわ。」

 

属性魔導士か(ソーサラー)……戦闘に長けたタイプだな…………」

「そういう事!」

 

レミリアはパチュリーのフォローには入らずアインズに向かっていった。

 

「『ヴァンパイアクロウ』!」

吸血鬼の力を込めた爪がアインズを切り裂く。

「ぐぅ!!」

 

 

「戦い方が利口すぎるのよ。

もっと肩の力を抜いて、楽しみましょう。

せっかくの『弾幕ごっこ』なんだから。」

 

「…………後、出し惜しみは無しよ。

貴女達の魔法、すべてをぶつけて頂戴。」

 

アインズの戦いは利を追求した戦いだ。

回避する隙間を与える弾幕などMPの無駄遣い、魔法を繰り出すにも出来るだけ手札は見せない、敵に情報を与える事ほど愚かな事は無い。ヤるなら一撃、一瞬で決める。

 

 

しかし、これは敵を殺す為の戦いでは無い。

敵を欺く為の戦いでも無い。

 

これは『弾幕ごっこ(・・・)』暇を弄んだ少女達の遊び。

 

「(これが痛み…………ダメージを受ける感覚か………………しかし、おかげで目が覚めたよ。)

 

戦いを楽しむか…………久しく忘れていた気持ちだよ……良かろう。

なんの駆け引きもなしに午後の一時を楽しもうでわないか!!!

行くぞ!シャルティアァ!!」

「はいでありんす。」

 

「〈魔法最強化(マキシマイズマジック)無闇(トゥルーダーク)〉!!」

「〈魔法最強化(マキシマイズマジック)輝光(ブリリアントレイディアンス)〉!!」

 

パチュリーには闇、レミリアには光のエネルギーが降り注ぐ。

 

「月符『サイレントセレナ』!!」

「紅符『不夜城レッド』!!」

 

二人は逆属性の技で相殺し、レミリアから今度はシャルティアに仕掛けた。

 

「夜符『デーモンキングクレイドル』!!」

オーラを纏いながら回転し突撃をかけるレミリア、生半可な盾では防ぎきれない。

 

「〈不浄障壁盾〉!!」

シャルティアの切り札の一つ。

最初は使う気が無かったが、相手は予想以上の強敵の上、アインズの許可が下りたため惜しみなくさらけ出した。

 

「悪魔『レミリアストレッチ』!!」

レミリアは拳に力を込め、思い切り殴り障壁を破壊。

更に追撃を繰り出そうとした。

「必殺『ハートブレイ…………」

槍を召喚し、ぶんなげようとするレミリアにシャルティアが反撃する。

 

「させないわ!清浄投擲槍!」

光の槍はレミリアを突き刺した。

 

これは吸血鬼であるレミリアにはよく効くだろうにレミリアは刺さった槍をぶち抜き、笑いながら叫ぶ。

 

「良いわね、シャルティア。吸血鬼はこうでなくちゃ!もっと楽しみましょう!もっと狂いましょう!

魔符『全世界 ナイトメア』!!」

 

レミリアはシャルティアを挑発し、シャルティアとガチンコ勝負を仕掛けるために弾幕を展開する。

 

「その話、乗ってあげるわ!

アインズ様、見ていてくださいまし

シャルティアの勇姿を!」

 

シャルティアもそれに乗り、レミリアに勝負を仕掛けた。

 

ぶつかり合う二体の吸血鬼。

みたところ二人の基本戦闘能力はほぼ互角、相性の関係でシャルティアが少し有利と言ったところだ。

 

「(……相性悪いでしょうに…レミィ、無理して譲ってくれたのかしら。)」

 

パチュリーは異世界の魔法を使うアインズと魔法をぶつけ合う事を望んでいた。

そしていま、ナザリック最高の魔術師と幻想郷最高の魔術師がぶつかる。

 

「(………属性魔法を下手に打つと弱点を突かれる。無属性の魔法をメインに攻めてチャンスがあれば相手の属性魔法の逆を突くのが吉。)

魔法最強化(マキシマイズマジック)重力渦(グラビティメイルシュトローム)〉!!」

重力を固めたような漆黒の球体を高速で飛ばす。

 

先ほどの地属性の障壁を出そうとしている雰囲気だったのでアインズは直様それを貫く弱点属性の攻撃をする準備を始める。

 

「土金符『エメラルドメガロポリス』!!」

 

「(二属性が融合された魔法だと!?

こんなのユグドラシルにはなかったぞ!!)」

 

なんとか回避は出来たが、アインズの動揺は隠しきれない。

 

「(魔法使い同士の戦いはひとえに知識の勝負、引き出しの多い方が勝負を有利に進める!ここで易々とやられるようでは見込み違いよ)」

 

「〈黒曜石の剣(オブシダント・ソード)〉」

 

アインズは三本の黒曜石の剣を召喚しパチュリーに追尾攻撃を仕掛ける。

 

「金符『シルバードラゴン』!」

「〈獄炎(ヘル・フレイム)〉」

 

剣を弾き向かってくる銀ドラゴンに地獄の炎、ハイレベルの魔法戦が繰り広げられる。

 

「(死霊術師の癖にそこいらの属性魔術師に引けを取らないほどの属性魔法を使ってくるなんて)」

 

パチュリーの二属性以上の融合技術がなかったら下手したら圧倒されているかもしれないほどである。

 

「(…体力がそろそろ不味いわね。アレを使いましょうか。)」

 

「(さっきから〈生命の精髄(ライフエッセンス)〉で体力を確認しているが減りが異様に早いな………2属性融合は体力を消耗するのか?)」

 

 

一方吸血鬼同士の戦いは最終段階、お互いの切り札の登場により戦いの激しさを増していった。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

神器(ゴッズ・アイテム)『スポイトランス』!!」

 

 神の槍がぶつかり合う。

 スポイトランスは戦闘序盤から使うことで効果を一番発揮するのだが今回は最初からは使う気が無かったので出していない。

このタイミングで出したのは純粋に神アイテム故の強度が必要であると判断したからだ。

つまりレミリアの槍も神アイテム並みの威力と強度があると判断しても良い。

 

その様子をちらりと見た二人も切り札を出すことにした。

 

パチュリーは足元から五つの色の違う宝石を取り出した。

それはファンタジー世界に精通するものなら誰しも知っている伝説のアイテム。

 

「見てちょうだい、私の魔法研究の集大成。これが私の切り札よ、伝説の術法増幅器

火水木金土符『賢者の石』……………」

 

それが出された瞬間、明らかにパチュリーの魔力が跳ね上がる。

しかし、アインズはそれを見ても慌てる様子は無かった。

なぜならアインズもそれに匹敵するものを持っているのだから。

 

「賢者の石か…素晴らしい…

ならばこちらもそれ相応のもので答えるべきだな。

 

(これを表に出す事をみんなは反対するだろうな…

自分でもバカな事をしてると思う。調子に乗りすぎだってみんなに怒られるだろうな………

でも、文句があるなら出てきてほしい………その時はこの名もギルド長の座もおとなしく素直に返上する。

それに決めたんだ………ナザリックの存在をこの幻想郷中に知らしめるんだって、ナザリックの魅力を余すことなく!!)

 

見よ!!これが我ら至高の41人によって生み出された最高の一品!

 

我がギルドの証(・・・・・・・)!!!

 

【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】!!……………」

 

 至高の41人によって作られたギルド武器【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】は七つのヘビが絡み合う形をした杖でその力はかの世界アイテムに匹敵するものである。

 

最高峰の魔力に究極の魔道具、ここまでこれば超火力魔法の打ちあいだ。

 

 

「日月符『ロイヤルフレア』!!」

暗黒孔(ブラックホール)!!」

 

「月金符『サンシャインリフレクター』!!」

月光の狼の召喚(サモン・プライマル・ムーン・ウルフ)!!」

 

「火水符『フロギスティックピラー』!!」

根源の(サモン・プライマル・)火精霊召喚(ファイヤーエレメンタル)!!」

 

 次々と繰り出される魔法、ぶつかり合う余波だけで建物が壊れそうだ。

 

 戦略性のへったくれもない戦闘が続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「引き分けか………………」

 

魔法がかけられ、通常よりかなりの硬度と広さを誇る紅魔館の一室は半壊し外から心地よい風が吹く。

 

「久々に楽しい戦いができた。感謝する。」

「ここまで大被害になるのは稀だけどここではいつでも楽しい戦いが待ってるわよ。」

「それが弾幕ごっこというわけだな…………」

 

パチュリーはボロボロ、レミリアもプライドだけで立っている状況だ。

引き分けとアインズは言ったが、続けていたらやられていたのは間違いなくレミリア達だ。

 

「レミィ………ハア、ハア、ハア……私………ハア、ハア、ハア………ちょっと、休んで来る………ハア、ハア、ハア………(ふらぁ………」

 

バタリ!!

 

「パチェ!!」

「パチュリー様!!」

 

息を荒くしながらパチュリーが倒れた。

それを心配してレミリアと咲夜が駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

パチュリーをベッドまで運び、ベッドを囲うように皆が集まった。

倒れたパチュリーを見て、頭をさげるアインズ。

 

「私のせいで申し訳ない…………」

「気にしないで、貴方が悪いわけじゃないの………

これはパチェの持病の喘息のせいよ。」

「(戦闘中から体力の減りが異様かと思ったらこのせいか……)」

 

 

「普段はここまで無茶しないんだけど…

よっぽど嬉しかったのね。

自分と対等以上の魔法使いに会えて。」

 

「いえいえ、こちらこそパチュリーさんの見事な魔法の数々……感服しました。」

 

 ようやく呼吸が整い出したパチュリーは少し笑みを浮かべながらベッドに寝ている。

 

「パチュリーさんの魔法で治すことはできないのですか?」

「できたらとうにやってるでしょうね。

あなたみたいなアンデッドは良いわね、病気になる心配がないんだから。」

 

 仮に状態異常を治すタイプの魔法を使っても持っている状態がデフォなら使っても意味はない。

 

 その様な事を考えているとアインズはある事を思いつく。

 

「あの魔法なら可能か…………」

 

ぼそりと声を漏らし、アインズは手をパチュリーに翳した。

 

「超位魔法………………」

 

アインズの周りに光り輝く魔法陣が展開される。

 

「アインズ!何を!」

 

慌てるレミリアをシャルティアが止めた。

「落ち着いて見てるでありんす。」

 

「〈星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)〉………………

日陰の魔女、パチュリー・ノーレッジの持つ全ての病を癒せ!!」

 

アインズが魔法を唱え終わるとパチュリーは光に包まれる。

光が消えるとパチュリーは勢いよく起き上がる。

 

ムク!

 

「…………パチェ!?…………大丈夫?」

 

 

「これまでに無いくらい調子が良いわ………」

 

レミリアとパチュリーは信じられない顔をしてアインズを見つめた。

 

「お元気になられましたか?…………」

アインズが尋ねた。

 

 超位魔法とは自分の経験値を犠牲に発動する魔法で1日の使用制限、冷却時間、発動までのロスなど様々なリスクの元で発動できる魔術師の切り札だ。

 

 先程使ったのは純粋に使用者の願いを叶える魔法でゲームでは消費した経験値に応じて選択しを与えられるが、現実世界では純粋に願いを叶える魔法になっていた。

 

「全然、苦しくない……病気が治ってる……こんなこと………ありえない。」

「アインズ様に不可能は無いでありんす。」

 

 シャルティアがドヤ顔で自慢する。

 

「魔法名からして願いを叶えるタイプの魔法で良いのかしら?」

レミリアの質問に対し素直に答える。

 

善意から行った行動だが、どのような仕様変更が行われているか試したい思惑もあった。

実験台にしたのだ、魔法の概要くらい教えるべきだ。

 

「はい、多少の対価を支払う事で願いを叶える魔法です。」

「そうなの……パチェのために対価を支払っていただいてありがたい……」

「楽しいひと時をくださったお礼ですお気になさらず。」

 

レミリアは友人として礼をしていると横でパチュリーがブツブツ言い始めた。

 

「そんな大魔法を何の準備もなくこんな一瞬で!?…………いや、それよりアインズはネクロマンサーだから専門外のはず…………属性魔法も召喚魔法も一級品の癖に本職は反魂術!?なんて規格外なの?…………オマケに戦闘も一級品なんて悪夢だわ…

いや、それよりも…」

 

パチュリーとしては今まで築き上げてきたものが粉々に砕けていく気持ちだろう。

 

「パ、パチェ?…………」

「はっ!!!」

 

 正気に戻ったパチュリーは直様ベットから降りてアインズに訴えた。

 

「お願いよアインズ!

いや、私の全魔法技術を…いや、すべてをあげるから、貴方の魔法を私に教えて!」

 

「はい?」

「は?」



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紅魔館-4

パチュリーの一言でその場の空気が固まる。

 

「お願いよアインズ!

いや、私の全魔法技術を…いや、すべてをあげるから、貴方の魔法を私に教えて!」

 

「はい?」

「は?」

 

「ん?わたし、そんな変なこと言ってる?

魔法使いにとって魔法技術は命よりも大事な物、それを欲するなら命を捧げることも惜しくは無いわ。

等価交換を考えれば足りない分を命で補うのは当たり前よ。

勿論、それでも足りないなら考えるけど」

 

「「いやいやいや…命は大切にしましょう」」

 

という二人のアンデットジョーク。

 

 テンションが無駄に高くなっているパチュリーを何とか落ち着かせようとレミリアとアインズは焦る。

 

 レミリアは吸血鬼で魔術由来のスキルを使えるが魔法使いではない。

 アインズも元が一般人の普通の人間だから魔法使いの一族の生まれであるパチュリーの常識や価値観に二人とも意見が違う。

 

「落ち着いて、パチェ、あなた疲れてるのよ。」

「そうですよ、急の話で私も戸惑っています。そういう話はまた後日話し合いましょうよ。」

 

「いや、引かないわ。

何が足りないっていうの!アインズ!

言って頂戴!」

 

 

 元気になって良かったが元気になり過ぎてテンションがおかしな方に狂ってる。

 見かねたレミリアがパチュリーに喝を入れた。

 

「れみりあ☆キック!!」

「むきゅ!!」

 

「少し、落ち着こうか…………」

「むきゅ…………」

 

 レミリアの蹴りが後頭部にクリーンヒット、力技だが何とかパチュリーを落ち着かせることが出来た。

 

「流石、友人。扱い方を心得てらっしゃる。」

「いや、こんなパチュリー初めてよ……

さっきの魔法、精神支配とか付加されてないでしょうね。」

「無いはずなのですが、この変容を見ると疑いたくもなりますね。」

 

 

 

 

 

 ようやく、落ち着きを取り戻したパチュリーは改めてお願いした。

 

「アインズ……私は貴方(の魔法)が欲しいの……」

 

 取り敢えず言葉を選んでください。

 ほら、その言葉に反応して血管剥き出しそうな位やばい人(シャルティア)が隣で凄く睨んでますよ。

 

 

 

 パチュリーが落ち着いてくれた為、アインズも落ち着くことが出来た。

 

「先ほどの言い方はともかく技術交流はわたしとしてもお願いしたいところです」

 

 アインズが最も欲しているもの、それは情報・知識・技術。

 それを向こうからくれるというならこれ以上嬉しいことはない。

 

 話が纏まりそうになったあたりでレミリアが閉める。

 

「紅魔館とナザリック地下大墳墓の同盟。

紅魔術同盟ってとこね」

 

 

 

「いや、それだとナザリック要素ないぞ」

 

 

-----紅魔館正門-----

 

 

 

「今日はお誘いありがとうございました。」

「いえ、こちらも貴方に会えてとても有益な時間を過ごせたわ。

ところでアインズ、今日のことで紅魔館とナザリックは同盟関係を結んだわけだけど、私達、個人的な友達にならないかしら?」

 

 レミリアはわかっていた。

 気軽に話かけろと言われてもアインズが敬語をやめなかったのは今回はあくまでもナザリックの主人と紅魔館の主人としての交流だったからだ。

 アインズからしたら会社で取引先と話す感覚だったのだが髑髏の姿で敬語を使われると逆に怖いものがある。

 

「それは良いですね、レミリアさん。」

「そのさん付けもよくないわね。

そうね……気軽にレミリアって呼んでちょうだい。」

 

 お互い全力の弾幕を受け止めあった四人なのだからそろそろ敬語をやめて欲しいらしい。

 

「了解した、ではレミリアまた会える日を楽しみにして待っているぞ。」

「じゃあね。アインズ。」

 

「じゃあ、アインズ………勉強会の連絡、待っているわ。」

「では、パチュリーも元気で。」

 

 パチュリーとは学友という関係で落ち着いたから敬語はやめてもらった。

 

 しかし、彼女は既にアインズの魔導の虜となっているため、またさっきの様な発作が起きるかわからない。

〈星に願いを〉で全ての病を治してもらったが、また新たにアインズ病(笑)にかかってしまったのだ。

 

「ではアインズ様、参りましょう。

……レミリア、アインズ様の許しが貰えれば今度、個人的に訪れるでありんす。

その時は貴方の妹に合わせて欲しいでありんすよ。」

「わかったわ、楽しみにしてるわ。」

 

 去り際にレミリアがアインズを引き止め、声をかける。

 

「あっ!アインズ!」

「何か?」

「お互い従者を持つもの同士、いろいろ苦労することがあるわ。

部下の忠義故の勝手な行動で迷惑をかけることがあるかもしれないわ。

だから、お互い、そういう時は寛容な態度で処理して欲しいわ。」

「………わかった」

 

 アインズはなぜそんなことを今言ったのか考えながら了解した。

 

 

-----紅魔館近郊の森-----

 

 

 

 アインズ達は歩き出した。

 少し歩き、森に入ったあたりでシャルティアが話しかけた。

 

「ではアインズ様、ただいま〈異界門(ゲート)〉を開くでありんすよ。」

 

しかし、アインズは断った。

 

「いや、少し歩きたい気分なんだ。

悪いが、付き合ってくれるか?」

 

 意外な言葉にシャルティアは少し戸惑いながら付き従った。

 

 

「もちろんでありんす、アインズ様とご一緒なら何処へなりとも。」

 

 

 

 

 空は曇り空で今にも降りそうな状況であった。

 

 

 

 

 歩き続ける四人、しかし会話がない。

 アインズは考え事をしているのか無口で他の三人もその空気を感じ取って無口になっている。

 

「(そろそろだな………)

シャルティア、ユリを連れて先に帰っていてくれ、その際ゲートは使うな。

私はやる事がある。」

 

 流石のシャルティアも何か考えがあってこその行動だと理解し、アインズを心配した。

 

「よろしいので?」

「セバスを残す、心配はいらんさ。」

 

 シャルティアは渋々了承する。

 自分のせいでアインズさまのお考えの邪魔になるわけにはいかないから。

 

「それではアインズさま、失礼します。」

 

 ユリとシャルティアが居なくなるとアインズは今度はセバスに命令を出した。

 

「さて、セバス。お前も少し下がっていてくれ。

そして、何があっても手を出すなよ」

 

 

 セバスはシャルティアとは違い、アインズが何を考えているか多少は理解していた。

 ゆえにおとなしくアインズと距離を置いた。

 

 

「(さてと………始めるか………)

 

そろそろ出てきてくれないか!!………」

 

……………………

 

アインズの声は無情にも森に響く。

 

 

「(簡単には出てきてくれないか。……)

 

もう一度言う!出てこい!近くに潜んでいるのはわかっているんだ!!…

紅魔館のメイド長!十六夜咲夜!!!」

 

がさっ!!

 

 アインズが人名を当てると近くの茂みから音がしてメイド長十六夜咲夜が現れた。

 

「何故、わかった…」

「屋敷でアレだけ睨まれたら気にもするさ」

 

 レミリアのフラグも確信出来た理由の一つだ。

 

「何しに来た!?レミリアの命令か!?」

「いえ、貴方を付けたのは自分の意思………

 

そう、貴方を殺すため……」

 

 

 突如、咲夜は消えアインズの後ろに回り込んだ。

 そして、反応する暇も与えない様にアインズに銀のナイフをぶっ刺した。

 

「まだよ!!幻符『殺人ドール』!!!」

 

 追撃に大量の銀のナイフを操り、アインズにその全てを突き刺した。

 

サボテン状態になったアインズは無残にも地に伏せた。

 

「な………ぜ…!?……」

 

 

 いくらアンデッドであってもこれだけの数の銀武器でつき刺せば死ぬであろうと咲夜は考えて、死にゆくであろうアインズに咲夜は訳を話し出した。

 

先ほどから降りそうだった雨雲から雨が降り始めて咲夜の銀色の髪を濡す。

 

「貴方は危険な存在だ………いずれ、お嬢様に害をもたらす。

 

貴方がお嬢様の前に現れた瞬間から、お嬢様のお心はお前に囚われてしまった!

 

お嬢様がご自身の能力で貴方の何を見たのかは知らないが、このままではお嬢様は貴方に奪われてしまう。

 

そうなる前の今なら引き戻せる。

元のお嬢様に戻せる!……お前を殺す事で。

 

貴方を殺したことで私はお嬢様かパチュリー様に殺されるでしょう、でもそれでも私は満足よ。お嬢様の目を覚まさせることができるのですから………」

 



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紅魔館-5

-----紅魔館近隣の森-----

 

 

「貴方は危険だ………いずれ、お嬢様に害をもたらす。」

 

地に伏すアインズを見ても一向に動く気配がないセバス。

そしてアインズを殺したと確信した咲夜はゆっくりとその場を離れようとしていた。

 

 

 

 

「どこへ行こうというのだね……」

 

 

 

 

低く、重い言葉が咲夜の耳に入る。

その声はセバスの声ではない。

そう、咲夜はこの声を知っている。

 

慌てて振り向いた咲夜の眼前には殺したと思った相手、アインズ・ウール・ゴウンがいた。

 

「ふ………くだらん。

何かと思えばタダの醜い女の嫉妬じゃないか……」

「……ど…………どうして………!?」

 

「ん?それは私が生きていることに関しての質問か?……

特別に教えてやる私には低レベルの武器によるダメージを無効化するスキルがある。

つまり、最初からこの程度の攻撃なんて食らってなかったのだよ。」

 

 

 

 

「くそっ!!ならば!!」

 

咲夜は慌ててアインズの距離を置いて次の攻撃に移る、今度はさっきの攻撃の強化版。

数も威力も格段に高い、これならアインズに届くはず。

 

「幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』!!!」

 

「これも時間差攻撃と物質操作による攻撃か……

芸達者な様でやる事はバカの一つ覚えだな。

魔法最強化(マキシマイズマジック)骸骨壁(ウォール・オブ・スケルトン)〉」

 

アインズは無数のスケルトンで構成された壁を作り出し、ナイフを全て防いだ。

 

しかし、防いだと思った瞬間。咲夜はアインズの後ろにいた。

 

「(まただ、またこの感覚………。)」

 

 

「傷魂『ソウルスカルプチュア』!!!」

「〈魔法最強化(マキシマイズマジック)盾壁(シールド・ウォール)〉!!!」

 

防戦一方のアインズだが、ある確信とともにその戦況を一転させることになった。

 

※※※※※※※※※※※※

 

-----紅魔館-----

 

「あ〜、雨降り始めちゃったわね。」

 

外を見ながらため息をつくレミリア。

 

「吸血鬼は雨が苦手だからね。

それより、行かなくてもいいの?」

 

咲夜が出ていることに気づいているパチュリーは彼女のことを心配する。

 

 

「行ったって無駄、咲夜の運命は既に決まってるわ。」

「それじゃあ………」

「大丈夫よ…」

 

雨はさらに強くなり落雷が落ちる様になっていった。

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

咲夜は急に足を止めたアインズを警戒し、攻撃の手を止めた。

 

「(何か狙っているのか?…)」

 

 

「………フフフッ……成る程、だいたいわかった。

こい!愚かな貴様に身の程をわからせてやろう。」

 

咲夜はアインズの挑発に乗り仕掛ける。

再び繰り広げられる銀ナイフの乱舞を防ぎ、回避するアインズは語り出した。

 

「本来、貴様が得意とする時間操作系の魔法は非常に高位であり、高レベル帯のものでしか習得不可能な上に習得にも非常に困難を極める。

 

しかし、貴様はどういうわけか先天的にその技能を習得してしまった。

 

どんな強者をも木偶の坊に変えてしまうそのスキルは貴様に戦闘と暗殺を勘違いさせてしまうほどだ。

 

故に貴様には絶対的に戦闘に対する経験が不足しているのだよ!」

 

「時符『咲夜特性ストップウォッチ』!!」

「〈魔法最強化(マキシマイズマジック)現断(リアリティスラッシュ)〉!!!」

 

咲夜から時間停止の能力が付加された魔法陣を複数放たれるもアインズの空間切断により破壊される。

 

「!!!」

「この程度のことで驚くな……さあ、次を打ってこい!!

スキルに頼る愚か者に私は殺されはしないぞ!!」

 

ユグドラシルにも時間操作系の魔法は存在しており、その強力なスキルから70LV以降はその対策が必須となっている。

 

「特別に貴様に教えてやろう、時間停止系の魔法に対抗する方法の幾つかを……」

 

 

咲夜は自分のスキルに絶対的な自信を持っていた。

 

 いざ、弾幕ごっこという遊びならともかく本気になれば誰が相手でも負ける気は無かった。

 実際、本気の殺し合いに置いて咲夜が敗北したのは、たったの一回、今の自分の主人であるレミリアだけだ。

 そしてそれは幻想郷に来てからも同じだ。

多少の対策は立てれても看破できたものは居なかった。

 

 タダの強がりだと咲夜は確信し、惜しみなくスキルを使った。

 

「時符『プライベートスクウ……」

「〈上位転移(グレーターテレポーテーション)〉!」

「アグッ!!」

 

アインズは時間操作のスキルを使おうとした咲夜の溜によるわずかな時間に転移し距離を詰め、取り出したスタッフで咲夜をぶん殴った。

 

「時間操作系対策その1、相手のスキルに差込め。………」

 

 強力なスキルほど発動までに時間がかかり無防備状態になる。その間に一撃でも入れれば発動はキャンセルされる。

 PKで名を馳せたギルドの長、ガチビルドの輩に対抗するために磨き上げた技術を持ってすればこれぐらいできて当然だ。

 

「これで一回、死んだな……次はどうする?」

「じゃあ!こんなのはどうかしらぁ!?」

 

コンッ!

 

アインズの肩に懐中時計が当たり、アインズの時間が完全に停止してしまう。

 

「時計『ルナダイヤル』!」

 

いまだ!と言わんばかりにこのチャンスを生かそうとする咲夜。

しかし、咲夜が足を踏み出した瞬間に地面が爆発する。

 

ドドドドッ!!

 

「きゃああ!!」

 

爆発に巻き込まれた咲夜は悲鳴を上げ倒れこんだ。

 

 

「全く、素人ほど罠にはめやすいものは無いな………

そこには〈魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)爆撃地雷(エクスプロードマイン)〉を仕掛けておいた。」

 

 相手に時間停止を施せば相手は認識さえ、できなくなるため油断してしまう。

 そこに付け込んだのだ。

 

今の地雷により足をやられた咲夜の機動力は激減した。

 

ゆっくりと踏みよる死の化身を前に咲夜は自分の最高の力でスペルカードを発動させた。

 

「ラ……ラストスペル!!!『咲夜の世界』!!!」

 

生きとし生けるもの全てが停止する世界、この世界で動けるのは彼女だけ………

 

 

パリィン!!!

 

 

「嘘…………」

 

 停止した世界が崩壊した。

 

「信じられないと言った顔だな………

時間を停止された空間を解除する方法がこの世に存在するなんて考えもしなかった…か?

どこまでも哀れな女だ。」

 

アインズは指を咲夜の方に刺して言った。

 

「……今のお返しと行こうか。

浮遊大機雷〉(ドリフティング・マスターマイン)

 

「!?……」

 

突如、咲夜の周りに爆発が起こる。

 

「あ″あぁぁぁあぁぁ………」

 

 近距離で大量の爆発を受けた咲夜は火傷、裂傷、骨折、が身体中に出来ていることが見て取れる。

 

「今のも何をしたか聞きたいかね?」

無詠唱化した〈時間停止(タイム・ストップ)〉使い、その間に機雷を設置しただけだとも。貴様程度の技、このアインズ・ウール・ゴウンも可能なのだよ。」

 

完全に動きを封じられ、痛手を受けた咲夜にアインズは近づき、骨折だらけの身体をスタッフでいたぶる。

 

「全く……何かと思ってやられたふりをしてみれば、女の嫉妬とはな」

 

どこっ!

 

「その上、自分の力を過信しスキルに頼り切った戦法しか取れないとはな」

 

どこっ

 

「身の程を弁えろよ、人間風情が………」

 

言葉のたびに咲夜を踏み潰す。

 

「ふぅ……………」

 

 一息入れたアインズは咲夜に今後、この様な事をさせないために最後の締めを施す。

するとアインズは痛みで意識が朦朧とする咲夜の首根っこを掴み高く上げる。

 

 

「二度と刃向わない様に完全なる敗北と恐怖を植え付けてやる…………

我が『絶望のオーラ』を味わうがいい!!」

 

 あたりに恐怖効果を与えるスキルを発動させる。

 本気でやれば今の咲夜の息の根を止めることぐらい簡単なのだが、レミリアに言われた手前、手を抜いてやったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜の目に映る眼光は消え失せ無機質なものに変わり、意識を失った。

アインズは紙の様に力の抜けている咲夜を地面に捨てた。

 

「セバス………興が冷めた。後はお前に任せる。」

 

 言葉に反応してセバスがアインズの元に移動した。

 

「かしこまりました。

………所でこの女の処遇はどうなさいますか?」

 

 

「好きにしろ………ついでにレミリアに伝えておけ、『番犬に噛まれたから調教し直してやった。もっといい鎖を付けることを勧める』とな…………」

 

 セバスなら殺すことは無いだろうと思うし、言わなくても自分の考えを理解している。

 

 レミリアはこうなることを予見して黙認した。

 奴が何を考えてそうしたかは分からないが器を図られた気分だ。

 

※※※※※※※※※※

 

-----紅魔館-----

 

心優しいセバスに最低限の治療が施され、紅魔館に運ばれた咲夜は今だ恐怖で震えるその体でレミリアにすがりついていた。

 

「よしよし……怖かったわね………」

 

すがりつく咲夜を母親の様に宥めるレミリア。

 

「あなたはしばらく休みなさい……」

 

 

 レミリアは今回の事で咲夜が死なないことを感じていた。

 レミリアの能力は【運命を操る程度の能力】、その能力の一旦である。

 レミリアはそれを利用し、わざと咲夜がアインズに仕掛けるのを黙認した。

 ナザリックの登場により今まで以上に幻想郷のレベルは跳ね上がる。

 そうなった時、先程アインズが指摘した項目から咲夜が遅れを取らないように経験を積ませたかった。

 

 このレベルは仲間内の模擬戦では決して味わえない経験だ。

 

 実際は経験などと生温い表現ではなく確実にトラウマを植え付けるレベルであるがそのくらいでなければ意味がないと吸血鬼だけに悪魔的な考えを実行したのであった。

 

レミリアは咲夜の頭を撫で寝かしつける。

 

「(……ハァ〜……彼らが起こす【異変】が楽しみね〜……)」

 

雷が鳴り響く雨の夜の出来事であった。



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人里-1

-----人里のとある定食屋-----

 

「へい!唐揚げ定食お待ち!」

 

 客である男の前に注文の品が置かれる。

 唐揚げご飯、味噌汁に惣菜など日本にある一般的な定食だ。

 

「いただきま〜す。

(あ〜久しぶりだな〜こう言う食べ物。)」

 

現在、アインズは紫によって渡された『人化の式』で人に変身し、情報収集のため人里を訪れていた。

 

「(このお札、無駄に高性能なんだよな……

人間だった時のスペックのままと思いきや魔法が使えたことに驚きだ。

ステータスを確認したら種族レベルが人間(ヒューマン)LV1に変更されていてステータスやスキルもそれに応じて下方修正されてた。

体質的な特性は完全に人間依存だ。

だから疲れもするし、腹も減る。

ま、だからこそ今、もう味わうと思わなかった日本食を食べる事が出来たのだが……

利便性を求めたらただの変身するだけの術でよかったんだけど、これは八雲紫に感謝だ。)」

 

 紫が作ったこの式符はモモンガとしてもアインズとしても、そして何より悟としてこの世界を体感して欲しい願いが込められている。

 そしてその仕様の節々には紫の思惑が込められている。

 

 アインズが食していると隣にいる黒髪の美しい女性が話しかけてきた。

 

 

「アインズ様がこの様な低俗な食事をなさらなくても………食ならナザリックにもありますのに………」

 

 彼女はナーベラル・ガンマ、ナザリックの戦闘メイドの一人でドッペルゲンガーだ。

 レベルを殆ど魔法職にも割いているためこの姿にしかなれないが代わりに第8位階の魔法まで使えるウォーウィザードだ。

 

異形種のプレイヤーが作った地だけにナザリックには人の姿をしている存在が極端に少ない。

だから彼女にお供を命じたのだ。

 

「まぁ、そう言うな。この世界には郷に入れば郷に従えという言葉がある。

たまにはこう言った食も乙なものだ。

 

あと、この姿の時は私の事をサトルと呼べ、私も別人に扮しているつもりで砕けた感じで話しかけるからナーベラルもそのつもりで。」

 

せっかく人の姿で人里に潜伏しているのだ。

つまらないことで正体がばれたくない、

 

一応人里に妖怪が入れないと言う掟はないらしいがばれないに越したことはない。

 

「かしこまりました、サトル様。」

「様はつけなくていい、あと敬語もやめてくれ。」

「わかりました。サトルさ………ん」

「少し間抜けだが取り敢えずはいいか……

 

(里に下りてわかったことだが里の文化レベルは日本の明治時代前後と言ったところか…

確かに科学の発展で妖怪などの存在が否定され始めた時代だが。やはりここは日本なのか?レミリアみたいな外国の妖怪も混じっているのだから確証はないが…)」

 

 一般的な日本人の容姿であるこのサトルの姿は正解の様だ。ナーベラルも黒髪なのが良い。

ただ、服装が分からなかったから現実世界で着てた服をそのまま着てきたため目立ってない訳では無いのだが。

 

「(サトルも日本ではよくある名前だし問題ないだろうけどナーベラルはちょっと日本人ぽくないな……紅魔館のメイドも日本名だったし、こちらも呼び名を変えるか?

……奈阿部(なあべ)とかか?………いや、やめとこう………)」

 

サトルが変なことを考えていると人当たりが良さそうな定食屋のオヤジが二人に話しかけてきた。

 

「ヘイ!にいちゃん、女連れなんて羨ましいね〜

そっちの嬢ちゃんは食べないのかね?可愛いからオジサンサービスしてあげるよ〜〜」

 

「黙れ、下等生物。舌を捩じ切られたいの?…………」

「おい!ナーベ!………」

 

これは計算外だ、まさかここまで人間に嫌悪感を感じているとは。

 

「へへっ!嬢ちゃん口がキツイな〜

にいちゃんも苦労してそうだ。」

「申し訳ありません、連れが失礼を。」

 

何とかこの場が収まりそうだ。

ナーベよ……頼むから少し考えてくれ……

 

中々寛容な主人の様だ。

飯ついでにこの御人から幾つか聞いていくか。

 

まずはここの住人はこの世界のことをどのくらいまで認識しているか……

それと妖怪などの幻想の存在をどの様に感じているか………

 

たずねると定食屋の主人はサトルの姿を見て何かを納得したのち話し出した。

 

外の世界というものは認知している。

妖怪は恐ろしい存在であり恐怖の存在であるが存在していることに関しては疑問はないらしい。

 

そこまで答えたら今度は主人の方から問われた。

 

「にいちゃん達、もしかして外来人って奴かい?」

 

外来人とはこの世界において外の世界(現実世界)から来た人間を指す。

ゲームから転移したサトル達はなんか違うかもしれないがそう言っておこうか。

 

私服のサトル達を見て判断したのだろう。

 

「はい、先日来たばかりで…………だからかってがわからないんですよ。

何か職を見つけて人里で暮らしていきたいと思っているのですが…………」

 

人里は幻想郷において需要な要素だ。

だから、ここの情勢を逐一把握するためにここに小さな拠点を構えるのが一番だと考えている。

 

「職か……………取り敢えず、慧音先生の所に行ってみたらいいんじゃねーか?」

「慧音先生?………」

 

「ああ、寺子屋の先生だよ。物知りで有名だし、世話好きな人だ。

きっと悪いようにはしないだろうよ。」

 

「ありがとうございます。行ってみます。」

「おう、気をつけて行けよ!」

 

「お代なんですけどこれでよろしいですか?」

サトルはユグドラシルの金貨を取り出した。

付加価値はつかないとは思うが金としての価値はある筈だ。

 

こちらの世界に来たばかりのサトル達は人里で使われている通貨を持っていない一文無しだ。

紫の話を信用するならここに他のユグドラシルプレイヤーはいない、あまり好ましくは無いが使うことにした。

ユグドラシルの金貨はNPCの復活にも使う重要なものだが物々交換等で変な物を渡すよりはよっぽどましだ。

 

「へぇ……珍しい紋章だなあ。これって外の世界の硬貨の一つかい?」

「はい、私が居た地域で使われていたものです。」

「ひょっとして連れてる嬢ちゃんの名前といい、にいちゃん達は外来人の上に異国人なんかい?」

「はい、そのようなものですよ。」

 

「よし、わかった。これで良いよ。

これから苦労する若者の門出を祝してな、心配しなくてもこの手の物なら香霖堂が買ってくれるさ。」

「香霖堂?」

「ああ、里外れ……魔法の森の入り口あたりにある道具屋だよ。

そこの亭主が外の道具の収集家でこういうものを集めてるんだ。

にいちゃんも外から持ち込んだものがあるなら持っていくと良いよ。」

「わかりました。行ってみます。本当にありがとうございます。」

「良いってことよ!困った時はお互い様ってな。じゃあまたどこかでな!!」

 

 本当に気前の良い主人であった。

 有益な情報をいくつもくれて、今度落ち着いたらまた来よう。

 

-----人里・街道-----

 

 

定食屋を離れ、次の目的地である寺子屋に向かうサトルとナーベ。

店々が立ち並ぶ街道を歩いていると珍しくナーベが話しかけてきた。

 

「サトルさ………ん、少し質問してもよろしいでしょうか?」

「まだ、なれんようだな…………まあ良い、何だ?」

 

「外の世界とは何でしょうか?」

「以前、私たちのいた世界とは違うようなのですが、サトルさんはよくご存知なようで。」

 

「ああ、そのことか。」

「外の世界とはこの世界に近接する世界だ。

…………私の生まれ故郷であり、至高の者達が住まう地だ…………」

 

 

「何と!?」

 

 

「私を除く至高の者はこのように人間の姿になりすまし、今も存在している。

ナーベ、私はいずれ来るかもしれない他の仲間達のためにこの幻想郷でナザリックの立場を確立しようと思っているのだよ。」

 

「成る程…サトル様の崇高なお考えを聞かせ願って誠に感謝します。」

「うむ。」

 

 

そこで話は終わり二人の間に沈黙が生まれた。

 

また暫く歩く

初めて来た人里の雰囲気を。

 

「(思ったより人口はありそうだな………………)」

サトルが近くの店々をチラ見しながら歩いているとある女性と肩がぶつかってしまった。

 

ドンっ!

 

ぶつかった女性は耐える様子もなくまるで糸の切れた人形のようにその場に伏してしまった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

声をかけるとサトルは驚いた。

その女性は青と白のメイド服を着て銀の髪をなびかせていた。

 

そう、彼女は紅魔館のメイド、十六夜咲夜であった。

 

「(十六夜咲夜!!)」

 彼女に気がついたナーベは血相を変えアインズの盾になるように間に入り、咲夜を睨みつけた。

 彼女の悪行は上司であるセバスからある程度聞いていた。

 

ポコっ!!

 

サトルはナーベの頭にチョップをして止めた。

 

「(ここは人里だぞ!面倒ごとを起こす気か!?)」

「(しかし…………)」

「(お前とは面識は無いし、この変身はちょっとやそっとじゃ見破れん。)」

 

そう、咲夜に自分達の正体を見破っている様子は無い。

敵意どころか覇気さえない状態であった。

 

「……………(ペコッ……………………」

 

 倒れた咲夜はそのまま膝をついた状態でぶつかったことに対して謝罪した。

 そして倒れた時に転がり出てしまった買い物を買い物袋にしまいだした。

 

どうやら大丈夫そうだ。

 

「ナーベ、入れるのを手伝ってやれ。」

「……はい。」

 

 よく見ると先日のことが応えたのか随分、見窄らしい姿になっていた。

 

 身体のあちこちには傷が残っているのか包帯や絆創膏が目立つ。

 よほどストレスを感じているのか肌は少し荒れ、髪も少し痛んでいる様に見える。

 表情は無表情のまま固まっており目の光は濁っていた。

 

 まるで人形の様に無機質になっているのを見れば先日のことがよほど応えたのであろう。

 

 それでも仕事をこなそうとしているのはメイドの鏡と言えよう。

 

 

 何事もなく回収は終わり立ち上がる咲夜。

再び礼をして去っていった。

 

 その足取りは非常に重そうでフラフラとする様に歩いていた。

 

あれでは誰かとぶつかってもしょうがない。

 

 

しかし、気にすることはない。

二人は再び、目的地に向かって歩き出した。

 

 彼女とはあの時に一度あっただけだが、主人に対しての忠誠心と愛はナザリックの皆に近しい。

 

 これは後でパチュリーに聞いたことだが、彼女はその能力から迫害を受けて、ずっと一人で生きていたらしい。

 それは咲夜に限った話では無い。

 魔女狩りを経験したパチュリー、スカーレット姉妹も同じだ。

 多くの仲間を失ったのだろう。

 そんな思いを同じくするものが集い、その末、幻想郷に行き着いた。

 

 故にその絆は深く、主従関係はすべてを掛けられるほどである。

 まるでナザリックでは無いか。

 

 ナザリックの皆の前でアインズがどこの馬の骨とも知れぬ輩と仲良くしたら。

 その者が危険だと判断したら主人の目を覚ます為に同じことをしたのでは無いかと、あれから考えるようになった。

 

「セバス様があれから紅魔館に通っているようですがご存知ですか?」

 

 ナーベラルが訪ねた。

 

「あぁ、シャルティアと一緒にな。

情報交流と監視とか言っていた。」

 

 シャルティアは同族のレミリアを気にいってるし、セバスは咲夜の傷が癒えるまで紅魔館のメイド業務を手伝たいそうだ。

 

 紅魔館とは良い関係を続けたいのだから遊び行きたいや手を貸したいならそういえば良いのだが、守護者たちが我儘を言えるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

-----人里・寺子屋-----

 

「確か……この辺なんだけどな〜」

 

 二人が歩いていると目的地に近づいたのか子供達の元気な声が聞こえてきた。

 

 正門に向かうと下校時刻なのか一人の少女が元気よく飛び出しサトルにぶつかった。

 

どんっ!

 

「きゃ!」

「(なんか今日はよく人とぶつかるな。)」

 

 

サトルは優しく手を差し出した。

 

「大丈夫かい?」

「イタタ、大丈夫です。ごめんなさい。」

 

ちゃんとあいさつできるいい子の様だ。

 

しかし、少女はこっちを見るや否や怖がり走って行ってしまった。

 

「ひっ!!ごめんなさーい!!もう、しませーん!!」

 

 原因はよくわかっている。

 後ろで殺気を張っている奴のせいだ。

 

「ナーベよ……後ろから殺気を放つのはやめてくれないか?」

 

「この下等生物の糞ガキが……サトル様になんたる失礼を……(ブツブツブツ…」

 

 サトルがナーベラルを叱っているとさっきの少女を連れて女性が寺子屋から出てきた。

 

「せんせー、あのお姉さんコワイ。」

「こらこら、そんなこと言うもんじゃありません。」

 

 

「すまない、生徒がとんだ失礼な事をした。

私はこの寺子屋で教師をしている上白沢慧音というものだ!」



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人里-2

-----人里・寺子屋-----

 

「私はこの寺子屋で教師をしている上白沢慧音というものだ!」

 

 青白い長髪を下げ、青いワンピースタイプの服、変わった帽子をかぶった女性はこの寺子屋で教師をしている上白沢慧音であった。

 

「あなたが慧音先生ですか。

私はある人の紹介であなたに会いに来たものです。」

 

「ほう!私に会いに来たのか。

ならば立ち話もなんだ、中でお茶でも出そう!」

 

 さすがは学校の先生、ハッキリハキハキと喋っている。

 しゃべり方はどこか中性的である。

 

 二人は慧音に連れられ中に入っていった。

 

 

 

-----寺子屋-----

 

 

 

「ほう、お二人は外の世界からやってきた旅人なのか!」

 

「はい、いろいろな所を転々としていたら、この地に流れ着いたというわけです。

たどり着いたのも何かの縁と思いましてしばらくこの地に留まろうと……」

 

「それは正しい判断だ!この地を出入りするのは容易では無いからな!」

 

「(あっ、やっぱりそうなんだ。)」

 

 一度幻想入りしたものはそう簡単には外に戻れない。

 例外としては八雲紫の能力ぐらいだ。

 

「どこか職を見つけてゆっくりと暮らしてみたいと思っているのですが、何分初めての地で人脈もありません。差し出がましいのですがこの里で顔の広い慧音先生のお力添えをお願いしたいのですよ。」

「顔が広いなんてことはありませんよ!」

 

 長らく教師をしている慧音はこの里ではかなりの顔役であり、若い衆はみんな慧音の教え子と言っても過言ではない。

 

「それにしても仕事か……

少し難しいな。仲介ぐらいは出来るが、すぐいきなりとなると…

何か特技なんかはあるか?

技能や実績があればその道の者を紹介することぐらいは出来るのだが…」

 

それはそうだろう。

あっていきなりの人間に任せられる仕事なんてほとんど無い。

 

「(早めにここでの生活の基盤を作っていきたいからな、早めに話しておくか。)

そうですね。私も連れの彼女も魔法が使えます。

それで何か出来ませんかね?」

 

サトルは自分が魔法を使えることを早々に明かした。

本当は隠した方が良いのかもしれないが、早めに自分の有用性を里に理解してもらうにはこれが一番だ。

 

 

「魔法?…失礼ですがお二人は人間ですよね?」

「はい、魔法を使える人間です。」

 

 この世界では魔法使いは妖怪の一種とされている。

 しかし、人間のままでは魔法が使えないわけでは無い。

 

 

「成る程、魔理沙のような感じだな…(ボソッ」

「ん?何か?」

「いえ、知り合いにも魔法が使える人間がいるので、ああ、もしかして旅というのは魔法の研究の旅ですかな?」

「…ええ、そんなところです。」

 

慧音はそれを聞いてある事を思いついた。

 

「それならちょうど良い仕事がある!」

「本当ですか!?」

 

「はい!旅の魔法使いの方でしたら妖怪への対処も心得ていると……

私の友人に妖怪退治や妖怪からの護衛をする仕事を副業にしている者が居て、彼女の仕事を手伝う形で仕事を始めてはどうだろうか?」

 

「成る程、それは良いですね。」

「なら、決まりだな。」

 

 

こうしてサトルとナーベは無事、里での仕事を見つけることが出来た。

 

「丁度、今日。その友人に会いに行くつもりだったんだ。紹介する、ついてくると良い。」

「はい。」

 

 三人は慧音の友人の家に向かう事にした。

 

「ところで連れの彼女は何も言わないが、二人だけでとんとん拍子に話を進めて良かったのか?」

 

 慧音の言葉にはずっと黙っていたナーベラルが口を開く。

 

「すべてはサトルさんの意思に委ねているので問題ありません。」

 

「信頼されているのですなあ〜サトル殿は

付かぬ事を聞くが二人は恋人同士か何かで良かったかな?」

「「違います!」」

 

「はあ?………そうか。

いや、そうかなと思っただけだ。」

 

「私なんかより、サトルさんにはもっとふさわしい人が(アルベド様とか……」

 

「(ナザリックのみんなは友人の子の様な存在だからな。そういう風に見たくないんだよ…)」

 

三人は歩き、人里を離れ竹林へと入っていく。

 

-----迷いの竹林-----

 

 見渡す限りの竹林、少し道を外れるだけで道に迷いそうだ。

 

「随分辺鄙な所に住んでいるのですね。」

「ああ、ちょっと人付き合いが苦手なやつでな偶に私が様子を見に行ってるんだよ。

もう少しだ」

 

 獣道と言っても良い歪んだ道を抜けると少し開けた場所があった。

そこにはボロ屋と言って良い家が建っていた。

 しかし、生活痕らしき物がある所、誰かが住んでいるのは間違いなさそうだ。

 

 我々に気がついたのか、家から誰かが出てきた。

 

「やあ、妹紅。元気にやっているか?」

「何だ、慧音か。」

 

 銀髪……いや白髪でロング、リボンで後ろを縛っている、白シャツにしたは赤いモンペの様なズボン彼方此方に護符を貼り付けている。

 

「そっちの連中は何?」

「ああ、紹介するよ。

今度、人里に越してくるサトル殿とナーベラル殿だ。」

 

 紹介されたので手を出して握手を求めるサトルであったが…

 

「よろしく…………」

「ん………」

 

「(確かに人付き合いが苦手そうな人間だ…

人の事言えないけど)」

 

現実世界での悟はユグドラシル以外の人付き合いを制限していた。

妹紅はそれとは違うタイプであるが何か近い物を感じた。

 

「で?何でこいつらを連れて来たんだ?慧音」

「ああ、そうそう。

二人は仕事を探していてな、お前の仕事を手伝ってもらおうと思ってな。」

「竹炭?…………」

「違う、もう一つの方だ。彼ら魔法が使えるんだ。」

「あ〜………」

 

妹紅はそこまで聞くとこちらに目を向ける。

 

「大丈夫かぁ?こんなんで

この辺の妖怪たちはヤバい奴らが多いからな。」

 

「(それは身をもって知ってるよ。)」

レミリア達のことを考えているが、彼女クラスはそうそういない。

 

「なんか弱そうだし…

足手まといだけは勘弁だからなぁ。」

 

妹紅はこちらを品定めする様にジロジロ見る。

 

「このウジ虫が………さっきからサトル様に失礼を…………(ブツブツ」

 

(なんかこんなのも慣れてきたな…)

 

 

 

「最初から上手くいくとは思っていないさ。

だが、彼ら自身やる気はあるし、妖怪たちを相手にした経験もある様だ。

それにお前もそろそろ人を育てる大切さと言うものを学んだ方が良い。」

「うぇ〜慧音なんか先生見たい…………」

「先生だがな…………」

 

 大きくため息をついた妹紅は二人にきつい言葉を吐いた。

 

「慧音の頼みだから仕方なく引き受けてやるよ。

でも私は人にものを教えれるタイプじゃないからその辺は自分で何とかしろよ!

それで良いってんなら明日から私の仕事の手伝いをしろ。」

 

そう言うと妹紅は振り向き、家に入って行こうとする。

 

「ありがとうございます!!………ほら、ナーベも。」

「…………ありがとうございます(ボソ」

 

 もし、二人が慧音や妹紅の助けもなしに開業していても信用がまるでないから客なんて寄り付かないだろう。

 しかし、慧音の推薦で妹紅の仕事の手伝いをする事で多少の信用は得られるだろう。

 

 それだけではない、この地の専門家の元で働くことでよりここの妖怪たちの情報が早く、正確に得られる様になるだろう。

 

 だから妹紅からOKを出されて安心するサトルであった。

 

 

「今日はもう、遅いから泊まっていけ、夜の竹林は危ないからな!!」

 

-----妹紅宅-----

 

この夜、妹紅の家に泊まることになった一行は妹紅の家でゆっくりしていた。

一人を除いて。

 

「また、こんなにも散らかして!」

「別にいいだろ。誰かに迷惑をかけてる訳じゃないんだから」

「私の気がすまんのだ!どけ、私が片づける!」

 

当の本人がのんびりしているのに忙しなく世話をする慧音。

 

「こんな事では他も心配だな。

睡眠は取れているのか?体に負担をかける様な生活はしていないだろうな?

少し痩せたか?食事はきちんと食べてないんじゃないか?」

「お前は私の母親か!?」

「私が妹紅の心配をして何が悪い。」

 

「(通い妻?……口煩い母親?……それとも教育指導の先生かな?……)」

 

 

 

「ん?妹紅、なんか焦げ臭いぞ。」

慧音は妹紅の服の匂いが気になった。

 

「ああ、さっき竹を燃やしてたからそのせいだろう。」

「そうか、なら風呂を沸かしてやるから直ぐに入ってこい。」

「えぇ……後でいいよ………」

 

「駄目だぞ!今日は殿方もいらっしゃるんだから

「んだよ……しょうがねえな。」

 

 

「(………そうじゃん!

ここで泊まるってことは同じ部屋寝るって事じゃん!!)」

 

 妹紅の家は然程大きい訳ではないため、寝泊まりできる部屋が2個も3個もある訳ではない、つまり寝る部屋はみんな同じこの部屋である。

 

 美人の女の人に囲まれて寝れるなんて男としては名誉なことかもしれないが気になってしょうがないのも確かだ。

 

「サトル殿、心配することはないぞ。

間違いが起きない様今日は私も泊まらせてもらう。」

「(………状況悪化!!!!……)」

 

「変に意識してんじゃねぇよ。

言っておくけど慧音に手を出したらただじゃおかねぇからな。」

「(怖い!!………)」

 

《「安心してください、サトル様。

私は寝る必要がありませんから寝てるふりをしながら監視します。

サトル様の身は私が守ります。」》

 



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竹林-1

今回は加筆多目です。感想待ってます。


-----藤原邸-----

 

 妹紅宅に泊まった夜、サトルは途中で目を覚ました。

 

「どうされましたか?」

 

 睡眠の必要のないナーベラルが警戒をしてくれていた為、小さい声で話しかけた。

 

「何でもない、少し夜風に当たってくる…

護衛はいらない」

 

「そうはまいりません…いつ妖怪に襲われるやも…」

「だからこそ、今度はお前が休め」

 

 若干、威圧するように言ったサトルの言葉にナーベラルはようやく従った。

 

 いくら休まなくても良い体でも精神的な疲れは出るかもしれない。

 必要な時に完璧なパフォーマンスをする為には十分な休息が必要だとナザリックでアインズがよく言っていることだ。

 

「…わかりました。」

 

 というのは今回は建前であり、ただサトルが一人になる時間が欲しいだけだ。

 こうでもしないと自室以外で一人になることが出来ない。

 護衛と称し最低1人の従者がつくようになっている。

 

 それもナザリックの皆が唯一の主人を万が一でも失うことを恐れている。

 

「こうでもしないと一人にしてくれないんだよな…」

 

 外に出ると、月明かりがとても綺麗で竹林の隙間から降りてくる光がとても綺麗であった。

 

 カランッ

 ザバーッ!

 

 風と竹の葉の擦れる音以外に何かが動いている音がした。

 サトルは音がした方を警戒した。

 すると井戸の前に一人の女性がいた。

 家の主、藤原妹紅だった。

 

 妹紅は水を被っており、白髪は水滴が付いていた。

 その水滴は月明かりに反射して幻想的な光が出ていた。

 

「おぉ、アンタも水浴びか?

今日は暑いからね。」

「いえ、そこまでは。

風にあたりにきただけです。」

 

「だったらちょっと話をしないか?

どうも、アンタのツレがいると警戒されて思うように話せない。」

「(だろうなぁ)」

 

ナーベラルの警戒には威嚇も含まれているのだから仕方ない。

 

「慧音から聞いたよ。アンタ、里で魔法を使って商売やりたいんだって。中々難しいぞ。

魔法を使うなら里から出た方がいいし、里に残るなら魔法も外の人間だという利点も捨てるべきだ。」

「それはご自分の経験からですか?」

 

 この藤原妹紅という女性は里の顔役である上白沢慧音の友人であり、妖怪たちの護衛としてそれなりに信頼されている。

 竹炭も妖怪警護も里を拠点とした方が効率がいいのに彼女はこんな妖怪がいつ出てもおかしくない所で一人暮らしている。

 

 彼女自身が人嫌いというだけかもしれないが、そうなるための原因がそこにはあるはずだ。

 

「ここの管理者の隙間から言葉を借りるなら

 

『幻想郷は全てを受け入れる。』

でも…『人里は人以外を拒絶する』

……」

 

「どういうことですか。

貴方は妖術を使えるだけで人間だと聞きましたが?」

 

 少なくともサトルにはそう見える。

 

「人と違う力を持つことには変わらない。

 

里のやつは外の人間だとわかるとすぐに直ぐに慧音の所に案内されたろ。

 

あれは厄介ごとを慧音に押し付けてんだよ。」

 

 サトルからしたらそんな感じには見えなかったが、そういう考え方もできるなと少し納得した。

 

「慧音が里の中で評価が高いのは事実だか、あいつも少し混ざってるからな。」

 

「(そうなのか…あの人も。)」

「アイツが寺子屋やってることをよく思わないやつも実は居るんだよ」

 

「でも…だからこそ未知の技術を持つかもしれない外の人間や魔法・妖術を使う奴をみんな慧音に押し付けて問題が起きたら慧音ごと…ってな。

慧音はわかっててやってるし、どのみち困ってるやつを見逃せないんだよな。」

 

この世界で一番強い存在、それは集団としての人間だ。

 

幻想郷が成立して百年ほど経っているらしいがその間人里の状況はほとんど変わってないらしい。

 

それこそが幻想郷を維持できている理由でもあるが少しおかしい。

 

サトルの様な外来人は時折姿を表すし、強大な力を持つ者が近くにいればそれに対抗する力を身につけようとするのは当然だ。

 

いくら妖怪が人里に手を出せないとしてもそのルールも妖怪が作ったもの、いつ反故にされてもおかしくはない。

 

にもかかわらず変化がないのはよほどこの世界の呪いとも言える悪習が染み込んでいるのであった。

 

「(中々この世界も業が深い……

いや、どこでも同じなんだな。)」

 

サトル基い、モモンガがユグドラシルで迫害を受けたのは他人と違う姿をしているからである。

人は自分たちと違うものを拒絶する。

この人もまたその被害者である。

 

「慧音はまだうまくやってる方だよ。

香霖堂の亭主は元は人里で働いていたが、やはり今は外だ。

アイツも半妖だからな。

霧雨は魔法の力を手にした途端親から勘当だぜ、元々人里の人間なのに。

本人は自由意志で外にいると言ってるけどそう誘導させたのは周りだよ。」

 

人里での活動の基板を作りたいと思い人里に出た。

自分には他に大した特技もないから魔法を売りにしようと考えたが、その考えは浅はかであったとサトルは後悔した。

 

「とまぁ、柄にもなく語っちまったが、これはあくまでもわたしの考えの一つだ。

里にも良い奴は居るし今言った風習も宗教じみた強制力もないよ。

店のこともまぁ、やるだけやってみろ。

 

案外、アンタみたいな奴が里を変えるのかもな。」

 

 なんだかんだで心配されていただけの様だ。

会ったばかりの自分達を心配するとはこの人達は本当にいい人たちなのだろう。

 

 その後二人は大人しくそれぞれの床につき夜を明かす。

 

-----迷いの竹林------

 

後日、慧音の紹介で人里にある空き家を使って良いと言われ、そこに滞在しながら藤原妹紅の元で仕事を始めたサトルとナーべの二人は今日も迷いの竹林に来ていた。

 

 

 

シャカッ!!……………シャカッ!!……………

 

石と土の混ざる地面に鍬が刺さる音が響く。

 

「ふぅ………………ふぅ………………」

 

サトルは中腰の体を一旦伸ばし、汗を拭う。

 

今日は妹紅とナーベと共に迷いの竹林にタケノコを取りに来ていた。

 

妖怪関連の仕事は主に退治に護衛、つまり依頼してくる人間が居なければ仕事がない。

妹紅自身も本業は竹炭を売って生計を立てている。

 

仕事がないからといって何もしないでいるわけにもいかず、妹紅の手伝いをする事でしのいでいる。

 

しかし、この仕事も考えようによっては色々参考になる事が多い。

迷いの竹林は妖怪も生息してる上、妖精のイタズラの所為で道にも迷いやすい。

そういった者の対処の仕方を覚えるには最適な仕事である。

 

「何だよその掘り方は、そんなんじゃタケノコが傷つくし、いつまでたっても抜けやしないぞ。」

「はぁ…………すいません。」

 

サラリーマンだったサトルにとってこの手の仕事は経験がない。

レベルダウンして下方修正を受けたとはいえオーバーロードのスペックを引き継いでいるため体力や筋力面は常人のそれを凌駕している。

だが、そういったスペックとは関係なく、経験のないタイプの仕事は上手くいかないものだ。

 

「何だよその屁っ放り腰は………もっと、下半身を安定させて体重をかけるように………」

「(何事も経験だな……………)」

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

仕事が終わり、帰路につく。

タケノコ狩りでは散々だったが、途中でちょっかい出してきた妖精は上手く対処出来たので良かった。

 

「タケノコ狩りはお粗末だったけど、妖怪退治の方はまあまあだったな………

これなら護衛の方は直ぐに任せられるかもな。

でも、妖怪の山や霧の湖には強力な妖怪がいるから気をつけろよ。」

「…………この辺には危険な妖怪が居ない…………ということですか?」

 

何気なくサトルが放った言葉に妹紅が少し反応した。

 

 

「まあ、妖怪より厄介な奴が居るからな…………ここには。」

 

 

妹紅からこの世界における妖怪退治屋の仕事について教えてもらった。

 

妖怪退治は基本的にはこの世界を維持する結界を護る博麗の巫女の仕事だ。

 

妹紅も頼まれればするが基本的には巫女だけで手は足りている。

 

では、なぜ慧音は妖怪退治の仕事を勧めたのか……それは緊急時人里を守れる人は一人でも多い方が良いからだ。

 

強力な妖怪は異変を起こす。そんな時、異変を解決するのは巫女の仕事だが里を守るのは自分達、里の者である。

 

そんな時少しでも妖怪に対抗できる存在がいてくれば多くのものを守れるというわけだ。

 

妖怪退治家業を行うのは巫女だけではない、最近では道具屋の娘も魔法を覚えて参加している。

だから妖怪退治だけでは暮らしていけないかもしれない、だが少しでも成果が出れば名が売れる。

 

そうなれば商売を始めるのにも役に立つだろうと言っていたが、先日の話を聞くと成果を上げればあげるほど里から遠のきそうだ。

 

 強すぎると拒絶されるが妖怪退治業は強さも信頼のうちと矛盾を抱えていた。

 

 

「(妖怪退治だけでやっていけそうにないな。何か自分の持ってる魔法でなんか商売になりそうなもの無いかな………

サーチ系の魔法で探偵家業……需要なさそう

転移系の魔法で運送業……クリエイト魔法で建築業……後考えられるのは……)」

 

 サトルが考え事をしながら歩いていると竹の隙間から人が現れた。

 

がさっ………

 

 その人を確認した瞬間、隣の妹紅の血相が変わった。

 

 

 その人は女性、まるで日本人形の様に黒く長い髪をなびかせ立派な着物を着ていた。

 

 妹紅はまるで親の仇にあった様に怒りで顔を歪ませながら名を呼んだ。

 

「か……輝夜!………」

「あら、妹紅………」

 

「(知り合い?……でも、いい関係じゃなさそうだ。)」

 

緊迫した空気の中、二人は物騒な話を始めたい。

 

「ちょうど貴方をぶっ殺しに行こうかななんて思っていたところよ……」

「へっ!永遠亭のお姫さんがわざわざ殺されに来るなんて……どういう風の吹き回しだよ!」

 

 

 

「調子に乗るなよ、竹林ホームレスが…」

「ほざいてろ、蓬莱ニート!!」

 

 

 

 すると妹紅が自分のタケノコをサトルに投げ渡し、言った。

 

「悪いが先に帰っててくれないか………

道はわかるだろ。………」

 

 二人の間になにがあるのかは知らないが、ここは一先ず、言うことを聞いておくべきだろう。

 

 一見ただの人間に見えるがこんな場所に不釣り合いな姿で現れた女性。

 なにか隠し持っているかもしれない。

 

 

「ナーベ………」

「はい。」

 

 サトル達はこの場から離れていった。

 

 

「………嫌に大人しく通してくれたじゃねぇか。」

「一般人に手を出す程落ちぶれては無いわよ。

まぁ、あれの壁になって一方的に殺される貴方を見るのも悪く無いと思ったけどね。」

 

「十分、クソだよ!」

「あらあら、はしたない言葉を使うのね。

昔はお淑やかなお嬢さんだったのに時は人を変えるわね………」

「変えたのはテメェだろ!!」

 

 宿敵がぶつかりし時サトルは何を思うか。



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竹林-2

-----迷いの竹林-----

 

タケノコを持ち、走る二人。

 

 

「………………」

「…相手に背を向け、逃げ帰る………あまりカッコ良い姿とは言えないな…………」

 

「いえ、賢明な判断だと思います。

もし、サトル様が危険を覚悟で戦うというのであれば私は命をかけてお守りします。

しかし、危険な目に合わないに越したことはありません。」

 

逃げるも兵法という言葉があるがまさにその通りだと感じる瞬間だろう。

 

藤原妹紅は緊急時における人里の防衛の切り札、その力はおそらく幻想郷でも上位の存在である筈だ。

 

その妹紅があれだけ気を荒立てたのだ。人としてスペックダウンしたサトルとそれとどっこいどっこいのナーベラルでは不安が残る。

残って巻き添えを食らったらたまったもんじゃ無い。

 

「だが、藪を突っついてみようか。」

 

ニヤッと少し、足を止めるサトル。

ナーベラルもわかっていたといった様な反応を見せる。

 

幻想郷の注意人物の情報は少しでも大いに越したことは無い。

 

「ナーベ、〈千里眼(クレアボヤンス)〉と〈水晶の画面(クリスタルモニター)〉だ!」

 

サトルはアイテムボックスから〈巻物(スクロール)〉を取り出し、ナーベラルに渡した。

 

「〈千里眼(クレアボヤンス)〉…〈水晶の画面(クリスタルモニター)〉…」

 

ナーベラルの発動した魔法で二人の戦闘の様子を覗き見、それをサトルにも見せる様に画面化させた。

 

 

映し出された戦闘は想像を絶するものであった。

 

《「呪札『無差別発火の符』!!」》

《「神宝『ブリリアントゴッドバレッド』!》

 

※音声は聞こえていない。

 

藤原妹紅と輝夜と言われる女性の戦いは先日体感したレミリアやパチュリーの戦いに引けを取らないものであった。

 

藤原妹紅は炎の術をメインに戦う。

背中に聳える炎の翼はフェニックスを彷彿とさせる。

これが話に聞いた妖術という奴か。

 

 

輝夜と呼ばれる女性の方は幾つかの宝具を自分の周りに展開している。

そこから繰り出される攻撃から神アイテムクラスの代物だと推測できる。

 

「(100LV帯と比べても遜色無い。

レミリアと良い、ここにはあと何人の強者がいるんだか。…

 

それにしても…

 

これが人間が出来る戦いなのかよ!?……)」

 

藤原の妹紅は妖術が使える人間だと聞いている。

 

相手の女性はもしかしたら人間じゃ無いかもしれないが今の所、妖怪らしい素振りはしていない。

 

 

レミリアが言っていた。

 

ここには妖怪なんか平気で圧倒してくる人間が居る………

 

てっきり自分の従者の咲夜の事だと思った。

彼女の能力は強力だし、それ以外の力もバランス良く強かった。

動揺を誘いハメたから圧倒できたが時間対策ができていなかったらやられていたのは自分だったかもしれない。

 

しかし、目の前に広がる光景を見るとレミリアの言葉が真実であったことを裏付ける。

 

「(これは、退散して正解だったかもしれないな………

人間の姿のままだと力が制限されてるし……)」

 

 

二人が少し離れた場所で戦闘を覗き見ていると戦況が徐々に変化していく。

 

「(…………あ!……………)」

 

徐々に妹紅が押されだしたのか、実力が拮抗したもの同士の戦いではちょっとした精神状態の変化が左右する。

 

そう、妹紅は先に帰した二人の事が心の何処かで気になっていた。

 

 成り行きだが二人は生まれて初めての後輩、それを初任務からこんな事態に巻き込んでしまった。

 実力的には十分だし道もわかっているとはいえ危険なこの地から二人だけで帰したことに負い目を感じていた。

 

「……………」

 

相手の女性はマジだ。

本気で妹紅を殺しにきている。

このままではやられてしまう。

 

「(………助けに行くことは可能だろう………しかし、リスクが高すぎる………)」

 

女性がまだ、どういう存在なのかはっきりしないうちは下手に手を出すと面倒ごとになる可能性が高い。

 

最悪、サトルとしてだけではなく、正体を見破られアインズとしても面倒ごとに巻き込まれる可能性ができてしまう。

 

そもそも、人間状態でレミリアクラスと戦うこと自体が危険だ。

 

そんな時、サトルは妹紅とのやりとりを思い出した。

 

『足手まといだけは勘弁だからなぁ』

『なんだよ、その屁っ放り腰は……』

 

口は悪いし、ヤンキーっぽいところはサトルの苦手なタイプと言って良い。

出会ってまだ二、三日しかし立っていないから大した思い出があるわけでは無い。

 

下手したら死を招く様な戦場に赴く理由にはだいぶ不足している。

だが………………

 

 

 

『困っている人が居たら、助けるのは当たり前!!!』

 

 

 

サトルの頭の中にかつての仲間の言葉がよぎる。

それは異形種差別により迫害されついた、まだ弱かった自分を助けてくれたギルメン【たっち・みー】さんの言葉であった。

 

サトルは決心がつき、ナーベラルに向かって言った。

 

「初対面の人間には虫程度の親しみしか無いが、どうも話してみたりすると小動物に向ける程度の愛着が湧くな……

行くぞ、ナーベ。あの女に借りを作るのも悪く無い。」

 

「ハッ!御身の御心のままに。」

 

輝夜に追い詰められ、地に膝をつく藤原妹紅。

 

「くっ!!……………」

 

上空から妹紅を見下す輝夜は呆れと怒りを覚えていた。

 

「これならあの二人を逃すんじゃなかったわーー。

まだ、逃げ回る貴女を追い回した方が楽しかったわ。」

「……………」

 

輝夜は空に手をかざし、大きめの弾を作った。

 

「いっぺん死んできなさい。」

 

輝夜は手を振り下ろし、大玉を妹紅に落とした。

 

〈次元の移動〉(ディメンジョナル・ムーブ)!!」

 

突如現れたナーベに抱えられ、大玉を回避することが出来た妹紅。

 

「おい!お前!何で戻ってきた!!」

「黙れ、ゴミ屑。サトルさんの命令でなければお前なんかのために戻っては来ない。」

 

 

輝夜はナーベラルの魔法に異様な驚きを見せていた。

 

「!!…………今の!?…………」

 

初めて見る魔法に驚いているのだろう。しかし、二人の作戦は落ち着かせる暇を与えない。

 

バチバチッ!!

 

 輝夜が浮いている位置よりも上から電気が流れる音がする。

 輝夜が振り向くとそこには大魔法を打つ準備をしているサトルがいた。

 

「〈万雷の撃滅(コール・グレーター・サンダー)〉!!」

 

雷を何本も束ねた豪雷が輝夜に降り注ぐ。

 

「ぐっ!…………(こ…………この魔法も……………)」

 

 落雷を受けて怯む輝夜を見て喜ぶサトル。

「(よっし!最大レベルにも通用する雷魔法があたった!!

あとは撹乱して妹紅さんを連れて撤退だ!!)」

 

 ここでサトルは先ほどとは反対に、威力は期待できないが相手を足止めするのに最適な魔法アイテムのを発動させた。

 

 

 

 

 

「火符『アグニシャイン』!!!」

 

 

 

 それは符の形をした魔法アイテム。

 術を唱えると無数の火球弾幕が輝夜を襲う。

 

 幻想郷のスペルカードは自らの力の一部を閉じ込めたカードというわけではない。

中にはルール上カードを掲げているだけですぺカードがなくても発動できるのものも多々ある。

 

 だからスペルカードを取られてもそいつが使えるわけではない。

 

 だがこれはパチュリーが考え作った術式が組まれたもので必要なものは『魔力』つみるところMPである。

 

ボンッ!!

 

 スペルカードが爆発した。

 別に一回だけの使い切りじゃない。

 寧ろ何回も使えるはずだ。

 理由はこのスペルカードはパチュリーがアインズ達でも使えるようにユグドラシルの魔法〈火球(ファイヤーボール)〉の術式を元に作ったもの、いくらパチュリーが天才でも数日でユグドラシルの魔法を理解し習得することはできない。

 わからないところを適当に作ったツケだ。

 

 

「(やはり…まだ試作品か……だが、この世界のスペルカードは戦闘面では非効率だが撹乱には最適だ……)」

 

 雷撃を受けた輝夜は避けられない。

 輝夜は自分の持つ宝具を使い、火球を防ぐ。

 

「(今度は…紅魔館の魔女の……!!)

『火鼠の衣』!………」

 

 サトルは火球による足止めは成功したと思い。

 二人は離脱準備を始めるのだが………

 

「逃げますよ!妹紅さん!」

「馬鹿野郎!気をぬくんじゃねぇ!」

 

 妹紅が叫んだ瞬間、輝夜はある術を発動させた。

 

 多少の被弾を火鼠の衣を纏い防ぎながら、直撃だけを回避し弾幕を掻い潜ってきた。

そのスピードはありえないほど早く、まるで

 

 彼女だけ生きている時間帯が違うよう。

 

 

 スピード上昇系の術でもない、発動前後に硬直が入る転移系でもない。

 そう、これは

 

 

「(まさか、こいつも時間操作系!!……)」

 

 

 輝夜は弾幕を掻い潜り、サトルの眼の前まで接近した。

 弾幕を御構い無しで接近したため、幾つかの火球を食らった輝夜は火鼠の衣をかぶっているとは言え所々に火傷が確認できる。

 

 その身体で無理やり掴みかかろうとする輝夜。

 その姿はそこいらのゾンビより怖く、恐怖を覚えてもおかしくはない状態であった。

 

 

「…お前ェェェ!さっきの魔法をどこで覚えたぁぁ!!」

 

「サトル様!!」

 

 叫び散らしサトルに掴みかかろうとする輝夜。

 主人の危機に駆けつけようとするナーベラルだが、間に合いそうに無い。

 

しかし、二人の間に傷ついた体を無理に動かし、妹紅が割って入った。

 

「……お前の相手は私だろうが!!

蓬莱『凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-』!!」

 

3人の交錯はスペルカードの暴発を産んだ。

 



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竹林-3

-----迷いの竹林-----

 

「……お前の相手は私だろうが!!

蓬莱『凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-』!!」

 

3人の交錯はスペルカードの暴発を産んだ。

 

「邪魔するなぁ!!」

 

 二人の力がぶつかり大爆発を生む。

 サトルは妹紅が割り込んだ時、押されて距離を離された為巻き込まれなかった。

 

 爆発の中から妹紅が落ちてくる。

無理に間に入った為、爆破により黒焦げになっていた。

 

 爆煙の中から輝夜が出てきた。

 

「くっ………」

 

 

 

 

 

 輝夜も無事じゃ済まされず、大ダメージを抱え、弱々しくそのまま飛んでいった。

 

 

「……サトル様、ご無事で何よりです。」

「ああ、だが彼女は助けられなかった……」

 

人が焦げる異様な匂いがその場を漂う。

これは流石に死んでいるだろう。

 

 アンデッドの時は人が傷ついたり死んだりする様子を見てもなにも感じなかった。

 しかし、今のサトルは一時的ではあるが人に戻っており、精神的ダメージをもろに受けていた。

 

 自分のせいで死んだ……そんな風に思っているのだろう。

 

「この死体の処遇はいかがなさいますか?」

 

 ナーベラルの言葉により、落ち着きを取り戻すサトル。

 この死体の処遇に対して思考を巡らす。

 

 藤原妹紅は優秀な人間だ。

 このままアンデッドにしてナザリックで働かせるのも悪くは無いだろう。

 絶対服従状態にもできるし情報も聞き出せる。

 

 しかし、彼女はこの世界でお世話になった人間の一人だ、そんな彼女を死んでもなお服従させ働かせるのは申し訳ない。

 ここはやはり純粋な生者としての復活を施し、本人には一命を取り戻したなどの言い訳をしようでは無いか。

 復活に使用するアイテムは高価なものだが、自分を庇ってくれたことを考えればやすいものだ。

 

サトルが復活のアイテムを取り出そうとした瞬間、驚きの現象が起きた。

 

がっでにごろずな(勝手に殺すな)

「!!!」

「!!!」

 

黒焦げになった死体が目を覚まし声を上げた。

 

ちょっどまっでろ(ちょっと待ってろ)のどがやげでうまくごえがだぜない(喉が焼けてうまく声が出せない)………

ふぅ……戻った。」

 

 信じられない光景だ。

 黒焦げだった体がみるみるうちに癒えていくでは無いか、人間がこれほどまでの回復力を持っているはずが無い。

 

 ありえない状況に警戒したナーベラルがサトルと妹紅の間に入り武器を握ったがサトルがそれを止め、妹紅に話しかけた。

 

「…妹紅さんって人間じゃなかったんですか!?」

「…いや、ちょっと妖術が使えるだけで基本的にはただの人間だよ。

…ただのちょっとばかり【不死】なだけだ。」

 

サトルは妹紅の言葉に驚きながらも少しずつ納得していく。

 

「(純粋な不死者か…

確かに吸血鬼とかいるこの世界になら居てもおかしくないけど………

肉体が人間のままで不死身になれるんだなぁ………

確かに傷がみるみる内に治っていくな……

治癒ってより時間が巻き戻っていくみたいだ…………)」

 

 

 何とも珍しい体質だ。

 そう言えば日本の言い伝えに人魚の肉を食べると不老不死になれるって言うのがあるって聞いたことがある。

 他にも日本の言い伝えには不老や不死の言い伝えが幾つかある。

 ナザリックにいる末っ子メイドも不老の人間だった。

 

 

「あのさ、そんなにジロジロ見るなよ、品定めされてるみたいだ……」

 

 

「……ああっ!!ごめんなさい!…」

 

慌てふためくサトル。

 

「お前たち魔法使いから見たら私の体なんて良い観察対象か実験材料ぐらいにしか思ってないだろうしな。

さっきもなんかしようとしてたし……」

 

「そんなこと無いですよって、あー違う。そうじゃなくて、えーと。」

「何だ?私の体に興味があるのか?……あんな美人を侍らせといて?…酔狂なやつだな。」

 

暇つぶしに変態か狂心者、どちらかのレッテルを貼られるやりとりをふっかけられるサトル。

 

結果的には必要なかったことだが、それでもやはり助けに来てくれたことは妹紅も嬉しく、少し機嫌が良さそうだ。

 

そんなやり取りをしている内に、十分回復した妹紅は立ち上がり移動を始めようとした。

 

 

 

「おい!行くぞ。家に帰ったら説明してやる。あいつが何なのか……私が何なのか……

 

言いたかないけど捲き込んじまったしな。」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

-----迷いの竹林・藤原宅-----

 

 妹紅の家にたどり着いた三人は妹紅から事情を聞いていた。

 

「蓬莱人!?」

「そう、不老不死の妙薬【蓬莱の薬】を飲んだ死ぬことが許されない人間になっちまったんだよ私達は。」

 

「達はって言うと………」

「さっき、戦った輝夜もそうだ。

まあ、あいつは元々が地上人(・・・)じゃないけどな………」

 

「つまり、さっきの傷は………」

「もう、とっくに治ってるだろうな。」

 

 その事実を聞いてため息を吐くサトル。

さすがに死んではいないとは思っていたが回復力が半端ない不老不死と聞いては肩を下ろしたくもなる。

 

「まあ、あいつは私が関わらない限り人間には無害な存在だからな。

しばらくあの辺に近づかなきゃ大丈夫だろ。」

「はあ……」

 

 引き続き、二人は妹紅と輝夜について聞いた。

 

 彼女の名前は蓬莱山輝夜、月のお姫様……つまりおとぎ話で出てくるかぐや姫らしい。

 

妹紅さんも実は凄い人だった、彼女の父親はかぐや姫に求婚した貴公子の一人らしい……

 

でも後の世界に語り継がれたおとぎ話とは少し違うみたいだ。

かぐや姫が月に帰ってなかったり、宝の数々が本物だったり。

そういえばさっき、【火鼠の衣】って言ってた。

見立て通りなら確かに神アイテムに匹敵する代物だろう。

 

本当にこの幻想郷では何でもありだな。吸血鬼の次はおとぎ話の住人かよ……

ゲームの中の住人である自分たちも大概だけど………

 

今は、幻想郷の迷いの竹林の最深部に構える【永遠亭】で従者やウサギと一緒に暮らしている様だ。

 

従者が月の医学を修めた薬師で蓬莱の薬の製作者らしい。

蓬莱の薬……使うかどうかは別として非常に興味のある代物だな。

 

その薬師が今は開業して診療所をやっているらしく里で急患が出ると妹紅が迷いの竹林を案内するらしい。

妹紅の護衛任務のほとんどがこれらしい……

 

あれ?……じゃあそのたびに彼女に会いに行ってるってこと?

憎しみ合ってるけど多少の同族意識があるのかな?

喧嘩するほど仲が良いってよく言うけどこの人達の場合は殺しあうほど仲が良いってやつかもな。

 

 

……なんか………ますます助けに来ない方が良かった気がする…………

 

 

 

一通り話を聞いた後、一休みして今日の仕事を終わらせた。

 

帰り際、妹紅が今後の事を話す。

 

「さっきも言ったけど念のためしばらくはこの辺に近づかないほうが良い。

慧音には話はつけとくからおとなしく慧音の手伝いでもしててくれ。」

「はい、そうさせてもらいます。」

 

しばらくは妖怪家業は中止かな…

せっかく始めたばかりなのに……

でも、さっきみたいなのにホイホイ遭遇するわけにもいかないからな……

 

「でも、予想以上の腕前だったぜ。

あれだけ戦えれば余程の相手じゃなければ何とかなるだろ。

慧音には強く推薦しとくよ、頼りになるから仕事を回すと良いってな。」

 

「それは助かります。

では、失礼します。行くよナーベ。」

 

 

 

 

人里に帰る二人を珍しく、手を振り見送る妹紅、二人の姿が見えなくなると今日の事を振り返る。

 

「(……他人に助けられるなんて慧音の時以来だったな………)」

 

 

 

 

 

帰る途中、サトルはずっと気になっていたことに考えを巡らせる。

 

『さっきの魔法をどこで覚えたぁぁ!!』

 

つかみ掛かってくる輝夜のセリフ、動揺させることを目的に組んだ作戦とは言え、驚き方が異様だった気がする……

 

「(まるで我々の魔法が何なのか知っている雰囲気だったな………

次はアインズとして探りを入れようか……

そのまえに準備できる事はしっかりやっておかないとな……)」

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

-----永遠亭-----

 

 

傷ついた輝夜は不老不死の力よりその傷を完全に回復させ、帰宅。

今は汚れた体を洗うため風呂に入っていた。

 

「ふぅ〜………

生き返るわ〜……って死ねないけど……」

 

輝夜は熱いお湯で温まりながら先の戦闘を振り返る。

 

「(あの魔法は間違いなくあのゲームの……

という事はあいつらは外来人?……

いや、外来人であっても知っているだけで使う事は出来ないはず。

 

………能力持ちの外来人がそれっぽい魔法を作った?………

 

それが一番しっくりくるけど、どこまで再現できてるかによって厄介なことに成りかねないわね……

 

そう言えば異形種の妖怪団体が幻想入りしたって隙間の式が忠告してたわね。

 

関連があるとしたらますます厄介になりそうね。)」

 

 輝夜が考え事をしていると扉の向こうから声が聞こえる。

 

「姫様……着替えはここに置いておきますね。」

 

「ありがとう、永琳………

ねぇ、永琳。調べておいて欲しいことがあるんだけど………」

 

 

 



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泥棒-1

-----ナザリック地下大墳墓-----

 

 

アルベドはその日、出かけようとするシャルティアとセバスを呼び止める。

 

「シャルティア!セバス!」

「何でありんすか?大口ゴリラ」

「アルベド様、いかがなさいましたか?」

 

 アルベドが機嫌悪く答えた。

「あなた達、最近気が緩んでるんではなくて?」

 

アルベドの言葉にシャルティアはむっとくる。

 

「どぉゆうことでありんすか!?」

「外の者に気を許し過ぎよ。

あなた最近、自分の守護階層にもろくに居ずに紅魔館とやらに行ってるらしいわね。

いくら同盟を結んだ相手とはいえ気を緩めすぎるのは危険よ。」

 

 流石にろくに帰っていないは言い過ぎであるが、任務でもないのに守護者達がナザリックを離れること自体が異常なだけに噂も尾鰭がつく。

 

「ふっ!そんなことでありんすか。

協力勢力との交流はアインズさまの命令でありんす。」

「私も気を許した覚えはありません。

彼女達をアインズ様の不利益になり得る存在から有益な存在に変えるための活動です。」

 

 アインズの命令であり、これはナザリックの為の活動。

 という大義名分をかざしているが、二人が持っている気持ちに気づかないアルベドではなかった。

 

「セバスはともかく、あなたは良い様に丸め込まれる可能性が高いと言っているの」

 

 現在、二人には紅魔館の連中に対し強い同族意識が芽生え始めている。

 それは人間で言うところの『友人』に対しての気持ちであり、ナザリックの皆に対して抱いている気持ちは『家族』に近い。

 

 しかし、つい最近まで記憶はあれど意思無きNPCだった者達にその二つの気持ちの違いがわかるはずもない。

 アルベドから見たらナザリックを蔑ろにしてる様に見えてもおかしくない。

 

  それに気に入らないのは仲良くしている姿が記憶に朧げにある彼らの創造主・至高の41人同士(友人同士)のやり取りに似ているから腹が立つのだ。

 

 

 ※※※※※※※※※※※※※※※

 

-----紅魔館-----

 

アルベドと別れたあと、シャルティアは紅魔館を訪れていた。

 

「と言うことがあったのよ。」

「その話を何の惜しげもなくわたしにする貴女の性格…まぁ、嫌いじゃないけど。

まっ、仮に暗殺に来てもアインズみたいに返打ちにしてあげるわ」

 

どう考えてもシャルティアの謀反と捉えられる発言

 

 レミリアはシャルティアと同格の存在に対し危険視していないわけではない。

 警戒し、その上で出来ると踏んでいる。

 大した自信だ。

 

 

「だいたい、アルベドは頭も腹筋も硬すぎるんでありんす」

「その子の腹筋はどうかわからないけど、あなたは緩すぎだと思うわよ?」

 

 お茶会ではそれなりには話だけど意気投合したとまではいかなかった。

 だけどそれから何度か会い、そのたびに二人の距離はどんどん近づいていた。

 

「なんででありんしょう?…

レミリアと一緒だと気が緩むのは同族だからでありんしょう?

…何故かレミリアと仲良くしていると創造主(ペロロンチーノ様)に喜んでもらえる気がするでありんす」

 

 確かにペロロンチーノがこの場にいたら萌え死んでいたに違いない。

 NPCの性格は設定に依存するが設定にない部分は創造主に依存する。

 きっとペロロンチーノもレミリアを気にいるだろう。

 

「アルベドも引きこもってないで外に出ればわかるでありんすよ」

 

 守護者統括としてナザリックの防衛を担っている彼女を引き籠もり呼ばわりは酷いが、そうかもしれない。

 

「さて、シャルティア。

お話はこの辺にしてそろそろナザリックに向かいましょ。

アインズが待っているわ。」

 

 一番最初に外と接点を持ったのが創造主があの(ペロロンチーノ)であったため希有な目で見られるかもしれないが、幻想郷の世界観にNPC達は少しずつ溶け込もうとしていた。

 そしてまた一人その兆しが現れる。

 

 

-----魔法の森・上空-----

 

 

最近、魔法の森の最奥地に新たなる領域が生まれた。

瘴気と霧の沼地だ。

後にアンデッドが湧き出ることから【亡者の沼】と呼ばれる様になる地である。

新しい領域がうまれることは幻想郷にとって珍しいことではない。

 

しかし、それはある出来事の予兆でもある。

 

新勢力と異変である。

 

遠くから沼地を眺める少女が一人。

 

彼女は霧雨魔理沙、魔法の森に住む人間の魔法使い。

白黒魔法使い、恋の魔法使い、泥棒魔女、様々な呼ばれ方をする少女は新しくできたこの変化に気分を高揚させていた。

 

異変と新勢力……それはすなわち冒険と出会い、そしてそれに伴う未知との遭遇。

これまで新しきものとの出会いは彼女の魔法を成長させてきた。

 

今度はどんなものが待ち受けているのだろうと希望で胸を膨らませていた。

 

「沼地から湧き出るアンデッド……

突如、おとなしくなった近隣の妖怪や妖精……極め付けは沼地に聳える大・墳・墓☆冒険とお宝の臭いがプンプンするぜ!」

 

 

箒に跨り、自慢のスピードで目的地まで猛スピードで駆け回る。

 

 

「ヒャッホー!!飛ばしていくぜー!!」

 

 

 

 待ち受けているものが絶望とは知らず、彼女は墳墓に向かった。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

数日前

 

「みかけない顔だな!お前、新入りか?」

「だったら何よ。」

 

 魔理沙がナザリック地下大墳墓に突撃する数日前、アウラと魔理沙はすでに出会っていた。

 

 アインズの命によりナザリック周辺地理の探索任務の最中、偶然にも遭遇してしまったのだ。

 

「私はこの魔法の森で魔法屋を営む魔法使い、名前は魔理沙。お前は?」

「アウラ……アウラ・ベラ・フィオーラ」

 

「オッケー、アウラか…よろしく。」

「(馴れ馴れしいなこいつ……)」

 

 

 魔理沙はアウラがその時連れていた使い魔、狼のモンスター、フェンリルのフェンを見て言った。

 

 

 

 

「所でそいつはお前のペットか何かか?」

 

「………だったら何よ。」

 

 魔理沙は輝く目でアウラに懇願する。

 

「こいつを私にくれー!!!」

「はあ!?」

 

 珍獣には目が無い魔理沙はフェンを見てテンションが上がっている。

 

 あまりにも積極的な言葉にアウラもフェンもつい後ずさりしてしまう。

 

「嫌に決まってるでしょ!!」

「そうだな、譲渡は虫が良すぎるな!!

なら、交換ならどうだ?」

 

 魔理沙は帽子からキノコを取り出す。

 

「これだ!!この魔法の森でも超希少品の幻のキノコだ。」

 

 見るからに怪しい。

 

「いや、いらないからソレ。」

「なんでだよ!!巨大化しちゃうぜー!!

無敵になっちゃうぜー!!」

「勝手になってろ!!!」

 

 

「じゃあ借りてくだけ、借りてくだけで良いから!!…………私が死ぬまでの間で良いから!?」

 

「返す気0(ゼロ)じゃん!良い加減にしてよ!!」

 

「なんでだよ〜お前、エルフだろ?だったら人間の寿命なんてあっという間じゃねぇか。」

「ここでアンタの寿命を終わらせても良いのよ!」

 

 なんだろうか。

 敵対する気も失せるやり取りである。

 強引かつ、図々しい。

 

「まぁ、今回は諦めるか。」

「今回は?……」

 

 

「アンタとはまた会えそうな気がするぜ。」

「私は……会いたく無いかも………」

「まぁ、そう言うな。

私はさっきも言ったが魔法店を営んでいる。

困ったことがあったら尋ねると良い。

妖怪退治から配管工までなんでも来いの霧雨魔法店をよろしく!!じゃあまたな!!」

 

 

 嵐のように現れ嵐のように去っていった。

 

「(生意気なやつ……人間のくせに(・・・・・・))」

 

※※※※※※※※※※※※

 

 マーレとアウラは今日の分の仕事を終わらせ、ナザリックに帰投しようとしていた。

 

「お姉ちゃん……今日の分は終わったよ。」

「そう、じゃあナザリックに帰ろっか。」

 

「あの魔法使い、どうなったんだろうね。」

「知らないわよ。…ナザリックに喧嘩売って無事でいられるわけ無いじゃん。」

 

 

「(なんか……機嫌悪い……さっきから。)」

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

-----ナザリック地下大墳墓第二階層-----

 

「ヘクシュッ!!

………誰か私の噂をしてるのかー?って、ただ寒いだけだよな。

それにしてもここは広いなー……

ここを作ったやつも空間を弄るのが得意なんかな。」

 

 紅魔館の図書館も咲夜が空間をいじっている。

 

 魔理沙が第二階層を飛び回っている様子をデミウルゴスは〈遠隔視の鏡〉(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を使い様子を見ながら作戦を構築していた。

 

 すでに第一階層を突破し、第二階層となっているのには理由がある。

 

 幻想郷の住人のレベルや能力を見極めるため、現在ナザリック地下大墳墓では序盤の階層第1〜5階層の難易度を下げている。

 

「………まずは様子見の『下級吸血鬼』五体ほどで………」

 

 ナザリック1の知恵者であり、強大な悪魔の手が霧雨魔理沙を襲う。

 

 

「ここまで雑魚にしか会ってないな……

このダンジョンはすでにもぬけの殻って線もありそうだな。あるいはどっかの館みたいに護る気が全くないって事かな…」

 

 などと都合の良い事を考えると目の前に悪魔の翼を携えた吸血鬼が現れる。

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 その頃、アインズはシャルティア、アルベド、レミリア、パチュリーと共に食事をとっていた。

 

「どうだ、ウチの料理長の自慢の料理は?」

「とても美味しいわよ。」

「……この食事……もしかして魔法か何かによって特別な効果を引き出す物なんじゃ……」

 

「その通りだ……

我々が元いた世界ではこう言った食事が主流になっていた。

まあ、私はこんな体なので食べたことはなかったのだがな……」

 

「…………こう言う食べ物ならわざわざ食する価値があるわね。

うちでも作って欲しいわ……」

 

 

 パチュリーがボソッとレミリアに言った。

 パチュリーは種族的な魔法使いであるパチュリーは魔力で生命を維持するため食事をとる必要が無い。

 

 

「パチェは不摂生だからね。

こう言う食事が出せればパチュリーの体にも良いかもね。

アインズ、こう言う食事はどうやって作るの?」

 

「これは特別な技術と特殊な食材が必要になっている。

食材はこの世界の物で代用できるかもしれないが、技術を習得している者はナザリックにも数が少ないから、習慣にしたいのならやはり新しく習得した者が必要になるな。」

 

「アインズがこの間言っていたこの世界の者にあなた達の技術が習得出来るか……ね。」

 

「私もアインズも魔法理論を自分の魔法に反映させるだけだからちょっと違うし……」

 

「そうだな………」

 

 お互いの技術が応用できるか、も偏にそれにかかっている。

 誰か純粋にユグドラシルの技術を習得する者がいれば確信に変わる。

 

 そこでアルベドが提案した。

「アインズ様、差し出がましいのですが人里あたりから適当に人間を攫ってくればよろしいのでは?記憶改竄などで操れば……」

 

 

 レミリアがアルベドの案を優しく否定する。

 

「私達妖怪は人里には手が出せないのよ。

幻想郷のバランスのためにもね。」

「そうでしたか、レミリア様。申し訳ありません。」

 

 アルベドはレミリアに様呼びで答えた。

 アルベドに取ってレミリアは主人が友人として招き入れた客人、様付けしてもおかしくは無いのだが……

 

「あっ、敬語も様付けも結構よ。

確か、あなたはシャルティアの上司にあたる者でしょう?シャルティアだって普通に呼んでるんだからあなたも……ね。」

 

とレミリアが提案してきたのだがアルベドは強く引き離した。

 

「いえ、シャルティアがあなたたちの事をどう思っているのか知りませんが、私はあなたたちを仲間だとは思っておりません。

あなた方はあくまでも同盟相手……状況においては敵にもなり得る存在だと思っております。

いくら私達と同じ種族の者であろうと急に来て仲間面をされるのは……」

 

 

 せっかく親しみを持って接してくれたレミリアに対しアルベドの失礼な言い方、アインズは慌てて叱る。

 

「おい!アルベド!」

「アインズ様、申し訳ありません。

アインズ様のご友人に対し失礼な物言い…

しかし、たとえアインズ様に深いお考えがあるとしても守護者の統括官としてこのナザリックの住人としてこの気持ちは変えられません。」

 

 そうかもしれないが何も本人の眼の前で言わなくても………

 この行動にはアルベドのアインズに対する思いからくる嫉妬も含まれていた。

 

 

やはり、ナザリックに他の者を招き入れる事をよく思っていない者もいるようだ。

 

「アハハハハハハ!!

良いのアインズ、怒らないであげて。

寧ろ本音っぽいところを聞けて満足よ。

確かに、私もあなた達との距離を縮める事に焦っていたのかもね。」

 

「すまない……部下が失礼を言った……」

 

「あなたも主人として想われているのね。

部下の忠義故の行動で苦労するのはお互い様よ。

この間の咲夜の件の時も言ったでしょ。」

 

 レミリアはアルベドに言い放つ。

 

「あなたはそのまま私達をいつまでも疑っていると良い、ナザリックと紅魔館、二つの勢力が近すぎず遠すぎない関係を維持するためにね。」

 

レミリアは言いたい事を言いたいだけアルベドに言うと今度はアインズに言った。

 

「良い片腕をお持ちで……

あなたに対しての絶対的な忠誠は他の誰より強い者を感じるわ。もしかして彼女を作ったのはあなた本人かしら。

彼女はサキュバスよね?パチュリーといい魔法使いは悪魔をそばに置く者なのかしらね。」

 

勘違いをしているレミリアにアインズが訂正する。

 

「いや、アルベドを作ったのは大錬金術士の称号を持つ我が友だ……だがそちらの魔法に長けていたのでパチュリーとは共通点が多い…もしかしたら関係があるのかもな……」

 

 

「あら?そうなの。じゃあ、あなたが作った者は居ないの?……」

「一応、居るには居るのだがな………」

 

 

 

「居るのなら会ってみたいわね……

あなたが作り出した存在を………」

 

 

「(アレをか………あまり出したく無い存在なのだがな……)」

 

 

 

 話が変な方向ばかりに流れる。

 アインズが話を逸らしたいと考えているとデミウルゴスから連絡が入った。

 

《アインズ様、先程報告した新入者が第二階層を突破しました。》

 

 



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泥棒-2

 

 

 デミウルゴスはアインズに現状を報告した。

 

 

「レミリア、パチュリー。

どうだろう。食後の余興と行こうか。」

 

アインズはデミウルゴスの報告を利用し、二人に提案した。

 

「待ってたわ。」

「何を見せてくれるのかしら?」

 

 期待する二人の前で自慢げにアインズが答えた。

 

「ふふっ。実は丁度このナザリックに侵入者が来ていてね。潰すことはたやすいが折角なので余興として楽しんで貰おうと思ってな……趣味が悪いことかもしれないが。」

「愚かな侵入者にはその様な扱いが妥当かと……」

 

アインズの口ぶりにアルベドが同意する。

 

「(ああ〜ナザリックに喧嘩を売ったらこうなるぞっていう警告も込みの余興ね。)」

「(確かにこういうのも悪く無いわね。)」

 

パチュリーは冷静にレミリアは興奮気味にアインズの言葉を受け止めた。

 

パチィ!!

 

アインズが指を鳴らすと目の前に魔法で展開された巨大なスクリーンが映し出される。

 

二人はそのスクリーンに映し出される映像を目の当たりにして驚く。

 

それは二人のよく知る人物であった。

 

「「魔理沙!?……」」

 

 

-----第三階層-----

 

 

現在、魔理沙は狭い通路を歩いていた。

狭いと言っても普通の道程度の広さはあるのだが箒で飛び回れるほどではない。

すると前に立ちはだかる新たなる敵の影が複数。

 

「……………今度は死者の大魔導士(エルダーリッチ)五体か…………」

 

 第二階層になってから露骨に強敵と遭遇する様になった。

 しかも徐々にレベルが上がっていく。

 倒すのが困難になってきた。

 

 

 魔理沙はぼやく。

 

「全力を出すわけにも行かないのに全力を出さないと倒せなくなってきてるぜ。」

 

魔理沙はすでに引き返そうとしていた。

 

 まだまだ戦えるのだが、残りどれだけ続くのかわからないダンジョン攻略で無理をすれば帰れなくなってしまう。

 

 しかし、ここは侵入者に対し進もうが戻ろうが遭遇する敵のレベルを上げていく仕様になっているのだろうか。引き返しているのに敵はどんどん強くなる。

 

 

 

 

 勿論ナザリックにそう言ったギミックがあるわけではないのだが、裏でモンスターを操作しているデミウルゴスが逃さない為にも、そして敵の戦力を図るために操作しているのだ。

 

 

 

 

「(最悪、アレ(・・)で無理矢理にでも脱出してやるけど………使わないに越したことはないからな)」

 

アレとは魔理沙が泥棒をするときによくやる手である。

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 魔理沙の映像を見た二人は驚きを隠せなかった。

 

 

「なんだ……知り合いだったのか。

一応聞いておこう。どんな関係だ?」

 

 

レミリアは魔理沙の事について話し出した。

 

「あなたからしたら異変を解決する人間の一人って言った方が速いわね。ウチからしたらパチェと妹のお気に入りで私からしたら霊夢……博麗の巫女の相棒みたいなものだからその分は評価している人間ね。」

 

「お気に入り?」

「妹は遊び相手として、パチェは魔法使い同士としてね。………」

 

レミリアは坦々と魔理沙について説明した。

するとアインズがマリサの名前を聞いて思い出す。

 

「……マリサ…マリサ…あぁ、人里でその名を聞いた。

確か魔法が使える人間で、元人里の勘当娘だったか。

なんだ、里の外で生き抜くために泥棒まがいの事をして食い繋いでいるのか?」

 

「……否定したいけど…否定できない……」

 

 一番の被害者であるパチュリーが言葉を濁す。

 

「手癖の悪いおてんば娘といった所か

これはしつけてやらんといかんな。」

 

 自分と仲間が築き上げたナザリックを汚されて、アインズは機嫌が悪かった。

 

「酷いことはしないほうがいいわよ。

彼女は博麗の巫女の相棒でもある…

下手をすればこの幻想郷で一番厄介な敵を相手にすることになるわよ」

 

 レミリアはアインズに忠告する。

 

 博麗の巫女の恐ろしさは純粋な力ではない。

 必ず異変を解決するその力は世界の強制力が関係している。

 

「そうは酷いことはしないさ。

そうだな…ここで働きながら素行を正して、ついでにこちらの魔法を習得できるかを試そうではないか。」

 

 アインズは先ほど行っていた事の実行に彼女を使う様だ。

 

「それは良いかもね。

売れない魔法屋よりナザリックの方が稼げそうだし。

それにあの子は結構器用で才能があるの、それに人のスペルカードを模倣することが得意なの、きっと役に立つわ。

ついでにこの辺の魔導生物にも詳しいからそっちも役立てれると思うわ。」

 

博麗の巫女の相棒ということも含め、アインズの欲しがるものを彼女は多く持っていた。

 

「正に引き入れるには最適だ」

 

 話がまとまるとアインズはデミウルゴスに確認と連絡を取った。

 

《という事だがいけるな?》

《問題ありません。直ぐに取り掛かります。》

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

-----第三階層-----

 

 再び魔理沙の方に視点を戻す。

 魔理沙は未だ第三階層をさまよっていた。

 

「くぅ………そぉ…………

帰ろうと思ってたのになんか……道に迷ったぜ…………」

 

 モンスターに遭遇しなくなったのはいいがいつの間にか方向感覚が狂わされていた。

 

「……いつの間にかトラップかなんかに引っかかってたのかなぁ。

罠回避には自信があったんだけどなぁ……」

 

 帰るつもりだったのに帰れなくされてしまった魔理沙は帰ったら何をするつもりなのかぼやく。

 

「帰ったらこの宝物を換金して……

そのお金と手に入れた魔導具で装備を整えて……万全の体制で再挑戦してやるぜ……

そうだ、今度は霊夢も誘おう……無敵巫女がついてれば鬼に金棒だし、あいつは年中金欠だからここを知れば必ずついてきてくれるだろう………」

 

 魔理沙が歩いているとボンヤリと奥の通路から光が見えた。

 

「出口か?」

 

 魔理沙がそこに到着するとそこに広がる光景は出口ではなかった。

 

 

-----第四階層・地底湖-----

 

「地底湖って奴か………

ずいぶん深くまで来ちまったのかもな………

 

(十分な広さがあるからアレを使うか?……

いや、リスクが高いから本当にやばくなってからの方がいいな………)

ここはさっきまでの墓地とは違うな……

ともかく、こんだけ広ければ箒で飛べるな。」

 

 魔理沙が箒に跨ろうとすると大きな地響きが鳴り響く。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

「なっ!なんだ!」

 

 すると湖の水面が盛り上がり中から巨大なゴーレムが現れた。

 

ザバァァァァァン!!!

 

「で…………でかいぜ………」

 

 

 大きさは30メートル程あり魔理沙などコメ粒に感じてしまうほどだ。

 

 ゴーレムから放たれる威圧感はとてつもなく。

 魔理沙はこれこそがここの唯一の切り札だと勘違いをしてしまった。

 

「(思ったよりも奥まで進んじまったみたいだぜ。

でも、ある意味結果オーライだぜ。

ここのモンスターもこのゴーレムも何かを守っている……

それがなんなのかわからないけど多分それは最も守りが強固な場所……つまりこのゴーレムを倒した奥にある!!)

こいつを倒して堂々と出口から出て行ってやるぜ!!」

 

 

 

 魔理沙はゴーレムを前に箒とミニ八卦炉を強く握る。

 

 魔理沙の運命が決まる戦いが始まる。

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 巨大なゴーレムを見て驚くレミリアはアインズに話しかけた。

 

「貴方、シャルティア、それにそこにいるアルベドに並ぶ戦闘力をもつ巨大ゴーレム……

これが貴方の切り札ってわけね。」

 

「ええ、そんなところです。」

 

 切り札が一枚とは言っていない。

 

 

 

「確かにこれを見せるだけでもいい見世物になるわね。」

「お気に召して光栄だ。」

「でも、魔理沙だって簡単にはやられないわよ。」

「ほう?」

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 ゴーレムは近くの大岩を掴み、魔理沙に投擲した。

 しかし、魔理沙は難なくかわした。

 

「遅い遅い!

やっぱでかい分動きは鈍そうだな。

今度はこっちの番だ!!

的がでかいから

 

魔符『ミルキーウェイ』!!」

 

 

 魔理沙から放たれた星型弾幕はほぼ全弾ガルガンチュアに被弾した。

 

 しかし、爆煙の中から無傷のガルガンチュアが顔を出す。

 

 

「かってぇーな!!

生半可な攻撃じゃあビクともしないぜ!

じゃあこれならどうだ!!」

 

 魔理沙はミニ八卦炉をかざし、魔力を集中させ、発射体制に入る。

 

 

 

「恋符『マスタースパーク』!!!」

 

 

 放たれた巨大ビームはガルガンチュアに向かって一直線。

高い機動力のないガルガンチュアには避けようがない。

 

バチッ!!

 

 ガルガンチュアの腕に着弾したビームは振り回されたガルガンチュアの剛腕により弾かれた。

 

「マスパを弾いた!?嘘だろ!?」

 

 流石は対人ではなく戦略級のゴーレム、その桁外れの防御力とHPを持ってすれば可能である。

 

「ぐわぁ!!」

 

 ガルガンチュアの反対側の腕の攻撃により魔理沙はピンポン玉のように弾かれ、地面に激突した。

 

 マスパのような火力の高い砲撃は足を止める、少なくとも軽快な動きは出来ない。

(ダブルスパークはおそらく動くために火力を下げてる。)

 本来、かわされるならともかく当たりさえすれば一撃必倒の技なのだがガルガンチュアのように受け止めれれば切り返して反撃ができてしまうのであった。

 

 ガルガンチュアの拳を受けた魔理沙は非常に辛そうだ。

 それも当たり前、本来何人もののプレイヤーを葬ってきたその拳、ギリギリ防御魔法か間に合ったとしてもダメージはでかい。

 

「(くそぉ……………

生半可な攻撃じゃあビクともしない。

魔砲を撃てば足が止まる………中々の詰み状態だぜ。)」

 

 本来なら火力て押すのではなく動きを止めたりして高い防御とHPを削っていく戦法をとるのだが、魔理沙はその手の絡め手が得意ではない。

 

「しょうがねぇ。アレをやるか……

ついでに脱出経路も確保してやるぜ。」

 

 魔理沙は再びミニ八卦炉に魔力をため始めた。

 

 魔理沙の脱出のための切り札とは全力全開の砲撃で壁に大穴を開けて地上への直通道路を作ることだった。

 しかし、ここは各階層が空間で仕切られているダンジョン、本来なら物理的に穴を開けることは不可能なのだが、莫大な魔力と桁外れの火力で空間に負荷をかければ突破は可能と考えていた。

 

 しかし、それはリスクが高い行動であり、空間関係のアクシデントや崩落による生き埋めも視野に入れなければならない。

 そのことも含め、最後の切り札として残していた手だ。

 泥棒して壁に穴を開けて逃げるいつもの魔理沙の手だ。

 

 今回はその桁外れの砲撃をゴーレムに当て、防御もHPもぶち抜いて壁に大穴を開けてやろうとしていた。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

「何をするかは知りませんが、貴方ごときの力ではガルガンチュアは倒せませんよ。」

 

 別室でモンスター達の指揮をとっていたデミウルゴスは数々の戦闘を元に魔理沙の戦闘能力をほぼ(・・)把握していた。

ゆえに先程の砲撃が彼女の最大火力だと思った。

 

 しかし、魔理沙の異変に気付いたデミウルゴスは慌て始めた。

 

『うぉぉぉ!!』

 

 ミニ八卦炉に徐々に溜まっていく魔力。

そして中で何倍にも膨れ上がるエネルギー。

 

 魔理沙の持つ魔導具の中でもそれは少なくとも神級(ゴッズ)アイテムに匹敵するものであった。

 

「なんだ!この魔力は!?」

 

 慌てて回避するようにガルガンチュアに命令を出そうとしたがもう遅かった。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

 人とは思えないほどの莫大な魔力。

 そこから放たれる砲撃は超位魔法にも匹敵する。

 

 

 

 

「行くぜ!!!

魔砲『ファイナルマスタースパーク』!!」

 

 

 

 

 

 

 魔理沙のミニ八卦炉から放たれた超巨大なビームはガルガンチュアを飲み込み、第四階層を光で包んだ。

 

 ビームの中に身を置きながらガルガンチュアは未だ耐えている。

 

魔理沙は負けじと追加でどんどん魔力を送り込み、意地でも止めを刺しに来た。

 

「いっけぇぇぇぇ!!!」

 

 別室で様子を見ていたパチュリーは光に包まれ、様子の見えない魔理沙を心配する。

 

 

 

 轟音と激光がやみ、次第にあたりが確認できるようになるとアインズ達もデミウルゴスも慌ててあたりを確認する。

 

 

 砂埃の中、人影を確認できた。

 魔理沙だ。

 

 

魔理沙の無事な姿を見て安心するパチュリー

しかし、魔理沙の前には巨大な影が、ガルガンチュアが立ちはだかっていた。

 

 

「ふっ…………もう、煙も出ないぜ………」

 

パタリ

 

 

 

 後のことを考え、多少の魔力を残すつもりだったが、残る全魔力を投入しても目の前のゴーレムは倒せなかった。

 ダメージは入っているのだがHPを削りきるには至らなかったのだ。

 

 魔理沙は魔力切れでその場で倒れこんだ。

 

 



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泥棒-3

「…………ここは、どこだ………」

 

 ガルガンチュアに敗れ、気を失った魔理沙は真っ暗闇の中で目を覚ました。

 

 チャリッ!

 

 体を動かそうとすると手足首が鎖で拘束されていることに気づく。

 

「ようこそ、侵入者……」

 

 真っ暗闇に灯る一つの蝋燭の火。

 その光に灯されるは机に腕を立て、頭を支えながらこちらを見るアインズの姿であった。

 

「が……ガイコツ!!」

 

ニュルッ!

 

「!!!」

 

 触手が魔理沙の首元に忍び寄る。

 

「この小娘はアインズ様になんて物言いをするのかしら?……」

 

 暗くて姿はよく見えない。しかし、肌に感じる触手の感触は魔理沙を恐怖するのに十分すぎる演出だ。

 

「ひっ!!………

だ…誰か!……助けてくれ!!」

 

「誰も助けになんて来ないよ。」

 

 ろうそくを持ち徐々に近づいてくるアインズに魔理沙は叫んだ。

 

「近寄るな化け物!」

 

 

「化け物か……確かにこの姿ではそんな風に言われても仕方ないな………

だがな…………貴様はその化け物に喧嘩を売ったのだ!」

 

 アインズは魔理沙の顎を掴み持ち上げる。

 ガイコツであるアインズの顔と魔理沙の顔がすぐそばまで近づく。

 魔理沙は恐怖で涙目だ。

 

「その身の愚かさを深く後悔しろ……ニューロスト、恐怖公……始めろ。」

 

「「はっ!!」」

 

 先ほどの気持ち悪い声とまた別の声が部屋に響く。

 

ニュルッニュルッ

 

 再び、魔理沙の体を触手が襲う。

 今度は複数の触手が………

 

「やめろっ……やめてくれぇ!……」

 

カサカサカサカサカサ………

 

ゾクッゾクッゾクッ!!

 

「!?」

 

 触手だけではない、足元から這いのぼるそれは昆虫の類の音、そして目の前までソレが来ると魔理沙は正体を確認する。

黒光りする昆虫、それは女性の恐怖の対象であった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

魔理沙の叫びがナザリックにこだました。

 

 

 

 

 

「おいおい、二人とも……あまりやり過ぎるなよ。そいつには利用価値があるんだ。

壊したらつまらん。」

 

 

 

 

 

 

アインズが余裕の顔で二人に言った。

 

 

 いくら利用価値があるとは言え、このぐらいの罰は受けてもらわないと自分もナザリックのメンツも納得できない。

 

 自分としてはそれでも生温い過ぎると深々と思うが、それもこいつを殺した時の幻想郷の影響を考えたらリスクが高い。

 

 

その日、魔理沙の悲鳴は一日中響いた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 拷問後、魔理沙が気絶した事を確認したアインズはいかに魔理沙を手懐けるかを考えていた。

 

 この手の輩は脅しても逃げ出すのが関の山だ。

 

「さてと、やはり首輪をつけでおかないとな。

…やはり〈支配〉(ドミネート)か、〈人間種魅了〉(チャームパーソン)か…」

 

 アインズが精神支配を決行しようとするとそれを止めるものがいた。

 

「待ってください。」

 

 周囲探索を終えて戻ってきたアウラであった。

 

「どうした?アウラよ」

「そいつ、私にいただけませんか?

勿論、我々のスキル取得の鍛錬もさせますから」

 

アインズは考えた。

元々、周囲探索の協力もさせたかったのでアウラに預けるのは問題ない。

この女の生活上、魔術師より狩人スキルの方が覚えやすい可能性が高い。

 

「構わないが、理由を聞かせてくれ。」

 

アウラが自らこの様な事を言い出すとは思っていなかったアインズは理由を気にした。

 

「この間、コイツとは森で会っていまして…」

「報告にあったな…」

 

「正直、生意気で図々しいけど面白いやつなんで精神支配で人形みたいになるのはもったいないかなって。

そのかわり何かあれば私が責任を取りますから」

 

「精神支配しない利点は分かったが、お前が責任を取るほどではないよ

…だが、正直にいって欲しい。何故コイツが欲しい?」

 

 正直、90レベルにも満たない小娘一人が反逆してもどうにでもなる。

 気になるのはアウラが欲しがる理由だ。

 アウラも他のものほどではないが人間を嫌っている。

 そのアウラがどの様な風の吹き回しだろうか。

 

アウラは正直に答えた。

 

「シャルティアばっかずるいな…って」

 

 その答えが意外すぎて、そして嬉しくてアインズは高らかに笑った。

 

「フハハハハハハッ!」

 

 まるで出来たばかりの妹に嫉妬する姉の様な、創造主的には弟だがNPCとしてではなく人格を持つ人の様な思想にアインズが嬉しくないはずがなかった。

 

「すっ!すいません、アインズ様!」

「いや、いいのだ。私は嬉しいぞ、本心を聞けて、よかろう!」

 

 アインズはペットを拾ってきた子供に言うようにアウラに言った。

 

「ちゃんと、面倒を見るんだぞ」

「はい!!」

 

 まるで親子の様な会話。

 正し、ペットが人間である事を除いて。

 

※※※※※※※※※※※※

 

「う…」

 

魔理沙が目を覚めると自分は鎖に繋がれており、薄暗い部屋に閉じ込められたままであった。

 

「目が覚めたか…」

 

 骸骨の男の声が聞こえる。

 そちらに目を向けると男は椅子に座っており、少女を膝に座らせていた。

 

「アウラ…だったよな…」

 

 この間、森で見かけた少女だった。

 

「そうよ。魔理沙」

 

 二人の会話を遮る様にアインズが魔理沙に言った。

 

「さて、愚かな侵入者よ。

貴様は私の大事なナザリックを汚した。

その罪は罪は重いぞ。」

 

「……初犯だから情状酌量を求めたいぜ…」

 

 何が初犯だと言いたいところだ。

 

「それは人間の法だろう?

我々(妖怪)にその理屈が通じると思うなよ。」

 

ゴクッ…

 

 魔理沙はアインズの殺気から緊張で唾を飲む。

 

「どうすれば許される……」

「そうだな。

本来なら死さえ、生温い拷問を受け、ありとあらゆる実験の非検体となり死んでも復活させ貴様が完全に壊れるまで利用しつくのだがな。

アウラの頼みもあり条件次第では許してやろう。」

 

 魔理沙は先程の拷問は序の口であると知り顔を青ざめる。

 許される条件もそれ相応なのだろう。

 

「霧雨魔理沙、我が軍門に下れ!」

 

 破格の条件だが、それは支配という魔理沙が嫌うものだった。

 しかし、こうなっては仕方ない。

 魔理沙は悔しがり言葉を漏らす

 

 

「私は自由が好きなんだ…

だから力をつけて里を出たのに…」

 

 悔しがる魔理沙にアインズが答える。

 

「だろうな。

里でお前の噂を聞いた。

だが、一人で生きるにはまだ力不足であったな…

だが、都合がいい、ここで強くなるが良い。

ちょうど貴様の仕事の一つが強くなる事だからな」

 

 幻想郷の住人のユグドラシルのスキル取得の事だ。

 

「これ以上の拒否権は無いんだろうな。」

「あぁ、貴様には先ほど裏切ったと私が判断したら死ぬ魔法をかけてある(嘘)」

 

 そんな魔法は勿論無いがこういっておけば逃げ出すことはないだろう。

 

「わかった…あんたたちに従う。

ただし、人殺しの仕事とかは勘弁してくれよな。」

「元からそのつもりはない。約束しよう。」

 

 話がまとまったところでアインズが高らかに宣言した。

 

「これより、霧雨魔理沙を第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラの直属の部下とし、専属メイドとしての任を与える!

しばらくはプレアデスの元で指導を受けるがいい」

 

「「……メイド?……」」

 

「少しは躾になろだろうさ。」

 

 アインズの意外な言葉に魔理沙は声を上げた。

 

「うそだぁぁぁ!!!」

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

それから一週間ほどが経過した。

今日もまた、パチュリーとレミリアは遊びに来ている。

 

 

「お紅茶をお持ちしましたぜ……」

 

そこにはメイド姿で働いている魔理沙の姿があった。

 

ギロッ

 

メイド長のユリのきつい眼差しに怯え、すぐさま言葉遣いを直す。

 

「すいません。お持ちしました………」

 

 

 

 

 基本的にはメイド達に任せ、必要に応じ魔法使いの勉強会に参加させたり、アウラとマーレの魔法の森探索に協力させる事にした。

家も第六階層に移され、住み込み状態だ。

 

 

 

 

 しかし、意外な事に魔理沙の待遇は決して悪くなかった。

 前にアインズが考えた人間でもこなせる休暇、休息を十分に取れる仕事スケジュールで休暇には外出も許可するつもりだ。

 

 人間でもナザリックで働けるというテストとしても十分な成果である。

 

 また、パチュリー以上にナザリックにとどまれるため、新しい魔法の勉強も中々はかどっている。

 アウラの手伝いをすることで今までの魔法研究も並行できる。

 

 

「中々似合ってるじゃない、馬子にも衣装よね。」

「しばらくはいい薬になるんじゃない?」

 

 レミリアとパチュリーがメイド姿の魔理沙をからかう。

 

 

「茶化さないで助けてくれよ〜」

「これでもだいぶ助けたんだけどね……

あなたの受けたやつの数十倍の拷問を受けた上にアンデッドにされるよりはマシでしょう?」

 

「確かに………あれは二度と味わいたくないぜ……」

 

 

ピシィ!

 

「いたっ!!」

 

 ユリが魔理沙のお尻を軽く鞭で叩く。

 

「変な語尾をつけない!

普段は多めに見るけど今はアインズ様のお客様の接客中、たとえ知り合いが相手でもTPOはわきまえて貰います!」

 

「うぅぅぅ………」

 

 友達に弄られ、躾役には叱られた魔理沙は持ち前の勢いの良さをなくす。

 

すると魔理沙を呼びに来た人が部屋を訪れる。

 

 

コンコンコン!

 

「失礼します。」

 

 それはプレアデスの一人、ソリュシャン・イプシロンであった。

 

「これはこれは紅魔館のお二方……

申し訳ありませんがこのダメイドを少しお借りします。」

 

ソリュシャンはレミリアとパチュリーとは裏腹にキツイ言葉で魔理沙に命令した。

 

「人間、アウラ様がお前の事をお呼びだ…

とっととここを片付けてアウラ様の元に急ぎなさい。」

 

ソリュシャンに限らずナザリックに住まう者の中には人間を下等生物程度にしか思っていないものが多い。そういう意味では居心地はすこぶる悪い。

 

「アウラが?……よかった……助かった……」

「様!をつけなさい!」

「いたっ!!

……ごめんなさい……では失礼します。」

 

 



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異変-序

 

 

魔理沙がナザリックで働きだして一週間程経った頃。ナザリックはある転機を迎えようとしていた。

 

-----玉座の間-----

 

 アインズを筆頭にナザリックに忠誠を尽くしているものが集められていた。

 

 

「すでに皆の元に届いていると思うが、これを見てくれ。」

 

アインズは何も書かれていないカードをかざした。

 

「コレはこの世界に来て私とパチュリー・ノーレッジと共に作った初のマジックアイテム。

空白の(クリア)カード』だ。

これは使用者の力の一部を封じ込めて置き、宣言により弾幕を展開するもの……」

 

 注意事項は回数制限のあるスキルをこのアイテムを使って増やす事はできないという事。

 

「これを各領域守護者及び階層守護者に渡してある。

この世界での決闘法『弾幕ごっこ』に必要なものだ。これを使い、異変を起こす。

皆、準備はできているか?

シャルティア!……」

 

アインズは準備ができているか順番に名前を呼んで確認した。

 

「はい、レミリアのカードを幾つか参考にさせてもらいましたが私の美しさを表現できる代物が出来上がりましたでありんす。」

 

「よろしい、次にコキュートス!」

「言ワレタ通リ作ッタノデスガ果タシテコレガ弾幕ト言ッテイイモノカ……」

 

「構わん…アウラ、マーレ。」

「か…完了してます。ご命令通り、エルフらしく、魔法使いらしく、そして何よりナザリックのぶくぶく茶釜様がご創造された守護者であるボク達らしい物に……」

「どんなものがいいか、魔理沙からもいいアドバイスをもらいました。

中々、役に立ってくれています。」

 

「(火力主義になってないといいが…)

次にデミウルゴス。」

「問題ありません、すべてはアインズ様のお考え通りに……そして、我が創造主ウルベルト・アレイン・オードルの名に恥じないものを……」

 

「(凶悪そうだな………)

よかろう。最後にアルベド……」

「はい、守護者統括として、ナザリックを守る最後の盾として……アインズ様の傍にいる一人の女として最高の一品をご用意しました。」

 

「……そ、そうか……期待しているぞ。

異変中は専用のルートを構築しそこに各守護者を配置する。

…………守護者は道中に領域守護者を配置する許可を与える。」

 

アインズはこれまでのことを振り返りながら宣言した。

 

「この世界に来て早数週間ほど経った。

転移した当初、掲げていた異変という目標が目の前まで迫った。

 

人の情報を集め(人里)………妖怪の情報も集めた(紅魔館)。

そして異変を戦い抜く武器(スペルカード)を揃え、解決者を本気にさせる餌(魔理沙)をも手にした。

 

すべての準備を整えた今私は宣言する。

 

諸君!異変を始めようではないか!!」

 

 

 

うおおおおおおおお!!

 

 

アインズの掛け声に応じてナザリック全モンスター達が雄叫びをあげる。

 

「スペルカードを手に少女達の遊びにナザリックの威を示せ!!

楽しい弾幕ごっこを始めようではないか。」

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

魔理沙が酷い目にあっている間も、幻想郷では何時もの平和な時間が流れていた。

 

 

-----博麗神社-----

 

 その日、博麗神社の巫女の博麗霊夢は友人のアリスを呼んで居間で最近魔法の森で渦巻いている不穏な空気について話し合っていた。

 

 

「最近魔法の森からスケルトンとかゾンビとかが湧いて人里に被害が出てるらしいわね……

アリス、貴女も魔法の森に住んでるんでしょう?なんか知らない?」

「そんな事より魔理沙でしょう!!最近こっちには来てないの!?

何かあったのよ!絶対そうよ!!」

 

 魔理沙の行方不明で軽くヒステリックを起こす魔法の森のもう一人の魔法使いアリス・マーガトロイド。

 

「心配しなくてもそのうちヒョッコラ出てくるわよ。

魔理沙が一週間ぐらいいないのなんてしょっちゅうじゃん。」

「いつの間にか家ごと無くなってたのよ!!」

「(ついに魔砲で吹き飛んだか…………)」

 

「うぅぅぅぅぅ!!マリサァァァァァ!!!」

「うるさい!」

 

あまりにもうるさいので叩いて黙らせる霊夢。そして、最近の人里事情について話た。

 

「人里に新しい魔法使いがやってきたみたいね。私はまだ会ってないけど。

なんか、魔法で商売をするらしいわよ。」

「魔理沙みたいに中途半端になるでしょ多分。」

 

 

二人が話していると横で呼んでもない面子が話している。

 

 

「…………最近……幽々子様の食欲がますます増えて………食費が家計を圧迫し始めて…………」

「妖夢も苦労してるのね………私もてゐの悪戯が度をすぎていてね…………今に始まった事じゃないけど…………」

 

白玉楼の庭師、魂魄妖夢と永遠亭の月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバである。

お互い主人を持つもの同士気があうようだ。

 

「そこ!呼んでもないのに何を井戸端会議してるのよ!

ここは愚痴を聞くところじゃないのよ!!」

 

 

霊夢達が何時ものやり取りをしていると意外な人間が博麗神社を訪れた。

 

 

 

「あらあら、こんなにも人が集まって。

今日は何のご相談かしら?今日は永夜の異変について話を聞こうと思ってましたけどまた新しい異変でも起こるのかしら?」

 

「阿求じゃない………珍しいわねこんな所まで………」

 

彼女は稗田阿求、幻想郷縁起の著者であり転生を繰り返す稗田阿礼の子。

 

「人里に新しい案内人が出来たからおかげでここまで妖怪に襲われず楽に来れたわ。

ああ、彼らです。サトルさん、ナーベさんこっちですよ。」

 

阿求に呼ばれ縁側まで足を運ぶ二人。

 

 

 

「こちら、今代の博麗の巫女の霊夢さんです。」

サトルは手を出し握手を求めながら挨拶をする。

 

「どうも、この度人里に越してきた鈴木サトルというものです。

話は色々聞いてます、博麗の巫女さん。どうぞよろしくお願いします。」

 

これがサトルと博麗霊夢の初対面であった。

 

「(商売仇………………)」

「(うわー今、メッチャ嫌な顔をした。)」

 

最悪のスタートであったのは見ての通りだ。

 

「こちらこそよろしく。人間の魔法使いさん。」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

幻想郷における中堅メンバーもとい自機組が集っていた頃、幻想郷の重鎮達も集まり、これから起ころうとしている異変について話していた。

 

-----白玉楼------

 

 

「なるほど…最近霊魂が騒がしいのは其の所為ね……」

「多分、近々異変に発展すると思うけど其のために私も準備がようやく目処がついたわ…これだけ働いたのは久しぶりよ…」

 

「お疲れ様…

貴女の話を聞く限り幻想郷のどの勢力よりも強いんでしょう?

私も妖夢と一緒に出ようかしら。」

 

「其の事なんだけど幽々子…………

今回の異変、貴女だけは絶対にでちゃいけないから………」

「何で?人手と戦力が欲しいのでしょう?」

 

「貴女と相手の能力の関係よ…………」

 

 アインズは死霊系の魔導士として最高位に位置する存在、幽々子は「死を操る程度の能力」を持つ、ともに死に関する力を持つもの同士である。

 一見、お互いアンデッドなら死なないからお互いの能力が相殺されるだけで何の効果も無いように見えるがそれは違う。

 

 お互いアンデッドであるが其の成り立ちが大いに違うのであった。

 幽々子は亡霊であり、其の力も肉体も能力も生物の(たましい)に異存する。

 逆にアインズはゾンビやスケルトンなどを作り即死系の魔法も肉体に異存するものが多く(たましい)ではなく(たましい)に異存する。

 

(たましい)(たましい)

 

 幽々子とアインズ、(たましい)(たましい)の力がぶつかった場合、起こる事象は相殺ではなく相乗、溢れ出した死の力により生者と死者の境界が乱れ幻想郷そのものにも被害が出る。

 

 通常のゾンビなどの下位アンデッドではでは幽々子の力が強すぎて相乗仕切れずここまでの事態には発展しない。

 しかし、アインズ程のアンデッドであれば其の相手としては十分すぎる。

 つまり二人は最も相性の悪い存在同士である。

 

「でも、所詮はゲームの設定で手にした力よね?

紫が恐れてるほどの事態にはならないと思うけど?」

「念の為よ、念の為。

流石に出会うだけでそうなるとは思えないけど戦うのはやめて欲しいの………

だから今回幽々子は不参加ね。」

 

「そう……残念。

紫が気にしてる坊やがどんなのか見てみたかったけど…………」

 

二人が話していると誰かがドタバタと廊下を歩いてくる音が聞こえた。

 

 

「紫ー!紫ー!いるんでしょう!!出ていらっしゃい!!」

 

永遠亭のお姫様、蓬莱山輝夜と其の従者八意永琳だ。

 

 

「人の家にズカズカと………蓬莱人(不老不死)のお姫様が冥界(死者の集う地)に何の用かしら!」

「貴女には用は無いわよ。ここに紫が来てるって聞いたから来ただけ。

こんな所一秒だっていたく無いわよ。」

 

 二人も中々、仲が悪そうだ。

 

「それより!!紫!これはどういう事よ!!」

 

 輝夜が声をあげ、コンソールを片手に紫に怒鳴りつける。

 

 

「ああ、そう言えば貴女もこのゲームやってたわね。

今度、幻想入りしてきた勢力、そのゲームの住人だから………」

 

 紫の適当な流しっぷりに怒りがこみ上げる。

 

「ふざけんじゃ無いわよ!こんなのゲームだから許されるようなチートの塊じゃない!

そんな奴ら呼んでどうしよっていうのよ。」

 

 

 

 

「そうだ、今度の異変。貴女も出たら?

ゲームの知識があればある程度の対策もできるし………」

「無視……………かい!?」

 

軽くあしらわれる姫に変わり永琳が紫に問いただした。

 

「冗談はともかく、紫。

貴女、何を企んでるの?………事と次第によってはただじゃすまないわよ?」

 

二人の視線が合う。

 

「…………大丈夫よ、少なくとも今回は『月』とは無関係よ。」

「本当でしょうね…」

「勿論よ…」

 

 

 

 二人の間に緊張が走る。

 

 

 

「わかったわ。とりあえず貴女の言葉を信じましょう。

姫様も珍しくやる気があるみたいだし………私も一枚噛むことにするわ。」

 

「きっと楽しいわよ。」

 

 

 これにより敵味方込みの永夜異変のメンバーによる大人数参加の異変解決が確定した。

 



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異変-1

『異変』編は当時から気合を入れて書いたところだから細かいところ意外はほんとに以前のままになりそうですね。


 始まりは妖怪達が活発に動き回る深夜。

 

 場所は魔法の森に新く出来た沼地……その中心に構える墳墓。

 

 そこに住まう死の魔法使いが不死の軍勢を生み出す大魔法の実験を取り行っていた。

 

 しかし、不死の軍勢を呼び出す大魔法は暴走し墳墓から大量の屍人が溢れ出した

 

 屍人は本能のまま生者を求め、幻想中へと侵攻していくことになる。

 

 ゆっくりと……でも確実に侵攻していく屍人達は幻想郷各地に広がっていた。

 

 深夜に発動した異変も朝方には幻想郷全域に広がり幻想郷の住人たちを震撼させていた。

 

 

------魔法の森-----

 

「何よこれーーー!!!」

 

 魔法の森に住む妖精、光の三妖精の一人サニー・ミルクは住処の大木の窓(?)から外の様子を見ると驚く。

 

「サニーうるさい!奴らに気づかれたらどうするの!」

「………ここにいる限りは大丈夫だと思うけど……」

 

 同じく光の三妖精のルナ・チャイルドとスター・サファイアが続く。

 

「異変……よね?」

「異変も異変、大異変よ。これじゃおちおち外にも出れないわ。」

「サニーとルナの能力を使えば出られなくはないけど解決するまでは大人しくしていましょう。」

 

 大抵の妖怪は早々に食われるか隠れ家に身を隠しているしか術がなかった。

 

-----太陽の畑------

 

 見渡す限りの向日葵の畑。

 今は夜から朝方にかけての時間であるため向日葵は下を向いているが、これだけ向日葵が立ち並ぶのは壮観である。

 

 そこでは向日葵の世話人である風見幽香が一人で畑を守っていた。

 

「花符『幻想郷の開花』………」

 

 幽香のスペルカードにより花が咲き乱れ弾幕となりゾンビを襲う。

 

 何体も薙ぎ払うことが出来たが、まだ残っているゾンビがいた。

 

 幽香は今度は茨の植物でそのゾンビを突き刺した。

 

「薄汚い屍人め………そのまま私の花達の肥料になりなさい。」

 

 彼女は幻想郷でも最強クラスの妖怪だ。

 たとえ一人でも問題ないだろう。

 

 

 

-----霧の湖-----

 

 

 霧の湖付近に住む妖精チルノもゾンビ達と遭遇していた。

 

「くらえ!あたいの最強スペカ!

氷符『アイシクルフォール』!!」

 

氷の礫が派手に突き刺さる。

しかし、すでに死んでいるゾンビは動くのをやめなかった。

 

「しぶといヤツ………」

「最強じゃなかったのかー?」

 

チルノと共にゾンビに応戦するのは宵闇の妖怪ルーミアだ。

 

氷に閉じ込めたりして完全に動きを止めることも出来るが一体一体にそんな事をしていたらキリがない。

 

「ちょっと調子が悪いだけよ!

ほら!アレならいくらでも食べていいわよ!いつもみたいにやっちゃって!」

「あれ………美味しくなさそう……」

 

 チルノの氷もルーミアの闇もゾンビに相対するのは相性が悪い様だ。

 

 

 

 少々やばい状況の二人に助け舟が出される。

 

(みんな)、思う存分食べていいよ。………」

 

ゾワゾワゾワゾワゾワゾワ

 

 どこからともなく大量の蟲が現れ、ゾンビ達を食い尽くしていく。

 

グチャグチャ!

 

 嫌な音を立てながら蟲達はゾンビを食い荒らしていく。

 

「手伝いに来たよ。」

「間に合ってよかった〜」

「チルノちゃ〜ん!」

 

それはチルノ達の心強い友達であった。

 

「リグル!」

「ミスチーに大ちゃんも!」

 

妖蟲の妖怪リグル・ナイトバグと夜雀の妖怪ミスティア・ローレライ、最後に大妖精の大ちゃんだ。

先ほどのはリグルの能力で操った蟲達の様だ。

いくら食人妖怪のルーミアでも腐った死体は食べれない、でも蟲なら問題なく食いつくせる。

 

「大ちゃんにチルノが大変そうだから手伝いに来てって言われてね。

私も一人じゃ辛かったから一緒にこの異変を乗り越えよ。」

 

リグル達の参戦にチルノはニコッと笑う。

 

「さあ、皆!最強のあたいについてこーい!」

「「「「おー!!!」」」」

 

 

 異変が起きることに慣れている幻想郷の住人はこの前代未聞の大異変に最初は戸惑いながらも力を合わせ、乗り越えようとしていた。

 

 

-----人里-----

 

 

 

「里の中央にみんな集まるんだ!

大丈夫だ、結界を張ってるから奴らは一気に攻めてくることは無い。」

 

 人里を護る半人半獣の妖怪、上白沢慧音もいち早くこの異変に対応した一人であった。

上白沢慧音は結界を張り里のもの達を集めて回っていた。

 

「「先生……」」

 

 指揮をとる慧音に不安がる子供がすがりよってくる。

 

「お前達か……」

 

「怖いよ……」

「私も……」

 

 奴らをこの目で見てしまったのだろう怯えて慧音の服を握りしめる。

 

「大丈夫……先生達がついてる。」

 

 慧音は子供達を慰め、安全な所に避難させた。

 

 

 

 

 慧音の張る結界は自身の能力、『歴史を食べる程度の能力』によって作られたもので一時的に人里を歴史から隠すことにより妖怪達から見つからない様にした認識阻害系の結界である。

 

 物理的な結界では無いため完全ではなく、偶然紛れ込んだ屍人は別の遊撃隊が処理していた。

 

 

「ちゃんと成仏できる様に火葬してやる。

死ねる体の奴は屍人になんてならずに大人しく死んで置く事をオススメするよ。

『火焔竹筒』!!!」

 

 妹紅は自分ごと屍人を炎の筒で巻き込み、消し炭にした。

 

「後、どんだけいるんだか……」

 

 そこで妹紅に魔法による通信が入る。

 

《「下等生物(クマムシ)……そこから北に600メートル先に新たな反応が三体だ。わかったら早く行け。」》

 

《「わかったよ!言われなくても急ぐよ!

……あと、今の悪口は不死身の私に対するチョイスか?」》

《「……………」》

 

人間嫌いのナーベラルの悪口にも慣れたご様子だ。

 

 魔法による通信の先には高い所に立ち、兎の耳を生やしたナーベラルが立っていた。

 

兎の耳(ラビッツイヤー)

 遠くの音を聞き分けることができる魔法だ。

 他にも幾つかの探索魔法を併用して周囲を探索しながら妹紅達に命令をしているのだ。

 

《「でも意外だよな……

いくら通信範囲とは言えお前がサトルの単独行動を許すなんて……

てっきり意地でもついていくと思った。」》

 

効率を考えれば当然だ。

一人が探索に専念し指令を出した方が効率がいい。

 

《「知った様な口を聞くな。

これもサトルさんの命令だ。

 

…それに、簡単にはやられませんよ。

あのお方は。」》

 

 

《「??………まあ、その意見には同感だ。」》

 

 

 

 なんとも言葉に違和感を感じる妹紅であった。

 

 

 

《「ナーベ、余計な事を喋るな。」》

《「申し訳ありません。」》

 

 同じく通信をつなげているサトルにお叱りを受けた。

 

 そして新たに反応が確認された。

 

《「サトルさん、そこから西に200。」》

《「了解。」》

 

 

 

 サトルは人里を〈飛行(フライ)〉の魔法でかける。

 

 

「(ナザリックから溢れ出したゾンビは生者を喰らいゾンビを増やす。

相手が妖怪でも肉体があるものならアンデッド化するのは実験済み………

これは人間、妖怪どちらに取っても脅威的な異変となりえるでしょう………

 

しかも後々の事を考え、人里の被害を抑える為、私を動員する思慮深さ。

 

事前にこの危機を察知できる様に上白沢女史を誘導し、結界を張らせる。

紛れ込んだゾンビは我々が処理をする。

情報操作と人里の戦力計算を考慮した見事な作戦。

 

オマケにこの異変でこの姿(サトル)の私が活躍すれば人里の人間の評価も格段に上がるというもの。

 

全ては計算尽く……

流石は私の創造主モモンガ様!……いえ、アインズ様!!!

 

そのアインズ様に任されたのだ。

この仕事、完璧にこなしてみせますよ!)」

 

 このサトルの姿をしている男の正体はパンドラズアクター。

 人に姿を変えれるドッペルゲンガーでありナザリックの宝物殿を守護する領域守護者にしてアルベドやデミウルゴスと同等の知力を持つアインズ自ら作ったNPCである。

 

 今回、アインズもといサトルの影武者をさせる為に派遣したのだ。

 

 パンドラズ・アクター…いや、サトルがほぼ自作自演の英雄行動をしていると通信が入る。

 

《「すまない!こちらで問題が発生した。

一度こちらに戻ってきてくれ!」》

 

 上白沢女史からの通信だ。

 サトルは慧音の元に急いだ。

 

 人里の皆が集まる場所に到着すると慧音に抱っこされている一人の少女がいた。

 その周りにはその子の両親であろうか男性と女性が寄り添っていた。

 

少女の息は荒く徐々に青ざめて行っている。

 

「逃げ遅れて奴らの攻撃を受けたんだ。

体温もどんどん下がって行っている……

このままじゃまさか……」

 

 そう、このままでは少女もゾンビと化して周りの人間を襲うだろう。

 人里の被害を最小限に抑える作戦だが、こうなる可能性は当然あった。

 

 必死で呼びかける両親の声も虚しく、少女の命は風前の灯火だ。

 

「諦めんじゃねぇ!私がこの子を永遠亭まで連れて行く!永琳ならなんとかしてくれる!」

 

 妹紅が最後の希望をかけて少女を永遠亭まで連れて行こうとする。

 

 しかし、彼女は知らない。永琳はとある事情によりこの時、永遠亭を離れていること。

 

「ダメですよ。あなたにはここを守ってもらわないといけないんですから。」

「じゃあ、この子を見殺しにしろってのか!」

 

 早まろうとする妹紅をサトルが止める。

 

「被害を最小限にするには今すぐここで殺すしか無いですね。」

「テメェ!!」

 

ナーベラルの言葉にマジギレの妹紅はナーベラルの胸ぐらをつかむ。

 

「落ち着いてください。」

「落ち着いていられるか!!」

 

「もう一度言います。落ち着いてください。

この子は………僕がなんとかします。」

 

 

「…………何!?」

 

 

するとサトルは黒い靄に手を入れあるものを取り出す。

アイテムボックス、そこからとあるマジックアイテムを取り出したのだ。

魔法の薬、魔法薬だ。

 

「娘を助けてください。」

 その子の両親はその薬が希望だと知りサトルにすがりつく。

 

 また一つ、また一つ。

 サトルは人里で栄光をつかんでいく。

 全て彼の計算のうちである事に誰も気づかず。

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

------妖怪の山-----

 

 そこは天狗と河童が統治する地、ここにもゾンビは侵攻してきていたが、麓の方で見張りをしている天狗達によって止められていた。

 

「切っても切ってもキリが無いですね。」

 

 妖怪の山の白狼天狗 犬走椛もそんな妖怪の山を護る天狗の一人だ。

 そんな椛が上を見上げると黒い翼を広げカメラを持って山を下りていく上司の姿が見えた。

 

「…こんな忙しい時にどこに行く気なんですかねあの人は……」

 

 

上空をものすごい速さで飛ぶのは新聞屋の烏天狗、射命丸文である。

 

「ゴメンねー椛。

でも、ジャーナリストとしてこんな異変を逃すわけにはいかないのーってね。

 

取り敢えず要注意人物の動向をチェックしますか。

まずは異変解決のスペシャリスト博麗霊夢さんの所ですね。」

 

 目標を決めた文は幻想郷最速のスピードで空をかけた。

 



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異変-2

-----博麗神社-----

 

 

 墳墓から屍人が溢れ出したこの異変。

 異変解決を生業にしている博麗神社の巫女博麗霊夢は異変解決のための準備を終わらせていた。

 

「とんでもない規模の異変ね………これを起こした犯人は何を考えているのやら。」

 

 敵の考えなんてわかった試しなど無いが、基本異変を起こそうとしている妖怪は頭がおかしく思えることの方が多い。

 

 しかし、朝起きたら家の外がバイオハザードだったなんて洒落にもならない。

 気づいたから良いものを結界を張るのが遅ければ今頃霊夢も屍人の仲間入りだ。

(気づかないのも博麗の巫女として問題だが。)

 

 準備を終えた霊夢はこれより異変解決のため旅立とうとしていたのだが。

 

「(いつもなら魔理沙が来る頃なんだけどな……)」

 

 別に魔理沙を待っているわけでは無い。

 基本別行動だし自分の仕事を掻っ攫っていくのだから。

 しかし、いつもなら一度ウチに来て『この異変は私が解決するぜ!』とか言いに来るのに。

 

「(また、アリスあたりと先に行ってるのかしら。

待つ理由も無いからそろそろ行こうかしら。)」

 

 霊夢が待ちくたびれ、飛び立とうとすると結界内の空間が歪み、中から妖怪がひょっこり顔を出した。

 

「魔理沙ならこないわよ。」

 

「紫………」

 

 中から現れるは妖怪の賢者、神隠しの正体、八雲紫であった。

 

「何よ。久しぶりに会ったのに随分ねぇ〜」

「まだ、何も言ってないわよ。」

 

「そんなあからさまに嫌な顔をされても説得力無いわよ。」

 

 紫の姿を見た霊夢はあからさまに『うわーまた面倒な奴が来たー』と言わんばかりの顔である。

 

「はぁ……また、アンタとか」

「そういう事♡」

 

 永夜異変を解決したチーム結界少女の再結成だ。

 

-----白玉楼-----

 

 屍人達が暴れているのは主に現界だが、冥界に存在する白玉楼もまたこの異変の被害が出ていた。

 

「幽々子様大変です!!幽々子様!!」

 

 白玉楼の庭師、魂魄妖夢が白玉楼の廊下を慌てて走って来た。

 

「幽々子様!起きてください!!」

 

 妖夢が襖を勢いよく開き主人である幽々子の寝室を開けた。

 

「な〜に〜?よ〜む、そんなに慌てて………」

 

布団から這い出た幽々子は目をこすり答えた。

 

 

「幽霊達がこれまでに無いくらい混乱しております!!」

 

外を見渡すと冥界へと誘われた幽霊達がまるで何かを探し続けているように彷徨っていた。

 

「……あ〜……

けんかいでなにかあったのかしら〜

ようむ〜………ちょっとけんかいにいってみてきて〜………」

 

起きたばかりで滑舌の悪そうである。

幽々子からの命を受けた妖夢は急いで飛び立った。

 

 

 

「わかりました!!」

 

 

 

 

 

「…………気をつけて。」

 

寝ぼけている振りでもしていたのか急に真面目な顔をした幽々子はすでに走り去っていた妖夢に言葉を送った。

 

 

 

 

-----永遠亭-----

 

永遠亭ではすでに永琳と輝夜が出ており、弟子の鈴仙は二人の姿が見えない事を心配し、永遠亭中を探し回っていた。

 

「ここにもいない…

師匠と姫様、何処に行ったのよ…」

 

あの姫様が出かけるなんて余程の事が無い限り無いはずなのだが。

 

「外はゾンビで一杯だし。

師匠と姫様はいないし………」

 

今は妖怪兎の防衛線によりゾンビの侵攻は防がれている。

 

「こりゃ、外の異変となんか関係あるかもね。」

「てゐ!いたの!」

 

急に話しかけられて驚く鈴仙。

話しかけてきたのは地上の兎のてゐである。

 

「鈴仙ちょっと外に行って二人を探してきてよ。」

「えー、いやよ。アンタが行ってくれば良いでしょ。」

 

確かに、こんなゾンビだらけの時に外に出たくは無いだろう。

 

「私は妖怪兎たちと一緒に防衛線を守らなくちゃいけないから。

それに二人を見つけないとこの異変が終わらないかもしれないし。」

 

「てゐはこの異変を師匠達が起こしていると思ってるの?」

 

異変が起きてタイミングが良いように二人がいない。

無関係とは考えにくい。

 

「まぁ……お師匠さんならバイオハザードを起こす薬の一つや二つ作れてもおかしくは無いし……」

「確かに…」

 

 

「それにこのシチュエーションって姫様が良くやってるゲームにありそうな状況だし。」

「たしか『さばげ』だったかしら?

うわぁ〜、そう考えるとますます二人が発端のような気がしてきた。」

 

「と言う訳で鈴仙お願いね。」

「うん、わかった。」

 

鈴仙もまた屍人が蠢く地に飛び立ったのだ。

一方、先に出ていた彼女の師匠は……

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「ああ〜、やっぱりあの子には何か言い残したほうがよかったかしら。」

 

何も言わず出てきた事に心配する永琳。

 

「まぁ、あの子なら雑魚にやられる事は無いでしょうし、地上に来て少し鈍ってたから良い修行になるんじゃ無い?」

 

「そうですね。……所で姫様。一言、言って良いですか?」

「ええ、良いわよ。」

 

 

「そんな装備で大丈夫か?……」

「大丈夫だ、問題無い………」

 

 適度に緊張を解く冗談を混ぜ、姫様の服装を確認すると軍人が着るような迷彩服にマシンガンを握っていた。

 

 マシンガンは鈴仙が月にいた時代の何かだろうが、服は一体何処から入手したのか。

 

 どんどん俗世にまみれていく姫をみて頭を抱える。

 しかし、そんな姫様につきあっている所為か、彼女もそこそこ毒されていた。

 

「一度やってみたかったのよね。

リアルサバゲー。ほら、私って形から入るタイプだし。」

 

「はぁ〜……姫様のゲーム好きにも困った物です。

でも今回はそれを当てにさせてもらいますよ。」

「任せてー!

多分あのダンジョンの連中だと思う。

借りは返させてもらうわよ!ナザリック!」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

 二人を探しさまよう鈴仙も共に戦うパートナーを偶然にも見つけることが出来たのであった。

 

 

 

「ふえ〜ん。

怖いよ〜、何でどこもかしこもゾンビだらけなのよ。

師匠も姫様も見つからないし、やっぱりゾンビ達が歩いてくる先に行くしかないのかな?

危険がいっぱいありそうで一人で行くのが怖い…

誰か一緒に行ってくれる人いないのかなぁ…

あれ?あれは…………」

 

 

 少し遠くの空を飛ぶのは見覚えのある半人半霊の庭師。

 

「妖夢ーーーーー!!」

「あれ?鈴仙?どうしたの?」

 

 妖夢を発見し、飛びついてくる鈴仙。

 

「妖夢も異変解決のためにゾンビ達のやってくる方向に向かってるんでしょう!?

一緒に行こ!!」

「うん…………まあいいけど。」

「よかったー!!一人で心細かったのよ。」

 

 永遠亭の従者と白玉楼の従者の異色のコンビが誕生したのであった。

 

 

 

 

-----紅魔館-----

 

 

 

 

近くでチルノ達が暴れているため他の勢力に比べ屍人の数が少なくなっているとは言えたった一人で紅魔館を守る猛者がいた。

 

「セイッ!……ハッ!タアァ!」

 

拳、掌、蹴、通常より高い筋力を持つゾンビ達の力を受け流し、カウンターを決める。

 

「ハッ!!!

虹符『列虹真拳』!!」

 

現在、戦力が著しく低下している紅魔館。その事を重々承知している美鈴は珍しく気張っていた。

 

「(咲夜さんはまだ戦えない……

なら、お嬢様達を…この紅魔館を守れるのは私だけだ!!!)

 

ハッ!!!」

 

美鈴の気持ちに呼応したのか美鈴の気が高ぶる。

 

 

 

その姿をみて安心したのか、館の主人達が表に出てきた。

 

「珍しく頑張ってるじゃない。美鈴……」

「少し、手伝ってあげるね。」

 

 

ドカーーーーーン!!

 

 

声と共に紅魔館に群がる屍人達が吹き飛ぶ。

 

「レミリアお嬢様!フランお嬢様!」

 

 紅魔館の主とその妹、レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットである。

 

 

「これなら安心してお出かけが出来そうね。」

「え!?こんな時にフランお嬢様も連れてどちらに?」

 

「友達の家に遊びに行くに決まってるじゃない。」

「こんな時に…………」

「こんな時だからこそよ。」

 

「わーい!お姉さまとお出かけー!」

 

 まあ、今レミリアが言う友達とは彼らのところだろう。

 普段、幽閉している箱入り妹のフランまで連れ出すのだ、今回はかなりガチなのだろう。

 

「では、無事なお帰りを待っております。」

「じゃあね、メーリン。お留守番よろしく。」

 

「行くわよ。フラン」

「はい、お姉さま。」

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

「禁忌『レーヴァテイン』」

 

 レミリアの槍とフランの大剣により、屍人で埋め尽くされていた領域に大きな道が生まれた。

 

「屍で作られ、観客にはゾンビ達が蔓延る夜王の道(デーモン・ロード)………

私達、夜の一族が凱旋するのに相応しい道だと思わない?………フラン」

「私にはよくわからないなー。でもお姉さまと一緒で嬉しい!」

「ふふふ。」

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

そして同じく、紅魔館から出立しようとする魔法使いのコンビがいた。

 

「レミィ達も行った様だし、私達もそろそろ行こうかしら。」

「そうね。早く魔理沙を助け出してあげなきゃ!!」

 

 

「……………」

 

 

 先日、アリスに魔理沙の所在を伝えた所、アリスの闘志は燃え上った。

 そして『異変にカッコつけて魔理沙を救出』作戦を提案され、巻き込まれたパチュリー。

 

 魔理沙の利用価値が発揮されるのはまだまだこれからの筈。

 だから救出しても連れ戻されるのが目に見えていたパチュリーはアインズに提案をした。

 

 もし、パチュリー達のチームがナザリックを攻略できたらその時は魔理沙を解放する様にと。

 アインズは敗北時にアリスの魔法使いの勉強会への協力を義務化する事を条件にその賭けを受けたのだ。

 

「魔理沙をメイドにして侍らせるなんて…

なんて、羨ま…じゃなくて怪しからん輩よ!!」

「言い直しても遅いから。」

 

「これだけ大事の異変なら間違いなく霊夢も出てるでしょうし…良かったわねアリス。」

「何も良くないわよ。霊夢ったら酷いのよ。

魔理沙が行方不明だって言うのに『その内帰ってくる』って言って心配さえしないのよ。

…全く、友達がいのない子よ。」

 

アリスにとって二人は魔界時代からの馴染みである。

 

「…所で貴女が好きなのは結局、霊夢なの?魔理沙なの?」

「好きとかそう言うのじゃなくて。ほら私達、付き合いが長いから!!……」

 

 

 二人の魔法使いもまた異変解決のため動き出した。

 

 

 



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異変-3

 異変開始から少し前に遡る。

 

 アインズは各ステージを守護する守護者を集め、作戦を伝えていた。

 

 

「以上がこの幻想郷で異変を起こす際のルールだ。

皆にもこのルールを守った上で各ステージを守ってもらいたい。」

 

 

「一つ質問がありますがよろしいでありんすか?」

「何だ、シャルティア……」

 

 

 

「このルール……明らかに解決者側が有利なルールになっているのは気のせいでありんすか?」

 

 

 その通り、スペルカードルールを採用した異変は解決者が精神的に諦めない限り解決者側に負けはなく、いくらでも再挑戦が出来るルールになっている。

 

 

「そうだ、誰かが解決をしないと異変が終わらないからな。」

 

「我々が勝つことができないルールなど律儀に守る必要があるのですか?」

 

 確かにその通りだ。

 ルール上、仕方の無いものであってもナザリックが負けることなど守護者にとってこれ程、屈辱的なものは無い。

もちろん、アインズとて同じ気持ちだ。

 

 

「…………それはだな、シャルティア………」

 

 アインズが少し気まずそうに訳を話そうとするところをデミウルゴスがかわる。

 

「アインズ様、僭越ながらここは私が説明いたします。」

 

「そうか……なら任せる。」

 

 

 

「では……………

 

シャルティア、ルールを守る事はそれと同時にルールに守られることにつながるのです。

 

アインズ様にかかればこの異変で勝ち抜く事は容易いかもしれません。

 

しかし、それをすればこの世界の妖怪たちを丸ごと敵に回すことになります。

 

今回の異変の犠牲者になるような雑魚妖怪たちがいくら束になろうとナザリックはもろともしません。

 

ですが、この世界にも我々守護者に匹敵する程の実力を持った存在がいることも確かです。

 

最初に出会った八雲紫、シャルティアと互角に戦ったレミリア・スカーレット、そしてナーベラルの報告にあった不死の人間、藤原妹紅や蓬莱山輝夜。

 

彼らが手を組めばその戦力は強大です。

勿論、我々は必死で戦いますが被害がゼロとまではいかないでしょう。

 

アインズ様はそれを警戒しているのです。」

 

 

 アインズ…いや、モモンガはギルド長としてこのナザリックを守る事をこの身尽き果てるまでの使命としている。

 

そのためには無駄な戦いは避けなければならない。

 

 デミウルゴスはわざとそのような言葉を使ったが、被害の中には守護者達も含まれる。

 

 

 この世界でNPCの復活が可能かの検証はまだしていない。仮にできたとしても守護者達の復活には莫大な費用がかかる。

 この世界での収入が画一しないうちは資金不足で守護者の復活が叶わない可能性もある。

 

 アインズはナザリック以上に失いたく無いのだ、仲間達が残したNPC(子供)達を。

 

「なので彼らにとっての共通の敵であるルールを破る者にならない様に我々はルールを守る必要があるのです。」

 

 

「………わかったでありんす。デミウルゴス

しかし、それでも負けると分かっている戦いに挑むとなると気が引けますわね。………」

 

 シャルティアは悲しい顔で答えた。

 敵が勝利を約束された剣を持つなら、異変を起こす妖怪は敗北の星に生まれていると言っても過言では無い状況だ。

 

「ボクたちがそんな奴らが気にならないくらい強ければ……アインズ様も気になさらずにいられるのに…………」

「不覚……」

 

 シャルティアの悲しむ言葉にマーレ、そしてコキュートスが続いた。

 

「フフッ…お前達…そう悲しむで無い。

私は嬉しいのだよ。

この世界にも我々と張り合える存在が居て、お前達を守れて………

そして、この世界にも全力で戦えるルールがあってくれて。」

 

ルールの無い環境はただの戦争でしか無い。

悟が一番輝いていた時と同様、仲間がいて敵が居て、ライバルたちが居て、目標があり楽しめる世界。

ユグドラシルから幻想郷へルールが変わろうともそれは変わらない。

 

 アインズの笑みとともにアルベドも初めからアインズの意図を汲んでいたのか笑みを浮かべる。

 

「それに例え負けが決まった戦いであっても、ただで負ける気は毛頭無いのでしょう?

アインズ様………

そのために宝物殿へと足を運んだのでしょう。」

 

 その言葉に守護者の期待が集まる。

 

「流石はアルベドだ。私の真意を見抜くとは…………」

「勿論であります。愛する人の気持ちがわからぬ女などいません。」

「そ………そうか…………」

 

 

 アレを見られたくなかったから一人で向かったのだが、なぜ知っているのだろう。

 アルベドの猛烈アピールに戸惑わざるえないアインズ。

 

 下がった士気が戻ったところでアインズは戦いに赴く彼らにとあるアドバイスをした。

 

 

「皆…敵の力は未知数、心していけ。

だが、相手も我々の力を知らない…

普段は対策がとられていてあまり通用しない戦法を使ってみるといい、おそらくうまくハマるぞ。」

 

これにはもう一つの意図がある。

逆にこの戦法をもろともしない者が居るのならそいつはユグドラシルプレイヤーである可能性が高い。

最初に八雲紫が言った「同じ様に(・・・・)転移した(・・・・)ユグドラシルプレイヤーが居ない」という言葉が偽りである可能性もあるからだ。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 そして時は戻りナザリックから溢れ出した屍人の異変を解決するため、各勢力の代表者がナザリックの最深部を目指していた。

 

 

ダダダダダダッ!!

 

「ヒャッハー!汚物は消毒だぜ!!

……快感♡」

 

 元、ユグドラシルプレイヤーの輝夜は月の技術仕込みのマシンガンで幾多の屍人を葬っていた。

 

「姫様、色々と自重してください。」

 

「良いでしょう。リアルゾンビゲーなんて中々出来るものじゃ無いし、楽しみましょうよ。

どうせ、ナザリックに入ったら集中していかなきゃ命がいくつあっても足りないんだから。」

 

ゲーム時代のままでもナザリックの戦力がハンパ無いことを輝夜は知っていた。

 

 

「そう言えば先程借りがどうとか言ってましたけど、ゲームの中で何があったんですか?」

「ああ、大したこと無いわよ。

ちょっとしたことが原因でギルド間戦争になっただけ……

お互い濃いメンツだったから後半は楽しんでたけどね。」

 

「ちょっとした原因とは?」

「ギルメンが『ハロウィーン!!』って言ってナザリックに突貫した………」

 

「原因がコッチじゃないですか………で?何が借りなんですか?」

「最終的にナザリックを攻略できなかったことに対しての借りよ。結局『二十』も使わせられなかったし。」

 

「……なんだかよくわかりませんが…わかりました。」

 

 

「それより、私が頼んだ薬は用意してくれたの?」

「ええ、それは勿論です。」

 

「それならいいけどユグドラシルみたいに対策魔法が無いから永琳の薬である程度補わないといけないからね。

…………でも、言ったままの効果がある薬を作れるなんて流石は永琳よね。」

 

 

ナザリックのギミックを知っている輝夜は対策を整え、ナザリックに入っていった。

 

 

「そろそろ、かしら………」

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 アインズにとって不安要素は三つある。

一つは前述の様に我々の力を把握しているユグドラシルプレイヤーという存在。

 

 しかし、現状いるかいないかわからない存在ゆえに最も問題なのは残り2つである。

 

それは博麗神社の巫女と言う存在だ。

 

 

 この幻想郷の設立に携わる一族であり、妖怪と人間の共存するこの世界の楔そのものである。

 

 先日、サトルの姿で彼女を見た時はレベルとしては80後半ぐらいだろうか……

弱くは無いが最強には程遠い。

 

 稗田阿求が歴代で最も修行不足であると称しているのも理解できる。

 

 しかし、彼女の実績がアインズの不安を物語っていた。

 

 いくら、解決者側が有利とはいえ人間である限り体も心もいつかは折れる。

それなのに輝夜や紫の様に桁外れの体力をもち、実力も100レベルに到達しかかっている妖怪たちを相手に勝ちをもぎ取ってきたのには何か理由があるはずだ。

 今代の博麗神社の巫女、博麗霊夢が。

そしてこのスペルカードルールが採用される前の巫女が妖怪たちを退けていた理由が……

 

 例えば……博麗の巫女の幻想郷に置いての絶対性だ。

 

 妖怪たちは博麗神社の巫女に勝てないなどといった世界の法則に近い者があるかも知れない。

 

 まるで漫画の主人公の様な特性だが、この世界の設立に携わる存在ならそんな力を持っていても不思議では無い。

 

 そんな者が相手ではアインズとて博麗神社の巫女から勝利をもぎ取ることが不可能になる。

 一応、それらを踏まえて対策を立てているが機能するとは限らない。

 

 

 

 そして最後に最も怪しいのが八雲紫と言う存在だ。

 

 

 

 

 

 彼女が何を企んでいるのかを未だに測りきれずにいる。

 この世界に来たばかりの自分達に情報をくれ、特殊な式を与え、そして今、異変解決のために動いている。

 

 彼女の行動には矛盾がある。

 こちらに異変を起こす様にけしかけておきながら一番の障害とともに異変解決のために動いている。

 

 

「(奴の目的は博麗の巫女と我々を戦わせること?…………ならば勝つことが奴の目的なのか……もしくは負けることが?

 

どちらかだとしてその思惑に乗るべきか否か…………)」

 

 

アインズは一人玉座の間にて考える。

ここまで勝ち残ってくる異変解決者を待ちながら。

 



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異変-4

 そろそろ、最初の組みがナザリックに入る頃合いであろう。

 

 アインズは第1〜第3階層もとい今回の異変の1面に当たるシャルティアの守護領域へと魔法で目を飛ばした。

 

 すると先日、サトルの姿で遭遇した藤原妹紅の襲撃者が従者らしい人を連れ、やってきていた。

 

※※※※※※※※※※

 

-----1面ボス-----

 

 

 

「そろそろね…」

「ここの守護者のことですか?」

 

 

 

 すると飛んで移動している二人の目の前で蝙蝠が密集して中からシャルティアが登場した。

 

 全く、凝った演出だことだ。

 

 

 

 

「そこいく人間……止まるでありんす。」

 

 シャルティアが二人の前に立ちはだかる。

 

「あら?吸血鬼じゃない。

もしかしてここの主人かしら?

(うわ〜お!本当にNPCが意思を持って動いてる)」

 

「いいえ、私はこのナザリック地下大墳墓の守護を任されている者の一人でありんす。」

 

「では、ここの責任者の元まで連れて行って欲しい。

私達はこの墳墓から溢れ出た屍人のことで迷惑をかけられている者よ。」

 

「ああ〜、なんかさっきから下の階層の方から溢れ出てきているアンデッドのことでありんすか。」

「話が早くて助かるわ。案内をお願い。」

 

 なんとも白々しい会話だ。

 異変の事情を知っていてシラを切るシャルティアとナザリックの組織図を多少は知っているのに知らないふりをする輝夜。

 

 どことなくバカにしたようにシャルティアが答えた。

 

「それは出来ないでありんすよ。」

 

 輝夜が少しドスの効いた声でさらにとう。

 

「はぁ?なんでよ。」

 

「私の仕事はお主達を案内する事でもここをおとなしく通す事でもないでありんすから」

「じゃあ、下に連絡してよ。あんたの主人とやらに。」

 

「その必要性を感じないでありんすよ。」

「じゃあ、無理やり通るしかないじゃない。」

 

 

「あは、そうでありんすね。

ご自由にどうぞ。それができるならでありんすが。」

「そうさせていただくわ。」

 

「(初っ端からなんとも胡散臭いのが相手ね。)」

 

「(NPCらしい考え方とも言えなくもないけど、多分知っててとぼけてるんだわ。)」

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 こうして一番手の永輝コンビを皮切りにナザリック各地に弾幕ごっこの嵐がやってくるのであった。

 

-----1面道中ボス?-----

 

チーム・うどみょん

 

暗がりを歩く二人。

 

「妖夢〜…私達、まずいところに紛れ込んじゃったんじゃない〜」

「服引っ張らないでください」

 

 

すると暗闇から声がする。

 

「これはこれはお嬢さん方。」

 

カサカサカサカサカサカサカサカサ

 

「「!!!!っ」」

 

 暗闇から出てきたのは30センチ級のゴキブリと通常(?)のゴキブリ。

 

「ゴキブリー!!!」

「ギョキブリ!?」

 

 流石の妖夢も鳥肌が立ち登り、一直線にその場から逃げ出した。

 

 地上速力最速の脚力を持って目にも止まらぬ速さで。

 

「妖夢!置いてかないで〜!!」

 

 迫るゴキブリの群。

 

「おや、逃げ遅れたウサギが一匹………」

 

「来ないでー!!!

毒煙幕「瓦斯織物の玉」(バルサン!!)

 

「毒霧ですか、準備のいい事で…しかし、その程度では我が軍勢は止まりませんよ。」

 

 大群は文字通りゴキブリ並みの生命力で責めるのであった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

-----特別ルート・第9階層-----

 

チーム・ウィッチーズ

 

 

 アインズとのコネにより、他の解決者とは別のルートで東方で言うところのextraストーリーを進めるパチュリーとアリス。

 

 

「物質の劣化を防ぐ為に保護魔法がいたる所に使われているわね。」

「うちもこのぐらいやりたいけど、やってもすぐにフランかレミィが壊しちゃうのよね。

だから、この手の魔法は大切な本にしか施して無いわね。」

 

「ここまで来るのに回避した魔法・(トラップ)の数々…

一体何人の優秀な魔法使い達がここを作ったのかしら。」

「全部で41人いるらしいわよ。今は一人しか居ないみたいだけどね。

ここは彼等の居住区でもあったからそう言った罠はもう無いと思うわ。」

 

「詳しいわね………」

「言ったでしょ。ここの主人とは懇意にしてるから何度も来た事があるって。」

 

 

 アインズがこのルートを選択したのはここが主な魔理沙の職場だからだ。

 

 

「ああ、だからさっきからすれ違うメイドが頭を下げてるのね。

でもあの子達、人間よね……ここで無理やり働かされているのかしら?魔理沙みたいに……」

 

「いいえ、彼女達は自分の意思でここで働いてるわ。

確かここの守護者同様さっき言った41人に作られた存在………人造人間(ホムンクルス)だったかしら。」

 

「ここにいる妖怪たちを作り出した技術と同じものね。

一度詳しい話を聞きたいわね。」

 

人造人間にもいろいろある。

クローン技術で生み出した生まれ方が特殊なだけで普通の人間と変わらない者からアリスが目標にしている完全なる0から魂を錬成した存在まで色々だ。

 

 

「詳しい事は聞いてないけどここの技術はどれを取っても至高品、あなたにとってもとても価値のある場所よ。」

 

 口調、精神状態は最初の頃に比べだいぶ元に戻ったが、パチュリーのアインズやナザリックに対しての評価は決して低くなかった。

 

「あなたがここが魔法使いにとって悪く無い環境だって言った訳がわかったわ。

それでも魔理沙を返してもらうまではここの主人と仲良くする気は無いわ。」

 

「(別に魔理沙は貴方のものでも無いでしょうに)」

などと思うパチュリーであった。

 

「にしても何人メイドを囲っているのかしら。

まぁ……この広さならしょうがないかもしれないけど。」

 

 メイドの容姿は様々であり、皆整っている。

 重要人物に女性が多く、皆美少女である幻想郷の面々と比べても遜色が無い。

 

髪の毛の色も様々である。

ピンク、赤、茶髪に黒髪、金髪までいる……金髪?

 

アリスは今、すれ違った金髪メイドに半端ない違和感を感じる。

 

他の統一されたメイド服とは違い、白いボタンをつけた黒いメイド服、カチューシャには星の装飾が施されていた。

それは少し違うがアリスのよく知る人物の着る服によく似ていた。

 

「………………え!?魔理沙?」

 

 アリスが振り向くと向こうも気がついたのかこちらに振り向いた。

 

「申し訳ありません、お掃除に集中しておりまして挨拶が遅れました。パチュリー様。

本日はどのようなご用件でしょうか?

必要なら私が案内しますが?」

 

 違和感しか感じない言葉使い。

 しかし、アリスの目の前にいるのは確かに魔理沙であった。

 

「どうしちゃったの!?魔理沙!?

まさか、洗脳されてたの!?」

 

アリスは魔理沙の両腕を掴み迫る。

 

「お客様……落ち着いてください。」

「しっかりして!魔理沙!!」

 

アリスは掴んだ腕を振り、魔理沙の頭をグワングワンと降っているとパチュリーがその腕を止める。

 

「ストップ!ストップ!落ち着きなさいアリス。

あと魔理沙、今日は客人というよりはどちらかと言ったら侵入者だから口調も戻していいわよ。」

 

 パチュリーの言葉を聞くと魔理沙の態度が一変する。

 

「あっ?そうなのか?

じゃあ、いつもの口調に戻すぜ。

いや〜客人と守護者の面々には敬語を使わないとメイド長に怒られるんだぜ。」

 

「あれ?いつもの魔理沙に戻った?……」

 

「戻ったもなにも公私を分けてるだけだぜ。」

 

「大した変わり身よ。まるで別人格みたいだったわよ。」

「確かにちょっと考え方が変わったかもしれないぜ……

でも心配するな!心はいつでも霧雨魔理沙だぜ!」

 

「何週間もしないうちに人ってここまで変われるものなのかしら………」

 

 

 魔理沙は結構変わり身の早いタイプなのかもしれない。

 

「そういえば、客人じゃなくて侵入者ってなんだよ。

まさかこのナザリックに喧嘩を売るつもりか?……

悪いことは言わないからやめておけロクなことにはならないから、私みたいに……」

 

 魔理沙の背筋がぶるっと震える。

 負けた後なにがあったか思い出しているのであろうか。

 

「うん、説得力のある忠告ありがとう。

でも大丈夫。アインズ公認の反逆だからだ。」

「本人公認の反逆とはwww」

 

色々と突っ込みどころは満載だが、時折笑顔を見せて会話する魔理沙を見てアリスは少し安心した。

 

 

「いや〜ここに来て考え方が変わったことは確かだぜ。

私は正直、井の中の蛙だった。

力には自信があったけどここでは二つ名通りの『普通の魔法使い』でしか無かった。」

 

魔理沙は人里では割と大きな道具屋の娘だったから結構甘やかされて育ったせいで我儘に育ってしまった点が若干ある。

 

「ここは一部を除いていい所だぜ。

自分のやりたい研究をするための環境を整えてくれる上に訓練相手にもこと欠かさない。

更に時間まで融通してくれる。その対価としてここでメイドの仕事をしてるけど、それだって魔法使いとして自分より何段も上に行ってる人(?)の側で働けるんだから決して無駄にならないぜ。

しいて問題をあげるならここには人間をゴミカスぐらいにしか思っていない者がいることぐらいだけど、どんな職場にだって気の合わない上司の一人や二人いるだろう?」

 

 まるで外の世界の企業戦士の様な口振りだ。

 アインズがもともとそうであった様にアインズの作った職場ならその考えが移っても納得が行く。

 

 まるで少し前まで学生をやっていた子供が新人研修を終えて考え方が立派な社会人になって戻ってきた様な雰囲気だ。

 

 

 メイド教育の名目は魔理沙の罪に対しての贖罪だが、結果的には魔理沙の手癖の悪さを直し、それでいていい環境を整えてあげるなんて、これを外の世界の企業に当て嵌めるとどれだけ優遇されているのやら。

 

「(パチュリー、もしかして私たちがやろうとしてることってすごく無駄なことなんじゃないの?…)」

「(だから言ったでしょう。

心配する事ないって。)」

 

 今の魔理沙ならたとえ二人がナザリックを攻略して自由になってもナザリックに戻ってくるだろう。

 

 

 3人が話しているとパチュリーとアリス、二人を迎えに来たのか魔理沙の上司であるメイドの一人が話しかけてきた。

 

魔理沙は急いで口調を戻した。

 

「新人…お喋りはその辺にしておく…

アインズ様が二人を大広間に案内しろとの命令…」

「シズ先輩、すいません。」

 

それはプレアデスの一人、シズ・デルタであった。

 

 

「!!!!!っ」

 

現れたシズに異様に反応するアリス。

パチュリーはそれをやはりといった感じで見ていた。

 

 

「ちょっと、貴女………いい?」

「何か?」

 

むにっ!

 

アリスはシズの頬を軽く引っ張る。

 

「…柔らかい…何でできてるかわからないけど柔軟性のある人工的な材質………」

 

コンコン!

 

肌の弾力性を確認した後、内部を音で確認した。

 

「中はやはり金属………機械で…………」

 

「何でしょうか?」

 

身体中いろいろ触られてるのにシズのポーカーフェイスを崩さない。

 

「貴女、肉体を機械化した元人間とか?それとも頭の中で小人が操ってるとか?」

「小人?…………何を言ってるかわかりませんが、私は生まれた時からこの姿ですが。」

 

シズの言葉に考え込む。

 

「完全自立の自動人形…私の追い求めてきた者がここに…

この子の技術を使えばもしかしたらうちの人形たちも…」

 

嬉しくも悲しくなる現状に何とも言えない気持ちになるアリス。

そんなアリスの肩に手を置く。

 

「気になるのはわかるけど異変が解決してからにしましょう。」



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異変-5

-----エクストラステージ・第9階層-----

 

チーム・ウィッチーズ

 

 シズに連れられ、案内される魔女っ子三人娘はナザリックの第9階層にあるとある広間に連れて行かれる。

 広間と言っても6つの通路が合流する場所ゆえ、少し広くなっている場所と言ったほうがいい。

 

 そこにたどり着くとシズが伝言を伝える。

 

「アインズ様からの伝言です。『サービスはここまでだ。私の元にたどり着きたくばまずはウチの自慢の戦闘メイドが相手をする』との事です……」

 

 

「つまり、あなたが私達の相手をするって事?」

 

 アリスが疑問を投げかける。

 相手がシズならアリスにとって願ったり叶ったりだ。

 いい観察対象との弾幕ごっこは此方の望むところ。

 

「いいえ………私達(・・)戦闘メイド(プレアデス)です。」

 

 シズと魔理沙は四人が入ってきた通路の入り口とその隣の通路の入り口まで下る。

 

 

 残る四つの通路から一人づつ二人同様メイドの格好をした人物が順に姿を現した。

 

 最初に現れたのはリーダー格の長女。

 

六連星(プレアデス)が一人、副リーダーのユリ・アルファでございます。

お二人には私達姉妹を相手にしてもらいます。」

 

 ユリが指をパチンと鳴らすと続いて残り3人が顔を出す。

 

 現れたのは明るい性格の人狼。

 

「同じく、ルプスレギナ・ベータっす!よろしくっす!」

 

 そして魔理沙の仕事場での天敵、金髪縦ロールのスライム種。

 

「同じく、ソリュシャン・イプシロンでありますわ。」

 

 見てくれは可愛い女の子だが、ところがどっこいそれは擬態の蜘蛛人

 

「エントマ・ヴァシリッサ・ゼータでございましゅ。」

 

 四人が登場し終わるとシズが改めて自己紹介する。

 

「シズ・デルタ………改めて……よろしく」

 

 そしてここにいないナーベラルの代わりに魔理沙が二人に改めて自己紹介をする。

 

「不肖、この私霧雨魔理沙がナーベラル・ガンマの代わりを務めさせてもらいます」

 

これで末妹と別件で出ているナーベラルを除き全戦闘メイドが集まった。

 

そしてそれぞれが最初のスペルカードを取り出し、弾幕ごっこの準備を始めた。

 

「魔理沙一人でも厄介なのに実力者が他にも6人なんて、サービスとか言ってた癖にクリアさせる気がないんじゃないかしら?」

「守護者を何人も相手にしなくちゃいけない正規ルートよりはだいぶマシよ。あくまでも弾幕ごっこだし。」

 

 そもそもアリスとパチュリーと殺し合いの戦闘をするとなれば魔理沙が参戦しないだろう。

 

 あと、純粋な戦いなら数の利のあるプレアデスが勝つだろうが弾幕ごっこなら数の利は小さくなる。実際1対多の形式も存在する。(プリズムリバー戦とか)

 

 そして、相手にするのは1対多戦を諸共しない魔法使い達であった。

 

 

「人数の利点なんて私にとってはあまりないけどね。」

 

そう言うとアリスはどこから取り出したのか6体の自慢の人形を取り出した。

人形で一対一をさせるつもりなのだろうか。

 

「アインズが知ってるのは持病の治る前の私、ならば彼の計算の上をいけるはず……」

 

パチュリーの雰囲気もガラッと代わり、戦闘態勢に入る。

 

エクストラステージ対プレアデス(代役魔理沙)戦が幕を開けた。

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

-----1面ボス-----

 

「ようやく来たでありんすか。」

「その様子だと随分出遅れてしまったようね。」

 

 1面ボスを任されているシャルティアは3組目の来訪者と顔を合わせ言葉を漏らす。

 

 相手は同種族であり、個人的な友人でもあるレミリア・スカーレットであった。

 

「私達の前にどんな強者がここを通過したのかしら?」

「えーーと、紅白巫女とスキマ妖怪のコンビと不死の人間コンビがここを通過して行ったでありんすよ。」

 

シャルティアの言葉を聞いて考えるレミリア。

 

「(巫女が出てくるのは当然としてもスキマが絡んでくるってことは何か裏があってもおかしくないわね……

ニート姫が突っかかってくるってことは噂に聞く『月』の関係かしら………それとも別の……)」

 

「考えは纏まったでありんすか?」

「ええ。」

 

「ところでシャルティア、通過したメンバーは異変を解決できると思うかしら?」

 

「ん〜ーー。

どうかしら、一人か二人かのパーティでナザリックを攻略できるとは到底思えないでありんすが、今回は罠やギミックの大半を止めている上に弾幕ごっこの形式をとってるでありんす。

ヴィクテ……いや、参加していない守護者もいるでありんすからアインズ様の元にたどり着く者は居ると思うでありんすよ。」

 

「あら?思ったより高評価ね。

下に居る守護者はあなた以上の実力者なんじゃないのかしら?」

 

アウラやアルベド、あと先日魔理沙と戦ったガルガンチュアまでは知っているが他の守護者は知らない。

前者二人もあっただけで戦った事なくレミリアはその実力を知らない。

 

 

「………言っていいのかわからないでありんすが下の階層を見渡しても直接戦闘力で私を超えるものは少ないでありんすよ。」

 

シャルティアに直接戦闘で勝てる者は少なく確実に勝てるのはNPC最強のルベドぐらいで他は互角か戦い方次第と言ったところだ。

 

「(つまり、それ以外の要素が評価されているわけね。

そっちの方が厄介だけど…)」

 

順当に強い順に並べられているなら色々くみやすい。

ただ、強いだけの存在はこの幻想郷に置いてそこまで脅威ではないからだ。

 

「それで……当の本人のアインズやあなたはこの異変についてどう思っているのかしら?」

 

シャルティアは少し不満気に答えた。

 

「どうもこうも無いでありんすよ。

まるで私達が勝っちゃいけないようなルールの元でしか暴れられないなんて不憫にも程があるでありんすよ。

アインズ様も勝つ気()無いようでありんすし。」

 

 栄光あるナザリックに敗北をつけるなんて不満しか無い。

 しかし、アインズ様が深い考えのもと出した結論であるなら仕方の無い事。

 

「(勝つ気()無いね………ただ、負ける気もなさそうだけど………

でも、ちゃんと後の事も考えて暴れてるようね。)」

 

 もし、アインズがなんの計画もなしに暴れまわったのならこちらもルールを無視してでもナザリックを滅ぼさなくてはならない。

 その為に紅魔館からフランを引きずり出したのだ。

 

 全てを破壊する力を持つ実妹を…

 

「(概ね計画通りに事が進んでいそうだから私達の出番はあまりなさそうね。

緊急事態に備えてここ(1面)で暇をつぶしておこうかしら)」

 

 

「それで?そっちの子が話に聞いていた貴女の妹ね。」

 

シャルティアが問いかけるとレミリアの後ろに隠れていた少女が顔を出した。

 

「どうしてわかったの?私とお姉さま、全然似てないのに……」

 

髪の色も翼も能力までも全然違う姉妹。

しかし、シャルティアは見ただけで言い当てた。

 

「そんな事無いわ。レミリアそっくりの可愛い妹じゃない。」

 

「本当!?嬉しい!!

ありがとう!シャルティアお姉ちゃん!」

 

フランは嬉々として笑顔を見せる。

 

お姉ちゃんと言う言葉はシャルティアの胸に突き刺さる。

 

「(お姉ちゃん!………良い響きね〜……

これがペロロンチーノ様が言っていた『妹萌』って奴なのかしら)」

 

その言葉に頬を染める姿は流石はあの変た……ゲフン!ゲフン!

あの紳士に作られただけの事はあると言ったところだ。

 

「ほら、フラン。シャルティアお姉ちゃんが遊んでくれるって言ってるわよ。」

「本当!?嬉しい!!」

 

 

「もちろんでありんすよ。」

 

シャルティアもフランもお互いスペルカードを取り出した。

 

そして弾幕ごっこに挑むシャルティアにレミリアが助言を施した。

 

「シャルティア…壊されないように気をつけなさい…」

「え?……」

 

「私、すぐにお人形さんを壊しちゃうの。

だから頑張ってね。」

「え?……」

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 一方、先ほど恐怖公の所にいたうどみょんコンビは迷いに迷い、何故か1面ボスのシャルティアをすっ飛ばして2面ボスの前までたどり着いていた。

 

-----2面ボス・第5階層『氷河』-----

 

「寒いよーひもじいよー死んじゃうよー」

「うるさいですよさっきから!

嫌なら先に帰っててください!この先は私が行きますから。」

 

「冷たい事言わないでよ〜

それに帰れるわけ無いじゃない。

半端ない迷宮を彷徨った挙句にゴキブリから逃げるために必死で帰り道なんてわかるわけないし………

それにこの寒さは半霊の妖夢は耐性があるけど素の私には結構死活問題なのよ。」

 

 うどんげは体を擦らせて寒さを凌ごうとする。

 確かに今の彼女の姿ではこの環境は堪える。

 ミニスカで露出されてる足なんて見るだけで寒そうだ。

 

 二人にここの守護者が立ちふさがる。

 

「ソコノ二人、止マレ」

 

 ズンッ!と地面に響きそうな重量感のある足音を立てコキュートスが現れた。

 

 

「ココカラ先ハ、通ス訳ニハ行カナイナ」

 

「あっ、通してもらわなくて良いので帰り道教えてください。…………」

「おい………」

 

 本当にうどんげは何をしにここに来たのだろうか…

 

 コキュートスは魔法を発動させた。

 

「〈氷柱(アイス・ピアー)〉」

 

 コキュートスは無数の巨大な氷柱で周囲を囲み、二人の逃げ場所を無くした。

 

「貴様ラガ何ヲ考エテイヨウガ関係無イ。

ココハ通サンシ逃シモシナイ。」

 

フシューと冷気がコキュートスから放たれヤル気は十分のようだ。

 

「行くよ。鈴仙」

 

「はぁ…さっきのゴキブリと良い、なんで今日は昆虫に縁があるんだろう…嫌だな。」

 

 逃げられないなら戦うしか無い。

 二人の顔は先ほどとは比べ物にならないほど凛としていた。

 

「(ナルホド、イイツラ構エダ。)」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 次々と火花を散らす弾幕ごっこの数々。

 最初はシャルティアしか見ていなかったアインズも今は複数の魔法のスクリーンを取り出し観戦していた。

 

 皆、興味深い内容であるが二つほど気になるグループがあった。

 

 

「(レミリアにクリアする気はなさそうだ。

終わるまでシャルティアと遊んでいてくれ…

コキュートスの所に来たのは剣士と幻術師のコンビか…バランスは良いがコキュートスを倒せるとは思えない。

 

問題はやはり博麗の巫女とスキマ妖怪のコンビか…………)」

 

※※※※※※※※※※※

 

 

-----3面ボス・第六階層-----

 

 

噂のコンビはアウラとマーレのダークエルフの双子と熱い火花を散らしていた。

 

「光矢『天河の一射』」

 

アウラのスペルカード、空から落ちてくる無数の光の矢。

霊夢は一つ、一つ確実にかわしていきスキルを発動した。

 

「スキル『亜空穴』」

 

転移系の能力でアウラの背後に回ろうとした霊夢だが、目的の場所とは全く違うところに出てしまった。

 

「転移系阻害か………本当に引き出しの多い連中ね!!」

 

マーレがすでに転移阻害の魔法を使っておりその罠に引っかかった霊夢はアウラの使い魔の一匹に襲われる。

 

「行け!フェン!」

 

アウラの自慢の使い魔、フェンリルのフェンだ。

 

フェンが霊夢に襲いかかろうとした瞬間、霊夢の姿がスキマ空間に消える。

 

紫が霊夢を自分の元に引き寄せたのだ。

 

フェンは向きを変え、紫と霊夢に襲いかかる。

 

「式神『八雲藍』」

 

 紫はそれに対し、式神を飛ばし応戦した。

 

 お互い最上級の妖獣同士のぶつかり合い。

紫の力の恩恵を受ける藍に対し、フェンもアウラのスキルの恩恵を存分に受けている。

 知性や他の技術ならともかく、威力だけは藍とも良い勝負だ。

 

 凄まじい力のぶつかり合いの後、両者は弾け飛んだ。

 

 両者ともに傷つき引き下がる。

 

「くっ!この狂犬が……すいません紫様。」

「良いわ、少し休んでいなさい。」

 

 

「クゥ〜〜ン」

「ゴメンねフェン、下がってて。」

 

 

「(やはり、転移系ではあちらにに優先権があるみたいね。)」

「(パワーで藍と互角…

式神…いや使い魔の扱いはあちらに分がありそうね。)」

 

 

 

-----4面道中・第七階層『溶岩』-----

 

 

ちょうど上の階層で熱い戦いを繰り広げている中で不老不死コンビは物理的に暑くなっていた。

 

「暑〜い!

えーりん助けて〜助けてえーりん。」

 

「確かにこの暑さは私達蓬莱人でも対策が必要ですね。」

「竹林ホームレスならいらないかもしれないけどね。」

 

「さっきは極寒で今度は灼熱、製作者の意地の悪さがうかがえますね。

姫様、これをどうぞ。」

「ありがとう。」

 

輝夜は永琳から飲み薬を渡されそれを飲んだ。

 

 

ゴクゴク………

 

キュィーーン!!

 

〈暑さに強くなった〉

 

 

「よし、これで後10分は戦える。」

「今のモーション、必要だったんですか?………」

 

「当たり前じゃない。

後、この薬の名前は『クー○ードリン○』で決まりだから。」

 

「さっきのエリアで飲んだのも似たような名前をつけていましたけどなんかのネタですか?」

 

「新作が発売されたしね。

みんなも狩りに行くときは忘れないようにしょう!」

 

 

※※※※※※※※※※※

 

輝夜達をモニタリングしていたアインズは……

 

「色々突っ込みどころ満載なコンビだな……

いや、それよりも薬でこのナザリックの対策を施しているだと?」

 

暑さ、寒さ対策だけではない。

対アンデッドやフィールド効果など幾つかもあの薬師の薬で補っている様子が見て取れる。

 

「流石にあの薬師が今ここで作ったとも思えん…となるとあらかじめナザリックのギミックを知っていた?……

そういえばあの蓬莱人は先日の戦闘でも我々の存在に驚いていたな………

元ユグドラシルプレイヤー?………

厄介だな…………」

 

アインズは次のステージのボスを任せているデミウルゴスに通信を飛ばした。

 

《「デミウルゴス。」》

《「はい、如何なさいましたか?アインズ様。」》

 

《「もうじきそのステージに勝ち残ってくるチームは我々の情報を握っている可能性が高い。」》

《「アインズ様が懸念していた《同郷(ユグドラシル)》の者の可能性が高いということですか?」》

《「ああ………裏で手を引いている可能性もある。無理に勝たなくても良い。

……その代わり、できるだけ多くの情報を集めろ。」》

 

《「かしこまりました。」》

 



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異変-6

-----4面道中・第七階層『溶岩』-----

 

 蓬莱人コンビとデミウルゴスの弾幕ごっこは終盤、デミウルゴスの数々の範囲攻撃を回避し、輝夜が優位に進めていた。

 

(……どれもこれもユグドラシルのスキルや魔法をベースに作り上げたスペルカードばかりね。

しかし、ユグドラシルをやり込んだ私はその攻略法を熟知しているわ。)

 

(やれやれ、ここまで完璧に避けられるとなると同郷者(ユグドラシルプレイヤー)本人と見て間違いなさそうですね。

………アインズ様の言う通りこの辺で負けておくのが良いでしょう。

戦術的勝利なんていくらでもくれてやりますよ。

全てはアインズ様……ナザリックの為。)

 

 

 デミウルゴスは芝居掛かった口調で最後のスペルカードを宣言した。

 

 

「この私をここまで追いつめるとは……

後悔するが良い!!ラストスペル!

偽神『悪魔の諸相:完全なる悪魔』!!」

 

 デミウルゴスは悪魔の変身能力を発動させた。

 普段、体の一部にしか発動させない変身を全身にかけ、更におぞましき肉体強化を施し。

 デミウルゴスはメキメキと音を立て異形の者に変身した。

 

 ナザリックは異形種のプレイヤーに作られただけあって異形の姿を持つ者が多い。

 ぱっと見は人間とそう変わらない姿をしていても真の姿を現せばその禍々しい姿に普通の人間は恐れ慄くだろう。

 

 

 永琳は弓を引き矢をデミウルゴスに向けた。

 

 デミウルゴスはドスの効いた声で返す。

 

「人間風情が調子にのるなよ………」

 

 

 デミウルゴスのラストスペルによる戦いが再開された。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 その様子を見ていたアインズは玉座の間で物思いに耽る。

 

 

(あの輝夜とかいう姫、何者なんだ?…

ナザリックの攻略法を知っている事は言うほど驚きではない。

その把握率に差はあれど攻略法を知っている連中は少なくない。

1〜7階層ならあの大戦の人間なら知っているだろうし、w○kiで調べればある程度出てくるからな…

しかし、彼女は我々の理念さえ知っていた…

『かぐや』か……何か聞いた事がある気がするが思い出せない……)

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

 アインズが考え事をしている間にも蓬莱人コンビはデミウルゴスさえ突破し、ついに前人未到の第9・10階層に踏み入れようとしていた。

 

「さっきの悪魔、歯ごたえを感じませんでしたね。実力を隠しているのでしょうか?」

「あら?永琳はそう読むの。私は違うと思うわよ。」

 

「どういう事ですか?」

 

「そのままの意味よ。

彼は戦闘関する能力は惜しみなく出してきたけど何かを隠してる…

つまりそれは直接戦闘に関係ないものである可能性が高いわ。

大分頭の良い雰囲気を醸し出しておきながらラストスペルが身体能力強化の力技っていうのがその証拠よ。

こちらは実力は出したからそちらも力を示せって言いたそうだったわよ。」

 

「そして私たちの情報を見事に引き出したという風ですね。

プライドは低い方には見えませんでしたのに簡単に勝利を捨ててきました……それだけここの主人に対する忠誠が高いようですね。」

 

(そう考えるとここの主人は彼の創造主かしら?…)

 

 とは言え、さすがの輝夜も誰が何を作ったのかなんて事知るはずもない。

 

 そして現役時代、一度たりとも踏み入れた事のない領域へと足を踏み入れるのであった。

 

 

「永琳、こっから先が本番だから気を引き締めていくわよ。」

「はい。」

 

 

-----第9階層-----

 

 そして、二人は最深部へと足を踏み入れる。

 

 

「前までの階層とは打って変わって豪華な飾りね。

月の実家とどちらが豪華かしら?」

「私はなんとも………」

 

 

 すると今度は二人の目の前に美しき堕天使が舞い降りた。

 

「お待ちしておりました。

私、ナザリック地下大墳墓の守護者統括、アルベドと言うものです。」

 

 

「待っていた?私たちを?」

 

 

「はい、お二人のすばらしい弾幕ごっこを拝見した我が主人が是非とも直接会いたいと……」

 

 このアルベドという女性がここを任されたボスなのは間違いなさそうだ。

 それを素通りさせてくれるのは嬉しい話しだ。

 

 

「それは嬉しいわ。

行きましょう。永琳」

「はい。」

 

 二人が歩き出そうとするとアルベドは永琳の首元に斧を突き出した。

 

「どういうつもり?」

「申し訳ありません。お呼びしているのはこちらの女性だけでして、従者の方はこちらでお待ちください。」

 

「そういう事ね……」

 

 二人を分断させることが狙いか……

 姫を一人にするのはまずいと思い、永琳は輝夜の方に目を向けた。

 

「大丈夫よ。

ここの主人とやらとは一度二人で話したかったし。

こちらがルールを守っている限り彼方もルールを守らないといけないのは確かだし。」

 

 確かにここまでやって今更そんなリスクを負うとも思えない。

 

「そうですか…」

 

 

※※※※※※※※※※※

 

-----第10階層・玉座の間-----

 

 

 前の階層にアルベドと永琳をおき、ここのメイドの一人、ペストーニャ・S・ワンコに案内され輝夜は玉座の間に連れてこられた。

 

 豪華な扉、豪華な壁や天井。

 そしてその真ん中に佇む豪華で大きめの椅子。

 

 そこに座るアインズはローブで隠した顔を見せた。

 

 

「ようこそ、侵入者。

私はここ、ナザリック地下大墳墓の主人。

アインズ・ウール・ゴウンというものだ。

この度は貴殿の美しくもすばらしい戦いを見させてもらいここに来てもらったのだが、まずは一つ尋ねたい事がある………

 

 

貴様は何者だ?………」

 

 

 

アインズは輝夜をギラリと睨みつけた。

 

 

「少ない筈なんだよ……

ナザリックをアインズ・ウール・ゴウンをここまで熟知している人間は……」

 

さらに輝夜にプレッシャーをかける

その背中には絶望のオーラが見える。

 

 

アインズだけに喋らせて黙っていた輝夜がようやくしゃべりだした。

 

「ふふふ…………

ふふふはっはっはっ!!!

 

やっぱりあなただったのね………

そうよね、あなたしかないわよね。

あなた程ユグドラシルに……いえ、アインズ・ウール・ゴウンに入れ込んでた人は居なかったわよねー!!!」

 

急に高笑いする輝夜に軽く殺意が湧きながらもアインズは確信を得た。

 

「やはり、元ユグドラシルプレイヤーか……

それでお前は誰なんだ?」

 

「え?………まだ、分からないの?

結構ヒントをあげてると思うんだけどね。

まぁ、あなたとは直接絡むことは少なかったわね。

今の姿とゲームの時の姿とは違うし。

私と絡みが多かったのはあけみちゃんとやまいこさんだったし。」

 

輝夜は笑いを止め、真面目に自己紹介をした。

 

「それでは、改めまして……

当時ユグドラシル・ギルドランキング36位

ギルド名『御伽噺の住人』ギルド長

プレイヤー名『てるよ』…どう?思い出してくれた?」

 

「御伽噺の住人?…まさか!?

竜宮城の自宅警備員!なんちゃってお姫さまのアイテムコレクター!」

 

「なんでそういうことばかり覚えてるのよ!!あとなんちゃってって何よ!!正真正銘の姫だし、皆のアイドルやってたし!!」

 

「アイドル(笑)………」

「ちょっ!!」

 

 ギルドランキングのトップ10にはアインズ・ウール・ゴウンを除けば少人数ギルドは無かった。

 しかし、ランキングを少し下げればランクインする少数ギルドが存在した。

 その一つがギルド『御伽噺の住人』であった。

 非常に共通点の多かったアインズ・ウール・ゴウンとは幾度となく剣と魔法を交える関係であり、そこから友情が生まれたメンバーも多々いた。

 

 共通点とは少数ギルドである事、そして非常に凝ったキャラメイクが施してあるプレイヤーで構成されたギルドであった事だ。

 

 異形種で構成されたアインズ・ウール・ゴウンとは違い、そのギルドに所属していたプレイヤーは皆、「御伽噺の登場人物になぞったキャラメイク」が施されていたのだ。

 

 その為、てるよの「かぐや姫」を始めアインズ・ウール・ゴウンに負けず劣らずの濃いメンバーが集っていた。

敵拠点(鬼ヶ島)攻略戦に長けた侍、金色に輝き戦闘力が増す猿ほか、東洋ばかりではなく西洋の御伽噺からは炎熱系魔法使いのマッチ売りや右腕が機械鎧(オートメイル)の隻腕の海賊、春眠暁を覚えない(よく寝落ちする)眠れる森の美女など、そうそうたるメンバーであった。

 その中でも輝夜が演じた「てるよ」はログイン率ナンバーワン、希少アイテムの収集家であり癖の強いギルメンを纏めるギルド長であった。

 

 ただ、お姫様らしいお姫様を演じていたはずなのにいつの間にかボロが出てギルメンからつけられたあだ名は「なんちゃって姫」、皆のアイドルをやっていると思っているのは自分だけであり、むしろ皆にちやほやされていたのは『乙姫』役の女の子の方であったとか。

 

 悪評高いアインズ・ウール・ゴウンと交流があった事を知っている者は殆ど居ない。

 寧ろ、幾度となく突貫していく御伽噺の連中を見て仲が悪いと思われていたほどだ。

 

 しかし、いい好敵手の存在もゲームを楽しむ大切な要素である事は確かである。

 

 

 

 

 

 そしてアインズは彼女達のギルドとの思い出を思い出していた……

 

 

 

 



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異変-7

この話のネタは余り評判良くなかったのですが、やはり好きなゲームのネタは使いたくなりますよね。
当時やり始めたゲームを今でも細々とやっていますし。


 

 

 まだユグドラシルに輝きがあった時代、蓬莱山輝夜こと『てるよ』と現在ではアインズと名乗っている『モモンガ』は出会っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初に二人が出会ったのはナザリックができて間もない頃、まだ防衛システムが完璧とは言えない時の頃のとあるイベントの時だ。

 

 そのイベントはハロウィンイベント。

 クリスマスなどリアルのイベントに合わせイベントを開催するゲームは珍しくない。

 

 そしてそれはアインズ・ウール・ゴウンにとって特別な意味を持つイベントでもあった。

 ハロウィンは知っての通り悪魔や吸血鬼などに仮装してお菓子をもらうイベント、ゲームでもその手のモンスターに因んだ獲得イベントが満載となっている。

 その手のモンスターが充実しており、またその手のモンスターに並々ならぬこだわりを持つアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーたちは作戦を立て、パーティを組みイベント攻略に燃えていた。

 

 その日、ナザリックでやりたいことがあったアインズはナザリックで留守番をしていた。

 

 

「おや?モモンガさんだけですか?」

 

 

 9階層にとどまっていたアインズを見つけ、話しかけたのはアインズ・ウール・ゴウン戦士職最強のたっち・みーであった。

 

「はい、みんなイベント攻略に駆り出されてしまって、僕はやることがあったのでお留守番です。

たっちさんこそ今日は随分遅いですよね。」

 

 たっちは気まずそうな顔で答えた。

 

「ええ…ちょっと家の方で…」

「…妻子持ちは大変ですね。」

 

「どうします?パーティに合流しますか?今、イベントで盛り上がっているでしょうし。」

「あ……いや、今からって言うのも…それに見たらパーティメンバーがアレでしたし。」

 

「……ああ……確かに。ハロウィンイベントにかっこつけて何かやらかしそうな面子ですね。」

 

考え方が『悪』に偏ったウルベルトを筆頭にトラブルメイカーのるし☆ふぁー、それにシャルティアの為にエロ可愛いコス衣装の獲得に萌える、いや、燃えるペロロンチーノといういかにも何かをやらかしそうなメンバーであった。

 

 暇そうにしているたっち・みーにモモンガが提案した。

 

「たっちさん、よければ一緒に出ませんか?」

「それは良いですね。でも、ナザリックに誰か残ってたほうが良くありません?」

「大丈夫ですよ。

今は何処もイベントで忙しくしてるでしょうしそんな時にここを攻めてくるもの好きなんて………」

 

ウー!ウー!ウー!

 

ナザリックに侵入者の警報が鳴り響く。

 

「……………」

「…すいません、盛大にフラグを踏みぬきました」

 

「ぐっ…偶然ですよ…多分」

 

 

 

この頃のナザリックは最盛期に比べてまだまだ防衛プログラムが完全でなかった。

その為、腕に覚えのある侵入者によって蹂躙されていった。

 

『鬼共を退治に来た!!ハロウィーーーン!!』

鬼殺しの侍がその大きな刀でスケルトン達を薙ぎはらう。

 

『早くつえー奴出てこないかなー!オラ、ワクワクすっぞ!!』

猿人の修道僧がその拳でゴーレムのどっ腹に一撃で風穴をあける。

 

 強く…そしてキャラの濃い連中の少数精鋭パーティがどんどん奥へと侵攻してきた。

 

「どうします?課金のトラップやモンスター召喚はこの間の大規模戦闘で使い果たしているでしょうし……」

 

 先日、ナザリックに大人数で責められた際その手のアイテムは使い切らしたばかりであった。

 かと言って今、出ているメンバーを今から呼んでも間に合わないだろうから彼らは自分たちで処理するしかない。

 たっち・みーがモモンガに意見を求めた。

 

 

「そうですね。

できる限り相手の体力と魔力を削った後に私達が確実に仕留めるとしましょうか…

そうですね………第3階層になら100LVのNPCにシャルティアがいましたし、そこら辺で………

わたしが出ますからたっちさんは裏方に回ってください。」

 

「わかりました。

でも気をつけてください。彼らは相当の手練れですから。」

 

 相手の体力を削り、決戦を当時、すでに完成していた1〜3階層の最後に決めたのであった。

 

 

 

 そして行動に移した二人。

 

 

 

 モモンガの思惑は思い通りに進み、侵入者の面々は疲弊していった。

 

「これ以上は動けぬ…無念………」

 体力切れでこれ以上の戦闘が不能になった侍。

 

「オラ、もう腹減って動けねぇゾ〜…」

 体力が削られ戦場のど真ん中で大の字で寝転がる猿人。

 

「動け!動けってんだこのポンコツ!!」

 動かなくなった義手に苛立ちを覚える海賊。

 

 

そこに絶対魔王が降臨した。

 

 

「愚かなる侵入者よ……その報いを受けるがいい。」

 

 タイミングも良かった。

 速さを優先する為に少人数で来たのもわかる。

 しかし、たった3人で攻略出来るほどヤワではないほどすでにこのナザリックは強靭であった。

 

 三人のスタミナが削られて動けないところにモモンガ達は追い打ちをかけた。

 

「…………やれ、シャルティア。」

 

 モモンガはシャルティアに攻撃のコマンドを入力した。

 そして、シャルティアは影から狼の眷属を召喚し、襲わせる。

 

侵入者三人がやられることを覚悟した瞬間。

 

介入者が現れた。

 

狼を一太刀で引き裂く紅き閃光。

 

「……躾の出来ていない狼は腑分けしてあげないとね………」

ペロリとハサミ型の剣を舐める赤いフードを被ったアサシン。

 

 

「鉞剣!相手を真っ二ぁつ!!」

クマにまたがり鉞担いだ大男が現れる。

 

魔法の鏡を手に持つ幼女が現れた。

 

「鏡よ鏡よ鏡さん〜♪

この世で一番可愛い女子(おなご)は誰じゃ?

それは勿論わ…「私だよーー!!」」

 

十二単の着物を着て、月をかたどった大きな杖を携えたお姫様があらわれ、少女の言葉を遮る。

 

「みんなのプリンセスアイドル!てるよちゃんが助けに来たよーー!!」

「ちょっとてるよ!妾のセリフをかぶせないでって言ったじゃろ!!」

 

「よっ!ウチの年齢詐称コンビ!!……」

 

「「あぁ!!潰すぞ金太!!」」

 

「ひぃ〜!」

 

緊迫した空気が一転し嬉々とした雰囲気となった。

 

しかし、モモンガはその変化にも流されずにいた。

 

「(増援か……厄介だな。………だが)」

 

モモンガだけではなく周りには高レベルのモンスターやNPCであたりを固めている。

数人増えた程度では何も変わらない筈。

 

「ふざけた連中だ………たとえ増援が来ようとも、足手纏いが三人もいて戦えると思うなよ………」

 

 

ギロリとモモンガが彼らを睨みつけると彼らもふざけたやり取りをやめ、逆にモモンガを睨みつけた。

 

 

 そして彼らを代表しててるよこと輝夜がモモンガの正面に立って言った。

 

「そうね。でもギルメンを無事に帰すのが私の仕事、連れ帰らせて貰いますよ。」

 

「こちらもそれなりの被害が出たんだ……そうやすやすと帰れると思うなよ。」

 

二人の視線が交差する。

 

 

「私は『御伽噺の住人』のギルドマスター『てるよ』といいます以後お見知り置きを………」

 

「『アインズ・ウール・ゴウン』のギルドマスター『モモンガ』だ………」

 

 

これが後に異変で再会する二人のファースト・コンタクトであった。

 

その後幾度とないギルド間抗争を繰り返し、幾度となく二人は出会うのだが、他のメンバーとは違い特別な交流には発展しなかった。

しかし、後に幻想郷と言う現実の世界で二人は相まみえることとなる。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

懐かしい思い出を思い返すアインズ。

 

「本当に懐かしい………」

「ちゃんと思い出してくれたみたいね。嬉しいわ。」

 

どうやら『てるよ』本人らしい。

しかし、アインズには驚きと同時に疑問が生まれた。

 

「しかし、そういうことならお前もゲームから転移を?………」

 

もしそうなら他にもプレイヤーが転移している可能性が高くなる。

 

「いいえ、私は元からここの住人よ。ゲームとしてやってただけ。

私の能力はゲームに関係ないのが証拠よ。」

「こちらでも流行っていたのか?

では、他にも…」

 

 自分たちの情報を知るものが他にもいるなら気を引き締めなければならない

 

「いえ、私はかなり特殊よ。

私の故郷が月なのは知ってるでしょ?

月が地上を監視している手段に衛星を利用する手段があるんだけどそれを内緒でうち(永遠亭)まで引っ張ってるの。」

 

「…いろいろとすごい話だな。」

 

 宇宙の怪電波の正体だったりその辺の不思議の原因はこいつらなんじゃないかって思う。

 

「DMMOをやるときは苦労したわね。

私、肉体に接続端子ないし。

でもそれも私の特異体質と月の宝具を使ってなんとかなったわ。

近代技術と神代技術を無理やりつなげてね」

 

輝夜はコンソールを取り出しアピールした。

 

 才能の無駄遣いを素で行く人だとアインズは思った。

 

 全てを理解したところで本題に入った。

 

「なるほど………

それで?何しにここに来た?

まさかこんな時に思い出話をする為だけにここまで来たわけではあるまい。」

 

輝夜はニヤつきながら答えた。

 

「ええ…せっかくだから幻想郷の住人として異変を解決しに来たわ。」

 

 

 

「そうか…それは残念だ。

わたしはお前を倒さなければならない様だ。」

「確か…『アインズ・ウール・ゴウンに敗北は許されない』……だったわね。

でもね。この異変で無敗神話は途切れる事になるわよ。」

 

 

「(知っているよ。

だが、それはお前ではない…)」

 

元ユグドラシルプレイヤー同士の戦いがいま始まろうとしていた。

 



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異変-8

-----1面ボス・第3階層-----

 

 舞台が完全に下の階層に移ったが吸血鬼たちの戯れはまだまだ続いていた。

 

「物質破壊能力とは………流石はレミリアの妹でありんす。

厄介なスキルを保有してるでありんすね。」

 

 伝説(レジェンド)級・神器(ゴッズアイテム)級でフル装備しているシャルティアの耐久力は非常に高い。

 しかし、その高い耐久力を持つ武装でさえ、フランの能力『すべてを破壊する程度』の能力の前では紙装甲同前だ。

 今はフランの能力の対象に入らない様にするのがやっとだ。

 

「ペロロンチーノ様に作って貰った大切な防具を壊されるわけにはいかないでありんす。

悪いけど切り札を使わせてもらいます。」

 

シャルティアはスペルカードを取り出し、宣言した。

 

センシ(鮮屍)『エインヘリアル』!!!」

 

 シャルティアは自分の切り札、物理攻撃しか出来ないが自分と同じだけの戦闘力を持つ分身を生み出すスキルを発動させた。

 

「これもスキルでありんす。

二体一が卑怯とは言わせないでありんすよ。」

 

 シャルティアのスキルをみてはしゃぐフラン。

 

「お姉ちゃん凄〜い!!

じゃあ、私も!」

 

「え?………私()?」

 

不穏な言葉を放ちながらフランも新しいスペルカードを宣言した。

 

「禁忌『フォーオブアカインド』……」

 

 フランは4体へ分身するスキルを発動させる。

 これには流石のシャルティアも驚きだ。

 

「『二体一が卑怯とは言わせない』だったよね〜。」

 

「………そ、そ、そうね。………」

 

フラン(×4)は狂気を孕んだ瞳でシャルティアに笑顔を向ける。

身の危険を感じざるえないシャルティアは横で見ているレミリアに視線を送る。

 

「シャルティア……頑張って♪」

 

「あぁ…はい…」

 

なんとも覇気のない言葉がシャルティアから漏れる。

 

 

 

 

 

-----2面ボス・第5階層-----

 

 

一方、コキュートスとうどんげ、妖夢の戦いは熾烈を極めていた。

 

うどんげの凄まじい数の銃弾がコキュートスに放たれるが、すべてがその硬い甲殻により弾かれる。

 

「ナンダ、ソノヒョウロク弾ハ………

我ガ装甲ヲ貫キタクバモット骨ノアル物ヲ用意セヨ!!」

 

コキュートスが現在発動しているスペルカード

『武士道「銃ナンテ捨テテカカッテコイ」』

はアイテムやスキルで相手の行動を制限するものである。

 

 遠距離攻撃弱化・遠距離攻撃耐性強化・近接攻撃強化・状態異常系攻撃弱化・空間系攻撃無効化などのバフを全体にかけ、遠距離戦を捨てて近距離戦に絞らせるものだ。

 

 一見、接近戦が得意なコキュートスに有利すぎる状況だがそうでもない。

 近接攻撃強化の恩恵は相手も同じでありコキュートスはこれを発動している間は一部を除き、スキル・魔法が殆ど使えない状態である。

 

 相手がコキュートスと同格以上の相手なら例え遠距離型でもデバフをはねのけるだけの対策が取れるのだが、その実力が発展途上の二人には憎たらしいほどに嵌っていた。

 

 うどんげの座薬弾はほぼ効かない、レーザー系の攻撃もあの装甲と武器でいなされてしまう。

 

 うどんげの援護射撃がほぼ意味をなさない状況である。

 

 うどんげのスタイルはバランス型であり、接近戦もそつなくこなす。

 しかし、目の前の光景がうどんげの足を止めていた。

 

「人符『現世斬』!!」

 

 妖夢が目にも止まらぬ速度でコキュートスに切り掛かる。

 その威力はバフの影響でいつものそれを凌駕する。

 

しかし…

 

「武刃『明王撃』ィ!!」

 

全力の突撃を止められ、はたまたはそれを打ち返される妖夢。

 

 妖夢は実感する。

 この男(虫だけど)の剣術の腕は自分のそれを遥かに凌駕すると………

 それは端から見ていたうどんげも同じ思いであった。

 

 それでも向かっていこうとしている妖夢にうどんげは肩に手を置き、止める。

 

「妖夢………やめよう。今の私達じゃ普通に戦っても勝ち目はないよ。」

 

うどんげの言葉に表情をムッとさせ答えた。

 

「じゃあ、どうしろっての!」

 

いつになく真面目に答えるうどんげがそこにいた。

 

「ちょっと無茶な戦いをしてみようと思うわ。

妖夢、しばらく私がアイツの相手をするからその間に力を溜めてて………

アイツが防げないくらいとびっきりの奴を用意してね…………」

 

「サセルト思ウカ?

言ッテオクガサッキノ様ナ弾幕デハ時間稼ギニモナラナイカラナ。」

 

うどんげはキリッとコキュートスに向かって強い視線を送った。

 

 

「そう、私の射撃じゃあこのフィールドで装甲を抜くことは難しいわ…

だったら拳で殴ればいいだけのことよ!!」

 

うどんげはブレザーの袖を引きちぎり靴も靴下も脱ぎ裸足となった。

 

「(何ヲスル気ダ?………)」

 

「師匠に貰ったこの薬を………」

 

うどんげはポッケから薬を取り出した。

 

 先ほど薬を毒霧の様に散布して恐怖公の部下を倒そうとしていた。

 同じことをしてもこのフィールドでは殆ど意味が無いはず…………

 コキュートスがその様なことを考えているとうどんげの行動はそれを上回った。

 

 

 

 

 

「自分に使って!!!!」

取り出した薬を自分の口元に躊躇なく持っていく。

 

 

 

 

 

「ドーピングじゃないですか!?」

「ドーピングジャナイカ!!」

 

ついつい、妖夢もコキュートスもツッコミを入れてしまった。

 

ビキッ!!ビキッ!!

と嫌な音がうどんげの体から響く。

筋肉や神経の強制的な活発化により体全体が悲鳴をあげている状況だ。

血管が浮き出て筋肉は盛り上がる。

何処ぞの格闘ゲームのファイターの様な体つきになってしまった。

 

 銃が効かないなら拳で殴れば良い………

 相手の方が強いなら圧倒的力で押し殺せば良い……

それがうどんげの出した結論である。

 

 しかし、見せかけだけの筋肉ではコキュートスには通用しない。

 だが、それが本物であることは次の攻撃により証明される。

 

トーン!トーン!トーン!

 

 その体でうさぎらしく飛び跳ねるうどんげ。

 次の瞬間、コキュートスは上昇した身体能力に驚愕するのであった。

 

「音が………遅れて………聞こえる………よぉ!!!!」

 

うどんげのスピードは普段の限界を軽く超え、コキュートスの懐に飛び込んだ。

 

 鈴仙ファントムとでも言えば良いのか、某生徒会長と同じ事をやってくれたうどんげ。

 この技が誰の影響で作られたのかは言うまでも無い…………

 

 

 コキュートスの腹部に見事な掌底を打ち込んだ。

 

「ヌォォォ!!貴様ァ!!」

 

 

 壮絶な肉弾戦を繰り広げ始めたうどんげとコキュートス。

 

 明らかに体に負担をかける戦いにうどんげの身を心配する妖夢。

 

「早く、準備をして!

この力は長続きしないし、コイツを倒し切ることも出来ない!!」

 

「でも、そんな戦い方したら体が壊れちゃうよ………」

 

「大丈夫!!無理するのは慣れてるから!

(主に師匠のお仕置きで)」

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

「へくちゅっ!…………」

「あらあら、見かけによらず可愛いくしゃみをするのね。」

 

9階層とどまった永琳はアルベドと共に輝夜の帰還を待っていた。

 

 輝夜本人をアインズの元に送り届けることが目的だった永琳にこれ以上戦う理由は無い。

 出来れば一緒について行きたかったが、輝夜の事だから無事に帰って来るだろうと思い、今は軽くアルベドと雑談を交わしていた。

 

「きっとうどんげだわ……

帰ったらお仕置きをしてあげないと…………」

 

「…………よくわからないけどその子はご愁傷様ね……」

 

 なぜ噂の対象までわかるのかは謎だがうどんげの異変後の追い打ちが確定していた。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 そして最深部では今まさに輝夜とアインズの戦いのゴングがなろうとしていた。

 

 元ユグドラシルプレイヤー同士の新しい弾幕ごっこの始まりであった。

 

 

 

「あの時の輝きは今は無い……

お互い立場も護るものも変わってしまった……しかし、肉体も魂も死しても遊びを楽しむ心は残っている!

さあ、あの時の続きを始めようでは無いか!」

 

 

「月には叢雲華には風、美しき時は儚きもの、一瞬の輝きである今宵を共に楽しもうぞ…………

蓬莱山輝夜………参ります。」

 

 

「「さあ、楽しい『弾幕ごっこ』を始めましょう。」」

 

 

掛け声と共にアインズは最初のスペルカードを宣言した。

 

魔導『死霊魔導ノ成レノ果テ』(〈スケルトンメイジ複数召喚〉)!」

 

アインズの周りにアインズに近しい姿をした五体のスケルトンが杖を持って召喚された。

 

そしてそのスケルトンから無数の魔法矢が放たれた。

 

魔法矢(マジックアロー)

 

無数の矢は輝夜に向かってとんできた。

 

「難題『龍の頸の玉-五色の弾丸-』」

 

輝夜の開幕スペル。

五色の弾丸がスケルトンメイジの矢を相殺し、更に五体それぞれを撃破した。

 

「ユグドラシルの魔法は弾幕ごっこには向かない!

あなたがモンスターを召喚して弾幕数を稼ぐ方法も予測できたわ!」

 

「そうか……しかし、これまでは予測できないだろう。」

 

被弾し、バラバラになったスケルトンの残骸から髑髏だけが宙に浮き、アインズの周りをグルグル回りだした。

 

髑髏は口を開き、口から魔法矢をはじめとする射撃魔法を連発し始めた。

 

輝夜はその攻撃を慌てて回避した。

 

「おっと………成る程………オプション攻撃ね………洒落たことしてくれるじゃない………」

 

これは魔理沙の「オーレリーズサン」やパチュリーの「賢者の石」を見てアインズが作ったものだ。

 魔法の種類は召喚であり、常にアインズの周りを飛び回り射撃魔法を打ち続けるスケルトンメイジを召喚するものである。

 

 これはアインズがアンデッド生成スキルを応用して作った改造スケルトンであり、本体は頭部のみである。

 ちなみに召喚時にMPは消費するが、射撃魔法のMPはスケルトンに依存している。

 MPがゼロになったら消滅するが、そうなったらまた新しく召喚し直すつもりらしい。

 

 また、最初に体ごと召喚したのはデコイ…囮である。

 

「次はこちらの番だ。

絶望符『星の終焉』(〈暗黒孔〉〈獄炎〉〈朱の新星〉)!!」

 

 次にアインズが宣言したスペルカードは複数の魔法を複合・同時発動させて作った弾幕。

暗黒孔(ブラックホール)〉の力で敵を引き寄せながら渦の中心からは黒い炎が飛び出してくる。

 更にアインズがばらまく炎弾が引き寄せられ、引っ張られながら前と後ろから弾幕が飛んでくるため非常に避けにくい。

 

 丁度、伊吹萃香に似た弾幕があったが彼は萃香に会っていないので偶然似たような弾幕を自分で考えたのだろう。

 

 

「神宝『サラマンダーシールド』!!」

 

輝夜は神宝の一つ、「火鼠の衣」を使い火を防ぎそこから放たれた弾幕によりアインズの弾幕を吹き飛ばした。

 

 

「ほう?…相変わらず良いアイテムを持っているな…」

 

「まぁね。

…こっちでも向こうでも珍品コレクターを名乗ってたからね。

言っておくけどあげないわよ。」

 

 

 弾幕ごっこに戦い慣れているアインズを前に輝夜は思考を巡らした。

 

「(誰が入知恵したのか……

弾幕ごっこ………スペルカードルールを熟知している。

使っている魔法は確かにユグドラシルのものだけどそれをベースにスペルカードに改造している。

あいつが幻想郷に来たのは最近の筈なのに

誰かが裏で糸を引いている?…

紫か?…いや、あのスキマなら助言はしても技術的な協力はしない筈…

なら…

…いや、そんなことはどうでも良い。

今は目の前の戦いを楽しむことが一番ね。)」

 

輝夜はニヤリと笑い、アインズに話しかけた。

 

「弾幕ごっこは素人だから手加減してあげないといけないと思ってたけどその必要はないようね。」

 

 アインズはこの世界に来て一番力を入れていたスペルカードの研究が実を結んだ事に喜びながら輝夜に謙遜で返した。

 

「いえいえ、ここの連中のスペルカードに比べたら美しさに欠けますよ。

…どうも自分は効率重視の考えに引っ張られて自由な発想が出来ない………」

 

「その気持ちわからなくもないわ。」

 

輝夜もアインズと同じように弾幕ごっこが存在しない土地の出身者。

 

 自分の能力が弾幕ごっこには不向きであるため、能力を使うスペルカードは数える程もない。

 だからアイテムを使ったスペルカードを作り異変に挑んだ過去がある。

 その為、アインズの気持ちがわからなくもないと言ったのだ。

 

 挨拶代わりの開幕戦は終わりだ。

 腹の探り合いはこのぐらいにして本気でぶつかり合うことを望んだアインズは輝夜に挑発をかけた。

 

「それで?……この程度か?…」

 

アインズの挑発に乗り、輝夜は眉間に力を入れて答えた。

 

「調子に乗るなよ。クソ餓鬼が………」

「年齢詐称姫が本性を現したようだな。」

 

 

 

 

 

 

各階層で激化する弾幕ごっこ…

 

 皆が異変解決の為に動いていた中で一人だけ違う目線でこの異変に参加していたものがいた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

『(月の姫さんに先を越されたのは残念だけど、この程度の障害ぐらい切り抜けて貰わないとね…

 

待っててね……さ と る )』

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 



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異変-9

白熱する輝夜とアインズの戦いは拮抗しているように見えたが徐々に差が開き始めていた。

 

「あらあら!さっきの威勢はどこに行ったのかしら!?」

 

「その減らず口………今直ぐ止めてやる!

魔法最強化(マキシマイズマジック)現断(リアリティスラッシュ)』!!!」

 

時空断裂の刃が輝夜を切り裂き、真っ二つにした。

 

しかし………

 

「『リザレクション』………」

 

輝夜は蓬莱人としての不死の能力を全開にして肉体を再構築したのだ。

 

「(くっ!後何回殺せばMPが無くなるのだ!)」

 

死なないことに関しては超一級品である蓬莱人も戦い続けることに関してはそうでもない。

時間回帰系の力で維持されている蓬莱人の不死性は絶対であるが、MPの回復は普通より少し早い程度。

 

 更に急速な傷の完治は精神的に疲労(MP減少)するのでMPを削りきれば戦えなくなる。

(死にはしない。)

 

 

 その事を知っているアインズは負けじと攻撃を続ける。

 

 しかし、アインズは輝夜との相性の悪さから少しづつ焦りが生じていた。

 

 お互い元ユグドラシルプレイヤーであり、ギルドマスター、更にお互い後衛よりのジョブである二人は共通点が多かった、しかし、戦闘スタイルは正反対である。

 

 敵の策略の上をいき、戦況をひっくり返す事に長けたアインズは攻撃よりの後衛。

 逆に同じ策略家である輝夜だが、アインズ程の火力が無い輝夜はかぐや姫の難題にまつわる神宝の力で多彩な攻撃を仕掛けアインズの攻撃をいなしている。

 この持久戦に蓬莱人の耐久の高さが拍車をかけている。

 

 単騎に置いての長期戦が苦手なアインズとしては厄介この上ない。

 

 更にアインズを苛立たせる要因がもう一つあった。

 

「肋骨符『肋骨の束縛(〈ホールド・オブ・リブ〉)』!!」

 

 アインズは新しいスペルカードを宣言。

 

 本家のホールド・オブ・リブとは違い、骨もリアルで隙間が空いている。

 

 まるで『巨大な生物の一部』のようだ。

 

輝夜の周りに巨大な肋骨が生えてきて輝夜を閉じ込めようとした。

 

輝夜は飛翔し逃れようとするがそこを待っていたアインズは次なる魔法を唱えた。

 

「腕骨符『龍腕骸手』!」

 

地面から突き出した巨大な骨の腕は上昇した輝夜を上から叩きつけた。

 

 わざと大きい逃げ道を作りそこに別の攻撃を繰り出す。

 回避不可では無いが限りなく避けにくい攻撃。

 今のタイミングなら避けられないはず。

 

「どこ見てるのよ………こっちよ。」

 

 上の方から声がした。

 アインズが見上げると巨大な腕の骨の上に座る輝夜の姿があった。

 

「(………今度は時間操作系の術で回避したのか………)」

 

 そう、時間操作系の術による回避性能の高さ……それもまたアインズを慌てさせる要因であった。

 ポ○モンでいうラッ○ーの耐久力の上にピ○シーの小さくなるを合わせたようなピンクい悪魔戦法である。

 

 

「(こちらから追いかけても捕まらない………なら向こうから来てもらうような状態にしないとな………)

肋骨と腕を避けただけでいい気になるなよ。

今度は本体が相手だ!」

 

 アインズの言葉に反応して先程出てきた肋骨と腕を中心に地鳴りが響く。

 

 地は割れ中から巨大な骨の龍が現れた。

 

 ナザリックの玉座の床をこんな風にしていいのかと思うが、ナザリックの為の戦いだからきっと仲間も許してくれる………

むしろ演出的には満点だから仲間も嬉々としてOKしそうだ。

 

 

極星『双頭の骸龍--オストガ○ア--』(スケリトルドラゴン×2 召喚)!!」

 

 床から出てきたのは巨大な二つの頭を持つ骸龍。二頭召喚扱いだが胴は一つであり文字どおりの双頭のスケリトルドラゴン。

 

 その龍がアインズを守るように降臨した。

 

 

 

「いい加減他ゲー過ぎると読者から怒られるわよ。」

貴方だけには言われたく無いです。

 

 

 このまま戦い続けてもジリ貧になるのは目に見えている。

 残りの魔力的にも最後のチャンスだと確信したアインズは最後の魔力を使い輝夜に仕掛けた。

 

スケリトルドラゴンに続き、アンデッドの大群勢を召喚し始めた。

 

 

「死霊連鎖『幻想都市陥落--ラクーンシティー--(アンデッド各種・大量召喚)』」

 

 

アインズは残りの魔力とスキルを使用し、兎に角アンデッドを集め、輝夜との間に壁を作った。

 

アンデッド製作スキルや外で暴れているアンデッド達まで可能な限りの数を。

 

 

 

部屋はみるみるうちにアンデッドで埋め尽くされ、輝夜は考えた。

 

 この数を相手にするのは骨が折れる。

 それよりここまでの召喚をし尽くしたのだ相手の魔力は残り少ない。

 高威力魔法一発分位であろうか?その一発では超位魔法とコンボを決めても自分の残り体力を抜くことは出来ない筈だ。

 

 このアンデッドの群勢を突破し、抵抗できないアインズを倒せば戦いは終わる。

 

輝夜は目の前のアンデッド達をなぎ払い道を作ろうとした。

 

輝夜の周りに展開する神宝が全てが光りだし、弾幕を形成し始めた。

 

 

〈神宝『ブリリアントドラゴンバレッタ』〉

・〈神宝『ブディストダイアモンド』〉・〈神宝『サラマンダーシールド』〉・〈神宝『ライフスプリングインフィニティ』〉・〈神宝『蓬莱の玉の枝-夢色の郷-』〉

 

「『かぐや姫、五つの難題』!!」

 

五つの難題、五つの神宝、それらの力を同時に放つ輝夜。

その威力は凄まじく、放射線上にいるアンデッドを塵に帰す。

 

壁代わりに配置したアンデッドが次々と撃退されている数秒間アインズは最後の切り札を出す為の詠唱を唱えていた。

 

「………〈The goal of all life is death……(あらゆる生ある者の目指すところは死である)………I give a fool refusing it fear of the death.(それを拒む愚か者には死の恐怖を与えよう。)……Again and again………〉(何度でも……何度でも……)

 

 

アインズの前方のアンデッドが薙ぎ払われ、輝夜が姿を現した。

 

アインズはすでに魔法を打つ準備を完了していたがその姿を見ても輝夜は驚きもしない。

 

 

 

「(さあ、使いなさい!どんな魔法やスキルであろうとそれが貴方のラストワードになるのよ!)」

 

 

 

何がこようが自分なら耐えられる。

そんな彼女の慢心こそ最大の敗因であった。

 

 

 

蓬莱人には直接死を与える即死魔法は効かない。

それはスキルにより強化されたアインズの即死魔法でも同じ事だ。

 

たとえ即死無効を無効にし、全ての者を殺す事ができるほどに昇華してあっても。

死を与えられる時間は限られており、死の効果が切れた途端に蓬莱の薬の力で蘇生する。

 

ならばせめて死を与える時間を延長させることはできないだろうか?

そう考えたアインズは普段は重ね掛けしないその魔法に時間延長化魔法(エクステンドマジック)をかけることにした。

 

 

つまり効果時間中なら何回生き返っても何度でも死を与える魔法である。

 

「貴様の負けだ!!蓬莱山輝夜!!

 

不死殺し『嘆きの妖精の絶叫(クライ・オブ・ザ・バンシー)』!!」

 

 

 アインズの背景に描かれている時計が12時を指し、大きな鐘の音を鳴り響かせる。

その音とともに光に包まれた輝夜は力なくその場に倒れた。

 

 

 死体となっている輝夜だか完全に殺したわけではない。

蓬莱人の不死性は非常に高くこの魔法を駆使しても限りなく死に近い仮死状態を維持し続けるだけ、一時間もすれば効果が消える。

そうなれば蘇生し、いつも通りである。

 

 

 ただ、動きを止め負けを認めさせるだけなら物理的に拘束したり魔法的に封印すればいいのだが、アインズはあえてこの方法をとった。

 それは絶対に死なない自信があった輝夜と死霊魔法に特化したアインズのプライドのぶつかり合いでもあった。

 

 輝夜はアインズのスキルの事も知っていた。

 しかし、もし食らっても一瞬の死でありすぐに復活し試合を続行できると考えていた。

 

 しかし、予め蓬莱人の情報を得ていて更に対策を取っていたアインズの辛勝である。

 

 

 

「眠れ…我が戦友(とも)よ…

異変が終わったらまたかつての栄光を語り合おうぞ…」

 

 



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異変-10

 

 

 アインズとの激戦を終えた輝夜は眠り続けた(正確には仮死状態)。

 アインズは輝夜は客人と認め、9階層の一室のベッドに寝かしたのであった。

 

「ん………んん………」

 

目をこすり、天井を見上げた輝夜は言葉を漏らす。

 

「知らない天井だ…………」

「第一声がそれですか………相変わらずブレませんね。」

 

 ツッコミを入れたのは従者・永琳である。

 

「ここは?」

「ナザリックの一室ですよ。

あなたはアインズに負けて仮死状態のままここに寝かされていたのですよ。」

 

「そうか………そうだったわ!

永琳!異変は!?モモンガは!?」

「落ち着いて下さい。異変は終わりましたよ。

いつも通り博麗の巫女が解決しました。」

 

「…………そう……………やっぱりアイツ負けたのね……………」

 

 わかっていたことだが自分に勝った相手が負けるのは気持ちいいものではない。

 

 輝夜はうつむきながら口ずさむと永琳が怪しげな言葉を吐いた。

 

 

 

 

 

「表向きはね……………」

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

---第9階層・5面ボス---

 

 

 

 時は輝夜が倒れて直ぐ後にまで遡る。

 

 下の階層で輝夜が敗北したことがアインズからアルベドに伝わった。

 

「あっはい!………それはおめでとうございます………そうですか………わかりました。では伝えますので…………失礼します。」

 

 

 アルベドが独り言を始めた。

 おそらく通信魔法でも使っているのだろうと永琳は直ぐにわかった。

 

「おめでとうってことはウチの姫様は負けたって事ね。」

 

「察しがよくて助かります。

今、部屋で休ませてるそうです」

 

「あら?意外にも親切ね。」

「アインズ様が輝夜様を客人だと認めたまでの事、アインズ様の客人に無礼をするわけには行きませんからね。

部屋まで案内するけど、どうします?」

 

 永琳は少し考え、答えた。

 

「そうね…………もうちょっとここにいるわ。

姫様も直ぐには目を覚まさないでしょうし……あなた、話をつけたい人がいるんでしょう?それに立ち会わせてもらうわ。」

 

 

 輝夜がいない間の時間、永琳とアルベドは戦いもせずただ喋っていた。

 

 それによりタイプは違えどお互いキレ者であり、この異変を別の視点で捉えていることに気付いていた。

 

「(内容によっては私も無関係ではないし…………)」

 

「それは助かるわ………でも、あなたにも何か考えがありそうだし、借りだなんて思わないわよ」

 

 

 

 この異変の真の黒幕の存在。

 アインズに異変を起こすように唆し、自分はのうのうと解決者側で介入している真の黒幕の存在。

 

 

 

「………綺麗なところに出たかと思ったら意外な人間が居るわね。」

 

「まぁ、なんとも意外な組み合わせね。」

 

 霊夢と紫の結界少女組、やはり勝ち上がってくるのはこの組であった。

 霊夢は知った顔である永琳に問い詰める。

 

「あら、霊夢。遅かったわね。」

「なんでアンタがここにいるのよ。

もしかして外のゾンビ達はアンタの仕業?」

 

 確かに永琳ならTウイ○ス的な薬を作れるだろうからこの異変の元凶だと言われても皆が納得するだろう。

 

「確かに私ならそういう薬も作れるでしょうけど、こんな事態になるようなヘマはしないわ。」

「…………どうだか…………」

 

 霊夢は疑いをかけるように言った。

 永琳のマッドぶりは中々のモノであり、餌と称して池の魚を巨大化させたり、肥料と称してタケノコの成長を促進させ更に弾より強固にした前科がある。

 

「まぁ、この異変はここを守ってる連中の親玉らしいから良いわ。

そこのあなたも他の守護者とか言う連中と同様『ここを通すわけには行かない…』とか言うんでしょう?」

 

 

 聞かれたアルベドが答えた。

 

「…………いいえ、主人からはここを死守しろとの命令は受けてないわ………通りたくば通りなさい………」

 

 死守とまではいかないがここの守護をするように言われていたアルベドが道を譲った。

 

 確かにこの二人とまともにやりあってもこれまでの守護者同様勝ち目はない。

 しかし、戦いもせずに道を開けるのはアルベドらしくはない。

 

 それはアルベドがすでに標的を絞っていたからだ。

 

 

 

「あらそう、なら遠慮なく…………」

「ただし」

「だが、しかし?」

 

アルベドは黒い斧を振りかざし、紫に向ける。

 

「八雲紫………あなただけは残りなさい。」

 

 

 

「あらあら、お姉さんに何か用かしら?」

 

 アルベドは紫に親の仇のような殺意に満ちた眼差しを送る。

 紫はそれをからかい気味に返した。

 

「紫〜

アンタ何やったのよ。彼女、滅茶苦茶怒ってるわよ。」

 

 このスキマは日頃からロクなことをしない。

 その事を知っている霊夢は呆れながら問う。

 

「誤解よ霊夢〜

私、何もしてないわよ〜」

 

 紫の甘え声にこの場の全員がイラッとした。

 

 

 

 

「あなたには聞き出さなくちゃいけないことが沢山あるの、洗いざらい話すまではここを通すわけにはいかないわ。」

 

 

「そうね、私もあなたに聞きたいことがあるのよ。

さぁ、紫。腹を割って話し合いましょう。」

 

 アルベドに引き続き永琳も紫を引き止める。

 笑顔で引き止めた永琳であるが、その言葉、一言一言には相当のプレッシャーが乗っていた。

 

「ああ〜ん、霊夢〜助けて〜。

一緒に戦ってきた仲でしょ〜」

「なんだかよくわからないけど自分の蒔いた種でしょう。

自分でなんとかしなさい。

後、その甘え声やめなさい。正直、イラっとくるから。」

 

 怨念Maxのアルベドに笑顔で人が殺せそうな永琳に囲まれた紫は霊夢と共に行く事をあきらめるのであった。

 

(まぁ、良いわ。

悟の元にたどり着けないのは残念だけど霊夢だけでもたどり着ければ何の問題もないし…………

はぁ〜、せっかくの機会だから悟に会いに行きたかったけど楽しみはとっておこうかしら。

異変が終われば会える機会なんていくらでもあるし。)

 

 

 

 霊夢は最深部へ飛んでいく。

 

 

「じゃあ、先に行ってるからね。」

「行ってらっしゃい。」

 

 

 霊夢の後ろ姿を見て面妖な顔でニヤリと笑いながら手を振る紫であった。

 

 

「さあ、洗いざらい話して貰おうかしら。

何のためにアインズ様を唆し、この異変を起こさせたのか。

そして、そのお前が何で解決者側としてこの異変に介入しているのかを。」

 

 紫はしれっと答えた。

 

「異変は幻想郷の恒例行事だから、解決者として参加したのは唆した責任をとって解決しなくちゃいけないと思ったからよ。

誰かが解決しなくちゃ異変は終わらないからね。

これで矛盾は無いわよ?」

 

「嘘おっしゃい。

私達を幻想郷に呼んだのもあなた、異変を起こさせたのもあなた、解決するのもあなた、ここまでやられて裏なんてありませんなんて信じるわけないでしょ。」

 

 

「確かに……全く無いとは言わないけどね……

………それより良いの?博麗の巫女を簡単に通しても…………」

 

「アインズ様があの程度の輩に負けるとは思わないわ。たとえあの巫女に特別な力があってアインズ様が負けるような事があってもアインズ様もそこまでは織り込み済み。

貴方に何かやられる事がこちらとしては一番厄介なのよ。」

 

 今、二人の頭の中にある目的なら問題はない。

 しかし、予想外な動きをしてくるのがこの八雲紫である。

 

 

「あらあら、意外にも熟知してるじゃ無いの。

私が一から十まで説明するまでも無さそうね。」

 

「あなた、私をバカにしてるの?」

 

「いやいや、生まれて数年程度の若造がどんなものかと思っただけよ。」

 

「(そういう事言うからみんなにババア扱いされるのよ………人の事言えないけど。)」

 

アルベドはナザリックの中でも一・二を争うキレ者、軽くバカにされているように返した紫に苛立ちを覚える。

 

 

「安心して、今ここで何かする気は無いわ。

私の考えは異変が終わってからが始まりなのよ。

あなたたちに取っても決して悪い話じゃ無いから安心して。

 

そうね………せっかくなんだから弾幕ごっこの観戦でもしながら気楽に話しましょうか。」

 

紫は隙間を開き、まだ戦いが続いている場所を写した。

 

「吸血鬼対決にメイドVS魔女、あら?うどんげも来ていたのね。しかも白玉楼の庭師と………」

 

「(シャルティア……………遊びすぎて自分の首を絞める様な状況になってるわね………

これに懲りて遊び癖が直れば良いけど…………)」

 

 

霊夢がアインズにたどり着くのを待たずして他の戦いの多くは終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

 

---第9階層---

 

 

 

 

 

「……………これでスペカは使いきっちゃったわ。」

「私は魔力切れだぜ………」

 

 最も乱戦であった魔法使いとメイドの戦いは全員が負けを認める状況まで至った。

 

 MPが切れた者、武器である人形が切れた者、動けなくなった者、弾切れを起こしたガンナー、スペカがなくなった者、様々だ。

 

 最後に残ったパチュリーと魔理沙がお互い戦闘不能になったところで試合は終わった。

 

「………流石はアインズ様のご友人。お見事でした。」

ユリがパチュリー達に敬意を払う。

 

「ナーベラルと妹がいれば負けはしなかった………下等生物(人間)が足を引っ張ったからですわ。」

 ソリュシャンが愚痴を零す。

 

「魔理沙は頑張った………せめるの…………可哀想…………」

 

 弁護するシズ。

 確かに魔理沙の活躍はナーベラルの穴を埋めて余りある。

 ただ、ナーベラルとはタイプが違う魔法使いなだけあって他のメンバーも合わせづらかったのも確かだ。

 

「パチュリー………フランと遊んだ時よりも強かったんじゃねぇか?」

 魔理沙は以前パチュリーが調子が良かった時の戦いに比べ強くなっている事に気がついた。

 

「そうね……アインズに持病を直してもらってから体力・魔力共に充実しているのを感じるわ………

すべてのスペカを使ってまだ余力があるわね………

今度その辺も含めて増やそうかしら…………」

 

 

 他の者が戦闘不能に対してパチュリーはスペカ切れの降参。

 扱いとしては引き分けだが、残ってる余力からしたら魔女組の勝利と言って良いだろう。

 

 

「引き分けじゃあ、商品は受け取れないわね。」

 

 アリスが魔理沙に軽く視線を送った。

 

「私もパチュリーと一緒に学ばせて貰うかしらお互い利益のある話になりそうだし………」

 

ここにはアリスが求めている物が存在するのだ、魔法使いとしては当然だ。

 

「では、主人に伝えておきます。

詳しい話はまた後日………主人に代わり今後ともに良き関係を築ける様、願っておます。」

 

 魔理沙の無事に未知の魔法との遭遇。

 アリスはそれに十分に満足したのであった。

 

 

 

 

 

---第3階層・一面ボス---

 

 

 場所は代わり第3階層。

 吸血鬼達はまだ遊び足りないのか不毛な弾幕ごっこをまだ続けていた。

 

「………もう…………いい…………

ここ通って良いから………この戦い終わらせてほしいでありんす…………」

 

 流石のシャルティアも消耗し、降参したいのだが相手のフランはそれを許さなかった。

 

「いや!もっとシャルティアお姉ちゃんと遊ぶのーー!!」

「………また今度………また今度遊んであげるから…………ギブアップ……」

「あなたが、ゲームオーバー出来ないのさ!」

 

「…………」

 

 まだまだ遊び足りないフランは以前の異変とは正反対のセリフを吐いた。

 あの時とは違い挑戦者側なのだから当然かもしれないが言われたシャルティアからしたらたまったものじゃない。

 シャルティアは子供との体力の差を感じる親戚のおばさんの様に疲れた顔をした。

 

 

 

---第5階層・二面ボス---

 

 

 ドーピングを施し、体の限界を無視したパワーファイトを繰り広げていたうどんげもコキュートスの前に敗北に帰そうとしていた。

 

「薬のタイムリミットが………もう、体が動かない…………」

「力デ押シキレルホド守護者ハ甘クナイ……」

 

 

 

「でも、間に合った………」

 

 

 

 うどんげの言葉にコキュートスは辺りを見渡す。

 

 そこには自分を取り囲む六人の妖夢がいた。

 

「分身術カ………」

 

 妖夢は剣を握りうどんげが稼いでいた時間に溜めた力を解放しようとした。

 

「私の………いや、私達の勝ちだ!!」

「甘イナ!何ノ対策モ無シニ時間ヲ与エルト思ッタカ!!」

 

 コキュートスはアイテムを使い。

 本来溜めがいる攻撃をノータイムで打てる様にした。

 

 二人の最大攻撃がぶつかり合った。

 

 

 

「空観剣『六根清浄斬』!!!」

「武神『不動明王撃』ィィ!!!」

 

 

 ぶつかり合った力は衝撃波を生み、辺り一面を破壊していく。

 

 氷結のエリアにある氷は砕け、地表がむき出しになる。

 

 そばで倒れているうどんげも吹き飛ばされ壁に激突、気を失った。

 

 嵐は収まり、土煙が晴れるとそこに立っているのは一人の戦士であった。

 

 

 

 

「イイ………太刀筋デアッタゾ………」

 

 

 そばに倒れる半人半霊と月兎に賞賛の言葉を送った。

 

 

 

 



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異変-11

 

 

-----第9階層・6面ボス-----

 

 

 共に戦っていた紫を9階層に置き、博麗の巫女・博麗霊夢は最深部である玉座の間に到着した。

 

 扉は豪華かつ巨大であり、霊夢は両手で押そうとすると一人でに扉が開いた。

 

「よくぞここまでたどり着いたな………博麗の巫女よ…………」

 

 中に導かれた霊夢は部屋の中央、玉座に座る魔王を見た。

 

 魔法使い独特のローブを纏い、中からは一目で異形の者とわかる髑髏が見えた。

 

「お前が妖怪どもの親玉で、この異変の張本人ね………

とっととこの異変を止めなさい!さもないと痛い目に合うわよ。」

 

 玉座に座る屍の王アインズは言った。

 

「ほう?………巫女の癖に中々物騒な事を………意外にも好戦的なのかな?」

 

 まるで品定めをする様に巫女を観察するアインズ、霊夢はその視線に不快感を覚えた。

 

「止めるの?止めないの?はっきりしなさいよ。」

 

 

 ドスの効いた低い声で脅す霊夢に対しアインズは答えた。

 

「私的には別に止めても構わないのだがな……術が暴走して止められないのだよ。

まあ、これはこれで良いデータが取れるから放っている訳だが。」

 

 

「その口ぶりだと止め方に幾つか心当たりがありそうね。」

「フフッ………考えすぎだよ。幻想郷にて名高い博麗の巫女がどんな手でこの異変を解決するのか気になっているだけだよ。」

 

 

 強大な力を持つ妖怪特有の上から目線、人を研究材料にしか見ない魔法使い特有の考え、異形種特有の人間種に対する劣等感、そして生者を憎むアンデッドとしての特性、そんな感情が読み取れるやりとりを続ける二人である。

 

「良いわ………その口が解除方法をしゃべれる様に素直にしてあげるわ。

どの道、異変を起こした妖怪にお灸を据えるのが私の役目だからね。

もしかしてあなたを倒したら術が止まるかもしれないし。」

 

 このバイオハザードはウイルスに依存するものではなく、魔術的な力によってもたらされている。

 ならば霊夢の言う通り、術者のアインズを倒せば止まる可能性が高い。

 

 

 

 

「人間如きが私をどうにか出来ると本気で思っているのか?」

 

「だったら何よ。人間舐めてると痛い目に合うわよ。」

 

 二人はお互い、髑髏と陰陽玉のオプションを展開し戦闘態勢を整える。

 

 

 二人の視線はぶつかりあい、火花が散るのが見える様だ。

 

 

 次の瞬間二人は同時に動き出し最初のスペルカードを宣言し戦いは開始された。

 

 

「霊符『夢想封印』!!」

死霊符『死霊乱舞』(死霊大量精製)

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 博麗の巫女とナザリックの主の戦いの火蓋が切って落とされた時、その様子をスキマで見ていた八雲紫は共にいる二人に勝敗の予想をたずねた。

 

------第9階層-----

 

 

「二人はこの戦い、どうなると思う?」

 

 紫は永琳とアルベドに尋ねる。

 

「10:0でアインズ様の勝利を信じております。」

「……永琳は?」

 

「そうね………私はアインズとやらがどれ程の力を持っているのか知らないから予測は出来ないわ。でも姫様を倒す程の実力を秘めている事を考えると8:2かしら………」

 

 永琳の回答に突っかかるアルベド。

 

「2も上げるなんて余程博麗の巫女を高く評価してるのね。」

 

「アインズが2よ………」

「なっ!」

 

 味方かと思われた永琳から放たれる一言に戸惑うアルベド。

 

「ありえませんわ!アインズ様が負けるなんて!」

 

怒るアルベドを紫がなだめる。

 

「アルベド………落ち着いて………

せっかくなんだから主従関係とかを度外視して話し合いましょうよ。」

 

「わかっているわ…でも、アインズ様が負ける姿なんて想像できません。

あと、あなたに気易く呼び捨てにされると腹がたつわ。」

 

「じゃあ、なんて呼べば良いのかしら?

お嬢様?お姫様?……それとも侍女かしら?

…ねえ、守護者統括殿。」

 

「あなた本当にムカつくわね。」

「おお、こわいこわい。」

 

 紫の挑発に乗ってしまうアルベド。

 紫はファーストコンタクトの時から自分こそアインズの理解者であり対等の立場であるような振る舞いを見せる。

 その態度が気にくわないアルベドは紫に強い敵対心を抱いている。

 

「確かに通常の戦闘なら10:0でアインズなのは確かだし、霊夢という才能の可能性を加味しても8:2がいいところでしょう。

でもね……これが『異変』である事を考えれば話は一変するわ。」

 

 霊夢の力は本人のモチベーションで大きく変化する。

 そのモチベーションが最高値に到達するのが博麗の巫女としての力を発揮する時であり、それ即ち異変の時である。

 

「とは言え試合序盤は三人の共通見解通り、アインズが優位に進めるわ………」

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

二人の戦いは三人の予想通りに進んでいた。

 

「そら!次に行くぞ!」

 

 アインズの言葉に反応し、双頭のスケリトルドラゴンが霊夢を襲う。

 

 霊夢はそれを華麗に回避したが着地地点に待ち構えるはスケルトン。

 

 スケルトンは霊夢の足をつかみ拘束、霊夢はすぐさま振り払おうとするがすぐさま上空の死霊が降りかかる。

スケルトンと死霊(レイス)の自爆コンボにより爆風が巻き上がる。

 

霊夢は間一髪防御結界が間に合い生還するがダメージを受けてしまう。

 

「どうした?今のでこちらは回復し、そちらはダメージを受けたぞ?」

 

 あたりを見渡すとスケリトルドラゴンを含む中位・下位アンデッドが霊夢を囲う。

 

 輝夜の時は準備段階で潰されると踏んで使わなかったスペルカード掌握符『骸掌伎楽』。

 アンデッドで敵を囲い、物量戦の持久戦に持ち込むものである。

 自爆特攻を仕掛けるアンデッドで攻めまくり、相手に休む時間を与えない。

 アンデッドの自爆により対象に負のダメージを与え、逆にアインズと場のアンデッドの体力を回復させる。

 アインズは回復された余剰体力をMPに変換させる魔法を使い、減ったアンデッドを召喚するループを展開するものだ。

 

 ちょうどナザリックの第1〜第3階層の凶悪システムを縮小化させたものだが、これが成立するまでには時間がかかる。

 ユグドラシルの環境を知らない霊夢が序盤は様子を伺いながら戦ったのが完全に裏目になってしまったのだ。

 

 このスペルカードは準備段階である序盤に叩ければそれほどこわいスペルカードではない。

 しかし、準備さえ整えてしまえばこれ以上優位に進めれるスペルカードはない。

 

 弾幕ゲームでいう発狂モードに突入した今となっては名前の通り霊夢はアインズの掌で踊る人形に過ぎない。

 

 アインズは博麗の巫女の力をこの世界における『主人公補正』のような力だと考えている。

 故に漫画の主人公がよくあっけなく負けるような状況である物量戦・ハメ技・初見殺しを優先的に仕掛けそれが現状完全に成功していた。

 

 元々、技の多彩さ、MP、魔法攻撃力をはじめとする機動力を除くほとんどのステータスで霊夢を上回っているアインズがゲームを優位に進めるのは当然である。

 

 

「(このまま楽に終わってくれれば助かるのだがな……………)」

 

 アインズに取って初見殺しであろうと博麗の巫女に一勝を取れることが何よりも収穫になるのだ。

 スペルカードルールを採用したこの異変で永遠に勝ち続けることは不可能だ。

 しかし、博麗の巫女の力がアインズの考察通りであり、勝つこと自体が可能であると言う事実が生まれれば今後如何様にも対処が取れるようになる。

 

 一度でも勝てれば後は適当に負けてやればこの異変を終わらせることができる。

 それにナザリックの敗北に納得が行ってない部下達もわかってくれるだろう。

 

 

 霊夢の能力は結界術が中心であり、どちらかというと守りよりだ。

 魔理沙のマスタースパークのようにこの場の全てのアンデッドを吹き飛ばすと言う荒技ができない霊夢にこの場を切り抜ける手段はない。

 

 このままズルズルと試合は終わると思われたがスキマの向こうの二人のだけは違った。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

「わからないわ………この展開は当然の結果であり、そこに不確定要素の隙間なんてないはず………

二人が博麗の巫女にどんな期待をしているのか私にはわからないわ。」

 

 アルベドが先ほどから紫と永琳が気にしている事について問う。

 

「博麗の巫女の強さってスキルとか魔法とか……そう言う物じゃ無いからね………

まぁ、あなたにはわから無いでしょうが」

 

「なんで今日のあなたはそんなにも喧嘩腰なのよ。見てるこっちがハラハラするわ……」

 

 二人はかつてそれぞれの異変で霊夢と対峙した時のことを話し出した。

 

「確かにあれはスキルとかそう言うものじゃないわね………

特別な能力の発動を感じなかったからね……

どちらかと言えば世界そのものが霊夢を祝福しているかのようなものね………」

 

 博麗の巫女の力は幻想郷創造の力であり、どんな神であろうと到達でき無い代物である。

 

 

「まるで誰かが乗り移っているようにも感じたけど後で本人に確認をとったら『勘で避け切っただけ』って言ってたわ。

………あれを見せられちゃあ歯向かう気が完全に無くなるわよね……」

 

「あれを才能で片付けられちゃ努力する気も湧かなくなるわ………」

 

「だから霊夢本人も修行嫌いになって私は困ってるのよね。」

 

 二人は愚痴とも言える感想を述べた。

 

 なんともよくわからない説明にアルベドは疑問しか湧かない。

 

「???」

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 その頃、玉座では紫や永琳が言った言葉通りの現象が起き始めていた。

 

「(何故だ?…………なぜ当たらない?………)」

 

 アインズは気味の悪い悪い現象に直面していた。

 

 先ほどまで順調に当たっていたこちらの攻撃が一向に当たらなくなってしまったのだ。

 

 次から次へと新しい弾幕に切り替えているのだからパターンを読まれているわけではない筈。

 初見殺しを混ぜているのにもかかわらず回避し続けるこの現状は気味が悪い。

 

「(未来予知か?………それともサトリか?………いや、そうでもこの動きはおかしい。)」

 

相手の心を読むや未来予知はわかるだけ(・・・・・)であり動きにぎこちなさが残る筈、なのに霊夢は無駄なく最適化された動きで回避を続けた。

 

アインズはこの動きに心当たりがあった。

それは…

 

「(この動き…何百回も同じ面をクリアした廃人ゲーマー見たいだな。)」

 

 この状況は魔王とそれを倒しに来た勇者の構図、狙ってその状況を作ったとはいえ、今思えばまるでクリエイターの書いたシナリオ通りに動かされたに過ぎないのだと感じた。

 

 

 

「(まるでゲームじゃないか………)」

 

 

 

 

 

 霊夢は次々とアンデッドの群とアインズの魔法攻撃を全てかわして目の前まで接近した。

 

「覚悟しなさい………アインズ・ウール・ゴウン」

 

「(これは勝てないな………)」

 

 霊夢は7つの陰陽玉を自分の周りに展開させ、アインズに殴りかかった。

 

「壱!」

「弍!」

「参!」

 

 霊夢の打撃攻撃がヒットするごとに点滅する陰陽玉。

 

「肆!」

「伍!」

「陸!」

「漆!」

 

 全ての陰陽玉に光が灯った時、そのスペルカードは発動させられた。

 

 

 

 

「『夢想天生』………発動。」

 

 



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異変-12

「夢想天生………発動。」

 

 博麗霊夢の最終奥義であり、何者にもとらわれない能力『空を飛ぶ程度の能力』の真骨頂、『夢想天生』は発動された。

 

 発動した霊夢はいかなる攻撃をも無効化する無敵の状態となり、周囲に展開する陰陽玉からは超強力かつ超高速の陰陽符が発射された。

 

 いかなる防御手段も意味を成さず、弾幕回避にまだ慣れていないアインズでは避けられるはずも無い。

 

 敗北を覚悟したアインズはその走馬燈の中で幻想郷での己が行動を振り返る。

 

「(………もし、この世界にクリエイターがいるのなら………

 

ここで俺が負けるのは組み込まれたストーリーの一部で運命なのかもしれない………

 

世界がそれを望むならその運命、受けるほかないのだろうか。……)」

 

 

 高速陰陽符が大量にアインズに着弾し、大きな爆発を生む。

 

 その衝撃はナザリック全土に響き、その影響力は外の世界にまで伝わった。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

-----霧の湖-----

 

「見て!ゾンビ達が動きを止めたよ!!」

「動いてるやつもどんどん引き返していくよ!」

 

 霧の湖付近でゾンビ達相手に奮戦していたチルノ達はこの危機を乗り越えたことに喜んだ。

 

「やったねチルノちゃん!」

「やっぱ、最強のあたいがいたお陰ね!!」

 

 

 

-----人里-----

 

 

 

 サトルの姿をした彼は命令通り、ゾンビ化しようとしていた人里の住人を看病していた。

 

「魔力が弱まって薬が効き始めたみたいだね………熱も下がったし、もう安心でしょう。」

 

 魔法薬の効き目を感じ安心して少女の頭を撫でる。

 助かった少女の親はサトルに感謝し頭を下げた。

 

「ありがとうございます先生!このご恩は決して忘れません。」

「先生はよしてください。

偶々、薬が効いてくれただけですから。」

 

 魔法の通信でナーベラルからゾンビ達が勢いを無くしたとの連絡があった。

 

「(ゾンビ達が勢いを無くしたということは異変の終わりを意味する………

わかっていたことだが創造主の敗北は悔しさが残りますね。)」

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

-----第9階層-----

 

 試合を間近で見ていた三人はその結果にあっけなさを感じていた。

 

「しょうがない結果とは言え、もう少し粘ると思っていただけに拍子抜けね………

さて、そろそろ姫様のいる部屋への案内を頼んでも良いかしら?」

 

 永琳が試合の終わりを確信し、切り上げようとアルベドに案内を頼もうとしたが、残る二人は試合の終わりを悟ってはいなかった。

 

「(本当にこれで終わるなら期待外れよ………

このままじゃ何も変わらないわよ……悟。)」

 

「(アインズ様はまだアレ(・・)を出しては居ない。

使うことに躊躇なさる気持ちはわかりますがどうかお使いください………私達の為にアインズ様の名に傷をつけたくはありません。)」

 

 

※※※※※※※※※※※

 

-----第3階層-----

 

 シャルティアとフランの戦いを観戦していたレミリアは外の異変とアインズの敗北を感じ取っていた。

 

 

「(アインズ、ここで貴方が負けることは運命だけど、あえて言わせて貰うわ………

立ち上がってみなさい。

運命に抗ってみなさい…………

貴方になら出来るわ、幻想の存在でありながら外の住人である貴方なら………)」

 

 運命を操るレミリアも幻想郷の住人である限り幻想郷の運命に抗うことはできない。

 しかし、アインズにはその可能性がある事にレミリアは気づいていた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 煙は晴れ、玉座の間に大きなクレーターができていることが確認できた。

 

 その中心に横たわるアインズ。

 

「(……負けた………完敗だ…………

計画通りとは言え悔しいな…………

ここまで力の差を見せつければ今までの異変の元凶者達が仲良くしているのも頷ける。)」

 

 

 

 

HPのほとんどを削られ動けない状態のアインズだが意識だけは残っていた。

 

 

「(やはり、幻想郷はここで我々の敗北を望んでいるのだな…………)」

 

 ユグドラシルのギルドを転移させ、異変を起こさせ人外の恐ろしさを幻想郷中に広げ人々に絶望を味あわせる。

 役目が終われば希望の光として博麗の巫女に退治させアインズ達を幻想郷の一部として組み込む。

 

 当時の博麗の巫女と八雲紫をはじめとする幻想郷の賢者達が組み込んだシステムだ。

 

 

 

『アインズ・ウール・ゴウンに敗北は許されない』

 

 

 

 モモンガがアインズ・ウール・ゴウンの名を名乗る時に掲げた覚悟の一つだ。

 

 一度たりとも攻略されたことが無いナザリックの栄光に起因するモモンガがナザリックのNPCを守るのと同じくらい大事にしている信念だ。

 

 アインズは砕かれようとしている信念を前にあの力を使う決心をした。

 

 

「(世界が我々の敗北を望むなら………やはりこのアイテムの力を借りるしか無いようだな。)」

 

 

パキッ……………

 

 

 アインズの指にはめる指輪が一つ、砕け散った。

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 アインズが地に伏せたのを確認した霊夢はこの地を後にしようとした。

 

 ここからでは異変が止まったかはここからじゃわからない。

止まっていればそれでよし、外に出て確認して異変解決だ。

 止まっていなくても紫と合流してナザリック周囲に結界を張りゾンビ達を閉じ込める。

その後、外のゾンビ達を殲滅すれば異変は解決する。

 

霊夢は『夢想天生』を解きこの部屋を出ようとすると背後から違和感を感じた。

 

 

パキッ…………

 

 

何かが壊れる音が耳に入り霊夢は後ろを振り向くとアインズが立ち上がっていた。

 

 確かに消滅するほどでは無いが立ち上がれるほど手加減したつもりも無い。

 アインズが平気な顔をして立ち上がる姿に驚愕する霊夢。

 

「…どうやって防いだの?……

防げたようには見えなかったけど。」

 

 

 アインズは堂々と答えた。

 

「防いだ訳では無いのだがな………

あえて言うと………課金アイテムだ!」

 

 聞いてはみたが理解できない。

 しかし霊夢はそれならそれでいいという風な態度をとった。

 

「ふ〜ん、よくわかんないけど………

それで?それを使ってまで立ち上がってわざわざ私にもう一度退治されるために立ち上がったわけじゃ無いようね…………

異変のことなんてどうでもいいみたいなことを言ってたくせに………」

 

「ああ………異変のことなんて本当にどうでもいいのだがな…………

お前という存在に興味が湧いてな………

悪いが気がすむまで相手して貰うぞ!」

 

 

 先ほどまでとは比べ物にならないくらいの威圧感を感じる霊夢。

 

 

「さあ、エクストラ(6面ボスを倒して解放される)ステージ(もう一つの物語)を始めようでは無いか!

 

 

 

 

 まずはその鬱陶しい能力の源を断たせてもらう…

 

 

(ここはナザリックの最深部、監視の目があるとしたら八雲紫か八意永琳ぐらいだろう……八意は遅かれ早かれ輝夜から聞くだろうし、八雲紫は隠し通せる気がしない。

既に知ってる可能性まである……)

 

 

 

 

 

世界級(ワールド)アイテム………『山河社稷図』………発動。」

 

 

 

 

 

 

アインズは世界級のアイテムにより霊夢と自分を隔離空間に閉じ込めた。

 

「何?ステージ作り?ご苦労な事ね。」

 

霊夢は気づいていない、この空間がただの異空間では無い事に………

 

 

 世界級アイテムにより展開されたこの隔離空間は外の世界とは完全に隔離された空間であり、その名に相応しい程に強力だ。

 その力は世界の法則を歪め、世界にぽっかり穴を開けたのだ。

 

 

「(二十を除き、俺が現在使えるアイテムで最も対抗できる可能性のあるアイテムだ………

これが通用しなかったら完全にお手上げだな。)」

 

 

 霊夢のチート能力を霊夢を世界から隔絶することで防ごうと言う算段だ。

 

「(さて……この状態で先程の動きが出来たら考えられる可能性は二つだな…………)

 

 

至高杖『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』!!!」

 

 アインズは世界級アイテムにも匹敵すると言われる自らのギルドの証をスペルカードとして宣言した。

 

 

 杖の先端に蛇の頭が咥える様に取り付けられているシリーズゴッズアイテムから火の精霊や月光の狼やらが大量に召喚された。

 

 縦横無尽に飛び回る幻獣達を華麗にかわす霊夢、その姿はまさに巫女の舞である。

 

「(既に世界に認識されていたからか。

それともそもそも世界級アイテムが効いていないかだな。)」

 

 このアイテムはレミリア戦で既に使っている。

 

 アインズは世界級アイテムが通用していないことを考慮し思考を巡らせた。

 

「(これ以上の世界級アイテムの使用はリスクがでかすぎるな…

 

世界級アイテム以外でそれに匹敵する力を持ち、世界を欺ける可能性があるもの…

 

 

あったな……………一つだけ………………)」

 

 

 

結論を出したアインズに先程のスペルカードを攻略した霊夢が話しかけた。

 

 

「どうしたの?もうおしまい?

次はこっちから行ってもいいけど?」

 

 霊夢が挑発する様に言った。

 逆上して慌ててスペルカードを使用すればその隙にまた再び『夢想天生』を発動させるつもりなのだろう。

 

 アインズはため息まじりに答えた。

 

 

「はぁ〜……

こんな所で使う気なんて毛頭無かったのに…正直、己の趣味の悪さをさらけ出す様な物だし…何よりまだ未完成なのにな…………」

 

 脱力している様にも感じる台詞だが、徐々に覇気が増していく。

 

「見せてやろう。

余り趣味のいいものではないがな……」

 

 

 

アインズは裾からスペルカードの束を取り出した。

 

 

カードは勝手に浮き上がりアインズの周囲に展開された。

 

 

 

その数………41枚。

 

 

 

 

「スペルカード発動!!

 

 

 

 

 

至高41符『アインズ・ウール・ゴウン』」

 

 

 

 

 41枚のスペルカードは光りだしアインズは己のギルドの名を叫んだ。

 

 

 

 



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異変-13

 

 

『宝物殿』

 ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』がユグドラシル全盛期時代に溜め込んだ宝の数々と、運営資金となる金貨の山、武器、データが大量に納められている。

 その価値の高さは幻想郷に転移した現在でも変わらない、むしろ高くなったとも考えられる。

 他の階層とは独立した空間に存在し、ギルドが作った特製アイテム『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を持つものしか侵入する事が出来ない。

奥にある霊廟にはアインズ・ウール・ゴウンのメンバー、至高の41人の石像が飾られており、アインズにより辞めていったメンバーから預かったアイテムが装備されている。

 

 

-----エクストラステージ----

 

 

「スペルカード発動!!

至高41符『アインズ・ウール・ゴウン』」

 

 

 

 山河社稷図により展開された異空間の中にアインズの言葉が響く。

 41枚のスペルカード光るこの光景に霊夢は困惑していた。

 

 

「(なんだろ………あのスペカ………

どう動けば良(・・・・・・)いかわからない(・・・・・・・)………)」

 

いつも冴え渡る霊夢の勘が鈍っている感覚がする、霊夢は思考を巡らす。

 

「(嫌な予感がするわね………

何かやられる前にやるしかなさそうね!!……無時間移動(【亜空穴】)!!)」

 

霊夢はアインズの背後に転移し蹴りを繰り出した。

 

「(スケルトンには打撃が有効!

【昇天脚】!!)」

 

 霊夢の痛烈な蹴りがアインズの後頭部に見事にヒットした様に見えた。

 しかし、二人の間にアインズを守る様に降臨したのは純白の聖騎士。

 

 

戦士職最強(たっち・ミー)…………」

 

 

 そう、それはかつてのギルドメンバーであり、モモンガが最も信頼する男の姿をしていた。

 

「仲間!?…………いや、式神みたいな奴ね………」

 

騎士は剣を縦に振り押す。

霊夢は慌ててそれを回避した。

 

攻撃は外れたが剣の延長線上の地面にはまっすぐな亀裂を作った。

まるで空間を切り裂いた様であった。

 

 

 霊夢は回避しながらでもアインズの腕の動きを見逃さなかった。

 アインズの手元にはキーボード少し上にはディスクプレイが空中に展開されている。

 

 

 

「(出せるのはおそらく1体……それもあの手操……本人が操らないといけないタイプね)」

 

 

「避けるのは良いが、上に注意した方が良いぞ?」

 

 避けた反動で後退りする霊夢はアインズの言葉で上空の異変に気付いた。

 

 上空から垂れる雫が霊夢の腕の大きな裾に落ちる。

 

「あつっ!!!」

 

 霊夢は突如襲う痛みに顔を歪める。

 雫は服諸共、霊夢の肌を溶かしていた。

 

 上空を見上げると上ではスライムが強い酸の雨を降らせていた。

 

強酸スライム(ヘロヘロ)……」

 

霊夢は堪らず結界をはり、身を守った。

 

「ふっ……そんな守り方で大丈夫か?」

 

 アインズは霊夢の周りや結界に酸がこびりついた状態を確認し、スライムをカードに戻し手元に引き寄せ、別のカードを霊夢の後ろに投げた。

 カードは光り、また新たなモンスターが召喚された。

 

 今、結界を消したら結界にこびりついた酸を頭からかぶってしまう。

 霊夢に回避の選択肢は無かった。

 

女教師怒りの鉄拳(やまいこ)

 

 巨大なガントレットは結界を叩き割り、霊夢に直撃。

 霊夢は吹き飛ばされ地面を転がった。

 

 次から次へと現れるアインズ・ウール・ゴウンのメンバーは勿論本物ではない。

 

アインズはそこに着目し、召喚したモンスターの姿をかつての仲間の姿に改造し、仲間から預かった装備を彼らに装備させたのであった。

 

 姿だけならパンドラズ・アクターを作る際のデータが残っていたため苦労はなかった。

 

 ただし、改造の際に召喚獣の精神が耐えられず人形になってしまったため、リモートを余儀なくされた。

 

 元々、召喚獣にギルメンの戦術がこなせるとは思っていなかったから問題は無かった。

 

 

 

 

 しかし、そうして出来上がったスペルカードの性能は対費用コストに比べ『微妙』である。

 

 

 

 

 装備は一流ではあるがモンスターのレベルまで100LVにする事は難しくPCのキャラとは違い種族LVや職業LVの振り分けが効かない上に習得できないスキルや技は多い。

その最も酷い例は『たっち・みー』であろう。

 彼の装備はワールドチャンピオンのジョブでしか装備出来ず、仕方なく魔法を使えるモンスターが〈完璧なる戦士〉(パーフェクト・ウォーリア)を発動して装備したのだ。

おまけに必殺技の〈次元断絶〉(ワールドブレイク)〈現断〉(リアリティ・スラッシュ)を更に劣化させないと再現不可能なレベルであった。

 

 たっち・みーだけではない、他のメンバーの分もレベルもスキルも再現度もまるで足りてはいない。

 そして、流石のアインズも幻想郷に来てまだ短く41人分も作れる筈がなく、今現在実際に戦闘に出せるのは10名もいない。

 

 

 

 しかし、ここで疑問が生まれる。

 

 

 

 何故、この様なスペルカードを作ろうとしたのか…………

 

 

 

 確かに至高の41人の装備は手元に置いておくのは惜しい。

 だがそれならNPC達に貸し与えた方が彼らがうまく使うだろう。

 

 もし、理由が戦力としてではなく、かつてのギルドメンバーの姿を再現することが目的だとしたら?装備もその為の手段でしか無かったとしたら?

 

そして、このスペルカードがアインズの………いや、モモンガの気持ちを最も再現するものだとしたら?………

 

 

 

 

 

 

 ユグドラシル終期、モモンガは独りであった。

 

 

 

 

 メンバーの殆ど居なくなったギルド。

 ナザリックで仲間達の帰還を待つ日々。

 

 いつか、またみんなで遊べる。

 そんな事を思いモモンガはあの輝かしい時代を糧にアインズは霊廟に仲間の石像を作り待ち続けた。

 

 決して折れる事は無かった。

 あの時代の思い出こそモモンガにとって何よりもかけがえのないものなのだから……

 

 

 

 しかし、幻想郷に転移してしまった今、もうあの輝かしい時は戻ってくる事はない。

 

 

 昔の様に皆が集まる方法を失ったのだ……

 

 

 

 仮にメンバーが幻想郷入りしてもそれは人間の姿……

 決してナザリックに戻る事はないだろう。

 

 

 モモンガは仲間の姿をした人形を作り出す事にした。

 永遠に近い時間の中でかつての栄光が自分の中で風化しない様に。

 

 

 

 このスペルカードこそ、待って、待って、待って待ち続けて叶わなかった願い。

 その寂しさをこめて作られたモモンガの人形遊びだったのだ。

 

 

 

 故に本来では使うつもりはなく、想いの強さが自分を突き動かすこの戦いで使う事を決心したのだ。

 

 

 出し渋ったのは「寂しいから友達そっくりの人形を作って遊んでいます」なんてとてもカッコいい話ではないのもある。

 

 

 

「(近づくのはマズイ、一先ず距離を……)

霊符『夢想封印 散』!!」

 

 霊夢は霊力の塊を複数、放った。

 

防御力特化スライム(ぶくぶく茶釜)!」

 

 アインズは再びスライムを召喚。

しかし、先ほどとは違う色をしていた。

 

 スライムは変形し、アインズを守る障壁となる。

 

「&……遠距離特化鳥人(ペロロンチーノ)!」

 

 素早くスライムを戻し、次のモンスターを召喚、今度はバードマンが現れ弓を構えた。

 

「ゲイ・ボウ!!!」

 

 矢は霊夢の肩に刺さり、霊夢は撃ち落とされた鳥の様に地面に落ちた。

 

 

「ふっ……まだこんな切り札を残してるなんて………」

 

 霊夢は撃ち抜かれた肩を抱えながら再び立ち上がる。

 立ち上がった霊夢の顔を見てアインズは少し意外だと感じた。

 

 

「本当………厄介な奴が幻想入りしたものね………」

 

 

 

「その割には嬉しそうだが?」

 

 

 霊夢の顔には笑顔が浮かび上がっていた。

 

 

「(…………なんで私、こんな状況で笑って居るんだろう………)」

 

 霊夢は自分の心の中から期待感がこみ上げてくる事に気付いたのだった。

 

 

 

 

 

 博麗の巫女として天性の才能を持っていた霊夢にとって妖怪退治は退治を通り越し虐殺であった。

 大抵の奴は霊夢の足元にも及ばず、たとえ実力的に自分より強い相手だろうが博麗の巫女としての世界の法則性が発動し、結果的には勝利を収めてしまう。

 

 普通は勝ち続ければいつかは負けるものだが霊夢は決して負けない。

 ワザと負け様にも妖怪退治は死と隣り合わせの為、必死にならざるえない。

 

 そんな状況を霊夢は博麗の巫女としての宿命だと悟った。

 悟った上でそれに抗った。

 

 それが霊夢が考案した『スペルカードルール』であった。

 

 死のリスクを減らせばあの異常な現象は生じないのではないか?

 強さが全てではないルールを作れば戦いを楽しむ事が出来るのではないか?

 

 そんな風に考えたのだ。

『スペルカードとは妖怪が異変を起こしやすくし、又人間がそれを解決しやすくする為のものである。』これは『人間でも妖怪に勝てる』ルールである。

 しかし、このルールの裏には『妖怪でも博麗の巫女に勝てる』と言う霊夢の思いが込められていた。

 

 このルールにより一人だった霊夢の周りにはいつしか人が集まる様になった。

 実際このルールの採用により幻想郷は変わり霊夢が負ける事()可能になった。

 

 

 

 しかし、事が異変の場合そうではなかった。

 

 

 ルールを採用する事で霊夢が嫌っていた自分の異常性は異変限定とはいえ「どんな大妖怪のどんな弾幕だって初見で完璧に避ける」と言ったものに昇華されてしまったのだった。

 

 

 

 

 そんな虚しささえ感じてしまう現状に終止符を打つ時がすぐそばまで来ていた。

 

 

 

 目の前の男の前では霊夢が何をしても抗えなかった異常性さえ意味を持たない絶対的力の持ち主。

 

 生まれて初めて全力を出しても勝てない奴が生まれようとしているのだ気分が高揚しないはずが無かった。

 

 

「(このままでは私は負けるだろうけど、それを受け止めるには今、全力でこいつにぶつかる必要がある……でなければなんの意味もない。)」

 

霊夢はアインズにとある提案をした。

 

「体は限界だし、霊力も残り僅か………

次の一撃を最後にしましょう…………」

 

霊夢は最後の力を振り絞り霊力を放出し始めた。霊力はまるで霊夢を包む炎のようであった。

 

「そうだな。どうやらこのスペルカードは貴様の力の範囲外であるようだが、そろそろネタ切れだ………どうせお前には二回も同じスペルカードは効かないだろうしな。」

 

 

二人は向かい合い、最後の一撃の準備を完了させた。

 

「もう一度………もう一度あなたの名前を教えて……………」

 

「…………アインズ………

アインズ・ウール・ゴウンだ。」

 

「アインズ・ウール・ゴウン………人の名前にしては変な名前ね………」

 

「自分でもそう思うよ。」

 

「でも、覚えたわ…………

(私に勝つかもしれない男の名を。)

 

そろそろ行くわよ。準備は良い?」

 

「待ってくれなんて言った覚えはない。

来るがいい博麗の巫女 博麗霊夢よ!!」

 

二人は走り出し、お互いの全霊力と全魔力をぶつけ合った。

 

二人は光に包まれ、その衝撃波は隔離空間中に広がった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

------玉座の間-----

 

 

 突如現れた隔離空間により、八雲紫でさえ中の様子を見れなくなった。

 

 よってアルベド、紫、永琳の3人はせめて空間のすぐ側まで来ていた。

 

「しかし、驚きね。

紫の能力を持ってしても干渉できない力があるなんてね。

神出鬼没の大妖怪の名が泣くんじゃなくて?」

 

「私はなんでもできるわけじゃない。

出来ることがあなた達より多いだけよ。」

 

 

「私たちからしたらそう易々と踏み込まれたら困る代物なんですけど。」

「ナザリックの切り札だからね。」

 

 

「…………あなた本当にどこまで知ってるのよ。……………」

 

 

 3人が隔離空間の前で待っていると空間が解除されていくことが確認された。

 

 主人の無事を心配し真っ先に走り出したのはアルベド、そしてそれに紫と永琳が続く。

 

 アルベドが走っていると戦闘痕で荒れ果てた玉座の真ん中で気絶した霊夢を抱えるアインズを発見した。

 

「アインズ様!ご無事で!」

 

「アルベドか…………ナザリックの名に恥じない戦いだったぞ………」

 

「そんなことより御手当を…………」

 

「そうだな此奴の傷を癒してやってくれ。」

「で……ですが!」

「私のは大したことはない。」

 

 少し遅れてやってきた紫に目線を送るアインズ。

 

「これでいいのだろう?………八雲紫。」

「ええ、いい意味で予想以上の働きよ。」

 

「ならば義理は果たした。これからは好き勝手させてもらうからな。」

「どうぞ〜」

 

 アインズは永琳に霊夢を渡し、紫に言った。

 

「その娘に伝えておけ

『異変を終わらせたのは貴様だ。

世間的な勝利は貴様にくれてやる。

しかし、貴様がそれで納得できないのであれば我々の領域(100Lv)までたどり着くがいい!その時再び相手になってやる。

何度でもな……それができるのが貴様が考えたスペルカードルールなのだろう?』

とな」

 

「ええ、伝えておくわ。

じゃあ、アインズ………またね。」

 

 なんとも意味深な風に「またね」と言う紫であった。

 

「………アルベド。」

「はい。」

 

「撤収作業だ。

24時間以内にナザリックの機能を復旧させよ。

それとナザリック内外問わず、本異変の被害調査を頼みたい。

被害の範囲は敵味方問わずだ。

パンドラズ・アクターに任せているから大丈夫だとは思うが人里の被害があったら今後面倒だからな。」

 

「かしこまりました。」

 

「それが終わったら守護者全員に出かける準備を済ませ、集まるように言ってくれ。」

 

「かしこまりました。12時間以内に終わらせます。」

 

「………何故自分でハードルを上げた?……」

「アインズ様に褒めてもらいたいからです!」

「………そうか………頑張れ………」

 

 

 今回、アルベドは裏方に回って今一活躍できなかったからここで名誉挽回したいのだろうか。

 

 アインズが時間制限をつけたのには理由がある。

 幻想郷には異変が解決すると開かれるとあるイベントが存在する。

 

 新参者のお披露目会も含め幻想郷中の主要人物が集まるイベント………そう、『宴会』である

 

 

 



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宴会-1

 アインズは第四・第八を除く守護者とメイド達の代表であるユリとセバスを連れ博麗神社に移動すると既に会場はお酒の匂いが充満していた。

 

「(時間は間違っていなかった筈だがな……)」

 

 連絡された時間より大分早く宴会は開始され、参加者の半分は既に酔っていた。

 

 理由はどこぞの酒呑童子が『前祝いだー』と言って準備が整っていないのにもかかわらず宴会をおっ始めたからである。

 

 幾つかのグループに分かれ会話を楽しんでいた。

 

 妖怪、幽霊、鬼、魔法使い、他にも様々な種族が集結していた。

 

「(百鬼夜行かな?……だがこれは宴会だからなんというのだろうか?)」

 

 少しこの場の雰囲気に押されたアインズに話しかけたのはやはり彼女であった。

 

「あら、アインズにシャルティア。遅いじゃない。早くこっちに来て呑みましょうよ。」

 

 紅魔館の主レミリア・スカーレット、その横には妹のフランドールが見えた。

 

 何があったかは知らないがシャルティアは妹の姿を見るとビクッと体を震わしていた。

 

 アインズがレミリアの元に行こうとすると周りのメンバーもついて行こうとした。

 

 流石にこの人数がゾロゾロと移動するのはマズイと感じたアインズは守護者達に言った。

 

「ついてこなくても良い……

お前達もこれを期にシャルティアを見習って外との繋がりを作ったらどうだ?」

 

 アインズが休暇というシステムをナザリックで採用してからも殆んどの者は遊びにも行かずナザリックで働いている。

 昔と違って皆が意思を持ち考えて動いているのだからその視野をナザリックだけで止めるのはアインズ的にもNPC本人的にももったいない。

 

 今日、皆を連れてきたのは自分の護衛などではない。

 シャルティアの様にナザリックの外の者との関係を築く理由もあった。

 

 

 アインズに言われると守護者の面々はそれぞれ動き出した。

 

 アウラとマーレは魔理沙を連れてアリスやパチュリーのいるグループに入っていった。

 

 コキュートスは辺りを見渡し、異変の時に手合わせした二刀流の戦士と月兎を探していた。

 

「……成る程、そういうことですか。では………」

と言葉を漏らし、行動をはじめたデミウルゴス。

 

 何が成る程なのかはわからないが、デミウルゴスは意外な行動をとった。

 

 八雲紫、西行寺幽々子、八意永琳、風見幽香などの幻想郷最強クラスであり各勢力のトップの者達が呑んでいる溜まり場にしれっと入っていった。

 

 それを見た中堅以下の妖怪達は

『チャレンジャーだな………』

と思わざるえない。

 だがデミウルゴスなら彼女達の輪に入ってもなんら問題はないだろうとアインズは確信していた。

 

 

 デミウルゴスまでがそれぞれ行動を起こしたにもかかわらずやはりそれでもアインズの側を離れないものがいた。

 

 シャルティアとセバスは紅魔館のメンツとの絡みが多いから良い。

 ユリはそれでもアインズの側でお世話するのがメイドの務めだと考えているのだろう。

 

しかし、アルベドの場合は違った。

 

「アルベド……お前も誰かと関係を持つのも悪くないと思うぞ?

ほら異変の時に一緒にいた八雲や八意も向こうにいるぞ?」

「命令ならばそうします。

しかし、必要以上にナザリック以外の者に干渉する気はありません。」

 

 アルベドは幻想郷(ここ)の連中のことがあまり好きじゃない。

 

 馴れ合いや余分な感情移入は逆に困るが適度な対人関係を築く事は大切だ。

 特にここの連中は同じ妖怪と言うカテゴリーを共有しているだけに敵にもなり得るが味方にもなり得る。

 

 現にレミリアや輝夜の様にアインズとそれなりの関係を築いた者もいる。

 

 しかし、それが逆に気に入らないのだ。

 

 同盟相手のトップ同士として対等な関係を築いているレミリア、同じユグドラシルプレイヤーとして同じ目線で話し合える輝夜、そして何故だかは知らないがこの幻想郷でおそらく誰よりもアインズの事を熟知している様な素振りを見せる八雲紫という存在。

 

 彼女達という存在がアインズの近くにいることが気に入らないのだ。

 

 主を誘惑する害虫としてなのかそれとも自分では出来ないアインズと同じ目線にいる彼女達に対する嫉妬なのかそれはわからないがアインズが原因なのは確かだろう。

 

「(全く………誰に似たんだか………

タブラさんはこんなんじゃなかったから

原因はアレだろうな…………)」

 

 NPC達の思考回路は基本的には設定に依存し、設定に書かれていなかった部分は創造主に依存する。

 アインズは転移直前にアルベドの設定に『モモンガを愛している』と言う一文を付け足したことに深く後悔した。

 

「いいじゃない!いいじゃない!

その子も一緒にさ!呑みましょうよ〜

私、自分の気持ちに正直な子は好きよ〜」

 

 先日、あれだけ失礼な事を言われても尚変わらずに接してくれるレミリアの心の広さには感謝しかない。

 

 アインズ達はレミリアの隣に座る。

 シャルティアが横で正座するとその膝にフランが飛びついてきた。

 

「シャルティアお姉ちゃん!約束通り今度遊んでくれるよね!」

 

「わっ!遊び相手が私だけだとすぐに飽きるでありんすよ。

そこにいるアルベドなら守護者随一の防御力でありんすからちょっとやそっとじゃ壊れないから安心して遊べるでありんすよ。」

 

シャルティアが少し引きつった顔で答える。

なんとか興味の方向を変えようとしていた。

 

「シャルティア!私を巻き込まないで!」

 

 異変でひどい目にあったシャルティアはなんとかフランの興味を逸らそうと必死だ。

 

「ほらほら、お猪口を持ってさ〜

たまには日本酒も悪くはないわよ〜」

 

 

 レミリアは既に酔っ払っている。

 こんな小さい子にお酒なんか飲ませるんじゃないと怒りたくなるが実年齢はアインズよりもはるか年上の500歳。

 

 周りを見渡しても見た目だけなら年端もいかない少女達が飲みに呑んでいる。

 しかし、見た目には反してほとんどが人の寿命をとうに越した者達、平均年齢が3歳ちょっとのナザリックの面々で対抗できるのかの一抹の不安を抱くアインズであった。

 

「いや………この体だと飲めないのだが………」

「そんなこと言わず。ほらほら、咲夜(・・)、注いであげなさい。」

 

 アインズがレミリアに目を向けるとそこには小さい背中に隠れる咲夜がたいた。

 

 先日見かけた包帯等は取れており、傷だけなら完治している。

 しかし、見えない所の傷はまだ癒えてないのか決してアインズと目を合わさず肉食動物に襲われる小動物のように震えている。

 

「………お、お嬢様………しかし………それだけは…………」

 

ガクガク震えながら主人に懇願する咲夜。

 

「やりなさい…………命令よ。」

 

急に真面目な顔つきになったレミリアは咲夜にきつく言う。

 

「…………かしこまりました…………」

 

観念した咲夜が返事をした。

咲夜はアインズの横に座り熱燗を差し出した。

 

その手はガクガク震えていた。

 

「(…ああ〜なるほど、トラウマの克服か。)」

 

咲夜とアインズの距離が縮まるほど震えが大きくなる。

恐怖がどんどん高まっていくのがわかる。

 

 あの時の〈絶望のオーラ〉による恐怖が蘇っているのであろうか。

 

 そして、小さなお猪口にそんな状態でうまく注げるわけもなく、アインズの手にお酒がかかってしまった。

 

「おい…………」

 

 恐怖の対象に対し失礼な事をしてしまった。

 それにより咲夜の恐怖は最高値に達してしまった。

 

 見るに見かねたセバスが助け舟を出した。

 

「申し訳ありません。アインズ様、失礼します。」

 

セバスは優しく咲夜を支え耳元で囁いた。

 

「落ち着いて………深呼吸をしなさい……

大丈夫、我が主人はあの程度のことであなたを殺す程心の狭きお人ではありませんよ。」

 

 咲夜は言われた通りに深呼吸をして、セバスから渡されたお絞りでアインズの手を拭いた。

 そしてセバスの助けを借りてようやくお酒を注ぎ直しアインズの前から下がった。

 

 

「はあ……はあ………はあ………」

 

 よほど息の詰まる状況だったのか離れた瞬間息を荒立たせる咲夜。

 

 そんなお疲れな咲夜の肩を叩き、レミリアは言った。

 

「お疲れ様、あとは向こうで休んでいなさい。」

 

「ありがとうございます。…………

では失礼します。…………」

 

アインズもセバスに一つ命令をした。

 

「セバス………向こうで見てやれ………」

「はっ。」

 

 

 セバスに支えられレミリアとアインズのグループから離れる咲夜を見ながらレミリアは言った。

 

「ありがとね、アインズ。

付き合ってもらって…………」

 

「別に構わない………ああ、なったのは私にも責任があるからな………

それよりもアレはリハビリのつもりか?

物凄い荒療治に見えるんだが…………」

 

「そんな所ね………

ウチの自慢の忠犬も牙を折られたままでは居られないからね。…………」

 

 確かに牙を折られた紅魔館の忠犬も研ぎ直せばナザリックにだって対抗できる切り札になり得る。

 元々時間操作という強力な力を持っているだけにその期待は大きい。

 

「(従者の意識改革をする為に心を折らせ、治療方法も荒療治………

納得は出来るがなんというメチャクチャなやり方だ…………)」

 

「あなた達には感謝しているのよ。あんな事をした咲夜を気にかけてくれるなんて……」

 

 レミリアが言っているのはセバスの事であろう。

 休暇の時、セバスは紅魔館を訪れることがある。

 

 基本的には妖精メイドの指導と門番との組手などなのだが、咲夜の様子も時折気にしているようだ。

 セバスの思想はナザリックでも珍しい人間よりの考え方だ。

 そんなセバスとしては妖怪屋敷の唯一の人間である咲夜が多少気になるようだ。

 

「私は何も言っていない。

セバスが勝手にやっている事だ。」

「でも黙認はしているじゃない。」

 

「まあ、そうだが……」

 

とは言えこの咲夜についでもらったお酒をどうするのかが悩みどころだ。

 

 ここまでしてついでもらったにも関わらず呑まないのも失礼だがこの姿じゃダダ漏れなのだから。

 

「この間みたいに人型の姿に変身すればいいじゃない。」

 

 レミリアが言った。

 しかし、あの姿は人里で情報収集に使用する事にしたから不特定多数がいるこのような場では使いたくないのだ。

 

 アインズが考え事をしていると後ろから声をかけられた。

 

「悟〜せっかくあなたの為に式を組んだんだからこういう時に使わないと〜」

 

 後ろから酔っ払っている八雲紫に小突かれる。

 

 そして気づいたら人間の姿になっていた。

 式を使わなくても能力者本人なら容易いのだろう。

 

「(コイツ……………)」

 

 周りはグループを組んでさらに酔っ払っているから変身の瞬間を見た者は殆どいないだろうが………

 しかし、流石に会った時から何かと馴れ馴れしい紫に苛立ちを覚えていると最悪のタイミングで最悪の人と鉢合わせるのであった。

 

「サトル?………なんでお前がこんなとこにいるんだ?」

 

 

 人里で世話になった藤原妹紅と横には上白沢慧音であった。

 

 

 

 



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宴会-2

 宴会でレミリア・スカーレットや八雲紫と接点を持っている事を妹紅と慧音に気付かれてしまった。

 

 

「サトル……なんで流れ者のあんたがレミリアや紫と仲良く飲んでんだよ。」

「それはですね……」

 

 

 サトルが返答に困っていると紫が口を挟んできた。

 

「どお?うちの秘蔵っ子は人里でも色々役に立ったでしょう?」

「「秘蔵っ子!?」」

 

いきなりの秘蔵っ子発言に驚く妹紅と悟本人。

 

「今回の異変を起こした一派と同郷だから連れてきたんだけど期待以上の活躍でね。お姉さん嬉しいわ〜」

 

 同郷というか同一人物なのだが、人里では身分を隠したいから紫としてはいいフォローだ。

 同じ魔法を使うことを少しは疑問に思う奴もいただろうが言い訳が立つ。

 

 

 紫の冗談を横に慧音は一人納得と言った所であった。

 

「なる程、彼らの宿敵かなんかだったのかな?ならばこのタイミングでの幻想入りも納得がいく。

 …通りで今回の異変の対応が完璧だと思ったよ。

 魔法を使って人里で商売なんて希有な考えを持つ者、そうそう現れる物じゃないし。

里の禁忌(人の妖怪化)を促す考えに八雲紫が干渉しないのもおかしいと思っていたら、既に手中であったか。」

 

「理解が速くて助かるわ。」

 

「しかし、それなら初めから言ってくれれば良いものを………紫は確かに妖怪だが、幻想郷のルールやバランスには人一倍気を使う妖怪の賢者だ。ならば私ぐらいには話しておいて欲しかったな………」

 

「あら?慧音、それは寂しいの?悔しいの?」

「からかうな!里においての後見人みたいなものだからな…お前たちが何かしでかしたら私の責任になる!」

 

 

 紫は悟に抱きつき頭を撫でながら語る。

大の大人が子ども扱い……

 まあ、確かに数百歳を超える妖怪からしたら悟なんて赤子同然だ。

 

「そういう事なら里のものにも黙っておくよ。」

 

 サトルと紫達が一緒にいた理由はわかったが、どうにも負に落ちない様子の妹紅であった。

 

「そっちの淫魔と吸血鬼は今回の異変を起こした一派の連中か?

お前らもなんでサトルと一緒にいるんだよ。」

 

 妹紅の矛先がシャルティアとアルベドに向かう。

 

「あなたには関係ないでありんす。」

「今回の異変で人里に被害が出なかったのは彼のお陰。

礼をするのは当然でしょ。」

 

「そうかい、でもな。

コイツに手を出したらただじゃ置かないからな!」

 

 そう言ってシャルティアにアルベド、そして紫やレミリアまで警告する。

 

 本人に自覚はないが、サトルは妹紅にとって妖怪護衛の仕事の後輩。

 経験も力もこれら幻想郷の重鎮たちに及ばない為自分が守ってやらないとという気持ちがある。

 

「(コイツ、アインズ様に気に入られているからと言って調子に…)」

「(…何も知らない単細胞が…)」

 

 慣れている他のものはともかくシャルティアとアルベドには十分な挑発であった。

 

「(まずいか…)」

 

 そこに良い感じに妹紅に突っかかってくれた人がいた。

 

「あ〜ら、ごめんなさ〜い。」

 

その人はわざとぶつかり妹紅は転びそうになった。

 

「輝夜!てめぇ!」

「あ〜ら、誰かと思ったら先日黒焦げになった竹炭屋じゃないの」

 

二人の喧嘩は日常茶飯事だ。

みんな逆に安心したのか、賑やかな宴会の雰囲気にもどっていた。

 

「今度はお前を黒焦げにしてやんよ!」

 

二人の喧嘩が日常茶飯事ならそれを止めるふたりも決まっている。

 

「こら!妹紅……こっちに来なさい!」

「え〜………慧音〜……」

 

「姫様も変な突っ掛かり方をしないでくださいよ。」

「えーりん………」

 

「「(全く、世話がやける………)」」

 

 

 

 

 

妹紅が慧音に連れて行かれ、先程までの賑やかな雰囲気を取り戻した会場。

 

 

 

 

 これで一安心だと考え、一人で飲んでいた悟に輝夜が語りかけてきた。

 

「初めて見ることになったわね。それが貴方のリアルの姿ね…………」

 

「てるよさんですか………はい、そうですよ。」

「なんでこんな回りくどい事をしているの?」

 

 てるよはサトルがわざわざ人の姿で里に入り込んでいることに疑問を持つ。

 

「まぁ、あれですよ。折角出来た新しい世界を人として楽しんでみたくなっただけです。」

「確かに、私達には永遠に近い時間が残されているからね。楽しみを増やすのは悪くないわ。」

 

「それにアインズ・ウール・ゴウンは今までもこれからも魔王みたいに持て囃されてますから、たまには冒険者としてロールプレイしたかったのかもしれません。」

 

もし、モモンガがナザリックごとではなく一人で転移していたら今の悟みたいに人里を拠点に楽しんでいただろう。

 

「今の貴方が勇者でもう一人の貴方が魔王……

なら私が囚われのお姫様をやってあげようかしら?………」

 

にこりと笑って輝夜が言った。

サトルは少し考える

 

「…………魔王を退治できるお姫様は遠慮したいですね。」

「あら、残念。」

 

輝夜は追加の酒をサトルのお猪口に注いだ。

 

「まさか、リアルの姿でこうして飲み交わせる時が来るとは思っていなかったですよ……」

 

「そうね……ユグドラシル時代もあんまし会話してなかったし……」

 

サトルは辺りを見渡して言った。

 

「ここの連中は良いですね………

新参者の私達にも対等な立場で接してくれる………

何より、関係性が良い………

敵ではありながら同族であり仲間である………

かと言って馴れ合いはせず一線は越えない………」

 

 そうでなければこんな宴会なんて開かれないし、冗談や揶揄いが混じる雑談を交わせるわけがない。

 

「こんな関係になれたのは最近だけどね。

弾幕ごっこ……私達の戦いは少女達の遊びと称されることがあるわ。

悔やんだり恨んだりするときもあるけどそれは遊びの中での話……遊びの借りは遊びで返すのが心情ね………」

 

「まるでゲームの世界だな………」

「そうよ。遊び(ゲーム)よ……」

 

 敵であり、ライバルであると同時に遊び相手でもある。

 そんな関係がここの連中である。

 

「まぁ、お互いが妖怪同士だから遊びがかなり過激だけどね……」

「時間を操れる不死身のアンタが一番エグイけどな………」

 

「そうそう、ゲームで思い出したけど。

今度、その姿で良いから遊びに来なさいよ。

ウチに外の世界のゲームが沢山あるから相手になってね。

『一人じゃゲームもつまんないわ』……」

 

 サトルはふと、ユグドラシル時代の孤独期の事を思い返した。

みんないなくなってしまったナザリック……

 

 一緒に遊べる仲間がいるから楽しいんだ。

 

 仲間であり敵であるライバル達がいるから熱くなれるんだ。

 

 そして幻想郷に流れ着いた今、またかつての輝きを取り戻そうとしていることにサトルは気付く。

 

幻想郷(ここ)には『ナザリックの面々(仲間)』がいる。

 

 そしてライバルであり、仲間でもある彼女達がいる。

 

 そんなこの世界に有り難みをシミジミと感じながら酒を口に運ぶサトルであった。

 

「何、いい雰囲気だしてんだ!輝夜ぁぁ!

お前もこの間コイツに殺されかけたじゃねぇか!!」

 

 輝夜と飲んでいるとまたもや妹紅が絡んできた。

 今度は明らかに酔っているのでたちが悪そうだ。

 

「そりゃあ、あなたみたいなガサツ女より私みたいな完璧美少女がお酌した方が気分がいいでしょうよ。」

「あ"ぁ"!!」

 

 確かに輝夜は美少女だが、完璧とは完全な鉄壁(不死身)という言葉通りの意味なのであろうか?

 こんなんだからギルドでもキャラ作りしてもすぐに化けの皮が剥がれるのだとツッコミたい。

 

「コイツはわたしのツレなんだから手を出すなって!」

「フッ!あって数日程度の付き合いで何を言ってるのよ」

「テメェだって同じだろ!」

 

 妹紅は知る由もないが接点こそ少なかったが輝夜との付き合いはユグドラシル時代からだ。

 

「あら?それを言うなら幻想郷で一番はじめに目をつけたのは私よ?」

 

 二人の会話にレミリアが乱入。

 皆、酔っているからいいがこんな公の場でアインズ=サトルであることを示唆する言葉はやめていただきたい。

 

「それを言うなら私たちはもっと前でありんす。」

「そうよ、ぽっと出の貴方たちには干渉させないわよ!」

 

 レミリアに対抗してシャルティアやアルベドまで加わる。

 

 このカオス状態に存在が胡散臭い彼女が追い討ちをかける。

 

「あらあら、ウチの子は結構モテるのね。

でもね…彼は私のものだからごめんね〜」

 

 

 

ブチッ!!

 

 

 何かが切れる音がした。

 紫の言葉に聞き捨てならないと言わんばかりの彼女たちが立ち上がった。

 

「調子にのるなよ隙間、黒焦げにしてやんよ!」

 

 妹紅の背中から火が溢れる。

 

「失血死もいいでありんすよ?」

 

 シャルティアが槍を構える。

 

「串刺しが一番。」

 

 レミリアも槍を出した。

 

「真っ二つもいいわよ。」

 

 アルベドが斧を振り回す。

 

「最後のトッピングは任せなさい」

 

 輝夜が自慢のシリーズゴッズアイテムを展開した。

 

 五人の壮絶な喧嘩が始まるとサトルは考えるのをやめた。

 

 「もう、どうにでもなれ…」

 

 

 

 

 

 サトルが途方にくれているとある少女が話しかけてきた。

 

「苦労しそうね。貴方も。」

「わかってくれますか。」

 

異変解決者、博麗霊夢だ。

 

「……」

「……」

 

「「だいたい、紫(さん)が悪い…」」

 

 

「ふふ…」

「ハハッ」

「商売敵だけどあんたとは気が合いそうね」

「かもしれないですね。」

 

 博麗の巫女故にあまり人とも妖怪とも繋がりを求めない霊夢と人とも妖怪とも分け隔てなく接点をもとうとするサトルの奇妙な会話であった。

 

「アンタ、あいつと同郷なんだって?」

「あいつ?」

 

「今回の異変を起こした骸骨のあいつよ。

さっきまでここにいたんだけどね…」

「……あぁ、あの人ですか。」

 

 同一人物だとバレないか本当にヒヤヒヤする。

 

「知り合い?」

「向こうはあちらでは有名人でしたからね。

お世話になった時期もありました。向こうの人が僕を可愛がってくれるのはその時の繋がりからです。」

 

 自分でも驚くほどの嘘が次々と出てくる。

 先ほどの守護者達の態度や話の食い違いを修正する様に。

…後で口裏を合わせないと…

 

「仲間にはならなかったの?」

「条件を満たしてないですからね」

 

「条件?」

「条件の一つに異形種であることが含まれるんです。」

 

 その条件を聞いた時、霊夢は確信した。

 あのラストスペルは仲間を模したのだと。

 

「あのスペルカード…」

「………」

 

 その時、霊夢はある事を思いつき、サトルに提案した。

 

「よかったら、今度アンタの魔法を見せてくれない?…」

「どうしたんですか?」

 

 霊夢は答えにくそうに言った。

 

「異変ではあいつに苦戦したからね。

……ちょっと対策……

………いや、気になってね。」

 

 異変の事が中々悔しい様だ。

 サトルは霊夢がアインズのいる高みにたどり着くと期待していた。

 

 サトルは提案を受け入れた。

 

「いいですよ…」

 

 



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宴-3

 霊夢と別れた後もサトルにはひっきりなしに誰かが付き纏っていた。

 

 この宴会は今回の異変の解決記念の様なものだけあってアインズ……もとい、サトルに絡んでくる人が多い。

 

 そして、また一人(?)サトルに絡む女性が現れた。

 

 水色の着物に蝶の刺繍、頭にドリキャスみたいなマークをつけた艶っぽい女性であった。

 

「あら、ようやく一人になってくれたわね……」

 

「ええ………っと、どちら様ですか?」

 

「私は西行寺幽々子。

冥界にある白玉楼で幽霊管理を務めているわ……」

「幽霊管理……死神か何かですか?」

「その下請けみたいな者よ……」

 

「私は紫とは仲が良くてね……

貴方の事情はよく知っているわ……」

「はあ………(あのスキマ、余計な事を………)」

 

「まあ、同じアンデッドだし…仲良くしましょう。」

 

「もしかして、人の姿に成るのを待っていたのはその辺が理由なんですか?」

 

「よくわかんないけど紫曰く、アンデッドの姿の時は近づいちゃいけないってさ…………」

 

 紫が言ったという説明を気にするサトル。

 

「詳しく聞かせてもらってもいいですか?」

「聞いたって意味無いわよ。

紫が言うことが本当なのかなんて保証何処にも無いんだから。」

 

 紫が幽々子をアインズから引き離したかったの事実であろうが、その理由は定かでは無い。

 

 幽々子が言いたいのは紫の思惑を一々考えていてはキリが無い。

 変に考えれば考えるほど彼女の術中にハマってしまうのだ。

 

「紫と長く付き合いたいなら、紫の言う事は半分ぐらいは嘘だって思った方が気が楽よ。」

(流石は八雲紫のご友人だ……参考になる)

 

 この幻想郷に来て紫に引っかき回されているアインズとしては参考になる一言だ。

 

(なんか……変わった雰囲気の人だな……)

 

 永琳とも紫とも違う雰囲気であった。

 

「私は異変に参加しなかったけど、異変ではウチの庭師がお世話になっわね。」

「庭師?………ですか?」

 

「ほら、そこで昆虫人間と居る娘よ。」

 

 昆虫人間なんてコキュートスぐらいしかいない。

 サトルはコキュートスの方に目を向けるとコキュートスの隣に女の子が落ち着きなく座っているのを確認した。

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「今日ハ、アノ兎ト一緒ジャ無インダナ。」

「………はあ、はい。

あの時使った薬の副作用………というか無理し過ぎて全身筋肉痛で悶えていました。

………後、あの時はたまたま一緒だったわけで普段は私達、コンビでもなんでも無いですよ。」

 

「ムッ、ソウダッタノカ。息ガ合ッテイタカラテッキリ勘違イシテイタ。」

 

 まるで子ども扱いをする様にコキュートスは妖夢の頭を叩く。

 

「……すいません。やめてもらえますか……

落ち着きません。」

「オオ、スマンナ。

コンナ小サナ体デヨクアンナ攻撃ガ出来ルモノダト感心シテイタノダヨ。」

 

 

「酔ってるんですか?」

「我々、守護者ハ毒二対スル完全耐性ヲ獲得シテイル………酔ウコトハナイ」

「…………」

 

「ソレヨリ、ヨカッタラソノ刀ヲ見セテモラエナイカ?」

 

コキュートスは妖夢が持つ名刀【白楼剣】と【楼観剣】に興味を示す。

 

「良いですよ。」

 

渡された二本の刀を抜きコキュートスは言った。

 

「良イ刀ダ。伝説級(レジェンド)……イヤ、神器(ゴッズ)ニ匹敵スル名刀ダ……

大事ニスルガ良イ。」

「はい、ウチの家宝なんで。」

 

「ダガ、イクライイ太刀ヲ持ッテイヨウガ、当タラナケレバ意味ガ無イ………ワカルナ?」

 

「はい、己の未熟さはわかっているつもりです。」

 

 あの戦いでもコキュートスの装甲を貫ける武器を持っていながらも中々、決定打が打てなかったのはその剣がコキュートスまで届かなかったことが原因だ。

 

 前衛職…剣士として最高峰のレベルを誇るコキュートスに比べたら剣においてはまだ半人前の妖夢であった。

 

「精一杯修行しますので今度、稽古をつけてください!」

 

「構ワン…………」

 

 

そんなやり取りを遠目で見ていたサトルはコキュートスの意外な一面に驚く。

 

「なんか………プチ師弟関係みたいなのが構築されてるが大丈夫ですかね?………

……というかコキュートス、ちょっと酔ってないか?」

 

 武士道キャラも相まって二人の様子は師弟の様だ。

 

「良いんじゃない?あの子、お爺ちゃん子だったから……」

 

 幽々子が懐かしくも悲しそうな顔をした。

 『だった』という事はそういうことなのであろうか?

 

 コキュートスの様子を見た後、今度はアウラ達の様子が気になり様子を伺った。

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

一方アウラとマーレの二人は霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド、それに異変解決者の博麗霊夢を交え楽しく飲んでいた。

 

「アハハハ!!

最近見ないと思ったらまさか、アンタがメイド!?…………

プフッ!プハハハハ!!」

 

 酒が入ってテンションが上がってる霊夢が魔理沙の姿を見て高笑いする。

 魔理沙は笑われて悔しそうにスカートを握りしめた。

 

「うぅぅ…………悔しいぜ。」

 

「盗みに入って器物破損したら捕まって強制労働とか自業自得以外の何物でもないけどね。」

 

 アウラもいつもより饒舌に話している。

 

「でも、アンタが安定職についたって聞いたら案外霖之助さんも安心するんじゃない?」

 

 森近霖之助とは幻想郷の外のアイテムを扱う香霖堂の亭主、魔理沙の昔馴染みだ。

 霖之助からしたら魔理沙は可愛い妹の様な存在である。

 

 魔理沙の本職は魔法店であったが、仕事は不定期の上、率先的に経営をする気が本人に無いのが問題でよく金欠になる。

幻想郷では博麗霊夢に並んで貧乏キャラだったりする。

 

「ちょっとアンタ!近いわよ!」

 

アリスはアウラと魔理沙が近い距離で会話をしている事に焼きもちを焼いているとマーレが反対側で眠たそうにしていた。

 

「………………うぅ……………」

 

 いい感じに呑んでいたマーレはウトウトしてきた。

 

フラ………フラッ……………パタッ

 

 

 マーレは頭を魔理沙の膝に頭から突っ込む様に倒れこんだ。

 

「わっ!マーレ様!?」

 

 

すぅ…………すぅ…………

 

可愛らしく寝息を立てるマーレ。

 

 激しく嫉妬の炎を燃やすアリスが飛びかかろうとした時、霊夢とアウラに取り押さえられ雁字搦めにされた。

更に霊夢は大声で叫ぼうとしたアリスの口に手を伸ばし声を抑えさせた。

 

『んー!!!んー!!』

 

「もう、こんな所で寝ちゃって、しょうがないな〜。」

 

 可愛いい弟の寝顔を見て表情を和ませるアウラ。

 

「相変わらず女の子にモテるのね。恋泥棒」

 

と霊夢は魔理沙の事を言ったが予想外の回答が二人から飛んできた。

 

「「男の子(娘)だよ。」」

 

 マーレの真の性別を知る二人は口をそろえて言った。

 

 

「え?……………」

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

(おかしい………おかしいぞ!!)

 

サトルは異変に気付き始めていた。

 

(酔うまでならともかく睡眠を必要としないアイテムをもたせたマーレがうたた寝するなんてあり得ないはず……

アイテムがしっかり発動していないのか!?)

 

 デミウルゴスの方はと思い視線を送るが彼は正常だった。

 どうやら彼はあまり飲んでない様だ。

 

 デミウルゴスとそれ以外で差が出るのなら原因はこの酒だろうか?

 一見普通の酒に見えるがこの世界には鬼をも酔わせる酒があるそうだから気が抜けない。

 

(普通の日本酒なんだけどな………)

 

 考え事をしながら酒をすするサトル。

 

(………ああ…………この異様な現象…………

何者かの手によるものなら………心当たりは一人だな…………)

 

 

 耐性やアイテムを無効化出来る者がいるとしたら一人。

 

「八雲紫………また、お前か………」

 

 すると先ほどまで女性達と喧嘩していた紫が隣にいた。

 いや、正確には喧嘩が乱闘に発展し、紫はしれっと抜け出していたのだ。

 

 

 サトルは先ほどから邪魔ばかりしてくる通称スキマにアインズ張りのドスの効いた声で問い詰めた。

 

「あれれ?〜ばれちゃったかな?」

 

「酔っていれば何でも許されるとでも思っているのか?………

それとも我々をおもちゃにしているつもりか?言っておくがそっちがその気ならいつだってお前と対立してやってもいいんだぞ?」

 

 サトルの身元保証とか紫のおかげで動きやすくなっている部分もあるが、こうもこちらの計画を狂わせる行動をするのなら話は別である。

 

 

「そう怒らないでよ。

ちょっと境界を弄った空間をここに展開しただけよ。」

 

 紫曰く、せっかくの宴会で酒を呑んでいるのに酔わずにケロっとしているのは勿体無いらしい。

 

「何を企んでいる?」

 

「貴方の所のメンツ、みんな硬いのよ。

忠誠心と仲間意識が強すぎて他に関係を作ろうとしないし、知略とか利害関係でしか相手を見ないし、見ているこっちが息がつまる。」

 

 確かにナザリックの者は他の者を嫌う傾向がある。

 それはアインズも懸念していたことだ。

 

 

(確かにその通りだな………

コイツがアルベド達を焚きつけているのも同じ目的だろうか?……………)

 

 サトルは落ち着きを取り戻し、いつもの口調で答えた。

 

「同じ様なことは考えていましたが、心配される筋合いは無いと思いますよ。」

 

「あるから言ってるのよ、そんなことじゃいつまでたっても幻想郷の異物よ………

私としては異変後はもっと幻想郷に馴染んで欲しかったからちょっと手を貸してあげたのよ。」

 

 その言葉で今日の紫の言動の理由がわかった。

 

(最初からそれが目的だったのか…………)

「確かにまだまだ意識改革が必要な様だ……」

 

 そう言うと紫は呑んでいるメンバーの何人かに合図を送った。

 すると喧嘩がパタリと止まりサトルの元に女性が集まってきた。

 

「まずはトップの貴方が馴染まないとね。」

 

 紫の言葉に続いて可愛らしい吸血鬼妹がサトルの胡座の膝枕に飛び込んできた。

 

「ドーン!!!

お兄ちゃんもあそぼ〜〜」

「貴方が美女に囲まれて慌てふためく姿、見てみたいわね。」

 

 サトルに抱きつく吸血鬼姉妹。

 

「さあ、悟。今宵は皆んなで飲み明かしましょう。」

「楽しそうね、紫。」

 

ドンッと日本酒の一升瓶を二、三本取り出す紫と幽々子。

 

「勿論私の酒は飲むわよね!

昔話もしたいんだから付き合いなさい。」

「姫様、飲みすぎですよ。」

 

 いつの間にか飲みに飲んでいた輝夜がいかにも値が高くて度も高そうな酒を取り出しサトルに突きつける。

 

「そんなに飲んだら体壊しちゃいますよ……」

 

「大丈夫!ここには病魔も治療に並ぶ薬師が居るから。」

「…………なんですか、そのキャッチフレーズは………まあ、病魔はまだだけどただの悪魔なら並んだ事があるわね。」

 

 流石にこれだけのメンバーに囲まれては断れない。

 

「酔わせて既成事実…有ね…」

「ないわよ、このゴリラ!

でも酔わせて誰が本命かぐらいは聞きたいでありんす。」

 

 何やらこれを機に共同戦線を張りそうなシャルティアとアルベド。

 

 

「おい!サトル帰るぞ!こんなとこにいたらお前の教育に悪い〜」

「それは妹紅もだ。

今日は飲み過ぎだ!帰るぞ!」

 

 妹紅だけは酔いすぎため慧音が引きずって帰った。

 

(これは逃げられない……)

「………しょうがないですね………

できる限り付き合いますよ。その代わり酔いつぶれた僕に変なことしないでくださいよ。」

 

「大丈夫、変な事考えてるのはおたくの淫魔だけだから。」

 

ニヤッと笑いながら答える輝夜。

 

今宵、宴は朝日が昇るまで続くのであった。



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時計-1

 

 

 雨が降るとあの日の事を思い出すようになった…………

 

 雷が鳴るとあの時の事を思い出すようになった…………

 

 私はあの時、思い出した。

 長らく忘れていた死の恐怖を絶対なる絶望を…………

 自分が人間である変わらない現実を…………

 

 

 

 

 紅魔館のメイド長十六夜咲夜は最近夜な夜な悩まされるようになった。

 目を瞑ると思い出してしまうのだ、あの雷の鳴る雨の日の事を。

 

 

 

 自分には何も無い友達も家族も恋人もいない………

 あるのは子供の頃から忌み嫌われてきた時間操作能力とそんな自分に価値を見出してくれたお嬢様だけだった。

 

 

 お嬢様に一生仕えると決めた時、この人の為なら命さえ捨ててもいいと思ってた。

 思っていた筈だった…………悪魔が住まうこの屋敷で自分には人としての考え方なんてとうに捨てていたと思っていた…………あの日までは。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 星が綺麗な夜、幻想郷に次元の歪みが生じた。

 お嬢様は運命を操る能力を保持しているし、自分も時間を操る能力を持っている為、その異変を感じる事ができた。

 

 すぐに妖怪の賢者・八雲紫の式、八雲藍が説明に現れた。

 

 場所にして魔法の森の最深部、そこの地下に当たる空間に巨大な異空間が現れた。

向こうの専門用語で言う所の『ダンジョン』が形成された様だ。

 

『幻想入り』自分たち紅魔館がそうであった様に新しく幻想郷に移住してきたものがいる様だ。

 紅魔館も移住の際には原住の妖怪と一悶着あったものだが我々には関係無い。

 いつも通り、いつも通りになる筈だった。

 

(お嬢様が…………笑ってる……………)

 

 いつものお嬢様なら面倒な新参者が増えて嫌な顔をするのが通例であった。

それが八雲の関係者なら尚更な話だ。

 

「咲夜………手紙を書いて頂戴、お茶会にご招待したいの………」

「……………かしこまりました。」

 

 飽き性のお嬢様の事だ直ぐに興味を無くされるであろう。

 私はそんな風に考えていた。

 

 数日後、新参者のトップ、アインズ・ウール・ゴウンが現れた。

 

 第一印象はどうって事無かった………強い魔力を持っている事はわかったが、その人間性には平凡なものを感じた。

 むしろ一緒にいた執事や吸血鬼の方にカリスマ性や非凡な物を感じ取れた。

 トップとは名ばかりのただの傀儡かと思った。

 

 しかし、自分の眼力に自信を持っているわけでは無かったがお嬢様との見解の相違には驚く事となる。

 

 お嬢様は一目見た時から彼の事を高く評価していた。

 それは持っている力とかそういうものではなく、何か特別な物を感じていたのだ。

 

 わけがわからなかった私はその男をじっと観察した。

 そして考えた。この男が幻想郷に………紅魔館に…………お嬢様に何をもたらすのかを。

 

 お嬢様はその間に彼との距離をドンドン詰めていった。

幻想郷では珍しい【魔】を司る同族意識があるのか良好な関係を築こうとしていた。

 

 その入れ込み具合はまるで魅了でもかけられているとも感じられるほどだが、そういった痕跡は無い。あったとしてもパチュリー様が気づかない筈が無かった。

 

 最初は上手い話を相手に提示し、相手の持つ知識や財産をうまく引き出す策略かと思った。

 利用するだけ利用して残りカスになるまで絞り取ったら捨てる様な事を考えているのだと考えていた。

 

 しかし、違った。

 お嬢様の顔にはそういった感情は感じ取れず、まるで友達と遊ぶ見た目相応の少女の様だった。

 お嬢様は今まで一度だってそんな顔を見せてくれた事は無かった。

 時に我儘、時に厳しい上司であり時には育ての母の様に接してくれたお嬢様はそこにはいなかった。

 

 

 私は確信した。

 この男がお嬢様の目を曇らせていると。

 

 私は嫉妬した。

 お嬢様にこんな顔を送られるこの男が。

 

 だから私は帰り道に彼を亡き者にする事にした。

 こんなお嬢様を見るのが辛かったから。

 

 自分の実力に絶対の自信を持っていた。

 私の主武器の銀ナイフは【魔】を司るものに対し非常に有効である。

 更にどんな強敵をも木偶の坊にするこの時間停止能力を持ってすれば肉体的に強靭で無い魔法使いは私の敵にはなりえない。

 

 勝手な行動をとってお嬢様にお叱りを受けるかもしれないが、その時はその程度の男でしか無かったという事にしよう。

 

 話を聞く限り連れの吸血鬼や執事の他にお嬢様に匹敵する者が数名拠点に残っている様だがトップが死ねば必ず混乱する。

上手くいけば優秀な者だけを引き抜けるかもしれない。実力結果主義の妖怪社会ならそうなる可能性は高い。

 例え大群で攻めてこようが私の能力の前に物量戦も不意打ちも意味を成さない。

何があろうとお嬢様方を守りきる自信があった。

 

 

 

 しかし、そんな自信は無残にも砕けっちった。

 ナイフも………時間停止も…………彼の前では役に立たず、切り札はまるで切れなかった。

 

 

 地に伏した私の心は崩壊寸前であった。

 この力はお嬢様が見いだしてくれた私の誇り、私が紅魔館という妖怪社会に居られる権利の象徴。それを無くした今、私に生きる価値は無い。その時私は諦めがついた。

 

 

 

 お嬢様が私を気に入っていたのは価値のある人間だから…………この男は私よりも価値があっただけの事。

 私はこれから死ぬが私の願いは生きる事では無い、紅魔館に………お嬢様に永遠の祝福がある事を願う…………

 

 

 しかし、彼は私を殺そうとはしなかった。

 

 彼は私の服を掴み持ち上げる。

凄い身体能力だ、魔法使いとは思えない。

 

 骨も肉も引き裂かれ、私に抵抗する力は残っていない。

 

痛みで意識が朦朧とする中、彼は今まで隠していた殺気を解放した。

『絶望のオーラ』と彼は言っていた。

 

 私の精神は抵抗する間もなくそのオーラに飲み込まれた。

 一点の希望も無い絶望の世界、根源的な恐怖………それは『死』の恐怖であった。

 

 お嬢様に仕えると決めた時、死の恐怖には打ち勝ったつもりであった。

 事実、先程までは死を受け入れていた。

 

 しかし、彼のオーラは私の精神を犯し、忘れていた記憶を呼び戻した。

 

 お嬢様に拾われる前………この特異な能力故悪魔と罵られ、いくつも街を転々としながらひもじい思いをしながらも生にしがみついていたあの頃を…………

 

 生きようとする思いが死の恐怖につながり、あっという間に私の精神は恐怖と絶望で満たされてしまった。

 発狂死寸前まで困惑した私の精神は感情と肉体を切り離す事で死を免れた。

 いや、そうできる様に手加減されたのだ。

 

 

 薄れゆく記憶の中で男の声が聞こえた。

 そして人の温もりを感じながら私は完全に眠りについた。

 

 

 

「すまない…………今はこのぐらいしか出来ない……………」

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた私は自分の力で立ち上がれるほど肉体が回復していた。

 しかし、精神的なダメージはぬぐいきれず、私は目の前のお嬢様に身を委ねる事しかできなかった。

 

 

「あなたはしばらく休みなさい……」

 

 

 まだ幼く、拾われた時の様にお嬢様は優しくしてくれた。

 しかし、あの時感じた温もりは誰だったのだろう。その時の私は知る由も無かった。

 

 

※※※※※※※※※※

 

 

 あれから数日後まだまだ私は不安定な状態を続けていた。

 精神と肉体が切り離されたかの様な感覚、体は上手く動かず休むにもあの時の事を思い出し震えが止まらなくなる。

 唯一、お嬢様と一緒にいる時だけは安心できたがお嬢様も四六時中寝たきりの人間と一緒にいるほど暇でも無かった。

 

 わたしは布団を被り部屋の隅にうずくまった。

 食事もまともに喉を通らずドンドン衰弱していった。

 

 そんなある日の事であった、紅魔館に客人が現れたのだ。

 相手は先日訪れたアインズの執事セバスチャンだった。

 

 彼は何よりも先に私への面会を望んだ。

 手土産にナザリックで作られたスキルによって特別な効果を生む食事を持ってきたのだ

効果は精神の安定化と滋養強壮、まさに今の私に必要なものであった。

 

 普通なら人に会わせられる状態じゃ無い。

 しかし、お嬢様は何を考えていたのかセバスを通す事にした。

 

 

 セバスは私の部屋に通された。

 私の部屋はベッドとタンスと机があるだけの質素なものだが女性の部屋に本人の了解もなしに通すなんてデリカシーが無いにも程がある。

 まあ、そんな事を考える余裕なんてこの時の私には無かったわけだが。

 

 

 私は顔を上げ、彼の顔をみた。

 その瞬間、私に心の傷を与えた男が過る。

 

 彼のバックにはあの男がいる事を考えると震えが止まらなくなった。

 

 

 そんな私を見た彼は私の肩を優しく抱きしめると耳元で囁いた。

 

「大丈夫です。私はあなたに危害を加えるつもりはありませんよ。

主人も貴女から何かしない限りは大丈夫です。」

 

 口で言ってどうにかなる状態じゃ無いのは当然だ。しかし、徐々に震えは治まっていった。

 

あれ?……………なんだろ…………この感覚は…………

どっかで味わった感覚…………安心できる感覚だ…………

 

 

 震えは鎮まり私は久々の食事を取ることができた。

 

「ウチの料理長が作った料理です。食べてください………」

 

 私は一口一口スープを口に運ぶ。

 まだ少し震える手を彼に支えられながら。

 

 吐きそうになった時もあった。

 その度に彼は私の背中を優しくさすってくれた。

 

 そんなやり取りを何回か繰り返す間に私は彼に対し安心感を覚える様になった。

 

 

 しかし、彼はなぜ私に優しくしてくれるのだろうか。

こんな…………何も無い私に…………

 

 彼は私の世話をした後すぐには帰らない。

 私が居なくなった事で空いた穴を埋めるため紅魔館の仕事を手伝ってから帰る。

 共に来たシャルティアが遊びに満足するまでの間。

 

 彼は何で此処に来るのだろう。

 仕事ではなく休暇らしい、しかも主人には黙って………

 なのにこんな所まで出向いて仕事をして居る。

 同盟関係の紅魔館に対する支援なのなら主人に言って仕事として堂々とくれば良い。

 ならば目的はやはり私なのだろうか…………

 

 

 

 彼のお陰で肉体も精神も大分回復した。

 ようやくメイド業に復帰できる様になった時、仕事環境はガラリと変わっていた。

 

シフト、仕事内容が見直され、以前より妖精メイドがよく働く様になっていた。

これまでは役に立たない妖精メイドの分自分が27時間働いていたのに………

きっと彼が復帰した私が無理をしない様な環境づくりをしてくれたのだろう。

 

 色々と彼の事を考える様になって知った事がある。

 彼の考えは妖怪でありながら人間のそれに近い、紅魔館は勿論ナザリックでもその思想は珍しく、良く参謀と一悶着起こしているらしい。

 

 

 

つまり、私と同じなのね………

 

 

妖怪社会で生きる人間と人間に近い考えを持つ妖怪………

 

 

 

でも彼と私では決定的に違うものがある。

それは彼には強さも能力もある………だけど私には無い。

 

 

「どうして私を助けてくれるんですか?こんな………何も無い私に………」

 

 彼に直接訪ねた事がある。

 すると彼は意外な顔をして答えた。

 

「確かに貴女の能力はナザリックでは珍しくありません。

メイドの業務も自分に課すだけで上司としては優秀とは言えません。

でも、貴女には貴女にしか持っていない大切な物があります。

それを失うのは惜しいと思ったのですよ。」

 

 

 

最初は何の事かわからなかった。

 

 

 

 

でもしばらく経ってから妖精メイドにある話を聞いて何となくわかった。

 

「でも、本当にメイド長はお嬢様方に愛されていますよね。」

 

私が寝込んでいる間、皆が私の為に動いていた事を知った。

 

パチュリー様は私の為に慣れない回復薬の調合に勤しんでくれた。

美鈴は昼寝の時間をメイド業に割いてくれた(門番しろよ……)。

私のいない間フランお嬢様は夜な夜な寂しいと泣いていた。

お嬢様なんて私の為にやった事も無い料理に挑戦して台所をぐちゃぐちゃにしていたらしい。

 

 私がこうなったのは私のせいなのに…………

 勝手な行動をしてお嬢様に迷惑をかけて…

 

 私の瞳には涙が溢れて来た。

 

 

 あの時、彼に言われた言葉の意味がその時ようやくわかった。

 種族の境界線を越えて生まれた家族愛………それが私の周りには溢れていた。

 ナザリックのメンバーは種族は違えど同じ親を持つ家族だ。

 だが、紅魔館はそんな繋がりの無い別種族が集まり家族顔負けのコミュニティを形成している。

 特に紅魔館は人間という本来妖怪とは相容れない存在をその中に入れている。

 

 その事にセバスは強い興味を持ち、このまま失うかもしれない事態に対処しようとしたのだ。

 そんな心配は実は無かったのだが………

 

 能力不足だろうが、上司としての資質が足りなかろうが、人間であろうが関係なく私を家族の様に思ってくれるお嬢様の為に再び立ち上がる決心がついた。

 お嬢様達の為なら死ねる覚悟ではなく、お嬢様達の為に生き抜く覚悟。

 

 人間である事を捨てるのではなく、人間としてお嬢様に仕える。

 その為に強くなる心も体も。

 

……あの人の様に

 



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日常-1

-----第10階層-----

 

 

 

 アインズはその日、ナザリック地下大墳墓の運営の為の業務に励んでいた。

 

 部屋で報告書などの書類に目を通していた。

 

「やはりゴーレムは疲れないから力仕事には最適だな。

そろそろ、人里あたりで一事業立てないといけないからな…

霧雨の様な移住者も居るし、NPCの皆も休日に遊べるくらいのお金は用意してあげたいしな…………」

 

 資源を突っ込めばユグドラシル硬貨は出てくるがそれを人里で使い続ける事は問題がある。

 今はサトルの時に稼いだお金を少しづつナザリックに入れている。

 守護者達には今はお小遣い程度にしか渡せていない、さすがに仕事内容に釣り合っていない。霧雨魔理沙の様な存在がこれからも増える事を考えたら早めに手を打っておかないといけない。

 

「やるなら生産業だな。

となるとデミウルゴスが勧めていた事業を軌道に乗せるのが一番………と」

 

 アインズはデミウルゴスから上がってきた報告書に目を通しているとアウラがメイドの魔理沙を連れて部屋にやってきた。

 

「失礼します。アインズ様」

「失礼しまーす。」

 

 二人とも自信満々の笑みを浮かべてやってきた。

 

「アインズ様!大発見ですよ!」

「ど………どうした?」

 

 アインズは二人の話をじっくり聞いた。

 すると面白い話を聞けた。

 

「前の世界のモンスターがナザリック近郊に数種確認出来るようになった?」

 

「はい、まだ低レベルモンスターに限られますが、沼地で自然湧きするモンスター以外に森林でしか湧かないモンスターが数種魔法の森で確認出来ました!」

 

 ナザリックはまるでユグドラシルから切り取られた様に転移している。

 最初にセバスが調査している様にナザリックを中心としたある領域から植生が変わっていた。

 

 しかし、今はなじむ様にその領域をひろげている。

 魔法の森、魔法の森とユグドラシルの両方の植物が生息する領域、ユグドラシルの植物が生息するナザリックの近くと言った順番にそれぞれの領域が存在する。

 

 これは植物に関した話なので花が種を飛ばす様にこんな事があっても不思議では無いと思っていた。

 

 しかし、今回両方の性質を持つ森から沼地では生息していないモンスターが数種確認された。

 

(我々の存在に引っ張られ、幻想入りしているのか?……

詳しくは八雲紫に聞かないといけないな………)

 

 ユグドラシルはもう存在していないのだからどっから移動してきているのか謎だ。

 

 詳細はどうあれこれは嬉しい情報だ。

 薬草の類だけではなく生物もこの近隣で取れるとなればアイテムの補充も可能になる。

 幾つかは魔法の森で取れる物で代用が効くが種類が増えればやれる事も増える。

 

「素晴らしい情報では無いか!これもお前達の日頃の努力の成果だ。」

 

 アインズはアウラの頭を撫でながら二人を褒めた。

 

「今回は魔理沙が頑張ったんですよ。」

「それは本当か?」

 

「それで魔理沙が言いたい事があるんですって。」

 

 アウラの支援から魔理沙が申し訳なさそうにアインズに話した。

 

「まだまだ、ガルガンチュアの修繕費分には程遠いのはわかるんですけど………

出来れば私もオリジナルのアイテムを作ってみたいな………なんて。」

 

アインズは考える間をおいてから話した。

 

「この間の勉強会でもそんな事を言っていたな、良かろう。

褒美はやらんといけないしな。必要なクリスタルと材料は私が見繕ってやる。後で取りにくるがいい………」

 

(やったぜ!!!)

 

 アインズの言葉を聞いて心の中で叫ぶ魔理沙。

 

「それじゃ、魔理沙行こっか!」

「はい、………ではアインズ様、失礼します。」

 

 

 要件を終わらせると二人は嬉しそうに二人で部屋を出て行った。

 

(霧雨魔理沙か…………本当に良い拾い物したものだ。)

 

 魔法使いとしての知識はパチュリーやアリスに劣るがその発想力には目を見張る者がある。

 術式構築に多少の強引さはあるが、そう言ったものこそ新しい発展には必要であったりする。

 今回の魔法の森の探索にしても我々が転移する前の魔法の森を知っているからこその成果だ。

 

 一癖も二癖もあるプレアデスと一緒に仕事をさせているが、持ち前の明るい性格と順応性の高さで馴染んできてる。

 アウラも友達が出来て嬉しそうだ。

 

 

 

(…と言うか順応性高すぎるだろ…)

 

見習わないと行けないだろうな……………

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----第6階層-----

 

 自分の階層に戻ったアウラは同じ守護者のデミウルゴスと打ち合わせをしていた。

 

 

「では、アウラ………アインズ様のGoサインが出たら貴女と貴女の魔獣の力を借りると思います。準備の方をお願いします。」

「アインズ様のお許しが出るとわかっている様な言い方だね。」

「言われてから動いていてはアインズ様に失望されてしまいますからね。

常に先を読む事が何よりも大切なのですよ。」

 

 

「ふ〜ん」

「では、私は明日は非番なのでナザリックをでます。

何かありましたらアルベドに………」

 

転移してからナザリックでは休暇というシステムを導入している。

明日はデミウルゴスが休みの日らしい。

 

「……………そういえばさ。

デミウルゴスは休日は何やってるの?」

 

ふと、何気なくアウラは聞いた。

シャルティアやセバスは紅魔館、コキュートスは白玉楼や近隣の妖怪とコミュニケーションをとっているらしい。

しかし、デミウルゴスが外で何かやっているかは想像がつかなかった。

 

「…………秘密です。では、失礼するよ。」

「うん…………わかった。」

 

 デミウルゴスは答えてはくれなかった。

 休日の使い方は人それぞれ、プライバシーの問題になるためこれ以上聞くのも野暮な話だ。

 

 報告を終えたデミウルゴスは去っていく。

 去り際、デミウルゴスは振り返ってアウラに意外な問いをした。

 

「そうだ、アウラ

女性である貴女に聞きたいのですが………

女性に渡すプレゼントには何が良いですかね?」

 

「プレゼント?………プレゼントかぁ……………

プレゼント!!!………どう言う事!?デミウルゴス!」

 

「どうしました?」

「いや、意外な質問だったから………」

 

「そうですか?

それで、貴女はどう思いますか?」

 

アウラは戸惑いながら答えた。

 

「そ………そうだね。定番だけど花とか良いんじゃないかなぁ〜」

「そうですか………花はちょっとマズイですね。他にはありませんか?」

 

「あ、アタシなんかより他の人に聞いた方が良いんじゃないかな!?」

 

ワタワタした様子で答えた。

 

「わかりました。他をあたります。」

 

デミウルゴスは再び去っていった。

 

意外な質問にあっけにとられるアウラは一人立ち尽くす。

 

「どうしちゃったんだろ。デミウルゴス………」

 

すると後ろから突然声がした。

 

「これは………恋の予感がするぜ!!」

「わ!魔理沙!いつからいたの!?」

「さっきだぜ。」

 

「じゃあ、なんでここに居るのよ。仕事は?」

「今日は早上がりだぜ!ユリ姉さんからもOK貰ってる。

アリスのところに遊びに行こうぜって誘おうと思ったら面白そうな話をしてるな〜なんて思って隠れてた。

で?誰だと思う?デミウルゴス様の意中の相手って。」

「すごく…………楽しそうだね……………

と言うかまだ決まりじゃないでしょう。デミウルゴスに好きな人が出来たなんて」

 

 

 

 

「じゃあ、確かめに行こうぜ!」

 

 

 

 

 恋話が大好きな恋泥棒霧雨魔理沙であった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 次の日、自分の守護階層を出たデミウルゴスをつける四つの影。

 

「臭うぜ〜臭うぜ〜、甘い香りがプンプンするぜ〜」

「そのハイテンションやめれ。」

 

テンションが上がる魔理沙とそれを抑止するアウラ。

そんな魔理沙たちに巻き込まれた二人の犠牲者

 

「辞めようよ………こんな事。」

「なんで私まで……………」

 

アウラの双子の弟のマーレと人形遣いのアリス。

 

デミウルゴスは上の階層に登っていく。

 

「あれ?…………外に出るにしてはルートが違う……………」

 

デミウルゴスが向かうのは第3階層の守護者の家。

 

(嘘!?…………まさかシャルティア!?)

 

 

シャルティアの家に入っていくデミウルゴス。

それを見送った四人は顔を見合わせた。

 

「………ここってあの吸血鬼の家よね?」

「シャルティア様とデミウルゴス様か〜なんか、意外な組み合わせだぜ」

「ボクはちょっと信じられないかな〜」

「いや、どう考えたってありえないでしょ!!」

 

デミウルゴスとシャルティアの組み合わせに信じられない双子。

それもそうだ、二人にとってシャルティアはもう一人の兄弟のような存在なのだから。

 

「というかアインズなら彼が休日に何をしているのか知ってるんじゃ無い?」

 

アリスが何故こんな回りくどい方法をとったのかを聞いた。

 

「私達も最初に思いついた。

でも、アインズ様に聞いたら

『私は知っているが休日の使い方は自由だし、プライバシーだ。本人が言わなかったのなら私も言うわけにはいかないな……』

って言われちゃった。」

 

「まっ、当然か………」

 

 

 

「中の様子、見れないかな………アウラ、なんかサーチ系のスキルとか持ってないのか?」

「なくは無いけど、確実にバレる。」

 

四人は仕方なくシャルティアの家の近くで待機してると変化が訪れた。

 

「アレ?デミウルゴス出てきたよ。」

「やけに早いな。」

 

不審がる双子

 

「なんか、手に持ってるぜ。」

「どうすんのよ魔理沙。」

 

悩む魔女っ子二人。

 

 

魔理沙とアウラはチームを二つに分け、情報を集めることにした。

 

「私とアリスは引き続き追跡。」

「じゃあ、マーレとシャルティアから事情を聞けば良いのね。」

 

「なんでこんな時ばっかり息がぴったりなのよ………」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 アウラはマーレと共にシャルティアの家を訪ねた。

 

「今日はやけに来客が多いでありんすね。」

 

「さっき、デミウルゴスが来たけど何していったのか教えてよ!」

 

「はあ?なんでありんすか。急に……

大した事はやってないでありんすよ。」

「なんでも良いの!話して!」

 

 シャルティアは嫌そうな顔をして答えた。

 

「ん〜

女性に渡すプレゼントには何が良いかって相談を受けただけでありんす。」

(あっ!私にもした質問だ……)

 

「確かあなたにも聞いたでありんす。

あなたの答えがあまりにも役に立たなかったから私にお鉢が回ってきたでありんす。

………やっぱりチビガキじゃダメってことでありんすよ。」

「ぐぅ…………」

 

 アウラも問われた質問にシャルティアはこんな返答をしたらしい。

 

「どんな人なのって聞いたら………」

「聞いたら!?」

 

「優しくて子供好きな人だって。」

「優しくて子供好き?なんか違和感あるわね。

それで?」

「良い感じの紅茶の葉があったから渡したわ。」

「手に持ってたのはそれか………」

 

 その後、いろいろ聞いたアウラはシャルティアの家を後にしようとするとシャルティアが呼び止めた。

 

「あんたもやめなさいよ。こんなはしたない真似。」

 

「うん、私もね……そう思うんだけどね。

魔理沙があんなに楽しそうにしてるしからね…………魔理沙と一緒になんかしてるの楽しいんだよね。

相手がデミウルゴスだし、多分十中八九勘違いか空振りに終わると思うし……」

 

「確かに……デミウルゴスがナザリック以上に愛情を注げる存在がいるとは思えないでありんす。」

 

「じゃあね!シャルティア!」

「まあ、健闘を祈るわ。」

 

 

※※※※※※※※※※※

 



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日常-2

デミウルゴス追跡計画は進行中、魔理沙の連絡を受け、二人に合流したアウラとマーレは集めた情報を二人に話した。

 

 

「優しくて子供好き?……なんかイメージと違うぜ。」

「なんか……デミウルゴスって人……

日頃、魔理沙にどう思われてんのかわかったわ………」

 

そして、気付かれない距離を話して追跡を続けていた二人に目的地と予測される場所を聞いた。

 

「で?今、向かっているのは何処なの?」

「ああ、多分。太陽の畑だと思うぜ。」

 

「太陽の畑?」

「ああ、向日葵が咲く綺麗な場所なんだぜ!」

 

向日葵と聞いて、先日にアウラがデミウルゴスに言った言葉を思い出した。

 

「そういえば昨日、私がプレゼントには花なんかが良いって言ったからかな?」

「ああ〜、そういえばそうだったぜ。」

 

「だとしたら不味いわね。」

「どうしたんですか。」

 

深刻そうに話すアリスにマーレが問う。

 

「ここには凶暴で強力な花の妖怪が彷徨いているのよ。

もし、そいつに花を無断で摘み取ったなんて知れたら………」

「確かに、知らないのなら不味いぜ…………」

 

 

青ざめるアリスと魔理沙………二人が怖がるのだから余程強力な妖怪なのだろう。

 

「でも彼なら知っても、『それだけ危険な場所の花なら、さぞ美しく価値のあるものなんでしょう』とか言いそうよね。

あなたたちナザリックの………特に守護者の人達って自分達の実力に絶対の自信を持ってるからね。」

 

「まぁ、私たちは至高の方々に作られた文字通りの至高品(・・・)だからね。」

 

 アウラが自信満々に答えた。

 彼等は至高の41人がユグドラシルで楽しむための嗜好品であり完璧に作り込まれた至高の品となっている。

 

「でも花の妖怪って聞く限りはあまり強そうな感じわしないよね。」

 

マーレが当然の質問をする。

 

「あいつの能力はいわばオマケ、強力な妖力と強靭な身体能力を持つ正統派の妖怪だからな。

それだけで幻想郷最強クラスって話だ。」

 

 双子は幻想郷最強クラスと聞いて息を飲む。

 それだけの戦闘力を持つ者はナザリックでもシャルティアを始めとした数人しかいない。

 

 ものの見事にここに集まったメンバーはデミウルゴスを含め直接的な戦闘に自信の無いメンバーが揃ってる。

 魔法使いが3人にテイマー、指揮官型で準備を整えた状況なら絶対的な優位性があるが面と向かった状態だと分が悪い。

 

「そうなったらデミウルゴス様の安全第一………

追跡計画は中止して5人で撃退するぜ。」

 

 4人の間に緊張感が走る。

 

「にしてもドンドン奥に入っていくな……

このままじゃ本当にエンカウントしちまうぜ。」

 

 デミウルゴスは入り口の向日葵には目もくれず奥に入っていった。

 

「「あ!」」

 

 

 入り組んだ太陽の畑の道を歩いているとばったり日傘をさした女性と出会うデミウルゴス。

 話に出ていた強力な妖怪だ。

 それを知っているアリスと魔理沙はつい声を上げる。

 

 しかし、対面した二人はニコッと笑って軽くお辞儀をした。

 

「「あれ?」」

 

 デミウルゴスはそのまま女性に家に案内されていった。

 女性の名前は風見幽香、先刻話に出た妖怪である。

 

 

「何で笑顔でアイツの別荘に招かれてんだ?」

「もしかしてデミウルゴスの相手って………」

 

「いやいやいやいや、さっき聞いた話と正反対じゃん!どこが優しくて子供好きだよ。」

「でも、この間の宴会であの人とデミウルゴスが話してるのを見たよ?」

「え!?でも、あの幽香とデミウルゴス様だぜ?」

「だからこそ気があったり………」

 

 テラスで楽しそうに会話する二人を盗み見みる4人。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 一方会話を楽しんでいた二人は外の異変に気付いたようだ。

 

「デミウルゴスさん……何やら外が騒がしいようだけど?」

「聞かれて困ることは何もしてませんが、藪を突っついてみますか?」

 

「任せて…………」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 藪を突っつくどころじゃ無い魔の手が四人を襲う。

 

「クソォ!ここからじゃ何を話してるかわからないぜ!」

「ちょっと魔理沙!前に出過ぎ!気づかれる!」

 

ニュル…………ニュル…………

 

「相手がわかったんだし帰ろうよ〜」

「なんか……嫌な雰囲気がする…………」

 

「「「え?」」」

 

ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

 

 いつの間にやら忍び寄る植物の蔦により拘束される四人は慌てる。

 

「うわっ!」

「キャッ!!」

「な!何!?」

「ヤバイ!ばれた!」

 

 

 そこに二人が現れた。

 

 

「貴方達、どういうつもり?」

「アウラ、マーレ、説明してもらいますよ。」

 

 二人の威圧感は凄まじく、なんとかごまかそうとする魔理沙とアリス。

 

「ええ〜っと

奇遇ですね!デミウルゴス様。今日はアウラ様とマーレ様を連れて太陽の畑にピクニックに来たんですよ!

それで偶然(・・)にもデミウルゴス様を見つけてそれで…………」

「そうなのよ!

ここは幻想郷の名所の一つだから私達が案内してあげようと………」

 

 

 しかし、正直者のマーレは本当の事を喋ってしまった。

 

「ごめんなさい!

デミウルゴスが貢ぎ物をしたくなるような女性が誰なのか気になってナザリックからつけてきたの!!」

 

(((マーレ!!!)))

 

 話を聞いたデミウルゴスはため息をつき話した。

 

「はぁ……そういうことですか………

別に貢いでるわけじゃありませんよ。

贈り物はその人に思いを伝えるものですが、何も恋心に限った話ではありませんよ。」

 

「「だよね〜」」

 

 そんなことだと思っていた双子は口をそろえて言った。

 

「少し考えればわかることなんですがね…

ここまで話をややこしくしたの魔理沙、貴方ですね?」

「そうです!!」

「ユリに説教してもらうから覚悟しておいてくださいね!」

 

「うわぁ〜つらいぜ!」

 

 怒られるというのにおちゃらけた雰囲気を崩さない魔理沙、デミウルゴスは呆れ顔で次はマーレとアウラの方に顔を向けた。

 

「マーレもアウラもこの事はアインズ様に報告させてもらいます。

………まぁ、アインズ様ならお咎めなしとするでしょうが、多少の反省はして下さいよ」

「「は………はい………」」

 

「十分な説明をしなかった私にも非がありますからね。

事情を話しますよ。

すいません、幽香さん。

部屋をお借りしてもいいですか?」

 

「ええ、構わないわ。」

 

 四人は解放され。

 幽香の別荘に招かれた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

四人はデミウルゴスの説明を受けて驚いた。

 

「「「「デミウルゴス牧農場!?」」」」

 

「そのネーミング、やめてもらえますか…」

 

デミウルゴスはアインズとともにナザリックの技術と能力を生かし起業する計画を進めていた。

 

 表の理由は迷惑をかけた人里への貢献。

 アインズ曰く、ナザリックの維持と発展。

 人里及び他の勢力との交流が目的である。

 デミウルゴス曰く、それに追加して人里の経済的支配を目的にしていた。

 

 現在ナザリックで行っている活動は二つ。

 

 一つはアウラと魔理沙の魔法の森探索。

 ユグドラシルでは存在しなかった生物や素材を調べ、研究に役立てる為だ。

 

 二つ目はアインズ主導の魔法研究。

 ユグドラシルには存在しない魔法を研究し、さらに上記で発見した生物や素材もここで活用される。

 

 そして新しく発見発明されたものを増やし、軌道に乗せる為の事業をデミウルゴスは考えたのだ。

 

 魔法の森にはユグドラシルのアイテムを作る際の材料の代用品がいくつか存在する。

 それらの種類は魔法の森探索や魔法研究によりこれからも増えるだろう。

 しかし、下手な乱獲は生態系を崩すし、安定した数が取れない。

 それらを養殖し生産するシステムが必要になるのだ。

 

 量産体制が整えば人里で売りに出すこともできる。

 それに何も魔法アイテムに限ったことではない、野菜や牛などを育てれば食料を生産できるし、エクスチェンジボックスに突っ込めばユグドラシル金貨を作れる。

 

 生産しても無駄にならない上に疲れない働き手はいくらでもいる。(ゴーレムやアンデッド)

 

 まさに一石二鳥どころか三鳥も四鳥もする話だ。

 

 ただ、この計画には問題がある。

 それは主導するデミウルゴス自身が幻想郷の風土に詳しくないことだ。

 

 季節、気温、土の性質、近隣の妖怪や妖精のいたずらも考慮して考えないといけない。

 

「それで四季の花を操る幽香の出番って事ね…………」

 

 最初にピンときたのはアリスである。

 現在、確かにこの手の知識や技術なら幻想郷において幽香が一番だろう。

 妖怪の山には豊穣の神がいるようだが、悪魔が神様に頼み事をするのもおかしな話だ。

 

「幽香さんとは貴方たちが酔いつぶれてた宴会で知り合ったのですが話していて中々面白い。色々勉強になりましたよ。」

 

 手土産はいつも持ってきているのだが、今日はそのお礼に少しでも特別な物をと思ってアウラやシャルティアに聞いたのだ。

 

 幽香の話を少し楽しそうに話すデミウルゴス。

 二人とも人間に対する考えは近いし、それを前提に考えれば花という儚くも美しいものを愛で、不器用でな形であるが子供にも優しい幽香ならば『優しくて子供好き』という考えが出来なくもない。

 

「でも?幽香さんのことも含めてなんで黙っている必要があったの?」

 

「まだ、アインズ様に許可をもらってないですからね………」

(それに理由はどうあれ女性の家に通うのは色々と勘違いされますからね……

まぁ、案の定こんな事態になってしまったわけですが。)

 

つけられてるなんて思わなかったのだ。

 

「でも、幽香…………

貴方はなんで協力したの?

貴方は他人と関わりを持つようなタイプじゃないでしょう。

少なくとも人の下につくような奴じゃない。」

 

 デミウルゴスの事情はわかった。しかし、アリスは疑問に思った。

 

「………別に大した理由はないわ………

デミウルゴスとの交渉で作った農場の一部を好きにしていいって話になってるし。

勝手に変な生物を作られて生態系を崩されるのは困るからね。」

 

「………」

 

 それでも風見幽香らしくないと思うアリスだが当然だ。

 幽香自身も最初から乗り気だったわけではなく、デミウルゴスが異変後知り合ってから毎日のようにしつこく交渉に通ってようやく納得させたのだ。

 

 これは幽香を落としたデミウルゴスがすごいのか、デミウルゴスを持ってしても風見幽香が手強かったのか…おそらく両方だろう。

 

 しかし、紅魔館に始まり、永遠亭、白玉楼、そして単体で大きな存在感を持つ幽香までナザリックは関係を作るようになった。

 これは驚異的な事だ。

 

 幽香はコンコン!と机を叩き、皆を注目させた。

 

「なんか最近、紫が色々動いてるみたいだけど私はいつも通り傍観者でいさせてもらうわ。

今回はその為にあえて協力したってことを忘れないでね。」

 

 どんな世界でもいつまでも傍観者ではいられない。

 世界の揺らぎが大きければ大きいほど。

 

 今回、幽香が協力したのは『少しは協力するからこれ以上は巻き込まないで』という意味合いがあったからだ。

 

彼女も癪なのだろう、紫の思惑に乗せられるは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、アインズより許可をもらったデミウルゴスは自らが企画した事業を推し進める。

 

 これにより数十年後、幻想郷屈指の大企業の前身が作られたのであった。

 

 

 

 

 

 

〜オマケ〜

 

魔理沙「あんなけ楽しそうにしてたんだから少しは気があるんじゃねぇか?」

幽香「悪いけど私よりも弱い男に興味は無いの……彼は頭がキレるからもう少し強ければ考えたわ。」

 

アウラ「確認するけど特別な感情は抱いてないんだよね?」

デミウルゴス「魅力的な女性だとは思いますが私にはナザリックが全てです。」

 



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儚月抄-1

 ナザリック地下大墳墓が幻想郷に転移し、異変を起こしてから少しの時がながれた。

 ナザリックもそこに住む住人も幻想郷に馴染んできたのを頃合いに彼女が動き出した。

 

 

 境目に潜む妖怪、八雲紫は自分の式神に命じ何やら探し物をしていようであった。

 

「さあ、行きなさい。私の可愛い式神たちよ。

神酒を手に晴れを越え、雨を越え、嵐を越え……

そして賢者を探しなさい。」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----ナザリック地下大墳墓-----

 

 アインズは休日明けの魔理沙からある話を聞いていた。

 

「博麗の巫女が修行?……」

「ハイ、アインズ様との戦いが余程刺激になったのか珍しく真面目にやってましたよ。」

 

 異変の時、形式的には勝利した霊夢だったが、納得行かずあれから修行を続けていた。

 

 魔理沙は楽しそうに続けて話す。

 

「しかも、稽古をつけてるのが紫だってんだから面白い。

『巫女なんだから神様の力を借りる方法ぐらい身につけなさい』ってさ。

巫女が力をつけたって妖怪からしたら退治されるだけなのに。」

 

 

(神様の力を借りる方法?…………信仰系魔術のようなものか?)

 

 アインズは考えを巡らせながらも魔理沙の報告を聞き終えた。

 

「………了解した、報告ありがとう。仕事に戻れ………」

 

「ハイ、かしこまりました。」

 

 魔理沙は去り際、もう一つとある情報を話していった。

 

「あっ!そうだ。もう一つ…………」

「どうした?」

 

 魔理沙は急に真面目な顔つきになった。

 

「多分ですが、ナザリックが誰かに監視されています…………」

「何!?……」

 

「気づいたのはアウラ様とマーレ様でおそらく鳥や獣を使った方法だと思います。

魔力は感じなかったので妖力……式神や眷属の類だと私は推測します。」

「成る程……で損害は?」

「今の所、ゼロです。

ナザリックの警備は万全ですし、向こうも獣を使って遠くから様子を見る程度しかできないみたいですよ。」

 

だからこそ尻尾を掴めないのだが……

 

これも気に止めておかないといけない案件だ…

 

「では改めて失礼します。」

 

 魔理沙の後ろ姿を見て彼女の言動について考えた。

 二つ目はともかく一つ目の報告は報告の義務は無い。

 休暇中のプライベートに関係する話なので言わなくても咎めはしないのだが…

 

(絶対に面白そうだから話したんだろうな……

この話を誰に話したらもっと面白くなるってわかった上で……

考え方からトラブルメーカーだな。)

 

 それにしてもナザリックを嗅ぎまわる不穏な影に巫女の修行他にも色々動きがありそうだ。

 

(十中八九、八雲紫が暗躍しているんだろうが………何を企んでいるんだか………)

「教えて〜ゆかり〜〜んって言ってくれたら教えてあげるわよ?」

「………………」

 

 聞き慣れた声がアインズの背後から聞こえる。

 アインズは杖を握り、後ろに振り回した。

 

「どっから入ってきた!!」

 

 ひょい!

 

 杖を難なくかわしたのは噂の彼女、八雲紫。

 

「どこからって、スキマからに決まってるじゃん。」

 神出鬼没の妖怪の面目躍如だとドヤった顔でこっちを見た。

 

 ここでの転移は制限されていたはずだが………

 

 ナザリックが転移してからだいぶ経つから何らかの対策を施したのかもしれん。

 

(……宝物殿のセキュリティを強化するようにパンドラに言わないとな)

 

紫はスッと顔を近づける、

 

 

「ねえ、悟……頼みたいことがあるんだけど?」

 

 どうも、アインズも紫が相手だとペースを崩されるようだ。

 

 ちょくちょく織り交ぜてくるお色気に対し、悟は必死に落ち着く。

 

(こいつの所為で精神の安定化が発動しないんだよな…………)

 

 アインズは紫の両腕をつかみ、引き離した。

 

「離れろ……」

(こんなとこ誰かに見られたら大変だ……)

 

 するとアインズの部屋を訪ねてきた者に目撃されてしまった。

 

「アインズ様、失礼し……ま………す………」

 

 部屋に入って来たのはアルベド。

 見たのは主人が自室に女を連れ込み、肩を抱いてる姿。

 

「ア……アルベド?…………」

「申し訳ありませんアインズ様。

……お取り込み中のようで…………」

 

「違う!これは!…………」

「大丈夫です。わかっています。」

「そ……そうか。」

 

アルベドに異様なオーラが立ち込める。

 

「わかっております……わかっております……

アインズ様を誑かす不届きものは殺すしかありませんね。仕様がないですね。

 

おどきくださいアインズ様………」

 

ぎゅっとアインズに抱きつく紫。

 

「アルベドちゃん、こ〜わ〜い〜。」

「おいっ!離れろっ八雲!貴様ぁ!!」

 

 

この後、乱心したアルベドを何とか止めると紫も満足したのかようやく真面目に話す気になった。

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

「で?……本題は何だ?

まさか、あんな茶番をする為だけに来たわけではないだろうな。」

 

寧ろ、そうでなければ許すわけには行かなくなる。

 

「そうそう、悟……月の都って知ってる?」

「蓬莱山輝夜、八意永琳の故郷で話を聞く限りは高い文明を持つ、幻想郷とは違う、でも幻想郷に近い法則で成り立つ世界………でいいかな?」

「教科書通りの返答ありがとう。

予習はバッチリね。私が先生なら100点あげちゃう。」

 

「…………それで?月の都がどうした?」

 

 

 

 

 

 

「私と一緒に侵略してみない?」

 

 

 

 

 

 

「……………………詳しく聞かせろ。」

 

 紫は話した。

 月には幻想郷とも外とも違う高い文明が栄えており、紫はその技術を手に入れたいのだと。

 

「成る程、侵略の理由はわかったが、私と組む必要がどこにある。

技術を盗むだけなら貴様一人でも十分可能ではないのか?」

 

「あなたは私を過大評価してるし、月の都を過小評価してるわ。」

 

 

 紫は暗い顔をした。

 

 

「昔ね。私、月の都の技術を奪おうとしたことがあるの………」

「その話し方を聞く限りはコテンパンにされたんだな。」

「不慮の事故よ………」

 

「されたんだな………」

「事故よ………」

 

「既に他の勢力にも声をかけているわ。

幽霊に吸血鬼に河童に天狗に他にも色々ね……」

 

「妖怪大戦争でも始める気か?」

 

「ただ、みんな癖のある連中なのはあなたも知ってるでしょ?」

 

「まあ、そうなるな。」

 

「だから私はあなたに協力して欲しいのよ。

幻想郷最大勢力であり、他の勢力とも顔が利くあなたが味方してくれるなら百人力よ。」

 

紫の誘いを聞いて何となく自分たちが幻想郷に転移された理由がわかった気がした。

 

「そのために我々を幻想郷に呼んだな?」

「否定はしないわ。でもそれだけじゃないけどね。」

 

アインズは紫が自分達を呼ぶ事で戦力を補充し。

また、いろいろな妖怪と交流を持たせて、こういう時に幻想郷全土を巻き込めるようにしたかったのでは無いかと考えた。

 

「決して悪い話じゃないわよ。

常に新しい力を求めるあなた達としては断る理由はないわよ。」

 

紫の侵略作戦はとある満月の日に紫の能力で月の都に繋げる境界を開き、そこに強力な妖怪を送り込む作戦だ。

紫が要求してきたメンバーには守護者各員の名が連なっている。

 

「わかった……

準備はしておく。しかし、手を組むかどうかは別だからな。」

 

「ありがとう、悟。

待ってるわよ…………」

 

こちらの全てを見透かしたような言い方をする紫は伝えることだけ伝えるとスキマで去っていった。

 

 

「ちょっと待て!」

「何?悟、名残惜しいの?」

「違う、外に監視の式を放っているだろう。それをどかしていけ。」

 

「監視?…………確かに幾つか烏の式を飛ばしたけどナザリックには放ってないわ。

その程度で監視できる場所じゃ無いってわかってるからね。」

「他に誰がいるっていうんだ。」

「……ナザリックの脅威を知らない愚か者とか?………」

 

紫の言っていることが本当なら外の監視は他の者の手だろう。

 

「どうなさるのですか?」

 

落ち着きを取り戻したアルベドがアインズに尋ねた。

 

「………そう、易々と引き受けていい話ではないことは確かだな。

だが、引き受けるにも引き受けないにしてもリスクがある。」

 

 奴は月の都の技術を欲しているようだ。

 もし参加して、計画が失敗したら損害。

 もし参加せず、計画が成功していたら参加した者だけが月の都の技術を手にし、ナザリックは幻想郷の発展に取り残される可能性がある。

 

 

(…………にしても月の都か…………まずはてるよさんの所に行ってみるか…………)

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----永遠亭-----

 

 

『てゃ!』『ハァ!』『トゥ!』

『昇竜拳!!』

『KO!!』

 

テレビの前からゲームの音声が部屋に響く。

 

「あぁぁぁ!負けたぁ!」

「小足見てからの昇竜余裕でした〜」

 

「てるよさん!能力使いましたね!?

そりゃあ、能力使えば言葉通りの事ができますよ!」

「読めなきゃ見ればいいじゃない。」

 

 

「次はこれやりましょう。………もう、能力使わないでくださいね。」

「某名作落ちゲーね。受けて立つわ」

 

 サトルは前回の異変で活躍した英雄として人里の信頼を得ることができた。

 そしてそれを元に最近、魔法の技術を生かして便利屋稼業を開業した。

 

 仕事の幅は広く、危険な人里の外の運送業も行っている。

 今日はその一つ、ナザリックで栽培した薬の原料となる薬草を永遠亭に運ぶ仕事だ。

 

 今、ナーベが向こうで永琳に引き渡しているところだ。

 

「……月の都の話をしたそうな顔してるね」

「……よくわかりましたね。」

 

「月に不穏な影が現れた。

巫女は修行を始め、八雲は動き出した。

そのタイミングで貴方が来たらバカでもわかるわよ。」

「なるほど、ナザリックに紫がやってきて月の都を侵略しないかって話を持ちかけられました。」

「へぇ………あのスキマも懲りないわね。

無駄な努力だとも知らずに。」

「やはり、前にもやって惨敗しているんですね………

あの八雲がそう易々と負ける姿は想像できませんね…」

「千年近く前の話よ?スキマもまだまだ若かったのよ。」

 

 

 

 

「月の都の住人とはどういう存在なのだ?」

「穢れない土地に住む穢れない存在、神霊とかの清浄の存在よ。

生きていないから死ぬこともない。

生きることに執着しないから、争い事もない。

無限の時間を無限のエネルギーを使って毎日を謳歌している連中ね。」

 

「神話の世界の楽園みたいな話だな。」

「間違ってないわね。」

 

「じゃあ、楽園を追放されたイヴさんは楽園に戻りたいのですか?」

「いや、イヴさんは穢れてもいいから生きることを選ぶわ。」

 

サトルは月の都に未練があるのか尋ねた。

 

「もし、帰れるようになったら嬉しいですか?…………」

「何?侵略して占領して私が戻れるようにしてくれるの?

やらなくてもいいし、出来ないわよ。

月の都の住人は一妖怪の手に負える相手じゃない。いくら、アインズ・ウール・ゴウンでもね。」

 

 能力は高いし、肉体も強靭、オーテクの兵器を提げてる相手では少なくとも月では勝てないとサトルに助言した。

 

「大人しく引き下がるのが妥当かな……

ナザリックとしては月の都の技術は魅力的なんだけどな………」

「え?いかないの?………

せっかくお土産を頼もうと思ったのに…」

「え?………」

 

諦めかけたサトルにてるよは意外な言葉をかけた。

 

「紫が何するかわかんないのよね〜

後、他の妖怪も…………」

 

そこまで言われてようやく言いたいことがわかったサトルはニヤリと笑って答えた。

 

「なら。ちょっと観光してきます。

お土産楽しみにしておいてください。」

「ええ、待ってるわ。」

 

 



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儚月抄-2

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----紅魔館-----

 

永遠亭で行動方針を決めてから今度はアインズの姿で紅魔館を訪れていた。

 

「来たわよ。ウチにはスキマの式が………

私には式で十分だって事ね……ムカつく。」

 

「それで?どうする?八雲の誘いに乗るのか乗らないのか……

できれば参考まで聞きたい。」

 

 レミリアの性格上、そう易々と従う性格じゃ無い。

 

「そうそう、いい計画を立ててるの!あなたも乗らない?」

 

 レミリアは嬉々としてアインズに話し出した。

 

 レミリアの計画とは紫が計画している侵略作戦よりも早くに紫の能力以外に月に行く方法を作り出し、先に月の都の技術の入手及び侵略を済ませておくことだ。

 

「あのスキマの悔しがる顔を想像しただけでも楽しくなるわ。」

「月の都の侵略がそう易々と出来るとは思えないのだがな」

 

「そんな事ぐらいわかってるわよ。

でもね、アインズ。この世界は楽しんだもん勝ちなのよ。」

 

 侵略は口実でただ自分が楽しめればそれで良いらしい。

 

「それはともかく当てはあるのか?月に行く方法なんて…

まさかロケットでも作る気か?」

 

 シャルティアのゲートも行ったことの無い場所には繋げれない。

 

「そうなのよ!流石ね。あなたに話を持ちかけて正解だわ!

どう?一緒にロケットを作ってみない?」

 

 外の世界には月にいけるロケットがあると聞いている。

 ならば外の世界に詳しいアインズを引き込めれば完成がグッと近く。

 

 

 アインズはレミリアの話に乗るかを考えた。

 

(ロケットに仕掛けを施せば後々役に立つし、我々だけで月に行ければ八雲の計画を乱せる、レミリアの暇潰しに付き合うのも悪くはないかな……)

 

「ロケット開発か……面白そうだ、良いだろう。」

「うふふ。ありがとう。」

 

これによりナザリック×紅魔館の共同開発、有人ロケットの開発が始まった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 やると決めたら本気で取り組むしかない。

 

 有人ロケットの共同開発が決定するとその数日後アインズは自分が集められるだけの人材を集め、一大プロジェクトチームを立ち上げた。

 

 まずはチームの核となる人物は勿論我らが主、アインズ・ウール・ゴウン。

 

「私も外のロケット細かい構造なんかは知らないがその辺は魔法で補おうと思う。

月の都が地上の幻想郷のような場所ならそれで問題ない筈だ。

基本設計は任せてもらう。」

 

 続いてチームのもう一つの核となるのは紅魔館の頭脳、パチュリー・ノーレッジ

 

「外の世界に詳しいアインズがいてくれて助かるわ……内部構造は任せて」

 

外の常識に囚われがちのアインズの考えを幻想郷の魔法使いとして軌道修正してくれる役割も担う。

 

次に遠距離の物質を操作する事にたけた魔法使い。人形遣いのアリス・マーガトロイド。

 

「こんな遠距離の上にこんな大きなものを操作した事ないんだけど………

魔力の糸が届くかな………」

 

ロケットの遠隔操作を担当する。

 

最後に姿勢制御のスラスターや予備エンジンを担当する魔砲少女、現ナザリックのメイドの霧雨魔理沙が担当する。

 

「姿勢制御ぐらいの火力は内臓できるけどメインエンジンはどうすんだ?

よほどデカくて安定するパワーじゃないとダメだぜ。」

 

 ただ、でかいだけでは明後日の方向に飛んで行ってしまう。

 幻想ロケットにはそれに相応しい力がある筈だ。

 

 情報収集および材料集めにはナザリックと紅魔館の自慢のメイド達が捜索する事になっている。

 

 こうして集められたメンバーによりプロジェクトは開始した。

 

 本当は技術畑の河童や導きの専門家の天狗も欲しかったがあいにくそっちの伝のないアインズであった。

 

(山の連中はナザリックにいい印象を持っていないからな……

私もあまり好きじゃ無いしな………)

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----隙間空間------

 

 八雲紫は放った式から情報を得ていた。

 

「偵察ご苦労様、後鬼…………」

 

 烏の式である。

 

「なんだかんだ言って、霊夢の修行も順調だし……」

「紫様」

「どうだった?」

 

 紫の片腕とも言える式、八雲藍が報告に来た。

 

「吸血鬼の一味についてですが、計画自体には興味津々でしたがやはり我々とは異なる手段を持ってそれを達成するつもりみたいです。」

 

 紫の能力以外での月の都への侵攻の話だ。

 

「他の手段では現在の幻想郷では達成し得ないと思うので協力してくれるのは時間の問題かと思われます。……ただ…………………」

「ただし、不死者の集団が関わっていると……」

 

「はい…………あそことは紫様直々にお話しされたんですよね?

なのに我々ではなく吸血鬼の計画に賛同し、自分たちだけで月に行こうとしています。

もっと協力的になってくれると思っていましたが…………もう少し利口な男だと思っていましたが………」

 

「わかってないわね〜藍は。彼らのことは放っておきなさい。」

「よろしいので?」

 

「ええ…………」

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

------紅魔館-----

 

 

アインズ達の有人ロケットの開発は予想以上に難航していた。

 

「決定的な資料不足で煮詰まってるわね。」

「外側だけはなんとか出来そうなんだがな……」

 

 アインズもいくら外の世界のロケットを知っているとはいえ、細かい構造までは知らない。

 そして、幻想郷には外の常識が通じない可能性が高い為、何が必要な情報で何が必要でない情報なのかわからない。

 

 パチュリーとアインズが頭を悩ましてる間、アリスと魔理沙は内装について楽しく話し合っていた。

 

「キッチンは欲しいわよね。後、シャワーも!」

「テーブルにベッドも必要だぜ!」

 

 冷暖房に水道完備で快適にし女の子が好きそうな可愛らしい雰囲気にするつもりだ。

 確実に力の入れ方を間違ってる。

 

 というか、アリスはお留守番組だろうに。

 

 

「外のロケットの情報がもっと集まればあるいは…………」

 

 パチュリーがボソッと言った言葉にアインズが反応した。

 

「もう、手は打ってある。そろそろだな…」

 

 この事態を予測していたアインズはすでに手を打っていた。

 

「パチュリー様」

「アインズ様」

「「お待たせしました」」

 

 タイミング良く現れたのは紅魔館のメイド十六夜咲夜とナザリックの執事セバスだった。

 

 

 二人が取り出したのは一つの雑誌。

 香霖堂にあったのを見つけたようだ。

 

 セバスと咲夜はアインズとパチュリーにその雑誌を見せた。

 その表紙を見てアインズは驚く。

 

 

「アポロ計画?サターンV!?これはまたまた古い話を持ってきたな。」

 

悟も詳しくは知らない。

当然だ100年以上も前の出来事なんて歴史の授業で少し齧った程度である。

特に高い学歴を持っているわけでは無い悟としては名前ぐらいしか知らない。

 

「幻想郷的には最新情報らしいのですが」

「……………幻想郷的には…………な。」

 

 存在が完全に否定され、幻想入りするにはかなりの時間が要するということなのか?

 ならばゲームが無くなってすぐに幻想入りした自分たちは一体どうなっているのだろう。

物によっては要する時間が違うのか、それとも時間という概念自体がねじ曲がっているのか。

 アインズはその辺に少し思考を巡らせたが、仮説以上の結論が出せないことを悟り考えるのをやめた。

 

 

「月に到達する為には多種類の大型エンジンを必要とし、そのロケットは3段で構成されている……と

足りなかったのはこれね。」

 

「その情報が幻想入りしているのなら必要な情報である可能性は高いな。」

 

「「『これは月侵略にとっては小さな一歩だが、私達にとっては大きな一歩だな(だわ)。』」」

 

 

「これだけでほぼ完成に持っていけるわね。」

「そうだな……(ならば後は私好みの仕掛けを施させてもらおうか………)」

 



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