ミコッテはソフバントームストーンを愛でた。 (雑種犬)
しおりを挟む

【MSTSM】ミコッテは自己紹介をした。【1】

画面に映るのは、ベッドの上で横向きに寝ている女性だった。

硝子窓から差し込む陽光が、石造の室内を照らしている。

 

「ンにゃぁ〜〜〜……」

 

彼女は上半身を起こすと、鳴き声のような声をあげながら伸びをした。

それからベッドの下に置かれていた靴を履いて立ち上がり、カメラに向かって歩いていく。

 

明るい茶色のポニーテール。

もみあげから目の下にかけて赤いフェイスペイントの入った端正な顔。

チューブトップを革の軽鎧で補強したような露出度の高い上衣に、

同じく袖口と肩口を革で補強したセパレートスリーブの長袖。

ボックスプリーツのミニスカートにサイハイソックス。

履き口が漏斗のように広がったショートブーツ。

何より特徴的なのは、彼女の体には猫のような耳と尻尾がついていることだ。

自然な動作をするそれは、よく見れば作り物ではなさそうだとわかるはずだ。

 

その映像を見ている者達の中には、彼女の姿に見覚えのある者も居ただろう。

というのも、彼女は紛れも無く初期装備のミコッテ族だったからだ。

 

 

 

 

 

「……以上、宿屋でログインするときのカットシーンの再現でしたにゃ。」

 

先程のシーンは実際に寝ていたわけではなく、作中に登場するシーンを真似た演技だ。

 

私は撮影機材に向かって話しかけた。

既に視聴者が幾人もいるようで、返答のコメントが返ってくる。

 

  枠乙   見えた        わこつ                  初見              再現度高すぎ       わこつー

 

「再現度はまぁ、本物のミコッテが役者ですからにゃあ。

 ここまではただのログインにゃ。こっからが本番にゃ。

 初めまして。ミコッテのT'tra Neco(チャ・トラ・ネコ)ですにゃ。

 よろしくおねがいしますにゃー。」

 

よろ   よろしく      ケモ耳かわいい       茶虎猫?   可愛い     わこつ   やたらと現実味のあるメスッテ        

       わこ        初見です          何これ?リアル?                      尻尾の動きが自然過ぎる

 

「リアルかって?リアルですにゃ。3DCGとかじゃないにゃ。リアルモンク系ですからにゃ。

 ちなみにここは地球じゃなくて、惑星ハイデリンにゃ。リアル話。

 地球の機材は無いから、アラガントームストーンを使って撮ってるにゃ。

 iPh(ピー)neっぽいのは気のせいにゃ。これはトームストーン。トームストーンにゃ。

 たぶん古代アラグ文明の技術によってS(ピー)ftbankの回線に接続してますにゃ?

 The L(ピー)dest(ピー)neとかも見れるから凄く便利にゃ。」

 

撮影に使っているトームストーンは、ドレッサーに立て掛けてある。

トームストーンを手に取り、ドレッサーの鏡越しにそれを映す。

 

アッポーのアイヒョンだ。間違いない  モンク関係ねぇ   字幕の伏せ字が一つも仕事してない              わこつ   伏せ字仕事しろ    

     すまほ    伏せ字の意味           何でもかんでもアラグのせいにしたらだいたい正解    ハイデリン星人は猫耳      

                                     なんでミコッテがあいぽん持ってるし        ところでMSTSMって何?

 

「あ、動画タイトルのMSTSMですかにゃ。これはチャンネル名の略にゃ。

 ミコッテは(M) ソフバン(S) トーム(T) ストーンを(S) 愛でた。(M)

 略してMSTSMですにゃ。逆から読んでもMSTSMにゃ。」

 

あーそれの略か   初見 完全にソフトバンク      俺はミコッテを愛でたい    変態はどこにでも湧く  ララフェルを愛でたい       

     愛でた。            これは言い逃れできない               愛でたい。    アラガントームストーンになりたい

 

コメントにあるララフェルとは小人のことだ。

ミコッテのような標準的な体格の種族と比べると、ララフェル族の身の丈は半分ほどしかない。

 

「ララコンの人はお帰りくださいにゃ。お前にはオトナのミリキがわからんのかにゃ。

 このチャンネルはミコッテがメインにゃ。

 ララフェル成分が欲しかったら、対価として幻想薬2個分(約 2 0 0 0 円)の収入を用意するのにゃ。

 なお幻想薬がヤバい薬であることは確定的に明らか。合法な手段では入手できませんにゃ。

 なんかM(ピー)g Stati(ピー)nでは普通に売ってますけどにゃー。

 M(ピー)g Stati(ピー)nっていうかSQUARE ENI(ピー)はどう考えてもヤバい組織ですにゃ。」

 

YESララフェルNOタッチ    ミコッテを愛でるチャンネル      収益化まだですか               ミコッテもそれほど大人っぽくない

    メスッテはミリキの塊           幻想薬(リアル話)      伏せ字仕事しろ             ダメ、ゼッタイ     

                           初回からいきなりスパチャ要求していく守銭奴の鑑                       

 

「とりあえず自己紹介の続きしますにゃー。

 私はエオルゼアに行く予定の新人冒険者ですにゃ。

 ゲームで言ったらオープニングの直前ぐらいの時期にゃ。

 そんで使用する武器はこれですにゃ。」

 

画面に映らない位置に置いてあった武器を手に取り、トームストーンに向かって構えてみる。

 

そこエオルゼアじゃないのか  冒険者と書いて雑用係と読む   リムサロミンサか         片手斧  剣術士?   ララフェル用の斧では  

                         斧術士……?   タンクとヒーラーは需要あるぞ  あまりにも小さく軽く薄く、そして大雑把過ぎた

 

私は右手に片手斧を、左手に盾を装備している。

片手斧は片手剣よりも威力が高く、両手斧と違って盾を併用できる。

何度か素振りして見せてから、斧と盾を元の位置に置いた。

 

「にゃー……。

 斧術士ギルドはリムサ・ロミンサにあるギルドですからにゃあ。

 私が居た所には狂戦士ギルドってのがあったのにゃ。ゲームでは未実装の地域にゃー。

 あとタンクじゃなくて近接DPSですにゃ。

 自己バフ掛けまくってオートアタックで殴るだけの簡単なお仕事にゃ。」

 

狂戦士   強い(確信    早くも脳筋の予感    強い……?   WSは?  弱そう   やっぱり弱い(確信    そいやなんて呼んだらいい?

                    やっちゃえバーサーカー!          私のバーサーカーは最強なんだから!(死亡フラグ        

 

「鬼の首取ったように周囲が騒ぎミコッテは深い悲しみに包まれたにゃ。

 狂戦士がどうやって弱いって証拠だよ。マジでかなぐり捨てンにゃ?

 ……あ、呼び方かにゃ?

 フルネームはT'tra Neco(チャ・トラ・ネコ)だからにゃあ。Neco(ネコ)嬢と呼ぶが良いにゃ。」

 

ネコ嬢wwww   もはや別ゲー        猫売りの少女          猫買います   茶虎ちゃん         寅さん    嬢  

   WS無いとか       ミコ嬢        俺が知ってるネコ嬢と違う   ミスラ語とブロ語が合わさりヴァナに見える           

      ネコの怒りが有頂天になった                              FF14も大雑把に言えばモンをハンするゲームだしな

 

「さて、最低限必要な情報はたぶん全部吐いたと思うのでにゃ。

 今回の配信はそろそろ終了しますにゃー。

 次回はエオルゼアに行くのでよろしくおねがいしますにゃ。

 じゃあ、またにゃー。」

 

最後に私はトームストーンに向かって手を振った。

……近くて映らなかったので後ろに下がってからもう一度手を振った。

 

終わりか  おつ  おつー  ノシ  02   にゃー       にゃーにゃー       リアルに決まってんだろミコッテは実在するんだよ(半ギレ

 乙     情報は吐くもの  またにゃー   ……で、結局これリアルなん?                   にゃーノシ           

 

こうして"ミコッテは(M)ソフバン(S)トーム(T)ストーンを(S)愛でた。(M)"の第1回はたぶん好評の内に幕を閉じた。




一人称視点で、主人公の思考内容が台詞として垂れ流されてると、地の文に書くことが全然無いですね。
次からは会話だけじゃなくて何か行動させることにします。
思考の描写が少ない分を行動の描写で補う感じで。

オリ主を転生者(あるいは憑依者)にするか現地人にするか、実はまだ決めてないです。
現地人にしては地球の文化に馴染みすぎてる気もしますが。
どうしましょうかね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【MSTSM】ミコッテは船に乗った。【2】

「/tell Allagan Tomestone」

「こんにちは。ミコッテのT'tra Neco(チャ・トラ・ネコ)ですにゃ。Neco《ネコ》嬢とお呼びくださいにゃ。

 今回の配信は船上からお送りしますにゃ。」

 

二回目の配信だ。

前回と同様に、私はトームストーンに向けて話し始めた。

 

M(メ)S(スッ)T(テ)S(さ)M(ま)   わこ  初見       ん?MOD?   わこつ      船室の中か?船上っぽさが無い        ねこつww

       わこつ                                        ねこつ     ロミンサ行きか       

 

「MODじゃなくてただのリアルですにゃ。たぶん古代アラグの超技術で地球と通信してますにゃ。

 というか最初のコメントがいきなりおかしいにゃ?

 MSTSMはチャンネル名の略ですにゃ。わかったかにゃ?」

 

わかりましたメスッテさま   メスッテ様吹いた         呼称確定の瞬間        つまりMSTSMと呼べばいいのか            

         わかった(棒読み                                          誰も猫嬢と呼ばない件   

 

「に゙ゃぁぁぁぁぁあああわかってねーにゃああ!」

 

にゃー   壊れた       鳴き声かわいい                   実質アニマルビデオ       MSTSMの別に貴重でもない鳴き声

                  お聞きください、これがMSTSMの貴重な鳴き声です     わかった(わかってない     に゙ゃー       

 

「に゙ゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……ッ!

 ミコッテ(全知全能たるこのクァール)()捕まえ(永遠の奈落への追放せしめ)()メス(帝国の一般的な女性)呼ばわり(──預言書にはそう記されている)とは(ともなりゃ)

 失礼な(幾度となく万死に値する)やつ(故郷を滅ぼした男)にゃ(クポ)遺憾の意(お話になりませぬな……)を表明します(悪いが、生かしておくわけにはいかない)にゃ(クポ)。」

 

に゙ゃああ     何言ってるん   この言語は人類の手に余る    台詞と字幕が合ってない    幾度となく万死  赦しは請わぬ(ごめんなさい)

  汚い鳴き声かわいい    MSTSM=クァール       やはり壊れた        確かに失礼      殺意高い              

               突然のノムリッシュ翻訳                   スペースキャットみたいな顔して聞いてる俺       

 

「……ンにゃぁ(しかし)ノムリッシュは現地人でも難しい(むしろこれを進化の過程と歓迎する者も居た)にゃ。

 ちょっと内なる「憎悪」がお前たちを焼き焦がしそうだったからにゃ、

 心を鎮めるために脳内ノムリッシュ翻訳してましたにゃ。

 あ、そろそろオープニングのカットシーンが始まりそうですにゃ。」

 

自身に向けていたトームストーンを反転させて、前方の光景を映す。

そこには、こちらに向かって歩いてくる日焼けした金髪のヒューランの男が居た。

ヒューラン族はこの世界に存在する種族の一つで、地球人と同じような姿をしている。

彼は私に話しかけた。

 

「なぁ、お前さん。大丈夫か?ひょっとして酔ったのかい?」

 

ゲーム中では、主人公は意識をエーテル界へと飛ばして星の意志(ハイデリン)と邂逅する。

エーテル濃度の高い地域に近付いたことによってエーテル酔いを発症したのかと心配して、

船に同乗している旅商ブレモンデが話しかけてくる場面だ。

 

「/say」

「うん……酔ったのにゃ……。

 船上でアラガントームストーンを愛でるのは……あかんですにゃ……。」

 

やだブレモンデさんがイケメンおじさま   ただの船酔いwww  草     アルフィノとアリゼーが居る      エーテル酔いどこいった      

    オープニング始まった          再現度高すぎ(ただし船酔い    実写版FF14              船酔いで台無し     

        会話モード切り替えで草      船酔いとかモコ草不可避                                    

 

「……そうだ、お前さん。こんな空気の淀んだ船倉にいても仕方ねぇ。

 甲板に出て、外の空気でも吸いにいこうぜ。

 ついでに、少し話でもしないかい?リムサ・ロミンサまで、まだ時間がありそうだしな。」

「わかったにゃ。

 ……うにゃ……ちょっとトームストーンの方をキリがいいところまでやっちゃうにゃ。

 すぐ済むから先に行っててにゃ。」

「そうか?まあ無理するなよ。それじゃ先行ってるぜ。」

 

おっさんにナンパされるメスッテさま  おっさんじゃねぇおじさまと言えぶち○すぞ   それよりハイデリンは?        アリゼーかわいい   

                                                ブレモンデガチ勢怖い              

 

「/tell Allagan Tomestone」

「ハイデリンは見てねーですにゃ。つまり私は光の戦士(ヒカセン)じゃないですにゃ〜。

 ヒカセンじゃないルートに入ったのでにゃ。

 ここから先は高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変にオリチャー発動しますにゃ。」

 

あっ……(察し  草草の草  エオルゼア終了のお知らせ  光の加護が無い冒険者とかただのパシリやん       特大のガバ  じゃあ俺草布生やす

                 ここまでやってヒカセンじゃないとか草糸生える                                 

 

「というかにゃ、なんか隣に居ますんにゃ。たぶんこのヒューランがヒカセンにゃ。」

 

トームストーンの向きを変えて、私の右隣の席に座っている人物を映す。

黒髪の青年だ。

トームストーンを向けた途端、彼は額に右手を当てて俯いた。

 

「ん?……これはヒカセン確定にゃ?」

 

えっ  この人は   草  誰?    ヒロシ       ヒロシです……隣のミコッテに晒されたとです……           そのひろしじゃない

        ひろし     出た公式主人公        こいつひろしって名前だったのか    MSTSMが晴れて脇役に降格した        

                      どう見てもハイデリンと交信中        ハイデリン「聞いて……感じて……考えて……      

 

「公式主人公を放置するのもアレなのでちょっと話しかけてみますにゃー。」

 

「/say」

「おーい、大丈夫にゃ?お前も酔ったのかにゃ?

 "見ざる聞かざる言わざる"かにゃ?それとも"来た見た勝った"かにゃ?」

「どっちも違うんだが……あんたも、聞いたのか。」

「私は見ざる聞かざる、知ってるだけにゃ。

 私は甲板に上がるけどお前も行くかにゃ?」

「……ああ、行こう。」

 

キェエアアアアアシャアベッタアアアアアアア     お聞きください、これがひろしの貴重な鳴き声です     ひろしとブレモンデを会わせるのか。GJ          

    ひろしに凸るMSTSM            来た見た勝ったとか掠りもしてない                                

 

ひとまずのところは話がついたので、ヒカセンとともに廊下に出て階段を登る。

甲板に上がった私達を海霧に霧った空気が私達を出迎えた。

湿った風が吹き抜ける。

見上げればフォアセイル、メインセイル、スタンセイルにミズンセイルと四種五枚の帆が順風を受けている。

ブレモンデは船首側の甲板に居るようだ。

 

「待たせたにゃ。

 もひとり酔っ払いが居たから連れてきたにゃ。」

「ん?ああ、お前さんも船酔いか?大丈夫かい?」

「いや、俺は……」

「エーテル酔いみたいだにゃぁ。まぁあんまり酷くないと思うけどにゃ。」

「そうか。それなら良いが。」

 

おお、船だ     変わった帆だな           ブレモンデ(2回目、3分振り)       酔っ払いw   酷い言いがかり        

 

「それはそうと、お前さん達。見慣れない民族衣装を着ているな……。

 見たところ、流れ者の新人冒険者ってところかい?」

「そうにゃ。雑用係(冒険者)ですにゃ。」

「俺もだ。」

「やっぱりそうかい!冒険者になって名を馳せたいってのは、誰もが一度は憧れるものな!

 でもなんだって、冒険者なんて危ない生業に?」

()れ高のためにゃ。アッシュトゥーナとか()りたいにゃ」

「俺は、強くなるためだ。」

 

会話をしながら海を見ていると、霧の向こうに何か大きな物が見えた。

 

「ンにゃぁ、なんか居るにゃー……」

「ん?どうかしたのかい?」

「ちょい待つにゃ。

 そこの船員、ちょっといいかにゃー!?

 右舷に船っぽいのが見えるにゃー!なんか真っ直ぐ近付いてくる気がしなくもないにゃー!」

/tell Allagan Tomestone 砲撃を想定しますにゃ。音量下げときますにゃ。」

 

私が叫ぶと、途端に船員達の動きが慌ただしくなった。

トームストーンを操作して、録音音量を下げておく。

 

「メインマストに蛇眼の旗!海賊だ!」

「乗客は船倉に戻ってくれ!」

 

海賊船の船首のあたりで赤白い発火炎が閃いた。

その瞬間、誰かが叫ぶ。

 

「伏せろ!」

 

二秒ほど経つと、発射音、着弾音が聞こえるのとほぼ同時に船が大きく揺れた。

至近弾だ。船から少し離れた位置に水柱が立つのが見えた。

炸裂しないただの鉄球(ラウンドショット)だろうから、至近弾であっても大した威力はない。

これで沈没などということはないだろう。

揺れで転びそうになったブレモンデを、ヒカセンと私が支える。

 

「助かった。」

「どういたしましてにゃ。それじゃあ避難するにゃー。」

 

にゃー!にゃー!              蛇眼ってリヴァイアちゃんの目?      耳死んだ   うるせえ    音量下げてもこれか     

                                              音量ワロス  びびった        大丈夫?沈まない?

 

私達は船内に戻った。

その後も断続的に砲撃は続いたが、暫くすると爆発音も激しい揺れもなくなる。

私は下げていた録音音量を元に戻す。

 

/Allagan Tomestone そろそろ大丈夫そうなので音量戻しましたにゃ。」

 

大柄なルガディン族の船員が現れて言った。

 

「乗客の皆さん、安心してください!

 海賊船とはすれ違う形になりましたが、もう大丈夫!

 風も味方してくれ、無事振りきりました。」

 

体格に見合った大きな声量だった。

 

音量戻った?   音量戻った               ルガディンうるせえw  耳死んだ(二回目    あ、海賊撒いたのか    良かった  

            ここで不意打ちの砲撃とか無いよな?    おい音量        誰だよ不意打ちフラグ立てたの  草      生還おめ




このまま船下りるところまで書くつもりでしたが、前話の投稿から一週間経つのでここで区切ります。

駄目だ、この書き方は無理がある気がする……。
無理に地の文を入れようとせずに、開き直って地の文減らす方針でいった方が良いかも。
それに地の文は固めの文体にするのが好きなんだけど、この作品だともっと軽い雰囲気にした方が良い気がする。

あとコメントをスクロールさせるのがめんどい。
スクロールしたらコメントっぽいと思ったのでスクロールさせてますけど、読みにくそうで不安。

なんか意見ありましたらよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

【MSTSM】ミコッテは毛玉(隠語)を吐いた【3】

「/tell Allagan Tomestone」

「さて、海賊は去りましたにゃ。

 大筋はゲーム中のカットシーンと同じ流れでしたにゃ。

 船の揺れが治まって安心、というか、時既に時間切れな気もしますにゃ。

 ……なので速攻で甲板に出ますにゃ!もはや一刻の猶予も無いのにゃ!」

 

乙  生還おめでとう    ルガディンも再現度高いよな                   どないしたん   なんか急ぎのイベントあったっけ?

    顔色が                ルガディンって特殊メイク?            ん?          何事         

 

口にした言葉の通り、急がねばならなかった。

私の身に危機が迫っていたからだ。

ブレモンデとヒカセンに一言告げる時間も惜しい。

私は何も言わずに船倉から走り去る。

後から二人が追ってくる気配を感じるが、今はそれどころではない。

甲板に出ると、私は風下側のブルワークから身を乗り出した。

 

「ゔっ……」

 

それから私は速やかにアラガントームストーンを操作して、映像処理を施した。

アラグの謎技術はリアルタイムでの映像編集をも可能とするのだ。

これで致命傷は免れた。

そのことに安心し、眼下の海へとモザイクを吐き出した。

 

(効果音)(ピーーーーーー)

 

え、何       何するんです    うわぁ  おいやめろ    mjd?   モザイク吐いてる      そういえば船酔いだったな     

                      ゔっ    あかん      MSTSMの口から出たものなら飲めるッ!   ちょ     ド変態が湧いてる

                              これはひどい          腹筋崩壊した                    

 

「大丈夫か?」

「揺れが酷かったものな。仕方無いか。」

 

後から来た二人が私に言った。

ヒカセンが背中をさする。

 

/say んぅ……だいじょ……(効果音)(ピーーーーーー)

「大丈夫じゃなさそうだ。」

「大丈夫じゃなさそうだな。」

 

大丈夫じゃなかった。

 

「……あの……ちょっと、無理にゃ。

 配信中断、しますにゃ……ごめんにゃ。

 ……ゔっ。」

 

大丈夫か   お触りOKなのか    MSTSMさすり隊     ひろし場所代われ   だいじょばない  ○ロイン     乙  お大事に  ええんやで

   オエー猫(AA略         YESメスッテYESタッチ             俺医者だけどこれは余命3ターン(適当   ノシ   死の宣告やめれ 

                     無修正ください                        合法ネコ                

 

 

 

 

 

「……何も起こってないにゃ。私のログには何も無いにゃ。」

 

船は無事に海都リムサ・ロミンサに到着した。

船を降りて暫く休んでから、私は何事も無かったかのように配信を再開した。

いや、何事も無かったのだ。絶対に何事も無かった。

 

わこ   おかえり       わこつ       何も無い(モザイクとピー音)        そこ船じゃないな    リムサロミンサ到着してた

        待ってた                 ただいま                    ねこつ                

 

「はいにゃ。リムサ・ロミンサ上陸済みですにゃ。

 左手に見えますのがメルヴァン税関公社と巴術士ギルドですにゃ。

 行く必要は無いので行きませんにゃ。

 Miq(ピー)'pediaとかによれば、公社の受付をしているペ・タージャ・スターさんは

 語尾に「にゃ」を付けるタイプのミコッテらしいですにゃ。

 会わないように気をつけますにゃ。キャラが被るのでにゃ。」

 

今居る場所は建物の中だ。

とはいえ前方にある扉の無い開放的な出入り口からまっすぐ道が続いているため、

ここも道の一部のようなものだ。

後方には桟橋に続くゲートがあるがそこも扉はなく、

腰程の高さの柵で区切られているだけなので開放的だ。

 

トームストーンを左に向けると、壁には重厚な扉と看板が付いているのが映る。

その扉の中にメルヴァン税関公社と巴術士ギルドが同居している。

税関公社は名前通りのものなので説明は省く。

巴術士ギルドの方は巴術という種類の魔法の研究や、普及活動を行う機関だ。

知識層である巴術士は、昔からリムサ・ロミンサの公務に関わることがよくあるらしい。

税関公社と巴術士ギルドが併設されているのも、そのような理由でのことだろうと思う。

 

カーバンクル見たい      ニャンシーカーかニャーンキーパーか  会わないのか     キャラ被りとか        猫被り    猫被るなw

                 MSTSMとカーバンクルのふれあいが見たいです   ニャンシーカーですな  ニャンニャーニャーかニャーンニャーニャーか?(難聴     

 

「カーバンクルというと、巴術士の使い魔のことですにゃ。

 カーバンクル見るだけのために行くのは難易度高いので、行きませんにゃ。

 もし巴術士になっても、ヒカセンじゃないので派生ジョブは取得できませんしにゃ。

 で、右手には都市内エーテライトがありますにゃ。早速交感しときますにゃ。」

 

通路の右端に、人間ほどの大きさがあるクリスタルが設置されている。

それはエーテライトと呼ばれるもので、転送魔法用の駅のような役割を持つ。

このエーテライトと交感することによって、今後は転送魔法でここに移動できるようになる。

とはいえこれは都市内エーテライトという小型のエーテライトなので、

同じ都市内にある他のエーテライトとの間でしか移動はできないが。

 

私はエーテライトに手を翳し、数秒ほどかけて交感を行う。

体内のエーテルをエーテライトのエーテルと同調させて、エーテライトの座標を記憶する。

その際に手とエーテライトの間に光条が発生し、エーテライト自体も淡い光を放つ。

 

都市内エーテライトさん        何故さん付け  綺麗     都市内エーテライトさん綺麗    都市内エーテライトさん好き      

        ベスパーベイ最短経路か                                          交感とか実質セッ(ry

 

「じゃ、ここからブルワークホールまで道形に歩いていきますにゃ。

 ブレモンデとは別れて、ヒカセンは先に溺れた海豚亭に行ってもらってますにゃ。

 溺れた海豚亭はブルワークホールの階上にありますにゃ。」

 

リムサ・ロミンサは、無数の小島と岩礁からなる都市だ。

海から突き出た白亜の巨岩が、中をくり抜かれて建物となり、橋で繋がれて都市となっている。

 

私は今居る道を真っ直ぐ進む。

西国際街商通り、国際街広場、東国際街商通り、八分儀広場、ブルワークホールと続く。

ブルワークホールの向こうはゼファー陸門があり本島の丘陵地帯ゼファードリフトへと続くが、そこまでは行かない。

二つの商通りは小島を貫通するトンネルの中にあり、アーケード商店街のような雰囲気だ。

道中の国際街広場と八分儀広場にあるエーテライトにもそれぞれ交感しておく。

国際街広場の片隅にあるのは先程と同じ都市内エーテライトで、

八分儀広場の中央にある巨大なエーテライトは都市間の移動にも使えるものだ。

 

このエーテライトを見てくれ。こいつをどう思う?              すごく……大きいです……      ひyな言い方やめろ        

    エーテライトさん綺麗      そそり立つエーテライト           ご立派              やはり交感は実質セッ(ry

 

「コメント欄が荒ぶってる気がするけど華麗にスルーしますにゃー。」

 

二つの商通りと広場を通り抜けると、ブルワークホールに着く。

ブルワークホールからリフトで二階に上がると、目的地である溺れた海豚亭だ。

溺れた海豚亭は酒場で、冒険者ギルドや宿屋ミズンマストが併設されている。

いわば冒険者の活動拠点だ。

 

「/say」

「待たせたにゃ。」

 

見渡してみるとカウンター席にヒカセンが居たので、声をかける。

ヒカセンはこちらを向いて片手を挙げた。

 

「来たか。体調はどうだ?」

「えっとにゃ、まず、陸酔いというものがあってですにゃ?」

「休め。」

 

おk把握   ゔっ  おいやめろ、早くもこのスレは終了ですね  ブレス系の攻撃か……青魔道士かな      モザイクブレス    コメ欄が阿鼻叫喚

  あかん   陸酔いって何     ピー     おおおちちつけ(混乱       お前が落ち着け   え?お乳突け?(難聴          

                    陸じゃ酔わんやろ               酔うんだよまじで    つ「正露丸」           

 

「/tell Allagan Tomestone いや、うん、そろそろ配信やめとくにゃ……。

 多分今日はもう無理にゃ……ごめんにゃー。」

 

配信を終了して、トームストーンの電源を切った。

真っ黒になった画面に自分の顔が反射する。

その顔はもはや限界が近い表情をしていて、見ていると悲しくなった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。