裏切り者の兄弟 (CT–1111)
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裏切り者の兄弟

爆音が鳴り響き、攻撃ヘリ(ガンシップ)が後方でメラメラと燃え盛る。

ヘリは爆破されてしまい、さらに近くの燃料タンクに引火してしまったのか火の手が上がり基地に燃え移った。

 

呆然と立ち尽くしてた俺は突然後ろに引っ張られ、資材の詰まった箱の山に押し込まれる。勢いよく張り倒されたので、いててと強く打ち付けた場所をさする。

その直後、ついさっきまで立っていた場所に金属片とビームが飛来する。障害物になっていたAT–TEウォーカーが空爆で吹き飛んだのだ。

 

「大丈夫か、ジャックス!ぼけっとするな」

 

そう言って手を差し伸べたのはローワンだ。先程助けてくれたのもローワンだろう。混乱の真っ只中だというのに俺のことにまで気を使ってくれるなんてローワン様様だ。

 

こいつは訓練兵時代の同期で、同じ分隊の馴染み深いやつだ。ブラスターでブリキ野郎の頭を立て続けに吹っ飛ばすほどの腕の持ち主なんだが、非常に脳筋野郎で最近のエピソードといえば分離主義者の艦隊と交戦中に艦内に侵入したバトル・ドロイドを素手でぶっ潰し、それを振り回して10体ほど破壊したことだ。

 

だが今はそんなこと関係がない。いかに脳筋野郎であろうと戦況を見極め柔軟に対応できるように俺たちはつくられている。

 

「ほらお前のヘルメットだ。あとそのブラスターを使え」

 

ローワンが投げ渡した俺のヘルメットにはDC–15Aブラスターが無造作に放り入れられていた。それを取り出しセーフティーを外し反撃の準備は完了した。

 

「じゃあいくか。向かうのは基地の格納庫だ。そこにスピーダーを用意してあるから最悪はそれで逃走する」

「この基地を放棄するのか?ここは戦線を支えるための補給基地なんだぞ」

「だがまあそれは最後の手段だ。とりあえず残存兵は司令部とその格納庫に集合だとよ。道中使えそうなものがあったら拾ってこいとも」

「……了解。それで、戦況はどうなんだ?」

「絶望的な一言に尽きる。こっちは多く見積もっても兵力は二百ほど。それに対し向こう側は確認できるだけでおおよそ800だ。急いで制御室に向かったルッチが対空迎撃システムを手動で稼働させてくれたおかげで大分楽になったとはいえ強襲してきた第一派はそんだけいるんだ」

 

希望的観測に則っていえば兵力の差は4倍。

それでもプログラミングされただけの鉄の人形と違いクローンは独自の独創的な思考できる。そのおかげで数倍のポテンシャルはあるものの、それでも正規の戦闘員といえない整備士やメディックなどを含めているので数で押し切られる可能性すら大いにある。

 

「奴らは指揮官がいなけりゃただの歩くカカシに過ぎない。それに対してこちらには脳みそがあるんだ。その差を活かすぞ」

「まあそれしかないわな。あっちは数だけは一丁前の鉄くずだ、ブラスターさえ持ってなけりゃ可愛いもんなんだが……」

 

愚痴るローワンを尻目にあたりに使えそうな武器やビークルはないかと探すとAT–RTウォーカーが3機ほど放置されている。近くに行って調べると2機は使用不可能なものの後の1機はコンテナに詰め込まれていたので流れ弾に被弾せずに済んだようだ。弾薬と燃料が満タンに入っていたのでおそらくは哨戒に出るはずだったが間が悪く、攻め入られたので放棄したのだろう。

 

「なんにせよ、今は渡りに船だ。とりあえずこれに乗って移動する。俺がAT–RTを操縦するから、お前は後ろにでもぶら下がってろ」

「はいはい。いつもながらに酷い扱いだ、座ることも出来ないなんてな。知ってるか?高速で移動する二足歩行兵器にビクビク怯えながら振り下ろされないように掴まっている俺の気持ち」

「いいや、残念ながら」

 

彼の面倒くさい絡みはいつものことなので無視していく。あいも変わらずこの切羽詰まった状況でふざけたことを抜かせるユーモアが俺にも欲しいものだ。

 

『いたぞ、あそこだ!ウテェ、ウテー。クローンは皆殺しだ』

 

なんともタイミングよくAT–RTが起動したのでさっそく姿勢制御を行い、顎部分に搭載されたレーザー砲をブリキ野郎に目掛けてぶっ放す。

ピュンピュンと砲塔から発射されたビームは分隊行動をしていたドロイドをまとめて吹き飛ばした。

その圧巻の様子に嬉しそうにローワンは口笛を吹いた。

 

「ヒュー、いいね。さあいくか。目指すは西側の入り口!あそこが一番格納庫に近い。そこを叩けば大分持ちこたえられるはずだ」

「了解」

 

ローワンの的確なアドバイスに従い道中のドロイドにレーザーを食らわせ、時には踏み潰し着々と目的地に近づいていく。

ローワンは時折片手でDC–15Aブラスター・ライフルの引き金を引き、正確に遠くの敵を狙撃していくのには素直に脱帽した。不安定な位置に揺れる機体でどうやったら100メートルほど先の相手に上手くヘッドショットを当てれるのだろうか。

 

「見えてきたぞ、あそこだな?」

「そうだ。入り口にいるブリキ野郎どもにこいつのレーザーをお見舞いしてやれ!」

『なんだあれは?』

『こっちに来るぞ』

『馬鹿!あれはクローンだ。撃ち殺せ!』

 

小隊規模のドロイドの軍勢が群がっている入り口に、俺たちはレーザーを放ちながらウォーカーで突っ込んだ。

 

 

 

通商連合の基本戦術は、ドロイドの大量生産による物量によるものであり、その圧倒的なドロイドの軍勢による大規模に展開された陣でものをいうものだ。

 

今は基地を攻めるために兵力は分散されており、外からの敵に備えてもいない無防備な鉄屑に俺たちクローン兵士が負けるわけがなかった。

といっても、今の俺たちにとって最大の脅威となる対ビークル兵装のドロイドは全てローワンが片付けてくれたからで、余計なものに気を取られずに集中できたからか早い段階で殲滅することができたというのもある。

 

 

「流石だな相棒!故郷では随一の成績を残しただけはある。俺の隣にお前がいなきゃきっと死んでたぜ?」

「ああ、そうかもな。それと助かったよローワン。お前の援護のおかげだ」

 

ローワンは照れていることを隠すように、いいってことよ!とだけ言って、無理やりこじ開けられた入り口にブリキ野郎やウォーカーでバリケードをつくっている。

 

「何してるんだ?バリケードなんて大した役にもたたんだろうし、早く兄弟たちと合流しよう」

 

交戦中で危機的状況だというのに緊張のかけらもしていないローワンを急かすように俺は呼ぶ。

 

いつもマイペースすぎるこいつは、カミーノの軍事複合施設での訓練成績も良かったというのにその性格から教官たちから好印象を持たれてはいなかった。

しかし、今こんな状況に陥ってこそ分かるが、この性格のおかげで緊急事態が起こった時に司令塔が麻痺しても、冷静かつ最善を尽くすことができたし、闇雲に上官の指示を待ちそれを遵守することが全てではないと分かった気がした。

 

そんなローワンは深くため息をついて、わかってねえな〜と勿体ぶったように口を開く。

 

「馬っ鹿野郎め!そんなんじゃあすぐに追いつかれるし、味方のもとに敵を案内してるのと同じなんだぜ?ここで敵の足を止める確かな手段を講じておくべきなのさ」

「……確かにそうかもな。具体的にはどうするんだ……?」

「この区画を火の海にする」

「……」

 

ドロイドたちも火の中をわざわざ通ってくるのは避けたいだろうが、自分たちの守るべき場所を破壊することを考えつくこと自体が異質ではないだろうか?

そんなぽっかり空いた俺の口をローワンは笑いながらも着々と燃料と爆薬を的確に燃え広がり攻め入ることができないように計算して設置している。

 

 

「よっしできたぞ!さあボサッとしてないでいくぞ!」

「な、ちょっ待てよッ!」

 

敵が来ないかという見張りがてら側からローワンを見ていたが、突然走り出したローワンに驚きながらも俺は追いかけた。

 

それと同時に先に交戦したドロイドたちのが呼んだ増援が到着し、バリケードを破って基地内に侵入しようとした。

ローワンはこれも計算の内だったのだろうか?

バリケードを無理やり破った瞬間──

 

 

即席のブービートラップに引っかかりそこから爆薬が爆ぜて、次々と燃料とともに引火して背後を火の海で飲み込んでいった。

 

俺はローワンの策に巻き込まれてたまるかと全力で駆け抜けた。

そして曲がって先でローワンは隔壁の操作をしており、俺がギリギリ滑るこむとちょうど隔壁が降りきった。

これで先ほどまでいた区画は完全に火にのまれたことだろう。

 

「危ないところだったぞローワン!」

 

俺が怒りを露わにして顔をそちらに向けるとそこには生き残った全てとは言えないものの半数ほどの兵士たちがいた。

どうやら無我夢中で走っていたら格納庫に辿り着いていたらしい。

 

 

ここもそう長くは持ち堪えられないだろうが、一先ずこれで安心できるだろう……

 




この作品を見てくれてありがとうございます。
これは一応書いてみたはいいものの、私の情熱のなさのせいでプロットから形にした段階にすぎません。

残念かもしれませんが続きは今のところ未定です。


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